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1998-09-24 第143回国会 参議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月二十四日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         野間  赳君     理 事                 岩永 浩美君                 三浦 一水君                 和田 洋子君                 須藤美也子君                 村沢  牧君     委 員                 岸  宏一君                 国井 正幸君                 中川 義雄君                 長峯  基君                 森下 博之君                 小川 敏夫君                 久保  亘君                 郡司  彰君                 風間  昶君                 木庭健太郎君                 大沢 辰美君                 谷本  巍君                 阿曽田 清君                 石井 一二君    国務大臣        農林水産大臣   中川 昭一君    政府委員        国土庁防災局長  林  桂一君        厚生省生活衛生        局長       小野 昭雄君        農林水産大臣官        房長       高木  賢君        農林水産省経済        局長       竹中 美晴君        農林水産省構造        改善局長     渡辺 好明君        農林水産省農産        園芸局長     樋口 久俊君        農林水産省畜産        局長       本田 浩次君        農林水産省食品        流通局長     福島啓史郎君        食糧庁長官    堤  英隆君        林野庁長官    山本  徹君        水産庁長官    中須 勇雄君        気象庁長官    瀧川 雄壯君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        鈴木 威男君    説明員        建設省河川局次        長        吉井 一弥君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○農林水産に関する調査  (平成十年八月以降の豪雨災害による農林水産  関係被害に関する件)  (食料・農業農村基本問題調査会答申に関す  る件)  (遺伝子組換え食品の表示問題に関する件)  (国営農地開発事業に関する件)   (ミニマム・アクセス米に関する件)     ―――――――――――――
  2. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を開会いたします。  農林水産に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  3. 国井正幸

    国井正幸君 自民党の国井正幸でございます。  八月の集中豪雨、今月に入ってからの台風等による集中豪雨あるいは風害、これらに関して御質問をさせていただきたいというふうに思います。  まず、冒頭、これらの災害でお亡くなりになられた方々の御冥福をお祈り申し上げますと同時に、被災された全国皆さんに心からお見舞いを申し上げたい、このように思います。  そして、私、栃木でございますが、特に栃木福島におきましても大変な被害がありました。これらに対して中川大臣もいち早く現地を訪問していただきまして、被災状況の把握あるいは被災者への激励等をしていただきましたことに心から敬意と感謝を申し上げたい、このように思います。  それで、被災された方々被災地自治体からは一日も早い災害復旧実施というのが強く求められておるわけでございまして、あるいは被災者経営再建、これらについても何らかの措置を講じなければならない、このように思っておるわけでありますが、冒頭大臣のこれら被災者等への支援あるいは災害復旧にかける決意をひとつお伺いしたい、このように思います。
  4. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 八月、九月の全国的な数回にわたる被害、特に農林水産関係で私も栃木あるいは福島等を視察させていただきましたが、自然の猛威というものの恐ろしさを目の当たりにいたしまして、本当にショックを受けたわけであります。  そしてまた、私からもお亡くなりになられた方々、そして被災された方々に心からお見舞いを申し上げざ世でいただきます。  今、国井先生からもお話がありましたように、大変な被害でございましたが、あえて省庁別に申し上げますと、いろんな被害がございますけれども、特に農林水産関係というのは生き物、自然が相手の仕事であるだけに、手塩にかけて育でてきた動植物を一瞬のうちに失った生産者皆さんのお気持ちというものは本当に察するに余りあるものがございます。  そういう意味で、私も全力を挙げて万全の対策をできるだけ早くやっていきたいということで、関係省庁とも連絡をとりながら、また農林水産省固有でできるものにつきましては全力を挙げてやっておるところでございます。いろいろな諸対策がございますけれども、とり得べきすべてのあらゆる対策をとっていきたいと思います。  そして、ショックからまだ立ち直れない方々に一日も早く気持ちを持ち直していただいて、新たな営農意欲、来年に向けての営農意欲、あるいはまた今後農作物がもとに戻るものもあると期待をしておりますので、万全の対策をとることによって生産者皆さん生産活動あるいは生活、そして今後の営農意欲に向けて我々全力を挙げて御支援をさせていただきたいというのが私の決意でございます。
  5. 国井正幸

    国井正幸君 今、大臣の力強いお心を聞きまして、被災者皆さんも喜ぶことだろうというふうに思います。ぜひそういうことで早急に実施をしていただきたい、このように思います。  続いて、被災者あるいは被災地自治体からは激甚災害に対処するための特別の財政援助等に関する法律、いわゆる激甚災害法適用を早くしてほしい、ぜひ指定してほしい、こういうふうな要望があるわけでございます。これは事務方皆さんにお聞きすることになるというふうに思いますが、激甚災害指定基準というのはどういうふうになっていますでしょうか、簡潔にひとつお答えをいただきたいと思います。
  6. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 指定につきましては中央防災会議協議をいたしまして定めるわけでございますけれども、いわゆる本激甚指定基準といたしまして、一例を申し上げますと、全国農業所得推定額の〇・五%を超える場合にはそういった災害には激甚指定があるというふうな例がございます。
  7. 国井正幸

    国井正幸君 そうすると、私の手元には平成年度全国農業所得推定額、これが大体四兆五千億だということですが、そうしますと二百三十億円を超えれば一つ基準になる、このように理解してよろしいわけですね。
  8. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) あくまでも基準でございまして、実際に協議をいたしまして設定をいたしますが、現状ではそういうふうな状況であろうと考えております。
  9. 国井正幸

    国井正幸君 そこでお尋ねをしたいというふうに思いますが、八月上旬の集中豪雨による被害あるいは八月下旬の集中豪雨による被害、そして今月に入ってからの一連の台風による被害、こうあるわけです。まだ今月に入ってからのいわゆる台風による被害については詳細を掌握していない部分もあろうというふうに思いますけれども、少なくとも八月の上旬あるいは下旬、これらの被害状況というのは都道府県を通じて農林省手元に届いているのではないか、このように思いますが、それはどのように承知していますでしょうか。
  10. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 八月二十六日からの災害の集計しか手元にございませんけれども、三百六十二億という数字になっております。
  11. 国井正幸

    国井正幸君 ということになりますと、二百三十億円を超えるか否かと、それが三百六十億ということになれば超えている、こういうふうに思うわけでございますけれどもあとは詳細は、これは大臣から冒頭言っていただいたように、早急に詰めるべきところは詰める、こういうことでありますから、私が今お聞きしている範囲では激甚災害指定基準を満たしている、このように私は理解するわけでございますので、ぜひ早急に指定をしていただいて災害復旧全力を挙げていただきたい、このように思うわけでありますが、いかがでしょうか。
  12. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、先生からも御指摘がありましたように、八月末の水害だけでも私個人激甚災害条件を残念ながら被害が大きいだけに満たすというふうに思っております。そしてまた、八月初めの新潟を中心とする災害も一体としてやれるかどうか今検討中でございます。  いずれにいたしましても、これは関係省庁協議の上での決定でございまして、今申し上げたように、激甚災害指定されるということはそれ自体、災害が大きいということでありますから喜ぶべきことではないのでありますけれども、せめても災害復旧のための激甚災害指定に向けて我が省としては関係省庁にも働きかけをしたいと思っております。
  13. 国井正幸

    国井正幸君 ぜひそのようにお願いしたいと思います。  ちょっと具体的な中身に踏み込んでお尋ねしたいと思いますが、一つ財政支援関係でございます。  激甚災害法適用された場合、農地及び農業用施設、これらに対して国庫補助があるわけでございますが、この補助率はどういうふうになっていますでしょうか。今まで大体この程度だというのがあればお聞かせいただきたい、このように思います。
  14. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 過去の例で申し上げるのが適当かと思いますけれども激甚法で、農地の場合、過去五年の平均補助率が九三%、それから農業用施設では九七%というのがこれまでの平均でございます。
  15. 国井正幸

    国井正幸君 そうしますと、農地の場合は九三あるいは農業用施設については九七ということになると、あとの残りが結局補助残ということになると思うわけであります。その場合、きょうは自治省も来ていただいておると思いますが、地方自治体起債をする場合、これは起債は認めていただけるんだろうというふうに思うんですが、どの程度起債を認めていただけるのか。補助災害復旧事業債と言うんでしょうか、これの起債の枠、それから起債した場合、翌年以降いわゆる交付税措置がどのようにとられるのか、その辺についてお尋ねしたいというふうに思います。
  16. 二橋正弘

    政府委員二橋正弘君) 今お尋ねがございましたような農地農林施設等補助災害復旧、これはそのほかには公共土木関係もございますが、そういうことに伴います地方団体負担が出てまいります。この具体的な数字につきましては関係省庁から私どもの方に数値がまとまって御連絡いただきまして、それに対して災害復旧事業債地方団体が発行するということになります。  農地農林施設の場合には、地方負担額の八〇%を補助災害復旧事業債として発行して、後年度元利償還については九五%を普通交付税に算入していくという仕組みになっております。
  17. 国井正幸

    国井正幸君 時間も随分経過したので先に進ませていただきたいと思いますけれども農地農業用施設と二つに分かれておるんですが、この農業用施設と言われた部分、これには共同利用施設は含まれているんでしょうか、含まれていないんでしょうか。
  18. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 農業用施設と申しますのは水路であるとかそういったものでございまして、いわゆる共同利用施設は別でございます。
  19. 国井正幸

    国井正幸君 実は、我が県では那須山麓酪連というのがありまして、これは酪農を大変一生懸命やっておるところなんですが、ここのクーラーステーションがだめになったというのが一つあります。それから、福島においては、私も現地へ行かせていただいたんですが、公設の卸売市場が流失をした、こういうことがあるんですね。ぜひ共同利用施設に対する補助というのを考えていただきたい、このように思うんですが、これらに対してはいかがでしょうか。補助はあるんでしょうか。
  20. 高木賢

    政府委員高木賢君) 御質問のありました那須山麓酪連クーラーステーションなどにつきましては、これは農林水産業共同利用施設災害復旧事業というものの対象になりまして、補助対象になります。その補助率は十分の二ということでございますが、先ほど来お話が出てまいっております激甚災害、こういうものに指定されますれば、その告示により指定された市町村内の施設ということであれば十分の九の補助率適用になります。し、告示指定を受けない市町村施設であっても、災害としては激甚災指定であれば十分の五という補助率かさ上げが行われるということになっております。
  21. 国井正幸

    国井正幸君 ありがとうございました。ぜひこれらに対しても今御答弁があったような形でお願いをしたい、このように思います。  それから、私の地元からも大変強い要望があって、あるいはほかの県、どこも同じだというふうに思うんですが、先般来一生懸命災害復旧全力でやっていただいても、今もう間もなく十月になんなんとしているわけですね。そうしますと、流失した水田、これらを来年の作付までに本当に原形に復旧できるのかということになりますと、もちろん一生懸命やっていただくわけでありますが、できない場合もあり得るのではないかと思うんですね。したがって、復旧ができなかった水田については土地改良通年施行と同様に休耕田とみなして、生産調整実施水田としてぜひカウントをしていただきたい。  大体、農家は自宅の近間に土地を持っているんですね。その襲われたところというのは大体全部流された、こういうことになっているんですね。そうしますと、同じ管内の別のところで生産調整実施しているわけでありますから、ぜひこちらも現在水田として使えないような部分生産調整実施している水田とみなして、別の方をつくれるように、この辺は経営再建とも大変絡むので、ぜひ農林省においても御配慮をいただきたい、このように思うんですが、いかがでしょうか。
  22. 樋口久俊

    政府委員樋口久俊君) お答え申し上げます。  生産調整実施基本的には稲の作付可能な水田にあえてそれをしないでほかのものをつくる、そのことをあらかじめ計画しておくということが基本ではございますけれども、現実にはさまざまな対応がございまして、いわゆる助成金対象になります場合と、転作として取り扱われるけれども助成金は支払わないでいわゆるカウント、これは私ども生産調整の世界ではカウントと呼んでおりますけれども、そういうものにするというようなことがございます。  本件のような場合には被災田カウントという仕組みが一応ございまして、被災年度の翌年度作付の時期までに復旧工事が完了しない水田につきましては生産調整実施する旨の実施計画を提出していただくとか条件がございますけれども、こういう仕組みがございますので、具体的な実施につきましては転作事務を取り扱っております県などと協議をして取り扱いは最終的に決まりますけれども、そういうことを踏まえまして相談をしていきたいなと思っております。
  23. 国井正幸

    国井正幸君 終わります。
  24. 中川義雄

    中川義雄君 この八月の集中豪雨台風五号、七号、八号と立て続けに国土を襲ったわけですが、その中で農業も大変な被害をこうむった。ちょっと重複しますので、農業災害について農地災害にポイントを置いてお聞きしたいと思います。  今回の集中豪雨等農地災害を受けた被害額面積等について既にまとめていたらちょっと教えていただきたいと思います。
  25. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 九月二十二日現在の農地被害状況といたしまして百二十五億四千万円という数字がございます。
  26. 中川義雄

    中川義雄君 農業にとって農地というのは、御承知のように唯一の生産手段と言ってもいいわけですから、その農地が流失してしまうということになりますと、農家にとっては、特に北海道のように専業農家にとっては生産手段を全く失ってしまうという悲惨な例も見られるわけであります。ですから、特に農地災害については緊急に、しかもなるべく手厚い国からの援助等が必要になってくると思います。  その場合、先ほどの質問にありましたように、激甚災害とそうでない場合とでは十分の二と十分の九という大変な違いがあります。御承知のように、農地災害の悲惨な例というのは、農地もとに戻すというのは物すごい費用がかかるものなんです。ですから、この十分の二と十分の九というのは被災者にとっては死ぬか生きるかの違いであります。  しかも、激甚災害というのを国が指定する場合には、災害の大きさだとか地域的な問題、いろんなことを加味してやるわけですが、主に地方公共団体がその補助対象になる場合が非常に多いわけですけれども農地の場合は御承知のように個人なんです。ですから、ここで大きな問題というのは、個人にとっては面積が広がろうとどうであろうと、農地が流失したということについては、個人激甚災害指定を受けようと受けでいないとにかかわらず、その農家にとっては大変なダメージといいますか、それに対する何かの手当てみたいなものを本当はいただきたい。  というのは、五十六年の北海道災害のときには、地域によっては農業土木事業全体を協力させて、例えば土捨て場に使ったり土取り場に使ったりしながら、制度とは別になるべく農家負担をかけないで農地復旧させるということを地域皆さん方が工夫しながらやった事例があるわけですから、今回もし激甚災害指定を受けないとしたら、そういう土地改良事業を弾力的に運用することによって農民に少しでも来年からすぐ生産にいそしめるような体制をつくるべきだと考えますので、その点についてもし感想等がございましたら、局長の方からお願いしたいと思います。
  27. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) ちょっと補助率数字を御説明しておきたいんですが、先ほど官房長が御説明申し上げましたのは共同利用施設等に係も補助率でございまして、激甚がある場合には十分の九、ない場合には十分の二という数字を申し上げましたが、農地の場合にはいわゆる暫定法という制度に当初から乗りますので、農地災害復旧補助率は、激甚指定がない場合は過去の五カ年平均で八四%、激甚指定があった場合には九三%というのがその数字でございます。  ただ、それにいたしましても、残余の分について農業者負担ということになりますので、これまでのケースから見ますと、およそ二〇%弱、一〇%台ですが、の市町村残余農家負担をすべて肩がわりするという状況にありますし、一部負担も含めますと五割強の地方公共団体農家負担の軽減を図っているところでございます。  それからもう一方、この復旧事業につきましては中小の企業に対する発注率が九割以上というふうに極めて高こうございますので、そういう点で地元復旧事業を通じまして、例えば農家の雇用、そういうものにも貢献ができるのではないかなというふうに考えているところでございます。
  28. 中川義雄

    中川義雄君 きょうは国土庁からも来ていただいておりますが、いろんな意味災害を受けた、特に専業農家人たちは来年に向けてどうするかということを非常に悩んでいるわけです。その中で激甚災害指定を受けるか受けないか、それがまた定かでないということに対する何となく不安感みたいなものもございますので、激甚災害指定に向けての動きについて、わかっている部分でよろしいから御説明いただきたいと思います。
  29. 林桂一

    政府委員林桂一君) 激甚災害指定につきましては、まずその被害の報告を地方公共団体の方からいただきまして、関係省庁において指定の前提となる被害額、すなわち復旧事業費等確定作業を行うということが必要でございまして、現在その作業を急いでいるという状況でございます。その結果が出ましたら、その結果を踏まえまして指定基準に該当する場合には速やかに対処するということで今対応しております。大変著しい災害であるという認識はもちろん十分持っておりますが、現在そういう作業状況中ということでございますので、本日におきましてはまだ具体的な指定については何とも言えないということでお許しいただきたいと思います。  よろしくお願いします。
  30. 中川義雄

