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1998-09-03 第143回国会 衆議院 金融安定化に関する特別委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月三日(木曜日)     午後三時三十分開議 出席委員   委員長 相沢 英之君    理事 石原 伸晃君 理事 藤井 孝男君    理事 村田 吉隆君 理事 保岡 興治君    理事 山本 有二君 理事 池田 元久君    理事 中野 寛成君 理事 坂口  力君    理事 谷口 隆義君       愛知 和男君    伊藤 達也君       伊吹 文明君    江渡 聡徳君       大島 理森君    大野 松茂君       大野 功統君    金田 英行君       河村 建夫君    倉成 正和君       佐田玄一郎君    砂田 圭佑君       滝   実君    津島 雄二君       中谷  元君    蓮実  進君       宮本 一三君    山本 公一君       山本 幸三君   吉田六左エ門君       渡辺 喜美君    岩國 哲人君       上田 清司君    枝野 幸男君       岡田 克也君    北村 哲男君       仙谷 由人君    中川 正春君       古川 元久君    石井 啓一君       上田  勇君    大口 善徳君       前田  正君    鈴木 淑夫君       西川太一郎君    西田  猛君       木島日出夫君    佐々木憲昭君       春名 直章君    濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         通商産業大臣  与謝野 馨君  出席政府委員         内閣審議官   白須 光美君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         大蔵省国際局長 黒田 東彦君         中小企業庁長官 鴇田 勝彦君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         衆議院調査局金         融安定化に関す        る特別調査室長) 藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 九月三日  辞任         補欠選任   岡田 克也君     中川 正春君   海江田万里君     岩國 哲人君   西川 知雄君     前田  正君   秋葉 忠利君     濱田 健一君 同日  辞任         補欠選任   岩國 哲人君     海江田万里君   中川 正春君     岡田 克也君   前田  正君     西川 知雄君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  不動産に関連する権利等の講堂に関する臨時措  置法案(内閣提出第一号)  金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律及び預金保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二号)  債権管理回収業に関する特別措置法案保岡興  治君外三名提出衆法第一号)  金融機関等が有する根抵当権により担保される  債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する  法律案保岡興治君外三名提出衆法第二号)  競売手続円滑化等を図るための関係法律の整  備に関する法律案保岡興治君外四名提出、衆  法第三号)  特定競売手続における現況調査及び評価等の特  例に関する臨時措置法案保岡興治君外四名提  出一衆法第四号)      ————◇—————
  2. 相沢英之

    相沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出不動産に関連する権利等の調整に関する臨時措置法案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案並び保岡興治君外三名提出債権管理回収業に関する特別措置法案及び金融機関等が有する根抵当権により担保される債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する法律案並び保岡興治君外四名提出競売手続円滑化等を図るための関係法律整備に関する法律案及び特定競売手続における現況調査及び評価等の特例に関する臨時措置法案の各案を一括して議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君及び預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 相沢英之

    相沢委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉成正和君。
  5. 倉成正和

    倉成委員 自由民主党の倉成正和です。  本日は、デリバティブズ取引について、金融監督庁日本銀行に御質問をさせていただきたいと思います。  金融監督庁から当委員会提出された資料によりますと、デリバティブ取引額は、平成九年三月末で想定元本二百兆円を超える銀行が五行、それからまた、大手十九行を合計しますと、二千九十四兆円に上るという数字が出ております。想定元本が多いことから、設定その他を間違えますと大きな損失が発生する危険もあると言われております。当委員会提出されたデータというのは一年半前のデータでありますが、金融当局は最新または日々の動きについてどの程度実態把握しているのでしょうか。金融監督庁長官日銀総裁にそれぞれお尋ねをいたします。
  6. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  デリバティブ取引が近年ますます高度化しておりまして、ただいま委員が御指摘になりましたように、量的にも拡大する傾向にございます。これは、金融機関健全性を確保するという観点からも、無視できないものになっております。  金融監督庁といたしましては、今後このモニタリングを充実いたしまして、その実態把握を強化していくという必要があると考えておりますけれども、現状では決算期ごと取引種類別想定元本時価評価損益等報告、開示されていることに加えまして、昨年十二月に導入されましたマーケットリスク規制に基づく四半期ごと報告が行われているところでございます。  なお、複雑高度化したデリバティブ取引等個々取引チェックするといった監督手法は物理的にも技術的にも大変困難を伴いますために、むしろこれらの取引に係る各金融機関リスク管理体制チェックする、こういう監督方法をとることによりまして、これが国際的な流れともなっておりますが、こうした方法手法での検査監督をこれから充実してまいりたいと考えております。
  7. 倉成正和

    倉成委員 次に、同じ項目でございますけれども日銀総裁お尋ねしたいと思います。
  8. 速水優

    速水参考人 日本銀行としましては、金融機関に対する考査モニタリングを通じまして、銀行の手がけております幅広い業務実態把握するように努めておるわけでございまして、デリバティブ取引につきましても、それぞれの銀行取引度合いに応じて、取り組み方針リスク管理手法などについて、適宜実態把握に努めているところでございます。  こうした新しくどんどん拡大していく金融市場高度化されていく金融市場の一方では、やはりリスクが一段と多様化していくわけでございまして、日本銀行としても、個々金融機関の、市場高度化リスク多様化に適切に対応し得るように、考査を通じて各行のリスク管理体制の点検に努めております。また、デリバティブ等新種金融商品に関する理論的研究を進めておるところでございます。  具体的に申しますと、考査局内に、金融先端技術に関するリスク管理体制を評価する専門チームを設けております。これには専門家が約二十人入っております。それから、金融研究所には、先端技術理論的研究を行うスタッフとして五名の者が研究に励んでおります。  以上でございます。
  9. 倉成正和

    倉成委員 今、日銀総裁からデリバティブズに対する研究などについてもお答えがございましたけれどもデリバティブズのような高度な金融商品を扱う金融産業全般に、米国等では、既に金融産業IT産業すなわち情報技術産業であるとまで言われております。このような中で、金融当局は、現在の状況あるいは今後の動向について、どの程度実際に把握をしているのでしょうか。体制専門家の人数なども含めて、御説明を伺いたいと思います。  日銀総裁から日銀実態についてお話がございましたので、金融監督庁長官からお答えをいただければと思います。
  10. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  このデリバティブ取引を含むいわゆるオフバランスの取引が急速に増加しておりまして、私どもといたしましても、これらの市場関連取引に係るリスク管理体制実態把握に努めているところでございます。  具体的には、BISのガイドラインなどを踏まえまして、各金融機関におけるリスク管理体制整備状況等を的確に把握するために、市場関連リスク管理体制チェックリストというものを策定いたしております。ここで、リスク管理基本方針経営陣の認識と役割、リスク管理のための組織体制各種リスク管理などの項目につきまして、各種資料提出を求めているところでございます。これらの資料説明の適否、問題点の所在の有無などを明らかにするように努めております。  このような金融業務高度化複雑化に対応するために、金融監督庁発足に当たりまして、検査部内に市場リスク検査室というものを設けております。組織整備を図ったところでございまして、現在、この市場リスク検査室を中心にさらなる検査技術の向上を図っているところでございます。  さらに、高度化の著しい金融商品金融取引等の実効性ある検査のために、これらの商品取引等に精通した民間専門家活用することが有益であると考えております。  このような観点から、金融監督庁発足に当たりまして、既に公認会計士五名を検査官に登用いたしましたし、また、非常勤ではございますが、検査部の参事に商法学者を登用したところでございます。  また、先般、八月三十一日に金融監督庁平成十一年度の機構・定員要求をいたしましたが、ここでは、デリバティブ取引等の高度の専門性を有する検査を専門的に担当する専門検査官、これは仮称でございますが、これを十八名要求いたしまして、検査官合計で百十三名の増員を要求しているところでございます。今後、この民間専門家活用、登用を含めまして、専門家の育成に努めてまいりたいと考えております。
  11. 倉成正和

    倉成委員 今、金融監督庁長官からお話がありまして、それなり体制は整っているとは思いますけれども、やはりこういう分野はどんどん新しい商品が開発されていくという分野ですので、それなりの対応をしておかないといけない分野だというふうに考えております。その定員の増加も含めて、民間人活用その他をぜひ今後とも進めていただきたいと考えております。  以上、今申し上げましたデリバティブズのいろいろな問題が、リスク管理の問題があるかと思いますけれども、そういう観点から、長銀破綻した場合、システミックリスク観点から何が起こると想定されるでしょうか。あるいは、長銀だけに限るとお答えしにくい場合は、一般大手行破綻した場合はどうなるのでしょうか。例えばそういうものについて、コンピューターシミュレーションのような手法で分析はできないものでしょうか。  まず、全般的なお話大蔵大臣からお話しいただければと思います。
  12. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 詳しくは監督庁長官にお願いをいたしたいと思いますけれども、私も詳しいことを存じておるわけではありませんけれどもデリバティブスというものが比較的最近、しかも非常に急速に発達したものでありますだけに、これに関するいろいろなルールというものは必ずしも確立しているようではございません。  しかし、ベアリング・ブラザーズの場合でも見ますように、ちょっとした、一支店長のいわば自分の動機による取引がついに銀行の倒産に至ったというようなことがございまして、いわゆる元本が見せるほどネットは大きくないにいたしましても、しかし単位が兆ドルでございますので、やはりこれの及ぼす影響は大きい。  殊に、仮に、仮にでございますが、我が国のある大きな銀行デリバティブについてデフォルトを起こしたということになりますと、恐らくそれは日本銀行の国際的な信用の欠如をあらわすものとどうしてもとられるでございましょうから、そのデフォルトによって、我が国のほかの銀行もそういうデリバティブスのネットワークの中に入ることを拒否されるような心配もございましょうし、無論ジャパン・レートというようなものも別途影響いたすと思いますが、未知の世界に近いだけに、ちょっと、影響の及ぼすところはかり知れないものがあるのではないかと考えております。
  13. 倉成正和

    倉成委員 今、一行デフォルトが起こった場合はそのリスクははかり知れない話になるのではないかという大蔵大臣の御答弁をいただきましたけれども、その辺につきまして、金融監督庁長官の方から御説明いただきたいと思います。
  14. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  仮にデリバティブ取引だけに限定いたしましても、この取引破綻によって一時的に清算されるということになりますと、国際金融市場に大きな混乱が生じるおそれがあることは明らかではないだろうかというふうに考えられます。また、そればかりでなしに、大手銀行破綻した場合には、そのほかに、信用不安が連鎖することによりまして他の金融機関市場の攻撃にさらされるとか、あるいは信用収縮が生じまして企業の資金調達が困難になるといったようなおそれがあるというふうに考えられます。  そういった意味で、デリバティブ取引を含む取引を行っているような大手銀行破綻いたしますと、信用秩序維持等国民経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずるものと考えられます。
  15. 倉成正和

