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1998-10-13 第143回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年十月十三日(火曜日)     午後七時開議  出席委員    委員長 中山 正暉君    理事 伊藤 公介君 理事 臼井日出男君    理事 北村 直人君 理事 久間 章生君    理事 自見庄三郎君 理事 海江田万里君    理事 前田 武志君 理事 北側 一雄君    理事 加藤 六月君       植竹 繁雄君    江口 一雄君       江藤 隆美君    小澤  潔君       越智 通雄君    大原 一三君       大村 秀章君    加藤 卓二君       河村 建夫君    岸田 文雄君       斉藤斗志二君    島村 宜伸君       田中 和徳君    津島 雄二君       中谷  元君    葉梨 信行君       萩野 浩基君    村田 吉隆君       村山 達雄君    森山 眞弓君       谷津 義男君    横内 正明君       岩國 哲人君    上原 康助君       生方 幸夫君    小沢 鋭仁君       岡田 克也君    金田 誠一君       小林  守君    坂上 富男君       原口 一博君    上田  勇君       旭道山和泰君    草川 昭三君       斉藤 鉄夫君    西川 知雄君       鈴木 淑夫君    中井  洽君       西村 眞悟君    木島日出夫君       佐々木憲昭君    矢島 恒夫君       濱田 健一君    深田  肇君  出席国務大臣         内閣総理大臣  小渕 恵三君         法 務 大 臣 中村正三郎君         外 務 大 臣 高村 正彦君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         文 部 大 臣 有馬 朗人君         厚 生 大 臣 宮下 創平君         農林水産大臣  中川 昭一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         運 輸 大 臣 川崎 二郎君         郵 政 大 臣 野田 聖子君         労 働 大 臣 甘利  明君         建 設 大 臣 関谷 勝嗣君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     西田  司君         国 務 大 臣        (内閣官房長官) 野中 広務君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 太田 誠一君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      井上 吉夫君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 額賀福志郎君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      竹山  裕君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 真鍋 賢二君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣法制局長官 大森 政輔君         内閣法制局第一         部長      秋山  收君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         外務省条約局長 東郷 和彦君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         厚生省年金局長 矢野 朝水君         社会保険庁運営         部長      川邊  新君         中小企業庁次長 殿岡 茂樹君         労働省労働基準         局長      伊藤 庄平君         自治大臣官房長 嶋津  昭君         自治省行政局選         挙部長     牧之内隆久君  委員外出席者         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 十月十三日  辞任         補欠選任   亀井 善之君     田中 和徳君   斉藤斗志二君     中谷  元君   島村 宜伸君     大村 秀章君   小沢 鋭仁君     金田 誠一君   草川 昭三君     旭道山和泰君   志位 和夫君     佐々木憲昭君   不破 哲三君     矢島 恒夫君   秋葉 忠利君     濱田 健一君   北沢 清功君     中川 智子君 同日  辞任         補欠選任   大村 秀章君     島村 宜伸君   田中 和徳君     亀井 善之君   中谷  元君     斉藤斗志二君   金田 誠一君     小沢 鋭仁君   旭道山和泰君     草川 昭三君   佐々木憲昭君     志位 和夫君   矢島 恒夫君     不破 哲三君   中川 智子君     深田  肇君   濱田 健一君     秋葉 忠利君 同日  辞任         補欠選任   深田  肇君     北沢 清功君     ————————————— 十月十三日  平成十年度一般会計補正予算(第2号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  平成十年度一般会計補正予算(第2号)      ————◇—————
  2. 中山正暉

    中山委員長 これより会議を開きます。  平成十年度一般会計補正予算(第2号)を議題とし、審査に入ります。  まず、本案の趣旨について政府説明を聴取いたします。宮澤大蔵大臣
  3. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 平成十年度補正予算(第2号)につきまして、予算委員会での御審議をお願いするに当たり、その内容を申し上げます。  本補正予算は総則において、金融機能再生のための緊急措置に関する法律及び金融機能早期健全化のための緊急措置に関する法律案の規定により、預金保険機構金融再生勘定借入金等について十八兆円、金融機能早期健全化勘定借入金等について二十五兆円の政府保証限度額を定めること等としております。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
  4. 中山正暉

    中山委員長 これにて大蔵大臣説明は終わりました。      —————————————
  5. 中山正暉

    中山委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま説明を聴取いたしました平成十年度一般会計補正予算(第2号)の審査中、日本銀行並びに公団、事業団等いわゆる特殊法人役職員から意見を聴取する必要が生じました場合には、参考人として出席を求めることとし、その人選等諸般の手続につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 中山正暉

    中山委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岩國哲人君。
  8. 岩國哲人

    岩國委員 岩國哲人でございます。  民主党を代表して、金融安定化法案等について質問させていただきたいと思います。  まず最初に、預金保護について、いろいろと預金保険機構等が整備されつつありますけれども、もう一つ証券投資であります。こうした証券投資も、非常に一般化、普及しておりまして、こうした銀行に預けたお金の安全性と同じように、こうした証券会社との取引、しかもこれは日本証券会社だけではなくて、外国証券会社も非常に進出が急ピッチになっていることは御承知のとおりであります。こうした観点から、預金保護証券版とも言えるそういった基金が今用意されつつありますけれども、これについて、国内証券会社とまた外国証券会社とのいろいろな利害の対立があるということが新聞等に報道されております。  こうした国内証券会社、特にその中小の証券会社においてでありますけれども、顧客勘定がしっかりと分別管理されておらない。そこから、業者のそうした破綻が、証券会社破綻が起きた場合に、顧客に不測の損害を招く。それに対して、各加盟会社がその基金を払い込み、また外国証券会社にもそのような基金を払い込むべきであるという意見利害調整が行われているようであります。  この分別管理が、来年の四月一日までにということになっており、基金そのものはもうことしの十二月一日から、金融改革法案によって実施されようとしております。この十二月一日から四月一日の間に、分別管理が十分になされていないときに日本証券会社がかぶった損害、あるいは例えば山一とか三洋証券、そういった負債というものを抱えたままで、十二月一日から内外証券会社が同じような条件でその基金負担を負わされるということになった場合に、外国証券会社から見れば、そういう個人顧客は少ない、しかし取扱高は大きい、したがって基金負担額は大きい。にもかかわらず、十二月一日から四月一日までの間は、日本側証券会社経理内容等が非常に不透明であるがゆえに、非常にこれに対する危機感がございます。  これに対してどのような対応が今なされつつあるのか。国内証券会社二百三十三社、海外証券会社五十八社、合わせて二百九十一社。これが参加予定会員数でありますけれども、これについてどのような対応がなされているか、その点をまずお伺いしたいと思います。
  9. 伏屋和彦

    伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生が御指摘になられましたように、改正証取法第四十七条におきまして、分別管理義務につきましては、証券会社システム対応に要する時間等を考慮しつつ可及的速やかにその履行を行っていくとの観点から、既存の証券会社につきましては、来年四月一日から適用されることとなっております。  他方、やはり先生指摘がありましたように、投資者保護基金につきましては、これは本年十二月に設立されることがやはり改正証取法法律上予定されております。この投資者保護基金につきましては、金融システム改革法改正による他の制度改正と合わせまして、まさに本年十二月から実施されることが投資者保護観点から必要であると考えております。  その間の調整的な意味で、先ほどの先生の御質問にお答えいたしますと、現在、日本証券業協会におきましては、来年四月までの間におきましても、証券業界として可能な範囲内で、分別管理をできるだけ早く自主的に行う方向検討が行われているところでございまして、私どもといたしましても、こうした業界の自主的な取り組みについて関心を持って見守ってまいりたいと考えております。
  10. 岩國哲人

    岩國委員 そうした十二月一日と四月一日という四カ月間の時差がある以上は、分別管理とセットにして基金をスタートするというのが常識的な考えではありませんか。あるいは、その四カ月間はそうした分別管理が完了していない証券会社は対象から外すとかいうことにしなければ公平でない、そのように思いますが、いかがですか。
  11. 伏屋和彦

    伏屋政府委員 お答えいたします。  この分別管理義務制度投資者保護基金制度、ともに投資者保護目的とする制度でございまして、法律上は別個の制度でございます。  したがいまして、まさに先生がおっしゃるように、分別管理が行われている証券会社とそうでない証券会社があるわけでございますが、これは例えば、現在、投資者保護基金設立に向けまして、日本証券業協会におきまして、外国証券会社三社を含む証券会社十六社による設立準備会が設置されておりまして、その設立に向けた検討等、先ほど先生が言われました問題も含めて精力的に行われているところであると聞いております。
  12. 岩國哲人

    岩國委員 これは、内外証券会社を平等に取り扱うというビッグバンあるいはグローバリゼーションの観点からいいますと、こうした不公平を、不公平感をそのままに残して外国証券会社に強制するというのは、非常に問題があると私は思います。  これは少し古くなりますけれども、日本証券会社銀行アメリカへどんどん進出し、駐在員事務所から支店に、支店から現地法人、やりたい放題。アメリカのそういった政府許可もなしに、大蔵省許可一つ現地法人を幾つでもつくることができた、しかし、外国証券会社銀行日本現地法人をつくることを許されなかった、そういう時代が長くありました。例えば、日本銀行が十九行、日本証券会社が九社、それに対してアメリカ側はゼロ。野球のスコアでいえば九対○、十九対〇、こういった時代が長く続き、そしてメリルリンチが現地法人をようやく取得するに至ったわけであります。  こうした内外平等という精神からいっても、私は有価証券保護基金あり方というのは非常に問題が多いということをまず指摘し、もう一つの問題は、結局こうした日本証券会社経理内容経営内容というものをはっきりとディスクローズしないままで、それでこの基金をスタートさせようという考え方は、預金者保護預金保険機構における銀行経営内容を明らかにしないままで公的な資金を導入しようという考えにもそのままつながっているわけです。投資家保護においても預金者保護においても、そういう業者経営内容というものをきちんとディスクローズさせてからこのような基金をスタートすべきではないかと私は思います。  同じことは、この預金保険機構についても言えます。こうした預金保険機構についても、銀行経理内容経営内容がはっきりと預金者あるいは公的資金負担させられる国民にわかりやすい形ででき上がっていないのに、このような預金保険機構に巨額な公的資金が投入されようとしている。まず低価法によってそのような、原価法とか低価法、いろいろなやり方がありますけれども、粉飾した決算に基づいた経営というものは許さないという大前提で始めるべきではないかと思います。  その一番の大きな原因は、銀行株式保有が多過ぎるということ。アメリカやヨーロッパの場合には、八%、四%のBIS規制というのは、株式保有が極端に少ないという体型に基づいて八%、四%という物差しが適用されようとしています。それに比べて、日本銀行体型は著しく異なっておる。株式保有という、人間でいえばおなかが出っ張ったような形、それで八%、四%という同じ物差しを当てはめようという考え方はまずおかしいのではないかと思います。この銀行経理内容というものをディスクローズするためにも、株式保有額、そして株式評価の方法というものは避けて通れない問題だと私は思います。  まず、大蔵大臣にお伺いいたします。  銀行株式保有についてどのようなお考えをお持ちなのか。日本大手十八行の銀行株式保有額比率はどれぐらいになっておるのか。例えば、アメリカシティバンクの場合は株式保有率がどれぐらいなのか。それをまずお答えいただきたいと思います。
  13. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 我が国金融銀行行政が長いこと護送船団方式でございました間、ただいまお話しのようなディスクロージャーということはほとんど関心を引きませんでしたし、また護送船団方式はすべての人がともかく生きられるという非常に安易な方式でありますから、銀行責任ということも余り言われませんでした。  しかし、それがビッグバンになり、何よりも今国会におきまして法案の御審議の中でディスクロージャーあるいは金融機関責任ということが非常に強く議論せられ始めまして、その間、六月から金融監督庁の本格的な初めての銀行検査が始まりましたこともありまして、空気はにわかに一変しつつあると思います。恐らく、ディスクロージャーというのはした方が自分の得であるというような観念はじきに定着するだろう、しない者は何か病気があるのではないかという意味でございます。  そういう意味で、急速にそこは変わってきつつあるというふうに、やや楽観的ですが、しかしもう恐らく間違いなく、ここで初めて国際並み銀行あり方金融機関あり方、あるいは金融行政あり方というのが生まれるのではないか。それはもとより顧客には一番有利なことでございますが、そう思います。  そこで、その間に、今銀行株式保有のお話がございました。アメリカは、一九二九年の恐慌以来の反省から、銀行株式を持つということを厳しく取り締まるに至りました。また、グラス・スティーガル法などもやはりまだまだございますから、少し昔とは違いますけれども、そういうことはかなり厳しくやっておると思います。  しかし、我が国の場合には多分、沿革は、戦前に財閥がございまして、財閥系金融機関がたくさんございましたから、それが系統の株式を持つというようなことにかなり関係があったのではないか。また、戦後は、閉鎖機関から売り出されました旧財閥の持っておりました株式が、デモクラタイゼーション、株式証券化というので、それがまた奨励されたというようなこともございまして、いっときは銀行よさようならというようなことにまで至りましたけれども、その時代は、証券化は実は余り長く続きませんで、我が国は依然として間接金融の国である。  しかし、銀行株式を持つということは、アメリカの例にかんがみましても、またその評価益の処理の問題につきましても、私は、問題がやはり非常に多いのではないか、傾向としては、銀行がたくさん株式を持つということは余り好ましくないことだというぐらいの認識は今出てまいっておると思います。行く行くは、それがまたかなり厳しく論じられることになるのではないかというふうに存じております。  アメリカ金融機関がどれだけ株式を持っておりますか、私存じませんので、政府委員が知っておりましたら申し上げます。
  14. 日野正晴

