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1998-10-07 第143回国会 参議院 金融問題及び経済活性化に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年十月七日(水曜日)    午前九時三十分開会     ―――――――――――――    委員異動  十月六日     辞任         補欠選任      内藤 正光君     角田 義一君  十月七日     辞任          欠選任      角田 義一君     高嶋 良充君      橋本  敦君     畑野 君枝君     ―――――――――――――   出席者は左のとおり。     委員長         坂野 重信君     理 事                 石川  弘君                 岩井 國臣君                 岡  利定君                 塩崎 恭久君                 江田 五月君                 齋藤  勁君                 森本 晃司君                 笠井  亮君                 山本 正和君     委 員                 岩城 光英君                 加納 時男君                 景山俊太郎君                 金田 勝年君                 木村  仁君                 佐々木知子君                 田中 直紀君                 林  芳正君                 日出 英輔君                 平田 耕一君                 松谷蒼一郎君                 三浦 一水君                 溝手 顕正君                 山本 一太君                 浅尾慶一郎君                 小川 敏夫君                 木俣 佳丈君                 小宮山洋子君                 高嶋 良充君                 角田 義一君                 直嶋 正行君                 峰崎 直樹君                 簗瀬  進君                 海野 義孝君                 浜田卓二郎君                 益田 洋介君                 緒方 靖夫君                 小池  晃君                 畑野 君枝君                 大渕 絹子君                 三重野栄子君                 入澤  肇君                 渡辺 秀央君                 佐藤 道夫君                 水野 誠一君                 菅川 健二君        発  議  者  笠井  亮君    委員以外の議員        発  議  者  筆坂 秀世君    衆議院議員        発  議  者  保岡 興治君        発  議  者  杉浦 正健君        発  議  者  石原 伸晃君        発  議  者  村井  仁君        発  議  者  池田 元久君        発  議  者  枝野 幸男君        発  議  者  石井 啓一君        発  議  者  西川 知雄君        発  議  者  鈴木 淑夫君        修正案提出者   保岡 興治君        修正案提出者   杉浦 正健君        修正案提出者   北村 哲男君        修正案提出者   上田  勇君        修正案提出者   鈴木 淑夫君        修正案提出者   津島 雄二君        修正案提出者   石原 伸晃君        修正案提出者   池田 元久君        修正案提出者   枝野 幸男君        修正案提出者   石井 啓一君        修正案提出者   西川 知雄君    国務大臣        大 蔵 大 臣  宮澤 喜一君        通商産業大臣   与謝野 馨君        国 務 大 臣        (総務庁長官)  太田 誠一君        国 務 大 臣        (経済企画庁長        官)       堺屋 太一君    政府委員        総務庁行政監察        局長       東田 親司君        経済企画庁調整        局長       河出 英治君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        金融監督庁長官  日野 正晴君        金融監督庁検査        部長       五味 廣文君        金融監督庁監督        部長       乾  文男君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵大臣官房総        務審議官     武藤 敏郎君        大蔵省主計局次        長        坂  篤郎君        大蔵省主計局次        長        藤井 秀人君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省金融企画        局長       伏屋 和彦君        大蔵省国際局長  黒田 東彦君        通商産業大臣官        房審議官     岡本  巖君        中小企業庁長官  鴇田 勝彦君        中小企業庁次長  殿岡 茂樹君        建設大臣官房総        務審議官     小川 忠男君        自治省財政局長  二橋 正弘君    事務局側        常任委員会専門        員        小林 正二君    参考人        日本銀行総裁  速水  優君        預金保険機構  松田  昇君     ―――――――――――――   本日の会議に付した案件 ○参考人出席要求に関する件 ○債権管理回収業に関する特別措置法案衆議院  提出) ○金融機関等が有する根抵当権により担保される  債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する  法律案衆議院提出) ○競売手続円滑化等を図るための関係法律の整  備に関する法律案衆議院提出) ○特定競売手続における現況調査及び評価等の特  例に関する臨時措置法案衆議院提出) ○金融機能再生のための緊急措置に関する法律  案(衆議院提出) ○金融再生委員会設置法案衆議院提出) ○預金保険法の一部を改正する法律案衆議院提  出) ○金融再生委員会設置法施行に伴う関係法律の  整備に関する法律案衆議院提出) ○金融機能正常化に関する特別措置法案筆坂  秀世君外一名発議) ○預金保険法の一部を改正する法律案筆坂秀世  君外一名発議) ○金融監督委員会設置法案筆坂秀世君外一名発  議) ○金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律を廃止する法律案筆坂秀世君外一名発議)     ―――――――――――――
  2. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題及び経済活性化に関する特別委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、橋本敦君が委員辞任され、その補欠として畑野君枝君が選任されました。     ―――――――――――――
  3. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  債権管理回収業に関する特別措置法案外十一案の審査のため、本日の委員会日本銀行総裁速水優君及び預金保険機構理事長松田昇君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ―――――――――――――
  5. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 債権管理回収業に関する特別措置法案金融機関等が有する根抵当権により担保される債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する法律案競売手続円滑化等を図るための関係法律整備に関する法律案特定競売手続における現況調査及び評価等の特例に関する臨時措置法案金融機能再生のための緊急措置に関する法律案金融再生委員会設置法案預金保険法の一部を改正する法律案及び金融再生委員会設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案、いずれも衆議院提出金融機能正常化に関する特別措置法案預金保険法の一部を改正する法律案金融監督委員会設置法案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律を廃止する法律案、いずれも筆坂秀世君外一名発議、以上十二案を一括して議題とし、前回に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  6. 木村仁

    木村仁君 自由民主党木村仁でございます。  私はまず、この金融再生法案を大変長い、しかも大変厳しい各省、各党折衝の中でおまとめいただきました各党関係皆様に心から感謝を申し上げたいと思います。私も、この八つの法案が一刻も早く本院を通過することを心から願う者の一人でございます。  私は新人でございまして、したがってこの金融問題に関して、住専問題あるいは北海道拓殖銀行破綻の問題、そしてこの二月、三月の金融安定化緊急措置法及び十三兆円の資本注入の問題、これらについては外からいろいろ考えながら拝見をしていただけの人間でございます。  この問題に入りましてから一つ気づいたことがございます。それは、自由民主党及び政府・与党の中に金融再生トータルプランというプランができております。そのプランをつくっていく過程で、自民党の若手の大変熱心かつ優秀な皆さんが本当に一生懸命議論をされ、それに長老の議員の方も参加されて、年代を超えて熱心な議論の末にこういった案ができております。そして、それに基づいていろいろと政策が展開されているわけでございます。もちろん、その過程大蔵省その他の省庁の協力、資料の提供があったことは事実のようでございますけれども、何よりも政治家主導でそういうプランが練られてきておる、こういうように認識をいたしております。  そして、その結果でございますけれども、八月初旬に提案されました最初の金融再生関連する六つの法律、このうち政府提案二つでありまして、そしてあと四つ議員提案という形をとっております。これがこの問題についての政主導の姿をあらわしているのではなかろうかと思うのでございますが、その後、二月余の折衝を経て衆議院を通過して本院に送られました法律案はすべて議員立法法律案ということになっております。私は、この国家の運命を左右するような大きな問題に関する法律がすべて議員立法の結果つくられるということは一つの大きな意義を持っておるのではないかと思っておるものでございます。  ここで、その衝に当たられました皆様に一言御感想をお伺いしたいところでございますが、失礼に当たるといけませんので省略をいたしまして、本題に入らせていただきます。  この金融再生に関します法律案与野党協議をされるという段階の前後において、政府は明確に長期信用銀行に対する破綻前の資本注入、これを方針として持っていたと存じます。  大蔵大臣は八月二十八日の衆議院金融安定化特別委員会において、長銀住友信託との合併を求めざるを得ないような状態にただいまございまして、リストラの案を具して金融監督庁長官提出され、そしてその案によりますと、やがてある段階公的資金導入を求めたい、そういう状況にあると承知しておりますと答弁され、九月一日には、本当に片方の銀行がいわば、どなたかせんだってスクラップとおっしゃいましたが、もはやその名前で存続することはないというそこまで決心いたしましたときに、国はそのような支援の要請に応ずるべきかどうか、答えはイエスというようになるように思うのですと、九月一日に答えておられます。  また、八月二十八日の同じ特別委員会でございますけれども金融監督庁長官が、銀行から申請があればそれを粛々として検討していくというようなことをおっしゃっているわけでございます。  そういうことでありましたけれども、御承知のように各党協議の中でその姿が一応見えなくなって、そして公的資金注入の問題も、早期注入の問題も含めて与野党問協議になったというふうに理解をいたしております。その結果現在の姿になってきたわけでございますが、政府長期信用銀行に対する破綻前の早期資金注入ということについて、その方針が明確でなくなっていった過程について、どういう状況であったかということを大蔵大臣に御答弁いただければ大変幸いに存じます。
  7. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この問題は本来金融監督庁の御所管の問題でございますけれども、かなり政治的な国会での御議論等の問題がございましたから私にお尋ねがあったかと思います。  本来、今年当初あたりに長銀がこういう危機に見舞われるということを恐らく予想した人は非常に少なかったわけでございますけれども、夏前にある雑誌がこれについて報道を始めたことから多くの人が問題をいろいろ言いはやすようになりまして、その風説もあって長銀としては急速に経営が不安になってまいりました。  そこで、長銀の当事者は非常なリストラを計画して、しかしその結果、もう長銀の名において生き残ることは恐らく難しい、したがって関係者責任を負い、海外活動はやめ、本店も売って、そうして責任をとった形で、しかし世間に迷惑をかけない方法として住友信託銀行合併をする。事実上吸収合併ということでございましょうが、そういう決心をされて、リストラ条件公的資金導入、と申します意味は、リストラを進めてまいりますとある段階過少資本になりますので、そこで公的資金導入を求めて、その後に住友信託銀行合併をしよう、そういう考え経営者が持たれて、それを金融監督庁に申し出られたといういきさつであったと思います。  それはそれとして、二つ金融機関の私契約において吸収合併が成り立つ、その間に公的資金が関与をするということは現行法一つの筋道でございますから、できることならば支援をすべきであろうというふうに政府としても考えたわけでございます。  しかるところ、この問題は法案の御審議との関連におきまして衆議院特別委員会で連日議論をされることになりました。衆議院特別委員会質問者が一番問題にされましたのは、リストラ案の中でノンバンクの幾つかの、三つでございますが、大きなものについて、これを倒産させると二次災害が起こる。そして、日本リースは全体として二兆以上の債務を持っておりますから、そうしますと、この債権者たちが恐らくその結果として連鎖反応を受ける、こういうことから、長銀としては長銀住友信託銀行合併条件シナリオの中にノンバンク債権放棄をする、こういうシナリオになっておりました。  その理由は、長銀がいわゆる母体行である、事実また母体行でございましたから、母体行として責任をとることによって二次的なリアクションを防ごう。また日本リースは、リース事業は実際に経営が持続可能のものでございますから、これをつぶすということは社会的なコストでもある、こう考えた結果、その債務五千二百億円はまず免除をしよう、こういうリストラ計画になっておったわけでございます。  このことについて一番衆議院特別委員会の御議論が集中しました。と申しますのは、これは二つ金融機関の間のいわゆる合併条件であるので、私どもはそれについてとやかく申すべきではないと考えましたけれども、そのノンバンク関係先には甚だ好ましからざる債務者がいるというようなことが御議論になりまして、その後に公的資金導入がございますと、公的資金がそういう好ましからざる債務者の救済に使われるという結果になるのではないか、こういう御指摘でございます。その御指摘は事柄としては全く誤りとは申せない。  ただ、合併契約をした両行のお互いの利益及びその後の連鎖反応を避けたいというそういう意図そのものは理解できると私ども考えましたけれども、やはり公的資金がそのように結果として役立つということは適当なことでない、こういう御議論が非常に強うございました。  そこで、これをめぐりましていろいろ御議論があり、法案の御審議もしたがって非常な影響を受けまして、結局最後のところは党首会談がございまして、どうもこういう処理はよろしくないということに結論がなってまいりました。それならばどういう処理をするかということで、また三党の法案の御審議にそこが影響いたしてまいりまして、現在御審議中のこの法案では、長銀のようなケースも、これは今破綻をしておりませんけれども、しかしそれも公的管理方法を設けることができるではないかと、こういう御議論になって今日に至ったように承知しております。
  8. 木村仁

    木村仁君 宮澤大蔵大臣は、当初、大規模な銀行破綻前の資本注入等の問題については政府提案法案とは切り離してこれを考えるべきであるというようなことをおっしゃっていたと思います。そして、ある新聞によれば、野党の一部にもその処理の問題と破綻時の問題を取り扱うこの法律案議論とは分けて考えてもいいのではないかという御議論がたしかあったと思ったわけであります。  したがいまして、政府としては、既に金融機能安定化緊急措置法によって権限が与えられ、かつ十三兆円の原資も与えられているのであるから、粛々としてそれを実施していけば、それも一つ考え方ではないかと思ったわけでございますけれども、やはり国会審議との関係においていろいろ御配慮をいただいた、こういうことだろうと私も考えておったのでございます。  ただ、国会審議との関係で、執行部が、既に与えられた権限あるいは財源を十分活用していく、そして断固として行政執行する、こういう決意も必要ではないかなと、そう当時考えました。そして、今後そういうこともまたあろうかということを思いましたので今御質問をいたしたわけでございますけれども、あの時点での御判断としては当然正しかったのだというふうに私は考えております。  当時、長銀への公的資金注入に対しては国民一般の非常に強い反発があったことも事実でございます。これは三月の一兆八千億円の資本注入の際にも、私ども外におりまして、国民一般は非常に強く反発しているなということは感じておりました。しかし、必要なことはしっかりとやっていかなければいけないというような考え方を持っていたわけでございます。  そこで、これは金融監督庁長官にお尋ねした方がよろしいのかと思いますけれども、そういった国会各党協議があっておる間、金融監督庁としては、やはりいつでも新しい事態に対応できるように、つまり執行という仕事をきちっとやっていくために粛々準備をなさっていたのでしょうか。それとも、今、大蔵大臣から御答弁がございましたように、日本リースに対する五千二百億円の債権放棄をするということはよくないというようなことであれば、もうこの仕事はしばらくとめておいてもいいなと、そういうふうなお考えでお進めになっていたのでしょうか。その点をお尋ねいたしたいと思います。
  9. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) お答えいたします。  私どもの立場は、長銀住友信託銀行との合併を認可するかどうか、この点にかかわってくるわけでございます。合併の認可は私ども権限とされておりますので、両行合併したい、こういうふうに申し出てまいりましたので、そのための所要のいろいろ準備手続をする必要がございました。もともと普通銀行信託銀行との合併でもございますし、それから両行はそれぞれ従来違った分野で活動してきた銀行でございまして、両行合併というのは我が国の金融システム全体にとって大変望ましいものである、こういう認識を私どもとしては持っておりまして、できるならばその合併に向けてできるだけの支援をしてまいりたいと、こう考えていたところでございます。  ところで、合併はあくまでも私的な契約でございますので、この両行がどういつだことを合併の前提として考えているかということをお尋ねいたしましたところ、両行のお考えといいますか、住友信託銀行の強い希望といいますのは三点に絞られておりまして、一つは、住友信託銀行正常債権だけを引き取りたいと。それから第二点は、金融監督庁が現在検査を行っているけれども自分たちは独自の検査、これをデューデリジェンスと呼んでおりましたが、それをやった上で資産の内容を査定したいと。それから第三点は、先ほどから出てまいりました日本リースその他の関連会社に対する不良債権といいますか、そういったものをきれいにしてきてもらいたいという、この三点に絞られたわけでございます。  しかも、これらの三つを充足していこうといたしますと、先ほど大蔵大臣からも御答弁がございましたように、どうしても長銀資本が非常に薄くなります。そのためには、現在与えられております現行法スキームでは十三兆円の世界がございますので、これをぜひ活用させていただきたい、こういうことでございました。  ところが、この十三兆円の希望がありましても、現実問題といたしましては、優先株の引き受けということになりますと長銀は定款の変更もいたさなければなりませんし、そのために必要な株主総会の招集その他もろもろの手続がございまして、日程的にはかなり急いでも両行の間での合併契約が成立し、さらにそこから計算して二カ月ぐらい、恐らく十一月か十二月にかかってから初めてその十三兆円を使わせていただくための申請長銀から行われるだろうと、こういうことで手続が進んでいたわけでございます。  ところで、先ほどから大蔵大臣もるる御説明なさいましたように、衆議院特別委員会でこの合併スキームに対しましていろいろ御批判がございました。特に、この関連会社ノンバンクに対する不良債権処理することがすなわち公的資金の投入と直接に結びつくのではないかという御批判がございました。いろいろ検討いたしまして、確かに不良債権を放棄するということは直接国民の税金を使わせていただくその十三兆円の世界と結びつくことになるという強い御批判から、これはやはり放棄せざるを得ないということになりましたために、合併契約そのものはまだ完全にとんざしたわけではございませんけれども、しかも十三兆円の法律も今や風前のともしびとなっているわけでございまして、そういうわけで必ずしもその合併契約が当初の両行もくろみどおりには進行しないような状態になってきたわけでございます。  そういったことで、あの時点で直ちに十三兆円の申請をするということは、物理的といいますか、そういった意味でも不可能でございましたし、いろいろ手続を進めていく上で時間がかかっていたということもございます一方で、国会での御審議などがございましたために、こういう御審議の結果、新しいスキームがこれからつくられようとしているわけでございますので、今後は、国会の御審議を踏まえた上で、新しいスキームのもとでこの長銀問題を処理していくのが最も妥当な適正な方法ではないかと考えておりますし、金融監督庁としてもそういった線に沿ってこれからやってまいりたいと考えている次第でございます。
  10. 木村仁

    木村仁君 よくわかりました。  私としてお尋ねしたいことは、いろいろありましたけれども政府としては条件が整えば早期資金注入ということを行って大きな金融機関がつぶれることがないようにしていきたいと、そして日本金融システムを守っていくというその方針においていささかも揺るぐところがなかったのかどうかということをお尋ねしたいのでございますが、その理解でよろしゅうございますでしょうか。
  11. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 行政としてそのような両行考え方を援助しようと考えたことは、私は誤りではなかったと今でも考えております。  ただ、先ほどから申し上げましたように、公的資金ノンバンク債務免除との関係で、衆議院ではこれは何か不正であるというような雰囲気が非常に強くございました。また、いわゆる世論と申しますとあいまいな表現でございますけれども、それにもそういう受け取り方がかなり強うございました。それはやはり行政をやっていく上で考えなければならぬ要素でございましたが、ここで木村委員が、少し時間がたちました今、こう一やってもう一遍この事柄をレビューしていただく機会を与えられましたことは、私は非常にありがたいことだと思っております。
  12. 木村仁

    木村仁君 立法というものは非常に慎重にやらなければいけませんし、またあるいは問題が起きた場合の司法行政、司法、それも裁判というものは非常に慎重にやらなければいけない。当然でございます。行政についてもそれは同じでございますけれども、私は行政というのはもうある場合には拙速主義でも何もやらないよりはやった方がいい、そういう気持ちを持っておるわけでございます。  例えば、この三月の資本注入のことを、昨日来の議論で、あれは失敗であった、あれで貸し渋り対策が回避できなかった、そういうような御認識が一般には多いようでございます。  しかし、私は若干違った考え方を持っております。あれは、ああいうスキームをつくって十三兆円の資金を準備して、そして金融機関状況を調べながら資金注入を行った。あのときは、たしか銀行に対してこの資金は必要かどうかということを政府はお尋ねになったと私は思います。恐らく政府の方にも資金を大胆に注入することにはちゅうちょがあったでございましょうし、また金融機関の方にも情報を開示することを避けるために、つまり自行が非常に多額の公的資金注入を要請すれば銀行経営状態が悪いという不信を招くのではないか、そういう考えのためにお互いちゅうちょして一兆八千億にとどまったのだろうと私は考えております。もし、あれを一兆八千億でなくて十兆あのときに資本注入をしていたら、現在このようなことにあるいはなっていなかったかもしれない。  それから、一兆八千億というものも、これは自動車で混雑した道を走っているときにどっちに行った方がいいかと言っているのと同じで、本当は両方やってみなければどういう結果になったかわからないのですけれども、それでも一兆八千億で私は貸し渋り対策にいささかでも貢献しているのではなかろうか。今それは恐らく大部分毀損されているという状態になっているかもしれませんが、またこれからの行政あるいは金融機関独自の御努力のいかんによっては次第に回復していく資金である、そう考えております。富士の山ほどお金を積んで端から一円ずつ使いたいというような行政ではやっぱりうまくいかないことが多いのではないか、私はそういうことを申し上げたかったのでございます。  そして、その後この八つの法案粛々と成立してまいる過程で、早期公的資金の注入、破綻前の注入ということについても新たなスキームをつくりたい、そういう動きが今進んでいるわけでございますけれども、私はそれもこの大規模な公的資金の注入によって日本金融システムの安定を図っていきたいという政府大蔵大臣の強い意志の一つのあらわれであるというふうに理解いたしておりますが、それでよろしいのでございましょうか。
  13. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今年三月の資本注入について、昨日も当委員会でいろいろ御議論がありまして、全く無意味であった、失敗であった等々いろいろ御批判がございました、貸し渋り緩和には効果がなかったではないか。しかし、あの注入の基本は、あのときの、私ではございませんが、前任者、政府がしばしば申し上げておりますように、日本に対する、日本金融システムに対する国際的な批判あるいは危機感が非常に強くなっていた、これに対応しなければならなかったというのが基本の理由でございます。  昨年の十一月に金融危機が発生をしまして、突如としてそれが蔓延することになりました。東南アジアの影響もございましたけれども、その結果として日本金融機関の海外における信用は急速に失墜いたしまして、昨年暮れのいわゆるジャパン・プレミアムは一%に達したわけでございます。一%というのはほとんど屈辱的なレートでございますが、そこまで日本金融機関は疑われた。とれるところが一%、それでもとれないところも出たということでございますから、これに対してはどうしても対処しなければならなかったと私は思っておりまして、三月の結果、決算期を過ぎまして事態は平穏になりました。  その後、しかし再びここに来まして、また〇・五%というようなレートが出ておりまして心配なことでございますけれども、少なくともあの三月の投入というのはそういう意味合いがあった。当時は、皆様御存じであったはずでございますけれども、貸し渋りの効果がなかったがためにという御議論は、それはそれといたしまして、本来の目的は違うところにあった。  今日のことでございますけれども日本金融機関がこれだけ大きな貸し出しをしていながら資本的には非常に過少であるということはよく知られておりますし、先般のG7におきましても、この状況を何とか、自分たちにはどうにもならないことなので、国会のお許しを得て日本が早く公的資金導入によって解決してほしい、これは日本の国内問題にとどまらないというような強い表明がありましたことは御存じのとおりでございますので、この法案に引き続きまして、早期健全化スキームにつきましても国会で御審議をいただきまして成立することを心から願っておるところでございます。
  14. 木村仁

    木村仁君 前置きが少し長くなってしまいまして申しわけございませんが、いわゆる金融機能再生法案について一、二だけ御質問をさせていただきたいと思います。  先ほど申し上げましたように、金融機能再生法案は、基本的に、破綻した銀行破綻した金融機関処理の問題、そして再建の問題、こういうことを中心につくられていると思いますし、また政府が提案いたしました最初の金融再生法案におきましても、公的資金早期注入と別に、破綻時におけるその処理ということを目標としたものであったと思います。  しかしながら、現行の金融安定化緊急措置法を廃止する中で、一つのパスができてまいったわけでございます。それは、破綻を心配する金融機関の申し出によって、再生委員会手続をとってブリッジバンクあるいは公的管理というものに持ち込んでいって、そして合併なり子会社になるという形で生き返っていくという姿が出てきた。これは大変難しい協議過程で出てきた一つの妥協の案であろうと思います。  昨日来いろいろ議論されておりますから私も理解はいたしているのでございますが、確認の意味でございますけれども破綻前の、破綻を心配する金融機関がこのスキームの中に入ってきた場合には、破綻という烙印を押されないでまた生き返っていくことができるのかどうか、その点を一つだけ確認しておきたいと存じます。
  15. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 特別公的管理の仕組みは、生き返らせる仕組みではございません。したがいまして、生き返ることはございません。  特別公的管理は、いわば破産手続など一般の金融機関に適用いたしますとその影響が大きい場合があることをかんがみまして、当該金融機関を整理、清算する手続として、国の管理と信用のもとに一気にデフォルトなどを生じさせない形でちょっと時間をかけて整理、清算をしていくというものでございます。したがいまして、生き返るものではございません。  破綻という言葉の前と後というような話がございますが、破綻預金保険法で定義がなされておりまして、その預金保険法破綻に該当するということを言ってしまいますと、その瞬間に国の信用のある国有銀行になったとしてもデフォルトが生じるおそれがあるという危惧が一部の方からもございまして、それであるならば預金保険法破綻という定義には当てなくてもいいでしょうと。そのかわり、要するに存続可能ではなくなった金融機関について、この特別公的管理という仕組みで国の管理と信用のもとで整理、清算、解体をする手続に入れるようにした、これが今回の修正の趣旨でございます。
  16. 木村仁

    木村仁君 今、特別公的管理という方を御説明いただきましたけれども、この修正後の法律案にはブリッジバンクというものも入っているわけでございますが、今おっしゃられましたことは当然ブリッジバンクにもそのとおり適用できるというふうに考えてよろしいのでしょうか。つまり、ブリッジバンクというルートに入っていっても生き返るわけではない、こういうふうに考えてよろしいのでしょうか。
  17. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) むしろブリッジバンクの場合の方が明確でございまして、ブリッジバンクの場合は逆にある意味では預金保険法における破綻をしている場合というふうに限定されていると理解していただいてよろしいかと思います。
  18. 木村仁

    木村仁君 そこで、もう一つお尋ねいたしますけれども、これはある新聞に、ちょっと私探しまして出てこないものですから申しわけないんですけれども、この今回のスキームでは、特別公的管理は大手金融機関に妥当しそうだし、ブリッジバンクの方は中小金融機関に援用されるようであるというふうに説明されておりましたけれども、これは正しいのでしょうか、間違いでしょうか。
  19. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 大手と中小という分け方が厳格な意味でいいのかどうかということはいろいろあろうかと思いますが、特別公的管理の方は、いわゆる破綻の認定をしてしまって、そしてその状況で放置をいたして清算手続に入りますと、例えば国際業務などを大きく行っているところにデフォルトが生じる、あるいは金融整理管財人からブリッジバンクなどというルートの場合ですと、健全な融資先に対する融資を短期的につないでいくということについてもなかなか難しい部分が特別公的管理の場合よりもあるということなどをかんがみまして、影響の非常に大きな場合については特別公的管理で国の信用で一種のオープンバンク方式で整理、清算をしていく、影響がそれほど大きくない金融機関については金融整理管財人あるいはそこからブリッジバンクというルートを通じて、もちろんこれによっても影響を小さくするための手当てはできておりますが、そういった形で処理をしていくということで、一般的には確かに大手、中小ということになるかもしれませんが、むしろ影響の大きさという部分で分けられるという理解をしていただいてよろしいかと思います。
  20. 木村仁

    木村仁君 破綻前に公的資金の注入を断行して破綻を防ぐ、それによって我が国の金融システム全体の再生を図っていくというのが公的資金注入考え方だろうと思いますが、今一連の御答弁をいただいてはっきりいたしますことは、現在私ども審議しております金融機能再生法という法律破綻を来した金融機関の整理をスムーズにやっていくための法律であると。したがいまして、やはりそこに破綻前の金融機関が申し出をすることによって手続が始まるという面があり、またかなり大規模な金融機関もそのような手続をとるということができるということではありますけれども、この法律だけで金融システム再生が図られるということではなくて、やはりいろんな方も御議論をいただきましたように、車の両輪、もう一つ法律がどうしても必要であろうと私は考えております。  したがいまして、今の法案が成立することをしっかり希望することは確かでございますけれども、二月におつくりいただいた法律を廃止するという部分は大変私は残念に思っております。二月の時点におきましても、衆議院は自民党多数でございましたけれども、参議院は非常に微妙な構成になっていたわけでございます。その中でつくられた法律、これが七カ月後には廃止されるということは、やはりどうも朝令暮改という評価を後で受けそうな気がして仕方がないんです。  したがいまして、G7でも問題になりましたような大胆な、いわゆる兵力の逐次注入とか溝次注入、少しずつ兵力を注入していって結局負けるということでなくて、大胆に公的資金を注入するなら注入するということができるようなシステム、ぜひそういうシステムをおつくりいただきたい。これは今衆議院の方、参議院も含めてと思いますけれども与野党議論されておりますので、けさの新聞等の記事にございますけれども、まだ協議が続いておると思いますので、できれば御協力をいただきたい、こういうことを念願いたす次第でございます。  次に、整理回収機構の問題について簡単な質問をさせていただきます。  現在、住宅金融債権管理機構及び整理回収銀行、この二つがあり、その後にまた買取機構のCCPCですか、これは民間のものでありますけれども、そういう機構があって、劣化した債権を引き受け、そしてその回収に当たっているということでございます。  現在どうなっているかということはもうお聞きする必要もないと思いますけれども、例えば住宅金融債権管理機構、これは千七十五人の職員がおられまして、そして中坊社長のもとに整理を行っておる。職員の大部分は金融機関関係から出向したりあるいはその経験のおありになる方が働いておられるようでございますし、また整理回収銀行も約七百三十人ほどの職員がおられまして、そして回収に当たっておられます。その資本も非常に大きな金額でございまして、住宅金融債権管理機構が約二千億、それから整理回収銀行の方が千六百億、非常に大きな資金になっております。  今度の法律が成立しますと、この二つの機関が合併してさらに大きな機関になっていくわけでございますけれども、現在の組織、規模、そういうものがどんなものになっていくだろうか、それについてどなたか、金融監督庁でよろしゅうございますか、お答えいただきますれば幸いでございます。――失礼しました。提案者、どんな規模のものをお考えになっておるかということでございます。
  21. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) この新しいいわゆる日本版RTCの組織、規模等でございますが、例えば金融機関不良債権状況、それがどのぐらい日本版RTCに移っていくかということの状況によって必要とされる規模あるいはその専門スタッフのレベル等についても非常に幅があるのかなというふうに考えております。  そうした点を考慮いたしまして、当初の野党三会派の提案ではこれを公益法人として、認可法人として設立をしようというような話でありましたが、中坊住宅債権管理機構の社長さんなどの御意見なども踏まえまして、むしろ柔軟性を持った組織の方がいいだろうということで、あえて株式会社形式、民間の形の方が人の採用その他についても柔軟性を持てるというようなことがあって、実は株式会社方式に修正で変更をいたしました。  基本的には、新しい日本版RTCの執行部、ここは与野党間の覚書で現在の住管機構の皆さんを中心に、中坊社長にそのまま引き継いでいただきたいというふうに私どもは理解をいたしておりますが、そこでのこれまでの経験などを踏まえて柔軟にやっていきたい。  ただ、当然のことながら、従来の住管機構の規模よりも整理回収銀行が吸収する分、さらには新たに不良債権を取得して回収に当たっていく分ということでふえるというふうに考えておりますが、ただ、整理回収銀行の現在のスタッフが、専従の方、正規職員の方の数が非常に少なくて、破綻した金融機関からのある意味では雇用対策的に一時雇用していらっしゃる方がいて、そういった方のモラル、つまり勤労意欲の部分のところはどうなのだろうか、いろんなさまざまな問題点があるようでございます。ここは民間企業の経営者として新しい日本版RTCの中坊社長以下の経営判断の中でどれぐらい引き継いでいただくか、そういったことを柔軟に対応していただきたいというふうに考えております。
  22. 木村仁

    木村仁君 ありがとうございました。  五千二百億の日本リースに対する債権を放棄するという話が出ておりましたときに、やはり民間の金融機関の、そういった危機的な状況の中で行われる金融の世界では常識的なことであるかもしれないけれども、一般国民の気持ちには到底そぐわない。したがって、長銀自身がそれを償却あるいは放棄するのはいいけれども、その後はちゃんとやっぱり回収すべきものは回収して公的部分に返ってくる、そういうことが必要ではないかというのが多くの人々の考え方であったと思います。  ということは、これから破綻金融機関に対して、あるいは破綻していない金融機関に対しても公的資金が注入され、非常に劣化した債権がそちらの方で引き受けられていくとすれば、その機構自身が非常に効率性の高い、そして回収能力の高い機関でなければいけないであろう、そういうふうに思います。  現在、両機構がこれまでに回収した比率でいきますと大体二〇%ぐらい、これが非常に効率的なものであるかどうかということは私には判断がつきません。一生懸命やっていただいていると思います。しかし、今後ますます新しいシステムのもとでこれが効果的な効率的な会社となるように、これはもう立法者の仕事ではないのかもしれませんけれども、注目していかなければいけないと考えております。  次に、金融再生委員会のことでございますが、これは時限的な委員会、そしてそれが終了した後は金融庁というものがこの分野を統括していく、こういうことになるようでございますが、この規模としては、現在の金融監督庁の組織に、委員会の総務部門でありますとか、新たに加わってまいります金融システムに関する企画部門、こういうものを加えた程度というような比較的コンパクトな姿になるというふうに考えてよろしゅうございますでしょうか。
  23. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) お答えをいたします。  金融再生委員会設置法第十四条に、「事務局を置く。」ということになっております。その規模、人員を決めるのはこれからです。ただし、二〇〇一年三月までに不良債権問題の解決に集中的に取り組むというのであれば、現在の金融監督庁に多少の人員を加えた程度では明らかに不足すると思います。経済、法律に詳しい職員を思い切って多数集めるべきであると私は思います。
  24. 木村仁

