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1998-03-20 第142回国会 衆議院 予算委員会第二分科会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月二十日(金曜日)     午前九時一分開議  出席分科員    主査 伊藤 公介君       相沢 英之君    久野統一郎君       生方 幸夫君    松本 惟子君       加藤 六月君    兼務 漆原 良夫君 兼務 冬柴 鐵三君    兼務 西村 眞悟君 兼務 上原 康助君  出席国務大臣         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君  出席政府委員         法務大臣官房長 但木 敬一君         法務省民事局長 森脇  勝君         法務省刑事局長 原田 明夫君         法務省矯正局長 坂井 一郎君         法務省人権擁護         局長      横山 匡輝君         法務省入国管理         局長      竹中 繁雄君  分科員外出席者         法務大臣官房会         計課長     中井 憲治君         大蔵省主計局主         計官      樋口俊一郎君         建設省建設経済         局総務課土地収 堀  正弘君         用管理室長         最高裁判所事務         総局刑事局長  白木  勇君         法務委員会専門         員       海老原良宗君         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 分科員の異動 三月二十日  辞任         補欠選任   相沢 英之君     田中 和徳君   生方 幸夫君     松本 惟子君   岡田 克也君     城島 正光君   加藤 六月君     西野  陽君 同日  辞任         補欠選任   田中 和徳君     相沢 英之君   城島 正光君     岡田 克也君   松本 惟子君     生方 幸夫君   西野  陽君     加藤 六月君 同日  第五分科員漆原良夫君、冬柴鐵三君、第七分科  員上原康助君及び第八分科員西村松悟君が本分  科兼務となった。     ————————————— 本日の会議に付した案件  平成十年度一般会計予算  平成十年度特別会計予算  平成十年度政府関係機関予算  (法務省所管)      ————◇—————
  2. 伊藤公介

    伊藤主査 これより予算委員会第二分科会を開会いたします。  平成十年度一般会計予算平成十年度特別会計予算及び平成十年度政府関係機関予算法務省所管について、政府から説明を聴取いたします。下稲葉法務大臣
  3. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 平成十年度法務省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  法務省は、法秩序確保及び国民権利保全等国基盤的業務を遂行し、適正円滑な法務行政を推進するため、現下の厳しい財政事情のもとではありますが、所要の予算確保に努めております。  法務省所管一般会計予算額は五千八百十五億七千四百万円、登記特別会計予算額は千九百三十一億六千九百万円、うち一般会計からの繰入額が七百三十億五千九百万円でありますので、その純計額は七千十六億八千四百万円となっております。前年度当初予算額と比較いたしますと、百六十億五千百万円の増額となっております。  何とぞよろしく御審議くださいますようお願い申し上げます。  なお、時間の関係もございますので、お手元に配付してあります印刷物を、主査におかれましては、会議録に掲載されますようお願い申し上げます。
  4. 伊藤公介

    伊藤主査 この際、お諮りいたします。  ただいま下稲葉法務大臣から申し出がありましたとおり、法務省所管関係予算概要につきましては、その詳細な説明を省略し、本日の会議録に掲載いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 伊藤公介

    伊藤主査 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————    平成十年度法務省所管予算説明  平成十年度法務省所管予算につきまして、その概要を御説明申し上げます。  まず、法務省所管一般会計予算額は、五千八百十五億七千四百万円であり、登記特別会計予算額は、千九百三十一億六千九百万円でありまして、そのうち一般会計からの繰入れ額が、七百三十億五千九百万円でありますので、その純計額は、七千十六億八千四百万円となっております。  この純計額を前年度当初予算額六千八百五十六億三千三百万円と比較しますと、百六十億五千一百万円の増額となっております。  次に、重点事項別予算内容について、御説明申し上げます。  まず、定員関係でありますが、前年度定員に比較いたしますと純減十九人となっております。  平成十年度の増員は、新規三百四十五人と部門間配置転換による定員化二十人を合わせ、合計三百六十五人となっております。  その内容を申し上げますと、  一 治安・法秩序確保のため、検事三十二人   を含め、二百六十一人  二 出入国管理業務充実のため、二十六人  三 国民権利保全のため、七十八人となっております。  他方、平成八年七月三十日の閣議決定に基づく平成十年度定員削減分等として、三百八十四人を削減することとなっております。  次に、主要事項経費について御説明申し上げます。  第一に、法秩序の維持・確保につきましては、三千六百六十九億七千二百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと、七十一億五千万円の増額となっております。  その内容について申し上げますと、  まず、検察関係では、検察活動充実を図る経費として、千二十八億二千七百万円を計上しており、この中には、特捜・財政経済事犯対策経費参議院議員通常選挙取締り経費等が含まれております。  矯正関係では、刑務所等矯正機能充実を図る経費として、千九百四十九億三千八百万円を計上しており、この中には、被収容者の増加に伴い必要となる食糧費等経費矯正施設保安対策経費等が含まれております。  入国管理関係では、出入国管理業務充実を図 る経費として、三百十一億八千四百万円を計上しており、この中には、出入国管理業務コンピュータ化経費等が含まれております。  第二に、国民権利保全充実につきましては、登記特別会計を含め一二千百二十二億八千九百万円を計上し、前年度当初予算額と比較しますと、百十八億二百万円の増額となっております。  その内容について申し上げますと、  まず、登記関係では、登記事務処理適正迅速化のための経費として、登記事務コンピュータ化経費を中心に、千九百三十一億六千九百万円を計上しております。  また、人権擁護関係では、人権擁護活動充実を図るための経費として、二十七億六千一百万円を計上しており、この中には、法律扶助事業費補助金等が含まれております。  第三に、施設の整備につきましては、東京拘置所を始め、老朽・狭あい化が著しい法務省の庁舎及び施設を整備するため、法務省施設費として、二百十一億四千九百万円を計上しております。  以上、平成十年度法務省所管予算概要を御説明申し上げました。     —————————————
  6. 伊藤公介

    伊藤主査 以上をもちまして法務省所管についての説明は終わりました。     —————————————
  7. 伊藤公介

    伊藤主査 この際、分科員各位に申し上げます。  質疑の持ち時間はこれを厳守され、議事進行に御協力を賜りますようお願い申し上げます。  なお、政府当局におかれましては、答弁は簡潔明瞭にお願いをいたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。冬柴鐵三君。
  8. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 新党平和の冬柴鐵三でございます。  私は、本院初当選以来、ライフワークとして法律扶助の拡充を取り上げようと決意をいたしまして、これまで、予算委員会て四回、法務委員会では十数回、この問題を集中して質疑をしてまいりました。また、六十二年、今から十年ほど前になりますが、五月三日、すなわち憲法発布四十周年を記念してできれば議員立法をいたしたい、このように思いまして、法律扶助基金法案法制局とともに約半年間かけまして完成させ、これを公表したこともございます。残念ながら国会上程には至りませんでしたけれども、そのようなことをいたしました。  この問題について初めて質疑を行いましたのは、昭和六十二年三月二十四日の法務委員会における質疑であります。国の基本姿勢をただしたわけでありますが、まずへ貧困者のために行う法律扶助憲法上の国の義務かどうかについて伺いました。当時の人権擁護局長は、  我が国民事訴訟法弁護士強制主義というものをとっておらず、また、弁護士費用訴訟費用化というものを認めておらないわけであります。したがいまして、訴訟というものはだれもがどの審級におきましても弁護士がなくても遂行し得る、こういう建前になっておるわけであります。したがいまして、弁護士を依頼すべきだと考え、その資力のある人は弁護士に委任して訴訟を行う、こういう建前がとられております。 というものでございました。  私は、重ねて、国の責務ではないのか、義務ではないのかと迫ったのでありますが、これが責務であるか義務であるかということになると、先ほど来申し上げております弁護士強制の問題などとの関係で非常に難しい問題があるということは御理解いただけると思いますということで、表現はえんきょくでありますが、明確に憲法上の国の義務を否定したのであります。  それでは、なぜ、額は僅少ながら、昭和三十一年以来財団法人法律扶助協会に対して法律扶助に対する補助金を出しているのか、このように尋ねましたところ、そういう貧しい人に対して国が援助の手を差し伸べてその費用を立てかえる、そういった形でもってその権利を十分なものにすることはまことに好ましいことでありまして、そういう考え方から現在の法律扶助制度というものが成り立っておるわけでございますというような答弁でありました。  まさに、義務に基づく国の補助ではなく、恩恵的といいますか、救貧的と申しますか、そのような観点に立って補助をしているにすぎないのだという答弁でございました。  また、重ねて、昭和六十二年度の国の扶助事業に対する補助金は年間七千二百万円でございました。この額は、六十二年からさかのぼって過去二十年間、名目額においても増額されていませんでした。  これに対する政府考え方をただしましたところ、真に扶助を必要とするケースについて、資金不足のために扶助を断ったという事例は今のところ連絡もない、扶助申請についての拒否判定不服申し立てがあった事例も聞いていない、したがって、現状、一応、ぜひ必要な人々にはこたえていると理解していますというものでございました。そして、増額については全く考えていないということもはっきりしたわけであります。  次に、扶助協会からの運営費についての助成要望に対しても、扶助協会から、運営費補助金で賄うことができる制度にしてほしいという意見もあります、しかし、扶助協会というものは財団法人でありまして、運営費まで国費で出すことになりますと、国の直営と変わらなくなるということも考えなければならない問題でありますという答弁で、考慮の余地なしとしていました。  以上が、昭和六十二年当時まで、今から十年ぐらい前の話でございますが、政府の一貫した立場であったと私は理解をいたしております。  しかし、これにめげずに、昭和六十二年七月十六日の予算委員会において、中曽根総理遠藤要法務大臣でありましたが、予算委員会総括質疑質問をする機会がありました。貧困者のためにする法律扶助憲法に由来する国の義務である、先進国基本法を持たないのは我が国ぐらいのものである、ぜひ基本法制定を進めるべきである、このように熱っぽく私が訴えたのに対し、遠藤法務大臣は、先生指摘のような制度がなくても、この補助金によって一人も欠くることなく権利を保持できるという考え方を持っており、法務省としては、今新たに制度をつくることに消極的でありますと、取りつく島もない答弁でございましたが、ただ、先生から何回もそのようなお話を承りまして、私も改めて省内において検討させてみたい、このようにお答え申し上げておきます、また、中曽根総理からも、ただいま法務大臣答弁したとおりでありますが、よく検討させますと、首の薄皮一枚を残してもらった気持ちで、それからの挑戦を行ったわけでございます。  編言汗の如しとの言葉もありますが、中曽根総理の再検討公約は、徐々にではありますが、その後の政府政策変更につながってまいりました。  まず、竹下内閣林田法務大臣は、昭和六十三年十二月六日の法務委員会質疑における私の質問に答えて、  七千二百万円、ここしばらくの間それできておるわけでありまするが、来年度はぜひこれを最も優先的に法務省予算として要求したい、八千七百万円にしたい、こういうことで今努力中でございます。特に、予算もそのうちには現在の倍額くらいにしなければいかぬ、そういう目標を掲げまして折衝をしておるという段階でございます。 と答弁をいただきまして、二十年ぶり補助金本格的増額への道筋を明らかにしていただいたわけであります。  周知のとおり、翌平成元年及び二年にはそれぞれ一千五百万円ずつ、平成三年及び四年には二千二百五十万円ずつ増額をしてくださいまして、平成四年度の予算補助金総額は一億六千二百万円と、わずか四年間に二・二五倍もの本格的増額に 踏み出したわけでございます。  この林田法務大臣答弁後、竹下改造内閣が発足し、高辻正己元法制局長官法務大臣に就任をされました。平成元年三月二十四日の法務委員会質疑で、私は再度法律扶助を取り上げ、憲法論争を挑んだわけでございますが、そのときの答弁要旨法務省からお答えいただければありがたいと思います。
  9. 横山匡輝

