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1998-08-11 第143回国会 衆議院 本会議 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年八月十一日(火曜日)     —————————————  議事日程 第四号   平成十年八月十一日     午後二時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ————————————— ○本日の会議に付した案件  議員請暇の件  金融安定化に関連する諸法案を審査するため委員五十人よりなる金融安定化に関する特別委員会設置するの件(議長発議)  国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     午後二時四分開議
  2. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより会議を開きます。      ————◇—————  議員請暇の件
  3. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 議員請暇の件につきお諮りいたします。  山崎拓君から、八月十六日から二十三日まで八日間、請暇の申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、許可することに決まりました。      ————◇—————  特別委員会設置の件
  5. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 特別委員会設置につきお諮りいたします。  金融安定化に関連する諸法案を審査するため委員五十人よりなる金融安定化に関する特別委員会設置いたしたいと存じます。これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 御異議なしと認めます。よって、そのとおり決まりました。  ただいま議決されました特別委員会委員は追って指名いたします。      ————◇—————  国務大臣演説に対する質疑(前会の続)
  7. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) これより国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。伊藤英成君。     〔伊藤英成君登壇〕
  8. 伊藤英成

    伊藤英成君 私は、民主党を代表して、小渕総理所信表明演説に関連し、総理並びに関係大臣に質問をいたします。  去る七月三十日、小渕総理を首班とする内閣が発足いたしました。本来であれば、新総理に対してお祝いを最初に述べるのが礼儀かもしれませんが、橋本内閣の六大改革のすべてが失敗したことに象徴されるように、今日の戦後最大の経済危機を招いた根本原因政府自民党の失政にあることをしんしゃくすると、国民の多くの方々もお祝いという気になれないのではないでしょうか。  事実、小渕内閣支持率は、マスコミ世論調査では二五%から三〇%台前半に低迷しています。また、小渕総理自民党総裁に選出された日、イギリスBBC放送は、市場にとって適切な総裁ではない、ドイツ通信は、国民日本金融関係者外国報道機関もこの人選に納得していない、フランスのル・モンドは、カリスマ性のないコンセンサスの男と報じております。  まさに小渕総理評価は、四面楚歌、内憂外患とも言える惨状にあります。まず、総裁就任早々、このような内外の厳しい声を総理はどう受けとめておられるか、その見解をお伺いいたします。  さきの橋本内閣は、景気は冷え切っているにもかかわらず、経済回復基調にあると言って財革法を強行導入し、桜の咲くころには景気は回復すると言ってデフレ予算を強行し、現在の戦後最悪の経済危機をもたらしました。橋本内閣状況判断誤り官僚主導型の経済運営誤り国民に甚大な不幸をもたらしたのであります。  しかるに、小渕総理は、自民党三役人事、組閣人事において相変わらずの国民不在派閥論理を優先するとともに、大蔵大臣大蔵省OBの宮澤氏を任命し、さらに特別補佐官に、これまた大蔵省のOBの行天氏を登用しております。私どもには、従来の官僚主導型の政策運営スタンスが維持された上に、極めて大蔵省影響力が強い政権が発足したと見えます。同じ轍を踏むとはまさにこのことを言うのでありましょうか。(拍手)  また特に、後で指摘いたします政府金融不良債権処理案では、破綻認定基準破綻認定時の責任処理、第二分類債権分割基準、これら核心部分はすべてあいまいとなっております。実際の運用に当たる大蔵省裁量権により、我が国には巨大なやみ社会が形成され、その当然の帰結として、政治の恣意的な介入を招くことは明らかであります。こうした危険性をはらんだ内閣とも見えます。  このような性格を持つ内閣において、そもそも、経済は得意でないとみずから述べている小渕総理御自身が、果たして経済再生内閣をリードできるのか、御所見をお伺いいたします。  現在の戦後最悪の危機を迎えている日本経済を立て直すには、金融システム安定化対策恒久減税追加補正予算財革法の凍結などの財政出動プログラムと、社会保障改革地方分権、官から民への権限移譲などの行政改革規制撤廃などの経済構造改革とのベストミックスを、いつどのようなタイミングで実施するかにかかっております。  そこでお伺いをいたします。  財革法の凍結や恒久的減税を行うというのであれば、その前に、まず国民の前に、現在の戦後最大の経済危機を招いた真因は、政府自民党経済情勢判断誤り経済財政金融政策誤り無為無策にあったことを真摯に認めるべきであります。  昨年初め、せっかく上向き始めた景気消費税率引き上げ医療費自己負担引き上げで急速に冷え込み、さらに追い打ちをかけるように、昨年十一月、単なる財政一律カット法である財政構造改革法の成立を強行し、景気回復の芽を完全に摘み取りました。しかも、これらの政策はアジアの経済危機金融不安が深刻化する中で打ち出されたのであります。  また、金融不安は不良債権問題に何ら手をつけなかったことが原因で引き起こされたものでありますが、政府自民党は、金融システム安定化という大義名分のもと、銀行救済のため国民の血税十三兆円を投入するという金融安定化措置法を、我々野党の反対を押し切って成立させました。  さらに、平成十年度当初予算は、財革法に縛られたデフレ予算であり、日本経済を一層悪化させることは火を見るより明らかであるにもかかわらず、政府自民党平成十年度予算は最善のものと言い続け、その上で、予算が成立するや否や、直ちに十六兆円の追加景気対策を発表し、補正予算を組むことを宣言したのであります。その内容は、前総理みずからが愚の骨頂と認めた特別減税の追加であり、選挙対策のための国土破壊型、税金浪費型公共事業であります。  このようなその場しのぎ政府自民党経済財政金融政策の失態が、現在の戦後最悪の不況、失業率を招き、国際的な信用をも奈落の底へと失墜させてきたことは明白であります。  小渕総理は、みずからの内閣経済再生内閣と位置づけるのであれば、まず昨年からことしにかけて政府自民党の行ってきた経済財政金融政策誤り国民の前でお認めになるべきであります。すなわち、総理所信表明で、国民の声を真摯に受けとめと述べておられますが、そうであるならば、財革法の導入は誤りであった、我々野党の要求した所得課税法人税恒久減税を退けたのは誤りであった、ばらまき型の公共事業を行ったのは誤りであったと、この場で真摯にお認めになるべきではないでしょうか。  総理は、つい先日まで橋本内閣重要閣僚であり、すなわち橋本内閣の有力な意思決定者の一人であったことを思うと、一層その感を強くいたします。総理の御所見をお聞かせください。  次に、宮澤大蔵大臣にお伺いいたします。  大蔵大臣は、バブル形成期大蔵大臣を務め、総理としてバブル退治に失敗し、バブル失政の元祖と巷間言われております。また、今日の経済危機の引き金を引いた張本人とも言われております。宮澤大蔵大臣とは、当時私自身、予算委員会でもこうした問題について厳しく議論したことを思い出します。  すべてが宮澤大蔵大臣責任ではないでしょうけれども、これから大蔵大臣としてリーダーシップを発揮なさるのであれば、その前に、日本はなぜバブルを引き起こしたのか、何ゆえバブル退治不良債権処理に失敗したのか、国民の前に、みずからの政策の何が誤りであったのか、しっかりと十分に説明すべきであります。大蔵大臣の忌憚のない明快なる御説明を求めます。  次に、金融問題についてお伺いいたします。  不良債権問題に対する政府とりわけ大蔵省金融行政を一言で言えば、事実を隠すこと、すなわち隠ぺい、解決の先送り国民への負担押しつけという言葉に集約をされます。政府は、これまでに何度も繰り返し不良債権処理は順調に進んでいると発言をしてきました。  例えば、九七年一月二十二日の本会議において、時の橋本総理はこう発言をされました。我が国不良債権問題の緊急かつ象徴的な課題でありました住専問題への取り組みを突破口として、金融機関不良債権処理は着実に進んでおります。  また、一九九七年二月十日の予算委員会においては、時の三塚大蔵大臣がこう言われました。二十行というメジャーバンクについてはしっかりと支えていくこと、大蔵大臣として当然のこと、自助努力の中でリストラが進み、対応が進んでいることを考えればなおのこと、これを支持するのは当たり前だ、こう思っております。  しかし、政府がこのような発言を繰り返したにもかかわらず、三塚大蔵大臣が言われたところのメジャーバンクである日債銀と拓銀が、その直後に大きな経営危機に見舞われました。預金者金融市場そして株式市場は、だれも政府発言を信用していなかったということであります。  それはなぜか。政府がこれらの銀行の真の経営内容、とりわけ不良債権実態を完全に隠ぺいしていたからであります。なぜに総理大蔵大臣発言銀行経営実態の乖離が幾度も繰り返されるのか。まさに大蔵行政隠ぺい工作と言っても過言ではありません。このような乖離、矛盾がなぜに発生するのか、小渕総理の御所見をお聞かせください。  それから半年後の十一月十三日、本会議において、橋本前総理はまたこう発言されました。現在、金融機関は、不良債権早期処理に取り組んでおり、個々の経営状況はさまざまでありますが、全体の状況は改善しております。  しかし、その四日後、拓銀は都銀として初めて経営破綻に至ったのであります。その後も、松永前大蔵大臣などが、全体としては不良債権早期処理への取り組みが進められてきており、改善してきていると表明いたしましたが、こうした政府現状認識の甘さ、実態隠ぺいが事態を一層深刻にしていることは、御案内のとおりであります。  以下、政府自民党不良債権処理策、いわゆる金融再生トータルプランについて、質問させていただきます。  不良債権の抜本的な処理を行うためには、不良債権実態を全面的に開示し、責任を負うべき者を明確にすることが大前提です。金融再生トータルプランにもそのような記述は確かにあります。当然のことながら、もしも債務超過銀行があるならば、その銀行責任をとって清算されるべきであります。  しかし、宮澤大蔵大臣は、就任直後、いち早く、大手銀行破綻をさせないと発言をされました。金融監督庁による検査が終わっておらず、債務超過でないのかどうかもわからない段階で、なぜ大手銀行破綻させないと言い切ったのでしょうか。  これは、債務超過かどうかにかかわらず、大手銀行はつぶさないから安心してくださいということなのでしょうか。つまり、大手銀行にはいわゆるブリッジバンク方式は適用しないということになりますが、そうであれば、債務超過大手銀行に対しては、税金を差し上げて破綻しないように救済しましょうということなのでしょうか。宮澤大蔵大臣の真意をここで明確にしていただきたい。  さて、宮澤大蔵大臣発言から推察すると、政府が描いているシナリオが見えてきます。すなわち、政府は、大手銀行については税金を投入して救済し、責任も一切とらなくて済むようにする。ことし三月に、大手銀行二十一行に対し一兆八千億円の公的資金を投入したようにです。  これらの銀行の中には、長銀のように、経営危機がうわさされている銀行もあります。もし長銀が破綻すれば、いや、もう既に実質的に破綻して国家管理銀行になっているという説もありますが、長銀に対して投入した千七百六十六億円は二度と返ってきません。  そのような形で、健全でない銀行に対しても健全だと偽って税金を投入していけば、その銀行の命は数カ月は延びるかもしれませんが、それは抜本的な解決には到底なり得ません。しかも、だれ一人として責任をとることもなく、責任がないはずの納税者責任をとらされることになるのです。宮澤大蔵大臣を初めとする大蔵省金融監督庁は、そのようなシナリオ考えているとしか思えません。総理の御所見をお聞かせください。(拍手)  我々民主党は、宮澤大蔵大臣考えていると思われるような、税金による銀行救済には一貫して反対をしてきました。そのため、それを可能とする金融機能安定化のための緊急措置に関する法律は、今すぐ廃止すべきだと考えております。総理の御見解をお聞かせください。  次に、だれが不良債権破綻の認定をするのかということについてお聞きします。  既に金融監督庁大手銀行に対する検査を開始しておりますが、現行の体制のままで金融監督庁が検査を行うことについて、私は重大な問題があると考えております。  それは、金融監督庁に対し依然として大きな影響力を及ぼしている大蔵省が、不良債権実態隠ぺいし、問題の先送りを続けてきた当事者であるからであります。我々民主党は、不良債権問題を今度こそ本当に解決するためには、もはや大蔵省主導裁量行政に任せておけないと考えます。彼らが問題の当事者であるという事実が厳然としてある限り、第三者が公正な立場から解決に当たることが必要です。  そのような観点から、民主党は、金融監督庁をコントロールし、破綻処理に当たる金融再生委員会という新たな機関の設置を提案しております。政府提出ブリッジバンク法案にも新しい機関が幾つか盛り込まれているようですが、根本的な考え方が違うと思っております。我々の考え方についてどのように思われるか、総理の御所見をお聞かせください。(拍手)  次に、銀行破綻に対して、だれを保護し、だれの責任を明確にすべきかという問題についてお尋ねします。  当然のことながら、銀行破綻すると各方面に大きな影響を与えます。そのうち預金者については、二〇〇一年三月までは預金を全額保護することになっております。次に、銀行預金者から集めたお金を企業個人に融資するという重要な役割を持っていることから、この金融仲介機能を守ることも非常に重要であると考えます。  そのために、政府は、破綻した銀行金融管理人管理下に置き、あるいは、その後公的ブリッジバンクを設立し、善意かつ健全な債務者に対する融資を継続するとしていますし、民主党が、破綻銀行を場合によっては一時的に公的管理下に置くとしているのも、そのような考え方に基づくものであります。  一方、銀行破綻すると、株主や出資者はその出資の範囲において損失をこうむる、すなわち株主責任を果たすことになるはずです。さもなくば、税金によって株主まで救済されることになります。政府案では、金融管理人破綻銀行を管理することになった場合、この問題はどう扱われるのですか。  また、破綻銀行経営者従業員はどう扱われるのかについてもお聞きします。