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1998-09-01 第143回国会 衆議院 金融安定化に関する特別委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年九月一日(火曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 相沢 英之君    理事 石原 伸晃君 理事 藤井 孝男君    理事 村田 吉隆君 理事 保岡 興治君    理事 山本 有二君 理事 池田 元久君    理事 中野 寛成君 理事 坂口  力君    理事 谷口 隆義君       愛知 和男君    伊藤 達也君       伊吹 文明君    江渡 聡徳君       大石 秀政君    大島 理森君       大野 松茂君    大野 功統君       金田 英行君    河村 建夫君       倉成 正和君    古賀 正浩君       佐田玄一郎君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    滝   実君       津島 雄二君    中谷  元君       能勢 和子君    蓮実  進君       宮本 一三君    山本 公一君       山本 幸三君    吉川 貴盛君      吉田左エ門君    渡辺 具能君       岩國 哲人君    上田 清司君       枝野 幸男君    岡田 克也君       海江田万里君    北村 哲男君       仙谷 由人君    古川 元久君       渡辺  周君    石井 啓一君       上田  勇君    大口 善徳君       鈴木 淑夫君    西川太一郎君       西田  猛君    鰐淵 俊之君       木島日出夫君    佐々木憲昭君       春名 直章君    秋葉 忠利君       濱田 健一君    笹木 竜三君  出席国務大臣         法 務 大 臣 中村正三郎君         大 蔵 大 臣 宮澤 喜一君         通商産業大臣  与謝野 馨君         国 務 大 臣         (内閣官房長官)野中 広務君         国 務 大 臣 柳沢 伯夫君  出席政府委員         内閣審議官   白須 光美君         国土庁土地局長 生田 長人君         金融監督庁長官 日野 正晴君         金融監督庁検査         部長      五味 廣文君         金融監督庁監督         部長      乾  文男君         証券取引等監視         委員会事務局長 船橋 晴雄君         法務省民事局長 細川  清君         大蔵大臣官房総         務審議官    武藤 敏郎君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省金融企画         局長      伏屋 和彦君         通商産業大臣官         房審議官    岡本  巖君  委員外出席者         参  考  人         (金融危機管理         審査委員会委員         長)      佐々波楊子君         参  考  人        (日本銀行総裁) 速水  優君         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         衆議院調査局金         融安定化に関す         る特別調査室長 藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 九月一日  辞任         補欠選任   愛知 和男君     古賀 正浩君   倉成 正和君     大石 秀政君   砂田 圭佑君     吉川 貴盛君  吉田左ェ門君     能勢 和子君   渡辺 喜美君     田中 和徳君   枝野 幸男君     渡辺  周君   岡田 克也君     岩國 哲人君   西川太一郎君     鰐淵 俊之君   佐々木陸海君     木島日出夫君   濱田 健一君     秋葉 忠利君 同日  辞任         補欠選任   大石 秀政君     倉成 正和君   古賀 正浩君     愛知 和男君   田中 和徳君     渡辺 具能君   能勢 和子君    吉田左エ門君   吉川 貴盛君     砂田 圭佑君   岩國 哲人君     岡田 克也君   渡辺  周君     枝野 幸男君   鰐淵 俊之君     西川太一郎君 同日  辞任         補欠選任   渡辺 具能君     渡辺 喜美君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  不動産に関連する権利等調整に関する臨時措  置法案内閣提出第一号)  金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律及び預金保険法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二号)  債権管理回収業に関する特別措置法案保岡興  治君外三名提出衆法第一号)  金融機関等が有する根抵当権により担保される  債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する  法律案保岡興治君外三名提出衆法第二号)  競売手続円滑化等を図るための関係法律の整  備に関する法律案保岡興治君外四名提出、衆  法第三号)  特定競売手続における現況調査及び評価等の特  例に関する臨時措置法案保岡興治君外四名提  出、衆法第四号)      ————◇—————
  2. 相沢英之

    相沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出不動産に関連する権利等調整に関する臨時措置法案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律及び預金保険法の一部を改正する法律案並び保岡興治君外三名提出債権管理回収業に関する特別措置法案及び金融機関等が有する根抵当権により担保される債権譲渡円滑化のための臨時措置に関する法律案並び保岡興治君外四名提出競売手続円滑化等を図るための関係法律の整備に関する法律案及び特定競売手続における現況調査及び評価等の特例に関する臨時措置法案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山本幸三君。
  3. 山本幸三

    山本(幸)委員 自由民主党の山本幸三です。  まず、今回の集中豪雨で大変な被害に遭われたわけでありますが、亡くなられた方もおられますし、また、家財を失い、避難を余儀なくされた方もたくさんおられるわけでありますが、心からお悔やみとお見舞いを申し上げたいと思います。  そしてまた、昨日は北朝鮮が事もあろうに日本上空を通過してミサイル発射実験をやったということでありますが、まことに国際世論を無視する動きであり、大変憤りにたえません。政府としても、他の国々と協力して、国民に不安を与えることのないよう万全の措置をとられるように要望しておきたいと思います。  時間がそれほどありませんので本題にすぐ移りたいと思いますが、この金融問題、不良債権問題というのは、これまでの議論を聞いておりましても、やはりなかなか難しいなという気もいたします。どうしてなかなかすっきりと理解が進み、結論が出ないのかなと思うんですけれども、私の考えでは、やはり一般的な常識だけではどうも処理できない、常識にそぐわないようなことも考えないとなかなかうまくいかない、あるいは経済実態が一般的な常識あるいは法律的な常識、そういうものとかけ離れているというようなことがあるんじゃないかなとずっと思っているわけであります。そういう意味で、ちょっと常識的な理解ではなかなか取り上げられてこなかったような問題があるんじゃないかというふうに思うんですね。  その第一は、不良債権問題というと、銀行が持っている債権で、焦げついた、つまり回収が不能になった、それがどれだけあるかという議論をこれまでずっと続けてきたわけですね。恐らく監督当局も、あるいは銀行経営者当人たちもどうもそういうふうに思っているみたいなようであります。つまり、回収が不能になったので、その分をどう処理したらいいか、それは一体どれだけあるんだ、監督庁検査をしてもらって、二分類の中で三分類、四分類にいくようなものがどれだけあるかというのを早く出せ、そういう議論が非常に多いわけでありますが、私はちょっと違う考え方をしておりまして、実は回収不能な部分というのは、これは処理できる。これは引き当てをやればいいし、償却すればいい。銀行経営にとって最大の問題は、むしろ反対の方でありまして、回収可能な不良債権というのが銀行経営にとって大きな問題じゃないかと思っているのですね。  なぜならば、その部分はかなりある。そして、これは引き当て償却という措置もできない。担保がよければよいほど、そういう対応ができない。しかし、その部分についての保有コストというのは銀行経営にかかっているわけですね。つまり、有利子負債預金にしろあるいは社債にしろ、そういう意味保有コストというのがしつかりかかっている。銀行バランスシートからはちっとも落とせない、しかし、保有コストはかかっていて、これが相当大きな負担となって銀行経営を圧迫しているのじゃないかなと。  したがって、この回収可能な不良債権をどうするかということが、今回の不良債権問題を解決する大きなポイントじゃないかなと私はずっと思っているわけであります。このことが一つ。  それからもう一つは、不良債権問題というのは銀行側の問題だという認識が非常に強いのじゃないかなという気がするのですね。不良債権という言葉自体がそうですね。ところが、コインの両面がありまして、反対側には不良債務問題というのがあるのだと思うのですね。つまり、借りている方の問題。  我々は、不良債権問題といって、銀行の方の負担処理をどうするかということばかり議論してきた。金融安定化法あるいはブリッジバンク法案も、そういう銀行の問題を中心考えているように思いますけれども、実は借りている方の問題というのをずっと考えてこなかった。私は、そのことが今日の日本経済の停滞の大きな要因の一つになっているのじゃないかなという気がするのですね。  借りている方、恐らくバブルで踊ったというところもあるでしょう、あるいは、銀行にどんどん借りてくれと言われて土地を買って、銀行の言うことを聞いていたら、気がついてみたらすっかりバブルの崩壊で傷ついてしまったというところがあるでしょう。多く不動産業とか建設業がそういう損害をこうむっていると思うのですけれども、この業界というのは、大手だけじゃないのですね。多くの中小企業がいる。不動産業建設業に従事している大半が中小企業と言っていいでしょう。  この人たちは、大体七百五十万人ぐらい雇用者がいると言われているのですね。そのほとんどが、帳簿上はそのままになっているけれども実態は資産の方がぐっと落ちて実質債務超過状況に陥っていて、銀行から金を返せ返せと言われているけれども本業の方のもうけだけではとても返してはいけない、そういう状況に追い込まれている。いつつぶれるかわからない。この人たち、七百五十万人の雇用者、家族を入れると人口の四分の一が、何らかの形でこうした業界関係している。その人たちの、将来会社がつぶれるかもしれないという状況がある限り、いろいろな景気対策を打ってもなかなかきかない、私はそこに大きな原因があるのじゃないかなという気もしているのですね。  したがって、不良債権問題を本当に解決しようとするならば、この実体経済の担い手である借り手の方、ここをどうするかということがなければ十分じゃない。そこで考えられたのが、簡略して言っておりますけれども、今回の不動産関連権利等調整法ではないかなというふうに私は思っているのです。  銀行経営にとっても、不良債権処理というのは結局バランスシートから不良債権を落とすということですから、早く回収するのが一番いいのですね。ところが、今までの日本銀行対応というのは実はそうじやなかった。むしろ、回収不能な部分について間接償却引き当てをしていけばいいという処理をずっとしてきました。  これはなぜかというと、回収作業というのは手間がかかりますから、あるいは税務上の問題、会計上の問題、いろいろ出てくる。厄介な問題があるのですね。そういう手間もかかる、厄介なことには余りかかわりたくない。机の上で、帳簿上の操作で引当金を積むということだけで終わっていれば、これにこしたことはない。そして、時がたって、景気がよくなって、不動産市場が戻ってくれば、その借りている企業再建できて、そして返してくれるであろう。  きのうの長銀頭取も言っておられましたけれども、時がたてば何とか解決できると思っていた。恐らく日本銀行頭取はみんな思っているのではないか、そういう気がしてならないのですけれども、それじゃだめだ。やはり回収できるところは回収する。それも担保の質のいいところから回収するということをやると、これはその部分がばさっとバランスシートから落ちますから、保有コストがなくなって、業務純益があっという間に、ただ単に不能の部分償却しているよりも何倍も業務純益の回復に寄与するのですね。  ところが、銀行はそういう面倒なことに対してやりたくない、あるいは、そういうことをやろうとしてもなかなか借り手がオーケーしてくれない。  例えば、百億をある不動産会社が借りて、百億の土地を買っていた。この土地の値段が、価値が今二十億に下がってしまった。これは極端な例ですけれども、わかりやすくするためにそういう例で話します。そうすると、銀行は金を返せ、返せと言うのだけれども、借りている方は本業もうけで返すというのはたかが知れている。銀行担保処分して返せと言うけれども担保処分して返したって二十億しか返せない、依然として八十億の借金がずっしりと残っていく。中小企業にとっては、きのうの話にも出ましたが、社長の個人保証までとっている。最後まで追いかける。  そういう状況だと、借りている方から見れば、いや、いずれ土地の価格はまたもとに戻る可能性があるのだから、そんな処分したくないという行動に出て徹底的に抗戦する。その結果、銀行借り手の方は対立した関係になって、なかなか処理が進まない。それを国民的なレベルで支えるために異常な超低金利が続いているし、あるいは、銀行側に、間接償却であるけれども無税償却という措置を認めた。あるいは、この三月には公的資金の導入ということもやった。しかし、この対立関係をなかなか解決できない。  私は、その意味で、このままそういう状況が続くと、体力のある銀行でそういう処理をしていって、持っている状況が続いて、そのうち景気が回復して不動産市場が戻ればいいですよ。だけれども、それがそう簡単にいかないとなると、長銀のようなことに多くの銀行がなっていくのではないかという気がしてならないのですね。  では、どうしたらいいか。そこは貸している方と借りている方が歩み寄るしかない。お互いに相談して、複雑な権利関係調整して、少しでも回収してもらうために、その担保処分をしてください、そして少しでも返してほしい、あるいは、その企業再建させる形で担保処分を少しでもやって、返してほしいと。少しでも返してもらう、そのかわり、銀行の方はその再建ができるように債権放棄ということも当然考えなければいかぬ。そのインセンティブがあれば、借りている方は、じゃ、やりましょうということになるのではないかなという気がするのですね。  その意味で、本当の不良債権問題を解決する道というのは、回収可能な債権回収するための措置、そして借り手の方の不良債務問題というのを解決してやる措置が必要で、それを何とか工夫してやろうというのがこの法案ではないかなというふうに思っているのです。  そういうふうに思うのですけれども柳沢大臣、いかがでしょうか。
  4. 柳沢伯夫

    柳沢国務大臣 委員が、長年のいろいろな御研究あるいは御経験を踏まえて、最近の不良債権問題についての見方というものを御披露いただきながら、今回の私ども不動産関連権利調整臨時措置法のねらいについてお話しになられ、これについて私の見解を今お尋ねになられたわけでございます。大体において、委員のおっしゃられたことは私ども考えでいるところと一致をするというか、軌を一にしているなというふうに思いながら聞いておりました。  ただ、山本委員の今述べられたことでちょっと気がかりな点は、百億の貸し付けの担保としてとったものが二十億に今減価してしまった、八十億の債権を切り捨てればきれいになるじゃないかという、これはまあ事柄をわかりやすくするために単純化されたのだとは思いますけれども、そういう感じ処理が今回の法案のねらいであるというようなお言葉もあったやにお聞きしたわけでございますけれども、これはそこまで単純に、私ども、すべてを考えているわけではございません。  委員の御発言というのは、当該の問題になっている不動産に対するいわゆるプロジェクトファイナンス的なファイナンスが行われた場合の処理としてはそういうこともあることが多いというふうにも聞いていますけれども、大体我が国の融資というのは、そういうプロジェクトファイナンス型の融資よりも、法人あるいは企業全体に対して貸すという、いわゆるコーポレートファイナンス型のファイナンスであるということでございますので、私どもが今この法律でもって考えておる譲り合いということは、必ずしもその不動産価値だけの、換価された価値だけの分配をどうしようかということにとどまらず、場合によっては、譲り合い、あるいは公正、妥当、遂行可能という私ども合意の三原則を実現するためには、その範囲を超えて全体として譲り合って、一つ債権放棄、一部放棄、あるいは抵当権の順位の変更あるいは抹消というようなことが総体として合意がなされ、それが企業再建に資し、そのことを通じて、先ほど言った八十放棄しちゃうんじゃなくて、担保不足の面で、合意のときには未回収に終わるものについても、徐々に本業というか不動産以外の事業の面で回収が期待される、そういうような総体的なパッケージとしての合意というものも考えられておるわけでございます。  ぜひそうした意味合いでの大きなパッケージとして譲り合って一つ合意が求められる、それが企業再建に資し、またその合意自体も、どこから見ても皆が公正、妥当、遂行可能だと見るような、そういうものを我々としては追求しているんだということについて御理解を賜っておきたいと思います。
  5. 山本幸三

    山本(幸)委員 そのことはおっしゃるとおりだと思います。当然、ただ債権放棄でまけてやればいいということはあり得ないので、いろいろな条件がつかないとお互い合意が得られないだろうというふうに思いますね。  その意味では、例えば放棄するかわりに第三者割り当て増資銀行が受けるとか、あるいは証券化してそのエクイティーを受けるとか、いろいろな条件つけ方があるだろうと思いますが、その辺はぜひ工夫していただきたいなというふうに思います。  ただ、このことが徳政令批判というような、一般的な批判があるのですけれども、その点についてはどうですか。
  6. 柳沢伯夫

    柳沢国務大臣 徳政令というものがどういう意味で言われるかということも、ちょっと厳密に言うと定かでないという感じもしますけれども、いわゆる借金の棒引き、しかもそれを一定の公権力が強制力というか一つの力を持って実現してしまうというのを徳政令だというふうに理解をさせていただくといたしますと、我々が今度御提案申し上げておる法案というのは、そうしたものとは非常に違うものである、これもぜひ御理解を賜りたい、このように思います。  もともと、これは関係者合意に基づいて行われるわけで、自分の意に反した譲歩というものが別に強制されているわけでも何でもありません。そういうようなことでございまして、譲り合いの中身として、自分が持っている財産権、例えば債権といったようなものについての一部免除というようなことも当然期待をいたしておるわけでありますが、それも、全体のパッケージとしての合意当事者のだれにとっても公正である。あるいは、公正というのは、もうちょっと、必ずしも当事者だけの間でなく、客観的にも公正である。それから、当事者相互にとって妥当である。これは、別の言葉で言えば公平であるということでございますが。  それから、えてしてこうしたものというのは、苦し紛れに、実際にはできもしないことで、みんなの痛みを和らげるためにとりあえず合意を図ろうという余り、遂行可能でないようなことになりがちだということも注意される点でございますが、それらについても、やはり遂行可能、実現可能の合意でなければなりませんよ、こういうようなことを言っておるわけでございます。  そうした今度の制度でございますので、これが徳政令に当たるというようなことはもう全く、その点はひとつ理解をしていただければおわかりいただける点であると我々は考えて、ぜひこの点についても御理解をいただきたいと思っております。
  7. 山本幸三

    山本(幸)委員 そのとおりだと思うのですね。アメリカはもちろんプロジェクトファイナンス、ノンリコースローンですから、担保処分してしまったらもう全部終わりというのは常識なんですね。日本ではそうなっていない。そういう意味で、これは徳政令批判あるいはモラルハザード批判、当然あると思いますが、まあそれが一般的な常識なんでしょう。だけれども、それだけではどうも経済実態問題が解決できないというところに難しさがある。  そういうことで、今まで待ちの姿勢で臨んでいた銀行が、どうもそういう批判を、我が意を得たりといって抵抗する手段に使っている向きがある。あるいは、やはり税務上の処理が難しいのだとか株主代表訴訟があるだとか、そういう言いわけばかりして、これは銀行が協力しないとちっとも進まない。あるときには、銀行は、そんな債権放棄したら、その企業には二度と貸しませんよなんでおどしもかけたりする傾向も見られないわけじゃない。しかし、そんなふうになると、これは動かない。銀行バランスシートが幾らきれいになったって、実体経済は全然変わらないのですから経済は回復しない。したがって、銀行がぜひこの法案趣旨をよく理解して、協力してもらわなければいかぬ。  このことは、私は金融監督庁としての重要な任務であるというように思っているのですが、監督庁、ぜひそういうふうに銀行側に協力を求めてもらいたいと思いますが、いかがですか。
  8. 日野正晴

    日野政府委員 お答えをいたします。  先ほど御指摘がありましたように、金融機関はこれまで不良債権に対して引当金を積むという、いわゆる間接償却中心にした処理をしてまいってきたところだと思いますが、不良債権問題を実質的に処理しようといたしますと、どうしても、担保物件処分あるいは債権債務関係整序などを通じまして、不良債権バランスシートから落としていくということが極めて重要ではないかというふうに考えるわけでございます。  そこで、この不動産関連権利等調整法案は、不動産担保つき不良債権に係る債権債務関係を整理、明確化するものと承知しておりまして、こうした不良債権の実質的な処理に資するものというふうに考えております。  金融監督庁といたしましては、この法案が成立した暁には、その趣旨をも踏まえまして、金融機関不良債権実質的処理がより一層進展していくようにこれを促してまいりたいというふうに考えております。
  9. 山本幸三

    山本(幸)委員 ぜひ大いに頑張っていただきたいなというふうに思います。そして、この法案の実が上がるようにしていただきたいなと思います。  先ほど申し上げたように、そういう意味で、この金融問題というのは、ちょっと常識と違うことを考えなければいかぬことがある。法律的な常識とちょっと違うところが出てくるんですね。まさにこの債権放棄なんというのは、あるいはそれによって無税償却を認めるというのは、そういうことだろうと思うんです。  だけれども、長期的には、やはりそこのところは調整を図っていかなければいかぬ。法的な常識経済実態と合うようにしていくというのが筋だろうと私は思いますね。その意味で、やはり倒産法制をちゃんと整備していく、そのことによって法律的な常識実態とを近づけていくということをやらなければいけないだろうなと思っています。  アメリカではチャプターイレブンというのがあって、非常に債務者に強い、債務者が、ちょっとした理由であっても、ぱっと裁判所に駆け込めば一斉に更生手続を始めることができて、しかもそのためのファイナンスも受けられるというようなことで、債務者を再建するということを非常に念頭に置いた更生手続がある。しかも、それは中小企業も大いに使える。あるいは、私は今後の課題だと思っているんですが、個人のローンの問題があるんですね。これもアメリカではチャプター十三でちゃんと個人の更生というのも措置している。  そういう意味で、倒産法制をぜひ早く整備して、それにこの法案は吸収されていくというのが筋だろうと思うんですが、その点いかがでしょうか。
  10. 中村正三郎

    ○中村国務大臣 委員御指摘のとおりだと思います。倒産法制の改正というのは、長いこと国会でも御論議があり、今法務省ではこれの全面的な改正について精力的に取り組んでいるところでございまして、特に昨今の経済情勢にかんがみますと、これはもうできるだけ早くやらなければいけないということでございます。  そして、今委員御指摘なされましたように、整理しなければいけないところは、今まで御議論ありました和議だとか会社更生、また会社整理でございますね。そして、今御指摘のとおり、その検討の中心は、やはり中小企業であるとか、株式会社形式以外のものが使えるような倒産法制にしなければいけないということと、それから個人債務者の更生手続を定めなければいけない。そういうものを議論いたしますときに、今議員おっしゃられましたアメリカのチャプターイレブン、これは会社更生の部分、法人の部分の非常な参考になりましょうし、まさにサーティーンの方は、これは個人更生そのものですから、こういったものも参考にしながらやってまいりたいと思います。  ただ、何分にも大変多くの法律がかかわるものですから、今鋭意急がせまして、前、十二年というようなことを党と議論していましたけれども、それより早まらないかという検討をしております。  そして、特に個人債務者の更生手続等については、国会で御論議いただき、また党で御論議いただいて、いろいろな御指導をいただかなければいけない部分も出てくると思いますので、そういう場合に、いろいろな国会の御論議、御指導を賜りたいと思っております。
  11. 山本幸三

    山本(幸)委員 ぜひお急ぎいただきたいと思います。  最後に、ちょっと違う問題ですが、この委員会でもなるべく早く結論を得なければいけないんですが、野党の方の対案が出るということでありますが、今骨子案だけ示されております。ただ、ちょっと一覧しただけでは、例えば株主の財産権を侵害してもいいのかとか、あるいは株価の決定をどうするのかとか、いろいろな問題があるように思うのですけれども、大蔵大臣としてどういうふうにお考えでしょうか、ちょっとそれだけお聞かせいただきたいと思います。野党の骨子案について。
  12. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 野党の御提案というのは、大体の輪郭は承りました。  それで、しばしば申し上げますとおり、私ども政府提案が全体的にベストのものだというふうにも私ども考えておりませんし、事態の処理は極めて複雑でもございますから、その上に国会の御承認を得なければできないことでございますから、そういう意味で、願わくは私ども考えもお聞き取りを願い、その上で与野党におかれましてベストの答えを出していただければ、それが最善ではないかというふうに思っております。そういう前提に立ちますと、細部にわたってここがいい、ここが悪いというようなことを申し上げることは余り建設的でないかもしれない、そのように思っております。
  13. 山本幸三

    山本(幸)委員 どうもありがとうございました。ぜひ早くまとめていただきたいものだと思っております。  ありがとうございました。
  14. 相沢英之

    相沢委員長 これにて山本君の質疑は終了いたしました。  次に、古川元久君。
  15. 古川元久

    ○古川委員 民主党の古川元久でございます。  今、山本議員からも野党案について若干ありましたが、この委員会に付託されております、そして私たち野党三会派が提出をさせていただこうと思っておりますこの金融関連法案を審議するに当たりましては、宮沢大蔵大臣のやはり基本的な現状の認識あるいは思想、あるいはまた歴史観といったものまでお伺いをしていくことが必要じゃないのかなというふうに私は考えております。  なぜなら、現在与野党から提案されている案を比べてみますと、私が考えますには、どうも今置かれている現状認識だとか基本的な考え方とか、そしてまた歴史観みたいなところにかなりずれがあるような気がいたしまして、それがやはり内容の相違につながっているんじゃないかなというふうに考えております。また、こうした基本的なところにそごがあるままで内容の修正協議などを行うのは、これはかえって混乱を招きかねないんじゃないか。そして、本当に金融恐慌などを引き起こすということにもなりかねない。その意味で、その点についてきょうは大臣に幾つか確認をさせていただきたいと思います。  さて大臣、実は、私はちょうど十年前の昭和六十三年に、ちょうど宮沢大蔵大臣が前の大蔵大臣だったときに大蔵省に入省いたしました。当時、新入省者に対する大臣主催の歓迎会というのが三田の共用会議所で開かれておりました。そこで大臣が私たち一年生に対して訓示をされたことがあるのですが、そのことはお覚えになっていらっしゃいますか、十年前ですが。恐らく覚えていらっしゃらないと思うのですが、私もほとんど覚えていないのですが、一言だけ、非常に印象深く覚えている言葉があるのです。それは、大臣が、とにかく君たち、戦争だけは起こしちゃいけないよ、戦争が起こるようなことだけはしちゃいけない、そういう言葉を言われたのです。  私は昭和四十年生まれです。戦後二十年たってから生まれた世代です。その私にとって、戦前、戦中、戦後と、まさに政府の中枢にいて、いわば歴史の生き証人とも言えるような大臣から出ましたこの言葉が、私の胸には極めて鮮明に響きまして、この言葉は政治家となりました今も、私は、これは一種の刷り込みじゃないですけれども、やはりそういったことを肝に銘じていきたいというふうに考えておるわけですが、その意味で、本当に大臣には大変にありがたいお言葉を承ったというふうに感じておるわけであります。  そういう点からいたしますと、最近の世界の状況日本を含めてすが、七十年前のあの大恐慌の前夜のような雰囲気があるんじゃないかな、そんな雰囲気がしております。  最近のルーブル暴落から始まった世界全面株安、きのうもニューヨークでまた五百ドル以上株価が下げたという状況で、またきょうの日本市場も、再び一万四千円をどうも十時過ぎの現在では割り込んでいるようであります。そうした状況に接しますと、何となく、私は七十年前には生きていません、宮沢大臣も七十年前ですと本当にまだ子供の小さいころだと思いますが、何かそのときの雰囲気と今はひょっとすると似ているんじゃないかな。よもやそんな破綻に、恐慌に陥ることはないとみんなが思いながらも、いつの間にかそういうところに走っていってしまった。  私は、そういう何となくの、気持ちの悪いような感じが杞憂であってくれればいいというふうに切に念じておるわけでありますが、あの世界恐慌へ突入した、そしてそれが結果として何を引き起こしたかといえば、それは、まさに言うまでもなく第二次世界大戦、戦争を引き起こした。そのきっかけになったのは、やはり経済的な恐慌だったと思うんですね。そういう歴史を振り返れば、今もし世界が恐慌にでも陥るようなことになったら、これはその先に、大臣が、決して起こしちゃいけない、そう我々におっしゃられた戦争が、何らかのきっかけで起こりかねないような、そういう危険性はやはり高まるんじゃないかと思うんです。  そういった意味では、この現在の日本経済状況、そしてアメリカを初め世界経済状況をどう認識しておられるか。それは、まさに大蔵大臣でおられる宮沢大臣のその認識というのは非常に大事だと思うんですが、今の日本経済そして世界経済について宮沢大臣はどのようにお考えになっておられるか、そこについてお聞かせいただけますでしょうか。
  16. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 三田の会合でそういうことを申しましたことは覚えております。本当にそう思っておりますから、そういうことを申し上げたと思います。  今、昭和恐慌のお話がありました。あのときには、やはり我が国が第一次世界大戦の関連で非常に大もうけをして、ブームもありましたし、その後のバーストもありました。その上に、御承知のように震災がございましたから、震災手形というものがあったりいたしました。また、大戦中、大戦後の財閥活動の中で、特に鈴木商店というのは非常な顕著な存在であったわけでありますが、それと台湾銀行関係がいろいろに取りざたされた、そういうことの関連の中で金融恐慌が結局起こっていったと思います。  今一つ比較して申せることは、これは先進国の間ではみんな言えることだと思いますけれども、失業というものに対してかなり力強いネットワークができた、セーフティーネットができたということが一つあると思います。したがいまして、今の時代はかなりこのセーフティーネットが働きますので、あの当時考えられておったようなまことに惨めな失業というものはある程度緩和されることになって、経済の悪化を防いでおると思います。  また、もっと小さなことと申しますか身近なことでいえば、預金保険機構のようなものが我が国にありまして、そういう意味で、金融機関に不安があっても預金者に関する限り急に心配をしなくてもいいような、これも一種のセーフティーネットと思いますが、そういうものができておりますので、ああいうようなあからさまな失業、あるいは世界全体に及ぶような失業というのは、かなりそれに対してセーフティーネットができているとは思います。とは思いますが、しかし、そのことは、金融不安というようなものがどこかで起こって、殊にプレトンウッズ体制というものは崩壊いたしましたから、とめどもなくそれが世界的に及ぶという危険は、これはないわけではございません。  そのことは、今日は、昔と違いましてコミュニケーションの手段が非常に発達しておりますから、電話ででもやれるし、いつでも集まれるということで、かなり共同防衛ができる体制はできておると思いますから、野放しにそういうものが世界的に燎原の火のように発展するということはないであろう。IMFなども一つ役割を果たすわけであります。とは思いますが、しかし常に警戒をしなければならないことであります。  それが戦争に発展するかどうかということは、戦争というものの今後の可能性、それは文明の衝突でいろいろに議論されているその問題ですが、今のようなセーフティーネットがあり、協議体制がありますと、経済が発端になって戦争になる危険は多分かなり少なくなっているだろう、そのほかの理由が大きいと思いますけれども。しかし、先進国経済が非常に不振でありますと、発展途上国に対する援助でありますとかそういうものはとかくなおざりになりますので、そういう意味でまた南北間の格差というものが大きくなって、そしてそれが戦争の原因になり得る、そういうことは一つやはり警戒をしなければならない要因だろうというふうに思います。
  17. 古川元久

