運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-03-11 第142回国会 衆議院 予算委員会公聴会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十一日(水曜日)     午前十時開議  出席委員    委員長 越智 通雄君    理事 伊藤 公介君 理事 石川 要三君    理事 中山 利生君 理事 深谷 隆司君    理事 山本 有二君 理事 五島 正規君    理事 高木 義明君 理事 北側 一雄君    理事 加藤 六月君       相沢 英之君    甘利  明君       遠藤 利明君    小澤  潔君       小野寺五典君    大野 松茂君       栗原 博久君    阪上 善秀君       桜井  新君    関谷 勝嗣君       滝   実君    津島 雄二君       葉梨 信行君    萩野 浩基君       桧田  仁君    増田 敏男君       村田 吉隆君    村山 達雄君       綿貫 民輔君    岩國 哲人君       生方 幸夫君    岡田 克也君       海江田万里君    小林  守君       原口 一博君    松沢 成文君       山花 貞夫君    草川 昭三君       斉藤 鉄夫君    西川 知雄君       鈴木 淑夫君    中井  洽君       西川太一郎君    西村 眞悟君       木島日出夫君    中路 雅弘君       春名 直章君    矢島 恒夫君       上原 康助君    北沢 清功君  出席公述人         株式会社東海総         合研究所代表取         締役社長    水谷 研治君         東洋大学経済学         部教授・同経済         研究所長    中北  徹君         立教大学社会学         部産業関係学科         教授      斎藤精一郎君         大阪大学経済学         部教授     本間 正明君         富士総合研究所         理事研究主幹 高木  勝君         全国商工会連合         会会長     近藤英一郎君  出席政府委員         総務政務次官  熊代 昭彦君         北海道開発政務         次官      吉川 貴盛君         経済企画政務次         官       栗本慎一郎君         環境政務次官  山本 公一君         沖縄開発政務次         官       嘉数 知賢君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君         農林水産政務次         官       岸本 光造君         運輸政務次官  江口 一雄君         郵政政務次官  中谷  元君         労働政務次官  柳本 卓治君         建設政務次官  蓮実  進君  委員外出席者         予算委員会専門         員       大西  勉君     ————————————— 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   遠藤 利明君     大野 松茂君   大原 一三君     滝   実君   栗原 博久君     阪上 善秀君   西村 眞悟君     西川太一郎君   志位 和夫君     春名 直章君   不破 哲三君     矢島 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   大野 松茂君     小野寺五典君   阪上 善秀君     栗原 博久君   滝   実君     桧田  仁君   西川太一郎君     西村 眞悟君   春名 直章君     志位 和夫君   矢島 恒夫君     中路 雅弘君 同日  辞任         補欠選任   小野寺五典君     遠藤 利明君   桧田  仁君     大原 一三君   中路 雅弘君     不破 哲三君     ————————————— 本日の公聴会意見を聞いた案件  平成十年度一般会計予算  平成十年度特別会計予算  平成十年度政府関係機関予算      ————◇—————
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成十年度一般会計予算平成十年度特別会計予算平成十年度政府関係機関予算、以上三案について公聴会を開きます。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず水谷公述人、次に中北公述人、続いて斎藤公述人順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。  それでは、水谷公述人にお願いいたします。
  3. 水谷研治

    水谷公述人 このように意見を言わせていただきます機会をいただきまして、大変ありがとうございます。私は、東海総合研究所社長水谷研治でございます。  予算はそもそも収支相償わなければならないものだと私は考えております。その意味におきまして、赤字予算というものが是認できるかどうか、大変な問題であると私は思っております。それじゃ本予算について反対なのかと申し上げますと、今この予算反対してもし成立しなかったらどういうことになるかという現実問題を考えますと、なかなかそうもいかないということなんであります。といたしますれば、私は、特に条件をつける、赤字を早急に是正するという条件づきで通過させるべきではないかというぐあいに思っております。  私がこのように赤字というものについて特に重要だと思う点につきましては、予算赤字そのもの大変魅力がございまして、ともすれば赤字予算わなにかかりやすい。そして、一たんこのわなにかかりますとなかなか逃げられない、こういうことがあろうかと思うからであります。  赤字予算と申しますと、収入よりも支出が大きいわけであります。収入が少ないということは、国の収入もと国民税金であります。国民にとりまして、税金は少ない方が望ましいのであります。収入が少なければ少ないだけ、国民の人気は高まります。  一方、支出は、どんな支出にしろ国民の懐へ入ってまいります。例えば社会保障費、これが支払われるということは、それだけ国民生活が楽になる、豊かになるのであります。喜ぶべきことであります。公共投資公共投資を行いますと、関係者のところへお金が回ります。と同時に、それだけではなくて、そのお金が回り回って皆さん方プラスになるのであります。例えば、道路ができて怒る人はいませんし、橋もかけていただきたい、こういう要望に沿うことができるのであります。  しかも、こういった赤字によりまして景気がよくなります。減税によりまして、皆さん方が懐が暖かくなる。暖かくなればお使いになるのであります。お使いになれば物が売れるのであります。物が売れれば景気がよくなるということでありますし、どんな支出にしろ、政府支出をすればそれだけだれかの懐に入ってプラスになります。景気に対してプラスになるのであります。あるいは、公共事業をやりますと、それに伴っていろいろな仕事が出てまいります。もちろん、これが景気プラスになるわけであります。したがって、赤字は大きければ大きいほど、目先的には好ましいのであります。  一般的に、いいことがありますと、その反面悪いことがあるはずなんであります。  では、赤字予算の場合どういう悪い点があるかと申しますと、原則としてインフレという懸念が出てまいります。では、現実インフレになっているかと申しますと、なっておりません。その気配すらないのであります。といたしますと、いいことだけありまして悪いことが少なければ、どうしても赤字予算の方がいいということになりがちであります。  なぜインフレにならないかと申しますと、これは我が国経済特殊性だと私は思っております。物が満ちあふれているからであります。物があり余っておりますので、赤字予算を組んで余分に買いましても物が不足しないからであります。もちろん、皆さんが買えばそれだけ物がなくなります。なくなったらつくればいいのであります。つくる力が大変旺盛なのであります。幾らでもつくれるのであります。しかし、つくれるだけつくるわけにはまいりません。そんなにつくったら、売れ残って置く場所にも困るからであります。  では、現実にどこまでつくっているかといいますと、売れる分しかつくっておりません。したがって、売る力がたくさんございますので、もっと買っていただければもっとつくれる、まだまだつくれる。したがって、たくさん買っていただければ買っていただくほどつくることができて、人を雇うこともできて、企業ももうかるし、国民も潤うわけであります。  そこで、皆さんに買っていただくのにどうするかといいますと、国民皆さん方、買ってくださいだけではなくて、政府みずからが買う。これがいろいろな公共投資を初めとする支出であります。もちろん、国民皆さんが買っていただくのがいいのでありまして、国民皆様方が懐が寂しければ懐を暖かくしてやる。そのための減税というものがきく。すなわち、減税をすればするほど、あるいは支出をふやせばふやすほど景気がよくなるということであります。  なぜ、そうなってもインフレにならないか。大きな供給過剰があると申しました。これは我が国特殊性でありまして、ほかの国とは随分違う面であります。  ところで、この赤字によりまして我々は何を願うかと申しますと、景気の持続的な拡大を願っているはずであります。減税をやることによりまして、国民が買う。買えば売れる。売れればつくらなければならない。つくるために人を雇う。雇った人に給料を払う。払われた給料人々消費財を買う。消費財をつくらなければならない。つくるために人を雇う。そして、雇われた人々に賃金が払われる。人々はそれをもとにして買う。つくらなければならない。人を雇うだけでなくて、機械も買う必要がある。機械が売れる。機械をつくるために人を雇う。その機械を設置するための工場も要る。工場をつくるための建築も出てくるということで、持続的な経済拡大につながることを願って財政政策を利用するのであります。  現実にそのような動きになっているかと申しますと、なっておりません。  確かに、赤字財政によって景気を引き上げることができます。しかし、それが呼び水となって景気の上昇に弾みをつけることにはなっておりません。それは先ほど申し上げました、余りにも物余りが激しいからであります。これだけ物が余っておりますと、余分に買っていただけるから、余分に売れるからといってすぐに人を雇うということはございません。  どの企業でも、ほとんどの企業では人手が余っております。新たに人を雇う必要はないのであります。多くの企業では機械が余っているのであります。余分につくるのは簡単です。新たに機械を買う必要はございません。したがって、機械の注文に結びつかないのであります。工場建設も同じであります。これだけ過剰生産圧力がある場合には、財政政策そのもの弾みをつけることにならない。一時的に景気をよくすることはできます。しかし、それでおしまいなのであります。  その政策をやめたらどうなるかと申しますと、もとへ戻ります。一たん上昇した経済水準は低下すると私は考えております。  それでいいのかと申しますと、多くの国民は不満になるのであります。したがって、一たん増加させた財政赤字を維持せざるを得ない。そうしますと、維持することによって景気は横ばいになるだけでありまして、引き上げることにならないのであります。本当に引き上げようと思いますと、さらに赤字をふやしていかなければならない、こういったことになってまいります。  現実はそこまでできませんので、どうなっているかと申しますと、一たん引き上げた赤字をそのままにします。すなわち、赤字の分だけ資金が不足いたします。不足する資金は借りなければなりません。主として国債でございます。そこで、赤字の分だけ毎年国債がふえてまいります。そして、現在どのような国債残高になっているかは、御承知のとおり莫大であります。  国債残高がふえますと、大変困ることが出てまいります。それは金利支払いがふえるということであります。現在の金利支払いが莫大な金額となっておりまして、予算の中に占める比重も大きゅうございます。もはや金利をまともに支払うことは難しくなっております。そこで、金利を支払うためにもまた資金を借りなければならないという事態に追い込まれております。その意味では、国の借金は引き続き増加するでありましょう。そして、それに伴って金利がふえるはずであります。  現在の金利負担が大変大きいと申し上げました。これだけの金利負担と申しますけれども、御承知のように、現在は極めて低い低金利時代なのであります。低い金利ですらこれだけの負担でありまして、将来的にもし金利水準が上がった場合の負担ということを考えますと、大変であります。この金利負担永遠国民が担いでいかなければなりません。そのもとになります借金がある限り続くわけであります。  現在、我々は国の借金を減らしておりません。毎年積み上げております。増加の一途をたどっております。そして、これからも、このままでいきますと増加してしまうということを考えますと、今後の国民負担は大変なものであります。  このような状況になりましても、赤字そのものが目先的に大きなマイナスになっていないという現実がございます。それは、我が国において大きな供給過剰があるからだと申し上げました。もしこれが永遠に続くならば、この赤字財政一つの方法かもしれません。しかし、私は、将来的にこういう物余りがいつまで続くかということにつきまして、懸念を持っております。  我が国におきまして、これほどまで物余りが出てまいりましたのは、せいぜいこの三十年間であります。四十年前、五十年前を振り返ってみますと、物は足らなかったのであります。百年前もそうです。恐らく千年前もそうでしょう。例外的な物余りが生じたにすぎない、こういうぐあいに考えております。  一体いつまでこれが続くか、いろいろなお考えがおありでございましょうが、私は、海外への生産拠点の移転など、国内産業空洞化の問題がそのあらわれの一つだと思っておるのであります。生産能力は下がっていくだろうと考えております。それは、私どもの先輩の国の例からも言えるのではないかと思っております。  アメリカは、しばらく前まで物余りの代表的な国だったのであります。莫大な物余りの中で、永遠物余りが続くかと私は思っておりました。そのアメリカが急速に変わっていったのであります。そして、物が不足し、海外から物を輸入しなければやっていけないというところへいきました。そのアメリカは、かなり復活したのであります。しかし、今でもなおかつ膨大な貿易の赤字を抱えております。恐らく、アメリカの前にはイギリスという国があって、同じような経過をたどったのでありましょう。  アメリカ転換は早かったと思います。しかし、我が国転換はそれよりもさらに早いのではないでしょうか。我が国には諸外国とは違った要因がつけ加わります。少子化であります。高齢化も加わります。その結果といたしまして、現在のような物余りは一体いつまで続くかという懸念になるわけであります。その段階で、すなわち物余りがなくなった段階インフレ要因が頭をもたげます。そして、財政赤字が大きな負担になってくるのであります。その段階財政赤字圧縮する方がいいのであります。  では、どのように圧縮するかと申しますと、これは支出を下げるということと、収入を上げるということしかないのであります。  支出圧縮は、例えば社会保障費削減、これは国民生活に直接影響を及ぼします。マイナスになるわけであります。公共投資削減、それは大いに必要でありましょう。しかし、莫大となりました公共施設維持管理のための費用まで削るとなりますと、公共施設使い勝手が悪くなるのであります。そこまでいかなければならない。しかも、それだけやってもなおかつ不足する分は、相当な増税が待っているのであります。  増税負担するのは国民であります。その段階におきまして、少子化が響いてまいります。実態として、働ける人の数が減りまして、その人たち負担が相当重くなるということは明らかなことなのであります。それを目の前にして、私ども財政赤字を続けていいものだろうかということを懸念するわけであります。  当然赤字圧縮すべきです。財政改革をやるべきであります。これは支出圧縮収入増加以外にありません。支出を徹底的に圧縮する、その上収入をふやす。これは増税であります。その結果赤字をなくす、これが第一段階です。黒字にして、我々がつくった借金を返す必要があると私は思っております。  黒字にするために相当の支出をカットし、さらに大きく税金を上げまして黒字になったつもりになりましても、現実にはなかなかそうはまいりません。景気が悪くなるからです。財政改革をやれば、景気マイナスになるのであります。支出圧縮にしろ増税にしろ、景気は悪くなります。悪くなるからやめるのか、いや、悪くなるのは覚悟の上で財政改革するのか、これは重大な問題であります。私は、当然に景気は悪くなると考えております。  それは、言い方を変えますと、今現在の日本景気は随分大きな力で押し上げられているということの裏返しでもございます。本来、予算は均衡していなければいけないのであります。大きな赤字の分だけ、我々は日本経済を押し上げております。本来使わなければならない支出については、国民負担しなければならないのであります。負担すべき資金負担していないから、現在の日本国民は、我々の生活は実に豊かであると考えられるのであります。  それだけに、我々は物を余分に買い、余分に売れ、そして景気が押し上げられている。これは、今まで二十年以上続いておりますけれども、一体これからも続けられるのであろうか、続けた方がいいのだろうか、こういう疑問であります。  もはや時代は変わっております。先を見なければなりません。すなわち、少子化に対応しなければなりません。といたしますと、私どものつくった借金は我々が返していく、当たり前の話であります。そのために大増税をし、あるいは支出をカットしますと、それに伴いまして企業は倒産し、失業がふえ、失業者所得税を払えませんので、所得税は減ります。法人税も減ります。税収は減るのであります。したがって、その分も見込んで増税あるいは支出のカットをやらないと、財政改革はできないのであります。  財政改革には相当な決意が要ります。しかし、それは必要であると私は思います。国民に対して説得しなければならない。今のままやっていきますと私どもの子供や孫にどれくらいの負担になるかということを考えますと、我々が経済水準を下げてこの問題を解決する、当然の話ではないかというところから、赤字につきましては早急に解消すべきである、私はこのように考えるわけであります。  ありがとうございました。(拍手)
  4. 越智通雄

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、中北公述人にお願いいたします。
  5. 中北徹

    中北公述人 東洋大学中北でございます。よろしくお願いいたします。  最初に結論を申し上げたいと思っております。  きょう申し上げたいことは、市場時代、ボーダーレスの時代、このような選別時代において、私は、政府が大変古い発想に立って、わざわざ市場規律に反することを行っているという印象を禁じ得ません。構造改革行政改革をちゅうちょしている。これでは、経済がますます悪化するのは不思議ではないと私は思っております。そこで、三点に絞ってお話しさせていただきます。  最初に、財政のお話でございます。  きょうこちらで審議が行われます本予算が承認されますと、十兆円の補正予算がすぐ議論が開始されると私は聞いております。しかし、単に目先の景気浮揚のことばかりを考えるのではなく、経済構造を積極的に、根本的に転換させる政策こそ必要である、財政はそのために強く結びつけた設計、運営が必要であるというふうに私は思っております。  累次の財政投入、あのバブルの崩壊以降、もう六年、七年、八年近くが経過しておりますが、財政支出拡大が思ったほどの景気浮揚効果をもたらしていないと私は認識しております。つまり、短期的にも、かつてほどの景気浮揚効果をもたらしていない。ここへ来てさらに財政出動歳出増加というのは、結局は財政赤字を残すのみではないかということを私は危惧しております。  他方におきまして、そのような財政出動、もし公共事業の支援に代表されるような旧来型の歳出であれば、私は日本経済の将来を大変憂うものであります。やはり財政中身歳出中身、根本的にメスを入れて、中身を入れかえていただくことがどうしても必要であるというふうに考えております。  さて、このような中で、昨今関心を集めております公的資金投入の問題、とりわけ優先株等の話について言及させていただきます。  公的資金は、あくまでも預金者保護が鉄則である。優先株などは、やはりモラルハザード、つまり経営規律の弛緩をもたらすので、私は断固反対でございます。しかし実際、今回の申請結果を見てみますと、いかがでしょうか。上位十三行がそろって申請していると報道されておりましたが、その反面で、私はむしろ横並びが崩れたと観察しております。  すなわち、名前こそ挙げませんが、海外自力優先株を発行し、国の介入を唯々諾々として受け入れることに反発する意思を示した有力行が数行いるのに対し、自力市場資金調達できない銀行優先株を申請するといったように、銀行間の二極分解が鮮明になっております。  政府反対を押し切って公的資金を入れても、今や市場の力は押しとどめがたく、選別の傾向はますます拍車がかかっていくのではないかというふうに私は考えております。  このように、今政府資金をあのような形で投入することは、つまり優先株といった形で投入することは、金融機関のリストラの方向に反する。そして金融機関、とりわけ銀行は膨大な資産を抱え込んでいる。それを腐らせ、その重みで今や沈み込もうとしている。そこへどうしてわざわざ公的資金を投入せざるを得ないのか、極めて疑問であります。  これは恐らく、悪循環の構造をますます根深くし、競争力収益性をますます悪化させ、紙のように薄い収益しかもうもたらせないのではないかと、私はかなり悲観的に見ております。つまり、もうこの政策は、旧来型の構造を温存する方向で、先送りにすぎないというふうに私は考えております。  貸し渋り、クレジットクランチ、これは公的資金優先株を購入するという議論の大前提になっているわけでありますが、誤解を恐れず今申し上げますと、この貸し渋り、むしろ新しい経済へ向かって選別が起こることであり、むしろプラスの面も同時に重視しなければならないと私は思っております。頭取を呼びつけて要請云々という報道がございましたが、市場の論理に反する大変野蛮な行為ではないかと私は思っております。  むしろ、本来でありますと、新しい社会をつくり出す担い手に資金を積極的に回していくべきである。つまり、直接金融市場を育成強化し、そのためのインフラの整備に注力することこそ政府の役割ではないかと思います。これはまさに、アメリカが九〇年代初めのあのクレジットクランチ、貸し渋りにおいてたどった道であり、そして現在、隆々とアメリカの金融が繁栄している礎ではないかというふうに思うわけであります。  二点目は、産業としての金融ということを一言申し上げたいと思います。  私は、金融業はもはや社会の公器ではないと思っております。高度成長時代は、既にもう七〇年代の末に終えんしております。すなわち、大企業資金が潤沢で自己資金も豊富、つまり銀行のローンというものを必ずしも必要としない、競争力をつけた産業というのがもう確立していたわけであります。その後、二十数年経過し、現在に至っておるわけでありますが、このビッグバンを間近に控えた今、金融業、銀行も証券も保険も本質的にサービス産業として自律していくべきであり、もう護送船団のくびきから解いて自律を促していくべきだと思うわけであります。銀行業は、国家が管理するものではなく、市場で鍛え上げられるべきものであると思います。  この意味で、私は、橋本総理が提唱されたビッグバンは大変画期的であると思っております。これは、従来型の審議会、つまり金融制度調査会に代表されます積み上げ方式では、到底実現できないことであったと思います。  タイムリミットを設定し、もうすべてそこに合わせて事実関係をつくり上げていく。つまり、従来の方式であればできなくても、しかしそれはやるのだ、もうそれはひとりでに回っていくのだということで、事実の先行型で市場を形成していく、つまり、デファクトスタンダードであります。  現実に起きていることを承認し、そして、もし万が一弊害があればその都度チェックしていく、そういうシステムに大転換していく契機にぜひなってほしいというふうに私は念願しております。つまり、事前に行政が裁量権を行使しすべてをきめ細かく仕切るのではなく、事後の規制へと転換していく大きな契機であるというふうに思うわけであります。  最後に、三点目でありますが、このビッグバンを成功させるための担保、つまりインフラの整備ということの重要性について、少し具体的にお話しさせていただきたいというふうに思います。  現在、日本では、金融機関の破綻に加え、金融不祥事が相次いでおります。そして、今や財政の破綻もあらわになってきているわけでありますが、こうした中で高齢化社会が進行しております。それは、社会保障の担い手である国家の財政、国家からの手厚い保護、福祉というものがもはや期待できなくなってきたということではないか。つまり、国民一人一人が老後の生活を自分で面倒を見なければならない、もういや応なく自己責任の原則に移っていかざるを得ないということであると思います。  このような厳しい状況の中で、どうしてまたそこにビッグバンを行うのかという疑問を呈する向きもあるかと思いますが、私は、今このビッグバンを推進するからこそ、金融機関のうみが、六年、七年を経過してようやく出てきたのだというふうに認識しております。このような自己責任の増大という要請は、ビッグバンを推進することによって、信頼性のある、透明性の高い、効率的な金融システムを形成し、そして国民が金融の問題を解く形で、自分自身の生活を設計し、自分の将来を責任を持って設計していくという意味でつながっていく、ビッグバンは国民の一人一人に対してそのような意味でつながっていくのだというふうに私は思っております。  つまり、ビッグバンを成功させる条件というのは、消費者が本当にイニシアチブをとって、金融機関に対して本当に厳しい注文をつけ、精いっぱい勉強をし、そのような切磋琢磨から、本当に生き残るに値する金融機関そして金融システムを形成していくことが重要ではないかというふうに思います。  そして、もし消費者が今後自己責任というものを重視しなければならないのだとしますと、最も大事な前提条件は何か。それは情報開示の徹底、ディスクロージャーの徹底と、これを担保する検査監督体制の整備ではないかと私は思います。すなわち、自己責任を貫くためには、すべてを透明化し、市場インフラの整備が必要であります。つまり、規制緩和を推進する、それに劣らずインフラの整備を重視していくことが最も重要であるというふうに考えるわけであります。  そのような意味におきまして、仄聞するところでは、この夏に発足いたします金融監督庁、この金融監督庁の検査機能を強化するため一千人体制が今言われているようでありますが、私は、この検査官の機能の強化、量的にも質的にもうんと高い機能をつくり上げるために、政府は抜本的な措置を考えるべきであるというふうに思います。  私自身、先月アメリカとイギリスへ行ってまいりました。アメリカではSEC、OCC、そしてイギリス・ロンドンでは特にFSA、フィナンシャル・サービシズ・オーソリティー、つまり金融サービス機構であります。これは、あの三百年の歴史を持ったシティー、この器が狭くなったために、新しいシティーをテムズ川の下流のドックランドヤードに今度つくる、そこに換骨奪胎してハイテックの金融監督庁をイギリスはつくろうとしております。  金融ビッグバン、ロンドンの、イギリスのビッグバンといいますと、これは大成功という印象が極めて強いわけでありますが、それは必ずしも正確ではありません。金融監督に関する限りイギリスにおいては大変深い深い反省が行われ、今回このFSA、金融監督庁をつくることになったわけでありますが、ここにおいて注目すべきことは、金融検査に、金融機関からのフィーを取る、検査料を取ります。検査料を取って、これをベースに通常の公務員より高い給料を支払うわけであります。そして、金融検査官というのはすぐれたノウハウが必要でありますから、公務員よりいささか高い給料というものを、これをインセンティブにしてシティーからヘッドハントするわけであります。それぐらいもう各国の金融監督当局は腐心し、金融の規律の強化のためにあらゆる知恵を絞っているわけであります。  あのサッチャーさんが徹底的に行革を行ったわけでありますが、しかし、金融監督に関してはもうこれは単なる行政機関ではない。パブリックな、公的な機関として、市場の中で金融監督機関をつくるというその哲学にのっとって、今、急速な整備をロンドンでは行っております。  私は、そのような状況を目の当たりにして、日本と欧米諸国との格差の大きさに改めて驚愕いたしました。はっきり申し上げて、この国はもう金融の後進国であると言ってしまいたくなるような気持ちで帰ってまいったわけであります。  今後、プロの検査官を育てる、そのためには、研修制度、公的な資格を与える、そうすることによってすぐれた専門家集団をつくり、官と民との間の本質的意味において水平的な労働市場を早急に形成していくこと、これが日本の金融システムを世界標準に押し上げるための最も重要なポイントではないかというふうに私は考えております。  最後になりますが、お配りいたしましたこの表、「ビッグバンと金融行政改革」という概念図をごらんになっていただいて締めくくりたいというふうに思います。  私は、金融ビッグバンが行われますと業種、業態の壁が消滅いたします、消費者がリーダーシップ、決定権を持つ、もう行政ではないということを申し上げました。そうなりますと、これからは、消費者が本当に安心して金融取引をするためには、ユーザーも機関投資家も消費者も守られる、きちっと守ってもらえる法律が必要になってきます。それが金融サービス法であります。これをぜひ早急に整備していただきたい。そして、消費者の観点に立ったものをつくっていただきたいというふうに念願いたします。  そして一方で、この右側におきまして、大蔵省改革、金融と財政の分離の問題がございます。そして、先ほども申しました金融監督庁がこの夏に発足いたしますが、私は、金融監督庁の機能の中身を、今申し上げたようにうんとハイテックにしていただいて、市場重視、インザマーケットになるようにぜひ変えていただきたい、強化していただきたいというふうに強く申し上げるものであります。  そして、この金融監督庁の基本法こそ金融サービス法であり、その上に立って、市場重視の、そして消費者重視の金融行政をやっていただけるよう念願するものであります。  これは、あたかも公正取引委員会があり、その基本法として独禁法があるのと全く同じであります。私は、基本的には、独立性を持った行政委員会、つまり三条委員会であることが将来的に望ましいというふうに思っております。  以上、私の卑見を申し述べました。ありがとうございました。(拍手)
  6. 越智通雄

