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1998-12-18 第144回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年十二月十八日(金曜日)     午後一時十分開議  出席委員    委員長 穂積 良行君    理事 赤城 徳彦君 理事 増田 敏男君    理事 松岡 利勝君 理事 横内 正明君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       今村 雅弘君    小野寺五典君       大石 秀政君    金田 英行君       熊谷 市雄君    熊代 昭彦君       鈴木 俊一君    園田 修光君       中山 成彬君    萩山 教嚴君       御法川英文君    宮腰 光寛君       宮本 一三君    矢上 雅義君       今田 保典君    樽床 伸二君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       漆原 良夫君    木村 太郎君       久保 哲司君    岩浅 嘉仁君       佐々木洋平君    菅原喜重郎君       中林よし子君    藤田 スミ君       前島 秀行君  出席国務大臣         農林水産大臣  中川 昭一君  委員外出席者         外務省経済局長 大島正太郎君         外務省経済協力         局外務参事官  堂道 秀明君         農林水産大臣官         房長      高木  賢君         農林水産省経済         局長      竹中 美晴君         食糧庁長官   堤  英隆君         通商産業省通商         政策局長    今野 秀洋君         農林水産委員会         専門員     外山 文雄君     ————————————— 委員の異動 十二月十八日  辞任         補欠選任   岸本 光造君     大石 秀政君   原口 一博君     樽床 伸二君   西  博義君     久保 哲司君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     岸本 光造君   樽床 伸二君     原口 一博君   久保 哲司君     西  博義君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(米の関税化)      ————◇—————
  2. 穂積良行

    穂積委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松岡利勝君。
  3. 松岡利勝

    松岡委員 私は、自由民主党を代表いたしまして、日ごろから同じ自民党の中で農林関係先輩議員として、また、今日極めて案件メジロ押しといいますか大変困難な重要な問題に連日果敢に取り組んでおられます中川農林水産大臣敬意を表しながら、米の関税措置の切りかえの問題につきまして質問をさせていただきたいと思います。  まず、米の関税措置の問題の前に、読売はきのうの夕刊、その他朝日なり日経はきょうの朝刊ということでありますが、私も、きょうこの米の関税措置の問題で党内手続過程で、自民党政調審議会なり総務会の場におきましていろいろとこの点でただされました。これは一体どういうことかということであります。  そこで、私は、これは報道のとおりのようなことになっていけば、大変今苦労しながら、本当に困難な問題を一つ一つ乗り越えながら、米の二カ年の緊急対策ということもあって減反ということに取り組んでおる農業現場が大混乱に陥ってしまう、こういうことになると思います。  そこで、一番の責任者として、大臣、この点について、どういうことなんだということを私はまず大臣から明快に御表明をお願いしたいと思います。
  4. 中川昭一

    中川国務大臣 今松岡先生から御指摘の件につきましては、私ども大変びっくりし、そして実は怒りすら覚えているところであります。結論から申し上げると、減反廃止というような昨日そしてけさ新聞報道は全く事実無根でございます。  つい先日松岡先生にも大変御協力いただきました新しい農政改革大綱の中でも、生産調整の着実な実施ということが大きな柱にあるわけでございますし、また、きのういわゆる三者合意というものが決まった直後にああいう報道をされるということは、本当に生産者皆さんのお気持ちを考えると、私は大変怒りを感じるわけでございます。また、具体的に幹部の名前まで出ておるわけでございますが、全く事実無根でございますので、検討委員会もまだ一度も開かれておりません。  全く事実無根でございますので、農林省としても、またけさ記者会見で私からもはっきりと、事実無根であり正確な報道をお願いしたいということを申し上げたところでございます。
  5. 松岡利勝

    松岡委員 大臣から明確にお示しをいただいて、私もそれを承って安心もいたしたわけであります。  と同時に、やはりこれは、これだけの報道ですから、相当いろいろな影響を及ぼしていくと思います。どうか農業現場混乱のないように、また、来年早速この問題が生産調整ということで大変な問題になるわけでありますので、そういった段階で農協の現場末端組合長さんたちやこのことを担ういろいろな人たちが困らないように、ひとつ農林省としても万全の策を講じていただきたいと思います。  このことを強くお願いいたしまして、次に移りたいと思います。  米の関税措置への切りかえの問題でございますが、私も、自由民主党の農林水産物貿易問題の委員長代理という立場で直接関与いたしてきたわけでありますけれども、今農業現場では、なぜ今そうなのか、余りにも唐突だ、こういったようなことで、大変末端に行くに従っていろいろな問題が生じているし、これからもこの問題がかなりいろいろと尾を引いていくのではないかと思っております。そこで、これはやはりなぜそうしたのかということを明快に、わかりやすく、そして一日も早く農業現場周知徹底をして誤りなき対応をしていただきたい、こう私は思っておるところでございます。  そこで、私なりにポイントを申し上げますと、細川内閣のときにマラケシュ合意ということでこの協定が調印をされたわけでありますが、この特例措置というのは、普通の基準に比べて一段軽い、そういう形で特例が認められたわけです。言ってみれば、執行猶予的な形で通常のものよりも緩やかなありがたい措置であった、こうだれしも思っているのです。ところが、この協定を勉強していけばいくほどこれは逆でありまして、まさに強制労働をより強く課せられた、こういうようなものに私は思っております。  といいますのが、二〇〇〇年が来て二〇〇一年になるときにこの特例措置を続ければ、今まで以上の上積みした、そういう負担犠牲をもって受け入れない限り、そしてそれならいいと相手も納得するものでない限り、これは認めてもらえない。したがって、特例措置を続ければ今まで以上の負担で苦しみを持ちながらやっていくしかない。また一方、関税化に切りかえれば、これは関税化に切りかえただけではなくて、今までのミニマムアクセスの分は背負ったまままた関税化に切りかえていかなきゃならない。こういうことでありまして、この特例措置はまさに二重、三重に犠牲負担を強いる懲罰的なものであった。  非常にそのときの協定に対して憤りも感じるわけでございます。何ゆえに国益をここまで損ねてしまわなきゃならなかったのか。これは私どもとしても同じ政治の一端を担う者としてじくじたるものがあるわけでありますが、そういうのが現実であります。  そこで、今後の二〇〇一年以降の交渉には、これは国益をかけて、国の総力を挙げて、こんな不平等、不公平な条約協定はもとに戻すような、相手のあることですからそう簡単にいかないと思いますけれども、今まで以上に悪くなることが絶対ないように、そういう強力な交渉をしていかなきゃならぬと思っております。また、そのために私ども努力をしていくべきだと思っております。  それはそれとして、そのことは全く関係なく徹底してやっていく、こういう前提に立って、今回の措置は、あと二年間残っている中で最善の、最大の有利な条件を引き出すということで、大臣におかれましても三者合意という中で行政の責任者として御決定、御決断をいただいた。私は非常にそのことに敬意を表する次第であります。日本農業を守るという観点からすれば、今の時点でこれが最善選択であった、こう思っております。  というのは、ミニマムアクセスが、最終年度は八%まで受け入れさせられるものを、ここで選択をすれば七・二%で済む。〇・八%は助かるわけでありますから、それが一点。それと、関税の問題でありますけれども、今の時点でこれを行えば、協定に決められたとおり、まさに計算結果として出てくるそのもの国際機関に通告すれば、それでこれが認められていく。この二つ日本農業を守る上で今回の決断をした一番有利な点であったと私は思っております。  そこで、ほかにもいろいろとあると思いますけれども、この二つの点を明確にしていただいて、日本農業を守る上ではこれが最善の道であったと。その最善の道を選択しながら、二〇〇一年以降の交渉には、今までの不平等、不公平と言われるようなこの条約を断固として正す、そして日本国益を守る。例えば輸出補助金の問題にしましても、全廃が無理なら日本にも、輸出補助金のない国にもこの輸出補助金を認めさせる、そういう平等な形でやるような、そういったことも逆に提案をしながら、求めながらやる。  そしてハンディキャップハンディキャップというのは欧米のルールにあるわけであります。どんなスポーツにもハンディキャップというのはあります。逆にないのは東洋の方にないようなもので、日本の相撲にハンディキャップはありません。舞の海も小錦も一緒にとるわけでありますから。そういうわけで、ハンディキャップも認めさせながら、そして不公平な部分は徹底して正していく、こういう交渉をやってもらわなければならない、こう思うわけであります。  したがって、まず前段の、わかりやすく、そして一日も早く現場末端までこのことを理解させていただきたい、この点について大臣の御所見をお伺いしたいことが一つであります。  二つ目は、二〇〇一年以降の交渉に臨むに当たって、先般のAPECでも、私どもは大変厳しい要求を受けながら、大臣先頭に、また我が党もそれこそ議員外交を展開して、非常に厳しかった状況を一〇〇%、総理の御決断もございまして、そしてまた各省がまさに一致結束、各大臣力を合わせていただいて乗り切ったわけでありますから、今度の交渉はもっとそれ以上に重要な、困難な問題でありますから、今回以上の強力な一体となった体制が必要だと私は思っております。  この二つの点について大臣の御所見、それからきょうは外務省通産省もお見えでありますから、一体となって取り組んでいくんだというそれぞれ各省立場を私は明確にしていただきたい、このことを求めたいと思います。
  6. 中川昭一

    中川国務大臣 経緯等についてはもう松岡先生も御承知でございますが、九三年の交渉においては、例外なき関税化という案に対して、我が国としては米の関税化は絶対に認められないんだと。松岡議員もわざわざ現地に何回も行かれて議員外交をやっていただいたわけでありますが、あのときは、関税化は阻止できたけれどもミニマムアクセスという、先ほどありがたいというお話がありましたが、私も、一瞬、関税化を阻止してよかったなと思ったわけであります。  しかし、そのときには、協定にもう既に書かれていた文章でありますけれども、私、恥ずかしながらその協定附属書の五なるものを精読していなかったこともございます。九五年からスタートをして一年たち二年たちしていくうちに、ミニマムアクセスの存在というものが、国内生産影響を与えないという政府決定をきちっとやってはおりますけれども、一方では、消費者需要のほとんどないミニマムアクセス米がどんどんたまっていく、量がふえていく、こういう状況になってまいりました。  一方、新食糧法あるいは次期国会で御審議いただく予定の新しい基本法、あるいは先ほど申し上げました農政改革大綱等々いろいろな国内的な法整備も進んでまいっておるところでございます。  そういう中で、二〇〇〇年に新しい交渉をどういうふうにしていくかということも一つ選択肢であろうと思います。その場合には、今先生指摘になったように、関税化の道をとるのか、あるいはミニマムアクセス特例措置条件つきの厳しい中でやっていくのかという選択肢、それから、協定に書いてある、途中において変更することが自主的にできるという選択肢もあるわけでございまして、それを来年の四月あるいは再来年の四月からということで、いわゆる四つの選択肢ということが認められるわけであります。  そういう中で、団体あるいは自民党を初め各党先生方が、限られた時間ではございました、なぜ限られた時間であったかといいますと、一番早い選択肢をとるとするならば十二月中に結論を出さなければならないということでございますので、それを念頭に置いて、十二月中旬までに本当に集中的に御議論をいただき、私としてはその御議論を注意深く見守ってきたところでございます。  そしてその結果、現時点において、生産者あるいは国民全体の負担等も勘案して、最終的に、団体等執行部責任者に一任ということになりまして出された案が来年四月一日からの関税化という選択であり、それに対して、私も熟慮の末、それがベストであろうということで、昨日、いわゆる三者合意というものができたわけでございます。  しかしこれは、先ほども申し上げたように、なぜ今なんだろうか。あるいはまた、団体に大変御努力をいただいたわけでございますけれども、まだまだ農家皆さんお一人お一人にこのメリットというものを御理解いただけない部分もあるということは私も重々承知をしております。  しかし、我々は、与えられた中で最善選択であるという信念のもとで、今後全力を挙げて生産者、すべての自治体、あるいはまた消費者も含めてこの決定内容について周知すべく、政府を挙げて取り組んでいきたいと思うわけであります。  それは、別の意味で申し上げますと、二〇〇〇年の交渉に向けて国民的コンセンサスを得るための大事な作業一つだという位置づけを持っているからでございます。二〇〇〇年に向けて交渉するに当たって、消費者も含めた国民的コンセンサスをつくらなければならないというのは前回の交渉一つの反省ではないだろうかと私は思っておるわけでございます。そしてまた、今回関税化することによって、次期交渉においては、先生も御指摘になりましたように、より強い立場交渉に臨んでいける、あるいはまた、今回の我が国にとって有利な選択を自主的にWTOへの通知のみでできるというようなメリットもあるわけであります。  そういういろいろな状況を判断して次期交渉に向かっていかなければならない。次期交渉に向かっては、先生指摘のように、不平等あるいは不公平といったいろいろな問題も現協定は抱えているという認識を持っておりますし、また、日本のいろいろな立場先生が今一部御指摘になりましたような、もう非常に我々は言いたいことがいっぱいあるわけでございますけれども、そういうようなことをより強い立場交渉に臨んでいきたい。  それに当たりましては、国民的コンセンサス、そして政府の中は、外務、通産あるいは大蔵を初め政府一体となって、もちろん我々農林水産省先頭に立って次期農業交渉に臨んでいきたい。国民的コンセンサス、そして政府各党国会、そしてもちろん団体を含めて一体となって外交交渉に臨んでいくことが私は絶対に必要だという認識を持っておるわけでございます。
  7. 大島正太郎

    大島説明員 お答え申し上げます。  外務省としての立場を申し上げたいと思います。  外交当局としましては、農業多面的機能とか食糧安全保障重要性輸出入国権利義務関係バランス確保、こういった点をいろいろ国際場裏で国際的な理解が得られるよう今までも主張してきたことは御承知のとおりでございます。  これから始まります二〇〇〇年からのWTO次期農業交渉でございますけれども外務省としては、次期交渉においても、国民理解を得つつ、我が国農業の実情を踏まえ、こうした我が国考え方が十分反映された内容合意が得られるよう、関係各省国民関係各方面と一体となって最大限努力してまいる所存でございます。
  8. 今野秀洋

    今野説明員 お答え申し上げます。  通産省といたしましても、次期農業交渉に関しましては、農水省を初め関係各省と十分協議いたしまして、政府一体となって取り組んでいくという覚悟でございます。よろしくお願い申し上げます。
  9. 松岡利勝

    松岡委員 時間であります。これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  10. 穂積良行

    穂積委員長 次に、赤城徳彦君。
  11. 赤城徳彦

    赤城委員 続けて質問をさせていただきます。  ウルグアイ・ラウンドが妥結したときには、当時の政権は、米の関税化を拒否し、特例をかち取ったんだ、こういうことを主張していましたが、実は、特例特例として機能していなかった。ミニマムとは名ばかりであって、最終年には実に八十五万トンも現実に米を輸入しなければならない。さらに、その特例継続しようと思えば、相手国が受け入れ可能な譲歩をしなければいけない。そういうことでありますから、何としてもミニマムアクセスによる輸入の増加をとめなければいけない、そこで関税化という道を選択した、こういうことであります。  そこで、これまでミニマムアクセス輸入がふえてきて、国内価格の低下とか減反の面で悪影響が出てきて、それが耐えられないから切りかえるんだ、こういうことではないかと思うのです。  当初は、六年間特例でいくということが想定されていたわけですから、期間中にそれを変えなければならないというのは、何らかの耐えがたい悪影響が出てきた、そう見るべきでありますけれども、具体的にはどういう問題がミニマムアクセス米輸入によって生じたのか、関税化に切りかえることによってその影響はなくなると言えるのか、その点について伺います。
  12. 堤英隆