    ○古川委員 私が今大臣にお尋ねしたのは、確かにセーフティーネットが七十年前と比べればある、いろいろな形で過去の悲劇を繰り返さないような状況はできている。その話はわかるのですが、じゃ、今の日本経済の現状あるいは世界経済状況、それを見て、まさにニューヨークなんかでもこれだけ、ここわずかで本当に千二百ドルとか下がっているわけですから。そういう中で、今の状況は、そういう深刻な状況になってそれが恐慌になる、ならないは別ですよ、その前提として、恐慌にもなりかねないぐらいのかなり深刻な状況考えておられるのか。いや、まあこれはある意味景気循環の一つの転換で、流れの中で不況がちょっと谷が深いだけというふうに考えていらっしゃるのか。その辺の現状の景気に対する大臣の御認識というものを、日本についてあるいは世界について、お伺いしたいというふうに思います。
  18. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 現実の事態にコメントしろとおっしゃいますといろいろ差しさわりがございますので、いきなり現実の事態ということでなく、一般論として申させていただきますけれども、かなり投資家の間にも、あるいはすべての消費者の間にも、先進国では少なくとも情報が発達をしておりますから、もちろんその中にスペキュレーションというものはいつの世にもなくなることはないと思いますけれども、十分情報が発達しておりますし、ヘッジの手段もございますから、そういう意味で、今の事態を私は決して心配していないと申し上げるのではありませんけれども、やはりこうなると人間の知恵の方が私は上だろうという思いがありますものですから、何かのことでこれは大変なことにならないような、そういう知恵をお互いに出せるし、またお互いに助け合う体制もできている、基本的には私はそう思っております。
  19. 古川元久

    ○古川委員 大臣はそうおっしゃるわけですけれども、最近、こういう「「大恐慌型」不況」なんという本も結構売れているみたいなんですね。お読みになられたかどうかわかりませんが、これなんかだと、現在の不況というのは従来型の不況と違って、先ほど大臣がおっしゃった、失業に対するセーフティーネットもできているという話だったのですが、むしろ今それが壊れかけているのじゃないか。つまり、ある意味で今までのセーフティーネットは、基本的に、物価がそんなに下がっていかない、インフレ基調の中で、それでワークしてきたわけであって、今のようにデフレがだんだんと進んでいる、人によってはデフレスパイラルに陥っているんじゃないかという話もあるわけですが、そういうことの中で本当に働くのかどうか。今もし本当に、これがデフレスパイラルに入っているという話はかなり多くの人も言われるわけですが、そういう指針があるのであれば、やはりそこに対しては大臣がはっきりと、いや、そうじゃないならそうじゃない、あるいは、そういう危険性が十分にあるならそういうことを考えて、危険性を十分承知して政策を打っていくんだとか、そういったものを明確にやはり国民に対して提示していただく、明言していただくことが必要だと思いますが、大臣は、今の状況について、例えばデフレスパイラルに入っていると言われていることについて、どのように認識されておられますか。
  20. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大変にお答えしにくいのは、今の現実の事態と、それから一つの世界観とを分けて申し上げなければいけないだろうと思いますので、現実の事態に即して申し上げるわけではございません。  しかし、いわゆるデフレスパイラルということは、たくさんの方がおっしゃいますけれども、世界的な規模で考えるならば、飢餓に死んでいく人、靴を履いていない人がこれだけいる世界でのデフレスパイラルということは、基本的にはあり得ない。それは供給側と需要側とをつなぐ知恵が足りないだけであって、必ずその知恵は出てくると思いますので、私は、そういう意味でのデフレスパイラルというものは、基本的には今の世界でないことだろうというふうに思います。
  21. 古川元久

    ○古川委員 そういう抽象的な話しかできないというふうにおっしゃるんですが、この金融問題を考えるに当たっては、今の日本経済状況がデフレ的な状況なのか、あるいはそうじゃないのかということを確認することは極めて大事だと思うのです。  なぜかといえば、デフレの状況下では、要は、不良債権問題など、処理を先送りすれば先送りするほど事態は悪化するということは、これはもう私が申し上げるまでもなく明らかなことですね。そうなると、もしそこの状況を、今デフレ的な状況があるんだという認識があれば問題を一刻も早く処理しなければいけない、そういう意識が働いて、それが政策にも打たれるはずだと思うのです。ところが、そういう意識もなく、いや、デフレになるのかインフレ的な傾向なのかわからないと。  ある意味で、今までの政府が打ってきた政策というのは、まあ時間がたてば土地もあるいは株価も上がってくるんじゃないか、だから、とにかく今何とかもたせればいい。そういった意味で、バブル崩壊後、この日本経済自体を見ていれば、これは完全に、数字的に見ればいろいろな形でデフレ的な方向に進んでいると思うのですが、そうじゃない、逆の方向を期待してきたがために、ここまで問題を先送りして、それがまさに今の金融危機を引き起こしている、そういう状況にあるわけですね。  もしここで抜本処理を怠れば、これはますます事態は悪化する。いわばがん細胞のように、とにかく、金融機関、ある意味ですべての、本来であれば今処理しておけば生き残れるようなところまで生き残れなくなる、そういう事態さえ起きかねない。あるいはまた、ここで抜本処理をすれば、それは当然大きなデフレ圧力になってきます。  そういう中で、大変に差し迫った状況にあるわけでありますが、そういう圧力を、ちゃんとここで意図的に、ある意味でつくるのであれば、それに対してちゃんと何らかの、そのデフレ圧力を緩和するような政策を打つとかそういうふうなことが考えられるわけですけれども、今大臣がおっしゃるように、いや、デフレの状況が今の日本の中でどうなっているのか、そこの認識がわからないと、この金融問題について、その処理策について先に進んだ議論というのはできないと思うのですが、いかがですか。
  22. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 アメリカのRTCのあの出来事のときに、直接に携わったかなり高名なアメリカ人ですが、私に最近言いましたことは、自分たちは一つギャンブルをした。それは、不動産処分するときに、かなりいわば思い切った捨て値で不動産を売った。それは非常に危ないと思ったけれども、したがって必ずもうける人がいるとは思ったけれども、結果としては、捨て値で売った結果初めて市場というものができて不動産のマーケットが開けた。今あなたのおっしゃるようなことなんですが、そういう意味では、やはりマーケットをつくるということが大事なんだと自分たちはあのときに教訓を得て、大変もうけた人がいる、現に大変もうけている人がいるのだが、それはわずかのことだ、マーケットをつくったということが図らずも成功したという話を私にしました。  今御審議中の柳沢大臣の御所管の法案どもそういうことを考えているわけですが、そういうことを工夫していけば、マーケットができないというのがデフレでございますから、それは防げるのではないかというふうに思います。
  23. 古川元久

    ○古川委員 今大臣の方から、アメリカの当局の方がギャンブルをしたと話をされていましたが、それはやはり私は一種の危機管理だったと思うのですね。危機管理の体制をとっている。  私は、今の政府の金融行政を見ていると、そういう危機管理体制にあってそうやっているのか、あるいは通常の行政体制の中で、その中で起きている問題に対処しているのか、その辺がはっきりしないのですね。やはりここは、ある意味で非常事態宣言じゃないですが、そういったものを金融について、これは危機管理に入っていかなければいけないんだよ、それくらいの、一種ギャンブルにかけるぐらいのそういう思い切った政策をとらなければいけないような状態なんだということを、これはやはり大臣としてもはっきりと宣言されるべきじゃないですか。いかがです。
  24. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 銀行に資本金を注入するなんということは、普通の世の中で考えられないことでございますし、また、ただいま御審議をいただいております法案も、通常ではあり得ないようなことを実はしなければならないという意思でつくられたものでありまして、最近のことから申しましても、少なくとも昨年の十一月から、もっと前にさかのぼれましょうが、それは我が国が危機管理体制に入っている、そういう意味で行政もやっておりますが、また、立法においてもそのような危機管理のための手段を行政に与えていただきたい、こういう考えを持っております。
  25. 古川元久

    ○古川委員 今危機管理の話が出ましたので、ちょっとそこについて、大臣も一般的なお答えをされるのがお得意のようでございますので、一般的なことでお伺いしたいのですが、そもそも危機管理というものはどういうものだというふうに大臣はお考えになっていらっしゃいますか。
  26. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 経済に限って申しますならば、正常な自由経済の市場が機能しなくなったときに、それを正常に戻すためのことであるというふうに思います。
  27. 古川元久

    ○古川委員 そういう状況にするための危機管理の体制、つまり、当局として、政府としてどういう体制をしくのが本来のあり方だというふうに思いますか。
  28. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 体制としては、正常なマーケットエコノミーのときには余計なことをしてはならないし、また非常にマーケットが乱れましたときには管理体制をしかなきゃならないということだと思います。
  29. 古川元久

    ○古川委員 ちょっと私の聞き方が悪いのかもしれませんが、危機管理体制という場合には、やはりある意味で権限と責任を一カ所に集中させて、そこでやはり集中的に管理して指揮していくということが必要じゃないかと思うのですね。これは恐らく賛同いただけると思うのですが、そういった意味で、私たち野党三会派は、金融再生委員会というものをつくって、そこに今ばらばらになっている金融行政に対する権限を集めて、しかもその委員長を国務大臣という形で政治責任をとれる、そういう人にして、そこで権限と責任を集中させる、そういう仕組みを考えているのですね。  しかし、今の体制はどうかというふうに考えると、これは権限が大蔵省にあったり、金融監督庁にあったり、あるいは預金保険機構にあったりみたいに、ばらばらなわけです。いわば、今の状況というのは、生卵を大蔵省と金融監督庁で投げ合って割れないように何とか今キャッチしているような状況で、もしこれがどこかでおっこちたら、あれはそっち、これはそちらという形でキャッチボールしている間におっことしたら、大蔵省と金融監督庁の間におっこちたら、それこそ大変になるわけですね。そういう危険性が今のような体制の中では起こってくるのじゃないですか。いかがです。
  30. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ちょっと生々しいお話になりましたが、そういう大蔵省の長い間の行政に対する御批判は、これは委員もそこの中におられましたのでよく御存じでありましょうし、そのことにはまさに反省すべき点が多い、そうであることには違いありません。  しかし、今、国において云々ということをおっしゃいまして、このことは、私は先ほど山本委員に申し上げましたように余り批判的に申し上げたくない、いろいろお知恵も拝借したいという気持ちでございますから。ただ、そういうものをつくりましても、それを運営する人たちは恐らくそれだけのエキスパティーズを持っていなければなりませんから、それだけの知識と経験を持っていなければなりませんから、素人が急にできるというふうにも思えない。ですから、それは、国営にしたらできる、そうでなければできないということとは違うのではないか。  今までの大蔵省の行政の誤りは十分認めますけれども、そういう思いがありますし、もう一つは、やはり危機管理ではあっても自由経済というものからなるべく遠く離れたくないという思いがございますから、仮に申しますと、法人でいえば株主、株主総会といったようなものをやはりこれは無視してはいけないんだろう、何かそこのところの仕組みが一つ要るといったような感じも持っていまして、したがって、危機管理は国がテークオーバーすればできるという、そう単純にお考えでいらっしゃらないことは知っておりますけれども、そこはやはり一つ問題かと思います。
  31. 古川元久

    ○古川委員 大臣、私が聞いておるのは、今の危機管理の体制が権限と責任がばらばらになっていて、こんなことではすき間に落ちちゃうことが起こるんじゃないかと言っている話で、我々が提案している株式を取得して特別な公的管理に入れるとか、そういう話を聞いているんじゃないんですね。  さっきのお話を聞いていますと、要は大蔵省の、私もいましたからそれはわかりますよ、ただ、今ここに来て、私なども今回の法案などの説明に来てもらっても、いや、そこについてはこれは金融監督庁です、いや、そっちは大蔵省の話ですとかいうことを言っているわけですね。まさに、確かに役所は分かれた、それによって、それはいい面はあるかもしれない。しかし、今の状況で見ると、ある意味で責任をあるいはお互いになすりつけ合うような形があって、こういう状況、まさに悪い意味でのセクショナリズムができちゃっているわけです。  そこであれば、むしろこれはもう、今おっしゃった話であれば、金融、財政、はっきりぽんと分けちゃって、それで、エキスパティーズがいないという話がありました。何も私は全部新しいのを雇えと言っているわけじゃないんです。今の金融部局にいる人は全部これはもうある意味でまとめてしまって、今は金融再生委員会という形で我々の提案している中でまとめて、そして二〇〇一年の四月からは今度は金融庁という形で発足させる、そこへ、やはりそれを早くシフトさせることの方が今危機管理ということをおっしゃるのであれば大事じゃないかというふうに聞いているんです。そこについてはいかがですか。
  32. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 機構というのはなかなか難しいものでありまして、いじりますと、少し時間がたてばうまく機能する、しかし、いじった当座はなかなか機能しないということはとかくありがちなことでございますから、その辺も一つ問題点かもしれないと思います。
  33. 古川元久

    ○古川委員 私は、今ここまでいろいろな事態が大きく問題になってしまったのは、やはり政府、とりわけ大蔵省に対する信頼感が欠如してしまっている、いわばそういった意味では、今の状況というのは、金融危機でもありますけれどもクレジビリティークライシスだと思うのですね。その信用をどうしたら取り戻せるのか、そう考えたら、これは政府も、まさに民間の金融機関なんかにいろいろリストラを要求すると言っているわけですよ。なぜそういう人たちがやらないかと考えれば、じゃ大蔵省、今まで自分たちを守ってきた大蔵省が、本当の意味でちゃんと血を出しているのかと。もし本当にここで大蔵省の、私は恐らく若い職員の人たちは思っていると思うのですが、別に役所の形を今自分たちが守りたいと思っているとは思わないんです。むしろ、自分たちのやっていることがちゃんと信頼されるような、国民から信頼されるような、そういう信頼を取り戻したい、そういう気持ちが若い職員には必ずあると思います。  その気持ちに報いるためには、そして国民に、大蔵省もみずから血を流して、そして信頼感を取り戻そうとしている、そういう姿勢が見えるためには、ある意味でみずから金融部分を差し出すくらいの、それくらいのものを見せなければいけないんじゃないですか。まさに、そうしたことは大臣が政治的な決断としてやはりされるべきじゃないですか。いかがです。
  34. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いっとき大蔵省のその方の関係者のモラルは非常に低下いたしました。しかし、今若い諸君が考えていることは、こういう未曾有の金融の危機にあって、何とか自分たちもこれを正常に返して、それによって自分たちのクレジビリティーをもう一遍取り返したい、そう思って一生懸命やっているように思われます。
  35. 古川元久

    ○古川委員 それは私は逆だと思いますよ。今、本当に正常に返したいと思って一生懸命やっても、何をやっても、大蔵省の役人が言うとだれも信用してくれない、信用してくれないからまたうまくいかない、まさにこれはクレジビリティークライシスですよ。本当は、信用があれば、やることも出してくることも信用されるわけですけれども、残念ながら、もう今や世間の信用がないわけですね。だからそういう中で、私なんかにしてみると、一番末端でやっている人たちは大変に悲しい思いをしているんじゃないかと思うんですけれどもね。むしろモラルは前よりも低下しているんじゃないか。危機管理というわけですから、そういった状況を今この状況で生み出してしまっているということは大変に危ないことじゃないかな、私たちはそんなふうに考えるんです。  ですから我々は、やはりこの状況は、政府が打ち出すものが信頼をされるような環境というものをまずつくらなきゃいけない。だからこそ、金融再生委員会というものをつくり、そこに権限と責任を集中して、そして、そこで一括してこれを早急に処理していく。我々は、現在の経済状況というのは、これは一歩誤ると本当に日本発の世界恐慌にもなりかねない、しかもこの不況下というのは、従来の不況とはこれは全く別次元で物事を考えなきゃいけない、それくらいのやはり深刻な状況だというふうに認識しているんです。  そのもとで、その経済の血流たる金融システム安定化のためには、これはどんな事態が起こっても国民を混乱に陥れない、それでいて国民の負担ができるだけ小さくなるようなそういう仕組みをやはり考えていかなきゃいけない。だから我々は、一種の有事立法じゃないですが、我々野党三会派が提案しているのは、本当のそういった意味で危機管理のための、危機管理としての立法なんですね。  先ほど山本議員からもありました、大臣からも、株の強制取得についてはいろいろと法制上の問題があるとか、そういう話もありました。我々だってこれが大変に特別的な措置だということはわかっているんです。しかしながら、危機管理であって、それくらい深刻な事態だから、それは最大限財産権も尊重しながら、しかし、できる範囲で立法府の意思としてそういう株の取得をして特別な公的管理に入れるということもやはり考えなきゃいけないんじゃないか、そういう発想で我々は提案をしているんです。ぜひともそこのところを理解していただきたいというふうに思います。  次に、ちょっと質問を変えたいと思うんですが、大臣のマーケットに対する基本的な認識をお伺いしたいと思います。  マーケットというのは、今御承知のようによく長銀の問題でも、これはもうマーケットから売られていて、実態とはかけ離れたところで株価が動いたりしている、そういうような発言もされたりされますが、マーケットについて、これは、任せておけば基本的にそれは自律的に均衡点に収束していく、そういう自律調整的なものと考えているのか、やはりマーケットというのは暴走もあるから、そういったものはある程度何らかの形で管理していくというか、そういうことも考えていかなきゃいけないというふうに考えておられるのか、そのマーケットに対する基本的な認識を大臣はいかが持っていらっしゃいますか。
  36. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 マーケットというのは売りと買いが出会って、そこで値段が生まれるというところと思います。短期的には多少いわゆる撹乱要素がございますけれども、基本的にはそういうものであると思っております。
  37. 古川元久

    ○古川委員 では、そういうマーケットに対して、政策当局としてはどのような対応をしていくべきだというふうに考えておられますか。
  38. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私自身は、取引が自由に行われる限り基本的には干渉すべきものではない。ただ、何かの事情によりまして、マーケットが自由に機能しなくなるような撹乱要素が生まれることがございますから、その場合には、例えば外国為替などについてはそうでございますけれども、多少のインターペンションをすることがある。それはしかし、マーケットの正常な機能を回復するための対応である、こう考えています。
  39. 古川元久

    ○古川委員 そうしますと、大臣は、基本的にはマーケットはあるがままに任せておく、そして何か起こったらそこに後から対応をしていく、それが基本的な政策当局の姿勢だと考えておられるというふうに認識してよろしいですか。
  40. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 このごろは物騒な世の中になりまして、そういうことを申しますと、すぐ外国通信社が、日本政府は為替をほうっておくんだというふうにすぐ言う。そういうことを申しておるのではございません。一般論を申しておる。
  41. 古川元久

    ○古川委員 大臣が前々からマーケットを尊重されておられることは私も承知をしておりますが、私は、マーケットというのは、もちろんこれは基本的には自律的なものに任せなければいけないのですが、しかし、やはり政策当局というのはある程度マーケットの先というものを読んで、それに、先々のところに、いわばまさに波乗りをするような形で、波が来るのに波の後ろにいては、波を後から追いかけていては絶対波乗りできないわけですから、波に乗るためにはやはり波より前にいなければいけないわけですからね。そういった意味で、政策というのはやはり波より前に、マーケットという動きの中の、それをできる限り予測をして、そこより前に行くような政策をとっていかなければいけないのじゃないか。それがマーケットの自律的な意思を阻害することなく、かつ、機敏に有効な政策を打っていく方法じゃないかと思っているのですが、今の状況だと、これはマーケットが動いてしまってから、長銀の問題だってまさにそうです、マーケットが動いてしまってから慌てて後ろから追いかけていく。まさにそういう状況をやっているから、結局もう間に合わない、波は先に行ってしまうという状況がやはり来ているのじゃないか、そんなふうに考えるわけなんです。  では、今マーケットについての基本的な認識はお伺いしましたから、日本の金融システムについて、これまでの、かつての護送船団方式というのは、ある意味ではあの昭和金融恐慌の経験を踏まえてできたわけなんですけれども、今振り返ってみて、護送船団方式という金融システムのあり方というものがどうだったというふうに評価をしておられるか。そして今、日本の金融システムというのがどういう状況にあるというふうに考えているのか。そして、将来の日本の金融システム、まさに金融ビッグバンが完成後、その姿というのはどういうふうにあるべきだと考えておられるのか、そのビジョンについてお伺いいたしてよろしいですか。
  42. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いわゆる護送船団、金融についての護送船団の行政というものを評価いたしますと、戦後、日本が無から立ち上がりましてかなりの経済大国になるまで、日本金融機関は、おっしゃいますように護送船団方式で保護されて育ちました。ある意味ではそれは外国の競争からも保護されましたので、かなり大きなものに育った。世界でも、資本の面でいえば最大の銀行というものが幾つか生まれまして、プラザ合意の前ぐらいまでは、国際的に大いに雄飛したということがございます。  しかし、そこらあたりが終わりでございまして、そのころからだんだん自由化というものが言われる。日本経済の他の部分、物に関する行政などは一番早くディレギュレーションということが言われましたので、各企業は競争にさらされました。しかし、金融行政だけはそういう早いディレギュレーションをいろいろな意味で免れてきましたので、いざというときにディレギュレーションが行われますと、それに全く備える姿勢がなかった。競争というものは護送船団のもとではないわけでございますから、いい銀行と悪い銀行という差別は一応表面的にはない。競争していい銀行になることのメリットはなかったわけでございます。  しかし、ディレギュレーションでこれはもう完全に競争の世界になりましたので、日本金融機関はそれに急にさらされることになった。不幸なことに、そのビッグバンと言われる時代にたまたま不良債権の問題が重なりましたので、それが今でございますが、日本金融機関はこの不良債権処理をしながら、しかも世界の銀行と競争をして勝っていかねばならないという、二つの命題を一緒にこなさなければならないというのが私は今の苦しみであると考えております。  それで、しかし消費者から見ますと、利用者から見ますと、いい金融商品が与えられることが一番大事なのであって、それをだれが与えようとそれは第二の問題である。それが自由化ということと思いますので、遠慮なく新しい金融商品が外から入ってくる、それに対して日本金融機関も戦わなければならない、それが今の姿と思います。また、こちらからもできれば外国へ行って競争をしなければならないでありましょう。  そういう意味で、これからの変化というものは、金融機関が世界の金融機関と、日本国内ではもちろんですが、競争をして、そしてその受益者が利用者である、お客さんである、そういうことでなければならないだろうと思います。
  43. 古川元久

    ○古川委員 世界とこれから競争していくということであれば、これは現状でいいますと、BIS基準、いわゆる自己資本比率八%が求められている銀行は、平成八年で八十一行、平成九年になってもまだ四十五行あるわけですね。世界で競争できるのは、こんなに必要ないですわね。  そういった意味では、これからやはり整理統合というのは進められていかなければいけないと思うのですが、これはそこの、市場の中で、民間の中で自由に行わせるに任せる、そういう感じ考えていらっしゃるのですか。
  44. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 みんながオリンピックに出ようというのはどうも無理な話でございますから、おのおのの銀行の立場において、これにはいろいろ、高い資本を維持するというのは難しいことでございますので、そういう意味自分銀行の利害関係の中で考えていかれるべき問題だ、私は、どう思うと言えば、それは多過ぎると思っています。
  45. 古川元久

    ○古川委員 要は、今自分金融機関に任せておいたら、金融機関はとにかくできる限り生き延びられるだけは生き延びて、最終的に市場に追い詰められたら動こうというのが、残念ながら今までのところの金融機関の一般的な行動ですね。まさに長銀なんかもそういう事例だと思うのですが、これは、そうした状況で果たしてこの金融不安というのが解消されるのだろうか。  私は、金融危機と金融不安というのはちょっと違うのじゃないかというふうに思っているのですけれども、取りつけだとかそういうことが起きない、恐慌が起きないような状況をつくる、それは金融危機を防ぐということだと思うのですが、一方で、今度はどこの銀行が危ない、今度はどこだ、そういう形で、要はこの金融システムが新しいまさに均衡点、今図らずも大臣は、とにかく今の銀行の数は多過ぎるというふうにおっしゃいました。これが、要は数が減っていって、世界の中で戦えるところは戦う、あるいはもう国内に引っ込んで、国内でやるところはやるところというふうに落ち着く、そういう新しい安定までこの金融システムが移行しない限りは、常にある意味で今度はどこが危ないといったような不安、金融不安というものは継続してしまうのじゃないかと思うのです。いかがですか、その点については。同じようにお考えになられますか。
  46. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いえ、今みたいな状態がそう長く続くとは私は思いませんけれども、しかし、基本的に申せば、競争ということはやはり優勝劣敗があるということである、そうは思っています。
  47. 古川元久

    ○古川委員 そう長く続くとは思わないとおっしゃいましたけれども、では、どれくらい続くのですか、これは。
  48. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これというのは、今のこの不安な状況ですか。我が国に関する限り、私は先が見えているという思いがするのですけれども、ただ、国際情勢は排除できませんので、そこは警戒していかなければいけないと思っています。
  49. 古川元久

    ○古川委員 先が見えているとおっしゃいますけれども、先が見えていないからこんなにおかしくなるのではないですか。先が見えていればこんなにおかしくなるはずないと思うのですよ。しかも、世界の情勢もあるということです。  まさにいみじくも、日本金融機関不良債権の問題なんというのは、世界の状況、アジアの状況がますますおかしくなれば、もっとそれはまたはね返ってくるわけですし、そういった意味では、今の世界の状況を見たら、逆に先がますます不安定になる、そうすると、ますますこれはしばらく、いっこの金融不安が果てるともわからない、そういう状況の方が現実的な現実認識だと思いますが、いかがです、それは違いますか。
  50. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 大蔵大臣が余りそういうことを言ってはいけないということもございますが、私は本当にそんなに悲観していないのです。
  51. 古川元久

    ○古川委員 この辺で、要するに今の状況をそうやって悲観的に考えるか楽観的に考えるかによって、これはかなり対策の打ち方が違いますよね。  悲観的に考えて楽観的に行動する、それが基本的な行動のパターンではないかということもよく言われますが、今の政府は、楽観的に考えて、今の長銀の問題を見れば、悲観的に行動している、まさにそういうふうにしか我々には映らないわけですね。でも、本来は逆なのではないか。  我々野党三会派の案というのは、基本的には考え方はかなり悲観的です、今の状況というのは。このまま放置しておいたら本当にすべての金融機関が債務超過に陥ることだって絶対にないとは言えない、それくらいにかなり深刻な状況。その中で、もし仮にそんなことが起こったとしても、国民に大きな不安が起こらないような、そういう大きな受け皿をつくろう、そういう仕組みをつくっていこう。そういった意味では、それさえつくれば、そういう状況が起こったって大丈夫なのだ、そういう安心を与える、まさにそこに我々の案のベースがあるのですね。ですから、政府の案とは根本的にそこのところでどうも違うような気がするのですね。  今のようなことをおっしゃったら、とにかくどんどんと金融不安というのは先延ばしされるだけですよ。むしろ今本当にやらなければいけないことは、まさに民間の銀行が一日も早く自分で、要は、自分銀行がビッグバンの後でも自力で生き残れるのか、あるいはやはり何らかの道、買収されるかあるいは提携するか、そういうものを選ぶ、それを一日も早くやらせること、そういうことをやらないと、例えば金融監督庁に破綻認定をされるぞ、それくらいの、ある意味で追い詰めていくということが政府の意思として必要なのではないですか。
  52. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ようやくそこでお話が合うことになります。  確かに、今非常に難しい状況でございますから、金融機関の優劣がだんだん明らかになり、そしてその間にいろいろな再編成が行われるであろう、それは、金融機関の自己防衛としてもそうなると私は思います。御審議いただいております法案も、それに資するために道を開きたいという趣旨でございますし、また、先般来御審議になっております個別案件につきましても、そのような銀行の努力をどうぞ支援をしていただきたいと思います。
  53. 古川元久

    ○古川委員 支援をしろと言われても、それは乗れない相談なんですね。特に長銀問題なんかは、これはまさに逆に進んでしまうのですよ。  要は、長銀、きのうも頭取もいらっしゃっていました。ある意味で長期信用銀行が、もう既に何十年も前に、何十年も前といっても二十年ぐらい前かもしれませんが、戦後の長期信用銀行ができた、その役割を終えた、その後までずっと存続していたこと自体がやはりこういう膨大な不良債権を生み出してきた。  私、学生時代を思い出しますが、学生の間でも、興銀とか長銀というところは就職先としては大変に人気がありましたよね。なぜかといったら、給料がいい。その割に仕事、やることがない。学生の間では、そういった銀行は、いわばいい人材はいるけれども人材が死んでいるから人材の墓場だなんということも言われていました。  まさに、そういう状況を放置してきて、今どうなっているかというと、ぎりぎりになって追い込まれてきて、そしてどうしようもなくなって駆け込んできて、私が倒れると金融システムはむちゃくちゃになります、だから助けてください。それに、わかったということで、それは、辞任されて退職金はもらわない、そして過去の人の退職金は返還してもらう。しかし、最悪でも、要は自分がやめるのと退職金を我慢する、それだけで責任は逃れてしまうわけですよ。それはある意味でいったら、銀行経営者にとってみたら物すごいモラルハザードが起こっているのではないですか。  大臣御存じかどうかわかりませんが、普通、例えば中小企業なんかで破綻をするというふうになったら、これは家を丸ごととられるだけではないですよ。例えば破産宣告してもらおうと思ったら、お金がなかったら破産宣告もしてもらえないですよ。百万円とか二百万円とか、手数料だとか弁護士料だとかいろいろとかかる。破産宣告をしてもらうのにも自分でお金を出さなければいけないのです。そういうお金がない人たちは、破産宣告もしてもらえないような人たちは夜逃げしていくわけですよ。  中小企業とか、ある意味でこれまで日本経済を支えてきたそういうところがそういう大変に厳しい状況に置かれているのに、大銀行経営者は、退蔵金をあきらめて、そしてやめる、それだけで何千億も国民の税金を投入してくれるなんて、そんなことでは、今いる銀行経営者の人たちは、一日でもとにかく頑張れるところまで頑張ろう、行き着くところまで行って倒れたら、倒れ込んだときに政府に飛び込もう、そういうモラルハザードが起こってしまうのではないですか。  むしろ、とにかく自分で決断しないと、今すぐ店を閉めるぞぐらいの、そういう毅然とした態度を政府が見せる。この長銀問題についてもまさにそうです。長銀のようにずるずると放置してきてこういう状況になったらこういうことになるんだぞ、そういった姿勢を見せることがやはり必要ではないかと思うのです。  この国会の審議が紛糾していることがいろいろ非難をされていますけれども、きのう新聞にも載りましたが、さくら銀行が緊急に増資するという話がありました。あれは、もしこの長銀問題を何ら問題もなくすうすうと通してしまったら、ああいうことが起こりましたかね。むしろ、こういう長銀に国民の税金を入れるについて強い批判がある、だから、危機感を感じるようなところはまず自分でやれることをやろうと動きますよ。そういう動きがもっと加速するようなことを本当はやらなければいけないのではないですか。いかがです。
  54. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何度も申し上げますとおり、実態において長銀というものはなくなるわけです。これは御同意いただけると思いますね、先々のことを考えますと。それは、役員は責任を負うし、退職給与も旧にさかのぼってやめるし、海外支店はなくなりますし、本当に何が残るかといえば、そういうスピリットだけでも残ると申しますか、実際はもう生き残る部分はないということでございますね。それでも、しかしそこまでして、やはりこれ以上世間に迷惑をかけることがあってはならない、世界にも迷惑をかけることがあってはならないというのがあの再建案だと思いますので、ここで長銀を仮に何か国がテークオーバーしてということは、私どもは現実でないと思います。  やはり合併という道を選ばれたのですから、その合併によって、自分は実はもうなくなってしまうわけですが、そういうことで社会的な責任を、これ以上ソーシャルコストを起こさないように、そういうことをあのリストラ案は言っておられるのだろうというふうに私は思っておるわけです。
  55. 古川元久