    日野政府委員 例えばシティバンクを例にとりますと、総資産に占める株式割合は、一番直近で平成九年十二月末現在ですが、〇・八%でございます。それに対しまして、我が国の都銀、長信銀、信託銀行における総資産に占める株式割合は、平成十年の三月期現在において約六・八%となっております。
  15. 岩國哲人

    岩國委員 今長官からお答えいただきましたように、これだけ大きな差があるわけです。株式保有の金額が大き過ぎる。しかも、アメリカからも株式持ち合いを減らせという要求を再三にわたってされており、これに対して今まで大蔵省としてはどういう指導をしてこられたのか、そしてそれは実績は上がっているのかどうか、それをお答えいただきたいと思います。
  16. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  先ほど大蔵大臣からも御答弁がございましたように、我が国法制度上は、銀行政策目的あるいは投資目的株式を保有することは原則としては禁止されておりません。もっとも、独禁法上は、金融機関原則として国内会社発行済み株式総数の五%を超える株式を取得してはならない、こういう例外はございますが、株式を保有するかどうかということは各銀行経営判断となっております。  しかし、いずれにいたしましても、保有株式株価の変動が金融機関経営に対して与える影響というのは大変大きゅうございます。また、かつて強固でありましたメーンバンク制というものが最近緩やかなものに変容しつつございます。そういった意味で、金融機関の中には株式持ち合いを解消するところも出てきております。  金融監督庁、当時は大蔵省でございましたが、本年三月期から、御案内のとおり、金融機関含み益につきましては、原価法を採用した金融機関は、自己資本比率の計算上、ティア2へ算入させないこととしたところでございまして、これは、自己資本比率規制上、金融機関株式を保有するインセンティブを減殺する効果を持つものではないかというふうに考えております。
  17. 岩國哲人

    岩國委員 こうした〇・八%と六・八%、この数字を使っただけでも、日本銀行アメリカ銀行に比べて約十倍の株式を持っておる。例えば大手十八行で、今、時価に換算しますと四十兆円の株式を持っております。この四十兆円が、株式市場が二〇%上がれば八兆円の含み益、二〇%下がれば八兆円の含み損。このように、銀行経営そのものが非常に危ない基盤の上に立っておることが最近の貸し渋りにも私はつながってきておると思います。  株価が上がれば含み益が出て、そして貸し出しに非常に積極的になる。株価が上がるときというのは好景気であって、みんなが貸したくなるときです。貸したくなるときには銀行も貸したくなるような体質になっている。今度は、株価が下がる、含み損が出る、貸したくなくなる、貸せない、そういうときほどみんなが銀行に金を貸してほしい。そういう救済的なつなぎ融資等も含めまして、結局、顧客が必要なときには銀行は金を貸せないような経営体質になっている。それほど銀行を必要としないときに銀行はどんどん金を貸し出しをしなければならない。これがバブルのとき、あのような貸し出し競争を誘ったことになっているんじゃないでしょうか。逆に、今のような不景気なときに、銀行貸し出しというものが国民経済の上で非常に大きな役割をしなければならないときに、含み損が大きいがゆえにそのようなことはできない。  私は、銀行株式の所有というもの、早急にこれを解消する、その方向へ持っていくべきだと思います。これは、長期的には、日本銀行体質改善、そして短期的には、粉飾決算と言われるような、原価法とか低価法とかいったようなことに対する投資家不信感、それの解消ということにつながっていくんじゃないかと思います。  例えば、さくら銀行が、あるいは富士銀行増資をされます。その増資をするときの数字は、言い方はきついかもしれませんけれども、粉飾されたバランスシートに基づいた株価発行されているんじゃないか。例えば長銀債券発行についても同じことが言えると思います。債務超過債務超過でないのか、それが不透明なままで毎月利付金融債発行されている。これは、一体どこがその証券発行届け出書審査しているんですか。それが粉飾されていない数字だということは断言できますか。日野長官、お答え願います。
  18. 日野正晴

    日野政府委員 金融債発行につきましては、金融監督庁当局届け出るということになっております。ただ、その届け出内容は極めて技術的な点が多うございまして、特に、今御指摘になっておりますようなBSあるいはPLについては届け出書の中には含まれないことになっております。
  19. 岩國哲人

    岩國委員 長銀検査はいつから始まって、いつ終了したのですか。お答えいただけますでしょうか。
  20. 日野正晴

    日野政府委員 大手十九行に対する検査の一環としまして、第一陣、七月から始めまして、立入検査は九月三十日に終了しております。ただ、立入検査は終了いたしましたが、それを持ち帰りまして、現在その検査内容を精査しております。厳密に検査が終了するのは、当該金融機関に対しまして検査の通知を届けたという時点で検査が終了いたしますので、まだ検査は終了しておりません。(岩國委員「始まったのはいつですか」と呼ぶ)七月十四日でございます。
  21. 岩國哲人

    岩國委員 二カ月半もかかってまだ検査が終了していない。二カ月半もかかって、専門検査官が乗り込んでもまだ経営の実態というものを十分に把握できない。そのような状態のままで、一般投資家になぜそこの債券発行することができるんですか。有価証券発行そのものがこれだけ国会で問題になり、そして検査内容が、二カ月半も十五人のベテランがかかってつかめないようなものを一般投資家はどうやって理解できるんですか。十五人のベテランが二カ月、三カ月かかって把握できないような発行体の有価証券一般投資家に売り出すことを認めるというのは、これは全くおかしいじゃありませんか。御意見を。
  22. 日野正晴

    日野政府委員 先ほど立入検査の開始を七月十四日と申し上げましたが、もうちょっと早くて、七月七日でございました。訂正させていただきます。  そこで、先ほども、金融債の当局への発行届の記載事項について、技術的なことだというふうに申し上げましたが、もう少し詳細に申し上げますと、発行総額、これは、上限は資本及び準備金の三十倍以内というふうに長期信用銀行法の第八条で決まっております。それから売り出し期間、利率、発行価額、それから償還の方法と期限、利息払いの方法と期限などが届け出書の記載事項になっております。  もし、この金融債発行届が虚偽の届け出であった場合には、長期信用銀行法の第二十七条の規定によりまして、百万円以下の過料が科せられることになっております。
  23. 岩國哲人

    岩國委員 三カ月もかかって検査が終了しない、そのような状態にある発行体は、有価証券一般投資家への売り出しを禁止すべきじゃないかと私は思います。  そのような投資家保護という観点から見て、大蔵大臣、どのように思われますか。一般投資家が理解できないような、国会議員でさえも理解できないような、十五人のベテランでさえも理解できないような銀行発行する有価証券が、白昼堂々と一般投資家に売却される。これが投資家保護の精神からいって認められるべきことなのかどうか、大臣の御意見を伺います。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 所管大臣でございませんが、意見を言えとおっしゃいますので。  今監督庁長官が言われましたように、七月初めに監査が始まりまして、きょう承るところでは、普通のところは三月末までの監査をやられるそうですけれども、長銀については、国会でもいろいろ御議論がございまして、もう少し後までエキストラの監査をされたそうでございます。しかし、普通、大蔵省時代にも銀行監査というのは二月はかかっておりましたから、そのことが異常に長い期間だと私どもは受け取っておりません。  それからまた、監査の途中で異常が発見されるということも余りないことでございますから、それで監督庁長官が言われましたのは、虚偽あるいは詐欺によって銀行金融債が発券されたときは罰則があると言われましたのは、監査の間にそういう事実を別に確認しているわけではない、監査が終了していないのですから。したがって、ただ長いからその銀行に問題があるとおっしゃることにはならないのだろうと私は思います。
  25. 岩國哲人

    岩國委員 大体、大蔵大臣がその程度の認識しかお持ちにならないのは問題だと私は思っています。二カ月と三カ月の問題だけではないことは大臣が一番よく御承知ではありませんか。この銀行については、額面が割れている、あるいは債務超過債務超過でないかが毎日のように議論されている。  二カ月かかるところが三カ月かかった程度のことで、そうした有価証券の健全性、安全性に大きな影響があるとは思えないかのような御答弁を今されましたけれども、この長銀の場合には、発行する主体の経営安全性そのものが問題になっているんじゃないですか。それを調べに行っているのが検査官である。それを我々国会で議論しているわけです。単に二カ月が三カ月に延びたから、その程度では大きな問題ではないという認識は間違っていると私は思います。  次に、銀行の普通株を通じての増資の問題についても、これは同じように問題があると私は思います。  銀行自身が低価法によってきちっとした経営体質をディスクローズしていないのに、公的資金でそれを買い取るのも大きな問題があります。ましてや、一般投資家にそのような十分なディスクローズがない。大蔵大臣もさっきおっしゃいました。そのような株式評価についても将来減らすべきであり、また低価法が将来的に望ましいという答弁を今までしておられますけれども、低価法が将来的には望ましいのであれば、現在は望ましくない状態の数字に基づいて一般の投資家にも株式が売り出されている。このような状態は非常に問題があると私は思います。  この点について、一般投資家と、また公的資金という結果的には税金に負担がつながっていく、その普通株発行低価法以外の決算方法で行われて、それに基づいて有価証券発行が認められるという現状について、私はこういうことはやるべきでないと思いますけれども、大蔵大臣の御意見があればお願いしたいと思います。
  26. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 あえて申しますれば、今までの我が国金融機関、あるいは金融行政、あるいは金融検査が、そのような、国際的と申しますか、例えばアメリカなんかのスタンダードに比べればかなりルースであったということはもう疑いないところでございますから、そういうルースな中でのいろいろな社会あるいは業界の取引が行われておった。外から見れば危ういかなということであろうかと思いますけれども、とにかく我が国としてはそれをやってきて、ここでそれを改めなければならないというところに来ておるのだと私は思っています。
  27. 岩國哲人

