運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-09-09 第143回国会 衆議院 日本国有鉄道清算事業団の債務処理及び国有林野事業の改革等に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月九日(水曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 大原 一三君    理事 赤城 徳彦君 理事 衛藤 晟一君    理事 杉山 憲夫君 理事 牧野 隆守君    理事 小平 忠正君 理事 佐藤 敬夫君    理事 宮地 正介君 理事 江崎 鐵磨君       大石 秀政君    岡部 英男君       河井 克行君    久野統一郎君       阪上 善秀君    桜田 義孝君       実川 幸夫君    下村 博文君       園田 修光君    戸井田 徹君       萩山 教嚴君    細田 博之君       宮腰 光寛君    望月 義夫君       山口 泰明君    山本 公一君       吉川 貴盛君    渡辺 具能君       今田 保典君    島   聡君       永井 英慈君    鉢呂 吉雄君       細川 律夫君    松沢 成文君       赤羽 一嘉君    長内 順一君       木村 太郎君    一川 保夫君       西川太一郎君    中林よし子君       平賀 高成君    伊藤  茂君       中田  宏君  委員外出席者         参  考  人         (千葉商科大学         学長)     加藤  寛君         参  考  人         (全林野労働組         合中央執行委員         長)      吾妻  實君         参  考  人         (慶應義塾大学         法学部教授)  小林  節君         参  考  人         (名古屋大学法         学部教授)   加藤 雅信君         参  考  人         (明治大学名誉         教授)     山口  孝君         衆議院調査局日         本国有鉄道清算         事業団債務処         理及び国有林野         事業改革等に         関する特別調査         室長      長尾 正和君     ————————————— 委員の異動 九月九日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     園田 修光君   木村 隆秀君     山口 泰明君   藤井 孝男君     吉川 貴盛君   渡辺 博道君     望月 義夫君   北脇 保之君     島   聡君   木幡 弘道君     松沢 成文君 同日  辞任         補欠選任   園田 修光君     江渡 聡徳君   望月 義夫君     戸井田 徹君   山口 泰明君     木村 隆秀君   吉川 貴盛君     藤井 孝男君   島   聡君     北脇 保之君   松沢 成文君     木幡 弘道君 同日  辞任         補欠選任   戸井田 徹君     桜田 義孝君 同日  辞任         補欠選任   桜田 義孝君     渡辺 博道君     ————————————— 本日の会議に付した案件  日本国有鉄道清算事業団債務等処理に関す  る法律案内閣提出、第百四十二回国会閣法第  四六号)  国有林野事業改革のための特別措置法案(内  閣提出、第百四十二回国会閣法第四四号)  国有林野事業改革のための関係法律整備に  関する法律案内閣提出、第百四十二回国会閣  法第四五号)  森林法等の一部を改正する法律案内閣提出、  第百四十二回国会閣法第七八号)  地方自治法第百五十六条第六項の規定基づ  き、東北森林管理局及び関東森林管理局設置  に関し承認を求めるの件(内閣提出、第百四十  二回国会承認第二号)  一般会計における債務承継等に伴い必要な財  源の確保に係る特別措置に関する法律案内閣  提出、第百四十二回国会閣法第四三号)      ————◇—————
  2. 大原一三

    大原委員長 これより会議を開きます。  第百四十二回国会内閣提出日本国有鉄道清算事業団債務等処理に関する法律案国有林野事業改革のための特別措置法案国有林野事業改革のための関係法律整備に関する法律案森林法等の一部を改正する法律案地方自治法第百五十六条第六項の規定基づき、東北森林管理局及び関東森林管理局設置に関し承認を求めるの件及び一般会計における債務承継等に伴い必要な財源確保に係る特別措置に関する法律案の各案件を一括して議題といたします。  本日は、各案件審査のため、参考人として、千葉商科大学学長加藤寛君、全林野労働組合中央執行委員長吾妻實君、慶應義塾大学法学部教授小林節君、名古屋大学法学部教授加藤雅信君、明治大学名誉教授山口孝君、以上五名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席いただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  次に、議事の順序でありますが、まず各参考人からそれぞれ十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えいただきたいと存じます。  なお、念のために申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。また、参考人委員に対して質疑できないことになっておりますので、あらかじめ御承知おきいただきたいと存じます。  それでは、加藤寛参考人お願いいたします。
  3. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 最初意見を陳述させていただきます。  私は、現在、国会で金融問題が大きな問題として取り上げられていることについては十分に承知しているつもりでございますが、外国で特に代表的な意見がいろいろございます。ビジネス・ウイークなどの雑誌によりましても、つい先日、皆様方承知のとおり、「日本の真の危機」という大きな論説が出ました。その真の危機というのは何かということについて、今表面的に問題になっております不良債権金融機関不良債権のみならず日本の持っている大きな債務、これが非常に大きな問題であって、これを表に出して解決しなければ日本世界的信用を得ることはできないということを断言している意見がございます。  そういう意味からまいりまして、私は、国鉄林野長期債務問題というのは、まさに日本金融安定化あるいは経済安定化のために極めて重要な問題であると考えておりまして、これは早期解決しなければ日本の金融問題すべてについて世界信用を得ることができないというモデルケースとしても重要な問題であると考えておりますので、早期解決が必要であると思っております。  さて、しかし、その場合にどういうふうにこれを考えるかということになりますと、根雪というものがございまして、これが大きな一つ債務でございますが、この二十八兆円になります根雪というもの、これを一遍に解決することは不可能でございますので、私は、かねてから、これにつきましては長期的な視野を持ってやるべきである。しかし、年々増加していく新雪部分、新しい雪が利子償還という形でもってふえてまいりますので、去年も八千五百億円ぐらいございましたが、その八千五百億円ぐらいの新雪が降り注いでまいりますので、この新雪を早く抑えなければ、つまり止血と言ってもよろしいのでございますが、この新雪をとめなければ長期債務を後で解決していくのには非常に大きな障害になる。そこで、根雪そのもの解決には時間がかかるけれども、しかし、新雪は早くとめなければいけないということを主張してまいりました。  したがって、今回提案されております案につきまして、この点が明確になっておりますので、私はこの案について非常に賛同するものでございます。ただし、その場合、御承知のように、根雪解決といたしまして、例えば郵便特会とかあるいはたばこ特別税というのを使用するということが行われております。  これに対して、余り関係がないではないかという御意見もあるのでございますけれども、私は、その点に関しましては、これは特別にこの国鉄債務あるいは林野債務だけに使われるというふうに考えるのではなくて、このたばこ特別税にいたしましても、郵便貯金特会にいたしましても、これは一般会計不足財源を賄うものであるというふうに考えておりまして、そのような賄うことということで突如としてこれが登場いたしますと、いかにも国鉄債務だけに使われる、あるいは林野債務だけに使われるという誤解を招くわけでございますけれども、私は、これはそうではなくて、一般会計不足を補うものであるから、必要ならばこれはやむを得ない、こういうふうに考えております。  しかし、やむを得ないのではございますけれども、私はベストとは思っておりません。私の考え方からまいりますと、むしろ整備新幹線の凍結を行うとか、あるいは道路財源圧縮を行うというようなことが一つの方法として考えられるのでありますが、しかし、そういう考え方に対してはいろいろな御意見があることも私は承知しておりますので、いずれこういったことについては行政改革中心としてやっていくべきである。  したがって、財源不足については、いずれは、当然のことでありますけれども一般会計あるいは歳出の削減というものを考えていかざるを得ないと思っておりますが、暫定的に急いでやらなきゃならぬというこの最初の命題に立ち返って申しますと、そのようなことはやはりやむを得ないこととして認めなければなりません。そんなわけで、私は、今回のこの長期債務処理の問題につきましては、妥当な一つ結論が出ているだろうというふうに考えております。  ただ、この場合、論争点一つになりますのが年金追加負担でございまして、これがどうもいろいろと誤解を生んでいるようでございます。  一般的に申しますと、事業主年金負担をするということは合理的でございますから、私は別にこれが間違っているとは思っていないのですけれども、ただ、これをやはり当事者に納得させていかないと十分な答えを得ることはできないと私は思っています。  特に政府の決定しております閣議決定でもっていろいろと言われておりますけれども、御承知のように、六十三年、ちょうど国鉄改革が行われましたときに私ども一つ考えておりましたことは、それは、いろいろな努力をして、例えば株を売る、あるいは土地を売るというような努力をして、それからさらにいろいろと経営努力をいたしまして、それでもなおどうしても足りない部分についてそれをどうするかについて政府処理に任せるという言葉を使っております、正確な表現ではなかったかもしれませんが、というような言葉でもって私どもは考えていたのでございますが、その当時、私も国鉄再建監理委員会の末席におりまして、いろいろとそのことについて議論をさせていただきました。  結果的に、私どもとして、あらゆる債務をここでもって俎上にのせて考えるということはしたのでございますが、しかしなお、あえて、そこにはどうしても我々の予測しがたいものがあるかもしれない、そういうことにつきまして新たな措置ということが当然起こるわけでございますから、したがって、政府処理とそこで申し上げましたのは、政府負担をするということではなくて、政府がどのように負担をするかということについて考えることになるということを申し上げたのでございます。  その点が今度のこの処理法案でもっていろいろと問題になっているところでございますが、私どもの考えからまいりますと、これはやはり両者話し合いというものが必要でございます。特にJR側納得が必要であろう。つまり、新しい問題でございますから、その意味ではここでもって納得が前提になってくると思います。  しかし、こうした問題が起こるのはなぜかと申しますと、それは、言うまでもございませんが、JRという形で民営化はされましたけれども、まだ本当に民営化されていないというところに禍根が残っております。つまりそれは何かと申しますと、第一には、やはり株式の放出がまだ完全には行われておりません。さらにまた、第二番目には、依然として特殊会社でございます。また、御承知のとおり、新幹線を買い取りましたときに延べ払いになっておりますが、これも早く繰り上げてまいりませんと、私どもとしてはこの弁済はだんだんと長引くだろうと考えております。  そういうことを考えますと、JR民間会社になり切っているならば、私はこのような問題はある程度抑えられたと思うのでありますが、しかし、JRがまだ完全に民営化されていないということが残されているのでございますから、これを早くやるということを一つ条件にいたしまして両者話し合いが行われるならば、私は両者の合意というものが当然できてくると考えますので、その点について御配慮をいただければありがたい、こんなふうに思いまして、私の意見とさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手
  4. 大原一三

    大原委員長 ありがとうございました。  次に、吾妻参考人お願いいたします。
  5. 吾妻實

    吾妻参考人 おはようございます。  国有林改革法案の審議に当たりまして、当該労働組合参考人意見陳述の機会を与えていただきまして、ありがとうございます。また、森林林業国有林問題について日ごろ御高配を賜っていることに対しまして、改めて感謝を申し上げたいと思います。  私は、本日は国有林問題を中心意見を申し上げさせていただきたいと思います。  国有林は、御案内のとおり、過去二十年間四度の改善計画の策定、見直しを行い、労使一体での努力にもかかわらず、債務は縮小するどころかついに三・八兆円になったことに対して、大変申しわけなく、残念であり、遺憾であります。  しかしながら、この二十年間は、国有林にとってはつらい苦しみの連続でございました。私たちは、かつて二十年前に、林野庁が言う、二十年後の国有林バラ色になるという言葉を信じて、ひたすら改善に次ぐ改善をやり遂げ、この間十五年にわたって年度末の業績手当削減をされるなどに耐えて、しのいでまいりました。結果は、ざる に水を注ぐがごとく、リストラ効果に逆行し、債務拡大しているこのシステム制度に強い疑念を持っております。  また、地域では、過去七度にわたる営林署の統合、廃止による地域からの撤退について、流域管理システム、中山間地政策定着に逆行したものとして不信感を募らせており、職場でも、糸車の中のハツカネズミ同然、走っても走っても目的が達成し得ないことに対して、焦りと激しい憤りを禁じざるを得ません。  私は、この際、三点にわたり率直に意見を申し上げさせていただきたいと思います。  その第一は、民有林を含む国有林を慢性的、恒常的に赤字に追い込んでいる制度システム問題について、抜本的制度見直しお願いしたいことであります。  不況、リストラの中で企業倒産、雇用不安が増大し、額に汗を流して働いている民有林国有林現場労働者が、技術に誇りを持ち努力すれば、その成果が目に見えて効果があらわれるように、また、国民の評価が得られるよう制度、基盤の確立をしていただきたいと考えております。  少なくとも、国内木材市場の八〇%を外材が占めていることに対応する国産材、地元産材活用振興に対する抜本的な国内対策を初め、市場価逆算方式価格決定方式見直し森林所有者生産価格の安定のシステム確立、ガス、電気、上水道等現業分野での総括原価方式の導入、住宅金融公庫等並み利子補給公益性を重視する森林経営に転換したことに対応する公共投資拡大などについて、制度システム改革をこの改革措置一体のものとして見直し改善をしていただきたいものだと考えております。  二つ目は、一兆円の林野庁債務負担については、さらに圧縮軽減などの財政的支援措置お願いしたいと考えております。  国の財政も大変逼迫している事情にはありますが、今の林野庁の置かれている事情からすれば、日常の森林保全管理に係る業務運営費確保すら困難であり、造林のおくれ、分収育林管理すら十分ではなく、改革初年度の今年度でさえ現に借入金に頼っている実情にあります。林野・土地売りも都市部の高い地価の所有地大宗処分済みでありまして、ここ当分は木材収穫量は大幅に縮減をせざるを得ない事情に加え、御案内のとおり材価は低迷の一途をたどっている実態にあります。  また、分収育林の販売についても頭打ち状態に陥っており、現場では大変苦労していることとあわせ、さらに平成十三年度より、改革期間以前の借入金元本返済による負担増が待ち構えております。そういう意味では、旧国鉄も大変な事情にありますが、今の国有林はそれにも増して逼迫した事情にございます。  このような現実、実態からすれば、国の財務事情あるいは財政構造改革会議論議経過を尊重しつつも、新たに公益性に転換をすることに対応するコスト増国民に負託された国有林の適正な管理をする立場から、ぜひ一兆円の債務圧縮軽減措置お願いしたいと考えております。  第三点は、組織要員リストラ問題についてぜひ御理解と御配慮を賜りたいと考えております。  森林林業そのもの長期性総合性のもとで運営され、資本及び技術の投下をしても、その成果が、四十年から五十年後でなければ効果があらわれない気の長い産業でございます。  その中で特に営林署は、内部事情ということよりも、地域にとっては山村振興森林づくりの拠点であると同時に、流域管理システム定着のかなめでもあります。これまで、他省庁あるいは他の現業に類例を見ないような組織機構の縮小に努力をしてまいりましたけれども国有林経営改善という大義名分があったにしても、今回のように突然かつ一方的に廃止することは、私は、林野庁への不信を増大させ、将来的には林野庁そのもの存在価値すら問われかねない危惧を持っているものだと考えます。この扱いについては、少なくとも国有林の所在地の百十三流域営林署を存置することを最低として、その実施日廃止署機能、役割、機能などについて恒久化して存続されるよう柔軟かつ寛大な措置をとり、地域市町村期待と信頼にこたえられるようにしていただきたいと思います。  あわせて、要員規模について最後にお願いをしておきたいと思います。  現状は、改善計画がスタートした時点、御案内のとおり六万五千人おりましたが、今や一万三千人になっております。リストラに次ぐリストラによって、要員規模労働力の質も悪化、低下の一途をたどっておりまして、コンピューターなどのOA機に対応できないばかりか、林業技術の継承に対する不安が高まり、職場の士気にも影響しかねない事態に陥っております。昨年十二月の林政審答申の中でも、国有林リストラが必ずしも国有林財政再建につながらなかったということが明らかにされております。  林業技術は四十年前後のサイクルで伝承あるいは継承されておりますが、今全署にコンピューターを導入して稼働させておりますし、そういう条件のもとで、要員組織が絶えず債務処理代替条件として削減されていることに対しまして、私は非常に疑念を持っております。今日、新規採用が他省庁に比しても大規模圧縮をされ、他省庁への部門間配転大宗林野庁が抱えております。そしてまた、職員年齢構成も他の公務員に比較しますと高い年齢構成になっておりまして、現行要員規模をこれからさらに三分の一にすることはとても無理であると考えております。  このような状態が続けば、森林が残っても国民期待する緑豊かな森林確保できなくなるばかりではなくて、今、国民期待にこたえて分収育林制度がございますが、この適正な管理すらもできなくなると同時に、森林の荒廃、土石流の危険が拡大し、花粉症の被害もますます拡大することになりかねないと考えております。  私たちは、これまでも地域流域管理システム定着及び地域林業活性化のためには、長年林業技術を培ってきた、そしてまた現場森林事情に詳しい基幹作業職員が現存しておりますが、この作業員を将来的に恒常的、安定的に活用していただきまして、これを民有林労務事情等森林管理ができない地域において枝打ちや間伐の支援活動を行うなど、言葉で言いますと森林国土保全班的なシステムをつくっていただきたいということを希望しております。  この際、現場は、少なくとも国有林を支える山守的な人材の確保新規採用拡大、そして要員規模についても、私はこの際に改めてお願いしておきたいのですけれども労使交渉にゆだねていただきたいと思います。私ども労使一体の姿勢で今日まで努力をしてきており、期待にこたえて今後も精いっぱい努力する所存でございます。その結果については政治的に尊重していただき、少なくとも債務処理のために職員削減する、身がわりにすることのないように、ぜひとも御努力、御配慮を賜っておきたいというふうに考えております。  いずれにしましても、二十一世紀を目前にしておりまして、国際的にも国内的にも、森林国有林に対する期待が高まっている中において、私たちの責務は重大であります。労使一体で今後も努力いたしますが、以上三点について、本委員会でも御確認をいただき、特段の配慮を賜りたくお願い申し上げまして、私の参考人としての発言を終わらせていただきたいと思います。  ありがとうございました。(拍手
  6. 大原一三

