運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-12-02 第144回国会 衆議院 財政構造改革に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年十二月二日(水曜日)     午後三時四十六分開議  出席委員    委員長 麻生 太郎君    理事 衛藤 晟一君 理事 大島 理森君    理事 小坂 憲次君 理事 茂木 敏充君    理事 上田 清司君 理事 日野 市朗君    理事 赤松 正雄君 理事 中井  洽君       浅野 勝人君    飯島 忠義君       岩永 峯一君    江渡 聡徳君       大石 秀政君    奥山 茂彦君       佐藤  勉君    阪上 善秀君       桜井 郁三君    下村 博文君       菅  義偉君    砂田 圭佑君       園田 修光君    田中 和德君       田村 憲久君    谷畑  孝君       西川 公也君    山口 泰明君       渡辺 博道君    池田 元久君       石毛 鍈子君    岩國 哲人君       生方 幸夫君    海江田万里君       北脇 保之君    中川 正春君       原口 一博君    石垣 一夫君       田端 正広君    並木 正芳君       佐々木洋平君    西川太一郎君       松浪健四郎君    児玉 健次君       春名 真章君    伊藤  茂君       中田  宏君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         自 治 大 臣 西田  司君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁総合         計画局長    中名生 隆君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         厚生大臣官房総         務審議官    真野  章君         厚生省健康政策         局長      小林 秀資君         厚生省老人保健         福祉局長    近藤純五郎君         厚生省児童家庭         局長      横田 吉男君         厚生省保険局長 羽毛田信吾君         自治大臣官房総         務審議官    香山 充弘君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         衆議院調査局財         政構造改革に関         する特別調査室         長       中谷 俊明君     ――――――――――――― 委員の異動 十二月二日  辞任         補欠選任   桜井 郁三君     大石 秀政君   田中 和德君     渡辺 博道君   宮腰 光寛君     岩永 峯一君   目片  信君     奥山 茂彦君   山口 泰明君     砂田 圭佑君   池田 元久君     石毛 鍈子君   松浪健四郎君     佐々木洋平君 同日  辞任         補欠選任   岩永 峯一君     宮腰 光寛君   大石 秀政君     桜井 郁三君   奥山 茂彦君     目片  信君   砂田 圭佑君     山口 泰明君   渡辺 博道君     田中 和德君   石毛 鍈子君     岩國 哲人君   佐々木洋平君     松浪健四郎君 同日  辞任         補欠選任   岩國 哲人君     池田 元久君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  財政構造改革推進に関する特別措置法停止  に関する法律案内閣提出第一号)      ――――◇―――――
  2. 麻生太郎

    麻生委員長 これより会議を開きます。  内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法停止に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。衛藤晟一君。
  3. 衛藤晟一

    衛藤(晟)委員 衛藤晟一でございます。  まず、本日、質問に入る前に、今日の不況に至るまでのプロセスについて論じてみたいというふうに思っています。それは、今回の財政構造改革法凍結法案緊急経済対策の意義を論ずるに当たって、まず、現在の景気低迷原因というものが何であるのかということを検証してみる必要があると考えているからであります。  我が国経済の混迷の始まりは、バブル崩壊でありました。例えば東京二十三区の地価を見ると、平成二年の十月のピーク時と比較して、三年後の平成五年十月は二分の一、六年後の平成八年は三分の一へと下がり続けています。国民みんながそろって、個人貯蓄法人利益を将来に結びつくような有効な投資に回せないままに土地や株につぎ込んで、バブルを演出したわけであります。そこで見せかけの富を築き上げました。それが崩壊しまして、急速にその富が目減りをして、資産価格暴落、いわゆる資産デフレと言われる状況が発生し、みんなが借金を抱えて消費投資が冷え込んだのであります。これが今回の不況の元凶であるというぐあいに考えます。  我々は当時、この冷え行く民間部門を必死に公的部門で支えました。金融政策は、平成二年以降、公定歩合を六%から何度も引き下げました。平成七年九月からは、何と人類史上初めての公定歩合〇・五%を続けているわけであります。しかしながら、民間投資は上向かず、政府は、平成四年から平成七年までの間に六回、累積で六十七兆円規模経済対策を打ちました。  当時、我が国を大恐慌ふち際から救い、平成八年度に三%成長に戻したのは、やはりこの公共投資中心とした経済対策のおかげであるということは、ここではっきりと認識しておく必要があると思います。  経済企画庁長官は、平成四年以降これまでの経済対策経済効果をどう評価しておられますか、お尋ねいたします。
  4. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 お説のように、まことに、平成に入ってから経済は激動をしております。そして、その大きな原因が、土地暴落それから株式暴落、そういった財産価格資産価格暴落にあることはお説のとおりだろうと思います。  その資産価格暴落を呼んだそれまでの原因資産価格がどうしてこう急上昇したかということを考えますと、やはり日本規格大量生産社会というのが成熟いたしまして投資対象が少ない、そういったときに、円高もございまして、貯蓄がどんどんふえた。外資も流入してきたこともございます。そういったことがどっと加わって株式土地投資されて、採算に合わないような価格まで上がったわけであります。これを政府総量規制で急速に抑えたわけでございますが、その過程で大暴落が起こって、実はもうそこで大きな不良資産が発生していたわけです。  これに対して政府は、お説のように、低金利政策公共事業中心とした景気対策でかなりの手当てをいたしました。ところが、一方で信用収縮が物すごい勢いで進んでいたものですから、それはあたかも穴のあいたバケツに水を注いでいるようになりまして、六十七兆円の対策もそれほどの効果を上げなかった。  ただ、お説のように、平成七年度から八年度にかけて二・八%、三・二%という経済成長をいたしました。これはやはり、そういう公共事業中心とした財政下支え効果というのが発揮されたのだろうと思うのです。ただ、全体が大きな下り坂の中で起こったものですから、非常に短期に終わった。これを政府だけではなしに民間のエコノミストもジャーナリストもかなり本格的な立ち直りに続くだろうと誤解した点がございまして、やや早急な引き締め政策に入った。これが現在に響いているところだと思います。  そういう意味で、六十七兆円の対策というのは日本経済が非常な勢いで冷え込むのを下支えしたという意味がありましたし、また、平成七年、八年にはこれを引き上げる効果も発揮した。それなり評価できるのではないかと思いますが、全体としての構造的な問題に取り組まなかったのはやはり失敗だったんじゃないか、そういうふうに思っております。
  5. 衛藤晟一

    衛藤(晟)委員 長官のそういう判断ということは、私はある意味では当時のマスコミ等にもいろいろ出てきたと思うのですね。  それで、もっと厳密に言うならば、今言われることはある意味ではそのとおりかもしれませんけれども、六十七兆円の経済効果は、当時やはり三・二%を回復するというようなことで、実はそのままほっておけば大恐慌になったということから救った。単に下支えしたというだけの評価それなり効果であったということのそういう評価の仕方がやはり今まで私はむしろ誤ってきたのではないのかと思うのですね。  同時に、信用収縮が起こってきたことを過小評価し過ぎていた、あるいは円安を過小評価し過ぎていたということは非常に大きな問題になりましたけれども、今のような表現が全体的に広がることによって、結局財政構造改革法を出すということになったわけですね。ほかの手が打てないまま財政構造改革法を出してもっと支出を抑えたわけですから、当然のこととして景気は非常に落ちていくという結果になったわけでございますから、一般的な風評に惑わされることなく、やはり六十七兆円規模投資が大恐慌を防いだんだ、そういうところなどを明確にしない限り、私は今回の財政構造改革法停止意味はないというぐあいに思うのですね。  そのことを、実は私は個人的でありますが、もう去年から、早い時期からずっと申し上げてきた。このまま幾ら低金利政策を続けても設備投資はなかなか起こらない、相当な間のデフレギャップがある。  それに対して政府は、お金が一番あるときに、思い切った、例えば新国土軸だとかあるいは都市周辺交通体系の整備だとかあるいは情報ネットワークをもっと早くやるとか、いろいろな意味で将来の日本にとって本当に価値ある投資の方に回せなかったことでこういう問題が起こってきたのであって、その中身について問題はありますが、しかし、このころのマスコミの論評を見ますと、とにかく公共投資を減せばいいんだと。大学の先生もそうであります。改めてそこのところについての認識は僕は明確にしていただきたいというように思っているのですね。  さて、そこで財政構造改革法が出てきたわけでありますが、今も申し上げましたとおり、よく我が国土建国家なんというようにやゆされますが、実際のGDPの構成を見ますと、民間消費が六〇%、それから民間設備投資が一五%強でその大宗を占めております。政府投資が占める割合は八%にすぎません。だから実際には、バブル前後のように民間部門がこのように大きく振れますと、我が国経済はひとたまりもなくこれに振られるわけであります。  この頭の民間部門落ち込みをしっぽである公共投資が四年にわたって支え続けた結果、公債残高は膨れ上がりました。一方で、次の世代は、少子・高齢化が進む中で、年金や介護の負担を確実に背負っていかなければなりません。この世代にさらなる負担を負わせていいのか。景気回復の兆しがかなりはっきりしてきたと思われた平成九年当時、学界、経済界マスコミもこぞって財政構造改革をやるべきだと言っていたのであります。  例えば日経でもそうでございまして、昨年五月八日の社説では、「公共投資中心とする歳出削減を思い切って実施する一方、大幅な所得税減税に踏み切ることである。」というぐあいに簡単に書いておりますけれども、当時支配していたこのような空気が、空気というかそういう論調が実は大変私どもの方向を誤らせたのではないかというぐあいに考えております。朝日新聞においても、「公共事業は、」「大胆に切り込むべきなのに、削減の幅、内容ともに、いかにも及び腰だ。」と。  そこで実際に、先ほど申し上げましたように、本当に公共事業切り込みをやったわけであります。ところが、支えるものがない状況の中で公共事業切り込みをやり、それにかてて加えて、信用収縮が、不良債権の問題に決定的な対策を講じないままやったものですから、大変なことになってしまったというのが今の状況であるというぐあいに考えます。  ところが、実際には景気回復の足取りが当時まだ脆弱でありました。これは、だれが悪いということではなくて、やはり景気回復し始めたら将来のために財政を立て直すべきだ、民需主導成長に早く切りかえるべきだという気持ちがみんなにあったのだというぐあいに思います。  しかし、よく言われますように、法案成立後、さらにインドネシアなどのアジア経済金融情勢の混乱、国内においては大型金融機関の破綻、いわゆる貸し渋りが発生し、それが、バブル崩壊後失った自信を少し回復しかけていた家計や企業マインドをさらに徹底的に冷え込ませるようになってしまいました。  さらに、特に深刻なのは、金融システムの不安であります。これは、長引く資産デフレのせいで担保価値がどんどん下がり、金融セクター全体の体力が弱まる中で、融資先不良債権化し、相乗的にシステム全体のリスクが高まっていった過程であります。  議論の中で、よく個別の金融機関経営姿勢が問題にされ、金融機関はどんどんつぶしても構わないという議論が出ます。しかし、それは金融システム不安が高まる中での対応の仕方に問題があったということで、システム全体のシステムリスクという問題の本質をきちんと把握しなければ政策対応を誤ることになるというぐあいに思います。  さらに、円安影響がこの二、三年は大変大きかったようであります。野村総研のリチャード・クー氏がよく言いますように、円安金融機関資産内容を悪化させ、BIS規制のためにどうしても貸し渋るという自己防衛行動を加速したという事情があります。その意味で、返済の不安を緩和するためにセーフティーネットワーク信用保証の充実が必要であると思うわけであります。  以上が、我が国経済が今極めて厳しい状況に立った経過ではなかろうかというぐあいに思います。  後から見れば、公共事業平成七年、八年補正後比較で、既にこの時点で六・二%減、それから財政構造改革法成立によって、平成十年度の当初は、九年度と比較しましてさらにマイナス七%絞ってしまったことと、金融機関システム不安という問題が直接的な原因であったということは否めないというように思います。  そこで、総理は、今は景気回復に全力を尽くそう、そして必ず来年度プラス成長、再来年以降を民需主導安定成長に乗せようということで、財政構造改革法を凍結し、第一次補正の十六兆円に続きまして二十四兆円、合計四十兆円という史上最大、いや、恐らく人類史上世界最大緊急経済対策を決断したところであります。  財政健全化必要性は変わっていないということはだれもがわかっています。国民もそれをよく承知しているからこそ将来への不安がぬぐえない。本来、GDPの八%しか構成していない公的部門経済全体を押し上げようとするような国のあり方はそろそろ変えていかなければなりません。にもかかわらず、再度、公的部門景気回復を図ろうとしているわけであります。何度もこのような歴史的な対策を打つことは恐らく許されないと思います。  私が本日、るる不況までのプロセスを論じてきたのはこのためでありまして、今回の対策は、単に税金を投入するものではなくて、今回の景気低迷原因が何であって、どこに対処するものであるか、さらには、それが将来の日本活力につながるものであるかどうかということを真剣に議論し、国民の前に明らかにしなければならないと思うからであります。  個別に論ずれば、一、金融対策は貸し渋りを生んだ金融システムの不安にこたえるものでなければならないと思います。単に銀行にお金を出すというのではなくて、金融機関の不安、融資先貸し倒れ等の不安、それから企業の不安、融資打ち切り不安等を除去いたしまして、民間資金循環の健全な流れを取り戻すものでなければならないと思います。  二は、公共投資は単に税金を投じただけの箱や道路ができるということだけではなくて、これが雇用を生み、地域の活力につながり、そして将来の日本の、そしてまた将来の子供たち財産になるようなものでなければならないというように考えます。  こうした観点から、経済企画庁長官に、今回の緊急経済対策考え方をお伺いいたします。
  6. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 衛藤委員から御指摘いただきましたように、一昨年から昨年にかけて、政府だけではなしに官民挙げて大合唱経済回復してきたから財政あるいは年金等を再建しろという大合唱があったことは事実でございまして、これが大変大きな影響を与えました。それは二つあります。  一つは、将来財政が悪くなる、年金が破綻するというような長期の暗い話をすることによって、日本人の心を非常に長期的に暗いものにしてしまった。これが設備投資にも影響いたしましたし、住宅投資にも影響して悪影響を与えた。もう一つは、それを真に受けてと言ったら語弊がありますが、本当に実行して公共事業等を縮小した。これもまた現実的な悪影響があったと思います。  そういう意味では、まことにタイミングが悪かった。ちょうどそこへアジア危機が来まして、日本金融危機が露呈するというようなことが重なったわけであります。  今回の緊急経済対策を立てるに当たりまして、私たちはそういった事情を深く反省いたしまして、どういうような経済構造になっているのか、日本経済不況原因というのを非常に注意深く観測いたしました。  その結果、やはり一番の問題は金融問題である。金融システムの安定がなければならないというので、さきの臨時国会で六十兆円に及ぶ、まさに人類史上初めて、またGDPの一二%というのも、これはフィンランドか何かに例があったようでございますけれども、一番大きな比率、そういったスキームをつくっていただきました。そして、さらに今度の補正予算でも、今度の緊急対策でも五兆九千億円の貸し渋り対策その他をつけました。  まず金融不安の環を切る。そして、そこから生じている企業マインドの冷え込みあるいは設備投資落ち込みをとめまして、そしてその次に需要不足を解決しなければいけない。これは、まさにお説のとおり、消費が六〇%、民間設備投資が一五%でございますから、これが少し冷え込むと公共投資の方を少々やりましてもなかなか持ち上がらない。それを意識しまして、この二十兆円をはるかに超えるような大きな対策費を組みました。十七兆円の事業費と六兆円の減税を含めて非常に大きな対策を組みました。これで需要不足をかなり補う。  そして、もう一つは、やはり消費が冷え込まないためには人々に安心してもらわなければいけない。それで、公共事業も、単に事業費を積み上げただけではなくして、まず第一に即効性があること、第二番目には波及効果があること、そして第三番目には未来性のある事業を選ぼうということを考えました。  それで、空間倍増計画であるとか、あるいは産業再生計画であるとか、特に小渕総理のイニシアチブによりまして二十一世紀先導プロジェクトというのを、これは各省をまたがって、所信表明演説の中にはバーチャルエージェンシーなんという言葉も出てまいりましたが、そういうような新しいものをつくって自信を持つ。  同時に、もう一つはやはり雇用対策でございまして、かつてない一兆円規模雇用対策。こういう金融需要不足雇用不安という三つの点で不況の環を切っていこう、こういうようなシナリオを明確にしました。この点が今までのやり方と違うところじゃないかと考えております。
  7. 衛藤晟一

    衛藤(晟)委員 次に、三点目ですが、減税についてお伺いをさせていただきたいと思うのですね。  減税については、実は、よく調べてみますと、減税乗数効果はそれほど大きいわけではないという点は、やはりよく踏まえる必要があるのではないかと思います。例えば、政府支出乗数は一年目一・三一、二年目一・六五、三年目一・九七であるのに対しまして、減税は、一年目〇・四一、二年目〇・五七、三年目〇・二二であります。したがって、減税は、乗数効果を通じた景気浮揚ということが目的よりも、むしろ、最高税率を引き下げ、一生懸命働けばそれなりのものは残るという税制にして、意欲活力を喚起するという点が最も必要ではないのかなというぐあいに思います。ここのところは、私はやはり冷静な議論をしなければいけないのじゃないのかというぐあいに思います。そのことがまさにグローバルスタンダードということであると思います。  そこで、緊急経済対策にも恒久的な減税が盛り込まれていますけれども、今後の減税についての大蔵大臣のお考えをお伺いいたします。
  8. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 波及効果についての減税公共事業のおのおのの持っている効果というのは、いろいろ議論のあるところでございますけれども、今衛藤委員の言われましたように、確かに、一つは、減税について、その勤労意欲法人につきましても個人につきましてもそういう問題がございます。同時にまた、我が国のようにかなり充足いたしました高度の経済におきまして、このようないわゆるデフレ現象になりますと、政府というのは公共事業でございますし、企業というのは設備投資でございますが、両方になかなか意欲がないというときに、結局消費だけが残る。そういう場合に、消費の動向を刺激するために減税、そういう物の考え方はあるであろうと思います。  したがいまして、これからも減税というものはやはり大事な道具として考えていかなければならないと思いますが、ここまで参りますと、しかし、今回減税をお願いいたしておりますが、もうこれは一遍限りの減税でございませんので、一応この状況でしばらくやらせていただきたいと思っておりますが、次の段階はもう次の世紀に、基本的に新しく我が国税制をどうするかという問題に直面いたさなければならないと思っておりまして、それが次の課題であろうと思っております。
  9. 衛藤晟一

    衛藤(晟)委員 私も、まさに大蔵大臣の言われたとおりだというように思っております。消費を引き上げるために減税ということは必要でありますが、しかし、経済乗数効果で見ますと、それほどいきなり大きな影響を出すものではない。そうなりますと、やはり何が必要かといいますと、私どもが一生懸命働けば働いただけのものがちゃんと残るんだ、そういう社会に対する信頼性というか、あるいは意欲活力が必要だというように思います。  戦後、私ども社会は長い間、過去の所得税の累進におきましても、最高税率八八%なんというようなことでありました。所得の再配分を税制で行うというものでありましたし、またすべての保険料も応能割で、とにかくたくさん所得のあるところから取っていけばいいんだという形で来たと思います。しかし、これだけ成熟をした社会の中ではそういうやり方はもう続けるべきではないというのが、今回の大きな税制改革の入り口ではなかろうかというぐあいに思っております。  大蔵大臣言われましたように、私ども、次の時代に向けて、本当にどのような税制がいいのか、頑張れば頑張っただけそれなりのものが残るよ、そして将来に向かって本当に意欲活力が喚起できるよというような税制に向かって切りかえる必要があるのではないのかというように考えておりますので、どうぞそこの点もよろしくお願いをいたします。  さて、ちょっと私も、今までの議論を踏まえながら、昨年の夏過ぎ、秋ぐらいから実は、ちょうど委員長もおられますが、数十名の国会議員と一緒にいろいろなことを勉強しながら、財政構造改革法がつくられる前でありますけれども、九月、十月に、こういうことを申し上げて幹部の方々にもお願いしたところであります。  財政構造改革法は今つくるべきではないのではないのか、しばらく延ばすべきだ。それから、減税に関しては制度減税として対応すべきである。それから、思い切った補正を早く組まなければデフレが起こってしまう。それから、信用収縮、クレジットクランチが起こっているので、思い切った不良債権処理と貸し渋り対策を講ずるべきであるということを去年の夏から秋にかけて申し上げておりましたけれども、実は、それを申し上げたころ、皆様方にもお願いして、政策転換をすべきじゃないですかというように申し上げたころ、マスコミにも、あるいは学者にも経済界の方にも、なかなか受け入れてもらえなかったような感じがいたします。それだけに、今ちょうどこういうことになりまして、もっと早ければよかったなという感をぬぐい去ることができません。  しかし、そういう中でこれだけ思い切った措置がとれたということは、これは私は非常に評価されるべきであろうというように思います。まさに人類史上初めてではないかと思われるぐらいの思い切った措置でございますので、この効果について期待をさせていただくところでございます。  最後に、経済企画庁長官、今回の経済対策、第三次補正によってどのような経路で景気回復に向かっていくのか、そして必ず回復軌道に乗るのかどうか、ひとつ元気な答弁をお願い申し上げたいと思います。
  10. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 この対策をこの国会で通していただきますと、かなりの需要効果が出てくると思います。  まず、金融不安につきましては、先ほども申し上げましたように、今度の金融対策のスキームによりまして民間の銀行も動いておりますし、また保証制度、中小企業に対する借り入れ保証が働いてまいりまして、かなり中小企業の間にもマインドが向上することが見られてまいりました。  まだこれから経済の指標は、かなり暗いものが、もっと暗いものが出てくるときがあると思います。夜明けの前が最も暗いといいますが、気象学では正しいかどうかわかりませんけれども経済学では明らかに正しいのでございます。  というのは、民間企業設備投資する前には利益が出ないといけない。利益が出るためにはリストラがあるんです。だから、リストラのときに暗くなりまして、それで利益が出て、投資が出るということになりますから、これが公共事業の注入等と重なり合いまして効果を上げてくるだろうと思います。  その結果、平成十一年度は必ずプラス成長になる。九年、十年と二年続いてマイナスでございましたが、十一年度には必ずプラスになる。そして、十一年度の後半ぐらいからはかなり住宅、消費等が上がって、やがて設備投資にこれが広がってくるだろう。従来の回復は輸出から始まりましたが、今、アジア等の情勢から見ると、やはり内需からやっていかなければいけない。そういう意味で、ちょっと長引くかもしれませんが、十一年度の後半には出てきて、十二年度にははっきり回復軌道に乗ったと言える形になるんではないかと期待しております。  このためには、政府の揺るぎなき方針を国民に説得することが必要でございまして、国民に信じてもらわなければいけない、これが大事なところだと思っております。そのために、私どもも懸命の努力をする覚悟でおります。
  11. 衛藤晟一

