○
本岡昭次君 私は、
民主党・新緑風会を代表して、
小渕内閣総理大臣の
所信表明に対し、総理並びに
関係閣僚に質問いたします。
質問に先立ち、甚大な被害をもたらした新潟県を初め
集中豪雨の
被災地の皆さんに対し、心からお見舞いを申し上げます。我が党としても最善の努力を尽くしておりますが、政府においても万全の措置を講ぜられるよう求めます。
まず、総理、御存じのとおり、本院の
首班指名は菅直人君であります。これが直近の
国政選挙である
参議院選挙において、民意が直接反映した国民の選択であります。
参議院選挙では
自民党政治が不信任され、
自民党は大敗北しました。その結果、
自民党は過半数を二十一議席も下回りました。
与党少数の参議院は
小渕政権の命運を握っています。総理、どうされますか。
小渕政権は国民の審判を受けることなく、
自民党の
政権たらい回しで登場しました。総理、
小渕政権は一日も早く国民の審判を受けるべきです。
私は、さる雑誌の一九九六年四月号に掲載されている「
政界随一の竜馬通が語る 「わがバイブル」政治家の志はここにあり」という
小渕総理の一文を読みました。その最後に、「日本が近代の扉を開いてから百余年、今日また、世界国家として新たな「開国」の時期を迎えているといわれる。かつて、争乱の幕末を駆け抜けた一人の男の、
けれんみのない生きざまが、時代を見据えた雄大な行動力とダイナミズムが、時として逡巡する私の心を鼓舞し続けている。その意味で、私の心の中で、「竜馬は永遠に生きている」ということがいえるだろう。」と書いておられます。
この日本の
危機存亡のとき、
小渕総理の心の中に竜馬が生きているとして、今どのような志をあなたは胸に秘めておられますか。その志を未来へのメッセージとして、もっと具体的にわかりやすく、
総理自身のお言葉で国民に語っていただきたいと思います。
総理、あなたは
所信表明で、「一両年のうちに
我が国経済を
回復軌道に乗せるよう内閣の命運をかけて全力を尽くす」と断言されました。総理の演説の中で一番印象に残った部分であります。これは恐らく総理御自身のお言葉であろうと思われます。しかし、かかっているのは内閣の命運でなく日本の命運なのです。命運をかけるということは、
小渕政権の退路をみずからが断つ、不退転の決意を表明したということであります。
小渕総理の御認識と決意を聞かせていただきたいと存じます。
また、この深刻な
経済危機の中で悪戦苦闘している国民が期待しているのは、こうした言葉だけでなく、その実行力と指導力であることも強く申し上げておきます。
また、総理は、「この内閣を
経済再生内閣と位置づける」と明言されました。しかし、その内容はかけ声とほど遠いものです。まず、政府・
自民党が進めている
金融再生トータルプランは国民を欺くものにほかなりません。
宮澤大蔵大臣が表明したように、
大手銀行は破綻させないという原則です。
不良債権の実態を隠ぺいし続け、国民の血税を
資本注入という形で投入し、銀行やその
経営者、株主を守ろうとするものです。そこには、
銀行業界が
自民党に対して長年にわたり巨額の
政治献金を行ってきた事情すら透けて見えます。
民主党は、既に二〇〇一年までに
不良債権を処理するという内容の
金融再生法案を準備しています。その
基本方針は、大蔵省の密室、裁量、
護送船団行政とははっきりと決別する、
不良債権の情報を徹底的に開示した上で、
経営内容が悪い銀行は存続させないというものであります。もちろん、
経営者等の責任は明確にする一方、
預金者、健全な借り手はきちんと保護します。あわせて、銀行の
検査体制強化のために検査官の大幅な増員は欠くことのできない課題であります。
金融を真に再生し、
我が国の経済・社会を活発化する道は、総理が勇気を持ってこの我々の提案を実施する以外にはありません。総理、いかがですか。
言うまでもなく、
不良債権を生み出す原因は、一九八〇年代後半の
マクロ経済政策の失敗であります。
プラザ合意後の長期にわたる