    大原委員長 ありがとうございました。  次に、小林参考人お願いいたします。
  7. 小林節

    小林参考人 私は、憲法学の専門の立場から、JRに新たに三千六百億追加負担を強制する点一つについてお話し申し上げたいと思っております。  結論を先に申し上げますと、こういう方針というか政策は、憲法上問題があるのではないかと思います。関連条文は、二十九条財産権保障と、派生的論点でございますが、三十一条の法定適正手続保障と、十四条の、これは平等、差別の問題になろうと思っております。  二十九条では、御存じのとおり、財産権がすべての国民、これは私法人も含むわけでありますが、に保障されておりまして、運や能力で現に享受している財産は不当に奪われないという保障がございます。もちろん、社会で共回生活しておりますから、その同じく二項で、社会を支えるための合理的制約には服さざるを得ないという規定がございます。  したがって、問題は、要はJRに三千六百億負担させることに合理性があるかでございますが、先ほど加藤学長が、年金に係る経費はその事業主負担させることに合理性ありとおっしゃいましたけれども、私は、その事実認識で一つ争う点がございまして、要するに、今JR職員、特定の職員の方を取り上げて、その人の身分を歴史的にさかのぼってみますと、十年ぐらい前から身分が変わっているんですね。それまでは国鉄職員ですから、いわば雇い主は国でございまして、これからその後が民間企業としての株式会社としてのJRでございまして、これは既に仕切り分けが合理的になされたはずなんですね。つまり、国が雇い主だった当時のものは国で負担する、そして負担してきたはずなんですね。それが、払い切れなくなったから、おい、ところでついでにこの分もというような話になっている、それが事実関係だと私は思うのです。  ですから、たまたま国鉄改革という歴史的な大事業の中で、それぞれの職員の方の身分が変わったところできれいに切れているはずなんですね。それを改めて国とJRで分けたものが、JRの方はきちんともう払っているわけであります。それに対して国の方が、実はいろいろな事情で払い切れなくなったのでもうちょっと負担してくれないかという話になっていると思うのですね。  そこで、合理性の問題でいきますと、JR雇い主でない期間のもの、すなわちむしろ雇い主がはっきり国であった期間のものを持ってこられたところに合理性はないということであります。  それから、三十一条の話でございますが、これは派生的論点ではありますけれども、要するに公権力は国民に対してやみ討ちをしない、わかりやすく言ってしまえばそういうことでございまして、これも先ほど、本当に恐れながらいろいろ申し上げますけれども加藤先生のお話の中にありましたけれども、二年前の閣議決定ですか、要するに債務処理してみて残ってしまうものがあったら最終的には国において処理するという文言がございますね。  言葉の争いなどは本当はしたくないし、制度趣旨を御存じの方がああ言ってしまったわけですから、逆らうことに何というか正当性がないかもしれませんが、ただ、これは例えば友人と酒を飲みに行って、伝票が一枚出た、これどうする、うん、おれが処理しておくと言ってもらって帰った翌日、おれがおまえに払わせることに処理したといって送り返すことはないと思いますね。これがやみ討ちのたぐいでありまして、それは最終的に国において処理する、だけれども、それは国民負担に転嫁する場合もありますよという文言ですね。でもそれは、国民国民であって、つまり、私たちが平等に国の財源を通して負担させられることには何の抵抗もありません。  ただ、この国の中にたくさんの人間がおりますけれども、その中で、JR各社という特定の私法人だけがいわばピックアップされて、おまえたちだけ負担しろというような話でありますから、これは次の論点の十四条の差別の問題に転化していくと私は思うのです。  これは憲法上の論点をラフに申し上げたのですけれども、全体の印象として私が心配しますのは、この議論がずっと来ています。その途中途中で、政治家の先生方がいろいろな、自民党を含む政治家の先生がいろいろな資料を私に下さったのです。それは政策立案側の説明資料のたぐいなのですけれども、何か結論が先にあって、理由が無理やり後からついてくるけれどもついてないというような資料がいっぱい出回っているのですね。  今、歴史的な流れの中で、私たちは、もう忘れてしまったかもしれませんけれども行政改革とか政治改革ということを追求しているはずなのです、国民的に。そうしますと、そういう雑な政策提案が行政省庁から出てくるということ、これは行政改革という観点からいったら、私は問題があると思うのです。また、それを政治が見逃すのであれば、それこそ政治の質が問われるわけで、これは政治改革という点では問題があると思うのですね。この点はぜひ申し上げておきたかったのです。  そして、もう一つは、国鉄改革は何だったのだろうということなのですね。どんな時代になっても、国土の中に健全なレールが敷かれているという事実はこの国を支えるためにとても重要なことだと思うのですね。いざとなったら、やはりレールが一番、質、量的に頼りになるわけでありまして、それが国鉄改革の原因になった当時はがたがたになっていたわけですね、さまざまな理由で。それを、加藤先生なんかも御努力なすって、問題を整理して、負担を仕分けして、見事に民営化することによって日本の鉄道はよみがえったわけですね。  そこで、今度、せっかく今民間企業として頑張っているJRに、それを全部合わせたって年に二千数百億円ぐらいしか利益が上がらない会社に三千六百億をどんと負わせて、これでは国鉄改革が挫折してしまうのではないか。これは国民全体の損失であるし、あるいはそこで働いている労働者の待遇の問題にも発展してくるし、それから、これもたびたびいろいろなところで申し上げているのですけれども、そういうわけのわからない政策決定をする国だと思われることが私は恐ろしいのですね。株が公開されておりますから、世界じゅうに株主がいるわけで、日本という国は、これはわけがわからない。私はアメリカ等の法律問題のつき合いの専門家なのですけれども、何か日本という国が変な国と思われて国際社会でいろいろな面で一人前の扱いをされなくなることの方が、私はまた恐ろしいことだと思うのです。  したがって、結論でございますが、今回の問題は、そういう意味で、大変大げさな言い方になってしまいましたけれども、二十一世紀に向かってこの国がきちんと国として内的にも外的にも歩んでいけるかというような極めて本質的な問題を含んでいて、かつ危ない問題であると思っております。  以上でございます。(拍手
  8. 大原一三

    大原委員長 ありがとうございました。  次に、加藤雅信参考人お願いいたします。
  9. 加藤雅信

    加藤(雅)参考人 御紹介いただきました加藤でございます。  現在問題になっております国鉄の清算事業団債務処理の問題は、現在の経済状況あるいは財政の健全さの確保という点からも非常に重要な問題でございまして、いろいろなところで波及するところが大きいと思います。その波及するところはたくさんございますが、時間が十分と限られておりますので、その中の争点の一つであるJR共済が厚生年金に統合することに伴ってJR各社が厚生年金移換金の一部を負担するということがいいかどうかという、前の小林参考人がお話しになったその問題に焦点を合わせてお話しさせていただきたいと思います。この問題に詳しい先生方を前にしてこういうことを申し上げるのも恐縮ですが、私は、これは余り複雑な問題ではないと考えております。  国鉄は、御存じのとおり、昭和六十二年に事実上破産いたしました。そして、その事業JR各社と国鉄清算事業団に引き継がれたわけです。それに伴いまして年金等を扱う国鉄共済もJR共済となったわけですが、これも平成九年には破綻を来しまして、厚生年金に引き取っていただく、こういう形になったわけです。  例え話で恐縮ですが、民間会社に例えて言いますと、国鉄財政状況が悪化して更生会社になったような状況にあります。会社更生に伴って旧会社をやめなければいけない者もいたが、新会社に移れる者もいた。今、国会提出されている法案の内容は、かいつまんで言えば、新会社に移った者については、JRさん、ちゃんと新会社で年金の面倒を見てくださいね、費用負担は新会社持ちですよというものです。ところが、JRさんはそれは嫌だとおっしゃるわけです。新会社に来てからの分は自分たちで持つけれども、旧会社の分は持たないというのがその言い分です。それじゃ、旧会社の時代の分だけこの人たち年金は少なくなってもいいとおっしゃるならば話は別なのですが、そうはおっしゃらないので、その人たちがちゃんと年金をもらうためには、結局税金で国民負担する等々の何らかの措置をとらなければならないことになります。しかし、世の中で、会社更生があったときに、旧会社から新会社へと続いて働いている人たち年金分を新会社は払わない、よそが払ってくれと言ったら、それは理屈としては通らないだろうと思います。  会社更生を考えますと、仮に更生会社が年金拠出をしていない、不払いがあったような場合に、更生手続以後は、その債権は共益債権となりますし、その更生手続前のものは更生債権となるのですが、いずれにしても、その債務は会社が払わなければいけない。新会社がその責任を負わないようなシステムというのは採用されていないわけです。この点を考えますと、今回の議論についてのJRさんの主張は、やはりちょっと無理筋なのではないかと私は思います。  それで、今回の法案は、国鉄清算事業団債務処理法案と呼ばれています。タイトルが一般的な債務処理となっているものですから、国鉄清算事業団の負っていた債務をこのごろもうかっているらしいJRに少しばかり負担させてもいいのではないかというような形の議論として理解されている部分が一部にはあるようです。もちろん、民間会社がもうかっているからといって、そこに関係ない債務負担させるなどということは、江戸時代の冥加金でもありませんし、許されようはずもありません。  この部屋にいらっしゃるような専門の方にはこのような誤解の心配はないと思いますが、学生等々とこのような話をしていますと、どうも一般債務JR各社が負うというような誤解があるようですので、今回の法案は、JR各社に一般的な債務負担を求めるのではなくて、自分たちが雇い続けている従業員の年金負担を求めるにすぎないということを世の中の人にわかっていただいた上で、この世論の動向を見きわめる必要があると思います。現在の案でも、国鉄に勤めていてJRには移れなかった人たち年金負担というのは、公的資金による負担となっているわけです。  また、もう一つ別の問題として、今回のJR共済の厚生年金への統合に関して、厚生年金、国家公務員共済組合、地方公務員共済組合、私学共済等々の他の機関の負担JR負担とのバランスの問題を考える必要もあろうかと思います。  初歩的な話で申しわけありませんが、年金制度には二つの側面があります。一人の人間に即して長い年月を見ますと、年金に入っている人は、若いころから掛金の形でせっせと積み立てて、いわば貯金をしておいて、年をとってからそれを取り崩すという側面があります。それから、一定時点で年金制度を横断的に見ますと、若い世代が年をとった世代を支えているという世代間扶養の要素もあります。  JR共済が立ち行かなくなったので厚生年金に統合するということは、厚生年金に入っている人たちから見れば、自分たちが営々として貯金してきて、さあこれから次の世代に扶養してもらおうと思っていたところに、JR共済の人たちが割り込んできたという側面があります。言葉は悪いですが、自分たちの預金に基づ年金制度を一部横取りされる側面があることは否定できません。今回支援を予定されている幾つもの共済制度にしても、本来なら自分たち年金に回る部分を削って、関係ないはずのJR共済の人たちを救っているわけです。厚生年金の加入者や他の共済組合の構成員たちは、今回、六兆円分、自分たちが受け取るはずの年金を削って、本来は無関係JR共済の構成員を救おうとしているわけです。  国鉄財政破綻にいたしましてもJR共済の崩壊にいたしましても、赤字路線の押しつけがあったり人員構成の世代比がバランスを崩していた等の要因が大きく、国鉄JRの人々には気の毒な側面も強いとは思いますが、旧国鉄経営が万全のものだったとは思えません。  また比喩になりますが、イソップのアリとキリギリスの話で言えば、厚生年金の加入者や他の共済組合の構成員たちは、アリのように働いてためてきたものをJR共済の構成員のために使って、気の毒な状況にあるキリギリスを救おうとし始めているわけです。  昭和六十二年に国鉄がだめになった段階で、JR共済も早晩だめになるであろうことは明らかだったと思いますが、破産に瀕した人々を前にして、自己責任の原則を正面から言うことを皆遠慮しました。その段階では、新生JRがどうなるかもわかりませんでしたし、JR共済の先々の破綻をどのように救済するのかの具体案もだれにもわからなかったからです。  しかし、JR各社のうち、少なくとも三社は黒字になっています。ところが、関係ない他の年金制度に六兆円の負担を求めながら、JRさんたちは、自分たちの社員についての三千六百億の負担を嫌だとおっしゃろうとしているわけです。十年前の国鉄崩壊のときには、国民たちは公的負担も我慢しました。国鉄が息も絶え絶えだったからです。しかし、新生JRが息を吹き返し満腹になりながら、無関係の他の年金制度には身を削った負担を求め、自分たちは社員の面倒も見ないというのであれば、他の年金制度関係たちは、JRさん、それはないよ、それじゃキリギリスの居直りだと思うのではないでしょうか。  私は名古屋に住んでおります。きょうの会にも新幹線で来ました。しょっちゅう新幹線を使います。アメリカやヨーロッパにもしばしば行きますが、そちらの国で鉄道を使うたびに、日本JRの優秀さをとても誇りに思います。そういう意味で、JRをこよなく愛している人間の一人です。また、国家公務員として、国家公務員共済のメンバーで、身を削ってJR共済組合を助ける者の一人ではありますが、別段それに異議を唱えるつもりはありません。  それだけに、今回のようなJRの主張を聞くと、とてもがっかりし、他人に物を頼む前に自分でやるべきことはやってくださいよとお願いしたくなります。私はおとなしい人間ですから、今はお願いをしているわけですが、でも心の中では、実は、それは本来当然のことではないでしょうかとも思っているわけです。  勝手なことばかり申し上げました。失礼の段お許しください。御清聴ありがとうございました。
  10. 大原一三