普通の企業が倒産すれば、経営者従業員は当然職を失います。破綻銀行金融管理人管理下に置かれた場合はどうなるのでしょうか。仮に業務を続けるために従業員は解雇しないとしても、今までどおりの給与を支払い続けるのですか。もしそうであれば、税金によって従業員まで救済されることになります。これらの責任を明確にすることが、公的資金投入大前提であります。総理のお考えをお聞かせください。(拍手)  ブリッジバンク法案と同時に、不動産に関連する権利等調整に関する臨時措置法案が提出されました。これは、不動産関連権利等調整委員会という新たに設置する機関が、不動産に関連する権利について、債権債務者間の調停、仲裁を行うというものであります。  非常に素朴な疑問として、我が国には裁判所というれっきとした債権債務者間の調停、仲裁を行う機関があります。なぜ、裁判所がありながら、不動産関連権利等調整委員会などという新たな機関を設置するのか、その理由を総理にお尋ねします。  また、不動産関連権利等調整委員会の調停、仲裁により、関係当事者債務弁済可能性を高める公正かつ妥当で遂行可能な合意を得たときは、銀行債権放棄をする際に無税償却を認めることとしていますが、公正かつ妥当かどうかの判断は、どういう基準で行うのですか。  法人は認めるが個人は認めないとか、大企業は認めるが中小企業は認めないとか、ゼネコンは認めるがそれ以外の業種は認めないとか、どういう基準でそれを決めるのでありますか。だれにでも認めるわけではないのなら、債務者間の公平という問題はどうなるのですか。総理にお尋ねをいたします。  政府案については、ざっと考えただけでも、以上のような大きな疑問点があります。それに対して、民主党案は、不良債権問題の当事者である大蔵省及び密室裁量護送船団式大蔵行政ときっぱりと決別し、真に抜本的な不良債権処理金融大手術をすることを提案しております。国民の前にすべてを明らかにし、責任者にはきちんと責任をとらせ、一部の人間だけが利益を受けるようなやり方は絶対しない、それが民主党のポリシーであり、政府案とは真っ向から対立するものであります。(拍手)  国民の一部には、与野党が国会でいたずらに対立しないで、お互いに協力して早く法案を成立させるべきとの声もあります。しかし、ここで明らかにしておきたいことは、政府案では不良債権の抜本的な処理は決してできないということであります。政府自民党こそ、民主党金融再生計画に素直に耳を傾けるべきであります。総理並びに宮澤大蔵大臣の御所見を求めます。  次に、税制改革についてお尋ねいたします。  総理は、総裁選出馬に際して、所得税恒久減税など六兆円超の減税公約として掲げました。一見いたしますと、我々がさきの参議院選挙公約として掲げた六兆円減税とうり二つの公約です。しかし、私どもは、総理の六兆円減税内容につきましては、さまざまな矛盾、疑問を禁じ得ません。  現在の不況は循環的不況構造的不況が同時に発生しており、これを解決し日本経済自律的成長を実現するには、所得税法人税恒久減税を行い、官主導から民主導に転換するための経済構造改革こそが不可欠と私ども考えます。このような経済構造改革に対する理念が政府自民党に欠落しているからこそ、定額減税定率減税などといった場当たり的な、こそくな手法をとり続けてきたのではないでしょうか。  今回、どのような理念のもとに税制改革を行おうとしているのか、小渕総理の明快なる御所見をお伺いいたします。  また、小渕総理は、自民党総裁選に際して、国、地方を合わせた所得課税最高税率を現行の六五%から五〇%に下げるという公約を掲げましたが、総理となった今、これを具体的にどのように実現していこうとお考えなのか、お伺いをいたします。  次に、所得税減税の具体的な内容ですが、もしも政府が、単純に最高税率ブラケットだけを廃止して、四段階、最高四〇%というような改正を行おうと考えているのであれば、やはり金持ち優遇所得減税との批判を浴びることは避けられないでしょう。中間所得層に重点を置くという観点から、それぞれのブラケットの延長や一時的な定率減税を組み合わせるということも考えられますが、それでも現在一〇%のブラケットにおさまっている年収七百万円台半ばまでのサラリーマン等にとっては、恒久的な減税の恩恵はほとんど生じません。  所得減税の具体的な内容として、年収七百万円台から一千万円ぐらいまでの所得層及びそれ以下の所得層について、それぞれどのように考慮しようとお考えなのか、宮澤大蔵大臣にお伺いをいたします。  次に、個人住民税ですが、私どもは、これまで、地方分権の観点から、国が地方財源を奪うような住民税減税を行うことには強く反対してまいりました。国、地方合計最高税率引き下げるためには、少なくとも地方税収を損なわない形での個人住民税率単一税率化など、改革を進めることが必要であると考えます。もちろん、その際には、低所得層には増税とならないよう、所得税との間での部分的な税源移譲ども含めた調整も不可欠です。  個人住民税の今後のあり方について、西田自治大臣のお考えをお聞かせください。  あわせて、課税最低限の問題についてお伺いします。  現在の平年度の課税最低限三百六十一・六万円という水準は、主要先進諸国と比べて著しく高いことは事実であり、これまでのところ、これを現在以上に引き上げることについては、各党おおむね共通して否定的であります。他方、課税最低限引き下げについても、現在の経済情勢のもとでは極めて困難と見られております。  しかし、この問題について留意しなければならないのは、例えば日本よりも課税最低限の低いイギリスフランスでは、扶養控除がないかわりに、日本よりもはるかに充実した児童手当があるということであります。  課税最低限が約三百二十万円とされるフランスを例にとると、いわゆる標準世帯に対して年額四十万円余の児童手当が支給されておりますが、これを日本所得税扶養控除に換算すると、課税最低限は、実にあと四百万円ほど上昇する計算になります。課税最低限が約百六万円と極めて低いとされるイギリスでも同様であります。我が国でも児童手当制度はありますが、支給対象年齢や金額の点で全く比較になりません。  以上の事実を逆の面から見れば、我が国でも扶養控除英独仏などの諸国並み児童手当に振りかえれば、ほぼ同じ財源で課税最低限を直ちに約百万円引き下げることが可能なのではないでしょうか。課税最低限問題を考える上で、今申し上げましたような、税制上の扶養控除社会保障給付への転換による課税最低限引き下げ可能性について、宮澤大蔵大臣及び西田自治大臣の御所見をお聞かせください。  最後に、世界における日本の位置づけ、評価に関して小渕総理の認識を伺います。  総理所信表明演説で、我が国対外純資産残高百二十兆円、個人金融資産はおおむね千二百兆円、年間GDPは五百兆円を超え、世界第二位の規模云々と述べ、そして我が国経済社会が力強い基礎的条件を有していると述べております。しかし、我が国経済社会に対する国際社会からの評価は、近年急速に低下してきております。  例えば、昨日、この場で我が党の中野議員の質問でも一部触れましたけれども、スイスの調査機関の九八年の国際競争力調査によれば、日本は、九四年までは世界のベストスリー、九五年、九六年は世界第四位。ところが、九七年に入りますと第九位となり、そして本年、九八年の調査では、第十八位まで転落をしております。目を覆うばかりであります。また、世界格付機関評価も、マスコミ報道で見る限り、いつトリプルAから格下げになるのか時間の問題とさえ言われております。  どうして日本はこのようになってしまったのでありましょうか。このような状況を見るにつけ、やはり日本経済社会システム、政治のシステムに大きな欠陥があるように思えてなりません。  私は、変革の時代あるいは大競争時代にあって、自民党政治が、国民に対して事実を伝えることを怠り、変化に適用可能な法整備社会システム改革を怠ってきたからだと考えます。すなわち、先ほども述べましたけれども金融不良債権問題に象徴されるように、政府はまさに事実を隠ぺいし、問題の先送りに終始をしてきました。処理の無責任さ、けじめのなさ、その結果待っていたものは、国家財政破綻国際競争力の著しい低下、優良企業海外逃避、そして市場からの日本売りであります。  また、米ソ冷戦構造の終えん、ベルリンの壁崩壊等、その後の状況を見ればおわかりのように、民主主義の進展や情報化社会がもたらしたのは、スピードであり、うそを見抜く力であります。こうした社会の変化や時代感覚に対応できなかったのが橋本前総理であり、自民党政治であり、官僚政治であります。  これらについての問題意識、これからどういう国家を目指し、どのようにそれを実現していこうとするのか、小渕総理にお伺いをして、私の質問を終わります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕
  9. 小渕恵三

    内閣総理大臣(小渕恵三君) 伊藤英成議員にお答え申し上げます。  内外の報道、世論調査等に引用されております本内閣評価についてのお尋ねがございました。  大変厳しい船出になりましたこと、私自身も十分承知をいたしております。私は、そうした中にあって、改めて捨て身の姿勢でこの困難に当たり、懸案の課題にこたえていくことがこうした国民の批判にこたえるゆえんであろうと考えまして、全力を挙げて努力をいたしていきたいと考えております。(拍手)  そのため、国民を代表する国会での御議論や、世論調査等に示された国民のさまざまな声をしっかり、かつ謙虚に受けとめ、強い政治的リーダーシップのもとで、経済再生を初めとする諸課題につきまして、全力で取り組む覚悟であります。迅速、果断に政策を実行していくことにより、国民の皆さんの御支持と御支援を得たいと考えております。  次に、この内閣の組閣や不良債権処理のあり方に触れつつ、経済再生に関するリーダーシップについてお尋ねもございました。  私は、この内閣経済再生内閣と位置づけ、内閣の組閣に当たりましては、宮澤大蔵大臣や堺屋経済企画庁長官、与謝野通産大臣などの起用を初めとして、経済再生に向けた強力な布陣をするとともに、所信表明において、喫緊の課題である不良債権の抜本的な処理を初めとし、財政税制等あらゆる施策を総動員することにより、一両年のうちに我が国経済を回復軌道に乗せるよう、内閣の命運をかけて全力で尽くす覚悟であることを明らかにしたところであります。  この内閣発足後、十日余りでございますが、既に迅速、果断に政策を決断、実行してきているところでありますが、さらに万全の施策を講じてまいる所存でございます。  財革法導入など、昨年から今年にかけましての経済財政金融政策についてのお尋ねがございましたが、二十一世紀の我が国経済の活性化に資するため、経済構造改革を推進しつつ、内外の経済金融情勢に応じ、財政金融両面にわたる適切な措置を講じてきたところでございます。  しかしながら、昨年秋以降、金融システムに対する信認の低下やアジア通貨、経済危機など、内外の悪条件の影響が予想を上回るものであったため、我が国経済は極めて深刻な状況となっており、現内閣として、まず日本経済再生に向けての諸施策をスピーディーに実施し、一両年のうちにぜひ回復軌道に経済を乗せていきたいと考えております。  金融機関不良債権処理についてのお尋ねでございますが、政府として、これまで、その時々の経済状況に応じて適切な経済対策を講ずるとともに、金融機関に対し、不良債権早期処理の努力と情報開示の拡充を促してきたところでありますが、今後とも、金融行政の遂行に際しては、一層の透明性の向上を図り、不良債権問題の解決に全力を尽くしてまいります。  不良債権処理策についてお尋ねでございますが、公的資金による金融機関の自己資本充実策は、我が国金融危機状況に対処し、金融システムに対する内外の信頼を確保し、その安定化を図るための緊急措置として行われたものであり、破綻のおそれのある金融機関の救済を目的としたものではありません。また、その経営責任につきましては、破綻金融機関と同列に論じるべきではないと考えております。  金融機能安定化のための緊急措置に関する法律についてのお尋ねでありますが、本法律は、個別金融機関の救済を目的としたものでなく、我が国金融危機的な状況に対処するための緊急措置であり、廃止する考えはありません。  ブリッジバンク法案に関連しての金融再生委員会についてのお尋ねでございますが、本年六月二十二日に実施した金融行政機構改革におきまして、民間金融機関等に対する検査監督権限は大蔵省から分離され、内閣総理大臣及び内閣総理大臣からその権限を委任された金融監督庁長官が所管するとされたところであります。このような体制のもと、適切に破綻処理に当たっていくことが適当であると考えております。  銀行破綻の際の株主責任についてでございますが、金融管理人による管理が行われる銀行におきましては、その株主による損失負担という原則が貫かれることとなります。また、破綻した銀行経営者につきましては、その退任及び民事、刑事上の厳格な責任追及という原則が貫かれるとともに、その業務執行権等は金融管理人に専属することとなります。従業員については、破綻した銀行状況に照らして適切と認められる給与が支払われることとなると思います。  不動産関連権利等調整委員会につきましては、本委員会は、不動産の処分を通じての企業の再建等による不良債権処理のため、関係者間の公正、妥当な合意を形成するよう、調停等を集中的に行うべく設置するものでございます。お尋ねの公正の判断は、合意内容経済合理性等に基づくもので、債務者である企業の業種や規模等によるものではありません。  民主党の提案に耳を傾けるべきであるとの御指摘でありますが、今般取りまとめた金融再生トータルプランの実施は、我が国経済の喫緊の課題である不良債権問題を解決するため不可欠のものであり、その関連法案を早期に成立させることが必要であります。野党に対しましても、その提案に耳を傾けながら、関連法案の早期成立に向けまして、今後とも理解と協力を求めてまいりたいと考えておりますので、御協力もお願いいたしたいと思います。  税制改正についての御質問でありますが、今回の六兆円を相当程度上回る減税は、我が国の将来を見据えたより望ましい制度の構築に向け、抜本的な税制の見直しを展望しつつ、厳しい景気の現状に最大限配慮するという理念のもとで実施するものであります。  所得課税最高税率引き下げについてお尋ねがありましたが、個人所得課税につきましては、抜本的な見直しを展望しつつ、国民の意欲を引き出す観点から、最高税率を五〇%に引き下げることといたしております。改正の具体的内容につきましては、政府及び党の税制調査会における幅広い検討の結果を踏まえて、最終的に私が決断してまいりたいと考えております。  大競争時代の国家像についてお尋ねがございました。  国際化と情報技術革新が進む中で、経済社会のさまざまな分野で迅速な判断が必要となっており、日本の従来の仕組みが必ずしも機能しなくなってきた面があります。こうした中、私は、情報化や制度の国際的な調和を図るとともに、公正な競争のためのルールの形成や情報の透明性の向上などにも取り組むことにより、創意工夫を発揮できる活力ある社会の実現に向かって努力をいたしてまいりたいと思います。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁願います。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
