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1998-08-11 第143回国会 参議院 本会議 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年八月十一日(火曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第三号   平成十年八月十一日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第二日)     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、永年在職議員表彰の件  以下 議事日程のとおり      ─────・─────
  2. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) これより会議を開きます。  この際、国会議員として永年にわたり在職されました前議員表彰についてお諮りいたします。  国会議員として二十四年の長きにわたり在職されました平井卓志君、遠藤要君、林田悠紀夫君赤桐操君、青木薪次君及び上田耕一郎君に対し、永年の功労を表彰することといたしたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。  よって、六君を表彰することに決しました。  表彰式は、追って議長においてとり行います。      ─────・─────
  4. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 日程第一 国務大臣演説に関する件(第二日)  去る七日の国務大臣演説に対し、これより順次質疑を許します。本岡昭次君。    〔本岡昭次君登壇、拍手〕
  5. 本岡昭次

    本岡昭次君 私は、民主党・新緑風会を代表して、小渕内閣総理大臣所信表明に対し、総理並びに関係閣僚に質問いたします。  質問に先立ち、甚大な被害をもたらした新潟県を初め集中豪雨被災地の皆さんに対し、心からお見舞いを申し上げます。我が党としても最善の努力を尽くしておりますが、政府においても万全の措置を講ぜられるよう求めます。  まず、総理、御存じのとおり、本院の首班指名は菅直人君であります。これが直近の国政選挙である参議院選挙において、民意が直接反映した国民の選択であります。  参議院選挙では自民党政治が不信任され、自民党は大敗北しました。その結果、自民党は過半数を二十一議席も下回りました。与党少数の参議院は小渕政権の命運を握っています。総理、どうされますか。  小渕政権は国民の審判を受けることなく、自民党政権たらい回しで登場しました。総理、小渕政権は一日も早く国民の審判を受けるべきです。  私は、さる雑誌の一九九六年四月号に掲載されている「政界随一の竜馬通が語る 「わがバイブル」政治家の志はここにあり」という小渕総理の一文を読みました。その最後に、「日本が近代の扉を開いてから百余年、今日また、世界国家として新たな「開国」の時期を迎えているといわれる。かつて、争乱の幕末を駆け抜けた一人の男の、けれんみのない生きざまが、時代を見据えた雄大な行動力とダイナミズムが、時として逡巡する私の心を鼓舞し続けている。その意味で、私の心の中で、「竜馬は永遠に生きている」ということがいえるだろう。」と書いておられます。  この日本の危機存亡のとき、小渕総理の心の中に竜馬が生きているとして、今どのような志をあなたは胸に秘めておられますか。その志を未来へのメッセージとして、もっと具体的にわかりやすく、総理自身のお言葉で国民に語っていただきたいと思います。  総理、あなたは所信表明で、「一両年のうちに我が国経済回復軌道に乗せるよう内閣の命運をかけて全力を尽くす」と断言されました。総理の演説の中で一番印象に残った部分であります。これは恐らく総理御自身のお言葉であろうと思われます。しかし、かかっているのは内閣の命運でなく日本の命運なのです。命運をかけるということは、小渕政権の退路をみずからが断つ、不退転の決意を表明したということであります。小渕総理の御認識と決意を聞かせていただきたいと存じます。  また、この深刻な経済危機の中で悪戦苦闘している国民が期待しているのは、こうした言葉だけでなく、その実行力と指導力であることも強く申し上げておきます。  また、総理は、「この内閣を経済再生内閣と位置づける」と明言されました。しかし、その内容はかけ声とほど遠いものです。まず、政府・自民党が進めている金融再生トータルプランは国民を欺くものにほかなりません。宮澤大蔵大臣が表明したように、大手銀行は破綻させないという原則です。不良債権の実態を隠ぺいし続け、国民の血税を資本注入という形で投入し、銀行やその経営者、株主を守ろうとするものです。そこには、銀行業界自民党に対して長年にわたり巨額の政治献金を行ってきた事情すら透けて見えます。  民主党は、既に二〇〇一年までに不良債権を処理するという内容の金融再生法案を準備しています。その基本方針は、大蔵省の密室、裁量、護送船団行政とははっきりと決別する、不良債権の情報を徹底的に開示した上で、経営内容が悪い銀行は存続させないというものであります。もちろん、経営者等の責任は明確にする一方、預金者、健全な借り手はきちんと保護します。あわせて、銀行の検査体制強化のために検査官の大幅な増員は欠くことのできない課題であります。  金融を真に再生し、我が国の経済・社会を活発化する道は、総理が勇気を持ってこの我々の提案を実施する以外にはありません。総理、いかがですか。  言うまでもなく、不良債権を生み出す原因は、一九八〇年代後半のマクロ経済政策の失敗であります。プラザ合意後の長期にわたる金融緩和政策により株式や土地の価格が急騰し、いわゆるバブル経済が発生いたしました。金融機関は完全にモラルを失い、ひたすら土地融資に金をつぎ込んだのであります。  一九九〇年になって大蔵省は総量規制を実施しました。しかし、抜け道だらけのこの規制は、金融機関をして住専やノンバンクを通じた迂回融資に走らせ、その結果が一九九六年の住専に対する六千八百五十億円の公的資金投入です。しかも政府は、この春に至るまで不良債権の処理は順調に進んでいるとの発言を繰り返し、不良債権の実態を隠し続けてきました。  大蔵省や金融機関による情報の隠ぺいと問題の先送り、そして歴代内閣が大蔵省の報告をうのみにしてきたことが不良債権問題をここまで深刻にしたのであります。  今回、大蔵大臣に就任した宮澤喜一議員は、一九八六年七月から八八年十二月まで大蔵大臣でした。この時期はまさにバブル経済が発生した時期であります。さらに宮澤議員は、一九九一年十一月から九三年八月まで総理大臣でありました。今度はバブル経済が崩壊し、不良債権問題が発生した時期でありました。宮澤議員不良債権問題のA級戦犯と批判されることは当然だと私は考えます。  宮澤大蔵大臣は、この不良債権問題を生み出した当事者として、みずからの責任をどのように認識されておられるのですか。  さらに、この場ではっきりさせたいのですが、経営危機がうわさされている長期信用銀行も含めて、大手銀行債務超過の銀行は本当にないのですか。総理の明確な答弁をお願いいたします。また、政府は、現時点における不良債権の総額が幾らあると認識しているのですか、あわせてお尋ねします。  いま一つ、国鉄長期債務処理法案などの政府案は一度撤回をして、与野党で十分協議した上、国民の納得のいく債務処理案を確立すべきであると考えます。いかがですか。  総理は、総裁選出馬に際して、所得税の恒久減税など六兆円超の減税を公約とされました。これは民主党がかねてより主張し、さきの参議院選挙で私どもが公約とした六兆円減税に、総理御自身が賛同されたのかと私は受け取ったのであります。  しかし、総理は、所信表明演説では恒久的減税と軌道修正されました。この「的」とは一体どういう意味でありますか。報道されている定率減税という小手先の減税でなく、民主党を初め多くの野党が求めている本格的な恒久減税を実施すべきであります。またもや国民を欺くのですか、明確に御説明ください。  このたび、中川農林水産大臣が従軍慰安婦問題の教科書記載に疑問を呈した発言について伺います。  総理は、その後に発言を撤回したから問題はないとしております。しかしながら、中川大臣は発言の趣旨を標榜する議員の会を結成して代表を務めている議員であります。まさに政府方針に反する確信犯であります。これは、明らかに派閥推薦優先の人事がもたらした弊害です。  外務大臣を務められた総理は、従来の政府方針、つまり一九九三年八月、日本政府として軍の関与を認め謝罪した河野洋平官房長官談話を熟知しておられるなら、中川議員を閣僚に任命しなかったはずであります。小渕内閣は、この河野洋平官房長官が談話として発表し、これが政府方針となったのでありますが、これを転換されるおつもりでありますか、お伺いいたします。  また、我が国は今、世界から、とりわけアジア各国から大きな責任とリーダーシップが求められています。秋には中国の江沢民国家主席の訪日や、韓国の金大中大統領を迎えて日韓漁業協定改定交渉が控えています。当然のことながら、我が国がさきの戦争の反省を踏まえ、近隣諸国との基礎的な信頼関係の構築を図ることは極めて重要であります。  総理と中川農林水産大臣歴史認識も含め、御見解をお聞きしたいのです。教科書問題については、有馬文部大臣の見解をお願いします。  引き続いて、少子・高齢化社会など、国民生活の将来に直結する諸課題を伺います。  自民党がさきの参議院選挙に敗北したのは、少子・高齢化社会に対する国民の不安にこたえ切れなかったからであります。まず、橋本政権が進めてきた社会保障構造改革財政対策だけに主眼が置かれ、国民はますます老後に対する不安を強めました。  望ましい高齢社会とは一体何でありましょうか。私は、言うまでもなく、高齢者が健康な老後を迎え、元気で働く意思と能力のある者は働けるだけ働ける社会であると思います。そのために、病気や寝たきりにならないようにする予防活動にもっともっと力を入れるべきであります。  また、六十歳定年制などは年齢による人間差別であると私は考えています。年金問題を考えても、働くことを希望する人が働けるだけ働けるようになれば、年金の支出も減り、保険収入もふえます。そのことは、個人にとっても財政にとっても好ましい結果を生むと考えますが、総理、いかがでありますか。  一方、拍車のかかる少子化傾向に対してきめ細かい子育て支援の対策が必要であります。  女性の高学歴化の進行を背景に、女性の就業率がますます高まっています。したがって、女性の就業と子育てが両立でき、子育てのコストが高くない社会にすることが少子化対策の重要なかぎであります。そのために、政府は少子化問題対策本部を内閣のもとに設置し、総合的な少子化対策を講じる体制を急ぐべきです。  そこでは、妊娠から出産までの支援策、保育所など保育制度改善拡充、労働時間の短縮など労働システムの改革、育児休業時の賃金保障を二五%から六〇%へ拡充、奨学資金制度を改善し、生活費も含め希望者全員に貸与、こうした諸対策を検討し、早急に実施すべきであります。  