    越智委員長 ありがとうございました。  次に、斎藤公述人にお願いいたします。
  7. 斎藤精一郎

    斎藤公述人 立教大学の斎藤でございます。  お時間を少しおかりしまして、現在の日本経済状況と、それに対する財政金融がいかにあったらいいか、僣越ですが私の考えていることを一言申し上げたいと存じます。  景気が悪くなったのは、御承知のとおり、一九九一年、平成三年の桜が咲くころ悪くなった。この間ずっと、ちょっと上がったり、だらだらしながら、もう七年を経過しております。  お配りした図表一、GDP成長率にありますように、こういう形で九一年から落ちてきまして、九五、九六、三%前後の、よく一般に言われる正常軌道に戻ったかに見えましたが、御承知のとおり、九七年、これは政府の見通しですと、今年度、この三月に終わる年度、〇・一。恐らくマイナスの〇・五前後になるのではないかと思いますが、こういう形になる。  九一年から九七年までを見ますと、平均しますと、年率にすると一・五%です。先進国としては非常に低い成長率でここずっと来ていたわけであります。長い、一種のだらだら景気といいますか、半煮え景気といいますか、こういう状況に突っ込んできた。  御承知のとおり、時々景気回復宣言も出ておりますし、景気も時々こういうふうによくなったりしますし、あるいは一般に、経済企画庁あるいは一般のエコノミストの景気経済を見る目というのは、一—三、四—六、七—九という四半期統計で見ていますから、四半期統計で見ると時々でこぼこがあります。これは、子供ではないのですけれども、悪いものはなるたけみんな見たくありませんから、人間の心理あるいは政府としては当然です。下がると目をふさいでしまうのですけれども、上がるとこれで大丈夫だという形です。  そして、これからお話ししますが、政府、日銀は、この間何もやらなかったのではなくて、むしろやり過ぎることをやっていました。  御存じのとおり日本銀行は、九一年七月の、公定歩合六%から九五年の九月〇・五と、恐ろしい勢いで下げてきている。現在〇・五、異常な超低金利、世界的にも類のない超低金利ということですから、日本銀行が何もやらなかったというのはとんでもないことで、当初ちょっともたもたした節はありますが、途中からはもう一気呵成に緩和政策に転じたということですから、よくやったと思います。  それでは、大蔵省が財政再建、再建ということでしぶちんで来たかといいますと、これも御案内のように九二年八月の、大蔵大臣は羽田さんでしたが、羽田さんの総合経済対策、あれは十兆七千億の事業費ベースですが、それを皮切りに毎年追加財政出動、九五年九月の例の十四兆の追加財政措置までで追加だけで総額六十五兆円強、これもまた前代未聞、ケインズが生きていたらびっくりするぐらいの大ケインズ政策をやってきました。  そういう面で、財政金融を大蔵省、日銀はやらなかったではないかという批判が時々あるように、日本でもケインジアンが多いですから言いますが、そうではなくて、やり過ぎるぐらいやったと思います。  しかし、問題は、そんなにやっているのに、景気が時々はよくなりますが、全体として見ると、先ほど言ったように一・五%という低速成長にへばりついちゃった。つまり、行ったり来たり。景気がよくなって青空が広がったなと思うと、途中でまた雲が出てくる。それで雨が降ってくる、小雨が。それで時々どしゃ降りになります。  時々起こる、株式市場一万四千円台に、これまでも三回金融危機が訪れています。みんな冷やっとします、これは大変なことになったのじゃないかと。慌てていろいろ政策が出ますと、またもとに戻ります。そうするとまた曇りになり、そして晴れ間が広がってくる。これで大丈夫かなと思って景気回復宣言などが出ますと、またしばらくすると曇ってくる。そしてまた雨が降り、大雨になって、えっと思うとまたよくなってくる。こういう行ったり来たりで、この七年間、一種の半殺しというか生煮えというか、適切な言葉がございませんが、そういう状態。  どうしてなのか、これだけ一生懸命大蔵省、日銀がやっているのに、なぜなのか、こういう疑問をほとんど今まで持たれてこなかった点がまた実は不思議なわけですけれども。これは、基本的に、九〇年から日本経済が長期的なデフレーション過程に入った。戦後初めてです。世界でも初めてです。  ですから、デフレーションという意味がよくわからないということが一つあるのですが、デフレーションというのは、一般的な、ケインズ的な財政金融政策をフル稼働しても、それだけではどうしても景気が浮揚力を持たない。確かに、マイナスに落ち込むとか失速することは抑えられても、景気に浮揚力を持たない状態がデフレーションです。  これは七十年前の話になりますから、経験がほとんどない。アメリカでも世界でもありませんから、G7に行けば内需拡大とかいう話がすぐ出てきますが、これはデフレーションを知らない人たちが言っていることであって、日本はそういう面で今新しいデフレーション過程に入っている。それは昔の、七十年前の要因とは全然違いますけれども、中長期的なデフレーション過程にある。  では、どうしてそういうふうになっているのか。政府、日銀は、一生懸命カンフル注射、モルヒネ注射を打って、できる限りのことを、あらん限りのことをやっています。しかし、効果が一時的で、一時的なカンフル注射にはなりますが、あるいは一時的な痛みどめにはなりますけれども景気を浮揚する力がない。今後十兆円を超す財政が出ても、恐らく効果は半年か一年しかないでしょう。一年するとまた力がなくなる。そうするとまた出すということの繰り返しだと思います。  それは、今回、日本経済が九〇年代、九一年から突っ込んできているこの長期的なはっきりしない景気、あいまいな景気の根因、一番の原因がどこかということについての診断、いわゆるカルテができていない。カルテがはっきりしていませんから、処方は間違うのですね。ですから、問題は診断書。的確な診断書を書く。  おなかが痛いといった場合は、単におなかが痛いのだったら、飲み薬あるいは注射あるいはモルヒネ注射で痛みどめをすれば治ります。しかし、中がポリープになっていた、あるいは何かしこりができている、あるいは潰瘍になっているといった場合には、単なるカンフル注射やモルヒネやちょっとした胃薬では治らない。ある種の手術が必要かもしれません。  では、一体根因は何かということなのですが、日本経済学だけではなくて欧米の経済学、みんなそうなんですが、経済学自体がもともとそうなのですが、御存じのとおり、よくストックとフローと言いますが、ほとんどの経済分析はフローです。流れ。所得だとか賃金だとか、期間でとったフローで見ています。経済学自体がそうやってつくられていますし、四半期統計をベースにする経済学でいきますと、フローだけを見ています。それから一—三月とか毎月の景気動向を見たりしていますから、当然ストックなどというのはそんなに変わりませんから、フローだけを見ていればいいということで、経済学的に物をとらえるツールがフロー重視になっていますから、ストックの変化に気がつかない。  そこで、多くのエコノミストあるいは政府、あらゆるところで見失ったのは、この三枚目の表です。図表三がありますが、ごらんいただきたいと思います。これは経済企画庁が毎年つくっている国民経済計算です。ちゃんとした政府の統計です。  御存じのとおり、九〇年から株が下がりました。それから、九一年の秋から地価が下がってきています。これは、統計が九五年末までの統計しか今使えるものがないのでここまでにしてありますが、この九〇年から九五年の五、六年間、土地と株が下がりまして、ここに点線で書いてあるように、土地は六百十六兆目減りしています。減価しています。資産の減価です。それから、株価はここにあるように四百兆。二つ足すと一千兆のお金が、企業金融機関あるいは我々個人、家計が持っている資産の目減りが起こっている。  よく日本は千二百兆の個人金融資産があるから大丈夫だということを言う人が非常に多いのですが、確かに、千二百兆、世界一の金持ちです。個人は貯蓄を持っています。しかし、逆に、それにほぼ匹敵する額の資産がなくなっているのですね。この事実を見れば、日本経済はそんなに安心していいかどうかとふと疑問になるのですけれども、多くの人は、片方のこっちの暗い方は見ないのですね。  これは手前勝手で恐縮ですが、私は前々からこの問題が一番大きいのじゃないかと言ってきたのですけれども、ストックということについての経済学的な常識といいますか、ツールがなかなか確立していないこともあって、ほとんど無視されてきました。唯一それを初めて明らかに言った方は、去年の十二月の週刊文春の、例の梶山さんの十兆円交付国債。あのとき梶山さんはこの数字を出しました。私が知っている限り、要人で出したのは梶山さんが初めてだと思います。これだけ大きいから十兆円入れなければいけないという話に梶山さんの論文はなっているわけです。  それで、これだけの資産が目減りするということは何が起こっているのかといいますと、経済学的に言うと当然二つのデフレ圧力、つまり経済に下方圧力がかかっている。  一つは、だれでも考えてわかりますように逆資産効果。  個人で我々が株を持っている、あるいは土地を持っている。これが目減りしてきますと、当然消費行動が地味になってきます。ベンツに乗っていた人は、買いかえが来ていても、もうベンツはちょっときついな、もうちょっと安い物にしよう。あるいは十万円の背広を買っていた人がやはり五万円か六万円にしよう、あるいは一年に三着つくっていた人が二着にしよう。海外旅行は今年はちょっとやめておこう。これがいわゆる逆資産効果で、消費がぐっと縮んでくる。  それから、企業にとってみれば、株式だとか土地資産がなくなりますから、新しい事業をやろうとか、新しい製品を開発しようとか、販売店を強化しようとか、新しい機械を導入しようとか、いわゆる設備投資等に当然慎重になります。金融機関は、もちろん御存じのとおり株式も土地も持っているわけですから、当然内向きの志向になる。これが逆資産効果で、これがデフレ圧力として需要を減らしてしまいます。これはだれでもわかる話だと思うのです。  それからもう一つの話が、いわゆる貸し渋りです。  こういう資産が下がりますと、株も下がり、土地も下がりますと、金融機関が不良債権を抱えるわけですから、そうすると、本来ならば、自分の不良債権を直すために資本を当然減耗する、減少していく。そうすると資本比率が下がる。下がると、情報が開示されている世界では、怖いから取引先企業や一般の顧客、預金者が逃げてしまいます。  アメリカクレジットクランチが起こったのはまさにそれです。一九九一年、ブッシュさんが例のサダム・フセインをやっつけて、万歳と言って世界一になったとアメリカが喜んだ途端、アメリカクレジットクランチに襲われて経済マイナス一%成長に落ち込みます。それは、預金者や取引企業がみんな危ない金融機関から、つまりアメリカも同じように八〇年代の不動産バブルの崩壊で痛手をこうむって、逃げちゃった。預金者が逃げたり取引先が逃げますと、預金が減っちゃって取りつけに遭う。そうなると大変だということで、金融機関としては当然自己資本比率を高めていく。財務内容をよくするために、貸し出しを、分母の資産をぐっと圧縮する。これがいわゆるクレジットクランチ、貸し渋りです。  ところが、日本の場合はこれが出なかったのですね。九二年六月に宮崎義一さんという方が「複合不況」という本を中公新書から出しまして、ベストセラーになりました。宮崎さんの主眼は、クレジットクランチが今こそ起こってきて、日本は大変な不況に陥るということを書いたのです。みんな、えっと思ってびっくりして買ったのですが、貸し渋りは全然起こらなかったです。だからみんな、何だ、あれはうそだと。まあうそだったのですが、実際には。  しかし、それはなぜかというと、日本では情報開示をしていません。金融機関がつぶれるものとはだれも思っていません。つぶれたって最後は金融当局が助けてくれるのではないか、こういうことですから、金融機関も貸し渋りをしたり自己資本を高めようなんという気は余りなかった。そこでこの貸し渋りが起こってこなかったのですね。  そしてあと一つ、先ほど言いましたように、逆資産効果も、実はあったのですが表面化してこなかった。なぜかといいますと、先ほど言った、財政が大盤振る舞い、六十五兆円。何かあるときにどかんどかんと出て、逆資産効果を打ち消していた。あるいは六%から〇・五という異常な超低金利によって下で支えたのですね、モルヒネで。つまり、企業がつぶれないように金融で支えました。ですから、大きな倒産などはほとんど起こらなかった。  御存じのとおり、バブルというのは、一番大きいのは土地バブルの崩壊が大きいわけですから、当然それに関連するディベロッパーや大手のゼネコンの倒産が、これはあった方がいいとかいう話ではなくて、経済論理的にいって、五年間で六百兆の土地資産が減価していれば、我々が目にしているように、東京、大阪を見ますと、あいたビルがたくさんある、あいた土地がたくさんある。地方に行って、特に北海道などへ行きますと惨たんたる状況で、ゴルフ場はもう閑散としている、リゾートホテルは人が入っていない、スキー場は閑古鳥が鳴いている、幾つかのテーマパークも人が来なくなっちゃった。どこへ行ってもうまくいっていないのですね。はっきり言って、そういうところが倒れてもおかしくないわけです。ところが倒れていません。  それはなぜかといいますと、これは支えていたのですね、金融機関が支えていた。モルヒネ注射を打って、金融機関お金を安く供給しました。したがってそれは支えられていた。そういう面では、社会不安が起こらないところはいいわけですが、そういうことで逆資産、貸し渋りが、ケインズ政策日本的な、開示がはっきりしていない、あるいは銀行の行動について厳しい規律がない、そういう中であいまいもことしたために、何とか経済は失速しないで、マイナス成長に陥らないで続いていった。  たまたま、九五年と九六年のときには円が急速に戻している。一時八十三、四円になった円が、御存じのとおり百十円前後に戻しました。いわゆるサマーズ・榊原合意という形で、アメリカの支援で戻した。日本の製造業というのは、これは非常にたくましいものですから、非常に為替レートを下げたところで戻りましたから、いわゆる史上最高の利益を上げる。こういうことで、九〇年代のバブルの崩壊という、戦後初めてのことですね。ですから大したことはない。  しかも財政が出て、公定歩合もこれだけ下がってきますと、マイナス成長に陥らないで済んだものですし、カンフル注射を打ちますから、時々景気もよくなりますから逆資産効果が表面化しなかった。それから、ビッグバンという話もないし、情報開示というのもなかなかならないために、金融機関は別につぶれる心配もない。安いお金を供給してもらって、それで利益は、ちょっと前までは史上最高の利益を上げていましたから、担保不動産を、償却を随分積んでいました。  ですから、金融機関にも危機感がなかった。住専という問題はちょっと厄介だけれども、それさえ解決すれば何とか済むと思って、そのうち地価が上がるだろう、そのときに不良債権を処理すればいい、こういうふうにたかをくくっていたわけです。  事態がおかしくなったのは九六年、正式に言うと九七年ですね。これは中北さんも言っているとおり、日本はそろそろビッグバンをしていかないと、日本の金融システムは大変な劣化をしてきますから、どうしても必要です。ですから、橋本総理が九六年の十一月にビッグバンを掲げたこと、これ自体は大変すばらしいことですね。  ただ問題は、一つ間違ったのは、その前に解決すべきうみ、黒い血。住専はもう法律が通って解決のめどがはっきりしたのですが、もう一つ大きな、ゼネコンを中心にした不動産バブルを片づけて、過去を清算してから未来に向かってのレールを敷くべきだったのです。  ところが、未来と過去が一緒くたに来ちゃったものですから、しかも外国の金融機関が千二百兆円をねらってどっと入ってくる、こういうことで、金融機関がもう後戻りができなくなっちゃった。しかも早期是正等が入ってくる。資本比率の問題が出てくる。こういうことになると、今まで貸し渋りなどということを考えたことがなかった金融機関が、自分の資産内容をきれいにしなければいけない。そういう面で資本比率の上昇。  それから、九五年以降も下がった担保が、土地が全然上がらない。そうすると、その部分について担保が足りなくなっていますから、金融機関は、自分の経営内容からすると当然貸し出しを回収し始めているのですね。  それから、二十一世紀初頭のビッグバンをねらって財務諸表をよくしなければいけない。そのためには、先ほどちょっと中北さんも言いましたけれども、ある面で長い関係で今まで何となくつき合っていた企業、しかしそういうものも、これからは金融機関の方から多少選別しなければ二十一世紀に生き残れないという危機意識が出てきた。そういうことで貸し渋りが出てきちゃった。  そして、あと一つ問題は、よくエコノミストの皆さんが言っているように、消費税等の九兆円の、九七年の春の特別減税の廃止とか、財政がもうぎりぎりになってしまっている。ある程度回転しなければいけなくなって、引き締めに転じなければいけなかった。しかも、財政改革法ということで中期的な財政を締める方向を出した。  そうすると、先ほど言ったカンフル注射がなくなっちゃったのですね。そうすると、逆資産効果というこの怖い顔が表に出てきちゃった。これが今、九七年から九八年になって出てきて、経済ががたがたっときて、デフレ経済。明らかに経済は資産デフレという顔がもろに出ちゃって、もう金融政策は実弾がない、〇・五で。財政も、今後多少出るとしても、もう出る余地がない。こういうところに来てしまっている。そういう面で、今経済は明らかに失速に入ってきていると思います。  それではどうしたらいいのかというと、問題は、今後財政が出たりしましても一種のカンフル注射に終わる。根っこは何かといいますと、膨大にたまった不良債権を処理しなければいけない。  つまり、それはよどんだ黒い血なんですね。一回あれだけのものがだあんと倒れてしまいましたから、黒い血になったそのものを吐き出さなければいけない。それを今、血が出るのが怖いからばんそうこうを張っていました。この間みたいにガムテープでとめています。しかし、黒い血が中にありますから、よく最近のお医者さんが言う多機能不全状態。だんだんほかのところまでやってきて、元気が出ない。ベンチャー企業は出てこない。  そうすると、もう黒い血を出さざるを得ないのですね。政府が思い切って出して、切開して黒い血を出してしまって元気になるか、あるいはほっておくと、これは市場の爆発です、市場の制裁であります。恐らくそれを世界がみんな怖がっているのだと思います。これがアジアと連動しますと、七十年ぶりの世界恐慌に入るのではないかと言われているのは、僕はそんな悲観論じゃありませんからそういう話をするのは嫌なのですけれども、危険性はなくはないということを十分踏まえておかなければいけないと思います。  ですから、黒い血を早く出してしまわなければいけない。出すのにはどうしたらいいのか。そうすると、今ある不良債権を早く処理することだ。今回の三十兆の問題は確かにある面でのばんそうこうにはなっていますが、黒い血を出す、不良債権の処理にはどれだけ効果があるのかはっきりしません。これが問題だと思います。  ですから、最後に、まずやるべきことは三つだと思います。  まず、政府は、黒い血を二年間のうちに出すような基本的な方針を立てる。かつて、オイルショックの後、国民がみんな不安でした。そのとき福田さんは、全治三年という形で、きちっと明快に国民に、三年間我慢してくれということで抜本的な政策をやりました。これから必要なのは、やはり政府は、二年という限定つきで黒い血を出す、大変なことがあるかもしれませんけれども少し辛抱してくれということが一つ。  それから二つ。そうなりますとデフレ圧力がだあっとかかりますから、そのためにやはり財政をバッファーとして使っていく。バッファーとしては財政政策効果があると思いますから、そういう面で使う。財政が出れば景気が浮揚力を戻すというのではなくて、黒い血を先に出す、そのために落ち込んだときにはバッファーを出す。しかし、そうなれば、水谷さんも強調なさっていますように、財政自体がもうどうしようもないわけですから、景気が正常に戻り自律したとき、二十一世紀には、その分については徹底的な行革と財政改革でその元を取るということを国民に約束し、また国民の協力を求める。  最後になりますけれども、この最後のペーパーの図、この図は、日本が世界最大の債権国である、対外純資産、アメリカとちょうど逆転しているのですね。日本が八千九百億ドル、アメリカマイナスの八千七百億ドル。日本は、インドネシア、韓国と違います。IMFやアメリカから首根っこを押さえられないで、こういう改革ぐらいはできるのですね。その力はあります。ですから、今こそそれをやるべきときではないかという気がいたします。  失礼いたしました。これで終わらせていただきます。(拍手)
  8. 越智通雄

    越智委員長 ありがとうございました。     —————————————
  9. 越智通雄

    越智委員長 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野松茂君。     〔委員長退席、石川委員長代理着席〕
  10. 大野松茂

    大野(松)委員 自由民主党の大野松茂でございます。  公述人のお三方の先生方には、大変お忙しいところを御出席いただきまして、ただいまは大変示唆に富む貴重なお話を賜りました。まことにありがとうございました。  今、我が国の様子といいますと、戦後この方当たり前のように続いた右肩上がりの経済成長が崩れて、それを前提とした社会の仕組みが行き詰まりを見せております。そして、金融の不安、景気の低迷など、困難な事態になっております。それぞれに緊急対策が講じられまして、四次にわたるところの緊急経済対策、二兆円の減税の実施、それにあわせて、平成十年度予算の一刻も早い成立こそ国民皆さんの大きな期待であろう、こう思っております。  今や、二十一世紀を前にいたしまして、社会の大変革の中にありますが、人生五十年を前提とした社会の仕組みから、世界で一番の長寿国にふさわしい、人生八十年を前提とした社会の仕組みに変えていくことこそ現下の改革であろう、こう思っております。まさに、たくさんの課題に直面をする中で、新しい時代にふさわしい改革が求められていると認識をしております。  そこで、まず、水谷公述人に、数点につきましてお伺いをさせていただきます。  公述人は、もはや右肩上がりの経済成長は望めない、我が国経済は右肩下がりの時代に入っていると指摘をされております。こうした中、我が国が生き残るためにも、改革の断行こそ大事であり、この改革を今行わないと手おくれになるとも終始主張なさっておいででございます。  私も公述人と全く同感でございますが、構造改革は、この時代にぜひやり遂げねばならないものであり、難しいからといって子や孫の時代へのツケ送りをしてはならないものでございます。さもなければ、我々の世代は後世代に対する加害者となりかねない、このようなものであります。そのためにも、たとえ厳しくとも、この六つの改革をなし遂げることをまさに至上命題であると思っております。  平成十年度予算につきましては、財政構造改革法により定められた事項を実施するもの、こうなっております。  そこで、公述人にお聞きいたしますが、世界にたぐいを見ないスピードで進む高齢社会を目前にいたしまして、国民の意識の変革を求めなければならないことがたくさんございます。今、我々がなすべきことは、どのような改革であるのかということをやはり国民にわかりやすくコメントしなければいけない、こう思っているわけでございますけれども、お考えをお示しいただければと思います。
  11. 水谷研治

    水谷公述人 ただいま先生の方からのお話の中で、右肩上がりはもう終わったというお話が実は出ておりました。この認識がどれぐらいあるかというのが、私は最大の問題ではなかろうかと思うのであります。  戦後、我が国経済は、明らかに右肩上がり、しかも、それは世界に冠たる奇跡的な発展を続けてきたのであります。私どもの記憶の中では、経済は発展するものだということが身にしみついて考えていると思うのであります。果たして現状がそうなっているかと申しますと、私は、既に右肩下がりになっているというぐあいに思っております。  これがなぜそれほど重要なことなのかと申しますと、右肩上がりであるとすれば、時がたてば水準は上がります。待てばよくなります。これに対しまして、右肩下がりの場合には、待てば水準は下がります。これは大変な大きな違いなのであります。  改革をやれば落ち込むと、私は繰り返して申し上げたつもりであります。落ち込んでは困る、それはそうです。落ち込まない方がいいです。我々は、よりよいものを目指して今までもやってきておりますし、これからもやはり目指していかなければならないわけであります。  しかし、一たん落ち込むとするならば、落ち込んだ場合には大変なことになるのでありまして、もう少し水準を上げてからにしたいという気持ちがございます。今はよくない、したがって、復活してから、水準が上がってからにしたい。そこで、改革を後送りにしたくなるのであります。  改革を後送りするということは、右肩上がりの経済では正しい処方せんであったと私は考えております。待てば体力が出ます。体力ができたところで手術をすべきです。体力の落ちたところで手術をして死んでしまうのは困るのでありますという議論が成り立つからであります。  ところが、待って本当に体力が上がるかといいますと、私は疑問なのであります。財政政策によりまして、いっとき水準を上げることはできます。しかし、持続的に水準を上げることは、もはや我が国では大変難しい、不可能であるというお話をいたしました。その場合に、いっとき上がってまた落ちていく。  一体いつ改革ができるか。待てば待つほど、時がたてばたつほど、体力が衰えて手術のチャンスはなくなるのではないのでしょうか。私は、今がチャンスである、今改革するのが一番耐えられると。我々が耐えればいいわけです。しかし、将来といえば、将来の国民に耐えさせなければならないわけです。それは本当にいいことでしょうか。いや、我々がつくった借金の責めを我々が負う、これは別に威張ったことでもなく、当たり前の話であります。借りた金は借りた人が返す、これをやれと、私どもは住宅金融専門会社のときに盛んに言ったわけであります。  では、我々は、日本国民は、本当に自分の借りた金を返しているかと申しますと、返していない。それを将来の人に返してもらおうというのは、大変残念な考え方ではないかと私は思うのでありまして、物の本質のところは、実は右肩上がりではもうなくなった、そして、我々が目指しているような拡大均衡は成り立たないということなのであります。  拡大均衡というのは、一たん減税をいたしますと景気がよくなって税収がふえる、一たん出ましたところの赤字が縮小する、場合によったら黒字にまで転換する、これをねらって我々はやってきたはずです。そのとおりになっているでしょうか。なっておりません。確かに、一たん出た赤字は縮小しました。しかし、相当な赤字が残っておるのであります。そして、赤字が残る限りは借金がふえ続ける。  この現象の中で、我々はもう一遍同じことを繰り返すのか。いや、何度繰り返しても本質的な解決にならないではないか。我々は、我々自身がレベルを下げること、生活水準を下げ、経済水準が下がっても、将来の我々の国民のために苦難を忍ばなければならない、これは切々と政治家の皆さん方に、国民に訴えていただきたい、このように考えます。
  12. 大野松茂

    大野(松)委員 現実に見てまいりますと、例えば国の利払いには一人当たり年十万円、一時間に十三億円もの利払いに追われている、こう言われております。十三億円といいますと、実は小学校が一校でき上がる額でございます。地方も実は同様でありまして、公債費負担比率一五%以上の市町村が全体の四五%にも及んでいる。そしてまた、二〇%以上の公債費負担比率の市町村は全体の一四・八%もあると言われております。こういう数字もあるわけでございますが、財政事情の硬直化どころか、もうにっちもさっちもいかなくなる状況にあるわけでございます。  しかも、このことを国民皆さんに理解されているとは思っておりません。住民に一番身近な市町村においてさえもそうでありますので、国においてはまして理解は難しい。実際に、市町村の行政ならばそこで見えるものでありますけれども、国という立場だけに難しい。私たちも、もちろん大いに説明をし、理解を求めなければならない責任があるわけでございますが、改革を進めるに当たって、いかに理解を求めたらよいかということが実は最大の課題であろうと思っております。  改革に成功した国々もあるわけでございますけれども、そのような国の状況をあわせまして、こうしたことに理解を求めるについてのお考えがございましたら、お示しいただきたいと思います。
  13. 水谷研治

    水谷公述人 国民の理解を求める、大変難しゅうございます。しかし、一番重要な点は、私が考えますのに、改革をやれば落ち込むということをはっきり明示することであります。しかも、大改革なのでありますから大きく落ち込む、しかしやらなければいけない、この訴え方の力不足じゃないでしょうか。国民はえてして、改革をやらなければならない、何のためか、よくなるから。よくするために、そのよくするのは後々であるということをはっきりさせなければいけないと思います。目先的には、落ち込むのが最初なのであります。まず相当落ち込む、しかし将来のため、十年、二十年、五十年後のために我々はやらなければならない、これの説得が不足のままに乗り出したという感じがするのであります。  いや、確かに、総理大臣初め、去年いろいろおっしゃいました。しかし、おっしゃいましたけれども現実景気が下がってまいりますと、経済界を初めといたしまして、まず目先の景気が大切だ、目先の景気が復活しませんと将来のことは実現しないではないかという声に打ち消されまして、今日もまたその意見が大きいかと思いますけれども、そんなことをやっていますと、一体いつになったら改革はできるのか。そして、改革をちょっとやりますとまた落ち込む、そのたびごとに改革をストップする、本当の改革ができません。  私は、海外の例は詳しくはございませんが、例えば、サッチャーのやったこと、レーガンのやったこと、あるいはニュージーランドでやられたことを考えますと、相当な犠牲を国民に強いております。当然です。相当な犠牲がなかったら改革にならないわけです。我々は、その結果だけ見て、立派であったと褒めそやします。結構です。しかし、その過程で、国民がどれくらい苦難を強いられ、それを我慢したか、我慢させたか。  これは、あるいは政治家の先生方に申し上げるのは無理かもしれません。マスコミの力なのかもしれません。しかし、我々は、一人一人がそういうことをお互いに話し合い、国民に訴え続けなければ改革はでき上がらないのではないか、このように考えております。
  14. 大野松茂