    横山政府委員 お答えいたします。  平成元年三月二十四日の高辻法務大臣答弁は、法律扶助制度憲法三十二条に由来するものと考える旨のものでございます。
  10. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 今お伺いしたとおり、今まで長い間国がとってきた政策をここで一転して、憲法に由来する国の義務であるということを認める画期的な答弁であったと私は評価をいたしております。私は、くしくも平成元年法律扶助元年と位置づけているわけであります。  この締めくくり答弁で、高辻法務大臣はこのようにも述べていられます。  弁護士会の今までの法律扶助制度についてのいろいろな熱意ある御努力並びにいろいろな資金的なやり繰りの御苦心等を伺うにつけ、弁護士の皆さん、弁護士会方々弁護士会そのものに対して大変深い感謝の意を表したく存じております。いろいろな基金の創設であるとか基本法制定の問題であるとか御提案がございますようでありますが、これらについてはなお時間をかしていただいて、御趣旨を体して検討させていただきたいと思います。 このように、冒頭紹介の六十二年までの政府答弁とは雲泥の差の、心の通った、こもったといいますか、答弁をもって、明確に政策転換を宣言されたのでございます。  私は、その後、法務大臣更迭たびごと、まずこのことを確認をいたしまして、今では、憲法上の義務であるということはコンクリートで固めた状態になったというふうに思っております。  訴訟扶助については、このように今後も増額されていく見通しが立ちましたので、次に無料法律相談に対しても国の補助についての道筋をつけるべく、これに絞った質疑を行うことといたしました。  平成三年九月十八日の法務委員会において、私は、無料法律相談事業というものにそれまで国は国費を一銭も支出していないという事実を踏まえ、無料法律相談事業運営法律扶助密接不可分関係がある、法律的紛争解決は、ただに裁判という場面だけではなく、これと並んで裁判外における示談による解決が重要な役割を果たしている、この事実に照らせば、示談内容が正義にかなったものであることが保障されなければならず、そのためにはすべての人に質の高い法律相談の道を開く必要がある、これは我が国憲法の要求するところであり、国の責務でもあらねばならない、このように論じたわけであります。  そのときの左藤恵法務大臣の所信を伺いましたが、その点についても法務省から示していただきたいと思います。
  11. 横山匡輝

    横山政府委員 今、委員指摘の、平成三年九月の左藤法務大臣答弁要旨は、裁判を受ける権利をより前の段階で実質的に保障するためには、訴訟援助だけでなく、法律相談充実していかなければならないというものでございます。
  12. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 ありがとうございます。  このように、それまで法律相談について国費は出されていなかったわけでありますが、今、人権擁護局長がお示しいただいたような前向きの答弁をいただいた上、平成五年度予算無料法律相談補助事業というものを新設されまして、とりあえず一千万円を要求されて実現をし、徐々にではありますが、今日までこれが拡充されているという事実であります。  そこで、最終目的であります法律扶助基本法制定の要請に的を絞ることにしまして、私は、その後、イギリス韓国フィリピンシンガポールへ順次私費で調査視察に赴きました。これをもとに、法務委員会において帰国のたびごとにその実情を詳細に報告して、その都度、法務大臣の所感と決意を伺ってまいりました。  詳しくは省略いたしますが、フィリピンシンガポールについての調査を終えた平成五年六月二日の法務委員会におきまして、当時、後藤田法務大臣に対してでありますが、我が国からの最大の被援助国であるフィリピン実情を紹介しつつ、質疑をいたしました。  一九九三年の私の調査によれば、フィリピンでは、邦貨に換算をいたしまして十三億一千百七十一万五千円を予算で計上いたしておりました。これにより、人口の八三%の国民無料で質の高いリーガルサービスを受けている事実を紹介しました。援助国国民である日本国民に比較をいたしまして、その日本の国の最大の被援助国であるフィリピンが、一人当たりで換算しますと実に三百二十倍に及ぶリーガルサービスを受けているという事実を指摘して、これについてどうかということを聞きました。  これに対する後藤田法務大臣答弁要旨がわかりましたら、お答えいただきたいと思います。
  13. 横山匡輝

    横山政府委員 今御指摘の、後藤田法務大臣答弁の部分を会議録の方で読み上げさせていただきます。  今のフィリピン状況日本のこの間接的な補助金の額を見れば、ただ金額の開きだけでなくて、購買力平価の面から見ますとこれは大変な開きがある。もちろん、両国は背景も違いますから一律には言えませんけれども、こういう点を考えまして、法務省としましては、法律扶助制度、これについて今後充実をしていかなきゃならぬ、かように考えておりますので、その点はひとつこれからの勉強課題である、こういうことで御理解を願いたい、こう思います。 要旨はそういうところでございます。
  14. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 このような後藤田法務大臣答弁をいただきまして、その日、法務委員会理事会で、画期的な申し合わせが党派を超えて全員一致で行われた事実がございます。これについても、もしわかればお読みいただきたいと思います。
  15. 横山匡輝

    横山政府委員 では、委員指摘法律扶助に関する申し合わせについて、読み上げさせていただきます。   法律扶助制度は、資力に乏しい人々に対し、憲法に定められた国民裁判を受ける権利を実質的に保障するために欠くことのできない重要な制度であり、その充実発展が望まれるところである。   政府は、近年、財団法人法律扶助協会による民事法律扶助訴訟援助)について補助金の大幅な増額を図るとともに、平成五年度から無料法律相談についても補助金を交付するなど積極的な取組を行っているが、法律扶助制度の一層の充実発展を図るため、我が国及び諸外国における法律扶助制度現状問題点我が国司法制度に適合した望ましい法律扶助在り方等について、本格的な調査研究に取り組むこととし、そのために必要な予算措置を講ぜられたい。 以上でございます。
  16. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 このような申し合わせ、まあ二十年ぶりでございますが、法務委員会理事会申し合わせができました。これを受けて、後藤田法務大臣は、重く受けとめ、誠意を持って対処してまいります、このようなことも述べていられます。これを受けまして、平成六年度予算におきまして、法務大臣官房費として二千三百万円を計上して、法律扶助制度研究会というものが設置され、発足をしたと思います。  この点につきまして、きょう伺ってまいりたいと思いますが、この法律扶助制度研究会の性格といいますか目的、構成、それから進捗状況と、その大きな論点について御説明をいただき、これ三年たつわけですが、いつ、その報告といいますかまとめができるのか、その点についても、あわせて簡潔に御答弁をいただきたいと思います。
  17. 横山匡輝

    横山政府委員 お答えいたします。  法律扶助制度研究会は、現行の民事に関する法 律扶助制度充実発展を図るため、我が国司法制度に適合した望ましい法律扶助あり方等について調査研究を行うことを目的として発足したものでありまして、学識経験者を初め、法務省、最高裁、日弁連及び法律扶助協会から、この制度にかかわってきた者などの参加を得ております。  研究会は、平成六年十一月に発足しまして、三年余にわたって議論を重ねてきましたが、今月二十三日に報告書まとめる予定となっております。  研究会における主要な論点を挙げますと、民事に関する法律扶助制度の理念の点、それから、国及び弁護士弁護士会責務をどのように考えるかという点、法律扶助事業内容として裁判援助のほかにどのようなものを含めるかという点、どのような所得層の者を法律扶助の対象とするかという点、利用者負担はどのようなものであるべきかという点、弁護士費用の基準はどのようなものであるべきかという点、法律扶助制度運営主体として何がふさわしいかの点等であり、多岐にわたって検討が行われております。
  18. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 ようやく、十年以上かかりましたが、この二十三日ということは、あと三日ほどでそのまとめが出る、大変楽しみにいたしております。  そこで、海外へ視察も行かれたと思うのですが、どういうところへ行かれたか、御披露いただきたいと思います。
  19. 横山匡輝

    横山政府委員 研究会では、イギリスフランスドイツスウェーデンアメリカ及び韓国の六カ国について、実情調査を行ったものと承知しております。
  20. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 私の希望では、途中でもいろいろ申し上げていたのですが、イギリスフランスドイツアメリカというのは、もう文献調査で、十分日本の国内で資料がある。それで、私のように、フィリピンとか、そういう発展途上にある国がどのような取り組みをしているのか、調査してほしかったと思いますけれども、これは一つの感想でございます。  そこで一民事事件に対して、日本国民は一億二千六百万人ですけれども、それぞれの国はそれぞれの人口がありますが、このリーガルエイドサービスに対する予算国庫支出額、一人当たりで割り算したら、大体どれぐらいになるのか。その六カ国全部でも結構ですが、その余の国もわかれば示していただきたいのです。
  21. 横山匡輝

    横山政府委員 お答えいたします。  民事に関する法律扶助のための、国民一人当たり国庫負担額を算出しますと、イギリスは約二千二百二十七円、フランスは約三百十七円、ドイツは約四百四十五円、スウェーデンは約五百三十七円、アメリカは約百七十五円、韓国は約三十二円。これはいずれも当時のそれぞれの年の為替レートによっております。
  22. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 私の韓国での調査もその程度でございました。フィリピンはわからないのですね。まあ、その程度にしますが、念のため、日本はことし幾らぐらいになりますか。
  23. 横山匡輝

    横山政府委員 十年度予算案でお答えさせていただきます。十年度政府予算案によりますと、一人当たり約四円になります。
  24. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 それは阪神・淡路の法律相談も含んでいますか。
  25. 横山匡輝

    横山政府委員 はい、震災分も含んでおります。
  26. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 それが三億ぐらいあるんじゃないですか。
  27. 横山匡輝

    横山政府委員 震災部分を除きますと、一人当たり約三・三円になります。
  28. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 大臣、今まで徐々に積み重ねてきているわけですから、批判はする必要はないのですが、イギリスの二千二百二十七円は別といたしましても、韓国の三十二円に比べても、日本の三円というのはいかにも、こういうものに対する日本の法文化といいますか、というものが、貧困者のためにする制度というものの立ちおくれということは否めない事実だというふうに思うのです。一言で結構ですが、感想を聞かせてください。
  29. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 冬柴委員、かねがね法律扶助制度について大変な情熱を持っておられまして、かねてから私もよく承知いたしておりました。  今日までの経緯について、るるお話があり、また国際的な比較までお示しされました。外国との比較、必ずしもそのベースが同じとは言えませんけれども、御指摘のように、我が国法律扶助制度というふうなものが、憲法三十二条の裁判を受ける権利を実質的に保障するものであるというふうな前提から考えてみますと、決して十分なものではない。  かねがね、私、大臣になる前からそのような認識を実は持っていたわけでございまして、平成六年の研究会の発足の問題、まあわずかばかり官房にお金がついたということも承知いたしております。その結論が、来週早々にでも出るということでございます。私も、先生のお考えと全く同じでございます。どれだけできるか。まあ今までの延長線上の発想では、ちょっと無理かなというような感じもせぬではありません。  その辺のところを十分踏まえまして、検討いたしたいと思います。
  30. 冬柴鐵三

    冬柴分科員 大変力強い決意を御披瀝いただきまして、欣快でございます。どうか、あと三日でそのような報告書が出るようでございますから、これを踏まえて、日本は今までおくれていたけれども、これから世界の模範になるような法律扶助制度をこの際飛躍的に発展をさせていただきたい。そのためには、私も非力ではありますけれども、予算獲得等万全を尽くしてまいりたい、そのような決意をいたしております。  最後になりますけれども、このような法律扶助基本法のようなものができたときには、その前文または第一条に必ず、憲法三十二条に由来するこのようなものなのだという宣言をしていただけますようにお願いを申し上げまして、私の質疑は一応終わります。
  31. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて冬柴鐵三君の質疑は終了いたしました。次に、松本惟子さん。
  32. 松本惟子

    松本(惟)分科員 松本でございます。  まず初めに、財団法人人権教育啓発推進センターについてお伺いをしたいと思います。  同センターは、一九八七年に同和問題の解決に向けて啓発活動を行うことを目的として設立をされた地域改善啓発センターを改組して設置されたものでして、同和問題など人権に関する総合的な教育啓発及び広報を行う機関として位置づけられているというふうに承知をしております。そのセンターの役員、理事の構成の現状について、私は特に女性の参画状況についてお伺いをさせていただきたいと思います。
  33. 横山匡輝