    中川義雄君 なるべく作業を急いでいただきたいものだと思っております。  そこで、今回の災害現場へ行きましていろいろ言われた中で、加害者被害者みたいな話が常に出てくるんです。例えば、十勝の場合ですと、十勝川の堤防が非常に高く立派につくられた。ですから、堤内から堤外に水は漏れなかったけれども、堤内における水は堤防一つのあれになって農地を浸しめてしまったというお話。  それから、十勝の場合は非常に凍上の激しい地域なものですから、凍上防止のために道路等棚工物が二メートル、三メートルと非常に高くなっているんです、砂利がたくさん入って。そうすると、平野なものですから水があふれて、その道路のところへ全部集まってくる。特に道路交錯点なんかには水があふれている。そういうところには民家があって、そして農地もいい農地があるわけです。  そこで大問題になったのは、道路管理者地域人たちはその道路を切ってほしい、切って水が下へ流れてほしいと。そうすると、農地災害からも、それからいろんな生活上の災害からも未然に防止することができる。しかし、そこへ来ている道路管理者人たちは、道路を守るために土のうを積んででもやらなければならないときに切るとは何ぞというようなことになります。そして、そういう争いがあると、今度はその道路管理者は、道路だけの責任じゃない、水がたくさん出たのは山が荒れてきて水が早く出ることにも責任があるんだと。そして、農地が非常によくなって、明渠、暗渠が非常にうまくいっているので水の出が早くなったためにこうなったので、道路管理者だけの責任ではないと、その現場責任のなすり合いみたいな話があるわけです。  それで、ちょっと国土庁に聞きたいんですけれども、こういう緊急避難的なことについて、官庁の縦割り行政みたいなものがそういう事態になると非常に弊害になる場合があるわけです。その点、災害未然に防止する指揮を一点に集中させて、指揮命令系統がしっかりすればその人の判断に基づいでできるんです。末端の道路管理者の出先の人にとっては、道路地域住民から破れと言われたらもう震え上がるに決まっているんです。しかし、そのときに例えば市町村長か何かに自動的に指揮監督命令ができるようになっていれば市町村長の権限で緊急避難的にいろんなことができるわけですから、その点、防災体制の中でこういう緊急事態が発生したときの指揮系統関係はどうなっているのか、ちょっと現況を教えていただきたいと思います。
  31. 林桂一

    政府委員林桂一君) 災害対策基本的な体制につきましては、災害対策基本法という法律の中でいろいろ具体的なことも含めて定めてあるところでございます。基本的には災害対策事前にいろいろ想定いたしまして防災基本計画というものを国として決め、そして都道府県あるいは市町村のレベルでどういう対応を行うかということをそれぞれの県の防災計画あるいは市町村地域防災計画という中で具体的に決めていくということになろうかと思います。  また一方、今回のような水害関係につきましては水防法という法律がまた個別の法律としてありまして、そこでいろいろ水防団等活動とか、あるいは市町村長等役割等についてあらかじめ定めでいるというようなことがございまして、そういう事前計画の中で相互の調整とか、あるいは一たん緊急のときにだれが指揮をとってその全体を指揮するか、行動するかというようなことなどが基本的に決められておるということでございますので、そういう中で連携をとりながらやるということが基本的な姿だろうと思います。  一方で、そういったような事前の備えと同時に、緊急の場合のいろいろな形での緊急対応体制ということも決めております。非常に著しい大きな災害でいきますと、緊急災害対策本部というものを決めますが、これは総理が本部長になりまして、関係の閣僚がそれぞれの所管の施設についての責任の中で連携しながらいろいろな形で、また本部長の指示権というようなものもございますので、そういうことも活用しながら動くというのが国の体制になっているわけでございます。それが緊急の場合。それから、それほどでもない、しかし著しい災害があるという場合は非常災害対策本部というものを設け、これは国土庁長官が本部長になりまして、関係省庁局長さん方がメンバーになって、そういう対応をとるというようなことでございます。  そういうことで、国の方につきましてはいろいろ一体的にやるという体制が整っておりますが、またそれぞれ県なり市町村のレベルでそういうような所管のところ全体をうまくまとめた形で緊急の対応をとられるというそれぞれの体制にはなっております。  先生の御指摘は、多分そういった国の権限とかあるいは地方公共団体の権限を含めて、例えば市町村長が全部行使できるような、そういう体系をつくってはどうかという御指摘なのかもしれません。そこはちょっとあれですが、そういう御指摘であるとすれば、今の体系の中で市町村長がすべての責任をそこの場で実施するというような形にはなっていないのが現状でございますが、そういうことの必要性等についていろいろ具体的な事例を反省しながら、どういうやり方が必要なのかということは、いろいろ今後の課題というようなことであると思います。
  32. 中川義雄

    中川義雄君 優等生の答弁みたいな話なんですけれども、事は本当に緊急に起きるんです、国土庁長官が行く前に。そこまで行っているうちにはもう被害が終わっちゃっているみたいな事例が多いんですね。ですから、未然防止という観点から、本当に緊急避難的にやらなければならない、その体制などについてやっぱりもっと検討していくべきではないかと思います。  ところで、今回いろんな被害を受けた中で、十勝の場合なんかは農家被害者になっている場合が多いんですが、農林省という一つの組織から見ますと、加害者被害者が同列にいるような感じがしてならないんです。  よく言われるのは、一つはやっぱり山が荒れてしまった、山が荒れてしまったから水の出が早くなって、それが保水能力を非常に著しく低下させる、そして地盤を軟弱にさせてがけ崩れの原因になったり、また木が荒れているものですからすぐ倒れて、それがいろんなところに詰まって大きな水害を起こしたというような話がよく出てくるんです。そして、先ほど言ったように、農地の水はけをよくするための施設がたくさんできたために水の流れもよくなったということであります。  きょうはその中で、今ちょうど森林に大きないろんな問題が起きていますので、その点に観点を絞って少し問いておきたいと思いますが、その前に、よく異常気象という言葉が最近異常なほどに言われるようになってきたわけです。確かに、ことしの場合を見ましても、台風の数は非常に少ない、しかし被害は多いとか、逆に梅雨がいつ明けたかわからないうちに梅雨前線がそのまま豪雨前線みたいになって豪雨被害になったとか、そういう異常な事態にことしばあるのじゃないか。経済も異常ですし、国も全部異常かもしれませんが、気候も異常のような気がします。  この異常気象ということについて、私は言葉一つで言っておりますが、いろんなことがあると思います。一体、異常気象というのはどういうことを言っているのか、ちょっと教えていただきたいと思います。
  33. 瀧川雄壯

    政府委員(瀧川雄壯君) ただいま御指摘のように、ことしは非常に台風が少ないのは事実でございます。ことしの七月八日に台風一号が発生しておりますが、これは昭和二十六年の観測以来最も遅い記録になっております。その後、八月以降は月ごとの発生数は平年並みに近づいでおりますけれども、本日まで八号ということで、現時点においても観測以来発生数は最も少ないということで、台風の発生数という観点から見ますと、これは統計をとり始めた過去にはない。そういうふうに言ってよろしいかと思います。  それから、先ほど梅雨がいつ明けたかわからないというお話がございましたけれども、これにつきましても気象庁の経験では初めてでございまして、以前にも過去にさかのぼって梅雨明けがわからなかったということはございますけれども、ことしのように梅雨明けの判定の時点でいつ明けたかわからない、こういうのは初めてでございます。
  34. 中川義雄

    中川義雄君 よく言われている中で、私もよくわからないんですけれども、異常気象の大きな要因の一つとして森林の砂漠化、いわゆる森林の荒廃したことが地球的な規模においてその要因と言われています。時間がなくなりましたからそのことについては置いて、ですから森林の公益的機能というものを国においてももっともっと活用していかなければならない、こう思っているわけであります。  そこで、日本の林が今どうなっているのか、森がどうなっているのかということで、全国土に占める国有林、公有林、民有林の比率、しかもそれを時系列的に見ると、森が荒廃していっている姿が統計数字上で見られるかどうか、もしわかった数字があったら教えていただきたいと思います。
  35. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先生御指摘の国有林、公有林、民有林の比率でございますけれども、これは私ども連続した統計として持っておりますのは昭和三十七年以降平成七年まででございます。国、公、民、この比率は三十七年で三二%、一一%、五七%でございますが、平成七年で国有林三一%、公有林が一一%、民有林五八%と比率はほとんど変化がございません。  このうちで荒廃した森林がどの程度あるのかということでございますが、これを網羅的に調べたものはございません。今、日本の国土では一応森林は緑に覆われておりますけれども、保育、間伐が重要でございまして、間伐を実施すべき森林で実施していない割合、これが約五〇%、間伐の実施率が五〇%でございまして、間伐を実施しないと公益的機能が必ずしも十分に発揮されないような事態になります。  私ども、森林を緑に覆うだけではなくて、この森林を国土保全、災害防止等の公益的機能を十分発揮できるような立派な健全な森林として育てるためにさまざまな施策を展開していくのが大きな課題であると考えておりまして、大臣の御指導のもとにそういった予算、また施策の面での努力に全力を挙げてまいりたいと思っております。
  36. 中川義雄

    中川義雄君 要するに、今日まで森を経済林として見る側面が非常に強かったわけでして、経済的に価値のあるものにしたい、そうするとどうしでも成長の速い木を植える、それが民有林においても国有林においても中心になってきたわけです。ところが、御承知のように、北海道の場合ではカラマツだとかエゾマツだとかマツ類になってしまう。マツ類というのは管理を怠ると非常に村もだめになると同時に、保水力を失ったりして大変お破壊力になってしまう可能性があるわけです。  ですから、今後は育林にしてもやはり広葉樹林を中心にするような、そして経済林というような形からなるべく公益林、要するに国土を保全したり酸素を補給したりする、そういう林に変えていく、そういうふうにしていかないとならないと思っています。  そんな点で、森林の公益的機能等について大臣の最後の御見解をお聞かせいただきたいと思います。
  37. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 我が国の地形は細長くて、背骨のように三千メートル級の山があって、いきなりゼロメートル、海に流れ込んでいくわけであります。諸外国の長い川と日本の川とを比較すると、その勾配というか角度が全然違いまして、ある外国人に言わせると、日本の川は川ではなくて滝だと言ったという話を聞いたことがあります。  そういう中で、多雨によってもたらされる恵みも大きいわけでございますから、そういう意味で森林がきちっと整備されていることがまさに洪水を防ぎ、ということは、川下に住む、いわゆる大都市に住む人々にとっても大きな役割を果たしているわけでありますし、農業等の生産活動にも、またダム等にも非常に大きな役割を果たすわけでございます。  そういう意味で、先生今御指摘のように、経済林中心であった、伐採して売るということが中心であった今までの林業といいましょうか林野行政から、まさにこれからは少なくとも国有林は公益林中心にしていこうということで、現時点では四五対五五で公益林が少なかったわけでございますけれども、今回御審議をいただく国有林等の法律改正におきましては、公益林を約八割、いわゆる伐採を目的とした機能の森林を二割というふうに、大幅に公益林の機能、ウエートを高めることによりまして、あるいはまた長伐期施業、複層林施業等々で山を守る、山を守ることによって国土を守る、あるいは暮らしや経済活動を守るという観点に大きく方向転換をしてこれから林野行政を進めていこうということで、今これから国有林等の法律改正も含めて御審議をいただき、先生方の御指導をいただきたいと思っております。
  38. 中川義雄

    中川義雄君 委員長、そういうことですから、どうぞよろしくお願いしたいと思います。
  39. 郡司彰

    ○郡司彰君 民主党の郡司彰でございます。何分初めての質問でございますので、よろしくお願いしたいと思います。  冒頭、八月の上旬、下旬の大雨による被害、また台風五号、七号の被害に遭われた方々にお見舞いを申し上げますとともに、お亡くなりになった方々の御冥福をお祈りいたしたいと思います。  さきの台風並びに大雨による被害でございますけれども、私の茨城の水戸あるいはひたちなかというふうなところにつきましては、前回、十二年前に大きな被害がありましたとき激特の指定から漏れた地域のはんらんでございまして、地域的にはそういう意味では人災的な側面が指摘をされているようなところもあるわけでありますけれども、全体として見た場合、まさしく天災というふうなことになろうかと思っております。  今回、被害に遭われました自治体からは、私どもの方にも天災融資法の適用ということを望む声が寄せられているわけでありますが、同法は被害規模その他によって基準というものがあるというふうに聞いておりますけれども、この適用基準についてお聞かせいただきたいと思います。
  40. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 天災融資法でございますが、そもそもこの法律の目的なり資金の内容につきましては、天災による農林水産物の被害が著しく、かつ国民経済に及ぼす影響が大きい場合に、被害農林漁業者の経営の安定に資するために農業資材等の購入に必要な経営資金を低利で融通するというものでございまして、実際に天災融資法の発動に当たりましては、それぞれの天災の都度、農林水産物の被害の規模とか被害の広がり、さらにはその被害の深さ、また農林漁業者の資金需要といった点を勘案して発動の可否を決定することにしているものでございます。
  41. 郡司彰

    ○郡司彰君 その一方で、自作農維持資金融通法というのがございますけれども、昭和三十年の施行以来、天災融資法とほぼ同じ時期に改正を重ねてきたように聞いております。  平成六年の附則改正によりまして、金利面の関係も相当引き下げられた、また償還期間、使途についても弾力的な運用が図られているというふうに聞いておりますが、そういうふうなことから判断しますと、天災融資法の意義というものが、実際に欲しがっているといいますか、そういう自治体からすると損なわれているような感じがしているわけでありますけれども、その辺のところについてお伺いをしたいと思います。
  42. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 元来、天災融資法によります天災資金はその金利の低さということにメリットがあるわけでございまして、通常の金利情勢でございますとかなり有利な金利設定ができるというものでございます。ただ、現在のような低金利情勢のもとになりますと、制度資金のほとんどが財投金利並みになるというような状況でございまして、こういういわば特異な金利情勢のもとでは天災資金の金利面の有利性はやや少なくなっているということでございます。  その一方で、資金の使い道とか償還期間とか、そういった面では自作農維持資金等が相対的に有利な点もございます。また、借り入れ手続等の面でも、天災資金の場合にはまず政令で災害指定してというようないろんな手続がございますけれども、自作農維持資金等の場合には迅速な対応ができる、そういったメリットもございます。  したがいまして、状況に応じてこういった資金を機動的に活用いたしまして被害農家対策に当たってまいりたいというふうに考えております。
  43. 郡司彰

    ○郡司彰君 今のお話をお聞きしますと、自作農維持資金融通法の方が使い勝手があるようなことになっているわけでありますけれども、一般的に天災融資法というふうな思いを持っている自治体が多いわけでありますから、逆にそちらの方の適用がよりスムーズになるような今後の検討をお願いしたいと思っております。  次に、被害を受けた農業者に対する既にある貸付制度、資金の償還期間の延長でございますけれども、どのような対策を講じていらっしゃるのか。  また、水稲の被害についてでありますけれども、倒れたことによって収量が減るというふうな影響がどの程度あったのか。あるいは、立地条件によっては水引きが悪いところがございますので、倒れた穂から発芽をする、そういうふうなことも考えられるわけでありまして、そのような場合に品質の低下、つきましては加工用米の特例規格の制定、そういうふうなことについても検討をされているのかどうか、お聞かせをいただきたいと思います。
  44. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) まず、前段の償還期間の延長等の問題でございますが、今回の豪雨災害につきましては、被害の実情も踏まえまして、既に貸し付けられております制度資金の償還期間の延長とか、あるいはまた事情に応じで中間据置期間の設定といったことが図られますように農林水産省から関係の融資機関等に対しましてお願いをしているところでございます。具体的には、農林公庫とか農協等が借入者の実情に応じまして償還条件の緩和を図るということになっておりますので、農業者方々にはそれぞれの融資機関に御相談をいただきたいと考えておるところでございます。
  45. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 後段の加工用米としての特例規格の問題でございます。  御案内のように、新食糧法におきましては政府の買い入れは備蓄というふうに限定されておりまして、そういう意味で国民の皆様に主食として食べでいただくということになりますので、食管時代のように政府米としての買い入れということはできませんが、今御指摘のように、主食用には該当しませんが加工用に供給し得るという米穀につきましては、これは加工原料用米という形で生産者団体と実需者団体の話し合いに応じまして流通し得る道が開かれております。したがいまして、当事者間の御要請がございますれば、国としても規格外の品質の確認という形で御協力をしていきたい、こういうふうに考えております。
  46. 郡司彰

    ○郡司彰君 償還期間の延長についてはさらに指導をお願いしたいと思います。  次に、被害を受けた農地農業用施設の早期復旧でございますけれども、通常ですと、査定、決定、実施というふうなスケジュールだと思いますが、来年度作付に間に合うのかというふうな問題がございます。  さらに、地域の中におきましては、旧に復するということに関しまして必ずしも望んでいないというふうな方々もいらっしゃるわけでございます。これは減反等の関係もございまして、水田であったところを畑地にしてほしいとか、そういうふうな希望を持っている方もいるようでありますけれども、そのような際に配慮の余地があるのかどうかについてお尋ねをいたします。
  47. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私も福島栃木等を見させていただきまして、農地が流失をしてしまった、あるいはまた農地だったところに数十センチにわたって砂や石あるいは大木が残ってしまったと。ここを農地として復旧するということに関して、まず生産者皆さんの御意思が第一だろうと思いますが、何としても原形復旧をしていただいて、いい農業、いい農地を引き続きまたもとに戻してやっていただきたいというのが我々の率直な気持ちでございます。  あくまでも御意思でございますし、今ショック状態でございますから、なかなか将来、来年のことというよりも、自分のもと水田を見で茫然としているというお姿に私も直接接して本当に胸の痛くなる思いをいたしましたが、我々といたしましては、もとに戻す、原形復旧が原則でございます。水田につきましては水田に戻す、畑については畑に戻すというのが原形復旧という基本でございますけれども、とにかく営農意欲を持っていただいて、引き続き農業に従事しようというお気持ちを持っていただきますならば、原則は原則といたしまして、例えば水田であったけれども畑にしたい、あるいは牧草地であったけれども畑地にしたいというようなお気持ちがあれば、それを十分尊重させていただきまして、できるだけ御期待に沿えるようにしていきたいというふうに考えております。
  48. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 前段の御質問について多少補足をさせていただきたいと思います。  来年の営農に間に合わせるということが大原則でありまして、その意味から、とりあえずの対策として応急対策を講じていただきたいということでこれを急いでおります。  それから、当然のことながら、先生から今御紹介がありましたように、査定という作業がありますので、その計画を立てることをお手伝いするような専門家を派遣する、さらに査定につきましても現地に査定官を総動員して、できるだけ早く査定をし復旧にかかるという体制で臨んでおります。
  49. 郡司彰