  10. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) バブル退治不良債権処理に失敗をした、何が誤りであったと思うかというお尋ねでございました。  いわゆるプラザ合意が一九八五年九月でございますが、そのときに円は二百四十二円でございました。しかるに、予想されたより非常に急速に円が上昇を始めまして、翌年の今ごろでございますが、私が大蔵大臣に任命されたときには百五十円台になっております。  したがいまして、このような、我が国が経験したことのないいわゆる円高不況というものが急速に広がりまして、有効求人倍率は低下をいたします。また、日本企業は外国に立地をすることを考えざるを得ないというような状況でございましたので、これに対しまして、財政としては、何度かにわたりまして財政措置を講じて景気の浮揚を図ってまいりました。  また同時に、ドルが急速に下落をし続けますので、私といたしましては、これに対していわゆる介入をせざるを得なかったわけでございまして、大量のドル買いを連続して行いました。一日に十億ドルを超える、当時の金で申しますと千数百億円という金が出ていったわけでございまして、これらは当然、ある段階で過剰流動性となって返ってくることは予想できなければならなかったわけでございます。  しかし、後で顧みますと、政府が、私どもが、素早くそういう過剰流動性を質、量ともにコントロールすること、それから金融機関に対して過剰流動性を不動産等々の取引にむやみに投入しないこと、そういう警告を早く発すべきであったと思います。一九九〇年に総量規制が行われておりますが、これも、今から考えますと遅過ぎたし、またいろいろ穴もあったと思います。そのような点で、顧みまして、反省をいたしております。  次に、銀行不良債権の問題についてお尋ねがございまして、大手銀行債務超過についてでございましたが、自己査定の結果を踏まえまして、外部監査によるチェックを経て公表されました大手十九行の平成十年三月期決算によれば、債務超過に陥っている銀行はないというふうに聞いております。  特定の金融機関について申し上げるのではなく、一般論として申し上げますれば、債務超過に陥った金融機関については、迅速にかつ明快な措置を講じてまいりましたし、また、そうならなければならないと思います。  なお、御指摘のような問題につきまして、昭和初期の金融恐慌の例もございますので、閣内にある者としては、こういう問題についての発言は、風説を生じないように、これからも注意してまいるつもりでございます。  次に、民主党金融再生計画に素直に耳を傾けるべきという御指摘につきましては、ただいま総理からも御答弁を申し上げました。私もそのような心構えでおります。  次に、税制改革に関しましては、昨日詳しく申し上げましたが、その中で中堅所得者層に対する所得階層別の控除率の差をつけることができるかどうかということは、理論的には可能なはずでございますが、源泉徴収義務者が、小さいものまで申しますと四百万以上ございます。大企業はよろしゅうございますが、そういうところについて、果たしてそういう複雑な源泉徴収の処理ができるかどうかという税務執行上の問題がございますので、なお検討をさせていただきたいと思っております。  それから次に、児童手当の問題につきまして、大変示唆に富んだ御質問がありました。それはつまり、扶養控除というものをやめて、逆にそれを児童手当で補う、そういうことが可能ではないか、またそういうことをやっている国もあるという御指摘であったわけです。  考えますと、税制そのものはいわば財政を主たる目的とする制度でございますし、児童手当は社会保障制度でございますから、大変に関連をしておりますが、必ずしも同一の目的に奉仕するものではない。そういう観点から、我が国としては、扶養控除も持ち、また児童手当もある所得制限のところまでは置いておるというのが現状でございます。  御指摘のように、両方持っております国もございますし、また児童手当のみで配慮を行っておる国もございます。また、選択制をとっておるところもございまして、それは、低所得層児童手当をとる、高所得層扶養控除をとるというようなことをやっておるようでございます。  大変御示唆に富んだお話でございましたが、私どもとしては、ただいまの制度が我が国の実情に適しておるのではないか、このように考えております。(拍手)     〔国務大臣西田司君登壇〕
  11. 西田司

    国務大臣(西田司君) 伊藤議員にお答えをいたします。  まず、個人住民税の今後のあり方についてのお尋ねでありますが、その検討に当たりましては、個人住民税の性格を踏まえつつ、地方分権の推進に伴う地方税源の充実確保という要請にもこたえられるものとすることが必要であると考えております。そうした中で、現行個人住民税の税率構造は既に三段階の簡素でフラットな仕組みとなっており、こうした緩やかな累進構造は、地域社会の費用について住民がその能力に応じて広く負担を分任するという個人住民税の性格からして望ましいものと考えております。  なお、御提案のような形での個人住民税の見直しにつきましては、個人住民税の基本的な性格等にも関連していく問題でありますので、政府税制調査会などの幅広い御議論をいただきながら、検討していくべきものと考えております。  次に、個人住民税扶養控除についてのお尋ねでありますが、個人住民税においても、所得税と同様に、税負担の公平を図る観点から扶養控除を設けております。先ほど、大蔵大臣から御答弁のありましたとおり、御指摘の点については、扶養控除児童手当は代替する制度ではないこと、税負担のあり方として扶養親族に配慮しないことが適当かどうかについては十分な議論が必要であることといった点を踏まえつつ、個人所得課税全体の中で慎重に考えるべきものと考えております。(拍手)     —————————————
  12. 伊藤宗一郎

    議長伊藤宗一郎君) 小沢一郎君。     〔小沢一郎君登壇〕
  13. 小沢一郎

    ○小沢一郎君 私は、自由党を代表し、小渕新総理所信表明演説に対し、自由党の政治方針及び重要政策について、所信を申し述べます。総理におかれましては、我々の主張に対し、御見解をお聞かせいただきたいと存じます。  まず初めに、小渕新総理に対しまして、小沢一郎として、全く個人的立場からでございますけれども、このたびの総理就任お祝い申し上げます。おめでとうございます。御健闘をお祈りいたします。(拍手)  さて、個人的立場の発言はこの程度にいたしまして、本論に入ります。  さきの参議院議員選挙におきまして、国民橋本内閣に不信任の審判を下しました。誤った経済政策の繰り返しにより、倒産、失業、老後への不安など国民に多大な苦しみを強いている結果から見て、当然であります。そして、それはまた、我が国の置かれた危機の本質を全く理解せず、政権の維持にのみきゅうきゅうとし、問題の先送りを続けた自民党政治そのものの否定であります。  もともと自民党に対しては、衆議院においても国民は過半数を与えておりません。そうである以上、野党に政権をゆだねるか、衆議院の解散・総選挙を断行し、国民の信を得た正統な政権に道を譲るのが憲政の常道であります。  以上の観点から、小渕新内閣は、選挙管理内閣に徹し、一日も早く解散・総選挙を断行すべきであります。経済状況の深刻さから政治的空白は避けるべきだとの意見がありますが、選挙の洗礼も受けず、大胆な改革を行う意思もない政権の継続こそ政治の空白そのものであることを肝に銘ずべきであります。(拍手)  今日、我が国は歴史的変革期に見舞われております。現在の平和と豊かさをあすにつなげるためには、国の仕組みを根本から立て直すことが不可欠であります。私ども自由党は、かかる認識に基づき、党の基本政策である日本再興へのシナリオをまとめ、その実現に全力を尽くすものであります。以下、そのポイントを申し述べます。  まず第一に、直面している経済問題について申し述べます。  今や、日本世界恐慌が現実になりかねないほど、我が国は深刻な経済危機に直面しております。しかし、自民党内閣ではこの危機を乗り切ることはできません。なぜならば、我が国が抱える危機の本質を全く理解していないのと同時に、政権の維持、そして目先の既得権の擁護にきゅうきゅうとしているからであります。  小渕総理は、経済再生内閣と豪語しておりますが、所信表明演説におきましても、危機感の欠如は目に余るものがあると言わざるを得ません。  所得課税四兆円をめどに、法人課税と合わせ六兆円を上回る減税を実施すると言われました。しかし、その規模においても、また実施時期においても、そして制度改正による恒久減税という総理自身の主張と照らし合わせてみても、全く中途半端なものでしかありません。  また、そこには、小渕総理がこの国をどのように立て直すかというビジョンもなければ、減税によって我が国をどのような国に改革しようとしているのか、つまり我が国のあるべき望ましい姿はどのようなものなのかということは全く述べられていないのであります。しかも、財源は、これまで自民党政府が否定し続けてきた赤字国債であります。  同時に、総理は、十兆円規模の公共事業を中心とした補正予算の編成を主張しております。しかし、公共事業追加という手法は今までに幾たびも実施してまいりました。そのようなやり方が効果があるというならば、景気は既に回復しているはずであります。公共事業には景気を下支えする効果はあるにしても、公共部門から民需へバトンタッチするための施策が伴わなければ、民需主導型の持続的成長につなげることはできません。  一昨年、政府・与党は、預金を取り扱わない住専の処理に六千八百五十億円の血税、税金を投じ、国民から厳しい批判を浴びました。そして、昨年秋まで、信用組合の破綻以外は公的資金税金を使わない、不良債権処理は順調に進んでいると繰り返し言明してこられました。  しかし、不良債権処理の見通しは全く外れ、北海道拓殖銀行や山一証券が破綻し、慌てふためいた政府は、預金者保護とは全く関係のない、金融機関救済のために十三兆円もの公的資金の投入を強引に決定いたしました。しかし、マーケットの金融機関に対する不信感は依然として変わらず、政府金融政策破綻を改めて示しております。  政府自民党はまた金融再生トータルプランを今国会に提案しようとしておりますが、それは、自己責任に基づく金融行政、護送船団行政からの脱却という方向性とは全く逆のものであります。  不動産関連権利等調整委員会を隠れみのに、債権債務関係を談合により帳消しにし、無税償却範囲を拡大するのは、形を変えた税金の投入にほかなりません。また、ブリッジバンクは、本来アメリカで用いられた制度とはほど遠いものであり、破綻金融機関に生命維持装置を取りつけ、公的資金を際限なく投入するための仕組みでしかありません。  すなわち、金融再生トータルプランなるものは、国民税金により、銀行を初めとする大企業そのものの救済政策でしかないのであります。したがって、我々は、政府の提案に係る金融関連法案に賛成することはできません。(拍手)  一方、政府自民党の誤った経済政策により、中小企業の倒産は戦後最大となり、それに伴う失業、そして経営苦による自殺者の急増は目を覆うばかりであります。大企業だからといって税金により損失を補てんされ救済されるというのでは、余りにも不公平であり、モラルハザードは、金融関係業界だけではなく、日本全土に蔓延するに違いありません。  本来、金融機関破綻市場の選別を受けてのことであり、この市場メカニズムを尊重し、預金者保護と金融システムの安定に万全を期すのが正しい政策態度であります。そして、何よりも行政介入を減らすことこそが、透明性を高め、信頼を取り戻す唯一の方策なのであります。  日本が直面する経済危機の本質的原因は、我が国の抱える構造的要因にあります。すなわち、戦後日本をこれまで繁栄に導いた日本経済システム、つまり、国が民間からお金を吸い上げて投資先を決定する官僚主導、行政主導による大量生産、大量販売の産業政策、護送船団行政が、東西冷戦崩壊後の経済のグローバル化に対応できず、行き詰まりを迎え、未来への発展に対する障害となっているのがその根本原因であります。  政治、行政、社会全般にわたる、そして経済の大胆な構造改革を行わなければ、二十一世紀も豊かな生活を享受することは不可能であり、本格的景気回復も望むべくもありません。  自由党は、今世紀残された三年間を日本経済立て直しのための集中改革期間と位置づけ、世界経済とも調和し、少子・高齢化社会にあっても活力を維持していける経済の実現を目指しております。  以下、自由党の日本経済立て直し三カ年計画を具体的に申し述べます。  まず第一に、直ちに消費税を三%に戻すことであります。(拍手)  政府自民党は、昨年、目先の財政帳じり合わせのために、我々の反対を押し切って、消費税増税を初めとする九兆円の負担増を国民に押しつけました。その結果、九七年度は戦後最悪のマイナス成長となり、税収も、法人税を中心に消費税増税分が帳消しとなるほどの減収となっております。  落ち込んだ景気を立て直すために、特別減税公共事業追加を行うより、GDPの六割を占める個人消費と住宅投資を直接刺激するため、日本経済が本格的回復を遂げ、民需主導の持続的成長軌道に回復するまで、消費税を三%に戻すべきであります。(拍手)  第二に、行革による歳出削減を財源とする恒久減税、つまり十八兆円の行革減税の実行であります。  所得税、住民税については、最高税率を五〇%とし、税率構造のフラット化、簡素化を実現して、すべての税率を引き下げ、現在の水準から半減すること、法人課税については、実効税率を、基本税率の引き下げ、連結納税制度の導入により、国際水準並みの四〇%に引き下げることであります。国民の可処分所得と企業の税引き後利益をふやし、勤労意欲と投資意欲をサプライサイドから刺激して、経済を民間主体とするものに改革しなければなりません。減税財源は、行財政一体不可分の見直しによる国、地方の歳出一割削減で十分賄えます。  第三に、行政改革に本気で取り組み、経費を節減し、民間の経済活動を活性化させることであります。  行政改革の本質は、中央の官庁の持っている権限と財源を中央から地方へ、官から民へゆだねることであります。補助金の廃止と、地方財源として一括交付の制度の確立は、国、地方を通じての莫大な行政経費の削減をもたらし、真の地方分権を確立することができるのであります。また、官の持っている権限を民間に移すことは、企業個人を問わず、経済活動を活性化させ、はるかに大きな経済効果を上げることができます。携帯電話の急激な普及はその典型的な例であります。  これらの改革を進めることにより、国家公務員の定数を二五%削減するという目標も容易に達成することが可能になります。また、政治自身がこれらの改革に取り組む決意を国民に示すため、国会議員定員の二割削減を実行しなければなりません。  第四に、不良債権を抜本的に処理することであります。  これまで不良債権処理が進まなかった最大原因は、景気回復の追い風がなかったためであり、政府自民党政策が逆に不良債権を積み上げてきたのであります。不良債権問題を解決すれば景気が回復するというのではなくて、むしろその逆であります。不良債権問題を処理するためには、景気回復が欠かせないのであります。(拍手)  景気が回復すれば、借り手の経営が立ち直り、問題債権は少なくなっていき、また、金融機関にも体力が戻り、不良債権処理することが可能となります。