    岩國委員 今度の何十兆円という巨額な資金を使って、銀行救済あるいは金融システムの救済という方向で一応の合意がなされつつあるわけですけれども、私は、こういうことについては、個人的にも、また党としても大きな問題を提起しております。  今度の五十兆円と言われ、あるいは六十兆円と言われるこのような巨額な公的資金が、結果的には国民負担につながる形において銀行システムのために使われる。これはツーレート・ツービッグだと私は思っております。ツーレートというのは、ツーレート・ツーセーブ、長銀等について手を打つ時期がもう遅過ぎる、そういう意味で私はツーレートだと思います。ツービッグと申し上げるのは、ツービッグ・ツーアコモデート、国民負担を押しつけるには余りにも大きな公的資金であります。  個人的なことを申し上げて恐縮ですけれども、私は、ヨーロッパで十年、アメリカで十年、東京で十年、そういう国際的な金融・証券の場というものを経験し、見てきました。どこの国でも、こんなに大きなタックスペイヤーのお金を使って一業界の救済をしよう、たとえそれが経済の根幹に大きな影響があろうと、私は寡聞にして見たことも聞いたこともありません。しかも、実態がわからないままに公的資金をつぎ込めという。よらしむべし知らしむべからずという言葉がありますけれども、今度の場合には、払わせるべし知らしむべからず、よらしむべしよりももっと悪いじゃありませんか。  このような構想については、私は、それこそ世界の金融の歴史で前例のないことであり、また世界の納税者、タックスペイヤーの中で、これだけ過大な負担を押しつけられるタックスペイヤーというのは日本が初めてじゃありませんか。  小渕総理に、このような国民的感情についてお伺いしたいと思います。  長銀救済について、国民の何割が賛成していますか、何割が反対していますか。党首会談において一応の合意を見た、そのような大筋が出た、その直後に行われた世論調査では、長銀救済に賛成一三%、反対八七%。これはごく一つの例ではありますけれども、総理自身は、国民の皆さんがこの問題について何割が賛成し、何割が反対していると認識しておられますか、お願いいたします。
  28. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今お示しされたのは、いずれかのメディアが調査した結果と記憶しておりますけれども、なるほどに、長銀救済ということでございませんで、金融システムを安定化させるという意味で、日本金融機関の現下の厳しい不良債権を抱えての状況について一体どういう手だてが講ぜられるかということでございまして、長銀救済ということで調査されました結果はそのとおりかもしれませんけれども、政府としては、全体をどう考えるかということでいたしたわけでございます。  ただ、政府といたしましても、国民に対する説明につきまして十分であったかどうかと問われますれば、私自身もこの問題につきましては、日本金融市場におきましてこのような経験をいたしますことは戦後初めてのことでございますので、これだけ大きな金融機関がかりそめにも破綻ということになりましたら、一体どういう事態が起こってくるかにつきましては、なかなかはかり知れないものがありまして、こうしたことを実験するという機会があるわけでもございませんで、いわば北拓とかその他山一とか、こうした破綻といいますかに至る間の状況におきまして、大きな影響を講じておるということについての説明はある程度できましたが、そういった点で十分な説明ができ得なかったという点において、今委員指摘のような数字のあらわれておったことについては認識をし、さらなる努力を継続してきたわけでございますが、最近におきましては、こうしたいわゆる公的資金の注入につきましても、ほぼマスコミその他におきましても理解が深まっておるという認識をいたしております。  国民の何割かと言われますと、私も、これを指し示す道標はございませんけれども、かなり理解が深まってきておるのではないか、このように認識をいたしております。
  29. 岩國哲人

    岩國委員 かなり理解が深まっているという御答弁ですけれども、国民の少なくとも五割はこれに賛成しておられるという認識はお持ちですか。
  30. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 今申し上げましたように、何プロということを示す今手だてはございませんけれども、多くの国民も、この事態を看過しておきますると、金融システムが、大きな事態に対応いたしましては、取り返しのつかないことになるのではないかという理解を示しつつあると理解しております。
  31. 岩國哲人

    岩國委員 我が国銀行それからアメリカ銀行が非常に苦境に立った場合の自己努力、企業努力と比較いたしますと、残念ながら、雲泥の差があるとしか申しようがないと思います。  シティバンクのリード頭取は、サウジアラビアまで行って自分の銀行の優先株を買ってもらうために必死の努力をした。シティバンクの本店、マンハッタンの中の目抜き通りにありました、それも売却しました。バンク・オブ・アメリカは、映画「タワーリング・インフェルノ」で有名なあの立派なビルを売却し、それぞれ家賃を払ってずっと営業を続けたのです。今は三分の一、二分の一とそれぞれ買い戻してきておりますけれども。  日本銀行は片手に立派な不動産を持ち、もう一つの片手に巨額の株式、NTTとかJRとか日立とか東芝とか、優良資産をたくさん持ち、両手に優良な不動産、優良な株式を持ちながら、なぜ、優良な資産も優良な株式もない、優良な不動産もない納税者のお金がこのように使われなきゃならないんですか。  わずか二時間で、この予算委員会で、六十兆円に関係する法案審議を終えようとしております。二時間で六十兆円。私の近所の豆腐屋さんは、三時間で百丁の豆腐をつくるのが精いっぱいです。ここでは二時間で六十兆。こういう巨額のお金が使われるということについて、一般の納税者がどういう気持ちかということは、大臣の皆さんも国会議員の皆さんもよくおわかりのはずだと思います。  銀行にとっては、持っている資産を失うことは全くない、売却もしない、自己努力もない。銀行にとってはまさにノーリスク・ハイリターンであります。国民にとってはハイリスク・ノーリターンではありませんか。  今度の公的資金は回収の保証がありますか。宮澤大蔵大臣、今度の公的資金の導入、それについては、国民の立場から見て回収の保証があるかどうか。元本の保証があるかどうか。その点についてお答え願います。
  32. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 概して申しまして、既に計上されております十七兆円は、国民預金者の保護のためでございますから、これは銀行が倒産いたしましたときに預金者保護のために使われる。これは全部回収されるということは、そうとは限りません。銀行が後でどこかの銀行と一緒になりまして、回収されることがあるかもしれませんが、これはしかし、そもそも預金者の保護のための金でございますから、回収されるのは本則ではないと思います。  それに対しまして、このたびの十八兆円というのは、御承知のように、例えば不良債権の買い取りであるとか、あるいは公的管理銀行や公的ブリッジバンクに係る出資、整理回収銀行、今までの整理回収機構が不良債権を買い取るための金でございますから、これは返ってくる可能性が相当高うございます。  それからもう一つ、二十五兆の、これは主として資本増強でございますから、資本増強した金融機関が強化されれば、投下いたしました金は当然返ってくる。したがいまして、今までの十七兆と、今度の十八兆あるいは二十五兆とは大変性格が違いますので、納税者の金とおっしゃることに違いはございませんけれども、十七兆が預金者保護のために使われてしまうのと比べますと、このたびの十八兆、二十五兆は、国民の金ではございます、政府の保証でございますから、保証を迫られればそうなりますけれども、これは返ってこないという金ではない。
  33. 岩國哲人

    岩國委員 回収についても保証はない、元本についても保証はない、しかし預金者のお金は完全に保証される。  私は、何度も引用して恐縮ですけれども、「豪邸に住んでる人の預貯金を隣の私がなぜ払う」、これが、多くの預金さえもできない人たちの率直な感情なんです。  低金利政策によって、かなり銀行は恩恵をこうむっています。少なくとも苦境を和らげてこられた。これは、なぜ低金利政策をとらなければいけないか、なぜ今でも続けなければならないか。理由として、この本委員会においても再三にわたって聞かされたことであります。低金利政策の結果として、得べかりし預金利子が六年間に三十兆円失われている。そういう預金者の気持ちがおわかりにならないはずはないと私は思います。  銀行というのは、釈迦に説法ですけれども、預かったものをお返しする、必要な人にはお金を貸して利子を取る、この二つだけが私は銀行の業務だと思っております。それを、貸した人からは利子を取らない、預けた人には利子を払わない、最近の銀行の実態は、まさにこのような状態になってきております。  銀行経営者から、あの低金利政策のおかげで皆さんには迷惑をかけたけれども私たちは助かりました、あるいは、払うべき利子を払わなくて申しわけありませんでしたというわびの言葉は、一遍でも聞いたことがありますか。あるいは三月の税金の投入、そのときにも、税金をいただいてありがとうという頭取の言葉がありましたか。反省もなければ感謝もない、このような業界に、なぜ何十兆というお金を使わなければならないのですか。そういう反省と感謝のない業界に、関係のない人たちの税金を公的資金などと詐称して使用することは、私は道義的にも全く論外ではないかと思います。  この点について、総理の御所感でもあればお聞かせいただきたいと思います。
  34. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今伺っておりますと、何か銀行という業界を保護するために税金を使うと。岩國さんほどの方がそうおっしゃったのではないと思いますけれども、そういうふうに聞こえましたので。  それはやはり、日本経済の、俗に言われます血の流れる動脈でございますから、ここに血が流れなかったらすべての人が困りますので、そのことは御理解いただいていると思います。
  35. 岩國哲人

    岩國委員 私も、銀行だけを救済するというふうに極言しているわけではありません。しかし、銀行はどれだけ負担しているのですか。一般の預金さえもできない人たちが、今度は公的資金という名のもとにみんなが負担させられる。この新しい金融再生あるいは健全化、この大きなプログラムの中に、銀行は具体的にどれだけの金額を負担することになるのですか。それが国民の目に見えないからこそ、銀行は救済してもらうだけ、国民はお金を使わされるだけという感情が残ってしまうわけです。  公的資金五十兆円、六十兆円に対して、銀行業界としてはどれだけの負担をされるのか、お聞かせいただきたいと思います。
  36. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私どもは、今、日本金融界、殊に銀行は世界的な不信を受けるほどのシステムの危機にあると考えておりますし、それはまた、我が国がこの経済から立ち直っていくときに、やはり市場経済においては、政府機関もございますけれども、市中の金融がなければ、それこそ中小企業から大企業まで経済がやっていけないわけでございますから、そういう意味で、金融の正常化、金融のシステム回復をいたしたいと考えておるわけでございます。  確かに、その間に、銀行はいわば助けられる側である、それには違いないと思います、預金保険機構には保険料を払っておりますけれども。それでも、全体として金融界が今救済を要する状況であることは間違いありませんので、そういう意味では、まあ預金保険の保険料は払っておりますけれども、救済を要する側が十分の負担をしていない、そういうことは言えるであろう。  それから、長年のやはり習慣とでも申しますか、自分たちが、今国からそういういろいろな意味での救済を受けておるということについての、もうちょっと素直な受け取り方をしていただくことが大事かなという感じは私もいたしますけれども、それはしかし、銀行がかわいいからやっておるということではないということは御理解をいただきたいと思います。
  37. 岩國哲人

    岩國委員 例えば、いわゆる発券銀行、興長銀等に対して、預金保険料に相当する積み立て、拠金を要求されますか。
  38. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そのことは、預金保険機構そのものは、いわゆる預金を受ける銀行金融債発行する長期銀行でない銀行から保険料を取ってやってまいりましたから、いわゆる長期銀行金融債が保護を受けるかどうかということについて、いっとき疑問が呈されました。  それに対しましては、私の前任者が、昨年でございましたか、それは当然保護を受けると。従来ややあいまいでありましたことがそれで明確になりましたので、それは取引の安定には非常に寄与したわけでございますけれども、しかし、そこで、それならばにわかに預金保険機構に保険料を払うかといいましても、長い蓄積があるわけでございますから、そのときに払ったからそれでいいというものでもあるまいというようなことがありまして、ともかく、倒産いたしましたときには金銭贈与を受ける、その金銭贈与を受ける勘定の中には金融債が入っておりますので、結果として金融債は全部保護を受ける。  しかし、そのための保険料は十分払っていないではないかとおっしゃいます問題は残っております。
  39. 岩國哲人