    ○郡司彰君 大臣の方から含みを持った答弁をいただきましたので、今後は、地域の中でそのような思いを持っている方が多数いらっしゃる、そういうふうな中でそのような配慮もお願いをしていきたいというふうに思っております。  次に、海岸に漂着をした廃棄物についてでございます。  今回の大雨による流木等の量は膨大なものがございまして、私ども茨城の各自治体におきましても、関係する業者、もちろん自治体もそうでありますけれども、多くのボランティアの方々による大変な労力を要しながら片づけをしているところでございます。これ以外の廃棄物を含め、この処理の費用でございますけれども国庫補助について考えていただきたいというふうなことが一つ。  それから二つ目は、この流木には砂が付着をしておりまして、通常の清掃工場に回すわけにはいかない、そういうふうな技術的な問題がございます。海岸に置いておくというわけにもいきませんので、現在は一カ所に集めた段階になっているところもあるわけでありまして、今後この処理について、そういうふうな技術的な検討も含めてお願いをしていきたいということが二つ目。  それから、三つ目でありますけれども、今後、河川の改修あるいは築堤というふうなものが進んでまいりますと、先ほど山の問題も話をされましたが、一般的にはアシ、ヨシをその地域の住民が使わないというふうなこともございますから、いろんな要素がありますけれども、いずれにしてもこれまでの歴史の中であった洪水等よりも多くのものが海に到着をする、漂流をするというふうなことが出てくるんだろうというふうに思っております。  そういうふうな中で、今回は大変多くのものが海岸に打ち寄せられましたけれども、海中で浮遊をする、そういうふうなものが多く出た場合に、特に今回の場合に漁業に対しての影響というものがなかったのかということと、長江の浮遊物が九州の方に相当参っているようなことも報道で目にしておりますけれども、今後そういうふうなことに対しての対応というものを水産庁なりでお立てになっていらっしゃるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  50. 小野昭雄

    政府委員(小野昭雄君) 海岸に漂着いたしました廃棄物に関する御質問でございますが、八月末の水害によりまして茨城県の沿岸に漂着いたしました廃棄物の量は九月二十二日現在で約三万七千トンに達しておりまして、その処理に要すると見込まれる費用は約八億四千万円程度に上っているわけでございます。  これらの処理方法につきましては、先生から今御指摘のございましたいわゆる技術的な側面もございます。費用だけではございません。そういった面も勘案をいたしまして、現地に担当官を派遣いたしまして実情を調査させ、必要な技術的な指導を行っているところでございまして、現場の方からそういう御要請があれば適宜対処してまいりたいと考えておりますし、またその回収処分の費用につきましては、財政的な支援を図る制度が廃棄物処理法の中にもう既に整備されておりますので、市町村被害状況調査いたしました上で、法にのっとって適切に対処してまいりたいと考えております。
  51. 中須勇雄

    政府委員(中須勇雄君) ただいまのお話のとおり、今回の豪雨におきまして大量の漂着物が海岸に打ち寄せられる、打ち上げられている、そういう状況があることは私ども承知しておりますが、これが漁業に直接的にどういう悪影響を及ぼしているかということについては、まだ具体的な例は聞いておりません。今後とも十分その辺は調査をいたしまして、その状況に応じて適切な対策をとっていきたい、こんなふうに思っております。  ただ、ただいまちょっと先生からもお話がございました長江から流されたのではないかという大量の漂着物が鹿児島の各地の沿岸に漂着をしたということが数週間前にございましたけれども、このような場合には、私ども、漁場環境保全総合美化推進事業という補助事業を用意してございまして、この事業に基づきまして、二分の一の助成でございますが、漂着物の回収あるいは処理を行う費用について助成するというような制度もございますので、こういうものの活用を図っていきたいというふうに考えております。
  52. 郡司彰

    ○郡司彰君 今後の課題としてお考えをいただきたいというふうに思います。  建設省に対してでございますけれども、先ほど言いましたように、河川の護岸あるいは築堤というふうなものが進んでまいりまして、海に到着をするものが大変多くなってきております。一つ一つの原因が重なっておりますから、これが原因だというふうにはならないわけでありますけれども、かなり以前から比べて量がふえてきている。その原因の一つには、護岸堤そのものがほとんどコンクリートによってつくられておりまして、例えば今、河川の方に参りますと、危険ですから遊ばないでくださいというふうな看板がたくさん見受けられます。  地域の中でヨシ、アシを生活に使わなくなったということ、あるいは生活の中で川というものに対する愛着といいますか、子供さんたちが遊びに来ないというふうなところもふえてきているわけでありますけれども一つとして、例えばヨーロッパの方で多く取り入れられております多自然工法による築堤といいますか護岸工事というものも、今後の環境問題あるいは自然に対する思い入れということも含めて大変重要な課題になってくるのではないかと思っておりますが、その辺についての建設省としてのお考えをお聞きしたいと思います。
  53. 吉井一弥

    説明員(吉井一弥君) 先生の御指摘の中で、今回の洪水によります海岸への漂着物と護岸との関係はなかなか難しい話ではないかと思いますが、ただ先生御指摘のございました河川について、親しみやすいものにしていくということは私どもも全くそのとおりだと思っております。昨年、河川法を改正していただきまして、河川整備に関しましても河川の環境の保全、整備等を河川法の目的の一つに入れたところでございまして、そのような観点から今後とも河川整備について十分配慮していきたいと思っています。  ただ、多自然型川づくりの話につきましては、私どもも従来からそのような形にしておりまして、平成二年から通達等を出しまして河川改修の基本を多自然型の川づくりにするというふうなことで基本的に進めていくというふうにしております。  また、ことしの六月には、災害復旧がとかく護岸をコンクリートで固めてしまうというふうな批判も多かったわけでございますが、災害復旧に関しましてもなるべく環境の保全に配慮したような、美しい山河を守るような形での災害復旧を進めていこうというふうにしております。  いずれにいたしましても、川に子供たちでありますとか住民の皆さんにもっと親しんでいただきたいというふうなことでいろいろ検討しておりまして、文部省、環境庁その他といろいろ連絡をとりながら対策を進めているところでございます。
  54. 郡司彰

    ○郡司彰君 実は、私の住んでおります茨城県には霞ケ浦というのがありまして、その全国で二番目の面積を持つ湖もすべてコンクリートで一周されてしまった、そういうふうなこともございまして、この多自然工法については今後とも十分に行政の中に取り入れていただきたい、そのように考えております。  それで、これまでいろいろな制度の申し込みでございますけれども、実際には予想よりも少ないというふうな報告も聞いております。いろんな事情がございますから一概に言えませんし、今後その中でまたふえてくるというふうなことも、これは行政、関係団体を含めて行っていただきたいというようにも思いますが、私は、一つには農業そのものに対する、将来に対する希望といいますか不安といいますか、そのようなものが申し込みの少なさにも若干影響をしているのではないか、そのような思いもいたしております。  最後に、大臣の方にお伺いをしたいと思うわけでありますけれども、先般十七日に答申がなされました食料・農業・農村基本問題調査会の関係でございます。  戦後の農政における制度全般にわたる抜本的な見直しがされたというふうには私は思えないわけでありまして、何よりも迫力に乏しかったのではないかな、そのような思いを感じでおります。食料あるいは農業あるいは農村に対する思い入れというものは個人あるいは団体によって関心の視点が異なってくるわけでございまして、だからこそ国民的な合意形成へ向けた啓発でありますとか、今後具体的な政策プログラムというふうなものの策定がなされなければならないのだろうというふうにも考えております。一つ一つの内容につきましては、今後の委員会審議等におきまして質問をしながらつくり上げていきたいというふうにも思っております。  本日は大臣に、さきの答申で、先ほどの関連もありますけれども、直接生産にかかわる農家方々に将来に希望を持ってというふうになったのか、元気が出たというふうな形になっているのか、しっかり農業に取り組んでいこうという方が一方にあっての食料・農業・農村問題だろうというふうに思っておりますので、その辺のところについて大臣のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  55. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、先生御指摘のように、四十年近くぶりでいわゆる農業基本的な法律を新しくしようということで、一年半にわたる御議論を基本問題調査会でいただきまして、十七日に総理大臣に最終答申が出されたわけでございます。  この答申は食料・農業・農村にかかわるということで、今までの農業基本法の理念にさらに時代の変化を十分勘案いただきまして、食料というすべての国民にかかわる問題を真正面から取り上げ、そして食料あっての国民である、つまり農業活動あっての国民生活である、農村地域あっての都市生活であるという位置づけ、あるいはまた逆に言えばお客さんたる消費者あっての農業生産活動であるということで、お互いに基本的な認識を共有し合ってという観点が一つあると思います。それがまさに食料の国民的な位置づけ、あるいは自給率の問題が書かれていることにつながっていくと思います。  そういう意味で、国際的な食料の位置づけ等も含めまして、我が国がこれから国産の食料を基本として国民生活が成り立っていくんだということを前面に打ち出した答申であるという観点からも、生産者皆さんにとっては新たな時代における日本の、先生承知のとおり、我が国の自給率等が世界の中でも最も低い国の一つであるという現状等もかんがみまして、これから大いに国民生活にとって欠くことのできない食料生産活動、そしてそのための農業、農村地域の役割の重要性というものをはっきりと位置づけしたものであるというふうに受けとめておりますので、私は生産者皆さんにとってはこれからの展望になる大きな指針であるというふうに考えております。  そして、この答申を受けまして、これから御審議をいろいろとこの場でも、あるいはいろいろな場で御意見等をいただきまして、そして基本法の法案の御審議をできるだけ早く、拙速は避けますけれども、十分な議論をしていただいた上で、できれば次期通常国会にも御提案させていただきまして、さらに御議論を深めていただいて、生産者もとよりでありますけれども、国民にとって大事な食料というものの位置づけをきちっとさせていただき、将来に向かっての展望を位置づけていきたいというふうに考えておるところでございます。
  56. 郡司彰

    ○郡司彰君 これで終わらせていただきます。
  57. 和田洋子

    ○和田洋子君 民主党の和田洋子でございます。  今回、基本問題調査会から十七日に総理大臣に対して最終の答申が出されました。この委員会ではもっと改めて論議をするということでありますけれども、私もこの点に関して質問をさせていただきます。  今、郡司委員は、この基本問題調査会の答申が農家の人が本当に力の出る基本問題の答申であったかということをお聞きになったんですけれども、私はこの基本問題調査会の基本理念というか、現行の基本問題というのは農工間の所得格差を是正するということが目的であったんですけれども農業生産対策から農村政策に焦点を当てて、農村のそういう大きな変換時期だと思います。国民的視点に立ったとか、または命と暮らしの安心と安全を究極の目的にしたとか、物すごく字句が本当に時代とともに今、大臣がおっしゃいましたように変わってきたように思いますが、そういう意味で農村の方たちに本当に力が与えられたのか、そしてこの基本問題というのは大臣はどういう抱負を持ってこれから本格的につくっていこうとされるのか、現行の農業基本法とこの新しい基本法の違いを含めてお尋ねをいたします。
  58. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 現行の農業基本法は昭和三十年代の半ばに制定されたわけでありまして、あのときはとにかく農業生産をできるだけ一生懸命やって、当時はまだ米も一〇〇%自給ではございませんでしたし、とにかく農業生産活動が急務である。一方、農村、農業者は都市に比べて生活環境も、また所得も大きな差がある。これは何としても埋めていかなければいけないというのが一言で言えば当時の情勢であり、農業基本法であったと思います。  現時点においても、都市と農村のいろいろな意味での格差というものはまだまだ存在するわけでございますから、それを受け継いでいることが一つ前提にございますけれども、さらに四十年近くの間に大きく世の中は変化いたしました。国際化の流れ、高齢・少子の社会あるいは環境の問題とかいろいろな時代の変化の中で、これからの二十一世紀の食料あるいは農業生産活動あるいは全国の八割から九割を占める農山漁村地域をどうやって守っていくかということもやっぱり国民的視点からきちっと位置づける必要があるというふうに考えて基本法の答申をしていただいたわけであります。  具体的に現行基本法と異なる事項といたしましては、食料の安定供給のために国内生産基本とした総合食料安全保障政策を確立する、あるいはまた価格政策に市場原理を一層活用するとともに農業経営の安定のための対策を十分に講じるということ、そしてまた農業の有する自然循環機能を踏まえて土地づくり等の農法の転換等を図る、あるいは農村の有する多面的機能の十分な発揮を図るようにしていく、それからさらに行政手法としては三年から五年に一度は施策の見直しをしていくというようなプログラムを策定していくというようなことを考えておるわけでございまして、国内生産基本とした食料の安定供給、それから食料供給力の強化、そして今申し上げた多面的機能あるいはまた我が国の農業の潜在力といいましょうか、力の最大限の発揮というものを大いに期待するような答申になっておりますので、これをもとにこれから法案づくりの作業に入らせていただきたいというふうに考えております。
  59. 和田洋子

    ○和田洋子君 今回の基本政策の見直しというのは、調査会の名称にもありますように、食料・農業・農村政策を総合的に見直そうというものであります。特に、食料の安定的確保とか食料自給率の問題を検討するときに、カロリーベースで五・一%のウエートを占めている魚介類の供給問題を外すことはできないというふうに思っております。  この点、基本問題は農政審議会ということでありますが、あえて総理大臣の諮問機関で検討することであるとすれば、水産基本法というんですか、水産とか漁業政策についても同じような基本法があってしかるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  60. 中須勇雄

    政府委員(中須勇雄君) ただいま御指摘のございました水産の基本政策ということにつきましては、昭和三十八年に沿岸漁業等振興法が制定されておりまして、この枠組みに従って水産資源の維持増大であるとか生産性の向上とか経営の安定、こういうことを進めてきたわけでございます。  しかし、御承知のとおり、水産をめぐる状況につきましても、一昨年、国連海洋法条約に日本も入るという形をとりまして、昨年からはいわゆる漁獲可能量、TAC制度というものを導入いたしまして、我が国の沿岸水域における資源管理、これをしっかりやって、持続的に海の資源、水産資源を利用していく、こういうような体制に切りかわったところであります。また同時に、水産業自体を見ましても、漁業生産全体が今減少しておりますし、担い手の減少とか高齢化、こういった厳しい問題もあるわけでございます。  こういう状況でございますので、ただいま御指摘がございましたようなことも含めまして、私ども現在、この沿岸漁業等振興法の枠組み自体の見直しということを含めまして、水産の今後の中期的な基本政策をどういうふうに持っていくべきであるかということの検討を開始しております。  昨年九月に水産基本政策検討会ということで議論を開始いたしまして、あと一年程度議論を続けたいと思っておりますが、御指摘のありました新しい基本法の制定ということも念頭に置きながら今後の水産政策のあり方について鋭意検討していきたいというふうに思っております。
  61. 和田洋子

    ○和田洋子君 ただいまの大臣のお答えの中にも、価格政策に市場原理を一層活用するという昔の看板そのままであったり、また一方では食料安全保障政策を農政展開の柱に位置づけるということでありますけれども、市場原理を徹底するねらいが内外価格差の縮小や実際に需要者の評価を生産に反映させることであることは理屈ではわかっております。価格支持水準を引き下げて、あるいは価格政策を廃止して価格の形成を市場原理にゆだねれば生産は縮小しますし、結果として食料安全保障にマイナスの要因として働いていくというふうに思っています。  このような関係にある市場原理の活用と食料安全保障というのが両立するという論理がちょっと私にはわかりにくいんですけれども、価格形成は市場原理で、市場にゆだねた価格が大幅に低落した場合、所得政策で対応するというふうなお答えが出るというふうに思われますが、中山間地を除いて、所得政策で救ってもらえるのは答申で言うところの意欲ある担い手が大きな打撃を受けた場合であって、その範疇に入らない多くの農家がたくさんな苦労をされているとすれば、この説明はなかなか納得できないんです。  こういうことを踏まえて、答申で市場原理の一層の活用が盛り込まれているけれども、これと食料安全保障をどういうふうに両立されていかれるのか、お伺いします。
  62. 高木賢

