運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-09-17 第143回国会 参議院 経済・産業委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月十七日(木曜日)    午前十時開会     ―――――――――――――    委員異動  九月十日     辞任         補欠選任      三重野栄子君     梶原 敬義君  九月十六日     辞任         補欠選任      平田 健二君     浅尾慶一郎君      福山 哲郎君     木俣 佳丈君      渡辺 秀央君     平野 貞夫君  九月十七日     辞任         補欠選任      木俣 佳丈君     北澤 俊美君      加藤 修一君     福本 潤一君      平野 貞夫君     星野 朋市君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         須藤良太郎君     理 事                 成瀬 守重君                 畑   恵君                 簗瀬  進君                 山下 芳生君                 梶原 敬義君     委 員                 上野 公成君                 加納 時男君                 倉田 寛之君                 小山 孝雄君                 中島 眞人君                 中曽根弘文君                 浅尾慶一郎君                 木俣 佳丈君                 本田 良一君                 前川 忠夫君                 海野 義孝君                 加藤 修一君                 西山登紀子君                 平野 貞夫君                 星野 朋市君                 水野 誠一君     国務大臣        通商産業大臣   与謝野 馨君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君     政府委員        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁物価        局長       小峰 隆夫君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        法務省刑事局長  松尾 邦弘君        外務省経済局長  大島正太郎君        大蔵大臣官房審        議官       山本  晃君        林野庁長官    山本  徹君        通商産業大臣官        房商務流通審議        官        岩田 満泰君        通商産業大臣官        房審議官     岡本  巖君        通商産業省産業        政策局長     江崎  格君        通商産業省環境        立地局長     太田信一郎君        通商産業省基礎        産業局長     河野 博文君        通商産業省機械        情報産業局長   広瀬 勝貞君        資源エネルギー        庁長官      稲川 泰弘君        特許庁長官    伊佐山建志君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君    事務局側        常任委員会専門        員        塩入 武三君    説明員        環境庁企画調整        局地球環境部長  浜中 裕徳君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○不正競争防止法の一部を改正する法律案(第百  四十二回国会内閣提出、第百四十三回国会衆議  院送付) ○経済産業、貿易及び公正取引等に関する調査  (景気対策に関する件)  (中小企業対策に関する件)  (経済構造改革に関する件)  (エネルギー政策に関する件)     ―――――――――――――
  2. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る十日、三重野栄子君が委員辞任され、その補欠として梶原敬義君が選任されました。  また、昨日、渡辺秀央君、平田健二君及び福山哲郎君が委員辞任され、その補欠として平野貞夫君、浅尾慶一郎君及び木俣佳丈君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事梶原敬義君を指名いたします。     ―――――――――――――
  5. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 不正競争防止法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案の趣旨説明は既に聴取いたしておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 おはようございます。民主党・新緑風会の木俣でございます。  本日は、条約に伴う不正競争防止法改正案につきまして、基本的なところではやはり海外における公務員に対する不正というのは断固たる態度で各国とも取り締まるべきだと思っておりますが、若干その中にも質問がございますので、本日はその論点について質問させていただきます。  まず初めに、この不正競争防止法に関する条約についての締結国が何カ国になるのか、伺いたいと思っております。
  7. 岡本巖

    政府委員岡本巖君) この条約に三十三カ国が今締結いたしております。
  8. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ありがとうございました。  その際に、三十三カ国以外の国については、特にいわゆる途上国方々が入っていない国が多いと思うんですが、その場合には、その国で行われたそういった公務員に対する不正に対してはどのように処罰されるんでしょうか。
  9. 江崎格

    政府委員江崎格君) 外国公務員に対する利益供与について、この条約加盟している国以外でそういう犯罪化のための国内法手当てしているという国は私どもの承知している限りではございません。  それで、国によりましては刑法でその当該国公務員に対する贈収賄規定している国はもちろんございまして、そういう国はそれぞれの刑法に基づいて処罰対象になるものは処罰されるということかと思います。
  10. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 若干話を変えまして、この本法律改正に伴う、また条約にある「金銭その他の利益」に当たるものというものにはどのようなものがあるか、伺いたいと思います。
  11. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) この「金銭その他の利益」というのは、刑法におけるわいろという概念と同一とお考えいただければと思います。  金銭ももちろんそうなんですが、金融の利益とか、例えば家屋、建物の無償貸与とかあるいは接待供応のたぐいもこれに入る場合もございます。またあるいは、担保を提供するあるいは保証する、ちょっと特殊な例としては異性間の情交というのもわいろに当たる場合があるというふうに見ております。職務上の地位などの一切の有形無形利益がこれに該当すると、抽象的に申し上げるとそういうことになろうかと思います。
  12. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 その場合に、我が国法において、供与される利益についての限度額というものは存在するんでしょうか。
  13. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) これも明確な形で、例えば金銭であれば幾ら以上というような形で決めるのはなかなか難しいかと思います。それぞれの事件の具体的な内容に応じまして、不正な利益供与になるかどうかということが決まるかと思います。したがって、一律的な形での規定あるいはガイドラインというものを設けるのは非常に難しいということでございます。
  14. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 私が思いますに、これは我が国法の改正においては我が国国内において適用されると、当然ながらそういうことでございますが、懸念されますのがこの条約締結国の中で特に一番厳しいと言われる米国でございまして、やはり我が国一つ商慣行ということを考えた場合に、今政府委員から御指摘ありましたような買収、供応というものについて、この条約国の中で理事国というんでしょうか、役員の中でよく話し合う必要があると考えますけれども、いかがお考えになりますでしょうか。  つまり、我が国商慣行からすれば、接待というのか情報交換というのか、やはりこういったことが日本経済全体を円滑にしてきた、支えてきたという向きも一つございます。もちろん昨今の日本国内においてのいわゆる官僚の方々の不祥事ということは若干、若干というか目に余るものがございます。しかしながら、それが余りにも行き過ぎて情報がかなり官界の方にストップしてしまっているという現状を伺ったりもするときに、もちろん我が国でそういった我が国公務員が不正な供与を受けるということもさることながら、日本企業の者が海外に行ったときに、普通、接待をして情報交換をしたいという気持ちは当然だと思うのでございますが、そのときに限度額みたいなものが必要ではないかと思うんですが、その点いかがでございましょうか。
  15. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) ただいまの御質問でございますが、何をもってこの「金銭その他の利益供与し、」という概念に当たるのかということでございますが、先ほど申し上げましたように、これはそれぞれの事件具体的状況いかんによるということでございます。  したがって、今の御質問内容に多少触れさせていただきますと、我が国ではあるいはこの程度の供応刑法に触れるなという場合でありましても、あるいは現に供応が行われた外国を想定しまして、供応が行われた外国の諸事情を勘案いたしますと、これは許容範囲かなと、あるいはあえて罰則をもって処断するという必要はないのかなと、あるいはいろんな考慮が働く場合もあろうかと思います。  したがって、何をもってこの違反になるのかということについては、やはりその犯罪が行われた具体的状況を詳細に事実を認定いたしまして、それに基づいて、この法律目的とも照らしまして、具体的に個々に判断されることであり、それぞれの相違はあろうかと思います。
  16. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 これは、改正法というより条約についてまた質問を深めたいと思っておりますけれども、例えば米国の場合は大変厳しいのではないかというふうに思うわけでございまして、大体ここ九四年、九五年だけでも約百件ぐらい摘発があって、四千五百万ドルの罰金の例があるというふうに伺っております。  アメリカはやはり一口で言う訴訟社会でございまして、言ってみると弁護士がかなり余っているような状況ではないか。マクドナルドハンバーガー屋へ入っておばあさんが熱いコーヒーを頼んで、それが手にかかったということだけで何千万円も損害賠償を払わなきゃいけないような、そんな国でございます。その他、また別の話ではございますが、特許権の侵害、コピーライト等々大変厳しい国でございます。  そうした場合に、例えばアメリカで、日本ではそういった範層に入らないような、今の政府委員の御説明は逆でございまして、日本では罪になるけれども海外では罪にならない事例でございますが、一番やはり恐れるのは、日本企業海外へ出ていってそしてそこで接待をしたといったケースのときに、逆にいわゆる指されるというケースが出てくるのではないかというおそれがございます。我々は我が国国益というものを考えなければいけない立場にありまして、そのあたりが非常に厳しい環境になるのではないかというようなおそれを感じるわけでございます。  通産大臣にも伺いたいのでございますが、条約のあり方によっては我が国にとって不利な立場になり得るのではないかという気がするのでございます。
  17. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 日本海外に行っていろんな商談をします。多分この条約の目指しているところは、そういう商談を成功させるために外国公務員に対して社会通念とは全く反した額の、あるいは社会慣習とは全く反した額のわいろを贈る。わいろの定義は先ほど刑事局長から申されましたけれども、そういうことを禁止しているのであって、この条約またこの法律を私が見たときのイメージというのは、まさに不正にわたることをするということをどう見るかということですが、通常商談食事をするとか、そういうことは恐らく処罰対象にはならないのではないかというふうに私は常識的に判断をしております。  したがいまして、日本商談が他国に比べて著しく不利になるケースというのはまず考えられない、そのように思っております。したがいまして、この法律を実際に運用する司法当局もそういうことは十分おわかりの上で恐らく今後法を運用されるものと私は期待をしております。
  18. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 アメリカのことばかりで、別にアメリカ憎してはないのでございますが、例えば米国の場合には公務員倫理規程だと思いますが、よく言われますように、私もワシントンDCに暮らしておりましたものですから、二十ドルランチというのがございまして、大体二十ドル以下であれば接待にならないというようなお話がございます。大体その範囲であれば接待とはみなされないというふうに考えていいとは思うのでございます。ただ、私も多分この範疇の公務員に入る者でございます。アメリカへ行きまして、例えば五十人の方を食事に御招待しようということで、二十ドルの五十掛けて、皆さんと情報交換米国公務員または議員朝食会とか昼食会をやった場合に、これはこういったものにひっかかるのでございましょうか。
  19. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) それだけの条件でお答えするのはなかなか難しいかと思います。ただ、抽象的にちょっと申し上げますと、この不正競争防止法わいろ罪規定については、既に主要な先進国はほとんど批准しているか、あるいはその準備をしているかという段階にございます。  我々も、法務省あるいは刑事司法を担当している諸外国担当者との意見交換等でいろいろ会う機会がございますが、公務員倫理観の問題についての当事者理解といいますか、それは意見交換をした限りではそれほど国によって差があるものではないというようなことでございます。したがって、我が国における理解米国における理解がそれほどのかけ離れたものであるというような認識ではございません。
  20. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 続けて米国の場合で、先ほど九四-九五年で百件の摘発と四千五百万ドルの罰金の例ということで若干の数字を申し上げさせていただきましたけれども、日本企業に対しての摘発の例はありますでしょうか。もしあれば、何か二、三事例をいただきたいんですが。
  21. 岡本巖

    政府委員岡本巖君) アメリカで九七年に有罪になったのは十八件でございます。日本企業はございませんで、アメリカ企業外国政府との軍用機補修部品契約獲得のために在米の大使館の参事官に贈賄を行ったとか、あるいは別の企業軍用機外国政府への納入のために国会議員に百万ドルを供与したとか、これはいずれもアメリカ企業ケースでございまして、お尋ねの日本企業ケースはございません。
  22. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ちょっと、最後のところ聞こえなかったものですから。
  23. 岡本巖

    政府委員岡本巖君) アメリカ企業軍用機外国政府への納入のためにその外国国会議員に対して百万ドルを供与したというケースにおいて罰金ニ千四百八十万ドルが科されるというような事例アメリカ有罪になっている一つケースとしてございます。
  24. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 これは我が国についてはないわけでございますね。わかりました。  日本企業の社員が海外出張して外国公務員を贈賄した場合に、基本的には我が国属地主義をとるわけでございますけれども、我が国の今度の改正法では取り締まれないわけでございますか。その辺、ちょっと。
  25. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) そこのところが、その事例をどう設定するかによりまして若干答えが違ってくるわけでございます。  我が国企業海外支店の者が金銭その他の不正な利益供与したという事例を考えますと、まず本社指示によった場合、供与行為そのもの当該外国で行われたといたしましても、法律用語共謀共同正犯ということでございまして、犯罪の一部が日本にかかっているというふうにみなされます。それでこの法律適用がございます。それと同じように、現地支店の者が情を知らないまま本社指示に従って金を届けたようなケースを考えますと、これも法律用語間接正犯という形がありますが、道具のようにその者を使って日本企業国内から操作した形になりますから、これは正犯がこちらの当事者ということになり、これも処罰可能でございます。  それからもう一つは、今のケース教唆幇助という概念が入ってくるとちょっとややこしい話になるんですが、これも日本企業現地支店みたいな形ですと、教唆幇助行為があれば何らかの形での処罰対象になる可能性はあるということでございます。  ただ一つだけ、外国にある企業外国にあるその公務員金銭を贈ったような場合は、基本的にはこの改正法の第十条の二の第三項で適用除外ということになっております。そういう場合は本法は適用されないということになります。
  26. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 この条約の、法改正案適用外のことについてちょっと考えたいと思いますけれども、通常行政サービスを確保するための円滑化のための支払いというのは、場合によってはやむを得ないケースもあるのではないかというふうに考えるわけですが、いかがでございましょうか。
  27. 江崎格

    政府委員江崎格君) 委員の御指摘のようなケースですが、国によりましては、例えば電話を敷設するとか、あるいは上下水道を敷いてもらうというようなときに何がしかの金銭を支払うというようなことが必要になる国がございます。こういう支払いというのは、今委員も御指摘のように、通常行政サービスを受けるために手続円滑化してもらうため、それだけを目的にしているという場合には、この条約規定しております不正の利益を得るための利益供与には当たらないというふうに考えておりまして、これは処罰対象外というふうにされております。  このことは、一般的にはいわゆるファシリテーションペイメントというふうに言われているわけでございますけれども、つまり手続を円滑にする、促進するための支払いということで議論されておるわけですが、この条約交渉過程におきましてこの問題も議論されまして、基本的に、こういうことはもちろん望ましいことではないんだけれども、ただ、国によっては公務員収入等が余り多くなくて、そういった支払いがいわば一種の収入の一部として実際構成しているような場合に、単にこういうケースについて法律で規制をしても実際的にあるいは効果的な防止手段にならないというようなこともありまして、そういうことも配慮して条約対象外にしょうというふうに整理がなされておるというふうに思います。
  28. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 まさしくおっしゃるとおりでございまして、途上国の場合なんかは特にやはりビザ取得その他もろもろ、今、上下水道、インフラについても若干心づけみたいなものを支払わないとうまくいかないなんということがあるものですから、このあたり先進国の論理というもので押し通すことが、いわゆる末端で働く方々末端という言い方はあれでございますが、現場で、フロントラインで働く方々にとっては足かせになるケースが出てくるのではないか。不正について、わいろ性の強いものについて、また額的にも大変高いものについて、もちろん絶対認めてはいけないという立場でございますけれども、このあたり、やはり特にアジアの商慣行というものをぜひ我が国としてはそういった締結国会議の中でしっかりお示しいただきたいと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  29. 江崎格

    政府委員江崎格君) 条約におきましても、それから今回の改正法案におきましてもそういう考え方で整理しておりますので、今後、国内はもちろんですけれども、海外におきましても今のようなことで周知徹底を図るように努力をしたいというふうに考えております。
  30. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 それと同様に、今ちょっと言い忘れてし、まいましたが、さっきのマクドナルドコーヒーではありませんけれども、ああいう本当に法外な罰金というようなものがかからないように、これも含めてぜひお願いしたい。ほかの締結国もそういう形でやっていただくように強く要望したいと思っております。
  31. 江崎格

    政府委員江崎格君) 犯罪構成要件はもちろんですけれども、罰金といいますか罰則につきましても、それぞれの国の贈収賄罪に相当するような刑罰を科するようにということが条約で決まっておりますので、それに従って各国国内法手当てをしております。ですから、そうアンバランスな格好にはならなくて、各国ほぼ共通に近い同等な刑罰が科されるものというふうに認識をしております。
  32. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 ちょっと質問が体系的でなくて本当に迷惑をかけますが、おっしゃられましたように条約署各国が当初三十三カ国ということでございますが、要するにこれで本当に条約実効性が保てるかなという根本的な気持ちがいたします。守った者だけが損する、正直者が損するというようなことだけはないように思っておるんですが、国際的にこの不公正な商取引が、要は、この条約が逆に署各国商取引を排除するような危険性というのはあるんでしょうか。
  33. 江崎格

    政府委員江崎格君) この条約加盟した、署名した国は三十三カ国と申し上げましたけれども、現在そのそれぞれの国が国内法手当てに向けて準備をしておりまして、もう既に七カ国ぐらいはたしか法案国会に提出しておりますし、その他の国も着々と準備を進めているという状況でございます。そういうことで、署名した国は順次国内法手当てされると思います。  それから、条約加盟していない国があるわけでございますけれども、これについても、今後加盟させないと全体としては実効が上がらないという観点で加盟国全員あるいはOECD加盟国皆がそういう認識を持っておりまして、主としてOECDあるいはその他の国際機関などが主催をいたしまして、非加盟国対象セミナーなどを開催することにしておりまして、もう既に実はせんだって第一回がアルゼンチンで加盟を促すためのセミナーが開催されました。これからも他の場所におきましてそういう加盟を促すセミナーなどを開くということにしておりますので、御心配のような御懸念は今後次第に解消されていくのではないか、このように認識しております。
  34. 木俣佳丈

    木俣佳丈君 大体質問は終わりました。ありがとうございます。  世界全体が不正がなるべく少なくリーズナブルな方法で商取引が行われますことを本当に心から希望いたします。しかしながら、日本国益にとって不利になるようなときには、やはりしっかりした御意見、アジア的という言い方でいいんでしょうか、わかりませんが、アジア的な商慣行というのを米国も学びながらアメリカは再生してきたという経緯があると私は思っております。その根本的ないわゆる接待というのか、円滑化にかかわることだと私は認識しておりますので、ぜひ大臣、さまざまな機会を通じて日本企業を守っていただきますように心から祈念いたしまして、質問を終了したいと思っております。  ありがとうございました。
  35. 海野義孝

    海野義孝君 公明の海野義孝でございます。  不正競争防止法の一部を改正する法案というのが現在審議中ということでありますけれども、この法律改正目的というのが、国際的な商取引のための外国公務員への不正利益供与を防止する、そういうことで、八〇年代以降の国際的な議論の高まりという中から、その後OECD諸国二十九カ国、さらにはその他五カ国、そういったところで条約交渉を実施して今日に至っている、これに関係して国内法改正する、こういうようなことのように理解しているわけであります。  一九八九年にOECDにおいて国際商取引における不正利益供与を防止するための検討が開始されて今日に至っているというわけでありますけれども、そういった中で、昨年来、この問題についての具体的な法案等をつくろうということが急速に進んできたわけであります。この間約十年近くなるわけですけれども、我が国のこれに対する取り組みというか、姿勢というか、これについてはどのようなお考えで今日まで進めてこられたか、その点まずちょっとお聞きしたいと思うんです。
  36. 江崎格

    政府委員江崎格君) 私どもにおきましても、こうした議論には従来から積極的に参加をしてきております。つまり、こうした国際的な商取引におきましてわいろの授受といったようなことが商取引における公正な競争を妨げている、結果としては貿易を非常にゆがめているというような事態があるというふうに認識をしておりまして、こうしたことはぜひ防止をすべきであるという観点からこれまでの交渉に参加をしてまいりまして、昨年末になりまして条約案がまとまりましたので、私どももその観点からこれに署名をしたということでございます。
  37. 海野義孝

    海野義孝君 アメリカにおきましては、一九七七年の海外腐敗行為防止法制定以来、アメリカ企業外国公務員贈賄防止に取り組んで、先ほど木俣委員からもお話がありましたように、これまでにも数十件を立件してきたということであります。今回のOECDを通じて条約の締結、さらには具体的な国内法、こういったものの制定ということで今関係各国が取り組んでいるわけでありますけれども、どうもアメリカが今回も先行してというか、イニシアチブをとってこういう問題について取り組んできたんではないかと思います。  今回の条約に署名する各国だけでなくて、いわゆる発展途上国等においても日本の場合は相当取引をしているわけであります。そういった中で、今回こういった法律不正競争防止法というのは昭和九年に制定されて今日まで至っているということですけれども、確かに法を改正するという必要性はあるかと思いますが、アメリカが主導権をとって今日こういうふうに至っているという点で、私、どうもその辺が十分理解できない部分があるんです。アメリカの主導によって今日に至った中で、我が国としてはどういうような対応というか考えを持って今日まで進めてこられたかという点で一言教えていただければと思います。
  38. 江崎格

    政府委員江崎格君) 委員おっしゃるように、確かに米国がこの問題につきましては大変熱心でございまして、OECDなどにおきましてもこうした観点から非常に熱心に推進してきたというのは事実でございます。ただ、私どもにおきましても、先ほど申し上げましたように、こうしたわいろの授受ということが商取引を非常にゆがめている、国際貿易を非常に歪曲しているということは全くそのとおりだという認識を持っておりまして、そうした観点から私どもこの条約交渉に参加をしてきたわけでございます。  ただ、アメリカに専ら引きずられて日本商取引というものがそれに非常に阻害される、日本が非常に不利な立場に置かれるということがないようにということは、これはもちろん私どもも留意をしてまいりまして、そうした観点も含めて条約交渉に臨んできました。したがいまして、結果としまして、今回条約で定められております構成要件というのはかなり明確になっておりまして、それに従って各国国内法手当てするということでございますし、また罰則等におきましても、それぞれの国の贈収賄に相当するような罰則ということで各国ほぼ同等なレベルの罰則になるのではないかというふうに思います。また運用におきましても、各国司法当局にもちろんゆだねられるんですけれども、構成要件等の明確化ということを考えますと、恐らくそう極端なアンバランスということはないというふうに思っておりますし、それからさらにこの条約にはっきりそのフォローアップをするということが明記をされております。  したがいまして、各国国内法の制定状況、またその運用状況につきましてフォローアップをするということになっておりまして、現に第一回のフォローアップにつきまして、どういつだ国内法を制定しているのかという質問状が既に来ているわけでございます。こういったフォローアップの作業を通じまして、運用などにアンバランスが生じないように是正していくメカニズムができているということでございまして、日本だけが不利になるとかそういったことは心配しなくてもいいんではないか、このように考えております。
  39. 海野義孝

    海野義孝君 通産省におかれては、この不正競争防止法改正については何か当初はやや消極的であったというようなことを報道等を通じて承知しているんですが、その辺の事実関係。  それから、通産省の御所管のこの不正競争防止法、これは悪質な類似商品販売行為などの取り締まりというようなことが主たる目的ということのように承知しているんです。外国公務員への贈賄防止、こういったことを改正法によって追加するということ自体については、何かややそぐわないというか違和感があるように指摘する向きもあるというようにも聞くんですけれども、条約の実施法を不正競争防止法改正でするということはどうしてかという点と、それからもう一点は、贈賄罪を定める刑法改正でこれにどうして対応しなかったかという点について、それぞれ通産と法務省の方にお聞きしたいと思うんです。
  40. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) このわいろに類するものを不正競争防止法の中で規定していただきたいということは、通産省と法務省の協議の際に法務省からもお願いしたことでありますので、まず私の方からお答えをいたします。  まず、刑法贈収賄罪でございますが、これは保護法益が公務員の職務の廉潔性の保持、それに対する国民の信頼感の維持ということにあります。したがって刑法の立て方も、まず、公務員の収賄行為について幾つかの条文を立てましてこれを処罰するということで、それに対応して贈賄側もこれを処罰するということで規定をしております。法定刑も、公務員の収賄罪に比べますと贈賄罪は若干低目に設定されているということでございます。  これに対しまして、今回の国際商取引における外国公務員に対する贈賄の防止に関する条約によって義務づけられました不正の金品の供与の問題でございますが、これは先ほどから何回も触れられておりますが、国際商取引における公正な競争を確保するということを目的あるいはその保護法益としているということでございまして、刑法の体系とこの不正競争防止法の贈賄罪の体系とが相違しておりますので、これを刑法上に取り込むことは我が国の場合にはその統一性から難しいという判断でございまして、通産省にお願いしてこの不正競争防止法の中で規定していただくということにしたわけでございます。
  41. 江崎格

    政府委員江崎格君) この条約国内法手当てするときにどの法案で対応するのが一番いいのかということを関係省庁の間で御議論をさせていただきました。決して私ども不正競争防止法手当てするというのに消極的だったということではなくて、どの法律で受けるのが一番ふさわしいのかという御議論をさせていただいたということでございます。その議論の結果、今、刑事局長からも御説明がございましたけれども、条約が国際的な商取引における公正競争の確保ということが主たる目的なものですから、一方、この不正競争防止法というのも事業者間の公正な競争の確保ということが法律目的になっておりまして、その意味でこの不正競争防止法改正で受けるのが一番適切であるという判断に至ったものでございます。
  42. 海野義孝

    海野義孝君 どうもありがとうございました。  刑法贈収賄とそれから不正競争防止法罰則、その性格が違うという点についてそれぞれお聞きいたしたわけで、今回の法改正の趣旨というか目的という点では理解できたように思います。  もうちょっとその点についてお聞きしたいのは、刑法におきましては贈収賄について個人のみしか処罰されないというように思うんです。しかし、この不正競争防止法によりますと、同じ贈賄行為につきましても法人に対する罰則が可能、最高三億円ですか、そういうようなことも聞いているわけです。この点で、この法案刑法による面とで整合性の点では問題ないのかということでありますけれども、いかがでございましょうか。
  43. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) まず刑法の方から申し上げますが、刑法わいろ罪は、先ほど申し上げたような公務員の職務の廉潔性の保持あるいは国民の信頼の維持ということでございまして、まず公務員の収賄行為を罰し、次いで贈賄罪も規定する、こういう立て方になっております。全体の立て方でございますが、刑法の場合は、この贈賄罪も含めまして、行為者個人の責任を定める体系で統一されております。したがって、行為者の属する法人まで処罰するという形にはなっていないわけでございます。  ただ一方で、今回の不正競争防止法の一部を改正する法律案におきましては、あわせて法人等も処罰するということで両罰規定を置くということで承知しております。  したがって、この両方の法律ではその立て方が違う、それから刑法の場合に確かに法人処罰規定がない点、いろんな角度から御議論をいただいているところでございますが、その理由の主たるものは、先ほど申し上げた体系が個人を処罰する体系になっているということで御理解いただければと思います。
  44. 海野義孝