金融緩和政策により株式や土地の価格が急騰し、いわゆる
バブル経済が発生いたしました。
金融機関は完全にモラルを失い、ひたすら
土地融資に金をつぎ込んだのであります。
一九九〇年になって大蔵省は
総量規制を実施しました。しかし、
抜け道だらけのこの規制は、
金融機関をして住専やノンバンクを通じた
迂回融資に走らせ、その結果が一九九六年の住専に対する六千八百五十億円の
公的資金投入です。しかも政府は、この春に至るまで
不良債権の処理は順調に進んでいるとの発言を繰り返し、
不良債権の実態を隠し続けてきました。
大蔵省や
金融機関による情報の隠ぺいと問題の先送り、そして
歴代内閣が大蔵省の報告をうのみにしてきたことが
不良債権問題をここまで深刻にしたのであります。
今回、
大蔵大臣に就任した
宮澤喜一議員は、一九八六年七月から八八年十二月まで
大蔵大臣でした。この時期はまさに
バブル経済が発生した時期であります。さらに
宮澤議員は、一九九一年十一月から九三年八月まで
総理大臣でありました。今度は
バブル経済が崩壊し、
不良債権問題が発生した時期でありました。
宮澤議員が
不良債権問題の
A級戦犯と批判されることは当然だと私は考えます。
宮澤大蔵大臣は、この
不良債権問題を生み出した当事者として、みずからの責任をどのように認識されておられるのですか。
さらに、この場ではっきりさせたいのですが、
経営危機がうわさされている
長期信用銀行も含めて、
大手銀行で
債務超過の銀行は本当にないのですか。総理の明確な答弁をお願いいたします。また、政府は、現時点における
不良債権の総額が幾らあると認識しているのですか、あわせてお尋ねします。
いま一つ、
国鉄長期債務処理法案などの
政府案は一度撤回をして、与野党で十分協議した上、国民の納得のいく
債務処理案を確立すべきであると考えます。いかがですか。
総理は、
総裁選出馬に際して、所得税の
恒久減税など六兆円超の減税を公約とされました。これは
民主党がかねてより主張し、さきの
参議院選挙で私どもが公約とした六兆円減税に、総理御自身が賛同されたのかと私は受け取ったのであります。
しかし、総理は、
所信表明演説では
恒久的減税と軌道修正されました。この「的」とは一体どういう意味でありますか。報道されている
定率減税という小手先の減税でなく、
民主党を初め多くの野党が求めている本格的な
恒久減税を実施すべきであります。またもや国民を欺くのですか、明確に御説明ください。
このたび、
中川農林水産大臣が従軍慰安婦問題の
教科書記載に疑問を呈した発言について伺います。
総理は、その後に発言を撤回したから問題はないとしております。しかしながら、
中川大臣は発言の趣旨を標榜する議員の会を結成して代表を務めている議員であります。まさに
政府方針に反する確信犯であります。これは、明らかに
派閥推薦優先の人事がもたらした弊害です。
外務大臣を務められた総理は、従来の
政府方針、つまり一九九三年八月、
日本政府として軍の関与を認め謝罪した
河野洋平官房長官談話を熟知しておられるなら、
中川議員を閣僚に任命しなかったはずであります。
小渕内閣は、この
河野洋平官房長官が談話として発表し、これが
政府方針となったのでありますが、これを転換されるおつもりでありますか、お伺いいたします。
また、
我が国は今、世界から、とりわけ
アジア各国から大きな責任とリーダーシップが求められています。秋には中国の
江沢民国家主席の訪日や、韓国の
金大中大統領を迎えて
日韓漁業協定改定交渉が控えています。当然のことながら、
我が国がさきの戦争の反省を踏まえ、
近隣諸国との基礎的な
信頼関係の構築を図ることは極めて重要であります。
総理と
中川農林水産大臣の
歴史認識も含め、御見解をお聞きしたいのです。教科書問題については、
有馬文部大臣の見解をお願いします。
引き続いて、少子・
高齢化社会など、
国民生活の将来に直結する諸課題を伺います。
自民党がさきの
参議院選挙に敗北したのは、少子・