    衛藤(晟)委員 ありがとうございました。
  12. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて衛藤君の質疑は終了いたしました。  次に、日野市朗君。
  13. 日野市朗

    ○日野委員 民主党の日野市朗でございます。  私は、この法案を読ませていただきまして、非常に簡明な法案でございまして、簡明であると同時に、実際はこう思いました。一体何たる醜態であるかというのが私の第一印象であります。  この法律案財政構造改革推進に関する特別措置法、まあ財革法、こう言わせていただきます。これは大蔵省では財構法と言ったりしているようですが、ここでは財革法と言わせていただくことにしますが、この財革法ができたのは、昨年の十二月五日の法律百九号でございますね。そして、これが五月の十一日には改正案が出されまして、六月五日には法律第九十四号として公布、施行されているということでございます。一年たたないうちに、わずか半年でそもそもの財革法が改正をされて、そして今やこの凍結法という形になっております。  私は、先ほど何たる醜態であるか、こう申し上げました。これについて、どうしてこういう措置をとらざるを得なかったのか、非常にかいつまんでで結構でございますから、大蔵大臣ひとつ、私は、醜態であるというふうに申し上げた。これは、経済の見通し、それから、これからの経済の立て直しのための緊急経済対策も用意しておられた、そういう事情はわかりますが、これはあなたが手をお染めになった法律ではなかったにしても、やはり大蔵省の長として、ひとつ御感想を聞かせてください。何でこうせざるを得なかったのか。
  14. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も、過去二年ぐらいのことを顧みますと、我が国経済の運営の方針と実際に起こりました実情とは非常に多くの食い違いを生んでおって、それをどういうふうに表現をいたしましょうと、決して経済運営が適切であったとは申せない、そのことは認めなければならないと思います。そして、この財革法もまたその一つの要素であったということも、これも事実であったように思います。  現実に財革法、財政改革というものが国民の意識に上りましたのは、実は平成八年のあの総選挙のときでございまして、自民党自身が財政再建を掲げておりますし、また、消費税率を引き上げるということにつきましても、何と申しますか、いろいろ議論はございましたけれども、何となくそれもやむを得ないのかなというような底流があったことも事実でございますから、このままでは二十一世紀に向かって非常に財政は大変になるという意識があったことは事実であろうと思います。  しかし、そのときは、実は外の経済状況で申しますと、平成八年度はGDPは三・二%というプラスの成長をしておるものでございますから、何となくこれでやれるんだという意識がまたその根底にあったように考えます。しかるところ、そのGDP成長は、実はその後に誤りであるということがわかるわけでございますけれども、そういう中で、政府は第一回の財政構造改革会議平成九年の一月にやっておりまして、そして、平成九年を通じまして財政構造改革の方針を決定いたしております。  これは、あえて大蔵省ということを日野委員が御指摘になられましたけれども、大蔵省と申しますよりは、何となく、我が国経済が二十一世紀を迎えるに当たってこの際財政改革をしておかないと、少子・高齢化もあるし、いろいろなことから問題が多い、殊に長期計画に問題が多い、キャップをかける必要があるという意識があり、他方で、それをやっていっても何となく経済はもつのではないか、そういう楽観がその根底にあったのではないかと思います。  私自身、実はこの第一回の財政改革会議に、当時橋本総理大臣が総理大臣経験者をこの会議に招かれましたので、私自身ずっと参画をいたしましたから、その責任を持っておるものでございますけれども、やはり財政改革が大事なのではないかという意識を持っておりましたし、それをやっていても大丈夫だろうというような多少楽観を持っておったことは、正直、告白をしなければならないと思います。  しかるところ、そしてその財政改革の考え方は大体秋ごろにはできてくるわけでございますけれども、十一月に我が国金融異変が起こっております。三洋証券、北拓は十一月でございますが、その前に、タイに金融異変が起こりましたのは八月でございます。タイ、インドネシア、それが動いております。それらのことが片っ方で起こりながら、我が国財政改革の方の道を進んでいった。そういう、どう表現したらよろしいのでしょうか、我が国が独自に考えていたことと実際に起こっていた経済の体質の内外の悪化というものが全く違った方向を歩いたということは、どうも私は事実であると申し上げざるを得ないと思います。  そういう中で平成十年度予算は十年度予算として組むわけでございますが、これは歳出削減をいたしております。また、公債発行額を減額いたしております。そういう中で、しかし経済状況は実は非常に悪くなってきておった、こういうことであると思います。
  15. 日野市朗

    ○日野委員 今、宮澤大蔵大臣にずっとおさらいをしてもらったような感じがいたしますが、そのとおり、そこらの認識は私もよくわかるんですよ。ですから、もう少し手短にひとつお話をいただければ、こう思うんですね。  それで、私、財革法ができたころの状況が今大臣がおっしゃったとおりなのはよくわかります。ちょうどそのころは、我が国のいろいろな改革を進めなくちゃいかぬという、学者、評論家の皆さん、それからマスコミの論調もそうでございましたね。これは、財政構造改革だけではなくて、行政改革もやらぬといかぬ、それから経済構造の改革もやらぬといかぬ、それからあとは教育。それで橋本総理も、大改革を一挙にやるべし、そういった論調がありまして、私はそれに橋本さんお乗りになったと思うんですよ。私は、それはそれなり一つの理由のないことではなかったろう、こんなふうに考えております。  それで、一挙にそれをやろうという議論が学者からも大いに主張をされて、私は、まあそんなにうまくいくものではあるまいよという感じを実は持っておった。しかし、橋本さん、断固として踏み切られたわけですね。それで財革法を出されて、しかし、すぐにこの方向が転換されてしまうわけですね。  私は、こういう財政構造改革に踏み切ったならば、その前提として必要なものは断固たる意思だったろうと思うんです。断固たる志を持って財政構造改革に突き進むべしと私は思っていたのですが、恐らく橋本さんもそうやられるだろうと思った。しかし、これはすぐにその基本的な構想というものがどんどん崩れてまいります。景気対策をどうするんだというようなことから橋本総理の構想というものは崩れていったと私は思うんですね。  特に、土建業を中心とする公共事業に対する要求が吹き上げてくる。そうすると、これは族議員の人たちも随分動いたのでありましょうが、どんどん国債を発行して景気を救うべきだという議論が横溢をして、そしてここで橋本さんは事志と違った方向に行ってしまったのではないか、こんなふうに実は私は今考えております。もっと橋本さん、断固として執着してよかったのではないかな、こういう感じを持っています。ほかの改革でも同じです。  そういう財革法の置かれた状況というものを見て、今ここで財革法の凍結という事態を迎えて、私は、この財政構造改革の志、これは既に失われたのではないか。  この法文を見ますと、これは非常に簡単に、とにかく、法律で定める日までの間その施行を停止するんですね。そして、またこれが息を吹き返しますときにはしかるべき方法を講じますよ、こういう内容にすぎません。  私は、ここでこの法律を見、今までの経緯を見て、もはや既に財政構造改革の志は失われたのではないか、こう思うんですが、いかがでしよう。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 橋本総理大臣の時代に事志とたがったとおっしゃったところまでは私もそういうふうに思っておりますけれども、それは具体的には公共事業が出なくて地方の土建屋さんが困った、そういうふうには私は思っておりませんで、現実に、先ほど申し上げましたような内外の経済情勢の変化の中で、例えば、財政の目標年次平成十五年度というのを、GDPの何%というようなものを変えなければならなかったとか、あるいは毎年度の赤字公債を減らすことができなくなったとかいう、そういう状況であったのだと思います。  したがいまして、委員へのお答えとしては、私自身はやはり、構造改革はなりませんでしたが、しかしある時点において国の債務をGDPの一定のパーセンテージにとどめなければならぬ、あるいは歳入補てん公債のとめどもない増加はとめなければならないといったような点においての志は、なお将来に向かって、私はそうしなければならないというふうに考えておるわけでございます。
  17. 日野市朗

    ○日野委員 いや、現実に志が存在しなければならない、これについてはどなたも異論はないと思うのですね。問題は、財政を現実につかさどる省の、国のつかさとしては、現実にこのような法律をお出しになって、現在審議している財革法の凍結法案でございますよ、このような法律をお出しになって、もう既に財革法では、改正法で、例えば平成十七年までに、一つの目標を決めて、そしてこうやりますよという方針を出しておられるわけですよ。しかし、今こうなってみて、十七年なんという一つの目標が、これは私はクリアできるとは到底思えない。もうそこで既に今まで財革法に託した志は失われたのではないか、このことを私は指摘しているのです。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あえて逆らって申し上げるつもりはございませんけれども、十七年度ということは難しいかもしれない、しかし国の債務というものがGDPの一定の中になければならない、理想としてはやはりそういう目標は持つべきだということは、最近のヨーロッパの状況などからも言えることでございますけれども、そういう目標そのものがやはり可能な時代になれば持っておくべきだろうというふうに思う、その点はいかがでございましょうかと思います。
  19. 日野市朗

    ○日野委員 今大臣は、十七年は難しいかもしれないと。私は、決して言葉じりをとらえるつもりではありません。現実に皆さんそう思われるのではないかと思うのですね。  そうすると、私は、もう一度、財政構造改革、これは高い志を持って最初からやり直してごらんになったらいかがか、こう思うのでございますよ。むしろ、これは凍結ということで古いそもそもの財革法に恋々とするよりは、ここで一たんこれを廃止して、そしてもう一度きちんと日本財政構造改革、どのような姿であるべきかということを、私はその作業をやり直すべきだというふうに思いますが、いかがでしょうか。  これはもう既に効力の停止だ、この法律の停止だと条文上は書いてある。しかし、もうこれだけ痛めつけられて、この法律が十分に機能していくとは到底私には思えない。いかがですか、これ、思い切って廃止をされて、もう一度最初から議論をし直してごらんになる、この方がよろしいんじゃありませんか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこはかつて政府部内にもいろいろ議論のあったところでございまして、委員のおっしゃるような考え方もございました。  しかし、例えば、政府の長期計画の中で少子・高齢化に伴うもの等々は現実に従来の計画を改めなければならないという事態は回避ができないということも事実でございますし、そういうものは現実にございますし、また他方で、今のような財政状態、今としてはやむを得ないとしても、やがて国の債務の累増というものはどこかで見直さなければならぬというような、その思想そのものは誤っているとは思えないといったようなことから、廃止でなく凍結ということにいたした次第でございました。委員の言われるような考え方政府部内にも一部ございました。
  21. 日野市朗

    ○日野委員 私は、だれも財政構造改革を忘れろなどと言っているんじゃありませんよ。私は、こうやってこの法律がこういう醜態をさらしている姿を見てつくづく思います。もはやこの法律で、現在の経済状態を――いろいろな経済政策を打つ、緊急経済対策を打っていく、その政策の必要を私は認めないわけではないんです。その当時から日本財政状況はぐっとさらに悪い方に今移っているわけでございましょう。  ちょっと資料を見ますと、ことしの国税と印紙税の収入見込み、大体五十兆でございますね。それから、国家の公債を初めとする赤字、これも大体四十九兆ぐらい、ほぼこれはもう並んじゃったんですな。平成十年度ですよ。こういう状況を見て、私は、あの当時の認識で出された財革法、これはもはや変えなければどうにもしようがない、こう思っているんですね。  ちなみに、地方も現在大変財政状況の悪化に苦悩しておられますね。今、地方の財政状況、どうなっていますか。簡便にひとつ、簡単に述べていただけますか。数字を挙げていただくだけで結構です。
  22. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 地方財政、大変厳しい状況でございますが、端的に、地方債の残高が大変多額になっておりまして、十年度末の見込みでございますが、今回の緊急経済対策等も含めて申し上げますと、全体として、地方債の借入残高と交付税特別会計の借入残高等全部ひっくるめまして、地方の借入残高の平成十年度末見込みは、百六十六兆円になる見込みでございます。
  23. 日野市朗

    ○日野委員 まあ、こういう惨たんたる状況でありますね。  今、この財革法を凍結されて、経済対策を打っておられる。これは結構でしよう、経済対策打つのは。こういう経済対策を行うにしても、ではこの財政をどうするかということについて、財政の政策がなければなりません。それはどういうものですか。どういうふうに財政を立て直していこうとなさっているんですか。この法律には何にも書いてありませんですね。要するに財革法の凍結である、これは私にとってみれば非常に無責任に見えます。  こうやって凍結をする、しかし、もう歳入と公債発行高、これがほぼ並ぶような財政状況の中で、どうやってこれを立て直していこうとされるのか。それは、経済立て直しが優先だとはいいながら、その政策を打ちながらも、やはり財政政策というのは考えていただかなければならないのです。どのような財政政策をお持ちなんですか。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 むしろ、そういうお尋ねがございますがゆえに、廃止をせずに凍結をしたというふうに御説明をいたすべきだと思いますのは、確かに、平成十七年までにGDPのあるパーセンテージを達することはできないとしても、しかしいずれの日かはそういう目標を持たねばならない、またそれが可能な経済財政運営をしなければならない、そういうふうに考えておりますために廃止をせずに凍結をいたしておるわけであります。  確かに今、日野委員の言われますように、それなら具体的に何年にGDPの仮に三%に債務をとどめるのかといえば、正直を申しまして、今それを申し上げることができない状況でございますから申し上げておらないのであって、そういう意味では、今具体的な目標を持てないではないかとおっしゃれば、まことに申しわけないが、そのとおりであります。しかし、持てなくてもいいというふうには考えておりません。いつの日か日本経済を正常化して、そういう目標を我々は持たなければならない、こういうふうに考えておるわけでございます。
  25. 日野市朗

    ○日野委員 財政の立て直しというのは決して容易なことではないと私は思っているのですね。これは、ややもすると皆さん簡単におっしゃるのです。景気がよくなってくれば税収が上がる、それで赤字公債は償還できる、こう安易におっしゃる。しかし、私はそんな安易なものではないと思うんですよ。  景気だってこれはいろいろな波があるものでございまして、今度景気回復したらゴボウ抜きにぐっとよくなる、そんなことはあり得ない。バブル時代のような好景気などということを想定してはいけないのでありましょう。こういう状況下で財政を立て直していく、赤字を消していく、これについては、一方では経済政策をやりながらも、ちゃんとした見識を持って財政の立て直しに臨まなければいけないのだというふうに思います。  ちなみに伺ってみましょう。では、あのバブルの時代、あんなに税収が上がった、驚くほど上がった、しかしそこで、それまで発行していた赤字公債のどれだけを消却したか。いかがですか。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その時代に一番税収が入りましたときには弾性値が三を超えましたので、したがいまして、名目成長率三とか四とかいうときに税収は十数%ふえたときがございます。したがいまして、その間に、毎年発行しておりましたいわゆる歳入補てん公債をゼロにすることができました。そういう段階がしばらくあったわけでございます。
  27. 日野市朗

    ○日野委員 大臣はゼロにすることができたと今おっしゃったが、私は、ゼロにするのが精いっぱいだった、むしろそういう表現であるべきだと思うのですが、いかがですか。
  28. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その新規発行をゼロにしたのは、そのとおりでございます。
  29. 日野市朗

    ○日野委員 従来の発行済みの公債、これを消却はしていないんだ。
  30. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 期限前消却はいたしておりませんけれども、償還期に参りましたものは償還いたしておりました。
  31. 日野市朗

    ○日野委員 これは当然の話でございますがね。  それで、これだけ財政状況が悪いということは、これは景気にも非常に悪い影響を与えていると私は思うのでございます。財政なんというのは経済を安定化させる効果というものをこれはビルトインしているものでありますから、財政がこれだけ悪いということになると、経済を安定させていくということもできなくなっていく。  それから、こんなに公債を発行してしまうと、資金をどんどん国の方で吸収してしまって、民間に十分資金が回らないということも憂慮されることですね。もはや、日本の公債の発行高、これを見てみると、そういうことを現実に心配しなくちゃいかぬのじゃないでしょうか。  大蔵大臣と、これは企画庁長官にもお答えをいただきたいと思います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこは大事な問題だと思っております。  ただいまは幸か不幸か民間資金需要がございませんので、まあ不幸でございますけれども、ございませんので、金利は低いし、国債を発行しても、実際その発行に困難はございません。しかし、仮に民間資金需要が出てまいりますと、国の資金需要と競合する事態というものはあるわけでございまして、そうしますと金利が上がるということになっていく、そういう事態が、民間資金需要が起こることを私どもは非常に期待をいたしております。期待をいたしておりますが、そうなった場合に、国の需要との競合というものは、量の面でも金利の面でも実は非常に考えなければならない問題だと思っています。
  33. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 大蔵大臣もお答えになりましたように、現在は資金需要が非常に低迷しておりますから金融市場は緩和しておりまして、金利も非常に安い。今民間企業の間で資金不足と言っているのは、金融市場の金詰まりではなくして、貸し渋りとかそういうようなことで起こっているわけであります。  ただ、委員御指摘のように、景気回復してきて金融需要がふえたときに国債発行とどうなるか、これは用心深く見守っていかなきゃいかぬ問題だと思いますが、現状においてはその心配は全くないと思っております。
  34. 日野市朗

    ○日野委員 今私が指摘した問題を動かすのは金利でございますから、結局金利が非常に大変な問題になってまいります。一部には公定歩合引き上げ論というようなものが強く言われているわけでございますが、金利政策が今非常に難しくなってきた。これは日銀のことよとおっしゃられると困るんですがね。  現在の低金利ということが幸か不幸かとおっしゃいましたけれども、現在の低金利に救われているというところがこれはなきにしもあらずでございます。でありますから、今非常に強い圧力があって、金利を上げなければというような主張が随分出ておるわけでありますから、ここのところは十分注意しなくちゃいかぬというふうに思いますが、いかかでしょう、大蔵大臣
  35. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今の民間資金需要に関する限りは問題がなくて、日銀が低利で、低目に運用しているということで私はよろしいんだと思っていまして、いわゆる引退をされた方々のおっしゃる問題はわかっておりますけれども、これはまことに申しわけないと思いながら、低金利で運用させていただいておるということでございます。
  36. 日野市朗

    ○日野委員 低金利の弊害は弊害でまたこれもあるわけでございまして、頭の痛いところでございますね。  しかし、こういった経済政策を運用していく、それから財政を運用していくについても、やはり一つのきちんとした自分たち考え方を持っていなければならない。このように単に凍結するのでございますよということだけで財政政策というのは進まないんだと私どもは思います。  どのような実体経済が営まれていようとも、やはり財政を立て直していこうという強い志、これはなくちゃいけないというふうに思いますので、凍結をしている期間というもの、これはやはりちゃんと決めるべきだと私は思いますよ。そうでなければ、際限もなくずるずると泥沼のようにとめどもなく公債を発行するというようなことに陥りかねない。  それから、その期限も必要でありましょうし、健全化の目標、こういうものをきちんと据えて、そして財政の計画、財政の政策というようなものを進めていかなければならないというふうに思いますが、野放しでいいんですか、こうやっていつまでという期限を決めずにやっていって。私は期限を切るべきだ、こう思います。いかがでしょう。
  37. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いかにもそうだと申し上げたいわけでございますけれども、今の我が国経済の現況を見ますと、そういう時期がいつどのような形で来るかについて確たる見通しを正直申して持ち得ない、まことに残念なことでございますが、それが現状でございますから、とにかく経済の、景気回復、正常化ということを早く呼び戻したい。それがどのぐらいのうちで、したがって、財政再建もいつはと言えるべきだとおっしゃいますのは、私どももまことに言えれば幸せだという感じがいたしますけれども、大変正直を申しますと、そのことを計数的に申し上げることが今の私どもにできないというのが経済の現状ではないかと思います。
  38. 日野市朗

