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1998-10-02 第143回国会 衆議院 環境委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年十月二日(金曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 北橋 健治君    理事 鈴木 恒夫君 理事 萩山 教嚴君    理事 福永 信彦君 理事 岩國 哲人君    理事 佐藤謙一郎君 理事 田端 正広君    理事 武山百合子君       愛知 和男君    岩下 栄一君       大野 松茂君    桜井 郁三君       戸井田 徹君    村上誠一郎君       山本 公一君    小林  守君       冬柴 鐵三君    前田  正君       西田  猛君    藤木 洋子君       中川 智子君  委員外出席者         参  考  人         (横浜市立大学         理学部教授)  井口 泰泉君         参  考  人         (環境総合研究         所所長)         (環境行政改革         フォーラム代表         幹事)     青山 貞一君         参  考  人         (北里大学薬学         部客員教授)  林  裕造君         参  考  人         (社団法人日本         環境衛生工業会         技術委員会委員         長)      千葉 佳一君         環境委員会専門         員       鳥越 善弘君     ――――――――――――― 委員の異動 十月二日  辞任         補欠選任   中村 鋭一君     西田  猛君   土井たか子君     中川 智子君 同日  辞任         補欠選任   西田  猛君     中村 鋭一君   中川 智子君     土井たか子君     ――――――――――――― 九月二十九日  琵琶湖の総合保全に関する陳情書  (第一四七号)  環境ホルモンヘ対応強化に関する陳情書外二  件  (第二〇〇号) は本委員会参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  環境保全基本施策に関する件(有害化学物  質・環境ホルモン及びダイオキシン問題)      ――――◇―――――
  2. 北橋健治

    北橋委員長 これより会議を開きます。  環境保全基本施策に関する件について調査を進めます。  本日は、有害化学物質環境ホルモン及びダイオキシン問題について参考人から意見を聴取いたします。  御出席いただいております参考人は、横浜市立大学理学部教授井口泰泉君、環境総合研究所所長環境行政改革フォーラム代表幹事青山貞一君、北里大学薬学部客員教授林裕造君、社団法人日本環境衛生工業会技術委員会委員長千葉佳一君、以上四名の方々でございます。  この際、御出席参考人各位一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお聞かせいただき、調査参考にいたしたいと存じますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  次に、議事の順序でありますが、井口参考人青山参考人林参考人千葉参考人の順に、お一人十分程度御意見をお述べいただき、その後、委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  なお、念のため申し上げますが、発言の際は委員長の許可を得ることになっております。  それでは、井口参考人にお願いいたします。
  3. 井口泰泉

    井口参考人 私は、内分泌撹乱物質あるいは環境ホルモンと言われているものについて、少し意見を述べさせていただきます。  この環境ホルモンあるいは内分泌撹乱化学物質といいますのは、今までは毒性とか発がん性の面から規制されているというような物質がありますけれども、そうではなくて、今は一応安全であるということで使われ、環境中に放出されているものがたくさんあります。その中に、ホルモン、特に女性ホルモンあるいは男性ホルモンの働きを邪魔するといったような化学物質が偶然見つかってきまして、今それが約七十種類ぐらいあるということです。  それがなぜ問題かといいますと、胎児期あるいは新生児期というような発生の途上に来ますと、生殖影響が出るんではないか。その結果として、人間ですと、成熟後、ですから二十過ぎぐらいに影響が出てくる。それが生殖に絡みますと、子孫を残すことが困難なことになるのではないかという仮説があります。  ですから、その仮説仮説のまま終わればいいんですけれども、そういう化学物質をもう少しきちっと調べ、それが人体影響に出てこないようにするにはどうしたらいいかということと、特に人体影響だけは強く調べられるんですけれども環境にいる生物に対しては、今まで割と野方図に見過ごされてきたところがあります。  特に水系、水の中にすむ生物ですと、卵をそこに産んでしまいますから、川の水あるいは海の水に化学物質が流れ込むと直接影響してしまいます。それから逃れるすべがないというようなことで、環境中にいる生物に対しても少し目を配らなければいけないということになります。  こういう問題は、降ってわいたような感じになっていますが、かなり古い化学物質の問題です。内分泌撹乱という観点では、一九九一年からアメリカで始まりまして、九七年にはホワイトハウス主催ワシントン会議が行われて、世界で協調しましょうというようなことが起こっています。  その化学物質でどんなことが起こっているかというのは、まだ因果関係がはっきりしたものは、そうたくさんありません。  例えば、イギリスの川で、化学物質ノニルフェノールというような界面活性剤影響、あるいはひょっとしたら人体から出るホルモン影響かもしれませんが、それで魚の雌雄同体、雄と雌がまざったようなコイ科の魚が見つかったとか、あるいはそこにニジマスを置いておきますと、雄の魚に雌のたんぱくが出てくるというようなこととか、あるいはフロリダのワニ、ここは農薬汚染されたということがわかっていますけれども、そのワニ生殖異常が起こっている。もうその湖では将来ワニは育たないというようなこともあります。  それから、日本では、海産巻き貝イボニシという貝がいますけれども、あるいはイボニシ以外にも三十八種類巻き貝の雌が雄のようになってしまうというようなことも見出されています。これは原因がはっきりしていまして、船底塗料、要するに船の底に塗っているトリブチルすずあるいはトリフェニルすずというすず化合物のせいである、これが非常に微量でも作用するということがわかっています。  人に影響があるかといいますと、人体影響というのはまだわかりません。人体影響がわかるようですと、どの物質がということですぐ規制ができるんでしょうけれども、こういう化学物質は、特に毒性あるいは発がん性という観点で考えられなかったことですので、一体何が起こっているかということをまだ、疫学的に調べるというような状況です。  そういう実態がはっきりしないような化学物質をこれからどうするかということで、欧米それからOECDでも、一緒にまず試験法をつくろうというようなことがあります。今までは人間に対する影響試験法だけはあるんですが、動物に対する試験法カエルとか魚とか鳥とかを使った試験法も組み込む。今までは発がん性それから急性毒性といった試験法はあるんですが、自分の体の中のホルモンのように働くというようなことを試験する方法がきちっとありませんので、それもつくろうということが起こっています。  これから何が必要かというのは、今、各省庁研究班がありまして、とにかく実態調査をしてみようということですね。環境中の濃度はどれぐらいあるのか、あるいは人体にどれぐらい内分泌撹乱物質というのが取り込まれているかというようなことですね。それに対して疫学調査を進めながら、人間の場合には全体的にどういつだことが浮かび上がってきているのか、あるいは野生生物にどんなことが起こっているのかというようなことを見ています。  環境中の濃度がわかれば、その濃度を使ってもう一回実験をしないとなりません。その濃度で、例えば魚の卵から、あるいはカエルの卵からどういうことが起こるのかということもわかってくるかと思います。  そういう実験というのは非常に長くかかります。毒性がなければ流してもいいかというようなこと、そのままいきますと、化学物質は、急性毒性がなければかなり環境に出していいということになっていますから、出してしまった後にはなかなかこれは取れません。今までのPCBでもそうですし、夢の化学物質だったわけです、壊れないから非常にいいと。ところが、一たん出たものを、今、これはちょっとまずい、でも取るすべがないんですね。  ですから、使って環境に出る前に抑える。どんなに安全だと思われても、環境中には余り出さないような方策を立てなきゃいけない。ですから、そういう方向で、人体影響がわかった物質は積極的に規制する、ほかのものは何もしないというのでは、後になって何かが起こったときにもう対応ができないということになりますので、環境に出す量をとにかく減すという方向性が必要かと思います。  それから、日本だけに起こっていることではなくて、欧米でもこういう問題がありますので、日本での実態調査あるいはアメリカでの実態調査というような国際共同研究をすれば、データ互換性もありますし、物質によっては日本だけが対応しても無理なことがあります。大気に出るようなものですと、東南アジアで使えばこれが日本の方に風で運ばれできます。ということで、国際的に化学物質の量を減らしていこうという方向が必要かと思います。  こういうことで、今各省庁研究班で進んでいることもありますし、それから国際的な連携、個人的にはいろいろありますけれども、それを国として行っていただければこれは非常に進むと思います。個人でやることというのは限界があります。ですから、これを、アメリカでは環境保護庁なんというのが積極的にやっていますし、それからイギリス環境庁かなり積極的にやっています。そういうところと定期的に話し合いをしながら、それぞれの国情が違いますから、物質もまた違うこともあるでしょうし、そこで出てきたものを総合してやれば、各国が同じことを同じお金を使ってやることはない。ですから、お金共同で使えるし、それからデータもできる。  全体で、世界化学物質を抑えることができれば、私の主張は、化学物質はすべて悪くて全部抑えなければいけないということではないのです。これはうまくつき合うことが必要です。ですから、体の中に入らないような使い方が一番望ましい。  では、どうするか。使っている材料消費者にわかるようにするのが一番いいかと思うのですね。そうしますと、これは私は使わない、私には関係ないから使うというような選択もできるかもしれません。今は、皆さんがお使いになっているものが一体何でできているかわからない。プラスチックということはわかる。では、その材料は何だ、使い方によっては中から少し出てくるかもしれない、そういう情報すら今ありませんので、そういったところがもう少しわかってきますとパニックにならないのですね。今はわからないから不安が非常に広がっているというところがあるのです。  もう一つは、内分泌撹乱物質というのは、毒性、週刊誌的には猛毒であって、超微量作用して体内に蓄積するというようなことがありますけれども、そういう物質もありますけれども、そういうのはもう規制されています。そうじゃない、ある程度の許容量はあるのだとか、そういったことも、これはコミュニケーション、明らかになった情報をちゃんと出していくということが必要かと思います。  いずれにしても、化学物質の総量を減す、安全であろうが危険であろうが、とにかく環境に出す量をなるべく少なくするような政策が必要かと思います。  以上です。(拍手
  4. 北橋健治

    北橋委員長 ありがとうございました。  次に、青山参考人にお願いいたします。
  5. 青山貞一

    青山参考人 青山でございます。  きょうは、発言機会を与えていただきまして、ありがとうございます。  私からは二つの資料をお出ししております。一つは、これからお話しします発言の要旨、もう一つは、それの裏づけになりますデータであります。  私は、学術といいますか、大学にもいっぱい行っていますけれども、どちらかといいますと、実務の現場で、国、自治体政策立案、それから地方で実際ダイオキシン問題等でいろいろと困って調査されている、市町村といろいろと議論している住民団体、そういう方々から呼ばれてお話しするというのが私のやっていることであります。  それで、時間も限られておりますので、レジュメに沿って一つ一つ申し上げたいと思います。  その第一は、私はダイオキシンの問題についてきょうはお話ししたいと思うのですが、課題一といたしまして、オランダダイオキシンごみを燃やして出ることがわかって昨年でちょうど二十年になりますけれども、二十年目にしてダイオキシン規制国会で通りまして一昨年の十二月から施行され、ことしの十二月一日から具体的に動くことになっています。しかし、これは御承知のように、大気、排ガスとして環境中に出るダイオキシンについての規制であります。  皆さん承知だと思いますけれどもごみを燃やして出るダイオキシンの約八〇%は、実は焼却灰飛灰として出ているわけです。それは、最終的に土壌汚染になっていくわけでありますが、昨年の法律はあくまで大気ということからしまして、今後土壌、それから水におけるダイオキシン規制排出規制濃度規制等ありますけれども、そういうものに向かわなければいけないというふうに思います。これは、ドイツとかオランダとかアメリカとか、ダイオキシン規制先進国一つ動向であります。ドイツもかなり厳しい土壌規制を行っているところであります。  二つ目は、私は所沢市というところで六年ほど前仕事を頼まれまして、当時、このまま産業廃棄物を燃やしていったら将来どうなるかということを予測しまして評価しました。さらに、その評価結果をもとにさまざまな対策を出したわけでありますが、残念なことにそれが公表されたのは昨年の春であります。その結果、幸か不幸か私たちの行いました予測がぴったり当たっちゃっていまして、それで出たときに、くぬぎ山という産業廃棄物が集中する施設、そのところの風がちょうど北北西から南南東に吹いていまして、その風下に当たる地域中心にかなりパニックに近いような状態が起こったわけです。  私ども報告書がもっと早く公表されていればそういうことはなかったと私は確信しておりますが、あそこは産業廃棄物の問題でありまして、産業廃棄物は実は民間事業者がやっておりまして、自治体が行う一般廃棄物のようになかなか管理規制がうまくいきません。その結果そういうことが起こっているのが一つであります。  もう一つは、施設が集中しております。十五あります。それが累積的な影響風下地域にもたらしている。昨年の法律は、全国平均的なダイオキシン大気汚染規制であります。そういう累積的、集合的な影響についての指針とか規制あり方というのが一つ必要になるのではないかと思います。  三つ目に、実は、一昨年、昨年と国会で相当ダイオキシン問題の審議がありまして、省庁予算が膨大につきました。ただ、その大部分の予算というのは実ははかることに向けられております。データはかなり出てきましたけれども、そのデータをどう使うのか、解析して対策に結びつけるというのはほとんど各省庁これからであります。先進国は、当然はかる前にどうそのデータを使うか、政策、計画にどう生かすかということを考えてから調査を行うわけです。我が国の場合、パニック状態もあったと思うのですが、とりあえずはかっちゃうということで膨大な予算もつけられましたが、御承知のように談合疑惑も起こっています。  限られた分析業者が、厚生省外郭団体の中で、精度を高めるという名のもとに価格のカルテルも結んでいたという疑惑がありまして、既に二十数社に対して公正取引委員会が入りました。その後の環境庁の入札では価格は下がりましたが、しかし、そういうせっかく健康、生命を考えて国が予算をとったものがそういうところでそういうふうに使われるという現状は、私は非常にゆゆしき問題だと思います。  ですから、はかることも重要ですが、その後を考えたはかり方、それからできる限り公正な業者の選定なり調査というものが前提になければ、国民のこの問題に対する要望にこたえられないと思います。  その精度に関しましても、私は、実は私ども会社でもカナダの大手の分析会社と技術業務提携していろいろと見てきましたけれどもアメリカカナダドイツでは、国が中心になりましてダイオキシン測定の方針とか手法を確立し、それを民間にガイドライン化する、マニュアル化しているわけです。  ところが、日本は、一言で言えば業者に丸投げ的な状態にあって、それを厚生省が後でガイドライン、マニュアル化しているということですから、もっとこういう問題に関しての、一兆分の一、オリンピックプールに耳かき半分ぐらいのものを入れるのが一兆分の一ですけれども、そういう分析をするに当たっても国のイニシアチブということが僕は重要だと思います。  五つ目に、焼却施設ばかりがこの一、二年ダイオキシン発生源になっておりますが、実はそれ以外にも、アメリカイギリスを見ますと発生源がいっぱいあります。例えば、塩ビをつくる過程でも出ているとか、アルミの製造プロセスで出ているとか、それから例えば子供が口にしているベビーフードの中にもダイオキシンが入っている、これはワシントンDCから一カ月ぐらい前私のところに届いた情報であります。今まで余りにもごみを燃やすことによるダイオキシンに目を奪われる余り、それ以外のものが日本で余り注目されていないという問題が一つあると思います。  次に、環境ホルモン井口先生がおっしゃられました環境ホルモンの実は六〇%は農薬であります。この農薬ダイオキシン同様、今後市街地にも市街地土壌汚染としても農薬は来るわけですから、それをどうにかしなくちゃいけないという問題があると思います。  七番目に、有機塩素系塩ビ、特に塩ビを燃やしてダイオキシンが出ると言われておりますが、そのものを分別する、もしくは、行く行くは、これを使わなければいいのですけれども、使わないというわけにいかなければ、どの製品にそれが含まれているかということを表示しなければいけないと思います。そうすれば、消費者が買う場合もそうですし、廃棄する場合もちゃんと分別できるわけです。それは国会でも何回となく質問が出たと思いますけれども、やはりそういうことを決定することによって、焼却に伴う問題以前に、相当事前にダイオキシン問題が回避できるというふうに思います。  それから、国際標準、これはWHOがことしの春、日本は一人一日当たり一キログラム当たり十ピコグラムという標準を持っていますけれども、それを一から四にするということを、十分の一ぐらいにする厳しい、値を出しております。日本世界で一番ダイオキシン汚染が激しい国でありますが、基準は一番緩いところにあった。それで、WHOも今後それを厳しくする。絶えず日本規制とか対応後手後手国際機関が言うと、それに伴って検討会を設けて、その検討会のもとに一年ぐらいたってそれを追認するということを繰り返しています。ですから、もっと国際機関動向を先取りすべきだというふうに思います。  次に、最終処分場ごみが最終的に捨てられるところ、そこに焼却灰飛灰が行くわけです。そこカ今までほとんど規制対象になってしなしダイオキシンに関して、そこでの排水処理もされていない。あと、そこから飛んでいく、大気汚染となって再度飛んでいく、再浮遊といいますけれども、それも全く規制対象になっていない。その周辺で最近かなり住民運動が起こっています。ですから、この最終処分場における問題は、大気汚染だけでは無理ですので、土壌、水の規制、一番最初に申し上げたものにつながるかと思います。  それから、ダイオキシン体内に入る上で一番多いのは、食べ物と言われています。食べ物のうち、野菜についてのデータがほとんどございません。ですから、今後、農水省、環境庁、はかると言っておりますけれども野菜、根菜、そういうものについても調べて、どこの農協とかどこの個人ということではなくてもぜひこれは公表していただきたいと思います。  それから十一番目は、これはこの問題に限らないのですけれども、HIVにも通ずるのですが、やはり省庁のところにいっぱいダイオキシン関係した検討会、また審議会委員会があります。それが似たようなことを重複してやっている問題が一つであります。それから、そこでの議論が、議事録がなかなか出てこない、公表されていないものがある。それがゆえに起こっている問題もありますので、ぜひ透明性を高めていただきたい。政策立案審議、きょうのような場はそれだと思っておりますけれども、そのプロセスをできる限り早く国民の前に示すことが混乱を起こさない一つのものだと思っています。  それから、時間がありませんが、環境アセスメント、昨年の春に法律ができました。私もそのとき公述したのですけれども、現在、環境アセスメント項目ダイオキシンが一切入っておりません。それがゆえに、各地でごみ処分場焼却場をつくるときに問題が起こっております。ですから、新法を施行するに際しては、必ずダイオキシンを入れていただきたい。あと地方自治体の条例にもこのダイオキシンという問題を必ず項目に入れていただきたい、入れなければいけないというふうに思っています。  さらに、土地利用規制、非常に高度に汚染されている、例えば能勢とか所沢の一部のようなところには、場合によって、イタリアのセベソのように土地利用規制を暫定的に行う必要があると思います。ドイツとかイタリアでは、五ピコグラム・パー・グラムというものを満たしていない場合には農地として適さないということになっていますけれども、例えば、所沢宮田先生が測定した一番高いデータ、四百ピコ、子供の遊ぶ砂場でも二百ピコというのが出ております。さらに、農地ではまだデータがないのでわからないのですが、五ピコグラムは明らかに超えているはずです。ですから、土地利用をもっとダイオキシンとの兼ね合いでしっかりすべきだと思っています。  それから最後に、厚生省ダイオキシン対策を考えて補助金あり方を昨年から変えました。大規模集合的なものに補助金を出すというふうに変えましたけれども地方では、その大きなものをつくるためにわざわざごみを集めてこなくちゃいけない、もしくはその補助金の半分を自分たちが自前で出せないということで大きな混乱が起きています。ですから、中小規模の炉でも十分ダイオキシン対策をとることは可能だと私は思いますので、再度、そういう中小規模についても補助金が出るような対応をしていただきたいと思います。  以上であります。(拍手
  6. 北橋健治