    木村仁君 金融システムの危機の問題、これは今世紀二度目の問題であろう。一度は一九二九年の大恐慌以降の金融恐慌、そして今回の大失敗、こういうことであろうと思います。  そして、それが幸いにして二〇〇一年までに、あるいは片づかないかもしれませんけれども、鋭意努力をして片づけるとして、それからまた平常の金融システムとして機能していくわけでございますが、この何年かの傾向を見ておりますと、あるいは証券会社の不祥事の問題、そして金融システムの危機の問題、こういうものを通じてこれを監督、指導する機構がだんだん私は大きくなっていくというふうに危惧をいたしております。平常時であれば、金融機関の良識あるいはその経営能力に任せていくべき問題が多いはずでございますから、危機的な状況の中をしっかり監督、管理することは別として、それが肥大化したまま将来にわたって進んでいくというようなことがないようにしなければいけないと私は存じております。  そして、これは恐らく反撃をいただくから御答弁はいただかない方がいいと思うのでございますけれども、私は、大蔵省の皆さんにしっかり反省していただき、その構造的な欠陥を直しながら、大蔵省が一元的に金融の問題は財政とともに運営していくのがよろしいと思っております。  これは別として、やはり今後、この数年間、委員会ができて、これは内閣からかなり独立した機能を営んでいくとすれば、例えば大蔵大臣が国際的な会議に出ていかれるときに、日本大蔵大臣は、現在の宮澤大蔵大臣はもう何度もそういう御経験がおありになり世界的に有名でありますからよろしいのでありますが、必ずしもそうでない方が大蔵大臣になられることもあります。能力があっても世界的には知られていない。  そうすると、やはりG7等においての比重が軽くなってきます。そこへもってきて、いや、私は財政のことはわかりますが金融のことはわかりませんよと、こういうことではやはり日本世界一流国としての面目が立たない、こういうこともあろうかと思いますから、何とかこれは、分けられるけれども、そういった場ではきちっと整合性のある発言ができるような形を持っていかなければいけない、こういうふうに考えますけれども大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  25. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いろいろその問題は各党協議でも御議論になりましたし、将来に属していることでもございますので、ちょっと私から申し上げることはこの際御遠慮させていただきます。
  26. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) 木村議員に申し上げますが、別に反撃するつもりはございません。政権党にいらっしゃる立場ですから、ぜひこの金融監督体制の強化について協力していただきたいという立場からお答え申し上げたいと思います。  御存じのように、金融行政はビッグバン時代に入りまして、これまでの密室業者行政から市場中心の行政への転換が迫られています。別の言葉で言えば、事前指導型行政から事後チェック型行政へ転換しなければならない。最近のように銀行検査を強化充実していけば多くの人員が必要となるわけです。米国の例をとれば、銀行監督は通貨監督庁など四機関で八千人、またいわゆるSEC、証券取引委員会は一九九五年の定員で三千三十九人となっているわけでありますが、我が日本金融監督庁は、これに比べて、証券取引等監視委員会の九十八人を合わせて四百三人となっているわけです。私も行政のスリム化というのは必要だと思いますが、行政需要の多いところ、ないところ、めり張りをつけてやるべきだと考えております。  それから、もう一言申し上げますと、検査をしっかりやれば公的資金の投入は少なくなるわけでありまして、私は日本の金融監督体制は抜本的に強めるべきであると思います。ぜひ木村議員の御協力もいただきたいと思います。  また、G7の問題でございますが、これはよく私も金融監督庁の対案のときも答弁をいたしましたが、要するに、先進七カ国大蔵大臣・中央銀行総裁会議というこのG7では、財政や国際金融を担当する大蔵大臣と金融政策を担当する日銀総裁が出席することになりますから、不都合はないと考えます。  以上です。
  27. 木村仁

    木村仁君 時間が迫ってまいりますので、次に進ませていただきます。  債権回収業、サービサーの問題でございますけれども、これは大変時宜を得た立法ではないかと考えております。ただ、資本金が五億円以上という非常に大きな基礎を持った会社になっておりますし、恐らく弁護士の世界の皆さんの協力をいただけるのではないかと思いますから安心でございますけれども、問題が問題でありますから、よほどしっかり最初から議論しておかないと、債権者にとっても債務者にとっても大変不都合な組織になるというものもまた出てくるおそれもあります。  そこで、まずお尋ねをしたいんですけれども、私どものもとにも弁護士会から、これは反対であるという意見が届いておりましたけれども、もちろん明治以来ずっと弁護士の仕事であったことを、時間は限られておるのかもしれませんけれども、とっていくわけでありますから、反対があるのは当然だと思います。  この間の協議は行われ、そしてうまく決着がついてこの法律ができているのでありましょうか、発議者にお尋ねしたいと思います。
  28. 杉浦正健

    衆議院議員杉浦正健君) 木村委員の御質問にお答え申し上げます。  まず、私ども金融再生トータルプランに深い御理解を賜っておることに対して敬意を表する次第でございます。  御指摘の点でありますが、この法律は、御承知のとおり、弁護士法七十二条、七十三条によりまして明治維新以来弁護士が業として債権回収を行う業を独占してきたというのを緩和するわけであります。一種の規制緩和であります。そして、いろいろ聞いておりますが、かなり多くの会社が誕生するのではないか。新しい業種が誕生するわけで、雇用も生まれますが、そういう結果になると思われるわけでございます。  そういうことにかんがみまして、私どもは当初から弁護士会と御協議をいただきながらやってまいっております。宮澤先生のもとで本部ができ、このプロジェクトチームが発足した当初から、日弁連にはオブザーバーとして私どものプロジェクトチームに参加をしていただいて議論をいたしてまいっております。  御意見は十分に承ってまいりましたし、資本金を五億円以上にするというのも弁護士会の御意見であります。それから、常務に係る取締役を一名以上会社に入れる、これも弁護士会の御提言でございます。暴力団の関係者を徹底的に排除するとか行為規制を厳しくするとかいう点につきまして、弁護士会の御意見を十分に承り、弁護士会としてもPTを発足させて現状調査もアメリカに行ってなさったそうでありましたが、そういう事情をよく承って十分な御議論をさせていただいてつくってまいりましたので、御理解は十分いただけておると。  日弁連はああいう大きい組織ですから、一、二反対の方がいらっしゃるのは当然でありますが、日弁連としての御理解はいただいた上でここまで来ていると御理解いただいてよろしいと思います。
  29. 木村仁

    木村仁君 多分、弁護士会、弁護士の皆様方の全面的な理解と協力が得られて初めてこの会社はうまく機能していくと存じますので、そういうことを期待しておきたいと思います。  それから、いわゆるサラ金に係る債権の回収というのは本法の適用外だというふうに聞いておりますが、もしそうだといたしますと、これはサラリーマン金融、このサービサーというのは債権者に対するサービスをする会社であると同時に、やっぱり債務者に対してもソフトな取り立てを行うという意味ではサービスをするもので、恐らく大手のサラ金業でも、このサービサーを使えば経費もアウトソーシングで安くなるし、そして対債務者との接触面でもソフトになるのではないかと思うから、私はこれを除外するというのは大変残念に思うんです。  これは議論議論を重ねた結果そういうことになったんでしょうから、この時点で文句を言うつもりはないのでございますが、将来また機会がありますれば、そういうことをお考えいただいたらどうか。これも運用を見てうまくいきそうならばサラ金の分野にも入れていただいた方がいいのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  30. 上田勇

    衆議院議員(上田勇君) お答えいたします。  今先生御指摘のとおり、今回の法案におきましては貸金業者につきましては銀行ノンバンクに限らせていただいているものでありまして、またそれも、ここでは法案の第二条第一項で貸金業者の有する貸付債権につきましては不動産担保つき事業者向けのものに限定するということでございますので、個人向け融資が中心となりますサラ金等は除外されているところでございます。  これは原案におきましても、本法案の目的が金融機関が有する不良債権の実質的な処理の促進を図るということが目的とされているわけでございまして、原案の提出者の意図としてもいわゆるサラ金等の貸金業者の個人向け債権は主たる対象とはしていなかったところでございまして、与野党協議の中でそれを一層明確にしたというところでございます。  なお、協議をいたしまして、修正案におきましては、この法案の運用の実態を見まして、五年後には見直すというような規定を設けているところでございます。  ぜひとも、当初限定的な出発になりますが、この制度が円滑に進むことを期待いたしまして、それが本当に円滑に進むようでありますれば、五年後にその見直しにおいて債権対象の拡大等もその中に含まれて検討すべきものだというふうに理解している次第でございます。
  31. 木村仁

    木村仁君 御一緒に考えてまいりたいと存じております。  時間が尽きそうでございますので、一つだけ簡単に御質問をいたします。  それは、貸し渋り対策と不動産権利調整委員会法案の行方の問題でございます。いわゆる貸し渋り対策につきましては、八月二十八日に極めて大胆な対策が閣議決定され、そして中小企業向けの信用保証協会の保証の枠の拡大あるいはその一部無担保化等の充実、それから政府系の金融機関の四十兆に及ぶ貸付額の拡大、こういうことがなされたわけでございます。  ただ、この場合、善良なる債務者であればこの制度に乗っかってどんどん行くわけでございますが、現在でも地方に参りましても本当に善良なる債務者経営状態も非常にいいというところはそれほど貸し渋りの被害は受けていない。貸し渋りの被害を受けるのはむしろベンチャー系のビジネス等であろうとは思いますけれども、むしろやっぱり善良なる債務者かどうかというのがちょっと疑わしい、一遍履行遅滞を来しておるとか、あるいは経営内容が非常に悪化しているとか、そういうところでございまして、そういうところになりますと、やっぱり銀行は、これは貸し渋りではございません、銀行としては貸せない状態でございますと、こういう説明になりますし、保証協会の方も、私どもは保証をするものであって、銀行にそれでも、少しきずものであっても貸せとは言えないんですと、こういうことになりますから、今本当に苦しんでいる中小零細の企業がそういう意味で運転資金に詰まってつぶれていくということが多々ございます。  それは経営者の方にも責任があるわけでございますから一概には言えないのでありますけれども、やはり金融機関について破綻処理をスムーズにやっていくということが必要なように、中小零細の企業にとっても破綻に瀕したときに何かもう少し簡便な駆け込み寺があるということは非常に心強いことで、この不動産権利調整委員会法案というものがどこにねらいを置いているのか、もう時間がありませんから議論しませんけれども、少なくともその法律の目的の中には、そういった企業の破綻状態になって破産したときの再建にも資すると書いてあります。  そういうものでありますから、昨日の御議論の中で調停あるいは仲裁であれば裁判所の方が上手だ、力もある、こういうお話がございました。なるほど、考えてみれば調停と仲裁だけやって、あっせんとかそういう事前の行政らしい行政世界へ持ち込んでくるところのメリットが少ない法律かと思いますけれども、そういうことはまた協議の上、修正でもして、ぜひこれは今国会で通していただければと思いますが、そういった全体的な面について、大蔵大臣、いかがお考えでございましょうか。
  32. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) このたび諸法案をめぐりましてこうやって両院で御議論がございます。その中で、金融機関に厳しくなければならないということは、従来のあり方あるいは行政のあり方から見ても、私はそういう御指摘があることは当然だと思っておりますけれども、他方で、預金者が保護されておりますために、金融機関の倒産ということについて、比較的借りている立場というものが問題に出てこない。これはまた声なき声のようなものでございまして、借りている中小企業が金融機関批判することはほとんど致命的になりますので、その声が出てこない。したがって、御議論がどうしても金融機関に厳しくなって、借りている立場というものはなかなか出てこない嫌いがございます。  これは、しかし我が国全体にとって非常に大事なことであろうと思っておりまして、今御指摘のようなことはそういう観点からもいろいろお考えをちょうだいしたいと思っているところでございます。
  33. 木村仁

    木村仁君 通産省の局長さん、お見えいただいていると思いますので、最後に、貸し渋りの問題、充実した内容の対策を講じながら、実際は末端では中小企業は余り変わらなかったという苦情が出てこないように一生懸命PR等やっていらっしゃいますけれども、例えばネガティブリスト、これも見ると、やっぱりああ本当に善良な債権者しか救えないのかなという気がして心配でなりません。  そういう点について、これは激励の意味も兼ねてでございますが、どういうお考えを持っていらっしゃるか、お聞きしておきたいと思います。
  34. 殿岡茂樹

    政府委員(殿岡茂樹君) 先生御指摘のように、この十月から新しい特別の貸し渋り対応の保証というのを実施しております。この制度の中では、保証要件を緩和するということとともに、適切な基準を設けることによりまして円滑な資金供給を図りつつも、無制限に保証がなされるということもないようにという工夫をしているわけでございまして、その一環としてネガティブリストというものを設けさせていただいております。  具体的に申し上げますと、例えば破産和議あるいは会社更生の申し立てなど、事業継続の見通しが立たないような場合、あるいは粉飾決算を行っている場合等々、こういったものをネガティブリストの中身にいたしまして、これらに該当する場合を除いては原則として保証を承諾するんだという扱いにしているところでございまして、保証協会における迅速な処理とあわせまして、その保証引き受けの要件の緩和を図っているところでございます。  私どもとしては、この保証の万全な実行というのを今後とも努力してまいりたいというふうに思っております。
  35. 木村仁

    木村仁君 同僚議員が待っていらっしゃいまして、ちょっと話し合いがつきましたので五分延長いたしました。大変失礼をいたしました。あしき慣習となりませんようにお願いを申し上げて、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  36. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 関連質疑を許します。岩城光英君。
  37. 岩城光英

    ○岩城光英君 木村議員関連質問をいたします。自由民主党の岩城光英と申します。私も一年生になったばかりでありますので、皆様の御指導をよろしくお願いしたいと存じます。  また、金融の分野につきましてももちろん素人でありますけれども、これまで例えば選挙戦を通じまして寄せられた国民と申しますよりは地方の住民の声をもとに質問をさせていただきます。  さて、衆議院におきまして各党皆様方が熱心に議論を展開されましたことに敬意を表したいと存じますが、その間に、例えば株価の問題あるいは失業率の問題そして倒産の問題と、よりひどい状況になってしまったこともまた事実であります。とにかく早く道筋を示してくれというのが国民の声であるようにも受けとめておりますし、金融再生はまさに待ったなしの状況にある、こう思っております。こうした中、昨日のこの特別委員会におきましてもとても熱のこもった論戦が展開された場面もありましたし、私自身は前向きな議論をさらに重ねていく姿勢が大事だ、こんなふうに感じたわけであります。  ところで、国会でのいろいろな論戦は、もちろん専門的な用語等も入るからでありますけれども、やはり一般の国民にとりましてはわかりにくい部分もあるのかな、こういうふうに正直言って感じました。極力わかりやすい言葉で説明することも必要だろうと思っております。私自身、七年間いわき市というところの市長を務めさせていただきました。そうした中で、ベテランの市議会議員皆様から時折、議会での答弁に横文字が多過ぎるとかそういった指摘を受けたことも事実であります。その私が国会に参りましてそう感じているわけでありますから、国会国民との間にまだまだ隔たりがあるんだな、そんなふうに思っております。ところで、地方自治体がそれぞれの持っている特性、そして置かれている環境、こういったものを十分に生かして個性と魅力あふれる町づくり、地域づくりを行うことが今求められているものと思っております。その地域の歴史、伝統そういったものを大切にしながら新たな地域の文化を創造していく、全国どこにでも同じような地域づくりをするのではなく、個性あふれる地域づくりが求められていると思っております。全国に三千二百三十二の市町村がありますが、その市町村がそれぞれ元気を出すことが日本の国土の発展につながると私は常々そう思っておりました。  さて、質問に入らせていただきます。  去る四月二十四日に取りまとめられました総合経済対策でありますが、総事業規模十六兆円ということで、過去最大の規模だったわけであります。公共事業や減税措置など、財政出動を伴ういわゆる真水部分は十二兆円程度でありました。このうち地方単独事業一兆五千億円を除く減税等の財政措置はこれまで随時執行されてきたわけでありますが、依然として景気の回復が見られないなど、厳しい状況にあることは御承知のとおりであります。私も現在、週末に地元に戻っていろいろ話をお伺いするわけでありますが、特に地方に住む住民の感覚としましては、底をついているというよりも、もっともっとこれから悪くなっていくのではないか、そういう不安の方が多いのも実態であろうと思います。  そうした中、地域経済に直接反映することになる地方単独事業はそれぞれの地方議会において議決、執行されることになっておりますが、大方の自治体は九月議会において決定されることになると思います。  そこで、まずお伺いいたしますが、地方単独事業につきましては、住民に身近な生活関連施設の整備ということで、地域の実情に即して実施され、地域の経済を下支えする事業として重要なものであると考えておりますが、国が地方に要請しております一兆五千億円規模の事業は確保される見通しがあるのかどうか、お伺いをいたします。
  38. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま政府委員から具体的には申し上げますが、ここに来まして地方財政の実情が非常に悪いということを私どもも心配しております。  せんだっても、公共事業の契約率は比較的いいにもかかわらず支払いがほとんど進んでいない。それは地方の金融失速によるもので、国がある程度それは肩がわりをしなければならないという決定をいたしたところでございますし、これからまた減税を考えますときにも、減税分の負担を地方に余り大きくかけるということにはいろいろ問題があるというような問題意識も持っておりまして、今おっしゃいましたようなことを実は非常に心配いたしております。  ただいま具体的に政府委員からお答え申し上げます。
  39. 二橋正弘

    政府委員(二橋正弘君) 総合経済対策を踏まえました単独事業の予算計上の状況でございますが、地方公共団体におきましては、十六兆円の経済対策を受けまして六月補正で既にかなりの予算額を計上しておられまして、私どもの方で調べておりますところでは、六月補正におきます都道府県と政令指定市の追加計上額、これは公共事業関係で約一兆八千億でありますが、単独事業も約三千四百億円をもう既に計上されておりまして、これは県と指定市ではございますが、相当前倒しの予算計上になっております。それから、一般の市町村におきましてもかなりの前倒し計上をしておるという状況にございます。  現在、九月補正予算の対応状況というのを聞かせていただいておりまして、ほぼ把握できるような状況になりつつございますが、今のところでございますと、九月補正におきましても、非常に厳しい財政状況の中ではございますが、片方でまた地域の経済状況が大変厳しいということも踏まえまして、地方団体でかなり積極的な予算計上がされておる状況でございます。私どもの方で今おおよそつかんでおる数字でいきますと、何とか要請をいたしました一兆五千億という額は計上が達成できるのではないかというふうな見込みを持っているところでございます。
  40. 岩城光英

    ○岩城光英君 次に、県単独事業の場合でありますけれども、この事業の場合はそれぞれ七月から八月までの臨時議会でほぼ対応されていると思っております。  そして、この効果は二カ月あるいは三カ月というふうに短い期間で反映されるという即効性が強いと思われますが、この県単事業の効果をどのように見ていらっしゃいますか、お伺いいたします。
  41. 二橋正弘

    政府委員(二橋正弘君) 県の単独事業につきましては、国の直轄事業や補助事業と同じような公共投資としての経済に対します浮揚効果を持つものでございますが、特に単独事業につきましては、先ほど委員が御指摘になりましたように、それぞれ地域の実情に即して創意工夫を生かした事業を実施するというものでございまして、住民に身近な社会資本を機動的に整備する、それから地域経済を下支えする、そういう重要な役割があるものと私ども認識をいたしております。  この県単独事業の計上の状況につきましては、先ほど申しましたとおりでありますが、六月補正あるいは臨時議会等で前倒し的な計上がかなり行われておりますし、九月でも先ほど申しましたように相当積極的な予算計上がされて、これは県、市町村通じて全体として先ほど言いましたような目標額が達成できそうなそういう状況にあるということでございまして、小回りのきく事業が多いものでございますから、そういう意味では発注すればかなり即効性が出てくる、そういう性格の事業であるというふうに思っているところでございます。
  42. 岩城光英

    ○岩城光英君 先ほど宮澤大蔵大臣からもお話がありましたように、地方自治体の財政状況は非常に厳しい状況にあります。こうした中、地方にとりましては地方単独事業に対する国の財政支援が大きなポイントとなっております。  今年度は地方負担額見込み約二兆円の二〇%を目途とした四千億円の地方交付税の増額措置を行ったわけでありますが、この措置の波及効果につきましてはどのように受けとめていらっしゃいますか、お伺いいたします。
  43. 二橋正弘

    政府委員(二橋正弘君) 年度の中途で経済対策を行いまして、公共事業あるいは単独事業の追加をかなり地方団体に要請をいたしたところでございます。  これまででございますと、通常は、年度中途の予算の追加でありますので、地方負担額というのは原則として全部地方債を発行いたしまして後年度その元利償還を財政措置するというやり方をしてきておったところでございますが、昨今のように非常に借入金の残高がふえて地方団体が借金の圧力というものを非常に痛感するような状況でございまして、そういうやり方ではなかなか予定した事業が消化できないのではないかということから、さきの経済対策に関連いたしましては、そういう状況も踏まえまして、公共事業だけではなくて単独事業の円滑な執行にも資するという観点から、御指摘のように地方交付税の増額四千億円という異例の措置でございますが、そういう措置を講じたところでございます。  こういう措置を講ずるに当たりましては、地方団体の代表の方々と自治大臣との意見交換をしていただきますとか、私どもなりにまたいろんな機会を通じて地方の意見あるいは実情を把握いたしまして、そういう措置をとったところでございます。  非常に厳しい状況の中でございましたけれども、こういう異例の措置をとるということが地方におきまして、先ほど申しましたような形で予算計上がほぼ目標を達成できそうな状況になっている、そういうことの一つの大きなポイントになっているものというふうに考えております。
  44. 岩城光英

    ○岩城光英君 ありがとうございます。今後とも地方の実情等を十分に反映した施策の展開をお願いしたいと存じます。  次に、大蔵大臣にお伺いをいたします。  政府は昨日、今年度の実質経済成長率の政府見通しをマイナス一・八%に下方修正したことを受けまして、景気の早期回復を目指した緊急経済対策の策定に着手したということでありまして、事業規模で十兆円を超える今年度第二次補正予算案に盛り込む追加的な景気対策を早急にまとめる方針だということであります。  現在の経済状況考えますと、この内容をどのように組み立てるかが重要である、こんなふうに思っておりますので、この対処される方針、内容等についてお伺いいたします。
  45. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昨日、本年度の経済見通しを下方修正いたしましたことに関しまして、そのような経済情勢に改めてどう対処するかということについて閣議で関係閣僚からいろいろ発言がございました。  私としては、いい考えがあれば何でも私は受けとめます、財政がネックになるようなことはいたしませんということをきのう申し上げたわけでございます。かねて、来年度の予算編成方針に関しまして、例年と異なりまして緊急枠というものを別途設けておりまして、それは公共事業、非公共事業合わせて四兆円でございますが、それにつきましては八月の概算要求ではなくて十月に、こういう状況に照らして即効性のある、今までの継続でなくてもよろしいから、スクラップ・アンド・ビルドでなくてよろしゅうございますから、いい施策があればひとつ十月までに各省庁出してほしいということを、要求枠はその一・五倍とか一・七五倍とか設けましてお願いをしてございます。これは十月末と考えておりましたのですが、そのことは八月の出来事でございますから、各省庁かなりいろいろ考えておられるだろうと思いますので、さしずめそこらあたりが今度の一つの中心の課題になるのではないかと思っております。  現実の問題といたしまして、この臨時国会が恐らく会期の延長をなさるのではないかというふうにも思われますので、その時期のところのとり方をどういうふうにするかということはちょっと決まっておりませんが、さしずめ、しかしそういう基本方針に沿って一遍関係閣僚の自由討議をしよう、できるだけ早くいたさなきゃならぬと思っておりますが、その中でどういうことを各省庁が考えておられるかをもう少し自由に議論してみたいと思っております。その後、多少輪郭が出てくるのではないか、こう考えておるところでございます。  できるだけ早くその討議はいたしたいと思っております。
  46. 岩城光英

    ○岩城光英君 さらに英知を結集されまして、効果のある方策等について取り組みをお願いしたいと存じます。  そこで、次の質問に移らせていただきますけれども、私は、私どもがさまざまな事態に直面した場合に歴史から学ぶことが非常に大切ではないかなと思っております。  宮澤大臣はこれまで極めて御苦労なされてこられましたことにつきまして敬意を表したいと存じますが、総理大臣経験者が大蔵大臣に就任されましたことは、七十一年前の昭和二年、金融恐慌の際に大蔵大臣に就任されました高橋是清以来のことであります。そういったことから非常に期待も大きいわけであります。  当時の昭和恐慌は、ある大臣の失言から始まったとされる金融恐慌の中で銀行の取りつけ騒ぎが起こり、次々と銀行がつぶれていったと言われております。そうしたことから現代と状況もよく似ているというふうな話もあるわけですが、ただ昭和恐慌の場合には地方の銀行が標的になった、今回の危機は大手十九行にある、こんなふうに言われております。ここが異なっておるところかな、こんなふうに思いますけれども、それだけに七十一年前より現在の方が非常に恐ろしい危機にある、そう言われるゆえんかと思っております。  そこで、昭和恐慌と現在の経済危機について、その類似点とかあるいは相違点とか、そういった面をどう認識されていらっしゃるのか、お伺いをいたします。
  47. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 昭和初期の恐慌は、その前に第一次大戦がございまして、我が国が非常に躍進をした、またちょうどその裏目が出た時期でございますけれども、たまたまその間に関東大震災がございまして、この震災手形というようなものが後を引いて、この二つの背景のもとに恐慌が起こったというふうに考えておるわけでございます。  その間いろいろ登場する出来事としては、台湾銀行であるとか鈴木商店であるとか、あるいは渡辺銀行であるとか十五銀行であるとかいろいろな、あるいは枢密院もございましたが、そういう中で蔵相が渡辺銀行について、実際は店を閉めていなかったのですが、連絡のちょっとしたずれから店を閉めたという発言をされたというようなことがあったりいたしました。そういうことはございましたんですが、結局おっしゃいますように、十五銀行はともかくといたしまして地方の銀行に不安が広がった。  ただ、その背景は、したがいまして、今申し上げましたように第一次戦争後に我が国が勃興をして、これは比べてもいけませんが、かなり大きな経済の膨張であったわけですが、それがちょうどバブルがはじけるような形に裏が来まして、そこへまた震災があってというようなことが重なりましたから、そういう意味での信用不安、大きくなった経済が収縮しなければならないということから生まれる信用不安と思われますが、ただ今日とかなり違うと思いますのは、今日は預金というものが一〇〇%保護されておるということを国民は御存じでございますし、また預金保険機構もある。そういう点が大きな違いと思います。  ただ、今日もそういう意味ではやっぱり大きな信用膨張があって、プラザ合意以後のことでございますが、その後バブルがはじけたという点では、非常に大きくなった金融が支えておった経済が、金融が縮小することによって支え切れなくなっているという点では、私は共通の問題があるだろうと思っております。  そして、おっしゃいますように、地方の銀行は、比較的バブルからはじけます間に行動が慎重でございました。土地、不動産等々、それはある程度やっておられますけれども、かなり慎重に行動をしておられるように思えますが、中央のマネーセンターバンクスの方がその点では、いろいろノンバンクを設けたりいたしまして、いろんな形で不良資産になるような投資をいたしておりますから、その上に国際的な関連がございますので、確かに今度の場合の大きな問題はむしろそういう中央の十九行を初め大きなところであるということであろうと思います。  したがいまして、お願いをいたしておりますのも、そういう大きな銀行を中心として、今の貸し出し七百兆というようなものは、実は資本から申しますと大変に重い貸し出してございますから、どうしてもそれを収縮しようとする、それがすぐ貸し渋りになるというような状況と、それから、そういう中央の大きな銀行の信用状況というのはかなり海外にも知れておりますものですから、そこから来るシステムの不安と、両方の意味でこのマネーセンターバンクスを中心に、ほかにやりようがございませんので、まことに申しわけないが公的な援助をせざるを得ないというふうに考えておりまして、これがこの状況を国内的にも国際的にも脱出するためにはどうしても不可避である。  もちろん、事ここに至りました銀行責任というものは厳しく問われなければならない、それはもう明らかでございますが、それと同時に、しかし、この状況はやはり公的な支援によって打開するしか方法がないというふうに考えておるところでございます。
  48. 岩城光英

    ○岩城光英君 ありがとうございました。  そこで、こういった指摘もございます。今の日本は、一九三〇年代の米国、アメリカの銀行改革と不良債権処理方法を参考にすべきであると。ちょっと論文の一端を読ませていただきます。  二〇年代の米国は土地と株式の高騰によるバブル経済であり、銀行は土地・株式担保貸し出しを急増させ、その上無制限の株式保有が認められていた。二九年の株価大暴落に始まるバブル経済の崩壊によって、銀行不良債権は膨張し、多額の株式評価損も抱えた。現在の日本銀行の苦境と同じ状況であった。  そこで三三年四月に就任したルーズベルト大統領は、銀行法を改正して銀行の株式保有を禁止し、公的資金の大規模投入により不良債権を  約一年半で一掃したのである。この後もあるんですが、続けると長くなりますので終わらせていただきますけれども、こうした教訓から学ぶべきことも多いのではないか、こんなふうに思われますが、御所見をお伺いいたします。
  49. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 十分御説明できるとは思いませんけれども、アメリカのあのときの恐慌も、結局、第一次大戦が済みましてアメリカはにわかに世界のリーダーにの上がりました。経済的には第一次大戦で一番、受益という言葉はちょっと不適当かもしれませんが、した国であったと思います。アメリカという国がつまりあのときに変わりますわけです。  おっしゃいますように、あのときの銀行なんというものは今我々の考え銀行と大分違ったもののようでございます。でたらめをやったとは申しませんけれども、それに近い話であって、ルーズベルトとしては、それはもう抜本的にやり直すしかない、みんな一遍はだめになって、もうしょうがない、後をつくらなきゃというような気持ちで施策をされたようです。  そして、他方で失業者が非常に多くなりましたのでニューディールというようなことになって、結局、第一次大戦後に知らないうちに大きくなってしまったアメリカという国をもう一遍自意識のもとに新しい国につくり直そうとしたのがあのルーズベルトであったというふうに思うのでございます。それで今日のアメリカの基礎が確かに築けたというふうに思うわけでございます。  我が国にとってもやはり直接のきっかけは一九八五年のプラザ合意であると思います。それは、あのときに二百四十二円であった円が急上昇して、いろいろ消長はございましたけれども、いっとき七十九円まで行きました。今日また、きょうはちょっと円がいいようですが百三十円前後、それでもこれはもう大変な変動でございますから、国全体が変わっていく過程を我々は今通っているんだろうと思います。  そういう意味では、こういう金融危機の後の日本、これをうまく解決でさましたら我が国はある意味で違う国になるのではないか、そういう意味で、ルーズベルトがアメリカに対して行ったこととの基本的な認識は、私はそこは一致しているのではないかというふうに考えております。
  50. 岩城光英

    ○岩城光英君 ありがとうございます。  次の質問に移らせていただきます。  経済戦略会議が去る八月二十四日でしたか、設立されました。これは総理大臣の諮問会議として設置されたわけでありますけれども、我が国経済の再生と二十一世紀における豊かな経済社会の構築のための構想について調査、審議をし、意見の具申を行うと、こうされております。これまで既に四回の会議があったとお伺いしておりますが、昨日ですか、総理の指示を受けて十四日までに緊急提言をまとめるという報道に接しておりますが、この会議の現在までの取り組み状況とその成果についてお伺いをさせていただきます。
  51. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) この会議は、総理大臣が今の日本の直面する問題、しかしその中でも毎日毎日の行政の課題はこれは行政がいたしますが、それをちょっと離れて、二十一世紀を展望してもう少し基本的な問題、二十一世紀における豊かな経済社会を築くために考えておかなければならない問題について、企業経営の方あるいは学者から総理大臣が意見を聞かれるということで、今朝までに五回あったようでございます。  幾つかのテーマを設けまして議論しておられまして、ここでは毎日の行政と重ならないように、しかし余り迂遠なことでなく、二十一世紀に向かってしなければならないことは何か、そういう提言を求めるために何回かの会議を開いておられるように存じております。幾つかのテーマを設けられておりまして、それにつきましての提言を得たい、こういう努力が行われておると承知しております。
  52. 岩城光英

    ○岩城光英君 時間の関係もありますので、次の質問に移らせていただきます。  金融システム安定化というのが喫緊の課題であることはもう先ほど来お話を申し上げております。国際的にも日本不良債権問題の迅速な処理が望まれているわけであります。そうした中、先般ですか、十月の二日から四日に行われましたNHKの世論調査におきましても、景気対策で今最も重要なものとして金融システム安定化を挙げる方が四一・三%の割合に至っております。  こうしたことを受けまして、今後、金融システムの維持、再生というシステム、枠組みの中で大手銀行の位置づけ、あり方をどのようにお考えになっていらっしゃいますか、御所見をお伺いいたします。
  53. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) かつて日本のいわゆるマネーセンターバンクスは、世界の金融界の一番から十番までほとんど独占した時代がございました。そのときは、アメリカの例えばナショナルシティ銀行が一株八ドルまで落ちぶれた時代でございます。その形勢はまことに逆転をいたしましたが、その中で今、日本の大手金融機関としてはやはり二つのことを考えておるだろうと思います。  一つは、もう金融のビッグバンによりまして外国からの競争も入ってまいりました。したがって、できるだけ力を団結なりあるいは提携なりによって結集して、このビッグバンの時代を勝ち抜くための体制をつくるということが一つの命題だと思います。  同時に、しかし銀行によっては、今まである意味で人もするからといってやっておったような海外活動を、むしろ自分の銀行は体力からいってやめると、そういう動きを示している金融機関もございますから、対外的にはより少ない数の銀行が競争場裏に臨むということではないかと思っております。同時に、対内的にはおのおのの銀行が、いわゆるユニバーサルバンキングは別といたしまして自分の得意の分野で残ろうと、そういう努力がまた行われているように思われます。  押しなべて、今、日本のマネーセンターバンクスにあります問題は、不良債権処理というのっぴきならない問題とビッグバンという国際的な競争力の問題が二つ一緒に起こってまいりましたので、問題の処理がそれだけ複雑になっておると見ておりますが、そういう中で、しかし同時に、先ほどもお尋ねがございました地方の銀行は独自の力を明らかに発揮しつつありまして、地方によりましては非常に大きな力に地方銀行がなりつつあるように見受けております。
  54. 岩城光英

    ○岩城光英君 実は大方の国民は、金融の問題につきましては用語の専門的なこともありましてなかなかわかりにくい、理解しにくいというのが事実であろうと思っております。なぜ国民の税金で銀行だけを救うのか、中小企業が銀行の貸し渋り等に遭って非常に危機に直面しているのに、どうして銀行だけなんだという素朴な声がもちろん多いわけであります。  そうした中で、地方の住民の中でも、例えば大手銀行再生させないと我が国の経済がますます悪化してしまう、だから破綻前の処理が大事だというふうな意見や、資本注入しても、銀行が回復すればその資金は回収できるけれども破綻してしまうともう何も戻らないんだと、こういうふうに理解している方もいることはいるんですが、まだほんの一部のようであります。  私は、やっぱりもっとわかりやすく国民に説明する必要があるのではないかなと思っております。大きな銀行がつぶれるということが、その結果どういうことが起きるんだということ、例えば公的資金導入することは善良な借り手の保護あるいは個人消費への悪影響を防ぐという意味があること、さらには破綻の連鎖を防ぐ、こういったことを具体的な例を挙げながら、例えば破綻した場合は失業者がこれだけ出るとか、そういうシミュレーション等を取り上げながら説明する手法も今後政府として考えていく必要があろうと思っております。  昨日もこの委員会でパネルを使っての質疑等もございました。テレビ等で国民に直接訴える必要もあろうかと思っておりますが、そういった点につきましてはどのようにお考えになっていらっしゃいますか、お伺いさせていただきます。
  55. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 我が国のような市場経済の国では、よく言われますように、金融が正常に動いておるということは、どなたかもけさおっしゃいましたが、血液が順調に流れているようなものである。血液が順調に流れております限りは、そのことはほとんどの人が気がつかないわけでございますので、そういう意味では流れておる限り知らぬでもいいことでございましょうと思いますが、故障が出つつありますときにこういう御議論が起こる。  ただ、我が国では預金者が一〇〇%保護を受けておりますために、給料生活者のほとんどの方々は銀行というものについての関心を持っておられません。自分の預金が危なくなるのでしたら関心を持たれるのですけれども、絶対それが大丈夫なものですから、銀行なんかどうなっても知ったこっちゃない。ちょっと給料は高いし、お高くとまっているし、場合によってはつぶれるのもいいんじゃないのというような考え方は殊に都会の給料生活者の間には多うございます。  他方で、地方では中小企業の方々は実はもう支店長さんの靴でも磨きたいようなそういう心理でございますから、一言でも悪口を言えばもう命にかかわる、死ぬときまでに一遍言いたいといったような心理でございますから、自分たちが困っているということをうっかり言えない。訴えて出るところがないんです。わずかにお互いのように、地方と接触のある者が政治の場にこれはどうも大変になっているようだというようなことで初めて借り手の立場というのが言えるんで、これはどうしてもマスコミュニケーションにも出てまいりません。ですから、銀行が健全であることについての国民的な関心というのは実際は高くございませんというのがよくも悪くも現状だと思っております。  そこで、先ほどおっしゃいましたように、中央の銀行に仮に事が起こりましたときに、それは今東京でもちょっとありかかったことがございますけれども、例えば長銀の話が出ますと、そうすると、この次はどうだ、どこへ行くんだろうというようなことは、殊に直接被害を受けない立場からいいますと大変に興味のある話題でございますし、それはまた、そういう風説が流布されますと実際事実になることがないとは言えない。またその風説を利用する人も当然おるように思います。先般の株式市場などには明らかにそういうことがあったと思います、銀行株につきまして。そういうことから来る一種の風説あるいは伝播と申しますか伝染と申しますか、そういう「一犬虚を吠ゆれば万犬実を伝う」というようなことは実際にしばしば起こることでございます。そういう危険が一つ。  それから、そういうことを海外が見ておりますから、日本の信用についての非常な疑いを持つ。それは具体的にはジャパン・プレミアムというような形で海外から外貨がとれなくなる。これは昨年、ことしも、現に今もあることでございます。そこからまたデリバティブズというようなこともいろんなふうに言われる。これはアメリカでこの間ヘッジファンドの失敗がございまして、お互いが見ておりますけれども。  そういうことに加えまして、大銀行ですから、そんなに国民関係はないといいましても大きな銀行は比較的大きな企業に金を貸しておりますので、その金が出なくなりますと企業の倒産、それは下請に当然影響するというようなことは申し上げるまでもないことでございますから、そういうことで、銀行がつぶれても自分に関係ないというわけにはなかなかまいらない。  それは、政府関係の機関も一生懸命保証したり貸し出しをしたりいたしますけれども、市場経済が基本の我が国では政府関係機関がやられることにはもう限りがございます。やはり市場の金融機関が血液が正常に流れていかなければ日本の経済活動というものは難しい。それがやがては一人一人の生活に関係してくる問題だというふうに考えております。
  56. 岩城光英