    ○日野委員 こんなことを申し上げて大先輩である宮澤大蔵大臣に失礼なのを十分承知で聞きますが、まさか、私は引退をするのだから次の大臣に聞いてくれというようなお話じゃないのでございましようね。私は、あなたのお話を聞いていて、私はあなたを尊敬しているんですよ、あなたのお話を聞いていて、我が国大蔵大臣がこのような弱気でいいんだろうか、こう思うんですよ。いかがでしょう。
  39. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 むしろ私は強気とおっしゃるかもしれないと思っておりましたのは、私は、今の日本の力は経済回復する力がございますから、多少の債務をこの際負ってもそんなに将来心配することはない、将来その償還を考えればいいんだということを腹の中で思っておりますものですから、したがって、ただいまいつだとおっしゃれば、それは申し上げることが残念ながらできないと申しつつ、必ずその日が来るんだということを私は考えておるものでございます。
  40. 日野市朗

    ○日野委員 押し問答のようになってもしようがありません。ちょっと見方を変えて伺います。  経済の問題にしても財政の問題にしてもそうですが、もっと日本人の物の考え方、これを変えていかなければならないと私は思っているのございますね。一言で言って、これだけ日本経済が落ち込んできた、財政の状態も悪い、このような中で国民の人たちは一体何を感じているんだろう。よもや人ごとだというように感じているのではないと思いますが、そういう風潮がある、こういう指摘もございます。  私はやはり、国というものは何なのか、国と国民というのは何なのか、国は国民に対して何をするのか、国民は国に対してどういうことをすればいいのか、こういうことをもう一度根源に立ち戻った議論をしてみる必要があるのではないか、こういうふうに思いますね。  私の尊敬するある方が本を書いておられまして、その本の一番最後のところにこう言っておられる。   これからの十年間、国際環境と社会の豊かさ  と人口構造の変化の三つの要素を、どう消化し  て行くかをめぐって、日本は大いに悩むに違い  ない。それは、外国から解答の与えられない問  題という意味で、仏教文化を見た飛鳥時代やゼ  ロサム社会に直面した享保時代の悩みに似た深  刻なものになるだろう。これからの日本人に  とって重要なのは、ここで再びこれを解決する  日本的哲学を生み出すことではないだろうか。 これは非常に貴重な問題の提起であろうというふうに思います。  経済企画庁長官、こういう問題の提起に対する何か解のようなものがあれば、デッサンとか方向性とかそういうものがあるならば、企画庁長官のお考えを聞かせていただきたい。
  41. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 委員に今お読みいただいたのは、私の著書でございます。まことに恐縮でございます。  私がそこで書いておりますのは、日本人が初めて仏教に出会ったとき、これまでの神道を守るか仏教を取り入れるか非常に悩んだ。あるいは享保時代、まさにゼロサム社会になって、新しい成長がなくなったときにどうしたらいいのか、勤勉を続けながら倹約を両立させるにはどうしたらいいのか、これを非常に苦労したのですね。そういう意味でまた新しい哲学が要る。それは、規格大量生産で物をふやすだけのことではなくして、新しい生き方、新しい人生観、新しい国家観が必要だろうということを言っております。  解といたしまして、私は知価社会ということを申し上げておるのでございますが、これはまた説明すると長くなりますので、著書を送らせていただきます。
  42. 日野市朗

    ○日野委員 その著書、もう読ませていただきました。  それで私、大蔵大臣、あなたとここで、予算委員会の総括質疑で随分いろいろなことのやりとりをしたのを今でも鮮明に覚えているんです。もう大蔵大臣はお忘れになったかもしれない。その中で私、もっと心の問題に政治は踏み込んでいいのではないかということをお話ししたら、大臣は、いや、心の問題に政治が踏み込むことはいかがなものかというようなお答えをなさいました。  しかし、今ここまで来て、経済にしても財政にしても同じです。余りにも自己中心主義になり過ぎた日本人、これをもっと公なものを考え、そして国とは何か、国民とは何か、こういうことを考えるということが必要なんだと私は根本的に思いますよ。  あなたは辞職されると言っておられるのですけれども、あなたのような見識のある大臣を私は非常に今世の中は求めているというふうに思うのですがね。どうですか、日本人はもっと自分たちのこととしてこの国のことも考えてみるということが必要なんだ、そのことを国民に訴えるということをなさるべきではないかと思いますが、いかがでしよう。
  43. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前にもそういうことを伺ったのを実は非常によく覚えておりまして、同じように思います。  かつて高度成長時代がございましたけれども、今こういう苦しみにあって国民に御迷惑をかけるのは申しわけないと片っ方で思いながら、おのおのが自分の問題として国の将来を考えるということにでもなれば、これは不幸中の一つの試練なのかなというような思いもいたしておりまして、おっしゃることはよく私は覚えております。
  44. 日野市朗

    ○日野委員 では、終わります。
  45. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて日野君の質疑は終了いたしました。  次に、生方幸夫君。
  46. 生方幸夫

    ○生方委員 民主党の生方幸夫でございます。  大蔵大臣にまず御質問をしたいのですが、今、日野議員の質問にもございましたが、大蔵大臣辞任をする意向だという新聞の報道が二十七日になされております。これは、あくまでも新聞の報道によりますと、派閥を加藤さんにお譲りになるので、お譲りになった後閣内にとどまるのはどうであるか、信義にもとるのではないかということで、年内にも辞任の意向であるという報道がなされておりますが、これは事実なのでございましょうか。
  47. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 これは、まことに私的なことが伝えられまして申しわけなく思っておりまして、私は総理大臣にそういうことをまだ申し上げておりません。おりません限りは、私は与えられた務めを務めさせていただくつもりでございます。
  48. 生方幸夫

    ○生方委員 そうであるのならばいいのですけれども、今の日野議員の質問にもございましたように、年内にも辞任だというようなことをおっしゃっている大蔵大臣が予算編成をしているということになりますと、我々は、ではどこへ向けて質問をしたらいいのかがわからなくなってしまいますので、もっとはっきり、あれは撤回である、辞任の意向はないということを表明していただきたいのですが。
  49. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 重ねて申しますが、私的なことが報道をされたことはまことに残念だと思っておりまして、私は、そのようなことを総理大臣にも申し上げておりません。したがいまして、与えられた務めに従いまして毎日の仕事をやらせていただくつもりでおります。
  50. 生方幸夫

    ○生方委員 前の金融国会のときに我々野党の案を丸のみにした責任をとって大蔵大臣がおやめになるというのであれば我々はわからないでもないのですが、きょうの朝日新聞の投書に、お読みになったかとも思うのですが、  「加藤氏をもりたてるのに、私が内閣にいるの  は信義にもとる」と述べているのは、おかしな  発言です。派閥の継承などは、一つの政党内の  問題にすぎません。一方、閣僚は、国民に対し  て重大な責任を負った職務です。仲間内の事柄  と、公的な職責を絡めて考えられては、国民が  いい迷惑です。 という投書が来ているわけですね。  どういう経過でこの報道がなされたのか知りませんが、少なくとも、一紙だけじゃなくて何紙にもこういうふうに出れば、宮澤大蔵大臣は年内におやめになるのかなというふうに国民の大多数が思ってしまうのは、これは事実なわけで、もしそういう意思がないのであればはっきりとしていただいて、これから、この財革特も二日間あって、予算委員会も二日間あるわけでございますから、はっきりしてもらって我々は討論をしたいと思うのですが、重ねてお伺いいたします。
  51. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうぞ、私ごとでございますので御放念いただきます。
  52. 生方幸夫

    ○生方委員 大蔵大臣の職責というのは私ごとではないわけで、私ごとで現在やめるという報道がなされているのでそれを否定していただきたいということを私は申し述べているだけでございまして、私ごとではないわけですね、大蔵大臣というのは公の職責ですから。  いかがでございましょうか。
  53. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その報道は私ごとについてのことでございますので、この点はどうぞそれとして御放念くださいまし。
  54. 生方幸夫

    ○生方委員 それは納得ができないのですけれどもね。  大蔵大臣でございますから、私ごとで大蔵大臣についているわけじゃなくて、内閣総理大臣に任命されて大蔵大臣宮澤さんがいらっしゃるわけですから、そこを、やめるというふうな発言があったのを否定されないまま私たちは論議をするというわけにはいかないんですね。やめないというのであればそれはそれで話は始まるのですけれども、年内にやめちゃいますという大蔵大臣に向けて質問をこれ以上続けられないということになってしまうのですが。
  55. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと年寄りの表現がまずかったのかもしれません。  私としては、総理大臣にそういうことを申し上げたことはございません。したがいまして、大蔵大臣としての職責を果たさせていただいておるわけでございます。
  56. 生方幸夫

    ○生方委員 大蔵大臣の意図するところでないのが新聞に出たんだとすれば、やはり新聞社にもきちんと抗議をしないと、これはやはり真意が通じないということになると困るわけですからね。これはやはり、自分の真意に反していることだということであればきっちりと申し上げていただかないと、我々は、この記事だけ読んで、きょう、今お話を伺わなければ、大蔵大臣は年内にやめるものだというふうに認識をしてしまうわけですから、その辺は、そうであるならばきっちりと発言をしていただきたい。  これはこれ以上お話ししてもしようがないので、ここでやめてしまいます。  それでは今度、財革法の本題について御質問させていただきたいと思います。  私は、財革法の凍結ということに関しては、昨年の財革法の委員会のときから、財革法の精神というのはできたんだから、これは景気がよくなるまで一年ないし二年凍結をしたらどうかということを、もうとっくから申し上げているわけですね。  特に今年の一月の予算委員会のときには、当時の橋本総理大臣に向かいまして、日本景気回復するまで本格的な景気回復予算を組み立てるためにも、今年度あるいは来年度まで行ってしまうかもしれませんが、一年ないし二年、財政構造改革法案の適用というのを凍結してみたらいかがか、そうすることによって予算編成をもう少し自由にして、追加的な措置というようなものをとるのではなく、本格的な景気対策を盛り込んだ予算をつくるべきではないかというような質問をさせていただきました。  当時の橋本総理大臣は、この財革法を通して予算をつくれば景気はよくなるんだから通してくれという一本で来てしまったわけです。実際問題として、政府はキャップのかかったデフレ予算を提出いたしました。  もうこれは御存じですが、その提出している間にも、自民党の首脳が大型の補正予算を組むんだということで、我々は随分そこで批判をしたわけです。何で本予算を審議しているときに補正予算を組むというようなことを言わなければいけないのだということで大分御批判をしたんですが、とにかく我々は補正予算を組むというようなことは少なくとも閣内では言っていないということでこれを乗り切って、本予算が通過したら、今度はすぐに大型の補正予算を提出してくる。  またそのすぐ後に、半年後、今度は財政構造改革法の一部改正というのを行ったわけです。我々は、一部改正案が出たときも、一部改正ではなくて、その時点で凍結するべきであるという凍結法案を出したわけです。ところが、その凍結法案に対しても、政府・自民党はそれはだめだということで一部改正にとどめ、さらに、それでも景気回復しないということで二次補正予算を組み、今度第三次補正予算というのを出してきているという経過があるわけですね。  一月の時点で、私が言った時点で、すなわち去年の時点で財革法というものを凍結しておれば、あれほどのデフレ予算を組まなくて済んだ。デフレ予算を組まなければ一次補正も二次補正も三次補正もやる必要はなかった。しかも、この間に公債依存度は、年度初めには二〇%だったのが、三八・六%と一八・六%も上昇してしまっているわけですね。すなわち、それだけ国民負担を大きくしてしまった政府・自民党の失政の責任というのは極めて大きいものがあると私は思うんですが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  57. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 前回も御議論が続いてあるところでございますけれども、結局、平成九年度における財政運営、経済運営が、しばしば生方委員も御指摘になっておられましたけれども、このときに消費税の引き上げがあった、あるいは特別減税をやめた、あるいは医療保険等の負担がふえた、そういう経済財政運営がこの年度で適当であったかどうかということにやはりなってくるんであろうと思います。  政府はこれを適当と考えましたから、その継続の上で十年度予算を組んだわけでございますけれども、おっしゃいますように、十年度予算を御審議いただいている途中で、既にこれはこのままではやれないなということがだんだんわかってまいりましたから、補正という話が出てきて、いろいろ御批判を受けました。  事実は、残念ながらそのとおりであった。そうではないかとおっしゃれば、そうであったとやはり申し上げるべきであろうと思います。
  58. 生方幸夫

    ○生方委員 これは、責任というものが当然発生をするわけです。政治が責任をとらなければだれが責任をとるかということになると思うのですね。私は、以下の四点で政府・自民党に大きな責任があるというふうに考えております。  第一点は、財革法というのを無理やり通して、デフレ予算を組んで、景気をその時点で悪化させた。  二点目として、間違えた予算を修正するために、一次、二次、三次、今回は三次ですが、三次の補正予算を提出しなければならず、その結果として国民の皆さんに多大な負担を強いた。  三点目として、その結果が上がればまだしも、その景気対策がいつもおくれて、いつも小さ過ぎた。これは減税を見れば明らかですが、我々が指摘をしてまいりましたように、いわばツーレート・ツーリトルという政策をとり続けたことによって、額が大きい割には非常に効果が小さくなってしまった。同時に、旧来型の公共投資中心型の、未来への投資というようなことをおっしゃっておりましたが、中身は旧態依然たる公共投資中心型の景気刺激策だったがゆえに、景気は一向によくならなかった。これが三点。  四点目。あげく、本予算を成立させた直後に大型の補正予算を提出したり、財革法を半年後に修正したり、さらに補正を繰り返すなど、一貫していない政策をとったことによって、国の内外の信頼、政治に対する信頼を損ねた。この四点において私は極めて大きな責任があると思います。  大蔵大臣、今おっしゃったように、失政があったということをお認めになるのであれば、失政の責任というものを明らかにしていただきたい。
  59. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 財革法の本来志しておりますところにつきましては、それなり意味があるということを先ほど申し上げましたので、重ねません。考え方そのものが間違っているとは思っておりません。具体的に掲げました目標の設定等々に現実的でないところがあったということはわかっておりますけれども、物の考え方が間違っておるとは思っておりません。  その後の対応でございますが、説明はいろいろに申し上げることができると思います。例えば、東南アジアにおける金融の変化であるとか、世界経済情勢であるとか、国内における不良債権の発生の、あるいはその処理についての見通しの誤りであるとか、いろいろございますと思います。  しかし、一言で申しまして、この大きな経済の変動に対して、非常にタイムリーにその都度その都度十分に対応できなかった。ツーリトル・ツーレートとおっしゃいましたが、結果としてはそういうことがおっしゃられるのだろうと思いますけれども、後から見ればそういうことは確かに言えることであろう。しかし、その都度その都度精いっぱいの対応をしてきたことは、またお認めいただけるのだろう。  つまり、経済の変化というものがそれだけ大きいもので、それだけ深いものであって、今日でもなお、どのぐらいデフレの深さがあるかがお互いによくわかっていないといったようなものでございますから、懸命に対応してまいりましたけれども、不十分であったということであれば、そのとおりであると思います。
  60. 生方幸夫

    ○生方委員 東南アジア金融危機も、原因がどこにあったかたどっていけば、日本原因があったと言える面ももちろんございますね。それから、金融破綻の問題にしても、政策の失敗というようなことも、もっと早くに金融の自由化をきっちりやっておけばよかったというようなことも含めて、政策の失敗がそれらをどんどん大きくしてきたということがあるわけですね。  それに対する責任をやはり一々明らかにして、さっきどなたかがおっしゃいましたけれども、それは橋本政権の問題であるといっても、政権はかわっても自民党政権であることは変わりないわけですから、それは同じような責任を担ってもらわなきゃ困るわけで、そうした意味で、私たちは一年前に既に財革法の凍結を言っていたわけです。そのときそれを拒否して、一年後にまた、我々が主張していたように財革法の凍結法案を言うんであれば、それなりにきっちりと責任をとっていただいてから凍結法案をお出しになるのが筋じゃないですか。
  61. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほども申し上げましたように、財革法に掲げておりました物の考え方はよろしいのですが、具体的な目標が達成できなくなったということであったと思うのでございます。
  62. 生方幸夫

    ○生方委員 政治に対する信頼がなくなったというのは、政治が責任をとらなくなったからだというふうに私は思っております。  今度のように、国民の皆さん方も、一年前に財革法を出して、一年前、そのとき野党である我々は反対をし、凍結をするべきだというふうに言っていたのを突っぱね、今度は半年後にまた財革法の一部を改正して、そのときも我々は凍結法案を出しているのにそれも突っぱねて、また半年後に凍結案を出す。この無責任さをどこかでだれかが責任をとらなければ、政治に対する信頼なんて、これは成り立ちませんよ。だれも責任をとらない。一年前我々が言ったときは突っぱねておきながら、今度は凍結だと。これじゃ、一年間何をやってきたんですか。財革法があって財政が少しでも黒字に転換したというんならいいですよ。あげく赤字がふえているんですから、この責任はだれかがとってくれなきゃ、国民の皆さん方は納得しないんじゃないですか。
  63. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういう御指摘はずっとありましたことをよく存じておりますし、現実の問題といたしまして、実際に行政をやり、あるいはこういう日々のことをやっております者の立場から見れば、どうしても、よそからごらんになっておられる方がよく見えて、実際上はそうじゃないじゃないかと言われて、後になって、そうでございましたというようなことが実際このように起こってまいっておるわけでございますから、そういう意味では、まさに先見を持っておられた、私どもがそこはよく見えませんでした、そのとおりでございます。  したがいまして、今度改めましてこうやって凍結をお願いいたしておる。おくればせでございますから、もっと早くすればよかったとおっしゃれば、それはもうそうであろうと申し上げるしかございません。
  64. 生方幸夫

    ○生方委員 聞いているのは政治責任の問題です。責任をどうとっていただけるのか、その一点だけでございます。
  65. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 責任をとる形で、このたび凍結をお願いいたしておるわけでございます。
  66. 生方幸夫

    ○生方委員 責任をとる形でというのは、どういう責任ですか。私にはちょっとわからないのですが、どういう形で責任をとるということになるのですか。
  67. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来、こういう法律を施行させていただきたいと考えておりましたが、事情によってそれが適当でなくなりました、したがいましてこの凍結をお願い申し上げますという提案をいたしておるわけでございます。
  68. 生方幸夫

    ○生方委員 責任を聞いておるのですけれども。重ねてまことに失礼なんですが、どう責任をとっていただけるのかということを聞いておるわけです。
  69. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府の責任におきまして、従来施行しようとしておりました法律の凍結を決心いたしました。政府の責任において決心いたしましたので、その点をお認めいただきたいと御提案をしているわけです。
  70. 生方幸夫

    ○生方委員 押し問答してもしようがないのですけれども、一年前に私たちが言ったとおりに凍結をしておれば――国民の皆様方に実害があるわけですね。あの段階で、きちんと景気対策を盛り込んだ予算を組めと我々は既に言っていたわけですから。この予算を通したらデフレになって景気はもっと悪くなる、だからちゃんと景気対策を盛り込んだものにしなきゃいけない、そのためには財政構造改革法があったのでは本当の予算が組めないでしょう、だから凍結をしましょうというのを一年前に我々が言っていたわけです。それを無視してデフレ予算を組んで、その結果、そのとおりに景気が悪化をして、それでまた補正予算を一次、二次、三次まで組まなければいけなくなって、結果として、さっきも申し上げましたように、予算の公債依存度が二〇%から三八・六%まで上がるという、国民の皆さん方に対する多大な、将来の皆さん方に対する多大な負担を強いたわけですよね。その強いたことに対する責任を問うているのですよ。それがなければ、国民の皆さん方の政治に対する信頼がなくなるのですよ。  だから、きちんと責任をだれかがとってくれる、明らかにして、初めて国民の皆さんの政府に対する信頼が生まれてくる。信頼が生まれなければ、どんないい政策をとったとしても、その効果は半減してしまいますよ。だから、私は責任をきっちりと明らかにしてくださいと重ねて申し上げているわけです。
  71. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、財政改革法にはいろいろな物の考え方が入っておりまして、それ全部が悪いとは多分生方委員もおっしゃっていらっしゃらないのだと思うのです。おっしゃっていることは、その背後にある経済運営の仕方がまずかったということをおっしゃっていらっしゃるのでございますね。(生方委員「僕は責任のことを言っている、責任のことを」と呼ぶ)ですから、それは財政改革法の問題というよりは、経済運営が常にツーリトル・ツーレートであったとか、そういうことについてまずかったではないかとおっしゃることだと思います。私は、その点はそうであったということを先ほどから申し上げております。
  72. 生方幸夫