    北橋委員長 ありがとうございました。  次に、林参考人にお願いいたします。
  7. 林裕造

    林参考人 北里大学薬学部の林でございます。今回はこのような機会をおつくりいただいて、厚く御礼申し上げます。  私は、ダイオキシンによる健康障害環境汚染、それからその対策を考える上で必要な科学的な事項あるいは技術的な事項を五点ほど御説明させていただきます。  まず第一点ですけれどもダイオキシンはさまざまな作用を持つ極めて危険な有害物質ということ。当たり前ではないかとお思いになると思いますけれども、実はこのさまざまな作用を持っているという点に非常に大きな誤解が持たれているものでございますから、あえて御説明させていただきます。  確かに、ダイオキシン発がん性もあるし、奇形を起こすという作用もある、確かにさまざまな作用を持っているのでございますけれども、ここで一つ一つ作用を取り上げてみますと、どの作用も決して明確なものではないということです。例えば、ダイオキシンを体重一キログラム当たり一億分の一、この割合でネズミに食べさせますと、二年間食べさせますと、確かに肝臓にがんができてくるのですね。そういう意味で、確かにダイオキシン発がん性を持っている、かなり強い発がん性を持っているというふうに考えられるのですけれども、人について見ますと、その様子が大分変わってくるわけです。  例えば、高濃度ダイオキシンにさらされた人、この方々をフォローしてみますと、がんの発生状況は、決して特定の部位にがんがたくさん出てくるというわけではないのですね。すべてのがんを全部一緒くたにして計算しますと、通常の人よりも高かったという程度なわけです。奇形についても同じことなんですね。ホルモン影響についても、やはりはっきりした作用というのが出てこないということです。  では、ダイオキシンは危険ではないのかといいますと、これもまた大きな間違いで、やはりダイオキシンは現在知られております最も危険な有害物質に数えられます。言いかえますと、ダイオキシンは一般に知られているような他の毒物、青酸カリとかアフラトキシンとか、そういうものとは性質が全く異なったタイプの有害物質であるということで、このことを理解することがダイオキシン対策にとって非常に重要であると考えます。  今回、ダイオキシンの耐客一日摂取量、TDI、それについての見直しがWHOで行われましたけれども、これも、実はダイオキシンが持っているこういう変わった性質、ユニークな性質、これが絡んでいることで、これは後ほど御説明いたします。  では、ダイオキシン毒性の本質は何かということなんですけれども、これを簡単に御説明いたしますと、これは決して発がん性、催奇形性というはっきりしたものではなくて、ダイオキシンは人とか動物が生きていくために必要な極めて基本的な、最も基本的な機能、代謝機能、内分泌機能あるいは免疫機能の根源といいますか、それのもとを障害して、その結果としてそれぞれの個体にあるいはがんを起こす、あるいは全身を衰弱させる、あるいは内分泌障害を起こすというような、非常に変わったタイプの毒物なんです。  現在、その作用メカニズムにつきましても分子レベルで非常によく解明されつつございまして、この分子レベルの解明では日本は最もよくやられている国であると思います。以上が第一点でございます。  その次に、第二点は、ダイオキシン体内に長期間蓄積される毒物であるということ。これは、具体的に申しますと、一度体の中に入りますと、その量が半分になるのに七年半かかるということですね。現在、ダイオキシンによる障害の程度は、体の中にたまったダイオキシンの量と非常に相関しているわけですね。ですから、ダイオキシンは、一度に大量を摂取しても危険ですけれども、ごく微量を長期間摂取し続けても有害ということになります。これが第二点です。  ダイオキシンはこのような変わった性質を持っているということで、毒性の程度を評価するということが非常に困難になってまいります。  そこで第三点ですけれどもダイオキシン毒性の程度、安全性の限界をどのように評価したらよいかということについてちょっと御説明させていただきます。  従来から、有害物質について、この程度なら安全であろうという限界をあらわす指標としてTDI、耐容一日摂取量という指標が使われております。この値が小さいほど有害性が高い、毒性が高いということになります。  一九九〇年代前半に、ヨーロッパ各国及び日本でもそうですけれども、行政機関でダイオキシンのTDIについての検討が行われました。そのときには、先ほど申しましたラットの発がん性試験の結果を根拠にして、TDIの値を十ピコグラム・プロキロ、体重一キログラム当たり十ピコグラムという値を提案したわけですね。日本厚生省も同様の値を提案しております。  ところが、その当時知られていた研究の中で、ダイオキシンは猿に対してはもっと低い用量で子宮に影響を与えるということが知られておりました。しかし、この研究はちょっと技術的に問題がありますために、国によっては採用する国と採用しない国がありまして、スウェーデンでは、全面的には採用はしないけれども、確かに低い用量で影響を起こすということで、これを考慮してTDIを五ピコグラムとしたわけですね。実は、日本環境庁も、この猿の実験の知見を考慮に入れてやはり五ピコグラムを提案しているわけです。  その後、ことしの五月に、WHOダイオキシンのTDIの見直しを行いました。WHOは、先ほど述べましたように、ダイオキシンが非常に変わった性質を持っているということで、発がん性とか子宮内膜症とか、そういうはっきりした作用を指標とするのではなくて、ダイオキシンが動物に何かささいな影響を起こす、そのささいな影響を起こすのに、ダイオキシンがどのくらい体の中にたまるとそういう影響を起こすかということを指標にしてTDIの算定を行ったわけですね。その結果、体重一キログラム当たり一ないし四ピコグラムという値を提案しておるわけです。  従来、TDIというのは単独の値なんですね、十ピコグラムというような単独の値なんですけれども、今回一ないし四というような幅を持たせたということ、これが非常に戸惑いを感ずるわけです。一応、四ピコグラム・プロキロというのは、これ以上ならば対策を考える必要がある値、一ピコというのは目標値という解釈ではないかと私自身は解釈しておりますし、いずれWHOから最終報告書が出ますので、そのときに公表されると思います。  それから第四点、ダイオキシンは塩素を含むさまざまな物質の燃焼過程あるいは製造過程で生成される極めて安定な有害物質ということ、その意味で発生源対策環境汚染に対する最も重要で有効な手段であると考えられますし、国際的にもこの対応が重視されております。  最後に、第五点でございますけれどもダイオキシン汚染対策を効果的に進めていくためには、やはり汚染実態の把握が重要であると思います。その前提となるのは、ダイオキシン環境中及び人体中での濃度を正確に測定するということでございます。  ダイオキシン分析は非常に高度な技術を要する非常に高価な作業でありますので、この仕事を進めていくためには、やはり何らかの形で精度管理が必要なのではないかと思います。さらに、分析によって得られたデータを総合的に解釈して、それを汚染対策に有効にフィードバックする体制、これの整備もやはり重要であると考えます。  以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手
  8. 北橋健治

    北橋委員長 ありがとうございました。  次に、千葉参考人にお願いいたします。
  9. 千葉佳一

    千葉参考人 参考人千葉でございます。  私のスタンスは、日本環境衛生工業会と申しまして、プラントメーカーの集まりを代表する者であります。ただし、私は技術委員長をやっておりますので、技術的視点でお話ししたいと思いますが、私の見解、私見を若干述べさせていただきたいと思います。  本案件に係る中でも、今問題になっておりますダイオキシン中心にして、我々はどのように取り組んできたかということにつきましては、お手元に配付させていただいておりますものでちょっと御説明いたします。  時系列的に、二ページのところをおあけいただきますと、「ダイオキシン問題の背景」ということで、これはよくある表でございますが、もう一九七〇年代にごみ焼却炉からダイオキシンが検出されているということは、「ケモスファー」等々の文献で業界の方でも知っておりましたし、当然厚生省及び環境庁の方でも知っておられたと思います。ただし、どの程度の毒性かどうかについては、ベトナム戦争でのあの悲劇から始まっての追跡がなされているというのは御案内のとおりでございますが、ごみから出てくるダイオキシンについてどのように取り組むかということは、EC、EUの動き等々のウォッチをしているという段階だったと思います。  日本においては、御案内のように、八三年にダイオキシンごみ炉から、フライアッシュのところから検出されたというようなことで、それを踏まえまして、八四年に厚生省の方でダイオキシンの専門家会議が設置され、その後ずっと今日に至っていると思います。  三ページでございますが、ダイオキシンのガイドラインは一九九〇年、第一回のガイドラインができまして、その後、昨年、第二回目の新ガイドラインができたということでございます。  プラントメーカーの立場で、それぞれの時点で、単にウォッチするだけじゃなしに、ラポテスト、ベンチテスト、パイロットプラントを建てての実証を含めまして、社会的責任のもとにやってきたという経緯がございます。それぞれの時点で精いっぱいの社会的還元をする、社会資本整備への参画という意味では、実績もあり、それなりの責務を負っていることは重々知っておりまして、今日ダイオキシン問題がここまでになるというのは、やはり次世代にどの程度影響を与えるかということが非常に重要視されているという認識もしております。  そういう意味におきまして、時間の関係で現状につきましては割愛させていただきますが、ペーパーで、一枚物で「次世代型ごみ焼却炉」、こういうのを挟んでおりますが、これに基づいて御説明いたします。  これは、我々六年ほど前に、日本環境衛生工業会じゃなしに、厚生省の財団法人となっています廃棄物研究財団というのがありまして、そこでワーキングを開始し研究してきたという経緯がございます。実際、委員会活動をしましたのは平成八年からことし、十年、三カ年計画ということで委員会活動をし、研究してきたということでございます。  これは具体的にどういうことかと申しますと、開発の目標を、表がちょっと見にくくて申しわけございませんが、右の上にございますように、今のごみ処理施設の一番の問題点というのは、やはり排ガス量が多い。余りにも大きい排ガス処理装置をつけざるを得ないというところにあると思います。それをいかにして低減させるかということ。そのためにはガス化燃焼等々の技術を組み込む必要があるのではないか。それは即ダイオキシン低減につながるということでありまして、空気過剰率を、今は一・八とか九とかあるのですが、それを一・三相当にするということであります。  それから二番目に、埋立地がほとんどなくなってきている、逼迫しているということに絡みまして、安定した焼却灰まで持ち込むという意味におきまして溶融処理をしようということになりまして、安定、無害化のスラギングをする、いわゆるスラグをつくる。そして、それを循環型社会にふさわしい骨材として、あるいはそれを加工してれんがの材料、セメントの原料にする等々のリサイクル社会にふさわしい原料づくりをする、あるいは副資材づくりをするというような灰の安定化の問題。  それから三番目にエネルギー。新しいエネルギーをどんどんつくっていくという視点で、次世代型焼却炉は、ボイラーの高温高圧化あるいはコンパインドシステムの構築ということで、発電効率を高めよう、サーマルリサイクルをアグレッシブにやろう、この三つの視点でガス化燃焼溶融炉を次世代型ごみ焼却炉と位置づけ、鋭意約二十数社が今現にそれぞれパートナーを見つけて開発している例もありますし、単独で開発している例もありますが、ぼつぼつ実績のある炉が動き出しつつあるということでございます。  これは、何をか言わんや、ダイオキシン対応を主としたものでございまして、そこにありますように、この一枚物の左側の上の方の表にDXNと書いてあるのはダイオキシンの略でございますが、ダイオキシン類が、ナノグラム・TEQ・パー・ノルマル立米というように単位が書いてありますが、排ガス出口、ということは炉出口で〇・二以下にしよう、煙突出口では〇・〇一を目標にしよう、できることならば〇・〇五ぐらいを保証したいなということを目標にして今鋭意各社検討しておりまして、私が知っている範囲でも数社、あるいはもうことしじゅう、また今年度、来年の三月までであれば十社ぐらいが実証が終わるということでございます。右側のNOx、窒素酸化物の除去に関しても、煙突出口では一〇以下に持っていこう、今とは大幅に前進した形になるということでございます。  しかし、この前提となるものは、ここにも書いてありますように、今あるごみ質というのは、容器包装リサイクル法は今ちょうどどんどん変わっていって、分別収集が盛んになってきておる段階で、容器包装リサイクル法施行後の分別ごみ対象にしていること。右の真ん中ぐらいに書いてあります。それから排ガス条件。そこにありますように、さっきも触れましたような空気過剰率を一・三相当にする。それから、有害物質の排出は先ほど言いましたようなことになりますし、あと、灰処理そのものは有効利用できるような形にする。飛灰についても山元還元できるような形にする。一番大事なことは、イニシアルコスト、ランニングコストを十分コストダウンしまして、コストリダクションを図りまして、現行以下にしょうということを前提にしております。  そんなことで、この新しい炉を早く普及型にして、これだけではございませんが、一つの試みを現に一社数十億のお金を出してやっているわけです。  それと、第二点目に、ダイオキシンだけの問題じゃございませんが、ノット・イン・マイ・バックヤードという言葉がございまして、迷惑施設という位置づけは決してダイオキシンだけじゃなしに、HCIガス等々ごみから出てくるいろいろな問題、音の問題等々がございまして、今後どういうふうにしていったらいいかという私見をちょっと述べますと、規制緩和をどんどん進めていこう、昨年来政府でも決定されておられますし、中央集権から地方分権への移行という意味においても、そういう背景があると思います。  そういう意味において、環境調和型の町づくり、村づくりをどんどん進めていく必要があるのじゃないか。しかも、高齢者社会への対応という視点で、これは私の見解ですが、やはり環境施設と医療福祉施設とのドッキングを意識的にやって、町のど真ん中でどんどんごみ焼却施設、いわゆる環境施設、エネルギープラントをつくる。水源地、山の方に追いやってかえって混乱したりあるいは収集費がたくさんかかるという方式じゃなしに、環境施設と福利厚生施設、いわゆる老人ホームを含めましたものを意識的に新社会資本整備としてやっていくのがこれからの行き方じゃないか。  それからもう一点。環境産業をどんどん育成しないと、この不況下に一つの目玉にすべきだという意味において、静脈産業だけで云々するのじゃなしに、静脈産業にも移行するようなプレプロセスとしての、静脈産業プレプロセス、インバースマニュファクチャリングという意味での位置づけをやはりしっかりとしてシステムづくりをする。例えば、焼却灰のスラグをれんがの原料にするとか、そういうことをお願いしたい。  最後に、PFIを、やはりファイナンスを含めまして、リスクテーキングを含めまして、その責任分界点を含めまして、民活をアグレッシブに進めていく必要があるのじゃないかと思います。  以上でございます。(拍手
  10. 北橋健治

    北橋委員長 ありがとうございました。  以上で参考人の御意見の開陳は終わりました。     —————————————
  11. 北橋健治

    北橋委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。田端正広君。
  12. 田端正広

    ○田端委員 本日は、参考人の先生方におかれましては、まことにお忙しいところ御出席いただきまして、ありがとうございます。また、ただいま大変貴重な御意見をお伺いいたしまして、それについてまたお尋ねをさせていただきたい、こう思っております。  井口先生青山先生、林先生にそれぞれお伺いしたいと思いますが、ダイオキシンの高濃度汚染のいろいろなニュースが新聞報道等でしばしばされているわけであります。そういうことから、こういう化学物質に対する国民の不安感というのは現在大変高まっている、こう思います。特にごみ焼却施設の周辺住民におかれては、人体の健康への影響度とかその他、土壌、水質等の汚染の問題等々、周辺地域では一番そういったことが心配の種になっているだろう、こう思うわけであります。  しかし、例えば血液の検査をするにしても、先ほどお話がございました、一検体当たり例えば五十万円とかそんなことを言われて、とても個人ではそんなことはできるわけないわけでありまして、非常にお金のかかることである。あるいは、土壌を入れかえるといったってこれは大変なことだ、こう思うわけであります。  それが、例えば所沢とかあるいは大阪の能勢とか、そういうところで今大きく話題になっているわけでありますが、例えば、そういうところの場合、住民あるいは元従業員、こういう方々のやはり人体への影響というのを一番我々も心配しているわけであります。  そして、きのうですか、茨城県の新利根町の清掃工場付近の住民のダイオキシン濃度調査宮田先生の方から発表されておりますけれども、これも三十四人のデータの中で、血液中の脂肪一グラムに含まれるダイオキシン類の濃度は、最も毒性が高い2・3・7・8四塩化ジベンゾジオキシンに換算した値で平均七十六・五ピコグラム、平均値とされる二十ピコグラムに比べて三倍以上高い、こういう報道があります。  そういう意味で、私は、このダイオキシンの特別汚染地域に対する臨時緊急措置法みたいなものを国として立法化を急いで、そして全国の焼却施設及びその周辺等の総点検、あるいは周辺住民の健康調査、あるいは土壌、水質の調査、こういうことを実施しないと、今のようにばらばらでやっていたのでは本質的な対策が立てられないのじゃないか、こう思っているわけであります。  したがって、三人の先生方に、私の今申し上げた、名称はともかく、そういう緊急的な臨時措置法のようなものが必要ではないかということに対する御意見をお伺いしたいと思います。では、井口先生からお願いします。
  13. 井口泰泉

    井口参考人 まず、その緊急措置法をつくられるためにも、全国の調査というのがまだ済んでおりません。今、あるところで調べたことだけでそれをつくりますと、その場所だけが非常に特化されて、ここは危ないという認識があるというふうに、まあそこだけを対象にするのではなくて全部調べたところで、これ以上ということであれば私はいいと思います。ですから、個々の場所だけですと、また社会不安、その場所だけが特にまた特化されて危ないという印象を与えてしまうような気がいたします。
  14. 田端正広