    ○岩城光英君 今、国民は、公的な資金あるいは税金といったものにつきまして非常にその使われ方に敏感になってきております。それだけに納得する説明が必要でありまして、そういったことによって初めてコンセンサスを得ることができるものと思っておりますので、今後とも創意工夫を重ねていただければと思っております。  次に、発議者の先生方に質問させていただきます。  きのうも石川先生から御指摘があったことだとは思うんですが、金融再生関連法案の共同修正案についての評価でございますけれども先ほど申し上げましたNHKの世論調査で、評価するが三三・七%、評価しないが三三・六%、わからない、無回答が三二・七%という数字が出ております。ほぼ三等分に分かれたわけでありますが、このNHKの世論調査につきましてはどのようにお考えになりますでしょうか。
  57. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) NHKの世論調査ということでございまして、私としてはちょっと懐かしく思いました。そういえば、かつて選挙班の事務局長というようなこともやって、世論調査を随分取り扱いました。今選挙をやる立場になって、また世論調査について非常に関心を持っております。  私は専門家ではございませんが、まず決定率といいますか態度を決めた人の数、割合、これが大事で、選挙の場合は非常に決定率が低いにもかかわらず大きく優劣が報道されるという問題がございます。それともう一つは、やはり設問の仕方によって随分違うと思うんです。  ですから、古巣のNHKがどのような設問をしたか私はわかりませんが、この世論調査の評価に対する評価を申し上げますと、まず、実務者ではこの金融再生法案については九月半ばに合意していたわけです。それから、党首会談までやりながら合意に反する政府・自民党の幹部の発言が相次ぎまして、前進と後退を繰り返した。残念ながら、中身の問題ではなく折衝がごたごたした印象を与えたのではないかと思います。このことが世論調査の評価に残念ながらつながったのではないかという感じがいたします。  私としては、この金融再生法案に対する考え方、評価についてはもっともっと評価していただきたい。きのうも申し上げましたが、まず政治主導で行われたこと、そしてブリッジバンク法案にはない危機に対応できる本格的、包括的なスキームを用意したこと、さらに金融行政の一元化へ向かって大きく前進したこと。もう一つ、きのうは申し上げませんでしたが、不透明な長銀処理策を事実上撤回させることができて公正な特別公的管理銀行という処理の仕方を準備できたこと、少なくとも四点において私はもっと高く評価をしていただきたいと思います。
  58. 岩城光英

    ○岩城光英君 もっと高く評価してほしいということでありますが、この世論調査でなく、例えば経済界とか、それからもっと地方の銀行あるいは信用金庫、信用組合、こういったところの評価についてはどのようだとお思いでしょうか。
  59. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) ちょっとお尋ねの趣旨がよくわからないんですが、そういった中小金融機関の方々の反応ですか。
  60. 岩城光英

    ○岩城光英君 はい。反応というか評価ですね、この修正案に対する。
  61. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) 中小金融機関の方の反応はダイレクトに聞いたことはございません。しかし、メディア等で拝見する限りにおいて、とにかくこの金融危機に際してしっかりとした危機管理策を立ててほしいという声はよく目にいたしましたので、私はそれに対する回答になっているのではないかと思います。  それから、海外のメディアの評価も決して低くありません。フィナンシャル・タイムズとかその他いっぱい、挙げれば切りがないですが、高く評価をしております。
  62. 岩城光英

    ○岩城光英君 時間の関係で次の質問に移らせていただきます。  国民公的資金導入等を理解してもらうためには、その前提として、これも昨日から言われていたことでありますけれども銀行の自己改革、これに積極的に取り組む姿勢が求められているということは言うまでもないことだと思っております。  例えば、金融機関責任のあり方について、今後具体的に取り組むこととなっておりますが、厳しい対応が不可欠だと思っておりますけれども、しかし、それにより貸し渋りなどの融資の選別が強化されることのないよう配慮すべきだとも思います。  また、金融機関の公的性格から見ましても情報公開の徹底が必要でありますが、しかしその内容によっては、先ほどもちょっと大臣からも触れられましたけれども、いたずらに混乱を招き、不測の事態になることも予想されますので、その基準も必要だと思います。  そうした中で、金融機関リストラを強化する、例えば製造業と比べて二〇%以上高い給料の是正の問題、あるいは頭取経験者に引き続き顧問という名目で高い報酬を払っていることの是非、そして多店舗型経営、いわゆる店舗の整理とそれに伴う人員の整理、こういったリストラを強化していくことが必要ではないか、こんなふうに思っておりますが、時間の関係で取りまとめて申し上げましたけれども、これらについて御所見を伺いたいと存じます。
  63. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これはむしろ金融監督庁からお答えがある方がいいのかと思いますが、ともかく、かつて世界のすべてのナンバーワンからテンまで独占していたようないわば大変に調子のいい時代から、今日のように厳しくいろいろなことを問われるようになった。これはやはりその方々も大変深く反省をしておられるように思います。思いも寄らない、世の中から、今まで黙っておっただけに、気がつかなかったようなことをさんざん言われる。それは関係の方々、皆さんかなり深刻に考えておられるようでございますし、またそうでなければ困ると思っております。
  64. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、休憩いたします。    午前十一時二十九分休憩      ―――――・―――――    午後二時十九分開会
  65. 坂野重信

    委員長坂野重信君) ただいまから金融問題及び経済活性化に関する特別委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、角田義一君が委員辞任され、その補欠として高嶋良充君が選任されました。     ―――――――――――――
  66. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 債権管理回収業に関する特別措置法案外十」案を議題とし、休憩前に引き続き、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。
  67. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 私は、消費者、納税者の立場から、これから先のことに重点を置きまして大蔵大臣に伺いたいと思います。  今回の金融問題全般につきまして、消費者、納税者である国民への説明が不十分なのではないかというふうに思います。私も議員になったばかりですけれども、私の周囲の人に聞きましても、今回の金融問題については何が問題で何が起こっているのかさっぱりわからない、そういう声が多いわけです。特に、公的資金、税金を使うのですから、そういう部分については特に納得がいくような十分な説明が必要だと思います。  まず、今回の金融問題につきまして、アカウンタビリティー、説明責任が果たされていないのではないかというふうに思いますが、その点については、大蔵大臣、どうお考えでしょうか。
  68. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 問題が大変複雑でございますので、国民の皆さんにわかっていただくというのは確かに相当の努力をいたさなければならないところでございます。  ただ、今のお尋ねの関連で申しますと、消費者とおっしゃいましたが、預金者である国民は自分の預金が一〇〇%保護されているということを知っておられますから、そういう立場からこの問題について自然に関心が少ない。都会等の勤労者の方々はそういう意味で御自分の問題としては幸いにして心配をされない。しかし、地方の中小企業の方々は銀行から金を借りて仕事をしていらっしゃいますから、そういう意味では関心を持っておられる、そういう違いがあると思います。  ですから、そういうことを知りながら国民にどのようにして関心を持っていただくかということになりますと、この問題の持っている国の経済における意義とかあるいは世界経済との関係とか、どうしてもそういうことになってまいりますので、多少難しいことは覚悟の上でそういう解明をしなければならないというふうに思っております。
  69. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 国民が関心が余りないというような今おっしゃり方だったと思うんですけれども、関心を持とうと思っても、それだけの情報、材料が提供されていないということが私は問題なのではないかというふうに思っています。  そういう意味では、やはり国民の納得を得ようとする政府としての姿勢、その表現の方法をどういうふうにしたらわかりやすく説明ができるか。また、説明するためのメディア、媒体の選び方とか、繰り返し頻度を多くするとか、もっとわかってもらうための努力が政府としても一層必要なのではないかと思うんですけれども
  70. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、仰せのとおりと思っております。
  71. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 次に、そのもとにもなりますディスクロージャー、情報開示について伺いたいと思います。  専門家とかマーケット向けにどこまで情報を開示するかという問題もありますが、私が伺いたいのは、消費者である国民が情報を判断できるようにするためには第三者の評価というものが必要なのではないか。そのためには、格付会社というのも国際的には幾つかございますけれども、いろいろな国民がわかるような評価をして提示するための評価機関のようなものが日本でも必要なのではないかと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  72. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのとおりと思いますけれども、まずその前に、実は金融機関自身が自分に関する情報をもっと明らかにしなければならないんだと私は思います。  従来、いわゆる護送船団方式のもとでは、どうやっても結果は同じというのが護送船団の効果でございますから、それは努力を怠りがちでもあるし、自分についてのパブリシティーもしなくて済む、そういう仕組みになっております。それはやっぱりいけないので、競争の世界になって、自分のところはよくやっているんだとPRをすることが自分の利益になることになりませんと、なかなか情報というものは出てこない。これからそういうふうに好むと好まざるとにかかわらずなってまいります点が一つ。  それからもう一つは、金融監督庁が初めて一つのかなり厳しい決まったスタンダードでマネーセンターバンクスなどの検査をしておられますから、そうしますと、今度は一つの基準に基づいて、おのおのが自分の勝手の基準ではなくて、そういう評価がどうしても結果としては生まれてくる、明らかに生まれてまいりますので、そこからまたおのおのが自分のために情報を開示しなければならない。開示された情報はばらばらのスタンダードではなくて、金融監督庁検査官の持っておられるマニュアルぐらいな、そういう一つの基準の上での情報開示になりましたら、そうしたら情報というものが信じられるものになる、その段階が大事だと思うのでございます。  おっしゃいますように、そういうものをこなして、そして何と申しますか、業としての情報提供、それも大変私は大事なことだと思っておりますけれども、その前に今まさに進行しつつある条件が早く整備されなければならないと思っております。
  73. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今おっしゃいました金融監督庁一つの基準をということですけれども、今金融監督庁ができていろいろやっていますけれども、そのいろいろな速度がやはり消費者、国民の目から見ると遅いわけですね。ですから、その一つの基準ができるということでもそれは早急にやっていただかなければいけないというふうに思います。  特に、これからビッグバンによって金融商品もますます多くなってまいります。そうすると、消費者の方が判断をするためのやはりそこに比較評価ができるような基準が必要なのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  74. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 金融監督庁仕事を始められたのはたしか六月二十二日でございますから、遅いと私は申すのはちょっと酷だと思います、十九行やっておられるんですから。非常に一生懸命やっておられるし、人員も実は多くはない。しかし、問もなくそういう情報のもとができるということになると思います。  それで、商品との関係で申しますとおっしゃるとおりだと思うのですが、私は銀行の優劣ができてまいりますと商品にも優劣ができてくると思います。ローリスク・ローリターンとかハイリスク・ハイリターンとか、いろいろできてまいりますから、それは商品が異なることによって消費者としては選択の自由が与えられる。ただ、おっしゃいますように、どこの商品がいいとか悪いとか、また業としてのそういう情報の評価があることも大事だと思います。
  75. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 それから、これは金融のことだけにとどまりませんけれども、アメリカなどでは政府の政策に対する評価ということがいろいろな形で行われるようになっていると思います。日本でもこれから二十一世紀に向けて、もっと政府がやることに対して国民が評価する、そういう仕組みが必要なのではないかと思うのです。先日来報道を見ていますと、国の行政機関などの政令などにつきまして規制にかかわるものについて国民の意見を聞くパブリックコメント制度というのを総務庁の方で考えていると聞きました。これも一つだと思うのですけれども、政策評価の機能というのがほとんど日本では今生かされていないのではないか、そういう仕組みが必要なのではないかと思いますけれども、そういう点についてはいかがでしょうか。
  76. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) お尋ねを十分理解していないかもしれませんが、日本のマスコミュニケーションというのは政府に対してたっぷり批判的だと私は思っておりますが、それは国民に情報を提供することになっていないでしょうか。
  77. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 マスコミというのではなくて、それこそ今政府と市民、GOとNGOがパートナーシップをとってやるというのはもう国際的な流れだというふうに思うのですけれども、マスコミというのではなくて一般の国民政府がとろうとしている政策に対してその評価をするということです。ですから、このパブリックコメント制で言われておりますのも、政府が例えば規制をする案を考える、あるいはその規制の見直しをするときにその情報をいろいろな形で国民に提示しまして、それについて国民の意見を聞いてそのことを政策に反映するということだと思うのですけれども、そういうような形のことがこれから一層必要になるのではないかという質問なのですが。
  78. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) どういう形をとるかがちょっと急にわかりかねますけれども、そういう仕組みは、そういうコミュニケーションは少なくとも必要だと、それは確かです。
  79. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 私が申し上げたかったのは、これまでは、お上と言うと変ですけれども政府がみんな決められて、そのことに国民は黙って従っていく、そういう時代ではないのではないかと思うのです。ですから、今回のようないろいろ国民が政治に対して不信を持っているのも、やはりそこが一方通行であることが問題なのではないかと思います。  そういう意味では、金融政策ももちろんですけれども、政策について、これをこういうふうにしようと思っている、あるいはここをこう変えようと思っているということが、私たち国民の暮らしに特に密接にかかわりあるものにつきましては必ず国民の意見がある形で反映されるように、こういうふうにしようと思っているけれどもこれについてはどうだというような仕組みがいろいろな面で必要なのではないかというふうに申し上げているのです。いかがでしょうか。
  80. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) さように思います。
  81. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今回の金融再生法案は、銀行に自己責任、自助努力を促すものだというふうに考えているのですが、それに対する銀行業界からの声がさっぱり聞こえてこない。これはどういうことなのかという疑問を持ちます。  このことについては、金融監督庁の管轄だとは思うんですけれども、先日来の質疑を聞いておりまして、政府委員からの答弁ではとても私たちが期待するような答えはどうも返ってこないのではないかと思いますので、これは政治家としての大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。
  82. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当然のことですけれども銀行経営者にとっては環境は非常に激変をしておりまして、将来も不安ですけれども、余りに環境が激変しておりますので何となく黙っている、物を言うことはちょっと差しさわりがあるということから、多少消極的なといいますか、かなりこの現状には、おびえているという言葉を使ってはいけませんのでどう申し上げたらいいでしょうか、非常に消極的な雰囲気でございます。  これは、このままでも私はいけないと思っておりますけれども、少なくともかなり大きな衝撃を受けておるということがよろしいでしょうか、そういう感じがしております。
  83. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 消極的という表現をなさいましたけれども、これだけ国としての大きな問題で、銀行業界がいろいろバブルの時代にやってきたことのツケが国民の方に回ってこようとしているという言い方もできると思いますので、そういう意味ではやはり消極的とか大きな変化の中で戸惑っているということでは私は済まない問題なのではないか、もっと銀行業界としての責任のあり方、そのほかについて気概がある発言が聞こえてくるべきだというふうに思いますが、重ねて、大蔵大臣はどのようにすれば銀行業界からのそういう声が聞こえてくるようになると思われますでしょうか。
  84. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そういう反省感がありますから非常に今発言がない、そういう感じを私は持っているんです。
  85. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 その反省感があればそれなりの反省の言葉が伝わらないと、反省をしているのかしていないのか国民の側はわからないということだというふうに思います。これは本当は全銀協の会長そのほか銀行業界に向かって言わなければいけないことかもしれませんが、今政治家としての大蔵大臣の御意見を伺ったわけです。これについてはぜひ銀行業界からのしっかりした意見、物言いが聞こえてくるべきだというふうに私は思っております。  次に、地域金融のことについて伺いたいと思うんですが、大きな銀行の問題については今法案審議したりいろいろ検討しておりますけれども、各地域で信用金庫、信用組合といったような協同組織系の金融機関が赤字の中小零細企業などに資金を提供しまして、大銀行がとらないリスクを負っているという現状がございますね。  中小零細企業の七割ぐらいが赤字だというふうにも聞いておりますけれども、そういう中で貸し渋り対策の一つとしまして、こうした地域の中でそういうリスクをとって仕事をしている金融機関支援するということを考えてもいいのではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  86. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 考えられる施策として、信用補完制度というのがやはり一番有効であると思いますし、そのことはもう既に政府としてもかなり新しい金も用意いたしましていたしております。
  87. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 けさの朝刊でも、東商のアンケートで、資金が一億円以下の中小企業でもう今の貸し渋りの状況で限界だというところが一七%あるという記事が出ておりました。  政府としてやることはやっているとおっしゃるんですけれども、なかなか地域の現状としては、このままではやはり、やることをやっていると言われてもそれがちゃんと形になっていない、きちんと貸し渋りを防ぐような形にはなっていないということがあるのではないかと思いますが、さらにそのことについて有効な手だてがもしありましたらお答えいただきたいと思います。
  88. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 経営リストラをやりなさいということは経営内容をよくしなさいということでございますから、そういたしますと、直接の反応は、なるべく貸し金を回収しよう、貸し渋りになる、これは論理として避けられないとごろでございます。そんなことをしなくてもいいからもっと貸しなさい、余り経営のことは今言わないからといろんなら別ですが、それは厳しくやれと言えば勢い貸し渋りになります。そこで、それならば信用補完をしてあげますと、そうしますとある程度危険が回避されますから、それが一番現実的にはいい方法で、これが一番地域的にはというか、そういう中小企業の方々なんかには一番喜ばれる、歓迎される方法のようでございます。
  89. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今、地方の時代、地方分権ということも言われておりますけれども、その地域の中では、金融機関にしましても、体力の弱いというのでしょうか、急に自己資本をふやそうと思ってもできないようなそういう仕組みの地域の金融機関もあるわけです。そうした機関が先日来お話のある血液としての資金をうまく回しながらやっていくことと、今、日本全体あるいは世界全体で流れとなっていますビックバンとの関係については、ここはなかなか難しい問題があるのではないかと思うんですが、その地方の時代の中での金融機関とビッグバンが展開されていくこと、そのことについては宮澤大蔵大臣はどのようにお考えになっているでしょうか。
  90. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) その点は、地方銀行との関係は私は余り心配しておりません。  ただ、お尋ねがあって、これは私が個人として感じることでございますけれども、地方の金融機関のかなりの方々がいわゆる八%銀行を志向しているという問題がございます。これは、だれもかれも国際的な業務をしなければならないわけではございませんで、かなりステータスシンボルでやられたところがあって、今としてはもう実益もないし競争も激しいわけでございますから、その点の競争力を、その点の力をむしろ国内の金融に移してもらうことができますと、そうしますと八%でなくて済みますので、そこから貸し出し余力が出てくるということは確かにございます。  そういう行政指導をなさるかどうか、これは私の所管でございませんから申し上げられませんけれども、傾向としては、地方の銀行でももはや国際競争力というのは非常に厳しゅうございますから、そこは分けて考えるような動きがだんだん出てくるのではないか。そのことに期待するとともに、先ほども申しました信用補完、あるいはどうしても資本が足りないわけでございますから資本導入、こういったようなことが効果があるように思います。
  91. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 これから中央から地方へいろいろなことが動いていく、その中でビッグバン、競争といいますとどうしても強いところが一層強くなっていくというところがあると思いますので、これは金融機関と消費者ということもございますし、中央と地方、大銀行と小さな銀行ということもあると思うんですけれども、ビッグバンが展開される中でこれからやはり地域のいろいろな金融の問題についていろいろな配慮がなされるべきではないかというふうに私は考えております。  次に、融資のあり方についてちょっと伺いたいと思うんですけれども、バブルを招きましたのは、これまで不動産担保融資に傾斜してきた、不動産を担保にとっての融資、そういう大型のものに傾斜してきたことがバブルを招いたということにもなると思います。その反省ということも踏まえまして、これからの融資のあり方についてはどういうふうにあるべきだとお考えになるでしょうか。
  92. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) これも私の所管のことでありませんで、一般の銀行についての監督、所管は金融監督庁でございますから、そういうことを前提にしておまえはどう思うかとお尋ねとして申し上げますけれども、やはりなかなか一言で申し上げられませんが、各金融機関が自分の得意な分野を持つということが一つ大事なことであろうと思います。それで、消費者の希望されるそういう金融商品を提供する、金融サービスを提供することが一つだろうと思います。  それからもう一つ、今おっしゃったこととの関連で申しますと、金を貸すのに土地を担保にして、たっぷり担保をとって金を動かすというだけなら、それは時計をとって質屋が金を貸すのと余り違いませんので、その企業が今後社会的に有用なものとして伸びていく、それを伸ばしてやろうというようなそういう目と、それから、そういう熱意をやっぱり金融側が持つということが社会的に大事なことではないかというふうに私は感じております。
  93. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 企業につきましてももちろんそうですけれども、そういう企業だけではなくて、これから、企業ではなくて起業をしようとする個人ですとか、特に女性の場合などは、なかなか融資を受けようと思いましても、夫の職業が何だとかその了解が得られているかとか、非常に女性で何か業を起こそうとする人たちが融資を受けられないで困っているという現状がございます。そういう意味では、やはり大きな担保をとって安全なところだけ貸すというのではなくて、今おっしゃいましたお話の延長線上として、そういう個人や女性に対してもこれからは融資というのがもっとスムーズに行われるような必要があるのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  94. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、それは非常に強く感じている一人でございますけれども衆議院委員会における御議論も、また当委員会も、大変に債権の分類を厳しくしろ、これはそれなりに理由のあることなのですが、分類と引き当てを厳しくしろ、殊に第Ⅱ分類においてそうであるという、それはそちらから見ればそのとおりなのですが、銀行の実情を見ますと、例えばベンチャービジネスなんていうのは長い取引はございません。きのうかおととい来たんですから大した担保もない、これは分類すれば必ずだめな方に分類いたします。銀行としてはきっとそうします。そういう融資はとりたくない。  ですから、ベンチャービジネスの立場から見ますと、何と申しますか、今までの銀行的スタンダードでいえば必ず落第になりますから、そうならないようにひとつやっぱりそこは考えることが大事なので、どういうふうにしたらいいか。ただ、これは銀行検査の問題になると思うのでございますが、銀行検査のときに外形的なことが満足されているかどうかと同時に、貸している企業の将来というものを、なかなかそこまで無理かもしれませんが、しかしそういうことまでいかないとなかなかベンチャービジネスなんかに金が回らない、女性がおやりになることにも金が回らないという、そこの何か一つかぎが要るように私は思っています。
  95. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 そういう意味では、おっしゃっていることと私も同感する部分はかなりあるんですけれども、ベンチャーというだけではなくて、これから少子・高齢社会の中で介護の問題、育児の問題を含めまして市民がいろいろ、NPOが活動していかないと成り立たない部分がたくさんありますね。ベンチャーということだけではなくて、NPOが福祉のことで何か業を起こそう、あるいは何かをしようというとき、ここへもやはり今のスタンダードからするとなかなかお金は回ってこないわけです。  このことはもう本当に早急にやらないと、幾ら仕組みだけをつくっても必要な手だてがとれないということにもなりかねませんので、重ねて伺いたいというふうに思います。
  96. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それも今実は申し上げようとしていたことの一つで、まさにNPOなんていうものの社会的意義はもちろんですが認めて、その上で銀行の立場からも決して危険な貸し出してはないと、何かそういう信用補完になるんでしょうか、何かを制度としても考える必要があるのかもしれませんね。信用保証協会といったようなものにNPOを今すぐに保証しろといっても無理があるかもしれないのですが、何かそういうやっぱりだれかが入って保証をする、証明をするといったような仕組みを一つ入れましたらうまくいくかもしれないと。
  97. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 私もそういうことが必要だと思います。  例えば途上国などでも、そこで女性とか市民が何かをしようとしたときに、日本政府がやるのがいいかどうかわかりませんけれども政府とか国際機関とかが信用を保証する形で何も担保になるものを持っていない市民に対して貸し出す、そのことで業を起こしてその人も自立てきるし社会のためになるいろいろな活動もできる、そういうことをとっている国は途上国などにもたくさんあるわけです。ですから、この日本で私はできないはずはないというふうに思います。  ですから、先ほどから申し上げているように、これまでの不動産などの大きな担保をとって銀行の方がその担保の上に乗って安心して殿様商売をするというのではなくて、多少リスクもあるかもしれませんけれども、これから個人とかNPOとかがすることに対してもっと社会的責任としてある程度やっていくということが必要なのではないか。ただ、そこは社会的責任といってもそれは業をなさなきゃいけないわけですから、今おっしゃったように何か保証する仕組みを間につくる、そのつくるということをぜひ早くやっていただきたいと思うんですけれども、今おっしゃったアイデアだけではなくて、これからそれをやっていこうというお気持ちがあれば聞かせていただきたいと思います。
  98. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 政府機関が何かせよというのでございますと、これはすぐにでも考えようがあると思いますけれども、民間の金融機関、信用金庫とかそういうことになっていきますと、やはり私企業ということでございますから、一つは哲学の問題として貸し出し総額のある部分はそういう社会的な有用な活動に対して一定部分は分けておこうというような物の考え方ができますと、そうしますと信用補完があれば自然にそこへ流れる、何もないとやっぱりいけませんので。  そういうことはやはり民間の、小さいといいますか、地方の金融機関が一致して考えるようになるというのはそんなに遠くないかもしれませんね。金融機関の社会的な使命というものはそんなにわからせるのに手間のかかることではないと思いますから、みんなが一定の枠だけはそっちへ留保しておこうというような信用補完があれば、そういうことは生まれてくる機運は私はあるのではないかなと思います。
  99. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 これはやはり国民のサイド、NPOのサイドからもそういう声を上げていく必要があるかとは思いますけれども政府の方としても、そういう形でこれまでの仕組みとは違うスタンダードでもって有用なものにお金が回るような信用保証の仕組みですとか、今おっしゃったような一定割合のものはそういうふうに回るようにとかいうことをぜひお考えいただきたいというふうに思います。  最後にもう一点だけ伺いますけれども、二〇〇一年の四月からペイオフが実施されるわけです。そのときになって、後は自己責任だと言われましても一般の国民は困ってしまうと思います。そのためには、それまでの間に最初にも申し上げましたような十分な説明と情報の提供、それから判断できるための力をつける消費者教育、そういったことがあわせて必要なのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  100. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように考えております。そういうものがそろいまして消費者が十分でなくてもかなりの程度の知識を持って自分が防衛できる、そういうことがあって初めてペイオフということが意味を持つわけでございますから、そういうことはあれこれいたさなければならないと思います。またそういうふうに向かっていくでございましょう。各金融機関も自分のところへお客さんを集めたいのはもう当然でございますから、そういう意味でのディスクロージャーもするようになると思います。そういうことは確かに大事な前提と思います。ただ、二〇〇一年は私は動かさない方がいいというふうに思っております。
  101. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 今、金融界全体の中でビッグバン、これも規制緩和の一つだと思いますけれども、そういう規制緩和がされていきますと、もちろん競争原理、市場原理でよく働いていく部分もあるとは思いますが、国民、市民のサイドというのは、情報量からしましても、今までの中でそういう力を培ってこなかった部分もあると思うんですけれども、やはり同列にはなかなかなり得ない。競争原理というのは両方が同じ力を持っていて初めていい仕組みで流れていくのだと思いますので、競争原理を働かせる一方で必ず金融の面でも私はセーフティーネットというのが国民のためには必要なのではないか。そのためには、最初から申し上げている十分な説明、情報それからそのための力を蓄えること、そういうことがセーフティーネットになり得るのではないかと思っています。  今、各省庁を見ましても、業界を保護する省庁というのは、大蔵省にしましても通産省にしましても非常に多くありますが、消費者を守る省庁というのがきちんと私は位置づけられていないように思います。経済企画庁が一部やっていらっしゃいますが、あそこも省庁の力の差からいきますとなかなか、いろいろ集めてホッチキスだなどという悪口を言う人もいるぐらいの感じでございますので、これから行革の流れの中も含めて、そういうビッグバンを含めた競争原理、規制緩和の中での消費者を守る、あるいは消費者の立場に立っていろいろ行政をしていく、そういう位置づけが行政の中でもぜひ必要だと思いますが、最後にその点はいかがでしょうか。
  102. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは同感いたします。  つまり、プロダクトライアビリティー、製造物責任とかあるいは環境とかいろいろな基準の設定だとか消費者のためのいろいろな情報、あるいは保護と申しますか、安全確保のための立法、そういうことは大変必要だと思います。殊にディレギュレーションというのは、役人は業界に干渉するな、消費者が選択するんだということでございますから、消費者にも余り役人に頼っていただいては困るという面がこれは当然なければなりません。それをやりますと役人が今度業界を抑えにかかりますから、ですからそれはいけないのでございますが、一般の消費者に対しての情報なり教育なりあるいは安全等々の基準等々、それは十分満たさないと、消費者にあなたの責任ですよとお願いするだけのものはつくっておかないといけない。  同感いたします。
  103. 小宮山洋子

    小宮山洋子君 終わります。(拍手)
  104. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 関連質疑を許します。小川敏夫君。
  105. 小川敏夫

    小川敏夫君 私、参議院議員になりまして本日が初めての質問でございますので、ふなれでございまして、言葉の使い方等、失礼な面がありましたら御容赦ください。  大蔵大臣に最初にお話ししたいんですが、大蔵大臣の今の危機的な状況にある金融システムを健全化したいという御熱意はまことにもっともでございまして、私も何とかこの金融システムを健全化したいという思いでいっぱいでございます。  ただ、健全化ということを考えます場合、普通ですと、健全化しなくてはならないようなそういう体質を招いたその原因を初めに除去することが本来の健全化であるというふうに思っております。ですから、今、金融システムに信用補完をしなくてはならない、あるいは公的資金資本注入をしなければならないという大蔵大臣の思いをお伺いしましたが、健全化というためには、資本注入をするということを先に考えるよりも、なぜ資本注入をしなくてはならないことになったのか、その原因を明らかにして、そしてその原因に対処する、そのことの方が本来の健全化の意味ではないかというふうに思います。  ですから、資本注入イコール健全化である、つまり健全化というのは、何かあたかも公的資金資本注入することが健全化であるようにちょっとひとり歩きしているような面があると思うんですが、私はそういう意味大蔵大臣にお伺いしたいのは、今のこのような公的資金資本注入をしなければならないようになったその原因がまず一体どこにあるのかという御認識をお伺いしたいのでございます。
  106. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それはもう端的に申しまして、一九八五年プラザ合意以後、ここまで十何年の間に日本経済が非常に膨張し、またバブルがはじけるという、その間における金融機関の貸し出しの態度、不動産等々、あるいはノンバンクを設けてといったような、それにあることはもちろん問題がありません、議論の余地がないと思います。  しかし、そこで問題は、今不良債権と言われて処理されたもの等々は、当時は優良債権だとみんなが思っておったわけでございます、それだけの総体の金額と日本経済とがバランスしておったわけでございますから。その不良債権をどんどん切っていきますと、日本経済には、当時の資金量とはもうはるかに与えられるものが小さくなってまいります。  日本経済はそれに従って一部は土地や家屋の値段が下がることによってアジャストしましたけれども、生産設備とかなんとかいうものはそんなに急にアジャストできませんから、不良債権処理された分だけ日本経済の資金不足が生じておるというのがこれが事実でございますから、そういう貸し出し態度をとった金融機関はあらゆる責任を負わなければなりませんが、それと同時に、今のアンバランス、それが貸し渋りということになると思いますが、資本不足、資金不足はどうかして埋めなければならない。  どこから金を持ってくるかということになって、外国から持ってくるといっても限りがございますから、やはりこれは日本の自分の中で残念ながら片づけなければならない。ただ、その金はしばしば公的な金であるかもしれませんがへこれは渡しっ切りにするつもりはございません。金融機関がやがて正常になればそれは返してもらわなきゃならない金であるとは思っております。
  107. 小川敏夫

    小川敏夫君 今の状態を招いた現象面としての説明はよくわかりましたが、ただ、今日の危機的状況を招いた中で、例えば大蔵大臣が午前中にお話しされたように、護送船団方式が間違いであって、情報開示をもっと徹底しなければならないというような御議論もありました。ですから、やはり銀行の情報開示が不徹底であった、あるいはこれまでの不良債権の引き当て、償却等の処理が不十分で棚上げにされてきた、このような原因もあって今のような現象面の状態が起きたのではないでしょうか。
  108. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 長年の経過の中で私は確かにそうだと思います。つまり、銀行としては、大変に土地が下がり始めた、不動産が不況であるという状況の中で、やがてそれはとまるだろう、いっかまた上がり始めるということをずっと考え続けていた、そういう形跡がございます。今でもまだ何となくそういう期待があるのではないか。  それで、かつてアメリカのこういう状況処理しました一人は今の連銀議長のグリーンスパンでございますけれども、グリーンスパンが私に申しますのに、自分の経験では、こういう状況の中で不動産を処分するというときに、こんな安いはずはない、こんなに安くやったら国が損するといったようなときでもあえて自分はやったことがある。後になって買った人はぼろもうけをした。しかし、それで初めて底値ができて、初めてマーケットができたということが自分の経験の中であって、日本の場合にも、そのままいいかどうかわからないけれども、そういうことはやっぱり考える必要があるということを言ったことがございまして、何となくまだこんなに安売りはできない、もう少しよくなるんじゃないかという部分が十年近い間見ておりますと金融機関の側にあったことはもう確かと思います。
  109. 小川敏夫

