運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-12-11 第144回国会 衆議院 大蔵委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年十二月十一日(金曜日)     午前九時開議  出席委員    委員長 村井  仁君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 鴨下 一郎君 理事 柳本 卓治君    理事 池田 元久君 理事 上田 清司君    理事 石井 啓一君 理事 小池百合子君       大石 秀政君    大島 理森君       河井 克行君    栗本慎一郎君       河野 太郎君    佐田玄一郎君       桜井  新君    桜田 義孝君       下村 博文君    菅  義偉君       砂田 圭佑君    田中 和德君       橘 康太郎君    戸井田 徹君       中野 正志君    古屋 圭司君       茂木 敏充君    山本 幸三君       吉川 貴盛君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       綿貫 民輔君    石毛 鍈子君       北脇 保之君    城島 正光君       末松 義規君    中川 正春君       日野 市朗君    藤田 幸久君       渡辺  周君    赤松 正雄君       河合 正智君    谷口 隆義君       並木 正芳君    若松 謙維君       江崎 鐵磨君    鈴木 淑夫君       西川太一郎君    西田  猛君       鰐淵 俊之君    佐々木憲昭君       辻  第一君    濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君  出席政府委員         大蔵政務次官  谷垣 禎一君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君  委員外出席者         参  考  人         (日本銀行総裁速水  優君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      山口  泰君         参  考  人         (日本銀行理事黒田  巖君         参  考  人         (日本銀行理事小畑 義治君         参  考  人         (日本銀行理事)引馬  滋君         参  考  人         (日本銀行政策         委員会審議委         員)      三木 利夫君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月十一日  辞任         補欠選任   大島 理森君     山本 幸三君   平沼 赳夫君     古屋 圭司君   村上誠一郎君     橘 康太郎君   渡辺 具能君     菅  義偉君   渡辺 博道君     田中 和德君   渡辺 喜美君     戸井田 徹君   綿貫 民輔君     佐田玄一郎君   末松 義規君     石毛 鍈子君   中川 正春君     城島 正光君   河合 正智君     若松 謙維君   鈴木 淑夫君     西川太一郎君   西田  猛君     鰐淵 俊之君   佐々木陸海君     辻  第一君 同日  辞任         補欠選任   佐田玄一郎君     綿貫 民輔君   菅  義偉君     渡辺 具能君   田中 和德君     吉川 貴盛君   橘 康太郎君     茂木 敏充君   戸井田 徹君     渡辺 喜美君   古屋 圭司君     平沼 赳夫君   山本 幸三君     大島 理森君   石毛 鍈子君     末松 義規君   城島 正光君     中川 正春君   若松 謙維君     河合 正智君   西川太一郎君     江崎 鐵磨君   鰐淵 俊之君     西田  猛君   辻  第一君     佐々木陸海君 同日  辞任         補欠選任   茂木 敏充君     村上誠一郎君   吉川 貴盛君     渡辺 博道君   江崎 鐵磨君     鈴木 淑夫君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  閉会中審査に関する件  金融業者貸付業務のための社債発行等に関  する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法  第一一七号)  金融に関する件(通貨及び金融調節に関する  報告書)      ――――◇―――――
  2. 村井仁

    村井委員長 これより会議を開きます。  金融に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として日本銀行総裁速水優君、日本銀行総裁山口泰君、日本銀行理事黒田巖君、日本銀行理事引馬滋君及び日本銀行理事小畑義治君の五名が出席しております。  去る十一月二十七日、日本銀行法第五十四条第一項の規定に基づき、日本銀行から国会に提出されました通貨及び金融調節に関する報告書につきまして、概要説明を求めます。日本銀行総裁速水優君。
  3. 速水優

    速水参考人 皆さん、おはようございます。速水でございます。  本日は、日本銀行金融政策運営につきまして説明の機会を与えていただきましたことを、心からお礼申し上げます。  本年四月に新しい日本銀行法が施行されまして八カ月が経過いたしました。新法は、日本銀行による政策運営の柱として、独立性透明性という二つの理念を掲げております。中央銀行が独立して金融政策の責務を担っていくためには、その背後に国民からの揺るぎない信認が必要となります。また、そうした高い信認を得るためには、政策決定過程透明性を確保しておくことが不可欠であると思います。私どもは、この点を強く念頭に置きながら、これまで政策運営に当たってまいりました。  アカウンタビリティーの向上の一環として、金融政策決定会合議事要旨公表などに加えて、このほど、日銀法第五十四条に基づきまして、初の半期報告書国会に提出いたしました。本日は、半期報告書に基づいて、日本銀行金融政策運営についての考え方を述べさせていただきたいと思います。  まず、本年の日本経済の動向でございますが、一言で言えば、景気低迷と不良債権問題の重荷が相乗的に経済状態悪化させてきたようにうかがわれます。  設備投資個人消費など民間需要が弱い状態を続けておりますもとで、企業は大幅な減産を余儀なくされております。この結果、企業収益悪化し、雇用所得環境も一段と厳しさを増しました。物価も、年央以降、軟調に推移しております。このように、日本経済には、民間需要の落ち込みが生産や所得減少をもたらし、これが再び民間需要減少させるというマイナスの循環が働いております。  金融面を見ますと、民間銀行融資姿勢は、不良債権問題に伴う実質的な自己資本の目減り、銀行自身を取り巻く資金調達環境の厳しさ、さらには企業業績悪化による借り手リスクの高まり、こういった要因が複雑に絡み合いまして、昨年末以来、一段と慎重なものとなってきました。こうした金融面からの制約は中小企業設備投資などに悪い影響を与え、景気下降圧力をさらに強める要因となっているように思われます。  この間、金融システム安定化関連二法の成立や総合経済対策決定など、さまざまな手だてが講じられてきましたが、民間経済の力が一段と弱まったことや、夏場以降、金融システムに対する不安が再び強まってきたことなどから、景気悪化にはなかなか歯どめがかからなかったのが実情でございます。  こうした情勢を踏まえまして、日本銀行は、九月九日の金融政策決定会合におきまして、経済デフレスパイラルに陥ることを防止し、景気悪化に歯どめをかけるために、一段の金融緩和に踏み切りました。具体的には、金融調節運営の目安としている無担保コールオーバーナイト物誘導目標を、平均的に、それまで公定歩合〇・五%をやや下回るという水準でやっておりましたのを、〇・二五%前後にまで引き下げました。  御存じのとおり、九五年九月の公定歩合引き下げ以来、我が国金利水準は極めて低い状態が続いております。そうしたもとで、金利収入に多くを依存しておられる家計にとりましては大変厳しい状況でありましたことは、私どもも十分承知いたしておるつもりでございます。  しかし、現下経済情勢のもとで、やはり、まずもって金融面から経済活動を下支えしていくことが重要となります。投資採算を改善し、企業収益資産価格を下支えすることが、経済悪化を食いとめ、ひいては雇用所得にもよい影響を与えることになると思います。私どもとしましては、そうしたマクロ的な視点に立って九月の金融緩和決定したものでございます。  また、こうした金融調節方針のもとで、日本銀行は、金融市場に対して潤沢な資金供給を行い、市場の安定に努めてまいりました。特に、金融システム不安が根強く続くもとで、年末、年度末越えの市場金利に強い上昇圧力がかかっていることを踏まえまして、長目のオペレーションを積極的に実施してまいっております。  ただ、こうした思い切った金融緩和の継続にもかかわらず、民間銀行金融仲介機能低下を背景に、企業資金調達環境は依然として厳しい状況が続いております。日本銀行では、このような企業金融の実態を踏まえまして、先月十三日、さらにオペレーション貸し出し面からの新しい三つの措置をパッケージとして決定し、実行しております。  第一は、コマーシャルペーパー、いわゆるCPオペをさらに積極的に活用することとしまして、買い入れ対象となるCPの期間を拡大いたしました。  第二に、企業金融を支援するための臨時貸出制度を創設しまして、今月から実施することといたしております。  第三に、民間企業債務である社債証書貸付債権金融調節の中で一層有効に活用するために、それらを根担保とする手形オペレーションの導入につきまして、年明けから検討を進めることにいたしております。  私どもとしましては、日本銀行資産健全性に留意しつつ、今回の措置により、企業金融円滑化最大限努力を払ったつもりでございます。  冒頭述べましたように、現在の日本経済は、金融面実体経済面とが相互に強い連関を示しながら低迷を続けております。日本銀行は、そうした情勢を踏まえまして、金融政策面から、金融市場流動性供給し、あるいはその供給の仕方を工夫することによって対応を図ってきた次第であります。  ただ、日本経済が活力を取り戻すためには、そうした流動性の面からの対応に加えて、我が国金融システム早期立て直しを図り、内外からの信認回復すること、また、即効性のある需要を追加することが同時に必要となります。  金融システムの問題につきましては、十月に金融機能早期健全化法が成立し、それに基づいて主要銀行の多くが公的資本取り入れの意向を表明しております。こうした動きや国際的な信用収縮懸念の後退もありまして、金融市場不安感は最近になって徐々に鎮静化の方向にあるように見られます。また、年末に向けての企業金融も、金融政策面からの対応政府によるさまざまな措置効果もありまして、ひところに比べ幾分緩和してきたようにうかがわれます。  このほか、外資や異業種間を含め、金融業界の再編の動きが目立ってきております。私どもとしては、こうした金融機関自身による経営改善努力を率直に評価したいと思います。ただ、一たん大きく毀損された金融システム健康体に戻すのは決して容易なことではございません。引き続き各方面からの粘り強い努力が不可欠と考えております。  実体経済面では、四月の総合経済対策に基づく公共投資が明確に増加してきております。私どもも、その効果が本格的にあらわれてくるにつれて、今後、景気悪化テンポは次第に和らいでくるものと見込んでおります。ただ、国内需給ギャップは既にかなりの大きさに達しておりますために、当面厳しい経済情勢が続くことに変わりはありません。したがって、現時点では、緊急経済対策に盛り込まれた需要追加策などが早期かつ着実に実行に移されていくことを強く期待したいと思います。  さらに、このように金融財政両面から経済活動を下支えするもとで景気が本格的な回復に向かうためには、やはり、企業家計のコンフィデンスがしっかりしたものとなることが必要となります。そのためには、民間経済に新しい息吹が生まれてくることが重要であり、経済構造改革を引き続き力強く推し進めていくことが大切です。もしそうした努力を怠れば、日本経済には巨額の財政赤字だけが残されることにもなりかねません。  世界を見渡しますと、米国経済は、次々と生まれる技術革新のもとで長期にわたる成長を調歌しております。欧州では、長年の悲願であった通貨の統合がいよいよ明年一月に実現いたします。世界は激しく動いております。日本経済も、そうした国際的なダイナミズムのうねりを真正面から受けとめて、みずからの構造改革を実現し、新たな発展を目指していくことが必要だと思います。そのことは、我が国自身にとっても、アジアにとっても、さらに世界にとっても重要なことと確信いたしております。  この点、金融面でも、金融市場の一層の整備、育成を進めていくことが待ったなしの課題となっております。そのことが、国内のみならず、海外から見ても、円の使い勝手をよくし、真の円の国際化に資するものと考えます。日本銀行としては、これらの課題の達成に向けて、今後とも中央銀行の立場から全力を挙げていく考えです。  また、日本中央銀行として、物価の安定や信用秩序維持のための業務を運営していくに当たっては、日本銀行自身の財務の健全性を維持していくことが重要な課題となります。このことは、一国の信用にもかかわることでありますし、中央銀行として常に守らなければならない原則と考えております。今後とも、資産内容健全性維持に努めるとともに、政策業務運営機動性を確保する観点から、資産流動性にも最大限の配慮を払っていく考えでございます。  このような日本銀行としての決意を最初に申し述べまして、私からの説明とさせていただきます。国民の皆様並びに議員各位の御理解と御支援をよろしくお願いいたします。
  4. 村井仁

    村井委員長 これにて概要説明は終了いたしました。     ―――――――――――――
  5. 村井仁

    村井委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺喜美君。
  6. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 自民党渡辺喜美でございます。  日本銀行というのは、店頭公開の株式会社なんですね。株価は、何か最近大変値段が下がってしまったようで、十万円を割っちゃったようなんですが、株主総会というのはないんですね。きょうは年一回の株主総会と思っていただきたいと思います。我々別に総会屋じゃありませんけれども国会というところは年がら年じゅう株主総会をやっておるようなものですからね。初めての試みで、八時間の審議でまた大変だと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。  新しい日銀法、これはことし四月から施行されたわけです。従来型の護送船団から市場型金融システム移行をしよう、そういうことでありますけれども、この移行過程過渡期我が国は残念ながら非常事態に巻き込まれてしまった、そういうことなんですね。ですから、頭の中も平時モードから有事モード、はっきり言うと戦争モードに切りかえないとこの非常事態は乗り切ることが難しい、そういう御時世だと私は認識をしております。  日本銀行も、この一年間よくやっていると思いますよ。我々自民党は、日銀に関しては時として野党になることもあるのですが、率直に言って、お世辞抜きで、この一年間よくやってこられたと思います。  そういうときに、この非常事態をどう乗り切るか。これは結局、お金世界疑心暗鬼が起こってしまった、そういうことだろうと思います。  去年の十一月にはっきりしたのでありますけれども、要するに、まずインターバンク市場疑心暗鬼に包まれたわけですね。十一月四日、三洋証券がコール市場で戦後初のデフォルトを起こした。それが預金者不安心理を呼び起こした。預金者銀行との間でお金収縮が起こった。一種の取りつけみたいなことが去年の十一月に起こったわけですね。そして、その前から続いていた話でありますけれども銀行の貸し渋り、資金回収がなお一層激しいことになったということですね。そして、今では企業間の信用が大変な収縮をしている。いわば金融恐慌産業恐慌を起こしているような状況に立ち至っているわけですよ。  そういうときに、我が国法人債務残高というものを見てみますと、これは総務庁の統計なんですが、一九八〇年には、金融機関を除いた法人営業利益、本業のもうけですね、これの大体十四年分の借金があったわけです。大体九〇年ぐらいまでは、営業利益の十八年分とか二十年分とか、そういう借金比率だったのですね。ところが、九二年ぐらいから、営業利益借金債務残高比率がどおんと上がっていくんですね。九二年は二十四倍、九八年、ことしになると何と営業利益の三十七年分の借金を抱えてしまっておる、こういう状況ですよ。こういう状況で果たしてお金は返せるのかという問題があるのですね。  貸し渋りの問題というのは、常識的には、お金を貸す方の自己資本低下して起こっているということなんでありますけれども、この貸し渋り問題、信用収縮というのは、借り手の問題なんですか、それともお金貸し手の問題なんですか。どうですか、総裁
  7. 速水優

    速水参考人 金融機関貸し出しにつきましては、確かに前年比で減少を続けておるわけでございますけれども、これには、銀行自己資本が実質的に目減りしたり、銀行自身の資金繰りの環境が厳しいといったような、いわゆる貸し手側要因と、もう一つ、景気悪化を続けていて企業資金需要低迷しているという、企業の、借り手側要因との双方があると思われます。  このほかに、企業収益悪化して借り手リスクそのものが高まっているということのために銀行が貸しにくくなっているというような事情もあろうかと思います。これなどは、借り手要因というべきか貸し手要因というべきか、必ずしもはっきりしないところがあるように思われます。  ただ、はっきりしておりますことは、景気悪化金融機能低下とが相互影響し合っていることであります。この悪循環を早く断ち切っていく必要があるのではないかというふうに考えております。
  8. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 きちんと質問通告はしてあるわけですけれども原稿棒読みじゃなくても結構です。アドリブでやっていただいても結構でございますから。  そこで、さっき申し上げたように、営業利益の三十七年分もお金を借りてしまうと、本当に返せるのかいな。こういう問題はどうですか。
  9. 山口泰

    山口参考人 私からお答えさせていただきます。  渡辺先生指摘のとおり、企業にとっての債務負担が大変重いという状態が生まれてしまったことは、御指摘のとおりだと思います。  ただ、借り手の多くは現在でも健全なビジネス、営業状態を行っているわけでございまして、日本に存在いたします企業にとっての債務借金を全部返済してしまうというようなことは、実際問題として現実的でもないし、また、それ自体本当に望ましいことかどうかもよく考えてみる必要があるのではないかと私どもは思っております。  お金はうまく回転すればよろしいわけでございまして、企業にとっての借金債務設備あるいは運転資金として有効に使われまして、そこから順調にキャッシュフローが生まれてくる、先ほどの渡辺先生のお言葉ですと営業利益が上がってくるという状態が生まれてきますと、その債務経済にとって潤滑油として有効に使われたということになろうかと思います。そういう意味では、早く景気回復が生まれてくれば、必ずしも現在の借金がそのままそっくり返済されなくてもよろしいのではないかというふうに考えております。
  10. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 いわゆる二分類債権灰色債権が、大蔵省公表数字でも八十兆円を超えているわけですね。中には、この二分類貸出先の半分くらいは実質債務超過なんだ、こういう御意見を述べる方もおられるわけですよ。そうすると、結局行き着くところ、銀行資本不足、こういうものがやはり信用収縮の一番根幹にある問題ではないのか、こういうことなんですね。  去年の十一月から、いわば政治主導公的資本増強という問題と取り組んできたわけですけれども、一年かかってやっとこさ、まともに近い法律になったわけですよ。  火事が起こったわけですけれども、本当は、火事が起こったら消防士が真っ先に駆けていって、水をかけて火事を消すのが当たり前なんですね。ところが、ピンぼけ銀行経営者は、一一九番してから、水かけに来てください、こういうことをついこの間まで言っておるわけですね。中には、火を消すよりもお巡りさんを送るのが先だ、そういうことをのたまわる人たちもおられたのですね。お巡りさんというのは火事が消えた後で現場検証をやってもらえばいいわけで、火事で燃え盛っているうちは交通整理でもやってもらえばいいのですよ。また別の人は、とにかく火を消すよりも金庫の中を見せろ、そういうことを言う人がいたりして、非常にピンぼけな議論を一年間やってしまったなという感じなんですね。  そこで、この資本不足という問題は、はっきり言って今でも全く解決されていないわけですよ。今度の新しい金融健全化法でもって、新聞報道されているのは、十八行ベースで大体五兆八千億とか、そういうオーダーの申請が出てくるだろう、こういうことのようですが、はっきり言ってこんなものでは資本不足は解消されないとだれもが思っているわけでございます。  日本銀行は、大手行のみならず金融の考査ということをやっているわけでして、全体としてどれくらいの資本不足があるのかということを大体つかんでおられるはずなんですね。透明性も大事なことだ、こういうわけでございますから、一体どれくらいの資本不足があるのか、御見解をお聞かせください。
  11. 山口泰

    山口参考人 お答えさせていただきますが、資本不足金融機関全体で一体幾らというふうになるのか、なかなか厳密には確定しがたいところでございます。  念のため申し上げますと、主要行がつい先日、十一月下旬にかけまして中間決算を発表いたしましたけれども、本年九月末時点での自己資本比率は、日本長期信用銀行を除きますと八%以上というふうになっております。  恐らく、御質問で御指摘のところは、もう少し実質的にいろいろなことを加味した場合に自己資本が足りない、その額は幾らかということであろうかと思います。  確かに、株式につきましては、含み損というのが多くの銀行にとって存在いたします。また、現下経済情勢あるいは資産価格が下がっている状態ということを考えますと、これから償却をしなければいけない資産というのもあるわけでございまして、そういうことを考慮いたしますと、金融機関自己資本が全体として十分というふうにはとても言えない状況だというふうに思っております。  どれくらい足りないのかということは、個々の銀行によっても違っておりますので、冒頭申し上げましたように、金額で幾らと申し上げることはできないわけでございますけれども、大事なことは、それぞれの銀行が、自己資本につきましてマーケットの中でここは足りないというような評価を受けることがないようにしていかなければいけないわけでございまして、そういうためには、公的資金の活用も含めまして、金融機関信認回復に十分なだけの思い切った資本増強が必要であり、ぜひそれを実行していただきたいと思っております。
  12. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 わかっちゃいるけれども言えません、こういうことだろうと思います。思い切った資本増強は、我々も必要であるというふうに思っております。  そこで、この一年間、よくやってこられたと思いますが、去年の十月二十三日、財革委員会財政構造改革特別委員会というのをやっていまして、そこに実は、山口当時理事さんにお越しをいただいたことがあります。私がこんなことを聞いたんですね、まだ山一も拓銀も三洋証券もつぶれる前の話でありますけれども。非常に金融不安みたいなことが起こっておりますね、短期金利は毎日変動するわけですが、思い切って〇・二五ぐらいまで下げちゃったらどうですか、こういうことを去年の十月に申し上げたのでございます。  山口参考人のお答えは、こんな調子だったですよ。「幸い設備投資の堅調あるいは輸出の堅調というようなことに支えられまして、景気回復の基盤がすっかり崩れてしまったわけではないという、こういう判断でございます。そういう判断のもとに、ただいま申し上げましたような、公定歩合をやや下回るところに市場金利を誘導する、こういう政策をとらせていただいております。」つまり、それ以上の短期金利の下げは必要ない、こういうことをはっきりおっしゃったわけですね。  さっき総裁の御報告にもあったように、ことしの九月に〇・二五に下げたわけですね。山口総裁がアメリカから帰ってこられてすぐおやりになったわけですね。この電話帳みたいな報告書を見ても、例えば中原審議委員なんかは、毎回短期金利をもっと下げるべきだ、そういうことを主張しておられた様子がよく書いてありますよ。  別に私は政策決定のおくれを問題にしているわけじゃないんですが、そういう金利の調節だけではもうどうにもならぬ、こういうことになっているわけでしょう、実際は。ですから、例えばCPオペなんというのは、もう去年の秋ぐらいからやっているわけですね。それを今回は、三カ月以内に期限が到来するものだけじゃなくて、一年以内に到来するものまで買い入れますよ。一年間保有するという意味じゃないんでしょうけれども、要するに、期間が長いものも対象にするということは、それだけリスクが大きくなるという話ですよね。  それから、臨時貸出制度なんというのもつくるということですね。それから、社債なんかも担保とするオペを導入する。社債というのはCPよりももっと長いものですから、なおさらリスクが高い、こういうことですね。  そこで、日本銀行というのはよく最後の貸し手だ、こう言われるわけですけれども、最近では最初の貸し手じゃないのかということを言う人も出てきたんですね。総裁、どうなんですか。日本銀行というのは最後の貸し手なんですか、最初の貸し手なんですか。
  13. 速水優

    速水参考人 レンダー・オブ・ラスト・リゾートという言葉が中央銀行の一つの機能、役割の中にあります。これは、日銀法考え方からいきますと、金融システムの安定化を図るために日本銀行は必要であるならば最後の貸し手にならなければならないということだと思います。  今おっしゃった、このごろは最初の貸し手になるのかというお言葉は、十二月四日付の日本経済新聞の「大機小機」にそういうあれがございました。企業から直接日本銀行が手形を買い取ったりするのを、このことを最初の貸し手というふうにとってお書きになっておられたのだと思います。  渡辺先生の御質問も、それはどういうことなのかという御質問かと思いますので、ちょっと日本金融のシステムについて……。  これは両方とも、最初の貸し手というのは、私どもが日ごろやっております金融調節の一つの手段として銀行に金を貸したり銀行から手形を買うのでなくて、市場から企業債務を、証券化あるいは債券化あるいは市場化された債務を買うということでございます。このこともほかの先進諸国の中央銀行では――私ども銀行への直接貸し出しは特融を除きますとほとんどないに等しいわけでございますけれども日本の場合は、今までは少なくとも間接金融というものが圧倒的に太い流れになっております。  ちょっと数字を申し上げてみますと、資金調達の側でいきますと、個人の金融資産というのは、マネーフローの表で見ますと、六月末でよく言われる千二百三十兆ですね。このうち八百四兆、これは預金になっておるわけです。そのうち郵貯にも二百四十兆ぐらい行きますが、大部分が銀行に行って、それが貸し出しとなって、全国銀行で七百兆近い貸し出しになっておるわけです。そのほかに、企業の方は七百十兆ぐらい資金を借りておりますけれども、調達しておりますけれども債務があるわけですが、そのうち銀行から借りておりますのは五百四十兆という数字が出ております。  これをごらんいただいても、ほとんどが証券、債券というよりも銀行から直接借りるという形でやってきた、間接金融方式というものがこれまでの日本の非常に大きな流れであり、またそのことが戦後の経済復興を早くし、国際化、高度成長、そういうものを実現していく上で非常にプラスになった、支えになったものであったことは確かだと思います。  しかし、その背景に、金融行政とか、よく言われる護送船団とかいったような政府サイドからのいろいろな意味での指示や保護もあったわけでございます。ここまで参りまして、今の世界金融市場というものは、あるいは金融組織というものは、やはり保護や指示で動くわけにはいかない。特に日本のように経済力の強い国にとりましては、交互に入ったり出たりしていかなければならないわけでございますし、その辺がもう少し直接金融の道がついて、企業と内外の投資家が市場で出会って、そこで貸すか貸さないか、オウンリスクで投資家が企業に金を貸していくというようなことが起こるのが自然の発展の過程だと思っております。そういう動きが出始めてきておるわけで、こういうものを発展させていくことが、東京金融市場が発達し、しかもそれがこれからの円の国際化といったものの基本になっていくことを、私どもは今その時期が来たというふうに考えております。  今回、直接企業からのコマーシャルペーパーの買い取りの範囲を広げた、あるいは社債等を根抵当にして銀行から手形を買い取るといったようなことを始めましたのも、そういう企業債務を証券化、市場化していって、そういうものが私どもの方にもそういう形で入ってくるという道を広げていこうというのが一つのねらいなんです。  もう一つは、申すまでもなく貸し渋りを是正しようということでございますので、そうやって直接企業から、もちろん選択をいたしますけれども、手形を買ったり、あるいは停止しておりました貸し出しを、お客さんに対する貸し出しが九月末に比較してふえた銀行には、そのふえた分の半分を日本銀行が直接お貸しする、一時的にお貸しする。  年末、年度末を展望してそういうような新しい措置をとったわけで、こういう貸し渋りと、もう一つは間接金融だけに頼るこれまでのやり方というのを少し切りかえていく必要があるというようなことを考えて、こういうことになってきた次第でございます。
  14. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 今、総裁が話しているときに、私数えてみたら十人の先生方が寝ておりました。いかにわかりにくくてつまらないかということなんです。我々政治家は、自分が話しているときに居眠りされると非常に心が痛むんです。これからしょっちゅう来られるわけですから、国会議員を眠らせないような話し方をひとつ御研究していただきたいと思います。  社債等担保オペというのは、これはいつからやるんですか。  それから、投資格付は一体だれが決めるんですか。ムーディーズとかS&Pとか使うんですか。それとも日の丸格付会社を使うんですか。それとも内部格付でやるんですか。  それから第三点目、トリプルAだったら問題ありませんけれども、そんなものばかりじゃないんですね。ダブルB、投資不適格、こういうものは当然担保対象にならぬということでしょう。では、トリプルB、こういうものはどうするんだ。実際、今の社債市場ではトリプルBというのは事実上発行できないという状況があるわけですよ。では、日本銀行がトリプルBの社債社債担保オペの対象にするよ、そういうことを言えばこういうものは発行されてくるわけですね。そのあたりはどうなんですか。  それから第四点目、担保の掛け目は一体どれくらいにするんですかということですね。そして、全体としてどれぐらいの規模でおやりになるんですか。日銀のバランスシートの問題もあるでしょうし、日銀自己資本の問題もあるでしょうし、どうなんですかということでございます。
  15. 山口泰

    山口参考人 私からお答えさせていただきます。  いつからという時期の問題でございますけれども、現在導入に向けて実務的な検討を進めておりまして、これはなるべく早く決めて実行したいと思っておりますが、まだ残念ながら何月から必ずできますというところまでお約束しかねるという状態でございます。しかし、なるべく早くやりたいと思っております。  格付、審査という点でございますけれども、民間の格付会社の格付をそのまま使うということは考えておりません。内部で厳正な審査を行いまして企業の適格性の是非というものは私どもで判断していきたい、こういうふうに考えております。  その場合、今例えばトリプルB格の企業はどうかというお尋ねがございましたけれども、申し上げましたように、私ども自身の内部的な適格性の審査によって決めていきますので、その点について直接お答えすることは差し控えさせていただきたいと存じます。  掛け目でございますけれども、おおむね時価の八割ないし九割といったところを考えておるということで御理解賜りたいと思います。
  16. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 どれぐらいの規模でやるかというのは、なかなかお答えできないでしょうね。日本銀行自己資本は五兆円ぐらいあるのかな。ですから、例えば十兆円やって、担保だからそっくりそのままというわけじゃもちろんありませんけれども、そのうち半分ぐらいがロスになっちゃうということになったら日本銀行自己資本がどんとすっ飛んでしまう話ですから、なかなか難しい問題があるんですよ。  結局、非常に悩ましい問題でして、日本銀行の財務の健全性ということを一方においては考えなきゃいかぬ。しかし、世の中はお金世界の大変な疑心暗鬼に包まれて久しいわけですから、日本銀行が最初の貸し手にならざるを得ないほど困難な状況に我々は追い込まれてしまったんだ、そういうことなんですよ。ですから、これは程度問題でして、問題先送りという批判も当然出てくるのです。  しかし、ここでお金がうまくめぐっていかないということになりますと、これは本当に心筋梗塞が起こっちゃうわけです。ですから、これは、そういう非常に悩ましい問題はありますけれども、めり張りをきかせて、やるべきときにはやってもらいたいと思います。  それから臨時貸出制度、これは年内にできるんですか。そして、十月、十一月に貸し出しを増加させた銀行は何行ぐらいあって、その規模はどれくらいになっているんですか。  結局、最近の銀行貸し出し状況日銀報告を見てもわかるように、去年よりはどんと減っているわけですね。ですから、十月、十一月にちょっとぐらい貸し出しをふやしたって、去年の水準には到底いっていないわけですよ。この問題はどうですか。
  17. 山口泰

    山口参考人 臨時貸出制度の利用を希望してまいりましたところは、銀行から信用金庫まで合わせまして合計百三十七の数に上っております。  実際、そういうところが十月、十一月にどれぐらい貸し出しをふやし、日銀貸し出しによる支援をどれぐらい要請してくるかというのは、実は今後の問題でございます。私どもは、第一回目の臨時貸し出しを十二月二十一日に実行する予定でございますけれども、それまでに申請を集計いたしまして、担保その他、若干実務的に精査するというような仕事もございますので、金額をそれまでに確定してまいりたいと思っておりますが、第一回目の貸し出しが年内に行われるということでございます。第二回目を引き続き年明け後に実行したいというふうに考えております。
  18. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 それから、CPオペの対象拡大。CPというのはどれくらい発行されているのか知りませんが、十五兆円ぐらい出されているのですか。そのうち半分ぐらいは日本銀行が買い取ってしまった、こういうことなんですね。そうすると、残りの半分も全部買い取っちゃおうということなんでしょうか。
  19. 山口泰

    山口参考人 御指摘のとおり、CPの発行残高は現在十五兆円弱でございまして、おおむねその半分近くを日銀CPオペでもって買い取っているという状況でございます。これからさらに年度末を展望いたしましてCPオペを引き続き活発に実行してまいりたいと思っておりますけれども、もちろん全額を買い取ってしまうというようなことはないと存じます。  なお、先ほど渡辺先生指摘の、今回のCPオペにつきましての私ども決定でどれぐらい新しく買い入れ対象がふえるかという点でございますけれども、正確な統計ということでは必ずしもございませんけれども、おおよその見当をつけますと、期間の制限を若干長くとるということによって一兆五千億程度の適格CPが新たに出てこようかというふうに思っております。
  20. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 日本銀行は準備預金を銀行に積み立てさせているわけですね。  最近、日本銀行のインターネットで「準備預金積立て状況等」、こういうのが新しく加わってきたのですね。ことしの十月の準備預金積み立て状況を見ると、要するに必要以上に積んでいる。何か豚積みというらしいのですが、何で豚を積むのかよくわかりませんけれども、必要以上に積んでいる豚積み、これは何と十兆三千億ぐらいあるというのですね。これはインターネットでとった数字なんですが、一体こういう豚積みの増加というのは何を意味しているのですか。
  21. 山口泰

    山口参考人 今先生御指摘の豚積みというのはある種の俗語でございまして、法律で保有を義務づけられました以上に準備預金を日銀に残しているという場合に、その超過の部分をそのように俗称で称しているというふうに理解しております。  金融機関全体といたしまして準備預金を法定額以上に持っているというのは、そこに日本銀行オペレーションによりまして準備預金額をそれだけ多目に供給しているからでございます。なぜ多目に供給しているかといいますと、私どもは、先ほど来先生御指摘の、金融システムの中に残念ながら出てきてしまいました信用リスクの感覚、不安感、懸念といったものに対処するために潤沢な流動性供給するということを再三お約束いたしまして、そういう方針にのっとって市場の中で活発な、積極的なオペレーションをやってきておりますが、その結果といたしまして、法定の準備預金額以上の資金が金融機関全体に対して供給されている、こういう状況でございます。
  22. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 私ら素人から言わせれば、こういう状況というのは、もっと現ナマが欲しいと市場が言っているのじゃないですか。  今、ベースマネーというのは大体五十兆円ぐらいですか。発行銀行券と当座預金も入るのですか、五十兆円ちょっとぐらいになるのですか。私はわかりやすくイメージしてもらうためにあえて現ナマと言いますが、現ナマを刷りまくってもみんなたんす預金にしちゃうわけですから、大企業も、じいちゃん、ばあちゃんも。だから、結局、現ナマは足りないのですよ。現ナマが欲しいというのはこの豚積み増加にあらわれているのじゃないですか。現ナマの追加供給はもっと必要ありませんか。  そして、どうなんですか、金融調節でもって短期金利の低目誘導、〇・二五、ここまでやってきちゃったわけですよ。そうすると、もう利下げの余地がないのじゃないか。そうすると、一体日本銀行は何を目標としてこの金融政策をやっていくのですか、そういう問題になってくるのですね。  お手元に信用乗数のグラフとかを配ってあると思いますので、ごらんいただきたいと思いますが、要するに信用がすくんでいるわけです。だから、これはもっと現ナマを供給してもいいのですよ。どれくらい供給したらいいかということは、これはだれにもわからないのですね。信用乗数というのはゴムひもみたいなものだと言った人がいますけれども、そのあたりはどうなんですか。  追加供給が必要なんじゃないか、もう一つは日銀政策目標としてベースマネーの供給量を位置づける考えはないか、この二点。
  23. 山口泰