    ○田端委員 私の申し上げ方がちょっと言葉足らずであったかと思いますが、地域を特に指定してやるという意味ではなくて、例えば地方自治体の経済負担がとてももう無理であり、個人的にもそういう検査ということは無理である、だからそういう意味で、どの地域になるかということはともかく、ある程度はっきりしてきた段階においては法律を適用する、そのために先に法律をつくっておく必要があるのではないか、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。
  15. 井口泰泉

    井口参考人 それは結構だと思います。  その前にまず健康影響、どこを健康影響としてとらえたらいいか、ダイオキシンの悪影響として何を見たらいいかということを明らかにするということも必要だと思います。
  16. 青山貞一

    青山参考人 青山です。  田端先生のお話に私はかなり近いものを考えておりまして、私の発言要旨の中に緊急臨時措置法的なものというのと総量規制的なものというのも書いてあります。  先ほど時間が余りにもなくて細かく申し上げられなかったのですが、実は所沢は私は何十回も行っていまして、先ほど言いましたように、調査も初期の段階からつき合っています。昨年一年で、一億四千万円市が独自に拠出して、さまざまな部局からお金をかき集めまして血液、母乳、大気、排ガス、底質、水質をやっています。一億四千万円というお金は、これは所沢市にとっては大変な額であります。血液も、先ほど先生がおっしゃられたように、たしか三十五万だか四十万です。五十万まではいきません。それは非常に高額です。  ですから、井口先生は全国調査云々とおっしゃっていましたけれども環境庁は全国調査もここずっとやっていますし、ことしもとりあえず九億円かけて全国調査を行います。経年もかなり出ていますので、やはり所沢とか能勢は実はこれから健康調査を行うということをこの間厚生省環境庁の課長と話し合ったときにおっしゃっていました。  ですから、大気汚染防止法のNOxとかSOxのように、法律のもとで地域を知事が指定して、その特定地域に対して、財政もさることながら、大気環境指針、〇・八ピコグラム、例えば所沢の東部とか清瀬に至るところではあれをはるかに超えていますから、そういうところを対象に、ある程度地域的な指定のもとに総量規制的な対応、つまり一つ一つのは仮に小さくてもまとまると大きいとか、民間事業者であってなかなかうまく規制が及ばない、立入検査もしにくい、してもなかなかデータが出てこない、そういうものについて環境庁厚生省も十分その辺理解されていますから、昨年つくった法律プラスアルファを、土壌とか水質とかというのとは別に大気に関しても行う何らかの枠組みをつくられる方がいいと私は思っています。さっきから私申し上げていますけれども、住民の不安は実は調査だけでは払拭できていません。  その理由の一つは、調査そのものが非常に精度管理で、日本のやり方が特殊だ。EPA方式、エンバイロメンタル・カナダとか、そういう国際標準に比べて違うやり方をとっています。宮田先生のはまた違うやり方だと思います。脇本先生も違うと思います。ですから、果たして出てきた値が、所沢の場合は島津テクノリサーチというところが血液をやったのですけれども、そこの値に対して、所沢の市民がえらいそれぞれが義憤を感じたり、会社を呼んでどうなっているんだと。というのは、ノーディテクトといって、一切検出されずというのがかなり出てきたわけです。  ですから、調査そのもののあり方も含めて、今言った臨時措置的な対応をとらないと、ただ膨大なお金を、市が自前であれ、国が補助してやるということでどうにかなる状態にはないと私は現場にいて感じています。  あと、五十万というお話ですが、私ども、これは別に業務ということじゃなくて、非営利でやっていますが、カナダで八百五十人いまして、そのうち六百人が高度に訓練を受けていまして、二十五年間ダイオキシン中心分析してきた会社、そこの社長とこの間うちの副所長が会って、カナダにおけるそこの会社の母乳、血液の価格を聞いてきました。いろいろなものを含めて十五万です。  ですから、日本では難しいとかいろいろな理由で、急に降ってわいたようにダイオキシン問題がわいてきたというのもあるのですけれども、急速分析技術者がやっているとか、設備を買い入れているとか、そういうことですから。アメリカでもドイツでも、ドイツはたしか保健所へ行くとやってくれます、母乳、血液検査。できればそういう体制も一方つくっていくことが必要じゃないかなというふうに思っています。  ですから、私が先ほど公述の冒頭で言った話なんですけれども、ぜひ今の法律的な対応のもう一歩前に土壌とか水でも行っていただきたいし、大気に関しても所沢とか、能勢はいっぱいの産廃施設があるというのじゃなくて、一つのが非常に問題が多い炉のためにああいうことが起こったと私は思っていますから、その辺は田端委員のおっしゃることを私も支持といいますか、そういうことに賛同したいと思います。
  17. 林裕造

    林参考人 御質問ありがとうございました。  先ほど私申しましたことですが、最後に、実態調査することが非常に今重要である。しかし、調査されたデータをいかに総合的に解釈するかということ、これを汚染対策にフィードバックすることが非常に重要である、その対策、体制を整備することが大事だということ、アカデミアの立場から見ますと、そうでなければならないと思うのです。  そういう意味で、そういうような体制を整備して、それを動かすために法規的にそういう先生おっしゃったことが必要であるとすれば、これは重要であると思います。  その場合に、汚染の場合には、やはり現在あるストック汚染ということと、これからどんどん続けていくかもしれないというフロー汚染と、この二つはきちんと押さえるというような体制、これは非常に難しいと思うのですけれども、この点が大事だと考えます。  どうもありがとうございました。
  18. 田端正広

    ○田端委員 ダイオキシンあるいは環境ホルモン等、こういう化学物質についての国民の関心は大変高まっているわけですけれども、実は、非常に専門的な言葉とか、あるいはそういう非常に化学的な用語とか、こういうものがあり過ぎて、国民にとっては非常に高度過ぎてわかりにくい、こういうことが大きな問題の特質だと私思っております。したがって、ダイオキシンにしても環境ホルモンにしても、もっとわかりやすい情報、わかりやすい表現を国民の中にしていかないと、ただ不安だけをあおっているのじゃないか、こういう感じがしてならないわけであります。  先ほど、青山先生の方からも、いろいろな検討会審議会があってもなかなか進んでいない、議論ばかりで具体的にいっていないというお話もございました。しかも、こういう問題に対して、環境庁や農水省や厚生省や科学技術庁や、いろいろなところが個々にやっていたのではなかなか対応も進まない。そういう意味で、私は、そういう縦割り的な弊害を克服して、もっと横断的な研究グループなりあるいは検討会なりというもので環境庁がやはりリーダーシップをとってやっていかないと、ばらばらではなかなか本質的な問題解決に至らないのではないか、こういう思いをずっと持っているわけであります。  青山参考人環境庁がもっと本気で取り組むべきだ、私はこう思っておりますが、そういうことも含めて御意見あればお伺いしたいと思います。
  19. 青山貞一

    青山参考人 青山です。  田端委員のおっしゃるように、環境庁が、いろいろな環境重要施策、法案で、他省庁とのやりとり、闘いに疲れて、効果ある法案がなかなか上がらない。実は、先週、私、地球温暖化対策推進法案の参議院の公聴会で公述してさんざん修正点を申し上げたのですが、残念ながら、きょうの本会議で無修正で通るというようなこともあって、その無修正の理由は、恐らく通産省さんなどに気を使って、修正するとなかなか通らないということを、たくさん実は去年のアセス法でも見てきました。  そういう中で、一つは、おっしゃられるように、縦割り行政の中で似たような検討会なたくさんある。実は、きょうその全委員会の名簿を持ってきています、私は調べて。かなりの委員の方が重複していまして、恐らく先生たちも本業ができなくなる、本業というのは大学の研究とか教育が、できなくなるぐらい霞が関に来なくてはいけないということは、私は非常にゆゆしき問題だと思っています。  さらに、そこでの問題は、私は実務をやっているからわかるのですが、行政側の説明が過半の時間になってしまう。二時間あると、一時間から一時間を超えて行政側の説明をその専門家の先生たちにするということになる。その後二十人とか十五人いらっしゃるのですけれども、割ってみますと一人当たり平均五分とか。きょうの方がよっぽど多いのです、実は。ですから、私も喜んで出てきたのですけれども。一人当たりにしますと、五分とか十分ないのです。  そこでわざわざ専門家をお呼びして重複したものでやる意味があるのかと思いますから、たまにいろいろな省庁の合同検討会を開くだけじゃなくて、環境省というのはまだ二年ぐらい先ですから、できればその前も一緒になって検討するようなことをされるべきだというふうに常々思っています。  あと、おっしゃるように、環境行政がもっともっと強くなっていただきたい。例えば、ダイオキシンに関して、環境庁大気保全局大気規制課、たしかこの間まで四人、今もう三人だと思います。兼務を入れてやっと四人だと思います。環境安全課も、ダイオキシン云々は数人だと思います。あと土壌農薬課も二、三人、水質規制課も三人ぐらいだと思います。アメリカに比べますと多分十分の一以下でしょう、担当している人は。そういう脆弱といいますか人数が少ないところでこういう問題を、厚生省環境整備課もたしか五人ですね、全部で。  ですから、これだけ世の中でこういう大きな問題、その問題になり方も問題がありますけれども、現実を見ると、徹夜したり、この間も厚生省の補佐が私のところに電話してきて、今のままだともう倒れてしまうと。そんなことを私に言われたってしょうがないと言ったのですけれども予算だけとられても人間がふえないという現実があって、強くするというのは、その個々人の能力もありますけれども、やはり組織もちょっと対応し切れない現実があるかなと思います。
  20. 田端正広

    ○田端委員 井口先生は、環境ホルモンにおける日本の研究の第一人者ということで、大変熱心にいろいろな形で御尽力されているわけですけれども、この環境ホルモンも、我々素人が見ますと、こんなに種類がたくさんあって、非常に聞きなれない用語ばかりが出てくるということで、大変我々にとっても理解が進まない。  例えば、ビスフェノールAと言われても、どの程度どうなのかということはもう全くわからない。例えば、新聞では、コプラナPCBがどうだということを言われます。しかし、カネミ油症事件があったということを言われると、ああそういうことかということがわかるのですが、その原因物質になっているそういう問題については、化学用語というのは国民的には非常にわかりづらい。  そういう意味でも、ぜひこの環境ホルモンの問題ももう少し具体的に理解できるように整理していただいて、そして、そういう問題の中で、例えば、いろいろなことが起こってきた場合、生産を中止するとか、使用を中止するとか、禁止するとか、何かそういうもののチェックをもう少ししていかないと、あるいは、先ほどもお話がございましたが、国民にわかるように、これにはこういうものが入っているのだという表示をもっとしっかりとしていただかないと、我々の場合わからない。  例えば、今まででもいろいろなことで問題になっていますが、赤ちゃんのおしゃぶりから始まって、ポリ容器、ポリ製品あるいは塩ビ製品とか、その他もろもろのものがいろいろな形で我々の食物あるいは食べる場合に接触がある。そういう意味で、それがどういうふうに人体に入ってどうなるのかということのその過程もよくわかっていない。ところが、こういうふうに報道されますと、国民の方にとっては不安感だけが残っていく、こういうことでございます。  そこで、具体的に井口先生にお伺いしたいと思いますけれども、例えば、学校給食の食器はPC製の食器が四割使われているようですけれども、ビスフェノールAが溶け出す危険があるということで、全国で一万二千四百九小中学校でこれが使われている、しかし、その中の二百七自治体においては、もうこれをやめよう、こういうことが起こっている。ところが、使っていいのだ、いややめるのだと、これは自治体によってばらばらに今なっている状況であります。  例えば、我々はわかりませんが、そういうものに対しての安全基準といいますか、破損している、欠けている、そういう食器はもう外すとか、そういうことをもう少し明確にしないと、勝手ばらばらに、いやこれは安全なのだ、いやこれは危険だ、こういうふうに真っ二つに分かれているのでは非常に困ったことだな、こう思います。  だから、事故が起こってからでは何にもならないわけですから、事前にこういうことに対してはきちっとすべきだと思いますが、こういうことも含めて国民に、どういうふうに安全を保っていくか、また、理解をさせるようにどうしていくか、井口先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  21. 井口泰泉

    井口参考人 先生御指摘のように、ポリカーボネートというプラスチックから、高温ですが熱を加えると、原材料として使われたビスフェノールAが溶出するというのは、哺乳瓶、プラスチックのポリカーボネート製の哺乳瓶に九十五度のお湯を入れて一晩放置した、その結果として、大体一番高いので五ppb程度、これは法律上は二・五ppmとさらに五百倍ぐらい高いところで設定されていますが、それの五百分の一ぐらい出てくるのだと。このピスフェノールA自体が女性ホルモン作用を持つということがありまして、それで、学校給食も同じ材料で食器がつくられている、食器にはスープなどが入りますから、ひょっとして出るのではないかということで問題が起こりました。ところが、本当に出るのか出ないかということをどこも調査をしておりませんでした。  ですから、こういう問題が起こったときに、まず材料としては使われています。それは明らかなことです。それでは、国の溶出試験というのがいろいろあります。お湯を入れるとか、ヘプタンという油のかわりに使うものとか、酢とかあるいはアルコールを入れてどれぐらい溶出するかというようなことですね。そういうデータが製造メーカーから出てこないわけです。そこがまず一つ問題があります。  それから、国の溶出試験を行って出てこないあるいは出てくるということとともに、学校給食というのは家庭の食事の方法とかなり違いますね。食器の洗い方、洗剤、乾燥の方法、一律に決められた方法で行っています。スープを入れたときに出るか出ないかというようなことをきちっと調査をして、それで出るあるいは出ないということを判断して、それから、でもやめましょう、出ないのだったら使いましょうということが割と行われない。すべて今起こっていることは、材料として使われていればそれは危ないというふうに直結してしまいます。その前は、プラスチックで固まったものからは出ないだろうから安全と。極端なんですね。  私の考えは、そういう問題にちょっと疑問が起こってくれば、実態に即した試験法を、まず自治体がやれということですと、またはかり方いろいろ、先ほどダイオキシンにしても、カナダ日本とあるいはアメリカとでちょっと違うのじゃないかということもありましが、ピスフェノールAの測定法は、これはもっと簡単だと思います、ダイオキシンよりは。ですから、実態調査をする。  私たちも、それは横浜の教育委員会として問題になりましたので、やってみましょうと。まず、学校給食ですから小学生ですね。ですから、幼児ではないということが前提なので、すぐやめようというよりは、とにかく調べてみましょうと。そうしないと、今まで使った人はどうなるのだというようなこともありますから。  横浜市で私たちが設定した条件は、国の溶出試験の基準と、それから、実態に即して、まず給食の食器にスープが何度で入るかというのを調べました。五十度から七十五度の範囲でスープがつがれます。ですから、まずお湯を入れてはかるというのが国の溶出試験。スープが七十五度ぐらいで入るのであれば、八十度ぐらいのスープを入れてみよう、野菜スープを入れたときどうなるのか。それから、学校給食の時間というのは大体四十五分とか五十分です。ですから、その時間を設定しまして検査した結果としては、機械ではかりますから限界値というのがあります。それ以上は出てこないということが今わかっています。  それから、三社のメーカーから納入されていますので、それを全部のメーカーさんのものを使う。それから、横浜では三年間ポリカーボネートを使っていますので、一番古い食器も三年使ったものです。それを小学校から抜いてくるわけですね。それから、三社のものを一年目、二年目、三年目、真新しいものというふうにして見ましたけれども、傷がたくさんついていれば出るかというのとはまた違いまして、もちろん傷ついたものはもう使わなくなります、危ないですから。ところが、三年使ったから出る、真新しいものは出ない、今の三年までの状態ですと出ておりません。  ですが、これから先は今度は行政判断になります。我々研究レベルは、できる範囲での調査をしました。ここから先は好き嫌いというところがありますので、でも使いたぐないという人もいらっしゃるし、それではもうちょっと使っていいのじゃないかというここからの判断はまた変わってきます。  それから、もう一つそれで浮かび上がってきたことは、あるメーカーのものは国の溶出試験、かなりきつい試験をしても出てこない、あるものはきつい溶出試験をすると若干出る。そうしますと、材料はどこから仕入れたかというようなこととを業界側が話し合えばかなり出なくできるのじゃないかというようなこともあるわけですね。ですから、こういう問題が起こってきたときには、製造メーカーがかなりデータを持っていなければ、おかしいのが出てこないというのが一番の問題です。  それから、すぐこれを自治体ではかろうというのじゃなくて、国の機関できちっとはかっていただいて、こうですよといって国が指針を示さないと、自治体としてはてんでんばらばらにならざるを得ないと思います。一番簡単なのは導入しない、やめるということもあるのですけれども、やめるのはいいのですが、では次にどういう容器にするかという試験をせずに今導入していますね。これだけある物質についてだけ非常にうるさく言って、あとのものは調べないというのも変な話なのです。  ですから、これはできるかどうかわかりませんけれども、ではどれが一番いいのだと。ステンレスを使っても酸を入れれば金属が出てきます。ガラスというと一番疑われるのは、鉛が溶出するかもしれない。陶器は、経験上家で使っていますからこれは安全かもしれません。でも、釉薬は何を使っているのか、何が溶出するのか、その結果何が起こるのか起こらないのかというようなことまで将来的には見ていった方がいいかと思います。  と同時に、これは学校給食だけじゃなくて家の使い方を見ると、プラスチック容器というのは電子レンジに入れて使ってもいいとなると、一体どんな使い方をしているかわからない。テレビのコマーシャルを見ると、かなりなことをしても大丈夫なように見えます。本当にどうでしょうか。電子レンジの中に入れて二十分、三十分かけていますと、中で料理しているのと同じです。油物が入ってくれば出てくる可能性もある、というようなことをもう少しメーカーさんがきちっと出すことも必要でしょうし、国の研究機関としてこんな使い方はちょっとやめてくださいというようなことも必要かと思います。
  22. 田端正広

    ○田端委員 時間が来ましたので終わりますが、例えばこういう五万とも十万とも言われる化学物質の追跡調査といいますか、そういった意味でPRTRの法制化というのはやはり緊急を要するなということを、今のお話を伺いながらしみじみと感じたわけでありますが、時間が来ましたのでこれで終わります。どうもありがとうございました。
  23. 北橋健治