    政府委員高木賢君) ただいまお話のありました食料の安全保障と市場原理というものの関連についてでございますけれども、先ほど大臣から答弁を申し上げましたように、国の基本的な責務として食料の安定供給を図っていく、そのためには国内農業生産基本に位置づけて、その維持拡大を図っていくということが重要であると思います。  その場合、大事なポイントが幾つかございます。農地や水や担い手とか技術、こういったいわゆる農業生産力の維持強化ということがまず一つ大事なポイントになると思います。それからもう一つは、でき上がった農産物が消費者や実需者のニーズを満たして、これがまさに選択をされるということが大事なポイントであろうと思います。やはり、消費者や実需者の好まれないものであるならばこれはなかなか選択されない、したがって消費をされないということになりますので、そういった点について相当理解を得ないと、これは自給率の向上なりにはつながっていかないというふうに思います。  そういう点で、市場原理と申し上げておりますのは、国内農産物の需要、どういうものを消費者や実需者が望んでいるかというニーズが的確に生産者に伝わる、こういう仕組みをとる必要があるというふうに位置づけられているところでございます。例えば、麦について見ましても、国が間に入った流通ということではなかなか的確に実需者のニーズが生産者に伝わりがたい、その結果、需給のミスマッチが生ずる、こういった問題もございます。したがって、民間流通にゆだねるという方向で現在検討が進められておるわけですけれども、そういった意味合いでの市場原理の活用ということでございます。  ただ、市場原理の導入をいたしますと、御指摘のありましたように価格の変動の幅が大きくなる、それで担い手に大きなリスクを与えるということも懸念されます。特に、農業で飯を食っている割合の高い意欲のある方々に一番打撃が来てしまう。これはいかぬということで、そういう安全措置といいますか、セーフティーな措置をとりつつ市場原理の導入ということが必要ではないかということが指摘をされているというふうに理解しております。まさに、そういった意味で今後の検討を進めてまいりたいと思います。  なお、自給率といいますか、食料の安全保障という点では、食品産業と国内農業の結びつきをさらに強めるとか、あるいは食生活のあり方に関しまして国民の方々に理解をさらに深めていただく、こういった多局面がございますけれども、市場原理というのは消費者なり実需者のニーズがより的確に生産者に伝わる、こういう仕組みとして位置づけているところでございます。
  63. 和田洋子

    ○和田洋子君 市場原理を徹底させれば徹底させるほど担い手の皆さんの苦労がますますふえてくるわけですから、そういうことをぜひ考慮の上でお願いしたいと思います。  食料自給率の目標を設定していくべきということをお尋ねします。  中間取りまとめの段階で委員の意見が分かれて、両論併記になった経過がありました。それは見させていただきましたけれども、これを一本化するに当たっては大変な御苦労だったと思いますが、一本化したおかげで私たちにはとてもあいまいな、歯切れの悪い表現になっているように思われます。政府の責任もとで自給率の向上を強く進めるというイメージにはほど遠いように思われてならないんですけれども、国民参加型の生産、消費についての指針としての自給率の目標が掲げられるなら意義があるということは、自給率というものは生産者と消費者がそれぞれの立場で参考にする指標であって、政策の目標ではないということなのかどうか、その位置づけをもう少しわかりやすく説明をしていただきたい。  私なりに解釈をすれば、自給率の目標は設定するけれども、それは生産者が内外価格差の縮小や品質の向上に取り組むとともに、消費者も畜産物や油脂等の消費を抑制するということで達成される両者の努力目標ということなのでしょうか。そもそも食料自給率の目標というのは国が国民に対して食料の安全を保障する尺度であったはずでありますが、いかがなものでしょうか。
  64. 高木賢

    政府委員高木賢君) 食料自給率の向上の問題は、今御指摘がございましたが、行政としての課題というだけにはとどまらない性質を持っているというのが答申の作成過程におきます調査会での議論でございます。つまり、農業者自身、消費者自身、それぞれがまさにこういった大変厳しい事態になりますとそれぞれの具体的な課題に取り組んでいく、そういういわば一体となった総合的な取り組みがなければ達成しがたい性質のものだということでございます。  すなわち、生産サイドで申し上げますと、先ほど来言っておりますように、消費者あるいは実需者に好まれるものができなければいけない、そういった意味での具体的な課題に生産サイドは取り組む必要がある。また、消費者サイドにおきましては、情報提供などを通じまして望ましい食生活のあり方についての知識を深める、そして現在の食生活の脂肪のとり過ぎのあり方を見詰め直す、こういったことが必要なのではないかということが議論になりました。そういったもの、だれかが目標をわっと掲げてついて来いというんじゃなくてみんなで取り組む、そういう性質のものだということについて十分関係皆さんの理解を得た上で食料自給率の目標が掲げられるならば意義がある、こういうことで取りまとめられたわけでございます。  この答申の趣旨に添いまして、今後、関係方面の意見を聞いて合意形成を図りながら具体的な取り扱いについてさらに検討を深めてまいりたいと思います。
  65. 和田洋子

    ○和田洋子君 株式会社の農業分野への参入の問題でありますけれども、これは大変悩ましい問題であるというふうに私も理解をしております。  今回の答申では、条件つきで株式会社の農地取得に道を開くべきとの方向が示されました。この問題は別の機会でまたしっかりやっていきたいと思いますが、一点は、新聞報道の中でも今回の答申は耕作者主義に風穴をあけたというふうに評価している向きもあるんですけれども農林省はどういうふうに理解をされているかということと、第二点は、農業団体などの抵抗が大きいために当面はこのような形にしておくけれども、株式会社アレルギーを解消したら将来は制限を緩和していくつもりではないかという農家の方たちの強い懸念があります。橋頭屋を築いたので、今後はその拡大を図り、株式会社一般の農地取得も将来的には認められるようにしたいというような声があったりもするんですが、御見解はいかがですか。
  66. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 二点お尋ねがございました。  第一点目でございますけれども、結論から申し上げまして、農地法の基本的な考え方と言われておりますいわゆる耕作者主義の範囲内での検討ということでございます。といいますのは、今回の答申では、農地法に位置づけをされました農業生産法人の要件を満たすものを検討といいますか議論の対象にしております。  御案内のとおり、農業生産法人は農業を行う法人であること、農業者が構成員の主体を占めること、役員も農業者が過半を占めることといった要件が規定されておりまして、地域に経営基盤を有する農業者主体の法人でございます。その意味で、農地法の基本的な考え方でございます農地を適正かつ効率的に耕作する者に農地の権利取得を認めるという原則に立っておりまして、いわゆる耕作者主義の範囲内での検討ということになると考えております。  それから、二点目の御質問でございますけれども、今回の答申では株式会社一般については合意が得がたいということを明確に示しております。農地の有効利用の確保の観点からの投機的な取得につながるおそれ、あるいは水管理、土地利用等の混乱の問題、そういうことを取り上げまして、株式会社一般については合意が得がたいというふうにしているわけでございます。その上で、あくまでも地縁的な関係をベースにして、耕作者が主体である農業生産法人の一形態という基本的な考え方に立ちまして今後検討することにいたしておりますので、その意味で株式会社一般に対する考え方は明確でございます。
  67. 和田洋子

    ○和田洋子君 問題は残しましたが、次の機会に質問させていただきます。
  68. 風間昶

    ○風間昶君 公明の風間です。  大変な時期に中川大臣、御就任おめでとうというか、頑張っていただきたいと思います。  まず、このたびの一連の災害で被災に遭われた方々にお見舞い申し上げますと同時に、残念ながら亡くなられた方の御冥福をお祈りしたいと思います。  毎年毎年天災で何人かの方が亡くなる。そういう意味では、性質は違いますけれども、犯罪によって被害に遭われた方々に対する給付金が犯罪被害者救済制度としてあります。ここの部分は、天災によって亡くなられた方に対してのきちっとした、少なくとも農水関係の従事者、農業従事者の方々に対して、これまでどうなっていたかわかりませんけれども、毎年毎年十数人単位の方が天災によって亡くなると。このことについて、ただ遺憾に、あるいは御冥福をということではなくて、その手当でを考えることが必要でないかというふうに思うんですが、どうでしょうか、その点について。通告外でありますけれども、どなたでも。
  69. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、先生御指摘のように、ことしは特に集中的に全国各地で大変な災害が発生し、現時点におきましてもまだ行方不明の方がいらっしゃるわけでございます。本当にお見舞いを申し上げますということは私ももう何十回、何百回といろんなところで申し上げておりますが、それにきちっとこたえるためには、行政と政治とが力を合わせてできるだけのことをやっていきたいということでございます。  具体的には、先ほどから答弁させていただきますように、法律の原則によればこういうことだけれども柔軟に対応していきたいとか、あるいはできるだけ早期にやっていきたいとか、あるいは場合によっては制度そのものを見直す必要があるということも今後必要によっては考えていくということも含めて、災害という突発的なことに対してでありますから、我々もできるだけ柔軟に対応していくのが基本であろうというふうに考えております。
  70. 風間昶

    ○風間昶君 前向きに取り組んでいく姿勢を、決意を御披瀝いただきました。  関連してですけれども、一昨日の大臣からの水害報告で、少なくとも台風第五号による農林水産被害については被害面積被害箇所は明示されましたけれども、九月二十一日現在で。もうそれからさらに、この調査のデータは恐らく九月十七、八日ぐらいのデータだと、それをもと大臣が報告されたんだと思いますけれども、もうそれから一週間たっておりますから、現時点での台風五号による農作物被害について、本日までに掌握している被害状況被害額状況について教えていただきたいと思います。
  71. 高木賢

    政府委員高木賢君) 九月二十二日の十八時現在というのが最新のデータでございます。もちろん、現在なお調査中でございますが、その二十二日十八時現在の被害の報告によりますと、農作物の被害面積が約五万五千七百ヘクタール、それから被害金額につきましては、農作物と営農施設関係が約百三十二億円、農地農業用施設が約三十七億円、林地荒廃等が約百億円、それから水産関係施設が約十七億円、足し上げますと約二百八十六億円というのが被害総額でございます。
  72. 風間昶

    ○風間昶君 なお調査中のところもあるでしょうからまだふえる可能性があると思いますので、大変御苦労だと思いますけれども、とにもかくにも生産者方々にどういう形でまた支援ができるのかということの観点からも、早急に調査を終えるようにしていただきたいと思います。  それに関連して、台風五号ではなくて、今回の一連の七月末から八月豪雨における農業共済の対応について、これもまた調査中ということなのかもしれないけれども、共済からどのぐらいの支出見込みがあるのか。また、そのことによって共済の赤字にどの程度の影響が出そうなのか。ある意味では一〇〇パーの回答にはならないかと思いますけれども、ある程度予測が立てられるのではないかと思います、今この時点での農林水産被害調査結果から。その部分について教えていただきたいと思います。
  73. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) このたびの豪雨による農作物等の被害につきましては、現在、農業共済団体が鋭意損害評価に当たっているところでございます。  農林水産省としましては、このたびの災害状況にもかんがみまして、できるだけ迅速な損害評価あるいは事故確認の実施、それから共済金の早期支払いにつきまして農業共済団体を指導しているところでございます。  共済金の支払い時期でございますが、家畜につきましては既に支払いを開始いたしております。それから、園芸施設につきましては九月下旬から十月中旬ぐらいの支払いになろうかと思っております。それから、収穫時期での確認を要する水稲とか果樹とかにつきましては年内支払いを予定しておりますが、これもできるだけ早くできるように努力をいたしたいと考えております。  共済支払いの総額がどうなるか、今そういう状況でございますので、まだ全体の金額的な見通しは立っていないところでございます。
  74. 風間昶

    ○風間昶君 この年内支払いについては一昨日の衆議院の農水委員会でも局長はお答えになっていらっしゃいますけれども、きょうのテレビでこの一連の水害に伴う部分自治省が、年四回支払いする、支払いというか払ううちの十一月分を繰り上げて、地方交付税繰り上げ交付というニュースが流れていました。十五億四千百万。これは栃木県の三市五町と茨城県の一町。  こういう形で自治省も極めて弾力的に考えていらっしゃるようでありますから、その部分についても農水関係でもぜひ、例えば収穫時の状況を見た上でないと、水稲に限ってですよ、それでないと出てこないというのではなくて、大体だめになっているところはもうわかっているわけですから。そうすると、そのマイナス部分がわかれば当然その部分については早出しでできるのではないかというふうに思うんです。そういうことが面倒くさいのかどうかわからぬけれども、全部トータルで出てからでないと出せないというふうになるのはどうかなというふうに思うんです。その部分についてはどうですか。
  75. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) ただいま水稲を例にしてお話がございましたが、例えば、ある圃場が全減であるというようなときにはこれはその確認がつくわけでございますから、その時点で損害評価をして迅速に手続を進める、こういうことは可能なわけでございます。ただ、最終的に収穫を確認してからでないとできない場合もございます。ケース・バイ・ケースであろうかと思いますが、極力早期に支払いができるように指導をしていきたいと考えております。
  76. 風間昶

    ○風間昶君 わかりました。  次に、この間出されました新農基法の答申にも入っております株式会社参入の件、これまでも四議員によってもう議論されましたけれども、耕作放棄とそれから農地の投機を防止するという観点から農業生産法人の株式会社化を支持できると私は思っているわけですけれども、ただその場合に、もう少し枠を明確にするということが私は必要でないかというふうに思うんですね。株式の譲渡に何らかの制限を加えることができないのか、この部分についてお伺いしたいと思います。検討、議論中だと思いますけれども、考え方を教えてもらいたい。
  77. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 農業生産法人は、農地法に位置づけられて、地域に経営基盤を有する農業者主体の法人でございます。この調査会での議論は、この基本理念の範囲内で法人としての形態をどうするかということでございまして、「地縁的な関係をベースにし、耕作者が主体である農業生産法人の一形態としてであって、かつ、これらの懸念を払拭するに足る実効性のある措置を講じることができるのであれば、」と言っております。その意味で、懸念を払拭するに足る実効性ある措置一つとして、株式の譲渡に制限を設けるという手法は商法上に実施をできる明確な規定があることでもございます。そういう点から、今後の検討の対象一つであろうと思っております。
  78. 風間昶

    ○風間昶君 今後の検討つで、どういう方向で検討していくということですか。
  79. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 懸念を払拭するための実効ある措置というのがどういうふうに仕組めるかということでございますので、それらを構築する懸念払拭の方向での措置一つとしての検討対象になるということでございます。
  80. 風間昶

    ○風間昶君 何だかよくわからないんだけれども、だまされているような気がしてしょうがないんですが、またこれは議論していかなきゃならないと思います。  一方で、株式会社化によって、耕作者は会社の従業員というかサラリーマンと同じ取り扱いを一般的な見方からするとできると思うんです。トーゴーサンといったような所得の捕捉の格差、この部分についての問題も是正できると考えられるんですけれども、その際、株式会社の正規の会計処理システムとして対応し得るものなのかどうなのか。どうですか。
  81. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 株式会社は商法に基づきまして、商業帳簿あるいは損益計算書等の計算書類の作成が義務づけられております。したがいまして、仮に株式会社である農業生産法人というふうなものがということになるといたしますと、当然にしてこの商法上の帳簿処理が必要ということになろうかと思っております。  現状を申し上げまして、現在、農業生産法人の形態として有限会社がかなり広範に使われておるわけでございますけれども、この農業生産法人たる有限会社につきましても、既に有限会社法によりまして、今、私が申し上げました株式会社と同様の帳簿処理の原則、計算規則と申し上げでいいと思いますけれども、それが適用されておりますので、そういう点で同じ扱いになるというふうに考えられます。今後の検討でございます。
  82. 風間昶

    ○風間昶君 株式会社の農業参入が担い手対策の有望な選択肢の一つであるというふうに思っております。  他方、これまでそういうことが議論はされていたけれども、それができないから、高齢者の方々が、担い手がいたとしても継がせられない、あるいは高齢の担い手の方々ができないというような状況があったからこそ、昨年でしたか、ことしも含めて、さまざまな青年就労支援法等々をやりましたね。  一方では、ですから離農せざるを得ない農家農地を譲り受けたり、あるいは賃借したりするなどで耕作を続けようとする担い手に対してはこれまでどおり続けていくべきだと私は思っているんですけれども、だからダブルの、両輪になっていく話じゃないかと思うんですね。農業生産者の株式会社化の一方では担い手、もう一方ではこれまで積み上げてきた高齢者支援あるいは青年新規就農支援等、こういうふうになっていくと思うんですけれども、株式会社の参入によってこれまでやられてきた就農支援が十分でなくなる懸念もあるわけですから、そこの部分についてはどうですか。
  83. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 調査会での議論の中でも一番焦点になりましたのが多様な担い手を形成するということでございまして、多様な担い手ということで、どれだけが今後の担い手ということではなく、個別農家もあれば集落営農もあれば農業生産法人もあると。  また、農業生産法人の活動をより活発にする、そういう観点から、農業生産法人の枠内で法人形態として株式会社を認めてはどうかというふうなことで、多様な担い手を形成するというのが大きなポイントになっておりますので、これまで力を入れてきた個別農業経営、あるいは法人への就職等を通じた新規就農、その他担い手を育成するための対策は今後も強化をして続けていきたいと考えております。
  84. 風間昶

    ○風間昶君 いや、それはだから考え方なんだけれども、だって予算は決められているんだよ。新たに株式会社参入のまた予算組みもしなきゃならないわけで、どこから持ってくるの、それは。お金の面でいうと、今まで青年就労あるいは高齢就労者の支援対策をずっと掲げてきて、株式会社化の部分を今度やるというんだったら、どこから持ってくるんですか。できるんですか。
  85. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 農業の政策手法というのは、先生承知のとおりでありますけれども、いわゆる補助金あるいは価格政策といったようなものだけではなく、技術的あるいは経営面での指導もございますし、融資という道もございますし、お互いお金を出し合うというふうな道もございます。そういった多彩な手法を通じて内容を充実していきたいというふうに考えている次第でございます。
  86. 風間昶