    横山政府委員 お答えいたします。  委員指摘のセンターの役員構成でありますが、理事が十名、監事が二名となっております。男女別の構成は、すべて男性となっております。  以上でございます。
  34. 松本惟子

    松本(惟)分科員 大変意外な気がいたします。同センターの事業としては、それまでの同和問題に対する教育啓発事業から、青少年等に対する人権に関する総合的な教育啓発、そして人権全般にわたる教育啓発及び広報、調査研究、情報収集、相談などの事業を対象としていると思います。このために、従来は総務庁の地域改善対策室が所管していたものでございますけれども、法務省、総務庁そして文部省の三庁の共管となったと伺っております。人権問題全般にかかわっていて、人権啓発教育を目的とする社団法人に女性の理事、役員が今日いない理由は何なのでしょうか、お伺いをいたします。
  35. 横山匡輝

    横山政府委員 委員指摘のとおり、センターの役員に人権教育啓発に造詣の深い女性に就任していただくことは、男女共同参画社会の形成を図る上で意義のあることと考えております。  このセンターは、昨年四月に地域改善啓発センターから改組されたものでありまして、役員については、改選の時期になかったためそのまま従前 の構成となったものでございます。なお、現在の理事につきましては今月末をもって任期切れとなりますので、現在、センターにおきましては理事候補者を選定中であって、候補者の中に女性が含まれているものと承知しております。     〔主査退席、久野主査代理着席〕
  36. 松本惟子

    松本(惟)分科員 四月に改組されて、そのときに継続という形をとられたために女性が入っていない、さらに加えて、前向きの御答弁をいただいたわけでございますが、多分十分御承知のことと思いますが、私は重ねて強調をさせていただきたいと思います。  今日、立法府も行政府も市民も協力をして男女共同参画社会の実現を図ろうというのは、これは政府の方針でございます。策定をされました二〇〇〇年プランの中にもそれは特記をされているわけでございます。この流れというのは、一九七五年国際婦人年以来、一方の性だけで政策決定をする、この仕組みを両輪でやっていこう、両性でやっていく方向に向けていこうという、これは国連が音頭をとった大事業だというふうに承知をしております。  さきの北京会議の宣言の中で、非常に高いトーンでこのことがさらに強調をされましたし、第百四十国会の中で、内閣委員会、私も出席をさせていただいてこの問題の討議にかかわったわけでございますが、採択をされました男女共同参画審議会設置法、この設置法の中で、審議委員の選定に当たりまして、一方の性が一方の性の四割を下ってはいけない、以下であってはいけないということを決めたわけでございます。私は、日本の国が決めた施策の中でこれは画期的なものだと思いますし、これを頂点にして、政策決定の場所へ、おくれている、とりわけ国際的におくれております女性の参画を促していくということを政府がお決めになった、そして今日に至っているわけでございます。  大臣御承知のとおり、男女共同参画推進本部は、国の審議会等の女性の割合についても、当面平成十二年度末まで、できるだけそれも早い時期に二〇%を達成する目標を定めているわけでございます。もちろん、人権教育啓発推進センターは国の審議会ではございません。しかし、政府と関連を持つ法人であり、所管する官庁として女性参画を進める責任があると思いますが、法務大臣の御見解を重ねてお伺いをいたします。
  37. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 先ほどからお話を承っているわけでございますが、ただいま関係局長から答弁いたしましたとおりに、このセンターは、法務省、総務庁それから文部省の共同の所管ということになっておるわけでございます。  人選につきましては、それは財団の中でお決めになることになると思いますが、私どもとしてはそれを承認する立場にあるわけでございます。今お話がございましたように、本年の四月に理事が改選されるわけでございますので、御趣旨の線で進んでいるものだ、このように理解いたしておりますし、そういうふうな方向で承認を求められていくのじゃなかろうかというふうに私は思っております。
  38. 松本惟子

    松本(惟)分科員 ありがとうございました。  手続としては大臣がおっしゃるとおりだと思います。お決めになる主体は法人団体でございますが、御承認をなさるという立場から今お答えをいただきまして、私は期待をさせていただきたいと思います。できるだけ早い時期に、片面的な構成を両輪に戻していただく方向でのステップを力強く踏み出していただくことを大いに期待をさせていただきたいと思います。  次に、昨年の三月に施行されました人権擁護施策推進法に基づいて設置されました人権擁護推進審議会についても、お伺いさせていただきます。  同法は、人権の擁護に資するために、人権尊重の理念に関する国民相互の理解を深めるための教育及び啓発に関する施策並びに人権が侵害された場合における被害者の救済に関する基本的事項を調査審議するために、人権擁護推進審議会を設置することを決めたというふうに承知をしております。  この審議会では、最初の二年間で教育・啓発に関する施策に関する答申、そして残りの三年間で人権侵害に対する救済措置に関する答申を出す予定だというふうに伺っています。つまり二年の箱と三年の箱と、こう二つ箱が並んでいるわけでございます。そして現在、そこへ向けまして、諸団体からの一通りの意見聴取を終えられたところであるということもお伺いをしております。  この審議会がどのように審議をし、目指す方向はどうなるのかということなどにつきましては、議事録を公開するだけではなく、人権問題に関するNGOとかそれから市民団体の声を私は十分に聞くべきであるというふうに思っておりまして、そのために意見表明の機会をふやすとともに、差別の現実を知るための現地調査、つまり、施策をつくっていくためには実態がどうなっているかということが非常に重要だというふうに思っております。そのために現地の調査そしてフィールドワーク、実態調査を行うべきではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  39. 横山匡輝

    横山政府委員 お答えいたします。  本審議会におきましては委員指摘のとおり、現在、二つの諮問事項のうち、人権教育・啓発に関する施策の基本的事項について調査審議をし、二年をめどに取りまとめるという予定で進行しております。  まず、今委員指摘の中の、現地調査あるいは実態調査をすべきではないかという点についてお答えいたしますと、この調査審議の中で、ただいま委員指摘のとおり、女性、障害者、同和問題等の各種の人権課題について実情を把握することを目的としまして、昨年十二月の会議それから本年一月の会議の二回にわたりまして、各種人権課題に関するヒアリングと題し、これらの人権課題に関して人権擁護活動を行っている団体、合計十五からのヒアリングを実施したところでありまして、意見発表及び質疑応答を通じて、これらの人権課題に取り組んでいる団体の意見を聴取できたものと考えております。  また、国民の人権意識の現状及び過去からの推移につきましては、平成九年七月に総理府が実施しました人権擁護に関する世論調査により、ある程度明らかになっているものと考えておりまして、審議会においても本調査を参考に審議を行ったところであります。  今後の審議会の運営に関しましては、審議会で決定される事柄でありますが、事務局側としましては、今後の審議会においてこれまでのヒアリングの結果や世論調査等を踏まえて人権問題に関する多様な意見が反映されるとともに、我が国における社会の実情、人権に関する社会の諸情勢を踏まえた審議が行われるものと承知しております。  また、審議会における公開性の点、それから意見交換等を行うべきではないか、その点でございますけれども、この点につきましては、まず議事録によりまして会議の公開を行うなど、審議会の透明性を確保しているところでございます。また先ほど述べましたように、意見交換の点につきましては、既に十五の団体からヒアリングを実施して、多様な意見を聴取したところであります。またそのほかに、各種の団体等から審議会あてに意見の提出等がなされた場合には、事務局において取りまとめ、審議会に提出することを考えております。したがいまして、事務局側としましては、一般の方々の多様な意見が審議会の調査審議に反映するように、このような点について考えているところでございます。
  40. 松本惟子

    松本(惟)分科員 お話の中で、御努力はわかりますが、私はもっと、せっかく二〇〇〇年以降の方向をお決めになる、しかも日本において人権問題が総合的に扱われる施策をまとめられるわけでございますので、可能な限り広く国民の声、各方面の声、さっき多様なというふうにおっしゃられましたけれども、十五の団体そして総理府の調査、世論調査等を踏まえ、さらには、発信をされてきたものについてはそれも踏まえてというふうなお話でございましたが、もうちょっと前向き に、せっかくのチャンスでございますので、たくさんの人々そしてNGOの団体などの声を聞き、聞くだけではなく、つまり会議の中で聞くだけではなくて、踏み出していってそこに触れてお聞きになったヒアリングとあわせて施策をまとめ上げていくということが今求められていることではなかろうかと思います。  そこで、大変恐縮でございますけれども、私もかかわりまして答申をいたしました総理府における男女共同参画審議会、その画期的な手法の導入がございますので、少し紹介をさせていただきたいと思います。  それはNGOへの積極的な情報の公開、つまり、同審議会におきましては、たび重なるNGOからの要請もあり、そして要所要所にNGOとの意見交換、幅広い意見交換をする中で、初めは議事録の公開から始まりましたけれども、現在では審議の模様を、じかに傍聴を認めて聞いていただくようにもなっているというふうに承知をしております。そういった意味で、情報公開が一歩一歩審議会の中で進んでいる。そして中間取りまとめをするときにこの報告の公開をし、それに対する意見の公募などをやって、そして計画をつくったということがございます。  私、きょう手元に持ってまいりましたけれども、これは国民の皆様から集めた、今情報が非常に発達していますから、ファクスだとか手紙だとかいろいろなものが寄せられたわけでございます。中間取りまとめをしたものを広く国民に開示をして、もうこれはそのまま印刷をしたものですから、活字もあれば手書きのものもございまして、二冊にわたっています。これを私ども審議委員は机の上にこうして置きながら、参考にして二〇〇〇年ビジョンを取りまとめていったという経過がございます。  どんなふうな状況かということをかいつまんで申し上げますと、審議会は二年間でございましたけれども、総会が二十回、この総会に持ち込むために各部会、課題ごとの部会が延べ四十回開かれております。三つの部会に分かれて審議をしたわけでございます。そしてそういったものをまとめていくときに、事務方の方とそれから委員の代表あるいは専門家をわきに置いて起草委員会をつくりまして、この起草委員会が六回にわたって審議をしました。そういった回数もさることながら、中間取りまとめの際に寄せられたこれだけの期待、そしてこのことによって、これはできる、これは無理だという仕分けをしてビジョンが策定され、プランが政府で決められたわけでございますが、国民が広く参加をしたことによって、現在、全国津々浦々の女性センターで二〇〇〇年プランの実行に向けてロビー活動をするための勉強会、つまり、政府にNGOがさまざまな提言をするための勉強会、国民の、いわゆる情報を得て主体的に参加をするためのレベルアップが進んでいるということを御紹介をさせていただきたいというふうに思います。  私は、本当にいいチャンスでございます、人権問題をまとめ上げていくといういいチャンスでございますので、本当にもっと広く広く、来る者は拒まずという姿勢だけではなく、審議委員さらに必要であれば専門委員も加えられまして、踏み出して、出前をやっていただきたいということもお願いをしておきたいと思います。  人権擁護推進審議会の運営におきましても、このような手法が必要と考えますが、いかがでございましょうか。  そしてこの点につきまして、平成八年十二月に衆議院の法務委員会で、佐々木秀典議員の質問に対しまして大藤人権擁護局長がお答えになったことがございます。それは、「人権教育・啓発に関する施策につきましては、二年程度を目途として早期に方向性を出していただくように審議会にお願いする所存でございまして、その具体的な方策といたしましては、中間答申等の措置が講じられるように配慮するのが妥当ではないかと考えております。」このように答弁をされております。  そこで、この答弁どおり中間答申が出されるものと理解してよろしゅうございましょうか。二戸についてお答えをいただきたいと思います。手法の問題と、二年間で必ず答申をまとめていただけるのかどうか、お願いをいたします。
  41. 横山匡輝

