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1998-09-16 第143回国会 衆議院 金融安定化に関する特別委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月十六日(水曜日)     午前十時一分開議 出席委員   委員長 相沢 英之君    理事 石原 伸晃君 理事 藤井 孝男君    理事 村田 吉隆君 理事 保岡 興治君    理事 山本 有二君 理事 池田 元久君    理事 中野 寛成君 理事 坂口  力君    理事 谷口 隆義君       愛知 和男君    伊藤 達也君       伊吹 文明君    江渡 聡徳君       大石 秀政君    大野 松茂君       金田 英行君    河村 建夫君       岸本 光造君    倉成 正和君       佐田玄一郎君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    滝   実君       津島 雄二君    蓮実  進君       宮本 一三君    山本 公一君       山本 幸三君   吉田六左エ門君       渡辺 喜美君    上田 清司君       枝野 幸男君    岡田 克也君       海江田万里君    北村 哲男君       仙谷 由人君    古川 元久君       石井 啓一君    上田  勇君       大口 善徳君    西川 知雄君       鈴木 淑夫君    西川太一郎君       西田  猛君    木島日出夫君       佐々木憲昭君    春名 直章君       藤木 洋子君    濱田 健一君       笹木 竜三君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村正三郎君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      堺屋 太一君         国 務 大 臣 柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官   白須 光美君         経済企画庁調整         局長      河出 英治君         経済企画庁物価         局長      小峰 隆夫君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         法務大臣官房司         法法制調査部長 房村 精一君         法務省刑事局長 松尾 邦弘君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君  委員外出席者         議     員 杉浦 正健君         最高裁判所事務         総局民事局長  石垣 君雄君         参  考  人         (日本銀行総裁速水  優君         参  考  人         (金融危機管理         審査委員会委員         長)      佐々波楊子君         衆議院調査局金         融安定化に関す         る特別調査室長 藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 九月十六日  辞任         補欠選任   大島 理森君     大石 秀政君   大野 功統君     岸本 光造君   春名 直章君     藤木 洋子君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     大島 理森君   岸本 光造君     田中 和徳君   藤木 洋子君     春名 直章君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     大野 功統君     ————————————— 九月十六日  信用保証協会法等の一部を改正する法律案(菅  直人君外十二名提出衆法第九号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  不動産に関連する権利等調整に関する臨時措  置法案(内閣提出第一号)  金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律及び預金保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二号)  債権管理回収業に関する特別措置法案保岡興  治君外三名提出衆法第一号)  金融機関等が有する根抵当権により担保される  債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する  法律案保岡興治君外三名提出衆法第二号)  競売手続円滑化等を図るための関係法律の整  備に関する法律案保岡興治君外四名提出、衆  法第三号)  特定競売手続における現況調査及び評価等の特  例に関する臨時措置法案保岡興治君外四名提  出、衆法第四号)  金融機能再生のための緊急措置に関する法律  案(菅直人君外十二名提出衆法第五号)  金融再生委員会設置法案菅直人君外十二名提  出、衆法第六号)  預金保険法の一部を改正する法律案菅直人君  外十二名提出衆法第七号)  金融再生委員会設置法施行に伴う関係法律の  整備に関する法律案菅直人君外十二名提出、  衆法第八号)      ————◇—————
  2. 相沢英之

    相沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出不動産に関連する権利等調整に関する臨時措置法案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案並び保岡興治君外三名提出債権管理回収業に関する特別措置法案及び金融機関等が有する根抵当権により担保される債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する法律案並び保岡興治君外四名提出競売手続円滑化等を図るための関係法律整備に関する法律案及び特定競売手続における現況調査及び評価等の特例に関する臨時措置法案並びに菅直人君外十二名提出金融機能再生のための緊急措置に関する法律案金融再生委員会設置法案預金保険法の一部を改正する法律案及び金融再生委員会設置法施行に伴う関係法律整備に関する法律案並びに各案中、債権管理回収業に関する特別措置法案に対する北村哲男君外二名提出修正案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君及び金融危機管理審査委員会委員長佐々波楊子君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 相沢英之

    相沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。仙谷由人君。
  5. 仙谷由人

    仙谷委員 おはようございます。  ここ数日来の報道で、いわゆる長銀問題、そして金融システム安定化に向けた法整備についての報道が、つまり、平委員の私などは知らないようなことが次々と出てくるものですから、そのことについて確認的に大蔵大臣に聞きたいわけでございますが、前回、前々回と、日本銀行総裁にお越しをいただきましたのに全く質問する時間がなくて失礼をいたしておりますので、その点から少々質問をさせていただきます。  日銀総裁にお伺いしたいんですが、八月十三日の記者会見で、日銀総裁が、ジャパンプレミアムあるいはその発展形態として、邦銀日本銀行海外金融機関等から資金を借りられなくなっている、非常に難しくなってきているので、金利の安い日本の円を海外に送金をしている、それでドルを調達しているということをおっしゃっております。この状況をもう少し詳しくおっしゃっていただくとすると、もう邦銀海外では一切資金調達をできる銀行はなくなっているのかどうなのか、その原因は何か、そのことをお答えいただきたいと思います。
  6. 速水優

    速水参考人 特定銀行資金繰りは申し上げるべきでないかと思いますが、一般論として、今、まずジャパンプレミアムというのは、海外で、まあ国内で借りることもあるんですが、外貨で借りる場合の日本銀行に対するプレミアム、これがここへ来てまた少し上がりまして〇・四%ぐらいになっております。だけれども、これを直接借りられる日本銀行というのはごく限られておるわけですね、三行とか四行とか言っておるんですが。そういう銀行が借りて、また日本銀行へさやを取って転貸する場合もあります。その他の場合はほとんど、円投と称しておりますが、円を投入して、それで外貨を買って、それを海外店などで使うというのが大部分でございます。その比率が、円投部分が非常に多くなってきているというのが最近の状況として言えるかと思います、全くなくなったということは言えないかと思いますけれども。  今回、そういうふうに円資金がもとになっているということも考慮に入れて、日本銀行は一段の金融緩和をいたしました。これもこういう金融市場全般の動きを、こういうことも踏まえて出したつもりでございます。結局、〇・二五下がりますから、その分だけ安くなれば高く取られているところでもその分は下がるわけですね。そういうことを考えたわけでございまして、今後とも一層の円滑化を図っていくように努力はしていきたいと思いますけれども、外銀日本銀行に対して枠をどんどん減らしてきていることは事実でございます。  特に、私は心配しておりますのは、そういう一行が破綻したといったようなことが起こりますことが、格付会社のほかに、ムーディーズとかそういうところのほかに、アメリカなんかの大銀行というのは自分のところで格付をつくっているんですね、今までの経緯や現状。そういうものが、大きな取引先がどんどん下げてくることが怖いと思うんです。これは、単に民間銀行だけでなくて、日本の国債に対しても下げてくるかもしれませんし、そういうところは日本全体に対しての格を下げてくるという可能性を十分考え、そういうシステムになっていることだけ申し上げておきます。
  7. 仙谷由人

    仙谷委員 原因の方をお伺いしたんですが、なぜそうなっているのかということであります。つまり、今海外で、国際マーケット金融業務を行っている銀行は、私が聞いておりますところでは、都銀、長信銀、地方銀行含めて七十六行ある、こう言っているわけですね。今のお話だと二、三行という話でございますから、そうすると、マーケット金融業務をできなくなっている。ほとんどの銀行ができなくなっている。もっと言えば、今のは多分短期、長期の、要するに金の貸し借りの世界だと思うんですが、いわゆる資本をとるといいましょうか、そういう観点からいえば、みずからの力で、つまり、あれは一月か二月でございましたでしょうか、住友銀行アメリカニューヨーク市場で、劣後債だったんでしょうかそれを発売して、ちょっと金利は高かったけれども、みずからの手で資金を集めてきたというか資本を集めてきたという、こういうことがありましたのですが、もうそういうこともほとんど不可能になっているというふうに認識した方がよろしいんでしょうか。
  8. 速水優

    速水参考人 恐らく銀行の、今七十何行とおっしゃいましたけれども、そのうち本当に金融業というものをやっておるところは十九行というか二十行というか、あるいはもう少し少ないかもしれません。その辺の残高全部でちょうど七千億ドルぐらいの金は使っておるわけなんですね。そういうところがこれから新たに資金をつくろうということになりますと、やはり円で国内で調達して送るしかない。円の場合も、外銀が出し手で円をとる場合には、恐らく、特定のところにはまたその金利を高くするというようなことが起こっております。  全般として、ちょっと申し上げさせていただきたいんですけれども、今、日本銀行で全体の日本マネーフローというのをつくっているんですけれども、それが三月末で、国民金融資産、よく言われる数字で千二百三十兆ある、それはそういう数字が出ているわけですね。その千二百三十兆円のうち、銀行信託保険で八百三十兆円ぐらい入れているんです、国民全体で。銀行は約五百兆ぐらいだと思いますけれども、それを銀行は貸しているわけですね。貸している方は七百兆円ぐらい貸しているわけです。預金の方は八百三十兆円、その額面どおり返さなきゃいかぬわけです。.ところが、この貸し出しの七百兆というのは、担保株式不動産等が相当値下がりしておりますから、これはもう明らかに実質価値がうんと下がっているわけです。それは自己資本を出さざるを得ないだろうということはだれが見てもわかるわけです。償却するのには自己資本が全体として足りないということは、このマネーフロー数字、これは公表されていますから、外銀はみんな知っているわけです。こんなに足りない自己資本でどうするつもりなんだと。特定銀行のことじゃないんですね。それは特定銀行が何か起こしたときはそれがきっかけになってそういうものがわっと出てくる可能性は十分ありますけれども、そういう基本的なところをどうやって日本調整していくか。今、海外から入れるということはもう難しくなってできない、それから、国内で増資ということはとてもできないでしょう、恐らくそういう本当に欲しいところは。  そうなれば、公的な金に何らかの形で頼って、日本の経済全体が、バブルはじけで下がってきているしわが全部、銀行貸し出し預金の方はその額面どおり返さなきゃいけない、貸し出しの方はみんな下がっている、この差額が何兆ありますか、恐らく相当の、二、三百兆は十分あるんじゃないかと思うんです、私の推測ですけれども。そういうものをどうやって資本を強化するだろうかということにかかっているわけですね。そこのところをお考えいただければ大変ありがたいと思います。
  9. 仙谷由人

    仙谷委員 まだ少々歯切れが悪いようですが、私が先般ここで議論したときには、大手十八行を、これはちょっと日本信託が計算がややこしいので除きましたが、大手十八行のバランスシートをつくってみると、これを一つ銀行としてつくってみると、十四、五兆の自己資本が額面ではあるのに、二〇%引き当てしてみると、第二分類債権を二〇%引き当てするというそういうバランスシート、そしてちゃんと有価証券資産のところは株式時価評価でいく、これをやると一兆四千億しかないですね、自己資本が。まさに総裁がおっしゃるのと同じ、マクロ的にはもうおっしゃるとおりの状態になっておるわけでございます。 そこから認識を出発させなければならないということは、もう仰せのとおりだと思います。  もう一つ、実は海外マーケットから日本金融機関銀行不信の目で見られているということのもう一つの大きな原因は、マクロ的に見るとそういう実態であるにもかかわらず、個別行もそのことを認めようとしない、つまり資産内容をちゃんとディスクローズしないということに大きな原因があるのではないかと思うんですね。  それで、速水総裁記者会見、さっきは八月十三日の記者会見を申しましたが、その前の六月十六日の記者会見で、自己査定の公表を求めるというのは、まさにその不信感を払拭するためには、株式時価評価で、つまり国際標準でやるべきだ、それから、資産査定については、端的に現在の担保価値時価で計算して、劣化しているんだったら劣化しているということを言わなければ、ちゃんと公表しない限り信認は回復できない、こういう意味があったんじゃないかと思うんですが、いかがでございますか。
  10. 速水優

    速水参考人 委員のおっしゃるとおりでございます。私は、ほかの国が全部それをやって、自己査定をやって自己開示をやっている、それを信頼されて初めてその銀行は大丈夫だ、あるいは預金者は、ここなら大丈夫だからここへ入れようということになっているんだと思うんですね。  日本の場合は、第一分類といえども、御承知のように、取引先との株の持ち合いとか、あるいはメーンバンク制というのがあって、ここだけはどうしても、もう債務超過なんだけれども貸さなきゃいかぬのだというようなものがかなりあり得るわけなんですね。そういうものは、本当はこれは不良資産に入るべきものなんです。そういうしきたりで今まで来ているわけですね。その辺を、それぞれの銀行自分立場に立って、本当にこれは自己査定で健全な貸し出しであるかどうかということを全部もう一回見直す必要があるということを申し上げて、それを開示しなきゃだめだということを言ったわけでございます。
  11. 仙谷由人