    岩國委員 こうした銀行業界にも、私は、適正な負担要求すべきだと思います。  全く関係のない、罪のない人だけがこれだけ、この予算委員会を通じて、巨額な将来のツケを残されて、そして銀行は、不動産を持っている、株式を持っている。そのような銀行がいまだに自己犠牲を要求されていないというのは、私は政治の姿勢を問われることになると思います。  銀行は、持っている株式を私は売却すべきじゃないかと思います、いつまでもそういった株式にしがみつくことなく。四十兆円の銀行が持っております株式の所有額、仮に五〇%、二十兆円以上を公的資金で買い上げる。これは証券保有組合、共同証券の前例があります。  私の提案ですけれども、これを、税金ではなくて二十兆円の国債を発行されて、その国債で皆さんが株式に転換できる転換国債を発行すべきじゃないかと思います。  前回の予算委員会等でも私は指摘いたしましたけれども、日本の経済の今の問題は、人が失業し、会社が失業し、お金が失業している。お金がたんすの中で、銀行の金庫の中で失業している。職を探してアメリカへ出稼ぎに行く。このような状態が日本の経済の立ち直りを妨げているのだと思います。  もう一つ株式市場が暗い、株価が低いということは、これはまた借り手にとっては担保掛け目はそれだけ下がってお金も借りられない、貸す方の銀行含み損が出ている。株価の低いということについても、これは非常に大きな問題があるのじゃないかと思います。株価を人為的に引き上げるというといろいろと問題がありますけれども、共同証券、証券保有組合、あれは株価を引き上げるというよりも、日本の経済のパニックを、そういう深刻な不況を救った功績は私はあったと思います。  二十兆円、当時とは規模が違います。だからこそ、二十兆円というような金額でそのような買い上げ機関を設立し、そこが国債を発行して、一%の利付国債、眠っている、失業しているお金をそこに吸い上げる、そして失業したお金を働くお金に変えること、そして買い上げた株式に転換できる転換国債、二〇%上がれば国債に投資した人は十分報われます。  仮に五年後にどうしても元本の保証がほしいという場合には、五年後に一回だけ額面で償還してもらうというオプションつき、これは企業も、東芝その他が約二十年前にやって大変成功した実例でもあります。一%の利付で五年後に一回だけ額面で償還できる、そうすれば、非常に憶病なお金も、高齢者のお金も、年金生活者のお金もそういうところに動員しやすいのじゃないでしょうか。そして、五年、十年と株式を凍結し、凍結することによって株式市場はそれだけ身軽になり、株式市場の景色が一変してきます。十年後には償還をする。  これは、もう一つ意味があります。これは、銀行の再編が進めば、人のリストラだけではなくて資産のリストラが進みます。持っている株式をどっちか売らなければならない、それを株式市場は敏感に恐れているわけです。そういう銀行再編というものを円滑に進めるための受け皿というものを最初につくっておけば、銀行同士の再編がもっとスムーズに動くのではないでしょうか。そして、そのときに株式市場に不要な負担を、プレッシャーをもたらすこともない。短期的には、株式市場の活性化、株式市場の景色を一変させる、長期的には、銀行体質を改善し、欧米の銀行体型と同じような体型に持っていくことによって、八%、四%という物差しが有効に適用される、そのような方向に持っていくべきではないかと思います。  こうした、新聞を見ても、テレビでもそうですけれども、毎日毎日、不良債権、不良債権。不良を優良に変える、債権を資産に変える、銀行の不良債権ではなくて銀行の優良資産に目をつけて、そこから今のこの暗い心理というものを解放していく手段が必要ではないか、そのように思います。お金が失業している、そのお金の失業対策として、株式市場対策として、銀行体質改善のために、このような政策、対策こそ有効ではないか、私はこのように思いますけれども、宮澤大蔵大臣の御所見をお願いいたします。
  40. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お話は注意深く伺いましたが、御意見として承っておきます。
  41. 岩國哲人

    岩國委員 私は、このような国の非常事態において、このような構想だけがベストとは申しません。いろいろな構想の中に、当然このようなことを検討しておられるはずだと思うのです。  国民の税金、公的資金を個別の銀行の普通株とか優先株とか市場性の余りないものに持っていくよりは、国民銀行株式を買い上げた、その株式という一つの大きな財産を担保にした別の国債を発行すれば、これは国の債務ではなくて、一つの投資行為として、しかも国家的な役割を果たすことになるんじゃないでしょうか。  堺屋長官いらっしゃいますので、景気対策について伺いたいと思いますけれども。  こうした減税あるいは低金利政策。この減税について、一兆円減税あるいは二兆円減税ということが議論されたときに、この予算委員会においてもそのシミュレーション、どれだけのGDPに対する効果があらわれるかということについて資料をいただいたことがあります。そのときは、恒久減税ではないために、特別減税であってしかも金額が小さいために、非常に低い効果が出ておったように思います。  今は、六兆円、七兆円、しかも恒久減税あるいは恒久的な減税。であれば、当然このシミュレーションも、単純に二兆円を三倍したとかいうことではないはずですけれども、この点について、当時のシミュレーションの数字と、そして今現在経済企画庁が持っておられるシミュレーションと、御説明いただきたいと思います。
  42. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 所得減税の効果でございますが、特別減税と恒久減税とは心理的にも行動的にも違うと思います。ただ、シミュレーションで申しますと、経済企画庁の持っております第五次世界経済モデル、これは一九九四年の十二月にできたものでございまして、推計期間が八三年から九二年、かなり古いんでございます。これで試算いたしますと、一兆円の場合には〇・一%、六兆円の場合には〇・五%というような数字が出ます。  ところが、重要なことはこの次でございまして、一年目だけの名目で見ますと一兆円と六兆円は一対六でございますが、二年目になりますとこれがかなり変わってまいります。  一兆円でございますと、一年目には四千六百億円のGDP効果でございますが、二年続けてやりますと、二年目には九千百億円の効果になり、三年目には、一兆円の減税で一兆二千六百億円の効果が累積してまいります。前に減税したものが貯金にたまっておりまして、それが、消費が拡大するのと、次の年に使われるのとありますから、恒久的な減税をやりますとどんどん累積してまいります。モデルの上でもそうでございますが、恐らく心理的効果等を入れますと、恒久的な減税はかなり大きな効果をやがて発揮する、二年目、三年目には発揮するものだと、このモデルでも言えると思います。
  43. 岩國哲人

    岩國委員 所得減税は非常に効果があるということでありますけれども、この低金利政策、あるいはそれがさらに強化されるかもしれない、これは所得減税の効果を相殺してしまうことになるのではありませんか。この点について簡潔にお願いいたします。
  44. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 確かに所得の面だけでいうと、低金利政策は所得を減らして、消費を減らす効果がありますが、一方においては企業の投資その他を促進するところがありますから、その関係はかなり複雑で、その時点時点によっていろいろと影響があって、一概には申し上げられないと思います。
  45. 岩國哲人

    岩國委員 それは、学者あるいは評論家としては、一概に言えないというところで答弁を打ち切られてもいいわけですけれども、しかし、政策の担当者としては、どっちか選べと言われたら、低金利政策を今続けるべきなのか、今の環境の中では続けるべきではないというふうにお考えなのか、どちらかに決めて答弁していただきたいと思います。
  46. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 現在の不況の中では、低金利政策をなお続けるべきだと決めさせていただきます。
  47. 岩國哲人

    岩國委員 視点を変えまして、中小企業あるいは中堅企業においての貸し渋りのマイナス効果が非常に深刻になっておりますけれども、こうした企業がなかなか単独では社債を発行できない。しかし、保険会社の保証つきの社債、銀行の保証つきの社債、こうしたものは外国で、日本の企業も銀行保証で随分たくさん出しました。今は自分の信用で出している例が多いわけですけれども。国内銀行保証つきの社債、あるいは保険会社の新しい業務としても、保険会社が保証しているから安心してこの会社の社債は買える、そのような制度を導入すべきではないかというふうに考えます。  また、中堅企業、中小企業は、なかなか、発行しても、五千万とか一億円では流通市場は、一つのロットが小さ過ぎてだれもディーリングの対象にしてくれません。ディーリング対象にできないからこそ割安に放置され、コストは割高になる。こうした中小に対しては、合同社債、これは商法にも規定があるはずですけれども、この合同社債は、連帯債務を要求されるがゆえに、結局よその会社の債務まで全部一社がかぶらなければならぬ。こうした商法改正検討し、合同社債あるいは中堅企業に対する銀行保証つき、保険つき社債といったものも景気対策として導入すべきではないかというふうに私は考えますけれども、通産大臣の御意見がありましたら、聞かせていただきたいと思います。
  48. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 いわゆる金融ビッグバンの進展によりまして、これまでの間接金融主体の金融構造は今後大きく変質するものと考えられます。資金調達の大宗を間接金融に依存しております中小企業にとっても、私募債の発行等直接金融による資金調達手段を検討していくことは、今後の中小企業政策金融の重要なテーマであると私は認識をしております。  このような認識のもと、中小企業、ベンチャー企業に対するリスクマネーの供給を円滑にするため、有限責任組合制度の創設等を内容とする中小企業等投資事業有限責任組合契約に関する法律を御審議いただき、先般通常国会で成立したところであります。また、中小、中堅企業の資金調達の多様化に関しては本年四月の総合経済対策、あるいは先般の通常国会で可決成立しました中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議において、中小企業の社債発行等直接金融の円滑化策について検討することが指摘されているところでございます。  今後とも、先生の御主張のように、中小企業も直接金融の分野が可能かどうか十分検討するということは当然のことだろうと思っております。
  49. 岩國哲人

    岩國委員 もう時間が終わりましたのでこの辺で終わらせていただきますけれども、きょう本会議に持ち出されようとしております健全化法案、こういった法案については、私は、納税者の立場から見ても、また、国際的な常識から見ても反対であるということを重ねて申し上げまして、私の質問を終わらせていただきます。
  50. 中山正暉