    堤説明員 先生指摘のように、ミニマムアクセス米については、この三年間で百五十四万トン入っております。ただ、その処理に当たりましては、国内産米需給にできるだけ影響を与えないという考え方で処理してきましたので、比較的低価格のところの需要ということに見合った対応をしてきております。その限りでは、国内産米との需給の競合というものを極力避けた運営をさせていただいてきたということでございます。  ただ、先生指摘のように、現在六十八万トンでございますけれども、最終的には八十五万トンまでいくという状況でございますので、さまざまな工夫をしてきているわけではございますけれども、やはり量の拡大ということにつきましては、これから相当厳しい運用をせざるを得ない、そういう状況に来ているのではないかなという認識をいたしております。  そういうことで、今回につきましては、今御指摘のように、当面のミニマムアクセス量的拡大を抑え得る、そういうメリットという中で、今回のような措置をとる意義があるというふうに考えているところでございます。
  13. 赤城徳彦

    赤城委員 今回関税化選択したことと、次期WTO交渉に向けて、先ほど大臣からも御決意がありましたが、農業の持ついろいろな機能輸入国としての立場主張していくということは、これはまた別次元のことでありまして、次期交渉については、しっかりと大臣の御決意に沿って臨んでいただきたい、こう思います。  一方で、そうはいいながら、これは継続交渉でありますから、農業協定の二十条によって、改革過程継続という性格を持っております。そうしますと、大きな枠組みというのはウルグアイ・ラウンド時点でもう既に決まっていて、その流れを逆戻りさせるというようなそういう交渉は、本来予定されていないのではないか。具体的には、例えばミニマムアクセスが七十七万トンでとまるとしても、これをゼロに戻すとか、あるいは一たん譲許した関税率を引き上げるとか、こういうことは継続交渉としての性格からは想定されていないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。外務省
  14. 大島正太郎

    大島説明員 お答え申し上げます。  御指摘のとおり、農業協定二十条の規定では、現行農業協定が定めるルール枠組みの中で、その改革の目標に沿った努力を引き続き二〇〇〇年以降も行っていくということでございます。したがいまして、今までの改革過程継続するということでございます。改正するというためには、コンセンサス方式による、あるいは三分の二必要だということでございますので、現行協定枠組み自体を見直すということは厳しい、そういうことはなかなか難しいという状況のもとにあるということでございます。
  15. 赤城徳彦

    赤城委員 そこで、この継続交渉にどういうふうに臨むかということが改めて大変大きなポイントだと思うのです。WTO協定を決めたときに、ウルグアイ・ラウンド合意したときに、その先の継続交渉枠組みも一応の了解がされていて、それは改革過程継続であります、一定の流れに沿った再交渉といいますか、継続交渉であります、こういうことであります。しかし我が党としては、それだけであってはいかぬではないか、WTO枠組みそもそもが、あるいはウルグアイ・ラウンドを決めたそもそもが、輸入国立場とか農業の持つ意味合いとかそういうものを十分配慮しない、そういう中身であるから、たとえその三分の二の多数という、これは大変困難な道でありますけれども、それをも乗り越えて各国理解を求めていくべきだろう、こういうことを党内議論しているわけであります。  しかし世間一般に、これが簡単になし得る、こういうふうに誤解されてもこれはまたいけない、こう思いますし、今の協定の二十条にあるような継続交渉性格、そしてそれを、枠組み自体を覆すということがいかに困難なことかということを一般農家の方にも、また国民全体に十分これを周知する必要がある、そう思います。  その点についての大臣のお考えと、それから、そういう中で、協定そのもの枠組みをどうするかという点と継続交渉という性格の中でどうするのかという二面性があると思いますけれども、それを踏まえて、どういう再交渉に臨まれるのかということを改めて伺います。
  16. 中川昭一

    中川国務大臣 今赤城先生が御指摘のように、次期交渉改革継続ということが二十条ではっきり書いてあるわけでございます。そして二十条に限らず、各条項の字句を変えていくということ、あるいはフレームワークを変えていくということは非常に難しいことであろう。利害が各国ごとと言ってもいいぐらいにそれぞれ微妙に違うわけでございますから、非常に難しい作業になると思います。ですから、我々としては、今外務省からも答弁ありましたように、フレームワークを変えるということはこれはもう困難であろうという認識を持っております。  しかし一方、今赤城先生からも御指摘のように、非貿易的関心事項あるいはまた輸出国輸入国とのバランスを欠いているという我が国主張、あるいは多面的機能とかいろいろなものについては、我が国が中心となって、いろいろな国際会議の場、例えば一昨年のFAOの総会とかいろいろな会議の場で主張をし、そしてそれが取り上げられ、理解を示す国がヨーロッパを初めとしてあることも事実でございます。  そういう意味で、例えば輸出国輸入国との間の貿易ルールをもう少し公平なものにしましょうという実質的な意味の新しい議論といいましょうか、新しい提案といいましょうか、そしてその実現に向けて努力をしていくということは一方では必要なことであろうと思いますので、そういう観点からも、今申し上げたような国際会議での我が国の地道な努力議員外交も含めた地道な努力を積み上げていって、二〇〇〇年の交渉我が国国益を守り、そして他国に対しても言うべきは強く言っていくという姿勢をとっていきたい、そのためにも国民的コンセンサスが私は大前提になると考えております。
  17. 赤城徳彦

    赤城委員 もう一点伺います。  今回は従量税で関税に移行したわけですけれども、これで本当に大丈夫なのかねということがよく聞かれます。ダンピングとか為替変動に対しては従量税は大変有効にきく、こういうことは伺っておりますけれども、低価格で品質のいい、国内と同じような米を例えば中国あたりが既に生産、研究をしている、こういうことを聞きますので、そういう米が生産されるようになったときに、輸入米と国産米の差を埋めるということで計算しているのが従量税ですから、果たしてそれが有効に機能するのか、こういう心配もありますが、その点についてはどうでしょうか。
  18. 堤英隆

    堤説明員 従量税と従価税との関係というものは、今先生がおっしゃったような形の理解をいたしております。  低価格のものに対しましては、やはり従量税の方が国際的な国境措置としてはきくということだろうと思うんです。米について、そういう意味で、従量税がいいか従価税がいいかというふうに考えましたときに、当面どういう国々が日本に米の輸出を特に期待しているか、またその余力があるか、力があるかということを考えなきゃならないと思うんです。  そういう意味では、今御指摘のように中国がその最大のものだろうと思います。それ以外にもインドでありますとか、タイでありますとか、そういった我が国の周辺はいずれも米の大国でございます。かつ生産性も、コストも非常に安い、人件費その他で非常に安いということでございますので、現在の日本の米の状況と比べまして、すそ物と言っては悪うございますけれども、比較的低価格のものとの競合というのをやはり国内では最も恐れているということでございます。消費者が袋詰めの外国のものを食べるということは、当面は考えなくてもいいのではないか。  そういう意味で、国内の今の需要の実態、それから近隣諸国の輸出余力、それからコストが非常に低いということ、やはり低価格米に対する防波堤という形の中でどちらがよりきくかということを考えますれば、従量税の方がより効果が大きいということを考えて、今回従量税を採用したところでございます。
  19. 赤城徳彦

    赤城委員 時間が来ましたので、終わります。
  20. 穂積良行

    穂積委員長 次に、小平忠正君。
  21. 小平忠正

    ○小平委員 民主党の小平です。  昨日、まさしく唐突な感で、WTO交渉に向かって、現在我が国ミニマムアクセス制度を受け入れておりますが、これを関税化に切りかえる、そういう政府方針が決定されたやに聞いております。  そこで、これについて、何か三者合意、そういう言葉がありますが、三者は三者ですね。しかし、これは所管の農水大臣として、三者といっても一方は全中であり、一方は自民党ですから、いわゆる行政の立場で、官として、農水大臣が所管大臣としてこれを決めたから、それでもう済む話なのか。この後、閣議決定という方向に行って決まるのか。どこが正式の政府決定か、それを今お聞きいたします。答えてください。どこのところでどう決まっていくのか。  それで、今回こういう形で政府方針が決まった、固まった、どっちかわかりませんが、報道では決まった、こう言われております。このことは、私から言わせると、国民議論を喚起する、そういういとまも与えず、立法府に対しても何ら事前説明もなく進められたことに対し、まさしく驚き、怒りを感じております。  現在のミニマムアクセスは、五年前のウルグアイ・ラウンド農業交渉で御記憶どおり、国論を二分するあの激しいときを経て受け入れを決めた、こういう経緯でございますね。しかし、今回の決定は、単に政府・与党による密室協議、それから形だけの極めて短期間の農協組織等々との討議を経て決定された。これは国民不在、言うならば民主主義を否定した官による決定、近代国家としてこのことは許されていいのか。確かに法律上は政府の専権事項でしょう。しかし、かつてのウルグアイ・ラウンドであのとおり七年間も、延長に延長を重ねて、そして苦渋の選択であの方向を選択したことを振り返ると、今回のことについてはもっとしっかりとした議論があってよかったのではないか、このように思います。  先般のUR交渉で受け入れた特例措置としての部分自由化、これを継続する場合と、今方向が出された関税化に移行した場合、想定される影響がいろいろと言われております。しかし、それをもっと詰めた形で、二〇〇〇年からのWTOの事前交渉を含めて、我が国の基本姿勢をもっと国民の前に見える形に出した後政府の方向を決めるのが筋であると私は思います。  ところで、ここの段階で大臣から、今のことを含めて御見解をいただきたいと思います。
  22. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、きのうの三者合意でございますが、内容については後ほど御質問があるかもしれませんので今は申し上げませんが、与党である自民党、そして生産者団体の代表である全中が秋以降ずっと議論をしてきたわけでございます。もちろん各党もそれぞれされてきていることは私は承知をしております。  そういう幾つかの限られた選択肢の中で、日本農業あるいは国家全体にとって何が一番の選択肢なのか。二〇〇〇年まで待っていいのか、あるいは九九年から関税化した方がいいのか。いろいろな選択肢、つまり長所や短所いろいろあるのだろうと思いますけれども、その決定議論を私は見守っていたわけであります。  行政が前に出るというよりも、むしろ当事者、また与党を初めとする各党の御議論というものを注目していたわけでありますけれども、一昨日に至りまして、団体においても会長に一任、そして与党の方も一任ということになりまして、きのう会議を三者、三者というのは自民党、それから全中、そして農林水産大臣中川昭一でございます、この三者が集まりまして、最終的に協議をいたしまして来年四月一日からの関税化という合意をしたわけであります。  したがいまして、これは農林省の最高責任者であります農林水産大臣中川ではございますけれども、これからこれをWTOに通知する等々につきましては政府としての作業になりますので、今夕行われます関係閣僚会議において政府決定という手続を経て対外的な作業に進ませていただきたいと思っております。  二点目の、この議論において、官による決定ではないかとかいろいろおしかりをいただきましたが、確かに時間的に限られているということから短いのではないか、あるいは突然になぜ今、こういうような御批判は承知をしておるところでございますけれども、限られた時間ではありましたけれども、本当に各党、そして団体が真剣に議論をし、また農林水産省としてもできる限り関係各方面の御意見を聞いてまいりました。自治体あるいはまた消費者団体、いろいろございますので、全部とは申しませんけれども消費者団体等々、できるだけ説明をしまた御意見を伺い、そしてそういうことも踏まえまして決定をしたところでございまして、これが私といたしましては、来年関税化する、あるいは二〇〇〇年になって再交渉の中で議論をスタートをする上でも最善選択であるというふうに確信をしておりますので、どうぞ御理解のほどをよろしくお願いいたします。
  23. 小平忠正

    ○小平委員 農業団体を初め、いろいろと意見を聞いたということですけれども、その中で、政府・与党に対峙する野党の我々には意見を聞いたのですか。そこは大臣は大事と思っていなかったのですか。我々は聞いておりません。決定段階でその報告を受けました。  しかも、マスコミを通じて、今大臣がおっしゃった御答弁では、広く国民理解を求めるためにその手順を踏んだと言われた。その中から野党が外れていたわけですね。我々民主党を初め、野党は聞いていない、相談を受けていない。短期間で決められた。そしてその上で、きょうの夕刻の閣僚会議ですか、そこで政府決定される、そういうことですね。それはそれで結構です。はっきりしましょう。我々野党に対しては相談が持ちかけられなかった、そういうことですね。答えてください。
  24. 中川昭一

    中川国務大臣 私が報告を受けておるのは、民主党さんを含め、全部とは言いませんが、ほとんどの政党が、この問題について農林省も出席をさせていただいて議論をしておる。そして、その内容についても報告を受け、それらの判断も踏まえて私はきのうの決断をさせていただいたわけでございます。
  25. 小平忠正

    ○小平委員 私は関税化に移行することがいかぬと言っているのではないのです。こんな大事な問題、我が国の米を中心にする農政の一大転換、この大事な問題に対し今大臣がそう御答弁された。私はそれは受けておりません。しかし、私は民主党の農林部会長として、こういう問題がマスコミを通じて報道がありました、私の方から政府に要求をして、我が党の農林部会に出席をしてその間の経緯を説明せい、それは私は指示しました。しかし、今大臣が言われるような形での相談は、少なくとも私ども民主党は受けていない。どうですか。
  26. 竹中美晴

    ○竹中説明員 お答えを申し上げます。  この問題につきましては、農協系統におきましても、昨年のJA全国大会での問題提起以来、いろいろ部内でも検討されてまいりましたし、その一方で、自民党の中でも、いろいろ協定の問題、協定の中における米の位置づけの問題、将来の農業交渉枠組みの問題等も含めて議論をされてきたところでございます。  十一月二十六日以降、農協系統の中でも組織的に議論が進められる中でいろいろ報道も行われる、そういったことと並行いたしまして、御要請に応じ公式、非公式に、与野党の先生方あるいは党としての部会といったような場において、いろいろな機会を通じて御説明なり資料の御提供をさせていただいてきたということでございます。
  27. 小平忠正