    海野義孝君 そうしますと、次のような問題が重要になると思うんです。つまり、今後入札などによって競争相手国が日本企業の追い落としというようなことで検察へ告発するなど、この不正競争というか、公務員のそういった利益供与的な問題に対する告発等の乱用が考えられる。そのためにも日本企業のいわゆる企業戦士といいますか企業マンは集団帰属意識を持つということでありまして、やはり企業のために必死に働いて収益を上げるという問題と、倫理的に見て正しい行為かどうかという問題のどちらかの選択を迫られることが考えられると思うんです。  今のように、そういった不正による個人的なことのみならず法人までも罰せられるというようなことになりますれば、企業利益よりも倫理を優先するという行動をとるというようなことが、企業としてもきちんとそういう体制というか倫理的な面を確立していく必要が求められるのではないかと思うんですけれども、そういった点については御所管の通産省としてはどのような御見解というか、今後どのような指導をされるというか、その点についてお聞きしたいと思います。
  45. 江崎格

    政府委員江崎格君) まず大事なことは、今回のこの法案の中身につきまして産業界に十分よく承知をしていただいて、どういうことが法に触れるのか、どういうことが法に触れないのかということを十分御理解いただくというのは非常に大事だろうと思っております。ですから、主要なこの論点などにつきましては、可能な限り具体的な事例に即しまして、解釈指針といいますかガイドライン、こういったものをつくりまして、説明会等を開きまして産業界に周知徹底したいというふうに思っております。  それから、今御指摘企業倫理の問題、これに国がどう関与していくかという問題、基本的にはこの問題というのは個々の企業がみずから自己を律するということが基本だというように思っております。私ども、各企業がそうした社会的責任を自覚して行動するということをもちろん期待しているわけでございますけれども、特に今回のこの条約に基づく約束でございまして、これは各社ができれば倫理規程のようなものをつくりまして、それに従って行動するということを期待しているわけでございまして、そのための情報の提供といったような各種の支援は考えていきたいというふうに思っております。
  46. 海野義孝

    海野義孝君 今回の改正法におきましては、贈賄側のみを罰するということになっているわけでありまして、収賄側については罰せられないということですが、どうしてかということ。例えば外国の外交官や国際機関の職員は要するに外交特権があるわけですね。日本刑法で対処することはできないわけですけれども、出身国の政府に適切な処罰を求めるというようなことは可能ではないかという点。  それから、一方、日本公務員外国企業から収賄した場合、これはそもそもがこの本法案対象外であるわけでありますけれども、贈賄企業がその国で罰せられた場合に収賄した日本公務員を罰しないのは均衡、バランスを失するんじゃないかと思うんですけれども、この場合に、刑法の収賄罪によって対応するということになるんでしょうか。その点はいかがですか。
  47. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 今のは二つの問題が入っているように思います。  まず、外国におきまして日本企業わいろを贈った場合に今回の法案によって罰せられるケースが出てくるわけでございますが、その際に、そのわいろを受け取った外国公務員処罰をどうするかという問題は確かにあります。国によって公務員の収賄行為をどう考えるかというのは、その国の刑罰法体系の立て方の問題でございます。多くの国で恐らく収賄行為については処罰規定を置いていることと思います。特に先進国でそうした規定がない国は私は承知しておりませんので、ほぼ全部にその規定はあると思いますので、その収賄行為そのものをどう処罰するかはそれぞれの国の主権の問題ということになります。  逆に、我が国において我が国公務員外国企業からわいろをとった場合でございますが、我が国刑法属地主義でございますので、我が国の中でそういった行為が行われていればこれは刑法そのものの贈収賄罪に触れるということでございまして、処罰されないあるいは処罰範層外にあるということではございません。  このような回答でよろしゅうございましょうか。
  48. 海野義孝

    海野義孝君 もう時間が参りましたので一言だけ申し上げて終わりますが、私は、今回のこの不正競争防止法の一部を改正する法律案、これにつきましては、これまで昭和九年にこの不正競争防止法が制定されて以来今日まで、こういった今回の法の目的についての外国公務員への不正利益供与を禁ずる法整備がなかったと、これでこれまで問題が生じなかったかどうかということも、もう時間がありませんから申し上げませんけれども、そういった点がある面で言うとちょっと奇異に感ずるわけであります。いずれにしましても、世界的な市場経済の潮流の中で公正な競争を保障する法整備の一環として、やはりこういった法改正ということは必要ではないかというように私も理解いたします。  あとは、こういった法の改正に基づいた運用について適正、公平を期していただくということ、それから、先ほどもお話がありましたような企業に対する的確な、適正なそういった指導をお願いしたいということを申し上げて、私の質問を終わります。
  49. 山下芳生

    ○山下芳生君 日本共産党の山下です。  外国公務員に対する贈賄防止条約について、政府は、この条約は国際商取引に関連して行われる外国公務員に対する贈賄行為を自国の法令のもとで犯罪とすること等について規定するものであると。我が国がこの条約を締結することは、国際商取引における公正な競争を確保するとの見地から有意義であるというふうに説明をされています。私もこの意義に異論はございません。実際、アメリカでは海外腐敗行為防止法によって海外企業が贈賄すると刑罰対象になる。しかし、日本を含む他の先進国は、自国内贈収賄刑法対象となるけれども、自国企業海外で贈賄した場合は現地法律にこれまでゆだねてきたわけでありまして、公正な競争を確保するためには共通のルールがやはり必要だというふうに思うからです。  問題は実効性だというふうに思います。その点で重要なのが、属人主義に立つのかそれとも属地主義に立つのかということだと私は思います。外国公務員に対する贈賄行為というのは、当然のことながら日本国内ではなくて国外で行われることが常だと思うんです。したがって、国内法の整備を行うに当たっては属人主義、すなわち人をもとにして考えること、人が現在どこにいるかにかかわらず本国の法の適用を受けるべきだという主義に立たなければ、外国公務員に対する贈賄行為防止の実効性は私はほとんど期待できないんじゃないかと思うんですが、この点いかがでしょうか。
  50. 岡本巖

    政府委員岡本巖君) この法律は、場所的な適用範囲ということに関して御指摘のとおり属地主義の考え方に立っておりますが、前提となります条約の方におきましても裁判管轄権、ジュリスディクションということに関しまして、自国の領域内において外国公務員に対する贈賄の全部または一部が行われた場合において、この犯罪についての自国の裁判権を設定するため必要な措置をとるということが、この条約加盟国共通の義務としてまずもって規定されているところでございまして、私どもはこれに対応するものとして今回、属地主義の考え方に基づいて今般の改正法案を御提案申し上げているところでございます。  その実効性という点に関連いたしまして、属地主義ということで改正法を組み立てているところでございますが、先ほど来刑事局長から御答弁あったかと思いますが、日本の中で共謀等が行われれば、これは今回の改正法適用が当然ある、そういうケースも十分ございますので、属地主義の考え方で組み立てている今回の改正法をもって条約が求めている外国公務員に対する贈賄の禁止というものの効果は十分上がるものと私ども考えている次第でございます。
  51. 山下芳生

    ○山下芳生君 確認をしておきたいんですが、例えば本国の本社から指示とか許可とかを受けて行動した場合、あるいは本国から電話で外国公務員に対する贈賄の約束などをした場合、これは属地主義でも処罰対象になるというふうに理解するんですが、そうじゃない場合はやはり国外犯となって処罰対象にならないというふうに理解していいんですか。
  52. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) その場合もどのような事例を設定するかによって答えがちょっと変わってまいります。  外国においてわいろを贈る行為について我が国の方で何らかの関与がある場合、関与の程度は大きく分けると二つに分かれると思いますが、我が国の方が主たる指揮あるいは指示がある場合、例えば東京にある本社が具体的にわいろを贈るように現地の子会社を通じてあるいは現地支店を通じて指示をしたような場合、この場合はこの適用があるということになります。  それからもう一つは、幇助あるいは教唆といったぐい、主役はやはり現地支店ではあるけれども、それに対して例えば金を都合してやったとかあるいは贈賄行為が容易になるような手助けを本社でもしたということになりますと、これは幇助行為あるいは共犯の類に入ります。それが我が国で行われていれば、これは処罰対象になる可能性があるということでございます。  ただ、そのいずれも我が国の中に足がないという事実、足といいますと、教唆行為も外国でやる、あるいは指示外国でなされたということになりますと、属地主義をとっていることでございますのでこの適用は難しいということになります。
  53. 山下芳生

    ○山下芳生君 私、それがやっぱり問題だと思うんです。今の御説明ですと、国外犯を処罰しないということですが、そうなると、贈賄によって不当な利益を得ようとする者は進んで国外犯、すなわち本国の本社から主たる指揮、指示を受けない、あるいは幇助教唆を受けない、あえてそういう道を選ぶ、単独で贈賄行為を行うようになっていくんじゃないですか。その危険性はどうでしょうか。
  54. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 刑事事件という観点から申し上げますと、一つは事実認定は証拠によるわけでございまして、証拠の収集いかんによるかと思います。  法務省としましても、この法律案を考えるに当たりまして、まず出発点として、こういう贈賄行為が処罰対象になるという枠組みをつくる必要がある。それからさらに、それだけでとどまると実効性の点で十分でない場合も考えられますので、例えば司法共助の規定をやはり締約国あるいは周辺諸国との間でさらにより実効性のあるものにしていくような努力というものが必要である。そういう意味で、フォローアップといいますか、そういう周辺の状況の整備もまた重要であろうと思います。  したがって、この法律案が成立するにとどまらず、今後のいろいろな諸活動も重要な事項になってくるであろうというふうに考えております。
  55. 山下芳生

    ○山下芳生君 角度を変えて聞きますが、外国公務員に対する贈賄防止条約に関する国内法整備を属人主義に立って進めている国はないんですか。
  56. 岡本巖

    政府委員岡本巖君) 広く刑事罰あるいは裁判管轄について、これまでほかの犯罪行為についても属人主義の考え方で臨んできている、例えばアメリカのような国は、これは属人主義で今回の条約国内実施法の手当ても行うというふうに承知いたしております。
  57. 山下芳生

    ○山下芳生君 そうしますと、日本が属人主義に立たないということで、属人主義に立っている国との間でやはり国際商取引における公正な競争の確保というものに支障を来すのではないかというふうに私は懸念をするわけです。これはいかがでしょうか。やはり属人主義に日本も立てばこの問題は解決するんだと思うんですが、なぜ立てないのか。いかがでしょうか。
  58. 岡本巖

    政府委員岡本巖君) 先ほどもお答え申し上げましたように、条約の四条、裁判管轄に関しての規定でございますが、そこでまずもって規定をしておりますのは、自国内外国公務員に対する贈賄が行われた場合に、これを犯罪として裁判にかけるという措置を規定すべしということを条約各国共通の義務として規定されておりますので、私ども、この条約を実施するための今回の国内法手当てにおいては、属地主義という、条約のまずもって求めているところ、それに対応する国内法での手当てを行うということが適当ではないかということで今回の改正法を御提案申し上げているところでございます。  先ほど来の先生の御指摘に関して申しますと、やっぱりアメリカがこれまで一九七七年以来の国内法摘発処罰されているケースというのも、かなり多額のわいろというものを提供したという事例がほとんどでございますが、そういう場合に、先ほどの国内での関与というものがあるケースというのが非常に多いというふうにも想定されますので、今回属地主義ということで提案申し上げているような法律の組み立て方をもってして十分に外国公務員に対する贈賄を禁止、抑制するという効果は期待できるものと私どもは考えている次第でございます。
  59. 山下芳生

    ○山下芳生君 私も効果が全くないというふうには思いません。前進であることは間違いないんです。しかし、締約国間同士でそういうことができても、締約国に加盟されない、締約されていない途上国の中ではそういうことができませんから、そこでのアンバランスはやっぱり生まれる。ここを埋めるためには、やはり我が国も属人主義に立って国内法整備をするべきではないかというふうにあえて指摘しておきたいと思います。  次に、法人の責任について質問します。  経団連は、条約に対するコメントで、「法人に対する処罰概念もわが国の刑法体系に存在しないなかで、外国公務員への贈賄にのみ法人処罰を導入することは認められない。」と述べていました。しかし、その後採択され我が国も署名をした条約では、「外国公務員に対する贈賄について法人の責任を確立するために必要な措置をとる。」ことが明記をされました。今回の政府提出の不正競争防止法改正案も両罰規定を置いて法人に対する罰金額を引き上げております。  そこでお伺いしますが、政府はなぜ外国公務員に対する贈賄について法人の処罰が必要と考えているんですか。
  60. 岡本巖

    政府委員岡本巖君) 今回の条約が目指しますところは、国際的な商取引における不公正な行為、贈賄という形でビジネス上の不正な利益を得んとする行為を抑制するということでございまして、そういう行為に関して一般的に法人の判断において行われる事例が多く想定されるという、そういう事案でございますので、条約交渉の中において各国からも指摘があったわけですが、法人に対する抑止というものが直接的に期待できるようなそういう罰則規定を設けるべしということでございますので、私ども、その条約の考え方に即して今般の改正法において両罰規定というものを提案申し上げている次第でございます。
  61. 山下芳生

    ○山下芳生君 もう少しわかりやすく御答弁をいただいた例が、五月十五日、衆議院の外務委員会で、外務省の経済局長事務代理の横田さんがこう言っております。「外国公務員に対する贈賄とは、行為者限りの判断で行われるというよりは、むしろ何らかの形で行為者の属する法人が関与している場合があり得ると考えられます」と。つまり、贈賄というのは、その個人が勝手にやるというよりも、やはりむしろその個人が属する法人が関与して、先ほどの指示であるとかあるいは教唆であるとかをやっていると考えるのが普通であるという認識に立ってこの条約では法人に対する処罰というものを明記しているんだと私は思います。  大臣にこの点の御認識を確認したいと思うんですが、いかがでしょうか。
  62. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 両罰規定が置かれておりますのは、一つは先生御指摘のように、そういう贈賄行為が行われ、なおかつ本社の関与というものが明らかになった場合は、その犯罪行為に加担した人間に対して刑事罰が適用されることはもとより、やはりそれらの個人が属しております法人、組織そのものもある種の責任を明確にする、そういう意味の私は規定であろうと思っております。  したがいまして、そういう責任をとるという事案が実際に起きたときに法人が罰金を払うことによって責任をとるということのほかに、そういう両罰規定を置くこと自体が犯罪発生抑止効果も持つという側面もぜひお考えをいただきたいと思っております。
  63. 山下芳生

    ○山下芳生君 大臣は今、法人が関与している場合があり得るということをお認めになりました。  そのことを確認した上で、私ぜひ問いたいのは、外国公務員に対する贈賄は法人が関与している場合があり得ると考えるけれども、日本公務員に対する贈賄は法人が関与している場合があり得るとは考えないという議論は成り立たないと思うんですが、これは大臣いかがでしょうか。
  64. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 刑法の領域の話でございますので私からお答えいたしますが、確かに刑法に定められた罰条あるいは罰則でも、実態としては経済活動に伴うような罪がございます。  確かに委員指摘贈収賄というのも、昨今の実情を見ますと、企業によって主として行われているということもまたあるわけでございまして、行為者の個人責任を中心に刑法の体系はできていると先ほど申し上げましたが、さはさりながら、今申し上げたような実情にかんがみますと、刑法の論議といたしましても、やはり両罰規定を設けて法人も相応の処罰をするべきではないかという議論があることは我々も承知しております。したがいまして、今後刑法の全体系との調和という難しい問題がございますが、いろいろな観点から十分な検討をしていきたいと思っているところでございます。
  65. 山下芳生

    ○山下芳生君 ずっと検討中ですから機は熟してきている、直ちにそういう方向に踏み切っていただきたいというふうに思います。  最後に大臣に、今回の条約国内法整備の根底にある流れ、精神は何かについて少し伺いたいと思うんです。  私は、企業というのは利益を得るためにはどんな手段を用いてもよろしいというのではなくて、やはり守るべきというか守らせるべき道徳、モラルというものがあるというふうに認識しています。それが現代の世界の資本主義の到達点だというふうに思うわけです。企業のモラルについて、まず大臣認識をお聞かせいただきたいと思います。
  66. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 最低限のことは、国際的なルールを守り、また国内外を問わずそれぞれの関連の法規を守るということは、これはもう企業にとっても個人にとっても私は当然のことであると思っております。かてて加えまして、やはり一定の社会的な責任に目覚め、あるいは社会的な良識を持って企業が行動するということも私は求められていることだと思います。  経団連の中でもある種の倫理に関する規定を設けておりますが、そういうものを読みましても、やはり企業自体は条約、国際ルール、法律を守ることはもとより、良識を持って国際社会の中でもあるいは日本国内でも行動するということは、今や企業社会に属する人たちにとっては半ば常識のようになっておりまして、倫理というものは、やや定義をしないとなかなか使えない言葉でございますが、一言で言えば社会的な良識を持って行動するということも、遵法精神に加えまして必要な時代になってきたということは私は当然のことであろう、そのように考えております。
  67. 山下芳生

    ○山下芳生君 時間が参りましたので、最後に私が配付した資料を見ていただきたいと思うんですが、これは海外で問われるまさに日系多国籍企業のモラルです。韓国、ミャンマー、ラオス、フィリピン、タイ、スリランカ、インド、マレーシア、インドネシアなどアジア各国日本企業あるいは日本企業が出資・設立した企業が何をやってきたか。七〇年代、八〇年代、これはかなり前のものもありますが、九〇年代の事案もあります。公害の輸出、環境破壊、住民強制移住、労働者弾圧、それから放射性物質の不法投棄など、まさに今大臣がおっしゃられた一定の社会的な責任、良識から外れた行動を実際に日本企業がこれまでやってきた。また、九〇年代になっても残念ながらこれやっているということが事実であります。  こういう点について一企業に対してきちっとモラルを守るべく、自分で守られないんだったらやはり民主的に規制していく、私はこれが今問われていると思いますが、この具体的な事実について最後に大臣の所見を伺って、終わります。
  68. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生の配付されました資料の中で、例えば解雇をしたというような事例がございますが、これはモラルの問題ではなくて、やはり経営判断の問題であろうと思います。それから、いろんな建設計画に参加したというケースについては、恐らくそれはそういうプロジェクトをやっております政府の方針なりあるいは法律に従って行動したことでございまして、それと企業のモラルとの関連を論ずるということは、はっきりしない事実関係の中で断定的な論じ方というのは私としては避けたいと思っております。  しかしながら、今は日本企業も非常に広く世界じゅうで活動をしているわけでございますから、やはり法律を守ることはもとより、社会的な良識を持って行動するということは当然のこととして私は求められているんだろう、そのように思っております。
  69. 山下芳生

    ○山下芳生君 終わります。
  70. 梶原敬義

    梶原敬義君 もう前の委員の皆さんから用意をしたことを大分質問がされましたので、ちょっとずれるかもわかりませんが、意見も申し上げたいと思っております。  私は七年前にカンボジアに当時の社会党の調査団の一員として行ってきました。七年前というのは多分PKO法案審議を前にいたしまして、一体カンボジアの状況というのはどうなっているかというのを視察に行ったんです。確かに、行ってフン・センやチア・シムさんや要人にもずっと会いました。いろいろなことをやってくれという経済的な要請もあったんですが、夜、飯を食っていたら繁華街の中で、雑踏の中ですが、電気がぽんと消えるんです。どうしたのかと言ったら、使用量が発電量の能力を超えていると。そういう話がありまして、当時は今川という大使で、非常にカンボジアを愛している大使からそういう状況を聞きました。  それで、はっと感じたのは、大使がさらに言うのは、日本が発電施設をODA等でこれからやるようになるだろう、ところがもう既に日本の重電機メーカー各社が向こうのカンボジアの要人に向けてアタックをしているんです、それはもう目に余るものがあると言うんです。だから、彼は日本企業の皆さんに、汚すな、私が取りまとめる、こう言っているんですよと言っている。  言いたいのは、日本企業が一社じゃなくて何社も向こうの公務員、要人にアタックをかけている。恐らくその背景には、ただ頭を下げお願いをする、説明をする、そういうことだけではなくて、裏にはこの法律審議をされているようなことが伴っていると、私は今そう思います。  この法律の中では、今もう審議もありましたが、各国の国外の企業との競争だけじゃなくて、問題は国内企業の幾つかが競争する場合に、これはゼネコンもそうなんでしょう、あるいはこういう重電メーカーもそうなんです、我が国国内企業同士が向こうの公務員に対する贈賄というのは恐らく相当やられている、そのことを一つは直視をしなきゃいけないんではないか、こう思います。  要するに、主要国三十三カ国、OECD二十八カ国とブラジル等を入れた五カ国で三十三カ国、さらにこれを世界じゅうにふやして、そして一斉にこういうことはもうやらないという常識をやっぱり早くつくる必要があると思うんです。そのためには、いい仕事というのかいい技術というのか、いい実績を中心にして競争していく、これは当たり前のことなんですが、この常識を早く世界各国に広げていく必要があるんだろうと思うんです。  質問時間十分ですから余り時間がありませんが、問題は、日本企業海外企業とのそういう競争の問題と、国内企業同士が海外に出ていって競争する、こういう点は一体どちらが多いのか少ないのか、比重みたいなものを感じていることがあったらちょっと通産省聞かせていただきたい。
  71. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) それは、一つの仕事に対して日本のその種の仕事をしている企業がたくさん出かけていって受注競争をするということもございますし、国によっては国の大きなプロジェクト、例えば大きなダムをつくるというようなことに対して日本とヨーロッパ勢が競うという場合もございまして、これはケースごとによって日本同士が争うケース、あるいは日本とヨーロッパ、アメリカが争うケース、いろんなケースを我々知っているわけでございます。
  72. 梶原敬義

    梶原敬義君 ぜひこの法律をつくりながら積極的に我が国はやはりそういう各国に対しても働きかけをして、相手の国の公務員を贈賄することによって本当に何といいますか、汚い風習に落としていく、そういうことになるわけですから、そういうことをしないようにぜひ頑張っていただきたいと思います。  それから、法案の中身の話でありますが、法務省もおられますが、一つは、日本人が日本公務員に対して贈賄をやった場合は贈収賄でやられますね。そうすると、日本人が日本国内においてどこか海外公務員に対して同じ額なら同じ額の贈賄をやった場合、これは不正競争防止法、今回の改正案でいくわけですから、この二つ、同じことをやっても罰則が違うんです。その点はやはりこれから直していかなきゃならないんじゃないかと思うんですが、この点はいかがでしょうか。
  73. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 先生御指摘のとおり、確かに法律適用という面では違うということになります。  主として両罰規定の有無ということになろうと思いますが、先ほども御答弁申し上げましたけれども、刑法とこの不正競争防止法というのは保護法益が違う、体系も違うということでございます。不正競争防止法の方は、先ほど通産省の方からも答弁がありましたが、やはり事業主体に着目しているということでございまして、したがって両罰規定というのになじむという面があろうかと思います。刑法の場合は、個人の責任という体系で組み立てておりますので、なかなか法人なり事業主体そのものを処罰するというのがその体系上難しいということもございまして、従来入れていなかったわけでございますが、昨今やはりその点も議論になっておりますので、我々としても個人主義の体系になっている刑法との整合性等を慎重に検討しながら、法人処罰可能性について論議していきたいと思っておるところでございます。
  74. 梶原敬義

    梶原敬義君 もう時間ですから、終わります。
  75. 平野貞夫

    平野貞夫君 自由党の平野でございます。  渡辺議員が行政監視委員会の委員派遣で愛知県に行っておりまして、かわりに質問させていただきます。  朝から先輩の諸先生がるるこの改正案について問題の指摘なり質疑をしていらっしゃいまして、いろんな角度で問題点が出ておると思いますが、率直に申しまして、この不正競争防止法の体系それ自身がこのままでいいのかという基本問題が一つはあるわけでございます。  この改正案について、自由党は、提案の理由は適切ということで賛成するという立場でございます。したがいまして、余り具体的な問題でなくて、基本的でかつ素朴な問題について大臣に何点かお聞きをしたいと思います。  この不正競争防止というのは市場経済、資本主義経済の基本になると思いますが、現在世界的にも我が国も大変経済の混迷といいますか、そういう状況でございますが、大臣、私らのような素人にわかりやすく言って、この混迷の原因は何とお考えでございましょうか。
  76. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 私は、日本経済自体の強さというものはそれなりに残っていると思います。例えば、海外交産の額を比べましても非常に大きな償権国でございますし、外資準備もございますし、国民の貯蓄もございますし、またマイナス〇・七%の成長を記録したとはいえ、五百兆円になんなんとする経済の規模を誇っているわけでございます。  私は、低迷の原因は、やはりバブルの後始末がうまくできなかったことが一つ、それからその過程で昨年十月、十一月にかけまして三洋証券あるいは山一、北海道拓殖銀行が破綻した、こういうことによって国民経済の六割を占めます個人消費が著しく冷え込んだということが現在の経済の低迷を招いている。あわせまして、やはり国際経済の伸展とともに歩むべき日本の制度のいろいろな改革がいろいろな理由で若干おくれてきたことだろうと私は思っております。
  77. 平野貞夫

    平野貞夫君 大臣の今のお話の後半の部分でございますが、改革がおくれたと、そのとおりだと思います。その改革の範層に入ると思いますが、私はやっぱり冷戦後の世界の構造変化の中で新しい市場経済なり新しい資本主義の秩序づくりといいますか、ルールづくりがいかにもおくれているといいますか、各国がそういうところに努力しょうとする、全くしていないわけじゃないんですが、そういうところに問題があるんじゃないかと思っております。  例えば、この不正競争防止法も平成五年に片仮名から平仮名に変わったわけでございます。しかし、基本的には昭和九年のへーグ条約ですか、これと変わっていないわけなんです。昭和九年といえば、私は十年生まれでございますので、六十三年ぐらいたっておるわけなんです。そのときにはこの法律がそこで機能したと思いますが、現在の目まぐるしい発達した企業間競争あるいは市場経済の中で、独禁法とかそういうものはいろいろほかにもありますが、不正競争防止法というような体系の中で果たして秩序の維持といいますかルールの確立ができるかどうか、非常に疑問に思っていますが、その点の御見解はいかがですか。
  78. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 世の中には市場原理というのが絶対だというふうに言う方もおられますけれども、今世紀の初頭からアメリカを中心にアンチトラストという法律概念が出てまいりましたのは、やはり市場原理を補う法理が必要だということだろうと思っております。  市場原理というのはそのような、例えば独占禁止法である種のルールをつくる必要がありますし、市場原理に補完的に働く法律として私は存在していると思いますし、またこの不正競争防止法もその一翼を担うものというふうに私は考えております。
  79. 平野貞夫

