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1998-03-03 第142回国会 衆議院 予算委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月三日(火曜日)    午前九時一分開議  出席委員    委員長 越智 通雄君     理事 伊藤 公介君  理事 石川 要三君     理事 中山 利生君  理事 深谷 隆司君     理事 山本 有二君  理事 五島 正規君     理事 高木 義明君  理事 北側 一雄君     理事 加藤 六月君        甘利  明君     小澤  潔君        大石 秀政君     大原 一三君        河村 建夫君     栗原 博久君        新藤 義孝君     田中 和徳君        津島 雄二君     東家 嘉幸君        中川 昭一君     中山 正暉君        葉梨 信行君     萩野 浩基君        桧田  仁君     増田 敏男君        松本 和那君     松本  純君        村田 吉隆君     村山 達雄君        望月 義夫君     吉田左エ門君        綿貫 民輔君     岩國 哲人君        生方 幸夫君     岡田 克也君        海江田万里君     小林  守君        原口 一博君     松沢 成文君        山花 貞夫君     山本 孝史君        吉田  治君     池坊 保子君        上田  勇君     漆原 良夫君        草川 昭三君     富田 茂之君        西川 知雄君     丸谷 佳織君        鈴木 淑夫君     中井  洽君        西川太一郎君     西村 真吾君        木島日出夫君     中林よし子君        春名 直章君     吉井 英勝君        上原 康助君     北沢 清功君  出席国務大臣         内閣総理大臣    橋本龍太郎君         法務大臣      下稲葉耕吉君         外務大臣      小渕 恵三君         大蔵大臣      松永  光君         文部大臣      町村 信孝君         厚生大臣      小泉純一郎君         農林水産大臣    島村 宜伸君         通商産業大臣    堀内 光雄君         運輸大臣      藤井 孝男君         郵政大臣      自見庄三郎君         労働大臣      伊吹 文明君         建設大臣      瓦   力君         自治大臣         国家公安委員会         委員長       上杉 光弘君         国務大臣         (内閣官房長官)  村岡 兼造君         国務大臣         (総務庁長官)   小里 貞利君         国務大臣         (北海道開発庁長官)          (沖縄開発庁長官) 鈴木 宗男君         国務大臣         (防衛庁長官)   久間 章生君         国務大臣         (経済企画庁長官) 尾身 幸次君         国務大臣         (科学技術庁長官) 谷垣 禎一君         国務大臣         (環境庁長官)   大木  浩君         国務大臣         (国土庁長官)   亀井 久興君  政府出席委員         内閣官房参事官         兼内閣総理大臣         官房人事課長    洞   駿君         内閣審議官     松田 隆利君         内閣法制局長官   大森 政輔君         内閣法制局第一         部長        秋山  収君         内閣総理大臣官         房管理室長     佐藤 正紀君          警察庁長官官房         総務審議官     金重 凱之君         警察庁警備局長   伊達 興治君         総務庁長官官房         審議官       西村 正紀君         総務庁人事局長   中川 良一君         防衛庁防衛局長   佐藤  謙君         防衛施設庁長官   萩  次郎君         経済企画庁調整         局長        塩谷 隆英君         経済企画庁国民         生活局長      井出 亜矢君         経済企画庁総合         計画局長      中名分 隆君         経済企画庁調査         局長        新保 生二君         科学技術庁長官         官房長       沖村 憲樹君         環境庁水質保全         局長        渡辺 好明君         国土庁計画・調         整局長       河出 英治君         法務大臣官房司         法法制調査局長   山崎  潮君         法務省刑事局長   原田 明夫君         外務省総合外交         政策局長      加藤 良三君         外務省アジア局         長         阿南 惟茂君         外務省北米局長   高野 紀元君         外務省欧亜局長   西村 六善君         外務省中近東ア         フリカ局長     天江喜七郎君         外務省経済局長   大島正太郎君         外務省条約局長   竹内 行夫君         大蔵大臣官房局         長         武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長     原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官      溝口善兵衛君         大蔵省主計局長   涌井 洋治君         大蔵省主税局長   尾原 栄夫君         大蔵省証券局長   長野 厖士君         大蔵省銀行局長   山口 公生君         大蔵省国際金融         局長        黒田 東彦君         証券取引等監視         委員会事務局長   堀田 隆夫君         文部大臣官房長   小野 元之君         文部省初等中等         教育局長      辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長        御手洗 康君         厚生省生活衛生         局長        小野 明雄君         厚生省社会・援         護局長       炭谷  茂君         厚生省老人保健         福祉局長      羽毛田信吾君         厚生省児童家庭         局長        横田 吉男君         厚生省保険局長   高木 俊明君         厚生省年金局長   矢野 朝永君         農林水産大臣官         房長        堤  英隆君         水産庁長官     嶌田 道夫君         通商産業大臣官         房商務流通審議         官         岩田 満泰君         通商産業省産業         政策局長      江崎  格君         通商産業省環境         立地局長      並木  徹君         資源エネルギー         庁長官       稲川 泰弘君         中小企業庁長官   林  康夫君         中小企業庁計画         部長        中澤 佐市君         運輸大臣官房長   梅崎   君         運輸省運輸政策         局長        土井 勝二君         運輸省鉄道局長   小幡 政人君         郵政大臣官房総         務審議官      濱田 弘二君         郵政省貯金局長   安岡 裕幸君         郵政省簡易保険         局長        金澤  薫君         労働大臣官房長   渡邉  信君         建設大臣官房長   小野 邦久君         建設省都市局長   木下 博夫君         自治大臣官房長   嶋津  昭君         自治大臣官房総         務審議官      香山 充弘君         自治省行政局長   鈴木 正明君         自治省行政局公         務員部長      芳山 達郎君         自治省行政局選         挙部長       牧之内隆久君         自治省財政局長   二橋 正弘君         自治省税務局長   成瀬 宣孝君  委員外出席者         最高裁判所事務         総局総務局長    浜野  惺君         参考人         (日本銀行総裁)  松下 康雄君         参考人         (日本銀行理事)  本間 忠世君         参考人         (預金保険機構         理事長)      松田  昇君         予算委員会専門員  大西  勉君     ───────────── 委員の異動 三月三日  辞任           補欠選任   相沢 英之君       松本  純君   江藤 隆美君       田中 和徳君   大原 一三君       新藤 義孝君   河村 建夫君       桧田  仁君   桜井  新君       吉田左エ門君   関谷 勝嗣君       大石 秀政君   中川 昭一君       松本 和那君   岩國 哲人君       吉田  治君   岡田 克也君       山本 孝史君   草川 昭三君       丸谷 佳織君   斉藤 鉄夫君       富田 茂之君   西村 真悟君       西川太一郎君   志位 和夫君       春名 直章君   不破 哲三君       中林よし子君 同日  辞任           補欠選任   大石 秀政君       関谷 勝嗣君   新藤 義孝君       大原 一三君   田中 和徳君       望月 義夫君   桧田  仁君       河村 建夫君   松本 和那君       中川 昭一君   松本  純君       相沢 英之君   吉田左右エ門君     桜井  新君   山本 孝史君       岡田 克也君   吉田  治君       岩國 哲人君   富田 茂之君       漆原 良夫君   丸谷 佳織君       草川 昭三君   西川太一郎君       西村 真吾君   中林よし子君       吉井 英勝君   春名 直章君       志位 和夫君 同日  辞任           補欠選任   望月 義夫君       江藤 隆美君   漆原 良夫君       池坊 保子君   吉井 英勝君       不破 哲三君 同日  辞任           補欠選任   池坊 保子君       斉藤 鉄夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成十年度一般会計予算  平成十年度特別会計予算  平成十年度政府関係機関予算      ─────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成十年度一般会計予算平成十年度特別会計予算平成十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。山花貞夫君。
  3. 山花貞夫

    山花委員 前半に外交日韓関係の基本的な問題について、後段、大蔵省にかかわる問題について御質問させていただきます。  ついせんだって、二十五日に新しい金大中大統領就任式が行われました。経済困難な折から質素にということでしたけれども、参加させていただいて、大変立派な就任式であったという印象を強く持ちました。  若干個人的な感慨もございます。私が金大中大統領に一番最初にお会いしたのは、あの拉致事件からちょうど十年たったころ、死刑の判決を受けて、その後、無期に刑が直されまして、国外追放といった形だと思いますけれども、足の治療にワシントンにいらしたころでした。死線を四回も越えたというお話をそのころ伺いました。やはり関心を持っているのは、国民のために民主主義を確立して、平和的な祖国統一を願うだけである、自分は監獄に入っても韓国に戻りたいということを切々とお宅でお話しになっておりました。  その後、思い出す機会は、それからちょうど十年たった今から五年前のことでしたけれども、ソウル郊外大統領のお宅の方にお伺いしてお話を伺う機会がございました。そのときには、自分政治から引退をしたということについてお話しされまして、これからは南北統一アジアの平和のための財団をつくりたい、こういうお話をされておったわけであります。これが五年前です。  死線を越え、政界から引退を決意された方が、改めてその国のあり方を考えて、大統領に立候補し、当選された。そうしたことをさまざまな機会お話を伺いながら見てまいりましただけに、大変印象強い気持ちを余計強くしたのかもしれません。  新聞でも紹介されました就任演説は、決して長いものではありませんけれども、極めて具体的に、国難を乗り越えて新しい時代に向かって跳躍していこうという、韓国の進むべき方向について、まさに政治リーダーとして国民に呼びかけた内容のものでした。聞いておりまして、まさにリーダー国民にこうしようということを投げかけ、そのことに対する反応を確かめながら演説をされている、政治リーダーの姿を見た、こういう感じもいたしました。  若干印象めいたこともお話しさせていただきましたけれども、日本韓国関係というものはまさにこれからも大変大事な問題だと思っております。総理に、日本韓国との基本的な関係あり方について、まず御所見を伺いたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私の場合、議員と異なりまして、遠くから拝見をしたことはありましても、金大中大統領とじかにお目にかかりお話をしたという体験を持ちません。それだけに、今回就任をされたことに対し、私は、この大変な時期に重責を担われる大統領に対して、就任の祝意とともに、日本としてもできる限りの協力を惜しまないという気持ちを伝達する親書をお渡しするという道を選びました。  日本にとりましてまさに最も近い隣国である韓国、二十一世紀に向けて強固で幅広い日韓関係というものをつくっていきたいと今までも心がけてきたつもりでありますが、一層、新たな大統領のもとにおきまして、日韓のパートナーシップというものを構築していきたい。そのためにも、金大中大統領を初めとする新たな政権とでき得る限り緊密な対話の機会を持ちたい、また意見交換機会を持ちたい。こうしたことを重ねることによって、日韓関係の一層の発展のためにも努力をしていきたいと考えております。  その過程におきまして、でき得るならば、私自身も、金大中大統領との間に個人的にも良好な信頼関係というものを持つことができればと願っております。恐らく、第二回ASEM非公式首脳会合の場がお目にかかれる最初機会でありましょうし、国会からどれぐらいの時間のお許しをいただくことができるのか、そもそも参加ができるのか、そういう状況の中で、限られた時間ではありましても、もしお目にかかる機会があるならば少しでもその関係の糸口を見出したい、今率直にそのような思いでいます。
  5. 山花貞夫

    山花委員 大統領就任演説でも、六・二五、朝鮮戦争のことを示していると思いますけれども、以来最大の困難である通貨危機の中にある、それでも我々は、というのはあの韓国みずからを指しているわけですが、破局を免れているのは愛国心で団結した国民の皆様の御協力と、ということとともに、日本など友邦国の助けのたまものであると。こうして日本の支援に対して大変強い感謝の気持ちもあらわされながら、今後の日韓関係について積極的に取り組むということをおっしゃっているところでございまして、ぜひ大臣の今のお話、さまざまな視点をとらえてのものだと伺っておりましたけれども、積極的に日韓外交について進められることを心から期待したいと思います。  実は、所信表明外務大臣外交演説、これを伺ったわけですけれども、ちょっと違いがあるのではないかという気がいたしました。  総理施政方針演説の中で、韓国との関係につきましては、懸案もあるけれども新大統領信頼関係を確立してということから始まりまして、実は私が違っているのかなと思ったのは、北朝鮮に関しての部分であります。  総理国交正常化交渉再開の問題を挙げられまして、こうした問題の解決に真剣に取り組みます、こういう施政方針演説になっております。実は外務大臣の方は、課題の中から国交正常化問題というものが外れているわけでありまして、全体の流れからするならば、総理が述べた施政方針について外務大臣の具体的なもうちょっと突っ込んだ方針ということだと思うのですけれども、この国交正常化問題について、外交演説の中でテーマから外したということは意味があるのでしょうか。  あるいはこの問題について、これから南北問題についてもさまざまな新しい提起が行われている中でありますので、一体大臣としてはどのようにお考えになっておるのか。外務大臣に、この点については、北朝鮮との国交再開問題についてどのような基本的な戦略あるいは方針をお持ちなのか、伺っておきたいと思います。
  6. 小渕恵三

    小渕国務大臣 総理施政方針演説の基本にのっとって私自身外交演説も申し上げたつもりでございますが、具体的に今山花委員指摘のように、その点について強調しておらなかったとすれば、別に他意があることではありませんで、具体的には、北朝鮮との関係につきましては、我が国としては、国連加盟国の中で唯一国交を持たないという意味で、一日も早く正常化しなければならないという姿勢で今日まで取り組んできたところでございます。  特に、金正日総書記が就任以降、我が国に対しましてもどのような対応をするか、極めて慎重に見きわめつつありますが、日本としては、九一年の第一次の国交正常化窓口を開かれた当時の金丸、田辺両氏を初めとしての交渉によりまして、九一、二年に八回行ってまいりましたが、その後中断をしておりました。その原因は委員も御承知のとおりのところでございますが、この機会にぜひ日本としても北朝鮮との関係正常化に臨むべく、種々のことを通じまして窓口を開いていきたい、こういう認識でございます。  また、同時に、金大中大統領におかれましても、今御指摘就任演説の中でもその強い御意思を示されておりますので、私も昨年の暮れ、次期大統領たる金大中氏にもお目にかかりましたときに、日本としても積極的に北との関係を開いていただくことに何の異存もありませんということを申されておりまして、日本としてはぜひ積極的に取り組んでいきたいということで、今努力をいたしておるところでございます。
  7. 山花貞夫

    山花委員 お話のとおり、五年間中断した後、昨年北京における再開を目指しての御努力、承知しておりますけれども、ただ、その後、やはり見えてこないということが積極的なのかなという疑問を持たざるを得ないわけであります。  私、例えば日本ロシアとの外交などについて、昨年来の経過を振り返りますと、二〇〇〇年までに日ロ平和条約締結に全力を尽くす、こういう合意を実らせた昨年のクラスノヤルスクでの日ロ首脳会談以降、これは外務大臣の御努力もその後続いておるようですけれども、私は、ここには日本外交の顔が見えているのかな、積極的に進んでいるのかな、こういう感じで、大変強い関心を持って見ておったところでございます。  同時に、この日ロの外交など見てみると、ただそこだけではなく、最近総理も強調されておられますユーラシア外交視点、あるいはシルクロード地域外交アクションプログラム等々をずっと拝見しておりますと、ここでは、油の問題もあるかもしれませんけれども、かつてなかった日本の戦略的な外交視点ということを感じないわけでもございません。  私は、これは顔の見える外交が進むのかなと思っておるわけですけれども、残念ながら、どうも長年振り返りまして、朝鮮半島問題についてはやはり積極性が欠けておるんじゃないだろうか、まず第一にアメリカの顔色をうかがうということがあるんじゃないだろうか。もちろん、韓国との連携は大事ですけれども、常に消極的に後手後手を踏んでいるんじゃないか、こういう気がしてならないわけであります。  例えば最近でも、新しい大統領のもとで、きのうの国会、ちょっとがたがたしておるようですけれども、首相の候補になっておる金鍾泌自民連総裁中国にいらっしゃって、六カ国共同宣言案というものを出しました。こういうものについてはどうなんでしょうか。外務大臣、それをお聞きになってどういう印象で受けとめておられるでしょうか。ちょっと所見を伺いたいと思います。
  8. 小渕恵三

    小渕国務大臣 あらゆる機会にあらゆる国々と積極的に話を進めるということは大切だと思いますが、特にこの北東アジアの問題につきましては、現在四カ国で話し合いを進めておりますが、それに加うるに、ロシア日本、こういうものが参加するということは、周辺の国として最大関心を持っておることですから、そういうことが実行されるとすれば、大変結構なことだというふうに思っております。  ただ、残念ながら、この提案につきましては、北朝鮮側の、公式かどうかわかりませんが、伝えられるところによりますと、これを拒否されておられるようなことも聞いておりますので、そういった点で、残念だとは思いますが、もし実行あらしめるとすれば、いろいろな機会に話し合って、この地域の平和と安定に寄与するということがあるとすれば、大変望ましいことだと考えます。
  9. 山花貞夫

    山花委員 実は、この韓国の六カ国宣言構想につきましても、私は前の四カ国会談経過を思い起こしたところであります。  四カ国会談についても、今その成功が期待されて、それぞれの国が積極的に取り組んでおる、日本もその立場で臨んでおるということは承知しておりますけれども、この提案も、もともとは韓国の方がかなり準備をされておったわけであります。九四年のクリントン大統領訪韓の際の会談の成果として共同提案されたということになっていますけれども、よく知られているとおり、その前の年から韓国準備をして、当時は中国も慎重にという格好だったわけですけれども、それが一年たって実って、四カ国会談が進み始めた、こういう経過があるわけです。  今度の六カ国宣言構想につきましても、ついせんだって同僚議員中国へ行ってその反応を聞いたことについて、私は話を聞いておりますけれども、やはり初めは慎重だ、こういう言い方をしております。  各国は初めは慎重なんだけれども、何年かたつとこれが、それは四カ国会談成功のその先にあるものかもしれませんけれども、具体的な中身を伴ってくる。やはりこういうあたりが、みずから主体的に、積極的に外交に取り組んでいく姿勢なんじゃなかろうかと、私は、大変したたかにこういう点、韓国はされてきたし、これは新しい大統領も引き継いでおられるんだ、こういう印象を強く持ったところであります。  六カ国会談提案ということもありますけれども、そうした意味におきましては、日韓関係についても、先ほど総理も、お会いするのはこのころかというお話がありましたけれども、私は、これは、どういう機会をどうとらえるかという、そのことをも含めて今大事な時期を迎えているのではないかと思って、今その点について伺った次第でございます。  ただ、これは、新しい大統領のもとでの韓国日本との関係を考えるに当たって、両国間に深く刺さったとげが二つあるとされております。一つは、一九七三年の金大中拉致事件であります。もう一つは、最近のテーマである日韓漁業協定破棄をめぐる問題であります。この問題については、実は取り扱いは慎重なことが両国政府に求められる、こういうように思っておりますけれども、ただ、振り返りますと、第一次の政治決着につきましても、第二次の政治決着につきましても、一言で言えば、封印をした。でも、封印というものは、将来、公権力の介入の事実が判明した場合にはこの封印を解くんだ、こういう構造になっておったと私は記憶をしているところでございます。  そうなってくると、新聞報道というのがこれはまだ始まったばかりでありまして、どうこの問題について動いていくのかということは見えませんけれども、政治決着問題について、封印を解くということが今度の経過の中であるのだろうか、こういう気もしておるわけでありまして、政治決着とのかかわりについて、新しい事態をどうごらんになっておるか、外務大臣に伺いたいと思います。
  10. 小渕恵三

    小渕国務大臣 金大中大統領は、金大中氏の拉致事件に関し、当事者の責任は問わないが、真相は解明されなくてはならないとの考えとともに、この問題を両国政府間で取り上げる意向のないこともあわせ表明していると承知いたしております。我が国としては、大統領自身のこうした姿勢にも関心を払っていきたいと考えております。  また、この事件に関する外交的決着につきましては、その当時の日韓双方の最高首脳が、日韓関係の大局を考えて高度の政治的判断を下したものと考えておりますが、今委員指摘の点につきましての政治的決着も含めて、一次、二次の決着以降についてのことにつきまして、今、将来の事実が出てきた場合にこれを見直すこともあり得るという我が国の立場を前提としてお話をされたのでございます。  委員も先般、就任式、式典にも御出席をされ、かつ、その後日韓議員連盟の諸先生方ともどもに大統領を表敬された折にも、本問題について大統領も若干の発言があったと聞いておりますが、公式に韓国側の立場でこの問題をお取り上げになるということを聞いておりませんので、その事実について、新聞紙上、その表明、その事実関係についての報道はいろいろ承っておりますが、政府といたしましては、前提申し上げましたような趣旨で、現時点では政治決着において処理したこととして対応していきたいと思っております。
  11. 山花貞夫

    山花委員 大統領の発言はまた後に触れるといたしまして、事件から十年たった八三年五月に、当時の後藤田官房長官が、もう事実上聞くことは不可能なのだからということで捜査終結宣言を出しまして、その後、その年の八月一日ですけれども、警視庁の公安部は捜査本部の解散を決定しております。  しかし以後、一応、専従捜査員五名の長期継続捜査体制、FBI方式で捜査を続行するということに当時なっておったわけでありまして、これは警察庁の方に伺いたいと思いますけれども、このFBI方式による事件の捜査というものは今日なお続いておるのかどうかということについてお伺いしたいと思います。
  12. 金重凱之

    ○金重政府委員 お答えいたします。  本件は、昭和四十八年八月に東京都内のホテルで来日中の金大中氏が拉致されたという事件でございますけれども、これにつきましては、警察としましては、事案の真相解明に向けまして、現在も捜査を継続しているところでございます。
  13. 山花貞夫

    山花委員 今お話しのとおり、捜査は継続しているわけであります。そうすると、全体を含めてどうするかという判断がやはり必要になってくるのではなかろうか、私はこう思って、実はこの点についてお伺いをした次第でございます。  いろいろ報道を通じても大統領の見解あるいは韓国の外務部の、従来の外務部ですけれども、見解等が出ておりますけれども、実は、外務大臣も触れていただいた過日の訪韓の際、この問題について、議連の皆さんと一緒にかなり詳しくいろいろな問題についてお話しになった中の一こまとして、大統領みずからがこうおっしゃっていました。  自分のいわゆる拉致事件であるが、かねてより当事者の責任はもはや問わないが、真相は明らかにしなくてはならないと主張してきている。拉致事件の犯人はわからないというのがこれまでの話であったが、KCIAがやったと言っている。私は、この問題を政府間でやるつもりはない。ただし、真相は明らかにされなくてはならない。  恐らく外務大臣のところにはそういう報告が上がっているのじゃないかと思いますけれども、今ちょっと紹介しましたのは外務省の記録でありまして、私が直接やりとりしたメモによりますと、今回、このたび安企部がやったということはわかった、みずからそうおっしゃっているのですね。同時に、私はこの問題で政府間をこじらせる考えは全く持っていない、しかし、真相は明らかにされなければならないと思っていると。  大体、この二つの記録で大統領気持ちというものは出てくるのじゃなかろうか、こう思うのです。  同時に、どうでしょうか、外務省はこの点をどう把握されておられるかということなんですが、就任式の前の日に韓国公報庁のパンフが発表されたことが紹介されております。人物紹介の日本語版のパンフレットによりますと、金大中拉致事件について、韓国政府が拉致をした、こう書いてありまして、略歴で、政府は東京のホテルに滞在していた彼、金大中氏を真っ昼間に拉致し、ソウルに連れ帰るという暴挙に出たと。  実は、この政府の公報庁のパンフでそういう紹介をするということをも含めて、直ちに外交問題にしてこじれるようなことにしたくない、こういう大統領の発言がしっかりとあるわけですけれども、同時に、真相はやはり明らかにしていかなければならない。こういう観点から、いろいろな工夫といいますか、さまざまな手だての中で真相は明らかにしていって、そして、最終的にこの問題について決着をつけていかなければならない、こういう方向で動きがあってしかるべきではなかろうか、私はこういうふうに考えるところでございます。  うやむやでずっといった場合には、さっきの捜査もずっと続いて、五人の捜査員がなお今日まで続けて捜査を行っているということですと、これは一体どうなるのかということにもかかわってくるわけでありまして、そこは外交の正式ルートということになるのか、そうじゃない形があるのかを含めて、やはり韓国側の対応というものを正確にとらえて日本の外務省としても対応すべきではないだろうか。  単にこの問題について伏せていく、伏せていくということでは、私は今後の関係ではいけないのではなかろうか、やはりけじめをつけた中で乗り越えていかなければならないテーマではないか、こういうふうに考えているところでございます。  外務大臣所見を伺いたいと思います。
  14. 小渕恵三

    小渕国務大臣 日本政府としては、先ほど来申し上げていますように、一次、二次の政治決着というものを、これを評価して、その線上で考えていかなきゃならないということであります。  ただ、当事者でありました金大中氏がみずから今韓国大統領として御就任をされておりまして、そのお気持ちとしては、今委員がお示しをされたように、真相究明はしなきゃならぬ、しかし、これは政治的な両国間の問題として取り上げることはない、こうおっしゃっておられるわけでございます。  したがいまして、この事件としては、当時これに関与したと称せられる韓国の責任者等についての我が国の捜査当局の対応について、どのように考えるかということでありますが、これも先生御承知のように、七五年七月二十二日の韓国側からの口上書におきまして、この人物が不起訴処分になっておるというようなこともございますので、かかって、これは韓国側でどのように対応するかということになるのではないかというふうに考えております。
  15. 山花貞夫

    山花委員 御指摘の第二次政治決着につきましても、やはり公権力の介入の事実が判明しない限りという前提がついているわけでありまして、理屈は第一次と同じだと私は考えています。  大統領の発言もあります。でも、この問題については、韓国の中でも、国会議員含めて、真相究明委員会というのがありまして、そこが熱心に事実を明らかにしようと今日なお努力をしております。日本の中にもそういう多くの皆さんの努力があります。  そうした委員会に対して持っている資料を積極的に明らかにしていくということを通じて、いわば政府という形でなくともこの真相については明らかにしていくということで、最終的なFBI方式も含めて、整理して、けじめをつけていく必要があるんじゃなかろうか、こういうように考えているところでございます。  この問題については、なおこれから新しい大統領のもとで内閣が組織され、それぞれ外務部の意向等も出てくると思いますので、その点なしにお伺いしているわけでありますから、まだ見きわめる問題点がこれから出てくるかもしれません。その点がありますので、以上で次の問題に移らせていただきたいと思います。  もう一つの問題点は、漁業交渉関係でございます。  農水大臣、これはかなり事が進んでおりまして、恐らく昨年、円満に解決するんじゃなかろうか、こういうように考えておったわけでありますけれども、残念ながらそういうことにはなりませんでした。  今度の新大統領就任に当たりましても、相当感情的な発言も含めて、それぞれのレベルで出ているわけでありまして、この問題について農水大臣に具体的な経過をお伺いする前に、これは外務大臣、昨年暮れ、わざわざ伺って交渉もされておるわけでありますから、政府の、外務省としてのこの問題についての取り組みについてまずお伺いをして、その後、具体的な経過について農水大臣の方からお伺いをしたいと思います。  外部大臣、まず全体的な経過についてお話をしてください。
  16. 小渕恵三

    小渕国務大臣 日韓の漁業交渉につきましては、委員御案内のように、国際海洋法を両国とも批准をいたしまして、俗に二百海里時代を迎えておるわけでございまして、一九六五年の日韓基本条約に伴って関連してこの漁業協定が結ばれてから、長きにわたって存続してきた協定でございます。  しかし、現下の状況を考えましたときに、新しい国際条約に基づいて日韓としても新しい協定を結ぶべく、かなり、二年有半にかけて数次の大臣同士の会談も通じまして進めてまいりましたが、大変残念なことに、我が国としては、協定十条二項によりましてこれを終了せざるを得なかったわけでございます。  この間、韓国の当時の柳長官におきましても、いろいろ積極的な提案もございました。また、私どもとしても、それを受けて、日本側の立場も主張いたしてまいりまして、かなりぎりぎりのところ、妥結に至る間に、それに近い案を結ばれてきましたが、我が国としては、どうしても両国との間の妥結に至らなかったということでございまして、前政権時代に残念ながらそのような対応をせざるを得なかったわけでありますが、新しい大統領も誕生したことでございますので、新しい外務部長官等も近日中に指名されるということであれば、私としては、積極的にこの問題について日韓の漁業協定が結ばれるべく最善の努力をしていきたい、このように考えておる次第でございます。
  17. 山花貞夫

    山花委員 実は、長年の経過は省略したいと思いますけれども、与党三党の強い要求もあってというような、最後の閣議に至る前の経過についてもお伺いをしております。  ただ、現実の問題として、昨年、この問題について大統領当選後の金大中氏が、民主政権の発足を前に侮辱的である、破棄通告後も協定は一年間有効であって、その間交渉を続けるということならば、今すぐ破棄通告をする理由はないではないか、こういう発言がございました。  あるいは、向こうの外務の長官の発言として、日本の態度は遺憾である、改定交渉は相当に意見が接近してきた、日本の外相が全権を委任して派遣した高官と妥協案ができていたのに、日本側の政治的な理由でうまくいかなかったのは納得いかない、こういう発言も出ているわけであります。  受けとめ方があります。したがって、一たん合意に達したのだけれども日本政治的な発言によってつぶされた、こういう受けとめ方が向こうでは一般的なわけでありまして、この辺の経過について、農水大臣にお伺いしたいと思います。
  18. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えいたします。  一昨年、国連海洋法条約を締結した後、過去二年近くにわたって首脳会談六回、外相会談十三回を含め、実は三十回以上交渉を重ねてきたところでありますが、残念ながら合意を見るに至らなかったというのが経過であります。  ただいまの新聞報道は必ずしも正確ではありませんで、もう煮詰まる段階であれば、総理の御指導その他もあって、日韓両国のお互い運命共同体的な、地理的条件等も考え、歴史的な経過等を踏まえまして、当然にそうであればもっと歩み寄ることができた、こう思います。  しかしながら、現行のままでは、国連海洋法条約に基づく我が国二百海里水域内の資源管理ができず、引き続く韓国漁船の違反操業に対して漁業者の不満がいわば頂点になっていた。与党三党の強い意見と申しますが、これは主として、主としてというよりは、それはまさに漁業者の意向を代表して、このままでは漁業者が立ち行かない、いつまでこういうことを強いるのかということに基本があった、私はそう考えております。  また同時に、新たな日中漁業協定が締結されました。中国漁船につきましても資源管理規制が行われることになっておりますので、韓国漁船のみをいつまでも放置できないという状況があったこともまた事実であります。  このような状況のもとに、いつまでも見通しのつかない交渉を続けることは許されず、協定の定めるところに従い、現行協定の終了通告を行うことと決定したものであります。なお、私はこの間も、官房長官、外務大臣ともたび重なる協議を行いまして、本件解決のためには誠心誠意取り組んできたつもりでございます。  なお、本協定は終了通告後一年間現行協定が有効であるということから、漁業交渉妥結のために、引き続き努力をしてまいる所存であります。  以上でございます。
  19. 山花貞夫

    山花委員 今、大臣が、そういう報道は余り正確でない、こういうふうにお話しになりました。報道が正確かどうかということについては私はわかりませんけれども、ただ、さっきお話しした日韓議連の皆さんと一緒に大統領に会ったときに、こういうふうにおっしゃっていました。漁業問題については、昨年末高村外務政務次官が韓国に来てぎりぎりまでの交渉を行い合意に至ったが、なぜかその後、政治的判断から妥結に至らなかった。これは、大統領の発言であります。  外務政務次官が昨年暮れ二度伺った等々のことは我々も知っておるわけでありますけれども、内容について、それはわかりませんが、向こうの大統領がそういう認識を持っているということだけではなく、外務大臣その他も含めて、どうもそういう認識が大変強いわけですね。  ということであるとするならば、じゃ一体どうするかということが問われるわけでありまして、この問題について今民間の皆さんもいろいろ動きをつくっておるようでありますけれども、農水大臣にもう一遍、どういうふうにこれから進めていくのかということについて伺いたいと思います。  まず、政治的に一たんまとまったのではないかということについては、改めてちょっと伺っておきたいと思います。
  20. 小渕恵三

    小渕国務大臣 高村政務次官のお名前も出ましたので私から御答弁させていただきますが、事は外交交渉でございますので、本件の経緯、経過をすべて明らかにすることは控えさせていただきたいと思いますが、実は私は十二月の初頭、いわゆる対人地雷条約署名のためにオタワに行っておりました。この間、日韓の漁業協定につきましては最終的段階に来っておるということでありましたので、高村政務次官をしてその最終的な交渉に訪韓していただいたことは事実でございます。  しかし、そのときにいろいろお話をされた結果、今先生御指摘なんですが、合意と言われましても、私の確かに全権委任といいますか、同じ省内における大臣、政務次官ですから、当然のことですがすべて私の委任を受けて行くわけですが、それが合意であったという理解かどうかにつきましては、私が帰国後、こういう提案があるというお話がありまして、そういう提案に対して最終的に大臣として判断をさせていただいて、十二月の最終段階で、改めて私としては訪韓をして柳長官との話し合いをしたという経過を申し上げれば、最終的合意がなされておるとすれば、既に私の、ある意味でこの問題についての訪韓の必要性はなかったということとも通ずるわけでございまして、この点については御了解いただきたいと思います。
  21. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 先ほど申しましたとおり、合意に達していたものであるならば、我々が政治的な意図で何でこれを破棄に持っていくでありましょうか。実はそれなりに誠心誠意努力をしてきたという自負が私たちにはございますし、先ほど正確でないと申しましたのは、新聞報道が実際のことを伝えていないということを申した意味であります。  なお、これは、終了通告後も一年間有効でございまして、今まだ交渉の期間を持っているわけでありますから、今ほど外務大臣が申されたとおり、詳細について申し上げることは控えさせていただきますが、民間ベースその他を通じても定期的な協議が持たれておりますので、いろいろな角度から、これからも二百海里以内の資源管理を含めてお互いが合意に達するような努力を重ねていきたい、こう考えております。
  22. 山花貞夫

    山花委員 お話あった民間の努力ということについては、ちょうど大統領就任式の前後でありましたけれども、二十四日、二十五日、韓国の遠洋漁業協会と、日本側は、北海道指導漁業協同組合連合会、大日本水産会、北海道民間漁業協議会の代表がそれぞれ、本来は漁具の損傷問題についていろいろ話し合うということのようですけれども、定期的に行われているだけではなく、民間ベースでこの努力も始まっているということを私は聞いております。  それから、確かに一方はどんどん延ばしていこう、一方は入り口論を乗り越えようという長い交渉があったことについては承知しておりますし、それぞれの国の漁民の皆さんの立場ということも、日本における漁具の被害等々につきまして、さまざまなところから私ども伺っているわけでありまして、今度の訪韓の場合にも、ちょっとお名前を言いまして失礼かもしれませんけれども、河村、鉢呂、佐々木、三議員が、韓国の海洋水産部の朴奎石第二次官補と会談をしております。私はその内容を伺ったわけでありますけれども、今言ったような日本側の主張については十分ぶつけた中で、やはりこの問題について解決していこうということを話し合っておるわけでありまして、そういう機会にも韓国側の漁民の話が出てまいります。  私が、釜山の方の現場で一遍逮捕された経験のある人の話というのを、これは又聞きなんですけれども伺ったところでは、とにかく韓国でも油の値段が上がってしまって、二倍ぐらいになっているようですね、輸入で考えればそうなんでしょう。免税措置もあるんだけれども、とても船も出せないという状況である。こういう困った状況の中で、せっかく持った船で出ていくんだからというような、非常にせっぱ詰まった状況の中で今の漁民の立場があるということを聞いているところでございます。  同時に伺っているのは、政府の方からは非常に強い規制があって、昨年の直線の場合、実線を引いたときにも、絶対そっちへ出ちゃだめだよという政府の方の韓国漁民に対する極めて強い規制も行われているということを現場を取材した皆さんから伺っているところでございまして、それぞれの人、苦労しているんだと思うんですね。  ただ、この状態でもしトラブル続発ということになったら大変だという気持ちはだれもが持っているところでありまして、民間ベースも大事なんだけれども、政府のレベルでもこの問題については、それぞれの立場あるかもしれませんけれども、どちらがまず乗り出していくかということが今問われている、タイミングがはかられているところではないかと思っています。やはりここのところでも後手にならないで、積極的に日本側からこの問題について交渉に臨むべきではなかろうか、こういうように思っているところでございます。  大臣からちょっと見解を伺いたいと思います。
  23. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 少なくも、日本韓国もともに締結をいたしております国連海洋法条約は、御承知のように、二百海里内の資源管理をいわば構築しようという基本に貫かれているわけでありますから、やはりその面も、今いろいろな角度から御指摘がありましたように、日韓両国の漁業関係者が、お互いの納得のいく、将来に向かっての共有する日本海の水産資源を守る、この基本に立ったお互いのこれからの漁業を営まないことには、両者の歩みが非常にやりにくいという面が現実にはございます。  それらを含めて我々はあくまで前向きに、新しいスタート台に立ったこの協定の締結に取り組んでいきたい、そう考えます。
  24. 山花貞夫