    大野(松)委員 今お話がございましたように、この問題を、例えば中長期的な問題としてとらえるという見方、それと、短期的にどうするかという問題が、現実にもう迫っております。  そうした中で、我が国経済の本当の回復、言うなれば実感を伴うところの景気の回復でありますが、それと、将来世代に安易に負担を転嫁しないためには、苦しい中にありましても徹底した各般の改革をやり遂げる必要がある、これは大事なことだと思っております。そのためには、時には国民にも負担と痛みを分かち合っていただかねばならないものである、こうも思っております。  ただ、まさに経済は生き物でございますので、最近の経済や金融の情勢など、厳しい状況からいたしまして、基本的立場に立ちながらも、中長期的視点からの対応にあわせて短期的視点からの臨機応変の処置を講じていくこともまた、この時代国民にこうしたことの理解を得る上では大事なことではないかと思うわけでございますが、お考えをお示しいただければと思います。
  15. 水谷研治

    水谷公述人 政治は生きております。国民生活は毎日送られております。したがって、将来の夢だけで現実を過ごすわけにはまいりません。これは事実であります。しかし、ともすれば我々は、目先だけが重要であって、将来を犠牲にし過ぎるのではないでしょうか。その結果が今日になっておるというぐあいに思うのであります。  日本経済の成長率を眺めてみますと、先ほど斎藤先生が冒頭の図をお示しになりました。これを先生方、どのようにごらんになったかわかりませんが、日本経済の成長率は〇・何%というのが続いておるのであります。この間にいっとき、九五年度、九六年度は上がりました、三%ぐらいに。戻ったと考えるべきか、あるいはこれが一時的なものであったと考えるべきかという議論は余りなされません。私は、いっときの特殊要因によって三%ぐらいの成長ができ上がったんだというぐあいに考えております。  それは何かと申しますと、三年前、九五年の出来事であります。一月十七日五時四十六分、阪神大震災、それによりまして大被害が出たのであります。当然、大復興計画が実施されたのであります。その規模は膨大なものであります。十兆円と言われます。それはGDPを二%押し上げます。もしそういうものがなかったら、これだけの成長にならなかった可能性があるのであります。それは翌年にまで影響を及ぼしております。翌年、九六年度であります。九六年度には、翌九七年度に消費税が上がることはもう予定されておりました。ということは、前倒しの需要が出てきております。前倒しの需要があり、その結果として成長率を押し上げて、三%なのであります。  したがって、そういう要因を除いてみますと、日本経済の成長率は〇・何%が続いているとむしろ考えるべきではないでしょうか。しかも、この間において、政府は手をこまねいていたわけではございません。先ほどの御説明がありましたように、手をかえ品をかえ、莫大な景気振興策を打って、なおかつ〇・何%の成長率、これが現状なのであります。  そして、同じことができるか、もはやできないといった場合には、日本の成長率はゼロ以下になる可能性がむしろ強いと思わざるを得ないのではないでしょうか。それを率直に認識した上で対策を立てる、これが必要だと思います。  いや、何とかして三%に押し上げようとすれば、相当な無理があります。無理が、自分の無理だけなら結構です。先生おっしゃいましたように、子供や孫にまで無理を押しつけて、なおかつ我々の成長率は異常な高さにまで持っていきたいのか、いくべきなのか、こういう問題であります。  私は、それは我々の考え違いではないか、我々が五十年、六十年後になって考えた場合、あのときに改革をしておけばということがあり得るのではないか、このように考えております。     〔石川委員長代理退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  16. 大野松茂

    大野(松)委員 ありがとうございました。  こうした新しい改革を進める中で、私は、六大改革の中でも、社会保障改革というのがやはり一番大きな問題だろうと思うのです。年金のことあるいはまた医療のこと、福祉のこと、さまざまな対応でありますけれども、それを私たちがどのように理解するかということの中で、また社会保障制度の改革というものも進めなければならないと思っております。  実は、せんだって、レスター・サロー教授の「資本主義の未来」という本を読みましたけれども、あの一番最後のところに書いてあること、非常に私も感銘を覚えたわけでございます。「財政の「敵」が誰なのか、姿が見えてきた。政府にとっても、企業にとっても、「敵」は年老いていく「わたしたち自身」だったのだ。」こういうふうにお書きになっておりますけれども、まさに私たちが、私たち自身がその中にあるんだということをすべての人に認識していただかないとこの改革は進まないのじゃないか、こう思っているところでございます。  実は、お二方の先生にお尋ねする時間があれでございますが、最後に、限られた時間の中でございますが、今金融ビッグバンを前にいたしまして、金利、公定歩合についての議論が大変かまびすしいものがございます。年金生活者や中小企業者のそれぞれのお立場もあるわけでございますが、世界的にもたぐいを見ない年〇・五%の公定歩合について、お三方の先生はどうお考えか、短い時間の中でお示しいただければありがたいと思います。
  17. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 時間が来ておりますので、恐縮ですが、端的にそれぞれの公述人からお願いをいたします。
  18. 水谷研治

    水谷公述人 私は、〇・五%の公定歩合は異常に低いと思います。異常に低い公定歩合というのは、一%でも異常に低いと私は考えております。それの半分です。異常さは是正すべきだ、チャンスを見て是正すべきだ。しかし、今それが是正できるかといいますと、金利を上げることによるプラス金利を上げることによるマイナスということを考えますと大変難しいのではないか、このように考えております。
  19. 中北徹

    中北公述人 私は、公定歩合は基本的にマーケットで決まるものだというふうに考えております。日銀も今回独立性を強固にしたわけでありますので、国会で何パーセントという議論は余り好ましくないとは思いますが、やはり基本的には公定歩合は低過ぎる。これは、これまで二、三年過去を振り返りまして、もっと公定歩合を上げておくチャンスを見失ったのではないかというふうに、逆に思っております。
  20. 斎藤精一郎

    斎藤公述人 皆さんと同じで、百万円預けて一年定期が税引きでたった二千円、これじゃもうだれもやるわけないので、最近はやりのようにシャル・ウイ・たんすということらしいですけれども、たんす預金が非常にふえてしまうということだと思います。  これは是正すべきなんですが、ただ、今中北さんが申し上げたように、ちょっともう手おくれなんですね。この際上げたら、恐らくアジアの問題にはね返り、あるいは世界の恐慌の引き金、金融パニックの引き金になる危険性が非常にあると思います。ですから、早く不良債権を処理して、上げる状況を早くつくるということが先決で、ただ、利子所得が少ないから、財源もないし、国民にも少し還元しなきゃという形で今拙速に上げると不測の事態が起こってくる。ゼネコン一、二社が倒れても平気だという覚悟だったら上げてもいいと思いますが、やはりそれは、今こういうデフレ下の中ではちょっと難しいのじゃないか。タイミングをちょっと失してしまった。それよりも、今のうちに早く不良債権を処理して、早く正常の金利に戻す。公定歩合としては二・五から三が普通だと思うのですが、それに戻すようにすべきだと思います。
  21. 大野松茂

    大野(松)委員 時間が参りました。ありがとうございました。
  22. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 次に、小林守君。
  23. 小林守

    ○小林(守)委員 民友連の小林守でございます。諸先生には大変貴重な御意見をいただきましてありがとうございました。  私は、間近に迫りました金融ビッグバンの問題から、将来にわたって日本クレジットクランチをどう克服して信用創造の時代を切り開いていくべきなのか、この辺を視点にしてお聞きをしたいなと思っております。  本年四月から改正外為法が施行されます。また、BIS基準に基づく早期是正措置も導入されることになっております。しかしながら、今日、個人の金融資産残高が一千二百兆円と言われている我が国でございます。これがいや応なく大競争のビッグバンの時代に入るわけでありまして、そういう点では、市場原理の貫徹によって、戦後続いてきた護送船団の、市場の原理が働かない金融システムが大改革を迫られる、このように考えるわけであります。  先ほど来お話がありましたように、二年半にも及ぶモルヒネの注射とも言われている超低金利〇・五%公定歩合という状況の中で、一千二百兆円の国民金融資産については相当の新たな利用先、運用先を求めた流動化が強力に進むのではないか、またそれがかえっていいことになるのではないかというふうにも思えるわけでありますけれども、一面、日本市場のウィンブルドン化というような言葉でもあらわされているように、日本の大手銀行二十行の中でも数行しか生き残れないというか、伍して国際金融資本との競争に生き残れないのではないか、こんなことも指摘をされているわけであります。  また、このような過程の中で大蔵金融行政の大変なスキャンダル、不祥事が出ておりまして、まさに、日本の金融行政の一つ方向を定めてきた、羅針盤とも言われてきた大蔵省がどうにもならない状況であるということをさらけ出しておるわけであります。そういう点で、うみを出し切るまでの大改革が求められると同時に、やはり国民の信任を得られるようなしっかりとした金融システムの確立というものが求められているのではないか、このように考えているわけであります。  この改革に何とか成功していくことによって、日本が、東京市場が国際的なマーケットとして機能していけるか、それとも、この改革に失敗することによって、まさにアジアのローカルなマーケットに甘んじなければならないか、二十一世紀の日本経済社会を大きく規定していくような大改革を迎えるのだろうというふうに思うわけであります。  そういう過程の中で、三十兆円に及ぶ公的資金の導入、先ほど中北先生の方からも、原則預金者保護であるべきだというようなお話がございました。しかし、金融システムの安定のために十三兆円に及ぶ公的資金政府保証もつけた形で導入をされるということでありまして、その中には、一部よくわからないのですけれども、地域経済に重大な影響を与える場合には預金保険機構が金融システム安定化の政策として取り組んでもいいんだ。預金者保護が原則だけれども、そういうシステムの安定と、それから地域経済への決定的な影響を及ぼさないようにというような枠組みの中で、三十兆円の公的資金が導入されたわけであります。  これらについては、今日大手の銀行が、まあ一面では足並みをそろえてまた護送船団方式の先送り、温存ではないかという考え方と、いや、先ほど先生のお話、二極分解は進んでいるよというようなお話もあったわけでありますが、この三十兆円の公的資金導入、日本のビッグバンに向けての自己資本注入というような形で導入されたわけです。本来、市場の原理に基づくならばこんなことはやる必要はないんだというふうにも言えると思うのですが、それらについて、諸先生の方から一言ずつ、この三十兆円の公的資金導入に向けての評価をお聞きしたいなというふうに思います。
  24. 水谷研治

    水谷公述人 三十兆円に及ぶ金融特別の措置、これにつきましては、私は原則は外れているのだろうと思います。したがって、原則から外れておりますけれども、当面具体的な対策としてはやむを得ない施策ではなかったのだろうか、このように考えております。  当面といいますのは三月末の話でありまして、ごく短期、目先の問題であります。それは貸し渋りの問題であると同時に、BISの基準クリアの問題でもあります。こういった問題の中には短期的な問題と長期的な問題が含まれていると私は考えております。  長期的な問題といたしましてこの背景に流れますのは、我が国における余りにも膨大な金余りなのであります。金余りの中で金融機関はどういう行動をとってきたかと申しますと、借りていただく方がお客様なのであります。借りていただかなかったら金融業は成り立たないのであります。何とかして貸したい、借りていただきたい。そこで、かなりの悪い条件でも借りていただきました。  本来、金融機関の役割はお金を貸すという役割がございます。しかし、この役割の中には、お金を貸さないという役割もあるはずなのであります。それは何かと申しますと、借りていただいた以上は返していただかなければなりません。そのお金は預金者のものだからであります。すなわち、返せないのではないかと思われるところに貸してはならないのであります。例えばばくちです。ばくちで当たったら返しますというところへは、貸してはいけないのであります。相当な将来性があるとにらんだところだけ貸す。  しかし、そんなことを言っていたらなかなか借りていただける方がなかった、そこで、かなり危ないところへも貸していたという事実があります。その結果がはね返ってきておるのであります。自己責任です。金融機関が悪いのであります。  とはいいましても、現実でありますから、じゃどうするか。そういった貸し出しはよくない、正常化するべきです。これが、実は貸し渋りの根底に流れる一つの問題なのであります。貸し渋りと言われます。従来が正しかったら、今の行動は間違いであるということになります。しかし、もし従来の行動が間違いであったら、是正して正しい方向に向かう、こういうのが実は一つあります。  例えば、国際的な銀行の例を申しますと、どうしても確実に返るというものに貸しましても、貸し倒れは出るのです。その貸し倒れをどうするか。償却します。どうやって償却するか。収益で償却します。ということは、一方におきまして適正なる収益を上げておりませんと償却がなかなかできないのであります。したがって、国際的な銀行は、それぞれ相当の収益を上げるようなものを当然として営業しております。  我が国は違います。そんなことを言ったらだれも借りてくれないからです。仕方がございませんから、かなり安い金利で出している。その結果が、収益で本当に償却できるのだろうか。こういう問題になってくるとすれば、従来どおりの融資の仕方というものは続けられるだろうか、こういう問題があるのであります。この長期的な問題は今後とも続くと思います。  もう一つは、短期的な問題であります。  短期的な問題としては目先の問題、これはもう何とかしなければならない。そこで、こういった措置もやむを得ないかというぐあいに考えております。
  25. 中北徹

    中北公述人 私は、二極分解、改革、これを短期間にむしろ加速すべきであるというふうに思います。安定の名において、護送船団の方に引き戻しているというのがむしろ現実ではないか、この十一月以降の日本がたどってきている道ではないか。そのような状態で、今ビッグバンがもう本当に半月先に控えている、ますます段差が大きくなっていく、日本をますます苦しくしているのじゃないかというふうに思うわけであります。  基本的には、私は、これは安定化のためであったとしても、公的資金預金者保護に限定するというものと安定化の維持ということは矛盾しないというふうに思っています。すなわち、万が一不幸にして倒産する銀行がありますならば、日銀が特融を入れる、その限りにおいて預金者を保護し、そして他方において、その後日銀等が中心になって債権を回収する。どうしても回収できない部分に関しては、その後一般会計で、明瞭な形で、ガラス張りの形で計上し、そしてチェックをするということであれば、極めてシンプルで現実的であるというふうに思います。何もわざわざ預金保険機構の中に数十兆円、それも非常にあいまいな形で入れる必要は全くないというふうに私は思います。預金保険機構こそは大蔵省そのものであるというふうに思っております。  そして、二点目でありますが、私は、貸し渋り、クレジットクランチ、これは先ほど申し上げましたが、誤解を恐れずに申し上げるならば、ある意味で正常化、ノーマライゼーションの過程という側面をもっともっと考えていただきたいというふうに思います。  銀行は、もう沈み込むように資産を持っています、膨大な貸し付けを行っています。その貸し付けの他方において、借り手がまた膨大な資産を持っている。しかし、その両者の関係においては、もう極めて将来性のある産業、次世代産業の育成にきちっとそれがかみ合っているかどうかということを考えますと、大変疑問であるというふうに私は思うわけであります。  そのような意味において、金融当局は、貸し渋りという議論に対してはむしろもっと違った議論をすべきである。そのまま受け入れて、そしてそのまま公的資金議論に乗っているというような印象を私は否めません。  つまり、日本は、十年前に金融の自由化、リベラライゼーションというのをやったわけでありますが、その後、いかがでしょうか。このインターバンク市場の整備は不徹底であります。つまり、インターバンク市場において、貸し手と借り手という関係を見ますと、もう大手銀行が本当に膨大な借り手、これも担保が必ずしもない形で、一晩で数千億円借りている。一方的な借り手であります。しかし、貸し手はどうでしょうか。もう今や機関投資家であります。したがって、あの十一月にリスクプレミアムが上がれば、これはぐっと締まるのは当然であります。  この膨大な資産を持った巨大な金融機関が非常に特殊なインターバンクに、市場からの資金調達に寄りかかっているということが非常に異常であるというふうに思います。私は、異常なのはインターバンク市場であって、むしろそこの整備をきちっとやることが重要である、これが一点目です。  もう一点目は、私は先ほどお話ししましたように、直接金融市場を何が何でももっと整備していただきたい。私は、政治家の方々の任務は、インフラを整備することであって、市場の中に介入していくことではない。おれが、私が買って出るという話ではなくて、やはりきちっとマーケットが機能するための条件整備、つまり決済システム、それから監視機構、それからある意味での格付、そして会計基準の時価評価、国際化、これをもっと後押ししていただきたい。そうしない限りは、ずるずると改革のタイミングを先送りしていくばかりであります。  私は、ベンチャー企業が今大変苦しんでいるという記事を昨日読みましたけれども、大変憂えております。やはりあの右肩上がりの時代には、経済が多少沈み込んでも、すぐ次の回復のきっかけをつくったのは中小企業でありますが、この方々は大変今苦しんでおります。そこに資金が流れていかない。やはりベンチャー企業その他にリスクキャピタル、危険資本が出ていくような条件整備を何が何でも整備していただきたいというふうに念願しています。
  26. 斎藤精一郎

    斎藤公述人 簡単にお答えします。  公的資金三十兆は、去年の十一月の一連の金融不安、危機、それの対応としては当然のことで、そういう面ではよかったと思います。  ただ問題は、十七兆の方はともかくとして、十三兆のいわゆる優先株、劣後債等の資本注入の問題ですが、本来、ビッグバンを間近に控えて、金融行政を明快なルールと理念のもとでやらなければいけない。ところが、時間もないということもあるのでしょうが、今回の一連のを見ていますと、相変わらず恣意性と裁量性だ。  行政の裁量性といわゆる審査委員会の裁量性、どういう基準でやっているのか不明確である。それから、金融機関が言っている自己査定等が非常に金融機関の恣意性にゆだねているので、本当に何が一番重要なのかというと、今申し込んできている大手のところは、自己資本比率はともかくとして、むしろ早く不良債権を処理すべきだと思うのですね。  ところが、この不良債権が資本注入によってうまく進むかどうかが非常に不明確で、そういう面では一種の、現在の状況を延命するという相変わらずの痛みを先送りする手法になりかねないという点では、問題の出てくるのを単に先に延ばしちゃった。ばんそうこう、僕はガムテープと言っていますが、一種のガムテープで、長い目で見ると、ビッグバンに反するような状態になってくるのじゃないか。むしろ、日本金融機関の体力を弱めるように作用するのじゃないか、十三兆についてはそういう心配を持っております。
  27. 小林守

    ○小林(守)委員 ありがとうございました。  現在、我々は平成十年度の予算審議しているところでございます。しかし、既に自民党の首脳は、外側でということになりましょうか、十兆円規模のいわゆる補正予算が必要だというようなことを打ち上げているわけであります。株価操作のための一種の口先介入なのかなと思ったり、橋本総理の責任を問わずに、なし崩し的に政策転換をやるための地ならしをやっているのかなというふうに思えたりするわけですけれども、政党政治における大変なモラルハザードが政権の中で今進んでいるのではないか、このように私は思えてならないわけであります。  基本的には、諸先生方の御意見の中で、長期デフレ過程に入ったのだというような御意見とか、拡大均衡路線というか経済はもうあり得ないのだ、右肩下がりの経済の中でどう再生を図っていくかというのが課題だというようなこと、それから、あらゆる日本経済の中で市場原理の徹底、そのためにも消費者の立場を含めた市場原理の徹底が必要だというようなお話がございました。  乱暴なことでございますけれども、しかし、このような経済過程の中で、政治からすると、国民に相当の犠牲は払ってもらわなければならないのだということを真っ正面からやっていかなければならない時代なんですけれども、やはりどうしても、一種のセーフティーネットといっていいでしょうか、中北先生の中で、例えば貸し渋りについても、正常な構造に戻っていくための過程なんだ、それから、市場の論理からすれば当然の帰結なんだというふうなお話だったと思うのですが、では、雇用の問題はどうしたらいいのかというような問題が当然かかわってくるわけです。  それから、黒字倒産と言われますが、資金繰り倒産の問題も現実には起こってきているわけですね。そして、今お話があったように、次世代の産業としてのベンチャー、そういうものに対する資金が回らないというような現実の貸し渋りの状況が進んでいる。政府としては、政府金融機関を総動員して、相当のてこ入れをしてやっているわけですけれども、そうはいっても、明らかに経営内容の危ないところというか、どうにもなりそうもないようなところについては、技術とか内容はよくても、これは無担保無保証で貸し出しするということはなかなか難しいわけです。  そんなことも含めて考えると、相当の犠牲を強いながら、国民経済全体が血を出すような改革をしなければならないということが迫られているのですけれども、しかし、国民の立場からいって、また消費者の立場という視点に立って、雇用の問題とか社会保障の問題とか、一定のセーフティーネットというものは、やはり政治の場面では最低限は押さえておかなければならないことなんだろうと思うのです。  そういう視点から、中北先生に、貸し渋りの問題と雇用対策の問題について、当然の帰結なんだという議論ではなくて、我々としては、社会政策として何らかの政治の支えがなければ困るのではないか、これは市場原理では解決できない社会政策としての雇用問題、貸し渋り対策というものはあるべきではないのか、このように考えているわけなんですが、先生の御意見をお伺いしたいと思います。
  28. 中北徹

    中北公述人 私は、経済経済社会問題は社会政策議論としてきちっと区別して、それで必要に応じて発動すべきだと考えております。  今回のこの貸し渋り、私も仄聞しております。大変厳しい状況にあるということは、私も承知しているつもりでありますが、これに関しましては、やはり本当に緊急避難的な措置という意味で、ここで政府関係機関に貸し出しを強化していただくというのも一案ではないかと私は思っております。  それから、ベンチャーのお話を先ほどいたしましたけれども、こちらの方に資金がなかなか流れていきません。特に、一般に、元気な方々が今なかなか担保をつけていただけない。そこで、うんと思い切った投資がわき上がってこない。  ですから、従来の回復パターンになかなか乗りにくいのではないかということは私も感じるわけでありますが、やはり基本的には、社会政策の問題と経済問題、ビジネスの問題というのをきちっと峻別していく。これをやってこなかったのが護送船団であったというふうに私は思います。この轍をこれ以上踏むべきではないと私は思います。  どうしても救い上げられない事情があれば、それは財政という形で仕方がありません。社会全体の保障ということで救い上げるべきである。しかしそれは明瞭な形で、経済なのか財政なのか非常にあいまいな形で、いわば隠れた保護、補助という形で入れるのは大変まずいというふうに私は考えているわけであります。それが私の意見であります。
  29. 小林守

    ○小林(守)委員 終わります。
  30. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 次に、西川知雄君。
  31. 西川知雄

    西川(知)委員 西川知雄でございます。  時間が余りありませんので、論点を絞ってお尋ねをいたしたいと思います。  先ほど、中北先生及び斎藤先生の方から、ビッグバンを控えて今非常に大切なことは何かということの一つとして情報公開を挙げられました。特に、先般の大蔵省の榊原課長補佐は、新しい金融商品等の認可、この認可ということ自体法律上の認可ではございませんが、実質的にそれを認可していった。すなわち、法律上、一体この商品が日本で売れるのかということについて大変あいまいな基準である。したがって、金融商品を開発する者は大蔵省の意見を聞かないといけない、そういうことで、あれは、非常にあいまいな裁量行政が、このビッグバンの新しい時代においてもまだ続いているということを象徴している事件ではないかというふうに思います。     〔伊藤(公)委員長代理退席、石川委員長代理着席〕  そこで、ビッグバンの実務に対しても非常にお詳しい中北先生に、一点、お尋ねをいたしたいと思います。  先ほど三十兆円の公的資金の導入の話をされました。我々国民の立場からいたしますと、一体どういう金融機関に対して、またどんな理由で公的資金を導入するのだろう。その金融機関は、今まで一体どんな問題点があったのだろう。個々の公的資金を導入する金融機関の実際の内容、不良債権の内容というものは、また審査体制の内容というものは一体どういうものなんだろうかということがはっきりわからない限り、公的資金を導入して、場合によっては、優先株の値段が下がった場合にはそれが税金で最終的に支払われる、こういう状況になるわけです。したがって、公的資金を導入する金融機関、またはいろいろな問題があった金融機関の、例えば大蔵検査の内容とかそれに対しての金融機関からの是正措置の回答書とか日銀考査の結果、そういうものを国民の前に堂々と開示するということがなければ、何にもよくわからないところにどうして日本国民の血税を導入することができるのかということが、率直に疑問として私は感じられるわけです。  したがって、その議事録を、密室で、例えば肝心なところを黒いペンで塗ってわからなくするというようなことでは、この新しいビッグバンの時代に、情報公開が大変必要な時代に、大蔵省の裁量行政、密室行政がまだまだ続いて、ひいてはウィンブルドン現象などにならない、そもそも、ビッグバンなどということが、言葉では言っているけれども、一体本当に起きるのかということについて私は大変疑問を持っておりますので、この点について一点、先生の御所感をお伺いしたいと思います。  そして二点目につきましては、やはりウィンブルドン現象というのが本当に起こるのかどうかということについて、もしその点について御意見があればお伺いしたいと思うのですけれども、例えば、これも大蔵省または国税庁の裁量行政にかかわることでございます。私も国際関係の金融関係の弁護士をやっておりましたので、いろいろな国からいろいろな新しい金融商品を紹介して、それが日本の法制または税制にどういう影響を与えるか、どういうことになるかということについて、いろいろな関係で大蔵省または国税庁と私は交渉してまいりました。そういう経験がございます。  案外と、その法制上のバリアといいますか規制というものは、皆さんが思っているよりは若干少ないかもしれません。しかしながら、実際に一番問題であったのは、新しい金融商品が日本の税法上どういうふうな扱いをされるのか。これによって、利回りとかリターンとかいうものが相当違ってきます。  しかしながら、日本の税務当局は、いろいろな資料を持ってこい、そして、もっと情報をくれなければ全然答えない、答えられないと言って、二カ月、三カ月、四カ月ほったままにします。その結果、マーケットはどんどん変わっていくわけです。そのおかげで、この金融商品が日本ではとうとう売れないということが何十回とありました。  こんな裁量行政が国税庁の方に残っていては、ウィンブルドン現象どころか、日本のビッグバンというものは全然起きないというふうに私は考えざるを得ません。  この点についての中北公述人の御意見をお伺いしたいと思います。
  32. 中北徹