    北橋委員長 次に、山本公一君。
  24. 山本公一

    ○山本(公)委員 自由民主党の山本でございます。先生方には、お忙しい中当委員会に御出席いただきまして、ありがとうございました。  私は、先般まで実は環境庁の政務次官を務めさせていただいておりました。ちょうど私の在任中には京都会議を挟んでおりましたので、役所もと言っては語弊がございますけれども、世間様も含めて地球温暖化問題一色のまさに環境行政であったような気がいたしております。あの地球温暖化問題については、私はその渦中におりまして感じましたことは、一種その影響を誇張しながら、こうしなかったら地球は大変なのですよ、地球はこういうことになってしまいますよというような、おどしと言っては語弊があるかもしれませんけれども、そういう立場で国民の皆様方に協力をお願いをするようなことを随分いたしたような気がいたしております。  しかし、今日巻き起こってきておりますダイオキシン問題、環境ホルモン問題等は、今度は逆でございまして、余り言ってしまいますと、さっきからお話がありますように、原因そしてまた影響等々が余りまだ解明されていない中で不安だけをあおり立ててしまう、そういうような問題でありまして、今度は国民の皆様方御用心をというような問題になってきているような気がいたして、今自分の在任期間を振り返っておったようなわけでございます。  そのダイオキシン問題、私は実は四国の片田舎の出身でございまして、私の選挙区で一番大きな町は人口六万一千人でございます。三市二十二町三村、二十八自治体あるわけでございますが、それが一つの選挙区になっておるわけでございます。つまり、一つ一つ自治体は大変小そうございます。人口も少のうございます。そういった自治体でも、今ダイオキシン問題に非常に頭を悩ませております。住民の方々もさようでございますけれども、責任ある首長さん、いわゆる市長さん、町長さん、村長さんのお立場でも、随分とこの問題に角度が違った意味で頭を痛めていらっしゃいます。  つまり、ごみ焼却から大部分のダイオキシンが生じるのだということは、もうこれはかなりわかっております。したがいまして、どうしても自治体にとって必要でありますごみ焼却場ということになってきたときに、自分の町の焼却場はいかがなものか、住民の皆さん方に対して胸を張ってこの焼却場は大丈夫でございますよと言える市町村長さんは現時点においては実はだれもいらっしゃらない。ではどうずればいいのですかということでどの町長さん方も頭を悩ませていらっしゃる。  理屈の上では、広域で大きな焼却炉をつくって、二十四時間運転をして、八百度以上で焼却をしてとわかっているのだけれども、現実には、広域でそんな大きなものをつくれようはずもない。東京近辺の関東平野ですと、隣の町まで平野でございますから、道路もよろしゅうございますし、さっと行けます。私のところは、隣の町まで行くのに峠を何度も越えて、やっと隣の町に行ったり村に行ったりする。そういうところで、簡単に広域で一つの大きなものをつくりましょうといってもなかなかいかない。そういうような、本当に身近なところでダイオキシン問題が、住民そしてまた自治体の課題になっている。  そうした中で、さっきお話を伺っておりまして、千葉先生のお話の中に、次世代の焼却炉というお話がございました。ちょっとその話をもう少し詳しく聞かせていただきたい。先ほどお話がございましたけれども、一体どの程度研究開発が進んでいて、いつごろになったらこのような形で提供ができますよとかいうようなことを含めて、もう少し詳しく、今申し上げたように、小さな小さな自治体焼却炉をつくろうとするときに実際活用できるのかどうかということも含めて、まずお伺いをさせていただきたいなと思います。
  25. 千葉佳一

    千葉参考人 お答えします。  今御指摘の次世代というのは、先ほどもちょっとお話しいたしましたように、六年前からこの研究を各社がやり出したものを横ぐしを通しまして、今三カ年の委員会活動をしたということでございます。  それからもう一点、次世代と称するガス化燃焼溶融炉の認可制度というのがございまして、現行法では指針外認定、構造指針以外の認定取り扱いがございます。これは法律的な配慮でつくられておるわけでございますが、その指針外認定を、昔は全国都市清掃会議中心になってやっておられたのですが、今は廃棄物研究財団で技術認定をされます。その技術認定をされたものを踏まえて、厚生省の方で国庫補助対象にするかどうかの参考にされる、こういうふうに聞き及んでおります。  その認可をされましたのは現時点で三社、次世代型の炉を三社が技術認定をされております。それは、ある条件下で、それぞれの条件、ハードルを決めまして、例えばダイオキシンであれば、〇・一以下にはできますというところもあれば〇・〇八以下にできますとか、それをクリアしたかしないか、所定の時間、所定の手続でもってやるのですが、その技術認可がされたからといってすべて同じレベルかというとそうでもないのですね。そういうことでございます。  それから、近い将来どの程度かといいますと、先ほどもちょっと触れましたように、今年度内、来年の三月までには約十社ぐらい認定手続を完了するのじゃないかという意味におきまして、いわゆる実証プラントのデータはしっかりとって、実績ある、実績一号機を各自治体に売り込み、かつ国庫補助ももらえるような形に持っていくのは来年からということでございます。  それでよろしゅうございますでしょうか。
  26. 山本公一

    ○山本(公)委員  ありがとうございました。  何度も申し上げますけれども、本当に財政基盤も弱い、実際に出るごみの量も極めて少ない自治体が全国には相当あります。そういったところが、やはり都市と同様にこの問題では悩んでいるわけでございます。ただ、都市に比べて若干有利なのは、対象ごみというところに、容器包装リサイクル法施行後の分別可燃ごみというのがございますが、こういうことに関しては人口の少ない方がやりやすうございまして、徹底がいたせます。したがって、そういう面では、小さな集落の方がこういったものに関してはやりやすいのではないかと思います。また、先ほど来のお話のような、来年以降メーカーさんも、大都市をにらんでだけではなくて、そういった全国の津々浦々の町村というか、そういった単位もにらんだ炉の開発をぜひ進めていただくようにお願いをいたしておきたいと思います。  ところで、同じような問題ですけれども、やはり昨今にぎわしておりますが、大阪の能勢町の問題でございます。  これについて林先生にお伺いしたいわけでございますけれども、実際問題これはもう起きてしまった、起きてしまった話だけに何かあれですけれども、この地域だけに限って言えば、では次どうするかという話だろうというふうに思うわけでございます。いろいろ聞いておりますけれども、もう根本的には汚染された土壌というのはやはり処分しなければいけない。ではその汚染土壌の処分の仕方というのは、いろいろな考え方があろうかと思うわけでございますけれども、やはり住民の方に御理解をいただいて、かつ、できるならばコストも低く抑えられるような技術によって処理すべき方法があるのかどうか、先生のお考えをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  27. 林裕造

    林参考人 どうもありがとうございました。  土壌のことは私専門でございませんので、技術的なことはお答えできないと思いますけれども、やはりそういうことが起こってしまった場合には、一つは、土壌を何とかしなきゃいけないということで、これはやはり専門家にお聞きするよりしようがないと思うのです。  私たち健康影響の方から考えますと、やはりこういう機会に、影響を受けたと思われる方々の健康のフォローを徹底するということが私はもう一つの重要な課題ではないかと思うのですね。これはまた後々にもこのデータは役に立つと思うのですけれども、その二つの面のことが重要であると思います。  土壌のことですから私よくわかりませんけれども、やはり今の場合にはたまってしまったということで、ストックをどうするかということ。それから、これはこれから土壌の改良ということになると思います。もう一つは、絶対にその次にはこういうことは起こさないというような保証が絶対必要なんで、そういう意味の焼却炉の改良、そういうことが大事だと思うのですけれども土壌の方は、申しわけございませんですけれども、私、どうしていいかということはちょっと……。
  28. 山本公一

    ○山本(公)委員 青山先生、もしよろしかったら土壌の問題についてお答えをいただきたいと思います。
  29. 青山貞一

    青山参考人 青山でございます。  私の資料の中に能勢の話があります。十ページを見ていただきたいのですが。私も、能勢の話、先般厚生省の担当者に伺ってびっくりしたのですけれども、三百万ナノグラムですか、三ミリグラム、これは、もしそれが口の中に入ると急性毒性で危ないような値が発見されたということもありまして、すごく気になっているのです。それは構造上の問題で、ほかでも三十六種類ぐらいたしか似たような炉があると伺っていますけれども、下の方の図に、実はこれはちょっと小さくて見づらいのですが、周辺の土壌汚染されている数値があります。  御承知のように、まだ日本には土壌に関しては基準がございませんので、五ページをちょっと見てください。五ページに「各国の環境基準は」という中で、ドイツ、スウェーデン、オランダに、下の方ですけれども土壌の基準というのがございます。これは、例えば農地ですと、ドイツは四十ピコ以下、さらに厳しく見ますと、食用に供する土壌の場合には五ピコ以下という非常に厳しい濃度基準がございます。  ところが、この能勢の場合には、それのもう何万倍の値が実は周辺地域に結果的にばらまかれてしまったということで、先般も厚生省さんに、この土壌をどこにどう処理するんだというのを伺ったのですけれども、残念ながらまだ、高度に汚染された土壌をどこにどう一時管理して、その後どうダイオキシンを分解なり処理して最終処分するのかという話は実は伺えませんでした。  これは、この炉の周辺、工場に働いている方にも影響が及ぶ可能性がありますし、周辺集落にもありますし、実は私心配しているのは農業だと思うのです。  というのは、ドイツの五ピコというのは極めて厳しい値ですけれども、四十ピコといっても、それの何千倍多分その近くでは出てしまっているわけですから、表土、例えば二十センチぐらいまでの土を掘り起こして、それは調べないと何センチまでというのは一概に言えませんけれども汚染地域、ある程度サンプリングした中で、そこの土を、一たん表土をはがすわけですけれども、それをどう入れかえるか、持っていく方が問題だと思うのです。  これは、法律がなかった、規制がなかったということとは別に、やはり例えばドイツとかオランダとか、イタリアも実は緊急措置的に基準があるのですけれども、そういうものとの関係で入れかえなくてはいけない範囲を決めた中で、その保管場所、どこかに持っていってしまいますとそこがまた汚染されてしまいますので、一時保管、とりあえず核廃棄物に入れるのです。今いろいろとプルサーマルが問題になっていますけれども、永久的に処分する場所じゃなくて、とりあえず安全に仮置きする場所を設けるということじゃないかなと思うのです。今その場所を多分大阪府とか厚生省が探している最中だと思うのです。  これに要するお金はかなりだと思いますけれども、三十六似たような炉があるということが来ていますので、その三十六について多分今早急に調査していると思うのですけれども、それによってどの辺まで土壌入れかえなり対策をとらなければいけないかということを解析した上で、できる限り早く仮置き場所をつくり、そこに一時仮置く。もう少し技術が進歩して、そういう汚染土壌を余り害のないところまで持っていけるような技術、紫外線でも分解するという話がありますけれども、しかし四十八時間その汚染された部分に太陽光をずっと照射するというのもなかなか難しいでしょう。あと、ここの場合はほかの地域と比べまして余りにも濃度が高過ぎるということもあります。先ほどの話じゃないですけれども、ここは特例的に国も関与する中で仮置きし、その後の処理処分、それもちゃんと国の監視のもとでの、監視といいますか参画と監視両方だと思うのですけれども、それで対策をすべきだと思います。  ここを今後この分野の一つのモデルケースにして、こういうような問題が起こったときになるべく早く、これは実は最終的にこの原因がわかるまでに三カ月時間がかかったのですね。大阪府もやっていましたし、能勢町もやっていました。厚生省も。三カ月の時間がちょっとあった。その間は当然停止していましたから、さらに汚染がふえたということはないと思うのですけれども。ここの経験を今後ほかの地域に生かすべく、モデルケースとして対応してもらいたいというふうに私は思っています。その経験は余り今までの日本にはないので、例えば市街地土壌汚染研究の最先端の国なんですけれどもドイツオランダあとイタリアはたまたま不幸な事故がセベソというところで起きまして、似たような土壌入れかえをやっていますから、そういうところの経験が生きるのじゃないかというふうに思っております。
  30. 山本公一

    ○山本(公)委員 ありがとうございました。  いずれにしても、環境庁というか国も関心を持ってこの能勢町の対応というのは考えていかなければいけない問題なんだろうというふうに思っております。  次に、環境ホルモンのことについて井口先生にお伺いをいたしたいわけでございます。  環境ホルモン、何か非常にこの問題は国民の間にセンセーショナルな不安をかき立ててしまっておるようなわけでございます。私も立場上時々地元の方々にお話しする機会があるのですけれども、私にもわかりませんと言うのです。よくこの問題はわかっていないのじゃないでしょうか、だけれども、間違いなく入り口、そして何歩かはこの問題の解明が進んでいるというような状況ではなかろうかというふうに私は理解しておりますということを申し上げることがあります。  先ほどから環境庁対応についていろいろ厳しい御指摘を先生方から伺っておるわけでございますけれども、私は内部におりまして、比較的官庁の中ではまじめな官庁だというふうに理解をいたしております。その一つ、科学者の方がよくいらっしゃるのですけれども、科学者の職員の方が、やはり科学者というのはわからないことはわからないと申し上げます、わかったことはわかったというふうに申し上げます、中途半端なことは言いませんということをおっしゃいました。まさにそうだろうというふうに思っております。この環境ホルモンという分野、まさにわからないことがいっぱいあるのだろうと思っておりますけれども井口先生日本の、国もそうでございましょうけれども個人もそうでございましょうけれども、研究レベルというのは一体欧米に比べてどの程度のものなんでございましょうか。
  31. 井口泰泉

    井口参考人 環境ホルモンという言葉は我々がつくったものですからいつもいじめられておりますが、環境ホルモンと言おうが内分泌撹乱物質と言おうが内容は変わりません。要は、公害ではありませんので人体影響はわかっておりませんと先ほど申し上げました。  ですから、今までのように化学物質毒性がないからといって環境に出し続けるということはここでやめた方がいい。ある物質はやはりホルモン作用をして野生動物には影響が出ている。それで、野生動物に影響が出ているということはこのまま演繹すれば人間にも来るかもしれないということと、それから、野生動物は野生動物でこれは守るべきものであるという二つ観点があります。  それから、わかりにくいのは、今六十何種類がリストされている。アメリカは、今一万五千の化学物質ホルモン作用の試験に入りました。EPAの人の、まあ想定ですからこれは当たるかどうかわかりませんけれども、一万五千の中の三千ぐらいはホルモン作用があるかもしれないというような想定をしております。  そうしますと、一つ一つ物質を当たるということは、今問題になっているものに対してはできると思うのですが、これからふえてきたときにどうするかという問題があります。これを一つ一つ調べれば何千年かかるかわからないということで、環境に出さないように、先ほどのPRTR、これが唯一今使える方法かなとも思います、人体影響がなければ規制できないとすれば。  研究のレベルといいますと、別に日本が特別おくれているというわけでもありませんし、アメリカは、来年施行する法律、セーフ・ドリンキング・ウオーター・アクト、これは最初農薬が問題だったわけですけれども、水の中とが食べ物の中にそういうものが入ってきてはいけない、その試験法をまずつくる。それがこの八月にできて、その試験法を使って化学物質ホルモン作用を見るということで進んでいますので、一番現実に研究が進んでいるのはアメリカである。  それから、フロリダの湖のようにたまたま汚染した地区がある、それが実験の湖であって 周りのきれいなところが対照群というふうに、非常にクリアカットに出てくる場所があったというようなことですね。ですから、研究が進みやすい。日本の場合には、水にしても、非常に急流、川も短いですし、あっという間に海に出ていくという面では、環境としてはまだいいのかもしれません。そういうことで、幸いにも、今、日本ではそれほど重大な問題として浮かび上がってきていませんけれども、私たち調査では、少し考えた方がいいというようなデータもあります。  この内分泌撹乱の問題は、もっと基礎科学といいますか、ホルモン作用といいますと、ホルモンが体に入って、体から出てでもいいのですが、細胞に作用するときに、受容体といったんぱく質にくっついてから作用が起こります。今、女性ホルモンにしても、女性ホルモンの受容体は二種類あるのだ、三種類目が出てくるよという、これは魚、カエル、鳥、それぞれの動物で少しずつ違います。そういう基礎的なことがきちっとわかっていないとすぐ対応はできません。この物質が、ワニには影響があるけれども人間にはどうなのかといったことですね。一般論としては、ホルモンの受容体というのはいろいろな動物で非常に似通っています。ですから、ワニ影響があることは人間影響があると考えた方がいいわけです。というようなことで、ホルモンの研究あるいは受容体の研究というのは、非常に日本でも進んでおります。  ですから、ある化学物質を想定したときにどうなのかという観点で、皆さんちょっと視点を変えたところもやっていただければ、決して日本だけが特におくれているというわけではなくて、先導はできると思うのです。今までの大学の研究ですと、メカニズムというのは非常にきちっとやるのですが、それに化学物質を持ち込んで広げようという観点がありませんので、それは研究費なりなんなりで鼓舞していただければ、それは動いてくださる人もいますし、今だんだんそういう機運が高まっておりますので 基礎研究をノックアップしながら、それが一番こういう問題の解明にはつながると思います。
  32. 山本公一