    山口参考人 御指摘のとおり、最近、たんす預金を初めといたしまして流通現金に対する需要がふえてきております。その需要に十分にこたえてまいりませんと、これは金融システム全体として資金が不足するという状況が出てまいりますので、私どもはこれに対しては十分な供給を行っております。  加えまして、先ほど御質問にございました金融機関日銀に対して持っております準備預金、これも法定額以上に供給しているという状況でございます。  これらの結果といたしまして、御指摘のいわゆるベースマネーと言われるもの、流通現金に準備預金を足したものでございますが、これは前年に比べまして一〇%近い増加をしているという状況でございます。  ところで、そういうベースマネーをそれでは量的なターゲットとして金融政策を運営する考えはないかという御質問かと存じますが、現在のところ、私どもは短期の金利、具体的に申しますと、コールレートのオーバーナイト物というものを目標にしながら金融政策を運営してまいりました。これは、ベースマネーといった量的な指標をある限られた時間の中で十分にコントロールし続けていくということが必ずしも容易ではない、また、それを無理に短期間の中で実行しようといたしますと、今度は逆に金融市場の中で金利の動きが非常に激しくなってくるということが起きるからでございます。  ただ、金利を操作するということは、それと裏腹に、ベースマネーでありますとかマネーサプライでありますとか、そういう金融の量的な指標も金利に応じて変動していくということが当然想定されますので、金利と量とは実は同じコインの表裏の関係にあるというふうに考えております。
  24. 渡辺喜美

    渡辺(喜)委員 もう時間が来ましたのでやめますけれども、この問題は、山本幸三先生がこの後たっぷりとやりますので。私より厳しいですよ。  とにかく、非常事態でありまして、日本銀行金融政策ははっきり言ってもう手詰まりなんですね。日本銀行だけでは何にもできない、そういう状況に来ていると思いますよ。ですから、これは戦争モード考えるしかないんですね。  ベースマネーが政策目標にできないという場合には、これは国会が決めてやるしかないかもしれませんね。つまり、財政法五条ただし書きですよ、国会が議決をして国債の日銀引き受けを決めてあげる。それをやればベースマネーはどんとふえるわけです。ですから、マネタイゼーションと言うんだそうですけれども、恐らくそういうことも視野に置いたお金世界の大作戦を今考えていかないといかぬ、そういうことでございます。私はこういうのをバイアグラ大作戦と称しまして世に発表したのでございますが、もう時間がありませんので、次回にさせていただきます。  ありがとうございました。
  25. 村井仁

    村井委員長 次に、山本幸三君。
  26. 山本幸三

    山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三です。  昨年の五月に、日銀法の議論のときにも質問に立たせていただきまして、そのときに私申し上げましたけれども日銀独立性を高めるというのは結構なことだけれども、しかし、それは日本銀行がちゃんとしたことをやるという前提においてである、ちゃんとしたことをやらないようなことだったら、それは野獣を野に放つようなものだから大変危険であるということを申し上げた。  大蔵省から独立したということでありますが、国会から独立ということはあり得ないので、先ほど渡辺先生株主総会と申し上げましたけれども、これは我々国会日本銀行を監視するしかない、それが間違っていればこれを正すべく指摘するしかないというように思っております。したがいまして、私は少し批判的な立場から御質問したいと思いますので、時には少し言葉が過ぎたりするかもしれませんけれども、それは御容赦願いたいと思います。  それから、最初に申し上げておきますが、私は日本銀行総裁以外にはお聞きしませんので、ほかの方は席を外していても結構です。  そこで、日本銀行は本当にちゃんとしたことをやってきたのか、私は非常に疑問に思っている。ことしのことはしっかりやりますが――その前に、まず資料をお配りさせていただいたんですが、資料の(1)でマネタリーベースの表があります。  このマネタリーベースというのは、私の知る限り、日本銀行の公式のこういう説明資料に姿をあらわしたのは初めてでありまして、その意味ではこの報告書は大変画期的と言ってもいいんじゃないかと思っているんです。これまで日本銀行はこのマネタリーベースを隠してきたんですね。日本銀行の統計表にも出さなかった。ようやく二年ぐらい前に、余り我々がうるさく言うものだから、マネタリーベースという、平残という数字が初めて載るようになりました。それまでは一切これを隠してきた。なぜ隠してきたかというと、このマネタリーベースこそが、日本銀行が何をやっているかということがわかるものなんですね。  しかし、日本銀行は、国会議員は余り金融知識がないと思っていたのかもしらないけれども、あるいは一般に知らせたくないと思ったのかもしらないけれども、隠してきた。我々は、いろいろな資料から、ほかの統計資料からそれを推計するしかなかったんですね。推計して、こうじゃないかなと思っていろいろ考えてきていたわけですが、その平残の数字自体は二年前にやっと出すようになりましたが、その内訳は依然として出していない。つまり、マネタリーベース自体のグロスの数字はちゃんと示しているんだけれども、平残という形で示しているけれども、その構成あるいは要因が何をもってそういうマネタリーベースの数字になったかということを依然として示していない。これはまた、我々はほかの数字から推計するしかないんですね。これがまた非常に問題になっている。これは後で指摘します。  それを申し上げた上で総裁にお伺いしますが、私は、日本経済が今日のような状況に陥ったのは、このマネタリーベースの表を見れば一目瞭然でわかる。つまり、一九九六年、平成八年には日本経済は少し回復の兆しが見えていたんですね。これは、九五年の九月に、あの村山政権のときに物すごい円高を経験した上でようやく気がついて、初めて本格的に金融緩和をやった。つまり、マネタリーベースをふやすということによってマネーをふやすということをやった。それまでは、金融緩和をやっている、やっていると言いながら、本当はしなかったんですね。  これは、マネタリーベースを見れば一目瞭然、わかる。だから、幾ら政府公共投資を打とうと、減税をやろうと、効かなかったんですね。九五年の九月以降、ようやく本格的に日本銀行金融緩和をとってお金の量をふやした。これが直ちに功を奏しまして、九五年の末から九六年にかけて経済はようやく復活の兆しを見せるようになっていたんですね。これが順調に推移していれば今日のような状況には至らなかった。  ところが、何を血迷ったのか、日本銀行は、九六年の末から九七年にかけて、せっかくふやして日本経済回復させようとしていたものを、その当時八%の上から九%ぐらいでマネタリーベースをふやしていたんですが、一気に七%前後に落とすんですね。その結果、明らかに日本経済は失速してしまった。私は、不況を深刻化させたのは、まさにこの日本銀行金融政策の失敗によると判断しています。そして、昨年だって、大いにびっくら仰天して、昨年の暮れから今度はまた慌てふためいてマネタリーベースをふやすことをやってきていますが、時既に遅しという状況になって今日を迎えている、私はそういうように判断しているんですね。  そこで、総裁にお伺いしたいんですが、日本銀行がこのマネタリーベースの表を出すに至った以上は、まず第一、日本銀行はマネタリーベースをコントロールできると考えておられるのかどうかが一つ。それから、これは総裁が就任する前の話なんで恐縮ですが、なぜ九六年の末から七年に、せっかくマネタリーベースをふやしたものを、九%前後でいたものを七%前後に落としてしまったのか。その二つについてお伺いします。
  27. 速水優

    速水参考人 山本委員の御質問にお答えいたします。  まず、九七年の春以降でございますが、景気が減速局面に入って停滞色を強めたことは、私どもも記憶に新しいところでございます。これには、消費税率の引き上げとかアジア通貨危機とか、それから一部金融機関、山一とか拓銀の経営破綻といったようなことが秋になって起こったわけですが、こういうものが複合的に作用して、九七年春以降、景気の減速が著しくなってきているということは申し上げていいかと思います。  そういうことで、金融政策につきましては、九五年九月以来、思い切った緩和スタンスを一貫してとってきたわけでございます。預金生活者のことなどを考えて、超低金利を早く解除して金利を引き上げてはどうかといったようなちまたの声が非常に強かったことも記憶しておりますが、日本銀行としては、金融面から経済活動を支えていくことがまずもって重要であるという考えから、コールレートを〇・五%をやや下回る水準でずっと維持し続けてきたわけでございます。  こういうことでございますので、この時期に金融政策が一たん引き締めに向かったというような御指摘は当たっていないのではないかというふうに申し上げなければならないかと思います。  確かに、マネタリーベースの前年比上昇率で見ますと、九六年後半から九七年前半にかけまして幾分低下していることは事実でございますが、これは、九五年中の累次にわたる金利引き下げによりまして九六年前半にかけて手元現金需要が大幅に増加して、その動きが一年たって前年比で見ると低下した、俗に言う裏が出たということではないかと考えます。しかし、それでもなお、その伸び率は七%程度でございますから、比較的高いものであったと思います。  また、マネタリーベースの短期的な変動というのは、私ども、必ずしも金融緩和スタンスだけで決まるものではなくて、その時々の銀行券に対する人々の需要とか、どれぐらいをたんすに入れておきたいといった心理状態が大きく作用するものだと思います。  実際、九七年の秋以降は、マネタリーベースの伸び率では再び高まってくるわけでございますけれども、これには金融システムに対する不安感から人々が預金を引き出していったことがかなり影響しております。このように、マネタリーベースの変動は、その時々のさまざまな要因で、もともとある程度振れるものと見ておく必要があるように思います。  こういうことを踏まえますと、九六年後半から一年間、マネタリーベースの伸び率が低下したのは事実でございますけれども金融緩和の後退を意味するものとは考えておりません。私どもも、この間一貫して金融緩和スタンスを堅持してきたものであります。これを、もちろん私ども金融政策……〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  28. 山本幸三

    山本(幸)委員 総裁、申しわけありませんが、質問に答えてほしいんです。
  29. 速水優

    速水参考人 では、第一の質問に今からお答えします。
  30. 山本幸三

    山本(幸)委員 だから、第一の質問は、これはコントロールできると思っているのか、イエスかノーか。二番目は、なぜか。
  31. 速水優

    速水参考人 第一の質問につきましては、もっとマネタリーベースを政策に使ったらどうか。  もちろん、これは金融情勢判断には大切なものでございますけれども、私どもとしては、マネタリーベースで資金の量を見るよりも、やはり金融調節には、日々動いておりますオーバーナイト物の無担保のコール、この金利の動きを見ながら金融調節していく、そのことが早く決められますし、明確に決められますし、また市場への効果が、市場を通じて末端に浸透していくものだというふうに考えております。
  32. 山本幸三

    山本(幸)委員 全く質問に答えていない。  私は、日本銀行は、こういう数字を出す以上は、マネタリーベースをコントロールできると考えているのかどうか、それはイエスかノーか、どっちかでいいんですよ。それが一つ。それから二番目は、なぜ九六年から九七年にマネタリーベースが減ったかという理由について聞いたんです。  あなたは、それはどうしてそんなふうになったか知りませんと。私は、裏が出たなんというのは、そんな話を金融理論の教科書で見たことがないので何を意味しているかわかりませんが、私の理解するところでは、要するに、日本銀行は姿勢が変わっていないんだけれども、何か自分たちの知らない理由で落ちちゃったんでよくわかりません、二番目の質問についてはそう答えているように思いますが、それでいいのか。  第一の質問については、あなたは、マネタリーベースは日本銀行としてコントロールできると考えているのかいないのか、イエスかノーか、どっちか答えてください。
  33. 速水優

    速水参考人 マネタリーベースの数字を重要な参考資料の一つとして見ていることは事実でございます。これによって、どれぐらい流動性を、それぞれの経済人が、あるいは消費者なり企業なりが持とうとしているか、自分の懐へ入れておこうとしているかというのは、やはりマネタリーベースを見ておりませんと、彼らの先に対する見方というのはこれが一番よくわかることは確かでございます。しかし、政策としては、やはり金利を動かしていくということの方が有効であり、間違いが少ないというふうに考えております。
  34. 山本幸三

    山本(幸)委員 では、マネタリーベースはコントロールはできると考えている、それでいいんですね。しかし、それを直接日本銀行としてはやらない、むしろ金利の方で考えていきますよ、だけれどもやろうと思えばできるんだ、そういうことですね。
  35. 速水優

    速水参考人 おっしゃるとおりでございます。  多少長い期間をとってみて、初めてある程度マネタリーベースというものはコントロールが可能になるものだと思います。また逆に、短期的にマネタリーベースを無理にコントロールしようとしますと、例えば銀行券に対する人々の需要が強まっているときには、それに見合う供給をしないでほっておくということになりますので、金利は大幅に乱高下するといったようなことが起こり得るというふうに思います。
  36. 山本幸三

    山本(幸)委員 日本銀行のマネタリーベースについて考えることは、少しわかりました。  それでは、次に行きますが、ことしの日本経済において何が起こり、そして日本銀行は何をしたのかということです。  この報告書を読むと、幾つか興味深いことがあるんですが、九月九日に初めて日本銀行は、コールレートをそれまでの公定歩合より少し下回る水準というところから〇・二五%程度に誘導するということで方針転換をいたしました。私に言わせると、なぜそんなに方針転換がおくれたのかということなんですよ。そして、報告書を読むと、要するに、政府総合経済対策効果を見きわめたい、それが先決だというように、それが大きな理由として書いてある。  私は、ことしの初めに月例経済報告を聞く会というのがありまして、そのときに、二月の初めだったと思いますが、日本銀行の方に、日本は既にデフレに突入しているんじゃないか、デフレスパイラルということにこれからいくかどうか、そこのところはあれだけれども、少なくともデフレ状態に入っている、したがって、早急にもっと金融緩和、マネーをふやしてそれを防ぐべきではないかという主張をしていたんですが、いや、デフレのおそれはあるけれどもまだデフレにはなっていない、デフレスパイラルにはなっていないという説明日本銀行はずっとやってきたんですね。  今振り返ってみると、明らかに日本経済はことしデフレスパイラルに陥っていた。経済はマイナス成長が繰り返され、物価はどんどん低下する状況、そして失業がふえ、設備投資が減ってきて危機的状況に陥った。なぜ日本銀行はそのことを見抜けなかったのか、これが私の最大の問題意識なんですね。  それは、今総裁説明されたように、日本銀行金融政策のやり方が、やろうと思えばコントロールできるマネタリーベースという量に注目しないで、短期金利市場という金利に注目した、金利を余り大幅に動かさないで何とかやっていこうというやり方を続けてきたからだと私は思っているんですね。  そこで、なぜ日本銀行は、そういう短期金利を例えば公定歩合より少し低目のところに維持しましょうということをやってきて、そんなことをやっていて間違いに、デフレスパイラルになるということに驚いて九月に変えざるを得なくなったか。その最大の問題は、総裁が言っておられる金利を念頭に置いた方が量を念頭に置くよりはいいというところの最大の問題は、日本銀行が言っている金利というのは名目金利なんです。それは、名目上の短期金融市場、コールレートだけを見ながら、しかも、その名目金利をある水準で極端に動かないようにしようというやり方でずっと来るわけですね。  ところが、経済にとって何が重要かというと、名目金利じゃありません、実質金利。参考に、この資料の(3)に、これは新聞からとったんですが、実質長期金利と実質短期金利。実質長期金利は、十年物国債から消費者物価を引いたもので出しています。あるいは実質短期金利は、ユーロ三カ月と消費者物価。私が正確に言うと、本当は消費者物価じゃなくて卸売物価で見るべきだと思いますので、卸売物価で見ると、これより一・五から二%もっと高くなる。  同時に、企業は実質金利だけで設備投資とかそういう企業行動を決めているわけじゃないんですね。設備投資が何で決まるかといえば、実質金利と、不確実性からくるリスクプレミアムというのも当然考えないといけない。資料の(4)に、これは家計リスクプレミアムで書いている。これは、ことしの経済白書からとったものです。家計でもリスクプレミアムが九五年ぐらいから一貫して上がってきた。九七年第四・四半期になったら非常に上がって、ことしのものがありませんが、必ずこれがどんどん上がっているに違いない。だから、家計の消費が落ち込んできた。これは家計ですが、企業も同じ状況になっているに違いない。  そうすると、家計の消費が落ち込み、企業設備投資が落ち込むというのは、この実質金利プラスリスクプレミアム、実質金利も上がってきた、リスクプレミアムも上がってきたという状況で、だれが設備投資をするのですか、だれが家計の消費をふやすのですか。そんなことはあり得ない。  こういう状況は、統計をきちっと見ればよくわかるはずなのですね。実質金利なんて、もう九七年、昨年の第四・四半期、第三・四半期の終わりぐらいから上がり始めた。ことしの前半というのはどんどん上がってきたんだ。それからリスクプレミアムも、九六年から九七年にかけてどんどん上がってきた。これが見抜けないようでは経済政策をやれるわけがない。  実質金利も上がり、リスクプレミアムも上がっているという状況のときに、あなた方は、名目金利だけを見て、いや、それは非常に低い水準ですからそれでいいのですという議論をやってきたのですね。そしてその上で、いや、我々は金融は十分に緩和していますと。緩和していないのは、このマネタリーベースを見ればわかる。それは、名目金利が余り大きく変動しては嫌だというようなことばかりやるから、量で大きく変動が起こっても知ったことではありませんよという話になってしまうのですね。  総裁、なぜこういうことが見抜けなかったのですか。なぜもっと早く金融緩和できなかったのですか。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  37. 速水優

    速水参考人 大変鋭い御質問でございますが、実質金利と申しましても、名目金利を実質化する際に期待物価上昇率をどのようにとらえるかという難しい問題がございます。先ほどの、この先生の表は恐らく生鮮食品を入れたCPIをおとりになったのだと思いますけれども物価に何をとるかによってかなり違いが出てくることは、私どももよく指摘をされますし、そして迷うところであります。  おっしゃるように、実質金利を見ながら、しかもリスクプレミアムをどういうふうに見ていくかということが、企業家を動かす一つの材料になっていることは確かだと思いますが、こういう全体を、いろいろな資料を見ながら政策を見ていく。  特に一番的確に出てまいりますのは、コール市場での需給の関係ではないかというふうに思います。これを円滑にしていれば、大体年末、年度末を控えてくると、急速に需給がタイトになってきたり、外貨の手当てをしなければならないというようなことで急に厳しくなったりというようなことを、日々の動きを私どもはやはり見ていかなければならない立場にございます。  九月の九日にオーバーナイトの無担保コールを〇・二五に下げたというのは、私はタイミングとしてはかなりいい時期だったというふうに思っております。あれが出てから、年末に対する懸念も、それから長銀等の金融システムの破綻等に対する懸念も大分変わってきたのではないかというふうに思っております。  その辺は、先生のおっしゃる材料を、私どもとしてもこれからも謙虚な気持ちで眺めながら政策決定をしてまいりたいというふうに考えております。
  38. 山本幸三

    山本(幸)委員 これは生鮮食料品は除いた消費者物価ですがね。おっしゃるように、実質金利を見るときに、どのデフレーターを使うかの問題はありますよ。では、どれが一番いいかということで、そういう議論をし、そういう試行をやるべきじゃないですか。  私は、本当は実質金利を見るときには、おっしゃるように理論的には期待物価上昇率ですから、これは実際にはなかなか得られない。恐らく、一番無難なのはGDPデフレーターを使うのがいいんでしょうが、むしろ企業行動にとっては、為替レートとかの関係でいえば、貿易財は為替レートに影響するとか、そういう議論をするときには卸売物価で見る方がいいんですね。だから、私は卸売物価で本来見るべきだと思って、実際はこれよりもっと高くなっているはずだ。  しかし、そういう議論を日本銀行の人とやっていると、日本銀行の人は、実質金利を見るとき必ず消費者物価で見ているんですよ。それを今まで私は何回も議論してきた。あなた方はいつも、卸売物価で見ると高く影響が出るものだから、できるだけ小さく出るような消費者物価を使って議論をしてきた。  私は、あなた方のベースに乗って議論してやろうと思って、ちょうどこの消費者物価の数字が出たから使っているんですよ。それで見たって、だれが見たって実質金利は上がってきているし、今は実質金利がどんどん上がってきて、あるいはリスクプレミアムが上がっているから、設備投資も減り、消費も減っているんですよ。この状況が見抜けないようで日本銀行総裁と言えますか。  あなたは、そんなことよりもコール市場でのレートの動き、コールでの需給を見ていればいいと思うし、あるいは九月に〇・二五%下げたタイミングはいい時期だったと思っていると。日本経済をここまでしておいて、いい時期だと思っているとは何事ですか。日本経済は問題ないと思っているんですか。いいタイミングだったというのは、そのタイミングによって結果がよくなったときに初めて言えるんですよ。最悪なタイミングだ、私に言わせれば。半年以上おくれた。むしろ一年前にやるべきだった。しかも、コールレートという名目金利だけ見ているからそうなるんだ。思い切った下げもできない。  このような実質金利がまだ上がっている、リスクプレミアムが上がっているような状況を、今も続いていますが、名目金利を〇・二五%下げただけで解消できると思っているんですか。これで設備投資家計の消費もふえるような状況になると思っているんですか。そんな名目金利を〇・二五%下げただけで、実質金利とかリスクプレミアムとか全然考慮もしないで、それで経済がうまくいくと総裁は思っているんですか。
  39. 速水優

    速水参考人 もとよりコールレート、コールの金利だけを見て政策を決めておるわけではございません。  九月以降のことにつきましても、御承知のように、アメリカの為替、株価はかなり大きな変化がございましたし、ヘッジファンドの動き、そういったものがかなり強く日本にも影響を与えてきております。そういう実体経済動き金融の流れ、今起こりつつある内外の情勢を見て政策は決めていかなければいけないというふうに思っております。  九月の引き下げに伴って、十一月に入って、その後の情勢を見ながら、貸し渋り対策を含めた三つの新しい金融政策を打ち出して、それが今またかなり効果をあらわし始めてきているように考えております。  日本経済は、もとより難しい状況の中にあります。しかし、ここへ来て、四月の公共投資効果が九月以降に出てきておりますし、今また新しい追加的な大きな公共投資が発表され、それに加えまして、金融システムの方でもほぼ道具立てがそろったという現状で、環境はかなりよくなりつつあることは間違いないと思います。  まだ設備投資や生産や、いろいろ悪い数字ばかりでございますから、特に雇用その他の数字を見ておりますと気分が暗くなっていくことは確かでございますが、そうかといって、これからますます悪くなるかどうかということは、この時点では少し決めかねるものではないかというふうに思っております。  年内はこの情勢をしばらく見ながら、また外で何が起こるかもわかりませんし、絶えず注意深くいろいろな数字を見て判断をしてまいりたいというふうに考えております。
  40. 山本幸三

    山本(幸)委員 これは大変問題があるなと思いますね。  要するに、実質金利を下げるような、あるいはリスクプレミアムを下げるようなことを日本銀行はやらなきゃいけないのに、それに対して何をやりますなんという答えは全然出てこなくて、依然としてコールレートの名目金利だけを見てやる。それだけじゃありません、いろいろほかの現象が起こってきたら何か考えますと言っていますが、基本的には、日本銀行がやっていることは、名目金利だけを見てやっているんでしょう。それじゃだめだと私は言っているんです。  名目金利が歴史的に低いといったって、ほかの条件は全部違っているんだから。物価は下がっているし、リスクプレミアムは上がっているし。むしろ、そんな名目金利に拘泥するのはやめて、実質金利とリスクプレミアムを考え金融政策を打ち出さなければ日本経済は立ち直れませんよ。  ことしの前半、マネタリーベースの供給がどういうふうに行われたかを見ると、これは推計するしかない、あなた方が出さないから。第二・四半期、第三・四半期、財政資金で相当のお金が出ている。それを日本銀行は、事もあろうに相殺するように日銀信用を大量に引き揚げているんですよ。何でこんなばかなことをするんだ。ちゃんと緩めていれば、こんなデフレスパイラルに陥ることもなかった。  なぜそういうことをやったのか。恐らく、コールレートの名目金利の水準が、それをやると急速に下がるだろうということが嫌だからやったんでしょうね、名目金利に拘泥するから。そこが問題なんだ。あなた方のやっている名目金利に拘泥していたらこの実体経済に追いつきませんよ。これに追いつくためには、そういう名目金利に拘泥するというやり方はやめて、マネタリーベースという量に着目した政策をやれば、実質金利の問題もリスクプレミアムの問題も吸収できる。  確かに、名目金利は大きく動くかもしれない。結構じゃないですか。だって、実体経済を救うために役に立つんだから。あなた方は、ことしの前半、ちっとも金融緩和をやっていないんだ。日銀信用を引き揚げたんだ。これは隠しているからほかの人は余りよくわからないけれども、プロが統計表をちゃんと見るとわかる。  そこで、日本銀行政策委員会の中でも注目すべき発言がありました。中原伸之さんという委員が、私の見る限り、ただ一人そういう状況を把握して警鐘を鳴らしていた。彼は、九月九日の変更する前にも言っていますが、この報告書をずっと見ると、実に三カ月前、六月の段階から、一日も早く金融を緩和しなければいかぬ、そう主張してきたんですね。それは、経済の実態から見て、あるいは株式市場影響から見て。  彼がどういう考え方で、どういう根拠に基づいてそういう主張をされためか知りませんが、今日振り返ってみると、政策委員会の中でただ一人、私が指摘したような問題にも対応できるようなことを言っているのではないですか。総裁をかわってもらった方がいいのではないですか。  そういう観点がなければ、日本銀行はこれからも、設備投資をふやすような、あるいは家計の消費をふやすような、実質金利を減らし、リスクプレミアムを減らすというようなことが到底できるとは思えませんね。もうそういうことをやめたらどうですか。  それからもう一つ、政府景気対策がだんだん功を奏してきているなんという言い方で言っていますが、金融政策というのは、非常に機動的にできる有効な経済政策の有力な手段ですね。そうであれば、日本銀行として必要だと思えば、総合経済対策効果はどうのこうのなんて、見きわめてはだめなんですよ。その効果を見きわめてから動きますなんて言っていたらだめなんだ、間に合わないんだ。  むしろ、金融政策というのは機動的にできるというところに最大のポイントがあって、そのために独立性を付与しようということをしているのだから、あなた方がこのレポートに何度も書いているように、政府景気対策の効果を見きわめてから考えたいなんということではだめなんですよ。政府景気対策がどういう効果をもたらすかどうかの前に、みずからやるべきことをやるべきだったんです。それをことしの前半に全くやらなかったというのが私の結論ですよ。その根拠は、実質金利をこれだけ上げ、リスクプレミアムをこれだけ上げ、経済をこういうふうにした。  なぜそうなるかというと、さっきも申し上げたように、一つは、日本銀行は名目金利だけを考えて議論するからそういうことになる。それからもう一つは、この(2)に書いているように、日本銀行の物の考え方というのは単純そのもの、日本銀行券増発マイナス財政資金払い超が日銀信用と準備預金の増という式を見ながら、名目のコールレートを余り動かさないようにしようというやり方でやっているのですね。  この式の問題点は、詳しいことは一度私は山口さんとやりましたから、もうそれほどやりませんが、どこが政策手段でどれが政策目標なのかはっきりしない。あるいは、どういう状況でそれが起こっているか、すなわち価格の概念が全くない。その結果、日本銀行は伝統的に、左辺がプラスだと金融は引き締まっていると思って日銀信用をふやす、左辺がマイナスになると資金余剰だという判断をして今度は減らすということをやっているのですね。  先ほど指摘したように、ことしの第二・四半期、第三・四半期に日銀信用を引き揚げたのは、恐らく財政が払い超で、その財政払い超が出てきたものだから左辺がマイナスになって、したがって資金余剰であるから、これは引き揚げないと名目コールレートがおかしくなるだろうなと思ってやったのでしょうね。  だから、そういう日本銀行金融調節のやり方に非常に問題がある。こんなことをまだこれからも続けようとするのであれば、日本経済は大変なことになりますよ。長期金利もリスクプレミアムもどんどん上がっていく状況経済をどうするのですか。  時間が参りましたから、最後に、日本銀行総裁、私の申し上げたことを受けて、もう名目コールレートなんて拘泥するのはやめて、渡辺先生がおっしゃったように、今非常事態ですよ。そういう状況で、短期の金利がどういうふうに動くのか関係ないんだ、実質金利の方が大事なんだ。しかも、渡辺先生の表にあったように、信用乗数、貨幣乗数というのは非常に落ち込んでいる。だから、貨幣乗数を上げるという政策とプラスして、名目金利に拘泥するんじゃなくて、思い切って量でしっかりとふやしていくということをやらなければ大変なことになると思います。  貨幣乗数を上げるためには私は預金準備率を下げればいいと思っていますが、貨幣乗数を上げる、同時に量的にしっかりふやさなければ大変なことになる。名目金利に拘泥するのはやめた方がいい。  そういうことができなければ、そういうことがわかっている人にかわってもらった方がいいというぐらいに思っているのですが、最後に総裁の決意をお伺いして、質問を終わります。
  41. 速水優

    速水参考人 先生がおっしゃっておられる、実質金利を重視せよ、あるいは金利でなくて量をよく見ながら政策を実行していけ、この御意見をまことに私どもとしても十分取り入れて考えていきたいところでございます。  ただ、金融政策は、今、確かに非常に難しい危機的な状態にあったことは事実でございます。しかし、その中で、やはり内外の金融の流れを見ながら、そしてまた国内のこれまでの間接金融一辺倒というものからもう少し直接金融ができるような市場をつくっていくというようなことを考えながら、いろいろな新しい手を打っておるわけでございます。十一月に打ちました手など、三つの新しい政策などが必ず何らかの形で効果が出てくるものというふうに思っております。  今後の金融政策実行に当たりましては、先生の御意見も十分に考えながら、間違いなくタイムリーに、しかも中期、長期の先を見ながら手を打ってまいりたいというふうに考えております。どうぞ引き続きよろしく御指導ください。
  42. 山本幸三

    山本(幸)委員 いろいろ言葉遣いで大変失礼なことがあったことは、どうぞお許しいただきたいと思います。  質問を終わります。
  43. 村井仁

    村井委員長 次に、末松義規君。
  44. 末松義規

    末松委員 民主党の末松義規でございます。  先ほど、大変厳しい御質問であったと思いますが、私はちょっと目先を変えまして、国際金融の実態について日銀あるいは速水総裁の見解をお伺いしたいと思います。具体的には外為相場の話でございます。まずそこから質問を始めていきたいと思います。  この前、欧米のある投機筋といいますか、そのグループの方々とお話をしていたときに、この投機筋の方が年に一、二回ぐらいはある一定の金額の範囲内で短期間に非常に大きな勝負をされるということをお伺いしました。それで、見ていてごらんということで、ことしの春ぐらいでしたか、対ドルと円の関係で百二十円ぐらいが百三十五円ぐらいにさっと円が下がったときに、またその関係のグループと話したときに、新聞紙上等ではこれがもう百四十円、百五十円ぐらいになるんだということを言っておりました。特に、橋本前総理大臣が百五十円になるのを容認した、そういうふうなニュースなんかも掲載されていたわけですけれども、その投機グループの方々が言うには、百四十円ちょっとぐらい、百三十五円を超えてぐらいから反転に移って、そしてこれがかなり円高になるのだということをその当時言っていたわけです。実際に市場を見ていきますと、円は確かに高くなって百十円台まで上がったわけなんですね。  こういうのを見ますと、その時期に円高になる要素というのは理論的には説明できない。日本経済がどたばたして、弱い弱いと言われまくっていた時期ですから、十数円から二十円近く円高になる要素がない。本当に私も外為相場というのはわからないなという認識をまた新たにしたのです。ということは、その投機グループなんかの話がある程度事実になったと私は思っているわけです。  そうすると、どうも国際金融市場というのは、たくさんの国がいて、たくさんのいろいろな方が参加してやっている割には、非常に市場に寡占性といいますか、あるコアグループがいて、そして流れがつくられていけばそれに従ってどんどんやっていく、いわば投機性が極めて強いのじゃないかな、その背景にはやはり寡占性というものがあるのじゃないかと思うのですが、速水総裁の御認識を伺いたいと思います。
  45. 速水優

    速水参考人 海外の情勢考えながらやはり為替レートというのは決まっていくし、また、先を読んでいかなければいけないのだろうと思います。  今、日本経済は、特に需給関係で見ますと、御承知のように、毎月百億ドルを超える経常収支の黒字なんですね。輸出もそうは伸びているわけではございませんけれども、輸入が少ない。だから、これは年間千三、四百億ドル、恐らくGDPの四%近い経常収支の黒字になって、四%台になるのじゃないかと思いますけれども、こういうことは、これまでもなかったぐらいの大きい経常収支の黒字が続いているのですね。  しかも、日本は御承知のように、ネットの対外資産というのは一兆ドル近い、ネット・エクスターナル・アセット、対外資産超過、アメリカがちょうど逆に一兆ドル近い対外負債ということになっているのですけれども、そういう外に対して日本経済がずっと八〇年代あたりから積み上げてきたものがまだ続いておるわけでございまして、そういう状況の中で、国内ではデフレとかあるいは金融システムの不安といったようなものがあって、大丈夫かということで円が売られていたというようなことはあったと思います。  しかし、ここへ来て、むしろ海外の方でいろいろ騒ぎが起こり、ドルについても、金利も下げましたけれども、一時売られる、あるいはヘッジファンド等で非常に大きな損を出したところが出て、いっとき、クレジットクランチが起こりそうだと連銀もかなり深刻に慌てていた時期があったと思います。  そういうようなものが円・ドル相場にも直接反映してくることは確かであると思いますので、これから、新年からユーロが動き始める、これがどういうドルに対する相場をつけていくのか、非常に注目されるところでございますけれども、かなり強い団結を持って当たっていこうという新しい基軸通貨になっていくのだろうと思います。  そういう流れの中で、今の円というものがどれぐらいの水準でいいのか、これはやはり日本が一つ一つ国内の立て直しをやりながら、外がそれをどう評価するかということもありますけれども、私はそんなに円は弱いものではないというふうに考えております。アメリカの変化が多少あって急に強くなったような感じが出ておりますけれども、今の水準というのがそんなにおかしなものであるとは思っておりません。  むしろ問題は、これからアジアからもどんどん輸入をふやしてやらないと、彼らの経済の立ち直り、新生は難しいと思いますし、そのためには余り円が弱くても彼らは困るわけでしょうし、そのためにも内需をふやさなければいけないわけです。  為替の相場については、内外の情勢を見ながら市場が動いていく。行き過ぎた場合にはやはり市場というのは適当な時期になると必ず返ってくるものだということを私も長い経験で教えられております。しかし、どうしても耐えられない行き過ぎがあった場合には何らかの協調した措置をとっていくことは必要だというふうに思いますが、当面、これぐらいの水準でいってくれればいいがなという感じがいたしております。
  46. 末松義規

    末松委員 その耐えられない行き過ぎ云々の話なんでございますが、日銀総裁から先ほど投機筋ということについてのコメントはなかったわけですけれども、このジス・イズ読売の十二月号にマハティール・マレーシア首相が、「世界金融危機金融テロと断固闘おう」、金融テロとまで彼は言って、マハティールさんとジョージ・ソロスさんですか、論争を繰り広げ、しかも彼は、リンギとドルの固定相場制をしいて、それで為替のある意味での国内の安定を図るということを主張して、そして世界から大きな批判を受けたということ。さらに、彼が言うには、猛威を振るうヘッジファンドにもっと強力な規制と管理というものが必要なんだということをずっと主張されて、これに対しても欧米を中心に大きな批判を受けてきたということで、彼は主張しているわけですけれども、この金融テロと彼が言う国際投機筋、こういうふうな活動そのものに対してどういうふうに認識されておられるかということについて、これはいかがですか。
  47. 速水優