    小川敏夫君 今のお話の御趣旨として、こういうふうに聞いてよろしいんでしょうか。金融システムなり銀行経営を健全化するためには情報開示は当然必要である、それから不良債権の適正な処理も当然必要であるということでよろしいのでございましょうか。  あと、銀行の健全化のためには、より経営なり組織の合理化を進める、あるいは経営者責任をはっきりさせる、こういったことも銀行の健全化のためには必要であると私は考えておりますが、大蔵大臣はいかがでしょうか。
  110. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) そのように考えております。
  111. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうすると、私が思うには、銀行の健全化をするためには、資本注入をするということよりも、まず先に、その健全化のために必要な、体質改善のために必要な情報開示とか不良債権の適正な処理、合理化、経営責任の明確化、こういったものを先にさせて、同じ過ちを繰り返させないという状態をつくり上げてから公的資金を投入するのが本来の筋ではないかと思うんですが、大蔵大臣の見解はいかがでしょうか。
  112. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほど小宮山委員にも申し上げましたように、銀行側の中にそういう反省がかなりもう深刻に生まれておりますし、銀行検査がきつくなりますと自然にそうせざるを得ないということになってまいる。それはもう今なりつつあるというふうに私は思っているのでございますが、と同時に、しかし資金投入をこれもおくれて行うわけにはいかないほど緊急性がございますので、また投入に際して条件をつけるということももう一つございまして、両方相まってというふうに考えております。
  113. 小川敏夫

    小川敏夫君 そこのところ私の認識とちょっと異なるのでございますが、私の考えとしましては、やはり情報開示等、先ほど申し述べた健全化のために必要な体質改善というものがただ単に銀行経営者の反省だけでは十分とは言えない状態ではないか。  むしろ、そのことをよりはっきりと、銀行経営者のやろうという意思とはまた離れてそういうことをしなければならないんだというようなルールを法律なり規則なり確立するか、あるいはそこまでが難しいのであれば、やはり資本投入をするに当たってはそういう健全化の経営体質の具体的な方法が実現されなければならないと思っておるんです。そこら辺の経営健全化のための情報開示等の体質改善の具体的な方策に関しては、銀行経営者の反省だけでは私は足らないと思うんですが、くどいようですが、具体的な方法はいかがでございましょうか。
  114. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 御審議中の法律案にもそういうことはたくさん出てまいりますし、また廃案になりました政府の案でもそういうことをたくさん条件としてつけております。これは、今回の一連のこういう出来事に対する私どもの反省もあるわけでございますけれども、かなり厳しくしておりますので、金融機関の人々はかなりそれはきつく感じておりまして、かなり雰囲気は違っております。  ただ、私なんかが一つ思っておりますのは、それは絶対に必要なことなのですが、その結果がすぐに大きな貸し渋りにつながらないようなことも政策的にはある程度考えておかなきゃいけないという点をお願い申し上げているわけでございます。
  115. 小川敏夫

    小川敏夫君 今のところは余り押し問答してもと思いますが、大蔵大臣のお気持ちの中で、とにかく信用補完をしてでも銀行破綻を防止したいというお気持ちをお伺いしました。  現在大きな問題となっております長銀でございますが、この長銀につきましても信用補完、すなわち公的資金による資本注入だと思うんですが、これをなされる考えは今の時点でございますのでしょうか。
  116. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 当初、六月、七月、それから八月初めごろでございますか、長銀がもう、理由はいろいろございましたが、風評が高まって自立は困難であると考え、そして経営者責任を負い、また海外の活動もやめる、過去のボーナスも取り返すというようなことでリストラ案をつくりまして、住友信託銀行合併、提携を相談して、そしてシナリオを添えて金融監督庁支援を求めてこられたその段階では、私どもはそれはいい解決であろうと思っておりました。長銀の自己保存ではなくて、長銀というものは現実になくなるということを覚悟での話でございますから、破綻した場合の内外への反響を考えますと、これは賢明な方策であろうというふうに考えましたし、またそのために必要なら公的な支援をする価値がある、こういうふうな判断をいたしたわけでございます。  それが当初の段階でございますが、しかし、今度の金融関連法案がまず衆議院で御審議が始まりましたときに、長銀合併計画、それに国がある段階で公的な支援をするということについて大変強い批判がございまして、結果といたしましては、党首会談もあって、長銀処理にはただいま御審議中の法案のような方法があるではないかということに大体の大きな流れが決まってまいりましたように思います。  したがいまして、当初私ども考えておりましたようないわゆる公的資金導入して合併案を援助していこうという考えは、今現在新しい法律のもとでの処理ということに変わってまいったというふうに思っております。
  117. 小川敏夫

    小川敏夫君 今のお話をお伺いしまして、長銀公的資金資本注入をしないという大体の大きな流れになってきたというような御説明だったのですが、ちょっとそこの点が不明確でございまして、私としましてお尋ねしたいのは、要するに、長銀について今審議している再生法のスキームが、特別公的管理処理するのか、それともそうではなくて、やがてできるかもしれない金融健全化スキーム、この適用をして資本注入をするということもあり得るのか、そこのところを、二者択一のような質問でございますが、お答えいただければと思います。
  118. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは監督庁長官にお答えいただくのが筋だと思いますけれども、私の理解では、今御審議中の法案の第三十七条に沿って処理されていくのであろうと考えております。しかし、それはいろいろな条件の変化等々がございますでしょうし、現実の事態になっておりませんから、そういうこととしてはお答えできませんけれども、現状と法案とを考えていきますとそういうことであろうかなと、私は行政責任者でございませんが思います。  したがいまして、今、後で早期健全化スキームに乗ることがあるかとおっしゃったと思いますが、そういうことはないと私は思います。
  119. 小川敏夫

    小川敏夫君 では、これは金融監督庁長官の方にお尋ねしますが、これまでのお答えの中で、現在大手行に対する立入検査が終わって精査中であるというふうにお答えいただきましたが、精査中のその精査の具体的なあり方について御説明をいただきたいのでございます。
  120. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) 精査の前に立入検査を行うわけでございますが、立入検査におきましては、実際にその貸国債権の内容、これを中心にチェックしてまいります。大手行、メガバンクと言われるような銀行になりますと、一行当たり何と百二十万件ぐらいに達するような貸出件数がある金融機関もございます。百二十万件それでは全部見ることができるかということになりますと、これはもう物理的に、わずか十人か十数人の検査官が参りまして二カ月ぐらいかかったところで到底これは計算上もうとても計算することもできないぐらい不可能なことは自明でございますので、焦点を絞りまして検査一つ一つの貸国債権についてするわけでございますが、それを持ち帰ってくるというのが立入検査の終了になるわけです。  持ち帰ってきた後、その検査官は、精査といいますと、A銀行に行きました検査官は例えば特定の債権につきまして、すなわち甲という債務者につきましてある分類がなされていることを知ると。しかし、違う金融機関に行きましたら同じ甲という債務者に対してはあるいは別な分類になっているかもしれません。そこはつまり特定の銀行だけを中心に考えていたのではその分類が果たして正しいかどうかということがわかりません。そういった意味では他行との資産の内容の比較検討も必要になります。  それから、いわゆるラインシートを全部引き揚げてくるわけにいきませんけれども、かなりの物量になるラインシートを引き揚げてきた後、それを縦横数字を計算しましていろいろ表をつくったりすることによって精査をするわけでございます。もろもろの精査の内容がございますが、そういった意味で時間が多少かかっているということを御理解いただきたいと思います。
  121. 小川敏夫

    小川敏夫君 そうしますと、同一債務者に対して複数の金融機関が貸し出ししている不良債権の扱いとバランスをとらなくてはいけないというような御趣旨だとすると、ある意味では全銀行が一斉に検査が終わるというような状態になるんでしょうか。
  122. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) 重複しているのは必ずしも全銀行とは限りませんが、今十九行に一斉に入っておりますのはそういった意味も込めましてやっているわけでございます。ただ、十九行全部が同じ債務者に対して債権を持っているということはございませんけれども、今例え話としてそれを精査の一つの例として申し上げたわけでございますが、少なくとも検査の結果というものはできるだけ全部まとまった段階で通知するのが望ましいかなと。通知した後、これは、私どもがいろいろな観点からまたそれを総合的に集計いたしまして取りまとめた上で御報告できるものは御報告したいというふうに今考えております。
  123. 小川敏夫

    小川敏夫君 今回の検査の一番の中心はやはり不良債権の実質的な中身だと思うんです。基本的な点でございますが、金融監督庁においても不良債権は第Ⅰ分類から第Ⅳ分類までの一般的に言われておる分類で仕分けしているのでございましょうか。
  124. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) Ⅱ分類以下がいわゆる分類債権と呼ばれているものでございますが、各金融機関が資産を査定いたします、これは自己査定と呼んでおりますが、この自己査定が果たして、公認会計士協会が決めた査定基準というのがございます、これは公認会計士がこれを認めた上でその決算を行っているわけでございますので、この査定基準などに基づいて適正な債権の償却あるいは引き当てがなされているかどうかということを中心にチェックするというのが検査の主眼でございます。
  125. 小川敏夫

    小川敏夫君 ちょっと抽象的だったのでございますが、金融監督庁が多数の銀行検査をするに当たっては、各銀行間に関してやはり公平に同じ基準で検査しなければならないわけでございます。  そういった意味で、まず不良債権につきまして分類はどのようになっているのかという点を、物差しとしてどうなっているのかをお尋ねしたいわけでございます。
  126. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) おっしゃるとおり、同じ物差しで分類債権がそのとおりそれが正しいかどうかということを推しはかっているということになります。
  127. 小川敏夫

    小川敏夫君 分類した不良債権について、金融監督庁はどの程度の割合による引き当てが適正な引当率であると考えておられるんでしょうか。
  128. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) お答えいたします。  それは分類された債権によってそれぞれ異なってまいりますので、一概にその引当率が幾らということを今ここで申し上げることはできませんことを御了承いただきたいと思います。
  129. 小川敏夫

    小川敏夫君 いや、ちょっと今答えになっていないと思うんです。  検査した結果は公表できない、銀行の信用に関することであるという御趣旨はこれまでたびたび伺っているんですが、私がお伺いしているのは、検査に当たっての物差しで、どういう基準で検査をするのかと聞いているわけですから、これはやはり客観的に説明していただかなくてはならないことだと思っておるんです。ですから、債権を分類した、その分類の区分けとそれから区分けした分類について適正な引当率はどのくらいかということを明確に説明していただきたいのでございます。
  130. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) 引き当て、償却につきましては、それぞれの銀行がよるべき基準として公認会計士協会が設定した基準がございますので、それを用いて適正に行っているかどうかということを検査するということになるわけでございます。
  131. 小川敏夫

    小川敏夫君 公認会計士協会の分類ということはわかりましたが、では、その公認会計士協会の分類方法に従った分類によって金融監督庁が求める適正な引当率は何%なのかを説明していただきたいと思っております。
  132. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) 公認会計士協会の実務指針では、例えば要注意先債権につきましては債権額で貸借対照表に計上し、貸し倒れ実績率に基づき貸倒引当金を計上する、こういうことになっております。  したがいまして、こうした例えば要注意先債権でございますと、この貸し倒れ実績率というものをどういう考え方で積算をしているのか、そしてそれに基づいて恣意性を排除した引き当てが行われているかどうか、こういったことをチェックしてまいります。  したがいまして、何%であればよいとか何%以上でなければいけないといったような定め方がこの実務指針で行われておるわけでございませんので、こういった意味での適正性を一つ一つチェックしてまいる、こういうやり方でやっておるわけでございます。  なお、破綻懸念先債権につきましては、担保の処分可能見込み額や保証による回収可能と認められる額を減算した残額のうち必要額を計上するということでございまして、一本一本の債権につきまして、どの程度の引き当てをしておけばよいか、回収の危険度に応じた引き当ての仕方というものが各銀行ごとに公認会計士と相談をしてつくられておりますので、そういったことで恣意性を排除したことが行われているかどうか、あるいは破綻先であれば基本的に担保で保全された部分以外は全額を引き当てまたは償却するという、こういう基準でございますので、そのように行われているかどうか、こういった形でチェックをしてまいるわけでございます。
  133. 小川敏夫

    小川敏夫君 私が懸念しておることは、金融監督庁の適正な引き当ての問題について、被検査行が客観的に同一の基準ではなくてさじかげんで検査されるんではないかということを懸念しておるわけですが、各銀行の実績率に従って勘案するというと、当然各銀行ごとの実績率は違うわけでしょうから、そうすると各銀行によって引当率も異なってくる、こういう理解でよろしいんでしょうか。
  134. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) 例えば、今お話にありました貸し倒れ実績率に基づく要注意先債権の引き当てということになりますと、この貸し倒れ実績率と申しますのは各銀行の要注意先債権の貸し倒れ発生が一定の期間でどの程度出ているかということになりますので、銀行によってその率というものは違ってまいります。  大事なのは、違ってはまいりますけれども、貸し倒れ実績率を算定するに当たって恣意的にこれを低く算定するような操作が行われていないかどうか、こういうところをきちんと見るということが大切であろうと思っております。
  135. 小川敏夫

    小川敏夫君 どうも抽象論に終始してしまって、余りすっきりと議論にならないんですが、例えば、昨日、江田五月委員が示しましたように、今の大手行は自己資本比率が日本経済新聞の発表ですと、三月も九月も八%を超えて、数字づらだけ見れば健全な状態になっておるわけです。ですから、これは見方によれば、幾ら金融監督庁検査をしても数字づらだけ健全に見せるということは非常に可能なことだと思うわけです。  ですから、金融監督庁検査が本当に正しくて国民が納得できるというためには、その物差しもやはり国民にわかるような客観的な基準がなくてはいけないと思うんです。そうした場合、各銀行の実績率を勘案して各銀行ごとに違う、ただ適正にやっているんだと言われましてもなかなかわかりにくいわけでございまして、ここは金融監督庁が独自にそうした適正な引当率というものをつくる、それも一つの数字でできないのなら幅で引当率を定める、そういったような方法はとれないんでしょうか。
  136. 五味廣文

    政府委員(五味廣文君) 今回の十九行の集中検査におきまして、Ⅱ分類の債権、いわゆるⅡ分類債権でございますが、これにつきましてその実態把握に努めるということから、このⅡ分類債権債務者ごとの区分を行いました上で、いわゆる要注意先Ⅱ分類債権、これにつきましては担保保全が行われているかどうか、あるいは統一開示基準に該当する債権であるかどうか、こういった切り口を入れましてこのⅡ分類債権を四等分してみるということで、この四つの区分についての詳細な実態把握ということを行っております。  そういうことをいたします心といたしましては、私どもの今年度の検査の基本的な考え方といたしまして、中長期的にはⅡ分類債権をより精級に実態把握するための基準を策定する、またⅡ分類債権を含めまして、分類債権の引き当ての適切性について判断するための基準をつくっていきたい、こういう試みとしてこういったデータ把握をしておるところでございますが、まことに残念ながら今現在におきましては何%というような客観基準はございません。ただ、公認会計士協会でつくられましたガイドラインにつきましては、これはもう大変権威のあるものでございますから、これが適正に行われているかどうかということは厳正に見ている、こういうことでございます。
  137. 小川敏夫

    小川敏夫君 監督庁長官にお尋ねします。  質問先ほど大蔵大臣質問した点に少し戻るのでございますが、長銀の今後の取り扱いでございます。大蔵大臣のお話ですと、公的資金資本注入することはないだろうということでしたが、監督行政責任者としての監督庁長官の見解はいかがでしょうか。
  138. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) まだ法律が通っていない段階で何か申し上げるということは大変僭越かと思いますが、少なくとも現在参議院でこうやつて審議されている法律案はしっかり勉強させていただいております。それから、健全化法案の方もしっかり勉強させていただいております。  金融監督庁が今参議院で御審議いただいているこの法案の中でどういうことになるかといいますと、特別公的管理の決定というのは金融監督庁ではなしに金融再生委員会がなさることになっておりますので、私から今の法案について長銀が適用されるかどうか、それが適用されるかどうかということは、これは僭越といいますか越権になると思いますので、これを申し上げることは差し控えさせていただきたいと存じます。
  139. 小川敏夫

    小川敏夫君 この法案提出に関しましては、与野党間の協議があっていろいろな成立に至る事情があったと思いますが、この点、法案提出者の枝野議員はどのようにお考えでございましょうか。
  140. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 私どもは、今回の法案提出に当たりまして、長銀という特定金融機関の問題というのは国会でダイレクトにやる問題とは必ずしも思っておりません。しかし、長銀の問題がちょうど提出前後のところで大変大きな問題になっておりました。そして、今年の三月にいわゆる安定化法に基づいて公的資金導入したそのやり方が失敗であったという反省に基づいて、そうではないしっかりとした法律をつくろうということで法律提出いたしてきました。  当然のことながら、三月に資本注入をし、そして私ども法案が通るまでの間は有効に存続をしている安定化法、これが再び使われるようなことになりますと、税金のむだ遣いということも含めて非常に矛盾が生じてくるということで、長銀に従来の安定化法を使わない、使えないという担保をとりながら進めていかなければならないということで進んでまいりました。  この間、党首会談等で特別公的管理等で処理するというような合意がございましたが、その合意の解釈をめぐって、私どもは明確だというふうに理解をしておりますが、その合意の趣旨と違うことがその合意をなされた翌日から与党の幹部から出てくるというような経緯までございました。  そうした中で、実は本日、衆議院の方に金融機能の早期健全化のための緊急措置に関する法律案が与党の方から提出をされております。提出をされた直後でございますので詳細まで全部精査をしておりませんが、一通り目を通させていただきましたところ、今回この参議院で御審議をいただいております法案で廃止をすることになっております従来の金融安定化法とほぼ同趣旨の内容になっております。しかも、施行期日も公布後十日間ということで、今参議院で審議をいただいている再生法と一緒であります。  そうしますと、場合によってこの両案が同時に成立をいたしますと、参議院で御審議をいただいている再生法によって安定化法が廃止されると同時に、ほぼ同趣旨の健全化のための緊急措置法が成立をするということになります。先ほど大蔵大臣の御答弁など、私も隣で聞かせていただいておりますが、条件に変化がなければ云々とか、いろんな留保をつけておられます。  法律スキームといたしまして、廃止になります安定化法と今回衆議院提出されました健全化のための緊急措置法はほぼ同じスキームでございますので、法律論といたしましては、従来の安定化法で長銀処理できるということの解釈論であれば、当然のことながら衆議院提出された健全化のための緊急措置法というものも長銀に適用できるという解釈になります。この健全化のための緊急措置法、きょう衆議院提出された法律を明確に使わないということを政治的に総理大臣でも担保をされない限りは、これは長銀処理が健全化のための緊急措置法で、つまりいわゆる十三兆円スキームからの資本注入が行われる可能性は高い。それは、現在参議院で御審議をいただいているこの法案とは明確に矛盾をするということを、特に野党各会派の皆さんに御理解をいただきたいというふうに思っております。
  141. 小川敏夫

    小川敏夫君 終わります。
  142. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 民主党の浅尾慶一郎でございます。  小宮山議員質問関連させていただきまして、数点質問をさせていただきます。  まず初めに、現在の金融のいろいろな問題につきまして、歴史的経緯も含めまして若干質問させていただきたいんです。  九五年の九月に大和銀行のニューヨーク支店で不正事件が発生しました。実際にはもっと前から起こっていたんだと思いますけれども、不正事件が発覚したのが八月から九月と言われております。その前に、実は日本銀行局に大和銀行さんから報告がなされていたようでありますけれども銀行局から米国の当局には報告が行かなかったという報道もなされております。  私は、この点につきまして、今言われております、先ほど宮澤大蔵大臣答弁されました、ジャパン・プレミアムが一%を超えているというきっかけをつくったのではないか、言いかえますと、日本銀行もあるいは金融当局も余り信頼ができないきっかけをつくった事件だったのではないかと思います。その当時の銀行局の対応について、大蔵大臣並びに金融監督庁になるんだと思いますけれども、御質問させていただきます。
  143. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) 当時の銀行局の事務は、個別行の監督につきましては金融監督庁が引き継いでおりますので、金融監督庁からお答え申し上げたいと思います。  御指摘の大和銀行事件といいますのは、同行のニューヨーク支店において、有価証券の売買ディーラーが約十一年間にわたり不正な売買を行いまして約一千百億円の損失を発生させた。さらに、同行がこのディーラーからの告白によって不正を認識した後もその事実を隠ぺいするなど違法行為を行ったというものであったかと思います。  この事件におきます当時の大蔵省銀行局の対応につきましては、平成七年九月二十六日、本事件が公表になりましたが、この公表に先立つ同年八月八日に大和銀行から、この事故者からの私信として、プライベートなレターとして、米国債の取引により約十億ドル以上の損失を生じさせたとの告白が大和銀行の頭取あてに届いたという報告を受けていたのにもかかわらず、直ちに米国の監督当局に知らせるような指示をせず、大蔵省みずからも直ちに知らせることはしなかったといった点につきまして、内外からの厳しい批判を受けたものであると承知しております。  金融監督庁といたしましては、こういった事件は過去のものではございますが、やはりこれからの金融監督のあり方として、他山の石と言うと何かよそごどのようになりますが、要するに教訓としてこれを生かして、これからはルールに基づいた透明な金融行政の推進と、それから特に海外当局との間の緊密な連携をこれから図ってまいりたいというふうに考えているところでございます。
  144. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 大和銀行ニューヨーク支店については、時間の関係もありますので、次に進めさせていただきます。  その次に、昨年の十一月に三洋証券、あるいは北海道拓殖銀行、山一証券、徳陽シティ銀行と、四社ほど倒産、破綻をしております。その中で、本日お忙しい中、日銀総裁にもお越しいただいたわけでございますが、三洋証券の会社更生法の申請について若干御質問させていただきます。  この三洋証券はコール市場でデフォルトを起こしてしまいました。コール市場というのは、御存じのように銀行間の信用取引が行われる、あるいは金融機関同士の信用取引が行われる市場でございます。その前日まで、巷間言われているところでは、インターバンクではデフォルトは起こさないと日銀当局は話をされていたと言われておりますけれども、残念ながらデフォルトが起きてしまった。デフォルトが起きた後現在に至るまで、三洋証券に短期資金を出していた信用金庫に対して返済が滞りている。  これは会社更生法ですから金額が確定しないという部分もあるんでしょうけれども、私が問題にして質問させていただいておりますのは、前日までデフォルトは起こさないと言っていたその言葉と、現在まで返済がされていない、その結果として大きな信用収縮がインターバンク市場で起きているんではないか。この点について大蔵大臣並びに日銀総裁に所感を求めます。
  145. 速水優

    参考人速水優君) 日本銀行は、これまで金融システム全体の安定が損なわれることのないように、中央銀行の立場から最大限の努力を払ってまいっております。こうした対応についてはこの問いささかの変化もございません。  三洋証券のケースにつきましては、同社による会社更生法の適用申請という法的枠組みによって対応となったことから生じたものでございます。三洋証券の経営破綻後、昨年十一月末には談話を発表しまして、日本銀行大蔵省は、預金等の全額を保護するとともに、インターバンク取引等の安全を確保することに万全を期す所存であるということを表明いたしました。  また、私どもは、御承知のように最近、九月九日に金融緩和措置をとりまして、日々の金融調節におきましても市場に対して潤沢な資金供給を行い、円滑な取引の確保と安定的な市場金利の形成に努めてまいっております。日本銀行としましては、今後とも断固として潤沢な資金供給を続けることによりまして、金融市場の安定に万全を期していく考えでございます。また、個別金融機関の資金繰りにつきましても、不測の事態が起こることのないように十分注意深くウォッチしてまいる考えでございます。  このように、マクロ、ミクロの両面から金融システムの安定確保に万全を期すことによって、中央銀行としての責務を果たしてまいりたいと思っております。
  146. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 私が質問させていただいた趣旨は、具体的な名前は申し上げませんけれども、多分その信用金庫さんは、金融当局がインターバンク市場では破綻を起こさせませんと言った言葉を信用して三洋証券に対して短期の資金を出した。ところが、破綻してしまった後、きょうに至るまで返してもらっていない一その言葉の責任をどう考えておられるんですかという趣旨でございまして、それは確かに法律上そこに公的資金を入れるとかどうとかということはなかなか難しいということなのかもしれませんが、今の御答弁ですと、今後とも一生懸命やっていきますけれども破綻した場合にはそれは責任をとれませんというふうに聞こえるわけでございます。そういたしますと、今行われています信用収縮が、拍車がかかると言うと言い過ぎかもしれませんけれども、改善をしないのではないか。そういう意味で、何かそれに対する対策はないかという趣旨の質問でございます。  お答えを求めます。
  147. 速水優

    参考人速水優君) 三洋証券のケースは、御承知のように、更生法の適用というのが先に手続がとられてしまいましたために、コールの出し手の方はそれを請求することができないという事態になってしまったわけでございます。  そういうケースでございますが、先ほど大蔵大臣日本銀行総裁の談話というのは十一月二十六日に出されたもので、「インターバンク取引等の安全を確保すること等について申し述べたところであるが、ここに改めて我々の決意を表明したい。」ということで、そのことをさらに注意深く見ていくということをもう一度申しております。その線で、なるたけそういうことのないようにしてまいりたいと思っております。
  148. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 若干ストレートにお答えいただいていないんではないかなと思いますけれども、時間の関係もありますので次に進ませていただきます。  今、更生法ということを日銀総裁おっしゃいましたけれども、ことしの三月に日本長期信用銀行に対して整理回収銀行から劣後ローンが四百六十六億円投入されております。この劣後ローン契約には、劣後ローンは普通は返さなければいけないんだけれども、劣後事由が発生した場合は返さなくていいですよという指摘がなされております。その劣後事由の一つは、今総裁が指摘されました更生法でございまして、もう一つは破産ということでございますけれども、そうしますと、この劣後ローンというものは更生法か破産の状況でない限りは返していただけるものだという考え方でよろしいんでしょうか。  この質問は、多分預金保険機構さんが整理回収銀行の上部団体でありますから、預金保険機構さんに対して行います。
  149. 松田昇

    参考人松田昇君) お答えいたします。  劣後事由の発生の問題でございますが、そうしますと一般債権者と同じになりますので、御指摘のとおりだと思います。
  150. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そこで、具体的なケースで申し上げた方がいいかと思いますけれども、今議論をされております長銀の問題で御質問をさせていただきます。  長銀の場合は、先ほど宮澤大蔵大臣は、恐らく特別公的管理で今のままのスキームでいくのだろうというふうに御答弁なされました。その後に、枝野議員からその点について、本日衆議院に提案がなされました早期健全化スキームとの関連について明らかではないというような御答弁があったと思いますけれども、私のこれからの質問の前に、まず宮澤大蔵大臣にこの点、先ほど枝野議員答弁についての所感を求めたいと思います。
  151. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 答弁を伺っておりましたけれども、ちょっと私はわかりかねるところがありまして、御質問がじゃなくて御答弁がです。  私がこういうことだろうと申しましたのは、今までの、衆議院もそうでございますが、この委員会における提案者の御説明を伺ったり、それから私が知っております限りの党首会談とか各党のいろいろな段階協議がありましたけれども、からは、長銀は今御審議中の法案によって、三十六条か三十七条かそれはわかりかねますけれども、そういう御処理の方向が大体出てきていると私は自分なりに理解しておりました。  いろいろ条件をつけたのではありませんで、事態が法律が成立しておりませんし、まだ長銀が何も言っておらないのでございますから、それを私がいろいろ申すのはちょっと出過ぎでございましたけれども、お尋ねでしたから、私の自分なりのそうじゃないかと思っていることを申し上げたにすぎません。
  152. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 わかりました。  それでは、もう一度確認のために枝野議員に、簡潔で結構でございますので、先ほど答弁、もう一度同じ趣旨で求めさせていただきます。
  153. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 私が申し上げましたのは、法律をどう読めるのかという話が一つでございます。  今御議論をいただいている再生法案には、十三兆円スキーム安定化法の廃止という規定が書いてありますが、きょう衆議院に出されました早期健全化のための緊急措置法案では、この廃止になります十三兆円スキームとほぼ同じ内容の法律案提出をいたされております。  したがいまして、衆議院にきょう出された法律がもし成立をするようなことがございますと、今参議院で御議論をいただいている法律安定化法を廃止いたしましても、十三兆円スキームを使って長銀にお金を入れるという、従来政府考えていたことがまず法律上可能になるというふうに解釈できます。  そうした中で、これまでの経緯の中では、私ども党首会談の合意で、明確に長銀には十三兆円スキームは使わないという確認がとれているというふうに理解をいたしておりますが、その合意に反したような御発言がその後もいろいろなところで出てきたというような経緯から考えますと、私ども、現在参議院で御審議いただいている再生法案の提案者といたしましては、きょう衆議院に出されたような法案が万が一にも成立をするようなことがあれば、ここで議論をしています法案とは矛盾をするということになるというふうに理解をいたしております。
  154. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今の枝野議員答弁につきまして宮澤大蔵大臣に御質問させていただきますが、今の答弁を要約いたしますと、法律上は恐らく本日提案された新しいスキームでも対応は可能である、しかし一方で、党首会談その他で十三兆円に類したものは使わないという合意があるということだと思います。  ここでイエス、ノーでできればお答えいただきたいんですが、今回の長銀処理に関して、今現在参議院で審議しているもので確実に取り組むということについて、御答弁をお願いしたいと思います。
  155. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) いろいろ各党間のお話がまたこの段階であるのかもしれませんので、どうも私はそれがつまびらかでございませんからちゃんとはお答えできません。ただ、私が今まで考えてきたことは、大変常識的なことで、法律上の可能性なんという話はこれはいろいろあるのでございましょう。しかし普通のこととして、私はそんなふうに考えてまいりませんでした。  今おっしゃいました早期健全化、その法案の努力は各党がおのおのしていらっしゃいましたけれども、それは長銀を救うための努力だと私は今まで思ったことはありませんでしたので、法律上の可能性とかいう話はちょっと私にはわかりかねます。
  156. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、先ほどの更生法に関する件で質問させていただきます。  今度の日本長期信用銀行に関しましては特別公的管理銀行に移行するということでございますが、この場合は先ほどの会社更生法でも破産の事由にも当たりません。したがって、政府が引き受けました劣後債務あるいは民間で出ております劣後債務について、これは劣後事由に該当しないというふうに私はその場合では読めると思うんですけれども、その点について大蔵大臣に所感を求めます。
  157. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは恐れ入りますが、提案者にお尋ねいただきたいと思います。
  158. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 それでは、提案者のどちらでも結構でございます。
  159. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 法律上の劣後事由に明記されておりませんので、劣後しないということで解釈されるというふうに判断しております。
  160. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 ここで、今劣後債のお話をさせていただきましたので、関連させていただいて、実は整理回収銀行日本長期信用銀行の優先株を引き受けさせていただいておるようでございます。その臨時報告書によりますと、一千三百億円分の優先株を引き受けているんですけれども、このうちの六百五十億円がいわゆる資本金になっておりまして、六百五十億円は資本準備金に入っているのではないかと思います。  ここで問題なのは、資本金については、御承知のように、それを減額する場合には減資の手続が必要でありますが、資本準備金の場合は取締役の任意によってこれを変えることができる。したがって、三月の時点で税金、公的資金を投入した段階で一千三百億円のうちの半分は余り守られていないのではないかという認識なんですが、この点について、これは預金保険機構の方に御答弁をお願いいたします。
  161. 松田昇

    参考人松田昇君) 先生御案内のとおり、優先株でございますが、株式でございますので半分は資本準備金に、半分は資本金に入ります。  それで、資本準備金は御案内のとおりで、利益準備金取り崩しの関係で崩せることになっておりますけれども、あれはいろいろと制約がございまして、外部の監査も必要だと思います。そういうような取り決めがあるのではないかと思います。  具体的な内容は、私ども検査権限を持っておりませんのでそれ以上詳細はわかりません。
  162. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 今の御答弁関連してでありますけれども質問させていただきますと、通常、普通株式と優先株式がある場合には、それぞれ権利義務関係が別にあるわけでございますから、優先株式の方が優先されるのではないか。言葉どおり優先と書いてありますから優先されるはずだと私は思うわけでございますが、残念ながら三月の時点で投入されました優先株について、普通株との間の権利義務関係の規定が一切明記されておりません。  言いかえますと、長期信用銀行は、当初の予定では七千五百億円ぐらい債権償却をする予定でありましたけれども資本金は三千八百億円しかなかったということであります。準備金その他合わせて七千八百億円あるのでいいんですけれども、本来であれば普通株式で出した資本金が最初になくなる規定を事前に設けておくべきだったのではないか。国民の税金あるいは公的資金ということを考えた場合には、普通株式との間の規定を厳しくしておく必要があったのではないかと思いますが、この点については預金保険機構の方、いかがお考えになりますでしょうか。
  163. 松田昇

    参考人松田昇君) お答えいたします。  先生御指摘のとおり、現在の金融安定化法では、株式は普通株式の取得が認められておりませんので、優先株式ということになっておりますが、それを、優先株式の中でも、商法の二百二十二条にある数種の株式の中でも、法律の中で自己資本を充実させるという目的でございますから、それに見合うように、発行時に議決権を持たない株式であるということが一つ。それからその他、利益配当や残余財産の分配でということで、はっきり普通株式と分かれた形になっておりまして、その趣旨にのっとって発行条件その他を決めて引き受けをした、こういう経緯でございます。
  164. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 私が指摘させていただいているのは、その中で、普通株式と優先株式との関係において優先株式の方が有利な取り扱い、換言いたしますと、減資その他の場合において最初に普通株式が減資されますよという規定を設けるべきだったのではないかということなのでございます。  ないものを今指摘しても、それは指摘するだけでございますけれども、今後優先株式を政府あるいは何らかの機関が取得する場合にはそういう規定を設けるべきだと思います。現在金融再生委員会ができておりませんので、できるまでの間その業務をあるいは代行する可能性があります大蔵大臣に、その点についての所感を求めさせていただきます。
  165. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) お答えいたします。  今先生が言われましたのは、何らかの形で契約等で明示しろということかと思いますが、この点につきましては、ちょっと急な御質問でございますので、また私どももいろいろ勉強してみたいと思います。
  166. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そんなに難しい話を私はさせていただいているわけではなくて、公的資金あるいは後から入るお金、優先株ということで議決権がないわけですから、会社のコントロールは当然持てないわけです。そうだとするならば、普通の会社のコントロールを持っている、経営を持っている人たちよりも、何らかの形で減資その他の責任は先に普通株式を持っている人がとるべきなのではないかということなんで、その点についての御一意見を再度お願いいたします。
  167. 伏屋和彦

    政府委員(伏屋和彦君) 優先株につきましての今までの考え方先ほど預金保険機構の理事長がお答えになられたとおりで、また、先生が言われるそのときの条件というような話でございますが、これは先ほども申し上げましたように、また勉強させていただきたいと思います。
  168. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 そんなに難しいことを質問しているつもりはないんですけれども、時間の関係で次に移らせていただきます。  本日、日銀の速水総裁にお越しいただいていますので、せっかくの機会でございますので、ニューヨーク・タイムズが報じました記事の件について若干質問させていただきたいと思いますが、きょうの毎日新聞によりますと、日銀当局は、総裁は自己資本比率には言及しておらず、資本勘定について述べたもので、報道は正確ではないという指摘がありますが、この点はそういう理解でよろしいんでしょうか。
  169. 速水優