高齢化社会に対する国民の不安にこたえ切れなかったからであります。まず、
橋本政権が進めてきた
社会保障の
構造改革は
財政対策だけに主眼が置かれ、国民はますます老後に対する不安を強めました。
望ましい
高齢社会とは一体何でありましょうか。私は、言うまでもなく、
高齢者が健康な老後を迎え、元気で働く意思と能力のある者は働けるだけ働ける社会であると思います。そのために、病気や寝たきりにならないようにする
予防活動にもっともっと力を入れるべきであります。
また、六十歳定年制などは年齢による
人間差別であると私は考えています。年金問題を考えても、働くことを希望する人が働けるだけ働けるようになれば、年金の支出も減り、
保険収入もふえます。そのことは、個人にとっても財政にとっても好ましい結果を生むと考えますが、総理、いかがでありますか。
一方、拍車のかかる
少子化傾向に対してきめ細かい
子育て支援の対策が必要であります。
女性の
高学歴化の進行を背景に、女性の就業率がますます高まっています。したがって、女性の就業と子育てが両立でき、子育てのコストが高くない社会にすることが
少子化対策の重要なかぎであります。そのために、政府は
少子化問題対策本部を内閣のもとに設置し、総合的な
少子化対策を講じる体制を急ぐべきです。
そこでは、妊娠から出産までの支援策、保育所など
保育制度の
改善拡充、労働時間の短縮など
労働システムの改革、
育児休業時の
賃金保障を二五%から六〇%へ拡充、
奨学資金制度を改善し、生活費も含め
希望者全員に貸与、こうした諸対策を検討し、早急に実施すべきであります。
中でも、
公的年金制度の改革は少子・
高齢化社会の最
重要課題であります。
年金改革に当たっては、何よりも
公的年金財政の現状、今後の見通しなどについて、国民に対して正直にデータ、情報を公開する必要があります。その上で、
国民的議論を行い、将来とも安心でき、高齢期における安定した所得を保障する
公的年金制度を
国民合意の上で実現しなければなりません。
政府は、
次期公的年金改革をどのような視点から改革しようとしているのですか。
年金生活者に、年金額がこれから減額されるのではないかという不安があります。減額はあり得ないと安心させていただきたいと思います。
また、
医療制度や
医療保険制度の
抜本改革は二〇〇〇年度までのできるだけ早い時期に行うと明言されています。しかし、少なくとも
抜本改革までの間は、国民にさらに
医療費負担を求めるべきではありません。総理の御判断をお聞かせください。
さらに、国民が抱く不安として介護保険問題があります。市町村によって
介護サービスの供給量や質に違いが生じるのではないかという点であります。新
ゴールドプランを完全に達成しても、
介護サービスの不足は明らかであるからであります。私たちは、
介護保険制度をより国民の利用しやすいものに見直しつつ、充実した
介護サービスの基盤を築くため、さらに
スーパーゴールドプランの策定を行うべきだと考えております。
この介護問題は、障害者問題と深くかかわっております。
先日、総理府が発表した
市町村障害者基本計画の
策定状況を見ますと、
策定済み市町村が全体の約三割にとどまっているという非常に残念な結果であります。私は、
地方分権、ノーマライゼーションの理念を実現するために、
障害者基本法で
努力規定となっている
障害者計画の策定を義務化する必要があると思います。いかがでございますか。
さて、深刻な
中小企業問題と
雇用対策についてお尋ねします。
昨年一年間、負債や事業不振などを苦にした
自殺者は、全国で一七・六%も増加し、過去十年間で最悪となっています。このように、深刻な不況が
中小企業を苦しめています。景気の回復が絶対条件でありますが、まず、
金融機関の貸し渋り対策を緊急に講じなければなりません。当面は、
政府系金融機関を最大限活用し、
信用保証協会の保証枠を拡大して、資金繰りに苦しむ
中小企業を救済すべきです。
また、
下請自立支援策の拡充、