    中北公述人 私は、フリー、フェア、グローバルという三大柱を掲げて一国の宰相が内外に誓約した約束でありますので、何が何でも貫徹していただきたいというふうに思っております。そして、この公的資金、なかんずく優先株の問題に関しましては、私は根本的にジレンマ、欠陥があると思います。  すなわち、国が優先株、劣後債を保有するのであれば、税をそこに投入するわけですから、どうして発言権を持てないのか、どうしてその使途に関してきちっと株主総会その他において発言できないのかというのは、私は大変疑問に思います。むしろ持つべきだというふうに思います。そして、それが嫌なら、優良な銀行はけるべきだったというふうに私は思っております。  私、もう二十年前になりますが、一介の公務員をやっておりましたが、裁量権を持つということは、正直に言って大変恐ろしいことであります。自分一人の判断が本当にこの国の、そして人々の生命財産を左右するのであると思えば、これは極めて厳粛なことであるというふうに思います。それをもって、あたかも自分が偉いかのように尊大になるということであったら、これは全く公務員の風上にも置けないというふうに思います。  同時に、私、それ以上に強調したいことは、裁量権を縮小することこそかえって公務員の地位を守るのだということ、これを公務員自身が自覚していただきたいというふうに思います。  アメリカにおいても証券取引法がございます。極めてあいまいな、非常に抽象的な法律であり、この点に関しては日米は基本的に差はありません。しかしながら、アメリカは基本的に司法社会でありますから、これまで集積された判例、そしてきめ細かなガイドラインをきちっと整備し、それを開示しています。必要があればインプルメンテーションレターという形で、明瞭な形で、そして弁護士も入る形で、お互いに拘束するという形で論点を整理しているわけであります。  つまり、どろどろした基本というのは同じであります。アメリカにおいても、いわゆるMOF担的なものはないとは言いません。あるようであります。先ほど申し上げたプラクティショナーがいるわけですが、しかし、その作業の進め方というのは極めてガラス張りで、そして必要に応じて文書で整理するということ、これが私は基本的に違うというふうに思います。  そして最後に、ビッグバンを成功させていく力、これは消費者、それから基本的には外銀等の異業種であると私は思います。昨年十一月、不幸にして倒産いたしました金融機関がございますが、その後いかがでしょうか。まだ金融ビッグバン、正式にスタートしておりませんが、既に、外資系金融機関その他が見事に再建に貢献しているというふうに私は見ております。  したがいまして、問題は何か。これは山一証券の例でも明瞭になりましたけれども、リーガルリスク、つまり、我々はこの金融機関を買いたいと思っても、一体どれくらい不良債権があるのかきちっと明示されていない。時には、名目価格を下がった株価をつけていても買えない。それは、一体どういうリスクがあるか全くわからないからであります。下手に外銀がそれを買いますと、株主代表訴訟で訴えられる。つまり、それくらい日本の金融システム、金融監督のチェックというのは、もう本当に世界の基準から見たら恥ずかしい限りであります。  このリーガルリスクというのをできるだけ縮小して、やはりマーケットを動かす力は基本的に消費者、そして外資系等の異業種であるということを私は強調したい。それがビッグバンを成功させていくかぎだというふうに思っています。
  33. 西川知雄

    西川(知)委員 質問時間が来ましたので、これで終わりますが、今先生おっしゃったように、ビッグバン、これは自己責任ということでございますが、その自己責任のもとで競争するためには、やはり同じ情報をみんなが共有していない限り、これはビッグバンの競争の自己責任の原則には合いません。したがって、先ほど申しましたように、いろいろな大蔵検査の結果とか日銀考査の結果とか、そういうものについて、少なくとも公的資金を導入するような対象機関であれば、国民の前に堂々と公表すべきであるというふうに思います。  どうもありがとうございました。
  34. 石川要三

    ○石川委員長代理 次に、鈴木淑夫君。
  35. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  三人の公述人の皆様、よく存じ上げている方々ばかりでございますが、きょうは御苦労さまでございました。お三方にまず一つずつ質問をさせていただきたいと思います。  水谷公述人は、いつも聞かせていただいている水谷節というか水谷セオリーでございました。一つお伺いしたいのは、公述人も御承知のように、日本経済というのは貯蓄率が大変高いですね。マクロの貯蓄率は高い。したがって、お説のように財政赤字を縮小したときに、日本経済の貯蓄・投資バランスというのはどうなるのだろうか。今のように、赤字を相当出していてもなおかつ国内で貯蓄が扱い切れないで、経常収支は世界一大きな黒字を持っているわけですから、ここで財政赤字を縮めていく、その結果、民間の投資へもデフレ効果が及ぶということになったら、一体どういう貯蓄・投資バランスの経済になっていって、それは一体持続性があるのかなというところについて、お考えをお聞かせいただきたいと思います。  それから、中北公述人のおっしゃいましたことは、実は私全く賛成でございまして、お説のとおりだというふうに思います。ですから、疑問ということではなくて、もう少し詳しく説明していただきたいという角度からの質問になりますが、まず最初にお伺いしたいのは、私も、金融業法を一刻も早く廃止して横断的な金融サービス法をつくらなければいけない、それこそが金融監督庁の活動の根拠になる法律だ、全く同意見でございます。  そこで質問は、そういう一般的な市場法の具体的な内容ですね。どんなものだろうか。  私が考えますのは、少なくとも公正な競争ということ、これが公正な競争だという条件を明示しておかなきゃいけないだろうな、それから二番目に、情報公開について決めておかなきゃいけないだろうな、三番目には、情報公開しても情報の非対称性がありますから、預金者とか投資家保護が入っていないとだめだろうなというぐらいはすぐすらすらと出てくるのですが、もう少し先生のこの辺のお考えをお聞かせいただけるとありがたいと思いますので、お願いいたします。  それから、斎藤公述人がお話しになりましたことも私は全く同意見でありまして、率直に言って、日本では早期是正措置と早期処理の順番を間違えたなというふうに思っております。  斎藤公述人よく御承知のように、アメリカの場合は、不良債権の早期処理に取りかかったのはRTCをつくった八八年、八九年あたりからで、九一年ぐらいまでにほとんどめどが立つわけですね。それで、九一年の十二月に早期是正措置が入ってくるわけです。ところが日本は、順番を間違えちゃって、不良債権の早期処理をきちっとやらない。斎藤公述人のお言葉をおかりすれば、黒い血をばんそうこうで押さえたままで早期是正措置を入れてきたものですから、ちょっと混乱が起きているなというふうに思います。  この順番の話と、やはり早期処理が大事だということを斎藤公述人は言っておられるわけで、私も全く同意見でございますが、それでは、早期処理の具体的な中身ですね、どういうふうにやったらいいと考えておられるか、御意見を述べていただければありがたいと思います。  以上、一つずつ質問いたします。
  36. 水谷研治

    水谷公述人 今先生の方から、貯蓄・投資バランスという話が出ました。  日本は貯蓄超過であります。投資が低いのであります。このギャップが、私が申し上げました需給ギャップであります。需要が不足しているのであります。もしそこで財政の再建を強行すれば、すなわち、増税並びに支出のカットといいますと、なお需要が落ちるのであります。したがって、より需要が落ちた段階で所得が決まる、こういう状況になってまいります。そこで所得水準は下がるというぐあいに考えております。  なお、現象としてどんなことが起こるかといいますと、より景気が悪くなった場合、我々は必死になって海外へも売るでありましょう。したがって、輸出はさらにふえると思います。また、海外から買う分は減るでありましょう。輸入が減ります。したがって、今の貿易の黒字拡大するはずであります。もし拡大が本当にできるならば、景気の下支え要因になります。そして、我々にとっては大変好ましいことになります。  ところが、相手の国にとりましては、これはなかなか大変なことなのであります。既に東南アジアは従来とは変わりました。しかし、今でもなおアメリカはたくさん買っていてくれます。おかげでこの状態が続いておりますけれども、我々がさらに輸出をふやし、輸入を減らした場合、相手の国の輸出入、貿易のバランスはより悪くなるでありましょう。赤字がふえるでありましょう。それでもなおかつ今の為替相場のままでいけるだろうか、この問題が出てくる可能性があると私は恐れております。  これだけ大きな黒字国の円が比較的弱い方向へ行き、膨大な赤字を抱えているアメリカのドルが強い方向へ行くということは、我々にとっては、目先の景気にとっては大変望ましいことであります。ありがたいことだと私は考えています。しかし、これが本当に続くだろうかということを考えてみますと、そういう段階での変化が我々にはマイナス方向の変化になる可能性がある。  したがいまして、財政構造改革をやるということは一体どれぐらい大変なことか。これは私は繰り返して申し上げますけれども、我々国民生活を含めまして、経済的に猛烈なマイナスになる、だけれどもやる、そういう覚悟は必要なんだ、こういうふうに考えております。
  37. 中北徹

    中北公述人 私は、鈴木博士のお話と基本的に同意見であります。総理の公約のうちフリーとグローバルというのは、これはもう基本的に市場の力で進行していくのだというふうに考えております。  日本が一番努力しなければならないのは、フェアネスだ、公正さの担保である。それは、金利、手数料のカルテル、いろいろありますが、それから透明性の問題、そして税の問題にも及んでいくというふうに思っております。日本が最も力を入れ、政治家の方々が関心を持っていただきたいのはフェアネスだ、それを結実させていくのが、担保していくのが金融サービス法ではないかというふうに私は思います。そのような意味では、ディスクロージャー、情報の開示、それから訴訟をするためのきちっとした手続、これを明瞭に定めていただくことが重要ではないかというふうに思います。  私、先月、アメリカのSEC、証券取引委員会に行ってまいりましたけれども、彼らは金融保安官ということで、もう草の根の足場というのを盤石なものを持っていて、とにかく、正直者が絶対ばかを見ないようなきちっとしたマーケットをつくる、高潔なマーケットをつくる、そのためには、一にも二にも三にもディスクロージャーだということを強調されました。  私は、ぜひこれを指針にして、そして監督機関が強い担保を持ち得るために、調査権、摘発権というものをぜひ制定することを検討していただきたいというふうに考えております。交通違反は野放しにするのではなくて、きちっと取り締まらないと法規は遵法されません。それと同じことだというふうに思います。
  38. 斎藤精一郎

    斎藤公述人 では、簡単にお答えします。  おっしゃるとおり、先に玄関先のごみを片づけてから未来への歩みをやる。そのごみをちょっと置いておいたままやっちゃったら、ごみの方が腐ってきちゃって、慌てて後ろを振り向いたら、もう大変なものになっている。そのうちの住専だけ片づいたけれども、もうちょっと大きなのがあった、ゼネコンがあったということです。  基本的には、問題の根幹というのは、九五年の四月、六月の大蔵省の通達、それから十二月の金融制度調査会の答申というので、いわゆる不良債権の処理、ごみ処理を先送りしたのですね、二〇〇一年三月と。例の有名な、ペイオフを行わないと。  それで、大蔵省のことは、先送りだとか隠ぺいばかりということでいろいろ非難されているわけですが、ここで一つ重要なのは、金融制度調査会という審議会が行ってきた一連の、そういう先送り行政について何のチェックもできなかったという点は、やはり厳しく、一度きちっと国会の場で議論すべきではないか。  僕は、金融制度調査会と直接関係していませんが、一度、九二年のとき、例のディスクロージャー委員会というのに入ってくれと。大蔵省としても、多少異論を言う人を入れておかないとぐあいが悪いと思っていたのでしょう、内輪ばかりでやっていると。  そこで僕は、行きまして、ディスクロージャーというのは今やもう当たり前なんだ、九二年、もうバブルの崩壊がわかっていて、金融機関はみんな資料を表に出せ、オープンにすべきだ、同じ上場をしているのに、地銀と都銀とが基準が違うこと自体が大体おかしいわけですからと言うけれども、そういうところで議論をしても、皆さんがおっしゃるのは、それは机上の空論としてはもっともだけれども、そんなことをしたら地方銀行はつぶれるのじゃないかと。そういうことで、結局みんなでもみ消すのですね。全員でもみ消しますから、僕は、もう途中でやめて、それ以来大蔵省の委員会には出ないことにしています。  そういう面では、不作為といいますか、そういうことで不良債権の先送りをみんなしちゃった結果、六千八百五十億円の住専でみんな驚いたのですが、今度は三十兆、もう今は、国民はみんな驚かないといいますか、ぼおっとしちゃったわけですね。なぜ六千八百五十億円が急に三十兆円になっちゃうのか。これはもっと前に、九五年以前に片づいていれば十兆円以内で軽くおさまったと思います。  しかし、問題は、もう今そんなことを言ってもしようがありませんから、この残っている不良債権を何とか処理しなきゃいけません。それをどうするか。  今回の十三兆の使い方がちょっと不透明なのですが、もちろん一見貸し渋りということになっていますが、本来、貸し渋りの根本策は、金融機関の体力をきちっとして正常化することである。ということは、今ある不良債権をできるだけ早期に処理することだと思います。  一千万円の預金保険を発動するということ、ペイオフをするということが二〇〇一年三月というふうに決まっちゃっています。そしてビッグバンも二〇〇一年三月になっていますし、九九年末には株式の手数料が自由化してしまうわけですから、二〇〇〇年に入ると、二〇〇一年度からはビッグバンとかあらゆることが本当に動き出してしまうわけですから、九八年度、九九年度のうちにある種の不良債権の処理のめどをつけておかなければいけないと思うのです。  それを各銀行に任せておくと、これまでの経験で、結局あいまいな自己査定をする。何となく問題債権というものの範囲がわからない。例の拓銀と北海道銀行の合併がうまくいかなかったのは、北海道銀行が拓銀の恣意的な不良債権区分を見て、びっくりしちゃって逃げ出しちゃったわけですね。そして、今、北洋が拓銀とやっておりますけれども、やはりその区分の仕方が非常にあいまいなんですね。ですから、僕は、こういうあいまいのままだとなかなか不良債権はなくならないと思います。  そこで、むしろちゃんとした中立的な調査委員会をつくって、そこが一斉に短期間、三カ月くらい集中的に全部の金融機関を調べて、そして不良債権分類、一分類の正常債権、懸念債権、要注意あるいは問題債権、破綻債権、四つくらいの分類に中立的なところがきちっとある基準で、明快なルールで分ける。そしてそれについて、例えば破綻については二年間で一〇〇%償却をする、それから問題債権については七五%、それから、ちょっと懸念のあるのは三〇%か四〇%、それはいろいろとあるのですが。そういうことで、二年間で基本的に処理するということを義務づける。  それによって債務超過になったところは十七兆の方でうまく処理をして、二年間で資本がどんどん減耗して、しかしまだ債務超過になっていないところに資本注入をするという形で、きちっと客観的に、恣意性と裁量性、行政の裁量性と金融機関自身の今までの隠ぺい体質からくる恣意性、やはり経営者というのは自分のあらを出すのを嫌がりますから、自分が首になったり、責任を問われたり、退職金を取られたりするとやはり嫌ですから、できるだけ不良債権を少なく見せようというのは当然だと思います。  しかし、そんなことをやっていると、なかなからちが明かないで国民経済が苦しむだけですから、そういう面で、二年間で不良債権のおおむねを処理するという客観的な基準を中立的な委員会で決めて、そこで十三兆円をうまく使えば、あと十七兆あれば、あるいはもっと必要な場合は出すべきだと思うのですが、そういう形ですることによって早くごみ掃除を終えて、ビッグバンに向かう態勢ができる。そうすると、今度はバッファーで使う財政資金も多少少なくて済むし、財政負担もずっと楽になるのではないか。それを二年間のうちにやらなければいけないというふうに思います。  以上です。     〔石川委員長代理退席、委員長着席〕
  39. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 あっという間に時間がなくなりまして、一回ずつしか質問できなくて残念でしたが、一言。  水谷参考人に、また機会があれば述べていただければと思うのですが、おっしゃるように、貯蓄・投資バランス上は所得水準は落ちていくのですね。そうしますと、経常収支の黒字拡大の圧力が非常にかかる。そのことは、グローバルに見て世界経済とどうやって調和がとれるのかというところに最大の問題点がありますね。日本は、世界最大の対外資産超過国、世界最大の黒字国、世界で二番目のGDP生産国。これがどうやって調和がとれるのだという点について、ぜひお聞かせいただければと思います。  どうもありがとうございました。
  40. 越智通雄

    越智委員長 次に、春名直章君。
  41. 春名直章

    春名委員 日本共産党の春名直章でございます。  お三方には、貴重な、示唆に富んだお話を本当にありがとうございます。  まず、中北公述人にお話をお聞きします。  十兆円の公共投資中心の補正予算との関連の話の中で、冒頭ですけれども財政支出拡大は思ったほど景気の浮揚をもたらしていないという旨の発言をされたと思います。そこで、その要因はどういうところにあるとお考えなのか、まず中北公述人からお聞かせください。
  42. 中北徹

    中北公述人 私は財政を専門にしておりませんので、いささか素人的な面もあると思いますが、経済学者の責任において私見を申し述べます。  私は、これまで累次にわたりあれほど財政投入をしてきたにもかかわらず、本当に目立った景気浮揚効果が出ていないというこの事実関係を、もっと虚心坦懐に受けとめるべきではないかというふうに考えております。  もちろん、私とてケインジアンを全く否定するわけではありません。当然カンフル剤としての効果はあるわけでありますが、恐らくもっと経済的な構造変化というものもあり得ましょうし、人々のセンチメント、経済に対する非常な悲観的な見方というもの、こういったものが財政効果というのをうんと押し下げているのではないかというふうに思います。  すなわち具体的には、この前半は、貿易等海外へ所得が流出してしまった分、それから企業支出が非常に低下している。それから、いよいよこの局面に来まして、今は消費者の財布のひもが非常にかたくなっていて、消費性向が極端に下がっているというところ、この辺は事実関係としてやはりきちっとチェックしておく必要があるというふうに思います。  しかし私は、中長期的には構造改革につなげる財政改革というのは必要でありますので、短期の問題も重要だけれども、中長期の観点から世界標準に沿った財政構造の見直しというものをしていただきたい。  すなわち、法人税の世界的なレベルをにらんだ引き下げ、他方において、もし一たん赤字がふえましたら、それをむしろ圧力にして歳出構造の徹底的な見直し、そういった二段階財政の再建というのをぜひ検討いただきたいというふうに思っております。
  43. 春名直章

    春名委員 ありがとうございました。  水谷公述人にお伺いします。  先ほどのお話の中で、今後の日本経済は右肩下がりになるのではないかという認識をお話しになりました。昨年成立した財政構造改革法は、二〇〇三年度、平成十五年度ですけれども財政赤字のGDP比を三%以下にするということを目指して成立したものです。ところが、その前提となっているのが、名目経済成長率を三・五%というふうにしております。それから、仮にそうならなくても、一・七五%の場合というのも想定されていまして、その際、歳出削減はさらに二割強増強しなければならない、こういう予測が出ているわけです。  公述人のお話を聞いておりまして、この政府の見通しそのものがどうなのか。見通しそのものが余り信用性がないのではないかというふうに思わざるを得ないわけですが、公述人の御意見を伺いたいと思います。
  44. 水谷研治

    水谷公述人 先生の御指摘の点、あるんじゃないでしょうか。私は、これから名目成長率が三%あるいは一・七五%というのは大変難しいのだと思います。もし、財政再建をやらなくて、ここで景気振興をやれば別かもしれません。それでも難しいかと私は考えております。  というのは、一たん上げることは可能です。しかし、翌年はマイナスになります。上がっただけのマイナスになる。それを横ばいにさせたら大変な借金の増大になる。それが一体可能なのかということを考えますと、実は、財政再建をやった場合には相当景気が悪くなる。その結果、収入も減る。それを考えた上での計画でないと現実的ではないのではないか、このように考えております。
  45. 春名直章

    春名委員 ありがとうございました。  続いて、中北公述人斎藤公述人、お二人にお伺いします。  今の不況の最大の要因の問題と、その手だての問題についてです。  私どもは、消費税五%への増税、医療保険の改悪による負担増、特別減税打ち切りによる九兆円の負担、これが昨年、覆いかぶさりまして、GDPの六割を占める個人消費を大きく落ち込ませてきたということが大きな要因になっていると考えております。実質可処分所得が、九七年四月から十二月を見ますとマイナス〇・七%と落ち込んでいるというような姿にも、そのことがあらわれているというふうに思います。  この消費不況を解決するために、私は、特別減税の継続も必要だと思いますけれども、特に消費の拡大を直接図っていく効果的な力として、消費税の五%から三%への引き下げ、これが非常に大事ではないか。実質五兆円の購買力を追加することにもなると考えております。  そういう点について、御意見をお二人に伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。
  46. 中北徹

    中北公述人 先ほど消費性向が極端に下がっていると申し上げましたけれども、これは恐らく石油ショック以来の、非常になぞの現象と言わざるを得ないぐらい下がっているわけであります。  消費が一体どういう形で決まるかというのは、実は大変難しい点がありまして、今このように消費性向が下がっているわけですから、単純に、所得がふえればそれに比例して上がるという保証は必ずしもないかもしれません。しかし、あの昨年四月の可処分所得の政策的な減少というのは、やはり景気に対して大変ダメージになったということは、私も同意見です。  いずれにしても、私は、小さい政府をつくるという観点から、税率を下げていくということは基本的に重要だというふうに考えております。その点で先生の意見には同意できるかというふうに思っております。
  47. 斎藤精一郎

    斎藤公述人 お答えします。  先ほど申し上げたとおり、私は、今回の九〇年代に入ってからの景気全体の停滞現象の根因は、資産デフレ、これは戦後初めてだと思いますが、その逆資産効果と、それから、いわゆる貸し渋りという資産デフレ特有の効果がきいているのと、あと一つは、グローバリゼーションが急速に起こってきている。これはプラス面とマイナス面といろいろあります。今アジアで起こっているのはマイナス面で、グローバルデフレーションという形で、日本企業、金融に新しいデフレ圧力がかかってきている。  これを突破するには、もちろん、その状況の中で、この間の九七年春の九兆円の国民負担増というのは明らかにマイナスになりましたから、それをもとに戻すために、十兆円規模の、復元効果といいますか、減税をする。消費税についてはむしろそうではなくて、所得税、住民税の方がいいのではないかと思うのです。消費税は五%にしておいて、十兆円規模の所得税減税をするとか、そういうコンペンセートは必要ですが、それによってもようやく水面上に上がる程度であって、経済が自律力を持つには、根因である資産デフレの根っこを早く断ってやってしまう。アメリカは事実上三年間でなくしてしまいました。かなり思い切ったリーダーシップが必要ですが、それがないと、市場の爆発で、いわゆる金融パニック的な状態で、ハードランディングになると思います。そういう形で決着がつくか、それはよくわかりません。軟着陸のシナリオはほとんどもうなくなっているのだと私は考えていますけれども、資産デフレを早く終わらせること。  それから、グローバルデフレーション。これはまたもうちょっと長い。恐らくアジアの停滞は、まだ三年から五年続くと思います。そういう中でどうやっていくのか。これは日本だけの問題ではありませんから、ここが非常にきついと思います。  ですから、一般的に、ケインズ的な需要デフレだったらば需要喚起策で十分なんですが、もう需要喚起策ではどうにも動かない、そういう構造的なデフレ過程に入っているという認識で、そしてどうしたらいいのか。むしろ、失業を吸収するようなバッファーをつくるとか、社会政策的な要素で国民に安心感を与える、あるいは地域政策、そういったことの方がむしろ必要で、マクロ政策はもう余り意味がないのではないかというふうに私は考えます。
  48. 春名直章

    春名委員 ありがとうございました。  最後に、水谷公述人に伺います。  国民の懐を暖かくする方法としての減税のことに少しお触れになったと思います。それで、二兆円の特別減税で、一回こっきりという批判もあるわけなんですが、これで十分なのか。私たちは、これをさらに継続することが必要だというふうに考えておりますが、そのあたりの御意見を伺いたいと思います。
  49. 水谷研治

    水谷公述人 減税をすれば国民はうれしいです。懐が暖かくなった方がいいのです。これはわかっています。今の国民にとって、減税は最も人気のある政策であります。  しかし、その結果として、その分だけ赤字が出ます。取りやめたら、せっかく上がった経済水準は下がります。せっかく上がった生活水準を下げなければいけないのであります。したがって、上げたらそのままにしておきたいといいますと、赤字がそのまま続きます。赤字の分だけ、借金の上乗せが毎年続くのであります。  果たしてそれで将来の国民は納得するでしょうか。今の国民は大賛成です。しかし、将来のことを考えると、我々は耐え忍ばなければいけないのではないか、私はそう思っております。
  50. 春名直章

    春名委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  51. 越智通雄

    越智委員長 次に、上原康助君。
  52. 上原康助

    ○上原委員 社民党の上原です。  三名の公述人の先生方、きょうは大変御苦労さまです。時間が大変限られておりますので、私は素人ですが、まず、水谷公述人にお尋ねをさせていただきたいと思います。  若干重複する面もあるかと思うのですが、先ほどの先生の御意見というか公述を聞いて、要するに、財政面においても、経済においても、国民生活においても、質の転換を図る、そういうふうに私は受けとめました。そこで、そのための全般的な構造改革をやっていく上で、御指摘がありましたように、財政改革景気浮揚対策というか景気対策は、ある意味では並行して進めなければいかないわけですね。しかし、一面には、もう今景気が悪いから凍結すべきだという指摘もまた強いものがあります。  そういう点を含めて、国民生活あるいは日本構造改革をやっていく上の質の転換を図る財政のあり方、あるいは、それとある面では矛盾するような感じもしないわけではありませんが、景気対策を、今政治の重要な課題としてどのように進めていかれたらいいのか、もう少しわかりやすくお聞かせいただければと思います。
  53. 水谷研治

    水谷公述人 私は、基本的に、財政改革景気振興とは矛盾すると思っております。矛盾しない部分も多少あるでしょう。それはどんどん実行した方がいいです、矛盾しない限り。しかし、その場合の効果といいますと、財政構造改革はちょっぴり達成されるだけです。そして、景気振興もちょっぴりなされるだけ。それで両方満足はできないと思います。  財政構造改革は、徹底してやらないと成果は上がりません。一方、景気を本当に振興しようとしますと、相当財政を犠牲にしないと景気はよくなりません。日本経済というのは巨大であります。そして、このデフレギャップは物すごいのであります。ちょっとやそっとのことでは景気はよくならない。したがって、どちらをとるかというのは考えざるを得ないと思います。  その場合、我々は、今をとるか、将来をとるかということではないでしょうか。今をとるなら景気振興です。そして将来を犠牲にするのです。やむを得ません。しかし、そういうことを我々はずっとやってまいりました。これからも続けるのでしょうか。私は、もう転換すべきだ、根本から変えるべきだ、今我々が、景気が悪くなって生活水準が下がっても、やはり将来の国民のことを考えてやるべきではないか、このように考えております。
  54. 上原康助

    ○上原委員 もう少し議論といいますかコメントを申し上げたいのですが、時間の都合がありますので、次に、中北公述人に一問お尋ねをさせていただきたいと思います。  金融ビッグバンを成功させるための市場インフラの整備が必要、同感でございます。また、金融監督庁の設置は既になされる方向で進んでおりますし、スタッフの確保と検査機能の強化というのが非常に必要だ。日本の金融不祥事というものも、そういった監督機能あるいはそれを推進するスタッフの権能、権限というものが、数を含めて弱かったゆえに今日の事態が起きている。もちろん、それだけではなく要因はいろいろあります。  そういう意味で、金融検査官の適正人数であるとか、一千人とかいろいろありますが、当面どのような市場インフラの整備を具体化していくべきなのか。また、金融検査官にはどういう機能、権能を与えるべきなのか。もう少し参考にしたいと思いますので、お聞かせを願いたいと存じます。
  55. 中北徹