    ○山本(公)委員 ありがとうございました。  時間が参りましたので、終わりたいと思います。
  33. 北橋健治

    北橋委員長 次に、小林守君。
  34. 小林守

    ○小林(守)委員 民主党の小林守でございます。  諸先生には、我々のこの環境委員会に御足労いただきまして貴重な御意見を賜りまして、大変ありがとうございます。私も、この環境ホルモンダイオキシンの問題について日ごろ感じていること、また、よくわからない問題等について整理をさせていただくような意味でも、先生方に幾つか御質問させていただきたいと思うところでございます。  よく世界の科学者また有識者の中で、いわゆる人類の危機というような観点から、三つの危機があるというようなお話がされております。記憶に残っていることなのですが、一つは核戦争の危機、人類絶滅のシナリオというのでしょうか、危機として核戦争の危機がある。そしてもう一つは、地球環境による人類の危機というような危機があると言われております。もう一つは、人間の精神の荒廃、心の荒廃というようなことが現代社会の中でやはり人類の危機として考える必要があるのではないか。  このような三つの観点での地球人類の危機というようなことが指摘されておりまして、鮮明に意識に残っているわけですけれども、核戦争の危機とか、それから従来型の、例えば地球環境の危機においても、地球温暖化の問題とかオゾン層の破壊の問題とか、これらについては、自然環境生物並びに人類に対して、外部的と言っていいのでしょうか、その作用を及ぼすことによって生存環境、生存基盤を破壊していく、こういうことになるのだろうというふうに思います。  新たに環境ホルモンダイオキシンなどの問題については、まさに種の生命の危機、種をつかさどっている内分泌系とか、それから神経系とか免疫系とか、このようなところを完全に狂わせてしまう、混乱をもたらしていってしまう。そういう形で、まさに種にかかわる、三十六億年の生命の歴史をずっと積み重ねてきたシステムに混乱をもたらしてしまうものだというような形で、今までとは違った、非常に内部的なというか、生命そのものが持っているところに害悪を作用するような新たな危機が迫っているのではないか、こういうような指摘が、特に東大ゼミで立花隆先生などが、若い生徒を集めていろいろな話し合いの中でそんなことを書かれた本も出ているようであります。  そういう観点に立って、ダイオキシン等の問題については、わからない、不安、危機意識だけが高まってきているというのも事実です。しかし、従来、化学物質急性毒性発がん性だけの視点から規制されてきた、見られてきた。しかし、それだけではない、超微量ですごい恐ろしい作用をもたらすのではないかというようなことで、生殖毒性と言っていいのでしょうか、免疫毒性もありますけれども、そういう新たな視点からとらえられなければならないという指摘がされています。  もっとも、そういう観点での取り組みが求められているということでございますが、しかし、先ほど来委員の先生方からもお話がありましたように、大変センセーショナルというか、危機意識それから不安意識をかき立てられるような事実が、調査分析、集積が、データが極めて少ないというような現状のもとで、非常にファナティックに世論が動いていくのではないか、私自身も、そういう面での危機意識を持たなければならないだろう、このように思っているわけであります。  つい最近、文芸春秋の十月号に、日垣隆さんという方、この方はエコノミストの「敢罵言」をいつも書かれている方だと思うのですけれども、「ダイオキシン猛毒説の虚構」というような形で、いわゆるダイオキシン症候群というものがもたらす実害というものも考えなければいけないよというようなことを指摘されております。最終的に、日垣さんの場合は、要は冷静な危機意識を持たなければだめなのだということをまとめとして言っていらっしゃるのです。  この辺の問題等について、とにかく子供たちの民俗行事であるどんど焼き、我々の小さいころはずっとやってまいりました。しかし、これはもうダイオキシンを出すから、まずいからやめろというふうになってしまったり、どこがどう指令を出したのかわかりませんけれども、どんど焼きはまずいからやめなさい、たき火はやってはいけませんよ。学校の焼却炉については、文部省がこれをやめましょうということになったわけですけれども、一斉にやめました。  一つ考えるべきことは、なぜやめなければならないのか、燃やしてはいけないのかということを、いわば学校の教材として、環境教育の場として、いいチャンスと言っていいのかな、それを生かすべきだったのではないかと。中止することはいいのですが、なぜ中止するかということを、やはり環境教育という視点できっちりと教材として考えていく必要があるのではないか、こんなことも感じたわけです。  そのほか、学校給食の食器の問題についても、やめるところとやめないところが出てきております。これらについても、統一した基本的なデータがあるのかないのか。先ほど先生方からも出ておりますけれども、このようなこともございます。また、哺乳瓶等についてもやはり有害な物質が出るのではないかとか、こんなことも言われているわけであります。ラップとか電子レンジの問題とか、それから極端な話、母乳はいけないんだというようなことまでまことしやかに言われているわけでありますけれども、一定の科学的な知見というのがあった上の話だと思いますから、決して全面的に間違っているということは言えないわけですけれども、しかし、確たる実証された根拠に基づいて言われていることではないと言わざるを得ないわけですね。  そういう点で、科学的知見が確立されていない、未知の分野の問題、しかし、それが具体的に本当の形でわかって、もう間に合わないということは避けなければならない。こんな非常に難しい問題を抱えた課題だと思うのです。まず、ダイオキシン症候群という言葉を使っていいかどうかはありますけれども、それぞれの立場でお取り組みになっている先生方から、この問題についての御意見、御所見をいただきたいなというふうに思っております。
  35. 井口泰泉

    井口参考人 ダイオキシンもそれから環境ホルモンというのも、データは少ないといいながら、ではそれをやめてしまうということはないわけですね。ダイオキシンに関しては、いろいろ影響が出ています。それから、環境ホルモンに関しては、少ないながら野生動物に影響が出ている。それで、危機意識をある程度高めないとこれは対策も何も進みません。  ですから、そういう意味では、わけのわからない環境ホルモンが、こういうところにまで来て参考人として話すようになったということは非常にいいことだと私は思います。これによって少しは皆さんの意識が変わって、では化学物質という今までの安全神話は少し考えてみた方がいいということになったと思いますね。そういう意味では私はよかったと思います。  一方、私は、朝大学に行きますと、大体七時ぐらいから電話が鳴っていまして、うちの子供の精子は大丈夫ですかと言われる。またきょうも電話があるかというふうに考えて行くのですけれども、そういうふうに極端に危機意識を持たれてノイローゼぎみになられる方も出てきた。これは少し困ったことだなと思います。  ですから、データがないので早く出すということは必要なのですが、どこまでが考えなければいけないか。ある物質の名前が出ますと、それがあること自体、自分の身の回りにあることが非常にまずいことであるとか、それから、特に子供をお持ちのお母さん方は非常にそういうことに神経過敏なところがありますので、私たちも、なるべくとらない方がいいですというふうな答え方しかできないのですね、ゼロにしなさいとかということはまず不可能ですから。そういいながらも、余りノイローゼにならないでください、その方が子供に対しては余計によくないですよという、科学者でありながらこんなことをしていていいのかなというような答えしかできないというのは非常に残念なことですが、それはこれからどんどん改良されていくと思います。  私は、今虚構であっても、虚構が虚構で終わればこれはいいことであると思います。ですから、人にはいろいろな考え方があるでしょうけれども、ある程度危機意識を高めないと、皆さん、そういう意識がない。そこで、落ちついてきたところでゼロになる。去年は地球温暖化と言っていた、ことしはほとんどそういうことは言わなくなったというようなことではいけない。環境問題は非常に長期にわたってこれからフォローアップが必要であるという意味の立ち上げとしては、非常にいいことだと思っています。
  36. 青山貞一

    青山参考人 青山です。  日垣さんの論文を私も読みました。実は、日垣さんがそれを書く前に、私に取材を申し込まれてきました。日垣さんは、私の持っているデータを譲ってくれ、売ってくれとまで言いましたので、そういうものは売るもの、譲るものではなくて、自分の足で、環境庁であれ所沢であれ、行ってくれということでしたけれども、その一カ月半後ぐらいにそれが出ました。七十冊の本を読んだと書いてあります。何らかの意図があってそういうことを書かれたのかどうかわかりませんが、私は非常に、それもえらい稚拙、拙速な論文だと思っています。  その数カ月前に、同じ文芸春秋上ですが、「所沢日本のベトナムか」という論文を書かれた方、横田さんがいらっしゃいます。それで、横田さんもそれに反論を書くと言っていましたけれども、僕は反論以前に、かなり間違った認識をその方は持たれているので、間違いをそのうち一回訂正してもらおうと思っています。  それはどういうことかというと、例えば一グラムで一万人死ぬ、サリンの二倍の毒性がある。そういう毒性は、恐らく国際的に認められた毒性でしょう。東京都の焼却場ごみを燃やせば年間これだけ出る、両方掛け合わせると二千万人死んでもおかしくないというところから始まっているのです。お読みになるとおわかりだと思うのですけれども。それは、均等にグラム数を、グラムといったって実際はミリグラム以下になりますけれども、ナノグラムになりますけれども、それを口の中にそれぞれが入れた場合には、ひょっとすると急性毒性でそうなるかもしれません。しかし、今の東京の各焼却工場というのは百メーターから、今度できました豊島区の清掃工場は二百メーターの煙突があります。そこから〇・一のナノグラムの、それをいいますとまた専門的になってしまうのでまずいのですけれども、そこで拡散していくときには広く薄くばらまかれますから、口の中に入るときには到底急性毒性に至らない。逆に言うと、そこに問題もあるわけです。それが東京湾に最終的に行き、植物性プランクトン、動物性プランクトン、小魚、魚、どんどん蓄積していくわけです。  それで、その方のは単純に、これだけのものを年間出しているのに、何で死なない、ダイオキシンで死んだという話は聞かないと。それはそうでしょう。そういう発生源があって、人間があって、その間というのは拡散してうんと薄くなって飛んでいく、散らばっていくという話がその話の中には一切ないのです。  ですから、それは明らかに意図的にそういうことを言っている場合以外であれば、その方はおよそ物理学のブの字を知らない方であって、笑って済む話だったらいいのですけれども、そういうことを随分影響を受けていらっしゃる方がいるので、私はそれはちょっと危惧しています。  騒ぎ過ぎとか、オオカミ少年とおっしゃっていますよね。それは確かに、騒ぎ過ぎのマスコミもありますし、オオカミ少年的なことを言っている先生もいらっしゃるかもしれない。私は行政とも住民とも対等につき合っていますし、自分自身も分析までやっていますから、そういうことに関しては今言った二つじゃないように心がけていますけれども、マスコミの前で言うことと論文で書くことの違いとか、そういうものは研究者として当然遵守しなくてはいけないことです。しかし、そこに書いてある、死んでいる人がいないから問題ないということには全然ならない。  リスクアセスメントというのがありますけれども、飛行機でおっこちて死ぬ確率と、ダイオキシン急性毒性で死ぬのを比較するような話があります。このダイオキシンの問題というのは、それこそきょうもいろいろと議論が出ましたけれども一つ発がん性アメリカはすごくこれを重視していまして、日本の千倍厳しいTDIというのを設けています。アメリカ発がん性にすごく、御承知のように、たばこもすごい厳しい基準を持っています。ですから、その問題が一つあります。もう一つは、免疫毒性生殖毒性のように、ピコグラム単位、一兆分の一でひょっとしたらおっしゃるような問題が起こるかもしれないという問題があって、その二つは、急に死ぬとかそういう話にならないところに問題があるわけです。ですから、それが一つその話に対して私が考える反論であります。  もう一つ、おっしゃられたことの中で僕はすごく重要だなと思っているのは、この問題の起源というのは、レイチェル・カーソン、井口先生の中にもありましたけれども、三十年前にアメリカの内務省に勤められていた女性の方ががんで亡くなります。レイチェル・カーソンという女性の方が、「サイレント・スプリング」、「沈黙の春」、春になっても何にも芽も吹かないし、鳥のさえずりもしないという本を書いたのです。僕は当初、英語で読みましたけれども日本ではたまたま「生と死の妙薬」などという難しい題がついてしまったために、当初だれも読んでいなかったのです。それで、その女性研究者は、まさに今のような状況を三十年前に見据えていたわけです。僕はローマ・クラブというところにそのころいたのですけれども、それは地球温暖化の地球環境の方です。  実は、レイテェル・カーソンさんも女性なんですけれども、「奪われし未来」というのが昨年日本で翻訳されました。これが井口先生とともに、今のパニック一つの原因かもしれません。それを書いているコルボーンとかダマノスキさん、ダマノスキさんはことし来ました。女性なんです。この種の問題の一番の問題提起者、告発者はみんな女性なんです。それで、何で女性かというのは、恐らく、子供を産む、生殖という問題があると思うのです。  ですから、男の論理だけでこの問題というのをはしゃぎ過ぎだとかオオカミ少年だと言ったときに、将来アカゲザルだけじゃなくて人間のどこかにそれに近いようなものが出てきた場合、私も男なのですけれども、果たして責任をとれるかという問題は、脳裏に焼きつけておく必要があると思います。  もう一つだけ言わせていただきたいのは、金沢の星稜女子短期大学、巨人のゴジラがいた高等学校の大学です、そこの私の友人が、文部省の教育委員会データから、小中高等学生の体力をずうっとこの数カ月集計して解析しています。そうすると、一九八〇年代の半ばちょっと前から急激に今の子供さんの体格はすごくよくなっているのですね。足も長くなっているし、見ばえもよくなっている、造作が大きくなっている。ところが、五種類ぐらいあるのですけれども、体力が全部急激に下がっているというデータを、実はきょう持ってこようと思いましたけれども、きょうは学会ではないのでお持ちしませんけれども、そういうものを出しました。それがひょっとしたら、全然因果関係はまだわかりませんけれども、きょうのこのテーマのようなもので関係しているとすれば、これは大変な話なのです。  御承知のように、慢性毒性の中には体力低下とかIQの低下までございますね。ですから、彼も、文部省に協力を仰いでもらってぜひ全国調査を行いたいと。あと焼却場がそばにあるところとか、何らかの農薬影響を受けるようなところで、小中学生、高等学生の体力はどうなっているかのデータも見たい。  ですから、そういう一個一個の問題に引き寄せた場合に、やはりはしゃぎ過ぎとは言えない部分もあります。  僕も、仕事でもこういうことをやっていますけれども所沢市の住民から毎日のように、そこに住みたいと思う、いい物件がある、日当たりもいいけれども青山さんの本を読んだら怖いので、どうしようか。それは、市とか何かに全部聞いた上で、だれも答えてくれないので、私のところに電話してきた。私も、井口先生と同じように、本来は余り答えたくないのですよ、安易なことは言えないですし。しかし、だれも答えない中でも、僕も半分ぐらい科学者をやっていますので、自分なりの、良心なり自分の信念の中で言わざるを得ないということがあります。  この種の問題は、全部調査して、終わったときに、結論を出したときには遅いという問題も半分あることを、私たちは認識していなくちゃいけないなと思っております。
  37. 林裕造

    林参考人 どうもありがとうございました。  先ほどの御質問、今回の質問も、リスクアセスメントに従事している人間にとっては非常に厳しい批判と思って受けとめております。  実は、多くの科学者は、何かリスクを考えるときに、この物質は、こういう過程にはこういうリスクを潜在的に持っているというところだけは非常によくやるのですね。ところが、それが実際の社会に対して、あるいは現実の環境にどういう影響があるかということについてはかなり手を抜いてしまうというか、時間がないということもありますけれども、その点があるのですね。  それで、先ほどおっしゃった論文は、実は潜在的に持っているリスクの内容を十分に御理解していなかったということによる誤りだと私は思っております。  先ほど私は、例えばダイオキシンの場合には、これはほかのものとは非常に違った作用がある、と同時に体の中に蓄積するということ、この二つが重要だと申しました。実は、先ほど省略いたしましたけれども、どこが違うかといいますと、普通毒性、毒物といいますと、例えば遺伝子に作用するとか、遺伝子から生成されたたんぱく、この部分に作用するというのが多いのですけれどもダイオキシンの場合、それから先ほどの環境ホルモンの場合にはその中間なんですね。その中間に作用するということで、これは非常に微量でも案外問題になることがある。  ただし、この場合に、すぐさま作用があらわれるわけでもない。長い蓄積でそういう作用が起こるということ、それを十分に理解しないと、これを普通の毒物と同じに解釈すると、なかなか判断ができない、誤ることがあるということで、私たちリスクを考えている人間は、そういう立場からもっとわかりやすく社会の方々にサイエンスをお伝えするということが大事だ。リスクコミュニケーション、これの重要性を改めて痛感した次第でございます。
  38. 千葉佳一

    千葉参考人 先ほどの御質問に対して、私の私見を述べたいと思います。  先ほど私が配付いたしました資料でも触れましたように、ダイオキシンの時系列的、経過的な中にも御紹介しましたように、例えば七七年にオランダダイオキシンが検出されたというような記事、それに対してなぜそのときまた騒がれたかという背景は、ベトナム戦争のあの悲劇のドクちゃん、ベトちゃんの話で、我々が一番びっくりするような出来事であったと記憶しております。  したがって、その時点での分析技術は、例えば今の分析技術とはもう比べ物にならないレベルでして、各業界で切磋琢磨してもなかなか、いわゆるピコグラムという単位すら話題になっていなかった時点だったと記憶しております。まだナノの追跡をするのが精いっぱいだったと思います。  ナノからピコの話になって、このごろはフェムトの、十のマイナス十五乗のレベルにまで突っ込むような段階になったのは非常にすばらしいことではあるのですが、さて、病理学的というのですか、健康とのかかわりでどうなるかというのは、我々は専門でもございませんし、それはそれぞれの分野の先生方の論文を見せていただきまして、単に世論じゃなしに、その是非を客観的に、企業側として全体の動きを見ながら感じるものであります。  したがって、ダイオキシンというものを変に不安がる必要はある面ではないわけで、先ほども話に出ておりましたように、日本においてダイオキシンで亡くなったという、日本においてはそこまでいっていないという考え方もあるのですが、さりとて、このままほうっておいていいかというととんでもない話で、できるだけ低レベル化を図り、無害化を図るということは当然のことだと思います。  したがって、先ほど来、焼却の仕方につきましても、さらに一けた、今の新ガイドラインで言う〇・一を、さらに〇・〇一を目標に各社が研究開発をしているわけでございますが、それを目標にしているということでございます。  ちなみに、2・3・7・8TCDDが一番毒性が強うございますが、物性につきましてはもう十分わかり尽くされておりまして、それは水に溶けにくいものであるとか、あるいは七百度以上にならないと絶対に熱分解もできない、したがって、厚生省基準でいいますと八百度以上、できることならば八百五十度から九百度で燃焼しなさいよ。  スリーTの原則というのがございまして、温度の管理と、それからリテンションタイム、二秒以上の滞留時間が必要ですよ、しかも、タービュランス、いわゆる混合撹拝をよくしないと分解しません。こういうことは、我々は実際定量的に、ダイオキシンがどうずればどうなるというのはわかっておりまして、低レベル化はできる昨今になっております。  したがって、文芸春秋の話に戻りますが、視点がちょっと違いますので、センセーショナルな表現、先ほども触れられていたような問題点等々は感じますが、ダイオキシン症候群という表現のように、ダイオキシンに注目しなさいよという受けとめ方をして私は読んだ記憶がございます。  以上です。
  39. 小林守