商店街活性化策、実効ある
事業承継税制の確立、
物づくり基盤技術振興基本法などの積極的な施策により、
中小企業の活力を取り戻さなければなりません。
一方、六月の
完全失業率は四・三%になり、一九五三年の
調査開始以来最悪の記録を更新しています。この雇用不安は、生活不安につながり、
消費者心理を冷やして、不況との悪循環を引き起こしています。今後も
雇用情勢は悪化し、六月で二百八十四万人となった
完全失業者は、やがて三百万人を超えて、
完全失業率が五%を突破するおそれが強まっております。
雇用情勢がここまで悪化したのは、政府・
自民党が
経済情勢の判断を誤り、有効な景気・
雇用対策を実施してこなかったからであります。
私たちは、
雇用創出効果が期待される、
情報通信・環境・
福祉医療関連産業などの
起業支援と育成、そして
職業教育訓練の充実や、
自発的教育訓練の助成を提唱しています。総合的で柔軟な
雇用政策と新
ゴールドプラン強化を組み合わせることで、
介護マンパワーを拡充することもできます。私たちは、このように思い切った
雇用政策の実施を求めていますが、政府の
中小企業と雇用の対策をお示しください。
次に、
継続審議となっている
労働基準法改正についてお伺いします。
民主党は、長時間労働を是正するために、時間外・休日・深夜労働に関する
男女共通の
上限規定や、一年単位の
変形労働時間制の
導入要件などの修正を求めてきました。また、
政府案の新しい
裁量労働制の導入については、
対象業務の範囲や運用に関する規定があいまいで、
労使委員会の機能が公正に機能せず、本人の同意のないまま裁量権のない
ホワイトカラー一般に
裁量労働制が拡大するおそれがあることから、
裁量労働制のあり方やルールについて労使で再協議するよう求めてきました。
来年四月からは、
改正男女雇用機会均等法が施行され、
女子保護規定撤廃後の
激変緩和措置の制定が急がれます。
労働基準法改正は
労働行政の根幹にかかわる重要問題です。政府は、さきに述べた修正と意見を受け入れるべきであります。
農業政策についてお伺いします。
御承知のように、
我が国の
農業農村は、過疎・
高齢化、
後継者不足、自由化の波による相次ぐ離農などにより、極めて先行き不透明な状況にあります。今日の状況を生み出した最大の原因は、ひとえに哲学のない
我が国の農政であります。
先進各国が軒並み高い
食糧自給率を維持しているのに対し、
我が国の自給率は四二%と際立って低くなっています。これは、
我が国政府が、食糧・農業について確固たる見識を持たないまま、画一的な
官僚主導農政を農家に押しつけてきた結果であります。
昨年末、新たな
農業政策のあり方について協議を続けてきた政府の食料・農業・
農村基本問題調査会により
中間報告が出されました。しかし、ここでも農政の位置づけや
食糧自給率の向上などの重要な部分が明確にされず、結論は先送りされています。この際、
食糧安全保障と言われる食糧・
農業政策について政府の
基本的認識を明らかにしていただきたいと思います。
環境問題について伺います。
有害な排ガスの
排出差しとめと
損害賠償を求めた
川崎公害訴訟で、
横浜地裁川崎支部は八月五日、
排ガス単独でも健康に害ありとし、国と首都高速道路公団の
損害賠償を命じました。
道路審議会も
道路づくりの基本を
環境保全に切りかえるように求めています。政府はこれまでの
道路行政を見直すべきであります。
これからの
環境政策は、
市民参加と
情報公開を徹底し、市民一人一人が責任を持ってライフスタイルを転換していかなければなりません。先国会から
継続審議となっています
地球温暖化対策推進法案についても、
基本方針を策定する段階からの
市民参加と企業の
温暖化物質排出量についての
情報公開を義務づけるべきであります。
現在、国民の関心が非常に高い
ダイオキシンなどの
化学物質対策について、事実を隠ぺいし対策を先送りする手法は、まさに