    中山委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  51. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  総理並びに蔵相、連日、まことにお疲れさまでございます。  金融再生法案の成立に続きまして、本日、金融健全化法案が衆議院を通過いたしました。国民とともに心から喜びたいと思います。御同慶の至りでございます。  私ども自由党は、金融再生法案につきましては、野党三会派の一会派として共同提出いたしましたが、修正の過程で、長銀のような債務超過の疑いの強い銀行も、預金保険法上の破綻宣告をすることなしに公的管理に入れて、不良債権部分を日本版RTCに移してきれいにした上で、営業譲渡だけではなくて、株式の売却という形で生きたまま外へ出していくルートが開けたことについてのみ反対をいたしました。  それゆえに、修正部分に対してのみ反対いたしましたが、本体につきましては、野党三会派で提出しました以上、賛成をいたしました。したがって、この本体によってこれから動き出す金融再生勘定についてはもちろん賛成でございまして、この補正予算でいよいよ政府債務保証という形で資金的裏づけができるということについては、もちろん賛成でございます。  それから、金融健全化法案につきましては、たび重なる協議の末、自民党さんが修正をされまして、私どもも、自由党も共同提出者として提出いたしましたわけですから、もちろんこの金融健全化勘定が早く動き出すことを願っているわけでございまして、その資金的裏づけとなるこの第二次補正予算につきましても、当然賛成でございます。  問題は、ですから、この後、健全化法案が成立することを期待しておりますが、再生法案と健全化法案がうまく運用されて、日本金融システムの再活性化が実現するかどうかというところに私どもの関心があるわけでございます。したがって、本日はそういう視点から質問をさせていただきたいと思います。  初めに、総論的な質問でございますので、総理にお答えいただきたいと思うのでございますが、この二つの法案が成立することによりまして、預金保険機構に三つの勘定ができるわけでございますね。いわゆる特例業務勘定、それから再生法案で裏づけられる金融再生勘定、それから健全化法案で裏づけられる金融健全化勘定。  この三つの勘定の性格、つまり、なぜこれは三つもつくったのか。恐らく、それは機能が違うから、ねらいが違うからでありますが、この三つの勘定の性格、そして、それが一つの政策システムをつくっていると思いますが、それについて、総理は、この三つをそれぞれどういう目的に使って、どういう経済政策のシステムとして何をしようとしておるのかということについて、総論的な、政策的な抱負をお述べいただきたいと思います。最初に、確認の意味で質問させていただきます。
  52. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 鈴木委員みずから申し上げられておるように、この三つの勘定はそれぞれの目的を持ってつくられておるわけでございますが、この点についての御答弁を申し上げることは基本的には提案者かと思いますが、まず、特例業務勘定は、預金保険法の規定によりまして設けられた勘定であり、二〇〇一年三月までの間、預金の全額保護のために行われる特別資金援助に係る業務の経理を区分するためのものでございます。  同勘定には、七兆円の交付国債が交付されているほか、十兆円の政府保証限度額を設けていることは、御案内のとおりでございます。  金融再生勘定は、金融機能再生緊急措置法の規定により設けられた勘定であり、我が国金融機能の安定及びその再生を図るため、二〇〇一年三月までの間に行われる特別公的管理銀行や公的ブリッジバンクに係る出資、貸し付け等の業務、整理回収機構の不良債権の買い取りに係る業務の経理を区分するためのものでございます。  同勘定には、十八兆円の政府保証限度額を設けることといたしております。  金融機能早期健全化勘定は、金融機能早期健全化緊急措置法案の規定によりまして設けられた勘定であり、我が国金融機能早期健全化を図るために、二〇〇一年三月までの間に行われる新たな資本増強の業務の経理を区分するためのものであります。  同勘定には二十五兆円の政府保証限度額を設けることといたしておりますが、いずれにいたしましても、冒頭申し上げましたように、三つの機能を十分発揮をされまして、早期健全化法案並びに金融再生法案、その両法案の効果が十分機能を発揮できますように、そのための資金として考えられているところでございます。
  53. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 総理、ありがとうございました。  ただ、非常に防備がかたいといいますか、各法案の趣旨説明のようなことを、官僚が、秘書官か知りませんが、準備してくれたとおりにお読みいただいたわけでございますが、もう総理もおわかりのとおりだと思いますが、もっと平たい言葉で言えば、この特例業務勘定というのは預金者保護なんですよね。破綻金融機関預金者、貯金者あるいは金融債保有者、そういう預金者保護のための勘定でございます。  それから、二番目の金融再生勘定というのは、破綻した金融機関を処理するための経費を賄う勘定でございます。おっしゃるとおり、公的管理に置くあるいはブリッジバンクにする等々の過程で必要となる勘定処理でございますね。  したがいまして、この二つは後ろ向きの目的だと思うんですよ。破綻した金融機関、それが預金者に迷惑をかけないようにするため、あるいは破綻した金融機関金融システムに混乱を起こしたりあるいは借り手企業が困ったりしないようにしながらうまく処理するための経理勘定でございますから、これはどちらかといえば後ろ向きの資金。しかし、これは同時に、入れたら大体返ってこないお金ですね。もう預金者保護のためのお金は典型的にそうでございますが、再生勘定もこれはなかなか普通は返ってこない、赤字の穴埋め的な要素がございます。  したがって、一口に公的資金と申しましても、この二つの勘定については最終的には納税者の負担になる可能性の極めて高い資金、しかも、いわば事後的処理、後ろ向き、防衛的な性格のものでございます。  これに対して、本日衆議院を通過いたしました健全化法に裏づけられている健全化勘定というのは、私は性格を異にしているんだというふうに思っております。これは生きている銀行を対象にしています。そして、金融システムの中にある不良債権というものを何とかここで一挙に処理をしよう、そうしなければ金融機関が前向きに企業に対して融資活動を展開できない、この重荷、足かせを取り除こう、そのことによって、日本金融システムを昔のような姿に戻そうということがねらいであって、一つ一つ経営破綻の話ではない。もっとマクロ的な金融システムの再活性化、ひいては日本経済を、総理がいつもおっしゃっているように、明るい展望の日本経済に持っていくための手でございます。  ということは、同じ公的資金といっても、これはいわば融資の世界、トランスファーじゃないんです、行ったきりじゃないんですね。金融取引的世界でございます、資本注入でございますから、もし資本注入をしてねらいどおり銀行金融機関が立ち直ってくれれば回収できる、融資の性格でございます。だから、この勘定が相当大きなことになっても、国民の皆さんに対して、これは我々のねらいどおり動けば返る金です。それに対して前のお金は、これは納税者の皆さん申しわけございません、皆さん方の御負担になってしまいますが、預金者保護等々のためだからお許しいただきたい、そういう性格のお金でございます。  その点をもう一度確認させていただきたいんですが、総理、どうぞ胸を張って、この金融健全化勘定というのは前向きの金としてみせるぞと、政治生命をかけてでもそうおっしゃっていただかないと困る。あとの二つは後ろ向きでございます。その点を実は最初に確認したくて総理に質問しているわけでございます。どうですか総理、これは、おれは政治生命をかけてでも、この健全化法案の健全化勘定というのは日本経済を立て直すための金だ、立ち直ったらこれは戻るのよということを堂々と国民に御説明願いたいと思います。いかがでしょう。
  54. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 改めてよく理解のできる御説明をいただきまして感謝を申し上げたいと思いますが、ただ、後ろ向き、前向きという言葉もなかなか難しいのではないかというふうに思っておりまして、先ほど御答弁申し上げましたように、すべて早期健全化のため、そしてまたある意味では、この金融再生法案あわせまして、やはり現下の状況を乗り越えるために必要な資金というものを投入しなければならないということだろうと思います。  今委員指摘のように、金融機能早期健全化勘定につきましては、これから金融機関がより健全になるための資金の注入だということでございまして、たしか昨日も党首会談の折、野田幹事長からも御指摘ありまして、これをいわゆる一般的に、前の勘定その他に比較してでしょうか、税金の投入だというふうな形で誤解をいただかないようにという御指摘がたしかあったように記憶いたしておりますので、これは前向きといいますか、それこそ金融機関を健全化するために必要な資金である、資本強化である、こういうことで必要なものと理解をいたしておる、こう御答弁させていただきたいと思います。
  55. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 ありがとうございました。御確認いただいたと思います。ぜひ総理は、政治生命をかけて、この健全化勘定のお金は国民の、納税者の負担にしない、回収してみせるぞということでお願いしたいと思います。  さて、この補正予算に出ている金額でございます。勘定の性格については今御確認させていただきましたが、金融再生勘定十八兆円、健全化勘定二十五兆円という金額の根拠について、蔵相にお伺いしたいのでございますが、どういうことでこういう金額が出てきましたのでしょう。
  56. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 実は、この法案の修正をめぐりまして各党間でいろいろなお話がございまして、この金額につきましてもいろいろなお考えが交わされたというふうに、私ども、修正の現場におる者ではございませんけれども承っておりまして、役所は役所といたしまして、それなりの試算と申しますか、そういうものもいたしました。  しかし、大変に率直に申しまして、これはきちんと普通の仕事を役所が積み上げてこういう答えになりましたと申し上げる性格のものでは正直申してなかったわけでございますので、各党が御審議をしていらっしゃるその過程を役所から見て、どういうふうな種類の御議論をしていらっしゃるかということを私どもなりに考えて見ておったという結果を申し上げる程度が、まあ正直なところであろうと思います。  そこで、まず金融再生法でございますけれども、これは今鈴木委員がおっしゃいましたような性格の法律でございますから、このための入り用は、恐らく特別公的管理あるいはブリッジバンクに係る出資、貸し付けといった業務に入り用な金がございます。それからまた、整理回収機構などが不良債権の買い取りをなさるための金が要るだろう。  それが幾らかということはなかなか予測が難しゅうございますが、一つのメルクマールといたしまして、全国の銀行のリスクの管理債権から引き当て相当額を引きますと、リスク管理債権が二十九兆あるそうでございますが、その中で、債権償却特別勘定に十五兆入っておるそうでございますから、例えば十四兆という金はここからひとつ出せるかな。いずれにしても、ラフな話でございますので、余り精緻に申し上げることはできませんが、それに公的管理銀行やブリッジバンクに係る出資、貸し出し等を足してみたらどうかなという一つの試算をいたしました。  それから、もう一つ早期健全化法案でございますけれども、全国の銀行のリスクアセッツがよく六百兆円と申しますから、仮にその六百兆円が四%インプルーブしましたら二十五兆でございます。これもしかし、なぜ四%だとおっしゃると困るんですが、例えば四%のインプルーブメントならかなりのインプルーブメントでございますから、そうすると、国内銀行が四から八にもなればまあいいことだというようなことがあるだろうかというようなことを実は申しておったわけでございます。それが十八兆と二十五兆の考え方でございます。  他方で、いやその考えは間違いだというふうに先ほども総理も言われましたから、私どもの試算は、これは余りいいお答えではないかもしれないなと思いますのは、六十兆というものを考えますと、五千億ドルでございますか、GDPの一二%ぐらいになります。フィンランドかどこかで処理をいたしましたときに、GDPの一〇%、九〇年の初頭に、これが一番大きな処理のようでございますが、しかし六十兆と固めて申しますと、その十七兆は性格が違うのでと御議論がありますから、これは本流の議論ではなくて、ちょっとそんなチェックもいたしてみました。
  57. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 蔵相、最初にぽろりと正直なことをおっしゃったわけで、私も、こういうものというのは、精緻に積み上げてこれだけ要るとなかなか言えるような性格の数字ではないというふうに思っております。  大事なことの一つは、アナウンスメント効果でございます。最後におっしゃいましたように、六十兆円というのをドル換算して、世界に流れますと、まず普通はびっくりすると思うのですね、それだけのものを用意したかということで。ただ、それは大事でございますが、私は率直に申しまして、金融再生勘定の十八兆円、これは本当は余り使いたくないお金です。これは、さっきも言ったように、後ろ向きで、出したら戻ってこない可能性がある。これは余りたくさん使いたくないなと思いますが、健全化勘定の二十五兆円というのは、これこそもう少しどんと積んで大丈夫だと言いたい勘定だと思うのですね。  私の簡単な試算では、今の不良債権を処理し、そして株価の下落に伴う評価損を埋めていくと、もうほとんどこのぐらいの金額になってしまいまして、高い自己資本比率を回復しようと思ったらこんなものじゃ足りないだろうなというふうに思います。もちろん、そう気がついたら後でまた次の補正のときに積んでいけばいいことでございますから、この二十五兆円が足りないから反対だと言うつもりはありませんが、私は、この金額についてはもう少し積む方法があった。民主党さんが三十兆円と言ったのは私はそれなりにわかる、三十兆円でも足りないのじゃないかなとさえ思っております。  さて、時間がなくなってしまいましたので、ここで質問を打ち切りといたしますが、最初に申し上げましたように、金融再生法案そして健全化法案が成立しようとしている、このことは国民とともに喜びたいと思いますが、問題は運用でございます。そして、その裏づけとなるこの勘定ということでございます。私ども自由党は、引き続きこの運用について、きちっと見て、国民とともにきちっと監視して、必要があれば国会で論議させていただきたいと思います。  ありがとうございました。
  58. 中山正暉