    ○小平委員 この問題は、私がこれ以上言いましてもその答弁しか出ないでしょう。まさしくルールを無視して、もっとはっきり言うならば、立法府を無視した形での決定だ、こう言わざるを得ません。  そこで、今回のことについては私も、相手はいわゆる諸外国です、アメリカを初め。したがって、来年四月までにこの新しい関税化に入っていかなければ、我が国外交交渉における条件は厳しくなる。となると、このルールの規定上、三カ月前の通達。となると、年内に、しかも欧米の習慣は二十三日からクリスマス休暇、したがって二十一日には通達しなきゃならない、そこはわかります。そして、特例措置としての事前交渉に入れば、アメリカを初めタイや豪州等々の関係諸国からの厳しい追及に遭い、我が国は不利な条件で入っていく、その焦りもわかります。  しかし、このことは、今この十一月、十二月、暮れになって初めてこういうふうになっていることがわかったわけじゃないわけでしょう。我が国がMA制度を導入し、WTO協定が発効した時点でこのルールは決まっていたわけだ。もうわかっていた事実です。であるならば、もう少し早くにこれについて幅広く検討する機会を持つべきではなかったかと思いますね。  先ほど大臣も、この附属書の五、第四条ですか、これによっての、言うならば「追加的かつ受入れ可能な譲許を与える。」というこのことが不勉強だった、こう言われたけれども、このことはもう既にあの時点で、特に事務当局は外務省を初めとしてわかっていた。政府の秘密主義による結果がこうなったということを私は強く指摘しておきたい。これは答弁は結構です。  そこで、政府決定によって来年四月から関税化に入れば、二〇〇〇年の時点でMA米の米の輸入量は六十八万トン。精米ベースですよ、玄米でなくて。精米ベースで六十八万トン。それに抑えられます。MA制度をそのまま継続すれば精米ベースで七十六万トン。そこに八万トンの差が生じることになる。これをねらったことはわかります。  であるならば、この特例措置を外していく場合に、二〇〇〇年以降の我が国の国家貿易としての輸入義務量は確かに、六十八万トンでスタートしますので、それは少なくなる。しかし、それ以外については、今これから進むであろう関税化の二次関税という中において、この関税化の方向でいく場合には、政府外務省を含めて確たる信念で、我が国農業の体制を守るためにこれ以上ふやさないという、MA制度を続けるならば輸入量をふやさざるを得ない、しかし関税化に移行するならば、それは据え置いてふやさないという確たる信念を持ち、また展望を持って進めていく、そういうことでありますか。そこをお聞かせいただきたい。
  28. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、来年四月から関税化をいたしますと、先生指摘のように、私は玄米ベースで申し上げますが、八十五万トンになるところが七十七万トンに二〇〇〇年にはなるわけであります。二〇〇〇年から新しい交渉が始まるわけでございまして、これはいつまでかかるか、一年で終わるのかあるいは何年かかるのか。これは大変な交渉であることは間違いないわけでございますので、その交渉をしている間はその数字が維持されるわけでございます。  そして、交渉結果がまとまったときに、米を初めとする新しいルールができ上がっていくわけでありますが、その交渉過程において我が国は、関税化を来年することによって、今までの特例措置の中で交渉に入っていって、まず特例措置をやめろと多分かなりの国からやられる中で主張するということはなかなか難しいという状況から、同じ関税化の土俵の中でお互いにこういうことを相手国に要求したり、また言われることもあると思いますけれども我が国としては、日本農業を守り発展させるという国民的コンセンサスのもとで交渉に臨んでいくということで、今も御審議をいただき、また国民的な御理解をいただきながら二〇〇〇年以降の交渉に向かっていく覚悟でございます。
  29. 小平忠正

    ○小平委員 その覚悟が言葉だけの覚悟ではなくて、実際に身を持っての覚悟をぜひ貫いていただきたいと思います。  先ほども自民党委員の方から質問がございましたが、当初、政府関税化を導入するに際し従価税で、そういう報道等もありました。また、現に政府も私のところにはそんな説明もありました。そして一説、全中の試算によれば一三〇〇%、少なくとも一〇〇〇%以上の高率関税が課せられる、こういう説明がありました。しかし、最終的には従量税の選択となった、そのように伺っております。  また、政府の説明によりますと、従価税では価格低下時や低価格品に対しては国境措置としての効果が不十分であり、しかし価格上昇時や高価格品に対しては従量税に比較して課税額が大きい。しかし、従価税では、先ほども言われた価格操作、ダンピング、バックペイ、これらに対する対応が困難である。  一方、従量税では、価格低下時や低価格品に対しては国境措置として安定的に機能する、しかし価格上昇時や高価格品に対しては従価税に比較して課税額が小さいとのことですが、この意味するところは、タイ米や中国米に代表される現在の低価格品に厳しく、アメリカ産米に対しては、言うならばアメリカ産米は高価格品、高価格品に甘いのが従量税である。  すなわち、今回の従量税という選択は、当初政府が予定した高率関税という中ではアメリカの強い拒否に既に遭った結果、早速矛をおさめて従量税に切りかえた、このように指摘をされても仕方がない、私にはそういうふうに受け取れます。すなわち、このことは、従量税では高関税とは言えず、我が国の米を守る強い防壁にはならない、このように危惧を持ちますが、これについてはいかがですか。
  30. 堤英隆

    堤説明員 従価税と従量税のそれぞれの利害得失につきましては、先生が今おっしゃったとおりだと私ども理解いたしております。その上で、私どもが従価税か従量税かということを考えます上で、判断します要素ということで申し上げますと、一つは、どういう国が日本に対して輸出余力があり、どういうコストで持ってくるかということを見きわめる必要があるだろうと思います。  そういう意味では、現在、SBSにつきましても、中国のウエートが格段に大きくなっております。多分、合弁企業等によりまして、そういう意味での生産性は上がっているのではないかと思いますが、品質がよくなってきている。そういうことの中で、相当に輸出余力が強くなっております。そういうことで、やはり中国、タイ、インド、バングラデシュ、そういった国々、日本の近隣のいわゆるお米の大国、そういうところの脅威といいますか、これを私どもとしては考えざるを得ないということが一つございます。  それからもう一点は、国内需要はどうかということでございますけれども、今、外国のお米を食べているといっても、ほとんどの方は食べておられないと思います。それは、やはり袋詰め精米ではほとんど消費がないということでございますが、現実は、いろいろな意味での外食産業等、お弁当でありますとか、そういうことを通じまして、言葉が余りよくはありませんけれども、いわゆる低価格品、すそ物、業務用、そういうものの中に、かなり国内産米とブレンドされた形で使われておりまして、ある意味ではそういうものが定着する兆しが見えてきているということでございます。  そういう意味で、今申し上げました外国の事情、それから国内需要の動向、そういうことを考えました場合に、アメリカがどうこうというよりは、低価格品との関係我が国に対する輸出が相当強くなってくるのではないか。そういうことを考えますと、やはり先ほど先生おっしゃったように、従量税によることの国境措置としての効果というものが高いのではないか。そういうことで、従量税をとることが正しいのではないかというふうに私どもは考えさせていただいた次第でございます。
  31. 小平忠正

    ○小平委員 問題は、従量税にしても従価税にしても、当初、初年度で政府がもくろむ高率関税、これが継続をすれば要は事なきを得ますけれども、しかし、外交交渉のいろいろな例を見るまでもなく、我が国政府の姿勢は、特に外交の現場では常に押し切られるというか、関税率が下がっていくことは、これはもう今から予想されるというか、大いに危惧をいたしております。だから、ここについて頑張るために、どちらがやりやすいかという、そのことも含めて、ここは大事な選択になると思うのです。  ですから、私は、このことも含めて、そう軽々に結論を下すのではなくて、十二月二十一日、言うならば二十三日のクリスマス休暇前に通達をすることが必要でしたら、なぜもっと早くからこういう議論をしっかりしなかったか。これは、言うならば禍根を残してはならない、そんな思いで強く指摘をしているところであります。  さて、きょうは外務省も、局長、見えていますね。WTO次期交渉で想定される問題点、農業問題でありますが、言うならば国境措置、それから国内助成の問題、輸出競争、また非貿易的関心事項等々の幅広い論議が想定されますが、今回の我が国のこの政府決定、この立場によって、日本主張である食糧安全保障、また農業多面的機能の強化、これについては主張を貫いていけるのかどうか。アメリカや豪州、また、ある意味では立場を同じゅうするであろうEUですら、この食糧安保では立場を異にいたしておりますよね。  そういう中で、外務省も含めて、これについての次期交渉に向かっての考え方をお聞きしておきたいと思います。
  32. 大島正太郎

    大島説明員 二〇〇一年以降にかかわる二〇〇〇年からの農業交渉についてどういうふうに臨むかという御質問にお答え申し上げます。  外務省外交当局といたしましては、先ほどもお答えさせていただきましたけれども、既にいろいろな国際会議とか二国間協議の機会を通じまして、農業多面的機能食糧安全保障重要性輸出入国権利義務関係バランス確保、こういったものを既にずっと主張して、国際的な理解が得られるように努めてきたところでございます。  そして、二〇〇〇年以降始まります農業交渉につきましても、国民理解を得つつ、このようなポイントを踏まえた我が国農業の実情を踏まえて、我が国考え方が十分反映される内容合意が得られるよう最大限の努力をしていきたいと思っております。  この観点から、今回の関税措置への切りかえということは、次期交渉を強力に推進していく上でも有意義な措置ではないかと考えております。
  33. 竹中美晴

    ○竹中説明員 お答え申し上げます。  我が国としましては、これまでも食糧の純輸入国としての立場から、農業多面的機能重要性とか食糧安全保障重要性、あるいは輸出国輸入国の権利義務のバランスといったことを強く主張してきたところでございます。  こうした努力は、これまでも、一昨年の世界食料サミットやことしのOECD農業大臣会合におきましても取り入れられまして、そういう考え方がコミュニケに盛り込まれたというような経緯もございます。  こうした我が国主張につきましては、今後とも強力に主張していきたいと考えておりますし、次期農業交渉におきましても、こうした主張が反映された貿易ルールということが実現するように、最大限の努力をしていきたいと考えております。
  34. 小平忠正

    ○小平委員 私は、今幾つか想定される問題点を列挙してお聞きしたわけですが、その中に一つ、輸出競争の中で、同時に輸出禁止措置というものがございますね。農業に関する協定の第六部のところ、これの十二条では「輸出の禁止及び制限に関する規律」、こういう条項がございます。これによりますと、輸出国は、自国の農業情勢、そのときのできふでき、あるいはその他の条件等で輸出が困難な場合には輸出をしなくてもいい、そういう条項だと私は思います。言うならば、輸出ができない場合には、関係加盟国に対し協議をするとか、あるいは情報を提供する、そういう表現が盛られていますね。  大事なところなので申し上げます。今まで我々は、ともすれば輸入国側の問題をいろいろ取り上げてきました。しかし、これはまさしく不公平な内容であって、輸出国は何ら罰則を課せられておりません。  ちなみに、一部抜粋しますと、「輸出の禁止又は制限を新設する加盟国は、」「食糧安全保障に及ぼす影響に十分な考慮を払う。」たったこれだけです。あるいはまた、次のところでは、「加盟国は、輸出の禁止又は制限を新設するに先立ち、」「要請があるときは、輸入国として実質的な利害関係を有する他の加盟国と当該措置に関する事項について協議する。」協議をするです。さらに、「輸出の禁止又は制限を新設する加盟国は、要請があるときは、当該他の加盟国に必要な情報を提供する。」ここに何らの強制的なかせもなければ罰則もないのですね。  これではまさしく輸出国サイドの協定であって、彼らが恣意的に、自分たちが都合がいいときは、自国に食糧が余っているときはふんだんに輸出攻勢をかける、しかし災害やその他の条件で生産がままならないときは輸出を抑えて、それを頼りにする輸入国に対しては何ら責任を負わない。単に、協議をする、提供をする。農業に関する協定の中でこのような不公平な取り決めがなされております。  私は、特に外務省、農水省から重ねて、次期交渉にどのような姿勢でこれについて当たっていくのか、そこのお考えをぜひお聞かせいただきたいと思います。
  35. 竹中美晴

    ○竹中説明員 確かに、ただいま御指摘ございましたように、輸出国輸入国との権利義務におきまして、現在の農業協定では幾つかの権利義務関係のアンバランスがございます。  輸出禁止あるいは輸出制限につきましても、輸入国輸入制限につきましては大変厳格な規律がある一方で、御指摘がありましたように、輸出禁止、制限は緩い。あるいはまた、輸入関税につきましてはすべてバインドする、譲許をしてそれ以上には引き上げられないというようなことになっておるわけでございますが、輸出税につきましては特に規律がない。  それからまた、輸出補助金につきましても、ウルグアイ・ラウンド合意で一定の削減率は定められておりますが、特に禁止はされていない。そういった面がありまして、輸出国輸入国権利義務関係においてかなり扱いの違いがある、これは事実だと思います。  私どもとしましては、かねてからも申し上げておりますように、次の交渉におきましては、こういった権利義務のアンバランスを是正していただくように強力に主張していきたいと考えております。
  36. 大島正太郎

    大島説明員 外務省といたしましても、輸出入国間の権利義務関係バランスの確保ということは重要なことだと思っておりますし、したがいまして、次期交渉に当たりましては、日本が純輸入国であるという観点から、輸出国にかかわる規定についても十分なバランスがとれたものとするよう、最大限の努力をする所存でございます。
  37. 小平忠正

    ○小平委員 このような不公平な条約は、強い姿勢でこれを改正するように進められることが私は大事だと思います。  さて、次に国内の問題でありますが、関税化を導入することによって、またまた国内の稲作農家に新たな不安材料を提供したことは否定できないと思います。国内農業が持続的発展を期するための対策が特に今急がれると私は思います。したがって、関税化によってさらなる転作強化を行わない、あるいは担い手農家に対する直接所得補償の確立など、政府において実行すべき点が多々あると思いますが、それについての政府のお考えをお聞きしたいのであります。  その前に、これに含めまして、先ほど質問もあったわけですけれども、きのうの夕刊からけさの朝刊、米の減反廃止、こういう報道がされました。大臣の先ほどの答弁では、閣議後の記者会見でそれを否定された、こういうことも承っております。しかし、火のないところに煙は立たない。では、マスコミが勝手に想像をめぐらせて書いたのか。私はそんなことはあり得ないと思います。これの意図するところは、関税化の導入によって政府は幾つか大きなおもしが外される、そういうところで今回のこのような報道がまとまって出てきた、こんなふうに思います。  特に、我が国の稲作農家は、七一年の生産調整が始まった時点では五十四万ヘクタール、これが生産調整面積でありました。しかし、MA制度を導入して、九八年に至っては九十六万ヘクタール、今年度では。このように四十二万ヘクタールも減反面積がふえている。こういうつらい選択をしながら、政府の施策にのっとって営農してきている生産者にあって、来年に向けての新農業基本法の制定の問題、また今唐突に関税化の問題、追い打ちをかけるように米の減反廃止、こういう報道があるということは、幾ら大臣が否定をしても、やはり生産者の心にまた大きな不安材料を植えつけてしまった。このことは私は否めないと思います。  これについて大臣はどう答えられるのか、まずそこのところをお伺いをし、そしてさらに、国内農業対策をどうこれから進められていくのか、お答えをいただきたいと思います。
  38. 中川昭一