中でも、公的年金制度の改革は少子・高齢化社会の最重要課題であります。年金改革に当たっては、何よりも公的年金財政の現状、今後の見通しなどについて、国民に対して正直にデータ、情報を公開する必要があります。その上で、国民的議論を行い、将来とも安心でき、高齢期における安定した所得を保障する公的年金制度国民合意の上で実現しなければなりません。  政府は、次期公的年金改革をどのような視点から改革しようとしているのですか。年金生活者に、年金額がこれから減額されるのではないかという不安があります。減額はあり得ないと安心させていただきたいと思います。  また、医療制度医療保険制度抜本改革は二〇〇〇年度までのできるだけ早い時期に行うと明言されています。しかし、少なくとも抜本改革までの間は、国民にさらに医療費負担を求めるべきではありません。総理の御判断をお聞かせください。  さらに、国民が抱く不安として介護保険問題があります。市町村によって介護サービスの供給量や質に違いが生じるのではないかという点であります。新ゴールドプランを完全に達成しても、介護サービスの不足は明らかであるからであります。私たちは、介護保険制度をより国民の利用しやすいものに見直しつつ、充実した介護サービスの基盤を築くため、さらにスーパーゴールドプランの策定を行うべきだと考えております。  この介護問題は、障害者問題と深くかかわっております。  先日、総理府が発表した市町村障害者基本計画策定状況を見ますと、策定済み市町村が全体の約三割にとどまっているという非常に残念な結果であります。私は、地方分権、ノーマライゼーションの理念を実現するために、障害者基本法努力規定となっている障害者計画の策定を義務化する必要があると思います。いかがでございますか。  さて、深刻な中小企業問題と雇用対策についてお尋ねします。  昨年一年間、負債や事業不振などを苦にした自殺者は、全国で一七・六%も増加し、過去十年間で最悪となっています。このように、深刻な不況が中小企業を苦しめています。景気の回復が絶対条件でありますが、まず、金融機関の貸し渋り対策を緊急に講じなければなりません。当面は、政府系金融機関を最大限活用し、信用保証協会の保証枠を拡大して、資金繰りに苦しむ中小企業を救済すべきです。  また、下請自立支援策の拡充、商店街活性化策、実効ある事業承継税制の確立、物づくり基盤技術振興基本法などの積極的な施策により、中小企業の活力を取り戻さなければなりません。  一方、六月の完全失業率は四・三%になり、一九五三年の調査開始以来最悪の記録を更新しています。この雇用不安は、生活不安につながり、消費者心理を冷やして、不況との悪循環を引き起こしています。今後も雇用情勢は悪化し、六月で二百八十四万人となった完全失業者は、やがて三百万人を超えて、完全失業率が五%を突破するおそれが強まっております。雇用情勢がここまで悪化したのは、政府・自民党経済情勢の判断を誤り、有効な景気・雇用対策を実施してこなかったからであります。  私たちは、雇用創出効果が期待される、情報通信・環境・福祉医療関連産業などの起業支援と育成、そして職業教育訓練の充実や、自発的教育訓練の助成を提唱しています。総合的で柔軟な雇用政策と新ゴールドプラン強化を組み合わせることで、介護マンパワーを拡充することもできます。私たちは、このように思い切った雇用政策の実施を求めていますが、政府の中小企業と雇用の対策をお示しください。  次に、継続審議となっている労働基準法改正についてお伺いします。  民主党は、長時間労働を是正するために、時間外・休日・深夜労働に関する男女共通上限規定や、一年単位の変形労働時間制の導入要件などの修正を求めてきました。また、政府案の新しい裁量労働制の導入については、対象業務の範囲や運用に関する規定があいまいで、労使委員会の機能が公正に機能せず、本人の同意のないまま裁量権のないホワイトカラー一般裁量労働制が拡大するおそれがあることから、裁量労働制のあり方やルールについて労使で再協議するよう求めてきました。  来年四月からは、改正男女雇用機会均等法が施行され、女子保護規定撤廃後の激変緩和措置の制定が急がれます。労働基準法改正労働行政の根幹にかかわる重要問題です。政府は、さきに述べた修正と意見を受け入れるべきであります。  農業政策についてお伺いします。  御承知のように、我が国農業農村は、過疎・高齢化後継者不足、自由化の波による相次ぐ離農などにより、極めて先行き不透明な状況にあります。今日の状況を生み出した最大の原因は、ひとえに哲学のない我が国の農政であります。先進各国が軒並み高い食糧自給率を維持しているのに対し、我が国の自給率は四二%と際立って低くなっています。これは、我が国政府が、食糧・農業について確固たる見識を持たないまま、画一的な官僚主導農政を農家に押しつけてきた結果であります。  昨年末、新たな農業政策のあり方について協議を続けてきた政府の食料・農業・農村基本問題調査会により中間報告が出されました。しかし、ここでも農政の位置づけや食糧自給率の向上などの重要な部分が明確にされず、結論は先送りされています。この際、食糧安全保障と言われる食糧・農業政策について政府の基本的認識を明らかにしていただきたいと思います。  環境問題について伺います。  有害な排ガスの排出差しとめと損害賠償を求めた川崎公害訴訟で、横浜地裁川崎支部は八月五日、排ガス単独でも健康に害ありとし、国と首都高速道路公団の損害賠償を命じました。道路審議会道路づくりの基本を環境保全に切りかえるように求めています。政府はこれまでの道路行政を見直すべきであります。  これからの環境政策は、市民参加情報公開を徹底し、市民一人一人が責任を持ってライフスタイルを転換していかなければなりません。先国会から継続審議となっています地球温暖化対策推進法案についても、基本方針を策定する段階からの市民参加と企業の温暖化物質排出量についての情報公開を義務づけるべきであります。  現在、国民の関心が非常に高いダイオキシンなどの化学物質対策について、事実を隠ぺいし対策を先送りする手法は、まさに薬害エイズと同じであります。あの悲劇から全く何も学んでいないと言っても過言ではありません。私たちは、環境や人体に重大な影響を及ぼす化学物質の対策について、製造段階でのチェックの強化を初め、既に汚染されている土壌の除去、住民の血液や母乳中のダイオキシン濃度測定の無料化など、多方面にわたる対策が必要だと考えております。政府の見解を求めます。  次に、阪神・淡路大震災復興対策についてお伺いします。  大震災から三年四カ月たって、自然災害被災者公的支援する画期的な被災者生活再建支援法がさきの通常国会で成立しました。阪神・淡路大震災被災者にはこの支援法と同程度の公的支援が兵庫県の復興基金により実施されています。  しかし、被災者生活再建被災地経済の立て直しは問題がますます個別化し、見えにくくなってきています。仮設住宅被災者は四年目の暑い夏を迎えています。住宅や店舗を再建した方々は二重ローンの返済に苦しんでいます。景気低迷に加え、地域経済への震災後遺症が失業、売り上げ減など経済的、精神的な苦しみとなって被災者に降りかかっています。中でも、被災したお年寄りや子供たちを苦しめているのが心的外傷ストレス障害であり、長期に特別な対策を必要としております。  さらに、二十一世紀のモデル都市として被災地を復興させる十年計画の着実な進展を図るために、被災地自治体の権限や財源の見直しが必要であります。また、被災者生活再建支援法には検討事項として住宅の再建が盛り込まれております。自然災害列島に住む日本国民安全システムの問題として、早急に住宅再建共済制度などの法制化を急ぐべきであります。  次に、外交・防衛政策について伺います。  我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態においては、日米防衛協力のための指針を実効あるものにする法整備は必要であります。しかし、政府は、周辺事態に必要となる措置の基本計画を国会に報告するにとどめ、閣議のみで日本の対応を決定するとしております。シビリアンコントロールの観点や対米防衛協力国民生活に与える影響の大きさを考えるとき、基本計画国会承認とし、不都合があれば国会で修正できる仕組みにすべきであります。事後承認を認めれば、緊急の場合にも対応できるはずであります。  この周辺自体の範囲に関して、クリントン大統領の訪中時に米国が明らかにした、二つの中国を支持しない、台湾の独立を支持しない、台湾の国際機関への加盟を支持しないという三つのノー政策があります。日米ガイドラインの性格がこの三つのノー政策によってどのような影響を受けるか、御見解をお伺いいたします。  さきのインド、パキスタンの核実験は、核保有国、とりわけ米ロ二大核保有国による核管理体制が事実上行き詰まっていることを明らかにしました。我が国が、米ロ両国を初め核保有国に期限を定めた核弾頭の削減数に合意することを求めるなど、核軍縮を積極的に働きかけていくべきではありませんか。  日米安保条約は、我が国安全保障体制の基軸であります。しかし、そのことは我が国米軍基地が現状のまま存在し続けるということではありません。現実に米国内でも、在日米軍の基地のあり方を見直すべきだという議論がふえているとも聞いております。総理は、在日米軍基地の整理、縮小、移転をどのように進めていくのですか。また、橋本前内閣で行き詰まった沖縄普天間基地の移転問題に対する対応もお聞かせください。  さらに、日ロ関係の改善が今後の日本外交の重要な課題であることは言をまちません。表面的には橋本前総理時代日ロ関係は前進したように見えますが、その実態は首脳間の個人的パイプに頼り、重層的なものになっておりません。スタンドプレーに走ることなく、国民の理解の上に立ったさまざまなレベルにおける信頼関係の確立に努めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。  国際人権問題について伺います。  本年は世界人権宣言五十周年の記念すべき年であります。私は、二十一世紀を人権の世紀にという人類共通の願いの実現に日本が積極的に取り組むことによって、大きな国際貢献を果たすと確信しております。しかしながら、我が国が国連の人権に関連する諸条約二十三のうち批准したのはわずか九条約のみです。これでは世界の経済先進国として恥ずかしい限りです。早急に人権諸条約の完全批准を求めます。  特に、重要な個人通報を認めた人権の基本文書である市民的及び政治的権利に関する国際規約に関する第一選択議定書をいまだ批准いたしておりません。私は、十年来参議院で毎年のように政府に批准を求めてきました。世界では既に九十三カ国が、アジアでも韓国、フィリピン、モンゴルなど九カ国が批准をしております。もう我が国が批准をおくらせる正当な理由はなく、政府の決断のみであります。  また、第百三十九国会で成立した人権擁護施策推進法による人権擁護推進審議会では、国の責務として、部落問題を初めさまざまな差別問題の差別意識の解消に向けた施策のあり方の議論がなされております。