破綻金融機関処理は、国民に開かれた場で法的処理により行い、健全な取引先への融資は、政府金融機関等を活用することにより十分対処することができます。  また、不良債権の回収のためには、関係者の責任も徹底的に追及するため、民法上の特例や刑事訴追権などの権能を付与した専門機関、つまり日本版RTCを設立し、迅速に行わなければなりません。公的資金、すなわち税金の投入は、あくまで預金者の保護のみに限定すべきであります。(拍手)  これらの規制の撤廃、不良債権処理には、本当に命がけで取り組まなくてはなりません。また、規制などで保護され続けてきた方々には、当然厳しい試練を課すことになりますし、不良債権処理も信用収縮を伴います。その痛みを和らげるためにも、消費税を三%にし、大幅な行革減税を行うことが必要であります。また、財政再建は経済再建なくしてあり得ません。経済構造を抜本的に改革して回復軌道に乗せなければ、財政再建など不可能であります。  我々自由党は、消費税を三%に、行革減税により所得税、住民税を半分に、法人税を国際水準に、本気で行政改革に、そして規制撤廃を、不良債権を抜本的に処理する、これらのことを一貫して主張してきた唯一の政党であります。(拍手)  もはや我が国に残された時間は余りにも限られております。官が民から金を吸い上げ使い道を決めるのではなく、国民がみずからの才覚と自己責任で金の使い道を決め、自由に活動ができるようにするための制度改革に今すぐ取りかからねばなりません。  減税、規制緩和は、個人の可処分所得をふやし、企業活動を活発化して経済を刺激し、構造転換を促すだけではありません。個人個人を尊重するシステムに転換することにより、自己責任原則が確立され、官僚主導による規制社会から脱皮し、フリー、フェア、オープンの真の民主主義社会を打ち立てることができるのであります。これが我々自由党の言う、国民が主役の社会であります。(拍手)  次に、国民の意識改革についてであります。  国の仕組みを大胆に変えるためには、古い制度の改革と同時に、国民自身の意識改革が不可欠であります。変わらずに残るためには、変わらなければなりません。私たち日本人が今考え実行しなければならないことは、これまでの対米依存、国や行政への過度の依存といった安易な依存心を捨て、国として、個人として自立することであります。自分がやらなくてもだれかがやってくれる、国や社会が何とかしてくれるといった、他に依存する意識のままでは、改革は不可能であり、事態はますます悪化するだけであります。  まさに自立心こそ改革の原点であります。依存心を捨て、真の意味で国と個人が自立することこそ、本当の協調と共生を可能といたします。また、人を愛し、国家を愛し、真理と平和を希求する国民となるためにも、自立が必要であります。そのことによって初めて、我々が目指す正々堂々、公明正大な開かれた社会を築くことができるものと確信いたします。  教育もまた、国民の意識改革という改革の一環として体系的にとらえ直すことが必要であります。  この観点から、人間形成の原点である家族のきずなを大切にすること、また、教育基本法を見直すとともに、自立心を育て、人権の尊重と他人を思いやる教育を進めるため、知育偏重の教育を改め、徳育を重視した人格教育を進めるべきであります。それによって初めて、日本のよき伝統、文化を継承し、日本人としての誇りと責任を持った国民を育てることができるのであります。(拍手)  次に、社会保障制度改革について述べます。  これまで我が国の社会保障制度は、社会保険方式に大きく依存してきました。高度の経済成長が続き、高齢者が比較的少なかった時代においてはこの方式はうまく機能してきたと思います。しかし、今日我が国世界に例を見ないスピードで少子・高齢化社会に突入しており、働く世代の社会保険料に頼る現在のシステムでは、社会保障制度を支えることは不可能であります。さらに、現在の社会保険方式を中心とした狭い枠で考えていたら、社会保障の水準を維持することさえ不可能になってしまいます。  しかるに、政府・与党の考え方は、旧来の発想から一歩も抜け出ておりません。抜本改革なき医療費引き上げ等により、昨年度は実質二兆円を超える社会保障費の負担増になりました。そして、現在も続く年金改革論議でも、保険料の引き上げと給付の削減を中心とする目先のバランス論に終始しております。これでは社会保障制度に対する信頼は崩れ、国民は将来設計など立てられるはずもありません。  また、社会保険料という直接税的負担は、働く世代の活力を低下させ、ひいては日本の社会、経済も停滞させることになります。さらに、社会全体で支えるべき制度であるにもかかわらず、保険料の未払い者が増加するなど、世代間格差や世代内格差について根本的な解決を見出すことはできません。このままでは社会保障制度が大きく崩壊してしまう危険があると我々は警告いたしております。  重要なことは、目先の制度維持ではなく、社会保障についてのナショナルミニマムを確立し、国として必ず保障する給付水準と負担の範囲を明確にするということであります。我々は、現在の社会保険方式を中心とした社会保障制度を、消費税を中心とした方式に改めることを提案いたします。  基本的な社会保障である基礎年金、高齢者医療、介護の主な財源については、消費税をもってこれに充てることにいたします。あわせて、消費税は、福祉の特定財源として、社会保障以外に使わないことにいたします。これにより、企業国民の社会保険料負担は軽減され、国民の可処分所得をふやし、経済に活力を与えると同時に、社会保障制度への信頼を維持し、給付と負担を明確にした安定した制度を構築することができます。  高齢や病気に対する不安をなくし、国民一人一人が持つ能力を遺憾なく発揮できる活発な社会を築くこと、それを支える安定した制度があるという信頼を与えることこそが、社会保障改革の原点であると考えます。  次に、外交、安全保障政策についてであります。  日本にとって世界の平和と安定こそ最大の国益であります。今や、安全保障、経済活動、環境問題などあらゆる分野において、地球的規模での相互依存関係が強まっており、世界の国々との協調なしには生きていけない時代となっております。これまでのように、日本だけが繁栄すればよいという一国繁栄主義、日本だけが平和であればいいという一国平和主義では、もはや世界の人々から信頼される国家にはなれません。  自由党は、この見地に立って、国連中心の平和外交と国連改革の推進、日米の信頼関係の強化、日中、日韓を初めとするアジア諸国との真の信頼関係を築き上げるため、率直で誠意ある外交の推進を主張いたします。  このような時代の大転換期に遭遇しているときにもかかわらず、小渕総理所信表明演説は、国民の命と暮らしを守るための国政の基本である安全保障政策について、総理自身の基本認識が全く示されておりません。これは、いまだかつて例を見ない驚くべきことであると同時に、まさに今日の自民党政治の堕落と限界を示すものであります。(拍手)  また、政府自民党官僚主導、役人依存の政治実態は、国家の基本である安全保障政策まで及んでおります。今日まで自民党内閣は、すべて法制局の言うがままになっているのであります。しかし、実態とかけ離れ、ひいては国家の存立を危うくする内閣法制局の支配、すなわち官僚支配による憲法解釈は根本的に改めなければなりません。(拍手)  自由党は、安全保障に関する三原則を定め、明確な理念に基づく政策を推進することにより、日本の平和と国民の安全を図っていく決意であります。  三原則とは、一つ、我が国は、日本国憲法の理念に基づき、我が国が武力による急迫不正の侵害を受けた場合に限り、国民の生命及び財産を守るため、武力による阻止または反撃を行うものとし、それ以外の場合には、個別的であれ集団的であれ、自衛権の名のもとに、武力による威嚇または武力の行使は一切行わないこと。  一つ、日米安全保障体制は、我が国及びアジア太平洋地域の平和と安定のかなめとして引き続き堅持し、その信頼性をさらに高める。そのために、我が国は日米安全保障条約の諸規定を誠実に履行するとともに、防衛力を効率的に整備すること。  一つ、我が国は、日本国憲法及び国際連合憲章に規定される国際協調主義の理念に基づき、国際連合の総会または安全保障理事会において国際連合平和活動に関する決議が行われた場合には、これを尊重し、当該活動に積極的に参加することであります。  この三原則を内外に宣明することとし、安全保障基本法にこれを規定いたします。  今日、政府自民党は、日本国憲法との関係で、自衛隊の活動がどこまで許されるのかを明確にすることなしに、日米協調の名のもとに、武力行使とそれに関連する行動をなし崩しに拡大させようとしております。このようなやり方は、まさに戦争へ突き進んだ戦前の政治と全く同じ発想であります。  国家としての究極の手段である武力の行使、すなわち軍隊を動かすに当たって、このようないいかげんであいまいなままに政治の決定がなされていくことは最も危険であり、そのようなやり方が国家を傾け、国民に大きな災いをもたらしてきたことは歴史の示すところであります。  我々自由党は、その意味において、現在政府が提出している日米ガイドライン関連法案に賛成することはできません。政府自民党は、法案の審議を言う前に、まず、みずからの安全保障政策理念、明確な行動規範、行動基準国民の前に明らかにすべきであります。(拍手)  次は、政治行政改革についてであります。  国民の間に蔓延する政治不信を払拭し、深刻な経済危機を初めとする内外の諸問題に対処するには、官僚依存を脱却し、政官財の癒着を断ち、国民から選ばれた政治家と政党とが政治責任を持つ体制を確立することが必要であります。  官僚依存の政治から脱却するためには、まず国会における政府委員制度を廃止し、国会を与野党の議員同士による議論の場とすることと同時に、大臣を補佐する副大臣、政務次官制度等の導入により、政治家と政党が、国会と政府政策決定に指導力を発揮し、責任を持つ体制を整えなければなりません。  行政改革の本質は、行政の役割を、外交・防衛、危機管理、治安、社会保障など必要最小限にとどめ、民間や個人の活動に国や行政が余計な口出しをしないことであります。その意味で、小さな政府を実現することであります。  中央省庁の看板の書きかえは、いたずらに行政を混乱させるだけであり、真の行政改革ではありません。各種業法の撤廃、補助金の廃止、公務員の削減、特殊法人地方現業の廃止、民営化、そして地方分権の受け皿として、全国を三百の市に再編する。このような思い切った改革により、今までの中央集権、官僚支配の大きな政府を根本的に改め、二十一世紀の新しい時代に対応する効率的で小さな政府をつくり上げることにより、フリーでフェアでオープンな開かれた日本社会を築き上げることができるのであります。(拍手)  以上、自由党を代表して、政治方針と重要政策について所信を申し述べました。総理自身の御見解をお聞かせいただきたいと思います。  最後に、さき参議院選挙において、自由党に対し、五百二十万余の国民の皆様に御支持をいただきました。国民皆様の自由党に対する御支援、御協力を心から御礼申し上げるとともに、今後一層努力し、御期待にこたえる決意であることを申し上げ、終わります。  御清聴ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕
  14. 小渕恵三

    内閣総理大臣(小渕恵三君) 自由党小沢議員の、党としての御主張を拝聴いたしました。私に対しましては、見解を述べよということでございますが、改めて、それぞれの諸点につきまして、考え方を申し述べさせていただきたいと思います。  その前に、個人としてということでございましたが、私の総理就任に際しまして、お祝いの言葉を述べられました。率直に、長い間政治行動もともにしてまいりました党首でございますので、ありがたくちょうだいをいたした次第でございます。  ただ、公の立場で申し上げますれば、私は、今こうしたお祝いをお受けするような気持ちになれないわけでございまして、現下、与えられた私に対する責任は、この難しい時局に際して、困難な諸問題を全力を挙げて解決すること、ひたすらこのことでございますので、ぜひ、そのお気持ちはありがたくお受けしたいと思います。(拍手)  解散・総選挙についてのお尋ねでございましたが、私は、まず基本的認識として、解散権が総理に与えられた最大の権限であると理解しております。したがいまして、政治的な決断を行わなければならないときには解散を断行し、国民の信を問うことは当然であると考えております。  ただ、これは、解散を今しないことが憲政の常道でないというお考えのようでございますが、過ぐる参議院の選挙につきましては、私ども、その国民の与えられた結果については真摯に受けとめなければならないとは思いますが、私は、この問題につきましては、やはりこれらに対する責任を十分果たすことが現在の私に与えられた任務であると考えておりまして、現時点におきましては、解散をするような考え方は有しておりません。(拍手)  公共事業を中心とする補正予算の編成が無意味ではないかという御意見をいただきました。  平成十一年度に向け切れ目なく施策を実行すべく、公共投資の追加を含めた事業規模十兆円を超える第二次補正予算を編成することが、減税その他の措置と相まって、消費者や企業マインドを高め、景気回復には効果が必ずあるもの、そう考えておりまして、これを実行いたしてまいりたいと考えております。  消費税の減税についての御主張もございました。  消費税五%の引き上げを含む税制改正は、少子・高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものでありまして、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えております。したがって、現在、消費税の引き下げ考えておりません。  今回の個人所得課税減税についての御意見もございましたが、今回の改正は、抜本的な見直しを展望しつつ、国民の意欲を引き出す観点から、最高税率を五〇%に引き下げることといたしております。  今後、さらに我が国の将来を見据えたより望ましい制度の構築に向けて、幅広い論点に立ち、腰を据えて検討していく必要があると考えております。こうした点につきまして、政府及び党の税制調査会においても引き続き検討していただきたいと考えております。  法人課税の実効税率を国際水準並みに引き下げるべきとの御意見をいただきましたが、我が国企業国際社会の中で十分競争力を発揮できるよう、法人課税の実効税率を四〇%程度に引き下げることといたしております。  また、連結納税制度につきましては、引き続き検討を深めていく必要がある課題であると考えております。  いずれにいたしましても、自由党から減税につきましていろいろと御主張をちょうだいいたしましたが、私ども内閣といたしましては、所信表明でも申し上げましたように、所得税並びに法人課税につきまして諸外国並みに引き下げる、このことをもっても大変な大きな決断でございまして、まずはこのことを実行させていただきたい、このように考えておる次第でございます。  減税財源は、国、地方の歳出削減により捻出すべきであるという御意見をいただきましたが、もちろん、こうした歳出削減につきましては、政府としても徹底的に考えていかなければならない問題と考えており、経費の節減、国有財産の処分などを進めながらこれを実行していきたいと思っておりますが、当面は赤字国債を充てることといたさなければならないと考えております。