    中北公述人 私は、これは大変重要な問題だと思っておりますので、本当に、委員会をつくって検討していただくぐらいの取り組みが必要ではないかというふうに思っております。  すなわち、単に監督庁に今の金融検査機能を移すというだけでは、まさに看板のかけかえになってしまいます。私は、やはり検査官の機能をうんとグレードアップしていかないと、今の金融革新に、そして世界の水準に追いついていけないというふうに思います。  他方において、ニューヨーク、ロンドン、それからシンガポールでは、専門家の集団というのが形成されつつあります。すなわち、いわゆるプラクティショナーといいますが、弁護士、公認会計士、そういった関係者が、しかも日々、マーケットの中でいろいろノウハウを蓄積し、データをとり、議論しながら、専門家集団をつくる。そして、モルガン銀行やメリルリンチのような、そういった金融機関は抱え込んでいるのですね。また、そういう方が検査機関の方に横滑りしていくということになっておりまして、一つの専門家の労働市場ができております。  これは、基本的に労働市場の整備の話になってきます。  そのためには、やはり検査官にもっと誇りと自信を持っていただけるように、公的な資格を与えるとか、あるいは国がきちっとした形で検査官の訓練所をつくるとか、そういった形で抜本的な取り組みをしていただく必要があるというふうに思います。単に数を五百人から千人にふやすというだけでは、もうにっちもさっちもいかないというふうに思っています。  すなわち、ここまで来ますと、役所と金融機関との間は、本質的にはもうプロの世界です。そこをどう遮断するかというのは、ある意味で私は、第二次的な問題だというぐらいに思っております。そういうことで考えております。
  56. 上原康助

    ○上原委員 大変ありがとうございました。  最後に、斎藤公述人にお尋ねさせていただきます。  低金利政策の是正については、予算委員会を通して相当議論をいたしております。しかし、公定歩合問題を含め、今是正をすると、かえっていろいろな障害というか問題が生ずるという意見等もあって、なかなか容易ではないような気がします。  そこで、先ほど先生の御指摘で、時期を失した、これは中北先生もそういう御指摘だったような感じがしますが、私は、いずれにしても、特に年金生活者であるとか低所得者層の方々が、より消費マインドを抑えている、あるいはそれがなかなか出てこないというのは、低金利政策も相当インパクトを与えて、悪い影響を与えていると思うのですね。  そういう意味で、しからば、いつ、どのような条件が整えば、もちろんアジアの金融問題、経済問題、いろいろ関連すると思うのですが、可能なのか。私はやはり、公定歩合問題を含めて、低金利政策というものはそろそろ改定をすべきだと思うのですが、その点について、もう少し御意見を賜りたいと思います。
  57. 斎藤精一郎

    斎藤公述人 九五年の九月に、円高是正ということで、公定歩合を一%から〇・五という、日本銀行がまさに清水の舞台を飛びおりるつもりでやった。日銀も当時はせいぜい一年と思っていたけれども、結局、九六年の九月、選挙の前ということもあってできなかったわけですね。  その後、いわゆる阪和銀行の問題とか、その後になると日産生命あるいは拓銀、日債銀問題、そしてゼネコンが去年の七、八月に三社倒れるという形で、結局、何回も申し上げていますけれども、不良債権を処理すべきなのをそのまま先延ばしにしてしまった。それで、景気がよくなって地価が上がって、不良債権問題は片づくとみんなが思ったわけですね。ところが、景気の勢いというのはそんなに強いものではありませんから、財政が昔みたいに大盤振る舞いで出られない、公定歩合も〇・五以上なくなってしまうと、経済はやはり下に落ちてきてしまって、そうすると、不良債権の黒い血がまた出てきてしまう。  そういうときにはむしろ下でバッファーしなければいけないから、財政を多少、今補正であるように緩めなければいけない。その緩めているときに金融政策を引き締めると、これは世界の常識といいますか、G7の世界の中では、また変な国日本だという話になると思うのですね。財政でてこ入れをしているのに金融で締めている。つまり、暖房をしている部屋で扇風機をかけているようなものですから、ちょっとわけがわからない、何を考えているかということで、これはかなりマーケットが混乱をする。あるいは、アジアの問題がちょっとわからない。それからゼネコンの問題がまだ残っている。そうなると、やはり雇用問題が特に出てくるのではないでしょうか。  ですから、この一年でもいいですから、やはりできるだけ早く不良債権をある程度めどをつけてしまう。今の金融機関が持っている担保不動産で、処分しているのはまだ二割なのですね。八割が残ってしまっています。これがあと四割ぐらい、半分ぐらいがはけた段階だったら、公定歩合を上げても構わないと思います。  しかし、もうちょっと売却をさせなければだめですね。というのは、不良債権処理です。みんな処理したいんだけれども、何となく、また資本が減ってしまうのではないかとかいろいろなことで、そして、今回の資本注入もそういうことで不良債権処理に進むはずなんだけれども、どうもそういうようなやり方で審査はやっていませんから、やはり先送りになってしまっているのですね。  ですから、今回の十三兆の問題、三十兆の問題、公定歩合の問題、あるいは今度の補正の問題も、みんなリンクしていると思うのですが、その辺の整合性が、今ちょっと私が外から見ていると、与党・政府にはないのではないかということが一番危惧しているところです。  以上です。
  58. 上原康助

    ○上原委員 ありがとうございました。時間ですから終わります。
  59. 越智通雄

    越智委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  午後一時三十分から公聴会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十五分休憩      ————◇—————     午後一時三十分開議
  60. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  平成十年度総予算についての公聴会を続行いたします。  この際、公述人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  公述人各位におかれましては、御多用中にもかかわらず御出席を賜りまして、まことにありがとうございます。平成十年度総予算に対する御意見を拝聴し、予算審議の参考にいたしたいと存じますので、どうか忌憚のない御意見をお述べいただきますようお願い申し上げます。  御意見を承る順序といたしましては、まず本間公述人、次に高木公述人、続いて近藤公述人の順序で、お一人二十分程度ずつ一通り御意見をお述べいただきまして、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  それでは、本間公述人にお願いいたします。
  61. 本間正明

    ○本間公述人 新年度予算につきまして公述の機会を与えていただきましたことに、感謝を申し上げたいと思います。  昨今、新年度の予算につきましては、景気の関連とあわせまして非常に毀誉褒貶があるということは十分承知いたしておりますが、第一番目に私が強調いたしたいことは、まず、新年度予算は、予算編成の手法といたしまして、恐らく、後年から振り返ってみますと、歴史的な予算編成であると評価されるというぐあいに私は考えております。  各国とも、財政構造的な赤字景気の調整という問題にこの十年間非常に悪戦苦闘してきたというのが現実でございまして、日本もまた九〇年代に入りまして構造赤字が出現する中で、バブルの後遺症という流れの中におけるジレンマをどのように克服するかということは、財政運営にとっては非常に重要なポイントであろうと考えております。  このような事態にありまして、我が国が新年度の予算におきまして、財政構造改革法に基づいて、いわばフレームを固めた上で景気対策の問題に対して裁量的に対応するという手法を明示的に出してきたということは、遅ればせながら、国際的に見ても通常のアプローチというものが採用されたものだと私自身は考えております。  今この問題を考えますときに、財政のフレームをルール化するという縛りと、景気の動向に合わせて裁量的にこれを運営する、これをどのように組み合わせるかという問題が非常に悩ましい問題でございます。そのルールと裁量のはざまの中で各国がどのように進んだかということを申し上げますと、裁量の流れの中でやってまいりますとどうしても財政が放漫になり、財政構造改革というものが後ろ延ばしになるというのが実態でございまして、各国とも、まずフレームというものを徐々に具体化をしてきつくつくるという方向に流れてきたというのが実態でございます。  日本財政構造改革法におきましても、マクロ的にGDP比赤字三%というフレームと、それから、各歳出に対しまして項目ごとにシーリングをかける、このようないわばキャップ制、さらには、ある歳出を増大させる場合にはほかの同一項目の中における歳出をカットするというペイ・アズ・ユー・ゴー原則、利用時支払い、こういう縛りをかけていくのが常套手段でございまして、新年度の予算におきましては、この国際的なスタンダードのやり方を日本のフレームの中に持ち込んだという意味では画期的な予算であるというぐあいに私は考えております。  しかし、どこの国でもそうでありますように、ルール化したこのフレームというものが、その時々の経済情勢に対してどのようなかかわりを持つかということは常に問われることでありまして、期間でございますとかあるいは各論の縛りの仕方でありますとか、そのような部分について経済の指標との中で連動させるという考え方が出ておるということも事実でございます。私自身は、今後の景気動向の中で、いろいろな御議論が出ようかと思いますけれども、このルール化されたフレームと、裁量的な、政策的な対応というものを臨機応変に組み合わせていくということが恐らく今後求められてまいるというぐあいに考えておりまして、これはある意味では当然のことでございますので、この枠組み自身の功罪を余り形式的にこだわって議論するのは意味がないことだということを強調いたしたいと思います。  これは政策当事者が万能な神でない限り、しかもグローバル化の景気動向の感応度の早い経済に対して、人知が常に事前に対応できるというぐあいに考えるのは愚かなことでございまして、その意味において、まさに知恵の出しどころが、このフレームを基本に守りつつ今後の経済動向の中で知恵を出すということが私は求められているのだろうと考えております。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕  第二番目に、後世から画期的と言われるゆえんは、財政構造の縛りのかけ方でございます。  今申し上げましたように、日本財政構造というものは、恐らく三つの点において構造改革というものを実現しなければならないと私自身は考えております。  一つは、硬直化した縦割り型予算の配分というものが国民のニーズとの対応において大きく乖離し、ミスマッチが生じてきた。この硬直的な予算編成をいかに是正していくか、こういうことが第一点でございます。  第二点は、これまでの行政手法の対応が時代の変化の中で陳腐化をし、専門能力において実は行き詰まっている状況、これは行政効率の観点から、新たな角度からマネジメントを革新していく必要があるという、こういう内部的な問題でございます。  さらには、この財政構造改革の最も大きな点でございますけれども、現在、財政構造国民に対して約束をしている歳出構造、とりわけ義務的経費が高度成長下の時代の流れの中で持続可能ではなくなっている。こういう構造的な問題に対して、このミスマッチをどのように経済整合的なものに直していくかということ、これが現在財政構造改革の長期的な意味合いにおける最も肝要なポイントでございます。  御高承のとおり、実は財政を、社会保障の年金、医療、介護等をこのまま約束している給付を実現する、さらには、ほかの歳出を今までと同じようなトレンドの中で延ばしていくということになりますと、国民負担率というものが極めて増大をし七〇%にも達するような、そういう大きな政府が実現するということは目に見えているわけでありますし、現在の歳入の構造をそのまま延ばしてまいりますと、高齢化のピーク時である二〇二五年時期におきましては、五三、四%ぐらいの水準でございますので、差し引き財政赤字国民所得比で一七、八%にも達するような事態を国民に対して過大に約束をしている。  そういう状況をどのように経済整合的な形に直していくかということが今問われ続けておるわけでございまして、この三つの財政構造改革の課題に対して、我々現世代の責務といたしまして、きちんと負担と受益という観点からこれを見直しながら、財政のあり方というものを真剣に議論をするということが今求められている点であろうと思います。  この点につきまして、新年度予算におきましては、大きな質的な意味においての改革、改善というものが組み込まれているというぐあいに私は考えております。  第一番目の点でございますけれども、これは社会保障関連等において、実は医療費、年金等における約束した歳出をカットする、あるいは合理化するという形での手順を新年度の予算は組み入れたということでございます。これは福祉の切り捨てというような矮小化された問題ではございませんで、払い続けられるかどうかという整合性の観点から、ペイ・アズ・ユー・ゴー・プリンシプルと申しまして、利用時支払いの原則というものを考え方の背景に持って、医療費あるいは年金等の問題を、国民に内容をプログラム化して選択の余地を与えていくという道筋をここにおいて取り入れたということは、私自身は高く評価されるべき提案であるというぐあいに考えております。  第二番目の問題は、これは公共投資等の裁量的な経費に対する扱い方というものを、シーリングをキャップ制という形でかけたということでございまして、御高承のとおり、マイナス七%というフレームの枠を与えて、従来型の公共投資に対して、それぞれの個別のシェアというものが現状では変えにくい現実を前提にして、全体の中において国民生活に役立つ、かつ生産性の向上に寄与する、そういうような絞り方をいわば財政のフレームとしてのキャップ制でかぶせたということでございます。  もちろん、この点におきましては、景気調整との関連において問われる部分があるわけでございますけれども、私は、従来型の公共投資日本国民生活の豊かさ、あるいは日本経済のファンダメンタルズの強化に対して大きく寄与しているというぐあいには、現状の配分比率の中では全面的にこれを認めるという立場にはございません。非常に多くの問題点がこの単価、配分も含めてあるという現状を考えますと、既存の公共投資配分に対して、枠組みとしてのシーリングキャップ制をはめるということは、これは十分意義のあることである。  もしそれを今後の経済動向との絡みにおいて公共投資を考える場合には、国民が十分に納得するような合理的な決定というものを国民の前で見せるということが必要なわけでございまして、財政構造改革というのは、実は裏側では経済構造改革と密接に関連をし、決して社会保障的な、地域を食わせるようなものであってはならないというのがタックスペイヤーからの恐らく要求ではないかと考えております。  社会保障的な地域振興と、国民が安くてしかも効率的な社会資本を要求するというジレンマを今ここできちんと意識をして、将来につなげるような公共投資配分をいかに実現していくかということが、景気対策の時点におきましても厳しく問われる課題なのだろうと私は考えております。  こういうように、社会資本と社会保障政策における二つの道筋を与えたわけでございますけれども、もう一つ、総予算の中では、財政投融資に対する取り組みということも見過ごすことができない大きなテーマでございまして、これも昨年来いろいろな議論がございましたけれども、この財投に対する資金の効率的な運用についての準備的な対応というものもとられてきておるということもございますし、あるいは公共投資、財投の効率的な運用という観点に対して、最近、各国で公的なマネジメントの革新という問題が非常に強く叫ばれておるというのが実態でございます。  日本だけではございませんで、歳出を決定するいわばエキスパティズムあるいは利権的なもの、政治的な思惑による硬直的な配分というものが国民のニーズに合わない状況をどのように科学的にマネージするかということが問われているわけでありますけれども、このニュー・パブリック・マネジメントの考え方の萌芽がこの予算の中には芽生えている。コストベネフィットの入れ込みの問題でございますとか、あるいはアセスメント、時のアセスメントという言い方もいたします。時だけではなくて、その中身について、事後的にも検証しながら、これまでやってきた歳出構造中身についても見直すような状況というものがついてきているというのが、これが私は質的な面で言えば評価をされるべき点であろうと考えております。  しかし、いろいろな形で議論されておりますように、昨年来からの急激な負担増及び歳出の絞り込みの中で、景気動向というものが極めて危惧すべき事態であるということも十分に理解できるわけでございまして、これに対して機動的な対応というものも恐らく今後の政策論議の中では出てき、そのことが財政構造改革とどのように整合的な形で実現をしていくかという問題とあわせて、中身が問い直されてくる部分があるのだろうと私は思います。  日本予算における最も重要な難点は、一般会計の当初予算については極めて熱心に議論をいたしますけれども、その後の対策がアドホックベースで行われて、効果の面においても負担の公平の点においても十分に検討されずに、その時々の情勢に流されるということは、私は、日本財政運営を考える際に非常に重要な指摘すべき点なのだろうと考えております。  これにつきましては、先ほど冒頭で申し上げましたように、ルールとしての財政構造改革法のフレームと裁量的ないわば政策対応の効率性というものを両立させながら、択一的な行財政改革景気対策ということではなくて、行財政改革イコール景気対策としての方途を知恵を絞って実現していくということが求められる。  その際に、肥大化をし大きな政府という視点から、やはり効率的で小さな政府を志向するということ、さらには、優先度を考えますときに、景気刺激の効果のみで議論をするということではなくて、構造改革に対して、その政策的対応がどのような効果をもたらすかということを十分に精査しながら、矛盾のない財政運営というものが問われる。  これは、後世代はまさに発言する機会がございません。どうしても目先の利益だけが、現在の人々の所得の向上だけが実は議会に反映されるという一般的な傾向を意識しながら、どのように後世代との調和を図っていくかということが問い続けられる難問なのだろうと私は思います。しかし、この難問を解くことが現世代に課せられた大きな責務だろうということを強調いたしまして、私の公述を終わらせていただきたいと思います。  以上でございます。(拍手)
  62. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 ありがとうございました。  次に、高木公述人にお願いをいたします。
  63. 高木勝

    高木公述人 富士総合研究所高木でございます。  本日は、このような公述人としての機会をいただきましたことを、厚く御礼申し上げる次第でございます。  私は、この九八年度の当初予算を、現実的な視点からいろいろと分析させていただきたいと思っております。  現在の一番大きな争点は、やはり景気対策かあるいは財政再建か、大変古くて新しい問題ですが、いろいろ意見は多様化しておりまして、なかなか決着がつかない問題でございますが、財政構造改革の必要性というのは当然重要でございますし、特に中長期的な視点に立つ限りは、もう欠かせない点だろう。この辺においてはほとんど意見の一致が見られるのではないか、かように思っております。  既に、九九年三月末には国債の発行残高は二百七十九兆円、これ以外にも、地方その他を入れますと日本全体のGDPの五百兆を大きく上回るという、いかにも厳しい状況にあるわけですから、そういう意味では、今言いましたように、構造改革の必要性というものはいささかも減るものではないと考えております。  しかしながら、これは中長期的な話でありまして、当面の状況という点ではどう考えたらいいのか。いろいろな見方がございますが、短期的な見方においても、両者は両立するという意見もございますが、私はそうは考えておりません。ここ当面、あるいは九八年度というような点で考える限りは、これはもう明らかに両者は矛盾するのではないか。景気対策を重視すれば再建はその限りではややとんざいたしますし、その逆もまたそうであります。  しかしながら、現時点での経済状況を考えますと、昨今痛感いたしますのは、経済あっての財政再建だ、この点を忘れてはならないのではないか。財政再建あっての経済ではないということでありまして、仮に財政再建あっての経済であれば、これは本末転倒もこの上ない話だろうと考えております。  さて、そういう中で、私はエコノミストでございますので、最近の経済状況はどうなっているか、もう皆様御案内のとおりでありますが、相当厳しい状況に今突入しているのではないか、とても今財政再建とか構造改革を最重点に置けるような状況ではないということを私は強調したいわけであります。  余り統計的な話になってもいかがかと思いますが、私の目から見た経済は今どんな状況かということなのでありますが、極度の不振とここにも書かせていただきましたが、最近の生産動向を見ますと、二四半期連続で大きく前期比減少になっております。既に去年の十—十二月の段階で、一年前の十—十二と比べてもマイナス、生産は一年たって落ちている、こういう状況が見られます。  同様なことは機械受注、船舶、電力を除く機械受注でございますが、六カ月先の設備投資動向を示すと言われておりますけれども、こちらも、あれよあれよという間に数字は落ちてまいりまして、やはり二四半期連続、七—九、十—十二連続で前期比でマイナスになっている。設備投資もここへ来て急速に失速の状況に入っているのではないか、こういう感じがいたします。  それから、問題はやはり個人消費でありますけれども、最近出ました家計調査を見ると、驚くべき数字が連続的に発生をしている。特に、つい先般出ました一月の勤労者世帯の実質の個人消費支出は、これは前年対比でありますが、五・九%のマイナス。この数字は、私商売は長いのでありますが、エコノミストの視点からいうと余りにも異常な数字で、落ちに落ちた数字ではないか。特にその中でも気になりますのは、新聞報道でもなされておりましたが、消費性向がどんどん落ちているということなのですね。これは具体的には、消費者の心理が一段と暗くなっている。本当に、よくもここまで落ちたなというのが率直な感想であります。  これ以外にも、こういった状況を受けて失業率も、特に男性の失業率は、やはり一月でありますが、三・七%と今までにない最高の数字になっておりますし、企業の倒産件数も非常に目立っている。こういうことで、ちょっと簡単に整理させていただきましたけれども、現時点での景気というのは極めて厳しい状況に入っているのではないかと私は認識しております。  また、あわせて、金融システムの方も昨年の十一月あたりから極めて厳しい状況で、特に十一月には、大手の金融機関が連続的に破綻するという大変想像を絶するような動きがあったわけですし、その後も貸し渋り現象というのは程度は強まる。こういうことで、結果的には、景気の悪さが株価の下落等を通じましてまた金融システムの混乱にはね、その金融システムの混乱がまた企業経営者あるいは消費者のマインドを一段と暗くして、さらなる次の景気をまた悪くする。まさに負の連鎖が始まっているのではないかという感じがいたします。  こういった状況を考えますと、やはり経済あっての財政再建という視点に立ちますと、ここできちっと政策転換の必要性を国民の前に明示することが極めて重要ではないか。両立し得るといった意見その他もございますけれども、事態が今申し上げたようなことであれば、明らかに状況が変わってきているわけですから、そういう意味では、きちっと政策転換国民の前に提示し、提示した上に具体的な実施あるいは実行が必要ではないか、こう考えます。  そういった中で、この九八年度の当初予算を拝見いたしますと、これはそもそも、財政構造改革法というのが成立した後にこういった予算ができたこともありますし、今申し上げたような最近の経済情勢を必ずしも織り込んでいないわけですね。そういったことから、極めて緊縮型になっていると思います。特に、景気に及ぼす影響という意味では公共事業関係費が重要でございますが、九七年度当初比では七・八%のマイナス、九七年度の補正後対比ですと一四%を超えるマイナスということで、これもかなり緊縮な形になっているわけであります。  また一方、九八年度予算でもいろいろな項目での減税措置がとられておりますが、しかし、全体の合計規模でもわずか七千五百億円前後という減税規模にとどまっておりまして、こういった意味でも、経済最優先という視点から考えますと、極めて不十分な予算内容になっているのではないかというふうに私は考えております。  状況が変わってきているわけですし、一段と厳しさが強まっている現在、基本的には、財政構造改革法は成立していますが、やはり改正をする時期に来ているのではないか、このように私は考えております。  具体的には、アメリカも同様な法律ができて、その結果、現在は大変な財政状況の改善が見られるわけですが、経済の状況が極めて厳しいとき、あるいは昨今のように金融システムが非常に混乱しているというようなときは、これはまさに例外のケースとして、一時的にせよ、こういった財政構造改革法から離れることが必要であります。依然としてこれにとらわれますと、例えは少し違いますけれども、大恐慌後のアメリカのまさにフーバー大統領のような、ますます緊縮財政ということで、一段とその状況を悪くする。こういう過去の経験もあるわけでありますから、今こういった厳しい状況にある以上は、やはりひとまずストップして経済の回復に全力を挙げる、あるいは金融システムの安定化に全力を挙げるべき時期にあるのではないか、こう考えております。  ただ、現在は二〇〇三年度までを目標とした財政構造改革法というのがございますけれども、二年、三年延期するとかという意見もございますが、今現在ではそこまでは変える必要はないのではないか。昨今の厳しい状況を受けて、とりあえず財政構造改革法から離れる、一時休止をするというのでよろしいのではないか。今後仮にまた景気がよくなってくれば、二〇〇三年度までまだかなりあるわけですから、今の時点で延期というのもやや早計ではないかというふうに考えております。  さて、こういった財政構造改革法、特に弾力条項を入れる形で改正した後どうするかという具体的な提案でございますが、私自身は、個人的な見方として次のように考えております。  ここにも書かせていただきましたように、所得税減税についてはとりあえず五兆円程度にして、しかも、一年限りとか一回限りというのではなくて、個人消費がだれの目から見ても確実によくなったというときまで減税を続けるべきではないか、このように私は思います。  こういった議論の中で、最近は恒久減税にしたらどうかという議論もございますし、私も、将来的には税率の抜本的な見直しという意味での本格的な減税も必要だとは思いますけれども、しかし一方で中長期的な財政構造改革というのも捨て切れないわけで、今回はとりあえず特別減税という形でよろしいのではないか。もちろん、将来的には抜本的な税制改革所得税の面でも行う、こういうふうに思っております。  問題は、そういう意味では、今年度限りあるいは九八年度限りといったことはそもそも言えないわけでありまして、とにかく、個人消費がここまで落ちてしまっているわけですから、かなり改善をしたということの見きわめがつくまでは減税は継続すべきではないか。したがって、現時点では終期というのは読めないわけであります。  もう一点その際に重要なことは、一気に五兆円の減税をやめるということになりますと、九七年度に見られたように、またまた景気を大きく悪くするという心配もございますので、やめるときには二段階ないしは三段階で解消していったらいいのではないか、こう考えております。  それから、法人税につきましても、この九八年度予算では全体で三千三百億円前後の減税をすることになっておりますが、全体的な面からいきますと極めて不十分な内容ではないか。確かに実効税率は四九・九八%から四六・三六%に下がりますけれども、先進諸国と比べるとまだまだ高い水準にある。アメリカは現在四一%弱でございますし、イギリスは三一%前後であります。  そういうようなことを考えますと、国際競争力という点からも、いつまでも高い率で縛っていいということには当然なり得ないのではないか。所得税減税も同様でありますけれども、こういった直接税を余りにも高いまま放置しますとやはり経済の活力というのが当然損なわれるわけで、そういった視点からも、あるいは競争力回復という視点からも、私は、思い切って法人税のさらなる大幅な減税を図っていくべきではないか、とりあえず実効税率ベースで四〇%程度というのが一つのめどになるのではないか、こう考えております。  それから、有価証券取引税あるいは取引所税も九八年度の当初段階で半減されますけれども、ビッグバンが四月から始まるときに、半減されたとはいえ残されるというのは余りにも税体系としておかしな話でありまして、今後は速やかに全廃していく。アメリカにおいてもこういったものは現在ないわけでありますし、いつまでもこういうことをやることは、取引の活性化あるいは自由化、あるいはビッグバンが始まるというときにはまさに逆行する話ではないか、こう考えております。  それ以外にも、公共事業でありますけれども、最近は非常にむだが多いということもありまして、事実そのとおりだと思うのであります。やはりこれからは、予算の制約がもちろんあるわけでありますから、いかに有効な公共事業に絞り込んでいくか、また、それも将来的な展望に沿った公共事業かどうかというのが焦点だろうと思います。旧態依然の、単に量をふやすという時代はもう終わっているわけでありまして、そういう形ではなくて、やはり資金の使途を特定の分野に集中、特化していく、この点が必要だろうと思います。  そういった面では、最近もよく言われておりますが、情報通信とか生活関連あるいは科学技術関連を中心とした公共事業の追加を図る。私は、真水額で二兆円というふうに考えております。  減税の方は真水そのものでありますけれども、えてして、最近の議論でちょっと気になりますのは、やれ事業規模で十四、五兆円やるとか、あるいは十兆円以上という話が今回出ているようでありますが、事業規模というのはあらゆるものを寄せ集めているわけで、例えば融資規模を膨らませても、それは事業規模になる。しかし、全体の経済が悪いときにはなかなか実績ベースで融資残高がふえるという状況ではないわけで、こういったものを計算上オンした形で規模を膨らますというのも、必ずしも実態を反映していないのではないか。これからはやはり真水額できちっと議論していくべきであって、単にすべてを足して事業規模がどうだというのは余り有効な議論ではないのではないか、こう私は考えております。  さて、これは今後の予算審議についての私自身のお願いになりますが、こういったことを申し上げますと、結論的には、九八年度当初予算はいろいろな意味で問題が残っている。私の見方からすると、景気対策という点では、さっき言いましたようにまだまだ極めて不十分でございますし、また、むだな経費の削減という点でもいろいろと不徹底であるというようなことで、本来ならば、これから当初予算が成立するわけですから、思い切って書きかえあるいは組み替えをして、今申し上げたような対策を入れた上で予算をもう一回つくり、そして速やかに国会で可決、成立して、それを実施に移す、これがそもそも筋でありますし、理想的な姿だろうとは思います。  しかし、現実を考えますと、きょうは既に三月十一日、四月、いわゆる九八年度のスタートまであと二十日ということも実は事実であります。こういったことを考えますと、政治的ないろいろな理由は別としまして、あくまでも一エコノミストという視点から考えますと、これから当初予算をつくりかえて、一カ月、二カ月時間をまた空費するというのもかえって問題でございますし、暫定予算の長期化というのは、これは過去もそうでありますが、やはり避けていかなければいけない時期ではないか。  特に、くどいのでありますが、経済の実態あるいは金融システムがまだまだ不安定な状況にあるだけに、やはり一日、二日たりともむだな時間というのは費やせないのではないか、これもまた事実だろうと思います。  そういった面では、いろいろ問題含みで必ずしもポジティブには評価できないのでありますが、今となっては、私の結論でありますが、当初予算は、問題はあるのだけれどもとにかく一刻も早く通していただきたい。その上で、さっきからいろいろ言っていますように、問題点は残っているだけに、補正予算という形になると思うのですが、速やかにそういった措置をとって経済に切れ目のない効果を与えるような対策をとることが、むしろ国民中心の、国民の視点に立った予算審議であり、あるいは政治ではないかというふうに思うわけで、むだな時間を空費するときではないということを最後に申し上げて、私の話を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。(拍手)
  64. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 ありがとうございました。  次に、近藤公述人にお願いをいたします。
  65. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 私は、全国商工会連合会会長近藤英一郎でございます。  諸先生方には、常日ごろ商工会関係のことをいろいろと御心配をいただいて、御指導いただいておりまして、本当にありがたく、厚くお礼を申し上げます。  きょうは、私は中小企業の立場から意見を述べる機会を与えられたわけでありますが、本当にありがとうございます。これから、平成十年度予算を中心に、景気や中小企業の抱える諸課題について申し上げていきたいと思いますが、どうかひとつよろしくお願いいたしたいと思います。  それから、本題に入る前に、先生方御承知のとおりでありますが、私どもの組織について一言御報告申し上げておきたいと思います。  商工会は、昭和三十五年、商工会の組織等に関する法律に基づいて設立された組織でありますが、現在、全国で二千八百十二の市町村に商工会が設置されております。その八割以上が町とか村の地区にあるわけであります。  会員数は、青年部、婦人部を含めて全国で百四十万人に上りますが、そのうち圧倒的多数が小規模事業者であることも、御承知のとおりでございます。  現在、全国におります五千人余の経営指導員の方々が中心となって、経営の近代化、技術の向上、新分野の開拓などの指導、相談業務に携わり、金融のあっせんなども行っております。  商工会は、法制化以来、地域の総合経済団体として地域活性化の主導的役割を果たすべく、今日まで努力してまいっているところでございます。  さて、十年度予算案についてでございますが、中小企業の立場から意見を述べさせていただきます。  平成十年度の国の一般会計予算は、対前年度比〇・四%増の七十七兆円であり、政策的経費である一般歳出は、対前年度比一・三%減の四十五兆円になっておると聞いております。そのうち、中小企業対策費については、平成十年度が財政構造改革元年に当たる厳しい状況の中で、前年度とほぼ同額の一千八百五十八億円を計上していただいております。  内容的には、全国の市町村において空洞化現象が生じておる中心市街地を活性化させるための総合的対策として、商店街や商業集積の振興対策が大幅に拡充されておりますことは、まことにありがたいことでございます。  次に、昨今の金融機関の貸し渋りなどにより厳しい経営が強いられている中小企業への資金供給を円滑化するために、マル経制度を初めとする中小企業金融や信用補完制度が抜本的に強化された予算となっております。  さらに、物づくり基盤技術の強化として、人材の確保、育成策が講じられることになっておりますし、中小企業のネットワーク構築や情報化の推進などの中小企業経営革新対策が強化されております。  また、私どもに直接関係する小規模事業関連予算につきましては、中小小売商業の活性化や人材育成に係る施策などが新設、拡充されておりますことは、非常に心強い限りでございます。  特に、商工会が地域の多種多様なニーズに時期を失せずに対応するために、みずからの創意工夫によって事業を提案する提案公募型地域活性化事業を創設していただいておることは、商工会の今後の事業を機動的に実施する点で、私どもとしては大変な期待を寄せておるものでございます。  なお、財政構造改革法及び地方分権推進委員会の第二次勧告を踏まえ、平成十年度より都道府県商工会連合会等の人件費等が一般財源化になっておりますが、地方交付税による所要の地方財政措置が確実に講じられるように、国において、ひとつ十分な御指導をいただきたいと私は思います。  それから、平成十年度の中小企業対策予算は、昨今の中小企業の経営環境に十分御配慮いただいた内容となっており、まことに時宜を得たものと思われますが、財政構造改革法によりますと、平成十二年度までの集中改革期間中は、中小企業対策費は前年度予算を上回らないようにとの条件が課せられておるようでございます。私どもとしては、財政構造改革の必要性は十分承知しておりますが、中小企業の振興発展の重要性にかんがみ、中小企業対策費につきましては、現行水準から後退することなく引き続いて維持していただくように、先生方にお願いをいたしておきます。  次に、中小企業景気動向について御説明を申し上げたいと思います。  私どもが全国八千社の企業を対象に実施しております中小企業景況調査の十—十二月期の結果や、それから全国三百の商工会の経営指導員が調査する小規模企業景気動向調査の一月期の結果によりますと、売上額、採算、資金繰りともに依然として大きく水面下にあり、深刻な状況になっておるのであります。  景気悪化の要因一つとしては、私どもは、金融機関の貸し渋りや信用保証協会の保証渋りも、いろいろと御報告をいただいておる問題があるわけであります。貸し渋り等については、既に政府によって御指導をいただいておりますが、依然として改善されていないようであります。  私どもがことしの一月末に二千八百余の商工会に実施した年末年始の貸し渋りの状況に係る調査において、約四割の商工会で貸し渋りが実際に存在している、こういう回答を得ております。中小企業者は、何といっても金融の面で、借りる方で立場が弱いものですから、商工会の調査なら率直に実情を報告していただけるのですが、金融機関等についていろいろと言うことは、やはりいろいろな関係があるものですから、控えておるようであります。  一つ、具体的な貸し渋りの事例を御紹介させていただきます。  これは新潟県の上越地方の幹線道路沿いのドライブインの例でありますが、例年冬場は売り上げが大幅に落ち込むため、メーンバンクからつなぎの運転資金を、一部信用保証協会の保証つきで、毎年ほぼ決まった金額を融資してもらっておりました。この冬も昨年と同額の運転資金の借り入れを申し込みいたしましたが、保証協会からは追加担保を強く要求され、やむなくそれに応じた結果、保証協会の保証つき分だけは融資が実行されましたが、それでは足らない。したがって、保証協会の保証が付されない部分については、銀行直接扱いの融資の借り入れが断られたので困ったなと、そういうことでいろいろと悩んでおるという報告もいただいております。  もう一つは、九州の例でありますが、これは自動車整備業のようであります。毎月、手形の割引を枠をいただいてやっておるのですけれども、十月にその手形の割引をお願いに参ったら、建設業の手形はこれから一切割り引かない、こういうことを言われて非常に困ったという例がやはり報告されております。  幾つかたくさんの例がございますが、そういうことで、貸し渋りの問題については、非常に中小企業が悩んでおります。  何か新聞の報道によりますと、昨日は、橋本総理が経済四団体を呼んで、貸し渋りの問題につきましていろいろと御報告を受けたり、それに対する対策についてのお話し合いがあったようでありますが、非常によかったと思っております。  政府においては、昨年来四次にわたって、貸し渋り対策を含めた金融システム安定化策や景気対策を柱とした総合経済対策を実施していただき、また、平成九年度補正予算や金融システム安定化関連法案なども早期に成立していただきましたことにつきまして、この場をかりて改めて感謝申し上げますとともに、私どもは、今後ともその効果を注視してまいりたいと存じます。  現在御審議されている平成十年度予算は、例えば、公共事業関係費について、物流の効率化対策に資する社会資本整備や情報通信関連分野の社会資本などについても重点的に整備するなど、限られた財源を効率的に配分した内容となっておると聞いております。こうした平成十年度予算の成立がおくれますと、公共事業を初めとする支出の執行が予定どおり行われなくなるなど、経済に大きな悪影響を及ぼすものと私どもは心配しておるわけであります。  したがいまして、私どもとしては、平成十年度予算を年度内に成立させていただくことが最大の景気浮揚策と考えておりますので、ぜひとも先生方にお願いをいたしたいと思います。  さらに、現在の景気の落ち込みに何としても歯どめをかけるため、公共事業を初め平成十年度事業を積極的に前倒しして執行していただくことを強く要望させていただきます。その上で、地域経済の活性化にかかわりの大きい公共事業の積み増しや、景気浮揚のかぎを握る消費の回復に即効性の高い所得税減税を主体とした思い切った大型補正予算の編成など、機動的な景気対策の発動をぜひともお願いいたしたいと思っております。  限られた時間でありますので、ここで、中小企業が抱える諸問題の中で、特に中小小売商業に関連して、現在国会に上程されておる大規模小売店舗立地法案について、一、二御要望を申し上げたいと思いますので、御了承をいただきたいと思います。  同法案の目的として、大型店周辺地域の生活環境の保持がうたわれておりますが、大型店の立地については、商業環境も含めた総合的な町づくり計画との整合性を保つのが重要であると私どもは考えております。したがいまして、同法の運用に当たっては、大型店を出店する者が配慮すべき事項などにおいて、町づくり計画への配慮を明確にされるようお願いを申し上げたいと存じます。  次に、新しい仕組みにおける商工会の役割について申し上げます。  商工会は、地域経済団体として、特定の業種、業態にかかわりなく、不偏の立場から公正な意見具申を行っており、また、社会一般の福祉の増進に資することをその活動目的の一つに掲げるなど、高い公共性を有する団体であります。したがって、大型店出店に関しては、運用面において商工会の意見が十分反映されるように、制度上の御配慮を特にお願い申し上げておきたいと思います。  最後になりますが、我が国経済発展の原動力である中小企業が真に活力を取り戻さない限り、我が国経済は活性化しないと言っても過言でないと私どもは考えております。先生方におかれても、中小企業の置かれた厳しい環境を御理解いただき、平成十年度予算の本年度内成立、平成十年度予算の積極的な前倒しの執行、さらには補正予算を編成するなど思い切った景気対策の発動の三点を実現していただきたく、ここに強くお願いを申し上げまして、私の意見陳述を終わります。  どうもありがとうございました。(拍手)
  66. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 ありがとうございました。     —————————————
  67. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 これより公述人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。小野寺五典君。
  68. 小野寺五典