薬害エイズと同じであります。あの悲劇から全く何も学んでいないと言っても過言ではありません。私たちは、環境や人体に重大な影響を及ぼす
化学物質の対策について、
製造段階でのチェックの強化を初め、既に汚染されている土壌の除去、住民の血液や母乳中の
ダイオキシン濃度測定の無料化など、多方面にわたる対策が必要だと考えております。政府の見解を求めます。
次に、阪神・
淡路大震災の
復興対策についてお伺いします。
大震災から三年四カ月たって、
自然災害の
被災者に
公的支援する画期的な
被災者生活再建支援法がさきの
通常国会で成立しました。阪神・
淡路大震災の
被災者にはこの
支援法と同程度の
公的支援が兵庫県の
復興基金により実施されています。
しかし、
被災者の
生活再建や
被災地経済の立て直しは問題がますます個別化し、見えにくくなってきています。
仮設住宅の
被災者は四年目の暑い夏を迎えています。住宅や店舗を再建した方々は二重ローンの返済に苦しんでいます。
景気低迷に加え、
地域経済への
震災後遺症が失業、
売り上げ減など経済的、精神的な苦しみとなって
被災者に降りかかっています。中でも、被災したお年寄りや
子供たちを苦しめているのが
心的外傷後
ストレス障害であり、長期に特別な対策を必要としております。
さらに、二十一世紀の
モデル都市として
被災地を復興させる十年計画の着実な進展を図るために、
被災地自治体の権限や財源の見直しが必要であります。また、
被災者生活再建支援法には
検討事項として住宅の再建が盛り込まれております。
自然災害列島に住む
日本国民の
安全システムの問題として、早急に
住宅再建共済制度などの法制化を急ぐべきであります。
次に、外交・
防衛政策について伺います。
我が国の平和と安全に重大な影響を与える事態においては、
日米防衛協力のための指針を実効あるものにする法整備は必要であります。しかし、政府は、
周辺事態に必要となる措置の
基本計画を国会に報告するにとどめ、閣議のみで日本の対応を決定するとしております。シビリアンコントロールの観点や対
米防衛協力が
国民生活に与える影響の大きさを考えるとき、
基本計画を
国会承認とし、不都合があれば国会で修正できる仕組みにすべきであります。
事後承認を認めれば、緊急の場合にも対応できるはずであります。
この
周辺自体の範囲に関して、
クリントン大統領の訪中時に米国が明らかにした、二つの中国を支持しない、台湾の独立を支持しない、台湾の
国際機関への加盟を支持しないという三つの
ノー政策があります。
日米ガイドラインの性格がこの三つの
ノー政策によってどのような影響を受けるか、御見解をお伺いいたします。
さきのインド、パキスタンの核実験は、
核保有国、とりわけ米ロ二大
核保有国による
核管理体制が事実上行き詰まっていることを明らかにしました。
我が国が、
米ロ両国を初め
核保有国に期限を定めた核弾頭の削減数に合意することを求めるなど、核軍縮を積極的に働きかけていくべきではありませんか。
日米安保条約は、
我が国の
安全保障体制の基軸であります。しかし、そのことは
我が国に
米軍基地が現状のまま存在し続けるということではありません。現実に米国内でも、
在日米軍の基地のあり方を見直すべきだという議論がふえているとも聞いております。総理は、
在日米軍基地の整理、縮小、移転をどのように進めていくのですか。また、橋本前内閣で行き詰まった
沖縄普天間基地の移転問題に対する対応もお聞かせください。
さらに、
日ロ関係の改善が今後の
日本外交の重要な課題であることは言をまちません。表面的には橋本前
総理時代に
日ロ関係は前進したように見えますが、その実態は首脳間の
個人的パイプに頼り、重層的なものになっておりません。スタンドプレーに走ることなく、国民の理解の上に立ったさまざまなレベルにおける
信頼関係の確立に努めるべきだと考えますが、いかがでしょうか。
国際人権問題について伺います。
本年は
世界人権宣言五十周年の記念すべき年であります。私は、二十一世紀を人権の世紀にという