    参考人速水優君) 御指摘のとおりでございます。資本勘定と申しますのは、御承知のように、三月末時点で十九行、約十五兆円、これは全部バランスシートに出ている数字でございますが、これは資本金、資本準備金、利益準備金、任意積立金、未処分利益金、償却に使うことのできる資本勘定というふうに考えております。  自己資本といいますと、それにティア1の一部とティア2が入りまして、これを入れますと八%になるかもしれませんけれども資本勘定だけですと十九行、六月末の貸出残高三百七十二兆円に対して約十五兆円でございますから、約四%ということでございます。
  170. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 どうも報道とその後のお話が違うようでございますけれども、今のお話を伺っていますと、四%あってティア2が倍、同額だけ組み入れられるから十分だというような御答弁のように聞こえます。この点についてこれ以上追及させていただいてもやはり多分同じような答えになってしまうんじゃないかなということで、次に進ませていただきます。  続きまして、先ほど劣後債務についてあるいは優先株について質問をさせていただきましたけれども、その点に絡みまして、発議者の方に今回の金融再生機能について若干の質問をさせていただきます。  第七条におきまして、法律上自己査定の開示が義務づけられておりますけれども、二〇〇一年にはペイオフが、先ほどの小宮山議員質問の中でもありましたけれども、実現されるわけですから、預金者に自己責任を求めるということは、当然銀行側にも自己責任というか自己査定を開示していくことが必要なのではないかということだと思います。この点につきまして、統一的な基準について、大手十九行と地域銀行を分けるとかいろいろなあれがあると思いますけれども、この点について、ただ二〇〇一年にはすべてまた自己査定の基準も含めてガイドラインとして統一的なものができるという理解でよろしいでしょうか。
  171. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 今の条項につきましては、衆議院の修正の段階で修正に関係しました三党で覚書などを交わしておりまして、金融機関それぞれの事情に応じた柔軟な対応をとるような趣旨の覚書を交わさせていただいております。  これは、今も御指摘ありましたとおり、大手十九行あるいは国際業務を行っている金融機関あるいは地域に密着した中小の金融機関とではいろんな事情が違うであろうと。国際業務を行うようなところについては、当然のことながら国際マーケットにさらされておりますので急いでやっていただかなければならないと思っておりますが、地域に密着をした国際業務などを行っていないところについては、準備等に対する時間もある程度必要であろうということで、一定の幅を持った対応をこれは金融再生委員会の規則で決めていただこうというふうに考えております。  ただ、当然のことながら、二〇〇一年のペイオフということは目前に迫っております。それまでにというよりも、それよりも早い段階で、消費者へユーザーの皆さんとの関係考えれば、それよりも一年とか一年半とか前ぐらいの段階ではきちんと公表、査定ができていないといけないのではないかなというふうに考えております。
  172. 浅尾慶一郎

    浅尾慶一郎君 多分、時間の関係で最後の質問になると思いますが、金融再生法案の中で、株価算定委員会というものが株価を算定するということが決められております。その中で、先ほど質問の趣旨と関連いたしますが、優先株というものも株価を算定していかなければいけないのではないか。言いかえますと、長銀の例をとりますと千三百億円公的資金が入っておるわけでございますが、これについては普通株式よりも当然優先的な取り扱いをしていかなければいけない。  過日の御答弁では、純資産に対して株価を決めていくというふうに御答弁をされていたと思いますが、純資産が仮にあった場合には優先株式が優先的にその配当にあずかるという理解だと、発議者の趣旨はそういうことだと思いますが、この点の確認だけさせていただきたいと思います。
  173. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) まさに優先株式は、そういった場合に普通株式に優先をして配当を受けられるということの趣旨の契約内容で株を発行しているわけでありますので、純資産が残るようなケースは余り想定しにくいかもしれませんが、そういった場合には優先株式から配当を受けられるというふうに考えております。
  174. 海野義孝

    ○海野義孝君 公明の海野でございます。  今回は、金融再生関連法案審議が一昨日から参議院の方では始まっているわけでございますけれども、長い間衆議院の方におきましては発議者の方々初め各会派共同でこの法案の作成について大変な御努力をされたということに対して、まずもって敬意を表したい、こう思う次第でございます。  先ほどから、午前中来、委員の方々の質問の中でもございましたけれども、今回の法案につきましては、さらに現在自民党さんがお出しになっているというふうに伺っていますけれども、いわゆる破綻前の金融早期健全化の枠組みといいますかスキーム、こういったこととの絡みでお話を伺っていると、大変複雑なというか、大変わかりにくい、そういった面がいろいろあるように思うわけでございます。  そういうことで、実は私は今回の法案につきまして、従来の政府・与党のお出しになった法律案が結局は野党中心のそういった対案といいますか、これを中心に共同修正案、こういったものが今具体的に日の目を見るかどうかという状況に来ていると思うんです。そういうことで、従来に比べまして今回の金融に絡む問題の点では大変画期的といいますか、そういった状況であるということを私は認識するわけであります。  このことは、つまり、問題は一昨年の住専の問題に端を発しまして、あれ以来金融システムの問題、国際的に大変信頼を失墜した問題、あるいは国内における金融機関のいろいろな破綻の問題等々、具体的な現実味を帯びていろいろな問題がここ相次いで出てきたということに対応して、早期是正措置であるとか、あるいはことし二月の金融安定化のための二法であるとか、いろいろなものを重ねてきたわけであります。そういった中で、またここへ来ての日本長期信用銀行経営不安の問題等々が出てきたということの中で起こってきた問題であろう、こういうふうに理解するわけです。  そういった点で、政府のお出しになった法案が成立しないで野党中心のそういった案がということは、私はやはり大きな変化だろうというような感じがするわけであります。  このことは、これまでの、いわゆるバブルが発生して以後今日に至る、バブルは八五、六年からだと思いますけれども、その後、一九九二年ごろのバブル崩壊以来の今日に至る長期不況、そういった中で大蔵省の金融行政というものが問題の先送りをしてきたということが、年々そういった問題が大きく膨らんできて今日どうにもならない、そういうような状況になってきた段階でこういった今回の法案が出されてきたのじゃないか、こういうふうに思うわけです。  これは、参議院が今回の選挙で過半数以上を制したということ等が一つの問題というように言われておりますけれども、一昨年来の金融行政あるいは経済問題等に対する一連の政府の取り組み、こういったいろいろな問題が結果的には今日の参議院における自民党の議席を大きく後退させる。そういった中で、今回のこの金融関連法案についても厳しい対応がされるというようなことで、やはりこれまでの我が国のそういう行政のいろいろな問題が、そのツケが今日回ってきてこういう状況にあるのではないか、このように私は感じるわけであります。  そこで、大蔵大臣はもう長い間ずっと携わってこられたし、御専門ですから、私が申し上げることは事前にお知らせしていない部分もあるかと思いますけれども、率直なところをお答えいただきたいと思うんです。とりあえず、金融再生関連法案が今参議院に回ってきた、この段階大蔵大臣としてどのような御所見というか御感想をお持ちか、まずその辺をお聞きしたいと思います。
  175. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) まず、お述べになりました御批判は概してそのとおりと思っておりますので、甘んじて受けなければならないと考えております。それが第一でございます。  それから第二に、そういう背景の中で我が国の金融のシステムが非常な信頼を内外ともに失うに至りましたし、また貸し渋りも起こっておって我が国の不況に一段の拍車をかけておるという事態の中で、政府としてもこの国会政府案並びに与党の立法の御審議をお願いいたしましたが、衆議院におきます各党協議の結果として、ただいま御審議のような法案が参議院に送付されました。一日も早くこれを成立させていただいて事態に対処したいと考えております。  同時に、もう一つの、問題の半分である金融の早期健全化のためのスキーム、今日衆議院に提案されたと存じますが、これにつきましても、両院におきまして一日も早く速やかに成立をさせていただくことを心から念願いたしております。
  176. 海野義孝

    ○海野義孝君 引き続き大蔵大臣にお聞きしたいんです。  私はかねてより、こういうことを言うのはなにかと思うんですけれども、いろいろな法案をつくりましてもやはり運用という問題が大変重要なことでありまして、そういう意味からもこの法案というものについてはよりクリーンな、透明な、そういうものでなくてはならない、こういうように思うんです。  そういった点で、先ほど来の御審議の中でも、ちょっとさっきも申し上げましたけれども、今回の金融再生法案につきまして、これが大変わかりにくいというか、そういう部分があるし、いろいろと判断ができるというような感じがするわけです。  これは後でまた発議者の方にもお教えいただこうと思いますけれども、その点については大蔵大臣はどのような御感想をお持ちでしょうか。
  177. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 衆議院において各党各派が長い間協議を積み重ねられまして、その結果として一つ法案ができ上がりましたので、そういういろいろな御協議の経緯をいろんな形で法案が反映しているということは私は事実と思います。  したがって、海野委員の御指摘のように、一人の人がすっと書いちゃったというような簡単でない、わかりにくさがあると言われますのは、私は恐らくそのとおりであろうと思います。  政府としましては、この法案が成立いたす過程における国会の御議論を承りながら、法になりましたときに、どのように解釈しどのように行政をやっていくかということをこの御審議過程を注意深く承りながら決めていかなければならない、こういうふうに思っております。
  178. 海野義孝

    ○海野義孝君 次に、今回の参議院の方に来ました共同修正案、これについて具体的に夜を徹して審議をされ、おまとめになった発議者の方々からお聞きしたいと思いますけれども、この金融再生関連法案の共同修正案について、どのような評価といいますか御感想というか、御所見をお持ちか、その点ちょっとお願いします。
  179. 石井啓一

    衆議院議員石井啓一君) お答えを申し上げます。  先日、本会議におきまして森本先生の御質問にお答えをいたしましたが、そのときは、長銀処理が明確化できる、あるいは金融危機管理が一元化できる、情報開示が進む、処理のスピードが上がる、また政治主導でできる、こういう五点をお答え申し上げましたけれども、別の点できょうは申し上げたいと思います。  まず、金融破綻処理に多様な選択肢を提供できた、こういうことでございます。  従来、金融破綻処理に当たってその処理の手法が十分でなかったわけでございますけれども、この法案によりまして、金融整理管財人による処理、そして公的ブリッジバンク、また特別公的管理、こういう多様な手法をそろえ、セーフティーネットを整えた、こういうことによりまして、今後検討されます早期健全化システムとあわせまして金融システム安定化へ大きく寄与することができる、このように考えております。  次に、破綻金融機関経営者責任追及を厳格化いたしました。  金融再生法案の十八条と五十条におきまして、金融整理管財人あるいは特別公的管理銀行に対しまして、破綻した金融機関経営者の民事、刑事上の責任追及を厳格に義務づけておりまして、これによりまして経営者破綻責任が明確にされる、このように考えます。  最後に、不良債権償却が進むということでございますが、ここの委員会でも御質疑がございましたけれども、この修正案によりまして、従来、破綻金融機関から預金保険機構不良債権を買い取るということになっておりましたけれども、今回あわせて二〇〇一年三月末までと期限を区切りまして、一般金融機関からの不良債権買い取りも、これは適正な価格ということで二次ロスを出さないという前提でございますけれども、そういったことを可能にいたしましたので、不良債権の償却に進むことができる、進めることができる、以上の点は評価できると存じます。
  180. 海野義孝

    ○海野義孝君 では、枝野さんに別の面をちょっとお聞きしたいと思うんですが、今の共同修正案についての評価につきましては、御一緒におやりになって、ですから特にあれかと思いますので別の面で、いわゆる早期健全化スキームのことでありますけれども、これは金融機能再生に関しまして野党三会派をベースとして与野党が共同修正の協議を行う中で、今回の法案協議を行う中で合意されたということだと思うんです。いわゆる破綻前のそういう早期健全化ですね。ということであるならば、当然その合意事項の中にある文言でありまして、具体的にこれについて御党の場合はどういう内容を持っていると思われるか、その辺をお聞かせいただければと思います。
  181. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) お答えをさせていただきます。  私どもは、今回、参議院でこうやって御審議をいただいております再生法案によりまして、金融機関破綻あるいは破綻に限りなく近い状態に陥ってしまった場合に、混乱を起こすことなく整理、清算をしていく、そのセーフティーネットがつくられるということで、この金融の危機に対する対応としては大きな前進があるというふうに考えております。  ただ、確かに現在の金融、経済を取り巻く状況考えますと、それだけでいいのかといえばそれだけでは決して十分ではないというふうにも考えておりまして、不良債権を抱えて非常に困難な経営状況に陥っているというふうに推測される日本金融機関状況を一刻も早く立ち直らせるというための別途の手段も必要であるというふうに考えております。  一部には誤解もあるようでございまして、私どもはそういったところに公的資金を使うこと一般について否定的であるかというような理解もあるようでございますが、そこの点は全く違います。今の金融の状況をしっかり立ち直らせることは、国民経済にとって、ひいては日本国民それぞれにとって大変重要なことである、必要なことであるというふうに思っております。ただ、そこで公的な資金を使う以上は、それが有効に使われる、そして納税者の皆さんに納得していただけるような使われ方をするというようなことが必要であるというふうに私ども考えております。  現在、きょう衆議院提出されました自民党の早期健全化というスキームでございますが、ここには実は大きな矛盾があるというふうに考えております。というのは、現在過少資本状態で大変だと、だから公的資金を入れなければならないというような基本的な流れで資本増強のための公的資金が使われるというスキームを提案されております。  しかし、きのう来のこの委員会審議でも出ておりますように、金融機関が表向きあらわしております自己資本の比率はすべて八%を大手十九行は超えております。一〇%を超えているところもございます。一〇%を超えているところが過少資本とは到底言い得ません。八%を超えている、国際的なBIS基準を超えている、それが過少資本ということは実は本来矛盾する話であります。それにもかかわらず、過少資本状態を解消しなければならないということをおっしゃっているということは、今金融機関が公表している八とか九とかという数字が実は実態をあらわしていないということを内在した発言であると言わざるを得ません。本当に八あるのなら公的資金は要らないわけであります。  私どもも、実はしっかりと審査をした場合には、査定を行った場合には八はないであろう、過少資本状態金融機関もあるであろうというふうに思っております。しかし、その査定をしっかり行わないで、表向き実態と違う八とか九とかという数字を片方で出しておいて、そこに公的資金を注入して資本増強をしましたと言っても、本当にそれで実質まで八%を超えたのかあるいは四%を超えたのか、マーケットは判断のしょうがございません。しっかりとマーケットに信頼をされる自己資本比率がありますということを信頼していただかなければ、金融は信用でございますので効果は生じません。  したがいまして、公的資金を使わせていただく以上はきちんとした査定をする。査定をすることによって、実は自己資本比率が大きく下がるところがたくさん出るでありましょう。そこを放置しては国民経済上いけないという判断であるならば、それは八よりもあるいは四よりも大幅に下がりますから、場合によっては非常に大きな公的資金を使わなければならないかもしれません。  自民党のようなやり方をした方が実は一回当たりに使う金額は小さいかもしれません。しかし、本当に金融を立ち直らせようとするのであるならば、しっかりと査定をして、四まではここまで足りないんだ、八まではここまで足りないんだ、その足りない分はどんと一発で使わなければ、兵力の小出し分散ば、孫子なのかよく知りませんが、最悪の兵法である、まさにこの間日本の金融行政がやってきたことは小出し分散でありました。  一気に査定をして足りない分はどんと入れる。その金額がもしかすると自民党などが考えていることよりも一時的には大きいかもしれません。しかし、これはしっかりと査定をして、不良債権の部分をしっかりと引き当てた、その足りない部分を補う部分でございますので、これは従来のようなあいまいな形で小出し分散をして減価してしまう、つまり価値が下がってしまうような公的資金の入れ方とは違う。そこからは少なくとも、日本経済全体が下がっていけばもちろん下がることはあり得ますけれども、基本的にはその株価というものは、投入した額というのは資本として維持され、景気が回復した段階では必ず、つまりしっかりと穴埋めができるお金である。  私どもはそこのところをしっかりとやらないであいまいな形で、今のように実態は四、三、二ぐらいなのに八も九もあるというところにお金を小出し分散するやり方は最悪である、こんなふうに考えているわけでございます。
  182. 海野義孝

    ○海野義孝君 大変御丁寧に重要な部分について御説明がありました。  そこで、石井議員にもう一つお聞きしたいんですが、今のことにも関連しますけれども、この早期健全化スキームです。要するに、金融機関破綻に至らしめないように早期診断、早期治療をするという意味とも私は理解するんですけれども、その場合に公的な資金の投入についての是非ということをどのように、個人的にでも結構ですけれども、お考えになっているか。これは条件次第なのか、どういう場合ならよいのか。  私、どうもこの議論というのは、その先には金融再生、金融安定化という問題もありますけれども、やはりビッグバンとの絡みのこととも絡んだような感じにもとれるんですけれども、その辺を含めてどんなお考えでしょうか。
  183. 石井啓一

    衆議院議員石井啓一君) 私ども平和・改革ではまだ早期健全化スキームに対する対案と申しますか見解を取りまとめていない状況でございますので、個人的な見解としてお答えを申し上げます。  私どもは、この公的資金をどういう目的で投入するのか、単純な銀行救済でやってはならない、システムとしての金融システムといいますか銀行界といいますか、それをやはり健全化させる、体力を増強させる、そういうものでなければならないというふうに考えておりまして、そういう意味ではやはり再編なり合併なり、そういった方向に誘導できるような、そういったものでなければならないのではないか。  これは、私が本当に個人的に考えているところでございますけれども、ある意味で体力の強い銀行をつくるということもございますでしょうし、また体力の弱いところは少し合併していただいて整理していくということもあるでしょうし、やはりもうどうしようもないところはこれは整理、清算の方に行ってしまう、こういう大きな流れなのではないかな、こういうふうに考えております。  それで、前提といたしましては、枝野議員からございましたように、私も、今の銀行状態をきちんと正確に把握する、治療に当たっては正確な診断が必要でございまして、銀行経営状態を正確に把握するということがやはり前提ではないのか。  また、条件ということで申し上げれば、一般的には経営者や株主の責任を明確化する、またリストラをきちんとやる。モラルハザードを防ぐためにそういった条件考えられますけれども、これは昨日も申し上げましたが、やはり国民の皆さんが納得するようなそういう条件でなければならない、このように考えているところでございます。
  184. 海野義孝

    ○海野義孝君 宮澤大蔵大臣にお聞きいたします。  これは報道によって私は承知しているんですけれども、我が国の金融機関の中では国際業務をしている金融機関が七十六あると、このように聞いているわけでありますけれども、その問題と、現在の大手十九行が言うなればそろって八%以上をクリアして国際業務を継続できるということ等があります。今、石井議員もちょっとお触れになりましたけれども、私は、今回の金融再生という問題は、一つ金融システム安定化ということと同時に、戦略的にやはり日本の金融界をどう再編していくかという面でいろいろと現下の金融界というのは問題が多い、こういうふうに思うんです。  例えば七十六の金融機関、これは恐らく八%以上をクリアしていなくちゃいかぬのでしょう。となると、大手十九行以外にも第一地銀あるいは第二地銀等にもそういうのがあるかもわかりませんけれども、そういったこと。それからもう一方では、この金融健全化という中で、戦略的にというか、安定化させるという部分と、もっと強力に、言うなればビックバンの中で生き残る金融機関をつくっていく。そういうような面での大臣としての金融行政というものに対するお考えというか、お取り組みというか、そういうことについてお聞きしておきたいと思います。
  185. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今金融行政は私の所管ではもうなくなってしまいましたので、一人の国務大臣としてどう考えるかというふうに申し上げなければなりませんが、今の我が国の難しさは、ビッグバンという問題と一緒に不良債権処理をしなければならないという、二つの方向の違う問題が一緒に処理されなきゃならないというところで問題が難しくなっていると思います。  それで、いわゆる八%銀行、国際業務は、明らかにある段階でステータスシンボルのように考えられたときがございまして、地方銀行でも大変たくさんの銀行が八%を維持しておられますし、マネーセンターバンクスもそれはむしろ当然のように考えられてまいりました。しかし、実際に銀行がいろんな業務に特化するということになりますと、必ずしも海外業務をしなくてもいいということ、また競争が激しくなりましたのでそれはなかなか容易なことではないということもありまして、殊によほど自信のある銀行でない限り、わざわざ八%銀行になって海外へ出られる必要はないのではないかなということをひそかに思っております。  それから、マネーセンターバンクスの大きな銀行につきましても、私はかつて、二、三年前でございますけれども、ビッグバンになって、国際的にチャンピオンとして競争できる銀行あるいは証券会社はこことこことここぐらいかなというようなことを半分自分なりに仮に考えてみたことがございますけれども、残念ながらいろんな意味でほとんどが傷つきました。傷つくというのは、大したけがでないかもしれませんが社会的に少なくともいろんなことを言われたという意味合いでございますけれども、ちょっとそういう元気がなかなか見えないようになりました。  そういう段階があって、しかし事態は進展いたしますから、海外との提携であるとかあるいは国内における業務の一種の調整であるとか、いろんなことが今行われつつございます。願わくは、その中から国際的な競争能力のある金融機関が幾つかは欲しい、外国と提携でも構いませんけれども、と思っておりますが、やはり一番、デリバティブスなどは弱い方でございますけれども、いわゆるインベストメントバンクというのは日本に伝統がございませんから、提携をするしかないのかなと思いつつ、やはりそこは不良債権の問題とそれからいろいろ、詐欺事件と申すか総会屋と申しますのか、そういうことからくるいろいろな手傷がやっぱりございますものですから、なかなか国際場裏でもう大丈夫でやれるという機関が出るまでにまだ至っていない。いろいろ御努力が続いておりますからやがて幾つかはそうなると思いますけれども、現在のところまだそう申せないのは残念だというふうに思っております。
  186. 海野義孝

    ○海野義孝君 大蔵大臣のこれから二十一世紀に向かっての日本の金融界のあるべき一つの姿といいますか、そういった方向がお話の中にも承れた、このように私は思っているわけであります。  もう一つ大蔵大臣、先週G7にお行きになりまして、そのときのことで、片や今この法案の問題を審議している中でいろいろと話題になったんですけれども、この点ちょっと確認をさせていただきたいと思うんです。  G7の共同声明というのは、ある程度国際的な公約というか、我が国がそれに向かってやはり必死に努力していかなくてはならないということかなと私なりには思いますけれども、その中で日本金融システムの安定には存続可能な銀行への公的支援を含む支援措置の早期立法化が重要というようなことがあるんですね。  これは日本で今いろいろやっているんですけれども、その場合に存続可能ではないと判断する場合の目安、基準、こういったものは一体何かと、これについては今情報開示が不十分でして、私なかなかわかりにくいんです。  私にとって不思議なのは、例えばことしの三月本決算の段階での大手十八ないし十九行の自己資本比率、それとこの九月中間での自己資本比率、この中にはいわゆる当期利益等については確定されていない部分もあるわけですからある程度推測かと思いますけれども、この間、江田先生がたしかパネルでお出しになったのを拝見していたら、ほとんどの銀行が自己資本比率がよくなっていますね。こんな奇怪なことは考えられない。  ということは、要するに今不良債権処理をしているのは、一つは土地の問題、それから株価の問題、こういったものはいずれも三月よりは下がっています。地価も下がっています。株価も下がっています。そしてもう一つは、いわゆる業務純益、これにつきましても三年間ずっと超超低金利で銀行さんにそういう不良債権処理のためにもやはり利ざやを取らせるような、ある面でいうとそういうことでやってきたけれども、この面でもだんだん最近は資金を取るのにコストがかかるようになってきたというようなことで採算は悪くなっている。こういうようになってきますと、あと自己資本だけなんです。これは今だんだん取り崩していっている。  聞くところによれば、日本の大手十九行の中では実質的にいうとほとんど債務超過になっているのではないかというふうなことを分析しているような連中もいる。これは別にそのことを信ずるわけでもなんでもないですけれども、そういうこともまことしやかに書かれている。それをまた読んでいる。それで、みんなそうかなというような疑いのあれを持っている。  そういうような中で存続可能な、あるいはこれは存続させてはいけないと言っては問題あるかと思いますけれども、そういう面で大変今情報不足であるということなんです。だけれども、さっき大臣がおっしゃったように、今回の時間をかけてやってきたということのいい面もかもわかりませんけれども、そういった中で大変日本の金融界もそういった提携の問題であるとか、あるいは言うなれば合併の問題であるとか、いわゆるユニバーサルバンク的な方向に向かっての業務の提携的な動きがあるとか、いろんなことが出たということは私はかなり前進したことではあろう、こう思います。  やはりこれから大事なことは、公的資金などを導入し、そういった戦略的な部門を強化する。大きな銀行二つ、ただ一緒になったって、大きいだけがいいことじゃないわけです。日本銀行はそれでなくても収益が低い。銀行の収益の中の大体三分の二ぐらいは貸し出し業務によっての収益である。いわゆる戦略的な金融商品とか、例えばデリバティブズであるとか、いろんな面で国際的に見ると、先端を行っているような銀行なんかの場合は三分の一ぐらいがそういった貸し出し業務による収益だというようなことも承知しているんです。そういうような中で、これから存続させていくとか、あるいは公的資金を投下していくとか、いろいろそういった金融の健全化スキームということを考えた場合、これはいろいろな問題をはらんでいるということで、私は大変難しいことだと思うんです。  これは、発議者の方々はこれからまたそういった問題にも取り組んでいかれることかと思いますけれども、大臣としてはそういった面について、本来的な金融の再生というものは私はただ法案をつくることじゃないと思うんです。先ほどもどなたが御指摘になっていましたけれども、もっと大きな問題だと。そのためには、セーフティーネットをつくるとかそういうことをまずやるということの先に、二〇〇一年の春からはペイオフ、そういうことになっていったときに、それまでの間にとにかくすべてのことをやっていかなくちゃならぬということからすると、この法案ができるということは、これは要するに終わりでも何でもなくて、つまりこれは始まりであるということだと思うんです。  そういったことを含めて大蔵大臣、ちょっと長々と申し上げてわかりにくかったと思いますが、何か一言。
  187. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 今お話しになりました、昨日でございますか、江田委員がチャートにしてお示しになっておられました自己資本比率でございますが、この九月期の決算はまだ公になつていないはずでございますから、それはまずその点はもう推測であるとしか言いようがございません。  全体として、私の受けました印象と海野委員のおっしゃいます印象と似ておりまして、事態が改善されたと考える理由がどうも余り思い当たりません。極端に回収をしたということぐらいはありそうですが、それだけではどうもああいうことになりそうもございません。丸々うそだと思って申しているわけでもありませんですが、結局、各銀行が自分の、おのおのの物差しで債権を分類し、そして引き当てしている限りは、やっぱり余り客観的に信頼できる、うそをついているという意味じゃございませんが、今度初めて監督庁の検査がありまして、そしてやがては少なくとも検査のマニュアルぐらいな一種のスタンダードができる。今度検査があったことで初めて各行の実態がある程度一つのスタンダードで判断できるものになるのではないか、いわばこれが初めてなのではないかぐらいに極端に言うと思っております。  ですから、これから銀行のよしあしというものが客観的にわかるし、またディスクローズもされる、本当のことはこれからだなというふうに私は感じがいたしております。その上で初めて競争が行われる。今までどうもいろいろ理由が、冒頭にもおっしゃいましたように理由がございましたけれども、残念ながら護送船団のもとでは本当の厳しい自由競争なり厳しい規律なりは十分でなかったと申し上げざるを得ない。これからのことだというふうに思っております。
  188. 海野義孝

    ○海野義孝君 大蔵大臣の本音の部分をおっしゃったと思います。その面をひとつ今後は、護送船団方式から市場原理に基づくそういったビッグバンの中で、我が国もグローバルなそういう標準の中で競争していくという方向に向かって、やはり大蔵省行政としても、何となく最近大蔵省は弱腰というかやや後ろ向きみたいに思いますけれども、私は、今こそ頑張っていただかなくてはならない、そういうようにまた国際的にも期待を日本はされている、こういうように思うわけでございます。  そこで次に、がらりと変わりますが、与謝野通産大臣、大変長い間お待ちいただいて申しわけありませんでした。  きょうここにおいでの委員の各位も御案内かと思いますけれども、私ども昨日、公明としまして、公明・平和として、国民経済の活性化に資するための商品券の支給に関する緊急措置法案というものを参議院の方にお出しをさせていただき才した。  これは、ことしの一月に私どもが、そう言っては僭越ですけれども各党に先駆けて、十兆円の大型の景気対策を早期に打つべきであるということの中で、六兆円の所得税及び法人税等の減税とあわせて商品券方式による四兆円の戻し金給付ということを当時私どもは出させていただいた、そういう構想を発表させていただきました。  これにつきましては、大変不本意ながら、その後、各党におかれましても大型の減税等の御発表があり、さらには四月に前総理が十六兆六千五百億円という総合的な経済対策を御発表になり、そしてそういった中で結果的には選挙で厳しい審判があった。これは、国民皆様方のそういった審判を、どこの党がどうということよりも、我々も厳しく受けとめたわけであります。  そういうような中で、その後、小渕総理になられてから、この問題については本会議あるいは委員会等において折に触れて私どものそのことを申し上げてきました。    〔委員長退席、理事石川弘君着席〕 それに対しては、いろいろと勉強してみるとかあるいは研究してみるとかそういったお話がございました。  実は、つい十日ほど前になりますか、経済・産業委員会におきまして私どもの同僚委員が、当時、与謝野通産大臣がお出ましになっておりましたけれども、そのときにも、かなりそういった御研究されている、検討されているということについて具体的にどうでしょうかというお話を申し上げたときに、これは直接はそのとき御同席の中小企業庁長官がおっしゃいましたけれども、今後、全国の地方自治体がそういう商品券方式による要するに景気浮揚のために具体的にどういうことをやっているかということ、その実態及びその効果等について、これは前向きにひとつ調査をしますということをおっしゃられた。  そのとき通産大臣も御同席されていてお聞きになっていらっしゃったと思うんですが、通産大臣もかねてからいろいろとそういったことについては、要するに景気をよくするために考えられるあらゆることをやっていくということが重要であると。これは今閣僚の皆様方も異口同音にそのことをおっしゃっているし、大蔵大臣もそのことはおっしゃっていることを私も報道等で拝見した記憶があるので、これは間違いないと思います。  そこで、今回、こういった案をお出ししたということに対して、通産大臣、どういうようにこれを受けとめられたかということをちょっとお聞きしたいと思うんです。
  189. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 公明の案を詳しく拝見したわけではございませんが、恐らく皆様方のお考えは、減税をやってもそれが貯蓄に回れば消費に対して全く効果がない、商品券で配付をすればそれが換物行為につながる、また課税最低限以下の方、あるいは特別減税のときに課税最低限は一瞬ですが四百九十万近くまで上がった、それが、所得税減税を恒久的なものにしますときにまた課税最低限が三百六十一万まで下がる、そういうもろもろのことをお考えになった上での私は御提案だというふうに実は受けとめております。  そこで、これが可能かどうかということは、実は実務上の問題がありまして、そういうもろもろのことを少し研究をしなければなりません。それは、日本国内でこういうことを大規模にやった前例もございませんし、諸外国の例も多分少ないと思いますので、そういう実務上のことは研究をする必要があると思っております。  ただ、私個人としては大変関心を持って御提案を見ております。
  190. 海野義孝

    ○海野義孝君 大蔵大臣もちょっと御感想というか御所見、この点につきまして、余りお詳しくはないかと思いますけれども。  今、通産大臣がおっしゃったとおりのような考え方で、私は広く、去年四月から消費税がアップした、それによって本来の所得税等の課税の対象にならないような多くの庶民の方々、そういった方々に対しても、要するに何らかの形で消費をしていただく。そして、確実にやはり消費していただくという意味で、一年間の期限つきでそういった商品券を戻し金給付というような形で国民皆様方に差し上げる。それは、国内に居住されている外国人の登録されている方々も同じように国内で消費をされているわけですので、そういった方も含めてということで、これを景気対策の一つとして、昨日、院の方に出させていただいた。  それに対しての景気対策として私どもとしては考えられる効果的なことを一つでも多く取り入れていこうというような考え方で、今まさにそういうように景気の状況から見ましても来ているんではないかというような感じも持っておりますので、大蔵大臣の率直なお考えをお聞きしたいということです。
  191. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 総理大臣がこれについては関、心を持って検討すると言われておりますが、実は私自身はかなり立ち入って考えてみなきゃならないと思っておる一人であります。  それで、とにかく今の景気というのはちょっと、そんじよそこらのことではなかなか直らないわけでございますから、ふだんなら常識で考えられないことも考えなきゃならぬのじゃないかという思いがありまして、二つの点で今事務当局に検討を指示してございます。  一つは、これは実際可能な方法としては、住民台帳を持っておる地方団体、そこで実施をすることが恐らく一番フィージブルであろう、可能であろう。ただしその場合、負担を地方団体に持ってもらうというわけではありませんで、負担は、これは事務費もあわせて国が持たなきゃならぬと思います。実施は地方団体が一番適当かなと。  次の問題は、どのようなふうにすれば間違いなくいくだろうか。つまり、こういうことには絶えず、にせ商品券であるとか、あるいはすぐそれを持っていって金券として売ってしまうとか、そうすると何にもならないわけでございますから、そういったような思わざる結果をどうやってあらかじめ防止するかとか、そういったような二つの面で実は検討を私は既に指示してございます。  それで、一つは、現実に行うとすれば、地方に実施してもらわなければならないだろうということと、ただし、そのためのコストはこれは国が持たなければならない、それを中心に検討を実はさせております。
  192. 海野義孝

    ○海野義孝君 大変時間超過してしまいましたけれども、自民党の税調の会長さんもやはりこういう商品券減税問題というようなことをたしかきようでしたかの新聞でも何かちょっとコメントされているというようなことで、景気対策というような面からも大変前向きにこの点について多くの方々が政府におかれましてもお考えになっていただいてきたということに対して感謝申し上げると同時に、必ずこれが実現して、少しでも景気の浮揚の一つの引き金になるということを私は念願する次第でございます。  大変ありがとうございました。(拍手)
  193. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 日本共産党の緒方靖夫です。  まず、金融機関不良債権処理の問題についてお伺いしたいと思います。  昨日、公的資金による不良債権の買い取りについて、整理回収機構は売れない可能性を勘案して買うので損は生じない、そういう趣旨の答弁があったと思います。私、実はこれを聞いて非常に驚いたわけです、果たしてこんなことがあるのかと。保岡先生は与党で土地や債権の流動化のことにいろいろ取り組まれてきたと聞いておりますけれども、こういう見解についてどう思われますか。
  194. 保岡興治

    衆議院議員保岡興治君) 不良債権金融機関から切り離して、そしてそこで塩漬けになっている土地を有効利用して日本の経済の活性化につないでいくということは、今の金融再生、再編にとって極めて重要な問題である。また、今厳しい経済環境をよくしていくためにも欠かせないことである。   〔理事石川弘君退席、理事岡利定君着席〕  そういった意味で、一つには金融機関の自助努力のCCPC、共国債権買取機構がいろいろな加盟金融機関から不良資産を集めてそして売却していく。またもう一つ方法は、個別の銀行が努力をしていろいろ売っていく。それからもう一つが、今度金融再生法で道がつけられました、今委員指摘日本版RTC、公的資金不良債権を購入する。    〔理事岡利定君退席、委員長着席〕  いずれも不良資産あるいは不動産担保がついている、こういったものを売却するときの価格でございますけれども、これはいわゆる適正価格手続というのでしょうか、デューデリジェンスによって回収可能性とかその他担保不動産の利用による収益とか、どれぐらいたてば売れるようになるかとか、そういったいろいろな観点の要素を積み上げまして、それによってできるだけ正確に時価を算定して購入する、そういった仕組みをこの際つくろうということで関係者が皆努力をしているところでございます。  恐らく、日本版RTCにおける購入価格もそういった合理的な時価による買い取りということになるものと思います。
  195. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 時価ということは回収可能ということだと思うんですけれども、そうすると、今言われたようにデューデリジェンスあるいは不動産の利用価値を勘案するということで考えたときに、RTCがゼロということを勘案して買う、そして損が生じない、そうしたことは果たしてあるのかと私は思うんです。  それで、ことし四月の総合経済対策では、不良債権処理の促進を図るために住都公団が新たに仕組みをつくりました。これを受けて六月に土地有効利用事業推進本部が設置された。現在、事業本部に持ち込まれた物件数、総面積、それが幾らか、そしてそのうち金融関係機関が持ち込んだ割合、これが幾つか、建設省にお尋ねいたします。
  196. 小川忠男