    山花委員 最後に総理にこの点を伺っておきたいと思うんですが、実は訪韓の際に、議連会長は竹下先生だったわけですが、我々御一緒して、自民連の朴泰俊総裁とお会いをいたしました。そのときの話題は、いろいろな問題がある、このほかにもまだたくさんあると思うんですけれども、かつては閣僚会議というのがあって、いろいろざっくばらんにお会いして理解を深めたことがあった。一体これがどうなったのかなということから、やはり個々の問題についてひざ詰め談判ということではなく、関係閣僚会議的な形でやることがどうなのだろう、こういうお話がありました。  その点は、実際上はもう昔と違って今忙しくなっちゃって、日程調整すら大変だというようなやりとりもあったわけでありますけれども、何かそういった過去の教訓といいますか、そこから引き出していろいろな手法についても考えるべきじゃなかろうか。これは、これからの長い将来、未来志向で考えた場合には、そうした閣僚会議を含めていろいろ考えるべき点があるのじゃなかろうか、こう思っているわけでありますけれども、最後に、こうした朝鮮半島関係につきましての総理の御意見を伺いたいと思います。
  25. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員は大きく二つの点、すなわち、大統領自身のかつての身辺に起こった問題、その外交的な処理並びに漁業の現況、この二つを中心に両国関係を論じてこられました。  私は、日韓両国の間には、まだまだお互いが話し合っていかなきゃならないものがたくさんあると思いますし、同時に、官民さまざまなレベルにおける交流が既に存在していると思います、学問の世界における、あるいは文化の世界における。こうしたものを考えてみますと、それぞれのチャンネルが全部生きていかなければ、殊に若い方々の交流が始まらなければ、本当の友情というものはなかなか根づいていかないだろうと思います。  そうした思いを申し上げた上で、確かに日韓両国の間に定期閣僚会議が存在し、私も出席したことがございましたけれども、このところそういう雰囲気に何となくならない時期が続きました。その御提案も含めて、どのチャンスをとらえることができるのか。国会のお許し等も得られれば、私自身にとりますとASEMの場が最初の場になろうかと思いますし、それまでにも事務的な接触、あるいは閣僚級の交流、チャンスをとらえてできるだけよりよいものに早く仕上げていきたい、そのように思い、院の御協力もまたぜひ得たいもの、そのように思います。
  26. 山花貞夫

    山花委員 総理が今文化交流ということを触れられましたものですから、この点も非常に関心が強いですね。さまざまな省庁にかかわるテーマがたくさんあると思うのです。  たまたま、今度伺った機会に、日本の大学を卒業した留学生の皆さんとお話をする機会がありました。何人かの方が集まったわけでありますけれども、今、日本の大学を出て韓国で仕事をされている方が約三万人いらっしゃるそうなのです。三万人もいるのだけれども、今度の青瓦台の人事を見ても、政府の関係を見ても、採用されるのがアメリカの大学を出た人とかほかの国ばかりであって、日本の大学で勉強して卒業した人がほとんどなっていない。本当のこれからの日韓関係を考えるならば、やはり日本で大学を出るぐらいの生活基盤を持っている、そういう人が政府の中の要職についていかなきゃ本物じゃないじゃないか、こういう話を聞いたものですから、大統領にお会いした機会に、留学生の人がそう言っていますよということも実はこれは要請としてしてまいったところでございます。  そうなってくると、これは留学生の受け入れはどうなっているか等々を含めて文部大臣にも伺いたいと思うので、これはまた改めてにいたしまして、そうしたさまざまなルートでの交流というものが必要だということについては総理のおっしゃったとおりだと思っておりますので、ぜひそういう観点で進めていただきたいということをお願いしておきたいと思います。  あと半分の時間、大蔵省にかかわる問題について触れたいと思います。  まず冒頭、やはり伺っておかなければならないのが、御経歴からして大変期待されてなった大蔵大臣最初の話題、法のもとの平等という大原則にかかわる大臣姿勢が問われたテーマであります。  参議院の予算委員会で、佐藤議員の質問、中島さんのかつての修正申告問題でありますけれども、プロ野球選手と比較して公平ではないではないか、こういう質問に対して、議事録を拝見しました。「そのことをもう一回再調査を命じていただければありがたいと思います。」こういう質問に対して、最後、松永大臣は、「身内に甘いということは御指摘のとおりの結果になっておると思います。よく調査をさせたいと思っています。」こういう回答をされております。これがわずか三日後に、私自身で調べたけれども処置は適正だった、こういうことになったものですから、一体どうなっているんだと、これは家庭の食卓の話題となったテーマでありまして、これは大臣姿勢も含めてであります。  私は、こういう観点で伺いたいと思うのですが、大蔵省の内部でどういう調査をされたのか、だれから聞いたのか、そういう大臣の発言が出てきた材料となったのは一体何だったのだろう。この点について、二日間ですから御自分でいろいろ調べたということは限界があると思いますね。大蔵省の報告をうのみにされたのではないか、こう思っています。この点について大蔵大臣に伺いたいと思います。
  27. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えを申し上げます。  参議院の予算委員会における質問の趣旨は、今申されましたけれども、一方において、プロ野球の選手については告発があり、そして刑事事件となって刑事処罰も受けた。一方、二年前のことでありますけれども、中島某氏は、告発がされずに、実は重加算税そして更正・決定。こうなったこの二つの間には、中島氏に対して、OBであるがゆえに甘かったのではないか、もし甘かったとすれば平等に反しますね、こういう御質問でございました。  法のもとの平等に反するような国税関係の執行がなされておるとすれば、それはよろしくないので、果たして事実関係はどうなのか、それを調べて、そして明らかにする必要がある、こう考えまして、そこでよく調査してみますと申し上げたわけでありますが、調査した結果、プロ野球関係、これはもう委員もよく御承知と思いますが、一つは、大がかりな脱税請負集団、脱税請負グループというのがあって、それに依頼をして、そして虚偽の文書等を渡して、それで税を免れたというケースでありました。  したがって、脱税請負集団などというものの存在を絶対許してはならぬ。同時にまた、それに依頼してうその文書を出して、そして税を免れる、そうなってきますというと、不正なことをし、かつ積極的に脱税をするという犯意も認められる、こういったことから、これは証拠も明白であるということで刑事処分をした、こういうことでございました。このことは、当時新聞にも報道されておりました。それがそのとおりであったと思いますし、この国税庁の処置は、これは軽過ぎるという批判は当たらない、妥当なものであったというふうに私は判断をいたしました。  一方、中島氏の場合でございますが、これは本委員会でも申し上げたことなのでありますけれども、当時の関係者から詳しく実情を聞きました。それによりますというと、中島氏は、平成七年の七月に役所をやめていわゆるOBになられた方でありますが、その当時から、この方についてはマスコミもいろいろな報道をし、そして委員会の中でもいろいろな質問等がなされた方でありました。  いずれにせよ、そういったこともあって、平成七年の七月にやめてOBになられた。それから一カ月以上過ぎたときに、中島氏の方から、期限後申告というのでしょうか、贈与を受けておった金が数年間の間に相当額あった、そのことの申告納税をしていなかったので、期限後申告をしたいという申し出があったわけであります。  それで、当局の方では、中島氏の方はいずれ調査があるだろうということを予見しての期限後申告だから、これは期限後申告と認めるわけにはいかないということで無申告加算税という処置をして、そして課税処分をしておるということが私にわかりました。その時点で、OBにやはり甘くはないな、きちっとやったなということが一つ。  それから、その後しばらくいたしまして、大々的にこれは調査してみる必要があるということで、国税はその人の調査をやりました。普通の調査は各署がやるんだそうでありますけれども、大がかりに調査する必要があるというわけで東京局でやったわけであります。五カ月かけて調査をしたということ、百数十カ所について反面調査その他詳しい調査をしたということ、こういったことの結果、課税をされていない所得が実は把握されたわけであります。  そこで、それをどういうふうな措置にするかということについても国税当局は随分検討されて、告発、そして刑事処分ということも念頭に置きながら調査を進めたということでありましたが、結局、積極的に脱税をしようという犯意を認定するだけの証拠が集まらなかった、それから、不正な行為をしておるという事実も実は証拠としてつかめなかったので、やむなく告発は見送り、重加算税つきの更正・決定というわけで税金を取ったという報告でありましたので、ならば、今までの経過からいって、OBだから甘いという処置をしたものではないなというふうに私はとらえたわけであります。  そのことを申し上げた次第でございます。
  28. 山花貞夫

    山花委員 随分長くお返事をいただきましたけれども、印象として心配ですね。大臣もどうも大蔵省のかばい合い体質に汚染されちゃったんじゃないかという気がするわけでありまして、この問題についてはもう改めて伺いません。  極度の不信が集中している大蔵省をめぐる疑惑に関する大蔵省内の調査というものが、実はいかにいいかげんなものであるかということについて、私は典型的な例を挙げて伺いたいと思っています。  まず初めに、現職の大蔵省の金融検査官二人が逮捕、起訴されております。どういう内容であるかについて簡単に御説明いただきたいと思います。
  29. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 宮川検査官と谷内検査官の二人が逮捕されました。  宮川、谷内につきまして、まず宮川宏一についてでございますけれども、それぞれ検査対象銀行でありますあさひ銀行、第一銀行から飲食及びゴルフの接待を受けて相手方に費用を負担させたほか、検査日を漏えいした。また、あさひ銀行に対する検査の際には、同行と関係の深い企業からマンションを購入するといったようなことで、同行から購入代金の融資を受けたということであります。  谷内敏美につきましては、三和銀行及び北海道拓殖銀行から飲食及びゴルフの接待を受け、相手方に費用を負担させたほか、三和銀行に部下と飲食した代金を支払ってもらった、あるいは三和銀行に他行の検査報告書の写しを渡したといったようなことでございました。
  30. 山花貞夫

    山花委員 省略されている部分もありますけれども、起訴状を見ると、問題点は以下のとおりです。  宮川検査官は、あさひ銀行から前後十八回、第一勧銀から前後十六回、計三十四回の飲食、ゴルフの接待及びマンションの購入時に四百四十万、谷内検査官は、三和銀行から前後三十四回と六回、北海道拓殖銀行から十一回、計五十一回の接待を受けている、こういう内容で起訴されているわけであります。  ところで、このうちの宮川さんについては、昨年の七月二十九日、大蔵省内で処分があったはずであります。どういう処分でしたか、伺いたいと思います。
  31. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 第一勧銀の検査は、平成六年の十月から十二月まで、四十日間にわたって行われました。検査官十七名で検査を行ったわけでございます。この第一勧銀が検査忌避という銀行法違反を行っていたわけでございますけれども、そういう銀行から検査期間中に、検査及び講評の終了から最終検査結果の示達までの間に、会食、ゴルフ、それから融資先企業の工場視察の帰路における車中での缶ビール等の提供を受けたことが判明いたしました。こういうことから処分を行ったわけでございます。  当時の検査の責任者でありました日下部に対しまして懲戒戒告、宮川に対しましても国家公務員法上の懲戒戒告、それから当時の検査官に対しまして口頭厳重注意、それから検査当時の監督者責任ということで、前事務次官の小村に文書による厳重注意の処分を行ったところでございます。
  32. 山花貞夫

    山花委員 今お話ありましたとおり、当時の処分の理由は、第一勧銀の融資先である工場の見学に行って、マイクロバスの中で、バスの中でビールやおつまみ、オードブルの軽食を振る舞われた、こういうことを処分の理由として言っているのですね。実際は、この間の起訴で挙げたような、まことに多数の接待を受けておる。これはまだ後があるのです、再逮捕がありますから。一体、何をこれ大蔵省は調査したのでしょうか。  実は、今お話ありました日下部元雄、宮川宏一両名の戒告と同時に、事務次官が文書厳重注意となっているということを伺ったものですから、一体どういう理由でこのときに戒告の処分、厳重注意したのですかということを随分伺いましたけれども、全然話してくれませんね。文書、あるのでしょう。文書も見せてくれませんね。密室なんです。密室で、どうやって調査したのかといえば、恐らく自己申告によってということだと思うのです。ビールをごちそうになった、缶ビール飲んだ、そんなことで、はい、そうですかという処分をしたというのがこの処分だったと思います、起訴されてから慌てて懲戒免職にしましたけれども。  この処分についても、非常に私は、公務員倫理法が問題となっていますけれども、あいまいだと思いまして、例えば大蔵事務次官に対して文書厳重注意ということになっていますけれども、これ官房長、根拠というのはあるのですか。どういう根拠でしょうか。
  33. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 今御指摘のありました前小村次官は、この宮川と谷内が問題となる行為を行った当時の官房長でございました。官房金融検査部にその検査官が所属するということから、監督者としての責任が問題となったわけでございます。  それで、実行行為者が戒告処分ということでございますので、監督者責任につきましては、一般的なこういうことに対する従来のやり方を勘案いたしまして、今申し上げたような処分にいたした、こういうことでございます。
  34. 山花貞夫

    山花委員 今の答弁のとおり、根拠というのは説明できないのですね。一般的な監督権限ということじゃないわけでありまして、伺いますと、内規による、こういう御説明があります。  内規ってどんなものですか。内規というのはないのですね、文書になっていないのです。ところが、ほかの処分でも出てくるのですけれども、訓告、文書厳重注意、口頭厳重注意というこの三つのランクがあります、こう説明するのですね。どこに書いてあるのだ。何もないのです、こんなものは。だから、処分をしたといったって、文書に基づいた内規もないところでやっておりますから、何が何だか聞いたってわかりませんね。  大体、小村さんの場合には文書厳重注意としても、だれが小村さんを文書厳重注意にしたのですか。この点もちょっと伺っておきたいと思います。
  35. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 内規による処分ということにつきましては、これは一般的に内規という規則があるわけではございません。国家公務員法上、守秘義務に違反するとか、名誉を失墜する行為があるとか、非違があるとかいう場合には国家公務員法上の懲戒処分が行われるわけでございますけれども、その事柄が国家公務員法上の懲戒処分にまで至らないような場合には、その同じ事柄について内規による処分ということが行われるのが一般的な、これは各省共通のルールというふうに理解しております。  それで、その内規の処分というのは大臣の名前において行われる、こういうことでございます。
  36. 山花貞夫

    山花委員 当時、恐らく缶ビール飲んだしかわからなかったというのですけれども、起訴された後調べてみましたか、この人たちについてどういう事態があったかということについて。
  37. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 この二人につきまして、起訴された後は、これは身柄が拘束されておりますので、簡単に本人から事情聴取をするわけにはまいりません。刑事手続に基づく捜査当局の捜査に協力していくというのが私どもの立場でございます。  ただ、捜査当局が明らかにされたことにつきまして、最終段階において懲戒解雇をいたしましたけれども、その際、本人に接見いたしまして事実を確認し、その上で懲戒解雇処分にしたわけでございます。
  38. 山花貞夫

    山花委員 実は、その処分が理由もあいまいだし、やられた方だって処分を受けたと思ってないですね、これは。  この起訴された二人についてですけれども、処分を受けた月も接待を受けていますね。その翌月も受けている、ずっと受けているのです。  これは起訴状じゃありませんけれども、当初は都銀四行から接待を受けた、これが起訴されておりますけれども、出張先で三日間に計十二回の料亭やクラブに招かれておったと。三日間で十二回というのは相当なものですね。後で日時を追って取り上げますが、こういうことをやっておって、缶ビール一本飲んだからというような、そういうことでやっていますから、受けた方が処分を受けたと思っていないのです。  懲戒処分をしたときには、今度免職にしましたね。免職にした理由はどういう理由ですか。
  39. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 先ほど申し上げましたとおり、起訴事実につきまして本人に接見をして確認し、それを踏まえて、幾つか本人は必ずしも起訴どおり認めていないところもあるわけでございますけれども、大宗においてそれを認めたために懲戒免職の処分を行ったわけでございます。
  40. 山花貞夫

    山花委員 懲戒処分、免職にしたというのは、一応本人から聞いたようですけれども、その後またぞろぞろ出てきましたね。初め四行だったのだけれども、処分の後の二月十六日になってから、あさひ銀行、第一勧業銀行、北海道拓殖銀行、三和銀行に加えて、東京三菱銀行、住友銀行からも繰り返し接待を受けているということで、再逮捕されていますね。  再逮捕された問題については、これはどう把握されておりますか。
  41. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 この宮川と谷内に関します処分について、昨年の七月に行われた第一勧銀関係の調査が不十分だったのではないかということからいろいろお尋ねでございますけれども、私どもは、第一勧銀の、先ほど申し上げました平成六年から七年にかけての調査に関して本人から事情を聴取いたしました。  確かに、御指摘のとおり、ゴルフの接待を受けたとか工場視察を行ったとか、いろいろ事実は把握されたわけでございますけれども、それ以外につきまして、本人は全く説明をしなかったわけでございます。私どももいろいろ調査はいたしましたけれども、第一勧銀の接待関係の帳簿その他の資料は、すべて強制捜査により捜査当局に押収されて銀行には残っていないという状況でございましたので、当時の検査に携わった行員から事情を聞くといったようなことをやったわけでございます。それから、本人にももちろん事情を当時聞きましたけれども、問題となるものはないというような回答に終始いたしました。  これはまことにけしからぬことであり、残念なことでありますけれども、この調査において宮川等が真実を述べなかった、それから第一勧銀にも資料が残っていなかったということから、私どもとしては、結果として調査が甘かったということになったわけでございますけれども、任意調査ということの限界があったというふうに反省しておるわけでございます。  その上で、さらに追起訴された事柄について調査は行われたのかという御質問でございますけれども、私どもは、捜査当局が本格的な捜査を始めた後は、これは刑事手続による事件の解明にお任せするのが適切ということでございまして、それで、わかった事柄については、必要な範囲内におきまして、我々が何か処分をするとかそういう必要な範囲内におきまして事実を確認していくということが最も適切だというふうに考えて、その追起訴に係る事実につきましては捜査当局の捜査を見守っているということでございます。
  42. 山花貞夫

    山花委員 こういう人たちが検査に入って、検査なんかできっこないと思いますね。今お話があった第一勧銀への検査、九四年十月十一日に着手されて十二月九日まで四十日行われていますけれども、この辺のところ、新聞に出ていることを土台として我々も、いつどうなったのかちょっと調べてみました。  ちょうど、検査が本格化するのは十一月の十四日前後なんですね。そして、小池隆一被告人の件にずっと入っていくのがこの辺なんですね。その前後を見てみると、例えば、担当した大平検査官の上司に当たる宮川宏一検査官、さっき処分された方ですが、九月二十八日に新宿の風俗飲食店に行っています。十月三日に赤坂の料亭、十月十八日に内幸町の第一勧銀本店、十一月二十二日に内幸町のすし店、それで、終わった後、検査報告書をやりとりしている間、一月に入ってから、これは日にちはわからなかったんですが、大磯のゴルフ場のレイクウッドに行っておる。検査している前も最中も後も接待漬けなんですから、これで検査できるはずがありません。  それでいて、実は大変不可思議な事件があるわけですけれども、こういう人たちが検査をしておいて、大蔵省が第一勧銀を、隠したじゃないかといって告発していますね。これは非常に私は奇妙な事件なんで、記録、略式で落ちていますから、全部検討してみました。一体何を大蔵省は告発したのか、ちょっと紹介してみていただきたいと思います。
  43. 原口恒和

    原口政府委員 平成六年六月の大蔵省検査において、小池隆一の実弟であります小池嘉矩の融資について第一勧業銀行が意図的に検査対象外としていたということで、所定の調査票が提出されず、これについては銀行法第六十三条に定める検査忌避に該当するということで告発をしたところでございます。
  44. 山花貞夫

    山花委員 接待を受けていて、いつ入りますよと教えて、小池の事件についても、検査官が目をつぶって報告書に上げていないんじゃないかと、全体はそういう記録、わかりますね。それでいて告発するというのは、どういう神経なのかと思いますね。  実は、この問題についてたくさんの調書がありました。全部で、十四人の二十四枚の調書。検査官の調書もありました。見てみると、検査の実態がどういうものかということがよくわかりますね。  十月に入って、秋に入っていくとなりますと、七月の段階からちゃんと聞いていますから、全行挙げて隠すスキームをつくっていきます。それで、来るよということで、そういう中で、例えば小甚ビルあるいは小池嘉矩に幾ら貸しておるか。これは、日銀の考査も免れ、前の大蔵の検査も免れ、今度またということですから、金額を見ると、初めは三、四十億なんですけれども、この年になると百億を超しちゃっている、どうごまかすかという相談が銀行挙げて行われます。そうして、じゃ小甚ビルだけ出して、そこで検査官に何とかしてもらおう、こういう段取りになる。検査官がやってくる。おかしいじゃないかと追及しますね。追及するけれども、報告書は消えてなくなっちゃうわけですね。これだけ接待されておったら、そうせざるを得ないのじゃなかろうか。  こういう、銀行の隠す体質、そのことを認める体質、この事件でそのことがよくわかるのです。それでありながら、隠したじゃないかと言うこの大蔵省のやり方は、これは一体どういうことか、もう一遍伺いたいと思いますね。  この事件について調べていますか。まさにこれは、世を欺くも甚だしいといいますか、大蔵省は、告発して、第一勧銀が隠したということを追及している形はとっているのだけれども、全くのなれ合いですね。こういうことをやって、どう思いますか。大蔵省、見解を伺いたいと思います。
  45. 原口恒和

    原口政府委員 先ほど申しましたように、検査で把握できなかったということがございました。それを、昨年七月に、その検査忌避について調べる過程、特に第一勧業銀行の内部調査及び内部関係者から事情を聴取するということによって、検査忌避ということで告発をしたわけでございますが、御指摘のように、その時点においてそういう接待等の関係まで把握するに至らなかったということは、非常に申しわけなく思っております。  ただ、告発自身、検査忌避という行為が行われたということ自体は、第一勧銀の内部調査並びに内部関係者からの事情の聴取によって把握したわけでございますので、それについては法にのっとって対処をしたということでございます。
  46. 山花貞夫

    山花委員 検査してわからないはずがないわけでありまして、営業部がやっているのじゃなくて、総務部管轄の二十件ぐらい怪しいのがあるわけです。  前から一番目をつけられているのがこの小池のケース。第一勧銀から小池隆一に対する直接融資。名義別ですと、株式会社小甚ビルディングで合計六十一億円、小池嘉矩名義、会社の代表者、この人の名前で三十八億九千六百万円、合計しますとこの年には百億を超しているのです。百億九千五百万円。前回の大蔵省の検査のときには三十七億三千万円、平成三年の日銀の考査のときには四十四億五千万円。これが、この年になりますと、元本だけで八十八億円、百億を超している。これは見つかっちゃうということで、こっちだけ出そう、こっちは隠そうということから内部の工作が始まるわけですが、さっきお話しになったように、気がついていないなんてことはないのです。これは、調書を見ていると、どう考えたって気がついているということがよくわかるのです。  これは、一番上が日下部さんですね、最高の責任者が。その下が宮川さん、その下が大平さんという段取りだったと思いますけれども、こういう調書を見ると、いかに一番現場で担当した大平検査官が突っ込んでおったかということまで、記録に全部残っています。  総務部案件の中でも特に小甚ビル名義の融資の残高が一番多額であったことから、特にこの案件を問題にして、そもそも、なぜ最初の時点でこんな大きな金額を貸したのか、幾らバブルの時期といったって、一億や二億ならわからないでもないけれども、この金額は多過ぎるではないか、なぜこのような融資を始めたのか、こういう格好でかなり厳しく追及しているのです。そして、小甚ビルと小池嘉矩さんの関係についても、相手が難しい人なのでこうなっておる、あるいは、兄弟に総会屋をしている人がいるんだ、こういうことを全部話しているのです。  きょう恐らく、大蔵委員会の方で検査の報告書閲覧ということになったりしていますけれども、第一勧銀関係では、こういう報告書の中に全く触れていないのではないですか。検査に入った人が現場でこれだけ厳しく追及したって、報告書ができ上がってくれば全く消えてしまう、これが検査の実態ですね。  この事件について、大蔵省は、一遍記録を全部読んでみて、略式で落ちているのですから、見に行けば見られますから、一体、現場の検査官は何をやっているかということを一遍見てみたらいいですよ、官房長は。  もとに戻って、ということで、告発をしたということは、私は、今考えてみていかにもごまかしであると思いますけれども、官房長、どうですか。名義は金融検査部長と銀行局長の名前で出していますけれども、こういうことをやったことについてどう思いますか。見解を伺いたいと思います。
  47. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 私どもは、金融検査がやはり厳正で的確なものでなければならないというのは当然のことだと思っております。そういう意味で、今回の事件はまことに遺憾でございまして、これを厳粛に受けとめて、新たな検査体制、検査手法をどのように改めるかということを、真剣に考えていかなければならないというふうに考えております。  また同時に、これに関連いたします原因というものをきちっと解明いたしまして、その結果を公表し、関係監督者に対する処分についても、現在行われております内部調査の話でございますけれども、その内部調査の結果を得ましたらば、それを公表して、関係監督者に対する処分についても厳正に行いたいというふうに考えております。
  48. 山花貞夫

    山花委員 一つだけ伺っておきたいと思います。  内部調査とおっしゃいましたけれども、ちょっと危なくなった人は海外に逃がすということをやっていませんか。官房長に伺いたいと思います。
  49. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 今御指摘のありましたようなことは、全く考えられておりません。
  50. 山花貞夫

    山花委員 私がきょうの質問の中で名前を挙げた方も、すっと海外にいらっしゃっている方がおりますね。どうもそれを見ると、逃がしたのではないかと。そういう印象を持って、これはまた、これから調べさせていただきたいと思っているところでございます。  ちょっと細かく聞きたいと思ったのですけれども、残る時間、まとめの問題に入っていきたいと思います。  実は、前回の予算委員会の機会でしたけれども、私は、泉井の問題に関連して、改めて公務員倫理法の制定について問題提起をいたしました。当時、総理は、慎重な態度を示されました。しかし、改めて最近に至って、情けないが法をつくるしかないという心境に変わった、こういうようにも伺っているところであります。  公務員倫理につきましては、去る二十七日、民友連、平和・改革、自由党、共産党の野党全会派が、国家公務員倫理法案を衆院に共同提出しているところであります。内容につきましては、これくらいやらなければだめだ、こういう感じで、私も検討しているところでありますけれども、公務員倫理法につきまして、今日の段階における総理の御判断を伺いたいと思います。
  51. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 本国会になりましてから、しばしば同種の御質問をいただき、今回の事件が、私自身は本当に倫理規程でそれを守ってもらえると思っておりましたものが、その倫理規程制定後において違反行為が継続されておったということでありまして、法をつくる以外にないという思いになり、いわゆる公務員倫理法というものをつくるという決断をいたしました。政府部内に今、公務員倫理問題に関する検討委員会を設け、いわゆる公務員倫理法の制定についていろいろな角度から議論をいたしております。  これを法律として考えましたときに、国家公務員法上の懲戒処分、あるいは刑法との関連をどうするか、あるいは対象とする公務員の範囲をどうするか。公務員倫理法の中で規制するべきもの、国家公務員法で規制するべきもの、刑法で規制するべきもの。こうした論点について整理をする必要があるということを申し上げてまいりましたが、こうした法律的な議論をきちんと煮詰めて、法案の内容を固めようと今作業を進めております。  現在、自民党の中でもこうした問題についての委員会の検討が行われておりますし、与党三党の間でも協議を行っております。これらと連携して早急に案をまとめたい、そのように考えているところであります。
  52. 山花貞夫

    山花委員 大蔵大臣にもまとめて伺っておきたいと思うのですが、これから発足する金融監督庁含めて、大蔵省の金融検査部から多くの職員の方が役割を担うと思いますね。大臣が、汚れのない人に行ってもらいたい、こうおっしゃったことを新聞報道で見ましたけれども、どうも、さっき挙げたような検査官の実態と、それから大蔵省姿勢を見ていると、大丈夫かなという心配が募ります。  また、現在、綱紀粛正のための自己申告を中心とした内部調査をやっているということも聞いていますけれども、内部申告によった結論がきょう御質問したような中身なのですから、よっぽどこれは締めてかからないと大臣も汚染されてしまうのではないかということを心配しますけれども、決意のほどを伺いたいと思います。
  53. 松永光

    ○松永国務大臣 お答え申し上げます。  昨年の第一勧銀の問題にかかわる内部調査、これは結果において大変不十分なものであったということは、おわびをしなければなりません。その当時はすべての書類が捜査当局に押収されておって、それで、第一勧銀側にいろいろなことを聞いてもほとんど口を割ってもらえなかったという事情も実はあったわけであります。  今回は、本格的な内部の調査は、実は捜査当局の捜査の邪魔にならぬ形で進めなければなりませんものですから、まだ相当程度進んでいるというわけにはまいりませんけれども、前回のことを深く反省をして、そして、後になって甘かったとか不十分だったとか、そう言われないようにしっかりした調査をして、そして、捜査当局の追及の対象にならなかった人についても、非行があったということが確認されれば厳正な措置をきちっとやりたい、こう考えているわけであります。  それともう一つは、検査のやり方、これを新しい手法に変えて、そして検査の実が上がるようにしていかなければならぬ、こういうふうに考えているところであります。
  54. 山花貞夫

    山花委員 大臣提案として御検討いただきたいと思いますことは、公務員倫理法につきましては議論が進んでいます。私も前回、やはり参考になるのはアメリカにおける行政倫理についての確立の歴史と法整備の現状ということで、そこを参考にして発言をいたしました。  アメリカにおける公務員倫理に関する法制としては、一つには政府倫理法、連邦公務員関係法、大統領令。そして、政府倫理法と大統領命令の下位規定としての連邦規則が、これは見ると百ページにわたるような細かいことを規定しておるわけでありますけれども、同時に、金融検査監督に当たる公務員につきましては、また一段とプラスされた規定の整備があるようですね。これは、連邦通貨監督局、連邦貯蓄金融機関監督局、連邦預金保険公社、連邦準備制度理事会等々、全部ほとんど共通の一般規定への上乗せの規定を設けているようであります。金融検査官については、その職務の性格から考えて、一般の公務員倫理以上のものが求められている、こういう現状のようであります。  時間が参りました。そういう問題ついてぜひ御検討いただいて、この恥ずべき今回の教訓というものを少しでも生かす努力をしていただきたいということを大蔵大臣に要請しまして、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  55. 越智通雄

    越智委員長 これにて山花君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  56. 越智通雄

    越智委員長 この際、お諮りいたします。  最高裁判所浜野総務局長から出席説明の要求がありますので、これを承認するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 越智通雄

    越智委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  58. 越智通雄

    越智委員長 次に、吉田治君。
  59. 吉田治

    吉田(治)委員 吉田治でございます。  日銀総裁、後の予定があるということで、先にしてくれということですので、先にさせていただきたいと思います。  もう低金利生活が随分長くなりまして、特に、お年を召した方、引退をされた方、年金と退職金等々ためられたお金で、それを金利に回して、それを助けにしているのですけれども、やはりちょっと長過ぎるのじゃないか。産業だとか金融だとかを守るということは大事なことであっても、やはり国民の生活を守っていく、所得を何とか確保する。特に年金生活の皆様方において、そういうふうな家庭からおいても、金利というものをそろそろ変えていく時期ではないかと言われているのですけれども、その辺についてのお考え、いかがでしょうか。
  60. 松下康雄

    ○松下参考人 私ども、現在採用しております低金利政策につきまして申し上げたいと存じます。  ただいまの御指摘のように、家計部門におきましては、金利収支を見ますというと、金利収入を生み出す預貯金、国債の残高の方が金利の支払いに必要な住宅ローンそのほかの負債に比べまして約二倍に達しておりますから、金利が低下いたしました状態では、家計のネットの金利の受け払いは減少してまいるわけでございます。  しかし、その一方におきまして、低金利は企業の資金調達コストを低下させまして、これによって企業収益を増加させますほか、設備投資や、あるいはまた個人の住宅投資、また在庫投資といったようなものの採算がよくなりまして、生産や投資活動にプラスの方向で働くことになります。  また、金利が低下いたしました場合には、資産価格の下支えにも寄与するものでございまして、こういったいろいろの経路を通じまして、低金利は経済活動全体を活発化させ、ひいてそれが雇用や給与所得につきましても下支えとなって働くという形で、家計部門にもメリットが及んでいくものであると考えているところでございます。  もちろん、そうは申しましても、御指摘のように、家計にもいろいろな世帯がございますから、特に金利収入に多くを依存していらっしゃる家計にとりましては現状は大変に厳しいものであるということは、私どもも十分に承知をいたしているところでございます。  ただ、私どもとしましては、景気の現況を見ますというと、現在、停滞が続いておりまして、この経済情勢を何とかして、経済全体の活力を高めてしっかりとさせていくということが大事でございまして、このことができることによって、家計の雇用あるいは給与所得といったようなものにもよい影響が行き渡っていくものだと考えております。  そこで、私どもは、金融面から経済活動の全体をしっかり下支えをしてまいりますために現在の政策を採用いたしたわけでございまして、先週開催をいたしました日本銀行政策委員会の金融政策決定会合におきましても、討議の結果、現況におきましては、これまでの金融緩和基調を当面維持するという決定をいたしたところでございます。  もちろん、そうは申しましても、金利のあり方は経済のその時々の実情に応じまして適切に定めていくべきものでございますし、今の金融政策決定会合も原則月一回ないし二回開催をされまして、その都度の情勢を点検してまいることになっておりますので、そういったことを通じて今後とも適切な対処をいたしてまいりたいと思います。
  61. 吉田治

    吉田(治)委員 るる御説明はよくわかるのですけれども、一つ、例えば資金調達コストが下がるというふうなお話であっても、もう御承知のとおり貸し渋り、これは何も民間金融機関のみならず、公的金融機関においても非常に大きな問題になっている。だから、言っていることと実体経済とは全然乖離しているのじゃないか。まさにバブル経済以降の今の経済において、日銀の政策判断というものが果たして正しかったのかどうか。  そういう中で、一番やはりしわ寄せは、今申し上げた、また総裁も家計を圧迫するというふうなことも申されたように、弱い部分の人たちに当たってくる。退職金、普通の方々は、民間企業に勤められて三十年、四十年働かれて、もらう金額は一千万とか二千万。今銀行の定期預金に預けて、私もいろいろな銀行に一預金者として、議員とは決して言わぬですよ。議員と言ったら、ひょっとしたらパーセンテージが上がったら困りますので、議員とは決して言わずに、一千万預けたら何%もらえるのですかとお聞きしました。ある地方銀行は、二%出すと言いました。都市銀行は、一・二五%以上は出せませんと言いました。一年回して幾ら、二十万ですよ。  日銀総裁、総裁をやめられたら、あなたは退職金幾らもらうのですか。理事の方々は、やめられたら退職金幾らもらうのですか。ちょっと答えてください。
  62. 松下康雄