    速水参考人 一般的に申しまして、国際的な金融取引にさまざまな規制を課していくということは、私は、有益な取引までも阻害されてしまうということになると思いますし、特に、短期の資金がヘッジファンド等によって入ったり出たりするのは迷惑だという気持ちはわかりますけれども、やはり中期、長期に見ますと、資本の多国間の入ったり出たり、それは自由にしておかないと、各国の共通した成長というのはやはりそういうところから出てくるわけでございますから、短期資本を規制するということはいずれ長期資本にも必ずつながっていくものであると思います。そういう意味からは、私は、短期資本の規制を今ここで取り上げるというのはよくないというふうに思います。  それから、固定相場にして安定させたらどうかという意見が出始めておりますけれども、これにつきましても、この時点でこれから固定相場が維持できるとも思えませんし、相場についてはなるたけ市場に任せて、長短資本、資金の流出入についても、いずれはこれは調整されていく、市場の需給で変わっていくものだと思っておりますので、なるたけ規制ないしは介入というのはしないようにしていくことが世界全体のグローバルな経済の発展にプラスするものだというふうに確信いたしております。  もとより、IMFがもっと強い力を持って、特定の国が危ないと、あるいは早期警告を出したり、あるいは必要に応じて資金調達をやったり、国内経済調整をその国その国の実情に合わせて指導していくということが必要だということもあわせて申し上げておきたいと思います。  国際通貨制度の改革が必要だということにつきましては、私もそういう意味で賛成でございますし、そういうことが行われていく中で円も強くなっていって、基軸通貨の一つに入っていくというようなことが将来の一つの希望だというふうに考えております。
  48. 末松義規

    末松委員 今一般論で言われましたけれども、例えばタイなんかもそうだったのですけれども、アジアの経済が急に資金が回らなくなって落ちていくというその事情を見てみますと、短期的な資金がタイのややバブルというものも引き起こして、長期的な不動産投資とかそういうふうなものに使われていた。それが急に短期資本が引き揚げられたがゆえにふぐあいが起こって、それでタイ経済がめちゃくちゃになっていったというような過程もあるわけなのですね。  それをジョージ・ソロス氏が引き起こしたんだというような言い方とか、いろいろな言い方がされているわけですけれども、そうしますと、この前のASEANの会議なんかでも、やはり国際的な投機について批判的な議論が起こったということがございます。特に、ヘッジファンドについて非常に額が大きい、数千億円程度の現実のマネーから百数十兆円もの取引までペーパー取引ができるということで、この危険性というのは非常に強いと思うのです。ある意味では、勝った人は、それは何十億円か一日でもうけたとかいう話になるかもしれませんが、負けた人にとって本当に払い切れるのかというふうなことを見てみますと、そういうふうなクリアリングハウスがきちんとしていればいいですが、それがないということであれば、これは恐ろしいことになるんではないかという懸念があるわけですが、その辺についてはいかがですか。
  49. 速水優

    速水参考人 ヘッジファンドというのは、私も実態がよくわからないのですけれも、先般アメリカでもああいうような事件が突如起こったりいたしておりますから、何がいつ起こるかわからない。百億ドルとか二百億ドルとかいうようなベースの会社が幾つかあるのでしょうけれども、動かしている。全体で五千億ドルあるというような説もございますが、こういう資金は、しかしすべてセルフリスクで動いておるわけでございますから、勝ったり負けたり、あるいは行き過ぎて、動き過ぎて間違ったりというようなことは起こっていくのは、国際金融資本市場、自由経済市場で起こり得ることだというふうに思います。  ただ、そういうものはやはり波打ち際で規制するのでなくて、それぞれの国が自国の中で、金融政策あるいは財政政策経済政策として、行き過ぎがあると思ったらそういうものを国内経済政策の一環として調整をしていくというのが、昔よくアジャストメントプロセスという言葉をIMFが使っておりましたけれども、そういうものを通じて規制していくのが真っ当なやり方ではないかというふうに考えます。
  50. 末松義規

    末松委員 そうしますと、ASEANの会議で国際的な投機に対して規制をしていこうという動きが一応合意されたということが報道されているのですけれども、そういう合意についても、速水総裁としては、どちらかというと否定的だということで受け取ってよろしいですか。
  51. 速水優

    速水参考人 ちょっと聞き取れなかったのでございますが、アジアの国々がヘッジファンド等の影響を受けてかなり迷惑をこうむったというようなことがあったことは事実でございましよう。しかし、それとても、やはり出した方、とった方、それぞれが自己責任で動いているわけでございますし、規制をすべきものではないと思います。それぞれの国が入れる方、出す方、自国の問題として考え、調整していくべきものだと思いますし、IMF等の国際機関が、そういうものを全体の立場で見ながら適時ウオーニングをしていく、あるいは支援をしていくというようなことが今後も起こってしかるべきだと思います。  そのためには、そういう国際通貨制度というものがもう少し力のあるものに、今暫定委員会というのは権限も何も持っていないものですから、これがオイルショックの後四半世紀も続いておるわけで、こういうものをもう少し見直して、力のある、権限のある国際機関が目を光らせて、おかしなことが起こりそうだというときには早期に警告を発したり、必要な手を打っていくというようなことが起こっていくことが望ましいというふうに考えております。  それともう一つは、やはりアジアのこの間の危機などを見て感じますのは、ドルだけにリンクしてエマージングカントリーズが輸出入を行ったり、資本を大量にドルだけで入れていくというようなことに無理があったのだと思うので、もう少し、例えば円とドル、ドルが強いときには円は弱い、円が強いときにはドルが弱いということでございますから、それはもう戦後五十年の流れを見て明らかでございますので、特にフロート制、変動相場制になってからの動きを見ておりましてもそういう動きがはっきりしておるわけでございますから、そういうものを複数の通貨でヘッジをし、あるいは使っていく、持っていくというようなことが起こっていくように変わっていくのではないかなというふうに思っております。
  52. 末松義規

    末松委員 そうすると、もうちょっと具体的にお話を伺えば、IMFが中心になって、そういうふうなことでウオーニングとかそういうことを、ステートメントか何か出す、そういうことが早期にそれを静めるためには有効じゃないかということをおっしゃっておられるのですか。
  53. 速水優

    速水参考人 今G7等でもこの問題について、通貨制度をどういうふうに変えていくか、あるいは国際機関をどうやって強化していくか、あるいは必要に応じてどういう各国共通のシステムをつくっていくかということについて話し合いが始まろうとしておるところでございます。  皆さん、その必要性を感じて動き始めているというのが現状だと思いますが、何分、これからヨーロッパが一つになってユーロになり、中央銀行もECBが支配していくようになって、どういうふうな力関係なりあるいは話し合いが進んでいくかということは、私、今この時点ではっきりしたことは言えませんが、最初に申し上げましたように、円も、早い時期に信頼される通貨になって、もっと用いられ、持たれ、そして使い勝手のいい通貨、そのためには円の国際金融市場を早くつくっていくということが大切だというふうに思っております。
  54. 末松義規

    末松委員 論争するような時間もないのであれですけれども。  そうしますと、例えば、日銀大蔵省の指示を受けて円相場に介入するということがたびたび起こってきたわけですね。日銀総裁のお考えでいくと、そういうふうな介入は必ずしもよくないという位置づけで考えますと、その辺は介入を極力控えるんだ、そういう姿勢だというふうに受け取ってよろしいですか。
  55. 速水優

    速水参考人 為替の介入のことにつきましては、これは大蔵省が主管でございますから私どもの立場で言うべきことではないと思いますけれども、私の感じをあえて言わせていただきますならば、やはり余り頻繁に介入するというのはいいことではないというふうに思っております。  なるたけ自由にしておいて、先ほども申し上げましたように、耐えられないような動きになったときに何かをするということは、これは十分考えられますけれども、介入という形が余り恒常化していくということには、私は余り賛成できないということは申し上げます。
  56. 末松義規

    末松委員 今、日銀の外為特別会計ですか、これにおける現状を極めて簡単に御説明いただけますか。これは総裁でなくても結構ですよ。
  57. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  外為特会につきましては大蔵省の所管でございまして、私どもの方から中身を御説明するのは不適当というふうに考えております。
  58. 末松義規

    末松委員 それでは、それはまた大蔵省関係にきちんと説明を聞きますからあれですが、最後に、ちょっと時間がなくなったのですが、先ほどの国内の問題に移りまして、日銀金融政策の限界というのが先ほどからずっと質問になって、そして話題になっております。日銀金融政策が余り有効でないのじゃないか、あるいは、先ほど渡辺議員も言われていましたけれども、手詰まりなんじゃないかということでございます。  私も、ある意味では同じような感覚を持っていまして、速水総裁も言われておりましたけれども日本経済というものが間接金融を中心に回ってきたということで、確かにその意味で今直接金融を育てるいい時期じゃないかと私も思うのですけれども、間接金融でやってきた限界といいますか、その間接金融銀行信用収縮でどんどん収縮していっている状況の中で、日銀が金利あるいはマネーの量をいかに多くしてマネーが出やすいようにしても、なかなかその辺の限界があるのかなという気がするのですね。  それを逐次お聞きしたいのですが、時間の関係で、日銀総裁の方から、今の日銀金融政策のある意味では限界といいますか、そこについての御認識を問いたいと思います。
  59. 速水優

    速水参考人 先ほども、金利でいくか量でいくかという議論がございました。  私どもは、金利も量も結局は同じことなんですが、今のところは、オーバーナイトの、翌日物のコールレートを動かすことによって、これも日銀が資金を適宜出すことによって〇・二五%程度のところへ持っていくということを続けていくのが、最も末端にまで早く資金が流れていく方法だと思っております。  アメリカの場合でも、FRBはフェデラルファンドというもののレートを基準にして金融調節をやっておるわけでございまして、もちろんこれは限界がございますし、今の貸し渋りという問題につきましては、銀行はここで、過少資本といったようなこと、あるいは不良資産を過大に持っているといったようなこと、そういう中で立て直しを図ろうとしております。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕  その場合に、やはり収益性と健全性ということが銀行が新しく立ち直る場合の一つの原則だと思うのですが、それと同時に、今起こっております貸し渋りというもの、これは、銀行が、金融機関が本当は貸したくなくても、中小企業あるいは末端の小企業が立ち行かないというときには何とかそれに手を伸ばしてやらなきゃいけないという、この貸し渋り対策というものが、先ほど申し上げた収益性、健全性と二律背反になるのですね。この辺は非常に難しい政策だと思うのです。  そういうこともあって、この間の三つのパッケージというのは、銀行の新生を前提にしながら、末端の企業中小企業にも金が伸びていくように。その場合に、私が必要だと思いますのは、信用保証協会の保証なども非常によくきいているわけですけれども、やはりただ先延ばししていくだけでなくて、これから新しい経済構造の変化の中で、競争力がなくて先が見えているというものについては、やはり金融機関はある程度指導性を持って、こういうふうに変えていったらどうですかというようなことをやっていかないと、日本経済の構造変化はできていかないと思うのですね。  そういう意味での金融政策の限界というものは十分感じますけれども、間接金融を使ってそういうことをやると同時に、企業と内外の投資家が市場で出会って資金の需給を満たしていくという市場原理の直接金融方式というものをもっともっと育てていくことが、自由経済、特に市場経済の原理に沿ったこれからの金融のあり方ではないかというふうに思います。  そういう中期のものも頭の中に置いてああいう政策を、今度は国債についても、できることなら、日銀がすっかり持っておりますFBなども、二十兆近くあるわけですけれども、これは、これまでは市場には売れないわけなんですね、今は売れますけれども。安い金利で全額日銀引き受けになっておりましたから、そういうものをまず真っ先に市場へ出して、内外の、貿易決済で円をどうしても必要だという人たちはそれを買うでしょうし、また国内の機関投資家などもまとまって買うものであるわけで、そういう今私どものずっと持ち続けておる資産市場へ流し込んでいって、それと同時に、先ほどの、企業債務であります手形とかあるいは社債のたぐいのものが何らかの形で金融政策に生きてくるというようなことも考えてああいう政策が打たれているという、転換期であるということを御説明したいと思った次第でございます。
  60. 末松義規

    末松委員 直接金融については私も全く同感です。また議論させてください。  質問時間が終わりましたので終わります。ありがとうございました。
  61. 鴨下一郎

    ○鴨下委員長代理 次に、上田清司君。
  62. 上田清司

    ○上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。  速水総裁初め大変御苦労さまです。総裁には一問だけちょっと聞いて、午後あと十五分だけでお伺いしますので、あとゆっくりお茶でも飲んでおくつろぎいただきたいと思います。そのかわり答弁は短く。  いわゆる景気の底打ち感があるというような議論もございますが、概要説明の中では、テンポが悪化している、テンポが緩くなってきているというような認識を総裁としてお述べになっているような嫌いがあるように先ほど私は感じましたが、現在の景気をどう見るかということに関して、日銀総裁としての御答弁を手短に的確にお願いしたいと思います。
  63. 速水優

    速水参考人 けさほどの最初のごあいさつの中でも申し上げたわけですが、日本銀行では、我が国経済は引き続き極めて厳しい状態にあるという認識は変わっておりません。設備投資個人消費は依然弱い状態にありますし、生産も低水準を続けております。また、企業収益悪化を続けておりますし、雇用所得環境も一段と厳しさを増していると言っていいと思います。先ほども指摘がありましたように、物価も軟調に推移している。これらを踏まえますと、日本経済の生産、所得、支出をめぐる循環はマイナス方向に動いていると判断すべきではないかと思います。  金融面でも、企業の資金調達をめぐる環境は、ひところに比べますと幾分落ちつきを取り戻してきていると言っていいかと思います。  先行きについては、四月の総合経済対策や九月の金融緩和措置効果で、また金融システムもある程度道具立てが出そろったといったようなことで、企業家計のコンフィデンスは今回の緊急経済対策などを契機にしてかなり明るくなりつつあるんではないかなという感じはいたします。  日本銀行としては、金融政策決定会合におきまして引き続きこういったことを十分討議して、景気判断に誤りなきを期してまいりたいというふうに考えております。
  64. 上田清司

    ○上田(清)委員 どうもありがとうございます。どうぞ、よかったら控えの方でお休みしていただいて結構だと思います。  ただ、やはり、カンニングペーパーを見ていらっしゃるという感じがあって、我が国中央銀行総裁としての威厳、あるいはさまざまな意味での、日本経済を引っ張っていく、そういう意味での態度ということに関して言えば、私は、落第点なんではないかというふうに思っておりますので、どうぞ気をつけていただきたいと思います。  それでは、幾つかお尋ねをしたいと思います。企業年末金融支援措置の構想がございますが、これについて、どのような形で臨時貸し出しをなされるのか、その基準というのは一体いかなるものなのか、このこと自体が貸し渋りに対してどのような影響を与えるのか、お伺いしたいと思います。
  65. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  企業金融支援のための措置は、先ほど総裁の方から話がありましたように、三つの措置から成っております。今先生から御質問のありました点は、その中の二つ目の臨時貸出制度に関してだと理解いたしました。  この臨時貸出制度は、タイトルにもございますように企業金融支援のためということでございますが、企業金融支援のために、金融機関の資金繰り面からの不安を和らげることなどによって、年末から年度末、特に年末と年度末における貸し出しの制約をいささかでも緩和したい、そういうことがねらいでございます。  やや具体的に申し上げますと、各金融機関における十月から十二月の間の貸出増加額の五〇%を上限といたしまして、貸し出し増加をリファイナンスさせていただこうというものでございます。十二月二十一日に第一回目の貸し出しを実行する予定でございます。
  66. 上田清司

    ○上田(清)委員 この五〇%の供給方式におけるチェックの仕方というのはどのようになっているんでしょうか。
  67. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  まず、五〇%を出す大前提といたしまして、実際に先ほど申しましたような貸し出しをふやしていただく必要がございます。これは、銀行全部がふえるとか減るとかいうことでなく、当然のことながら、個別の金融機関ごとに、ふえたところに対して貸し出しを行うということでございます。したがいまして、私どもといたしましては、まず、現に数字がふえているかどうかという点をチェックさせていただくということでございます。  もちろん、次に、金融機関サイドが現実に私どもに対してこれを依頼してくるというプロセスがございます。その依頼してきた中でも、担保が、私どもが受け取れる担保でございませんと貸し出しができませんので、担保について次にチェックをさせていただく、こういう手順を経た後、現実に貸し出しが行われる、こういうことでございます。
  68. 上田清司

    ○上田(清)委員 最近、テレビのニュースでも報道されました、いわゆる救済の肩がわり方式みたいな形で信用保証協会の二十兆の枠を悪用している金融機関があるということをしばしば国会でも取り上げておりますが、これが回収側に新たに回されるというようなことの懸念というのはないんでしょうか。
  69. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  先ほど申し上げましたとおり、この制度は、現に貸し出しの残高がふえませんとリファイナンスさせていただかないという仕掛けにしております。それは、先ほど先生御指摘のありましたような、片方で貸し出しをするけれども片方で引き揚げるというようなことでは趣旨が違うのでございますので、残高トータルとしてふえてくれないといけない、こういうことにさせていただいている次第でございます。
  70. 上田清司

    ○上田(清)委員 わかりました。  それでは、この報告書に触れていないのが残念だなというふうに私は思っているところですが、俗に言う日銀考査であります。今日の資産デフレに伴う銀行の持つ債権の不良化、こういう状況の中で、もし大蔵の検査あるいは日銀の考査がきちっとした形での検査状況にあれば今日の事態を招かなかったのではなかろうかという指摘も十分できるというふうに私は思っているところであります。そういう意味で、五十四条に基づく部分ではなくても、何らかの形で日銀考査の部分について触れておく必要があったのではなかろうかというふうに私は思っております。  そもそも、日銀考査と大蔵の検査、現在では金融監督庁の検査でありますが、どのような視点の違いを持って日銀の方は考査をされているか、改めて伺いたいと思います。
  71. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御案内のとおり、新しい日銀法では考査が法定化されたわけでございますが、私どもの考査は、中央銀行信用秩序を維持していくために、その役割を果たしていくために必要だということでございまして、監督当庁の行政権限の行使を前提といたしました検査とは大きく性格を異にするものでございます。言いかえますと、私どもの最後の貸し手機能を発揮していくためにも考査はぜひとも必要と考えておるところでございます。  それで、私どもといたしましては、常日ごろより、考査によりまして可能な限り金融機関の経営実態の把握に努め、改善すべき点があればちゅうちょなく考査先に対して自主的な改善を促してきた、そのときそのとき我々としては最善を尽くしてきたわけでございますが、今後とも、考査のより一層の効率化も図りつつ、私どもも、金融機関経営の実態についてはさらなる努力を重ねてまいりたいと思っております。
  72. 上田清司

    ○上田(清)委員 必ずしもちょっとかみ合いませんでしたけれども。  私が伺いたかったのは、要するに、その場においては全力を尽くされた、これは常に大蔵の皆さんも言われるのです。しかし現実は、長銀の実態、あの住専の実態あるいは兵庫銀行の実態。兵庫銀行に至っては、六百九十億ですかの不良債権が一たび倒れたら一兆五千億になる、二十四倍だ、とても考えられない。大半が大体三倍から四倍ぐらいに不良債権が膨れ上がるというのは理解できても、地銀有力銀行がとにかく二十四倍にも膨れ上がるというのは、これは検査がいいかげんになされているか粉飾決算をやっているか、二つに一つなんですね。粉飾決算をやっていたとすれば、当然これは何らかの形で特別背任罪なりなんなりで起訴されるなり告発されるべきであるのですが、そうもならない。では一体何なんだということで、国民に対して不信感を与えていくのですね。  そういう部分が過去に私はあったと。我々は正しかった、その時点その時点でよかったというふうに胸を張って言える人なんかいないと思いますよ、考査に立つ人たち、それから検査に立ってきた人たち。その辺についての反省が日銀にあるのかどうか、そのことを私は伺いたかった。  それから、新しい日銀法になってから、日銀考査の運営方針についてもぜひ国会の場に文書で明らかにしてほしい、そういうのを入れるべきだというふうに思うのです。確かに、十五条の一項に値するようなものを「通貨及び金融調節に関する報告書」の中に入れたということであります。しかし、日銀考査の部分に関しては、広義の意味では五と六の部分だって十分入る中身だと私は思いますよ。実態をきちっと把握しなければ通貨の管理や金利の調節なんていうのはできないわけですから。そういう意味において、考査の中身あるいは考査の概要、考査の方針、こういったものを次回から入れていただきたいということも含めて申し上げます。  とにかく一点だけ、日銀の考査の運営方針というのは一体いかなるものか、簡潔にお答えいただきたいと思います。
  73. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  新しい銀行法でのスタートに当たりまして、私どもは、本年三月末に十年度の考査の実施方針というのを公表いたしておりまして、その重点事項の一つといたしましては、いろいろ挙げておりますけれども、私どもは、先生御指摘資産査定初め、さらに一層努力して、経営の内容が実態把握できるように効率運営を図っていくということと、考査先の負担軽減を極力図っていきたいということを決めまして、これを対外公表いたしておるところでございます。
  74. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、総裁、ぜひ次回からこの中に考査の概要、運営方針とかをきちっと入れていただきたい、このことをお願いしたいと思います。     〔鴨下委員長代理退席、柳本委員長代理     着席〕
  75. 山口泰

    山口参考人 ただいまの上田先生の御指摘なんでございますが、提出させていただきました半期報告書は、法の五十四条第一項の定めに従いまして、金融政策運営に限って記述させていただきましたけれども、御指摘のとおり、日銀業務全般に関しまして国会の場あるいは国民の皆様方にお伝えすべき事項というのがほかにもございまして、そういうことにつきましてあまねく報告をさせていただきたいと思っております。  ただ、どういう場でそれをさせていただくかということでございますが、別に日銀法の五十五条で、年一回業務概況書というのを作成し、公表する定めになっておりますので、ただいま御指摘の考査あるいはその他業務につきましては、あるいはそちらの方で詳しく報告をさせていただくということも考えさせていただきたいと思っております。
  76. 上田清司

    ○上田(清)委員 御指摘の部分は正しい部分もありますが、ただ、国会の場で半期に一度報告をするという過程の中での重要性を考えて私はあえて申し上げておりますので、これはまた理事会とかでもあるいは要請をするかもしれませんので、お含みおきをいただきたいと思います。  それでは、私がこの報告書の中で一番気になったのが、日本銀行のバランスシートの動き、「参考」の部分であります。なぜ参考になっておるのか。一国の中央銀行のバランスシートがどうなっているか、このことはこの結論の部分に書いてあります。ちゃんとした認識は持っておられます。   以上のように、日本銀行は、与信リスクが伴  うことを十分に認識した上で、資産内容が劣化  することのないよう、さまざまな配慮を加えな  がら、政策的要請に応える努力を続けている。  これは、仮に一国の中央銀行に対する信認が損  なわれると、国全体の信用力が失われ、その国  の企業家計経済活動にも重大な支障が及ぶ  ことになるからである。 このように、きちっとしたバランスシートに関しての認識はできている。しかし、なぜそれが参考なのか、なぜきちっと正式な意味でこの報告書の中に入らないんだ。これはなぜ参考になったんですか。
  77. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  半期報告書の趣旨が、日本銀行の当該期間におきます経済についての基本的な情勢の判断あるいはそれに基づく金融政策の運営についての報告ということでございましたので、本文の方はそれを中心に記述をさせていただきました。  ただ、そういう政策運営の結果は、すべて日本銀行のバランスシートに最終的にはあらわれるものでございまして、その点について、私どもは正確な認識を持っているということを同時に報告させていただくのが適当だろうと思いましたので、御指摘のような形で報告書に記載させていただきました。
  78. 上田清司

    ○上田(清)委員 極めて重要だから参考というわけでしょうか。普通は、参考というのは二番目の話なんですよ。私は、一番目に書いてもおかしくない話だと思いますよ、極端なことを言えば。だから、参考という形でわざわざ添付したような形になっているのが問題だと申し上げたんです。認識が正しいにもかかわらず、形式が間違っていると私は言っているのです。  だから、これも初めてのことですから、おかしいじゃないかとやかましく言うつもりはありませんが、これもまた御検討いただかなければいけない、報告の仕方として考えていただきたいと思います。
  79. 山口泰

    山口参考人 日本銀行のバランスシートの重要性ということにつきまして、恐らく先生と私どもとの認識にそう差はないと存じます。これが第一回目の報告書でございますので、いろいろ御指摘を賜りまして、またそれを糧にしまして改善を加えてまいりたいと思っております。
  80. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  それで、けちをつけ始めると切りがないのですが、六十六ページの部分でも、日本銀行のバランスシート拡大を眺めて、日銀のバランスシートを見る限りにおいて、要するに劣化しつつあるんじゃなかろうかというさまざまな議論が出てきているわけですね。一部じゃないんですよ。こういう認識がよくないんですよ。一部じゃなくてかなり出ているんですよ。御承知のとおり、さまざまな金融関係の専門誌を読めばいっぱい出ているじゃないですか。一部じゃないんですよ。こういうことに関して、やはり物事の形式というのでしょうか、もっと謙虚になっていただきたいと思います。これからそのことを申し上げますけれども、劣化しているんですよ。  文章の書き方にしても、六十六ページの一番上ですよ、「一部からは、」と、せっかく結論のところですばらしい認識をされながらも、途中では軽くいなしているようなところがありまして、それはやはり中央銀行の姿勢としてよくないというふうに思いますので、御注意を申し上げておきます。  それでは、バランスシートの、まさに劣化しているのではないかという問題について、幾つかお尋ねをしたいというふうに思います。  まず、御承知のとおり、九年九月末と十年九月末を比較いたしますと、いわゆる資金の供給量と言ってもいいのでしょうが、いろいろな言い方があるかもしれませんが、一・四倍にふえております。難しくて、一般で言えば借金みたいなものも場合によっては銀行業務では資産になったり、なかなか混雑する部分がありますが、いずれにしても五割近い増加になっている。このことについて、余り淡々と事実関係を書いてあるだけだというところに私は少し気になっているところがあります。  それでまず、特融の部分から申し上げていきたいと思いますが、この特融に関して、大変増加しているわけであります。これは有名なところでは、四十年の山一証券の特融以来久々であるけれども、このところ連発されているという現況がございます。このことについて、例えば本当に回収ができるのだろうかというような懸念も持たれているわけであります。  そういうことについて、例えば記述の中で、過去の部分に関しては、「破綻処理が終了した案件では、処理方策が実施された時点で、預金保険機構の資金援助等により、すべて、全額が回収されており、貸し倒れが生じた事例はない。」これは、私の知る限りでは十年の九月までの話でありまして、コスモ信金までの話で、それ以降の山一、拓銀、大変金額も大きい話に触れておりません。もちろん、これは九月までということが前提になっていますから、触れなくてもいいのかもしれません。しかし、言い切るような形で本当に報告していいのだろうかという不安を私は持っております。  せっかくですので、再び出てきました山一と拓銀に関してきちんとした回収ができるのか、答弁をお願いいたします。
  81. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。少し長くなって恐縮になろうかと思います。  先生が御指摘なさいました特融でございますが、現在、十一月末残高で六千七十億でございます。内訳は、山一証券向けが約五千億円弱と、みどり銀行向けが千百億円でございます。したがいまして、先生御指摘の拓銀、徳陽シティへの特融は、御承知のとおり、本年十一月、預金保険機構からの資金援助に伴いまして営業譲渡で処理されておりますので、これは全額返済されておりまして、先ほど申し上げました六千百億円程度になっているわけでございます。  後者のみどり銀行の千百億円の方は、これは御案内のとおり、阪神銀行と今度新しく合併いたしまして、みなと銀行が来年四月一日、成立する予定でございますが、それに承継されていくものということで、私どもは返済は確保されると思っております。  それから、山一証券へは去年の破綻で特融を発動したわけでございますが、その後、山一の負債処理は進んでおりますけれども、現在まだそれが進行中でございまして、山一証券の約五千億円程度につきましては、新しい枠組みが実はできておりまして、証券界の預金保険機構ともいえます投資者保護基金が十二月一日からスタートいたしております。  去年、私どもが山一へ特融を出しますときに、大蔵大臣談話で、この山一特融の最終処理を含めまして、政府は、この投資者保護基金へ引き継ぐということがうたわれておりまして、それが法的枠組みでもう十二月一日からスタートいたしております。今後、私ども日本銀行といたしましては、この山一証券向けの特融が関係者の理解を得まして、法的枠組みに沿って投資者保護基金に継承をされていくことによりまして、特融の債権は、要するに返済は確保されるというふうな認識でおるところでございます。
  82. 上田清司

    ○上田(清)委員 仮に形式上そうなったとしても、少なくとも山一に対する特融は、債務超過がないことを前提に組み立てられたわけでありますね。これは事実ですよね。そうすると、実際はそうじゃない形で終わってきておる。この現状について、日銀はミスをしたということになりかねませんね。この認識はどうですか。
  83. 小畑義治

    小畑参考人 お答えいたします。  当時の私どもの認識は、先生御指摘のとおり、債務超過ということではないという判断で特融を実行したということでございますけれども、やはりそういう債務超過になるリスク、先生御指摘のとおり、実際にことしの三月末決算では債務超過になっているということが判明しているわけでございます。そういうリスクもございましたので、あえて私ども総裁談話の中で、大蔵大臣談話にもはっきりとうたわれておりますけれども、寄託証券補償基金というのが当時ございまして、それが先ほど申し上げました投資者保護基金に行ったわけでございますが、政府が大蔵大臣談話の中で、やはりそういうリスクもある、臨時異例の措置として日本銀行が特融を実行するという趣旨も踏まえましてそういう手当てが講ぜられたというふうに理解しております。  繰り返しになりますが、引き続きこの投資者保護基金の仕組みを活用することによって、関係者の理解を得て、私どもの山一特融の債権回収を図ってまいりたいと考えておるところでございます。     〔柳本委員長代理退席、鴨下委員長代理着席〕
  84. 上田清司

    ○上田(清)委員 同じような答えになってしまったのですが、私はやはり基本的にミスだったという判断をしております。  そのことを踏まえた上で、信用秩序の維持のために必要と認められる場合、いわゆる四原則に従って特融を行うということですが、この四原則も本当に抽象的で、何ら基準らしきものが私には見えません。もう少し過去の特融の実例を見ながら、やはり集約して、総括して、もっと丁寧なものをつくるべきではないかというふうに私は思いますよ。その辺について御検討を本当にされたのかどうか。これは確かに、社会情勢経済情勢の中で包括的に考えなくてはいけない部分もあります。しかし、日銀特融というものの本質は、まさに、これが出るときはこれ一発で終わり、これで金融危機を収束させる、そういう意味合いを持つものなんですよ。  後で申し上げようと思っておりましたけれども経済界から構想が出ております株の購入の案件であります。日銀特融が乱発されるような事態が出てくると、ああ、いいかいなという感じで、やたらめったらそれを欲しがる話が出てくるのですね。易しい言葉で言えば、甘いぞということであれば、こんなにおいしい話はないということでまさにゆるふん状態になって、日本国の信用がなくなっていくのです。  そういう意味で、四原則ということについて、回収の方策だとか基準だとか、いろいろなものをもう少し丁寧に、原則そのものはあるいは一歩譲ってこれでいいのかもしれませんが、その下につける運用の基準みたいなものをもう少し細かく出していくべきじゃないかということを私は副総裁に強く申し上げますので、御感想でも結構ですから、御答弁願いたいと思います。
  85. 山口泰

    山口参考人 感想でよいということでございますので、一言述べさせていただきます。  四原則といいますものは、御案内のとおりの内容でございまして、恐らく一般的な原則といたしましては、このようなルールをみずからに課すということで間違ってはいなかったというふうに思っております。  ただ、その中で、例えばほかに資金の出し手がない場合というようなことが一つ入っておりますけれども、こういうものは、例えば預金保険機構の中にどういうような仕組みがつくられるか、あるいは公的資金がどういうふうに用意されるかというようなことによりまして、当然それについての判断が変わってくる筋合いのものだと存じます。  また、個別の特融の実行の経緯、あるいは実行した結果どうなったかというようなことにつきましても、一つ一つ、実行の時点はもちろんでございますけれども、アフターケアについても厳しく点検を加えていくべきこと、これは当然のことだと存じます。  したがいまして、先生の御指摘は大変重要なポイントをついていただいたというふうに思いますので、そういうことも念頭に置きながら、こういう四原則で今後もいいのかどうかということはよく考えてまいりたいと思います。
  86. 上田清司

    ○上田(清)委員 お断り申しておきますが、重要なポイントを御指摘いただいたと言っていただきましたので、この次、どうなったかというのを私は必ず聞く男ですから、お忘れないように。普通の方だったら、重要な御指摘をいただきまして、勉強します、検討しますで済んでしまいますけれども、私の場合、済みませんからね。必ず形を出してください。  私の方からも少し申し上げておきます。回収方式、回収条件、回収見込み、回収不能時点での処理方針、この辺が一番ポイントになると思いますので、ぜひ後で議事録を読んでいただいて、そういう視点を持っていただきたいと思います。  なぜそういうことを申し上げますかというと、特融を受ける側の経営者の責任というのが、今日、余り表に出ていないのですよ。  日銀はどういう形で経営者の責任を追及されておられるのですか。この数年間で三つ四つ、経営上の責任をこんな形で追及しました、あるいはこういう形で経営上の責任にたがをはめましたというようなことを実例を挙げていただきたいと思います。
  87. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  実例ということではお答えできなくて本当に申しわけないと思いますが、経営者の責任追及ということに関しましての日本銀行の基本方針でございますが、モラルハザード防止ということは当然でございまして、経営破綻に関しましては経営者の責任が明確化されるということは、当然、日本銀行としても重要と考えている次第でございます。  この場合、私ども日本銀行考えます経営責任の明確化というのは、金融破綻の原因とか態様によってケース・バイ・ケースであるわけでございますけれども、最低限、破綻処理の過程におけるいずれかの時点で、経営破綻に関して責任を負うべき経営陣がその地位を退くべきだというふうに考えております。当然、経営陣におきまして、民事、刑事の責任を生じるような事情がある場合には、法律の枠組みで厳重な対処がなされることが当然であるというふうに考えておるわけでございます。  実例をお示しできないというのは申しわけないと思っております。
  88. 上田清司

    ○上田(清)委員 最近は、現実的には余りそういう実例がないのですよ。だから、最高幹部の皆さんにとっても、口頭でぱっぱと言えないのですよ。  実は、四十年の山一特融のときに、当時の政策委員会はきっちりしているのですね。こんなふうに書いてありますよ。「山一との特約書に基づく指示」の中の一つとして、こういう形で書いてあります。  経営上の責任を明らかにする趣旨から、経営破綻が表面化した昭和三十九年十一月の社長更迭前三カ年において代表取締役にあった者については、その私財を提供させるように取り計らうこと。三カ年にさかのぼらせて私財提供もさせる、こういう取り決めをしているのですよ。  本指示に基づき、四十年十月、元社長、もうお名前は申し上げませんが、ほか七名から次のとおり私財提供の申し出があった。不動産四件、当時のお金でありますが一億六千二百六十万、有価証券九百九十万、現金三百四十万、もちろんこれは特融に充当されております。合計で一億七千六百万、今日の価値に換算すれば、私はよくわかりませんが、百倍ぐらい見てもいいんじゃないかなというふうに思っております。  ほかにもまだたくさんあるのですね。山一の株式、額面で、当時の金額で四千九百万。これは、当時の会長、社長、専務、副社長、こうした役員の人たちが八人。  こういう形で、きちっと政策委員会の中でも議論ができて、特融をやる場合の経営上の責任の追及ということを明確に指示をし、相手側との関係においても取り決めをしているのですね。  今日、そういう事例が私には余り見えないように思えます。単に交代した程度じゃないか、こんな思いがありますので、何か御意見がありましたら、副総裁、どうぞ。
  89. 山口泰