    ○風間昶君 質問には答えていないけれども、まあいいです、時間がないから。  自給率の目標設定についても議論がありました。目標設定が導入される傾向というか流れにあるというふうに認識しておりますけれども、その際、大臣のまず御認識を伺いたいんですが、大臣自身が自給率という場合にどういう物差し、どういうものを想定しているのか、僕は聞いていないんです、まだ。つまり、穀物ベースなのかカロリーベースなのか、両方なのか。  いずれにしても、この飽食の時代ですから、個人的にも大臣になる前に一緒に食事しましたけれども、国内生産や輸入によって食卓に上るものをすべて分母に置く必要は私はないと思っているんです。むしろ、国が責任を持って国民に供給を約束できる穀物量や野菜などの量が先に決まってから、どのくらいが国産でカバーできるのかなというふうに自給率を計算するのではないか。それが自給率ということの数を上げるために、率の目標の前に、本当は国民がどのくらいの食料を必要としているのかという議論が国民にも伝わってこないし、私らにもわかってこないし、そこの部分は農水省がやっぱりどれだけ情報を仕入れ、そして分析し、その結果で出てくるのではないかというふうに思うんですよ。先に食料自給率ありきでいくから、これまでの消費の傾向とか何かに流されていって、ぐずぐずと崩れていくということを私は否めないんじゃないかというふうに思うわけであります。  だから、大臣自身が自給率という場合に穀物でいくのかカロリーでいくのか、言えないんだったら、どういうような認識なのかぐらいのさわりを教えてもらいたいし、とにかく国民がどのくらい食料を必要としているのか、穀物量あるいは野菜、そんなところが大臣の懐に、腹におさまっていないと、自給率云々ということは言えないんじゃないかと思います。それを含めて認識を伺いたい。
  87. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私は、初当選以来農政に携わってきた人間といたしまして、特に先生と同じ北海道でございますから、そういう意味でやはり自分が食べているものをふとじっくりと考えたときに、例えば卑近な例でありますけれども、私の大好物の一つにてんぷらそばというのがあるのでありますが、このてんぷらそばのそば、そばつゆ、エビ、衣、あるいはネギ、唐辛子といろいろありますけれども、この中で国産のものは一体どのぐらいあるんだろうかと考えたときに、ほとんどない。ネギぐらいかなというふうに思うと、正直言って素朴に非常に寂しいものを感じざるを得ません。寂しいのを通り越して、これでいいだろうかという疑問すら思うわけであります。  てんぷらそばの例は極端かもしれませんけれども、翻って、先生から御指摘の自給率とは、おまえ、どう考えるんだという御指摘でございますけれども、私自身は諸外国との比較というものもやっぱり一つの大きな参考になるのではないかというふうに考えます。  自給率というものについてはまず代表的なものとしてはカロリーベースと、それから穀物ベースとございます。  よく我々が使うのほかロリーベースで四二%程度だと、世界で最低部類であるというふうに比較をしておりますが、最近はどうも世界的な比較としてはなかなかカロリーベースの比較がしにくいということで、最近の統計では余り比較になるような世界の各国のずらっと並んだ統計が出ておりません。  各国と比較になるのは穀物ベースの自給率でございまして、これも御承知のようにもう三〇%を切っておる水準でございまして、これも当然世界でも最も低い状況でありますが、いずれにいたしましても先進国、OECD二十九カ国ですか、を比較しても日本が圧倒的に低い。しかも、時系列的に見ますと、ほかの国々は低い国でも少しずつ上がってきておる、あるいは一〇〇%を超えている国でもずっと伸びたりあるいは維持をしておるという状況の中で、日本だけが、世界で最も低い国の一つであるにもかかわらず、さらにそれが穀物ベースであろうがカロリーベースであろうが下がっておるという状況は、果たして今回の答申の中の食料安全保障的な観点から見ていいのだろうか。  これは何を意味するかというと、ある日突然不測の事態が起きたときに、例えば平成五年の米の大冷害のときに、あのときは前年度の米の備蓄繰り越し在庫がたった二十六万トンしかなかった。二十六万トンしかなかったところに作況七四というものがどんと重なったことによって大変なああいう米パニック等も起きたわけでございますから、やはり日ごろから、少なくともどんどん下がってくるという状況を看過するのはいかがなものかというのが一つございます。  一方では、今度の答申の中でも述べられておりますように、では、何でもかんでもつくっておけばいいのかというと、決してそうではない。やはり、生産者にとってのお客さんであります国民ニーズにこたえられるものをつくっていくということも今回の大きな答申の柱になっておるわけでございまして、そういう意味生産者は国民のニーズにこたえられるように生産活動をする、あるいはまたすべての国民はやはり国産でつくってもらう農産物、食料品を基本とすることの意味というものを十分御理解いただく、この両々相まちまして私は自給率の議論というものが初めて実のある議論になっていくんだろうと思い、そしてそれを少しでも上げでいくということが、我々にとりましては、国民生活にとりましても、そしてまた生産者たる農業者、農村地域にとりましても意味のある、また将来にわたってプラスになることではないかというふうに考えております。  調査会の答申におきましても、このような自給率の特質や、その維持向上を図る上で必要となるそれぞれの課題について国民全体の十分な理解を得た上で、食料自給率の目標を掲げるならば意義があるというふうに書かれておりますけれども、やはり消費者、生産者ともども食というもの、そして我が国が生産する食というものを考えていただき、そしてその基本的な部分を共有していただくということに大きな意味があり、その上で自給率向上に向かって議論が進んでいくことを私としては期待をしておるところでございます。
  88. 風間昶

    ○風間昶君 ですから、そこからもうちょっと踏み込んで、国民がどのくらいの食料を必要としているのかというのは、例えば農水省で公聴会であろうが何であろうが私はやるべきだと思うんですね。つくる側だけの意見と、それからさまざまな環境問題とかいろんなことで心配されている消費者とが食い違ったまま、農水省としてはどうしようもない状況に今だんだん入りつつあるのではないかというふうに私は思っておるものだから、そこをクリアするためにももっともっとやっぱり理論上の、今、大臣がおっしゃったように、消費者と生産者のそれぞれが相まってと言ったけれども、その相まつためには農水省が乗り出していかないと、これは国民の食に対する意識の底の気持ちがわからないんじゃないかというふうに思うんですね。ぜひやっていただきたいと思います。  消費者側からしますと、最近また遺伝子組みかえ食品についてもいろいろ表示をめぐって議論があります。科学的に安全であるかないかということの論争は当然やらなきゃならないわけですけれども、一消費者から言わせれば、それが要するに遺伝子組みかえであるかどうかということがわかるかわからないかということが私は大事だと思っておるものですから、そのことがまた食の選択の幅を広げたり何かすることにつながると思うので、確かにそれは表示をするとなると生産者あるいは輸入業者にかかるコストはまた大きくなるけれども、しかしそれを食べる、受けるのは我々国民、消費者だから。  そういう意味では、少なくともいろんな科学的な安全性の議論はあるにしても、これは遺伝子組みかえ食品ですよという表示をとりあえずすることが一歩、私は消費者にとっても大事なことではないか。科学的にこれだから、何%だから安全ですとか何かでなくて、この食品、食材は遺伝子組みかえの操作がされているということの表示を私はすべきだと思いますが、どうですか、それは。
  89. 福島啓史郎

    政府委員福島啓史郎君) 今御質問のありました遺伝子組みかえ食品につきましては、先生御案内のように、平成八年に厚生省によりまして大豆、菜種等の安全性が確認されまして市場流通が現実のものになった。そういったことから消費者等から遺伝子組みかえ食品であることの表示を求める声が、先と言われましたように、高まっているわけでございます。  こうした状況を踏まえまして、農林水産省といたしましては、昨年五月より食品表示問題懇談会を開催いたしまして、遺伝子組みかえ食品の製造、流通実態を踏まえました表示のあり方につきまして検討を行ってきているところでございます。  先月開催されました懇談会におきましては、報告書のたたき台を提示したところであります。この中では、表示の目的を安全性の有無に関するものではなく、商品選択のための消費者に対する情報提供であると位置づけた上で、これまで特に議論が分かれていた点、すなわち遺伝子組みかえ食品につきまして表示を義務づけるのか、それとも任意のいわゆる不使用表示等を適切に行うことで十分なのかにつきましては両案を示すとともに、遺伝子組みかえ食品の製造、流通実態に即しまして検査を義務づけない不分別の表示を設けているところでございます。また、これらの案につきまして、いわゆるパブリックコメントを求めでおります。それらを取りまとめた上で、次回の懇談会で検討を行うこととしているところであります。  いずれにしましても、遺伝子組みかえ食品の表示のあり方につきましては、懇談会の検討結果を待つで適切に対処してまいりたいというふうに考えております。
  90. 風間昶

    ○風間昶君 時間がないですから、最後の質問になりますので的確に答えてくださいね。  環境への負荷軽減に配慮した持続的農業ということがこの数年議論されて、それで農水省も形というか名目上は環境保全型農業、環境保全型農業と言っているけれども、極めて国民的にはわかりづらい。すなわち、ハードの部分だけは農、水、林それぞれあるし、また十一年度の概算要求でも環境に寄与する農林水産業推進対策ということで六十七億を要望しているわけですけれども農業に限って言いますと、農地の土壌の問題について、御案内のように、この二十年から三十年で堆肥を含めて有機物がどんどん下がってきている、土壌中の割合が。そして、もう三倍ぐらいに燐酸が高くなり、そして一・五、六倍水田も畑地も石灰が多くなり、そしてカリも多くなってきている。こういう状況の中で、環境保全型農業、いわゆる土づくりにやっているやっているとは言うけれども・どういうことをやっているのかということが見えないような気がいたします。  したがいまして、この六十七億の概算要求も見させてもらったけれども、今年度の、本年の予算執行状況について、この土づくり、土壌中の成分の部分について、化学肥料を少なくするとかそういういろんなことについてあると思うんだけれども、そこの部分でどのぐらい執行されたのかということを最後に伺いたいと思います。
  91. 樋口久俊

    政府委員樋口久俊君) 先生お話ございましたように、確かにこのところ燐、カリ、石灰、かなり土壌中の含有量がふえてまいってきておりまして、これは生理障害とか病気にかかりやすいということがございまして収量の減につながるわけでございますが、そういう考え方が農家方々の中にも浸透してまいりまして、ハードに限らず、このところの普及センターとか農協でやっております土壌診断とか作物診断というものが大変大事だということがわかってきていただいております。したがいまして、そういうところに力を入れる、それから施肥基準などをきちんと整理していこうというような、いわばハードに対しますソフトの部門に対する認識が深まってきていると思います。  そういうこともございまして、特に来年度はそういう点を含めました予算の充実を少し踏み込んでやってみようじゃないかということで、お話をなさいましたような額で現在、概算要求をいたしておるというところでございます。  具体的な執行状況は十年度でございますのでまだはっきりいたしておりませんが、少なくとも十年度については今申し上げましたような部分をしっかりやって、それから来年度の予算要求につなげていって、全体として土づくりが充実をされるというふうに私どもはしたいなと思っているところでございます。
  92. 風間昶

    ○風間昶君 終わります。
  93. 野間赳

    委員長野間赳君) 午後一時に再開することとし、休憩いたします。    午後零時一分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  94. 野間赳

    委員長野間赳君) ただいまから農林水産委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、農林水産に関する調査を議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  95. 須藤美也子

    須藤美也子君 日本共産党の須藤美也子でございます。  中川大臣には初めて質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。  私は、まず最初に、きょうは新人の大沢議員と二人でやりますから、最初、食料・農業・農村基本問題調査会の答申についてお尋ねをしたいと思います。  最初に大臣に、二の答申はWTO農業協定の枠内での対応基本としたものではないのか、その点をまずお聞きしたいと思います。
  96. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) この調査会の答申は、現在置かれておる日本の食料・農業・農村の現状をしっかりと踏まえた上で、日本のあるべき食料あるいは農業・農村の姿について、今後の数十年に耐えられるような基本法づくりをするために、総理大臣から調査会での御議論をお願いしたところでございます。  現状ということになりますといろんな与件があるわけでございますけれども、現在のWTO体制もその中の一つということになるかと思います。
  97. 須藤美也子

    須藤美也子君 橋本前総理の施政演説、昨年の一月二十日に改革方針が出されました。その施政方針の中に、WTO体制にも対応した農政を実現するための新たな基本法の制定に向けて本格的な検討を進めますと、こう施政方針で述べております。  ですから、今回のこの答申、私も読ませていただきました。WTOのWの字も出ておりません。しかも、この中身は自給率の向上も明記されていない。さらに、輸入自由化拡大のために市場原理の一層の導入を図る、こういういろいろな文言を見ますと、「国際規律との整合性」というのが答申の中にありますね。ですから、二十四ページの⑤の「国際規律との整合性」、明らかにWTO枠内でこういう答申が進められ、これからそれに合わせた制度の改正を行おうとしているのではないか、こう言わざるを得ないのですが、どうですか、大臣
  98. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 自由化拡大のために何らかの方策を提言しているということはこの答申の中にはございません。  それから、先ほども申し上げましたように、現在置かれておる日本の食料・農業・農村の現状、例えば環境問題、あるいは食料に対する国民のニーズ、さらには日本が果たすべき国際社会における食料に対する協力援助のあり方、あるいは国民の生命や健康づくりといったいろいろな現状を踏まえ、分析をし、そしてそれに対してどういう方向性、対策をとっていくかということの御審議をお願いしたわけでございまして、その中の一つとしていろいろな条約あるいは法律というものが現在あるわけでございますから、少なくとも現WTO協定というのは二〇〇一年まで約束されておるものでございますから、その中の一つとしてのWTO体制の約束というものも与件として当然議論の前提に入っているわけでございます。
  99. 須藤美也子

    須藤美也子君 私は、いろいろ今答弁がございましたけれども、この答申の内容全体はそういうWTOの枠内でこれからの二十一世紀に向けた日本農業を進めようと、こういうふうに言わざるを得ない。  そこで、逐次質問をしたいと思います。  まず、答申の初めに、「戦後の農政を形づくってきた制度の全般にわたる抜本的な見直し、二十一世紀を展望しつつ国民全体の視点に立った食料・農業・農村政策の再構築が、今なされねばならない。」、言ってみれば、戦後農政の総決算をここで言っているわけです。それに対して大臣の談話はこう言っております。この四のところで、大胆な改革を実行していかなければならない、こういう談話を発表しております。  ということは、これまでの制度を全面的に変えることを意味しているのかどうか。これは簡単でいいです、答弁してください。
  100. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 昭和三十年代半ばの農業基本法の時代から現在を経まして世の中は大きく変化をしております。したがいまして、農業基本法の趣旨というものの中に時代に合わないものも、当然新たな問題あるいは変化とともに幾つも私は出てきておると思っております。  しかし、農業基本法第一条にございますような農村社会の都市部に比べた生活環境、経営環境のおくれ、あるいは所得の格差、そしてまた食料をできるだけ国産でやっていこうというような趣旨については変化はしていない、その上に時代の変化とともにいろいろと新しいものが必要になってきておりますので、そういうものについては新たな政策等を大いに取り入れていく必要があるという趣旨の発言でございます。
  101. 須藤美也子

    須藤美也子君 それでは、もう少しお尋ねいたします。  現行の農基法です。  現行の農基法は農業生産の増大、これを掲げております。株式会社ではなくて家族経営を基本とし、そのもと農地制度や食管制度、価格支持など農家経営と生産の維持に欠かせない制度的な支えがあった。その後、農業生産に意欲が持てなくなるほど次々と制度を変えていった。つまり、農産物の総自由化です。さらに、大規模農家の育成と称して、一九九二年の新農政、さらにWTOに合わせて市場原理の導入を図った新食糧法、これによって自給率の異常な低下、たった三年間でカロリーベースで四六%から四二%、穀物自給率は三三%から二九%に下がりました。大臣も先ほどおっしゃいましたように、こんな国は世界に日本しかないんです。こういうような状況に今追い詰められています。  さらに、耕作放棄地の拡大、担い手の減少、今農村の生活基盤そのものが失われております。学校はなくなる、診療所はなくなる、生活そのものの基盤が失われつつある。  こういうふうに、農業・農村を追い込んだ原因はこの答申の中でどう分析されているんですか。
  102. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 答申はあくまでも現時点における現状の分析と、それからこれから二十一世紀に向けて国民ひとしく必要不可欠な食料の国産を基本とした安定的な供給、あるいは非常事態に対する対応、そしてまた先ほど申し上げたような国際社会に対する貢献、あるいは消費者ニーズにこたえられるようないろいろな生産者の御努力というものも含めまして、消費者と生産者とが本当に共生できるような新しい食料・農業・農村政策を構築していこうという前提で御議論をいただき、それを政府としては踏まえながら、また国会その他の場での御審議、御議論をいただくことにしておるわけであります。  過去についていろいろとまた総括すべきこともありますけれども、WTO体制でどうなったとか、あるいはまたここ数年でどうなったとかいうことを短絡的に考えるのではなくて、長い間の日本の農政を踏まえて、今後の長い食料・農業・農村政策にたえ得るような政策をつくる基礎づくりとしての答申でございます。
  103. 須藤美也子