答申までに幅広い国民的論議をするため、政府は審議会に中間報告を求めるべきであります。  ことしの一月下旬に来日しましたメアリー・ロビンソン国連人権高等弁務官は、各国政府国内人権機関の設置を強く働きかけておられます。我が国も、政府から独立した権威ある国内人権機関を設置すべきであります。  さらに、日本国内における身近な国際人権問題として外国人学校差別問題があります。文部省は、在日の外国人学校卒業生に対して、国立大学への受験資格を与えていません。公立や私学は既に半数近い大学が受験資格を与えているのであります。国連児童権利委員会からもこの問題に関する改善勧告日本政府に送付されています。兵庫県の外国人学校協議会は、この問題を国連人権小委員会に来週にも直訴するようであります。  政府は、人権擁護差別防止の観点から早急に解決すべきであります。政府の決断を求めます。  また、国連人権小委員会に、戦時における女性への性暴力について報告を求められていたアメリカの特別報告者が旧日本軍の従軍慰安婦問題も取り上げ、日本政府に勧告したことが報道されています。事実関係を明らかにしてください。  教育問題について伺います。  一九九七年度の文部省の学校基本調査によると、不登校の小中学生は十万五千四百十四人となりました。私は、一九八六年一月、本院の代表質問において小中学生の不登校問題を取り上げ、この十年間で三・五倍と激増し、三万百九十二人に及んでいる、この子供たちのうめき声が総理や文部大臣に聞こえますかと問題の解決を迫りました。  それから、小中学生の数が減っているにもかかわらず、不登校は十二年前に比べ、ついに三・五倍の十万人を超してしまったのです。今日、小学校にまで学級崩壊が起こり、義務教育制度の崩壊の危機を感じます。  総理は、所信で「次代を担う子供たちがたくましく心豊かに成長する、これは二十一世紀を確固たるものにするための基本」であると発言されました。まさにそのとおりであります。しかし、その一方で、義務教育崩壊にもつながる不登校に歯どめがかからず、増大の一途をたどっているのであります。  この際、大胆な制度改革の断行が必要であります。それは三十人学級の実現であります。第六次教職員定数改善計画完了のめどがつき、さらに、小中学校の児童生徒の減少により教職員定数の自然減が続くという現状にある今日こそ、実現すべき最重要の国民的課題であります。  三十人学級実現によって、総理の言う「子供たちが自分の個性を伸ばし、自信を持って人生を歩み、豊かな人間性をはぐくむよう心の教育も充実させる」ことを可能にいたします。これこそ総理の「今日の勇気なくして明日の我が身はない」の問題であります。三十人学級実現への勇気ある決断を求めます。  行政改革及び地方分権について伺います。  地方分権は、時代の要請であり、新しい日本社会を築く基礎であります。私たちは、この改革なくして活力ある二十一世紀の日本社会はあり得ないと地方分権を強く主張しているのであります。  さて、政府は、昨年末まで四次にわたる地方分権推進委員会の勧告を受け、本年五月に地方分権推進計画を閣議決定しました。  まず伺いたいのは、この地方分権推進計画に対する総理御自身の評価であります。確かに、この地方分権推進計画にある機関委任事務の廃止は画期的なことであり、地方分権の推進においては不可欠であります。しかし、法的な枠組みは変わっても、自治体の事務の細部まで規定するそれぞれの法律はそのままです。実際の行政事務や財源は全く移譲されていないのです。  政府は、昨年末に地方分権推進委員会に対して行政事務の移譲を盛り込んだ勧告を要請しました。現在、第五次勧告として本年秋の勧告に向けて作業が進められています。第五次勧告は、主として公共事業における地方分権が内容です。この勧告の取り扱いと、勧告の内容である公共事業における地方分権について総理のお考えをお聞かせください。  一方、省庁再編においては、設置法が一つの焦点となっております。橋本前総理は、重ねて二〇〇一年に新体制への移行を表明されていましたが、小渕総理はどうされますか。  また、行政の行動を国民みずからが監視するための情報公開法案制定も緊急の課題であります。  橋本前内閣が提出した政府案は、特殊法人を対象にしない、非公開の範囲が広いなど、まさに欠陥法案であります。参議院選挙に示された国民の意思は、自民党の官僚主導型政治に対する不信任であり、官僚による情報独占の否定であります。野党四会派案のすぐれている点を柔軟に取り入れ、審議の促進と早期成立を図ることが国民の期待にこたえることだと考えます。  政治倫理問題について伺います。  私たちは、さきの国会に、政治腐敗防止策として、国会議員が役所に口ききをして報酬を得ることを処罰する地位利用収賄罪に関する法案を提出しています。国会議員の株取引を規制する法案も準備しております。自民党では、あっせん利得をしても政治資金として届け出れば罰則を免れるという骨抜きの法案すら国会提出に至っておりません。この際、民主党案を軸に議論を進めることが国民の批判にこたえる唯一の道だと考えますが、総理の決意をお聞かせください。  最後に、政治と民主主義について伺います。  文部省は、敗戦後間もない一九四八年、軍国少年として育てられた私たちに文部省著作の教科書「民主主義」を与え、軍国主義から民主主義への変革を迫りました。私たちの世代は軍国主義と民主主義を学んだ貴重な世代であります。  その教科書には、「民主主義の理想は、人間が人間たるにふさわしい生きがいのある生活を営み、お互いの協力によって経済の繁栄と文化の興隆をはかり、その豊かなみのりを、すべての個人によって平和に分かち合うことのできるような世の中を、築いていくことにある。」とありました。  小渕総理、私たちはこの五十年、教科書が示した民主主義の理想を求めて懸命に歩んでまいりました。しかし、日本の社会・経済構造が大きく変化する今、私たちは政治システムとしてどのような民主主義を選ぶべきかを改めて問い直すときが来ていると思っております。  私は、私たちが選ぶ民主主義として、まず第一に官僚主導の政治から政治家が政策責任を持つ政治へ、第二に利益誘導型の政治から国民生活優先の政治へ、第三に社会・経済構造を集権型から分権型へ、この三点を今日我々が必要とする民主主義改革の要点として挙げたいと思います。  小渕総理我が国は新しい時代、二十一世紀を目前に大きな改革を迫られています。総理は、所信演説で「鬼手仏心を信条」に「次の時代を築く決意」を表明されました。何が「鬼手」で何が「仏心」なのですか。残念ながら総理の哲学と改革をなし遂げる勇気が全く伝わってきません。言葉の遊びであります。  果たして総理に改革への哲学と勇気がおありなのでしょうか。私たちは、改革を行う勇気なき総理には直ちに退陣を求めなければなりません。  総理に改革の決意を求めて、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  6. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 総理大臣に就任をいたしまして、初めて良識の府参議院で御答弁の機会をちょうだいいたしました。  まず、本岡昭次議員に対しまして、私なりに誠心誠意御答弁を申し上げたいと思います。若干時間がかかろうかと思いますが、お許しをいただきまして御理解をいただきたいと存じます。  まず冒頭、本岡議員から、私の坂本竜馬に対しての拙文に対しまして御紹介をちょうだいいたしました。  私が二十代で国会に議席を得ましたそのときに、ちょうど司馬遼太郎氏の「竜馬がゆく」という連載が新聞で始まりました。私は、それを読みながらみずからの責務を考え、改めて国家と国民に対して竜馬が果たしてきた役割に思いをいたしながら、微力でございますが全力を尽くそうと、こう決意をいたした次第でございます。  今なお、その思いを十分にかなえ得ておりませんけれども、願うことは同じでございまして、当時は幕藩体制から新しい日本を目指されたわけでありますが、今の時代は、私は新しい第三の改革の時期を踏まえ、この国難を乗り越え、そして将来にわたりまして日本の国を美しい日本、そして品格ある国家として、これから一生懸命に努力をしてその責任を果たしていきたい、このように考えておりますので、御鞭撻をお願いいたす次第でございます。  さて、今後の国会運営につきましてお尋ねがございました。  今般の参議院選挙の結果を謙虚に受けとめまして、今後とも野党各党と誠心誠意話し合いをいたしまして、理解が得られますよう最大限の努力をいたしてまいる所存でございます。  次に、一日も早い国民審判を受けるべきとの御指摘もありました。  私は、基本的認識として、実際上、解散権は総理に与えられた最大の権能であると理解いたしております。したがって、政治的決断を行わなければならないときは解散を断行して国民の信を問うことは当然であると考えております。ただ、現在の状況を考えますと、我が国金融経済、極めて深刻な状況に直面しておりまして、この内閣の最重要課題が、日本経済の再生に向けて不良債権問題の抜本的処理を初めとしてあらゆる施策を迅速に実行していくことであることに思いをいたしましたとき、私といたしましては、現時点において解散するような意思はございません。  景気回復に向けての認識決意についてお尋ねがございましたが、今後は、先般成立いたしました補正予算等、総合経済対策の本格的効果が徐々に出てくると考えられますが、他方、雇用の悪化、金融機関不良債権問題等が懸念されております。したがいまして、総合経済対策の実施に全力を尽くすことに加え、金融再生トータルプランの早期実現を目指してまいりたいと思っております。その上で、事業規模で十兆円を超える第二次補正予算を編成し、六兆円を相当程度上回る恒久的な減税を実施いたします。  以上の政策を実行し、一両年のうちに我が国経済回復軌道に乗せるよう、内閣命運をかけて全力を尽くす覚悟でございます。  先ほど、内閣命運のみならず国家の命運がかかっておると仰せでございますが、内閣が選ばれてこの仕事を達成するということは、当然のことでございますが、国家国民に対する責任に対して、その命運をかけて努力するということは言うまでもないことと思っております。  不良債権処理に関するお尋ねでございますが、今般取りまとめました金融再生トータルプランの実施は、我が国経済の喫緊の課題である不良債権問題を解決するために不可欠なものであり、その関連法案を早期に成立させる必要がございます。野党の皆様に対しましても、その提案に耳を傾けながら、関連法案の早期成立に向けて今後とも理解と協力を求めてまいりたいと考えております。  大手銀行の経営状況についてでございますが、自己査定結果を踏まえ、外部監査によるチェックを経て公表された大手十九行の平成十年三月期決算によりますれば、債務超過に陥っている銀行はないと承知をいたしております。  また、不良債権の総額についてのお尋ねですが、十年三月末における金融機関不良債権の総額は、従来の基準で見まして二十五兆円、米国SECと同様の基準で見まして三十五・二兆円となっており、また、不良債権に係る損失の引き当てとなる債権償却特別勘定の残高は十九兆円となっております。  