    山口参考人 先ほどの小畑理事のお答えの中にちょっと出てまいりましたけれども日本銀行の特融が発動されます場合には、通常の場合、ある種の金融機関についての破綻処理のスキームの中でそれが使われるわけでございます。その破綻処理のスキームの中では、通常の場合、株主、場合によっては出資者ということになりますが、それに加えまして経営者についての責任の追及といいますか、責任がとられるということがこれまで行われてきたというふうに理解しております。  その具体的な責任のとり方の中で、四十年の山一証券の場合のように経営者の私財提供まで求めるのかどうかということは、これはケース・バイ・ケースによって変わってくるというふうに考えております。
  90. 上田清司

    ○上田(清)委員 いずれにしましても、そういう日銀特融の重みというものをきちっとさせていくことが重要だということを私は申し上げております。  それはやはり、後で申し上げる予定でありましたけれども、関連ですので申し上げておきますが、経団連の企業保有株式買い取り機関構想が出ておりますね。まさに受けたい側の構想ですから、日銀がそれについて何か回答したわけでも何でもありませんが、なぜそんなふうになってきているかというと、今日の日銀特融、あるいは、これからまた申し上げようと思っておりますけれどもコマーシャルペーパーを初めとするさまざまな、渡辺喜美議員に言わせると、非常時においては何でもありだ、こういう意識で言っておられるとは思いませんが、非常事態だからありとあらゆる手段をということをいろいろな形でお考えいただいているのもわかりますけれども、まさにそれがゆえに基準をきっちりしていかなくてはいけない。そういう基準がややゆるふんではなかろうかというふうに私は勝手に思っております。そういうことでありますから、経団連からも、企業の保有株式を買い取る機関をつくって、そこに日銀からお金を出したらどうだ、こんな話まで出てきている。国民の財布を勝手にそんなふうに考えるなと私は思っているところです。  この問題についても、日銀資金供給の体制というものをなめているのじゃないか、こんなふうに私は思っているのですよ。そういう意味でこの問題を考えておりますので、関連ですので、経団連からのこういう構想についてはどのように御判断されているか、お伺いしたいと思います。
  91. 山口泰

    山口参考人 お答えさせていただきます。  先ほど、日本銀行のバランスシートの中で、資産健全性を維持することが非常に重要で、それが一国の信用にも響きかねない問題であるという御指摘をいただきましたし、私どももまさにそのように考えております。  そういう基本的な考え方に照らしまして、例えば、株式の買い上げ機関的なものに日本銀行信用を供与することができるのかどうかという問題を考えてみますと、答えは明らかにノーでございます。
  92. 上田清司

    ○上田(清)委員 大変な見識だと思います。むやみやたらにそういう意味での信用供与はなされるべきじゃないと私も考えておりましたので、大変いい御答弁をいただいたと思っております。  それで、今申し上げましたコマーシャルペーパーの問題でございますが、これも、期間を長くしていただく形を三カ月から一年以内という形でとっておられますし、また、関連するところで、社債を担保にした手形のオペ導入の検討もなされているというふうなことも聞いております。これはやはり、信用リスクがどんどん上がっていく、大きくなっていく、結局、中央銀行信用というのが低くなってくる、こういう流れがどんどんできているのではなかろうか。したがって、国債の格付の引き下げも行われている。こういう関連がどうも気になるなと。  私も、個人的には悩ましいのですよ。大変悩ましいのです。こういう非常時において資金供給をしていかなくてはいけないという状況にあることも事実ですので、大変悩ましいのですが、大丈夫ですよ、こういう歯どめがかかっております、こういう認識ですということを、ぜひ、副総裁、副総裁じゃなくても結構でございますが、お伺いしたいというふうに思っております。
  93. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  ただいま先生から御指摘いただきました点は、先生おっしゃいますとおり、私どもにとりましても、また日本経済にとりましても大変大切なポイントであろうと思います。そしてまた、先生御指摘ございましたように、現在のような厳しい経済情勢のもとでは、特にそういったことについて努力してまいらなければいけないポイントであるということであろうと思います。この点も先生御指摘のとおりだというふうに認識いたしております。  それで、今回の具体的な措置について若干申し上げさせていただきます。  先ほど先生から御指摘のありましたCPオペでございますが、オペの対象とするCPの質につきましては私どもで審査をさせていただくわけですが、この審査の基準については全く緩和するつもりはございません。  それから、先生、先ほど期間を長くという御指摘がございましたが、期間を長くというのは、CPの手形そのものの残存期間が今までに比べて長いものでもよくした、一年以内であればいいということにしたわけでございます。私どもがオペの結果として持つ期間自体は、全く従来どおり三カ月未満ということでやらせていただきたい、こういうふうに思っております。  先生、悩ましい問題だという御指摘がございました。それを私どもとしてはもっと努力すべきというふうな御指摘と受け取らせていただきまして、この要請にいかに的確にこたえていくか、今後とも工夫をしてまいりたいというふうに考えております。
  94. 上田清司

    ○上田(清)委員 その発言、よしといたします。議事録にきちっと残って、国民の前に日銀考え方が記録されていくことも大変大事なことだというふうに私は思っておりますので、非常にいいお話をいただいたと思います。  社債を担保にした手形オペの導入の案件については、どのような結果になっているのでしょうか。
  95. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  社債の問題につきましては、ただいま詳細を検討中でございまして、改めて日本銀行政策決定会合におきまして決定をいただいて実施に移す予定でございます。  ただ、先生御指摘のポイントにつきましては、これにつきましても、CPの問題と全く同じように、十分に検討、工夫をしてまいりたいというふうに思います。
  96. 上田清司

    ○上田(清)委員 また午後に十五分いただいておりますが、前半部分はこれで終わらせていただきます。ありがとうございました。
  97. 鴨下一郎

    ○鴨下委員長代理 午後零時四十五分に委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時七分休憩      ――――◇―――――     午後零時四十五分開議
  98. 村井仁

    村井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。大蔵大臣宮澤喜一君。     ―――――――――――――  金融業者貸付業務のための社債発行等に関   する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  99. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ただいま議題となりました金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  現在、いわゆる金融業者社債発行により不特定かつ多数の者から貸付資金を受け入れることは出資法で禁止されております。これは、社債制度が未成熟であった戦後の出資法制定時において、投資家保護等の観点から規定されたものでございますが、今日、社債に係る諸制度が格段に整備されたもとで、この規制の撤廃は、金融仲介チャネルの多様化による資金配分の効率化等に資するものと考えられます。  本法律案は、こうした状況を踏まえ、金融システム改革の一環として、投資者保護の観点からの措置を講じつつ、金融業者社債発行等による資金調達を自由化するものであります。  具体的には、社債の購入者等の保護に資するため、貸付業務のために社債発行等を行う金融業者につきまして、最低資本金基準等を要件とする登録制度を実施するとともに、証券取引法に基づく有価証券報告書等に融資業務の特殊性に対応した貸し付け状況等の項目を明確に表示するための会計の整理を義務づけることにより、ディスクロージャーの充実を図り、あわせて出資法の関係規定の改正を行うものであります。  以上が、この法律案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  100. 村井仁

    村井委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。      ――――◇―――――
  101. 村井仁

    村井委員長 金融に関する件について質疑を続行いたします。上田清司君。
  102. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、特融の部分からお話をしておりましたが、御承知のとおり邦銀がドルの調達ができないということで、ことしの九月にも政府日銀で支援対策をとるということで外貨預託を行っているというようなことを承っております。  この外貨預託についても、考えによっては外貨建てのいわば特融だ、こう考えても構わないのではないかというふうに勝手に私は思っておりますが、この外貨預託の部分について、どのような考え方で、そしてどのような基準で預託をされ、邦銀へのドル支援につながっているのか、御答弁いただきたいと思います。
  103. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  日本銀行といたしましては、邦銀に対するドル調達支援のために為替スワップ取引等を実施する考えはございません。中央銀行など当局がその国の銀行の外貨支援を安易に行う場合には、いわゆるモラルハザードの問題が惹起するというおそれがありますほか、海外からは、当該国の銀行が危機的状況にある、こういうふうに受けとめられておるところでございます。  先生御指摘の外貨預託の問題につきましては、大蔵省政府対応ということになろうと思いますので、日本銀行としては、申しわけございませんが、コメントを差し控えさせていただきます。
  104. 上田清司

    ○上田(清)委員 日銀としてはやっていないということですか。
  105. 山口泰

    山口参考人 お答えさせていただきます。  日本銀行は外貨預託をやっておりません。
  106. 上田清司

    ○上田(清)委員 わかりました。ありがとうございます。確認でしたので。  それでは、やや週刊誌が喜ぶような話の部分ではありますが、さきの国会あるいは委員会においてもいろいろ、日銀が持つ固有の資産についてもっと処分しろという意見が出ておりました。私もその当時はそう思っておりましたが、処分をするんではなくて、いわば劣化しているという認識を私は持っております、日銀そのものが。したがって、日銀資本増強のために、日銀の株がピーク時七十五万あったのが今は九万五千円ぐらいだということも考えれば、銀行株なんかももちろんうんと下がっておりますが、私は、日銀の方は一部それ以上だというふうに思っておりますので、いっそのこと日銀の持つさまざまな資産を処分して、それを国庫納付ではなくて資本増強のために使っていけ、こういう考え方で申し上げます。  問題になったゴルフの会員権、これはかなり処分しているということは聞いておりますが、保養所の処分状況、それから興銀も支店長宅を十カ所処分したというようなことを私、どこかの報道で見ておりますが、日銀の支店も三十件あるかと思いますので、それも同じようにしたらどうだ、こういうことを含めて総括的に御答弁いただきたいと思います。
  107. 引馬滋

    ○引馬参考人 お答えをいたします。  私ども資産の中で、ゴルフ会員権、遊休不動産等については積極的に売却を進めておりまして、現状では、ゴルフ会員権につきましては、保有は四十二口でございますが、これがことしの十一月末時点で既に二十六口を処分いたしております。また、遊休不動産につきましても、昨年度から積極的に売却をいたしております。ちなみに、売却価格で申しますと、昨年度が四十九億七千八百万、今年度が十一月末までに五十三億九千二百万という形で売却を進めているところでございます。  そのほか、私ども保養所の関係でございますが、これは職員の厚生をどう考えるかという点が一つございまして、なかなか難しい問題ではございますけれども、いわば効率的な組織運営というものを目指していく中で見直しを図る余地があるのじゃないかということで、新たな目で検討していきたいというぐあいに考えている次第でございます。  それから、今先生御質問の支店長舎宅の関係でございます。  実は、この支店長舎宅につきましては、歴史的経緯等々いろいろございまして、今まで私ども、支店からの距離あるいは周囲の環境等、もろもろのことを考えましてこの建築に当たってきたわけでございまして、その際の基準としては、規模が世間の常識から余りかけ離れることのないように、こういう点に留意してまいったわけでございますが、しかし、現時点で改めて考えてみますと、規模等の面で見直しを図った方がいいんじゃないか、こういう舎宅があるというのも事実ではないか、こういう認識を持っております。  したがいまして、支店長舎宅の関係につきましては、もろもろ考える中で、建てかえ時期の到来した舎宅から順次マンション化を図っていきたい、そういう中で規模の縮小を図りたい、こういうぐあいに考えているわけでございます。  そこで、上田先生の問題意識でございます、こういう資産売却の中で自己資本充実との関係ということをどう考えるかということでございます。  この点について申し上げますと、私どもでは、自己資本の関係でいいますと、日銀法で法定準備金の積み立てというのが定められているわけでございます。これに加えまして、私ども資産、金利変動にさらされているわけでございまして、そういう金利変動等に伴う収益悪化に対する備えとして、債券取引損失引当金並びに外国為替等取引損失引当金という特別の引当金勘定を別途計上いたしているわけでございます。  したがいまして、こういう自己資本の充実の状況、これも適正な自己資本比率という水準をにらみながら所要の積み立てを図っていくのが望ましいのではないか、このように考えている次第でございます。
  108. 上田清司

    ○上田(清)委員 保養所の処分の検討というお話でございますが、かなり前から議論が出ていますので、検討じゃなくて、幾つか処分したという話を聞くぐらいじゃないと私は余り納得ができません。ぜひ至急に形をつくっていただきたいというふうに思います。今、便利ないろいろなリゾートの会員証だとかそういうのがありますので、そういうのをしっかり使われればいいんじゃないかなというふうに思います。  時間が迫っておりますので少しはしょりますが、一点、天下り問題について日銀のルール、組織内部のルールがございますが、具体的に名前は出しませんが、日銀の役員の皆さんが金融機関以外のところに天下りされている。天下りじゃない、何というんでしょうか、転職でも結構ですが、しかしそれは、本体じゃないけれども、関係機関ではないかというような考え方をとれるんじゃないかというところが、私の一つ、二つの情報の中にあります。  例えば日銀お金を輸送するときに、これは保険が掛かっていますか。
  109. 引馬滋

    ○引馬参考人 保険を掛けております。
  110. 上田清司

    ○上田(清)委員 そうですね。  そうすると、東京海上火災保険に日銀の元役員が顧問で入っておられますね。これは関係しているからじゃないんですか、そういう保険等の関係に。
  111. 引馬滋

    ○引馬参考人 御指摘の該当する人物がおるのは確かでございますけれども、一切疑惑を持たれるような関係のもとで再就職をしたものではございません。
  112. 上田清司

    ○上田(清)委員 ほかにもNTTの関係、あるいは千葉銀の関連会社でありますところのちばぎん総合研究所、これは役員かどうかわかりませんが、いろいろそういう方々の名前がある筋から出てきております。  もちろん、これは厳密な意味での関係ではないということを言われるかもしれませんし、疑惑を持たれるようなことはないということを言われるかもしれませんが、少なくとも、理事の方々は二年ぐらい何でしっかり休養しないんだ。接待事件の主犯になられた吉沢さんがもうすぐ判決があるわけですが、これは一つの組織体の中で起こった事件でありまして、少なくとも個人の犯罪じゃないんですよ、はっきり言って。その上司の人たちが、疑惑を持たれるような関係じゃないところとはいえども、きちっと就職をされておられる。しかもトップになっておられる。そういうことをすると、私はどうも納得いかない部分があります。そういうことだけ申し上げておきますので、頭の隅っこに入れてください。その辺が国民的な判断じゃないかなと私は思います。一つのタコつぼの中におられると十分そのことがわからないかもしれませんけれども、私はあえて申し上げておきます。  それから、総裁に申し上げます。  私は、総裁の発言録をずっと見ていて、気になるところというよりも、ミスマッチじゃないかというようなのが幾つかあるような気がいたします。特に、十月のG7のときに、総裁は、大手十九行は危機的な資本不足に陥っているというような趣旨の発言をされておられまして、お帰りになった後に、東京三菱銀行の頭取から銀行協会を代表してクレームが出たと思いますが、正しいことでも言っていいことと悪いことがあります。うちの党も、少しそういうことが一回あって問題を起こしておりましたが、正しくても言っては……(発言する者あり)正しくないのかな、あれは。言っていいことと悪いことがありますので、大変気になっております。  それから、十月十五日にも、三月時における資本注入のいわば横並び、護送船団方式のやり方があれだけ批判されながらも、意図されたのかどうかは別にしても、言葉として、特に大銀行についてはできることなら一斉に手を挙げる形になることが望ましいというような趣旨の発言をなされております。  こういうことに関して、今振り返って正しかったのかどうか、お尋ねしたいと思います。
  113. 速水優

    速水参考人 お答えします。  G7で私が申しましたのは、なぜここで公的資本の導入が必要なのかということをアメリカ側にわかってもらいたいということで申したわけです。それは、不良貸し出しに対するコアキャピタル、ティア1と言った方がいいのかもしれませんが、余りにも少な過ぎる、四%だということを、記者会見のときにもちょっとそういう意味のことを言ったわけです。ここで外から外資を入れたり、国内で増資、第三者割り当てなど不可能な状態の中で、公的資本の投入しか今過少資本を埋める手はないんだという説明をしたわけです。それをニューヨーク・タイムズが、四%と言ったのが間違って、これはもう明らかにミスなんですが、そのことについて恐らく、銀行協会長は現場におられませんでしたから、ニューヨーク・タイムズなどを見てああいう発言をされたのではないか。直ちに日銀に来ていただいて御説明をさせていただきました。  それから、十一月の一斉に手を挙げてほしいというのは、これは私の感じでは、どの銀行も、十八行あるいは十九行、いずれも不良資産、不良貸し出しを消すに十分なコアキャピタルをお持ちかどうかということはいささか疑わしいと思いましたし、これだけの金を政府国会の方々が苦労をして準備してくださったことを思うときに、今この機会に公的資本を入れて、思い切って不良資産、不良貸し出しを償却してほしいということを申したかったからであります。
  114. 上田清司

    ○上田(清)委員 時間が参りましたが、速水総裁の過去のさまざまな経歴、見識、また大変なる人生経験等々も含めて立派な方だということを理解した上であえて申し上げます。  どうも国会答弁を見る限りにおいて、少なくとも私に関しては、やや危なっかしい感じがいたします。ぜひ、決するものは決して、後進に道を開くようなことをあえて申し上げておきます。  終わります。
  115. 村井仁

    村井委員長 次に、藤田幸久君。
  116. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 民主党の藤田幸久でございます。  まず、速水総裁にお伺いいたしたいと思います。  就任をされてから約九カ月がたっております。就任されるに当たって、恐らく、こういったことをしてみたい、こういう日銀にしたいという、立て直しの意味で相当の決意でお引き受けになったわけですが、それから九カ月たちまして望まれたことがどの程度達成をされておるかということ。特に日銀独立性ということが今回の新しい日銀法の中の主要な目的でございますので、その独立性を含めて、この九カ月についてどういう御自身の認識、評価をされておられるか、伺えれば幸いです。
  117. 速水優

    速水参考人 御指摘のとおり、四月一日から新しい日銀法が施行されまして、独立性透明性といいますか、アカウンタビリティーといいますか、これが法律で保障され、課題とされておるわけでございます。  これにつきましては、政策委員会の政策決定方法も変わりましたし、独立性については、十分私どもの責任で政策を決めていく。必要に応じて政府委員も加わって聞いていてくださるわけで、連絡はうまくいっているというふうに思っております。  それと、アカウンタビリティーといいますか、透明性、今回のこういう会で、私どものやったこと、やろうとしていること、考えていることを申し開きあるいは御説明する機会ができたことも私どもとしては非常にありがたいと思います。きょうが第一回でございますけれども、今後もう少しこの経験を生かしながら実のあるものにしてまいりたいというふうに思っております。  行内につきましても、いろいろなスキャンダルめいたことがございましたけれども、この九カ月の間に、吉沢君の判決が近く行われますが、明るくなってきたというふうに考えております。日本銀行日本経済の良心でなくてはいけないということを就任のときに申しましたけれども、そういう認識も少しずつ浸透してきているように思います。  どうもいろいろ御心配いただきましてありがとうございます。今後ともひとつよろしく御指導ください。
  118. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ありがとうございます。  独立性という場合に、当然大蔵省からの独立ということがその中に含まれておるわけです。  私が思い出しますのは、総裁が同友会の代表幹事をされておられるころでございますが、カンボジアにソン・サンという首相がおりました。あの方はカンボジアの国立銀行をつくってずっと総裁をされていた方ですけれども、シアヌーク殿下から国立中央銀行総裁と大蔵大臣を兼務しないかという話を持ってこられて、それを断ったんです。その結果、シアヌーク殿下のげきりんに若干触れて、後に、首相になっておりましたけれども、首相をやめさせられたということがあるわけです。  中央銀行総裁と大蔵大臣を兼務するということをそのシアヌーク当時の殿下が望んだということ自体が非常に時代をあらわしておりますけれども、そのことを思い出しておりまして、中央銀行大蔵省というものがある意味ではかなり対等に近くなってきたのかな。きょうこういうヒアリングが行われているということ自体、報告書が出ていること自体、それから先ほどの上田議員の発言の中に、総裁がかなり大胆な発言をされておられると。私は、一方で組織としては独立性を保ちながら、一方でやはり国全体のことを担う機関の長として積極的に発言もしていただきたいなという両方の思いがございます。  愚問かもしれませんが、速水総裁、もし大蔵大臣も兼務してほしいというような質問あるいはそういう要請が参りましたら、どうされますでしょうか。
  119. 速水優

    速水参考人 私は、それは無理だと思いますし、中央銀行総裁というのは全精力を傾けてやるべき仕事だというふうに思っております。ほかに手を出す余裕は全くございません。
  120. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それから、ちょっとこれは質問通告というような形ではしておりませんが、日本銀行総裁はずっと、生え抜きの方とそれから大蔵事務次官経験者の方でたすきがけのような形で来ましたが、これもある意味では独立性に反するのではないか。  今総裁の方ではっきり兼務ということはあり得ないということをおっしゃられましたが、これはやはり組織的に見ますと、コンフリクト・オブ・インタレストといいますか、利益が相反するということだろうと思うのです。  そういう観点からいいますと、例えば大蔵事務次官がやがて日銀総裁になる、もちろん、個々の人物ということもあるかもしれませんが、これは組織同士の利益が相反する。先ほどのカンボジアのソン・サン首相の場合はまさにそういうことだろうと思いますが、そうした場合に、仮にそういった人事というもの、つまり大蔵事務次官がやがて日銀総裁につかれるというようなことについてはどういうふうにお考えになりますでしょうか。
  121. 速水優

    速水参考人 それは人物次第でございますし、そのときに最も適当な人が総裁になったら一番いいということでございますので、一概に大蔵省にいたからどうというようなことを私は申すつもりはございません。
  122. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それでは、幾つか個別の質問に移ってまいりたいと思います。  最近、堺屋経済企画庁長官が、現在の景気状況について、変化の胎動ということも感じられるというふうにおっしゃっておられますが、日本政府の方、あるいは条約なんか特にそうなんですが、難しい局面になりますと、ふだん使わない言葉、表現が出てきたりもするわけでございます。  その変化の胎動ということについて総裁はどう認識されるかということと、非常に厳しいという認識をけさほど示されましたが、そういう厳しい中で変化の胎動があるのだろうか。それで、もし変化の胎動があるとするならば、ここに六カ月分の報告書日銀さんの方から出ておりますけれども、例えばこの報告書の中にそういう変化の胎動と言えるような兆候が実際にあるのかどうか。  認識と、それからこの報告書の中にそういった認識をあらわすような、変化の胎動をあらわすようなことがあるのかどうか、ございましたらばお答えいただきたいと思います。
  123. 速水優

    速水参考人 きょう御討議いただいております報告書は一月から九月までのものでございますので、そこにはそういう考え方は恐らく出ていないと思います。  変化の胎動というお言葉、さすがに作家をなすっておられるだけにいいお言葉だと思いますが、私どもの判断から申しますと、まだ一般の諸計数は依然としてマイナス方向に働いていることは確かでございます。ただ、明るい面ということになりますと、秋口以降、公共事業の発注が大幅に増加してきておりますし、金融システムの立て直しも枠組みが大体整って、これからこれをいかに応用していくかという段階に来ております。中に、電器関係の白物とか、多少明るいものが出てきていることも事実でありましょう。そういうものがこれからどういうふうに変わっていくか、注目をして見ていきたいというふうに思っております。  そういう段階でございまして、これを胎動というのかどうか、ちょっと私は余り言葉になれておりませんので、明るい兆しは確かに出てはいるけれども、まだ全体としては変化していないというふうに思っております。
  124. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ありがとうございます。  それでは、今度の新しい日銀法で明らかになっておりますことは、旧来の、つまり一九四二年にできた日銀法には入っておりませんが、四月一日以降の日銀の目的に明らかになっていることは、物価の安定ということを言っておるわけでございます。これは、新しい日銀法の二条に政策目標として物価の安定ということが入っておるわけでございます。この物価の安定というものはどんなことを日銀の方で意味されておるのか。  つまり、経済は、まともに活動が行われておれば上がっていくのが普通なわけですけれども物価の安定というのは、ある程度、そういう意味で安定的に物価が上昇していくことを物価の安定というふうにお考えなのか、それとも完全に物価が停止をしてゼロインフレ的なことになるのを物価の安定とお考えになっているのか、物価の安定の意味合いについてお聞きをしたいと思います。
  125. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  物価の安定とは何かというのは、非常に抽象的に表現させていただきますと、インフレでもない、デフレでもない、そういう状況ということになります。  それはゼロインフレなのか、あるいは数字にあらわすとどうなのかというのは大変難しい問題でございまして、物価指数というのにはどの国でも若干のバイアスがあるというふうにも言われております。日本についてもそのような指摘がございます。  そういうことも考えますと、私どもは頭の中に物価についての明確な数値目標を持っているというわけではございませんが、インフレになってはもちろん困ります。逆にデフレも経済に対して悪影響を持つものでございますから、そのどちらでもない状態を目指すべきであるというのが日銀法の精神ではないかと理解しております。
  126. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それではちょっとお聞きしますが、この十四ページに物価についてのページがございまして、そこに三つの物価指標が出ておりまして、三つとも急激に下がっております。つまり、卸売物価と消費者物価企業向けサービス価格、三つともかなり急激な形でカーブが下がっておりますが、物価が下がっているということは、しかもかなり急カーブで下がっておるということは、これはやはりデフレと言えるのでしょうか。
  127. 山口泰

    山口参考人 確かに御指摘のとおり、最近の物価指標は、どういう指標をとりましても下落ぎみの状態になっております。月によってもちろん振れはございますけれども、ならしてみますと、やはり物価の基調が大変弱い状況にあることは事実だと思います。そういう意味で、物価の一般的な下落傾向をデフレと呼ぶのであれば、現状はデフレ的な状態であろうというふうに思っております。  デフレスパイラルとか、また別の言い方はございますが、そういう話になりますといろいろ定義もややこしくなってまいりますので、これ以上立ち入るのは差し控えさせていただきます。
  128. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 デフレスパイラルとは申しませんが、一般的下落傾向をデフレと呼ぶならばデフレというふうにおっしゃっていただいた。しかも、一般的な下落というよりも、このカーブを見てみますとかなり急落でございますから、これははっきりデフレだというふうに御認識をいただいたということだろうと思います。  そうしますと、例えば堺屋長官の先日の国会答弁で、物価が値下がりしていることをデフレといいますというような答弁もございましたし、この表で三つもかなり急激に下落をしているということはデフレだろうというふうに思うわけです。  そうすると、先ほどの物価の定義に戻りますけれども、いろいろな国に中央銀行がございまして、中央銀行ももちろんいろいろな形態がございますが、各国の中央銀行に課せられている最大の使命、共通の使命というのは、急激な物価の上昇といいますかインフレの回避である。そうしますと、先ほど来申しておりますように、デフレ、物価が急落した今はデフレ、それも避けるし、それから急激な物価の上昇、つまりインフレも避ける、そしてインフレでもデフレでもない物価の安定という場合に、先ほど指標を挙げることはできないとはおっしゃいましたが、全く静止してといいますか、水平線のようなものを安定というのか。  やはり経済活動というのは、多分、物価が水平線でいった場合には経済活動が決してうまくいっていないという状況だろうと思いますので、ということは、少なくとも水平線上ではなく、物価がやはり多少上がっていくことを目標にすることを、日銀の、先ほど副総裁は精神とおっしゃいましたが、政策目標の中に、日銀法の中に入っているところの物価の安定という経緯からいたしますと、やはりある程度安定した物価の上昇といいますか、少なくとも水平線ではないというようなことを目標にされていないと整合性がないのではないかという気がいたしますが、いかがでしょうか。
  129. 山口泰

    山口参考人 先生御指摘の、物価が少しずつ上がっていく状態というのは、これはやはり、程度にもよりますけれども、持続的に物価が上がっていく状態というふうに仮に表現させていただきますと、ある種のインフレあるいはインフレ的な状況なのではないかというふうに拝察いたします。  もしそういうことでありますならば、やはり物価安定という範疇からはいささか外れるのではないかというふうに思っておりまして、持続的に物価が上がっていく状態というのは、中央銀行政策目標から考えますと、やはりとり得ないところというふうに考えております。
  130. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 つまり、持続的なというのは、サステーナブルなという意味で言えば少しずつという意味ですから、それがインフレと言えるのかどうか。インフレという場合には、形容詞の問題がありますが、やはりある程度急激な物価の上昇ということですが、ただ、もちろん急激であってはならないわけですが、一方、水平である場合には、経済活動とすれば、やはり停滞の現象あるいは兆候と見ざるを得ないのではないか。  したがって、継続的にといいますか、あるいは少しずつというかわかりませんけれども、やはり水平線以上の、コンマ一なのかコンマ〇〇一なのかわかりませんけれども、少なくとも水平線以上ではなければ、日本銀行世界経済大国であるところの、金融的にも世界じゅうに非常に影響の大きい日本中央銀行とすれば、逆に水平線を目標にしているのでは経済の健全な運営というものは難しいのではないかという気がいたしますが、いかがでしょうか。
  131. 山口泰

    山口参考人 大変難しい問題点の御指摘だというふうに拝聴いたしました。  コンマ幾つというような物価の上がり方をもってインフレ的だと言うのは、これは言い過ぎだろうというふうに思います。先ほども申し上げましたけれども物価指数にはある種のバイアスというのがございまして、そういうものを十分差し引いて考えるべきだというのも最近の国際的な議論の一つの特徴だろうというふうに思います。そういう議論をさらに一歩進めますと、数値であらわすのはなかなか難しいので、むしろ企業なり一般国民の頭の中で、物価というのは今後毎年毎年上がっていくものだというような予想といいますか、期待といいますか、そういうものができる限り存在しない状態をもってインフレ的でないというふうに考えてはどうかというような問題の提起もございます。私どもも、実はそういうふうなインフレマインドみたいなのが存在しない状態というのが割合に大事なことではないかというふうに思っております。
  132. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 前の、つまり戦争中にできた日本銀行の目的、旧日銀法によりますと、「日本銀行ハ国家経済総力ノ適切ナル発揮ヲ図ル為国家ノ政策ニ即シ通貨調節金融ノ調整及信用制度ノ保持育成ニ任ズルヲ以テ目的トス」と第一条にございますが、これを今回あえてこの二条で「物価の安定」としたというのは、やはり前の日銀法が十分でない、あるいはふさわしくないという反省から、この物価の安定という非常に重い言葉を入れたんだろうと思うのです。  そういう観点からしますと、今副総裁は、インフレでないということはおっしゃられましたが、逆に言いますと、デフレでない。デフレでないというのは、先ほどのこの三つの指標からそれがデフレだという定義に基づいておりますけれども、そういう観点からしますと、いろいろなバイアスがあったにしても、あるいは逆に、バイアスがあるゆえにこそ物価の安定という定義づけをはっきりさせて政策目標を立てていくのが、むしろ、新しい日銀のせっかくここまで歩んでこられた姿ではないか。  だから、バイアスがあれば、あるがゆえに、少なくとも例えば水平線以上ではあるということを政策目標にする、そういった考えがむしろ必要ではないかと思うわけですが、総裁、いかがでしょうか。今副総裁とやりとりをしておりましたが、その辺について、もし御意見をいただければありがたいと思います。
  133. 速水優

    速水参考人 物価の安定というのは、インフレでもデフレでもなくて、持続的な成長が続いていくという状態を私どもは目標にしてまいりたいというふうに考えております。
  134. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 では、持続的成長というのは、物価の持続的な成長というふうに一応とらせていただきたいと思います。  それで、日本銀行の新しい体制にとって、物価の安定ということを入れた非常に重要な意味があると思いますので、ぜひ、バイアス等ほかの要因があればあるほど、やはり明確な政策目標といいますか、日本銀行はこういうことを目指しているということをはっきりおっしゃっていただいた方が、私自身は新しい日銀のあり方としてふさわしいのではないかと思っておりますので、その持続的な成長ということを踏まえた物価の安定ということをぜひ今後ともさらに進めていただきたいというふうに思います。  それでは、次の質問に移りたいと思いますが、先ほども上田議員の方から、バランスシートについての質問がございました。日銀自体の資産についてでございますけれども、上田議員は、九月までの日銀資産について、特に特融の観点から主に質問されておられたと思います。  ところが、けさほど別の資料も配られてまいりましたが、十一月末の資産勘定を見てみますと、特融よりも、むしろ預金保険機構に対する貸付金が七兆六千億に上っている。つまり、九月までは恐らく特融の形で日銀資産が記されておりましたけれども、それが随分預金保険機構の方に、数字としては七兆六千億というふうに出てきておるわけです。  この預金保険機構に対する貸付金七兆六千億円の中には長銀に対するものもかなり多いというふうに、半分近いのでしょうか、聞いておりますけれども、そうしますと、ことしの冒頭で八十八兆円になったものが一たん下がって、また今度七兆六千億円、実質的には預金保険機構に対する貸付金がふえたぐらいのものでまたふえてきているということがあるわけでございます。  そうしますと、これからさらに、特別景気対策の二十四兆円なんかに関しましても、資本注入を日銀の方から行うというふうな形で、さらに日銀資産勘定が劣化するということが十分予想されるわけですけれども、これに対してどういう対応をされるおつもりなのか、お伺いをしたいと思います。
  135. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、現在日本銀行では、預金保険機構に対しまして七兆六千億円、うち日本長期信用銀行向けには三兆七千億円の貸し出しを行っております。  先生お尋ねの、今後どういうことになるのかということでございますが、日本銀行の預金保険機構に対します貸し付けにつきましては、従来から最後の貸し手という中央銀行の性格を踏まえまして慎重に対応してきているところでございます。  私どもが預金保険機構に貸し出します大前提は、やはり預金保険機構において民間からの借り入れないしは債券発行等の民間からの調達に最大限努力していただく、その後どうしても必要資金が足りないというときに、預金保険機構の業務の円滑な遂行のため、いわゆる預金保険機構が必要不可欠な範囲内において私ども日本銀行としては貸し付けを実施しているということでございます。  したがいまして、日本銀行からの今後の預金保険機構に対します貸し出しがどの程度の増加になっていくのかというのは、一に、金融機関の経営動向によりますけれども資金需要の発生の仕方と預金保険機構自体の民間からの資金調達努力、自助努力いかんにかかわることでございますので、私どもとしては、今後とも預金保険機構に対しましては、先ほど申し上げました必要欠くべからざる範囲で適切に対応していきたいというふうに思っておるところでございます。
  136. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 これからさらに二十四兆円の関係からも日銀の方に要請が来ることもあり得るわけですが、今回の報告書にもございましたけれども日銀資産が劣化するということは円そのものに対する信頼が失われるということでございまして、これは単に日本銀行だけの問題ではなく、国全体に対する信用にかかわる問題である。したがって、仮に大蔵省あるいは政府の方からそういう要請があっても、やはり日本銀行として、これは七・六兆円ぐらいでしたらまだしも、これからもっとけたの違う可能性があるわけでございますから、それに対してはやはり確固とした態度を示していただく必要があるのではないかと思うわけです。  ドル紙幣にはイン・ゴッド・ウイ・トラストとありますから、大変ドルに対する信頼は高いわけですが、円の場合にはそういうことがございませんで、ますます円に対する信頼が減っているわけですけれども、やはり円というのはますます国際化していく必要がある。例えば、ドルというのに対して円ということも非常に国策上必要な時期で、そういった時期に日本銀行にそういう形での圧力がかかってくるということは、結果的には日本全体の利益にならないのではないかという気が私はいたしますが、その点について総裁か副総裁からお答えをいただければ幸いです。
  137. 速水優