    大原委員長 ありがとうございました。  次に、山口参考人お願いいたします。
  11. 山口孝

    山口参考人 山口です。  一番最後になりまして、加藤先生以下いろいろな方の御説を拝聴しまして、そのことについて私の意見を含めてのお話を申し上げたいと思います。ただ、時間が少ないので、できるだけ要約的に申したいと思います。  私は、やはり今度の長期債務の問題、特にJRの問題につきましては、その民営・分割がどういう理由でなされたかというところにさかのぼって考える必要がある、そんなふうには考えております。ただ、時間がありませんので要約的に申し上げれば、破産状態、こういうふうに言われておるのですけれども、これは当時の国鉄職員の方からいえば、やはり残念だと思っていると思います。  あのときに、御説のとおり、国鉄の方では何度も改善計画をやっておりまして、最後の改善計画というのを実施している最中でした。そして実際に、六十一年度を見ますと、赤字も減っておりますし、いろいろな財政状況はよくなってきている わけです。傾向的に国鉄自身がよくなっているところで、破産状態ということで民営・分割された。ここの悔しい思いというのはあるんじゃないかというふうに感じております。  特に、赤字の原因になっているのは、このことを特に監査報告書で強調しておりますが、上越、東北新幹線で膨大な資本費がかかったわけでありまして、これが六十年度で四千億円であります。それから、今お話しになりました、例の終戦直後に満鉄やあるいは出征をしていた軍人が帰ってきて、社会政策的にたくさんの国鉄職員を受け入れたのがちょうど定年になりまして、その特定年金、特定退職金が非常にふえておりまして、これは六十年度で特定退職金が七千六百億、特定年金が三千五百億、こういうふうになっております。これがピークになっておりまして、その後減っていくわけでありますが、そういう一番赤字がふえるところで国鉄は破産状態だ、こういうふうに言われまして、そして中曽根さんの行革の中で、前の橋本さんが運輸大臣という中で分割・民営化されていったわけでありまして、そこには非常に問題があったと私は考えております。  さらに、いわばその分割・民営の、今はやりの言葉で言えばスキームにも大変問題があったと思います。加藤先生がここにおられますけれども、ちょっと不思議なのは、分割・民営化した初めの年から、いわゆる三島、貨物を含めましてすべての民営会社が黒字になる、こういう奇跡的なことを行ったわけであります。そんなことはあり得ないわけです。今までは破産状態であった旧国鉄が、一夜明ければ翌年にはすべて黒字になる、これは何かと。  要するに、一つ言葉で言えば、不必要なものは全部清算事業団に棚上げしてしまって、自分たちのところはすべて利益にする、こういう政策をとられました。これは、御承知のとおり、売り上げに対してすべての会社が一%の利益が上がるような仕組みをつくりました。それから、後に配当できるように資本金利益率が五%になるようにという、そういうスキームの中で、そしてしわ寄せば結局、そうすると支払い利息はこのくらいにとどめるべきだろう、そうしたらやはり債務はこのくらいにしておくべきである、あとは全部清算事業団だという形で、私からいえば、膨大な長期債務が清算事業団に棚上げされてしまって、その結果、民営化されたすべての会社が黒字になった。  こういう状況でありますので、やはりこの長期債務、清算事業団の請け負った長期債務は極めて大きいわけでありまして、これを解決するということは大変なことになっているということは同情すべき点がある、そんなふうに考えているわけであります。  ところが、そのいわば同情すべき清算事業団の棚上げされた長期債務につきまして、今だから申し上げられるかもしれませんが、大変問題があったのは、その預けられた長期債務について、弁済方法は一応できておりますけれども、期間の損失について全然配慮がなかった。つまり、その膨大な債務のうちで、特に財政投融資については、御承知のとおり、当時多分七・五%ぐらいという、今からいえば高利ですね、うらやましい高利で借りているわけで、その支払い利息が膨大にかさむのは当然であります。七・五だと十年で恐らく倍になりますよね、利息を含めて倍になる、そういうことを容認した。  今加藤先生がおっしゃったのですけれども、まあそのときに、きっと安易だったと思いますね。いわゆる土地が膨大にある、それから株も売却できる、いわば時価で土地を売却し、株を公開すればそこで相当稼げる、それを見た上でその残った債務処理について考えよう、そういう考え方だったと思います。しかし、途中で土地の売却を凍結してしまったわけでありますから、ここで大きく清算事業団のスキームが変わったわけでありますから、その時点で土地も売れないんだ、株式も下がってなかなか公開できないんだ、そうしたら一体どうしたらいいかということを考えるべきであったけれども、そこでお考えにならなくて、結果的にきように来てしまった、ここにやはり大きな問題があるだろう、そんなふうに考えざるを得ないわけであります。  そして今の政府案になっております。御承知のとおり、今後はたばこ税でその財源を得る、あるいはJR年金部分については負担をさせる、そういうような話が出ているわけで、しかし、たばこ税というのは余り、直接清算事業団債務には関係がない、こういうことは当然であります。しかし、私は、JRにつきましては、これは当然負担すべきだと考えております。  今こちらの小林さんは憲法上疑義があるとおっしゃったけれども、私は、会計学をやっておりますと、親会社、子会社の関係がありまして、そこで五〇%基準とか二〇%基準で親子会社を規定するということをやっておりましたが、現在の潮流は実質基準ですね。実質的に親子関係があるのは一緒に連結して発表しなければだめだ、こういうのがあるわけです。そこから教訓を得ているんですが、実際、実質的に見て、やはり清算事業団債務というのは、それはもうJR負担を負っているわけですね。これはもう紛れもない事実であります。その職員のほとんども国鉄から継承しているわけであります。  これは憲法上はそうだとおっしゃるのだけれども、やはりその点で、もう一人の加藤さんがおっしゃったような論理が展開できれば、私は、もうJR負担すべきであるし、それは年金部分でなくて、もっと包括的に考えてみて、いわゆる自分たち債務を棚上げしたものであれば、やはりもうけがあればそれは、その部分について、応分という言葉だけではなく、相当な部分JRがこれを負担して、そして清算事業団債務解決してやるというのが、これがまあ私から見れば当然なことだ、こんなふうに考えております。  しかし、それだけではなかなか財源が足りないので一般財源に依存せざるを得ない、こういうことになってきますと、やはり私はどうしても総合交通体系ということを考えざるを得ない、そういうふうに考えております。  地方ローカル線が減ることによって、恐らく地方の方は、不便な中でなけなしの金でバスに乗り、あるいは自動車を買い、こういうような形になっていきまして、自動車会社は大もうけしているわけであります。これは御承知のとおり、トヨタ、ホンダは今国際的にももうけております。だから、こういうところから税金を取ればいい。直接取れなければ、消費税の際に軽減されました物品税、あれは自動車に多分一五、六%の物品税をかけておりましたけれども、あれがいつの間にかなくなりまして、消費税五%の方に近づけられていって、今はそうなっているかもしれませんね。だから、やはり自動車に課税すべきだ、そういうふうに私は考えております。  それから、それと関連して、やはり自動車は公害を起こしております。騒音公害あるいは大気汚染、いろいろな公害を起こしておりますので、やはりガソリン税、揮発油税あるいは重量税、いろいろと問題があることは知っておりますけれども、そういうようなものの収入を含めて財源とした部分かちこの清算事業団債務処理する、こういうことが必要ではないだろうか、そんなふうに考えております。  それから、私、国有林野特別会計の赤字問題についてもごく簡単に申し上げたいことがありまして、資料を一々説明できませんが、一番最後に、私が自分で、国有林野がどのくらい大きくこの日本の自然環境をよくし、あるいは公害をなくするために役割を果たしているかということを書いておきました。いわゆる国有林のベネフィットは毎年十二兆円ぐらいある。いわゆる酸素の供給、大気の浄化、水資源の涵養、土砂流出その他、十二兆円もある。しかし、それはなかなか収入という形であらわれないわけですね、ベネフィットですから。そういう中で赤字が累積してきているわけであります。  そういうことを考えた場合に、もうその国有林野特別会計を独立採算的に維持することはできな い、こういうふうに考えておりまして、その点で、政府案は、いわゆる公益的機能を重視するという形に変わってきておりますから、大いに歓迎をしております。  しかし、やはり最後の一兆円につきましては、独立採算的に運営して自分たちで返せというのだけれども、これはなかなか難しいだろう、初めからそんなことを申し上げてあれなんですが。だから、これももうそういう形のものでないものに改めていく必要がある。結果的に言えば、国有林のそういう公益的機能ということにかんがみまして、これについては経済性は考えるけれども、収支予決算でいった方がいいと思いますね。  そして、支出超過については一般会計からこれを補助していく、そして森林の調査簿をきちんとして、これがなかなか今できていないようですが、森林資源をきちんと守って、日本のかけがえのない森林資源を管理保全してふやしていく、こういうことのためにぜひ政府の方は努力をしていただくということで、ひとつこの赤字問題を解決していただければ非常にありがたい、そのことを切にお願いして、私の話を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手
  12. 大原一三

    大原委員長 ありがとうございました。  これにて参考人意見の開陳は終わりました。     —————————————
  13. 大原一三

    大原委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡部英男君。
  14. 岡部英男

    ○岡部委員 自由民主党の岡部英男であります。先生方には御多忙の折、当委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  私は、清算事業団債務処理関係加藤寛参考人にお伺いしたいと思います。  加藤参考人は、土光臨調の時代からいわゆる三公社の民営化に参画され、国鉄再建監理委員会委員長代理として昭和六十二年の国鉄改革の実現に大変に御苦労をいただき、分割・民営化で発足したJRから見れば、いわゆる生みの親ともいうべき存在でございます。  まず最初に、清算事業団債務処理についてですが、国鉄改革時の閣議決定においては、土地等の自主財源を充てるとともに、なお残る債務等については「最終的には国において処理するものとするが、その本格的な処理のために必要な「新たな財源措置」については、」土地の「全般的見直しとあわせて検討、決定する。」とされましたが、国鉄改革時における長期債務処理についてのお考えをお伺いしたいと思います。
  15. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 御質問ありがとうございました。  まず、私ども国鉄再建監理委員会の当時、どういうふうに考えていたかということについて申し上げますと、私もこの席に参りますために当時の方々とお会いいたしまして、私の考えが、当時の印象が正しかったかどうかを確認してまいりました。共通しておっしゃっていたことは、当時は、とにかく将来どういうふうになるかわからないのだけれども債務を全部洗いざらい出して、そして株を売り、土地を売ることによって相当程度補うことができるだろう、しかし、それでもなお残るものについては、これは国の方針に任せるしかないという意味で国の処理という言葉を使わせていただいたというわけでございますので、今回の問題につきましても、私どもとしては、国がどういうふうにそれを処理するかということについてむしろ判断をゆだねている、こういうことでございます。
  16. 岡部英男

    ○岡部委員 次に、この清算事業団債務処理問題は国鉄改革で残された最重要課題であり、これを放置することは利子によって債務がさらに増加することとなり、国民立場に立てば、その債務を抜本的に処理することはもはや一刻の猶予も許されず、早急に解決すべき問題と考えますが、参考人の御意見を伺います。
  17. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 おっしゃるとおりでございまして、今の日本の経済、そしてその根幹となっている金融の不良債権問題に対しても、長期の債務問題を解決することは絶対必要なものであるということは世界共通の認識であろうと考えておりますので、早急にこれは処理しなければならないと考えております。
  18. 岡部英男

    ○岡部委員 次に、今回の国鉄清算事業団債務処理方策についてお伺いをいたします。  今回の清算事業団債務処理方策は、事業団債務を大きく三つに分けた上で、一つ、利子については債務のさらなる増加を招くことのないよういわゆる止血措置をすること、二、その元本については借りかえを行いながら長期的な処理を行い、この元本、利子は国の一般会計負担し、三、年金等の費用やJR社員分以外の厚生年金移換金については鉄道建設公団、JR社員分の厚生年金移換金についてはJR負担するというものです。今回の処理に当たって一番大きい問題はJR問題です。  ここで、加藤参考人にお伺いいたします。JRと清算事業団移換金の負担区分を決めた年金統合法は、十分な国会審議を経て昨年四月から施行されたばかりでございます。これをわずか一年で朝令暮改のように覆すようなことはいかがなものかと考えるわけでございます。新聞社説その他を見てもわかるとおり、世論も皆そう考えているのではないかと思われますが、参考人のお考えをお伺いいたします。
  19. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 おっしゃるとおりでございます。私は、今の状況については新たに負担すべきものとして登場した問題であると考えておりますが、このような年金の厚生年金への移換問題につきましては、これは当然JR事業主がやはり負担すべき問題であろうというふうに理解しなければなりません。そのことにつきましては、国とそれからまたJR当事者との了解を必要としている問題であると思っております。
  20. 岡部英男

    ○岡部委員 これは加藤参考人とちょっと意見を異にするわけですが、法文上移換金の負担区分は明確であり、これを変更してJR追加負担させる可能性は法文上示されておりません。  また、平成八年の国会審議でも、もう倒産しておかしくないというところから本当に八千億円を持ってきていただけるか、本当に払えるかと非常に不安だという懸念に対し、政府委員は一貫して、清算事業団負担は、事業団の既存の債務と同様、最終的には国において処理すると答弁を繰り返してまいりました。JR追加負担させる可能性を示してはおりません。  つまり、一年後にはこの負担区分を変えて、清算事業団分を再度JRにつけかえるようなことは当時全く論議されなかったことも事実でございます。法律上にも一切書かれておりません。JR追加負担はないという結論が出ていると思うのでございますが、参考人意見をちょうだいいたします。
  21. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 今の問題につきまして、私は先ほど申し上げましたように、これはJRが一般的に申しまして完全な民営会社であるならばそれについて負担をすべきだというふうに申し上げたのでありますが、この六十三年のとき、私ども国鉄再建監理委員会が考えましたときには、厚生年金に果たして移換するかどうかということについての結論をそのときは持っておりませんでした。どちらにどういうふうにこれを処理するかについては国に任せた問題でございました。  それからさらに、平成八年の問題でございますが、このときの問題につきましては、これは既に先生がおっしゃいましたように、土地処分収入については最終的には国において処理するということとされておりまして、移換金債務についても事業団の既存の債務と同様に取り扱いするもの、こういうふうになっておりますので、私は、その考え方に立てば私のような答えが出ると考えております。
  22. 岡部英男