国鉄長期債務の処理についてお尋ねがございました。  約二十八兆円に上る国鉄長期債務の処理は、もはや先送りが許されないこれまた緊急の課題でございまして、政府としてその処理を本年十月一日から実施するための法案を国会に提出いたしております。政府といたしまして、この処理方策が最も適当な案であると認識をいたしておりますので、これまた御協力をお願いする次第でございます。  税制改正についての御質問でありますが、今回の六兆円を相当程度上回る減税におきましては、個人所得課税の最高税率の引き下げ及び法人課税の実効税率の引き下げを行うことといたしておりまして、抜本的な税制の見直しを展望したものであります。また、これらは、御指摘の定率減税を含め、期限を定めず継続していくものであり、期限を定めないという意味でまさに恒久的な減税であると考えております。  歴史認識についての御質問がありました。  歴史認識一般につきましての政府の考え方は、御指摘にありましたように、平成七年八月十五日の村山内閣総理大臣談話基本とし、また、いわゆる従軍慰安婦問題につきましての政府基本的立場は、平成五年八月四日の河野官房長官談話のとおりであります。この政府の方針に転換はございません。中川大臣は、内閣の一員としてこの方針を遵守いたしておると承知をいたしております。  少子化対策についてお尋ねがございました。  結婚や出産について個人が望むような選択ができる環境を整備することは、社会全体で取り組むべき課題であると考えております。このため、少子化への対応を考える有識者会議を設けたところでありまして、この会議での議論も踏まえ、関係省庁の連携のもとに総合的な施策を推進してまいりたいと考えております。  年金についてのお尋ねでございますが、次期制度改正におきまして、給付と負担の均衡を確保し、将来世代の負担を過重なものとしないよう、制度全体の抜本的見直しを行い、将来にわたり安心して年金を受給できる制度を構築してまいります。  なお、給付水準の抑制を行う場合におきましても、原則として現に受給している年金額を引き下げることは適当でないと考えております。  医療費負担についてでございますが、医療保険制度の安定した運営を行うためには、無理のない範囲での公平な負担は必要と考えておりますが、今後の新たな負担のあり方につきましては、医療保険制度等の抜本改革の検討の中で国民的視点から御議論いただくものと考えております。  介護保険制度についてお尋ねがございましたが、国民の利用しやすい制度となりますよう、その円滑な導入に向けて必要な準備を進めてまいります。  また、新高齢者保健福祉推進十カ年戦略、すなわち新ゴールドプランの達成を目指すとともに、介護保険制度施行後は、地方自治体の介護保険事業計画に基づく介護サービスの供給体制の整備について、必要な支援を行ってまいります。  地方公共団体の障害者計画に関するお尋ねですが、基本法で努力規定とされておりますのは、それぞれ障害者の実情及びその状況に即して主体的に策定すべきであると理解いたしております。政府としては、平成七年五月に策定に関する指針を通知する等、策定の促進のための指導に努めておるところでございます。  中小企業対策についてでございますが、これまでも貸し渋り対策として政府系金融機関の融資制度の拡充等を行っているほか、下請自立支援策としては取引のあっせん等を、商店街活性化対策としては中心市街地活性化対策等を、また、物づくり支援につきましては、技術指導、研修事業を実施する等、各種の取り組みをいたしてきておりますが、今後とも中小企業実態を踏まえた施策を強力に進めてまいります。  雇用対策についてでございますが、総合経済対策の実施により景気の回復を図るとともに、緊急雇用開発プログラムの実施や産業構造転換・雇用対策本部の決定に基づく政府一体となった取り組みの推進、あわせて新規産業の創出、魅力ある事業環境の創出等の経済構造改革を通じた雇用の拡大に向けた取り組みなど、きめ細かく講じていくことにより、雇用の安定に全力を尽くしてまいります。  労働基準法改正法案についてでございますが、改正法案につきましては、さき通常国会に提出後、真摯な御審議が重ねられてまいりまして、種々の御意見や課題の御提起もありましたが、継続審議となっております。今後とも引き続き真摯な御審議をいただいた上、政府としては一日も早く成立させていただきたいと考えております。  食糧農業政策についてお尋ねがございました。  食糧国民生活にとって最も基礎的な物資であります。国民に対し、国内農業生産を基本として安全な食糧を安定的に供給していくことは国の基本的な役割であります。今後、食糧農業政策につきましては、現在行われている食料・農業農村基本問題調査会議論も踏まえ、国民が安心できる確固たる政策を築いてまいります。  環境問題をめぐりまして、道路行政あり方につきましても御指摘がございました。  従来から、沿道の環境に配慮して、道路交通の分散と円滑化を図るための道路ネットワークの整備や、緑地帯の整備などの道路構造の改善に取り組んできたところであります。今後とも道路審議会の答申も踏まえ、沿道の生活環境の保全に一層重点を置きつつ、道路行政を進めていく考えであります。  地球温暖化対策推進法案についてでございますが、基本方針策定には広く国民の意見を聴取し、反映していきたいと考えております。また、企業の自主的な温暖化物質排出量情報の公表を促進していくため、技術的情報の提供等、その支援を図ることといたします。なお、国際的な取り組みの推進を図る上でも、継続審議となっております本法案の早期成立をお願いいたします。  化学物質対策について、ダイオキシンを例に御指摘をいただきましたが、国民の健康や生態系への影響を防止する観点から重要な課題認識をいたしております。特にダイオキシン対策につきましては、現在関係省庁におきまして廃棄物焼却炉等に係る排出規制、血液や母乳中のダイオキシンの調査、汚染土壌対策の検討など各般の施策を進めており、今後とも推進を図ってまいります。  阪神淡路大震災復興対策についてお尋ねがございました。  政府としては、これまで地元地方公共団体の復興に向けた取り組みを最大限に支援してまいりました。また、今般新たに創設された被災者自立支援金に対し、地方財政措置による支援を行っております。今後とも心のケア対策を含めた被災者生活再建の支援など、阪神・淡路地域の復興対策に努めていきたいと考えております。なお、住宅再建支援のあり方につきましては、総合的な見地から検討を行うことといたします。  次に、外交、防衛についてでございますが、周辺事態安全確保の基本計画国会承認するかについてのお尋ねでございました。  周辺事態への対応は、武力の行使を含むものではないこと、国民の権利義務に直接関係するものではないこと等を総合的に勘案すれば、基本計画について国会に遅滞なく御報告し、議論の対象としていただくことが妥当と考えております。  クリントン大統領訪中と日米防衛協力のための指針の性格についてお尋ねがございました。  指針は、特定の地域における事態を議論して作成したものではありません。また、周辺事態が地理的な概念でないことは従来より御説明申し上げておるところでございます。したがいまして、御指摘の米国と対中国台湾政策によって指針の性格が影響を受けるというものではありません。  核軍縮についてお尋ねでございましたが、我が国は従来より核保有国に一層の核軍縮を求めてきております。米ロに対しては従来より戦略兵器削減条約の早期締結を求めてきておりますが、今後とも核兵器国に対し、核軍縮努力を一層強化するよう強く要請するとともに、このため世界の世論を結集すべく我が国としてイニシアチブをとってまいりたいと思います。従来のNPT、CTBTあるいはカットオフ条約という形での今日までの我が国努力に対しまして、冷戦構造は終えんいたした今日、新たなる民族問題が起こってまいりまして、このことがインド、パキスタンの核実験強行にもつながっておると考えております。  我が国といたしましては、唯一の被爆国といたしましても、この七つの国に対しまして、国際世論をできる限り結集し、そしてそうした力を背景にいたしまして、こうした国に対する大きな圧力をかけることのできるように努力をいたしていきたいと思っております。  在日米軍施設・区域についてのお尋ねですが、日米安保体制は、我が国の安全の確保及びアジア太平洋地域の平和と安定に不可欠であり、政府としては、米軍駐留に伴う国民の負担を軽減するための努力をいたしております。  普天間飛行場の移設につきましても、海上ヘリポート案が最良の選択肢と考えており、これまでの経緯も踏まえつつ、真摯に取り組んでまいりたいと思っております。  日露関係についてお尋ねでございますが、両国関係のさらなる進展のため、両国国民の幅広い交流を通じた信頼関係強化が必要であります。そのため、政府としては、議員交流、技術支援、報道関係者招聘、対先進国招聘、さらには各種文化交流事業等の枠組みを通じ、各界各層での交流の活発化を図ってきており、今後ともさまざまな分野における協力と関係強化を図ってまいります。  私も本院の所信表明で申し述べましたように、二〇〇〇年までにぜひ平和条約を締結いたしたいということで、前の橋本総理の築かれたエリツィン大統領とのよりよき信頼関係をさらに深くいたすことによりまして、この問題について最終決着の図れるように努力をいたしてまいりたいと思います。  外務大臣時代もこの席から申し上げましたけれども、我々政府としては全力を挙げてこれを努力いたしますが、院といたしましても、かねて来この問題につきましては院の御決議をちょうだいいたしております。国会挙げて、また、国民挙げての御支援をいただきながら、エリツィン大統領とも十分話し合ってまいりたいと思いますので、改めて、御支援と御協力をお願い申し上げる次第であります。  人権関係条約の締結につきましてお尋ねがございましたが、我が国は、これらの条約の目的、意義、内容、締結の必要性を十分勘案した上、順次締結してきております。  御質問選択議定書につきましては、司法権の独立を含め司法制度との関連で問題があるとの指摘もありますので、今後とも本議定書の定める制度の運用状況等を見詰め、慎重に検討してまいりたいと考えております。  人権擁護推進審議会に関してお尋ねがありましたが、現在、審議会では人権教育・啓発に関する施策基本あり方につきまして審議中であると承知をいたしておりますが、中間報告を出すか否かといった審議会の運営事項につきましては、審議会みずからが決めるものであろうと考えます。なお、審議状況につきましては、議事録等により広く国民に公開されていると承知をいたしております。  政府から独立した人権機関を設置すべきとの御指摘でございますが、このような機関の設置につきましては、責任内閣制の原則などに照らし、慎重な検討が必要であると考えます。我が国では、政府人権擁護機関が中立公正の立場で人権問題に取り組んできた実績があり、御質問の点に関しましては、今後、この実績も踏まえまして人権擁護推進審議会において慎重に審議されるものと承知をいたしております。  