    須藤美也子君 私はそういうことを聞いているんじゃないです。今日こういう農業に衰退していった、こういうことに対する何が原因だったのか、その分析がどこにこれに書かれているのか、これを聞いているんです。でも、先ほどから答弁を聞いていますと抽象的な答弁しがなされないようですから、高木さん、何か答弁したいしたいとおっしゃっていますから、つけ加えることがありましたら具体的におっしゃってください。
  104. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生から抽象的だという御指摘がございましたが、そもそもこれは法案づくりのための一年半にわたる御議論での結果でございます。生産者、消費者、学識経験者、その他大勢の三十数人の国民を代表する方々が一年半をかけて、あるべき食料・農業・農村の姿について御議論をいただいたわけでございますから、これをもとにまた国会、当委員会を初めとするいろんな場で御議論をいただいて、より具体的に、そしてまたいろいろな御要望や御指導をいただきながら具体的な法案づくりをし、最終的にはそれによって生産者、農村地域、そして国民が幸せになれるように、またよりよい姿になれるようにというのが最終目的のこの政府のスタートでありますから、多少抽象的になることは私はやむを得ないと思います。
  105. 須藤美也子

    須藤美也子君 これは一年半もかけてつくったわけでしょう。これを基本にしてこれから二十一世紀に向けて、二〇一〇年に向けて日本農業の立て直しを図ろう、大胆な変革を行おうとしているわけでしょう。大事な問題なんですよ。その中に、今日ここまで追い詰めた農業・農村の原因の分析がない。そして、今の答弁では政府の責任一つも感じていない。ここに私は問題を感ずるんです。そういう点でいえば、新農政、新食糧法、そして新しい米政策、これによって農民がどれだけ苦労しているか。  私はきのう北海道に行きました。一番その犠牲を受けているのは中川大臣のおひざ元の北海道ではありませんか。きょう鵡川町の農業危機突破生産者大会が今開かれていると思います。北海道農業はどうですか。規模拡大をした。きのうお会いしました三十代の男性は、二十四ヘクタールで、ことしは恐らく一千万の減収になるだろう、こう言っているんです。ことしもさらに離農がふえるだろう、しかも政府にこれまで二十万トン政府米買い上げをしていただいたが、ことしはそのめどもつかない、こういうことで最も悲惨な状況になっているのが北海道だと思うんです。規模を拡大して借金をつくった、しかし米価は上がらない。その犠牲を農民が受けているんです。  ですから、今回の一年半もかけていろいろな方々からの意見も聞いてつくられたこの答申が、展望の見えない今の農家にとって二十一世紀に向けて希望の持てるような内容になっているのかどうか、ここをはっきりお答え願いたいんです。なっているのであればなっていると、なっていないのであればなっていないと、農家皆さんがはっきりわかるように答弁していただければいいんです。後の注釈は要りません。
  106. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) なっていると思います。それを前提に御議論をいただきたいと思います。
  107. 須藤美也子

    須藤美也子君 私は全然なっていないと。そうでなければ、なぜきょうあたり農民が全国各地で危機突破集会とか、それからいろいろな陳情が来るんですか。  この新しい食料・農業・農村に関する基本法づくりに対してさまざまな意見がマスコミ等でも報ぜられているわけです。もうお読みになっていると思います。そういう中で、今回、まず最初に農民の皆さんが非常に不満を感じているのは、私どもは自給率の向上、つまり目標が明らかにされていない、こう言いましたけれども生産者にとっては生産者が目指す目標が明らかにされていない、見えない。なぜこれが明記されないのか。  二十一世紀を本当に展望してこの答申を出して、これに基づいて審議をするのであるならば、私もローマで開かれた世界食料サミットに参加しました。これは今現在、国際的な全体の食料問題の基本になっております。二〇一五年に向けて世界の飢餓人口八億四千万人を半減する、こういうことをローマ宣言で採択をいたしました。それに向けて各国がそれぞれの国の食料主権を守って国内生産を高めていく、こういうことを確認したんです。にもかかわらず、これがどんどん減少しているわけです。食料自給率が今減少している、四二%と。  先ほどからカロリーかどうかと言いましたけれども、私はいつもこの農水委員会で、一億二千五百万人国民のうち国内生産で食べられる人員が五千万人しかいない、あとの七千万人は外国の食料に依存しなければ生きていけないと申してきました。しかし、カロリーで計算するならば、今、人間が一人生きていくのに必要なカロリーは、参考資料にもありますように、一日約二千七百カロリーから二千四百カロリーです。カロリーベースでこれの四二%ですから、国内生産では千百カロリーから千カロリーしかないということです。これでは、日本が今飽食で金さえあれば好きなものを食える、しかし既に中身を見れば、カロリーベースでいけばもう日本は飢餓の国に入っているんじゃありませんか。  そういうことを考えるならば、私は、食料安全保障とか農業の持つ多面的機能の育成とか機能を発揮するとかいろいろ話をしています。目標に掲げています。それをどう具体化するのか、どう農家にそれを示すのか、これが今最大、政府に求められていることだと思うんです。ところが、この目標が明確にこの答申の中でも明記されておらない。これが二十一世紀に向けて一番重要な課題ではありませんか。国際的には食えない人たちが八億以上もいる。一方で、主食、米が日本ではたっぷりつくれるのによそから輸入して、その輸入米が倉庫に山積みにされている。これが国際化ですか。大臣の言う国際化というのはどういうものなんですか。  食料安全保障を本当に守るのであれば日本の食料主権を守ることではないですか。各国の食料主権というのはいかなる国際法もこれを侵してはならないという国際的な決まりがあります。そういう点で、食料主権を守る、これはローマ宣言で各国から発言され、ローマ宣言の行動計画の中でこれが打ち出された内容であります。そのことを言っているんです。それを実現……(「できるわけない」と呼ぶ者あり)できるわけないと言っていますけれども、できるんです。今まで、一九六〇年、これやってきたでしょう。  現在の農基法をつくるとき、このとき自給率は七九%、主食糧の穀物自給率は八九%、穀物自給率は八二%だったんです。そのとき国が先頭に立って、国内生産の推進を各県にその目標をきちんと提示して進めたから農業に意欲を持って生産に励むことができた。こういう農業を私は、もう一度今度の二十一世紀の農業を目指すのであれば、そういうことをきちんと掲げるべきではないかというふうに思います。(「時間だ」と呼ぶ者あり)時間だ時間だと言いますけれども、答弁をいただいて、きょうの党の持ち分は三十分ですから。  そういう点で、その辺は厳しく、食料主権の問題、安全保障の問題、そういうことをただしゃべるのでなくて具体的な目標を掲げて、日本農業再生のためにこの答申が生きるように、農民に希望を与えるような、そういう基本法になるように強く私は大臣に要求をしたい。それで終わります。答弁は要りません。
  108. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 引き続きまして、私、日本共産党の大沢辰美より残された時間、農業災害の問題について質問いたします。  先ほどから議員の皆さんから災害についての質問もございましたけれども、本当に台風七号の被害が一層深刻なものになっておりますし、誠意を持ってお答えいただきたいと思います。  私は、先日、災害対策特別委員会でも一部質問したんですけれども、やはり現行制度の範囲にとどまる答弁しかいただけないんですね。これでは農家の方は再生産に希望が持てない。  そこで、私は八月上旬の水害を受けた新潟県にも行ってまいりましたけれども、既にここはもう調査が終わっているわけですから、新潟県の一つの村、笹神村のその後の状況について農家の方のお話を問いでまいりました。この小さな村は減反による転作で大豆を七十五町歩つくっていたんです。だけれども、それが全部だめになったと。その中でも三分の一の二十五町歩は全滅しているわけなんです。その減収金額たるや、小さな村で千九百七十四万円だとも言っています。お米も、もうわせを収穫したんですけれども、規格外の米が九割にも上っているということでとても困っていると。村は今、一生懸命に農家生産再建のために頑張っています。  そこで、大豆の共済についてお尋ねしたいんですけれども、今回、大豆を転作した農家の方は一割しか共済に入っていないんですよ。その結果、大きな痛手を受けていることは事実なんです。未加入の農家の方は早く秋野菜に取りかかれるように県は苗代なんかを補助して指導が始まっているんですけれども、ところが共済に入っている方、この人たちは、先ほども質問がありましたけれども、共済の制度上、収穫時期の、この笹神村は十月下旬だそうですけれども被害認定が受けられず、全滅した大豆を眺めながら困っているわけです。秋野菜に間に合えば少しでも収穫があるわけですから、早期認定、支払いを早くやってほしいと要望されています。収穫皆無はもうはっきりしている場合です。だから、収穫時期を待たずに認定を行って、農家生産再建の意欲にこたえるべきだと思います。  農水省はせんだって早期支払いの通達を出していますね。ですから、本当に実情に合った早期認定、支払いが行えるようさらに指導してやっていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  109. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 共済の損害認定の話でございますが、通常、大豆の損害評価につきましては収穫時期に実施するわけでございますが、お話のように、損害が既に判然としている耕地につきましては収穫期を待たずに適切な時期に損害評価を実施できることになっております。したがいまして、お話ありましたような、例えばもう既に全損が明らかである、そういうような圃場につきましては、収穫期前でありましても早期に損害評価を終了いたしまして、営農活動の早期再開ができるように農業共済団体等も指導していきたいと考えております。
  110. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 本当にはっきりしているということを農家の方もそれから村も言っていらっしゃるわけですから、その辺は現況に合った形で急いでやっていただけるようにもう一度指導していただきたいことをお願いして、次の点をお尋ねしたいと思います。  二点目は、共済制度そのものなんですけれども、大豆はことしから転作された農家が多いんですね、この村の場合は、特に。一割しか共済に入っていないということを今申し上げたんですけれども、なぜ入らなかったんですかとお聞きしましたら、掛金の負担の問題と補償の内容に問題があると言うんですね。昨年まで皆さんは稲をつくっていらっしゃったわけですから稲作の共済のことが頭にあって、品質低下で補償が受けられなかった、いざ被害に遭ったときに思うように補償が受けられなかったというその経験から、高い掛金負担をして入る気になれなかったというのが今回の転作農家の方たちの共済に入らなかった一つの大きな理由に示しているわけなんですね。  だから、私は、本当に農家の方がこういう転作した人たちも含めて加入しやすい掛金に引き下げるとか、その結果、国庫負担をふやさなければいけないと思うんですけれども、こういうことを検討していただきたい。  お米の場合は、ことしは本当に集中豪雨と日照不足も出ていますから、品質低下というのは非常に問題になっているわけですね。今、笹神村の場合はもうわせの収穫を終わっているんですよ。ですから、ここではどうも規格外の米が九割に達したと言っていますから、この分にもやはり共済を認定できるように、そういう農家の方のお願いなんですけれども、いかがでしょうか。
  111. 竹中美晴

    政府委員(竹中美晴君) 御存じのとおり、水稲共済は共済事故によって収穫量が減少したという場合に共済金を払う仕組みでございまして、通常の場合、品質を加味するということは難しい面がございます。  ただ、異常な災害で広範囲にわたりましてお話ありましたような低品質米が発生したと。そういう場合には、共済組合連合会の申請によりまして損害評価の特例措置を講ずることができるようになっております。この特例は一定の基準によりまして被害粒等の低品質米を除いて収量を確定するというものでございますが、今般の豪雨災害に際しましても、農業共済組合連合会から申請がございましたら適切に対応していきたいと考えております。
  112. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 ぜひ本当に……
  113. 野間赳

    委員長野間赳君) 大沢委員、時間がございませんから。
  114. 大沢辰美

    ○大沢辰美君 はい、わかりました。  本当に特別措置を講じなければならない今回の災害だと私は認識している。また、村の人たちもそういう思いで期待を寄せているんです。そういう共済でまたあってほしいと思いますから、それでこそ役に立つわけですから、それをもう一度、今回トータル的にあるんだと思いますけれども、その件についてはぜひ、連合会の要請があればということが入りましたけれども、あればやはり対応をしっかりと答えていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  最後、一分間ありますけれども大臣お尋ねしたいんですけれども、私は、本当に小さな村の実態を挙げて質問しましたけれども、今回の水害はいかに大被害であったかということを認識されて、全力を尽くしますという答弁をいただいたんですけれども激甚災を受けたってやはり七%農家負担はありますし、農地の場合。そして、農作物でも、こんな小さな村でこういう問題が発生しているという個々の分野にまでやはり気を配って、本当に農家皆さんが来年の転作に希望が持てるように、こう言っているんです。種を分けてほしいな、そして規格外の米も政府が買い上げでほしいなと本当に切実におっしゃっています。そういうことを踏まえて、大臣の今の見解をお尋ねしたいと思います。
  115. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、先生が実際に視察されたことの御質問でありますけれども、私もいろいろ見てまいりまして、一年間手塩にかけて、あるいは数年間かけてつくられてきた作物、あるいは畜産も含めてでありますけれども、一瞬のうちに大変なことになってしまった、まるで自分の子供を失ったかのような非常に悲痛な声を直接聞きました。  生き物相手、自然相手の大切なお仕事でありますし、意欲というものが何といっても一番大事でございますから、その意欲が一日も早くまた増すように、もとに戻るように、そしてまた一層頑張ろうというふうなお気持ちになっていただくように、小さな村であろうがどこであろうが、農家お一人お一人の損害に対しまして万全を尽くして早急に対策をとり、そして今後の営農にまたいそしんでいただけるように全力を挙げて頑張っていきたいと思っております。
  116. 谷本巍

    ○谷本巍君 大臣、御就任おめでとうございますと申し上げたらいいのか、御苦労さまですと申し上げたらいいのか、ともかくもひとつ頑張っていただきたいと存じます。  大臣とは、かつて連立内閣を組んでいるときにたびたび調整会議で御一緒させていただきました。私どもが強く印象を持っておりますのは、議論が込み入ったときに大臣の発言が一番公正な判断を下される、あるいはすぐれた的確な判断を下されたことがたびたびでありました。農業・農村の将来を決める基本法づくりという大事な仕事を控えておられるわけでありますから、そうした大臣のすぐれた判断をこの際また示していただきたいということをまずお願い申し上げておきたいと存じます。  初めに、災害問題から質問させていただきたいと存じます。  福島県の西郷村でのからまつ荘の土砂崩れ災害の問題についてでありますが、豪雨災害でとうとい人命がここでも失われました。救護施設からまつ荘の場合で申し上げますというと、裏山の土砂崩れにより五名が死亡したと、これは国土庁の報告の中でそう述べられております。ここで言う、裏山の土砂崩れにより五名死亡というのは現場を確認された上で書かれているものなのかどうか、この点を伺います。
  117. 林桂一

    政府委員林桂一君) お答えいたします。  災害によります被害の国への報告につきましては、基本的に市町村から県を通じ、それから自治省、消防庁、さらに国土庁へと報告されるというルールになってございます。  今回の救護施設からまつ荘における被害状況につきましても、県から消防庁に報告され、それをもと平成十年八月末豪雨による災害の取りまとめ資料を作成し公表したところでございます。  したがいまして、国土庁がそれを当初の段階から現地で確認しているかというお尋ねであれば、そうはなっておらないわけでございますけれども、以上の全体のこの報告の流れの中で、当然、村の段階あるいは県の段階で現地を確認した上でこのような表現方法をとっているというふうに考えているところでございます。
  118. 谷本巍

    ○谷本巍君 この事故が、災害が起こった後、内閣総理大臣現地へ足を運ばれました。私も同じ日に現地に足を運びました。そこで見たのは裏山のかけ崩れのようなたぐいのものではない。現地人たちお話を伺いますというと、ほぼ二キロ先の山からおりてきた土石流であるという説明でありました。亡くなられた方の部屋も拝見いたしました。がけ崩れなら部屋満杯に土石がいっぱいになるということはあり得ないんです。裏の山もそんな崩壊状況にないんです。  そうしますと、これはやはり正確に土石流というぐあいに言わなきゃならぬ問題ではないのか、私はそう思うんですが、いかがでしょうか。
  119. 林桂一

    政府委員林桂一君) この土砂崩れという言葉の持つ意味でございますが、いろいろな形の土砂の移動による被害ということに関しましてありますが、そういったものを一般的に表現する言葉として土砂崩れという言葉を用いているところでございますので、先生が言われますような、建設省におきましても、その後、土石流という認定をされておられるようでございますので、そういう意味では、より正確に申しますれば土石流ということであることだろうと思いますけれども、とりあえず、土砂崩れというのは、そういったことも含む一般的な土砂の移動による被害である土砂災害を一般的にあらわす言葉として間違いではないというふうに考えているところでございます。
  120. 谷本巍

    ○谷本巍君 これは重大なことですよ。いいですか。裏山のかけ崩れというのと山のてっぺんの方から土石流が流れてきたというのはこれは全然違うんだよ。こういう状況というのははっきりさせなきゃならない。なぜはっきりさせなきゃならないかといいますというと、その後の体制がまるで変わっちゃう、対策が。  この西郷地方でいいますというと、多くのがけ的な土手的なものというのは、これは岩盤がありまして、土はこんなものなんです、十センチか二十センチなんですよ。ですから、これはがけ崩れというのは非常に起きやすいところなんですよ。ところが、ここで起こった事故も同じように地元皆さんが判断しておられる、はるか二キロのかなたから土石流が流れてきたということになったら、その後の対策をどうすべきかということになってくると、山の問題から手をつけなきゃならぬということになるんです。  ですから、この種の発表というのは正確を期していただきたい。みそもくそも一緒にして、それで同じ土砂崩れだとやられたんじゃたまったものじゃないですよ。事後対策関係がありますから、そこのところはきちっとしていただきたい。
  121. 林桂一