    ○岡部委員 先ほど加藤参考人からお話のありました前段での意見開陳の中に、JR、三社あるわけでございますが、非常に企業として脆弱であると。その中での分割ということが今日もう十数年過ぎてまいっておるわけでございます。その脆弱であるという理由の中で、これは私は政府信用を失墜するような問題点が一つあると思います。  少なくともJRは一部企業として上場しているわけですから、企業としてですよ、多くの方々が株を取得していると思います。と申しますのは、大体相対的には一〇%が外人株主でございます。今度のこの問題は、私は世界が本当に注目をしていると思うのです。一〇%が外国の株主である、あと国内というような問題でしょう。そういうことを踏まえますと、JR負担すべきものは負担すべきだというありきたりの結論は、大株主とはいえ、いろいろな株主がいると思います。そういう信頼関係。  そして、現にアメリカの格付機関スタンダード・アンド・プアーズは、政治的なリスクが高まるからJR日本の格付を下げた。本州三社の株価が一万円下がれば、やはり財源的には三百億の財源がなくなるわけです。  そういうことを言いますと、先ほど前段先生が開陳した、JR、これは東日本と言ってはちょっと固有名詞を申し上げて申しわけないですが、いろいろ固有名詞の中で、脆弱だという中で、先生が当然参画、土光臨調の中で作業してまいったわけですから、その脆弱だというとらえ方を政府というものの中でやっているわけですから、その視点は、先生どういうふうにお考えになりますか。
  23. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 今の御意見は、私の考えでは、JR年金追加負担をやるという場合には株に影響を与えるのではないかという御意見だと思いますが、それに対しまして私が申し上げたいことを一つ申し上げますと、それは、現在の日本の状況は、世界から金融において信用を失っております。それはなぜかと申しますと、日本の欠陥である債務を完全に表明していない、つまり隠しているというふうに世界は見ています。その見ていることが日本の株価低迷をもたらす理由であることは、これは私は一つ結論だと思っています。  したがって、今回もしこのようなことでJR負担をしたとした場合には、根本的に長期債務問題が解決するという見通しになれば、信用は回復いたしまして、かえって株価には好影響を与えるという場合もあり得るのでございます。  そういうふうに私は考えております。
  24. 岡部英男

    ○岡部委員 これは、株というのは非常に生き物ですから、経済的な中で大変なものはあるかと思いますが、いずれにいたしましても、ここにありますニューヨーク・タイムズやマスコミは、この問題につきまして、先ほど先生の発表なされました根雪論、九月三日のこれも見させていただきました。しかし、昨年からこの九月まで見ますと、各社の社説等その他の論調はすごいのですね、この問題につきましては。すごいという言葉は私の田舎の方言で、甚だ失礼なのでございますけれども、大変なページ数なのですね。  そういうことをいたしますと、先ほど言った、それぞれの企業のあり方の中で、やはりトップの責任、トップの先見性と洞察力というのが、各JRのトップがどうであるという、先ほどちょっと私、申しましたが、政府信用を失墜するのではないかという、また、本当に企業として生々発展できないのだという思惑があると思うのです。そういうことでは、これは将来の展望として、株価に与える影響というものは是としない問題があるのではないか、私はそういう理解をしておるわけでございます。  時間の関係もありますので、もう一点だけお聞きいたします。  次に、今回の厚生年金移換金の負担により、JR北海道、四国、九州及び貨物の経営に影響を与えるものと考えられますが、今回の法案では、鉄道建設公団による無利子貸付制度の創設を行う等の措置を講ずることとしております。経営が厳しい四社に対する経営支援についてどのようなお考えか、参考人からの御意見を伺いたいと思います。
  25. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 基盤の弱いJRにつきましては、これは当然別途配慮していく必要がある。少なくとも、JR各社が今後とも発展を続けることができるような措置を講ずることは必要であろうと考えております。
  26. 岡部英男

    ○岡部委員 最後に、JRが今回の負担に反対している理由に、この負担を受け入れると再度負担を求められる心配があるのではないかということがあるのではないかと考えます。本委員会においても、総理や運輸大臣が、今後さらなる負担を課することはないことを答弁していますが、この点について明確にすることが必要であると思いますが、参考人の御見解をお伺いいたします。
  27. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 おっしゃるとおりでございまして、今、少なくとも収支の状況がどのように明らかになったかという状況で今回の問題が出たのでございますから、これ以上もしこの問題がまたぶり返すようなことがあれば、つまり、さらに追加負担を求めるというようなことがあるとすれば、これは明らかに今度は政府信用失墜でございますから、その意味で、私は、絶対にそういうことがあってはならないという意味で、お説のとおりだと思っております。
  28. 岡部英男

    ○岡部委員 ありがとうございます。  以上で終わります。
  29. 大原一三

    大原委員長 鉢呂吉雄君。
  30. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 民主党の鉢呂吉雄でございます。参考人の皆さん、大変お忙しいところ御出席賜りまして、感謝申し上げる次第でございます。  私、民主党枠の二十分のうち、前半の十分を国有林野に限って御意見をお聞かせいただきたいと思っております。  吾妻参考人にお伺いいたします。  先ほど、国有林野で働く当事者の一人として、ある面では大変苦渋の、この間の国有林野経営管理における状況についての御発言があったというふうに思っております。  そこで、昭和五十三年から二十年間、職員の皆さんは六万五千人から今一万三千人というふうに先ほどおっしゃいましたけれども、大変な要員の縮小でありました。ある面では、国の定員削減大宗、ほとんどを担ったというふうに思っております。  私ども大変心配するのは、そのことによって、この間林野庁は適切な施業管理を行ってきたというふうに表明をしておるわけでありますけれども、果たして国有林野の適切な管理あるいは適切な施業というものが行われてきたのかどうか、率直なところの御意見をお伺いいたしたいと思います。
  31. 吾妻實

    吾妻参考人 今御指摘があったように、現状はどうかということの御質問だと受けとめました。  今現在、定員内、定員外という職員がございますが、約一万三千人規模国有林の維持管理に努めておりますが、実際は、やるべき業務と実際行っている業務との間には、量的に、また質的に、質の面でも非常に見劣りがしているのが現状でございます。せっかく国民期待にこたえるべく努力はしているのですが、何せ金不足という問題と、それから現場の労務の事情が非常に逼迫をしているということの両面から、実は、森林の間伐や枝打ちあるいは下刈りとかいう保全管理業務あるいは国土保全的な業務は、必ずしも十分に至っていない。  私が一番心配しているのは、最近で言いますと、せっかく国民期待やあるいは信用を預かってきた分収育林制度がございますが、この管理すら実は手が届き切れなくなってしまっているという問題が生じておりまして、私ども現場に働く者にとっては非常に危惧をしております。  以上でございます。
  32. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 職員の数を現行の一万五千人の三分の一程度ということで政府は決めております。これについては無理があるということを先ほどお述べになりましたけれども、五千二百人程度で果たして国有林野管理維持というものが適切に行われるのかどうか、ここについて率直にお話を伺いたいと思います。
  33. 吾妻實

    吾妻参考人 率直にお答えします。  私は、確かに債務を借りているという事情がある身でありますから、強腰部なことを言うつもりはありませんけれども結論から申し上げまして、現実的には無理がある、やれと言ってもこれはできない相談ではないかというふうに考えております。  理由を申し上げておきます。  私は、今この五千二百人規模という話が出ておりますが、現実的にこの背景には、民間に全面的に事業を移しかえるということが前提になっております。しかし現状は、民間の労務事情というのは、先生方御案内のとおり、年々減少し高齢化をしております。これが二十一世紀にわたって安定的に民間実行という見通しが立っていないまま、五千人規模でどうだ、こう言われても、その保証と担保はないのではないかというのが現実問題だと私は考えております。
  34. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 もう少し具体的に聞きますと、森林管理事務所は千二百カ所ぐらい全国にございます。これについては一人配置をするというのが林野庁の方針でありますけれども、この一人配置ということの問題点、安全性、職員の見回り、あるいはそこの国有林野を熟知しておる数を確保できるのか等、私は極めてさまざまな現地調査をやりましたけれども現場の所長さん以下、本当に管理職の人が、これはえらいことになると。広大な管理すべき国有林野を本当に管理できるのかどうか、率直なところのお話をいただきたいと思います。
  35. 吾妻實

    吾妻参考人 国有林で災害が起きて非常に私ども危惧しておりますのは、今現実的に大幅なリストラをやってきて、現場では森林巡視とかあるいは一人作業問題が非常に多くなってきております。  ところが、先般も実はこの一人作業で死亡災害が起きましたけれども、一人で山に行っているものですから、クマに襲われたりあるいは事故が起きた場合、夕方でなければその本人が安全かどうかというのが不明である。過日の災害の場合は、夕方になって帰ってこないということが初めてわかって捜しに行ったら、もう既に八時間にわたって、以前に死亡しておるなどという事例がございましたので、私は、先山での一人作業というのは非常に危険が伴うなという心配をしております。
  36. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 昨年十二月の予算編成時に、政府は、森林管理現場の実情やあるいは雇用、身分問題について、労使関係に十分配慮してというふうに閣議決定をされております。十二月二十五日、国有林野国鉄問題に関しての閣議決定をされておりますけれども、これをどのように評価をし、どのように労使関係というものをこの要員問題で行っていくのか、当該する労働組合の委員長としてお聞かせをいただきたいと思います。
  37. 吾妻實

    吾妻参考人 私どもは、この改革改善を行うということは、そこに働く労働組合、そして使用者がまさに気持ちを一つにしてやらなければ完遂できないものだと思っておりまして、昨秋の、政治レベルで労使関係を大事にして、あるいは尊重ということを言われておりますが、私は、それを踏まえて、かつまた大事にして、今後とも国有林業務に尽くしてまいりたいというふうに考えております。  とりわけ、私どもにとって今一番心配しておりますのは、やはり要員規模問題について、労使で相談をして決まったことについては政治的にも担保をしていただいて、新たな債務処理身がわりにされることのないようにだけ特段お願いをしておきたいというのが率直な気持ちであります。
  38. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 最後に、独立行政法人、エージェンシーと国有林野管理経営との関係で、その実現性等について御見解をお伺いいたしたいと思います。
  39. 吾妻實

    吾妻参考人 エージェンシー問題については、昨年の一連の行政改革会議結論を見ているものだとは考えております。  しかし、あえて問われましたので、私なりに考えてみますと、私は、外国で行われているエージェンシーという問題には、その国の経済事情森林を取り巻く地形や気象、あるいは装備など、幾つかの条件の違いを棚に上げておいて、形だけエージェンシーというのにはなじまないのではないかと思います。我が国のように急峻地で、しかも効率性を問われても、あるいは大型機械を導入しろと言われても限度のある中で、同じくエージェンシーで経済的効果、企業的効果を上げろと言われても、これは無理があるということが第一点。  二つ目には、やはり森林経営という問題は、私は、現場技術という問題と企画立案というのが一体で継続性がなければならない問題であろうというふうに考えております。これが、仮に企画する側と実行する側とが別の仕組みで、別の団体でということになった場合には、そこにさまざまな業務上あるいは技術上の乖離が生じ、適切な森林管理は全うし得ない、こういうふうに考えて、我が国においてはさらに検討しょうとすることでありますが、私は現段階でいえば、これは適切な措置ではない、適合できないものだというふうに考えております。
  40. 鉢呂吉雄

    鉢呂委員 大変ありがとうございました。  時間がありませんので、これで私の分は終わらせていただきます。ありがとうございました。
  41. 大原一三

    大原委員長 佐藤敬夫君。
  42. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬)委員 実は同僚の鉢呂委員お願いをいたしまして、どうしても短い時間でも割いていただいて、加藤寛参考人に私は御質問したいのであります。  平成三年、私は運輸政務次官でありました。そして、あの国鉄再建監理委員会での加藤先生の発言をずっと金科玉条のごとく、私もまさに自分の気持ちの上で納得をして、この課題をずっと私ども努力をしてまいりました。  しかし、先ほど岡部委員の方から御質問がありましたように、学長、これはどうして、再三これまで新聞でJR追加負担については絶対反対の論陣を張ってこられて、この朝日新聞の九月三日の「論壇」では、先生、加藤寛さんというのは二人いるのかなと思うぐらいの実は論調なのですが、なぜこの半年間に、例えば他のマスコミでもそうですね、読売新聞のインタビューでも、「政治的妥協の悪い典型だ。経済的な合理性がまったくなく、筋が通っていない。処理策のスキーム(枠組み)全体が混乱しているが、中でも最悪はJR追加負担だろう。」こう言っておられるわけです。  そしてまた、財部誠一先生との中央公論の平成九年の七月号の対談ですか、ここでは本当に見事なまでに、先生がおっしゃっていることがわかりやすく報道されているわけです。例えばJR三社の社長の行動に対して、本当に正しいことを言っている、こういう人たちがいなくなると大変なことだというようなことまでおっしゃっているわけですね。  どうして百八十度、先生の論調が変わったのですか。時間がありませんので、少し短いところでどうか御返事をいただきたいと思います。
  43. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 今おっしゃいましたことにつきまして、私が申し上げますことの第一は、それは、日本の経済のバブルがはじけましてからの急激な変化が、清算事業団の収支について大きな影響をもたらしたことでございます。  清算事業団に大きな影響をもたらしたと申し上げましたのは、それは我々としては、収支を十分に判定した上で土地、株を売って、なお残る負担については国の処理に任せると考えたわけでありますが、その点が大きく違ったということ。したがって、清算事業団が将来廃止される場合にはどうなるかということにつきましては、これはその当時はまだ十分に判定をしていないという段階でございます。  したがって、その当時と私の今申し上げていることは、これは事情が大きく変わったということを前提にして申し上げているわけでございます。
  44. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬)委員 しかし、平成八年の七月三十日の毎日新聞で学長は、JR事業団との負担区分というのはスタート時点での約束だと。  十年たってみたら、JRはさまざまな負担を抱えながらもきちんと八兆円の金利を払って、きちっと元金も払って、普通の長期債務になっている。しかし、問題は、国が責任を持つ清算事業団の中身が大混乱だ、もう一度国鉄再建になってしまった、こういうことでしょう。そういう認識でいいのでしょう。スタート時点でのスキームの振り分けは約束であるぞ、この原則は、先生、変わってないのでしょう。
  45. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 はい、そのとおりでございます。
  46. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬)委員 だとすれば、先ほど先生からのお話の中で、例えば当事者に納得をさせない限りはこのスキームは活用してはならぬというふうに私は受けとめました。それはそのとおりでいいのですね。
  47. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 そのとおりでございます。
  48. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬)委員 それからもう一点、これは非常に大事なところだったのですが、郵便貯金とたばこは国鉄林野だけのものではない、これは歳入財源の問題でありますが、一般会計不足を補うものだ、先生はこういう認識を持たれましたね。ところが、今この法案をめぐって、JRにも負担をさせなければたばこも郵貯もだめだと言っているのですよ。この意見に対して、先生はどう思われますか。     〔委員長退席、赤城委員長代理着席〕
  49. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 今の問題につきましては、私は、最初のときに申し上げましたけれども平成八年のときの考え方も、それから六十二年のときの考え方も同じでございますが、やはり国民がどういうふうにその負担を割り振るかということを考えなければならないんだ、こういう意味で申し上げておりました。
  50. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬)委員 時間があれなので、もう次々に質問の中身を追いかけていくわけにいかないので、最後のところでありますが。  しかし、とれは全体からいって、先生も再三登場されるマスコミの批判も、JR追加負担に対しては大変反対の論調が多いですね。珍しいことだと思うのですよ。こういうことに対して、短いコメントで結構ですが、先生はどう思われますか。
  51. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 いろいろな意見があり得ることはそうだと思いますが、先ほど申し上げましたように、これは結果的に、民営化ということを完全にしていないために起こっている一つの論争でございます。したがって、私は、それをこれからやっていくことが重要だ、こういうふうに判断しております。
  52. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬)委員 最後に、これは私、朝日の九月三日のものを見て愕然としたのですが、学長は、「これまで不明確だった長期債務問題に片がつけば、残った会社は健全であることが確定し、JRの株価も上昇するのではないか。」とおっしゃっているのですね。  しかし、それではJR各社の上場時に各社の債務が不確定だったということになるのじゃありませんか。経営の基本事項である債務額が確定していないような、そんないいかげんな会社の上場が認められるのでしょうか。また、もしそんな会社であったとすれば、株式を売り出した国の責任というのは一体どうなるのですか。これについて所見をいただきたい。
  53. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 株を上場いたしますときに、その会社がどういう経営状態にあるかということは十分に知っておかなければならないし、ディスクロージャーが必要でございます。そのようなディスクロージャーをやりました場合に、それはもちろん、やっておりますディスクロージャーが、判断がいろいろございますので、その判断が違いましたときには、今度は株式の市場でもって批判を受け、株価は低落いたしますし、それがよいとなれば株価は上昇いたします。市場にそれは任せることになるわけであります。  そういうようなことを考えまして、今、JRは少なくとも、それが確定する状況にあったんだけれども、なお残るものがあった、その残るものについて、ここは国が処理をしなければならない、国が処理をするという意味は国が負担する意味ではございませんが、そういう意味で決定して、それをどういうふうに配分するかを考えなきゃならないということでございまして、私は、ここでもってむしろ公になることによって、ディスクロージャーがあることによって、株価はかえって明らかになってくるだろうと考えています。  これは、もしそれを否定なさるならば、それは今の日本状態も同じでございまして、ディスクロージャーされることによって日本経済が世界信用を回復できるかどうかは同じことなのでございます。  そういう意味で、私は、JRの株についても同じように考えております。
  54. 佐藤敬夫