    ○古川委員 この問題につきましては、同僚議員であります仙谷議員からまた質問させていただくと思いますのでこれぐらいにしておきますが、今の政府のやっている、きょうの大臣のお話を聞いていても、どうも手法があべこべだと思うんですよね。平時には銀行なんかにもあれこれ細かいことを指示しておいて、今の有事の状況になったら基本的には民間にお任せしてその中でなんていうのは、これは本来逆でしょう。本当は、そういうときにこそしっかりと政府がある意味でリードしていく。それは直接的に手を入れなくても、そういうことをとらざるを得ないような状況に追い込むということでもいいわけです。やはりそういうことをやるべきじゃないか。それを一言申し上げておきたいと思います。  我々の案は、まさにそうした形に金融機関をある意味で間接的に追い込んでいく、それが大事だ、そういうためのスキームだというふうに考えていただきたいと思います。  最後に、昭和金融恐慌との比較について、最初にもちょっと大臣お話しされましたけれども、お伺いしたいと思うのです。  金融恐慌が起こった原因については、先ほど若干お話がありました。あの昭和金融恐慌が起こった原因、そしてその際にとった政府対応策について、これは大臣から見て、戦後からもずっと見ていらっしゃるわけですから、あのときのとられた施策については、あれは適切だったと思われるのか、どういう御感想をお持ちか、お聞かせいただけますか。
  56. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これはかなり長い間に経過していきますので、全体としてどこがよくてどこが悪いということはなかなか申せないように思いますので、基本的に当時の政治の仕組みというものがやはりあると思います、政党間の対立ということでありますが。あるいはまた、そのほかに、貴族院というものがございました。また、そのほかに枢密院というものがございました。これらの間の力関係、その争いというものが事を非常に複雑にしておる。これはしかし、民主主義ではある意味で当然かもしれません。  そういうものが事を複雑にしておるという面と、それから、やはり政府系の銀行が一企業に非常にたくさんの融資をした。企業からいえば、自分がつぶれればあんたもつぶれるんだというような銀行との関係に、それがしかも政府の息のかかっている銀行であるといったようなとごろあたりは、やはり非常な問題点ではなかったのかというふうに思っています。
  57. 古川元久

    ○古川委員 今、議会とかあるいは枢密院の話が出ましたけれども、最近よく高橋亀吉さんが書いた「昭和金融恐慌史」についてちらちら引用されて、まさに今大臣がおっしゃったみたいなところ、そこをちょっと読んでみますと、  震手処理法案は、その表面理由はともあれ、そ  の実際的適用において批判されるべきものであ  り、それがために、政府与党を除くほとんどの  論者が、法案通過に反対していた。また台銀救  済にも反対していた。しかもその反対論は決し  て浅慮に出たのではなく、あるいは「正義の主  張」でさえあった。しかし、こうした正義論が  現実には世間の心理を動揺させ、恐慌の誘因に  つながっているのである。ここを引いて、我々の野党の対応を、まさにそういう同じような状況に陥れているんじゃないか、そういうようなことを言う方がいますが、これはそこの部分だけとるのはフェアじゃないんですね。  これ、よく後を読んでいただくとこんなことが書いてあるんです。  もし政府、政党、日銀さらには有力市中銀行  が、国家的見地から大局的に行動しておれば、  史上未曾有の金融恐慌、三週間にわたる不名誉  なモラトリアムは発動せずにすんだかもしれな  い。しかし、こうした仮定はあくまで、現実化  した恐慌との対比において、それほどの激烈  性、規模をもって勃発しなかったであろうとい  いうるだけであって、当時その巨額な赤字の累  積によって実質的にはすでに破産状態にあった  問題銀行会社の外科的整理、淘汰は不可避で  あったといわねばならない。したがって、仮に  昭和二年春には大々的な弥縫策を講じて、その  爆発は防止しえたとしても、後日さらに大規模  のパニックに襲われることは必然であった。とあるのですね。  いいですか、「昭和二年の金融恐慌の真の原因は、」というふうに書いているのです。これは「大正九年の反動以降における政府の施策が次の二点において錯誤を重ねたことにあったことを物語る」「すなわち、事態の性格の誤認を基因とする施策の重大失策を数度にわたって犯したこと。そのうえに、財界の徹底的整理を必要とする場合に、逆に財界救済の名において誤った弥縫策を続け、いよいよ、財界整理のともなう摩擦的波紋の見通しを大にするに至り、これを恐れてさらに弥縫対策を累加するに至ったこと、の二つである。」こう書いているのであって、今の政府がとっておる対策は、こういう歴史的な分析に比べて、胸を張ってこの対策がいい対策だ、そういうふうに言えますか。
  58. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 高橋亀吉さんはそういうお説です。私は何度も伺いました。それは一つの見識と思いますが、ただ、今の場合と比べまして、当時の、そこにあります某大銀行、今御議論になっております銀行、それが何か同じような感じのものであるということは、全く私にはそうは思えません。
  59. 古川元久

    ○古川委員 ビスマルクは、賢者は歴史に学び、患者は経験に学ぶと言ったといいます。平成の高橋是清とちまたで言われている大蔵大臣でございますから、どうか歴史からきちんと学んでいただきたいということをお願いして、質問を終わります。ありがとうございました。
  60. 相沢英之

    相沢委員長 これにて古川君の質疑は終了いたしました。  午後零時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時三十一分休憩      ————◇—————     午後零時三十一分開議
  61. 相沢英之

    相沢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君、金融危機管理審査委員会委員佐々波楊子君及び預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取することにいたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 相沢英之

    相沢委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  63. 相沢英之

    相沢委員長 質疑を続行いたします。仙谷由人君。
  64. 仙谷由人

    仙谷委員 せっかくヨーロッパからお帰りいただきまして、どうもありがとうございます。佐々波委員長にお伺いをするわけでございますが、資料をそちらに手渡されていますでしょうか。  一枚目が「日本長期信用銀行の決算書上のバランスシート」というふうに書いてある紙の四枚目を見ていただきたいのでございますが、委員長が三月に公的資金を二十一行に投入するという決断を、判断をされて、そこで公的資金が投入されたわけでございますが、八月二十六日の株価水準でいきますと、七千三百六十億円評価損を出している。長銀に至りましては、八月二十六日の段階での優先株の評価損が一千九億円、劣後債の評価損が三百六十一億円。  二枚めくっていただきますと、今度は八月三十一日、昨日の公的資本の注入の現在価値日本長期信用銀行は優先株については一千十九億円の評価損ということになっておりますし、二十一行合計で何と七千八百十九億円の評価損を出しているということになっておるわけでございます。  他の銀行の優先株も同様であろうと思いますが、日本長期信用銀行の優先株は、あと一カ月たちますと、十月一日になりますと、これを普通株に転換をすることができる、一対四でございますが、日本長期信用銀行の四株を優先株一株で転換ができる。それをできる限り早く現金化するといいますか、市場で売却することができるようにということも審査基準の一つであったと思いますが、一月後に売却すると、現在の株価水準ならば、こんなに損が出てしまう。まだ、三月からでございますから、たった半年でこの損が顕在化、現実化する、こういう事態になっておるわけでございます。  委員長、この事態を今日の当たりにしまして、どういう感想をお持ちですか。何かお考えはありますか。
  65. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 詳細な御指摘、ありがとうございました。私なりの考えを申し上げたいというふうに思います。  評価損につきましては、今、現在価値について、株価水準等の御指摘についてはそのとおりだと思うのですけれども、三月期から今日、今、九月に入ったわけですけれども、六月までの株価水準の変更につきましては非常に他の条件に変化というものがあったように思います。国内景気の停滞もさりながら、アジアにおける経済の混乱、それから昨今ではロシアでの展開、そのようなことは三月時点では予測が非常に困難であったというふうに思っております。  それで、長期信用銀行の株価を含めましての低迷につきまして、その優先株の取得についての御指摘があったわけですけれども経営の合理化それから不良債権処理等の抜本的な処理、今後の経営改善努力ということを私どもとしては見守っていきたいと思っております。  それで、それについてさらに付加させていただけるとしますと、いわゆる経済実態というのは、経済というのはそもそも生き身の人間のつくっているマーケットでございますので、急速な悪化というものもあり得ると同時に、回復もまた可能であるというふうに考えております。  今後の運営といたしましては、金融危機管理委員会といたしましては、公的資金というものをお預かりしている以上、全体の金融システムの安定というものと同時に、景気の回復というものに資するような考え方というものを持っていきたいというふうに思っております。  以上でございます。
  66. 仙谷由人

    仙谷委員 早急な低落もあるけれども早急な改善もあるんだと。もう九二年から六年間も、景気がよくなるとか、土地が高くなるとか、株が高くなると言い続けてきたんじゃないですか。そんな前提で国民の公的資金をつぎ込まれたんじゃたまらない。これだけは申し上げておきます。その程度の経済理論で、経済見通しで公的資金をつぎ込まれたんじゃたまらない。  後で大蔵大臣とも議論するために用意してきていますけれども、八九年、九二年の八月十八日、九七年の十月三十一日、九八年の三月三十一日、九八年の八月二十八日、この金融機関の株価の推移表を見れば明らかじゃないですか。何かしなければいけないということで指摘されたって、まともなことをほとんどしてきていないから、どんどん金融機関の株だけ下がるんじゃないですか。平均株価が上がっても、金融機関の株だけ下がっておるのですよ。  こういう経済構造をつくってきたのが日本政府で、それは佐々波委員長自身の責任ではないかもわからないけれども、今度の公的資金を三月の段階で投入するに当たって、厳しく、金融機関個々一体一体の資産内容なり財務内容なり営業のトレンドというものを見て投入するかどうか決めていただかないと、国民の税金がどぶに捨てたのと同じようになりますよ。  この一枚目の、まず「日本長期信用銀行の決算書上のバランスシート」という、この一枚をまず見てください。これは、決算書にあるがままを書いたものでございます。その下に「修正バランスシート」と書いてございます。これは、七千五百億円を今回長期信用銀行経営改善策の中で放棄する、こうおっしゃっておるんですね。もし、現時点でなくて三月期に、七千五百億円の債権に、全額放棄するんですから全額引き当てていたらどうなるのか。さらに加えて、有価証券の評価損、非上場を含むわけですが、これは損益計算書上、はっきり、堂々と長銀が公表している数字です、二千四百七十一億円。純資産的にバランスシートをつくると、もう既に、七千五百億円を一〇〇%引き当てると、自己資本が二千九十九億円マイナスじゃないですか。どういう審査をしたんですか。  つまり、きのうの長期信用銀行頭取さんをお呼びしての審議の中でも、この三枚目を見てください、三枚目にある、長銀から——我々から見ると、まともな企業も少々あるが、ほとんどがいかがわしい企業ですよ。事務所を訪ねていっても、ワープロで刷った一枚の短冊みたいなものを一つのビルに五つも六つも張りつけてあるような企業じゃないですか。そういうところに単体で一千億内外という、いいですか、百億とか十億じゃないんですよ、一千万じゃないんですよ、一千億内外という金を貸し付けて、これが一兆五千億あるんですよ。多分、そのうちの七千五億を今度償却する、放棄する、こう言い出したんだろうと思っているんですよ。この種の債権長銀のいわば大変なうみとしてたまっているということを三月時点で審査したんですか、しなかったんですか。
  67. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 数多くの御指摘ありがとうございました。  ただ、三月時点の公的資金投入につきましては、操り返し申し上げておりますように、金融システムの安定というのを第一義に考えておりまして、個別行につきましては後ほどでもより詳細な御説明があるかと思います。私どもといたしましては、三月——私自身、審査委員を拝命いたしましたのは二月二十日でございまして、その後、システム安定につきまして、非常に急速な市場の状態の中に迅速性というものも加味しながら精いっぱいやらせていただいたつもりでおります。  あわせて申し上げますと、私自身の責務といたしましては、円滑な審査委員会の運営ということにありますので、その点もよくお含みいただきたいというふうに思います。  以上です。
  68. 仙谷由人

    仙谷委員 少なくとも長銀について、いわゆる長銀が第一分類と言っている、あるいは第二分類と言っている、あるいは第三分類分類している個別の債権を、ラインシートを取り寄せて審査したんじゃないんですか、してないんですか、見てないんですか、それだけ言ってください。
  69. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 御質問にありました審査プロセスについてですけれども、個別行のバランスシートにつきましては、日銀及び大蔵当局のバランスシートをもとにして審査いたしましたので、詳細につきましてはそちらの方からお答えいただきたいというふうに思います。
  70. 仙谷由人

    仙谷委員 委員会としてちゃんと吟味したかどうかを聞いているんですよ。経験だけでいいですから。やってないんだったらやってないと言ってください。
  71. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 吟味につきましては、審査委員会の回数等についてお答えしたいと思います。  三月十二日から二日間にかけまして、立て請け、深更に及びますまで委員会を開きまして、できるいっぱいの審査というものをいたしたということを申し述べたいというふうに思います。
  72. 仙谷由人

    仙谷委員 委員長、今のは質問の答えになっていませんけれども、時間が長かったからいいという問題じゃないですからね、言っておきますけれども。徹夜したからいいという問題でもないです。  問題は、例えば長期信用銀行の資産について劣化しているのかしていないのか、劣化しておるのであれば引き当てるべきではないか。引き当てれば、この銀行が将来この銀行の優先株を取得して、国民に迷惑をかけないように換価できるのか、現金化できるのかというような観点も必要だったと思うんですね。あるいは三月期の償却の仕方が中途半端である、こんなことではこの銀行は再起できない、もし再起させるための資金だとしても、そういう観点だってあると思うんですよ。  今になって急に七千五百億円丸々放棄しますなんてばかな話がどこにありますか、たった五カ月しかたっていないのに。だれが考えたっておかしいじゃないですか。そうでしょう。  少なくとも、日本リース以下のこのセプンシスターズと言われるノンバンクの債権、これが第二分類であるとしても、二〇%は引き当てておいたというんだったら話はわかりますよ。だけれども、このバランスシートの二枚目で計算してございますが、七千五百億円を一たん除いて、今の長銀が言っている第二分類債権、第三分類債権を合わせて一〇%引き当てただけで四千百七十三億円もマイナスになるじゃないですか、自己資本が。一〇%引き当てただけですよ。  こんな会社が何で健全行だということで資本注入を受けられるんですか。こんなことわからなかったんですか。お答えください。
  73. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 ただいまの御質問は、これまでの話と今後についての視点を含めましてお答えしたいというふうに思います。  審査委員を代表いたしまして、委員会の場におきましては、自己査定結果を踏まえて資産の健全性について大蔵大臣及び日銀総裁に御質問申し上げてお答えをいただきました。そのお答えをいただくに際しまして、急遽ラインシートを請求されて資産内容の洗い直しというものが行われましたというふうに承知しております。主要行についての同一時点での資産内容を初めて比べるという機会を得ましたことは、私どもとともに日本にとっての監督行政運営強化について寄与したものというふうに承知もしくは理解しております。  それから、今後につきましてですけれども、各行から健全性確保計画の提出を求めておりまして、今後、こういった経営内容というものをより一層詳細に審査いたしまして、今後とも、おしかりを受けることのないような内容にしていきたいというふうに心しております。  より個別の内容については、私どもとしては詳細については承知しておりません。
  74. 仙谷由人

    仙谷委員 今、ラインシートを取り寄せて吟味したとおっしゃっておりますけれども、もし本当にちゃんとラインシートを取り寄せて、こんな幽霊会社みたいなところに一千億も貸されておるのを吟味したら、こんな結果出るはずないじゃないですか。  大体、わかっているんですか。この一兆五千億の長銀の関連会社に対する融資が第何分類にあって、どのぐらい引き当てをされていたのか、わかっているんですか。わかっているんだったら公開してください。この問題が解決つかない限り、長銀に対する新たな公的資金の投入なんということが、国民感情としても、国民のカンジョウのカンジョウは二つですけれどもね、国民の懐勘定としても、怒りの感情としても、こんなこと許せませんよ。今から明らかにできますか。どうですか。
  75. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 ただいまのラインシートにつきましては、言い直しますと、大蔵省、日銀にお順いしたということです。  それから、個別行についての内容については、私自身は承知しておりません。
  76. 仙谷由人

    仙谷委員 これ、今のお話を聞くと、私はマーケットに過剰に反応してもらいたくないから聞いておるんだけれども、その程度の審査しかしなかったということになると、これはマーケットに対して余りいい影響を及ぼさないんじゃないでしょうかね。単なる横並びだということになるんじゃないですか。  じゃ、もう一点聞きます。  いいですか、この長期信用銀行というのは、委員長、今度の改善策の中で、早々と優先株に対する配当、一%の配当をするという約束をして政府から公的資金の資本注入を受けたわけですが、これをほごにしている。その前に、六月の株主総会では、普通株に対しては百四十四億円の配当をつけている。任意積立金を二千九百億余り取り崩して、そこまでして配当はするわ、優先株に対する配当はやめるわ、これどうなっているんですか、こんなやり方は。詐欺に等しいじゃないですか。三月から、あなた、六月ですよ。どうですか。
  77. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 配当については、二点あるかと思うのですけれども一つは、九年度赤字決算にもかかわらずその配当を行った理由いかん、それからもう一つは、先般の業績修正によっての集配の問題と二つあるかと思います。  最初の方につきましては、赤字決算であるにもかかわらず配当を行っている銀行というものはありますけれども、これは配当可能利益というものを、各行の商法違反にはならないというふうに理解しております。  それから、審査委員会といたしましては、各行から提出された経営の健全性確保計画というものの中の、中長期的な配当の維持が可能であるというような記述をもとにいたしまして、資本充実を害する懸念がないという判断のもとにはそれを認める、各行の経営判断に任せるというのは、委員会としての意見が一致したものというふうにお答えしたいというふうに思います。  それから、引き受けをいたしました優先株の保全の観点からは、配当が得られなくなるというのは大変遺憾であるとは思いますけれども、今後は、詳細なリストラ計画、先ほど申しましたような市況の回復というものによって現在のような状態からの回復というものを願うものでございます。  以上です。
  78. 仙谷由人

    仙谷委員 国民が納得できるようなお答えを全然なさらないじゃないですか。これ、普通の世界で中小企業の人が、ことしはこういうふうに配当を払いますと誤信をさせて資本金として取り入れたら、三カ月後に、いや、経営改善政策でもうことしから配当やめさせてもらいますと言ったら、これは完全に詐欺になりますよ。ね、日野さん、昔のあなたのやっていることだとそうなるでしょう。これを詐欺というんですよ。もしそれを、その種のことも資産内容の調査から見抜けなかったとすれば、これは節穴だったということしか言えない。  私は、これからまだまだいろんな口実をつけて資本注入みたいなことをやろうやろうとする人たちがおると思いますけれども、もし仕事をお続けになるんだったら、国民の税金を使うんですから、あなた自身の目でラインシートを見て、足で歩いて、債権を調査してやるぐらいの緊張感を持ってやってください。  次に、話題を変えます。  宮沢大蔵大臣、「金融機関の株価の推移」というのをきょうつくってまいりました。実は、昨年の十一月四日、この場で質問をさせていただきました。つまり、三洋証券が会社更生の申請をしたときでございます。十月三十一日までの株価をそのときには書いてあったのです。  何が言いたかったかといいますと、例の、先般の議論でも問題になりました九二年八月十八日の一万四千三百九円の日経平均株価のときの金融機関の株価、ところが、九七年の十月三十一日には、約二千円日経平均が上がっているのになぜ金融機関はこんなにひどいのですか、もっと、大本営発表をやめて、当時の政府ですよ、宮沢さんじゃなくて、当時の政府が大本営発表をやめて、どこにこの原因があるのか、株価が何を表現しているのかということをちゃんと認識しなきゃだめだ、こう申し上げたのですね。  しかし、まだそのときには、不良債権処理も本気でやらなきゃいけないとも思っていない。景気は回復に向かって足踏み状態であると堂々と皆さん言っていた。そんなことはないでしょう、もういいかげんにそういうおためごかしというか、そういうのはやめませんかという話をしたんだけれども、どうも年末までは、クリントンさんから電話がかかってくるまではそうならなかった、当時の橋本内閣ですね。  その後、いかがですか、これは。九八年の三月三十一日の平均株価がほとんど十月三十一日と変わらないのに、金融株だけはどんどん落ちている。九八年の八月二十八日、せんだっての、バブル崩壊後最安値をつけた、このときにも当然のことながら落ちております。きょうは、平均株価は少々戻しても、金融株は全般にそれほど高くない。こういう状況にあるのですね、今。  新聞は、あるいはメディアの方は長銀にだけ焦点が当たっていますけれども金融機関のこの現状について、株価から見て、大蔵大臣、どういうふうにお考えですか、全般について。
  79. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これだけずっと、お示しの、九二年から下がってきたことは、これはもうこの表の示すとおりであります。それは恐らく、もともと金融機関の株というのは実は非常に高位にありましたことは御承知のとおりです。いろいろな、配当等から見まして、こんなに高いものかなというほど高かったことはもう御承知のとおりですから、それにも関係がありましょうけれども、それは、やはり一般的に、金融機関不良債権を持っているということが株価に反映されていて、その中で含み益の多い金融機関が比較的高位にあり、そうでないものの値下がりが目立つ、こういうことではなかったかと思います。
  80. 仙谷由人

    仙谷委員 そこで、今度は大手十八行のバランスシートというのがそこについていると思います。  大手十八行を三月期決算で、非常に単純化して、貸出金と有価証券を資産項目、負債の方を預金とその他負債、そして貸倒引当金、資本の部。資本の部は額面です。額面というよりも、それぞれの大手十八行、日本信託だけちょっと計算上難しかったものでありますから除いてありますが、この資本の部、資本金というふうに計上している分を合算したものでございます。日本の大手金融機関十八行を一つ金融機関として見立てて、バランスシートをつくってみたのが上の表でございます。  さらに、今度は修正バランスシートとして、第二分類債権を、梶山さんがよくおっしゃっておったように二〇%を引き当てする、第二分類について。日経平均を一万四千円と仮定して、有価証券がどのくらい含み損があるか。これは、ついせんだっても各紙がこういう格好で、二十九日付の新聞でしょうか、有価証券含み損一覧表というのを出しております。あるいは、いろいろなシンクタンクからも速報で我々のところへも流れてきております。  それを前提に、含み損を使って計算をしますと、貸倒引当金を十七兆九千億から二十五兆六千億に積み増さざるを得ない。そして含み損を計算して、つまり低価法で計算すると、何と日本銀行の資本の部は十四兆六千三百三十四億円から一兆八千百十億円の資本しか残らない。こういう状態に今日本の大手行は追い込まれている。体力がここまでなくなっている。こういう現状を深刻に認識すべきではないかと私は思うのですが、いかがですか。
  81. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今資料をいただいたばかりで、数字の計算を私、にわかにできませんけれども日本銀行の含み資産というものが急激に減って、いわゆる資本というものが非常に脆弱化している、それはもう御指摘のとおりと思います。
  82. 仙谷由人

    仙谷委員 ただ、この計算が粗っぽいということは認めます。あらあらです。あらあらであるけれども、このぐらい深刻なんだというのは、十八行を一つ金融機関に見立ててバランスシートを組み直してみれば、低価法というか、実際の財産価格で組み直してみれば、これほど深刻だ、こういうことなんですね。  さらに、もう一つ。今度話の観点が変わりますが、日本銀行はオーバーバンキングだとか、あるいはオーバーキャパシティーだとか、こういう言い方をされていますよね。さっき我が同僚の古川議員の質問に答えて、いや、やはり多過ぎますなという意味のことを答えられていたと思いますが、このオーバーバンキングとオーバーキャパシティー。  さらに、かてて加えて直接金融と間接金融の比率、国民の預金の直接金融への資金の出し方、間接金融への預け方、企業サイドの、直接金融で資金をとる、間接金融から金を借りてくる、この比率が今のままでもっと思いますか。あるいは、これで日本の金融界は、この体質のままビッグバン時代を乗り切れるというふうにお考えですか。どうですか。
  83. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一つ一つ申し上げたいこともありますけれども、しかし、大きなデッサンとしては、今おっしゃったような問題を確かに持っておるというふうに私は思います。
  84. 仙谷由人

    仙谷委員 結局、私、今の時代は、政府部門もそうですけれども銀行という部門も、自分で資源配分をするには余りにも大きい預金を抱えて、そのリスクがとれなくなっている、こういう時代だと思うんですね。どうかこれを、みずからが貸し付けた貸付金を債券化してリスクを分散する、一方では。一方では、直接金融やってください、私も直接金融の世界、投資信託も扱わせてください。これをやらない限り、間接金融でこれほど大きいものを自分が資源配分するということは、貸し付けるということは、銀行がリスクをとるわけですから、リスクがとれなくなっている、こういう規模と時代だと思うんですね。  そうしますと、どうしても直接金融の流れをつくらなければならない。これは十年も前から言われている話だと思うんですが、どうもここが、思い出してみますと、九二年の金融制度改革でも、まだ銀証の垣根がどうのこうのという議論に終始した、こういう反省が私にもございます。ございますけれども、実情そうだった。  ちなみに直間比率を、まさに直間比率を比べてみますと、企業が資金をとる直間比率でありますが、日本は、間接金融から日本の非金融法人がとっている比率は四四%、直接金融から三〇%です。アメリカは一〇対六二。イギリスは一二対六六。フランスは一七対六六。ドイツは日本とよく似たというか、日本よりもまだ間接金融の比重が高くて六三対二二、こういうことになっています。  しかし、いずれにしてもこれは、これだけマネーの量が多くなってきて国民の金融資産が膨れ上がりますと、とてもじゃないけれども間接金融を整理していかざるを得ない。間接金融から直接金融の流れをつくらざるを得ない。つまりそのことは、日本のマネーセンターバンクも、大胆な再編成が行われないともたない、そちらの面からも再編成がないともたない、淘汰がないともたないということをあらわしているんじゃないですか。どうですか。
  85. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 という状況でありますから、それらの銀行も、新しい金融商品を開発したり、あるいは傘下に証券会社を持とうとしたり、持ち株会社制度ですが、そういったような大変な努力を今しておる。仙谷委員の言われました大まかな問題は、まさにそういうことだと思います。
  86. 仙谷由人

    仙谷委員 そこで長銀のような格好になるのか、みどり銀行のような格好になるのか、あるいは弱小の金融機関がぱたんとつぷれることになるのか、いろいろなケースが想定されますけれども、再編合理化という波は必然だという前提を考えた方がいいと私は思います。  ところが、先般から問題になっているように、銀行というのは、物を売って何か現金でも抱えておれば再建途上も商売ができる、会社更生法の手続中のようなことができるということにならないのですね、お金そのものが商品ですから。そしてまた、決済機能を持っていますから、そうそう簡単に一遍息の根をとめて再出発というわけにはいかないのです。まさにシステミックリスクの問題でございます。そういう危機管理が必要だということです。  そして、長銀だけが問題なのではなくて、大きな流れとしても、あるいは現時点での日本のマネーセンターバンク十八行、十九行の問題だというふうに設定しても、これは長銀だけの問題じゃない、ある種の必然だ、そのための危機管理をどうするのかということが今、国会に問われているのじゃないですか、というふうに私は認識しているのですよ。  そこで、危機管理と、もう一つ重要なことは、借り得とかごね得とか、あるいはつぶれたら国家がやってくれるんだから高い金利でどんどん資金を集めればいいんだとか、高い金利の方にどんどん預金をほうり込めばつぶれても国家が面倒を見てくれる、あるいはつぶれるときには全部国家が始末してくれるんだから、そしてうまくいけばそこの株式もまた復活できる、こういうモラルハザードをいかにして排除するか、防止するかという観点がないと、危機管理をやったのはいいけれども、もうモラルハザードのやり放題、悪いやつほどよく眠るという世界が現出するわけであります。  ここは、要するに、モラルハザードをなくしながら危機管理をやる、この原点だけはどんなことがあっても手放してはならないと私は思うのです。どうですか。
  87. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そのとおりだと思います。
  88. 仙谷由人

    仙谷委員 そこで、お伺いしますが、金融機能と決済機能というのは、確かにこれは公共性がある、あるいは公共財であるというふうに言ってもいいと思いますね。  先般から、公共性と政府の介入というか権力の介入という問題意識で議論をさせていただいているつもりなんですが、銀行は、なぜ免許制で、検査を受けなければならなくて、早期是正措置の対象になる。なぜなんですか、これ。つまり、一般の事業会社が、免許制であったり財務内容について当局の検査を受けなければならなかったり早期是正措置を課されたりしないのに、銀行はなぜそういうものを課されるのですか。いかがですか。
  89. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 一番基本的に申し上げますならば、人の財産を預かって、善良なる管理者としてその管理に当たらなければならないというのが一番基本であって、その次に、しかし貸出業務につきましても、預かっている財産を危殆に陥れないような、そういう貸出業務を行わなければならない、そういう部分が他の産業と異なっていると思います。
  90. 仙谷由人

    仙谷委員 反対からいいますと、免許制であったり検査であったり早期是正措置、こういうのは、マーケットに対する、あるいは私企業に対する政府の介入であるというふうにお認めになりますか。
  91. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 免許制である、銀行検査がある、あるいは最近で申しますなら早期是正措置でございますか、銀行法に基づきます改善命令のようなもの、これらはやはり、そういう業であるがゆえに生じておる政府の介入と申しますか、関与であると思います。
  92. 仙谷由人

    仙谷委員 そうすると、平常時でもそうでありますから、ここで問題になっておりますように、金融システムの動揺あるいは崩壊近しとかシステミックリスクの発生とかというのは、これはある意味で、いかなる形、いかなる程度であるかは別にして、今私が申し上げた免許、検査、早期是正措置、そういう一連の手続のさらに先にある国家の介入、政府の介入がない限り、公共性を維持する、公共性を守るんだ、そういうことにはならないんじゃないですか。つまり、国家の介入が、システミックリスクを守るためには、防止するためには出てくるんじゃないですか。いかがですか。
  93. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その一番成就的な形が金融監督庁による検査であると思っております。  そして、検査の結果、よければそれでよろしいし、問題があれば恐らく金融監督庁において注意を促される、いろいろな種類があると思いますが、そういうことと思います。
  94. 仙谷由人