    中川国務大臣 前半部分は後ほど食糧庁長官から答弁いたさせます。  報道につきましては、先ほどもお答えしたとおりでございます。事実無根であり、しかも、具体的にきのうの夕刊などは我が省の幹部の名前まで出て、何かそういう方向で検討しているんだということでございますが、その検討委員会なるものは一度も開かれておりません。また、こんなことを言うと失礼かもしれませんけれども、火のないところにという御発言がありましたが、私も、けさ念には念を入れて確認をいたしましたが、全くそのようなことはございません。むしろ、我々は、いろいろな改革農政改革大綱あるいは基本法等々の中で米の位置づけというものを柱にしておりますけれども、その中でも、生産調整が今後も必要なんだ、適切な運用が必要なんだということを柱にしておるわけであります。  したがいまして、事実無根であると同時に、きのうああいう合意というか決定を私がしたと時を同じくして、きのう、けさ報道があったことに対しては、本当に生産者皆さんから見ればショックなことであろうと思います。そういう観点から、農林水産省としても、それから私自身が、各社に対して直接、正確な報道をしてもらいたい、事実無根であると申し上げました。  と同時に、末端まで、その不安を少しでも、杞憂であった、間違いであったということを御理解いただくために、全国の関係者に向かって、抗議をしたことも含めて事実関係を早速全国に伝えまして、この問題については少しでも早く一件落着をさせていかなければならないというふうに考えております。
  39. 堤英隆

    堤説明員 関税化への切りかえに伴います農家の御不安、対策につきまして御質問がございました。  やはり私どもとしましては、ミニマムアクセス導入に伴う転作強化はしないという平成五年の閣議了解の趣旨をこれからもきちっと守って、その点につきましては、国産米の需給国内の稲作農家との関係におきまして、そこはきっちりとした対応をしていかなければならないというふうに思っております。  それに加えまして、それを担保する措置として、ミニマムアクセス米につきましては引き続き国家貿易ということを維持しまして、これによりまして一たん食糧庁が買って、それから国内需給状況、特にミニマムアクセス米国内米との競合を極力避ける。そういう意味で、先ほど来御説明いたしておりますような業務用でありますとか加工用でありますとか、そういった低価格米との関係において使えるものは使っていくことになりますけれども、国産米の主たる用途でございます主食用そのものに対する影響を極力、これからも国貿の適正な運用ということを通じまして対応させていただきたいというふうに思っております。  それから、担い手等に対します対策等につきましては、次の通常国会におきまして農水省として基本法をお出ししてさまざまな御議論をいただくわけでございますが、そういった中で、担い手に対する対策、中山間地域に対する対策、それから各種の経営安定対策を含めた所得対策といいますか、そういうことにつきましても、これから鋭意検討を進めていきたいというふうに考えているところでございます。
  40. 小平忠正

    ○小平委員 先日、政府によって農政改革大綱が出されました。調査会の数回にわたる議論も踏まえる中で、我が党もいろいろと議論を展開してまいりましたが、その中で、自給率の問題ですとか、あるいは株式会社の参入問題、さらには所得補償の問題、まだございますが、この幾つかの点に関していろいろと議論を展開してまいりました。そのときに、関税化のことが視野にあるならば、自給率の問題一つとっても、議論の大きな根拠になった。でも、そのときには、これらは一切大綱の中でも触れていない。  こんな状況の中で今回のこういう関税化政府決定は、今食糧庁長官の答弁がありましたが、本当に生産者が掛け値なしにそれを素直に受け入れて期待する、そういうふうになっていかなければいかぬと私は思う。しかし、残念ながら、何となくその答弁がただ言葉だけの答弁に聞こえてならない。私は、生産者の気持ちを代弁して申し上げておきたいと思います。  それから、例のMA制度を導入する時点で、WTO特別委員会がございました。あのときに大きく議論になりました六兆百億円、これが内か外かということで随分時間を費やしましたが、まあ曲がりなりに六兆百億円が盛り込まれました。さあ、これについては、今回の関税化を導入することによって、この六兆百億円の残余の分はどのようになっていくんでしょうか。従来と何ら変更はないんですか、それとも何らかの影響が出てくるんですか。  特に、この問題については、いろいろな角度、いろいろな方面から指摘もございます。農業界だけでしたらそこは問題も起きないのでしょうけれども、しかし、いろいろな意見を異にする声もある中で、政府として、この六兆百億円は今後もしっかりと約束どおりこれを実行するお考えなのか、そこのところを確認しておきたいと思います。
  41. 高木賢

    ○高木説明員 今般、米の国境調整措置関税に切りかえるといたしましても、高い二次関税率を張るわけでありまして、国境調整措置としての実効性は実態的に失われることはないということで、UR対策の見直しに直ちに結びつくということは考えておりません。この対策の本旨であります新たな国際環境に対応し得る農業、農村の構築を着実に進めていきたいというふうに考えております。
  42. 小平忠正

    ○小平委員 しっかり進めていただきたいと思います。  さて私は、前回の国会でも当委員会で質問をしたのでありますが、稲作農家の経営実態は、まさに崩壊の限界をもう超えてしまった、こう言っても過言ではないと思います。  食管法から新食糧法へ移行し、日本人の主食である米が市場経済に投げ出され、相次ぐ価格の暴落、さらにこういう輸入米の増加等により、過剰在庫にも追い打ちをかけられ、ここ数年来の米の価格の下落は、農業経営、今申し上げたように、極限までいっております。  しかも、その影響を最も顕著に受けているのは、政府の新政策に従って経営規模拡大を目指して農地の取得、あるいは生産資材の負担増、また土地改良事業の農家負担、こういうものを変える中でやってきた意欲的な農家であります。  このようなことは、前国会のこの委員会でも私は負債対策についてお伺いしましたが、やはり具体的に対策を講じるのは予算措置であります。来年度に向かっての予算編成が今大詰めに来ております。具体的に政府は、これについて、特に関税化という方向に向かうのであるならば、この負債対策としての来年度の予算編成に向けての作業はどのようになっているでしょうか。そこのところをお聞かせください。
  43. 竹中美晴

    ○竹中説明員 今先生指摘のように、経営規模の拡大なり経営改善に意欲的に取り組んでいきながら負債に苦しむ農家が一部にある、大変残念に思うところでございます。  農家に対する負債対策としましては、これまでも、既往の借入金の借りかえを行う農家負債軽減支援特別資金とか、あるいは制度資金の毎年の返済資金を融通しますリリーフ資金等、負債整理資金というものを設けまして、債務負担の軽減を図りますとともに、また個別の、それぞれの経営の実情に応じまして償還期限の延長等の条件緩和を図ってきているところでございます。  こういったところが金融対策としてはぎりぎりのところではないかと思うわけでございますが、先日先生から御指摘がございました北海道の稲作農家の問題につきましては、関係方面とも調整をいたしまして、農林公庫におきまして個別の事情に応じて延納措置をとったり、あるいは中間据置期間を設定したりリリーフ資金を活用するといった手段をとります一方で、北海道庁におきましても、稲作経営安定対策の補てん金が支払われるまでの無利子貸し付けを予定しているというふうに理解いたしております。  いずれにしましても、金融対策、負債対策としましては、そういうとり得る手段、いろいろ活用しているところでございますが、今回の関税措置への切りかえと金融対策、直接関連するものはないというふうに考えております。
  44. 小平忠正

    ○小平委員 幾ら農業基本法を新しくつくっても、あるいは関税化の道を開いていっても、そこに農家が存在しなければ、すべてが絵にかいたもちに終わります。しっかりとそこのところを進めていっていただきたいと私は思うのであります。  さて、これは一つ提案でもありますけれども、今、ウルグアイ・ラウンドの前回のあの交渉妥結により、そしてWTO体制に入っている中において、既に指摘がございますように、非常に不公平な、アンバランス状況が続いております。我が国のような輸入国の弱い立場、また、自由貿易という名のもとに輸出攻勢をかけてくるアメリカを初めとする国々、そういう状況の中で一方で忘れてならないのは、世界の人口の中で八億余の人口が飢餓・栄養不良人口、飢餓にあえいでおります。これは我が国の人口の七倍にも値する大きな人口です。それも、発展途上国を中心にこれらの人口がひしめいている。  そういう中で、国際社会は前のケネディ・ラウンドで、小麦を中心にして先進国は援助をする義務を負う体制をつくりました。残念ながら我が国は、小麦においては援助をする協力体制には参加でき得なかった。しかし、ウルグアイ・ラウンドが妥結し、次の再交渉に向かう中で、例えば例として、先般のインドネシアのああいう大変な食糧不足の状況、この例をとるまでもなく、これからもこういう国々は続発をしてくると思います。  そういう中で、私どもは、日本としてこのWTO交渉を大きな機会ととらえて、我が国は、米を中心にした援助体制をこの際しっかりつくっていくべきではないか。今ODAという制度があります。そんなものじゃなくて、我が国政府として、新しいスキームをつくって常にそれに即対応できる体制をつくる、これをこの国際舞台でも広く呼びかけてそういう状況をつくっていく、そういうような我が国の姿勢をあらわしていくことが大事である、私はこんなふうに思うのでありますけれども、いかがお考えかお聞きしたいと思います。
  45. 堂道秀明

    堂道説明員 お答えいたします。  先生指摘のとおり、我が国といたしましては、従来より、二国間の無償資金協力あるいは国際機関を通ずる支援で、いわばODAを活用いたしまして食糧援助を行ってきております。その中では、政府保有米につきましても、これを活用しているところであります。  また、こうした形態以外にも、貸し付けとか延べ払いという形で従来から政府米の利用を行っているところでありますが、今回、ことしの春のインドネシアに対する食糧支援を契機にいたしまして、既存の国内公益法人を活用いたしまして、政府保有在庫米の貸し付けによる緊急食糧支援を実施するための新たな仕組みを創設いたしたところであります。  今後は、既存の援助スキームでは対応できない大規模なもので、かつWFP等国際機関による緊急アピールがなされる、そのような状況におきましては、WTO等の国際ルールも遵守しつつでありますが、この新たなスキームのもとで政府保有米の貸し付けを行うことを検討してまいりたいと思っております。
  46. 小平忠正

    ○小平委員 現在あるそういう制度を大いに活用するのは結構ですが、私の言いたいことは、それでは単なる小手先のことである、もっとしっかりそういう形をつくっていくことを我が国として国際社会に提案してはどうか、そんな意味を込めて言っているのです。まあ私の考えを申し上げて、それで結構です。  さて、時間ももうありませんので、私は質問の終わりに際し、最後に申し上げておきたいと思います。  これは冒頭に申し上げましたが、現行のMA制度、これが大変な限界に来ているというか、打ち続く海外からの米の輸入、こういうことで振り回されている、そういう過剰輸入に直面している中で、WTOの再交渉を前にしてMA制度をどうしようか、これを再検討しようということについては、私は別に反対いたしておりません。大いに結構です。また関税化も、頭から私は反対とは言っていません。関税化選択肢の大きな一つです。反対はいたしておりません。しかし問題は、このような農政の一大転換という大問題に直面し、余りにも短期間で事を進めようとする政府の姿勢に私は大いなる危機を、危惧を感じている、そういうことです。  したがって、私ども民主党としては、この関税化についてどうあるべきか、これを検討する時間が余りにも短くて結論を出すに至っておりません。単に自分だけで決めるのだったらとうに結論は出せます。しかし、この問題は、自分たちだけで決めるのではなくて、広く国民理解を求めながら関係者が真剣に議論を深めて進めていくこと、これがやはり民主主義のルールであると私は思います。したがって、当委員会で、我が党としては、この関税化について賛否は表明できません。  この後、来年の通常国会になるでしょう、WTO協定関税化政府が進めるならば、この譲許表の改正、これは国会承認案件です。前回はWTO特別委員会でこの審議がなされました。この後、どの委員会がこれを担当するかまだ決まっておりませんが、この大事な国会承認案件が控えております。あわせて、関税法の改正やあるいは新食糧法の改正等々国内法の整備も控えております。その場を通じて、私どもは、この選択が誤りなきよう、二十一世紀に向けて我が国農業がしっかり進んでいけるよう、そのことを真剣に、時を改めて政府にもいろいろとただしていきたい、このように申し上げて私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  47. 穂積良行

    穂積委員長 次に、宮地正介君。
  48. 宮地正介

    ○宮地委員 最初に大臣にお伺い申し上げたいと思います。  先ほど来、本日のこの米関税化の問題に対する審議が、午前中は参議院、午後衆議院で行われているわけでございます。手続上に瑕疵があったとは私は思いません。確かに関税化については、農業協定協定内容から見れば政府のやっている手続には問題はないと思います。  昨日は三者合意が行われ、また、本日、この農水委員会が終わって、小渕総理が四時過ぎに羽田に到着され、恐らく夕刻関係閣僚会議政府の方針が決定されるでありましょう。  しかし、思い出しますとちょうど今から五年前、あの平成五年の十二月の細川政権の当時、ウルグアイ・ラウンド合意に向けて国論は真っ二つになりまして、我が国において自由化というものについての大変な議論が行われ、当時は、例外なき関税化、米は一粒たりとも国内輸入してはならぬ、こういうような大変な国論の中で、いわゆる部分自由化と言われたミニマムアクセスが導入されたことは、大臣も十分御存じだと思います。  七月に小渕政権が誕生して中川農水大臣が新たに誕生いたしました。既に農水省内部においては、当然二〇〇〇年のWTO交渉を考えたとき、今のMA米の例外措置でいくのか、あるいは農業協定に準じて前倒しで関税化にいくのか、どちらが国益に戦略的に効果があるかは、先ほどからの答弁を聞いておりましても、十分に承知をしていたわけであります。  そういうような背景を考えたとき、中川農林水産大臣が小渕内閣で誕生したとき、あの夏の臨時国会において、何らかの形で国権の最高機関であり国民の代表であるこの立法府に対して、二〇〇〇年のWTO交渉を考えたときに、今のMA米を中心としたこの例外措置でいくのがいいのか、あるいは二次関税として関税化の導入に踏み切った方がいいのか、農水省も四つの選択を示したわけでありますから、まずこの国会に対して意見を求めるような、そうした大臣の発言があってしかるべきではなかったか。そして二度にわたる臨時国会が行われたわけですから、その中で、関税化問題について、先ほど最善の策であり国民合意を得るためにこれからも全力を挙げるとおっしゃっているわけですから、もっと早い機会に当農林水産委員会等に対しても意見を求めて、この農林水産委員会において各界の代表を参考人なりに呼んで意見を聞く機会とか、あるいは場合によっては公聴会などで我々も全国に出ていって生産者の意見を聞いたり消費者の意見を聞いたり、そういう議論を大いに詰めてきて本日の閉会中審査で、最後の詰めの結論を得る前にこの委員会が開かれたというのであれば、きょうの委員会というものが大変意義ある委員会ではなかったか、私はこう思っている次第でございます。  しかし、本日は我々野党が要求して、三時間というわずかな時間で、それもこの委員会が終わった後閣議決定される。このいわゆる政府の姿勢が今国民から、問題ではないのか、余りの行政府国会軽視ではないのか、あるいは密室の協議ではないのか、こういう批判が出ていることは事実であります。  三者合意ができた、生産者団体の代表のJAの皆さんとも議論した、それは結構です。しかし、JAでない他の農業生産者団体あるいは同じJAの中でも末端の生産農家の中にはまだまだ戸惑いを持っている方がたくさんいらっしゃる。そういう方に対してはこれから最善を尽くして御説明を申し上げる、こうおっしゃっていますが、、私はまず、この国会に対して行政府がきちっと意見を求める姿勢が少しなさ過ぎたんではないか。言葉を悪く言うなら、国会を少しなめているんじゃないですか、こう言われますよ、大臣。  まず、この点について、大臣はどうお考えになっているか、伺いたいと思います。
  49. 中川昭一