    ○佐藤(敬)委員 質問時間がもう終わりました。  しかし、投資家は、国鉄改革によって国とJRの責任分担がはっきり分けられていて、どんな形であろうとJRという民間企業に対する政府の不合理な介入はない、こう考えて、移換金についても、平成八年の法律で、将来事業団が消滅するときには負担区分を見直すなんという条項は一行も書かれていませんよ、既に決済済みということで投資家は投資したんじゃありませんか。  したがって、この前提が崩れれば、JRの株式というのは完全に投資家の信頼を失うし、特に海外でのアナリストやさまざまな状況を見ても、もしこの負担をさせたら株価はどうしますかということに対して、追加負担の妥当性については、妥当ではない、三十四人のうち三十四人、株主利益については、法案は株主利益を侵害する、三十四人中三十四人。これは全部海外の投資家ですよ。JR株式に対する投資のスタンス、こういう問題について、慎重になるという人が三十四人中二十九人。こういう状況は恐らく、政府というものが要するに我々に配当が来る前に勝手に法律をつくっていって奪ってしまう、日本政府というのはそういうものだという認識に立つのじゃないか。  そういう意味に立ったら、先生の、債務負担分をこういう形にしたら、分けたら、解決したら株価が上がるなんて、私はとんでもないと思います。千数百人の清算事業団から離れる職員だって全部JRが賄うことになっていますでしょう。これだって一千億ですよ。  ですから、そういう意味で私は、先生に、ぜひあの国鉄改革スタート時点に返った論陣で、どうぞもう一度ひとつ御努力お願いしたいということをお願い申し上げまして、質問を終わります。ありがとうございました。
  55. 赤城徳彦

    ○赤城委員長代理 次に、宮地正介君。
  56. 宮地正介

    ○宮地委員 新党平和の宮地正介でございます。  きょうは、参考人皆様方におかれましては、御多忙の中を本委員会にお越しいただきまして、心から敬意と感謝を申し上げたいと思います。  平和・改革の会派を代表しまして、限られた時間が二十分でございますので、きょうは、小林先生を中心として、JR追加負担の問題について御質問をさせていただきたいと思います。  今回のこの特別委員会に付託されております五法案、一承認案件、これは大変に重要な法案でございます。まさに国鉄清算事業団また国有林野事業経営破綻の状態になりまして、累積債務が清算事業団が約二十八兆円、国有林野事業が約三・八兆円、これを今後どうやって処理をしていくか、こういう大変重要な課題が本委員会に示されているわけでございます。  そういう中で、先日、私は、小渕総理と一時間にわたりまして、根本的な財源対策の問題等につきましてはいろいろと議論をさせていただきました。そういう中で、この関係法案の中で、特に処理法案の中にあるJR追加負担の問題は、いわゆる金額や予算やお金の問題ではない、本質的には民主主義のルールの問題である、国会の審議の軽視の問題である、ここをどうとげを抜くかがまず大変大事な問題であると私どもは認識をしているわけであります。  と申しますのは、私どもは、この問題は既に平成八年の国会審議の中で決着済みであるという認識であります。なぜならば、平成八年の三月八日、政府閣議決定をいたしまして、厚生年金保険法等改正案という法律案国会提出をいたしました。そのときに、この閣議決定の中の最後のところに、いわゆる移換金、厚生年金に統合一元化するときのいわゆる持参金でございます、この持参金の中の七千七百億円の移換金は、これは国において処理する、こういうことで閣議決定をして厚生年金保険法等の一部改正案が国会提出されました。  そして、この厚生年金保険法等一部改正案の「等」という中に、日本国有鉄道改革法等施行法という法律案がさらに含まれていたわけであります。このいわゆる国鉄改革法施行法に三十八条の二というところがございます。この最後に、「政令で定めるところにより、清算事業団負担する。」という法律になっているわけであります。この政令で定めるところによるという、これはまさに、清算事業団負担するその七千七百億円の積算の根拠を示しているわけであります。  いわゆる旧国鉄時代のものについての負担、その七千七百億円の積算を政令で定めて、そして清算事業団負担する。まさに清算事業団というのは政府出資一〇〇%の事業団であります。国の機関であります。これが負担するということで法律がつくられ、国会提出をされまして、あの平成八年の五月から六月にかけまして衆参の厚生委員会で審議が行われました。そして六月十四日にこの法律案は成立をしたのであります。このときの衆参の国会審議の中で、新たにJRに三千六百億円の追加負担をさせるという国会に対しての政府答弁はないのであります。皆さん、閣議で決定して、国において処理する、法律の中においては清算事業団負担する、国会審議の中でも新たなるJR追加負担三千六百ということは全く出てこない。そして平成九年の四月一日から厚生年金に統合されて施行になったわけであります。  でありますから、昨年の十二月十七日、政府の、橋本総理が議長になっておりました財政構造改革会議で、また当時の加藤幹事長が座長をしておりました企画委員会、この報告と財政構造改革会議で政治決着をして、まず財源としてたばこ特別税の創設、それから郵貯の一兆円、そしてJR追加負担、このスキームができてから、国会の答弁は、本年の衆参の予算委員会あるいは本会議等において政府の答弁が変質をするわけであります。  私は、このような流れを見たときに、この今申し上げた三十八条の二、この法の精神がゆがめられまして、まさに今回の処理法案、新法九条の中に今度は承継法人として新たにJR三千六百の負担が入ってくる、それで四千百億円は鉄建公団に承継される、こういうふうに負担の配分が二分した法律案が今出てきているのであります。  まさにこうした国会の審議、法律で一度決まったことが、財政構造改革会議で政治決着されたことを機会に変質をされて、新たな法律の中で三十八条の二が形骸化され、変質された法律が出てきている。これは問題だ、これはまさに国会における審議の軽視であり冒涜だ、日本の民主主義のルールのこれは大変な違反である。  こういう立場から、先ほど小林先生はまさに憲法二十九条の二、三項、これに違反をするのではないか、こういう大変貴重な御陳述をいただきまして、私は大変心強く思っているわけでございます。この経緯を踏まえまして、小林先生に、憲法との関係について、ぜひ国民にわかりやすく御説明をいただければありがたいと思います。
  57. 小林節

    小林参考人 今十分に御説明いただいちゃったのですけれども。ただ、問題を整理いたしますと、結局は、株主であれ、JRという私法人であれ、財産権が簒奪されるわけで、これは人権問題になりますから、基本的には憲法の許容する合理性の範囲内で国会がお決めになれば決まりになっちゃうのですね。ただ、今のお話を伺っていますと、確かに行政主導で話が進んでいる。ただ、内容はかなり怪しからんと私は思いますが、でも、逆に申し上げますと、ここで決めてしまえば、それでも手続的には僕はまかり通るような気がいたします。であるからこそ、ここでの審議が極めて重要になってくるわけであります。  それで、一つ加藤先生のお話に出てきたことで私が御説明申し上げたいと思いますことは、事情変更ということを法律家がよく使うのですけれども、つまり、話が違うじゃないかという流れの中で、これは法的にもおかしいし政治的約束も違うじゃないかという流れの中で、急に伝票があらぬところへ回ってきた、これは事情変更という言葉を法律家は都合のいいときに使うのですけれども事情変更は認められる場合には許されることがあるわけであります。ただ、今回はそれかということなのですね。つまり天変地異のごとき変化でしょうか。  つまり、バブル崩壊後の日本の経済のこの異常な状態を、一部の方はこれを事情変更の根拠にお使いになるのだと思うのですね。ただ、私が気になりますのは、それによってJR改革をつぶしてしまうこととのバランス感覚で、これはなると私は思うのでありますが、それはさまざまに御検討いただければいいわけでありまして、その危険を冒すほどの事情変更ではない。ましてや経済の動きはある意味で見えていたわけですし、政府の方できちんとした行財政改革とか、それから国鉄債務処理の手続を、すべき手を打ちそびれてきたいきさつもあると思うのですね。その政治責任もあると思うのです。  だから、そういうことすべてを含めて、結局はもとに戻りますが、民主主義の手続論でいきますと、議員の先生方に投げ返すようでまことに恐縮でございますが、ここで決めてしまえば、後は、内容的にはおかしいと思いますから、株主とかJRが抵抗することによって憲法訴訟に持ち込む以外方法はない。まさにここで質の高い御議論をいただくか否かにすべてがかかっていると思います。  以上でございます。     〔赤城委員長代理退席、委員長着席〕
  58. 宮地正介

    ○宮地委員 小林先生は憲法二十九条だけでなくてさらに踏み込んで憲法三十一条の違反にもなるのではないか、こういう御意見をお持ちと承っております。さらに憲法十四条の違反にもなるのではないか、こういう御見解をお持ちでございますが、私どもも、これは憲法との整合性について非常に問題があるのではないか、こういうことで、先ほど申し上げましたように、国鉄清算事業団の今回の処理法の第九条、この中から承継法人、いわゆるJR負担三千六百億のところは削除して、政府みずからがやはり修正をしてくるべきであろうと。  特に、この法案は橋本内閣閣議決定して通常国会のマターで提出されてきたわけであります。今回、小渕内閣が誕生いたしまして、まさに財政構造改革につきましては凍結宣言されたわけです。財政構造改革会議で、根っこのところの議論は一緒にされたんですね。ですから、小渕内閣としては、政策変更したんですから、ここのところは修正を決断することに決してやぶさかではないのではないかということで、私は小渕総理にも、決断をすべきだということを過日、三十一日に強く要請いたしました。  そういう流れの中で、小林先生、他の憲法とのかかわりについてもう少し国民にわかりやすく御説明いただければありがたいと思います。
  59. 小林節

    小林参考人 要するに、今の状態では、JR負担させようとするものを撤回するということ、国側が負担を負いましょうという、それはどう負うかはまた別の問題として、そういう修正をしていただくために、もう一つ憲法上の根拠になるもの、先ほどお話ししそびれておりました。  二十五条の二項。先ほど、いろいろな方々のお話の中にも、JRのことをJR負担しないのはおかしいじゃないかという議論が何度も出ました。それはさっき私が申し上げたように、例えば民間法人の破産とかいう例を出されても困るわけでありまして、これは歴史的な国鉄改革で特殊事例でありますから。それから親会社と子会社の話をされても困るわけであります。これは要するに、一面で、あの国鉄改革という、日本全体が反省して出直すべき一つの論点だったと思うし、もう一つは、その結果、年金制度の中にもしひずみが来るのであれば、これは福祉制度の問題であります。  そうしますと、憲法二十五条に、日本人として生まれたからには、だれであれ、運悪く生活の不自由を感ずることになったら政府に助けてもらえるという条文がございます。二十五条の一項はその権利を保障しているのですが、二項で、そのための福祉関連制度政府は精いっぱい頑張って整えなさいという命令規定があるわけです。  そういう意味で、この問題はむしろ、さっきのような議論での、これはJRの話じゃないですかよりももっと大きな、日本全体のあり方に関する問題だったはずなんです、国鉄改革の一環ですから。ですから、むしろ二十五条の二項の問題として、政府年金制度の大きな観点から整える、それはもちろん負担するということなんですけれども、そういう議論に発展していくべきものではないかと思います。  三十一条は、先ほど申し上げましたが、話が違う、やみ討ちはするな、実にこれに尽きるんです。それから十四条は、大きな制度改革の中でどうしてJR関係者だけ特定個人が不当に負担を負わされなければならないか、これは差別の問題だろう。繰り返しになりましたが、以上でございます。
  60. 宮地正介

    ○宮地委員 最後に、全林野委員長吾妻参考人に御質問させていただきたいと思います。  先ほど吾妻参考人も、いわゆる要員リストラの問題と一兆円の債務の今後の林野特会での対応、大変これは苦しいというお話がありました。確かに、今回、林野事業を思い切って改革をして、公益化八〇%、環境、国土保全を重視した改革にする、これは緑を守る、森林を守るということで、私ども大変賛成であります。  ただ、問題は、平成十五年度末に一万三千人の現状の要員を五千人程度まで削減をする、特にその中で、現業の定員外の職員、この方々についての仕事は全面的に委託事業にするということで事実上ゼロにしていこう、こういう財政当局との話がいろいろ進んでいるということを伺っているわけであります。  私が林野庁から報告を受けたところによりますと、特に、平成八年末六千人いた現業部門が果たして平成十五年度末に自然退職でどのくらいまで落ち込んでいくのかな、本当にゼロになるのかな、こういうことで資料要求等をさせていただきましたら、自然退職でいきますと、どうも二千人から二千五百人程度は残らざるを得ない。こうなりますと、委託事業全廃との関係で大変無理がある。こういうことで、二、三年先送りをしてソフトランディングさせないと、生首を切るようなことはできませんので、ここは調整が大変難しいな、こういう感じをしておるわけですが、この辺のところの現実的な対応はどうなっていくのか、これが一点でございます。  それからもう一点は、先ほど、一兆円の債務を五十年償還で林野特会に残す。中身は、五千億円をいわゆる資産の処理、今国有林野は約六兆円の資産を持っておりますが、この中で五千億を処分していくことが果たして可能なのかな。もう一つは、いわゆる林産物収入、木材を伐採して収入を得て五十年で償還をする、これも大変な無理が出てこないかな。先ほど委員長おっしゃいましたように、特に昭和三十年代に大変な伐採をして、大変な状態になったことは御存じのとおりであります。この辺が、公益化との問題で矛盾が起きないのか、こんな感じをしているわけでございますが、この点について吾妻参考人の御意見をいただければありがたいと思います。
  61. 吾妻實