次に、大学入学資格のお尋ねでございますが、これは学校教育法に基づき、高等学校卒業者またはそれと同等以上の学力があるとして文部大臣が定める者に与えられております。外国人学校はほとんどが各種学校であり、各種学校の教育内容は法令上定めがないため、その卒業者に大学入学資格を認めておりません。この問題は、我が国学校教育体系の根幹にかかわる事柄でありまして、慎重に対処すべきと考えます。  国連人権小委員会への報告についてのお尋ねでありますが、現在開催中の小委員会にマクドーガル特別報告者が武力紛争下における性的奴隷制に関する報告書を提出する予定であり、その中でいわゆる従軍慰安婦問題にも言及するものと承知をいたしておりますが、現段階では報告書はいまだ公表されておりません。  なお、昨年の同小委員会においては、従軍慰安婦問題に関するこれまでの我が国対応を前向きな措置として評価する決議が採択されております。  三十人学級に関するお尋ねですが、現行の教職員配置改善計画では、不登校の児童生徒に対する指導など生徒指導の充実とともに、グループ別指導など少人数の学習集団できめ細かな指導をすることができるよう改善を図っておるところでございます。財政状況が極めて厳しい中ではありますが、平成十二年度の完成を目指して、現行改善計画の着実な推進に努めてまいる所存でございます。  地方分権推進計画の評価と第五次勧告についてお尋ねがありましたが、地方分権推進計画地方分権推進委員会の四次にわたる勧告を最大限に尊重して作成したものであり、これを着実に実施していくことが重要であると考えております。  また、現在、地方分権推進委員会におきまして、御指摘の公共事業を含む国及び都道府県からの事務権限の移譲などにつきまして審議されておりますが、第五次勧告が行われれば、中央省庁等改革基本法の規定も踏まえ、適切に対処してまいりたいと思います。  省庁再編についてお尋ねがございました。  さき国会で成立をいたしました中央省庁等改革基本法に基づき、政治主導のもとで、不退転の決意で、二〇〇一年一月の新体制への移行開始を目標として、来年四月にも所要の法案を国会に提出することを目指しております。あわせて、中央省庁のスリム化を徹底し、十年間に定員の二〇%削減を実現するよう最大の努力をいたしてまいります。  情報公開法案につきましてお尋ねがありました。  情報公開法案は、法制の専門家、学者、実務家等、各界の英知を集めてまとめられました行政改革委員会意見を最大限尊重して立案したものであります。同法は、国民に開かれた行政の実現を図るため重要な法律であり、十分御議論をいただき、速やかに成立させていただきたいと思います。  政治腐敗防止策についてお尋ねがございました。  国会議員のあっせん利得行為等を処罰する罪の新設や株取引の規制等に関し、自由民主党等におきましても議論が行われてきたところであり、先ごろ民主党が衆議院に御指摘の法律案を提出いたしておることは承知をいたしております。政府といたしましても、各党各会派で十分御論議をいただくことが基本であると考えており、その結果を踏まえ適切に対処してまいりたいと考えております。  個人の自由、人格の尊厳、基本的人格の尊重は、歴史、時代を超えた民主主義の理念、価値でありますが、こうした民主主義の理念、価値をどのように実現していくかにつきましては、内外の経済社会環境が変化する中で最も適切な対応、取り組みを行うべきことは当然であると考えております。こうした意味で、議員がお示しされたお考えは一つの御見識と深く受けとめております。  私の信条であります鬼手仏心の言葉に触れられて改革への決意のお尋ねがございました。この言葉は、大平元総理大蔵大臣当時に赤字財政改革に関連して初めて使われたものと記憶いたしております。  私といたしましては、現下のこの難局をあらゆる手段を講じて乗り切るとともに、国民の将来への不安を払拭して豊かで安心のできる社会を築き上げることにこの内閣を挙げて全力を注ぐ所存であり、その際、こうした目標の実現のために、必要とあれば大胆な手術を避けずに断行するとの鬼手仏心の信条で当たってまいりたいと思っております。  いろいろの御批判をちょうだいいたしておりますが、これからの私自身のなすべきことをなすということによって、その批判におこたえをいたしてまいりたいと考えております。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
  7. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) バブル経済の発生につきまして、私の責任に関してお尋ねがございました。  私は、バブル経済発生の前後何年間か政府におりまして、この状態に適切に対処できなかったことを今でも反省いたしております。  一九八五年にプラザ合意がございましたときの円は二百四十二円でございました。しかし、一般の予測に反しまして円がそれから急速に上昇いたしまして、その年の暮れには二百円になっております。八六年の夏に私は大蔵大臣を仰せつかりましたが、そのときに円は百五十円台に上昇しておりますから、このような急速な円の上昇、いわゆる円高不況というものが、非常に経験したことのない幅と大きさで日本経済を襲ったわけでございます。  それに対応いたしまして、政府は何とかそのインパクトを緩和いたしますために補正予算を組みました。あるいはまた、ドルの下落を防ぎますために、かなりしばしば市場に介入をいたしました。いわゆるドル買いをいたしたわけでありますが、有効なドル買いのためには当時十億ドル単位、申しますと千数百億円の介入を一日にいたしたなんということがしばしばございまして、これらのことは後に過剰流動性の原因になったことも明らかでございます。  企業におきましては、我が国における投資、立地が困難になりましたために、東南アジア中国を含めまして、への投資がそのときから急速に増大をいたします。それから数年間の我が国企業アジア投資は、講和会議からプラザ合意までの三十五年間をはるかに超えます膨大な投資が急速になされまして、その結果、いわゆる急速なアジア各国の工業化、アジアは二十一世紀の希望であるというようなところまで、今日陰りがございますけれども、そういう結果になりましたことは喜ばしいことでございましたが、しかし同時に、それは我が国における空洞化と言われる状況を生んだり、あるいは有効求人倍率が非常に低下をいたして大変な不況になりましたような状況でございました。  そういう状況の中で、一九八七年にいわゆるアメリカにおけるブラックマンデーがございまして、このときは日本経済世界の通貨不安を支えるようないわば力であったわけであります。  しかし、間違いはその辺に実は根差しておったと思います。つまり、それだけの過剰流動性がやがては不動産、株への投資になることはわかっておったはずでございますから、ある段階政府がマネーサプライを量、質ともに縮小しなければならない、抑えなければならない、そうして金融機関等々に対しては不動産投資を何らかの形で規制をするという措置を、その段階と申しますのは恐らく一九八八年あるいは九年であったかもしれませんが、とるべきであった。  それは、当時まだ不況感が一部にございますから、相当な混乱と抵抗を招いたかもしれないと思いますけれども、しかしそのときにやはりそういう措置をとるべきであったということは今となって明らかでございますから、それをなし得なかった、実は総量規制は九〇年になってやっておりますけれども、それは遅かったということも明らかであると思います。  通貨がこれだけ変動した、一九九五年には七十九円にまでなったわけでございますので、このようなことは、ただ為替レートの問題ではなくて、我が国の国のあり方を大きく変えるものであるし、また、今日まで我々はその影響から実は自由になっていない。それを思いますと、この段階でもっと早くマネーサプライあるいは不動産、株式等の投資について政府が迅速な処置をとるべきであった、今から考えますとまことに反省すべきことが多い、申しわけなく思っております。(拍手)    〔国務大臣中川昭一君登壇、拍手〕
  8. 中川昭一

    国務大臣(中川昭一君) 歴史認識一般につきましての政府の考え方は、平成七年八月十五日の村山内閣総理大臣談話基本とし、またいわゆる従軍慰安婦問題につきましては、政府基本見解は、平成五年八月四日の河野官房長官談話のとおりでございます。  私の立場もこれらの談話と同様でございます。御理解をいただきたいと思います。(拍手)    〔国務大臣有馬朗人君登壇、拍手〕
  9. 有馬朗人

    国務大臣(有馬朗人君) 本岡昭次議員、御質問ありがとうございました。教育の問題に御関心をお持ちいただきまして感謝いたします。  まず、いわゆる従軍慰安婦問題の教科書掲載についてのお尋ねでございますが、教科書の記述につきましては、民間の執筆者によって著作、編集された図書について、専門家から成る教科用図書検定調査審議会において、客観的な資料等に照らして審議が行われた結果に基づいて検定を行ったものでございます。  次に、在日外国人学校卒業生国立大学受験資格について、人権擁護差別防止観点から早急に解決すべきだとのお尋ねでありますが、我が国大学入学資格については、学校間の接続や全体としての体系性を維持し、大学教育の水準の確保を図るため、学校教育法の規定に基づき、高等学校卒業者またはそれと同等以上の学力があるとして文部大臣が定める者に対して与えられており、この旨各大学に対して指導しているところであります。  次に、国内の外国人学校はほとんどが各種学校となっており、各種学校の教育内容については、法令上特段の定めが設けられていないため、その卒業者に対して一般的に高等学校卒業者と同等以上の学力があると認定することは困難であることから、大学入試資格を認めていないところであります。この問題については、我が国の教育体系の根幹にかかわる事柄であることにかんがみ、慎重に対処すべきであると考えております。  不登校の児童生徒対策のために三十人学級を実現すべきとのお尋ねでありますが、不登校児童生徒数が依然として増加傾向にあることは、極めて重大な問題と深刻に考えております。  不登校原因、背景としては、家庭の問題、学校のあり方、本人の意識の問題等の要因が複雑に絡み合っていると考えられることから、これまでスクールカウンセラーの派遣を初め、各種の施策を総合的に講じてきているところであります。今後、不登校問題についていま一度考える上での有効な資料が得られるよう、不登校生徒であった者の追跡調査を実施したいと考えております。  お尋ねの三十人学級編制に関してでありますが、現在、グループ別指導や習熟度別指導など小人数の学習集団を編成してきめ細かな指導を行うとともに、不登校児童生徒に対する生徒指導の充実などを目指した第六次公立義務教育諸学校教職員配置改善計画を推進しているところであり、文部省といたしましては、当面、現行改善計画平成十二年度の完成に向けて最大限の努力をしてまいる所存でございます。  以上、お答え申し上げます。(拍手)    〔国務大臣野中広務君登壇、拍手〕