    倉成委員 今お答えをいただいたように、かなりのシステミックリスクというのが想定されるというお答えでございましたけれども、ちょっと繰り返しの質問になって大変恐縮でございますけれども長銀公的資金注入について議論がされているわけですけれども長銀に限らず一般大手行について、破綻をする前に処理する場合と破綻後に処理する場合のコスト比較というのは一体どうなるのでしょう。そういう大きな比較ができないものなのかなという感じがしております。  例えば都銀の場合は、今リストラがどんどん進んでおりますけれども、多いところでは一万八千人からの行員がおりますし、これを都銀九行で平均しますと、一行当たり大体一万四千三百名ぐらいの行員がいるわけですけれども破綻の場合は当然全員が失業というふうになるわけですから、失業となれば当然失業保険という形の社会的コストが出てくるわけでございまして、そういう場合も含めて、コスト比較破綻前に処理する場合と破綻した後に処理する場合のコスト比較みたいなものができないだろうか。その辺のところが国民の間にもなかなかわかりにくい点ではないかと思いますので、重ねての質問で恐縮でございますけれどもお答えいただければと思います。大蔵大臣、お願いします。
  16. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そういうシステムのようなアナリシスがございますかどうか、実は不敏で存じませんが、普通に考えますと、破綻前でございましたら、御承知のようにいろいろな救済方法がございます。  仲間の金融機関と合併するとか、あるいはまた早期是正措置で救われる場合もございましょうし、あるいは、もし資本比率が悪ければ公的な資金導入を申請するといったような方法がございまして、つまり、今倉成委員のおっしゃいますことをそのままお答えいたしますならば、やはり破綻をしないで済むための方法がいろいろございます。その場合にもちろん、当該銀行が厳しいリストラをしなければならないとか、役員の責任問題が起こるとか、それはいろいろございますけれども社会に与えるインパクトというものはそれで救われることになる。  しかし、破綻となりますと、これが殊に突然起こりますと、いわば全くオーダリーに物事の処理はできないわけでございますので、それだけでも世間に非常に不安を与えますが、いわんや、銀行の活動の範囲が大きければ大きいほど社会に与えるインパクトは大きゅうございますので、社会的なコストはやはり破綻による場合には非常に大きいというふうに考えております。
  17. 倉成正和

    倉成委員 今、大蔵大臣の方から御回答をいただきましたけれども、やはり大手銀行破綻ということになりますと、その社会的なコストというのは大変なものだ。これが、できれば数字的なもので計算ができると非常に国民の間にもわかりやすいだろうなという感じはいたしておりますが、なかなか難しい点があるかと思います。  次の質問をさせていただきたいと思います。これもなかなかお答えにくい質問であると思いますけれども、あえて質問をさせていただきます。  世間ではさまざまな風評といいますか、風説が飛び交っておりまして、長銀ケースは特殊なケースではないのではないかという話もあります。すなわち、ほかに破綻懸念されるような大手行はないのでしょうか。  長銀に対して破綻前の処理ができないとなりますと、当然ながら他の大手行についても破綻前の処理ができないということになります。その場合、仮に大手行数行について破綻懸念が出てきた場合、我が国金融システムそのものへの信認を失うことになると考えますけれども、この点はいかがでございますか。大蔵大臣、お願いします。
  18. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 他の銀行のことを私存じませんので、金融監督庁長官の御所管でございますが、長銀の場合を見ておりますと、先日来たびたびこの委員会でもお尋ねがございましたように、ことしの三月に資本導入をするときには決して危険な銀行というふうには恐らく金融危機管理委員会もお考えではなかったでございましょうし、世間も考えていなかったわけでございます。  それで、アタックが起こりまして、それがかなり広く世間に伝えられるようになりましたのはある月刊誌の記事からであったと思いますけれども、御承知のように、あそこは金融債発行しておりますから、新規の募集が難しくなった、あるいは期限前の償還というようなことも起こってくる、そういう意味で金繰りが非常に、てきめんに苦しくなってまいります。  株価はしたがって暴落するというような、そういう状況の中で、銀行実態が悪くなったと申しますよりは、まず金融的に非常に危機に陥った、こういうことが先に立ったようでございますので、それに従って実態も悪くなったということでございますが、どうもあの経緯を見ておりますと、いわゆる危機説というものが危機をつくったという印象が深いわけでございます。  ですから、今後そういうことをどういうふうにして防ぐのがよろしいのか。やはり根本は、ちゃんとした検査がございまして、そしてその検査に基づいて、銀行自身自分の利益のためにある程度のものをディスクローズしていくということが一番いい方法であろう。今それができておりませんので、将来はそうなることがいいのかなと思っております。
  19. 倉成正和

    倉成委員 同じ質問を、金融監督庁長官にもお尋ねしたいと思います。
  20. 日野正晴

    日野政府委員 お答えをいたします。  ただいま宮沢大蔵大臣が御答弁されたことに尽きると思いますが、私どもは、現在、大手十九行に対する検査を集中的に行っております。自己査定結果を踏まえた、外部監査によるチェックを経た本年三月期の決算で発表されているところでは、自己資本比率はいずれも八%を確保しておりまして、他の大手十八行について、現時点では、今御懸念になっておられるような破綻という銀行があるというふうには認識しておりません。
  21. 倉成正和

    倉成委員 今あえてお答えにくい質問をさせていただきましたけれども、今現在破綻をしそうな銀行があるかどうかという意味よりは、今後そういうケースが、三月の時点ではよかった、あるいは九月の時点ではよかったという銀行であっても、将来、先ほどもお話がございましたように、この銀行がどうも危ないらしいという風説が出てくるだけでも、その銀行についてのいろいろな意味での信用が失われて、破綻に近い状態に追い込まれるというケースが今後とも出てくるのではないかなと思っております。そういう場合に、今回の長銀についての破綻前の処理のようなことができない場合には、できないということに仮になりますと、非常な大きな社会的な不安を起こすのではないかなという気がしております。  お尋ねしたいことはほかにもございますけれども、私が御用意いたしました質問は大体これで終わりますので、時間がちょっとありますが、これで質問を終わらせていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
  22. 相沢英之

    相沢委員長 これにて倉成君の質疑は終了いたしました。  次に、岩国哲人君。
  23. 岩國哲人

    岩國委員 民主党を代表いたしまして、質問させていただきたいと思います。  まず最初に、長銀債償還発行の毎月の計画について、九月、十月、十一月、十二月と、どのようになっておるのか。これは五年物の利付債について、その計画をお示しいただきたいと思います。
  24. 日野正晴

    日野政府委員 突然の御質問でございますので、具体的な数字を今ちょっと持ち合わせておりませんので、お許しいただければありがたいと思います。
  25. 岩國哲人

    岩國委員 委員長、これは事前に、そういった毎月の償還額、それから発行額、九月、十月、十一月、十二月、けさからそういうことを要求し、通告してあります。これは、ぜひともこの委員会提出してもらうように理事会でお取り計らいをいただきたい、そのように思います。
  26. 相沢英之

    相沢委員長 後刻理事会で相談いたします。
  27. 岩國哲人

    岩國委員 次に、この利付長銀債発行条件についてお伺いします。  利付長銀債発行条件表面利率幾らなのか、また市場利回り幾らなのか。日本興業銀行との比較において、簡潔に御説明いただきたいと思います。
  28. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  利付長期信用債券、いわゆるリッチョーと呼ばれているものでございますが、これは五年物の発行条件でございますが、本年の八月十日現在の発行条件としては、利率が、八月債が年二・一%、それから七月債が年二・一%。募集期間は八月十一日から八月二十日までということになっております。(岩國委員市場利回りは」と呼ぶ)ちょっと今のところ資料を持ち合わせていませんので、調べさせていただきます。
  29. 岩國哲人

    岩國委員 発行利回り市場利回りの違いは、当然監督庁の方ならおわかりだと私は思いますけれども。要するに、発行されたときの利回りのままで市場取引されているとは限らないわけであって、市場がイエローカードを突きつけているのか、レッドカードを突きつけているのか、それが大切なところです。  株価についてはこの委員会でも随分議論がされています。しかし、株式も額面で常に取引されているという国はどこにもないわけです。債券についても、これは動く商品ですから、当然、動く商品発行することによって資金調達をやってきた長期信用銀行検査、また経営体質の吟味ということについては、この市場利回りということが一番大切なものではありませんか。株価以上にこれは大切なことです。  もう一度、長官、お願いします。
  30. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  発行されている金融債の銘柄が非常に多いものですから、例えば二〇〇〇年の四月二十七日に償還される発行利回り二・七%につきましては、現在では複利の利回りが、基準気配では一・〇八〇ということになっております。
  31. 岩國哲人

    岩國委員 これは新聞等でも報道されておりますけれども、二・一%の利率発行された長銀債が、市場では五%の利回り取引されている。ということは、発行したら直ちに一〇%値下がりして取引されているのです。興銀債と同じ二・一%で発行されても、興銀の場合にはほとんど発行価格で取引されているにもかかわらず、いきなり発行価格割れで取引されている。  この現実について、監督庁はどのようにお考えになっていますか。また、先ほどの発行条件についても、一般投資家が窓口に行って二・一%のものを買えますか。この二点、答弁をお願いします。
  32. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  発行価格とそれから市場での価格というのは、恐らくその信用力によって違ってくるだろうというふうに考えられるところでございます。
  33. 岩國哲人

    岩國委員 いや、答弁漏れがあります。  一般個人が買える条件と、二・一%なんというのは金融機関しか買えない条件でしょう。なぜ長期信用銀行は、同じ信用を背景にし、同じ五年の債券を調達しながら、個人の人には〇・九%、金融機関が買いに来たら二・一%。なぜこのような差別が行われておって、その差別に対して一般投資家からの苦情は来ていないのかどうか。  何よりも、二・一%で発行したものが五%ということは約一割の値下がり。そして、一般投資家の場合には、〇・九%で買ったものを市場で売りに行けば、たちまち一割以上の損失でもってしか売却できない。このような一物二価、これが堂々と東京の中心で行われていることについて。しかも、今長官がおっしゃいました、これは信用力の差だと。つまり、監督庁検査に入る前からもう既に市場検査に入っているのです。答えを出しているでしょう。その後追いさえもしていないんですか。
  34. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  お言葉を返すようですが、一物二価ではなくて、やはり物が違って、これはそれぞれ、片方は二・一%、それから片方が〇・九%ということですが、例えばロットも違いますでしょうし、それはやはり物が違うというふうに認識せざるを得ないのではないかと思います。
  35. 岩國哲人