    吾妻参考人 第一点目の、現場作業員の御質問がございました。  御指摘のとおり、先生がおっしゃられるように、平成十五年度の段階では、まだその目的値に達成できなく、このままいきますと、生首問題というか、強制にわたる解雇的な問題が生じるというようなことがあり得ると思います。したがって、御指摘のように、そういう不幸なことが起きないようにソフトランディング的なことをぜひ考えていただきたいということが第一点。  もう一つは、やはり森林経営というのは長期経営であるだけに、現場技術労働力を将来的に安定的に行うことによって森林の保全管理が安定できるということにリンクするものでありますから、ソフトランディング問題とあわせて、将来的に一定規模は安定的に、恒常的に確保できるようにしていただいた方が森林保全管理のためには一番いいのではないか、私はこういうふうに考えております。  それから二点目の問題であります。  確かに、今日、林野・土地売りということを求められましても、国鉄のように市街地の高地価地はもうほとんど処分済みであります。これ以上林野・土地売りで収支を賄え、こういうことになりますと、国有林というのは、御存じのとおり脊梁、山奥地帯にございますから、坪単価も相当下がっております。そうなりますと、国民の共有財産である土地を結果としては債務のために失ってしまうということで、国民的な合意は得られにくいのではないか。  したがって、そういうところに依拠すべきではないということとあわせて、今は資源量は確かに端境期という問題があります。これは昭和三十年代の高度成長時代に、あるいは戦後の復興時代に、国民的に、増伐せざれば国賊であるというようなことで、林野庁は増伐をせざるを得なかったツケで今日、当分の期間は資源の端境期に落ち込んでいる。  したがって、そういう意味では、これからの伐採量というのは、当分の間は多く期待しにくいのではないかという問題とあわせて、森林の年齢別構成から見て、先々仮に増伐ができるという場合であっても、先生が御指摘のとおり、公益性配慮した伐採方法であるとか管理の方法ということになりますと、これも大きく期待できるのかどうかという問題や、材価が、果たして現時点の単価が想定できるのかどうかというのは、これはなかなか難しい。  したがって、余り格式張ったといいましょうか、固定的に先行き、見通しを試算することも難しいなというのが実直な考え方であります。
  62. 宮地正介

    ○宮地委員 ありがとうございました。
  63. 大原一三

    大原委員長 一川保夫君。
  64. 一川保夫

    ○一川委員 私は、自由党の一川保夫と申します。  本日は、参考人の皆さん方、大変御苦労さまでございます。私の方から、今回話題になっております国有林野事業並びに国鉄債務処理の問題について、限られた時間内でございますけれども、お伺いしたい、そのように思います。  まず、先ほど来いろいろとお話を聞いておりまして、この国鉄問題を処理するに当たって、これまでいろいろな経過があった中で、いろいろな方々がこの問題にかかわってこられて、またいろいろな組織の皆さん方もこの問題に関係されておるということが非常によくわかったわけでございますけれども、冒頭のお話の中で、加藤雅信参考人のお話を聞いておりまして、ある面では一般国民の素朴な気持ちのある一面を表現されておるようなところがちょっとあったような気がするわけです。  その点に関しまして、今直前に話題になりましたけれども、この問題は憲法に抵触するというようなお話がございました。憲法に抵触するということになると大変な問題でございますけれども、そういったところについて、加藤雅信参考人としては、何か御見解がございましたらちょっとお聞かせを願いたいと思います。
  65. 加藤雅信

    加藤(雅)参考人 憲法の問題について、いろいろと議論されておりますし、きょうもここで小林参考人の方から幾つかの御見解が示されたわけです。それに即してこの場で言うのが適当かと思うのですが、ここで一番問題となるのが、だれでも議論するのは憲法二十九条、財産権保障の問題です。  財産権保障の問題を考える前に、一般の言葉で、カイゼルのものはカイゼルに返せという言葉があります。だれかのものを勝手に国がとってもいいというものではない。そういうことは禁じられているわけです。それと同じように、関係ない人に関係ない負担をさせることもできません。そういうことをしたら、当然憲法二十九条に違反します。仮に、旧国鉄長期債務があって、JRがもうかり始めたからそれに負担させる、これはもう憲法違反そのものです。  では、今回の問題はそういうものなのか、これが基本なんです。基本的に、国鉄清算事業団のもとで、不幸にして必ずしも債務処理がうまくいきませんで、むしろ債務残高が増額しました。そういったものをJR各社に負担させるという問題だったら憲法違反ですけれども国鉄の後身である清算事業団が解散する、それに伴って、それに伴ってではありませんけれども、その前に、JR共済を厚生年金に統合する、それをどこが負担するか。そして、それのときに、旧国鉄関係で終わった人については全部公費負担です。しかし、JR関係に引き継いだ人についてはJR負担する。これは、会社更生を見ても、どこでも手法として当然行われているものです。そうすると、カイゼルのものをカイゼルに返しただけで、負担すべきところが負担した問題ですから、憲法二十九条の問題は一切起こらない。そういった種類の問題ではない。  ただ、これは最初に申し上げましたように、タイトルが長期債務負担という形になっておりますので、そこのところでいかにも誤解されやすい問題があった。そこのところでいろいろな議論が起きているし、それを利用したという側面も一部にはあると思いますけれども、そういったもので二十九条の問題は起き得ないと思います。これは私の見解です。  それから、それ以外の問題について、一々言ってもと思うのですが、議論になりましたので一応申し上げますと、憲法三十一条のことを小林参考人はおっしゃったのですが、憲法三十一条は「何人も、法律の定める手続によらなければ、その生命若しくは自由を奪はれ、又はその他の刑罰を科せられない。」という刑罰規定の問題です。別に今回JR各社は刑罰を科せられるわけではありませんから、小林参考人も、いわば精神の問題として共通とおっしゃったのだと思いますけれども、三十一条そのものがカバーしている事例とはちょっと異なると思います。  それから、先ほどの質疑応答で二十五条二項の問題をおっしゃいました。二十五条二項は「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」こういう条文でございます。  国が社会保障をしなければいけない、これはそのとおりです。では、これは国が社会保障をするときに国が社会保障費を払えということを言っているのかというと、そうではありません。例えば、今問題になっている年金制度も、基本的に事業負担と受益者負担の半々によると定められております。税金によるのではなくて、そういうぐあいになっておりますし、年金制度以外でも、例えば健康保険制度も、事業負担と受益者負担の半々の負担で普通定められております。国はこういう制度をつくって、合理的な負担をしなければいけない。  先ほど来私が申し上げていますように、JRの移換金問題について、JRに引き継いだ人についてJR負担するのは当然だとしますと、憲法二十五条の問題も起こらないと思いますし、それから法のもとの平等の問題も、負担すべきところが負担するという話だったら起こらない、そういうふうに私個人は考えています。  もちろん、小林参考人は違うあれですし、いろいろな見解があると思いますけれども、私の見解ということで申し上げますと、以上でございます。
  66. 一川保夫

    ○一川委員 もう一点、加藤雅信参考人にお伺いしますけれども、先ほどの見解の中で、今回のこの処理について、大変多くの関係組織関係の皆さん方に影響を及ぼす、他のいろいろな共済制度等々の皆さん方も言い分は多少あるでしょうけれども、我慢をしながら国鉄改革のためということでじっとしているのではないかというような趣旨の見解がございました。要は、国鉄改革の問題というのは、それぞれの立場、いろいろな方々から大義名分、理屈づけというのはいろいろとあろうと思うのですけれども、今の日本の経済状況、財政状況等々を総合的に勘案して、いろいろと問題点はあるけれども、この際、何かどこかで割り切って解決すべきだというような御意見も中にはあるわけです。  そういったことについて、加藤参考人は、今この時期に一つ考え方として、今提出されている基本的な政府考え方、こういう考え方でやった方がよろしいという見解に立っておられるのですか、そのあたり、ちょっと確認のために。
  67. 加藤雅信

    加藤(雅)参考人 私、最初の話で、JR各社の移換金負担の問題に焦点を絞ってお話ししましたけれども、いろいろな議論はあり得るとは思いますけれども、基本的に今度の国鉄清算事業団債務処理法案そのものの基本スキームには賛成でございます。  賛成の理由というのは、基本的に清算事業団債務が減少することが期待されていたわけですけれども、不幸にして結果としてはそういうことにならなかった。それについてのいろいろな議論はありますし、私自身いろいろな見解を持っておりますけれども、それはさておきまして、結果として債務額が二十八兆円に達してしまった。この二十八兆円の問題をどのように処理するかという問題は、依然残っているわけです。  先ほど加藤寛参考人が、根雪の上に新雪が積もってくるとおっしゃいましたけれども、この利子負担等々も大変な問題でして、いわば財政の健全化のために、もちろん財政健全化以前に今景気を刺激することが重要だということが全体の中であることも知っていますけれども国鉄時代の病根を依然として抱えている、どこかで問題を解決しなければいけない。そういう意味で、マクロに見て、ここの段階で解決すべきだろうと思っています。  また、短期的に見ますと、これは予算関連法案でございまして、この法案ができませんと国鉄清算事業団はいわば支払い不能に陥ってしまうという短期的な問題もございますので、そういう意味で、もちろん百点満点の百点と私は考えているわけではございませんけれども、基本的にこの法案を通した方がいい、そういうぐあいに私は考えております。
  68. 一川保夫

    ○一川委員 一応参考人の御意見はわかりました。  では、ちょっと話題を変えさせていただいて、国有林野の問題についていろいろと見解をお伺いしたいと思います。余り時間もございませんから、私の方から端的にお聞きして、また、答えの方も要点をついたお答えをお願いしたいと思います。  最後にお話しされた山口参考人が、今の一兆円をベースにした特別会計での返済は要するに無理がある、不可能だというか無理があるというか、今の時点でもそういうことは非常に難しいというような見解を述べられたと思いますけれども、そこのところをもうちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。
  69. 山口孝

    山口参考人 三兆円のうちの一兆円の長期債務事業の中で返済をしていく、こういうことであります。ところが、御承知のとおり、現在外材が安く入ってくるということで、材木が売れないという状況があります。それをカバーするために土地の売り払いと貸し付けということをやっているわけでありますけれども、これもなかなか十分いかない。  そしてもう一つは今の要員の合理化、こういうことが進められていくわけですけれども要員を合理化するといっても仕事はありますから、森林組合その他下請に任せなければいけないので、そちらの方で人件費もかかる。こういう状況がありまして、そこの中で、利払いも含めて何十年かの間に債務を減らしていく。  今までも、御承知のとおり、計画をつくりましても、それがほとんど大きく外れて実行できませんでして、それと同じことがやはり一兆円についても繰り返されるんじゃないかということを私どもは危惧をしております。
  70. 一川保夫

    ○一川委員 では、次に吾妻参考人にお伺いしたいと思います。  先ほどのお話を聞いておりまして、全林野という労働組合としまして、今回のこういう抜本的な改革ということについては相当関心を持って真剣に取り組んでおられるというのは、それは我々も十分わかりますし、労使がしっかりと話し合いをする中でこれからの改革の方向づけを明確にしていただきたいというふうに基本的に思うわけですけれども、先ほど参考人のお話の中に、国有林野制度システムについて見直しをかけて、その努力した成果なり国民の評価が反映されるような、そういう制度、仕組みを構築すべきだというような御見解があったと思いますけれども、それは、今出されておる抜本的な改革の方針とはどうなんですか、そこのところをお聞かせ願いたいと思います。
  71. 吾妻實

    吾妻参考人 お答えをいたします。  私は、今回の改革案の枠組みは、いわゆる債務処理を考える場合に、いわゆる要員組織面を重視したリストラが前提になっているのではないかというところを問題意識として持ってはおります。  私は、そのために、過去二十年間余を振り返ってみれば、そのことが効果をあらわしていない、逆に債務拡大するということからすれば、森林林業、そしてまた国有林が抱える制度的な、構造的なといいましょうか、そういう基本的な問題の解明をやらない限りは、国有林とて赤字から黒字になるんだなんということは言いにくいのではないか。なぜならば、現実的には、今国有林以外の民有林の地区でも、倒産件数や、あるいは事業を見合わせているなんということが順次行われておりまして、その債務残高という表現がいいのでしょうか、これ自身だって約五兆円になんなんとしているということから見ますと、もう一つやはり全体的な制度見直し問題というのを考えていただきたいということを主張したつもりでございます。
  72. 一川保夫

    ○一川委員 おおむねその御趣旨は理解できますけれども、これまで二十年の間にも四回も大変な時期があった、そういう中で労使一体となっていろいろとリストラ中心とした改革に取り組んでこられたという、そういうお話もされておられました。当然ながら今日のこういった累積債務を生じた責任というのは政府側にあるわけでございますけれども、労働組合側としまして、こういった累積債務を今日こういう状態まで生じたということに対する組合側としての何か反省点みたいなものがございましたらお話し願いたいと思います。
  73. 吾妻實

    吾妻参考人 正直申し上げます。  私は、かねてから、これは林野自身だけでは難しい、いわゆる財政関係当局にもいろいろな御協力、御支援をいただいてきておりますけれども、さらに特段のお願いをしたいという立場で参りました。  そして、平成二年の十二月の段階で、当時の政治でいきますと、自由民主党それから社民党の間で政治的な合意が行われまして、当時は二兆三千億の債務でございまして、そのうちの一兆円は財政当局が工面する、残りの一兆三千億円は林野庁林野・土地売りなどを通じて債務をなくそうという合意があったやに聞いております。  ところが実態上は、これ以降、湾岸戦争があったり、あるいはWTOにかかわる農業問題などがあって、結果としては、その政治レベルでの合意は不問というのでしょうか、何というのでしょうか、実行に至らなかったというのが今日までの経過の一つでありまして、これなどを見ましても、私は、やはり早目に手を打つ、そしてまた制度的に根本的に手を打たない限りは、この債務問題というのは反復、繰り返し拡大をするという危険性を持っているのではないか、こういう意味を考えております。
  74. 一川保夫

    ○一川委員 では、最後になりますけれども、この国有林野、これは森林全体に言えるわけでございますけれども、大変長い年月を要してこういった資源が実りあるわけでございます。そういう面では、今後五十年間でおおむね一兆円の債務を返済するというような一つのスキームになっておりますし、また、森林の行政そのものが、これから長伐期行政等も言われております。この時点で、これから五十年間をいろいろな面で前提条件を置いて収支計算を見通すということは、私はもうほぼ不可能に近いものがあるというふうに思っておりますけれども、しかし、我々としては、何かの目標を掲げて、その目標に向かって努力していくということが一方では必要ではないかというふうに思います。  そういう観点で、吾妻参考人に、特に現場で御苦労されている組合員の皆さん方のリーダー格としまして、これからのこういった五十年間を見通す中での収支見通しといいますか、そういう中には、そのときそのときのいろいろな経済社会情勢なり木材の需給関係なり、また、先ほどの関心を持っておられます要員削減問題なり、いろいろなファクタしが絡んでくるわけでございますけれども、特に収支見通しという中で、どういった点に最も心配をしていらっしゃいますか、そのあたりについて御見解をお伺いしたいと思います。
  75. 吾妻實

    吾妻参考人 五十年のスパンといいますと、私らもこの先を想定すること、あるいは客観的に、固定的にこれをということはなかなか断言できないのが現状だろうと思います。  これは過去にも、林野庁改善計画の前回の改定の際にもやはり長期見通しを出しましたが、その計画を組んでから五年余もたたないうちに再度今の見通し、試算を出さざるを得ないということで、過去にもこれが一致したこともなげれば、あるいは見通しが当たったためしがないという中に今日の改革を迎えてきておる。  そこで一番心配なのは、そういう意味では、どうも因子の中には過大に評価されている分野が非常に多いのではないか、林野・土地売りを含めて。それから、リストラだけが固定をされる。こういうところに矛盾や少し過大な見積もりが含まれている、こういう危険性を持っているものだと私は思っております。
  76. 一川保夫