    ○生方委員 どうも議論がかみ合っていないのですが、財革法のことなんですよ。財革法の凍結を、我々は一年前に言っていたのですよ。それを無視して予算を組んでいて、補正を組んできて、またここで今財革法の凍結を言うわけですよ。我々が言うのならいいですよ。一年前に我々が凍結を要求した。それで、もうだめだったから凍結をしなさいというのなら、それはいいのですけれども政府は否定をしていたのですよ。我々が、凍結をしたらどうかと。  今おっしゃいましたように、財革法の精神、これはだれも否定しようがないのですよ。現実に五百何十兆円もの赤字があるわけですから、何とかしなければいけない。これは国民の皆さんだれだってわかっているわけで、ふえればふえるほど財政は硬直化してしまうわけですから、何とかしなければいけないことはだれでもわかっている。だけれども、その精神は財革法というものの中でできたのだから、一年か二年、景気がよくなるまで凍結をしましょうということを、もう既に一年前に言っているわけですよ。一年前に言っていたことを否定して、その結果として現在の本年度予算が組まれていて、補正予算が組まれていて、景気がこれだけ今悪くなっているわけですよ。その責任はだれかがとらなければいけないのじゃないか、そうしないと政治に対する信頼というものがなくなってしまうのではないかということを私は重ねて申し上げているわけです。
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 財革法そのものの精神が間違っているとはおっしゃっていらっしゃらないわけですから、したがって、そのことを否定しておられるのではないのだと思うのですね。  ただ、現実の事態に立って施策を進めていく上で、これはどうも凍結をせざるを得なくなった、そんなことは前からわかっていただろうとおっしゃれば、それはかぶとを脱ぎます。そうでございましようけれども、私どももそう思いましたから、ここで凍結をさせていただきたいと思います。
  74. 生方幸夫

    ○生方委員 責任をとってくださいということを私は重ねて申し上げておるんですが、どうも論議がかみ合わないので、これはまた、予算委員会もございますので、その席ででも質問をさせていただきます。  本題の財政構造改革法凍結法案について、今度はお伺いをいたします。  この財革法の今度の凍結の趣旨の中に、財政構造改革推進するという基本的な考え方は守りつつ、まずは景気回復に全力を尽くすため、これを凍結するという趣旨が書かれております。この基本的考え方は守りつつというのは、具体的にはどういうものを守るということになるのでございましょうか。
  75. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  少子・高齢化が進む我が国におきまして、将来の世代のことを考えれば、安心で豊かな福祉社会や健全で活力のある経済の実現といった課題に十分対応できる財政構造を実現する、そういうことが引き続き重要な課題である、そこがポイントであると考えております。  そういうことで、財政構造改革推進するという基本的考え方といたしましては、こうした問題意識のもとに財政構造改革の実現に向けて努力を重ねていくという基本姿勢ということでございまして、景気回復に全力を尽くすために財政構造改革法の施行は当分の間停止するといたしましても、そうした基本姿勢は引き続き堅持するということでございます。
  76. 生方幸夫

    ○生方委員 今のではよくわからないので、大蔵大臣、基本的な考え方は守りつつというのは具体的にはどんなことでございましょうか。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 例えて申しますと、将来我が国の累積債務あるいは年々の債務というものをある程度の範囲にとどめたいというような思想、あるいはまた、場合によりまして、少子・高齢化社会において、長期計画の幾つかのものはそれに対応しなければならないであろうといったような、そういう基本的な物の考え方そのものは将来大切なことであると考えながら、しかし、ただいまそれは現実的でございませんので、それらを凍結するということでございます。
  78. 生方幸夫

    ○生方委員 停止法案において、財政構造改革法の全体の施行を当分の間停止すると。先ほど日野委員の質問にもございましたが、当分の間停止して、停止を解除するには、どんな条件があれば停止を解除するということになるんでしょうか。
  79. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 この点につきましては、法にこのように述べております。「財政構造改革推進に関する特別措置法の再施行のために必要な措置については、この法律が施行された後の我が国経済並びに国及び地方公共団体の財政状況等を踏まえて講ずるものとする。」この意味は、将来におきまして、我が国経済が今日のような状況を脱却いたしまして正常な歩みに入って、そして将来の展望ができる、また、その他の国内、国外の社会情勢もそれを可能にするといったようなときにおいて、先ほど申しましたように、ここに述べられております思想そのものは大切な思想を含んでおると思いますので、そのときに改めましてこの再施行について法律を起こしたい、こう考えております。
  80. 生方幸夫

    ○生方委員 これは総合的に判断してということなんでございましょうが、解除するに当たって例えば目標のようなもの、この数字をクリアしたら解除するというような目標があれば、それに向かって皆さんも努力をして、ここへ到達したから解除だなという、いわば財革法の精神でいえばまさにそうですね。数値を挙げて、キャップをかぶせて、それを達成しようと。その数値が挙がらないとなかなか具体的な目標達成まで至らないからということで財革法をつくられているわけですから、解除にも、これこれこういう数字をクリアすれば解除しますよというのをお示ししていただいた方が、みんなもそれに向かって努力をしてここに来たんだから、では解除してまたもう一度、再度財政構造改革をやりましょうということになると思うんですが、その辺の目安というのは、大蔵大臣が今お考えになっておられる範囲で結構なんですけれども、いかがでございましょうか。
  81. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点のお尋ねは私はごもっともだと思いますし、普通ならお答えできなければいけないんだと思いますけれども、正直を申しまして、我が国経済の現状というのを見ておりますと、これがいつになったらどういう状況になるということを私自身で今描けておりません、正直を申しますと。  したがいまして、こういう景色になりましたらということが具体的に、大変情けないことですが、申し上げられないというのがこういう法律の書き方をいたしましたところですが、それでもしかし何か言ってみろとおっしゃいましたら、例えば、我が国経済成長がかなりポジティブに、プラスに何年かなっていく、そういう状況ができましたら将来計画が書けるんではないか。しかし、それ以外にもいろいろ国の内外の事情はございますのでそれだけではいけませんが、とにかく、マイナスが続いておる状況では新しい絵はかけないなと。  例えば、せめて何か言えとおっしゃればその程度のことは申し上げられますけれども、実はもっともっとお答えは難しいように私は思います。
  82. 生方幸夫

    ○生方委員 大蔵省の方は、これは具体的な数値というものを何か想定はしておるんですか。
  83. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 ただいま大臣がお答え申し上げましたように、やはり今後の我が国経済回復状況を見た上で総合的判断をすることになるんではないかと考えております。
  84. 生方幸夫

    ○生方委員 今大蔵大臣のお答えですべてだとは思うんですが、やはりある程度の数値を示さないと、例えばプラス成長に転じて、その時点じゃなくてそれから数年ということになると、せっかく財革法を出したときの精神を守りつつということから外れるんじゃないですか。  財革法を出したというのは、数値を出してそれをちゃんと達成しよう、年度もちゃんと区切ってやろうというのがまさに財革法の精神であって、今の大蔵大臣のおっしゃりようじゃいつまでたったって財政は好転しないだろう、財政赤字は残ったままだろうと。それを断ち切るためにこそ、まさに去年我々は財革法の論議をしていたんじゃないのでしょうか。
  85. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ですが、マイナス成長が続きましたら、実際財政改革の計画を立てるということはもうほとんど不可能でございますから、やはり、それがどうしてもミニマムの必要ではないかというふうに思いますね、成長がプラスになってくること。
  86. 生方幸夫

    ○生方委員 いや、先ほどそれはもう聞きました。プラスになってそれから何年かというふうにおっしゃったんで、例えばプラスが三%ならどうかとか、三%が二年続くとか、二%なら三年とか、大体あると思うんですよ。大蔵大臣の長い経験からいえば、これぐらいならば一応財革に取り組んでもいいなという数値というのがあれば、今現在具体的な数値で縛るというんじゃなくて。  今度はじゃ質問を変えまして、将来的にそういう数値というものをお示しするつもりがあるのかどうか。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 おっしゃっていることはわかりますけれども、稼ぐに追いつく貧乏なしみたいになりましたらだんだん考えられるんだな、こういうことなんでございますけれどもね。
  88. 生方幸夫

    ○生方委員 量的縮減目標というのが財革法の中に盛り込まれております。この中で、公共事業等は前年比七%を下回るなんというのはとっくにもう上回っちゃっているわけだからいいんです。よくはないんですけれども、まあしようがないんですが、それ以外に、社会保障費もこの間の修正で減らさない、ふやすということが明らかになって、それ以外の、例えば文教予算とか防衛関係費とか、政府開発援助費とか主要食糧関係費というのはほとんどが前年を上回らないようにするという量的縮減目標がございますが、これらも全部外してしまうということなんですか。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようでございます。
  90. 生方幸夫

    ○生方委員 ということは、凍結じゃなくて廃止にもう限りなく近いということですね。この量的縮減目標そのものも全部外しちゃうということですね。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 一般的にそういうことを一遍引っ込めてしまおう、少なくともそういうことを決めましたけれども、決めたことは一遍凍結してしまおう、いわばそういうことがない状態に置こう、こういうことでございます。
  92. 生方幸夫

    ○生方委員 委員長もよくおわかりだと思いますけれども、いつまでに解除するのかも明らかでない、縮減目標も全部これは取る、ということは、これはもう廃止ですよね。凍結でも何でもないじゃないですか。凍結というのは、期間が限られていて、これとこれについては凍結しますよ、ある部分については凍結しますよ。これじゃ、全部について何にもなくしちゃうわけですね。それで、いつまた再開するかもわからないというんじゃ、これは廃止に限りなく近いんじゃないですか。
  93. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、先ほど申しましたとおり、やはりいつの日にか財政は再建しなければならない。そのためには、国の累積債務だとか毎年の債務だとかはちゃんと、累増するというようなことはいつまでもとめどもなくあってはいけない、そういう物の考え方そのものがやはり大事だから、いつかやはりそういうことを持っていかなければならないと考えておるわけなんで、そのための手段として一つ一つの長期計画をどうとかというところは、今その目標をおろしましたから、それは今凍結させていただきます。
  94. 生方幸夫

    ○生方委員 ということは、凍結を解除した場合、今ここに量的縮減目標というのがずっと並べられておりますが、これは限りなく復活するというふうに考えてよろしいんですか。
  95. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは恐らく、凍結が解除できるような状況になりましたときの我が国経済が、どのような長期債務であるとか長期計画であるとかいうことが可能なのかということになりますから、そのときにもう一遍新しく考え直すと思っていた方がいいんだろう、本当はそうは思っております。
  96. 生方幸夫

    ○生方委員 それじゃ、廃止をして、そのときにもう一回新しい財革法をつくるという方が筋じゃないですか、それの方が。
  97. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いや、そうではないんで、やはり、長期債務とか累積債務とか毎年の債務とかいうものをきちんとした方がいいという思想そのものは残しておきたいわけでございます。それは残しておく。ですから、廃止をしたくない。
  98. 生方幸夫

    ○生方委員 それは、一たん枠組みができたところでみんな納得はしているわけですよ。  だから、この部分のうちのどこが残るのかと。何にも残らないで全くまたゼロからそのときの経済状況にかんがみてつくり直すというんであれば、この基本的な考え方は守りつつといっても、全然、基本的な考え方はここにまさに反映されているわけですよ。そのうちのどこが残るのか。何にも残らないでそのときの経済状況によってまた再び考えるというんであれば、全く新しい財革法をつくるのと何ら変わらないじゃないですか。
  99. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 長きにわたる国民生活の安定のためには財政の安定というものが大事なんだ、そういう思想は失ってはならないと私ども考えているわけなんです。ですから、そのことを放棄するのではないということを申しておる。  今、そういうことを目標をおろしました。おろしましたが、それは仮の姿であって、いつまでもそういうものがなくていいんだとは私どもは思っていない。いつの日にかそういう目標をやはり掲げなければならないと思いますがゆえに廃止をいたしたくないのです。
  100. 生方幸夫

    ○生方委員 それは、精神を残すということと法律を残すということとは別だと思うんですね。  これは、財革法をつくる論議の中で、財政構造を改革しなければいけないというのは、与野党を問わずみんなが一致した考えなんですよ。国民の皆さん方も一致している考え方なんですよ。だから、そうであるならば、ここは一たん全部、凍結するんじゃなくて廃止をして、新しくまた、本当に財政構造改革をやろうというときにはきっちりとした財革法をつくる方が、よほどこれは筋が通っているんじゃないですか。
  101. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今おっしゃいますように、一つ一つの具体的なことについてはそのときに確かにつくることになると思いますけれども、今からそのときの間、やはり財政の健全というものは国民生活のために大事なものなんだという思想そのものは失ってはならないと思いますから、そういう意味で全体の考え方をやめるということはいたしたくない。そういうことがあって、それを今度新しく、日本経済がよくなりましたときに具体的にどうやるかということはそのときに書かせていただきますけれども、基本の思想を廃止するということはない。
  102. 生方幸夫

    ○生方委員 財革法の論議のとき、量的縮減目標というのを我々はいっぱい論議したわけですよ。こうやって、例えば防衛費であれば前年の額を上回らないようにするとか、ODAであれば十分の九を乗じた額を上回らないようにするとか、これでみんな一応納得をして財革法というのは通っているわけですよ。  それで、今これを全部なくしちゃうということで、では、次にやるときに、もし凍結だというふうにおっしゃるのであれば、最低どことどことどこの部分は残しますよということとか、さっきおっしゃった何かしらがないと、何のために論議をしてきて、何のためにこの法律をつくって、一年間その法律に縛られたあげく不況にならなきゃいけなかったのかということが明らかにならないわけですよ。  だから、何かしら、精神を残すということであるのならば、基本的な考え方を残すというのであれば、例えば宮澤大蔵大臣だとしたらこの部分のどこだけは最低復活させますよということをおっしゃらないと、凍結にならないじゃないですか。
  103. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 多分それは、今の日本経済の現状というものを、それから、本当にこういうことであってはならない、将来の日本経済の姿というものとの違いというものをやはり考えれば考えるほど、どの部分を残してどの部分を残さないということは本当になかなか言えないんだと思うんです。  だから、残っているのは、財政は健全でなければならないということ、そのことはやはり、その目標を失うわけにはいかない。
  104. 生方幸夫

    ○生方委員 限りなく廃止に近い凍結であるということがわかりましたので、これはここでやめさせていただきます。  堺屋長官、今の大蔵大臣と私の論議を聞いていて、堺屋長官は、その財革法をつくったときは閣外におられて、民間におられたわけですから、そのときの、財革法を通したときの感想というものがございましたら聞かせていただきたいのですが。
  105. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 当時、私は全くのちまたの物書きでございましたから、そのときの感想というのは全く個人的であることをお断りして申し上げますが、国際的にも通貨危機が起こっておりましたし、日本の銀行破綻もあったから、大丈夫かなという気はいたしました。だから、ちょっとタイミングが悪いんじゃないかという気はしておりましたけれども。まあそんなことですね。
  106. 生方幸夫

    ○生方委員 長官の発言のことでお伺いしたいのですが、二十五日の朝刊に出ておりました景気に新しい胎動、勘ですがというのがくっついておりまして、景気にかすかに新しい胎動が感じられるというような報道がなされております。  まさに私たちが去年の暮れに財革法の論議をしているとき、どなたかは申しませんが、経済企画庁長官は、桜が咲くころには景気がよくなるという非常に国民の皆さん方の感覚とは乖離した感想を述べておられた。その方は、その後はまた五月ごろには、七月には景気がよくなるというふうにおっしゃったり、景気見通しをずっと誤り続けてきたわけですね。  私たちはその景気の見通しの誤りがゆえに、まあ一応、桜が咲くころに経済企画庁長官景気がよくなるんだというふうに言えば、ある程度の国民の皆さん方は、うん、桜の咲くころには景気がよくなるんだろうということで期待もするわけですね。ところが、全く逆に、桜の咲くころには景気がさらに悪化し、それから七月には、今度はちゃんと補正予算を組んだのだから、その効果が行き渡って七月にはきっと景気がよくなるだろうというようなことで、みんなまた期待をして、また裏切られる。  それと同じことを堺屋長官も、景気に胎動というふうなことをおっしゃると、私たちはどう見ても今の状態で景気に明るい兆しが見えているというふうにはとても思えないわけですね。それは、経済企画庁の中に入ると、もちろんいろいろなお役人さんがいて、日々いろいろな資料を持ってくるんでしょうから、その資料を見ているうちに、やはりだんだん明るく言わないといけないのかなという気持ちになるのかもしれないですけれども、勘で、何で明るさが見えてきたのか。  それと同時に、もう一つ、その次の日に、今度は日銀総裁が支店長会議で、同じ数字を多分見ていると思うんですよ。同じ数字を見ているにもかかわらず、日銀総裁の方は、いや、景気はまだ依然として非常に厳しいという見通しをしている。全くこれは百八十度違った見通しをしているんですが、どういうふうにそれを判断して、勘で新しい胎動というふうにおっしゃったのか、お伺いします。
  107. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 経済企画庁の見通しを見ますと、当たっているときもあれば外れているときもございます。当たっているときの方がそれは多いんでございますけれども、残念ながら、去年、おととし、特に去年からことしにかけてはかなり強気の見方をしたんですが、外れております。  私が新聞記者に申し上げましたのを正確に言いますと、現在の経済は非常に厳しい、そしてまだしばらく悪い数字が続くだろうけれども、目に見えないところで景気回復景気の新しい動きの胎動を感じる、こう申し上げたのでございます。  現在、悪化を示すものと、それから幾分よくなってきたかなというような感じを感じさせるものと、両方ございます。  悪化を示すものといたしましては、例えば民間設備投資の計画でございますが、これは依然として下方修正が続いております。それから雇用情勢、これは完全失業率でいいますと四・三が三カ月続いておりますが、有効求人倍率も減っておりますし、かなり悪い数字が続いております。  それに対しまして、例えば家電の量販店の売り上げでございますとか、あるいは、分譲マンションはがたっと落ちているんですが、個人住宅でございますとか、幾つかそういう点ではふえているものもあります。  私が勘と申し上げたのは、一つは、金融問題がかなり動き出したということで、中小企業を初めとする経営者のマインドに明るさというか期待感というようなもの、明るさとまでいきませんが、期待感みたいなものが出てきている。だから、やがてこれは少し違ったものが動くんじゃないか。既存のものは下がっていきますけれども、新しい動きが出てくるんじゃないかというような感じもいたします。  そのほかいろいろと数字がございますけれども経済というものは夜明けの前が一番暗いのでございます。だから、今から悪い数字はまだ出てくると思います。けれども、大体時間的にもかなり経過してまいりましたから、そろそろ動きがあるんじゃないか。  経済というのは要するに勘でございまして、数字というのはやはり後から出てくるものですから、そういう感触としてとらえていただいた方がいいかもしれません。
  108. 生方幸夫

    ○生方委員 本当に、前の経済企画庁長官ももちろん数字を述べられまして、それを根拠にして桜の咲くころとか七月とか述べていたわけですが、全部外れているわけですよ。  これは、経済企画庁長官もお忙しくてなかなか表を歩いたりする時間がないんだと思うので、やはりぜひ、経済企画庁の中に閉じこもって、官僚が上げた数字だけ見て、もちろん勘ですからそうじゃないのかもしれませんが、できるだけ表に出て実感を確かめてきていただいた上で御判断いただけると大変ありがたいんですが。
  109. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 経済企画庁の組織から上がってきた報告は、私の勘と違いまして、まだまだ暗いという方が上がってまいりました。だから、私がこう言うときに、官僚の方はむしろ、長官ちょっとやめた方がいいんじゃないですかと言われたんでございますけれども、私は五つの地域を現場視察もさせていただきました。それから、十の業種のヒアリングもさせていただきました。いろいろそういう情報活動には努めておりますし、また、いろいろな中小企業、小売店、あるいはサービス業の方々、タクシーの乗車、特に建築設計の相談なんかの件数、そういったものもそれぞれ調べさせていただいて、そういう感触を得ているわけであります。
  110. 生方幸夫

    ○生方委員 これは私、記事を読んでいないのでわからないんですが、宮澤大蔵大臣は、きのうどちらかで御発言をなさって、景気の見通しについて、どしゃ降りの雨の中でちょっと明るい日が見えた程度じゃないですかというようなことをおっしゃったというふうに聞いておるんですけれども、その発言はそれでよろしいんですか。
  111. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 さようなことを申した覚えはございません。
  112. 生方幸夫