    中川国務大臣 今、宮地先生から厳しい御指摘をいただきましたが、決して国会をなめているわけではございません。時間的なこと、あるいはまた、なぜ突然にというような御指摘があることは私も重々承知をしております。  マラケシュ合意の後、私も含めて全国会議員に農業協定の文書を配ったそうでありますが、私自身はその協定内容に目を通すことをしなかったという怠慢がございました。そういう中で、生産者団体の方が、大変なこの今の状況、そして来年からもう非公式なWTO交渉が始まるということに対して強い危機感を持って、昨年の十月からJAの全国大会において、どういう選択肢があるのかという検討を始めるという作業決定したわけであります。  私が七月の三十日に農林水産大臣を拝命して、そして二〇〇〇年からといっても、もう九九年、来年にはこういうスケジュールがありますという話を事務的に聞いていて、そろそろどういう対応をとれるのか、あるいはどういう状況になっているのかということを教えてもらいたいということを内部で指示したわけでございます。これは八月の就任直後でございました。それから役所では内々、いろいろな事務的な検討をし始めたわけでございますが、実はその中で、自民党のスタディーグループというグループが検討を始めたという話も伺っております。  実はこの問題、九三年の交渉のような全体の枠組みを決めるような大きな交渉ではありませんけれども、しかし関税化も四つの選択肢の中の一つである、そしてまたいつやるかということも選択肢ポイントであるという中で、先ほどもお話がありましたように、九三年のときは国論が真っ二つになった状態で、最後まで国会の場では一粒たりともと、一方では、消費者あるいはマスコミ等で、日本だけがとんでもないことを言っているみたいな議論があって、海外の厳しい状況を当時の政府がなかなか我々に伝えなかったというか、伝えられるような雰囲気じゃなかったというふうに、私は率直にそう思っているわけであります。それはまさに、事前に交渉に当たっての前回の反省材料であろう。  逆に、役所としては、もう困ったな、関税化も受け入れられませんし、また関税拒否もできないというぎりぎりの板挟みの中で、外務省農林省外交交渉に当たったわけでありますが、今回はできるだけいろいろな形で、いろいろな方々の御意見、消費者の方々の御意見も含めて、いろいろな方の御意見を聞かなければならない、決して農林省や私が前に出てはならないということを農林省の中で確認をいたしました。  いろいろな方々に御意見を伺う、必要であればお手伝いをさせていただくということで、一方では、限られた一つ選択肢をとるとするならば、今月中に、年内に決定をしなければならないという状況でありますので、団体あるいはまた与党を初め各党、そして農林省の職員が、自治体や消費者団体、全部ではございませんけれども、回って御意見を聞くというような、やるべき努力は限られた中でそれぞれ最大限やっていただき、またやったつもりでございます。  ただ、各党議論とこの国会の場で御議論をいただくということ、国会の場に委員会を開いていただきたいとお願いをすることも一つ選択肢だったかもしれませんし、また各党の方から、委員会を開くからおまえあるいは政府考え方を述べろという御指示があるということも一つ選択肢だったと思います。  いずれにいたしましても、御指摘をいただいたようなことも踏まえながら、今後、国会あるいはまた各党、そして国民全体の御議論をさらにいただきながら外交交渉に臨んでいきたいと考えております。  先生の御指摘については、私は厳しい御指摘として受けとめさせていただきたいと思っております。
  50. 宮地正介

    ○宮地委員 基本的に、やはり国会軽視と言われても私は仕方ないと思います。  ということは、さきの臨時国会で衆参予算委員会等においても、この米関税化については各党からもいろいろ質問なり意見も出されておりました。私もその内容政府答弁を聞いておりますと、まだ方針を決定していないからという中で、非常にあいまいな答弁に終始していました。昨日の三者合意ができて、きょうこの委員会で初めて大臣は答弁をきちっとするようになっている。そうでなくして、これだけの重要な案件なんですから、やはりきちっとした姿勢で、もっと早くから国会をまず最優先にして議論の場をつくっていくべきであったと私は思います。  今後のこともありますのでこれ以上は詰めませんが、ぜひ農水省の官僚の諸君もその点については十分に反省してもらいたい。国民から見ればおごりに見えるんです。まして、今回のこの関税化というのは、これからの日本の食糧の安全保障の問題あるいは国内の稲作農家に対しての対策等、重要な問題が山積をしているわけであります。  この機会をとらえたことというのは、結果としては、私はタイミングとしては十分理解できる立場を持っております。特に、あの大綱が出され、来年は新しい農業基本法を通常国会政府として出してくる、それに伴って昭和三十六年以来の農業基本法を抜本的に改革する、いよいよ日本の農政改革が来年の通常国会から本格的に始まる、そのタイミングを見て今回関税化導入ということに踏み切る、それは私は理解をする立場におります。  しかし、今申し上げたような基本的な手続の問題、基本的な政府の姿勢、こうした問題でそうした大きなこれからの国益にかなった政策を議論する中において、前段の部分で余り国民のひんしゅくを買うようなことはやってはならない、私はこう思っております。ぜひこの点については、十分反省をしていただきたいと思うわけでございます。  そこで、まず私は、昨日の三者合意、これについて少し質問をさせていただきたいと思います。  大臣、この三者合意でまず生産者団体の意見は全部集約をされた、こういう理解をしているんですか。
  51. 中川昭一

    中川国務大臣 先ほどお話しいたしましたように、組織内で討議をし続けていたわけでありますけれども、私の聞いているところではいろいろな意見があった。県単位でも、また単位農協単位でもいろいろな御意見があったということは私も承知をしております。  しかし、団体内の、本当に限られた時間の中で最大限の時間を費やしての議論の結果、いろいろな御意見が、いろいろな立場、いろいろな県、地域からあったことは事実でありますが、最終的には、全中会長にその取り扱いといいましょうか対処方針を一任するということをおととい決定していただいたというふうに承知をしております。
  52. 宮地正介

    ○宮地委員 この点については、ぜひ大臣、今大臣もいみじくもおっしゃいましたが、やはり議論生産者全体にまだ行き渡っていないというのが実態だと思います。来年の新しい農業基本法、これに対しても生産者団体は大変重大な関心を持っております。  こういう詰める中において、まずこの三者合意で、もうこれで生産者団体のいわゆる意見は集約したんだ、こういう立場に固執しないで、これは代表の意見としては一応こういうふうに集約できて合意ができたけれども日本全国の稲作農家皆さんにとってはまだまだ大変な戸惑いがある。この戸惑いに対して、政府としても積極的に説明をする、誠意を示す。  そういう意味合いにおいて、わかりやすい、例えばパンフレットのような小冊子をつくって、そして本当に末端の生産農家まで、こういう趣旨で関税化に踏み切るんだ、そのかわり、関税化に踏み切っても、二〇〇一年以降のWTO交渉では、これは国貿の立場から生産調整もしっかりやります、今の七十七万トンのMA米をさらに上回るような輸入については全力でこれを交渉の中で阻止のために努力してまいります、特にこの三者合意の最後には、「平成五年十二月の閣議了解の趣旨も踏まえ、責任ある対応に努める」、こういうことを明らかにしているわけでございますから、ここのところについて、どうか大臣生産者団体に対して、どういう意味かわかりやすく御説明してあげてください。
  53. 中川昭一

    中川国務大臣 まずは、先生指摘の、できるだけわかりやすく、全農業者だけではなくて自治体あるいは消費関係皆さん方を含めて、わかりやすく理解をさせるという先生の御指摘はそのとおりにさせていただきたいと思います。  この平成五年十二月の閣議了解というのは、あのウルグアイ・ラウンド協定決定受け入れの日が十六日の未明だったと思います、当時細川内閣でございますが。この閣議了解は十七日だったと思います。  いわゆるミニマムアクセス米が義務的に入ってくるけれども、それが国内生産調整影響を与える、つまり量がぽっと入ってくるからその分また減反をふやすというようなことはしない、ミニマムアクセス米の扱いというのは、国内の生産とファイアウオールを置きまして、生産調整影響を与えないという意味でございます。
  54. 宮地正介

    ○宮地委員 この精神は今後のWTO交渉の中においても強く主張する、こういうことですね。
  55. 中川昭一

    中川国務大臣 そうでございます。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 そこで、食糧庁に伺いますが、今回従量税を導入いたしまして、来年はキロ当たり三百五十一円、二〇〇〇年には三百四十一円、これは従価税の税率に換算するとどの程度になるか説明いただきたい。
  57. 堤英隆

    堤説明員 今御指摘のように、従量税でいきたいと思っておりますので、今、キログラムの四百二円とかそれから三百四十一円というふうに申し上げておりますが、これをその当時の国際価格で割り戻しますれば、四百二円のものは一二六〇%相当でございます。それから三百四十一円につきましては一〇七〇%相当でございます。
  58. 宮地正介

    ○宮地委員 これは協定上の積算の算定の仕方に応じてきちっとやったから、私は、それなりに問題はないと理解をしております。  しかし、二〇〇〇年にキロ当たり三百四十一円、これを従価税に換算すると一〇七〇%。これは、特にアメリカの通商代表部あたりは、既に一〇〇〇%の情報のときにも相当批判をしております。特に、御存じのように、アメリカ通商代表部は、通商法三〇一条を抱えているわけですね。これは、昔は大統領の発動でありましたが、現在は通商代表部が発動できるようになっているのは御存じのとおりであります。  果たして今後WTO交渉の中で、この三百四十一円、従価税に換算して一〇七〇%という世界に類を見ない四けたの関税率、これが交渉に耐え得るのかどうか、これが一点。  場合によっては、アメリカは、包括交渉の中で他の日本の製品なり農作物等について三〇一条を適用してくる、そうした対抗措置をしてくる可能性はないのかどうか。まあ先のことですからきょう答弁はしにくいと思いますが、そういう戦略も当然考えておかなくてはならないと思います。  この点についてはいかがでございましょうか。
  59. 堤英隆

    堤説明員 今回の関税相当量を張ります際に、私どもとしましては、現行協定を誠実に遵守した形で対応いたしております。  現行協定に明確に書いてございまして、関税相当量につきましては、国内価格と国際価格の実際の差を用いて、透明性のある方法で行うということになっております。基準は八六年から八八年。それから、国際価格は、輸入国におきます実際の単位当たりのCIF価格の平均と書いてございます。それから、国内価格は、国内市場におきます代表的な卸売価格、こういうふうに書いてございます。  したがいまして、これに則しまして私どもとしては算定をしたわけでございますが、例えば国際価格につきましても、一九八六年から八八年に我が国に実際に輸入されておりますCIF価格のすべての平均、これは大蔵省の貿易統計をそのまま利用いたしましたので、最も透明性があるというふうに思っております。  それから、国内価格につきましても、一九八六年から八八年度におきます、食糧庁が毎月調べてかつ公表をいたしております卸売価格をとりました。これの自主流通米を主体としたものという定義がございまして、これは、当時でも六四%、国民皆さんに消費されております。そういう意味では、このWTOの規律にございます国内市場における代表的な卸売価格、この規定にそのまま私どもとしては合致する、こういうふうに考えております。  そういうことをベースに計算をして、先ほど来の数字をはじいたわけでございますが、そういう意味で、現行WTOの規律に沿って、何も足さず何も引かず、そのままの形で、透明性のある形で出しておりますので、十分これは国際的には通用し得るというふうに考えております。
  60. 宮地正介

    ○宮地委員 私も、先ほどから申し上げているように、協定の中の算定の仕方は透明性もあるし、皆さん方の計算をしたことについては私も理解をしております。  ただ、四けたのこうした高関税に対しては、既に、政府の三者合意のできる前からマスコミ等が報じていたあの一〇〇〇%、三百五十一円、そういうマスコミ情報を見て通商代表部が非常にぴりぴりしていた状況を考えると、今後のWTO交渉も大変皆さん御苦労が多いと思いますが、そうした戦略も考えて当然立ち向かわなくてはなりませんよということを私は申し上げているわけです。  特に輸入米の、一九八六年はタイ米ですよね。タイ米で、それもたしか加工米でしょう。それは私は、基本的にはそのときはそういう状況しかなかったんですから、そういうデータしかないんですから、それはやむを得ない。しかし、今後のWTO交渉の中で、アメリカからも、当然市場開放をやるわけですから、二次関税で、ミニマムアクセスに今度はさらにいよいよ従量税による関税を導入するわけですから、それに対しては相当やはり手厳しい対応が来るであろう。それに対してしっかりとした戦略を持って、食糧の安全保障あるいは多面的な機能も結構です、さらに、もう御存じのとおり、やはりEU諸国との連携というのも大変大事なポイントになってくるのではないか、私は、この点について政府としてどういうような戦略を考えておるか、確認をしておきたいと思います。
  61. 中川昭一

    中川国務大臣 先生指摘のとおりでございまして、アメリカといわず日本もそうですけれども、自分の国の立場交渉に臨むわけであります。今回は関税化ということになりまして、ほとんどの国々と同じ土俵に立って交渉を始めるわけでありますが、我が国国益を守り、そしてまた相手国に対して、理不尽なことに対しては修正を求めていくという交渉を行うに当たっては、日本立場理解を示していく国々が当然必要であるわけであります。その一つ日本の近隣諸国であろうというふうに思いますし、もう一つが非常に大きな勢力でありますEU諸国だろうと思っております。  つい最近のAPECの前に私は欧米に行ってまいりましたけれども、EUの代表の方とも御議論をいたしましたが、特に多面的な非貿易的関心事項の扱い等については認識をほぼ一致させてまいりましたし、また、一昨年のFAOの会議等々、国際会議においても日本立場が取り入れられておりますので、そういう先生の御指摘のような観点から次期交渉に臨んでいきたいと考えております。
  62. 宮地正介