    中山委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木憲昭君。
  59. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  金融機関の不良債権をどのように処理するか、あるいは金融機関破綻の際に預金者とまじめな借り手をどのように守るか、これらは日本経済の直面する重要な課題であるというふうに思います。問題は、そのコストをだれが負担するかということでございます。  明確にしなければならないのは、このような事態をつくり出したのは一体だれかということであります。バブルに踊り、乱脈経営を続け、地価や株をつり上げ、国民に大きな被害を与えてきた金融機関責任というのは極めて大きいと私は思います。バブルの崩壊後も、銀行業界は、不良債権化した担保不動産を、いつかは値が上がるだろうということで、そういう期待のもとで事実上塩漬け状態にしたままで、計画的な引き当ても処分もしてこなかったというのが現状ではないかと思うわけであります。それが今日のような事態にまで問題をこじらせてしまったというふうに思うわけであります。  まず初めに総理にお聞きをしたいと思いますけれども、銀行経営を現在のように揺るがせている不良債権をつくった責任でありますが、一体だれにこの責任があるのかという点でございます。端的に言いますと、銀行経営者に責任があるのか、あるいは一般の国民責任があるのか。このそもそも論といいますか基本問題について、総理はどのように考えておられますか、お聞きをしたいと思います。
  60. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 金融機関の不良債権問題の状況は、バブルの発生と崩壊に加えまして、長期化する景気の停滞と相まって、なお抜本的な解決に至っておらないと認識をいたしております。  しからば、バブルは自己増殖した価格上昇期待により膨張し、崩壊したものでありますが、その背景には、金融機関のリスク管理体制が不十分なまま活発な融資が行われたことにあったものと認識いたしております。  また、政府といたしましては、その時点時点におきまして、我が国が置かれた状況を踏まえながら、最善と考えられる政策を講じてきたところではございますが、現時点で当時の状況を顧みますと、資産価格の急激かつ大幅な変動が国民経済に及ぼす影響について認識が不十分だったのではないかと考えております。  いずれにいたしましても、金融行政につきましては、本年六月に金融監督庁が発足したところであり、市場規律と自己責任を基軸とした明確なルールに基づく透明かつ公正な行政を進めていくことが重要と考えております。  また、政府といたしましては、バブル経済のもたらした教訓をかみしめつつ、内外の経済情勢等を十分注視しながら、経済運営に遺漏のないよう万全を期してまいりたい、このように考えております。
  61. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私の質問は極めて単純な質問でございまして、そのような複雑な御答弁でなくても結構なんです。  要するに、この不良債権はなぜできたかというか、だれがこれをつくったのか、その責任はだれにあるのかという点を聞いているのです。つまり、銀行経営者なのか国民なのか、極めて単純なことなんですが、総理はどのようにお考えですか。
  62. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 そのように二者択一で単純に結論づけられませんので、今お許しをいただきまして、その経過と、それぞれの責任ある立場の者がそれ相当の責任を負っておると、こう申し上げて答弁いたした次第でございます。
  63. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 銀行経営者に一番の責任があるというふうには思わないわけですか。
  64. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 大変大きな責任を負っていると思いますが、先ほど申し上げましたように、それぞれの分野における方々、あるいはまた、その時点における政策その他につきまして、万全ではなかったという反省はいたしております。
  65. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 まあ大きな責任はあると。  国民には責任はないと思うのです。一般の国民が不良債権をつくったわけではありません。この点ははっきりしているんじゃありませんか。
  66. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 不良債権は金融機関自身が現在もこれを解消できず保有していることですから、そこに至りました間におきましては、金融機関責任も極めて大きいと考えております。
  67. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の御答弁でわかりました。  金融機関に基本的な責任がある。これはもう当たり前のことであります。ところが、最大の責任のある銀行業界に自己負担を求めるということなく、今回、徹頭徹尾公的資金の投入、国民の税金投入で問題を処理しようとしているというのが現在の政府の姿勢だと言わざるを得ないと私は思うのです。  会期末になりまして、金融機能早期健全化法案、これを慌てて提出されまして、三党修正で強行されまして、現在第二次補正予算がこの委員会に提案されている。これで早期健全化勘定に二十五兆、金融再生勘定十八兆、合わせて四十三兆円、さらに特例業務勘定で十七兆円、合わせて六十兆。こういう非常に大きな金額でありますけれども、これでは国民に極めて莫大な負担を負わすことになるわけで、現在の不良債権や銀行経営の危機の状況に責任のない、いわば罪なき国民負担を負わせるということになるわけで、私はこういうやり方は絶対に許すわけにはいかないと思います。  そこで、お聞きをしますけれども、今回成立をしました金融再生法、それから早期健全化法、この二つの法律ですね。この中に、銀行金融業界に新たな負担を求める、そういう内容が含まれているかどうか、あればその条文はどれか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  68. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 二つの法案の異なる性格につきましては、先ほど鈴木委員が仰せられたとおりでございますが、ともかく今、日本金融機関というのは全く正常な機能をしていないわけでございます。血液が流れない体というようなことを皆さんよくおっしゃいますが、そのとき血管を非難してみてもしようがないので、まず血液を流すことを考えないと国民経済全体が死んでしまいますから、こういういわば破綻の処理、それからもっと前向きの資本の強化ということを法案でお願いしようとしているわけでございます。その中で資本の強化の部分は、いわば金を貸すだけである、先ほど鈴木委員が言われましたが、そのとおりでございますから、やがて銀行が強くなれば返ってくる金でございます。  しかし、押しなべて、銀行はこれらのことをやります上で徹底的に今回は責任を追及されますので、なるほど金銭的には何がしかの負担もないかもしれないけれども、今までの経営を問われ、そしてその責任を追及されるということは、やはりこれは、この際、我が国金融界にとっては大きな出来事である、また必要な出来事であると思います。
  69. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今お認めになりましたように、金銭的には負担はない、つまり国民に対しては大変な負担をお願いするということになるわけだけれども、しかし、当の銀行業界、つまり現在の事態をつくり上げた最大の責任のある銀行業界は一円の負担増も行わない、こういうスキームが、現在通りましたこの法律、そして現在ここに提案されている補正予算、こういうことになるわけで、私は、そういうやり方は国民からは全く理解できないものだというふうに思います。  強くなれば返ってくるということですが、強くなれば返ってくるのであれば、銀行がみずからそれを市場で調達すればいいわけでありまして、何も国民の税金を使う必要はない。銀行負担ができない、先ほど血液が流れていないなどというふうにおっしゃいましたけれども、しかし、銀行は毎年業務純益を兆単位で上げておりますし、優良な資産も、例えば一等地に本店、支店がある、広大なグラウンドも持っている、あるいは頭取などは九億円という莫大な退職金を受け取っている。そういう状況の中で、一円も負担できない、一円もさらに上乗せできないということは、だれが考えてもこれは異常なことでございまして、余りにもこれは銀行優遇、国民負担だけが先行する、こういう点で、全く私はこういうやり方について容認をできないわけであります。  銀行は何をやっても最後は国が面倒を見てくれる、税金で処理してくれる、こういうことになれば、ますますモラルハザードを助長するだけであります。今大事なのは、金融業界のこういう体質を大もとから改めまして、やはり自分の不始末は自分で処理するという自己責任原則、この原則にしっかり立たせるということが大事であります。そうして初めて規律が生まれていくわけでございます。  次に、長銀問題についてお聞きをしたいと思います。長銀金融再生法の適用を受ける第一号というふうに報道されております。今月の下旬にも特別公的管理を申し出る方向が強まった、これに対して政府・自民党も、長銀破綻させないとしてきたこれまでの方針を堅持する構えで、特別公的管理の開始を決定する見通しだとされている。ただ、株式の譲渡先、これは必ずしも住友信託にはこだわらないという報道をされていますけれども、大体こういう方向で処理をしていくというその考え方はこのとおりですか。
  70. 日野正晴

    日野政府委員 ただいま御指摘になりましたような報道がさまざまになされていることは承知いたしております。私的な契約として、住友信託銀行長銀との間で将来合併に向けていろいろ交渉が進められていたわけでございまして、そういった前提は、従来存在しておりました十三兆円のスキームを前提としたものでございましたけれども、それが廃止されまして新しい再生法案法律として成立いたしましたので、恐らくそういった法律が施行されたならば、それをもとにして何か申し出たいということを新聞等では報道していることは承知しているわけでございますが、私どもの方にはまだそういった申し出はございません。  いずれにいたしましても、そういった新しい法律の枠組みのもとで、この長銀問題が将来処理されることになるものと存じます。
  71. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 新しい法律の枠組みで処理されていくということでありますが、まだ申請が出されていないということでありますけれども、一般論としてお聞きをしたいわけですが、長銀のように破綻寸前の銀行、そういう銀行を、これは将来的に、預金等の払い戻しを停止するおそれが生じるというこの規定を使いまして、この銀行株式を一〇〇%取得して一時的に国有化する、そして日本版RTCが不良債権を買い取ったり資金援助を行う、このようにして、いわば身ぎれいにして、ほかの銀行株式の譲渡、営業譲渡、そういう形で子会社にしていく、このことが法律的には可能になっているわけでございます。その子会社を親銀行に合併するということもこれは可能だということでありますので、そしてまた、引き受けた銀行に資本注入もできる、こういうスキームになっていると思いますけれども、法律的にはこういう理解でよろしいですね。
  72. 日野正晴

    日野政府委員 ただいま委員が御指摘になりましたその生ずるおそれがあるというのは、恐らく再生法の三十七条の条文をお引きになって言われたものというふうに理解いたしますが、まだ長銀からはどういう法律のもとに……(佐々木(憲)委員長銀じゃなくて一般論で」と呼ぶ)一般論でございますね。一般論でございましたならば、再生法ではさまざまなオプションが用意されております。もちろん、今お話しになりましたような特別公的管理でありますとか、あるいはブリッジバンクでありますとか、いろいろなオプションがございますので、そういった広いオプションの中でどれを使うかということは、仮に将来一般論として申し上げることができるとすれば、さまざまなオプションが用意されたということになろうかと思います。
  73. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今私が申し上げましたようなそういう流れも、この法律によっては可能だということですね、選択として。
  74. 日野正晴

    日野政府委員 今おっしゃっているそういった流れも、オプションの一つとして用意されているということは承知しております。
  75. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 結局、この長銀について、具体的にはまだ申請は出ておりませんけれども、長銀のような破綻寸前の銀行をいわば身ぎれいにしてほかの銀行に合併させていくという筋道が、この再生法によってつくられているわけでございます。  それからもう一点聞きますけれども、長銀の場合、自己資本比率というのは現状どの程度になっているのか。過少資本の状況にある、あるいは著しい過少資本の状況にあるというのが、新しくできました早期健全化法案の中に書かれていますけれども、これに当たるのかどうか、お聞きしたいと思います。
  76. 日野正晴

    日野政府委員 私どもがことしの三月期の決算で把握しておりましたところでは、十・何%だ、一〇%を超えていたかと思います。現在私どもが検査をやっておりますのは、その三月期の自己査定が、適切に引き当て、償却がなされているかどうかという点を中心にやっておりますので、その比率が変わってくることは十分考えられます。また、最近報道等では、長銀のみならず長銀以外のさまざまな銀行についての自己資本比率が報道されておりますが、いずれもこれは十一月の決算を待ちませんと実際の自己資本比率は出てまいりません。  長銀につきましては、私どもの検査が終了いたしましたならば、その検査の結果に基づいて自己資本比率がおのずから算定されてくるものになると思います。
  77. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 長銀の場合は自己資本比率が三月で一〇%を超えていた、しかし現在は、ゼロ以下ではないはずでありますから、かなりのところに落ちている。しかし、破綻したと認定されていないわけでありますから、当然それは早期健全化スキームの資本注入の対象となり得る銀行であるということになりますね。さあ、そうなりますと、政府がこれまで八月にもくろんでおられたように、長銀に対して公的資金を投入して身ぎれいにしてほかの銀行に合併させるということが、今回この国会で成立をした二つの法律によって可能になったということではないかと思うのです、できないのはノンバンクに対する債権放棄ぐらいなものでありまして。  ですから、ほかの野党三党と私ども日本共産党の間には、預金者保護公的資金を使うかどうかは別としまして、少なくとも九月の上旬までは二つの点で共通点がありました。一つは、長銀に対して公的資金を投入しない。第二に、十三兆円の公的資金のスキームを廃止するということでありましたけれども、しかし、今回この二つの法案が通った結果、この二つの共通点は見事に裏切られてしまったと言わざるを得ません。  結局、自民党・政府の思うつぼのそういうスキームが生まれ、そして、これまでにない空前の資金投入、国民の税金が使われるということが可能になった。これは極めて重大なことでありまして、私は、こういうものは予算としては撤回以外にないという主張をいたしまして、質問を終わらせていただきます。
  78. 中山正暉