    仙谷委員 ちょっとまだ議論が同じ土俵になかなか上がってこられないんで、聞き方を変えます。  今度ブリッジバンク法案というのが出ておりますね。金融管理人が代表権、業務執行権、財産の管理処分権と持つことになりますね。これは国家権力が介入して、株主の権利を、取締役の権限を制限もしくは奪い去るということになるんじゃないですか。いかがですか。
  95. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 株主総会の固有の権限を一方的に奪い去るということは我が国の法制上できないと思っておりますから、それとの調整は非常に問題がございますが、金融管理人は、かなりの権限を振るうことができるのは、そのとおりです。
  96. 仙谷由人

    仙谷委員 いやいや、ちょっと待ってくださいよ。整理してくださいよ。  株主総会の権限を奪い去ることができないのに、金融管理人は、株主総会の権限を無視してというか排除して、代表権を持つんでしょう、業務執行権を持つんでしょう、財産の管理処分権を持つんじゃないですか、ブリッジバンクというのは。ブリッジバンク法案の、破綻認定の後はそうなっているんじゃないですか。
  97. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  まさに今先生が言われましたように、金融管理人が選任されますと、その業務を代行するというか、行うことができるという規定がございます。
  98. 仙谷由人

    仙谷委員 宮沢大蔵大臣、先般、国有化のためには株主総会の特別決議が必要で、株主の権利を無視した手続は困難だとおっしゃっていますけれどもブリッジバンク法案、これは株主総会を無視して代表者を選び、行政命令的にですよ、業務執行権を与え、財産の管理処分権を与える、あなたの論理からいってどういう理屈からこれができることになるんですか、おっしゃってください。
  99. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 そこはよろしいんですけれども、この法律に書いてございますことは、被管理金融機関における株主総会の特別決議、これは、商法等の定足数に係る規定にかかわらず、出席した株主等の議決権の三分の二以上の多数をもってできることとするとともに、再度の株主総会等において同一の多数をもって上記の仮決議等を承認した場合には、そのときに特別決議等があったものとみなすこととするということをわざわざ法律に書いておりまして、それからまた、被管理機関がその財産をもって債務を完済することができない場合には、商法等の規定にかかわらず、裁判所の許可を得て、営業譲渡、資本減少等を行うことができることとするということで、法律によりまして、かなりの、いわば株主総会の持っております権限を、ある意味で弱めると申しますか簡略化するということは書いてございますけれども、基本的に株主総会の存在を無視する、アメリカの場合はそれができるわけですが、それはやはり我が国の法制ではできないと私ども考えております。
  100. 仙谷由人

    仙谷委員 今おっしゃったのはみなし規定の話でありますから、基本的に。株主総会の決議がなくても法律によって特別決議があったものとみなすとか、裁判所の許可を得て営業譲渡や資本減少まで総会の決議があったものとみなすという規定になっているじゃないですか。こんなものはみなし規定じゃないですか。  あなたが今おっしゃったように、法律の規定によってできるとおっしゃったんでしょう。みなし規定を置くことによってできるわけでしょう。擬制をできるという話じゃないですか。擬制でできるというだけの話であって、大臣、いいですか、株主総会の決議があるかないか、株主の意思がそこで発言をされたかどうかなんて全然関係ない話じゃないですか。何をお考えになっているのですか。
  101. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この点は、この法案の作成におきまして、いわばこれは司法と行政の接点の問題でございますから、行政内部においては、当然、法務省とかなりぎりぎりの検討をしたわけでございますけれども、最後に残りましたことは、擬制でいろいろなことはできる、いろいろなことはできるが、株主総会というものはついに存在する、これを無視するということはできないというのがやはり基本的な考えであります。その権限をいろいろショートカットしたり、三分の二というのをいろいろしたりしますけれども、しかし株主総会というものは存在する、これを無視できないというふうに考えているわけです。
  102. 仙谷由人

    仙谷委員 その種の議論は、アプリオリにできるとかできないというのは、なぜかというところが全部抜けているのですよ。  いいですか。どうせ憲法二十九条の話なんでしょう。憲法二十九条の二項に、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用ひることができる。」ここで書いてある公共というのは、皆さん方がおっしゃっている、システミックリスクを排除するというのは、公共の利益とか公共のためではないのですか。どうですか、お答えください。
  103. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 難しい議論になりますと、ようお答えいたしませんが、しかし、そういう意味合いだと思います。ただ、株主総会という、これは、人格はやはり存在するということに立っているわけで、これは無視できない、公共のためといえども
  104. 仙谷由人

    仙谷委員 そうすると、無視はできないけれども、擬制、つまりみなし規定を法律で置けばできるという理論ですね。
  105. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 みなし規定にはやはりそれなりの限度がありまして、その本体をゼロにするようなみなし規定というものはやはりあり得ないと私どもは思っている。
  106. 仙谷由人

    仙谷委員 限度はだれが決めるのですか。アプリオリに天が決めるのですか。だれが決めるのですか、お答えください。
  107. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、行政権と司法権の接点の問題でございますから、事実上の立法上は、私どもは法務省においてその限度を考えてもらっている、こう申し上げるべきだと思う。それはしかし、それすらも将来違憲だという判決を受ける危険は、これはございます。
  108. 仙谷由人

    仙谷委員 そこのところは、私は、司法権と行政権の侵害の問題ではなくて、まさに私権に対する公共性ゆえの制限が、所有権に対する制限が、いろいろな具体的な状況の中で合理性を持つかどうか、それこそ司法判断を最終的に仰ぐ、時代とともに変わり得る可能性のある事柄だと思うのですね。  したがって、私どもは、古今未曾有の、皆さん方の話を聞いていたら天地がひつくり返るようなことをおっしゃるこの金融システミックリスクの発現というものに対しては、ほとんどマイナスに近づいている株式を強制取得する、このことは、今までの考え方からいったら問題があるかもわからぬけれども、しかし、許されると。ここを許されてシステミックリスクを排除しなければ、到底ブリッジバンクのような生ぬるいつなぎ政策ではだめだ、こう思っているわけですね。そういう考え方なんですよ。  何か御意見はございますか。
  109. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 あります。  それは、専門家にチャレンジをする気持ちはございませんけれども、死にかかっている株主権でもそれは株主権でございますから、もう死にかかっている人間は人間でないという、そうおっしゃったのではないのですけれども、やはりそこには人格というものがある、法人格というものがある、素人でございますが、そう思います。
  110. 仙谷由人

    仙谷委員 死にかかっている話をされましたけれども、別に補償をしないと言っているわけじゃないのです。  それから、一つ考えいただきたいのは、人間の命と、しょせんは金は金なんですよ。人間の命とは重さが全然違うのですよ。人権の中でも、生命を維持する権利と財産を保持する権利の重さは、質、量ともに違うということだけはお考えください。  それからもう一点、では今度は別の話題にしましょう。  ここにブリッジバンク法案というものがございますね。この法案は、しょせんは破綻認定をしないと発動できないのですね、破綻認定をしないと。何か今の世の中の議論を聞いていると、野党がこの法案審議の中でこの法案をすっと通さないから長銀問題も片づかないんだという議論が行われてみたり、何かどこかの党の政調会長さんは、破綻前処理の方策が野党案にはないからけしからぬ、こう言ってみたりする。ブリッジバンク法案とか与党が出している法案の中に、何か破綻前処理の方策というのはあるのですか。明確に答えてください。
  111. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いや、そういう話がございましたら、それは誤解でございまして、破綻をどうするかというのがこの法案でございます。
  112. 仙谷由人

    仙谷委員 これはメディアの方にもよくわかってもらわないと、もう混同されて、長銀の問題とこのブリッジバンク法案の問題と。  要するに、我々の言い方からいえば、長銀は、事実上破綻もしくは破綻に近いけれどもまだ破綻していない。このときに、長銀にどういう支援というか救援をすれば、最も国民経済的に最小コストで、危機管理をしながら、さっき申し上げたようにモラルハザードを排除できるか。この二つの観点で、どうやれば最小コストでこの長銀問題を切り抜けられるか、こういう問題だと思うのですね、こっちは。今、そのスキームとかルールはほとんどないということだと私は見ています。いかがですか。
  113. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 おっしゃる意味は、破綻をした金融機関を……(仙谷委員「破綻前」と呼ぶ)破綻前、破綻前の……
  114. 仙谷由人

    仙谷委員 我々は事実上破綻だと思っているけれども、皆さん方は破綻と思っていないのでしょう。
  115. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 はい、さようです。
  116. 仙谷由人

    仙谷委員 そういう状態の危なっかしいところを……
  117. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 でございますから、その銀行が、自衛のために合併をしたいという話が起こっておるわけでございます。
  118. 仙谷由人

    仙谷委員 だから、それは、後から時間があったら聞きますけれども、皆さん方が力を入れて、両方の背中をよいしょよいしょ押して、合併させよう、合併させようとしていますけれども、自主的な合併であれば、それはあなた、マーケットの世界というか私的自治の世界だから、ほっておけばいい話ですよね。だから、さくら銀行が三千億円、資金をどこかから取るという話も、これは自主的にやっていただいていい話でございます。  だから、私が言っているのはそういう私的な話ではなくて、程度問題とかやり方はありますが国家がそれこそ介入をして、破綻寸前というか、破綻近しというか、あるいはこのままではもう何年ももたないだろうというところを、国家が介入しながら何とかこれを整理する。つまり、整理というのは清算と再生と両方ですから、整理をする、そういう破綻前のスキームというのは今は我が国にはありませんねということを言っているのです。いかがですか。
  119. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 長期信用銀行とあえて申しますが、常識的に考えまして、長期信用銀行がそういつまでも長期信用銀行という名で残っていることはないだろうと一般に考えられておりますが、そのような苦境にあって、長期信用銀行が友達の銀行と合併話を進めておる。  その合併話の中に、国は資本率が非常に低下いたしましたときには状況いかんでこれを補強することができるという制度がございます。したがって、この合併話の中には、この制度が活用される、制度を利用するという部分が入っておりますので、この制度がなくて合併話だけが進行しているというわけではない。  ただし、この制度を資本を投下する場合からいいますと、状況によって、そういう状況をもたらした銀行はそれなりのいわば責任を負わなければならない。社会的に何もしないでそれができるはずはない。それは経営陣の総退陣であり、あるいは退職金の返還であり、海外支店の廃止であり、本店の売却であり、従業員の削減であり、いわば極めてきついリストラをしなければ国のそういう処置は期待できませんよということの上に両行が合併話を協議している、こういうふうに考えております。  ですから、先生のお話によりますと、そういう条件ができまして、本当に片っ方の銀行がいわば、どなたかせんだってスクラップとおっしゃいましたが、ちょっと適当な言葉がございませんが、もはやその名前で存続することはないという、そこまで決心いたしましたときに、国はそのような要請に応じるべきかどうか。先生のお考えを進めていきましても、答えはイエスというようになるように思うのです。
  120. 仙谷由人

    仙谷委員 今のお話は、ルールはないけれども、自主的に合併するのであれば資金注入だけはやってあげるよというルールはあるという話ですよね。そうじゃないですか。  どういう段取りで進めるかというような、つまり早期是正措置がかかった段階でどうするかとか、そういう話ではないのですよ。今のままの、破綻前処理などという言葉がメディアの世界で言われておりますが、そんなものはなくていいんだ、合併で、それで資本注入をしてやればいいんだということならば、もう御自由におやりください、時の政府が裁量行為でどんどんやっていただくしかありまへんな、こういうことになるのですよ。それでいいんですかと私は聞いているのです。
  121. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは何日も御審議をいただいたことですし、昨日も参考人が言われたように承知しておりますが、長期信用銀行金融監督庁長官のもとに極めて厳しいリストラ計画を提出いたしました。それによって自分たちは自分たちのいわば責任をとるので、ひとつ金融監督庁に、政府に御考慮を願いたい、こう言っておられるのでありまして、のんべんだらりとただ救ってくださいというようなことでないことはもう御承知のとおりでございます。
  122. 仙谷由人

    仙谷委員 しかし、先般からの長銀に対する政府の態度を見ていますと、このリストラ計画についての反応が甘いですよね。長銀のリストラ計画について、経営改善策について大歓迎みたいなことを言っているでしょう。歓迎をする、喜ばしいと言っているじゃないですか。  何が喜ばしいのですか、こんなもの。さっきから申し上げているように、回収できる債権は投げ捨てるわ、まだまだいっぱいあるような感じは醸し出されるわ、全然我々の前に明らかになっていないじゃないですか。どこがリストラなんですか。  さらに、かてて加えて、株主に対する責任の追及の仕方が全く甘いじゃないですか。何で株主が権利が残って、国民が税金を投入して長銀を支えなきゃいけないんですか、合併できるようにきれいにお化粧してあげなきゃいけないんですか。
  123. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これも申し上げておりますとおり、歓迎というような気持ちは一切持っておりません。いやしくもかなりの銀行がその姿を消すという、そのことの大きな影響を考えますと、とても歓迎という感じではございませんで、むしろ、あれだけのリストラをしたということは、気の毒ではあるが、長銀としてはこれは当然のことであるというふうに考えております。  それから株主のことでございますが、ここは考え方があると思いますが、長銀考えでは、いずれにしてもこれは両行の合併になる、合併比率の場合に長銀の株主は非常に不利な条件を甘受しなければならない、それによって株主が責任を負う、こういう考え方をとっておるように思います。
  124. 仙谷由人

    仙谷委員 先ほど、私どもでつくった修正バランスシートをお見せしましたけれども、ああいう観点からいうと、長銀の株主は一銭の配当もなく一銭の残余財産の分配もなくても何にも言えない状態じゃないですか。そこを、非常に厳しい、その程度では困るんですよ。国民の方は泣いても泣き切れない。  話題を変えます。  次に、このブリッジバンク法案で、破綻、それから金融管理人の選定、それから審査判定委員会の判定、営業譲渡、それから、あるいは整理回収銀行、ブリッジバンク、こういう格好になるわけですね、このスキームを見ますと。この破綻認定から判定まで、期間はどのぐらいを想定しているんですか。
  125. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 今先生の言われました期間の話でございますが、全体は法律に二年プラス延長三回という話はしてありますが、今、選任されて、さらに審査判定基準に基づいてブリッジバンクヘ移行する期間は、なるべく短ければ短い方がいいと私ども考えております。
  126. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵大臣はどのぐらいだと思います。
  127. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 なるべく短い方がいいと申し上げましたんですが、今までの実例でいいますと、例えば半年とかかかっているものもございますし、なお努力すべき点もあるかとは思います。
  128. 仙谷由人

    仙谷委員 大蔵大臣、今のようなお答えなんですよ、実は。ここが、私、専門家に聞きましたら、この法案の持つ最大の弱点、最大の欠点だと言われているんですね、この期間が。  つまり、債権の仕分けとか、不良債権であるか優良債権であるか、あるいは第二分類だったらaであるかbであるかとか、その仕分けをここでやらなきゃいけないものだから。そして金融危機管理委員会の中に判定委員会をつくって、これこそ大変な作業ですよ、一本一本いかないといけませんから。借り手からいえば生死を決するような話ですからね、これは。これは時間がかかる。時間をかけないと、さっきの、三月の長銀公的資金投入のようにむちゃくちゃやると、拙速をやると大変なことになりますから、やる。  それで、半年と言われたけれども、まあ半分の三カ月にしましょう。三カ月もこの仕分けの期間をかけると、いい得意先は全部いいところへ行ってしまう、残ったのは、そういう言い方をしたらなんですが、余り善良でもない、健全でもない借り手が残る、こういうことになるわけですね。  それから、国際取引では、この間、菅代表が予算委員会で聞きましたけれども、この金融管理人がレシーバーという訳文で、皆さん方が、政府が外へ流している以上、やはりレシーバーが立ったということはデフォルトだ、こういうことになるというのですね。インターバンクの中でも、これは非常に資金がとりにくい状況になるだろうということが専門家の間で言われておるわけでございます。  先般来の議論との関係でいうと、じゃ、これは半年か三カ月にしましょう、大蔵大臣、この間の資金手当てはどこがつけるのですか、日銀特融ですか。
  129. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今のお話ですが、それは私どもの中でも実は議論をしておりますし、先般もこの委員会でもお尋ねがあったと思いますが、ぐずぐずしていると、いい取引先はよその銀行に持っていかれる、よその銀行との話がつくというのなら、それならば実際そんなに心配したことはありませんので。今の世の中の状況は、三十年も銀行と本当にまじめに取引している人たちですら縁を切られるような世の中でございますから、なかなかよそが、うちとというふうにはやってくれない。今の状況は残念ながらそういう状況だと私は思いますものですから、そういうことになればむしろ問題は少ないがなと思います。  むしろ申し上げたいのは、そうやって選別しましたときに、残ったものはいわばいいお客さんばかりである、悪い債務は整理回収銀行が買っていったという状況で、それなら丸ごといただきましょうかという銀行が出てくるのを期待する、こういうのが実情ではないかと私は思っているのです。  資金繰りは、預金保険機構がいたします。
  130. 仙谷由人

    仙谷委員 本当ですか。この間の日々の資金繰りは、日銀特融しかないのじゃないですか。判定までですよ、破綻認定から判定までですよ。
  131. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  先生先ほど言われました話で、今大臣が言われたように、ブリッジバンクの段階は預金保険機構からの融資でございますが、管理人の段階のときには、まさにそういう日銀の融資ということです。
  132. 仙谷由人

    仙谷委員 僕は、自由党の鈴木さんの肩を持つわけじゃないのだけれども、この間鈴木さんが、日銀特融でやればいいじゃないかと。これも日銀の信任上、全部日銀特融でやるというのもいかがなものかという気持ちがあるから聞いておるのですが、もうむきになって大蔵大臣が、いつまで日銀特融が続くとおっしゃるのですか、こういう反論的答弁をされました。  ところが、このブリッジバンクのスキームでも、半年とか三カ月の間、日銀特融が続くという話になるのじゃないですか。まさに日銀の信任を、あるいは規律を汚すことにつながるような話になるのではないか。つまり、もし判定までの期間、いつまでも日銀特融をずるずる続けるなんというスキームだとすれば、日銀的観点から見ると非常にゆゆしいことだということにもなるのじゃないですか。
  133. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今この法案で想定しておりますのは、まさに日銀の融資といっても、いずれ預金保険機構から資金援助という形で返ってくるといういわば当てがあるわけでございまして、先日大臣が言われましたのは、いわゆる単純な日銀の特融がどのぐらいの期間続けられるだろうかという御趣旨で大臣はお答えになられたと思っております。
  134. 仙谷由人

    仙谷委員 もしそうだとすれば鈴木淑夫先生が非常におかわいそうで、やはり鈴木先生の今度の質問のときに訂正をされた方がいいと私は思います。  最後に、ちょっと時間がなくなりましたが、今度、長銀と住友信託の合併の話が出ていますね。  私は、これは法律家の常識から考えると大変おかしいと思っているのですよ。というのは、高橋さんという住信の社長さんが、いいところしかとらない、こう言っているわけですよ。そうすると、どう考えても、いいところを営業譲渡で住友信託に渡す、長期信用銀行として残ったものは、余りよくない債権と負債を整理していく、こういうことにしか、住信さんの社長の言い分を聞くとそうしかないんじゃないかと思うんですね。  そうじゃなくて、合併を無理やりやらそうとすると、不良債権をまず償却しなければいかぬですね。どこかへ売り飛ばさなければいかぬですね。これを受ける受け皿はないじゃないですか、今。破綻していないんだから。自由に不良債権を売買してくれるんだったらいいけれども、そんなことになっていないじゃないですか、こんな大量のお金を。  そうだとすると、無理やりここに引き当て分を資本注入して、例えば、一兆五千億とすれば、それの七割ぐらい引き当てをして、引き当て金を積ませて、つまり一兆円ぐらい資本注入をして、無理やり合併させるみたいな話にしかならないじゃないですか。  また時間があったらこれをやりますけれども、私の常識と経験からいうと、この合併というのは、言葉は踊っていますけれども、営業譲渡でない以上、大変無理筋であると思います。いかがですか。
  135. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 でございますから、長期信用銀行側はそのような不良債務をリストラをやって整理をしなければならない。それがああいうリストラのきっさになるわけでございますが、まさにおっしゃいますように、銀行自身が整理をいたしませんと合併というものが成り立たない、そういうことでございます。
  136. 仙谷由人

    仙谷委員 終わります。
  137. 相沢英之

    相沢委員長 これにて仙谷君の質疑は終了いたしました。  次に、石井啓一君。
  138. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 平和・改革の石井啓一でございます。  まず長銀問題、先日もお聞きしましたが、十分時間がございませんでしたので、引き続き長銀問題をお聞きしたいと思います。  これまで長銀問題につきましては、その責任追及ということ、責任の明確化ということで、経営者の責任ということが随分議論をされてまいりましたけれども、一方で、長銀の株主の責任をどうするのか、まずこれにつきまして質問をいたしたいと思います。  長銀の株主の責任につきまして、昨日、大野頭取は住友信託との合併の比率で株主への負担をお願いする、こういうふうに参考人でお答えになりましたけれども、これは具体的にどういうことになるのか、御説明をいただきたいと思います。
  139. 日野正晴