    ○松下参考人 私どもの役員、委員の退職手当につきましては、現在は大蔵大臣の認可を得まして決定をいたしておりますので、これまでもお尋ねに応じまして国会にも御説明をしたところでございますが、任期満了時の役員の退職手当の金額を申しますと、総裁は任期五年で七千四百七十一万円、副総裁は同じく五年で五千四百十二万円、政策委員は任期四年で三千六百九十六万円、理事は同じく任期四年で三千百二十六万円、監事は任期三年で千四百八十九万円でございます。  ただ、新しい日本銀行法におきましては、社会一般の情勢に適合したものとなりますように、給与等の支給の基準を定めて公表していくということにされておりますので、私どもといたしましては、退職手当につきましても、こういった四月一日から施行の新日銀法の趣旨を十分に踏まえまして、国民の理解が得られるような役員の給与等に関します基準の見直しを行って、これを公表してまいる考えでございます。
  63. 吉田治

    吉田(治)委員 では、七千四百万も総裁をやめられたらもらうのですね。二%で預けたら、月に直したら大体十万。七千万も預けるといったら、銀行は今厳しいときですから、二%どころか、もっと出す可能性もありますよね。まさにこの低金利、ビッグバンという中で、持てる者がますます富んでいく。持てない人間は、やはり生活がもっと苦しい。  そういう意味からも、私は、この低金利政策というふうなもの、大蔵省の方もおいでですけれども、大蔵省の事務次官はこの間八千万だと退職金が出ておりました。退職金を母数に考えていたときでも、総裁、もう行かれなければいけませんけれども、また大蔵省の事務次官も、本当に国民が、自分たちの生活のために一生懸命してもらっていた、それだったら八千万は安いと思うのですよ。亡くなられた松下幸之助さんという方は、一億でも二億でも、国のためにしてもらうのだったら安いと文章にも書かれていました。私は、それは正直な気持ちだと思うのですね。  今、国民が新聞を読んで、大蔵省事務次官八千万、日銀総裁七千四百万、高いなと。私は、ぜひともこれが高いなと思わせないような努力をしていただくことをお願い申し上げまして、どうぞ総裁、行っていただいて結構でございます。  続きまして、質問の予定では、あと景気対策の方に行かせていただきたいところですが、現行、イラクの問題、日本とイギリスが国連において共同決議を提案し、決めるということでございますので、その辺がまとまったやに今情報が入ってまいりましたので、総理の方からその辺のこと。それからその後に、外務大臣また防衛庁長官の方から、もしもきょうのまとまった決議案とは別にアメリカが突っ込んで武力行使というふうになった場合に、日本は、人的また物的、お金の部分でどういうふうな支援、どういうふうな対応をとるのか、どう準備をされていたのか。  ケースがいろいろあったと思います。アメリカだけが突っ込む場合、前のクウェート侵攻のときのように多国籍軍として突っ込んでいく場合。あのときは、御承知のとおり、日本にとっては増税というものまでして協力をした。しかし、どこの国からも感謝をされなかった。日本は何もしてくれなかったというふうな、小切手外交だというふうな話もされましたが、その辺を含めて、総理以下関係大臣から御答弁をちょうだいしたいと思います。
  64. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今般、我が国は、英国と共同しまして、イラク問題に関する安全保障理事会決議案を提出しておりました。そして、審議の結果、この決議案は、本日、日本時間の午前十時十分に全会一致で採択をされました。  この決議は、さきにアナン国連事務総長がイラク側との間でまとめました文書に基づいて、これを安保理として承認し、イラクが無条件、無制限の査察を実際に受け入れることを求めるなど、これを内容といたしております。  今後は、この決議の採択を受けまして、UNSCOMによる査察が可及的速やかに実施をされることが非常に重要でありますし、我が国としても、引き続きその状況を注視してまいります。  この決議は非常にバランスのとれた決議だと申し上げてよいと思いますが、日英共同提案でありますこと、そして外交解決を図ることが最善と考えてきた日本として、この決議案につきましても、そうした外交努力の一環として、英国と協力をし、すべての理事国と緊密に協議をしながら採択を目指してまいりました。これが棄権あるいは反対なく全会一致で採択をされましたことは、その努力が結実したという意味で大変喜ばしいと考えております。  ただ、重要なことは、この決議を受けまして、UNSCOMによる無条件、無制限の査察というものが本当に可及的速やかに実現されることでありまして、日本としては、引き続きこの状況を注視していく考え方でございます。  以上、御報告を申し上げます。
  65. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ただいま総理から御答弁の中で、この対イラクの新しい安保理の決議案につきまして御報告ございましたが、そのとおり、ただいまの時点でこれが安保理全会一致で通過したということを心から喜んでおります。  これは、二月二十六日に英外相から私あてに電話がございまして、共同提案国としてこの問題を検討してもらいたいということがございまして、現地におきまして、小和田大使を中心にいたしまして我が国として協力を申し上げているところでございまして、そういった意味で、大変この決議案、意義が深いと思っております。  この決議案の中で、「最大級の深刻な結果」という表現は、武力行使の発動と直接は関係ありませんで、すなわち、この表現によって、イラクの違反があれば自動的に武力行使に至るという性格のものではないということを承知いたしております。  同時に、この決議は、既存の一連の決議、六八七、一一三七等の内容を変更するものではないと考えております。  しかし、いずれにしても、この決議の合意を得たということは、この決議によりまして、イラクに対して事態の重要性について明確な警告のメッセージを送り、もって外交的解決を目指すことを目的とするものでございまして、イラクに対して、UNSCOMの査察が合意どおり実施されることが確保されることが何よりも大切だと思っております。  いずれにしても、日本としては、こうした決議を通じまして、アナン事務総長のとられた合意が実効あるものとして実施される方向になりましたことをさらに推し進めてまいりたいというふうに考えております。
  66. 久間章生

    ○久間国務大臣 防衛庁としては、一般的な情報収集等は努めておりますけれども、また外務省とも一般的な情報連絡等はやっておりますが、現時点で、あるいはこれまでの間において特定のことはいたしておりません。
  67. 吉田治

    吉田(治)委員 これは総理にお聞きした方がいいと思うのです。  では、イラクに武力行使をするとアメリカが、決定はしませんでしたけれども、事前に協力方の要請というのがあったのかどうかということ。それから二点目は、協力方の要請については具体的に何があったのか。また、先ほど質問してお答えいただけてないのですけれども、外務、また中心になる防衛庁として、具体的にこういうことが協力として来そうだ、その準備をしておかなければならないというふうな予定を立て、なおかつ、その予定に基づいて準備をしたのかどうか。この辺をお答えいただきたいと思います。
  68. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私にということでしたが、私が本当に適切かどうかわかりません。  ただ、少なくとも、リチャードソン特使が日本を訪問された際、アメリカの考え方を説明され、支持は求められましたが、具体的に、例えば何をしてほしいといったような、湾岸戦争あるいは湾岸危機の発生当時のような要請というものはございませんでした。  そして、今御報告を申し上げましたとおりに、日本外交的な解決というものを目指して努力をいたしましたものが、きょうこの決議という形、しかも全会一致の安保理決議という形で結実をいたしました。したがって、現時点で、武力行使が行われた場合の具体的措置というものを云々するという段階ではないと思います。  私としては、事実関係として、リチャードソン特使が見えられたとき、アメリカの考え方の説明があり、支持の要請はございました。しかし、湾岸危機から湾岸戦争に至る時期のような要請というものはございませんでした。
  69. 吉田治

    吉田(治)委員 では、こういう場合にはそういうことがあってからやる、もしも万が一のことを考え、具体的にこうしておかなくてはということは一切なく、アメリカから、頼むわ日本さん、これしてくださいよと言われてからでないと動かない。まさに、いざというときの準備は何らされていなかったと。それとも、平素から、いや、もうそういう準備は、法制度またその他、そういう指示のレベルがあって、もうできているからすぐに言えばできるんだよというふうになっているのか。これはどちらなんでしょうか。
  70. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ただいま総理から御答弁ありましたように、我が国としては、平和的、外交的手段をもって行うということでございまして、それに伴って、ただいま申し上げたような国連決議が全会一致をもって決着をしつつあるわけでありまして、この推移を十分見守っていかなければならぬと思っております。  ただ、国際貢献について何らの考慮もしないか、こうさらに問われれば、やはりイラク情勢の推移によりましては、人道的な観点から、我が国として何ができるかということを考えていく必要が生じる可能性はあると思っております。  しかしながら、先ほど申し上げましたように、アナン国連事務総長がイラクとの間でまとめた文書に基づきましてただいまの決議が採択された時点で、武力行使が行われた場合の具体的措置を云々する段階ではない、このように心得ております。
  71. 吉田治

    吉田(治)委員 やはり、聞いていてもちょっと議論がかみ合っていないなという感じがするのですよね。何にも考えていないという、何かあったときはそのときそのとき考えようという、どうも場当たり的な防衛、安保なのかなと。  総理にお聞きしたいのですけれども、沖縄の普天間の問題、これも一つの重要な安全保障の問題なのですけれども、これについては今どういう状況で、これからどうしようというわけですか。大田知事がああいう発言をした。どうなんですか。
  72. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員に対しこの問題で御答弁をするのは多分初めてだと思いますので、多少時間をいただきまして、原点からきちんと申し上げさせていただきたいと思います。  と申しますのは、初めて大田知事にお目にかかりました時点で、知事から、従来、沖縄県として非常に重要視をしておられたいわゆる三事案というものよりも解決を急ぐ問題、市街地の中に存在し、住民の暮らしと隣り合わせており危険であり、一日も早く動かしてほしいという強いお話が出たのが、いわばこの問題の発端でありました。  そして、政府部内にはさまざまな意見がございましたけれども、クリントン大統領との初めての会談の際にこの問題を提起をいたし、その後、SACOの最終報告を取りまとめるまでの間、政府といたしましては、沖縄県も正式のメンバーでおられる沖縄米軍基地問題協議会、あるいは普天間飛行場等の返還に係る諸課題の解決のための作業委員会、この場におきまして検討状況などは御説明を申し上げ、御意見も伺いながら、この問題に対しての努力を進めてまいりました。私自身が大田知事と何遍もお話をしたことは、もう既に御承知のとおりです。  そして、そうした中でSACOの最終報告を取りまとめ、普天間飛行場の移設の手法として、論議の中から海上ヘリポートというものがだんだん選択肢として集約をされてまいりました。  そして、普天間飛行場に対して示しました代案をつくりましたポイントの一つは、規模を大幅に縮小すること、しかも必要がなくなったとき撤去できること、自然環境、騒音、安全、さまざまな要素を考慮の対象として、これを地元に提示したものでございます。  ちょうど知事さんと昨年の末に会談をいたしました際に、県内の意見集約などに一月中旬ぐらいまでは時間が必要であって、その後再度会談したいというお話でしたが、お目にかかる機会を日程の調整等もつかず失しておりますうちに、知事さんの御意見が表明されるということになりました。私は、今も知事にお目にかかりたいとも思っておりますし、御要望があれば、御要望も御意見も伺いたいと思っておりますし、これも繰り返し申し上げております。  そして、私は、知事が指摘をされました、一日も早く市街地の中にある普天間基地の危険な状況というものを除去する、その周辺住民の不安を解消したいと言われた、その原点を今も信じております。  先日、岡本内閣補佐官に県に出向いてもらいました。そして、大田知事の方から、補佐官を通じ、国に対して早期の会談の御要望が知事にも依然としてあるということを伺い、双方の日程の調整がつき次第お会いをし、御意見を伺いたいと考えております。  また、それとは別に、国と県の実務者レベルの協議ということを求めておられました。これも昨日、そうした協議の場を持ち議論をする、これは非常に重要なことだと私は思いますし、結構なことだと受けとめまして、早速それを実現するように事務方に指示をいたしました。  今の状況はそういうところにございます。
  73. 吉田治

    吉田(治)委員 新聞等々で読みますと、総理にとったら信義にもとるだとか、知事がいろいろ話していたのとちょっと違うんじゃないかというのがるる出ております。総理という立場を離れて自民党総裁として、それだったらもういっそのこと、次の沖縄県の知事選挙にはこういう候補者を立てて戦う、あの知事はもうだめだというふうなお考えまで持っておられるのかどうか、ちょっとお聞かせください。
  74. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変失礼でありますが、私は大田知事に対してそのような言葉をどこで使いましたでしょうか。私が使ったとおっしゃるなら、お示しをいただきたいのです。  私は、今まで、事実関係の説明を求められて御説明をしたことはございます。しかし、知事に対してそのような非礼な言葉を用いたことはございません。  ただ、例えばSACOの中間報告の説明に際し、知事さんがどのような言葉を用いられたかとか、あるいはこの場、この場というのはその記者会見等の場においてどういう言葉を用いられたかとか、そういうことを問われて御紹介をしたことはございますけれども、私は、知事に対して批判めいた言葉を漏らしたことはないはずです。
  75. 吉田治

    吉田(治)委員 そういうふうに総理が言われるのだったらそれで結構でございます。  ただ、では、国の今考えている方向と沖縄県知事が考えられている方向というのは、これは事実関係からしたら一緒なのか違っているのか。普天間の飛行場に関しては、知事ははっきりノーと言われている。私は、別に沖縄の問題をこれ以上質問するつもりはございません。あと、たくさん質問したいことがございます。  ただ、やはりそこのところ、そうであるならば、知事に対して、行政の長としての知事もおありでしょう、また政治家としての知事という部分もおありでしょう。総理としてまた自民党総裁として、今後、では、そういうふうな部分の中で、行政のトップ同士としてのお話はされる。政治家として、また知事自身も次の知事選挙の候補者という部分であるならば、総理の胸のうちで、ううん、ちょっといろいろ、これからもそういう部分も含めて考えなければならないことがあるかなという気持ちがおありなのかどうか。  その辺をちょっと、そういうことは今考えていない、もう沖縄のことで精いっぱい、今知事と頑張ってやっていくんだというのであればそれで結構でございます。そこのところだけ、ちょっとだけお答えをいただければ結構でございます。
  76. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 誤解を生じませんように、私が今原点に戻ってということを申し上げました。  八年四月十五日、SACOの中間報告の際に、知事さんが発表されましたコメント、「今回の中間報告において、普天間飛行場の全面返還が決定したことや」、そこから一連のことごとがございまして、「前進が見られたことは喜ばしいことであります。」と言っていただいております。その上で、「しかしながら、ほとんどの施設の返還については、県内の既存の施設・区域への移転を前提としていること等、必ずしも県民が十分に納得できる内容とはなっておりません。」これが知事さんのそのときのポイントであります。  そして、記者会見の際には、「基本的には日米両政府が県民の要請を受け入れる形で、特別委などを設置し、沖縄の基地問題に取り組んでくれた。危険度の高い普天間飛行場や県道一〇四号線越え実弾砲撃演習の問題など、沖縄側の意向を取り入れる形でやってもらったことには、率直に感謝したい。」これが八年四月十五日の知事さんの記者会見の発言のメモでございます。  私は、そうした思いを持っていただけたのならば原点に戻っていただきたい、私もそうした気持ちで解決に努めたいと繰り返し申し上げてきております。
  77. 吉田治

    吉田(治)委員 これ以上議論してもあれなので、原点に戻っていただきたい、戻らないときにはどうするのかなというふうな疑問だけを残しまして、本来の質問の順番に戻っていきたいと思います。  一昨日ですか、自民党の山崎拓政調会長が、大分県の政経文化パーティーにおいて株価の安定について発言をなさった。それによって、昨日、株価が四百円近く値上がりしたということでございますけれども、総理は、私どもの同僚議員の質問において、自分がやめて株価が上がるならばいつでもやめるという発言をなさったやに聞いておりますが、総理自身の株価というものに対する御認識というふうなものをまずお聞かせをいただきたいと思います。
  78. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 本来、株価が反映いたしますもの、それは市場を通じましたそれぞれの企業に対する信認、その信認という言葉の中には、資産、業績、その企業の経営方針等々を評価し、その上で認める価値というものが反映されるものと存じます。
  79. 吉田治

    吉田(治)委員 大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、こういうふうに山崎政調会長が言われた。内容的に言うと、郵貯、簡保の株式直接購入とかをこれから行っていくというふうな話なんです。  これは自民党の政調会長が、思いつきと言ったら大変失礼ですけれども、その場で言った話なのか、政府・与党とよく言われますけれども、事前に政府の中で何らかの話なり合意なり、そういうふうな話が出ている中での発言なのか。二点目は、そうであるならば、具体的に、言われておりますように郵貯、簡保の直接購入というのは現時点でできるのかどうか、まずこの二点をお聞かせください。
  80. 松永光

    ○松永国務大臣 自民党の山崎政調会長の話につきましては、事前にはもちろん、今でも、具体的に大蔵省の方に何の話もまだございません。自民党の方で、山崎さんを中心にこれから御意見をおまとめになるのかなというふうに私は見ております。
  81. 吉田治

    吉田(治)委員 それならば、こういう発言をされた場合に、郵政省、こういうふうなことで資金というのは簡単に使えるわけですか、こういう発言の中で。
  82. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 委員にお答えをいたしますが、前半の山崎拓政調会長からの発言があったことは承知いたしておりますが、今も大蔵大臣の御発言にもございましたように、自民党として正式に決定されたということは聞いておりませんので、そのことについてはコメントできる状態でないというふうに思っております。  ただし、後段の質問でございますが、簡保資金でそういったことができるのかという話でございますが、これはそういった景気対策の、今までも当然、簡保資金というのは安全有利あるいは公益のために利用しなさい、こういったことが書いてあるわけでございまして、加入者の利益のため、あるいは簡保事業の経営の安定のためというのが大原則でございます。  そういった中で、簡保資金から、簡保事業団というのがございまして、そこを経由して指定単というのを、金銭信託の一種でございますが、簡保事業団を通じて指定単にお金を流しまして、そこから株を買っているということは、従来から法律上のスキームとしてやっているところでございます。
  83. 吉田治

    吉田(治)委員 じゃ、それはいろいろうわさというか、うわさで質問するのはいかがかと思うんですけれども、何兆円流すとかそういうふうな議論も、大蔵大臣また郵政大臣、全然されていない、何にも決まっていないというふうにとらえていいわけですか。  そして郵政大臣、私、簡保の話だけじゃなくて、郵貯の話も聞いたんですけれども、郵貯はどうなるのですか。  そしてもう一つ言うならば、今一万七千円をもっている。三月いっぱい、三月危機説とかいろいろ流れている中で、一万八千円まで持っていくのに郵貯の金、簡保の金を突っ込んでいくというのか、はたまた、その後は知らないよというのか、そこまで議論は全然できていないというのか。  もう一つ言うならば、じゃ、もしも万が一、今大臣、安定有利という言葉を言われましたが、株式相場がもっと下落したときに、だれが責任とるんですか。だれがそれを補てんするわけですか。補てんという言い方はよくないですね、それをだれが補足するのか。  そういうふうな部分、それを大蔵大臣郵政大臣、お答えください。
  84. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 お答えをいたします。  郵貯資金についてはどうかという御質問でございましたが、これも同様でございまして、事業団を通じまして信託銀行に指定単をお願いするというところでございます。  それから、これは簡保事業団を通じて指定単にお願いをしているということは、基本的に信託銀行にお願いするわけでございますから、どういった株の銘柄だとか、買う時期だとか買う量だとか、そういったことは郵政省から一切お願いをしたり指示するようなシステムになっておりません。信託銀行にまさにそのときにお願いをするということでございまして、そういった仕組みに基本的になっております。
  85. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどもお答え申し上げましたとおり、山崎さんの方から今日まで大蔵省に対して何の申し出もございません。恐らく、政調会長の立場でこれから党内で議論を取りまとめるという、そういうお考えではなかろうかなというふうに思っているところです。
  86. 吉田治

    吉田(治)委員 じゃ、本当におととい、きのうの株式相場がぐっと上がったというのは、どの新聞も、政調会長山崎さんの発言をきっかけに、きっかけにと書いてあるけれども、それはそうではなかったということなのか。  そして、郵政大臣郵政大臣は簡保、郵貯については事業団、信託と言っていますけれども、発言内容的にいうと、郵貯、簡保による直接購入というふうに、これは現在の法制度のもとにおいて、郵貯、簡保によって株式は直接購入ができるのか。また、党の中で、自民党内でまとまって直接購入をしろというふうになった場合に、郵政としてどう対応されるのか、この二点、お願い申し上げます。
  87. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 今の法律の仕組みでは、今さっきお答えをさせていただきましたように、簡保、郵貯資金で株式を直接購入するというふうには法律の仕組み上できません。  そういった中で、今、直接購入というふうな表現もあったやに、新聞記事があったというふうな先生の御指摘でございますが、法律上はそういった仕組みになっておりませんので、直接購入することはできないということでございます。
  88. 吉田治

    吉田(治)委員 それと同時に、じゃ、党の方から、政府・与党という与党の方から、直接購入するように法改正をしろというふうに来た場合には、命ずるままにするというふうなことなんでしょうか、大臣
  89. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 それは将来の仮定の話でございまして、今ちょっとそういった仮定の話についてコメントは差し控えさせていただきたいと思いますが、いずれにいたしましても、やはり郵貯資金、簡保資金というのは国民からお預かりした貴重なお金でございますから、それを安全あるいは確実、場合によれば有利、そして御存じのように、簡保の場合は法律にきちっと、公益のために使いなさい、そういうことがございまして、また両事業の、これは事業でございますから、事業の健全性の確保ということも大変大事な視点だろうというふうに思っております。
  90. 吉田治

    吉田(治)委員 五十嵐郵政事務次官が二日の記者会見で言われていることとまさに一緒で、慎重というふうな形でとらえさせていただいていいのですね。
  91. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 そのことにつきましては、やはり諸般の事情を勘案しながら慎重にあるべきだろう、今の時点では私はそう考えております。
  92. 吉田治

    吉田(治)委員 大蔵大臣、GDPというものでいくと、アメリカは世界の三五%、日本は一五%、ただ、何か株の相場でいうと、やはりアメリカが世界の五〇%で、日本は一〇%しかない。このそごというか、株価が安定してこなければ、しかもいい水準で安定しなければ、経済的にも上向かない。  G7の話をちょっとお聞かせいただきたいなと思うのですけれども、G7に行っている国から考えたら、日本というのはおかしい国だと思うのですね。貿易黒字は一千億ドルはある。失業率は、日本国内としては史上最悪だという三・七%、雇用不安がある。しかしながら、日本に住んでいて、日本という国はほかの国に比べていい国だとか景気がいいとか、決して思っていない。しかしながら、例えばアメリカを例に挙げますと、御承知のとおり貿易赤字は相も変わらず悪い。しかしながら、何とはなしにアメリカの方が生活水準もよくて、いっとき、ゆとり、豊かさという言葉があったやに聞いています。所得水準がいい悪いは別にしましても、それがどういうふうな階層になっているというのを別にしましても、何かその辺がある。  やはりこれは株価というものが大きな影響を持つと思うのですけれども、山崎政調会長のお話は全然聞いていないということですけれども、総理は先ほどの答弁では、それぞれの会社のそれぞれの業績、実績だというふうなことを言われておりましたけれども、大蔵大臣としてこの株価というのを今後どういうふうにするのか、そのための対策、対応策というのをどうするのか、ございましたらお聞かせください。
  93. 松永光

    ○松永国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどの委員の質問の中で、日本はいい国だと思っている人はいないというふうな発言がございましたけれども、私は、この日本という国はいい国だと思っている人も相当たくさんいらっしゃると思いますよ。治安はよくできているし、それからまた、いろいろつらい点もありますけれども、安全に暮らせる国だ等々、いい点があるわけでありまして、多くの人がいい国だと思っていると思います。  今株価の話がございましたが、先ほど総理が答弁をされましたことと私は同じ考え方であります。いずれにいたしましても、いろいろな条件に基づいて市場で決まるのが株価だと思うのでありまして、大蔵大臣として、その株価のことについて具体的なコメントをすることは適当でないと思いますので、差し控えさせていただきます。
  94. 吉田治

    吉田(治)委員 大臣、申しわけない、いい国というのは、国がいいとかじゃなくて、経済状況がいいかどうかというふうにとらえ直していただきたいと思います。経済状況がいいかと思うと、多分ほとんどの人は、大きなマクロの数字はいいけれども、一人一人の生活はちょっと厳しいのじゃないかなと。  そういう中で、総理、財政再建という形で随分頑張ってこられた、六つの改革というふうな形でやってこられた。しかしながら今、これは新聞しか知らないですよ、私、自民党の議員でもございませんのでわからないのですけれども、新聞等によりますと、自民党の党の内外で、さまざまな議員の皆さんが、いや、もう財政再建というのを一時凍結しても、思い切った景気対策を発動すべきときに来ているのじゃないかなという強い意見が出ているとも聞いております。特に、ある意味で不況に強いと言われておりました建設関係、また建設にかかわる鉄筋、形鋼などの普通鋼、電力業界なども、ほとんど素材産業まで赤字経営に至って、本当に日本というのは、すぐれた設備と技術を有している企業でさえ経営が立ち行かなくなってきている。先ほど三・七%の失業のお話を申し上げましたけれども、諸外国に比べて少ないかもしれないが、国内的には戦後最悪だ。  そういうことを含めて、景気対策の発動というふうなもの、これを小出しではなく一気にやるべきだとこの委員会でもさまざま議論があったと思うのですけれども、まだやはり総理、お考えは、変わらないと言っては語弊があるのかもしれません、同じ御答弁でございますでしょうか。
  95. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、失業率、やはり男女平均の三・五をお使いいただく方が間違いがないと思うのです。それだけに、都合のいいとき、例えば私どもが女性の方の三・二を使いましたら多分おしかりを受けると思うのですけれども、やはりこれは男女平均しての三・五という失業率の方が実態を正確に映すと思いますので、この点は私個人の感じを申し上げたいと思います。  そして、自民党の中まで御心配をいただいて恐縮でありますけれども、いろいろな御意見があることは私も別に否定もいたしません。そして、今さまざまな課題を抱える中で、しかし、少なくとも私は、財政構造改革の必要性を認めないという方は我が党の中にはおられないと思います。  問題は、その間においてどういう手法を用いていくか、財政構造改革の必要性を認めた上において、現時点でどのような施策を採用すべきかについては、さまざまな意見が我が党の中にもございます。要は、その中で、私自身も含め、党全体、これが一番いい、今必要だと思うことを臨機応変に進めていく。その柔軟さは我々は失っておらないと存じますが、財政構造改革というものが必要ではないという人間はいない、私はそう思っております。
  96. 吉田治

    吉田(治)委員 G7でもやはり、日本に財政出動を含めてもっとやってほしいという、アジアのリセッションというのですか不景気というのも、日本に助けてくれ、一千億ドルも貿易黒字があるんだったらもっとできるだろうという声も強いのですけれども、そういうふうな中で、この本予算を審議されて、後すぐ補正予算が出されるやにも聞いておりますが、その辺についての判断というのは、どういうふうに今お考えになられているのでしょうか。
  97. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今まで同種の御質問を何遍かいただきましたけれども、今、確かに間違いなく我々は、この国会におきまして特別減税を決定していただき、それが実行に移りつつあります。また、金融システム安定化策を御審議いただき、これも国会で成立をさせていただき、これも今動こうといたしております。  さらに平成九年度補正予算、この中には、いろいろな御論議もございましたが、公共事業一兆円規模、ゼロ国債一兆五千億円、こうしたものが含まれ、現にこれは稼働いたしております。  さらに平成十年度予算をお考えいただきましたときに、この中に、法人課税あるいは地価税、証券関係税制を初めとした政策税制の減税があることも御承知のとおりでありますし、私どもは、一日も早く予算を通過、成立をさせていただきたい、そしてこれらの施策を切れ目なく使わせていただきたい。こうしたものが相まって、我が国の景気を回復の軌道に乗せていく。そのためにも、年度初めに空白が生じないように、特に税制についてというお願いを申し上げてきております。  補正予算をするともしないとも、私は一度も申し上げたことがありませんし、それ以前に、十年度予算並びに関連する法律案を一刻も早く通過、成立をさせていただきたい、そのお願いのみを申し上げております。
  98. 吉田治

    吉田(治)委員 この議論はずっとやっても平行線ですし、総理も、何度も質問されているようにというふうな形になりますので、これぐらいにさせていただきたいのですけれども。  本日の新聞、一部朝刊等に出ておりましたが、行財政改革基本法、本国会においての審議は、法案成立はちょっと無理じゃないかなというふうな報道等もなされております。  この行財政改革、橋本内閣の大きな位置づけだと思うのですけれども、これが成る成らぬは別にいたしまして、中央省庁の再編が終わりましたら、いわゆる外郭団体、特に特殊法人ですとか公益法人、特殊法人は八十一ですか、そういうふうな改革というものを進めていく必要があるのではないか。  公的という言い方をすると、まず中央省庁、地方自治体というふうになるのですけれども、今後この特殊法人、公益法人、これは国、地方を含めて改革、見直しの時期に来ているのではないかと思うのですけれども、その辺は今後どういうふうな予定になっておるのでしょうか。
  99. 小里貞利

    ○小里国務大臣 特殊法人の改革についてのお話でございますが、要するに、不断の見直しを行うことが最も大きな要諦であると思っております。  御案内のとおり、近年におきましても、平成七年の閣議におきましてこれが実施を決定いたしております。また、自来、平成九年度のごときにおきましては、三次にわたりまして閣議で決定をし、しかも整理統合あるいは民営化等を、その実施方を策定いたしましたこと御承知のとおりでございます。  結果といたしましては、御承知のとおり、平成七年度末に九十二ありました特殊法人が、平成九年度におきましては八十五法人となっております。なおまた、既往の閣議決定事項等を加えてまいりますと、これが恐らく七十二からあるいは七十五法人となる予定でございます。あるいはまた国際電信電話株式会社等の完全民営化、これはまだ閣議決定は得ておりませんけれども、これらが実現いたしますと七十一から七十四法人となるか、こう思っておるわけです。  なおまた、一言つけ加えさせていただきますが、今せっかく御相談を申し上げておりまする中央省庁改革基本法、これがどうなるのかなというお話でございますが、ぜひひとつ、断固として今次国会で始末をつけていただきたい、この方針は堅持をしておるところでございまして、その中央省庁改革基本法案においても、これらの、ただいま指摘がありました問題等もきちんとその方向で処理するべく含めてあるところでございまして、御了承いただきたいと思います。
  100. 吉田治

    吉田(治)委員 今長官が中央省庁改革基本法のお話をなさいましたので、一点、この法案に関して運輸関係で御質問したいのですけれども、今度、運輸省というのが国土交通省という形に変わる。しかしながら、法案第二十二条ですか、国土交通省云々というところで書いてあること、また別表を読ませていただいても、これは交通とは名ばかりで、運輸行政、運輸省が今していることをそっくりそのまま移すんだというふうなとらえ方しか私ができないのか、はたまたそういう目的でそういう法案を出されたのか。  よく言われているように、総合交通政策というのは、実はこれは特命大臣が経企庁長官ですけれども、中を聞いて驚いたんですね、え、交通というのは経企庁がやっているのと。また、交通問題というのは、死者が一万人近い交通事故、それから交通渋滞では十二兆円の損失が出ている。しかも交通と名のつくところは、ちょっと調べさせていただきましたら、省庁が十ぐらいにまたがっているのですか。運輸省から始まり、郵政、文部、環境、通産、建設、警察、経企、総務、国土と、これだけまたがっている。  フランスでは一九八二年に国内交通基本法という形で、交通というふうなものが非常に、人間の体でいうならば血液の働きをするということで、交通権など非常に注目を与えた法案ができているのですけれども、日本において今度国土交通省、今小里長官言われたようにこの国会で始末をしてくれと言うなら、始末した後にまさに国土交通省の交通という部分は運輸と違いこういう交通になるんだというふうなことを、運輸大臣と、それから現状総合交通政策担当大臣・経企庁長官、一体全体何をしているのかというふうなことを、あわせてお答えを賜りたいと思います。
  101. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えをいたします。  委員指摘の国土交通省、これは建設省、運輸省また国土庁並びに北海道開発庁を母体として設置され、交通政策の推進をその主要な任務とすることにより総合的な交通行政が展開できることとなることは、社会資本の整備の観点からいいましても、整合的、効率的な推進と並んで、国土交通省を編成する大きな眼目になっているところでございます。  御指摘のとおり、では、一体どういうふうになるのかということでありますが、例えば、具体的に申し上げれば、今回の国土交通省の創設によりまして交通関係行政が一元化されることによりまして、例えば物流のコスト減、また構造是正のための道路輸送あるいは海上輸送、鉄道輸送等を通じた総合的な施策や、効率的な幹線交通体系の整備、来るべき高齢化社会に対応した都市交通施策等がより的確に展開するものと私どもは認識をいたしております。  しかし、いずれにいたしましても、各省庁にわたるという今御指摘ございましたけれども、交通行政の基本は安全の確保にあるということは、もうこれは御案内のとおりであります。国土交通省は、運輸省及び建設省が所管している各般の交通安全施策を一元的に引き継ぎ、将来にわたって安全な交通サービスの提供の確保に大きな役割を果たしていくものと考えておるところでございます。
  102. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 総合交通体系につきましては、昭和四十六年十二月の臨時総合交通問題閣僚協議会におきまして、政府として基本的な方針を打ち出したところでございます。その後に、私が、経済企画庁長官が総合交通担当大臣となっておりまして、交通政策の総合化、体系化によります柔軟な対応、あるいは受益者負担の原則、あるいは各種交通機関の適切な競争と利用者の自由な選択による交通分担関係の確立等、基本方針に示されました内容を、その時々の経済社会情勢に応じまして経済計画等に反映をさせているという実情でございます。  現在の経済計画でございます構造改革のための経済社会計画におきましても、物流等につきまして推進がされておるところでございますし、また、公共投資基本計画におきましても、効率的、整合的な交通体系の形成を推進するということにしておりまして、物流効率化対策を中心といたしまして、優先的、重点的に整備することになっております。  御指摘のとおり、中央省庁改革基本法案におきましては、総合的な交通体系の整備を行うことが国土交通省の機能とされているところでございます。しかしながら、行革会議における議論あるいは中央省庁等の改革基本法案におきましては、経済財政に関するいわゆる調整機能は経済財政諮問会議において行われるところでございまして、総合的な経済政策の調整という観点から、今後、各省庁の設置法等の議論を進める過程で具体的に検討されるものと承知しております。
  103. 吉田治

    吉田(治)委員 安全という部分に重きを置くということですけれども、省庁的に言ったら、再編の中で一元化されていくのですが、やはりあくまでも規制、取り締まりは警察庁にそのまま残すというふうなこと、その確認が一点。  二点目が、この省ができるのであれば、先ほど申しましたように、フランスが制定したような国内交通基本法的なもの、そういう交通の中心になるような法律というのを今後制定する予定があるのか、そういう検討をする余地があるのか、その辺、二点お聞かせいただきたいと思います。
  104. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  省庁再編によりまして国土交通省が誕生するわけでございますけれども、国土交通省の交通行政につきましては、ハード、ソフト両面からの総合的な交通体系の整備を担うことを行革会議の最終報告において明記をされているところであります。  また、中央省庁等改革基本法案の中で、国土交通省の編成方針におきましては、「施設の整備及び管理、運輸事業者による安全かつ効率的な輸送サービスの提供の確保その他の施策による総合的な交通体系の整備を行う」ということを規定をいたしております。  いずれにしましても、運輸省といたしましては、今先生の御指摘にありました基本法等のことにつきましてまだ今コメントする段階ではありませんが、いずれにいたしましても、今後、関係省庁との間で総合交通行政の展開のあり方について、最終報告及び基本法案を踏まえ、さらに検討を進めてまいる所存でございます。
  105. 吉田治

    吉田(治)委員 そういう法案の作成、制定も視野に入れて、交通行政に一元的なもので携わっていただきたいと思います。  同じ行政改革の中で、よく日本成功事例と言われているのが国鉄の民営化、つまりJRのことでございますけれども、先ほど小里総務庁長官の話の中で閣議決定ということがございましたが、法制局長官、おいでいただいています。  この日本政治システムの中、行政システムの中で、閣議決定ですとか国会決議、また附帯決議というふうなものがるるされておりますが、その辺の重みというか拘束力というか、それは具体的に今どういうふうになっておるのでしょうか。
  106. 大森政輔