    仙谷委員 大変率直な御答弁をいただきました。  結局のところ、報道は、公的資金資本投入、あるいは資本注入という格好でやるのがいいか悪いかという議論に傾斜する傾向があるわけですが、実態といいますか、根っこのところには今総裁がおっしゃられたような問題がマクロ的にもミクロ的にも存在する、ここから日本金融業界構造改革を行いつつ、そういう方向性を持ちながら、現在の危機にどう対処するかということが今問われているんだと思うんですね。これはなかなか、二律背反ではないと思いますけれども、一緒に行うというのは甚だ難しい、特に政治の場に出てきますとより難しいということになろうと思いますが、それをやらなければならないと考えているところでございます。  もう一点、きょうの新聞報道とも絡んで、あるいは八月二十一日の日本銀行総裁談話、「日本銀行としては、本合併」、日本長期信用銀行住友信託銀行合併でありますが、「本合併の円滑な実現に向けて、金融監督庁大蔵省とも協力しつつ、中央銀行立場から、日本長期信用銀行資金繰り面も含め、必要な支援を行い、」ということが総裁談話として発表されております。  それで、きょうの某新聞報道によりますと、これはまた後から大蔵大臣に聞かなければならないことでありますが、今度は、この旧来スキーム合併じゃなくても、長銀に対する資金繰りを全面的に特融という格好で行うんだ、こういう方針を固めたという報道がございますけれども、日本銀行としては、現在、長銀の問題が問題になっていますからはっきり言うわけですが、あらゆる手段を尽くして、どのような形態であろうとも、パニックとか混乱を起こさないために面倒を見るといいますか、資金繰りについてはどのような形であろうとも全面的に面倒を見る、こういう方針を固められたということなんでございましょうか。
  12. 速水優

    速水参考人 そういうことを、従来の方針を変えてはおりません。  一つだけ申し上げたいのは、先週金曜日の記者会見で私が申しましたことは、そういうことを考えて、今、特定銀行でなくて、十九行なら十九行全部が一斉にスタートしてほしいことは、お願いしたいことは三つある。  それは、やはり不良資産を一刻も早く償却する、そのための自己開示をやるということ。二つ目は、思い切ったリストラをやるということ。それから三つ目は、やはりこれからの金融再編の流れを見た上で、自分たち経営戦略というか経営方針を中期、長期的にここで決めてくれ、そのことが必ずプラスになるんだということを申したわけです。  それから、日銀特融につきましては従来から四つ原則がございまして、一つは、システミックリスクになるおそれがあるとき。それから二つ目は、日銀しかこの際出すところがないという、不可欠な融資であるというふうに判断されるとき。それから、モラルハザードを十分行っているかどうかを確認する。四つ目は、それによって日銀財務健全性が著しく悪くなるというようなことが起こらないということ。その四つ原則を満たされているときに、大蔵大臣からの御依頼があれば政策決定委員会にかけて特融をするということになっております。
  13. 仙谷由人

    仙谷委員 日銀総裁にお聞きするのが厳し過ぎるかわかりませんので質問ではございませんが、そうだとすると、私の意見だけ申し上げておきますが、長銀住友信託銀行合併については、二十日という日に公邸に呼び込んで、住信の頭取にうんと言わせたか言わせないのかわかりませんけれども、まあ何となく合併方向に向かって検討が進む。このときに、モラルハザードのこととかあるいは日銀財務健全性という観点から考えれば、さあどうなるのかということの検討もなしに、と言っても検討はされておるんでしょうけれども、目をつぶってということだと思いますが、もろ手を挙げて資金繰り面を含め必要な支援を行いという、何かやったのはいささか軽率ではないかと私は思うんですね。それはその程度にしておきます。どうぞお帰りください。お答えになりますか、じゃどうぞ。
  14. 速水優

    速水参考人 二十日の日とおっしゃるのは……
  15. 仙谷由人

    仙谷委員 二十一日に総裁談話があって、二十日は住銀と長銀合併話が何か公邸で決まったかのような……
  16. 速水優

    速水参考人 ああ、その記者会見のときですか。  ですから、先ほど申し上げた規則に乗っている限りは、政策委員会決定に従って出すということは申したつもりです。
  17. 仙谷由人

    仙谷委員 だから、そういうお答えしかできないだろうと思うから、お答え要らないと私は言ったんです。どうぞお帰りください、結構です。  それでは、今度は宮澤大蔵大臣にお伺いをするわけでございますが、報道によりますと、数日前から、政府・自民党はという主語でありますから政府がお考えになっているのかどうなのかわかりませんが、この長期信用銀行住友信託銀行合併前提とする、長銀に対する公的資金による資本注入というやり方で長銀を救済しつつ合併させる、この方針政府としては一応あきらめたといいますか、方針変更やむなしという決断をされたというふうに伺っていいんですか。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 私は直接の関係者ではございませんけれども、そういうことは別段ないように存じております。
  19. 仙谷由人

    仙谷委員 政府としては、そうしますと、依然として住友信託銀行長期信用銀行合併させるという前提、それから十三兆円の金融安定化法スキーム、この十三兆円から長期信用銀行資本注入をする、ここのところは変更はないと伺っていいわけですか。
  20. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府に関します限り、これは監督庁長官お答えいただいた方が正確かと思いますけれども、かねて長銀リストラを覚悟で住友との合併を求める、そういう意向を表明され、両行の間にその折衝が続いておる、その状況に変わ りがあったというふうには承知いたしてはおりません。  と申しますことは、その基本的な状況は、長銀リストラをした上で、資本が過少になりますと、不良債権を処理いたしますと、そのときに預金保険機構に公的資金の導入をお順いしたいというのが大きな筋道でございますけれども、その合併計画長銀のそのような意向あるいは希望には変化があったというふうには政府承知していないわけでございます。もちろん、まだ申請は行われませんのでそれは将来のことでございますが、その大きなシナリオは変わったというふうには聞いてはおりません。  他方、しかし、そのような長銀計画あるいは希望に対して、この委員会におきましてもいろいろな御議論がございます。そして、その御議論の中で、果たしてそれはいい筋道であろうかそうでなかろうかというような御議論のあることも、政府はよく承知をいたしております。  ただ、しかし、今のところ長銀がそういう考えを変えたということは聞いておりませんので、ただいまの時点でどうだと仰せになりますと、政府としては、そういう合併計画がなお現実に進行しておる、そういう状況だと、私は直接に実は存じていない立場でございますけれども、お尋ねでございますから、私はそのような理解をいたしております。
  21. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっと細かく聞いていくんですが、「長銀は」という主語が非常に多くて、「政府は」という主語がほとんど出てこないんですね、大蔵大臣の今のお答えには。つまり、長銀がどう考えようとも、事ここに至って政府は、長銀申請をしてこようとも、それについては資金注入をするという前提でもこういうことが必要だということを今考えているとか、もう資金注入はしないんだとか、何か主体的な判断が出てきませんと、何かいつまでもふらふらしているようなそういう雰囲気になってくるんじゃないんですか。やはり政府主語の話をちゃんとしないといけないと私は思いますよ。  もう一度、いかがですか。
  22. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  政府といいますか金融監督庁といたしましては、今与えられている法律に基づいてベストを尽くすということしかないわけでございます。現在国会で御議論が続いていることは承知いたしておりますが、現在私どもに与えられている法律は、幾つかございますが、それをもう最大限に活用していくしかないというふうに今考えているわけでございます。  それで、現在の前提条件が、先ほど宮澤大蔵大臣仰せになりましたが、何か変わったかと言われますと、何も変わっておりません。長銀住友信託銀行合併をするという前提に立ってのお話を変更したということは聞いておりませんし、それから、長銀リストラ策をやるということを何かギブアップしたということも聞いておりませんし、これまで私どもが進めてきた大きなスケジュールというものに、前提としては何も変更はございません。  私どもは、今与えられている法律をもう最大限活用して、この日本金融システムの安定のために尽くしたいと考えているところでございます。
  23. 仙谷由人

    仙谷委員 後から詳しくまた時間があればやりたいんですが、このスタイルが今回の最大の問題なんですよ。  僕は、監督庁長官を個人的にどうのこうの言っているのじゃないですよ。つまり、金融危機管理対応をどこでするのかというのが、腹の据わった体制が全然ないのですよ。ここが大問題ですよね、私に言わせれば。一元的に行われているのかどうなのか、全くわかりませんよ。  監督庁が何でこんなところへ出てきて、そんな話をしなければいけないのですか。監督庁は、もうちょっと違う仕事があるはずですよ。もっと言えば、監督庁がやるべきなのは、長銀の整理方針が世間に受け入れられるような常識的なものかどうかというぐらいの吟味をしなければいけないのに、そこはやらないで、長銀方針は変わってないとかなんとか、そんなことを何回言ったって、報道だってあきれますよ、それは。ますます白けてきますよ。  そこで、大蔵大臣、私、この間の委員会の審議を聞いておりまして、大蔵大臣が、非常に際どい話でありますけれども、恐らく長銀というのは、公的資金の導入の申請があって、それをしなければそこで破綻をいたさざるを得ないと、これは平和・改革の西川さんに対する答弁です。それから共産党の佐々木さんに対する答弁では、しからざれば、つまり税金の投入をしなければ、長銀が破綻をして、先ほど申しましたような大変な出来事が起こるということです、こういうことをおっしゃっているのですよ。  具体的に私聞きたいのは、長銀を破綻させないためには、何千億円投入すれば破綻しないのですか。それをおっしゃってください。
  24. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 従来、この委員会で、御指名で私はお答えをいたしておりますけれども、実は厳格には、それは私の所管に属さず、総理の委任を受けておられます金融監督庁の長官の御所管でございますので、どうも私が一つ一つそういうことについて、内情を存じませんのにお答えをするわけにいかないという立場は御理解をいただきまして、監督庁長官の御説明をお聞きいただきたいと思います。
  25. 仙谷由人

    仙谷委員 もうしつこいようですけれども、金融危機管理の対応は大蔵大臣大蔵省金融企画局に残すということをことしの一月二十日に決めているわけですから、皆さん方は。そうやって財政と金融の完全分離を阻止しているわけですから、せっかく残した権限をお持ちの大蔵大臣がそんな逃げたような話じゃ、この危機に及んでどうするんだという話になりますよ。  それはそういうことにして、じゃ監督庁長官、幾ら入れたら破綻しないで済むのですか、長銀は。
  26. 日野正晴

    ○日野政府委員 大変難しい御質問だと思います。  つまり、いかなる企業も、これは今営業が継続しているわけでございまして、それが破綻ということを前提にして営業をしているわけではございませんので、営業が継続されているということを前提にしてその企業を見る場合と、それからその企業が、何といいますか、つぶしてしまうといいますか、そういうことを前提にしてそのものを見る場合とでは全然違うと思いますが、私どもは、あくまでもその企業、今回の場合でいいますと日本長期信用銀行がゴーイングコンサーンであるということを前提にして、さまざまな問題に対処しているわけでございます。  いろいろな意味で、その前提としてはこの企業が継続していく、あるいはしていくであろう、将来は住友信託銀行合併するであろうということを前提にして、さまざまな作業を進めさせていただいているわけでございまして、その検査も、これはたびたびお答え申し上げていることでございますが、生きているものを評価する場合とばったり倒れてしまったものを評価する場合とでは、全然資産の中身の評価というものも変わってこようかと思います。  私どもは、あくまでもその銀行がゴーイングコンサーンで、生きているということを前提にして検査をさせていただいておりますので、死んだ場合はどうなるかということは、これは全く前提とはなっておりません。
  27. 仙谷由人

    仙谷委員 何をそんなにごまかそうとしているのですか、あなた。いいですか、生きているままでそれを維持し、救済し、再生させようとすれば、長銀が言っておる七千五百億の債権放棄あるいは債権償却、これを前提にすると、あるいはそれをしなければ再建できないとおっしゃっているわけですから、放棄というふうなやり方を我々謹めませんけれども、しかし、長銀の言っていることを前提にして、幾ら投入しなければ破綻するのですか。生き長らえるために幾ら投入しなければいかぬのですか。
  28. 日野正晴

    ○日野政府委員 長銀は、とにかく一生懸命になってこれから生きていこうとしているわけですね。つまり、それがあらわれているのが何かといいますと、リストラ計画にあらわれていると思います。そのリストラ計画で徹底的にリストラを実行することによって、そして何とか生きていこうとしているわけですから。  幾らかということを具体的にお尋ねでございますが、幾らかということは、これはあくまでも長銀が、自分が生きていくためにどのくらい必要かということをいろいろな角度から計算して、金融危機管理審査委員会申請されるものでございますので、私どもの方から、幾ら申請したらどうかとか、幾ら必要じゃないかということは、ちょっとお答えできないということだけは御理解いただきたいと思います。
  29. 仙谷由人

    仙谷委員 端的にお伺いします。  現在の自己資本は七千八百七十二億円です。この七千八百七十二億円を上回る資本注入ということがあり得ますか。
  30. 日野正晴

    ○日野政府委員 それはいつの時点のことをお尋ねになっているかは……(仙谷委員「三月末で七千八百七十二億円」と呼ぶ)ええ。ですが、それは長銀申請する時点で考えなければならないことだと思いますけれども、やはりそれも、幾ら必要かということは、たびたび同じような御答弁で大変恐縮でございますが、長銀考え申請するということになろうかと思います。
  31. 仙谷由人