    日野政府委員 お答えをいたします。  合併比率を決定する場合には、御案内のとおり、両行の企業を評価するということが必要となってまいると思います。  この企業の評価につきましてはいろいろな考え方があろうかと思います。例えば、帳簿上、単純に資産から負債を引く、あるいは場合によっては、株式の市価を基準としまして、例えば現在の株式の市価に現在の発行株数を掛けるとかいったようなもろもろの方法があるかと思いますが、要は両行の、いろいろな方法によって計算された企業の評価額というものを比率によって計算して、出てくるのが合併の比率となろうかと思います。  これが具体的にどういうふうに決定されるかということは、これから合併交渉の進展に伴って決定されることになろうかと思いますが、その前提としては、やはり企業の評価というものがもちろん当然必要になってこようかと思います。
  140. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 一般的に合併比率を検討する場合、おっしゃるとおりだと思います。  そこで、長銀の場合、公的資金を入れる前と入れる後と、どの時点で長銀企業の評価を行うのか。私は、これは一つ大きな課題であろうかと存じます。  といいますのは、一般的に上場企業の場合は、合併比率というのは株価がベースというふうに言われておりますけれども公的資金を入れますと株価が上がるということが考えられます。実際に、公的資金の話が出ただけで、長銀の株価は、八月の二十日、これは終わり値でございますけれども五十六円でございましたが、翌日の八月の二十一日には七十四円にぽんと上がっておりまして、公的資金導入の話が出ただけで株価が上がる。まあその後はまた国会等の審議云々で、昨日ではまた五十円ということになっているようでございますけれども、今後、公的資金を実際に導入ということになりますと、長銀の株価が上がるということになります。  そういたしますと、株主の責任というのは、公的資金を入れた後の株価で評価をしますと、株主の責任をとらせることにはならないのではないか。いつの時点での、今は株価ということで一つ申し上げましたけれども公的資金を入れる前と入れる後と、どの時点での長銀企業の評価を行って合併の比率を出すのか。私は、長銀の株主の責任を合併比率でとらせるとすればそれが大きな問題である、こういうふうに認識をしておりますが、その点はどうでしょう。
  141. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  ただいま、企業の評価額を合併比率の計算上前提として必要とするということを申し上げました。ただいま委員が御指摘になりましたように、株式の市場価格ということもその一つのメルクマールになろうかと思いますが、公的資金を投入いたしますと、当然のことながら資産がそれだけ増加するわけでございまして、当然企業の評価額が高まることは、資産の増加によっても明らかになるかと思います。  ただ、現時点では公的資金をいつ注入するかということが決まっておりませんので、その前か後かによって違ってくるかと思いますが、これは、いずれ両行の合併交渉におきまして、それをどちらの時点でやるのかということを決めてこられるものというふうに理解しております。また、当然それは両行の株主総会の決議も必要となることでございますので、そういったもろもろの事情によって合併の比率というものも変わってこようかというふうに考えております。  以上でございます。
  142. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 端的に申し上げますと、私は、公的資金導入以前の長銀の評価でやらないと、長銀の株主の責任をとらせるということにはならないのではないか、それを長銀と住友信託との交渉だけにゆだねていて、果たして、株主の責任を明確化させた、公的資金導入の前提として株主の責任を明確化したということになるのであろうか、こういう問題意識を持っておるわけでございまして、その点、どうでしょう。
  143. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  もう既に、償却の額からいたしますと、本来の普通株といいますか、従前の株主の持ち分の比率はもうかなり薄くなっているといいますか、低下していることは間違いない事実だろうと思います。  今後、合併比率を計算する場合にも、公的資本の分を従前の株主の分と区分いたしまして計算することも可能でありましょうし、そこは、長銀がこれから合併をするに当たりまして、どういうふうにして株主に対して責任をとってもらうかということをお考えいただけるものというふうに考えております。
  144. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 この問題は、そもそも長銀公的資金導入が必要なのかという問題とも絡むんですけれども、私は、公的資金を入れた後の合併では株主責任は問うことが難しいんではないか。この長銀のケースでは、自己資本で不良債権償却すると言っているわけですが、資本比率は下がるとはいえ資本が残るという政府の御説明でありますから、その状況で住友信託と合併しても何ら差し支えないんではないか。入れるとすれば、むしろ合併後に公的資金を入れる方が株主の責任という意味ではすっきりとれるんではないか、こういうふうに思うんですけれども、その点はどうでしょう。
  145. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  これは公的資金をいつ申請してくるかということにかかわってまいりますので、御質問に対しては直接今すぐストレートにお答えできないのがまことに残念なんですが、いずれにいたしましても、公的資金の注入前に計算するということになれば、お説のとおりになろうかと存じます。
  146. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 私は、今回、長銀の株主の責任を最も明らかにする方法は、長銀の自己資本で不良債権償却した後減資をすべきである。減資をすれば、長銀の従来の株主の責任というのはその時点ではっきりするわけでございますから、私は、株主責任を明確化するということであれば、合併比率云々というよりは、この九月の中間期で不良債権償却する、その後に減資をすべきである、それが最も株主の責任を明確化することになる、こういうふうに考えるわけでございます。いかがでございますか。
  147. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  株主責任を追及する場合には、お説のように、合併比率だけでなしに、減資という方法があることも当然でございます。  もう御案内かとは思いますが、この長期信用銀行の場合、債権者がかなり多数、それも異種の債権者がたくさんございます。また、金融債につきましても、毎月償還期限が来るといったような形で、長銀に対する債権者の数、それから種類がさまざまに分かれておりますので、これは私が長銀がなぜ減資の方法をとらないかということを推測しているだけですけれども、恐縮でございますが、恐らく、商法上とるべき手続、減資の手続をとるということになりますと、極めてその手続が多岐、煩瑣、複雑にわたるというようなことから、そういった方法をとらずに合併比率ということでお考えになっているのではないかなというふうに推測している次第でございます。
  148. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 大蔵大臣に、今のやりとりを聞いていておわかりになったと思いますけれども、私は、手続が複雑だからということでやらないというのはどんなものかな。これだけいろいろな意味で問題になっている長銀でございますから、経営者の責任とあわせて株主の責任をきちんと明確化するという意味では、先ほどから申しておりますように、やはり長銀が中間決算後減資を行う、これが最も株主責任をとるやり方であり、そういうやり方で初めていわばモラルハザードも防げるんではないか、こういうふうに考えているわけでございます。いかがでございましょう、大臣、御見解を。     〔委員長退席、石原委員長代理着席〕
  149. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私も、今監督庁の長官がおっしゃったように実は推理をしておりました。非常に債権者が多うございますから、減資といっても簡単ではない。それに、いつの時期をもって減資をするかというものももう一つ問題でございます。  それに反しまして、合併比率というのを合併時の資産の割でいたしますと、これは一番最後の姿が株主にわかるわけでございますので、それは恐らく一番株主にとって不利な姿であろうと想像いたしますが、その場合に合併比率が一番株主にとっては損失が大きいということではないかなと私は想像しております。
  150. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それは私は若干見解が異なっておりまして、合併直前が本当に株主にとって不利なのかどうか、そこら辺ははっきり言って明確には申し上げられないところだと思っておるのです。  そういう意味で、片や減資という方法をとればそこはやはり明確になるわけでございまして、私は、これは国民の皆様方に十分納得いただくという意味でも、この株主責任のとり方というのは明確化すべきではないかと思うのです。  といいますのは、今回の長銀の救済のケースが破綻前処理のモデルケースになるとするのであれば、ここはやはりまず銀行みずからの責任で、すなわち自己資本で不良債権償却し、減った分の資本、それは満額するかどうかは別にしまして、その分を第三者割り当て等で増資を行う、これが本来の銀行にとっての責任のとり方だと思うのです。そういうやり方をきちんとやはりやるべきではないか、今後の一種のモデルケースになるとするのであれば、やはりここは王道を歩むべきではないか、私はこう考えておりまして、先ほどから御質問申し上げているわけでございます。この点はいかがでございましょうか。
  151. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 今おっしゃいましたようなことがむしろ普通であるかもしれません。ただ、減資の手続が非常に複雑だということがあるのではないかと私は思っているわけです。
  152. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 この点、指摘をさせていただきたいと思います。また機会があればこの点について伺いたいと思います。  次に、責任問題という点で、昨日も参考人でお越しになりましたけれども、今回、長銀債権放棄をするノンバンクの方の経営者等の責任がどうなっているのか。やはりこの点も抜きにしては語れないと思うわけでございますけれども債権放棄をされる、債務免除をされるこのノンバンク三社の再建計画がどうなっているのか、この点について御説明ください。
  153. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  これは、長銀によりますと、日本リースにつきましては、不良債権の徹底的な処理ファイナンス業務からの撤退を行うために、二千五百億円の貸付金全額の放棄等による支援、それから取引先等に対する貸付金の一部放棄を含む支援をお願いするということになっております。  それから、日本ランディックにつきましては、関連子会社等の整理を含めまして、不良資産を徹底して処理し、長銀がその結果発生する損失処理支援のための貸付金約一千百億円の放棄などを行うということになっております。  それから第三番目に、エヌイーディーにつきましては、戦略部門である株式公開支援業務を除きまして、業務全般にわたって大幅な整理縮小を行い、長銀が貸付金全額の放棄等によりまして約千六百億円の支援を行うという方向で、それぞれ、今後この取引先との協議を行っていく方針であるというふうに承知しております。
  154. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いや、私がお聞きしたがったのは、このノンバンク三社の経営者の責任、株主の責任、そしてリストラ案がどうなっているのか、こういうことでございます。  昨日の参考人質疑では、このうち日本リースと日本ランディックについては社長が退任、辞任する、こういうふうに表明をされましたし、あと役職者を数を減らすというようなことも発言をされたようでございますけれども、もう一度申し上げますが、この三社の経営者責任、株主責任、リストラの計画、これがどうなっているのか、御説明ください。
  155. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたしたいと思います。  若干金融監督庁の監督の範囲から大分遠くなる世界の話になりまして恐縮でございますが、現在再建計画をつくっておりまして、その再建計画の中で、今お話がございましたようなもろもろの責任追及が行われていくものというふうに承知しております。
  156. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 私は、このノンバンク三社は相当のいわば借金を免除される、こういうことでございますから、破産相当の厳しいペナルティーといいますか、それなりのやはり責任を果たさなければならない。当然のことながら、経営者は退任をすべきだと考えますし、また相当大胆なリストラ計画というのもやはりこれは示されるべきだろう、こういうふうに考えるわけでございます。  こういった破産するに等しいような、破産すれば、もうそれこそ従業員も全部解雇されるわけでございますから、それに相当するようなやはり厳しいリストラ計画になるべきではないか、こういうふうに考えるわけでございます。その点、大臣、いかがでございますか。
  157. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 これは、ますます私の守備範囲から遠い問題でありますけれども、恐らく、現実にそれらのノンバンクの幹部は長銀におられた方々でございましょうし、いわばかなりの程度に長銀が母体行というようなことでありましょうと思います。しかも、その立場では、他の銀行金融機関にもかなりの負担をかけなければならない、そうでありませんとリストラができませんので。普通考えますと、その責任は何かの形でとられると思うのが常識ではないかと。ただ私は、具体的に存じませんので、一般的な常識を申し上げておるわけでございます。
  158. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 私は、この点についてもはっきりさせていただかなければ国民はやはり納得できない、これが通常の庶民感覚ではないかと思うんですね。  一般の事業会社では、資金繰りが厳しくても政府は全く助けてくれない。それに対して、銀行はどうなっているんだ、ノンバンクはどうなっているんだ、これが率直な庶民の思いでございましょうから、長銀はもちろんのことでございますけれども長銀債権放棄をするこの関連のノンバンクについても、やはり相当厳しいリストラといいますか責任を課す、これがなされなければ国民は十分今回のスキームが納得できない、私はこういうふうに指摘をしておきたいと思います。  それから、今回、このノンバンク三社で合わせて五千二百億の債権放棄をするわけでございますけれども、昨日もこのやりとりがあったわけでございますが、七千五百億、今回債権放棄をして、その分自己資金で六千三百億充当する、それで自己資本が少なくなった分公的資金を導入する、こういう御説明でございます。結果として、公的資金が本来破産すべきノンバンク三社の救済という形で、プロセスとしてはそうではないかもしれないけれども、結果としてそういう形でこの資金が使われるということになるんではないか。昨日からのこのノンバンクに対する質問も、そういう趣旨で各委員質問をされたと思うんですけれども、この点についてはどうでしょうか。
  159. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  今回のノンバンクに対する債権放棄を含みます経営改善計画の実施といいますのは、これは長銀が住友信託と合併を着実に進展させるために必要なものだというふうに理解しているわけでございます。これが、ひいては我が国の金融システムの安定と国民経済の円滑な運営に資すると考えております。  確かに、この関連ノンバンク向けの債権を含む不良債権の抜本的な処理といいますのは、資本注入が行われて、それによって不良債権処理されるのではないかというようなお考えもあろうかとは思いますけれども、しかし、あくまでも長銀による資本注入の申請というのは、不良債権処理する、それに伴って過少資本に陥る、そこでその過少資本を回復するために必要な資本注入をお願いする、それによって市場の信認を回復する、そういった目的のために申請されるものというふうに理解しております。
  160. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 昨日の参考人質疑でも質問がございましたけれども、十分な債権回収努力を行わないで債権放棄する、その一方で、そのために過少となる資本を穴埋めするために公的資金を入れる、こういうやり方を安易に認めますと、これは本当に最大のモラルハザードになるのではないか、その点をやはり私どもは大変心配をしておりまして、その点についての見解はいかがでございましょうか。
  161. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  確かに、お説のように、セーフティーネットを充実いたしますと、逆にモラルハザードが起こりやすいということは、これは間違いのない事実だろうかと思います。  しかし、本件の場合、単に債権放棄をするからいきなり公的資金を注入してくれというのであれば、これは明らかにモラルハザードだと思いますけれども長銀の場合は、そういったことでなしに、改善策といたしまして、取締役全員の退任でありますとか報酬の大幅な削減などなど抜本的なリストラ策を行うほかに、株主責任につきましても、先ほどからお話が出ておりますように、合併比率を通じて既存の株主にも負担を求めるといったようなことになっておりますので、単にセーフティーネットをつくったからモラルハザードにすぐ結びつくという、その弊害はそこでかなり断ち切られているものと存じます。
  162. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ちょっと大臣にお尋ねしたいのですが、住専と比較して今回のケースをお考えいただきたいのでございますけれども日本リース等の三社も住専と同じノンバンクでございます。農協系の金融機関が大量に貸し込んでいるという意味でも構造は同じであるというふうに考えますけれども、一方で住専は破綻をさせました。今回、ノンバンク三社は破綻させない分、住専よりなおさら悪いのではないか、こういうふうに私は思いますけれども、その点、どうでございますか。
  163. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 住専は破綻させたのではなくて、住専七社でしたか、破綻した結果、その後をだれがどのぐらいしょい込むかという、そういうお話であったと思うのでございます。今度の場合は破綻という状況があるわけではございません。
  164. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いずれにいたしましても、先ほど申し上げましたように、長銀の責任のみならず、やはり債権放棄を受けるノンバンクの責任の明確化ということも十分明らかにされなければ、到底国民の納得は得られない、このことは重ねて指摘をしておきたいと思います。  続いて、質問のテーマを変えまして、六月の長銀株ですけれども、これが六月の当初から比べますと大変な下落、暴落になっております。ちょっと終わり値だけ紹介しますと、六月の三日で二百円でございましたが、四日では百九十九円をつけておりましたけれども、五日になりますと百八十一円、九日には百六十七円、六月十五日に百五十二円、六月の十七日には百二十三円、六月の十九日には百十二円、何と六月二十二日はストップ安、前日比五十円安になって六十二円、六月二十五日には五十八円と、わずか三週間の間で二百円から五十八円まで暴落をしているわけでございますけれども、この長銀株の暴落の要因をどのように認識をされているのか、確認をしたいと思います。
  165. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  個別の銀行の株価についてどういう要因かというのは、私どもちょっと、なかなか知り得る立場にもございませんし、また、申し上げられる立場でもないという点を御運解くださいませ。
  166. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 もともとは、これは長銀自身の経営内容がやはり悪かったということで、ある意味で、身から出たさびということだと思いますけれども、片や一方で、いわゆるヘッジファンド等の株の売り浴びせを受けたということも指摘をされております。  私は、マーケットは当然のことながらこれは尊重すべきものというふうに考えますけれども、一方で、マーケットの暴走をやはり抑えること、これも必要であるというふうに考えておりまして、私はその観点から、これから具体的な提案を申し上げたいと思います。  まず一つは、現在、銀行株はいわゆる貸借銘柄、売りも買いも信用でできるという銘柄になっておりますけれども、これを現物銘柄にすべきではないか。要するに、現金と現物の株ということで行う。現在、お聞きしますと、証券会社の内規あるいは証券市場の内規でこれが決まっているということのようでございますから、銀行株を市場で現物銘柄にすべきではないかというふうに提案を申し上げたいと思いますけれども、この点についていかがでございますか。
  167. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  どの株がまさに今言われた信用取引貸借銘柄になるかというのは、まず法律の段階と自主ルールの段階がございまして、法律の段階では、証券取引法は、具体的に信用取引の対象銘柄については何ら法的な規制を行っていないわけでございます。したがいまして、もう一点の自主ルールの話でございますが、証券金融会社及び証券取引所が、信用取引の円滑な執行という観点から、自主ルールとして今先生の言われた銘柄の選定基準を定めているわけでございます。  ここで今言われましたのは、現物ということは、銀行株を信用銘柄から除外してはどうかという御趣旨、御提案だと思います。考え方として一つあるかとは思いますが、技術的な点で申し上げますと、信用取引が投資家の売買にもたらす影響とか、それから海外における貸借取引には特段の規制がないこと等がございまして、結局は、これは自主ルールでございますので、証券金融会社等の関係者間でこれらの点を考えながら、慎重に検討されるべき課題だと思います。
  168. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、最後にちょっと大臣に感想をお聞きしたいと思いますので、私の方の提案を申し上げますけれども一つ目が、今の銀行株を現物銘柄にすべきではないかという提案でございます。  二つ目が、空売り規制がございまして、これは実はこの通常国会で金融システム改革法案に盛り込んだわけでございます。金融システム改革法は我が会派も賛成をしたわけでございますが、この空売り規制について、ことしの十二月一日が施行日になっているわけでございますけれども、これを前倒しで実施してはどうか。いろいろな法技術上の問題はあるかと思いますけれども、特段、前倒しで実施することに支障はないと思うのです、市場に対してですね。周知期間があればいいどいうことだと思いますので。特にこの空売りによって大変な、いわば市場の暴力的な売り圧力を受けるということがよく指摘をされておりますから、この空売り規制を前倒しでやる、こういうことを二番目の提案として申し上げたいと思います。この点について、いかがでしょうか。
  169. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答えいたします。  今先生が言われましたように、有価証券を持たないで、有しないで売りを行うという空売りにつきましては、さきの国会で成立させていただきました金融システム改革法で、まさにその改正が行われたところでございます。  この空売り規制に係ります改革法の施行日が、実を言いますと、今先生も言われましたのですが、これから関係する政省令とか告示の改正作業があるわけでございます。これはむしろ私ども行政の方の仕事でございますが、一つ大事な作業といたしましては、証券取引所等は、自主規制機関における、いわば先ほど言いました自主ルールの整備に伴いますいろいろな作業が、これは物理的なものも含めましてございまして、そのために必要な期間ということで、法律の附則で平成十年十二月一日としたところでございまして、その点の作業というようなことも御理解いただきたいと思います。
  170. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 三つ目の提案でございますけれども、いわゆる風説の流布が想定される場合、株の取引を停止して、その真相について調査すべきではないかというふうに考えます。  現状をお伺いいたしますと、証券取引所の判断によって、現在では、例えば合併だとか破綻のうわさが出た場合は、当該会社が声明等をしてそれについて明らかにするまでの間は取引を停止する、こういうことで自主ルールで定めておるようでございますけれども、これをもう少し広く運用して、例えばこの長銀の場合もいろんなうわさが市場で流れているんですね。この六月でいえば、例えばスイス銀行との提携が解消するのではないかとか、資金繰りが逼迫しているのではないかとか、あるいは日債銀と合併するのではないかとか、そんなうわさ等々も出ていまして、そのたびに暴落をしておりまして、こういう風説の流布が想定される場合、取引を停止し、その真相について調査すべきである、このことを三つ目の提案として申し上げたいと思います。
  171. 船橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答えいたします。  この金融システム改革が進められる中で、公正で信頼できる市場への要請が大変高まっているわけでございますが、今委員御指摘の意図的なうわさあるいは風評を流して、それをもって証券取引を行ったりあるいは相場変動を図ったりするというようなことは、あってはならないことと考えております。委員会といたしましては、取引の公正を害する証取法違反があった場合には厳正に対処していくということでございます。  それから、取引の停止や中止ということでございますけれども証券取引等監視委員会といたしましては、市場ルールの遵守状況を監視していくということを通じて、市場の公正性、透明性の確保に努めているところでございまして、私どもとして取引の停止等を行う権限は持っておりません。
  172. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、最後の四つ目の提案でございますけれども、この長銀に関してどういう売り買いが行われてきたのか、いわゆる長銀株に関する手口ですね。これは本来、いつの時点でだれがどれぐらい売り買いしたか、こういうことでございますけれども、この手口を明らかにすれば、これがどういう経緯で株式が下がっていったとかはっきりするわけでございますが、この手口をすべて明らかにするということになりますと、証券会社の顧客のプライバシーにかかわるということであると思いますので、少なくとも長銀株に関する証券会社の自己売買分について公にして、これがどういう経緯で行われたのか、これをはっきりさせるべきではないかと私は考えますが、この点についていかがですか。
  173. 船橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答えを申し上げます。  個別の私どもの行っております調査につきまして、その内容を明らかにすることは、今後の当委員会の活動に支障を来しかねないことから、実施の有無等を含め、お答えは差し控えさせていただきたいと考えております。
  174. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 実は、株取引に関する手口についてでございますけれども、かつて平成三年に証券会社の損失補てんが話題になりました折に、証券及び金融問題に関する特別委員会が平成三年に開かれております。この折に、私は今平成三年九月二日のこの特別委員会の議事録を手に持っておりますが、ここで現在我が党の幹事長でございます冬柴委員が、当時の東急電鉄株につきまして、野村証券の自己売買の手口を、これは大蔵省に資料請求をして、当時の資料を入手してこの特別委員会の審議に臨んでおる、こういうことがはっきりしております。  その後、これにつきましては、例えば平成三年九月二十七日の読売新聞の一面でも、東急株の急騰、その当時は急騰したわけですが、その詳細が明らかになっておりまして、今できないというふうなお話でございましたけれども、実際に、かつてこういうふうに、個別の株の取引についてその手口を明らかにしている事例があるわけでございますから、この点についてはぜひやっていただきたいと思います。再度答弁を求めます。
  175. 船橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答え申し上げます。  ただいま委員御指摘がございましたように、平成三年の時点におきまして、東急電鉄株に関して、当時の大蔵省証券局において提出が行われております。  今事案は強引な相場形成ということが問題になり、行政処分の対象になった法令違反の事実等について、諸般の事情を総合的に勘案して、当時の大蔵省証券局において提出したものと聞いております。  平成四年に当委員会が設立されたわけでございますが、その後、当委員会において開示をしたケースはございません。
  176. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、今回、今まさに長銀が話題になっているわけでございますから、今回のケースではどうされるのか、もう一度答弁をお願いします。
  177. 船橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答え申し上げます。  先ほどもお答え申し上げましたように、個別の私どもの行っている調査内容について、その内容を明らかにすることは差し控えさせていただきたいと思います。
  178. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 先ほども申し上げましたように、実際に東急電鉄株についてやっている事例があるわけでございますから、この長銀についてできないということは私はないと思うのです。  委員長、ここで資料の要求をいたしたいと思いますけれども、今申し上げましたように、長銀株に関する手口について、証券会社の自己売買分を調査して、本委員会に提出することを求めたいと思います。委員長の扱いをお願いします。
  179. 石原伸晃

    ○石原委員長代理 後日、理事会で協議をさせていただきます。     〔石原委員長代理退席、委員長着席〕
  180. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、今、いわゆるマーケットの暴走を抑える提案として四つ行いました。一つは、銀行株を現物銘柄にすべきではないかという点。二つ目には、空売り規制を前倒しすべきではないかという点。三つ目には、風説の流布が想定される場合、取引を停止して真相について調査すべきではないかという点。最後、これは具体の長銀株について、その手口、証券会社の自己売買分について公にすべきではないか。この四点を申し上げました。  それぞれこの業界の自主ルールあるいは取引上の自主ルールで行われているような点もあろうかと思いますが、やはりこういった方向で我が国のマーケットを自己防衛する、市場の暴走を抑えるために自己防衛するということも必要であるし、今あるやり方を活用すれば、私が今申し上げていたことは、法律改正云々ということではなくて、現在のやり方を運用を改めれば十分可能なわけでございますから、こういった点、ぜひ私は前向きに取り組んでいただきたいと思います。  大蔵大臣の見解を求めたいと思います。
  181. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 前の三点につきましては、政府委員がそれぞれ申し上げましたが、よく勉強させていただきます。
  182. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは話題をかえまして、いわゆる破綻前処理について何点か伺いたいと思います。  私は、破綻前といいましても相当程度があるというふうに思っております。病気でいえば、多少鼻風邪を引いた程度から熱が出た程度、また大変重くなって肺炎にかかってしまった、また長銀みたいに今にも死にかけている、こういうところまで大変大きな幅があってこの破綻前処理というのは考えていかなければならないと思いますが、本来のあり方でいえば、これは健康問題もそうでございましょうし、病が重くなる前に早目に対処するということが私は本来のやり方であろうかと存じます。  そこで、ここは私は実は総理大臣にお聞きをしたいところなのでございますが、きょうばいらっしゃらないので官房長官にお聞きをしたいと思います。  破綻前処理という意味で、なるべく早く手を打つという意味では、私は、早期是正措置をきちんと実施をする、こういうことが重要である。その前提としては金融監督庁検査が厳正に行われるということ、これはもう大前提でございますけれども、その上でこの早期是正措置の厳格な適用を行うべきというふうに考えますが、官房長官の見解を伺いたいと思います。
  183. 野中広務

    ○野中国務大臣 お答えいたします。  委員御指摘のとおりに、金融機関の監督につきましては、金融機関経営の市場に対する規律と自己責任の原則を徹底させなければならないと思っているわけでございます。それだけに、市場の信認を得ていくことが重要であると存じております。  こうした考え方のもとに、これまでも金融機関は、金融システムの改革が進んでいく中におきまして、みずからの経営判断によりまして得意分野への重点化や合併、提携などを進め、競争力の強化や自己資本率の向上等の経営努力の強化を進めてきたものと考えております。  政府といたしましても、今御指摘ございましたように、常日ごろより検査やあるいはモニタリングを通じまして金融機関経営状況について実態把握に努めるとともに、その破綻が経済に与える悪影響や、これがコストにかんがみますことを十分配慮いたしまして、破綻に至る前に、早期是正の措置や金融危機時におきます公的資本注入のスキーム等によりまして、内外の金融システムに大きな動揺が生ずることのないように十分対処していかなくてはならないと存じております。
  184. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ところで、この早期是正措置については、まだこれは発動したことはないんでございますけれども、どこの銀行がこれが最初に適用されるのかということが非常に話題といいますか、最初に適用を受ける銀行というのは非常にある意味では不名誉でございましょうし、また市場からどんな反応があるかわからないということで、この早期是正措置措置はあるのですが、実際に監督庁が非常に発動をしにくい状況になっている、こういうふうな指摘もございます。  私は、今実は総理にお聞きしたがったというのは、監督庁がそういった意味で非常にやりにくい状況でございますので、ここはやはり総理なり官房長官がリーダーシップをとって、ちゃんとやりなさい、こういうふうにやはり指導をしていただく、これが私は非常に重要ではないか、こういうふうに思っておりまして、その点、もう一度長官の見解を伺いたいと思います。
  185. 野中広務

    ○野中国務大臣 いずれにいたしましても、金融監督庁中心になりまして厳正に検査を進め、監督を進めまして、金融監督庁として金融システムの安定、改革のために努力をするべきだと存じますし、私ども、また内閣を挙げてこれに責任を持っていくべきだと考えております。
  186. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今、内閣を挙げて責任を持っておやりになるということでございましたので、これはぜひしつかりとお願いをいたしたいと思います。  それからもう一つ、破綻前処理ということでいえば、私は、まず金融機関みずからがこれは本当に考えていかなければならないことである、みずから不摂生をして健康を害しておいて助けてくれというのはけしからぬのではないか。やはり、病になれば体力を回復するなり、あるいは健康を回復するためのいろいろな努力をすべきだ、病人でいえばですね、例えて言えばそういうことである。金融機関みずからの努力というのがまず重要でございまして、これは経営改善努力であり、あるいは合併、再亀ということになるかもしれませんけれども、私は、そういった金融機関みずからの努力がまず最初にありきであって、そういうことをきちんとしないところを政府が救済するということはないのではないか。  そういった点で考えると、まあ確かにさくら銀行が昨日増資をするということで、そういった努力の一環はうかがえるわけでございますが、全体的に見てまだまだ金融界の危機意識というのは非常に不足しているのではないか。そういう意味で、まず金融界みずからの努力というのがぜひ必要であり、それなくしては私はこの公的資金というのは問題外である、こういうふうに認識をしております。官房長官の見解を伺いたいと思います。
  187. 野中広務

    ○野中国務大臣 委員御指摘のとおり、金融機関が今日よって来った背景を十分認識し、みずからその責任とモラルの確立に努めるべきであると考えております。
  188. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 よろしくお願いしたいと思います。  それでは、時間が少なくなってまいりましたので、情報開示の問題、幾つか質問を用意してきましたが、その中で重要なポイントだけお聞きしたいと思います。  先日、我が党の大口委員の方から、個別銀行ごとに自己査定の結果を公表すべきではないか、こういうふうな指摘を申し上げました。金融監督庁長官の方からはこれは慎重な答弁でございましたけれども、むしろ公にしない方が市場の疑心暗鬼を招く、結果として先ほど申し上げましたような市場の大変な圧力を受けるということにもなりかねない。私は、まず、みずからこれを明らかにしていった方が市場からの信頼を得るのではないか、こういうふうに考えておりますけれども、ただ、今の資産査定がそのままでいいのかということについては私も問題意識を持っておりまして、幾つか指摘をしていきたいと思います。  まず一つは、今の資産査定が、今第一分類から第四分類までございますけれども、非常にアバウトな分類の基準になっておる。特に第二分類、灰色債権については、よく玉石混交と言われますように、非常に第一分類に近いものから第三分類に近いものまである。今回の長銀のケースでは、何と第二分類に入れていた日本リースなり日本ランディックなりが、債権放棄をするということで、この第二分類について、もっとこの分類を細分化すべきではないかということが一つ。  さらには、その基準自体、例えば債務者の基準というのが、これも非常に幅がある基準になっております。やはりこういった基準を明確化すべきである。この細分化すべき、細かくするという点とそれぞれの基準についてより明確化すべきである、これは金融監督庁がこの資産査定の基準をこういった形で統一基準として公にしていく、私はこういう努力が必要だと思いますが、その点についていかがですか。
  189. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  資産査定におきましては、この第二分類とされておりますのは、債権確保上の諸条件が清足されていないため、あるいは信用上疑義が存する等の理由によりまして、その回収について通常の度合いを超える危険を含むと認められる債権等の資産と定義されているわけでございまして、これは適切なリスク管理を怠らなければ損失が発生しないものが大宗を占めているというふうに考えられます。  今般のこの十九行に対する検査におきましては、今御指摘がありましたように、第二分類債権実態把握に力を注いでおりまして、特に、まず第二分類債権を債務者ごとに区分する、さらにこの区分しました債務者ごとの区分の後、その上で要注意先の第二分類債権につきましては、債権保全の有無、それから統一開示基準上のリスク管理債権に該当するかどうかといったようなことに留意いたしまして、さらにこれを四つに区分して詳細な実態把握に努めることとしております。  それから、第二の御質問にございました金融監督庁で自己査定基準を統一すべきではないかという御質問でございましたが、これは、現在各行の自己査定基準、それから償却引き当て基準といいますのは、これは、大蔵省、当時の金融検査部から出されました通達、それから日本公認会計士協会のガイドライン、俗に実務指針と呼ばれておりますが、これに沿うことが必要でございまして、各金融機関は、自己査定結果を踏まえて企業会計原則に基づいて償却引き当てを行うこととされておりますが、現在鋭意その査定の内容について検査をしているというところでございます。
  190. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 もう一度御答弁いただきたいのですけれども。  そこで、今の十九行の検査ではその第二分類を四つの区分に分けてやっているということでございましたけれども、それを一般的に金融機関全体に該当する基準として公にされるつもりはございますか。
  191. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  これはかなり細分化したものになりますが、これを把握するための客観的基準の策定につきましては、今申し上げたような方法で実態把握した結果なども踏まえまして、中長期的にこれは検討していくべき課題であるというふうに考えております。
  192. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 中長期的では、この現下の金融危機というのはもうどこかに、終わってからそういうことをされてももうこれは遅いのでありまして、私は、これは早急にぜひやっていただきたいと思います。  もう一つ伺いますけれども分類債権ごとの引き当て率でございますが、これは各銀行が公認会計士等と相談して決めているということでございますけれども、この引き当てが果たしてどうなのか、非常に甘いんではないか。それで、公表の不良債権の額、そして、その引き当て額より大量の本来償却すべき不良債権があるんではないか、そういう疑念を持たれているわけでございます。  私は、金融監督庁分類債権ごとの標準引き当て率を設定すべきではないか、こういうふうに考えております。その点について、いかがでございますか。
  193. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  ただいま御指摘がありましたように、金融機関によりましては大変甘い引き当て率で引当金を計上しているところもなしとしないかと存じます。  そこで、私どもは、その引き当て率が甘いかどうかということを現在チェックさせていただいているわけでございます。分類ごとに標準の引き当て率を定めるべきであるという御提言でございますが、先ほどから申し上げておりますように、二分類と申しましてもさまざまな債権がございまして、これを一律に、二分類であれば何%というふうに決めることは大変難しかろうと存じます。  そこで、先ほど申し上げましたように、まず債務者ごとに分類を行いまして、さらにそれを四つの区分に分類する。できるだけ細かく分類するということをやっておりますので、それを通じまして、将来的には、これはまたおしかりをいただくかもしれませんが、中長期的な課題として将来は、標準引き当て率がもし設定できるものであれば、そういうものを作成していくことにしたいというふうに考えております。
  194. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 中長期的に作成していくということでは、私はやはり遅過ぎる。ちなみに金融監督庁は、この十二月に検査マニュアルみたいなのをおつくりになって、それを公にされるというふうに発表されておりますが、その検査マニュアルの中にはどういう事項が盛り込まれるのでしょうか。こういった今私が提案申し上げましたような資産分類の基準をもっと細かく、あるいは明確化すべく、あるいは債権ごとの標準引き当て、こういったことも、この検査マニュアルですか、その中に盛り込んでいってはどうでしょうか。
  195. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  去る八月二十五日に検査マニュアル、チェックリストの検討会を始めまして、十二月までにこの成果を取りまとめたいと考えております。  チェックリストと申しますのは、従来も検査官向けの通達チェックリストがございまして、分類の判断基準などの統一ルールの整備に努めてきたところではございましたけれども、さらにこれを充実させるためにこの検討会を設置させていただいたわけでございます。  ただ、その中で、標準引き当て率ということになります。やはりチェックリストの整備という観点からしますとやや難しい点があろうかと存じます。
  196. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 やや難しいというか、長官の答弁では中長期というふうにおっしゃっているから、それは十二月中にはやらないということの裏返したと思いますけれども、私は、やはりこういった問題は早目にやるべきではないかと思います。引き続きこの点について、また機会を設けて問いただしてまいりたいと思いますけれども。  ちょっと最初の問いに戻りましたけれども、そもそも、現在の不良債権実態開示、この四月からはリスク管理債権を発表しているわけでございますけれども、私は、これでは残念ながら十分ではないというふうに考えております。  今回の長銀のケースでも、日本リース、日本ランディックはこのリスク管理債権にさえ入っていなかった、こういうことでございますから、私は、今の市場からは、残念ですけれども、このリスク管理債権では信認は得られない。やはり自己査定というものを公表する。それは何も銀行をつぶすという意味ではなくて、市場からの信頼を得るためにも、私は、まずみずからこれを公表していくという姿勢が必要であると思いますし、先ほども申し上げましたように、この自己査定の基準をもっと明確化した上でこれを公にしていく、このことが重要である。日銀総裁もその趣旨で御発言をされているようでございますし、この点について改めて申し上げたいと思います。答弁を求めます。
  197. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  このリスク管理債権が、現在の私どものスタンダード・ミニマム・ルールと申しますか、法律上決められている公表すべき債権ということにされておりますのは、前回の国会で金融システム改革法が成立いたしまして、その中で新しく銀行法に盛り込まれましたものでございまして、来年の三月期からは、連結ベースでしかも罰則つきという、大変世界的にもこれは遜色のないものというふうに私ども考えております。これが現在の法律上私どもに求められているディスクローズの最低の基準ということになっております。  これに対しまして、今お話がございましたが、自己査定でございまして、これはたびたび御答弁申し上げている次第でございますが、これは、各行、各金融機関がそれぞれ違った物差しで、先ほどから出ておりますように、引き当て率も異なる、あるいは引き当て率につきましても物差しが違うといったようなことから、これは必ずしも各金融機関ごとに比較が不可能なものでございます。  それから、これが一たん公表されますと、やはり債務者に対する影響というのが非常に大きいのではないかということから、これはやはりその点からその弊害が大きいということ。それから、これは国際的にも、例えば米国をとりましても、自己査定というものは公表されることが義務づけられていないようでございます。もしこれが義務づけられますと、我が国がグローバルスタンダードにもなっていないことを先取りするということは、国際的な競争市場の中でやはり大変不利な立場に各金融機関が置かれるのではないかといったようなことが考えられますので、私どもといたしましては、その自己査定を今強制して、これをすべての金融機関に対してディスクローズしなさいと言うことは、法律上も認められておりませんし、それはできないと思います。  ただ、それは前回の機会にも申し上げたと思いますが、自信のある銀行は、例えば地方銀行でも最近なさっているようでございますが、それをなさることについては、私どもの方からそれはやめるべきであるといったようなことを申し上げるつもりは毛頭ございません。
  198. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 例えばSEC基準、リスク管理債権でもよく指摘されるのは、アメリカと違って、日本は返済が滞らないようにいわゆる追い貸しを行う、こういったことによって正確な実態が隠されている、こういった点についてはいかがですか。追い貸し。
  199. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  追い貸しにつきましては個別の問題になろうかと思いますので、これは、いずれにいたしましても公表することができないかと存じます。
  200. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 私は、アメリカのように開示した数字が非常に信頼を持って受けとめられている、こういうことであればアメリカ並みの基準でやればいいと思うわけでございますが、現状はそうなっていない。だからこそ、私は、アメリカ以上の自己開示を行わなければ、日本の金融界に対する信頼は回復できない。ある意味で信頼性に対する危機というふうに言われているわけでありますから、私は、その信頼を回復するためには世界で最も先進的なことをやってもいいのではないか、むしろそうやらなければ今日本の金融界に対する信頼は回復できない、やはりそういう危機意識をぜひ持っていただきたい、こういうふうに思います。  それでは、官房長官にお尋ねをいたします。  この金融監督庁の体制が、アメリカやイギリスと比べると余りにも貧弱過ぎる、こういうことがよく指摘をされております。  二つのことをまとめてお尋ねしたいと思いますけれども一つは、量的な拡充ということで、監督庁の人員をやはり大幅に拡充すべきではないかということが一点。もう一点は、これは検査官の質の充実ということで、民間の専門家、例えば銀行のOBなり公認会計士なりをもっと活用するという意味で、今の公務員制度ではなかなか難しい点がございますので、そういう制度改正を行った上で、民間の専門家を中途採用したり、あるいは、今例えば十九行入っている状況の中で、臨時採用したり、こういう方策を私はとるべきではないか。この点についてお答えをいただきたいと思います。
  201. 野中広務