    政府委員小川忠男君) お答えいたします。  住宅・都市整備公団が七月一日から九月末日までの三カ月間で受け付けた実績でございますが、仮受け付けというふうなことでございますが、件数にして合計二千三百二十五件、面積にいたしまして八百二ヘクタールというふうなことになっております。  このうちのいわゆる金融機関関係分でございますが、例えば共国債権買取機構でございますとか銀行信託銀行等々でございますが、件数で千九百五十三件、全体の約八四%というふうな結果になっております。
  197. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 多くの金融機関が物件を持ち込む、八四%という話がありましたけれども、それは住都公団の土地買い取り価格の基準が収益還元的な価値、これを基礎にしているからなんです。これは当たり前の話です。したがって、整理回収機構が、答弁のとおり持ち込んだ物件を安い金額とかあるいはただ同然で買うとしたら、金融機関が物件を持ち込む必要はないわけです。そうなれば不良債権金融機関が抱え込む、したがって迅速な処理ができない、そういうことになってくるわけです。きのう、民都機構の話がありましたけれども、四年間頑張ってたった二件しか売れなかった、これが厳しい現実なわけです。  仮に、きのう民主党さんが言われたように、ゼロに近い価格で買えたとしましょう。その値引き分というのは銀行の負担になりますね。それから、それは利益を食う。したがって自己資本を食い、だから自己資本比率は下がる。不良債権処理はしなさい、そして安く売りなさい、そういうことになっていったときに、それでは自己資本比率が下がる、こうなりますね。そう言われたらどうするんですか。
  198. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) まず最初に、きのう説明が足りなかったとすればさらに説明させていただきますが、ただ同然という話、限りなくゼロに近いという話を申し上げました。  例えば、不良債権をある金融機関から日本版RTCが買い取るときというのは、いろんな売り買いの仕方があるわけでございまして、一個一個の債権ごとに売る、あるいは債権にとっていた担保を実行してそれを売る、あるいは幾つかの債権をまとめてセットで売る、いろんなケースがあり得るわけでございます。  特に、破綻金融機関からRTCが買い取る場合には、不良債権部分をまとめてセットで買うというふうなケースの方がむしろ一般的なのかなというふうに想定をいたしております。そうした場合には、例えば二十件、三十件という件数の債権のうち、あるものは今もある程度回ってはいる、したがってある程度の回収はできるというものもあるでしょう、その担保権を実行しなくても。あるいは一番ひどいものは、実は担保をとっていたけれどもその担保の物件はなかなか買い手もつかないようなもので限りなくゼロに近いものもあるでしょう。そういったものをトータルして例えば三年間、五年間、利息分まで想定をしてやっていく。ああこれは限りなくゼロに近いものだな、これは例えば何%は回収できるものだなと、そこのところをトータルして買い取り価格を決めるというようなことがございますので、初めからゼロのものをゼロで売るというようなことは想定をいたしておりません。  その上で、今回資産の買い取りという規定を設けましたのは、金融機関に強制はいたしておりません。金融機関から申し出があって、それで日本版RTCが、適正な価格ででもいいんですねということであるならばお買いしましょうという話であります。  したがいまして、それによって自己資本比率が下がるケースというのは当然出てまいります。しかし、日本版RTCが買い取っても例えば第三者に売ってお金にかえることができないような資産であるならば、そもそも当該金融機関にあったときからそれは自己資本の部分で償却をさせておかなければならなかったものが、実は一種の粉飾決算的に回収できそうだというような部分が資産として計上されていたということにほかならないわけであります。  むしろ、そういった実態は価値がないものをバランスシート上価値があるものとして載っけている部分があるから、これを早く処理しないと実態としての各金融機関の体力がわからない、体力がわからないのに水増しの数字だけマーケットに出ているという日本金融機関に対する信用のなさというものが一層悪循環で日本金融機関経営を悪くしている。  したがって、これはできるだけ早く具体的な価値に相当した金額で金融機関も計上させるべきだし、金融機関で回収できない部分を日本版RTCに中坊機関と同じような強制的な権限、強い権限を持たせて少しでも回収して、借り得を許さないようにしょうということの選択肢でつくったという趣旨でございます。
  199. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 実際上、少し訂正されたようですけれども、しかし私は、今どういう形で回収するかと幾つかの例を挙げられましたけれども、いろんなケースがあると思うんです。  その中で、私は思うんですけれども、例えば、今言われたように、自己資本比率が下がってきたときにどうするか。そうすると、結局早期健全化スキーム、そういうことが出てきます。健全な銀行に対しては安い金額で売る。そうすると、それをどう補うかということで結局は預金保険機構からの資本注入必要額が出るということになってくるわけですね、これが。  それから、破綻した銀行の場合にはただ同然で売る。そうすると、結局破綻処理での公的資金の分がその安く買いただいた分だけふえるということですね。結局変わらないわけです。一方のRTCにつながる蛇口を細くすればほかの公的資金処理の蛇口が広がるという、それだけの話なんです。  だから、そうすると、きのう言われたRTCは絶対損をしない、そういう話というのは、結局はRTCだけ見ているからそういうふうになる。仮に、そういうことは現実にあり得ないけれども、あなたが言われたようなことを認めるとして、そういうことになるわけですよ。RTCだけ見ればそうなるかもしれない。しかし、公的資金というのはいろんなところに入るわけでしょう、健全銀行に対しても、それから破綻した銀行についても、今言ったけれども。  ですから、そういうことで言うと、結局ただ同然なんということはあり得ない。そもそもこれだけの不良債権処理するのには相当額必要だ、これが常識です。それをあなた方は、公的資金がこういう形で少なくて済む、自分たちがつくったスキームだからそう言われるのかもしれないんだけれども、やはりそこは非現実的、空想的だ、そう言わざるを得ないと思うんです。
  200. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 私どもは、各金融機関が抱えております実質的な債務超過部分については、預金は保護するということが従来からのお約束でございますので、債務超過部分についてはこれを公的資金で埋めざるを得ないということは従来から一貫して主張をいたしております。  したがいまして、各金融機関が例えば破綻をした場合において、債務超過部分に限りなく限定をしてそこに上乗せされる部分ができるだけ少ない形で公的資金が使われるということでなければならないというふうに考えております。したがいまして、債務超過が大きければ、不良債権が大きければ大きいほど公的資金が使われる額がそれだけ大きくなるのは当然のことだというふうに理解しております。  ただ、そこのところで、例えばしっかりとした資産査定もなく従来の十三兆円スキームのような形でじゃぶじゃぶお金を入れますと、片方から水を入れて片方から水が抜けているというふうな形になりますし、それからわけのわからない経営者の九億円だなんていう退職金のところへ行ったりとか、それから本来返す力がある債務者が返さないというような形でそこでロスになったりというようなことが出てきますので、そういったことをできるだけ防ぐ、本当の実際の債務超過部分についてだけ埋めるようにしていきましょうと。  そのための一つスキームとして、中坊さんの機関は国民的な信頼もありますし、こういったところに不良債権を移すという形で、借り得を許さないというところでそこの道はふさぎましょう、必ず債務超過の部分にしか国有化された金融機関についてはお金は入れませんということもルールできちんととめているわけです。そういった形の中で、債務超過以上の部分はお金をできるだけ使わないという部分で、抜け道は限りなくふさいだつもりでおります。  それで、金額が大きくなるか小さくなるかは実際の債務超過がどれだけなのかというきちんとした査定の結果によって決まりますので、これは正直言って私どもも、巷間言われているよりもしかするともっと大きなお金がかかるのかもしれない、しかしこれは預金者保護のためにはやむを得ない決断であるというふうに思っております。
  201. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 不良債権処理する際に、その額が非常に大きくなる可能性もあるということを今認められた。そうすると、きのう言われたケース、長銀の場合とそれからまた健全銀行の場合、両方あったと思うけれども、あなたはただ同然であるいは非常に安く買い取ることができる、そういうことを言われたと思う。今実際上非常に大きな額の公的資金が投入される可能性があるということを認められた。ですから、やはりきのうのあの発言は余りにも空想的で非現実的だった、私はそのことに驚いたのでこのことを改めて問うたわけです。  私は、はっきり言ってこの問題については実際はどうか、このことを考えていくと、今一括、迅速な処理ということが叫ばれているけれども、相当額の公的資金を使って強力にそして迅速に処理をしていくということが今の実際の考えだと思うんです。そうすると、やっぱり相当な額の公的資金が投入される。それが結果として金融機関からそこにあった不良債権をRTCが買い上げて、そしてそれが結局RTC、国に積もり積もって大量にたまっていく。したがって、言ってしまえば銀行の、金融機関不良債権を解放してRTC、国の方に移してやる、結果としてそういう役割があると私は思うんです。どうなるかわからない、しかしそのときに使われるのは結局国民の税金なんです。  私は、だからその点で、きのうあなたがただ同然とかそういったことを盛んに言われたけれども、それが余りにも誇張され、というよりも空想的だ、そういう話だということを指摘したかったわけです。ですから、その点で、こういう国会の場ですから、ただ同然とかそういう形の答弁というのはやはり私は非常におかしなものだということを率直に指摘しておきたいと思うんです。  それで、私……
  202. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) ちょっと今のお話は不思議な気がするんですが。  日本版RTCが本来客観的に回収可能な金額よりも高い値段で買えば、これは不良債権日本版RTCに移しかえたという話になります。それから、日本版RTCが本来回収可能な金額よりも低い価格で買えば、これは本来ロスが生じない金融機関の方の債務超過額が膨らむということになります。いずれにしても、これは許されることではありません。  もちろん、これは価格の査定の問題ですので、神ならぬ身がぴちっとした数字で一〇〇%正確にすることはできませんが、限りなく回収可能な金額よりも上にも下にも行かないように努力をするということであるならば、基本的には日本版RTCにおかしな不良債権がたまることも、逆に金融機関の方におかしなロスが余計に生じることもこれは理論的にあり得ません。もちろん、査定の問題ですから一〇〇%そのとおりにはなりませんけれども、そこのところは法律でしっかりとそういったことをやりますということであります。  それから、昨日、ただ同然というお話を確かに申し上げましたが、御質問の中で、確かに土地の中には未来永劫買い手がつかないであろうと想定をされるような不動産というものも存在はし得ます。これについてどうしても買ってくれとか、あるいはこれは破綻金融機関についてはきちんと移さなければならないというときには、ほかの債権とのトータルの査定の中で実際に限りなくゼロに近い査定をされてトータルとしての金額がつくことはあり得るでしょうということを申し上げた趣旨でありまして、まさに日本版RTCに不良債権をためないということをするためには、限りなく売れる可能性のない土地については、そういった可能性は私は否定はできないというふうに思っています。
  203. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 話がまたもとに戻るんですけれども、そういったことが実際には起こり得ないというのが今の現実であるわけです。ですから、私はそのことをきちっと述べておきたいと思うんです。  それで、私はここで筆坂議員に伺いたいと思いますけれども日本共産党が不良債権問題についてどう考えているのか、その点いかがでしょうか。
  204. 筆坂秀世

    委員以外の議員筆坂秀世君) 緒方議員にお答えいたします。  私、今不良債権処理問題でこの処理を急がなければならないというのは、これは当然のことだと思うんです。問題は、何でこれがこんなにおくれてきたのかということだと思うんです。今まで全く手を打ってこなかったわけじゃないんです。例えば、超低金利政策をとってきました。あるいは無税償却、この適用をたびたび拡大してきました。それにもかかわらず不良債権処理は一向に進まなかった。  なぜかといえば、私、一番の元凶は公的資金の投入にある、あるいは公的支援にある、事実上の。幾ら不良債権を抱えておったっていずれは国が面倒を見てくれるということになるわけです。ですから、損切りしないで不良債権を持ち続けるということになってきた。もし超低金利政策であるとかあるいは無税償却の拡大であるとか、こうした事実上の公的資金の投入あるいは公的支援、こういうものがなければ、これはみずからの努力で当然やるべきことなんです。それを怠らせてきたというのが私たちの考え方です。だからこそ私たちは公的資金の投入はやるべきじゃない。これは、今度もしゃれば、例えば不良債権を買い取る、このために公的資金を使う、そして自己資本が低下すればそこへまた公的資金を入れる、資本注入するということになるわけで、ですからこういうやり方はやるべきじゃない。  いま一つは、やはり実体経済の問題があると思うんです。例えば九七年三月期と九八年三月期を見ましたら、銀行金融機関の抱える不良債権は約三兆円ふえてます。減っていないんです。何でかというと、これは実体経済が悪くなった。だから、バブルのときだけじゃない、新たな不良債権も加わってきた。ですから、その点では昨年四月からの消費税増税を初めとする九兆円負担増、これが実体経済をうんと冷え込ませてしまった。いわば不良債権をふやす路線だった。  私たち、先日、消費税三%への引き下げ法案を他会派の皆さんとも力を合わせて出しましたけれども、本当に実体経済をよくしていく、そのためには、GDPの六割を占めている個人消費を拡大していく、これはいわば不良債権をふやす経済政策じゃなくて減らす政策だ、これもあわせて今不良債権処理を進めていく上で非常に大事だというふうに考えています。
  205. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 私は、この問題に関連して、次に長銀問題について伺いたいと思うんです。  修正案は長銀処理を念頭に置いたものだということになりますけれども、ここに私は長銀のことし三月期の融資状況を示した内部資料を持ってまいりました。これを見ると、上位五十社グループへの融資総額は七兆五千八百億円、長銀全体の融資額十六兆八千七百億円の四五%を占めているわけです。このうち、系列ノンバンク日本リースが一位、日本ランディックは四位、エヌイーディーは八位といずれも上位、三社の関係会社を含め四十九社に一兆一千四百九十億円の巨額融資をしているわけです。関係会社には多くの不良債権を抱えたペーパーカンパニーも含まれています。長銀が八月に示した五千二百億円の債権放棄額を大きく上回ることは明らかです。  法案により、国が不良債権処理の面倒を見るならこの点でも莫大な税金を投じることになってしまう、そう思うんですけれども、その点いかがですか。
  206. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) この間の修正協議過程の中で、まさに当初の日本リース関連ノンバンク、ペーパーカンパニー等への長銀債権を放棄するというような話をやめさせるために、私どもは日夜協議といいますか折衝を重ねてまいりまして、私どもの強硬な姿勢の結果として、野中官房長官が債権放棄をあきらめるという声明を出さざるを得なくなったというふうに理解をいたしております。  逆方向から、民主党のせいで日本リースは倒産したんじゃないかというような御批判もいただいているような状況でございまして、まさに私どもはそういった不透明な債権放棄によって公的資金がおかしな使われ方をしないことのためにこの間一カ月余り努力をしてきたということは、国民の皆さんが一番御存じだというふうに理解をしております。
  207. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 しかし、こういう実態、これが明らかになるのが非常に大事。その点で情報開示等々を強く要求されているということはよく知っております。  しかし私は、この法案には、検査結果が明らかになり、そして情報開示がされてからこの長銀処理に入る仕組み、それはないと思うんです。ありますか。
  208. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 長銀処理に入る前段階での資産の査定、情報開示という問題につきましては、基本的に情報開示の規定ということで、第三章六条以下で資産査定の報告、一般的に規定を置かせていただいております。本来の法律の順番からいえば、これに基づいた資産の査定、そして公表の過程の後に五十三条あるいは五十四条等の規定に基づいて特別公的管理に入るということが、理論上はそういった段取りになると思います。  ただ、御承知のとおり、日本で金融検査・監督ということは既に存在しておりますので、この法律施行前から金融監督庁による監督・検査はなされております。それに基づく情報は金融監督庁、ある程度持っているでありましょう。そのデータに基づきまして、例えば五十三条や五十四条に基づく申請が、申請といいますか申し出がこれに該当するような状況がありましたら、これは危機管理でございますので、その段階で動き出さざるを得ないということは当然あり得るというふうに想定しております。
  209. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 しかし、この法案の条項を見ても、結局長銀が今のあいまいなままで申し込みをする、そしてそれが受理されるという可能性を否定する担保はないわけです。ですから私は、その点をそういう条項のままでこの法律を通す、そのことがやはり非常に大きな問題だということを指摘しておきたいと思うんです。  それから、資料によると、長銀日本リースなど三社以外にも関連会社二十三社に一兆三千億円の融資をしております。そのうち日比谷総合開発、エル都市開発、日本ビルプロヂェクトは、決算書によると既に大幅な超過債務になるわけです。そして、こうした経営実態が隠されたもとで修正案の成立を先行させるということは、結局はやはり長銀の乱脈経営を不問に付したまま、そしてまた長銀を国の責任処理するということになってしまう。私はこういう仕組みをつくっていくことになるんじゃないかと思うんです。
  210. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 多分私がこれから申し上げる点で御理解をいただけていないところでそごが生じるのかなというふうに思っておりますが、特別公的管理に入るということは、本来であれば金融機関ではしたくない、つまり破産を申し立てるであるとか会社更正を申し立てるであるとかということと並ぶような話であります。  つまり、特別公的管理に入るということは、公平な第三者に、破産管財人のような立場の人間に経営権を全部奪われます。資産査定をすれば長銀の場合は債務超過と想定されますので、株主の権利もゼロになります。その上で清算、整理、破産の手続と同じような清算の整理が新しい経営陣によって行われてまいります。  したがいまして、特別公的管理に入る前の段階で査定が行われていない、公表が行われていないと。それはもちろん行われた方がいいと思いますが、当然のことながら今の体制のもとで公開をさせていくということには、例えばことしの九月の中間決算をこれから査定をさせ公表をさせてということでは三カ月、四カ月という期間が当然必要になるでありましょう。その間に何か起こってしまって、そのときには要するに金融機関を突然死させますと、これは大変ハレーションが大きいということを我々考えておりまして、そこのところは何とかしなきゃならないということで、そういった段階でおかしなことになった場合でも特別公的管理に入れるようにしております。  特別公的管理に入ると何か銀行が救われるというようなイメージをお持ちのようでございますが、経営者も株主も、それから従業員についても一たん全員解雇をして必要な分だけ再雇用するという想定で、当然の前提でこの法案は進んでおります。株式会社の三要素でございます株主も経営者も従業員も、いずれもすべて事実上入れかえるというか権利をゼロにするということでございますので、これは銀行側としてはもう破産と同様の処理をされるんだというような実態になるというふうに理解しております。
  211. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 そういう中身を私たちは今やれ、今やるべきだということを強く要求しているところなんです、もちろん今の全体の体制がありますけれども。  長銀のことについて言いますと、長銀の融資先上位の五十社の中には、長銀関係会社のほかにも大量の不良債権を抱える企業が名を連ねているわけです。例えば、長銀がメーンバンクの不動産会社エルカクエイというのがあります。歴代社長は全員が長銀のOB、そのほか役員も十二人中五人が長銀のOB、役員以外の部長、副部長クラスにも長銀OBが就任するという、事実上長銀の丸抱えの企業なわけです。長銀もエルカクエイを支店がわりに利用して、投資有価証券として日本リース日本ランディックなどの株を四十五万株も持たせている。エルカクエイはバブル時代に不動産担保融資にのめり込んで、最盛期は売り上げの二五%も占めるという状況に膨らんだわけです。この資金の大部分を融資したのが長銀。  ところが、バブルの崩壊で多くが焦げつく、巨額の不良債権を抱え込む、そして長銀を一時国有化し国が責任を持って管理することになる。そういうことになると、整理回収機構から出るかあるいは別から出るか、いずれにしても莫大な税金がかかる、こうなるわけです。そうすると、先ほどのお話にもなりますけれども、一円の公的資金も投入せずに長銀処理ができるわけがない、これははっきりするじゃないですか。
  212. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 私の方は一円の公的資金も使わずに処理できるなどということは申し上げているつもりは一度もありません。債務超過に相当する部分は預金者保護のために必要だと申し上げております。  そうした中で必要なことは、今のような融資先についてまず厳しく取り立てる、取れるだけ取り立てる、これをひとつきちんとやらなければなりません。それはあらゆる融資先に対して、少なくとも企業として継続をして将来回収できるという見込みのない企業についてはすべてきちんと回収をする、一円でも多く取るということをしっかりやる。それから、従来の経営について責任を負っていた関係者については、これは損害賠償請求訴訟になるのか、あるいは取締役としての契約上の責任になるのか、さまざまな形はあると思いますが、こうした関係者から一円でも多く回収をしてそれでロスを埋めていく。  従来、不正な融資があったとしても、そういった形で回収をしてそれを弁済に充てる以外にはロスを埋める方法はございません。そのロスを預金者に負担をさせていいのかという判断であるならば、それは一つの判断だろうと思いますが、二〇〇一年までは預金については全額政治の責任で守るという約束をしておりますので、そういった関係者にすべて搾れるだけ搾り取った上で、足りない部分は税金を使わせていただく、このことについては私ども一貫してそういった主張をさせていただいております。
  213. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 いずれにしても、この処理に莫大な相当額の税金が投入されるということは非常にはっきりしているわけですね。私はやっぱりそれが非常に大きな問題だということを指摘しておきたいと思うんです。  この問題について、エルカクエイについてなんですけれども、新事業を手がけるたびに次々と関係会社をつくってきたわけです。今や数は七社に上り、さらに延長線上で大規模なリゾート開発に手を伸ばす。千葉県ではエストーレホテルアンドテニスクラブとか季美の森ゴルフ倶楽部とかを経営している。私は二つの所在地の土地の登記簿謄本を調べてみましたけれども、両施設とも全く無担保だと、そういう状況なわけです。  さきにも述べましたけれども、エルカクエイは深刻な経営状況にあります。レジャー施設やあるいはその建設資金をすべて現金で賄ったとは到底考えられないわけですよ。一方、資料によると、長銀はエルカクエイに一千九百億円も融資している。これらの土地に担保権を一切設定していないわけです。  私はこういう状況を見たときに、これは金融監督庁にお伺いしたいんですけれども、こうした実態を把握しているのかどうか、その点をお伺いいたします。
  214. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) お答えいたします。  金融監督庁検査の面でいいますと、銀行法に基づきまして当該金融機関あるいは当該金融機関の子会社に対する検査権限を有しておりますので、当然それらの金融機関についての検査はしっかりやっておりますし、それから当該金融機関が貸し出している債務者につきましても、その債務者の財務内容等についてはもう関連会社ということでしっかり調べております。  ただいま委員がいろいろよくお調べになっておられますが、当然長銀の貸出先についてはどういう関連会社であるかというようなことは私どもとしては鋭意把握しておりますし、また把握しなければならないというふうに考えております。
  215. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 今の私が述べた点についても把握されているわけですか。
  216. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) 具体的な貸出先との関係については、個別のことでございますので答弁は差し控えさせていただきたいと思いますが、一般的に申し上げて、先ほど申し上げたような方法長銀の貸出先についてはできるだけ調べているところでございます。
  217. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 いつもそう答えるわけです。私は、これは商法の特別背任罪に当たる、そういうふうに思います。ですから、その点でやはり監督庁としてもしっかり調査していただきたい。相手は東証一部上場企業なんです。そのことを述べておきたいと思います。  次に、自民党の早期健全化スキームについてお伺いいたします。  これは二日に発表され、そして昨日修正案を出したというものですけれども、そこで私は、自民党案によると、自己資本比率が八%以上の健全銀行にも、銀行側の申し出により優先株等を引き受けることになっているわけですけれども、その導入した理由、これをお尋ねいたします。
  218. 保岡興治

    衆議院議員保岡興治君) きょう、金融機能の早期健全化の緊急措置法について、衆議院の方に自由民主党議員立法として提案させていただきました。  その中には、自己資本比率八%以上の金融機関についても、デフレスパイラルとか金融危機回避、あるいは地域経済、雇用、こういったものに影響が大きく出てくる場合には、申請によって優先株式等の引き受けの対象とするということになっております。その際には、経営者責任あるいはリストラ等、厳格な、明確な要件のもとにしかるべき措置をとることが要件になっておるところでございます。
  219. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 破綻した金融機関の受け皿になる金融機関への優先株の引き受け、これは可能にするということですね、この案によって。さらに、経営の悪化した著しい過少銀行あるいは自己資本比率が八%以下、これでも普通株を引き受ける。公的資金導入がこういう面でもできる仕組みをつくることになるわけですけれども、このスキームで対象とならない金融機関はありますか。
  220. 保岡興治

    衆議院議員保岡興治君) これについては、要件に該当する金融機関は対象になるけれども、要件に該当しない金融機関は対象にならないという  ことでございます。
  221. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 それは当たり前じゃないですか、そんなことは。その辺ははっきりしていないんですか。(「まじめに答えろ」と呼ぶ者あり)
  222. 保岡興治

    衆議院議員保岡興治君) しかし、最もまじめに答えての答弁でありまして、要件に該当する場合というのは、経済・金融情勢の変化によって、ある銀行については場合によってはその要件を満たせば対象になるし、そうでなければならない、こういうことです。
  223. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 法案として提出されて、どこに適用されるのかということがはっきりしない。これは自民党の提案ですから、あなた自身どういうことになるかということについてやっぱり答える必要があると思うんですけれども、今の答えだけで終わりですか。要するに、どこに適用するかということについて全く案がないんですか。今当たり前のことを言われたわけですね。
  224. 保岡興治

    衆議院議員保岡興治君) 優先株の引き受け等あるいは普通株の引き受け等、資本金融機関に入れる際の要件がそれぞれ決まっておりまして、その要件に沿って資本注入等を行う、こういうことでございまして、金融再生のために、あるいは再編のために必要な場合もありましょうし、また信用収縮など非常に急激に起こった場合に対応する場合もありますし、また内外のシステミックリスクの回避に対応する場合もあるということでございます。
  225. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 信用収縮の対応なんということを今言われましたけれども、十三兆円を使って、この三月に一・八兆円注入した結果がどういうことだったかということはもう非常にはっきりしているわけで、またここで貸し渋り等々の問題を出すというのはおこがましいと私は思います。  今説明されたことともあわせて、結局今度の修正案というのは八%以上の銀行にも適用される。それから、過少資本銀行にも、それから破綻の蓋然性が高い銀行にも資本の注入は可能になる。そうすると、十三兆円のスキームは廃止される。ところが、金融機関の体質強化、そういう新しい名のもとに、結局十三兆円のスキームをさらに幅を広げて使いやすくする、使い勝手をよくする、そういうものになるんじゃありませんか。
  226. 保岡興治

    衆議院議員保岡興治君) 今度の新しい資本増強制度というものは、資本増強に当たってリストラとか経営責任とか、株主の責任について従来よりより厳格な、明確な条件をつけるとか、その他、合併等金融再編を十分視野に入れた仕組み、先ほども申し上げたような急激な、また重大な信用収縮につながるような場合、あるいはシステミックリスクに対応するような場合など、要件を明確にして、またそのための金融機関の対応ぶりについても、きちっとした経営健全化の計画を出させたり、いろいろそれをフォローアップするなど、きちっとその目的を達成するように工夫がしてあるところでございます。
  227. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 いろいろ言われたけれども、十三兆円のあのスキームの復活だけではなくて、さらにその枠を広げたものだということは皆指摘しているわけですよ、マスコミでも。一々挙げませんけれども。  それで、私はお尋ねしたいんだけれども、この規模、どのぐらいの額を予定しているのか、お尋ねいたします。きょうの修正案を読むと、政府負担の分が十兆とかいろいろ書かれておりますけれども、どのぐらいの予定ですか。
  228. 保岡興治

    衆議院議員保岡興治君) 法案の附則において十兆円の枠ということでございます。
  229. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 大蔵大臣にお尋ねします。  大蔵大臣は、今のと数え方が少し違うのかもしれないのだけれども、昨日、閣議の後に、十三兆円を下らないということを言われていると報道されております。あるいはまた、アメリカでもそういう話をしたということが報じられておりますけれども大蔵大臣としてこの規模をどのぐらいに考えておられますか。
  230. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私が問いに答えて申しましたのは、今のは健全化法案のことを言われたんだと思いますが、金融再生勘定にも金が要るに違いありませんので、その両方を考えなきゃいけないということを申しましたんです。
  231. 緒方靖夫

    ○緒方靖夫君 はっきりした形で幾らということが言いにくいのかもしれませんけれども。  私は、もう時間も参りましたので、改めて、十三兆円のこのスキーム、これが廃止される。しかし、自民党が進めようとしているこの新しいスキーム、今修正案が示されておりますけれども、これは結局、これまでの健全銀行だけを対象としていたその枠を過少資本銀行にも破綻の蓋然性が高い銀行にも全部広げていくという、そういう中身になるわけで、やはり私はその点が非常に重大であるということをはっきりと指摘しておきたいと思うんです。  そして、特にこの会期末、きょう会期が延長されましたけれども、そうした中で十分な国会審議が行われないまま、とりわけ参議院においては本当に不十分なままこの法案が通されるようなやり方、私はこれは本当に重大な問題だ、このことを指摘して、質問を終わります。(拍手)
  232. 三重野栄子

    三重野栄子君 社会民主党の三重野栄子でございます。  債権管理回収業に関する特別措置法外十一案件に関する質問に先立ちまして、これらの課題は何よりもまず国民の理解を得ながら進めるべきでありまして、それには金融行政の透明性の確保にあると考えます。  そこで、現在、日本銀行及び金融監督庁のうち、証券取引等監視委員会については年次報告書が国会提出されておりますが、それ以外は、過去及び現在の大蔵省の金融部局、証券取引等監視委員会を除く金融監督庁は報告書の作成がなく、預金保険機構も簡単な年報の作成しかしておりません。これでは金融行政に対する国民の理解を得ることが難しいこと、昨年十二月の総務庁の行政監察でも指摘されているところでございます。  行政監察による総務庁の勧告に対しまして、六月に金融監督庁へ業務が移る前の大蔵省は、金融検査の実施状況について定期的に取りまとめ公表する方向、あるいは破綻処理を行う際には検査により明らかになったものを含め開示しており、拓銀の例がある、あるいはまた金融検査・監督に係る情報のより一層の公開に努めるべく公開内容、公開方法の実施を検討する等の回答をしております。  そこで、大蔵省及び大蔵省の業務を引き継いだ金融監督庁では、現在どのような情報公開を行い、その拡充についてどのような検討を行っておられるか、また拓銀以外の破綻処理ではどのような情報開示を行っておられるか、大蔵大臣並びに金融監督庁長官にお伺いをいたします。
  233. 日野正晴

    政府委員日野正晴君) お答えいたします。  金融監督庁は、御案内のとおり、去る六月二十二日に発足したばかりでございまして、まだ一年たっておりませんので、年次報告書といった立派なものを提出あるいは作成するような段階に至っていないということをまず御理解いただきたいと思います。  しかし、金融行政に関しましてその情報を国民皆様方に適切に提供していくということは、これから金融監督庁が金融行政を開かれたものにしていくということから考えますと、大変重要なことであるというふうに考えております。  実はその都度、事あるごとにといいますか、金融行政を遂行する上でいろいろ問題が起きたときなどには新聞発表あるいは長官の談話という形で発表させていただいておりますが、インターネットでホームページを出させていただいております。このホームページをごらんいただきますと、現在の金融監督庁、それから下の方には証券取引委員会のホームページも一緒についておりまして、それをインターネットでごらんいただければ、少なくとも金融監督庁が現在どういつだことをしているかということは御理解いただけるのではないだろうかと思います。  それから、破綻金融機関についての情報開示のあり方についての御質問がございましたが、これは実はきのうでございますか、拓銀につきましては清算検査をいたしましたので、私ども検査いたしました拓銀の清算検査の結果を分類債権ごとに発表させていただいたところでございまして、これは新聞等でも公表されているところでございます。  そのほか拓銀以外の金融機関破綻の際にどういつだ情報が開示されているかということでございますが、例えば、最近では、山一証券の場合は簿外債務状況、顧客からの預かり資産の保全状況、それから北拓の場合には今申し上げましたように、破綻した際には受け皿銀行に対して業務を引き継ぐ際に総資産の査定状況などについても発表させていただいているところでございますが、冒頭にも申し上げましたように、これから開かれた金融行政ということを目指すために、できるだけいろいろな形で国民皆様方にこの情報を開示してまいりたいと考えているところでございます。
  234. 三重野栄子

    三重野栄子君 大蔵大臣はいかがでしょうか。
  235. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) ただいま監督庁長官の言われたとおりでございます。
  236. 三重野栄子

    三重野栄子君 開かれた金融行政という方向を伺いまして、大変期待をいたします。インターネットのホームページが開かれたそうでございまして、私も開いておりますので、これから再々見せていただきたいというふうに思います。  次に、発議者のうちの民主党さんにお尋ねしたいわけでございますけれども、野党提案の金融機能再生のための緊急措置に関する法律案第五条では、「政府は、おおむね六月に一回、又はその求めがあったときは直ちに、破綻した金融機関処理のために講じた措置の内容その他金融機関破綻処理状況国会に報告しなければならない。」と記載されておりますが、その具体的内容として、どこがどのようなことをつくるとお考えでしょうか、お伺いいたします。
  237. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) 最近、片仮名でアカウンタビリティーという言葉がよく使われております。わざわざそういう言葉を用いるまでもなく、事金融行政については国民や議会への説明というのは大変重要だと考えております。そこで、金融機能再生法案の第五条では、政府破綻金融機関処理のために講じた措置の内容等について国会に報告することにしております。  報告事項としては、例えばこの法律による金融整理管財人による管理を命ずる処分、また承継銀行の設立、さらには特別公的管理の開始決定、資産の買い取り、預金保険法による資金援助等々、金融再生委員会が実施した措置、そして預金保険機構が行った措置の内容等が考えられます。  報告は政府が行うのでありますが、具体的には金融再生委員会が作成することになろうかと考えております。
  238. 三重野栄子

    三重野栄子君 それぞれのところで開かれた金融行政が方向づけられていることを大変心強く思います。  そこで、具体的問題でございますが、中小企業金融貸し渋り問題についてお尋ねしてまいりたいと思います。  広範かつ陰湿な貸し渋り金融機関をやめさせ、中小企業向け融資や信用補完制度をさらに充実し、日本経済を支える中小零細企業の資金調達環境を改善すべきだと思っております。私たち社会民主党は、一般金融機関に対する公的資金投入が善良かつ健全な借り手保護や、あるいは地球経済、雇用対策に資するものであることを鮮明に規定することが公的資金投入に対する国民批判にもこたえることになると考えまして、金融機関に対する明確な貸出実行計画の提出を義務づける。同時に、市場の正常な淘汰作用を通じまして、我が国のオーバーバンキング体制の抜本的な再編合理化を断行する観点から、その吸収合併も含めまして、民間受け皿銀行等に対する自己資本充実策を公開制の原則のもとに適時適切に講じていくということを私ども考えているのでございます。  そこで、貸し渋りの問題でございますが、通商産業省は、昨年、民間金融機関の貸し渋り及び中小企業資金調達状況について、「「貸し渋り」の現状と今後の見通しについて」という実態調査を行っておりますが、現在の状況はいかがでしょうか、通商産業大臣にお伺いいたします。
  239. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 九月の段階での調査では、まだ中小企業者のうち三四%程度が貸し渋りに悩んでおられるということですから、三分の一の中小企業は苦しんでおられる、そういう状況だと我々は認識しております。
  240. 三重野栄子