    政府委員林桂一君) 言葉が少し紛らわしいということで誤解を生じている面もあると思いますけれども、土砂崩れ、先ほど先生が言われましたようなのはがけ崩れてございます。一般的な土砂災害の中にはがけ崩れもあり、また土石流もあり、それから地すべりというような態様もありまして、そういうものを包括するものとして土砂崩れという言葉を、一般的にそういう言葉を使用されている前提で使用させていただいたということでございますが、経緯はそういうことでございます。  これにつきまして、そういう言葉が、非常に災害に対しての、その事後の対策について非常に支障となるという御指摘であろうかと思いますが、私ども今回は当初にその言葉を使いましたので、それが一般的な概念として許されるという前提でまだこれを使っておりますが、そういう意味で、事後の対策に誤解の生じないというようなことの配慮ということも当然必要だろうと思いますので、こういったことを、訂正できるかどうか自治省ともまた相談しなきゃいけないところでございますが、少なくともそういう誤解のないように、いろんな形でこれはそういう意味だということを徹底して御説明していくということも必要ではないかなというふうに考えているところでございます。
  122. 谷本巍

    ○谷本巍君 次に伺いたいのは、今回の集中豪雨状況を見てみますというと、以前、以前といっても、例えば十年前等に比較しますというと、大きく変わったなという印象を私は受けました。  土石流でいえば、これはここ最近ではこの一年間で長野県で起こった、秋田県でも起こった、鹿児島県でも起こった、これは大きい事故だけですよ。かなりの地域で起こるような状況になってきているんですね。  それからまた、今回の福島水害現場を歩いてきた中で共通的に聞いた言葉は、あっという間に洪水になってしまいましたという話。それから、水の引きがとにかく速いですよ。そういうような状況というのは各所に見られた。  さらに、もう一つ例を挙げておきましょう。大きな川の流れに中小河川が流れ込んでいるところの場合は、大きな川の流れが非常に雨量が多くて急流になってきますから、中小河川の場合、逆流状況になっちゃって、そこが今度はまた水害状況になっていくという例が非常にふえてきたというのがこれまでと違った点だということであります。  では、こうした現状について皆さんはどうとらえておられるか、それを伺いたいのです。
  123. 林桂一

    政府委員林桂一君) こういった風水害の新しい状況をどうとらえておるかという御質問でございます。  国土庁災害全体を所管する立場でございますので、そういった治山治水の関係についての必ずしも専門の役所ではございませんけれども、しかしながら最近、もともと我が国は地形あるいは気象条件からそういった風水害災害というのは非常に大きなものがあったわけでございますが、特に土砂の災害の発生状況などを見てみますと、全国で毎年七百五十件、これは昭和五十二年から平成年度平均数字でございますが、かなり大きな数の土砂災害が発生しているということであろうかと思います。  特に、最近、いろいろ土地利用の変化ということが大きいと思いますが、そういうあってはならないことかもしれませんが、かなり危険性のあるところに住宅等が建っていくというような現象などの土地利用の変化ということの中で、災害の危険が想定されている箇所がふえているというのも現実の問題だというふうに考えております。  それからまた、流域内の開発状況によりまして降雨が河川の中に早く流れてくるというようなこともあるわけで、一般に都市化などが進展することによって早く水が流れるということで、下流におきまして支川にいろいろな問題を生じているというようなことなども見られるところでございます。  そういうようないろいろな大きな土地利用を初めとする変化など、さまざまな状況の変化が生じでいるわけでございまして、そういう意味で、こういった変化を的確にとらえた総合的な洪水対策あるいは土砂災害対策ということがこれからも必要になってくるだろうというふうに考えておるところでございます。
  124. 谷本巍

    ○谷本巍君 その認識については大分、私自身の実感とは大きなずれがあります。  といいますのは、もう一つ例を挙げておきますが、今度の災害の場合は以前と比べますと非常に川底が上がっている。これはどこもそうですよ、大体。原因は何なのか。山ですよ。山が荒廃してきている。除間伐をやっていない。したがって、下草が生えれい。そして、雨が降りますというと山の表土とともに水が下流に行く、山が水をためる力を失ってしまっておりますから。集中豪雨といっても、川への水の負担というのが余りにも大き過ぎるというのは、主たる原因というのは私はそこにあると思う。これはもう川底が上がっているという状況を見ても明白であります。  こうして見ますというと、これまでの災害対策というか水害対策といえば、川底を深くする、川幅を広げる、中小河川の溢水対策でいうならばポンプで対応するというやり方でやってまいりましたが、それだけではもうどうにもなりません。山からやらなきゃしようがない、そういうふうな状況になってきているというふうに私は見ました。  皆さんはどう見でおられるか、また林野庁はどう考えておるか、その点について考え方を承りたい。
  125. 山本徹

    政府委員(山本徹君) 先生御案内のとおり、森林の災害防止、国土保全の役割というのは大変大きなものがあり、かつ重要でございます。  私どももこういった公益的な役割を重視した森林の整備に心がけでいるつもりでございますけれども先生も御指摘のように、隙間伐などがおくれているのではないかと。国有林では大体計画どおりに行われていますけれども、例えば民有林で見ますと、今、間伐の実施率が五割程度でございまして、私どもも、間伐は大変重要でございますので、今年度の予算も一一%ふやすとともに、間伐推進のための全国的な運動を展開するなどの努力をさせていただいております。  今回の災害について見ますと、福島県でも六日間の降雨量が一年の二分の一とか、あるいは栃木では一年の三分の二程度が数日間に降ったというようなことを見ますと、森林がその災害の原因ということは私ども必ずしも言えないのではないかと思っております。  いずれにいたしましても、急峻な国土の日本においては森林の健全な育成、整備というのは大変重要でございますので、こういった課題に対して中川農林水産大臣の御指導のもとに一層力を入れてまいりたいと思っております。
  126. 谷本巍

    ○谷本巍君 そこで、山をどう整えるかについて若干問題提起をしながら大臣のお考えを承りたいのです。その後、担当官庁としての国土庁の考え方を聞かせていただきたい。  国有林は現在、人工林と育成天然林と天然生林ですか、たしか三つに分けて施業しておられます。  ところが、これは現場を歩いての話になってくるのでありますが、人工林で申し上げますというと、下刈り間伐がやられていないところが非常に多い。それから、育成天然林でいいますというと、植林と天然で生えるものとの併用でやっているわけでありますが、金がないから育成になかなか手が出せないという現場人たちの声が多い。  国有林の現状というのを見る目は、役所の皆さんの説明と民間の皆さんが見ておられる現状というのには大きな差があります。どうしてこの差が出てくるのか。下から上がってくる書類はみんな判こをついてきちっとやっているという話になっているのではないかというぐあいに私は思うのでおりますが、ともかくも今度の国有林改革でもって管理経営基本計画、これを提起して、そして五年ごとの見直しもやろうじゃないかという話が出ておるわけでありますけれども、その管理経営基本計画を立てる前に、山の現状がどうなっているか、しっかりした現状把握をしていただきたい。いかがでしょうか。
  127. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 今、谷本先生からいろいろと今回の集中豪雨災害を例にとられまして、いかに山を守ることが山自体、そしてまた中流、下流に対する被害に影響を与えるかという示唆に富むお話がございました。  私も現地をいろいろ見てまいりましたけれども、常識では考えられないぐらいの集中豪雨でございましたから、ある意味では本当に信じられないような、先生がおっしゃるようにあっという間に水がたまってあっという間に消えてしまうとか、あるいは逆流するとか、あるいは橋がしっかりしていて橋の周りから水があふれていくとか、あるいはカーブしている川の外側の方にぐわっと水圧がかかって決壊していくとか、そういうものを初めで目の当たりにいたしまして、川上が一番しっかりしなければいけないという御指摘を私自身実感をしたわけでございます。  そういう意味で、山につきましては、いわゆる国土保全の多面的な機能、役割というものは国民ひとしく認識をしているところだと思いますけれども、今回の災害で一層その大切さ、またいざというときの恐ろしさというものを認識したと思います。  我々といたしましても、治山事業に一層精励をしなければいけないと同時に、森林そのものの整備、特に国有林の整備というものに一層取り組んでいかなければならない。特に、公益的観点からやっていかなければならない。そのために、これから御審議をお願いする国有林野関係を初めとする林野行政の抜本的な改革法案にひとつまた先生の御指導をいただきたいと思う次第でございます。  国有林の実態について、実情を中央にいる我々が知らないじゃないかという御指摘に関しましては、もう一度総点検をいたしまして実態をきちっと把握できるようにさせていただきたいと思います。
  128. 谷本巍

    ○谷本巍君 ありがとうございます。  それで、国土庁、あなたのところがトータル的に全体を担当しておるわけでありますから、こうなってきますと、水害対策というのはこれは川下対策をやっていただけじゃどうにもならぬということは今のやりとりだけでもわかっていただけたと思うのです。でありますから、これからは川上問題も含めてひとつ当たるようにしていただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  129. 林桂一

    政府委員林桂一君) 自然災害を受けやすい条件の国土の安全を確保しながら国民の生命、財産を守るという、そういう立場で総合的なこのような土砂災害対策への取り組みが必要なわけでございますが、本年三月に決定いたしました新しい全国総合開発計画の中でも流域圏に着目した国土の保全と管理ということが重要であるということで、先生の御指摘のような上流、下流を含めて洪水、土砂災害に対する流域圏単位での総合的な取り組みを推進するということになっておりまして、そのための施策もいろいろなものを提言しているところでございます。  当然その中にはいろいろ治水事業、それから治山事業もございますけれども、そういったことだけでなくて、いろいろな流域の土地利用の誘導というようなものもございますし、また最近の災害の例では、やはり情報というようなものを素早く提供する、それによって避難等のことを適切に進めることによって人命の被害等を避けるというようなこともございます。そういったもろもろのことを流域単位で総合的に取り組むというような計画となっております。  そういうこともありまして、いういろそれぞれ個別のことにつきましてはこれまでも対策を進めてきておりましたけれども、さらに一層総合的な対策に取り組んでいくというふうに考えていきたいと思います。
  130. 谷本巍

    ○谷本巍君 それでは、国土庁さん、一層ともかくも抜本的にというか、川上を重視したそういう対策をやっていくという考え方であると承っておいてよろしいですね。――はい、ありがとうございました。  それでは次に、農業基本法の問題について伺いたいと思います。  私の持ち時間はもうなくなってしまいましたが、一問だけ大臣に伺っておきたいと存じます。  答申を読みまして私が奇異に感じましたのは、株式会社の農業参入の項であります。といいますのは、株式会社の農地取得の問題について、土地投機とそれから水管理、農地利用秩序を乱す懸念があるので、そういう懸念がないような形でもってこれを認めていきたいと。それは具体的に言うと何なのかというと、農業法人の一形態としての参入だということが示されておりました。  これをなぜ奇異に感じたかといいますというと、土地投機と農業生産形態の秩序維持という二つだけがなぜ持ち出されたかということです。この二つの検討をやっていきますと、自動的に農業生産法人参入ならこれでいいだろうということになってくる。それよりももっとでっかい問題が私はあったんじゃないかと思うのです。  そのでっかい問題というのは一体何なのか。今、日本の農業が世界から求められているのは、大臣、何でありましょうか。  一つは、食料輸入国からしますというと、日本が余りにも輸入し過ぎちゃって、値段も上げてしまっているという問題がありますが、もう一つ大きな問題は持続可能な農業、環境保全型向きの農業、これを日本がどう確立するかということ、これが注目されているということなのであります。とりわけ、アジア各国の皆さんが注目しております。日本の農業でそういう形のものが仮にうまくできたとすれば、それに学べばいいんだという考え方は結構アジア各国にあるということであります。  そうした点からしますというと、今度の基本法を描くに当たっては持続可能な農業ということと環境保全型農業、これを基本に据えていくべきだろうと私は思います。  ところが、答申を読んでみますと、一方では効率化問題が盛んに強調され、そして農法の見直しが何かつけ足し的に出されてくる。食品産業の視点について示しても、農家との共生を目指す消費者の視点というのが非常に弱々しくしか出ていない、こういったようなことであります。でありますから、読んだ印象は、ああでもあればこうでもあるという感じになってしまっている。そうではなくて、骨太で説得力のあるものをつくらなきゃならないんです。それは何かというと、繰り返して申し上げますが、持続可能な農業の建設ということであります。そこのところがあいまいになっているからこそ、株式会社の農業参入というものが出てきたというふうに見受けることができます。  大臣、この答申を受けて、株式会社の農業参入の問題について検討するに当たっては持続可能な農業というのをしっかりと位置づけて、そして環境保全型農業を位置づけ、この二つを位置づけて、そうした視点を踏まえて株式会社の農業参入問題について再検討していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  131. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 先生御指摘のとおり、今回の答申につきましては、昨年十二月の中間報告でいわゆる両論併記だったものが四点あるわけでございますが、さすが私の農政の師匠であります先生の御指摘でありますけれども、株式会社の問題が両論併記の一つでありましたが、その根っこには、先生が今おっしゃられた持続可能な農業というものをもっと骨太にという御指摘、つまりこれは両論併記の中の一つのポイントでありました国民における食料の位置づけ、いわゆる食料安全保障的な位置づけの議論が根本にあるという先生のお考えではないかと私は拝察をし、私もそのとおりだろうというふうに思っておるわけでございます。  やはり、国民的なコンセンサスの中での食料の位置づけ、そしてそれを供給する農業・農村の役割というものが根本に一番あって、そして先生も今おっしゃられたように、生産者、そして中間段階の流通あるいは加工、そして消費者、ともにあるべき国内生産農業基本とした食料政策というものをみんなで共有し合っていくということがこの答申に込められておるものだと私は思い、その答申を尊重しながらこれから先生方の御議論をいただくわけでございます。  そういう中で、株式会社の位置づけにつきましても、そういう観点から、先ほどから構造改善局長等が答弁しておりますように、あくまでも農業生産法人の一形態としてやっていく。つまり、耕作者主義であるとか、あるいは地域に根差しているとか、地域社会の中での水管理だとかいろいろな普通の生活そのものも含めて、いい意味での村としての結束とかつながりを大切にしていこうという、その日本型農業というもののいい点を、根本を残しながら、さらに経営が前に進んでいくような、生産者にとってプラスになるような農業のあり方というものはどういうものかという中での株式会社の議論というものを、今後、当委員会、また先生を初め委員の先生方、いろんな場で御議論をいただければというふうに考えておるところでございます。
  132. 谷本巍

    ○谷本巍君 制限時間が来てしまいました。  この株式会社問題については、これはまた地域社会の形成問題なども含めて議論をしなきゃならぬという点等々が残っております。こうした点については次の機会にまた改めて質問をさせていただきたいと存じます。  これで終わります。ありがとうございました。
  133. 阿曽田清