    仙谷委員 国民の税金を使おうという話ですよ。そんないいかげんな話でずるずるずるずる隠したまま行って、最後に、じゃ、一兆円の資本投入をする、資本注入をする、一兆五千億だというふうなことがあり得るのですか。お答えください。
  32. 日野正晴

    ○日野政府委員 それは破綻前の話として今お聞きしているわけでございますが、それはあくまでもそういうこととして、前提として理解をさせていただくとすれば、やはりそれは長銀がみずから考え申請することになるということをお答えせざるを得ません。
  33. 仙谷由人

    仙谷委員 だから、じゃ、一兆五千億、長銀申請してきたら認めるのですか。
  34. 日野正晴

    ○日野政府委員 決定するのは金融危機管理審査委員会でございます。私もその七人の委員会のメンバーの一人でございますので、私限りで御答弁は、これはできないということも御理解いただきたいと思います。
  35. 仙谷由人

    仙谷委員 そんなことないでしょう。これは全員一致ですから、あなた一人が反対したらできなくなるのですよ。じゃ、あなたが賛成か反対か、言いなさいよ。
  36. 日野正晴

    ○日野政府委員 申請されたときに、その申請の内容をよく検討して、要件に当てはまっているかどうかをよく検討させていただきたいと思います。
  37. 仙谷由人

    仙谷委員 いつまでたってもやみの中というかやぶの中というか、これをやるからまずいのですよ、本当に。私は、長銀問題というのは実はここに問題があると思っているのですよ。  いいですか、明らかな数字を言いましょう。七千八百七十二億円が今の自己資本ですよね。それは日野さんもお答え前提でおっしゃっていますよ。これは、うち優先株が千三百億円です。皆さん方の議論によると、七千五百億円を償却した場合には、いいですか、そして年間の業務純益と不動産売却益が千二百億円だから、償却後の自己資本が一千五百七十二億円になる。しかし、優先株がそのうち千三百億円である。これは単体の話ですよ、だから本来分は二百七十二億円になるというのは、これは平和・改革の石井さんの議論でもちゃんとあって、皆さん方も認めざるを得ないでしょう。  例えば、これについて長銀の代行が会見して、自己資本が薄くなるが、債務超過ではない、と言っているのですよ。そうすると、この二百七十二億円の自己資本を、実額ですよ、幾らにしてやればいいのかという話でしょう。もとに返すのであれば、七千八百七十二マイナス二百七十二ですよ、七千六百億円注入しないともとどおりにならないじゃないですか。そういうことをお考えなのですかと聞いているわけですよ。どうなのですか。もとの姿にしてやるためには七千六百億円必要だ、こういうことですよ。どうですか。
  38. 日野正晴

    ○日野政府委員 いつも同じ答弁で本当に恐縮なのですが、結局幾らの金額を投入するか、つまり、もとの姿に復元するのが長銀の目的なのか、それとも、住友信託銀行との合併前提として、将来住友信託銀行との合併を推進していく上において、何か作業が必要かということを考えるかどうか、やはり長銀申請するに当たっては、単純にもとの姿に戻すかどうかということだけじゃなしに、いろいろな要素を考えなければならないと思うのですね。  そうした場合には、そういったもろもろの要素を計算した上で恐らく申請されることになろうかと思いますので、単にもとの姿に戻すからこれだけ必要じゃないか、こういうふうに言われましても、そうですとちょっとお答えできないことを御了解いただきたいと思います。
  39. 仙谷由人

    仙谷委員 反対から聞きます。  これ、大蔵大臣でも金融監督庁長官でもいいのだけれども、なぜ七千五百億円という金額が長銀の再建計画の中で出てきているのですか。七千五百億円償却というのはなぜ出てきているのですか。
  40. 日野正晴

    ○日野政府委員 これは、住信との合併交渉の過程で、住信の方から条件として三つ挙げられているわけでございます。正常先債権のみを引き取る。それから第二は、関連会社それから親密関連先を整理してほしい、こういう要望なわけですね。三つ目はデューデリジェンスですけれども、その三つの条件に当てはめるために日本長期信用銀行としてはこの償却が必要だということを判断されたというふうに理解しております。
  41. 仙谷由人

    仙谷委員 その説明をお伺いするとますます不信と疑惑が募るのですよ。  きょうお配りした「長銀の主な融資先」というのを見てください。先般、絵で示しましたけれども、私どもの調査でも不十分です、これで。いいですか、不十分です。  それで、いわゆる親密先とか関連会社とか言われる大どころで五千二百億ということは、この間からこれは公表しています。それから、長銀のこの頭取代行のインタビューの記事を見ますと、「日本リースの子会社、孫会社など実態のない休眠会社をどうするのか。」「六十から八十の会社は資産を持たず、損失を抱えた会社になっている。その八割から九割は九月中間決算で清算する。」こう言っておるのですね。六十から八十と言っているのですよ、これは。我々がここへ出してきたのは、そんなに数はありませんよ。せいぜい二十ぐらいです。二十ぐらいで、長期信用銀行の頭取さんがここへ参考人でいらっしゃったときに認めた金額が、いいですか、ほぼ一兆五千四百三十四億です。小計と書いてあるところです。いいですね。さらに、イ・アイ・イの分と桃源社を加えると、一兆七千億です。  さらに我々が、まだ調査はついておりませんが、千代田プロジェクト、エル都市開発、長友、ウエストエステート、こういうものの、どこから借りたのかわからぬけれども、ほぼ長銀が主体だ、長銀以外には借りていないだろうと思われている金額、これは借入金のところを、この備考欄に短期、長期と書いてあるもの、これを起こしますと、これだけあります。全部が全部長銀から借りていないかもわかりませんが、先ほど来問題になっておりますように母体行責任をとるということになれば、全部かぶる可能性のある金額ですよ、これ。全部で二兆三千億ですよ、我々が調べただけでも。  その一兆五千億と仮定してもいいし、二兆三千億と仮定をしてもいいのですが、まさにこの暗やみというか、泥沼がどのぐらいあるのかということが、本件のまず第一問題。  そして、この分を、長官がおっしゃったように、関連会社や親密会社については整理してくれ なければ合併なんかできませんよというのが住友信託の発言だとするならば、態度だとするならば、何で七千五百億で一兆五千億じゃないのか、あるいは二兆三千億じゃないのか。あるいは、もっともっとこの種のものがあるということがマーケットでもささやかれ、言われておるのに、なぜ七千五百億なのかというのが二番目の大不信ですよ。  私、いろいろ考えたのです。ああ、これは薄く自己資本を残すために、薄くプラス、この間三月に投入を受けた千三百億円を残すために考えた、逆算したやり方だなと思ったのです。違いますか。
  42. 日野正晴

    ○日野政府委員 お尋ねは三つあったように思います。  それで、第一点は、これだけ貸し出ししているではないか、まさに、銀行ですからいろいろなところにたくさん貸し出ししていることは、もう仰せのとおりでございます。それが三月の自己査定でどの分類に入っていたかということ。それから、その自己査定の結果を現在チェックしておりますので、これは厳密にチェックさせていただきたいというふうに思っております。ですから、これらの貸国債権がどうであるかということを現在チェックしておるということが第一点。  それから第二点は、住友信託銀行との合併交渉に当たってなぜこの三社だけかとこう仰せになりますが、しかし、住友信託銀行はこれからデューデリジェンスをかける、こういうふうなことを言っているわけですね。デューデリジェンスをかけるということは、私どもが検査をしてもそれにとどまらず、さらにこれらの貸国債権について住友信託銀行としての立場からデューデリジエンスをおかけになるということでございますので、それはまたそのときになりましてから、これらの債権をどういうふうに処理されるかということは両行の間で決められることではないかと思います。  何でこの三つかということで、母体行主義とおっしゃいますが、恐らく完全プロラタをとらずに母体行主義に行った理由というのは、またこれは長くなりますが、要するに、自分債権をプロラタで多少は回収したとしても、それによって得られる利益よりは、この際完全に全部自分がかぶって放棄した方が、これは経営戦略の問題として、全体としてはいずれ自分の方にはメリットとして返ってくるのではないかという判断があったからだろうと思います。  それから、仙谷先生が、何かぎりぎりのところまでで、何か三月の分だけは残したのじゃないかという御質問でございましたが、それはそんなことじゃなくて、たまたまその三社に対する債権を償却するという計算の結果、そうなったものであるというふうに理解しております。
  43. 仙谷由人

    仙谷委員 全然お答えになっていない。じゃ、何で八千億とか九千億じゃないのですか。何で一兆円じゃないのですか、その債権償却分が。こんなにあるじゃないですか。それで、いかにでたらめな会社かというのはこの委員会でももうこもごも、要するに、短冊みたいな会社表示しかないような会社がいっぱいじゃないですか。それで現に長銀の頭取だって、六十から八十の会社は資産を持たず、損失を抱えた会社になっているというんだ。それで、この六十から八十の会社は入っているのですか、今度の七千五百億に。  つまり、七千五百億を超えると、薄くても自己資本が残るということにできないから七千五百にしているのじゃないですか。そういう仕掛けでしょう。僕は、大リストラをかけるというのであれば、不良債権償却、巷間言われておる、七兆円とか四兆円とか言われていますよ、長銀は。回収不能が四兆円の七割としても、五割としても、四兆円の五割といったら二兆円ですよ。大体合ってくるじゃないですか、この一兆五千億とか二兆三千億とかいう話に。それで、なぜ七千五百ぽっきりで、リストラをせっかくやるのに一兆円じゃないのか。これだけほぼ明らかになっている金額をリストラ、つまり償却をしないで、なぜ七千五百億円なのかというのがわからないんですよ。そんなぐあいのいい数字があるはずがないと思っているんですよ。  だから、ここはまさに、この暗やみをちゃんと金融監督庁が検査をする、それで償却を促す、自己資本不足になってもマイナスになっても、それはそれとしてやる。しかる後に、整理方針もちゃんと立つ、つまり子会社以下の整理方針も立ってくるし、金融危機管理審査委員会べの資本注入申請も行うか行わないか決まってくるし、破綻処理にすべきなのか、どういうことにすべきなのかという方針がそこから決まってくるんじゃないですか。初めに七千五百億円償却ありきなんて、こんなでたらめな話ないですよ。いかがですか。
  44. 日野正晴

    ○日野政府委員 お答えいたします。  今仙谷先生が仰せになったような観点から現在検査をしているわけでございまして、その検査によってこの貸国債権実態というものを把握していきたいと考えております。
  45. 仙谷由人

    仙谷委員 残り時間が少なくなってきましたので、二点聞きます。  私どもの検査だけじゃなくて、デューデリジェンスをやるんだと住友信託が言っている。現に、もう堂々と、アーサーアンダーセン以下、こういう監査法人あるいは法律事務所を入れて検査するんだということをインターネット上でも公表しています。これこそ従来の、つまり三月の金融危機管理審査委員会資産査定も、この間の日銀考査が何か債務超過じゃないとおっしゃっているんだけれども、もしそうだとするとそれも、それから今やりつつある金融監督庁の検査も、少なくとも国際マーケットから信頼を受けられないという認識を、住友信託銀行がそういう認識を持っているから、アーサーアンダーセンに依頼するという挙に出ているということはわかりますね。それについてどうお考えですか。
  46. 日野正晴

    ○日野政府委員 結論から申し上げますと、やはりそれは物差しが違うというふうに言わざるを得ないんじゃないかと思います。  三月の自己査定もあるいは日銀考査も私どもが今行っている検査も、これはあくまでもゴーイングコンサーンということを前提にしているわけでございまして、これを、例えばアーサーアンダーセンがこれから入ろうとしているデューデリジェンスというのは、やはり合併をその前提として、住友信託銀行がいかにして安く買うか。合併というのは、もうこれは釈迦に説法で御説明するまでもないと思いますが、結局、長銀の株主から買い取るわけですね。その資産をできるだけ安く買い取りたいというのが、やはりこれは契約ですから、一方、長銀の方はできるだけ売りたいということでございます。できるだけ安く買い取りたいというからには、その資産に対していろいろ、もっと減らしてくれ、要するに価値を減らしてくれというふうな、住友信託銀行はそういうふうな希望を持っていることは、これはもう第三者から見て明らかだと思います。  そういった意味で評価するわけですから、これは評価の基準、つまり物差しが違いますので、私どもは、デューデリジェンスをかけられてどんな資産評価になるかわかりませんけれども、決してそのことによって、私どもが行っている検査の信認が失われるとか、あるいは日銀の考査が間違っているというふうに言われるとかいうことは全然考えておりません。
  47. 仙谷由人

