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大森委員 私は、今回の裁量労働制の、本質的には時間
管理を企業がしない、先ほど労使のことを言われましたけれ
ども、現実の問題として三六協定等が効果を発揮していないということも現実にあると思うのですよ。そういう面で、こうした裁量労働制が新たに導入される、先ほ
ども申し上げましたけれ
ども、この間の労働
大臣の
答弁ではホワイトカラーに拡大するんだということをおっしゃって、きょうは中枢部分というような注釈がつきましたけれ
ども、しかし、それがどんどん拡大されない保証は何一つないということを重ねて申し上げたいと思います。
ですから、本質的な問題として、裁量労働制の持つ害悪がこの電通事件にやはり示されておるんじゃないか。第一が、労働時間の上限規制が形の上でもなくなってしまう。ですから、必然的に長時間労働になる。しかも、ノルマや目標と結びついて、それを一層加速すると思うのですよ。
大臣はたびたび、週四十時間のところを能力のある人は二十時間でも済ませることができるんです、あとは子供の授業の参観でも行ってなさいと。わかりやすくおっしゃっているつもりでしょうけれ
ども、例えばこの富士通のSPIRIT制度、二十時間で目標を立てられるようなそういう状況はまず労働者の側にないということですよ。二十時間で済むのであれば、さらにもう二十時間の目標が必ず来るわけですよ。目標を設定するのはだれか、その成果を評価するのはだれか、労働者じゃないんですよ。その点はよく御理解いただきたいと思うのです。
もう一つは膨大なサービス残業、これも申し上げましょう。先ほど申し上げた、これは同じ朝日新聞で報道された、やはり富士通ですよ。目標を半年ごとに立てており査定に直結する、
取引先への納期もある、残業は月六十時間から九十時間になるが、残業代がなくなるかわりについた裁量労働の手当は三十時間分、年間百万円以上の減収になった、こう記者に語っておられるわけですよ。
先般の労働
委員会での
質疑の中で、
大臣は、収入がふえる人もあれば減る人もある、問題は経済の底上げだ、そして、こういう労働
法制の改定を通じて経済の活性化を図るかのような、そういう
答弁をされました。しかし、これは私は、大変重大な問題を含んでいる発言だと思うのですね。
つまり、かつて当
委員会でも、労働条件を競争の武器にしてはならないというのが、当時私
ども日本共産党の追及の中で、当時の労働
大臣が共感を示されました。労働基準法というのは、本来労働者が人たるに値する生活を営むに必要な最低の条件、基準を決める、こういうものだと思うのですよ。労働者の暮らしを守る、権利を守る、それが労基法じゃないか。
それを、経済活性化の道具にするなどというのは、これはやはり大変問題があるのではないかと思います。問題は、こうした裁量労働制について、先ほど労使を呼んで話を聞かれたという
お話もありましたけれ
ども、もっとこういう実態を調べるべきじゃないかと思います。
裁量労働の持つそういう害悪のもう一つのものとして、やはり全体として収入が減ってしまう、労働者の賃金が減ってしまう。
これは、確かにふえる人もあるでしょう。先ほどの富士通のSPIRIT、SAのランクに
位置づけられた特別の手当がつくわけです。しかし、それにしても、本当に彼が働いた時間にふさわしいものになっているかどうか、これは疑問だ。しかし、それにしてもSAに相当するのは、相対評価でわずか一〇%しかないという状況なわけですね。
ですから、私は、もし本当に経済活性化を言うのであれば、ホワイトカラー二千万とも三千万とも言われるわけですが、その人たちの収入が全体としてどうなるのか、購買力が全体として拡大されるかどうか、この点をやはりしっかりと見るべきではないかと思います。
加えてもう一つ、変形労働時間、これについても本当は私
どもが調べた実態をお知らせしたいところなんですが、時間がありませんので割愛しますが、ただ申し上げておきたいのは、変形労働時間については既に四十数%の企業が導入している、そこでどういう実態が起きているのか。
それを非常に詳細にアンケートをとった広島電鉄の暮らしや健康、労働実態アンケート、これは、会社でもない組合でもない任意の団体によって、七百人の皆さんのアンケート回答が寄せられているわけでありますけれ
ども、その結論は、とにかく年間拘束時間が逆に四百時間ふえてしまった、収入の方は七割の方が平均四万円減ってしまった、こう言われているわけですね。しかも、そういう中で私自身も衝撃を受けたのは、週休完全二日制なんというのはもうやめてほしい、このアンケートの中にはそういう七百人の労働者の皆さんのまさに叫びが含まれているわけなんですよ。
ですから、裁量労働にしろあるいは変形労働にしろ、結局労働者にとっていいことは何一つないじゃないか。
大臣は各所で何事も効果もあれば副作用もあるんだとおっしゃっているわけなんですが、私は、こういう労働
法制の改定は、効果は資本の側に、副作用は労働者の側に、こういうことが、現に行われている職場の実態を見ても明らかではないかと思います。
だからこそ、労働
法制の規制緩和を財界はこぞって要望したと思うのです。政府への規制緩和要望、これらの労働
法制の改定について要望を出した団体を調べてみました。労働省も調べました。
裁量労働制の適用対象
業務の拡大、経団連、日経連、日商、経済同友会、日本自動車工業会、電気事業連合会等々、企業団体ばかりですよ。変形労働時間の規制緩和、同じく経済四団体に加えて、日本自動車工業会、日本電子工業振興協会。さらに労働契約期間の上限についての規制緩和、これは経団連、日商、経済同友会、日本チェーンストア協会等々。労働者派遣事業の原則自由化などの大幅拡大、これも経済四団体や地銀協会等々になっているわけです。ただ一つの例外もなく、すべて企業側、財界側の要望ばかりだと思うのです。
この労基法、今回の建議から
法案の提出に至る経過の中で、労働者
委員、労働団体はどういう要望、どういう意見を審議会なりで出されたのでしょうか。