    岩國委員 ロットの違いだけで、それはまとめて買えば二二%で買えるということですか。  それから、市場利回りとの乖離の激しさについて、何カ月前からこの乖離が生じたのか。これは、三年、五年前、十年前にはこの乖離はなかったはずでしょう。つまり、市場利回りというものを見ながらこの発行条件は決められてきたはずです。また、大蔵省もそのような指導をしてこられたはずです。にもかかわらず、今はこれだけ激しい乖離を伴ったままで、しかも、同じ長期信用銀行という信用を背景にしながら、同じ五年の債券が違った条件で発行されているということのおかしさ。それに加えて、両方とも損をしなければ市場取引ができないような発行条件が、他行との比較においても、何カ月前からかこれが行われているということについて。  監督庁は、長官は再三、預金者保護、投資家保護ということをおっしゃいます。アメリカのSECは、投資家を保護するための機関として栄光の歴史を歩んでいるでしょう。日本監督庁は、一物二価で、物が違う。したがって、物が違う条件でも、金融機関には二・一%、一般投資家には〇・九%。このようなことを大体認めているのがおかしいのです、投資家保護、預金者保護という点からいえば。なぜ個人と小口は虐待される。そのような投資家保護の精神がどこにありますか。御答弁をお願いします。
  36. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  なかなか私の申し上げていることが御理解いただけないのが残念なんですが、結局、発行条件というのは売れるかどうかということを考えた上で決めるわけでございまして、もし売れなければそういった条件にはならないわけでございます。要するに、商品でございますから、果たしてそれが市場で通用するものかどうかということを考えた上でいろいろ条件をそれぞれの企業が決める、経営戦略の問題ではないだろうか。  つまりは、ある意味では株と同じで、市場がその価格を決定しているのでありまして、それを買うかどうかということも、それは市場によって、果たして買うべきものであるかどうかということはお客さんが判断すべきことなのかなというふうに思っております。
  37. 岩國哲人

    岩國委員 私、失礼ですけれども監督庁長官の資格審査を一遍やらなきゃならないんじゃないかと思います。聞いていらっしゃる方は、私だけがわからないようなことを長官はおっしゃいますけれども、私以外にもわからない人間はいっぱいおります。信用力の差だということをおっしゃった以上は、信用力の差は発行条件に反映されなきゃならないでしょう。株価にしてもそうです。松下、日立、東芝、いろいろあれば、企業の魅力によって株価というのは発行条件が違うものです。  債券発行条件信用力が反映されるものであって、市場でそれだけの大きな信用力の差が数字であらわれているときに、信用力の差があるということを一方ではおっしゃいながら、興銀と長銀が同じ条件で発行されてもこれはおかしくないと。どこか矛盾しているんじゃないでしょうか。
  38. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたしますが、もともと発行条件というのは企業が決めるものでございまして、そして、それがマーケットで販売されるかどうか、売れるかどうかということは、マーケットの情勢を見ながら企業が発行条件を決めるものだろうというふうに思います。  私どもは、監督といいましても、そういった市場、マーケットで決められるような事柄を私どもが、それをやめなさいとか高過ぎるとか安過ぎるとかいうことは言えないということは御理解いただきたいと思います。
  39. 岩國哲人

    岩國委員 もうこれ以上この問題について質問するのは、私はあきらめたいと思います。  というのは、そういった、市場において適正な値づけが行われているかどうかを監督するのは、監督庁の一番大切な使命ではありませんか。株価においても同じことです。何か異常な株価です。きのうまで千円だった株価がきょうは三百円。これは皆さんがお決めになることですから結構です、こういうことにはならないでしょう。  発行価格と市場価格との乖離がいつから生じたか。なぜこんなに大きな乖離が生じたまま、毎月毎月、これからも同じ条件で市場利回りというものを無視しながら発行価格が決められて、これが本当に投資家保護と言えるかどうか。この点について答弁を求めません。しかし、監督庁としてしっかりこれは考えた上で、これからの金融行政を展開していただきたい、投資家保護の行政に立ち返っていただきたいということを要望します。  次に、長銀検査についてお伺いします。  現在行われている長銀検査は、いつから開始され、いつが終了予定日なのか。人数は何人動員されておるのか。たしか十五人ということを答弁されたと思います。延べ人数としてはどれぐらいをこの調査にかけるのか。終了予定日はいっか。それを簡潔にお願いいたします。
  40. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  長銀検査は、今回は七月十三日から立入検査を実施いたしまして、当初十二名の検査官を投入いたしましたが、その後三名を追加いたしまして、合計十五名の検査官によって検査を実施しているところでございます。  まことに、検査の終了の時点を申し上げることができないことはひとつお許しいただきたいと思います。
  41. 岩國哲人

    岩國委員 しかし、作業をやる以上は、いつまでに終了させたいという目標日ぐらいはあるんじゃないですか。  大体、十五人の大切な少数精鋭の人間を投入しておいて、いつでも適当に仕事が終わったら帰ってきなさいよという程度の仕事のさせ方ですか。それとも、いつまでにやってこいという一つの目標日を与えて仕事をさせているのですか。それとも、その十五人のリーダーはいつまでたっても行方不明で、極端に言えば、これは市場のうわさですけれども検査は既に終わっているのに帰ってくることを認められていないのか。帰ってきたら何かを言わなきゃいかぬ。つまり、検査員の飛ばしが行われているのかどうか。そういうことも含めて返答をお願いします。
  42. 五味廣文

    ○五味政府委員 お答えいたします。  長期信用銀行検査は、十九行検査の一環といたしまして、七月の十三日から入りました。目的は、三月時点での自己査定の正確性をチェックする、こういうことでございます。そのための検査を続けておりますけれども、今回、住友信託銀行との合併に関連いたしまして、公的資金導入を要請する予定であるという発表がございました。そうなりますと、三月時点での資産の自己査定の正確性のチェックをしつつも、その後起こりましたもろもろの事象について、やはりできる限りの実態把握をあわせてする必要がございます。  このために、当初、普通はこのたぐいの検査ですと二月もあれば大体平均として終わっておるという見通しで、そうしたもとで事務計画も策定をし、メンバーも決め、追加投入もいたしましたけれども、どうもやはりもうしばらくかかる、これが実情でございます。
  43. 岩國哲人

    岩國委員 住友信託に対する調査は、いつ開始され、何人が投入され、延べ人数は幾らで、終了予定日はいつですか。
  44. 五味廣文

    ○五味政府委員 住友信託に対します検査は、七月二十四日から入っております。人数は十一名でございます。  それで、立入検査の終了でございますが、ちょっと資料チェックさせていただいてよろしゅうございますか。
  45. 岩國哲人

    岩國委員 資料を調べていただいている間に、追加質問。  それから、地銀に対する検査の開始をたしか新聞報道で見たことがありますけれども、地銀検査はいつから開始される予定かも、こちらにおいでになったときにあわせて答えていただきたいと思います。
  46. 五味廣文

    ○五味政府委員 大変失礼いたしました。  住友信託銀行に対します立入検査は、七月二十四日に立ち入り開始し、八月三十一日に立ち入りを終了しております。現在、部内において、その検査結果の整理と精査を行っておるところでございます。  それから、地方銀行でございますけれども、地方銀行につきましては、八月二十四日以降、各財務局によりまして、十一行、立入検査が開始をされております。
  47. 岩國哲人

    岩國委員 そうした住友信託の件も終了したようですし、地銀検査に出るだけの余裕があるならば、これは、全世界注目のこの長銀検査の終了をできるだけ早く、いつまでにというめどなり発表していただかないと、ここでの議論がさっぱり実質的に進まないんじゃないですか。  債務超過になっているのか、きのうもいろいろな委員から既にもう質問も出ております、債務超過か債務超過でないのか。債務超過であるということは聞いていないという、そういうネガティブな表現ではなくて、もっと明示的に、債務超過でははっきりありませんと。また、長銀検査が終了しなければ、住友信託も合併していいかどうかわからないんじゃないでしょうか。  ましてや、公的資金の投入については、佐々波委員長の答弁によれば、新しい合併銀行の収益性にもよるといったような答弁を聞いたことがありますけれども、とするならば、住友信託の検査結果、その数字と、それから長銀検査結果を踏まえて、その数字でシミュレーションをやって、まず収益性というもののめどをつけなければ、公的資金を投入して返ってくるものやら返ってこないものやら、めどがつかないんじゃないでしょうか。  再度お伺いします。どこかにその作業日程の終了予定日というのは書いてありませんか、薄い鉛筆ででも。
  48. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  住友信託銀行長銀とが合併するという前提で今いろいろ手続が進んでいるわけでございますが、今お話しになりましたような両方の資産の状況を合体してシミュレーションするということは、これは両行が自発的に、自主的に合併をしたいというふうに言っていることですので、官側が、おまえのところの資産はいかほどと認定するとか、おまえのところはこのくらいだといって、あえてその合併比率をこちらから提示するようなことは、これはもう絶対言えないことだろうと思います。  それから、検査を前提としてということではなしに、検査はあくまでもゴーイングコンサーンということで非常に動態的な切り口で資産の内容を検討しております。ところが、合併ということになりますと、やはりまた違った観点、つまり、住友信託から言わせますと、いわゆるデユーデリジェンスというものを実施することによって、また別な切り口で資産の内容を検討すると言っておりますので、私ども検査の終了を待つか待たないかと関係なしに、合併そのものの手続は進行させていただいて一向に差し支えないのではないかというふうに考えております。
  49. 岩國哲人

    岩國委員 何度お聞きしても、作業の終了の目標日さえも明らかにされないということを大変不満に思います。  また、長官ただいま自主的にとおっしゃいますけれども、本当にこれは自主的な合併なんですか。自主的な合併であれば、なぜ国民の嫌がる税金を使わなければならないんですか。町へ出て聞いてみてください。自主的な合併だったらどうぞおやりください。何も我々、ここでこんな議論する必要、時間さえももったいないことです。自主的合併だとはっきり断言されるのであれば、税金はびた一文使わないで自主的合併を実現させたらどうですか。答弁を求めます。
  50. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  合併というのは、これは商法とかあるいは銀行法に基づいて行われるものでありまして、私的な契約でございます。私が自主的と申しましたのは、私的な契約というのは自主的に行われるべきものであるというふうに申し上げているわけでありまして、国がそれに対して進めなさいとかあるいはやめるべきだということを申し上げる立場にはないということを申し上げている次第でございます。
  51. 岩國哲人

    岩國委員 自主的、自主的と強調されるその裏には、そうした、強制してないんだ、こっちから頼んでないんだというイメージをつくりたいというお気持ちだろうと思いますけれども、六月二十六日、日野長官は新聞記者に対して、これは通常の合併ですと、はっきりそこで明言していらっしゃいます。通常の合併ということと自主的な合併という、この言葉二つを重ね合わせれば、公的資金の投入など全然前提にしない合併だと国民は聞かされているんです。そのとおりでよろしいでしょうか。
  52. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  その公的資金の注入といいますのは、これから長銀預金保険機構の金融危機管理審査委員会に対して申請されるわけでございまして、それは、当事者である長銀が申請されるのを待って、その委員会において判断されるべきものであるというふうに考えております。
  53. 岩國哲人

    岩國委員 それでは次に、金融危機管理審査委員会、きょう佐々波委員長に御答弁を期待しておりました。昨夜から何か扁桃腺ということで、返答をしないという意味のへんとうせんじゃないとは思いますけれども、急な扁桃腺ということで、かわりにどなたかから答弁いただきたいと思いますけれども、審査委員会において、三月の投入時点においてヒアリングは行われたのかどうか。そのヒアリングのときに、簿外債務、不良債権、飛ばしについて、海外のぺーパーカンパニーの存在等も含めて、何らかの指摘あるいは指導がそのときに行われたかどうか、それをお願いいたします。
  54. 松田昇