  10. 野中広務

    国務大臣(野中広務君) 先ほど本岡議員から御質問のございました阪神・淡路復興につきましては、小渕総理からお答えを申し上げましたところで尽きておるのでございますが、私ども、総理の答弁どおり、関係地方公共団体の一層の支援を行うことにおいて、内閣を挙げてこの復興のために努力をしてまいりたいと存じております。  内閣発足早々に、担当大臣であります柳沢国土庁長官は直ちに神戸に参りまして、被災地現状やあるいは被災者状況をつぶさに視察をいたしまして、関係者とも協議を進めて帰ってきたところでございます。今後、この視察をまた十分生かしながら、この被災地現状に照らして、至らないところをきめ細かく私ども取り組んでまいりたいと思う次第であります。  御提示のございました住宅対策につきましては、先般成立をいたしまして、特に本院で濃密かつ充実した御審議を賜りました被災者生活再建支援法の附則二条に基づきまして、総合的な見地から、関係地方公共団体の意見をも聞きながら、協議を進めてまいりたいと存じております。  以上であります。(拍手)     ─────────────
  11. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 青木幹雄君。    〔青木幹雄君登壇、拍手〕
  12. 青木幹雄

    ○青木幹雄君 私は、自由民主党代表して、小渕総理大臣の所信表明演説に対し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  まず冒頭に、去る七日、ナイロビとタンザニアにおいて大規模な爆弾テロ事件が連続発生し、二百人近くの死者と五千人近くの負傷者が出ましたことに対し、衷心よりお見舞いを申し上げます。今回は米国大使館を連続してねらったと思われ、国際社会の平和秩序に真っ向から挑戦する組織的な大規模テロであり、決して許されてはなりません。国連やサミットにおける国際テロに関する累次の決議、宣言に沿って各国が連携をさらに強化し、断固このようなテロ犯罪事件を根絶すべきことをまず強調いたします。  戦後最大の経済危機とも言われる中で、我が国の最高指導者としての重責を担われることになりました小渕総理に対し、心から御激励を申し上げるとともに、宮澤元総理の入閣を初め強力な布陣により経済再生内閣が発足しましたことに対し、大いに歓迎し、我々も力を合わせて小渕政権を懸命に支え、この難局を乗り切る覚悟であります。  所信表明に対する質問に入る前に、私ども参議院自由民主党は、さき参議院選挙において国民の皆さんから厳しい審判を受け、大きく議席を減らしました。このことについて、国民の皆さんの声を素直に受けとめ、真摯に反省し、今後、国民の信頼を回復すべく、その総括と反省からスタートをしていかなければならないと考えております。  ここまで経済が深刻になったことについて、バブル経済の後遺症である不良債権がいかに金融システムを傷めていたか十分認識しないまま、誤ったタイミングで財政再建等に取り組み、それが今日の事態を招きました。さらに、金融ビッグバン等の改革のきしみが拡大する中で、国民の不安が大きくなったのが主な原因であったことを肝に銘じております。  生活や雇用不安、中小企業の苦しみ等、国民の訴えを対策に適切に反映できず、立ちおくれたばかりではなく、争点となっていた恒久減税についてあいまいな印象を選挙民に与えたことも大いに反省し、謙虚になって民意に深く思いをいたすところから再出発をしていかなければならないと考えております。  参議院選挙は、経済情勢の悪化のほかに、政治への不信等いろいろな要因が作用した結果であり、これを重く受けとめて、政治の信頼回復に真剣に対処することが我々に課せられた重大な責務であると考えております。  総理として、この選挙結果をどのように受けとめておられるのか、まずお伺いをいたします。  我が国は今、グローバル化、大競争時代にあって、明治維新、戦後復興に並ぶ第三の開国を迎え、二十一世紀を見据えた総合戦略が求められております。長期的に見れば六大改革の方向は間違っていないものと考えておりますが、その方向性に沿いつつも、中長期的な改革と待ったなしの経済対策について、官僚の発想に左右されず、内外政を通じ戦略的に根本から見直していかなければなりません。民間の声に真剣に耳を傾け、大胆な政策をタイムリーに打ち出し、断固実行していく必要があります。  総理のお人柄、調整力により大きな信頼、豊かな人脈が今日まで築かれてまいりました。これらの蓄積を生かし、総合力をフルに発揮して、今こそこの最大の難局に先頭に立って立ち向かわれるときであります。経済再生内閣の発足に当たり、総理の一大決意を改めて国民の前にお示し願いたいと思います。  これから、国民の生活を守るため、日本世界不況の引き金とならないためにも、金融再生関連法案を初め多くの重要法案をできるだけ早く処理していかなければなりません。参議院で与党が過半数を大きく割り込む中で、我々は野党の皆さんの主張にできるだけ耳を傾け、真摯な態度で対応をしていくつもりであります。野党におかれましても、この危機感を共有され、国難をいかに乗り越えるかという立場で御協力いただけるようにお願いを申し上げる次第であります。  内外から注視される中で、国民各層の要望が法案に十分に反映されるよう誠心誠意努めるとともに、その過程と結果について国民にわかりやすく説明することが議会政治の基本であります。一方で解散・総選挙を求める向きもありますが、危殆に瀕している経済情勢の中で政治空白をつくるわけにはまいりません。これらのことを踏まえ、総理は今後政局運営にいかなる方針で臨まれるのか、お伺いをいたします。  総理は、景気対策として、就任前、不良債権の本格的な処理を進めるとともに、減税中小企業対策住宅対策、都市対策等を行うと約束をされました。総理も言われているように、金融システムの信頼を回復するには不良債権処理が急がれますが、それにより直ちに景気がよくなるわけではありません。総理景気回復を一両年と強い決意を示されましたが、このように具体的に目標を定めることは、国民にとって政治の責任のとり方として大変わかりやすいものであります。このような考えのもとで、六兆円を超える減税と十兆円以上の追加補正を行うことを言明されました。  そこで、まず不良債権処理についてお伺いをいたします。  政府と自由民主党は、早急に金融システムを安定化させるために金融再生トータルプラン策定し、その中で、特に金融機関が破綻した場合の対策として受け皿銀行、いわゆるブリッジバンク構想を打ち出しました。これを中心に金融関連六法案を先日国会に提出をしたところであります。この六法案の成立が内外から強く要望をされております。  不良債権の公表については、金融機関の貸し渋りや資金の回収につながり、景気に悪影響を与えるとの否定的な見方もあります。他方、内外において国際的に通用するような情報公開を行うべきであるという強い要望があります。このような状況を踏まえて、総理不良債権の公表について具体的にどのように取り組んでいかれるのか、お尋ねをいたします。  また、不良債権処理を進めることによって体力のない金融機関は経営不振に陥ることが想定をされます。しかし、金融システムの健全性を確保するためにも、金融機関がその気になって積極的な不良債権処理に取り組まなければ、これからの銀行経営が成り立っていかないという認識が不可欠であります。また、世界日本金融機関の再生へのメッセージを強く発信するためにも、まず不良債権処理に取り組む総理決意をお伺いいたします。  今回の金融再生トータルプランの一つの柱は、複雑な権利関係を調整するための不動産関係権利等調整委員会を設置することであります。この委員会は、話し合いによるお互いの合意形成を目指すことになっておりますが、これを円滑に進めるためこの委員会にどのような権限を持たせるのか、税制上の措置とあわせて国土庁長官にお尋ねをいたします。  次に、ブリッジバンクについてお尋ねをいたします。  金融機関が破綻したときに、その国民経済に与える影響ははかり知れないものがあります。すなわち、金融機関と今まで取引のあった企業が資金調達に支障を来します。このような事態対応するため、ブリッジバンクをつくり、善良な借り手に必要な資金が提供できる仕組みができ上がることになります。しかし、これが銀行やゼネコンの救済であってはなりません。そういう批判を招かないようにするためには、返済の状況や財務内容等によって借り手が善良かつ健全であるかどうかを判断することになっておりますが、国民にわかりやすい判断基準をつくり、これを公表すべきではないでしょうか。  また、経営者責任については、金融管理人は、犯罪があった場合告発しなければならないことになっておりますが、犯罪に至らなくても経営上重大な過ちがあった場合、公的資金を入れる以上、経営者としての責任は厳しく問われるべきであり、具体的にどのように取り組まれるおつもりなのか、以上二点について大蔵大臣見解をお尋ねいたします。  次に、税制改革についてお伺いをいたします。  現下の経済情勢のもとでは、税制の改革は、当面、経済構造改革よりも景気回復に重点を置いたものでなければなりません。そのため、減税を先行させるとの考えのもとで、所得課税では最高税率の五〇%への引き下げと定率減税の組み合わせが検討されているようでありますが、中所得者層の負担軽減をめぐっていろいろ議論があります。この問題をいかに処理されるのか国民が注目をいたしております。このような恒久的減税の二段階方式を導入する場合、大変複雑であります。十分理解できるよう、総理大臣大蔵大臣の説明をお願いいたします。  法人税については、来年から国際水準に合わせ四〇%にすることを言明されております。これは、構造改革経済活性化に資するものとして大いに評価いたしますが、これに伴い、法人事業税の引き下げにより地方財源が大幅に減るのは、地方の時代を迎え問題が出てくることが懸念をされます。このことについて、法人税減税の国税と地方税との分け方をどのように検討されているのか、総理にお尋ねをいたします。  さらに、補正予算について、公共事業が来年の年明け後息切れする可能性を十分踏まえ、新社会資本整備にも十分配慮していく必要があります。追加補正の基本的枠組み、実施時期についてのお考えを大蔵大臣からお示し願いたいと思います。  今までは、景気対策対応がおくれてなかなか効果が出てこないのは財革法が縛りになっていたこともありますが、判断が余りにも遅く、対策が後追いになったことも原因の一つではないでしょうか。アメリカでは一カ月後に景気動向の速報値を出しております。日本においても迅速な景況判断ができるような仕組みを早急につくる必要があるのではないでしょうか。堺屋経済企画庁長官は、本音で話す官庁という信頼を得たいと話され、今年度の経済成長率の見通しも下方修正される方向と聞いておりますが、景気判断を早めることにあわせ、見通しの修正の時期についてお尋ねをいたします。  小渕総理も、経済政策をタイミングよく決断、実行するため、経済戦略会議を新設するお考えのようでありますが、この経済戦略会議についてお尋ねをいたします。  