    ○大森政府委員 お尋ねは、閣議決定あるいは国会決議の意味あるいは効力についてでございますが、まず、閣議決定につきましては、内閣法第四条に規定しておりますとおり、最高行政機関である内閣の意思決定の方式であるということであります。したがいまして、その効力は、構成員である国務大臣のみならず内閣の統括のもとにあります行政機関すべてを拘束する、またその所属の職員も拘束する、こういうことでございます。  これに対しまして、国会決議、これは言うまでもなく、国会を構成する衆議院及び参議院の一般的な意思表示の一形式であるというふうに理解しております。したがいまして、政府といたしましては、議院の意思として示された議決の趣旨を十分尊重して行政を遂行する責務を有することは当然でございます。  ただ、法的拘束力があるかということになりますと、法的拘束力まであるというわけではございません。もし、国会が内閣を法的に拘束し、縛ろうという目的がある場合には、法律の形式でその意思を確定する必要があるということが言えようかと思います。
  107. 吉田治

    吉田(治)委員 その場合、確認なんですけれども、閣議決定、一度されますよね。それは、次にそれを変更する閣議決定がない限りはずっと生き続けると考えてよろしいでしょうか。
  108. 大森政輔

    ○大森政府委員 ただいま申されましたとおりでございまして、閣議決定は、後の閣議決定によって取り消しあるいは変更することができます。しかしながら、内閣がかわっても依然として効力を持ち続けているというのが純理論的な考え方でございます。
  109. 吉田治

    吉田(治)委員 そういう中で、国鉄改革、まさに昭和六十二、三年。  まずお聞きしたいのですけれども、運輸大臣、JR各社というのは、あれは民間企業なんですか、それとも公益法人なんですか。
  110. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 厳密に言いますと特殊会社でございます。
  111. 吉田治

    吉田(治)委員 特殊会社で、今株式を公開しておりますよね。これが、全部株式が公開し終わった、全部放出するということを聞いておりますが、放出された時点で、特殊会社法というのは自動的にというか、廃止するという前提でそういうことがされていると考えてよろしいでしょうか。
  112. 小幡政人

    ○小幡政府委員 お答え申し上げます。  当然、特殊会社でございますけれども、完全に株式を民間に開放しました場合には、特殊会社法を改正いたしまして対象から外すということを念頭に置いて手続を進めているところでございます。
  113. 吉田治

    吉田(治)委員 それでしたら、将来的には純民間企業になると。  それで、今度、共済年金の統合に関して、年金問題について来年度予算においてJRに追加負担をお願いしていくということなんですけれども、法制局長官、将来的に民間企業になるというものに対して、また現に株式をこれだけ公開している企業に対して、国が法律という形によって、会社側からしたらお金を拠出させられるというふうなことは、全然おかしくない、憲法にも違反していない、財産権の侵害でもないとはっきり言えるんですか。
  114. 大森政輔

    ○大森政府委員 まず結論から申し上げますと、内閣の方で、先般閣議決定の上、審議をお願いしている法案の中にその旨が盛り込まれているわけでございまして、その前提といたしまして、何ら問題がないという判断のもとに審議をお願いしているわけでございます。  若干その理由を、ただいま問題を提起されました憲法二十九条との関係だろうと思いますが、その点についての私どもの考えておるところを簡潔に御説明いたします。  御承知のとおり、憲法二十九条第一項は、財産権を不可侵のものとして保障しているわけでございますが、その保障の内容、程度につきましては、同条の第二項におきまして、「財産権の内容は、公共の福祉に適合するやうに、法律でこれを定める。」というふうに規定してあります。したがいまして、公共の福祉を実現しまたは維持するため、必要がある場合に、法律により財産権の行使につき合理的な範囲内の制約を加えることがあるのは、憲法の予定するところでございます。  また、多分、平成八年に一たん決めたものを今回再び変えるのはおかしいじゃないかというお気持ちもおありと思いますが、一たん法律によって定められました内容を自後の法律で変更しても、それが公共の福祉に適合するように定められたものである限り、これをもって違憲の立法と言うことはできないというふうに考えておりまして、これは一連の最高裁判所の判例において明示された考え方に従ったものでございます。  そして、私どもは、今回の法律に盛られた措置というものは、公共の福祉を実現あるいは維持するために必要なものであり、それは合理的な制約の範囲内の措置であるというふうに考えてお出ししているものでございます。
  115. 吉田治

    吉田(治)委員 法理論的には、ひょっとしたら、この法律が通った後、いよいよ日本でも訴訟社会、後ほど質問をさせていただきたいと思うんですけれども、それが本当に正しいかどうか、裁判で争われる可能性もあるかもしれない法律をこれから審議されるんだと思うのです。  実際上、今、例えばJR西日本におきましたら二百万株あり、百三十万株を公開した。大体そのうちの二割ぐらいを外人投資家が買っているという中において、運輸大臣、どうですか。  こういうふうな追加負担という形になると、もう運輸大臣の手元にも行っているかと思いますけれども、海外の経済アナリストまた投資アナリストは、例えば、時間があったら質問したかったんですけれども、今まで国鉄の長期債務のために、JRという会社は、各社合わせて十四・五兆円負担をし、それを着実に返してきた。しかしながら、何か一朝事あると、政府は、やっぱり特殊会社JRに、今法制局の長官が言われる公共の福祉の用に立てるために、お金を取り立てと言ったら語弊があるかもしれないが、また追加負担を言ってくる。そんな危ない株は買えない、売っちゃえと。また、株主代表訴訟として、そんな会社の株を公開するのはいかがかというふうな訴訟も起こるかもしれない。  そうしますと、この国鉄の長期債務の返済計画の中におけるJR株の公開、それによるお金によって返済をしていくという部分の海外部分、例えば二割なら二割がどっと買わなくなるのではないか。市場経済という中にJRを入れた割には、やっていることは昔の国鉄に対してしていたことと変わらないのじゃないかというふうな強い意見が、JRの中のみならず、海外の投資家の目がそういうふうに見ているのではないかと言われておりますけれども、この辺はいかがでしょうか。  また、今、法制局長官が、閣議決定という言葉について御説明をいただきました。昭和六十三年また平成八年、それぞれ閣議決定の中において、「最終的には国において処理する」、特に重きを置くのは、昭和六十三年一月二十六日の閣議決定においては、「歳入・歳出の全般的見直しとあわせて検討、決定する。」という形で、まさに行財政改革というものを前提のもとで国鉄の長期債務を国が処理をする。また、年金についても、平成八年三月八日の閣議決定では、「最終的には国において処理する」という昭和六十三年の閣議決定が明示されております。  この「国において処理する」というのは、果たしてどういうことなんですか。巷間言われているように、いや、国において処理策をつくるということなのか、普通、文案的に言うと、国が全部責任を持って処理するよというふうに純粋に受け取ってはいけないのか。  この二点、運輸大臣、いかがお考えなんでしょうか。
  116. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  二点ございまして、まず第一点目は、特殊会社といっても今株を公開し、また株を売却して、そのうち海外の株主の方もいらっしゃる、また投資家の方もいらっしゃる。その株主や投資家の利益や信頼を害するのではないかという御趣旨ではないかなと思います。  JRには、今回、年金移換金の御協力をお願いしているところでありますけれども、これまでもJR各社は、共済年金という社員の福利厚生の問題のために、鉄道共済に対して毎年総額二百二十億円を任意に負担してきたことは、先生御承知かどうかわかりませんが、そういうことがございます。今回JRに負担を求めているJR社員分の移換金も、自分の社員の福利厚生のための費用にほかなりませんで、JRは、これまで毎年二百二十億円の任意の負担と同様、企業として許容される合理的な負担を負うことにすぎないと考えております。  したがって、JRが、その社員の福利厚生のために法律に基づいて企業として許容される合理的な負担を負うことは、これまで任意に行ってきた毎年二百二十億円の負担と同様に、株主の利益や信頼を害するものではないと考えております。また、JRの費用負担を軽減するために、JRの社員の福利厚生のための費用までいわゆる一般国民の負担、税金による負担とするわけにはいかないと考えております。  それから、閣議決定のことについて御指摘がございましたけれども、法的のお答えですと後ほど法制局長官の方から補足をしていただくことになろうかと思いますが、例えば平成八年の閣議決定におきまして、国鉄清算事業団が負う移換金につきましては、他の事業団の債務と同様に国において処理することとし、国が将来その処理のために必要な財源・措置を検討、決定することとしたわけでございます。  しかしながら、国において処理することが、JRの負担とすることが合理的なものまで一般国民の負担にすることを意味するものではございません。また、「国において処理する」との文言は、これをもって当然に国庫負担、いわゆる一般国民の税金による負担とすることを意味するものではございません。国が事業団の債務を処理する場合には、あくまでも個々の債務の内容に応じまして、一般国民の負担とすることが合理的かどうかを判断すべきであり、このような判断をしないで、当然に一般国民の負担とすることはできないと考えておるところでございます。
  117. 吉田治

    吉田(治)委員 るる御説明いただきましたけれども、本当に、国の出される文章も、国の処理というふうな部分において、それぞれ気をつけて読まなければ、読み方によってはいろいろ理由がつくんだなというふうな感じをしております。  この法案については、これから委員会に付託をされていくのでしょうからこれ以上申し上げませんけれども、やはりどう考えても、国鉄で一遍チャラにして、NTTだとか何だとかと違ってもうあかん会社を一遍整理して、全部そこで断ち切って新しい会社でというふうにしている中で、うまいこともうけているからやれ、これは会社のことじゃない、社員なんだから、年金負担は社員のことだからと言いながら、でも、最終的に回り回って運賃だとかなんとかいう形で国民に負担が来るのではないかなということもあるということを指摘させていただきます。  続いて、行政改革ときますと、次は規制緩和というふうな部分が出てくるのではないかと思います。  政治改革、行政改革という形がきまして、規制緩和ではよく皆さん方が自己責任ということを言ってこられたかと思うんです。しかしながら、規制緩和で自己責任、じゃ、ルールは一緒なのかどうなのか。まさに規制緩和、自由競争、市場が弱肉強食のジャングルにならないというふうなことが重要ではないか。  規制緩和のさまざまな委員会に参加されているオリックスの社長の宮内義彦さんも、市場が弱肉強食のジャングルにならないために、当然厳しい市場のルールがなければならないと。そのルールというのをだれかが判断しなければならないときに、まさに司法が持つ意義というのはこれからふえていくのではないかと思うんですけれども、その辺を含めて、総理、規制緩和のルール、また事後チェックというふうなものを今どういうふうにお考えになるのか、お答えをいただきたいと思います。
  118. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 規制緩和を進めていく、反面、司法というお言葉を使われましたが、私はちょっとその司法という点には何となく抵抗がございます。むしろ、規制緩和を進めていく場合、これは当然ながら自己責任原則というものが出てきます。特に、経済的規制につきましては原則自由、本来ならば原則自由であり、規制は例外的な場合にということになるわけですけれども、この場合には、反面、むしろ独占禁止法の運用、すなわち公正取引委員会というものが機能することがまず必要なんじゃないでしょうか。  また、国民の暮らしあるいは財産、安全の確保、いわゆる社会的規制の部分については、私は本来の政策目的に沿った必要最小限のものは必要だと思います。そして、これはやはり十分慎重な検討を要するものだと思います。機械的に何でも緩和すればいいというものではありません。  同時に、事後チェック型の行政に変えていく、これには、あわせて明確なルールを設定するということが必要になってくると思います。  その上で、なおこれを拡大していって何らかの事故が生じた場合の担保というようなことにまで、もし議員の御議論が進むのであるとすれば、これはそれぞれの状況とか内容によって判断すべきことでありまして、一概には申し上げられないと思います。ただ、規制緩和と対極に直ちに司法というのは、多少私はオーバーではないかと思います。
  119. 吉田治

    吉田(治)委員 自民党の司法制度特別調査会、平成九年十一月十一日の資料では、「規制が緩和されることによって、行政における従来の事前チェック型から事後チェック型への移行という、わが国の」云々と、「国民には「自己責任」によって行動することが強く求められ、その基本的な拠り所となるものは「法」という公正で透明なルールである。」というふうにされているわけですよ。これは総理、どうお考えなんですか。
  120. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ですから、我々は、司法制度改革が必要であるということ、あるいは司法の強化を必要とするということ、これを全然否定しておりません。  ただ、議員が規制緩和から司法とぽんとつながれましたから、私は、それは必ずしも一概のものではないんじゃないか、そして、経済的規制に関しての緩和についてはむしろ独禁法がまずあるべきではないだろうか、また、暮らしとか生命の安全を確保するための規制というものはむしろ慎重に緩和していく必要の方が存在をする、そういうふうに申し上げたわけでありまして、私は、司法制度の改革が必要でないということを申し上げたつもりはありません。
  121. 吉田治

    吉田(治)委員 今独禁法の件も言われましたけれども、具体的に、ではそういうふうな形で司法に訴えをされていくと。やはり司法制度改革というのは、いろいろなことが議論されているのでしょうけれども、最終的には、それを判断する裁判所の機能、司法容量というのですか、そういうふうなことが必要ではないか。  そして二つ目には、憲法三十二条でも規定されていますように、国民の裁判を受ける権利というのを守る必要があるのではないかな。非常に、裁判官の不足ですとか裁判官の多忙というのが今よく言われているところであります。  最高裁、きょう来ていただいていると思うのですけれども、具体的に、東京地裁で民事訴訟の裁判官一人当たりの単独事件数、また、地方においてそういうふうな比較資料があればそれをちょっと教えていただきたいと同時に、それを解決するために、本年度予算においてどれほどの要求をなさってきたのかというようなことをちょっとお答えいただきたいと思います。
  122. 浜野惺

    ○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  まずは、委員がお尋ねの裁判官の手持ち件数でございますが、裁判所によりまして、場合によっては民事事件、刑事事件、さらに家裁の事件というものを一人の裁判官が担当しているということもございますので、一概に裁判官の手持ち件数という点を正確にお話しすることは困難でございますが、今委員指摘のように、特に大都市の大規模庁、特に東京地裁の例で申しますと、これは民事事件は民事部の裁判官だけが、刑事事件は刑事部の裁判官だけが担当しております。そういうことで一人の手持ち件数の概数を申し上げることができるわけでございますが、東京地裁の民事部を例にとりますと、裁判官一人当たりの単独事件の手持ちが、民事で大体二百四十件程度でございます。  これがどの程度の忙しさかということでございますが、大規模庁の民事事件の裁判官の平均的な感覚と、これまでの私自身の実務の経験を踏まえて申しますと、二百件程度の手持ちでございますとそう繁忙感のない処理ができるということでございます。そうしますと、やはり先ほどの東京地裁の手持ちの民事が二百四十件ということでございますので、相当繁忙感があるのではないかということでございます。  それで、委員御承知のとおり、バブル崩壊以降、平成三年、四年以降、民事系統の事件が急増してまいりまして、特に大規模庁、大都市及びその周辺庁に事件が多発しておりましたのですが、ここら辺を中心に裁判官の事件の負担が重くなっておりますので、従前から大規模庁を中心に重点的に人員の手当てをしておるわけでございます。  そういうような事件の動向を背景にいたしまして、平成五年から平成九年までは、裁判官の増員につきましては、この五年間で合計六十四名の裁判官を増員してきておりますが、十年度の予算案についてはただいま御審議をお願いしているところでございますけれども、十年度の予算案で二十人の裁判官の増員をお願いしているところでございます。  単年度で二十名の裁判官の増員と申しますとどの程度かということでございますが、民事部七カ部に相当するものでございまして、もう少し庁の規模でわかりやすく御説明させていただきますと、横浜地裁本庁民事部あるいは名古屋地裁本庁民事部の規模の裁判所を一つつくるという程度の、相当規模の増員の実現をすることができるということでございます。
  123. 吉田治

    吉田(治)委員 手持ちの資料では、一九七四年と一九九六年を比較すると、二十二年間で地方裁判所の民事事件数は六二%ふえ、弁護士は五六%ふえましたが、裁判官の定員はわずか八・八%。今局長言われましたように、大変な御努力をしていただいているのですけれども、よく名前が出てくる中坊公平さんなども、とにかくどんどん裁判に訴えていくのだと。しかし、訴えても、する方が手持ちでもう大変だというのであれば、やはり司法というふうな部分の解決というので、もっと増員する必要もあるのだと思います。  しかしながら、もう一点として、司法制度改革の中では、裁判官に対する一般市民の受け取り方、例えば裁判官の方でも、これは今局長言われましたように、ほとんど、司法試験、司法修習生を終わられたらすぐに採用、任官という形になると思うのですね。ですから、ある意味で、市民感覚といったり社会的常識というのですか、社会経験をされている方というのはどうも少ないのじゃないか。  よく聞くのは、裁判官を見た途端に、ああ、事件が多いのですね、若い人ですね。それで、判決が終わって、自分は一生懸命訴えたのに、余り説明がなかったのではないかなというふうなことを感じられる方も多いと思います。  よく言われておりますように、法曹一元化、つまり全員一応弁護士になって、アメリカ的な制度かとも思うのですけれども、そこから裁判官、または検事と。やはり弁護士という形で社会生活を、自分で稼いで生活をして、それから裁判官なりにする方がいいのではないかというふうな声も強くあるのですけれども、この辺について、最高裁なりまた法務大臣の方はどういうふうにお考えなのか。  また、裁判を受ける権利という形でいいますと、法律扶助の予算、本年度予算は年間一億円でありますが、来年度予算は大体十億円と聞いておりますが、果たしてそれで諸外国に比べて十分賄い切れるのかな。この辺の三点について、それぞれ担当の方からお答えをちょうだいしたいと思います。
  124. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  法秩序を維持し、国民の権利を保全するということが我が国の社会、国民生活の基盤である、まずこれが出発だろうと思います。そういうふうな角度から、司法の場におきまして、国民の権利、利益に関する紛争が適正迅速に解決されるとともに、違法行為に対する適切な処置、これが一層要求されてくる。国際化が進み、規制緩和が進めば、そういうふうなことになろうかと思います。  そこで、裁判官の問題につきましては、今最高裁からお話がございましたが、私どもも最高裁の御要望を踏まえまして十分協力してまいりたい、このように思います。  それから、司法制度改革の問題についてお話がございました。これはもう長年いろいろ議論されまして、今お話しのような法曹一元化の問題等々も議論されたのは私も承知いたしております。  結論的に申し上げますと、議論の中で、法曹一元化をしなくちゃならぬというような結論に至っていないというのもまた現状でございます。しかし、私の承知いたしているところによりますと、弁護士から裁判官に移り変わった人が今三十二名ですか、それから弁護士から検事になった人も六名というふうなことで、毎年窓口は広げてやっているわけでございますし、おっしゃるように、司法の場に携わる人が常識からかけ離れて仕事をやっていいというわけじゃございませんし、やはりそういうふうな中でいろいろな判断をされなければならない、このように思います。  そこで、法曹の養成制度を構築する等の観点から、今通常国会に、司法修習制度の改正を骨子といたしました裁判所法の改正だとか、あるいは司法試験法の一部を改正する法律案等々を提出したところでございます。そういうような形で私どもは進めてまいりたいと思います。  それから、法律扶助制度の問題についてお話がございました。国際的に比べまして日本の制度が必ずしも十分ではないということは、私どもも承知しておるわけでございまして、この点につきましても力を注いでやってまいりたい、このように思います。
  125. 浜野惺

    ○浜野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。  委員指摘のとおり、裁判官自身が、紛争を解決する上での基本的な社会的な常識をわきまえていないということになりますと、適切な紛争解決もできないということは御指摘のとおりでございまして、私どもは、内部の研修その他を含めまして、そのようなことのないように、仕事を通じての研修と同時に、自己研さんの機会をいろいろ設けているところでございます。  先ほど御指摘のとおりの法曹一元の問題につきましては、御承知のように、臨時司法制度調査会におきまして検討されたところでございます。その中で示されました考え方のうち、参考とすべきものについては大いに参考にさせていただきまして、よりよい司法の実現に努めてまいりたいというふうに存じております。
  126. 吉田治

    吉田(治)委員 時間ですから、終わります。大変御苦労さまでございました。あと、地方分権のことはどうしても財政の問題を聞きたかったのですけれども、これはまた改めて、それからまた厚生省の方にも後日ということで、これで終わらせていただきます。  ありがとうございます。
  127. 越智通雄

    越智委員長 これにて吉田君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時一分休憩      ————◇—————     午後一時一分開議
  128. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。原口一博君。
  129. 原口一博

    原口委員 民友連の原口一博でございます。  総理並びに関係大臣に、幾つかの政策上の問題点、それから政治責任について御所見を伺いたいというふうに思います。  まず、ジャパン・プレミアムについてでございますが、大蔵大臣にお伺いいたします。  お手元の資料一でございますが、九七年十二月三日のジャパン・プレミアムの最高値一%を頂点に、ジャパン・プレミアムはまだ依然として高い水準で推移をしております。やや下がったというものの、この資料をごらんいただきますように、九八年の二月二十七日においてもまだ〇・三八%。こういう数字、〇・三八%ですね。現状を、大蔵大臣はどのようにプレミアムの推移を認識しておられるのか。なぜこうしたプレミアムが我が国の銀行に発生しているのか。そして、邦銀の経済活動に著しい障害となるこのプレミアムを減じるために、一体何が政策的に必要なのか。この三点についてまずお尋ねしたいというふうに思います。
  130. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 まず、ジャパン・プレミアムの現状につきまして、私から答弁申し上げます。  ただいま御指摘になりましたように、昨年の十二月の上旬には一%までプレミアムが拡大いたしましたが、直近の現段階では〇・四%を若干割るくらいまで低下してきております。  このプレミアムがそもそも何で成立する、あるいはこういうものが発生したかということは、市場のことでございますので私どもが一概に特定できませんけれども、二つぐらいあるというふうに考えております。  第一が、やはり何といいましても市場の需給関係。つまり、邦銀がドルで資産を運用しております、貸し出しをしております。一方でドルの資金調達の必要性があるということで、その額がかなり大きなものになっておりますので、そこで、その需給関係から出てきたという要因が一つあると思います。  しかし、何と申しましても、昨年の十一月から十二月にかけていわゆるジャパン・プレミアムが一%まで拡大した背景には、日本の金融機関に対する内外の信認が揺らいだ、いろいろなことが言われたということがあったと思います。  したがいまして、現在こういうふうにかなりジャパン・プレミアムが縮小してきました背景には、年度末越えの資金が大体とられたということで需給関係が少し改善してきたということもございますし、もう一つ、恐らくは、金融二法の成立等、金融システム安定のために政府としていろいろな取り組みをしておるということが、ある程度内外の市場関係者に理解されてきたということからくる点もあるのかというふうに思っております。  ただし、いずれにいたしましても、この動向につきましては十分注視していかなければならないと思っておりますし、これをできるだけ早く縮小するというためには、何よりもやはり日本の金融機関の信認をかつてのような完全なものまで高めていく、少なくとも昨年の十一月、十二月に見られたような状況をできるだけ早く解消していくということが何よりも必要ではないかというふうに考えております。
  131. 原口一博

    原口委員 大蔵大臣に続いてお伺いしますが、私は今の現状認識、そんなに外れてはいないというふうに思います。  この表を見ると、金融二法が成立した後、やはりプレミアムは下がっている。ですから、私たち日本政治の分野に携わる者は、しっかりとしたメッセージを明らかな言葉で発していくことが大事ではないか。世界のマーケットに対して我が国は、これは総理が、日本発の金融恐慌は絶対起こさない、そういったことは絶対避けるんだとおっしゃった、これも一つの明確なメッセージだというふうに思いますが、さらに我が国の、この間御質問させていただきましたように、内需拡大に対する大変な期待が集まっている中で、明確なメッセージを出すということが大変重要ではないかというふうに思いますが、大蔵大臣の御所見をお伺いいたします。
  132. 松永光

    ○松永国務大臣 今局長から御答弁を申し上げた考え方、私も全くそのとおりなのでありますが、同時にまた、ことしになりまして、国会の御努力をいただいて、金融安定化二法を通していただきました。これも私はジャパン・プレミアムの低下には貢献している面があると思うのであります。  これから、この法律に基づく金融システム安定化のための措置をきちっとやって、そして日本の金融システムについての信認が回復されてくれば、現実に措置が終わって、そうすればこの問題もいい方向に変化していくのではなかろうか、そう思っておるわけでありまして、そのことのために金融安定化二法の適切な運用をやっていかなければならぬ、こう思っておるところでございます。
  133. 原口一博

    原口委員 金融安定化二法については、メッセージはある程度伝わったというふうに私も思います。しかし、この先のメッセージを明確にする、そのことは次に挙げます観点からも大変大事なことだというふうに思います。  資料三をごらんいただきたいと思います。  資料三は、「我が国の対米貿易動向」ということで、近年の動きを示してくださいということで当局にお願いをしましたところ、出てきた数字でございます。このグラフだけを見ていると、そんなに対米黒字が大きくなったというふうには、このグラフでは見えない。しかし、いや本当にこうなのかな、お役所はこの数字を出してこられたけれども、本当にこれが事実なのかなというふうに私は疑問に思いまして、少し精査をしてみました。  北米についてでございますが、日本の貿易の輸出輸入のバランス、それからその伸び率を見ておりますと、一九八一年には、この一年間で一六四%伸びました。そのときには貿易摩擦という大きな問題がございました。また、八四年にも八六・四%伸びています。一九九七年にも五二・六%の伸びを示し、これはそのときと同じような伸びが続いているのではないか。前月比十六カ月連続で対米貿易黒字が伸びてきている。このことは、ひとえに我が国の経済が非常に輸出ドライブ、輸出主導型の経済であるためではないかというふうに思います。例えば、一九九七年の一月の伸び率を見ますと一〇九・四%、四月二三〇%、五月一五八・一%と大きな大きな伸びを示しています。  私たちはやはり、今、日米関係が大変大事だというのは言うまでもない事実でございます。その中で内需主導の景気の拡大を我が国は義務づけられているというふうに思いますが、この日米の貿易収支のギャップについて、通産大臣そして経済企画庁長官、どのようにお考えなのか、御所見をお伺いいたします。
  134. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  最近の我が国の貿易収支の動向を見ますと、昨年の四月以降、対前年同月比プラスでずっと推移をいたしてきております。暦年でまいりまして、九七年は対前年比四八・一%の増で、九兆九千八百十八億円と五年ぶりに増加となっております。  こうした中で、対米の貿易黒字は、九六年十月以降、対前年同月比でずっとプラスに推移をいたしてまいりました。同じく暦年で、九七年では対前年比四一・六%増というような大幅なものになっております。金額では五兆百九十七億円と三年ぶりに増加に転じてきたわけであります。  また、米国を含む海外から、我が国の内需拡大の必要性について大変指摘を受けていることも事実でございます。  貿易収支の動向は、為替レートの変動あるいは内外の景気の動向、こういうさまざまな要因が影響を及ぼし合って出てくるわけでございますが、政府といたしましては、我が国の経済の力強い回復のために、緊急経済対策あるいは二兆円規模の特別減税、金融システムの安定化のための三十兆円の公的資金の活用、総額二十五兆円の貸し渋りの対策、財政、金融両面にわたる幅広い措置の迅速かつ的確な執行に努めることにいたしているところでございます。  また、現在の非常に厳しい経済の状況下で、政府といたしましては、経済の活性化や金融システムの安定化等を図っていくことは引き続き重要な課題であると考えておりまして、関係各省庁と連携をしながら、三月中旬をめどに、経済活性化のための具体策を検討いたしているところでございます。  こうした先取りの取り組みのすべてが、相乗効果を持って我が国経済の内需主導の力強い回復に寄与するとともに、アジアを初めといたします世界経済との調和にも資するものと考えておりまして、その意味でも、平成十年度の予算の早期成立を何よりもぜひお願いをいたしたいと思っているところでございます。
  135. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 貿易収支につきましては、二国間だけの収支をとることがどうかという問題があることはあらかじめ御理解をいただきたいと思いますが、対米貿易収支等につきましては、ただいま通産大臣から御答弁のあったところでございます。  このようにいわゆる黒字幅が増大している背景は、一つには九五年四月以降円安の効果が非常にあらわれてきたということと、アメリカ経済そのものが非常に好調であるというようなことも原因かと考えておりまして、対米輸出も、九五年の十一兆円のレベルから九七年には十四兆円のレベルへと増加しているわけでございます。  しかしながら、私どもといたしましては、先ほど来のお話のとおりに、内需中心の経済拡大を図ってまいりまして、いろいろな施策をやりながら経済を正常な回復軌道に乗せていきたい、そういうふうに考えて全力を尽くしているところでございまして、経常収支の経済に与える影響という点でございますが、来年度はいわゆる寄与率はゼロというふうに見込んでおりまして、私どもとしては経常収支のこれ以上の黒字幅拡大を避けていきたいという考え方でいるわけでございます。
  136. 原口一博

    原口委員 この三月一日に開幕した日米財界人会議運営委員会に出席中のマイケル・ジョーダン米日経済協議会会長がやはりこの米国の対日赤字に触れて、最近経験したことのない高水準に達するであろうという見通しを示しておられます。私たちは、もうそろそろこれが危険区域に入ってきたのではないか。  日米関係について、私も、今尾身長官がおっしゃったように、日本とアメリカだけで見るのはアンフェアだというふうに思います。貿易黒字の収縮圧力が必ずしもその額に反映していない、湾岸戦争やさまざまなものがあって、政治的にこれがある意味で利用されてきた、そういったことも踏まえておるつもりであります。  また、アメリカは日本の人口の倍あるわけで、生活水準が同じであるとすれば、その取引は当然アメリカの方が輸入超過になる、これも事実であろうというふうに思います。しかし、この間示しましたIMFの指摘や内需拡大の圧力が大きく高まっているというのは、真摯にとらえなければいけないというふうに思います。  私は、私ごとですが、二十代に尾身長官の御講義を拝聴したことがございました。たしか大変な積極財政論者でおられたと思います。今はさぞかし窮屈な思いをなさっているのではないかというふうに思う次第でございます。  さて、今度は大蔵大臣に、この間の答弁の続きをお伺いしたいというふうに思います。  財革法の六条の六を大蔵大臣は留意事項であるというふうにおっしゃいました。留意事項というのは何を指すのか。大蔵大臣は大変な法律家でございますが、留意事項という法律があるのか、留意事項に対する反対概念は何なのか、この財革法の三つの柱のほかの事項についてはこれは留意事項なのか、そのことについて大蔵大臣から御答弁をお伺いしたいというふうに思います。
  137. 松永光

    ○松永国務大臣 留意事項の反対語は何かとおっしゃいますが、これは法律で決められて義務になっている事項、それからそれよりも弱い、要するによく注意しなさいよ、こういう意味が留意事項だというふうに私は常識的に解釈をして答弁を申し上げたわけであります。  要するに、今後の日本の高齢化の進展等を考えると、国民負担率は長期的にはある程度上昇していく、これは避けられないことだと思いますが、しかし、経済の発展、社会の活力を損なわないよう極力その上昇を抑制する必要がある、これはもう委員も同じお考えだと思うのであります。そしてまた、世代間の負担の公平という点もあります。そういったことから、将来世代への負担の先送りとなる財政赤字を含めた国民負担率を抑制していこう、こういったことで、財政構造改革法第六条が留意事項として国民負担率五〇%以下にということを決めたものだというふうに私は解釈をしておるわけであります。
  138. 原口一博

    原口委員 大蔵大臣がおっしゃるように、留意事項の反対概念は義務事項、義務だというふうに思います。それを違反すればこれはいかぬということで、それで、資料の二をお示しさせていただきます。  資料の二は、財政構造改革五原則でございます。これは平成九年の三月十八日に橋本総理が御提出になったものでございます。一番から五番まででございます。この中で、一番から四番までは財革法の中で義務事項として掲げられているというふうに思います。それに対して、五だけが留意事項になっているのはどういう理由からでございましょうか。
  139. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、総理の財政構造改革五原則の中で、義務事項となっているものと留意事項となっているものに分かれているわけでございます。  ちなみに、財革法において中期的な財政健全化目標につきましては、これは、安心で豊かな福祉社会、健全で活力ある経済の実現のためにその達成が必要であるということで法律上の目標と位置づけられているわけでございますが、これは国際的にもマーストリヒト条約、あるいはフランスの財政五カ年計画においても、こういう目標を規定しているところでございます。  そういう意味で、やはり先ほど大臣がお答え申し上げましたように、いわゆる財政赤字の対GDP比等の財政健全化目標と、その時々あるいは国々によって異なる国民負担率とは性格が異なるものと考えております。  そういう観点から、財政構造改革法におきましては、国民負担率につきましては、国と地方との役割分担とか、あるいは公と民との役割分担とか、同じように留意事項としたわけでございます。
  140. 原口一博

    原口委員 御説明をちょっと伺っていても、どうしてそれだけが留意事項になるのかというのは、いま一つぴんときません。  それでは、これは財革の委員会の中でも質問がございましたが、これを破ればどういうことが起こるのかという質問に対して、これは法的な制裁はございません、法的には問題はない、ただ、政治責任はあるだろうという前回の臨時国会の中の議論でございました。この政治責任というのは何を指すのか、大蔵大臣に御答弁をお伺いしたいというふうに思います。財革法を違反したときに政治責任が生まれる、この政治責任というのは何を指すのか。
  141. 松永光

    ○松永国務大臣 委員指摘の第一項目から第四項目ですか、これが義務事項、第五項目は留意事項ということで、厳しく政治責任が問われるのは義務事項違反だというふうに思います。その場合の政治責任というのは、国民の批判を受ける、政府は法律に違反した財政運営をやったという国民の厳しい批判を受けるのではないかというふうに思います。
  142. 原口一博

    原口委員 なかなか納得のいく——それでは、この間の答弁の中で総理はしっかりと、内閣法制局長官がそのときに、政治的責任はあるだろうと、総理はその問いに対して、当然だ、政治的責任があるんだというふうにここで言明をされました。  私は、与党内にも首相の政治責任を問う声が上がっている、このことについても触れなければいけません。一方で、ある元総理のように、従来の財政再建路線を問われるような財政金融措置を首相の責任で行ったとしても、それは橋本総理の責任を問うべきではない、そういう御意見もあります。与党の中でも意見が割れている。  私は、一義的には、政策転換を臨機応変に行っても、それは高度な政治的判断に基づくものであって、財政の機動性を確保する観点から、責任は問われないというふうに思います。しかし、財革法の審議の中で、しっかりと総理は、これを守れなかったら政治責任をとるということを言明されている。私は一貫したこの橋本総理の立場を評価するものでありますが、とすれば、もし、この義務事項に違反をすれば、今大蔵大臣お話しになったような、国民から非難を受ける、そんなもので済むものではない。むしろ、みずからしっかりと謝って、政治責任、具体的な、目に見える政治責任をとるべきだというふうに思いますが、橋本総理の御所見をお伺いします。
  143. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員が引用されました発言を捜しておりますが、実は私の手元にあります議事録、十月三十一日に北側委員と交わしました論議、また、原口議員とさせていただきました十月二十二日の論議、そして、今触れられた、その六条に関連してお尋ねのあったやりとりを振り返っております。  その上で、その国民負担率のあり方というもの、これは究極的には、国民が必要とされる公共支出の水準と表裏をなす、言いかえれば受益と負担のバランスを眺めながら、その時々の情勢のもとにおいて国民的な選択が行われるべき事項、これはその時により、また国により、当然ながらさまざま異なると私は思います。  これはちょっと例示でしかられるかもしれませんが、例えば北欧のように、国民の選択の結果というものが公共サービスに非常に大きなウエートを置いている国もあります。国民負担率の水準を議論する場合に、財政の側面からのみ高低が議論できるのだろうか、またそれは正しいだろうか、率直に私は実はそういう感じを持ちます。  そして、冒頭議員がお尋ねになった、なぜ留意事項か。まさにこれは、国民の究極的には選択、そこにかかってくるものだ。その中で、今五〇%という数字を選んで置いておるわけでありますが、ここはある意味では他の数字とちょっと性格を異にする、私はそのように感じておりました。
  144. 原口一博

