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1998-02-26 第142回国会 衆議院 予算委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年二月二十六日(木曜日)    午前九時開議  出席委員    委員長 越智 通雄君     理事 伊藤 公介君  理事 石川 要三君     理事 中山 利生君  理事 深谷 隆司君     理事 山本 有二君  理事 五島 正規君     理事 高木 義明君  理事 北側 一雄君     理事 加藤 六月君        相沢 英之君     甘利  明君        石崎  岳君     江藤 隆美君        小澤  潔君     大原 一三君        栗原 博久君     桜井  新君        関谷 勝嗣君     津島 雄二君        東家 嘉幸君     中川 昭一君        中山 正暉君     野中 広務君        葉梨 信行君     萩野 浩基君        増田 敏男君     村田 吉隆君        村山 達雄君     綿貫 民輔君        岩國 哲人君     生方 幸夫君        小沢 鋭仁君     岡田 克也君        海江田万里君     小林  守君        中川 正春君     原口 一博君        松沢 成文君     上田  勇君        太田 昭宏君     草川 昭三君        斉藤 鉄夫君     白保 台一君        西川 知雄君     鈴木 淑夫君        中井  洽君     西村 眞悟君        木島日出夫君     瀬古由起子君        辻  第一君     中路 雅弘君        矢島 恒夫君     上原 康助君        北沢 清功君  出席国務大臣         内閣総理大臣    橋本龍太郎君         法務大臣      下稲葉耕吉君         外務大臣      小渕 恵三君         大蔵大臣      松永  光君         文部大臣      町村 信孝君         厚生大臣      小泉純一郎君         農林水産大臣    島村 宜伸君         通商産業大臣    堀内 光雄君         運輸大臣      藤井 孝男君         郵政大臣      自見庄三郎君         労働大臣      伊吹 文明君         建設大臣      瓦   力君         自治大臣         国家公安委員会         委員長       上杉 光弘君         国務大臣         (内閣官房長官)  村岡 兼造君         国務大臣         (総務庁長官)   小里 貞利君         国務大臣         (北海道開発庁長官)          (沖縄開発庁長官) 鈴木 宗男君         国務大臣         (防衛庁長官)   久間 章生君         国務大臣         (経済企画庁長官) 尾身 幸次君         国務大臣         (科学技術庁長官) 谷垣 禎一君         国務大臣         (環境庁長官)   大木  浩君         国務大臣         (国土庁長官)   亀井 久興君  政府出席委員         内閣審議官     安達 俊雄君         内閣審議官     島中誠二郎君         内閣審議官     坂野 泰治君         内閣法制局長官   大森 政輔君         内閣法制局第一         部長        秋山  収君         人事院総裁     中島 忠能君         人事院事務総局         職員局長      佐藤  信君         国際平和協力本         部事務局長     茂田  宏君         総務庁長官官房         審議官       西村 正紀君         総務庁人事局長   中川 良一君         防衛庁長官官房         長         大越 康弘君         防衛庁防衛局長   佐藤  謙君         防衛庁運用局長   太田 洋次君         防衛庁装備局長   鴇田 勝彦君         防衛施設庁長官   萩  次郎君         経済企画庁調整         局長        塩谷 隆英君         経済企画庁調査         局長        新保 生二君         科学技術庁長官         官房長       沖村 憲樹君         環境庁企画調整         局地球環境部長   浜中 裕徳君         沖縄開発庁総務         局長        玉城 一夫君         沖縄開発庁振興         局長        若林 勝三君         国土計画調整         局長        河出 英治君         国土庁土地局長   生田 長人君         法務省刑事局長   原田 明夫君         外務大臣官房長   浦部 和好君         外務省総合外交         政策局長      加藤 良三君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長      上田 秀明君         外務省アジア局長  阿南 惟茂君         外務省北米局長   高野 紀元君         外務省欧亜局長   西村 六善君         外務省中近東ア         フリカ局長     天江喜七郎君         外務省条約局長   竹内 行夫君         大蔵大臣官房長   武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長     原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官      溝口善兵衛君         大蔵省主計局長   涌井 洋治君         大蔵省主税局長   尾原 栄夫君         大蔵省証券局長   長野 厖士君         大蔵省銀行局長   山口 公生君         大蔵省国際金融         局長        黒田 東彦君         証券取引等監視         委員会事務局長   堀田 隆夫君         国税庁次長     船橋 晴雄君         文部大臣官房長   小野 元之君         文部大臣官房総         務審議官      富岡 賢治君         文部省生涯学習         局長        長谷川正明君         文部省初等中等         教育局長      辻村 哲夫君         厚生大臣官房総         務審議官      田中 泰弘君         厚生省保健医療         局長        小林 秀資君         厚生省医薬安全         局長        中西 明典君         厚生省児童家庭         局長        横田 吉男君         農林水産大臣官         房長        堤  英隆君         農林水産省畜産         局長        中須 勇雄君         農林水産省構造         改善局長      山本  徹君         林野庁長官     高橋  勳君         中小企業庁長官   林  康夫君         運輸省運輸政策         局長        土井 勝二君         運輸省鉄道局長   小幡 政人君         運輸省港湾局長   木本 英明君         郵政大臣官房総         務審議官      濱田 弘二君         郵政省放送行政         局長        品川 萬里君         労働大臣官房長   渡邊  信君         建設大臣官房長   小野 邦久君         建設省建設経済         局長        五十嵐健之君         建設省河川局長   尾田 栄章君         自治大臣官房長   嶋津  昭君         自治大臣官房総         務審議官      香山 充弘君         自治省行政局公         務員部長      芳山 達郎君         自治省行政局選         挙部長       牧之内隆久君  委員外出席者         参考人         (日本銀行総裁)  松下 康雄君         参考人         (日本銀行理事)  本間 忠世君         予算委員会専門員  大西  勉君     ───────────── 委員の異動 二月二十六日  辞任           補欠選任   河村 建夫君       石崎  岳君   岡田 克也君       中川 正春君   山花 貞夫君       小沢 鋭仁君   草川 昭三君       白保 台一君   志位 和夫君       辻  第一君   不破 哲三君       矢島 恒夫君 同日  辞任           補欠選任   石崎  岳君       河村 建夫君   小沢 鋭仁君       山花 貞夫君   中川 正春君       岡田 克也君   白保 台一君       太田 昭宏君   辻  第一君       中路 雅弘君   矢島 恒夫君       瀬古由起子君 同日  辞任           補欠選任   太田 昭宏君       草川 昭三君   瀬古由起子君       不破 哲三君   中路 雅弘君       志位 和夫君     ───────────── 本日の会議に付した案件  平成十年度一般会計予算  平成十年度特別会計予算  平成十年度政府関係機関予算      ─────◇─────
  2. 越智通雄