人類共通の願いの実現に日本が積極的に取り組むことによって、大きな
国際貢献を果たすと確信しております。しかしながら、
我が国が国連の人権に関連する諸条約二十三のうち批准したのはわずか九条約のみです。これでは世界の
経済先進国として恥ずかしい限りです。早急に人権諸条約の
完全批准を求めます。
特に、重要な
個人通報を認めた人権の
基本文書である市民的及び
政治的権利に関する
国際規約に関する第一
選択議定書をいまだ批准いたしておりません。私は、十年来参議院で毎年のように政府に批准を求めてきました。世界では既に九十三カ国が、アジアでも韓国、フィリピン、モンゴルなど九カ国が批准をしております。もう
我が国が批准をおくらせる正当な理由はなく、政府の決断のみであります。
また、第百三十九国会で成立した
人権擁護施策推進法による
人権擁護推進審議会では、国の責務として、部落問題を初めさまざまな差別問題の
差別意識の解消に向けた施策のあり方の議論がなされております。答申までに幅広い
国民的論議をするため、政府は審議会に
中間報告を求めるべきであります。
ことしの一月下旬に来日しましたメアリー・
ロビンソン国連人権高等弁務官は、
各国政府に
国内人権機関の設置を強く働きかけておられます。
我が国も、政府から独立した権威ある
国内人権機関を設置すべきであります。
さらに、
日本国内における身近な国際人権問題として外国人学校差別問題があります。文部省は、在日の
外国人学校卒業生に対して、
国立大学への
受験資格を与えていません。公立や私学は既に半数近い大学が
受験資格を与えているのであります。
国連児童の
権利委員会からもこの問題に関する
改善勧告が
日本政府に送付されています。兵庫県の
外国人学校協議会は、この問題を
国連人権小委員会に来週にも直訴するようであります。
政府は、
人権擁護・
差別防止の観点から早急に解決すべきであります。政府の決断を求めます。
また、
国連人権小委員会に、戦時における女性への性暴力について報告を求められていたアメリカの
特別報告者が旧日本軍の従軍慰安婦問題も取り上げ、
日本政府に勧告したことが報道されています。事実関係を明らかにしてください。
教育問題について伺います。
一九九七年度の文部省の
学校基本調査によると、不登校の
小中学生は十万五千四百十四人となりました。私は、一九八六年一月、本院の
代表質問において
小中学生の不登校問題を取り上げ、この十年間で三・五倍と激増し、三万百九十二人に及んでいる、この
子供たちのうめき声が総理や
文部大臣に聞こえますかと問題の解決を迫りました。
それから、
小中学生の数が減っているにもかかわらず、不登校は十二年前に比べ、ついに三・五倍の十万人を超してしまったのです。今日、小学校にまで
学級崩壊が起こり、義務教育制度の崩壊の危機を感じます。
総理は、所信で「次代を担う
子供たちがたくましく心豊かに成長する、これは二十一世紀を確固たるものにするための基本」であると発言されました。まさにそのとおりであります。しかし、その一方で、義務教育崩壊にもつながる不登校に歯どめがかからず、増大の一途をたどっているのであります。
この際、大胆な制度改革の断行が必要であります。それは三十人学級の実現であります。第六次教職員定数改善計画完了のめどがつき、さらに、小中学校の児童生徒の減少により教職員定数の自然減が続くという現状にある今日こそ、実現すべき最重要の国民的課題であります。
三十人学級実現によって、総理の言う「
子供たちが自分の個性を伸ばし、自信を持って人生を歩み、豊かな人間性をはぐくむよう心の教育も充実させる」ことを可能にいたします。これこそ総理の「今日の勇気なくして明日の我が身はない」の問題であります。三十人学級実現への勇気ある決断を求めます。
行政改革及び
地方分権について伺います。
地方分権は、時代の要請であり、新しい日本社会を築く基礎であります。私たちは、この改革なくして活力ある二十一世紀の日本社会はあり得ないと