    原口委員 国民負担率についての御答弁は、もう本当に丁寧でありがとうございますと言うほかないのですが、留意事項ではない、それは百歩下がって留意事項だと認めましょう、しかし、その残りの四項目の義務事項について、これを違反したら政治責任をとると総理は言明をされているが、この政治責任というのは一体具体的には何なのかということをお尋ねしているのであります。  ここに亀井静香前建設大臣の論文が、「インテリジェンス」というものに載ったものがあります。こういうふうに亀井先生はおっしゃっています。  「財政再建」の名のもとに「「財政再建至上主義」路線をしゃにむに走りだした。財政再建ももちろん必要だが、今この時期にやるべきではない。 機敏かつ柔軟に対応するのが政治というものだ。ところが、橋本政権は一本調子で「財政支出カット=財政再建」であるかのようにとらえてしまった。反対したのは私一人だけだったため無視されてしまった。そのことを明確にせず、大きな意味での政治責任を取らずに、大蔵検査官たちの何人かを逮捕し、大蔵大臣を更迭することで狭い行政責任のみを問うというのはナンセンスだ。私は折に触れてこのことをずっと主張し続けてきた。にもかかわらず、橋本首相は一顧だにしなかった。」ということであります。  私たち野党が総理の責任をとやかく云々する、これは当然であります。しかし、私はここで、御党の中から行財政改革、景気対策等に対する批判が相次いでいる実態、これを自民党総裁としてどう受けとめておられるのか。あるいは、これは野党からではなくて、総理大臣として橋本総理を指名した立場、特にこの亀井前建設大臣は自社さをおつくりになったという自負をお持ちになり、また前の橋本内閣の閣僚のお一人であります。とても重みのある御発言ではないか。早期退陣を総理に突きつけるということは、重みのあることではないか、真摯に受けとめる必要があるのではないかというふうに思いますが、総理の御見解をお尋ねします。
  145. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、恐らく同じようなことをおっしゃりたい方はあるいはほかにもおられるのかもしれないと思いますし、その意味で、我が党所属の議員のどなたからの批判でも、これは私はまじめに受けとめなければならないと思います。同時に、その批判をされる方も、財政構造改革の必要性をお認めにならない方はいないと思います。その上で、現実の経済に対応して、あるいは金融情勢に対応して、臨機の措置をとることをいけないとも言っておられないと思います。  要は政策選択の問題でありましょうけれども、そうした御批判があることは、私自身が胸にこたえております。
  146. 原口一博

    原口委員 この方も財政構造改革を、この方というのは亀井先生ですけれども、否定しているわけじゃない。ただ、この中で大事なのは、「狭い行政責任のみを問うというのはナンセンスだ。」とまでおっしゃっているのであります。  私はよく、選挙戦、論戦といいますけれども、政治は五つの戦いがあるだろう。資料に指し示させていただいていますが、理想、理念をめぐる戦い、政策の戦い、代表になるための戦い、これが選挙です。時代の流れとの戦い、時流との戦い、民主主義を守りはぐくむための戦い、この五つが少なくともあるだろう。民主主義をはぐくむためには、責任をとるべき人がしっかりと責任をとる、このことが大前提ではないかというふうに思います。  総理の御所見をお伺いし、また、総理があのときに政治責任をおとりになるとおっしゃったのは具体的にどんな責任なのか、明らかにしていただきたいというふうに思います。
  147. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員が挙げられた、その五つの戦いと言われるその考え方に必ずしも反論をするつもりはありません。  その上で、例えばどういう責任をと言われますが、私は、大蔵省の検査官が職務に関連して職を汚したという捜査が行われていることを狭いことだとは思いません。そして、そういう中で三塚大蔵大臣がその責任をとって辞された。その重みは、現在残っている大蔵省の諸君が一番胸にこたえていることだと思います。また、その決断というものを無にしてはいけない、それだけきちんとしたチェックを、同時に今後の行政のあり方を考えていく責任は我々にあると思います。その上で、政治の責任のとり方というのはいろいろなケースがあると思います。  例えば私自身、証券・金融不祥事で私の秘書の名前までが云々されましたとき、即時に辞任という御意見を私に下さった方がありました。私は、その原因を調べ上げて、証取法の改正を終わり、既に引き受けておりましたG7の議長の役割を終わった瞬間には辞任をいたしました。私は、そのときそのときにおいて、これは言葉ではなく、責任のとり方というものはいろいろな姿があろうと思います。
  148. 原口一博

    原口委員 もう時間が参りましたので終わりますが、信頼回復、責任をとるべき人がしっかりとした責任をとる、このことを強く求めて、質問を終わらせていただきます。ありがとうございます。
  149. 越智通雄

    越智委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。  次に、岩國哲人君。
  150. 岩國哲人

    岩國委員 民友連を代表して、質問させていただきます。  最近、ある新聞に次のような川柳が投稿されておりました。「ゆるやかに回復しつつ倒産し」、これは昨年の桜のころであります。経済企画庁長官大蔵大臣が緩やかな回復を強調しておられた時期に、着実に倒産件数はふえておって、ついに昨年は倒産新記録であります。どなたがおつくりになった川柳かわかりませんけれども、こうした実態と政府の認識のずれというものを見事にあらわした川柳だと私は思います。ことしも同じようなことにならないように、「ゆるやかに回復しつつ嘘をつき」といったような川柳が出てこないように、私は、経済企画庁長官にはぜひとも的確な認識を常に示していただきたい。  最近、同じように気になる新聞報道がありました。それは、経済企画庁の中でいろいろ景気判断について議論が交わされ、既に景気は後退期に入っているという認識を示した委員が多いにもかかわらず、それは外部には公表されなかった。このような情報隠しというものはあってはならないことであります。むしろ、そのような情報隠しをやるような経済企画庁であったら、これこそ行政改革の対象にしなければならないと思いますが、まず最初に、尾身長官の、この情報隠しがあったかどうか、その一点について、あったかなかったか、それをお答えいただきたいと思います。
  151. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 ある新聞に出ていた記事のことをお話しされていると思いますが、私自身は、九月十一日に就任以来、経済の状況につきましては、できるだけ客観的にかつ正確に国民の皆様にお知らせするのが経済企画庁の責務であるというふうに考えまして、そのことで全力を尽くしております。  この内容についても、詳しい説明をしてもよろしゅうございますが、これは、調査局長の私的研究会というところで、景気の現状についての段階を判断しているという会の話だと聞いております。  五月ぐらいが山だったのではないか、ピークを迎えたのではないかということでございますが、私自身、家計調査の消費性向等で見ますと、四月、五月というのはかなり低かった。消費税の反動で低かったわけでありますが、六月、七月、八月、九月と、実は消費性向もかなり九月まで七二%から七三%ぐらいの高い水準でありまして、九月に七二・五%という水準を示しましたが、十月以降、十月、十一月、十二月と急速に消費性向が下がって、六九・〇と三・五ポイント三カ月間で下がりまして、それから景気がいわゆる緩やかな回復過程から足踏み、停滞という表現に変わるような実態に変わってきたというふうに考えております。  そういう実態を踏まえて、私ども、正確に経済の状況についてのレポートは出しているつもりでございます。
  152. 岩國哲人

    岩國委員 こうした、常に判断がずれておる、間違える、これは、神様でない限り全力を尽くしてもそういうことは時にはあるかもしれませんけれども、そうした内部の議論は、できるだけ透明度を高めて、外部にもこれから発表していただきたいと思います。  昨年来、我々は、この委員会でも再三にわたって、そうした経済企画庁の認識の甘さ、判断の間違い、あるいは政府の政策そのものの間違いというものを指摘させていただきました。  これは、かなり以前になりますけれども、私がニューヨークに住んでおりましたときにも、有名な、特に名前は言いませんけれども、金融機関の調査部長は非常に社内でも人気があった。彼の判断は常にみんなの注目を集めました。それは、いつも的確に当てておったということではなくて、常に間違っておったからなのです。その調査部長が金利が上がると言えば下がる方へ、下がると言えば上がる方へ、社内の注目を一身に集めて、彼は常に、しかしコンスタントに間違えておったのです。大変重宝がられました、上からではなくて下の社員の方から。  経済企画庁が日本において、常に経済企画庁がこうと言えばその反対だというような存在にならないことを祈りながら、そして行政の透明度をこれからも高めていただきたいということを申し添えたいと思います。  次に、行政改革に関連いたしまして、自治大臣に質問させていただきたいと思います。  行革、行革、総理は大変御熱心で、私は、そういった熱意に対しては大変敬意を表するものではありますけれども、そうした中央、霞が関の行政改革よりは、その四倍大きい地方の行政改革の方がもっと大切ではないか。しかし、地方の行革については余り声が聞こえてこないわけであります。  例えば、市町村合併。行政コストを下げるといえば、民間企業がやることはまずどうやって合併、リストラをやるかということであって、それを、賛成されればとか、あるいは数値目標もないという取り組みでは大変不満であります。地方の行政改革こそ行革の宝の山ではないか、私はそのように思います。  分権の時代と言われているときに、例えば地方の公務員のそういう報酬体系の見直しというのは既に着手されておるのかどうか。お手元にお配りさせていただきましたこの特別手当、この数の多さを見てください、そして何やらわけのわからない名前も見ていただきたいと思います。  この中で自治大臣が特に、もう既に手をつけた、一番最初にこれは廃止したいと思われる項目を二つ挙げて御説明ください。
  153. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 お答えいたします。  二十五種類あります、この地方自治法第二百四条第二項で地方公務員に対して支給ができます手当があるわけでございますが、この中から二つ選べ、こういうことでございます。これらのことにつきましては、この手当の問題をどうするかは既に行政改革の中で取り組んでおるわけでございまして、これらは地方自治法、先ほど申し上げました第二百四条第二項に限定、列挙された手当の範囲内で各地方公共団体の条例で定めなければ支給できないこととされておるわけでございます。  御指摘がありましたように、諸手当のうちの特殊勤務手当の中にはいろいろなものがあるわけでございまして、例えば窓口手当のような、勤務の特殊性が認められないようなものにも支給されているものなど、制度の趣旨に合致しない特殊勤務手当も一部見受けられるとお聞きをいたしておるところでございます。そのような団体に対しまして二つと言われても大変困るわけでございますが、早急にその見直しを図りますように助言指導を行っておるところでございます。
  154. 岩國哲人

    岩國委員 これだけ民間企業が、特に最近は大手銀行までが公的資金を受け入れるために大変なリストラに取り組んでおります。御承知のように、役所というのは公的資金どころか公的資金一〇〇%の企業体でありますから、もっともっと真剣に、民間企業以上に、そして大臣である以上は私はもっと具体的に、これとこれは絶対に廃止しなければならないという、もう少し情熱を感じられるような御答弁を期待いたしました。そういう点、大変残念であります。  例えばこの特殊勤務手当、大臣、具体的にこの特殊勤務手当というのはどういうことに支払われておるのか、御説明いただけますか。
  155. 芳山達郎

    ○芳山政府委員 お答えいたします。  特殊勤務手当につきましては、著しく危険、不快等の著しく特殊な勤務を行う職員に対して支給をされております。国におきましても給与法において支給要件が定められて、高所作業手当等三十七種類の手当が支給されております。地方公共団体でございますが、国に準ずるということになっておりますけれども、地方団体の事務は多種多様でございます。そういうことで、国と同じような手当と、またそれ以外の地方特有の手当等もございます。  御案内のように、御指摘がありましたが、例えば窓口手当のように業務の特殊性が見られないようなもの、また自動車運転手当のようにその職務が本来の職務ではないかというようなもの等もございます。制度の趣旨に合致しないものにつきましては、一日も早くその是正が行われるように適切な助言を行っております。
  156. 岩國哲人

    岩國委員 大臣も、そして今御答弁ありましたけれども、もう具体的に、そういうものはいつから廃止するのか、もう廃止したのか、今年度中に廃止するのか、もっとそういうことを明確にしていただきたいと思います。犬や猫の死体を片づけた、それもまた手当が幾らとか、窓口にちょっと立ったらまたそれで手当が幾らとか、これは一般企業ではおよそ考えられないことであります。そういうことをもう少し、税金を払う人の立場に立って私は大きなリストラをやっていただければ、これこそ本当に行政改革の宝の山だったということが、よく国民の目にもわかるのではないかと思います。  先ほど大臣が、法律によって支払っておるということでありますけれども、法律があるから支払うべきだというのではなくて、法律というのは、ここに書いてなかったら支払ってはいけないというだけの話であって、そこに書いてあったら何でもかんでも払うというのは私はおかしいのではないかと思います。  ぜひとも、国民の感覚、納税者の感覚に立った地方行政の大改革を今年度中に絶対私はやっていただきたい、そのようにお願いいたします。  次に、こうした特殊勤務手当の整理という場合に、確かにこれが本俸の一部としてほとんどなっているようなものもあろうかと思います。私は、市長時代ですけれども、二十五項目を八項目に整理しました。市民の皆さんが、大体役人はどういう手当をもらっているのかと言われたときに、市長自身が、あるいは受け取っている公務員自身が恥ずかしそうに説明しなければならない手当というのは、私はよくない手当だ、そのように思っております。堂々といつでも説明できるように整理統合し、中には増額をし、しっかりと公務員が胸を張って、どういう手当をもらっているのかということを恥ずかしがらないで説明できるような、そのような体系に改めていただきたいと思います。  出雲市役所は七割で十割の仕事、土曜日、日曜日もやっております。しかも手当は八項目、このような役所をもっともっと私は自治省の方でも指導していただきたいと思います。役所というのは役に立つ所と書いてある。それが民間の皆さんにもわかるようなリストラをぜひお願いしたいと要望いたしまして、次の質問に移らせていただきます。  次は、JRの債務の問題であります。  この問題は、昨日もきょうも多くの方が取り上げておられました。重複を避けたいと思いますけれども、しかし、上場企業が自分の利益を自分の利益として使うことができない、こんな企業が上場されているのは私はおかしいんじゃないかと思うんです。上場企業が、年間利益を上回るだけの負担を押しつけられる、そのような企業が上場されている前例がありますか、今までに。そのような制約を、負担を負わされている企業が、堂々と一般の無知の投資家に株式を売り出し、外国人にも買わせ、そして後から膨大なツケが来る。私は、長い間証券の仕事におりましたけれども、このような企業を見たことはありません。  まず運輸大臣に、私は、JR東海、去年の九月、売り出されたときのこの発行目論見書を読みました。しかし、その中にわずか一行それらしいことがかすかに書いてある程度であって、この株式を買う人にそういう負担が一年たったらやってくるというようなことは、どこにも書いてないじゃないですか。これは虚偽、少なくとも不十分な情報に基づいて、国家的な、詐欺とは言いませんけれども、売り出しを行っている。運輸大臣に御見解をお願いします。
  157. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  お答えする前に、詐欺というお言葉をお使いになられましたけれども、そういう言葉はぜひお慎みいただきたいということをお願いいたしたいと思います。  JR株式上場、売却に当たってのその時点における適切な情報開示が投資家に対して行われていなかったではないかという趣旨ではないかと思いますが、決してそういうことはございません。  端的に申し上げますけれども、今JR東海の株式売却のときの情報開示につきまして申し上げますと、いろいろ情報開示、目論見書におきまして、事業団の債務等についてこのように列記をいたしております。  平成八年十二月二十五日の閣議決定におきまして、平成十年度よりその本格的処理を実施することとし、その具体的処理方策の検討を進め、平成九年中にその成案を得ることとされたこと、また、平成九年六月三日の閣議決定において、JRによる負担を含むあらゆる方策について個別具体的に検討を行い、平成九年中に成案を得ることとされたことについて記載を行っているところでございます。
  158. 岩國哲人

    岩國委員 この目論見書十九ページの中に、わずか一行「JRによる負担」というのが書かれております。これは、「(平成九年六月三日閣議決定)の抜粋」としてここに書かれております。JRが一千七百億円を払ったのは六月三日以降、そして、たしか九月であったと思います。一般の投資家は、この目論見書を見て、この「JRによる負担」というものを仮に気がついたとしても、千七百億円をJRが支払った時点において、この項目は確かに実行されたと思うのが普通ではないでしょうか。大臣の御見解をお願いします。
  159. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 先生御承知かと思いますし、また他の委員の先生方からも、今回の年金移換金についての御質問がたびたびございました。このことについて再度繰り返しますけれども、年金移換金というのは、本来、当事者である共済関係事業主が負担すべき性格のものである。平成八年の法律は、今先生御指摘のことでございますが、この厚生年金移換金の基本原則に従いまして、共済関係事業主としてJRと国鉄事業団で負担することを決定したものであり、今回、事業団分の七千七百億円を最終的にだれが負担するかを定める場合に、当事者であるJRが一切の負担をせずに、すべて国民の負担、いわゆる税金による負担とすることは合理的でないという判断をいたしたわけであります。  特に移換金七千七百億円のうちJR社員分の三千六百億円は、JRの社員に対して年金を給付するための費用であり、JRの社員の福利厚生のための費用であることはたびたびお答えをしているところでございます。このような特定企業の社員の福利厚生のための費用は、その事業主である企業の負担とすることが合理的であり、この分まで一般国民の負担とすることは合理的ではないということで答弁を申し上げたところであります。  また、先ほど来、海外からの不信と申しましょうか、投資家の不信、株主の不信、民営化企業からの利益納付、国の債務の肩がわりというような御指摘があったわけでありますが、今回の国鉄長期債務の処理方策のうち、JRの負担問題については、そういった投資家、株主の皆さん方から一部に誤解があるように私は思えてなりません。  今回の措置は、我が国政府が民営化されたJRに利益の納付をさせたり、国の債務の肩がわりをさせようとするものではございません。このようなことは、政府といたしましても、国鉄改革に基づく我が国の民営化政策に合致するものではないと考えております。(岩國委員大臣、どうもありがとうございました。もう結構です」と呼ぶ)もう一言申し上げます。  そしてまた、昭和六十二年の国鉄改革のときに、いわゆる債務が、三十七・一兆円の国鉄長期債務がありまして、そのうちJRが十一・六兆円の債務、これに新幹線の再評価分二・九兆円を積みますと、実質的に十四・五兆円のJRの債務がございました。そして、事業団が二十五・五兆円の債務を負担したわけでございます。  今回の具体的処理方策におきましては、この国鉄改革によって事業団が負った債務は、すべて国、いわゆる一般会計及び鉄道建設公団の負担で処理することとしておりまして、JRには一切この点の負担を求めていないことも、念のため申し上げておきます。
  160. 岩國哲人

    岩國委員 質問時間がなくなりましたので、残念ながらこのJRについての質問はこれで終わらせていただきますけれども、株主の立場を利用して特別な利益を強要するのは、まるで総会屋がやったようなこと、あるいは新井将敬代議士がやったような、地位を利用して民間企業に対して特別な利益を強要する、私には何やらそのようなイメージが重なってならないわけであります。  次に、金融問題についての質問に移らせていただきます。  きょうは、日銀の理事にもおいでいただいておりますけれども、私は、金融機関というものは、とりわけ銀行は、預かったお金をお返しする、それが銀行の役割ではないか。当然、預金保険なるものは銀行あるいは預金者の共同の負担において行うべきものだ、そのような認識を持っております。  例えば、今から約十年前、八五年から九〇年にかけて、シティ銀行あるいはバンク・オブ・アメリカ、アメリカを代表する大手の銀行がいろいろな問題を抱えたときに、このような大手の銀行が一番最初にやったことは、本店を売るということでした。  シティ銀行も、そしてバンク・オブ・アメリカのサンフランシスコの、「タワーリング・インフェルノ」に登場したようなあの有名な建物を六億六千万ドルで売ってしまいました。そして、それから七年かかってやっと半分を買い戻しております。ロサンゼルスの本店も全部日本の投資家に売ってしまいました。このような自己犠牲があったからこそ、投資家あるいはそういう市民の信用というものをつなぎ得たのではないかと私は思います。  その上、最近の大蔵省、日銀の関係者の不祥事件、そして接待によって曲げられた数字、こういうことに基づいて国の税金を使うのは間違っている、私はそのように思います。本店を売りもしない、そして資産をたくさん持っている大きな銀行に、キンニク増強剤、このキンニク、これは筋ではなくて金融の金でありますけれども、金肉増強剤を注射したり、あるいは大型のばんそうこうを張りつけたり、そのようなことがなぜ必要なんですか。  銀行の不祥事に関連しまして、証券においては借名、仮名口座が発見されておりますけれども、日銀の考査において借名口座、仮名口座はどれぐらい発見されておりますか。こういうことをやってはならないというのが、今から十六年前、通達で出ておるはずですけれども、日銀考査によってどれぐらいの件数が発見されておるか、その件数だけを簡単にお願いいたします。
  161. 本間忠世

    ○本間参考人 お答えをさせていただきたいと思います。  私ども日本銀行の考査は、信用秩序の維持に資するという中央銀行の役割を果たすために実施されておるものでございまして、ただいま御質問いただきました仮名口座あるいは借名口座等の不正の取引の発見ということを含めまして、金融機関の個々の取引の違法性のチェックでありますとか、あるいは法令違反、この摘発でありますとかいうようなことを直接の目的としてやっているものではないわけでございます。  また、考査が、日本銀行と取引先の金融機関とのいわば信頼関係というものを基礎といたしまして、取引先の金融機関の協力に基づいて行われるものであります以上、先方の隠ぺい行為等が行われました場合には、実態把握の点で一定の限界があるということも、これはぜひ御理解いただきたいと思います。  そういう意味で、私どもの考査の性格というものはそういうものでございますが、しかし、リスクの顕現化というものを事前に防止する観点から、内部管理体制を含みますリスク管理全般の整備、こういうものについてこれからもしっかりとチェックをしていき、考査の実を上げていきたいというふうに考えております。
  162. 岩國哲人

    岩國委員 そうした銀行に対する公的資金の注入ということがこれだけ話題になり、しかも国民の負担を伴っている以上、借名口座、仮名口座が、郵便局も含めて、私は膨大なものがあると思っております。そういうものを徹底的に検査し、考査することは、監督機関の当然の義務ではありませんでしょうか。そうした、接待を受けるのに忙しいから検査に手が回らない、こんなことは言いわけにもお話にもならないわけであって、理事は今そういうことをおっしゃったわけではありませんけれども、これからの姿勢を変えていきたいということですけれども、ぜひ徹底的にやっていただきたい。  特に、日本銀行は、今までの中央銀行の意識を私は変えていただきたい。金利というものは、払う時代から、今受け取る時代に変わってきております。金利は払う時代から受け取る時代、そういう意識を背景にして、中央銀行の金利政策あるいは公定歩合に対する考え方も、昨日日銀総裁に申し上げましたけれども、ぜひ変えていただきたい。  最後に、大蔵大臣に一つだけ御質問いたします。  今、日本の銀行がアメリカで優先株を発行しております。住友、三菱、三和、計画がございますね。これは本店の自己資本に同じようにカウントされるものですね。カウントされるかされないかだけ。  それがカウントされるものという前提で、それでは質問させていただきますけれども、アメリカで発行される優先株は、大体配当が一〇%程度、このように報道されております。アメリカの長期国債にプラスオンして、一〇%近い。これがほぼ妥当な予測かどうかということの確認と、そして、日本で発行される優先株は二ないし三%という話を聞いておりますが、それが事実かどうか。両方とも事実であるならば、なぜ日本人の税金はそのような安い証券の購入に向けられるのか、アメリカの高いリターンがあるものをなぜ日本人の税金で買わないのですか。言ってみれば、日本人の税金の安売りではありませんか。このような考え方が間違っているかどうか。大蔵大臣、どのようにお考えになっていますか。  これだけ大きなお金を使おうとするときですから、局長部長の考えではなくて、大蔵大臣自身が税金を守るたった一人の大臣だという意識を持っておられたら、こういうふうな日米格差、あるいはそういった証券そのものが有利なものに、そして日本では不利なものに、これは、その差額はまさに銀行に対する補助金ではないでしょうか。御答弁をお願いします。
  163. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  米国で数行、これは優良な銀行の格付をもらっているところに限るんですが、資金調達をしております。しかし、アメリカといえどもこういったマネーを供給する市場の規模はそう大きくありません。したがって、かなり大幅な金利になっているというふうに聞いております。一方、我が国の場合、現行の金利水準、配当水準等を勘案し、その市場でやるわけでございます。  いずれにせよ、金利差は通貨の関係でいろいろ変わってまいります。米国の市場の金利と我が国の市場の金利というのは為替レートで調整されるわけでございます。また、その市場がどれくらい狭いのか広いか、供給者がどれくらいあるかということで決まってまいります。したがって、著しく不利な取り扱いをしている場合は、やはりそれはもっと有利なところで調達するということになるわけでございますが、そこの市場のすくみ現象というものがある以上、そういったことが生ずる場合もあるということでございます。
  164. 岩國哲人

    岩國委員 的確な答弁をいただけなくて残念です。何%の違いがあるのか、その差額は通貨の差を通り越して大変不自然だ、私はそのように思っております。  また、この金融安定化法の十三兆、十七兆の使われ方がもし日本円でしか使ってはならないというふうになっているとしたら、この国際化時代、そしてビッグバンの時代に、ボーダーレスの時代に大変おかしいことじゃないでしょうか。国民のためにどちらがいいか。日本の円でそういった自己資本を注入するのか。ドル建てで自己資本を注入した方が日本の納税者にとって有利なのであれば、外貨建ての注入の仕方というのを考えておかなかったとすれば金融安定化法の大変な欠陥ではないかという疑問を呈しまして、私の時間が終わりましたので、質問を終わらせていただきます。
  165. 越智通雄

    越智委員長 これにて岩國君の質疑は終了いたしました。  次に、北側一雄君。
  166. 北側一雄

    ○北側委員 平和・改革の北側一雄でございます。  限られた時間でございますので、早速質問に入らしていただきますが、まず最初にお聞きをしたいテーマは、証券取引における借名口座、仮名口座の問題でございます。  先般の予算委員会の質疑で、証券取引等監視委員会がこの五年間で把握した借名口座、仮名口座は全部で五百八十口座という答弁がございました。ただ、これは恐らく氷山の一角だと私は思います。現に、この予算委員会に日興証券が借名口座との疑念のある口座として報告をしてまいりましたのが三十二件。ただ、この三十二件というのは、先ほど申し上げた監視委員会が把握しておった五百八十口座に含まれていないということでございますので、実際は相当な数の借名口座、仮名口座がこの日本の証券市場にはあるというふうに言わざるを得ないと思います。  ちなみに、監視委員会にお聞きをしたいわけでございますが、この予算委員会に報告されました日興証券が、三十二件、借名口座との疑念がある口座があるというふうに報告があったわけでございますけれども、これは二月十六日にございました。監視委員会として、この三十二件の借名口座の件について日興証券に対し何か対応をされたのかどうか。御答弁をお願いいたします。
  167. 堀田隆夫

    ○堀田政府委員 お答え申し上げます。  日興証券が借名口座との疑念のある口座として三十二件の報告を当委員会に報告をされたということは、よく承知をしております。  私どもは、日興証券に対しまして、この問題についてさらなる事実解明をしてくれるように指示をしておりまして、現在、報告を求めているということでございます。日興証券の本件につきましての取り組みを見守りつつ、必要があると思いますれば、今ちょうど日興証券には故新井議員との取引の問題で事実解明を進めているところでもございますので、それとあわせまして、この問題についても事実解明をしていきたいと思っております。  いずれにしましても、この問題はきちっとチェックをしたいと思っているところでございます。
  168. 北側一雄

    ○北側委員 先般も監視委員会の方からこういう御報告があったわけでございますけれども、この五百八十口座でございますが、その背後には、違法行為がある場合が間々あると。これは証取法の損失補てんだけではなくて、インサイダー取引とか相場操縦までこの仮名口座を使われていたということを把握しておったというふうに事務局長から、監視委員会の方から、この間、御答弁ございました。  こういう証取法違反、それだけではなくて、もちろん仮名口座が脱税に使われたケースもかつてございました。また、マネーロンダリングに使われているという例もございました。等々、この借名口座や仮名口座というのは、違法行為また不正行為の温床に非常になりやすいわけでございます。現に、昨年、四大証券の総会屋への利益供与事件、これはもうすべて仮名口座、借名口座でございます。また、先般の新井議員の事件も、御自身が認めておられたように借名口座でございます。  この借名口座、仮名口座が不正取引の温床になるというのは、もう今始まった話ではないということは総理もよく御存じのところでございまして、これはかなり昔から、仮名口座、借名口座についての禁止の通達等があるわけでございます。私が知っている限りでも、昭和四十八年の三月十五日にも大蔵省の通達がございますし、四十九年五月十七日にもございますし、さらには六十三年の九月十三日にもありますし、かなり詳細な内容の仮名取引の禁止を証券会社に対して厳しく通達をしておるわけですね。  にもかかわらず、その後、証券業協会の自主ルールができて、今私が申し上げたような大蔵省通達というのは一応失効しておるわけでございますけれども、この業界の自主ルールがあっても、実際には全く守られていないというのが実態と言わなければならないわけでございます。九一年の証券不祥事を受けて証取法の罰則を強化したにもかかわらず、昨年来の一連の事件を通して、日本の証券業界の体質はもう本当に何ら変わっておらないということは、我々この一年間、嫌というほど教えられたわけでございますけれども、そういう意味では、協会の自主ルールぐらいでは何の規範にもなっておらないというのが実態であると思うわけでございます。  そこで、私、二つ提案をさせていただきたいと思っております。  一つは、私は、やはり監督当局の大蔵省として、この際、全証券会社に対しまして借名口座、仮名口座の徹底調査をすることをぜひ指示してもらいたい、そしてその結果をこの予算委員会に報告をしてもらいたいと思うのです。  先般、私もこれはびっくりしたのですけれども、日興証券社長の参考人質疑の際に、ある委員の方から社長に対して、借名口座について自主調査を行い、その結果を当委員会に報告していただきたいという要求をいたしました。これが一月三十日。この三十二件という回答が返ってきたのが何と二月の十六日なんですね。たった二週間余りで、調べたら、調べる気があったならば結果がわかるわけでございまして、この際、借名口座、仮名口座の徹底調査をぜひ指示していただいて、その結果を当委員会に報告してもらいたい。いかがでしょうか。
  169. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  今、委員御説明もありましたように、従来は通達でこの仮名口座あるいは借名口座の禁止をやっておったわけでありますけれども、平成四年ですか、自主規制機関の規則に改まったものであります。  ところが、自主規制になっておるのに守られないのがまだ相当あるという実態が、今までのお話の中で明らかになってきました。これでは何のために自主規制機関があるのかという問題になってくるわけでありまして、証券会社の守るべき行為規範を確立し、そしてその遵守を求めることを通じて証券会社と証券市場に対する投資家の信頼を高めるという立場に、実は自主規制機関はあるわけですね。  そこで、今御指摘にもありますので、大蔵省としては、まずはこのための証券業協会の取り組みをしっかりしろという観点から、仮名、借名取引の禁止規定の励行状況、これを調査するように証券業協会に指示したい、こういうふうに考えております。
  170. 北側一雄

    ○北側委員 ありがとうございます。徹底調査をすると。これは、ぜひ当委員会に御報告をいただけるようお願いをいたします。  そこで、せっかく調査をしていただくという御回答をいただきましたので、もう一つお願いをしたいのですが、国民が今この証券取引の問題、またこういう借名口座、仮名口座の問題等々で一番不信感といいますか疑惑を持っているのは何かといいますと、政治家や官僚がこういう借名口座や仮名口座をもって株取引をしているのではないかという疑いを、やはり新井議員の事件を通してもそういう疑惑を持っておることは、これは厳然たる事実なわけでございます。  我々は、これに対して、そうじゃないんだということをやはり明らかにしていく必要があるわけでございまして、私は、もう一つお願いをしたいのは、調査の結果、例えばどこどこ証券会社に借名口座が何件ありました、何件ありましたというだけではなくて、そのうち政治家や官僚の口座がもしあったならば、その名前をぜひ明らかにしてもらいたい、このことを私は強く求めたいと思いますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  171. 長野厖士

    ○長野政府委員 仮名、借名口座につきましての調査につきまして、今大臣がお答え申し上げました。大臣のただいまの御答弁でございますので、具体的にどういう形で指示できるか、早急に検討いたしたいと思います。  ただ、具体的な借名口座の、だれがそれに該当しておったかということの公表をせよという御指摘は、御指摘として大変重要な点であるとは存じますけれども、仮名、借名口座そのものの禁止は、そのことの違法性よりも、どちらかと申しますと、マネーロンダリングでありますとか脱税でありますとか、証券でいいますと利益供与でありますとか損失補てんであるとか、実態的に処断されるべき違法行為、それを未然に防止したいという観点から行っておられるものでございますので、そういった違法行為のレベルの問題と、借名口座が、たまたま借名口座に当たったから氏名を公表するかどうかという問題につきましては、大変慎重な検討を要するということを率直に申し上げざるを得ないと思います。
  172. 北側一雄

    ○北側委員 私は、証券局長、そういう法律論の話を今しているのじゃないのです。ここはもう政治論、我々議会人として、こういう問題があった、やはり襟を正す必要がある、国民の疑惑に対してはきちんと答えていく必要がある。そのためには、せっかく今、借名口座、仮名口座については徹底調査するよという大蔵大臣の御答弁があったんですから、その中に、政治家が仮名、借名口座を使っておった、官僚が仮名、借名口座を使って証券取引をしておったという事実が仮にあったならば、それはきちんと名前も含めて御報告いただきたいというふうに申し上げているわけでございます。  総理、いかがでしょうか。
  173. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 率直に申しまして、法律上の議論をいたしますならば、先ほど証券局長が答弁を申し上げたのが正確な答えであろうと存じます。  ただ、その上で、今問われているものは何かという視点からの議員の重ねてのお尋ねでありました。私自身、とっさのお話でありますから、法的にどのような問題があるのか十分わかりませんけれども、後ほど大蔵大臣と十分相談をいたしたいと思います。その指摘をされた重みは理解をしているつもりでありますが、その上で大蔵大臣と相談をさせていただきたいと思います。
  174. 北側一雄

    ○北側委員 ぜひ前向きに御検討いただきたいと思います。  もう一点、私の提案は、この借名口座、仮名口座の禁止というのは、先ほど大臣おっしゃったように、証券業協会の自主ルールで禁止をされております。本当にこのままでいいのかということなんですね。そういう自主ルールで禁止しても、実態は全く野放しになっておるというのが現状。もう自主ルールではある意味じゃだめだということが、本当は自主ルールで守れば一番いいんですけれども、だめだという実態なわけでございますので、これはやはり法令できちんと禁止していく必要があるのではないかと私は思いますが、大蔵大臣、いかがでしょうか。
  175. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  今、委員指摘のように、自主ルールになっておる、しかし、その自主ルールが守られてないというところが一番残念なところですね。そこで、ではどの程度守られているのか、自主ルールの励行状況というか、それをまず調査させるわけでありますが、問題は、それを見た上での判断になるかもしれませんけれども、果たしてこれだけでいいだろうかという問題は当然あるわけですね。  そこで、こういう仮名口座、借名口座の禁止をどういうルールのもとに規制していくか、禁止の規制をしていくかということは、行政官庁による規制で行っていくか、あるいは自主規制で行うか、あるいは法律で行うか、いろいろやり方があるのでありますけれども、諸外国の例だと、法律によらずに自主規制という形でやっておるということであります。  そこで、問題は、有効に規制が行われるようにしていくということが大事なことなんでありますが、同時にもう一つは、銀行預金と他の金融機関取引も視野に入れて検討しなければならぬというふうに思うわけでありまして、十分問題意識を持って勉強させていただきたい、きょうの段階ではその程度の御答弁とさせていただきたい、こういうことでございます。
  176. 北側一雄