    中山委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  79. 濱田健一

    濱田(健)委員 突然のバッター変更で、ちょっと場違いな質問もあるかと思いますが、三点質問させていただきたいと思います。  まず、小渕総理にお伺いしたいわけでございますが、再生法案や、本日衆議院を通過しました健全化法案を通して、私たちは、銀行業界からの政治献金自粛されるべしということを訴えてまいりました。八月十八日の党首会談でも、そのような趣旨で総理の方からも御回答がございました。きのうの党首会談でも、公的資金を導入する金融機関からは、これまでの借金を含めて経常的な経費にかかわる政治献金も辞退いたしたいというお話があったやに私伺っているところでございます。  そこで、九六年の九月十一日付の朝刊でございますけれども、このような趣旨のことが述べられていたというふうに手元に持ち合わせております。「自民党が総選挙のための政治資金として、財界に五十億円、うち銀行業界に対して七億円を要請していることが十日、明らかになった。自民党は前国会で、経営が破たんした住宅金融専門会社(住専)の母体である銀行業界を批判し、一九九六年分の銀行からの献金を辞退する方針を表明していたが、この方針を裏でほごにしていたことになる。関係者によると、来年九月の政治資金収支報告で公表の対象になる年内を避け、年明け後に献金するよう求めるなど、国民の批判をかわす「工作」もしていた、という。」というような記事の内容が書かれているわけでございます。  今回の小渕総理の、公的資金を導入するところには政治献金辞退をするというお話、公的資金を導入しないところからは今からも堂々ともらうんだよという、裏返せばそういうお話になるというふうに思っておりますけれども、このような九六年の前例がまた再び起こることは、国民の、金融機関への公的資金導入のさまざまな財政的な措置も今論議をしているわけでございますが、問題点多しと私は思うわけでございますが、総理の御見解はいかがでございましょうか。
  80. 小渕恵三

    ○小渕内閣総理大臣 前回の社民党党首との党首会談におきまして、自民党の政治献金につきまして御指摘がございました。その後、今月の六日に、私、党の幹事長に対し再検討を指示いたしましたところ、これを受けまして、今月九日、自由民主党としては、新たに公的資金を投入される銀行からの寄附は、今後、過去の借入金返済に充当するものも含め、当分の間自主的に辞退する方針を決定した旨を報告を受けましたので、昨日、土井党首に対しましても、その向き御説明を申し上げた次第でございます。  そこで、今委員が御指摘をされました平成八年、一九九六年における自民党の政治資金に対する新聞の報道につきましては、経理の担当に確認をいたしましたところ、当時、自由民主党から銀行協会に総選挙のための政治資金として七億円、新聞にそう書いてあるわけでございますが、そのような献金を要請した事実はない、こういうふうに報告を受けております。
  81. 濱田健一

    濱田(健)委員 二年前の話でございまして、経理の方はそういうことはないということなのかもしれませんけれども、今回の総理のそういう御回答に対して、私たちは、政治献金の持つ、政党や政治家個人が活動していくために必要ではないとは申し上げませんけれども、やはり国民の目からして、現下の状況の中で問題点多しということを再度申し上げておきたいというふうに思うところでございます。  次に、これは景気や雇用の問題と直結しているというふうに思うわけでございますが、福島県で、タクシー事業者の皆さん方が集団的に厚生年金から脱退していくという問題がことしの当初生じたところでございます。  事業不振で自分の仕事を廃業すると称して国民年金に変更していく。これは事業者負担、本人負担半分ずつ折半をやっている中で、偽装で休業する、偽装で仕事をやめていく、そしてその半分は社会保険事務所に納めない。何に使うか。運転資金に使っているというような実態でございまして、社会保険事務所も、地域の中にある役所として、ある意味ではだまされてしまったというような状況がございます。  これらは、現地の社会保険事務所に一生懸命努力していただきまして、ほぼ解決したというふうに私は伺っているところでございますが、福島県の保険課の方でこういう実態を、県下的にどういうふうになっているのかというのを調べてみましたところ、この二年間に百八十事業所で似たような偽装休業などによる全員の喪失届が出されていたというふうに、ことしの七月の新聞に報道されているところでございました。  この辺を、社会保険庁はどのように実態をとらえているのか、そこをお聞かせいただきたいと思います。できたら大臣に。
  82. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 今先生の御指摘の問題は、厚生保険につきまして、保険料は労使折半でございますから、企業が当然半分を負担するわけですが、このタクシー会社の場合はかなり滞納がございまして、それが累積しておりました。そして、その支払いが不可能といいますか、非常に困難であるということで、喪失届というのを出しまして保険料の滞納をしておったわけでございます。しかし、現実には、また営業もやっておるというようなことがはっきり後でわかりましたものですから、その喪失届を取り消しまして、そして適正な届け出の励行をするようにということにしております。  ただし、滞納額はかなりの額に達しておりまして、二千九百万円くらい滞納しているほか、その全喪取り消し後の保険料も二千万以上の滞納があるということでございますから、これらを督励して納付をしていただくということになろうかと思います。
  83. 濱田健一

    濱田(健)委員 こういう状況は全国的にどのようにつかんでいらっしゃるのか。
  84. 川邊新

    ○川邊政府委員 まず最初に、福島県におきましては、先ほど先生指摘のとおり、同様な事実がないか、現在確認作業をさせているところでございます。  それから、全国的な問題でございますけれども、いずれにしろ、こういう案件そのものは年間で約五万件以上ございます。そういう意味で、適正な適用を励行するというところの指導を十分してまいりたいというふうに考えております。
  85. 濱田健一

    濱田(健)委員 現下の厳しい雇用状況や労働者の厚生的な面でこれは絶対に許すことはできないと思うところでございまして、これらの面について、大臣、どのように今後対応していかれるか。
  86. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 現在非常に不況な業種が多いことも事実でございますけれども、しかし、営業をやっておる以上、事業者負担分は必ず納めていただかなくちゃなりませんから、これは各保険事務所等を督励してその納付方について指導を徹底してまいりたい、こう思っております。
  87. 濱田健一

    濱田(健)委員 同じ質問を、労働大臣、いかがでしょうか。
  88. 甘利明

    ○甘利国務大臣 この事案、詳細は把握はいたしておりませんが、お話の限りによりますと、厚生年金からの偽装脱会の事件でありますので、基本的には厚生省所管のお話であります。ただ、私どもは労働条件の保護という行政を扱っております。そういう観点から、何らかの支障が生じないかどうか、そういう懸念がないか、厚生省ともよく話し合っていきたいというふうに思っております。
  89. 濱田健一

    濱田(健)委員 先日のテレビで堺屋長官と御一緒したわけでございますけれども、今の景気の問題、国民の皆さん方は、将来に向けての不安というものが、実際上の金融機関がどうだということも含めてあると。長官は、今までやはり不安要素、暗い面だけ出してきた、もっと明るい面を出していこうではないかということを言われました。来年の年金の再計算期に向けて、今いろいろな提言がなされておりますが、平成八年度の厚生年金累積剰余積立金の残高は幾らになっているのか、厚生省にお尋ねいたします。
  90. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 厚生年金の積立金残高は、平成八年度までで百十八兆円でございます。そしてまた、十年三月末の一年間の剰余金は七兆三千億円でございまして、平成九年度の積立金残高は百二十六兆円となっております。  なお、この七兆三千億の増加分の中には積立金による運用収入がございまして、これが五兆六千億くらい含まれておる、こういう実態でございます。
  91. 濱田健一

    濱田(健)委員 この積立金はどのように運用されているのか、その内容をお知らせください。
  92. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 この積立金は、全額が今の段階では資金運用部に預託されまして、財政投融資制度の中で、社会資本整備でありますとか、あるいは政策金融等の原資として活用されております。  なお、その一部分は、厚生年金の保険料拠出者に対する還元融資として住宅融資、それから社会福祉施設等の整備に活用されておりますし、また年金福祉事業団の市場運用事業の原資にもなっておる、このような状況でございます。
  93. 濱田健一

    濱田(健)委員 年金の基盤が危うくなってきている。五つの提言の中では、そのほぼ一貫的に主張されている中身は、保険料の値上げ、給付額の低下という方向がその思想を貫いているというふうに思っているわけでございますが、こういう百二十六兆円にも上る累積剰余積立金、これらはこの五つの提言の中ではどのように国民の皆さん方の中に触れられているのか、その辺はいかがでしょうか。
  94. 宮下創平

    ○宮下国務大臣 御案内のように、昨年の十二月に審議の参考として厚生省が五つの選択肢を示しました。そのうち、最後の一つは、年金体系を基礎年金部分だけにとどめて他は民活に任せようということでございますが、四つのケースは、いずれも保険料と給付額とのバランスをどう考えるかという態様の違いを参考のために示したものでございまして、その前提としては、積立金の運用が計算上は五・五%の利回りで行われるというようになって、この五つの選択肢が示されております。
  95. 濱田健一

    濱田(健)委員 これで質問を終わりたいと思いますけれども、百二十六兆円という累積の積立金がある。これらは資金運用部で使われているわけでございまして、国民の皆さん方の積み立てたお金ということで、当然年金の新たな財源に基本的には使うべきものでございまして、また九四年の村山内閣のときに、基礎年金、今三分の一の国家財政負担、これを二分の一に次の再計算期には上げていくんだということが附帯決議をされている。これらもしっかりと国民の皆さん方のところに明らかにして、そしてこれから先の年金制度というものを、そういうものをベースにしてどうしていくのかということもやっていかなければ、国民をだましていくことになるというふうに私は申し上げておきたいと思います。  これで質問を終わります。
  96. 中山正暉

    中山委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  以上をもちまして平成十年度一般会計補正予算(第2号)に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  97. 中山正暉

    中山委員長 これより討論に入ります。  討論の通告がありますので、順次これを許します。自見庄三郎君。
  98. 自見庄三郎

    ○自見委員 私は、自由民主党を代表して、ただいま議題となっております平成十年度一般会計補正予算(第2号)に対し、賛成の討論を行うものであります。  今回の補正予算は、我が国金融システムに対する内外の信頼の回復という喫緊の課題にこたえるものであります。  以下、賛成する主な理由を申し述べます。  賛成の理由の第一は、本補正予算が、我が国金融機能の安定とその再生に資するものとなっている点であります。  すなわち、今回の補正予算は、金融機能再生のための緊急措置に関する法律の規定により、一般会計予算総則において、預金保険機構金融再生勘定借入金等について十八兆円の政府保証限度額を定めることとしており、これにより、金融機関破綻した場合等に対応預金保険機構が行う金融再生業務等について、予算面において万全の対応ができることとしております。  賛成の第二の理由は、本補正予算が、我が国金融機能早期健全化を図るものとなっている点であります。  今回の金融機能早期健全化のための緊急措置に関する法律案では、金融システムの早期健全化策として、預金保険機構金融機能早期健全化勘定を設け、新たな資本増強の制度を創設することとしております。本補正予算は、この金融機能早期健全化勘定借入金等について二十五兆円の政府保証限度額を一般会計予算総則において設定するものであり、預金保険機構金融機能早期健全化業務のための資金として、万全の対応を図るものとして評価できるものであります。  以上、賛成理由を申し述べましたが、私は、本補正予算がこのように必要かつ不可欠なものであるとして、賛成の意を表明するものであります。本補正予算を初めとするさまざまな取り組みなどが相乗効果をもって我が国金融システムの再構築と経済の再活性化をもたらすものであり、そのためにも、本補正予算の速やかな成立を期するものであります。  以上であります。(拍手)
  99. 中山正暉