    横山政府委員 まず、審議会における調査審議の手法の点でございますけれども、これにつきましては、先ほどお話ししました、審議会が二回にわたって行われましたヒアリング、これ自体、中身をちょっと具体的に申し上げますと、現在重要な人権課題としてとらえられているものの中から、女性、子供、高齢者、障害者、同和問題、アイヌの人々、外国人、HIV感染者等、こういう人権課題を取り上げまして、それぞれの課題に取り組んでおる団体、例えば女性でいいますと、国際婦人年日本大会の決議を実現するための連絡会、子供でいいますと、日本PTA全国協議会や日本子どもの虐待防止研究会、障害者でいいますと、社会福祉法人の日本身体障害者団体連合会、全日本手をつなぐ育成会、全国精神障害者家族会連合会、同和問題でいいますと、全国自由同和会、全国部落解放運動連合会、部落解放同盟等々、幅広く意見を聴取しているところであります。  また、先ほども言いましたように、各方面からいろいろ御意見があれば、それは事務局の方にお出しいただければ、それを事務局の方でまとめまして審議会の場に提示し、調査審議に反映されるということを考えておりますので、この手法によっても、十分に国民各層の多様な意見が反映される調査審議がなされるのではないか、このように思っております。  それから次に、中間答申ということでございますが、これ自体、現在、人権教育・啓発の施策に関する基本的事項につきましては、衆議院及び参議院の法務委員会における附帯決議を踏まえまして、二年を目途に答申等をまとめるということで今動いているところでございます。
  42. 松本惟子

    松本(惟)分科員 後段の方は、この期間でおまとめいただくということを確認させていただいたというふうに思いますが、前段の方は、やはり私は従来の枠を踏み出していないというふうに思います。  十五の団体、どこどこかというのは承知しておりますけれども、おっしゃられました、各方面から意見が出されれば、それを事務方としてまとめて反映をするというのは大変受け身である。私は、団体以外にも、こんなことをやっているということを知らせていただいて、個人でも言いたいことがあろうと思います。それから、二十分程度報告で十分意見交換ということでは、それはきちんとまとめておいでになっているとは思いますけれども、やはりまだ国民の方には心残りがあるという声も伺っておりますので、ぜひとももう少し柔軟な方法でやっていただけるように、法務省といたしまして、審議会に、こんな意見が国会であったということをぜひ諮っていただきたいということをお願いをしておきます。  次に、司法過程における通訳などの確保についてお伺いをいたします。  司法手続や裁判においては、具体的に聴覚や視覚に障害がある人はどのような立場に置かれているのか。逮捕、勾留、取り調べ、接見、審理過程における手話通訳の確保や、それから視覚障害者に対する点字による逮捕状の作成、裁判過程での点字訳の確保などが必要と思いますけれども、裁判の場、それ以前の場でどのような状況にあるのか、伺わせてください。
  43. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 まず、順番からいたしまして、裁判にかかる前の、特に刑事司法における捜査段階での問題についてお答え申し上げます。  大変重要な問題だという認識でございますが、被疑者となった方々が聴覚あるいは視覚に障害があるという場合には、さまざまな角度から関係者の協力を得て、それらの方々の権利が十分保全されるように努めているところでございますが、特に聴覚に障害がある方の場合は、手話通訳人をつけるなどいたしまして、被疑者との確実な意思疎通に努めて、その置かれている立場を十分遅解し ていただいた上で、その弁解にも配慮して取り調べが行われている。これは警察段階もそうでございますし、検察官の場合もそうでございます。  また、視覚に障害がある人の場合も、被疑者に繰り返しその事実、置かれている立場を説明いたしまして、その弁解を丁寧に聞くなどして、権利の保全には十分に注意いたしているというところでございます。  また、検察庁段階で、例えば平成八年度には二十三件、平成九年度では二十件、これは福祉事務所の職員の方々ともよく相談をしながら、置かれた立場の方が自分の状況についてよく理解しているということを前提として通訳がなされるよう配慮されているというふうに考えております。  ただ、今後とも、この問題につきましてはさまざまな角度から検討をしていくべき一つの分野であると考えております。
  44. 白木勇

    ○白木最高裁判所長官代理者 それでは、裁判所の方につきましてお答え申し上げます。  耳の聞こえない方が被告人となった場合には、刑事訴訟法の規定によりまして、手話通訳人をつけて審理を行っております。この手話通訳人は、手話通訳派遣協会から派遣していただきましたり、あるいは手話通訳士名簿の中から選んだりするなどして、良質な手話通訳人が選任されますように配慮されているところでございます。  それから、目の見えない方の場合には、刑事訴訟法が、すべての手続を口頭で行うようになっておりますので、耳が聞こえれば理解できるように手続が進められるわけでございます。  いずれの場合も、質問を短く区切ったり、あるいはわかりやすい表現で質問をしたり、あるいは繰り返して質問をしたりというようなことで、被告人が理解しやすいように配慮いたしておりますし、また目の見えない被告人の方の場合には、例えば証拠物でありますとその形状を口頭で説明したり、あるいはいつでも弁護人と法廷の中で相談できるように配慮するなどいたしておるわけでございます。  委員指摘のように、これは大変重要な問題でございますので、今後とも、耳の聞こえない方、目の見えない方の立場に十分配慮して裁判が行われるように努めてまいりたいと考えております。  以上でございます。
  45. 松本惟子

    松本(惟)分科員 ありがとうございました。  御配慮のほどはわからないわけではないのでありますけれども、私は、これを現場に任せるだけではなく、つまりケース・バイ・ケースで現場にゆだねるだけではなく、制度化を検討すべきではないかと思っておりますので、この点について法務大臣に後ほど御見解を賜りたい。  それから、さらに審理の段階では、各種の書面の点字訳などが本当は必要ではないかと思いますし、特に判決文については、請求があった場合に、その請求に応じて点字訳を添付することが必要だというふうにも思いますが、こういった点についていかがでしょうか。もう少し前に進めて、配慮という段階から、制度化をしていただきたい。このことを御検討いただけないかということでございます。
  46. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 聴覚障害者や視覚障害者の方々が被疑者になられるという場合の処遇でございますが、私は一これは一般の被疑者の方々と同じような形で、何もそういうふうな障害のために不自由を感じないような制度なりなんなり、仕組みなり体制なりをとっていくようにするというのが基本ではなかろうか、このようなつもりでおります。  点字の問題等々も、同じような趣旨で、どういうふうなことができるか検討させていただきたいと思っております。
  47. 松本惟子

    松本(惟)分科員 ぜひ前向きの御検討をお願いをしておきたい、重ねてお願いをいたします。  最後に、ことしは人権宣言が制定されまして五十年の記念すべき年でございます。人権擁護施策推進法の提案理由説明にございますように、今日においても、同和問題等、社会的身分や門地による不当な差別、人種それから信条、性別による不当な差別その他の人権侵害が、今なお存在をしております。人権の擁護に関する各種の施策の充実を図ることは、私は国の責務だというふうに思っております。  本日、御答弁をいただきましたことをぜひとも誠実に実行していただくことを要請させていただきまして、私の質問を終えたいと思います。どうもありがとうございました。
  48. 久野統一郎

    ○久野主査代理 これにて松本惟子君質疑は終了しました。  次に、西村眞悟君。
  49. 西村眞悟

    ○西村(眞)分科員 早速でございます。二つの柱で質問させていただきます。  第一は、知的所有権が、現在の社会生活上、先進工業国では非常に保護すべきものとして把握されてきていることは御承知のとおりでございますが、私はここで、知的所有権の保護の風潮そして保護の必要性の中で、そこに国家が関与をする場合、つまり補助金という形で国家が関与する場合にいかにすればいいのかという観点から、法務省の御見解を伺っておきたい。つまり、私自身が個別具体的に相談を受けたケースを前提にして伺うわけです。  そのケースは、Aという会社がスーパージフライスという一つの精米機械を販売しております。しかし、Bという会社から、その精米機械については特許権侵害であるという抗議がかなり以前からなされ、業を煮やして、今訴訟が係属中でございます。そして、第三者のCという会社が、その機械の購入に当たり、特許権侵害において係争中であることから、弁理士に鑑定を依頼する。弁理士は、A、B双方の会社から設計図等を取り寄せて、これは特許権侵害であるという鑑定を書きました。この中で、Cという第三の会社は、その係争物件を購入するのを断念した。しかし、ここで、農業機械ですから農林水産省からの補助金がおりるわけです。そのスーパージフライスという機械は三千七百万ぐらいの価格ですから、一千万以上の補助金がおりるわけです。  国家が市民生活上の係争に補助金という形で関与していく形態がここで見られるわけですけれども、仮に、弁理士さんの鑑定が正しくて、本件機械が特許権侵害だ、今係争中の裁判が有権的にそこで確定する。翻って、国家の補助金というものを考えますと、違法な物件に補助金を出したということになります。また、補助金が出るからこの機械を購入するんだという観点から見ますならば、特許権侵害を補助金を拠出することによって促進したのではないか。結果として、国家の関与はこういう効果をあらわしてくると思うのです。  これは非常に難しい問題でございますけれども、行政庁においては、補助金を出す以上は、一応結果としてこういうふうなことになるということは理解しておかねばならないと思うのです。法務省は、法秩序全体の整合性をこの点についていかに考えておられるのか。事前に資料をお渡ししておりますけれども、具体的な本件ケースについてお答えいただくということをお求めいたしませんが、この特許権保護に関して、いやしくも国が補助金を出す以上、法秩序全体の整合性をいかに整えるべきかということについての御見解をお尋ねしたいところでございます。  よろしくお願いします。
  50. 森脇勝

    ○森脇政府委員 知的所有権の保護の問題を私ども直接所管する立場にはございませんが、一般的に、財産権に関する法秩序の中で、知的所有権の保護が重要な問題であり、今後ますます国際的にもその重要性が増していくのではないかという点については、委員指摘のとおりであると私どもも認識しておるところでございます。  法務省としては、今御指摘の具体的な事実関係については承知しておらないわけでございますが、一般論として申しますと、機械設置に対する補助金交付の判断に当たりまして、当該機械について特許権侵害訴訟が係属しているというようなことが判明した場合には、訴訟係属という事実を考慮するのかどうか、あるいは考慮するとしてどの程度考慮するのかといった問題については、そ れぞれの所管の省庁において慎重に考慮の上、適切に取り扱われるべきものだというふうに考えておるところでございます。
  51. 西村眞悟

    ○西村(眞)分科員 そのようなことだと私も思います。  いわゆる原告という立場からするならば、補助金が出ることによって機械が購入をされる、これは、動機づけとして補助金があるわけですから、これが続きますならば国に対して不法行為責任を問い得るケースだ、このように思うのですが、これは御見解を聞かずに発言だけにとどめておきます。  今、整合性を整えるべきだとおっしゃいまして、法務省としては所管するところではないけれども、政府としては、農林が多いのですが、各所で補助金を出す行政があることは確かでございますから、政府tして各所管所管に関して態度の統一性を確保するための方策というのは、法務省においてはどのようにとられるおつもりか、お聞かせいただきたい。
  52. 森脇勝

    ○森脇政府委員 これは各省庁、特に補助金交付にかかわる省庁全体に及ぶ問題であろうかと思われます。  また、私どもの所管いたします司法秩序の観点からは、少しワンクッションある問題なのかなという思いをしておるところでございます。
  53. 西村眞悟