    平野貞夫君 問題は、いかにしてこれから私たちが健全な資本主義、公正な市場経済社会をつくり上げていくか。これは別に日本だけじゃなくて世界じゅうがやらなきゃいかぬことだと思いますが、特に経済大国、また第二次世界大戦後、特殊な経済成長をした日本にはその義務があろうと思っております。  私ども自由党では、構造改革の重要なポイントとしてやはり官、いわゆる行政の規制の撤廃、そして自律的な企業あるいは個人でもいいと思いますが、健全な競争、そして公正公平なルールに基づいたそういったものが達成できるために、行政が経済活動に過剰に介入する、過剰に介入した一つの証拠がこの金融システムの混乱、長銀問題だと思いますが、そういうことがないように公正公平な競争ルールを確立するため、市場法とでもいいますか、公正経済活動法というような構想、それを経済構造改革の根っこに据えるべきじゃないか、こういうふうに我々は提言をしていますが、大臣の御所見をいただければありがたいと思います。
  80. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 市場法というのがどういう概念か、もうちょっと詳しくお伺いしなければならないんですが、恐らく独占禁止法の現在のあり方というのはやはり先生の言われた市場法の考え方に近いものだろうと思っております。現在の独占禁止法が完全無比なのかといえば、それはいろいろ考え方によっては問題点を指摘される方もおられるわけでございまして、そういう方向の法整備を行う必要性というのは時代とともに出てくるだろうと私は想像しております。  先ほど先生が言われました資本主義のルールというのは、第二次世界大戦終了後、大戦の反省の上に立って、ブロック経済を阻止する、あるいは世界的に共通なルールをつくる、あるいは決済手段としての通貨というものをどう考えるかということでガットも生まれIMFも生まれ、また政治の問題としては国連という組織が私はできたんだろうと。ガットは今、WTOに発展的に解消されておりますけれども、やはり世界の平和と安定、繁栄を保つためには、国際的なルール、中でも市場主義を基本としたルールというものをさらに深めていくということは、先生の御指摘のとおり、私は必要なことだろうと思っております。
  81. 平野貞夫

    平野貞夫君 いずれ後日、またいろいろ議論して御指導いただきたいと思っていますが、最後にちょっと大臣にお願いがございます。  この場で申し上げることがふさわしいかどうかという問題もありますが、実はこういう話を私は聞いて愕然としております。  九月十一日、金曜日にマスコミ七社の社長会に小渕総理が会食で出席されて、その中の話ということを私聞いたんですが、内容は、大変今問題になっております長銀問題と金融再生問題、与野党の交渉がうまくいっていないこと、これは小渕総理の立場からすれば三野党を批判するのは私は別に文句を言いませんが、その中で、さきの参議院選挙で民主党初め野党が勝ったから、いわゆる国民がこういう選択をしたから話がまとまらない、混乱しているんだという趣旨のことを話されたと、私は信頼する人から聞いております。もちろん事実かどうかという問題もありますが、大勢そういう話があったことは間違いないようでございます。  こういう認識では、金融問題も解決しませんし経済も再生しません。日本の健全な発達もできません。非常に官邸サイドでいろいろ御見識の高い大臣に、そういう認識を持たないように、そしてやっぱりこの国をどうするかという根っこの問題に目を置いた政治をやっていただきたいということをぜひひとつお伝えしておいていただきたいと思います。  それで私の質問は終わります。
  82. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 私は、選挙の結果というのは、定められたルールに従って憲法上の行為をなすわけでございますから、選挙の結果はありのまま厳粛に受けとめるというのが政党の態度であり、また政治家の態度であるべきだと思っております。確かに現在、与党である自民党が参議院で過半数を割っておりますけれども、それぞれの党は国民の将来や社会の安定ということを考えておられるわけでございますから、その中で与野党を問わず全体の方向を見出していくということは、私は、可能なことであり、また国民が要望をし、国民が期待をしていることだろうと思っておりますので、与野党の協議等を通じてよりよき方向性を見出していくというのが議会に所属するあらゆる人間の責務であると考えております。
  83. 水野誠一

    ○水野誠一君 もう既に大部分の質問が出ておりますが、幾つか私の方から伺いたいと思います。  まず、この法律改正の根拠になります条約の問題について、これは外務省の方からお答えいただく方がいいのかと思いますが、伺いたいと思います。  まず、条約加盟各国の批准状況、これはまだ批准が済んでいない、準備中の国もあるというふうに伺っておりますが、今どんな状況になっているのかお答えいただければと思います。
  84. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) お答え申し上げます。  一応、承知のとおり、本年の末までに条約締結ということで各国手続を進めておりますが、現在一部の国、日本を含めましてですけれども、国会条約及びもしくは立法府に担保法も出しているということでございまして、まだ締結を完了したという国はないと承知しております。ただ、各国とも年内にということで今引き続き努力中と了解しております。
  85. 水野誠一

    ○水野誠一君 OECD加盟国のうちオーストラリアが署名していない。これは何か特に原因といいますか理由があるんでしょうか。
  86. 大島正太郎

    政府委員大島正太郎君) オーストラリアは御承知のとおり連邦制をとっておりまして、一部の条約内容によりましては各州との調整が必要であるということで今までこの条約について署名に至っていないということでございますが、ただ、もう既にその調整は終わって国内法をオーストラリアの国会に提出しているということでございます。そして、オーストラリアとしても年内に署名、締結を目指して努力していると了解しております。
  87. 水野誠一

    ○水野誠一君 今三十三カ国ということで、OECDを中心としてこの署各国があるわけでありますけれども、先ほど、実効性を担保するためにこの加盟国をふやしていきたい、こういう御答弁もありましたが、これは、特にこういう贈収賄の問題というのは、贈賄側だけではなくて収賄側の倫理、これも非常に問われるものでもありますし、この加盟国をふやしていくということについてはぜひ日本も協力的に考えていただければというふうに思います。  次に、贈収賄の認定あるいは捜査に関する各国間の協力について、国際的な協調体制、これがどういうふうになっているか。特にこういう捜査の場合というのは収賄側の捜査協力、これがないとなかなか進まないんではないだろうか、こういうふうにも思うんですが、その点も含めてお答えいただければと思います。
  88. 松尾邦弘

    政府委員松尾邦弘君) 現在もいろいろな犯罪につきまして捜査の国際間協力ということが行われております。  先生御指摘のとおり、確かにわいろを収受した公務員の属する国の協力ということも非常に大事なことでございます。実効性の担保ということで申し上げれば、我が国には捜査共助法という司法共助の規定がございまして、捜査についても外交ルートを通じましていろいろな手だてをとり得ることになっております。そうしたことを活用しまして実効性を担保していくということになろうかと思います。
  89. 水野誠一

    ○水野誠一君 先ほど御答弁の中で、アメリカでの、これは有罪判決でございますか、九十七件というお話、御答弁があった。違いましたか。――十八件ですか。これは資料でいただいています五十件の摘発の中で有罪になったのが十八件ということでございますか。
  90. 岡本巖

    政府委員岡本巖君) 一九七七年に制定された海外腐敗行為防止法でこれまで有罪となった件数というのが十八件というふうに承知をしているところでございます。
  91. 水野誠一

    ○水野誠一君 私は、先ほど山下委員から属人主義か属地主義かという御質問もありました。これは繰り返しませんが、その点は非常に重要なポイントではないかなと思っております。  特に、各国国内法のそれぞれの整合性、これがこれからはやはり問われていく。なぜならば、これからますます多国籍企業が世界をまたにかけて活躍する、こういう時代になっていくわけでありますが、やはり各国国内法の整合性がとれていかない場合に、ある意味においてその裏をかかれる、あるいはそこにすき間ができて抜け道がそこに生じてくるというようなこともあり得るのではないぞなと思うのであります。とりわけこれからの多国籍企業の時代に向けてのこういった国内法整備の問題点あるいは意識、この点についてお答えをいただければと思います。
  92. 岡本巖

    政府委員岡本巖君) 先生御案内のように、本件について犯罪構成要件の部分は条約の中でかなり詳しく明定されております。  それを受けて各国国内法を逐次準備いたしているわけでございますが、構成要件のところは条約で輪郭が明確になっているという点がまず第一にございます。それから、この条約に基づいて国内法の整備の状況あるいはその運用の状況というのをフォローアップしていくということが明らかに規定されておりますので、そういうフォローアップルールの作業を通じながら、先ほど先生御指摘のように、法律の制定あるいはその運用という面でお互いに不都合のないように十分なフォローアップをしてまいりたいと思っております。
  93. 水野誠一

    ○水野誠一君 終わります。
  94. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。――別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  不正競争防止法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  95. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  96. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  この際、午後一時まで休憩いたします。    午前十一時四十三分休憩      ―――――・―――――    午後一時一分開会
  97. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) ただいまから経済産業委員会を再開いたします。  この際、委員異動について御報告いたします。  本日、加藤修一君及び平野貞夫君が委員辞任され、その補欠として福本潤一君及び星野朋市君が選任されました。     ―――――――――――――
  98. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 経済産業、貿易及び公正取引等に関する調査を議題といたします。  これより質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  99. 畑恵

    ○畑恵君 自由民主党の畑恵でございます。  本日は、同僚の加納時男議員とともに御質問をさせていただきます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  昨今、深刻さの度合いを深めております我が国経済状況ですが、これを見るにつけまして、確かに中小企業への貸し渋り対策、その一層の強化といった当面の景気対策というのももちろんのことなのでございますけれども、やはりその一方で、急速に進展しておりますグローバル化ですとか情報化といった世界的トレンドをしっかりと見据えて、戦略的かつ迅速に経済の構造転換を図っていくという、こういった視点もまた肝要であると考えております。  先日のごあいさつの中でも与謝野通産大臣そして堺屋長官、お二人ともこの構造改革という課題については殊のほか力点を置いてお話をされていたと記憶しておるんですけれども、もう一度改めて振り返らせていただきますと、中でも通産大臣が強調されておりますのがいわゆる中小ベンチャー支援、そして加速する情報化社会への投資という点であったと思います。  そこで、きょうはまずこの二点について通産大臣に伺わせていただいて、後ほど堺屋長官から、私どもの党本部でも大変貴重なお話をいただきましたが、PFI法案について伺わせていただきます。  まず、ベンチャー支援についてですけれども、この点につきましては、前通常国会でも投資事業組合制度の改革をかなり大胆に進めるなど、グローバルスタンダードに即しました投資活動が日本の中でも実現していく社会を目指して通産省さんは大分さまざまな知恵を絞ったり努力をされているというのは、これはよく理解させていただきました。ただ、実態を見ますと、日本人そのものがリスクを嫌いましたり、また横並びということを好むといいましょうか、そういうメンタリティーに根差しているんでしょうか、やはりベンチャーを育成して成功させるような社会システムに構造を変えていくというのは、なかなかこれは大変だなということも痛感しておる昨今でございます。  そこで、さらに今回、中小ベンチャー支援ということでさまざまな施策を打ち出されているわけですけれども、具体的にどのようなポイントで考えていらっしゃるのか、そして意気込みということも含めまして与謝野通産大臣に御紹介いただきたいと思います。
  100. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生御指摘のとおり、新規開業というのは非常に数が減ってきておりまして、新規開業と廃業の数を比べてみますと新規開業の方が廃業を下回るという大変困ったことになっているわけでございます。  したがいまして、こういうものを中小ベンチャー企業と仮に呼ぶことといたしますと、こういうものに対して資金面、技術面、それから経営面、こういう面から総合的に新規開業がなされるためのいろんな施策をやっていかなければならないと私どもは思っております。  こういうものがまた雇用も吸収するわけですから、日本経済社会全体にとっては大変有効な私は経済再生の方法だとも思っております。したがいまして、資金供給の円滑化、支援人材の活用、それから技術開発の促進、そういうことに関しては積極的に支援を申し上げたいと思っております。  それではどういう手段と道具を持っているのかと申しますと、具体的にはマル経の新規創業融資の充実、第二が新規開業者を対象とするセミナー・研修制度の創設、ベンチャー等中小企業に対する技術開発支援の強化、新規成長産業連携支援事業の拡充、試作開発、販路開拓に対する助成、これらの政策をぜひ実現したいと思っておりまして、これからこういう施策をやるために努力をいたしたいと思いますので、ぜひ委員の皆様方の御理解もいただきたいと、そのように思っております。
  101. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。  今るる御紹介いただきましたさまざまな施策ですけれども、私、特に注目しておりますのが、資金もさることながら情報の提供という点でございまして、これを実現するという意味で地域プラットフォームの拡充ということを大変期待しております。私も三十代の半ばでございます。同世代にベンチャーを志したり、また実際に自分で運営しているという人間と多く話すんですけれども、やはり彼らから漏れてくる声というのを凝縮しますと、インキュベーションシステムが本当に日本というのは未整備だなということが聞こえできます。平たく言えば、要するに、彼らはそれまで余り経験もないしコネクションもありませんから必要な情報が必要なところから必要なときになかなか入ってこない。そこに行き着こうとしている間に、昨今のこうした貸し渋りの問題もございますので、結局そこで息絶えてしまうというところがかなりございます。そういう意味から、シーズの部分からニーズの分野まで一貫して情報提供してくれるこの地域プラットフォーム構想というのは大変注目をいたしております。  若干詳しく施策について御説明をいただければと思います。
  102. 太田信一郎

    政府委員太田信一郎君) お答えいたします。  国の産業立地政策あるいは自治体の取り組みによりまして、全国各地域におきまして、いわば新産業の苗床となるような研究集積あるいは産業集積が形成されてきております。これらの集積地域を中心に、テクノポリス財団とかあるいは中小企業振興公社あるいは工業技術センター等の多彩な産業支援機関も整備されてきているところでございます。  今後、こういう各地域での苗床機能を生かして新産業創造を加速化するためには、こういうテクノポリス財団とか中小企業振興公社等を中核として既存の産業支援機関を統合・ネットワーク化する、今、畑先と言われましたように、研究開発から事業化まで一貫して新規起業家を総合的に支援する体制が必要不可欠だと思っております。こういう一貫総合して支援する体制を我々の言葉で地域プラットフォームと呼んでおります。  私どもとしては、そういう視点に立ちまして、十一年度、来年度の新しい施策として地域プラットフォームを全国的に整備したいと考えております。現在所要の予算要求等を行っているところでございます。このプラットフォームが全国展開されれば、各地域におられます新規の起業家が技術だとか人材だとか、そういうもろもろの情報をいわばワンストップサービスというか一時に全部情報を容易に入手でき、入手できるだけではなくてこれらの経営資源を容易に活用できる環境が整うというふうに我々は考えております。こういうことを通じて新規産業の創造が加速化されることを期待しているところでございます。
  103. 畑恵

    ○畑恵君 ありがとうございます。ぜひ質的にもまた量的にも拡充していただきたいと思うんです。  若干私ごとで恐縮なんですけれども、この夏に一週間ほど米国のIT、インフォメーションテクノロジーの事情というのを視察しました。その中で、ベンチャーのそれこそ一番集積しますシリコンバレーの中でも中核でありますサンノゼ市という市の経済開発事務所を訪れまして、そこの産業誘致政策、支援策というのを伺ってまいりました。  この中で、やはり今のような苗床機能をそちらも果たしていらっしゃるわけですけれども、サンノゼ市とサンノゼ州立大学が共同でインキュベーター組織をつくっておりまして、これが、市は資金と建物、施設というのを提供するだけで、実際の運営というのは民間の非営利団体、NPOがやっているということでした。しかも、そのNPOで実際に業務に当たっているのがビューレット・パッカードですとか、IBMですとか、ベンチャーから始まってそして大企業にというような、そういう大手の管理職を経験した人たちというのがこちらのNPOでは実際に業務に当たっていると。  こういうことが実現していますと、容易にコネクションというのも形成されますし、また銀行への紹介ですとか、あと市への助成の申請という、それも単に事務的に右から左にというのではなくて非常にきめ細やかにケアができるし速やかに進むということで、ああなるほど、こういうことがもし日本で実現できれば先ほどの地域プラットフォーム構想もより一層進むなと思いました。  ただ実際、日本の中ではNPO法が成立したとはいえ実態はまだまだこれからですし、難しい面もあると思うんですけれども、可能性とそして課題を幾つが御指摘いただけますでしょうか。
  104. 太田信一郎

    政府委員太田信一郎君) 先ほど御答弁申しましたように、各地域で産業支援機関がいろいろ活動しておりますが、その活動を見ますと、民間企業でのビジネス経験をお持ちの方、いわゆる企業OBの方が非常な熱意を持っていろいろと地域産業振興に取り組んで成果を上げられている場所、例えば浜松とかそういうものを我々は知っているところでございます。要すれば、地域プラットフォームの産業支援活動を実りあるものとするためには民間の人材活用が極めて重要であるという御指摘はもっともだと、そのとおりだと思っております。  一方、現下の経済情勢を見ますと、雇用情勢は大変厳しい。特に中高年のホワイトカラーの方々の雇用情勢は厳しさを増しておるということでございます。これらのホワイトカラーの中には、地域で新しい事業を起こす上で非常に重要となる販路開拓とかあるいは財務会計とか事業計画等々の分野で豊富な経験をお持ちの方が多数おられると承知しているわけでございます。  これらの優秀な人材を産業支援機関あるいはそのインキュベーター、さらには地元のベンチャー企業に円滑に導入していく必要があるのではないかと我々は考えております。ただ、その地域的な人材の偏在による需給面や雇用条件面でのミスマッチというものがあることも確かでございまして、その辺をどのように解消していくかということでこれからいろいろ知恵を絞っていきたいと考えているところでございます。
  105. 畑恵

    ○畑恵君 前向きな御答弁をありがとうございました。  確かに、地域的な偏在の問題、そしてやはり日本の中では人材の移動ということが非常に今いろいろな構造改革の中で一番のと言ってもいいぐらいネックになっていると思います。この例もそれにしかずということだと思うんですけれども、通産省さんの大きな施策の柱としてもこの人材の流動化というのは挙げられています。やはりすべての根本になるところでございますので、ぜひこれもあわせて取り組んでいただければ幸いだと思います。  では、ベンチャー支援の方はこれぐらいにいたしまして、次に情報化社会への対応について伺いたいと思います。  この点についても、恐縮でございますけれども、米国視察の経験をもとに御質問させていただきたいと思うんです。  シリコンバレーを離れました後に、ダラス、メンフィスという中南部の方に参りまして、メンフィスで物流のフェデックス社、フェデラル・エクスプレス社を訪ねました。ITの活用そしてベンチャーの雄といいましょうか、大変世界的に注目を浴びているフェデックス社でございますけれども、それぐらい期待をして行ってもそれでもなおかつ驚いてしまうぐらいに衛星、インターネット、ありとあらゆる通信手段を駆使しまして、まずもう本当に人間の力をITの力で超えたんだと思えるような、ここまでするかと思えるようなきめ細やかなサービスで、それが極めて正確でなおかつ低廉であると。  これを見まして、いろいろと情報化ということに対する概念そのものにも思いを新たにしたんですけれども、こうした受発注から最終的に消費者の手元に届けるまですべてITを活用するというサプライ・チェーン・マネジメント、こうした動きについて我が国ではどのように取り組まれていらっしゃるのか、推進していらっしゃるのか、まずこの点を教えていただきたいと思います。
  106. 広瀬勝貞

    政府委員(広瀬勝貞君) サプライ・チェーン・マネジメント、私ども、広い意味で電子商取引というふうに考えてもよろしいかと思いますけれども、平成七年度、八年度あるいは十年度の春の補正におきまして、この技術開発とかあるいは実証実験、実用化の推進のために合計一千億円を超える支援を行ってきたところでございます。  特に、今年度の補正予算の実施におきましては、実用化に近い技術開発案件も多く寄せられておりまして、各種の電子商取引の手法というのが現実のビジネスの手段としてようやく日本でも花開く段階に来たのではないかというふうに考えております。
  107. 畑恵

    ○畑恵君 ぜひ今まで投入した部分が生かされますように、なおかつお続けいただきたいと思うんです。  こうしたサプライ・チェーン・マネジメントという視点とともに、物流の高度情報化ということについて非常に通産省さんとしても注目をして、これも柱に掲げていらっしゃいます。私自身もこれは非常にこれから抜本的に変わっていく分野だとは思うんですけれども、やはり通産省という一つの省だけでは、規制を緩和していくにしてもその制度を変えていく経緯に関しましても一省の中で済まないことが多々あると思います。その物流システムの高度化という点で各省連携はどういうふうになっていらっしゃるのか、万全でいらっしゃるかという点について伺いたいんです。
  108. 岩田満泰

    政府委員(岩田満泰君) 物流に関します各省連携のお尋ねでございますが、まさに先生御指摘のような問題意識で私ども各省との間にいろいろなお声がけをいたしまして、結果といたしまして昨年四月に総合物流施策大綱という形で閣議決定を行いました。関係省庁が同じような考え方でかつまた具体的にどういう実施の手順で協力をするかというようなことが決められたわけであります。  この中で、関係省庁の間では総合物流施策推進会議というものが設けられております。かつ、この下に具体的な分野として物流の情報化でございますとか、あるいは一貫パレチゼーションの問題でございますとか、あるいは輸出入手続のEDI化といったような、現在のところは五つほどのワーキンググループが設けられておりまして、それぞれに関係省庁がしっかりと明記される上に、かついわば幹事会と申しましょうか、そういうものが決定されまして、相互に具体的なプロジェクトについて連絡を取り合いながらこの物流の施策を推進するというようなことを今展開させていただいているところでございます。
  109. 畑恵

    ○畑恵君 総合物流施策大綱も読ませていただいたんですけれども、なおかつそうしたさまざまな組織もできてということで非常に意気込みのほどというのもよく理解されますし、ぜひ今後ともこの部分というのは遅滞なく進めていただきたいと思います。  この問題、そして先ほどのサプライ・チェーン・マネジメント、こうした傾向がこれから進展していってどういうふうに世の中が変わっていくんだろう、それを思いましたときに、もう現在既に始まっておりますが、仲介業務、その幾つかですけれども、この存在理由ですとか役割というのがやはりある意味で淘汰されていくという、そういう方向というのは否めないことだと思います。実際、自動車のディーラーですとか、書籍の関係ですとか、そうした動きというのが起きているわけです。もちろん消費者側からすれば、安くて早くて、そしてより自分が気に入ったものというのが手に入るのであれば、そのシステムの方に移行するということを何か阻害する要因があるのであれば、それは早急に取り除いていただきたいと思います。  ただ一方、サプライヤー側からすると、そうやって構造転換が急速に進んだ場合にどうなっていくのかなと、こちらに対する施策、配慮というのもまたこれ必要だと思います。それぞれの面でいろいろな対応をお考えだと思いますけれども、この傾向については今どのようなお取り組みをなさっていらっしゃいますでしょうか。
  110. 岩田満泰

    政府委員(岩田満泰君) 物流に限らず、今サプライ・チェーン・マネジメントというようなお言葉でも表現されておるわけでございますが、いずれにしましても消費者のニーズが多様化するあるいは高度化するということでございまして、こういうニーズに的確に対応するということのためにはそれなりの流通・物流システムをつくっていくことが求められている。その場合に、特に顧客と申しますか、消費者のニーズと申しますか、そういうものに即したものでなければならないことは当然でございます。その上で、私ども情報技術の活用というものを極めて重視いたしておるわけでございます。  その意味で、先生今御指摘のように、そうした流通システムの変革が行われるということは、同時に、経済構造改革一つの柱に置かれているように、経済構造改革という名前が示しますように、まさに経済の中の物流というところにかかわられるもろもろの主体について変化が生ずるということを意味しているわけでございます。だからこそ構造改革になるわけでございますが、その意味において、物流一つとりましても、その関係の業界と申しましょうか、関係者の方々がそうした新しい経済の仕組みと申しましょうか、そういうものが求められているし、そういう方向に進みつつあるという環境変化についてしっかりとした自覚を一つは持っていただく必要があるし、変化に対してビジネスマンとして対応していくという努力をお願いしなければならないというふうに思うわけでございます。  ただ同時に、一方で、例えば卸売業というようなものが物流全体の中で減少をするという傾向があるわけでございますけれども、昨今の実体経済を眺めますと、そういうことが一方に進みつつも、かつ他方で、卸売というようなものがしつかりしたシステムを用意したものであるとすれば、むしろメーカーあるいは小売業にとってアウトソーシングという別のよさというものを持つ存在として活用しようという動きがまた同時にあるわけでございます。そういう意味では、情報技術などを活用しつつ高度な流通システムあるいは物流システムというものをお持ちになるということで新しい活路がまた発生をするということもあるということでございます。  そこで、私ども、とりわけ中小のレベルの卸売業者とかそういう方々につきましては、全国的なネットワークをその業界の中でおつくりをいただくというようなことについて中小企業施策の中で支援を申し上げて、例えば全国的なできれば広域の卸売業者のネットワークづくりをして、それによって大きな企業を相手にした一種のアウトソーシング、大きなメーカーさんあるいは大きな小売業者との間で一種の真ん中の、中間に立つ業者としてのアウトソーシングの役割を果たすというようなことは十分に今後の中小卸売業者にも役割が期待できるというふうに思っておりまして、その施策の面では中小企業に対してはそうした支援、助言というようなものを今後充実をしていきたいというふうに思っているわけでございます。
  111. 畑恵

    ○畑恵君 大変詳しい御説明ありがとうございます。  私も先ほど淘汰という言葉は余りよくないなと思いながら使ってしまったんですけれども、そうではなくて変化でございますので、ぜひそういう意味ではトレンドをゆがめたりとめることなくそうした移行というのがスムーズに行われるように施策を行っていただきたいと思います。  時間の方も大分押し詰まってまいりましたが、堺屋長官にPFIについて伺わせていただきたいと思います。  多々伺いたいことはあるんですけれども、時間の関係がございますので、法案の中に盛り込まれました民間資金等活用事業推進委員会いわゆる日本版PFIのタスクフォースでございます。こちらのあり方について御見解を伺いたいんですけれども、一つは人選ということでございます。  具体的なお名前等々ではないんですけれども、どういう方を想定していらっしゃって、どういう方を期待していらっしゃるのかということ。そして、その方がどのような勤務形態、業務形態で働かれると想定していらっしゃるのか。フルタイムでイギリスのPFIタスクフォースのように働くとなると、先ほどの人材の移動の問題も含めましていろいろ難しいこともあると思いますので、この点につきまして、そして、人選の経緯に関しましてはやはり透明性を担保するというのは必要不可欠だと思うんですけれども、この点について御見解を例えればと思います。
  112. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) PFI、つまり民間資金等を活用いたしまして公共施設等の整備等を促進する制度でございますが、これにつきましては、PFI法と略して呼んでおりますが、議員提案で民間の資金で公共施設を促進する制度の法律を提出していただいておりまして、我々の方といたしましては、関係省庁連絡会議準備会合を開催して進めているところでございます。  この対象は大変広い範囲にわたっておりまして、いろんな公共施設、道路でございますとか美術館でございますとか公園でございますとか廃棄物処理施設でございますとか、非常に多くのものを含んでおりますので、御指摘のとおり、どのようにタスクフォースを組んでいくか、また自治体や民間企業と提携していくかが非常に重要な点だと思っております。その点につきまして、学識経験者あるいは実務専門家から成ります民間資金等活用事業推進委員会、通例PFI推進委員会と呼んでおりますが、そういうものを設置しております。  また、政府といたしましても、PFI推進委員会の重要な役割を考慮いたしまして、その運営等につきましてもPFI推進に関する関係省庁連絡会議準備会合を設けて連絡調整体制を整えておりまして、既に何回か実行させていただいております。  その人選等につきまして、もし必要でございましたら事務当局から説明させていただきますが、万遺漏なきよう十分注意してやっておるつもりでございます。
  113. 畑恵