    ○生方委員 いや、そういうふうにどこかで出ていたということをちょっと聞いたもので、私もきょう新聞を見て確認をしようと思ったんですけれども、どこにも出ていなかったので、発言を確認できないであれでしたので。  それでは、私の質問、時間がちょっと余りましたが、これで終わらせていただきます。
  113. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて生方君の質疑は終了いたしました。  次に、赤松正雄君。
  114. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 公明党の赤松正雄でございます。  私は、ちょっと観点を変えて、財政構造改革法の問題に入る前に、冒頭、若干宮澤大蔵大臣にお聞きをしたいことがございます。それは、今、参議院も含めてこの三日間ですか、代表質問で、大変に各党党首級からの議論の中で話題になっております自民党と自由党との連立の問題であります。これについては国民的な関心が非常に高くて、皆さん強い関心を持って見守っている。  この中で、私は二つ、まあ幾つか問題はあろうと思いますけれども、ぜひこの場で、大蔵大臣、所管外でありますけれども一つは安全保障の問題について、元総理大臣というお立場もありますのでお聞きしたい。それに、もう一つ消費税の問題、この二点についてお伺いをしたい、こんなふうに思います。  まず、安全保障につきましては、小沢自由党党首が五年ほど前に自民党から出られたとき、たもとを分かたれたときの総理大臣であられるということ、あるいはまた、今日までの流れの中で、私、お二人とも大変に尊敬をいたしておりますけれども、この安全保障をめぐる議論で、小沢、宮澤という二人のおっしゃったこと、今日まで言ってこられたことというのは、ある意味で非常に屹立した対立点を持ってきたという部分がある。  とりわけ、今回の小沢党首がおっしゃっている、自民党の小渕総理・総裁との間で、いわゆる一国の総理・総裁、政権党の総裁と公党の党首とが合意をしたということの中で、一つ大きな問題、安全保障に関する問題については、いわゆる多国籍軍を含むところの国連軍、今現在国連軍はないわけですけれども、そういったものに日本の自衛隊が参画をするということについては、これはこの間本会議におきまして法制局長官の答弁もありましたけれども、従来、日本政府は、海外における自衛隊の武力行使を伴う行動については憲法が禁じているところであるというふうな解釈、憲法解釈をしてきたわけでありますね。それはこの間の法制局長官の答弁でもはっきりしたわけでありますけれども。  一方、小沢党首の方は、その憲法解釈、政府の解釈というものを変えるということについて合意を見たのだ、こういうことをおっしゃり、一方で小渕総理は、要するに政策の基本的方向で一致した、こういうふうにおっしゃっています。きょうまでのいろいろな場面で、具体的なことはこれから協議をするんだ、両方の機関でもって協議をするんだということでもって説明をしておられるわけです。  私は、従来この問題に関しては、宮澤総理のお立場に全く賛成をしているという立場であるんですけれども、改めてこの問題について、所管外ではありますけれども、元総理としてお考えを聞かせていただきたい。
  115. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに、私が内閣をやらせていただいておりましたときに小沢さんは離れていかれたわけでございましたけれども、二人の間に個人的な、何と申しますか、争いというような感じはございませんで、むしろいろいろなときに議論をしてまいりました。ただいま御指摘の問題につきましても、テレビなんかでも議論をしておりますので、内容は御存じのとおりでございます。  私自身、小沢さんとそういう議論を何回かしながら非常に裨益をしてまいったものでございますが、おっしゃいましたように、私自身は、我が国は外国において武力行使をしてはならないというふうに考えております。  小沢さんは、殊に最近におかれましてはそのように拝見いたしますが、武力行使ということについては同じく非常に慎重でいらっしゃって、自衛というようなことをむやみに言うことにも問題があるとすらおっしゃいますが、他方で、しかし国連ということであればこれはまた別の問題である、こういうふうに考えておられるわけでございます。その間には国連軍というものが将来どのようになるかという未確定要素もございますから、きちんと話が詰まってはいかないのですが、そういうふうに考えておられるように私はお見受けをしております。  ただ、これは、小沢さんと私はそういうお話、議論を何度かしておりますけれども、二人とも当面の政治の問題として議論をしたことはございませんで、一人の政治家として、我が国の将来におけるあり方の議論をしている中でそういう論争、論争と申しますか、そういう討論をしておりますわけでございまして、したがいまして、私は今、もとより自分の所管じゃないことはおっしゃいましたとおりですが、そういう二人の議論は、将来の日本における、日本の将来像との関連で二人の政治家がディベートをしている、そういうものとして御理解をいただきたいと思います。
  116. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 宮澤大蔵大臣、大変含みのある言い方をされましたけれども。  そこで、もう一つこの問題についてお聞きしたいのですが、防衛庁長官が、総理のこの問題に関する言い回しの中で、従来、憲法の枠内でという言い方をしていたのを、憲法の理念に基づきというふうな形で小渕総理はおっしゃっているということについて、両党間におけるいわゆる交渉の余地があるということを言っておられるわけです。  私は、先ほど来申し上げました観点に基づきまして、要するにこの問題は、よく一般的に法制局長官が国の基本的方向を決めるのかという議論があります。つまり、法制局見解というものをこういう場面で出してくるのはおかしいという議論が一方であるんですけれども、そうじゃなくて、こうした問題に関しては、憲法ができたときから今日に至るまでの一つ政府の大きな遺産というか、積み重ねられた憲法に対する考え方というものがあるわけで、それを政府がかわったから、政府の枠組みが変わったから、その憲法解釈を時の政府が簡単に変えていいというふうには思えない。したがって、この問題に関しては、この今の点に関しては交渉の余地がない。つまり、憲法を改正しなければこの問題はできないのであって、解釈でもって変えるということはできない、こんなふうに思いますけれども、この点について、宮澤総理のお考えを聞かせていただきたい。
  117. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その点は、先般本会議で内閣法制局長官が述べられましたことが政府の従来からの、また今日の見解であると思います。
  118. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 次に、もう一つの問題としての消費税の問題でありますけれども総理は本会議場におきまして昨日も、消費税下げという問題について否定的な見解を示しておられます。  ただ一方で、自由党の代表質問の中には、消費税の時限的減税という言葉を使われて、これも、消費税の時限的減税という角度の中で両党間の合意が見られようとしている、これからの交渉に任せられようとしているということがあると思うんです。  そうしますと、先ほどの安全保障の問題についても国民は大変に関心を高めておりますけれども、もう一つ、この消費税の問題についても、どうも両トップが合意したこと、小渕総理消費税下げについては否定的な話をしておられますけれども、同時に、自由党の皆さんについては、テレビの場面とかいろいろな場面で消費税を下げることの重要性というものをおっしゃっています。そうしますと、国民は見ていて、この二つの政党が基本的方向で一致をしたというのは一体どういうことなんだろう、こういうように思うわけですね。  そういうことで、特にこの問題に関してあいまいな態度をとり続けるということは、結果的に消費に対する国民の気持ちというものを手控えさせてしまう。待っていれば消費税は下がるんじゃないか、小沢さんと小渕さんとの間でそういうふうになって、なるんじゃないのかという期待を持つ向きがある。したがって、これは毅然とした態度をしっかりと示してもらわなくちゃいけない、そんなふうに思います。  経企庁長官大蔵大臣、お二人から。
  119. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 消費税の問題につきましては、私の存じております限り、小渕総理大臣は、我が国の福祉政策一般において消費税がどのような役割を持つべきかということについては確かにいろいろ問題がある、それについては十分に検討する値打ちがある、こう言われたとは承知しておりますけれども、下げるということについて言われたように私は承知しておりません。  ただ、二つの問題を含めまして、先ほど憲法のことを言われました。今また消費税のことを言われましたが、恐らく小渕総理大臣が言おうとしておられますことは、そのような政治の大きな問題について二つの党の間でいろいろ議論をする、立場が違うわけでございましょうから。違う立場の間で議論をしていくことには非常に意味がある、こういうことを多分言おうとしておられるのだろう、そのように私は伺っておるわけでございます。
  120. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 消費税の問題については、税率を変えるという話は一度も聞いたことがございません。  消費税を五%に引き上げるに当たりまして、これは直間比率の問題、将来の消費所得、所有に対する税の問題、当時私は政府税調の委員をしておりまして、そこでもいろいろ議論をいたしました。  そういう税構造の上から、タイミングにはちょっと問題があったのですけれども消費税を高めて所得税を下げてバランスをとっていくという、税構造上これは大変重要な問題でございますから、うかつに下げるべきではないと考えて、動かすべきでないと思っています。  これを下げてまた上げるという説が一部の人々から、政府でない人々から出ておりますけれども消費税を上げたり下げたりしますと、その周知期間がございます。それから、そのためにいろいろな機械を変えたり値札を変えたりカタログを印刷したりするコストがかかります。だから、短期間で上げたり下げたりするのは、結局、非常に経済悪影響がある。そのたびに買い渋りも出ますし、買い急ぎも出ますから、非常に悪影響があるんじゃないかと危倶しております。したがって、私は、消費税を動かすべきではないと信じております。
  121. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 では、この財政構造改革法について、私も公明党の立場から御質問いたします。  先ほど来、民主党の先輩方、また同僚議員から厳しい指摘がありました。私、聞いておりまして、私も一年前の当委員会に所属をしておりまして、この財政構造改革法というものに対して厳しく反対の論を張ったわけでありますけれども、そのときに、政府側だけじゃなくて自民党の皆さんからも大変なやじが飛んで、財政構造改革を先行すべきだ、景気もそうだけれども今は財政構造改革だというふうな話があったり、今一年たってみて、私たちの立場からは半年前に凍結法案を三党共同で出しましたけれども、今度は、先ほど来宮澤大蔵大臣のお話を聞いておりますと、限りなく廃止に近い凍結というふうに聞こえました。  あるいはまた、先ほど来のお話を聞いていますと、非常に大蔵大臣、まあ財政構造改革をめぐる議論については余り元気が出てこないのが自然かもしれませんけれども大蔵大臣、随分元気な感じを抱きましたけれども、もう少し元気を出してほしいなと思うような御答弁でございました。まあ、元気が出ないのはしようがないと思いますけれども。  要するに、この二年を振り返りますと、九七年に消費税率二%アップ、それから医療費値上げ、あるいは特別減税の打ち上げ、こういうふうに九七年冒頭から続いてきて、そして一年前にこの財政構造改革法が出てきた。まさに真打ちの登場みたいな感じで、消費を冷え込ませる大きな要因になった。今、よく小渕総理がおっしゃいます不況の環という言葉がありますけれども不況の環のスタート点がまさに去年の財政構造改革法の成立にあった、こういうふうに見ざるを得ない。  もう既に大蔵大臣の方から、先ほどのやりとりの中で、率直に、多少楽観視をしていたといういわば告白をせざるを得ないというお話がありましたので改めて言わなくてもいいのですけれども、もう一回、財政金融担当部局の最高責任者として、今日の事態を迎えたことの責任についてお話しを願いたいと思います。
  122. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 総選挙がございました後、二十一世紀に向かっての改革ということが言われ、我が国経済もそれほど悪くはならないかもしれないというような雰囲気もございまして改革ということが言われました。  それで、財政改革法の議論をずっと私どもの党内あるいは与党とも詰めてまいりまして法律をつくりましたのですが、その中で、いわゆる我が国の将来の少子・高齢化であるとか、したがいまして、そこからくる長期計画であるとかいうものには、確かに、この際どうかしておかなければいずれにしても困るという問題意識はございました。  そこらはよろしかったのですが、しかし他方で、具体的に、毎年の歳入補てん公債を減らしていく、あるいは、ある時点で国の債務をGDPの一定のところでとめるといったようなことはできるのではないかと考えたその部分は、言ってみますと、二兎を追ったということに私はなると思います。  そして、今申せることは、こういう景気状況になると二兎を追うことは残念ながらできない、将来そのことを決して忘れることはないんだけれども、今、具体的に目標を掲げて二兎を追うことは無理である、こういうふうに、私どもの認識のそういう意味での甘さがあった、希望があった、しかし、今それはなかなか具体的には言えないことになった、こういうことと思っています。
  123. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 そういう御答弁を当時の橋本総理にしていただきたかったなという感じがいたします。  また、大蔵大臣は、八月十九日の予算委員会で、まさに、これは新聞報道を見て私は知ったのですけれども、凍結をするのか、場合によっては廃止をするのか、年末までに検討したい、こういうふうな答弁をなさった。その後、小渕総理からの指摘があり修正をされたという経緯があるわけですけれども、これ、先ほど来議論をしておりますと、何だか宮澤大蔵大臣は、御自身の本心を抑えて小渕総理のお立場を守っておられるというふうにも聞こえるのですけれども。  当時、廃止と停止という、この二つについてはどういう違いがあると考えておられたのか。この辺について。
  124. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 結局、私は、端的に考えて、当分難しいんだから一遍やめちゃったらどうだというようなことを思いましてああ申したのですけれども、他方で、海外から見ていまして、確かに、日本は国債を出したりいろいろしていって、財政再建というものは日本はもうやらないのかねというようなこと、そういう見方になりましてもまたそれは問題でございましょうから、そういうこともありまして、それは総理大臣のおっしゃった方がいいかな、こう思うに至りました。
  125. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 先ほど来のお話を聞いていますと、私は実はこの委員会に、もう少し宮澤大蔵大臣日本財政をよくしていくために強い意思とビジョンをお持ちだと思って臨んだのですけれども、どうも先ほど来のお二人の仲間の質問を聞いておりますと、いつの日かとか、何か随分、いつの日か日本財政をよくしたい、よくする日が来るとか、あるいは必ずその日が来るとはおっしゃいましたけれども、やりとりの中で、そういうふうになれれば幸せだとか、非常に消極的というか、率直といえば率直なんですけれども、何か非常に厳しい感じを私は抱いたわけです。そういう点が一つ。  それから、経済状況が、思っていた認識よりその後の展開が悪くなったということに尽きるのでしょうけれども総理が所信表明で、平成十二年度までに経済再生を図るとおっしゃっています。そして、明年、平成十一年度には経済プラス成長に転換させる、こういうふうにおっしゃっています。  もちろんこれは、先ほど来の話で、やりとりでわかるわけですけれども経済の今の状態をよくしていくための、マイナス成長からプラス成長に変えていく一つの見通しとして総理はおっしゃっているのですが、先ほど来の大蔵大臣の御答弁をあわせ聞いていますと、どうも総理のおっしゃっていることも、直接的に財政再建のことには触れておるわけではないのですけれども、そのいわば起因としての経済成長についての見通しというものが、どうもお話を聞いていると、本当にそういうふうになるのかな、随分とこれは所信表明では元気におっしゃったけれども、意外と自信がないのではないかというふうにも聞こえるのですけれども、そのあたりどうでしょうか。
  126. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、そうおっしゃる私の申しようがちょっと不注意だったのかもしれませんけれども、私が絶えず申そうとしておりますのは、財政の均衡というのは非常に大事なことであるのですけれども、今日本に何が必要だといえば、そのことではなくて、どうやってこの景気回復するかということなのでして、ついでにこのことも言いたいというのはちょっと欲の深いことだ、そんなこと、ちょっと今言うまい、とにかく、あらゆることをやってこの景気回復しようではないか、これを申したいために、いつになったら財政がきちんとするんだということを申さない方が私はいいんだろう、こういう気持ちがあるものでございますから、そのようにまでおっしゃっていただけば、それはちょっと私の思い過ごしかもしれませんが、ともかく、この際はあらゆることをして景気回復をしたい、こう思っております。  そして、それは必ずそういう日が来るわけでございますから、そのときにはもちろん財政のことは忘れてはならない、気持ちの中でそう思っておりますのでついつい二兎を追おうとする。そこはちょっと、ここは、片っ方のことを大事に考えて、片っ方のことは、いずれそれはあるさという部分は言わずに済ませてもいいのではないかというような思いで申しておりまして、そうおとりになりましたら、それは私自身の思い過ごしであったかもしれません。
  127. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 まさに、二兎を追うべきではない、今は景気対策景気の浮揚に最大の力を注ぐべきだということを、一年前もあるいは半年前にも我々は主張してきたわけで、まさに先ほど来のお話にありますように、ちょっと本当にそういう気になられるのが遅過ぎたなという感じがいたします。  同時に、一つの法律ができてそれを凍結する。先ほど宮澤さんは、要するに精神を残すんだ、いわゆる財政構造改革に向けての精神、魂、思想というものを残すんだ、こうおっしゃったわけですけれども、過去にさかのぼりますと、こういう決めた法律を凍結するというケースは実は一つだけあるそうですね。陪審法があるという。さすが大蔵大臣はちゃんとそのことを知っておられるわけですけれども。  陪審法は、これも凍結が解除になって動き出す可能性は、この間法律の専門家とお話ししたときに、日本にも陪審制度を再び復活させる芽が全くないわけではないというお話をしておられましたけれども、どうも完壁にそのことさえ忘れられてしまうぐらいに凍結、冷凍庫に入ったままの状態になっているわけでございます。  そういった点で、私も、先ほど来のお話を通じて、財政構造改革の精神、これはもうみんなよくわかっているわけですから、今の大臣のおっしゃり方については非常にやはり無理があるなという感じがいたします。  そこでもう一つお聞きしたいのは、大蔵大臣は、二十七日の閣議後の記者会見ということで、私は新聞報道を通じて知ったわけですけれども、第三次補正予算の編成に伴って国債発行額が急増する、このことについて大臣はこうおっしゃっているという報道に接しました。「いまの至上命題は景気回復で、財政支出は惜しまない。経済が正常化すれば、この程度の国民負担は問題ない」。これも記事だけ読むといろいろな見方ができますので、それこそさまざまな解釈を呼ぶわけで、大蔵大臣は一体財政再建についてどういう考え方でおられるのだろう。  先ほど、二兎を追うのは云々、今景気回復に力を注ぐということを言われたから、そういう目で見るとわからなくはないのですけれども、ここでおっしゃっているこの程度というのはどの程度なのか。あるいはまた、大蔵大臣の目から見て、問題のある国民負担、これは問題ないと。今回の三十四兆円ですか、三次補正が終わって三十四兆円の赤字負担になる、赤字公債発行になるということに対して、問題ないとおっしゃっているわけですけれども、じゃ、どれぐらいだったら問題あるというふうに考えておられるのでしょうか。
  128. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大蔵大臣が借金しても平気なんだというようなことを言っておってはもともといかぬわけでございますから、どうもそのお尋ねにはなかなかお答えしにくいのですが、いろいろな観点がございまして、GDPあるいはGNP全体から申しますと、日本はこれだけの国でございますから、累積赤字が相当ありましてもそう心配することはないだろう、将来、我々が健在、日本経済が健在である限りというふうに思っておりますが、一般会計に占める国債費で申しますと、それはやはりかなりつらくなってまいると思います。  ただいまのところは非常に金利が安いものでございますから国債費は意外に小さくて済んでおりますが、金利が高くなりますとこれは大きくなりますので、つまり、全体これだけのものの中で二割は国債費でとられてしまう、八割しか使えないといったような財政は、実はやはり非常につらい財政でございます。今金利が低いので済んでおりますけれども、高くなりますと、それが二割から三割なんということになりますと、もう三割は使えない、そういうことになるとなかなかつらいので、金利との関連もございますけれども、やはりそこはほどほどでないとつらくなるなということは思っております。
  129. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 景気はもちろん大事でありますけれども、そういった部分も国民は非常にしっかりとした目で見ておりますので、財政構造改革に向けてのそれこそ大蔵大臣の魂、精神というものも同時に示す、そうした姿勢を示してもらいたい、こんなふうに思います。  先ほど大臣は、あらゆることをして景気回復に役立てたいとおっしゃいました。そこで、私ども公明党が自民党との交渉の中で、いわゆる商品券構想、今地域振興券という形で、当初の構想よりも随分後退をしたということで私ども大変不満な部分はあるのですけれども景気浮揚に向けて一定の効果を発揮する、そんなふうに強く期待をしているところでございます。  この点に関して、経企庁長官、大変に影響力の大きい方でございますので、この地域振興券に関する見通し、また、自治大臣、今準備に当たっておられると思いますけれども、この点について、どういうふうな効果を発揮するものと思っておられるかに絞って、簡単にお答えいただきたいと思います。
  130. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 地域振興券は大変高度な政治的判断で決められたものと承知しておりますが、この経済効果でございますけれども、初めてのことなのでこれを正確に計算するモデルはございません。仮にこれを減税と同じような可処分所得の増加ということで計量計算してみますと、大体人々の手に渡るのが七千億円でございます。これを計算しますと、十年度に名目GDPで約〇・一四%ぐらいの押し上げ効果があるのではないか、〇・一%強の押し上げ効果があるのではないかと思います。  そのほかに、特に地域別の限定をつけているということで、地域振興効果というのが別途あると思うのですね。みんなが大都市へ買いに来ないというような点があると思います。ただ、その効果がどういうぐあいにあらわれるか、初めてのことなので計量的にできませんが、地域振興としての期待は持てるのではないかと思っております。
  131. 西田司