    小野寺委員 私は、自由民主党を代表して、三先生に質疑をさせていただきます。  まず初めに、お忙しいところをおいでいただきまして、どうもありがとうございます。  現在、平成十年度の予算審議をしているところでありますが、先ほどお三方、皆さんの御意見を伺わせていただきまして、まず、その結論の中で、当初予算を一刻も早く通して経済に切れ目がないようにするというような御指摘をいただきました。まことにもってありがたいと思っております。少しでも予算がスムーズに進むように頑張っていきたいというふうに思っております。  さて、まず初めに、先ほど高木先生の方からお話がありましたように、今の日本経済というのは非常に危機的な状況にあるということは皆さん共通の認識だと思うのですが、その中で、個人消費が非常に冷え込んでいる。お引き合いに出されましたが、一月の家計支出の状況を見ますと、全体では四%減少、それからサラリーマン世帯では五・九%減少、非常に大変な状況にありますし、消費性向も本当に落ちているというようなお話がありました。  私は、確かに今このような非常に厳しい環境にあるのですが、では、この背景にあるのは、その根本にあるのは一体何かということをぜひここで議論させていただければなというふうに思っております。  どうもその背景にありますのは、将来に対する不安ではないかというふうに思うのです。  私は、いろいろなところでいろいろな方にお話を伺いますと、まず、確かに非常に景気が厳しい、いろいろな減税策も出てくるのでしょうが、その中で私どもが一番不安なのは、実は雇用の問題。本当に、私どもの会社があしたあるのでしょうかというような雇用の問題があります。  それからもう一点は、年金の問題があります。  今の財政状況から見て、どうもマスコミ等で報道されると、年金財政は厳しいのではないか、将来に対するそういう不安が今国民の間には広がっております。そういう不安をまず払拭しなければ、いろいろな形で財政出動しても、特に減税という形で行っても、恐らくいわゆるたんす預金に回ってしまう。その根幹のことが一番大事ではないかというふうに思うのです。  その中で、先ほど高木先生がお話をされました、特に景気対策の中で減税のお話があります。これは、今のような根幹の議論を踏まえた中でどの程度効果があるのかどうか、お聞かせ願えればと思うのです。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  69. 高木勝

    高木公述人 お答えいたします。  最近の個人消費、特にその主因としましては、先ほども申しましたように消費者心理が非常に落ちているということなのですが、その背景には、やはり将来に対する漠然とした不安感があるのも事実だろうと思います。  しかし、こういった問題はここへ来て急に出てきたわけではないわけで、以前から個人消費はどうだったかというと、特に九六年度までは大変な勢いで個人消費が上昇していたことも事実であります。  したがって、不安の問題だけが全てというわけではなくて、根底にはこの問題があるとは思いますが、やはり直接のきっかけは、昨年の四月からの消費税の影響、あるいは特別減税の打ち切り、あるいは九月からの医療費の自己負担の増大という、いわゆる九兆円とよく言われますが、これだけの激しい財政デフレを国民の前に示したということが直接のきっかけだったと私は思うし、それに加えて、こういったことがまた、直接間接ではありますけれども、株価の下落を通じての金融システムの混乱につながっている、先ほど申し上げたとおりであります。  こういったことが再び消費者の心理を一段と暗くしている、またそれがその後の個人消費にもマイナスの影響が出ているということですから、確かに長い意味での将来に対する不安というのはありますけれども、私は、直接のきっかけは、やはり激しい財政面からの圧力を加えた一年だった、これがここまで最終的には個人消費を大きく落としてしまったのではないか、こう考えております。
  70. 小野寺五典

    小野寺委員 確かに、いわゆる九兆円という数字に関してはそれなりの意味があるとは思うのですが、その一番の根っこにあります、ここ七、八年ずっと財政出動をいろいろな形でしてまいりました。減税に対してもいろいろな形でしてまいりました。それが本当にもし効果があるのであれば、実はしっかりした景気回復がなされたのではないか。なかなかそれが表に見えてこなかったのは、実はその一番底にありますマグマのような、そういう危険なものがあって、その上に乗っかっていろいろびほう策をとったということがその根幹にあるのではないかというふうに思っております。  その中で、先ほど本間先生のお話の中で、ルール化されたフレームと裁量的な政策というようなお話がありました。私個人の意見でありますが、私も、今の財政的な課題というのをまずクリアしなければ、どうしても本当の意味での景気の健全な成長というわけにはいかないのではないかというふうに思っています。  そこで、今のフレームということ、特に三点、大変歴史的な評価をいただきました。GDPの三%枠の問題、あるいはキャップ制の問題、あるいは利用時支払いの問題、そういうふうな、非常に苦労された中での国際基準に合わせた今の財政的な仕組みがあるわけなんですが、これはこれとして、では、この先にどういう裁量的な政策が講じられるのか、その辺について少しお聞かせ願えればと思います。
  71. 本間正明

    ○本間公述人 ただいまの御質問でございますけれども、今の高木公述人と、私は若干意見を異にいたしております。  もちろん、昨年からの急激な公的負担の増大というものは、可処分所得を通じて消費に対して影響が及んできたということは事実でございますけれども、九〇年代に入りまして、この不況の原因をたどってみますと、巷間言われておりますように、これは複合不況としての消費低迷ということなのだろうと思います。一つは、今申し上げました可処分所得を通じての効果。しかし、そのほかにも、三つばかり要因として挙げられるだろうと思います。  金融のいわば不安感の増幅の中における貸し渋り等の問題も、お父さんの雇用が危ないのではないかというような不安感を造出させたということもございまして、基本的に大きな家計への緊縮的な影響をもたらしたというぐあいに考えられます。  二番目は、これは九〇年代に入っての構造改革不況というぐあいに呼んでもいいのだろうと私は思います。大きな為替レートの変動の中で、日本が生産性の高い分野に対して資源を移していかなければならないときに、脆弱な産業が淘汰されるプロセスが着実に深く進行しているというのも事実でございまして、これが安易なこれまでの消費行動に対する見直しの契機となって、消費低迷に拍車をかけている。構造改革のメリットが前面に出てまいりますと、この点についての不安感が払拭されていくというぐあいには考えておりますけれども、今の過渡期の状況の中では、構造調整即消費のいわば控え目な発動というような状況につながっているのだろうと思っております。  それから、三番目の御論点は、委員御指摘のとおり、将来へのいわば期待の修正というものが非常に大きく影響をしている。  この期待の修正というのは、一つは、高齢・少子化の中で、潜在成長率を日本がこれまでの高さから下方修正をしてきたということが、いわば期待所得の低下という形で増幅をし、消費のパターンを抑え込んでいるというのが原因であろうと思います。  もう一つは、消費者がストック化経済の中で賢くなってきたということも、見逃しておいてはいけないポイントだろうと思います。つまり、今減税をいたしまして赤字国債を発行いたしましても、将来にそれが増税となってはね返って、いつの時点かで財政というものが調整されなければならない、こういうようなことを合理的に推察する消費者が確実にふえております。これは、経済学の中では中立命題という言葉遣いがされておりまして、そういう赤字財政における減税というものが将来の負担の中で相殺をされていく、こういうメカニズム。これは、全面的とは申し上げませんけれども、計量的にはかなり信頼の高い推計値が得られているということでございますので、そのような変化の中で、減税効果というものを十分見きわめながら検討していく必要があるのだろうと思っております。  今の所得税減税に対する評価を踏まえた上で、私自身は、今後、追加的な景気対策というものをとるのであれば、一番重要な施策というものは、やはり法人税減税ではないかと考えております。  この問題は、先ほど高木公述人の中にも少しございましたけれども日本法人税というものが国際的に極めて高いということは事実でございますし、そのことは、一面で事実でありながら、一面では事実でないという部分がございます。九九%の法人は実は余り高くない法人税率を適用されておりまして、一%弱の黒字法人が圧倒的に六五%の法人税を支払っているという現実、これを見過ごしてはならないわけでございます。その点での法人税の抜本的な改革と連動して、実質減税というものをどういう形で入れ込んでいくかということが今後問われると思います。  それから、第二番目のポイントは、公共投資。これは短期的に減税よりも効果があるという言われ方がいたしておりますけれども、私は、従来型の公共投資というものは、短期の需要効果はあるにしても、サプライサイド、供給側の効率性の向上を通じて日本のファンダメンタルズを強化するというような形での公共投資に、実は残念ながらなっていないというところに問題があろうかと考えております。  公共投資をするならば、従来型の地方分散型の公共投資効果というものを十分精査した上で、将来世代の利益にもつながるような形での、新しいタイプの社会資本形成というものを十分考慮していただきたいと考えております。これは夢を与えるということでございまして、所得で食わせるということではないということであります。  例えば、教育の面におきまして、ニュージーランド等におきましても、例えば子供たちにパソコンを一台ずつ与える。このような資本投下を新社会資本として与えることによって、一人一人の能力が高まるというようなことで社会資本の効果が発現されるということになりますと、私は、長期的に非常にいい効果が及んでいくのだろうと思いますので、ぜひこれは、従来型の社会資本形成とは違う計画を国民の前に出して、コストとベネフィットを中長期的にきちんと分析をした上で、これを実現していくというプログラム化がこれから要求されるのではないかと考えております。  以上でございます。
  72. 小野寺五典

    小野寺委員 まさしく今のお話の中にありました、ストック化した中で消費者が賢くなったということを私も非常に感じておりまして、本当に、減税、でも国家財政は大きな赤字があるということを皆さん知っております。どうせいつかは増税になるんだろうというような中での恐らく減税策中心の経済政策では、私個人の考えですが、かなり厳しい、あるいは余り効果がないのではないかなというふうに思っております。  今の本間先生の御指摘、何点かあったのですが、その中で、私は、現在の経済構造の中で一つ大きな見過ごしがあるのは、実は大きな技術不況に陥っているのではないかというふうに思っています。  実は、十年前なんですが、前の東北大学の学長の西沢潤一さんが、こんなことを私に言っていました。そのころはバブル真っ最中でしたが、今から大きな不況が来る、それは技術がもうそろそろ枯渇しているんだ。そのときにお話しされたのが、もうこれから出てくるのは、せいぜいレーザーディスクに書き込むという、そういう製品しか出てこないだろう、そうなると本当に民需を拡大することは非常に厳しいと。  確かに、翻ってみますと、オイルショックのときに日本経済を一時支えてくれたのは、実はVTRの普及だったと思います。あのころVTRは、大卒の初任給以上に高かったのですが、それでも非常に画期的な製品ということでみんな購入しましたし、その後にソフトあるいはレンタルビデオという新しい産業分野も生み出しました。  そういう意味で、今の日本にもう一つ足りない視線というのは、実はそういう先端技術というのがかなり不足をしていて、本来はその先端技術から民需に転換するような新しい産業が生まれてくる、それが足りないのではないかというふうに思っています。  新社会資本システムあるいは社会資本整備の中で、ぜひ加えていただきたいのが、科学技術予算あるいは教育予算、これが非常に大事だと思っています。今回の予算で、確かにキャップ制はありますが、社会福祉、社会保障関係の予算、それから科学技術、教育関係の予算は、その中でも伸びということを許していただきました。やはり、こういう姿勢というものが今後すごく大事ではないかなというふうに考えております。  財政構造改革ですが、これからますますいろいろな形で進めていかなければいけないということがあるとは思うのですが、その中でぜひ、根本に触れる話題、一番もとにあるのは何かということをしっかりと見据えて対策を打っていかないと、また同じことを繰り返してしまう、びほう策に終わってしまうのではだめだなというふうに思っております。  時間もそろそろ参りましたが、さて、最近の経済の問題で、特に貸し渋りということが盛んに言われております。ぜひ近藤先生にお伺いしたいのですが、貸し渋り、例えば、企業的に黒字運営をされていて、将来も発展性があるような企業に対しても、現在は貸し渋りというのが本当に行われているのかどうか、その辺の実態についてお聞かせいただければと思うのです。
  73. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 先ほど公述の中で申し上げておきましたが、商工会でいろいろ調査した結果は、地方銀行が大体五〇%、信用金庫が二五%、それから信用組合とか都市銀行が八%ぐらいの調査の結果が出ております。  実際に行われているかどうかという御質問でございますが、やはり借りる方は弱いから、なかなか本当のことを言わないのですが、商工会の指導員を通じて実態調査をやりますと、率直に、四割の商工会で、貸し渋りがある、こういう報告が来ております。  その具体的な内容は、やはり、保証人をつけろ、それから担保力が大分落ちているじゃないか。それからもう一つは、非常に景気がいいときにある程度までお金を借りておったのですが、どうもこの状況では設備投資をする時代ではないし、金が幾らか残ったので、金を四千万借りたうち千五百万なしておいた。ところが、年末に行って、その枠があるから借りられると思ったら、貸さないと言う。それから、貸さないだけでなく、今まであるものについても云々というような言葉すら出ている。そういうような状況で、貸し渋りは事実あることでございます。  それから、それに関連して、やはり保証つきが多過ぎるのではないかという御意見も多々あるわけであります。保証協会の幹部の方々にお伺いすると、いや、保証渋りはない、保証債務残高は伸びている、こう言われておるのですが、中小企業者が実際にお金を借りに行って、保証協会をつけなさい、こういうことを言われて行きますと、やはり保証協会がなかなかうんと言ってくれないで借りられない、保証してもらえない。それからもう一つは、借りに行ったところが、保証協会が保証した分はやるけれども、そのほかの枠は、前にはあったけれども貸さない、こういう事例もあるようであります。  事実あることでございますので、今後、機関を通じてまた何かと御指導いただきたいと思います。
  74. 小野寺五典

    小野寺委員 やはり現実の経営の中で、貸し渋りあるいは保証渋りということが重要な問題になっていると思うのです。金融安定化二法でいろいろな対策を打っておりますし、また、金融システムの安定化もようやく近々進んでいくというような状況になりますが、その中で、こういう現実に起きている貸し渋りという問題、これが果たして解消されるのか。あるいは、もしまだ不十分であれば今度どういう対策が考えられるのか。最後に、ぜひお三方から短く教えていただければというふうに思います。本間先生からお願いします。
  75. 本間正明

    ○本間公述人 貸し渋りの問題につきましては、いわば早期是正措置という、BIS規制の達成というものが課題になっておりますし、この問題につきましては、金融機関に対して十三兆円の資金投入ということが決定され、それが現実に実現されようとしております。  私自身は、金融の不安は金融で対処する。財政の問題が金融の貸し渋りまで対処するというようなことになりますと、財政は非常に水膨れをするということでございまして、政策のアサインメント、つまり政策目標と政策手段の対応ということを十分意識しながら、金融の補完的な側面の中で適切に不安を解消していくということが求められているのだろうというぐあいに考えております。  これは構造調整とも絡んでおりまして、金融機関がどのような形で貸し渋りをするかということは、日本経済の再生との関連におきましても微妙な問題がございます。その点で、すべて救済をすればいいか、こういうような問題ではないわけでございますし、余りにもずさんな金融機関に対する救済的な措置に対しては、国民が非常に強い反発もあるということもございますので、資源配分、資金配分の効率性とこの貸し渋りの問題について、きちんと効果を見きわめながらやっていくということが今後求められるのではないかと考えております。
  76. 高木勝

    高木公述人 お答えいたします。  公的資金の導入につきましては、実はいろいろと問題はあろうかと思いますけれども、これはきょうの御質問でもないと思いますので。  これで、いよいよ三月末に向けて公的資金が入るわけでありますけれども、これによって、果たして貸し渋りが是正されてどんどんこれから貸し出しがふえるかということは、これからの話でもございますので大変難しいのでありますが、私は、公的資金の導入というのは必要条件であろう。貸し出しがふえる、あるいは貸し渋りがおさまる必要条件ではあるけれども、必ずしも十分ではない。したがって、公的資金が入れば、自動的に貸し渋り現象がおさまり、後はめでたく貸し金がどんどんふえるか、これは必ずしも言えないのではないか。やはり基本は、いわゆる金融あるいは融資業務の正常化という基本は、銀行の経営内容の改善以外にないわけであります。  具体的には、不良資産、まだまだ巨額に残っていると思いますけれども、これをみずからの自己責任で、思い切って、いかに早期にダイナミックに償却していけるか、一刻も早く健全な経営内容になれるかどうか、これで決まってくるわけであって、公的資金が千億入ったから直ちに貸し出しがふえるというものでは必ずしもないのではないか、こう考えております。
  77. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 実は、年末を一番、貸し渋りを心配しておったわけであります。しかし、先生方のおかげで、金融政策の面でいろいろな手を打っていただいておりますので、二月末現在では多少よくなってきているように、調査の結果は出てきております。やはり強力な政府の指導が必要であろうと思います。  ただ、心配なのは、三月がまた企業の決算月でもありますし、それから納税月でもありますので、そういう点から考えて、早速、先生方のお力で、政府の強力な指導が必要であろう、私はこういう点をお願いしておきたいと思います。
  78. 小野寺五典

    小野寺委員 どうもありがとうございました。今後とも頑張ってまいりますので、ぜひ御助言のほど、よろしくお願いいたします。ありがとうございました。
  79. 越智通雄