    松田参考人 審査に関与しました一員として、委員長にかわって経過をお話し申し上げます。  三月の資本注入の場合の、長銀の場合でございますけれども、三月五日に受け付けまして、八日から十日の間に審査をいたしました。  若干今の質問に絡みますので、審査の概要についてお話し申し上げたいと思いますが、まず、事務局が予備ヒアリングを実施いたしまして、申請内容とか提出書類の整理を行いまして、これを各委員に提供いたしまして、そのときに委員長から大蔵大臣及び日銀総裁に対しまして、それぞれ提出された事実関係についての、信憑性と申しますか、事実に誤りがないかどうかについての確認方を御依頼申し上げました。  そこで、このような準備が行われた後で審査委員会における審査に当たったわけでございますが、そこで行われた主たるものとしては、例えば、不良債権の償却、引き当て方針等に対する提出資料の内容の事実に誤りがあるかないか等について、大蔵大臣及び日銀総裁から総括的な報告、御発言をいただき、それを参考としながら、委員全員で、例えば今後の業務計画や収益見通し等に関して検討を行いました。  他方、頭取を召喚いたしまして、例えば十二年末の資本額の見通しの問題とか、海外業務提携先との関係とか、発行条件等についていろいろとヒアリングを実施し、その後、発行条件について、客観性を持たすために外部の複数の専門の機関から意見を徴しまして、それをさまざま検討いたしました結果、長銀の申請に対しましては、劣後ローンの申請額のうち、自己資本比率の直接的な向上につながらない部分を削減いたしまして、減額をいたしました。そして後、優先株式千三百億円とローンの四百六十六億円については、経営健全性確保計画も適切であると当時の委員全員で意見が一致いたしまして、議決を見、閣議決定を見た後、資本注入に及んだということでございます。  先ほど先生御指摘のありました、海外の飛ばし、海外の隠し資産があるかないか、そのようなことについては、ヒアリングの中では直接出なかったと思います。(岩國委員「それは、検査の中でも海外ぺ−パーカンパニーの存在というのが見つかっていますか」と呼ぶ)
  55. 相沢英之

    相沢委員長 発言の許可をもらってください。  岩國君。
  56. 岩國哲人

    岩國委員 それでは再度。九六年、二年前に検査が行われております。二年前の検査で、不良債権、簿外債務、飛ばしについて、何らかの指摘や指導は行われたか。それから重ねて聞きますけれども、今回の今までの検査の中で、海外ペーパーカンパニーは存在しておったかどうか、それから飛ばしが行われておったかどうか、簿外債務があったか。この三つの項目について、二年前とそして現在と、それぞれについて指摘、指導は行われたかどうか、簡潔にお答えいただけませんでしょうか。
  57. 松田昇

    松田参考人 大蔵大臣日銀総裁に事実関係の信憑性等について御依頼を申し上げまして、それぞれラインシートを相当量お取り寄せになって精査をされた上での総括的な意見をいただきました。その中に、具体的に、個々の貸出先である海外の問題、あるいは先生が言われた飛ばしがあるかないか、定かではありませんけれども、その問題、それはございません。ただ、ヒアリングの中で、簿外債務になる有価証券の評価損益の問題については、我々もヒアリングをいたしました。
  58. 岩國哲人

    岩國委員 海外におけるペーパーカンパニーは存在しておらなかったというふうに、検査をされた担当官はきちっと報告しておりますか。それとも、その疑いは今でも残っているのでしょうか。あるいは、まだ検査されておらないから答弁できないということなんでしょうか。三つのうちのどちらですか。
  59. 松田昇

    松田参考人 先ほど申し上げましたように、審査委員会の席上では、個々の貸国債権とかいうことを個別の審査はしておりません。できませんでした、時間的にも。したがって、それは、実際にその検証に当たられた大蔵省とかあるいは日銀の方でどのぐらいごらんになったかわかりません。総括的な御意見をいただきました。
  60. 岩國哲人

    岩國委員 住友信託と長銀の合併についてお伺いしたいと思います。  公的資金の必要額というものの見積もりは、大体どれぐらいの見積もりで考えておられるのですか。  八月二十日ですか、首相公邸で行われたという三者の談合、まさに政官財の癒着を象徴するような顔ぶれでそのようなことが話し合われたと新聞等で報道されておりますけれども、その席で、合併した場合の必要な公的資金というものについての話し合いは一切行われなかったのですか。数字は一切出なかったということでしょうか。
  61. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  たびたびお答え申し上げているかと思いますが、長銀が不良債権を償却する、一方で、リストラ計画に盛り込まれておりますように、本店の売却等によって多少資産が入ってまいりますので、それを差し引きしまして、そのマイナス分を資本勘定から控除する、こういうことになります、ここまでは長銀リストラ計画で明確にされているわけでございます。  あといかほどの公的資金が必要かということは、いろいろな考え方がありますでしょうし、それは長銀が、将来の合併に向けて、一体どのくらい入れるのが適当かということをやはり考えて決めるべきものではないかというふうに考えております。決して多いからいいというものでもなければ、少なくていいというものでも、その辺の金額というのは、やはり長銀がみずから判断して、考えて申請されるべきものであろう。あとは、審査委員会において、それが認められるかどうかということを御判断になるというふうに理解しております。
  62. 岩國哲人

    岩國委員 日野長官の昨日の答弁の中で、秘密協定という言葉がありました。この秘密協定というのは、秘密の協定なのか、あるいは秘密を守るという意味の守秘協定なのか、どちらでしょうか。
  63. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  後者でございます。要するに、合併の当事者というのはお互いにまだ別な人格でございますので、幾ら話し合いをしていても、同一人格の一つの会社になってしまえば一つの頭脳が手足を動かすかもしれませんけれども、別な人格ですから、いろいろ話し合っている間に、その話の内容を漏らすことが考えられますので、そういうことは一切他言しないという意味で、今お話しになりました後者の方でございます。
  64. 岩國哲人

    岩國委員 それでは、その秘密協定が結ばれた日にちはいつですか。
  65. 日野正晴

    日野政府委員 これは私の記憶だけになりますが、たしか合併委員会というのが両行に設置された日だったと思いますので、七月の二日ではなかったかなと思いますが、合併委員会が両行に同時に設置された日だったと思います。
  66. 岩國哲人

    岩國委員 次に、銀行に対する業務指導について伺いたいと思います。  まず、配当でありますけれども、公的資金が配当に回ったということは昨日もいろいろと質疑されましたけれども銀行に対する配当の指導はどのように行われているのか。つまり、配当性向は四〇%以内という指導がかつて行われておった。そして、何年か前にそれが廃止されておる。廃止された結果として、四〇%以上の利益が配当として支払われることが可能になってしまった。この長銀の場合、過去三年間、配当性向は幾らでしたか、四〇%に対して。
  67. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  これは平成九年の七月に廃止されましたが、大蔵省の銀行局から出されております通達によりまして、従来は、商法で定められております許された配当に絞りをかけて、配当性向四〇%以内というふうに定められておりました。  ところが、これは平成九年七月に廃止されておりますので、この廃止の結果、新しい配当政策といいますかに基づいて配当されているのですが、今ちょっと具体的に配当性向の数字を持ち合わせておりませんので、しばらくお許しいただきたいと思います。
  68. 岩國哲人

    岩國委員 私が調べたところによりますと、配当性向は八〇%ぐらいに達しておるのじゃないかと思います。四〇%ははるかに上回る。その利益のほとんどをすべて社外に配当として支払ってしまう。  しかも、一番直近の配当でいえば、六月二十五日の株主総会で決められた配当。大野木頭取はこの委員会で、六月中旬から急激に経営が悪化してきていると。ということを知りながら、しかも大蔵大臣が、公的資金を入れないと破綻せざるを得ないとはっきりと天下におっしゃっているような銀行が、経営者自身が経営の内容の悪化していることを十分に知りながら、配当を六月二十五日にそのまま払うことを総会に諮るというのは、これは背任容疑として告発しなければいかぬのじゃないですか。長官の御意見を伺います。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  69. 日野正晴

    日野政府委員 確かに、大蔵省のその通達が廃止されましたのは、さまざまな通達を最近に至りましても廃止しておりますが、私どもの立場といたしましては、結局、配当政策といいますのは各金融機関自分の意思決定機関である株主総会において決めることですから、それを高いとか低いとか言う立場にはございませんけれども、今後は、自己資本比率を充実させるという観点から、場合によりましては配当等の外部流出を抑制していくという観点から、一定の自己資本比率となった金融機関に対しましては、法令に基づく早期是正措置を発動いたしまして、配当の抑制、あるいは場合によりましては禁止といったような命令を出すことも考えなければならないのじゃないかというふうに思っております。
  70. 岩國哲人