    越智委員長 これより会議を開きます。  平成十年度一般会計予算平成十年度特別会計予算平成十年度政府関係機関予算、以上三案を一括して議題とし、総括質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。岡田克也君。
  3. 岡田克也

    岡田委員 民友連岡田克也でございます。  きょう、私の方は、事前に配付をさせていただいた要旨に従いまして、まず、日米防衛協力指針関係につきまして議論をさせていただきたいというふうに思います。  日米防衛協力指針につきましては、基本的に私はこれを支持する立場でございます。日米同盟の実を上げるために、日米同盟関係の強化のためにはその実効性を上げていくことが必要である、そのための措置の一環として今回の防衛協力ガイドラインの話もあったし、あるいはそのさらに先にあるのはそれを具体化するための国内立法である、そういうふうに考えているところでございます。個々にはいろいろ議論しなければいけない点はございますが、基本的にはそういう立場で、政府考え方というものをきょうは質問していきたいというふうに思っております。  防衛協力ガイドラインの話は、一つ大きな話として、私は、やはり憲法九条に定める武力行使との関係、あるいはその境界線をどう引くのかという非常に難しい問題がございますが、きょうは、その点は次回に議論させていただくことにいたしまして、そのほかの点で、特にシビリアンコントロールを重視するという立場から、ガイドライン関係の予定される立法フレームワークについて議論していきたいと思っております。  そこで、まず総理にお尋ねしたいと思いますが、シビリアンコントロールという言葉をよく聞くわけでございますが、政府において、あるいは総理のお考えということでも結構でありますが、シビリアンコントロールというものについて、その意義、どういうふうにお考えか、お聞かせをいただきたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 公式にお答えを申し上げるとするなら、平成三年九月三十日に、衆議院のPKO特別委員会に対し、政府シビリアンコントロールについての考え方として申し述べた方針を申し上げることになるのだと思います。  その上で、私の感じを交えてお答えを許していただけますなら、シビリアンコントロールというのは、政治が軍事に対する優先の確保を指すものである、そして、民主主義国家においてぜひともこれを確保しなければならないものである、そのように思います。  そして、現行の我が国の制度におきましては、自衛隊は、文民であります内閣総理大臣防衛庁長官のもとに十分管理をされる。また、法律、予算等につきまして国会の民主的なコントロールのもとに置かれている。また、国防に関する重要事項については、内閣総理大臣を議長とする安全保障会議の議を経ることになる。こうした仕組みをとっていることでシビリアンコントロールの実を上げている、そのように考えます。  そして、こうした考え方が受け入れられ、定着してまいりましたのは、旧大日本帝国憲法下における統帥権問題、これが後に我が国における大きな国論の分裂につながっていった。そして、それがあるときには政争の具に供せられた。そうした反省の中からこうした考え方が取り入れられ、それが定着をしてきたものだ、私はそのように考えております。
  5. 岡田克也