    仙谷委員 やはりマーケットに対する見方が違うんだと思います。  先般、月曜日でございましたか十四日に、もう政府合併路線を断念して、別のスキーム長銀に対する手当てといいましょうか処理をするんだというニュースがばっと流れて、その瞬間からわっと住友信託銀行が上がっているんですよ。つまり、どうも深いやみのあるそういう資産の中身の銀行合併をするのでは、住友信託は価値が下がらざるを得ないね、もし切り離されるのであれば、そのことの方がすばらしいねという反応じゃないですか。マーケットの信頼を得るためには、アーサーアンダーセンのスクリーニングを一遍通さない限りだめだということじゃないですか。そ れは、商売上の駆け引きしているかもわかりませんよ、安く買いたたくためにそういう会計事務所を入れたということもあるかもわかりません。それはそのとおりかもわかりません。だけれども、そんなレベルの話だけではないということを監督庁の方はもうちょっと御認識なさるべきだし、監督庁の検査がまだ信頼を受けるに至っていないということを自覚されるべきだと思いますよ。  そのことと関連して、長銀のあるいは長銀関連子会社の整理の問題と関連して申し上げておきますけれども、この母体行主義なんというものが全体としていいんだなんという話は、マーケットにも通用しないし、国内でも通用しないし、これこそが護送船団の横並びのもたれ合いのモラルハザードなんですよ。これをむしろ金融監督庁が、こんな整理方針はない、法律に従ってちゃんとやれと。今までもたれ合ってきたから、日債銀の整理についてクラウンリーシングと日貿信を破産申請したら業界が混乱した、そんなことを言うのは泣き言だと。何で法律に従って処理したら迷惑がかかるとかという議論が出てくるんですか。それこそ、大蔵省の今までの金融行政がどこかゆがんでいたということじゃないですか。  これは、整理について、金融監督庁が子会社、孫会社までちゃんと含めて検査をした上で、放棄なんという安易な手段をとらせないと約束してください。
  48. 日野正晴

    ○日野政府委員 関連ノンバンクのこの処理に関しましては、もう御案内のとおり、住専の処理のときに際して、将来は一切政府はそれに手を出さないということになっているわけですね。私どもも、それはあくまでも当事者間の話し合いで決めるべきものと考えております。  破産手続をとって完全プロラタでいくのか、あるいは母体行主義をとって特定債権者が泥をかぶっていくのかということは、あくまでもこれは話し合いの上で決めるべきことであって、政府がこれに手を貸したりあるいは口を挟んだりすることは、さきの住専の経験でもう大変懲りておりますから、それは私どもとしては手を出すという考えはございません。あくまでも当事者間の話し合いで決める。現在は、その話し合いがまだ完全には終わっていないというふうに理解しております。
  49. 仙谷由人

    仙谷委員 もしそうであるとするならば、絶対に公的資金なんか入れないという前提ですよ。入れないという前提だったら、私的な世界でどういうネゴをしようが、取引をしょうが、駆け引きしようが、私的自治の範囲で許されるということは言えますよ。その後、税は、無税償却は認めるわ、生の税金は投入するわという話になっているから言っているんじゃないですか。  だから、原則は税金の投入をしないということなら、今の話でいいですよ。税金の投入があり得るという前提で、そんないいかげんなことで通用すると思っているんですか。もう一度お答えください。
  50. 日野正晴

    ○日野政府委員 投入と、現在行われている関連ノンバンクのその整理とは、今直接関係づけてお話しなさいましたけれども、あくまでもこれから申請するかどうかということは長銀が決めるべきものでありまして、この審査をする審査委員会が、もし、けしからぬじゃないか、結局はその関連ノンバンクのために使われるようなものは許さないというふうに言われるかどうかということは、これはやはり委員会が決められることでございますので、私から今それを直接お答えすることは御遠慮させていただきたいと思います。
  51. 仙谷由人

    仙谷委員 国土庁長官と法務大臣に質問できなくて申しわけなかったんですが、そういうふうにおっしゃると、一言やはり言葉をお返しするというか、重ねて私の方から申し上げなければいけないんです。  つまり、バブルで踊って遊んだ紳士を無罪放免し、民事的にも放免し、放免することによって銀行自己資本が不足するから国民の税金を投入するんだという理屈がどこで通るかということを聞いているんですよ。  現に、私が示したように、イ・アイ・イも桃源社もあるじゃないですか、さる高名な俳優の名前も、何百億円かの借金が焦げついているというのは公然の秘密であるじゃないですか、長銀の。そんな人に対する債権を、九割放棄するのか十割放棄するのか知りませんけれども、放棄しておいて、長銀自己資本が不足する、だから資金を投入するというふうなことが許されるかということを聞いているんですよ。  原理原則を立ててくださいよ、やるのであれば。原理原則が必要なんですよ。そんなときには絶対にだめだ、そこまで税金を投入する以上、ちゃんと整理をやらせますということを監督庁長官が言わない限り、この問題は解決しませんよ。どうですか。
  52. 日野正晴

    ○日野政府委員 結局、その関連ノンバンクの整理というのは、やはり今仙谷先生がお話しになったように私的自治なんですね。私的自治の範囲内のことなものですから、決してそれを前提にして公的資金を注入するかどうかと言っているんじゃなくて、今現在話し合いが行われているわけでありまして、関係者間で結局協議が調わなければ、完全プロラタに行く場合だってあり得べしなんですね。ですから、それを前提にして、何かけしからぬじゃないかというふうな御意見には、ちょっとにわかに私どもとしては何かこう賛成しがたいわけでございます。
  53. 仙谷由人

    仙谷委員 原理原則がないということだけ申し上げて、質問を終わります。
  54. 相沢英之

    相沢委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  55. 相沢英之

    相沢委員長 この際、お諮りいたします。  最高裁判所石垣民事局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  56. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  57. 相沢英之

    相沢委員長 次に、上田勇君。
  58. 上田勇

    上田(勇)委員 平和・改革の上田でございます。  きょうは、まず最初に、本委員会提出されております不動産に関連する権利等調整に関する臨時措置法案につきまして、何点かお伺いをしたいというふうに思います。これまでの委員会の審議の中でも、柳沢大臣の方から法案の目的、効果等についていろいろと御説明をいただいておりますけれども、その中で何点かちょっと不明な点もございますので、それにつきまして質問させていただきたいというふうに思います。  まず、これまで幾度か取り上げられたことでありますけれども、現在裁判所で行われております民事調停制度との関係についてお伺いしたいのですが、この民事調停制度というのはどういうものなのか、その辺を裁判所の方から最初にお聞きしたいというふうに思うのです。  この民事調停制度、これまでこの委員会の方でもいろいろな面からの指摘がありました。例えば、これは答弁の中で出てきた話でありますけれども、民事調停制度というのは個人の債務関係だけが対象であって、企業等にかかわる調停にはなじまないというような御指摘もありましたし、確かに、裁判所の資料を見ますと、いわゆる消費者金融というんでしょうか、そういうふうな債務関係の占める割合が大きいというのは事実であります。  そういうことで、一つは、企業法人のそうした債務関係の調停は行うような制度にはなっていないのか。また、あわせて、これまで比較的規模の大きい法人の債務に関する調停、そういったものの実績はあるのかどうか。  きょうは時間の限りもあるので、裁判所にまとめてお伺いいたしますが、第二点として、迅速性という問題も言われましたけれども、実績として、調停の申し立てから結論が出るまで、平均してどのぐらいの期間を要しておるのか。  また、三点目といたしまして、調停委員は現在 何人ぐらい選任されておられるのか。また、どのような人物が選任されておられるのか。  ただいま三点申し上げましたけれども、そういったことも含めまして、この民事調停制度について御説明をいただければというふうに思います。
  59. 石垣君雄

    ○石垣最高裁判所長官代理者 民事調停についてお尋ねでございますので概略申し上げますが、この民事調停というもの、どういう定義をするかということがございますが、現在行われておりますものを言葉で申し上げますと、民事に関する紛争の当事者が裁判官と調停委員で構成される調停委員会のあっせんのもとに話し合いをし、互いに譲り合い、合意により紛争を実情に即して解決する制度であるということになろうかと思います。そういうことでございますので、民事に関する紛争であればどのような類型のものであっても調停の対象になりますし、また、その紛争の当事者であれば、自然人だけではなくて、先ほど委員のおっしゃられた企業を含みます法人も民事調停の対象になるというふうに考えております。  そこで、この民事調停の処理の状況でございますが、例えば平成九年度におきます処理の実情を申し上げますと、全既済事件数、これは全事件が約十九万五千ぐらいございますが、ほぼその七七%ぐらいは三カ月以内に終了している。平均審理期間でとりますと、二・八カ月程度になろうかと思っております。  そこで、調停委員の人数でございますが、おおよそ一万二千人前後というのが一般的な傾向でございまして、ただし、ことしの九月一日現在では全国で一万一千七百四十五人が調停委員となっていただいております。その内訳でございますが、弁護士、医師、大学教授、会社役員等、社会の各分野にわたっておりまして、弁護士で申しますと、この平成十年九月一日現在で約千九百人、そのほかの士業といいますか公認会計士、税理士、不動産鑑定士、土地家屋調査士等が千五百人弱というような状況でございます。  以上でございます。
  60. 上田勇

    上田(勇)委員 ありがとうございました。  それで、一つだけ確認をさせていただきたいのですが、裁判所からいただいた資料でも、この民事調停の件数というのは貸金業関係、信販関係といったものの割合が高いのですが、これまで例えば大規模な法人の債務にかかわる調停だとかそういった実績というのはあるのでしょうか、その辺をちょっとお伺いしたいというふうに思います。
  61. 石垣君雄

    ○石垣最高裁判所長官代理者 失礼いたしまして申しわけございません。  先ほど委員から御指摘がありましたように、現在の調停事件の多くはサラ金、クレジット関係の、いわゆる債務者から申し立てのあります債務弁済協定調停事件、これが全体の七割ぐらいを占めておりまして、企業等の事件も当然あるわけでございますが、統計をとっておりませんので、実態は把握しておりません。
  62. 上田勇

    上田(勇)委員 これまで柳沢大臣の方から、本法案とそれから民事調停制度の違いについて、おおむね次のような点をお話しになったと思うのです。まず一つ、これはちょっと大臣のお言葉をおかりすれば、民事調停制度というのは家計的な金融、消費者金融ともおっしゃっていますけれども、を対象としているのであって、事業金融の分野の調停は行っていないという御指摘がありました。  またもう一つは、これは不動産権利調整制度がどのぐらいの期間を想定しているのかわかりませんが、迅速性について民事調停制度の方は問題があるんだという御指摘もありました。また、大臣の方からは、再建型の倒産法制ということになると、柔軟、微妙な判断が必要である、どうも司法の方は柔軟性に欠けるというような指摘もあるというようなこともおっしゃいました。また、さらに税制上の特例についてもお話がございました。  今ちょっと裁判所の方から概略説明していただいたところを見ますと、どうも制度上の制約は法人であろうが企業であろうがそれはないような感じがいたします。しかも、調停委員は全国で一万二千名ということでありますし、弁護士、公認会計士、不動産鑑定士、土地家屋調査士等の専門家もかなりいらっしゃる。事務局体制も既にある。不動産権利調整制度の方は、すべて全部これから立ち上げるわけでありまして、そうすると、法案の中では、指名される特別委員というのは法律金融、企業財務または不動産評価に関する学識経験者というふうに書かれておりますが、これは調停委員の先ほど申し上げましたいろいろな資格を持っている方とほとんど同じような資格、能力の方ではないかというふうに思います。  この特別委員の方々が、先般来の委員会の中で、大臣の方からは数十名というふうにおっしゃっている。どうも、そういうことを考えますと、迅速性ということもそれほど改善されるというような何か合理的な根拠は余り感じられませんし、また、同じような資格の方、また能力の方がおやりになるのに、片方は極めて柔軟、微妙な判断が可能であって、片方は若干柔軟性に欠けてしまうのではないかというようなことというのも、ちょっと根拠がないように感じられます。  最後の税制上の特例、これは非常に重要な点で、私も、無税償却というのはある程度必要でありまして、巷間よく徳政令だとかなんとかと言われている批判というのは、必ずしもこれは当たっていないというふうに思うんですけれども。そういったことを、ちょっと今の裁判所の方の御説明、それからこれまでの大臣のいろいろな御説明、これらを見ますと、大臣はまた、これは司法を補完するというような言い方もされているんですが、どうも補完するというよりも何かもう既にかなり整った制度に、片や一万二千人近い調停委員が全国に整っているという制度に、わずか数十名の特別委員の制度を発足しても、何かこれは補完するというよりも、むしろ同じようなものをつくって混乱させてしまうというような面の方が大きいのではないのかなというような気がいたします。  少々長くなって恐縮でありましたけれども、大臣、再度、この御提案されている制度と現行の民事制度の違い、現行どのような点の不備を補っていくのか、これはやはり税制のところが最も重要なのかどうか、その辺も含めて御説明をいただきたいというふうに思います。
  63. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 上田先生、過去の審議でのやりとりもよくお調べいただいて、今回私どもが提案しておる制度の存在理由というか、存在意義というものについていろいろ御検討いただいていることに、まず心から感謝と敬意を表しておきたい、このように思います。  今度の制度と特に民事調停制度との比較において、今最高裁判所の方からも、現行の民事調停制度の運用ぶりについて御説明があったわけでありますけれども、私ちょっと記憶に定かでないんですけれども、物すごい数の調停が今行われておるということでございます。そして、それが特に最近に至って数において非常に増嵩を来しておるということの御報告も、先般最高裁の方からあったように記憶をいたしております。  そういうことを聞きながら私ども感じておるのは、やはりこれは、いわば消費者金融にまつわる紛争処理に今の民事調停制度が非常に活用されているということをあらわしておるというふうに感じておるわけでありまして、いろいろ申しましても、基本的に今現に行われていることは、大宗において、今、消費者金融におけるトラブルの調停に力を割かれているということの実態ではないか、このように思うわけでございます。  片や、私どもの方の今回のいわば日本経済の存立の基盤を揺すぶっているような金融不安、その大きな部分において絡み合っているこの不動産絡みの権利調整の問題をどう処理するかといった場合に、現行の民事調停制度、今あえて私ここで言わせていただければ、消費者金融をめぐっての紛争処理に手いっぱいというか、そういうことで一生懸命やりなさっている、そういうことと並んで、やはりこれに専門的に従事するところの新し い制度を創立するということには、十分行政的な意義があるということを私どもは考えておるわけでございます。  特に、私、あえて、枝野議員との応酬で申させていただいたかとも思いますけれども、やはり司法界にも、司法界というのはどうしても静態的に事をとらえがちである、創造的に企業の再建等を図っていくのにどういう知恵がそこにあり得るか、これらを個別の事情、そこに積み上がってきたいろいろないきさつ、こういったものを全部勘案して、そしてそこに譲り合いのもとでの解決策を見出していくということになると、ずっとやってこられたこととの絡みでやや、改善の余地もあるというか、そんなことを聞くわけでございます。  私ども、別にそこに論拠を求めているわけではありませんけれども、とにもかくにも今現に起こっていることをできるだけ早く解決したい。そのことには一つ我々が行政として受けとめなければならない使命があるというふうに認識をいたしまして、今回のこの提案をいたしておるということでございます。もちろんそれに、手続面とは言い条、税制上の措置を加えて制度の効果を上げようと考えていることも、先生御指摘のとおりでございます。
  64. 上田勇