長期的には、今後の経済の活性化の状況、行財政改革の推進等と関連づけて考えていくべきものと考えております。  次に、地方分権に関連をいたしまして、国からの補助金を廃止し一括交付方式に改めるべきだとの御指摘がありましたが、地方分権の推進に当たりましては、地方の自主性を高めるため、国と地方の役割分担を踏まえ、国庫補助負担金の整理合理化や事務権限の移譲などに応じ、地方財源の充実確保を図ることが重要だと考えております。  今後、地方分権推進計画や中央省庁改革基本法を踏まえ、公共事業に関し、できる限り、個別の補助金にかえて、適切な目的を付した統合的な補助金を交付し、地方公共団体に裁量的に施行させるなど、補助金の整理合理化を図り、地方分権を積極的に推進していくことといたしておるところでございます。  金融機関不良債権に関しての御意見もいただきました。  今般の金融再生トータルプランは、不良債権処理のため不可欠なものであると考えております。また、金融機関破綻処理に当たりましては、これまでも、預金者保護、信用秩序の維持を基本としつつ、破綻金融機関を存続させない、経営者の厳格な責任追及を行う等の方針に従い、一貫して対応を行ってきたところであり、決して金融機関の救済のために行ったわけではありません。  次に、自立心を持った国民を育成することが必要であるとの御指摘でございます。  本件は、言うまでもありませんが、教育基本法は、教育は、人格の完成を目指し、自主的精神に満ちた心身ともに健康な国民の育成を期して行うことと定めております。この精神を踏まえ、豊かな人間性を備えた子供たちの育成を図るため、心の教育の推進や道徳教育の充実など、教育改革に最善を尽くしてまいりたいと思います。  と同時に、この教育によりまして、日本国民、自己責任世界に入ってまいりました我が国といたしましては、おのおのみずからの責任を自分の責任として対処しなければならない世に合う政策をとっていかなければならないと考えております。  消費税を福祉のための特定財源とするとの御意見もございました。  お聞きをいたしておりまして、消費税を三%に引き下げた上で、こうした福祉のみを目的とした財源としてこれが足り得るものかどうか、この点も極めて困難ではなかろうかというふうに考えております。かつて細川内閣のときに七%の福祉目的税が主張されましたけれども、結果的に国民の理解と協力は得られなかったことを考えますと、なかなか困難な問題ではなかろうかと思っております。  財政の一般論といたしまして、目的税的な仕組みは、財政を硬直化させる傾向を持つことから好ましくないこと、消費税と社会保障経費との間に直接的な受益と負担の密接な関係を見出せないこと、福祉が税収によって逆に制約を受けるのではないかとの懸念の問題があることを踏まえて、慎重に考えるべきものと考えております。  次に、安全保障の問題につきましてでありますが、我が国は、従来より日本国憲法のもと専守防衛に徹し、他国に脅威を与えるような軍事大国にならないとの基本理念に従い、日米安保体制を堅持し、節度ある防衛力の整備に努めるとともに、我が国を取り巻く国際環境の安定を確保するため外交努力を行うことを安全保障政策の基本として、今後ともこれを堅持していく方針であります。  戦後五十三年、自由民主党政府、とってまいりました安全保障政策によりまして今日のこの平和な日本があることを考えますと、この方針は決して誤りのなかったものと我々は確信をいたしておるところでございます。  自衛隊による武力行使等に関する御主張につきましては、政府といたしましては、従来から、憲法九条において認められる自衛権の発動としての武力の行使は、我が国に対する急迫不正の侵害があること、これを排除するため他の適当な手段がないこと、必要最小限度の実力行使にとどまるべきことという三要件に該当する場合に限られておると解しております。  日米安保体制に関する御意見もいただきましたが、日米安保体制は、我が国の安全の確保及びアジア太平洋地域の平和と安定に不可欠であります。安保条約上の義務の履行を初め、今後とも日米安保体制の信頼性の強化に努力するとともに、防衛大綱及び中期防に基づき、適切な防衛力の整備に引き続き努めてまいります。  国連平和活動への参加についてでございますが、国連平和活動の内容が必ずしも明確ではございませんが、我が国として、国連を中心とした国際平和のための努力に対し積極的に寄与することが必要であると考えております。今後とも、憲法が禁ずる武力の行使または武力による威嚇に当たらない範囲内で、国連平和維持活動等には積極的に参加いたしてまいります。  政府委員制度を廃止すべしとの御主張でございました。  政府委員は、国会法に基づきまして、国務大臣を補佐する目的で両議院の議長の承認を得て任命しているものであり、現在の委員会の審査方式を前提とすれば、ある程度の任命はやむを得ないと認識いたしております。委員会を議員同士の議論の場とするという問題につきましては、各党各会派間で十分御議論いただきたいと考えております。  なお、大臣を補佐する副大臣、政務次官制度の導入につきましての御主張もございました。  これまでも、政務次官制度により、より積極的に活用する観点から、閣僚経験者を政務次官に充てるなど取り組みを行っておるところでございますが、さらに本年五月には、国会答弁、国際会議等における政務次官の積極的な活用を初めとする政務次官の機能強化のための措置を講じておるところでございます。  なお、副大臣制度につきましては、立法府と行政府との関係、政治と行政との関係、行政の中立性の要請等に十分配意しながら検討されるべきものと考えております。  中央省庁等の改革は小さな政府の実現につながらないとの御意見でございますが、政府は、中央省庁等改革基本法に基づき、二十一世紀に向けた新しい行政システムを確立するため、内閣機能の強化、新たな省庁体制の実現等を内容とする所要の法案の準備を進めるとともに、独立行政法人化等や業務の徹底した見直し、規制緩和や地方分権の推進を通じ、中央省庁のスリム化の徹底を図ってまいりたいと思います。(拍手)     —————————————     〔議長退席、副議長着席〕
  15. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 不破哲三君。     〔不破哲三君登壇〕
  16. 不破哲三

    ○不破哲三君 私は、日本共産党を代表して、小渕首相に質問するものです。  まず伺いたいのは、首相が、さきの参院選での国民の審判をどのように受けとめているかであります。  自民党は、比例代表選挙では得票率二五%、投票した有権者の四分の一の支持しか得られませんでした。大都市部では、自民党候補はほとんど全滅しました。自民党政治に対する国民の批判が、これだけ鮮明に噴き出したことは、かつてなかったことであります。ところが、首相は、この選挙結果について、所信表明演説で、国民我が国経済情勢を極めて深刻に感じていることのあらわれだと指摘するにとどまりました。  首相、あなたの耳には国民の強い批判の声が聞こえていないのですか。もし聞こえているとしたら、首相は、自民党政治のどこが国民に批判され、その審判を受けたと考えているのか、そして、どのような反省を行い、自分たちの政策のどこをどのように変えようとしているのか、選挙戦の審判を受けた政権党の党首としての責任ある見解伺いたいのであります。(拍手)  国民の不安と批判が集中したのは、何よりも今日の不況の問題でした。  経済情勢は、今日ますます深刻の度合いを深めています。その特徴は、国民の家計消費の冷え込みを最大内容とする消費不況の性格がいよいよ浮き彫りになってきたことであります。それなのに、橋本内閣は、国民の消費を拡大する真剣な手だてを講じないまま、ここに不況対策の最重点があるとして、銀行業界への支援に三十兆円に上る国民税金をつぎ込む、こういう枠組みをつくり上げました。  私たちは、選挙戦で、今政治に問われているのは、大銀行の応援団になるのか、それとも国民の消費の味方になるのかの選択だと訴えました。ある新聞は、選挙後に、共産党のこの問題提起が選挙戦の政治対決の軸をつくったと書きましたが、この訴えが多くの有権者の共感を得たというのは、全国各地を歩いての私自身の実感でもあります。  ところが、今、小渕内閣は、国民の審判を受けた橋本内閣政策をそのまま実行しようとしています。首相は、自分の内閣経済再生内閣と名づけました。しかし、消費不況を打開して日本経済を再生させようという政策は、演説のどこにも見当たりませんでした。そこにあるのは、金融システムの再生、つまり、国民税金の投入によって銀行業界を支援しようという、大銀行の応援団の立場に徹したものではありませんか。  もちろん、不良債権問題の解決は、今日の緊急課題の一つであります。しかし、このことだけに熱中して、それが不況対策の中心だとするのは、日本経済の現実を余りにも無視したものと言わなければなりません。(拍手)  現実はますます深刻化する消費不況であり、それを引き起こした最大責任は、消費税増税など昨年の九兆円国民負担増の政策にあります。日本銀行政府経済企画庁の最近の報告も、景気悪化が、昨年四月、消費税引き上げとともに始まったことを事実として認めています。  その上に立って伺いたい。  第一。首相、あなたは、現在の不況が消費不況の性格を持っていること、また、橋本内閣国民負担増九兆円の政策が、少なくともその有力な原因となったこと、この政策日本経済の誤ったかじ取りとなったことを認めますか。  第二。消費不況の打開のためには、国民の消費を拡大する積極的な施策が必要であります。小渕内閣は、この点でどのような政策を持っているのですか。首相の演説を聞いた限りでは、この点では無策としか思えません。国民の消費拡大への積極策をお持ちであるならば、ぜひ説明を願いたいと思います。  首相の演説によると、いわゆる恒久減税の実施を景気対策として位置づけているようにうかがえました。しかし、その内容は、景気対策どころか、国民の消費をさらに冷え込ませる、不況推進型の政策と言わざるを得ません。  首相は、六兆円を相当程度上回る恒久的な減税の実施を国民公約しました。これを聞いた多くの人々は、当然自分もその減税の対象となると考えます。しかし、あなた方が示した大枠に基づいて各方面で試算した結果は、減税となるのは一部の法人とごく一部の高額所得者だけで、国民のほぼ九割は、特別減税が打ち切られるために、所得税、住民税が増税になるという予想で一致しています。減税とは名前だけ、国民の圧倒的多数には増税を押しつけるというのが政府の提案だとしたら、余りにも国民をばかにした話ではありませんか。(拍手)  首相の言う恒久減税は、国民の全体に現実の減税をもたらすものなのか、それとも減税は一部に限られるのか、そうであるとしたら、国民のどれだけの部分が増税になるのか、国会の場で減税公約した以上、首相にはその実際の内容を明確にする義務があります。はっきりした答弁を求めます。  その際、特別減税は別だという言い逃れは許されません。一年だけの特別減税であっても、それは政府自身が提案し、現に実施されている減税であって、それが今年度、国民が負担している現実の税金であります。国民の生活にとっては、その水準から税金が減るのかふえるのかが問題であります。来年度の税金がその水準からふえるとなれば、それが国民生活に新たな重圧を加えることは明瞭ではありませんか。  そして、政府減税案なるものが、国民の大多数には増税だというものであるならば、それが国民生活に破壊的な影響を及ぼすと同時に、国民の消費をさらに冷え込ませ、消費不況をさらに悪化させることは明白ではありませんか。首相は、この消費不況のただ中に国民に増税を押しつけて景気を悪化させるという誤りを、再び繰り返すつもりなのですか。首相の真意をただすものであります。  しかも、政府は、国民に増税を求める一方、二兆数千億円にも上る大幅な法人税減税を行おうとしています。これは全く許されないことです。  法人税については、政府税制調査法人課税小委員会の報告でも、日本では企業の利益の中で課税の対象となっている範囲が狭いという問題、いわゆる課税ベースの問題があり、その問題と切り離しての国際比較は適切でないこと、現時点で法人課税の軽減を行う環境にはないということが指摘されていました。  その報告さえ無視して、六兆円以上という減税財源の約四〇%を大企業減税に振り向けるというのは、余りにも公正さを欠いた、国民踏みつけのやり方ではありませんか。  政府が真剣に景気打開の見地から減税に取り組むというのなら、このような大企業や高額所得者だけの減税方針は取りやめて、庶民のための減税に徹すべきであります。  そして、何はおいても今優先的に取り組むべきものは、消費税の減税であります。国民世論の多数は、以前から景気対策への第一の要求として、消費税減税を挙げてきました。選挙の後で実施された日本経済新聞の世論調査でも、景気対策への要望の第一が消費税の減税で、五四・七%がその実施を要求しています。  それにはそれだけの根拠があります。  第一に、この数字が示しているものは、消費税増税が毎日の買い物に直接の圧力を加え、我が家の消費を抑制していることを、国民の多くが生活の実態から実感しているという現実にほかなりません。  第二に、消費税減税は、減税分が消費の拡大に直結することを、税制の仕組みから直接に保障されている唯一の減税の方式であります。どの世帯にとっても消費を拡大すればするほど減税の効果が広がるというのがその特徴でありますから、消費拡大への効果ははっきりしております。  第三に、消費税減税を決断することは、日本が消費の拡大という本格的な不況対策にそれだけの真剣さを持って取り組み始めたことを、内外に強力に発信する意義を持ちます。それが衝撃的な波及効果を持つことは間違いないでしょう。(拍手)  私たちは消費税の廃止を目指す政党ですが、以上の立場から、税率を増税前の三%に戻す消費税減税を、景気打開への緊急対策として提唱してきました。もちろん、将来的にどんな税制像を目指すかについて言えば、政府にも我が党以外の野党にもそれぞれさまざまな立場がありますし、それはそれとして時間をかけて議論をすべきことであります。しかし、日本経済の現状は、不況打開のためにこれが有効で必要な措置だとなれば、将来像の違いをわきに置いても、それに大胆に取り組むことを求めているのではないでしょうか。  その見地から、私は、多くの国民に増税をもたらすような、そして消費を冷え込ませ、景気をさらに悪化させることが目に見えているような今の政府案ではなく、消費税減税の実施を真剣に検討することを政府に求めたいと思うのであります。(拍手)  私たちは、消費税減税に加えて、所得税、住民税についても庶民に手厚い恒久減税を行い、合わせて七兆円規模の減税を提唱しています。特に、国民の家計消費の拡大が重要な現在ですから、この面でも、庶民に手厚い減税の方式を選ぶことが大切であります。  首相、消費税減税を求める国民の声は本当に切実であります。それはまた、不況の打開という日本経済の要請にもかなっています。政府が、これまでとってきた政策的な立場にこだわらず、この問題を真剣に検討することを重ねて要望するものであります。(拍手)  そして、どんなに国民の強い要求があってもこれを拒否するというのであるならば、その理由と根拠を、国民の前に明らかにしてもらいたいのであります。  次に、金融対策の問題に進みます。  