    岡田委員 今総理は、政府によるシビリアンコントロールということを中心にお話をいただいたと思いますが、もちろん政府コントロールということは非常に重要でありますが、同時に国会コントロール一般的には予算や法案の審議を通じてのコントロールということはあるわけでありますし、これは後ほど少し議論したいと思いますけれども、現在の自衛隊法においても、防衛出動あるいは治安出動における国会承認というものがあるわけでございます。  私は、今総理統帥権の問題を例に引いて御説明をいただいたわけでありますけれども、基本的に自衛隊も、一般の軍隊とは違うかもしれませんが、一つ武力集団といいますか、一般市民生活の中では少し異質の集団でありまして、それをいかにしてきちんとコントロールしていくかというのがシビリアンコントロールの根本の問題意識だろう、そういうふうに思っているところでございます。  それでは、少し話題を変えまして、ガイドラインはもちろん日本が直接攻撃にさらされた場合ということも規定しているわけでありますが、今回のガイドラインで非常に特徴的なのは、周辺事態という概念が持ち込まれていることだと思います。この周辺事態については、今まで国会でもいろいろ議論がございました。その議論の結果も踏まえて、現在のところでは、「周辺事態は、日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である。周辺事態概念は、地理的なものではなく、事態の性質に着目したものである。」そういう政府考え方がこのガイドラインの中にも示されているわけでございます。  私は、周辺というのは地理的概念で、どうも、周辺事態ということで、これは地理的な概念ではないというその説明にはやや違和感を覚えるわけでありますが、しかし、一応そういうふうに「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態」だというふうに定義をされておりますので、そういう前提で少しここの議論をさせていただきたいと思います。  まず、「日本の平和と安全に」という、平和とか安全と言うときに、これはどういう概念かという問題がございます。具体的には、安全と言うときに、狭い意味での安全、それからより広い意味、特に経済安全保障という意味での安全という問題があるかと思いますが、この点について、ここで言う安全というものは中身は具体的にどういうことなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  6. 越智通雄

  7. 岡田克也

    岡田委員 外務大臣にお願いします。済みません、委員長、ちょっと待ってください。私は、予算委員会ですので、基本的に、細かいことを聞くつもりはございませんので、政府委員答弁は私が指名したときのみにお願いしたいと思います。
  8. 越智通雄

    越智委員長 御希望としては聞きますが、指名は委員長の権限でございます。指名いたしました。
  9. 高野紀元

    高野政府委員 今の御質問でございますが、平和と安全とは具体的に何か、あるいは経済的安全保障意味合い等でございます。  周辺事態定義に言う「日本の平和と安全に重要な影響を与える場合」ということは、単に経済的のみならず、軍事的な観点を含めて日本の平和と安全に重要な影響を与える場合を言うわけでございます。ある事態がこのような意味周辺事態に該当するか否かは、事態の態様、規模等を総合的に勘案して判断するということになります。  一般的に平和と安全という言葉でございますが、国連憲章安全保障条約にもございますけれども、これは安全保障という言葉に密接にかかわるわけでございます。これは当然のことながら、国の安全と繁栄を維持し、国民の生命財産を守ることを内容とするものだと考えております。
  10. 岡田克也