    速水参考人 御指摘のとおり、私どももその点は十分懸念いたしております。これからまだふえることは間違いないと思いますし、それに対して私どものバランスシートが膨らんでいくということは何とか、内外の信頼につながっていくものでありますだけに、早く預金保険機構でも自己調達ができるように手順を進めていただきたいということは、ここへ来て特に強く思っておる次第でございます。その点は、今まで余り起こったことのない事態でございます。  それと同時に、やはり私どもの持っておりますほかの資産が、自由に動かせる、流動性のある資産にしていかなければいけないというふうに思っております。銀行券、今約五十兆ですけれども、今度の預金保険の貸し付けだけでも七兆六千億ですから、かなりのウエートがあるわけでございます。これとまた、国債が大体五十兆ということで見合っておるわけで、これにつきましても、市場で売買のできる国債の状態で持っていきたいというふうに思っております。  その辺、それができていきませんようですと、資産が膨らんでいきますし、中身を疑われますし、私ども金融調節も、私どもの持っている資産を売買することによって資金の調整、金融の調整ができていくということが望ましい方向であるというふうに考えております。
  138. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ありがとうございました。  非常に重要な問題でございますので、総裁初め、ぜひ熱心に取り組んでいただきたいというふうに思います。  それから、時間がありませんので、最後にもう一つお伺いをしたいと思います。  いわゆる為替スワップの実現の可能性についてお伺いをしたいと思いますけれども、昨年の拓銀と山一の破綻が引き金になって金融不安が発生して以来、日本銀行がドル買いが非常に難しくなって、法外な上乗せ金利、ジャパン・プレミアムが乗せられるという状況になっておるわけです。したがって、日本銀行は、まず円を調達して、そこから外国の銀行を相手にした資金調達を行うということになっておるわけですけれども、一方で、外国の銀行の方は、日本の短期国債をマイナスの金利で購入するといった異常な事態まで起こっておるわけです。  それで、この報告書の二十二ページにもジャパン・プレミアムの表が出ておりますけれども、発生してから一年以上に及んでおります。これを解消する一つの手段として、日本銀行が邦銀と外国の銀行との間に割って入るというような形での為替スワップを行うことによって日本銀行の外貨繰りを助けるという方法が考えられるわけですけれども日本銀行はなぜ為替スワップを行わないのか。それは行えないのか、行わないのか、その辺についてまず御説明をいただきたいと思います。
  139. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のとおり、日本銀行としては、邦銀に対します外貨支援のために為替スワップ取引を実施する考えにはございません。  まず、一つの認識といたしましては、現在の邦銀が外貨を調達いたします市場を見てみますと、要するに年末越えの外貨調達にもほぼめどがついてまいりまして、先生御指摘のジャパン・プレミアムが非常に高く、あるいは為替スワップコストも大変高くてマイナス円金利が見られたような状態と比べますと、相当落ちついてきているという認識がございます。  この背景は、一つは、邦銀自体の自助努力と申しますか、外貨資産を思い切って圧縮していくという一方で、円資金をドルに転換するという、お話のございました円投を大規模に進めたということが寄与しているということと、もう一つは、私どもが年末越えの潤沢な円資金をずっと継続してきている、それが要するに邦銀のそういう自助努力をバックアップしたというふうにも認識いたしております。  したがいまして、今後、年末に向け、引き続き邦銀の外貨繰りについては注意深くモニタリングしてまいる所存でございますけれども、現時点では、そういう邦銀の外貨状態でございますので、為替スワップは行う必要がない。  それから、もう一つ一般論的に申し上げれば、中央銀行当局そのものが銀行に外貨支援を安易に行うことは、モラルハザードの観点、あるいはそれがどういうふうにマーケットに受けとめられるかというようなことを考えますと、やはり相当十分留意して慎重に対応せざるを得ないということがあろうかと思っております。
  140. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 今のお答えですと、行えないじゃなくて行わないということでしたから、制度上は行おうと思えば行えるというふうに考えてよろしいのでしょうか。
  141. 小畑義治

    小畑参考人 おっしゃるとおりでございます。
  142. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 余り安易にやるとモラルハザードを起こすという話もございましたが、外国の、特にヨーロッパなんかの中央銀行は随分為替スワップをやっておるようです。そうしますと、ヨーロッパなんかにおいては、中央銀行が為替スワップをしてモラルハザードが起きてしまった、あるいは市場からの信頼を失った、そういうことでございますでしょうか。
  143. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  確かに、一部の国で為替スワップというのを金融政策の一つの道具として使っているような場合がございます。  今、藤田先生御指摘の、我が国の邦銀を対象にいたしましたドル資金の供給という意味での為替スワップは、日本金融機関の国際市場における信用力が残念ながら低下してしまい、ドル資金の調達がなかなか難しくなっている、あるいは調達する場合に高いコストを払わなければいけない、こういう事態に対処するための一つの提案として出てきている考え方であろうと思います。  したがいまして、一般的な金融政策市場オペレーションの手段として使います場合と、現下我が国金融機関対策として使います場合とでは、おのずから市場の中で受け取られる性格が、相当これは違うのではないかと考えております。
  144. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それでは、副総裁の前の参考人の方の先ほどの発言の中で、年末を迎えて随分潤沢に邦銀に資金を提供しているのでという話がございましたが、ということは、先ほどの日銀資産との関係でいいますと、日銀の方が随分資金を提供しているわけですね。そうしますと、今副総裁がおっしゃったように、邦銀の信用が非常に低下してきている、したがって、そのためのスワップは仮にしないとしても、先ほどのお話で、信用低下した邦銀を救うためにかなり資金を日銀の方で投入している、したがって、日銀の先ほどのバランスシートじゃございませんけれども、随分日銀自体の資産悪化しているというふうにもなっているわけですね。その辺のバランスといいますか、整合性はどういうふうにお考えになっているのでしょう。
  145. 山口泰

    山口参考人 確かに、日本銀行がドル資金の調達を海外の市場でするのが難しくなってくる度合いに応じまして、国内で円資金を調達して、それを民間銀行市場でドルに転換してそのドルを海外の決済に使うというようなことがここ一年間ほどふえてきております。これは結局、日本国内マーケットの中での円資金の調達がふえてくるということでございます。  それに対しまして私どもは、それを放置しておきますと国内の金利が大幅に上昇する、経済に対してまたマイナスの圧力がかかるということになりますので、それを未然に防止するために、潤沢な資金供給という言葉を使っておりますけれども、そういう方針にのっとりましてオペレーションをやってまいりました。これは例えば、先ほど来議論が出ておりますコマーシャルペーパーオペレーションを積極的に行うとか、買い入れ手形、国債、いろいろなものを動員いたしまして資金を供給してきたわけでございます。  ただ、資金の供給を行います場合に、これも先ほど来再々申し上げておりますように、日銀が取得する資産の質を万が一でも落とすことがないようにということ、これは最大限注意してやってきたわけでございまして、ここまでのところでは、バランスシートの大幅な拡張ということは起きておりますけれども資産の劣化が大幅に進んでいるということは起きていないというふうに思っております。  それから、一言だけ。先ほどの藤田先生の御指摘の中で、持続的な経済成長の中に物価の持続的な上昇も入れて御理解になっておられたと思いますけれども物価の持続的な上昇という部分は私どもの理解の中には入っておりませんので、よろしく御理解賜りたいと思います。
  146. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ありがとうございました。  六カ月の間に、日本銀行独立性透明性は大変高まったと思います。例えば大蔵省との関係における独立性は制度上随分高まったような気がいたしますが、やはり今までのいろいろな歴史の流れ、それから配慮もあると思いますので、まだ歴史から十分独立していないといいますか、とらわれから自立されていないようです。もちろん、それはすぐ変わらないと思いますけれども、ぜひこれからは、今までのしがらみといいますか、歴史からぜひ自立をして、独立をして進んでいただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  147. 村井仁

    村井委員長 次に、谷口隆義君。
  148. 谷口隆義

    ○谷口委員 公明党の谷口でございます。本日は、この四月から新日銀法が施行されて六カ月間の日銀動きについての報告についての審議ということで、大変結構なことであるというように思っております。  御存じのとおり、旧日銀法というのは昭和十七年に制定されて、いわば一九四〇年体制というような言葉がございますが、戦時経済体制の中で成立した法律がこの三月まで行われてきたわけでございます。いろいろな問題もございまして、独立性また透明性というようなお話も、総裁のお話、冒頭ございましたが、そういうようなことでこの四月から新日銀法が施行されたというわけでございます。  新日銀法はこの四月にスタートしたわけでございますが、ちょうどこの四月に、一方では外為法の自由化と申しますか、ビッグバンが実質的に始まった。本年十二月には投資信託も自由化されて、どんどんそういう意味においてビッグバンが進行しておるわけでございます。  従来、我が国金融を取り巻く状況というのは、いわば金融鎖国と言われるような状況にあったというように聞いておるところでございますが、新日銀法が施行されて、施行されると同時に、いわば国際的な金融社会との間で、もう本当に大変な激動の中で発足したということではないかというように思っております。  また一方で、バブルが崩壊してから以降、景気も大変悪化いたしておりまして、そういう状況の中で政府も、景気活性のための政策、また金融政策においても、この報告書を見せていただきますと、デフレスパイラルに対する対応等々やられておるわけでございまして、大変な時期に新日銀法がスタートされたなというように思っておるところでございます。  何か、本日の午前中の委員会の審議の中で、宮澤大蔵大臣が、我が国経済状態はもう既にデフレ経済に入ったというような御見解を示されたようでございまして、まさに大変な経済状態であるわけでございます。  それで、そのような観点で何点かの御質問をさせていただきたいというように思っております。  本日は、三木審議委員が来ていらっしゃいますので、冒頭、私が質問をさせていただきまして、終わればもう帰っていただいて結構でございますので、まず初めにお聞きいたしたいというように思います。  これは、本年の九月九日の開催分、金融政策決定会合において、準備預金制度の準備率を引き下げるという議案を出されて、これは否決されたというようにこの報告書にあるわけでございますが、この議案の内容を見せていただきますと、準備預金制度の準備率を引き下げ、所要準備額を約一兆円減少させる議案を出されたということのようでございます。  後で私も述べたいと思いますが、実は、五月に同様の質問緊急経済対策特別委員会で総裁に来ていただいて質問をしたことがあるわけでございます。  十月十三日の金融政策決定会合において、預金準備率の引き下げを軸に追加的な金融緩和策を検討されたというような状況でございますが、その際に準備率の引き下げまで至らなかったと申しますか、これは否決されたという状況のようでございます。  まず初めにお伺いいたしたいと思いますが、三木委員に、このような議案を出された背景なり趣旨なりをまず述べていただきたいというように思います。
  149. 三木利夫

    ○三木参考人 審議委員の三木でございます。お答えさせていただきます。  お尋ねの準備率引き下げの件でございますけれども、このときの私の提案でございますが、九月九日の提案は、実は六月十二日の会合においてこの提案を同じようにさせていただいていまして、それに引き続く二回目のものでございます。  その提案理由でございますけれども、いずれも議事要旨に記載されておるとおりでございますけれども、ここでは六月十二日の議事要旨に記載されております内容に従いまして申し上げたいと思っております。  概要を申し上げますと、まず現時点、つまり議論がなされた当時のことでございますが、現時点での金利の引き下げにつきましては、当時さまざまな制約がございました。しかし、経済情勢が非常に厳しい中で政府が大規模な経済対策をちょうど打ち出しているさなかでございます。そういう中で、日本銀行としても金融政策面で何らかの対応をとることが望ましいというふうに私は考えました。  それで、準備率の引き下げにつきましては、その直接的な金融緩和効果は小さいとはいえ、金融機関の融資対応力の強化に多少なりとも好影響があるんじゃないかということでございます。私としましては、貸し渋りの問題の解消にも効果があるとすればこうした措置を講じていくべきだ、こういう考え方にのっとりまして提案をさせていただきました。  また、今御質問の九月九日の会合におきましては、金融市場調節方針につきまして、無担保コールレート、いわゆるオーバーナイト物でございますけれども、誘導水準を平均的に見て〇・二五%前後で推移するように促し、それから金融市場に対してあわせて潤沢な資金供給を行うということに加えまして、六月と同様の趣旨から準備率の引き下げを御提案させていただいたわけです。  準備率の引き下げにつきましての私の提案理由は以上でございますけれども、私の意図をつづめてちょっと申し上げますと、金融機関の融資対応力強化などの量的緩和のイメージ、やはり企業家計の心理にそういうインパクトを与えよう、そしてデフレ懸念を払拭したいということでございます。その意味では、このような私の主張は、九月九日においては準備率引き下げの件についてのみ否決されましたけれども、その後の議論を経まして、さきの十一月十三日のオペ、貸し出し面の三つの措置決定という形で結実することになった、こういうふうに考えてございます。  お答えいたしました。
  150. 谷口隆義

    ○谷口委員 どうもありがとうございました。  まさに私も、三木委員がおっしゃっておられますように、貸し渋りの問題に対して非常に危機感を感じておるところでございまして、九月の九日にそういうような御提案があったのですが、これは否決されて、九月の中旬に日銀が超過準備預金を容認するというような状況になったようでございます。これは、インターバンク市場の資金取引を円滑にすることによってマネーサプライの増加を期待しようということで超過準備預金を容認したということのようでございます。  先ほど私が申し上げましたように、五月の十四日に緊急経済対策特別委員会で質問した折に、このときも本年の三月末にかなり積み上がりまして五兆七千億程度まで積み上がったのです。大体三兆五千億ぐらいでございましたので、こういう無利子の預金を信用リスクの問題があるから準備預金に積み上げて結局市中に出ないということについては、これは問題があるので、準備率を引き下げることについてどのように考えるか、このように申し上げたところでございます。  その後、また状況を見ておりますと、この十月の準備預金残高の積み上げ期間に義務づけられた必要最低限を大幅に上回って累計超過準備預金が過去最高の十兆三千六百億円。この中には預金保険機構経由の長銀に対する三兆円も入っておるようでございますが、いずれにいたしましても十兆円を超えるような積み上げまでいっておるわけでございます。  このような状況の中で、御存じのとおり市中における貸し渋りの状況は一向にやむ様子がなくて、先日、日銀の方からの報告を見ますと、やはり前月対比で貸し渋りは間違いなく進行しておる、こういう状況でございますが、このようなことにつきまして、まず初めに総裁に、準備率の引き下げの件につきまして御見解をお伺いいたしたいというように思います。
  151. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  準備率の引き下げという提案につきましては、政策委員会の金融政策決定会合の中で勉強もいたしましたし、議論もさせていただきました。  結果といたしましては、準備率を引き下げることによる効果がかなり小さいのではないかというのが多数意見としての判断でございまして、効果がより大きなものとしてどういう措置があり得るのかというようなことを種々検討した結果、九月九日のような措置になり、さらに十一月十三日のような年末を意識した資金対策という措置になったというふうに理解しております。
  152. 谷口隆義

    ○谷口委員 総裁を指名した場合には総裁の御答弁をいただきたいというように思います。山口さんはまた山口さんで指名して御発言をいただく場合もあると思いますので。  そういうことで、大変微妙な状況でございます。市中の貸し渋りの状況はもう大変な状況であって、確かに金融機関の経営状況も大変厳しい状況にあるわけでございますが、一方で市中における貸し渋りの状況が大変厳しい。これに対して日銀として、先ほど申し上げましたが、準備率の引き下げも含めて、貸し渋り対策ということでまず総裁に御答弁をお願いいたしたいというように思います。
  153. 速水優

    速水参考人 貸し渋り対策につきましては、先ほども申し上げたかと思いますが、今回の十一月十三日にとりました私どもの対策は、貸し渋り対策を当面の主たる目標にしたわけでございます。  内容は、御存じのように、CPの買いオペを、今まで三カ月物に限っておりましたのを、一年物までに範囲を拡大したということでございます。  それからもう一つは、九月末の残高に対して十月、十一月の貸し出しの平均残高がふえている銀行に対しては、十二月の十日過ぎに、数字がわかりました段階で、貸し出し増加分の半分までを日銀が直接貸し出しをする、これは信用金庫までを含めて全国店でいたします。これは、貸し出しをふやしたところに対して、それに報いるというのはおかしいのかと思いますけれども、末端に心を使って貸してもらっているんだというつもりで、それと同時に、これで年末十二月に一回、一月、二月、三月までやっていくつもりでおりますが、貸し出しをふやしていく。  明年度になって、年度末対策としてもう一つ決めましたことは、社債とか貸し出しの証書を根担保にいたしまして銀行から手形の入札買い取りをやるということを決めまして、詳細はまだ明年になってから決めることになっておりますが、いずれも当面の貸し渋りに対応した日銀政策とお考えいただいていいと思います。
  154. 谷口隆義

    ○谷口委員 今おっしゃったのは大体同僚議員が質問いたしましたので、的確に、簡潔に御答弁をお願いいたしたいというふうに思います、余り時間がないものですから。  それで、さっきおっしゃったように、企業に対して資金支援ということで、貸し渋りの対策として今回されたというお話でございました。これは、日銀の今までの守備範囲を超える対応である、このようにも言われておるわけでございまして、一方で、先ほど同僚議員から質問ございましたように、日銀の財務状況資産劣化の問題なんかも出てくるんじゃないかというように言われております。  このように極めて今大変な時期でございますから、このような緊急時の対策としてこういうことも必要なんでしょう。しかし一方で、それはあくまでも回収を前提にしたものでなければいけませんね。そういう観点を外すわけにはまいりません。ですから、資産が劣化して回収ができないというような事態は避けていかなければいけません。  私が言いたいのは、こういうような場合に、一方で産業構造の転換であるとか企業再生の展望であるとか、このような観点がないと、出しっ放しで、ただ企業の資金繰りがうまくいかないということでCPを引き受け、また直接社債を引き受けたりするようなことをやっておると、それこそ先ほどから同僚議員がおっしゃっておりますように、資産が劣化し、日本全体の信用状況低下し、円安になり、これが日本売りになっちゃうというように危惧されるわけでございますが、そういう観点が今回の企業資金支援にはおありであったのかどうか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  155. 速水優

    速水参考人 民間の債務を債券化してそれを買うということでございますが、これはほかの国でも中央銀行は通常やっている取引でございます。もちろん、適格であるかどうかの判断はそれぞれ中央銀行が決めるべきことであると思います。私どももそういたします。  特別の臨時の貸し出しの方は、これは貸し出しをふやした銀行に我々が貸すのであって、それは後どこへ貸すべきかということはそれぞれの銀行が判断して決めていただかなければいけない。その意味では、何でもいいから貸せということではございません。銀行が新たに貸す場合に、自己の判断でこれは競争力が将来ないと思えば恐らく貸せないでしょう。その辺のところの判断は第一線の金融機関考えるべきことだというふうに思います。
  156. 谷口隆義

    ○谷口委員 金融政策全体の問題としてそのあたりはとらえる必要があると思いますよ。ですから、金融機関が、融資先というか、そういう金の出し先について勝手にやりなさいというわけじゃないわけですから、金融政策全体の問題として、そのあたりを整合性のとれた金融政策をやっていかないと、それこそ根雪化するといいますか、企業の資金繰りが悪くなっちゃうと結局回収できないというようになって、結局、資産劣化するというか、こういうことになりかねないわけでございますから、そういう全般的な金融政策の立場でぜひ行っていただきたいというように思います。  それで、CPが出ましたので、ちょっと総裁の個人的なことと申しますか、お聞きしたいのですが、総裁は以前、日商岩井という商社の社長をやっていらっしゃったわけでございます。今マスコミ等々についてもそのあたりの状況を報道されておるところでございますが、先ほど日銀の方に頼んで、これは金融機関以外だったと思いますが、CPオペ残はどのくらいあるんだと聞きますと、十年九月末でCPオペ残五兆六千億、このうち日商岩井がどうも五千三百七億円ある。そうしますと約一割になるわけでございますが、これは金融機関の資金支援ということにつきまして、割合が極めて高いんじゃないかというように思うわけでございます。このあたりについて御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  157. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  個別企業CPをどのように買っているかといったようなことにつきましては、申しわけございませんが、お答えを控えさせていただきたいと思います。  ただ、先ほど先生御指摘の五千三百七億円という数字は、これは偶然の一致かもしれませんが、ことしの九月末時点での有価証券報告書に日商岩井のCP発行残高全体として記載されていた数字かと存じます。
  158. 谷口隆義

    ○谷口委員 個別企業のことは言えないということでございますが、私これを見ますと、CPオペ残の状況から日商岩井の今の残高を見て、これはやはり極めて偏っておるのじゃないかなというように思うわけでございます。  今、貸し渋りの問題が大変だ、だから貸し渋りの対策は何があるんですかとお聞きしたら、企業資金支援として、CP買い入れ対象を拡大したり、期間を三カ月から一年にしたり、こういうようなことをやっておるというようなことでございますが、これは広く、あまねくやらなきゃ意味がないわけでしょう。特定のところに偏るというのは、これは僕は余りよくないことであると思うわけです。  また、先ほども申し上げておるように、総裁が以前いらっしゃった企業でございますので、余計そのあたりは、利害関係と申しますか、そういう特殊な関係と申しますか、これが疑われるような状況になるんじゃないかというように思うわけでございまして、もう一度御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  159. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  ただいま先生が御指摘の点は、私どもにとりまして大変大切なポイント、御指摘のとおりであろうと思います。  そこで、私どものオペの仕組みでございますけれども、個々の企業CPを私どもが買いますときには、オペで買うにしても、買うたびにそのために審査するのではなくて、あらかじめまとめてこの企業についてどういう状況にあるかという形で審査させていただいております。  それから、実際にオペをする場合には、この企業を買うというようなことは私ども一切指定いたしません。民間金融機関さんが、こういうCPオペを全体としてこれくらい私どもは付与したいというオファーに対してレートを入れてこられるわけでございまして、その結果、競争入札で残った方がそのCPをお持ちになるということでございますので、そもそも私どもでどの企業CPを買うことになるかということは、私どもからあらかじめ指定することはできないわけでございます。
  160. 谷口隆義

    ○谷口委員 それにしても、やはり偏っておるなという印象はぬぐえないということでございます。  それで、こればかりやっていると時間がありませんので、次にちょっとお聞きしたいんですが、私は前国会金融再生法案並びに早期健全化法案の協議に参加しておったんです。その折に、総裁に来ていただいてお話をお伺いしたことがございますが、そのときに、デリバティブの発言をされたんですね。私たちがいろいろ協議をやっておるそのさなかに、長銀のデリバティブの想定元本が今五十兆円ある、この五十兆円は極めて国際的な信用問題になるから、大変大きな問題になるから早くやらなきゃいかぬ、こういうようにおっしゃいました。  その後、御存じのとおり、長銀は特別管理に入ったわけでございますが、おっしゃるようなデリバティブズの国際的な波紋と申しますか影響と申しますか、これがどの程度あったのか、御報告をお願い申し上げたいと思います。
  161. 速水優

    速水参考人 デリバティブの中で破綻宣告が出て、一社からでも出ればそれが大きな波紋を呼ぶであろうということを申し上げた記憶がございます。  幸いにして、長銀の場合は、十月二十二日の晩に債務超過であるということが決まりまして、二十三日にそれが特別管理銀行に変わったわけですが、その時点で、私ども、係がほとんど徹夜で各国の中央銀行あるいは関係銀行にファクスを打ちました。  もう一つ非常に恵まれておりましたことは、たまたまISDAというデリバティブのアジアの大会が東京で開かれておりまして、そのデリバティブ協会、これは各国のものですが、それの幹部が皆東京にあの日いたわけですね。その人たちに連絡をとって、世界じゅうのその協会員に連絡をして、長銀の債務政府日銀で引き継ぐ形になっているからこれはデフォルトではないということをはっきりさせたわけです。  その結果として、今日に至るまでまだデフォルト宣言をしたところはございません。これは非常に恵まれておりましたし、私ども人たち努力のたまものであったというふうにも思っております。これが必ずいつでもそうなるというものではありませんから、その点はよく御理解いただきたいと思います。
  162. 谷口隆義

    ○谷口委員 一般的に市中においては、本当に日銀総裁金融のことをわかっているのか、国際金融のことをわかっているのかというような意見をおっしゃる方もいらっしゃいます。  このデリバティブズというのは、相対取引で担保も入れ、大変リスクが大きいですから、それはもう大変な思いで当事者間はやっておるわけでございますので、その状況はほかのだれよりも当事者がよくわかっておるわけでございます。私たちはそんなに大きな影響はないだろうというように言っておったわけでございますけれども、現実に、終わってみますと、そんなに大きな影響がなかったということでございまして、その審議の折に何回かこの国会に来ておっしゃったことは余りにもオーバートークであったのではないか、このように私は思っておるわけでございます。  それともう一つは、外貨資金繰りをめぐる状況でございまして、これは先ほど同僚議員から何回か質問が出ておりますが、当然、これは大蔵省国際局為替資金課が、外為勘定ですか、外為特会を持っておる関係でここでやっておるわけでございます。しかし、今御存じのとおり、この年末、年度末の外貨資金をめぐる状況は大変逼迫しておりまして、金融機関が資金をなかなかとれないというような状況のようでございます。  聞いておりますと、農中あたりがかなり今まで外貨をとっておったのが格下げされてとれないとか、輸銀を通じてとっていくとか、いろいろ市中においては外貨資金をめぐって大変困窮した状況が報告されておるわけでございます。今まで大蔵省のやっておる外貨預託というのは、そんなに大きなそういう意味を持っておらなかったと思うわけでございますが、現下のような大変緊迫した外貨の資金繰りの状況の折には、これは大変な重みを持ってくるわけでございます。  御存じのとおり、我が国の外貨準備の総額は九八年度九月末で二千百二十億ドル、五年連続世界一の水準を誇っておるわけでございまして、このうち、邦銀向けの外貨預託は数百億ドルある、このように言われております。この外貨準備の運用実態は、今の緊迫した、逼迫した外貨の資金繰りの状況の中で、これは事実上特融の意味を持っておるんではないかというように言われております。  私は何が言いたいかといいますと、これは大蔵省のことだから大蔵省で聞いてくれ、こういうことになるんだろうと思いますが、この今の逼迫した外貨資金繰り状況の中で、事実上特融と言われるような状況大蔵省でやっておる、また一方では日銀金融政策全体の責任を負うておるというような中で、整合性のある金融政策を果たして打てるのかどうかということをお聞きしたいわけでございまして、これについて御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  163. 山口泰

    山口参考人 お答えさせていただきます。  まず最初の、日本の外貨準備のうち大部分は御指摘のとおり政府の外為特会というところにございます。その運用の内容ということにつきましては私どもはつまびらかにいたしませんので、これについてコメントする立場にはございません。  それで、日本銀行も、ごくわずかでございますが外貨を保有しておりますが、これを日本金融機関にそのまま預金として預託するということはやっておりません。  今まで申し上げましたのは、いずれにせよ外貨の話でございますが、私どもの守備範囲は、主として国内金融市場において金融調節を行い、金融政策を運営するというところにございます。  これにつきまして、どういうような方法論でどういうような道具立てでもってやっているかということは、けさ来、何人かの先生方から御質問もございまして、私どもなりの説明をさせていただきましたが、ここにつきましては、現在の私ども金融調節オペレーションのさまざまな道具立てでもって、コールレートを一つの誘導目標としながら運営をしているということで、特段支障が生じていない状態にあると考えております。
  164. 谷口隆義

    ○谷口委員 私が申し上げたのは、邦銀の外貨準備、支払い準備として外貨が今必要なわけですね。この年末、年度末にもう大変な状況が待ち構えておって、聞いておりますと、大体年末は見えてきたというようなお話をされておったようでございますが、いずれにいたしましても、この状態はまた来年の年度末にも持ち越されて大変厳しい状態になるだろうというように考えるわけでございます。これがそういう意味において事実上の特融という位置づけになってくると、整合性のとれた金融政策を行う場合に、このあたりの状況も勘案しながらやっていかないと、なかなか全体として完結しないのではないかというように思うわけでございまして、そのように申し上げたわけでございます。  それで、もう時間が余りありませんので、次に移りたいと思いますが、日銀特融でございます。  新日銀法三十八条は、健全性に問題のある金融機関に対して日銀特融を行う。三十七条の方は、健全銀行に対しても発動できる。これは、日銀独自の判断で特融が発動できるというような状況のようでございます。この特融の対象範囲が広く解釈されておるのではないかということをお聞きいたしたいわけでございまして、この日銀法上の特融の趣旨を逸脱したり、手続的に認知されておらないようなやり方で行われておるということはないかどうかという問題意識でございます。  先ほどの特別公的管理になった長銀の状況、また日債銀、これはちょっとあれを出すとあれですから、市中において一時資金繰りが大変ではないかと言われておったわけでございます。しかし、この長銀、日債銀について、このような金融債が、御存じのとおりもうほとんど販売できない、資金繰りが大変苦しいようだというような状況の中で、果たしてどのように資金繰りしておったのかという疑問があるわけでございます。  日銀の資金需給実績表を公表されておられるようでございますが、例えば、これは報告しますから月末残だけは一応合わせておいて、一時的に月中は膨れているというようなことはないのかという疑問でございまして、それで、先ほども申し上げておるように、月中に本来の特融の趣旨を逸脱したような特融が行われておらないのかどうかということについて、御答弁をお願い申し上げたいというように思います。
  165. 村井仁

    村井委員長 小畑参考人、簡潔にお答えください。
  166. 小畑義治

    小畑参考人 お答えいたします。  いわゆる特融、三十八条は、総裁等からお話し申し上げているとおり、四原則で対応いたしております。それから、先生御指摘の三十七条の運用は、これはいまだ新法上発動がございませんが、コンピューターの故障等偶発的な事由ということで、法律でその要件が厳しく制限されております。しかも、期間も一カ月と限定されておりますので、これがこの趣旨に反して運用されるということはございません。  それから、最後に、日本長期信用銀行に対します特別公的管理移行前に、一時的に日本銀行貸し出し等で金繰り支援をしていたということかということでございますが、個別金融機関の問題でお答えするのは差し控えさせていただきたいと思うのでございますが、申し上げれば、そういう事実は一切ないということでございます。
  167. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたのであれですが、要するに、私が今ちょっと質問した趣旨は、あの長銀が公的管理に入る前の資金繰りはどのように行っておったのかということが極めて不明快でわからない。これは、日銀の方がそのような融資を、いわゆる特融を、何らかの特融というか、特融は一応三十七条と三十八条の二つなんですが、行っておられたのではないかということをお聞きしたわけでございまして、答弁になっていないので、もう一回ちょっと御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  168. 小畑義治

    小畑参考人 先生御指摘のことは一切ございません。
  169. 谷口隆義

    ○谷口委員 これは、それ以上やりとりしておっても仕方がないのであれでございますが、いずれにいたしましても、現下金融政策は極めて重要でございますし、それこそ、どんな手段を講じても今のこの金融の逼迫状況を乗り越えていかなければいけないわけでございますので、そういう観点で慎重な金融政策をぜひお願い申し上げたい。  また一方で、冒頭お話をさせていただきましたように、独立性透明性が二つの柱でございますから、その要求にこたえられるようにぜひやっていただきたいというように申し上げまして、質問を終わらせていただきます。
  170. 村井仁

    村井委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後二時二十五分休憩      ――――◇―――――     午後二時五十分開議
  171. 村井仁

    村井委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。若松謙維君
  172. 若松謙維

    若松委員 済みません、おくれまして。ちょっと官房長官に申し入れをしてまいりまして、時速二十キロでこっちにやってまいりました。速水総裁、ひとつよろしくお願いいたします。  まず、大勢の方がさまざまな質問をされましたので、再度、今回の報告書の意義というものを確認する意味で総裁にお聞きしたいのですけれども、まさに新しい日銀法のもとにおきまして今回の報告書国会に提出する意義についてどのようにお考えなのか、お答えいただきたいと思います。
  173. 速水優

    速水参考人 新しい日銀法は四月一日から施行になったわけでございますが、今回の報告書は一月から九月までということで、新法における初めての報告でございます。私どもも、随分担当が力を入れて書いてくれましたし、よくまとまっていると自画自賛しているわけでございますけれども、新法の精神というのは独立性透明性透明性も、特にきょうなどはこういうところで申し開きをする、我々がやってきたこと、これからやろうとすること、そういうものを皆様に私たちの立場から御説明申し上げるのがアカウンタビリティーということだと思います。  そういう意味では、この大変難しい時期に、経済実態もそうですし、金融的にもいろいろな変化が日々起こっておりますが、そういうものに我々がどう対応していこうとしているか、対応してきたか、それからまた、これから中期、長期にわたって日本金融というものをどういうふうに持っていくつもりでいるかといったようなことまでを含めてけさからお話をさせていただく機会がありまして、私どもにとっては非常にいい機会だ。厳しい御質問もたくさん受けましたけれども、こういう機会に私どももみずからの襟を正し、そしてまた将来のことを夢を描いて進んでまいりたいという意味では、非常にありがたい機会であるというふうに思っております。     〔委員長退席、鴨下委員長代理着席〕
  174. 若松謙維

    若松委員 先ほども何人かの議員が、こういった報告も入れるべきじゃないかとか、さまざまの改善要望事項も出されました。ぜひそういった国会の意見をさらに取り上げていただいて、国民の観点からのまさにアカウンタビリティー、ディスクロージャーという観点から鋭意努力を促す次第でございます。  それで、先ほど上田議員からも質問がございましたけれども我が国景気情勢に関する認識ということで、依然として大変厳しいというお話でしたけれども、これは雑談的な感じで結構なんですけれども、ちょうど先週ですか、アメリカのさまざまな学者の方または輸銀の副総裁とか、そういった非常に著名な方々と一つの勉強会をする機会がありました。  そこで、私が、アメリカは所得以上に今消費が上回っている、当然そのサポートとしてクレジットカードがある、これはこれで今のアメリカの好景気を支えているわけですけれども、構造的に問題があるんじゃないのですか、片や、世界お金持ちの日本は、全く湿っぽい、全然使わない、これはなぜですかというような質問をしましたら、その米国の学者は、まず日本は、いわゆる資産はあっても、その資産が将来の所得を生まない、だから、結局今の所得をいわゆる貯蓄に回さなくちゃいけない、結果として消費が伸びない、こういった説明。それに対してアメリカは、先ほど消費し過ぎだといいながらも、それなりの資産が、いわゆる資産運用ノウハウとかさまざまな金融商品とかの層の厚さで、結局今の少ない資産でも将来所得を生む、だからそういった期待に基づいて消費が安心してできるんです、こういう説明を受けて、私なりになるほどなと思いました。  こういう状況におきまして、日銀の方どなたでも結構なのですけれども、今の米国学者の一つの見方、日米に対する見方を踏まえて、本当に日本の消費がなかなか進まないというところに対する認識というものをちょっとお聞かせいただければと思います。
  175. 黒田巖