    三重野栄子君 そこで、通産省の最新の調査結果、九八年七月時点でございますけれども、相当数の中小企業が金利引き上げや担保、保証条件の厳格化、あるいは審査期間の長期化といった民間金融機関の貸し渋りに懸念、不安を示しています。今も三四%すいうことを伺ったところでございますが、そういう状況の中で、政府金融機関は今こそ市場の補完性を発揮して中小企業に手厚い資金供給を行うべきであると考えるのであります。  昨年十一月から緊急経済対策が実施されておりますが、中小企業金融公庫や信用保証協会などの貸出保証残高などに全く変化がありません。本来ならば増加に転じてよさそうですけれども、最近の貸出保証残高の推移はどのようになっているでしょうか。  問題の一つとなっている多量の提出書類や長期にわたる審査期間を解消し、融資手続、審査の迅速化を図るべきではないかと思いますが、いかがお考えでしょうか。
  241. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 政府は、昨年秋以降、累次の経済対策を講じてきたところでございますが、これらの対策に基づく中小企業向けの貸出保証実績を見ますと、昨年十二月から本年九月末までの間に、政府系中小企業金融三機関において融資実績が約六兆二千億、前年同期比約一八%の増加でございます。信用保証協会においては、保証実績が十三兆九千億円、前年同期比約一〇%増となっております。  それから、前段の先生の御指摘のとおり、手続等々あらゆる面で政府金融機関に対しては親切、親身に対応するようによく指示をしております。
  242. 三重野栄子

    三重野栄子君 いろいろ御指導があっているようでございますが、融資審査システムの転換についてもお尋ねしたいというふうに思います。  現在、政府系、民間を問わず、金融機関の融資審査は土地を中心とする物的担保によって行われております。けれども、土地など不動産を有していなかったり、あるいは現在のように地価下落によりますと、担保価値が減少している中小零細企業や新規開業者にとっては極めて難しいのが現実であると考えます。  特許を初めとする知的財産を担保にした融資制度への転換、経営能力や技術開発力など総合的な評価に基づく審査システムに転化すべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  243. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 先生のおっしゃっていることは同感するところが多いわけでございます。  通産省といたしましても、融資の審査においては中小企業に対する資金供給の円滑化という観点から、担保徴求のあり方を含めまして多面的に検討することは重要と考えております。  政府系中小企業金融機関においては、融資審査を行うに当たりまして貸付先からの情報に加えまして、当該企業の取引先、取引銀行、業界関係者等からも情報を収集し、その成長性、発展性という長期的観点にも立って融資を判断しております。  さらに、例えば中小企業金融公庫においては、民間金融機関が通常対象としない機械設備等の動産、ソフトウェアを担保の対象とするなど、担保の範囲のとり方、評価を弾力的に行っております。また、担保が不足しがちなベンチャー企業の育成を目的とした特別貸付制度において貸付額の二分の一まで担保徴求を免除する特例を設けております。
  244. 三重野栄子

    三重野栄子君 システムの転換については大変努力をいただいているようでございますが、ここでもう一度中小企業金融対策について改めて伺いたいと思います。  十月一日実施の中小企業金融対策に関連してでございますが、私たち社会民主党は、昨年の緊急経済対策を取りまとめました段階から中小企業者への低利な特別融資枠の拡大を主張してまいりました。とりわけ、信用保証協会は無担保・無保証人での保証枠を拡大し、無償限度枠を二ないし四割、現行の七百五十万円を九百万ないしは千五十万に増額するという提案を繰り返し行ってきたところでございますが、  今回、私たち社民党が主張してまいりました方向で信用補完制度の拡充、無担保保証の特別小口保険の限度額が一千万円に引き上げられたわけでございますけれども、そういう実施がされまして貸し渋りが一刻も早く解消されることを私どもは期待をしているところでございます。  八月の閣議決定の貸し渋り対策に基づきまして、今回一連の金融対策で中小企業に対する貸し渋りがどの程度解消されるとお考えでしょうか、通商産業大臣にお伺いいたします。
  245. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 政府が決定いたしまして十月一日から実施しております中小企業の金融に関する施策というのは、次のようなことで成り立っております。  まず、政府金融機関の持っておりますお金、いわゆる融資ができるお金というのはおおむね二十兆ございます。そういうことですから、まずその二十兆は中小企業対策として三機関の窓口が親切、親身に中小企業の方の実情を聞いて融資を考える、審査を考えると。まずその量的な面での対策でございます。  次には、先生がおっしゃった保証ということですが、これは中小企業の方が一般の銀行に行って、一般の金融機関に行ってお金を借りたいと、それで貸してあげましょう、あなたの保証人と担保はどうですかと言っても、なかなか保証人とか担保とかということがうまくいかないでお金が借りられない、こういう声が全国から大きく出てまいりまして、それではということで特別枠で二十兆円の保証を行えるよういたしました。  この保証を行いますのは、全国の各県にございます保証協会が保証をすべきかどうかという審査をいたしまして、保証料をいただいて従来から保証をしていたものですが、その保証料自体も中小企業の負担となりますから、この特別枠につきましては、従来の保証料を下げまして使いやすい保証制度にしたわけです。  それと同時に、従来どおり保証協会が業務をやっておりますとどうしても保証渋りというような御批判を受けるわけでございますので、全国の保証協会の方々に東京にお集まりいただき、保証に当たっては中小企業の現況に照らして弾力的な保証を行うようにということを徹底したわけでございます。  従来でございますと、お金を貸してそれが貸し倒れになるといいますか、いわゆる代位弁済を行うというのは大体貸し出したものに対して二%ぐらいでございましたけれども、今回のリスクのとり方は大体一〇%ぐらいまではリスクをとってもいいということですから、相当程度私は貸し出しがふえていくものと思っております。  何しろ十月一日にこの特別枠を発足したばかりでございますので、まだ実績の問題として先生には御報告できませんが、各県の保証協会に対する問い合わせ等を考えますと、中小企業の皆様方は非常に大きな関心を持っておられるということはわかっておるわけでございます。
  246. 三重野栄子

    三重野栄子君 なかなかそういう細かいところまで存じませんでしたが、どこに行きましてももう貸し渋り貸し渋り、その声でいっぱいでございますので、今お答えいただきましたようなことをやはり私どもも広げる必要があろうかと思います。  ここで、事前にお願いしておりませんでしたけれども発議者としてお出になっておられる党で、通産省がお示しになったわけじゃなくてそれぞれがお考えになっております貸し渋り対策、これを一掃するにはどうすればいいかというお考えがございましたらお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。
  247. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 貸し渋りについてはさまざまな手段をとらなければいけないというふうに思っております。  一つには、今も御議論がございました信用保証協会につきましては、衆議院の方で野党三会派の方から共同して、信用保証協会の融資が拡大をするとともに、特に第Ⅱ分類等に該当されているけれども本業自体では利益が上がっているような企業に対して、破綻処理過程で連鎖倒産など生じないように、こういった趣旨の提案を既に国会提出させていただいております。  それから、本質的な問題としてなぜ貸し渋りが今生じておるかといいますと、先ほど来の議論でも出ておりますように、各金融機関、名目上の自己資本比率は高いけれども、実態として本当に不良債権等の引き当てをしていきますと実は非常に過少資本状態にあるという、このギャップが生じております。したがいまして、そのギャップを埋めるために貸し渋りあるいは資金の引き揚げということをせざるを得ないような状況になっていると思っております。  私どもは、このギャップをまず埋める、きちんと実態を明らかにする。そうすると過少資本状態になる金融機関が明白になってくることもあろうかと思います。そうしたことの実態が明らかになった場合については、そしてなおかつ関係者責任をきちんと問うという条件の上で公的資金を使って自己資本を充実させる。これによって実質的に、例えば国際業務を行っている金融機関であれば八%、国内行であれば四%を超える自己資本が実質的にも存在をしていれば貸し渋りあるいは融資の引き揚げということは必要がなくなるわけでございますので、こういった抜本的な対策が必要であろう。  それから、きょうの議論の中で出てきておりますが、特に中小零細企業に対する対応といたしましては、実はここで主に議論されている大手十九行、都市銀行の問題以上に、地域に密着をした、例えば第二地銀でありますとかあるいはさらには信用金庫、信用組合、こういったところの融資機能を充実させる必要があろう。  特に、土地を担保にした融資ではなくて、その企業としての成長性というものを担保としてお金を融資しようとしましたら、地域に密着をして経営者の資質等をしっかりと判断できるのはむしろ信用金庫などのようなところではないだろうかつこういったところに資金をつけていく対策を私ども民主党としても提言をし始めておるところでありますし、可能であれば法案としても出していくようなことも考えていきたいというふうに思っております。
  248. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 私は、貸し渋りというのは現在まで続いておりますけれども、今後祈るような気持ちで思っておりますのは、銀行が自己防衛的になってさらに信用が収縮することのない  ように私は実は祈っております。  しかしながら、世の中の風潮というのはそういう方向に進む危険性もあるわけでございまして、その点は我々としては十分考えていかなければならない。国会でせっかくこういう金融安定化法案議論し成立させた後に、逆にそれが信用収縮につながるということでは国会の意図したものとは全く別のことになりますので、そういう意味では我々は十分いろいろな面で心していかなければならない点があるのだろうと思っております。
  249. 三重野栄子

    三重野栄子君 ありがとうございました。  今、民主党並びに通商産業大臣にお答えいただきましたが、自民党さんはいかがでございましょうか。大変失礼しました、今おいでになりましたから、事前にお願いしておりませんが。貸し渋りについて解消対策を伺っておるのです。突然で恐縮でございます。
  250. 津島雄二

    衆議院議員(津島雄二君) 御質問への準備がないわけでありますが、私は委員会室へ参りまして、枝野委員がお答えになっていたあの点は全く同感でございます。早く金融機関資本不足状態を是正しないとこの問題の解決にはならない、しかし、それを公的資金で是正していくについては国民の理解も得られなければならない。同感でございます。
  251. 三重野栄子

    三重野栄子君 事前に御相談をしないまま御答弁いただきまして、それぞれありがとうございました。  次に、新規開業支援貸し付けの問題についてお伺いしたいと思います。  地域から景気回復を実現していくためにも、特に環境や福祉関連の生活に密着した新規産業の育成あるいは地域住民や特に女性の開業支援など大胆に実行すべきであると考えます。高齢社会を目前にいたしまして、生活者としての視点やあるいは発想を生かした商品、サービスが社会に受け入れられておりまして、みずから創業することを希望する女性や中小企業を起こす、企業を経営する女性の数が急増しております。他方、初めて女性経営者に言及されました九七年度中小企業白書でも指摘されておりますとおり、女性が経営者として活動する際には、女性であるがために借り入れが困難だとか信頼度が低いなど差別や偏見に基づくさまざまな障害も一方では山積しているところでございます。  先ほど民主党の小宮山議員のお話もあっておりましたけれども、今回の新規開業者への貸し付けに関する対象の拡充ではより積極的に女性、とりわけ子育てを終わりまして何かやろうかという既婚の女性の位置づけもしていただきたいと思うわけでございます。  こうした低利優遇融資のみならず、各種研修、相談、訓練体制の充実、優先的な債務保証、税制上の特例措置などトータル的な起業支援策を実施すべきである、ぜひそうしていただきたいのでございますが、通商産業大臣の御見解を伺います。
  252. 与謝野馨

    国務大臣(与謝野馨君) 本格的な高齢化社会の到来を目前にした日本の経済、この経済活力の維持向上を図り、また個人の自己実現を通じて豊かな経済社会を創設するためにも、女性の方々の起業支援は大変重要であると考えております。  今般の中小企業等貸し渋り対策大綱に基づきまして、小企業等経営改善資金、すなわちマル経と呼んでおりますが、この融資制度において経験を有する分野で新規開業を行う者向けの従前からの融資に加えまして、今回、職業訓練等で習得した技能等と密接に関連する業種で新規開業を行う者向けの融資を開始したところであります。  今後、女性とりわけ子育て後の女性の方々にこの制度がより積極的に活用されることを期待しております。
  253. 三重野栄子

    三重野栄子君 大変期待をしているところでございますし、これは私どももこれから各地域で広げていかなくちゃならない課題であろうというふうに思います。  最後に、金融機関からの政治献金についてお尋ねをいたします。  政治家が金融機関からの献金を受け続けているならば、金融システム安定のために必要な公的資金まで国民から不信の目で見られるおそれがあると私は思います。政治家と国民の乖離をなくすためにも、金融機関からの政治献金は禁止すべきであると考えます。  本日の東京新聞でしょうか、「小渕恵三首相は六日、自民党の森喜朗幹事長に、同党が銀行業界から政治献金を受け取らないことを徹底するよう指示した。」、「首相の指示は、金融機関への公的資金投入をめぐって「税金を受け入れる側からの献金はおかしい」との批判が再び強まったのを配慮したためとみられ、森氏は記者団に「週内にも具体的にどうするか決めたい」」ということが述べられていると新聞に出ておりました。  去る九月十六日の衆議院金融特において、濱田健一社民党議員でございますが、同様の主張に対しまして大蔵大臣は、「御指摘の御趣旨は承っておきたいと思います。」と答弁されておりますが、その後、党内ではどのような検討がなされているでしょうか。大蔵大臣にこの点をお伺いいたします。
  254. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 党にかわりましてお答えすることはできませんけれども、党の中で、現状がどうなっているのか、そういう御指摘に対してどのように対処すべきかをかなり真剣に検討しておるというふうに存じております。
  255. 三重野栄子

    三重野栄子君 ぜひ検討を進めていただきたいと思います。私は、けさの新聞にこのように書かれておりますので、これは積極的に前進すればいいなというふうに思います。  そこで、そこにおいでの発議者の方にも、金融機関から政治献金をいただくということについてどのようにお考えかお伺いしたいと思います。突然で恐縮です。
  256. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) そもそも、企業献金一般についてどういうふうに考えるかということについても、私は個人的には消極に考えるべきであるというふうに考えております。とみに現在、金融機関は社会経済上の必要性として政治あるいは行政によるバックアップが必要な状況にあるというような中で、そうしたところから政治家が政治献金を受け取っている、あるいは癒着と疑われるような関係にあるということでは、国民の皆さんから到底信頼を受けることはできないというふうに考えております。  この間のこの法案の修正の協議過程におきましても、残念ながら、協議をしている過程の中では、一部の方は当該問題になっている金融機関との深い関係があるからおかしな抵抗をしているんじゃないかというようなことをマスコミでも報じられましたし、私自身そう勘ぐらざるを得ないような状況もありました。  そういったことのないような、外から清潔に見えるということが清潔であることと同時に必要であるというふうに思っておりますので、しっかりとしたけじめを私自身はつけておるつもりでおりますし、民主党としてもそのあたりの仕分けはしっかりできているというふうに思っております。
  257. 津島雄二

    衆議院議員(津島雄二君) 私は、この件について党を代表して御答弁する立場ではございませんが、個人的な立場として申し上げますと、政治資金規正法附則におきまして一定の期限までに政治資金のあり方について結論を得なければならないということになっておりますので、党内で真剣に議論が行われていると受けとめております。  また、金融再生の問題については、そのような政治献金がいささかも私ども仕事には関係がないというふうに受けとめております。
  258. 鈴木淑夫

    衆議院議員鈴木淑夫君) 突然の御質問をちょうだいいたしましたが、私ども自由党は、かねてから政治改革の大変重要な柱として政治献金のあり方について意見を申し上げているわけで、将来の方向として企業献金そのものを見直すということを申しております。  御指摘のように、今度のような長銀処理をどうするか、あるいはより一般的に破綻金融機関をどうするかといった議論が出てきたときに、委員質問のとおりの疑問が当然国民の間にも出てくると思うんです。こういう破綻金融機関処理議論をしているときに銀行界から政治献金が来ている、一体どういうことだと。特に公的資金、血税を入れるかもしれないという話のときにどういうことだと。こういう疑念が出るということからもわかりますように、企業献金のあり方というのは早急にみんなで結論を出していかなければいけないというふうに我々自由党は考えております。
  259. 三重野栄子

    三重野栄子君 それぞれ緊急にお尋ね申し上げまして、大変失礼いたしました。お二人にもお話をいただきましたけれども、朝日新聞の方にも、「借入金の返済用も 銀行献金一部自粛」「自民が検討着手」等々と新聞にも出ておりましたので、お答えをいただいたところでございます。  それぞれ各党の皆さんが、この政治献金につきましては国民がみんな注視をしているところでございますので、これからも一生懸命に検討をいただきまして、国民に信頼される政治が行われるようにお願いしたいというふうに思います。  金融問題につきましていろいろと御検討のところを御回答いただきまして、ありがとうございました。  私の質問を終わらせていただきます。(拍手)
  260. 入澤肇

    ○入澤肇君 自由党の入澤でございます。  こんな時間にお呼び立てして、速水総裁、大変申しわけありません。  きのう、実は、いらっしゃらないところで大蔵大臣に私御質問したのでございますけれども、G7に行きまして、日本の十九行の自己資本比率が非常に低いという意味の発言をされたということが日本の新聞に大きく取り上げられました。きょう、またそのことにつきまして全銀協の皆さん方が抗議を行ったとかいう記事が新聞に出ていました。  私は、きのう大蔵大臣が申されましたように、確かに国内で増資をするのは非常に難しい、それから、外国から資本を持ってくるといっても限りがある、金融機関経営をきちんとやっていく上にはだれかが資本の注入をしなくちゃいけないんだ、そのためにとにかく今の日本金融機関の自己資本の比率が十分でないんじゃないかというような感じのことを申されたんじゃないかということを大蔵大臣が逆に解説されておりました。  そこで、実はきのう、その質問の前に、江田委員の方から三月期の自己資本比率と最近の自己資本比率の表がここで大きく皆さんの前に見せられたんです。それを見ますと、八%とか一〇%とか、総裁が御心配になったような比率でなくて大変高い、いい数字が並んでいたわけでございます。  そこで、きょうはせっかく来ていただいたのでございますから、ひとつ、日本の国の十九行の資本状態が果たして本当に過少資本状態にあるのかどうか、それから、大手十九行の現在発表されている自己資本比率と総裁のお考えになっている比率ですか、お考えになっている状態とのギャップはどこら辺にあるんだろうか、どのくらいなんだろうかということをちょっとお聞きしたいと思います。
  261. 速水優

    参考人速水優君) ワシントンの記者会見での私の話が誤解に基づく報道で違った数字が一部の新聞に出たりしましたことは、大変私にとっても迷惑でございますと同時に、遺憾に思っております。  その数字につきましては、先ほども申し上げましたように、自己資本の数字じゃなくて資本勘定、すなわち資本金、資本準備金、利益準備金、任意積立金、未処分利益金と、バランスシートに載っております、三月末決算で出ております数字が十九行で約十五兆円、それに対して六月での貸し出しは三百七十五兆円ということで、これで平均しますと四%ぐらいになるわけですね。  これからもまだまだ不良債権は現在の株の状況その他見てまいりますとふえていく可能性があると思いますし、そういう中で民間の金融機関は懸命に資本調達、民間から資本調達するのが筋だと思いますけれども、こういう情勢の中では難しいわけですから、その辺は考えてみるとやはり公的な資本金に期待していくということしかないんじゃないかというふうに思っております。これから先、景気がよくなっていって株価がまた上がるようなことになっていけば別でございますけれども、現状におきましては、やはり資本調達は公的資本に頼るということにならざるを得ないというふうに思います。  私が会議の内容その他を申し上げるわけにいきませんけれども、申し上げたかったのは、強い金融なくしては強い経済というのはあり得ないということはアメリカでもよく言われておりますし、欧州でも言われておりますし、日本でもそのとおりだと思っております。今、日本で強い金融システムをつくるためには、早期かつ大規模に公的資金を投入していくしかないというふうに私は思っております。この公的資金の投入によって金融システム自体が早期に再生することができると思いますし、日本経済の再生もまたこれによってできていくのではないかというふうに思っております。  ぜひ国会の方でもなるたけ早い時期にこれを実現していただきたいというふうに思います。
  262. 入澤肇

    ○入澤肇君 私も、早く早期健全化スキーム与野党問の話し合いがまとまりまして、理想的な案ができまして、日本金融機関が今のような土地の値下がりとかあるいは保有している株の値下がり等で一喜一憂することのないようになっていただきたいと思うわけであります。  私は、衆議院の議事録を熟読させていただきました。日銀総裁の発言も特にチェックしました。デリバティブスの発言以外は非常に慎重に発言された。しかし、この発言を見まして、御自分のお立場、一言一言が大変大きな影響を与えるんじゃないかということをちょっと外国に行ってお忘れになったんじゃないかなと、失礼ですが思ったわけでございます。  きょうの株を心配していましたら、早期健全化スキームの案が出て、通るんじゃないかという観測で下がらなかったというふうなことでございますけれども、総裁の発言で、もしこういうことがなければまた株価も大幅に下がるということがあると思いますので、こんなことは全く言い過ぎかもしれませんけれども、慎重に御発言をされたいと思います。以上で結構でございます。どうもありがとうございました。  そこで、きょうは、法案の本題で一番難しいところですが、意見が対立しているところにつきましてぜひ発議者に解説していただこうと思っているわけであります。  きのうから池田議員枝野議員それぞれが長銀の扱いにつきまして非常に明確な答弁をされております。この修正案によれば、特別公的管理に入った途端に、破産と同様な処理になって長銀は消えていくんだというふうな発言をされております。大蔵大臣は、私は必ずしもそうは考えていないんだ、そう聞いていないんだというふうに正反対の御答弁をされています。大蔵大臣は必ずしもそうは考えていないと。要するに、長銀が破産して消えていくんだというふうな池田議員枝野議員発議者の考え方をそのまま認めているわけじゃないというふうに私は聞こえたんですけれども
  263. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は、概して提案者の言われたようなことになるんではないかと思うと申し上げたつもりでございますので、もし言語が不明瞭でございましたらそれが私の、たしか何度かそれ申し上げております。
  264. 入澤肇

    ○入澤肇君 先ほど私が聞いたところによりますと、私のメモでは、特別公的管理に入ると破産と同様な処理になるというふうに枝野議員がおっしゃった後で、大蔵大臣は、そうは考えていないし、早期健全化スキームの方で長銀が救われるというふうなことも考えていないというふうに言ったと聞いたんですが、もし間違いでありましたら訂正しても結構でございます。
  265. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) それは、今度長期健全化スキームというものでも長銀処理される法律上の可能性があるということをおっしゃいましたので、法律上の可能性ということは存じませんが、常識的には私は今御審議の三十六条とか七条とかいうあの部分に行くのだろうと、こう思うということを申し上げたつもりでございます。
  266. 入澤肇

    ○入澤肇君 そこのところが一番問題なところでございまして、まず法案を調べてみますと、原案では三十六条とかなんかの条文、ちょっと条文の条が違いますけれども、章名も「第五章 破綻した銀行の特別公的管理」となっていましたね。これが修正案では「破綻した」を削りまして「特別公的管理」となりました。また、原案ではいわゆる債務超過につきましては当然これは書いてあったんですけれども、修正案で「払戻しを停止するおそれがある」、これは流動性不足になるおそれがあるというふうに解釈するのかどうか知りませんけれども、「払戻しを停止するおそれがあると認める場合」、これも要するに特別公的管理の対象にするんだというふうになったわけですね。  これを別の言葉で言えば破綻直前、破綻した銀行については今までのまだ生きている法律で、成立していませんから、現行の制度では健全な銀行でなければ十三兆円を入れないという話だったんですが、破綻直前になればこの特別公的管理スキームに入ってきてお金が入るということになったわけですね。  ここまでは間違いありませんね。
  267. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) きのう来御答弁させていただいておりますが、破綻という言葉の定義にもよりますが、預金保険法に規定をする破綻銀行になっていない状況であっても、特別公的管理によっていわゆる破綻処理を行うというような法律構成になっております。
  268. 入澤肇

    ○入澤肇君 ほかの法律の定義とこの法律を一緒にしてはまた私はいけないと思うんです。  破綻直前の、要するに破綻直前という言葉は使っていないんですけれども、「払戻しを停止するおそれがあると認める場合」にも特別公的管理にするということは、生きたまま入れて、そして特別公的管理に入ります。特別公的管理に入りますと、別の言葉で言えば国有民営銀行ですか、国有民営銀行みたいなものができるわけですね。  それは、例えば長銀の場合であるとすれば長期信用銀行という名前でないかもしれない、新しい新長期信用銀行かもしれない。その新長期信用銀行という仮に名前の国有民営銀行ができる、そして金融再生委員会の一定の規則のもとに業務を行って、最後には営業譲渡であるとかあるいは株式の譲渡であるとか等で業務を終了して、新しい受け皿機関に移っていくということでございますね。  これは間違いありませんね。
  269. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 受け皿機関に行くということの意味がなかなか難しいのでございますが、基本的には破綻処理スキームでございますので、何か全体が営業譲渡されて受け皿機関に行くというようなイメージでございましたら、ちょっと違うんだろうと。  例えば、北海道拓殖銀行がこういったスキームもなく通常の破綻手続破綻処理が行われておりますが、そうした金融機関であっても、健全な部分については北洋銀行が営業譲渡を受けるというようなことがございます。そうした意味では、特別公的管理に入った金融機関の営業の一部が営業譲渡をどこかにされるということがございますし、入ってみたけれども債務超過でなかったという場合には、全体として株が売りに出されるという可能性もございますが、それは破綻処理であったとしても同じことではございますので、そこは三十七条によって入った場合と三十六条によって入った場合とで違いはございません。
  270. 入澤肇

    ○入澤肇君 国有民営銀行としての新長期信用銀行が一定の業務を終えて、そして営業譲渡をする。例えば住友信託に営業譲渡をする、あるいは合併されるということもあるわけです。合併は書いてないか。営業譲渡あるいは株式の譲渡、それは書いてありますね。そうなりますと、名前を変えて長銀を救ったということになるんじゃないですか。  破産直前に陥っているというふうに定義しただけでも私は問題だと思うんです。債務超過でないと言って、健全な銀行だと言ったのが、なぜ直前になって破綻したという言葉を除いて、破産直前という言葉を入れて生きたまま救って、そして一定の処理をして、要するにクリーンにして営業譲渡して住友信託等に持っていくというふうな仕組みが法律上明瞭なわけです。だから、ここの部分がいわゆる換骨奪胎だとか洗脳されたとかいう部分ではないんですか。
  271. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 確かに三十六条と三十七条で、三十七条がふえたという部分については原案と違っておりますが、特別公的管理に入った後の手続につきましては、一切自由党さんも含めて三党で共同して提案をした内容と変わっておりません。もし換骨奪胎ということであるならば、自由党さんも含めて提案した部分を含めてということになってしまいますが、入った後の手続については全く一緒でございますので、生きたまま処理されるということはございません。  三十六条で入ろうと三十七条で入ろうと、従来の当該金融機関の株主の権利がなくなる、経営者が全部いなくなる、従業員については一たん解雇して必要な部分だけ再雇用する。つまり企業、株式会社としての三要素をすべてゼロに一たんしてしまうということで、そこで一たん企業としては消えてなくなるというふうな理解をしていただいていいと思っています。  ただ、三十六条と三十七条との違い、三十七条をふやした趣旨は、私どもは三十六条だけでも十分であるというふうに今も思っておりますが、破綻という言葉が人によって違った使い方をいたします。例えば債務超過をもって破綻と言う方もいらっしゃいます。それから、例えば実際に取りつけ騒ぎのような話になって借りている金を返せない状態になっている、それをもって破綻と言う方もいらっしゃいます。預金保険法上は、これは債務超過は実は入っておりませんで、支払い停止や支払い停止のおそれだけでございます。  こういったふうに破綻という言葉の意味を人によっていろんなとり方をされておりますので、そうした中で、破綻処理という形で、しかも預金保険法破綻の定義と同じような条文で特別公的管理に入ると言った場合には、例えば国際マーケットの中でデフォルトなんだというような誤解をされてはいけない。これはオープンバンク方式で破綻処理をしていくというやり方でございますので、しかも法人格同一でやりますので特別公的管理に入った瞬間にデフォルトは生じない、そこがみそなわけでございますが、そこのところの誤解を生じさせないために、預金保険法上の破綻という定義とは違うけれども破綻処理に入る入り口というのをつくったということが趣旨でございます。
  272. 入澤肇

    ○入澤肇君 鈴木議員、ちょっとお答えしてください。
  273. 鈴木淑夫

    衆議院議員鈴木淑夫君) 今、枝野議員お答えになった中で、特別公的管理に置いた後の条文というのは私ども自由党が野党三党の法案として出したままになっている、これはそのとおりなんです。ところが、入り口を変えられちゃったわけです、御指摘のように。  つまり、預金保険法上の破綻の認定なしに公的管理に入れることができる。入り口を変えられたことによって、生きたまま公的管理にして、生きたままきれいにして、営業譲渡ならあれですよ、だけれども株式の売却という格好だと生きたまま出ていっちゃうわけですね。これが子会社になるんでしょうね。そういう仕掛けを入れてしまったわけです。入り口のところを変えられちゃったものですから、そういうことが可能になってしまった。それで、私どもは残念ながらこの修正案には賛成できないということで外れたわけでございます。
  274. 入澤肇

    ○入澤肇君 非常に問題点というか、我々とそれから発議者との間の考え方の違いが明確になったわけであります。  もう一つ、違う次元の話をちょっと質問したいんですけれども、払い戻しを停止するおそれがあると認めるのは金融再生委員会だと。これは認められる場合じゃなくて「認める」と書いてありますね。そうすると、金融再生委員会が認めるためにはどういうシグナル、あるいはどういう基準が明確になったときにおそれがあると認めるんですか。
  275. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) そこまで言ってしまっていいのかどうか難しいところの答弁なんですが、三十六条で規定をしております「預金等の払戻しを停止するおそれがあると認める場合」と、三十七条に規定しております「預金等の払戻しを停止するおそれが生ずると認める場合」というのは限りなく密接をしているというふうに理解  いたしております。  ただ、預金保険法上の定義にぎりぎり該当しない場合であっても、ほぼそれに近いような状態であるという場合にはもはやその銀行は回復不可能、つまり存続不可能という認定をすることができるということの趣旨でございまして、ほとんど同義に近いというふうに私は理解をしております。
  276. 入澤肇

    ○入澤肇君 ここはやっぱり大事なところなので、第六条にある資産の査定の結果とかいろんな資料が出ることになっていますけれども、これは常時出してもらうわけじゃないですね。年に一回か二回ということだと思いますし、それから破綻のおそれがある場合でもすぐこの特別公的管理に入ると認めない、認められるんじゃなくて自分で認めちゃうんですから、その認める前に日銀特融があって救われる場合もあるかもしれませんね。  だから、この認めるという場合にはそれなりの基準的な考え方を明示して、要するに運用の基準、判断の基準、そういうものを明示することが私は必要だと思っているんですけれども、それはどういうところで、具体的にどんなことで担保されるんですか。
  277. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 基本的に法律上の要件というのは、この規定、重要でございますので法律上に明示をさせていただいているというふうに考えております。  そして、その認定は、中立公正な信頼性の高い第三者機関であります金融再生委員会が認定をするかどうかということにかかります。このあたりのところは、まさに日々動く、日々というよりも時々刻々金融の状況は動く、そうした中で例えば市場からお金が取れるのか取れないのか、取れたお金で翌日の預金の払い戻しができるのかできないのか、そういった非常に専門的かつ流動的な要素を判断していく過程の中で、これはもうもたないから特別公的管理に入れなければならないということを再生委員会が判断をすれば、それが預金保険法上の破綻認定と同時に起こる場合には三十六条でいきますし、金融再生委員会の方の特別公的管理を入れなければならないという認定の方が先であれば三十七条でいく、この程度の違いだと理解をしております。
  278. 入澤肇

    ○入澤肇君 いや、私は、法律に書いてあることを具体的に運用するときの客観的な基準というのがもう一つ必要になるんじゃないんですかということを言っているんです。私が例えば行政官でこの法律を読んで、おそれがあるというときに、じゃ、どういう指標が出てきたときに、どういう数字が出てきたときに次のステップを踏もうかという、その判断の基準を必ず我々は内部で用意すると思うんですよ。そういうものが抽象的な言葉ではなくて具体的な基準として用意されてしかるべきだと思っているんですけれども、それはまだこれからの話だといえばそれだけで結構でございますけれども
  279. 枝野幸男

    衆議院議員枝野幸男君) 預金保険法で三十六条の要件にも重なっておりますが、預金の払い戻しを停止するおそれがあると認める場合ということについて認定の基準があれば、これに準じたものが三十七条の基準についてもつくられるんだろうなというふうに思っておりますが、そこは当てはめを行う金融再生委員会が判断をされる事項であるというふうに考えて、法律事項としてつくらなければならない要件としては足りているというふうに思っています。
  280. 入澤肇

    ○入澤肇君 そういうふうに言っていただければ理解できないわけじゃないわけです。法律に書いてあると言うけれども、同じようなことをきちんと金融再生委員会がつくるわけですね。つくって、それをもとにして判断をするということであれば、それは運用の基準としては理解できないわけではないということでございます。  いずれにいたしましても、先ほど鈴木議員からの説明がございましたけれども、問口を広げて破綻直前の生きた金融機関までここに入れてしまったということは、私は野党三党首の約束事に違反するんじゃないかと思っています。それについて、この時間になってそういうことを言ってもしょうがないかもしれませんけれども、これは公党の約束ですから、私どもはやっぱり相当この件に関しては重く受けとめなくちゃいけないというふうに思っています。  次に、もう一つ違う次元の質問をさせていただきます。  実は、金融行政のあり方につきまして、財政と金融の分駐の議論が大きな話題になりました。  私は実は現役のときに、行政管理庁、当時、総務庁になってからも、金融行政とか何かにつきまして行政監察をする必要があるんじゃないかということを言っていたんです。なぜかといいますと、行政監察局というのはどちらかといいますと、例えば土地改良事業の執行の仕方だとか、目につきやすい、また行って取り組みやすい課題につきましては行政監察をやるけれども、金融行政一般とか、あるいはマクロ的な産業政策一般とか、中小企業政策一般とかということにつきましては行政監察ないんです。ただ、切り口を明確にすれば幾らでもできると私は思ったんですけれども、やっていなかった。  この間聞きましたら、去年の十二月にやって報告書を出したというんですけれども、金融、財政の専門家によるいわゆる組織論、あるいは今までの大蔵省の資料隠ぺい体質というんですか、そういうことを言っていますのでそういう言葉を使わせてもらいますけれども、そういうことに対する感情的な組織論だけじゃなくて、行政組織そのものを監察あるいは定員の管理とか何かを扱っている専門家としての立場からの総務庁長官の財政と金融の分准についての考え方をお聞きしたいと思います。
  281. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 今の御質問は、これまでやっていなかったんではないかと思ったけれども、去年の暮れにやったと。その結果、例えば検査方式は新検査方式というもので、別にそれだけが原因じゃないでしょう、勧告をして、勧告をした後、新検査方式が導入され、そしてまたことしの六月に新しい情報開示を義務づける法律ができたというようなことで、一連の流れの中ではそれなりの役目を果たしたんだと思っております。  そこで、金融と財政の分離の話はどうかということになりますと、これは今ちょうど中央省庁の改革の話を進めておりまして、その中でもここはちょっと、我々が提案をするというよりも与野党協議の成り行きを見守っておるということだろうと思います。  しかし、一般論として申し上げれば、チェック・アンド・バランスということは組織の中できちんと分離をしてやるということ、実施と監査というのは分離をしてやるということが原則だと思います。
  282. 入澤肇