    上田(勇)委員 現実に民事調停制度は、いわゆる貸金業あるいは信販関係の占める割合が七割という御説明が先ほどあったんですが、ただ、同時に、裁判所の方からは、これは制度的な制約ではなくて、そういう申し立てがないからそうなんだということなんだと思うんですね。私は、むしろそれは企業の側に、金融機関あるいはその金融機関に対する債務者の方に、本気でこれを処理するというつもりがなかったのでそういう申し立てがなかっただけであって、制度的な問題ではないのではないのかな、それをいきなり制度的な問題というふうに持っていくのは若干無理があるのではないのかなという気がいたします。  先日この委員会の中でも、質疑の中で、ちょっと正確には復唱できませんけれども、質問者の方から、銀行は、無税償却が認められないのであれば、債権放棄をしたり、その債務者の方の企業を本気で立て直したりするようなことがあるわけないではないですかというような発言もありました。まさに今まではそうだったんだというふうに思います。ですから、現実に今までそういうことが行われていなかったということをもって制度的な不備というわけではないのではないのかなというふうに私は思うのですが。  また、新しく設置を提案されておりますこの権利調整委員会の方も、その辺は、ではどういう方がそういう審査をしていくのかといえば、ほとんど今までと変わらないような方がされるのかなと。法文上、読む限りにおきましてはそういうような気がいたします。  そこで、税制上の特例の方の問題についてお伺いしたいのですが、今度の法案で御提案もありますように、不良債権の処理を促進して土地の流動化、有効活用を図っていく上で一定の無税償却を認めるというのは、当然重要なことだというふうに私も思っております。ただし、この法案でも、税制上の特例が認められる、無税償却が認められるというのは調停における合意が前提でありますので、この合意というのは公正かつ妥当なものでなければならないというわけであります。  そうなりますと、現行の法人税の取り扱いと比較いたしますと、これは法人税基本通達などを見ると無税償却というのが認められておりますし、通達上、特に改正後はかなり本文それから注書きなども明確になっておるので、ここであえて税制上の特例を設けた理由というのは何なのだろうか、これまでと税制上の取り扱いが実質的に変わるのかどうか。その辺、大臣に御見解を伺いたいと思います。
  65. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 結論を申し上げますと、取り扱いの実態が変わるわけではありません。  ただ、上田先生も行政官でいらっしゃったということを私は承知をいたしておるので、あるいはこういったことについて直接見聞をされるというようなことはこれまでになかったかもしれませんが、私も官界におったのですけれども、政界に出まして、先生よりもかなり時間がたっております。そういうことの中で、いろいろそういったことも見聞きすることもあったわけでございますけれども、現実に、事前に損金算入があるということがわかっている場合、やはりそこは最終的には税務署の判断、しかも事前に税務署の方に問い合わせてもこれについてなかなか教えてというか方針が示されるということは、事の性質上、ないわけでございます。  そういうことでございまして、事前的にこれがわかって、税の負担の問題もわかった上で、譲り合いを、さあ、どうするかということをやることがどれほど大きく事態の迅速な解決に役立つかということは、私どもはやや経験もありまして、そういうことをよく承知をいたしております。  したがって、今回のような手続面で優遇というか、優遇という言葉が当たっているかどうかあれですけれども、明らかにしておくということの効果として、これが微妙に影響して合意形成の機を失せしめない、こういうことのために大きく役立つということは、私ども、ぜひ先生方に御認識を賜りたい、このように考えます。
  66. 上田勇

    上田(勇)委員 現行の法人税の取り扱いと基本的には適用の方法は変わらないのだという御答弁だったと思います。事実、今の大臣に御答弁いただいたようなことというのは、私も何人かの方からいろいろお話を聞くと、実際に税務署に出してみないとどうなるかわからないことというのはあるのだというのは、十分承知の上でお聞きするのですけれども。  今、法人税法があって、施行令がある、そして基本通達と、こういうようにルールが決まっているわけであります。にもかかわらず、これはルールに沿って処理をして、しかも事後的でないと税金がかかるかどうかわからないというのは、国税の行政として余りにも行政の裁量が大きく、ちょっと不透明なものなのではないかというような感じがいたします。ルールが決まっており、しかもこれは素人だけならともかくとして、少なくとも税理士さんであるとかそういった一定程度の能力、知識のある方に見てもらったときに、ルールが示されているのに事前に正確な判断ができないという行政のあり方というのは、ちょっと問題が多いのではないのかな。  まずは、そうした不透明な、担当者の裁量に任されているかのような税務行政、この点を改めることが制度全体をいじることよりも重要なのじゃないかというふうに思いますけれども、その点について御見解はいかがでしょうか。
  67. 柳沢伯夫

    ○柳沢国務大臣 先生御指摘の面は確かだと思います。ルールによる行政ということで、できるだけ善意においてルールが遵守されるということに対しては、もう間違いなくそのルールが最終的に適用され確定するということが望ましいことは申すまでもございません。ただ、現実の行政が直面する問題の中には、やはり行政として、いろいろ解釈ということもありましょうし、また実態面においても、率直に言ってそこの当事者自身も迷うようなことがあるわけでございます。そういうようなこともございます。  さらに言いますと、一番これは言いづらいことでございますけれども、税務当局としては、みずからの行政目的からいって、租税回避的なことはこれはもう毫も許すわけにはいかないというようなことから、事後チェックということの留保を置くということは、やはりそれなりに合理性があるというふうに考えているわけでございます。それを我々は、今度行政的にかかわることによって事前的に明確にしていこう、こういう趣旨でございますので、御認識を賜りたい、このように思います。
  68. 上田勇

    上田(勇)委員 現実がどうなっているかということは、確かに今大臣のお話のとおりなのかと思いますが、ただ、税務の分野も行政の一部でありまして、当然政府の行故意思というのが正確に伝わらないということでは問題があるのじゃないか と思うのですね。  今、あたかも何かそういうような言い方がちょっとあったと思うのですけれども、もし政府全体として極力こういう償却は幅広く認めるのだということであれば、そういう意思を伝えなければいけないし、そのためのルールも納税者の方でもわかるようにしてもらわなければいけないわけでありまして、それを放置したまま、新たにもう一つ、しかもこの委員会については内容は非公開ということでありますので、ほかの人が、ではこういうところはこういう結論が出たなということでなかなかそれを次の参考にするというわけにもいかないというような面もあるでしょうから、これはやはりルールは明確にする、しかも現場の担当官には、ちゃんと政府の行故意思を伝えるということが重要だと思います。  先ほど大臣の方から、いろいろと当事者でも迷うことがあるのだとありました。そういったことについては裁判所の、さっき言った民事調停制度というのをそういう場合には使えばいいでしょうし、あるいは税務当局の方としても、その辺は事前に多少は相談に乗るというようなことも含めてやれば、何か非常に大げさな、今回こうした体制を整えるといったことが、確かに現実を乗り越えるという意思については理解すると言ったら我々の立場からまずいのかもしれませんけれども、わからないわけではありませんが、その辺はもうちょっと行政の全体の意思をちゃんとしていただくことの方が大切なんじゃないのかなという気がいたしました。  ちょっと時間がなくなりまして、この件についてまた今後いろいろとお尋ねしたいと思うんですけれども、最後に、ちょっと話題が変わりますが、サービサー法案について、きょうは提案者の方からも杉浦先生にお見えいただいておりまして、十四日に、民主党、平和・改革、自由党、三派の共同で修正案提出いたしました。  内容については御検討いただいたと思いますが、要は、我々は、中長期的にサービサーの必要性については認めるものの、現状、暴力団等による債権回収への関与等が、これは警察庁にお伺いしたところでもかなり深刻な事態になっているというようなことから、とりあえずは限定的な導入をして、なおかつ規制も加えるという内容でありまして、さらに五年後には、こうした問題がクリアできているかどうかを判断した上で見直しを行うという見直しの条項も含んでいる内容でございます。  いわば、債務者の立場に視点を置いたというような観点での修正を御提案させていただいたわけでありますし、また、野党三党といたしましては、日本版RTC、強力な権限を持たせましてこれを新設し、金融機関不良債権の回収に当たるということもあわせて提案をしておりまして、これについては与党の方からも十分御理解をいただいているというふうにも承っております。  この野党三派の共同提案、共同の修正案につきまして御提案者の方の御意見、また、我々の提案につきまして御理解、御賛同いただけるのかどうか、その辺につきまして御見解を伺いたいというふうに思います。
  69. 杉浦正健

    ○杉浦議員 上田委員にこういう公式の場で意見を申し上げる機会をお与えいただいて、感謝いたしております。  この野党修正案を拝見して、一言で言いますと、びっくりしたといいますか、驚いたわけであります。日本語には適切なボキャブラリーがないわけですが、英語でいえばフライトゥンド、跳び上がって喜んだ、二語になっちゃうわけですが、びっくりしたわけでございます。  と申しますのは、この野党の修正案、サービサーだけでなくてほかの競売等の部分にも出されておりますが、これらの修正案の内容は、日弁連さんの、統一した見解と言えるかどうかは別ですが、日弁連案の中で私どもの中に取り入れられなかった、この原案の中に入っていない部分がそっくりそのまま出てまいったわけであります。そっくりそのままであります。  実は、サービサー法のことについてだけ私は申し上げますが、サービサー法の問題については、これは弁護士法七十二条、七十三条の特例法であります。一種の規制緩和であります。弁護士から権限を移すと申しますか、中坊先生に言わせると業務拡大だというあれになるわけですけれども、大幅な規制緩和でございますので、弁護士会の了解がなければできるものじゃありません。そういうわけで、私どもとしては、チームが立ち上がりました当初から、日弁連さんにも御協力をお願いいたしておりますし、日弁連も、執行部と申し上げるべきでしょうが、ワーキングチームを立ち上げられる、執行部の方も我々の審議にオブザーバーとしてずっと御参加いただいてまいったわけであります。  そして、この案の中に日弁連の方で重大な関心を持っておられる大部分の事項は盛り込まれております。弁護士一名以上を取締役に選任する、これは原則として弁護士会の推薦を要するという要件が入っておりますが、これによってこのサービサーのコンプライアンスといいますか、きちっと法令に従った業務が執行できる要素にしていただくとか、あるいは訴訟の遂行は弁護士によらなければならないということも入っております。  それから、マル暴対策、これにつきましても、日弁連は民暴対策をずっとやっておられたわけですが、そういうわけで、そういう立場からいろいろな御意見がございました。それもきちっと取り入れさせていただいております。  それから、資本金五億円以上というのも日弁連さんの御意向でございまして、これも、珍しく法務省と日弁連の意見が一致したわけですが、私どもは一億円とかあるいは五千万円ぐらいにして、つくりやすいようにしたいと考えておったのですが、五億円ということで、要するに、小さく産んでいいものを育てようという趣旨で私ども賛同したわけでございます。  ですから、原案を提出するに当たっては、日弁連、少なくとも執行部と申しましょうか、の御理解は得られておる。積極的に賛成という御意見は、日弁連にもいろいろ御意見がありますから公式にはいただけておりませんが、理解はした、反対はしない、どうぞ出していただきたい、こういうふうに御理解をいただいて提出させていただいたわけであります。そういうわけでございますので、日弁連にも確認しました。野党の修正案については日弁連執行部として正式に修正を依頼したのかどうかと確認いたしましたところ、そういうことはない、日弁連としては驚いておるということを言っておられますので、まずこの点を申し添えさせていただきたいと思うわけでございます。  それから、中身についても、非常に重要な点が変更になろうと修正を図っておられるわけでございまして、ぜひともこれは原案どおりでやっていただかなきゃならない点が幾つかございます。  まず、取扱債権の範囲でございますが、金融機関不良債権だけに限定する、二条一号ですね。二号、三号、リース・クレジットは外れておりますし、その他政令で定めるという部分も外す。そして、私どもが政令で入れようと思っていた債権のうち、かなりの部分法律事項に盛り込む。これは日弁連さんが主張されていたことです。政令で決めるのはけしからぬ、全部法律で決めろ、その他政令で定めるはだめだとおっしゃっていたわけですが、それを御理解を得てそうしたわけであります。  政令指定事項を入れるのはいいのですが、重要なのが落ちております。それは、もともと金融機関債権であったものを買い取った、譲り受けた場合においては、それは金融機関債権としようじゃないかということがこの修正案では落ちております。非常に不都合が起こるのは、いわゆる外資系が買い取っておられる不良債権、バルクセールで買い取っておられる、これは本来的に言うと弁護士法違反だという意見もあるわけですが、それが落ちております。  私どもは、このサービサーの問題は、不良債権の問題の処理の観点だけじゃなくて、債権等の流 動化も推し進めるという観点で用意しておりましたので、できる限り……(発言する者あり)済みません、言いたいことがたくさんあるものですから、委員の御理解もいただいて。改めて御質問いただけるなら打ち切りますが。できるだけ広くしたい。商社とか一般からは、金融債権だけじゃ困る、一般のも入れてくれという御要望が強かったわけですが、しかし、こういうふうにこの原案で一応、実質的に金融機関の貸国債権と同様の与信機能を有するリース・クレジットについては入れようということで折れ合ったわけであります。  現実的に困るものも出てまいります。例えば、問題になっている長期信用銀行不良債権は扱えるが日本リースはだめだ、日本リースのは扱えないとか、それから、長銀はクレジットの会社にも随分融資しております。クレジットの債権を扱えないとなったら、サービサーは、長銀のは処理できてもリース・クレジットはできないのだったら、長銀不良債権全体を一体的に扱うことはできなくなるわけでございまして、非常に実際的な不都合が出てまいるだろう、こう思うわけであります。  それから——時間がかかりましたので、その他いろいろございますが、ほかにも重要な点がございます。御注意がありましたのでこれはやめさせていただきますが、また改めて時間をいただいて御質問いただければ、その他についても詳細申し上げさせていただきたいと思っております。
  70. 相沢英之