    ○野中国務大臣 御指摘ございましたように、現在の金融監督庁、発足間もございませんし、膨大な事務量も持っておりますので、その組織、人員において、委員が御指摘のように十分な機能を果たすに至っておらないことをよく承知をいたしております。今後とも、金融監督庁として、金融行政に責任を担っていくための機構の充実、人員の重点配備等には十分な体制を整えてまいらなくてはならないと考えておるところでございます。  したがいまして、昨日、明年、平成十一年度の予算の概算要求に当たりましても、人員について二百五名の要求をしたところでございます。また、委員が御指摘になりました人材の登用につきましても、検査の強化充実のために民間の専門家を活用しますことはまことに有益でありまして、既に、金融監督庁の発足に当たりまして、公認会計士五名を検査官に中途採用をいたしました。また、商法学者を、検査部参事、非常勤でありますが、登用いたし、さらに、コンピューター二〇〇〇年問題に関する検査のために民間専門家を非常勤蔵員として臨時採用すべく、先般募集を開始したところでございます。  今後とも、御指摘ございましたように、金融検査を充実強化する観点から、銀行OBあるいは公認会計士等、民間専門家の中途採用、臨時採用には前向きに取り組んでまいりたいと存じます。
  202. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 時間が参りましたので、終わります。
  203. 相沢英之

    相沢委員長 これにて石井君の質疑は終了いたしました。  次に、西田猛君。
  204. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。  きょうも、大臣その他各位におかれましては大変お疲れさまでございますが、まことに、我が国が置かれている現下の経済危機及び金融危機に対しまして、非常に大切な委員会でございますので、ぜひ真剣な討議を、しかも、時間がございませんので、一刻も早い適切かつ有効な手だてをとれるように、我々一丸となって頑張らねばならないと思っております。  冒頭、関東、東北地方を襲いました大豪雨その他で被災された皆様方に対しましては、心よりお見舞いを申し上げておきたいと思います。したがいまして、私は、きょうは国土庁長官には御質問をさせていただきません、大蔵大臣を中心に質問をさせていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いをいたしたいと思います。  さて、この現下の経済危機及び金融危機に対してどういう適切かつ有効な手だてをとらなければならないのかということを、今、この金融安定化特別委員会で我々は一丸となって審議をしなければいけないのですけれども、そこで提案されているのがこのいわゆる金融六法と呼ばれているものだということは、ある意味では驚くべきことであると言わざるを得ないのだと私は思います。しかも、そのいわゆる金融六法案と称するものの大宗を占めているものがブリッジバンク法案と呼ばれているようなものであるということは、これはいかなることなのでしょうかという思いを抱かざるを得ません。  と申しますのは、それは、金融機関等が破綻後に、実に複雑な仕組みをもってその破綻銀行等を整理しようというものであります。今我々が問題としているのは、目の前の金融危機であり、長期信用銀行にとどまらない、我が国全体の信用秩序の危機そのものであると私は思っております。  実はけさも、私は、地元のある方たち二人からお電話をちょうだいいたしました。一人は元市長の方、もう一人は、これはある金融機関とだけ申しておきましょうか、ある地元の金融機関のトップの方であられます。その方たちは、異口同音にこうおつしゃいました。まず、普通の市民、あるいは民間の会社、あるいは大阪には多い中小企業、個人商店主が経営が行き詰まったときに、政府があるいは都道府県が公的資金で、それはある程度の援助措置はありましょうけれども、もう何千億円というふうな規模で支援してくれるようなことはそれはない。したがって、金融機関に対してだけそういう支援がなされるということについては、非常な憤りを覚えざるを得ない。もちろん、西田さんたちがいつも言っているように、金融機関には預金者がいる、借り手がいる、決済機能があるんですという特殊性があるということはわかっています、そういうことはわかった上でも、やはり不公平感は否めないという苦言なんですね。  しかし、そのお二方とも、その先にさらに続けて言われるには、だけれども西田さん、今、国会の特別委員会で審議されているあのスローな審議の状況は何でしょうか、早く、ある意味で長期信用銀行と住信の合併を促進してやってくださいね、こういうふうに言われるわけですね。  私は、その話を聞いて、長銀の問題は実はこうですよ、これからも私御説明申し上げますけれども、我々はそれについてこう考えますということを、るる電話で述べたわけです。  しかし、私は、きょうのお電話の主のお二方の話を聞いていて、これは国民の非常に苦渋に満ちたお考えであり、苦渋に満ちた声だなというふうに考えるわけです。  といいますのは、やはり金融機関だから、あるいは大きな銀行だからといって公的な資金を注入されて、ある意味で救済されようとしている。しかし他方、それが救済されなかったら日本発の世界恐悦が起こるかもしれない。確かに、ニューヨークも東京も、いろいろなところで株価が落ちている。自分たちの生活も苦しくなってきている。だから早く経済が回復してほしい。そのためには日本の金融秩序が戻ることが必要なんだろう。だったら、西田さん、やるべきことはやってくださいという、非常にこれは庶民的なというか、国民の肌身のお声だと思うのですね。  したがって、るる大蔵大臣もこの金融特別委員会その他で御発言しておられることについて、私は、大臣御自身も、もう少しそういう一般的な国民の皆さんの感覚をお考えになった御発言をぜひしていただきたいと思うのであります。  何を言っているのかということは、大臣御自身が一番おわかりだと思いますけれども、ここで、例えば長期信用銀行が今のような形で破綻をしたらば大変なことになるんだぞというふうなことを声高におっしゃっておられるわけですね。その御発言そのものが、これから私いろいろ述べますけれども、いろいろな意味で、例えば金融安定化措置法に書かれている一体どこの資金注入策に該当するのだろうかという実態的な問題もございますし、それから、大臣というお立場でありながら、国民の皆さんに非常な不安をかき立てているという画面もございます。  そのようなことでございますので、私は、長期信用銀行という個体の企業としての銀行を救済するという観点の議論は、ここではなされるべきではないと思います。日本の金融秩序、世界的な決済機能の保護ということのために、今、日本が一刻も猶予ならず何をしなければいけないのかということを議論していかなければならないのだと思います。  ぜひ、私は、そのことを最初に銘記をしておきまして、大臣にいろいろと御意見をお聞かせ願いたいと思っているのであります。  私は、日本の金融危機を回避すること、それはとりもなおさず、経済危機を回避することが一番かっ最も有効な方策だと思っています。したがって、我々は、るる申し上げておりますように、日本経済を再活性化させなければいけない、そのためにマクロ経済政策その他の構造的な改革を行って日本経済を再活性化すれば、金融不安あるいは信用秩序の問題も、やがてこれは解決に向かっていくものだということを主張してまいりました。したがって、何年も前から、あるいは二年前の総選挙のときもそうでございました。我々は、そのための抜本的な税制改革、それから構造的な諸改革、具体的に申し上げれば、所得税の半分、法人税を国際水準並みに引き下げる、行革による減税、政治改革などなどと申し上げてきたわけです。  それに対して、この二年間、総選挙の後、自由民主党内閣は、いや、そうではない、国の財政赤字を消すことがまず大切なのだということで、緊縮財政路線をとってこられたわけでございます。そのためにできたのが財特法であったり、いろいろな法律であって、我が国の今の経済危機を招いたということは、もう既にさきの参議院議員選挙で国民の皆さんが判断したことだ、これはまさに国民の審判でございました。  その後成立した小渕内閣は、その方針を転換されて、今私が申し上げたような所得税の恒久、まあ内閣は恒久的減税と言っておられるようですけれども、あるいは法人税率の引き下げ等々についても、やっと重い腰を上げてきたという状況でございます。  したがって、私は、ぜひここで大蔵大臣の口から、今の金融秩序の問題というものは、マクロ経済経済政策をしっかりととっていくことによって払拭することができるのだ、したがって、個々の金融機関の問題ではなく、日本の全体的な経済運営をどうしたらいいのかということをいっときの猶予なく実行に移すべきだということを言っていただきたいと思います。大臣、御意見いかがでしょうか。
  205. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それはまことにごもっともな御指摘でありますし、私も従来そういう気持ちでやってまいったと思っております。  問題は、二つのことが、いずれが原因、いずれが結果とでも申しますか、この不良債権問題が我が国のマクロ経済の正常化を非常に妨げていることは事実でございますが、また、もし不良債権問題が片づけば、と申しますのは、例えばマクロ経済が好転いたしまして不動産等々の取引が普通に行われるようになりますと、これは不良債権の原因になっております担保などに相当の影響があると思いますので、両方は、原因、結果おのおの、鶏と卵のようなことになっておりますが、何といってもそれはマクロ経済を正常化していくことがこの問題を解決いたします大きなかぎになると考えまして、政府もその努力をいたしておるわけであります。
  206. 西田猛

    ○西田(猛)委員 私も申し上げましたように、今大臣も、マクロ経済政策を正当に進めていくことがやはり一番大切なことだというふうにおっしゃっておられますけれども、それとともに必要なことは、やはり、今までのような、俗に言われている護送船団行政ではなくして、フリーでフェアでオープンな、そういう市場原理の、透明性のある経済構造を持っていくんだということを世界に対して日本が発信すること、それそのものが世界からの日本に対する信認を取り戻す唯一かつ一番早い方法だと思うのであります。  という観点からすれば、今ここでるる議論されている金融六法に至る前の、個別の長期信用銀行に対する資金注入によってその救済を図っていこうということ、これは、今私が申し上げた、世界に発信すべき我が国の抜本的な構造改革を示す意思とは反することなのじゃないんでしょうか。
  207. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 せんだってのこの委員会でもお尋ねがありまして申し上げましたが、私が二月の末にウォールストリートに行きまして、いわゆるリキャピタライゼーション、資本投下のことについて説明をいたしました自分の動機は、いかにもこれは市場経済からいうと異常なことでございますから、これをせざるを得なかった我が国の状況を説明するとともに、これはしかし、将来に向かっては護送船団行政との決別であるということを説明いたしたわけであります。  幸いにしてアメリカは、SアンドLの話もございましたし、いろいろなことで政府が関与することがごくごくたまにはやむを得ないという経験をしておりましたから、そういう意味で誤解を受けることはございませんでしたけれども、しかし、そうは申しましても、やはりそのこと自身は決して自由主義、市場経済の国として自慢できることではなかった。そのことは、私は自分でそのときも申したのでございますが、やむを得ない措置であった、そうでないと日本の金融システムの信頼が内外ともに崩れる、もう既にかなり大きなジャパン・プレミアムを取られておりましたし、そういう状況でございました。
  208. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今の大蔵大臣の御発言を聞いておりますと、私ども考えていることをウォールストリートでおっしゃっておられたかのように私も感じるのでございます。したがって、この三月に十九行に対してのいわゆる公的資本注入をしたときに、もう既に、いわゆる自由主義、資本主義経済の原則を我が国はちょっと踏み外してしまっているわけですね、今おっしゃったように。これはもう、少し踏み外してしまいました。  その中で、二〇〇一年三月三十一日までは必ず預金者の預金は保護するということまで言っておるわけですから、ある意味では、二〇〇一年の三月三十一日までというのは、私はいわゆるグレースピリオドだと思うのですね。ですから、この猶予期間の間に、その以降はペイオフも行われるわけですから、金融機関がもう淘汰されます。すなわち、金融機関を、預金者も投資家も、すなわち消費者が選んでください、そのかわり、選んだらば自己責任でございますよ、悪い銀行を選んだら預金は一千万までしか返ってきませんよ、いい銀行を選べばいい金利がついているかもしれません、そういう経済社会をつくっていくわけですね。  二〇〇一年といえばもう目と鼻の先でございます。三月に少しばかりルールを踏み外したんですけれども、ここでまた大きくルールを踏み外すことはないんじゃないでしょうか。もう時間はない。この猶予期間の間に、今市場から残念ながらアウトと言われている銀行については粛々と整理を図っていく。そのための方策は、預金者保護であれ、借り手保護であれ、これは、我々が提唱し始めました保証機能の充実、そして決済システムの維持、保護であれ、これこそが日銀、政府等の特融などでできることでありますから、今ここでやっておくべきことなんじゃないんでしょうか。
  209. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 ことしの三月の資本投入の前の我が国の事態というものは、いわゆる護送船団方式の行政であったわけですから、その中には、自由競争もないし、お客さんの自由な選択というものもなかったわけでございます。そういうところで、しかし、ビッグバンでグローバライズしなきゃいけないときに不良債務というものが生まれておりましたから、両方の問題を一どきに片づけなければならないという状況になりまして、それでやむを得ずあの資本投下をいたしたわけでございます。  そこから、おっしゃいますように、金融監督庁検査等々の体制が整いまして、まさに検査が行われつつあります。それによって銀行は、ある程度統一した基準によってお互いの優劣を知ることができる。劣った銀行は黙っておるでしょうが、いい銀行は恐らく黙っておりませんから、自然にそれによって優劣がわかり、市場がそれを知り、お客さんに提供される商品によって、おっしゃいますように、まさにいい銀行と悪い銀行が分かれる。そういう体制になりまして、まさに二〇〇一年の三月まで、それがグレースピリオドだとおっしゃいます。もうそのときには、まさに、いい悪い、お客さんの選択、それがみんな自分の責任であるということになっていく、おっしゃいますように、そういうところに今我々はおりますと思います。
  210. 西田猛

    ○西田(猛)委員 おりますということなんですけれども、そうしたら、我々がよって立っているこの今の状況から、長銀の問題について大臣はどのようにお考えになられますか。
  211. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 失礼いたしました。  そこで、長銀の出来事というのが、日本のそういう自由競争の、行政から見て一体何事であるかということでありますが、私は、おっしゃいましたこととちょっと所見を異にしておりまして、政府長銀を生き延びさせようとしておるわけではございません。正直を申して、長銀も、自分の将来は合併しかない。これは明らかに優劣の関係におけるマージャーでございますから、そういう意味では、それは護送船団方式の思想の延長の上にあるのではない。これは、新しい優劣に基づく金融機関の間の統合あるいは合併等々の一つのケースであって、政府はそれを支援しようとしている。私はそういうふうに考えております。
  212. 西田猛

    ○西田(猛)委員 大臣は、これまでの本会議もしくは委員会の中で、今公的資金を注入しなければ長銀は破綻してしまう、救済することができないという御発言をしておられます。そういう御認識ですね。
  213. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私は、そのとおりストレートに申し上げたことはございませんが、そういうふうに受け取れることは申し上げております。  つまり、長銀のリストラ計画を拝見してみますと、今ここで七千五百億円の不良債権処理があって、非常に小さな資本になりますので、そこで公的資金の導入を求めたい、そして、やがてそれは合併に向かっていくんだ、こういうリストラ計画。しかもそれは、いわば役員の総退陣、海外支店をやめる、退蔵金は取り戻す、本店は売る、行員は減らす、言ってみれば捨て身のことでございますから、そこで公的資金が、七千五百億円の不良債権処理しました後入らなければ、それから後の銀行経営というのは恐らく非常に難しいだろうと思いますし、また、そうであるからこそ、合併に先んじて公的資金導入の申請が行われるであろう、そういうスキームのリストラになっておる。そのことをあけすけに申しますならば、今仰せになりましたようなことであろうと私は考えております。
  214. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そういたしますと、私も何度も申し上げますけれども、あるいは何度もこの委員会でも議論になったと思いますけれども、それは、日本全体の金融秩序の維持という観点につながることもあるかもしれません。しかし、日本のあるいは世界の金融秩序の維持ということであれば、そうじゃない方策もあるんじゃないでしょうか。  今言っておられたように、長銀が七千五百億円の償却をする、それで資本が薄くなるから公的資金を注入するんだ、そして住信と、あるいはどこかわかりません、まるで住信ともう合併するかのような話になっていますけれども、合併させるのだという方法じゃなくして、今この場で、長期信用銀行については粛々とこのままで整理していく、それで我が国の金融秩序というのは保っていけるんじゃないですか。
  215. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 まさにその最後の点の判断でございます。仮に、これがどこか地方の小さな金融機関でございましたら、破綻をさせることで多少地方に影響はあるかもしれないが、まあしかし、預金者は保護されますし、そう大したこともあるまいという判断もあり得ると思いますが、長期信用銀行の場合、現実に内外の影響を考えますならば、殊にこういうやや不安な時期でございますので、内においてこういうことがございますと、長銀の場合、ことしの一月から見ますと、いわば風評が先に立って、現実にこういう金融債の売れ行きが悪くなるとか早期償還だとか金融的に苦しくなるとか、株が落ちるとか、風評が先に立った嫌いが非常に大きいと私は思いますものですから、したがって、それはまた新しいところがアタックを受ける危険は決して少なくないということも考え合わせますと、ここはやはり処理をしておきませんと本当に大きな結果を招くのではないかということを私自身は真実心配しております。
  216. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そこで、きょうはお忙しい中を、預金保険機構の中に設けられております金融危機管理審査委員会の佐々波委員長にもおいでいただいておりますので、佐々波委員長に少しお伺いしたいのです。  本年三月のいわゆる十九行に対する資金注入ですけれども、いわゆる安定化緊急措置法の中の第何条に基づいて優先株、劣後債を引き受けられたのでありますか。
  217. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 御質問のありました三月の資本注入についての条文、基準についてお答え申し上げたいと思います。  足利銀行を除く二十行につきましては、安定化法第三条第三項二号イの、経営状態が著しく悪化していない金融機関等が内外の金融市場において資金の調達をすることが極めて困難な状況にあることなどにより、我が国における金融の機能に著しい障害が生じることになる事態を生じさせるおそれがあることということとしての申請によって受理いたしました。  足利銀行につきましては、安定化法第三条第三項第二号ロ、経営状態が著しく悪化していない金融機関等が、当該金融機関等が破綻し、それが他の金融機関等の連鎖的な破綻を発生させることにより、地域または分野において、企業の活動や雇用の状況に甚大な影響を及ぼす等経済活動に著しい障害が生じるごととなる事態を生じさせるおそれがあることということによって申請を受理いたしました。  それから、審査委員会におきましては、安定化法に沿って厳正な審査をさせていただきました。  なお、審査基準の一般金融機関の基準一から基準五までの基準への合致ということで健全性確保計画が適正であるかどうかを審査委員会として全員一致で議決ということがその根拠でございます。
  218. 西田猛

    ○西田(猛)委員 丁寧に御答弁をいただきましてありがとうございました。どうぞ一度お戻りいただいてもよろしゅうございます。  しかし、今おっしゃった足利銀行以外の銀行が、今委員長がおっしゃった第三条三項二号イ該当ということなんですけれども、あれだけの銀行が内外の金融市場において資金の調達することが極めて困難な状況に至るというふうに御認識されたわけですか、委員長
  219. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 御質問の趣旨に沿ってお答えいたしますと、本安定化法の趣旨としましては、金融システムとしての安定ということを第一の意義としておりますので、申請の理由としてはそれぞれ各行別々に申請しておりますけれども、それぞれの申請行の理由というものを審査いたしました結果、先ほどの条文に合致しているというのがその結果で、それを省略いたしましてお答えした次第です。
  220. 西田猛

    ○西田(猛)委員 先ほどと違って、ちょっと御答弁の内容が私もよく理解できなかったのですけれども、どう考えても、今営業している銀行のすべてが、三月の時点で内外の金融市場において資金の調達をすることが極めて困難な状況に至っていたとは、我々には思えないわけですね。そんなのだったら大変なわけですよね。それこそ、こんな状態ではないと思います、今この九月の時点で。  ですから委員長委員長も大変御苦労されて、大任をお受けになって非常に御苦労されていることとは思いますけれども、これは、やはり我が国は法治国家でございますから、法律に基づいてこの行為を行っていただきませんと、国民の皆は、一体なぜそういう、劣後債だか優先株だかわからない、そんなことは皆さんきっとおわかりになってもわからなくてもいいのですけれども、なぜ公的資金銀行に注入されるのだろう、もう素朴な疑問なんですよ。だけれども、大きな銀行がつぶれてしまったら困るやないかというやはり庶民感覚もあるし、本当に苦渋に満ちた今感覚なんですよね、国民の皆さんは。だから、ここを、我々の国会も行政機関もあるいは預金保険機構も丁寧に説明をしていかなければいけないと思うのですよ、一つ一つ。だから、私はこんな、しち面倒くさいことかもしれませんけれども委員長にわざわざ御足労いただいてお聞きをしておるわけでございます。  これは法律に基づいてきっちりと、資金注入されるならする、されないならされないということを決定していただかなければなりません。委員長、それでよろしいでしょうかね。  ちょっとさらにお聞きしたいのですが、大蔵大臣はもう既に長期信用銀行公的資金を注入するんだということを言っておられます。この法律の何に基づいて注入するんですか。(宮澤国務大臣「申請があればですよ」と呼ぶ)もし申請があれば。
  221. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 申請があればというお返事がありましたので、その点についてはお答えすることができませんので、まだ申請していないわけですから。  ただ、先ほどの私の説明が至らないという点について、至るかどうかわかりませんけれども、若干言葉を継ぎたいというふうに思います。  個別行の申請は先ほど申し上げたとおりなんですけれども、全体として、海外の市場において、調達金利の上乗せ、いわゆるジャパン・プレミアムの存在というのは、三月、十一月の末からのいわゆるシステミックなものとして設定されていたということは皆さん御承知のことと思います。
  222. 西田猛

    ○西田(猛)委員 まず、申請がされればということですけれども、申請がされていないからお答えすることができないと。それでは一体長銀問題を我々はどういうふうに今後理解していったらいいんでしょうか。  先ほど申し上げたでしょう。国民の皆はその説明を待っているわけですよ。注入されてからじゃ遅いんです。注入されて、ああやっぱり公的資金が返ってこなくなるかもしれません、この間からこの委員会でも申し上げている。そうすると、大蔵省の金融企画局長は、返ってくるように努力するものと心得ているというふうな御答弁です。ということは、万全に返ってくるとはおっしゃっていないわけですね。皆、そこがどうしてもやるせなく、わけがわからないわけですよ。  それで、佐々波委員長は民間から登用されて、我々の代表だと思って国民の皆は見ておるわけです。その方が、申請がなされていないからお答えすることができません、それでは国民の皆は全然理解しないですよ。  では、申請がなされたら、あるいは今の日本長期信用銀行の現状をごらんになって、金融危機審査委員会委員長ともあろう方ですから、今の長銀の立場を見て、この法律のどこの条文で資金注入できるとお考えですか。
  223. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 先ほどの私の発言に関しますので、委員長がお答えになります前に、一言申し上げます。  先ほどのお尋ねは、もしこの話を進めていって、公的資金が出ない場合には破綻するのか、こういう種類のお尋ねでしたから、私は、破綻という言葉を使っておりませんけれども、実際上、リストラ計画を見ますと、七千五百億償却をした後公的資金が出なければ、長銀としてはリストラをやっていけないことになるでしょうと申し上げました。  それは、事柄の筋を申し上げましたので、誤解はしていただいていないと思いますが、申請がある、ない、それから、あったときに佐々波委員会がどういう決定をなさるか、そのことを私はプリエンプトして申し上げたのではありませんで、全体の流れを申し上げたのでございますので、そこだけ釈明させていただきます。
  224. 西田猛

    ○西田(猛)委員 その釈明はお聞きしておきますが、それでは、佐々波委員長、今私のお聞きしたことについてお答えいただけますか。
  225. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 先ほどのを若干言葉を足させていただきます。  先ほど正式な申請があってからというふうにお答えいたしましたので、もし申請があればという仮定上のことでお答えさせていただきます。  長銀の現状ということから考えますと、いわゆる長銀というのは、受け皿金融機関としての申請ではなくて、一般金融機関としての資本注入により自己資本の充実の状況が改善されなければ、全国的なシステミックリスクを発生させるおそれがあるという理由での申請になるかというふうに思います。  なお、資本注入をするためには、申請理由のほかに、安定化法及び審査基準によって経営の状態が著しく悪化していないこと、それから経営再建を目的とするものではなくて信用秩序の維持を目的とするものであること、それから資本注入後も破綻する蓋然性が高いと認められないこと、優先株等の処分が著しく困難であると認められないこと等が条件となりますと思いますので、それを基準にして審査したいというふうに思います。
  226. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今の委員長のお答えを聞いておりますと、いわゆるこの金融機能安定化緊急措置法の三条の三項の二のイというところを発動されるということなんですけれども、今重要な御発言をされたのは、個別の銀行再建を目的とするものではない、こうおつしゃつておられました。その直前に大蔵大臣は、公的資金が入らなければ長銀はリストラもできないとおっしゃいましたね。だったら、再建を目的とするものになるんじゃないですか。
  227. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは違いますでしょう。その前に、長期信用銀行というものは実態上もう姿を消すんだ、再建ではありませんということは何度も申し上げてございます。
  228. 西田猛

    ○西田(猛)委員 姿を消すのであれば、なぜそういう公的資金を注入しなければいけないんでしょうか。なぜならば、この法律にも書いてございます、「経営状況が著しく悪化している金融機関等でない」と。別に経営状況が著しく悪化していなくても合併してもいい、それはもちろんでございます。それはいいでしょう。  しかし、この法律の予定していることは、この金融不安の中で、合併の受け皿銀行に対する資本注入、それと、システムを守るための全然悪化していない銀行に対する資本注入、この両方ですね。したがって、「経営状況が著しく悪化している金融機関等でない金融機関」というのは、存続が予定されているんだと僕は思いますよ、この法意は。どうでしょう。
  229. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 法律によりますと、金融の経営状況が著しく悪化していないこと、法律第三条第三項第二号は、さらにこの定義をいたしておりまして、その定義によりますと、最近三年間連続して経常利益または当期利益について赤字決算ないしは無配当となっていること、それから早期是正措置の発動区分、いわゆる〇%、四%、八%、これの落第、この方はまあ問題ございませんが、こういうふうに二つ定義をしておりまして、この定義に当たらなければ、逆に申しますとこの定義に該当するときは経営状況が著しく悪化している、こういうことでございます。それが判断基準になると思います。
  230. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今おっしゃったその基準というのは、審査基準ですよね。今、長銀経営状況が著しく悪化している金融機関ではないという御認識を示されたのだと思うのですけれども
  231. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 この法律による定義を申し上げました。
  232. 西田猛

    ○西田(猛)委員 では、今の長銀についての御認識はいかがですか。
  233. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは監督庁のお答えでございますが、法律にはそのように明記してございます。
  234. 西田猛

    ○西田(猛)委員 では、長銀の今の状況について、何度も議論になっていると思いますけれども、今この議論の流れですので、お聞きしたいと思います。どなたですか、金融監督庁長官ですか。
  235. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  現在、長銀に対しましては金融監督庁が鋭意検査をしている最中でございまして、今その資産の内容等について、その検査の内容についてお答えできる段階にはまだ達しておりません。
  236. 西田猛

    ○西田(猛)委員 検査はいつ終わりますか、監督庁長官。
  237. 日野正晴

    日野政府委員 現在、鋭意やっている最中でございます。  従来、大蔵省の金融検査部当時は、一つ金融機関につきまして、おおよそ二カ月ぐらいの期間を要していたようでございます。現在私どもは、この大手十九行に対しましては、本年三月期の決算について今鋭意やっているわけでございますが、ただいまこの御議論が進んでおりますように、事態の変化といいますか、がございますので、できるだけ近いところまで検査をしたいというふうに考えておりますので、若干時間的には従来の期間よりもあるいは長引く可能性もあるかと思います。
  238. 西田猛

    ○西田(猛)委員 佐々波委員長にもう一度お聞きしたいのですけれども、三月の時点で資本注入をしてほしいという申請があってから決定されるまで、何日間かかりましたか。
  239. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 三月時点の審議経緯についてお答えいたします。  三月八日、九日、十日、十二日の間に二十一行、審査時間合計二十時間を費やしました。  優先株を発行する長銀等四行につきましては、まず三月八日から先行審査いたしまして、十日に結論を得ました。  審査に先立ちましては、三月五日からでございますが、事務局の予備ヒアリングを実施、申請内容、提出資料の整理を行い、各委員に提供いたしました。そして、委員長から、大蔵大臣、日銀総裁に提出資料の信憑性等についての確認を依頼いたしました。  審査に当たっては、不良債権償却引き当て方針、提出資料の内容について大蔵大臣、日銀総裁から報告を得まして、業務計画、収益見通し等の妥当性について検討いたしました。
  240. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そうしますと、もしも今度もまた長期信用銀行が注入を申請したとしたらば、大体どのくらいの期間で決定できますか。
  241. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 仮定的な御質問には、ちょっとお答えする準備ができておりませんので。
  242. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そうしたら、その申請があったときに、その判断をするに当たり、金融監督庁長銀検査というのは終わっている方がいいと思われますか。
  243. 佐々波楊子

    ○佐々波参考人 一般論しかお答えできないと思うのですけれども、資本注入の審査に当たりましては、申請銀行実態を踏まえての審査基準を満たしているかどうかがチェックのポイントとなるというふうに思います。  それで、金融監督庁検査結果が極めて重要であるということは認識しておりますけれども、必ずしも検査結果が審査、承認のための条件というふうには考えておりません。ただ、重要なことは十分に認識しておりまして、討議の中でいずれ、これも仮定的なことですけれども、正式な申請があれば、金融のシステム安定化の重要性ということを十分勘案して、厳正な審査を行いたいというふうに思っております。  以上でございます。
  244. 西田猛