    ○北側委員 ただ、これは先ほども申し上げましたように、昭和四十年代から通達で何度も禁止をされて、守られない、また通達を出す、これの繰り返しなんですね。そして、自主ルールができる。でも、実態は何らこの二十年以上全然変わっておらないという現状でございまして、ここは、一たんやはり法令による規制をしないといけないんじゃないか。その上で、現状が変わってくるなら、また自主ルールに戻すのがいいかもしれない。  ただ、今のこの状態を見るならば、これが実際、違法行為、不正取引の温床になっていることが多いわけですから、やはり一任勘定取引と同じような趣旨で、私は法令できちんと一たん禁止をしていったらどうかと思うんですね。総理、いかがですか。
  177. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほどの部分にもちょっと触れたいと思うのですが、私は後で大蔵大臣と一生懸命に相談をいたしますけれども、政治家、官僚と言われましたが、官僚というところまで広げますと、これは正直、国家公務員、地方公務員、膨大な数になります。同時に、仮名、借名という口座の性格上、その疑いを持ったものはあったとしても、本人確認ができるかという問題まであることは御理解をいただきたい。そうした点を踏まえて、私は大蔵大臣と相談をしたいと思います。  同時に、実は、これが今自主規制のルールになっておりましたのは、私自身が引責辞任をいたしました証券不祥事の後、通達行政というものを見直した中からのことでありました。そして、各国の状況を調べてみましても、ほとんどが、実はこの問題は自主規制的な形で行われております。そして、これは今大蔵大臣から御答弁を申し上げましたけれども、今手元にある資料を見ておりますと、必ずしも各国、本当にその法律制度を持っている状況ではありません。  ただ、一方で、マネーロンダリングの観点から別のルールを定めておる部分があります。マネーロンダリングにおいて、例えばドイツの場合で、これはこの資料そのままに読み上げさせていただきますと、本人以外の名義でする株取引自体を規制する規定はない。他方、マネーロンダリング法により、二万マルク以上の現金、有価証券等の受領、交付を行うときは本人確認義務が課せられている。これは一つの例でありますが、フランスにおいても、本人以外の名義でする株取引自体を規制する規定はないと思われるが、マネーロンダリング法により、証券口座開設の際、金融機関の本人確認義務がある。  ですから、借名口座、仮名口座を規制する直接の法律とは別に、まさにマネーロンダリングという視点からの切り口を持っている例が幾つか散見されます。こうしたものもあるいは参考になるのかな、今御質問、答弁を聞きながら、資料をそのような思いで見ておりました。
  178. 北側一雄

    ○北側委員 大蔵大臣も勉強するというお話でございますし、今総理の方からも、違った観点からの規制も可能だよというお話もございました。ぜひ積極的な御検討をお願いしたいと思います。  そこで、質問を変えますが、財政構造改革法と景気対策との関係につきましてお聞きをいたします。  総理、先般も鈴木委員との間で、これは財革法が審議されておるときもありましたし、ついこの間もあったわけでございますが、もう一遍、私、確認をしておきたいわけでございますが、今、与党幹部の皆さんの一部の方から、またマスコミ等でよくこういうことを聞くのですね。  それは、財政構造改革法のキャップは当初予算にかかっているだけだから補正予算で財政出動をすることは何ら拘束されるものではないとか、それから、財政構造改革法は特例公債の年々縮減を規定しているが建設国債を財源として財政出動することは何ら拘束されるものではないとか、こういう言い方がされておるのです。  私は、こういう言い方はこの財政構造改革法の法の趣旨とか精神からは、こうした考え方というのは誤りであって、やはり二〇〇三年度の財政赤字対GDP比三%以下という厳しい目標を達成していくためにはおのずから限度があるわけでございまして、総理のお言葉をかりますならば、当然のことながら財政赤字の毎年の縮減に努めていく必要がある、これは総理の御答弁です。当然のことながら財政赤字の毎年の縮減に努めていく必要があるということだ、私はやはりそう思うわけでございます。改めて総理に確認をさせていただきます。
  179. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 財政構造改革法におきましては、国、地方の財政赤字対GDP比を三%以下とすること、公債依存度を引き下げること、あわせて財政健全化の当面の目標としております。  そして、過去のやりとりをもう一度繰り返すことも避けたいと存じますけれども、そうした中において、財政構造改革の必要性は私は変わらないと思っておりますし、同時に、景気回復のために経済金融情勢の変化に応じて対応措置をとっていくことも当然のことであり、その範囲内において努力をすることは当然臨機の措置として許される。いわばタイムスパンの違う問題を重ね合わせて御論議を今までしばしばいただくのに対し、そうではないということを申し続けてまいりましたが、内外の経済情勢、金融情勢の変化に応じてその措置を講じていくこともまた可能だと考えております。
  180. 北側一雄

    ○北側委員 総理は先般も同じような御答弁をされておられるわけでございますが、財政構造改革法の法の精神からして、毎年毎年財政赤字そのものの縮減に努めていく必要があるのだ、努めていくというお言葉ではございますが、必要があるというふうに御答弁をいただいております。  それを踏まえまして質問をさせていただきたいわけでございますが、委員長、ちょっと総理に一枚の計算式をお渡しさせていただきます。  これは、御答弁はまずは事務当局の方からで結構でございますが、財政赤字を毎年縮減しなければいけない、努める必要があるという前提に立った場合に、まず、九年度の財政赤字の見通しというのは対GDP比五・九%になります。この五・九という数字はそういう数字でございます。それで、十年度の当初予算の財政赤字の見込みは対GDP比四・七%。これは国鉄それから林野債務の処理の問題は除きます。除きますと四・七%。これは十年度当初予算の財政赤字の見込みでございます。  それで、十年度の財政赤字を九年度より削減をするためには、一体、十年度で追加公債、追加的に発行する公債というのはあとどの程度可能なのかということをまず事務当局に聞きたいのです。もう一遍言いますよ。十年度の財政赤字を九年度より削減するためには、十年度の追加公債発行の可能な限度は推計でどの程度か、金額をおっしゃってください。
  181. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  北側先生がただいまおっしゃった御趣旨を単純に計算いたしますと、国分といたしまして約三兆九千八百億円ということになります。
  182. 北側一雄

    ○北側委員 総理、この三兆九千八百億という計算値が出てくる根拠がこの計算式でございまして、これは、前提としてGDPが成長率一・九%になるという見通しでございます。それが前提の数字でございまして、この一・九%が低くなれば、追加公債発行可能な限度というのはさらに減ってくるわけでございます。  その前提で、これはどういう意味かといいますと、赤字公債そのものは法律の規定で明確に年々縮減を規定しておりますから、平成九年度全体の赤字公債発行額と平成十年度当初予算の赤字公債発行額との差額というのは一兆三千八百億ございます。これと、あと建設国債が約二兆六千億、それでこの約三兆九千八百億になるわけですね。赤字公債があと発行できるのは一兆三千八百億、建設国債が発行できるのは二兆六千億。これは、財政赤字を九年度よりも十年度を低くしようと思ったならば、限度はもうこの限度であるという数字になるわけでございます。  総理、私がお聞きをしたいのは、九年度より財政赤字の比率が大きくなるようであれば、これはもう明らかに財政構造改革法が破綻をしたことは明白と言わざるを得ないわけでございまして、公債発行額が建設国債、特例公債含めまして約四兆弱の三兆九千八百億を超えるような公債発行を財源とした財政出動をしないといけない、そんな状況になったとしたら、財政赤字は九年度より大きくなってしまうわけですから、明らかに財政構造改革法の改正が必要になる場面であるというふうに考えてよろしいんでしょうか。
  183. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変お答えしにくい思いをいたしますのは、この前、議員が提起をされ、続いて他の議員が提起をされました問題に、私は、政策的な評価をいたしつつ、しかし現実に難しいという御答弁を申しましたところ、御注意を受ける羽目になりました。それだけに大変お答えをしにくい思いがいたしますけれども、まず第一に、計算として、今の議員が立てられました数字上の論拠というものは理解をいたしたつもりであります。そして、御質問のような事態にならないように全力を尽くすためにも、早期の予算成立をお願いしているのが今の私の立場でございます。
  184. 北側一雄

    ○北側委員 私は、財政構造改革法を改正しなければいけない、その限界、場面というのはどういう場面かということをお聞きしておるわけなんですね。  私は、今数字でお示しをしましたように、九年度の財政赤字よりも十年度の財政赤字の方が大きくなっただとか、それから、公債依存度が平成九年度よりも十年度の方がトータルとして結局高くなったというふうな状況になったならば、これはもう財革法そのものが破綻をしておる、今既に破綻をしておるという意見もあるわけでございますが、これはもう明らかにその時点では破綻をするわけでございますから、幾ら追加景気対策といったって、これを超えるような財政出動をしなきゃいけないというふうなことであるならば、その時点では、その景気対策とともに法改正が当然必要になってまいりますねという確認をしておるわけでございます。  総理、もう一度御答弁を。
  185. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ですから、そういう事態を想定しないで済むようにしてまいりますためにも、一日も早い予算並びに関連法案の成立をお願い申し上げております。
  186. 北側一雄

    ○北側委員 総理、これはこの後もいろいろな質問者の方が質問しますが、朝、朝刊を開きましたら、毎日のように自民党の幹部の方々の、大型補正予算だ、財革法の改正だ、こういう発言がもう毎日毎日じゃないですか。この間も野中幹事長代理が、政策転換は明確にしたんだとか、もう連日連日、かわるがわる、次から次へ、与党の幹部、自民党の幹部の方々は連日連日そういう発言が続いているわけでしょう。今度の予算委員会でこの問題が最大の争点ですよ。ここははっきりしていただかないと、委員会、続けられませんよ、そんなの。
  187. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、改めて申し上げますけれども、私どもは、平成十年度予算、これに関連いたします税制改正並びに予算関連法案の一日も早い成立をお願い申し上げております。  そして、既に国会で御承認をいただきました特別減税、九年度補正予算、金融システム対策等々の施策と相まって、一日も早く日本の景気を回復させるためにも、予算の切れ目をつくらないための御協力をお願い申し上げておるところでございます。
  188. 北側一雄

    ○北側委員 先ほど申し上げましたように、もう連日、与党の最高幹部の方、自民党の最高幹部の方は、かわるがわる、財政出動の必要性、大型補正予算を組むぞ、また財革法の改正の必要性、こうしたことを次から次へアナウンスされております。一方で、連日連日の予算委員会では、今の、総理大蔵大臣がいつもされるような答弁しか返ってきません。  これでは予算審議にならないですよ。これはきちんと政府として、これは我々野党が言っているのだったらいいですよ、与党の、自民党の最高幹部の人がおっしゃっているわけですから、きちんとこれは政府の統一見解を出してください。委員長にそれを求めます。
  189. 越智通雄

    越智委員長 北側委員の御発言に関しましては、理事会で協議させていただきます。
  190. 北側一雄

    ○北側委員 以上で終わります。
  191. 越智通雄

    越智委員長 これにて北側君の質疑は終了いたしました。  次に、草川昭三君。
  192. 草川昭三

    草川委員 草川であります。  十一時から野党三会派の国会対策委員長会議とそれから幹事長会談を開きまして、当面、とりあえずの要求を六項目まとめました。党対党、そして党から政府の方に物を言っていただきたい、こういうことでございます。  その第一番目が、今北側委員がおっしゃいました、いわゆる景気刺激策についての総理答弁と与党幹部の方々の一連の発言との整合性について、きちっとした見解を出していただきたい。これは文書で出していただきたいというのが第一番であります。  それから第二番目に、政治倫理の立場上、既に現場では出ておりますが、山崎拓議員の証人喚問の日程を明確にしていただきたい。  それから三番目に、経済企画庁のいわゆる景気判断の検討委員会の審議会のメンバーの方々、あるいはまた金融危機管理審査委員会の方々をぜひ参考人としてこの予算委員会にお招きをして、参考人質疑等々をしていただきたい。  そのほか、VIP口座の問題、あるいはまた一連の与党幹部の方々あるいは中には現職大臣の方々の利益誘導発言の問題等をこの際きちっと一度整理していただきたい。その整理の上に、また今後の予算委員会の運営を図っていきたい。  こんなことをきょうじゅうに、それぞれ現場あるいは党対党の国対委員長から申し入れをし、政府の方にも反映をしていきたいと思っております。  そのことについての総理の御見解を賜りたいと思います。
  193. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 とっさのお話でございまして、私自身、今伺いましたけれども、この中には、政府として判断すべき事項と、また理事会においてと申しますか、委員会において御決定をいただき、その上で御指示を受けて行動をすべきもの、さらに党対党の中でお話をすべきものと、幾つかの問題があるように思います。  これは、この予算委員会の場で御提起をいただいたことでありますので、我々は、理事会あるいは委員会の御意思、判断に基づき、また、党とも相談をいたしますが、党対党の問題につきましては、党の方に、この委員会が終わり次第、それぞれが対応をきちんといたすようにということを申します。
  194. 草川昭三

    草川委員 ぜひよろしくお願いをしたいわけであります。  今、私、一つ失念をしておりましたが、現在大蔵委員会の方で、四銀行に対するいわゆる大蔵省の検査報告、示達あるいは回答書の問題が出ておるわけであります。これについても、ぜひ予算委員会に同様なものを出していただき、しかも、その内容というものが我々が納得できるような内容、しかも、そのもののいわゆるコピー、相当な分厚い資料でございますから、全委員の方々がよく読めるような状況にしていただきたいとお願いをしておきたいと思います。  では、中央省庁の再編について、まず総理に二問お伺いをしたいと思います。  中央省庁の改革を、一体どの程度総理が意欲を持ってみえるのか。ある新聞によりますと、今国会の成立はもう困難だ、行革日程も見直すべきときが来たのではないだろうかという早々とした報道も出ております。まず、総理は火だるまになってもやると言い遂げてみえたわけでございますが、大分火は消えたように思うのですが、改めて総理の見解を問いたいと思います。
  195. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に、問題となりました報道、事実関係を申し上げますと、先日の行政改革会議におきまして、ある委員の方から、当然今国会で法律は通過、成立をするという前提の御議論がありましたので、そんな簡単に国会の審議が進む状況ではありませんという現状を申し上げ、むしろその委員の方は大変びっくりされまして、こういう性格の、いわば中央省庁再編のプログラム法という性格から、当然ながらすぐに成立をすると思っていたということで、非常に驚かれましたために、それが外へ出て大きな話になりましたようでございます。  私どもは、何とかしてこれをぜひ成立させていただき、その法律のもとに改めて本部を結成し、個別の法律案作成に少しでも早く入りたい。そのためにも、ぜひこの基本法は今国会において成立をさせていただきたい。改めてその意思を聞いていただきましたので、ぜひお願いを申し上げたいという気持ちを、率直に申し上げます。
  196. 草川昭三

    草川委員 断念せずという決意と受けとめます。  内容についてはいずれ改めてお伺いをするということにしまして、一つだけ、省庁の名称の問題についてお伺いをしたいと思います。  行政改革会議の結論はそのまま基本法に掲げるということであったと思いますが、どうして省庁の名称については、変更もあり得る、こういうことになったのか。この点について、総理として、総理は省庁の名称について今後どのような方針で臨まれるのか、お伺いをしたいと思います。
  197. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 プロセスについて長々説明するつもりはありませんが、この基本法案における新たな省の名称は、行政改革会議の最終報告に従っております。  しかし、法律案の立案過程におきまして、さまざまな御議論がありましたことを踏まえ、附則の第二項に、新たな省の名称について、これを設置する法律案の立案までの間に、その任務をより適切にあらわす名称となるような検討を行うこと、同時に、その結果に基づいて、この基本法で置いております名称と異なる名称とすることを妨げないということをいたしました。これは、まさに議論のプロセスをそのまま反映いたしております。  ですから、新たな省の名称が検討をされる場合、これは新たな省を設置する法律案の立案段階において政府、与党等における検討が行われるものと想定されますし、当然ながら、その前の国会の御審議の際にもさまざまな御意見は示されようかと存じます。その詳細につきましては、今後検討してまいりたいと考えております。
  198. 草川昭三

    草川委員 じゃ、次に移ります。  これはぜひ大蔵大臣総理に聞いていただきたいことであります。榊原財務官のいわゆる証券疑惑について、問題提起をしたいと思います。  一連の金融・証券、大蔵省職員の不祥事に関連をするわけでございますが、近年明らかになりました銀行や証券会社による不祥事は、野村証券による大物総会屋への利益供与事件が発端であります。  今からさかのぼりますと七年前の平成三年、証券会社による損失補てん問題が表面化をし、日本じゅうが大騒ぎになったことは記憶に新しいところです。その際、本院におきましても、証券・金融問題の特別委員会が設置をされまして、野村などの大手証券会社の幹部が証人として喚問され、野村証券と暴力団幹部との関係が取りざたされるなど、国民、投資家の間に、証券会社と証券行政に対して不信感が渦巻いておりました。  委員会の席上、野村証券の幹部は、国民と全国の投資家に向けて反省とおわびの言葉を述べました。当時、私も同委員会の理事として尋問も行いましたが、今回の銀行や証券会社、事もあろうに監督をすべき大蔵省職員をも巻き込んだ事件を見るときに、このときの教訓が何ら生かされていなかった。非常に私は残念に思います。  また、その後発覚をいたしました大蔵省の一部幹部による不祥事では、当局の処分の甘さが指摘をされていますけれども、この際、大蔵省は、国民から信頼されるよう、根本的に姿勢を改めるべきだと強く申し上げたいと思います。  そこで、本日はあえて、個別案件でありますけれども、大蔵省の反省を求める立場から、以下のことをただしたいと思います。  まず、経緯をかいつまんで説明をいたします。  今述べました証券会社による損失補てん問題が表面化したのは、平成三年の一月でした。大蔵省の榊原財務官、当時東海財務局長でありました。都内で会社を経営する社長でありますけれども、証券会社との取引で発生をした損失の処理についての依頼を受けまして、証券会社などに働きかけを約束したと言われます。すると、一転して、これまで社長の言い分を認めていなかった証券会社から、社長側の銀行口座に巨額の金が振り込まれたという内容です。当初、通常の取引だと主張をしておりました証券会社が、突如判断を変えたわけです。  私の調査では、榊原氏と同社長は以前から懇意にしており、たびたび飲食の接待を受けていたようでありますが、接待は大和証券とのトラブル解決後も続いております。  本日は、このあたりの事実関係を榊原財務官御本人にお聞きしようと思って、昨日、本委員会の理事会において、榊原財務官の本委員会出席を了承していただいたわけですが、残念ながら、本日は海外出張のため御出席いただけませんでした。御本人不在の場所で申し上げるのは甚だ不本意でありますが、きのうの午前中はお見えになりまして午後一時から海外へ行かれたわけでありますから、大蔵省はかわって、私の今から申し上げることをよく聞いていただいて、調査をして、本委員会にその答弁をしていただきたいと思います。  調査をお願いしたい内容を今から言います。  私の調査では、平成三年一月二十三日、榊原財務官、当時東海財務局長は、勤務先の東海財務局長室において以前から面識のあった会社社長と面会をし、同社長が大和証券新宿センタービル支店などで行っていたワラント債の取引でこうむりました二億二千万円の損失の補てんについて、大和証券へ働きかけてもらいたい旨の依頼を受けたと言われますが、この点について、大蔵省は調べていただいて私に報告を願いたいと思います。これがまず第一です。  なお、この社長は、事前に電話で今からお伺いをするという用件を伝えた上、名古屋の東海財務局の榊原氏を訪問しております。その際、榊原氏は、問題解決のため、大和証券社長と証券局業務課長へ働きかけをすることを約束したと言われていますが、これは相違あるかないか、調べていただきたいと思います。これが第二番目です。  さらに、依頼を受けた直後、社長の自宅に榊原さんは電話をかけ、大和証券の社長の了解を得た、話はついたので心配要らない、金は返るといった趣旨の話をしたようですけれども、これも調べていただきたいと思います。  その後、月が明け二月になって、社長の銀行口座には、榊原氏の言葉どおり、大和証券から損失分に相当する二億二千万円が返金されました。榊原氏は大和証券から返金があったことをいつ、どのように知ったのか、これもあわせてお調べ願いたい、お答えを願いたいと思います。  この社長は大和証券で株の取引を始めましたが、これはちょうど昭和六十二年五月ごろからワラント債で失敗をした平成二年の七月ごろまでの約三年の間に、十五回ほど榊原氏を飲食接待をした。一回当たり三万円から五万円の車代を渡していたと言われています。これは事実でしょうか。  この社長は、平成三年九月から十月にかけて、捜査当局から、損失補てんに関連をしてたびたび事情聴取を受けています。榊原氏への飲食接待は、事情聴取を受ける直前の平成三年八月二十日と八月二十九日にも行われています。私は、この両日、接待に使われた場所も承知をしています。  そもそも榊原氏は、この社長と面識を持ってから、何回くらい飲食の接待を受けたのでしょうか。また、社長から現金や品物を贈られたことは何回あるのでしょうか。金額、品名を挙げて詳細に調査してください。これは後ほど、時間がおくれておりますけれども大蔵省は職員にやっているわけですから、さかのぼって榊原さんに聞いてもらいたいと思うのですよ。  若干前後しますけれども、このトラブルについては、榊原財務官に相談する以前の平成二年の十一月ごろに、この社長自身が大和証券新宿センタービル支店長と交渉しています。何とかしてくれ、こういうことですね。また、同じ時期にこの社長は、知人の大蔵省OBを通じて紹介を受けた証券局第一課の係長に、名前を申し上げませんけれども、大和証券の一任勘定取引によって損害を受けたのだから、損害を償ってもらいたいとも訴えているのです。しかしながら、十二月になりまして、これも名前は伏せますけれども、大和証券の監査本部の部長から、一任勘定ではないと反論されて終わっちゃうわけですね。  聞くところによれば、大和証券側は、裁判をしてもこれは勝てると判断をしていたようです。ですから、この時点では、大和証券側は金を返す意思がなかったわけです。とすれば、このときの監査本部の部長の反論は当然のことと言えます。  ところが、先ほど申し上げた翌年の平成三年一月になり、当時の榊原東海財務局長に相談をすると、ごく短期間の間に、突如として二億二千万円もの大金が返金された。しかも、先ほど述べたように、この時期を含め、長期間にわたり社長から接待を受けながら行った行為だ、こういうことになりますね。ここに不自然さを感ずるのは当たり前ではないでしょうか。  さらに、返金の理由を調べてみると、約定取り消し扱い、つまり取引そのものがなかったということになっておるわけですよ。大変都合がいい話ですね。これはどう考えても不可解です。榊原氏の大和証券側への働きかけを境に、白と主張していたものが黒という判断に変わるわけですよ。これは大和証券側ですね。この働きかけが大きな役割を果たしたとしか思えません。だからこそ取り調べもあったのでしょうね。  この年の七月二十九日、日本証券業協会は大和証券の損失補てん先リストを公表いたしました。これは、我々がここでいろいろと委員会でも申し上げてリストが公表されましたが、その中にはこの会社社長の名前はないのです。なぜか。今申し上げたように、大和証券側が取引そのものがなかったとしたために、損失補てんには当たらないと認定したものと思われます。  この会社社長との取引に対する大和証券側の一連の対応、当時の経緯については、大和証券から詳細に事情を聞いてもらいたいと思うのですよ。こういうことが現実にあるのかないのか、あるいはあったのかどうか、これは当委員会にきちっと報告をしていただきたいものだと思います。  この社長は榊原氏以外にも多くの大蔵官僚と交際をしておりまして、昭和五十七年ごろから、都内にある自社ビルの六階、後にこれは五階に移転をしておりますけれども、ここにカラオケサロンを開いて、大蔵省OBの名前がついているのですよ、トップに。それで、何々カラオケ歌謡学校と称して、幹部の方々の接待を行っておりました。  私の調査では、大和証券から社長に二億二千万円が返金された平成三年当時、このカラオケサロンにおいて社長から飲食接待を受けていた現職の大蔵官僚は、今回は名前を伏せますけれども、七、八人おみえになります。これは事実でしょうか。調べてください、簡単な話ですから。また、このカラオケサロンを利用して接待を受けていたすべての大蔵官僚の氏名も明らかにしてもらいたいと思うわけです。これは事実経過です。  そこで、総理大蔵大臣にお伺いをしますが、いずれにしましても、この榊原氏の行為には問題があると思うのです。私は、きょう申し上げた中に、現在の大蔵省を巻き込んだ一連の証券・金融不祥事の病巣を見る思いがします。  総理総理はかつて大蔵大臣を経験され、大変苦い思い出もあるわけであります。また、大蔵大臣は今回新たに任命をされましたけれども、大蔵大臣の経歴というものが非常に重要視をされ、国民の方々もその大蔵大臣の経歴を高く評価をして、私はこれからのお仕事を注目すると思っているわけであります。私のこの問題提起についてどうお考えか、お伺いをしたいと思います。
  199. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ただいま御指摘のありましたことにつきまして、事実関係につきまして、私の方から御説明をさせていただきます。  平成三年、既に国会におきましてそのことが問題となっておりますけれども、当時の証券局及び官房が事実をいろいろ調査いたしました。その結果、まず、その当時の記録によりますと、今から約七年ばかり前のことでございますけれども、平成二年十一月に、この顧客が証券局の業務課、先ほどちょっと御指摘がありましたけれども、そこを訪問いたしまして、大和証券との取引に関しまして苦情の申し立てがありました。  苦情の内容は、大和証券の元支店長による無断売買等によって多大の損害を受けたというものでございます。苦情の内容を聞きました担当者から、大和証券の苦情相談窓口に対しまして上記の苦情があったことを伝えたわけでございます。大和証券からは、担当者及び顧客から事情聴取を行った結果、無断売買等の事実が一部にあったと判断し、顧客の損害賠償請求に対し、話し合いの上和解し、解決に至ったという報告が当方に寄せられました。  以上のように、本件は、営業員の不正行為によって顧客が損害を受けたことに対して大和証券がその損害を賠償した証券事故でございまして、損失補てんに該当するものではないということでございます。  それで、榊原財務官という今御指摘がございました。当時、東海財務局長にいろいろな相談があったということについて御指摘がありましたけれども、当時、この顧客、すなわち会社の社長とは確かに榊原財務官は以前からの知り合いでございまして、一時は年一、二回会うということがあったようでございます。しかし、この社長からそのトラブルにつきまして相談を受けたのは事実でございますけれども、それを証券局でありますとかあるいは大和証券というところに伝えるといったような関与は一切行っていないということでございます。  そういうことでございますので、そのほか細かい御指摘がいろいろございました。これはごく最近、ある新聞に報道されたわけでございますけれども、その報道内容と私どもが当時調べた内容とは、大体私どもとしては、そういう事実を把握し、問題がなかったというふうに考えておるわけでございます。  なお、いろいろ細かい、約十項目近くにわたります御指摘がございますけれども、すべて今この場でお答えするだけのことは、私ども、現時点で準備がありませんけれども、いずれにいたしましても、きちんと御説明できるというふうに考えております。
  200. 松永光

    ○松永国務大臣 今武藤官房長から、その当時、大蔵省で事実関係を調べたその内容についての報告がございました。  そのとおりであるかどうか、あるいは委員のおっしゃったようなことがあったのかどうか、これははっきりさせた方がいい、こう思いますので、私自身関心を持ってこの事実関係を、当時の調査をした資料等を見ながら調べてみたいというふうに思います。
  201. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今大蔵大臣から、事実問題について関心を持ってチェックする、議員の御指摘を踏まえて、官房長の説明をいたしましたものとの間、またその中に漏れておりましたこと等を含めて大蔵大臣から御答弁を申し上げました。  そして、いやしくも公務員が国民の不信を招くことのないように、今後とも綱紀の粛正に努めるべきであると存じますし、調査すべきはきちんと調査すべき、私もそう思います。
  202. 草川昭三

    草川委員 今武藤官房長の方から御答弁がありましたが、私、これは納得をいたしません。  平成三年一月二十三日、当該の社長が、当時の榊原東海財務局長に電話をして、どういう電話をしたか、そして東京でどのような土産を買っていって東海財務局へ行ったということまで我々はつかんでいるんですよ。新聞を見て質問しておるわけじゃないんですよ。これは大変長い間の調査結果で、一部が報道にも出ておりますけれども、名前が出ておるわけではありません。  そこで、委員長に改めてこれはお願いをしたいんですが、総理大蔵大臣に、榊原財務官に対する調査項目を私、九項目に分けてきました。これをペーパーでお渡ししますので、とにかくこの九項目について答えてください。  それで、本来ならば、榊原氏がこの目の前にいれば、幾らでもまだ言っていない材料があるんです、私。しかし、本人が、きのうの午後、少なくとも予算委員会の理事会で了承をとっておきながら、午後から海外へ行かれたので、これはもう仕方がない。だから私は、これは委員長にきちっと立ち会っていただいて、回答をもらいたいと思うんです。  なお、私は、榊原氏に損失補てんを依頼した人物が民間人だということであえて氏名は伏せました。だけれども、大蔵省が調査をしたいということで詳しくやられるならば、社長の氏名も申し上げますし、会社名も申し上げますし、カラオケサロンの所在地及び接待を受けた少なくとも二カ所の接待場所について、必要があるならば私は担当の方にお教えいたします。そういう立場から私はこの問題提起をしております。  どうぞ、この回答をぜひいただきたいと思うんですが、委員長、どうでしょう。
  203. 越智通雄

    越智委員長 草川委員からの御要望につきましては、ただいま大蔵大臣がお答えいたしましたように、詳細に調査の上、委員にお答えするようさせていただきたいと思います。
  204. 草川昭三

    草川委員 じゃ、あとわずか時間が残っておるようでありますから。  総理は、この二月五日の本会議で、俗に言う中間報告をやったときの本会議でございますが、金融関連部局に在職をした約五百五十人を対象に、過去五年にさかのぼって、金融機関との関係を内部調査をし、その結果を公表すると答弁をしておみえになります。発言をしておみえになります。また、検査官等を接待した四大銀行についても究明をする。これは今大蔵委員会で問題提起をしている資料要求にも関連するのでございますが、その後の経過をまずお伺いしたいと思います。
  205. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今大蔵省におきまして、金融関連部局に在籍した職員、過去五年間にさかのぼり、金融機関との関係についての調査を行っていると承知しておりますが、詳細は事務方から報告することをお許しいただきたいと思います。
  206. 草川昭三

    草川委員 二月の初めに調査表を配付しているわけでございますけれども、もう一カ月もたっておるわけです。まだ結果が出ないということは、今日の情勢を正しく反映をしていないのではないか、こう私は思うのであります。  そこで、確かに調査要領を見てまいりますと、対象者の範囲は、今申し上げました国際金融局を初め証券取引等監視委員会、理財局国債課等、大変な幅の広いところがありますから、それなりに難しいことはよくわかりますけれども、今度、予算の金融不祥事等々の集中審議が予定をされているようでございますけれども、少なくともこの集中審議の前までに結論をぜひ出していただきたいことを、これは大蔵大臣に要求をしたいと思うんです。どうですか。
  207. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  今までの調査がどの程度進んでいるかということは、草川委員、ある程度御存じのようでありますが、実際、詳細にやってもらわないかぬと私は思っているわけでありますけれども、ただ、委員御存じのとおり、去年の第一勧銀、あの調査がずさんだった、非常な欠点があったわけです。なぜずさんであったかというと、招待をした側、すなわち銀行側の招待をしたときの資料その他、全部捜査当局に行っておるものですから、したがって裏づけ捜査といいますか、それが全くできなかったという欠点があった。  そこで、そういうことを考えますと、なるほど、よく調査したなという結論を出さぬことには、これは委員にも御了解いただけないだろうと思う。委員の方で御了解いただけるようなきちっとした調査をするのには、これは大変恐縮ですけれども、九日というのは無理でございます。実際、まだその関係の資料その他はこちらの方には全くありませんし、それからまた刑事の方の、捜査当局の捜査が続いている段階でございますから、そういった点も御勘案願って、それで実際、内部調査がこの程度までは時間がたつのはいたし方ないなと、その点をぜひひとつ御理解願いたい、こういうふうに思う次第でございます。
  208. 草川昭三

    草川委員 とにかく予算委員会が終わってしまってからでは意味がありませんから、ぜひ予算委員会の審議中にお願いをしたいということが最後の要望です。  それから、総理に決意を聞きたいのですが、この報告について、もし虚偽の報告があった場合にどのように取り扱うか、非常に私は重要だと思うので、最後に、時間が来ましたので、総理のいわゆる決意というものをお伺いして質問を終わりたい、このように思います。
  209. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、日限を切っての御要求に対し、大蔵大臣が慎重を期してなお時間をちょうだいしたいと申し上げたのも、それぞれの報告、問題ありと思われるようなものを突き合わせるだけの努力の時間が欲しいということでありました。  私は、その調査に当たって虚偽の申告をした者が判明をいたしました場合、それは当然ながら、大蔵省として厳しい処分が行われるであろうと思っております。
  210. 草川昭三

    草川委員 以上で終わります。
  211. 越智通雄

    越智委員長 これにて草川君の質疑は終了いたしました。  次に、西川太一郎君。
  212. 西川太一郎

    西川(太)委員 自由党の西川でございます。  早速お尋ねをさせていただきますが、大蔵省金融検査部と銀行局旧検査部のOBと現役の検査官で組織をされます霞桜会、これについて、OB会員は四百七名、そのうち都市銀行に三名、地方銀行に六十三名、証券会社に九名、保険会社に十八名、ノンバンクに七名、信用金庫に十一名、その他関連団体に三十三名天下りしている、これは昨年の四月時点でそうだ、こういうことが報道されておりますけれども、大蔵大臣、これは事実でございましょうか。
  213. 原口恒和

    原口政府委員 お答えいたします。  霞桜会につきましては、金融検査部に在籍をした者の親睦を図ることを目的とした団体でございます。詳細な数を数えたわけではございませんが、今委員のおっしゃったような数のOBが金融機関に行っているということは、大宗としてはそういうことだと思います。
  214. 西川太一郎

    西川(太)委員 特に、この天下り先のうち、金融検査部が検査の対象としておられる金融機関、すなわちあさひ銀行に一名、北拓銀に二名、そのほかの地方銀行に六十三名が天下りしていると報道されておりますが、これも事実でございましょうか。
  215. 原口恒和

    原口政府委員 お答えします。  今手元に詳細な資料を持ち合わせませんが、そういう銀行に一定の者が行っているということは事実だと思います。
  216. 西川太一郎

    西川(太)委員 私は、きょうの質問に関しては全項目きちっとお届けしてございますが、ただいまの御答弁は、何か初めて聞かれるような印象でございますけれども、遺憾に思います。  親睦団体である霞桜会、これについてとやかく言うものではありませんが、OBが天下りしている金融機関には金融検査部が対象としている銀行が含まれていて、各銀行のMOF担と言われる部門の人々が金融検査部等を接待する場合、これらのOBが接着剤の役目を果たしている、こういう指摘もございますけれども、大蔵大臣は、それについて現役は少なくともこの会から抜けなさい、こういう御指示を最近されたということを承知の上でございますが、今私が申し上げたようなことにつきまして、どんなお考えをお持ちでございましょうか。
  217. 松永光

    ○松永国務大臣 抜けさせたかどうかの事実関係を事務方から。
  218. 原口恒和

    原口政府委員 今大臣の、前段、霞桜会から、現役は入るべきではないということでお答えをいたしました。我々も大臣の意を体してやっていきたいと考えております。(発言する者あり)  お答えします。  現実に、正規の会員ではございませんが、そういう疑いのないように処置をするということで決めております。
  219. 松永光

    ○松永国務大臣 今の委員の御質問の趣旨は、金融検査官が検査の対象となる、あるいはなった金融機関に天下りするということはいかがなものかというふうにお聞きしたのですが、それでよろしゅうございますか。その関係でございますが、金融検査官が、離職前五年間にみずから検査を実施した金融機関に承認を得て再就職することは、これまではなされていないというふうに私は報告を受けております。  国家公務員が離職後二年以内に国の機関と密接な関係のある営利企業へ再就職する場合には、公務員の公正な執行を確保するという観点から、国家公務員法第百三条の規定により、人事院の承認を得ることが必要と、こうされておるわけでありまして、その規定は私は守られておるというふうに思うわけでござます。
  220. 西川太一郎