不良債権処理は、政府銀行業界の先送り政策によって余りにもおくらせられてきました。しかし、そのおくれを取り戻すためだからといって、何をやってもいいということにはなりません。今回政府が提案している処理方式は、国民日本経済にとって多くの重大な問題をはらんでいます。  第一に、不良債権処理に当たっての最も重大な政治問題は、その費用、つまり銀行などが引き起こした不始末の穴埋めをだれの負担でやるのか、その穴を公的資金、つまり国民税金で埋めるのか、それとも銀行業界の自己責任自己負担で埋めるのかという点にあります。  日本共産党は、銀行などが引き起こした不始末の処理国民税金を投入することには、厳しく反対するものです。この立場は、アメリカなどでは既にルールとして確立している原則であります。  アメリカは、八〇年代から九〇年代にかけて、深刻な金融危機に苦しみました。公的資金の投入を政策とした時期もありますが、それはアメリカの経済財政に重大な痛手を負わせました。その教訓に立って、九一年の法律で、公的資金の投入を禁じ、必要な費用は銀行業界の自己責任自己負担で賄うという原則を確立し、税金の投入なしに危機解決したのです。ブリッジバンクの制度も活用されましたが、それには一ドルの税金も使われませんでした。首相は、アメリカのこの経験と教訓をどう考えますか。そこから学ぶところがあるとは思いませんか。  政府の今の提案は、これとは全く反対の立場に立っています。それは、肝心の銀行業界には負担増を一切求めない、すべての処理公的資金の投入、すなわち専ら国民税金によって賄おうというものであります。  首相、政府は、住専問題への公的資金の投入が問題になった二年前の国会で、これ以後は公的資金の投入は絶対にやらないと公約しました。また、今日の不良債権問題について、大蔵省幹部が、今の銀行業界には全体としてそれを処理する体力があると答弁したのは、わずか七カ月前のこの国会においてであります。  それなのに、政府は、どうしてその銀行業界に不良債権処理の負担増を求めないのか、また、国際的な教訓も無視して、政府自身公約も踏みにじり、すべてを国民税金で賄うという暴挙になぜ固執するのか、明確な答弁を求めるものであります。(拍手)  第二は、不良債権処理についての政府の提案が、問題の金額的な規模を全く示していないことであります。  政府は、処理すべき不良債権の総額はどれだけあると見積もっているのか、また、公的資金の投入がどれだけの規模で必要になると見通しているのか、それが問題であります。公的資金を使っての不良債権処理を国会に提案する以上、あなたには、これらの金額的な枠組みを国会と国民に説明する義務があります。  三十兆円で足りなければ幾らでも積みますよ、これは、就任の翌日、新聞インタビューに答えた宮澤蔵相の言葉であります。金額的な規模を示さず、税金投入の仕組みだけをつくるという政府のやり方は、この言葉のとおり、状況のいかんでは無制限に税金を投入できる、底なしのパイプをつくることになるではありませんか。(拍手)  次に、財政の問題であります。  政府は、いわゆる恒久減税についても、銀行応援の三十兆円にしても、特別の財源対策を立てず、主として赤字国債の増発などに頼るとしています。将来の増税を必至とするこんなやり方で本当の経済対策になるか、こういう強い不安と危惧の声が既に多くの方面から上げられています。私も全く同感であります。  日本財政危機的な現状は、一刻も放置できるものではありません。日本経済の現在と将来を真剣に考えるならば、景気対策を積極的に進めながら、財政危機の悪化を防止する政策をとることが必要です。また、社会保障の積極的な拡充策をとることも、国民の将来的な生活不安を取り除くために緊急、切実に要求されていることであります。  これらの課題をあわせて解決していくためには、世界からもその異常さが指摘されている、ゼネコン型公共事業中心の逆立ちした財政の構造を正すことが、いよいよ急務となっております。  ここ数年来、日本財政では、国と地方を合わせて、公共事業への財政支出は約五十兆円、社会保障への公的支出は約二十兆円という状態が続いています。これは資本主義諸国でも極めて異例なことで、公共事業への財政支出は、ヨーロッパ諸国やアメリカの水準を数倍も上回るものとなっています。これこそが、一方で今日の財政破綻を引き起こし、他方では社会保障への公的支出を欧米諸国の三分の一、四分の一という低水準に押し下げている、その最大原因となっているものであります。  私たちは、公共事業最優先のこの逆立ち財政を世間並みの社会保障優先の財政に改めることを財政再建の大目標に据え、十カ年計画でこれを段階的に改革していく方針を立てています。この転換に踏み出せば、消費税減税などについても、その第一年度の財政改革によって、赤字国債の増発によらずに実行することができるし、財政再建の道を進みながら、同時に社会保障の充実という国民的な課題にこたえていくことも可能となります。  首相は、日本経済再生への決意を繰り返し表明しましたが、公共事業優先という異常な道から社会保障優先という普通の道へ財政のかじを切りかえ、国民とともに日本経済の民主的な再生への道を探求する意思はありませんか。  現状を憂慮しているのは、私たちだけではありません。  先日、財界団体の一つである経済同友会が六月八日に発表した公共事業改革の本質という提言を拝見しました。そこでは、既得権益の集約となって壮大なむだを生んでいる公共事業の現状が厳しく批判され、一、公共事業の全体の規模の縮小、二、巨額な公共事業費の根拠となってきた長期計画の廃止など、一連の思い切った改革が提唱されていました。  首相、基本的には自民党政権を支援する立場に立っている財界団体の目から見ても、ゼネコン中心の公共事業への政府自民党の異常な打ち込みぶりは、もう我慢のできないところへ来ているのであります。この問題についての首相の考え方を聞きたいと思います。(拍手)  次に、日中関係の問題です。  私は、参院選直後に中国を訪問し、六月に結ばれた関係正常化の合意を踏まえて、中国共産党の江沢民総書記・国家主席と会談してきました。その際、私は、国交正常化以後二十六年の歴史を踏まえ、また二十一世紀を展望して、日中関係がよるべき立脚点として、次の五つの原則の提唱を行いました。  第一、日本は、過去の侵略戦争を厳しく反省する。第二、日本は、国際関係において、一つの中国の立場を堅持する。第三、日本と中国は、互いに侵さず、平和共存の関係を守り抜く。第四、日本と中国は、どんな問題も話し合いで平和的に解決する。第五、日本と中国は、アジアと世界の平和のために協力する。この五原則であります。まず、この五原則について、政権の責任者としての首相の考えをお聞きしたいと思います。  私が、侵略戦争への反省と一つの中国の問題を冒頭に強調したのには、理由があります。それは、どちらも特別に日本責任にかかわる重大問題であると同時に、この二十六年間、この問題で日本側に原則を踏み外す動きが出てきたときには、必ずそれが日中関係の波乱となってあらわれたからであります。  第一に、日本が中国に対して行った侵略戦争は、中国国民に与えた被害の大きさからいっても、戦争の期間の長さや侵略した領土の規模の大きさからいっても、二十世紀の世界の歴史の中で最も際立ったものでした。この侵略戦争への真剣な反省なしに、本当の意味での中国との友好はもちろん、アジア諸国との友好もあり得ません。この侵略戦争への反省をどう考えているのか、首相の責任ある見解を改めて伺いたいと思います。(拍手)  新しい内閣を組閣するとき、いつも過去の歴史の認識をめぐる閣僚の発言が問題になります。今回もそれが繰り返されました。それは、根本をただせば、日本が中国に対して行った戦争を侵略戦争と認めず、その事実を歴史から消し去ることを主張する有力な潮流が、自民党内部に、組織的にもさまざまな形をとって存在しているところに、何よりの問題があります。  この状態を放置していたのでは、政権党として、日中関係に責任を持って対処することができないのではありませんか。そして、その責任を果たすためには、侵略戦争と植民地支配への反省という問題で、党内にある歴史認識の混迷を正し、党としての見解の統一を図る必要があるのではありませんか。あなたが、自民党総裁として、決意を持ってこの問題に取り組む用意があるかどうか、伺いたいのであります。(拍手)  第二の、一つの中国の立場とは、台湾を中国の領土と認める立場をあらゆる国際関係で貫くという問題です。台湾は、今から百三年前、日本が中国から奪って自分の植民地とし、戦後、ポツダム宣言の受諾とともに中国に返還した中国の領土であります。ですから、日本は、世界の他のどの国よりも、台湾問題で原則的な立場を貫く特別の責任を負っています。  今、ガイドライン問題をめぐって、台湾とその周辺地域をガイドライン発動の範囲内に含めるかどうか、これが重大問題になっています。  この問題では、政府は、一九六〇年の安保国会で、安保条約で言う極東の範囲内に台湾とその周辺を含める答弁を行いました。それが今でも安保条約の有効な解釈だとされ、ガイドライン論議にも引き継がれていますが、私は、ここには重大な時代錯誤があるということを指摘したいのであります。  政府が、台湾を安保条約の対象地域とする見解を示したのは、日本もアメリカも、台湾の政権を中国の正統政権とする誤った立場に立って台湾と国交を結び、アメリカは台湾と相互防衛条約を結んでいた時代でした。しかし、その後、七〇年代の初めにアメリカも日本も対中国政策の大転換を行いました。両国とも、台湾との外交関係を絶って中国と国交を結び、一つの中国の立場、すなわち台湾を中国の領土の一部とみなす立場を認めるに至ったのであります。まじめにこの立場に立つなら、台湾やその周辺を安保の対象範囲とする以前の解釈が、もはや成り立ち得ないことは明白であります。あえてそれに固執すれば、一つの中国を否定して中国の内政問題に手を出すという、国際的に全く道理のない立場に立たざるを得ないことになります。(拍手)  首相、国際関係の道理をまともに考えるなら、過去の誤った遺産はきっぱりと投げ捨て、台湾とその周辺は、安保条約の対象範囲からも、ましてやガイドラインの発動範囲からもきっぱりと外す、こういう立場を鮮明にすべきではありませんか。そうしてこそ、将来に向けての日中関係の安定した発展が可能になることを指摘して、首相の見解を問うものであります。(拍手)  次に、核兵器の問題ですが、首相、あなたは所信表明演説で、核兵器のない世界を目指し、世界に向けイニシアチブを発揮することについて語りました。あなたのこの言葉が真剣なものであるなら、まずその第一歩として、国連総会での日本代表の行動に検討を加えるべきではありませんか。  昨年の国連総会で、非同盟諸国から、期限を切った核兵器廃絶のための交渉を求める決議案が提案され、賛成百九、反対三十九、棄権十八の多数で採択されました。アジアでは二十二カ国がこの表決に参加しましたが、核保有国である中国を含めて二十カ国が賛成の態度をとりました。アジアの国で核兵器廃絶のこの決議に背を向けたのは、日本と韓国、韓国は金大中政権以前のことでしたが、この二カ国だけでした。核兵器使用禁止決議案の採択でも、同じことが繰り返されました。  これは昨年だけのことではありません。期限を切った核兵器の廃絶や使用禁止の決議案が、国連総会に提案されるとき、日本政府はいつも棄権の態度をとってきました。被爆国民の代表でありながら、国連という国際政治の場で、核兵器廃絶の世界的な流れに逆らう態度をとり続けるとは、余りにも情けないことではありませんか。  核兵器のない世界を目指すという立場で、この問題の真剣な再検討を行うことを強く求めるものであります。(拍手)  最後に、私は、首相に、解散・総選挙への決断を求めるものであります。  首相、あなたは衆議院での多数によって首相に選ばれましたが、自民党が、現時点での国民の審判で二五%、国民の四分の一の支持しか得られなかったことは厳然たる事実であります。しかも、あなたは、選挙で国民が支持しないと表明した前内閣政策をそのまま受け継ぎ、何事もなかったかのような態度でそれを実行に移そうとしています。国民主権が憲法で宣言されている日本で、最初から国民の支持を受けず、民意に逆らった政治を強行しようとする内閣の存続が、許されるはずはありません。(拍手)  私は、この国会での代表質問及び予算委員会総括質問を通じて、当面する諸問題に対する自民党政府の立場、また野党それぞれの立場を国民の前に明らかにした後、直ちに国会を解散して、総選挙で国民の意思を問うことを強く要求して、質問を終わるものであります。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕
  17. 小渕恵三

    内閣総理大臣(小渕恵三君) 不破議員にお答え申し上げます。  今般の参議院選挙の結果、厳しくかつ謙虚に受けとめております。特に、この選挙において示されたのは、国民が何よりもまず我が国経済情勢を極めて深刻に感じ、その一日も早い回復を願っておるということでございます。  私は、こうした国民の声を真摯に受けとめ、内閣経済再生内閣と位置づけまして、不良債権の抜本的処理を初めとする経済再生の施策を、政治主導のもと、責任の所在を明らかにしながら、スピーディーに政策を実行することにより、一両年のうちに我が国経済を回復軌道に乗せるよう、内閣の命運をかけて全力を尽くす覚悟でございます。(拍手)  経済情勢認識についてのお尋ねがございました。  我が国経済が、アジア通貨・金融市場の混乱、金融機関経営破綻などを背景に、家計や企業マインドが慎重になっていることなどから、最終需要が弱まり、景気は低迷状態が長引いております。御指摘のございました一連の改革が、九年度経済に与えた影響について否定するものではありませんが、我が国の将来を考えたとき、極めて重要な改革であったと考えております。  消費拡大策についてお尋ねがございました。  ただいま申し上げましたとおり、まず、政府といたしましては、総合経済対策の実施や金融再生トータルプランの早期実現に全力を挙げてまいります。その上で、事業規模で十兆円を超える第二次補正予算を編成することといたしております。また、六兆円を相当程度上回る恒久的な減税も実施をいたします。これらが早い時期から、家計等のマインドの喚起に役立つものと考えております。  個人所得課税恒久減税についてお尋ねがございましたが、本年の定額方式は、諸外国の中でも高い課税最低限がさらに高くなるなど、所得税制として本来好ましくないのでありまして、できる限り早期に減税を実施するためには、臨時異例の一年限りの措置としてとったものでございます。  来年から、今年の定額減税にかえて恒久的な減税を行うことによりまして、これはあるべき税制を展望しつつ、恒久的な減税として行うものであり、一年限りの特別減税と単純に比較することは適当でないと考えます。  これまで単年度の減税が行われておりましたが、今回の減税は一時的でなく、期限を定めず継続して実行してまいりたいと思います。このような六兆円を相当程度上回るという大規模な減税を恒久的に実施することが、消費者や企業のマインドを高め、景気に効果的に作用するものと考えております。  法人課税についての御質問でありますが、平成十年度改正におきまして、課税ベースを適正化しながら法人課税の実効税率を引き下げたところでありますが、これに引き続き、今回、我が国企業国際社会の中で十分競争力を発揮できるよう実効税率をさらに引き下げることといたしたものでございます。  