    ○西田(猛)委員 さらに、ちょっと観点を変えますけれども、先ほどから私が申し上げていること、すなわち、今の長銀という個別の企業体である銀行に対して破綻前資金注入をして、それである意味で救済を図っていくということ、それに基づいて日本の金融システムを維持するというふうにつけ加えてもいいですけれども、ということは、世界の日本に対する信頼をある意味で決定的に損ねてしまうのじゃないか。  要するに、我が国は、二十一世紀に向けて構造的な改革をして、こういうフリー、フェアでオープンな構造を持っていくんだということの宣明をすれば日本に対する信頼も回復されるでしょうに、ああ、また従来のような方式でやるんだな、じゃ、これからも日本というのは変わらないんだなということをあからさまにしてしまうようなものじゃないかなと思うのです。  きょうはお忙しいところを通産大臣にもおいでいただいているのですけれども、まことに通産大臣は所管外だとお思いかもしれません。しかし、産業政策を所管される立場から、今私が申し上げたようなことを、この個別の長銀救済、あるいは日本の金融システムとの関係ということについてどのようにお考えになられますか。
  245. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 金融機関の破綻が経済に対して与える悪影響やコストにか人がみまして、破綻に至る前に、早期是正措置、民間金融機関自身による合併等の再編努力及び金融危機時における公的資本注入のスキーム等により、内外の金融システムに大きな動揺が生じることがないように適切に対処していくことは極めて重要でございます。  日本長期信用銀行のケースについても、今後資本注入の申請があれば、金融危機管理審査委員会において、法律の手続に基づいて、審査基準に従って適切に対処されるものと考えております。  他方、ブリッジバンク制度は、金融機関の破綻に際して、民間の引受金融機関が登場しない場合でも、預金者保護及び金融システムの安定性確保、さらには善意かつ健全な借り手に対する適切な配慮に万全を期すためのものでございます。この制度によりまして、金融機関が破綻した場合にも、破綻金融機関が業務を行っている地域または分野における資金の円滑な需給及び利用者の利便に大きな支障が生じないようにすることが可能となるわけでございます。  通産省といたしましても、産業界の資金調達を円滑化する観点から、金融システム改革を着実に進めていくとともに、これらの施策により、金融システムに対する内外の信認を確保しつつ、預金者保護等、金融システムの安定に向けた取り組みに最大限の努力をしてまいりたいと思っております。  加えて申し上げれば、中国の通信社では、早く国会でこれらが処理されるべきということを言っておられますし、イギリスのブレア首相からは、けさ官房長官が記者会見で発表されましたのですが、日本の金融制度について、現在日本の国内でいろいろ取り組みをされておると承知しているけれども、これは世界に貢献することでもあり、英国政府としても支持をしている、また、いわゆる長銀と住友信託との合併の成功を重要視しており、英国としてもこの救済策を全面的に支持したいということを、改めて首相から、小渕総理に伝えてほしいという伝達があったということを訪問の際に通告されたということを紹介されましたので、先生が今御心配になられました、この種の解決策をとりますと世界の信認が失われるということはあり得ないことだと私は思っております。
  246. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今通産大臣、お答えいただいたまではよかったんですけれども、最後におつけ加えになったことがちょっと私は腑に落ちないんです。例えば中国の配信社が言った、あるいは英国のだれが言ったということで、今私が申し上げたような、二〇〇一年三月三十一日までの猶予期間の中で日本が本当の構造改革を図っていかなきゃいけないのに、今個別の企業体に対する処置を誤ってはいけないということを私は申し上げているんであって、銀行をつぶせだとか、あるいは信用秩序を壊せだとか、そんなことはだれも言っていないわけですよ。  冒頭申し上げたように、私たちこそが一番危機感を持って、五年も前から、だから経済政策を、ちゃんとマクロ政策をとらなきゃいけないと言ってきたわけですね。その経済政策をとってこなかった内閣がいたから、今経済全体がこうなっておるわけです。私たちこそが危機意識を一番持っておるわけで。  したがって、きょう申し上げたように、朝、私どもを支持してくださっている方からのお電話もあったように、今国民の皆さんは苦渋に満ちた感覚なんですよ、どうしたらいいのかと。そのためにこそ私たちはここで、国会で議論しているのに、英国がこう言った、中国がこう言ったからあり得ない、そこまで一国の通産大臣が断言されるんじゃ、国会の審議は要らないんじゃないですか。ちょっとひどい御発言だったのじゃないかなと私は思っております。
  247. 与謝野馨

    ○与謝野国務大臣 日本の国会は日本の国会として自信を持って論議をされる、また与野党間で建設的な話し合いをされるということが一番大事なことだろうと私は思っております。  ただ、先生が、外国からのいろんな批判があるのではないかという部分の御質問がありましたので、その傍証として、中国とイギリスの例を挙げたまでのことでございます。
  248. 西田猛

    ○西田(猛)委員 さらに、国民の皆さんがどうしてもやはりもうひとつわからないところは、この長期信用銀行と、それから住友信託銀行の合併ということについで、果たして公的な関与がどうなっているのか、なぜそこまで秘密裏に、そして急に進めなきゃいけないのかということなんですね。これは私が先ほど来申し上げているように、構造的な改革を進めなければいけないという観点と裏腹というか、反するものではないかなという気がするのです。  例えば、八月二十一日に住友信託銀行の高橋社長が談話を発表しておられて、長銀の優良先債権しか引き受けない、あるいは密接な関連企業等のいろいろな債権については整理しておいてもらうことが必要だというふうなことを言っておられます。  このことを、これから長銀公的資金が例えば注入されたとして、どのように長銀がそれを担保したということを住信としては判断するのか、大蔵大臣はどのようにお思いになりますか。(宮澤国務大臣「それは住信のやることでしょう」と呼ぶ)ですから、住信としてはどういうところを見てどういう判断をされると大蔵大臣はお思いになられますか。
  249. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 その前に、合併を推進することは構造的改革に役立つと私は思っているので、その反対ではありません。  それで、住信の社長がたしか談話を出されております。それは、一つは、不良債権は受け付けない、それから、殊に親しいというようなことが書いてありましたが、非常に近いところとの関係はきちっとしておいてくれろ、それから、自分たちはデューデリジエンスで十分自分たちなりの調べをする、たしかそういう幾つかのことを言われたと思いますので、それがきっと、いわば条件と思います。
  250. 西田猛

    ○西田(猛)委員 条件のことをお聞きしたのじゃなくして、その条件をどのように担保しているというふうに住信はお考えになるだろうかということを大蔵大臣にお聞きしたのです。  それで、大蔵大臣は今、長銀が住信と合併することが構造改革に役立つというふうにお話しになりました。それはどういう意味なのかをお聞きしたいのです。  というのは、長銀が七千五百億円もの償却をする。するのであれば、そのまま長銀長銀として残ればいいことでしょうね、もし残れるのであれば。あるいは、長銀が残れないのであれば、残れないのだと思いますね。住信の高橋社長がどうしてこんな条件を出しているのでしょうか。いいところしかとれないからですね。長銀がきれいにして、そしていいところだけ住友信託銀行は持っていこうと、それが構造改革に資するのですか。どういう構造改革に資するというふうに今おっしゃったのですか。
  251. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 いや、それは政府が進めている対策を外国から見ると、この合併を促進したら構造対策に逆行するじゃないかとさっきおっしゃったように聞きましたから、やはり合併とかいうことはいわゆる再編成に資するものではないかと思って申し上げました。  それから、今私、三つの条件と申し上げましたが、先ほど申し上げた三つでございます。ですから、弊社はこれを前提条件として着実に検討を進めてきたとございますので、これが住信が必要とされる条件だと考えてよろしいと思います。
  252. 西田猛

    ○西田(猛)委員 もう何度も本会議でも委員会でも話題になっていますけれども、本当に長期信用銀行が債務超過でないのかどうかという議論もまだ残っておりますし、そういう中で長銀が住信と合併することが、今大臣おっしゃったように構造改革に資するんだということは、私ちょっとわからないのですね。  市場があって、先ほどもある委員の方から質問がありましたけれども、先にマーケットで、例えば長銀株がターゲットになってどんどん売り込まれてこういうふうな結果になった、これは市場から、残念ながらアウトと言われているのですね。そうしたら、それは企業であれば粛々と、破産法であれ、それからいろいろな法律で、破産法理で処理されていくべきものなのでしょう。それをあえて公的資金を注入して残していく、そして合併させる。これはやはり構造改革に反する、構造改革に反するどころか、ああ、やはり日本はこういうやり方をこれからしていくのだなということに対して、世界はむしろ信認を持たないというふうに私は思うのですよ。ですから、それを申し上げているのであります。
  253. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 違うと思います。  きのうも参考人が言われましたように、企業としては、そうやってつぶれてしまったらもう大変に、日本ばかりでなく世界に迷惑をかける、したがって経営者としてはこういう道を選んだと言っておられるのです。したがって、生き残るというふうなことを企業は思っていないわけですね。
  254. 西田猛

    ○西田(猛)委員 長銀の問題、これは非常にデリケートな問題ですから、長銀自体が、今大臣もるる言っておられるように、形もなくなり、名前もなくなる。何かスピリットが残る、こういうふうなお話でしたけれども。それは別にいいのかもしれません。  しかし、私たちは長銀が残るか残らないかということを言っているのじゃなくして、やはりマーケットが、消費者がこれから判断していく、そういう自由で透明で公正な経済社会をつくっていく上において、疑義が残ることはやらない方がいい。この処置の方法はやはり疑義が残るんじゃないかなということを申し上げているわけです。そこに、ましてや五千億とも一兆円とも言われる税金が絡んでいるわけですから、ここは全国民に対して事細かにきめ細かな説明を一つ一つしていく必要があるでしょう、そういうことなんですね。  もしそれが結構だと今おっしゃるのであれば、この処置について一抹の疑義もないとおっしゃられますか。
  255. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 こういうふうに申し上げたらいいかと思うのですが、長銀当局者としては、今まさにおっしゃるように、破綻して野たれ死にする方法もある。それはありますが、日本のためにも世界の金融秩序のためにもそれはとるべき道でない。したがって、身を捨ててこういう方法をすべきじゃないかと。  それがリストラ計画でございますが、政府は、そのリストラ計画を見ましたときに、確かにそれはそうであろう、社会的なコストが余りに大き過ぎる。それに対して、仮に申請があって公的資金を導入するということが、合併ということでその状況を回避することができるのであれば、それはそれこそ普通の言葉で言えば費用対効果、コストとベネフィットの関係から見てそれは一つのやり方ではないか、こう考えることもまた私は一つ考え方と思っています。
  256. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今の論争の中で、私は、構造改革を進めていく上で、公的な関与、資金が必要ということはあると思うのです。そういう場面は当然あると思います。しかし、どこにどういう時期で公的資金を、あるいは公的関与をしていくかだと思うのですね。  そこで、きょう、お忙しい中、日本銀行総裁にも来ていただいておりますので、ひとつお伺いしたいのですけれども、最近、日銀の資産規模が非常に膨らんできております。貸借対照表の資産規模が九十一・五兆円、これは九八年三月期の数字でございます。過去一年間に二十九兆円増加いたしまして、一・五倍になってきております。その中にはいろいろと、無担保の日銀特融が三・二兆円、それから個別の企業のコマーシャルペーパーの買いオペが五・三兆円などなどございまして、いろいろな問題含み資産が、日銀の資産のふえたうちの三分の一をも占めております。  日銀の財務状況、今のところどのような状況になっておるか。国民の皆さんは、わかっておられる方は、日銀大丈夫かなというふうに思っておられる方もいらっしゃいますので、総裁の方から資産状況について少し御説明いただけますでしょうか。
  257. 速水優

    ○速水参考人 本年七月末の日本銀行の資産規模は七十二兆円でございます。このうち、いわゆる特融の残高は二兆七千億円。七十二兆円に対しまして銀行券は四十五兆円ぐらい発行しているわけでございますが、このほかに、資本金一億円、引き当て勘定二兆七千億、準備金二兆千億、こういうものを持っております。  特融をいたします場合には、私どもは、大蔵大臣からの依頼に基づきまして、四つの原則に基づいてこれを査定して政策委員会で決定することになっております。これは損失を補てんするのでなく、回収可能と見込まれる場合に限って、財務の健全性をも考えながら出すものでありまして、一番大事なことは、金融システムの安定を維持していくために必要であるというふうなことの判断でございます。  このことは私は非常に重視しておりますし、どこの銀行を救うためというようなことよりも、むしろ一番先に考えることは、金融システムリスクを回避するということが大事なことだと思いますし、その間のつなぎ資金というふうにお考えいただいたらいいと思います。
  258. 西田猛

    ○西田(猛)委員 総裁、ありがとうございました。  時間が来ましたので終わりますけれども、大臣、先ほどもある委員が言っておられました。要するに、我々が考えているのは、構造的な改革をする中で公的資金を投入することはあり得べし。しかし、どこへ投入するか。個別の企業体に投入するのじゃなくして、今総裁が言われたような日銀特融をする、金融のシステミックリスクを回避するために、そこの日銀特融が十分にできるように資金を投入していく、あるいは預金保険に投入していく、そこをやっていくべきだと我々は主張したいのであります。  以前、自由党の鈴木委員の質問に対して大臣は、何日もつと思われますかというふうなことをおっしゃいましたけれども、それはもつようにしていく、そのために公的資金を投入するのだということが我々の考えであり、我々の答えでありますので、こういう日本の構造改革、金融秩序の維持の方法もあるということを今後ともお考えいただきたいと思いますが、もし、コメントがあればお聞かせ願いたいと思います。
  259. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは破綻前の問題と思います。破綻をしてしまいますと、三十八条には限りがどうしてもございますから。
  260. 西田猛

    ○西田(猛)委員 私は今、長銀のことを言っているわけです。  時間が来ましたので、これで終わります。
  261. 相沢英之

    相沢委員長 これにて西田君の質疑は終了いたしました。  次に、春名直章君。
  262. 春名直章

    ○春名委員 日本共産党の春名直章でございます。  最初に、宮沢大蔵大臣に、きのうの新聞ですけれども、「報道二〇〇一」の世論調査が出ました。それで、長銀への公的資金投入について、賛成という答えが一七・四%、反対が七七%という数字でございます。  審議が進むほど反対がふえているのかな、こういう印象も受けるわけですけれども政府は、なぜこれぐらい国民の理解をこの問題で得られていないとお考えなのか、そのあたりの意見をお聞かせいただきたいと思うのです。
  263. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、国内における、あるいは国際における金融のシステミックリスクということの御理解が、いかにも国民の立場からいうどどういうことかわからない。起こった危険はわかりますが、起こるかもしれない危険の予測というのは、無理もないことですけれども、何かオオカミ少年のような受け取られ方をする。それは実際あることだと思いますね、皆さんにおかれましてもその評価は違っておるわけですから。それが先に一つあると思うのです。  そこで、それを防ぐ、国民の金を一片なりとも借りてやることがそんなに大事なのかなということがまずあって、それと今度別に、何かそれが一つの私企業に投ぜられるのではないか、その救済ではないかということがまた大きな疑問である。この二つの解明が、私どもの努力が足りないのだと思いますけれども、事の性質上、起こるかもしれない危険を防止するということのコストはなかなかわかりにくいことであると思います。    〔委員長退席、村田(吉)委員長代理着席〕
  264. 春名直章

    ○春名委員 今二つの要因があると言われましたが、そういう要因が解明されるほど反対が多くなってきているというのが私の印象であります。要するに、公的資金投入が、今の二つの理由をおっしゃいましたけれども、それに照らしても、だれが見てもやはり道理がないということがわかってきているのじゃないかと私は思うのです。  そこで、少しお聞きをしたいと思います。  長銀公的資金投入申請の理由は、だんだんに議論はされておりますけれども、過少資本になるからだということでございますが、なぜ過少資本になるのか、そのことを改めて簡潔にお答えください。
  265. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  現在、有価証券報告書のことしの三月期の分をごらんいただきますと、資本勘定が載っているわけですが、七千五百億円、PL勘定で落とします。一方、本店の売却その他で入ってくる方のお金もございます。これを差し引きした金額は、結局資本勘定で落とさざるを得ません。そういたしますと、その資本勘定が従前に比べるとかなり過少になるということだろうと思います。
  266. 春名直章

    ○春名委員 いろいろおっしゃいますけれども長銀は、もうこの間議論してきているとおりですけれども日本リースヘの貸し付け二千五百億円、日本ランディック千百億円、エヌイーディー千六百億円を放棄する、それ以外の貸出資産の処理を合わせて七千五百億円を九月の中間決算で全額前倒しをする、それで引き当て処理を実施する、そういう一連の処理の中で自己資本比率が低下をする、だから早期に公的資金を投入したいということが言われているわけです。  要するに、この一連の流れは、不良債権となっている関連ノンバンク三社への五千二百億円もの債権放棄するというところに大きな原因があるということは、もう御存じのとおりであります。そのために、過少資本を解決する、公的資金を投入するということにならざるを得ないということを言われているわけですね。だから、だれが見ても、この穴埋めのために、はい税金投入という安易なやり方をなぜやるのだろうかという疑問の気持ちを持つのは当然だと思います。  これまで長銀は、日本リースに千五百九十一億円、日本ランディックに千九百七十三億円、エヌイーディーに千二百五十三億円、合計四千八百十七億円もの支援を行ってまいりました。今回の処理でさらに五千二百億円の貸付金の放棄を行うということになります。みずからの体力もままならない事態の中で、約一兆円もの資金援助を行うということがやられようとしているわけであります。長銀が系列のノンバンク三社に対して幾ら債権放棄するか、これは公的資金投入額に直結せざるを得ない、こういう流れに当然なるわけであります。  だとすれば、大蔵大臣に改めてお聞きをします。長銀のこの三社に対する債権回収を強力に、真剣に行わせる指導こそ、今政府がやらなければならない一番の責任ではないでしょうか。その点、お答えいただきたいと思います。
  267. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  確かに、何の理由もないのに債権を単に放棄したり、あるいはそれを帳簿上から償却するということは、これはその会社にとっては大変いけないことだろうということはもう当然のことでございます。  ただ、本件の場合は決してそういうことではございませんで、これは、住友信託との合併交渉が進む中で、当事者間がそういうことになっているわけでございまして、その合併が実現いたしますと、我が国の金融システムの安定などなどに大変寄与するところが大きいということから、そういうことになっているんだろうというふうに存ずる次第でございます。
  268. 春名直章

    ○春名委員 今回の公的資金を申請すると言われている理由は、七千五百億円を前倒しであれするということですね。それで、そのときに、その多くは五千二百億円の貸し付けを放棄するというところから出発をするわけでございます。ですから、この五千二百億円を本当に放棄をしなければならないのか、そして、債権回収できないのかどうか、どれぐらいできるのか、やらせる努力、そういうものをまず本格的にやって、改めてそういう問題が出てくるんじゃないんですか。私は、そこの方向が、先に公的資金投入、申請が来たらすぐ入れます、それありきだからこそ怒りが広がっているんだと考えるわけであります。  そこで、昨日、参考人質疑が行われました。三社の経営長銀経営、いかにずさんなものかというその一端が明らかになったと私は思うんです。  政府としての対応を改めてお聞きをしておきたいと思うのですけれども、なぜ長銀が三社への五千二百億円もの債権放棄しなければならなくなったのか、どこまで三社の実態を皆さんが把握されているのか、現時点での情報を報告していただきたいと思います。
  269. 日野正晴

    日野政府委員 繰り返しになって大変恐縮でございますが、この関連ノンバンク向けの債権を含む不良債権の抜本的な処理といいますのは、あくまでも長銀経営改善策の一部ということになっているわけでございます。また、この経営改善策をとらなければ、合併も恐らく成立しないだろうということだろうと思います。  したがいまして、この長銀による資本注入の申請というものも、この不良債権処理に伴って同行が先ほどからお話に出ておりますように過少資本となることから、市場の信認を回復し、円滑な合併を実現するために実施するものであるというふうに承知しております。
  270. 春名直章

    ○春名委員 答えてほしいのですけれども、どういう実態になっているのか。なぜ全部で一兆円も放棄しなければならないのか、五千二百億円放棄しなければならないのか。それが公的資金投入に直結するのですから、そのことについて責任を果たさなければ、公的資金投入の前提が崩れるじゃありませんか。そのことをもう一度きちっと答えていただけませんか、今どうなっているのか。
  271. 日野正晴

    日野政府委員 関連ノンバンクの再建計画につながるものだと思います。ただ、御案内のとおり、関連ノンバンクの再建計画については当事者間で話し合うべきものでありまして、既に住専の処理のときにあったようなことをまた二度と政府としては起こしたくないというふうに今考えているわけでございます。
  272. 春名直章

    ○春名委員 当事者間でやるんだというふうなのは当然ですよ。当事者間でやるのは当たり前のことですが、しかし、あなた方の検査は、今生きている検査の作成要領というのは、その六十一番に関連会社状況というのもつかむと、長銀を通じてですけれども、そういうことになっているじゃありませんか。だから、どうなっているかということをつかもうと思えばつかめるわけであって、そんな無責任な発言は許されないことであります。どんな乱脈をやっても、その経営責任は何も問わないで公的資金投入ということに、今のようなお答えをしていると当然なっていくじゃありませんか。  なぜ三社が大変な経営状態に陥ったか。昨日の討論でも、それから私たちが独自に当事者にお聞きした話によっても、いずれも、バブルの時代に本業から離れて、長銀からの巨額融資を受けながら投機的な土地開発業者などに無謀な融資を続けて、これらが不良債権として固定してしまったということは既に明らかであります。  これまで、千五百九十一億円の経営支援を受けて、さらに今回二千五百億円の貸し付けを免除してもらうという日本リースの実態についてであります。  九八年の三月のこの有価証券報告書をつぶさに見ました。その中に、固定資産という項目の中で固定化営業債権という言葉が出てくるのです。この固定化営業債権の注意書きがありまして、財務諸表規則三十二条一項十号、「破産債権、更生債権その他これらに準ずる債権」、そういう名前なんですけれども、そういう耳なれない債権が出てきて、この金額が三千四百十六億八千二百万円。日本ビルプロヂェクト五百七十九億、いわきリゾート二百八十一億、青山シティプランニング二百七十八億、大口十社の相手先の企業名が記入をされております。分類債権で言えば三ないし四分類というふうに言えると思いますけれども、本来全額償却すべき債権ですけれども、ここにあの住専問題で名前をはせた朝日住建九十二億円とか、それから太陽エステート百五十二億円とか、こういう名前も出てくるわけでございます。  さらに、その額が、調べてみて驚きました。九四年度はこの固定化営業債権は百九十二億円でございましたが、九八年には三千四百十六億円、五年間の間に十七倍にこの金額が膨れ上がっているということも、数字上ですけれども、明らかになっているわけでございます。  蔵相にお聞きしたいんですけれども、なぜこのような膨れ上がり方をしているのか。悪名高い企業の名前が上位十傑に出てくるのはなぜか。こういう不明朗な実態、そういうものを解明、究明して、国民の前にも明らかにして、そして説明をするということが何よりも問われるんじゃないでしょうか。大蔵大臣、どう思われますか、例えばこういう実態をお聞きになって。
  273. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 私の所管のことではございませんけれども、そういう名前は確かに聞いたことのある名前でして、きっとその時代にやはりそういうところと取引をされたということだと思いますね。
  274. 春名直章

    ○春名委員 えらい客観的なことを言われておりますけれども、まさにそうだと思うんですよね。そういう問題を放置して公的資金を投入するということにつながっていくわけだからきょう私は問題にしているわけでありまして、そういう客観的なお話ではなしに、断固たる調査をするとか努力をするとかいうことを言っていただかなければ責任は果たせません。  それで、私は、昨日同僚議員の木島議員が明らかにした、日本リースが事実上所有しております沖縄県恩納村のリゾートホテルのことについて、きょう蔵相にお話ししたいんですね。  きょうの新聞にも少し出ておりますけれども、この恩納村にあるリゾートホテルは、鉄筋コンクリート地下一階、地上十三階建てです。昭和六十三年六月三十日に日本リースが所有権保存登記を行っています。平成八年の二月二十八日に、日本リースが債権保全と債権の流動性を高めるためにつくったと言われている会社一つで有楽町リゾート開発というのがありますが、この有楽町リゾート開発に所有権が移っております。驚くことに平成十年、ことしの八月二十七日、わずか今から五日前ですけれども長銀が、突如根抵当権を極度額百九十億円で設定をし、仮登記をしている、こういう事態でありました。昨日、このことを木島議員が追及をいたしました。  これだけの物件を、昭和六十三年からいえば丸々十年間全く無担保で放置をし、そして国会に呼ばれることになって仮登記を慌ててつけているという様子がありありでございます。ですから、本日付の新聞も、招致決定の日に抵当権、これはきょうの東京新聞ですけれども、招致を決定したのが今から五日前、その五日前のときに伐てて抵当権を設定ということで、重大だという見出しをつけているわけであります。放漫経営長銀がまじめに債権回収しようというような気持ちはかけらもないということを示す一つの例ではないでしょうか。さもなくば、このリゾートホテルを日本リースは借金なしでつくって経営するほどの豊かな財力を持っているのかということにもなります。  大蔵大臣、こういう現実がきのうも議論され、明らかになりました。調べてみますということを社長さんはおっしゃいました。こんな問題が今やみに葬られてはならないと思うんです。  個別事案に答えられないとよくおっしゃいますけれども、事はこういう問題ですので、ぜひ大蔵大臣先頭に、こういう問題が目の前で問題にされているときに手をこまねいて公的資金の申請のそれを待つ、そういう態度は厳に戒めて、断固たる姿勢で臨んでいただきたいと私は思いますけれども、この問題について、今初めてかもしれませんけれども、どういう印象をお持ちになるでしょうか。どうでしょうか。
  275. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは、不正があるとか背任があるとかいうことであれば、これはもう問題なくそれとして処断されなければならないわけですが、ノンバンクは文字どおりバンクでないわけでございますから、銀行法の適用を受けるわけではない。そういう意味での調査権というものは恐らく政府側にないのだと思います。ただ、おっしゃっていることを考えますと、あの時代にやはりそのノンバンクも、言ってみれば本当にかたぎの商売さえしていればそんなことにはならなかったわけで、そこはもうきっとそうだろうと私も思うのです。  ただ、それはノンバンクの出来事で、独立の法人の出来事でございますから、そういうところに貸したことに長銀の責任がないかといえば、昨日も言っていらっしゃいましたが、長銀の方々も全く責任なしとは言っていらっしゃらないようです。ただ、それは言ってみればもう一つ先のところで起こった出来事であることは、もう間違いありません。
  276. 春名直章

    ○春名委員 先のことではないのです、これは。長銀融資でやっているのじゃないかということももちろんありますし、根抵当権の話も今しましたし、しかもノンバンクというのは、先ほども調査の中身、金融検査の中身の中の六十一番目に、関連会社も調査するということで、直接はできないですよ、私も知っていますけれども。しかも今、事は、そこに対する債権放棄することによって過少資本になるので公的資金投入という一連の流れの中でこれが起こっていることでございましょう。そうであるならば、どういう権限を駆使するのかは皆さんの方が詳しいと思うのですけれども、こういう問題を放置することは絶対にできないと思うのです。  それで、長銀のこういう融資のあり方などの考え方から見ますと、私ちょっと長期信用銀行法を読んでみましたら、第七条、ありますね。長期信用銀行は、長期資金に関する貸し付け等に基づく債権については、その特殊性にかんがみ、その保全及び回収の確保を図るために、確実な担保を徴し、または分割して弁済させる方法をとるなどの特別の考慮をしなければならない。担保を徴し、回収の確保を確実に図っていく特別の考慮をしなければならないということが条文でわざわざうたわれています。  今言ったような事態はまさに投機的な運用であって、本来のあり方から外れていて、私は、この長期信用銀行法第七条に完全に違反していると読み取らせていただきました、例えばこの事例でいえば。  そういう問題ではないでしょうか。大蔵大臣の御見解を聞きたいと思いますが、いかがですか。
  277. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  まず第一段の御質問でございましたが、これは個別行の問題でございますので、お答えは差し控えさせていただきたいと存じますが、しかし、検査によって私どもはその内容をできるだけ明らかにしていきたいと考えております。  また、もし今御指摘がありましたように長期信用銀行法七条に違反するような事例があったというようなことがもし発見されましたならば、私どもといたしましては、必要に応じて法令にのっとり適切に対処していきたいと思います。  また、一連の流れの中で公的資金を注入されるわけですから、金融危機管理審査委員会において審査の過程で私どもに対しましてそういうことについてもし御要求がございましたなら、それぞれ必要に応じた御説明を行っていきたいと思っております。    〔村田(吉)委員長代理退席、委員長着席〕
  278. 春名直章

    ○春名委員 もしかしたら法律に違反するような事態、そういうところの乱脈経営公的資金でしりぬぐいするということになりかねない、そういう問題だということでありまして、私は、この点を明らかにするために、次の三つの資料を要求させていただきたいと思いますので、委員長、済みません、お取り計らいいただきたいのですが、第一は、平成八年二月の土地売買に関する日本リースと有楽町リゾートの売買契約書。第二、この土地売買に関する長銀内部の決裁文書、稟議書。三、平成十年八月の根抵当権設定にかかわる長銀内部の決裁文書、稟議書。この三つを、事態解明のためにどうしても必要な資料だと思いますので、御検討いただきたいということをお願いしておきます。
  279. 相沢英之

    相沢委員長 理事会において協議いたします。
  280. 春名直章

    ○春名委員 昨日、木島議員は、続きまして、日本リース所有の土地と建物で、港区浜松町一丁目七番四十一のところに地下二階、十階建てのビル、その敷地というのがあるということで説明をいたしました。ところが、どこにも担保に入っていません、こんなこともありました。こういうものがあるのに、こんないいかげんなことがやられているのに、長銀日本リースに対する債権放棄するというのは、私は全く常識からいって理解できないことだと思います。まじめに債権回収しようという気持ちが伝わってこないので、私はきょうあえてこの問題を質問しています。  大蔵大臣は、こういうやり方、今一連の三つの具体的な例をお話をいたしましたけれども、どのように受けとめて、これからどういう対応をされていくつもりか、お聞かせいただきたいと思います。
  281. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 それは先ほども申し上げましたとおり、御指摘のことはごもっともだと思っているのですが、先ほど監督庁長官が言われましたように、この長銀のリストラ案というものは、先ほど私が御紹介いたしましたような住信の出しております幾つかの条件に沿わなければならないという性格を持っておりますので、したがって、長銀としてはこの条件を満たさなければならないという必要を感じておるのではないか、これは想像でございますが、先ほど長官のお話から私は推察いたします。
  282. 春名直章

    ○春名委員 住信の条件というのは正常債権しか受け取らないとか、そういうことがこの間も議論されて、これがどういうことを意味するのか議論されてまいりました。そういうことがやられることによって、これがもし強行されれば、今三つの事例をお話ししましたけれども、やみの中に葬られる危険性もあるし、国民の税金投入ということがこういう形でやられるということに、ますます大きな怒りが広がりかねないということを私はぜひ考えていただきたいと思っています。  こうした政府の態度は、私は住専のときと比べても少し違うような気がするんですね。住専のときの政府の姿勢で、これがすべてということではありませんけれども、例えば一つ答弁の中身を紹介しますけれども、橋本当時総理大臣が、金融問題等に関する特別委員会九六年五月二十八日で、こういうふうにおっしゃっています。まさに「財政措置を伴うものなんですから、弁済が可能なのにもかかわらず弁済しないといった債務者がありますなら、それは決して許さず、その責任を厳しく追及してまいります。」ということを言われ、貸し込んだ各企業に対して、御存じのとおり、住宅金融債権管理機構も設立をし、現在、債権回収も進めるということがやられています。  これは、政府自身が借り得は許さないという立場だったと私は理解するのですけれども、この立場は今お捨てになったのでしょうか、そのことをお答えいただきたいと思います。大蔵大臣、どうぞ。
  283. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何度も申し上げますとおり、このたび政府考えておりますことは、一企業の損得というようなことを考えておるわけではございません。
  284. 春名直章