    越智委員長 次に、小林守君。
  80. 小林守

    ○小林(守)委員 民友連の小林守でございます。  公述人のお三方には、大変貴重な御意見をいただきまして、ありがとうございました。  行財政改革景気対策という観点から、政策転換の必要性ということもお話がございました。緊急の景気対策は当然行わなければならないわけですけれども、しかしながら、行財政改革、中長期的な改革を決して忘れてはならない。そして、この政策について、短期的には相矛盾する、対立するようなことにもなるわけでありますが、しかし中長期的にはそれが構造改革政策として矛盾しないような展開が求められているのだろう、私はこのように思っておるわけであります。  相矛盾するということになるならば、政策転換を明確にして、政治責任を明らかにして転換するということが求められるというふうに思いますが、私どもは、景気対策の中に行財政改革を展望する構造政策を導入すべきである、このような考え方での提言もさせていただいているところでございます。  そこで、まず最初に、本間先生の方に、二者択一の相矛盾する対立の問題ではなくて、脱却をするような構造改革を提言されているというお話があったというふうに思います。今回の平成十年度予算は、財政構造改革法のフレームの導入という中で大きな歴史的な評価を受けるものであろうというようなお話もございました。  しかし、お話の中で、一つにはフレームを導入するルール化というようなものがきちっと位置づけられた。いわゆる省庁縦割りの予算配分から分野別にきちっとしたキャップをかけていくような、シーリング方式からキャップ制を導入したというようなこと、さらには義務的経費の持続可能性の問題の見直しが入ってきたというようなこと、さらには、公共事業のあり方について費用対効果という観点からの見直しが必要だということも入ってきた。このような観点で、財政赤字のGDP比三%以内というような、こういう枠組みの中でペイ・アズ・ユー・ゴー原則も導入されているという評価があったわけであります。  この予算の中で、行財政改革の中で私は一つ問題としてお聞きしたいなと思いますのは、ルール型行政への転換ということと裁量型行政をうまくかみ合わせてやっていく方向が見えてきたということなんですが、しかし、実際に省庁再編の動向を見てみるならば、むしろ裁量型行政をさらに巨大に肥大化させるものになっているのではないか、このように思えてならないわけであります。いわゆる裁量型行政の最大の弊害が、今日の大蔵官僚不祥事の問題にあらわれている、日本の金融システムのまさに市場ルールのない状況を生みだしてきた。これがまさに裁量型行政の最大の問題だというふうに思うのです。  これからこの裁量型行政を評価していく部分、臨機応変の状況に応じた弾力的な対応、これを否定するものではございませんけれども、私はその裁量型行政を、しっかりとした情報開示とそれから国民または市民の参加によるチェックシステム、さまざまなチェックのシステムが保証されない限り、当然裁量型行政は再び問題を先送りしていくものになるのではないか、さらには強大化する、肥大化していくのではないか、こんなことを恐れるわけでございます。  そういう観点に立って、裁量型行政は必要であります、しかし、これは地方分権型の行財政の展開の中で、やはり最も住民に身近なところで、最も住民のニーズに近いところで再評価させていく、それから要望をしっかりと生かしていく。そのことによって、いわゆる壮大なむだを省くこともできるでしょうし、腐敗や不祥事を身近なところでチェックできるというふうに私は考えておるわけでありまして、裁量の部分についてはできるだけ分散、分権型の行政を展開しなければならない、こういう視点が今議論に欠けているのではないか、このように強く思っているわけであります。  費用対効果の問題とか、それから事業目的の時代における変化。今、二十年前、三十年前に計画された事業の目的が今の時代の状況に本当に合っているのかどうか、そこの自治体の住民の本当に身近な生活の中から、身近な仕事の中から意見が言えるような、これがまさに費用対効果をより効率的にさせるものだと思うのですね。これを中央で、霞が関で画一的に決めてしまうところに大きな問題がある。それが裁量でやられることによって、許認可や補助金行政によってまさに中央集権的な利権誘導型の政治が今日までの政官財の腐敗癒着を生み出してきた、このように言えると思うわけでありまして、先生にはその裁量型行政のチェックシステム、国民的なチェックシステムをどうつくっていくのか、その辺を御意見をいただきたいなと思います。
  81. 本間正明

    ○本間公述人 お答えさせていただきます。  今、委員の御指摘は非常に重要なポイントでございまして、各国とも、財政構造改革のさなかでこれをどういうぐあいに解決をするかということが非常に大きく取り上げられたというのが実態でございます。  裁量性を認めていくということが国民にとっていかなる意味を持つかということは、その投入した税金がどのような形で国民生活あるいは経済力につながっていくかということが問われなければならないわけでありまして、裁量性が増大をするということは、それにも増してアカウンタビリティー、説明責任というものが求められてくるということでございます。  この点で、各国とも、最近では公会計制度の改革という問題が大きなテーマになってきておる。これは補正予算等で経済対策をいたしますと、その精査もなく慌ただしくやるということがございまして、その対費用との関連における便益がきちんと把握されないということがございます。そのために、現金主義的な公会計制度から発生主義的な公会計制度に移るという国際的な潮流もございます。これは、現金でインプットとしての予算を計上したときに、それが結果として何を生み出したかということを計量化し、数量化することによって、国民がその歳出の最終的な判断をする材料にしていくということでございますので、ぜひ私も、日本の中にもこの制度を早い時期において導入していただくような検討をお願いいたしたいと考えております。  その上で、もう一つの先生の御指摘で重要なポイントは、我が国が、歳入のレベルでは地方が三割強、そして国が七割弱、それを使う段階になりますとほぼ逆転をするというところに、財政錯覚を生み出す大きな要因が実は財政構造の中にインボルブされている、組み込まれているということでございます。  地域経済にとりますと、負担が非常に少なくて、そして受益が多い形でお金がおりてまいりますので、その地域にとってみますと、限界便益、つまり便益から負担を引いたものがプラスの範囲であれば、もっとよこせ、こういうような形で大きな政府を地方の側は要求をいたしますし、都市部におきましては、負担する金額が受益の金額よりもずっと大きいということで、こちらは、そんなに大きくされたら負担が大きいからといって小さな政府を主張する。このことが議会における定数制のバイアスと重なって、日本の場合には地方に非常に大きな財政上の配分が行われている、これが実は最も大きな問題でございます。  この点について、先生方は自分の地域に対してたくさん持っていきたいというお気持ちはわかりますけれども、実証研究でやってみますと、先生方のお力はほとんど無力であるということでございます。配分に対してそれほど大きな力は持ち得ないというのが実態でございまして、先生方も財政錯覚を持たれているというのが現状であろうと思っております。  この点について、御指摘のとおり、地域の中において負担と受益というものがマッチするような形で自己完結型になればなるほど、市民であります選挙の投票者というものは錯覚を起こさずに、みずからの歳出とみずからの負担というものを決定していくという賢い市民、賢い選挙人が登場するというぐあいに考えておりまして、この点については、中長期的に改善をしていかなければならない我が国固有の問題だというぐあいに私は判断をいたしております。  以上でございます。
  82. 小林守

    ○小林(守)委員 ありがとうございました。  それでは、次に高木先生の方に、今の関係の中で構造政策としての地方分権、分散型の税財源構造というものが必要だというようなことを私自身も常にお話しさせていただいているわけなんですけれども高木先生には政策転換の必要性という点で、私も同意見なんですが、要は政策転換の表明と実施の必要性。  現実の状況の中で、平成十年度予算を今必死に論議をしています。しかし、外側では政府・与党、自民党の首脳が、もうとにかく十兆円以上の景気対策予算を組めというようなことをどんどん花火を打ち上げているわけなんです。これはやはり無責任と言っていいかどうか、モラルハザードと言っていいかどうか。やはり政党政治、政党が内閣をつくってやっているわけでありますから、総理はどういう立場になってしまうのか、まさに権威もリーダーシップもあったものではない、このような状況に思えてならないのです。  しかし、逆に考えるならば、みずからの責任を問わずに、なし崩しに政策転換をしていくための地ならしをしているのかな、やらせではないかというふうにも思えるのですけれども高木先生は、政策転換の表明と実施が必要ということです。表明のあり方、責任のあり方、こういうものはきちっとけじめをつけないと、本当にずるずるべったりの、何かわけのわからぬ政治になってしまうのではないかというふうに思うのですが、そこをどのようにお考えになっておられるか、ひとつお聞きいたしたいと思います。  それからもう一つは、私は、先ほども言いましたように、やはり景気財政構造改革というのは連立方程式だというふうに考えている。しかしそうではなくて、一つ一つ矛盾するものだというふうに、別の問題だということに考えるならば、明確に、私の政策は誤っていました、ここまではこれで、間違いだったから今度はこう転換しますと言う政治責任の問題があると思うのですね。  しかし、我々としては、それでは極めて壮大なむだをもう一回やることになるのではないか。また土木建設に偏った公共事業を、建設国債を導入してどおんとやっていく、これもまた半年や一年はカンフル効果が出ると思うのですが、またもとに戻ってしまって、膨大な赤字財政、累積債務が残ってくることになるのではないかというふうに心配するわけです。  そういう観点に立って、弾力条項のあり方について論議がされております。補正予算は対象外だからいいのだというような考え方、それから建設国債赤字国債ではないから、これは後に物が残るのだからいいのだというようなこともあるわけでありまして、むしろ財政構造改革法のフレームというのは底抜けというか、しり抜けの部分があるのではないか。アメリカの包括財政調整法で言う弾力条項ではないのだけれども、おかしなしり抜けのものがあるじゃないか、こんなことについて、二点について御意見等お聞きしたいと思います。
  83. 高木勝

    高木公述人 お答え申し上げます。  最初のいわゆる政策転換の必要性ということで、はっきりと認めるべきじゃないかというのは、私はそのとおりだろうと思っております。  今現在も、九八年度当初予算がベスト予算である、これがすべてだということでありますけれども、先ほど来申し上げているように、大変経済も状況が悪いし、金融システムが混乱しているときに、国民としては本音ベースで語ってもらいたい。どうもそれとはかなりかけ離れたところで建前論を言われても、なかなか国民承知できないだろうし、理解できない。やはり国民あっての政治でもあるわけですから、いわゆる政治責任云々というようなことで仮にきちっとしたスタンスが出せないとなれば、これはもう大きな問題であるわけで、国民あっての政治ということからいえば、本音で語ってもらいたい。  私は、政策転換をはっきり出したところで、別にそれは政治的責任としてどうこうというのではなくて、むしろ転換をきちっと明確にして、そういったいわゆる経済活動政策をとれば経済はよくなるというふうに思いますので、それはむしろ国民のためである。すぐやめるやめないとか、そういう話ではないので、日本経済をどうしたらいいかという視点から考えれば、思い切って政策転換を表明し、それに見合った形で思い切ってとるべき対策を打っていく、これがすべての解決方法ではないか、これ以外ないのじゃないか、こう確信をしております。  それから、そういった中で、やや最近混乱しているというふうに思いますけれども財政構造改革法と補正予算との関係で、補正予算については何ら縛りはないのだ、ですから、例えば補正予算公共事業をどんどんふやしても財政構造改革法とは矛盾しないのだというような意見も確かにあるようでございますが、これはもう明らかな誤りであって、我々は、別に当初とか補正というのは関係なく、財政として一年間にどう出るか、これがすべてであります。仮にその議論でいえば、補正で公共事業をぼんとふやせば、これはもう建設国債がぼんぼんふえて、結果的には二〇〇三年度に、国、地方合わせて全体の財政赤字を三%以内というのは逆行になるわけですね。  ですから、当初ならだめで補正ならいいというのは、先ほど本間公述人もおっしゃっていましたけれども、どうも補正がいろいろな意味でいいかげんに使われている。私は、単に便宜上、当初予算あるいは補正予算というのがあるだけであって、実態は、中身は同じなわけで、それによる影響というのも両者を分けること自体おかしいのじゃないかというふうに思っております。  それから、建設国債ならばいいのだ、赤字国債ならばいいのだということもございますけれども、確かに今までこういった区分でいろいろ議論してきましたが、しかし、最近は両者の中間みたいなものもあるので、果たして、従来のように建設国債赤字国債をぴたっと分けて、それですべて処理できるかどうか。建設国債の場合には一応六十年という期間があるわけですが、例えば情報通信関連というのは、物によっても違うと思いますが、はるかに耐用年数が短いわけですし、あるいはそれ以外の科学技術などについても、果たしてこれを建設国債というふうに呼べるかどうかというのもあると思うのですね。  ですから、これも人為的に決めたものですから、余りこれにとらわれ過ぎるというのもかえっておかしいわけで、そういった面では、議論も単に形式にとらわれずに、経済にどういう影響が出るのか、まさに国民経済という視点からすべて考えていきますと余り混乱は生じないのではないか、こう考えております。
  84. 小林守

    ○小林(守)委員 ありがとうございました。終わります。
  85. 越智通雄

    越智委員長 次に、北側一雄君。
  86. 北側一雄

    ○北側委員 平和・改革の北側一雄でございます。きょうは、三人の公述人の先生方、大変お忙しい中、貴重な御意見を賜りましてありがとうございました。限られた時間でございますので、早速質問に入らせていただきます。  今度のこの予算委員会でいろいろな論点が議論されておるわけでございますが、一番よく議論に出ておりますのは、先ほど来高木先生もおっしゃっておられましたけれども景気対策と財政再建、これをどう調整するのか、この問題が一番議論の対象になっております。先ほど本間先生は、財政のルール化とそれから政策的な裁量をどう調整するかという問題であるというふうにおっしゃられました。全く同じような御趣旨であると思います。  アメリカの例でございますが、アメリカはかつて双子の赤字と言われておったわけでございますが、この財政赤字の点だけ取り上げますと、九二年度にはアメリカ連邦政府財政赤字は二千九百億ドルを超えておりました。それが、先般発表されましたけれども、九九年度の見通しは、財政赤字ではなくて何と九十五億ドルの財政黒字であるというふうな発表をされたわけでございます。この五年、六年間で急激に財政赤字が縮小した。  これはいろいろな見方があると思うのですが、ある方の見方によりますと、なぜこのように財政赤字が縮小したか、その理由は何なのか。一つは、もちろん防衛費等歳出削減努力が当然ございました。包括財政調整法によるキャップをかけて歳出削減していった。もちろんこの努力もあったわけでございますが、それよりも、やはりアメリカ景気拡大効果がこの財政赤字縮小に非常に貢献をしておる。  ある試算によりますと五五%。税率は変えておらないわけでございますが、所得税並びに法人税等の税収がいわば自然増収という形でふえてきた。一方で景気が非常によくなりましたから、好況になりますと失業者が減ります、失業者が減りますと失業手当を政府が出さなくていいわけですね。一方、またさまざまな福祉手当も減ってくるということで、入りは、税収は自然増収で入ってくるわ、出の方の歳出は減ってくるわということで、歳出削減努力もあるけれども、それ以上に、五五%を占めておるのがこのような景気拡大効果であったというふうな試算も発表されておるわけでございます。  私は、もちろん中期的な構造改革財政再建、財政再建を否定するような人は一人もいないわけでございまして、中期的な財政再建はもちろん重要であるけれども、当面の経済情勢というものに即した政策発動ができるような仕組みでなければいけないというふうに思うわけでございます。このアメリカの例をとりましても、先ほど高木先生がおっしゃっておりましたが、やはり経済あっての財政再建でございまして、経済がよくならない中で財政再建が極端にいってしまいますと、逆に経済が悪化してしまって、さらに財政悪化につながってくるというのが日本の現状ではなかったのかなというふうに私は思っておるわけでございます。  そこでお聞きをしたいわけでございますが、恐らく本間先生も、現時点の景気情勢を見て、景気対策が不要であるというようなお話は多分全くないだろうと思うのです。やはり今景気対策を打ち出していかないといけない。そこで、その景気対策の内容としてどのような内容をお考えなのか。  それとともに、今の財政構造改革法というのはいろいろな問題点があると私は思っておるのですけれども、この財革法の、現行の法律の問題点の一つは、先ほど先生がおっしゃっていました、時の経済情勢に応じた柔軟な財政出動ができないような、割と硬直的な法律になっておるのですね。これをやはり改正していかないといけないのではないかと私は思っておるのです。  景気対策の内容としてどういうものをするべきとお考えか、また、その際に財革法の改正についてどのような御見解をお持ちか、本間先生並びに高木先生から御見解を承りたいと思います。
  87. 本間正明

    ○本間公述人 お答えさせていただきます。  今御指摘の中にございましたアメリカ財政改善という問題が、我々が問題を考えてまいりますときに、レッスンとしてあるいは教訓として教えられるところが非常に大きいのだろうと思います。  御承知のとおり、アメリカは、七〇年代に生産性低迷のパズルという形で日本等に比べまして生産性が非常に落ち込み、経済の供給側が非常に弱体をしてきたということで、供給面における強化というものがアメリカの大きな政策課題になってまいりました。このために、レーガン大統領が登場いたしまして、小さな政府、つまり減税をし規制緩和をするという形で、サプライサイドに対してのポジティブな効果というものを期待したわけであります。  実態は、ここの部分のところはまだ、供給側の効果というのは実は非常に時間がかかるというのが事実でございまして、前半の五年間におきましては、意図せざる需要拡大政策、これは財政赤字がふえましたので、意図せざるケインジアンの政策が出現をした。これが景気に対する下支え効果をつくりましたけれども、経常収支の赤字という形でのセットになって双子の赤字拡大をする、こういう事態でございました。  しかし、その重要性をアメリカはずっと言い続けてまいりまして、レーガン・マークツー、二期目、あるいはブッシュ政権の時代にも、依然として、需要効果ではなく結果として出てくるサプライサイドへの対応というものを持続することによって、十年間かけてアメリカの供給側としての強さというものが、高度情報の入れ込みとセットになって、これが今の状況をつくり上げてくるベースをつくり上げた、こういうぐあいに理解するのが正当なのだろうと思います。  翻って、日本でこのことを考えますと、エコノミストの方の多くは、何か需要面でサポートすることが景気対策のすべてであるというような見方をされておりますけれども日本の場合には、あしき需要をつけることによって構造改革を妨げる、そういう施策というものがずっと行われてきたことも事実でございまして、これは公共投資等の問題点に集約されておりますし、さまざまな形での弱者対策ということが生産面において行われるがゆえに、社会保障政策としての再分配政策効果が上がらないばかりか、日本の供給面における後進性を助長する、こういうことにつながっておるわけでありまして、私は、財政構造改革経済構造改革とは決して無縁ではなくて一体になっていると。  その意味で、今後経済対策を打つときには、需要面での短期的な効果にとどまることなく、日本経済に対して生産力を強化する、あるいはアメニティーを高めていくためにどうあるべきかというその効率面、資源配分の効率面と矛盾することなく実現をしていくということが非常に重要である。まさに社会保障的に生き続けさせるような中小企業対策というのは、これは中小企業皆さんにとっても決して望ましいことではないのだということを認識していく必要があるのだろうと私は考えております。  そういう意味では、第一段階目には、先ほども少し申し上げましたけれども、やはり法人税改革の問題は避けて通れないであろう。今の状況というのはまさにあしき比較優位の原則、つまり、利潤を出しているいい分野が外に出、そして生産性の上がらない分野が日本の中にとどまる。今の為替レートのレベルで評価をいたしますと、生産性が国際的なレベルに達しているのは恐らく二割弱、八割強が実は生産性の点では劣っているということでございまして、これが高コスト体質、二つの日本を生み出して、需要をつけても国際的に見ると低評価の状況をし続けるというのが実態でございますので、この面で、法人税改革ということをまずやる。  そして、その上で、所得税減税の部分につきましては、社会保障政策等々の将来への見通し、こことセットにして実現をしていく。年金がどうなるのだ、介護がどうなるのだ、あるいはそれが社会保険料、所得税との関連においてどのような形で受益と負担がなるかということを国民に明らかにして、シミュレーション化をして理解させた上で減税措置をとっていくのでなければ、コンフィデンス、将来への確信が得られないままほとんど効果がないような事態を、今のようにリスクが大きくなっている状況の中では、財政赤字だけを膨らませる、いわば初期のレーガン当時のような状況を生み出しかねない状況があるのではないかと私は考えておりまして、私自身は、この両者の矛盾なき政策をどう推進するかということに意識的にかかわることが、今の政策面では非常に必要とされる点ではないかと考えております。
  88. 高木勝

    高木公述人 お答えさせていただきます。  先ほどのアメリカ財政収支が大幅に改善しているということですが、おっしゃられた点で多分尽きているのだろうと思うのでありますが、一般に、これは日本でもそうでございますけれども財政赤字というのは、循環面によってもたらされた赤字構造的にもたらされたいわゆる構造赤字、この両者から成っているのは間違いないのだろう。その比率はもちろん国によっても違いますが、日本におきましても、正確にははかれませんが、やはり循環的な要因による赤字部分が半分以上あって、残りが構造的な問題ではないか。  したがって、やや中長期の話でありますが、いかに財政構造改革していくかというときにはやはり両方必要でありまして、景気あるいは循環面を無視していいということにはならないし、一方で景気をよくしていく、同時に構造改革も進めていく。とかく両者は矛盾するというお話が今も本間公述人からありましたが、それこそ両立できる方法はあると思うのですね。例えば、規制の緩和などというのも中長期的には構造改革になりますし、それがまた全体の経済の活性化にも資するということで、必ず共通あるいは両者が両立する案というのはたくさんあるのだろう、こう考えております。  それから、具体的な経済対策として私先ほど申し上げたわけでありますが、一つだけコメントさせていただきますと、財源が限られている中で減税公共事業をどう見たらいいのか。  とかく、公共事業の方が経済効果が大きいからこれを中心にやれという意見がございますけれども、バブル崩壊後、九〇年代を見ますと、あれだけ公共事業を大量に投入したのですが、やはり一時的な効果にとどまったということもございますし、どうも最近は、公共投資のいわゆる乗数効果が予想以上に落ちているのじゃないか。公共事業がふえますと、とりあえずはゼネコンあるいは不動産関連が潤うわけですけれども、どうもその効果がその時点で終わってしまって、いわゆる二次、三次の、その次の効果というのがなかなか期待できないのではないか。  一方、減税の場合には御案内のとおりで、所得税を払っている人に対しては、金額の高低はあるにしても全員にメリットが及ぶ。こういった面でも、確かに薄くはなりますけれども、幅広いという効果もあります。  それから、同時に私が重視したいのは、減税というのは小さな政府への第一歩なんですね。これが本当に実現しますと、今度は無言の圧力となって歳出を抑える方向に行かないとおかしいわけであります。ところが、公共事業をぼんぼんふやすということは、何のことはない、これは大きな政府をさらに助長するということにもなるので、こういったことからも、やはり基本は、これからは減税中心の対策であるべきではないか、こう思っております。  それから、財政構造改革法の弾力条項についても、先ほど申し上げたとおりですが、一点だけ申し上げますと、九七年度、今年度の我が国経済の成長率は、残念ながら、どうやらマイナスになりそうであります。実は、七四年度、第一次オイルショック後に、最初で最後のマイナス成長を我々は経験しておりますけれども、どうも九七年度はそれに次ぐマイナス成長で、一—三月の展開によっては、むしろ九七年度のマイナス幅の方が七四年度を上回る心配がある。そうなりますと、これは完全に、弾力条項ということでもないのでありますけれども、大変な事態なわけで、ましてや、さっきも言ったとおりでありますが、当面においては財政構造改革法は少しストップする、こういうふうにならざるを得ないのだろうと考えております。
  89. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。  今、高木先生の方から経済成長率の見通しのお話がございましたが、これからそれを聞こうと思っておったのですね。  今お話がございましたように、平成九年度は、当初一・九%という見通しをしておりました。ところが、これを今ゼロに直したわけでございますが、どうもゼロでおさまらないで、マイナスになるかもしれないというのが今の先生のお話でございます。確かに、この一月に入ってからのいろいろな経済指標、連日新聞に出ておりますが、出るもの出るもの、ひどい指標ばかり出ております。  そこでお聞きをしたいわけでございますが、平成十年度の経済成長見通しをこれも一・九%という前提でこの予算は組まれておるのです。予算を組むときの大前提は、この平成十年度の経済成長をどう見るかというのが大前提の話で、これを経企庁は一・九%という成長で見ておるわけでございます。本当に、このままでいって一・九%なんて可能なのということなのです。  私が一番心配しておりますのは、外需の問題なのですね。恐らく九年度、辛うじてゼロ、マイナスになるかもしれません。でも、これは外需が相当よかった。というのは、これだけ円安になれば外需がよくなるのは当然で、外需によって何とか支えておった。個人消費もだめ、設備投資も、最初はよかったけれども今はだめ。もう外需によって今何とか日本経済はもっておるというのが現状だろうというふうに思うわけでございますが、この外需にこの先影を落とす要素が多い。その一つは、アジアの経済危機、通貨危機の問題でございます。  日本のアジアに対する輸出というのは四割を占めておるわけでございまして、日米関係も、これ以上対米黒字がまたふえてしまうと、大変な国際問題、日米の貿易摩擦問題になってまいりますし、今でも、内需拡大しろということで、いろいろなアメリカ政府高官がおっしゃっておるわけでございます。ということでして、外需についても、果たして十年度、このままでいくと厳しいのではないか。  等々を考えますと、この一・九%成長なんというのは、今のままでいきますと、どだい不可能な数字というふうに私には思えるのですが、ついては、本間先生、高木先生の御意見はいかがでしょうか。
  90. 本間正明

    ○本間公述人 お答えいたします。  予算を編成する段階で高目に経済成長を見通すというのは、最近、このところの癖になっておりまして、新年度もまた同じことが起こっているということだと思います。  御指摘のとおり、現実には、今の財政予算が追加的な対応をとらないといたしますと、恐らく一%弱くらいの経済成長になるのではないか、こう考えておりまして、その点での、御懸念の経常収支のいわば外需依存型体質が強まるのではないか、こういうことが指摘されております。  これは現実にかなり顕著でありまして、私ども経済を見ておりますときに、昨年の状況を見ますと、唯一日本を見放さなかった要因というのは、アメリカ、ヨーロッパの経済というものが比較的堅調で、これが輸出を中心にしてサポートした、これが崩れたら総崩れだ、こういうようなことが見方としてはあったわけでありますし、これは事実であると思います。  しかも、これを踏襲していくということになれば、当然のことながら、アジアの経済不安というものを助長していくことになると思いますので、これは、バブルの発生の前後から日本に高まってきたいわば外需主導型の経済に対する批判というものがますます高まっていき、この点で財政というものが出動を要求されていくということは、もう自明の理だというぐあいに考えます。  しかし、従来型の財政の対応というものを継続してこれを克服していくという点におきましては、私は非常に疑問を持っておりまして、内需拡大のためのイノベーションをぜひここで考えていくということが問われているのだろうと考えております。  以上でございます。
  91. 高木勝