    ○西田国務大臣 それでは、私の方からお答えをいたします。  今それぞれお話がございましたように、地域振興券事業は、若い親の層や所得の低いお年寄り、特に比較的可処分所得の少ない層を対象として今回実施をすることといたしております。  それからもう一つ、ここで重要なことは、限られた期間、六カ月ですけれども、その期間内に使い切る、こういうことを考えておるわけであります。これは地域の消費拡大にはかなり効果があるのではないか、私はこういう考え方を持っております。商店街等の活性化などにもかなり地域振興的な役割を果たすであろう、このように思っております。  自治省といたしましては、今後、このような事業の趣旨をよく国民の方々にも御理解をいただきたい。これは、都道府県、市町村、そういうところと一体になって、皆さんに御理解をいただいて、有効に活用していただくようにやっていかなければいけない。特に、直接事業主体になられます市町村ですね、大変御苦労をかけると思うのでございますが、ここらに対しての協力も要請をいたしておりますし、何とか所期の効果を上げるように懸命の努力を払っているところでございます。
  132. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 今お二人の大臣から、地域振興に大きな役割を果たすというお話がございました。経企庁長官、冒頭におっしゃった高度の政治判断ということは余り強調されないで、後半の地域振興に役立つというところを強調していただきたいなと思いますね。  厚生大臣に来ていただきながら、時間が押し迫って申しわけないです。厚生大臣にお聞きいたします。  特に、一点絞って介護保険のことについてお伺いいたしますけれども、先日私、さきに亡くなられた小児科医で高名な評論家でもあられる松田道雄さんの本を拝見しました。「安楽に死にたい」という本でありますけれども、この中で、在宅介護の重大性、御自身の体験も含めて、在宅における介護のありようというものの大事さを強調しておられますし、同時に、地域医療の日本の現状、あるいはまた、特別養護老人ホームの実態等についてかなり嘆いておられるくだりがあっていろいろ考えさせられたわけですけれども、この介護法は、非常に不幸なことに、この厳しい財政状況の中でスタートせざるを得ないという問題があるわけです。  そこで、時間がありませんので、厚生大臣に大きく二つの観点についてお聞きをしたい。  一つは、市町村の財政破綻、これを招きかねない。充実したサービスを提供しようとするほど、そういう市町村ほど財政破綻に陥りかねないという指摘があります。法が成立してから一年たった。まさにこの財政構造改革法と軌を一にして進んでいるわけですけれども、この辺の不安についてどういうふうに厚生大臣は考えておられるのかが一点。  それからもう一つは、介護保険の財源について、介護保険だけじゃなくて基礎年金、この基礎年金部分に、私たち公明党も現状の三分の一から二分の一のいわば公的資金の注入のようなことを主張しているわけですけれども、高齢者医療とあわせて消費税の福祉目的税化ということで対応すべきだという考え方があります。  そういったことに対して、私は、先ほど来の財政構造改革についてもそうですけれども社会保障へのこうした、さっき大蔵大臣も盛んにおっしゃっていましたけれども、これからの二十一世紀に向けて少子・高齢社会に対してどういうふうにしていくのかということについて、財政、そして社会保障についての明確な断固たるビジョンというものが出てこないと、やはり国民にとっては非常に不安だ、そんなふうに思います。  この二点につきまして、厚生大臣の現時点における考え方を聞かせていただきたいと思います。
  133. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 介護保険は、御案内のように、再来年の四月から実施が法定されております。今、私どもとしてはこれが円滑にスタートできるようにあらゆる手だてを講じているところでございますが、特に保険者である市町村、これは広域化してもよろしいわけですが、その財政が国保の二の舞みたいに赤字になった場合は一体どうするんだという懸念が示されております。  これはごもっともな懸念でもございますけれども、制度的には、私どもは、保険者が各市町村単位であれ、広域であれ、その保険者の介護の総給付額を想定できます。それの半分は公費で負担する。つまり、五〇%は公費で負担いたしまして、その半分、二五%を国が負担して、あと二五%を半分ずつ県と市町村が負担していただける。そしてなお、給付額の全体の三分の一をいわゆる二号被保険者と言われる方々の健保組合とかそういうところから拠出を三三%いただきますから、実際に市町村で負担していただけるのは一七%ということに今設計をしております。  ところで、それで果たしていいのかなということがございますので、その点は、二五%の国の負担部分のうち五%は調整用にこれを使おうということでございますから、そのアンバラ是正をやる財源にいたします。  それからもう一つは、調整基金を各県で造成をいたしまして、全国で約二千億くらいの規模になると思いますが、各県単位でつくって、そこから調整資金を支出して調整をするというようなことも枠組みとしては考えております。  なお、設計がどのようなものになるかということは、これから政省令を詰めたり、あるいはその単価をどうするのか、水準をどうするのかというようなこと、それから介護の認定をどうするか、今実験的にスタートしています。そういうもろもろのことを含めて、市町村が安心してできるようなスタイルに早くする必要がございますから、政省令を早く出したい、こう思っておるわけでございます。  そんなことで、財政破綻のおそれがないように私どもとして今設計を考えているわけでございますので、そこは水準をどの程度にするかにもよりますから、その水準でやった場合に保険料も多くなるとか、あるいは非常に保険料と給付の乖離が生ずるとかいうようなこともなしとしませんから、そういうことのないように、ひとつ、準備期間は一年以上ございますから、早期に設計ができるように、それから市町村の方々が安心して見通しがつくようにしたいというのが第一の答えでございます。  それから、介護保険の財源でございますが、これは今申しましたように、国庫補助と、直接的には二号被保険者の各健保組合等から上乗せしたものと、それから自己負担一割をお願いいたしております。そういうことでやるわけでございますが、基本的にはこれが、少子・高齢化がますます進みますと膨大なものになる可能性もあります。  したがって、今御指摘のように、年金もそうでございますが、消費税を福祉目的税化したらどうかという議論がございます。これは、総理も本会議等で御答弁申し上げておりますように、少子・高齢化を考えるときに一つ考え方で、検討に値するということも申し上げておりますが、私もそうだと思うのです。  ただ、現実に、今消費税を下げろとかいろいろな議論があるときに、消費税の上げを前提としたセッティングはできないと思うのですね。そうなりますと、既存の、今発行している赤字国債をよしんば目的財源化して、それは年金だけに充てるよとか年金と医療に充てるよとか、あるいは福祉まで含めるよと充てても、結局そのツケはどこへ行くかというと、赤字国債の増発に行くわけですね。  したがって、将来課題として、総理も直間比率の是正という流れがあるということを申しておりますが、私もそうだと思うのですね。そういう意味で、これは魅力的なことでございますので、検討を、厚生省としては、どちらかといいますと厚生予算の確保という点ではアトラクティブです。しかし、財政全体として考えた場合は、直間比率の問題等々の解決がなされないで、ただ、中の振りかえだけでございますと、赤字国債の増発だけにつながるおそれもありますから、例えば基礎年金の三分の一を二分の一にするだけで二兆二千億かかりますから、これを特化しても、結局は消費税の増税なかりせばそれは赤字国債の増発につながる、こういう構造になっておりますので、私どもとしては、これは慎重に取り扱っていきたいなというように思っておりますし、社会保障の中でその対象領域をどうするとかいろいろな議論がこれからあると存じますが、慎重にひとつ検討してまいりたい、こう思っております。
  134. 赤松正雄

    ○赤松(正)委員 終わります。
  135. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて赤松君の質疑は終了しました。  次に、西川太一郎君。
  136. 西川太一郎

    西川(太)委員 私ども自由党は、財政構造改革法については、その成立に一貫して反対をしてきたことは御案内のとおりでございます。また、成立後は、廃止をするべきではないかということも、私自身も含め、いろいろな場所で申し上げてまいりました。  大幅減税を主張し、しかしながら、財政の健全化についても、これは非常に重要な課題であるということは当然のこととして考えてまいりました。そのためには、財政の抜本的な改革というのは、経済再建なくして財政再建はないんだという主張を繰り返してきたことも、宮澤総理初め御案内のとおりだと存じます。  しかし、ただいまも消費税の話に触れられました。私は、きょうは消費税については伺うつもりはございませんが、一言言わせていただければ、私のような末輩の議員の知識でも、税の議論というのは、それを構造的なものや改革の方向で直間比率の見直しとかに移っていくというのが流れであることはよく承知をしております。しかし、その税の体系の議論を維持しながら、税を景気刺激策として使わなければならないというこのジレンマが私は知恵の働かせどころではないかというふうにも思っているわけで、これはなかなか言うはやすくして実行することは大変だろうというふうに私個人は思っております。  しかしそれを、ただいまの宮下厚生大臣、お帰りになっちゃいましたけれども、お役所側の、大蔵省的論理で、赤字国債の増発になっちゃうんだということになれば、これから政府がおやりになろうとする緊急経済対策の財源だって同じことじゃないか、私はこう思うのですね。  つまり、今はいわゆる非常事態といいますか緊急避難と申しますか、そういうところで時限を切って大胆なことをやろう、こういうことから、自自もそこに含まれる一つの選択肢だったのではないかと私は思っているわけでございまして、余り原理原則で官の側の都合ばかりを言うと、これは民の力を引き出す効果は小さくなるんじゃないかというふうに私は思うわけでございます。  例えば、我が党が主唱した、そして宮澤先生に大変お褒めをいただいたあの中小企業の貸し渋り対策につきましても、あれは従来の官の発想からいったならば保証渋りでどうしようもなかったわけです。しかしそれを、モラルハザードを承知の上で大胆に政府が踏み込んでくださって、私たちの考えに近いものを出してくださった。それが非常に大きな成果を生んだということにかんがみて、私は、ここはそういうオーソドックスな議論にばかりとらわれずに、大胆に日本経済再生のために努力をしていただきたいというふうに申し上げたいわけでございます。  その点につきまして、宮澤先生の御見解を賜れればと存じます。
  137. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 確かに非常な経済危機でございますし、政府がしなければならないことは多いのでございますけれども、基本的には、しかしやはり我が国は市場経済でございますから、その市場経済をどうやってうまく動かすかということがやはり政府にとって一つ大事な仕事だろうと思っておりまして、今言われましたようなことは、租税政策についてもあるいは金融政策についても私どもは大事に考えなければならないことだと思っております。
  138. 西川太一郎

    西川(太)委員 私が民の立場でと申し上げましたのは、やはりマーケットを重視してという意味で申し上げたわけでございまして、それは御理解いただけると存じます。  消費の減退がいわゆる需給ギャップ、堺屋長官は二十兆とおっしゃるけれども、三十兆と言う人も大勢いるわけでございますが、それを埋めるためには、やはり消費税というのは上げるべきでないときに上げたということ、そして、できればそこにひとつ光を当てなきゃいけないんじゃないかということをここで申し上げて、法律の質問に入りたいと思います。  このたびの停止凍結法案によりますと、これをずっと法文を読んでまいりますと、財政構造改革五原則、こういうふうに言ったものがあったわけでございますけれども、これも凍結をされるというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  139. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いわゆる財政改革五原則は、思想を述べてはおりますけれども、その間に具体的な数字について定めておりますので、したがいまして、そういう意味では、それは実際上効力を失っておるとお考えいただいた方がよろしいだろうと思います。
  140. 西川太一郎

    西川(太)委員 今の御答弁は、私にとっては大変判断をするのに適切な御答弁をいただいたと思っております。すなわち、五原則、ただいま大臣からお話がございましたとおり、何年までに何%というような数字が入っているわけでございますけれども、それも廃止といいますか、停止、凍結、こういうことであるということでございますから、なるほどというふうに思うわけでございます。  そこで、また同じようなことをお尋ねして恐縮でございますが、経済の再建策というものを最優先にとって、自然増収が期待できるようなそういう経済に持っていきたいというふうに当然お考えになるんだろうと存じますけれども、端的に言って、いろいろな具体的な手法はございますでしょうけれども、理念としては、経済再建最優先政策とでも申しますか、そういう姿勢を政府はおとりになるか、これは確認の意味で伺いたいのでございますが。
  141. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 気持ちとしては、景気回復経済再建が最大の課題である、かように考えております。
  142. 西川太一郎

    西川(太)委員 自由党は、財政の健全化については一律の歳出の削減をするのではなくて、いわゆる行政と財政は一体のものだというふうに考えて、構造自体を見直す必要があるというふうにかねがね主張してきたのでございますが、この見解につきまして、大蔵大臣はどのように評価といいますか、印象を持っておられますでしょうか。
  143. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 ちょっと抽象的でわかりにくうございますけれども、仮に、経済というものは、上位概念として、国民経済と申せばいいのかもしれませんが、それがあって初めて財政がある、そういうふうに考えております。
  144. 西川太一郎

    西川(太)委員 私どもの考えをもう少し具体的に申し上げれば、従来型の手法で需要の追加だけをしても乗数効果は余り上がらないというのが最近の考えのようでございます。しかも、先ほど来のお話のように、宮下大臣の御答弁は、それは事実の面も、事実の面もと言うことは本当は失礼ですが、事実の点もお話しになりました。つまり財政事情の悪化を招く、こういうことはあるわけでございます。  しかし、私どもとしては、公共事業について、個別事業の補助金を廃止して一括交付金として交付することがいいのではないかと昨日も藤井議員から本会議でお尋ねをしましたところ、総理の御答弁、西田自治大臣の御所管でございますが、これは通告してございませんのでお尋ねはあれでございますけれども、いわゆる国が政策的に地域特性やいろいろなものを考えて誘導しようというその目的のために出すお金と、何にでもお使いなさいというあれとは違うんだ、こういう趣旨でありました。  しかし、やはり地方自治体の意向というものをくみ上げて、全国一律の補助金で一件算定を続けるようなことではなくて、枠で算定したり、全体を自治体に任せるということも私はこれからの地方分権では必要ではないかということを考え、また、これは地方分権推進委員会の勧告にもなじむものだということを申し上げさせていただきます。  次に、停止法案は、「別に法律で定める日まで」とございますけれども、どれぐらいのことを想定しておられるのでございましょうか。
  145. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 定性的にしか申し上げられないと思いますが、我が国経済が今日のような姿でなく、少なくともプラスの成長に入って、それが持続性があると考えられるときというふうに申し上げるのが定性的なお答えではないかと思いますが。
  146. 西川太一郎

    西川(太)委員 実は堺屋長官に、せっかくおいでですから、思い出していただきたいのですが、十月十三日の商工委員会でこのことをお尋ねしました。そのときに、堺屋長官は、凍結だ、廃止ではないと。それは、財政構造改革の旗をおろしたんじゃないということを国民の皆さんに承知してもらうためにも廃止はまずいと。しかし、短期決戦という言葉をお使いになった。短期決戦でやるんだと。これは、今宮澤総理のお考えも、常識的に考えてそうだろうと思うんですね。  そうすると、よく一両年とおっしゃいますが、大体二年ぐらいと見ているんですか。これは、国民に対するアナウンスメントとしてすごく大事だと思うのでお尋ねします。
  147. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 一両年で経済回復の軌道に乗せる、これが小渕内閣の公約といいますか、目指しているところでございます。ところが、一両年で軌道に乗った、二年目に乗ったとしたら、すぐにこの財革法の凍結を解除して発動するということができるかどうか、これは著しく疑問でございます。  この前の、平成八年あたりを見るとかなり成長率が高くなってきた。二・八、三・二と来たものてすから大丈夫だと思ったら、結果としては非常に不況になりました。経済は生き物でございますから、何%何年続いたらとか、そういう定量的な決め方は非常に難しいと思うのですね。国際的な環境もございますから、そのときになってやはり判断するという以上に言いようがないような気がいたします。
  148. 西川太一郎

    西川(太)委員 そうすると、本格的に景気回復するときまで、こういうことだというふうに受けとめさせていただきます。  問題は、この停止法案というのは、別に法律で定める日まで、別の言い方をすれば、凍結を解除するまでに、財政構造改革のために、経済の情勢を見きわめつつ財政健全化のための法律を新たに制定するというふうに読んでいいのですか。つまり、私たち自由党は、これは凍結であると言うけれども廃止的凍結なんだ、こういうふうに受けとめているわけでございますが、それでよろしいでしょうか。
  149. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は、そう考えた方がいいのではないか。と申しますのは、もちろんこの中に書いてあります物の考え方は、将来妥当することがたくさんあろうと思いますけれども、かなり違った経済財政事情になっておると思いますので、恐らくそのときにもう一遍こういうことをやろうかと考えますと、それはいっそ書き直した方がいいなと考えるのではないかと私は思います。     〔委員長退席、大島委員長代理着席〕
  150. 西川太一郎

    西川(太)委員 以上で私の用意した質問は全部終わるのですが、時間があと十三分も余っていますので、そこで、せっかく文部大臣おいでですから、通告していないのですけれども一つ要望を聞いてください。  実は、私は先月の下旬、ネパールに渡部副議長のお供で行ってまいりました。そのときに、青年海外協力隊の一人の方が、バスで三日かかるのだそうですよ、昼夜兼行でバスに乗って三日、さらに、そこでおりて二日間歩いて、自転車もオートバイも利用できないけもの道のようなところを通ってその村に着いて、たった一人で農業指導をしているというのです。そういう青年を、帰国の後、文部省の予算で、全国の小中学校にまたは高等学校に特別講演講師として任命して、こういう強い立派な青年がいると。一人ですよ。一人で、病気になったって五日もかかってしまうところにいるのですから、私はそういうことを文部省としてやらなければいけないと。  文部大臣、本会議場でなかなか沈思黙考されておりますけれども、ひとつ大いにこういうことは頑張っていただきたいということを申し上げて、要望でございます。  終わります。
  151. 大島理森

    ○大島委員長代理 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、児玉健次君。
  152. 児玉健次

    ○児玉委員 日本共産党の児玉健次です。  財革法は、昨年の秋、臨時国会で野党の反対を押し切って成立させられた。そして、ことしの通常国会では一部にこそくな修正が加えられました。この二つの論議の機会、私はその都度この委員会に所属しましたが、私たちの予言どおり、財革法は、消費税の引き上げなどと相まって、国民生活を非常に困難にし、日本経済を破綻にもたらすものであった、これは停止などではなく、きっぱりと廃止する以外にない、そのことを最初に申し上げておきます。  そこで、まず取り上げたいのは、財革法と教育の関連です。  今、日本の教育がどのような状況にあるか、これは私、多くのことを述べる必要はないと思う。文部大臣もよく御存じです。子供たちが何を願っているか。自分たちのいろいろな悩みや思いを先生たちに、余り忙しいという感じでなく、ゆっくり聞いてほしい、そう願っている。そして、多くの教師は、子供たちと接する時間をふやしてほしい、こうも願っている。行き届いた教育をつくる、そこへのかなめの一つは教職員の数をふやすことだ、私はそう思います。  文部省も、国民の声を聞いて、非常に徐々にではありますが、第一次から第六次までの教職員の定数配置の改善計画を進めてこられた。一九九三年に始まった第六次計画、これは三万四百人の改善増を目指していらっしゃるが、九三年、平成五年から本年度まで改善増が何人か、コメント抜きで簡潔に答えてください。     〔大島委員長代理退席、委員長着席〕
  153. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 お答え申し上げます。  平成五年度が五千四百八十三人、平成六年度が五千二百三十五人、平成七年度が五千八十四人、平成八年度が四千九百八十四人、平成九年度が四千八百三十二人、平成十年度が千六十七人、全体として八七・八%の進捗率でございます。
  154. 児玉健次

    ○児玉委員 文部省、ちょっとそのままいてください。  来年の概算に向けて皆さんがどうなのか。今のお話のように、平成十年度は千六十七人で、平成九年度、一九九七年度の三分の一以下になっていますね。三万四百人の目標まであと四千人近く残っていますが、一九九九年度は何人を予定していますか。
  155. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 全体の改善計画のうち残りが三千七百十五人となっているところでございますけれども、このうち、平成十一年度につきましては、現在概算要求中でございますけれども、二千五百十五人を要求いたしているところでございます。
  156. 児玉健次

    ○児玉委員 文部大臣にお伺いいたします。  一九九八年、今年度に完成すべきであった第六次改善計画が二〇〇〇年度まで先延ばしになっている。今のお話だと二千五百十五人を概算で盛り込んで、なおかつ千二百人が残っている。二年先延ばしになるということは、その後の改善計画も順送りで延びていくということになって、行き届いた教育に対する国民の願いからやはりかけ離れていくことになりはしないか。  財革法の破綻は明らかですから、そして政府自体がその施行を停止すると言っているのだから、せめて第六次計画を、ことしの春にさかのぼってというのは無理かもしれないけれども、来年の春完成させるための努力が必要ではないか、こう考えます。文部大臣、いかがでしょう。
  157. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 お答え申し上げます。  財政構造改革特別措置法停止法案は、御議論になっておられるように、財政構造改革推進という基本的考え方は守りつつ、我が国経済回復を優先するため、当分の間施行を停止するということになっております。  しかしながら、本年八月の十二日の閣議了解で、平成十一年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針に基づきまして、財政構造改革の一環として既に措置された制度改正、計画の延長等に関しましては、既定の方針に沿って引き続きその推進を図るということになっております。  そこで、文部省といたしましては、今申し上げましたように、平成十二年度完成予定の現行改善計画の着実な実施に向けて最大限の努力をしているところであります。先ほど局長よりお答えいたしましたように、明年度二千五百十五人ということを予定して、今年度よりは二倍ぐらいにいたした次第であります。  なお、その後の教職員配置のあり方並びに学級規模及び学習集団のあり方などにつきましては、やはり専門家の検討を経て考えたいと思いまして、専門家や教育関係者等から成る会議を設けたところでありまして、そこで検討を開始しております。
  158. 児玉健次