    岩國委員 時間が終了しましたので、質問を終わります。
  71. 山本有二

    山本(有)委員長代理 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、坂口力君。
  72. 坂口力

    ○坂口委員 平和・改革を代表しまして、お聞きをしたいと思います。  岩國先生の御質問は非常に難しい質問ばかりでございましたが、私のは易しいことばかりでございますので、ひとつお気軽にお答えをいただいて結構でございます。  先日来、過去のデータを整理いたしておりましたら、平成五年一月二十九日の予算委員会質疑のが出てまいりまして、これは、当時宮沢総理がお答えになっておりまして、私の方の、その当時公明党の書記長をいたしておりました市川が質問をさせてもらっているものでございました。  この内容を見ますと、現在と同じようなことが議論されておりまして、金融の自由化の問題、八%の自己比率の問題、それから銀行のディスクロージャーの問題、そして不良債権の引き取り機関の問題等々、これは二、三日前のものでないかと思うほど、この五年間、時間がたっておりますのに変わらない内容でございました。ある意味ではこれは先見性のある質疑ではなかったかとも思っております。  その中で市川氏が質問をいたしておりますのは、金融の自由化というものを、政治家はもちろんのこと、大蔵省も日銀も、あるいは銀行も、すべて少し甘く見過ぎていたのではないか、景気に対する影響というものの中には金融の自由化というものが大きく影響しておるではないかという質問をいたしております。それに対して、宮沢総理も最後に、ほぼ一時間余り、いわゆるバブルがはじけたことによる経済への影響についていろいろお話を伺いました、私はそのことはそのとおりであると考えてお答えをいたしましたが、大事なことは、しかしそれは我々にとって大切な教訓でございましたが、これに対応する準備は十分にできているということを申し上げておきたいと思います、こう結んでおみえになるわけでありまして、お認めになりながら、しかし準備万端できておりますよ、御心配は要りませんということを述べておみえになります。  このことに対することをきょうはお聞きをしようとするわけではありませんが、こういうものを見ながら金融の自由化をずっとさかのぼって見てみますと、一九八〇年代半ばぐらいから日本の金融の自由化はいろいろな形で徐々に徐々に行われてきております。一部のものだけピックアップをいたしますと、一九八四年の六月にいわゆる円転換規制の撤廃がございまして、これはかなり大きかったというふうに思うのですが、一九八五年からは外国銀行の営業が開始をされ、そして一九八六年以降、多数の外国の証券会社が東京証券取引所会員の資格を取得するとかいうようなことが幾つもございました。  それで一九八〇年代後半ずっと続いてまいりまして、それから九〇年代になりましてから一時少し途切れるわけでございますが、また一九九六年ぐらいから幾つか始まりまして、今回の金融ビッグバンというものに結びついてきている。日本におきます。その前半、一九八〇年代半ばからの金融の自由化というのを第一期とすれば、今回は第二期と言ってもいいのではないかというふうに思います。  日本におきます第一期の金融の自由化は、バブルの形成、そしてその調整過程におけるバブルの崩壊と、非常に大きな影響を与えてきたというふうに思います。そして今回、金融のビッグバンということになってまいりまして、この金融ビッグバンがこれから先日本の経済にどんな影響を与えるのかということは、これはいろいろなことが予測されるというふうに思うのですが、現在の経済状態の中で、これからどのような影響を与えていくというふうにお考えになっているか、まずちょっとお聞きをしておきたいと思います。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  73. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 坂口委員も長い間日本の経済の推移をごらんになっておられますので、今のようなお尋ねをいただいたものと思います。  私自身もいろいろ思いがございますが、やはり一九八五年のプラザ合意というものが、我が国の経済を非常にいっときは大変に元気よくさせまして、円が続騰いたして海外に企業が進出する、東南アジアの工業化が急速に推進するというような面がございました。他方で、しかし、その裏がやがて出てくるわけでございますが、その段階における規制解除というものは、主にやはり為替関連から始められたように思います。  我が国はいろいろな為替管理をしておりましたが、これだけの外貨を持っておる国がそんなに長く為替管理をすることは許されないということはみんなの言うことでございまして、したがって、為替管理の緩和あるいは撤廃ということが常に最初に進んできたように思います。  と申しますのは、ありていに反省をいたしまして、国内の金融機関のあり方、銀行、証券、保険等々でございますが、これはいろいろな理由があって私は非常に自由化がおくれた、大変におくれた、ビッグバンがおくれたというふうに思っております。  これは、いろいろアメリカとの交渉にも関係はございましたでしょうが、護送船団行政にも関係があったと思います。一般産業に対する統制解除、自由化というものは非常に早くスタートいたしましたので、日本の各産業は苦しいところをともかく自立をいたしましたけれども、金融だけがかなり手厚い保護を受けてかなり長きに及んだ、私は、これがおくれたということがきょうの問題の難しい一つの原因であるというふうに思っております。  と同時に、しかし、先ほどから坂口委員が言われますように、その間にプラザ合意の結果のバブルがバーストしまして、破裂をいたしまして、不良債権処理が当面の問題になってしまった。したがいまして、我々にとっては、おくれて始まりました規制緩和と、同時に起こりました不良債権処理とを、一緒に行わなければならないという事態になったと思います。これが問題を大変に難しくしていると思いますので、もし日本金融機関が、五体健全で十分競争力を持ち、競争精神を持っておりましたら、ビッグバンというものは、これだけ苦しくはなかっただろうと思われます。  現実には、ビッグバンになりまして、さて日本金融機関の幾つが果たしてこの新しい時代に生き延びていけるだろうか、世界で仕事をできるだろうかということを今の時点で考えますと、まことに心寂しい気がいたします。昔であれば、坂口委員にしても私にしても、あそことあそことあそこぐらいはやれるだろうと知っておったものでございますけれども、どれもが傷ついて、そしてなかなか世界に伍して仕事をできるような体制になっておりません。  ウィンブルドン効果ということを私は余り真剣に考える方ではございません。日本の利用者が、消費者が本当にいい金融商品に恵まれるならば、それが日本銀行であろうと外銀であろうと、私はそのことは余り言うべきでないという気持ちを持っている人間ですけれども、いかにも、この世界的な規制解除、ビッグバンの中で、世界に向かってひとつ出かけていこうという元気のある金融機関が本当に見当たらないということが、今の我が国の苦境を表現しているのではないかというふうに私は考えております。
  74. 坂口力

    ○坂口委員 金融の自由化が非常におくれたという御指摘でございます。  さて、確かにおくれたというふうに私も思いますが、前内閣、橋本内閣のときに六つの改革というのが掲げられて、そしてその中の金融の改革というのはフロントランナーということが言われて、その金融の自由化の中のまたフロントランナーとして為替の自由化というものが取り上げられた。  それで、おくれてはいたのでしょうけれども、しかし、金融の自由化が取り入れられたこの時期は、不良債権をまだ片づけずに金融機関が非常に苦しんでいる最中であって、しかもまた、日本全体としましても不況の真つただ中にある中でこのビッグバンが行われた。おくれていたかもしれないけれども、この時期は、これはよかったのかどうかということはあると思うのですが、どのようにお考えでございますか。
  75. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 為替がまさに常に先導しておりまして、今回もさようでございました。それは、いろいろ難しい事情があっても、我が国がこれだけ外貨を持っている国として歩まなければならない道であったと思います。それは、いろいろに言われまして、なかなかきつい影響がある、日本人はだれでもアメリカに預金ができるんだってさと日本の安い金がアメリカへ高い金利を求めていく、どうやってとめるかとか、いろいろございましたけれども、私は、これは長い間のコミットメントとしてしなければならなかった、それはしなければならなかったと思います。  その中で、ビッグバンが進行していきますと、先ほど申しましたような状況でございますから、なかなかそれは苦しい。適当な時期であったかとおっしゃいますれば、もういろいろなことから延ばし延ばしで待ったなしのところに来ておりましたのですから、いい悪いということが既に言えないようなほどおくれていた。そういう中で、いわば行われざるを得なかった。  私は、これが何年か、五年も待てればまた違う事情になるかというようなことは、議論はできますけれども、現実にそういうことが許されるわけではございませんでしたし、また、日本が二十一世紀にいわゆるグローバライゼーションに入っていくためには、もうこれが最後のチャンスであった、もっと早く行われるべきであったというふうに思いますので、大変におくれたことは残念であったが、しかし、これよりおくらせるわけにはいかなかったと私自身は考えているものでございます。
  76. 坂口力

    ○坂口委員 お考えはよくわかりました。  さて、それで、非常に前置きが長くなったわけでございますが、おくれてはいたけれども、しかしもうこれ以上おくらせるわけにもいかない、いろいろの経済の状況を言っておれない環境の中でスタートをした。それはもう、しかし覚悟の上で出発をしたということでございますが。  まあ金融ビッグバン、名前が示しますとおりビッグバンですから、いろいろなことが起こって当然といえば当然でございまして、今回の長銀の問題も、ビッグバンですから、こんなことの一つや二つは当然起こるはずだというふうに思いますけれども、覚悟をして出発された割には大騒ぎをしておみえになるという印象を受ける。これはもう覚悟の上のことでありますから、このぐらいのことは当然起こる、そして、一つ二つ破綻することは、それはもう覚悟してやらなければならないということではなかったのですか。
  77. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 今、坂口委員の言われましたことは、この二、三年、いろいろな論説あるいは主張の中で、ビッグバンというものについて、それはそういうことをどうしても伴うということは言われてまいりました。そういう意味ではわかっておったはずではないかという仰せになるわけですけれども、さすがに、なってみるとこれは容易なことでないというのが真実の感想と思います。  そして、ある意味で、そういうことは起こるべくして起こった。長銀のことを申しておるのではありません。一般論として、ビッグバンというものはそういうところを伴う。イギリスの場合もそうでございますから。しかし、それに対して社会的なコストをできるだけ少なくするということは、またビッグバンに対応する一つの命題であると考えておりますので、そういう意味で、社会的なコストをいかに少なくしてこの事態を乗り切っていくかということであろうというふうに考えております。
  78. 坂口力

    ○坂口委員 時間が進んでまいりますから、少し中を飛ばします。  そして、長銀を初めとしていろいろの問題が起こってきた。長銀に対する公的資金導入の問題が、今大きな話題になっている。  もし仮に、長銀破綻をするようなこと、あるいは大臣は、破綻をさせてはならないということを先日もこの委員会で御指摘になりまして、だから公的資金が必要なんだ、公的資金導入しなければ長銀破綻をするんだ、してしまうんだという趣旨のことをおっしゃったというふうに思います。  それで、そういう状況の中で、もし公的資金導入しようというふうに政府の方がお考えになりますときには、それは何らかの法律が要るわけでございます。その法律は、前国会でございましたか、でき上がりました金融機能安定化のための緊急措置に関する法律、恐らくその二十三条を適用してやろうというお気持ちなのではないかというふうに思いますが、そのことはひとつ後でお聞きをするとして。  それから、二十三条に対する審査基準というものがございますね。この審査基準を拝見いたしますと、非常にわかりにくい。もともとこの法律は、健全な銀行にのみ資金は注入するということででき上がったものでございます。  したがって、この審査基準を見ましても、経営の状況が著しく悪化していないこと、あるいはまた破綻する蓋然性が高いと認められる場合でないこと、これらのことが基準として挙げられているんですが、中にはしかし、基準三として、経営の再建を目的とするものではなくて、信用秩序の維持を目的とすることというのもあるわけで、どうもその中身が非常にわかりにくい形になっているというふうに思いますが、これは大臣ばかりにお聞きをしておってはいけませんので、どなたにお聞きをしたらいいのかな、これは預金保険機構の方にお聞きをした方がいいか、大変わかりにくいと思いますが、皆さんの方は明快におわかりでございますか。
  79. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  私ども、今先生御指摘の五つの要件でございますね、法律で申しますと三条の場合と二十三条の場合と、これは分解しますと五つの要件に、御案内のとおりなります。五つともクリアしなければ資本注入ができないという仕組みになっておりまして、その法律の趣旨をできるだけ具体的にかみ砕いて審査の基準として示して、それをあらかじめ公表して申請を受け付ける、こういう仕組みをつくったわけでございます。  したがいまして、先生御指摘の基準一のところにあります三年連続して赤字とか配当がないとか、あるいは債務超過はいけないとか、そういうのはできるだけ形式的でわかりやすく、しかも裁量が余り入らないようにという基準でつくったものでございますが、先ほど先生御指摘のありました、破綻の蓋然性のおそれとか、あるいはそれに絡みまして、審査基準の五になるのですけれども、二十三条の方は事柄の性質上、それを明確に数値であらわすことがなかなかできなくて、それで、どういうものを中心にそういうことを判断させていただきますよということで、できるだけ具体的に考えたというのが審査基準でございます。
  80. 坂口力

