○野村
政府委員 ダイオキシン問題につきましては、先生御指摘いただきましたように、かつては、ベトナム戦争時に使われました枯れ葉剤の中に副産物として入っておりましたものが奇形等を生んだのではないか、あるいはベトナム戦争に従事をいたしました米軍兵士あるいはその子供に
影響が出たのではないか、また、イタリアにおきまして化学工場の事故がございましたが、これによる
影響があったのではないかといういろいろな指摘がなされていたわけでございます。
私ども、日本の
研究者だけではございませんで、国際的にもいろいろダイオキシンの
研究が進められているわけでございますが、動物実験におきましては、いろいろダイオキシンの
影響につきまして、発がん性、生殖毒性等、今話題になっております
環境ホルモンの作用もダイオキシンには一部あるわけでございますが、そういう
影響等がございます。
ただ、人体
影響につきましては、ベトナム戦争の事後の話としては、なかなかデータが集まらなかったということもございまして、科学的に実証されたというところまでいっていないわけでございますが、アメリカの先ほど申し上げました兵役従事した兵士なり子供等からのいろいろなデータについては、例えば、兵士に皮膚症状があらわれた、あるいは子供さんに奇形があらわれたというその
影響との関係を示唆するデータも出ているわけでございます。
私ども、基本的な姿勢といたしましては、必ずしも人体
影響について確かな証拠がなくても、問題の
未然防止という観点から対応しなければならないということで、ある意味からいいますと、先進諸国の
取り組みからいいますとおくれたわけでございますけれども、近来いろいろ国内でも、先ほど御指摘になりましたように焼却炉周辺の住民から提起された問題等もございまして、昨年になりまして、まずはダイオキシンのリスクの評価をきちんとしなければならないということで、私ども
環境庁としては、一日摂取量、これは体重一キログラム当たりということでございますけれども、五ピコグラムというのを、かなり安全性に考慮を払った数値でございますが、そういうものを設定し、また焼却炉につきましては、大気中に排出されるダイオキシンの九割方を占めるということでございましたので、まずはここから手をつけなければならないということで、
大気汚染防止法におきましても焼却炉の、新設、既設の別はございますけれども、段階的な規制的措置を講じたところでございます。
いずれにいたしましても、今後、発生源
調査といたしましても、これまで焼却炉を中心にやってまいりましたけれども、それ以外の
可能性もあるということで調べなければならぬということもございますし、それから、
環境中のモニタリング
調査ということで、これにつきましては昭和六十年代の初めから、例えば大気だとかあるいは河川等の底土等についてもモニタリング
調査をいたしてまいりましたが、今後、水だとか土壌も含めまして、モニタリングの内容につきましても拡充をしていきたいと思っております。
また、人間に対する
影響ということにつきましても、これも厚生省とも連携をして行っておりますけれども、例えば
環境庁におきましては、亡くなった方の臓器中にどのくらいダイオキシンが残っているかということを分析することによってダイオキシンの
影響を見よう。また、大気中のダイオキシンの濃度とそれから生殖毒性、先ほどもおっしゃいましたけれども、例えば人口動態というようなことで、全国的な規模で奇形のデータ等がございますけれども、そういうものとの関係が、大気中の濃度の濃いところと薄いところとの間で差があるかないかといったことまで含めまして
調査をいたしてまいりたい、そのように考えておるところでございます。