    西川(太)委員 私が申し上げたいのは、国家公務員法で退職後二年間はそうした関係のところに直接天下ってはいけないという規定はありますが、実態としては、関係子会社に籍を移して、そして密接な資本系列、人的系列のある本社をそういう面で助けているという事実が何件かあるというふうに思います。  これについては、大蔵省としては、こういう形でもし切り抜けるということがあれば、これはその法律が形骸化されていて、厳正な検査というものができなくなる。こういうところに、今問題になっているところの大蔵省をめぐる幾つかの問題点があるのじゃないか、こんなふうに思いますが、大臣、いかがでございましょうか。
  221. 松永光

    ○松永国務大臣 今の御質問の趣旨は、先ほど申し上げました国家公務員法百三条の規定を免れるという意味合いで、脱法行為的にそれをやっているというお話ではなかろうかと思うのでございますが、そういう脱法行為的なことは、これは望ましいことではないというふうに思うわけでありまして、そういう事例があるのかどうか、これも事務方によく聞いてみて、そしてこれからそれがなされないようにしなければならぬというふうに思います。
  222. 西川太一郎

    西川(太)委員 要するに、そういう二年間の天下りは直接はしてはいけない、しかし関連の子会社に行く。ここを許しておいては、ただいまのようなことも発生する可能性があるのじゃないか、大臣、こういうふうにお思いになりませんか。
  223. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ただいま御指摘の銀行の関連会社に再就職する場合の問題でございますけれども、私どもといたしましては、個々の事案ごとに再就職先の企業と大蔵省との関係というものを審査いたしまして、国家公務員法に基づいて人事院の承認を要する関係にあるのか、それとも要しないのかということについて、人事院と相談しながら進めているわけでございます。  確かに、銀行と銀行の関連する会社、いわゆる親と子の関係にあるような場合というのは、御指摘のいろいろ問題があるわけでございますけれども、私どもは、銀行からの出資率等によってそういうことが判断されている、これは人事院においてそういう御判断をされているわけでございまして、やはり関係があると認められれば、当然その再就職は認められない、そういう運用になっているものと理解をいたしております。
  224. 西川太一郎

    西川(太)委員 天下った方々の中には、再三申し上げているとおり、金融機関のつくった研究機関ですとか関連会社に一たん就職して、その後本体の金融機関に移った元検査官が、平成元年から去年まで少なくとも九人おられたという事実があります。迂回する形で再就職された九人のうちの五人は検査官室長や上席検査官など金融検査部の幹部経験者で、残りの四人の方も地方財務局の幹部として金融検査に携わっていたという事実があります。  したがいまして、私が申し上げたいのは、厳しくおやりになるというなら、こういう形骸化の抜け道のあるところについてもきちっとなさるべきだ、こう思って伺っているわけでございまして、重ねて大臣の御決意を聞かせていただきたいと思います。
  225. 松永光

    ○松永国務大臣 国家公務員法の規定はきちっと守らなければならぬし、守るようにやっていきたい、こういうふうに思います。
  226. 西川太一郎

    西川(太)委員 次に、金融システム対策についてお伺いをいたします。  総理は、蒸し返して恐縮でございますけれども、住専以来、いわゆる信用組合の破綻以外は公的資金を使わない、こういうふうにおっしゃってきて、または、不良債権の処理は順調に進んでいる、大銀行はつぶさない、こういうふうに昨年の秋まで明言してこられました。しかし、事実は、不良債権処理の見通しは全く外れましたし、北拓銀や山一証券が破綻し、その結果、莫大な公的資金を信用組合以外の金融機関の不良債権処理にも使わざるを得なくなった。わずか秋からこの冬の間に百八十度事態は変わってきた、こういうふうに思います。  そこで、総理にお尋ねをしたいのでございますけれども、今回の金融二法、これによって日本のいわゆる信用危機というものは回避される、こういう御主張を常々政府はなさっているわけであります。  日本の経済は、短期的な今の緊急的な不況と、そして金融システムの安定化、それからもう少し先の、いわゆる新産業を起こして日本を元気づける、こういう三つの大きな荷物をしょっている。そういう中で、景気を回復するために赤字国債を積み増して、そして減税をやれば、三番目の、いわゆる長期的な日本に対する期待が崩れる。こういうことから、なかなか財政再建路線の旗をおろせない、こういう気持ちは、私も野党でありますけれども、理屈の上ではわからないじゃない。しかし、今可及的速やかにやることは、どんな方に伺っても、景気をよくすることだ、こういうふうにおっしゃるわけであります。  それで、景気をよくするためにはいろいろなことをやらなきゃいけないんですが、逆に現象面からいうと、貸し渋りということはこの金融二法が成立した暁には少なくともなくなる、軽くなる、こういうことでございましたけれども、事実はどうもそうじゃない。お気の毒に、親友三人がそろって自殺をされるなんていうことがこの間あったわけであります。こういうことにつきましては、これはもう与野党を問わず、政治にかかわる者として大変つらい思いでそういう報道を聞いたわけでございます。  そこで、総理、まず伺いたいのでございますけれども、今度の金融二法案によって景気はよくなる、今のままで、つまり財政再建の旗を堅持して、総理がおっしゃるスパンの中で処理できるという範囲で景気の回復はある、こういうふうにお考えでございましょうか。極めて素朴な質問でございますが、お願いをしたいと思います。
  227. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変長い問題提起の上で素朴な質問という言われ方をしましたけれども、実は、それぞれの前提で置いてこられましたお話、それぞれ一つ一つに本来ならお答えをしなければならないのかもしれません。  しかし、少なくとも今最後にまとめられました部分、これについて申し上げるべきことは、政府として、経済の停滞から一日も早く抜け出して力強い日本経済を再建しなければならないと考えておりますけれども、そのためには、もちろん他の対策も並行して行われなければなりませんけれども、金融システムがまず安定し、景気の回復に向けていくことが必要であると私どもは思います。  同時に、経済構造改革を初めとする構造改革が不可欠であります。財政構造改革の必要性も何ら変わるものではありませんし、同時に、経済金融情勢の変化に応じた臨機応変の措置を講じていくこと、景気の回復を図る努力として当然のことだと考えております。  そうした中におきまして、政府としては、既に国会で御審議をいただきました特別減税、金融システム安定化策、九年度補正予算、こうしたもの一つ一つに迅速に取り組んでいくこと、実施に移していくことが極めて大事だと考えておりますし、税は今動いております。また、おかげさまで、金融システム安定化策につきましても、審査委員会の方で作業に入っておられます。  九年度補正予算は既に執行に移っていくわけでありまして、これに加えまして、十年度予算と連動いたしております税制改正、すなわち法人課税、土地税制、証券関連税制等々の政策減税、こうしたものが相まって私どもは景気回復に資すると考えております。  同時に、昨年十一月、政府としては緊急経済対策を決定したわけでありますけれども、当然ながら、このフォローアップ、追加的な規制緩和等、経済活性化のための具体策を検討しなければなりません。  いずれにしても、十年度予算の早期成立をお願い申し上げる次第であります。
  228. 西川太一郎

    西川(太)委員 総理がそういう頂点に立ってお考えになっていらっしゃるのに、先ほど来同じ質問で恐縮ですが、党の方の幹部の皆様方が、次から次と補正予算の必要性をにおわせるような御発言が続けてある。  これについては、同じ質問を何度も受けられてもう辟易されていると思いますが、私にもひとつ答えていただきたいと思うんです。そうしたことがなぜ、言ってみれば、総裁であられる総理が、財政再建の旗はおろさない、その限られたスパンの中で、限られた手法の中で景気回復を努力をされていくとおっしゃる一方で、党の政調会長が、党主催の政経パーティーで、郵政大臣をわきに置かれて、いわゆる郵貯や簡易保険のお金を使っても株価のPKOをやるというような御発言があったりしました。  そこで、そういうふうに党幹部が、総理とは若干趣の異なる発言を積極的にされている、そういう発言をあちらでもこちらでもされている、こういうことについて、恐縮ですが総理、どんなふうにお考えか、重ねて私にも御答弁をいただきたいと思います。
  229. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、本委員会が開催されて御審議が始まりまして以来、絶えず同じことを申し上げております。  すなわち、御審議中の平成十年度予算案並びに関連の税法初め予算関連法案を切れ目なしに運用できますように、ぜひ成立をお願い申し上げたい。それ以上のことも、以下のことも申し上げずにまいりました。今も同様に申し上げたいと存じます。
  230. 西川太一郎

    西川(太)委員 総理、それは私は総理に比べればうんと経験も浅い者でありますが、今の御答弁を伺っておりますと、党の総裁として、責任政党の代表として内閣総理大臣に選任されておられ、国の経済運営をしっかりとまとめておられる総理が、党の政調会長や幹部の皆さんがおっしゃることが御自分の考えとは違う、我々はそう思うんですが、そういうことをおっしゃっているときに、それは違うんだよ、この線で、私の考えで一緒に歩いてくれ、こういうふうにおっしゃるのが普通じゃないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  231. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もともと私どもの党は大変自由濶達に物の言える党であります。そして、組織としての党と、党の役職にある個人の発言と、報道を拝見しております限りは、それは判然といたしません。  そして、党のそれぞれの機関において今党が全力を挙げ協力をしてくれておりますのは、平成十年度予算並びに関連する税法初め予算関連法案の一日も早い通過、成立のための努力だと私は信じております。
  232. 西川太一郎

    西川(太)委員 しかし、総理の御答弁を伺っておりましても、私はよくわかりません。  それはなぜかというと、細かい問題なら、それぞれ自由濶達な自由民主党さんだそうでございますから、あちらでこちらでおっしゃって一向に構わないと思いますが、このたびのところは極めて大きな問題です。国の、アジアもアメリカも、日本発の世界恐慌だなんという話まで出たり、この間のIMFの日本に対する勧告はこれはまあ認めるけれども、しかしG7の共同声明はどうだとかこうだとかという、そういう大きな問題に関連していく御発言だと思うんですね、党の幹部の皆さんの御発言は。  それを、毎日毎日、新聞にこう出て、報道が判然としないならば、そういう方をお呼びになって、どういう意図でこういう話をしたのかということを、統一見解をきちっとするぐらい御指導なさるべきだと思います。そうお思いにならないとしたら、それは総理としておかしいんじゃないでしょうか。私はそう思いますけれども、いかがでしょうか。
  233. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 総理としておかしいと言われましたが、総理は内閣の責任者でありまして、党の責任者の立場は総裁の方でありましょう。  そして、私どもの党は、一人一人の発言にすべて統一見解の枠をかけなければならない党ではございません。
  234. 西川太一郎

    西川(太)委員 今の御答弁は大変苦しい御答弁だと私は思います。これはまたいろいろと別の機会に伺わせていただきます。  次に、大蔵大臣に、また通産大臣にお尋ねをいたしますが、先ほどの貸し渋り、これについてまず通産大臣に伺います。  貸し渋りを是正できる、それがキャピタルインジェクションであると。自己資本比率を改善していく、このことのために金融の危機管理勘定というものも、私どもは反対しましたけれども、おつくりになった。その結果、貸し渋りがやんでいるかというと、残念ながらそれは終息しておりません。  むしろ、金融繁忙期の年度末である三月にかけても、まさに今月ですけれども、お金が非常に忙しくなって、ところが信用収縮はどんどん出て、某大手銀行は六兆円もの回収をせよと頭取が命じた、また、極めて業績のいいある銀行でも二兆円回収しろと。そういうことが、今、中小企業、小規模企業に押せ押せになっているということは、もう政権党の皆さんの方がむしろそういうことはよく御存じのとおりです。  そこで、今いわゆる貸し渋り監視の機関というのはないんですよ。政府の機関の中に貸し渋りの監視機関というのはない。とすれば、中小企業庁の、または地方通産局のいわゆる一一〇番制度、これがその後どんなふうになっているか。  実は、一月の下旬にこの質問をお尋ねしましたところ、当時の大蔵大臣はその日におやめになったのでありますけれども、私の質問に対して、拝聴した、よくわかった、おまえの言うとおりだ、しっかりやる、こういう趣旨の答弁をされて、そのままその日にやめられてしまったのでございます。  まあしかし、その辺について、実態はどうなっておりますか、通産大臣に伺います。
  235. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答え申し上げます。  貸し渋りに関する事業者の生の声をくみ上げてきめ細かな政策に反映させるために、当省といたしましては、各通産局、各都道府県、政府系金融機関、こういう各所に合計六百三十五の相談窓口を設置するとともに、ファクスや電子メールでの情報の提供もしていただけるように受け付けをいたしているところであります。  本省と各通産局に、貸し渋り一一〇番、先生の今のお話のように対策をいたしました。貸し渋り一一〇番を初めとする当省の窓口に寄せられましたものは、二月末現在までで総計五百九十二件の相談が寄せられております。そのうち、いわゆる金融システム安定化二法が国会を通過した先月の十六日以降の件数は、三十九件となっております。月ごとに件数を単純に比較をいたしてみますと、何といっても昨年の十二月がピークになって、以降減少傾向にございます。  ただ、政府といたしましては、昨年末以来、総額二十五兆円に及ぶ資金を用意いたしまして各般の施策を実施してきているところでございますので、金融システム安定化二法を含めて、これらの一連の対策の効果を十分に見きわめてまいりたいと思っておりますが、株価の動向あるいはその他の状況などを見まして、年度末にかけて事態は予断を許さないものと私も考えております。  現下の厳しい状況を踏まえまして、去る二月二十日に閣議において貸し渋り対策の拡充を決定いたしたところでございますが、今後とも事態の推移を注意深く見守りながら、年度末に向けた企業の資金調達の円滑化に万全を期してまいりたいと考えております。  ただ、私ども感じますのに、金融二法の実施は効果を上げるものと考えておりますが、それとあわせて、大蔵当局の銀行に対する貸し渋り解消に向けての指導をしっかりやっていただかなければならないと思っております。
  236. 西川太一郎

    西川(太)委員 ある意味では唯一の政府の貸し渋り監視機関でありますから、三十何件だから大丈夫だとかという御判断はもちろん持っておられないと思いますが、ぜひひとつよろしくお願いをしたいと思います。  そこで、この問題もう少しお尋ねをするわけでございますけれども、日本総合研究所がマクロモデルで推計をしたところ、政府系金融機関による貸し渋り対策を織り込んでも、民間金融機関が貸出残高を一〇%圧縮すると経済成長率を一・一%下げ、二〇%圧縮した場合三・三%も押し下げる結果が出た。銀行の貸し渋りの総額は、ここ三年間で八十五兆円強になる。これはもう非常に大変なことで、しかも最近は信用保証協会の保証渋りという言葉まで出た。貸し渋りじゃなくて、保証を渋ってしまう。  そこで、いろんな意味で信用収縮というものは中小企業に厳しい経営環境を強いているわけでございますが、これはひとつ大蔵省としても看過できない問題だと思いますので、大蔵大臣のこれに対する対策と決意を聞かせていただきたいと思います。
  237. 松永光

    ○松永国務大臣 今回の成立をさせていただきました金融安定化緊急措置法、これは我が国の金融システムの安定化を図り内外の信認を得るための措置でありますが、先般、この法律に基づく資本注入のための基準とかいろんなことを審査委員会で審査して決めていただいて、発表になりました。  それは、一つは審査基準でありますが、もう一つは、審査に当たって、申請銀行は経営の健全性確保のための計画を審査委員会に出していただくことになっております。その健全性確保のための計画の中には、銀行の社会性、公共性を踏まえた適切な経営理念、これが明確に示されなければならない、あるいは金融の円滑化、経営基盤の充実が資金供給など金融円滑化に資するものとなること、こういった事項を織り込んだ計画書を出していただくことになっております。そういったものを審査した上で、そこで資本充実のために資本の注入をするかどうかが決まるわけであります。  したがって、資本の注入を受けた銀行というのは、当然のことながら、経営の健全性確保のための計画書を出してしかじかこのとおりやりますということを約束するわけでありますから、その約束がきちっと守られていくように大蔵省は従前以上に強く指導することができまするし、また審査委員会の方も、あるいはまた、審査委員会というのはあれは預金保険機構の中につくられておるわけでありまして、預金保険機構等々、事務方を通じて、この出した健全性確保のための計画が約束どおり実行されているかどうか、それは当然のことながら見ていくものだ、あるいはまた指導していくものだというふうに私は理解しておるわけであります。  その意味で、この金融安定化緊急措置法に基づく資本充実、資本注入ということがなされれば、当該銀行に対する貸し渋りの関係での指導というものはより徹底してなすことができるというふうに考えております。  したがいまして、金融システム安定化のための仕組みでありますけれども、今申したような意味合いで貸し渋り対策にも大いに役立つものだというふうに考えているところでございます。
  238. 西川太一郎

    西川(太)委員 角度を変えて、きょうは参考人として預金保険機構の理事長にお出ましをいただいておりますので、お尋ねをしたいと思いますが、たまたま、ただいまの大蔵大臣の御答弁の中にもございましたけれども、計画を出してもらってそれで判断をする。その際には、当然規矩というか基準というか、そういうものの確立が必要であると常々言われておりました。それを佐々波委員長のもとで、二回の会議で、事態が急を要するということでおつくりになった、こういうことであります。  しかし、そこで一つの見解の相違といいますか考え方の違いが明確になってまいりましたのは、私どもはその法案にも反対をした党であることは理事長もわかっていただきたいのでありますが、今の大臣お話の中にもありましたが、大蔵省が監督をする、またはそちらが監督をする。自己責任の原則というものは、この監督の中に、またはこの基準の中に盛り込まれているのでしょうか。まず、そこから伺いたいと思います。
  239. 松田昇

    松田参考人 金融機関も非常に公共性の高い機関でございますが、原則として私企業であることは変わりありませんので、ビッグバンに向けて、自己責任で金融機関も行動するという原則は当然あると思います。そういう当然の前提を踏まえて、いろいろな資本注入に関する申請が出てまいります。  そこで、先ほど大臣からもお話がございましたけれども、例えば貸し渋り対策につきましては、健全化計画の中にその一項目を織り込んで具体的に書いてくるようになっております。そして、法令によりますと、当審査会はその後の履行の状態について報告を求めることができる、場合によっては公表することができるという規定になってございます。  そういたしますと、ペナルティーとしての罰則はございませんけれども、私どもの審査会が、履行状態を捕捉して、場合によっては公表することによって、当該金融機関の社会的な責任、それは十分問われ得るのではないか。そこに期待をいたしているところでございます。
  240. 西川太一郎

    西川(太)委員 今、理事長の御答弁の中に、罰則規定はないと。これが、住専のとき以来言われているRTC型の、アメリカのいわゆる整理信託公社と違って、RFC型、復興金融公社型である、こういうところであります。  ところで、理事長、佐々波委員長さん初め委員の方々が判断をされるわけですけれども、例えば、もう提出してもこれはだめよという、そういう銀行は対象銀行の中にあるのかというと、日債銀が少なくとも何となくひっかかるのじゃないかと言われていたのが、過去三年の業績によるということでそこが救われてしまった。そうなると、もう出せばみんな通る。つまり、全部の金融機関を救うということでございますか。そうすると、自己責任などというものはどこにもあらわれてこないのじゃないでしょうか。
  241. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  先生御案内のとおりで、審査基準は、法律にいろいろ要件が書いてございまして、それを具体化したものでございます。そしてその中で、お尋ねは、受け皿銀行でなくて一般金融機関が資本注入の申請をしてくる場合、そういう場合のお尋ねだろうと思いますが、法令によりますと五つの要件がございます。  そのうちの第一番目が、経営状態が著しく悪くないことということが要件になっておりまして、したがって経営条件の著しく悪い銀行は対象にならないことが決まっているわけでございます。  そこで、審査基準で、著しく経営が悪いということはどういうことかということでいろいろ検討いたしました結果、先生御指摘の、過去三年間で連続して赤字決算もしくは無配当、この要件を一つ入れてみよう、ほかにも要件あるのでございますけれども、そういうものが一つ入りました。  具体的な銀行名については、まだ申請が出ておりませんので、私の立場からあれこれ言うことはできませんけれども、その要件が一つございます。そのほかに四つの要件がございますので、全部の要件をクリアしないと資本注入の承認の議決ができないことになっております。したがいまして、そういう過程では一つ一つ個別に要件を審査させていただくということでございます。
  242. 西川太一郎

    西川(太)委員 優良な、全く自己資本を必要としないようなところに、ぜひこれを使えと、こういう話があったとか。または、出しても通らないところは、それはムーディーズの格付もさらに落ちるだろうし、いわゆる比較優位論からいえば日本の金融は今非常に低いところにあるということを考えると、全部の金融機関、優良であれ、そうでなかれ、全部救ってしまうんだ、こういうふうにとれますよね。  私はそういうふうに、この仕組みを素直に見れば、みんな通ってしまう。リストラ計画を出して、給料をカットして、ボーナスをカットして、そうすれば、もうこれはだめ、おたくはもうだめですよ、こういう金融機関はまずない。これは国民みんなそう思っていますよ。  それで、そういう金融機関が、今いろいろ物議を醸しているような、場合によっては刑事事件に及ぶようなことをやっている。こういうときに、私は、自己責任の原則というのはもっと強く、明確にしていくべきじゃないか。  今、緊急避難的に日本の経済を、またはクレジットクランチと言うのですか、コンフィデンシャルクライシスと言うのか、余り英語は強くないけれども、そういうものを盛んに言っておりますけれども、将来、少し安定して経済が上向きになったら、そういうものについてはもっと厳しくやっていかなければ国民は納得しないと私は思いますよ。いかがでしょうか。法曹界御出身の理事長として、その点について御見解を賜りたいと思います。
  243. 松田昇

    松田参考人 お答えいたします。  委員指摘ございましたけれども、全部の金融機関をすべて救うという精神でやっているわけではございません。それは、基準の中に一つ、法律にも書いてございますけれども、これは個別銀行を救済するための手だてではない、あくまでも金融システムの安定のために行う手だてだということが法律に明記されておりまして、それに従いまして、審査基準についても詳しく厳しい限定をつけております。  したがいまして、すべての銀行が出されたから、すべてオーケーだ、すべて承認するということにはなりません。五つの要件を全部クリアした銀行のみが承認を与えられる、こういうことになると思います。
  244. 西川太一郎

    西川(太)委員 現在そういうふうにお答えでございますけれども、私の質問は、先に行って、その自己責任の原則というのを国民が求めた場合には、もっと厳しく対応する用意があるというような答弁をいただきたかったのでございますけれども、現時点ではそれは無理ですか。
  245. 松田昇

    松田参考人 私は法曹界の出身でございまして、定められた法令と基準に従うのが性格でございます。現行の法令に従いまして、誠実に処理させていただきたいと思います。
  246. 西川太一郎

    西川(太)委員 次に、先ほども触れましたし、ただいまの問題にも関連がありますが、自見大臣に伺いたいと思いますけれども、山崎政調会長の御発案になるアイデア、前の予算委員会でも同じことをお尋ねいたしました。あのときは外資系の証券会社の方々だけの席でおっしゃったわけでございまして、これはインサイダー取引に当たるんじゃないかということを伺いましたところ、総理初め皆さんから厳しい反撃に遭いましたが、私、重ねて、憶せずまた同じ質問をいたします。  今度はオープンでやられたわけでございますけれども、郵政省としては、事務次官が慎重にというような御発言が報道にございましたけれども、大臣、これはどういうふうに考えておられますか。
  247. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 西川委員にお答えさせていただきます。  山崎拓政調会長の発言があったことは、先生今さっきの質問の中でも、大分県で日曜日に自由民主党大分県連主催の政経文化パーティーがございました。我が党の慣例として、大体党幹部と閣僚と行くようになっておりまして、藤井運輸大臣と玉沢徳一郎組織委員長が来られる予定でございましたが、たまたま大雪で、東京の羽田の飛行場が閉鎖ということでございまして、それで私と山崎政調会長が大分に行かれたわけでございまして、そのときの発言のことだというふうに思っております。  発言があったことは、当然、私は後ろで聞いておりましたから承知をいたしておりましたが、自由民主党としては正式に決定したことではないというふうにお聞きをいたしておりまして、次の日の各紙新聞もいろいろニュアンスの違うような書き方をしておったというふうに私は記憶をいたしております。現在では、そういう段階でございまして、コメントできる状態ではないというふうに私は思っております。  ただし、一般論として申し上げれば、郵貯、簡保資金の運用は、これは確実で有利な方法で行うことにより、郵便貯金事業あるいは簡易生命保険事業の経営を健全ならしめ、預金者あるいは加入者の利益の向上を図ることを目的としたものでございます。また、近年、今さっきいろいろ話題になっております簡易保険事業を通じた指定単運用も、やはり有利確実な運用をやってきたというふうに私は認識を持っております。  以上でございます。
  248. 西川太一郎

    西川(太)委員 その翌日、株が一万七千円に上がった。山崎さんは、三月末に株価が一万八千円にとどまらなかった場合には、三役はここにいないだろうというような発言をされたことも我々野党は承知をしております。  だから、そういう、法律を改正して国民がこの金融不安の中で信頼をしている郵貯の金を使うようなことを軽々におっしゃることは、大政党、政権党の幹部としていかがなものかなと、私はまことに、こんなことでお尋ねするのも学校の先輩だから残念なんですけれども、しかし、いいですか、もしそういうことをたびたび、これ二回目ですよ、そのたびに株が動いている。  こういうことをもし本気でおやりになるのだったら、仮に、郵貯を発動する、その法律の改正の準備があるということが一部の人に漏れた場合には、それはインサイダー取引の要素になるのじゃないですか。こういうことをやはり私はきちっと政権党はやるべきだ、こう思いますが、いかがでございましょうか。これは総理大臣にお尋ねをいたします。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  249. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 内閣の中にある身として、内閣として発言をいたしておりますこと、これは当然それだけの責任を持たなければなりません。  また、政党は政党としての立場でさまざまな行動もされますし、またお考えを述べられる場面もあろうかと存じます。
  250. 西川太一郎

    西川(太)委員 あと十分しか時間がないので、これはまた別の機会に伺います。  次にお尋ねをしたいことは、ただいま総理が党としての、総裁というお立場とはおっしゃらなかったけれども、党としての発言と、それから内閣としての発言、内閣については総理大臣が責任をお持ちになる、こういうことでありました。  そこでお尋ねをいたしますが、この間、長崎県の選挙、その選挙で自民党はお勝ちになったわけですが、知事選挙も補欠選挙もお勝ちになった。そこで防衛庁長官が応援に行かれて……(発言する者あり)地元であるという今不規則発言がありました。それはよくわかりますよ。わかりますけれども、こういう内容をおっしゃっている。よろしいですか。  まず、これはビデオテープをたまたま私撮った。そしてそこに、金子知事誕生の一つのまたプレゼントになるかもしれませんが、はっきりとこの島原—天草架橋を新全総の中に名前を盛るという、そういう腹構えを決めたからこそ、島原半島に乗り込んできょう金子先生の応援に回ることになっているわけでございます、こういうふうに発言をされた。  この新交通軸調査というので、提出されておりますこの平成十年度予算の中に五億六千万円調査費が計上されているわけであります。  それは、久間先生が長崎選出であられることは不肖私もよく承知をしております。ついでに言うと、沖縄のことで非常によく頑張っておられる。私は敬意を表している。ところが、その久間先生が、あんなに大差がついた、何もあそこまでやることないのに、長崎でもう夢中になってこういうことをおっしゃるということ自体、私は、閣僚として、これは利益誘導で、御自分の選挙区じゃないじゃないですか。利益誘導じゃないですか、これは。  こういう選挙のあり方をしちゃいけないんじゃないかと我が党の野田幹事長が本会議総理にお尋ねしたところ、総理は、そういう趣旨を御理解いただく答弁をいただいているのです。  長官、ではどうぞお答えください。
  251. 久間章生

    ○久間国務大臣 委員の聞かれたテープの部分が非常に切られた部分ですから、そういうふうに誤解されたと思います。  あの前のところに……(発言する者あり)聞いてくださいよ。金子知事誕生の一つのプレゼント云々と言う前に、現在の高田知事に対する置き土産かあるいは金子知事誕生への一つのプレゼントになるかもしれませんがと言って、あれは長崎市内で言ったのですよ。そして、そのときに回っておられたのは、ここで、応援に回ることになっているわけでありますと言ったのは、その日、国土庁長官が島原半島を回っておられたので、それの解説をしたわけです。  だから、あの後を受けまして、その後の私のせりふの中では、しかしながらこれから先やらなければならない問題はたくさんあります、高田県政がやりかけた仕事を引き続いて金子県政はやると言っておりますから、皆さんどうかひとつ引き続き金子県政にやらせてくださいということを言ったわけです。  だから、ここの部分だけをとられますと非常に利益誘導みたいなことになりますけれども、利益誘導については十分意を払ったつもりでございます。
  252. 西川太一郎

    西川(太)委員 久間大臣、ただいまいろいろとおっしゃいましたけれども、それはテレビの部分的な問題だよ、こういうふうにおっしゃいました。  しかし、それだったら、その放送局を後でお教えしますから……(久間国務大臣「いえ、見ました。私は見ています」と呼ぶ)じゃ、厳重に抗議しないのですか。利益誘導だと言っているじゃないですか。
  253. 久間章生

    ○久間国務大臣 いや、抗議は別にする必要はありません。  あれを見ても、何を言っているのか、何が主語なのかよくわからないなと思われたと思います。だれが腹を決めたのか、だれが回っているのか、そういうのもはっきりしない文章だったと思います。あれをまともに読まれて、これはおかしいな、文章が非常に途切れていますから、そういうふうな疑問をまずお持ちになったのじゃないかと思いますので、抗議するという以前に、あれで何を言いたかったのかよくわからないのです。
  254. 西川太一郎

    西川(太)委員 私は、いずれにしても、もう時間です、だからこれ以上の発言はルールでいけないことになりますからこれで終わりますが、しかし、ただいまの御発言は、白を黒と言いくるめ、黒を白と言いくるめ、それは少なくとも閣僚としては……(発言する者あり)こっちの方で同じようなことをおっしゃっていますよ、いずれおまえらだってやっているじゃないか、こういうことを言っているのです。  そんなことを、みんながそういう印象を持つようなことは、いやしくも閣僚としてそういうことはおっしゃるべきじゃない、私はそう申し上げて、質問を終わります。
  255. 久間章生

    ○久間国務大臣 決して白を黒とかそういうことではありません。あの冒頭のところで、本日は国土庁長官が、私は長崎に来ていますけれども、島原半島を回ってくれておりますということを私は言ったわけで、その言った部分がもし利益誘導になるというならそれはそうかもしれませんけれども、あそこの部分で利益誘導はしておりません。それは私がはっきりとそういう意識を持ちながらしゃべっておるわけでございますから、間違いございません。
  256. 西川太一郎

    西川(太)委員 私は、ただいまの答弁を納得いきませんが、これで時間でありますから終わります。  どうもありがとうございました。
  257. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、吉井英勝君。
  258. 吉井英勝

    吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  せんだって、一月ほど前ですが、NHKの「クローズアップ現代」で、郊外に大型の小売店舗が出店して、既存の商店街がすっかり店を閉じシャッター通りになっている静岡県掛川市と群馬県伊勢崎市を紹介していました。そこでは、高齢化していく社会で、地域のお年寄りの買い物の場がなくなってきて暮らしが大変になってきていること、そのために、市がお金を出して無料の巡回バスを配車して、郊外の大スーパーまでお年寄りを運ぶようになっていることを生々しい映像で見ることができました。  今、全国どこを歩いておりましても、かつての商店街が多くのところでシャッター通りになり、そして倒産や廃業する商店がふえて地域の住民の皆さんの買い物の場が失われていく、また、地域の防災を担ってきた消防団活動まで支障を来す、こういう事態が広がっております。  最初総理に、このような事態をどのように認識していらっしゃるか、これを伺いたいと思います。
  259. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先般来の本委員会の御論議の中にも、議員が提起をされましたような地名を挙げてのお話ではありませんでしたが、中心市街地の再活性化というとらえ方で、何人かの議員から問題提起がございました。  同様の状況というものは、私自身、通産大臣をいたしておりますときにも体験をいたしておりまして、大型店の出店というものにより町の様子が変わること、また、郊外に新たなものが、人のたまり場が生まれる、反射的にさまざまな現象が旧市街地に起こる。  しかし、その原因は必ずしも一つに帰すことはできず、後継者不足のために元気なうちに店を閉めるという方々もありまして、一つではないけれども、今まさに中心市街地の活性化に通産省も取り組んでおり、また政府としても、重点的に各省の施策をその地域に集中することによって町の顔を取り戻そうと努力をしておることを申し上げます。
  260. 吉井英勝

    吉井委員 今日の非常に深刻な事態というのは、これは天下周知の事実だというふうに思います。  昨年の四月十七日に日本商工会議所が発表した提言では、こんなふうに述べておりました。過去三回にわたる大店法の規制緩和は大型店の新規出店数の大幅増加、店舗面積シェアの大幅増大など目的を既に十分達成しており、各分野で推進されている規制緩和の中でも際立った成果を上げている、郊外立地を含む新規出店等の激しい増加は商店数の激減と空き店舗の増加などをもたらし、予想外の規模とスピードで都市中心部の空洞化を進行させており、弊害面が顕著になっているとしていました。  今や、地域経済、地域社会の崩壊という、日本の将来にもかかわる重大な政治課題となってきていると思うわけです。事態の深刻さについての認識は、各地の商工業者や消費者の皆さん、自治体関係者の皆さんとどこでお話ししてもほとんど同じです。  総理はこういう厳しい認識を本当にお持ちなのか、私は重ねて、もう一遍聞いておきたいと思うのです。
  261. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 総理就任以来、自分の郷里の家にも帰れません。そして、行動は制約されておりますから、最近、なかなか自分の足で見る機会というものは減りました。  しかし、その中におきましても、例えば私の小学校の同級生がその町の変化を伝えてくれる、あるいは中学、高校の同期生たちが自分たちの住んでいる町の状況を伝えてくれる。自分のふるさとを考えてみてもそうです。商店街というものが、ただ単なる本来持つ流通機能ということだけではなくて、ある意味では町の顔と先ほど私は冒頭申し上げました、そういうものを形づくっていた。その顔の役割が空洞化してきている。  どう言葉で申し上げたら私自身自分なりの受けとめをしておることを御理解がいただけるのかわかりませんが、その程度の知識はあるつもりでありますし、同時に、今正確にもう一度申し上げますならば、大型店に係る政策の見直しを政府として行うとともに、関係十一省庁の連携により商店街を含む中心市街地の活性化のための総合的な取り組みを展開することとしておりますというふうに、私はむしろ自分の言葉で語る方が大事だと思って申し上げましたが、念を押されましたので、きちんと改めて申し上げ直します。
  262. 吉井英勝

    吉井委員 総理も深刻な事態として受けとめていらっしゃるということは、私も今のお話で受けとめました。  ところで、総理は、通産大臣として九五年三月の規制緩和推進計画の閣議決定に関与されたわけですし、また、総理大臣として九六年と九七年のこの推進計画の改定をしてこられたわけであります。  そして、その推進計画の検討を進めた結果に基づいて、大店法廃止と、これにかわるものとして大規模小売店舗立地法案など、今これで対処をしようとしておられるわけでありますが、総理が本当に今日の事態を深刻に受けとめているならば、大店法の廃止ではなしに、大型店の無秩序な出店の規制を強化することこそ、今必要なんじゃないですか。
  263. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 果たして、今から逆に大店法の現状凍結あるいは強化という手法で、それでは既にダメージを受けている地域やダメージを受けてしまった商店街の再活性化ができるかといえば、私は、そこは議員と考え方を異にいたします。  そして、むしろ、もっと新たな視点から計画的な地域づくりを考えるべき、そしてその地域づくりとの整合性をどう確保し、また交通事情の変化あるいは環境対応等を含めて考え直すべきときに来ている、私はそのように思いますが、具体的には通産省から御答弁を申し上げます。
  264. 吉井英勝