    ○一川委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  77. 大原一三

    大原委員長 平賀高成君。
  78. 平賀高成

    ○平賀委員 日本共産党の平賀高成でございます。  きょうは、参考人の皆さんは、大変お忙しいにもかかわらず御出席をいただきまして、心からのお礼を最初に申し上げたいと思います。  まず最初に、国鉄長期債務の問題について伺いたいと思います。  私もこの特別委員会の中で、一体なぜ国鉄長期債務が二倍に膨れ上がってしまったのか、この点について政府の説明を聞いておりますと、土地がうまく売れなかったとか株がうまく売れなかったとかいろいろな説明がされましたが、私は、そこに本当の理由があるのではなくて、政府自身がやるべきことをやってこなかったという、ここのところに一番大きな責任があると思っています。  議論の中でも、清算事業団法の第三十二条で、清算事業団債務返済のための実施方針をつくらなければなりませんでしたけれども、これをつくってきませんでした。さらに金利の問題につきましても、借金が雪だるま式にふえていくという認識を持っていながら、借りかえを行うなどの適切な対応をやってきませんでした。ですから、政府の責任というのは明白だと私は思います。責任がやはり政府にあるというのでしたら、私は、債務処理の返済計画は国民に新たな負担をかけないでやるべきだと思っています。  そこで、問題はやはり財源の問題になると思います。  最初に、山口先生はお話の中で、そもそも分割・民営化の方針の中でJRに継承させた債務が余りにも少な過ぎたのではないのか、こういうお話がありました。私も同感です。今、国民負担長期債務が二十八兆円にも膨れ上がっているわけです。ですから、こういうふうになってきた大きな原因は、そもそも分割・民営化のスキームそのものに大きな誤りがあったと私は思うのです。  この点で山口先生のお考えをまず聞きたいと思います。
  79. 山口孝

    山口参考人 今、御質問を受けながら思うことは、やはり現在のJRは巨大な財産、何といってもJR日本といえば日本一の公共交通だ、そう思います。これはもう、明治以来、日本の国有鉄道が国民に支持されあるいは政府、国家に支持されてでき上がってまいりました巨大な宝物である、財産であった、こんなふうに考えております。今でもそう思っております。  このいわゆる国鉄が分割・民営化されるというようなことがあったわけでありまして、これは私にとっては大変不幸な事件であったと思っております。その際に臨調行革、その当時、御承知のとおりレーガノミックスというような形で、すべて市場の原理に任せていればうまくいくというような論理がまかり通る時代でありまして、そういうことになっていくわけでありました。  そこで、どうしてもこの国鉄改革を成功に見せるためには、民営化すればもうかるんだ、利益が出るんだ、こういういわば仕組みをつくらなければいけませんでした。これが今、平賀委員がおっしゃったスキームの問題になるわけでありまして、御承知のとおり、この際どうしても利益を出す、三島については御承知のとおり別れ金とか持参金というような形で金をつけてまでもその利子で利益を出す、こういうことが行われました。どうしても利益が出るためにば、たくさんの負債を負わせたら当然それの利払いがかさみますから赤字になります、だから、できるだけ彼らの利益が保証できる範囲の支払い利息と、これはJRの方ですが、それと長期債務、これを割り当てて、それ以外のものは清算事業団に持っていく、こういうようなことでありました。  これは我々から考えますと、実際に自分のところで使っているものを正当に評価して、そしてそれに見合うような債務というような形の論理でつくるべきでありましたが、初めに利益ありき、よく、初めに一%利益ありきと言われておりました。それから、配当できるという形で資本金利益率五%、こういう論理が先行しまして、その結果としてのJRの方における支払い利息及びそれに見合うところの長期債務、こういうことになりましたので、私の考え方では、著しくJRに対する債務負担は小さく、清算事業団の請け負った債務が大きくなってしまって、それが根本原因になりながら、いろいろな失策もありまして倍になってしまう、こういうことになった、そういうふうに考えております。
  80. 平賀高成

    ○平賀委員 二つ目に、私は、長期債務の返済のスキームの中で、金利の問題について全然検討に入っていないという、普通、借金をしたら、金利のことを考えて返済計画をつくるというのが常識だと思うのですが、しかし、債務の返済について時間的経費というのは考えていなかったということなんですが、この点についての先生の御見解を伺いたいと思います。
  81. 山口孝

    山口参考人 一般の経営レベルで考えればそんなことはあり得ないわけでありまして、債務を棚上げして、その場合にもしその利払いは無視するということであれば、やはり債権者会議を開いて、会社更生法のような形で、いわゆる更生債権については、これの減免をお願いするとか停止をするとか、そういう措置をとらなければいけませんでした。それをやらないで、しかもその当時、恐らく七%か七・五%だと思うのですけれども、それは決して高くないという理由もあるかもしれませんが、しかし、これは十年で元本が倍になってしまう、こういうような高率の利子であります。  このことを考えないで、これは加藤参考人に言わせれば、いや、それは土地あるいは株があるから、これを売れば相当返せるんだ、その返済の条件のところであとは考えようということで、当時はそれを一応別に置いた、こうおっしゃるけれども、普通の経営の感覚あるいは家庭での家計をうまくやるというような感覚で見ても、そういう債務について、悪い言葉では無視をして、そして、ただ長期債務そのもの、元本ですね、いわゆる根雪のものについては公開しますよということではやはり不十分じゃなかったか、ちょっと失敗ではなかったか、そう考えております。  同時に、その途中で、これは失敗だと加藤さんおっしゃって、繰り返しになりますが、もう土地の売却をしないということにしましたね。そうすると、そこからはますます債務の弁済ができなくなって利子がかさむわけです。そこでまた手を打つべきときがあったけれども、それもしなかった、これもやはりちょっと失敗じゃなかったか、そう考えております。
  82. 平賀高成

    ○平賀委員 今いろいろこの委員会の中でも議論がありまして、それで私は、JRに対して、応分の負担をするというのは必要だとは思っています。ただ、この委員会の中の議論を聞いておりましても、ただ民間の企業に困ったから負担をさせていいのか、こういう議論があると思いますが、しかし、もともとJRというのは、これは民間の企業と全く同列に論ずることはできない問題だと私は思っています。加藤寛先生も先ほどお話の中で、これはまだ完全に民営化されていないんだ、それからまだ株の売却も完全に終わってないんだというふうなお話もありました。  もともと、JRという会社そのものは、国民の足を守るということで、鉄道事業関係する資産は、これはあくまでも帳簿上の価格で、明治時代からの帳簿上の価格で引き継ぐのだ、こういうことで出発をしたわけです。しかも政府のいろいろな支援策もあって、それでここまで来たわけです。ですから、私は、国民長期債務負担がここまで大きく膨れ上がったときに、私たちは全く無関係だと言うことはできないことだと思うのです。  この点について山口先生の御見解を伺いたいと思います。
  83. 山口孝

    山口参考人 さっき小林参考人から、いわゆるJRと清算事業団というのはグループとして、一環としてとらえるべきだ、親子会社だと。そもそも同根であって、その一部、かなりの部分を清算事業団長期債務という形で棚上げをしたという形になっております。  だから私は、経済とか経営の論理からいえば、JRの方に利益が出れば、そもそも同じであった、債務を棚上げしたのだから、それは法律的な措置はいろいろあるにしても、それについて、応分だけではなくて私は相当という言葉を入れたいですね、応分、相当のやはり負担をすべきだ、これは当然だ、そんなふうに考えております。  そもそも、私はJR経営者に言いたいのですけれども、ああいう形で優遇されて経営を預かって、そして利益を出しているということで、おれたち民間企業で徹底的に合理化して利益を出したなんということは言えないと思いますね。もっともっと、輸送の安全それから利用者のサービスという図らなければならないものがいっぱいあるわけですね。そういうものを収益主義でやっているわけでありまして、その辺の改善も含めましてやっていかなければならないし、そしてまた、利益が出たならばそれで応分、相当の負担をするということは、法律の問題はこれは国会やその他でやっていただくのですけれども、経済、経営の論理としては当然だ、そういうように私は考えております。
  84. 平賀高成

    ○平賀委員 ありがとうございました。  もう一つ財源の問題で私が考えているのは、道路特定財源の問題なのです。財政構造改革会議の中でも加藤寛先生もいろいろこの問題について御発言をされておりますけれども最初意見陳述の中でも道路財源圧縮ということを言われました。  それで、そもそも鉄道との関係でいいますと、道路をどんどんつくって、そしてモータリゼーションが大きく前進していく一方で、鉄道の方は衰退をしていく、こういうふうな関係にあったと思います。今盛んに環境問題のことも言われておりますが、今の道路問題を考えますにつけても、私は、道路の特定財源という問題に対してはやはりメスを入れて、総合的な特別会計をつくるべきだというふうに思っています。  この点で、先ほど加藤寛参考人道路財源圧縮ということを言われましたので、この点についてもう少し詳しくお願いしたいと思います。
  85. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 今御質問のありましたとおり、私も道路財源についてはもっと考えるべきであろうと思っております。  ただ、念のために申し上げておきますが、あの財政構造改革会議で私もそれを盛んに主張いたしました。揮発油税の問題とかあるいは自動車重量税、揮発油税の方はこれはいわゆる道路財源となっておりますが、しかし、片っ方の重量税の方はこれは必ずしも目的税ではございません。ただ一義的に道路に使用するということになっておりますから、これについては一般会計の中に入れて考えていいのではないかということを私は主張したのでございますけれども、受益者負担という考え方がございまして、その受益者ということからまいりますと、そんな余裕があるならばむしろ道路を走っている税金を安くしろ、こういう意見になってしまう。  そういう意味で、私は大変残念な気がしておりまして、今、道路につきましてもあるいは港湾についても同じでございますけれども、全体としてそういう公共投資を見直すべき時期だと考えておりますので、今の御指摘は賛成でございます。
  86. 平賀高成

    ○平賀委員 この道路特定財源の問題についての山口先生の御見解を伺いたいと思います。
  87. 山口孝

    山口参考人 私は、全くそれに賛成なんです。  先ほどの林業特別会計のことにつきましても、林業の経費の中で非常に大きな部分をつくっているのが例の減価償却費なんです。ああいう山林で減価償却費というのは何が発生するのだと調べていきますと、いわゆる林道ですね。スーパー林道という形でどんどんつくられていく。これは、私は、現場の人に不十分ではありますが聞きますと、あのスーパー林道というのは自動車のためにつくっているので、本当に山のためにつくっているのではないのだ、しかもそれがよく崩れるのでまたつくりかえなければいけない、こういうことを聞いております。  というようなことで、いわゆるモータリゼーション化の中で日本で道路をつくる、そのための財源はああいう形で手当てされておりますが、そのことによっていろいろと、いわゆる環境に対して悪い影響を与えておりますし、エネルギー問題もこれから出てくると思います。エネルギー効率、乗車効率が一番高いのはもちろん海運ですが、その次は鉄道でありまして、どうしても日本列島のような狭いところではこれを復活させて、そしてやっていかなければいけない。  そのためには、やはりどうしてもそういう交通税などをつくりまして、そしてできるだけモータリゼーション化に対しては抑制的に、そして鉄道については誘導的に金を配分するという形で国のすばらしい総合交通体系をつくるということが私どもの理想ではないか、その一環として、心から賛成するわけであります。
  88. 平賀高成

    ○平賀委員 それでは次に、国有林の問題について伺います。  今回の政府の方針では、森林の果たしている役割を公益性を高める方向に重心を移すのだ、こういうことを主張されております。特に私が思っているのは、そういう公益的な機能を果たすためには、やはりもっともっと山を守り森林を育成する、こういう体制をつくる必要があると思います。  しかし、方針によりますと、職員が現在の三分の一に減少をして、さらに営林署も統廃合をしていくという、まさに国有林の公益的機能発揮という方向とは逆の方向に体制的には進んでいくと思うのです。  この点についての吾妻参考人の御見解と山口参考人の御見解を伺いたいと思います。
  89. 吾妻實

    吾妻参考人 これまでの要員といいましょうか職員の数が減ってきているというのは、そもそもが森林の保全管理をしようとしないために減っているのではないと私は思っております。むしろ逆に、そうではなくて、国有林債務処理のためには国民の理解と合意が必要だということの大義名分と言っては語弊があるのでしょうか、そういうことに重きを置くがゆえには自助努力が先だという中で要員が減らされてきているのではないか。  したがって、森林保全管理の分野にシフトしたのでさて要員はどうなるか、こうなれば、私は、いろいろな、今度は間伐や除伐やそういう自然環境保全的な分野までシフトするということになると、仕事の仕方もやる分野も相当変化をすると思います。それに伴って必要な人員はまたそれなりに出てくるものであって、私は、そういう意味では、全体の要員規模問題というのは、仕事の量、仕事のさせ方、そしてまた期待する山の姿、こういうものが総合的にリンクをして形づくられてくるのではないかと思います。  そういう意味では、今後とも、人は減るということ、減らすということよりも、むしろそういう環境保全的な分野、あるいはインストラクター的な分野、レンジャー的な性格、また、先ほども宮地先生から御質問がありた際にお答えしたのですが、私は、民有林で労務事情が十分でないところなどについては、むしろ国有林技術職員を国土保全班的な性格を持たせて応援態勢に組み込ませていくなどということで、多面的な活用の仕方があると考えております。
  90. 山口孝

    山口参考人 今の森林育成の問題なのですけれども、御承知のとおり、山というのは木を植えなきゃいけませんね。そうすると、木を植えましたら、同時にしょっちゅう草取りをする、間伐をするということで手数がかかるわけですが、どうも今までのやり方は、先ほどの参考人のお話にもありましたように、そういう手間のかかるところをやめまして、成木をどんどん伐採する、乱伐をするということになっていたようであります。  しかし、土地の恵み、自然の恵みで二十五年で一応成木、実際には四十年ぐらいかかると思いますけれども、そういうことになりますので、森林財産は随分ふえているのだろう、そう思いましたから、私は、会計的に再評価すれば赤字はなくなるぞと言ったら、いや、先生、再評価したら日本の立木資産が減ると言うのですね。恐ろしいと思いました。それだけ山が荒れてしまいまして、それが今後またこういう一兆円の債務返済というようなことで荒れていくのを非常に心配をします。しかし、何といっても、世界的に見ればまだまだ日本では森林があるとうらやましがられておりますが、中身がだんだん悪くなっていくのです。  これをぜひ育てるためには、もうやはり独立採算制、赤字、黒字ではなくて。しかし、私が申し上げたいのは、経済性というのは尊重しなきゃいけませんね。だから、ちゃんと木材を育てて売るということの原価の計算’そういうことをきちんとするけれども、全体としてはやはり収支会計でやって、ぎりぎり足らなかった分は一般会計から充てる、こういうやり方しかないのじゃないか、そう思っております。  営林署を営林局にして統廃合するということが進められておりますが、これに対して私はやはり反対せざるを得ないのは、営林署というのは非常に大きな役割を果たしておりますね。地方へ行きますと、やはり営林署長、税務署長、警察署長、校長先生というのはもうその地域の、悪い言葉になるかもしれませんが、名士でありまして、信頼を受けて、そして土地のために大きな役割を果たして、地域の特産物や何かを売ったり宣伝をしたり、こういうことにも大きく役割を果たしている。これが統廃合してなくなるということは、地元にとって大変寂しいことであり、残念なことだと思うに違いないわけです。  しかも、営林署長は、そういう営林署だけでなしに、民有林も含めていろいろと管理運営その他に対して援助をしておりますので、やはり収益主義で統廃合をして減らすということではなく、何とかそれを生かしながらやっていく道を考える以外ないのじゃないか、そんなふうに考えております。
  91. 平賀高成