    ○坂口委員 きょうは時間が少ないものですから余り詳しくお聞きできませんが、今おっしゃいましたように、この五つの基準を全部クリアしなきゃならないということになると、それぞれが違う方向性を示しているというふうに思います。これは頭の中で大変混乱を起こすような方向性のものばかりでございまして、本当にこの五つをクリアできるところがあるんだろうかという気もするわけでございます。しかし、今、それはできるというお話でございますから、きょうはそういうふうにしておきましょう。  しかし、私は、どうもこの法律のこの基準は、我々が見てわからないのですから、一般の人が見たらもう一つわからない。こういうわかりにくい基準で、その銀行に公的資金導入する、しないということを決めるのはいかがなものか。これは少し、このわかりにくさもほどが過ぎるのではないかというふうに思っております。思っておりますが、このことについてぎょう言う時間はありませんから、思っているということを申し上げて、最後に大臣にまたちょっと答弁をしていただければ結構でございます。  それで、日銀総裁にきょうはお忙しいところをお越しいただいたわけでございますので、日銀総裁にもひとつお聞きをしておきたいと思いますが、長期信用銀行が今どういう状態になっているのかということを我々はよくわかりません。ディスクロージャーもなかなかされないものでございますから、大臣から、資金投入、公的資金導入がなければこれは生き延びられない、破綻するんだというようなお話を聞きましても、どの程度かということは我々にはわからないわけでございます。  それで、長銀日銀融資を受けて正常に運営できる状況にあるのか、それとも、それは通常のこの日銀融資ではもういけない状況にあるのか、それが一点でございます。それからもう一つは、公的資金導入しなければ破綻するというふうに大臣は言われましたが、速水総裁がごらんになって、総裁の目からもこれはそういうことなのかどうか。二つお答えをいただきたい。     〔委員長退席、山本(有)委員長代理着席〕
  81. 速水優

    速水参考人 私の立場で個別金融機関取引の今の現状につきまして余りコメントすることは差し控えたいわけでございますが、いずれにしましても、日本長期信用銀行に対して、現時点で当面日銀特融を発動するといった支援が必要であるとは考えておりません。  ただ、日本銀行は、新しい日銀法第一条に書かれておりますように、一般論として、金融政策の運営のほかに信用秩序の維持に資することを目的としているということでございまして、こうした目的を達成するために、金融機関破綻理事例であるか否かを問わず、また破綻前か破綻後であるかを問わず、私ども信用秩序維持のために資金供与を実施するに当たっての基本的な考え方という四つの原則があるわけでございます。一つはシステミックリスクが顕現化するおそれがあること、第二には日本銀行の関与が必要不可欠である一こと、第三にはモラルハザード防止の観点から、経営者、株主、出資者等関係者の責任が十分に追及されること、四つ目は日本銀行自身の財務の健全性維持に配慮すること、この四つの条件が満たされ、大蔵大臣からの依頼がありました場合には、政策委員会で特融を出すことが認められておるわけで、そういう状態と判断したときには出す用意がございます。  しかし、最初に申し上げましたように、今、日本長期信用銀行に対して特融発動といった支援が必要な情勢、時期であるとは考えておりません。
  82. 坂口力

    ○坂口委員 もう一つ、公的資金導入しなければ破綻するという状態なのかどうか。
  83. 速水優

    速水参考人 私は、これも難しいことですけれども、このままずるずると株価が額面を割って、しかも取引先からも大分いろいろ取引の中止や減少が起こってきておるわけで、銀行は、信用を失えばやはり破綻に陥る以外には手がないのではないかと思います。そういうことが起こらない前に早目早目に、できるなら民間ベースで手を打っていく、必要に応じて私どもが支援をしていかなきゃいけないというふうに考えております。
  84. 坂口力

    ○坂口委員 易しい質問ばかりというふうに申しましたが、ちょっと答えにくい問題だったのかもしれません。  もう一点だけお聞きをしておきたいと思いますが、これは他の委員からもここで何度か日銀特融の話が出まして、いろいろこれに対してお答えになってもおりましたが、日銀特融はこの長銀の場合にも選択肢の一つとしてはなり得るというふうにお考えかどうか、それだけひとつお伺いしたいと思います。
  85. 速水優

    速水参考人 ただいま申し上げましたように、先ほど申し上げた条件を満たしております場合には、日銀特融は出せるわけでございます。  ただ、必要性の判断ということは、考査の結果とかモニタリングを中心にして判断するわけでございまして、今直ちにこれを出すという必要はないと思っておりますけれども、必要が生じた場合には出すことができるということだけを繰り返し申し上げて、お答えにさせていただきます。
  86. 坂口力

    ○坂口委員 さて、最後にもう一度大臣にお聞きをしておきたいというふうに思います。  一つは、先ほど、難しい名前でございますが、特別措置法ですね、金融二法の特別措置法、これは初めの法律をつくりますときの趣旨からいきましても少し違いますし、そしてまた、審査基準というのも余りにも難し過ぎる。それに対するお答えをいただきますのと、それからもう一つ、このまま進んでいけば破綻しかあり得ないということを大臣はおっしゃったわけでございます。きようではございませんけれども、先日のこの委員会で、公的資金導入がなければ長銀は生き延びられないという意味のことをおっしゃいました。もしそうであるならば、それはもう現在既に破綻状況になっているのではないかというふうに私は思いますが、それはどうかということ。  もう一つは、これは少しきつい話かもしれませんけれども破綻が、公的資金導入がなければいつごろまで大丈夫でございますか。名医でございます宮沢大蔵大臣にお聞きをしたいと思います。そのことはこの委員会のスピードにも関係する話でございまして、一年ぐらい大丈夫だという話でございましたら、ゆっくりとこれはやらせていただいて結構かというふうに思います。
  87. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 まず最初に、今度のケースが金融措置法のケースであるかということにつきましては、先日来、監督庁長官も何度かお答えになっておられますが、あるいは預金保険機構理事長もおっしゃっておりますが、いわゆるシステミックリスクを回避するために公的資金を投入することができるという、私はまさにそういうケースであろうと考えておりますので、それは該当するであろうと思います。  第二に、審査基準のお話は、私もこれを何度も何度も読んでおりまして、確かにまことに難しい基準でございます。厳格に書こうとしますとこうなるのかと思いますが、問題は、こういう審査基準でやったんだから間違いはないんだ、そのとおりであると思いますけれども国民の皆さんから見ますと、この審査基準というものは大変読みにくい、難しいものでございますから、御信頼は申し上げるが、しかしよく話は、なかなかわからないな、少なくとも善意の方でもそう思われるような難しさがございますので、この点はやはりこのたびの反省として、銀行によるディスクロージャーの問題ともあわせまして、もうちょっと国民がごらんになってやむを得ないんだと思われるようなことを、何か考えなければならないだろうということはしきりに考えております。  それから、もう一つの問題。公的資金導入しませんと破綻するのだということを、私はなるべくそう真っすぐに申し上げないように申してきているんですが、しかし、そういう印象をお与えしていることは間違いございません。  私が苦労しておりますのは、長銀というものは、これをやればそれなら生き延びるのかという反論がございましょうから、そうではないのですと。結局、経営者は総退陣し、海外の取引はやめ、そして払った賞与まで追及する、たくさんの人員整理がある。ですから、もう実体というものは、実は合併によって実体はなくなる、そういう形で、命があると言えばまあ申せるかもしれませんけれども、実際は延命とは申せない。  ただ、長銀の経営者としては、そういう事態に際会して、自分たちは、ただ破綻をすれば大変に大きなソーシャルコストを生ずる、国内的にも国際的にも。ですから、もう死ぬことは覚悟、言葉が悪うございますが、しているんだが、そこから生まれる社会的コストというものを何とかして少なくしなければならない、こう考えてあのリストラ計画をつくられたと思います。  したがいまして、坂口委員の言われますように、リストラ計画を読みますと、ある段階で公的資金導入を申請してそれが行われるということが合併が成就するいわば条件だというふうに考えられ、書かれておりますから、したがいまして、それが成就しないときには、よくわかりませんが、想像いたしますと、合併そのものが危殆に激するのではないか、そういうふうに考えていくのだろうと私は思っております。  それから、最後のお尋ね日銀総裁お尋ねになられたこととの関連でございますけれども長銀に生じた危機が、先ほど申しましたようにワリチョー、金融債の新規募集がなかなかうまくいかない、早期償還というようなことが起こってくる、株価は下がってくる等々の理由から金融的な苦しさに恐らく見舞われておるのでありまして、また延長線上に、何月にはどのぐらいの償還をするというようなことがございますので、そういうこともあって金融的に非常にやはり一つ問題があるのだろう。といたしますと、そのときに、坂口委員は特融の話をされたんだと思いますが、それはしかし、金融的にその場をどうやってつなぐかという問題でございましょうと思います。  実態の問題は、それとは別に、先ほど申し上げましたように、合併あるいはその間における公金の導入ということがなければ実態的にはやはりリストラ計画は挫折をせざるを得ない、こういうことではないかと思っております。
  88. 坂口力

    ○坂口委員 おっしゃることは大体わかるような気がするんですが、今おっしゃったことは、もう血圧は下がってくる、脈は乱れてくる、このままではもういかんともしがたいから合併という形で安楽死をさせる以外にない、こういうことをおっしゃったんですか、一言で言いますと。
  89. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そう承りますと、何か病人を楽に死なせてやりたいということをおっしゃったように思われますが、そうではなくて、死は恐らく前提にされておるわけですけれども、そこから来る社会的なコストをできるだけ小さくしなければならない、そういうことというふうに考えております。
  90. 坂口力

    ○坂口委員 ありがとうございました。もはや、死亡時期まではおっしゃいませんけれども、もう確実に死亡するということを前提として事を進めておみえになるということだけは理解させていただきました。  ありがとうございます。
  91. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 お医者様の御診断は承りました。
  92. 山本有二