    ○宮地委員 もう一つ大事な視点は、やはりこれからの国内の米、稲作農家の再生、活性化、また、国際競争力をつけるために政府がどういう対策をつくり上げていくか、これが私は一番大事だと思っております。  五年前にウルグアイ・ラウンド合意を得てから六兆百億の国、地方の予算が措置をされて、現在も進行中であります。果たしてこの五年間で、日本国内の米、稲作農家が本当に国際競争に耐え得るだけの、担い手の養成とかあるいは経営における生産性の向上とか、どれだけ強力な稲作農家になったのか、まずこの五年間を私はきちっと精査、総括をすべきだと思います。  そして、いよいよ来年四月から関税化を導入するのであれば、今後日本の稲作農家をどのように仕立てていくのか、保護政策と自力政策をどう調和させていくのか、やはりこの点についての明確な政府としての政策、対策というものをつくり上げていかなかったら、私は、今いわゆる生産農家皆さんが懸念しているような時代になってしまうと思います。  きょうは時間がありませんから多くを申し上げられませんが、そういう中で、私は、二十一世紀の日本の稲作農家についても、新しい産業起こしと同じように、我が国においても稲作農家というものに対してそうした視点からの思い切った改革をやらなくてはならないと思っております。  そういう意味合いにおいて、一つは、中山間地域にデカップリング方式を大綱の中で十二年度から導入のできる方向性、あるいは生産法人に限られた株式化の導入の問題、あるいは自給率の向上に対する数値の目標の設定等々、来年の通常国会には大きな課題を議論いたします。  平成十二年度からそうした問題に取り組んでいくわけでありますが、さらにその根底に、今後の日本の稲作農家食糧安全保障の中でどう位置づけてどう再生していくのか、保護政策と自力政策をどう調和させて活性化させていくのか、国際競争に立ち向かうだけの体力をつけていくのか。先ほどもお話がありましたが、北海道生産農家の体験を私も昨日聞きました。本当に悲惨な所得の状態であります。あんな状態では、到底国際競争に立ち向かうだけの体力はありません。  そうした根本的な農業改革について、大臣、最後になりますが、きょうは御決意だけ伺っておきたいと思います。
  63. 中川昭一

    中川国務大臣 まさに先ほどから先生指摘のように、WTO体制の中で、新食糧法あるいは新しい基本法次期国会で御審議をいただく、あるいは農政改革大綱、本当にいろいろな新しいスタートをまさに切らんとしているときでございまして、そのときに、米についても、最善選択肢と私は信じておりますが、関税化をしていくということでございます。  その中で、米作農家を中心とする日本農業がきちっとした将来展望とそして経営の安定強化ができるようにしていくために、あらゆる手段を講じていかなければならない。具体的には、いろいろあるのでしょうけれども、次期通常国会でこの基本法の御審議を通じて、また、宮地先生にも、先生と私と共通の目標の実現に向けて御指導をいただきたいと思います。
  64. 宮地正介

    ○宮地委員 終わりますが、最後に、来年四月からの関税化導入を契機として、我が国の稲作農家、これは我が国国民の主食であるし、また、農作物の生産の基軸にあるのは我が国は稲作農家、国土、気候、あらゆる角度から、水田農家が今後いよいよ国際的に競争力をつける、また、世界の異常気象などの中で、ますます食糧の安全保障の問題が世界的にも重大な課題になるのは必至でありますし、我が国食糧安全保障のみならず世界の食糧安全保障立場からも、我が国の稲作農家が、自信と誇りを持って国際的にも通用する農家にどうか本当に活性化できるよう特段の政府の対策を要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。
  65. 穂積良行

    穂積委員長 次に、一川保夫君。     〔委員長退席、赤城委員長代理着席〕
  66. 一川保夫

    ○一川委員 自由党の一川でございます。  今回のこの米の関税化問題につきまして、先ほど来、いろいろなやりとりの中で、特に、余りにも唐突ではないか、結論を出すに性急ではないかというような議論が割とあるわけでございます。  実は、私自身も地元のJAの正組合員の一人でもありますけれども、何らそういう相談もございませんでした。昨日も地元にいたときにそのJAの幹部クラスの方々に問い合わせをいたしました。先ほど大臣が御答弁の中で、団体の中で時間は十分なかったかもしれないけれども徹底的に議論をしていただいたというような趣旨の御答弁がございましたが、率直な印象としましては、そういうJAの末端段階においてそんなに深く掘り下げた議論というのは私はなされていないというふうに思っております。  確かに、当面のミニマムアクセス量としての輸入量を抑えるということでは、一種の猫にかつおぶし的な議論で、当面の輸入量は下がるのだからもうこれでいいじゃないかというような、割と乱暴な議論が若干展開されていたのではないかなという感じがいたします。そういう面では、我が国農業の、本当に中長期的な稲作農業のあり方ということを含めた幅広い、またしっかりとした議論というのは余り闘わされてこなかったのではないかなという感じが正直言っていたします。  特に、私も、この米の今回の関税化への転換という考え方は、やはり従来のそういうミニマムアクセス量の輸入という考え方と本質的に考え方を変えてきておるというふうに思いますので、やはりそれぞれの農業団体農家皆さん方も、そういう貿易の自由化体制の中に完全に組み込まれていく心配というのは当然あると思うのですね。  従来のミニマムアクセス輸入米という考え方を今回関税化に切りかえるわけですけれども、そのことによって、我が国のいろいろな稲作農業に対する影響、そういうものは従来とは大分変わってくるんではないかというふうに私は考えるわけですけれども、そのあたりをどのように認識しておられるか、まず見解をお伺いしたいと思います。
  67. 堤英隆

    堤説明員 今回の関税化の切りかえの問題と稲作農家の方々の御不安につきましては、先ほど来御議論がございましたし、御答弁申し上げているところでございますが、さらに、稲作農業の将来のことにつきましては、基本法議論の中でさまざまな角度から行われていくべきだと私どもも思っておりますし、先生方の御指摘もそうだと思います。そういう意味で、私どもも鋭意今詰めておりますし、次の通常国会には基本法という形でお出しして、また御議論を賜りたいというふうに考えております。  当面、この関税化ということだけで申し上げさせていただきますと、結局、関税化の中にミニマムアクセスの数量が入っております。その数量を本来の数量に比べてもっと落とす手があるということでございますので、そういう意味では、外国のお米が入ってくる量を、伸びを落とすことができるというメリットがあるというふうに考えております。  他方で、先ほど来御説明申し上げておりますように、ミニマムアクセスと国産米の需給とは切り離した形で、国貿制度の活用と相まってやってきております。それが閣議了解の趣旨でもございます。そういう意味では、これからも国貿を堅持し、それから平成五年の閣議了解の趣旨を守って私どもとしては対応していきたいというふうに考えておりますので、直ちに稲作農業に対する影響があらわれてくるということではないのではないかというふうに思っております。     〔赤城委員長代理退席、委員長着席〕
  68. 一川保夫

    ○一川委員 今回、末端農業団体も含めて検討する時間が非常に不足したというような言い方がよくあるわけでして、現実もそうだというふうに私は思います。しかし、全中の方に先日お聞きしましたところ、こういう話題は実は昨年から一応出ていたというようなお話がございました。それをなぜ農協の末端までおろして十分議論しなかったのかということをお聞きしますと、例の食料・農業・農村にかかわる調査会ですか、ああいうところでいろいろな中間答申等が出されました。我が国農業のこれからの将来方向を決める重要な、そういういろいろな調査会が議論するときに、そこへまた関税化議論が入ってくると議論混乱しちゃってなかなか結論が出てこない、また、そういうことで我が国需給問題にも当然影響するわけでございますので、昨年の段階でこの話題を全国末端におろして議論するということは農業団体としては余り得策でないというふうに判断したというふうなことをちょっとお聞きしたのです。私は、それは農業団体だけの意見なのか、何かどうも農水省が意識的に抑えたのじゃないかなという印象も持ったわけでございますけれども、そのあたりいかがですか。
  69. 堤英隆

    堤説明員 農協の方は、昨年の十月の段階で全国農協大会を開きまして、この関税化問題ということにつきましてもきちっとした文書で、そういう議論が急がれるということで整理をされております。そういう意味では、次期交渉ということがだんだん迫ってくる中で、農協としてのさまざまな検討というものは昨年来から静かに行われていた、また、その中でもいろいろな勉強が行われたというふうに理解をいたしております。  したがいまして、農水省がそれに対してどうこうというような立場ではございませんし、そういうことを申し上げることは全くないわけでございます。確かに、農家段階におきましての議論は十分浸透していたかというと、必ずしもそうではないと思います。それは御指摘のとおりだと思います。  ただ、ことしに入りましてから、秋以降、そういった問題がいろいろ取り上げられてくるし、次期交渉が迫ってくるという中で、組織討議という意味では、時間的な制約はございましたけれども、それぞれの地域におきましてかなり濃密な議論が行われたのではないかなと思います。これは地域によって濃淡の差はあろうかと思いますが、一応やはりそれぞれの段階で、会長一任なりという形で意見集約をされてきているわけでございますので、そういう意味での議論というものはかなり行われたのじゃないかと思います。  ただ、これだけで十分ということではございませんで、これからもまたそれぞれの農家の方々の御理解を得べくお互いの立場努力をすべきだというふうに思っております。
  70. 一川保夫

    ○一川委員 今までの御答弁で、ちょっと私は認識が違うと思いますけれども、十分議論をされたということは余り強調されない方がいいと思います。  私も実際の現場の意見も聞きましたけれども、要するに、いろいろ判断する材料も不足している、期限も切られているということについて、もう団体の長に一任せざるを得ないような雰囲気になっていたというふうに私は判断するわけでして、それを農家も含めて農業関係団体のコンセンサスが得られたというふうに、余り簡単にそういう判断をしていただくと非常に困るわけでございます。  先ほど来いろいろ議論が出ていますように、次期のWTO交渉を控えて、大臣も先ほどの答弁の中でお話しされましたように、やはり国民的なコンセンサスを十分得るということに対して、当然その中には農業関係者あるいは都市の住民、消費者も含めて、やはり全体に我が国の米政策のあり方みたいなものも含めた議論を展開する中でしっかりとした国全体のコンセンサスが成り立たないと、私は、国際交渉の場でも日本立場は非常に弱くなる、日本主張も通らないというふうに思います。まず、現状のそういったいろいろなコンセンサスづくりに対する認識も含めて、十分反省するところは反省をしていただいて、ぜひ今後の参考にしていただきたい、そのように思っております。  先ほどの話題の中で、けさほどの報道にも減反政策を廃止するということが突発的にぽんと出ましたけれども、各紙がほぼ同じような中身であれだけのものを報道されるということは、私は、大臣が答弁された、事実無根であるという、確かにそれは公式には事実無根かもしれませんけれども、やはりいろいろなことを勉強されているということは事実だと思いますし、そういうことが報道されてくるということは、余りにもタイミングが今回の関税化の問題と一致しているものですから、若干そこに不信を抱くわけでございます。  私は、やはり農政に関するいろいろな問題も別にタブー視する必要はないと思うのですね。だから、あらゆる検討課題は検討課題として、時間をかけていろいろ議論されることは私はいいと思うのですけれども、余り大臣が抑えよう抑えようとすればするほど、そこにちょっと不信を抱くわけですけれども、いかがですか。
  71. 中川昭一

    中川国務大臣 抑えよう抑えようとしているわけではなくて、事実無根だということを確認したわけであります。  今先生おっしゃるように、本当に、きのうの段階での報道でありますから、事実であったとしても、タイミング的に非常によくないタイミング、それがまして事実でない報道であるということになりますと、これは生産者皆さんのお気持ちを考えると、私としても耐えられないわけであります。  今先生がおっしゃったように、いろいろな検討をすることはこれは今後やっていくことだろうと思いますけれども、二〇〇〇年に減反を廃止するとか何年に減反を廃止するとか、そんなところまでは議論をすることは考えておりません。
  72. 一川保夫

    ○一川委員 今回のこの関税化問題も、非常に検討時間が少なかったというような批判もございます。今の生産調整のあり方、減反のあり方という議論も、これは現場としてもそういう問題意識を持っている人も当然いるわけでございますし、本当に稲作農家がそれなりに意欲を持って取り組めるような制度を確立してほしいというのは一つの願いでもございますので、いろいろな問題点について議論を深めていくということも非常に大事だというふうに思います。勉強することは大いに勉強していただいて、適当な時期にしっかりと情報を開示していただくということが私は必要ではないかというふうに思っておりますので、その点の要請をいたしておきます。  それから、当然、次期のWTO交渉に向けて、今回のこの関税化へのそういった転換ということを踏まえて、交渉自体はだんだんやりやすくなるというようなお話もございました。ただしかし、この関税そのものの税率をどう高水準に維持していくかということからすればまだまだ楽観的なものではないというふうにも思いますし、また、今後のいろいろな動向を考えれば、こういった税率が下がっても上がっていくことは私はないと思います。  そういう中で、今回こういうふうに結論を一応出された背景として、我が国農業の生産性が今後どういうテンポで向上していくかということは、いろいろな試算があろうかと思いますけれども、そういう我が国農業の生産性の向上、それから、今後関税化することによって関税の率がだんだん下がっていくということはある程度想定しながらいろいろ試算するということが当然あってしかるべきだというふうに私は思います。それによって、将来、十年後、二十年後でも我が国の稲作農業はそれなりに成り立つというような見通しがあっての結論でないと非常に不親切だというふうに私は思いますけれども、そのあたり、いかがでしょうか。
  73. 堤英隆

    堤説明員 今回につきましては、WTO協定に従いまして、先ほど申し上げたような水準の従量税を張りたいということでございます。そういう意味では、今後のことにつきましては、なかなか難しいわけでございますが、いずれにしましても、日本農業の生産性の向上、これは各種の施策の推進と相まって対応していかなければならない問題だと思います。  それと税率との関係というのは、これはなかなか一概には申し上げにくいわけでございまして、これから次期交渉にどの程度の期間を要するのか、その間は当然、私どもとしては現行のこの従量税がそのまま通用する、張れるというふうに理解をいたしているわけでございます。  それから、その後の交渉の中身につきましては、これは、次期交渉に、先ほど大臣からるる御説明申し上げておりますように、国内の世論、農業の実情、農家の方々の御希望、そういうものを踏まえて、強い姿勢で私どもとしては内部の改革を進めながらも対外的には当たっていくということでございます。  そういう中で、私どもとして今どうなるかというのは申し上げにくいわけでございますが、当然ながら、やはり今後の税率ということにつきましては、今申し上げましたような国内農業が健全に育成され、発展し、農家の方々が安んじて営農にいそしめるような、そういう国境措置であるべきだという考え方を持って対応させていただきたいというふうに考えております。
  74. 一川保夫

    ○一川委員 農家の皆様方も当然、今回のこの政府決定を受けて、将来に対する不安感というのがますます私は高まるのではないかという感じがいたしますけれども日本農業の生産性の向上ということとそういった国際交渉の中で今後税率がどういう格好で維持されていくかというのは非常に不確定なところがございます。幾つかのケースをやはり想定しながら、日本農業の体質改善、構造を改善していくという面では、何か一つの目標を持って、例えば十年後なら十年後にこのレベルまで持ち込むという目標がない限りは、何か力強い農政というのは私はないような気がするのですけれども、そのあたりはいかがですか。
  75. 中川昭一

