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上田耕一郎君 私は、
外交・総合
安全保障調査会時代の前回の七項目の
合意、あのときの小
委員をいたしまして、今回も小
委員をさせていただいたんですが、あの七項目
合意もその後の
政府の大綱にも積極的な貢献をするなど大きな
役割を果たしたんですけれども、今回の
小委員会の
調査報告書はあのとき以上の積極的な
内容を持っているものだと、自分が小
委員なのに自画自賛みたいになるとまずいと思うんですが、小
委員長初め小
委員の努力、それから
委員部、
調査室も大変な努力をしてくださっていいものができたというふうに思うんですね。
と申しますのは、南北問題の解決というのは二十一
世紀に非常に大きな課題になっていると思うので、その中で
日本の
ODAがよりよいものになることは、単に
日本のためだけでなくて国際的にも非常に大きな
役割を果たすと思うんですね。
この
報告書の三ページに六行目からこういう
意見、これは私の
意見なんだが、「他方、小
委員からは、米国の
世界戦略に追随するような
援助や大企業の海外進出の
支援的な傾向を是正し、
開発途上国の人間
中心の
開発、発展の権利、その自助努力への
支援を自主的に行うという
方向に
理念をうたう必要があるとの
意見も表明された。」と。私の問題意識というのはこの三行に実際尽きるんですね。
と申しますのは、ソ連の崩壊でいわゆる東西問題というのはなくなったというか解決されたというか、そうするとやっぱり南北問題というのが全地球的な課題として、そのほかにもありますけれども、非常に大きな課題になっているんですね。
ところが、この南北間の格差というのはむしろ拡大しているんですね。例えば、八〇年代には、失われた十年というふうに言われたように、アフリカ、南アメリカ等々は格差はむしろ非常に拡大、
深刻化する状況になっている。その中で、例外的に
アジア地域は
世紀の奇跡と言われるような発展を遂げていたのが、最近の通貨
危機で、ホットマネーの急激な流入から流出で明から暗に暗転するというような状況になっているわけですね。
私たちは、マルクス主義の理論的
立場からも、この南北問題、発展
途上国の低
開発をどういうふうに理論化し解決を目指すかというのでさまざまな
議論がありまして、例えば有名なものとしては、フランク、サミール・アミンの従属理論とかウォーラーステインの
世界システム論とかが衝撃を与えるような理論的、実践的影響を与えた時期もあるんですね。
これは一言で言いますと、単におくれというんじゃなくて、こういう発展
途上国の低
開発というのは、北の先進資本主義国からの計画的な不等価交換、物すごい剰余価値の搾取、だから北の発展の
条件に発展
途上国の低
開発がされているんで、そういう現代資本主義、現代帝国主義のシステムそのものを改善しないと、直さないと低
開発というのはもう解決できないんだという理論的枠組みで、私は必ずしも賛成していませんけれども、そういう理論が非常なショックを与え、受け入れられる状況が南北問題にはあるんですね。
その中で、
日本の
ODAというのは、私がここで指摘しているような、残念ながらアメリカへ追随した戦略
援助、それから戦後賠償から生まれていったために
日本の大企業の海外進出への
経済的
支援という、二つの基本性格を引き継いだまま進んでいった。だから、
日本の
援助では、人道的
援助、アフリカに対する食糧
援助等々の性格、比重が非常に弱い特徴を残念ながら持っている。
ですから、私は今度の
報告の、例えば
基本法案の
骨子というのが二十二ページにありますけれども、ここにあるような「
国際開発協力の本旨」、「人類の共生と連帯の精神に基づき、
開発途上地域における飢餓と貧困の問題が克服され、住民に人の尊厳に値する生活が保障されるような
支援を行うことにより、国際社会における地域格差の是正を図り、
世界の平和と人類の福祉に貢献するとともに、
開発途上地域の
政府、住民の自助努力を
支援することを旨として行われること。」と、私はもうこれに全面的に賛成なんですよ。こういう
方向で
基本法がつくられ、
日本の
ODAがこういう
理念と
原則に基づいて
実施されるということになれば、これまでの、また現在の
日本の
ODAの質がやっぱり変わると思うんですね。
板垣小
委員長の先ほどの
報告の中の二ページに、「
日本型の
ODAを
実施する」と書かれているんですけれども、こういう
日本型の
ODAが行われれば、
世界の先進主要国の中にもこういう
ODAを実際にやっているところはないんですから、やっぱりそれぞれの
外交政策に基づいて
国益に基づく特殊な型の
ODAを各国が
実施していまして、ここでうたわれているような
理念、
原則を本格的、全面的に
実施している国というのは実際はないんです。
アメリカの
ODAというのは、みずから法律で決めているぐらい軍事的
援助、軍事
援助の性格がもう歴然としていまして、公然とそれでやっています。
日本のようなこういうアメリカの戦略
援助に追随、自国の資本の進出を旨とするのは、ドイツもやっぱりそういう型なんですね。イギリスのは大英帝国のところに対する
支援が主です。フランスは、アフリカなどを
中心に
もとの自分の植民地のところへ主にやっている。
ですから、それぞれの国が自分の国の
国益に基づいてそれぞれの型の
ODAを
実施しているという現状の中で、
世界で一、二を争う
日本の
ODAが本当に発展
途上国の自助努力を
支援すると、そして南北問題の解決に役立つような
ODAをやるということは非常に大きな
役割を果たすと思うんですね。発展
途上国にとってはこの
ODAの占める比重というのは大変大きくて、発展
途上国に対する資金移転の半分に達するぐらいの比重を持っているわけなんです。
だから、そういう
意味で、きょうのこの
報告が本当に採択されて本
報告に入ることを望んでいるんですけれども、これが
基本法を
制定の
方向に
国民世論それから
国会を実際に動かして、
日本に初めて
ODAの
基本法がこういう
骨子に描かれたような
方向でつくられれば、これは
日本の
ODAの歴史にとってもやっぱり画期的なことになりますし、それから
世界の二十一
世紀の南北問題の解決にも少なからぬ
役割を果たすことになるんじゃないだろうかという期待を持っているんです。
以上で
発言を終わります。