    岡田委員 ここはガイドラインの基本的なキーワードでありますから、私はぜひ大臣お答えをいただきたかった。こういうキーワードについても政府委員答弁するようでは、予算委員会審議成り立たない、そういうふうに思います。  今の北米局長の御説明で、私は非常に気になる御説明がございました。経済的安全のみならず軍事的な安全も言うと。ということは、経済的安全も入る、そういう意味ですか。大臣、どうですか。
  11. 小渕恵三

    小渕国務大臣 区分をすることは困難だと思います。
  12. 岡田克也

    岡田委員 そうすると、私はよくわからないのですが、従来、政府の御答弁の中で、基本的には、中東で、例えば産油国で何らかの危機が発生したというような場合にはここで言う周辺事態には含まれない、こういう答弁が従来あったように思うわけでありますが、そういった中東産油国危機が発生して我が国に石油が来ない、つまり経済安全保障がそこで害される、こういう場合も、ここで言う、ガイドラインで言う周辺事態に含まれる、こういう解釈でございますか。
  13. 小渕恵三

    小渕国務大臣 一般的に安全保障という問題について御答弁申し上げたわけでございまして、今の安保条約に基づくガイドラインということになりますれば、この安全保障の問題についてはあくまでも安保条約に基づいての安全保障、こういうことでございます。
  14. 岡田克也

    岡田委員 今の大臣の御説明は、そうすると、ガイドラインの中で、周辺事態というのは安全保障条約安保条約目的達成というのが一つかかっていると。そこで、周辺事態に基づく後方支援のところは安保条約目的達成というのがかかっているから、もう一縛りかかっていると。それ以外の部分については、このガイドラインで言う安全というのは非常に広い概念である、こういう解釈でございますか。
  15. 小渕恵三

    小渕国務大臣 一般的に国家安全保障と言われればすべての問題を含んでいる、こう申し上げているわけでありまして、ガイドラインの問題については、これは日米安保条約に基づいての安全保障という立場考えていくべきものだと考えております。
  16. 岡田克也

    岡田委員 私は先ほどから、ここで言う安全の議論というのは、ガイドラインにある周辺事態定義における日本の平和と安全に重大な影響を与える事態だ、その周辺事態定義における安全とは何ですかという議論をしているわけでございますが、そうすると、先ほどの北米局長答弁を取り消されて、これは軍事的なものである、こういうふうに解釈してよろしいでしょうか。
  17. 高野紀元

    高野政府委員 周辺事態との関係における定義でございますが、周辺事態軍事的観点を含め我が国の平和と安全に重要な影響を与える事態であるということでございます。  したがいまして、例えば湾岸、中東等で起きている事態について言えば、日本の平和と安全に重要な影響を与えるかという観点からいえば、そういうことは基本的に生じることは想定し得ないということは前から御答弁申し上げているとおりでございます。
  18. 岡田克也

    岡田委員 今の御説明は、軍事的な安全を含めということは、軍事的安全という観点がなければこの周辺事態に言う安全にはならない、そういう意味ですね。
  19. 高野紀元

    高野政府委員 昨年の国会でもこの御議論をいただいた際に申し上げているところでございますが、経済面だけではなく、総合的に勘案して日本の平和と安全に重大な影響を及ぼしているかどうかということから判断するわけでございます。こういうことでございます。
  20. 岡田克也

    岡田委員 非常に答弁が私にはよくわからないわけでありますが、経済的安全も含め総合的に判断するということは、経済的な安全保障だけであって、軍事的な安全ということにかかわらないような場合には、これはガイドラインの想定する周辺事態に該当するんでしょうか、しないんでしょうか。明確にもう一度お答えいただきたいと思います。
  21. 高野紀元

    高野政府委員 繰り返しで恐縮でございますけれども、周辺事態の認定に当たりましては、単に経済面だけでなく、総合的に勘案して日本の平和と安全に重大な影響を及ぼしているかどうかでございます。それは、軍事的な観点も含めて総合的に判断するということでございます。
  22. 岡田克也

    岡田委員 今の御説明だと、例えば中東我が国が非常に依存度の高い産油国で何らかの軍事的な衝突が起きたと。もちろん、日本経済安全保障には非常に大きな影響を及ぼします。しかし、軍事的な波及というのは日本にはない。こういう場合にもこのガイドライン適用になる、そういうふうに考えていいわけですね。
  23. 高野紀元