    中川国務大臣 まさに今後の経営の将来展望ということで、次期通常国会で御審議いただく基本法の中でも、自給率の設定でありますとかあるいは三年から五年をかけての政策の見直しとか、そういう形で中期的なあるいは長期的な行政手法もより取り入れながら、努力をしていく上でも、生産者皆さんが、一つの目標、あるいはまた自分が今どの辺にいるのかなというようなことがわかるような形の一つの指針みたいなものも含めて、そういうものをお示しをしながら、そしてまたそれを三年、五年でリバイズしながらやっていくことによって農家皆さんの経営の意欲の向上にお役に立てたいというふうに考えております。
  76. 一川保夫

    ○一川委員 大臣にちょっと確認のためにお伺いしたいのですけれども、先日の参議院の予算委員会で自由党の阿曽田先生が、次期のWTO交渉に向けて、前回の交渉後の我が国農業状況変化あるいは国際的な食糧を取り巻くいろいろな状況の変化を受けて、新しい貿易ルールみたいなもので交渉に臨んだらどうかというようなことを御質問されたら、大臣の方から、非常に何か難しいけれども一応検討してみるというような趣旨の答弁があったふうに聞いたわけですけれども、そのあたりはいかがですか。
  77. 中川昭一

    中川国務大臣 午前中の参議院での阿曽田先生の御質問に対してお答えしたのは、協定の全体のフレームワークを変えるとか、あるいは個々の条文を一つ一つ変えていくということは非常に難しいのではないかという判断に立った上で、しかし、例えば輸出国輸入国との間のアンバランスがある現状を変えていくというような、輸出国輸入国との間のルールの公平化といいましょうか、そういう意味でのルールということであれば、日本として主張すべきことはたくさんありますと。  ただ、ルールといった場合に、条文とかあるいは協定全体とかいうのも言葉としてはルールということになるのでしょうけれども、それは難しいですけれども、その協定改革過程の中で我が国主張すべきこと、また守っていかなければいけないことについてルールを変えていくということについては我々は努力をしていきたいという意味で、そのルールという意味が誤解を招きかねないということでちょっと今申し上げたわけでございます。
  78. 一川保夫

    ○一川委員 次期のその交渉の中身がこれからの非常に大事なポイントになろうかと思いますけれども、農水省として、次期のWTO交渉段階では、この米にまつわる話題としては何が一番問題点になりそうか、何が焦点になると認識していらっしゃるのか、また、そのあたりに対する見通しをどのように持っているのか、そのあたりをまず確認したいのですけれども
  79. 竹中美晴

    ○竹中説明員 次期の交渉、二〇〇〇年の初頭から始まるわけでございますので、まだまだその具体的な議論がたくさん出てきているという状況ではございません。  これまでのいろいろな国際的な場での各国の意見等、いろいろ総合いたしますと、次の交渉議論になりそうなのは、いわゆる国境措置、市場アクセスの問題とか、あるいは各国国内の補助金の問題、国内支持の問題、それから輸出国に対する規律の問題、輸出国輸入国の権利義務の問題等も含みますが、そういった問題、さらに、先ほど来話も出ております非貿易的な関心事項、農業多面的機能とか食糧の安全保障といったことも含めた問題、また国家貿易に対する規律の問題、そういった論点が考えられるわけでございます。  そういう中で、市場アクセスの問題、関税等も含めた市場アクセス、国境措置の問題、各国農業補助金、国内支持の問題、そういった点が大きな議論の対象になってくるのではないかと想像いたしております。
  80. 一川保夫

    ○一川委員 今、たくさんいろいろな課題を挙げられましたけれども我が国農業、その中でも米というのは基幹作物でございますし、国民の主食でもございますので、そういう面では非常に大事な交渉事でございます。先ほどの大臣の答弁にもありますように、やはり国民幅広く、いろいろな関係者の意見をしっかりと聴取されて、力強い交渉をしていただきたいというふうに思っております。  最後に大臣決意のほどをお伺いしたいわけですけれども、先ほど来の議論にありますように、これからの我が国農業、とりわけこういった稲作農業というのは、そういった国境措置なり国内のいろいろな支援施策というものが非常にポイントになってくるわけでございます。先ほどもちょっと言いましたように、一つの目標を掲げて、それに対してある程度具体的な施策を示すということも、一方では非常に大事なことだというふうに私は思います。  やはり農業に取り組む、これから意欲を持ってやろうというような方々に対しても、日本の稲作というのは十分将来展望があるというような気持ちになっていただくためにも、農業に対するいろいろな施策も、ある程度具体性を持って、目標年次を示しながら進めていくということが非常に大事だというふうに思いますので、そのあたりに対する大臣の御決意をお伺いして、私の質問を終わりたいと思います。
  81. 中川昭一

    中川国務大臣 今先生指摘になった後半の、目標年次を持ってより具体的に全国の意欲ある農家農業者に対して施策を示していく、当然大事なことであり、先ほども申し上げましたように、実質的には次期国会での基本法の審議の中で、またいろいろ貴重な御意見をいただきながら実行してまいりたいと思います。  また、次期交渉に向かいましても、今の段階では、日本立場あるいは輸出国に対していろいろと我が国の要望を主張するとか、国境措置はきちっとするとか、あるいは多面的機能とか食糧安保とか、そういうかなり大きな抽象的な話でございますけれども交渉に当たっては、国民的な合意のもとで、より具体的にどうしていくんだということを絞り込んで交渉に行かなければならないというふうに考えております。
  82. 一川保夫

    ○一川委員 ありがとうございました。
  83. 穂積良行

    穂積委員長 次に、藤田スミ君。
  84. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私はまず初めに、きのう政府が米関税化決定したことに断固抗議をし、その撤回を求めるものであります。  とりわけ私は、この間四つの選択肢をあなた方は言っても、米の関税化の本質論については全く議論されないまま、政府関税化を決めたことに大変大きな憤りを覚えております。少なくともウルグアイ・ラウンドのときは、農林水産省自身が米関税化の危険性について国民に向かって啓蒙をしていたわけであります。  大臣、今、米関税化問題について、どれだけ農業者、消費者国民の間で理解が広がっていると思われますか。
  85. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、きのう合意したのは政府決定ではございません。これから政府決定をしたいというふうに考えておりますが。  今回の来年四月からの関税化につきましては、決定をした後のことになりますとやはり新聞報道ということにならざるを得ないわけでありますが、けさの新聞等を読んでみますと、まだ内容がよくわからないとか、今後関税率がどうなるのかとかいう心配もある一方、これで余分のミニマムアクセスが義務的に入ってくることが少なくて済むとか、新聞ですからいろいろな意見をお出しになっているわけでございます。いずれにしても、今回決定をしたことについては、生産者を初めとして国民皆さんにあまねく御理解をいただくべく、最善努力をしていきたいと考えております。
  86. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 これから国民理解を求めていくというのなら、大臣おっしゃるように、それは政府決定ではないわけですから、だから、きのうの三者の合意というのは政府決定ではない、もっと国民理解を求めてからやる、そういうことでいいじゃないですか。  先ほど言われましたけれども生産者団体議論を行われたのはわずか一カ月間です。大臣いみじくもおっしゃいましたけれども、多くの県、農協中央会では時間不足で意見集約はできない、私も幾つかのところを聞きましたが、みんな同じような答えです。県段階でもそうですから、いわんや末端の農協レベルになるとなおさらのことなんです。  そして消費者の方はどうか。それは全く国民的な議論もなされておりません。  米は言うまでもなく国民の主食であります。その主食について、消費者の意見をただすこともなく政府として結論を出すことがあっていいのですか。あなた方は今まで、米の自由化を行うことは米を不安定な国際市場にゆだねるだけではなく、国内の生産基盤を弱体化することになり、米を安定的に供給する上でも極めて問題となり、消費者の利益になるとは到底言えません、消費者の利益を守るためにも関税化してはならないということを言ってきたのです。  そして、農業白書でも、ことしのを見ると、今後の農業については国民的な合意が必要なんだ、これからの農政はそういう農政でなければならないということを強調しているじゃありませんか。  大臣消費者の意見もたださずに、日本農業にとって死活的な問題を今決断していいのでしょうか。もう一度お答えください。
  87. 中川昭一

    中川国務大臣 確かに、時間的な制限というのがありました。それは、四つの選択肢の中で一番早い選択肢がベストだという判断に至るとするならば、それに間に合わせるようにしなければならないという意味で、十二月中ということが一つあったわけであります。しかし、その間、団体あるいは与党を初め多くの各党皆さん方が真剣に御議論をいただき、もちろん御理解をいただいた部分、また、まだ御理解をいただかない部分、いろいろあったと思いますけれども、しかし、組織としての手続を踏んで、また与党の手続を踏んで、ああいう私自身の決断も含めて昨日の合意になったわけであります。  今後も説明をするということは、今までも説明をしてまいりましたけれども、いよいよ決定になったわけであり、その決定は、私としては、限られた選択肢の中では最善のものと考えている以上、消費者生産者、あらゆる立場の方々により一層早急に御理解をいただく必要があると考えておるわけであります。  それから、多くの県が反対とかわからないという意見だと言ったじゃないかとおっしゃいましたが、決して、多くの県とは私は申し上げておりません。幾つかの県からはいろいろな御意見があったというふうに先ほど申し上げたと記憶をしております。  これから日本農業が大きな転換点に立つ、特に二年後の次期交渉に向かって、大変な交渉がスタートするわけでございますから、それに向かって少しでもいいポジションで交渉に臨めるように、そしてまた現時点においても、日本生産者そして消費者にとってよりよい選択は何だということで、今回の決定をしたところでございます。
  88. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 これだけの重要な問題を、大臣もお認めのように、消費者抜き、国民抜きではだめなんです。だから、これから説明する、事を決めてから説明するというようなやり方は、およそ民主主義の常道じゃありません。私は、撤回を重ねて要求しておきたいと思います。  ところで、農業団体の論議の中でも、将来にわたって高関税を維持することが条件として出されているわけでありますが、私が関税化の危険性が理解されているのかという言い方をしたのは、まさにその点にあるわけであります。  中林議員も紹介をしておりますが、農水省の官僚がつくった問答集の中にも、  いったん関税化を受け入れたとしても、税率が  どのように設定されるか、どのように変化して  いくかは全く何の保証もないものであり、米国  が途中で税率の急速な低下を要求することは、  今までの態度からして大いにあり得ることで  しょう。このように中長期にわたって不安材料  が残されているものを、目先の短絡的判断で受  け入れようとすることは、将来に悔いを残すこ  とになります。 と端的に答えています。私もそのとおりだと思う。  大臣、高関税を維持する保証が一体どこにあるのか、その保証が一体どこにあるのかということをお答えください。
  89. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、消費者皆さん全部とは言いませんけれども、幾つかの団体には、農林水産省としても事前に説明をし、また御意見も聴取をしております。  それから、関税化すると、これは譲許するわけでございますから、その次期交渉に当たって、アメリカに限らずどこの国でも、また日本もほかの国に対して下げてくれと言う可能性もあるわけでありまして、それは別にその国の立場相手の国に対して要求するということであります。  幸い政府は、与党そして多くの政党と同じようにアメリカと友好関係を持っておりますので、十分腹を割って話すことができます。お互いに言いたいことを言い、そしてだめなものはだめと言うことができるわけであります。つい最近も、APECでも、アメリカの強い要求を、政府それから政党、団体一体となってはねつけたことは先生も御承知のとおりだと思います。  我が国としては、仮にアメリカあるいはその他の国から要求があっても、我が国国益に反することについては、これは拒否をするということで交渉に臨むわけであります。もちろん、交渉ですから、相手のあることであり、相手の意見が一〇〇%通らないと同じように、こちらの意見が一〇〇%通らないということもあるかもしれませんけれども、我々は最大限の努力そして決意を持って交渉に臨んでまいるつもりでございます。
  90. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私も一々言いませんが、しかし、アメリカと腹を割って話し合えばだめなものはだめで通る、そんな話を私にしたらだめですよ。牛肉・オレンジ、どんなに悔しい思いをしてきたか。私は本当に、ここで何ぼ涙を流したか知れません。そういう言い方は通用しませんよ。  そして、結局大臣は、交渉事だからと。そういうことでしょう。もう一度具体的に聞きましょう。  例えば、高関税の計算の前提になる八六年—八八年のこの計算基準年を次の農業交渉で維持できるのか、関税の引き下げ率が日本の思惑どおりにおさまるのかどうかということなんです。この点では、アメリカが九六年農業法でこれまで以上に輸出特化型の農業生産体制になっていることを見れば、これはもう容易でないことは明らかじゃありませんか。  もう一度具体的に、保証できる根拠を示してください。
  91. 竹中美晴

    ○竹中説明員 一九八六年から八八年の基準とかあるいは具体的な関税水準とか、そういったものが次の二〇〇一年以降どうなるかということは、これは次の交渉で決まってくるものでございますので、現時点で何らかの予断をお示しするというわけにはまいらないと思います。  ただ、二〇〇〇年の初頭から始まります次の交渉は、恐らく数年続くわけだろうと思いますし、その間は、スタンドスティルといいまして、現状が維持されていく。また、交渉の中身におきましても、先ほどからもいろいろ出ておりますように、我が国としての、食糧輸入国としてのいろいろな主張を訴えていく、そこでその実現に全力を挙げていくということでございます。  その場合に、何回か大臣からも申し上げておりますように、我が国は、今回の関税措置への移行によりまして、百三十四カ国ございますが、ほかの大多数の国といわば共通の土俵に上っておるわけでございますので、共通の土俵で議論ができるという強みがあろうかと思います。その場合に、従来ですと、いわば先進国では、イスラエルを除けば我が国だけが特例措置を持っているという状況でございましたが、そういうことでなくて共通の土俵にある、そういう中で議論ができる。  しかも、この関税化というのは……(藤田(ス)委員「短くしてください、わかっていますから」と呼ぶ)協定上のルールによりまして算定されておるわけでありまして、世界の各国関税化に移行したわけでありますが、高い関税を張ってもいいからこういう仕組みにするということでございまして、世界各国にも高い関税は幾らもあるわけでございます。
  92. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 要するに、高関税化を長期に維持するということを政府は何ら具体的な裏づけを持って保証することができないということが明らかになりました。  大体、米のように、世界的な生産量に占める貿易量がたったの五%、気象変動や豊作、凶作の変動で国際価格の変動が最も激しいものでありますから、関税化には適さない、大変危険なものであります。しかも、関税化そのものは、従価税をとっても従量税をとっても危険性を伴うものであるということは言うまでもありません。  これは、私、パネルを持ってまいりましたが、ごらんください。従価税をとった場合は、輸入価格に対して、従価税七〇〇%と仮に決めましょう。私は、これはあえて十キロ単位の数字で言っていますが、七〇〇%の場合は、輸入価格五百円の場合は三千五百円で四千円になります。しかし、十キロ百円に暴落した場合には、これは七百円の従価税で結局八百円、そういうことで、とても障壁にならない。  一方、従量税の方はどうかというと、従量税の方は、不作によって国内価格もそれから国際価格も上がっていくと全く効果がなくなるわけであります。これは従量税の方で、量に対する税金ですから、五百円に対して十キロ三千五百円の従量税をかけて四千円、ところが、国内価格が五〇%アップし、それから輸入価格も五〇%アップすると、従量税を乗せると明らかに国内価格よりも安い価格輸入されてきて障壁の役にならない、こういう危険性があるわけであります。  そういうことを、私は、大臣御存じないはずはないと思う。そういうこともきちんと生産者団体に説明されたんですか。
  93. 堤英隆