    ○畑恵君 できましたら、長官御自身の思いというのを伺いたかったんですけれども、もし事務方の方に伺った方がよろしければそれでも構いません。
  114. 中名生隆

    政府委員(中名生隆君) ただいま大臣から御答弁申し上げましたように、この法案国会の先生方が御提案をいただいておるものでありまして、この臨時国会で継続審議ということになってございます。  それで、今御質問がございましたいわゆるPFI推進委員会でございますが、もちろん法律ができて施行されて、それから委員をお願いする、こういうことになりますので、現時点ではまだ当然我々としてもどういう方にお願いするのかということは決まっておりませんけれども、今御指摘がありましたように、できるだけ透明性の高い方法で委員をお願いし、できるだけその仕事を十分にやっていただけるようにということで考えたいと思っております。
  115. 畑恵

    ○畑恵君 時間的にも私の持ち時間を過ぎましたのでここでとめますけれども、本当に透明性を高めていただくということはぜひ実行していただきたいと思います。PFI推進委員会をつくるときにも実際いろいろな問題等々ございました。それを解決するためにもぜひその点については御留意いただきたいと思います。  これで終わります。
  116. 加納時男

    ○加納時男君 自由民主党の加納時男でございます。  三点ございますが、第一は中小企業における貸し渋り対策についてお伺いしたいと思います。  ちょうど一週間前でございますが、この席で通産大臣のごあいさつを伺っておりました。その中で、無担保保険及び特別小口保険については保険限度額を引き上げる、これを貸し渋り対策の重要な柱にすると大臣から決意を伺ったわけでございます。確かに、現在、中小企業の経営実態は深刻でございます。金融機関の貸し渋りに加え、債権回収まで始まっておりまして、このために資金繰りが苦しくなって経営が行き詰まり倒産に至る例も多く伺っているところでございます。  ところで、信用保証協会の保証がついている融資については、債務の弁済がうまくいかない場合に代位弁済が行われるわけでございます。最近、この代位弁済率が上がってきているのではないかと私、危惧しているのでございますが、そういう実態がおわかりでしたら教えていただきたいことが一つと、それに加えまして、大臣が先週おっしゃった今回の対策でどのような貸し渋り対策効果が期待されるのか、そのあたりを伺いたいと思います。
  117. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生御指摘のとおり、中小企業においては中小企業を経営するために必要な運転資金あるいは設備資金を確保することが大変難しくなってきております。特に銀行から融資を受けます場合には、担保はどうなのか、保証人はどうなのかということになりますので、やはり信用保証協会の役割というのは、これまでも大事でしたし、今後ますます私は重要な役割を担っていかなければならないと思っております。  先生御懸念の代位弁済率、要するに保証をして結局保証協会がかわりに債務を払ったという率は年々実は上がってきております。ちなみに数字だけ申し上げますと、平成五年度から平成八年度にかけましては約一・五%でございます。しかしながら、平成九年度は一・七一%となっておりまして増加傾向を続けております。特に今年度の第一・四半期の代位弁済額は一千八百億円ということで、前年同期比で一四〇%という大幅な増加を示しているということで、これの数字自体が不況の中であえぐ中小企業の経営の姿を私は物語っているのではないかと思っております。  先般閣議決定されました中小企業等貸し渋り対策大綱の中で、信用補完制度の充実策として信用保証について特に二十兆円の保証規模を確保しまして、民間金融機関から貸し渋りを受けた中小企業者に対し積極的な保証を実行することとしております。このため、それぞれの県にございます信用保証協会、ここに特別な会計を設けまして、まず第一には保証要件を緩和します。ですから、保証要件を緩和するということは、今まで常識的には大体二%だった事故率というものをもうちょっと高目のところに設定して保証の審査を行うと、こういうことでございます。それから、保証料の引き下げも実はお願いをしておりまして、こういう特別な保証制度を十月一日を目途に創設することといたしております。  さらに、国会に提出をいたしておりますが、御審議をお願いする法律としては中小企業信用保険法、これは先生御指摘のように、無担保保険及び特別小口保険の保険限度額を引き上げる、こういうことが入っております。ぜひ迅速に御審議をいただければと願っております。  また、ただいま御説明申し上げました特別な保証制度については、今詳細を中小企業庁を中心に詰めております。そういうことでございますので、委員の皆様方に御審議をいただく法律とともに、この制度が十月一日から円滑にスタートできますよう心からお願いを申し上げる次第でございます。
  118. 加納時男

    ○加納時男君 保証要件を緩和すること、事故率を高目にした制度設計をすること、あるいは保証料の引き下げと、非常に意欲的なお話を伺いました。  今、無担保保険の件が出ましたけれども、無担保といいますと何でもいいように普通思うんですが、もう大臣御存じのとおり、無担保というのは物的な担保が要らないというだけで、保証人が要るわけでございます。我々、中小企業の仲間から非常に苦しいという話をよく聞くのは、第三者保証の問題でございます。第三者保証というのは、専門語でよく面前自署と言っておりますけれども、目の前で自分でサインする、そしてまた根保証が多いわけでございます。自分が第三者の保証人を依頼すると、第三者から今度は自分が第三者保証を依頼されるということがあって、第三者保証と言葉ではいいんですけれども、非常にやりにくいという実態がございます。こういった現状をどう認識され、また何か今後対策があるかどうか、この辺一言触れていただけたらと思います。
  119. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 委員から今御指摘をいただきましたが、現在我々、信用保証協会を通じて中小企業者に対する信用保証、三種類やっておるわけでございます。一つが普通保険に基づく普通保証、二つ目が今委員指摘のありました保証について物的担保を求めない無担保保証、裏打ちとしては保険公庫の無担保保険制度がございます。  今申し上げた無担保保険制度につきましては、物的担保は求めないという信用保証でございますので、本人の保証と第三者の保証人を要件といたしております。現在、法律限度額が三千五百万円になってございまして、委員の御指摘のように、こういった貸し渋り状況あるいは中小企業者相互に大変厳しい経営状況にあるときに第三者保証をとるのはなかなか難しいという状況にございます。  この点、我々も認識をいたしておりまして、本年二月の経済対策におきましては、三千五百万円の限度のうち半額に当たります千七百五十万円までは第三者保証人の徴求を要しないということで無担保保険制度を運用させていただいております。  ただ今回、貸し渋り対策大綱ということでまとめさせていただいたわけでございますが、新しく設置いたします二十兆円の貸し渋り保証制度につきましては、この無担保保証につきましても第三者保証の徴求の枠を千七百五十万円を上回る額まで免除するという方向で現在鋭意努力を続けているところでございます。
  120. 加納時男

    ○加納時男君 第三者保証のその増枠でございますね、千七百五十万円現在ありますけれども、そこまでは第三者保証は要らないというその限度をぜひ引き上げていただきたいと申し上げようと思いましたけれども、今の御答弁で私は大いに期待しております。日本の中小企業というのは御案内のとおり、雇用者数で見ると七五%ぐらいですか、事業所数でいうと九九%ぐらいを占める大変大きな存在であります。彼らの健全な発展こそ日本経済のかなめであると思いますので、よろしくお願いいたしたいと思います。  第二の質問に移りますが、環境エネルギー政策について伺いたいと思います。  環境エネルギー政策の基本は何であろうかということでございます。  私は、一つはコストであろうと思います。これは企業、経営の自主的な効率努力を阻害しているような規制があるならば、こういう規制を片っ端から撤廃していって、そして自主性、創造性によって経営の効率化を図り、長期的なコストダウンを図ること、これが第一。二つ目は、エネルギーの安全保障あるいは安全、安定供給といったセキュリティーであります。第三は、地域の環境並びに地球温暖化防止など、気候変動防止に役立つ環境適合性、この三つだろうと思いますが、この三点を総合化して推進するのがエネルギー政策の基本ではないかと考えておりますが、大臣の御所見を例えればと思います。
  121. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生御指摘のとおり、私ども、日本エネルギー政策の基本目標は何かと申しますと、一つは、やはり日本は資源を持っていないということでございますから、エネルギー資源の確保、またエネルギーの安定供給ということがまず第一の目標でございます。それと同時に、ある程度の経済成長も達成をしていかなければならないわけでございますし、いわゆる環境全般との調和ということもエネルギー政策の中で取り上げなければならない課題であると思っております。  例えば、環境問題では京都会議、COP3で目標を決めました。その目標と二%の経済成長を両立させたいと、こういうことでいろいろな政策を考えているわけでございますし、また、長期エネルギー需給見通しはそういうことを前提に実はつくられているわけでございます。  この見通しの具体的なこととしては、やはり省エネというものの大切さということを実は強調しておりまして、どういう分野がトップランナーになるかということも非常に重要でございまして、そういう省エネ対策等も講じ、また経済成長も達成し、なおかつ二〇一〇年にはエネルギー需要ほぼ横ばいということを目標にしているわけでございます。  一方、供給面では、炭酸ガスを排出しない等の特性を持っております非化石エネルギーの導入等に最大限努めるという考え方も示されておりまして、その中で最も中核でございます原子力につきましては、まず立地ということが大変大事な問題になっておりまして、その立地を推進するということが第一でございまして、それと同じぐらい重要なのが核燃料サイクルの推進ということで、この二つのことに関しましては省を挙げて取り組んでまいる決意でございます。  新エネルギーにつきましては、開発あるいは導入についていろいろな支援策、また各種の施策を用意してございますので、そういう方向の努力も続けてまいります。  また、エネルギー産業に対する規制緩和による供給効率化ということを先生御指摘されましたが、これは大変大事なことでございまして、私どもとしては、そういう先生の御指摘になったような線で現在も取り組んでまいっておりますし、これからも取り組む決意でございます。
  122. 加納時男

    ○加納時男君 とても内容のある御返事をいただきましてありがとうございました。  今の御答弁に関連してでございますが、最近IPP、独立系の発電事業者が具体化し、これが非常に活発化していることは結構なことだと思っているわけでございますが、今の大臣のお話の基本的なエネルギー政策環境適合性やエネルギーセキュリティーなどを含めた長期総合的なエネルギー政策の視点からどのようにこれをお考えか、一言お答えいただけたらと思います。
  123. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 一つは、独立した電気の供給者、これは電気事業法で言う卸売電気事業者ということを先生は多分お考えだと思います。これはそもそも、土地も持ち、ある種の技術も持ち、そういう発電所を設置するだけの十分な資力を持ったところが発電所をつくる、これを電力会社の送電網に乗せて卸売電気事業者として電力会社に卸売をする、こういうシステムが最近大変活発になってきたということは、立地が困難な日本の電力需要にとりましてはある意味では大変朗報であると私は思っております。  しかしながら、一方では、電力の供給というのは常に予備力というものを必要といたします。例えば仮に大きな発電所が落ちたというような場合には直ちにそれにかわる供給源が必要なわけでございまして、そういう予備力の確保ということは実は電力会社がやるわけでございますから、そういう予備力を確保するということに必要な物の考え方、すなわちそういう業者から一体幾らで電力会社が電力を購入するかということに十分考えを、思いをいたしませんと、適正な料率というものは決まってこないわけでございます。こういうものは通産省・資源エネルギー庁が中心になりまして、公平公正な料金とかあるいは供給義務規定とか、そういうものは考えているわけでございます。そういう意味では、独立して卸売電気事業者としてやっていかれるという意欲を持った企業が最近もまた出てきておりますということは大変望ましいことでありますが、その導入に当たっては公平公正ないろいろな取り決めをするということが私は前提であると思っております。
  124. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  もう一つ伺いたいのは、原子力や新エネルギーの大幅な導入促進が大事だということは今もおっしゃったわけでございまして、同感でございます。昨年の京都で開かれたCOP3のこういう国際公約を実現するためにも私は大事なことだと思っております。  ところで、今まさに大臣がおっしゃったように、原子力の立地でございますけれども、利用密度の高い海岸部において広い土地を確保するというときに、権利関係が複雑であるということも非常に現実の問題であることは否定できないと思います。もうちょっと明るい面を見ますと、日本は海洋開発技術では世界のトップランナーであることも事実であります。  そこで、例えばなんですが、人工島のような海上立地方式もこれからの立地問題解決の選択肢の一つとして考えられるんじゃないか、これは同時に、日本の先端技術、海洋開発技術というすばらしい技術を開発する有力な方策であるんじゃないかという意見もございますが、この辺いかがでございましょうか。
  125. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 原子力発電所の立地というのは、やはり地元の皆様方に深い御理解をいただかないとなかなか進まない。また、土地の権利関係なども整理整とんして、これを買い入れなければならないという側面もありますし、日本の場合には、海岸沿いに立地をいたしますから、漁業権との関係も大変難しいことになっております。しかし、今まで関係者の努力によりまして一応計画にほぼ沿った立地がなされておりますが、今後はますます立地の問題は原子力政策を推進する上で最も喫緊の課題であり、重要な課題になっております。  先生御指摘の海洋に関して持っております技術を活用して沿岸から離れたところに発電所を建てるのはどうか、こういうことですが、これはもちろんいろいろな工学的な安全性とかそういうものをすべて点検した上で、一つのオプションであり、可能性であると私は思っておりまして、そういう方面の考え方や研究も進めていく必要があるのではないかということは先生の御意見どおりだろうと思っております。
  126. 加納時男

    ○加納時男君 実は、土木学会というのがございまして、特に海洋土木の専門家、学者、技術者が集まって研究した、ちょっときょうは中身を紹介すると時間がないのでやめますけれども、このぐらい立派なものだというのだけ見ていただきます。土木学会で発行しました「原子力発電所の立地多様化技術」という、学術的にも価値の高い報告書だと、私、読みましたけれども。この中で、今申し上げました人工島立地についての技術的課題等がかなり研究されております。もちろん御存じかと思いますけれども、今お話しのように、これからも一つの選択肢としてぜひ御検討いただけたらと思っておるわけでございます。  話題を変えまして、残った時間わずかになりましたので、PRTRについてひとつ伺いたいと思います。  先週、大臣はごあいさつの中で、事業者が化学物質の排出量及び移動量を登録し、公表する制度の法制化を早期にやりたいというような御趣旨の御発言がございました。私の理解では、これはOECDで議論しておりますポリュータント・リリース・アンド・トランスファー・レジストレーション、その頭文字をとったPRTRというのが国際的に今大変大きな話題になっていますが、そのことをきっと大臣は触れられたんだと思いますが、これを推進していく上での最大の課題は何でございましょうか。一言お願いしたいと思います。
  127. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) これは化学物質の管理の改善強化を図るため、九月八日に取りまとめられました化学品審議会の中間報告を踏まえまして、関係省庁と十分な調整を行って、できるだけ早くPRTR制度の法制化を行ってまいりたいと思いますが、私どもとしては関係省庁との調整ということに十分力を尽くしたい、そのように思っております。
  128. 加納時男

    ○加納時男君 実は、最後のお言葉に非常に私は期待しております。といいますのは、環境問題について、実は一つの官庁だけでは律し切れないような非常に難しい問題がありますので、このPRTRについてはぜひとも関係省庁とよく協議していただいて、一本化して出していただきたい。我が国日本といいますけれども、こういう環境問題は一本でいきたいというのが第一のお願いであります。  第二のお願いは、これは化学物質、非常に複雑多岐にわたっております。因果関係も不明確なところがありますので、一番実態を知っている企業者、事業者の自主的な努力をエンカレッジするというか促進するような形で、しかも悪さかげんといいますかリスクをしっかりと見て、リスク評価を行ってリスクコミュニケーションを行っていく。これから御検討なさるそうでありますので、これは希望でございます。御答弁は結構でございますが、ぜひそれをお願いしたいということでございます。  残った時間、わずかでございますが、最後に堺屋長官にぜひこの場で伺いたいことがございます。  長官は、先週、現在の日本経済的、社会的ファンダメンタルズといった基礎体力は高い、適切な施策があれば十分経済は再生できるという力強いお言葉がありました。  そこで、私の質問でございますが、日本のGNPは御存じのとおり八割は民間だと思います。六割が個人消費、二割が設備投資、住宅投資というようなことですから。民間というのは心理が非常に大きく作用して行動にあらわれます。そこで、何か暗い話ばかりが多いわけです。確かに、金融政策や景気対策が喫緊の課題だというのは、同僚の畑恵委員が申したとおりでございますが、これに加えて、国民が自信を持ち、夢を抱けるような情報の提供をぜひ長官のわかりやすい言葉で語っていただくのもいいんじゃないか。  考えたら、日本は対外債権だって世界一だし、技術貿易収支も大幅な黒字になりましたし、アメリカにおける去年の特許のリストを見たら日本がトップなんです。これらのことはみんな国民は知らないと思うんです。日本の技術も、土木技術、今申し上げた海洋開発技術、エネルギー技術、部品、いろんな分野で日本は世界のトップを行く。自信を持っていいわけですけれども、そういった明るい面は全部目を暗くして、暗い話ばかりがメディアに乗っているというのは非常に悔しく思っているんです。  こういうところで、困難な時代こそ私は逆転の発想でいきたい。つまり、マイナスというのは全部プラスになると考えていけば、世の中明るくなると思うんです。高齢化社会だから暗いんだというのは敗北主義だと思うんです。  シニアの方が多いというのは、教養豊かな経験豊かな方々がお元気だということですから、この方々がマーケットの主役になる時代が来ている。彼らにとって魅力的なファッションなり食事なり、カルチャーだとか、いろんなマーケットを用意する。これによって新しい有効需要がつく。ワークシェアリングをやってシニアの方に働いてもらう。私もかつてそういう仕事をやったことがありますけれども、その結果、六十五歳以上の人に限って仕事をやってもらったところ、手ごたえを感じ、お元気になり、そして孫にもお小遣いがやれるようになり、カルチャーセンターにも行かれるようになり、何といってもいいのは、元気になったので病院に行かなくなった、老人医療費が減る。  何事も暗いところだけを見てがっかりするのは演歌の世界でありまして、政治の世界はやはり逆転の発想で、暗いものは全部プラスになる。日本だってエネルギーがないからこそ省エネルギー技術で世界一になったんだと。こういったことを経済企画庁長官、せっかく堺屋さんという立派な方がなられたので、もっと国民に語っていただきたい。時間も三分ほど残しましたので、どうぞごゆっくりお話しいただきたいと思います。
  129. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 三十分ぐらいしゃべりたいところでございますけれども、時間がございますので、かいつまんで御指摘の点をお話ししたいと思います。  まず、現在の日本というのは大変な大国でございまして、国富の総額が七千四百兆円という膨大な金額に上っております。対外債権も御指摘のとおり百二十兆円、世界一をずっと続けておりますし、貿易収支、国際収支も黒字でございます。特に、御指摘のように技術収支が非常に黒字でございまして、これは科学技術だけではございませんで、最近はアニメーションとかそれからキャラクターグッズなんかのデザインの面でも相当の黒字を上げるようになってまいりました。  そういう面で言いますと、日本は大変豊かな国であります。その上、国民の教育水準が非常に高うございまして、一般の人々の技術水準、それから秩序に対する感覚、勤勉の意欲、こういうものが衰えず高い状態にあります。  特に御指摘の高齢化社会でございますけれども、高齢化社会というととかく暗いイメージがございまして、テレビ番組なんかでもなかなか明るい番組がつくられないわけでございますが、高齢者の方々は非常に金融資産、資産が多うございます。したがって、高齢化とともに社会資本を初めといたしまして日本の一人当たりの資産規模はどんどん上がってまいりました。加えまして、最近バブルが崩壊して土地の値段も安くなりましたから、投資の機会も非常にふえてまいりました。  今までの社会というのは嫌老好若といいまして、年をとることは嫌なことだ、若いことがいいことだというのが近代文明の一つの特徴でございます。ところが、昔の文化、日本で言いますと江戸時代まで、ヨーロッパで言いますとルネサンスぐらいまでの文化というのはむしろ好老文化、老を好む文化でございました。だから、七福神を見ましても大体高齢者が福の神でございますし、また日本でも高齢者というのはめでたいということになっておりまして、松尾芭蕉などは五十歳ぐらいで死んだのでございますけれども、三十代からおきなと言われたことを喜びにしていた時代であります。  そういう高齢者がふえてくるということは、高齢者マーケットが大きくなるということでもございますし、そこに資本蓄積がたくさんあって経験も豊かになってまいりますので、そういった好老文化、老を好む文化というものを形成していきますと、大きなマーケットが生まれてくる。そして、日本だけではなしに世界じゅうの国が高齢化してくるわけですから、日本が好老文化を形成し高齢者マーケットの産業を具していくと、これがまた輸出産業として大いに先導的な役割を果たすだろうと思うんです。ぜひそういう意味で、日本国民が高齢化社会に対して明るい夢を持って立ち向かうようにしたいと思います。  今は不況でございますが、これを乗り切ったら日本には明るい未来があると私も信じております。
  130. 加納時男

    ○加納時男君 ありがとうございました。  ぜひともネガティブな発想でなくてポジティブな発想、常に元気の出る明るい側面も企画庁長官として国民にわかりやすい言葉で今のように語っていただけたら大変ありがたいと思います。  よろしくお願いいたしまして、私の質問、ちょうど時間でございます。終わらせていただきます。     ―――――――――――――
  131. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、木俣佳丈君が委員辞任され、その補欠として北澤俊美君が選任されました。     ―――――――――――――
  132. 本田良一

    ○本田良一君 堺屋長官の大変明るい答弁がありました後、私が質問をいたします。少しまた暗くなると思いますが、お許しをいただきたいと思います。  私は、今回、与謝野通商産業大臣及び堺屋経済企画庁長官が九月十日にあいさつで述べられました景気回復についての見解について、民主党・新緑風会を代表して一般質問を行います本田良一です。よろしくお願いをいたします。  私は、さきの参議院選挙におきまして、実は県民に公約をしたことがあります。そのことをちょっと申し上げて参考にしていただければと思います。  これまでの景気対策といえば、何十年と変わりなく政権党は公共事業、中でも公共工事予算の配分こそ景気対策のようにやってまいりました。果たしてこれが景気対策でしょうか。  国家予算は本来税金の自然増によってもたらされるもの、その税収によって国の予算は編成をされます。そして、これを公共事業による社会資本の整備や高齢化・少子化対策、教育、福祉、農業、環境、商工業などの政策に対する予算配分といたします。  では、この基本財源を得る政策は何か。新しい産業政策による起業化促進であります。本来、この政策こそ政権党の総理がどの政策よりも先に提案をし、これを実現することであります。しかし、これまで我が国政治の数十年、新しい産業政策による起業化促進提案はいずれの内閣によっても提案されることなく、今日の最も危険なデフレ経済に落ち込んでしまいました。  そこで私は、熊本県議会においてでありますが、一昨年より新しい産業政策についての起業化支援策を提案してまいりました。これは国の景気対策にも通じることであります。この政策実現のため当選をし、民主党の政策としてこれを具現化したい。  もう一つ、既にアメリカにおいてはクリントン大統領は、本来秘密であるべき軍事技術を開放することによって新しい産業政策を提案いたしました。これがいい例で、いわゆる「タイタニック」というあの映画は、この軍事技術を開放して生まれた映画です。一方、ゴア副大統領はスーパーハイウエー構想を打ち出しました。これは情報通信産業の政策であります。それぞれ二つの政策実現によってアメリカ国家予算は三十年ぶりに黒字に転換をしたというようなことを私は言ってまいりました。  そしてまた、平成七年十二月ごろから私は新産業創出を申し上げ、これをやらないと今後地方も国も行き詰まってしまうということを言って、この起業化支援センターというのが熊本県でも平成八年にできたわけであります。  それからもう一つは、これから情報化の時代になれば情報産業の担い手として女性の起業家をたくさん誕生させる、このこともこれからの大きな日本産業創出につながるというようなことを言ったわけであります。アメリカには全米女性起業家会議というのがありまして、日本からも何名か今入っているということも聞いております。  それからもう一つ、先ほどの時の政権の総理が産業政策の創出について述べなかったというのは、ずっと四代前までの総理の所信演説を聞いておりますと産業政策についての所信表明は実はあっておりません。そういうことを踏まえてこれから質問をいたします。  小渕総理はさきの所信表明で、与謝野大臣堺屋長官はさきのあいさつで一両年中に景気回復をなさると述べられました。この一両年というのは、経済動向の判断、数値的にかそれとも国民生活の実感としてとらえる判断か、そしてまた、この年度において回復ができなかった場合は与謝野大臣堺屋長官は責任をとられるのかどうかをまずお伺いをいたします。
  133. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 私どもは、日本経済が直面している困難を二つの問題としてとらえております。それは、目前にございます不況の問題と、あるいは中長期的に考えて二十一世紀の日本が果たして豊かであるのかどうか、また豊かであるためには一体何をするのかということであります。  短期的な問題としては、やはり内需を拡大する、あるいは金利水準を下げる、そういうことも必要でございますし、また政府が国会にお願いしております不良債権の処理を加速するためのいろいろな金融関連の法案、こういうものによって金融システムを安定させるという課題もございます。当面はそういう三つがございますが、果たしてこういう処方せんだけでやっていけるのかというのが多分先生の質問の御趣旨だと思います。  私は、財政支出を繰り返し、あるいは金利水準を低目に維持をして経済を支えていくという手法は永久にとれる手段ではないと思っております。先生がいみじくも御指摘になったように、日本経済そのものを強くするということを考えなければならないわけでございます。  それでは、一体日本経済の強さというものをどうやってつくり出していくのかと申しますと、一番基礎になりますのはやはり技術でございます。技術というのはそう簡単に手に入るものではございませんで、在来型の技術というのはもう既に全世界に散らばっておりまして、だれでも使えるという技術になっております。  したがいまして、日本の得意な分野をどこに求めるかというのが日本人全体に課せられた大きな課題でありまして、そういう意味では財政支出を考える際にもやはり日本の将来の科学技術の水準を高める、科学技術の水準を高めることによって日本が自分の得意な分野をつくり出し、また国際競争力も維持をしていく、そういう国際競争力を持った経済を構築することによって二十一世紀を豊かな世紀にするというのが現代に生きる我々の責務であろうと思っております。当面の問題は当面の問題として解決しなければならないというのは社会的な要請であるとは思いますけれども、それだけでいいのかと言えば、そういうことでは決してなくて、ある方向性を持った投資を行っていく、国民全体としての投資の方向というものは私は必要なのではないかと。  一方、もう一つは、確かに数字の上では日本は大変豊かになったとは申しましても、やはり生活実感としての豊かさというものは欠けているのではないかと思っております。それは専ら住宅事情あるいは通勤時間の長さ、交通渋滞、こういうことによってやはり本当の豊かさというものを実感できていないというのが私は国民の生活であろうと思っております。  先般、小渕総理が指示をされました生活空間倍増計画というのはこういうものに対応した考え方であろうと私は思っておりまして、通産省でも、通産省として担うべき生活空間倍増計画、どの部分を担って今後政策をやっていくかということを省内で今懸命になって検討をしている最中でございます。
  134. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) ただいまの御質問の中で、どういう状態で景気が回復してくるかという御質問があったかと思いますけれども、先ほど私どもの経済企画庁で発表いたしましたように、今は三四半期連続で経済がマイナスになるような状況でございます。これを回復軌道に乗せる、一両年の間に回復軌道に乗せるというのが現在小渕内閣のお約束している事態でございますが、大体今、我々の判断といたしましては、DIといいますけれども、景気指標が三期連続ぐらいで上向いてくるというようになれば軌道に乗ったと言えるだろうと思います。そういう状況にできるだけ早い機会に持っていきたいと思っておりますけれども、国際情勢その他の関係がございまして、日本だけですべてが解決できるかどうか、これは必ずしも今の状況では申し上げにくいところでございます。できるだけの努力はしなければならないと考えております。  短期政策といたしましては、今通産大臣からお話がございましたように、減税政策あるいは公共投資の追加政策等も遂行していかねばなりません。また、通産大臣がおっしゃいましたスペース、生活空間を倍増する計画、そして新しい産業を興す産業再生計画等も推進していかねばなりませんし、同時に、日本の社会全体をやはり消費生活あるいは国民生活で明るい状況にしていく、これが大きな問題だろうと思います。そのためには、産業面と同時にやはり人々が働いて報われる世の中をつくっていく、そういうような社会構造的な変化も必要でございます。  したがって、雇用の面でも高齢者の雇用をどのように確保していくか、女性の働きやすい環境をどのようにつくっていくか、そういうこともあわせて考えていく必要があるんじゃないか。そういうことが相まちまして、国際環境にも恵まれて、一両年中に景気が回復軌道に乗るようにしていきたいと考えております。
  135. 本田良一