    山本(有)委員長代理 これにて坂口君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  93. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木でございます。  先週の金曜日、総括質疑の折は時間が一時間と制約されておりましたし、テレビも入っておりましたので、余り一つの問題を深く技術的に掘り下げて議論してもいかがかと思って通り過ぎてしまった。コンプリヘンシブに、しかも国民の皆さんにわかりやすいように議論しなければという気持ちでやりましたものですから、きょうは時間が大してありませんが、あの折、本来ならもっと掘り下げて議論しなければいけなかった、だけれども先へ飛ばして進んでしまったところを振り返って、幾つか質疑をさせていただきたいと思います。  あの折、総括質疑の折も申し上げましたけれども、やはり長銀が倒れると信用秩序あるいは日本経済に大変なことが起きる、大変だ大変だというふうにおっしゃるわけですが、総理も大蔵大臣金融監督庁長官もそれをおっしゃるわけですが、私はあの折、大変だ大変だと言い過ぎるのはいかがなものかなと。大変なんだから早くこの六法案を通してくれ、大変なんだから長銀への公的資金導入を認めてくれ、こういう言い方をしていると私は感じるんですが、その結果かえって国民に不安を与えていないかという観点から、私はあの折議論をしました。  まず蔵相に伺いますが、長銀あるいはああいう大きな金融機関破綻したら大変だという場合に、蔵相は破綻という言葉をどういう意味で使っておられるんでしょうか。     〔山本(有)委員長代理退席、委員長着席〕
  94. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 せんだってお尋ねがございましたときに、大変に影響力の多いお方の御発言でございますので、つい私も自分の方の主張を強調しようといたしまして、大変御無礼をいたしました。  それで、私どもも、破綻は、やはり預金保険機構に定義しておりますように、預金の支払いが不可能になるおそれのある場合、あるいは預金の支払いが現実にとまった場合、そういう状況破綻という、その定義に従って使っております。
  95. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そうですね。私どもも大体ここで、特に定義しないで破綻と言えば預金保険法破綻であって、おっしゃいますように、預金等の払い戻しを停止するおそれがある場合、あるいは現実に停止した場合ですね。それで、等というところがみそで、これは別に預金とは限りませんで、マーケットでの決済ができなくなるということも含んでいるというふうに思います。現代では預金保険がしっかりしておりますから取りつけ騒ぎというのはめつたに起こりませんで、市場での支払い不能が中心になっていますね。  さて、そういうことですから、金融機関破綻というのはりクイディティーの問題なんですね。キャッシュフローの問題でございます。資産は持っているのだけれども、その資産をすぐに換金できない、それでキャッシュフローに不足が生じて支払いができない、イリキッドな状態に陥ったというのが破綻だというふうに思います。これはよろしゅうございますね。  私が言おうとしているのは、では、もっとはっきり申しましょう。私が先般、金曜日の総括質疑のときに質問しましたら、蔵相はこう言ったんですね。私は、イリキッドの状態、キャッシュフローが足りなくなってしまったというときに日本銀行がばんと特融で入っていけば、これでとりあえず支払い不能の連鎖が続くことはとまります、そういうことをはっきりと責任ある地位におつきの蔵相がおっしゃらないと国民が大変な不安を持つ、破綻したらお手上げたというようなことをおっしゃってはいけませんというふうに言いましたところ、蔵相はこうおっしゃったんですね。「一体、特融というものが何日続きますか。金融が何日続くとお思いですか。銀行破綻しているのですよ。」「破綻した銀行が債務超過を回復する道はないということです。」その後も、「破綻した銀行日銀の特融を受けると生き返ることができる、こうおっしゃっているのですか。」とおっしゃったんですね。  私はこのときに、何をおっしゃいますかと言ったんですが、とにかくテレビが入っているから、余りひどくこの問題をやってもいけないと思って進んでしまいましたが、これは明らかに、蔵相はリクイディティーの問題とソルベンシーの問題をごっちゃにしているんですね。(発言する者あり)両方あるのなんて、当たり前のことを言わないでちょうだい。リクィディティーを喪失するのはどういうときかというと、インソルベントなときもそうなりますよ。だけれども、ソルベンシーはあるんだけれども流動資産が足りなくなれば、やはりリクイディティー喪失なんですね。両方のケースがあるわけです。  それで、金融機関が支払い不能になりそうだ、あるいはなってしまったという破線のときは、その時点では普通インソルベンシーかどうかわからないんですね。つまり、債務超過かどうかわからないんですよ。しかし、そのときにばんと中央銀行日本でいえば日本銀行がレンダー・オブ・ラスト・リゾートとして、最後の貸し手として飛び込んでいって特融をすれば、そこで支払い不能の連鎖はとまる。したがって、マーケットや決済システムの動揺はぽんとそこでとまるわけなんですね。それが中央銀行の仕事です。さあその後、この破綻金融機関のソルベンシーはどうなっているのかというのは、次の問題で出てくるんですよ。  ところが、今お読みしたのでわかるように、破綻した銀行、つまりリクイディティーを失った銀行は即債務超過だ、こういうお答えなんですよ。そんなことはその時点ではわからない。特融の役割というのは、そういう債務超過かどうかのところを詰める話ではない。とりあえず間髪を入れず飛び込んで、リクイディティーを喪失した金融機関の支払い不能がシステム全体の動揺を起こさないようにとめることなんですよ。その点は御了解いただけますでしょうか。
  96. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 はい。おっしゃっていることはよくわかっております。  結局、おっしゃっていられますことは、預金保険機構の定義に従えば、これはりクイディティーがなくなったということであって、即インソルベントだ上は必ずしも言えない、債務超過であるとは必ずしも言えない、両方は同じことではないということを言っておられるわけです。それはよくわかっております。  この間申し上げようとしましたのは、私ももっと詳しく申し上げればよかったと思いますが、リクイディティーが足りないときに日銀の特融が行われる、それはよくわかりますが、日銀のお立場としては、特融というものはやはり基本的には将来支払いを受けなければ、出しつ放しというお立場ではないでございましょうから、そういうときにいつまでも、イリキッドな立場の銀行、手元は苦しいが資産は大変にいいということはほとんどございませんので、両方のことは同じことではないけれども非常に近いことでございますから、そういう状況のときにいつまでも特融というものをやっておいでになれるものだろうか。  それは一般的な、ごく普通に解釈すればやはり、言ってみれば、恐らく鈴木委員の言われますのは、それはカンフル注射みたいなものであるから、リクイディティーが回復、そうやって維持されればその間に体質が改善するということはあり得るんだ、そうおっしゃっているわけではないでしょう。そうじゃないですね。そうだとすれば、まあまあそういう意味で私は申し上げた。
  97. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そこの最後のところは違うので、リクイディティーを喪失した状態が破綻ですね。それが支払い不能の連鎖を起こしてシステミックリスクが表面化するのを防ぐためにリクイディティーを供給する、それにぽんと入っていくのが日銀の仕事、特融です。  それで、ぽんと入って支払い不能の連鎖をとめたらその後どうなるか。拓銀を見たって何を見たってすぐわかるでしょう。そこでもう営業停止ですよ。それで整理に入っていくわけですよ。それを特融で営業をやらせるなんて、そんな妙なあり得ないことを前提に蔵相はおっしゃるけれども、そうじゃないので、ばんと飛び込んでいったら、そこでもう営業停止で整理に入っていくわけですね。  それで、整理に入っていったときに何が起きるかといえば、もちろん債務超過でなければ、ソルベンシーがあれば、リクイディティーの問題を解決しただけで整々と整理されて、あるいはこれは継続できるわいといって生き返るかもしれないけれども、普通はおっしゃるように、整理していけば、特にゴーイングコンサーンでなくなると、回収できたはずのものまでおかしくなりますから、普通は、その瞬間には債務超過じゃないとか言っているけれども、整理に入っていくと、ああ、やっぱり債務超過でしたと、山一みたいな話になっていくわけですね。  そのときに日銀特融はどうなるのか。預金は、支払い資金が不足すればペイオフコストをはかってちゃんと預金保険機構から金を入れますね。それから、債務超過の分をかぶってしまうのは株主であるし、劣後の債権者であるわけですね。それで、通常は特融というのは戻ってくる。これまで特融が戻らなかったことは一度もない、全部戻っているのですね。そういうのが特融の性格ですから、私が、特融があるんだから、大銀行破綻したら打つ手なしとか大混乱が起きるとかおっしゃってはいけないと言っているのは、そういう意味ですよ。特融が入ったら、その瞬間、システミックリスクをとめることはできる。それから整々と整理に入っていけばいいじゃないかということです。  次に問題を進めますと、わかったと、それで整々と整理に入っていこうと思っても、今や大銀行は国際取引がたくさんあるよ、特にデリバティブスがたくさんあるよということがこの委員会でもしばしば議論になっていて、長銀さんも金利スワップ中心に四十四兆円ぐらいの残高が一応想定としてはあるわけですね、想定元本として。そういうことを言っておるわけですが、これはどなたにお聞きしたらいいのかな、その場合、ディーリングとお客様の取引をつなぐ委託があるわけですね。これはどう違うかは、準備してあるならお答えください、どうぞ。
  98. 乾文男

    ○乾政府委員 お答えいたします。  ただいま御質問いただきましたディーリング、いわゆる自己勘定と申しますものは、金融機関、この場合ですと銀行でございますけれども、みずからの判断に基づきまして、みずからの勘定において取引を行う業務を指しているわけでございます。それから、顧客からの委託と申しますのは、顧客の判断のもとに、顧客からの注文を受けまして、顧客のために銀行が当該取引を執行することを指しているわけでございます。  したがいまして、言うまでもないことでございますけれども、ディーリングによりまして生じました損益は銀行の損益に帰属いたしますし、それから顧客からの委託によりまして生じました損益は顧客に帰属する、銀行はその場合手数料を受ける、そういう関係にございます。
  99. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そのとおりであります。  さて、デリバティブスについても全く同じです。先日、大野参考人は西田委員質問に対してはっきりこういうふうに答えております。  今度のリストラ計画で出しましたように、そういった業務デリバティブスについて抑えているということでございますが、ただ、デリバティブ自身は、私どもがいわばディーリングでやっている部分というのはもうほとんどございません。お客様の財務上のヘッジ、それに対する依頼を我々が受けて、それを逆につないでいって、こういう形の対顧ベースのデリバティプスがある、これが大部分でございます。  ということは、仮に破綻した、それで日銀特融まで出ていったんだから業務は整理だといったときには、ディーリングはもうないのですね。お客様のをつないでいるだけだったら契約破棄なんかしませんよ。お客様がリスクを負って、損益はお客様につくという形でやっているんですから、契約を途中でとめるなんということは絶対しません。これは最後まで続けますよ。だから、世界じゅうに大変な影響が行くというのは大うそ、そこのところをちゃんとわきまえていただきたいと思いますね。  大野参考人ははっきり言っているのですよ。これはもうディーリングはほとんどありません、委託をつないでいるだけです、委託をつないでいるだけだったら、その金融機関業務を停止するといったって、その部分はお客のかわりにやっているんですから、契約は期限が来るまでずっと続けます、契約破棄なんかしません。  ですから、こういうことで、デリバティブスを例に引いて、仮に特融が入って国内のシステミックリスクがとまったとしても、対外的に大騒ぎが起きるなんというのは、僕は、金融の本当の知識のない人が大騒ぎしているというふうに思いますね。ですから、私は、この点でもちょっと、長銀破綻したら大変なことになると言い過ぎる、国民に不安を与え過ぎるというふうに思います。  この大野参考人の証言、残念ながら新聞は四十四兆円ぐらい金利スワップ中心にあるということしか伝えていない。大野木さんが、これはディーリングはないと言ったのがあの証言の一番大事なポイントです。それを新聞は伝えていない。それから、宮沢蔵相を初め政府側もその重い意味を受けとめていながつたなと思いますので、きょうははっきり申し上げておきたいと思います。  それから、先ほどのお答えの中で、ベアリング・ブラザーズがつぶれたときは大変だったというふうにおっしゃいました。それは、ベアリング・ブラザーズは一個人の裁量で、デリバティブスなんかわっと膨らんでしまって、大変な額の負債を抱えて破綻している。これは大変でした。  しかし、ずっと御答弁を伺っていますと、仮に長銀破綻したら、日本銀行は国際的なデリバティブス市場からシャットアウトされる、ないしは物すごい高いプレミアムを要求される、その手の答弁をしきりとしているのですよ、この委員会で。ベアリング・ブラザーズが破綻したとき、イギリスのどの銀行がそういう目に遭いましたか。もしそういう例を御存じだったら言ってごらんなさい。
  100. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 先ほどのことに戻りますけれども、ディーリングがないから長銀自身の損失というものは実はそんなにあるはずはない、そこは、私はそうだろうと思っているのです。  そうでなくて、委託でありましても、長銀が一方の相手方になりましたデリバティブス取引デフォルトになるわけですから、そのことが相手側にどういう影響を与えるか、そういう信用の問題というのは私はある、そういうふうに思っておりますし、金銭の問題は、確かに自分の勘定がないわけでございますから、ないとしても、海外に相当な支店も持っている銀行が、だれのものであれ、そのデリバティプスの契約そのものが相手方からいえばデフォルトになる、こう考えるのじゃないでしょうか。
  101. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そこは違いまして、デフォルトになるのはディーリング、自己勘定分だけです。委託でやっている分はデフォルトになりません、それはなりません。これ以上この場で申しませんが、どうぞ専門家をお呼びになってお調べください。それは大丈夫です。  そういうわけですから、私、まず最初に何を言いたかったかというと、総括質疑のとき、こんな技術的な議論をしてはいかぬな、テレビも入っていたしと思って、さあっといってしまいましたが、実は長銀破綻したら大騒ぎになるんだというのは二つの点で違う。一つは、特融が入れば大丈夫なんですよ。それからもう一つは、デリバテイブスだってもうディーリングはなくなっているんだからという、この二つの点を確認したわけでございます。  もちろん、長銀は大きな銀行ですから大変じゃないとは言わないが、お手上げたということは絶対ない。きちっとシステミックリスクを回避できる、それだけの能力を持っている。ぜひこういうことを総理や大蔵大臣に胸を張って言っていただきたい。そうすれば、国民の皆さんも安心するし、何も知らないで聞いている海外の人も安心するしと思います。  次にもう一つ、この間話をしているときに、余り深めないでさっといってしまったことがあるのですね。これは破綻銀行の借り手保護の話でございます。  宮沢大蔵大臣はしきりと、公的ブリッジバンクにして二年、場合によっては五年だけれども、こうやりているうちにとてもいい銀行になって借り手が出てくるとよくおっしゃるのですが、私にはその理屈は理解できないですね。  総括質疑のときも申し上げましたが、破綻した金融機関を国家が管理している、そんなところとしか取引できない企業というのは信用ない企業ですよ。だから、企業は、業績が改善すれば少しでも早く公的ブリッジバンクから一般の、普通の銀行へ移りたがりますよ。移っていくでしょう。そうすると、最後まで吹きだまりのように残っている公的ブリッジバンクの取引先というのは、一番悪いところだけだと思うのです。しかも、そこに公的資金をつぎ込むというから、この公的ブリッジバンク構想は公的資金の投入が非常に大きくなる、まずいアイデアじゃないかと私は言っているわけです。  蔵相、私のこの見方についてどうお思いですか。僕は、どう見ても公的ブリッジバンクがいい値で売れる銀行によみがえるとは思わない、景気でもよくならない限り。
  102. 宮澤喜一