これについては、民間を中心とする方針のようですが、行政との関係を踏まえ、どのような性格の組織で、いかなるテーマに取り組まれるのか、総理にお伺いをいたします。  最近、官僚の不祥事が続きましたが、国の将来について、大部分の公務員の皆さんは真剣に考えていると私は信じております。士気の低下を招かないよう、この戦略会議の事務局にも優秀な公務員を登用する配慮も必要ではないかと考えております。  総理決断されたように、景気対策を強力に推進するために、財政構造改革法を凍結することは、景気回復するまでやむを得ない措置であります。今後、恒久減税の財源に加え、景気対策財政出動が必要となることは明らかであります。このような事態も考慮して、総理は行政改革を強力に推し進め、行政経費を今後十年で三〇%削減するというお考えを示されたのではないかと考えております。  行政改革については、明日、同僚議員質問いたしますが、当面、減税財源や補正予算の財源等を赤字国債に依存することはやむを得ないにしても、景気回復後についてはある程度財源手当てのめどを立てる必要があります。この際、国有財産の処分と活用の具体的な方法を含め、財源対策についてのお考えをお伺いしたいと思います。  次に、外交、防衛について質問をいたします。  外交防衛政策は、継続性、一貫性がなければなりません。小渕内閣においても、基本において橋本内閣といささかも変わることはないと確信をいたしております。  しかし同時に、日本経済に対する海外の信認の欠如が、ひいてはアジアを初めとする日本外交に対して影を落としていることから、内政、外交を通じた戦略を確立し、信頼回復のため積極的に外交を展開していく必要があります。また、日米関係の一層の強化を図るとともに、ガイドライン関連法案の早期成立も重要であります。総理外務大臣外交、防衛に対する基本姿勢、方針を明確にお示し願います。  秋の総理のロシア訪問の際には、川奈会談で橋本総理が提案したと言われる日ロの国境線画定提案に対する回答がエリツィン大統領からあるはずであり、東京宣言に基づき、二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすとのクラスノヤルスク合意の実現に向けて、いよいよ日本外交の正念場を迎えることになります。  橋本・エリツィンプランの着実な進展、ロシア側の強く求める共同経済活動など、このところ日ロ関係は良好であります。この機会を逃すことなく、全力を傾注して対ロ外交を推進されるよう総理指導力を期待するものであります。総理の御決意のほどを承りたいと思います。  また、日中、日韓関係は、アジアの平和と発展を図る上で善隣友好に努めていくことが極めて重要であり、両国の首脳が秋に来日されることはまことに有意義であります。  両国との間で懸案となっていた漁業協定については、中国とは先に交渉が実質的に合意をいたしましたが、韓国とはことし一月に今までの協定の終了通告をし、この四月末に新協定に向け事務レベルの交渉が再開をされました。  日中間では、国連海洋法条約の趣旨に沿って、近いうちに日中両国が沿岸国主義に基づく資源管理体制に移行することになっている中で、韓国との間についても、新たな漁業秩序、資源管理体制の構築が求められております。十月の金大中大統領訪日までには交渉妥結のめどを得るよう最大限の努力を行うべきであります。  日韓の漁業問題を解決することは、日中韓の間の連携を一層強化することになり、近く始まるWTOの農産物貿易交渉において、米を主食とし稲作を基幹とする三国で、おのおのの農業を守る立場から連携することにつながるのではないかと思われます。日韓漁業交渉の今後の見通しについて総理大臣にお伺いをいたします。  終わりに当たり一言申し上げます。  総理は、今日の勇気なくして明日の我が身なしと所信表明の冒頭で言明をされました。この一両年が我が国の浮沈をかけたまさに勝負のときであります。我々はもとより、各会派ともこのことを肝に銘じて国を挙げて取り組んでいかなければなりません。政治主導により、経済再生内閣の総合力を遺憾なく発揮されるための総理の勇断を期待して、私の質問を終わります。(拍手)    〔国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕
  13. 小渕恵三

    国務大臣(小渕恵三君) 青木議員にお答え申し上げます。  また、御激励を含めまして御質疑をちょうだいいたしましたが、私自身も、御指摘をいただきましたように、今般の参議院の選挙を厳しくかつ謙虚に受けとめておりまして、この選挙に示された、国民が何よりもまず我が国経済情勢を極めて深刻に感じ、その一日も早い回復を願っているということでございました。私はこうした国民の声を真摯に受けとめ、この内閣経済再生内閣と位置づけ、不良債権の抜本的処理を初めとする経済再生の施策を政治主導のもとで、責任の所在を明らかにしながら、スピーディーに政策を実行することにより、一両年のうちに我が国経済回復軌道に乗せ、内閣命運をかけて全力を尽くす覚悟であります。  改めて、私自身この場におりますことは、その責任を果たさなければならない、このことかと考えておりまして、力いっぱい努力をいたしていきたいと考えております。  経済再生に向けた決意でございますが、まず政府は総合経済対策の実施や金融再生トータルプランの早期実現に全力を挙げてまいります。その上で、事業規模十兆円を超える第二次補正予算を編成することといたしております。また、六兆円を相当程度上回る恒久的な減税を実施いたします。以上の政策を実行し、一両年のうちに我が国経済回復軌道に乗せてまいりたいと考えております。  今後の政策運営につきましてのお尋ねもございました。  改めて、この参議院選挙の結果を謙虚に受けとめまして、野党各党とも誠心誠意話し合い、協力をいただきますよう最大限の努力をしてまいる所存であります。  特に、現下の最大の課題であります金融機関不良債権処理の緊急性、重要性につきましては、野党各党も同様の御認識を持っておられるものと承知をいたしております。野党の提案にも十分耳を傾けながら、関連法案の一日も早い成立に向けて、野党の理解と協力を強くお願いをいたすところでございます。いずれにせよ、国家国民にとって何が望ましいのかという原点に立ちまして、各党各会派が努力されますことを心から期待いたしておるところでございます。  大胆な政策を実行し、しかも、これを国民にわかりやすく説明し、そして理解と協力を求めよというお話でございますが、このことを肝に銘じて対処いたしていきたいと思っております。  金融機関不良債権の公表についてのお尋ねでございますが、本年三月から全国銀行において米国SEC基準と同様の基準に従って不良債権情報開示が既に行われておるところでございます。また、来年三月期から全金融機関につきまして、これを連結ベースで罰則つきで義務化することとしており、これにより不良債権の開示制度は国際的に遜色のない水準になるものと考えております。  我が国不良債権処理につきましてのお尋ねですが、経済を再活性化し、金融機関不良債権の抜本的処理を促すことによりまして、金融システムの健全性を確保しつつ、金融本来の機能を早急に回復させ、我が国金融システムへの内外の信認を得る必要があります。このため、金融再生トータルプランに盛り込まれた総合的な施策を早急かつ一体的に進めてまいりたいと思います。  御指摘のありましたように、不良債権問題をすべて解決いたしましても、すぐに実体経済がよくなるということでもないかと思います。しかしながら、この不良債権の解決なくしては経済の再生はあり得ないという立場で、全力を挙げて努力をしてまいりたいと思っております。  今回の個人所得課税の恒久的減税の具体的内容についてでございますが、個人所得課税につきましては、抜本的な見直しを展望しつつ、国民の意欲を引き出す観点から、最高税率を五〇%に引き下げることといたしております。また、景気現状に照らし、課税最低限は引き下げる環境にないと考えており、個人所得課税の減税規模は四兆円を目途といたしております。  いずれにしても、改正の具体的内容につきましては、政府及び党の税制調査会における幅広い検討の結果を踏まえて決断していきたいと考えております。  法人課税についてでありますが、法人課税の実効税率につきましては、我が国企業が国際社会の中で十分競争力を発揮できるよう、四〇%程度に引き下げることといたしておりますが、その具体的内容につきましては、国税と地方税をそれぞれどのように取り扱うかといった点を含め、政府及び党の税制調査会における幅広い検討の結果を踏まえて決定することといたしております。  経済戦略会議についてのお尋ねでございますが、今日の我が国の危機的状況を乗り越えるため、国民の英知を結集するという観点から、私の直属機関として経済戦略会議を国家行政組織法第八条に基づき設置することといたしました。この会議では、我が国経済の再生と二十一世紀における豊かな経済社会の構築のための構想につきまして、戦略的な観点から短期集中的に調査審議し、意見具申を行っていただくことといたしております。  なお、お尋ねの中で事務局のことに触れられました。優秀な公務員を採用すべきだというお話でございますが、もとより公務員の方々のお力をかりなければこれを実行し得ません。ただ、私といたしましては、その事務局には民間に人を得られれば、ぜひ民間の方々にも御参加をいただきまして、こうした会議がまさに民間の声を反映しておるという形にいたしていくような人選を考えていきたいと、こう考えております。  減税、補正予算の財源についてでございますが、これは徹底した経費の節減、国有財産の処分などを進めながら、当面は赤字国債を充てることといたしますが、長期的には、今後の経済の活性化の状況、行財政改革の推進等と関連づけて検討すべき課題と考えております。  補正予算につきましては、財源を含めまして具体的中身につきましては、先般の総合経済対策、補正予算の効果を見きわめた上で考えていくべき問題と考えております。  次に、外交防衛政策につきましてでありますが、言うまでもありませんが、我が国といたしましては、これまでの外交方針及びその成果を踏まえ、我が国及び国際社会全体の安全と繁栄のため、引き続き米国及び近隣諸国との関係強化アジア太平洋地域をめぐる地域協力の強化国連を初めとするグローバルな取り組みへの協力を着実に進めてまいります。  また、防衛の基本方針についてお尋ねがございましたが、我が国は、従来より、日本国憲法のもと、専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従いまして、日米安全保障体制を堅持し、文民統制を確保し、非核三原則を守りつつ、節度ある防衛力を自主的に整備することとしており、この考え方に変更はありません。  また、現在国会に提出いたしております周辺事態安全確保法案等が早期に審議され、成立または承認されることを期待いたしております。  