    ○本田良一君 与謝野大臣からは一両年という区切りの目安というのは出てこなかったようでありますが、しかし、今おっしゃったようなことを踏まえてその年度までということだろうと思います。一つは、意欲ととっていいんでしょうか、それを一生懸命やりたいと、そういう期日を示されてこれだけ一生懸命やるんだという意気込み、それは私も買っているところでありますので、ひとつ両大臣ともしっかり頑張っていただきたいと思います。  次に、そこで、景気回復のための新産業政策でありますが、小渕総理は歴代総理としてある程度具体的に産業政策について初めて述べられました。地方議会で私どもが平成七年ごろからこのデフレ経済に向かうことを予測して知事や行政当局に訴えてきたわけでありますが、常に地方で言われることは、国の方ですることですからと、こういう言葉で我々は不況に向かう日本経済に対して実はどうすることもできなかったわけであります。そうしたときに、今回総理が所信表明で述べられましたことにつきましては、私としてはもっと具体的に実は今度の所信表明で述べていただきたかったわけであります。  ところが後で、例えばさっきおっしゃいました公共事業見直しの会見や生活空間倍増による産業創出の会見や記者発表、それから失業・退職者の起業家支援策を発表されるなど、私は何かまだ小渕政権は我々がとらえた不景気に比べますと計画性と実現性がないような、そういう感じを持ったわけであります。しかし、一応景気回復のための産業政策が具体化しつつあることを了として、これからの政策実現に期待するところであります。より早い時期の国民の経済不安の解消に小渕政権が努力されるよう望むものであります。  与謝野大臣堺屋長官は、この景気回復を政府提案の総合経済対策を着実に実施することによって景気回復の軌道に乗せるとしておられます。また、宮澤大蔵大臣は景気回復を新ニューディール政策と位置づけ、これをもって景気回復を達成しょうとしておられるわけでありますが、この新ニューディール政策というのは、時のアメリカのルーズベルトがやった時代のダムあるいは道路建設、そういう政策と宮澤大蔵大臣が考えておられる公共工事を主体とした社会資本の整備のこの違いについて実は説明をいただきたい。  今や公共事業予算では景気回復にはつながらない、そのために新産業の創出ということになっているところであるので、我々からすればケインズをもととしたニューディール政策については何か時代錯誤のような感じを持つわけであります。  それで、平成十一年度概算要求の新事業・雇用創出予算、三千十六億などの政策で数値的にどれぐらいの景気回復を予測しておられるか、この三点について与謝野大臣にお伺いをいたします。
  136. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 先生御指摘になられましたように、ニューディール政策をアメリカでとりました一九三〇年代は、理論の基礎はケインズ経済学、オールドケインジアン学派と今は言われている物の考え方でございます。これは、財政支出によって有効需要を生むというのが基本的な思想でございます。  これは、平成三年以降、バブル経済がはじけた後とりましたのは、やはり低金利政策と財政出動による有効需要の創出という手法を実はとったわけでございます。これは効果がないわけでは実はないので、十兆円使いますと確かに十兆円の効果はある。ただ、波及効果の面においては、昔のように財政出動をしますとそれが次々とこんがらがった経済をほどいていく、財政支出をすることによって設備投資を誘発するというような効果までは実は出なかったということは私は事実であろうと思っております。  そういう中で、今政府の中において考えられておりますのは、財政支出だけでは十分ではなくて、やはり個人の消費性向を上げる、そのための施策が必要だというふうに私は考え方が静かに変わってきたと。これは、所得税の恒久的な減税をやるということがまず第一でございますし、また失業が出ますとそれだけ可処分所得が減るということにもなりますから、そういう雇用対策もやるということも一つの方向ですし、現在目の前にございますいろいろな政策的なツールというのは、ことしの春決め、既に国会で御承認をいただいております十六兆円規模の経済対策をやるための補正予算、これが動き始めます。それから、第二次補正というものも小渕総理は公約をされております。これは実際いつ国会で御承認をいただけるかという問題はございますけれども、そういう面での財政出動は行います。それから、来年の一月一日からは四兆円になんなんとする所得税の減税を恒久的なものにいたします。四月一日からは法人税を国際水準まで下げる。  そういう一連のことをやっておりますが、やはり財政を支出する、あるいは公共事業を行うというときに、一つの方向性を考えるといたしましたら、借金をして財政出動をいたしますから、将来の世代に対してこういう理由でこういうところに財政資金を投入したということが十分私は説明できるものでなければならないと思っております。  そういう方向を考えますと、一つはやはり国民の生活の質を直接向上するような分野、あるいは直接間接、国としての経済の生産性を向上する分野、あるいはそういう方面にお金を使うことによって誘発効果が今以上に期待できる分野、こういう分野を考えながら財政出動を考えていくということが私は今後の方向性であろうというふうに考えております。
  137. 本田良一

    ○本田良一君 今、大臣と考えは一緒なんですよ。だから、ケインズ理論であってもいいから波及効果のある予算の使い方をやらなくちゃいかぬ、そしてそういう社会資本の整備をやらなくちゃいかぬということなんです。  ただし、ルーズベルト時代のダムや道路では、あのときは農を潤して、その農産物が日本など世界の貧困を救ったり波及効果があったわけですよ。ところが、今は日本でダムをつくっても、農を潤したって農産物は売れない、そういうふうにどこかでとまってしまう。道路をつくっても、フォードあたりが自動車をつくって、若者はドライブに行って車がどんどん売れた。今はもう道路をつくっても若者はドライブには喜んで行きません。そういうふうにとまってしまう。  だから、別な形の社会資本の整備を、ニューディールとして波及効果のあることを今大臣が言われるようにされるのであればいいわけですよ。だから、そういう配分の仕方を私としては今後お願いしたい。時代錯誤に陥らないような予算の使い方をお願いしたいということです。  次に、新産業政策はまず国家戦略として恒久的であるべきと思います。そのためには一国の総力を挙げてなされるべきものであって、時の首相とその政権が先頭に立って具体化するものでなければなりません。しかし、まだ限られた省のみのもののようであります。そうしたことにかんがみると、他の省との横断的な改革の接点や壁となる部分はわかっていても、それを解決するに具体的なものがないように思います。この点につきまして見解をお伺いいたします。これは、規制緩和とちょっと前の答弁であったようなことも踏まえてお答え願いたいと思います。与謝野大臣です。
  138. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 以前ですと、例えば通産省だけで解決できる問題もありましたし、郵政省だけで解決する問題もありましたけれども、今多くの問題が省庁をまたいで存在しておりまして、省益などという小さなことを考えないで政府全体として相協力しませんと解決できない問題が実はたくさんございます。例えば、廃棄物の問題をとりましてもそうですし、環境の問題をとりましてもそうですし、あるいは情報通信分野についてもそうですし、これは物の考え方として省益を捨てて、やはり国民の利益になることをどうやって政府全体として実現できるかという視点に立って私どもは行政に携わっていかなければならない。  これは先生が多分お考えになっていることだろうと思いますが、私はそういう意味では現在なおかつ省庁間の壁というものがあるということは実感しておりますので、今後とも省庁間の壁を取り払って国民のために行政機関同士が協力をする、そして一つの政策目標に向かって進んでいく、そういう姿勢がますます大切な時代になってきた、私はそのように認識をしております。
  139. 本田良一

    ○本田良一君 与謝野大臣、それはもう十分わかっておられるわけですが、この省庁間の縄張り、これについてはずっと昔から言われて、だれが取り組んでもなかなか難しかったと思います。しかし、これからの景気対策として通産省がやっぱり前に出てそういう点を、極端に言うならば総理大臣と同じぐらいの権限を持ってその省庁間の縄張りを取っ払って、例えば通産大臣が言うことであれば省の縄張りがあるけれども超法規的なことだと、それくらい考えてそれに従ってくれるような、やっぱりそれぐらい前に出てやらないと、アメリカとも交渉を先頭に立ってやっておられるわけですから、そうしないとこれからの新産業創出というのは私はできないと思います。だから、周りを気にしておったのではできないから、ひとつそういう点しっかりやってもらいたい。  次に、新産業政策は個人や企業がいかにして新産業を起業化するかを支援する環境づくりの政策であります。そのための環境づくりとして資全体制、法体制、教育改革、税体制、規制緩和などさまざまな改革が必要であります。このたびの通産省の平成十一年度概算要求にも相当こうした環境整備予算への努力がうかがわれます。よって、以下その課題について御見解をお伺いいたします。与謝野大臣にお願いします。
  140. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) ちょっと概算要求の内容ですから。
  141. 江崎格

    政府委員江崎格君) 新規産業関係の来年度に向けての要求でございますけれども、私ども新規産業としてこれから有望な伸びる分野として十五分野を想定しておりますが、この技術開発の関係ですとか、あるいは各種の情報提供の関係ですとかあるいは規制緩和、こういった種々の予算項目を合わせまして三千十六億円を平成十一年度の予算要求でお願いしているところでございます。
  142. 本田良一

    ○本田良一君 私がこれをなぜ聞いたかといえば、そういうものを新規事業として地方に十分説明をしていただきたいんです、そういう新規事業の分野は。  私どもが地方におりまして、自分の県を悪く言うわけじゃないけれども、新しい事業がおりてきても行政マンがなかなかそういう関係の県民に周知をしない、それでせっかくの予算がとまってしまったりそういうことがあるんですよ。だから、そういう新規事業についてはよく下部を指導して、地方を指導して、それがちゃんと波及効果のあるように、満遍なくそういう新規の予算が伝わっていくようにやっていただきたい。そういう我々の感じたところがありますから、申し上げておきます。  次に、与謝野大臣にお聞きしますが、新産業とはどういう種類のものをおっしゃるのでしょうか。与謝野大臣にお願いします。
  143. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) どういうことを考えているのかということですが、政府としては、昨年五月に閣議決定をいたしました経済構造の変革と創造のための行動計画においては、市場規模の拡大、良質な雇用の創出といった観点から、医療・福祉、情報通信、環境、バイオテクノロジー、航空・宇宙等の今後成長が期待される十五の新規産業分野を掲げたところでございます。  通産省といたしましては、今後成長が期待される新規産業分野ごとのニーズを踏まえつつ、関係省庁との連携のもと、抜本的な規制緩和、技術開発、人材育成等の施策を積極的に推進してまいります。  以上です。
  144. 本田良一

    ○本田良一君 まあ大体そういう十五分野だと思います。先端技術産業の世界やエレクトロニクス技術の世界やフロンティア技術の世界。例えばもう一つは災害・救急技術の世界、そういうものなども私はあると思います。  特に科学技術、知的産業の分野に多くが存在いたします。そのため、通産省としては、こうした新産業分野の総合的把握をぜひ行っていただき、その中の重点産業を国の指定として積極的に起業化支援をしていただきたいのであります。  次に、こうした科学技術や知的産業が新産業として起業化されることになりますと、特許申請から取得、ひいては法廷闘争など、特許庁の改革、法体制の整備、これは弁護士の数まで改革する必要があります。法の後進国である我が国は、これからこの法改革においてもアジアを指導しなければなりません。例えば周辺特許より基本特許、つまりプロパテントの取得を国家戦略としてやってもらいたいわけであります。これをなすための分野の改革が重要であります。よって、こうした分野の問題点も含め、改革すべきところを具体的に述べていただきたい、特に外国とも比較をして。  この外国とも比較をしてというのは、さっき加納先生がアメリカにおいて日本は特許で一位になったとおっしゃいました。しかし、アメリカで特許をとるようじゃいけません。日本でパテントをとれるような法体制等そういうものを整えないと、アメリカで特許をとるような日本の弱さがあるから新産業とか知的産業が常にアメリカ等に先を越されていると私は思います。  特許申請窓口の改革や手続の問題から裁判まで複雑で金がかかることなど、また地方に権限を持った窓口がない、そういうことも含めて、よければお答えをいただきたいと思います。  与謝野大臣にお願いします。
  145. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 特許はいわば国の大事な財産でございます。これは、富も生みますし、また外国にも売れますし、大変大事なものでございまして、先生御指摘のとおり、基本的な部分の特許がとれませんと外国の特許に頼るということになっておりまして、やはり科学技術というものを重視して、新しい発明・発見というものを特許制度で保護するということは大変大事な国の政策であると私は思っております。  特許庁もいろいろ過去工夫をしてきておりまして、ペーパーレス計画というのを実は立てまして、事務を簡素化するということには非常に成功しております。ただ、特許というのは、出願をしましてから実際に特許がおりるまでの期間、出願から実際の特許が得られるまでの期間というのが大変大事でございまして、そういう意味では、特許の審査の方法あるいは審査に携わる人員、あるいはコンピューター等の活用、あらゆる面で特許の審査期間というものを短くする必要があるということは先生の御指摘のとおりだと私は思っております。  それからもう一つ、大変問題なのは、特許紛争が実はございます。  特許紛争がありましたときに、結局は裁判所に訴え出るわけですが、裁判所の審理というものがなかなか遅々として進まない。裁判所の方では最高裁で、東京地裁では昨年一部、またことし一部裁判官の増員をしてくださる、こういうことになりまして、この増員した部分は特許を専門に扱うということでございますけれども、それでも特許が切れてから判決が出たという笑えない話もございます。また、日本人同士が特許を裁判で争うのに、日本の裁判を利用しないで日本人がアメリカに行って日本人を訴えるというような話もございまして、この裁判制度の迅速性ということもまた大変大事なことだろうと思っております。  それと同時に、やはり知的所有権と申しますか工業所有権と申しますか、著作権を含めたすべての知的な所有権、こういうものに関しましては、発展途上国とも制度を同じくして、日本の持っておりますいろいろな知的な財産権が守られるということをこれから図っていかなければなりません。  CDなどは簡単に今複製できますので、大変著作権逃れのCDが出ているとかあるいは特許逃れがたくさん出ているとか、いわゆる日本人の財産であるそういう知的な財産権を保護する制度というのは国際的にやはり構築していかなければなりませんし、また、日本も他の国のそういう知的な財産権を尊重するという態度で特許行政を進めていかなければならない、そのように思っております。
  146. 本田良一

    ○本田良一君 ありがとうございます。  大臣がおっしゃったとおりでございまして、まず私がこれを言いますのは、アメリカで裁判をすればもうかる、勝つ場合は。アメリカで裁判すれば、一つの特許で勝った場合は日本で勝ったより金額がはるかに大きい、だから日本人がアメリカで裁判をやる。そういう例もございます。  しかし、私は、国内で裁判が起こることはいいと思うんですよ。大いにこういう特許関係の裁判は日本で争ってもらいたい。そうすることによって日本の法が強くなります。日本に法廷闘争が少ないことが日本の法が弱い。法を強くするためにはやっぱり裁判が起こらなくちゃいけない。だから、起こって、その場合には裁判官がもっとたくさんいなくちゃいけない、弁護士もいなくちゃいけない。  ただ、特許庁は特許をとるまで一年六カ月に短縮をしました。しかし、そういうものでなくて、まず、特許庁は全国で中央にしかない。特許関係の地方の窓口はないんですよ、県庁とかそういうところには。私はそういうところにそういう窓口をやっぱりつくってもらいたい。そうしないと、県民が何か特許を自分でやろうとした場合に、熊本県でも三名ぐらいしかいない近くの弁理士のところに行かなくちゃいかぬ。そういう地方で特許を出願する場合は非常にまだ窓口が少ない。  ただし、この閲覧についてはインターネットでこれからやるとおっしゃっていますからそれはいいんだけれども、現実にその前の、自分がアイデアを、そういう何か特許をとろうとするときの相談をするところがない。だから、そういうところを地方に充実しないといけないと思います。  それと、今回の審査を早くするために特許庁の審判官を置かれるということでありますが、そういうことをやってこの特許あるいは技術の保持のために環境づくりを私はもっとやっていただきたいということです。  次に、草の根起業家群を国内に発生させることが新産業政策の目標と思います。これは今回の概算要求の中にもありましたが、既にアメリカにおいてはその数は日本と比較にならないものがあります。こうした起業家支援をなさる方針を述べられましたが、より具体的にお示しをいただきたいと思います。  まず、これからお願いします。
  147. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 委員指摘の草の根起業家群をいかに生み出していくかということでございますが、起業家精神にあふれました事業者による活発な開業がどんどん行われまして、新規事業が次々と創出されることが我が国経済の活性化を図るために必要だと考えております。また、こういった新規事業が創出されますと、ある意味で良質な雇用も創出されるということで、雇用対策の面でも大変期待ができると考えております。  このため、私どもといたしましては、新たに事業を開始されようとする起業家あるいは成長が期待される企業等に対しまして資金面、例えば信用保証の面とか補助金の面とか融資の面での支援もさせていただいておりますし、技術面、経営面でも集中的な支援を行うこととしてございます。また、地域におきましては、ベンチャー財団の直接金融の道を開くなど体制の構築についても対応いたしておりまして、新規開業あるいはその成長を円滑化するための施策に来年度予算においても重点的に取り組ませていただいておるところであります。
  148. 本田良一

    ○本田良一君 特に、これから学生、失業者、女性、そういうところに働きかけられるわけですが、広報体制それから行政の窓口そういうところの設置をお伺いするとしておりましたが、次に大きな問題がありますから省略をいたしまして、お願いにかえさせていただきます。  また、大学の方にも起業化促進をされるわけでありますが、大学の学生たちが卒業と同時に新しい産業を興すということはこれからの日本産業構造の変化に大きな影響を与えると思いますので、ひとつ積極的にお願いをいたします。  次に、資全体制について、草の根起業家を国内に発生させるには現在の金融システム、特に公的資金の導入のみでは限界があります。よって、アメリカ並みの投資家と起業家の資金システムを確立すべきでありますが、ここに幾つかの資金、税制両面の課題についてお答えをいただきたいと思います。  それは、例えばベンチャー企業でいいますと、先ほども出ておりましたが、我が国の開業率は平成六年から八年までの年平均で三・七%で、廃業率の三・八%を下回っている。ちなみに米国の開業率は、一九九四年で一三・八%と我が国の四倍以上である。このようにベンチャー企業に対する支援のメニューは豊富だが、我が国企業の創業が活発であるとは言えない。どこにこの原因があるかであります。その原因についてお答えをお願いします。
  149. 江崎格

    政府委員江崎格君) これはなかなか難しい問題でございまして、私どもこの新規産業の育成というものはどういう対策をとったら最も有効であるかということをかねてから検討し、それに従いましていろいろ施策を講じてきているわけでございます。  一つは資金面の問題があろうかと思います。ベンチャーを目指す企業方々に対しまして十分な資金が回らないというようなことが問題であるということが一つ言えるかと思います。それから、人材の面でも、ベンチャー企業が人材の確保をするのはなかなか難しいという問題もございます。それから、大企業に比べまして技術の面でも格差がございまして、新しい技術を駆使してそれを起業化するということを考えます場合に、ベンチャー企業にとりましてこうした点もネックかと思います。  こうしたことにかんがみまして、私どもこれまで一つは資金面、税の面でございますけれども、創業期のベンチャー企業を支援するためにエンジェル税制というのを昨年の六月に創設したわけでございます。それからもう一つが、やはり資金を潤沢に回すということで、これはさきの通常国会におきまして、年金基金からベンチャー企業への資金供給を円滑にするということのために投資事業組合法という法律を成立させていただきまして、これは投資者の有限責任を定めて投資をしやすくするということでございます。こういったような施策を通じまして資金面、税制面での対策を講じております。  それから、もう一つは技術面でございますが、これはいろいろな施策を講じてきておりますけれども、特に来年度に向けましては、今委員の御指摘アメリカの施策も参考にいたしまして、アメリカには実はSBIRという中小企業向けの一定の技術開発費用を確保するという制度がございますが、こうした考え方を日本にも導入いたしまして、提案公募型の技術開発につきまして中小企業に一定の枠を確保するというようなことができないかということで、現在、関連する予算をお願いしているところでございます。  これからもなお一層こうしたベンチャービジネス、新規産業の育成にとりまして重要な施策をさらに充実していきたい、このように考えております。
  150. 本田良一

    ○本田良一君 このところには実を言いますとあと十項目ぐらいあるんですが、時間があったときに振り返って御質問することをお許しいただいて、その前に重要なことをあと二つだけ。  まず、今の起業化は個人的なことだけれども、官主導の起業も大切と思います。その官主導はどういうのがあるかといえば、今まで新産都市がありました、それからニューメディア指定地域、テクノポリス指定地域というのがありました。全国にそういうものが指定されておりましたが、これについてはこれからの産業創出が考えられますけれども、どのようにされるのか、そこをお伺いいたします。
  151. 太田信一郎

    政府委員太田信一郎君) 先生御指摘のように、これまで新産業都市あるいはニューメディア指定地域、テクノポリス指定地域等々、発展ポテンシャルの高い地域において新産業創出のための施策を講じてまいりました。テクノポリスですと二十六地域ございますが、おかげさまで工業出荷額あるいは従業者の数においても全国平均をかなり上回るところまでいっております。それから、俗な言葉で恐縮ですけれども、それぞれ金太郎あめ的に発展しているわけではなくて、例えば光だとか材料だとか、いろんな技術を核にしながら発展しているところでございます。  私どもとしては、先ほど御説明いたしましたように、地域のプラットフォームの施策を充実させることを通じて、さらにこういう集積地域が苗床機能としての役割を十分に果たしていくように施策を続けてまいりたいというふうに考えております。
  152. 本田良一

    ○本田良一君 私もそう願います。  地域プラットフォームの整備というのが先ほども出ておりますが、こういうこともその後に来ると思いますが、今三つの大きな指定地域、特に新産都市などは一度今死にかけておったわけですから、こういうのをもう一度起こしてやっていただきたい。  それから、地方にも国にも地方公共団体とか国の第三セクターがたくさんあります。この第三セククーの民間移行、これを積極的にやっていただきたい。そうした場合にPFIの導入を考えられないか、それをお尋ねします。
  153. 江崎格

    政府委員江崎格君) 委員指摘のPFIでございますけれども、これは私どもも大変意義があるというふうに思っております。  と申しますのは、PFI方式による社会資本の整備ということになりますと大変効率的に行われるだろうということが期待されますし、その意味で財政構造の改革にもつながるということでございます。それから、先ほど来御議論が出ております新規産業の育成ということにもつながるだろうというふうに思っておりまして、大変意義があることだというふうに思います。  ただ、今実は議員立法の動きがあるわけでございますけれども、そうした法案などを通じましてPFI導入のための条件整備が必要だというふうに思っておりまして、例えば公共施設の整備・運営主体につきまして、今それぞれの例えば道路法ですとか港湾法によりまして事業主体が限定されておりますけれども、こうしたことについての早急な規制緩和ということも必要だと思いますし、それから行財政改革などを通じまして民間事業者の創意工夫が発揮されるような環境整備をする必要があるというふうに思っているわけでございます。  それから、第三セクターによるプロジェクトの民営化といいますか民間移行の問題でございますけれども、これは従来、民活法によりまして事業が行われておりまして、そのうちのかなりの部分が第三セクター方式によってなされているわけでございます。これは整備されます施設がほとんどが公共的な施設なものですから、それに対して地元の関係の自治体が非常に大きな関心を寄せて積極的に資金の面でも参加するということの結果かと思っております。  ただ、プロジェクトによりましては純粋に民間だけでなされている事業もございまして、私どもの所管しております民活法は主体によって必ずしも区別をしておりませんでして、第三セクター方式のものも支援をしておりますし、それから純粋に民間のものも支援をしておりまして、それぞれ事業にふさわしい体制が組まれることを私どもとしては期待をして今事業を遂行しているという状況でございます。
  154. 本田良一