    ○西村(眞)分科員 ありがとうございます。  次は、第二の問題点に参ります。  組織犯罪対策としての主に通信傍受についてお聞きするわけですが、これはこの分科会で私は一番お聞きしなければならないし、また、ある意味では、国家の、社会、市民生活防衛上の最重要の課題が実は本国会にあるんだというふうな認識を僕は持っております。  ただ、この法案が、政府から提出される前の与党内の議論を漏れ聞くところによりますと、やはり抽象的な人権ということに非常に配慮した議論がなされて、具体的な市民生活における漠然とした不安がいずこからよって来るのかという観点についての議論の仕分けは、ああいう議論をされている限りはないのではないかな、こういうふうに思ったものですから、法務省の御見解をお伺いしたいと思って、これから質問させていただきます。  およそ我々の社会は、匿名ではない、具体的に名前と個性と顔がはっきりわかる、安心した市民社会を前提にして法体系も成り立っているわけですが、匿名性があってどこに何があるかわからないという社会が現在は出現している、これはもう明らかなとおりでございます。  したがって、そのアンダーグラウンドの世界から来る漠然とした不安が、これは古典的な例ですが、そういう不安があるから家にはかぎをかけるということになるわけですが、この不安というのはどれほどの社会に惨害を与えているのだろうかといえば、私は、不良債権問題で騒いでおります、騒いでおりますけれども、あの不良債権が発生した根底にある一つのものは何かといえば、例えば銀行の支店長射殺、それから副頭取の射殺事件一これが全く、どこでなされて、何の意図でなされたかわからない。しかし、これは債権回収に当たる個々の銀行にとって非常な心理的重圧になっておるわけです。この不安がよって来るところを解明する。それには情報の収集が必要であり、また、壊滅させるためには、そこから得た金銭を没収しなければならない。  私自身は、憲法にある個々の人権、これは非常に確かでございますけれども、この社会にこれほどの惨害、目に見えませんけれども、これは一年以上の国会の審議、住専処理以来ある審議から見れば、非常な国家社会に対する大損害です、非常な損害です。戦争状態と同じような損害を与えている。こういうふうな組織の解明、こういうふうな組織には犯罪をするプライバシーはないのだという前提からすれば、その解明には、個々の犯人がわかっておって、個々の犯人の人権を確保しながら実体的真実の究明に至るという古典的なものではなかなか防庄できないのではないか、このように思っておりますが、この点で、この法案を出してこられた法務省の大前提としての、この社会不安が持って来るところの実態の解明については、従来の捜査手段が有効なのか、有効でないのか、またその点についてちょっと考えをお聞かせいただきたいと思います。
  54. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 委員指摘のとおり、最近におきます犯罪状況の実態を考えてみます場合に、御指摘の点は極めて重要であると考えているわけでございます。  銃器あるいは麻薬の取引の実態、またその背後にある組織的な動きということを考えますと、御指摘のような金融機関の経営者に対する殺害事件の解明が十分に行われていない、そのことがもたらす社会的不安というようなことも、当然のことでございますが、我が国の平穏な市民生活を脅かすという観点、健全な社会の維持発展にさまざまな悪影響を及ぼす状況があるという点は、私どもとしても十分な認識を持っているところでございます。  そのような犯罪は、犯行自体が密行的に行われる、あるいは犯人の特定を困難にするために種々の工作が行われることも少なくない。また、犯行に関与した者の一部が検挙されましても、本当にその犯行を計画し、実行した首魁、首謀者等の関与の状況、その特定が極めて困難であるというような状況がございまして、まさに御指摘のとおり従来の捜査手法だけでは、十分その実態の解明、いわば国民生活の安全という観点から、その不安を取り除くような刑事司法が行われているのかという観点からは、大変問題があると考えております。  そのこと自体が、今回さまざまな形で検討させていただきました結果、国会に御提出させていただきました、組織犯罪等、その対策のための一連の立法をお願いする大きな動機でございます。  委員指摘のお言葉の中に、これは委員のお気持ちがあらわれたのだと存ずるのでございますけれども、そういう組織の犯罪の根源に触れる問題については、個々人のプライバシーについてはともかく、ある種のそのような件については別途考えてもいいのではないかという御趣旨に承りました。その点は確かにあるのでございますが、しかしながら、近代司法の中でやはり個々人に還元されましたプライバシー、その他、人権に対する配慮は、私どもとしても十分していかなければならないと思います。  しかし、その上で、やはり近代国家といたしましても、市民生活の安全を守るという観点、そしてそのことがもたらす社会全般に対する影響ということを考えますと、もはや放置できないというのが私どもの考え方でございます。この点については多くの方々の共感を得、かつ理解を得つつあるものと私どもは考えている次第でございまして、そのような時機が至りましたら、できるだけ早く国会で御審議をいただきまして、大方の御理解を得て、そして納得のできる立法という形でぜひこの世に出していただきたいというのが私どもの期待するところでございます。
  55. 西村眞悟

    ○西村(眞)分科員 私も、組織犯罪の被害は戦争による被害に匹敵すると考えておりますので、この法案を出していただいたことに敬意を表しておるのです。  これはちょっとしばらく個別的なことをお聞きしますが、従来、検証令状という形で通信傍受はされた判例が数例あるわけですが、これができますならば、この法案を出す前に、もっともっと通信傍受という捜査手段を活用して実態解明に進めるべきではなかったのか。検証令状による傍受はなぜ不十分だったのだろうか。新しく立法する必要性は、不十分だったからあるという判断でなされたのですが、この辺の、検証令状では不十分だということ、だから今までその通信傍受という形での情報収集が非常に抑制されておったということがありますならば、御説明いただけませんでしょうか。
  56. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 御指摘のとおり、犯罪捜査のための通信傍受に関しましては、これまでも電 話を利用した覚せい剤の密売事犯につきまして、刑事訴訟法が定めております裁判官による検証令状、検証許可状によりまして電話の傍受を行って、実際に密売に従事した者の検挙に成果を上げた例が幾つか、大変限られておりますが、報告されております。  これらの事例におきましては、主として覚せい剤の密売に用いられる電話であることが実質的にその要件の一つにされていることなどから、その背後にいる首謀者の特定等は困難でございます。犯罪の全容を解明する観点からは、十分な効果は期待できないというふうに考えられます。  また、傍受の条件、手続が、刑事訴訟法の検証に関する規定の解釈によっているところ、その通信傍受は組織的かつ継続的、密行的に行われるという点で、関係者の権利保護等につきましては従来の強制処分とは異なる配慮が必要でございます。  また、対象犯罪も、単に覚せい剤ということに限るのではなく、ある程度組織犯罪の実態を考えまして必要な範囲に、限定的でございますけれども、拡大していく必要があるという点がございます。  また、実質的に考えましても、やはり捜査機関といたしましても、また裁判官といたしましても、明確な形で通信傍受ということが立法化され、そしてそのことが十分チェック機能を果たしながら関係者の手で行われていく、そして、いやしくもそのことによって濫用が行われないということがございませんと、やはりやりにくいという点は正直言ってあろうと思います。  また、学者の多くの方々も、そういうことの必要性はあっても、やるならば正面から取り上げて立法的に事を解決してもらいたいというのが、かねてからの要望がございます。また、実際、事に当たるには、NTTの職員の方々、その関係者の、専門家の協力を得なければならないわけでございますが、それらの方々の立場に立ちましても、いわば法律でもって明定されていないことが検証令状といった形で行われることになりますと、何がしかの不安と申しますか、これでいいのだろうかとお考えになることは確かにあろうと思います。  そういう点で、今回お願いしております裁判官の令状に基づく通信傍受の一連の規定は、そのような幅広い観点から考慮した上で、対象罪名を限定しつつ、かつその手続も極めて抑制的に、そしてまた濫用が行われた場合には、後からそのことが検証可能なようなさまざまな配慮をやりながら進めていく、国際水準からいたしましても最も進んだものにできているのではないだろうかというふうに私は考えている次第でございます。
  57. 西村眞悟

    ○西村(眞)分科員 よくわかりました。  次の質問ですが、現在の情報を収集して実態を把握しようとするこの組織は、犯罪自体がビジネスなわけであります。したがって、私がこの冒頭申し上げましたように、犯罪をするプライバシーはないのでございます。なぜ通信という電波、ワイヤを通じた会話だけに傍受を限られるのか。そのほか、およそその会社のオフィス、およそそのアジトで行われた会話、会合して打ち合わせをするというときの会話、この会話傍受はなぜ除外されたのであろうか。  と申しますのは、私がここで皆さんとおしやべりしていてこれを横で聞いている、これはいいのですけれども、現在の光学器械では、例えばガラスが振動する、このガラスの振動を察知して、中で行われている会話がわかる、こういう器械もあるわけです。これはできないのでしょうか。今の通信傍受という点では除外されているわけですが、情報収集という点では、ここで重要な会話が行われているかもわからない、これを収集しなければ実態の解明はできない。むしろ、傍受がこの法律でなされるとなれば、人間は、電話でしゃべるよりも会話する、じかに会合して、使者を立てて、そういうことが多くて、またここでするりと手から抜けるのではないか。  会話傍受は必要である、あらゆるいわゆる高度な機器を動員しての会話傍受も必要であるのだと思っておりますが、この点はいかがですか。
  58. 原田明夫

    ○原田(明)政府委員 委員指摘のとおり、通信傍受のみならず、場合によって密室を含めた会話についての傍受についても考慮すべきでないかという点は、さまざまな議論の中で指摘されたところでございます。  しかしながら、通信傍受と比較いたしますと、プライバシーの利益の制約の程度がやはり質的に少し違うのではないかという議論がございました。したがいまして、その導入につきましては一層慎重な検討を要するものというのが、現在の結論でございます。  例えば、通信傍受でございますとそういう点はないのでございますけれども、やはり口頭による会話の傍受ということになりますと、対象となる会話以外の、いわばそこで行われる物事すべてが聞かれる可能性が出てくるという点が一つ差異としてはございましょう。また、口頭による会話の傍受の場合は、その傍受施設、傍受装置を設置するために、例えば捜査機関が他人の占有する空間に秘密のうちに立ち入る必要が出てくるという点もあるかと思います。そういう点からいたしますと、一般的に会話を傍受するということになりますと、さまざまな観点から、より一層慎重な検討を必要とするというのがただいまの大方の御意見ではなかろうかと思います。  ただ、一般的に、これは私人間でもそのような会話の傍受が行われている、そのための例えば機器が現実に売られているのではないかという指摘も確かにございます。しかし、その点になりますと、捜査機関の行為を縛るという観点もさることながら、一般的にそのようなプライバシーを探ることが民間人あるいは一般に行われているということをどう考えるか、これは幅広いプライバシー保護の観点から一層幅広い立場で考慮していき、またその点についてどう考えるのか、一般法制の問題として今後検討すべきだというのが法制審議会の大方の議論でございました。  委員の御指摘は十分踏まえながら、今後の重要な検討課題とさせていただきたいと思います。
  59. 西村眞悟

    ○西村(眞)分科員 社会を壊そうとする組織との戦争状態であるということで考えますならば、この法案についても、令状の期間が短い、また、犯罪の限定は諸外国にその例はない、諸外国は、戦争状態だと把握してその実態解明と撲滅に取り組むという法制を日本よりも問題意識として持っておるというふうに思います。  この問題はじっくりとまた御審議、またお教えいただくとして、本日の分科会質問はこれで終えさせていただきます。ありがとうございます。
  60. 久野統一郎

    ○久野主査代理 これにて西村眞悟君の質疑は終了いたしました。  次に、漆原良夫君。
  61. 漆原良夫

    漆原分科員 平和・改革の漆原でございます。  本日は、地元の問題についてお尋ねしたいと思いますが、新潟県西蒲原郡の黒埼地区というところがございまして、ここでは昭和四十八年から五十三年までの間に、河川、国道、鉄道、三つの事業についての土地収用法の対象になったわけでございます。この地区の土地は権利関係が錯綜しておりまして、起業者、収用委員会が知り得た土地所有者と思われる者が真の所有者であるかどうか、また他の権利者が存在するかどうか確定することができなかったわけであります。そこで、起業者は土地所有者不明として裁決の申請を行って、収用委員会も土地所有者不明として、いわゆる不明裁決をしたわけであります。その後、起業者は土地収用法九十五条第二項二号に基づいて四十九年、五十年、五十四年と、それぞれ損失補償金を供託した、こういう事案でございます。  ところで、供託規則二十四条二項によりますと、被供託者が損失補償金の還付請求をするためには、還付を受ける権利を有することを証する書面を添付しなければならないことになっております。本件のように、他の権利者の存在が不明として供託されている場合には、他の権利者の不存在を証明しなければならない、そうしなければ還付 を受けられないということになると思います。ほかに権利者がいないということを、不存在を証明するということは、いわばないことの証明であって、法律家の間ではお化けの証明、事実上不可能だ、こういうふうに言われております。強いて言えば、日本国民全部を被告として訴えて不存在の証明をしなければならないのではないか。そんなことはとても不可能でございますが、現に本件事業の被供託者は約四百名ぐらいおるわけですけれども、土地は収用されたけれども補償金を受け取れないということで、二十年以上もそういう状態が続いております。そしてまた、その間に相続関係が発生しまして、非常に権利関係が錯綜して、多分もう関係者は千人近くになるのでないかというふうに言われております。  そこで、法務省にお尋ねしたいのですが、本件のように、不明裁決に基づく供託がされた場合、供託規則で言う権利を有することを証する書面とは、そもそもどのような書面を添付すればいいのか、法はどのようなことを予想していたのか、これが第一点。  それから、じゃ、本件の場合にはどのような書類を添付すれば供託を受けられるのか。この二点についてお伺いしたいと思います。
  62. 森脇勝