地方分権を強く主張しているのであります。
さて、政府は、昨年末まで四次にわたる
地方分権推進委員会の勧告を受け、本年五月に
地方分権推進計画を閣議決定しました。
まず伺いたいのは、この
地方分権推進計画に対する総理御自身の評価であります。確かに、この
地方分権推進計画にある機関委任事務の廃止は画期的なことであり、
地方分権の推進においては不可欠であります。しかし、法的な枠組みは変わっても、自治体の事務の細部まで規定するそれぞれの法律はそのままです。実際の行政事務や財源は全く移譲されていないのです。
政府は、昨年末に
地方分権推進委員会に対して行政事務の移譲を盛り込んだ勧告を要請しました。現在、第五次勧告として本年秋の勧告に向けて作業が進められています。第五次勧告は、主として公共事業における
地方分権が内容です。この勧告の取り扱いと、勧告の内容である公共事業における
地方分権について総理のお考えをお聞かせください。
一方、省庁再編においては、設置法が一つの焦点となっております。橋本前総理は、重ねて二〇〇一年に新体制への移行を表明されていましたが、
小渕総理はどうされますか。
また、行政の行動を国民みずからが監視するための
情報公開法案制定も緊急の課題であります。
橋本前内閣が提出した
政府案は、特殊法人を対象にしない、非公開の範囲が広いなど、まさに欠陥法案であります。
参議院選挙に示された国民の意思は、
自民党の官僚主導型政治に対する不信任であり、官僚による情報独占の否定であります。野党四会派案のすぐれている点を柔軟に取り入れ、審議の促進と早期成立を図ることが国民の期待にこたえることだと考えます。
政治倫理問題について伺います。
私たちは、さきの国会に、政治腐敗防止策として、
国会議員が役所に口ききをして報酬を得ることを処罰する地位利用収賄罪に関する法案を提出しています。
国会議員の株取引を規制する法案も準備しております。
自民党では、あっせん利得をしても政治資金として届け出れば罰則を免れるという骨抜きの法案すら国会提出に至っておりません。この際、
民主党案を軸に議論を進めることが国民の批判にこたえる唯一の道だと考えますが、総理の決意をお聞かせください。
最後に、政治と民主主義について伺います。
文部省は、敗戦後間もない一九四八年、軍国少年として育てられた私たちに文部省著作の教科書「民主主義」を与え、軍国主義から民主主義への変革を迫りました。私たちの世代は軍国主義と民主主義を学んだ貴重な世代であります。
その教科書には、「民主主義の理想は、人間が人間たるにふさわしい生きがいのある生活を営み、お互いの協力によって経済の繁栄と文化の興隆をはかり、その豊かなみのりを、すべての個人によって平和に分かち合うことのできるような世の中を、築いていくことにある。」とありました。
小渕総理、私たちはこの五十年、教科書が示した民主主義の理想を求めて懸命に歩んでまいりました。しかし、日本の社会・経済構造が大きく変化する今、私たちは政治システムとしてどのような民主主義を選ぶべきかを改めて問い直すときが来ていると思っております。
私は、私たちが選ぶ民主主義として、まず第一に官僚主導の政治から政治家が政策責任を持つ政治へ、第二に利益誘導型の政治から
国民生活優先の政治へ、第三に社会・経済構造を集権型から分権型へ、この三点を今日我々が必要とする民主主義改革の要点として挙げたいと思います。
小渕総理、
我が国は新しい時代、二十一世紀を目前に大きな改革を迫られています。総理は、所信演説で「鬼手仏心を信条」に「次の時代を築く決意」を表明されました。何が「鬼手」で何が「仏心」なのですか。残念ながら総理の哲学と改革をなし遂げる勇気が全く伝わってきません。言葉の遊びであります。
果たして総理に改革への哲学と勇気がおありなのでしょうか。私たちは、改革を行う勇気なき総理には直ちに退陣を求めなければなりません。
総理に改革の決意を求めて、私の質問を終わります。(拍手)
〔
国務大臣小渕恵三君登壇、拍手〕