    ○本田良一君 私がこれをなぜ言うかといえば、もう第三セクターが多過ぎます。だから、日本は自由主義市場だけれども、ある面、官の第三セクターがずっとはびこることによって官的ないわゆる統制経済が逆な方で進行してきている。だから、これを取っ払わないと日本経済は本当には活性化されない。だから今後こういう第三セクターを早く民間に、昔の人は偉かったですよ、八幡製鉄をある程度操業して民にぱっと移したんだから。そういう大胆なことを明治の人はやっております。今の人たちは握ってしまっている。これでは日本はよくなりません。そういうことをお願いしておきます。そして、官が天下りをしないことです。  次に規制緩和。これは与謝野大臣にお尋ねします。先ほど、先頭に立ってやっていただきたいと言いましたが、特にお考えをひとつ聞きまして、もう一つ、今回新聞に載りましたが、きのうの日経に出ましたのは、逆なこともあります。第一種の電気通信事業を、ケーブルを引っ張る事業者、この人たちが、今はNCC、第二電電あたりはNTTへの接続で市内通話をやっております。これは設備が大変きついからそういうふうにしておったわけですが、きのうの場合は、NTTを除いてほかの事業者は全部参入している。これは今は言わないけれども、次のときには公取でも調べていただくような問題です。ちゃんと設備能力のあるのを除外してほかの者を参入させてしまった。電波のことですけれども、きのうそういうことを郵政省はやっております。  こういうことでは今の時代に逆行しているし、アメリカ日本のNTTは五年でなくしてしまうと、それくらいシリコンバレーでは言っているわけですから、アメリカは参入しているのに日本のNTTは入れない、そういうことではこれは公取の問題です。だから本当に厳重に調査をやって、こういうことが郵政省はないように大臣は指導していただきたいと思いますが、お願いします。
  155. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 郵政省を指導するほどの力はございませんが、あらゆる分野で公正な競争が行われるということは大事なことでございまして、仮に先生御指摘のような事例があったとすれば、それは政府として十分注意を喚起すべきことだろうと私は思っております。
  156. 本田良一

    ○本田良一君 ありがとうございます。  結局、両方が設備投資をやれば経済にそれだけの活気を与えることになります。NTTはやれるんだけれども、それを排除するわけですから、経済の活性化にもならないし、NTTが一番技術を持っている、その技術を開放しようと思っているのにそういうのもできない。そういうことをやるようでは、本当に今からの産業政策としてはおかしいと思います。そういうことを申し上げておきます。  それから、教育の改革、これもまた省をまたぐわけでございますけれども、教育の改革は、特に大学の研究所、こういうのが最近もう非常に設備も古く、学生たちも研究室にいるのが嫌だと言うぐらいあるわけですから、新しい科学技術の創造をやるためには大学のこういう研究室の設備が私は重要だと思いますが、その点を文部省とも、そういう知的産業の育成のために通産省がどういう協力体制をとられるかをひとつお伺いをいたします。
  157. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) これは通産省の所管ではありませんが、国立大学等の研究施設等に実際行ってまいりますと、大変建物も老朽化しておりますし、実験装置等もこれで研究ができるかというぐらい貧弱なものになっておりますし、研究費自体も大変少ないという悩みに直面をしております。一般の民間企業が研究をしている分野もありますし、国立の研究所がやっている分野もありますけれども、大学というのは大変優秀な研究拠点でありまして、そういうところの設備や予算というものを充実させていくということはやはり日本の財産をつくるということであろうと思っておりまして、私どもとしては、政府全体としてそういう研究開発体制の大事な一翼を担う大学の研究施設のあり方ということにも配慮していかなければならないというのは先生の御指摘のとおりだと私は思っております。  これからは、やはりそういう中で、大学における研究とあるいは産業における研究、その研究を有機的に結びつけていくといういわゆる産学連携ということも大変大事になってまいりました。そういう産学連携をどう深めていくか、産学連携の拠点はどうするのかというようなことも大事な政策として考えていかなければならないというのは、まさに先生の御指摘のとおりでございまして、産、学、そして国の研究所等々が有機的な連携をとって、それぞれの独立した研究がさらに大きな研究に結びついていく、そういう方向に日本の社会を導いていくというのは、教育の問題としても、あるいは科学技術分野の問題としても、あるいは産業政策の問題としても私は大変大事なことだろうと思っております。
  158. 本田良一

    ○本田良一君 最後に、日経連と連合が新産業創出の共同研究を実はやっているんです。これについて、今後どのようにこの共同研究を生かすことなど、御意見をお伺いします。
  159. 江崎格

    政府委員江崎格君) 連合とそれから日経連によりまして策定されました新産業・雇用創出共同研究というのがございますが、これにつきましては、厳しい雇用情勢の中で、労使が共通の認識を持って共同して新産業・雇用の創出に取り組むという必要性を打ち出しているものでございまして、大変私どもとしても意義のあるものだというふうに認識しております。  政府としましても、経済活力の維持、良質な雇用機会の確保のために、昨年五月に経済構造の変革と創造のための行動計画というのを閣議決定したわけでございます。この行動計画におきましても、新しい産業あるいは雇用の創出の共同研究というのを取り上げておりまして、情報通信、医療・福祉、住宅、環境関連分野を含めまして、今後成長が期待されます十五の分野につきまして、各分野ごとのニーズを十分踏まえながら、技術開発とか人材の育成ですとか、あるいは抜本的な規制緩和の施策を推進していくということにしているわけでございます。  この行動計画につきましては、昨年末に、可能な限りの計画の前倒し、新たな施策の追加を行うためのフォローアップをしたわけでございまして、改めて昨年の十二月の年末に閣議決定をいたしました。  今後とも、こうした十五分野を中心としました新規産業の育成に向けまして総合的な施策の遂行に努めてまいりたい、このように思っております。
  160. 本田良一

    ○本田良一君 両大臣、それから政府の皆さん、ありがとうございました。よろしくお願いします。
  161. 海野義孝

    海野義孝君 公明の海野でございます。きょうは主として経済企画庁、特に堺屋長官にいろいろと承りたい、こう思います。  長官、御就任になってからもう約二カ月ぐらいにおなりになるかと思いますけれども、国の内外、経済を初めとして大変多事多難な中で御就任になったということは、それだけ期待も大きい、お果たしになるお仕事も大変だ、こういうふうに思うわけでございます。  私はこれまで経済関係の委員会、過去三年近くやってまいりましたけれども、最近はこういう委員会から抜けまして、この経済産業委員会だけが私の経済関係の委員会になりましたので、堺屋長官からお話を承るというような機会はもうほとんどありませんので、きょうはそういう意味でいろいろとお聞きしておきたい、このように思うわけでございます。  私、過去二回、お二人の経済企画庁長官といろいろ勉強させていただいたわけでありますけれども、結論から言いますと、過去お二人の長官からは我が国経済見通しに対する御判断というか、こういった点について大変失望したというか、そういう思いしかないわけであります。これもある面で言いますと、これまでの日本経済、過去二年間ほど大変大きくやはり後退してしまったというような感じが経済の面でするわけでございます。  長官が御就任になった早々から大変画期的な御発言をされていたわけでございまして、そういう意味で、私、大変期待をするんですが、冒頭に、今年度の我が国経済成長は実質一・九%という、これは二年続きで当初一・九%見通しを出されていると思いますけれども、これは達成は無理だろう、あるいはゼロ成長というようなことまで言及されたように思いますが、大変思い切った御発言をされたなと思ったわけでございます。  先週、実はこの第二・四半期、つまり四-六の経済成長率が発表になりましたけれども、年率でたしかマイナス三・三%ぐらいということでございまして、加うるに、昨年の十-十二月期以来三四半期連続の対前期比マイナスということでございまして、これはこれまでにないワースト記録だろうと思うわけでございます。四-六ということは既に三カ月も前までの数字でございまして、その後一四半期もう既に経過しているわけであります。そうした中で、こういった現下の我が国経済状況、最初から暗い話で恐縮ですけれども、現実を直視すれば大変厳しいということなんですが、こういった状況について、長官が就任以来今日までの間で今回のこういった数字を踏まえてどのような御感想というか御見解をお持ちか、まずその辺ちょっとお聞きしたいと思います。
  162. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) さきに発表いたしました四半期ごとの速報、我々の言葉でQEと言っておりますが、御指摘のように三期連続のマイナスになりました。しかも、そのマイナスの規模は、前期が四半期で一・三%、年率にしますと五・二%。今期は〇・八%、年率にしますと三・三%。そのもう一つ前が、四半期で〇・四%、年率にしますと一・五%。こういう三期連続のマイナスでございまして、しかもその規模はかなり大きいものがございます。  これから見ましても、現在の日本は大変な不況だと。戦後初めて三期連続のマイナスでございますし、特に個人消費が伸びない。その上に今期は、前期に引き続きまして民間設備投資が大幅に減りました。特に中小企業の設備投資が減少しております。大変厳しい状況でございまして、私は、恐らく戦後最悪の事態、あるいは明治維新、終戦直後に続く第三の大きな構造改革期を迎えているのではないかと認識しております。  したがって、ここで政府といたしましても相当大胆な、また迅速な対策を打っていく必要があると本当に思っております。これは正直に、正確に国民の皆様方にも知っていただきたいと思いまして、飾り立てることなく申し上げている次第でございます。
  163. 海野義孝

    海野義孝君 これからお聞きしょうという点にもう若干言及なされましたけれども、これまでGDPの中で主たる部分を占めている個人消費、これの落ち込みにつきましてはもう昨年来そういった数字が、厳しい現実があるわけであります。この四-六のGDPを見ますと、言うなれば国内需要が、公共投資がほぼ横ばい強ぐらいであって、あと民間需要というのが総崩れという、大変これはもうまさに厳しい状態だと。  先ほど長官は、こういった現下の状況を踏まえて、大胆なそういう施策ということについても必要があるのではないかというようなニュアンスのお話もされました。年率三・三%のマイナス、対一-三月比でマイナス〇・八%ということであります。この数字だけを見ると、対前期比一%弱のそういう落ち込みじゃないかというようにとれますけれども、実は寄与度の面で見まして、内需と外需というふうに見た場合に、外需の部分というのが、純輸出といいますか、これはどっちかといったら、景気のしからしむるところでしょうか、つまり輸入が大きく落ち込んできた、輸出も落ち込んでいる。しかし、一-三に比べれば、輸入の落ち込みによって、数字のマジックでしょうけれども、相対的に外需の分が結果的には大きく落ち込んでいる内需を多少引き上げている。ですから、対一-三月比マイナス〇・八%という以上に国内需要、の落ち込みというのは、多分これは一・七とかそういうことになろうかと思うんです。そういう面から見ても、国内需要の不振というのは、経済成長率年率マイナス三・三%以上に厳しく受けとめなくてはならない、そのように私は思うわけでございます。  そういうような状態の中にあって、国内需要の回復の見通し、それから、そういった面で、あと二四半期年内残されておりますけれども、その中でも七-九は終わり、あと一四半期ということでありますが、確かにこの七月あたりの速報的な消費関連等の数字を見ましても大変悪い数字が引き続き出ている。  こういうような中で、年内に景気を浮揚させるような施策というものがあるのか、あるいはこれまで打ってきた対策によってその効果は今後残された期間に出てくるというふうに見ておられるのか、その辺についての長官の率直な御判断をお聞きしたいと思います。
  164. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘のように、現在ただいま景気は依然としてよくございません。私たちの経済企画庁で掌握しておりますのは七月速報まででございますけれども、それで見ましても、鉱工業生産、これはやはり相当の落ち込みになっておりますし、出荷もよくございません。それから、設備投資の先行指標と言われております機械受注、これを見ましても大幅に落ち込んでいる状況でございますので、恐らくこの七-九月期もいい数字は期待できないだろうと思います。  これから年末にかけての見通しでございますが、企業の心理あるいは消費者の心理、マインドでございますが、これが冷え込んでおりまして、直ちに回復すると期待することは非常に難しい状況です。加えまして、アジア諸国を初めといたしまして海外の情勢も余りよくございません。アジア諸国もよくないし、ロシアも御存じのように経済が崩壊しております。その影響でヨーロッパ諸国もやや冷え込んでおります。南米は最近、ごく先週、今週あたりは回復の兆しも見えたりしておりますが、やはり基本的には危険な状態だろうと考えております。そういうことを総合いたしますと、直ちに景気がよくなるという要素はなかなか探しにくいのでございます。  小渕内閣といたしましては、既に前内閣のときに十六兆円の総合経済対策を打ち出しまして、六月に国会でも御承認いただいたとおりでございますが、これが実際に効果を上げてくるのは、支出が行われまして各地方自治体の議会でこの裏負担等が承認されるのが今やっております九月都道府県会になりますから、この後でございます。引き続いて十兆円の第二次補正予算、これは十五カ月予算として来年度予算と一体にして行いますけれども、それが引き続いて行われます。そして、来年の一月からは四兆円の所得減税、そしてその後四月からは法人税の減税と、できるだけ速やかな手を打ってまいりました。また、先週は金利の点でもさらにオーバーナイトのコールの金利の低目誘導等も行いました。  いわば全速力でいろんな手を小渕内閣は発足以来打ってきておるわけでございまして、これが恐らく十月、十一月ぐらいから下支えの効果を上げるだろうと思っております。  しかし、最初に申しましたように、消費者そして経営者の状況が沈んでおりますので、この財政支出等の効果も下支えの程度で、これで景気が上向くと期待することはなかなかできないんじゃないかという気がしております。したがって、本当に景気が回復してくるのはまだかなり時間がかかるんじゃないか、人々の気持ちが盛り上がってくるまでまだ時間がかかるんじゃないかというのが正直なところでございます。非常に残念な話でございますけれども、これだけあらゆる手を打ちながら余りいい予測ができないというのが正直なところだろうと思います。
  165. 海野義孝

    海野義孝君 今のお話の中でもちょっとお触れになっておりますが、国内の需要が各セクターともに全体的に沈滞し切っているということですが、特に私が懸念するのは民間の設備投資です。  これだけをとっても、たしかここ二四半期連続で対前期比でマイナス五%台ということだと思うんです。だから年率にして二〇%台ということです。そういたしますと、これだけで既にこの四-六のGDPの前期比マイナス〇・八%、要するにこれを上回るようなマイナス寄与度になっているということでして、これは後で通産相、長官にもちょっとその点、設備投資をお聞きしたいと思うんです。  まず最初に、こういった設備投資が落ち込んできている点については企画庁長官はどのようにお考えになっているかということと、この民間の設投についての調整局面というのはなおしばらく続くと見ておられるのか、どういうきっかけがあればこれが反転するきっかけになるか、そういった点についてのお考えをお聞きしたいと思います。
  166. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘のように、民間設備投資は中小企業を中心としてかなり落ち込んでおりますし、機械受注等を見ましてもまだなかなか回復しそうにないというのが現実でございます。    〔委員長退席、理事成瀬守重君着席〕  この落ち込んでいる理由でございますが、二つあると思うんです。  一つは、いわゆる貸し渋り問題でございまして、やはり金融界の不安というものが各銀行の窓口を厳しくしておりまして、設備投資をしたいという企業に対してもなかなか資金が回らない、またその心配がありますので経営者の方も踏み切れないというような状況があります。また、金融界の方からいいますと、担保にとっておりました土地が値下がりいたしましたので、担保割れになっているから貸せないんだというような事情もあるようでございまして、そういった金融面の問題というのは今、金融安定化に関する問題で与党、野党、いろいろと御尽力いただいておりますが、これが早く解決いたしまして、金融の健全化というのが第一のきっかけになるんじゃないかと思います。  もう一つは、金融問題を除きましても、確かに投資意欲が落ち込んでいる。これは経済の見通し、需要の見通しが低いからという点も否定できない事実だと思います。  従来でございますと、ずっと戦後の日本経済状況を見ますと、不況になりましたら、まず立ち直ったのは輸出からなんです。輸出がまずふえまして、それによって雇用がふえ、給与所得がふえ、設備投資がふえ、そして雇用がふえて、最後に消費がふえると、こういう状態を繰り返してきたんですが、先ほども申しましたように、アジア諸国を中心として今国際情勢がよろしくございませんので、輸出からふえるということがなかなか期待できない。これが今回の非常に構造上の深いところでございます。  したがって、やはり消費から回復することを待たざるを得ない。最初は公共事業で下支えをしておいて、そしてそのうちに消費がふえてきてくれるのを待つよりしようがない。そういたしますと、大事なことは、消費者が大いに将来に対して楽観的な気分、安心した気分になってもらうということが大事だと思います。  小渕内閣では、一方で財政政策、金融政策、減税政策をとるとともに、他方では経済戦略会議を設けまして、中長期的な日本の将来に対して人々に安心してもらう、自信と安心を取り戻してもらうような提言をしていこうとしているのはそこでございます。    〔理事成瀬守重君退席、委員長着席〕  そういうことが重なりまして、恐らく一定の期間で、一両年のうちには回復軌道に、成長軌道に再び日本経済を乗せられるのではないかと期待しております。
  167. 海野義孝

    海野義孝君 今、堺屋長官に御質問した際に、ちょっと通産大臣にと申し上げたその設備投資に関係した問題ですけれども、御所管のお立場から見ると、今、中小企業に対する貸し渋りの問題とかいうこともお触れになっているんですけれども、それも踏まえまして、私、それだけじゃないと思うんです。  先ほどの開業率、廃業率、休業率の問題とかあるいはまた新しい産業の創造とか、三年ほど前でしたか、日本のそういった安定成長に絡んだ経済構造改革というようなことで、たしか一・七五%成長とそれから三・五%と。経済構造の改革によってこれが実現されていくんだということで、たしか私、去年二年ぐらいたったので経過報告をお聞きしたら確たるお話はなかったんですけれども、そういったことも踏まえて、設備投資はどういうような絡みで今進んでいるか、数字だけで見ると何かちょっと寂しい状況なんですけれども、その辺どういう御判断をお持ちなんでしょうか。
  168. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 経済をどう見るかという問題ですが、従来ですと経済というのを循環的な景気・不景気、好・不況というふうに考えておりましたが、バブル経済がだめになった以降というのはやはり景気の循環論だけではなかなか解釈できない現象が私はたくさん起きているのではないかと個人的には考えております。  仮に私がどこかの企業の経営者だとしまして、現時点でどのぐらい設備投資意欲がわくかということを想定してみますと、一つ日本全体では供給過剰、マクロで見ますと供給過剰の経済になっております。そういう面では設備投資意欲がわかない、それがまず第一点。  それから第二点は、昔ですと生産調整というようなことを国内でできました。これは経済に国境があって、ちゃんと国と国との間に壁がありましたから国内での生産調整というのは有効でありましたけれども、例えば今一つのエチレンという種類の設備をとりますと、日本だけが生産調整をしてもエチレンは外国から自由に入ってくるということですから、そういう供給過剰の状況というのを生産調整では調整できないという局面にございます。  それからもう一つは、日本経済の高コスト構造という問題がございまして、ある一定のお金を投資しようとしたときに人件費及び税金、その他もろもろ生産にかかわる要素を考えますと、エネルギーを含めまして日本で投資することの是非ということはやはり考えてしまわざるを得ないという高コスト構造の問題がございます。  そういうもろもろのことを考えてみますと、循環的な問題だけでこの設備投資意欲の減退を論ずることはできないので、やはり経済構造改革という根底からの問題を解決しませんと経済を回復させるというきっかけにはならない。しかしながら、当面はやはり何としてもデフレスパイラルに陥らないように財政出動をするという非常手段をとっているわけでございまして、これは長期的に続けるという処方せんではございません。やはり構造自体、それからまた有望な分野をさらに伸ばしていくということをあわせてやってまいるということが私は必要な政策ではないかと、そのように感じております。
  169. 海野義孝

    海野義孝君 大変御丁寧な御答弁をお二人からいただいておるので時間がなくなってしまいました。  それで、最後に堺屋長官にお聞きしたいと思いますが、昨日でしたかの新聞にも報道されておりましたように、四-六までの状況からいきますれば、たしかあれでげたが一・八何ぼぐらいに四-六の時点ではなっておりますから、七-九以降の分が相当しゃかりきにやってもこれはかなり厳しい状況だと思います。そういった中で今、衆議院の方では金融問題について最後のところへ来ているんじゃないかと思います。  私は、昨年、一昨年の経済問題に対する取り組みというのをやはり十分に行っていなかったという面が今日のこういう状況に影響している面は多々あると思うのです。そういう面からしますと、さっき冒頭に長官おっしゃったように、私はやっぱりここで思い切った経済の対策、来年度の恒久的減税七兆円とか、これもことし特別減税四兆円やるわけですから、そうすると効果としては三兆円の上積みしかない。それから、来年の一-三のうちに第二次の補正予算を組んで、これと平成十一年の予算の十五カ月というようなことで十兆円の補正とか、こういうことをおっしゃっていますけれども、私はもうこれは年が明けてから国会においてそういったことを審議し決めていくということでは、さらにツーリトル・ツーレートで、問題が先に行くほどコストはかかると。  私は、金融の問題も経済の問題も不幸ながら両々相まっているということで、今日の経済の不幸というのは多分にバブル崩壊後の金融面での問題もあったわけですから、一概にきょうこういったところに来ているお二人だけの問題じゃないと思います。そういった中だけに、やはり金融と同時に経済の再生の問題についても思い切ってここで早期に手を打たなかったら大変なことになるんじゃないかということを私は思うんです。  その辺について、大胆な施策をというようなことも先ほどちょっと堺屋長官お触れになっていましたけれども、その辺をもうちょっと踏み込んでいかがかということをお聞きしたい。それをもって私の最後の質問にしたいと思います。
  170. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘のとおり、かなりのげたといいますか前年度からの影響がございまして、残る四半期がゼロ%の成長でございましても十年度の実質成長はマイナス一・八になるというような厳しい環境にございます。したがいまして、何らかの手を打たなきゃいけないというふうになる場合もあるかと思います。  これは、一番ポイントは国際情勢がどうなるかということと関係があると思うんですけれども、どういう手段があるかということになりますとかなり選択肢が限られてまいりまして、私はやはり今の金融問題の解決、これが一番急がれる問題ではないかと考えております。  金融問題を解決するにつきましては四つぐらいの基準がございまして、第一は社会コストを一番低くこの問題を解決しなきゃいけない。第二番目には、できるだけ国費、公費の支出を少なく抑えなきゃいけない。第三番目には、処理期間を短くしなきゃいけない。第四番目には、モラルハザード、倫理の問題を確立していかなきゃいけない。こういう基準がございますけれども、今やはり社会コストを低く抑えて短い期間でこれを解決していただく。そういたしますと世の中に相当大きなインパクトがあるんじゃないか。今この問題が絡んでいることが非常に人々を暗くしているという気がいたしますので、この金融の点ではかなり大胆な政策をとっていただきたいと思います。  場合によっては今の十五カ月予算をより繰り上げてということもありますが、これは先ほど申しましたように予算案を出しましても実施の面でかなり時間がかかる仕組みになっておりますので、一方でこの予算の審議をしながら他方で十六兆円、続く十兆円をどんどんと実施できるような体制をする。そしてそのときに、御指摘もございましたように、消費を喚起するような事業を優先していく、できるだけ効率の高いものを優先していく、そして早く効果の出るものを大胆に選んでいくということが必要なんじゃないか。その点、従来の慣例その他もございましょうが、各省別あるいは各局別、事業別の分野も超えて検討していく必要があるんじゃないかと思っております。
  171. 海野義孝

    海野義孝君 終わります。
  172. 西山登紀子

    西山登紀子君 日本共産党の西山登紀子でございます。経済産業委員会は初めてでございますので、どうぞよろしくお願いをいたします。  まず、先日、通産大臣並びに経企庁長官の所信的なごあいさつがございましたけれども、そのごあいさつに関連をいたしまして質問をさせていただきます。  私の地元は京都でございますが、先日いろんな方、業者の方、それから消費者の方々の実情をつぶさに伺ってまいりました。もちろん、いつも伺っているわけですけれども、きょうの質問もございますので特別にいろいろな方に伺ってまいりました。  そのときの切実な声、大変なものでございます。例えば、わずか八百万円の連帯保証人になった方がそれが払えないで自殺をされたという痛ましいお話を伺ったわけです。経営に御本人が行き詰まっただけではなくて保証人であるという、保証人になったばっかりにと言ったら悪いですけれども、そのために御自身が今まで落とさなければいけない、こういう不幸な事件が起きているわけです。  こうしたことはもちろん京都だけではなくて、恐らく全国各地で深刻な不況にあえぎ、みずから命を絶つ人は後を絶たないと思います。今のこの実態を直視いたしまして、そして一日も早い不況の打開を図るということは、やはり政治の最も緊急な責任であるというふうに考えます。  そこで、与謝野大臣は先日の十日の本委員会のあいさつで、まず「第一に取り組むべき課題は、低迷するマクロ経済からの脱却であります。」ということで第一の課題を上げていらっしゃる。それから長官は、「我が国の景気は低迷状態が長引き、極めて厳しい状況にあります。」ということで状況を述べていらっしゃるわけです。そして今、経済企画庁としては、経済の実体を迅速かつ的確に把握し、国民にわかりやすい言葉で語るよう、正直、迅速、わかりやすさをモットーに努力してまいります、と決意を表明されていらっしゃいます。  いずれも低迷する経済、あるいは景気は低迷状態というふうに述べていらっしゃるわけです。  そこでお伺いいたしますけれども、それではこのように非常に長期にわたり、しかも戦後史上最悪と言われているようなこの不況の状態が今続いている原因はどこにあるのかということで、長官と大臣のお二人の御認識をまず最初にお伺いしておきたいと思います。順番はどちらでも結構です。
  173. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 現在の長期低迷には、私は三つの要因があると考えております。  第一は、日本がずっと規格大量生産の世の中をつくろうとして近代工業国家を目指してまいりました。これには大いに成功いたしまして、一九八六年、一人当たりでアメリカを抜いて人口千万人以上の国では一番豊かだと言われる水準まで達したのでありますが、そのとき既に世界は規格大量生産の時代から多様な知恵の時代に変わっていた。これに対応して日本もそのとき変化に入るべきだったんですが、規格大量生産の近代工業国家の心地よさが残っておりましたものですから、その転換がおくれた。これが先ほどから通産大臣からも答弁のございます新しい産業、新しい企業の少なさということとかかわり合って今日の問題を生んでいる。そういった歴史的な発展段階の問題が第一にあると思います。  第二番目の問題といたしましては、やはりバブルの処理、中期的な循環のバブルの下り坂にあった当時、これに対する対応が歴代内閣、九〇年代に入りましてからの政治、政治だけではなしに世論もジャーナリズムもみんなちょっとずつおくれてきた。そういったことが合わさって社会全体のムードとして対応がおくれてしまったということがあると思います。  そして三番目には、短い循環で、大体昨年の初め、春ぐらいに景気回復の頭を打って下り坂になっていた。この判断がちょっとまずくて、そのときにすぐ拡大政策を打つべきところを縮小政策、緊縮政策をとった。  こういった三つのことが重なりまして今日の状況が生まれてきたと思っております。したがって、対策といたしましても、短期の対策、中期の対策、そして本当に長期の構造対策の三つを重ねてとらなければならない、そういう状況にあるのではな  いかと思っております。
  174. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 不況の原因というのは、一言で言えば需給ギャップがあるということだろうと私は思います。それに加えまして、やはり日本の金融システムが揺らいでいる。資金が円滑に中小企業を初めとした意欲のある方々に供給されていない、そういう金融システムもその一つでしょう。それからもう一つは、アジアで昨年の春以降発生した通貨危機というものが直接間接日本経済に及ぼしている影響も私はあると思っております。  かてて加えまして、昨年十月、十一月に発生しました一種の心理的なパニック。これは三洋証券の倒産から始まりまして、北海道拓殖銀行、山一証券と相次いで破綻をしたわけでございますが、これが恐らく一気に消費者のマインドを冷やした。あんな大きな会社、あんな大きな地域銀行が破綻をするということで国民生活はむしろ守りに転じて、私の友人に言わせれば女性軍がすべて巣ごもりを始めたのではないかと、そう言う方もおります。日本人は金融資産も持ち、対外資産も持ち、ドル、外貨準備もたくさん持っているにもかかわらず大変将来に不安を持って日々生活をしておりますから、そういう消費性向が落ちたということも不況の大きな原因だろうと私は思っております。
  175. 西山登紀子