    黒田参考人 お答えさせていただきます。  ただいま先生から御指摘のありました消費の問題につきましては、現在の経済情勢考えるに当たってまことに大切な問題だと私どもも認識しております。そういう意味で、先生と全く同じ問題意識でございます。  そこで次に、なぜ日本では消費が米国のようなわけにいかないのかという点につきましては、先生御指摘のとおり、資産があっても所得を生まないとか、一般的に申しますと、そういった将来にかかる不安というものが非常に大きな役割を果たしているように思われます。したがいまして、将来に対する不安を取り除いていくということができれば、皆が安心して生活できるということでございますから、これが消費にプラスになるはずだ、こういうふうに私ども認識しております。  将来に対する不安を取り除くということは、それこそあらゆる生活の面から対策をしていくことがそれぞれの側面において役立つことだと思っておりますが、私どもといたしましては、先般来御説明申し上げておりますような、金融政策を通じまして景気を下支えしていくということによってその面で寄与させていただきたい、こういうふうに考えております。
  176. 若松謙維

    若松委員 わかりました。  企業の下支えというところですけれども、もっと頭をひねって、日銀としてそれ以外に、そういった消費冷え込みのマインドを変えさせるような、何かできるものはありませんか。どうですか。
  177. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  大変難しい御質問でございます。そういう意味で先生の御指摘に真っすぐ答えることになるかわかりませんが、私どもといたしましては、金融を一般的に緩和の状態に置くということのほかにも、これも先般来御説明申し上げましたような、企業の資金繰り、金融に少しでもお役に立てるように、これも消費の立場からいうと間接的になってしまいますが、企業の活動をサポートすることによって、そこで働いていらっしゃる方々の生活というものを拡大し、明るいものにしていくということができればというふうに思っております。  先般の企業金融のサポートといいますものは、単に銀行のための金融というだけでなくて企業の資金繰りのためというふうに考えておりまして、間接的ではございますが、そういったことも考慮のうちというふうに考えております。
  178. 若松謙維

    若松委員 ちょっと済みません、これも質問通告していないのですけれども。  ちょうどこの報告書の過去の政策会議の議事録を読みましたところ、篠塚委員がことごとく反対をしております、一貫して反対。よく調べてみますと、家計というか主婦の立場から、要は金利が低過ぎる、いわゆる貯蓄を持っている方々に対しては今の政策は何ら寄与していないと。そこら辺は、恐らく現状の金利政策にしろ、金融の現状というものが、先ほど日銀の方々から、いわゆる企業面での貢献しかできないというお話かなと思っておるのですけれども。  反対に、篠塚委員がこういった反対から賛成に回る一つの条件というのが、どのように、いつごろ来るのかな、もしそんなふうな問いかけをした場合にどうお答えをされますか。質問通告しておりませんけれども、よろしくお願いします。
  179. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  篠塚委員政策委員会における意見表明につきましては、議事要旨に記載されているとおりでございます。それ以上に私自身が篠塚委員のお考えを代弁するということはできませんので、ちょっと御質問への直接のお答えは御容赦いただきたいと思います。
  180. 若松謙維

    若松委員 わかりました。では、それ以上聞きません。  それでは、これはかなり具体的な一つの問題点といたしまして、ちょうどバブルの時代に企業がかなりの外債等も含めた資金調達をいたしました。それが来年三月には恐らく総額三兆円の社債の大量償還があるのではないか。これにつきまして幾らあるかという統計は恐らくこの国ではないかと思うのですけれども、今、企業は業績が悪化かつ資金調達もさまざまな面で困難、そういう状況で、今年度末、来年三月末ですね、企業の資金繰りが大丈夫かという危惧があるわけですけれども日銀としてはどう認識されていますか。
  181. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  ただいま先生御指摘のとおり、企業金融につきましては、私どもも重大な関心を持っているわけでございます。  また、ただいま先生から御指摘のとおり、しばらく前までは、企業の資金繰りと申しますと、この年末の資金繰りということに非常に大きなウエートがかかっておったわけでございますけれども、これが、外貨手当ての進捗から始まりまして、信用保証制度の利用と私ども措置、いろいろな要因もあったと思いますが、逼迫感が幾分和らいできているということでございます。そうなりますと、御指摘の年度末の資金繰りということに企業の関心が移ってきているという、先生御指摘のとおりだと思います。  私どもの認識はそういうことでございますが、これに対しまして、先般決定いたしましたオペ、貸し出し面での措置というものも、この年末と年度末の両方、あるいはこの間を含めた企業金融円滑化ということを念頭に置いて決めさせていただいたものでございます。その趣旨も生かしながら、日々の調節におきましても、年度末の企業金融に不測の引き締まりが生じることのないように細心の注意を払っていく必要があると思いますし、そういうふうに努力してまいりたいと考えております。
  182. 若松謙維

    若松委員 言葉としてはわかるのですけれども、何ら具体的なところが見えないのですけれども、要は、かなり注意を要しながらもということで、巨額のお金ですから、やはり日銀としても、まだこういった一つのバブルの清算という面で、三月末、いずれにしても金融面で大変積極的ないろいろな対応はしていく、そういう理解でよろしいわけですね。     〔鴨下委員長代理退席、委員長着席〕
  183. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  先ほど説明を省いてしまいまして、失礼いたしました。  例えば、私どもがとりました措置のうち、二つ目の臨時の企業金融のための貸し出しと申しますのは、この年内にも第一回の貸し出しを始めますが、その貸し出しは、年度末を越える四月まで貸し出しを続ける、四月に入ってから回収を図るというふうな形にさせていただきまして年度末の資金繰りに寄与したい、こういうふうに考えているわけでございます。
  184. 若松謙維

    若松委員 恐らくこの次の質問も今のような話にやや関係するのかなと思うのですけれども日銀が先月の十三日に発表いたしましたCP買い入れの拡充などの企業金融支援策、こういったものを見させていただきました。  このCPというのは、もう御存じの三カ月物で、非常にプライム企業、そういったところしか実際にマーケットとしては取引されていない。それに対して、今回のいわゆる三カ月から一年間というところの支援策ですか、これは今の企業金融の逼迫に対してどんな効果があるのかな、こう見ているわけです。  先ほどのバブル時代の企業社債発行等も、当時はまさに円高、そして日本経済は大変強かったという時代でありまして、今同じ企業社債を発行できるかというとそうでもないし、ましてやCPはといった状況で、このCP買い入れ拡充がどのような効果があるのか。特に中堅、中小企業といったところに対しても何らかの、それなりの策というものをお考えになっているのか、そういった点から御答弁いただけますか。
  185. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  まず、御指摘CPオペの件でございますが、これはCPの手形の残存期間の長いものも私ども受け入れるという措置をとったわけでございます。このこと自体につきましては既に十一月十六日から実施しておりまして、その結果、年度末越えのCP発行が増加するなど、着実に効果を上げてきております。  ただ、先生御指摘のとおり、中小企業についてはどうなのだということでございますけれども、先ほど私申し上げました企業金融支援のための臨時貸出制度につきましては、中小金融機関、これは私どもの取引のあります信用金庫を含めまして、大変幅広い先に対して信用供与を行うという仕組みにしております。また、中小金融機関につきましては、中小金融機関自体の担保力に配慮いたしまして、国債も担保として認めるといったような仕組みも取り入れております。  実際にこういった制度になりまして、そうした中小金融機関を中心として中小企業貸し出しをふやしていただけるのであれば、これは中小企業の資金繰りにも寄与するのではないかというふうに私としては期待しております。
  186. 若松謙維

    若松委員 要は、中小企業に対しては、間接というかワンステップ置いての資金提供が期待される、そういうことなのですね。CPマーケットにすればやむを得ないかなという面はあるのですけれどもね。  では、ちょっと質問の観点を変えまして、これも同じく上田議員でしたか、日銀のバランスシートの悪化という観点から質問があったと思いますけれども、先ほどのCPオペにしろ、当然、日銀融資、特融ですね、そういったさまざまな支援策的なものが次から次へと行われております。その結果、日銀のバランスシートの中身が非常に悪化している、健全性が非常に問題になっているのではないか、そういった議論があります。  特に、先ほどのCPに関しましては、民間企業債務の担保とか、それぞれのバランスシートが悪化しないような、そういった健全策、担保策というのが講じられているのでしょうけれども、とはいっても、かなりの金額の資産がふえておりますので、そういった点から、本当に日銀のバランスシートの健全性が維持できるのか、そういった懸念があるわけですけれども、それについてはいかがですか。
  187. 黒田巖

    黒田参考人 日本銀行のバランスシートの健全性が大変大切な問題であるということは、先生のただいま御指摘のとおりでございまして、先ほど来御議論いただいているとおりでございます。  少しこのバランスシートの説明をさせていただきますと、この一年間におけるバランスシートの拡大、半期報告書の中でも述べましたように、ターム物金利の上昇圧力に対するために、長目の資金供給と短目の資金吸収をしばしば並行して実施してきたといったようなことがございますし、こういうことで総資産が大きく拡大したわけでございますが、その拡大した総資産は、国債やこれを見合いとする資産がかなりの割合を占めております。また、今御指摘民間企業債務でございますが、これをオペ対象とする場合にも、私ども信用力の審査におきましては、その基準を従来と全く変えないということでやらせていただきたいと思います。  繰り返しになりますが、先生ただいま御指摘資産健全性ということは、中央銀行として常に考えていかなければいけない原則だと考えておりますので、今後とも、その点に十分留意して、さまざまの工夫を凝らしていきたいと思っております。
  188. 若松謙維

    若松委員 それで、バランスシートの悪化という観点から、私もちょっと決算書を見まして、特に、「重要な会計方針」の中の引当金の計上基準、これはまだ質問していませんね、どなたも。大丈夫ですね。  この貸倒引当金がまさに日銀特融の、まず銀行関係ですと、北拓、徳陽シティ、みどり銀行、こういったところに対して貸付残高の一〇%が引き当てとして計上されております。ああ、そうかなと思ったのですけれども、よくよく考えると、この日銀特融というのは、基本的には今三十兆円の預金保険機構ができましたので、一〇%も引き当てをする理由がどこにあるのかなというのが率直な疑問なんです。これだけで恐らく二、三千億になると思うのですね。  さらには山一証券ですけれども、山一証券も、これは預金保険機構とはちょっと違うのでしょうけれども、先ほど、十二月一日から投資家保護基金が設置できたということで、いずれにしても、山一は今貸付残高の二五%、これが本来の日銀特融の引き当て率の原則だというお話を聞きましたけれども、最終的には日銀は損をかぶっていないのですね。  ですから、この引当金というものを設ける意味は何なのか。いわゆる健全性というのが、政府への従来の甘えの姿勢の健全性なのか。それで引当金を立てるのか。これはもうちょっとめり張りをつけた意義づけというものをしなければいけないと思うのですけれども、いかがですか。
  189. 引馬滋

    ○引馬参考人 特融に対する貸倒引当金の問題でございますが、そもそも特融は、回収可能と見込まれる場合に限って実施をいたしているわけでございますが、一方で、それでもなお財務の健全性というものを強く意識いたしまして、万一の損失の発生に備える、こういう趣旨で引き当てているものでございます。  拓銀等々につきましては、かつては期末の債権残高の二五%を引き当てていたわけでございますが、九年度の下期から、預金保険制度の拡充整備等が進んだことを考慮に入れまして一〇%にしている、こういう事情でございます。
  190. 若松謙維

    若松委員 基本的に、上期末が三千二百二十六億の貸倒引当金ですか、それを立てるということは、ある意味ではそれだけ資金も寝るというか、そういった見方もあるわけなんですけれども。立てればいいというものじゃないと思うんですけれどもね。  だから、要は日銀として、基本的には日銀特融の最終的な損は実際出ないわけだし、そのための預金保険機構もあるのだからという形の姿勢をかえって明確にして、引当金はこの際立てない、それも一つの意思表示じゃないかと思うのですけれども、そういう観点からいかがですか。
  191. 引馬滋

    ○引馬参考人 ただいま御説明申し上げましたように、私どもとしては、万一の事態にやはり備える、こういうことでございまして、通貨信認維持を図るという観点から、万一の事態に備えて財務の健全性を考慮しておく、こういう考え方でとっているということでございます。
  192. 若松謙維

    若松委員 ぜひ、その万一の姿勢を本当は民間の銀行に指導してほしかったな、今それを言って、次の質問に移りたいと思います。  今、日銀が金利を大きく引き下げております。そして、日銀券の伸びも、前年比一〇%近く伸びている。こういうことで一生懸命資金供給をしているわけですけれども、それにもかかわらずマネーサプライがそんなに伸びない。こういう状況で、経済全体に今資金が回っていない原因は何なのかということを、これはいろいろなところで議論しておりますけれども、再度この委員会でお答えいただきたいと思うのです。  あわせて、日銀券のたんす預金というのはどの程度ふえているのか減っているのか、それについても、もし日銀の推測値なり何らかの理解値というものがあれば教えてください。これは別に泥棒に対する情報提供じゃありませんので、お願いします。
  193. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  先生御指摘のまず第一の点、金利の低下等にもかかわらずなぜマネーサプライがふえないのか、まことに御指摘のとおりだと思います。先ほども議論が出ておりましたが、ハイパワードマネーのふえ方に比べて、マネーサプライのふえ方は相対的に少ないということもそういったことかと思います。そういう意味で、やはり伸び悩んでいるという感じが否めないということかと思います。私どもとしても、そういう意味で、マネーサプライの底支え、さらには増加を図るという気持ちでございます。  マネーサプライの伸び悩みの背景ということで御質問がございましたが、これは、実体経済企業経済活動等が悪化してきたことに伴う資金需要の落ち込みもございますが、民間銀行、広くは民間金融金融仲介機能低下ということが影響しているというふうに認識いたしております。したがいまして、この民間金融金融仲介機能回復を促すための措置を私どもとしても講じてきているわけでございます。  いま一つ先生御指摘の、たんす預金がどれぐらいあるかということでございますが、ハイパワードマネーの主要部分を占めます銀行券の発行高は大変伸びているわけでございますから、マクロで見ましても、たんす預金の額も恐らくは相当ふえているだろうというふうに考えられるわけでございます。しかし、銀行券を今だれがどれだけ持っているか、あるいはたんすの中に持っているか、違う形でもっと使われているかというふうなことにつきましては、正確には私ども把握できない状態でございます。
  194. 若松謙維

    若松委員 わかりました。  先ほど言いましたように、今の非常な低金利で、もう実質、金利政策の余地がないということであれば、それなりに日銀の方は努力されていらっしゃるのでしょうけれども、やはり先ほどの篠塚委員の不満みたいな反対意見になるわけですね。  そういう現下情勢ですので、例えばインフレーションターゲットとか量的ターゲットとか、こういった手法もいろいろと論じられております。そういったものを導入してはいかがかななんて思っているのですけれども、それについてはどうお考えですか。
  195. 山口泰

    山口参考人 確かに、諸外国の中央銀行におきましても、先生の御指摘のような方法論によりまして金融政策を運営している例というのはたくさんございます。  日本銀行におきましても、そういうものについてどういうふうに考えるべきか、特に、金利がここまで下がってきた状態でそういう新しい政策的な試みをやることは可能なのかどうか、現実的なのかどうか、あるいは効果はどうなのかというような議論はやってまいりました。今日までのところ、私どもはそういう考え方を採用するというところにはいっておりません。  幾つか理由がございますけれども、例えばマネーサプライをターゲットとするというような場合に、これをある限られた時間の中で日本銀行はどれぐらいコントロールできるだろうかというような、コントロール可能性の問題というのがございます。実際問題としては、これはなかなか難しいと考えております。特に、金利を大幅に操作する余地というようなものがなくなってきた状態におきまして、こういう難しさというのがもう少し際立ってきているというような感じを持っております。  それから、もう一つ御指摘の、それでは、マネーサプライではなくて物価そのものの目標値を決める、いわゆるインフレーションターゲティングというような考え方についてはどうかということでございます。これについてもそれなりに勉強はしておりますし、また、諸外国でこういうことを採用している中央銀行というのがあるわけでございますから、なかなか魅力的な考え方であるという側面はあろうと思っております。  ただ、インフレーションターゲティングというようなことを採用した国では、どういう背景のもとにそういうことが行われてきたかということを考えますと、これはどちらかといえば物価の上昇率がかなり高い状態から出発いたしまして、それを何とか下げるための一つの工夫として導入されたという場合が多いように思います。  現在の日本はちょうどその逆でございまして、デフレ的な状況にあるわけでございますが、こういうときに、先ほどもちょっと御議論がございましたけれども、こういうデフレ的な状況のもとである種の物価の目標というものを掲げることについてはどう考えるべきかというのが現下の問題だろうと思います。  先ほどマネーサプライについて申し上げたのと似たようなことをここで申し上げるわけですが、現在の金利水準のもとでは、さらなる金融緩和の余地といいますか、さらに金利を下げていく余地というのは極めて小さいわけでございますから、インフレの目標率というのを仮に掲げた場合でも、それを実現していく、それもある限られた時間の中で実現していくということは、実は、実際問題としてそう簡単ではないというふうに思っております。  そういうようなことをいろいろ頭の中に置きながら、日本銀行の中で議論を続けているというのが現状でございます。
  196. 若松謙維

    若松委員 策は、本当に日本のオプションというものがなくなってきているなという感じをますます実感いたします。  これも先ほどのアメリカの教授等からの、本当にうらやましいなと思ったのですけれども、ちょうど十年前、アメリカでは、商業銀行のいわゆる金利差、スプレッドですか、大体三%ぐらいあったのですね。それが結局、キャピタルマーケットなりいわゆるインベストメントバンク系に行くとスプレッド一%で資金がとれるということで、どんどん商業銀行から資金がそっちの方に行ってしまったのですね。それで商業銀行は慌てて、今のシティコープとか、ああいう強いバンクになったということです。  いずれにしても、アメリカは資本市場の先進国ですし、金融インフラの多様性という面でそれだけ層が厚いから、また、万が一間接金融が悪くても直接金融の方に対応できるという層の厚さ、これが歴然とした日本金融市場とアメリカの金融市場との差だと思っております。  そういうことを前提に、いずれにしても、我が国金融市場でも徐々に着実に間接金融から直接金融への構造変化が進んでいると思うのですけれども、ところが、今、貸し渋りにも見られましたように、いわゆるメーンバンク制というのですか、日本の上場企業の半数くらいと言ってもいいのでしょうけれども、結局、いわゆる短借り、短期借入金をロールオーバーして、これは昔からずっと借りている、創業以来借りている、これは自己資金ですと。間接金融なのですけれども、それが企業から見て直接金融になっているというミスマッチですか、これは、いずれにしても銀行側としては解除しなければいけないと思うのです。これをいきなり欧米並みの短期借り入れの、その場その場の、まさに貸して返してもらう、さらに新しい資金ニーズがあれば貸して返してもらう、そういった非常にドライな関係なのですけれども、一挙にそれをやってしまうと、恐らく今の日本の上場企業の半数くらいは資金繰りで倒産すると思うのですね。  そういうことを考えますと、間接金融、間接金融と言いながら、日銀の役割としては当然金利または金融面で、一つの制限があるのでしょうけれども、やはり何とか資本市場なり株式市場、もしくは社債市場も含めて、もっともっとそういった資本市場を何とか十分に機能させるしか方法はないと思うのですよ、現実に。  そういった点から、資本市場の活性化のために日銀は何ができるか、そういった点はどうですか。
  197. 山口泰

    山口参考人 御指摘のとおり、日本で支配的でありました間接金融というのは、戦後のいわゆる過少流動性の時代に定着した構造でございますから、そういう金融の構造が変わってまいりますと、しかも、国際的な資金の流れに洗われてくるというような変化にさらされてまいりますと、当然直接的な金融市場資本市場というものの役割が増大していくという筋合いにあろうかと思っております。  日本銀行がそういう直接金融あるいは資本市場の役割の向上についてどういう役割を果たせるかという御質問でございますが、例えば、私どもは、現在でも、資本市場の決済インフラといいますか、例えば国債につきましては、国債の決済の仕組み、登録制度あるいは振替決済制度というようなものを日本銀行が担当させていただいているというようなことがございます。さらに先を展望いたしますと、現在、ある決められた時間のところで決済をしております決済の仕組みを、一つ一つの取引に即して決済していく仕組みに切りかえるという即時グロス決済制度といいますが、そういうものを二〇〇〇年には展望しながら作業を進めているところでございます。  そういうような資本市場における資金や証券、債券の決済が滞りなく、何の不安もなく行われるというようなことが、実は東京金融資本市場の魅力を高める上で非常に重要な、不可欠の要素の一つでございまして、私どもは、こういうところでまだまだ知恵を出していかなければいけないし、努力してまいりたいというふうに思っております。
  198. 若松謙維

    若松委員 総裁に聞いていいですか。  今の観点から、総裁もまさに日商岩井で海外の資本市場なりビジネスにかかわっておりました。特にヨーロッパですと、ユーロ・クリアでしたか、そういう決済システムが非常に発達していますよね。我々も、いろいろなビジネスで出ると、必ずそういう決済システムの名前がばんばん出るんですね。それほど金融のインフラというんですか、それが非常に進んでいる。  そういうことで、同じ質問になりますけれども、例えばジャパン・クリアとか東京クリアとか、何かそういった世界でも最先端の決済システムを構築するために、日銀として何らかのインセンティブというかイニシアチブをとっていくというんですか、そんなお考えはありますか。いずれにしても、ぜひ総裁もコメントください、これは日銀の役割ということで重要だと思いますので。
  199. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  先生御指摘のジャパン・クリア、そういう決済システムがどうかという点に限ってお答えさせていただきますと、今後本当に東京マーケットの国際競争力が上がるためには、決済システム面でも、グローバルスタンダードに合ったような改革あるいは技術進歩を取り入れての開発というのが必要だと考えております。  現在は具体的にそういうジャパン・クリアという構想はございませんが、私ども日本銀行に関します決済システムの改革という意味では、今二〇〇〇年末を目指しましてグローバルスタンダードということで、今日本の決済システムの中核は日本銀行ネットワーク、日銀ネットと言っておりますが、これを即時決済化、RTGS化と称しておりますけれども、グローバルスタンダードに合ったそういう決済システムにシフトさせていく。  そういう中で証券決済等、日本の国債が中心になりますが、国債の決済システムもそういうRTGS化の方向で移行させていくということで、今具体的に動いておりますのは、とりあえずは世界的なスタンダードに合わすそういう即時決済化、RTGS化という作業を二〇〇〇年末に向けて進めておるところでございます。
  200. 速水優

    速水参考人 こういう決済システムはもともと民間でつくるべきものだというふうに思います。我々はそういうものをなるたけサポートしていきたいと思っております。  先ほどからおっしゃっておられる、市場をつくって直接金融のウエートを高くしていけということは、全くおっしゃるとおりでございまして、私どももそのために――今までは日本はやはり間接金融一本で来たと言ってもいいぐらい、数字を見ましてもそのとおりです。また、株一つとりましても、持ち合い制度とかメーンバンク制度とか、こういうことが伝統的に続いてきておりまして、これがかなり株の取引を固定化しているということは、御承知のとおりだと思います。  こういうものから少しずつ崩していって、もう少し間接金融でなくて直接的な金融をふやしていく。そのことが円の国際化にもつながりますし、国内的には新しいジョブをつくり上げて雇用をふやしていく。ロンドンなんかそうですけれども、シティーであれだけの国際金融ができて、その波及効果というのがどれだけ大きいかということは、イギリスのビッグバンの後にどれだけ経済が伸びたかということは数字で出ておりますが、雇用問題なんかにも、サービス産業の面で、通信とか情報とかあるいは金融とか、そういうものの仕事がどんどんまだまだふえる余地は十分あると思っております。  そういう意味でも、おっしゃることは大いに私どもは賛成で、サポートしてまいりたいというふうに思っております。
  201. 若松謙維

    若松委員 今はまさに与党、野党一緒になって法案をつくっている時代でもありますし、日銀とか大蔵省とか金融監督庁とか、それぞれの役割はしっかり持ちながらも、けれども、いわゆる気がつかないところをお互いに協力して初めて成果が上がる、そういった点も多々あると思いますので、そういった点からぜひ日銀も積極的に提言もし、また努力もしていただきたいと思います。  それで引き続き、これは最後の質問になりますけれども、これも総裁にお答えいただきたいんですけれども、吉沢前営業局証券課長、いよいよこの容疑者の判決が近づいております。これについては、そういった一連の事件から速水総裁ということになったわけですけれども総裁、今この件に関してどのように思っていらっしゃるか、所感をいただきたいと思います。
  202. 速水優

    速水参考人 吉沢前課長の判決は十二月十五日に行われる予定でございますが、まだ判決が出ておりません段階でもありますので、私からは余りあれこれ申し上げるのは難しいと思います。  ただ、今回の事件が日本銀行に対する信認を大きく揺るがしたということは紛れもない事実でございまして、私ども、大いに反省をするところでございます。この春以来、一貫してこれを重く受けとめ続けてきたところでございます。  私どもでは、現在、コンプライアンス委員会という活動を通じまして、服務規律の厳格な運用と業務運営におけるルールづくり、ルールを透明化して、それをみんなが持って歩いて守っていくということを通じまして、日本銀行に対する信認をこれを機会に確保してまいりたいというふうに考えております。
  203. 若松謙維

    若松委員 一分時間がありますので、最後の最後で。  英国で今、銀行監督権限を、FSA、ファイナンシャル・サービシズ・オーソリティーに一元化しましたけれども日本の場合にはまだ、金融監督庁はかなり一元化したわけですけれども日銀考査も別でやっているわけなんですね。日銀考査も金融監督庁検査に一元化した方がいいのではないかというのが私の率直な意見です。それについてはいかがですか。
  204. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  私ども日本銀行考え方は先生の御指摘とは全く逆でございまして、日本銀行といたしましては、私ども中央銀行の役割を果たしていくためには、どうしてもみずからの考査を通じて情報を入手することによって中央銀行の役割を果たしてまいりたい、こう思っておるところでございまして、ほかの機関に考査の機構を代替できる、一元化できるものではないというふうに考えております。  具体的に申せば、やはり民間金融機関に対して資金供与を行う際の金融機関の経営内容、経営実態の把握という役割も重要でございますし、決済システムの円滑な、安定的な運行の確保を図っていくというためにも考査を活用していくということは重要でございまして、行政権限の行使を前提として行政当局が行われます検査とは性格を異にいたしますので、私どもは一元化は考えていないということでございます。
  205. 若松謙維

    若松委員 では、それはまた別の機会で議論させていただきますので、時間が来ましたので終了いたします。ありがとうございました。
  206. 村井仁

    村井委員長 次に、小池百合子君。
  207. 小池百合子

    ○小池委員 自由党の小池百合子でございます。  質問者も残すところ、私を含めましてあと三人ということでございますので、日銀の皆様方も、また委員の皆様方もよろしくお願いを申し上げます。  本日のこの国会報告は、言うまでもなく日銀法の五十四条による初めての国会報告ということでございます。冒頭にもございましたけれども、株式会社日本銀行とすれば、本日のこの国会報告というのは株主総会に当たるということで、私も株主の一人として御質問をさせていただこうと思います。総会屋云々という話も先ほどございました。私も小池と申しますが、ポイントのみをしっかり伺わせていただきたいと思っております。  まず、これはあらゆる組織体がそうなんでございますけれども、やはり組織、企業であったり、それから銀行であったり、また時には政党であったり、その四大元素と申しますのは人、物、金、情報というふうに言われているところでございます。  そこで、株主総会でございますから、社長である速水総裁に伺いたいわけでございますが、先ほども最後に御質問がございました、この一年間というものは、日銀にとりましては大変な、怒濤のような一年間ではなかったかと思います。接待汚職で先ほどの課長の逮捕ということ、それから九十八名にも上ります幹部職員の皆さんの内部処分があった。それから、私もいまだに脳裏にある、そこに元気に座っておられた鴨志田理事の自殺ということで、まさにこれまで、奥の院と言ったら失礼でございますけれども、伝統に守られてこれまでお仕事を続けてこられた日本銀行の皆様方にとりましては、本当にあらしのような一年ではなかったかと存じます。  ただ、青天のへきれきというのは、ここはマインドを変えなくてはいけない、つまりこれまでやってきたこと、これまで当たり前であったこと、実は今それを是正しなければ新しい日本銀行の出発はない、そういう大きな曲がり角に皆様が存在しておられるということでございまして、その意味でも、今回の新日銀法をきっかけとして、また、先ほどの総裁の「はじめに」というところにも独立性透明性という二つの理念を掲げられたということは、大変重い意味があるかと思います。  一方で、こういったあらしのような中で、行員の皆さんの、モラルハザードとは申しませんけれども、士気の低下ということがあるのではないか。例えば、聞くところによりますと、若い世代の方々は、日銀よりもむしろ、もっともっとやりたい、やってみたいことの実現できそうな外資もしくはほかの業界に転職をするといったような形を望んでおられる方々も最近はふえているというふうに伺います。  そんなこともありまして、トップとして、やはり今私たちが日本銀行に求めるのは、そういう難局を乗り越えてといいますか、意識改革をしっかりしていただいた上で、しっかりと日銀のメンバーとして仕事をしていただきたい。ですから、モラルダウンどころか、どのようにしてモラルアップをしていかれるのか。これは社長としても、行員の皆さんに大きくハッパをかけなければならない大変重要な時期ではないかというふうに思っております。  そこで総裁に、行員の皆様方のモラルアップをどういうふうに考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  208. 速水優

    速水参考人 一連の事件で、行内ではやはり大きなあらしであったと思います。四月から数えますと半年ですか、かなり変わってきつつあるように私は思うのです。  ことしの三月に、法令遵守という観点から業務執行体制を全部見直そうということで、先ほど申し上げたコンプライアンス委員会、法令遵守委員会というのを設置して、外部の法律専門家も入れまして、その意見を聞きながら、日本銀行業務フローを改めて点検してまいりました。その結果をもとに、金融機関などと接点の持ち方、情報管理のあり方、決裁プロセスのあり方、こういうものを全行規模で見直しを行って、業務執行体制の整備、厳正化を図ってまいったわけです。こうした努力を通じまして、今後とも法令遵守にのっとった業務運営の確保に万全を期してまいりたいと思っております。  先ほど御指摘がありました、日銀をやめていく人たちがふえているかということでございますが、これは、退職者が若手職員で比較的目立っていることは私も認識しているところでございます。しかし、それぞれの人たちの行き先を見ますと、やはり自分のやりたい、特色を生かせる、個性を生かせるところへ移っていかれている方々が大部分であるように思います。こういうことはもう自然の流れでございますし、あえて余り引きとめをするようなことはしていないのじゃないか。私は末端の方はよく知りませんけれども、方向としてはそういうことになっているのじゃないか。そのことが行内の士気の一つの指標になるというふうには私は思っておりません。  外からも入るし、内からも出ていく人があっていいわけでございますし、外国の中央銀行でもそういうことではないかと思います。外国人が入ってきても本当はいいのだろうというふうにも思いますけれども、そういう流動化というのは、日本銀行に限らず日本金融機関国内金融機関について見ましても、役員というのは大体銀行上がりの人ですし、海外から入ってくるということも余りないようでございますし、その辺から金融のあり方というものも変わっていっていいのじゃないかなというふうに思っております。  そうかといって、すぐ日本銀行に外国人の理事ができるというわけではございませんけれども、それぐらいの変革の気持ちを持っていていいのじゃないかという感じがいたしております。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  209. 小池百合子

    ○小池委員 今総裁の大胆な御発言と申しますか、外国人を入れてもいいのじゃないかというようなお話がございました。最近はルービンさんがもうやめるという話も出ておりますので、ルービンさんあたりにちょっと来てよということでお願いしてもこの際いいのではないかなと思ったりもするのですが。  今のお話の中で、自分のやりたいことをほかでやるということでございます。そうすると、逆に申しますと、日本銀行で自分のやりたいことがやれないという裏返しの話になってしまうわけでございます。中央銀行の役割と一般の民間金融機関の役割とおのずと違ってくるということもございましょうが、いずれにいたしましても、この怒濤の中で収縮するのは信用だけでございまして、今市場信用収縮があるわけでございますが、皆様方の士気が収縮することのないように、総裁の方からもしっかりと皆さんを信頼し、そしてまたハッパをかけていただきたいというのが、まず株主の第一の要望でございます。  それから二番目に、営業、運営の面での効率化ということも一般株主なら当然求めていい問題だろうと思います。この大蔵委員会などでもよく御質問をさせていただいたことでございますが、日銀の各支店がございます。歴史的なお金の流れなどによりまして、その支店の位置といいましょうか、所在地はいろいろな意味も含んでいるかと思いますが、しかしながら、運営の効率性、効率化ということから、支店の統廃合というのは今どのように進んでいるのでしょうか。
  210. 引馬滋

    ○引馬参考人 支店、事務所の統廃合の問題でございますが、結論からいえば現在検討しているということでございますが、ではどういう検討かということであります。  この統廃合問題につきましては、やはり地域経済のニーズというものは一方で非常に根強いものがあるわけでございまして、そういうものをよく見きわめながら、合理的な配置というのは一体どういうものかという観点から見直しているということでございます。  私が申し上げるのもなんでございますが、日本銀行の支店、事務所、それぞれの地域で愛されて重要な役割を果たしているというぐあいに信じているわけでございますが、一方で地域経済環境というのは時代の変遷につれて変わってくるものでございまして、そういう意味で、ここで一たんその必要性というものについて、文字どおり虚心坦懐に検討、総点検を行っている、こういう段階でございます。  この場合に、一つは、支店、事務所を統廃合いたしますと、私どもの取引先、金融機関でございますが、金融機関のみならず、国民の方々にとりましていろいろな意味で利便性を低下させることがないかどうか、こういうところもよく検討する必要がございます。  それからもう一つは、支店の運営という点では、直接的に職員の雇用問題というものも響いてくるわけでございまして、こうしたもろもろの点を視野に入れながら、現在鋭意検討を進めているという段階でございます。
  211. 小池百合子

    ○小池委員 検討を進めていただいておりますが、しかし、やはり目に見えるような形で、株主といいましょうか、日銀は、新しいそして大変効率的な運営をやっているんだということをはっきりとお示しいただくように、前倒し前倒しで結論を出していただきたいと思っております。  それから、次に伺いますのが、前の委員が何人か既にお尋ねになっております件でございますが、この一年間といいますものは、山一そして拓銀、みどり銀行、数えることもできないほどというまではいきませんけれども、何といいましても金融機関の破綻ということが相次いで起こった一年間、これまたすさまじい一年間でございました。  そして、現在の日銀の特融は幾らかということでもう既にお答えがあったかと思います。六千七十億ということで、山一分が五千、そしてみどり分が一千百というふうに伺ったところでございます。  一方で長銀でございますけれども、十月の二十三日に預金保険機構を通じてたしか三兆の融資が行われた。そして、そのわずか二週間後でございますが、十一月の二日、新たに五兆円という数字が出ているわけですが、先ほどの日銀特融の話と長銀の方については、数字はこれでよろしゅうございますでしょうか。
  212. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  いわゆる特融、日本銀行法第三十八条にございます残高は、先生おっしゃったとおり、十一月末で六千七十億円でございます。山一証券向けが約五千億円弱、残りがみどり銀行、千百億円でございます。  後者の日本長期信用銀行に対する貸し付け、これは実は正確に申し上げますと、要するに法律上、預金保険機構が特別公的管理銀行の金繰り等業務上に必要な資金を供給するということになっておりまして、預金保険機構が必要資金が枯渇しているということで、私どもは長銀に直接は貸しておりませんが、長銀が特別公的管理に移行された後、預保に貸している残高といたしましては、十一月末で三兆七千億円でございます。現在もその残高で推移いたしておりまして、先生御指摘の十月二十三日に三兆まとめて出ましたが、その後漸次七千億円ふえて、現在推移しているというふうに御理解いただいたらと思っております。
  213. 小池百合子