    ○児玉委員 大臣、簡潔にお尋ねするので、簡潔にお答えをいただきたい。  今大臣がおっしゃったことは、とどのつまり、財革法十八条にあります「第四条に規定する財政構造改革の当面の目標の達成に資するため、」これだけが目的ですね。イエスかノーかで答えてください。(有馬国務大臣「ちょっと、もう一度言ってください」と呼ぶ)第十八条で言っている、その中に、「第四条に規定する財政構造改革の当面の目標の達成に資するため、」今年度完成すべき計画が二年先送りになった、それがただ一つの目的ですね。イエスかノーかでお答えいただきたい。
  159. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 附則のところに、「附則第二項から第五項までの規定中「平成十年三月三十一日」を「平成十二年三月三十一日」に改める。」ということが根拠であります。
  160. 児玉健次

    ○児玉委員 私の述べたことをお認めになったのです。  そこで、これまでの議論です。きょう夕刻からの議論です。量的縮減目標は一遍引っ込める、ない状態に置く、こういう形で政府からの答弁がある。そして、財革法の構造自体が、今私が述べましたように、財政構造改革の当面の目標の達成、すなわち量的縮減目標ですよ、これを一遍引っ込めるのであれば、二〇〇〇年まで待たずに前倒しで実施することは可能じゃありませんか。どうです、大臣。
  161. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 その附則を改正できるかどうかという問題であろうと思います。
  162. 児玉健次

    ○児玉委員 この経過も文部大臣は多分御存じだと思うけれども、この法律、財革法が成立をしたとき、附則二十四条が設定されました。それと時期を同じくして、義務教育諸学校の学級編制及び定数の標準に関する法律、略称定数法、この定数法も同時に改められたのだから、どこが改められたかというと、目標年次平成十年を平成十二年に置きかえただけです。ですから、量的縮減目標が一遍引っ込められる以上、ここのところを平成十一年と変えることによってあなたの制約はなくなる、どうですか。
  163. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 しかし、先ほど申し上げましたように、本年八月十二日の閣議了解がございまして、平成十一年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針に基づき、財政構造改革の一環として既に措置された制度改正、計画の延長等に関しては、既定の方針に従って引き続きその推進を図るということになっております。
  164. 児玉健次

    ○児玉委員 閣議了解というのはしょせん閣議了解です。法律を上回るものではありませんね。  そして、大臣、私申し上げたいのだけれども、冒頭言いましたように、子供たちの願いや親の願いを考えれば、小渕内閣及び文部省の意思として、もっと端的に言えば文部大臣の御意思として、この法自身が提出される、そして量的縮減目標も一遍引っ込める、そういうときに、皆さんとしては、先に延ばしている千二百人を前倒しにして実現するための努力をなさって当然ではないか、いかがですか。
  165. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 したがいまして、先ほどから繰り返して申し上げることになって恐縮ですが、平成十二年度完成予定の現行改善計画をともかく着実に、確実にやりたいと思っております。  と同時に、教職員の配置、四十人学級をどうすればいいかというふうなことに関して、私としては、学級規模とか学習集団のあり方、例えばチームティーチングをふやすとか、いろいろなやり方があると思うのですが、こういうことについて教育専門家にぜひとも意見を聞きたいというわけで委員会をつくらせていただきました。その結果を待って判断をさせていただきたいと思っております。
  166. 児玉健次

    ○児玉委員 この問題は、政府の教育に対する態度が根本から問われる問題ですね。  今、文部大臣は教育の専門家の会議とおっしゃった。あなたが中央教育審議会の会長をなさっていたとき、平成八年七月十九日、「二十一世紀を展望した我が国の教育の在り方について(第一次答申)」、その二十四ページに何と書いてあるでしょう。「当面、教員一人当たりの児童生徒数を欧米並みの水準に近づけることを目指して改善を行うことを提言したい。」と明記しているではありませんか。この提言を今実現することに支障はない。どうですか。
  167. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 その文章は私が強く主張したことです。おっしゃるとおりです。  しかしながら、今与えられている状況のもとですぐにそれを達成することはできないことと、もう一つは、本当に、どういうやり方でクラス編制をすることが最もいいかということの確信を持ちたいと思っているわけです。そのために、やはり専門家の意見を聞きたい。すなわち、いきなり何人にすることがいいか、それともチームティーチングのようなものでクラス編制を少しふやすか。  私は、小学校を何校か見てまいりました。そこでチームティーチングが非常に有効に働いていることも見ております。私としても、当然、大勢の先生がいるにこしたことはない。それから、先生たちが忙しい、この忙しさを防ぐ一つの方法としてゆとりを与えるべきだということが五日制導入に至った最大の理由です。ですから、よくわかっております。  しかし、現在与えられた境界条件のもとで最もいい解はどういう解かということを今考えているところであります。
  168. 児玉健次

    ○児玉委員 自然科学者でいらっしゃるから、話をかみ合わせたいのです。  大きな枠について私は論議をしています。あなたは今、所与の枠の中でどう教職員を配置するかを議論なさっています。ここはすれ違いがあります。私は、大きな枠を伸ばすことであなたのおっしゃった学級編制その他ももっと豊かな展望が開けるということを言いたい。  そして、あなたは、例えば去年の四月十五日、参議院文教委員会の参考人としておいでになったとき、我が党の阿部幸代委員の質問に対して、先ほどの部分を引用されて、欧米に近づける、私も大いに賛成でありましてと。そのとき、学級編制がどうのこうのという別のカテゴリーのことをおっしゃってはいない。  学問を通して真理を追求されてきたあなたにとって、やはりこの機会に子供と親の願いにこたえていく。そして、第六次計画を達成する上でただ一つ障害であった量的縮減目標が一遍なくなるのですから。そして、閣議了解というのは、さっきの宮澤蔵相の言葉をかりれば、思想ということになりますかね、思想は残ると言ったけれども、閣議了解というのは政府の意思によってどうにでも変わる。最善を尽くすべきではないですか。文部大臣、いかがですか。
  169. 有馬朗人

    ○有馬国務大臣 私は、その中央教育審議会の報告を書きましたとき、何年何月何日までにやるとは言っていないはずです。
  170. 児玉健次

    ○児玉委員 文部大臣、それは子供や親の顔を思い浮かべてのお言葉だとは思えない。やはりあなたはこの機会に、まだ少し時間がありますから、来年度に向けて第六次計画の前倒し実施のために全力を尽くしていただきたい、そのことを強く私は求めます。  そこで、次に厚生大臣にお伺いいたします。少子化とよく言われる。まさに教育の少子化の問題です。子供の健やかな成長を保障することが少子化を克服するための重要な課題ですね。私は、財革法と、難病一般ではなく、小児慢性特定疾患治療事業の関連について絞ってお聞きをしたい、こう思うのです。  御承知のとおり、厚生省はことしの初めに、成長ホルモン分泌不全低身長症、以下低身長症と言いましょう、これに対する公費治療に重大な変更を加えられた。非常に大きな影響を与えていますね。成長ホルモンを投与すれば身長は伸びる。家族性低身長症のことを私は今言ってほしくない、治療すれば伸びるのとそうでないとの違いがあるのだから。  それで、この分についての国際基準はマイナス二SDです。同僚議員に私申し上げるけれども、百人子供がいたら、その中の低い方から数えて一人二人ぐらい、それが国際基準のマイナス二・〇SDです。それをこの春一挙にマイナス二・五にぐっと狭めた。その結果、男の子供は百五十六・四センチ、女の子は百四十五・五センチになったら公費治療が打ち切られる。電車に乗ってつり革に手を伸ばして届かない。女の子の場合、いすに座って足が床に届かない。公費が打ち切られた結果、月額四十万円を窓口で一回払わなければいけない。その後、月額六万三千六百円との差額は返ってきます。何人もの親や子供がこのことで悩んでいる。  私は札幌で、お母さん、子供さんと会った。中学生の子供です。この数字というのは、ちょうど中学生、高校生、物を思う盛りです。そのとき打ち切られて、六万三千六百円の費用を負わなければいけない。その子供がお母さんに、お母さんはパートで働いている、六万円といったらお母さんのパートのお金だね、僕いいから、そう言ったといってお母さんはおえつしています。ここのところをやはり直すべきです。  なぜこういうことになったのか。それは、財革法における三十五条のその他の補助金の削減ですね。  厚生省は、十月、十一月、十二月、三回、中央児童福祉審議会母子保健部会を開催された。ある委員は何とおっしゃったか。この事業は九七年で百十三億円です。約十七億円削減する必要があった。そこで、その委員はこう言った。結局どこで線を引けば補助金を十七億円削ることになるのか、これは学問ではなく経済の問題だと。そして、他の委員はこうも言うのです。日本経済状態が改善したときにはこの基準をもう一度もとに見直してほしい、こういう意見もあった。  私は、やはり、この親や子供たちの願いにこたえて、いつまでもとは言わない、全国小人症連絡会の方々から、せめて治療開始基準はマイナス二・〇SD、国際基準として確立しています。厚生省も私との議論の中で一つの安定したメルクマールだと言っている。男は百六十二・三センチ、女の子は百五十・四センチまで、この機会に公費の継続を回復されてはどうか。いかがです。
  171. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この成長ホルモン分泌不全症による低身長症の問題でございますが、これは御承知のように、小児慢性特定疾患の治療研究事業の対象疾病の問題でございまして、十疾患あるうちこれだけが減額されています。それは一見、百十三億と今数字をお示しになりましたけれども、一割ですと十一億でいいわけですけれども、十六億円削減してあります。  それは、やはり開始基準を見直す必要があるということと、それから、終了基準がなかったものですから、終了基準を設けた。つまり、今先生のおっしゃった男百五十六センチ、女百四十五センチまで自己負担部分を見るけれども、それ以上は、医療費では見るけれども、自己負担はいたしませんよというラインを引いたわけですね。  したがって、これは、先生、今審議会のお話もなさいましたが、審議会で専門家の意見を聞いてやったわけでございまして、私としては、いろいろちょっと調べてみましたけれども、必ずしも財革法の一割、その他の一割削減ということでやったものではなくて、医学上の必要性を十分勘案して、特に終了基準等も設けたということであると私は理解しております。  ただ、ここに、委員のおっしゃったように、衆議院の厚生委員会で前厚生大臣が、必要があれば見直しますよ、正確に言いますと、今後専門家あるいは親御さん等の意見も聞きながら、所要の改正を講じた方がいいということであれば、やはり検討はいたしますということでございまして、私もやはり、改正後の基準の実績を見たり新しい治験の状況を見たりして、もしも評価する必要が生じることがあれば、検討会を設けて検討することはやぶさかではございませんが、ただ、これは先生に申し上げておきますが、一割削減のためにやったものではないことだけははっきり申し上げさせていただいておきます。
  172. 児玉健次

    ○児玉委員 ただいまの大臣が御紹介になったのは、ことしの三月十一日、小泉前大臣の私に対する答弁です。薬価の問題だとか、国際的な薬価に近づければ、今言われた十七億円なんというのはあっという間に出てしまいますね。積極的な検討を私は求めたい。  そこで、最後に宮澤大蔵大臣にお尋ねします。  今私が取り上げたのはわずか二つの事例です。後者の事例は、宮下厚生大臣のお言葉ではあるけれども、皆さんの委員会の委員の方自身が、十七億、それを削るためにはどうしたらいいのかという議論をなさったということを告白されているのだから。そして、もう一つは、先ほどの教育の問題です。本当にわずか二つの事例ですけれども、財革法は社会保障、教育、中小企業、農業など国民生活の最も重要な部分に対しては厳しい予算の刻み込み、削減をやりましたね。そのことが多数の国民を苦しめ、家計消費の冷え込みにつながった。国内総生産五百兆のうちの三百兆は個人消費ですから、そこのところを冷え込ませたという点では消費税と同然だと私は考えている。  一方、財革法の名目であった聖域なき歳出削減、こっちはどうなったのか。もう見るも無残じゃないですか。銀行に対する六十兆円の公的資金の枠が既に設定されている。そして、公共投資の野放しの積み増し。  あなたは先ほど、二兎を追わないとおっしゃった。私は、そのウサギの二匹というのはどれとどれかなと思いながらさっきから聞いていたのです。恐らくあなたは、一つ財政の健全化というウサギと、そして景気の浮揚というウサギを二つ追うのは無理だという意味でおっしゃったのだと思うのだけれども、私は、そうではなくて、社会保障を充実させ個人消費を豊かにすれば景気も浮揚するし、そのことが日本経済再建の言ってみれば最も中心的な道筋になり、そして、財政の再建について言えば、日本財政構造のゆがみに思い切ったメスを入れることでそのことは可能になる。決してこれは、あれかこれかではない。  私は、率直に大蔵大臣に申したいのです。  宮澤内閣から橋本内閣までの七年間に七回にわたって、何回かの財政出動が行われました。減税を除いて景気対策七十兆円、そのうち、私たちの見るところ八割、五十六兆円が公共投資に投入されたと思います。その結果が今日の日本経済状況であり、国、地方の財政の深刻な事態ですね。  あなたは総理大臣としてその出発点に責任を負われた。そして、今また巨額の財政出動を大蔵大臣としてなさろうとしている。この責任は重いですよ。やはりこの機会に国民生活に対する抑制措置は思い切って取り払う、そして財革法はきっぱり廃止する、そのことで決断していただきたい。いかがでしよう。
  173. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 いろいろ問題を含んでおりますので、よく検討をいたします。
  174. 児玉健次

    ○児玉委員 私は、まだ三分ありますから、三分の議論をしたいのです。  もうちょっと言いますよ。財革法、これは昨年の秋のときもここで議論をしたし、本会議でも議論をした。五月にもやりました。やるべきことはやっていない。すなわち、国民個人消費を直接温めるということについてはやらずに、先ほどの難病に対する問題や、そして医療、年金に対する財革法の細かな規定、そういうやり方で、やるべきことはやらず個人消費を冷え込ませている。  そして、やってはならないところについて言えば、公共事業も、生活に密着した福祉の、地域から積み上げてきた公共事業は、私たちはそれは必要だと思っている。そこにまとめていけば、今の五十兆の公共投資を三十数兆に縮減できると思う。ところが、今皆さんがやろうとしているのは割り当て方式ですよ。これだけ割り当てる、何々県は幾ら引き受けろ、これでは日本財政が成り立つはずがないですよ。  私が言いたいのは、やるべきことはやらず、やってはならないことをやってきた、それが財革法の歴史ですね。この機会に廃止してはどうですか。
  175. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこまでおっしゃいますと、また何か申しとうございますので、よく検討いたします。
  176. 児玉健次

