○江田五月君 私は、民主党・新緑風会を代表して、ただいま
議題になりました
金融機能の
早期健全化のための
法律案二案につき、総理及び大蔵大臣、
衆議院送付の
法律案の
提出者並びに本院に提案された
法律案の
提出者に質問いたします。
便宜、
衆議院送付の
法律案を自民党案、本院に提案された
法律案を民主党案と呼ばせていただきます。
深刻な不況の克服と
経済の再建のために
金融システムを再生させることは、私たちみんなの緊急の
課題です。
既に、最悪の事態に備えて
金融再生関連法が一昨日、本院で可決、成立しました。
金融機関が破綻し、または破綻することが目に見えている場合に、特別公的管理等によって破綻や倒産の連鎖を断ち、世界金融恐慌の発生を防ぐ手だてが用意されたところです。あとは、そこまでは行かないが、体力の弱った
金融機関に必要な限度で公的
資金を投入して、体質を強化し、
金融機能を一日も早く健全で力のあるものに立て直さなければなりません。
しかし、私がまず問題にしたいのは、
政府・自民党の
早期健全化法の使い方です。
きょう、あすにも
資本注入しないとおかしくなる
金融機関が仮にあるとすれば、それは破綻することが目に見えている
金融機関であって、
早期健全化にはなじまないのではありませんか。破綻
処理と
早期健全化が仕組みとして車の両輪だというのはそのとおりですが、なぜ、破綻
処理策に加えて
早期健全化策も事実上同時にでき上がらなければならないのですか。会期切れ寸前に、駆け込みで、議論を省き、真実に目をつぶる欠陥法をつくって、実は破綻に瀕した
金融機関も
早期健全化の枠組みで救おうという意図があるように思えるのです。総理、大蔵大臣及び両
法案の
提出者にお伺いします。
私がそのように疑うのは、単なる邪推ではありません。自民党案と民主党案はほとんど同じで、ちょっときついか緩いかぐらいの違い、まあ程度の差しかないかと思われるかもしれませんが、真実を直視した
処理と真実に目をつぶった
処理とでは基本にある理念や哲学が大違いなのです。
そこで、基本理念に関係した質問をいたします。
そこで伺いたいのは、現在の
我が国の
金融機関の財務
状況をどう見ておられるかということです。先月の末に、新聞が大手銀行の
自己資本比率の速報値を報道しました。それによると、軒並み八%以上で、二けたのものも珍しくありません。これなら、別に
資本注入など必要ありませんね。ところが、私どもも含めて、現在の
状況は極めて悪いというのがまあ常識になっているのです。だから、だれも、一部の人を除けば、
健全化のための
資本注入は必要だと言っているのです。これは、つまり公表された数字は偽りだとだれもが思っているということではありませんか。偽りと言って悪ければ、真実の財務
状況を示していないということです。いかがですか、総理。
また、金融監督庁は随分検査に手間をかけていますが、結果をありのまま示すと、これらの数字が真実でないことが明らかになるから殊さらゆっくりしているのではありませんか。金融監督庁の責任者である総理大臣に伺います。
大蔵大臣も日銀総裁も、軒並み八%以上などということには疑問を呈されていますよね。違いますか。大蔵大臣に伺います。
しかし、私たちは、末弘厳太郎博士を引き合いに出すまでもなく、うその効用という
言葉も知っています。真実を隠して危機を通り過ぎる方がいい場合もあるでしょう。私は、自民党案の
提出者の皆さんが悪意で
国民をだまし続けようとしているとは思いません。恐らく本当の病気を知らないままで健康になった方が連鎖倒産や貸し渋りの悪化などを避けることができ、経費も安くて済むとお考えなのでしょう。だから軒並み八%以上などという偽りの数字をそのままにして
資本注入をしようとするのでしょう。違いますか。自民党提案者に伺います。
しかし、本当にそれでうまくいくのでしょうか。私たちは、これではうまくいかないことを示す格好の事例を知っています。それは今年三月の
資本注入です。あのときは、破綻のおそれのない銀行だ、これで貸し渋りはなくなるのだと言って一兆八千億円もつぎ込んだのでしたね。ところが、貸し渋りはなくならず、一千七百六十六億円つぎ込んだ
日本長期信用銀行には、ついに破綻
処理の道筋がつけられたのです。このお金はだれのお金ですか、返してもらえるのですか。あのとき銀行が書いた立派な
健全化計画は何だったのですか。砂に書いたラブレターは、さざ波で消えてしまいます。金融危機管理
審査委員会の
先生方は責任を感じているのでしょうか。大蔵大臣に伺います。
総理、あなたは長銀の
合併相手とされていた住友信託銀行の社長を公邸に呼んで
合併を説得されましたね。あなたの考えていたことがそのまま実現していたら、確かに当座は皆ハッピーだったかもしれません。しかし、長銀や関連ノンバンクの実態は、その後明らかになったとおりです。真実を隠して
合併を強行し問題を先送りしていたら、私たちが指摘していたとおり、もっともっと公的
資金の投入は際限なく膨れ上がったのではありませんか。お答えください。
金融の世界にうその効用が通用しないことは、事実が証明しているのです。
市場の目はごまかせないのですね。新しくつくる