    西山登紀子君 今の消費不況というのはやはり国民の消費力が非常に減っているということが一番大きなわけですから、なぜその国民の消費力が、購買力が落ちたのかということを直視する、それに対する正しい認識がなければ私は対策も的を射ないと思うんです。  確かに経企庁長官は、短期的には昨年の春から頭を打ったということをおっしゃったわけですけれども、経済白書もこの不況の最初の頭打ちは去年の四月一日からこうなって、もちろん大臣がおっしゃるようないろいろな不安な状況も加味されてさらに加速されているということはあるとは思いますけれども、まずその購買力が減ってきたという不況の始まりは、昨年の四月一日、つまり何があったかと言えば、それは消費税の増税であります。そこを私は直視しなければならないのではないかと思っているわけです。  昨年の十月三日ですが、参議院の本会議の代表質問で私は橋本総理に、この深刻な不況の最大の原因、そのときももう既に起こりつつあったということで、最大の原因が消費税の五%への増税や、九月一日から医療保険改悪が始まって既に一カ月がたっておりましたので、そういうものが重なつて一挙に九兆円もの国民負担を押しつけたことにある、だから消費税をもとに戻すこと及び九月一日からの医療改悪をそれ以前に戻すということを求めたんです。ところが、そのとき橋本総理は、日本共産党を代表しての私の質問でございますけれども、その主張に対して、いいえ、それは必要な改革なんだということで、全く意に介そうといたしませんで、実行を続けました。  その後、不況はますます深刻になりました。そして参議院選挙があったわけですけれども、参議院選挙の結果、この橋本内閣の経済政策の失敗に対する国民の厳しい指弾が示されたというふうに私は考えます。結局、橋本内閣は退陣を余儀なくされたわけでございます。  選挙中も、私自身、消費税を当面三%に下げて景気の回復をということを非常に強調いたしましたが、大きな反響がございました。選挙後も、例えば日経の世論調査、八月四日付でも、景気の対策として消費税減税を求める、五四・七%とトップですね、消費税の減税。  そして、長官は著書の中でもはっきり述べていらっしゃる。今も述べていらっしゃる。消費税の引き上げや特別減税の停止など七兆円、医療費を含めると九兆円の増税を行った失政ということを認めていらっしゃる。私、非常に率直だと思います。その指摘は私たちも正しいと思っております。その点では長官と意を同じくするものでございます。  そこで、その四月一日からの消費税の増税、それが国民生活にどのような影響を及ぼしているかということについて少し分析を加えて、きょうパネルを持ってまいりましたので、見ていただきたいと思います。(図表掲示)  これは、年間収入階層別に見る駆け込み需要とその後の減少の実態ということで、既にこれはもう総務庁より発表されている数字をもとに分析を加えてみたものでございます。九七年の一月-三月期の駆け込み需要と消費税が導入された後の九七年四-六月期の家計消費減、これを比べてみたんです。それを収入によって第一分位と第五分位にちょっと分けてみたんです。  そうすると、駆け込み需要とその反動減、予想を超えた反動減が起こったということをよく経済白書でも言っていらっしゃいますけれども、この予想を超える駆け込み需要というのは、実は第五分位、非常に収入の高い人たち、年収九百九十九万円以上という収入の高い人たちががばっと駆け込みで需要をしたと。その反動減はじゃどれぐらい起こったかというと、わずかマイナス二・六なんです。  それで、うんと収入の低い人たち、四百万以下の第一分位の人たちというのは、駆け込もうにも駆け込む資力がないということで、わずかです。そして、むしろどうんと落ち込んでいるんです。消費減の方がマイナス六・二%ということで大きいですね。  反動と言うなら、この駆け込み需要に対する反動、これを見なきゃいけないと思います。収入の低い人たちは、むしろ駆け込みの反動減というよりも、もともと消費税が導入されたことによる直撃減といいましょうか、そういう影響がここに出ているわけでございます。  ですから、私は、とりわけ堺屋長官が九兆円が非常に失政だ、消費税の増税も失政だというふうに率直に言っていらっしゃることについて、さらに検討を加える、こういうふうに私たちは言えるんじゃないか。決して反動減があったからということではなくて、まさに消費税増税五%が国民の、特に庶民の懐を直撃したんだ、そして今、消費の減が起こっているんだというふうに思います。  ですから、それだからこそ消費・購買力を上げるためには、消費税をもとの三%に戻すことや、医療保険の負担増をせめて九月一日時点に戻すということ、それがどうしても不可欠だというふうに思いますし、もしそのことを実行すれば非常に衝撃的な波及効果が起こるだろうというふうに考えるわけですけれども、堺屋長官はごあいさつの中で、私、率直にそういう点が触れられるのかなと期待をしていたんですけれども、消費税という言葉すらないんです。長官のごあいさつや与謝野大臣のごあいさつの中にも消費税という言葉すらありません。  消費税の影響についても全く触れられていないというのはなぜなんでしょうか。その点をお伺いいたします。
  176. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 私が著書の中で、昨年四月、特別減税を廃止することを含めて七兆円の増収を図り、また医療関係で二兆円、合わせて九兆円の増収、負担増をかけたことは橋本内閣の失政であったと書いたのは事実でございますし、今もその考え方は変わっておりません。  ただし、これは衆議院でも申し上げたことですが、消費税をあの段階で五%に上げる、これは時点の問題は多少議論があったかもしれませんが一消費税を上げて所得税を下げる、そういった直間比率を変えることは必要だと私は考えております。そのことが時期的にどうであったかという議論は残りますけれども、その点を取り上げて失政と言っているのではございません。去年の下降期に入ったこの時期にあえて緊縮財政に向かったことが失政だと言っておるのでございます。  したがいまして、今、この五%にした消費税を三%に引き下げることは私は反対でございまして、五%の消費税は、今日の状況、そして将来の日本を見ていくときに、税制構造からもこれは必要なことだと考えております。
  177. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 私は、何から何まで消費税のせいに押しつけるというのは、何かどうも納得がいかない気持ちでございます。  消費税を三%から五%にということを決めたのは村山内閣のもとでございますが、その当時、恒久減税三兆五千億、特別減税二兆円ということで、年間にいたしますと五兆五千億の所得税減税を行って、三年間で十六兆五千億の減税をやったわけでございます。そういう面で見ますと、国と国民との間の懐の差し引き勘定は昨年の春の時点ではまだまだ国民の方がプラスになっていたはずでございます。これはやはり考えていただかなければならない点だろうと思います。  それからもう一つは、先生が今お示しになった表の最後の平均のところの数字を見ていただきますと、駆け込み需要の反動というのは平均としては二・七%ということですから、階層別の数字だけ特異的に取り出して論ずるということよりは、マクロ経済を論ずるのであれば、その平均の数字を御採用いただいた方が正確なのではないかと私は思っております。  ただ、消費税という形で所得が国民から政府に移転したことは間違いない。これは税収として国側に移ったということは事実でございますし、また健康保険料については負担増になったことも事実でございますが、どうもやはり決定的な消費マインドを冷やした契機というのは、十月、十一月に起きました一連の破綻が決定的な要素として日本の消費者のマインドを冷やした、私はそのように考えております。これは後世の史家の評価にゆだねるしかないなとは思っておりますが、やはりその十月、十一月の時点も一度は共産党にお考えをいただきたい、そのように思っております。
  178. 西山登紀子

    西山登紀子君 後世の史家というような言葉が出て、そんな悠長なことを言っていられないと。実体経済というのは、毎日やっぱりみんな暮らしているわけですから、生活しているわけですから、大臣がそんな悠長なことを言ってもらっては大変困るなという思いがいたします。  私は、いろんな御意見があると思うんですよ。消費税は制度としては、税制としては認めているとか、あるいは時期としてはあの時期はまずかったとかいろんな意見はあるにしても、なぜ所轄の大臣なり企画庁長官は、非常に景気動向に直接責任を負っていらっしゃる方々の所信的あいさつの中に消費税の一言もないのか。それは余りにも不自然だし、国民は消費税で非常に苦労している、毎日の暮らしに苦労している、営業も苦労している、それに一言も触れないというのは余りにも何か故意に消費税について触れないでおこうというふうに思えるわけです。その点について私は非常に、今の経済再生内閣を看板に発足した内閣の大臣、お二人いらっしゃるわけですけれども、大臣にしては余りにも国民に対して責任を負っていらっしゃらないというふうに、今これだけ大きな消費税で国民が苦しんでいる、下げてほしいと言っている、そういうことに一言も触れないというのはいかがなものかなというふうに思うわけです。  それで、ちょっと時間がないので次に移りますけれども、アメリカのカンター前通商代表というのが日本の景気の回復について共同通信の記者会見でこういうふうなことを言っていらっしゃるわけです。カンター氏は、日本の実質経済成長率がマイナスになったということを挙げて、「日本の人々は消費税の(税率)引き上げに苦しみ続けている。それは引き下げられるべきだ」と主張した。しというふうに共同通信の会見という形で報道されています。  私は、外国の方から日本経済について干渉めいたことをいろいろ言われ、そのとおりやるのがいいというふうには思っておりませんけれども、しかしこの指摘というのは非常に適切だなと思います。外国の人ですら、消費税の引き上げによって日本の国民が苦しみ続けているとわかるほどの生活実態があるからだと思います。  長官はこの会見をどのように受けとめていらっしゃいますか。
  179. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) その記事は私も拝見いたしましたが、カンター氏はもとは通商代表でございましたけれども、今は個人としてお話しになったことだと認識しております。  日本の消費税が五%でございますが、欧米諸国のこれに当たる税金、付加価値税というのは二〇%前後、ずっと高い。そして、アメリカはこれに当たる税金はございませんが、同じような売上税がございまして、ほとんどの州で日本の税金よりかなり高い税率をとっております。したがいまして、日本のような先進国、かなり所得が高くなりました国でこの日本だけが五%の消費税で苦しみ抜いているというのはちょっとオーバーな表現じゃないか。諸外国の現在の税制から見ますと五%の消費税というのは許容できないものではないと認識しております。
  180. 西山登紀子

    西山登紀子君 堺屋長官は消費税を五%に上げたことは失政だというふうに今も思われているにしては、その五%は高くないんじゃないかという御意見はちょっと私はいただけないなと思います。  それで、外国の話をなさるんですけれども、外国とそう消費税が高いとか低いとかというのは単純にその一点だけでは比較できないと私は思います。私もデンマークに視察に行かせてもらいましたけれども、社会保障の制度全体、国のつくり全体が違っているわけです。そういうこともありますし、世界の趨勢というのは大体生活費とか食料品というのは非課税であります。消費税も非課税だということですから、生活費にかかる消費税だけを諸外国と比べたそういう数値がありますけれども、それを見れば日本というのはフランスに次いで二番目に高いというような数字もあります。  それで、長官にばかりお聞きするのはあれなんですが、実際、長官は非常に国民にわかりやすい説明をするというようなことを言っていらっしゃるわけですけれども、この一カ月半、実体経済の悪さを克服するために長官自身はどのような努力をなさいましたか。
  181. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) その前にちょっとお断りしておきますが、私は消費税の引き上げたけをとって失政と言っているわけではございませんから、念のため、もう一度申し上げておきます。  私は今、経済の回復にとって一番重要なのは信の回復、信頼を回復することだと考えております。これは政府と国民の間にも、企業と消費者の間にも、経営者と従業員の間にも、さらに申しますれば、先生と生徒の間にもいろいろと最近物事が複雑に考えられるようになりました。したがいまして、私の差し当たりの、当面の務めといたしましては、まず、政府の申し上げることが正直である、わかりやすい、これが大事だと思いまして、この一カ月半、いろんな機会にできるだけわかりやすくかつ粉飾を凝らさないで正直に申し上げることに努めてまいりました。  あわせて長期的な政策といたしましては、経済戦略会議を小渕内閣のもとに設置いたしまして長期政策の検討に当たっています。また、先ほども申しましたように、小渕内閣発足と同時に、減税政策あるいは十兆円の第二次追加予算の問題、あるいは最近行われました金利の低目誘導等の政策をわずか五十日の間に次々と打ち出しております。私もその小渕内閣の一員としてこれらの政策に参画させていただいておることを誇りと思っております。
  182. 西山登紀子

    西山登紀子君 時間が来ましたので、最後に与謝野大臣にお伺いをして終わりたいと思いますけれども、この消費税の五%の影響というのはやはり中小企業家にも非常に影響が厳しく出ております。  私がお伺いしてきたところでは、四十三年間も順調に経営をしていた資本金一千万円の化粧品の卸をやっている方ですけれども、五%に上がった途端に売り上げが七六%に減ってしまって、つまりなぜ売り上げが減ったかといいますと、化粧品卸ですから女性のパーマの液体を売っているんです。ところが、お母さん方の財布のひもがきつくなったためにパーマの回数が減っているというんです。そしてそのパーマの液体を販売するというそういうお商売がうまくいかなくなっている、七六%に下がってしまった。去るも地獄、続けるも地獄と、こういうふうなお声も聞いたわけでございます。  京都の百五十年の歴史のあるしにせの仏壇屋さんですけれども、仏壇というのは非常に高いんです、百万とか、いいものだと二百万、七百万するそうですけれども、その仏壇を五%になった途端に五%まけてくれなきゃ買わないというような声が強まってきて、そしてその分自分がかぶると。そして消費税、また税金を納めなきゃいけない。一〇%利益があったのが今はゼロになっているということで、非常な経営難を訴えていらっしゃったわけでございます。  そこで、全国の中小企業家同友会が「総会アピール」を出していらっしゃいますけれども、七月十七日に中小企業家同友会全国協議会の第三十回定時総会で、「景気回復の基調となる個人消費回復政策への速やかな転換をのぞみます。そのためには、消費税率を当面三%に戻すこと、所得税減税の恒久化実現にただちに着手すること。」、それを第一に挙げていらっしゃるんです。  こういう声をぜひ与謝野大臣は受けとめていただいて、実体経済の立て直しのために消費税を下げるという、その点について決意をお伺いしたいと思います。
  183. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 共産党の御主張をそのまま日本の財政に当てはめますと、歳入が著しく減って歳出は今のままということで、そのギャップをどう埋めていくかということを御提案いただかないと、にわかに共産党の御質問にはお答えしづらいと私は思っております。  しかしながら、私どもは、やはり現在のような五百兆の経済といたしますと、個人消費がその六割、約三百兆を占めているわけですから、消費者がどういう行動をするかということが日本の実体経済に決定的な要素となるという点は、先生の御主張は私は理解をしているつもりでございます。  したがいまして、政府全体として、財政出動をする、あるいは所得税、法人税の減税をする、あるいは第二次補正を考える、あらゆる手段も使いますし、中小企業の貸し渋り対策にも大量のものを用意いたしますし、政府が持っている政策手段あらゆるものを動員して中小企業の経営、こういうものの健全化を進め、また消費者マインドが変わるような施策というものをこれから次から次へとやっていかなければならない、私はそのように思っております。  確かに、いろいろな昨年の一連の消費税の問題、あるいは特別減税の問題、あるいは医療保険の問題等々、また経営者がリストラ、リストラと言って雇用不安を呼んだという問題、また十月、十一月にかけましていわゆる極端な信用収縮が起こったということ、一連のことが全部相乗作用として今の不況を生んでいると私は思っておりまして、小渕内閣の使命は、一つ一つの問題を丹念に解決をして、消費者もあるいは中小企業方々も将来に対してある種の確信を持てるというところまで我々は努力をしなければならない、そのように思っております。
  184. 西山登紀子

    西山登紀子君 最後に一言言わせてください。  消費税を三%に下げるというのは、共産党の主張というより、今私が言ったのは、中小企業家同友会がそういうアピールを出して政府に御要望していらっしゃるということについて大臣がどのようにこたえるのかということをお聞きしたわけです。  時間がありませんけれども、消費税を三%に下げるというのは私たち日本共産党だけの主張じゃなくて、国民の大多数、先ほども世論調査で言いましたけれども、過半数を超える国民が望んでいらっしゃることであるということ、それから財政再建十カ年計画を日本共産党もきちっと出しておりますから、また別の機会大臣とお話をしたいと思っております。  それから、今のような、大臣がおっしゃる、あるいは長官がおっしゃる景気の回復策については、例えば朝日新聞の世論調査では、回復に向かうというのはわずか八%しか国民は支持していないということもあわせてお考えをいただきたいと思います。  質問を終わります。
  185. 梶原敬義

    梶原敬義君 通産大臣、経企庁長官には、連日、大変御苦労さまです。  私も商工委員会からこの経済産業委員会、ずっと国会へ来て十三年ぐらいやっているんですが、今ほど経済担当の両大臣が脚光を浴びているというか、国民が期待をしているのは両大臣、長い大臣の中にあっても今が一番国民から注視をされているんじゃないかと思っております。ぜひ頑張っていただきたいと思います。  堺屋長官が先ほど、今日の経済不安の三つの要因というのを挙げられましたけれども、私は、もう一つ基本的に忘れてならないのは、政治の責任、それから大蔵省、日銀の責任、これはやっぱりはっきり指摘しておかなきゃいけないと思うんです。  ちょうどプラザ合意以降ずっと内需拡大が叫ばれ、貿易黒字をどんどん、対日圧力がかかる中、そういうことをやっておりまして、当時中曽根総理のときに、民活を中心にして、業界の皆さんも総理に対しては、民活で我々にやらせてくれ、国が金を出すことはない、そのかわり持っている資産は売れ、建物の容積率を上げてくれ、こういうことをだんだん受け入れまして、それでバブルに火をつけていったんです。  それから、それに対して、国民も酔いながら、かたいはずの銀行がノンバンク等をつくり、利用して、そしてあっちゃこっちゃもう見境なく不動産やあるいはレジャーや株や、そういうところに金を突っ込んでいったわけです。  そういう状況を大蔵省も検査・監督をしながら、おかしいということを言いながらとめ切れなかったということです。日銀も考査をしながら、そういう実態をわかっておりながら本当にくさびを打ち込むことができなかった。バブルはどんどんどんどん膨らんでいって、ぶすっと突き刺して今日のような状況になっておるわけです。  政治と行政の責任をまずやっぱり指摘しておかなきゃならない。このことを抜きに、ただ民間の皆さん方の責任だけを追及するというのは、それは一方的だと、私はこのように思っております。答弁要りません。  それで、貸し渋り対策に対して与謝野通産大臣が、信用保証協会及び中小企業信用保険公庫について、二十兆円規模の特別の保証制度の創設等により総額四十兆円を超える対応を進めておるということでありますが、通産省の担当者の皆さんも、この貸し渋りの状況あるいは信用保証協会、これをやっても、窓口の課長クラスのところで信用保証協会は、もう前の資料をいっぱい持っていて、借りに行ったってなかなか貸してくれないんですよ、実態は。それで、もう困っている困っていると言う人に、借りに行けよ、国はこうしてやっているじゃないか、こう言っても、行ったってだめですよと言う。  だから、そういう実態を一体担当はどれだけ知って、どういうように県や信用保証協会に対して具体的に指導する腹があるのか、それをまず一つはお聞きしたい。  それから、二十兆円規模の総額四十兆円云々と、こう書いておりますが、政府の真水というのか、通産省は昔から少しやったら大きく宣伝するのがうまいんですようちの大分の県知事もそうなんだけれども、そういうところがあるんだが、それは大体伝統的なものです。もう私はよくわかっています。一体その点はどうなのか。その二つお伺いします。
  186. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 御質問を逆の順序でお答えさせていただきたいと思います。  二十兆の規模というのはどのぐらいの予算が必要かと、こういうことですが、二十兆の保証をしてどのぐらいの貸し倒れが発生するのかということにもなります。従来は貸し倒れ率を大体二%ぐらいに抑えていこうという考え方でしたから、仮に二%としますと四千億あれば事足りるということですが、実際は今回の貸し倒れ率というのは大体一〇%を想定しておりますから、二十兆の一〇%ですから約二兆円の予算が必要となっております。  そこで、この貸し倒れを負担するのは、何も保証協会ばかりでなくて、中小企業保険公庫もこれを負担いたしますから、予算としては中小企業庁の予算として計上されるもの、あるいは大蔵省の予算として保険公庫を最後面倒を見るという予算として計上されるもの、合わせて二十兆をやるためには二兆円ぐらいは必要である。今回私どもが要求しておりますのは二千億というふうにお考えをいただくのが私は正確ではないかと思っております。  そこで第一の質問は、どんなにそんな制度をつくっても貸し渋りどころか保証渋りが発生するのではないかという御趣旨だと思います。  保証協会の窓口の方々も大変まじめな仕事熱心な方々でして、保証する前の審査というものを本当に真剣にやられるわけでございます。  そこで私どもとしては、そういう状況が続きますと、お金は用意したけれども保証の総量は全然変わらない、これでは困る。それはもう先生と全く同じ考え方でございまして、過日、全国の保証協会の会長の方々に東京に来ていただきまして、一連のこの政策を御説明申し上げましたと同時に、今、中小企業庁を中心に保証協会の業務の手引的なものをつくっておりまして、これを全国各県の保証協会に差し上げることにしております。それと同時に、保証協会としては保証協会自体がこういう新しい制度が導入されたということを広く知らせていただきたいと思いますし、各県の商工部も、県が先頭に立ってこういう新しい保証の仕組みができたということを知らせていただきたいというふうにも思っておりますし、政府広報も約三億円の予算を使って全国民にこういう中小企業の保証制度を拡充するということをお知らせする予定でございます。  今ちょっと数字を間違えましたのは、一〇%の貸し倒れ率でございますが、その後回収できるものが約半分と想定をいたしますと、二千億プラス八千億があれば最終的に二十兆は保証できる、こういうことでございます。
  187. 梶原敬義

    梶原敬義君 取り組む姿勢はよくわかるんです。前の大臣も、そこらは大分議論したんです、やりますということだったんですが、よく調べてみるとなかなか詰まってしまうんです、信用保証協会。信用保証協会の各県の会長というのは、大体県の部長上がりぐらいがおるんです。その下に地方銀行の常務か専務かそこらがおりまして、この人たちはもうくるくるかわるんです。下にずっと職員がおりまして、経過は一番よく知っている。なかなかここが、信用保証協会の会長にこう言ったからといって、その会長がやれとなかなか言いにくいから、もう少し何らかの形で、今言われましたように、県ともよく相談をして、本当に末端にひたひたと浸透するようにひとつ頑張っていただきたいと思います。  それから、堺屋長官のこの所信のあいさつを見せていただきましたが、特に私は経済運営で日本はまずいと思うんです。スピードを出して悪い道をぱあっとアクセルを吹かしたかと思うと、がたがた道ではっとブレーキを踏むような経済運営をやっている。もっと高原のハイウエーをなだらかに上がり下がりを車で行くように、そういう経済運営がどうしてできないのかというのが、これは経企庁だけの問題じゃないけれども、過去私はずっとそう思ってきました。  やっぱり、「景況判断が国民に信頼され、適時適切な政策を実現していくためにも、経済の実体を迅速かつ的確に把握し、」というところが狂うから、結局橋本内閣もああいうような形で構造改革をやってしまうわけです。特に、去年の九月二十四日に、例えば住宅金融公庫とか特殊法人に対して閣議決定しているのは、住宅金融公庫については、「景気対策として制度化された特別割増融資制度について、段階的に縮小し、融資残高の増大を抑制する。」とか、民間でやれるところは民間でやれとか、融資残高の縮減を図るとか、その他特殊法人についてそれぞれ、商工中金に対してもいろいろ言っておりますが、そういう閣議決定を九月にやっているんです。何でそういう時期にこういうことをやるのを放置していたか。  それから、私も質問をしまして、行革税制特別委員会で、ちょっとこれはおかしいんじゃないかと、早く住宅金融公庫あたりにはちょっと謝って、これを切りかえるべきじゃないかということも言ったんです。そう言ったからやったかどうかわかりませんが、十一月十八日に、「「特殊法人等の整理合理化について」において、段階的に縮小し、融資残高の増大を抑制することとされているが、早急な景気対策が必要な現下の情勢にかんがみ、臨時的措置として融資額の引上げを行うこととする。しと、「住宅金融公庫の特別割増融資制度について」ということで閣議決定をし直しているんです。  私が言いたいのは、大蔵省というのはいろいろ政治的なあるいは税金の関係があるから容認していく。経企庁は状況判断と見通しを、特に見通しをしっかりできるようなそういう体制をつくらなきゃいけないと思うんです。果たして今の状況で大丈夫だと、こういうことは大臣は言えますか。
  188. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘のとおり、日本経済統計はかなり遅日なんです。特にアメリカに比べますと統計の出るのが遅いんです。これは、日本の統計が正確を期して非常に丹念に調べるという習癖がございます。これは統計だけではなしに日本人全部、念には念を入れて間違いがないようにということをやるんです。アメリカの方は速報値とか暫定値とかいうのを出しまして、後で修正する。プラスがマイナスになるようなことさえあるのでございますけれども、正確さよりも速度を重んじているわけです。  私は就任以来、日本も二種類、ある程度スピードで、時には修正することがあっても早くしてもらいたいということを事務方にも申し上げまして、約二週間、今のところ早くなりました。ところが、それ以上早くするためには、体制それからつくり方、そしてそれぞれの担当者の人々の教育まで必要でございますので、これから一年間いろいろと検討いたしまして、来年度にはやはり少し体制を改めて経済情報の面で改善していきたいと、今鋭意努力している次第であります。
  189. 梶原敬義