    相沢委員長 これにて上田君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  71. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木でございます。  現在出ております私ども野党三会派の法案、そして政府・自民党の法案との対比をいたしながら大蔵大臣に、そして不良債権処理のために欠くことのできない大きな条件である景気の見通しについて、堺屋企画庁長官にお尋ねしたいと思います。  御承知のように、現在、院に提出されております金融安定化関係の法案は、政府・自民党さんの方から六法案、これに対して野党三会派の方からは九法案が院に提出されているわけでございます。先週、自民党の山本委員が御質問の中で申されたように、政府・自民党さんが提出された六法案は、一つだけ、いわゆるブリッジバンク関連の法案、これが破綻金融機関の処理に関連しておりますが、あとの五法案は、破綻処理というよりも、現在日本経済の中に存在している不良債権をどうやって早期に処理するか、またその背後にある担保不動産をどうやって流動化して不良債権の処理を促進していくかということに関連しております。  日本経済の不良債権問題といったときには、山本委員が正しく指摘されましたように、単に破綻金融機関不良債権だけではなくて、生きている金融機関不良債権を一刻も早く処理して、ビッグバンに備えて、日本金融機関が大いに元気を出して競争できるようにするという問題、この二つがある、これはそのとおりでございます。  その意味で、政府・自民党さんの六法案のうち五つが不良債権の早期処理一般に向かっているということは、私どもはそれなりに評価しているわけでして、したがって、私どもが提出しております九つの中の四つは、衆法の形で自民党さんから出されました不良債権早期処理に関連した法案に対しての修正案でございます。  今、たまたまサービサー法案に触れた途端に提出者の方は熱弁を振るわれました。私の時間、十分ぐらいずれましたけれども。しかし、私はごもっともだと思うのですね。この法案、不良債権早期処理の関係、非常に大事なんです。ところが、破綻金融機関処理の法案の議論にこれまで集中しておりますため、十分議論されていない。私どもの四つ修正案を含めて、この場で大いに議論をして修正を一本に練り上げていくということが、不良債権早期処理のために大変望ましいことだというふうに考えております。  問題は破綻金融機関の処理の方でございまして、政府・自民党案はいわゆるブリッジバンク法案一本でございますが、私どもは五本も出したということからおわかりいただけますように、私どもの野党三会派の案の方がコンプリヘンシブ、非常に包括的で体系的になっていると私は思うのですね。破綻前の生きている金融機関全般についての情報公開の問題もきちっと入っておりますし、破綻したときの処理についても、法的処理と公的管理、二段構えの制度を入れようとしております。それから、借り手企業については、中小企業信用保険公庫と信用保証協会を連動させる形で保証をつけることによって他行に移させる、移ることができるように援助しようということも入っている。  私は、そういう意味では、やや自画自賛でございますが、野党三会派のこの法案というのを全面的にお取り上げいただいた方が、コンプリヘンシブな今の破綻金融機関処理の体系として完結しているように思うわけでございます。  一、二質問させていただきたいと思いますが、まず第一に、私どもは、何といっても情報公開が大事だと。市場経済でございますから、詳しく情報公開すればするほど市場に信用される。特に海外市場はそうでして、日本金融機関不良債権その他の財務状況の情報公開は不十分だということで、日本金融機関全体が信用を失っているわけですので、日本金融機関をもっともっと情報公開をしていくということが非常に大事だと思っております。  この点で、一つ聞き捨てならぬ御発言が先週ありました。自民党さんのある委員が、情報公開は百害あって一利なしとこの席で叫ばれたわけですが、これはもしかして、自民党さんあるいは政府のお考えだとしたら大変なことだなと。ここは我々は共通の土俵に立たなきゃいかぬと思っておりますが、宮澤大蔵大臣、御記憶にあるかどうか知りませんが、まさかこれは政府・自民党の考えじゃございませんでしょうね。  情報公開ということをもっと自主的にやらせる、それで初めて日本金融機関の世界的な信用がつく、この考え方については、まさか我々野党三会派と政府・自民党さんの間に考えの違いがあるとは思っていないのですが、百害あって一利なしというのは、蔵相もまさかそうお考えじゃございませんでしょうね。お聞かせください。
  72. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 政府はそういうことを考えておりません。
  73. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 それを伺って安心をいたしました。  それで、情報公開に基づいて、過少資本になってきた、あるいはこれはもう債務超過だという場合には、野党案の枠組みで処理できるわけです、私どもはコンプリヘンシブですから。具体的に言えば、長銀さんが検査の結果債務超過だということになった場合の処理だって、私どもの枠組みでできるというふうに思っております。  長銀さんについては、まあ金融庁には聞きません、聞いても同じ答えしか返ってこないことはわかっていますが、先ほども民主党の仙谷委員が言っておられましたように、常識的に考えまして自己資本が八千億ない、ところが長銀さんの償却しなきゃいけない不良債権はとても八千億なんてものじゃないというのはわかりますから、これは検査結果が出たら債務超過だなというふうに私も思っておりますが、この場合に、私ども野党三会派で出しております案では、整々とこの整理を行っていくことができる枠組みになっているわけであります。  何も新法をつくる必要はない、あるいは現在の金融安定化緊急措置法、十三兆円の注入、あれに固執することもない。大体、あの法案の要件を満たしていないわけですからね、債務超過ですと。ですから、私どもの提案しているこの法案の枠組みで処理できるはずのものなんですね。  蔵相にお伺いいたしますが、私どもの法案ですと、債務超過が明らかになったときは、これは業務停止命令を出す、銀行業は免許制でございますから。業務停止命令を出すに当たっては、行政当 局、日本銀行関係者がよく協議をした上で、その瞬間の混乱を防ぐために注意深く練り上げた案をぽんと発表するわけであります。そのとき、どういう取引は継続する、契約がこうなっているから継続する、どういう取引は直ちに停止をする。そして、その場合の資金繰り日銀特融で完全に保証される。預金者金融債保有者は、預金保険に十七兆円も積んであるお金も含めて、完全に元金は保証されるということを発表する。また、私どもの枠組みですと、他行に移れない資本金五億円以下の中堅、中小については、ばっちりずっと債務保証をつけます。債務保証がついた融資というのは自己資本比率算定上有利になりますから、これで十分にシフトを援助することができると私ども思っているわけです。  その場合に、長銀は破綻ということになりますから、当然不良債権は、整理回収銀行、私どもの案では日本版RTC、強化された回収機構がこれを回収いたしますが、残った部分について、受け皿銀行が、例えば住信が受け皿銀行として手を挙げればそちらに引き継ぐという手も残されておりますし、受け皿銀行がなければ清算をしていくというプロセスになっています。  そういうわけで、ここに提出されております私ども野党三会派の五本の法案によって、私どもは長銀の処理だってできるじゃないかというふうに思っております。  宮澤大蔵大臣、いかがでございましょう。私どもの枠組みで長銀問題を処理するという考え方について、どうお考えでしょうか。何かどこかにまずいことがございますでしょうか。
  74. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 長銀の現状につきましては、金融監督庁長官が御答弁になったとおりと思います。  後段の問題は、ただいま各党間においていろいろ御検討、御討議中であると承っておりますので、私からはコメントを差し控えさせていただきます。
  75. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 残念ながら御答弁をいただけないということでございますけれども、そのこと自体、御答弁をいただけないということ自体、大分政府の御見解が変わったな、トーンダウンしたなというふうに私は理解させていただきます。  なぜなら、こういう質問を私、総括質疑のときにも一般質疑のときにも過去にしておりますが、そのとき宮澤大蔵大臣は、日本銀行特融で、あるいは野党案の公的管理で、どうやって信用秩序が維持できるか、もし長銀破綻と認定したら、もうそれだけで内外の金融市場あるいは日本の決済システムに大混乱が起きるというふうに申されたわけであります。  私は、大蔵大臣ともあろう方がそんなことを言ってはいけません、むしろ逆に、たとえ長銀といえども業務停止ということで整々と整理する、そして最後の貸し手、レンダー・オブ・ラスト・リゾートとしての日本銀行特融金融市場、決済システムの混乱は未然に防ぐ、これを総理あるいは蔵相はおっしゃらなきゃいけないということを一生懸命申し上げたんですが、今までは、それどころか、大変なことになる、大変なことになると言って、一般国民を不安に陥れるようなことばかり言ってこられました。  それに比べますと、今の御答弁は、私が野党案の枠組みで長銀問題といえども処理できると言うのに対して正面から批判されておられませんので、少し、私どもがこれまで主張してきたことに御理解がいただけたのかなというふうに思います。いかがでございましょうか。
  76. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 破綻とソルベンシーとリクイディティーとの関係は、前回お答えしたとおりであります。
  77. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 リクイディティーとソルベンシーの問題についても、総括質疑で私が申し上げましたときは、目の色変えてお立ちになって反論されまして、私もびっくりいたしましたのですが、今のお答えの意味は、破綻したときのイリクイディティーということは特融で完全に阻止できる、その後は、今度はインソルベンシーである場合に整々とバランスシートを解体していくという整理の過程に入っていく、この二つは全然違った問題、もちろん表裏の関係はありますよ、だけれども違った問題だというふうにあのときるる申し上げたわけでございますが、今の蔵相のお答えは、その違いは自分も十分に了解したという意味にとらせていただきたいというふうに思います。何か御異存ございましたら、どうぞ。御異存のないものと了解をいたします。  さてそこで、一つ話を進めたいわけでございます。  これも、自民党の山本委員、このときは山本委員の御質問に、私、野党三会派案に関する答弁をする立場でも申し上げたことでございます。山本委員は、どうも野党三会派案提出者は経済の実態がわかっておらぬとおっしゃったわけですが、私聞いていて、実体経済のことは我々はわかっているんだが、実体経済のミクロの話はおれの方がよく知っておる、こういう趣旨だなと思って聞いておりました。  ですから、私は、実体経済、すなわち、景気が回復してくる、日本経済を実力相応の安定成長軌道に乗せる展望が立つ、このことなしに幾ら、担保不動産の流動化、それを通じる不良債権早期処理の努力をしようとしても、なかなかうまくいかない。アメリカの経験を見てごらんなさい。さまざまの施策を八〇年代につくった。しかし、実際それがうまくワークしたのは、景気が着実な成長軌道に乗った九二年以降でありますからね。そういう意味で、私は、景気の立ち直りを図ることは、今ここで審議をしている金融システム安定化関連の法案を有効なものとするためにも、絶対欠かせない条件というふうに思っております。  申すまでもありませんが、景気が立ち直れば、企業業績は好転しますから、不良債権が優良債権に変わってくる。そして、株価も回復しできますから、株価の下落で損を出している金融機関の損が評価益に変わってくる。そして、円も恐らく上昇してくるでしょうね。そうしますと、株価上昇と円の上昇で自己資本比率が上昇しできます。金融機関の貸し渋りも解消に向かってくる。さらに非常に大事なことは、日本経済の先行き、特に長期的な成長率の予想が回復しできますから、収益還元価格としての均衡地価が回復してくることによって先高感が生まれれば、不動産の流動化も進む。そうすると、今苦心して自民党さんが衆法として提出されたあの四法案、私どもが修正を出しておりますが、これもうまく動き出しますよということだと思うんですね。そういう意味で、日本経済はこの先実力相応の安定成長軌道に向かって回復していくんだという予想、期待をつくることは、決定的に大事な政策ターゲットだと思うんですね。  企画庁長官にお伺いいたしますが、先般発表になりました四−六月のGDP、恐らく長官の予想以上に悪かったんだろうとは思います。あれを前提にいたしますと、実はこの後、七−九、十−十二、来年一−三という三四半期、仮に横ばいだとした場合、俗に言うげたですね、これは相当大きくなりますね。  御用意なければ、私の方から、時間の関係もありますから申し上げますが、御存じだと思いますが、マイナス一・八%ですよね。マイナス一・八%のげたを履いていると、えらいことに実はなります。平均成長率〇%、堺屋長官は〇%プラス・マイナス・アルファと言っておられました、しかし、この四−六が出ると、堺屋長官の言っておられる〇%成長に持っていくために残る三四半期はどのぐらいのスピードで上がっていかなきゃいけないか、御存じでしょうか。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  78. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 鈴木委員の御指摘のとおり、四−六のGDPは大変、予想以上に厳しいものがございました。その前もマイナスでございましたから、これが仮に年度でゼロになるためには、あとの三四半期、年率約五%の経済成長をしなければならない。現実的に見ると、非常に厳しい数字が出ております。
  79. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 おっしゃるとおりで、私の試算でも五・一%です。こんな猛スピードで突如日本経済が成長を開始するわけがありませんから、したがって、本年度の成長率見通しというのはかなりのマイナスになると思うんです。まだ公式の見解は発表する時期ではないと思いますが、今長官はどのくらいの感じを持っておられますか。
  80. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 いろいろな指数を集めまして、事務局を督促いたしまして今見通しを立てておる段階でございますので、軽々に答えられませんけれども、恐らくかなり厳しい、マイナス一%をかなり上回るマイナスに出ることは十分予想されるところでございます。
  81. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 大変正直にお答えいただきましてありがとうございます。私もそう思います。  〇%成長でいってマイナス一・八です。多少はプラスになると思うのですけれどもね、十六兆円の効果がじりじり出てきて。それでも、私の試算でもマイナス一%という数字を置くことはかなり無理がありますね。マイナス一からマイナス一・八の間に来るだろうというふうに思います。  といたしますと、もう既に拡大しているGDPベースのデフレギャップはこの先一段と拡大していく、本年度全体の姿として一段と拡大していくわけでございますから、現在の倒産多発、失業率の上昇、そしてそれを反映した消費あるいは設備投資、住宅投資の落ち込み、こういう状況は一段と強まっていくと見なければいけませんので、私はそのことを考えたときに、金融問題は大丈夫かしら、今長銀処理だけでこれだけ大騒ぎしておりますが、そんな問題で済むのであろうか。  長銀に限らず、どんなことが起きてきても絶対日本発の恐慌は起こさぬぞ、世界恐慌は起こさぬぞ、そして日本金融市場、金融システムを混乱させないぞというしっかりした、コンプリヘンシブな枠組みをここでつくらないとえらいことだなというふうに思いますが、しかし、それにしても、枠組みをつくっても、私は残念ながら、この先大変な難問がまだまだ金融面から出てくるというふうに思うのですね。  ですから、私、今一刻も早く必要なことは、マクロ経済面でどうして追加対策を小渕内閣は打ち出さないのだろう。今のままでいきますと、来年の一月からの通常国会に例の七兆円減税、実はこれ、ネット減税はたったの三兆円ですがね、それから第二次補正予算を出してくる、それで十五カ月予算とおっしゃるが、実は、この中身は第一次補正後の本年度に比べて公共事業横ばいですよ。こんな程度のもので、これだけマイナス成長二年間突っ込んできた日本経済が立ち直ると、そんなのんきなことを考えておられるのでしょうかね。  もしそうじゃないとおっしゃるなら、大急ぎで、もうこの臨時国会にでも、すぐ法案は出せなくたって、年内に効果が出てくるような政策をおっしゃらないと、非常に日本経済は危ないし、金融面も大変に危険だと思いますが、堺屋長官いかがですか。
  82. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 御指摘のとおり、今、日本経済は大変厳しい状態、極めて厳しい状態を通り過ぎておりまして、あるいはデフレスパイラルの入り口の、わきを通り過ぎていると私は思っております。だから、うまくいけば、わきを通り過ぎていい方へ行きますが、下手をすると吸い込まれる可能性もないとは言えないというほどの危機感を持っております。その点では鈴木委員危機感は共有していると思いますが。  十六兆円の総合経済対策、これが各都道府県、市町村、自治体の九月予算で通りまして、間もなく実効をあらわしてまいります。続いて、切れ目なく十兆円の第二次補正予算、これは十五カ月予算になっておりますが、これが出てまいりますし、また、減税も三兆円の追加と仰せになりましたけれども、恒久的な減税ということで、かなりマインドに影響を与えると思っております。そういったことが重なりまして、恐らくかなりの下支え効果はあると思います。  しかし、世界的な情勢がかなり厳しい環境になっている、このことも無視できません。したがって、場合によっては、より大胆な手法も必要になる可能性はあると思いますが、今のところは、現在打っている手の状況、これが十月、十一月からあらわれてくると思いますので、その成り行きを見きわめたいと考えております。
  83. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 場合によっては抜本的な新たな対策が必要かもしらぬが、今のところは見きわめていくとおっしゃいますが、十月、十一月まで見きわめている間にえらいことが起きるおそれがあると思うんですね。第一、九月末に中間決算を越えるわけですね。その発表をしなければいけないのが十一月です。九、十、十一というのは大変な時期になるだろうと思いますから、そんなに悠長にしていられたのでは日本国民ははらはらしてしまうと思うんですね。  今、十六兆円の対策で何とかある程度は期待できるとおっしゃいましたが、聞いていて、ちょっと待ってくださいと言いたいことが何カ所かありますね。  例えば、一・五兆円を単独事業で地方にやらせることになっているんですよ、あの十六兆円の中では。もうお調べがついていると思いますが、今、地方公共団体は相当財政状況が悪いものですから、やりますよと言っている地方公共団体はむしろ少数ですね。極めて限られています。だから、あの一・五兆円は私はほとんど当てにならないと思っています。  それから、恒久減税になって国民が喜んでいるというけれども、それなら最近までの、七月までの家計統計を見て、一向に消費マインドは回復していないという結果になっていますでしょう。消費性向は上がってきていない。それからその他の情報を見ても、消費マインドは回復したなんという話は全然ないですよ。だから、これも長官、ちょっと楽観的に過ぎますぞというふうに申し上げたい。  それから、先般、総括質疑のとき申し上げて、時間がなくて長官のお答えをいただけなかったのですが、今設備投資が大変な勢いで落ちてきている。それも落ち方が加速してきているんですね、この四−六の統計を見ても。あるいは、先行きを示す機械受注を見ても加速して落ちている。設備投資というのは公共投資の二倍の規模を持っていますから、公共投資を仮に一〇%持ち上げたって、設備投資が五%落ちたら相殺されてしまう。実際、一〇%なんて上がってこないのですから。  そういうことを考えても、この十六兆円の効果だけじゃ足りないという見切りを今すぐつけなかったら危ないですよ。十一月まで様子を見るなんて言っているうちに何か起きるおそれは非常に高いと思いますけれどもね。そうしたらもちろん長官の責任そして小渕内閣の責任になりますけれども、私は危ないというふうに思うんですね。  最後に堺屋長官が言われた、世界の情勢を見てもというのは、大変大事なポイントだというふうに思います。宮澤蔵相も世界の情勢に大変詳しくていらっしゃる。直接外国の新聞雑誌もお目通しだからよくおわかりだと思いますが、ここ数年世界経済を引っ張っていたアメリカ経済は、景気循環的な調整局面がついに近づいてきている。それを先取りして、株価が二割調整されましたね。  株価はちょっと上がり過ぎだということはグリーンスパンも言っていた。ですから、いずれ二割ぐらいの調整が起きるだろうという意見はエコノミストの間で一般的でしたが、二割調整が起きた現在、世界を見渡すと、ラテンアメリカ諸国はがたがただ、ロシアはもうどうしようもない、東アジアは相変わらずだめだね、日本もがたがたしている。そうしたら、もう一つ……
  84. 山本有二