早期健全化のスキームは、前車のわだちを踏んではいけません。
そこで、自民党案の
提出者に伺います。廃止される安定化のスキームから何を学び、そのわだちを踏まないようにどのような工夫をされたのですか、説明してください。
わだちの一つは、大蔵省任せにしたことです。すべて大蔵省にお任せで、大蔵省が音頭をとってどの銀行にも一律に
資本注入するといった愚を繰り返してはいけません。そこで、私たちは、大蔵省から完全分離された独立の
金融再生委員会をつくり、その判断で必要な銀行に適切な
資本注入を行うことを提案しているのです。自民党案は、再生
委員会が監督庁に随分権限をゆだねることになっているのに対し、民主党案にはその種の規定がありませんが、監督庁は
委員会の下にあるので、ゆだねても
委員会の力がそがれることはないと考えると、これは甘いですか。事務局の構成とか、何か
理由があるのでしょう。せっかくついた財政と金融の分離の道筋が、変なところでおかしくなってはいけません。民主党案の
提出者に伺います。
また、もう一つの前車のわだちは、言うまでもなく銀行の財務
内容の把握の仕方です。銀行の言うことをうのみにするのか、真実の姿を把握するのかということです。
資産査定のあり方で両案には根本的な差がありますね。まず、債権の分類と引き当てですが、自民党案では
法律事項になっていません。やはりどうしても裁量行政が懐かしいのですか。行政の裁量がなければ適切な運営はできないとお考えですか。自民党案の
提出者に伺います。
民主党案は、分類と引き当て率をはっきり
法律に書いていますね。もう一つの
資産査定が
有価証券ですが、原価法、低価法といろいろあります。
資産の現実の姿を知るためには、低価法がいいことははっきりしています。
評価のときだけ突然価が下がったらどうするなどというのはためにする議論でしょう。しかし、自分のところはどうしても原価法でいきたいという銀行はどうしますか。無理やり低価法を押しつけると貸し渋りを助長するとの指摘もあります。
銀行も私企業であることは確かですが、同時に公共の財産である
金融システムを構成し、公共的使命を担っているのですから、公的
資金で
健全化を図ろうとする以上、
資本注入を行う場合の判断
基準として低価法をとるのは当然と思います。それに、どうせ
市場は株の含み損などはお見通しなのです。民主党案の
提出者に伺います。
真実を知ることは怖いかもしれません。勇気が必要なのかもしれません。しかし、もう私たちはうそで固めた見せかけの安定や繁栄の夢をむさぼっているときではないのではありませんか。裸の王様はもうやめましょう。
金融機関の真実の姿を白日のもとにさらし、
国民の理解と納得を得た上で、真に必要な場合に限り、そのかわり思い切った額の
資金を投入しようではありませんか。そのことは逆に、不必要な
資金や損失になって消えてしまう
資金の投入を防ぐことにもなるのです。
こうして、その
場しのぎ、隠ぺい、先送りの金融行政を根っこから終わりにし、新しい金融行政で真に国際社会にも信用される
金融システムにつくりかえることができるのだと確信します。ピンチの今がチャンスなのです。この好機を逸してはなりません。そのためには、自民党案ではだめで、民主党案をこそ成立させなければなりません。民主党案の
提出者に覚悟を伺います。
私は、特にこの際、総理に伺います。小渕内閣は、金融の再生と
早期健全化のために四十三兆円に上る補正予算案を
提出しました。つい先週までは十兆円の構想しか持っていなかったはずですね。それがなぜこんなに多額の予算を決断したのか。それは、私たち民主党が六十七兆円の提案をしたからです。しかし、私たちの提案は、真実を明らかにし、みんなが痛みや苦しみを乗り越えながら、新しい時代の扉を開いていこうという決意をすることを前提になされたものです。
制度改革と予算はセットです。
総理、あなたは当然そのことをよく御存じですよね、私たちの代表である菅直人さんと党首会談をされたのですから。それなのにあなたは、予算の提案だけをつまみ食いされた。私たちの鼻を明かしたつもりかもしれませんが、使い方を間違うと、せっかくの公的
資金が壮大なむだ遣いになってしまいます。
国民は皆、あなたの決断を待っているのです。この国の立て直しのため、おいしいとこどりでなく、
制度改革についても厳しい選択をされてはいかがですか。そのことが、大きな壁にぶつかっている
我が国に今求められているのです。総理のみがなし得ることです。できなければ交代してもらわなければなりません。
最後に、大蔵大臣、
政治家としてだけでなく、人生の大先輩でもあります。ぜひお聞かせください。本当にあなたは自民党案のような
びほう策で今の金融の状態がよくなるとお思いですか。そのような姿勢で新しい時代を迎えることができると思われますか。宮澤さん、
日本国民にはまだよらしむべし、知らしむべからずがふさわしいのですか。真実を前にたじろがない勇気を期待するのは無謀ですか。二十一世紀に続く後進のために、総理経験者のあなたの真実の声を聞かせていただくようお願いして、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
衆議院議員保岡興治君
登壇、
拍手〕