    高野政府委員 今の御質問に対しては、そういう事態周辺事態には該当しないということでございます。
  24. 岡田克也

    岡田委員 今の御説明と、それから該当しないという答えの間に、私は論理的な関係を認めることはできません。  ここは、委員長にお願いしたいのですが、政府の方で、この周辺事態定義について、もう一度きちんとした政府としての見解をお示しいただくことを求めたいと思います。  外務大臣、もし何かございましたら。
  25. 小渕恵三

    小渕国務大臣 繰り返して申しわけありませんが、周辺事態というのは、日本の平和と安全に重要な影響を与える場合で、経済的のみならず軍事的な観点を含めて日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす場合を言うわけでございます。
  26. 岡田克也

    岡田委員 いまだに私は理解できないのですが……。  ですから、軍事的な安全に影響がなくても、経済的に非常に重大な影響を及ぼすようなことになれば、これはガイドライン適用がある、こういうことですね。
  27. 小渕恵三

    小渕国務大臣 総合的に勘案して判断をするわけでございます。
  28. 岡田克也

    岡田委員 私は基本的に、軍事という観点が必ず含まれる、それがこの周辺事態定義だというふうに考えておりましたが、今の御説明だと、総合的にという名のもとで、軍事的な観点がなくても、場合によってはこのガイドライン適用はあり得る、こういうお話だと思うのです。総合的に勘案する。軍事というのは必ずなければいけないという御説明はないわけですから。そういうことになりますと、おっしゃるように、これは世界のあらゆるところで、今これだけ相互依存性高い時代ですから、日本の経済的な安全保障が害される事態というのはあらゆるところであり得るわけですね。  例えばアフリカのある国で、日本が非常に依存している希少金属生産国で何か軍事的な問題が起こった、あるいは軍事的な問題でなくてもいいのかもしれません、そういうときにもこのガイドライン適用があって、米軍がそこに何らかの武力的な関与をする場合、日本はこのガイドラインに基づいて後方支援もあり得る、こういう話ですね。
  29. 高野紀元

    高野政府委員 お答え申し上げます。  先ほどの大臣からの御答弁繰り返しになりますが、周辺事態は、単に経済的でなく、軍事的な観点を含め我が国の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態でございます。  これは、周辺事態という時々刻々推移し得る事態のすべての局面において、いろいろな局面が出てくるわけでございますが、周辺事態我が国の平和と安全の関係において判断されることにかんがみますと、我が国に対して軍事的な観点からの影響を与え得る可能性は全くないような事態、これは周辺事態には該当しないものと考えます。
  30. 岡田克也

    岡田委員 今のお話で少し明らかになったと思うんですが、どうも議論がかみ合っていないように思います。  では、もとに戻りまして、しかし、本当に経済的な安全と軍事的な安全というものは明確に区分できるのか。今、全く軍事的に脅威を及ぼさないような、影響を及ぼさないような場合にはこの周辺事態に該当しないというお答えだったわけですけれども、じゃ、軍事的なというのは一体どういうものを言うのか。そこの定義を明確にしないと、結局、全くというかなりきつい縛りをしていますから、周辺事態に当たるかどうか、非常に微妙な判断をしなければいけない場合が多い、こういうふうに思うわけですが、そこのところはいかがでしょうか。
  31. 小渕恵三

    小渕国務大臣 先ほど来御答弁申し上げておりますように、周辺事態、これに対しての、事態の態様、規模、こうしたものがすべて時々刻々変わってきておるわけでございまして、そういった点をその時点において勘案して、事態について対処する、こういうことだろうと思います。
  32. 岡田克也

    岡田委員 いろいろ答弁いただいたんですが、私の今聞いた範囲では、最初の北米局長周辺事態の安全についての御答弁と先ほどの御答弁にも少しニュアンスの違いがあるように思いますし、ここはぜひ文書で政府としての周辺事態についての考え方をお示しいただきたい、そういうふうに思います。委員長、いかがでしょうか。
  33. 越智通雄