    ○森脇政府委員 まず、一般的に申し上げますと、供託物の還付を請求する者はその権利を証明することを要する、これが法の規定でございます。この法の規定を受けまして、規則におきまして添付書類が定められておるわけでございますが、それは、供託金の還付請求書には還付を受ける権利を有することを証する書面を添付しなければならない、今先生指摘のとおりの規定がなされておるところでございます。  この還付を受ける権利を有することを証する書面というのはどういうものかというと、これは事案によってさまざまでございまして、実務の上で多く用いられているのは確定判決、あるいは和解調書、あるいは公正証書、場合によっては私署証書であっても、これを証するに足るものであれば足りる、こういうふうに解釈されておるところでございます。  土地収用法の九十五条二項二号ですか、不明裁決があった場合に、また事業者の方で権利者を過失なくして知り得ない、こういう状況のときに、供託していわば収用裁決の効力を維持するという手だてが認められておるわけでございます。  これは、一定の期限までに、権利取得の時期までに権利取得に係る補償金の払い渡しをしないと権利取得裁決が失効する、こういう形になっておりますので、起業者が過失なくして補償金を受けるべき者を確知することができない場合も、補償金の支払い義務の履行を供託ということによって可能にするための規定である、こういうふうに理解されておるところでございます。  それで、この場合にどういう書面が考えられるかということでございますが、私も事案の中身を詳細に承知しておるわけではございませんが、先生指摘の場合には、所有権のいわば持ち分権者が多数あって、そこに相続関係が何回にもわたって起こっておる、こういう事案であろうというふうに想像しておるところでございますが、そういたしますと、それらの相続人を戸籍謄本等によって証明することが可能になってくるであろうというふうに思っております。  それで、その中に「または不明者」というものが入っているときにどうするのか、こういう問題であろうかと思われますが、この場合も、関係者間で判決を得るという手続をとりまして、持ち分が一になるような形での判決であれば、これは仮に名前を掲記された方々だけで持ち分が一になるということであれば、「または不明者」という場合の「または」は意味がなかったんだということが証明されるということになってくるであろうというふうに考えられます。したがいまして、その場合にはそうした判決の添付が可能である。または、その判決は、主文の中に示されていなくても、理由中でこの権利を証する書面に当たるということになれば、その理由の記載によって判断する、こういうことにいたしておるわけでございます。
  63. 漆原良夫

    漆原分科員 本件の場合は確かに被供託者の間の争いではないんですね。供託事由は、ほかにだれか本当の権利者がいるかもしれないということで、供託されている。したがって、本来この供託規則からいえば、ほかに権利者がいないんだということを証明しなければ還付を受けられないわけです。その際に、今おっしゃった方法、関係者がわかっているという被供託者だけの間で裁判をして、持ち分が全部一〇〇になるような裁判をすればいいのではないかという御主張をされたですね。私は、それはそれとしてちょうだいしておきます。そういう裁判が可能かどうかは考えますが、もしそういう判決がもらえればそれは供託金をおろしていただけるということで、一つの便法としてちょうだいしておきます。  ただ、それが本当のやり方なんだろうか、この供託規則二十四条二項で言うところのそれは本当のやり方で権利を証明しているんだろうかと。むしろ、いるかいないかわからない人の存在を証明するのに、いる人の間だけで持ち分を確定してしまって、あとはないんだと言う。これは、本当の権利者を被告にしないで、いるかいないかわからない権利者を、供託事由になった人を被告にしないで、別な人を被告にして事実上還付請求権の持ち分を確定してしまう。これは、ある意味ではこの法の予想しているノーマルなやり方ではないんじゃないかと思いますが、いかがでしょうか。
  64. 森脇勝

    ○森脇政府委員 今御指摘の事案ですと、特定の判明しておる権利者の記載がある、それから、死亡しておるけれども相続人が判明していないという方もある、それで最後に「または不明者」と、こういう記載になっておりまして、ここで「または」となっているのは、不明者の存否、不明者がいるのかいないのかの点も不明であるというかわからないと、こういう事案なんだろうと思うんです。  それで、ほかに私どもは資料がございませんので、ここでほかの権利者があるのかないのか、あるとしてどうなのか、こういう問題でございますので、供託者の側に立ちますと、その部分がないということ、不明者がいないんだということを証明していただくのも一つの手であろう。そして、今申し上げたような訴訟の判決というのはまさにこれを立証するものであろうと思っておりまして、これが必ずしも便法だということにはならないのではないかと思っております。
  65. 漆原良夫

    漆原分科員 他の権利者の存否そのものが不明なわけですね。いるかもしれないし、いないかもしれないと。ですから、法の要求するところは、いないんだということを証明しなきゃいかぬわけですね。他に権利者はいないんだということを直接証明する方法があれば、それが一番ベスト。しかし、先ほど来申し上げておるように、それを直接証明する方法というのは、今の法体系では、ないですね。そこで、今民事局長がお考えいただいた方法ならばよろしいと、こういうことになるわけですね。そう理解してよろしいでしょうか。
  66. 森脇勝

    ○森脇政府委員 存在の立証が直接的には不可能であることは、委員指摘のとおりでございます。
  67. 漆原良夫

    漆原分科員 土地収用法がこの不明裁決とそれに基づくその供託を認めた理由というのは、これは、権利関係の確定に時間を費やすことによって事業を遅延させてはならない、公共の実現に支障を来すということで、それが趣旨であると思うんです。そういうことで、ある意味では、私人の権利関係よりも公共の利益ということを優先させた規定であろうか、こう思っております。  先ほど来申し上げましたように、確定した権利者間の持ち分の関係、内部紛争であれば、被告は決まっていますから訴訟解決すれば非常にやりやすい。しかし、今回のように、だれが権利者であるかわからない、そのほかにもいるかもしれないというそういう不存在を証明しなければ原則的にもらえないんだ、こういう規則になっているわ けであります。こういう規則のつくり方、今民事局長が、それを直接証明する方法はないけれども、先ほど来お聞きしたような方法での証明ならばいいのではないかということをおっしゃっていただいて、少しは安心しているんですが、それにしても、やはり直接証明するのが原則なわけですから、その方法がないような規定の仕方をしたということは、やはりこれは私人の権利実現の可能性を事実上奪ってしまっているのではないか、こう思うわけです。そういう意味では、余りにも公に重くて私に対する配慮が軽過ぎるのではないか、法的整合性という観点からどうなのかなという疑問を持っております。  そこで、土地収用法の九十五条二項二号で、所有者不明という供託理由でこの供託を認めた、その際に、還付の手続について定めた供託法八条あるいは規則二十四条二項との関係で、還付手続をどうするかということが問題となったのかならないのか。これは建設省にお聞きした方がいいのかな。
  68. 堀正弘

    ○堀説明員 お答え申し上げます。  土地収用法におきましては、権利関係の錯綜等によりまして土地所有者が不明な場合、権利関係の確定にいたずらに時間を費やすことによって事業の実施がおくれまして、公益の早期実現に支障が生ずることのないように配慮したというのは、先生指摘のとおりでございます。このような場合におきましては、御指摘のように、収用委員会が権利者不明のまま不明裁決というのを行うようになっております。その場合の補償金の支払いでございますが、これは九十五条におきまして、供託という方法によるとされております。  それで、収用法で規定し得る範囲と申しますのがありまして、土地収用法は、公益と私益の調整、具体的に申し上げますなら、起業者が事業の実施によって実現しようとする公共の利益と土地所有者との調整、これを図るというのが収用法の基本的な性格でございます。その土地所有者と起業者との間の調整というのはやるんですが、一度供託金が供託所にもう供託された、補償金が供託された、それ以降の手続につきましては、もう収用法の範囲の本来的な外側であるというふうに認識しておりまして、還付手続については一切定めないというように整理がされております。
  69. 漆原良夫

    漆原分科員 趣旨はよくわかるのですが、私益と公益の調整を図る、よくわかります。そのためにも供託をするという、不明裁決の場合に供託する方法を認めた、これはよくわかります。現実に供託を還付する場合どうするかということを考えなかったのですか。この供託規則の二十四条二項というのは、頭にありましたか、ありませんでしたか。
  70. 堀正弘

    ○堀説明員 当時は、もちろん供託法の規定も頭に置きながら規定を整理したと思うのですが、収用法の先ほど申し上げました性格、起業者が土地所有者に対して補償金を支払う、収用法で規定し得るのはそこまでだという判断がございました。したがいまして、それ以降のことは、収用法で規定するいわば制度的な限界があるのではないかと考えております。
  71. 漆原良夫

    漆原分科員 だけれども、供託する以上は、供託後、じゃ、どうやって還付を受けるんだというところぐらいは頭をめぐらせますね、当然として。供託してしまえばそれでいいんだ、あとはもううちの分野じゃないんだ、こういうことじゃないわけでしょう。供託をしたら、どうやってその被供託者は還付を受けるんだろうか、ここまで考えるのが僕は当たり前だと思うのですよ。違いますか。  権利者がいるかどうかわからないという、何といいますか不明裁決に基づく供託をした場合には、この規則二十四条の二を見れば、不明だということを証明しなければもらえないという、そういう条文になっているわけですよ。それに対して配慮を全くしなかったということになりますか。あるいは、それは法務省が考えればいいのであって、うちの管轄じゃないというお考えでしょうか。いかがですか。
  72. 堀正弘

    ○堀説明員 先ほども申し上げましたように、収用法で規定し得る範囲というのは当然制約がございまして、公益と私益の調整という観点から、土地所有者に補償金を払い渡す、どういう方法で払い渡す、そこまでは十分留意しております。それ以降の手続につきましては、権利者の保護という観点につきましては、すべてが収用法単独でカバーし得るものではございませんので、ほかの法体系の手をかりながら権利者の保護を全うしていくというのが立法の趣旨でございます。
  73. 漆原良夫

    漆原分科員 それでは、こう聞きましょうか。この供託事由を、不明裁決に基づく供託事由を認めるについて、還付の手続、権利者が還付を受けられないようなことでは困るわけですから、還付の手続について、建設省は法務省と打ち合わせしたことがありますか。
  74. 堀正弘

    ○堀説明員 土地収用法は昭和二十六年の制定でございまして、その当時、還付手続についてどのような調整をしたかにつきましては、手元に資料がございませんのでお答えできません。
  75. 漆原良夫

    漆原分科員 不明裁決というのは、事業を行う、早く大きなところの事業をスムーズに行うためには、非常に僕はいい制度だと思うのです。この制度がないと、もう権利者が確定するまで物すごい時間がかかるわけですね。この制度は、公益事業をやる観点から見れば非常に私はいい制度だと思うのです。しかし、それによって本当の権利者が犠牲になって、もらえるものがもらえない、土地は収用された、しかし還付金もらえない、これは二十年も据え置いている、こんな事態は異常な事態なわけですよ。そうでしょう。こういうことまできちっと思いをめぐらせるべきではないのかというのが私の考えなのですが、いかがでしょうか。
  76. 堀正弘

    ○堀説明員 繰り返しになりますが、そういう権利者の保護というのは土地収用法でも非常に配慮しておりまして、各所に権利者保護の規定を設けておりますが、収用法でどこまで果たしてカバーできるかといいますと、制度的な限界がございます。  ちょっと観点を変えて申し上げますと、例えば、その他不明者があるというのが先生指摘のケースでございますが、それ以外にも、例えば、甲または乙という形で権利者が確定しておる、そういった場合の両者間の権利関係の確定、これはもう最終的に裁判によらざるを得ないというようになっておりまして……
  77. 漆原良夫

