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参考人(
堀部政男君) おはようございます。
中央大学の
堀部でございます。
本
委員会におきまして、
風俗営業等の
規制及び
業務の
適正化等に関する
法律の一部を
改正する
法律案に関連いたしまして、
インターネット問題について
意見を述べる
機会を与えられましたことを大変光栄に存じます。
インターネットにかかわる法的問題につきましては、これまでにも国際的、国内的にも随分
議論をしてまいりました。
最初に、
インターネットにかかわる一般的な問題について申し上げたいと思います。
インターネットは、改めて言うまでもなく、多くの機能を発揮できますし、また多くの
可能性を秘めています。従来の
メディアと比較いたしますと、
インターネットは、
個人の
情報発信と
情報アクセスの
機会を
世界的規模で飛躍的に拡大する点で、これまでの
出版、
通信、
放送といった既存の
メディアとは異なる
特徴を持っていまして、政治、
経済、
社会、文化等さまざまな分野に非常に大きな影響を与えるものであります。その
重要性はどんなに強調しても強調し過ぎることはないと思っております。
このような
特徴を備えました
インターネットも、
情報流通の点でさまざまな
批判を加えられています。その
問題点を次のように整理することができるかと思います。
まず第一に、
個人の
情報発信が容易であるため、
出版、新聞、
放送等と異なりまして、
発信者にプロの
倫理観がないというところであります。
第二に、
放送等と異なりまして
発信者に
匿名性があるために、無
責任な
情報発信や
違法行為が心理的に容易にできるという面があります。
第三に、違法な内容の
情報がある
サーバーから削除されましても、他の
サーバーに簡単かつ迅速にコピーできますために、
情報が
流通し続ける
可能性は大きいと言えます。
第四に、ある国が
国内法によって違法な
情報の
流通を禁止いたしましても、別の国で違法でなければその
情報が
世界じゅうに
流通する
可能性もあります。
第五に、そのようないろいろな
情報が
世界じゅうに
流通するわけでありますが、その
関係で、
一つの国で
アクセスを制限いたしましても、他の
プロバイダーを利用することによって
当該情報が広く流布するというような問題もあるわけであります。
こうした問題につきまして、これまで
幾つかのところで
検討してまいりました。国際的には、
OECD、
経済協力開発機構の中にICCPという
委員会がございまして、そのもとに
専門家会合があります。そこでも
インターネット問題をどうするのかということは、一九九六年二月のオーストラリアのキャンベラで開きました
会議でも
議題になりまして、私もそのときこの種の問題でスピーチいたしましたが、非常に大きな関心が
世界的に持たれております。その後
OECDではさまざまな形で
検討をしてきておりまして、昨年も七月それから十月と
検討を重ねてまいりました。しかし、
各国の事情がそれぞれ異なりますし、また
法制度が異なるために、なかなか統一した、あるいは
調和のとれたルールをつくるというところには至っておりません。
また、G8の中で、特にG8の
科学技術大臣等の集まりでありますカーネギー・グループというのがありますが、そのもとにやはり
専門家会合ができております。この
会議が昨年の十月にローマで開かれまして、そこにも出てまいりました。
各国の
関係者どこの問題で
議論をしてきておりますが、そこですぐに条約をつくってというような提案までは行きませんで、
各国がそれぞれ
検討をし、そうしたものを
各国がそれぞれまた話し合いをしていく、全体として
国際協力をしていくというようなことにとどまっております。
そういうことを踏まえまして、
郵政省の
研究会、これはこれまで二回開いております。
最初は一九九六年の十二月に
報告書を出しました。また、一九九七年、昨年の十二月にももう一度
報告書をつくっております。この
研究会で多くの
議論をしてまいりました。そこでは法的な
規制までは提案するに至らなかったわけであります。先ほど言いましたような国際的な動向も踏まえつつ、さらに
検討を続けるというようなことも
報告書では述べてみたわけであります。
特に、
郵政省の場合には、
電気通信事業を所管している
関係で、
電気通信事業法の三条に定められています
検閲の禁止、それから第四条に定められています
通信の
秘密、これとの
関係で
プロバイダーである
電気通信事業者あるいは
電気通信事業者である
プロバイダー、これに対してどのように法的に
責任を負ってもらうのかということにつきましても、なかなか
解釈が統一いたしませんで、先ほど申し上げましたように、法的な
措置を講ずるというところまでは至りませんでした。
そういう中で、
警察庁が今回、
風営法、
風適法の一部
改正ということで
インターネットについて
一定部分の
規制をするということを聞きまして、既に
家庭や学校にもいわゆる
有害情報というのが入ってきていますし、そういうことを考えますと、また、先ほど言いましたような私
責任者で
検討してまいりました
研究会では、
法的措置というところまで提案するまでに至っていなかったものですから、この案によって
インターネット問題について本格的な
議論が始まるんではないだろうか、そういう
意見も述べたことがございます。
また、それとともに、
研究会で
かなり慎重な
議論をしてまいりましたので、その
立場から今回の
法案につきまして若干
意見を述べてみますと、今回の
法案を見まして、
規定は
かなり注意深く慎重に書かれているというふうに受けとめました。それをほかの
研究会あるいは学会で
議論している
立場で申し上げますと、まず
一つは、
表現の自由との
関係をどうするのかということがございます。
今申し上げましたように、注意深く慎重に
規定されているという点では
表現の自由との抵触というのはそれほど生じないのではないかというふうにも思います。しかし、実際に適用するということになってまいりますと、これは
日本の
法律の
規定の仕方の常なんですが、
かなり概括的でありますので、この
法案が成立した場合の適用を受ける
人たちからしますと、何がどうなるのかということが今ひとつわからないのではないか。そういう場合に、やはり
解釈基準を明確に示すということをぜひしてほしいと思います。また、その
解釈基準をできるだけ速やかに公表し、それについても
議論を深めるということが必要ではないかと思います。
第二に、これが
風適法の一部
改正ということでなされている
関係で、
青少年に有害な
情報ということで、やはり性に関する
情報になっております。しかし、最近問題になっていますような
暴力的表現などをどうするのかという問題も残るかと思いますし、国際的に
議論していますと、さまざまな問題になる
情報が出ておりまして、それにどう対応していくのかということがあります。これを
機会にぜひそういう問題についても
議論を深めていただく必要があろうかと思います。
第三に、国際的な
議論をしておりますと、これだけ国際化してきておりますが、
各国は主権をそれぞれ持っているということは当然の
前提でありますが、なかなか
調和のとれた
法規制というものができにくい状況があります。今後そういった
検討がいろんなところでなされるかと思いますが、その際にもこの
法案の趣旨が生かされるような形で運用していくということが必要ではないかと思います。
申し上げたいことはたくさんございますが、とりあえず以上で終わらせていただきます。
ありがとうございました。