    吉井委員 先ほどの日商の提言は、さきの情勢認識に続けて、したがって、九七年度の大店法の見直しに当たっては、これ以上の規制緩和を避けるとともに、各界、各地の実情はもとより、多様な形態を持つ各国の規制制度も十分把握し、現行法の基本的スキームの中で弊害の除去に努める必要があるとしておりました。  今大変になっているところをどうするかという議論、これは後ほどやりますが、しかし現在もどんどん進行しているわけです。全国的に商店街が衰退し、地域経済や地域社会の崩壊という事態は本当に今深刻です。だから、昨年十一月十二日には、ほとんどすべての業界団体が参加して全国小売商怒りの総決起大会が開かれ、そして、これ以上の大店法の規制緩和絶対反対という声を上げました。このとき来賓として出席した与野党の国会議員はみんな、その立場で頑張ると決意を表明しているわけです。  総理、これ以上の規制緩和を避けると、やはりこの声に今こたえるべきじゃありませんか。
  265. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 同様の言い方を申し上げるとこれは失礼かもしれませんので、ちょっと違った例で、現実にありましたケースを申し上げたいと存じます。  阪神・淡路大震災の結果として、みずからの全国的な店舗展開を見直しましたある大手スーパーの一店が、地方の都市において閉店をいたしましたところ、むしろ商店街が大騒動になりまして、まずその店舗の閉鎖に何とかブレーキをかけたい、そして、それが結局聞き入れられませんでしたとき、それにかわる出店を求めるという騒ぎがございました。残念ながら、そうしたケースは一カ所ではございません。そして、むしろ現状を凍結することよりも、私は、むしろ新たに施策を講じる方がより望ましいのではないでしょうかということを、もう一度申し上げます。  残念ながら、私のふるさとの町を振り返ってみましても、既存の商店街とある程度、大店舗法による出店、数店は、一定の関係を既に築いてしまいました。これ以上出てこられたらという恐れは、既存の大店舗法対象店にもございます。  しかし、現実には商店街の衰退が始まりました。これにかわる魅力をどう持たせるかというのは、本当に大事です。そう考えましたときに、私は、今通産省の諸君が、また、これを中心として十一省庁が協力して新たな顔づくりをしようとしている、その中に活路を見出していきたい、そのような思いがあることは事実であります。
  266. 吉井英勝

    吉井委員 閉店問題につきましても後ほど触れていきたいと思いますが、大店法廃止、規制緩和ということで今進めているわけですが、規制緩和は、これはそれ自体が世界的な流れというものでもありません。  外務省に少し伺っておきたいと思うのですが、フランスは、通称ロワイエ法、フルネームで言えば、商業及び手工業の指導に関する一九七三年十二月二十七日の法律で、大型店出店の許可にかかわる事前許可制度を定めています。その審査対象とする小売売り場面積を、人口四万人以上の都市では千五百平方メートル以上、人口四万人未満の市町については一千平方メートル以上としておりましたが、九六年にこのロワイエ法を改正して、三百平方メートル以上と厳しくしました。さらに、六千平方メートル以上の大型店の出店に当たっては、全国ベースの委員会で、中小小売業への影響などの経済的側面、そして雇用への影響など社会的側面を調査するように義務づけて、そして罰則の大幅な強化も行ったものであります。  九六年の改正で主にこの三つのことをやったのではないか。この点は外務省の方で確認しておきたいと思います。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  267. 西村六善

    西村(六)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のロワイエ法は、一九九六年七月五日に改正されておるところでございます。  この改正におきましては、事前許可の対象になる売り場面積を、現行の千五百平米、人口四万人以下の市町につきましては千平米でございますけれども、それを三百平方メートルに引き下げることに改正をいたしております。さらに、六千平方メートル以上の大型店の出店に当たりましては、全国ベースの商業施設委員会で公共調査が義務づけられている次第でございます。三番目の改正の主な点といたしまして、罰則の大幅な強化も規定されている点でございます。
  268. 吉井英勝

    吉井委員 私がお聞きしたとおりの事態なんですね。  イタリアでは商業基本法で出店許可制度、ベルギーでは商業施設設置法で、指定地域外では四百平方メートル以上の売り場面積の施設は、その建設、拡張、転用について許可制度をとっている。この二カ国についてもこういう制度で間違いないと思うのですが、これも確認させていただきたいと思います。
  269. 西村六善

    西村(六)政府委員 イタリア及びベルギーにつきましては、先生がおっしゃられますとおりでございます。
  270. 吉井英勝

    吉井委員 次にイギリスなんですが、八〇年代に出店規制がなかったために、ここは、先ほど総理も言っておられた、郊外に大型店がどんどん出店して、中小小売店の減少と都市中心部の空洞化が進みました。その反省から九〇年に都市・田園計画法が制定されて、そして地方政府は、法律に基づく開発プランに従って大型店の郊外出店を規制し始めました。  さらに、九三年には、都市・田園計画法の運用に関する環境運輸省通達で、地方政府は開発計画を策定する際、将来の小売店出店に関し既存の中心街の活力、機能の維持、活性化につながる計画を策定しなければならないと、ここでは出店審査の三つの基準というのを示しております。  その第一は中心街の活力、機能への影響、第二に商店へのアクセス、交通の便、三つ目に車の交通量への影響を挙げているわけです。そしてこの通達で、店舗面積が二千五百平方メートル以上の小売店舗の出店申請に当たって、計画者は、一つに中心街や周辺の村、小規模な店舗の集落への経済的影響、二つ目に店舗へのアクセス、交通の便、三つ目に出店に伴う交通のパターンの変化、四つ目に出店に伴う環境への影響、これらに関する証拠、情報を添えることを求めています。  九六年通達では、さらに対象を小売業だけじゃなくてレジャー施設やオフィス施設にも拡大し、これは今日本で問題になっている郊外型大型商業施設が、スーパーからレストラン、レジャーセンター施設から駐車場を含めた巨大なショッピングセンターになっているのとちょうど相応するわけです。この九六年通達、いわゆるPPG6では、地方政府が策定した開発計画を損ねるような出店許可申請は拒否しなくてはならないとして、郊外への大型店は認めない。  こうしてイギリスでは、九〇年代に入ってから、規制の法律と通達で三回の規制強化を図っている。これがイギリスの実態ではありませんか。これもこの点だけ確認しておきたいと思います。
  271. 西村六善

    西村(六)政府委員 イギリスにおきましては、大店舗の出店規制に関する直接の規制はないわけでございますけれども、都市計画の観点から、今先生がおっしゃられましたように、一九九〇年の都市・田園法及び同法の運用に関しますところの環境運輸省の一九九三年の通達及びその改訂版でありまして規制が強化されましたところの一九九六年の通達によりまして、小売店等の開発許可を通じた規制が存在するということでございます。
  272. 吉井英勝

    吉井委員 そこで今度、ドイツもせっかくですから伺っておきたいのですが、六〇年に連邦建設法、六二年には建設利用令が制定されました。連邦建設法では、歴史ある町並み保存、環境など、町づくりを重視して、建築許可制度をとっています。  これによって、ショッピングセンターや大規模小売業で、連邦国土計画それから都市の発展等の目的の実現に相当の影響を与えるもので、床面積が千二百平方メートル以上のものは原則として都市の中心部または特別の指定地域にのみ立地が許されるということになっていて、そこで出店する以外は原則出店禁止、つまり特別の指定地域以外は建てられないのですよ。日本のように郊外にどんどんつくっていくということはできない。その特別地区というのも、人口九十六万のケルン市で五カ所だけ、人口約六十万人のデュッセルドルフでは一カ所もありません。  これがドイツの実情ではありませんか。これも確認しておきたいと思います。
  273. 西村六善

    西村(六)政府委員 ドイツにおきましては、連邦建設法、建設利用令という法律と政令がございまして、それに基づきまして一般の建築物の建築許可制度が存在しておる次第でございます。  大型店舗につきましては、その立地について、この制度に基づきまして制約が行われておる次第でございまして、原則といたしまして、都市の中心部または特別地域に指定された地域においてのみ立地が許されているという制度になっていると承知しております。
  274. 吉井英勝

    吉井委員 そこで、各国のことを伺ったわけですが、大型店を規制しているドイツと、九〇年代に入って三回の大店法の規制緩和を行った日本では、実は中小小売業や商店街の状況がまるで違います。  通産省の方の日本の統計と外務省からいただいた資料によりますと、従業員十人未満の中小商店の比較をいただいた資料でやりますと、日本では、一九八五年から九四年の九年間に十八万店の中小商店が減少しました。だから、総理もさっきおっしゃったように、全国各地で今深刻な事態が広がっているわけです。  これと逆に、ドイツの旧西独地域で見てみますと、八五年から九三年、こちらは一年間少ない数字しか得られませんでしたが、この八年間で、日本とほぼ同じ間になりますが、本当は一年長い方がいい数字が出ると思うのですが、一万九千店の中小商店がドイツではふえたのです。  大型店出店規制のドイツと野放しの日本では、これほどまでに大きな違いが出ているわけです。出店調整や規制強化のヨーロッパと比べて、日本のやり方というのは余りにも今異常過ぎるのじゃないでしょうか。  そこで、総理が本当に全国各地で見られる事態をこれはもう大変なことだと深刻に受けとめて、商店街や地域経済の活力を取り戻して高齢化社会を支えていけるような、そういう地域社会をつくろうと思うならば、日本でも、大店法の廃止ではなくて、ヨーロッパのように大型店の無秩序な出店に対して規制強化を図る、このことを本当に考えるべきときじゃありませんか。
  275. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは私は、通産大臣並びに関連の閣僚、また政府委員からきちんと御説明をさせたいと思いますけれども、そういう問題がありますからこそ都市計画法の改正を考え、また大規模小売店舗立地法を制定しようと考えているわけです。そして、その中にどのような考え方を盛り込んでいるのか、十分御説明をお聞きいただきたいと思います。
  276. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 吉井委員お話のように、全国の約八五%の商店街に空き店舗ができている、また空き店舗の比率が一割を超えている商店街が全体で三分の一に上っている、これは非常に深刻な状態であるということは基本的には我々了解をいたしておりまして、こういう状態を、いかに商店街をまた回復させるかということで、中心市街地の問題を含めて全力を挙げて取り組んでいるところでございます。  同時に、先ほど総理からもお話がございましたように、今までの大店法というものの性格は、もうほとんど残りの規制の部分がなくなってきておりまして、そういう状態の中で、これからはかえって、小売業を取り巻く環境の中で、大型店にかかわる政策については、経済的規制としての限界の大店法、これは店舗の面積だとか休業日数だとか閉店時間だとか、あるいは開業時間、この四つぐらいきりないのです。ですから、そういうものにかわりまして、むしろ時代の変化に対応した政策の転換を図ることが必要だというふうに考えたわけであります。  そして、生活環境などの保持をしっかりと保つために、大規模小売店舗立地法の制定を加えて、先ほどの先生のお話のように、都市計画法を中心とするような改正を考えてのゾーニングの手法を活用しようということで、現在、大型店と地域社会との調和を図る実効性のある新しい制度を用意することにいたしたわけでありまして、結果といたしまして、今の吉井委員のおっしゃるような傾向のところにしっかりと取り組みを進めていると申し上げていいと思います。
  277. 吉井英勝

    吉井委員 日本商工会議所の昨年十月の追加意見で、今あなたの方は経済的規制の廃止の方ですが、商店街は地域経済の担い手である一方、伝統、文化、防災、防犯等の広範な分野で多様な役割を果たし、大店法の規制緩和による影響が空洞化という地域全体を巻き込んだものになっている。  つまり、事実上なきに等しいんじゃなくて、規制緩和をやってきてこういう結果が出ているんですよ。  単純に経済的規制と社会的規制に分けて議論することは現実的でない、これ以上の規制緩和をやれば、生活環境の保全、従業員の健全な家庭生活の維持や良好な労使慣行の維持、時短の流れに逆行するおそれの面から社会的に大きな影響が出るということを商工会議所が指摘しておりましたが、私は本当に今そういう問題を持っていると思うのです。  そこで、今立地法のことをおっしゃったわけですが、現行大店法にある「中小小売業の事業活動の機会を適正に確保」という法律の目的さえ削除していますね。口では、新しいことに対応だ、深刻だと言いながら、総理、これで中小小売業や商店街の衰退、商店街の影響を食いとめられるのですか。これじゃ、られないじゃないですか。
  278. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 お答えをいたします。  商工会議所の会頭その他関係の商工業者の方々ともよくお話をいたしております。そして、先ほども総理からお話がございましたように、中心市街地の空洞化をもたらしている現状を、何としても町の顔を中心に戻していかなければいけないということから、今中心市街地の活性化法の取り組みをいたしているわけでございまして、今の大店法にかわる大規模小売店舗の立地法とあわせて、片方で中心市街地の活性化法を行って、そして両々相まって地域の活性化が行われていくということになり、商店街の活性化が行われていくということになるわけであります。
  279. 吉井英勝

    吉井委員 現に、郊外へどんどん大型店が進出していっているときなんです。今問題になっているところの活性化は当然の話なんです。しかし、現に進出しているものについて、全面的に規制を廃止してしまって食いとめることはできないというのが今問題になっているところなんですよ。  立地法では、「地域的な需給状況を勘案することなく、」として、周辺の中小商店や商店街への影響、地域において小売店が充足しているかどうかを考慮することを禁止していますよ。これでは、深刻な事態だと総理は認めているのに、大型店の出店から、現にどんどん出店している部分から商店街や地域経済を守ることができないじゃないですか。
  280. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 ただいま御指摘の点でございますが、この大店法の見直しにつきましては、ただいま御提案を申し上げております法案の内容について、産業構造審議会、中小企業政策審議会で御議論をいただきました。その中で、現在の課題といたしまして、大型店の出店というものが都市の構造というものに大きな影響を与えるものであると同時に、生活環境というものにも大きな影響を与える存在である、その点を強くこの審議会においては御指摘を受けたわけでございます。  そういった中で、他方におきまして、現行の大店法がこの課題に的確に対応できる内容になっているかどうかという点の議論と、また一方におきまして、大店法というものは経済的な需給調整を目的とする法律でございます。この点の考え方につきましては、国の内外におきまして厳しい批判が一方において存在をいたしておる。  このような事態を勘案いたしますと、一方において、都市の構造というものをどのように的確なものにするかという意味におきましては、都市計画法を初めといたしますゾーニングの手法というものを我が国においてももっと積極的に活用するという手法が重要であるし、生活環境という意味においては、周辺の地域社会と大型店が調和をして出店をするという措置をとることが重要である。  このような意味におきまして、今回、都市計画法の改正の法案と同時に大規模小売店舗立地法案を提出し、また、中心の市街地を町の顔としてより発展をさせたいという市町村の意向に沿うために、振興策としての中心市街地の再活性化法というものの御提案を申し上げている、こういうことでございます。
  281. 吉井英勝

    吉井委員 問題は、ヨーロッパなどでもやっている規制を緩和してこういう事態が生まれたということが一つ、それが現在も続いているということが一つです。その結果として空洞化している問題をどうするか。これは後ほどちゃんと私も触れますが、その二つの問題があるんですね。幾らそのことを言ったって、これからもどんどん大型店が無秩序に進出していく、これについて一切規制が加えられないじゃないか、ここが問題なんですよ。この法律で本当に指導できるのかという点です。  法案の第八条二項に、商工会議所、商工会が書き加えられたりもしました。しかし、これら業界の声は意見書として出すだけでしょう。都道府県がそれに基づいて意見があるときに書面で意見を述べるだけ。大型店出店者からすると、聞きおくにとどめるだけでよいことになっているんですよ。勧告をするといったって、出店者が応じないで、法律に示す期間を過ぎて出店するときに、罰則で従わせることすらできないんです。企業名の公表だけですよ。  そこで、法律や指針によって、今生活環境を云々されたけれども、駐車場、騒音対策、ごみ処理さえ完備しているものについては、大型店の出店は可能になるんでしょう。そうでしょう。
  282. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 ただいまも御説明申し上げましたとおり、今回の大型店の出店の規制と申しますか規制策の側面におきましては、二つの手段、ゾーニング的な手段と生活環境との調和を図るための手段という二つの手段をセットとして御提案を申し上げておるわけでございます。  その意味におきましては、いわゆる出店の場所に関する立地規制というものは、基本的に都市計画法を初めとするゾーニングによって対応をするというのが適切な方法であろうというふうに考えるわけでございまして、これはまた、先ほど来御質問のございました欧米主要国におきまして皆とられている手法でもあるということで、国際的にもまさに調和をした手法ということが言えるかと考えておるわけでございます。
  283. 吉井英勝

    吉井委員 だから、あなたがおっしゃったのはゾーニングの話だけなんですよ。私が言ったように、今度の法律や指針によって、要するに、生活環境を云々された、駐車場、騒音対策、ごみ処理さえ完備しているものだったら、大型店の出店はどんどん可能なんでしょう。その可能かどうかだけ、まず言ってください。
  284. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 お答えを申し上げます。  ゾーニングと申しますのは、それぞれ……(吉井委員「ゾーニングじゃない、出店可能かどうかを聞いているんだから。全然違う話だ」と呼ぶ)ゾーニングの手法というものが別途用意をされるわけでございますので、その手法によりまして、市町村の判断ではございますけれども、先ほど来ございましたように、欧米の主要国におきましても、大体市町村レベルにおいてゾーニングをして計画をつくっております。出店の可否、どこに配置をすることが適当かというレベルの問題は、それによって対応がされるということでございます。
  285. 吉井英勝

    吉井委員 今あなたはゾーニングに話を逃げているんだけれども、この立地法上は可能でしょうということを僕は聞いているんですよ。立地法上は可能なんでしょうということを聞いているんですよ。
  286. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 御提案を申し上げております大店舗立地法は、基本的に、立地の適否を判断しようとすることを目的とする法律ではございません。その出店は、まさにゾーニングの手法によるべきものとして御提案を申し上げているわけでございます。
  287. 吉井英勝

    吉井委員 要するに、立地法によっては規制をしないということを今答えられたわけですよ。ゾーニングによってこれから考えていくんだと。ゾーニングの場合も、ヨーロッパのような場合とまず違うわけですが、これは後ほど議論していきますから、順番に参ります。  今度のこの立地法によっては、先ほど問題になった大型店の退店問題、これを規制するということはありませんね。
  288. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 退店に対して規制をするということは、提案を申し上げております法律の中には盛り込まれておりません。
  289. 吉井英勝

    吉井委員 ですから、今問題になっているのは、大型店の無秩序な出店の方と、もう一つは、いつの間にか勝手に退店してしまうということなんですよ。それで、その退店については、これで大きな問題になっているということが今全国的に指摘されていて、全国商工会連合会などからも、身勝手な大規模小売店舗の撤退を規制されたいとする要望、意見が出ていたわけですが、結局届け出だけでということで、規制はありません。  そこで、中心市街地が大変だから活性化事業というお話があった。私も、今日、郊外型の巨大化した大型店がどんどん出て中心市街地の空洞化を生み出している中で、中心市街地の活性化に取り組む話は、これは当然のことだと思っているんですよ。  問題は、郊外に無秩序に大型店が進出したり、あるいは小売店舗の床面積をどんどんふやすという、巨大化していくのをそのままにしておいては、今、中心市街地活性化事業そのものがうまくいかないところへ来ているんですよ。それでも採算度外視で事業を進めたらどうなるか。建物の活性化はできても、郊外型大型店から客は戻ってこないということになると、活性化事業の個人負担分だけがずっしりのしかかるということになるんです。  例えば福岡県飯塚市では、かつてジャスコ飯塚店が店舗面積一万四千平方メートルで出店して、中心商店街は打撃を受けました。しかし、何とか共存共栄の道をと努力して、今、中小企業庁監修の「元気のある商店街一〇〇」にも選ばれているぐらいのところですよ。  ところが、同じジャスコが九四年になって、飯塚市の隣の穂波町に敷地面積七万二千平方メートル、店舗面積二万二千平方メートル、駐車台数千八百台のジャスコ穂波店を開いて、これで飯塚の中心商店街は打撃をまた受けました。  その上、穂波店出店のときの約束は、飯塚の店は継続するとちゃんと言っておったわけですよ。ところが、一年後にはジャスコ飯塚店を閉鎖して、またまた商店街は打撃を受けましたよ。ジャスコは、ここをもう解体撤去しました。  そこで、中心商店街の方は、新たな活性化策をということで、キーテナントも誘致して都市開発の事業、つまり中心市街地活性化事業に取り組み出したわけです。そうしたら、そのやさきに、今度はジャスコ穂波店が小売売り場面積を一万九千平方メートルふやす、合計四万一千平方メートルへ二倍に増床するという計画を出してきました。これでキーテナントの方も採算計画は壊れてしまって、再開発の事業の都市計画の決定も延期となりました。  大資本の出店も無秩序なら、撤退も身勝手な判断でどんどん進める、こういうやり方が放置されておったのでは、これは地域経済や地域社会が崩壊に追い込まれるのは当然じゃありませんか。  だから私は、穂波の問題については通産省よく御存じのことだから、これはちょっと具体的に聞いておきたいが、直ちに調査して、こういう身勝手な増床計画をやめさせるべきじゃないかと思うのですよ。通産大臣、どうですか。
  290. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 具体的な数字についてはまた事務方から御説明申し上げますが、今先生のいろいろお話しになられたような問題、そういういろいろな問題が今自由にできる状態であるというところに大きな問題があるわけなんであります。  今度の場合には、ゾーニングを中心として、少なくとも、ここは建てられる場所、建てられない場所、あるいはそれに基づいて市町村や都道府県が調整を行うという、一番地域に密着したところでの判断が行えるようにするというようなことで、すべてに向かって、生活環境その他、今までの規制と違った意味での調整が行えるようになっているわけであります。
  291. 吉井英勝

    吉井委員 通産大臣、当然、現行大店法、御承知のところですから、現行の七条は変更勧告ですね。通産大臣は、その届け出に係る事項が実施されることにより云々、その周辺の中小小売業の事業活動に相当程度の影響を及ぼすおそれがあるかどうかを審査し、おそれがあると認めるときは、審議会の意見を聞いて、店舗面積を削減すべきことを勧告することができるのですよ、今の法律だったら。  現行法の八条では変更命令ができるのです。通産大臣は、勧告を受けた者がその勧告に従わない場合において、店舗面積を削減すべきことを命ずることができる。  だから、数字を調べさせてなんというような話じゃなくて、あなたが今権限を持っているのですよ。  今、この地域では大問題です。私は飯塚の話だけを頭に置いて言っているんじゃないですよ。こういう話は今全国に起こっているのですよ。全国でこれが大問題になっているときに、穂波の問題さえよう解決しない。穂波の皆さんは、本当に深刻な問題になっている。全国もそうですよ。通産大臣の権限がありながら、変更命令を出すこともできない。これじゃ地域の人、救われないじゃないですか。どうなんですか。
  292. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 お答え申します。  御指摘の穂波の案件につきましては、増床計画が昨年の十一月の二十一日に提出をされておりまして、現在、まだいわゆる調整の手続中でございます。  ただいま御指摘のような勧告あるいは命令というような規定が存在することは私どもも十分承知いたしておりますが、現行の大店法のもとにおきましては、いわゆる大規模小売店舗審議会における審議を経て、それの上で大臣としていかに判断をされるか、こういう仕組みでございますので、引き続きこの大店審の手続を見守ることが必要ではないかと考えております。
  293. 吉井英勝

    吉井委員 現行大店法だったら、今おっしゃったように、審議会で議論をして、その意見を受けて、通産大臣は変更させるように勧告もできるし、命令も出せるのですよ。これを廃止するというのでしょう。そういうふうになれば、それは、こういうジャスコ穂波店がどんどんやっているような問題は全国で起こっているのに、しかも、そのことによって中心市街地の活性化事業が支障を受けているのですよ。幾ら市街地活性化事業だといってみたって、それ自体ができないことになるじゃないですか。だから、私は具体の例としてこれを言っているのですよ。  せめてこれぐらいのことについて通産大臣が、変更命令を出さない、通産大臣として何にもしない、今の大店法も一顧だにしない、こんな態度では、地域社会の皆さんはどうなるのですか。  先ほど冒頭に総理の方は、今本当に中小商店がつぶれていく、商店街が寂れていく、地域経済や地域社会が深刻だという事態については、私は大体お聞きして、総理と認識は同じだと思ったのですよ。しかし、現実に進んでいる事態がこれでは、通産大臣、どうなんですか。やはりきちっと、大臣、これは大臣権限ですよ、官僚の問題じゃないんだ。大臣、どうするのですか、これは。
  294. 岩田満泰

    ○岩田政府委員 ただいまの具体の案件につきましては、先ほども申し上げましたとおり、現在、大規模小売店舗審議会の審議のプロセスの途上でございます。その結論をいずれ得ることができるわけでございます。その上で、大臣としてどのような御判断をされるかということというふうに理解をいたします。
  295. 吉井英勝

    吉井委員 大臣、私、そういうことでは、これは本当に地域の人は救われないと思います。この飯塚もよう救わぬような状態で、飯塚の町も救えないような政治で、どうして全国のこういう深刻な事態を救えるのですか。  せっかく中心市街地活性化事業をやろうといったって、その周辺部へ郊外型の巨大型店です。大臣御存じですか、最近のショッピングセンターというのは十万平方メートル、二十万平方メートル規模ですよ。物すごく広い範囲で非常に大きな影響が出て、自治体の方はお年寄りの買い物を保障するために、商店街がなくなって、市が金を出して巡回バスまで出すという事態になっているではないですか。それでもあなたは何にもしないで、腕を組んで済ますのですか。
  296. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 先生のお話には多少、問題がちょっとすりかわっているような感じがするのですが、現在のところでまいりますと、大規模小売店舗審議会において答申が出てまいりまして、その結論に大体従うという形になっているわけなのであります。  今度の場合には、それではなくて、各地方の地域において、市町村あるいは都道府県というようなものが身近な中でそれに対する調整を行おうということですから、さらにその中での地元の考え方や商店街の考え方や、密接なつながりの中での意見の集約ができるということでは、今よりずっと私は地元の皆様方の意向が反映できるものになるというふうに思っております。  大店審における結論が出たものに対して反対をする権限はあるとおっしゃいますけれども、そういうことはいまだかつて一度もないわけであります。そういうことは一つの流れの中で結論が出ているわけでありまして、そういう大店審の考え方に基づいて行政は動いているということでございますから、今度はそれよりもさらに身近な市町村において、あるいは都道府県において調整をしてまとめていくということでありますから、さらに効果は上がると私は思っております。さらにゾーニングがございますしね。
  297. 吉井英勝

    吉井委員 そうしたら、この点だけ最後確認しておきたいのですが、審議会からこういうむちゃなやり方についてこれはやめるべきだという意見が出たときには、ちゃんと大臣はその立場で命令を出されますね。
  298. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 審議会の意見は最大限に尊重するということでございます。
  299. 吉井英勝

    吉井委員 この例が非常にわかりやすいように、現行法ではとにかく大店審があって、そして私たちはその構成をさらにこうすればとか意見はありますよ。しかし、とにもかくにもそれがあって、余りにも地域社会に対してひどいやり方については歯どめをかけるものがあるのです。そして、通産大臣の方には変更命令を出すことのできる権限もあるのです。しかし、今度はそれを廃止してしまうのです。そういうものを全部なくすというのが立地法であって、駐車場と騒音とごみの問題さえクリアすれば、ゾーニングの話は後でやりますけれども、できるという仕組みに変えようとしているのです。  さて、そういう中で今度、今ちょうど都市計画というお話がありました。この都市計画の方は、今市街化区域と市街化調整区域に都市計画区域は分かれますが、その市街化区域において、大型店の建設ができないところ、第一種低層住居専用地域とか工業専用地域、また現行大店法で対象となる店舗面積五百平方メートルを超える大型店の建設については、五百平方メートルを超えて千五百平方メートルまで可能な第二種中高層住居専用地域など十二種類の用途地域に指定されていて、そこで、現行大店法では店舗面積が五百平方メートルを超える大型店が対象ですから、これが出店調整をクリアした場合には、第二種中高層住居専用地域から第一種住居、第二種住居、準住居、近隣商業、商業、準工業、工業地域の八つの用途地域では建設は可能だということですね。  これは、事実関係だけ最初に聞いておきます。
  300. 木下博夫

    ○木下政府委員 お答えいたします。  用途地域は、お話がございましたように、都市づくりのところでは大変重要な手続でございまして、全部で十二ございますが、地域によって、今おっしゃられたように床面積、いろいろ大小ございますが、基本的には全体の七割は何らかの形で規制を受けている、こういう御認識をいただいて結構でございます。
  301. 吉井英勝

    吉井委員 私が今質問しました五百平方メートルを超えるということで、現行法でクリアした大型店、出店調整をクリアした場合、この八つの用途地域で建設可能だなということを聞いているのです。
  302. 木下博夫

    ○木下政府委員 多少細かくなりますから簡単にお答えしましたけれども、五百平米というのは、先生から御質問のございました第一種の中高層住居専用地域という例でございまして、その他には、例えば第二種の場合には千五百、それぞれございます。ただ、問題は、やはりその周囲の環境その他等も我々考慮の中に入ってございますので、ただ面積だけで審査するとか条件をつけているということではございません、念のため。
  303. 吉井英勝

    吉井委員 それはわかった上で聞いております。あなたは今の私の話に、七割のところで規制と。  それで、今の八つの用途地域で、今の例だったらできるんですが、これは建設省からいただいた資料で見ますと、用途地域全体に対しては五八・一%なんですよ。六割弱です。今度の都市計画法改正によっても用途地域の色塗りは変わらない、法律改正とは関係ないわけですから。  改正案では、特別用途地区について、法令で十一種類に限定されている類型を廃止して、自治体独自に設定できるようにしようというものですが、自治体が独自に一定規模以上の大型店を規制できる小規模小売店舗地区をつくって、これをこれまでの用途地域に上乗せしようということなんですよね。それはお話を伺いました。  それを、今の商業地域の全域にこの小規模小売店舗地区をかぶせて大型店を規制するということはできるんですか。
  304. 木下博夫

    ○木下政府委員 若干前提があると思いますけれども、今の我が国の都市のあり方という、先般からお答えしておりますけれども、ある程度都市の整備が進んでまいりましたから、そういう成熟した都市の中でこれから中心市街地をどう考えるか、あるいは商業のあり方はどうあるかということで議論すべきであろうと思います。  先ほど数字が違うというお話がございましたけれども、いわば種々の店舗についての規制がかかっているのが全部で七割ございますから、そこのところでは、面積の差はございましょうが、何らかの形で規制があるということでございます。すべての店舗が可能だというのが残り三割で、例えば第二種の住居地域以下、それぞれの用途の中でございます。  それから、あわせて御質問の、御照会ございましたけれども、特別用途というのは、これは担当の委員会でまた御議論あろうかと思いますが、今回の都市計画法の改正の中で、いわば用途地域に上乗せした形で規制をかけたいということでございます。ただ、考えますると、商業地域を全部そういう小規模小売店舗を中心とするかどうかというのは、これは市長さんなりそれぞれの首長さんのお考えであろうと思いますし、我々は、そういうところで新しい中心市街地対策も、町が全体的にどういう町づくりをするか、加えてその中で商業はどうあるべきか御議論の上で、それぞれの用途なりあるいは特別用途地域をお決めになると期待しております。
  305. 吉井英勝

    吉井委員 今のお話にありましたように、例えば商業地域というたら市街化区域の中の約四%ですが、それ全部に特別用途地域の網をかぶせるということは法の趣旨にも反するわけです。現実問題としてはそれはないわけなんですが、いずれにしても理論上は一〇〇%可能というふうに、無理に拡大して四%可能ということにすることも理論上はできるかもしれないが、問題はそういうことなんです。そして、市街化区域というのは全国土面積の三・八%。  今日、全国で重大な問題になってきているのが郊外型の巨大規模化したショッピングセンターの無秩序な進出なんですが、これは市街化区域の中の工場跡地とか調整区域の中、未線引きの地域に立地しているのですよ。これらは、市街化区域であれば、用途地域の変更か再開発計画に基づいて用途を抜くという手法、調整区域でも、通常は二十ヘクタール以上であるものを政令に基づく自治体の基準で五ヘクタール以上で開発が可能であり、また、未線引きのところでは農地転用の許可などで開発が可能であったわけです。だから、それらは都市計画法との関係はなしにできるわけなんです。  結局、ドイツのように決めた場所しか建ててはならないという法体系と、日本のように、そういう色塗りに上乗せをしてでも、そこはだめだよ、あとは基本的には原則建設可能だよという、この法律上の仕組みの違いのもとでは、結局この大型店の無秩序な出店というのはごくごく部分的にしか規制できないということになってくるものです。  だから多くの皆さんが、この大型店の無秩序な出店を規制する、これをやる上で、今政府が考えているやり方ではうまくいかないんだと。しかも大型店がどんどん出店したときには、中心市街地のせっかくの活性化事業をやろうといったってできないんだと。今その問題に直面しているときなんですよ。  そこで、総理、やはり実効ある制度をということで総理は言ってこられたわけですが、今の大型店の無秩序な出店が、今のやり方では規制できないんですよ。本当にこれを規制しようと思ったら、大店法の廃止じゃなしに、これは廃止してしまったら、先ほどの条文全部消えてしまうのですよ。せっかく組み合わせるといっても、ヨーロッパと法体系の違う中で、特定の地域以外は全部つくっていいよというこの法体系のもとで、うまくいかないのですよ。これはやはり大店法の廃止じゃなしに規制を強化する、この方向こそ、総理、考えるべきじゃありませんか。
  306. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、私、議員のお考えには反するかもしれませんけれども、むしろ、その中心市街地の商店街に、大規模店に対抗し得るだけの魅力をどうやって付与するかの問題だと思うのです。私は、どちらにどういうお店があろうと、それを利用されるのは消費者の皆さんですから、その消費者を引きつけるだけの魅力をその商店街が持ち得るかどうか、あるいはその大規模店が持ち得るかどうか、それが結局は消費者の足をどこに向けるかの決め手だと思います。  私はどこへ住んでいるということは、今は公邸住まいですけれども、それ以前に住んでおりました近くにおいて、大変魅力のある商店街がそばにございました。そこにも大規模店が二店ほどありますが、同時に多くの人々を引きつけております。全く同じぐらいの距離で非常に大きなスーパーもあります。地域の人々がどちらに足を運ぶか。  私は、やはり一つ一つの商店が集まった、その商店街の持つ魅力というものは大規模店にはかえがたいものを持っていると思っておりますし、そうした身近なところを振り返りましても、必ずしも議員の御意見に同調ばかりはできないように思います。
  307. 吉井英勝

    吉井委員 私は、今日の空洞化した町をどうするか、それに取り組むのは当然だと思っているのですよ。しかし、現に郊外にどんどん今も出ていって、それが中心商店街の活性化事業自体を非常に困難にしたり、あるいは新たに商店を衰退させるという事態が起こっているもとで、大店法は廃止じゃなくて規制を強化するべきだというふうに思います。  時間があと二分余りになってまいりましたから、日本共産党はこの国会に大店法改正案を提出しています。  その特徴というのは、第一に、現行大店法の目的である中小小売事業者の事業活動の確保、消費者利益の保護にあわせて、良好な都市環境の形成、地域社会の健全な進展を加えたものです。第二に、フランス、イタリア、ベルギーなどのような、大型店の出店に許可制を導入しようという、これは言ってみれば、グローバルスタンダードを持ち込もうというものです。第三に、営業時間、休業日数、営業の廃止、撤退に規制を加えることです。そして、地方自治体に対する規制を緩和して、より自由に積極的に自治体が地域住民の期待にこたえる役割を果たせるようにしよう、そういう立場で提案をいたしておりますが、法制局とも詰めて、法律として立派にできることになりました。
  308. 越智通雄

    越智委員長 質疑時間が終了いたしておりますので。
  309. 吉井英勝

    吉井委員 はい、終わります。  それで、私たちは、提案をいたしましたが、非常に柔軟に、やはり今の皆さんの問題にどうこたえるかということで、超党派的にぜひ実現をしていきたい。これは各種団体の皆さん、消費者団体の皆さんからも、ぜひ超党派でつくってくれというお声もいただいております。そういう立場で臨みたい。  大店法廃止は撤回されることを重ねて申し上げて、時間が参りましたので、私の質問を終わりたいと思います。
  310. 越智通雄

    越智委員長 これにて吉井君の質疑は終了いたしました。  次回は、明四日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時十一分散会