    漆原分科員 ちょっと失礼。時間がないので、そんなわかり切ったことはいいんですよ、さっき僕、申し上げたんだから。確定しておる場合は裁判やればいいんだからね。確定しない場合に裁判やりょうがないじゃないかというのが僕の言い方なんですよ。まあ、それはいいです。  法務省と建設省に、両方に聞きたいのですけれども、私、今後も不明裁決というのはなされていくだろう、たまたま事例は少ないようですけれども、今後ともやはり土地収用法による不明裁決がなされるだろう、こう思います。このような場合に、それに基づく供託がなされた場合に、その被供託者が還付を受ける場合の規定として、今の規則二十四条二項のままでいいのかどうか、これは法務省、建設省ともにお尋ねしたいと思います。
  78. 森脇勝

    ○森脇政府委員 この問題、先生指摘のとおり、何らかの解決策があっていいのではないか、私は、そこの点は、先生の御意見に傾聴すべきものがあるというふうに考えております。  ただ、それのやり方はどうするのかという方向でございますが、一つの考え方は、もう地権者のいわば権利は供託金還付請求権に化体してしまっているのだから、不明者の部分は一定の場合にはその権利が失効するというような考え方はどうかというのが一つあり得るだろうと思うのです。  それからもう一つは、これのそもそも始まったのは、地権者がどの範囲かということが、迅速になすべき土地収用の段階では確定できなかった、そこが整序できていないというところから始まっているわけです。そうすると、その手続の中で何らかの地権者の確定の、解消策をつくっていく、 そして、そこで確定されれば、以前にやった還付請求権の範囲、その特定の人、それも確定してくる、こういう仕組みをつくるのか、二つの考え方があり得ると思うのです。  申し上げましたとおり、これは、始まりは何かというと、地権者が錯綜していて不明者が出てしまったというところから始まっているので、そこに基づいての解決でないと真の解決にはならないのではないかという感じがいたしております。
  79. 堀正弘

    ○堀説明員 先生の御質問が供託法にかかわる部分でございますので、私ども、供託法は施行する立場にございませんので、直接的なお答えは差し控えさせていただきます。
  80. 漆原良夫

    漆原分科員 それじゃ、こう聞きましょう。先ほど来、問題点はわかったでしょう、問題点。このままでいいですか。このままほったらかしていいですか、どうですか。
  81. 堀正弘

    ○堀説明員 もちろんこのままの状態でいいとは考えておりません。何らかの対策が必要であることは十分認識しておりますが、土地収用法を所管する立場から一体どういうことができるかといろいろ考えたところでございますが、これにつきましては、本来的にはもう民事上の手続の世界の話でございますので、なかなか土地収用法のサイドからはこれといった対策が浮かんでこないというのが現状でございます。
  82. 漆原良夫

    漆原分科員 役所のことはわかりません、それは。どっちの所管であってどっちがどうのこうのというのはわかりません。そんなことじゃないのですよ。実際、四百人ぐらいの本当の権利者が、本当かどうか知らない、被供託者が、土地はとられたけれども、土地収用法で土地はとられたけれどもお金をもらえないという事態が出ておるわけですよ。そうでしょう。そうしたらあなたの方は、そんな木で鼻をくくったような答弁しないで、法務省なり、土地収用法に関連した供託なんだから、関係の省庁と積極的に連絡をとり合って検討しますとなぜ言えないのですか、どうですか。
  83. 堀正弘

    ○堀説明員 先生御指揺のとおり、法務省と連絡をとりまして、何か具体的な対策がないかにつきましては、検討させていただきます。
  84. 漆原良夫

    漆原分科員 先ほど民事局長の方から二つの方法の話がありましたが、私も、よくわかりませんが、権利を失効させる、まあ一番簡単な方法なんでしょうけれども、権利を一定期間行使しない場合には権利の失効手続をとらざるを得ないのではないか。これも時効という制度もあるわけでして、権利の上に眠る者は許さないという思想があるわけでして、自分の土地だと思っておるところに道路ができた、新幹線ができた、河川法によっていろいろなのができた、そういうのをわかるわけですから、もし本当の権利者がいるのであれば、名乗り出てしかるべきだと思うのです。その本当の権利者がいるかどうかわからないために、ある意味では今まで待っていた被供託者が権利の補償金をもらえないというのは、これは大変な矛盾でして、やはり権利の上に眠る者は、一定期間眠っていた者はもう権利を認めないんだという何らかの権利失効の手続をとっていただいて、あとは被供託者間で権利が確定する、そしてその者の間で裁判をして取り分を決める、こういう方法、一つあると思いますが、この辺についていかがでしょうか。これは民事局長
  85. 森脇勝

    ○森脇政府委員 冒頭申し上げましたとおり、先生指摘の案件については、恐らく持ち分の問題に集約されるので、その場合には解決の仕方があるのではないか、先ほど申し上げたような方法でできるのではないか、私はそう思っておりますが、その問題を離れまして、「または不明者」というその不明者を本当に判明させる方法がない、存否を含めて判明させる方法がないという事案についてどう対応するのかといった問題については何らかの手だてが必要なのではないか。そのときに、先ほど申し上げましたように、事の起こりの方から解決しておきませんと、これは一方で、土地収用ということで地権者が権利を奪われ、そしてその奪われる代償として補償金還付請求権が生じたにもかかわらず、それが失格してしまう、一段飛ばして失権してしまうということになると、財産権保護との関係はどうなるのかとか、いろいろ困難な問題が出てきはしないかという感じがいたします。
  86. 漆原良夫

    漆原分科員 最後に、この問題について法務省と建設省と、本件事件を離れて一般論で結構ですが、こういう不明裁決による供託手続、供託があったその還付手続について法務省と建設省と今後打ち合わせをしていくというふうに理解してよろしいかどうか、おのおの両省から御答弁願いたいと思います。
  87. 森脇勝

    ○森脇政府委員 将来の問題でございまして、解決の方向もまだ見えておりませんけれども、先生指摘のような問題が想定できるということはわかりますので、それに対する何らかの対応策を、建設省の方に、要望するのかあるいはそういった点も含めまして相談してみたいというように思っております。
  88. 堀正弘

    ○堀説明員 建設省といたしましても、法務省にお願いする立場なのかあるいは逆にお願いされる立場なのか、今後の検討次第だと思いますが、できるだけ連絡をとって、具体的な対応策を考えていきたいと思っております。
  89. 漆原良夫

    漆原分科員 以上で終わります。ありがとうございました。
  90. 久野統一郎

    ○久野主査代理 これにて漆原良夫君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  91. 上原康助

    上原分科員 私にとっては、余り法務省は縁がないといったら変ですが、おつき合いのないお役所なんですが、ぜひ下稲葉法務大臣に、おわかりになっておられるか、あるいはお耳に入っているかわかりませんが、国会の場ではそう問題にはならない、ならないというか取り上げられていない問題についてちょっとお尋ねさせていただきたいと思います。  それは、法務省矯正職員の勤務改善問題で、私は内閣委員会その他で、これまで二、三回くらい取り土けてきたことかあるし、また、沖縄刑務所の那覇市から現在の知念村への移転に伴って、いろいろ復帰後のことでしたので関係をして、刑務職員一矯正局職員のことにある程度関心がありましたので、そういう立場から、刑務所というのは御承知のようにああいう制度、法的に非常に厳格な、厳重なところにありますからなかなか情報等も入らないわけですが、法務大臣、九州管区でもいいし、矯正局職員なり刑務所等でいろいろな思わしくない事件、事故というかそういうのがこの四、五年というのか二、三年相当起きていると思うのですが、そういうことについては大臣のお耳まで入るのか入らないのか、まずそこいらから率直な御見解を聞かせてください。いや、これはまず大臣に。
  92. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 具体的な事案につきましては、私のところまで報告が上がります。その都度私の考えを口にいたしております。
  93. 上原康助

    上原分科員 報告はあるわけですね。  それで、もちろん私は、刑務職員なり刑務官あるいは矯正管区の職員等が、拘置所でもいいし刑務所でもいいし、受刑者に便宜供与をするとか、職務分限上規制されているあるいは守らなければいけないことに抵触をしてどうのこうのという立場でお尋ねするなり、私が取り上げようということでないということをまず前提に聞いていただきたいのですが、一つは、非常に閉鎖的な職場環境にあり過ぎますね、法務大臣。  明治開聞以来の監獄とか刑務所とかいうと、これはもう聞くだけでも余りいいイメージを与えない。ですから、勤務時間にしても、四十八時間制から四十四時間、今は四十時間のところもあるかどうか、よく十分は聞いていませんが、最も遅くなった。それは職場環境上しょうがないというかやむを得ない面もあったかもしれませんが、大変な閉鎖的な職場だ。だから、刑務官というのは上司に対しては戦前の軍隊以上に絶対服従なんです、今でも。  しかし、沖縄の刑務所というのは復帰前はアメ リカの支配下にあって、もちろんそれは刑務所はどこも厳しいわけなのだが、ある程度民主的というのか、職場の職員が自分たちで苦情を集めて上司に意見を言って、陳情しようではないか、請願しようではないか、要請しようではないかと。ということは、自力で、自分たちの権利意識に目覚めて努力をした足跡があったわけですよ。だからハブ会というのもつくって、これも復帰後だんだん制度が一体化されるにつれて、そういうことはおまえらできない、法律上許されていないということで職務規程、管理が厳しくなるものだから、どんどん締めつけられて、大変なフラストレーションを与えられて、結果として非常に拘束される。人権が抑圧されるというか物も言えない、意見も言えない、もうストレスだけがいっぱいだまる。周囲の人間関係もよくない。勤務時間は四十八時間ないしはそれ以上だ。二十四時間体制。ですから、私はそういう前近代的な職場環境というものは、大臣、幾ら刑務所だろうが拘置所だろうが改善すべきだと思うのです、近代的に。  そのことについてはどういう御見解、御認識をお持ちですか。
  94. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 委員御承知のとおりに、今受刑者が全国で五万人を超しております。そういうふうな人たちに対して矯正施設の職員は、私は必ずしも十分であるとは思いません。  それから、そういうふうな施設、仕事の内容からいいまして、やはり大変厳格な規律が要求されるという側面は非常にあるわけでございます。だから、そういうふうな厳格な規律の中で、やはり今委員指摘のとおりに、規律は保持しながらも、職場が、意思が、心が通う、そういうふうな雰囲気でなければならぬと、かねがね私はそういうふうに思っております。したがいまして、機会があるたびに私もそういうふうな職員の方々と接して意見を伺ったりいろいろやっているわけでございまして、正直申し上げまして大変苦労しているわけです。努力もいたしております。  沖縄の特殊性ということも先生はおっしゃいます。私もよくわかります。それと同時に、やはりもっと私は、もとをただしますと、今そういうふうな矯正施設の根本になっている法律が監獄法なのです。明治の時代なのです。  これを何とか改正をしたいということで、大分昔、まだ私が古く警察の幹部をやっておるときからもその問題等々法務省の方と議論したことがございましたが、法制審の答申もいただいておりますけれども、まだ実現できていない。あの当時できれば、私は、刑事施設法のもう改正をやろうということで、二回も三回も改正をやっているのではないだろうか。明治の時代の漢字と片仮名のああいうふうなことが基本になっている、この辺にも一つの原因を私は考えるわけでございます。  そういうふうな意味で、施設そのものも非常に老朽化しているところもございますし、それからそこで勤務している今、人間関係の問題、これも委員おっしゃるような問題もあろうかと思いますし、非常に秩序維持の根幹にもかかわる問題でございますので、いろいろな面で配慮しながらやってまいりたい、このように思っております。     〔久野主査代理退席、主査着席〕
  95. 上原康助