    山本(有)委員長代理 質疑時間が終了しておりますので、御協力をお願いします。
  85. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 はい。もう一つ、世界経済が動揺する、これを救えるのは日本だけじゃないか。ロシアだって、ラテンアメリカだって、東アジアだって、自分の力じゃ立ち上がれない。残念ながら、アメリカも景気循環的に調整局面に入ってきている。日本だけだと言っているわけですね。  そういうことを考えても、早く、年内に手をお 打ちください。そうしないと、金融の波乱だけじゃない、もっと実体経済の面から日本発の混乱、あるいは世界の混乱を日本が助けなかったという批判が起きると思います。  これで質問は最後にいたしますが、何か御意見ございましたらお伺いしたいと思いますが、いかがですか。
  86. 堺屋太一

    堺屋国務大臣 鈴木委員危機感をかなりの程度私も共有しております。いろいろと情勢を見きわめて、そういう世界の経済を破綻させないように用心深く考えていきたいと思います。
  87. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 一刻も早く手を打っていただきたいと思います。  質問を終わります。
  88. 山本有二

    山本(有)委員長代理 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、木島日出夫君。
  89. 木島日出夫

    ○木島委員 日本共産党の木島日出夫でございます。  長銀への公的資金の投入の問題についてお伺いをいたしたいと思います。  長銀は、日本リースに対する約二千五百億円の貸出金、正確に言いますと、ことし三月の決算で長短合わせて二千五百五十六億八千万円、この貸出金を全額放棄し、公的資金を受けるといいます。日本リースの九八年三月期の決算、私持ってきているのですが、これによりますと、資産合計が二兆二千四百三十億円、負債合計が二兆二千百九十三億円、資本合計二百三十七億円で、一応、数字の上では債務超過にはなっておりません。  しかし、この資産の中身を精査いたしますと、この委員会でも問題になりましたが、いわゆる固定化営業債権が三千四百十六億八千二百万円計上されております。固定化営業債権の概念についてはこの決算書で明記されているわけですが、破産債権、更生債権その他これらに準ずる債権のことであります。要するに、債権回収はほとんど不可能なものであります。  そうしますと、もうそれだけでも日本リースは三千億円を超える債務超過状態になるわけです。固定化営業債権だけではなくて、営業貸付金、これの中身も精査すると問題債権がたくさんあるようですが、それは棚に上げましても、そういう状況に今あるというわけです。  長銀日本リースに対して債権放棄をする、その穴を埋めるために公的資金を投入するということは、結局、経済的にはどういう意味かというと、日本リース救済のために公的資金、税金が使われるということになるわけでありまして、これはもう到底認められるものではないと私どもは考えます。同じ長信銀の一つである日本債券信用銀行は、御存じのように、関連ノンバンク三社を破産手続で解体しているわけでありますから、これとの比較でも、今回問題になっているスキームは到底国民の理解を得られるものではないと考えます。  そこで、日本リースの固定化営業債権の相手先の一つに、太陽エステート株式会社というのがあります。決算書によりますと、日本リースの債権額は百五十二億一千百万でありまして、日本リースの固定化債権のリスト、ベストテンのうちの六番目になっている。  そこで、宮澤大蔵大臣にお聞きしたいのですが、この太陽エステート株式会社というのを御存じでしょうか。
  90. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 存じません。
  91. 木島日出夫

    ○木島委員 太陽エステート株式会社というのは、一九八六年、昭和六十一年三月二十五日に設立をされました、土地建物の分譲、賃貸、管理等々を目的とする会社でありまして、資本金が一億三千五百万円であります。代表取締役は、現在の謄本では塚原裕氏であります。  宮澤大蔵大臣は、この塚原裕氏という太陽エステート株式会社の代表取締役、御存じありませんか。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  92. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 知りません。
  93. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは確認だけさせていただきたいのですが、ことしの九月二十五日付の週刊ポスト誌によりますと、この塚原裕氏の長男のところに嫁がれたのが、現在の広島銀行会長の岸田俊輔氏の次女だ、八九年に宮澤夫妻がその結婚の媒酌人を務めている、そういう記載があるのですが、これは、では全く事実無根の報道でしょうか。
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 事実ではないと思います。
  95. 木島日出夫