消費税減税についてお尋ねがございました。  少子・高齢化の進展という我が国の構造変化に税制面から対応するものでございまして、我が国の将来にとって極めて重要な改革であったと考えております。したがいまして、消費税率引き下げ考えておりません。  今回の個人所得課税減税方式についてお尋ねでございますが、個人所得課税につきましては、まず、国民の意欲を引き出す観点から、最高税率の五〇%への引き下げを行うとともに、景気の現状に照らし、あらゆる所得階層に効果が及ぶとともに、中堅所得者に配慮された方式をとることが適当と考えております。  米国の破綻金融機関処理についてお尋ねがございました。  米国におきましては、一九八〇年代後半に大量のSアンドLが破綻したことを受けまして、多額の公的資金を導入し、金融危機に対処したと承知しております。その後、一九九一年におきまして、破綻金融機関処理方法を選択する際のコスト基準の厳格化等が図られたと承知いたしております。  我が国にありましても、金融システム安定化が迅速に図られますよう、できる限りの努力を傾けてまいりたいと考えております。  不良債権処理のための金融機関の負担についてのお尋ねでございますが、預金保険の保険料負担につきましては、我が国金融機関の置かれている状況や国際的な信認との関係等にも留意しつつ、検討していくべきものと考えております。  いずれにいたしましても、公的資金の活用による金融安定化策は、預金者の保護と金融システムの安定性確保のための措置であることを申し上げさせていただきたいと思います。  処理すべき不良債権の総額についてもお尋ねございましたが、十年三月末における金融機関不良債権額は、従来基準で見て二十五兆円、米国のSECと同様の基準で見て三十五・二兆円となっております。  一方、九年度において各金融機関が従来と比べて徹底した不良債権処理を進めた結果、不良債権に係る損失の引き当てとなる債権償却特別勘定の残高は大幅に増加し、十年三月末に十九・〇兆円となっております。  不良債権処理に当たりまして、公的資金が幾らかかるかについてのお尋ねでございますが、不良債権処理に伴う公的資金が必要となりますのは、金融機関破綻した場合でありますが、今後発生し得る金融機関破綻を現時点で予測することは、困難であると考えております。  我が国の今後の財政構造についてのお尋ねでございますが、公共投資に関しまして、二十一世紀初頭には社会資本が全体としておおむね整備されることを目標としつつ、効率的、及びその実施過程の透明性の一層の向上を図ることが重要と考えております。  また、社会保障に関しましては、高齢化の進展に伴い社会保障給付費の増加が見込まれる中で、必要な給付を確保しつつ、社会保障構造改革を推進し、制度の効率化、合理化を進めてまいりたいと考えております。  公共事業についてのお尋ねでありますが、公共事業につきましては、景気回復への効果を踏まえるとともに、真に豊かな国民生活を実現するため、従来の発想にとらわれることなく、二十一世紀を見据えた分野に重点化するなど見直しを行うとともに、コスト縮減、費用対効果分析の活用及び再評価システムの導入などを通じて、効率的、効果的な実施を図ってまいる考えであります。  次に、議員御指摘の対中国五原則についてでございますが、政府といたしましては、日中共同声明及び日中平和友好条約の基礎の上に、日中関係の発展に努めております。過去の歴史、台湾等に関する我が国の立場につきましては、両文書において明確に述べられているとおりであります。今後とも、こうした基礎の上に、両国関係の発展に努めていく考えであります。  歴史に関するお尋ねでありますが、政府考えは、一九九五年の内閣総理大臣談話に述べられたとおりでありまして、我が国が過去の一時期に、植民地支配や侵略により、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたものと認識しております。  日中間におきましては、日中共同声明及び日中平和友好条約を基礎として、未来に向けて日中関係の発展に努めていきたいと考えております。  歴史認識についてでございますが、内閣総理大臣としてお答えを申し上げれば、政府考え方はこの一九九五年の内閣総理大臣談話のとおりであり、その基礎の上に立って、関係諸国との信頼関係を一層強化していくとともに、責任ある国際社会の一員として、国際協調を促進し、これを通じて平和の理念民主主義を推進していくとの立場をとっております。  台湾と日米安保条約及び指針の対象範囲についてお尋ねがございましたが、日米安保条約及びこれに関する政府の立場に変更はなく、また、周辺事態は、地理的な概念ではありません。我が国としては、中国政府が、台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると承知をいたしておりまして、この問題が、当事者間の話し合いにより、平和的に解決されることを強く希望いたしております。  国連総会での我が国の対応についてお尋ねでございましたが、期限つき核廃絶や核兵器使用禁止の主張は、核兵器国を含む多くの国が受け入れておらず、核兵器国と非核兵器国の対立を助長し、核軍縮の進展を妨げるおそれがあります。核兵器のない世界を実現するためには、CTBTの早期発効、カットオフ条約交渉の早期開始、核兵器国による核軍縮の促進等、着実、段階的に努力が重要だと考えております。  最後に、解散・総選挙についてのお尋ねもございました。  私は、まず基本的認識として、実際上、解散権は総理に与えられた最大の権能であると理解いたしており、したがいまして、政治的な決断を行わなければならないときには、解散を断行し、国民の信を問うことは当然であると考えております。  現在、我が国金融経済は、極めて深刻な状況に直面をしている。日本経済の再生に向け、不良債権問題の抜本的処理を初めとして、あらゆる施策を実行していくことこそが、この内閣に求められた最大の課題であると思いをいたすとき、私としては、現時点におきましては、解散は念頭にございません。(拍手)     —————————————
  18. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 土井たか子君。     〔土井たか子君登壇〕
  19. 土井たか子

    ○土井たか子君 社会民主党・市民連合を代表して、私は、小渕内閣総理大臣所信表明演説に対して質問いたします。  七月に行われました参議院選挙で、大きな変化を求める民意がはっきりと示された後の小渕新政権の誕生でありますから、私は、非常な期待を持って所信表明演説を聞かせていただきました。そして、大変落胆をいたしました。この演説のどこに民意にこたえる反省があり、どんな新鮮味があったでしょうか。どこに日本再生の具体策が、迫力を持って描かれていたでしょうか。  参院選での民意とは、これまでの政治のあり方、行政のやり方ではだめだ、大きく変えなさい、そして未来に対する方向をしっかり示してほしい、こういうことだったと私は考えております。それに対して、この演説は全くこたえておりません。  経済の大きな落ち込みの中で、人々は自信を失い、生活の先行きが見えない不安の中にあります。会社が、工場があすにもつぶれるのではないか、職を失うのではないか、あるいは退職後、年金が支払われないのではないか、介護が保障されていないのではないか、その一方で負担はふえるばかり、こういう不安の中では、人々は決して消費などしないものです。  さらに深刻なのは、本来、人々の不安にこたえて未来への展望を指し示し、あすへの確信と希望を与えるべき政治の言葉が、人々の信用を失っているということであります。  国民のこの不安と不信と不満とにこたえることが、与野党を問わず、今すべての政治家に問われていることです。通り一遍ではだめなのです。これまでのやり方の踏襲では通用しないのです。にもかかわらず、総理の所信は、これまでの踏襲に過ぎると言わなければなりません。  それでは、信頼に足る政治とはどんなものでしょうか。それは、事を行うに当たって、国民に真っ正面から向き合い、不公正を憎み、正義を行い、なすべきをきちんと説明し、説得し、苦しみも喜びも国民とともにして歩もうという姿勢の政治のことであると考えます。もし国民に対して負担をお願いする必要があるとするならば、それを呼びかける前に、政治家がまずみずからを徹底して正し、率先して身を切る覚悟のある、そういう政治ではないでしょうか。  社民党は一貫して主張してきたことでありますが、改革を言うなら、まずみずからの政治倫理をはっきりさせることであります。不良債権処理のために、国民の負担をお願いします、税金を注ぎます、それしか方法はないのですというのなら、金融機関の情報公開、経営責任をはっきりとらせることは言うまでもないことながら、政治の側もみずからの姿勢を改めることが求められているのではありませんか。まさかこの上、自民党金融機関からの献金などを受け取ることはないと信じたいのですが、総理、いかがですか。  企業、団体からの献金について、既に政党には公的な助成が行われているのですから、政治資金規正法に言う今から二年後にというのではなしに、もうこの機会にきっぱりとやめることが筋だと思いますが、いかがですか。第一にお聞きしたいのはこの点であります。  総理は、御自身内閣経済再生内閣と位置づけられ、一両年のうちに我が国経済を回復軌道に乗せるよう、内閣の命運をかけるとおっしゃいました。私の率直な印象を申し上げますと、少なくとも一両年は日本経済の回復は困難だと告白されたようなものだと感じております。ある意味では、精いっぱいの正直発言なのかもしれません。昨年秋に打つべきだった大型経済対策の時期を失ってしまい、さき参議院選挙ではこの経済失政に対する国民のおしかりが、橋本前政権に引導を渡しました。当時の与党の一員として、社会民主党もその限りの責任を回避しようとは思いませんが、それだけに、私たちの野党としての要求は真剣です。  日本経済は、戦後経験したことのない深刻なデフレの入り口に立っていると専門家は指摘しております。将来に対する国民の不安が消費マインドを冷え込ませ、一方で、九七年以来のマイナス成長が不良債権のすそ野を拡大させています。こうした膨大な不良債権処理が行われることによるデフレ効果は、六兆円を上回る恒久減税の効果を簡単に帳消しにしてしまうほどの深刻さだといいます。  こうした底知れない不良債権処理を、国民税金処理するというのでは、大銀行優先の不公平、不公正がまかり通ることになります。日本経済再生のために公的資金の投入が必要不可欠だというのなら、不良債権を生んでしまった経営責任を峻烈に問い、同時に、政府がそう考え判断の材料を、国民に詳しく示すべきです。  バブル経済破綻とともに表面化した不良債権の詳細にとどまらず、その後の日本経済のマイナス成長によって倒産が続出し、新たな不良債権がさらに積み上がっている実情データも国民に示さなければなりません。総理、そして大蔵大臣の御存念をお聞かせいただきたいのです。  次に、総理は、税制について、景気最大配慮して、六兆円を相当程度上回る恒久的な減税を実施すると言われました。総理は、勤労者、中小企業経営者の皆様などを初めとする国民の生の声に耳を傾けと言われていますけれども、こうした国民の声は、ただ聞くだけなんでしょうか。減税という言葉は大変心地よい言葉ですが、しかし、問題は、だれにとっての負担減なのかということです。  減税の中身は、所得税と住民税を合わせた税率の最高水準を五〇%に引き下げ、また法人課税の実効税率を四〇%に引き下げるというものです。所得税のこれまでの税率六五%を五〇%に引き下げられる人々は、年収入ベース三千五百六十五万円以上の人々です。一九九五年の国税庁の調査によれば、約四千七百万人の納税者のうち、わずか十七万人余、〇・五%にも満たない人々にすぎません。こういう人々が最大の恩恵を受けるのです。そして、財源は、当面は赤字国債をもって充てるというのですから、やがては国民全体にこの負担がのしかかってくるわけです。  これは、一体だれのための、何のための減税でしょう。勤労者や中小企業経営者の生の声や姿はどこに行ったのでしょう。所得の少ない人々や社会的に弱い立場の人たちへの配慮を、どのような形で示されるのか、総理大蔵大臣にお聞きいたします。  国民の働く意欲を引き出すというのは、格好のいい言葉です。しかし、最高税率引き下げた米国などでは、格差が拡大して、その是正が大きな課題となっております。ごくごく一部の者だけが働く意欲を持ったにしても、国民の大多数が働く意欲を失うというのでは、本末転倒、健全な経済は営めないのではないのでしょうか。  戦後の日本社会が世界に類を見ない安定構造を持ち得たのは、つまり、どんな所得階層の出身でも、まじめに勉学に励み努力すればどんな職業にもつける、小渕さんも総理大臣になれるという、職業選択の階層間流動性が第一の理由でした。  そして第二が、所得格差の相対的な小ささです。こうした状況を実現できた有力な方法論の一つが、所得に対する厳しい累進税率の適用です。内需刺激のためという米国の要求に丸乗りして、こういう所得再配分や格差是正機能のメリットを簡単に放棄することは、禍根を残すでしょう。総理はどのような御見解か、お聞かせください。  そして、肝心なことは、総理の言われるとおりに、この減税が果たして景気を刺激することになるのかどうかということです。  減税をすると、その結果歳入が減りますから、医療費や社会福祉、教育費の削減につながるという不安を多くの国民は持っております。この不安の中で人々の消費マインドは一層冷え込み、人々は決して財布のひもを緩めません。老後を初めとするいろいろな不安を解消することが先決です。そのためには、政策を思い切って福祉にシフトすることが大事です。歳出の中で目をみはるような、医療や福祉、教育を厚くする総理政治的手腕が問われていますが、どうお考えですか。  例えば年金です。総理は、さき自民党総裁選で、年金の給付水準は現状を維持するとの年金改革案を発表しておられます。社民党は、年金制度全般の改革、さらに介護や医療の総合的かつ抜本改革を行う中で、だれもが暮らせる年金水準の実現を図って、活力ある高齢社会を築くことがまず取り組まれるべき課題であると考えています。  前回、九四年の年金改正では、当時の社会党の主張で、基礎年金の国庫負担割合の引き上げに道筋がつけられています。次期年金改正で基礎年金の国庫負担を二分の一に引き上げを行うことが全会一致の国会決議でした。さき総理が発表なさった年金改革案で給付水準を維持するためには、この国会決議を実施することが責務となります。総理の御所見を求めます。  総理は、財政構造改革法を当面凍結するとおっしゃいました。  問題は、凍結のための改正案提出を次期通常国会にしようという総理の方針です。行政権優位を認めない国民主権制の議会制民主主義を保障する財政法定主義や、財政に関する国会中心主義は、日本国憲法に盛り込まれた重要な柱の一つです。法律をそのままにしておいて、総理凍結方針表明だけに依拠して、政府が新年度予算の概算要求や予算案編成作業を進めることは、憲法の定めるルールに反する国会軽視です。凍結のための改正案をこの臨時国会で成立させてから、新年度予算案編成に取りかかるべきではありませんか。総理及び大蔵大臣の御見解を求めます。  さて、総理は、外相時代、外務省や防衛庁の中にあった一部の消極論にくみせず、地雷廃止条約への署名を決断されました。