    阿曽田清君 自由党の阿曽田でございます。  このたびの台風並びに集中豪雨被害を受けられました皆様に心からお見舞い申し上げます。  ことしは異常気象ということで、台風の常襲地帯であります九州には台風はまだ一本も来ないままで、東北あるいは西日本に台風が上陸しているようでありますが、どうぞ異常気象という観点の中で、六月の梅雨の時点、九州は長南に遭いまして、かんきつ等については花の咲く時期に、発芽の時期に雨に打たれた。そして、今や干ばつ状態であるということで大変な被害が出てきておるということも、どうぞ九州地区の方は台風が来なかったからよかったねじゃなくて、台風被害こそはなかったけれども干ばつで相当やられておるということも御記憶いただいて、いわゆる共済等の問題についても後日出てくるかもしれませんので、その点よろしくお願いいたしたいと思います。  実は、国営問題について質問させていただきたいと思いますが、昭和三十六年に開拓パイロット事業が行われ出しまして、その後に昭和四十一年に草地改良事業が実施されました。昭和四十五年に国営農地開発事業というものに一本化されまして、現在百五十一地区が完了し、十一万二千ヘクタールが造成されたところであります。それぞれこの国営農地の問題については百五十一団地、それなりの問題点を抱えていると思いますが、我が地元の問題について具体的に御質問させていただきたいと思いますが、地元の熊本の矢部という地区にこの国営農地開発事業実施いたしております。  当時、昭和四十九年でありますから、米も順調であり、あるいは繭等も、あるいは山林もますますという状況であったかと思います。しかも、その当時はまだ増産傾向の中でありましたから、資産形成という面もあったでしょう。ある意味ではスムーズな取り組みがスタートできたわけでありますが、当初計画した四十九年の受益面積六百九十一ヘクタール、事業費四十九億四千万、これでスタートしたわけでありますが、途中、昭和五十八年に計画変更いたしまして、受益面積を五百四十一ヘクタールに減らし、そして事業費を九十九億七千万、こういうことになったわけであります。そして、完了時が六十三年、最終的受益面積が五百三十三ヘクタール、総事業費百二十四億九千二百万円、こういう結果になって、面積が二二%当初計画より減り、そして事業費は二・五倍にふえたということで完了いたしておるわけであります。  これは十三年間かかったということもある、あるいはオイルショックの時期もあったでしょうけれども、問題になりますのは、この開拓したところの土地の一割がいわゆる不良債権でいうならばDランクなんです。そして、二〇%がCランクなんですよ。  私、現地を見てまいりましたけれども、そこには草木も植わらないという状況で、まさに砂れきの状態であります。私は、そういうところの造成をしたことが本当によかったのかどうか、何のために造成したのかというような思いを大きくするわけでありますが、そういうところにどんな営農計画を立てて始めたんだろうかなと、ここにまた疑問が生じております。  その場所に行ってみますと、六百メーターから九百メーターの高さであり、かつ土壌条件も悪い、そして風雨も物すごく強いところでありまして、ここには作物は育たぬな、国は何を考えていたんだろうと。いわゆる適地適作というものを考えた計画だったんだろうかなと疑わざるを得なかったわけであります。  地元生産者方々はこんなことを言っていました。高台四団地、それは不良息子だと、こういうことでありましたが、そこで農家方々が私どもに一番強く訴えられましたのは、いよいよ十年たって返済を合しているけれども、何も植えられない、そういう場所の農地の返済金もちゃんと払っていかなきゃならない。これじゃ収益は上がらないし、まさに収益どころか、植えることもできないところを払い下げした形で自分のところが引き受けて、栽培できないで、返済金だけ返せと、これはまさにおかしいのではないかというようなことでありまして、どうして今、払いができないでいるんですかと、こう聞きましたら、四億五千万の返済金のうちに七千万がもう既に支払えない、延滞の状態になっておるということであります。この七千万について恐らく十一年度にはもう一億を超すだろうと、こういうことでありますが、国といたしまして、これは国営でございますので、この七千万が現在の延滞金部分であります。今後どんどんふえていくでありましょう。この作付もできないところ、そういうものについては、むしろ私は償還金はもう免除すべきじゃないか、そのようにも思うんですが、いかがなものでありましょうか。構造改善局長お尋ねいたします。
  134. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 今お話がございましたように、なかなか大変な状況にあるということは私どもも情報を得ております。そして、その上で農家負担の軽減を目指しまして、国も、また県におきましても大変な努力をいたしております。  例えば、国におきましてば計画償還制度適用する、県におきましては県の負担分をかさ上げする。町村におきましては公益部分といいますか、農道部分について公費負担を行うというふうな努力をいたしまして、地元負担の軽減を実行してきております。ピーク時の償還額、本来でありますと十アール当たり四万二千円でございますけれども、現在ではこうした努力の中で八千七百円にまで軽減をさせているところでございます。  一方、今、先生から御指摘ございましたように、平成元年から平成九年までの償還金の未納が累積で五千九百万円というふうな状況でございますので、要は、農業がこの地域においてきちんと経営をされ振興するような方策を一日も早く見出すことであるというふうな立場に立ちまして、営農指導にこれまで以上の力を入れております。県、関係町村、農協、土地改良区等で構成をされます矢部地区営農対策協議会、そこに改良普及センターのプロジェクト活動の指導班も投入をいたしまして、今後ともこの地域における営農の改善、農業の振興を図りまして、負担金の軽減策ともども円滑に動くような対応をいたしたいと考えております。
  135. 阿曽田清

    阿曽田清君 今の御説明は農政局からもお聞きいたしました。しかし、根本的な解決につながらないじゃないかと。むしろ、そういう不良台地についてはこれは価値を生まないんだから、その部分については償還金の免除を図ってやるというくらいのはまりがなからぬと、それが農政不信につながってきているんじゃないかなと私は思いますので、今の答弁は、償還額の返還を免除してやったらどうかというそういう御質問をしたわけでありますが、営農の話がありました。だけれども、営農の面についてもまさに何もやらないんですよ。私、写真を撮ってきていまして、大臣、後で見ておいていただきたいと思いますけれども、草木も植えられないんです。そういうところに新たな作目を考えていくといったって、私はまた投資する分だけ損だというふうに思います。  時間も本当に限られておりますので簡明に答えていただきたいと思いますが、今いろんな利子補給しているというような話がありまして、具体的に農家方々が二十五年間五%の金利で払っていっているわけですよ。この五%の金利というのは、もうここ数年非常に高過ぎる金利じゃないでしょうか。やはり、私は、ある程度五年刻みぐらいで金利の見直しもしてやるというぐらいの配慮があってしかるべきだと思いますが、その点が一点。  それから、百三十キロに及ぶパイプラインのかん水施設ができているんですけれども、これらもつくったときに非常に雑につくってありまして、もう毎年毎年十数カ所が漏水漏れをやっているんです。それをだれが負担するかというと、全部組合、その事業に参加している方々負担金を伴って払っている。今後減ることはない、ふえていく。ということであるならば、ますます開拓事業に対しての魅力というのが薄れていく。そういうようないわゆるランニング上の修理費というような問題等も、もうこれは固定化しているわけでありますから、その点の処理をどのように、返済金の金利の問題と施設の漏水漏れの問題、これについて国として、国営でございますから、国が何とかしなきゃならぬことだと思いますが、どうでしょうか。
  136. 渡辺好明

    政府委員渡辺好明君) 二点御質問があったわけでございますが、その前提として、確かに国営事業ではございますけれども、この事業をスタートさせましたとき、それから途中で計画変更いたしましたとき、いずれも地元方々の御意向を踏まえてこうした計画の策定もしくは変更をしているわけでございます。  それから、金利の問題につきましては、今御指摘ございましたように五%ということでございますが、この時期非常に高い金利の時代でございまして、実は計画償還事業という平成二年につくりました事業のもとで五%を超える部分を切りまして助成をするという、下げて五%というふうな状況でございます。あわせて、平準化をするという意味で、十アール当たりの年償還額が大きくならないようにというふうな工夫をしているのが現状でございまして、ぎりぎりのところというふうに申し上げておきたいと思います。  それから、土地改良施設の問題、具体的にパイプラインのお話が出ましたけれども、確かに地域土地改良区等にとっての基本施設でありますと同時に、重要な社会資本でもございますので、私ども幾つがこの土地改良区が管理をする施設に関しまして、整備補修とか管理技術に関する指導への助成といった助成事業も持っております。こうした既存の事業制度も活用しながら、負担金のみならず、維持管理費の面で農家負担が軽減をされるような努力を続けたいと考えております。
  137. 阿曽田清

    阿曽田清君 申請主義ということを私も冒頭から申し上げましたように、そのときにこれだけの面積とこれだけの事業でできますからと、こういう説明であったのが、面積は二〇%以上減り、事業費は百二十四億にもふえる、二・五倍にもなる。なってみてから支払いをそうしなさい、こういうことですから、当初は申請主義でそう言ったかもしれません。今度は実際、途中でもうやめるわけにはいかないということであるわけでありますから、結果そういうことになってしまっても、そういう現況からして問題点が多過ぎることについて、国営である以上、国が最後まできちんと道筋を立てる、それが私は本来の姿勢じゃなかろうかな、信頼を取り戻す道じゃなかろうかなと思います。  大臣、若いんです。この百五十一団地、単なる一地元の国営の問題を説明しました。恐らく全国百五十一団地、完了している中で、本当に営農計画がばっちりいっているというのは私はもうごくわずかだと思います。かなりの問題点が各国営の事業にはあると思いますが、大臣、思い切って、せっかく十一万もつくった農地を有効に活用する、そして農家方々のいろんな問題点を国が支えてやって、介助してやって元気づけさせてやる、大臣は思い切ったこの百五十一団地の検証を行う気持ちはありませんか、どうでしょうか。その御意見を聞かせていただいて、質問を終わります。
  138. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 私は北海道でございますので、北海道でも国営事業が幾つかございまして、完了してその後いろいろな農業情勢の変化で負担金が非常に大きいという問題も地元に幾つかございます。  今、局長からもお話がありましたように、特に高い金利のときの負担をどういうふうにしていくかということで、七%、八%という金利を五%に切ったと。それでも今の金利情勢から比べればかなり高いとか、今話がありましたように、平準化とかリリーフ資金とかいろんな制度をつくりましたけれども負担金あるいは今の農業情勢、不景気等もいろいろございますので、そういうことを含めて、先ほどから災害のときに盛んに申し上げておりますが、生産者の意欲を損なわないようにできるだけのことは考えさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても実態の調査はやらせていただきたいと思っております。
  139. 阿曽田清

    阿曽田清君 終わります。
  140. 石井一二

    ○石井一二君 二院クラブ・自由連合の石井一二でございます。よろしくお願いいたします。  中川大臣が御就任になって間もなく、ひやりとする一つのささやかな事件が起きました。それは大臣の元従軍慰安婦発言問題であります。  私は、ここに十月十日付の「正論」を持っておりますが、大島編集長みずから「朝日新聞よ、中川農水相と慰安婦問題をもてあそぶな」と、そういう記事を書いた朝日新聞に対して挑戦状を出しておられるような記事がございました。  私は、これを読んでいて、果たしてどの部分が問題になっていたのかなと、こう思ったわけでありますが、大臣御自身はこの発言のどの部分が問題として指摘されたと現在御認識になっておるか、ちょっと御所見を承りたいと思います。
  141. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) 就任のときの記者会見で、私は、農林水産大臣を拝命いたしまして、農林水産行政に全力を挙げて取り組もうと、新人でもございますし、その決意で臨んだわけでございますが、記者会見で全然予想もしなかったような質問が出まして、私としては誠意を持って答えたつもりでございますが、事柄が事柄であるだけに、場合によっては誤解を招くおそれがあるということで、次の日いち早く発言は全面的に撤回をさせていただくということにさせていただいたわけでございまして、そういう意味で、私の発言そのものが全体としてなかったものというふうにひとつ御理解をいただければというふうに思っております。
  142. 石井一二

    ○石井一二君 朝日新聞とか赤旗等を見ておりますと、一部罷免を求めると、こういった内容の活字があったように思います。お若くして大臣におなりになる。私もお父上にはいろいろ御指導をいただいてまいりました。どうかひとつ気をつけて、多難の折でございますので、大いに頑張っていただきたい、そのように思います。  さて、農水行政全体を見ておりまして、私、どうもいつも目ざわりだなと言うと言葉は不適当ですが、気になる問題が俗にMA、ミニマムアクセス。日本にこれ以上、米が要らないのになぜ入れなければならないか。しかも、二〇〇〇年にはまた新たな交渉がある。  ちなみに、食管会計を見てみますと、平成年度は一般会計からの繰入額は二千四百三十四億円にもなるという赤字の台所。また、減反実施も、生産調整というものはことしは過去最大の規模になっておりまして、九十六万ヘクタールが割り当てられて、しかも九九・四%の達成率だと。苦渋の姿というものを私たちは農家皆さん方のお顔を見ながら思い出すわけでございます。  こういった中で、ラウンド交渉の経過はいろいろあると思いますが、まず基本的に、この引き受けた趣旨、すなわち日本の黒字大国としての責任をとったのか、開発途上国の輸出を支援するためなのか、あるいは貿易の自由化の徹底とか、そういった角度から大局的な理由について、農水省のお考えをまず御示唆いただきたいと思います。
  143. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) たしか一九八六年だったと思いますが、いわゆるウルグアイ・ラウンド交渉が始まったわけでございますが、十年近くの長い交渉で、我が国としては米はもう一〇〇%以上の自給率でございますし、米を初めとして農産物、林産物、水産物、これ以上無理やり輸入をするようなルールをつくるということについては、国内の生産者もとより、我々の立場からしてもこれはもうできないということで、これは数度の国会決議もやったわけでございますけれども、国民的、国会の場でもそういう議論が大勢であったというふうに理解をしております。  しかし、輸出国を中心とする多くの国々の論理が一層の貿易自由化の徹底、すべての農産物に関して関税化をしろという流れの中で、我が国としては最後までぎりぎりの主張をしたわけでございますけれども、最終的に一定数量の輸入アクセス機会を拡大するということになり、今、先生御指摘の、関税化はしませんでしたけれども、ミニマムアクセス、六年間で四十万トンから八十万トンを玄米ベースで輸入するという約束をしたわけでございます。  したがいまして、今、先生の御指摘で、何が原因だというふうな御質問に対しては、世界的な貿易自由化の徹底というものが一つの流れの中で、こういうミニマムアクセス米という制度を我が国が導入したということでございます。
  144. 石井一二

    ○石井一二君 今の大臣の答弁に対して、食糧庁長官は異なった御意見をお持ちですか。いかがですか。
  145. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 大臣からお答えを申し上げたとおりでございます。
  146. 石井一二

    ○石井一二君 米国の農務省が十四日に発表した農産物需給貿易の長期見通しというものが十六日の我が国の主要各紙に報道されております。その中でいわく、日本は二〇〇一年以降も約八十万トンの総輸入のままで推移する、ただ日本にはこれ以上の量の増加を望むことは難しいんじゃないかというような趣旨の米国の一方的な勝手な見通しが述べられておるわけでございます。  国民の一つの関心事というものは、関税化ということと現在のような姿ということ、ミニマムアクセス、どちらをとるべきか、我が国はどちらを主張すべきかという一つの論議があろうと思いますが、このことについて大臣なり長官の御意見を聞きたいと思います。
  147. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) たしかウォール・ストリート・ジャーナルか何かの新聞記事だったかと、私もちらっとその記事を読みましたけれども、それはアメリカの農務省の見解でございますけれども、公式のものとして我々は受けとめておりませんのでコメントは差し控えますが、今後どうするかにつきましては、また我が国の中で十分議論を踏まえて国際交渉に臨みたいと思いますけれども、私としては今のミニマムアクセス米状況を見ましても、これ以上、米を外国から輸入する必然性はないものというふうに現時点では考えております。
  148. 石井一二

    ○石井一二君 大変国際会議で難しい主張だと思いますが、じゃ、中川大臣は自分が大臣である限りできるだけ輸入しないように頑張ってみる、そういう考えだと、そう理解していいわけですか。
  149. 中川昭一

    国務大臣中川昭一君) これは私だけではなくて、一昨年の世界食料会議にいたしましても、あるいはAPECとかいろいろなバイの会合にいたしましても、我が国としては農業というのは、ただいっぱいつくって日本がどんどん買えという、そしてまた日本はその分つくるなというような全くそういう単純なものではなくて、農業生産活動、米を初めとするそういうものについては多面的な機能といいましょうか、いろいろな農業生産活動を通じての国土保全等の役割があるということを国際会議の場で主張しておるわけでございますから、それを我が国としての基本方針として今まで、そして今後もその方針で臨んでいくわけであります。それを踏まえまして、私としては今申し上げたような気持ちでいるわけでございます。
  150. 石井一二

    ○石井一二君 このミニマムアクセス米の輸入先の国別内訳という面で、ちょっと主な国と大体の比率を簡単に述べていただきたいと思います。
  151. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) ミニマムアクセスにつきましては平成年度から入れてきております。平成年度四十万トン、平成年度四十六万トン、平成年度五十四万トンでございますが、そのうち最新の平成年度の国別の状況について申し上げますと、アメリカが二十七万三千トン、オーストラリアが八万六千トン、タイが十三万五千トン、中国が四万四千トンということで、全体で五十四万四千トンでございます。
  152. 石井一二

    ○石井一二君 見ますと、大体過半数をアメリカが占めておると。我々は当初、タイという国を開発途上国として輸出を推進するとか、そういったいろんな意味も期待しておったわけでありますが、結局、声の高いところ、大きいところが大きなメリットを得る、そういうような格好になっておるように思います。  ただしかし、対米貿易黒字というものは数字の上ではもう微々たる是正にしかならない。そういう面で、今後いろいろ数字も変わってこようと思いますが、ちなみに、入れた米というのは必ずしも国内でウエルカムではない、人は食べたがらぬと。こういう中で、北朝鮮に対してどのような今まで援助というものがこの関連で行われてきたか、数字があれば御指摘いただきたいと思います。
  153. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) 先生御指摘のように、三カ年間入れてまいりましたけれども、国民の嗜好の問題もございまして、主食用としての売却は非常に少のうございます。したがいまして、主として加工用という形で消費しているわけでございますが、最近におきましては、非常に日本以外の国々からのいろんな国際需給の状況もとで米についての援助要請がございます。  そうした中で、今、先生御指摘の北朝鮮につきましては、WFPの支援との中で全体として七万トンを支援いたしておりますけれども、そのうちミニマムアクセス米は五万トンでございます。
  154. 石井一二

    ○石井一二君 ちなみに、こういった米というのは日本のODAとしてカウントされるんですか、統計上。どうなんですか。
  155. 堤英隆

    政府委員(堤英隆君) ODAとしてのカウントというのは、ちょっと私、先生の御趣旨に沿うかどうかわかりませんが、負担との関係で申し上げますと、食糧庁が買いましたものにつきましての国際価格との差額は食管の負担という形になりますけれども、国際価格ベースでの対応のものにつきましてはODAの予算の中から対応されているというふうに理解をいたしております。
  156. 石井一二

    ○石井一二君 ちょっと答弁がわかりにくいですが、やや抹消の問題でございますので、また後刻改めて承りたいと思います。  時間の関係もございますので、私は二〇〇〇年に、最終的な次の交渉の場合には、ぜひこれをなるべく少なくて済むように、またどうしても受けない場合は、日本に自由貿易でもっと門戸を開けと言っているほかの国々が、それぞれ自分の国々のそういった閉鎖的な面を温存したまま我が国だけが譲歩しておるというような嫌いもございますので、これは農水省一つだけの問題じゃございません。国を挙げての、通産その他いろいろ各省庁も含まれておると思いますが、要望として、これは今後少なくともどんどんミニマムアクセスをミニマイズしていくべきであるという主張とお願いをいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  157. 野間赳

    委員長野間赳君) 本日の質疑はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後二時三十二分散会