    ○入澤肇君 時間が来ましたけれども、一言だけ。  私は、金融行政とかあるいはそのほか原子力行政だとか非常に専門的な分野にわたるものについて、その行政執行の仕方とかあるいは基本的な考え方について専門家による外部委託行政監察という制度をきちんと法律をつくって設けたらどうかと思っているんです。外部の専門家に委託して監察した結果はもちろん守秘義務をかけるとかいろんな手続規定あるいは内容規定を入れまして、そして行政の効率化に資するようなことが必要じゃないかと思っているんですが、この点について最後にお聞きして、質問を終わります。
  283. 太田誠一

    国務大臣(太田誠一君) 一般論としては私もよくわかるわけでございます。ただ、行政監察は公権力の行使になりますので、公権力の行使を外部に委託するというときにいろんなことを考えなくてはいけないんじゃないか。考え方としてはよくわかるんですけれども、ちょっとそれは慎重に考えなければいけないテーマだと思います。
  284. 入澤肇

    ○入澤肇君 終わります。(拍手)
  285. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 私からは、長銀問題を中、心といたしまして大蔵大臣に若干の御質問をしたいと思います。  長銀、今や大変な状態にある、悲惨な状態にある、破綻したも同然といろいろ言われております。どうして長銀がこういうことになったのか、その原因がどこにあるのか、経営責任はどうかと、こういうことでまたいろいろ議論もされておるようでありますけれども、私はちょっと角度を変えまして、長銀というのはもちろん大蔵省銀行局の監督下にあったわけでありますから、監督官庁である銀行局は一体何をしていたのかと、こういう角度からお尋ねしてみたいと思うわけであります。  これからもどんどん銀行破綻は続くんだと、それを前提にしてこの法案審議をしているわけでありますから、その一つの具体例として長銀問題について深い徹底した議論をする、その結果を残しておくということは将来にわたっての教材としての意味もあろうかと、こう思うわけでありまして、あえて一つのサンプルとして長銀を取り上げてみた、こういうわけであります。  そこで、これはもちろん釈迦に説法でありますけれども長銀というのは昭和二十七年に長期信用銀行法に基づいて設立されておるわけであります。戦後の復興期の基幹産業に対する長期融資を行う、要するに基幹産業を育成していこうという国家の目的に沿った銀行だと、こう考えてもよろしいかと。当時の基幹産業というのは石炭だ、造船だ、鉄だと。その後は石油、電力、運輸、そういうものも加わってまいりましたけれども、いずれにしろ国家目的に沿ってこういう基幹産業を育成しようということで長銀、興銀などがつくられた、こう考えてもよろしいわけであります。  そして、長銀はその方向に沿って基幹産業に長期融資を続けてきたと、こう我々は思っていたわけであります。その間、業界誌にもいろいろと非難、攻撃されていたようでありますけれども国民は忙しいかちそんなのは見る暇はない。長銀はきちっとした法律長期信用銀行法に従った基幹産業に対する長期融資を続けているものと、こう思っておりましたら、ある日突然のように長銀破綻に瀕している、不良債権の山また山である。そうして、肝心の融資先は何だと、こう思って見ましたら、もう基幹産業に融資なんというのはほとんど行われていない。いうところのバブル企業、レジャー産業だ、サービス業だ。不動産業といえば聞こえはいいけれども地上げ屋であるとか、それから金融業といえばこれまた聞こえはいいけれどもしょせんは金貸し、リースというものもしょせんは金融業でありまして金貸しであります。そういうことにもう何億、何兆円と計算できないぐらいの金がつぎ込まれていた。あれあれあれ、一体これは何だろうか、法律が改正されたとも聞いていないのにこんなことが果たして許されるんだろうか、だれでもがこう考えたわけであります。  これは実は大蔵大臣にお伺いするというのは、まことに適切な人物だと、こう思ったからでありまして、郵政、財政、金融のプロだ、プロ中のプロ、若いころはずっと大蔵省一筋に来られまして、その方面の知識もあるし、ひょっとしましたらこの長期信用銀行法の制定にも関係しておられたのか、関係していないにしても当然十分な知識はお持ちでありましょう。政界に入られても先輩として大蔵省銀行局の金融行政にも十分な関心をお持ちでありましょうし、またあったと思います。  それから、何はさておきましても、一九八六年から二年半余りにわたりまして、中曽根、竹下内閣と引き続いてたしか大蔵大臣をおやりになっておりまして、このときに八五年に例のプラザ合意があって、円高不況と、こう言われまして、それを克服するために大幅な公共投資を行う、金利の引き下げを行う、いろんな政策がとられました。  そう言ってはなんですけれども、バブルの糸口がつけられて、それ以降の銀行の融資というのは主としてバブル企業、地上げ屋とかレジャー産業だとか、その代表例が長銀が融資していた歌う不動産屋と言われる千昌夫氏の関係企業に千数百億も融資するとか、ああいうこともありましたけれども、いずれにしろ、特殊銀行とすれば一九八六年先はなかなか仕事がつらい、生きていくのが難しい、こういうふうに考えられたんではなかろうかと思います。もっとも、そのころ既にして長銀自体がもう本来の基幹産業に対する融資というのは一割もなかったようであります。  いずれにしろ、大蔵大臣として一体これから特殊銀行はどうやっていくのか、もうそろそろ免許でも返上させようか、あるいはもう法律を改正して普通銀行にして一般の銀行と競争した方がいいのか、いろいろと思い悩まれたこともあろうかと思いますので、どうかその辺を中心といたしまして、どういうふうな指示を銀行局に下したのか、御説明いただければと思います。
  286. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 長銀が設立されました当初、昭和二十七年でございますが、おっしゃいますように、日本がいわば敗戦後工業化の道を歩もう、近代国家の近代産業をもう一度つくり上げようという、そういう日本経済の要請に長銀がこたえる、そういうことを期待されたことはもう御承知のとおりであります。  その後、日本経済はしかし意外にも比較的早い時間の間に高度の工業化をいたしました。また、国内的にも、したがって長銀以外にそういう長期金融の融資をできるような市中銀行もできてまいりました。  したがって、最近になって、長銀が当初設立された目的はほぼ日本経済が果たしておって、長銀自身はそれだけに融資を限るということはできないし、またよその銀行もやっておりますから、長銀がいわば俗な言葉で申せば普通銀行のような貸出先を選ぶというようなことになりましたのも事実のとおりと思います。  ただ、そのことは業務方法書に違反したとかいうことではもとよりございませんから、監督責任としてその時々のニーズに従って金融をするということは、それは別に禁ずることはないであろう、その融資がもちろん不正であったり不正な目的であれば別でございますけれども。  そういう意味では、昭和二十七年以来の何十年の間に日本の金融のニーズが変わり、また長銀もそれに従って貸出先を変えていったというところまでは私は多分非難をすることはない、あるいは監督者としても落ち度があったとは思いません。  問題は、それから後、いわゆるブームになりまして、先ほどノンバンクであるとかいろんな形の融資、それが結局は不良債権になるわけでございますから、結果責任であっても、そのような融資をしていたことの責任、あるいはそれを監督していたはずの役所の責任というものは、これは結果責任として私はないとは申せないと思います、刑事責任でなくとも。そういうことの責任というものはないとは言えないかもしれない。  そこで、しかし、それから先が実は問題のあるところだと思いますが、そのゆえに長銀が今日のような事態になったということでありますと、そういうことをやっていた銀行長銀ばかりではなかっただろうということについて答えなければなりません。そういたしますと、長銀がことしの三月に公的資金導入する際に、長銀のそのときのあり姿というものは、預金保険機構において、非常にお忙しい中ではあったろうけれどもテストを受けているわけであります。そしてまた、この国会が始まりましてから、監督庁長官の御所見によれば、長銀は特に債務超過だと今の時点考える印象は持っていないということを、もうしばらく前ですけれども、言っておられたわけでございます。  そういう中で、六月ごろと思いましたが、ある雑誌に長銀状況というものが掲載されて、一般的にはそこからにわかに長銀についての流説が高まったように思います。これは非常に、殊に金融債を発行している銀行でございますので、その売れ行き等々にすぐに影響いたしまして、金融的には非常に苦しくなって、もうつるべ落としのようになっていったように思いますが、そこの部分、つまり流説に基づく、これは非常に怖いものでございますけれども銀行の体力が見る見る弱っていったということがあったのではないか。  私は、今は自分の所管でございませんから、今日現在の長銀の内容を正確にとらえておりませんが、少なくとももう長銀として生き延びることは難しい、それは恐らく世の中に非常に迷惑をかけるということから、ああいうリストラを決心されて、住友信託銀行との合併をするについて政府の援助を求めてこられた、そういう経緯でございます。  ずっと長く申しましたが、長銀が今日の危機を迎えた近因というのは私はそういうものではなかったかという印象を持っております。
  287. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 大臣と余り細かな法律議論をするつもりはないのでありますけれども法律には制定の趣旨というのがありまして、長期信用銀行法というのは何のためにつくったかというのは、あくまでも基幹産業に対する長期融資を行うためと。ですから、長銀がもうその目的を果たしたということになれば免許の返上をする。それじゃ余りにもかわいそうだというならば法改正が当然必要で、普通の銀行にしてからそういう事業融資をするというのは当たり前のことだと思うんですよ。  大ざっぱなくくり方をするのでありますれば、そもそも長期信用銀行法なんというのは要らなかったわけでありますから、普通の銀行法でやっていけばよかった。何でわざわざあんな法律をつくったのか。この銀行にはこういうことをやらせる、目的、性格の範囲内でやらせるということで発足しているわけでありますから、そう簡単に、これが行き詰まったからこちらというわけにはいかないと思う。  これは当たり前の法解釈でありまして、当時大蔵省銀行局は、長銀がこういうことをやり始めたんだけれども、これが果たしていいんだろうか、法改正を要せずしてこんなことをやっていいんだろうかということは、内閣法制局等に持ち込んで十分に議論して政府の統一見解というのが出ているんだろうか、こう思いますので、その点はいかがでありましょうか。それとも、法律なんというのはそんなものは何とでもなるんだ、解釈のしようだ、悪いことさえしなきゃいいんだ、不正融資さえしなきゃいいんだと、そんなふうに軽くお考えなのでございましょうか。
  288. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 私は法律の専門家でございませんし、長銀法を今ここでそらんじるわけではありませんけれども、確かに何十年の間に長銀が当初奉仕すると考えられていた目的はかなり変わってきたし、よその銀行もやり始めました。しかし、長銀銀行としてその間ゴーイングコンサーンであったわけですから、貸し出しが業務方法書に違反しているというようなことになれば別でございますけれども、一条に掲げられた目的そのものでないからもうやめなさいというようなことには私はならないだろう。  むしろ、長期銀行法というものが要るのかどうかという議論は、これは段々ございました。その点は、むしろ今のような貸出先の問題ではなくて、一種の銀行債、金融債を発行できる、そういう特権を持っておりましたから、もう普通銀行も社債が発行できるということになればあえて長期銀行法というものは必要であろうかという、そういう議論はございました。しかし、それは長銀の今日の貸し出し、業務方法が悪いという議論ではなかったように私は思います。
  289. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 そういう自在、自由な解釈がありとすれば、もうそもそも法律などは要らぬ、やりたいようにやりなさい、ただ犯罪だけは犯しなさんなよということぐらいで事は足りるんではないかという気がして仕方がないのでありますが、この議論はここで打ちどめにいたします。  それから、今度は、宮澤内閣が誕生いたしまして、九二年の夏、軽井沢におきまして首相がセミナーを開きまして、今や不良債権問題は大変である、必要ならば公的援助をすることもやぶさかではないということで新聞に大きく報道されました。その際に、どういうわけか知りませんけれども、ディスクロージャー、どれだけ不良債権があるか銀行自身が情報公開することが必要だということも述べたということが新聞に出ておりますので、これはどうなのかなという気もしないわけじゃありません。  いずれにいたしましても、この呼びかけを受けたのかどうかわかりませんけれども、このとき長銀不良債権処理するために、ということはもうこの時点で、九二年現在で不良債権というのは長銀に重くのしかかっていたわけでありますが、九二年現在で事業推進部というのをつくって不良債権処理させるということで出発したようでありますけれども、遺憾ながら、この宮澤提案というのは金融界に断られたようであります。金融界はそんな公的資金を受け入れると経営責任が問われるからお断りいたそうということで断った。これも勝手な話なんで、そのときに総理でありましたから、勇断を持って決断をして、不良債権処理のためにいろんな方策を講じようということをおやりになっておれば今日の悲劇もある程度防ぎ得たのではないか。少なくとも長銀自身が特別部までつくって不良債権を征伐しようと乗り出したわけでありますから、それを支援するのが内閣の方針というのか大蔵省方針というのか、監督官庁としてのあり方でもなかったのか、こういう気がしてしようがない。  いずれにしろ、そのときに打つべき手を打っておけば今日の長銀の悲劇あるいは銀行界全体の悲劇も防ぎ得たのではないか、こう思うわけでありますけれども、いかがでありましょうか。
  290. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 九二年の夏にそういうことを申しましたが、金融界はこれを真っ正面から取り上げませんでした。今考えますと、佐藤委員の言われますように、それは必ず責任問題に展開する、いい銀行はそんなことはかかわりたくない、悪い銀行と申しますかは、責任問題になるということで、金融界全体が拒否反応を示されました。それだけならよかったのですけれども、経団連に代表される産業界が拒否反応を示しました。それは、銀行救済ということは嫌だ、端的に申しますとそういうお考えのようでございました。  したがって、とうとう世論の支持を得ることができずに申すにとどまりましたが、あのときこうしておればとおっしゃいますが、なかなかこの世論の支持がなければこういう大手術はできないということ、これは端的に一つのそういう例であったかと思います。
  291. 佐藤道夫

    ○佐藤道夫君 終わります。(拍手)
  292. 菅川健二

    ○菅川健二君 金融再生にとって実体経済の回復はどうしても必要だという観点から幾つか質問を申し上げたいと思います。  昨日、小渕総理が追加景気対策について閣議で指示されたやに聞いておるわけでございますが、この具体案を検討する前に、これまでいろいろ講じてこられた十六兆円の総合経済対策や、あるいは二月と五月に実施いたしました特別減税の効果を十分に検証し、かつ評価し、その上に立って効果的な政策を実施される必要があるんじゃないかと思うわけでございます。  そこで、企画庁長官、大変お忙しいようでございますので、まず基本的な問題についてお聞きいたしたいと思いますが、企画庁長官は御就任以来、経済企画庁というのは経済政策の企画立案をするのが極めて重要であるということを主張されておるわけでございます。経済政策の企画立案は、当然、これまで行われた経済政策の検証、評価の上に立って初めて有効な政策が打たれるんじゃないかと思うわけでございます。  その意味で、経済企画庁がこれまでの経済政策の検証、評価の上で大きな役割を果たすべきではないかと思うわけでございますが、いかがでございましょうか。
  293. 堺屋太一

    国務大臣堺屋太一君) 仰せのとおり、経済企画庁は経済政策の企画立案を旨とする官庁だと心得ております。  それで、お尋ねの件でございますが、まず二兆円の減税を二月、そして六月、八月というように行いまして、それでかなり非消費支出、つまり税金とかそういう消費以外の支出、これが減っておりまして、そういう意味では下支えの効果はあったと思います。しかし、残念ながらその間景気が悪化いたしましたので、可処分所得は顕著にふえておりません。八月はちょっとふえたのでございますけれども、それ以外の月は前年に比べてふえておりません。そういうようなことがございまして、顕著な効果が見られなかった。これは、もしこれがなかったらもっともっと悪化していたんじゃないかというような気がいたします。そういう意味では下支えの効果がありましたけれども、それほど十分な効果があったとは言えないと思います。  また、十六兆円の総合対策も行いましたが、これはまだ実効はそれほど及んでおりません。地方議会その他の関係がございまして、実施されているのはまだ比率として一割台というようなことであります。  さらに、昨年の十一月、「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」というのを策定いたしまして、経済構造の変革の方を行いました。これに関する法律はさきの通常国会において大部分成立させていただきましたので、その結果、情報通信とか中心市街地とかというようなところの構造改革の改善が徐々に始まっていると心得ております。要するに、経済政策というのはそういう緊急の短期的な需要創造政策、これは減税とか財政投資とかいうものでございますが、それと同時にこういう構造改革、これが両方相まって初めて効果を上げるものだと思っております。  そういう点で、小渕内閣は発足以来、六兆円を超える減税であるとかあるいは十兆円の追加第二次補正予算でありますとか、官僚機構を通さないで政治主導でいろいろ決定を行いまして迅速な対策を試みておりますけれども、まだこの激しい不況の中でその効果が十分に上がっていないのは残念なことだと思っております。  したがいまして、今度また小渕総理からそういう指示がありましたので、経済政策、これを構造政策、短期政策両方あわせてとり行っていきたいと考えております。
  294. 菅川健二

    ○菅川健二君 いろいろやっているけれどもまだ効果が上がっていないということでございますが、各論につきましては後ほど政府委員の方からお聞きいたしたいと思いますので、どうぞ御退席なさっていただきたいと思います。  大蔵大臣には、やはり御所用があったようでございますが、最後まで残っていただけるようでございまして、まことに恐縮に存じておるわけでございます。  そこで、ただいまも企画庁長官から話がございましたけれども、十六兆円の総合経済対策の実施状況でございますが、きょうの朝日新聞を見ますと、大蔵省の調査で二割程度しかまだ発注されていないことが判明したという記事があるわけでございますが、この記事はそういうことでございましょうか。  仮にそういうことでありますと、ただいまも企画庁長官は一割台にとどまっておるという話でもあったわけでございますが、やはりかなり政策の実施がおくれておるということが言えようかと思います。とりわけおくれておる原因について何かあるのか、その点をお聞かせいただきたいと思います。
  295. 坂篤郎

    政府委員(坂篤郎君) お答えさせていただきます。  ただいま御指摘いただきました第一次補正予算に計上された公共事業の執行が今どうなっておるかということでございますが、八月末の契約状況につきまして特別に先日調査をいたしました。それによりますと、いわゆる施行対象予算現額というのがございますが、これが三兆五千億円余りでございますが、これに対しまして契約率が八月末で一二・四%という数字でございます。  これは御承知のように、先日の第一次補正予算の裏打ちとなる地方公共団体での措置がいろいろ必要でございまして、相当程度、各地方公共団体の九月の議会で御審議をなさっているというふうに伺っておりまして、それがだんだん進捗いたしますとこれから本格的な執行が見込まれるのではないかというふうに私どもも期待しております。  また、このような観点から、私どもとしてもできることは努力をいたしたいというふうに考えておりまして、先日、閣僚会議が開催されまして、そこで公共事業等の施行促進の強化策を種々決定いたしました。  政府といたしましても、第一次補正及び、そもそも十年度の当初でもあるわけでございますが、これの積極的かつ着実な実施に努めてまいりたいというふうに考えている次第でございます。
  296. 菅川健二

    ○菅川健二君 十六兆円の総合経済対策というのはたしか四月に決定されたわけでございます。もう半年もたっておるわけでございますが、やっと実施の緒についたというのが実態ではないかと思うわけでございます。  現実に私どもが地方の選挙区等に帰ってみましても、どこに金が流れておるのだろうか、末端まで全然届いていないわけでございます。今聞かせていただいたとおりで、全く実態としても事実もうほとんどおりていないという状況にあるわけでございます。これでは有効な政策とはならないわけでございます。  また、おくれておるということだけならまだそれなりに若干の期待が持てるわけでございますが、午前中、公共投資の大半が地方団体によって行われておるということで、それも九月補正等によりほとんど満度に順調にいっておるのだという自治省のお答えもあったわけでございますが、ただ、これも地方団体の関係者に聞きますと、大変地方財政が厳しくて、とりわけ単独事業についてはなかなか消化できないんだと。一兆五千億の一応計画額がございますけれども、それも一兆円程度が消化できるかどうかではないかという記事も私は見たことがあるわけでございます。そういった面で、実態としてはおくれておるということと、もう一つは、やはり消化し切れていないという状況にあるんではないかと思うわけでございます。  今後、やはり公共投資ということになりますと、地方団体が大半を受け持つわけでございますので、そういった面で十分な地方財政措置が要ろうかと思いますし、あわせて、特に現段階で地方団体が問題にしておりますのは、七兆円を超える減税につきまして、所得減税とか法人課税の減税でございますが、これについては地方財政基盤というものをきちっとする、十分に行うという観点から、主として国税の方でやってほしいという要望が強く出ておるわけでございます。  この点につきまして、大蔵大臣の御答弁をお願いいたしたいと思います。
  297. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 先ほどもおっしゃいましたように、公共事業でかなり、当初決めたものでも、契約率は進んでおりますけれども支払いがちっとも進んでいない、地方団体に金がないということがかなりはっきり見えておりまして、せんだって閣僚会議で、その分は国がとりあえず負担しようと、支払いの分でございます、のことまで決めたわけでございますから、おっしゃるように、地方団体の金融的な苦しみは相当深刻であるように考えております。  それで、今お話のございました所得税と住民税の減税の問題、どのように減税分の負担を仕分けいたしますか、あるいは法人税も減税を考えておるわけですが、事業税がついてまいりますのでそこをどうしますかとかいう問題が、実は今解決をしなければならない大きな問題として残っておる問題でございます。  これはしょせん遅くとも年末には解決しなきゃなりませんが、全体を早めるとすればここを解決しませんと税制改正の具体化に入れませんので、自治省と大蔵省、主として両省でございますけれども、の間でいろいろ折衝をする。これは恐らくは財政全体として取り上げなければならないことになるかもしれないとも思っておりまして、今御指摘の点は十分考えませんと、国だけやっていいわけでございませんので、全体として考えなければならないと思っております。
  298. 菅川健二

    ○菅川健二君 経済再生には地方財政の措置が十分あるということがどうしても必要だということを大臣もお答えいただいたわけでございますので、ひとつよろしく措置をお願いいたしたいと思います。  また、減税でございますが、減税につきましても、この二月、五月に実施した減税効果がいかほどにあったのか。先ほど企画庁長官は、下支えの効果はあったということでございますが、もう少し具体的に、例えば消費に対してどのような影響を及ぼしておるのか、そういった具体の数字、具体の効果があるのではないかと思うわけでございますが、企画庁の方、いかがでございましょうか。
  299. 新保生二

    政府委員(新保生二君) お答えいたします。  先生御指摘のように、二月に二兆円、それから六月、八月と分かれて合わせて四兆円減税を行ったわけでございます。家計調査で、先ほど大臣が御説明しました非消費支出、税金部分の動きを見ますと、二月が前年比で九・四%税金が減っておりますし、六月も二割減っておりますし、八月も一四・四%減っておるということで、減税が行われた月が大きく非消費支出が落ち込んでおる。それに合わせて可処分所得の方が少し伸びが高まっておるという状況がございますので、減税については少なくとも下支えで可処分所得をふやすという効果がうかがえます。ただし、全体の動きの中で収入の伸び自体が下がっておりますし一消費者マインドが萎縮してきているということで、消費全体を押し上げるまでにはいかなかったけれども下支えの効果はあったということだと思います。
  300. 菅川健二

    ○菅川健二君 それから、昨日閣議決定されました経済成長率の今年度の見通しでございますが、一・九%からマイナスの一・八%にかなりの下方修正になったわけでございます。この十六兆円の総合経済対策の効果というものはどのように見込んでおることになるんでしょうか。
  301. 河出英治

    政府委員(河出英治君) お答えをいたします。  減税の効果はただいま政府委員が説明申し上げたとおりでございます。  また、社会資本整備につきましても、まだ統計上ははっきりした効果は出ておりませんけれども、一次補正予算の裏打ちとなる地方税の措置が六月議会、さらに九月議会におきまして講じられているところでございますので、今後本格的に発現をして下支え効果を持つものと考えているところでございます。  こういった効果を十分織り込んだ上で今回の十年度の経済見通し改定試算を作成したところでございます。
  302. 菅川健二

    ○菅川健二君 今お答えになりましたように、これまでの経済政策というものが十分検証されないまま次々と追加的な対策が行われるということは大変問題でございますので、ひとつ十分検証の上、今後経済対策を打つ場合にはより有効な政策を打つように、ぜひお願いいたしたいと思います。  以上、ありがとうございました。(拍手)
  303. 水野誠一

    ○水野誠一君 最後の質問者になりました。御予定では大臣がもういらっしゃらなくなるということで寂しく思っておりましたけれども、最後までおつき合いをいただけるようでございまして、本当にうれしく思っております。  私は、今回の与野党合意の中に財政、金融の完全分離、これが織り込まれているという点に大変関心と期待を持っておりました。私たち新党さきがけも橋本政権時代に与党の片隅に身を置きまして、行政改革討議に参画をさせていただきました。この財金分離、特に財金の完全分離という点に大変こだわり、最後まで主張をしてまいったわけでございます。  そこで、今回の四党合意の中に財政、金融の完全分離という言葉を拝見しまして、大変大きく評価もし、また期待もしたわけでありますが、どうも読んでみると随分あいまいな点が多い。既に決まっております中央省庁等改革基本法よりもさらに一歩踏み出しているものとはちょっと思えない、むしろ後退しているんじゃないかな、こんな危惧を持っておりました。そういう視点から幾つかお尋ねをしたいと思います。  まず、十月一日の与野党の覚書では、「金融再生委員会の設置に伴う財政・金融の完全分離及び金融行政の一元化は、次期通常国会終了までに必要な法整備を行い、二〇〇〇年一月一日までに施行する」とされております。「金融行政の一元化」とは、恐らく農協系統金融あるいは労金、ノンバンク等の検査・監督業務の一元化のことを示すのだと思われるわけでありますが、そこで、「金融再生委員会の設置に伴う財政・金融の完全分離」とは一体どこまで示しているのか、これをお尋ねしたいと思うわけであります。  と申しますのは、金融再生委員会設置法案では、同委員会は現在の金融監督庁の業務を担うとともに、金融破綻処理制度ないし金融危機管理に関する企画立案を大蔵省と共管で担う、こういうふうにされています。また、破綻処理ないし危機管理以外の企画立案については、その権限大蔵省に残されている、こういうふうに理解をしております。こうなりますと、果たしてこれが財政と金融の完全分離と言えるのか、こういう素朴な疑問を持つわけでありますが、この点についてお答えをいただきたいと思います。
  304. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) 新党さきがけの皆さんがこの財政と金融の分離について熱心に取り組まれておられますことに敬意を表しますが、ただいまの評価を聞いて少しがっかりいたしました。  私ども民主党も、この問題にずっと取り組んでまいりました。金融監督庁の対案につきましてははっきり財金の分離というものを打ち出しておりますし、これまでも、今回の折衝でもこの点について相当粘り強く折衝を重ねてまいりました。  自社さきがけ政権の中で何度もさきがけの皆さんが挑戦されて、九六年の十二月の合意に財政と金融の分離を明確にするとあったと思うんですが、さらにことしの一月二十日の夜ですか、中央省庁等改革基本法の策定の前に折衝をやられて、その段階では、金融の破綻処理制度及び危機管理の企画立案については、財務省ができてから、その先まで当分の間持っていくという合意があったわけであります。金融破綻処理制度と危機管理の企画立案は、後回しにしたものを前倒しで持ってきたという点が大変重要な点でありまして、正直に評価をしていただけるものと思っております。何もさきがけができなかったことを我々がやったとまでは申し上げませんが、その点をぜひ御理解いただきたいと思います。  ただいまの財政と金融の完全分離という意味でございますが、これは水野委員も今おっしゃっておりましたが、我々がかねてから、住専問題の反省などからいって、金融の検査・監督は共管を廃して一元化をしなければならないということも当然でありますし、それから現在大蔵省の金融企画局を検査・監督部門である監督庁とあわせて統合するということももう一つの重要な部分であります。  そして、当然のことながら、来年中といいますか二〇〇〇年の一月一日までに財政と金融の完全分離と金融行政の一元化ができるまでは、破綻処理制度と危機管理の企画立案については当面大蔵省と共管ということになりますが、これはあくまで当面共管でありまして、二〇〇〇年一月一日には当然専管になると私は理解しております。
  305. 水野誠一

    ○水野誠一君 今の御説明で、いま一つわからないのは、破綻処理あるいは危機管理の企画立案、これが今おっしゃったような形でこの前の我々が決めました合意よりも明確になったんだと、こういうお答えなのでありますが、そのほかの企画立案部分、これが私たちが合意を読む範囲では、あるいは今回の金融再生委員会設置法案を読む限りにおいてはその権限大蔵省に残るというふうに読み取れるんですが、この点はどうなんでしょうか。
  306. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) さきの党首会談及び官房長官を交えた幹事長会談の合意によって、先ほどもおっしゃいましたように次の通常国会終了までに必要な法整備を行うということでありますから、次の通常国会関係省庁の設置法、それから中央省庁改革基本法の改正案が当然出されて、そこで措置されて、二〇〇〇年一月から財政と金融の完全な分離と金融行政の一元化が実現するものと思われます。
  307. 水野誠一

    ○水野誠一君 もう一つ伺いたいんですが、原案では二〇〇一年の三月三十一日までに金融再生委員会は廃止されるということにされておりましたが、与野党折衝金融機能再生のための緊急措置に関する法律の規定に基づく金融再生委員会の事務が終了した後に速やかに廃止する、こういうふうに変わったと理解しております。  ところで、その廃止後の金融行政については法案にも与野党合意にも言及されていないというふうに私は理解しておりますが、これはいかが理解をしたらよろしいのか。この点について伺いたいと思います。
  308. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) 委員おっしゃるとおりでございますが、二〇〇一年一月を目標に金融監督庁を改組して、大蔵省にある国内金融の企画立案をあわせて金融庁に移行するということに中央省庁改革基本法ではなっております。私の考えでは、この中央省庁改革基本法にも「金融については、基本的に市場の自主性及び自律性にゆだね、行政の関与は必要最小限のものに限る」となっておりますので、金融庁ではなくて、平時に移行しましたら金融監督委員会とか金融監視委員会といったものにすればよいのではないかと考えております。
  309. 水野誠一

    ○水野誠一君 私は、当初民主党さんが金融庁へ移行するという主張をされていたというふうに理解をしておりましたが、何かその主張がいつの間にか見えなくなってしまったな、そんな感じを持っておりました。その辺が、先ほど申し上げましたように、当初の期待がちょっと外れたなという感じに映っているんですが、その点はいかがでしょうか。
  310. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) 金融再生委員会がなくなったらどうするか、その説明としては、中央省庁改革基本法によればそれは金融庁ですよと、そういうことでありまして、金融庁を別に主張していたわけではありません。我々は、やはりこの金融行政の司令塔として、また公正な処理をしなければならないということでありますから、担当大臣、特命大臣を長とする三条委員会が両者の長所を兼ね備えたものとして一番いいと思っておりますので、三条委員会を主張し、今度の法律に盛り込んだわけであります。  自社さ政権も、たしか九六年六月の合意で、公正取引委員会のような三条委員会を基本としてやるという合意があったのはもう水野委員御存じのとおりであります。
  311. 水野誠一

    ○水野誠一君 その辺の議論も含めてまだまだこれからさらに議論をさせていただきたいと思いますし、また今後の皆様の活躍にも大いに期待をしたいと思うところであります。  次に伺いたいのは、国際金融及び為替管理の問題であります。今回の与野党合意の中では、国際金融及び為替管理については検討項目にも上がっていません。それらの問題、これは前の中央省庁改革基本法の中では、いささかあいまいながら「当面、財務省」、これは大蔵省の変わった後の財務省でありますが、「財務省に置き、日本銀行の役割を含め、当該部門の在り方について検討し結論を得る」という形で議論を今後詰めていきたい、こういう考えを示しているところなのでありますが、今回の皆様がなさった議論の中で、国際金融、為替管理の問題というのはどうとらえているのか、その点について発議者の皆さんと、それからできれば大蔵大臣にもその辺のお考えをお聞きできればと思います。
  312. 池田元久

    衆議院議員池田元久君) 委員指摘のとおり、中央省庁改革基本法の第二十条三項には、「当該部門の在り方について検討し結論を得る」となっています。我々も今度のこの金融再生法案をつくるに当たって検討しないわけではなかったんですが、正直申し上げまして、そこまでなかなか行かなかった。この国内金融の企画立案のうち、破綻処理制度と危機管理の企画立案を再生委員会に持ってくるだけでも大変なエネルギーを費やしましたので、正直そこまでは行かなかった。  しかし、衆議院本会議での質問もございました。私たちは次の検討課題としてこの問題に取り組んでいかなければならないと思います。そのときにはやはり日銀の役割というものも当然考えていかなければならないと考えています。
  313. 水野誠一

    ○水野誠一君 ぜひこの点についてはまた大蔵大臣にもお答えいただきたいのでありますが、今のお答えありました国際金融及び為替管理の問題というのは、これは確かに国内金融とは違ってなかなかそう簡単に結論が出るものではない、また同時に、日銀との関連ということも含めて、これの扱いについては大変慎重を期さなければいけない問題だと思うのでありますが、特に国際金融について造詣の深い宮澤大蔵大臣の御意見として伺いたいと思うのでありますが、この点についてはいかがお考えになりましょうか。
  314. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 財政、金融の分離の問題につきましては、水野委員は一番お詳しい方ですし、今回も、大変何度も何度も各党の間でお話がありましてこういう文章ができ上がりましたので、私はこの文章をポケットに持っておりまして、とにかくこの一語一語を大事にすればいい、こう思っておりますので、どうも何か申しますと余り生産的に、効果にならないように承知をしておりますので、どうぞそういうことでお許しをいただきたいと思います。
  315. 水野誠一

    ○水野誠一君 大変に謙虚というか含蓄のあるお答えでございまして、よくその意味を今晩かみしめて理解したいと思います。  しかし、私は、今の金融の混乱、これは前回の委員会では一種のカオスだというふうに申し上げたわけですが、まさにビッグバンの後の金融というのがどういうポジションになっていくのかということを考えると、本当に今までの常識をひとつ変えて新しい金融行政のあり方あるいは金融システムのあり方、これをやはり我々は考えていかなければいけないと思っております。  そういう点から申しましても、今回の財政、金融の分離、今までのようにややもすると金融が財政に従っていくという形ではなくて、金融というものが独自に世界の金融市場というものに伍して戦っていけるような、そういうしっかりとした金融のあり方というものを考える上でも、私はこの財政、金融の分離というのは非常に重要な試金石だと思っておりますので、今後、皆様のまた議論と同時に早期実現を期していただきたい、これをお願いして、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。(拍手)
  316. 坂野重信

    委員長坂野重信君) 本日の質疑はこの程度にとどめます。  明日は午前十一時に委員会を開会することとし、これにて散会いたします。    午後七時三十五分散会