    越智委員長 既に答えておりますが。
  34. 岡田克也

    岡田委員 非常に不明確です。不明確であります。
  35. 高野紀元

    高野政府委員 先ほどの御質問にちょっと戻らせていただきますが、軍事的観点を含め日本の平和と安全に重要な影響を及ぼす事態とは何かということでございます。  特定の事態を念頭に置いているわけではないことは従来から周辺事態に関して申し上げておりますが、典型的に申し上げますと、日本周辺地域において日本の平和と安全に重要な影響を与えるような実力の行使を伴う紛争が発生する場合、あるいは紛争の発生が差し迫っている場合、及び紛争後の秩序の維持、回復が求められている場合等も含むと思いますが、そういった場合が考えられると思います。
  36. 岡田克也

    岡田委員 典型的な場合はそうだと思いますが、どこまでその外縁が広がっていくかということが非常に大きな議論であります。  きょうは時間がありませんから、引き続きこの問題、もう少し整理した上で議論したいと思います。  では、一つお伺いしたいのですが、今回のイラク危機、これがもし極東で起きたと仮定した場合に、これは周辺事態に当たりますか。
  37. 高野紀元

    高野政府委員 繰り返して申しわけございませんが、周辺事態は、その事態の性質によって判断されるべき問題でございます。したがいまして、その事態の態様、規模等を総合的に判断して考えざるを得ませんので、今の御質問についてはお答えすることはできないということでございます。
  38. 岡田克也

    岡田委員 今回のイラク危機と同じ規模の、同じ中身のものが極東で起きた場合に、当然、米軍がこのイラク危機と同じように出動しますね。そのときに、これは周辺事態に該当しますかどうですかと具体的に聞いているのです。抽象的に聞いているのじゃないのです。
  39. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、ちょっと今の議員の御質問の仮定は無理があると思います。  というのは、現実に中東で起きております情勢、これは湾岸戦争というものから継続した、もう一つさかのぼりますならば、イラクのクウェートに対する侵略の開始の時点から継続している事態であります。そして、そのプロセスの中における国連の安全保障理事会における決議にイラクが違反をしているかどうかという問題で、これに対して今国際社会がどう動いているかは、議員御承知のとおりの状況であります。  これをちょっと極東に当てはめると。どこの地域に当てはめましても、ちょっと私、これは問題のある仮定だと思いますし、その仮定を仮に一〇〇%受け入れてお答えをするとしても、その時点における周辺事態に相当するかどうかの判断は、日本政府日本政府として行う判断であり、まさにその点では局長が先ほど来、また大臣も申し上げておりますように、その時点における状況を総合的に判断して、日本が自主的に当たるか当たらないかを判断すべきことだと思います。
  40. 岡田克也

    岡田委員 今、国連の問題を言われましたが、このガイドラインの問題というのは、基本的に国連が機能していない場合を想定して、もちろん臨検とか例外はありますが、やっているわけで、私はそれが大きな違いになると思いませんし、この議論はここできょうはやめますが、私は、これだけ議論して、まだ周辺事態定義について政府の中できちんとしたものがないし、あるいは少なくとも国民から見て非常にわかりにくいということは、この議論を通じて明らかになった、そういうふうに思いますから、なお引き続き議論したいというふうに思っております。  さて、ではこの周辺事態、これは日本とアメリカそれぞれが決めることになると思うのですが、日本がこの周辺事態ということを認定する場合に、それはだれがどのような手続を経て周辺事態というものを認定するのでしょうか。
  41. 久間章生

    ○久間国務大臣 周辺事態が発生した場合、どういう形でいろいろなことをやっていくか、実効性あるものにしなければならないということで、今、官房副長官をチーフにしまして、一つの勉強会といいますか、取りまとめを各省庁でやっております。非常に広範多岐にわたるものですから、なかなか議論が煮詰まっていない点がありますけれども、その過程において、そういう手続等についても議論がされながら、いろいろな整備をしていこうと思っております。
  42. 岡田克也

    岡田委員 まだ検討中ということですが、ちょっと観点を変えまして、周辺事態が発生したときにいろいろな日本国民の私権の制限ということが出てくる、こういうふうに思いますが、今までの検討の中で、周辺事態あるいはもう少し限定して周辺事態発生の際の自衛隊後方支援をする場合に、どういう私権の制限というものが想定されるというふうにお考えでしょうか。
  43. 久間章生