    ○春名委員 答えに全然なっていないわけでありまして、住専のときの対応と今問題になっていることについて態度が違うのじゃないですか、言えば、姿勢が後退しているのじゃないですかということを申し上げているのでございまして、そのことに対する責任ある御答弁をいただけませんでしょうか。
  285. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 何度も申し上げておりますが、問題となった金融機関は、実のところ、やがて消滅をする。それは、責任者がみんなそういう責任を感じておるわけでございますから、一企業をどうこうしようとしているのではありませんで、たびたび申しますが、日本の金融のシステミックリスクを救わなければならないと考えておるわけです。
  286. 春名直章

    ○春名委員 そういうことを私聞いているんじゃないんですけれども、大蔵大臣は繰り返しシステミックリスクを起こさないということをずっと言われますけれども、あなた方は債務超過ではないとこの間言ってきました。そうであれば、債務不履行は起こりませんし、システミックリスクも生まれようにない、生まれないということもこの間議論されてきたことでございます。そういうにしきの御旗を掲げて、こういう今の突きつけられている大問題について一つ一つ真摯に解明もし、国民の理解を得るという姿勢が非常にあいまいなままであるということを私は指摘せざるを得ません。  その当時の大蔵大臣もこう言っているんですね。債務者に対して財産隠しなどを絶対に許さず、徹底してその回収に努める、その回収の実を上げることによって国民の御負担が極力少なくて済むように努力をしなければならない、そういう責任を政府は負っております、当時の久保大蔵大臣の答弁でございます。  借りたものは返すというのは世の大原則でございます。住専から借りた企業は返済を迫られる、日本リースから借りたものは免除されるということになれば、これほど不幸なことはないといいますか、不公正なことはございません。  一方で、多数の中小業者、国民は、ローン地獄や債務返済に血のにじむ努力を行っているわけでありまして、一方は回収の努力もしない、債務者は許してもらう、かわりに公的資金を投入してもらう、こんなことは国民の理解を得ることにはどうしてもならないと私は思います。貸し手も、悪質な借り手も、モラルハザードを拡大していくことになりかねないと私は思うのです。そういうことを政府はおやりにならないで、真剣な検討を求めたいというふうに私は思っております。  それで、もう一つ大きな、今回の法案の中で私聞いておきたいことがございます。  こうしたなかなか国民の理解を得られないこの処理策を、後ろ盾となって支援していこうというものが、今回提案されている例えば臨時不動産関係権利調整委員会の仕組みなどではないかという危惧を私は持っておりまして、ここからは国土庁長官にもお伺いしたいと思っておりますけれども、まず、この権利調整委員会についてですけれども債権者の債権放棄による損失の額の損金算入による無税償却、それから債務者の債務免除益の繰越欠損金との相殺、これによる税制上の措置、こういうことが調停、仲裁によってとられているということを何度も説明をお聞きしました。  そこで、あえてなぜこのような機関をつくり、このようなことをやる必要があるのかがどうしてもなかなか私は理解できません。それで、長官にこの点について御説明をいただきたいと思うのです。
  287. 柳沢伯夫

    柳沢国務大臣 まず第一に、委員も認識を共通にしていただけると思いますけれども不良債権の直接償却というものが必要なのです。その直接償却がおくれている大きな原因の一つ担保不動産の問題がある、その不動産をめぐって複雑な権利関係が入り組んでいる、なかなかこれが解きほぐせない。したがって、この直接償却になかなか至らない。こういう現実がありまして、これを今回、行政的な一つの需要がある、そこに行政を求める必要性があるという認識のもとに、行政の枠組みの中でこの権利関係調整する、そういう仕組みを置いたわけでございます。  そういうことをいたしますと、実態的にはこれを民間同士、民間人同士の間でやったとしても、事後に、事後的ですけれども税務当局が今御指摘になられたような税制上の措置をするということは大いにあり得るわけですけれども、今度の行政上の仕組みの中では、せっかく行政がそういう仕組みをもって介在をしてこの調整をするということであれば、事前的に、民間人の場合には事後的なのですが事前的に同様の、全く同じ税制上の措置を与えるということにすることが適当なのではないか、こういう考え方でこういう仕組みを置いたという次第であります。
  288. 春名直章

    ○春名委員 錯綜した権利関係調整するのであれば、当委員会でも議論を繰り返しされてきましたが、司法の場でやることが十分可能ではないでしょうか。なぜこれをつくる必要性が、必然性があるのかということが、私は今の御説明でも十分納得しかねます。  そこで次に、時間もありませんのでお聞きしておきますけれども、今塩漬けになっている土地、今回調停にかけられる対象となるであろう土地、そういう土地バブル経済の乱脈経営の後遺症だということは、もう御存じのとおりです。この処理を無税でやれるような仕組みになっていく、借金棒引きという形にもなっていく、喜ぶのはどこだろうかということを私は考えてみました。権利調整委員会の仕組みは、いろいろ教えてもらいまして、なるほどこういう仕組みかというのはわかったわけですが、今のトータルな日本状況の中でこの委員会がどんな役割を果たすのかということを私なりにも考えてみました。  その多くは、銀行業界や大手ゼネコン、不動産業者などが、いわば共犯者と言ったらきついかもしれませんが、そういうものになって生み出したものというのは常識でございます。大都市で地価暴騰が始まった八五年ごろからバブル崩壊の九〇年までに地価は約三倍、この間、都銀、長信銀十九行の不動産、金融、保険、建設業向けの融資残高は四十三兆円という数字が出ております。物すごい規模であります。特に共犯としてバブルに踊ってきたのは銀行業界とゼネコンであることは、よく御存じのとおりです。今、その後始末も共同でやっているといいますか、そういう事態になっているということも御存じだと思うのです。  例えば、飛島建設への富士銀行の強力なてこ入れという問題があります。  飛島は、九〇年までに三十七カ所ゴルフ場を建設して、カリブ海での高級リゾート開発、ニューヨークのスタンホープホテル、インターコンチネンタルホテルの買収、運営など、不動産の投機的な買収に次々手を出したのですね。経営危機に陥った飛島にメーン銀行の富士が副頭取を会長に送り込んで三度の再建計画を策定して、その結果、グループの負債の大半を棒引きにして本体を生き残らせるというふうなことが言われているわけでございます。その結果、金融機関が新たにこうむることになった損失は四千七百億円というふうにも言われていて、膨大なものでございます。  銀行と大手ゼネコンは共犯者としてバブルをつくり出してきたけれども、今もまさに一心同体でこれをやっているわけですね。飛島以外にも、大手、準大手と言われるゼネコンに次々と銀行幹部を送り込んで経営再建を進めている。元第一勧銀取締役の立松さんという方、今はハザマの副社長さん、私は銀行による支援の証拠品でございますというふうにも言っていらっしゃるような状況です。  ですから、こういう委員会ができますと、お互いに利益を得るような、談合的と言ったら失礼かもしれないけれども、そういうやり方が行われる危険性を私は感じてしょうがないわけであります。そういうことはない、こういう今の状況の中でそういう事態にはならないということが言えるのでしょうか。そこのところをお答えいただけますか。
  289. 柳沢伯夫

    柳沢国務大臣 今委員はいろいろな具体的な事例をお取り上げになられて質疑をなさったわけですが、私は、これらの具体的な事例について云々するという能力も立場でもない、このように思っておりますので、それを離れて一般論として御質疑にお答えさせていただきたい、こう思います。  私どもが今度のスキームでやらんとしていることは、要するに債務者、債権者ともにお互いにメリットがある、債務者の方も、一定の債務を免除してもらう等のことによって自分たちの企業再建を図る、そして債権者の方も、その企業再建という中長期的な目標を達することによって、残余の、多分残余の債権があるわけですが、そういったものについての回収の機会、弁済可能性というものが高まっていく、こういうことを考えているわけであります。  しかも、その合意というのは、例えば調停でございますと調停委員会が介在するわけでありますが、その調停委員会が見届けるところの合意というのは、あくまで公正、妥当、遂行可能でなければならない、こういう法的な枠組みを持っております。したがいまして、その結論においても、いたずらに一方的な利益を供与するとか、あるいは隠れたいろいろな取引を行うとかというようなことは、公正さ、妥当さといったようなことできちっとチェックされるものだ、こういう仕組みになっていることをぜひ御理解賜りたいと思います。
  290. 春名直章

    ○春名委員 時間が来ましたので、またの機会に議論できればと思います。  以上で終わります。ありがとうございました。
  291. 相沢英之

    相沢委員長 これにて春名君の質疑は終了いたしました。  次に、秋葉忠利君。
  292. 秋葉忠利

    秋葉委員 社民党の秋葉でございます。  質問通告の中には入っておりませんが、最初に宮沢大蔵大臣に、きょう入ってきたニュースですが、ニューヨーク株の大暴落というニュースが入ってきておりますが、こういったことについてどういうふうにお考えになっているのか、まずその点についてお考えを伺いたいと思います。
  293. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 十分な情報がございませんので、むしろ秋葉委員の方がお詳しいのではないかと思いますけれども、グリーンスパンが何度も何度も警告をしておりました事態が、それも余り急激にとも申しませんが起こっている。恐らくこれで最高値から二割ぐらいの下落になっておるかと思いますが、たびたび警告がございますから、何かパニックになるとかいうことは多分ないのではないか。  いずれにしても、ロシアの行く末がまことに、政治的にもともと、わからないことになりましたので、主としてそういうことでちょっと先が見えなくなっておるということではないかと思っております。
  294. 秋葉忠利

    秋葉委員 今のお答えの中に示唆的に含まれていたことでございますけれども、よく総理初め、これは橋本内閣時代から一つの目標として掲げられていたことですが、日本発の世界恐慌は起こさないんだという言葉がよくございました。  あたかも、そのことが囲えば今回の不良債権処理の大目的であるかのようなとられ方をしておりますけれども、ニューヨーク株の動きを見ても、必ずしもそれが日本発かどうか、ロシア発かどうかというところが大事なのではなく、そもそも世界的に連鎖をしているこのシステム全体をどう運営するかというところが大事な点なのではないか。それをあえて日本発というところに結びつけてしまうというところに、少々視野の狭窄といいますか、そういった傾向が見えるのじゃないかと思いますのが一点。  それからもう一点は、かなり日本の金融状況が悪いという認識、これはもう世界的に共有されているところですけれども、そこで、もう一歩進めて、仮に日本状況がもっと悪くなった場合、大手の破綻が続いたような場合にも、問題なのは、そのこと自体を、今おっしゃったニューヨークの株も事前にそういった注意があり、それに対するある程度の、ある程度といいますか、十分なと言った方がいいのかもしれませんが、準備があればパニックは避けられるといった点。  これが実はハーバードのガルブレイス教授の長い間主張されてきたことですけれども、要するに、仮に恐慌と言われる状態が起こったにしろ、パニックを避けることによってその先の展望を図ることが大事である、こういうふうにおっしゃっているわけですけれども、その点が図らずも今の宮沢大蔵大臣の御答弁の中に含まれていたような気がいたしますが、その二点について御感想を承れればと思います。
  295. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 もともと日本がこういう経済状況でありますことが東南アジア等々周辺に深刻な影響を与えておりましたことは御承知のとおりですが、アメリカは好景気でありますために、直接その影響は、最近になって大分いろいろ話が出てまいっておったところでしたつそこへたまたまロシアの問題が起こりましたので、ここであちこちで連鎖し合っているというふうに申し上げるのが適当ではないかと思っております。  それから、確かにガルブレイスもそういうことを言っておりますのを気がついておりますが、昔と違いまして、失業とかいうことについてはセーフティーネットがかなりできておりますし、預金者の保護も制度がございましたりいたしまして、昔のようなパニッキーなということは多分避けられるであろう。しかし、そうは申しましても、正常な経済運営が当分妨げられるということはどうも避けられないように思います。
  296. 秋葉忠利

    秋葉委員 ありがとうございました。  ともかく状況がかなり深刻であるという認識は世界共通だと思いますが、それほど世界的な影響がある事態について、だから公的資金を導入するのもやむを得ないという議論になっているわけですが、その前段として、それほど社会的影響が大きい、例えば金融機関経営を預かっている皆さんの経営責任をもっと厳しく問うべきではないかといった声が非常に強い。今の日本の世論を考えても、そういった点があると思います。  その一環として、情報の開示ということですね。これはたびたびお答えを承っておりますけれども、大蔵大臣もこの情報開示について余り積極的ではない。二の次、三の次の問題として考えていらっしゃるような気がいたします。  例えば、私は、経営者責任の一環として、長銀なら長銀、もっとまともにこの情報開示の努力をすべきではないかという気がいたします。昨日の参考人の答えを聞いても、自分たちが当事者であって、その当事者が一生懸命頑張って現状を打開しようとしているんだというその意気込みがほとんど伝わってきませんでした。  そこで、具体的にお答えいただきたいと思うのですが、例えば、長銀なら長銀、これは融資先が一万二千件か何かあるということなんですけれども、その融資先の一つ一つについて、例えば国会で頭取がその一つ一つについて全部説明をすると、私は百時間というふうに概算をいたしましたけれども、百時間でも時間は足りないと思いますが、この場で一つ一つ国民に向けてきちんと説明をし、その結果を官報に掲載をする。その努力を通して、その融資先の例えば融資額、利息、返済状況あるいは事業の状況等について細かく報告をする、その姿によって実は国民的な納得やあるいは理解が得られるのではないかと思いますけれども。まあ、それは極端だとおっしゃるのであれば反論もいたしますし、また別の方法を考えてもいいんですけれども、そんな努力も行われていない。横着な姿勢で、自分たちは何もやらなくても税金を使って当然だというような姿勢が、表に裏に見えている。そういう状況で本当に今の状況を打開できるというふうに大蔵大臣はお考えでしょうか。
  297. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  長銀につきましては、住友信託との合併を前提とした抜本的な不良債権処理に伴いまして過少資本となることに対処するために公的資金の導入を申請することになるわけですが、金融監督庁といたしましては、私どもが保有する長銀関係の情報開示につきましては、国民の理解が得られるよう努力しなければならないということはひしひしと感じております。  ただ、もちろん、これは開示いたしますと取引先への影響とか信用秩序の維持に与える影響というものもございますので、これはこういった点もよく考えながらこれからどうするかということを考えてまいりたいと思いますけれども、差し当たり資本注入の申請がこの金融危機管理委員会になされますので、この委員会の場におきましては、私ども検査で把握した情報等につきましては、できる限りその審査会の判断にコントリビュートしていきたいというふうに考えております。
  298. 秋葉忠利

    秋葉委員 大変不満足な答えなんですが、要するに情報開示の意味がまるっきりわかっていないんではないでしょうか。さらには、私が申し上げているのは、金融監督庁がこれは命令を出してもいいと思いますけれども経営者側が自分たちが今までやってきたことをすべて報告をして、それをすべて国民に明らかにした上で国民の判断を仰ぐというのがこういった問題についての基本的な原則だと思いますけれども、その原則がまるっきりわかっていない。国民感情からいえば、これはとんでもない話なのです。  例えば、今一万二千件の融資先について報告をしろと言いましたけれども、先ほど言った百時間というのは、一日十時間国会を開いて十日間、それだけ使ったとしても、一つの案件について三十秒の時間しかとれません。でも、これをやることで六千億の公的資金の導入をするとすれば、一時間当たり六十億円ということになるんです。いいですか。銀行のやめた頭取が九億円退職金をもらっている。それで、今度は税金から一時間当たり六十億円ともなるような金額を、これを出すというときに、銀行の責任者、経営者が全く出てこない、出てきて説明をしようともしない。横に寝ていて六十億円ぼろもうけと言ったら言葉が過ぎるかもしれませんけれども、そういう感情を国民は持っている。そういう国民感情があるときに、金融監督庁の長官がまるっきり情報開示に理解を示さない、全くわかっていないということで、金融監督庁の職務そのもの、非常に怠慢じゃないかと私は思います。  金融監督庁の目的はそもそも何なのか、機能や目的は何なのか、第三条、金融監督庁長官、改めてその目的を簡潔に述べてください。
  299. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  預金者の保護、金融システムの安定ということだと思います。
  300. 秋葉忠利

    秋葉委員 そうじゃないでしょう。第三条、一番最後のところに書いてあるのは、「これらの民間事業者等について検査その他の監督をし、及び証券取引等の公正が確保されるようその監視をすることを主たる任務とする。」監視でしょう。国民の立場に立ってきちんとした監視をすることが義務だと書いてあるじゃないですか。金融の安定はその結果としてあらわれることであって、主たる目的は、国民の立場に立った監視です。だから、監視監督だから監督庁という名前がついているのでしょう。そこを忘れている。その点がこの委員会における答弁においても非常に何度もあらわれていますので、あえて注意を喚起しますが、文書としても同じような任務怠慢を犯しているじゃないですか。  例えば、「住友信託銀行日本長期信用銀行の合併について」という文書がございます、八月二十一日の文書。この中で、「両行の合併構想の具体化を着実に進展させるものとして、評価したい。」これは判断ですね。監督ではありません。それから、既にこの問題について、第四項では、「当庁としては、」「申請があれば適切に対応する予定である。」ということではないのですが、この問題について、「わが国金融システムの安定に資するものであること、」と、既に長銀についての検査が終了していない段階で価値判断を下している。これも任務とはまことにそれたことを言っているわけですし、事実に基づかない判断です。  しかも、この中には、この合併がきちんと法律にのっとって、しかも経済原則にのっとって、国民の立場から納得がいくものであるということを、金融監督庁としてきちんと監督をしますという言葉一つも入っていない。この合併がいいか悪いかなんというのは、それは別の、例えば大蔵大臣に任せておけばいい、あるいは総理大臣に任せておけばいい、よくはないんですが、仮にそういうふうに言っておきます。  金融監督庁が行うべきは、そういった大蔵主導で行われる合併について、国民の健の利益が本当に損なわれないかどうかということを検査監督する立場じゃありませんか。その金融監督庁が、これを歓迎する、安定化に資する、検査もしないでそういうことを言って、だれがそれでは一体国民の立場を守るんですか。だれが金融システムにおける法的な枠組みを守るんですか。そこのところが全くわかってないんじゃないですか。
  301. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  監督行政がどういうものを含むかということはいろいろ御議論があるかと思いますが、少なくとも私どもには、銀行法や長期信用銀行法に基づきまして、住友信託銀行とそれから日本長期信用銀行の合併を認可するという権限を与えられているわけでございます。  この合併は一朝一夕にして認可できるものではなくて、それに至るまでにさまざまな手続をクリアしていかなければならないわけでございまして、その中身は一言にして申し上げることはできませんが、その手続の中で、今回、両行がこういった形で合併に向けてかなり前進したということがうかがえるわけでございます。  私どもは、監督というのは単に日常やっていることを見ているというだけじゃなくて、そういった意味で、両行が合併に向けた話し合いをしているということにつきまして折に触れていろいろ御相談を受けていたということもございまして、そういった意味で話が進んだということを評価したということを申し上げさせていただいたわけでございます。
  302. 秋葉忠利

    秋葉委員 この委員会でも何度も指摘されているような不明朗な問題がたくさんあるわけじゃないですか。何も日常的な問題を監督しろなんと言っているわけではありません。そうではなくて、この合併というのは金融システムの根幹を揺るがす問題だという認識、これは皆さんお持ちですけれども、その合併なりあるいは処置をするに当たって、適法に、そして、法の精神に沿って、国民的な利益が損なわれないように、権利義務関係がきちんと遂行されるように勘案し、監督し、監視をするのが金融監督庁の仕事だということですから、答えを少々ずらしてしまっているので、この点についてはまた改めて問題提起をしたいと思います。  日銀とそれから預金保険機構の皆さんに来ていただいておりますので、これは同趣旨の質問なんですけれども、この委員会あるいは予算委員会等での答えを伺っておりますと、預金保険機構、日銀とも、これは金融監督庁も含めてですけれども、何か大蔵省の非常によき応援団になってしまった。日銀は、独立したにもかかわらず、相変わらず大蔵に依存しつ放し、寄っかかりっ放しという感じがいたします。預金保険機構についても、例えばその任務の一つである金融管理審査委員会の決定等にしても、三月の決定が誤りであったということは事実がもう既に証明をしております。  そういったことがなぜ起こってしまうのかという事態を考えたときに、実は、この日銀も預金保険機構も両方とも大蔵省所管の認可法人である。ですから、定款を変えるに当たっても、あるいは役員をかえるに当たっても、大蔵省の許可が必要であるということになっています。これがやはり私は、現在の金融の枠組みの中で非常に大きな問題であるというふうに考えております。  これは別に抽象的に言っているのではなくて、NPO法案というのができて、皆さんも御存じだと思いますけれども、このNPO法案の中で何が一番大きな問題だったかというと、どの省庁を所管省庁にするのかというのが非常に大きな問題になりました。NGO側から考えると、所管省庁の権限が余りにも強いために、どの所管に入るのかということによって自分たちの独自性が損なわれる、そもそも官庁が所管をするということ自体がおかしい、これが自主的な活動をするNPO、NGOの基本的な考え方でありました。  日銀、預金保険機構はもっと大きな組織だからそうではないとおっしゃるかもしれませんけれども、手短に日銀総裁それから預金保険機構の理事長に伺いたいのですけれども、やはりこういうところのかせがなくなれば、もう少し大蔵省から独立した、本来の意味の日銀あるいは預金保険機構の機能が果たせるのではないかと思いますが、どうお考えですか。
  303. 速水優

    ○速水参考人 秋葉委員には、日銀法改正のときに大変御貢献いただいたというふうに伺っております。  確かに、認可法人でございますけれども、四月一日施行になりましてから、政策面での独立性というのは非常に強くなってきたというふうに思っております。  今問題になっております長期信用銀行あるいは住友信託銀行の合併問題につきましても、日本銀行としては、信用秩序の維持という立場で、既に私自身も前内閣のときから、長銀の救済ということもさることながら、金融システミックリスクの回避という立場からこの問題を考えてきたつもりでございます。その討議の過程において、政府とはもとより密接な意見交換をしてきております。意見交換を踏まえて、政府との間で共通の認識に至るということはこれまた自然ではなかろうかと思います。  金融システムに関する私どもの見解は、あくまでも日本銀行自身のものでありまして、政府に配慮して中央銀行としての考えを曲げているということは全くございません。  先ほど御指摘のありました不良債権の自己査定、自己開示、早期償却につきましても、六月のときから私はこのことを申しております。言い続けてきておるつもりでございまして、一つの選択肢としてこれを早くやらなきゃいけない。アメリカでも、SEC基準は守られておりますけれども、例えばJPモルガン等は、年報で自己開示をどんどん行って、それによって信認を保っている、強めているということを承知しております。そういうふうになっていくべく努力してまいりたいと考えております。
  304. 松田昇

    ○松田参考人 お答えをいたします。  先生御指摘のとおり、預金保険機構の一般的な監督権限は大蔵省にございます。私自身、大蔵大臣によって任命されておりますし、定款その他基本的な枠組みに関する事柄は認可を要するということになっております。  しかし、個々の業務の運営に当たっては、私、理事長になって以来、大蔵省の意向を受けてコントロールされながら業務の執行をしたという覚えは一切ございません。  特に、先ほど御指摘のありました金融危機管理審査委員会の仕組みでございますけれども委員の中の三名は民間の方で、これは両院の同意を得て内閣が任命するということになっておりますし、各委員は、法律にも書いてございますが、独立して職務を執行すると書いてございます。  したがいまして、私は、大蔵大臣から任命されておりますが、委員会の席では全く独立して職務を執行しておりますし、各委員とも全員一致で重要な事項を決めておりますので、先ほどのような御指摘は当たらないのではないかな、そのように御理解いただきたいな、このように思っております。
  305. 秋葉忠利

    秋葉委員 質問時間が終わりましたのでこれで終わらせていただきますが、今の問題提起は、実はもう少し深めて続けていかなくてはならない問題ですので、また別の機会に質問したいと思います。  どうもありがとうございました。
  306. 相沢英之

    相沢委員長 これにて秋葉君の質疑は終了いたしました。  次に、笹木竜三君。
  307. 笹木竜三

    ○笹木委員 無所属の会の笹木竜三です。  前回できなかった検査体制のことについて、きょうは質問したいと思います。  今、例えば国内の金融機関の方にお話を聞いたり、あるいは外資系の金融機関の方にお話を聞いたりしているわけですけれども、この間のいろいろな政府が打っている手を見ましても、一体不良債権の全体像について本当に把握した上で手を打っているのか。いや、そうじゃないのだろう。あるいは各金融機関実態についても、どれだけ把握をしているのだろう、それをしっかり把握して手が打てているのだろうか。わかっていて隠しているのならまだいいのだけれども、そうじゃないのじゃないのだろうか。そういう意見が非常にたくさん、外資系の方からも聞かれます。やはり検査体制が非常にお粗末だからそういうことになっているのじゃないかという面も非常に強いと思いますので、そのことをお聞きしたいと思います。  これは、いろいろな国内の金融機関あるいは銀行の方とお話ししていますと、かつて、かつてといってもそんな大昔じゃないです、ついこの間までの話です。検査が入る。日もわかっている。事前に、余り見られたくない資料は移す。あるいは、お土産が必要だから、この点は見つけてもらって、この場面で頭を下げよう、そんなシナリオまでできている。あるいは聞き取り。三十分ぐらいで大体十社ぐらいやる。事前にフォームはつくってあるわけですけれども、そういうような聞き取りがほとんどの検査実態だ。これではまず実態はわからないでしょう、そういう意見が非常に多いわけです。  この金融監督庁検査は、事前に日にちがわかっている、あるいは今言ったようなこんな状態は変わってきているのかどうか、そのことをまずお聞きをしたいと思います。
  308. 日野正晴

    日野政府委員 検査の日時はあらかじめ予告いたしております。
  309. 笹木竜三

    ○笹木委員 それで、アメリカの場合には、例えば二、三カ月常駐して、その検査官が勝手にファイルなんかも見て歩く。あるいは金融が非常に悪かったときには、でかい銀行に対しては一年間ずっといて調べている、そういうこともたくさんあったと聞きます。こういったもつと濃密な検査にする、そういうような前提はあるのでしょうか、確認したいと思います。
  310. 日野正晴

    日野政府委員 お答えいたします。  確かに、今お話がありましたように、米国におきましては、銀行検査官を常駐させてその検査に当たらせているというふうに承知しております。ただ、我が国の場合におきましては、検査官を常駐させることが現行法上可能かどうか、あるいは私企業の業務活動の妨げとならないかどうかなどの幾つかの問題点があろうかと思います。  しかし、これからその検査を充実していかなければならないということは確かでございますので、いろいろこの金融検査の充実強化には努めてまいりたいと考えております。
  311. 笹木竜三

    ○笹木委員 今、民間の金融機関の仕事の邪魔になるんじゃないかとか、そういうお話もありました。公的資金もつぎ込んで何とか金融を再生させよう、その前提で今議論をこの委員会でもしているわけですけれども不良債権の問題等、非常に把握がされていなくて、後手後手、小出し、そうなっているんじゃないか、そういう批判もたくさんあります。  こういう現状を踏まえて、今監督庁の方からはああいうお答えがあったわけですけれども官房長官にお聞きをしたいわけですけれども、今お話ししました、もう資料も事前に移している、どこで頭を下げるかも決めている、こんな情けない検査の体制を改めるために、もっとしっかりと常駐もして調べていく、そういうようなことを検討するつもりはないのか、官房長官にお聞きをしたいと思います。
  312. 野中広務

    ○野中国務大臣 お答えをいたします。  委員がただいま御指摘になりましたようなことが過去にあったのかどうか、私は残念ながらよう確認をいたさないわけでございますけれども、少なくとも金融監督庁が新しくスタートをした意味は、過去のいろいろな経緯にかんがみてスタートをしたと思うわけでございます。それだけに、金融監督庁が持つ使命はまことに重いと思うわけでございまして、今後、その責任の上に立って、金融監督庁の機構、人員、各般にわたりまして金融監督庁としての機能が果たせるように、私どももバックアップをしてまいりたいと考えております。
  313. 笹木竜三

    ○笹木委員 それと、これは実際の金融機関に働く方々が言われるわけですけれども、果たして役所の方が今の金融の最先端のいろいろなことについて理解をされておられるんだろうか、かなり疑問だ、そういう意見もたくさんございます。  いろいろ調べてみますと、この検査体制、例えば去年の段階でいうと、百六十五人の金融監督庁検査部の中で、民間の方はわずか五人、公認会計士がわずか五人です。大蔵省から百四十九人、あとも他の省庁からの出向者。これで本当に検査になっているんだろうか。アメリカが、金融が非常に悪い時期に一万人を超える検査官にしたわけですけれどもへ二千人以上増員をしたわけですけれども、これはほとんどが民間の銀行での職務をやっていた方の退職者だったと聞きます。  来年度に向けて、検査官の増員と言われていますけれども、あるいは民間の方も積極的に登用をする、臨時とかそういうことですると言っておられますけれども、もうお役所からの方はたくさんおられるわけですから、例えば全部民間から採用する、そんなことも含めてかなり抜本的に変えないと、小出し、後追い、この現状はとても変わっていかないんじゃないかと思うわけですけれども、大蔵大臣、そのことについて御意見を伺いたいと思います。
  314. 宮澤喜一

    ○宮澤国務大臣 過去においていろいろありましたことは私も存じておりまして、遺憾なことだと思っていますが、確かに私は変わってきたと思います。これはやはり、昔同じ役所にいたからいつまでたってもというふうにひょっとお思いになるかもしれませんが、そういうものじゃございませんで、やはり新しい機構が出て、新しい長官のもとに仕事をすると、本当に、本当に変わりつつあります。世の中もきっとそれを求めているんだと思いますが。人員的には非常に不自由をしておられると思いますし、もっと民間の人が来られたらいいと思いますが、確かに私はこれは変わっていくと思って見ております。
  315. 笹木竜三

    ○笹木委員 もう時間が終わったみたいですからこれで終わりますけれども、例えば地方銀行検査も、実態は大蔵省の方がやっている実態があります。ぜひ民間の方を充実して、検査体制を充実していただきたいと思います。それなしては、全体像も把握できない、不良債権の対策も常に部分で、後追いになる、そう思っています。よろしくお願いしたいと思います。  質問を終わります。
  316. 相沢英之

    相沢委員長 これにて笹木君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二日水曜日午前九時五十分理事会、午前十時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時七分散会