○鴻池
祥肇君
自由民主党の鴻池
祥肇でございます。
長時間にわたる
衆議院の
予算委員会の審議も終えられ、ほっとする間もなく舞台が
参議院に移りまして、
総理を初め閣僚の皆様方には日夜御苦労さまでございます。
今この
参議院が大変注目をされておるときでございます。
さきの
選挙結果、まずは投票率の高かったこと、あるいは後ほども申し上げたいと思いますけれども、大変残念ながら
政府・与党
自民党が改選前の
議席を大きく割り込んでしまいました。
衆議院に対して
参議院は抑制、均衡、補完という、こういう役割を自負するものでございますが、よく
民主党の角田幹事長が言われます対決の
衆議院、それに対して合意形成の
参議院、我々与野党力を合わせながら、ただいま当面をしております
経済危機、
日本の危機に対処をしていかなければならないと決意を新たにいたしているところでございます。
参議院選挙で
自民党が負けました。多くの優秀な、有能な同志がこの政界を去りました。大変残念無念でございます。しかし、我々はこの
選挙戦を通じて反省するところはやはり十分反省をしなければならないと思っておる者の一人でございます。長い間の
政権、それを支えてきた責任政党、いっときは風で舞い上がった
細川内閣や羽田
内閣というのがありましたけれども、随分長い間私どもは
政権の座に着き、それを支えてきたわけでありますが、このような
経済状況の中で
国民の多くの方々は、あすが見えない、どんな
状況下の中においても未来が想像できない、こういうところにたたずんでしまった、たたずませてしまったというその責任というものは、やはり謙虚に反省をしなければならないと私は思います。その反省を
国民の皆様方に理解をしていただきながら、そしてそれをうなずいていただいた上で、新しい
経済の再構築に向かって進むのが本来の筋だろうと思います。
私は、
総理や閣僚の発言というものは極めて重いものだと思います。ですから、
衆議院の審議に一部行われておりましたように、失政なのか失政でないのか、そういう議論については私の方から申し上げるつもりはございません。しかし、そういう思いの
自民党に所属する
国会議員、
参議院議員がいるということもひとつ御
認識をいただきまして、
質問に入らせていただきたいと思う次第であります。
この分厚い本を持ってまいりました。(資料を示す)フランシス・フクヤマという学者の書きました「トラスト」、信頼。これは今から三年前に出版されました。
日本では二年前に慶応義塾大学の
加藤寛先生が「「信」無くば立たず」という題名で翻訳をされました。これは五百ページにも余る大変な大著でございますけれども、歴史
経済学の一般的基礎教養、これを前提としてかなりアカデミックな著作でありますにもかかわりませず、全米ではベストセラーのトップになったという本でございます。
さて、このフランシス・フクヤマ教授の著書の中で何が書かれているか。五百ページでございますから、これを一挙に一言二言で申し上げるのは大変無謀でございますけれども、話の切り口としてあえて申し上げますと、こういうことだと私は思います。
企業と国の繁栄を約束し、社会を
改革する推進力となるもの、それは信頼である。
日本が
経済的な繁栄、そして安定してきたのは、
日本が高信頼社会であったからである。これに要約されているような思いでこの本を読ませていただきました。
我が国の
政治・
経済情勢、これを見ますとき、まさに
日本経済の発展というのは高信頼社会であった、それが基礎となって今があったというふうに、私はこの本を読み、改めてその感を強くしたわけでありますけれども、しかし、今はその信頼社会というものが音を立てるようにして崩れてきておる、このことに大変危機感を持つものでございます。
戦後の焼け野原から五十三年、
経済の危機あるいは
日本の危機とも言われたニクソン・ショックや二度にわたるオイルショックあるいは円の暴騰、三年前の一ドル七十九円七十五銭を記録した円高不況、それぞれ苦しい努力を重ねてまいりました。そして、その苦境を乗り切ってまいったわけであります。
それがどういう原動力であったかということを考えた場合には、何度も申し上げますように、この信頼社会、どんな場合でも、今のように
政府や日銀や銀行や大蔵省やこういった機関に対して
国民や企業が信頼感を失っていなかった、このようにも私は思えてなりません。
日本社会を構築する組織、機関には確固たる信頼があった、だからその苦境を乗り切ってきたのだというふうに私は今強く思うわけでございます。
現在の
経済状況をかんがみて、
総理、どうでしょうか。
経済再生内閣とみずから銘打ってこの苦境に挑んでおられるわけでありますけれども、単なる
経済不況だけで片づけていいんでしょうか。
経済不況だけでなく、
日本社会の危機、国家的な危機だと私は思いますけれども、
総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。