    堤説明員 従量税と従価税につきましても、それぞれのメリット、デメリットにつきましては、農業団体の方々も正確に理解をされているというふうに認識をいたしております。
  94. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 正確に理解している、大臣もその危険性を認めておいでになる、そういうことでしょうか。そして、そういうことであるならば、私の質問に答えてください。  二十一世紀に向けて、農業白書の中では、「中長期的な世界の食料需給は、需要面の大幅な増加が見込まれるなかで、それに見合った供給が確保されるかどうか不透明な状況にあり、ひっ迫することも懸念されている。」そういうふうに述べています。  逼迫すれば米価が上がる、米価が上がれば従量税も障壁の機能は果たさなくなっていく、そういうことになるじゃありませんか。そのことは、政府自身がこれまでも言ってきたことなのです。そういうことを承知の上であえてやるということになるわけですか。
  95. 中川昭一

    中川国務大臣 関税化するに当たっては、従量税、従価税どちらかを選択することができるということで、今、先生そして長官からもそれぞれ、上がった場合にはどっちが得か、下がった場合にはどっちが得か、またその逆もあるということは、農業団体も我々も十分承知をした上での与党との三者合意であるわけであります。  今後食糧が逼迫したときに価格が上がるではないかということでありますが、それよりももっと大事なポイントというのは、今後食糧が逼迫したときに、我が国が国産で、きちっと国内で供給ができるという体制をつくっていくことが大事なのであって、その中で世界の食糧の需給我が国がどういうふうにこれから貢献できるかという、もっともっと大きな観点でこの問題については御議論をいただきたいと思います。
  96. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 よく言えたものであります。逼迫したときに国内でちゃんと米が供給できるような体制をつくることこそ大事だ、そのとおりです。だからこそ関税化はやっちゃならない、自由化をしちゃならない。  私は、大豆の遺伝子組み換えの表示の問題で、日本が三十六年に自由化に踏み切って、以来大豆の自給率が落ち、九八%まで輸入に依存するというような状態の中で、消費者にとってどんなに惨めな問題が起こってくるかということを嫌というほどかみしめてきました。米も同じ轍を踏ませてはならないんです。  大臣大臣はお忘れですか。あのウルグアイ・ラウンドのときに、私はここに持っていますが、あの当時の国会自由民主党が九三年十月に提出した米の自給方針堅持に関する決議案、九四年一月に提出した農林水産大臣畑英次郎君不信任決議案、同じく外務大臣羽田孜君不信任決議案、いずれの提出者の中にも中川大臣は名前を連ねていらっしゃいます。  私は、もう時間がありませんからあえて紹介はしませんが、これほどまでに言ってきたあなたが今どうして関税化決断するのか。その政治的意味、責任について一体どのように受けとめていらっしゃるのか。私は、食糧主権を放棄してはならないという怒りを込めて、最後に大臣の御答弁を求めたいと思います。
  97. 中川昭一

    中川国務大臣 当時、私は、野党でございましたが、自民党の筆頭理事をやらせていただいておりましたので、そのことについては鮮明に覚えております。  当時、交渉について、例外なき関税化、そして日本では、私どもも含めて関税化は絶対まかりならぬということで臨んでいって、あの結果になったわけであります。  それから時がたち、今回関税化決定をしたわけでありますが、共通することは、その時々の時点で、その時点、そして将来にわたって、生産者そして消費者を含めて、国会にとって何が最善選択かということが一番ポイントになるわけであります。したがいまして、関税化をしないと言い続けることが、私は、現時点において生産者にとってもベストではない、むしろ、この時点において、四月一日に関税化をすることが消費者、そしてもとより生産者にとって選択として最善であるという確信を持って、今回決断をした次第でございます。
  98. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  99. 穂積良行

    穂積委員長 次に、前島秀行君。
  100. 前島秀行

    ○前島委員 二、三伺います。  きょうずっと出ていた議論の仕方の取り扱いの問題ですが、五年前の経過から見ると、関税化に移行したということは転換だろうと思いますね。それもあの経過から見ると、大につながる大転換をしたということ。  そしてまた、国民理解国民合意を得るということであるなら、やはりその辺のところは、単に直接の農民団体だけではない、さまざまな人からも意見は十分聞くべきだったな。そして同時に、その経過というのが国民の前にオープンになって初めて合意というものはできるわけなので、その辺のところの方法論、これから運営の問題については、やはりそこは政治家としての大臣に期待するしかないのであります。事務当局にそのことを言うのは、やはり事務当局としては方針を通すということに、技術的に物事を追求するのでそれは期待するのは無理だろうと思うので、その辺は政治家としての大臣に期待するしかないだろうと私は思います。国民合意がなければ、これからの農業あるいは食糧政策、米の再生というような問題は難しいと思いますので、ぜひその辺の配慮をこれから大臣に期待したい、私はこういうふうに思いますので、よろしくお願いしておきたいと思います。  それで一つ、まず、私たち社民党が、よくミニマムアクセスの取り扱いの中で、ヨーロッパで牛肉でもそんな議論があったように、米と麦を一つに含めたバスケット方式というのはとれないのかということを終始言ってきたわけであります。そのバスケット方式をとるということになると、小麦の輸入との兼ね合いで相当米のウエートというのは落ちてくるんではないだろうか、そんな議論もしてきたし、また、一連の中でも何度か、恐らく長官とか大臣にもそういう方法も検討してみろという申し入れなんかもやってきたんでありますけれども、その辺のところはとれなかったのか。また、そういう努力をやってみたのかどうなのか。また、今後ミニマムアクセスという世界はまだ続くわけでありますから、その辺のところをひとつ、認識といいましょうか、考え方を聞かせていただきたいな、こういうふうに思います。
  101. 堤英隆

    堤説明員 先生指摘のように、ウルグアイ・ラウンド交渉の際に、ECは当初、アクセス水準の算出を食肉単位ということで行っていたわけでございます。提案をしたということですね。その際に、食肉ということで、牛肉や豚肉や羊肉なんかを一くくりにするということであったわけでございますが、結果としまして、こういう今申し上げましたような牛肉、豚肉、羊肉、鶏肉等々、それぞれの関心国がみんな違うものですから、自分たちとしては、それぞれについてこれだけの量のミニマムアクセスだというふうになりまして、結局は、豚肉や牛肉等、それぞれの個別品目単位でミニマムアクセスの約束をするという形になっております。  そういう意味で、バスケット方式ということも一つ考え方とは思うんですけれども、例えば日本で、今御指摘のように、米と麦をバスケットでやることが現実的であるかどうかということはなかなか難しい問題があると思うんです。今現在、麦につきましては、カレントアクセス五百五十万トンほどございます。米につきましては、今のミニマムアクセスが七十万トンほどあるわけでございますけれども、麦は麦として、米の減らした分を例えば麦で受けるというふうになりますと、結局内麦をそういう意味では圧迫するという形になります。国内需要は一定でございますから、麦をカレントアクセスでふやしますと内麦を圧迫する。  これから基本法、農政を御議論いただきますけれども、麦、大豆、飼料作物といった自給率の向上ということを図ります上で麦はやはり大事な作物でございますので、そういった観点も考えていかなきゃならないんじゃないかということを思っているところでございます。
  102. 前島秀行

    ○前島委員 いや、国内の方に影響するんじゃなくて、輸入量との兼ね合いの中で、米の輸入であるし麦の輸入でありますから、その辺のところは、政治理論として、各国との政治交渉の中でできる問題ではないかな、私はこういうふうに思います。  時間がありませんから、いずれまた、うちの方では非常に重要な現実的方法論だろうと思っておりますものですから、またこれからも別の機会に議論させていただきたいと思います。  二つほど大臣に、認識といいましょうか、決意みたいなのをちょっと聞かせていただきたいなと思っています。  その一つは、関税化というのを受け入れたということはやはり私は大きな影響があるだろうと思います。確かに、堤長官が言われるように、二〇〇〇年までの話ですとか、あるいは交渉中は影響ないでしょうね。今のルールに基づいて透明性を持って計算したんだから、文句言うなと言えばそれなりの論理があるということがあるけれども、しかし二〇〇〇年以降の新たなルールというのは、これから先私は全くわからない。同時に、関税化ということは、あくまでも私は、自由化に進んでいく一過程の、ある意味では激変緩和としてあり得る政治的な妥協の方法論だろう、こういうふうに見るべきではないだろうかな。  だから、前回のウルグアイ・ラウンドでもって、国を挙げて、文字どおり与野党挙げて国会決議をして、先生先頭になってこれはだめだと言われて、僕が困って、当時与党でしたから、農水委員長の不信任案まで出ちゃったという状況ですよね。やはり関税化影響というのは、私大きいなと思います。  そこは入り口があいちゃったんですよ、玄関があいちゃったんです。その玄関があいたら、輸出をしたいというところは、あいた玄関目がけて日本に合った作物だとか品質だとか、あるいは価格努力というのを当然してきますね。それがあいちゃったんだ。あいていないのとあいたというのは、そういう面では非常に意味は違う、基本的に違うということ。  それから、関税化というのは完全自由化に向かっての道でもあるんだ、こういうことになってくると、私は、そう甘いものじゃないぞ、こういうふうに見るべきだろうと思う。特に輸出国、その中でもアメリカというのは、正直二〇〇〇年の交渉に向かって厳しい姿勢で来るんではないだろうかなと私は受けとめざるを得ない。恐らく二〇〇〇年ごろになってくると、アメリカの経済はそろそろ陰りが見えてくるんじゃないかという見方もある。アジア経済はどうなのかというところもある。そうすると、やはり農作物の輸出というところに国を挙げて、政権として大きなウエートを持って臨んでくる可能性がある。しかし、玄関をあけちゃったんですから相当厳しい、私はこう見ざるを得ない。  二〇〇〇年までは今までの説明でわかりますよ。それから先はそんな甘いものじゃないぞというふうに思っていますので、そのアメリカが今後望んでくるであろうことをどう受けとめ、どう認識していくかということと、関税化はそう甘いものじゃない、あらゆる面で影響してくるということ。  ある意味で、減反やってもらわなきゃ絶対困りますけれども、やり方について、あり方については検討しなくちゃいかぬなというところに必ず来る可能性はあるだろうな、私はこういうふうに思いますね。特に、環境問題を論じたり食糧安保のことを論じたり、あるいはいろいろな角度から新しい農業を見ていくとそういうことを感じますので、その辺の基本的な認識、受けとめ方をどう持っていらっしゃるのか、また、どういうふうにこれから臨もうとしているのかの決意をひとつお聞かせいただきたいと思います。
  103. 中川昭一

    中川国務大臣 まず、今回の関税化決定というか、私の決断でございますが、先生と本当に五年前にやったことを今思い出しております。  あのときは、先生のところも私のところも、立場は違えども関税化は絶対まかりならぬということで、これは生産者関係の一致した意見でもありましたし、いろいろな立場でそういう主張を強くする方、一方ではもう米だけが関税化しないのはおかしいじゃないかという国内議論、そして交渉過程においてドゥーニー調整案というのが出まして、例外なき関税化が基本原則であるという中で、最後、日本は本当に孤立した状態になったわけであります。その中で、例外なき関税化か、それとも通常の関税化にして七百何十何%を張るというような議論も一時出ましたけれども、どうしてもだめだということで、最後に出てきたドゥーニー調整案が例のミニマムアクセスというものでございました。  これならばごく一部だから、関税化を押し切られるよりも仕方がないということで、本当は不満だったわけでありますけれども関税化を阻止したということで、協定上もWTO特例措置という扱いになって、しかも特例措置を認められたのが日本を含めて四カ国であったということであり、しかも日本だけが、イスラエルもそうだったと思いますが、韓国、フィリピンよりも厳しい条件で、六年間で四から八という条件になったわけであります。  そのときには、その附属書協定の途中での変更条項というのも率直に申し上げて私自身知らなかったわけでありますが、現時点でいろいろな国内情勢、あるいは在庫の積み増し、あるいはMA米の売れ行き状況等を考えて、この先さらに毎年〇・八%ずつ積んでいって二〇〇〇年を迎えて、そして二〇〇〇年に関税化をするか、あるいはミニマムアクセスをそのまま持続するかという選択を考えたときに、非常にこれは厳しいものがある。その時点関税化をやるんであればもっと前にやっておいた方がいいということでありますし、そのときに引き続きMAを、特例措置を維持するということになれば、協定上大変厳しい代償措置各国のコンセンサスを前提にとらなければいけないということであります。  関税化最善と申し上げたのは、四つの中で、仮に二〇〇〇年にこの制度を持続することの困難さ、そしてその意味、さらには二〇〇〇年に関税化をするときの意味、あるいは再来年関税化をする、来年関税化をするときの意味。しかも、そのときに張れる関税先生承知のとおり国内水準と同じだけの差額分を張れるわけでございますから、そういう意味で、私は、二〇〇〇年まで、あるいは次期交渉がまとまるまでは、来年でいうと三百五十一円十七銭という金額というものが、余計なMA米が〇・四%ずつ入ってくるよりも国内での米の需給に対してよりよい結果であろうということで決断をしたということでございます。  これが自由化の一歩かと言われれば、確かに関税化をしたわけでございますから、関税化をすることが関税化をしていない状態よりもより貿易自由化の言葉にふさわしいといえば、より自由化ということに言葉上はなるとは思いますけれども、実質上は国内生産者にとって決してマイナスではない、むしろ四つの選択肢の中ではプラスだろうというふうに私は確信をしております。  もう一点、アメリカの認識でございますが、アメリカというのはもちろん経済力も、また政治力も大変大きい国であり、また輸出国としての立場を強く主張してくる国であり、現に現WTO協定輸出国偏重のルールだと私は認識をしております。  したがいまして、輸出国輸入国バランスのとれたルールづくりということも含め、日本立場を精いっぱい主張していく。何も日本対アメリカだけの闘いではありませんけれども、主要な交渉相手がアメリカということでありますので、日本としては、全力を尽くし、また、先ほども提案ありましたように、関係諸国、近隣諸国、EU等々含めまして、同じ土俵の中でより同じ立場で闘っていける国々と連携をして、日本国益を守るべく次期交渉に臨んでいきたいというふうに考えております。
  104. 前島秀行

    ○前島委員 時間が来たのでこれで終わりますけれども、ともかく関税化というのは、僕は相当厳しいものだろうなという認識だけはぜひ持ってほしいし、米というのはもう本当に命につながる重要なことですから、国民合意を得てやっていく努力大臣に期待しますので、よろしくお願いをいたします。ありがとうございました。
  105. 穂積良行

    穂積委員長 本日は、これにて散会いたします。     午後四時二十分散会