    梶原敬義君 私は、大事なのは見通したと思うんです。このまま行ったら敵がいっぱい待っている、あるいはこの道を行けばうまくいけるというときに、情勢判断を間違って、行ったらやられるところの方へ行くようなことなら、国全体を変な方向に持っていくわけですから、だからやっぱり私は、小さいことより、経企庁というのは見通しを誤らない。小さいことはわからない、しかし少なくとも見通しは世界のどこよりもすぐれている。国を引っ張っていく原動力になるわけですから、見通しだけは間違わないように、そのことをぜひお願いしたいと思います。  それから、金融問題、確かに大事です。大事ですが、金融問題は金融問題で片づけるとして、それだけでは今の閉塞状況というのはよくならない。非常に恐慌状態に近いような状態。こういう状況であればあるだけに、経済担当の両大臣が力を合わせて、一体何をするか。余り小さいことばかりでなく、役人の発想を超えて手を打っていただきたいと思うんです。  そうはいっても、政府がやる景気対策というのは、所得税の減税と公共事業、それから住宅をどう刺激するか。ほかにありますよ、ありますけれども、恐らく大宗を占めるものというのはそこだと思うんです。そこをきちっと踏まえて手を打つべきところは打っていく、このようにぜひお願い申し上げたいと思います。  公共事業につきましては、時間がありませんからちょっと言うだけ言いますが、私ども地方におりますと、まだまだ今やってほしい公共事業というのはいっぱいあるんです。それは、土地代も安いし、非常に波及効果も早いし、やれるんです。そういう地方の公共事業はやっぱり必要に応じて対応してもらいたいということが一つ。  それからもう一つ、減税ですね。減税については、私が中小企業の経営者の皆さんなんかと話をしていましたら、公明党さんは商品券で減税をやる、こういう話ですが、僕にぜひやろうじゃないかと言ってくるのは、現金袋に入れて減税部分は現金で皆さんに支給をするということがどうしてできぬのかと言うんです。できるはずじゃないかと。現金でやるということは、その人が蓄えるなら蓄える、物を買うなら買う、選択の余地がありますから、少なくとも国家公務員、地方公務員は、減税時期には、支給するときには計算してもらって袋に入れて現金で渡すようなことをしたら、そういうように考えたらどうかというのが第二点。  第三点の住宅に関しては、家を取得した人は十年ぐらいで減価償却制度が認められるぐらいの思い切った手を打つことができないのかどうなのか、そうすれば随分変わってくると思うんです。  本当は一つ一つもっと深く話をしたいんですが、どうも時間が参ったようですから、本当に大筋だけ申し上げて、終わりたいと思います。  特に何かあれば。
  190. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 見通しを正確にしろというのはまさにそのとおりでございまして、間違おうと思って間違えた人はいないと思うんですけれども、いろんな要素が入ってきて、バイアスがかかることがないとは言えません。これからは私も経企庁で、自分の良心にもとらないで正確に言うようにということを念を入れて行っています。  それから、税金を現金で返す点でございますけれども、私が役所へ入ったころ、二十年前まで月給袋がございましたけれども、今なかなか技術的に現金を配付するということが難しくなっておりますので、時間がかかり過ぎる、手間がかかり過ぎるということが問題のようでございます。御了解いただきたいと思います。
  191. 星野朋市

    星野朋市君 自由党の星野でございます。  企画庁長官がお出になっちゃったので事務方に聞きますけれども、時間の関係で主に経済企画庁に質問をいたします。  先ほど公明の海野議員経済企画庁を中心に御質問なさいましたけれども、私はちょっと角度を変えた形で御質問したいと思います。  堺屋長官は日本の潜在成長力をどのくらいに見ているか。これ、今まで聞いたことないんですよ。お答えになれますか。
  192. 中名生隆

    政府委員(中名生隆君) ちょっと今大臣が席を外しましたので、恐縮でございますが私からお答えさせていただきます。  潜在成長率というのは、一般的に申し上げますと、利用可能な生産要素を最も有効に利用した場合に実現される実質GDPの成長率、こういうことだろうというふうに私ども考えております。  この潜在成長率が実際に現在の日本でどれだけあるかというのは、推計の方法あるいは前提の置き方等によりまして、技術的な問題がいろいろあるわけでございますので、必ずしも一義的に幾らと言うのは難しい点もございますけれども、本年の六月に経済審議会の中の部会であります経済社会展望部会というところで報告書をおまとめいただきましたけれども、その中では、全要素生産性と申しましょうか、資本なり労働の増加をカウントしない生産性というのが大体一%というふうに考えまして、今後五年間ぐらいの潜在成長力としては年平均で実質約二%強という数字をお出しいただいております。
  193. 星野朋市

    星野朋市君 ごたごたいろんなことは言わなくていいんです。成長力はどのくらいあると思われますかと言ったら、何%だと、こういうふうにお答えいただければいいわけです。  堺屋長官、どうぞ。
  194. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 日本の潜在成長力でございますけれども、二%ぐらいはあるんじゃないかと思うのでございますけれども、現在はそれが発揮されていないという状況にあると思います。
  195. 星野朋市

    星野朋市君 昨日、長官は衆議院の金融安定化特別委員会で、今年度の日本経済成長率はマイナス一%よりかなり大きくなる、こういうふうにお答えになったと思うんですが、それに間違いございませんか。
  196. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) そのとおりでございまして、一%をかなり上回るほどマイナスになる可能性が高いと認識しております。
  197. 星野朋市

    星野朋市君 そうすると、潜在成長率二%というお考えは、後で別の形でもってどうしてそんなに違うのかという形で申し上げますけれども、その二%とそれからことしの成長率がマイナス一%よりはるかに大きい、このギャップ、これは何で生じたのかとお考えですか。
  198. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 先ほども申し上げましたように、一つは大きな構造転換のおくれ、二つ目はやはりバブル以来の金融を中心とする落ち込み、そして三つ目は景気波動、短期波動の下り坂、この三つで潜在成長力と現実との間に格差が生じている、いわば大きな意味での資源の失業状態が生じている、こういう状態だと思います。
  199. 星野朋市

    星野朋市君 平成八年度は、三月の駆け込み需要はあったにしても、日本経済成長力は三%台に乗ったんです。これで、このままテークオフできるのだと思っておったんだと思います。それが例の消費税の引き上げ、それから特別減税の打ち切り、これによって四月から下降に入ったと。これは経済企画庁が後で認めたことなんですよ。  それで、去年、橋本総理は何と言っていたかというと、彼は、七-九に多少上がったのも事実だったじゃないか、そういう言い方で、政府見通しは間違っていなかったんだ、政府の施策も間違っていなかったんだと、こういう説明を続けてきたんですけれども、これが全く間違いであったということは後になってわかったわけです。それの問題というのはやっぱりこれはかなり重要視しなくちゃいけないと思うんですが、いかがですか。
  200. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 七-九で多少回復をいたしました。これはむしろ消費税で前期に落ちた反動だったと思います。それ以後の下落がすべて橋本内閣の失政のせいだけではなくして、先ほども申しましたような循環的な問題もあったと思いますが、確かにそれは時期として判断が誤っていた、これは私もはっきり認めざるを得ない、認めさせていただくところでございます。
  201. 星野朋市

    星野朋市君 そうしますと、平成七年十二月に閣議決定された構造改革のための経済社会計画というのがございますね。それは今も生きているとお考えになりますか。
  202. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) この平成七年につくりました現行五カ年計画は、確かに実態とかなり乖離しております。したがいまして、生きているか死んでいるか、この法的な地位は別といたしまして、現実の経済とは乖離しておりますが、ただ、ここで書いております構造改革をしなきゃいけない、規制緩和をしなきゃいけない、この方向は正しかったと思うんですが、現実の成長率とここで描いている経済の成長の姿とはかなり乖離している。したがって、有用性という点を問われますと、方向性は正しいけれども、現実の姿とは違ってしまったと言わざるを得ません。
  203. 星野朋市

    星野朋市君 そこは長官、私と随分意見を異にするんです。  ということは、この構造改革のための経済社会計画というのは、その前に宮澤内閣がつくった三・五%成長生活大国という五カ年計画が破綻をしたんですよ。どういうことかというと、このままでそんなに伸びるわけがない。しかもバブルの崩壊期でございますから、ゼロ%成長が続く。それで、こんな実現性のないものをいつまでいわゆる中期計画として日本は持っておるのかと、私なんか随分攻撃した方ですけれども。  そうしたら武村正義氏が中心になって、これはこういう形のものをつくるということででき上がったのが今の問題のものなんです。これは、つくるときは、日本人の悪い癖で、みんな大騒ぎするんですよ。だけれども、しばらくたつとみんな忘れちゃう。  ここの中に書いてある最大の問題の数字というのは、もし構造改革が進めば日本経済成長率は名目三・五%、もし構造改革が進まないならば一・七五%だと、そういう形なんです。そして、これは今生きているんですよ。どういうことかというと、大蔵省の中期財政計画の中には、歳入見積もりの中にそういうのが二通り入ってずっと続いている。しかも、弾性率一・一を掛けてちゃんと入っているんですよ。これがまだ生きている証拠だと思います。  そして、珍しくここに成長率だけでなくて、消費者物価の割合と、それから失業率が入っているんです。それで、構造改革が進めば失業率は二・七五%、それから構造改革が進まなければ三・七五%の失業率、こういうふうにうたってあるにもかかわらず、現実には失業率はどうだったか、四・三。先月は四・一です。四・一のその説明は、就職をあきらめた人がいるから減ったんだと、こういうふうな説明になっています。  ところが、日本の失業率の構造は、いわゆる主たる収入をもらっている人の失業の割合が二・九%と高いんです。構造上非常に悪い形になっている。そうすると、せっかくこういう計画をつくって、今の状態は何にもしなかったよりもっと悪いじゃないかと、こう言わざるを得ないんです。  先ほど申し上げましたように、収入の面とかそういう形でこの計画がまだ国家財政の中に生きている、このくびきから逃れられない。それで現実はこんなに狂っちゃっている。私は、長官が潜在成長率は二%程度ではないかと言ったんだったならば、この計画は何だったんだと、こう言いたいんですけれども、いかがですか。
  204. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘のように、この計画をつくった当時と現在とはかなり違っております。そして、この計画に基づいて立てたいろんな数値、例えば今おっしゃいました財政収入なども狂っております。したがって、財政改革法案も変えなきゃいけないというような形になっておりまして、現実にはこの計画に基づく経済運営は困難になっていると言わざるを得ないと思います。  それで、これをどのようにしていくか。つくり直すのか、見直すのかということでございますが、現在大変経済が激動期でございまして、今慌ててこれをまたつくり直すということになりますと、今の情勢で非常に不安定な要素がございます。これをどのようにつくり変えていくか、そのことについてはもう少し情勢が安定といいますか、見きわめがつく段階までお待ちいただきたいと考えております。
  205. 星野朋市

    星野朋市君 先ほど長官はスピードということをおっしゃられまして、私はかねがね経済企画庁の統計で問題であると思っているところは、そのスピードの問題だと思うんです。  これは大いに見解の相違があるんですが、例えばディフュージョンインデックスを今の経済企画庁がアメリカから導入したときは、何でこれを入れたのかというのは、要するに景気の転換点をどこで見つけるかということだったはずなんです。それまでは日本経済成長率は年率一〇%ぐらい伸びていましたから、そのトレンドの中にみんなこれが隠れちゃって、アメリカだったら三%から四%の成長だからそれが見つけられると、こういう形のときにこれを導入したはずなんです。ところが全然今生きてない。しばらくたってから、おしりの方を一生懸命合わせて、そして転換点はこのときだったというようなことを出している。これだから日本の政策がすべておくれている、こう思っているんですが、長官の御意見はいかがですか。
  206. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 経済の予測というのはまことに難しいものがございまして、必ずしも当たるとは限らないと思います。  私も御指摘の点は気になっておったものですから、経済企画庁長官に就任いたしますと、過去の経済企画庁が出した見通し、これをいろんな民間企業、学者その他の出したものと比べて見ました。そうしたら、経済企画庁が民間企業よりも当たっている率と外れている率とちょうど半々ぐらいなんです。これは半々だったら全然威張れないのでございますけれども、正直言って同じぐらいでございました。より正確にするためにどうずればいいか、これはこれからやはり研究しなきゃいけないこと、より早くすることとより正確にすることとを両方やらなきゃいけないと思っております。  迅速にと申し上げたんですが、五カ年計画ともなりますとそう迅速ばかりを旨としていいかげんなことはできませんから、これについては慎重にやりたい、短期の情報はできるだけ早くやりたい、そのように心得ております。
  207. 星野朋市

    星野朋市君 これは慎重になさっても結構なんですが、長官の頭の中にあるいわゆる潜在成長力はこの計画の約半分なんです。そうすると、今までと同じような形、新産業という言葉は今まで随分出てきましたけれども、ではこれがどのぐらいそういうことに機能するのかというのはこれこそ少しタイムラグがあると思います。  例えば、連合と日経連ですか、これが共同で研究した四つのテーマというのに、安い住宅とか環境産業、それから医療、情報産業、こういうのがあります。ところが、私はこれでいいのかという考えがありまして、前国会の予算委員会のときに、日本が今外国から入れている物の量はどのぐらいあるかということを聞いたんです。  数年前までは統計がとれていなかった。今は統計がとれていまして、輸入される量は年に八億トンあります。そして、これを加工して輸出する分が一億トン、あとは燃料で燃したり食べたりするものがあります。そういう形で日本に年々どのぐらい残っていくかというと、三億トン残っているんですよ、残滓物が。そうしたら、これはやがて瀬戸内海の豊島があちこちにできちゃうぞと、同じような形、要するに大量生産、大量消費、大量廃棄というような形はもうやめなくちゃならない。  例えば、住宅一つとってみても日本の木造住宅というのは何年で建てかえているか。二十五年なんです。木の成長は五十年から六十年かかる。その半分で建てかえているということは、日本が戦後五十年たってようやく杉の木が一人前になった、だけれどもそれまでの間は海外から収奪しているわけでしょう。  だから、私たちは、これから要するにリサイクル、このことを考えないで海外からやたらに物を入れてそして大量廃棄していく、この社会はやめなくちゃいけない、こう考えておりますけれども、御所見をお伺いして、私の質問を終わります。
  208. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 御指摘のように、日本経済は大きな転換点を迎えておりまして、先ほども申し上げましたように、大量生産時代から多様な知恵の時代に変わらなきゃいけない。その一つとして大量消費、大量廃棄という問題も改めていかなきゃいけないと思いますが、さりとて今消費量を急速に下げるということは非常に困難でございます。  したがって、一方においてはそういうライフスタイルの転換を図りつつも、他方においてはやはりそういう廃棄物産業というようなものももっと国民に信頼される形でつくり直していく、これは医療、介護等とあわせてこれから日本の重要な新規産業だと私は思っております。
  209. 星野朋市

    星野朋市君 終わります。
  210. 水野誠一

    ○水野誠一君 私は、ベンチャーの振興策、これは特に今貸し渋りの中で大変中小企業が苦しい経営を迫られている、その中で貸し渋りに強いベンチャー企業を育てるために、いわゆる金融機関からの間接融資に頼らないベンチャー企業の直接金融への道が我が国の金融市場の土壌にしっかりと根づく必要がある、かように思うわけであります。  そこで、お尋ねをしたいんですが、日本の店頭市場、これは昨年ですか、第二店頭市場がつくられたり、非常にそれに対する期待は大きいわけですが、実際問題、今の状況を見てまいりますと、株式市場の動きにつれて店頭市場というものも低迷をする。一方アメリカあたりでは、ニューヨークの証券市場の動きが波を受けてもNASDAQは非常に堅調に頑張るというような、かなり体質の強さに違いがあるのではないかと私は思うわけであります。  先日、日証協が今までの第二店頭市場というものをやめて店頭市場自体を二部制にしていく、そしてしっかりと育成された第一都市場とそれの予備軍的な第二都市場、こういう構成にしていくことによって店頭市場の活性化を図っていきたい、こういう計画が発表されました。  これについて、私は、大蔵省あるいは通産省に、この第二店頭市場というもの、これはやっぱり失敗だったのかという点と、店頭市場というものが二部制にすることによって今後活性化されるというふうにごらんになっているかどうか、この点についてお尋ねをしたいと思います。
  211. 山本晃

    政府委員山本晃君) お答えをいたします。店頭登録市場は、我が国の将来を担う成長企業の資金調達の場として重要な役割を果たすものというふうに考えております。  こうした観点から、店頭登録市場の整備というものは重要な課題であるというふうに私どもといたしましても認識をしておりまして、本年六月に成立をいたしました金融システム改革法におきまして店頭登録市場というものを、従来は取引所市場の補完という位置づけであったわけでございますが、これを取引所市場と同等の存在として証券取引法上明確に位置づけるなどの所要の規定整備を行ったところでございます。  さらに、店頭登録市場を管理運営しております日本証券業協会におきましては、近年、低迷状況にある店頭登録市場の本来の機能を回復、発揮するため抜本的な見直しを行う必要がある、こういう観点から、本年七月に店頭市場改革の方向性についてという提言を取りまとめまして、その中で、現在は本則銘柄と特則銘柄ということに分かれております登録株式の銘柄区分につきまして、店頭登録市場が「ベンチャー企業の資金調達に一層資することのできるよう見直しを行うこと」とされておりまして、御指摘の店頭登録二部という形式をとるか否かは現段階では不明ではございますけれども、多段階の銘柄区分を構築した方がいいのではないか、こういう方針を明らかにしているところでございます。  またさらに、この店頭登録市場全体の、まさに店頭登録企業の円滑な資金調達あるいは登録株式の流通の活性化に資する、こういう観点から、店頭登録基準の見直しであるとか、あるいは登録審査内容、申請手続の見直し、また証券会社が自己の計算に基づき常時売り、買い気配を提示いたしまして、投資家等の相手方となっております登録銘柄の売買を成立させる、いわゆるマーケットメーク制度の導入、こういったものの実施を明らかにしているわけでございます。  こうした日本証券業協会における取り組みによりまして、店頭登録市場というものがベンチャー企業を含めた店頭登録企業の資金調達あるいは投資家の多様なニーズにこたえ得るものとなることを期待しているところでございます。
  212. 水野誠一

    ○水野誠一君 第二店頭市場についてのコメントというのはちょっとなかったんですが、時間の都合もありますので、これは大いに私たちとしてはこの店頭市場の活性化ということに期待をしまして、次の質問に移らせていただきたいと思います。  先ほど本田委員質問に対して一部お答えがあったんですが、日本版SBIR、これは私は四月九日の当委員会において我が国においてもその導入を検討すべきだということで意見を述べさせていただきました。今回早速来年度予算要求に盛り込まれたというふうにお聞きをして大変うれしく思っておりますが、実際に要求されました予算、これは政府委託研究開発費全体の大体何%を占めるのか、また数値目標のようなものは設けられているのか、この点についてお尋ねをしたいと思います。  そしてまた、この制度をぜひベンチャー支援の柱に育てていただきたいと思いますが、その決意のほどを大臣にお答えいただければと思います。
  213. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 数字は中小企業庁長官からお答えいたしますが、御指摘のとおり、平成十一年度概算要求におきまして、日本版SBIR関連予算として技術開発課題の解決のための提案を公募し、その技術的可能性の研究調査及びその技術開発のための予算について新規要求を行っているところでございます。通産省としては、米国SBIR制度等を参考にしつつ、よりよい制度の導入に向けて努力してまいりたいと考えております。
  214. 鴇田勝彦

    政府委員(鴇田勝彦君) 予算の点についてお答えをしたいと思います。  日本版SBIR関連予算ということで二種類の予算を要求してございますが、六億円と十五億円で合わせまして二十一億円を情報通信・科学技術・環境等二十一世紀発展基盤整備特別枠で要求させていただいております。  これが政府科学技術関係予算全体でどのぐらいの比率になるかということでございますが、科学技術関係経費というのは今三兆円ほどございます。これで今私が単純に計算いたしたところでは〇・〇七%ぐらいの数字になっておりまして、アメリカの二・五%に比べると大分低いんですが、とりあえずこういうところから徐々に始めてまいりたいと思っております。
  215. 水野誠一

    ○水野誠一君 アメリカも最初は〇・二%ぐらいから次第に今おっしゃった二・五%ぐらいまでふやしてきたということでございますし、私はぜひこれを継続性のある政策としてしっかりと育てていただきたいということを思います。  次に、温暖化ガス削減に向けての国内対策についてお尋ねをしたいと思います。  地球の温暖化対策について、我が国は京都議定書によって二〇一二年までに一九九〇年対比で六%の温暖化ガスの削減を行うということを決めたわけでありますが、この六月に相次いで発表されました地球温暖化対策推進大綱あるいは長期エネルギー需給見通しにおきまして、温暖化対策として原子力発電の比重を大幅に高めるという方向性が示されているわけであります。しかし一方、環境庁は、今度の新しい真鍋長官が、温暖化ガス削減に向けての国内対策の中心は新エネルギー開発だと、こういうふうにおっしゃっている。  通産省と環境庁というのはいろいろこういう環境政策において温暖化ではなくて温度差があるん  ではないかなというふうにいつも思うのでありますが、この点について通産省、環境庁、それぞれのお考えを簡単にお述べいただければと思います。
  216. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 炭酸ガスを排出しない非化石燃料というのは、幾つか種類がございます。その中で、大まかに分けまして原子力それから先生が今御指摘になった新エネルギーというふうに仮に分類をしてお話を申し上げますと、新エネルギーとしては太陽光発電、風力発電、波力発電、あるいは海面の温度と海底の温度差を利用した発電とかいろいろなものがございますが、当面実用化できそうなものは太陽光発電ではないかと私は思っております。そのほか、風力発電というものもございます。  この新エネルギーの分野は確かにいいエネルギー源だというふうに私自身は認識をしておりますが、さて日本経済全体が必要とするエネルギーの総量と新エネルギーから供給可能な量というものを比べてみますと、まず量的な制約がございます。これが一番大きなネックであると私は思っております。  それと同時に、例えば太陽光発電は今非品質のシリコンなどを使ったものを実用化しておりますけれども、これもまだ転換率が一〇%程度でございまして、経済性という面ではこの程度では他のエネルギー源に太刀打ちできないという問題があります。それから、太陽は出たり、また曇ったり、また夜になったりということで、安定性という点でも制約があるということは先生御承知のとおりでございます。  しかし、こういう新エネルギーというものは可能性を秘めておりますから、政府としては以前はムーンライトという省エネの分野、サンシャインというこういう新エネルギーの分野ということで予算をつけてきておりますし、また今後もやはり新エネルギーというものは可能性を秘めた、日本の必要とするエネルギー源の一つだという考え方は捨ててはまいりませんが、以上のような制約もまたその中にあるということはぜひ御理解をしていただきたい。  原子力発電は、安全性を理解していただKということ、立地に関しましては特にこういう点では難しさもございますし、今後核燃料サイクルをさらに確立したものにしていくという大事な仕事もありますし、いろいろな難しいことはございますけれども、量的な問題としては日本が必要とするエネルギーを炭酸ガス排出なしに実現できる非常に有望なあるいは実用化されたエネルギーだというふうに私は認識をしております。
  217. 浜中裕徳

    説明員(浜中裕徳君) お答えを申し上げます。  環境庁といたしましても、ただいま与謝野大臣がお述べになられました御認識と基本的に同様の認識を持っているわけでございます。  確かに、真鍋環境庁長官は御就任以来、新エネルギーにつきまして、その普及が地球温暖化の防止に非常に有効だという点を強調されておられますが、私ども環境庁といたしましても、先ほど先生御指摘のとおり、六月に内閣の地球温暖化対策推進本部において決定をされました地球温暖化対策推進大綱に従ってただいま取り組みを進めているところでございまして、原子力につきましても新エネルギーと同様、二酸化炭素を排出しないエネルギー源であるということで、安全性の確保の徹底を大前提とした開発利用に取り組んでいくことは必要であるということは環境庁としても同様に認識をしておる次第でございます。
  218. 水野誠一

    ○水野誠一君 今のお話で大体両省のお考えというのはわかったわけでありますが、太陽光発電、これは確かに今大臣もおっしゃったように、バックアップ電源の問題とか蓄電技術のコストの問題とか、技術的な課題がまだまだある。しかし一方では、一九九六年に通産省が発表された試算ですと一億七千三百万キロワットの発電能力があると。これはちなみにその前の年であります一九九五年の夏のピーク時の電力需要を上回る数字だということで、決してばかにできないポテンシャリティーを持った方法である。まして、日本のように資源がない国であります。  先ほど、堺屋長官は江戸時代は好老文化であったという文化論からおっしゃったんですが、やはり江戸時代というのは太陽エネルギーというのを最大限利用した時代でもある、こういう研究もございますし、私は大いに日本こそ太陽光発電の先進国ということに向かって頑張っていただきたいと思うわけであります。  そして、また逆に、原子力発電のこれから計画なんですが、二〇一〇年までに十六ないし二十基の原子力発電所を増設する、こういう計画が長期エネルギー需給見通しにおいて六月に発表されているということなんです。ただ、この原子力発電の必要性というものもわかるのでありますが、果たして原発を二〇一〇年までにこんなにたくさん具体的に増設できるのか、この方がどうも非現実的なスケジュールなんではないか。それから、その設置に伴う補助金とかそういう目に見えない莫大なコスト、これを考えたときに、果たして原子力発電というのは本当に採算がとれるものなのか、こういう視点からぜひ、これは二者択一ということよりも、大いに両方のいいところを生かしての知恵の勝負だと私は思うのでありますが、ひとつそういった意味でのエネルギー政策をしっかりとお立ていただきたいというふうに思います。  そして、もう時間が迫ってまいりますが、最後に、これは与謝野大臣と前に、官房副長官時代にも随分議論させていただいたような記憶もあるんですが、こういった例えばベンチャー支援とか産業支援の予算というのは往々にして補正予算で組まれる。しかし、本来はもっとしっかりとした予算を補正ではなくて当初予算の中でしっかり組んでいただきたい。やっぱり補正というのは本来の補正の意味という原点に戻っていただきたい、こういうふうに思うのでありますが、来年度の予算等々でそういった私どもの考え、あるいは大臣のお考えというものが反映されるものであるか、改善されてきているものなのか、これを最後にお尋ねして、私の質問を終わりたいと思います。
  219. 与謝野馨

    国務大臣与謝野馨君) 水野先生御指摘のように、大事な予算が補正に回されてきたということは過去の問題としては私は事実であろうと思っております。それは、毎年毎年ある種のシーリングをかけてまいりましたので、そのシーリングの範囲内で要求できないものを秋から十二月にかけての補正予算の折に、景気対策予算が多かったんですが、その中に入れて各省が予算を獲得するというならわしが何年か続いたことは事実でございます。  しかし、そういうものが本当に正しい予算要求のあり方かどうか、それから財政法で言う補正予算というのは、当初予算をつくったときには予測できなかったようなものというふうに財政法を読むこともできて、大事な予算というのはやはり当初予算として堂々と計上すべきだということが先生の御主張であるとするならば、それは正しい御主張ではないかと私は思っております。
  220. 須藤良太郎

    委員長須藤良太郎君) 本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後五時四分散会