    ○小林(守)委員 ありがとうございました。  それでは、次に、有害化学物質がどんどん明らかになってきている状況の中で、既に十万種に及ぶ化学物質、そして毎年千種ぐらいの新しい化学物質がつくられているというようなことを聞いているわけですが、日本における有害化学物質対策が非常におくれてきているのではないか。特にダイオキシン対策については、少なくとも、大気汚染濃度土壌濃度など、調査の結果を見ると、欧米に比べて十倍ぐらいの数値が出ているのではないか。超微量の話ですから、十倍といってもどうなのかよくわかりませんけれども、しかしそれでも十倍ぐらいの汚染濃度が数値として出ている。こういうことを考えると、日本ダイオキシン等を含めた有害化学物質対策についてはおくれているのではないか、こういうことをまず感じておるところであります。  また、できるだけ国際標準に持っていく。科学的な知見というのは国が違っても関係ないわけですよね。科学的知見というのはこれは普遍的なものでありますから、やはり国際標準に合わせていくのは当然のことだろうというふうに思うのですね。そんなことも含めて、世界の、WHOの専門家会議がTDIの見直しを行いましたから、少なくとも一から四ピコグラムにTDIを日本のものは合わせていく、直していくということは当然のことであろうというふうに思いますし、その際に、コプラナPCBも含めた一日耐容摂取量の基準でなければならないだろう、こんなことを日本のおくれたところとして指摘をしておきたいなと思っているのです。  一つお聞きしたいのは、化学物質についての、新たな製造、製品化、市場に出回る、そういう過程の中では、現在、化学物質の審査及び製造等の規制に関する法律、こういう形の中で規制を受けながら出てくるのだと思うのですけれども、先ほどもお話しになっているように、急性毒性発がん性の問題が規制対象であって、いわゆる内分泌撹乱物質としての観点というのはないわけですね。そういう問題。それから環境アセスメントの上でも、いわゆるスコーピングの項目としてダイオキシンの問題等については触れられていないということであります。これもおくれていると言わざるを得ないところなのです。  新たに化学物質がつくられて、これが人間生活にとって便利でいろいろな有効な作用をもたらしてくれるメリットがあるわけですけれども、一方においては、予知できないようなデメリットというか有害性が後になってわかってくるというのが随分多いのですね。  これは例えば、DDTという殺虫剤、これも大変すばらしいものができたというふうに当時は言われたそうであります。それから、例えばフロンにしても、これも夢の物質だと言われた。ところが、二十キロも上空に行きまするととんでもない悪さをするということもわかってきた。そのほか、プラスチックだって大変便利なものであるし、安いし、非常に耐久性があるとかそういうことで便利で普及してしまったと思うのですね。ところが、大変な問題を生じるというようなことも今はわかってきているわけであります。  こういう新しい化学物質の検査のあり方、許認可のあり方というのでしょうか、この辺について、基本的な行政のシステム、考え方がやはり問われているのだろうというふうに思います。それから、事後的に新たな知見が、有害な知見がある学者によって発表された、一人でも二人でも、圧倒的に世界的にも認知されるような知見ではなくても、こういう問題があるのではないかという指摘があったならばすぐに対応する仕組みがないとおくれてしまうのではないか、こんなふうに思うのですね。  そういう点で、要は、製品化して出回るまでに有害性が実証されない限り使ってもいいのですよという原則自由論の立場に立つのか、それとも、いや、安全が証明されない限りやはり使うのは待ってくれという原則規制という形で新たな化学物質に対して臨む、姿勢、基本的な観点、これがこれからの化学物質行政の大きな分かれ道になるし、日本化学物質行政というのは原則自由論で来てしまったというふうに私は言えると思うのですね。  これは全員の方というのもあれですから、井口先生の方に、その辺についてどのようにお受けとめになられているかお聞きしたいなと思います。  それから青山先生には、新たな規制値について、国際標準に即近づけるべきだし、外国人と日本人、日本人の方がダイオキシンに対して耐性が強いなんてことはこれはあり得ない話で、同じだと思うのですね。そういうことになるならば、国際標準に合わせるのが当たり前のことだろうというふうに思っておりますが、その辺についてのお話をしていただければと思います。  それから、次世代型ごみ焼却施設の問題で、今厚生省の方では、一日三百トンくらいのものがいいのだ、しかし、最低補助基準としては百トンくらいまで集めて連続完全燃焼でやれば大丈夫なのだというような方式をとろうとしているのですけれども、この広域化、大規模化、このような燃焼方式というのはやはりごみの減量とかリサイクルとかいう視点からするとやはり間違うのではないか。発電していく、そのためにはごみをもっと持ってこいという話になってしまうわけでありまして、本末転倒の問題が住民団体からも強く指摘されているところだと思います。  そんなこともあるのですが、要は、焼却場がものすごく多いですよね、公的にも千九百施設もある。これは日本独特の焼却主義、燃やすときれいになって衛生上いいのだという考え方、もう毒はなくばい菌も死んでしまう、きれいになっているという、火に対する何か一つの民俗信仰的なものがあるのではないか、こんなふうにも思うのですが、それはさておいて、この焼却主義を脱却しない限りなかなか難しいのではないか、私はこのように思うのです。広域化の問題や大規模化の問題についても、その辺の問題をクリアしていないのではないか、このように思うのです。  それで、次世代型のごみ焼却施設として、私もプラントを、藤沢の荏原さんですね、実験プラントを見学させていただきましたが、まさにその最先端を行っている技術だというふうに私は思いますし、そのことによってダイオキシン問題も、まず今までの技術では世界最高レベルのものの達成ができるというふうに思うわけなのです。先ほどの質問のように、では、これからダイオキシンのほかに有害な化学物質が排出されることがないのかどうか、そういうものが新たに出てきたときにはこの次世代型のごみ焼却施設はどういうシステム、新たなものが出たからにはどういうシステムを備えているのかどうか、そこも大事だと私は思うのですね。ダイオキシンに対しては最高の技術をつくった、しかし、ほかの物質に対してはだめだったということになっては困るわけでありますから。それに対して、科学的知見というのはなかなか容易ではないと思うのです。技術も追いつかないのだと思うのですが、しかし、そういうこともあり得るという想定のもとに、科学というのは、技術というのは謙虚でなければいけない、このように思うのです。  私もこういう次世代型のガス化溶融炉というものは、これから自治体も含めて大きな展開をしていかなければならない一つの道なのかなというふうには思うのですが、広域化、大規模化という問題についてはどう解決しようとしているのか。  それから、新たに有害化学物質が排出されるということがある程度わかってきた場合にはどういうシステムで受けとめようとしているのか、その辺の備えがあるのかどうかをお聞きしたいなというふうに思います。  とりあえず、その辺のところを質問させていただきます。
  40. 井口泰泉

    井口参考人 化学物質の認可のあり方ということでお答えいたしますけれども、今OECDの方では、野生動物に対する試験法を取り入れようとしています。ですから、魚、鳥それからカエルなどに影響があってはいけない。今人間に対する試験法はできております。ですから、毎年二千五百くらいな新たな物質ができているということなのですが、それはOECDの試験法ができますと世界法律になりますね。それが通れば、使ってもいいだろうということになると思います。  それから有害性がなければ使っていいか、あるいは安全性が確認されれば使っていいかということになりますと、これは非常に難しいです。すべての化学物質は量によっては有害性が出てくると考えるのが通例でありますので、柔軟な対応が必要だと思うのです。これは科学の進歩ということと対応していますので、今ではわからない、しかし十年後にはこれはこんな作用があるということがわかった、わかったら即座にそこで対応ができると。今、一回認可されたものは、もうこれは認可されているのでというのを建前として使い続けるということがありますので、それを今度は法律がバックアップしてくれるわけですね。  そうじゃなくて、何かが起こったときには法律といえども柔軟にもう一回見直せということがないと、一回オーケーとなったものはずっと使い続ける、これが今の非常にかたくななといいますかかたい政策になっているんだろうと思います。
  41. 青山貞一

    青山参考人 青山です。  御質問はTDIのお話だったんですけれども、その前に、私はやはり、先ほどの小林議員のお考えですと後者の立場をとるものであります。  私は、テクノロジーアセスメント、技術事前評価というのを、二十年ぐらい前アメリカに最初に行ってこういうのがあるというのを見てきたんですけれども、要するに、新製品を開発するに際して、それの将来影響を、日本環境アセスメントにはなくて、予測し、評価し、場合によっては、そこで不確実性はありながらも問題があるという場合には開発をやめるというものです。アメリカでは今もう議会にオフィス・オブ・テクノロジー・アセスメント、OTAというのがあります。日本は、当時検討しながら、結局技術者、企業の開発意欲を阻害するという名のもとにこれは法制化されなくて、いわゆる大規模公共事業によるアセスが昨年通ったという経緯があります。それの観点からしますと、やはりこのテクノロジーアセスメント、TAを日本でも今後、日本でもたしか五万種類以上あると思うんですが、新しい合成物質を開発するに際してやっていくべきだという立場であります。  あと、昨今通産省、環境庁がPRTRというのをいろいろと制度化のための研究をしておりますけれども、これは単に化学物質を移動登録するに際して、専門家だけじゃなくて、情報を公開することによって地域の住民とかそれ以外の方にも、リスクコミュニケーションといいますけれども、それをしていくという制度ですから、これも日本は、おくれているかどうかわかりませんけれども、実はまだ確立されていない。こういうものを踏まえて化学物質と私たち人間がどうつき合うかということを考えるべきですし、法制化の課題もあると思います。  TDIに関しては、一から四というのが先ほど林先生からもありましたし、僕も申し上げたんですが、例えば、私の資料の九ページをちょっと見ていただきたいんです。この上の方の図は所沢です。これはシミュレーションです。ある条件です。というのは、産業廃棄物濃度データがありませんから、一律百ナノグラムというのを与えた場合に、この九ページの上の方の図は、この黒い部分が濃度が高いところです。あえて絶対値は入れておりません、また騒ぎになりますから。この黒いところでは、実は空気から吸う大気汚染だけで二とか二・五ピコグラムというのが出ています。これをTDIに変換するのは、五十キログラム体重の方の場合に〇・三掛ければいいので、約一になつちゃうんです。つまり、高度汚染地域ではWHOの一を大気だけでオーバーしちゃうということがありますので、やはりコプラナPCBを入れればもっとオーバーしちやいます。  ですから、TDIから見ても、やはりこういう地域規制を強める必要性が、先ほど言いました臨時措置法じゃないですが、地域指定的に、こういう地域はほかの地域とは違う対応をとる必要があるかなと思います。
  42. 千葉佳一

    千葉参考人 私はプラントをつくっている立場ということで御説明したいと思いますが、ダイオキシン以外で、例えば次世代炉であろうが今の従前炉であろうが、どの程度環境ホルモン物質と言われるようなものに対応できているか、あるいはまた将来するだろうかというのを、私の私見でございますが、それを定量的に測定しているわけじゃございませんが、かなりの量は、実際ごみという形で排出されてきましても、環境ホルモン物質が入ってきましても、焼却炉の中で高温で酸化されまして、所定のリテンションタイムで分解すると考えられます。  それで、大きく二つに分けまして、ハイドロカーボン系、いわゆる有機系のものがかなり今内分泌撹乱物質になっておりますし、一方、ヘビーメタルにつきましては、今ダイオキシン対応していますように、パーティクルは、従来のやり方というのは、EP、いわゆるエレクトリクプレシピテーターで、電気集じん機で取っていたんですが、それをバグフィルターでさらにきめ細かく取るようになりましたし、ダイオキシン対応する中で環境ホルモン物質はかなり取れていると思います。ただ、そういうことが現実に今定量的に実態が把握できておりませんし、研究機関を含めましてこれからの問題だろう、かように思います。  したがって、ごみ焼却という行為は焼却主義が民族主義かというようなお話がありますが、これは国の施策、いわゆる衛生法、清掃法、汚物処理法から出発して、衛生的な処理、特に、O157じゃないですが、微生物を分解するというのは、コンポスティング一つでもああいう手法でやりますと、きっちりとした本当に毒性物質、トキシンを発生するような胞子のようなものを出す毒性物質もあるわけですし、そういう意味では、どちらかというと、熱分解という以外の減容化、減量化、衛生化、安定化というような手法がほかにあるかということですね。  例えばエネルギーでも、原子力は使えないでしょうし、光エネルギーも十分まだ使えないでしょうし、やはり今のようなやり方をせざるを得ぬということで、厚生省当局もそれから通産の方の技術開発のプロジェクトもかなりの額を出しておられるというのは、ダイオキシンはだんだんだんだん取れるような段階になってきましたし、環境ホルモン物質といえどもごみ焼却炉から排ガスなり排水なりのところで取れないかというと、取れるような対応は十分将来を含めて可能だと思います。私はそういうふうに思います。
  43. 小林守

    ○小林(守)委員 時間が参りましたので、ありがとうございました。
  44. 北橋健治

    北橋委員長 次に、西田猛君。
  45. 西田猛

    西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。  きょうは、参考人におかれましては、皆様方大変お忙しい中、わざわざお越しいただきまして貴重な御意見を拝聴させていただいております。まことに御礼を申し上げたいと存じます。  まず冒頭申し上げておきますけれども、今回の環境ホルモン及びダイオキシン等の有害化学物質に関するこの環境委員会での問題提起でございますが、特にダイオキシン問題の一つの大きな提起となりました能勢の美化センターにおけるダイオキシン問題については、実は、能勢町というのは私のふるさとでございまして、私の地元でございます。大都市大阪府の中にありましては、豊かな自然と、そして人々の豊かな心が残っております、まことに住みよい、そしてすばらしいところであります。そのようなところでかかる問題が起こりましたことについて、私も地元の人間の一人といたしまして大変ざんきにたえないところでありますし、一刻も早くこの問題を解決しなければいけないというふうに考えているのでございます。  したがいまして、以下の五つの点を中心にいたしましてきょうは参考人の皆様方に御意見を聞かせていただきたいと思っているのでございます。  まず第一点は、ダイオキシン等の有害化学物質問題についての行政の取り組みのあり方でございます。  それから第二番目に、そのような行政の取り組みの問題に端を発しますところの、やや問題点が大きくなりますが、国、地方の行政の責任あるいは行政の守備範囲のあり方についての問題でございます。  それから第三番目には、私の方から若干今の現地能勢町及び豊能町におきます現状を御披露申し上げまして、先生方の御意見をお聞かせ願いたいというふうに思っております。  それから四番目には、施設とその施設をつくられたメーカー及びその基準をつくっていた国との関係、並びに、言うならばプロダクトライアビリティーのような問題点についてでございます。それが五つの柱なのですけれども、私は長らく行政官をしておりまして、その後は米国で弁護士もしておりましたから、プロダクトライアビリティーということについては少しく研究もしておりました。この点について後ほどまたお聞かせ願いたいと思うのであります。  まず第一点の、化学的な有害物質等に関して、国民あるいは地域の住民の皆さんが被害を受けられる、あるいはその他、農作物でありましょうともいろいろな被害が出ているということについては、これはすぐれて危機の問題であるし、これについて国や地方公共団体あるいはその他の機関、組織がどう対応するかというのは、専ら危機管理の問題なのではないかなというふうに私は思うのであります。  私も、現在、特に世上かまびすしく言われております金融の危機問題に対処している金融安定化に関する特別委員会委員もしておりますが、これもすぐれて危機管理の問題でありまして、日本の行政が最も不得手とする部分なんですね、この危機管理というところが。したがって、この能勢における、あるいはほかの地域でもありますけれどもダイオキシン等の問題についてどのような対応をしていったらいいのかということが、国であろうと都道府県であろうと市町村であろうと、あるいはその他の機関であろうと、なかなか道筋が見えてこないというところが今回露呈してきたのでございます。  その中で、きょう、特に青山先生からダイオキシン汚染対策臨時措置法的な対応を行うべきではないかという御提言をいただきました。私は前々から、こういう危機に当たっての危機管理を行う法律をつくっておいて、そして、いざというときに万全の態勢をとるという形をつくっていかなければならないのだと思っておりました。したがいまして、まず皮切りに青山先生にお聞かせ願いたいのですが、先生が提唱しておられるような臨時措置法的な対応、これの常における法律の中身、どのようなものを想定しておられるか、教えていただけますでしょうか。
  46. 青山貞一

    青山参考人 青山です。  それほど個々具体に検討しているわけではございませんが、実際、実務に当たっている人間と話しますと、例えば総合的とかいっても、結局は大気汚染防止法、水質汚濁防止法等々、土壌汚染云々、個々の法律の政省令を改正して指定物質にして、その上で今度は排出濃度、環廃濃度を決めていくということをしないと実際の規制はとれないというふうに言っていますし、私もそうだと思うのです。  昨年やったのは、実は大気だけなのです。大気、水質、土壌と、今のようなやり方ですと、一個終わると次だ。モグラたたき的な立法対応では結局、委員おっしゃられるような対応はできませんので、大気だけじゃない、水だけじゃない、底質だけじゃない、そういうものをワンセットとして、しかもある程度地域を、さっき私申し上げましたけれども、おおむね指定した中で、財政的なものも含めまして、そこでの対応がとれる法律の枠組みが必要かなと思うのです。  何とか基本法とか、何とか総合何とかというのはほとんど、聞こえはいいのですけれども、実際使おうとするとなかなか規制的な効果がないのです。ですから、個別法をうまく使うというのと、土壌も従来のは農地の話ですから、それをこういう地域に当てはめるための改正が必要でしょうけれども、そういう改正作業を一遍にできれば、臨時措置法の中でしていただければ、所沢とか能勢とかのような高濃度地域に対しては対応が早くとれるのじゃないか。ただ、それは、その地域だけでいい話じゃなくて、土壌ダイオキシン濃度もしくはアメリカのスーパーファンドみたいなものは当然それとは別に、じっくりつくっていただきたいというふうに思っているわけです。  ですから、それは、今のままで見ていますと、ことしの五月に土壌ダイオキシン検討会というのが環境庁にできましたけれども、多分最低一年ぐらい検討して、来年以降じゃないと何らかの指針値、基準値、政省令改正は出ないと思いますけれども、それを待っていると、能勢の場合は恐らく法的な対応は無理で、あくまでも行政が対応するということがせいぜいかな。その場合の行政も、町村と県と国でいいますと、先ほど申し上げましたけれども、どちらかといえば今は国が中心になるのかなと。しかし、所沢を見ていても、やはり法的なものが不備なために、実際市町村がどう頑張っても、県がどう頑張ってもできないということがありますから、行政的な意味での国の対応じゃなくて、立法的なものを背景にした行政対応、しかも、国がある地域に対して県と一緒になって対応できるような枠組みをつくっていただきたいと思います。それがないと恐らく自治体は動けないと思います。
  47. 西田猛

    西田(猛)委員 今青山先生もおっしゃいましたように、例えば、当初この能勢の問題が起こったときに、ごみ焼却場の問題だから、ごみの問題だから、これは基本的に町で対応してくれというふうな話があったように聞いているんですね。これは私は問題の本質を全く理解していない、とんでもない議論だったんだなというふうに思うのですね。確かに地方自治法上、ごみを集めることは市町村の基本的な行政事務かもしれません。しかし、これはごみの問題なのではなくて、当然、今申し上げたように人体に関する、あるいは環境に対する危機管理の問題ですから、これはすぐれて国が全体的なものとして取り組んでいかなければいけない問題なのだなというふうに思っているのです。  そんな中で、やはり我が国の中央政府、霞が関の行政体制のあり方、それから土地の利用計画、それから環境基本計画などとの整合性の中、そしてまた財政的な側面から、今も青山先と言われましたが、国が総体的に取り組んでいかなければならない問題なのだと思うのですけれども、このあたりについての御所見を林先生の方からもお聞かせ願えますでしょうか。
  48. 林裕造