    ○木島委員 そうですが。これはちょっと、もう公にされている週刊誌ですからね。(発言する者あり)いやいや、確認しているのですよ、ですから。全然事実と違うことがこれに記載されている……(発言する者あり)いやいや、ですから確認しているのですよ。  それじゃあれですよ、全然関係ないと言うなら、では、知らないということを前提にしてお聞きします。  これまで書かれてしまいますと、ちょっと大問題なんですね。「ファミリー企業に百五十二億円」というような見出しになっていまして、何か法的措置もおとりになるお考えですか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうも思い当たりのないことであります。
  97. 木島日出夫

    ○木島委員 それではいいです。それはもう前提にして、太陽エステートのことについてお聞きをいたします。  太陽エステート株式会社というのは、九二年、平成四年でありますが、この五月に茨城県日立市小木津町にザ・オーシャンというゴルフ場をオープンしています。このゴルフ場はもともとは茨城県労働者住宅生活協同組合が勤労者のためのゴルフ場という名分で開発を進めてきたものでありますが、八八年、昭和六十三年九月にこの太陽エステート、いわゆる日本リースの固定化営業債権の貸出先ですが、この塚原氏が率いる太陽グループが株式会社茨城県労住建設、こういう会社をつくって、協同組合がゴルフ場をつくろうとしたようでありますが、その全株式を買収して開発したものであります。  宮澤大蔵大臣は九一年、平成三年十一月に総理大臣となって直後の十二月二十日、いわゆるそれまでやられていました不動産業向けの融資の総量規制の一部解除といいますか解除、トリガー方式を採用したと言われているわけですが、これをしているわけであります。  その通達によりますと、総量規制は解除をする。しかし、不動産担保融資を行うに当たっては、担保となる不動産の価格を把握するに際し、時価に偏重することなく価格の妥当性を十分チェックするとともに、適正な掛け目に基づいて担保権を設定する等、不動産担保評価の厳正化に努めること。また、貸金業を行う関連会社における投機的な土地取引等に係る融資を厳に排除するため、当該関連会社に対して上記の趣旨の徹底を図ること。  こういう、総量規制はとりあえず解除をして、トリガー方式に移行はするけれども、不動産担保融資や貸金業を行う関連会社における投機的な取引については、引き続きこれを排除するためにしっかり監視をしていく、こういう通達を出されておりますが、もう承知をしておりますね。これの徹底方はどんな状況だったのでしょうか。
  98. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 それは、そういう通達を出したということ、その後どういうことになったかということは、ちょっと私存じません。
  99. 木島日出夫

    ○木島委員 当時、茨城県内では、このゴルフ場造成が社会的に非常に大きな問題になりました。  地元で発行する新聞に常陽新聞というのがあるのですが、このゴルフ場がオープンしたのは平成四年五月十六日であります。一九九二年であります。九〇年、平成二年の九月ごろに発行された常陽新聞の記事を見ますと、ここへ持ってきてはいるのですが、この太陽グループが株式会社茨城県労住建設の全株式を買収するわけですが、この買収後、ザ・オーシャンゴルフクラブ、こういう名前で今営業しておりますが、これが発行したパンフレットによると、出資会社として記載されているのは太陽グループの太陽エステート、太陽商事のほか、日本リース、施工者の清水建設の四社 だ、そういう記事があります。  また、同じころ発行された常陽新聞新聞記事には、この太陽グループがゴルフ場造成のために頒布しているパンフレットには、大槻文平日経連元会長、当時名誉会長を理事長に委託しているほか、日立製作所など上場企業の社長らが理事として名前を連ねている。起工式では同理事長がくわ入れを行い、名門ゴルフ場としての発展を出席者に訴えていた。政治家などもこのオープンには参加しているようであります。  蔵相は、この茨城県の日立につくられているゴルフ場、このことを御存じありませんか。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 何か違った話じゃないかと思うのですが、聞いたことも行ったこともございません。
  101. 木島日出夫

    ○木島委員 それでは結構です。  もう一つ、では太陽エステートの問題について触れたいと思うのです。  太陽エステート株式会社は、先日私もここで取り上げましたが、現在、株式会社銀座二丁目ビルが所有して、長銀がつい先日、平成十年八月十四日に根抵当権設定仮登記をした中央区銀座二丁目のビルの敷地について、謄本等によりますと、八六年、昭和六十一年、ですから会社設立直後ですね、七月十二日に、住専七社の一つである住総の関連会社住総エステートサービス株式会社などから、この土地を、売買によって所有権移転登記を受けております。そして、これを九一年、平成三年七月五日に株式会社日本リースレックに売却する。その間、そして移転登記が日本リースレックになされるまでの間、この土地の所有名義人となって、その間、日本リースを債権者としてたび重ねて根抵当権が設定されているわけです。  ここから何が読み取れるかというと、もう明らかですが、太陽エステート株式会社というのは日本リースと一体となって投機的な不動産取引をしていたことをうかがわせるわけであります。  また、太陽エステート株式会社というのは、住専七社の一つ住総との不自然な取引については九六年の住専国会でも取り上げられてまいりました。ちょうどこの時期は宮澤さんが大蔵大臣として、八六年、昭和六十一年七月から八八年、昭和六十三年十二月までの間ですが、公定歩合を二回にわたって引き下げる、それから八七年五月にはリゾート法が成立するなど、バブル経済を引き起こした責任を負っている。まさに太陽エステート株式会社は日本リースなどと一体となって、またその背景には金子元である長銀もあるわけですが、そういうところと一体となってビル転がしをしていた。その破綻の結果が今日の状況を引き起こしているということは明らかだと思うのです。  先日、長銀日本リースの経営者が当委員会参考人として呼ばれまして、今日破綻に瀕している最大の原因が、このバブル経済の時代に本業から離れてしまった、そして不動産の乱脈な取引にのめり込んでしまったと、それは当事者たちがはっきりと述べ、一応反省の弁を述べているわけであります。その一つの典型が太陽エステート株式会社にも見られる。その実動部隊として乱脈投機的な不動産取引に狂奔した、それがバブルが崩壊して今日行き詰まっている。その一つの姿が、現に営業はしておりますが、茨城県のこのザ・オーシャンゴルフクラブのゴルフ場にも見られる。  ですから、本当に徹底して、そこまで金の流れ、バブル時代にどういう金の使われ方をしたのか、それが後の経営の状態を考えない大変投機的な、乱脈な金の流し方ではなかったか。あるいは、大蔵省が再三出した規制、不動産投資に対する総量規制、あるいは、一部解除したとはいえ、ノンバンクなどの不動産投資に対してはきちっと監視しなきゃならぬ、そういうことが本当に実行されたかどうかがまさに問われていると思うわけであります。  それで、今日、長銀日本リースに対する債権を放棄する。そうするとどういうことになるかというと、日本リースは二千五百億円放棄されますから、結局、自分が太陽エステート株式会社などへ貸し出している、焦げついてしまっている固定化営業債権なるものの回収も緩くなるわけですね。そういう玉突き現象が起きることは間違いない。そして、そのために公的資金を投入するということは、結局、最悪のモラルハザードを引き起こす、今後とも引き起こすことになると私は思うわけであります。  ですから、監督庁長官、おいででありましょうが、再三監督庁は、長銀は調査の対象だ、しかし、現行制度上その下の関連ノンバンクに対しては直接調査の権限がないんだというので、なかなかメスを入れようとしないわけでありますが、私はそれでは本当にいかぬと思うのです。私は、むしろ日本リースに対して、徹底的に、財務を洗うだけじゃなくて、日本リースから茨城にゴルフ場を持っている太陽エステートですか、これへの融資がどうだったのか、担保がどうだったのか、現状がどうなっているのか、焦げつきということで財務諸表には載っていますが現状がどうなのか、そこまで徹底して洗わなければ、本当の意味での日本リースの財務もつかめない、そして長銀財務も正確にはつかめないということになるんじゃないでしょうか。  監督庁長官に御所見を求めます。
  102. 日野正晴

    ○日野政府委員 木島委員大変御案内のとおり、私どもに与えられている権限はフルに活用していきたいと思っておりますが、与えられていない権限を使ってメスを入れるということは法律では許されていないことでございますので、あくまでもその対象となる金融機関もしくはその子会社に対する検査、立入検査、監督を通じて、その関連ノンバンクの資料などもその金融機関を通じて実情を把握していきたいというふうに考えているところでございます。
  103. 木島日出夫

    ○木島委員 どうもそんな態度では、到底、私は国民の皆さんは、長銀に対する公的資金の投入を許さぬと思うわけであります。長銀への公的資金の投入で利益を得る者はだれかという視点で物を考えていただきたい。  第一に、長銀そのものであります。長銀は破綻、清算、解体を免れることになるわけであります。  第二に、私は住友信託銀行だと思うのです。お荷物を背負うということを言う人もいますが、高橋頭取は第二分類債権は継承しないとも言っているわけであります。要するにおいしいところだけを受け取ることになるわけでありまして、焼け太りになる可能性もあると私は思います。  第三に利益を得る者は、何といっても日本リースなど関連ノンバンクで、債務免除を受ける、こういう関連会社。  そして、第四番目には、その結果として、日本リースなどに融資をしている金融機関長銀債権放棄をした分だけみずからの債権の回収率が高まることになるからであります。  そして、第五は、日本リースなどから融資を受け、返済しないで放置しております、今私が指摘した太陽エステート株式会社などの貸出先。結局、事実上、日本リースからの取り立ての追及は緩んでくるからであります。  こういうことになりますと、国民の犠牲で乱脈経営をした当事者ばかりがうまい汁を吸うことになる、そういう公的資金の投入になる、ならざるを得ないと思うわけです。  大蔵大臣の御所見を伺って、時間が来たようですから、質問を終わらせていただきます。
  104. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 その問題につきましては、監督庁長官から、二つの私企業の合併の条件に関連して十分御説明があったと私は思っています。
  105. 木島日出夫

    ○木島委員 もうこんな状況では、到底公的資金の投入は許されないということを重ねて厳しく指摘いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  106. 相沢英之

    相沢委員長 これにて木島君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  107. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 時間がございませんので、二問だけ質問させていただきたいと思います。  社会民主党は、貸し渋り対策、善意の借り手対策、地域経済や雇用対策の観点から、金融機能安定化緊急措置法の廃止を進んで望むものではございません。しかしながら、長銀合併スキームとして、言われるような、どう見ても債権処理の償却原資に充てるような使い方では、野党三党が主張しておられるように法案の廃止もやむを得ないというふうに考えております。自民党も修正協議の中で廃止に進むことの方向性を示しておられるようでございます。しかしながら、出てくる案が破綻前処理として公的資金の投入の蛇口を二つも三つもにふやすような案では、国民は、何を考えているのかということになると思います。  宮澤大蔵大臣は破綻前処理のルールの制度化に前向きに取り組む姿勢を示されているものと判断をしているところでございますが、破綻の蓋然性の高い金融機関には公的資金は投入しないことを含むいま一度のルール制度化について、どういう御見解をお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
  108. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 御質問の意味はわかっておりますけれども、その点につきましても、各党間でいろいろ、どうすればよりよい制度が生まれるかという御協議が継続していると伺っておりますので、今の段階で私の意見を申し上げることは差し控えさせていただいた方がよろしいのではないかと思っております。
  109. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 各党で協議をしているから意見は控えさせていただきたいということでございます。  いろいろな案が示されているようでございますけれども、例えば自己資本比率八%、四%、いろいろありますが、それよりも低いところでは公的な管理に移すというような話も聞こえてくるわけですが、自分たちで持っている優良な債権も処理をせずに公的な管理に移し、そこで株の買い取り等行いながら公的資金を投入するというようなことは、国民は絶対納得しないのではないかというふうに、私はいろいろな聞こえてくる話を聞きながら考えているところでございます。  二点目ですが、自治省が九七年分の政治資金の報告書と政党交付金の使途報告書を公表いたしました。  これによると、自民党は、長銀など十二行からそれぞれ千八百四十八万円の献金を受けたのを初め、金融機関からの献金総額は約五億円に上っているというふうに伝えられております。もちろん、適正に処理されたもので、問題だというようなことを殊さら声高に言うつもりはございませんが、果たして国民感情からすればどうでしょうか。銀行から献金を受け取りながらも自民党は銀行に対して断固たる措置をとるんだと、好意的な受けとめ方をする国民がいるはずはないと私は思うわけでございます。金融システム安定化のために必要な公的資金の投入まで国民からは不信の目で見られるでありましょう。  こうした政治家と国民の乖離をなくすためにも、金融機関からの政治献金は禁止すべきだと私は思うのでございますが、大蔵大臣の御所見はどうでしょう。
  110. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 どうも私、詳細を存じませんので十分にお答えができません。恐らく、もしそういうことがございますと、自民党としては、この長銀という銀行がこのように御議論の対象になりますのは極めて最近のことでございましたから、そういうことを知ってしたとも思われませんが、しかし、私、自分の知識の少ないことでございますので、御指摘の御趣旨は承っておきたいと思います。
  111. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 破綻前、破綻後、公的資金の投入、いろいろな形が検討されるというふうに思いますが、社会民主党は、やはりこの銀行からの政治献金というのは、国民は絶対にこれからは納得しないということを強く意識しているものでございまして、その辺を申し上げて質問は終わりたいと思います。ありがとうございました。
  112. 相沢英之

    相沢委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十六分散会