    高木公述人 お答えいたします。  九七年度の成長率でございますけれども、先ほども御指摘ございましたように、政府は当初一・九%、昨年十二月に改定をしまして〇・一%。よくわかりませんが、私どもの見込みでは、さっき言ったように、どうやらマイナス成長。そういう意味では、完全に外れた一年ではなかったか、こう思っております。  しかも、中身を見ますと、いわゆる外需の寄与度というのはかなりプラスになっておりまして、しかしトータルは間違いなくほぼマイナス成長、こうなりますと、言ってみれば、内需の成長寄与度は大変な落ちなのですね。昨年、日本の橋本首相以下、デンバー・サミットもそうだったのですが、内需主導型の経済運営をやると国際公約したわけですが、既にもう八カ月、九カ月たっている今、状況は全く正反対を相変わらず歩んでいる。こういうことで、大変悪かった一年ではないか。  問題はこれからの九八年度でございますけれども、さっき申し上げたような対策が全然とられない、相変わらず財政再建というのがみんな足かせになって対策がとられないとすると、再び厳しい数字になるのではないか。今民間では、来年度実質〇・五%くらいというのが平均だと思いますが、政府は相変わらず一・九。  しかし、こういった下降局面というのは意外と時間とともに加速する心配があるわけで、おっしゃるように輸出などの不安材料もこれから出てまいりますので、放置しますと再び大変悪い数字になりかねないので、そういった面でも、さっき申し上げたとおりでありますが、もう可及的速やかに内需中心の経済運営をやる。そのためには、やはり減税を中心とした思い切った経済対策が早期に打たれることが必要ではないか、こう考えております。  以上でございます。
  92. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございました。
  93. 越智通雄

    越智委員長 次に、西川太一郎君。
  94. 西川太一郎

    西川(太)委員 十五分の時間しかございませんので、ぶっきらぼうなお尋ねになって、失礼がありましたらお許しをいただきたいと思います。  きょうは、お忙しい中、御苦労さまでございました。先ほど来からもう大勢の皆さんから御質問があり、私が用意しました質問も同じようなことをお尋ねして恐縮でございますが、自由党の立場でお伺いをいたしますので、御理解をいただきたいと存じます。  まず一点は、経済対策でございますけれども、先ほど来からお話がありますように、政府・自由民主党も、与党の皆さんも、大型の追加の景気対策はやらざるを得ないという御判断になっておられることはもう間違いないようであります。伝わるところによりますと、建設大臣などは、公共事業を中心にやった方がいいだろうという御見解も報道されております。しかし、総理がお会いになった経済四団体の長は、すべからく減税を中心にやってほしい、すべて減税という御意見もあるし、半々くらい公共事業とまぜてやったらどうだという御見解もあるようでございます。しかし、十兆円規模でやってほしい。半分としても五兆円でございます。すなわち、大型減税。  我が党は、六兆円の減税、さらにいろいろなものを加えて十兆円規模のものをやれ、こういう主張をしているわけでございますが、公共事業を中心にやるべきか、減税を中心にやるべきか、もう既に先生方の十分な御開陳の後に同じ質問をして恐縮でありますが、ひとつ改めてその点をお聞かせいただきたいということ。  それから、三人の先生方に伺いたいのは、今度は、ぐっと現実的な問題であります貸し渋りについてお尋ねをさせていただきたいのです。  どうも、せっかく金融二法が成立しても、クレジットクランチは一向に解消しない、ここのところ自殺者が出てくるようなことになっております。この貸し渋り、特に政府金融機関の二十五兆円に対しても、効果が必ずしも出ていない。窓口でシャットアウトされるというようなことも出てき始めました。  民間の金融機関企業との問題、政府金融機関企業の問題、二つの貸し渋りがあるわけでございますが、これについての御見解を時間内に承らせていただきたい。  質問は以上でございます。
  95. 本間正明

    ○本間公述人 お答えをさせていただきます。  公共投資の問題でございますけれども、実は九〇年代に入りまして、数えようは幾つもあるわけでありますけれども、一説によりますと、六十兆円以上の公共投資をした。このような状況が、バブル崩壊後、景気をゼロ成長に抑えたというプラスの側面はあるわけでありますけれども、実態といたしまして、九〇年代の前半を調べてみますと、就業人数、雇用の増大、そして賃金の増大、これを産業別に調べてみますと、第一位が土木、建築でございます。二位が通信、ハイテク関連、三位が弱電関係、四位が鉄鋼関係でございます。  私は、何を申し上げたいかと申しますと、実は、公共投資という形で景気を刺激しても、言葉は悪いわけでございますけれども、生産性の低い形で吸収をされ、それが産業連関のリンクの外にあることによって乗数効果を低めている。いわば、所得再分配政策として機能したけれども経済全体のファンダメンタルズの強化には役立ってこなかったというのが実態でございます。  これを続けるということは、地域経済にとりますと、お金が落ちてくるということでプラスになりますけれども、結果として、そのことがその企業の新たな付加価値をつくるためのノウハウにどのようにリンクするかということも非常に問題でございまして、それで、公共投資の割高感でありますとか、質の悪い公共投資というものを温存させ、助長させるような状況というものを生み出してしまったというのは、これは否定すべからざる事実だと思っております。  公共投資をするなら、新社会資本計画というものをきっちりとつくっていただいた上で、これは本当は公募をして、こういうプロジェクトがあるよ、したがって、コストベネフィットをどういう形でやるかということも含めて公開の場の中でやっていただきたいというのが現実でございます。  その点で、構造改革という観点でいえば、やはり法人税の部分、非製造業を中心にして強化していくということ、これが価格体系を是正する上でも非常に重要だと考えておりまして、私は、物を書くときには、公共投資を抑えた分を法人税減税に回せというようなことすら主張しておるということでございます。  貸し渋りの点についてでございますが、現在貸し渋り状況というものが出てきておるわけですが、日本の金融ビッグバンの中で問われておりますのは、収益構造の高いところにお金が回るという形で対応するということでございますけれども、それが中小企業対策的な形に使われてまいると、その趣旨が随分違うような状況が出てまいります。このジレンマをどういうぐあいに克服するかということが今問われているわけであります。  いわば、産業温存型の部分で積極的に政府というものが対応していくということは、これは余り望ましくない。むしろ、転業する、ベンチャー等の新たなシーズを生み出す部分に対して資金を供給していく、そういう形で誘導していくのが最もいい貸し渋り対策ではないかと考えております。
  96. 高木勝

    高木公述人 お答え申し上げます。  最初の御質問は、実は先ほど申し上げたとおりでございまして、私は、やはり減税中心の経済対策をとるべきではないか、このように考えております。  二番目の、貸し渋りにつきましても、先ほど私は、必要条件であるけれども、必ずしも必要十分ではない、直ちに貸し出しがふえるということではないということを申し上げましたが、それについて少し補足をさせていただきます。  金融機関の不良資産がここまで存在をし、償却しても次から次へと出てくる。特に、問題は、今までの公表不良資産と、先般報じられました問題貸し金とに余りにも格差がある。しかも、時間とともに、この問題の貸し金がいわゆる不良資産化する可能性が出てきているわけですね。例えば、地価が相変わらず下落しているというのが一つのあらわれだと思うのであります。  そういう意味では、ここで公的資金が入っても、直ちに新たなリスクテーク能力を持って新規貸しに走るかというと、どうもそうではなくて、全体の環境を見る限りではやはりリスクテーク能力は着実に落ちている、こう言わざるを得ないと思いますし、その結果、残念な言葉でありますが、貸し渋り現象というのが生じている。  私は、一民間金融機関としてはこれは正常な行為ではないかというふうにも思うわけで、私企業である以上は、やはり収益性の維持とか健全性の維持ということを考えるとやむを得ないことではないか。しかし、いわゆる合成の誤謬ではありませんが、全体がそれへ来ると結果的には大きな社会問題になる。こういうことで、難しい問題でありますけれども、当面は、やはり公的金融機関によるもっと積極的な貸し渋り対策が必要ではないか。  これは、私は、PRという問題も一部残されていると思うし、諸条件面ももっと緩和していいのではないかという感じもいたしております。  それから同時に、金融機関もいつまでもこの状態ではいけないので、先ほど申しましたように、最終的な解決策はいかに銀行の資産内容をよくするかですから、やや強制的な力をもってしても償却を思い切って進めさせる。特に公的資金を入れるときには、条件として、これからどう償却計画をつくっていくのかということをかなり強制的な形で問うべきではないか。それも公的資金を導入する際の一つの条件ではないかと思うのです。これが着実に減ってくれば、逆に、反比例的な形で貸し出し能力というか、リスクテーク能力も上がっていくのではないか、根本はそこにあるというふうに考えております。  以上でございます。
  97. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 先ほどの御質問にお答えいたしたいと思います。  思い切った減税をやることは、消費が増大することにつながってくるわけですから、景気の浮揚に大きく影響していくことは非常にいいことであろうと思います。また一方で、切れ目のない大型の公共事業の上積みによって景気を刺激するということは非常に重要であろうと思います。  そこで、いろいろ議論があるとは思いますけれども、私としては、どちらか一方ということではなく、減税公共事業、双方がうまく組み合わされることによって大きな相乗り的な効果が出てくるだろうと思いますので、それが一番いいのではないだろうか、こう考えております。  貸し渋りの問題は、先ほど公述のときと、それから御質問に対してお答えをいたしましたが、確かに貸し渋りはよくないと思います。毎日の新聞紙上に非常に悲しい記事が載っておることも、貸し渋りが影響してきているわけであります。  したがって、この貸し渋りをなくすためには、政府の強力な、先生方のお力で、何とか貸し渋りのないようにやれと、こういう点で御指導をいただくことが一番大きな問題であろうと思いますので、その点をひとつお願いいたしたいと思います。
  98. 西川太一郎

    西川(太)委員 先ほど、質問はこれで終わりますと申し上げましたけれども、あと三分あるので、せっかくの時間ですから、お許しいただきたいと思います。  高木先生にお伺いいたしますが、貸し渋りでございますけれども、これは民間金融機関としてはもうやむを得ない、こういうお話でございましたけれども、一部というか極めて少ない説でありますが、銀行としての貸し渋りの要素はもう終えんした、こういうことを言っている学者もいらっしゃるのです。最近発売されている経済雑誌の中で、某私立大学の外国人の講師の方がそういうことを言っておられます。  それから、優先株を発行しますと、それはバランスシートの資本の側に載ります。劣後債を発行して、それを今度の機関が買えば、これは発行した側は負債の側に載せるわけですね。そうすると、バランスシートの改善という観点から見れば、なかなかわかりにくい、こういう意見もあります。だから、技術的な問題も含めて、先ほどの御見解も含めて、今のままではなくてやはりもっと突っ込んで貸し渋り対策をやらなきゃいけない、私はこういう思いでございます。  もう時間でございますが、そうだとか、そうではないとか言っていただけたらと思います。  PRで恐縮でありますが、自由党は、所得課税で六兆円、法人課税で四兆円、すべて恒久減税でやるべきだ、こういうことを言っておりますこともつけ加えて、これはお答えは結構でございます。  前段、ひとつ高木先生、お願いいたします。
  99. 高木勝

    高木公述人 お答え申し上げます。  貸し渋りにつきましては、確かに、個別金融機関ごとに経営内容が違っているわけで、もうかなり償却の進んだ金融機関もあれば、まだまだこれからというところもあるので、今まで私は基本的には全体、平均的な概念で言ったわけで、中にはもう余り貸し渋り的なものもないという機関もあろうかと思うのです。しかし、中心的な姿は、まだまだそう楽観は許されない状況ではないか、とても貸し渋りがすぐに終わるというふうには今読めない状況だろうと思います。  それから、優先株あるいは劣後債で確かにバランスシート上は違うのでありますが、問題は、そこの点よりも、公的資金が入った、その金は何に使われるのか。それがいわゆる貸し金の原資として使われるならば、確かに、八%を基準とする国際金融業務をやるところは八分の百の貸し金がふえる理論上の計算になりますけれども、同時に、自己資本の増大が不良資産の償却に回るとなれば、これは話は全然変わってくるわけです。  これをどう使うかというのは各金融機関の経営判断に任されるわけですから、そういった面では、単純にそれが即貸し出しの増加には残念ながらつながらない、こういうことだろうというふうに考えております。
  100. 西川太一郎

    西川(太)委員 どうもありがとうございました。
  101. 越智通雄

    越智委員長 次に、春名直章君。
  102. 春名直章

    春名委員 日本共産党の春名直章でございます。  三人の公述人の皆さん、本当にありがとうございます。  最初に、近藤公述人にお伺いいたします。  消費税が中小企業や商売人に与えている影響について伺いたいと思います。  個人消費の落ち込みによって直接の打撃ももちろんあると思いますし、その上に、消費税を価格に転嫁できないという問題だとか、あるいは今、税納入の時期ですけれども赤字なのに消費税の納入を迫られるとか、こういった問題が考えられるわけですけれども、実感も込めて、この影響という問題についてお伺いしたいと思います。
  103. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 今の先生の御質問ですが、景気に影響するのは消費税が大きく影響しているだろう、そういうことをお話しのようでありますが、私は、必ずしも消費税が大きく影響しているとは考えておりません。
  104. 春名直章

    春名委員 随分簡単なお答えで、ありがとうございました。  続いて、高木公述人にお伺いしたいと思います。  個人消費の落ち込みが、今の不況という点で重要な要因になっているということをおっしゃいました。私も全く同感でございます。  そこで、やはり個人の懐を本気で暖めるといいますか、直接暖めるという対策が、今何よりも景気対策という点でも必要になっているというふうに思います。所得税減税のお話、有価証券取引税の廃止だとか、そういう御提案もいただきました。  その中で、先ほどの話とあれですけれども、消費税の問題について伺いたいのです。  五%の消費税を三%に引き下げていくということは、私どもは、やはり今非常に重要な景気対策になるのではないかと考えておりまして、国民に五兆円の購買力を追加するということに結果としてはなりますし、直接個人消費にもつながります。それから、中小企業皆さんが身銭を切って消費税を負担している面もありますので、そういった点への、所得をふやすという点でも大きな効果があるのではないかなというふうに思っておりまして、その点での御意見をお聞かせいただけますか。
  105. 高木勝

    高木公述人 お答え申し上げます。  確かに、消費税を今の五%から再び三%に戻したらいいかというお話があるのはよく存じ上げておりますが、私は、二つの理由から、消費税の引き下げをするよりも、先ほど来申し上げましたように所得税減税をやるべきではないか、こう考えております。  第一点は、やはり物理的な問題もありまして、去年の四月からスタートして、いろいろな面でそれに合った物理的な対応を既にとってしまっているわけですね。それを戻すというのも、これは単なる物理的な問題ではありますけれども、かえってまた混乱も起こるのではないか。ですから、もちろん個人消費を喚起する必要性はさっきから強調しているわけで、そのためにも所得税減税を思い切ってやれというふうに申し上げたわけですが、消費税をもとに戻すというのもやや現実的ではないなというのが第一点であります。  それから二番目は、中長期的に考えた場合も、我が国の税体系、いわゆる直間比率という問題でありますが、基本的には我が国は直接税中心で、七、三とよく言われておりますが、やはり直接税が中心になっている。これが、さっきもちょっと申し上げましたが、勤労意欲の喪失につながる。例えば個人の場合ですと、地方を入れた最高税率は六五%。これは、働いても大半は持っていかれる。これでは働く意欲もなくなるのは当然でございますし、法人税も、さっき申し上げたとおりで、五割近く持っていかれるというのでは、もうばかくさくて日本で商売やっていられるかと、日本企業でありながら海外へ逃げていくという情けない話もあるのだろうと思います。  そういう意味では、直間比率の是正というのは絶対に必要なわけで、中長期的には、間接税をある程度はふやしながら直接税を減らしていく、そういった視点からいえば、やはり私の申し上げた方がよろしいのではないか。消費税を戻すということは、結局は間接税をまた落とすということにもなるので、消費が今大変悪いということはもう同感でございますので、戻すというよりはむしろいわゆる減税で思い切ってやっていった方が将来的な姿としても合うのではないか、こう考えております。  以上でございます。
  106. 春名直章

    春名委員 どうもありがとうございました。  続いて、本間公述人にお伺いします。  最初のお話の中で、財政構造を変えるという点もお触れになりました。そこで、九四年の数字なんですけれども財政構造をマクロで見たときなんですけれども、国、地方を合わせて公共事業への総投資額が四十七兆八千二百十億円でございます。社会保障の国や地方の負担額の合計は十九兆四千七百六十一億円でございます。五対二ぐらいの比率になっているというのが事実なんです。  これを他国と少し比べてみますと、アメリカでは、社会保障費の方が公共事業費と比べますと約四倍。ドイツは三倍、イギリスは六倍ということで、逆になっているという状況がございます。  財政構造といった場合に、大きく見たときに、こういう構造転換という問題も今視野に入れる必要があるのではないかなと私たちは考えておりますが、その点での御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いします。
  107. 本間正明

    ○本間公述人 お答えをさせていただきます。  財政構造改革におきまして、裁量的な経費であります公共投資と、非裁量的な義務的経費であります社会保障関連の歳出を、どのような組み合わせの中で、財政再建に向け、あるいは財政構造改革に向けて手直しをしていくかということは、各国で非常に大きな悩みでございます。この点につきまして、各国の歴史的な事情がございまして、今の委員御指摘のような違いを生み出しているわけでありますけれども我が国が異常に公共投資の比率が高いということは、これは事実であります。  戦後の五十数年の歴史の中で、我が国社会資本整備が進んでいなかったということもございますし、フローのレベルで、はかり方によるわけですけれども、狭い統計では六%以上、財投等公的企業も含めますと八%以上の数字もあります。これが各国になりますと、二%から三%の水準にあるということが違いとしてあるわけであります。  これは、歴史上の差も一つ反映しておるわけですが、公共投資を通じて、いわば地域経済の活性化のためにこの手段を継続的に実施してきた、そういう背景もございまして、この点における見直しというものは、費用対効果との関連において今後していかなければならないテーマだろうと考えております。  その上で、非裁量的な経費であります社会保障制度は、現在比較的少数の高齢者の方々が、これからは二〇二五年にかけまして非常に多くの高齢者になってまいりますので、今約束をしております手形を、将来の我々のような団塊の世代前後の者にまで拡大をいたしますと、先ほど申し上げましたとおり、公的な負担というものは極めて天文学的に上がらざるを得ない。この点で、経済財政のいわばファンダメンタルズなミスマッチをどのような形で改革をしていくかという問題は、中長期には別個の問題としてあるのだろう。単純に公共投資を削って社会保障をふやせというわけにもいかないというのが、我が国の今現在抱えている非常に難しいテーマなのだろうと考えております。  以上でございます。
  108. 春名直章

    春名委員 ありがとうございました。  最後の御質問です。高木公述人にお願いします。先ほど来の質問でも出ていますが、金融機関への三十兆円の公的支援の問題でございます。  当委員会の議論の中でも、銀行局長さんが、銀行は総体としては体力がある、こういう御答弁をされたり、先ほどの、貸し渋り対策に本当になるのだろうかという不安といいますか疑問、それから、贈賄をしている銀行公的資金を投入するのはおかしいじゃないかという意見、私たちもそういうふうに考えていますけれども、そういったことを含めまして、金融機関への三十兆円の公的支援の投入問題についての評価といいますか、御意見を伺いたいと思いますので、よろしくお願いします。
  109. 高木勝

    高木公述人 お答えいたします。  大変難しいテーマでございますが、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今回の金融システムの安定化策というのは、やはりいろいろと問題点はあるのだろうと思います。個別にはいろいろございますが、もう時間もございませんので省略いたします。逆に言うと、そういう問題点があることは認めながらも、やらざるを得ないところまで金融システムの混乱が追い込まれているということもまた、一面の事実だろうと思います。  したがって、先般も、公的資金を入れるに際しての審査基準が出ましたけれども、あれもかなり緩い審査基準だという評価が一般的ではございますが、私は、問題は、入れた後、それこそが大変重要で、やはりいろいろな意味で厳しく条件をつけていくべきではないか。  例えば、今回の審査基準では倫理規定は外されておりますが、これまでのことはとりあえずおいておいて、入れた以上は、やはりこれからはきちっとした倫理行動、当たり前のことなんですが、それを一つの条件にする。  あるいは、貸し渋りが必ずしもおさまるとは限らないというふうに申しましたけれども、もし促進するのであれば、公的資金導入と同時に、貸し出し増加計画を各銀行から提出させる。計画だけではいけないわけで、その後もきちっとフォローしていく、場合によってはこういったこともする。  ですから、実施に際しての条件として、初めからそれを審査基準にするのではなくて、実施に際して、入れます、しかし入れた後はこういうふうにしてもらいたいというので、実行後の厳しいクライテリアをつくっていくというのも重要ではないか、私はこう考えております。  以上でございます。
  110. 春名直章

    春名委員 以上で終わります。ありがとうございました。
  111. 越智通雄

    越智委員長 次に、北沢清功君。
  112. 北沢清功

    ○北沢委員 社会民主党の北沢でございます。  きょうは、お三人の公述人に御出席をいただきまして、私にとりましてはいろいろ貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。  実は、午前中は経済研究所や学者の先生でございまして、五人の方がそういう立場でお話しになりました。当然、経済のとらえ方、これからの景気という面では、いろいろ違った面はあるわけであります。私は、きょうはお三人の方に御質問したいわけですが、たった十分ということですから、残念にもできません。  そういう中で、きょうは、中小企業の連合会会長の近藤さんがお見えになっております。近藤さんは、いわゆる日本の中小企業を引き連れて、昔から大企業に対して中小企業ということで、日本の二重構造の中で、実は大変な御苦労をされております。  また、最近の情勢というものが、一次産業もそうなんですが、私は信州の安曇野という山の中におるのですが、そういう中で、農業も水産業も林業ももう採算が合わないわけですから、まさに失業率も三・何%ということで高くなりました。そういう中で、ほとんど自給がされなくて、いわゆる輸入の比率は、世界の先進国では一番高いわけですね。  それから、日本の第二次産業を見ても、今収益を上げているのは海外へ移した、アイワなんかもそうですし自動車もそうなんですが、また衣料やその他含めて、外国におられて、外国の安い労働力を使う、そういうものが一番強いわけでございまして、その面では、不況ではございますが利益を上げております。  そういう中では、やはり中小企業は、実は将来に向けて大変厳しい展望を持っているのではないか。  それから、第三次産業は、今問題になっている証券とか金融でございますが、これも、こんな大蔵省から始まっての混乱の中で、特にバブルの影響がございますし、本当の意味日本が生きていくための、産業といいますか企業としての情勢というものも、私は、やはりこのままでいくと、外国の日本の預金も含めて、競争に耐えられるかどうかということが非常に心配であります。  観光は、私もよく知っていますが、ほとんど外国旅行へ行っていますから、日本の観光は非常に沈滞をしております。  どれを見ても、いわゆるグローバルといいますか国際化の中での対応ということが非常に重要なわけでありますし、加えて、五百何十兆円の財政赤字を持っていますね。加えて、少子・高齢化社会、それからまた都市の温暖化等も含めて、いろいろとそういうものが絡み合ってくるわけです。成長率がよければいいのですが、私は、これからも、成長率というものは実は大変心配するわけです。  ですから、そういう意味で、首相の言う今日の財政再建路線というものは、ある面では私は非常に理解をします、このことは厳然としてあるわけですから。しかし、経済がこういうふうに冷え込んだ場合は、やはりこのことはこのこととして、柔軟に対応すべきであるということを私は思っております。  そういうことですから、減税公共事業のあり方ということについては、きょうは非常にいい御意見をいただいたわけですが、減税をとってみても、バブルになって後の九二年から後は、日本の税収不足が二十五兆円です。加えて、日本の投資は六十五兆という、減税景気浮揚使いました。しかし、そのことが余り効果が上がらなかったといえばおかしいのですが、今もってこういう情勢でありますから、やはりその根源は、いろいろな面で、金融も含めて、これからの対応を考えていかなければいけないわけです。  そういう中で、中小企業、私ども地元におりまして、どんどんとシャッターが閉まってきているのですね。ひところはスーパーがよかったのですが、スーパーもだめになったのですね。大型店ができてきまして、私はこの間もちょっと質問したのですが、私はその状況を見て胸が張り裂けるような思いだと。借金をしながら、やめるにやめられないということでは、失業対策を考えなければいけないのではないかというふうに思うくらい、私はせつない思いです。  しかし、それはそれとして、今回、振興策を、二つの法案をしております。大店法の問題が規制緩和でなくなる、そういう中で、新たな環境を中心としての大店法というのができるし、また都市の都市計画の活性化というものも出ていますね。  しかし、都市の活性化法案というのは、都市計画というのは非常に長い時間がかかるのですね。これは即効薬ではないのです。それから、大店法は、改正されますと私の町へもすぐ入ってくる。大きな企業は待っているのですね。そういう意味で、私どもは非常に中小企業のあり方を心配しています。  ですから、二つだけお尋ねしますが、長引く不況の原因はどういうふうに見られるかということです。それから二として、中小企業の立場から、本当に有効な景気対策を政治に求めるものは何であるかということ。述べられた面もございますが、私どもの参考にして今後取り組んでまいりたいと思いますから、改めて御披露をいただきたいと思います。
  113. 近藤英一郎

    ○近藤公述人 景気が沈滞しておるという原因はもろもろあると思います。例えば、先ほども消費税の話が出ておりましたが、消費税だけでなく、金融不安あるいは東南アジアの企業の瓦解、通貨の不安定、それがやはり日本へはね返ってきておる。景気がすぐよくならないとは思いますが、私はよくこういうことを言っているのです。  要するに、今緊急的な対策が必要なのだ、それはなぜかというと、どちらかというと、構造改善をやるとか規制緩和をやることによって将来よくなるのだということを言われる方々が大分おるのですが、今つぶれそうになって、今どうするのだといえば、やはり景気対策が優先であろうと私は思います。  したがって、減税の問題もぜひやっていただきたい。それから、商店街が栄えていることはその町村の顔でありますから、何といったって中小企業がよくならなければ日本経済はよくならないと思います。そういう点で、いろいろとまたお世話になるわけであります。  貸し渋りの問題、これは非常に悲しい問題でありますけれども、先ほど何回か申し上げておりますが、やはり貸し渋りに対しては政府の強い指導がなければならないと思います。  減税も二兆円やっていただきましたが、当然、今後、所得税あるいはまた法人税減税もお願いをいたしたい、あるいは公共事業もやっていただきたい、こういう点が景気対策につながってくると私は思います。  ですから、私は、最終的に申し上げれば、来年度予算をひとつ速やかに通していただいて、そしてその予算が早く執行できるようにしていただきたい。その中には、公共事業問題もあろうし、減税問題もあろうし、いろいろの問題がありますけれども、そういう点について、ぜひひとつ本予算を早く通していただくことをお願いをいたしたいと思います。  減税措置や公共事業の積み増しなどによって機動的な景気対策を発動することも必要でないだろうか、私はこう考えておりますので、どうかよろしくお願いをいたします。
  114. 北沢清功

    ○北沢委員 ありがとうございます。  これで質問を終わりますが、私、最後に一言だけ申し上げたいのは、先生方の御発言は、いわゆる減税の大合唱なのですね。片方に大きな財政赤字を持ち、減税の大合唱の中で、所得税も事業税もキャピタル税もすべて、証券でも早くゼロにするとか、そういうことになれば、後に来る税制というものは、逆進性の強い消費税になるのだろう。これは、そのままいても、大蔵省はそういう意味で控えていると思います。  これも、今回のいろいろの面で国民の不信があるわけですから、私どもは考えていかなければいけないものですから、改めて論争をしたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  以上です。
  115. 越智通雄

    越智委員長 これにて公述人に対する質疑は終了いたしました。  公述人各位におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。厚く御礼を申し上げます。  明十二日の公聴会は、午前十時より開会することとし、本日の公聴会は、これにて散会いたします。     午後四時七分散会