    ○児玉委員 では、この議論はまた続けましょう。  終わります。
  177. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて児玉健次君の質疑は終了いたしました。  次に、伊藤茂君。
  178. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 だんだん夜分遅い時間になります。幾つか御質問申し上げますので、御答弁をお願いしたいと思います。  まず、大蔵大臣に伺います。  この質問をするに当たりまして、去年一年の、財政構造改革の組織ができてずっとやった経過の資料をこの数日、いろいろと振り返ってみました。いろいろなことを実は思わされたわけであります。  くしくも財政構造改革会議、大変ハイレベルな会議でございまして、現、OB総理、OB大蔵大臣、与党三党の幹事長、政策責任者など勢ぞろいをした会議を半年間やったわけでありまして、いろいろなことを思い起こしました。  また、くしくもと申しましょうか、きょう、あすと質問をする中でも、その構造改革会議のメンバーであったのは質問者で私だけでありまして、御答弁になるのも宮澤さんだけということになるわけでありまして、率直なところ、思うところをこの際申し上げて、気持ちを伺いたいというふうに思います。  一つは、当然のことですが、ハイクラスの人がかつてないハイレベルな集まりを持って、しかもあのときは本当に真剣な議論をしたというふうに私は振り返っております。  ただ、事態は、残念ながら失敗と申しましょうか、落第と申しましょうか、現実の経済にそのまま機能することができない状態になったわけであります。何でだろうかということを当時から、小さな政党でありましたが、それぞれの政治家としての責任はしっかりと果たさなければならないというのが議会人としての使命だと存じますので、そんなことでやってまいりました。  先ほど大臣の御答弁を伺っておりますと、財政再建と景気回復経済の活性化と二兎を追うわけにはまいらぬのだなというお話がございました。正直申しまして、尊敬する宮澤さんですが、ちょっと評論家的だなという気がしました。  私なりに振り返りますと、重い反省と申しましょうか、そういう気持ちがいたします。私なりに考えますと、幾つかの意味で、ああ、あの当時の政策判断、あの当時の勉強、こういう点が足りなかったのかなという思いがいたします。例えば、順不同で申しますと、当時の経企庁、堺屋さんの前の代ですからね、念のため。大体、消費税のこともあって四―六は落ちる。四―六はGDP支出が落ちる。しかし、六月以降は何とかとにかく回復するでしょうと。そのテンポが速いのか遅いのか、それが問題でというふうな議論をいたしておりまして、私どもも不勉強で、そういうことを大分信用したわけでありますね。ところが、それとは非常に違った状況になりました。  それから、消費税の負担あるいは医療費、年金その他の負担の問題などなど、それから特別減税停止などございまして、現実には一挙に大幅な負担がふえるということになりまして、やはりそれがあれほどまでに消費に響くのかということですね。また、一たんやはり財布のひもが締まると財布のひもをあけるというのは大変なことだ、大変なことをしなくちゃならぬという思いをその後ずっとかみしめているわけでございます。  緊縮予算を組めばデフレになるということも当然のことでございましよう。それからもう一つは、やはりアジア的視野と申しましょうか、アジアにおける日本GDPということを考えますと、宮澤さんに私がこんなことを申し上げるまでもなく、大変大きな比重を持っている。アメリカも大変な大きな関心を持つということになるわけでありますし、それから、金融の問題については本当に思った以上の大きな変化がございました。  何か振り返りながら思ったことを幾つか申し上げましたが、そんなことを含めまして、やはりもっと幅広い、またもっと正確な、掘り下げた、先見性のある議論というものが必要だったんだなというふうな反省の思いを、私なりに実はするわけであります。  同時に、これから先を考えますと、やはりそういうことの反省を今後繰り返さないようなこれからのやり方というものも考えなければなりません。そうなりますと、財政構造会議という政治家の、責任を持つハイレベルの集まりがございましたが、これからどうするのかということを考えますと、ちょっと違ったいろいろな仕組みも考えなくちゃならぬ。堺屋さんもそうですが、私は、アメリカ流に、やはり民間、それから幅広くいろいろなところからの知恵を集めてやっていく、議論をしていくというふうな仕組みも大胆に考えるべき時期だろう。言うならば、政治家と官僚の固まりのような仕組みでない発想をこの際持つということも必要ではないだろうか。  質問をさせていただくに当たりまして、去年一年間の経過を、いろいろなことを、実は資料を振り返りながら自分なりに振り返るわけでありまして、当時、財政構造改革会議のメンバーの一人でございました。そして、当時はもちろん与党でございましたが、今は野党という立場にありまして、実は振り返って思うわけでありますが、率直なところ、宮澤さん、どうお思いなんでしょうか。
  179. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 平成九年の一月に第一回財政構造改革会議を開きまして、以来数カ月にわたりまして、これは総理大臣が主宰せられましたが、たまたま私も総理経験者ということで参加を要請され、また村山元首相もおいでくださいました。伊藤委員におかれましては、当時与党の立場から、その領袖として御参加をいただいたわけでありまして、大変正直な気持ちでまず申し上げますならば、このような大きな会議が閣議決定に至りますまでの一つの結論を得ることができたことについて、私は、参加者の一人として、伊藤委員に対しては深い感謝の気持ちを持っております。  しかし、総体として、その結果が、今おっしゃいましたように、必ずしもすべて妥当しなかったということについては、私自身は主宰者ではございませんけれども、しかし、主宰をした側の党の一員といたしましては、大変に申しわけない気持ちもいたしておるわけでございます。  ただ、いろいろ御討議いただきました中で、具体的に、将来の少子・高齢化を控えました種類の、一種の長期計画につきましては、それをもう一遍レビューするということなどは現実に行われまして、それは今政府の政策の中に残されておりますので、その点につきましては、これは私の立場から申しますと、お力添えのおかげであったというふうに思っております。  ただ、その反面で、将来についての国の債務の負担をある程度に抑えること、あるいは毎年の赤字公債の発行を縮減していくこと等々は現実には合わない事態となりまして、その点は、結果としてこうやって凍結をお願いするような結果になっております。したがいまして、大変に犠牲的なと申しますか、思い切ったお立場から思い切って御賛同いただきました部分だけが政策として残って、そしてその裏づけになる部分が実はなくなってしまったというような、そういう思いのする部分も実はございまして、その点は気持ちの上では申しわけなく思っておるわけでございます。  しかし、もう一遍立ち直りまして、ああいうことを一遍させていただいたということは、将来に向かって、たまたま今こういう経済状態になりまして、お力添えいただきましたことすべてが実を結ばなかったということを申しわけなく思いますけれども、しかし、そういう御尽力をいただきましたことについての感謝の気持ちは変わっておりません。
  180. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 振り返って考えることでもう一言だけ申し上げたいのです。  言葉じりを言うわけではありませんが、二兎を追う、追えないという話がございましたが、先ほど来同僚議員の質問にございましたように、経済活性化なくして財政再建なし、当たり前のことでありまして、そうなりますと、やはりどちらかというと、去年一年の財政構造改革会議は、先々のことばかり考えて、削減、削れ削れの大合唱じゃありませんが、必死になってそういうものをみんなで議論したという経過でございました。今は、目の前のことにもう頭がいっぱいになって、先々のことはどうだかわからぬというみたいな傾向が私はあると思います。  やはり、政府、政治の責任というのは、目の前のこと並びに先のこと、二兎ではなく、相伴わなければ、本当の意味での確かなプランにはなりませんし、国民の皆さんも安心できない。言うならば、消費の問題でも、お先真っ暗では、今目の前に何ぼ金券を配ろうと、減税をしようと、なかなか安心して、お買い物、消費が安定して構造的にふえていくということにはならぬというわけでございまして、その辺の認識を持って目の前のことを精いっぱいやる、これはみんなやらなくちゃならぬと思います。  と同時に、そういう過程の中で、先々どうするのかということを休みなく、やはり知恵を絞ったり、それから政府の中でも、また議会でも議論し合うということが必要ではないだろうか、相伴う問題ではないだろうかと思いますが、いかがでしょうか。
  181. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それをおっしゃいますと、なおさらどうもつらいような立場でございまして、まさにそうであったと思います。あのときには先のことばかり考えていましたし、今はまた今のことばかりということで、その点は、まだ遅くありませんので、よく反省をいたします。
  182. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 これから先のことを幾つか申し上げたいと思います。  私は、基本的に考えてみて、表現が正確かどうかわかりませんが、やはりやり直しという気持ちでやるというのが一番適切なことではないだろうかというふうに思います。  先ほども廃止か凍結かという御議論がございました。廃止法案を出された党の立場からすれば当然廃止でありますし、それから、停止、凍結というこの原案からすればそういう主張になるわけであります。  私は、考えてみて、何か言葉の衝突をやってもしようがないんじゃないかという気がします。もうちょっと率直に、現実どうしていくのか、あるいは何が正しいのかということを考える必要があるのではないだろうかというふうに思います。  凍結あるいは停止、ごく機械的に申しますれば、一定の時点が来れば、間もなくそういう時点が来れば復活をする。すごろくでいえば一回休みか、また動く。しかし、冷凍した魚を解凍して、同じ魚をまた料理できるというのは違うと思いますね。やはり経済は生き物ですから、先々も状況は日に日に変わってくるということでございまして、何もこれは、御提案されている宮澤さん御自身も、今停止をする、後は年次か何か数字を変えるだけでそのまま復活をするとはお考えにはならないだろうと思うのですね。これは、経済を考える者としては当たり前のことであります。  それから、廃止という御主張でも、じゃ後はどうでもいいんだというお考えはだれも持っていない。やはり財政再建、財政構造改革ということの国家的な、国民的な大きな意義づけ、大変なことだと。  大体、相伴って財政危機の問題と景気の深刻な問題、これは先進国かブラジルあたりを含めて日本だけですから、そうなりますと、言葉でぶつかっている問題ではないんだというふうな気がいたします。そういうことを考えますと、やはりそのまま復活をする、あるいは一たん停止をして、その後は決まったまままたストップからゴーになるというものではないというふうに考えるのは当たり前じゃないだろうかというふうな気がいたしますが、いかがでしょうか。
  183. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 大変適切な比喩を教えていただいたと思うのですが、まさに、解凍したら同じ魚が出てくるはずはないはずでございますし、しかし、あのとき考えた必要はやはり残っていくので、将来は将来として、同じ問題をまた新しい景色の中で考えなければいけないだろうと思っています。
  184. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そういう御答弁でございますから、いま一度伺いたいのですが、私は私なりにこういう視点が必要ではないかというふうに思います。  まず大蔵大臣に、今の御答弁にも関連する点なんですが、先ほども同僚議員から話題がございましたが、橋本五原則、あの中身から実はスタートしたわけです。当時は、決意を込めた政治の表現としてあの文書があったということになるわけでございますけれども、あれが数字が違うだけでそのまま復活をするというふうなことではない、やはり設計のし直しが当然必要だろうというふうに思いますね。去年一年の経過、これから一年か二年かわかりませんが、あのたばこのときのような、今回値上がりをしたたばこも理論的には六十年という「当分の間」とは当然全く違うと思いますから、短い期間のうちに再設計をしてスタートをするというのが当然のことなのだろうというふうに思います。  もう一つ、これは大蔵大臣に確かめておきたいのですが、財政構造改革会議、構造改革法、すべて構造改革という言葉でございまして、実は昨年の一月スタートをいたしますときに、私も大分当時の与党三党の中で意地を張りまして、財政再建、財政改革ではありません、構造改革ですと。言うならば、収支をどうバランスするのかという従来の再建論ではなくて、財政の構造を次の時代にふさわしいように、二十一世紀日本社会にふさわしいように一体どうつくり直すのかという視点が必要なので、そういう意味で、ぜひ会議の名称も、財政改革会議ではなく財政構造改革会議にしてくださいということを強くお願いいたしまして、そのようなネーミングに実はしていただいてスタートをしたという経過でございます。  私は、特にそういう意味では、やはり財政の構造を変えるという不断の努力をどうするのかということに非常に実はこだわるわけでありまして、私どものメンバーでございました村山前総理を含めまして、めり張りとかさまざまなことを強く、実はいろいろと会議の中でも主張させていただきました。  そういう意味で申しますと、橋本前総理は新たな一歩を踏み出したというふうにあの法律を当時評価なされましたが、私は、正直申しまして、前総理には恐縮ですが、一歩にすぎないと思う。  例えば、公共事業その他にしても、やはりこれからの社会にふさわしいものをどうやってつくっていくのかという意味での仕組みも目標もやり方も、いろいろな意味での知恵を絞り直さなくちゃならぬということが、もうあまねく声が広がっているという状況ではないだろうか。  そういう意味で申しますと、厳しく言うならば、あの構造改革会議の結論というのは、延ばす、減らすです。目標総量の年次を五年から六年とかなんかに延ばす。したがって、各年次のものは小さくなる。延ばす、減らすというとちょっと冷た過ぎる言い方かもしれませんけれども、そういうふうな感じがいたします。  そういうことを考えますと、やはりやり直しと申しましょうか、さらに本当の意味での構造改革、どうするのかという視点でもって今からずっと勉強を積み上げて次を考えるということが必要ではないかと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょう。
  185. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私も、次どうするんだということを当然国会でも、本会議でもお尋ねがございまして、ちょっと思っていまして、次というのは、多分二十一世紀の当初、初頭であろうということ、多少希望的でございますが。それから、しかしこれは財政だけではどうもなさそうである、どうしても税制というものがやはりきっと入ってこなければならないんだろう。そこまで考えているうちに、しかし、今我々が持っている経済構造あるいは社会構造というものは、もう少子・高齢化だけでもそうでございますけれども、かなりそのときに違っておって、したがって何をやるかという命題が、問題意識が違っているんではないかということを、よくわかりませんが、ぼんやり考えております。  したがって、さっきの解凍の話じゃありませんが、もう一遍同じものが出てくるという話ではなくて、かなり違った与件の中でそれからの日本を考える、そういうものにならざるを得ないのではないか。ただ、その場合でも、恐らく、国としての収支というものは大きなバランスが外れてはいけないという問題はあるのであろうから、というようなことをぼんやり考えておるわけであります。
  186. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 大蔵大臣にもう一つだけ申し上げたいのですが、私は、この国会にかかっている補正予算、それから、どういう中身になりますでしょうか、まだ全体がよくわかりませんが、平成十一年度、新年度の予算というものをやり、そして経済がマイナスからゼロ、プラスへというふうな変化が、来年度、平成十一年度にどう展望されるか、どうするかにせよ、一、二年後に残った財政の姿というものは、今よりもはるかに厳しいということだと思います。  ですから、財政危機とか財政破綻とかございますけれども、戦後の財政の歴史どころではなくて、戦前の大恐慌時代などを含めまして振り返って比較をしてみても、極限状態というふうな姿に日本財政は陥る、姿になる。宮澤さんがおっしゃいました税制の問題も含めて、一体どういうふうにそれをつくり直して確かな一つの姿を次の世代に送れるのだろうかということにならなければならぬと思います。  まあ、その全体の議論は別にいたしまして、一つだけそういう中で申しますと、余り進んでいないので私は残念なんですが、情報公開ですね。財政の姿、税制の姿、これからの社会的ニーズその他などについて、それから、例えばさまざま問題指摘がされている公共事業、今後のあり方の仕組みはどうしたらいいのか、現状はどうなっているのか。マスコミなどいろいろなところで大変ひどいこともあるぞと書かれますけれども、やはりそういうデータを広く国民に提供していただく。  私は、日本国民の皆さんはほかの国と比べても決して遜色のない、立派な、レベルの高い国民だ、そう思っておりますから、税の面でも変な反税闘争があるみたいな国ではないと思います。そういう意味で、やはり国民の皆さんにディスクローズ、情報公開というものをいろいろな意味でもっと努力をしなくちゃならぬ。特に税財政の面では格段に必要なことじゃないかな、深刻になることが予想されるだけに大事なことじゃないかなというふうに思いますが、一点だけ、いかがでしょうか。
  187. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 よらしむべし知らしむべからずというのは昔のことだと思いがちですけれども、何年かたったら、今の日本はあるいはそうであったかもしれないぐらいに情報というものは公開されるということになるんじゃないかと思います。
  188. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そこで、経企庁長官というよりは堺屋さんに、二つお伺いしたいと思います。  先ほど宮澤さんからも、財政まで含めて、税制のあり方、少子・高齢化社会というふうなことがございましたが、やはり今の情報公開を含めまして、私は、これから考えますと、ちょっと仕組みも考える必要があるんじゃないだろうか。  例えば、政府税制調査会、財政制度審議会、金融調査会などいろいろございまして、私は、この前の日銀法の改正のときにも、何でこんな時間かけて金制調がいじらなくちゃならぬのかなという思いもいたしました。大体あのときには政治主導、与党主導でやろうということでございましたから、そういう思いもいたしましたが、やはり、例えば税にしろ、まさにタックス・イコール・デモクラシーの歴史でありまして、いつでも表現できる姿にしなくちゃならぬ。さっきも申しましたが、やはり官僚、専門家、政治家というジャンルでの固まりとは違った仕組みというものを考えるということが求められているということではないかと思います。  そういう意味では、アメリカの場合にしても欧米の場合にしても、相当大胆にそういう仕組みがされている。私も、経企庁長官が政治家の世界ではないところから活躍をなさっている、非常にそういう意味では歓迎いたしておりますし、毎週週刊朝日を読んで、書かれていることも、毎週読みながら、ああ、いいこと書いてあるなと思っております。愛読しておりますからあれなんですが、何かそういう、やはり一つの思い切った変化というものを仕組みの面でも考えるべきではないだろうかということですね。特に堺屋さん、そういう思いをまた特段にされる立場じゃないだろうかなというふうに想像しているんですが、それが一つ。  それからもう一つは、先ほどの話で、財政経済、相伴ったプランが決められません。経済経済の専門家があり、専門の審議会があり、お役所がある、財政財政で別途同じような仕組みがあるということではだめだと思いますね。やはり経済戦略と財政戦略、ある意味では社会政策、全体を含めたものがあって初めて国民の皆さんはトータルとしての我が日本の将来の国の形をどうするのかということがわかる。それについてみんな議論するというふうな形になるべきではないだろうか。  したがいまして、財政構造改革の将来像の取り扱いは、先ほど大蔵大臣に申し上げましたが、もっと広い視野で、経済の視野から、やはりそういう視野が、また知恵が求められているというときではないだろうか。今までどおりの仕組みとやり方で次の予算をつくり、次の仕組みを考え、次の政策をつくったのではだめだろうという気がいたしますが、いかがでございましょうか。
  189. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 ただいま宮澤大臣と伊藤先生と、尊敬する両先輩のお話を伺って、なるほどそうだったのかという感じがいたしました。かなり触発されたところもあるのでございますけれども、まず第一に、伊藤先生のおっしゃった仕組みの問題でございます。  大体、日本語、大和言葉で言いますと、仕方と仕様と仕組みというのがあります。最初、政府でも企業でもそうですが、行き詰まると、まず仕方、どんなやり方をしようかというところを改造しよう。その次に、それでなかなかうまくいかなかったら今度は仕様、何センチにするとか、そういうつくり方の変え方から今度は設計の変え方になっていく。それでもうまくいかなくなってやっと仕組み、だれが担当するかという仕組みの変化になる。昔からそう言われて、大和言葉がそうできておるのでございます。  おっしゃるように、今まさに我々は仕組みを変えなきゃいけないというときに来ているのだろう。日本政府というのは、日本国というのはそういう段階に来ているのだろうという感じがいたします。  その点につきましては、橋本内閣がお出しになった行政改革の中で、経済財政諮問会議というのが総理直属にございます。そこは、政治家、官僚とともに民間の学者のような方もお入りいただく、情報も集中するという仕組みができております。あれがうまく動けば伊藤先生の御指摘のような仕組みができるんじゃないかという気がするのでございますけれども、果たしてうまく動くかどうかはまだわかりませんが、やはりそういう夢を抱いてあの改革はできているのではないか。今、小渕内閣では経済戦略会議というのをつくっておりますし、また諮問委員会もございますけれども、やはりそういう政府の中枢に、情報を多くの人々に見せながら行くような形ができているのではないかという気がいたします。  これからの日本が立ち直っていくためには、今までお金をつぐだけではなくして、やはり大きな新しいものをつくっていかなきゃいけない。そういうこともございまして、今度の御審議いただく補正予算の中にも、二十一世紀の先導的なプロジェクトというものをつくっております。これは総理の直属で、総理大臣の所信表明演説によりますとバーチャルエージェンシーなんて言葉も出てきておりますが、枠組みを超えたそういう未来的なものをつくっていこうということになっておりまして、それもやはり改革の第一歩になるのではないか。その中に、先端的な情報国家をつくる、電子国家をつくるとか、あるいは競争力のある大都市交通をつくるとか、あるいは歩いて暮らせるような町づくり、安心・安全のゆとりの町づくりをするとか、あるいは流動性のある雇用社会をつくろうとかいうような問題が入っておりまして、そういうものが本当にうまく進んでくれれば、次の段階では改革の導火線になっていくのじゃないかという期待を持っております。
  190. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 堺屋調の答弁をいただきましたが、一つは敬意を表し、一つは苦言を呈しておきたいと思いますね。  敬意を表する面でいいますと、いろいろな意味でのやはり新しいチャレンジをしなくてはならぬということをいろいろなところで主張されているという点は、私は敬意を表します。例えば、さっき週刊朝日と言いましたが、「今日とちがう明日」、うまい言葉ですね。こういうのは内閣のレッテルになってもいいはずなのです、内閣の主張としてですね。きょうと違うあすをどう構想するか。やりますよ、みんな意見ください、言ってくださいとなれば、大分総理の人気も内閣の人気も違うのじゃないか。それぐらいの迫力があっていいのじゃないだろうかというような思いがいたしますし、それから、安心して歩ける町とか大都市問題、選挙でも大変だったが、大都市問題に焦点を当てようという発想は非常に豊かな、いいことだというふうに私は思いますから、そういう点は大胆に出していただくということが必要だと思います。  ただ、苦言を呈したいのは、今度の補正でもとか、経済戦略会議とか、行革ででき上がる新しい諮問委員会とかおっしゃいましたが、私は、補正予算についてはこれは落第点をつけざるを得ないというふうに思っておりますし、もっと大胆に、焦点を骨太に立てた対策がこういう時期こそ求められるのじゃないだろうか。  例えば、一つはベンチャーの問題があります。アメリカの場合でも、八〇年代十年間のうちに、つぶれるものは随分つぶれました。その二倍、三倍のベンチャーが出ました。サクセスストーリーもあれば失敗もあります。ハイリスク・ハイリターンもあれば、いろいろなことがあります。しかし、やはり活力を持ったわけであります。新しい雇用もつくることができたというふうなことになるわけであります。  実は、私、地元の神奈川でKSPという、かながわサイエンスパーク、要するにベンチャーを育てるための機能をつくりまして、社長が友人ですから年じゅういろいろな議論をしているわけでありまして、彼は、韓国、中国、そういうところに意見交換に走り回って、アジア全体で、自治体のそういう努力などを中心にしながら、アジア・ベンチャーサミット会合、シンポジウムをやろうとかいったような大いなる野望を持ってやっている、いろいろなおもしろいことがやられているのですね。  ですから、そういうものをどう育てるのかということを見ますと、長年、この数年間も、いろいろな努力は政府でもだんだんはやってきたと思います。株式市場の問題とか、人も含め、人の対応もやってきたと思いますが、やはりこういうことを、アメリカの八〇年代と比べてみても、思い切り大胆に、思い切り大きくやるというのがこういうときには経済危機突破の印象的な柱になるということではないだろうか。その意味からしますと、及第とは言いにくいというふうな気持ちがいたします。  時間もございますから、遅くなりますので、最後に一点、自治大臣にお伺いして終わりにさせていただきたいと思います。  現在もそうですが、これから先を考えますと、先ほど来同僚議員からも話がございましたように、介護保険とかあるいは医療問題などなど、要するに、分権、自治体の税財政、自治体の体力と、それから福祉社会になるかどうかというものとは不離一体の関係ですね。改革を進めなくちゃならぬ。三千自治体ですから、大中小、零細ございますから、これも大事業でありますし、自治体自身の意識改革を含めました努力もしなくちゃならぬというのが現実だろうと思いますが、分権と福祉、福祉社会と分権型ということは並行した存在だろうというふうに思います。  にもかかわらず、全国の自治体の大変大きな比重を占める部分が深刻な財政危機になっている。昔は、財政が非常に悪い、体力の弱いところの自治体がピンチだという傾向でございましたが、今は、東京、大阪、我が神奈川などを含めまして、日本の顔となるようなところが大変深刻な状態になっている。本来でしたら、分権型財政下だったら、私は、政令指定都市、百万以上の都市なんというのは全部自前でやる、国にお金下さいなんて言わないというふうな仕掛けになるのが本当のあるべき社会の姿だろうというふうな気がするわけでありまして、そういう意味では特段の努力を、分権推進委員会につきましても、私は第五次の方向についてちょっとがっかりしているのですが、やはりもう一度勇気づけたと申しますか、大胆な努力をしなければならないときではないかなというふうな気がするわけであります。  御決意のほどを伺いまして、質問を終わりたいと思います。
  191. 西田司

    ○西田国務大臣 地方行政にとって大変重要なポイントを御指摘いただきました。私の方からも率直にお答えを申し上げたい、このように思っております。  いろいろ重要な問題があるわけでございますけれども一つは、やはり地方分権の時代、それから少子・高齢化の時代、こういうものが地方へ押し寄せてきておるわけでございます。自治体は、これらの対応に当たって、地域における行政、自主的な、総合的なものを担っておるわけでございますから、これらを今後元気を失わないようにやっていく道筋を立てていかなければいけない、このように思っております。  特に、御指摘がございました介護サービスというのは、これは総合的な地域福祉施策の一環であるし、これらをどう住民に身近なところで充実させていくかということは大変大きな役割を担っていく、私はこのように思っております。そういうことの中で、できるだけ自主的、自立的に、地域が元気を出して、将来の夢を持ってやっていくように進めていかなければいけない。  そこで一つ、私たちが今大変心配をいたしておりますのは、地方財政の問題でございます。  これは、自主的な地方税の問題もありますし、それから地方交付税の税源の問題もあるわけでございます。こういうことを考えてみますと、地方の歳出規模と、それから地方税収というものの乖離をできるだけ縮めていかないと、幾ら言葉だけで元気を出せとかやれとか介護を充実しろとかと言ったって、それはなかなか容易にできるものではない。そういうことに特に重点を置いて、今後地方団体と一体になってこの難局を乗り切っていきたい、私はこういう考えでございます。
  192. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 終わります。
  193. 麻生太郎

    麻生委員長 これにて伊藤茂君の質疑は終了いたしました。  次回は、明三日木曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十七分散会