日ロ関係についてのお尋ねでございますが、ロシアとの間で、引き続きさまざまな分野における関係強化しつつ、二〇〇〇年までに東京宣言に基づいて平和条約を締結し、日ロ関係を完全に正常化するよう全力を尽くす決意であります。  私も、できればこの秋に訪ロし、エリツィン大統領と会談を行い、日ロ間の間断なき対話を進めてまいりたいと考えておりますが、橋本総理とエリツィン大統領の間の信頼に基づきまして過去二回、いわゆる非公式会談、すなわちネクタイなし会談が行われ、特に先般の川奈におきまする会談におきまして、橋本総理から、我が国の立場につきまして大統領に考え方も申し述べておるところであります。  私は、ぜひ今秋の訪ロを通じまして、ロシア側の考え方を十分承りながら、最終的に二〇〇〇年までの平和条約締結を目指して全力を挙げて努力をいたしてまいりたいと考えております。  日韓漁業交渉につきましてのお尋ねがございました。  新たな日韓漁業協定の締結交渉につきまして、必ずしも楽観できる状況ではございませんが、韓国側の協力を得て、金大中大統領の訪日までに妥結の見通しを得るべく最大限の努力を傾注していきたいと考えております。  本件につきましては、私、外務大臣時代に、まことに残念でありますけれども、現行の日韓漁業協定につきまして、来年一月までにこれが終了をいたさなければならない状況の中にあることについて、一日も早くこれが解決をしなければならないと考えておる次第でございます。  本件につきましては、青木議員におかれましても、漁業問題に対する大変な御見識を持っておられますので、ぜひこの点につきましての御協力も私からもお願いを申し上げておくところでございます。  残余の質問につきましては、関係大臣から御答弁願います。(拍手)    〔国務大臣柳沢伯夫君登壇、拍手〕
  14. 柳沢伯夫

    国務大臣(柳沢伯夫君) 不動産関連権利の調整に関する臨時措置法で設立が予定されております調整委員会の権限、またその調整等の活動が落着した場合の税制上の措置、これらについての御質疑をいただきました。  今回、不動産、不良債権処理というのはまさに喫緊の課題であるということは、これまでの議論でも各議員また各政府答弁者から申し述べたところでございますが、中でも、今日言われておりますことは、この不動産の処理というのを、これまでの間接的な償却、引当金あるいは債権償却特別勘定を活用しての間接的な償却というような手法ではなくて、もっとバランスシートからこの不良債権を完全に消去してしまう、そういう最終的処理と申しますか実質処理というか、そういう方法で行うべきであるという声が非常に強まっておるわけでございます。  他方、我々の今日直面している不良債権は、そのいきさつから申し上げまして、非常に不動産に絡んだ不良債権ということになっておりまして、この不動産の処理が、また資産の性格上いろいろ重層的に権利義務関係が積み重なり合う、したがってこの処理が非常に難しい、こういう性格がございます。  そういうようなことでございまして、他方、債務者の方はどうかと申しますと、債務者の方は完全にもう今回の不良債権問題で傷ついてしまって、清算であるとかあるいは解散であるとかというところに追い込まれてしまう、そういうものもあるわけでございますが、多くのものは、この問題になっている不動産の問題だけ処理できればこれは今後経営が再建でき、債務の弁済の機会もどんどん向上していく、こういうようなケースがあるわけでございます。  これらの二つの要請をいかにして解決していくかということにつきましては、司法手続が当然用意されておりまして、特に競売等の手続が用意されておるわけでございますが、この司法手続も非常に時間がかかる。したがって、この競売等の手続についても、改正をして改善をしていくということを今回のトータルプランにおける一連の関連法案で提案をいたしておるわけでございますけれども、私どもといたしましては、それに加えまして、さらに一般の紛争処理の手法である調停であるとか、仲裁という制度をもう一つこれに補完的に設定することによって、この手続をさらに迅速に進めてまいりたい、このように考えて今回の法律案を提起したわけでございます。  そこで、この問題のそういう委員会というものがどのような権限を持つかということでございますが、この委員会は、例えば調停におきましては利害関係人の参加を勧告する、このようなことであるとか、あるいは仲裁におきましては関係の物件だとか文書の提出を求める、このようにこれら調停、仲裁に必要な権限を付与しているということでございます。  また、調停による合意等に基づく債権放棄等による債権者の損失の額は税務上損金算入されることを明確化しておりますし、他方、債務者が債務の免除を受けることに伴う免除益につきましては、累積欠損金との相殺ができるという規定を置いておりまして、これらを通じて今回の不良債権処理に大きな助けになる制度である、このように確信をいたしておる次第でございます。  どうぞ議員各位の御理解と御協力をよろしくお願い申し上げます。(拍手)    〔国務大臣宮澤喜一君登壇、拍手〕
  15. 宮澤喜一

    国務大臣(宮澤喜一君) ブリッジバンク法案におきまして、善良かつ健全な借り手、この判断を誤らないようにというお尋ねでございました。  法案におきましては、学識経験者によります金融危機管理審査委員会におきまして基準を定めることにいたしております。そして、その基準は公表されることになっております。  なお、その基準に基づきまして、既に経営者は退陣いたしておりますが、金融管理人のもとに、従来審査等に経験のあります銀行員が事情をよく知っておりますわけでございますので、間違いなく処理ができるものと考えております。  それから、破綻処理の際の経営者責任についてでございますが、経営上の責任追及のほか、経営者の退任及び民事上の責任追及はもちろん今後とも貫かなければなりません。  なお、破綻した金融機関の業務執行権を金融管理人に専属する制度を設けておりまして、金融管理人が破綻に至った経緯等の実態解明に努めるとともに、法文によりますと、「金融管理人は、」「犯罪があると思料するときは、告発に向けて所要の措置をとらなければならない。」と規定されております。  所得税につきましては、大部分総理大臣が御答弁になられましたが、その中で、中堅所得者層に配慮するために階層別に減税率の差をつけることができるかどうかというお尋ねがございました。  実は、この問題はいろいろ議論がございますが、現実には源泉徴収義務者、それも非常に零細な企業の徴収義務者に非常に複雑な負担をかけることになりまして、税務執行上それをどうするかという問題がございますので、引き続き検討をさせていただきたいと考えております。  次に、追加補正の問題、来年度の予算編成方針につきまして、公共事業を中心にお尋ねがございました。  来年度予算編成に当たりましてのいわゆるシーリングにつきまして、私どもとしては景気回復のための配慮を最優先いたしたいと存じます。ただいま事務当局が鋭意作業をいたしておりますが、私からは、公共事業の執行が年度末に切れ目を生じないようにすること、及び平成十一年度の公共事業は十年度のそれを実質的に上回るようにすることの二点を指示してございます。  これを実行いたしますためには、各省庁の要求のうち、公共、非公共を含めまして、景気対策に即効性のあるものを予算化するために特別の対応を工夫してまいらなければならないと思っております。そして、そうしてできました部分の相当部分は、要すれば十年度の二次補正に前倒しをしてはどうかと考えております。  御懸念の点は十分よく理解をいたしておりますので、できるだけ早く結論を出してまいりたいと思います。(拍手)    〔国務大臣堺屋太一君登壇、拍手〕
  16. 堺屋太一

    国務大臣(堺屋太一君) 景気対策が遅いのは景気判断が遅いからではないか、景気判断が遅いのは景気判断のもとになる諸データの出てくるのが遅いからではないか、こういう質問であったかと思います。  景気判断につきましては、いつの時代でも大変難しい問題でございまして、民間研究機関でもいろいろと分かれることが多いのでございますけれども、我が国の場合、確かに景気判断のもとになります統計諸資料が出てくるのが米国等に比べると遅いという問題があります。米国等の場合には暫定速報値というのを出しまして、後で訂正をすることがあり得べしということで、速いものを出しております。それに比べまして、日本では正確を期するために暫定値はなるべく出さないで、丁寧な扱いをしております。  この問題につきまして、私どもも速い暫定値を出すべきかどうか、正確さをとるか、それとも速さをとるか、これは経済を預かる者の常に大問題でございますので、この点どのようにすべきか、いろんな方面で研究をいたしまして、最も適切な条件を生み出していきたいと考えております。  当庁の所管いたします四半期の状況等につきましては、直ちにそういう検討をしたいと思いますし、また、他の関連官庁につきましても、できるだけ早く統計がとれるように御協力を求めるようにしていきたい、勉強したいと考えております。  もう一つ、経済見通しについて修正をするのか、その時期はいつかという御質問がございました。  私は、政府経済見通し、平成十年度経済成長率一・九%は達成が困難だと考えております。達成が困難だといたしますれば、現実的な予測をやってみるのは経済を監督し、監視する官庁として当然の義務でございますから、これは見直し作業を行うことになります。  ただし、政府経済見通しというのは、経済運営に当たっての政府基本的な態度のもとをなします経済の望ましい姿、目標値を描いた部分がございますので、一般に言う見通し、単なる予測とは違った意味合いがございます。したがいまして、具体的にはどのようにするか、四月—六月期の数値が出ましたとき、国民所得統計速報値が発表されます九月の中旬の時点で情勢を分析いたしまして、どのような扱いをするか、どのような時期にどのような発表をし、それを経済運営にどのように反映していくか、これはその数値がわかりました時点で慎重に考えたいと思っております。(拍手)    〔国務大臣高村正彦君登壇、拍手〕
  17. 高村正彦

    国務大臣(高村正彦君) 外交基本姿勢、方針についてお尋ねがありましたが、我が国といたしましては、これまでの日本外交の成果を踏まえ、引き続き日米関係を基軸としつつ、ロシア、中国韓国など近隣諸国との関係強化するとともに、アジア太平洋をめぐる地域協力、国連などにおける国際社会共通の課題への取り組みに積極的に参加し、我が国ひいては国際社会全体の安全と繁栄の確保に向けて、より一層好ましい国際環境を醸成していく考えであります。(拍手)
  18. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 質疑はなおございますが、これを次会に譲りたいと存じます。御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 斎藤十朗

    議長斎藤十朗君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時十三分散会      ─────・─────