    林参考人 どうもありがとうございました。非常に勉強させていただきました。  私は、やはり危機管理というのは決して一つの行政機関で対応できるものではない、これはもっと立体的なものである、多角的な対応が必要であるということで、少なくとも考えなければいけないのは、そのリスクの実態を認識することですね。それのためには、リスクアセスメント、これをリスクマネジメントにいかに反映させるか。  しかしもう一つは、そのリスクを住民の方々がどういうふうに認識されているかということ、言うなればリスクパーセプションですね。住民の方々のリスクパーセプションと、それからサイエンスでできたリスクアセスメントの両方をリスクマネジメントにいかに生かすかということが非常に大事だと思いますし、これも決して一つ省庁でできるものではないと私考えております。この間には、伝達しなければいけないという、リスクコミュニケーションをさらに充実させなければいけないということもあると思いますし、こういうことのためには、私がいつも日ごろ考えておりますのはNGOをもっと有効に活用する、あるいは日本にNGOをもっと育成するということがこういう問題の解決に重要でないかと思います。  私、能勢町の隣の池田市に住んでおりましたので、非常に能勢町のことも身にしみて感じております。  どうもありがとうございました。
  49. 西田猛

    西田(猛)委員 ありがとうございます。  ところで、今、能勢町あるいは豊能町での現状でございますけれども、どうやら、豊能郡環境施設組合における高濃度ダイオキシンの原因というものが、先般の厚生省の集中的な調査でほぼ明らかになってきつつある。それによれば、湿式の排ガス処理施設に附帯する開放型の冷却装置から、高濃度ダイオキシン類を含む水がミストとして、霧として飛散したものと推定できるという発表が厚生省調査で行われたわけですね。  これは、いろいろ町の方でも調査してみると、どうもおかしい、煙から出たのじゃないかなという意見が最初あったのですけれども、それにしては、四百メートル、五百メートルというところにあるのじゃなく、施設塔のすぐ直下で高濃度ダイオキシンが検出された。どうしても説明がつかないなということで、皆悩んでいたわけですね。その中で、こういう今の、私が申し上げたような調査の結果が、ほぼそうであったのではないかということになりつつあるのです。  ところが、困ったことには、そのような水を媒介としてこのダイオキシンが飛散したということですので、まだ施設内に相当高濃度ダイオキシン類が残留しているのではないかという調査結果もあるのですね。したがって、早速大阪府は、現地の町と一体となりまして、厚生省の指導もあり、焼却施設の開口部を閉鎖し、それから施設内への立ち入りを制限、それからまた焼却塔などをカバーにより囲って再飛散を防止したということもしておられるわけなんです。  しかし、これらの措置は、もちろんただでできるものではございませんで、例えばどれだけの費用がかかったかということを参考までに申し上げますと、町が行った環境調査がこれまで二回ございまして、一回目の環境調査で約二千二百万円ですね。二回目の調査で二千八百万円。それから、施設内の環境改善事業で一千八百万かかった。それから、今年度実施したところの、すぐ近くに能勢高校という高校がありますし、そういうところの環境改善事業として二億五千万円をかけました。そしてまた、ことしの十月に実施する予定の地域住民の方の健康調査で一千五百万円かかるだろうということで、今年度だけでも合計三億三千三百万円の費用がかかるだろうというふうに言われているのですね。  さらに、今後最低限必要だと思われる費用としては、さらなる環境調査に約三千万円。それから、ここが一番問題になりまして、今までも委員の方から御指摘ございましたけれども汚染した土壌の処理費でございますね、これが推定で約六億円かかるだろう。そして、さらなる環境改善のために約二億五千万円かかるだろうということで、今後予想される費用の合計が約八億八千万円にも上る。  そうしますと、合計で、これで大体十二億円余の金額になるのですが、他方、皆様は御存じかどうかわかりませんが、この豊能町というところ、能勢町というところは、まことにのどかな地域でございまして、その予算規模は、平成十年度の一般会計予算額で、能勢町は五十七億円、豊能町は八十一億円。この豊能郡の環境施設が立地しておりますところはまさに能勢町でありまして、だから、能勢町が第一義的に地域的な責任を負っているのですけれども、一般会計予算が五十七億円の中で、今後十二億円余の支出が見込まれる。これを町だけに負担しろというのは、とてもむちゃな話でございます。私ども、常々地元の住民の方あるいは行政当局、いろいろな機関の方と話しておりますと、こういうことが悩みの種だという御指摘がございました。  それと、お金の面もさることながら、自分たちだけでいろいろな技術的な面をカバーしていくことはやはり非常に難しい。したがって、ぜひ国やあるいはいろいろな機関に、特に今、林先生御指摘になりましたNGOも含めて考えてもらいたいのは、技術的な、あるいは財政的な支援だということを言っておりました。このことを皆様方にも御指摘をしておきたいなというふうに思っているのですね。  それで、そのような中で、私が一つ一番大きな問題だなと思ったのは、いわゆる風評被害というものがございました。この問題が起こってから、能勢イコールダイオキシン、豊能町イコール汚染とか、そういうイメージで非常に風評を立てられた。したがって、のどかな農村地帯でしたから、毎日曜ごとには朝市が立って、野菜が百円でたくさん売られていて、大阪の都市住民の方が喜んで買いに来ておられたのですけれども、それがばったりとやんでしまってとても困っているというふうな状況もございました。  これは金融問題でも同じでございまして、ところが金融問題なんかになると、大蔵大臣までもが、いや自分が不用意な発言をすると大きな問題になるので、ここはひとつ何も答えずにおきましょうなんということを、国会委員会の答弁でしゃあしゃあとおっしゃるわけですね。ところが、この問題についてはだれしもが、口を開けば、いや汚染だ、いや何が原因だこうだといろいろなことをおっしゃった。それらが積もり積もって、最終的には能勢、豊能町というのはこんなところなんだな、こういう風評に結実してしまったというふうな点があったわけですね。  したがって、私は、これは非常に社会学的な観点からの御意見拝聴ということになるのでしょうけれども、こういう環境問題についての、報道機関の報道も含めて、あるいは対応あり方として、今後どういうふうな配慮がなされていくべきとお考えになられるか。ここのところを、では井口先生と、それから技術的な面もございましょうから、千葉先生の方からもひとつお聞かせ願えませんでしょうか。
  50. 井口泰泉

    井口参考人 風評被害についてというのは、これは難しいと思うのですが、逆に、国がかなりな額を投資してこれをこれだけきれいにしましたよという、モデル地区にという先般のお話もありましたけれども、そういうふうにすれば、いやこれだけきれいになったのですよということを今度はアピールしましょうという対象にするといいと思うのですね。  そのまま忘れてしまうということですと、いつまでも、何かあそこは危ないと、これは化学物質と同じで。ですから、何らかのことが起こったわけですから、それを今度は逆手にとるというふうな政策をぜひ考えていただければいいと思います。  私の方も余り科学的ではありませんけれども、そういうふうな対応がいいのではないかと思います。
  51. 千葉佳一

    千葉参考人 今の御質問でございますが、私はやはり、厚生省が発表しました資料それから新聞報道等々では知っておりますが、こういう業界の立場ということでございますので、そういうスタンスで御説明したいと思います。  九月二十一日に発表されました厚生省調査結果に基づいて判断しますと、開放型の冷水塔が原因になっているということでありまして、非常に高い濃度ダイオキシンが検出された。これはやはり、考えますと、施設の維持管理上の問題が非常に大きかったのじゃないか。具体的には温度管理。まず、焼却炉で焼却しますね。それで、液温塔がございまして、減温して排ガス処理設備、ガスを洗う設備がありまして、それをためる減温水の循環設備があるわけですけれども、それの温度が上がらないように冷却をする必要があるのですが、そこから直接出てきたものじゃないかということになっております。  それで、このタイプのものはかなり、三十六カ所あるわけでございますが、きちっと燃やしていると言われているところではレベルが一けたも二けたも低かったということも指摘されておりますし、いわゆる施設そのものは当時の基準及び規則に合致したものと聞いております。  したがって、設計施工上問題があったかというと、そうではないというように判断しておりますが、そもそも焼却過程でのダイオキシン発生というものがなければ、この後の過程での、洗煙プロセスでの濃縮したものが飛沫化し、飛散し土壌汚染につながったとは考えられないわけでございますので、ダイオキシン発生を抑える、発生抑制をする、いわゆる焼却の炉の中できちっと燃やすということがまず最も重要だと思いますし、またそのことが各地でなされておりますし、そういう意味では、これは特異なケースじゃないか、そういう技術的知見を持っております。  以上です。
  52. 西田猛

    西田(猛)委員 実は、私は風評被害の点についてお聞きしたのでありまして、今、千葉参考人の方からはいろいろと御所見の開陳がございました。ただ、それについてはまた違った意見もあるということは、ここで一応指摘しておかなければならないと私は思います。  そこで、例えばこういう話もあるわけですね。洗煙、洗った煙の排水は外部に流すのが普通なんだけれども、あの施設の周辺は農地なので、これはあえて外に流さなかった、いわゆる閉鎖システムを採用したがゆえにこういう問題が起こったのだという指摘もございますし、ある技術者の方は、これはどこの企業とは申しませんけれども施設を建設する立場からしても、ダイオキシン類は水に溶けにくいと考えていたので、水を経由する汚染を考えられなかった、したがって今回のダイオキシン発生は予想外であったというふうな指摘もあるわけですね  私は、きょうのこの場は、どちらが何、これがどうということを議論する場ではありませんので、この指摘にとどめておきますけれども、たとえ当時国が有している基準に合致した施設をそのとおりつくっていたとしても、あるいは一応のマニュアルに従った運用がなされているのだけれども、その運用に若干の問題が生じようとも、それこそ原子力の問題にしてみても、ちょっとの操作ミスとか管理のミスで放射能が漏れるようなことがあってはならないわけですね。そういう十重二十重の、英語ではいろいろとありますけれども、十重二十重の安全管理をなすということの認識が、この有害化学物質についても今後は必要だし、欠けていたなということを私は思っているところでございまして、ここにつきまして、林先生、最後に御所見をお伺いしておきたいと思います。
  53. 北橋健治

    北橋委員長 恐縮ですが、簡潔にお願いいたします。
  54. 林裕造

    林参考人 私はやはり今おっしゃったとおりだと思っております。  一番大事なことは、先ほど次世代の焼却炉という問題がありましたけれども、私は、ただ単にサイエンステクノロジーでもってそういうものをつくり上げていくということじゃなくて、今までの試行錯誤ですか、そういうものを反映させてつくり上げていくことが非常に大事だと思っております。現に確かに、十分でないとしても、ダイオキシンの体の血中濃度環境汚染は着実に落ちているのですね。そうすると、その中で落ちているというのが、どういう施設をどういうふうに使ったことがそれに反映したかということ、これを十分に踏まえて、それで新しい施設、新しい運営方法を考えるということが大事だと思います。ですから、今の先生のおっしゃったことは、まさにそれの重要な一つのステップであると私は考えております。  どうもありがとうございました。
  55. 西田猛

    西田(猛)委員 時間が終わりましたので、ありがとうございました。
  56. 北橋健治

    北橋委員長 次に、藤木洋子さん。
  57. 藤木洋子

    ○藤木委員 日本共産党の藤木洋子でございます。  きょうは先生方、本当にお忙しい中をこの委員会参考人として御協力をいただきまして、ありがとうございます。順次お伺いをしてまいりたいと思いますが、まず最初に井口参考人に伺いたいと思います。最初に二点ほどまとめて質問させていただきたいと思いますので、お答えください。  参考人の御意見の中にもございましたし、参考人がお書きになりました「生殖異変」という著書にも、環境中の安全値はどう決めたらいいのかというところで、妊娠何週日かの男女の性別を決めるような一番微妙な時期であれば、少量でも効くということは可能性としてはあります、化学物質胎児期にどう影響を及ぼすのかをまず見る必要があるとしておられます。環境ホルモンによる胎児期から新生児期での暴露が、成人してからの生殖体内ホルモン環境等へ影響を及ぼす可能性があるというふうに考えられるわけですけれども、胎児影響につきまして詳しい研究はこれからだというふうに伺っているわけですね。  そこで、今後の胎児影響についての取り組みとして、動物実験であるとかあるいは研究体制などで今一番何が求められているのかという点をお答えいただきたいというふうに思っております。  二つ目は、「科学」という雑誌に先生が「環境ホルモン問題にどう挑むか」という論文をお書きになっていらっしゃるわけですけれども、ここでは政策に必要なこととして、政策的な問題に対しては、科学的な問題がすべて解決されるのを待つことなく、どの時点かで決定されるとして、リスクアセスメントとリスクマネジメントをどうするか、予防原則に立っていかに考えるか、責任あるいは費用の負担をどうするかという問題があり、また汚染を予防し、毒性の低い代替物質を開発することが必要であり、一般市民の知る権利も考えた政策が必要である、このようにお述べになっていらっしゃいます。  そこで、日本環境庁も、ことしの五月に環境ホルモン戦略計画というのを出しているわけですけれども、そこでは専ら環境汚染状況の調査であるとかあるいは生殖異常の現況調査であるとかということに重点が置かれておりまして、アメリカ政策的な水準には遠く及ばないという気がするわけです。  そこで、日本の国内でも、環境ホルモンについての情報公開など、政策的なものが必要なのだろうと思うわけですけれども井口先生は今一番何が求められているとお考えか、この二点についてお答えをいただきたいと思います。
  58. 井口泰泉

    井口参考人 胎児影響が一番その仮説としては考えられますので、研究面としましては、人体実験は到底できませんので、動物実験中心になるかと思いますけれども、いろいろな化学物質が、これは非常に難しいのは、ダイオキシンということだけで取り上げればダイオキシンなんですが、ダイオキシンが入ってくる背景にはPCBも入っているでしょう、ある程度農薬も入っているでしょう、とすると、その複合作用ということがあります。  それはおいでおいでも、胎児影響、今いろいろな化学物質ダイオキシン以外でもあります。ポリカーボネートでもいいですし、その材料のビスフェノールA、そういったものが一体胎児に対してどういう影響をするか、今話題になっているものをまず優先して調べてみるということが必要です、これは世界的にもやっていますので。そういうところのデータをこちらがいただければもらって、しかもこちらもまた追試をして、一つ実験で物を言いますと、またあそこのデータとうちのデータは違うのだということがありますから、共同でやれば実験のそごが見えできます。  ですから、胎児影響実験動物を中心にして調べた方がいいというのと、それから私の立場は人間だけではないです。魚、鳥、カエルという、それだけじゃなくて、アメリカの方では、サンゴに対してどういう影響があるかとか、あるいはミジンコに対してどういう影響があるかというふうなことも始まっています。それは生態系という観点で考えれば、ある動物が絶滅してしまえば、あとのえさとなるものがないその次の動物が影響を受けてしまうようなことがありますので、もっと広い観点から見る必要があります。  その胎児影響とともに、発生といいますけれども、卵から育っていく過程の一体どこに作用するのか。私たちがやっていましても、同じような作用は出てきません。ある非常に敏感なときにだけ、ぽんと作用が出てくることがありますので、そういった研究が必要だと思います。  それから、政策として書いたものは、アメリカのことを紹介したくだりをお読みいただいたと思うのですが、アメリカの場合には、結局日本環境庁は私も非常に頑張っていると思います。たった二人の専門官が環境ホルモン問題、しかも五つぐらいなものを抱えて二人だけでやっておりますので、私、夜中にもいますから、時々ファクスが来て、返事を書くとまたファクスが返ってくるというような状況があるわけです。今その状況のところに、日本環境庁はけしからぬと言うのは非常に酷な話です。  ということは申し述べておきまして、じゃ何が問題になるかといいますと、これは情報がないというのが一番の問題ですね。ですから、ここからは政策とちょっと外れるかもしれませんけれども化学物質問題は何に何が使われているかということがまず明らかになっていないことが非常に問題です。それは製造メーカーの人に聞いても自分がつくっている製品の材料すら知らないのですね。そういう人に向かって何が出てくるのですかと言っても、これは何も答えがありません。材料を供給しているところもちゃんと言わないです。ですから、ある容器にしても、何が出てくるかということを、ではどこで調べるかというと、つくっているところは材料を知らない、材料を提供しているところは、私は売っているだけですということで、責任のとり方が非常にあいまいになっている。  ですから、何からできていて、材料表示がないということも非常に問題ですし、それからもう一つ、ちょっと余計な話になりますが、つくっている人たちは最後に処分までを考えてつくるような、政策的に、ある容器をつくるときには、つくっている人が材料のことを一番よく知っておりますので、それがどういうふうにしたら壊れやすいか、あるいは、廃棄するのかもう一回回収して再利用するのかというところまでを考えて、それがやっとレスポンシブルケアだと思います。使っているものが有害性があるかないかというところではなくて、もっと大きな観点でやっていただかなければいけない。  日本政策としては、今、現状把握をしようというところが一番のところですね。ですから、これでどういうものがどこに出るかということを今度はオープンにするわけです。それからの話だと思います。
  59. 藤木洋子

    ○藤木委員 井口先生にもう一問だけ伺っておきたいというふうに思うのですが、先生のこの本を読ませていただいておりまして、アメリカの例が随分出てくるのですけれどもアメリカでは相当環境保護庁お金を投じまして、研究費をつけていい成果を上げているというふうに書いておられまして、いずれ、今でも基準値が決められているわけではないのですけれども、早晩出てくるだろうというふうに私は思うわけですね。  しかし、井口先生がこう述べられているところがあるのですね。現実には基準値を考えることも必要ですが、何といってもなくすのが一番だと。これは実に明快だというふうに思うのですけれども、私も、妊婦や子供を初め、野生動物が環境ホルモンに暴露されない環境をつくるというためには、環境ホルモンをなくすということが一番大事だろうと思っていますが、なくすために何が必要なのか、お考えがあったらちょっと伺いたいと思うのです。
  60. 井口泰泉

    井口参考人 環境ホルモンと言われているものを周りからなくしてしまう、それは非常に理想像であると思います。そのためには代替品で何が使えるかということが必要ですね。代替品になりますと似たような化学物質を使うので、また同じようなことが起こるかもしれない。ですから、そういう基礎的なところをきちっとやって、それで代替品に持っていく。  ところが、今の風潮は、何も調べないでやめてしまいましょう、風評被害というところもあるでしょうし、現実にどういうものがどれだけ、どういう使い方をしたら出てくるのかということの認識すらまだきちっとしていない状況があります。それは、私などは、国の方の研究機関で使用に応じた溶出ということをきちっと見ていただきたいということと、それは売っている方の責任でもあって、売っている方も使用状況に合わせたらこうなのですよというデータをちゃんと持つような指導をしていただきたい。  今、私たちの方にいろいろメーカーの方も問い合わせてこられますけれども、聞いてみますと、材料すら、先ほど御紹介しましたけれども、知らない。そういう状況でいくと非常にまずいわけですね。それで安全ですと言って売っているのですかと言うと、そうですという状況がありますので、これは非常にまずいことだと思います。  ですから、漏れてくる漏れてこない以前に、まずつくっているメーカーさんは材料自分でちゃんと把握してくださいと。そこがないと何も進みません。
  61. 藤木洋子