    ○小池委員 この辺の数字、今お話あったとおりだとは思うんですけれども、ちまたでは七兆円ぐらいはいっているんじゃないかとか、既にそういう数字もひとり歩きしております。そして、金融債の償還がこれからもあるわけでございまして、そうすると、日銀からの直接ではないにしろ、預金保険機構を通じて、今後長銀に対しての貸し付けというのはずっと続くことになるのか。そしてまた、長銀がどこか一部分が売れるとか新しい局面が出ればまた別なんでございましょうけれども、しかしこのままいきますと、いつまでも長銀に金融債の償還分なりをつなぎで出すということになるんでしょうか。
  214. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  私ども日本銀行の預金保険機構向けの日本長期信用銀行の特別公的管理移行に伴う貸し出しが今後どのようになるのかというのは、実は難しゅうございますのは二つございます。  一つは、特別公的管理銀行移行いたしました日本長期信用銀行が、今後どの程度、金融債あるいは預金等含めて資金調達力をキープできるかという問題でございます。現在、日本長期信用銀行の経営者は資金調達力、金融債の消化等に努力しておられますが、ここの金繰りがどうなるかという要因でございます。それからもう一つの要因は、私ども、預金保険機構に対します貸し付けはあくまでも、預金保険機構が民間で必要資金の調達努力をして、その不足する必要不可欠な資金を日本銀行は貸すという原則で応じておりますので、二番目の要因は、預金保険機構自体がどのように自助努力で民間資金を調達できるか。この二つの要因が絡み合っておりますので、的確に、今後長銀向けの預保系の本行貸し出しがどの程度ふえるかというのはなかなか定量的に申し上げにくいというのは御理解いただきたいと思います。  ただ大事なことは、先生御指摘の、今三兆七千億ある貸し出しが今後どの程度ふえるかは正確には申しがたいのですが、要するにいつ返るのか、あるいは返らないという懸念がないのかということでございますが、実は私どもは、その心配はないというふうに認識いたしております。  これは先生御案内のとおり、現在の金融再生法上、この特別公的管理銀行は、最終的には営業譲渡または預金保険機構による株式の譲渡その他の処分により特別公的管理が終了する。期限も、ペイオフの凍結が終了いたします平成十三年三月三十一日ということで、時限性もございます。その過程において、私ども日本銀行の認識といたしましては、預金保険機構による資産の買い取りや損失の補てんといったことが、法律によって所要の支援が行われるということでございますので、したがいまして、結論的に申し上げれば、今三兆七千億と大変多額の日本長期信用銀行の資金繰りのための資金にかかわる預金保険機構向け貸し付けが出ておりますけれども、この債権回収ができなくなる、いわば焦げつくというような事態はないものというふうに認識いたしております。
  215. 小池百合子

    ○小池委員 お話では、バケツの底はちゃんとあるんだというお話でございました。また、そのためにこれまで、この夏の金融国会、必死の思いでやったところでございます。  ただ、今後の資金調達力次第という長銀の話、第一の要因と第二の要因を挙げられましたが、第一の要因金融債。金融債はやはり、破綻したところの金融債を新たに買おうという人はまずいないということを考えますと、これはなかなか難しい。それから第二の方の、民間の金融機関の足りない部分をということですが、やはり民間金融機関の方が今とにかく資金繰りがなかなかできないという問題を抱えているわけで、第一、第二の要因、ともにかなり難しい要因を二つとも抱えているのではないかなというふうに私受け取らせていただきました。  いずれにいたしましても、バケツの底があるとはいえ、今後、日銀へのツケ回しといったら言葉が悪いかもしれませんが、これからの金融の安定の行方次第ではそうならないように我々は努力をして、またそれに必要な政策を打っていかなければならないというふうに感じているわけですが、この日銀へのツケというか、それはかなりふえていく方向になるのであろうなというふうに思わざるを得ないところでございます。  そこで、午前中も聞いていらしたでしょうか、これから景気回復ということが、金融の安定化そしていわゆる金回りというか金繰りがよくなったとしても、やはり根本的には日本経済景気回復が行われなければいけないということが一番大きなポイントだと思うんですが、そうなりますと、いろいろな財政面のことを考えてもやはり残念ながら国債に頼らざるを得ないということで、これからの国債の発行ということが現時点ではふえざるを得ないというのが現状かと思います。  そうなってきますと、長期金利が歴史に残る金利を記録したわけでございますが、そこが最近はまたぐっと上がってきているというふうに承知をいたしておりますが、これは、これから大量に出る国債のことをもう先に見越した市場動きではないかと思っております。  それで、今後財政支出が膨らむことを見込んでといいましょうか、その上でお聞きしておきたいのは、例えば、これは高橋是清さんのころかと思いますけれども、財政法の五条で禁止されているところの新発の国債の引き受け問題というのが浮上するのではないかというような見方も出ているわけでございますけれども、これについての日銀のお考え方はいかがでございましょうか。
  216. 山口泰

    山口参考人 財政法第五条は日本銀行による公債の引き受けを原則として禁止しているわけでございますが、これは、申し上げるまでもなく、日本銀行が戦時中巨額の国債を引き受けたということ、それが一つの温床になりまして戦後のインフレを招いてしまったという、その反省を踏まえたものだというふうに理解しております。  けさほど来御議論もございましたけれども、新しい日本銀行法のもとで、物価の安定を図るということが日本銀行政策運営の理念として改めて明確にされたわけでございます。物価の安定ということが確保されないと経済自身が健全な発展を遂げることができないというようなことが明確にされたというふうに理解しております。そういうような日本銀行の目標、運営理念に照らして考えますと、日本銀行がかつてのように国債を直接引き受けるというようなことはぜひとも避けなければいけないことだというふうに思っております。
  217. 小池百合子

    ○小池委員 わかりました。もしそういう状況になったときには、また格付にも響きますし、言ってみればカントリーリスクの問題にもなってこようかというふうに思う次第でございます。  ただ、一方で、もうデフレに入っているんではないですかということで私は前から何度かやりとりをさせていただいたわけでございますが、前にも指摘させていただいたように、今日銀で活躍しておられる皆様方というのは、インフレファイターとしての御経験であってデフレの御経験というのはないわけでございます。歴史的にないわけでございます。  そこで、デフレに対しての政策、対策をどうするのかということで、私はまず、九月の九日に無担保コール誘導目標の〇・二五%への引き下げに踏み切られたわけでございますけれども、そもそもデフレの認識がおくれたがために、本来はもっと早くこういう措置をしなければならなかったのではないかというふうに思うわけでございます。ずっとツーレート・ツーリトルということが言われましたけれども、ツーリトルは別にしてといいますか、もう後が余りないわけでございまして、ツービッグにしちゃうと本当に底が抜けて、私が前から申し上げているようなネガレートの話になってしまう。そこで今回は、九月九日に〇・二五%に引き下げられた。  その反応はいろいろ、マーケットはそれなりに反応もしましたけれども、しかし、その引き下げの時点が遅過ぎたのではないか、結局、それによってまた流動性のわなに陥り始めているのではないかというふうに私は思うわけでございますが、御見解はいかがでございましょうか。
  218. 山口泰

    山口参考人 最初の、九月九日に行いました金融緩和措置のタイミングが少し遅かったのではないかという御指摘についてでございますけれども政策委員会の金融政策決定会合というところで原則月二回会合を開き、定期的に経済情勢を点検する、そしてベストな政策を議論するというようなことを重ねながら、九月九日にそういうような多数意見に到達したというのが経緯でございます。これは、提出させていただきました半期報告書の中に、議事要旨として詳しく記載させていただいたとおりでございます。  経済情勢が非常に厳しい状況であるという認識は、政策委員会の中で早くから持たれていたというふうに私は理解しております。  ただ、そういう状況認識のもとで実際に金利政策をどういうふうに運営するかということになりますと、既に、九月九日の措置をとる以前の段階で、公定歩合〇・五%、それから短期の金融市場の金利誘導目標としておりますオーバーナイトのコールレートにつきましては、〇・五%をやや下回るという非常に低いところにあったわけでございます。その低さからさらに引き下げることが適当かどうか、必要かどうかということが政策委員会に求められた判断でございまして、私どもは、そのときの内外の経済情勢に照らしまして、そういう措置をとった場合に生ずるプラス面とあり得べきマイナス面とこの両面を常に比較考量しながら毎回議論を重ね、九月九日の時点で初めてこのタイミングでこの手をとるのがベストであるというふうに判断したわけでございます。  それから、もう一つの御質問は、デフレ的な環境のもとで、金融政策として、デフレがさらに進むことにどういうふうにして有効な手を打てるのかどうか、あるいは既におっしゃっている流動性のわなという状態に入ってしまったのではないかという御質問があったと思います。  確かに、先ほどもちょっと御質問いただきましたけれども物価全般に現在弱い状況にございまして、その弱さの背後には、日本経済全体としてその中に非常に大きな供給過剰能力を抱えてしまったという厳しい現実があると存じます。そういう現実に対しまして、金融政策だけではなくて、財政政策の面からもそれから金融システムの面からもさまざまな対策が打たれておりますので、こういうことの効果が組み合わさりまして相乗的に出てくるならば、どんどんデフレスパイラルの中に突っ込んでいってしまうという事態は何とか避けられるのではないかというふうに期待しているところでございます。  金利水準がこれ以上どういうことをしても全く下がらないというところにいってしまいますと、恐らくそれがいわゆる流動性のわなという状況に近いのではないかというふうに考えられます。金利水準は確かに極めて低いところにあり、これ以上の下げ余地は極めて限られているということは事実だと思いますけれども、世の中の金利にはいろいろな金利がありますから、そのすべてが下限に張りついて全く動かないという状況では必ずしもないというふうに思っております。
  219. 小池百合子

    ○小池委員 もう既に超低金利であったところを下げようがないではないか、もしくはこれからのさらなる金融危機に首の皮一枚でも残しておかないといけないんではないか、そういう思いがある種強過ぎて、少しおくれをとったのではないかと私は思っております。  アメリカの場合のFRBにいたしましても、それからアメリカ財務省にいたしましても、非常に機敏な金融政策、財政政策をとるということで知られており、また、それによって市場が緊張感を持って当局を見ているということについては、やはり機敏性であるとかタイムリー性、同じかもしれませんけれども機動性、そしてそれを決意する決断力、こういったところで互いの信頼感といいましょうか、むしろ恐れる存在であるとか、そういう関係ができてくるのではないかと思います。  あともう本当に首の皮一枚どころかそれもないぐらいの状況ではございますけれども、この金融政策、極めてこれからも重要となってまいりますし、また、インフレファイターとしての御経験を今度は逆に発想を変えて、ますます機敏にやっていただくことを期待いたしております。  総裁の最初の御報告でも、「本年の金融政策運営」というところで、一番最後の行に書いてあります、「一言でいえば、景気低迷と不良債権問題の重荷が、相乗的に経済状態悪化させてきたように窺われます。」というふうにございますけれども、何か人ごとのように書いておられるような気がするわけでございます。  金融政策についても、アメリカとの関係など、これまでの長年のいろいろな国際情勢も加わっていることもよく承知いたしておりますが、一方で、バブルが起こったこと、そして崩壊したこと、そしてその後の金融政策、これはやはり日銀の責任も非常に大きい部分があるというふうに私は思いますし、また、そう思う人はかなり多くおられると感じております。  ちょっと質問を変えさせていただきますが、速水総裁、学生時代から日記をつけておられるということなんですが、今もおつけになっておられますでしょうか。
  220. 速水優

    速水参考人 つけておりますけれども、このごろ毎日忙しいものですから、一週間ぐらい、あるいは場合によっては二週間ぐらいためてつけるのが精いっぱいというところでございます。つけていることはつけております。
  221. 小池百合子

    ○小池委員 週間日誌。こういう、本当に今歴史的な状況だとも思います。日銀総裁の毎日というのはどのような毎日であったか、ぜひ私もその日記は読んでみたいような気もいたしますので、お続けいただければと思います。  伺いましたのは、きょう私、総裁の書かれました二冊の本を国会図書館の方から借りてまいりまして、まず、「変動相場制十年」ということで、「海図なき航海」を読ませていただきました。ニクソン・ショックからずっとこれまでの通貨の歴史が御自分の体験をもとにして書かれているということで、非常に興味深く読ませていただいたわけでございますけれども、これは、「海図なき航海」というタイトルがついていますね。毎日でなくても毎週でも、今おつけになっているもの、今はどんなタイトルをおつけになりますでしょうか。「続海図なき航海」なんでしょうか。
  222. 速水優

    速水参考人 おっしゃるように、まさに海図なき航海をうろついているというのが現状でございます。  しかし、日本も今非常にきつい、苦しいときですけれども、これを乗り切って、やはり円というのは強い通貨であるべきだと思いますし、現に、基軸通貨に恐らくユーロがなっていくでしょう。そうなってきたときに、円が今のままでいいのかということはむしろ小池先生がお聞きになりたいことではなかろうかと思うのですが、私もそういう感じを持って、これからどうしていくべきかなというようなことを考えております。
  223. 小池百合子

    ○小池委員 「続海図なき航海」ということでございますが、ぜひ海図をしっかり読んでいただいて、日本丸がタイタニックにならないように、そういうお仕事がまさに総裁のお仕事、そして中央銀行のお仕事だと思っております。先ほどのツーレートではなかったかというような指摘を受けないように、さすが日本銀行だ、そういう緊張感でぜひ続けていただきたいと思っております。  実は、先に総裁に答えられちゃったんですけれども、ユーロの話でございます。来年の一月一日からスタートということで、まさに秒読みの段階に入ってまいりました。実は、この十一月にEUの方に参りまして、またEUの中央銀行の副総裁、今来日中なんでしょうか、にもお会いいたしまして、そして、基軸通貨に向けての熱意などを伺ってきたところでございます。  私もこのユーロ、そのときはユーロという名前はついておりませんでしたけれども、十年ほど前に報道機関として取り上げているときに、そんなのできるんですかねということを申し上げてまいりました。長年の歴史というか努力が実って、今回ユーロの出現ということに相なったわけでございますけれども、やはり、そこまでユーロの実現にヨーロッパ各国を走らせたのは、アメリカ一極支配、そして日本経済力に対しての危機感ではなかったか、それ以外の何物でもないのではないかと私は思っております。このままではヨーロッパが沈んでしまうという大変な危機感、それがユーロを出現させた最大のエネルギーではないかと思っております。  話はそれますけれども、我が日本の市町村合併などは、それを考えますと、現時点でも実現される見通しはなかなかございません。かつての廃藩置県の逆さまなんていうのを私どもは一種政策としているわけでございますし、また、全国三百の市町村合併をやろうなんていうことをうたっておりますけれども、ユーロができっこないよというふうにそのとき私が思った以上にみんな知らんぷりをしているというような状況でございます。  それだけに、ヨーロッパ各国の決意というのは大変なものがあっただろうなと思っております。歴史そして主権、そういったことを乗り越えて一つの通貨にするなどというのは、本当に歴史上まれに見ると申しますか、歴史的なことであり、そこに向けての努力をしてきた人たちには敬意を表さなければならないと思います。  一方で、先ほど総裁が既にお述べになりましたけれども、ユーロは基軸通貨になるであろう。そうなりますと、ドルがあってユーロができて、円というのは単なるリージョナルカレンシーになってしまうのではないかというおそれは多分にあるわけでございます。そこで、もう一冊の本に「円が尊敬される日」、こちらの方に総裁は一つずつ具体例を挙げて何をすべきかということをうたっておられるわけでございますが、しかしながら、今のところまだまだ短期市場の整備などもおくれているわけでございます。  総裁は、この円の国際化に向けての環境整備という中で、優先順位を挙げるならば何をすべきだというふうにお考えになりますでしょうか。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  224. 速水優

    速水参考人 今引用してくださいました「円が尊敬される日」というのは三年前に書いた本でございますけれども、まさに、ビッグバンというのはそういうことを実現しようということになっていくんじゃないかと私は思っております。  円の国際化というのは、国内のみならず海外から見ても円が使い勝手がいいということにならないと、なかなか実現しないわけでございます。そうした観点から重要なことは、一つは、我が国金融資本市場が自由で効率的なマーケットになっていくこと、これはけさから随分議論が出たところでございます。もう一つは、適切な金融政策運営などによって経済の健全な発展を実現すること。こういう観点から見ますと、日本版ビッグバンというのは着実に推進すべき課題ではないかと思っております。  また、信用リスクがなくて海外諸国からの保有ニーズの高い日本のFBというのを、ほとんど日本銀行が二十兆円ぐらい今持っているわけですけれども、これを公募入札に切りかえる。これなどが、借り手政府でありますし、二カ月ぐらいでいつでも売買できる、税金をグローバルスタンダードに切りかえる、そういう作業が今なされていると聞いておりますが、可及的速やかにこれが実現していくことがまずはしりだと思います。  円のFBというものが実現しますと、内外、特にアジア等から、円で決済をする人たちが、二日でも三日でも、寝かせておかないでFBに投資をして短期間でも利益を稼ぐことができる、そういうようなことにしていかないとだめだというふうに思っております。  今度のユーロにつきましても、ユーロは、今度はECBが一つの中央銀行として政策を運営していくことになるわけでしょうけれども、GDPで見ても、十一カ国の人口で見ても、IMFのクオータなどでもアメリカよりは多くなると思いますし、そういう意味では、ユーロがかなりアジアなどにも出てくることになるだろうと思いますけれども、相当強い基軸通貨になっていくのじゃないか。  基軸通貨というのはキーカレンシーと言われていますけれども、これは別に定義があるわけでなくて、実際問題としてよく使われ、よく持たれる通貨が基軸通貨ということになるわけでしょうが、日本の円につきましても、今こそ日本経済はデフレのスパイラルに入るか入らぬかといったような非常に苦しい状態にありますけれども、対外的に見る限りでは、外から見ている目というのは、千二百兆円もの個人の金融資産があるし、対外の資産超過というのが一兆ドル近くもあるし、それに毎年百億ドル以上の経常収支の黒字が続いているし、それにもう一つは、経済力が、やはり何といってもGDPの総額でも、パーキャピタインカム、一人当たり所得でも、まだ世界一だと思います、三万二、三千ドルでしょうから。こういう条件だけ見ますと、そういう国がそれをバックにして、本当に海外で円が使い勝手がよくなってくれば、基軸通貨になる可能性は十分まだあると私は思っております。  それを早く実現していくには、そのために東京インターナショナルマネーマーケットというものを早くつくっていくことが大事だというふうに考えております。そのはしりは、まずFBというふうに考えております。
  225. 小池百合子

    ○小池委員 円の国際化についての総裁の強い思いを伺わせていただきました。  これもある意味で、日本はツーレートだった部分というか、せっかくのチャンスを逃してきてしまって、今大変な苦しみを味わうことになってしまったと私は思っております。不良債権の処理のおくれもそうでございますし、古くは前川レポートが出た折に金融市場の規制緩和ということがうたってあったのが、これが大幅におくれたというのは、結局、円の国際化どころか、金融危機までもたらしてしまったのではないかと私は思っております。  また、私の小さな経験ではございますけれども日本のバブルの前に、オイルショックのアラブでのプラス面ということで、アラブ産油国が大変なバブルを経験いたしました。アラブの経験と日本の経験で何が共通するかといったならば、要は内需拡大をせずに、どんどん海外の市場でマネーゲームをやってしまったことではないかというふうに思っております。  やはりアラブにおいても、わずかにペトケミなどの内需の拡大、産業振興なども行いましたけれども、しかしながら、それだけ人口がいないということもございましたけれども、本格的なそこでの内需拡大ということをせずに終わってしまった。そして日本についても、本当の意味の内需拡大、大変な高いワインが売れたり、シーマがばんばん売れたりといったようなこともございましたけれども、本質的な内需拡大ということに努力をしなかったのではないか。そんなことで、私は、日本は円の国際化のタイミングを実は逸してしまったのではないかなと思っております。  遅くはありません。ヨーロッパが経験した悔しさと危機感というものを考えますと、アジアにおいて今大東亜共栄圏をつくれなどということは間違っても申しませんが、しかしながら、これからのアジアの中の日本としての役割、そしてアジアの中の経済のリーダー役としての日本ということをいま一度踏まえて、そしてまたこの危機をみんなで乗り切る、アジアで乗り切るんだという感覚でもって、円の国際化を進める一つのチャンスではなかろうかというように思っております。  今御指摘の、FBを整えていくということなども賛成でございます。危機というのは最大のチャンスでもあるということを踏まえまして、これから円が単なるリージョナルカレンシーにならないように、国家の威信ということもかけて臨んでいくべきではないかという気持ちでいるところでございます。  最後に伺いますが、これは日銀に対して伺う質問ではないのかもしれません。ただ、銀行銀行ということで伺わせていただきますが、全国銀行協会が会長選びを、ぐるぐるとたらい回しをやめるとか、今いろいろな改革をしようとしておりますが、結局たらい回しの順番にちょうどはまってしまったというような皮肉な結果もございます。  今、内部でさまざまな改革をしようとしておられますけれども、私は、基本的には全銀協なるものは、これから外資も入ってくるわけでございますし、もはや談合組織、護送船団の母港というのは早くやめて、そして決済システムだけを残した形の純粋な業界サロンであるならば結構だと。すてきなビルもお持ちでございます。  そんなことで、全銀協なるこれまでの日本の象徴のような形は早くそっくり変わるべきではないかと考えているわけでございますが、日銀の方が、随分たくさんその後全銀協の方にはいらっしゃるので、それは決済システムで実力を出していただければいいと思っているわけでございますが、総裁のお考えはいかがでございましょうか。
  226. 小畑義治

    小畑参考人 お答えいたします。  全銀協のあり方ということでございますが、全銀協は戦後でき、歴史ある団体でございまして、そのときそのときの金融経済情勢で大きな役割を果たしてきたというふうに認識いたしておりますが、先生御指摘のとおり、今後ビッグバンがさらに進展し、金融機関の経営戦略、経営態様、いろいろ変化することも予想されるわけでございまして、今後の全銀協のあり方につきましては、私ども日本銀行といたしましては、銀行業界みずからが、先ほど申し上げましたような経営環境悪化、変化等を眺めながら所要の措置を実施されて、適切な対応を図られるべきものというふうに考えておりますし、私どもも、注意深くそういう動きを見守ってまいりたいと思っております。  御案内のとおり、先般、全銀協では既にそういう経営環境の変化等を踏まえまして、経営、組織運営の全般の透明性、効率性、そういう構造を目指されまして、本年四月より組織運営の見直しを進めておられるわけでございまして、先般十月にその見直しの方向を取りまとめられたということを承知いたしております。  それから、先生と認識が全く同じでございますのは決済システム面での関連でございまして、私ども日本銀行は、信用秩序の維持ということで、日本の決済システムインフラに、サービスの提供とともにその動向に強い関心を持っておるところでございますが、先生おっしゃられましたとおり、全銀協は、為替決済を初め外為決済等、日本の民間における資金の決済システムの運営等にとって大変重要な役割を果たされておられるわけでございまして、そのシステムのリスク削減など、本当に今まで御努力を重ねておられるところでございます。  全銀協は、こうした決済システム分野において、組織のあり方の自主的な判断での見直しとともに、ますますこういう日本の民間での決済システム発展のために御尽力いただけたらというふうに思っておる次第でございます。
  227. 小池百合子

    ○小池委員 時間が参りましたので質問を終えさせていただきますが、最後は、決済システムのところで独立して、特化した組織を私は望むところでございます。ありがとうございました。
  228. 村井仁

    村井委員長 次に、佐々木憲昭君。
  229. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  きょうは、新日銀法のもとでの初めての国会報告と質疑でありますが、国民に信頼される日銀として今後発展できるかどうか、改めて問われていると思います。  私は、主に三つの問題についてただしたいと思います。  第一は、現在の経済情勢、実体経済の現状をどのように把握しておられるか、この点についてお聞きをしたいと思います。  この報告書では、五十七ページのところで次のような見解が紹介されております。  すでに国内経済は、デフレスパイラルに陥って  いる可能性があるとの見方をとる委員も複数み  られた。そのほかの委員は、そこまでの判断は  示さなかったが、やはり、デフレスパイラルの  入り口に立っており、先行きデフレスパイラル  に陥る可能性も必ずしも否定できないとの意見  を述べる者が多かった。 このように書かれておりまして、いずれの見解も極めて深刻な認識を示しております。  実際、最近の全世帯ベースの家計消費は十二カ月連続してマイナスでありまして、まさに冷え切っております。鉱工業生産も大幅なマイナスで、設備投資も、中小企業から中堅、大企業まで落ち込みが広がっているという状況でございます。消費者物価、卸売物価も下落している。  こういう点を見ますと、まさに不況の悪循環、そういう状態が加速されておって、デフレスパイラルの様相が出ているように見受けられるわけでございます。民間のシンクタンクなどでは、企業業績の予想の下方修正さえ行われているという状況でございます。  そこで、まず前提としてお聞きをしたいわけですけれども、現在の景気の現状、実体経済の動向についてどのように見ておられるか、基本的認識についてお伺いをしたいと思います。
  230. 速水優

    速水参考人 私ども我が国経済の現状はどうかと言われますと、やはり厳しい状態にあると言わざるを得ないと思います。設備投資個人消費は依然弱い状態にありますし、生産も低水準を続けておりますし、また企業収益が悪いということでございますし、雇用所得環境も一段と厳しさを増している。これらを踏まえますと、日本経済の生産、所得、支出をめぐる循環は依然マイナス方向に働いていると判断せざるを得ないと思います。金融面でも、企業の資金調達をめぐる環境は、ひところに比べますと幾分落ちつきを取り戻しているとは言えますが、全般に依然厳しい状況が続いていると思います。  ただ、秋口以降、公共事業の発注が大幅に増加してきた、また私どもも、その効果があらわれてくるにつれて、景気悪化テンポは次第に和らいでくるのではないかと見込んではおります。また、金融システムの方も一応道具立てがそろいましたから、これから何が起こっても、これまでのような混乱、あるいは解決に長く時間がかかるということはなくて済むのではないかというふうに思っています。これらが今後、企業家計のコンフィデンス、ひいては景気全般にどのような影響を及ぼしていくかということを注目しているのが現状でございます。  これらの景気認識は、一番最近の政策決定会議が十一月二十七日に行われましたが、そのときの判断でございまして、金融緩和スタンスを継続していくということをそこで決定いたしました。また、十一月十三日、その前回の決定会議では、御承知のように、オペや貸し出し面で幾つかの措置決定いたしまして、貸し渋りあるいは企業金融の行き詰まりを何とか和らげていこうという政策を決めた次第でございます。
  231. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 公共事業の積み増しその他の施策が行われたということに対する期待感が示されましたが、我々は、このような公共事業の積み増しで本当に景気回復なりにつながっていくのかどうか基本的には疑問を持っておりますが、いずれにしましてもかなり厳しい現状であるということはおっしゃったとおりでございます。  この報告書の一ページのところでは、  最終需要が落ち込みを示すなかで、在庫調整圧  力が加わり、生産活動は大きく低下した。ま  た、こうした生産活動の低下が、企業収益や雇  用者所得減少を通じて、再び設備投資や個人  消費などの企業家計支出の抑制に繋がると  いったように、生産・所得・支出を巡るマイナ  スの循環の動きが徐々に強まりをみせた。 このように書かれております。  ここで述べられております「最終需要が落ち込み」、これは何をきっかけに始まったか。この一、二年の情勢が極めて重大だと私は思っておりますので、日銀としてはこの最終需要の落ち込みの要因をどのように分析しておられますか。
  232. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  昨年来の日本経済を振り返ってということでございました。  昨年の四月の消費税率の引き上げということ、昨年秋の一部金融機関の経営破綻といったようなことが消費者の心理を冷やしたということもあったと思います。これが個人消費や住宅投資などの減退をもたらすことになったと言えるのではないかと思っております。また、昨年夏に生じましたアジア地域における通貨金融危機も、これがひいては我が国からの輸出を抑制する方向で影響したものと考えております。さらに、本年に入りましてからは、企業収益悪化民間銀行融資姿勢の慎重化といったようなことの影響を受けまして、年初来、設備投資の大幅な減少をもたらしました。  こういったことが最終需要悪化の比較的直接的と言える背景であったのではないかというふうに考えております。  もちろん、先ほど来先生御指摘のとおり、その背後にあるコンフィデンスの低下ということもさらに根本的な原因であると言えると考えております。
  233. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 報告書の十一ページに今おっしゃったようなことが書かれておりまして、平成九年四月以降、消費税率の引き上げ、特別減税廃止等の影響から伸び悩んでいたが、九年秋から十年初にかけては、金融システム云々というふうに書かれております。それで、「特別減税を実施したものの、前述のような雇用所得環境悪化のもとで、特別減税後でみても可処分所得が伸び悩んだほか、消費者心理もさらに慎重化した。」このように書かれていますね。  結局、昨年の春に、四月以後実施されました消費税率の大幅な引き上げ、これによる大変な消費の落ち込み、その後の所得減税の打ち切り、さらに医療の改悪、こういうものが九兆円の負担増として家計に大変大きな圧迫を加えて可処分所得を直接圧迫した、こういう状態があり、さらに将来に対するさまざまな不安が広がった。これは雇用の問題だけではなしに、将来の高齢化社会に向けての不安、果たして、福祉、社会保障、本当に安心できるのだろうかという不安、これが慎重な心理を消費者の中にもたらしてしまう。こういう直接的な要因と将来に対する不安、この二つが最終需要の落ち込み、GDPの六割を占める個人消費の大幅な落ち込みとなってあらわれたのではないだろうか、私はそのように思います。  したがいまして、消費税の引き上げの前の駆け込み需要の反動減、こういう単純な考え方、単純な見方では昨年来の最終需要の落ち込みを説明することはできないというふうに私は思うわけです。  今いろいろと御説明がありましたけれども、可処分所得の落ち込みと消費性向の低下、そのために最終消費市場が狭まり、その結果、在庫が積み上がって生産活動が低下する、さらにそれが雇用所得減少させる、雇用不安も広がって個人消費全体の抑制につながっていった。ですから、個人消費の落ち込みを一段と深刻化させたこの政策上の問題、私はこれは大変な失政に値すると思うわけですけれども、これが大きな要因ではなかったか。これは、もちろん日銀の責任に帰するわけにはいかないわけで、今の政府政策、この政策に大変大きな問題があったと私は感じております。  もう一つ、きょうのこれまでの議論の中でも指摘がありましたが、超低金利政策の中で預金金利が極めて低い事態が生まれてしまった。報告書では四十七ページのところで金融緩和の副作用という表現がございます。副作用の一つとして消費マインドへの影響というのが取り上げられております。このように書いているわけです。「金融政策運営に関する論点として、十年前半の会合では、「預金者や年金生活者等に配慮して金利を引き上げるべきではないか」との議論をどう考えるかという点も討議された。」四十八ページにはこのように書かれております。  先ほどの、午前中行われました速水総裁概要説明の中で、金利収入に多くを依存している家計にとって大変厳しい状況にあることは、私どもも十分承知しているつもりです、このようなお話をいただいたわけであります。  そこで、この金利の低下による家計消費への影響はどの程度というふうに判断をされているか、数字がありましたら、それをお示しいただければ幸いに思います。
  234. 黒田巖

    黒田参考人 消費への影響というものを考えますときに、現実に最終的にどれだけの影響が出るかということにつきましては、幾つかのポイントを考える必要があるというふうに考えております。  今、先生が直接御指摘になりましたのは、まさに一番直接と申しますか、金利が下がりまして、例えば預金金利収入が減るということによって可処分所得が減って消費が下がるという経路でございます。しかし、政策決定会合での議論は、そういう副作用はあるけれども、しかし、ここで金利を低い状態に保つことによって企業活動の下支えができるならば、それが雇用所得の増大をもたらし、その面では消費にもプラスに働くことができるのではないか、そういう議論も行われたわけでございます。そうしたことの総合効果として消費の増減が出てくる、こういうふうに考えております。
  235. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 直接的な家計への影響ということを考える場合には、金利の一番高いところを基点にしまして、それ以後、預金金利がずっと下がっていく、その間に、本来高い時点で入るべき家計への金利収入がどの程度減ったかという概算の数字はあると思うのですが、それは出していただけますか。
  236. 山口泰

    山口参考人 統計として申し上げられる数字は、これは国民所得統計の中でさまざまな家計所得の数字がございます。その中で、例えばいわゆる利子所得というものを取り出してみますと、家計にとりましては、利息、金利の受け取りと住宅ローンの金利などについて払う支払い利息と両方あるわけでございますが、金利の低下が始まりました平成二年度から、直近のデータはまだ平成八年度までしかございませんが、二年度から八年度にかけまして、ネットの受取額が五兆三千億ほど減少しているという数字がございます。  一方、家計にとっての所得というのは、利子所得以外にも、通常の勤労所得でありますとか財産所得といったものがあるわけでございまして、雇用所得全体でとりますと、同じ平成二年度から平成八年度にかけまして四十七兆二千億円増加しているという数字がございます。これは政府の統計でございます。
  237. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 金利の低下による所得移転、家計から企業、これは銀行も含めてですが、所得移転が起こった。計算の仕方はいろいろあると思います。今の数字もその一つかもしれません。我々は、もっと深刻だというふうに計算をしたこともありますけれども。  いずれにしましても、家計への影響は低金利によって非常に深刻にあらわれている。もちろん、金利政策はそれ一つだけで決定するというわけにはいかないというのは私もよく承知しております。しかし、この間の金利の低下によって全体として家計消費が大変な圧迫を受けたということは、これは事実だと思います。さらに、昨年来の家計に対する負担増、このことが大変な相乗効果で、将来不安も重なりまして現在の最終需要の大変な低迷を生み出している、そのように私は考えるわけでございます。したがって、特別減税をやった後でも可処分所得が伸び悩んだほか、消費者心理もさらに慎重化した、こう指摘をされているわけですね。  その意味するところは、今私が申したようなことを基本的に意味しているのかどうか、どのようにその点はお考えでしょうか。
  238. 山口泰