    ○平賀委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  92. 大原一三

    大原委員長 伊藤茂君。
  93. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 参考人の皆さん、きょうはありがとうございます。長い時間でお疲れだと思いますが、私が最後の質問者でございますので、ちょっとおつき合いをお願いいたします。  数点お伺いをさせていただいて、御意見を賜りたいと思います。  私は、この法案につきましては、個人的にも特別の思いを込めて参加をさせていただいているわけであります。この法律をつくるときには与党の立場にございました。難しいことだな、無理な内容だなというようなことを思い、かつ議論をいたしながら、実際にまとめるときには、政府がお出しになるならば、私どもの方は意見がありますから、それはきちんと文書で確認をしておきます、審議の中で国民の理解が得られるように努力をいたしまして、その時点で賛否は決める、その途上で今やっているわけであります。  また、私も短い期間ですが、運輸行政の責任を仰せつかった経過もございまして、いろいろなことを含めながら、思い返したり何かしながら、しかし一番大事なことは、根雪論、新雪論がございましたが、これから何年、何十年にかかわる問題ですから、やはり筋の通った結論を出すために精いっぱい努力するのが私どもの責任であろうというふうな気持ちでおります。  それで、まず加藤寛参考人にお伺いしたいのですが、この話をいろいろなところでいたしますとどこでもまず聞かれるのは、何でこんなことになったの、歌の文句でありませんが、何でこうなったのということを聞かれましてまずお答えをしなくちゃならぬというのが、これは今日どこへ行っても言われることでございます。  振り返りますと、国鉄改革以来十年余り、この間の処理の問題、長い長い宿題でございました。この間に、バブル、ポストバブル、金融政策、土地政策、総量規制あるいは売却禁止、いろいろなことがございまして、さまざまの政府のかかわりがあったり、特に大蔵省の責任も多かったわけであります。  私は、そういう意味での一つ政策的な総括、反省というものがあって、やはりそれについて正直な反省と正直な総括があって、こういう状況になりまして責任があります、しかし何とかしなくちゃなりませんねということが出発点ではないかというふうに思います。  先ほど来の御答弁の中でもお話がございましたが、それの経過は、加藤寛先生はいろいろなことでかかわりの多い方でございますから、凝縮して振り返ってみてどういう御感想と気持ちをお持ちになりますか。また、私どもが何でこうなったのと言ったらどう答えるか、何かそれについての感想をまず伺いたいです。
  94. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 伊藤先生には、国鉄改革のときから大変いろいろと御意見をいただきまして、本当に感謝しております。現在私が思っておりますことは、あの当時の国鉄改革、六十二年でございましたが、あのときの案は私はそれほど間違っていなかったというふうに思っております。特に、土地を売ってその債務を埋めるということは、これは非常に有力な手段でございました。  私が残念に思っておりますのは、なぜあのとき土地を売ることができなくなったかということでございまして、土地をもし売って全部一斉に放出しておりましたならば東京の土地の価格は下落したはずでございます。したがって総量規制などの必要はなかったと私は思っておりますが、そのような、土地を放出するということが本当に効果があるであろうということがわかったのは、その半年ぐらい後でございますけれども、農地の宅地並み課税が行われました、そのことによりまして、御承知のように東京の土地の価格はどんどん下がり始めました。ということから考えましても、もし土地を放出しておったらあの債務は恐らくなかったであろう、こういうふうに思っております。  しかし、それは楽観的な見通しでございまして、本当にそうなったかどうかということについては確信を持っているわけではございません。それと同時にまた、株がどういうふうな価格で売れるかということも、私どもはまだ自信を持っていたわけではございません。  しかし、JRが懸命に頑張ってそして利益を上げてくれました。利益を上げるということは非常に重要なことでございまして、これは今ロシアがどんどん民営化をしておりますけれども、あのロシアの民営化が成功しなかったのは、株というものを余り重視していなかった、つまり利益を上げるということを重視していなかったということに問題がございます。これをこれからロシアはやらなきやなりませんが、私ども国鉄改革の方ではこれは見事に成功したと私は思っております。  ただ、そのような成功には、もう当然のことでありますけれども、清算事業団にその債務を全部棚上げしてもらったことが大きな一つの利点だったわけでございますから、そのことで、私はまだまだJRがこれからやるべきことはいっぱいあるというふうに思っております。  六十二年のときに、果たしてどこまでJRがやれるか、清算事業団債務がどうなるかということがよく私どもは見込めないところがございました。  しかし、見込めないとは申しましても、実はその間の政策に、今土地を売ることがなぜできなかったかという問題がございましたが、さらにつけ加えて申し上げますならば、なぜそのとき借りかえをしておかなかったか。つまり、どんどん財投を使うということはよくないことなのです。これは既に御承知のとおり、国鉄時代に財投を使うことによって赤字を増大させましたから、それをやっちゃいけなかった。それを財投を再び使うという形でもってやったということが、これが私は非常に残念なことだったと思っております。  そして同時に、その意味では借りたお金について借りかえをどんどんしていかなきゃいけなかった。借りかえをすることが、財投でございますからやりにくかった。それをやるということになりますと、住宅ローンにいたしましても、そのほか住宅の財投にいたしましても、みんな同じような問題が起きますので、そういうことでなかなか借りかえというのができなかったということが残念でございました。  そしてさらに、今思ってみますと、そういうことで六十二年のときに我々が予想しておったものはもちろん十分ではございませんから、そこで、努力をしてなお残るものがあるならばこれは国が処理しなきゃならぬ、こういうような表現になったわけでございますが、六十二年のときには、実は今回のJR年金が厚生年金に統合されるということがまだそのときは考えられておりませんでした。したがって、この問題は、実は六十二年のときではなくて、九年から実行されますが、平成八年のときの一つの課題ということで、同じような考え方で国が処理する、なお新規の問題についてはこれは処理する、こういうふうになったわけでございます。  そういうふうなことでまいりましたが、実はその後、日本経済が非常に深刻な状況に立ち至りました。これは、恐らく企画庁あるいは政府も同じでございますけれども、なかなかそういう厳しい状況になることが予想できなかったということもありました。そのために思わざることになって、清算事業団をいよいよ廃止しょうということになりましたときには、やはり足りないものが出てきたということになってしまったというふうに私は理解しております。  以上でございます。
  95. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 率直な気持ちを伺いましたが、これだけでも本当は私ども自身の中でも時間をとって振り返ってみるということが大事なことだと思います。  今日の金融危機の問題にいたしましても、バブル、ポストバブル、そのときの日銀、大蔵当局はどうあったのか、いろいろな議論がございますけれども、そういう気持ちは持ちながら、先に間違いのないことをやるという気持ちでおりますことで申し上げたところでございます。  加藤寛先生にもう一つだけ御意見を伺いたいのですが、先ほど、今出されている政府・与党原案はベストではないがやむを得ないという趣旨の評価がございました。そういう言い方もあると思うのですが、日ごろ歯切れのいい加藤さんですから、ベストにチャレンジするぐらいなことは少しおっしゃってもいいんじゃないかなと思って伺っていたのです。  私はこう思いますね。前にドイツの国鉄総裁と話したことがございました。ドイツはドイツ流で、さまざまの道路に関する財源、これを鉄道にも道路にも何にもいろいろなことに相談をして使う。ドイツの場合には、ああいう分権社会ですから、道路整備日本よりもずっと前から進んでおりますから事情の違いもございます。まあしかしゲルマンらしい合理的な考え方だなと思いました。  私は、これから二十一世紀を展望しますと、やはり航空にしろ、港にしろ、鉄道にしろ、道路にしろ、本当の意味での総合設計、総合政策という時代に入らなければならないと思います。国土交通省ができるのか、その中でどういう仕組みになるのか、あるいは、そういう意味での識者の意見を広く聞いた、また利用者の意見を反映した時代に入らなければならないと思うわけでございます。  道路財源とかいう問題もその一つなんですが、なかなか現実は利害が絡んで難しい問題ですけれども、しかし、やはり大きな構想と大胆なるものがあるべきであって、そういう中で、これから例えば五十年六十年かかって全部雪をなくするわけですから、そういうものがなければ国民の理解が得られない。そういう勉強を必死にやります、また、そういう発想も我々は真剣に検討してやっていきますということを国民の皆様にお訴えするのが御理解を得る道の一つではないだろうかというふうに実は思うわけでありまして、そういう意味で、これは数々難しいいろいろな問題がございます。  単に道路財源だけでは、それもありますけれども、総合的な政策をどう設計するのか、あるいは会計のあり方としてどうなのか、いろいろなことを多面的にこれは研究をしなくちゃなりません。そういう発想と取り組みの必要性についてどうお考えでしょう。
  96. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 全く同感でございまして、これは、実は運輸省に昔、総合交通という発想があったわけでございますね。ところが、この発想がだんだんとなくなりまして、現在は余りそれが使われていないのですが、私は、やはり交通というものは、道路も飛行機も、それから鉄道も含めまして総合的に考えるべきだと思っております。フランスなどでは、御承知のとおりそれが一体になった形を一応とっておりますので、どの交通機関を利用しても収益は必ず全体に行き渡るという形になっておりますが、こういうことをやはり日本でもやるべきときが来ている。したがって、それをもう一度ここでもって、これを機会に私は断固として提案をしていくべきだと思っておりまして、先ほどお話しになりました財政構造改革会議でも私はそのことを何度も繰り返して言ったのでございますけれども、どうにも私の意見では十分ではございませんでした。  したがって、結論として、政府の方でお考えになって、こちらはこうやって、こちらはこうやって、全体としてこうするんだというふうにお出しになってきたという、その御苦労の道筋がよくわかりますので、私は先ほどは、現在の当面の問題については今回の措置で仕方がない、やむを得ない、こういう言葉を使ったわけでございます。
  97. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 済みません、もう一つだけ追加して、加藤さん。正直言いまして、ちょっと無理な話を、まあ無理をセロテープで束ねたみたいな感じだななんというようなことをつくづく自分で思うことがございます。  何とかやはり筋の通った打開をしなくちゃなりません。もっと筋の通った考え方を、その時々、私どもも主張したり努力をすべきであったというふうに思います。例えば、先ほどのお話の中でも、三島会社プラス貨物、特別の配慮とか、これはもう当然のことでありまして、マルビの会社から金を取るわけにいかぬですから、そういうものをどうするのかとか、当初から本当は私どもは考えなくちゃならなかった、もっと議論すべきであったという思いがします。  たばこ特別税があります。スペシャル、特別というんですから、まあ三千数百億円、JRの場合そうですけれども、一定の期間を限ったのがスペシャルというものだと思うのですが、期限がございません。何だろうかと。いや、スモーキング、ノースモーキングという議論から起こってくる理屈は、それはその理屈ですよ。関係ない別の理屈ですからね。  ですから、御理解を得なくちゃならぬとかやむを得ないとかという話がございましたが、正直言いまして、足りないところは、直す点は直す、あるいはただす点はただすということが大事ではないかというふうに思いますが、冒頭の御陳述に加えまして、一言、いかがでございますか。
  98. 加藤寛

    加藤(寛)参考人 たばこ特別税とそれから郵貯の問題につきましては、これは国鉄あるいは林野にそのまま直接関係しているわけじゃございませんので、一般会計のものとして、これは税調でも言っていることでございますけれども、もし一般会計不足があるならばたばこ税の引き上げということも認められるということを我々は言っておるのでございますが、そういう意味で今回はとられた措置だというふうに理解をしております。
  99. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 そうおっしゃいますが、事実上は目的税の扱いになっておりますから。  時間もございませんので、吾妻さんにまとめて二つお伺いをさせていただきまして、御意見を伺いたいと思います。  私も、山と、また全林野の皆さんとも長い長いおつき合いでございまして、労使の御努力も含め、また勤労者の皆さんが非常に苦しい状況の中で、山と緑を愛する根性でやってこられているということにつきましては、よく理解しているつもりでございます。  二つ申し上げて、どうお考えか伺いたいのですが、一つは、要員問題でございます。  六万数千の時代から事実上一方体制、さらに切り込むとか、そんなことがございまして、まさにぎりぎりという状況は身に痛いほど私どもも感ずるわけでございます。先般、これらのことにつきましては、やはり大事な国民の資産であり、国民財産である山と緑、国有林をどう大事にするのかという問題ですから、こういう要員問題についても労使の合意を大切にするようにということを農水大臣にも申し上げまして、肯定的な回答もこの審議の中でいただいているわけであります。  これは吾妻さん、もう一歩突っ込んで、仕事と要員のぎりぎりの姿の設計というのは、そういう要員とか労働条件の交渉と同時に、やはり政策的な意味も含めましたものをどうしていくのかという観点が大事だと思います。当然それはおやりになっているというふうにも伺っているわけでありますが、その辺の認識をどうお考えかということが一つ要員問題に関連することが一つであります。  もう一つは、組織再編の問題でございまして、私どもの方も、国有林にかかわる百十三流域、それを、参議院選挙が終わって、日本の政治構造が大激変という中で、十三日に、九十八とか、あと十四と八とかいう構想が発表されまして、びっくりいたしました。やはりこういうことは、これからの山を考えますと、川上、川下、地域自治体、住民、みんなの連帯精神が大事になっているという時代ですから、突然出すのはいかがか。自治体や住民の意向を聞きながら、国民の山にふさわしい姿にどうしていくのかということが大事である。  もう一遍こういうことは議会の場で理解が得られるように検討する、みんなでそういう意見を出してもらうということが必要だと思いますし、もっといろいろな意味国民に開放されたと申しましょうか、国民財産ですから、林間学校にせよ、あるいはさまざまなレジャー、レクリエーションにせよ、あるいは自然を大事にする皆さんにせよ、有名な絵かきの皆さんもいらっしゃいますけれども、みんなが大事にするというところで初めて日本の山が、輝く緑の保全ということになるんじゃないだろうかという気がするわけでございます。  私、要員問題それから組織再編問題、当面するポイントかなというふうに思いますので、御見解、御意見を伺って、終わりにしたいと思います。
  100. 吾妻實

    吾妻参考人 要員問題については、今、林野庁と仕事の実態やあるいは今後の山づくりのあり方問題などを含めて精力的に交渉を詰めさせていただいております。  私らとしては、確かに、国有林の山管理の問題とあわせて政策的に考えますと、いわゆる民有林の行政などにも目配りをし、また中山間地政策的な、定住化的なことも構想しながら、今話題を提供し論議をしている最中にございます。したがいまして、これらについては労使で精力的に交渉をまとめるつもりでございますので、この結果については、また先生方に、今後とも引き続いて安定的に確保されるようにお願いをしておきたいというふうに思います。  組織の方は、これは、行政側の都合もありましょうけれども営林署という問題は、さっきも御発言があったように、村のものであり町のものであり、あるいは地域住民の窓口でもあるというようなことで、他の行政機関もいろいろな必要性があるのかもしれませんが、山村地区にとっては中央情報の窓口でもあるなど、あるいは人的な交流などということからしますと、私はこれは大事なものだなということを考えております。  したがいまして、結論としては、私は、今の法案の枠組みでいきますと一月一日から切りかえということを言われておりますが、今回は、従前の諸手続がとられていないこと、それから突然であること、大規模であることなどということから考えますと、もう少し関係自治体や関係者の皆さん方の意見調整をして、みんな納得ずくで、そしてやむを得ないならやむを得ない、これならこうしてもらいたいということの措置をとれるような道を探っていただきたいということをお願いをしておきたいと思います。
  101. 伊藤茂

    ○伊藤(茂)委員 終わります。ありがとうございました。
  102. 大原一三

    大原委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。当委員会を代表いたしまして、心からお礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後一時三分散会