    中山委員長 次に、海江田万里君。
  100. 海江田万里

    ○海江田委員 私は、民主党を代表して、平成十年度一般会計補正予算案に対して、反対の立場から討論を行います。  民主党は、公共の財産である金融システムを守るため、公的資金の投入が必要不可欠であるならば、情報公開の上、国民に対して説明義務を果たし、必要な額を思い切って投入すべきであると主張してきました。しかし、本日衆議院において可決された金融機能早期健全化のための緊急措置に関する法律案を前提とするのであれば、金額の大小にかかわらず、民主党としては本補正予算案に賛成することはできません。  以下、具体的にその理由を申し述べます。  第一に、金融機能早期健全化のための緊急措置に関する法律案においては、金融機関の真の経営実態を明らかにすることなく、中途半端な資産査定及び引き当てに基づく中途半端な資本増強しかできません。つまり、仮に二十五兆円という巨額の公的資金を過少資本の金融機関等に投入したとしても、一時的な延命にこそなれ、抜本的な問題解決にはならず、いずれはむだ金に終わるおそれが大きいと言わざるを得ません。  第二に、金融機能早期健全化のための緊急措置に関する法律案においては、行政による裁量の余地が大きく、資本増強の要件が不明確であります。二十五兆円もの巨額の公的資金を投入するというのに、その要件をあいまいにしたままでは、そのお金がどういう使われ方をされるのか不透明であります。  第三に、金融機能早期健全化のための緊急措置に関する法律案においては、国民に対する説明責任は全く無視されております。二十五兆円もの巨額の公的資金を投入するというのに、国民に対してその理由を説明しないというのは、全くもって無責任であります。  むだなものは一円であってもこれを認めず、真に必要なものには十分な資金を投入する、これが国民の税金を有効に使う要諦であります。したがって、本補正予算案に盛り込まれた二十五兆円が有効な使い方をされない以上、民主党としては本補正予算案に賛成することはできません。  以上申し述べ、反対討論を終わらせていただきます。(拍手)
  101. 中山正暉

    中山委員長 次に、西川知雄君。
  102. 西川知雄

    ○西川(知)委員 私は、平和・改革を代表して、賛成の立場から討論を行います。  平和・改革は、日本金融危機が深刻な状況に陥っており、与野党の枠を超えて、政治の責任でこの危機を乗り切ることが重要であるとの認識に立ち、今日まで対応してまいりました。  さきに成立した金融再生法では、預金者保護、決済システムの維持に配慮した上で、金融整理管財人、ブリッジバンク、特別公的管理など、さまざまな選択肢を備えて、金融機関破綻等についての多様な事態に当たり最も効果的な対応がとれるようになりました。  法案審議の過程においては、平和・改革の強い主張により、金融機関の不良債権の実態、財務状況に関する情報公開について、一定の実態を反映するものが実現しました。  すなわち、我が国金融システムに関する国際的な信頼性を確保し、信用秩序の安定を図る観点から、国際会計基準を勘案して、資産査定の公表を実施するようになりました。また、国内の中小零細企業に対する信用収縮が助長されないよう、実施時期、公表内容等について十分な配慮を行うものとして、めり張りをつけた効果的な情報開示を目指しております。  同様の認識のもと、早期健全化法案の協議においても、平和・改革は、情報開示、経営者、株主の責任の明確化等を中心に真剣に議論をしてまいりました。早期健全化法案は、不良債権の処理を速やかに進め、資本増強により、個別行の救済では決してなく、金融システムの強化を図ることを目的としている法律であります。そして、適正に資産の査定、引き当て及び有価証券評価等を行うこと、情報公開を充実し、努力規定から義務規定に修正したこと、虚偽記載に対する罰則を強化すること、過少資本行の区分をふやし、対応策についても細分化したことなど、我々の主張が相当程度反映された修正案となりました。  特に、委員会における平和・改革の主張、すなわち金融再生委員会による適正な引き当てのためのガイドラインの作成及び公表、自己査定のために策定した金融機関の引き当てのガイドラインの公表、有価証券その他の資産評価において、国際業務を営む金融機関は国際会計基準に基づき適切に評価することの点について、自民党、民主党より明確に我々の主張に賛同する答弁があったことは、情報開示に関する大きな前進であります。  これを受けて、平成十年度一般会計補正予算の予算総則補正において、金融再生勘定に十八兆円、早期健全化勘定に二十五兆円の政府保証限度額設置の予算措置を行い、万全の備えをとろうとしています。  金融再生勘定については、整理回収機構の不良債権買い取りに必要な金額及び特別公的管理や公的ブリッジバンクに係る出資、貸し付け等の業務等を遂行するために必要な金額の合計十八兆円の枠は、万全の対応が可能な金額であると考えます。  また、金融機能早期健全化勘定については、早期健全化法案対応する新たな資本増強の業務を推進するために二十五兆円の枠を用意するものでありますが、これは、全国銀行のリスクアセットが総額で約六百兆円であることから、全国銀行の約四%相当の自己資本増強に寄与するに十分な額となります。すべての国際基準行の自己資本比率を八%から一二%に、すべての国内基準行の自己資本比率を四%から八%に引き上げることをも可能にする額に相当する規模であるものと考えます。  これらの政府保証枠は、出資や貸し付け等に活用される資金を用意するものであり、原則としてその元本は戻ってくるものであることから、金融システム安定のための有意義な予算措置であると考えます。  金融再生法、金融健全化法案の成立後には、これらの法律に規定している経理勘定を機能させ、実効あらしめるようにしなければなりません。本件補正は、金融システム安定化のための大胆な措置であり、国内、国外に対する安心感を高めることに大きく寄与するために必要であると主張し、私の討論を終わります。(拍手)
  103. 中山正暉

    中山委員長 次に、西村眞悟君。
  104. 西村眞悟

    ○西村(眞)委員 私は、自由党を代表して、ただいま議題となりました平成十年度補正予算案に賛成する討論をいたします。  今日我が国を襲っている未曾有の金融危機は、自民党政府責任であります。不良債権処理の見通し、政策の中身、そして実行手順すべてにおいて誤った結果が現下の深刻な金融システム不安であり、日本発の世界恐慌さえ現実となりかねない情勢となってきたのでございます。  約一年前から始まったこの金融システム不安は、実体経済の悪化が大きな原因となっております。つまり、自民党政府が、目先の財政帳じり合わせにこだわる余り平成九年度において、消費税五%への引き上げ、特別減税の打ち切りを初めとする九兆円の国民負担増政策をとったため、景気は急速に失速し、マイナス成長となりました。実体経済の悪化に伴う株安、円安、倒産の急増に伴う不良債権の増加が金融機関の財務内容の悪化を招いているのであります。  また、自民党政府は、不良債権問題にめどをつけないまま金融ビッグバンを開始いたしました。その結果、銀行のみならず、証券、生保を初めとする金融機関は、実体経済悪化により体力が低下しているにもかかわらず、不良債権の処理を進め、なおかつ世界規模の再編の中で生き残らねばならないという大変な困難に直面しております。本来、不良債権処理だけでも信用収縮を伴うにもかかわらず、これら三つの相反することを同時に行わねばならない銀行が貸し渋りに走ることは、当然予見できていた事態でございます。  景気の悪化、景気の悪化に伴う金融機関の財務内容の悪化、金融機関の財務内容の悪化に伴う貸し渋りと資金回収の激化、貸し渋りの激化に伴う景気のさらなる悪化と、日本経済はとどまることのないマイナスのサイクルに陥っておりますが、この歯車を一刻も早く逆転させねばなりません。  我が国金融機関の将来像はどのようなものであるべきかを明確にした上で、再編と合理化を行い、体質強化を行わねばならないのであります。そのグランドデザインを示さないで、大手銀行を救済したり、弱い銀行同士の合併に公的資金をつぎ込んでも、先行き不安を解消することはできません。抜本解決にならないのであります。  金融機能早期健全化のための緊急措置に関する法律案に対する修正案は、いまだ不十分ではありますが、我が党の考え方も取り入れており、賛成をいたします。小出し、後手後手の対策がここまで金融システムの不安を招いてきた事実にかんがみ、政府は、抜本的な再編合理化のために必要かつ十分な資金量の確保を行うべきであります。  以上が、平成十年度補正予算に賛成する理由であります。  この早期健全化のための施策として行う資本注入は、融資、融通、つまりファイナンスであって、必ず返済されなければなりません。政府・与党にはこのことを強く求めるものであります。  また、不良債権問題、金融システム不安は、我が国が乗り越えなければならない構造問題のほんの一部でしかありません。金融機関早期健全化対策として重要な政策に抜本的な経済対策があることは言うまでもありません。本来、この補正予算案には抜本的経済対策が含まれていなければならないはずでありました。  この難局を乗り切り、経済再建を達成するために、今直ちに取り組まねばならない課題は、旧来の考え方にとらわれない大胆な構造改革であることを申し述べ、私の討論を終わります。(拍手)
  105. 中山正暉

    中山委員長 次に、矢島恒夫君。
  106. 矢島恒夫

    矢島委員 私は、日本共産党を代表して、本補正予算に反対の討論を行います。  本補正予算案に反対する第一の理由は、銀行の不始末やさらなる体力増強のために、国民の血税をさらに大規模に投入して、露骨な銀行支援を行おうとするためのものであるからであります。  金融再生勘定破綻前の金融機関に対する一時国有化の枠組みに対する公的支援でもあり、金融機関債務超過でなく破綻していないのなら、預金者保護も善良な借り手保護も自力でできるはずであります。国民負担を負わす道理はどこにもないのではありませんか。それどころか、最後は国が面倒を見てくれるということによって、金融機関に一層の倫理観の欠如、モラルハザードを招くだけであります。  早期健全化勘定は、現行の金融機能安定化のための十三兆円の資本注入枠が廃止されるかわりに創設されるものですが、現行よりはるかに巨額でかつ包括的な制度であって、廃止したはずの十三兆円スキームが単に復活しただけではなく、大きく肥え太ったものになっているのであります。  優先株式の引き受けができるのは債務超過状態などではないこととしています。すなわち、破綻状態でなければよいということですから、破綻寸前銀行、すなわち自己資本比率が限りなく〇%であっても注入可能ということであって、健全銀行のみとしていた十三兆円スキームの建前とも大きな逸脱であります。破綻直前銀行から超健全銀行までどんな銀行でも利用できるこうした新たな公的支援策は、結局、銀行業界による自己責任原則を破壊し、無責任体制をさらに助長することになりかねません。  第二の反対理由は、健全銀行が合併をする場合にも資本注入を受けることができることにしている問題であります。  法案によれば、破綻金融機関と合併を行った受け皿銀行だけでなく、健全な銀行が合併する場合でも資本注入を可能としているのであります。金融ビッグバンのもとで国際的な金融機関の再編が進められている中で、これに対応するために巨大銀行同士が合併する場合にも資本注入を認めるわけで、公的資金をつけてさらなる巨大銀行への再編を促進しようとすることになります。文字どおり、露骨な大銀行支援策そのものではありませんか。  第三の理由は、今度のスキームは、早期健全化で二十五兆円、金融再生で十八兆円、これに従来からの特例業務勘定の十七兆円を加えて、実に六十兆円もの空前の資金が、回収に穴があいた場合には国民負担が巨額となる危険性があるからであります。破綻銀行の損失補てんはもとより、株式等の買い取りや不良債権の買い取りについても、損失が発生すれば丸々政府が肩がわりせざるを得ません。  今回の六十兆円スキームは、これまでの三十兆円スキームと比較して、限度額が二倍になっているだけではありません。資金の使用ルートも格段に拡大されており、しかも、対象が健全銀行から破綻寸前銀行、過少資本銀行へと広げられており、回収困難の危険性はますます増加しています。  さらに、バブルへの反省のない大銀行公的資金でげたを履かせてもらった上で、投機的国際市場に出ていって新たな不良債権をつくらないという歯どめはどこにもありません。バブルのツケを国民に回すだけでなく、新たな銀行甘やかしのツケを国民に回しかねません。こうした税金の使い方自体が根本的に間違っているのであって、国民の理解を到底得られるものではありません。  私は、このような銀行甘やかし策に貴重な資金を投入するのではなく、景気回復につながる国民の消費購買力の支援策が今こそ必要であることを強調して、討論を終わります。(拍手)
  107. 中山正暉

    中山委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  108. 中山正暉

    中山委員長 これより採決に入ります。  平成十年度一般会計補正予算(第2号)について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  109. 中山正暉

    中山委員長 起立多数。よって、平成十年度一般会計補正予算(第2号)は、原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました平成十年度一般会計補正予算(第2号)に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  110. 中山正暉

    中山委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時十七分散会