    上原分科員 私は法律には全く疎い者ですが、さっき申し上げたように監獄法、明治開聞以来変わっていない。法律家にもいろいろおって、弁護士法の問題にしても資格の問題にしても、緩和しようとすると反対するし、なかなか容易ではないかもしれませんが、私は少なくとも近代国家として、また民主主義国家に変わったわけですから、そういう面はもっと積極的に法務省としても御検討すべき時期だと思います。今法務大臣のそういう御見解というか御認識がありましたので、御努力を願いたいと思います。  そこで、時間も限られておりますので、これはいろいろ調べるというか、時々私は刑務員の問題とかこういうことを取り上げるものですから、無名のというか匿名の手紙とか、あるいはこういう雑誌がありますよ、ああいうことが書かれていますというのが入ったりするのです。  そういうことから参考にして申し上げますと、例えば昨年の四月ごろですか、熊本刑務所の副看守長が、いろいろ、上司との関係で非常に自尊心が傷つけられた。余りにも服務規程というか仕事上の命令がきつい。表現は悪いかもしれませんが、上司のやり方が全く人間扱いしない、そういうことに腹が立ったということで、ちょっと職務分限という規律に触れるようなことで、大変問題になっている事件なども起きているわけですよ。なぜ私がこれを取り上げるかというと、要するに、管区内、域外への配置転換の問題からそもそも非常にトラブルが起きている。沖縄刑務所から長崎に行かすとか、あるいは熊本に行かすとか、福岡に行かすとか。これは公務員だからやむを得ない、皆さんは公務員法に基づいてやっているといえばそれまでのことかもしらぬが、事前に本人の意向も全く聞かない。これは逆もあるのですよ。お名前は申し上げませんが、今言う熊本刑務所から沖縄に、三十三年も勤めて行った方なんか、沖縄に行って、余りにも職場環境が変わって、二週間後には脳梗塞で倒れて廃人同様になっている。これは一、二の例なんです。  この二、三年来、熊本、長崎、福岡あるいは広島、そういうところで、福岡拘置所を含めていろいろな問題が起きているわけですよ。それはどういう事件があるのか、事故があったのか。まず、特徴的なものでいいから、どなたか述べてください。
  96. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 転勤をめぐって事故ということでございましたら、今先生指摘になりました熊本刑務所から沖縄刑務所に転勤された方が、今先生おっしゃったようなことで脳虚血ということで若干病気になりまして、現在は熊本に帰って療養しているというケースはございます。
  97. 上原康助

    上原分科員 例えば、刑務官が自殺をしたとかあるいは上司とのトラブルで懲戒処分になったとか、あるいは上司だって、管理職だって懲戒になったとかいろいろ事件を起こしている人がいるでしょう。そういうことはどういうものがあるかを説明しなさいということです。
  98. 坂井一郎

    ○坂井政府委員 突然のお尋ねでございますので、今具体的に、もちろん先生おっしゃるとおりいろいろな所内的な事故もございますけれども、今、こういう事故があったということで具体的に言えと言われますと、ちょっとただいま資料を持っておりませんけれども、そういういろいろなトラブルがあって、職員同士のトラブルがあって処分されたという事例があることは十分承知しております。
  99. 上原康助

    上原分科員 大臣、そういうごまかしと言ったら失礼ですが、そういうことが多いのですよ。  私が、今は与党の一角にこれでもおっても、なかなか説明を十分やってくれない。野党時代は本当に木で鼻をくくったぐらいの、いろいろ資料を集めてやってようやく事実が、もう逃げられないというか、これはわかられてしまったなということになるとそれらしきことを言って。そういう閉鎖的な、だから今公務員の、官僚というのは私は余り書いたくないが、上級公務員の不祥事というのがあるのだよ。まずは襟を正しなさいよ、あなた方自体も。  この間も、私が、平成五年以降における福岡管区内の職員の懲戒処分状況の資料を持ってこいと言ったら、戒告が、平成五年六人とか六年が三人、平成七年が十二人、平成八年が五人、九年が七人、三十三名、減給が十八名とか停職が八名とか免職が三名とか、合計六十二人いるのですよ。こういう内訳について、管理職もいるだろうと言うと、それはなかなか個人のあれに関することだからと言って、とうとうこのときも持ってこなかったですよ。こういう状態なんです。  だから、いかに、管理職から含めて閉鎖的で非民主的なんだよ。そういう状況は改めるべし。そのことを大臣に強く要望しておきたいと思います。  そこで、あともう一点取り上げたいこともありますので、この件の結びというか、要望というよりぜひ改善していただきたいことは、私は、私が 皆さんに意見を言うことはできてもやる権限は皆さんしかありませんから、その限界は心得ているつもりでございます。要するに、公務員の配置転換にしても、勤務先をかえるということは、単身赴任の場合、もちろん妻帯者も単身赴任はあるわけですが、大臣、独身者の場合だって大変なのです。ましてや、家族を持っている人にとっては、教育の問題もあるし、夫婦の関係もあるし、家族の問題もあるし、容易ではないわけです。  沖縄県からの場合だと、特に福岡とか長崎とか熊本とか、要するに飛ばされる。しかも、本人の意向は事前にも事後にも全く聞かない。もう、あなたはこういうふうに転勤になるからと通告するだけ。今、こんな無謀なことがありますか。しかも、何年行きなさいとも言わない。大体はローテーションとして、いろいろな人事交流はあるわけですが、二年が大体の原則でしょう。長くて三年。行けば定年になるまであなたは向こうで働くかもしらないとむしろおどしをつける、重しをつける。  その背景には、今さっき言うように、職場において何か意見を言うとか、上司にいい提言をしても、こいつはよく物を言うからけしからぬ、これがおると職場規律が乱れるから飛ばせ、こういう背景がないでもないのです、今までの例を見ますと。私は、そういうことは改めてもらいたい。  そのことは、ぜひ、事前に本人の意向を聞くとか、家族の状況がどういう環境にあるのか、子供の教育、この家庭がどうなっているのか、あるいは健康状態がどうなのか、その人の性格はどうなのか、新しい職場に行っても十分精神的にも環境にも耐え得るような体力があるのかどうか、そういうようなことも勘案してやるというのが本当の人間性を加味した人事のあり方ではないでしょうか、大臣。  それはぜひ、いろいろお調べになっていただいて、善処してもらいたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  100. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 先ほど来申し上げておりますように、それはやはり、職場関係かぎしぎししているのでは実効が上がりません。今委員指摘の点を十分踏まえまして、善処するようにいたします。
  101. 上原康助

    上原分科員 ぜひその点は、私もそんなに無理なことを前から言ってきたつもりはないのです。取り上げたことについて誠意を持って改善していただいたこともかなりあります。だから、今私が指摘したようなことも、そうできないことではないと思う。  相手の立場というものもよくそんたくをして、とにかく刑務所とか拘置所とか監獄というような古いイメージでなくして、もう少し何か風通しのいいような職場環境をつくって、余りにも上下関係というものが厳し過ぎる。  そして、私に言わせれば、どういうわけか中間管理職というのが大変何か威張りたがる。私は、そういうのは余り好きではないです。余り好きでないというか、本当に嫌いだ。やはり働く人の立場を一番、一般の職員の、平の職員の気持ちというものを体してやるのが立派な管理職です。いつの間にかそういう雰囲気になっている、矯正局というのは。これは法務省全体かもしれませんがね。よくわかりません。そういう面でぜひ改めていただきたいと思います。  次に、沖縄への外国人の入国状況、全体的なことについては、後で資料をいただいても結構ですので。平成九年でたしか十四万二千人余になっているやに聞いております。これは、米軍基地もありますし、いろいろな国際性がありますから、どちらかというとほかの都道府県よりは国別の入国者もあるいは多いかもしれません、もちろん大都市と比較すると別でしょうが。  そこで、きょうは一点だけ、台湾からの入国者の方々の問題ですが、沖縄観光の面から考えて大変これはプラスになっている面が多いんですね、来県、来日というのは。そういう面で、沖縄振興という観点から考えても、もちろん、どこの国にも法律を犯したりあるいは悪いことする人はいるわけですから、これは中国、台湾であっても、そのことはまた法に基づいてそれなりの手続をとればいいわけですが、出入国手続の簡素合理化ということを、特別扱いしなさいとはこういうところで申し上げられませんし、また、政府もそういうことは言えるお立場にはないと思うんですが、やはりビザ問題、あるいは観光振興、特に距離的にも歴史的にも大変親近感がある、また交流も広くて深いということからすると、むう少し工夫をしてもいかがかと思うんですが、この点について、現状と、これは入管局かな、法務省としてのお考えを聞かせていただきたいと存じます。
  102. 竹中繁雄

    ○竹中政府委員 まず現状でございますけれども、現行の入管法では、日本政府の承認した外国政府以外の地域の機関が発行した文書は、現在旅券として認めておりません。したがいまして、これらの地域からの来日者については、出入国管理事務が複雑になっておりますし、一方、先生がおっしゃいましたように、最近この地域からの来日者が、特に沖縄についてふえてきておる状況でございます。したがいまして、私どもといたしましては、早急に出入国関係手続の簡素合理化を図りたい、このように考えております。
  103. 上原康助

    上原分科員 一時期私も予算委員会で、ほかの問題、沖縄振興策のことを取り上げて、あるいは今問題というか話題になっているフリーゾーン、あるいはフリー・トレード・ゾーン、フリーポート等との関連で、一国二制度的というような、大変前向きにいろいろ沖振法の改正もなされたわけですが、その中でビザなし渡航とかいろいろなことを言われたんです。外務省も非常に一時期前向きにやったんだが、これはもちろん法務省とも関係するわけなんだが、ちょっと立ち消えというか、非常に足踏みしたような印象を受けているわけです。そのビザなし問題はどうなっているんですか。ビザなし滞在というのか渡航というのか。
  104. 竹中繁雄

    ○竹中政府委員 ビザなし渡航と申しますのは、私どもの言葉で申しますと、寄港地上陸という制度でございますが、それは、どこか第三国に行きます場合に、その途中に日本のどこかに寄る。そういう場合は、本来、日本に入国する場合には当然のことながらビザが必要なわけですけれども、そういうことで、外国に行く途中に日本に寄る場合には、七十二時間の範囲で入国審査官がその入国を認める、こういう制度でございます。
  105. 上原康助

    上原分科員 ですから、それは前広に、沖縄に関しては、沖縄だけでなくても結構ですが、やる方向で今検討されているわけですね。  大臣、もう時間が来ましたから、あと一、二分ありますが、結びとして、今沖縄は、御承知のように、基地問題、振興策、こういう問題がたくさんあるんです。ですから、法務省とのかかわりのことについても、ぜひよく各関係局に御指示をいただいて、国務大臣というお立場でも特段のお力を賜りたいと思いますが、まとめてひとつあなたの沖縄に対する思いを述べていただいて、終わりましょう。
  106. 下稲葉耕吉

    下稲葉国務大臣 ささやかな努力でございましたけれども、琉球の琉という字が人名に使えないというふうなこと等がございまして、お話を承りまして、照屋寛徳先生から御要望もございまして、手続をとりましてその問題は終わりました。  今の出入国の問題等につきましても、これはかねがね懸案になっておる問題でもございますので、国会の皆様方の御同意を速やかに得られるような形で、できれば今国会中に解決させていただきたいというふうなことで、手続を進めているところでございます。  沖縄の問題につきましては、もう今さら申し上げるまでもなく、大変戦後苦労なさっているということは私どもよくわかっているわけでございまして、それぞれの、法務省法務省の立場で、ひとつどのような問題があるのか、どういうふうに解決していけばいいのか、努力してまいりたい、このように思います。
  107. 上原康助

    上原分科員 ありがとうございました。終わります。
  108. 伊藤公介

    伊藤主査 これにて上原康助君の質疑は終了い たしました。  以上をもちまして法務省所管についての質疑は終了いたしました。  これにて本分科会の審査はすべて終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  分科員各位の格段の御協力を賜りまして、本分科会の議事を無事終了することができました。ここに厚くお礼を申し上げます。  これにて散会いたします。     午前十一時二十七分散会