    ○藤木委員 ありがとうございました。  それでは続きまして、青山参考人にお尋ねをさせていただきたいと思います。  先ほど来、先生がきようお示しになった資料をお使いになって御説明をいただいて、所沢の経験をおっしゃったわけですけれども、ここでも、公開されなかった、研究はしていてもそれが開示されない、公開されないというようなことがあったということをお述べになっていらっしゃるわけですね。先生が「ダイオキシン汚染 迫りくる健康への脅威」というのをお書きになっていらっしゃいますね。ここでもそのことが随分強調されているように私はお見受けしたわけですけれども、現在、ダイオキシン汚染問題でもっとも問われているのが、政策立案審議対策調査、測定、分析など、政策立案の背景及び意思決定プロセスにかかわるあらゆる情報データ透明性だと思われるということをお述べになっていらっしゃいます。私も全くそのとおりだというふうに思うわけですね。  続けてお書きになっておられるのは、法規制について今後の課題というところで、PRTR制度について企業の自主的な環境リスク管理という名のもとに形骸化した制度とならないように、市民がパイロット事業の段階から監視をし、制度づくりへの関与を進めていく必要がある、だから、住民も参加をして、そして意見も述べるということが非常に大事だというふうにお述べになっていらっしゃって、私はこれは本当に大事なことだというふうに思うのですね。  それと、私は、企業の自主的な環境リスク管理という名のもとに形骸化した制度とならないようにするということになりますと、やはりNGOの監視と参加が必要なのはそのとおりなんですけれども、それに加えて、やはり企業に義務づけるというようなことをきちんと法律化していく必要があるのではないか、行政の側も指導する権限をきちんと与えられるということが大切ではないかと思うのですが、その点についての御意見を伺いたいと思います。
  62. 青山貞一

    青山参考人 青山です。  藤木先生のおっしゃるとおりで、読まれたところは自分が言っているわけですからそのとおりなんです。  それで、昨今、PRTRをめぐってOECDの会議まで先月頭、開かれたのですが、通産省と環境庁の間でのその制度化のあり方をめぐる議論がいっぱいあります。一つの論点は、通産省にしても環境庁にしても、企業の自主性を重んじる、企業のプライバシーを尊重するということがあるのですが、その問題と人の健康、生命にかかわる問題、両方をどう勘案していくのか。  企業のプライバシー、自主性も重要ですが、それ以前に、やはり有害化学物質のもたらすこういう影響が一にわかにというより大きくなってきたことが、知る権利の問題も含めてあるわけですから、自主性とかだけではなくて、当然法的な枠組みで、かつ有害性が一〇〇%わかったものについてだけ化審法であれ新しい法律であれ公表するのではなくて、もう少しグレーゾーンに関しても、企業の保有、管理、移動する、排出する有害化学物質について、しかも個別企業のレベルで、行く行くというかなるべく早く、川崎市のA地域とかではなくて、個々の企業単位でそういう情報が例えばアメリカ並みに出せるような枠組みがないと、多分日本の今の現状にはたえられないし、NGOも相当勉強しています。  実は、きょう皆さんにお配りした資料は、私がいろいろなところで大学とNGOの講義に使っているものです。ですから、住民がこのぐらいの資料をもとに勉強しているという時代ですから、そういうことも含めて、ぜひPRTRに関しましては、単なる自主性と企業のプライバシーを超えるものにしていただきたいと思っています。
  63. 藤木洋子

    ○藤木委員 ありがとうございました。  それでは次に、林参考人にお聞きをさせていただきたいというふうに思います。  林参考人は、環境庁ダイオキシンリスク評価検討会の検討委員のお一人として頑張ってきていらっしゃるわけですけれども、その検討会報告書もまとめられておりますよね。その報告書の暴露評価で、ごみ焼却施設の周辺環境において暴露状況の推定を行ったところ、その結果は一・八ないしは五・一ピコグラムであったとしながら、リスク評価のまとめとしては、特に高い暴露を受ける条件においては、例えば、これはごみ焼却施設の周辺のことではないかというふうに思うわけですが、その暴露量の推定値が健康リスク評価指針値と同程度以上となることがあり得ることから、今後、健康リスクをより小さくする観点から、ダイオキシン類の環境濃度の低減を図る必要がある、このように述べていらっしゃるわけです。暴露量の推定値というのは、ごみ焼却施設の類型ごとに、あるいは大気拡散モデルによって最大着地濃度を推定したものだというふうに思うわけですね。  そこで、厚生省が九月二十一日に発表しました、能勢の美化センターなんですけれども、これの調査結果によりますと、冷却水槽の周りの土壌が五万二千ナノグラム、屋上の開放型冷水塔の残留水は実に十三万ナノグラムということなんですが、この冷却水等が焼却施設周辺の直下に飛散したというふうなことを述べておりますね。  この高濃度ダイオキシン大気拡散には余り影響されずに周辺直下に及んだということになりますと、そこで働いていた職員だとか、そのごく周辺の住民に対する健康被害の影響というのがかなりあったのではないかということを非常に危惧するわけですけれども、先生に伺いたいのは、このセンターでの暴落評価とリスク評価を健康リスク評価指針値との関連でどのようにお考えなのか、伺っておきたいというふうに思うのですが。
  64. 林裕造

    林参考人 どうもありがとうございました。  まず一般論として、焼却場周囲とそれからもっと遠い地域、その間に確かに土壌中の濃度は違うということは明らかですけれども、実際問題として、血中のダイオキシン濃度、健康影響を見ますと、余り大きな違いがないということは明らかなんですね。  ところが、今の能勢町の場合は、これは全くそれをオーバーしたけた外れの違いでありますので、これを一般論として、健康には影響がないと考えることは誤りだと思うのですね、私は、能勢町に関しては、やはり住民の健康影響をこれはかなりの長い期間フォローするということが絶対に重要であると思います。
  65. 藤木洋子

    ○藤木委員 どうもありがとうございました。  それでは、最後に千葉参考人にお伺いをしたいと思います。  参考人は、プラントメーカーとして、ダイオキシン対策をそれぞれの時点で社会的責任を果たしてこられたというふうに述べてこられました。しかし、兵庫県の宍粟郡の環境美化センターというのがございます。それからまた、今問題になっております大阪府の豊能郡の美化センター、ここでは高濃度ダイオキシンを排出しておりますし、周辺環境に重大な被害が及んでおります。  この原因として、厚生省調査でもプラントの維持管理、先ほどもおっしゃっていましたけれども、維持管理と同時にプラントの構造上の欠陥が問題になっておりまして、豊能郡の美化センターのプラントは、これは三井造船で、その維持管理も実は三井造船の子会社がやってこられました。このプラントは厚生省焼却施設構造指針に基づいて実は規定されたものでありまして、国庫補助で建設をされたものではありました。しかし既に、この炉頂型のプラント、厚生省の新ガイドラインだとか、あるいは八月の政省令改正では構造上の改修が指導されて、今改めていくということになっているわけですね。  そこで、排ガス施設も含めたプラントの構造上の欠陥、また旧ガイドラインさえも守られなかったずさんな維持管理の責任、これは、能勢の場合は挙げてプラントメーカーの責任が重かろうというふうに思うわけです。私は同時に、補助金を出してきた国、厚生省にもあるということは否めないというふうに思うのですけれども参考人はこの点についてどのようにお考えか、お答えをいただきたいと思います。
  66. 北橋健治

    北橋委員長 質疑時間を過ぎておりますので、恐縮ですが、簡潔にお答え願いたいと思います。
  67. 千葉佳一

    千葉参考人 わかりました。  お答えいたします。  今、具体的なメーカー名が出ました。私はその立場でもございませんが、先ほど言いましたように、公開されている資料との客観的なジャッジメントという意味でお答えしたいと思うのです。欠陥であったか欠陥でないかというのは、ダイオキシンがまき散らされたということが今問題になっていますが、その前にまず我々、私も経験があるのですが、アシッドスマットプロブレムと申しまして、飛沫が飛ぶことによる汚れ等々によってのジャッジをして、そういうものが飛ぶのがぐあい悪いのじゃないかという意味で、白煙防止とアシッドプロブレム、この両方が四十年代から技術的には課題になりまして、デミストをいかにするか、ミストが飛ばないようにどうするかということを組み込むという意味では、そのものがなされていたかどうかということは、私、現地へ行っておりませんので承知しておりません。どうなっているかはわかりません。今話題になっているサイト、二カ所おっしゃったのですが、私は知りません。歴史的には、四十年代からそういうことは言われています。  それから、塩が飛ぶ、濃縮されまして塩が飛ぶ問題。ですから、ミスト、白煙ですね、それから塩、そして今ダイオキシンが話題になっているのですね。そういう意味においてどうだったかという点では定かじゃございませんが、先ほども触れましたように、燃焼炉できちっと燃やしておれば、温度を低くすると、けたが幕乗で出てきますので、ダイオキシン濃度の高いものが、さっき水に溶けないからどうこうじゃなしに、サスペンドしたものがたたき落とされているわけですから、水に溶けたからどうこうじゃなしに、そのサスペンドしたSS分が飛び散っているわけですね。それが問題になっているのです、ダイオキシン濃度が非常に高いですから。  そういう意味におきまして、溶けないダイオキシンといえども、パーティクルの中に付着しているわけですから、それが問題になっているという意味で、先ほどちょっと違う見解を前々回の議員さんがおっしゃっていましたが、あれはそういうことであります。  だから、まず燃やすという点でどうだったかという点で判断するべきじゃないかという見解を持っております。
  68. 藤木洋子

    ○藤木委員 終わります。ありがとうございました。
  69. 北橋健治

    北橋委員長 次に、中川智子さん。
  70. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合の中川智子です。  きょうは本当に、お忙しい中、大変貴重な話をありがとうございました。私に与えられた時間は十分ということで、おくれていますので、おくれついでにちょっと長くなるかもわかりませんけれども、質問をさせていただきたいと思います。  私も、苦肉の策で、最初にまず千葉参考人、続いて青山参考人に質問をさせていただきます。  千葉参考人は、次世代のガス化溶融炉のお話を結構、十分間で御説明いただいたわけなんですけれども、二カ月ぐらい前にドイツのフィルト市では、三井造船が技術提携をしているガス化溶融炉、先ほど次世代のとおっしゃったガス化溶融炉の爆発事故も起きました。次世代の焼却技術でダイオキシン問題を解決するというお話よりも、きょうは特に、現在の日本ダイオキシンのこの状況をどういうふうに考えるか、業界としてその責任をどのように考えているかというお話を伺いたかった、それは非常に残念だというふうに最初にお伝えしたいと思います。  そこで、千葉参考人なんですが、ただいま設計施工上の問題はなかった、燃焼温度の問題とか運転技術の問題というふうにおっしゃいましたけれども、この間ずっと報道されているダイオキシン問題では、三井造船がいわゆるデータを隠ぺいして、ずっと何回もダイオキシンの立入調査に入ったという事実を、現場の働いている人から、また施設組合などから聞いているわけなんです。そのようにきっちりとその危険性をわかっていたのに、いわゆる燃やすことの操作をしたり、そのデータを隠ぺいしたりしていることが、報道でもこんなふうにたくさん書かれていて明らかなのに、業界としてはそのことに対してどのように認識されているのか。  三井造船に対してそのことをきっちりと聞いて、先ほど藤木先生の話で、ほとんどそのことは承知していないとか現地にも行ったことがないとおっしゃいましたが、そのような態度でいいのかどうか。そういうふうな体質そのものが今後もダイオキシンの高濃度汚染を生んでいくというふうに思いますので、そこを一点まずお伺いしたいのです。偽装工作をどのように思うか。業界としての責任、三井造船に対してどのようなかかわりをしてきたかということに対して、まず千葉参考人に伺いたいと思います。  続いて、青山参考人に伺いたいのですが、ただいま一検体を調べるのに三十万というお金がかかる。非常に私たち、私はとっくに子育てはあれしているのですが、おっぱいをやっているお母さんたち自分の中のダイオキシン濃度を調べたいと思っても、三十万なんてとてもじゃありません。今回も一応施設組合などの責任ということで、膨大ないわゆる税金が、地方自治の税金が使われていくということがございます。三十万円というのがなぜこんなにずっと高くあるのか、それをもっとみんなが身近に検査するような形での、いわゆる価格の面に対してどのようにお考えかということと、今回の焼却炉から出てきたダイオキシン汚染、先生のお考えとしてはどこに責任がまずあるというように御認識されているかということを伺いたいと思います。     〔委員長退席、佐藤(謙)委員長代理着席〕
  71. 千葉佳一

    千葉参考人 お答えします。  昨日も三井造船さんにも来ていただきまして、関係者数名に来ていただいて事情聴取しております。それで、本日来ておりますが、決してそういった偽装工作あるいは隠ぺいのことはお聞きしておりません。  私が知る限りでは、厚生省の問答集がございます。それは開示されておりまして、あれだけが本当のやりとりであろうと思っておりますが、その中にはその疑惑はないと感じております。あそこには隠ぺいとか偽装工作があったとは考えられません。それは新聞あるいは雑誌でいろいろなそういう言葉が、偽装だとか隠ぺいだとか、そういう言葉が出ているとは思いますが。  それと、日本環境衛生工業会の立場で申しますと、そんなことに無関心であるという、そういう物の言い方は失礼じゃないですか。何をもっておっしゃるのですか。何か根拠があったら見せてください。
  72. 中川智子

    中川(智)委員 わかりました。
  73. 佐藤謙一郎

    ○佐藤(謙)委員長代理 参考人に申し上げますが、こちらからの質問は避けていただきたいと思います。
  74. 青山貞一

    青山参考人 時間がないので簡単に申し上げたいと思います。  先ほど母乳、血液が日本で非常に高い。ただ、厳密に申し上げますと、PCDD、PCDF、いわゆるダイオキシンとコプラナPCBというのがありまして、両方加えた場合の価格ダイオキシンだけの場合の価格とかいろいろと細かいことはあります。  しかし、私どもがこの春、ワシントン、トロント、ドイツオランダあとイギリス、そこにインターネットと郵送を使いまして、そこらのラポ、そこに存在しますラボというのは分析会社に、僕も実は業務とは別に専門家のNGOというのをやっていまして、そこで調査を送ってみたところ、何と日本一言で言えば談合に近いような状況があるということをアメリカから実はデータが寄せられたのです。その後、日本を代表する化学の三菱系の大企業の部長さんが私に電話してきまして、その実態をさらに、これは新聞に載っていないことです、私にお話しされました。  そこでわかったことは、ある年限まで厚生省が都道府県にある通知、事務連絡に近いものを送り、さらにそれを市町村が受けて、ダイオキシン分析はかくかくこういうことであるから以下の会社に業務を頼めというのが、所沢市の市長以下全員の判こをついたものが出てきました。それが事の発端です。  その後いろいろと調べていったところ、厚生省外郭団体の中にそういう、さっき申し上げましたけれども精度を高めるという技術的な検討会の名のもとに、どうも価格を協定といいますか、カルテルに近いことをやっているのじゃないかということを私のある知人が受けてきました。あと、私どもに内部告発もありました。  さらにそれを進めていったところ、あるところまでは下がってきたのでありますが、そこから先、全然下がっていないという実態がわかりました。かつ、母乳、血液に至っては、日本の中で二、三カ所しか技術的に対応できないということを理由に、非常に高額のところでとまっていた。  先ほど申し上げましたが、私どもカナダの、これは実名も全部申し上げられますが、その会社に、それを全部英文にして、カナダ大使館にも入ってもらいましてその実情を伝えたところ、最近アメリカでも日本の談合が向こうに飛び火して高くなっていますけれどもカナダでは十万から十五万で、本当の実費ですけれども、母乳も血液もダイオキシンについてやっているということがわかりまして、私どもは少しずつ検体を送っていたのですけれどもカナダ政府の農務省の許可が先週おりまして、可能な場合には十五万円以下でできるという、しかも精度は、二十五年やっているところですし、五十GC・MSというのですけれども分析機を五十台持っているところですから、そういうことがわかったのです。  ぜひ、日本で今後母乳、血液、さっきいろいろと林先生もおっしゃっていましたけれどもデータが実は本当に少ないのと、過去やったもの、冷凍保存していたものを今厚生省分析しているような状態で、決して日本の母乳がどんどんダイオキシンが下がっているなんて言えるほどの検体数はありません。安全だなんて言えないと思います。ですから、そういう状況が背後にある中で濃度の話を言われても、それは住民の方にしてもお母さんにしても本当かいなということは思ってしかるべきだと思います。  ですから、それは委員おっしゃられるように、ぜひ、精度を管理する話というのと、価格はできる限りそれこそ一般競争入札なりそういう状況で、この業者以外頼んじゃいかぬというのは、今厚生省さんはそういうことになっていないですけれども、そういう方向でやっていただきたい。  二つ目の、責任はどこにあるのか。これはHIVは僕はすごく近い話だと思うのですけれども、やはり透明性のないところで政策がつくられたり検討会が開かれたり、議事録が相当後にならないと出てこないということにかんがみて言えば、国と学者とメーカー、その三者の関係の中でこういう状況が生まれてきたというふうに私は思っていますし、これ以外の分野でも似たようなことを感じていますから、透明性を極力高める審議会検討会を開く。あと、学者の方も、先ほど言いましたけれども、いろいろなところにかけ持ちで入っていますけれども、そういう方々がどこまで責任を持ってちゃんと話せるのかということも、私は、さっき言いましたけれども、半分科学者の身としてお願いしたいと思います。     〔佐藤(謙)委員長代理退席、委員長着席〕
  75. 中川智子

    中川(智)委員 ありがとうございました。  先ほど千葉参考人、私は無関心と言ったわけじゃありませんで、業界としてどんな見解をお持ちかということを聞きました。そして、事情をきっちり聞いてくれたのかと言いました。私の言葉に不適切なことがありましたら、失礼の段、お許しください。  終わります。
  76. 北橋健治

    北橋委員長 以上をもちまして参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼を申し上げます。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。午後零時二十九分散会