私がその決断に敬意を表するのは、単にお役人の抵抗を抑えたからというのではなく、地雷廃止に積極的な姿こそ、この日本という国の根本的なあり方であると考えるからにほかなりません。  私たちが尊重するのは、自由であり、民主主義であり、人権であり、平和であります。それがこの五十三年にわたる戦後日本の基盤であり、内外の人々への約束でありました。そして、今やその価値は全世界じゅうに共通のものとなっております。私たちは、戦後の歩みに自信を持ち、さらに世界の人々、とりわけ隣人であるアジア諸国の人々と手を携えて歩んでいかなければならないと思います。  そこで、気になることが幾つかあります。  その一つは、アウン・サン・スー・チーさんを代表とするビルマ民主化運動と軍事政権との緊張がますます高まっていることです。総理は、この事態をどのように受けとめておられますか。また、祖国を離れて日本に難民申請をしているビルマの人たちに対して、入管当局が身柄を拘束するという事態が起きています。我が国は、国際難民条約批准国として、人権を尊重した取り扱いが求められていると思いますが、この点、総理はどのようにお考えになりますか。  次に、いわゆる周辺事態法案についてであります。  日米防衛協力のための指針、いわゆる新ガイドライン関連法案等について、社民党は、憲法と日米安保の範囲を超えていると考えます。日本が武力攻撃を受けてもいない他国の武力紛争に軍事的に加担、介入していくことは、明らかに憲法が禁じる集団的自衛権に抵触し、専守防衛の原則からも逸脱しており、認めるわけにはいきません。  周辺事態法案で、自衛隊の出動は国会に事後報告としていることはゆゆしい問題です。しかし、それにとどまりません。国会承認が事前に行われさえすればよいという性格のものではないからです。本来、日本は、国際紛争を解決する手段として、武力の行使はもちろん、威嚇さえ行わない、そう内外に約束してきた国です。それを、周辺有事だから仕方がない、国民挙げて米国の軍事行動に協力せよというのは、この国の基本姿勢にかかわります。やすやすと賛成するわけにはまいりません。  周辺事態の周辺という範囲もあいまいなまま、また、自治体や民間企業に協力させながら、では、何に対してどのような協力を具体的に想定しているのか。自治体が政府に尋ねると、甚だあいまいな答えしか返ってこなかったといいます。なぜこのようにあいまいなのか。それは、これまでの国のあり方の根本からいって、あるいは国民への約束からいって、明らかに許されないことがここに含まれているからではありませんか。  防衛庁は、自治体への協力要請によって一般的協力義務が生ずると説明していると聞きますけれども、本当にそうなのですか。総理にお尋ねします。  このようにあいまいなまま、日本全体、日本国民全体の進む方向を決めてしまうような法案は、日本の戦後の歩みの基盤を全面的に崩してしまうものだとはお考えになりませんか。  先月、アメリカのクリントン大統領は、中国の江沢民国家主席との会談で、二つの中国は支持しない、台湾の独立は支持しない、台湾の国連加盟は支持しないと表明しました。  既に我が国は、中国との間に交わした一九七二年の日中共同声明で、台湾は中国の不可分の一部であることを理解し、尊重することを表明しています。この立場から、日米安保が台湾海峡をターゲットにしていると言われる懸念を取り除くために、中国に対しては、台湾の武力解放の選択肢を捨てる約束をするよう迫り、同時にアメリカに対しては、日米安保の極東の範囲から台湾は除外するとはっきり伝えるべきです。江沢民国家主席の九月訪日を前に、総理の御決断を求めます。  また、新ガイドラインが内包する本質の一つは、冷戦後、アメリカだけでは担い切れなくなった後方支援や前線基地の負担を、日本に背負わせるところにあります。この問題は、日本財政力を度外視して考えることはできません。  安保再定義を議論し始めた九四年は、一ドル百円前後、日本経済は日の出の勢いのように見られていました。新ガイドラインを見直すということをうたった日米安保共同宣言が発出された九六年四月ごろは、一ドル百八円でした。そして、それが今や一ドル百四十円台になっています。日本の負担能力はどんどん低下して、国力の背景が一変したことははっきりしています。それでも軍事優先で総理は臨まれるのか、また、経済の成長力と整合性のない負担を背負い込むことができるのか、はっきりさせていただきたいと思います。  自由、民主、人権、平和を守り、発展させようという方向において、今ほどアジア諸国がともに議論し合い、協力し合うことができる共通の土台のできた時代はこれまでありませんでした。  昨日、野中広務官房長官が発表された、北朝鮮に住む原爆被爆者の渡日治療受け入れを検討するというニュースはよい知らせでした。  九月の江沢民中国国家主席訪日に続いて、十月には金大中韓国大統領が訪日されます。アジアの共通の未来のために、平和と安全のために、画期的な秋になると言えましょう。ともに未来を語り得る関係を築き得るかどうかの重要な会談となるでしょう。  未来を語るときに、両国民に対して、日本は、過去の歴史を忘れず、未来に生かしていかなければなりません。国民とともに歩む外交をモットーとされる小渕総理は、植民地支配と侵略の過去をどのように見ていらっしゃいますか。  このことをお伺いし、「杖るは信に如くは莫し」、頼りとするものとしては信義にまさるものはない、これは古典にある言葉ですが、村山元総理が戦後五十年の談話の中で述べられていることを申し上げ、質問を終わります。  ありがとうございました。(拍手)     〔内閣総理大臣小渕恵三君登壇〕
  20. 小渕恵三

    内閣総理大臣(小渕恵三君) 土井たか子議員にお答えいたします。  まず、政治献金についてのお尋ねでございましたが、政治活動に関する寄附につきまして、特定分野、業界を対象とした規制は定められておりませんが、自由民主党は、住専問題等により、都銀、地銀等からの献金を自粛していたところであり、先般、改めて、金融システムの安定のため公的資金が投入されることにかんがみ、過去における借入金の返済に充当するものを除き、銀行業界からの政治献金を自粛することといたしました。  また、企業、労働組合等の団体献金につきましては、平成六年の政治改革における政治資金規正法の改正により規制が強化され、さらに、改正法附則により、施行後五年を経過した場合には、団体献金のうち、資金管理団体に対するものについては禁止する措置を講ずるとともに、政党及び政治資金団体に対するものについては、政治資金の個人による拠出の状況を踏まえ、政党財政状況を勘案して、そのあり方の見直しを行うものとされているところでございます。  この問題につきましては、自社さきがけの間で真剣に検討が重ねられてきましたが、結論は得られませんでした。各党会派におきまして十分御論議をいただくべき問題と考えております。  金融機関不良債権の公表についてお尋ねですが、本年三月期から、全国銀行については米国のSEC基準と同様の基準によって不良債権の情報開示が既に行われておるところであります。また、来年三月期からは、全金融機関について、これを連結ベースにより罰則つきで義務化することとしており、これにより、不良債権の開示制度は国際的に遜色のない水準のものとなると考えております。  不良債権を抱える金融機関経営者の経営責任についてお尋ねがございましたが、その責任は、まず何よりも経営者みずからが判断し、さらには株主等が追及していくべきものと考えます。もちろん、金融機関破綻処理に当たって、経営者の退任及び民事、刑事上の厳格な責任追及という原則は、今後とも貫く必要があります。  今回の個人所得課税減税についてお尋ねですが、今回の改正による個人所得課税減税規模は四兆円を目途といたしております。減税方式といたしまして、最高税率引き下げに加えて、期限の定めのない定率減税を組み合わせるとの意見が有力であると承知いたしております。  また、課税最低限引き下げる環境にないと考えております。  なお、税制改正の詳細につきましては、政府及び党の税制調査会における幅広い検討の結果を踏まえて、決断をいたしてまいりたいと思っております。  所得税の累進税率についてでございますが、今回、国民の意欲を引き出す観点から、最高税率引き下げを行うことといたしておりますが、所得再分配機能は所得税における重要な機能であり、今後とも維持すべきものと考えております。  歳出を医療、福祉、教育にシフトすべきではないかとの御指摘でございますが、政府としては、これまでも医療、福祉、教育の分野に適切な施策を講じてきたところであります。先般の総合経済対策、補正予算におきましても、福祉、医療、教育に対し、事業規模で一兆円に上る重点的な配分を行っており、今後とも適切な施策の実施に努めてまいる所存でございます。  年金についてのお尋ねでございました。  基礎年金の国庫負担の引き上げについて、前回改正時におきまして、財源を確保しつつ検討を加えるとされておりますが、莫大な財源を必要とすることから、現下の厳しい財政状況にかんがみ、国庫負担の引き上げを行うことは困難であると考えております。  財政構造改革凍結のための法案を今国会に提出すべきとの御意見でございますが、財政構造改革を推進するという基本的な考え方は守りつつも、まずは景気の回復に全力を尽くすため、財政構造改革法は、当面、これを凍結することといたしております。  財政構造改革法凍結の最終内容は、予算編成過程における景気回復のための税制改正を含めた、具体的施策の内容等の議論を踏まえて検討してまいりたいと考えております。  次に、外交問題でございますが、ミャンマー情勢についてお尋ねがございました。  我が国としても、現状を懸念しておりまして、状況の改善には、同国政府、スー・チー女史を含むNLDとの対話が重要であると認識をいたしております。このような観点から、米豪等国際社会と協調しつつ、直接ミャンマー政府に対話の実施を働きかけるとともに、ASEAN諸国にも、同国政府に対し、同様の働きかけを行うよう、慫慂しておるところであります。  我が国において難民として認定を求める外国人についてのお尋ねですが、ミャンマー人に限らず、難民の地位に関する条約、難民の地位に関する議定書及び出入国管理及び難民認定法に従って、適正な取り扱いを行っておるところであります。  次に、周辺事態安全確保法についてのお尋ねでございますが、本法案は、周辺に対する事態に対応して我が国が実施する措置等を定め、もって我が国の平和と安全の確保に資することを目的とするものであり、平和に向けた我が国の戦後の歩みの基盤を崩すものとの指摘は当たらないものと考えております。  周辺事態安全確保法の地方公共団体に対する協力要請についてのお尋ねでありますが、本法案では、周辺事態に対する対応の重要性にかんがみまして、地方公共団体に対する一般的な協力義務について定めるものであります。この場合、あくまでも協力を求めるということでありまして、地方公共団体に対して強制するものではありません。  また、本法案は、有事態勢への協力を国民に白紙委任させようとするものでももちろんありません。  次に、台湾に関するお尋ねでございますが、我が国の基本的立場は、日中共同声明に述べられておりますとおり、かかる基本的立場を堅持した上で、我が国として、東アジアの平和と安定の観点から、台湾をめぐる問題が関係当事者間で平和的に解決することを希望しておりまして、こうした考えを従来から中国側に伝えておるところでございます。  日米安保条約の極東の範囲についてお尋ねでございますが、日米安保条約に関する政府の立場に変更はありません。  また、我が国としては、今後とも日中共同声明を堅持するとともに、台湾に関して、中国政府が、台湾をめぐる問題は中国人同士の問題として平和的解決を目指していると承知をいたしておりまして、この問題が当事者間の話し合いにより、平和的に解決することを強く希望いたしております。  新たな指針と我が国の負担についてお尋ねでございますが、新たな指針及びそのもとでの取り組みは、いずれの政府にも、立法上、予算上または行政上の措置をとることを義務づけるものでもありません。新たな指針の協力項目に掲げられている活動を行う際の日米間の経費負担の問題につきましては、日米間で具体的な話し合いが行われたわけでなく、今後検討してまいります。  次に、歴史認識についてのお尋ねでありますが、政府考え方は一九九五年の内閣総理大臣談話のとおりであり、その基礎の上に立って関係諸国との信頼関係を一層強化していくとともに、責任ある国際社会の一員として国際協調を促進し、これを通じて平和の理念民主主義を推進していく立場をとっております。中国や韓国とも、こうした立場を踏まえて、関係の発展に努めてまいります。  残余の質問につきましては、関係大臣から答弁をさせます。(拍手)     〔国務大臣宮澤喜一君登壇〕
  21. 宮澤喜一

    国務大臣宮澤喜一君) 不良債権を抱えております金融機関経営者の経営責任でございますが、先ほど総理がなされました答弁の補足をさせていただきます。  すなわち、金融機関破綻処理に当たりまして、経営者の退任及び民事、刑事等の厳格な責任追及が行われるという原則がございます。その中で、背任あるいは横領行為等の犯罪が判明をいたしましたときは刑事責任、それから商法上の取締役の会社に対する弁済または損害賠償あるいは民法上の債務不履行責任、これらの民事責任、あるいは株主代表訴訟等の民事上の責任が追及されます。  そのほかにお尋ねの具体的な点は、ブリッジバンクの制度におきまして、金融管理人破綻に至った経緯などの実態解明に努めることが求められておりますが、その結果、取締役あるいは取締役等であった者に対する調査の結果、犯罪行為があったと認められるときは、告発に向けて必要な措置をとらなければならないと法案に定められております。  また、金融管理人は取締役等に対する調査の結果を金融監督庁長官に報告する義務がございまして、長官は、こうした行為の中に法令違反行為がありました場合には、銀行法第二十七条に基づいて取締役の解任を命ずることができます。  さらに、金融管理人は、当該金融機関株主総会等に取締役解任の議案を提出することができます。  等々、制度といたしましては、かなり詳しく厳しく経営責任の追及について整備をいたしておるつもりでございます。  それから、財政構造改革法の国会提出との関連につきましては、先ほど総理が御答弁になられたとおりでございますが、要は、この法律の改廃を必要といたしますような予算が編成されましたときには、予算と同時期にこの法律の改廃を国会に提出して、御審議を仰げば足りるのではないかというふうに考えておるわけでございます。  それから、個人所得課税のいわゆる最高税率を六五%から五〇に引き下げたということについて御批判がございましたが、このたびの所得課税減税規模は四兆円を目途としておりまして、その影響はすべての納税者に及ぶわけでございまして、高額所得者に限るわけではございません。  他方で、六五%という極めて高い最高税率引き下げますことは、先進諸国との比較の上からも、また、将来本格的な税制改革考え観点からも、好ましいことではないかと考えております。  以上でございます。(拍手
  22. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————
  23. 渡部恒三

    ○副議長(渡部恒三君) 本日は、これにて散会いたします。     午後五時一分散会