    山口参考人 私ども報告書の記載が意味している内容いかんという御質問でございますけれども、特別減税が実施された場合に、家計にとりましては、それは当然、その分所得の増加になったわけでございます。ただ、家計にとっての所得はそれだけで決まるわけではもちろんございませんで、その時々の雇用環境、労働市場状態、そういったものがより強い影響を及ぼすわけでございます。結果といたしまして、経済環境自体の悪化に歯どめがかからなかったという中におきましては、特別減税後で見ても可処分所得が伸び悩むという結果が出てしまったわけでございます。  しかし、そのことをもって、それでは減税そのものに全く意味がなかったかというと、それはそうではないと思います。そういうことを私ども報告書で主張しているわけではございませんで、これは仮にの話になりますが、もしその時点で減税がなかったならば、消費者心理はもっと冷え込み、消費はもっと落ちていたであろうという議論は可能かと存じます。
  239. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 家計の落ち込みというのは極めて深刻でありまして、特別減税をやったとしてもなかなかそれで埋め合わせができないほど、雇用環境や全般的な経済の落ち込み、この影響がそこにあらわれているというような御説明でございました。  この報告書を読ませていただきまして、例えば中小企業雇用というのは、今まではこれが下支えの役割を果たしてきたけれども現状ではもう支え切れなくなっているというような意味の、雇用過剰感という表現でここに書かれていますけれども、そういう点でいいますと、全体的な最終需要の落ち込みの要因として家計消費が落ち込んでいるというのは、さまざまな要因が重なり合って、それが家計消費を圧迫し、そのことが需要低迷させ、さらにそれが生産あるいは設備投資にはね返っていくという、まさに悪循環に入っているというふうに私は感じるわけであります。  そこで、この状況をどのように打開するかということが今大変重要でございまして、その効果を上げるためには、やはりインパクトのある消費拡大政策といいますか、これが私は今求められているのだと思うんです。従来型の政策ではどうしてもその点がなかなか正面から突破できない、何度緊急経済対策を実施しても効果が上がらなかった、このことはそのことを証明しているというふうに私は思うんです。  例えば、我が党は、この点について、消費税の三%への引き下げということも消費に直結する政策として提起をしておりますし、また、庶民に厚い所得税の恒久減税の実施、この二つを組み合わせて、例えばことしよりも来年はすべての階層で減税の効果が及ぶ、こういう政策を実施することが必要ではないか。さらに、可処分所得を積み増しすると同時にまた、将来の不安を解消するという点でも、医療の負担をもとに戻して、基礎年金に対する国庫負担、これを二分の一に直ちに引き上げる。こういう点を全体として組み合わせ、例えば十一兆円程度の負担減、これを直ちに実施するという提案をしておりますけれども、やはりそういう従来の発想にとらわれない思い切った抜本的な政策に転換していくということが今求められているのではないかというふうに思うわけでございます。  最終的な家計消費の引き上げ、そしてそれを中心とする最終需要の拡大、この点についての効果的な拡大策といいますか、これは日銀政策としてではなくて全体的な経済政策としてどのようなことが可能なのか、その点について速水総裁考え方といいますか、それをお伺いしたいと思います。
  240. 山口泰

    山口参考人 恐縮でございますが、お答えをさせていただきます。  どうしたら最終需要、ここまで冷え込んでしまったものを回復させることができるかということでございますが、やはり現在の、将来について見られる不安あるいは生産能力の過剰の度合い、海外経済をめぐるさまざまな不確実性といったことを考えますと、先生御指摘のとおり、単純に一つの要因でもって消費なら消費の停滞が生じているのではなく、さまざまな要因がそこに働いているというふうに考えるのが至当であろうというふうに思います。そこで、政策的なアクションといたしましても、現時点で可能な政策を幅広く総合的に、いわば総動員しながら現在の状況に対処していくことが必要ではないかというふうに思う次第でございます。  日本銀行がとってまいりました施策につきましては、午前中からの先生方の御議論の中でも御指摘もあり、かつ御意見もちょうだいいたしまして、私どもとしましては、日本銀行の守備範囲の中で、金融面から経済活動最大限サポートできるような政策を今後とも考えてまいりたいというふうに思っております。  また、政府におかれましても、緊急経済対策の中で幅の広い総合的な手が打たれつつあるというふうに考えておりますし、また、金融システム状態経済に対してかなり悪影響を及ぼしてきたという事実に対しましても、多額の公的資本が用意され、本格的な手が打たれようとしている、こういう状況ではないかと思います。  これらすべての施策が有効に動員されまして、現在の状況に一刻も早く歯どめがかかることを期待いたしたいと思っております。
  241. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私は、これまでの政策の現状を見ますと、例えば、この夏以来の新しい内閣で中心的にやってきた政策というのは、銀行に対する六十兆円の支援政策、これは非常に熱心にやってこられましたが、同時に、全く手を触れなかったのは、家計消費に対する支援策ですね。これは具体的には、現実に何一つ手が打たれてこなかった。ここに従来型の政策の延長線という感じがぬぐい切れないわけでありまして、やはりそういう発想の転換がないという点が今の日本経済の深刻な事態を長引かせている要因になっているのではないかというふうに思っております。  そこで、第二の問題は金融問題についてでありますが、主として産業界に対する資金供給、特に中小企業に対する適切な資金供給がなされているのかどうか、この問題であります。  銀行の公共的役割、その一つの大きな柱が資金の供給ということだと思うのです。一昨日日銀が発表した十一月の「貸出・資金吸収動向」によりますと、貸出残高は過去最大の四%減であります。これは、一面では不況の深刻化に伴う資金需要低迷というのはありますけれども、同時に、銀行自身の貸し渋りという点がいかに深刻か、この点も示しているというふうに私は思います。  とりわけ貸出残高の減少が大きいのが、信託銀行マイナス九・七、続いて長信銀マイナス八・二、都銀はマイナス五%であります。このように、大手銀行が軒並み過去最大の貸し出し減でございます。これに対して、地銀はプラス〇・二。別のデータによりますと、信用金庫はこれも横ばいでございます。  このように、大手の銀行貸し出しが急激に落ち込んで、地域密着型の銀行が横ばい、こういう状態が生まれているのはなぜだというふうに思いますか。それを説明していただきたいと思います。
  242. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  先生御指摘貸し出しの数字でございますが、御指摘のとおり、私どもの数字で十一月にはマイナス四・〇%ということで、この数字自体マイナス幅を拡大したわけでございます。ただし、これには不良債権の償却とか債権流動化といった要因が寄与しておりまして、仮にこうした要因を調整してみますと、十月の一・四%減から十一月の一・二%減と、むしろ減少幅は幾分でございますが縮小しております。  もう一つつけ加えさせていただきますと、地銀や第二地銀の貸し出しが幾分持ち直しているのは事実でございます。一方、都銀の伸び率がやや大きくなっているのは北海道拓殖銀行の解散による点が大きゅうございまして、この要因を除いてみると横ばい圏内という動きであろうと思います。  そういう意味で、十一月については、達観して見れば、多くの業態でこれまでの貸し出し減少傾向にやや歯どめがかかる形になっているというふうに思います。もちろん、こうした動きの背景につきましては、各業態における季節的なパターンの違いだとか、あるいは政策面におきましても、信用保証制度の利用拡大といったようなものが寄与しているというふうに思っております。
  243. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の御説明で最近の状況の一端がわかりましたが、大手と中小の銀行を比較しますと、依然として大手銀行の方がいわば貸し出しについてかなり厳しい態度をとっているということがわかると思うのです。全体として、やはり国際的活動をしている大手銀行国内では極端な貸し渋りを行っていて、これに対して、地域密着型の中小銀行ほど一生懸命貸し出しをしているというような全体の構図が見えるように思うわけです。  問題は、だれに対して貸し渋りを行っているか、供給を絞っているかという点でありまして、大企業に対して絞っているのか、それとも中小企業に対して厳しく絞っているのか。日銀の全国銀行ベースの貸出先残高の統計で見て、この貸出先企業規模別の対前年の伸び率、これを大企業、中堅企業中小企業、こう分けますと、どういう結果になっておりますでしょうか。
  244. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  大企業向け貸し出しは、本年三月末前年比マイナス一・六%であったものが、六月末同プラス二・九%、九月末同プラス三・〇%でございます。中堅企業向け貸し出しは、本年三月末同プラス〇・六%であったものが、六月末同プラス八%、九月末同マイナス〇・二%でございます。第三に、中小企業向け貸し出しは、本年三月末同マイナス三・三%であったものが、六月末同マイナス二・八%、九月末マイナス四・〇%となっております。
  245. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の数字でも明らかなように、大企業向けについてはプラス三%、七―九月の実績ですか、中堅企業はマイナス〇・二、中小企業がマイナス四・〇。ですから、大企業向けにはふえているわけです。しかし、中堅企業以下、特に中小企業に対しての伸びはマイナスになっている。ですから、大手銀行貸し出しが極めて厳しくなっており、それがどこに向けられているかというと、大企業ではなくて中小企業に大幅に向けられているということがこの統計で浮かび上がってくるのではないか。通産省の「「貸し渋り」の現状と今後の見通しについて」という実態調査によりましても、大企業の場合よりも中小企業の方が金融機関の融資態度が厳格化した、こういう回答をしておりまして、それを裏づけているわけです。  そこで、お聞きをしたいわけですけれども、大手銀行になればなるほど、中小企業に対して貸し渋りや資金回収が強まっているという状況であります。これは、大手銀行が本来果たすべき公共的な役割、地域産業、中小企業に対する資金供給という役割、これを十分に果たしているということが言えない事態になっているのではないか。この点についてはいかがでしょうか。
  246. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  先生御指摘金融機関の行動でございますが、金融機関は、現在、収益性の向上とか健全性の確保を強く意識した経営を行っておりまして、大企業に比べて信用力が相対的に低い中小企業向けの融資について慎重な姿勢で臨んでいる面があることは、御指摘のとおり否定できないと考えております。ただし、中小企業向け貸し出し低迷していることには、景気悪化が続く中で、中小企業資金需要自体が落ち込んでいることもございます。  一方、格付が高い大企業などでは、設備投資資金のほかに、不測の事態に備えて手元資金を厚目に確保する動きを強めておりまして、こうした資金需要がここにきてむしろ強まっている面もございます。  日本銀行といたしましては、こうした企業金融の動向がどういうふうに進展しているのか、実体経済にこれがどのような影響を及ぼすのかについて、今後とも十分に注視してまいりたいというふうに考えております。  それから、この機会に、先ほど私まことに失礼いたしまして、数字を申した際に、中堅企業向け貸し出しの六月末につきまして、プラス八%と申したようですが、〇・八%の間違いでございますので、訂正させていただきたいと思います。まことに失礼いたしました。
  247. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 中小企業向け貸し出しがより厳しくなっているという点は今お認めになったわけですが、本来、困っている中小企業にしっかりと資金供給を行うというのが銀行の公共的使命でありまして、その点を十分に監視をしていただきたいと思います。  これまで大手銀行に対して公的資金が投入されたり、あるいは日銀の潤沢な、先ほどの表現では潤沢な資金供給をしたというふうにおっしゃいましたけれども、そういうことをやりましても、この貸し渋りという現象はなかなか直らない。  我が党が調査したところによりましても、例えば三和銀行ですとか東海銀行資金回収マニュアルというようなものをつくりまして、それでちょっとでも業績の悪くなりかかった中小企業に対して直ちに資金回収に向かっていくというような、銀行の公共的役割を放棄したような行動が大変目につくわけでございます。また、横浜銀行などが社内文書までつくって信用保証の横取りをやるというようなことまで、大変世間の非難を浴びているわけですね。  したがって、こういう銀行の行為に対して監視をきちっと行うというのが大変重要であります。そして、それに規制を加えて公共的な役割を真に発揮させるということが大変重要だと思うわけです。自己の銀行の利益のみを第一に考えた利益第一主義といいますか、そういう点を正していくということ、全体としての金融政策にとってもそういう観点が非常に大事だと思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  248. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  個々の金融機関企業借り手との関係につきましては、これは私どものような中央銀行の立場からあれこれ申し上げるということは適当ではないというふうに考えておりますけれども、私ども中央銀行の立場から考えますと、一刻も早く金融機関信用供与能力というのが回復され、強くなり、そのことを軸にいたしまして、今度は、中小企業を含めまして経済全体に資金が行き渡るような状態を早く実現したいと思っております。そういうことを頭に置きながら、金融政策の運営もしてまいっておるつもりでございます。
  249. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 信用供与能力を高めるということも一つの支援策と言われましたが、やはり銀行そのものの行動に対してもっと監視をするということが私は重要だと思います。それは、日銀というよりも、むしろ政府あるいは金融監督庁の仕事かもしれません。  次に、国際金融の問題について伺います。  来年一月一日にユーロが発足をするわけであります。十五カ国のEUのうち十一でスタートするわけでありますが、これでどのような経済圏が生まれるか。ユーロ参加国のGDPは六兆九千億ドルであります。日本の四兆九千億ドルを上回っておりまして、アメリカの七兆三千億ドルに匹敵する大変大きな経済圏になるわけです。貿易でも、EU十五カ国をとりますと二〇・九%、約二割で、アメリカの一九・六%を上回っておりまして、日本の一〇・五%の倍になるわけであります。  このユーロの誕生ということで、最初は各国の通貨と併存でありますが、二〇〇二年には各国通貨は廃止されましてユーロに統合されるわけでございます。ユーロの発足後も、参加国の財政赤字に対する規制ですとかいろいろな条件が課されておりまして、それによって単一通貨ユーロが安定した強い通貨となることが期待されていると言われているわけですね。欧州中央銀行、これは高い独立性を持って金融政策を行う、まさに歴史的な実験だというふうに私は思うのです。  このユーロの誕生というのは、全体としての国際通貨の安定の上でどのような意義を持っているか。先ほども少しお話がありましたが、改めて、ここでそのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  250. 山口泰

    山口参考人 御指摘のとおり、統一通貨ユーロというものが巨大な経済圏を背景にして誕生してまいるわけでございまして、これからはドル、ユーロ、それにあえて円というものもつけ加えたいと存じますけれども、こういう三大経済圏を背後に持つ三大通貨が生まれていくということになろうかと思います。  通貨が保有される動機というものを考えますと、当然、その背後にある経済力がどれだけしっかりしているか、それから、その経済圏が持っておる金融資本市場というものがどれだけ使い勝手のいいものであるかというようなことが大事なポイントであろうかというふうに思います。ユーロの経済圏につきましては、現在、比較的順調な経済の成長が続き、インフレの低下が実現して、そういったことを背景にいたしまして、金利水準低下しながら収れんしつつあるという比較的望ましい状況が生まれつつあるように思います。  今後、そういった経済のバランスがうまく持続していくかどうかということは、これからのユーロ十一カ国における経済政策動きが非常に重要であろうというふうに見られておりますし、金融財政政策といったマクロ政策が適切なタイミングで適切に発動されるのかどうかということが非常に注目されている大事なポイントであろうかと思います。そういうようなことがうまく運営されるということが、ユーロというものが魅力のある国際通貨としてのし上がってくるかどうかということの一つのポイントだと思います。  もう一つは、ユーロ圏の中で為替相場という壁がなくなるわけで、資本移動というのが当然活発化する、それに伴いまして金融資本市場の底が深くなるというようなことが予想されております。そういうことが現実に起きてまいりますと、これはやはりユーロという通貨が魅力を増すもう一つの理由になっていこうかというふうに考えられます。日本におきましても、そういったユーロ圏の動きを見ながら、東京の金融資本市場がより魅力的な、使い勝手のいいマーケットに育っていくように力を傾けなければいけないというふうに考えている次第でございます。
  251. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 戦後の国際通貨を振り返ってみると、一九七一年、ニクソン・ショックでドルと金の交換が停止をされる。七三年に変動相場制に移行して、ドルは世界貨幣の座から一部足を踏み外した形ではありますが、代用品として世界貨幣として通用して、そのためアメリカは基軸通貨国として特権的な地位を得てずっと続いてきているわけでありまして、ドルの価値を厳格に維持するという厳しい政策が、どうも基軸通貨国であるということにあぐらをかいて、十分にそういう政策がとられなかった。そのために、経常収支の赤字は八二年から今日まで一貫していわば垂れ流しが続いているという状況でございます。  したがいまして、これに対抗して安定した国際通貨をどのように構築するかというのは国際的にも大変重要な課題でありまして、ユーロもその一つの対応策のあらわれだというふうに私は思います。  したがって、今後の日本対応としてはどのような方向に進むのか。日本の場合には、アメリカともう完全にリンクした形になっておりまして、アメリカの政策に翻弄されてしまう。場合によっては、円高攻撃あるいは円安攻撃ということで、アメリカの政策によって日本自身が大変な大きな経済攪乱を受けてしまう。これに対してユーロの場合には、新しい通貨をつくり、共通の通貨政策を持ち、また経済政策を統一していく。  そういう点を考えますと、将来の、二十一世紀の国際通貨の展望として一体どのような方向が望ましいのか。日本としてはどういう政策が望ましいのか。一部アジアからの、アジアの共通の通貨圏ということも考えたらどうかという提案もありますけれども、そう単純にもなかなか進まないというふうに思います。  ユーロが生まれた後の日本通貨政策としては、むしろ私は、ユーロとの関係を、どのように安定した通貨の構築の上でそれを活用していくかということが重要になるのではないか。さらに、そういう方向にかじを切りかえていくということも一つの重要な選択の方向ではないかというふうに考えております。  この点については先ほども御答弁がありました。もう一度この点を確認すると同時に、さらに、投機活動が、今いろいろな問題が起こっておりますが、これについての規制も重要だというふうに私は思います。しかし、時間がもうありません。最後にこの点についてお答えをいただいて、質問を終わりたいと思います。
  252. 村井仁

    村井委員長 簡潔に御答弁願います。
  253. 速水優

    速水参考人 私は、方向としては、ユーロが基軸通貨になって十分アメリカを牽制することができるだろうと思いますけれども、私ども通貨、円についても、これは早く円を使い勝手のいい通貨にして、アジアの通貨というのでなくて、やはりインターナショナルに、グローバルな基軸通貨というふうに持っていくのが最も望ましい。そのことが世界全体に役立つというふうに私は信じて疑いません。  そういう方向に持っていくのがいいので、場合によっては、IMFのいろいろな討議においても、ヨーロッパと日本とが一緒になってアメリカに対して反対のことを言う、あるいは場合によっては、日本とアメリカでヨーロッパに対して物を言うといったようなことになっていかないといけないんじゃないか。エマージングの国々にとっても、基軸通貨が三つあるということは決してマイナスではないと思います。  それから、規制につきましては、私はやはり、短資の移動が急激だからといって規制をするということは、長期の資金の流出入にも規制が及んでいくという意味で、これは軽々にすべきことではないというふうに思っております。
  254. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 もう時間が来たので終わります。
  255. 村井仁

    村井委員長 次に、濱田健一君。
  256. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 社会民主党・市民連合の濱田健一でございます。  三十分の質問時間、貸し渋りと不良債権問題を中心に質問をさせていただきたいと思います。  まずは、戦時立法で統制色の強いと言われました日銀法の改正、これは金融民主化をキーワードとする金融行政改革の大前提であったわけでございまして、改正法の基本理念は、透明性に裏打ちされた日銀独立性の確立にあったと認識をしております。  そこでまず、現在の経済にとって最も重要な貸し渋り問題に絡めてお聞きしたいのですが、政府からの独立性が高まった以上、日銀政府の対策とは別口の独自の貸し渋り対策というものを進める必要もあるのではないかと思いますが、日銀から、現在の貸し渋りに対する認識と、この半年間にどのような対応策をとってこられたのか、経過と御見解を述べていただきたいと思います。
  257. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、昨年秋以降、中堅、中小企業や格付の低目の企業は、厳しい資金調達環境に直面してまいりました。また、この秋には、世界的な安全資産への資金シフトの動きどもありまして、より広い範囲で企業金融をめぐる環境が厳しさを増してきたわけでございます。  日本銀行といたしましては、この昨年秋以降の金融システム不安の強まりに対しまして、潤沢な資金供給を続けることによって、市場における資金不足懸念を緩和するように努めてまいりました。そうしたもとで、本年九月に金融緩和を一段と進めまして、市場の安定に万全を期すということにしたわけでございます。  また、先月の十三日に、金融機関借り入れ、市場調達の両面におきまして企業金融円滑化に資することをねらいといたしまして、オペ、貸し出し面で新たな措置決定したわけでございます。具体的には、CPオペの積極的活用、企業金融支援のための臨時貸出制度創設、社債等を担保とするオペレーションの導入といったような措置でございます。  日本銀行といたしましては、今後とも、企業金融の動向に十分留意をしながら、さまざまの工夫をし、政策運営に努めていく所存でございます。
  258. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 企業金融に対して支援策をいろいろと講じているというふうに述べていただきましたけれども、貸し渋りの影響を最も強く受けて厳しい経営環境にある中小企業のためには、ほとんど効果はないんじゃないかというような声が多くの皆さん方から聞こえてくるわけでございます。  今述べられた企業金融支援策は、これから先どのような効果があると考えておられるのか、その辺を具体的に述べていただきたいと思います。
  259. 黒田巖

    黒田参考人 お答えいたします。  今回とりました策は、三つあるわけでございます。  第一のCPにつきましては、確かにCPを出せる企業は大手の企業が多いと思います。また、第三の手段に関します例えば社債といったようなものも大手の金融機関が多いかと思います。  ただ、二番目の臨時貸出制度につきましては、これは、全国の私どもの支店全部で、中小金融機関を含めまして、そういった貸し出しを伸ばした先に対してリファイナンスをしていこうということでございます。また、中小金融機関については、担保力に配慮いたしまして、国債も担保として認めることといたしました。  そういう意味からいきますと、この二番目の措置は、中小企業の資金繰りに対しても相対的に、直接的に影響を及ぼしてくるのじゃないかというふうに考えております。実際、この臨時貸出制度に対する金融機関側のこれまでのところの対応ぶりを見ますと、大手銀行のみならず信用金庫に至るまで、幅広く問い合わせが寄せられているという状況でございます。  もちろん、中小企業に対する先生御指摘の問題は、これだけで解決するというふうに考えているわけではございません。政府もさまざまな信用収縮対策を講じておられます。最近では、信用保証制度が活発に利用されております。さらに広げて申せば、先ほど申しましたCPオペというような直接中小企業につながっていないようなものであっても、これが大企業なりなんなりの資金繰りを緩和するということも、いわば浮いた資金が中小企業に回りやすくなるということであって、決してこれが中小企業金融にとって無縁ということではなく、むしろこういったことが全体としてプラスに働いてくれることを我々は期待しているわけでございます。
  260. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 ビッグビジネスも厳しい環境にあることは当然です。ただ、これまでの日本の産業構造を支えてきた中小が、今まさにその土台となる部分をすべて崩されてしまうという状況まで、地方を歩くと見えてまいります。その辺を日銀の皆さん方は、日本の産業を支えてきたのは本当のところどこなのかという思いを決して忘れずに、今話をしてもらったような部分についてきちんとした対応を各銀行は、地方も含めて、いろいろな場で論議をし合って、対策に全力を尽くしていただきたいと申し上げておきたいと思います。  金利の問題についてお聞きしたいのですが、これまで政府はさまざまな形で景気対策を打ってこられました。しかし、実際にはほとんど効果が上がっていないというのも現状でございます。これまで手を打って、そのことでここまで持ちこたえているという話もございますけれども国民の皆さん方は、もう少しどうにかならないのかという声が多いのは当然でございます。政府景気対策の基本として産業界、銀行界を優先しているという理解の仕方も私たちの耳には聞こえてくるわけでございますが、生活者を意識した対策というものをもっともっとやっていかなければならない、その部分に原因があるのではないかと私自身も思うところでございます。  そういう意味で、長期の超低金利政策も産業界、銀行界の優遇という点で問題があるというふうに考えております。私たちの周りにいる年金生活者を初めとする高齢者の生活不安を取り除くためにも、超低金利政策をそろそろ是正すべきときに来ているのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  261. 山口泰

    山口参考人 低金利の状態が長引くにつれまして、金利収入に多くを依存しておられる家計の方々が大変厳しい状況にあるということは、本日の御議論の中で総裁からも申し上げましたし、私どもも十分認識しているつもりでございます。私どもも、一刻も早く、金利を引き上げても大丈夫だというような経済情勢になることを念願しておりますし、そういう経済情勢を生み出すために金融政策面で貢献をしてまいったつもりでございます。  ただ、今日の時点で金利を引き上げるというようなことになりますと、これはやはり企業にとっての投資採算が悪くなる、企業収益が悪くなる、あるいは資産価格に悪影響を与えるというようなことを通じまして、経済活動全般をさらに冷え込ませてしまうおそれの方が大きいのではないかというのが日銀政策委員会の多数意見でございます。  仮にそういうことになりますと、それはそれで雇用所得、結局は家計、生活に悪影響が及んでまいってしまうわけでございますので、そのような判断のもとで今日のような政策を運営しているというところでございます。
  262. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 政策委員会の中でもいいかげんに論議をしているとは私も思いません。ただ、これだけ長い超低金利の時期というのが続いていくことによって、高齢者の皆さんを含めた多くの皆さん方がお金を使わない、いろいろな状況が出てきているわけで、ある程度の方向性というものを、こういう状況になるときには是正をしていくんだよ、そのために国民の皆さんも頑張ってほしいというような呼びかけといいますか、こういう状況にしたいんだというようなアピールの仕方はお考えじゃないのでしょうか。
  263. 山口泰

    山口参考人 これは政策委員会のメンバーの一人としての意見ということでお聞きいただければありがたいと存じますけれども金利水準が高くなるためには、やはり経済金利水準をこなしていくといいますか、それに耐えるだけの体力が出てこないとなかなか難しいのではないかと思います。そういう体力がない状態の中であえて金利を引き上げますと、かえって経済をさらに悪化させてしまうということを私どもは心配しているわけでございます。  そういう判断に基づいて申し上げますと、やはり景気が立ち直ってまいりまして、ある程度持続的な経済成長の展望が開けてくるということが金利水準修正の前提になるのではないかというふうに考えております。  これは私見としてお聞きいただきたいと思います。
  264. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 景気回復しなければ、公定歩合を含めて金利の部分を是正する環境にはないという御回答でございました。  この部分は、今幾らやっても水かけ論になってしまいますし、言わんとされるところも理解できるところでございますから、きょうの各先生方の論議の中でもあったように、日本の中心的な金融全体を政策の中でつくり上げていく日銀政策のキーポイントにしていただきたいという要望をして、先に行きたいと思います。  次は、日銀法改正の最大のポイントとしては、財政と金融の分離を通じた金融民主化ということをキーワードとする金融行政改革の先鞭をつけることであったと私は理解をしております。その意味で、一つの重要な改正は、日銀の国債引き受けは原則禁止であるべきことを日銀法上も明確にし、FBも公募発行とする方向で進めていることではなかったかと思っております。  日銀による国債引き受けを求める声が出ているようでございますけれども日銀ではこの点をどのようにお考えになっているのか。せっかく新しい日銀法をつくっても、ずるずると国債の引き受けに応じるようでは、日銀に対する信認自体が危うくなるのではないかと考えますが、この辺の御見解はいかがでございましょうか。
  265. 山口泰

    山口参考人 国債の日本銀行引き受けについての考え方は、私どももただいま先生がお述べになったとおりというふうに考えております。
  266. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 国債の引き受けについては、慎重であるべきということで確認をしておきたいと思います。  不良債権問題に関する質問ですが、日本経済にとって最大の問題である貸し渋りの解消、これには金融機関の不良債権問題の解決が不可避であると認識をしているところでございます。その意味で、今般、大手行公的資金による資本注入申請見込み額を発表いたしましたけれども日銀はこれで金融システムの安定、不良債権問題の解決に十分な金額であるとお考えでございましょうか。また、公的資金資本増強を実施する場合の責任論というものは、日銀的に考えてどのようにお考えでしょうか。
  267. 小畑義治

    小畑参考人 お答え申し上げます。  まず最初の、公的資金の適正な注入規模というのは日本銀行としてどのように考えているかというお尋ねだと思いますけれども、私どもといたしましては、基本的に、金融機関資本増強をどれぐらい行うかというのはあくまでも各金融機関の重要な経営判断でございまして、さらに、そのうちどの程度公的資本に依存するかというのは個別金融機関状況により異なるというふうに思っております。また、先生御案内のとおり、公的資本の注入は金融再生委員会の承認にかかわる事項でございますので、私どもの方からは大手行の申請見込み額についてのコメントも差し控えさせていただきたいと思っております。  ただ、そういうことを前提といたしまして、あえて一般論として申し上げさせていただきますと、要は、市場信認に十分にたえる公的資本注入を図るべきだというのが私ども考え方でございまして、市場信認を十分に回復いたしますためには、個別金融機関が現在の不良債権処理を踏まえました経営内容や今後の経営戦略を熟慮いたしました上で、思い切った規模の資本増強策を講じるということを強く期待いたしているところでございます。  それから後者、第二点の公的資本を注入する場合の責任論、先生は経営者の責任ということを問題とされておられるというふうに解釈させていただきたいと思いますが、これは少し難しい面もございますけれども、私どもといたしましては、公的資本の投入に当たりましての経営者責任の問題というのは、当然、経営の著しく悪化いたしております金融機関、あるいは経営が悪化いたしました過程で、刑事、民事の経営責任があると認められる場合には関係者の責任が厳しく問われるべきことであるというふうに考えております。  ただ、関係者の責任を強調いたしますと、せっかくの資本増強への意欲も衰えてしまうということにもなりかねませんので、この点には十分留意する必要があろうかというふうに思っております。  いずれにいたしましても、これから資本投入されます公的資本は、将来株式等を処分いたしまして返ってくることを前提としている、予定されているということを考えますと、そうした観点からいたしますと、事前に経営者の責任を追及するのではなくて、最終的に投入資本が毀損され、結果的に国民に負担をかけるというようなことになった場合、事後的に責任を問うといった考え方もできるのではないかというふうに思っておるところでございます。
  268. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 日銀考えはわかりました。  ただ、今回の健全化法、再生化法を含めて、国民の目というのはやはり非常に厳しいということを、お互い資本注入を受ける銀行は、そしてその責任というものが今までないがしろにされてきたというこの間の論議、これをやはりしっかり持つということを、これは日銀が主導するわけにはいかぬのかもしれませんけれども、そういう発想というものをこの委員会の中でも改めて認識をするという意味でお尋ねをさせていただいたところでございました。  これまで不良債権の問題が大きくなってしまいましたのは、結局、政府による一連の金融システム安定化策がなかなかうまくいかなかったという結果だと思います。特に、ことしの三月末の公的資本注入については、資産内容に問題がある先に対する資本注入は行うべきではなかったのではないかというふうに思っております。旧金融危機管理審査委員会の委員でもあった日銀総裁、当時は松下総裁であったとは思うのですけれども総裁の意見をお聞きしたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  269. 速水優

    速水参考人 日本銀行では、この三月に公的資本注入の申請がなされました二十一行の経営内容等について、審査基準及び経営の健全性確保計画の観点から、格別の問題はないという判断をした次第でございます。  旧金融機能安定化緊急措置法二十四条で、以下の三点が求められているわけです。「経営の合理化及び健全な経営体制の確保に関すること。」「財産の状況健全性の確保に関すること。」「その他業務の健全かつ適切な運営の確保に関すること。」この三つの点から特に問題はないという判断をしたと思います。
  270. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 という判断を当時はされたけれども、現実的に調べてみると長銀のような結果になってくるというこの現実が、どのように銀行の本質的なところをきちっとチェックできるのかという意味で、まだまだ監視体制等々強化をしなければならないという問題点が残っているということも自覚をしなければならないというふうに思うところでございます。  最後に、日銀法の改正の審議では、政策決定過程透明性というものを明確にするとともに、経営合理化を一段と進めていくことが求められていたと思いますが、この半年間で日銀はどのように経営合理化を推進したというふうに胸を張って説明していただけるのか、お願いをしたいと思います。
  271. 引馬滋

    ○引馬参考人 この半年間における私どもの合理化の成果、こういうことでございますけれども、まず基本的な認識といたしましては、この四月に新しい日本銀行法のもとで私どもの組織がスタートしたわけでございまして、私どもの使命の十全の達成を期するそのプロセスにおいて、私どもも一個の経営体でございますので、効率的な組織運営、経営を目指すということを基本に考えてきたところでございます。  そうした中で、今私どもとしては、具体的に成案を得たものから逐次これを実行に移してきたということでございまして、まずこの四月から組織運営の見直し、これは新しい組織がスタートいたしております。三月までは局の数が十三、室の数が二、一研究所ということであったわけでございますが、これが局が十、室が五という形で、私どもなりの効率化を図ったということでございます。  そのほかには、私どもが持っております保有資産というものをできる限り余分なものは処分していこうということで、ゴルフ会員権、いろいろ話題になったわけでございますが、これを順次処分いたしております。また、遊休不動産という観点では、私どもの行員が入ります行舎でございますが、こういうものをできる限り集約化するということで、積極的に売却を進めているということでございます。  それから、既に先生御案内のとおり、私どもの給与につきましても、法律の三十一条の定めによりまして新しい給与の支給の基準を定めまして、これを定める際に減額の調整を行ったということでございます。  そのほか、私どもといたしましては、支店、事務所のネットワーク網をどうするかという課題もあるわけでございますが、こういう支店、事務所の統廃合につきましても虚心坦懐に今総点検を行っているということでございまして、こうしたプロセスにおいて人員の配置の問題等々、残された課題があるわけでございますが、効率的な業務運営に努めるという観点から鋭意検討を進めてまいりたい、こういうぐあいに考えているところでございます。
  272. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 時間があれば、今述べられました透明性、合理化の中身というのをもう少し論議をする必要があるというふうには思いますけれども、きょうは時間がございませんので、その点は省きたいと思いますが、今言われた中身を含めて、より一層の国民に対する透明性、そして、このように頑張っているのだという中身をまた次の機会には改めてお示しいただけるようにお願いをして、質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  273. 村井仁

    村井委員長 速水日銀総裁初め、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  新しい日本銀行法に基づく最初の通貨及び金融調節に関する報告書に関連し、金融に関し、広範な事項について、長時間にわたり貴重な御意見を開陳賜りましたこと、委員会を代表して御礼を申し上げます。(拍手)      ――――◇―――――
  274. 村井仁

    村井委員長 この際、御報告いたします。  本会期中、当委員会に付託されました請願は五種九十八件であります。各請願の取り扱いにつきましては、理事会において慎重に検討いたしましたが、委員会での採否の決定は保留することになりましたので、御了承願います。  なお、本会期中、参考送付されました陳情書は、消費税率を三%に戻すことに関する陳情書の外二件であります。御報告をいたします。      ――――◇―――――
  275. 村井仁

    村井委員長 次に、閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。  まず、第百四十二回国会内閣提出金融業者貸付業務のための社債発行等に関する法律案につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をするに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  276. 村井仁

    村井委員長 起立多数。よって、そのように決しました。  次に、  国の会計に関する件  税制に関する件  関税に関する件  金融に関する件  証券取引に関する件  外国為替に関する件  国有財産に関する件  たばこ事業及び塩事業に関する件  印刷事業に関する件  造幣事業に関する件 以上の各件につきまして、議長に対し、閉会中審査の申し出をいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  277. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次に、閉会中の委員派遣に関する件についてお諮りいたします。  閉会中審査案件が付託になり、委員派遣を行う必要が生じました場合には、議長に対し、委員派遣承認申請を行うこととし、派遣委員の人選、派遣期間等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  278. 村井仁

    村井委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  本日は、これにて散会いたします。     午後五時五十三分散会      ――――◇―――――