    宮澤国務大臣 そこはこの間も申し上げたことでございますけれども、気のきいたお客さんはよその銀行へ移っていく、こうおっしゃるのですが、現在の日本の事情から考えますと、御承知のような貸し渋りで、何十年の得意先も切っていく、そういう今の銀行のありさまの中で、長い取引から外された企業がどこかへすぐ拾ってもらえるという状況には今の日本のありさまはない、残念ながら、これは早く変わってもらいたいと思いますけれども、そういう状況であると思いますもので、その点は余り私は楽観的になれないのでございます。
  103. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 直接お答えになっていないような気もしますが。私は、そういうわけで、公的ブリッジバンクは悪い企業の吹きだまりになるだろう、公的資金の投入もふえるだろうと思っているのですが、我々野党三会派は、そう思うがゆえに公的ブリッジバンクには反対で、どういう対案を用意したかといえば、破綻した金融機関の借り手で、自主的によその銀行に移れない、しかし三分類や四分類ではないのだ、こういう中小、中堅に対して、信用保証協会の保証を与えることによってよそへ移れるようにしょうという構想を持っておりまして、これは、法案はほとんどできておりますが、ほかの四法案よりちょっとおくれて来週提出することになると思います。  それで、与謝野通産大臣、お忙しいところお越しいただきまして、ありがとうございました。  実は、ここのところが、私ども三会派の構想と政府・自民党が考えておられることとの違いなんですよね。つまり、二つ大きな違いがあって、一つは、政府・自民党は、貸し渋り対策として信用保証協会にお金をつけて枠を大きくすることしか考えていない。我々は、それも考えているけれども、もう一つ、破綻金融機関の借り手で、大体第二分類の中小、中堅でしょう、他行に移れないというところに保証をするということを考えている。そこが政府案と違うのですね。この前、総括質問で私がこの話をしたら、おれたちだつて考えているよとやじを飛ばした自民党の委員の方がいらっしゃったけれども、それはここがまず第一に違うのですね。  それから、二番目に違うのは、政府・自民党案では保証協会のところへ金を入れることを考えています。我々もそれは考えているが、もっとメーンのところは、特に破綻した金融機関の借り手が移りやすくしてやる。ここのところはお金を中小企業信用保険公庫の方に入れようと思っているわけですね。公庫の方に入れておいて、普通、信用保証協会が公庫に再保険するのは七〇%、八〇%ですが、この再保険率をうんと上げてやる、場合によっては一〇〇%に上げて、全部こっちへつないでいらっしゃい、保証協会はリスクを負わないでいいですよと言ってやれば、どんどん出るだろうなと。  それで、どのくらいお金がかかるだろうと考えますと、第二分類の回収不能の比率というのは、過去の例では一五%かそこらなんですね。梶山構想では二割引当金を置けと言っているから、二〇%と、非常に大きく見ている。信用保証協会の貸し踊れのリスクというのはもっと低いです。一〇%以下だと思います。そういうことですから、仮に二割と考えても、公庫のところへ五兆円入れてやれば、五、五、二十五兆円の信用保証の能力が保証協会につくだろうなというふうに思うのですね。もう二十五兆円だったら十二分でしょう。第二分類全部合わせたって、マネーセンターバンクで自己査定の結果では四十五兆円、全国銀行協会で六十五兆円、その他もろもろ入れても八十兆円です。その連中の四分の一が倒れるなどということはないでしょうが、仮に四分の一倒れたってカバーできるということですからね。そこが違う。この二点が違うのですよ。  ですから、私は、政府・自民党さんに、おれたちも考えているよ、同じだよなどとやじを飛ばす暇があったら、ちゃんと私どもの案を精査していただいて、ああなるほどと思ったら、これに賛成していただきたいというふうに思うのですが、通産大臣、いかがでしょうか。
  104. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 自由党がお書きになった貸し渋り対策と実際閣議決定されたものは非常に似ているわけでございますが、別にこれは自由党の政策から直接引用したものではございません。先生方も独自でお考えになっていた、我々も独自で考えていた、たまたまそういう考え方は大体同じ方向であったということだったと思いまして、自由党の政策には、先般もお答えいたしましたように、私は心から敬意を表したいと存じます。  そこで、先生の第一の御質問は、どうも政府の案は貸し渋り対策だけではないか、破綻した銀行取引をしている人たちは一体どうなるのだろうかということですが、これは、事実資金の調達が困難になったという意味では、両方とも実は同じ性質の問題だろうと私は思っております。一般的な貸し渋りのほかに、そういうことはないと思いますが、仮に破綻した銀行が多数の中小企業を抱えているというような場合には、ブリッジバンク制度に移行する、あるいは本来業務は継続されるということになっておりますが、当然、ある種の不自由はそういうときに生じるということも予想されるわけでして、そういうときにこの保証協会の今回の能力強化ということがどう働くかということは、その事実に直面しないとわかりませんけれども、そういうものを直接除外しているわけではありませんで、むしろそういうものも、そういうことになれば、当然そういうことの対象になるというふうに考えた方が私は自然であると思いますし、そういうふうに私はなると確信をしております。  したがいまして、第一の点は、先生御懸念のそういうものまで入れた方がいいのではないかという御指摘は、私はそのとおりだと思いますが、直接は表現しておりませんが、当然、実行の段階ではそういうものも包含されるというふうに私は考えていいのではないかと思います。  第二の点は、代位弁済をやるときに、今は保証協会が二、保険公庫が八という代位弁済の負担率になっております。これは、皆様方の御主張は、代位弁済をするときに保険公庫で一〇〇持ったらいいじゃないかという御主張だと思いますが、これはある種の、この間西川議員も御指摘になっておられましたが、ある種のモラルハザードを生むという御指摘も、西川太一郎議員から受けました。保証協会が事故があって代位弁済をするときに、自分たちの負担がゼロだということになりますと、保証をするべきか否かということについての審査は、通常の場合よりは甘くなってしまうということが予想されるわけでして、やはり今法律に書いてありますように、二割は保証協会が持って、そして八割の分は保険公庫が持つという負担の割合というのは、私は適正だろうと思います。  ただ、先生が多分御懸念なのは、保証協会に対して幾らお金をつけても、実際、ある種の保証渋りとか、実際に保証行為が進まないのではないかという御懸念は、確かに私はそのとおりだと思っておりまして、保証協会の窓口で、例えば中小企業が保証を求めてきたときに親切親身に対応する、そういうことはやはり今後、実際現場を督励していかなければならないことでございます。  来週から、通産省、中小企業庁も全国の保証協会の方々と実際にひざ突き合わせて、実際にこれだけの金額は決めたけれども、実行するときの態度はいかにあるべきか、保証行為はどういう手順でどういう目安で行うかということは、実際現場できちんと申し合わせと申しますか、そういう態度については意思を統一して中小企業に対応しませんと、金額は計上したけれども保証は実行されないということでありますと、ただの絵そらごとになってしまいますので、実際にこういうものを用意した以上、そういう範囲内で中小企業の貸し渋りが少しでも解消できるように、政府を挙げて、また各県を挙げて努力すべきということは多分鈴木先生の御質問の趣旨だと思いますので、そのような方向で我々は努力をさせていただきたいと思っております。
  105. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そういう御努力はぜひやっていただきたいと思いますが、まず第一の点について、政府・自民党の貸し渋り対策も、破綻金融機関取引先で、よそへ行けないから保証してちょうだいというのもリジェクトはしてないから包含できるというふうにおっしゃいましたね。それはそうだろうと思うのです。だけれども破綻金融機関のそういう中小、中堅をもっとしっかり保証して、他行に移りやすいようにしてあげるためには、我々が言っているような特別枠というのをばんとほかに設けた方がいいんじゃないんですかと言っているわけですね。特に我々はブリッジバンクを……
  106. 相沢英之

    相沢委員長 申し合わせの時間が終了しておりますので、御協力願います。
  107. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 はい。でも、御答弁が長過ぎたから。なるべく早くやりますが。  ブリッジバンクをやめてと言っているものですから、やはりそういう特別枠が要るんじゃないのか、ぜひその点を前向きに考えていただきたいというふうに思います。その点を要望いたしまして、質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  108. 相沢英之

    相沢委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次回は、明四日金曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時四十三分散会