    ○久間国務大臣 財産権等、個人的な私権との関係についても十分留意しながら議論をしておるわけでございますけれども、要は、実効性を確保するということが大事でございます。  そういうような場合に罰則等をつけましても、実効性が確保されなければなかなかできないわけでございますので、そういう意味で、罰則等を設けてそれを縛るような、そこまでは考えないで、要するに何らかの協力が得られるような体制がどうすればできるか、それを鋭意検討しているところであります。
  44. 岡田克也

    岡田委員 具体的になかなかお答えいただけないのですが、例えば有事法制を検討したときの政府考え方の中にもこういうのが出てまいります。  航空機用の倉庫を臨時につくるという場合に、これについては建築基準法の規制がかかる。それに対して、有事においては、自衛隊の建築する建築物については建築基準法に関して特例措置が必要であると考えるというのがあるのです。私は、後方支援の場合にだって、米軍機に対して同じようなことがあり得るのではないかというふうに思うわけであります。  あるいは、火薬類の夜間の積みおろしというのは、今政令で制限されているけれども、これについても特例が要るという検討結果があります。これも同じようなことが起こるのではないか。  それから簡易病院をつくる、医療法に定める構造設備なしの病院ということで特例措置が要る、こういう検討結果が出ているわけですが、後方支援の場合にも、例えば有事が発生した地域から送り返されてくる傷ついた病人に対して、そういった簡易病院で対応するということはあり得るんじゃないか。そうすると、同じように構造設備なしの病院ということで特例措置が要るんじゃないか。  やはり法律的な、新たな立法をもってそういうことに対処していくということは、当然必要になると思いますし、あるいは、今の自衛隊法の中で防衛出動の際のいろいろな規定がありますね、物資の収用でありますとか電気通信設備の利用でありますとか。そういうものについても周辺事態に基づく後方支援の場合に同じような問題が出てくるのではないか、こういうふうに思うわけですが、いかがでしょうか。
  45. 久間章生

    ○久間国務大臣 我が国が攻撃にさらされております場合と周辺事態の場合とでは、若干緊急性といいますか、そういう点も違うのではないかと思います。  それと同時に、先ほどから何回も言っておりますように、要は実効性を確保するためにどうすればいいかということでございますから、協力体制を日ごろからつくっておく、そういう形で実効性を確保していくという方法もあるわけでございます。今のところ、罰則まで設けて強制的に従わせるということが少し可能じゃないんじゃないかというようなことから、罰則については、強制力を持たせるような立法については、議論の中でもないわけではございませんけれども、非常に可能性として少ないということでございます。
  46. 岡田克也

    岡田委員 罰則までつけるかどうかは別にして、国が動くときには法律の根拠がなければできないわけでありますから、法律の根拠というものをきちんとしておかないと、いざというときに制度が動かない、こういうことになるのではないかというふうに思うわけであります。そういう意味で、私は、私権の制限まで踏み込んでそういう法的な手当てが必要になる場合が出てくるだろう、そういうふうに予想しているわけでございます。  そこで、次に、周辺事態発生時に自衛隊が対応する場合に、先ほど、周辺事態の認定とか認定手続、だれがどのように手続をするのかということについては検討中であるという、余りお答えをいただかなかったわけでありますが、少なくとも、私は、自衛隊を動かす場合には内閣総理大臣の命令というものがそこに必要になってくるというふうに思います。  今の治安出動あるいは防衛出動、いずれも内閣総理大臣の命令があって初めて自衛隊は動くわけであります。これはシビリアンコントロール一つのコアの部分ですね、核の部分だと思うのです。勝手に動かさない。防衛庁長官がという場合もあるかもしれませんが、私は、基本的に、大規模に動かしていくということであれば内閣総理大臣の命令ということが必要になると思うわけでございますが、そこのところについては基本的にどういうふうにお考えでしょうか。
  47. 久間章生

    ○久間国務大臣 当然、自衛隊の最高指揮官は内閣総理大臣でございますから、内閣総理大臣の命令によって行動するわけでございます。  ただしかし、内閣総理大臣だけの命令かというと、議論の中でいろいろやっておりますけれども、例えば安全保障会議の議を経るとか、あるいは内閣で決定するとか、そういうような段取りを経ながら、内閣として、その長として、内閣の長としての内閣総理大臣の命によって動くというような一つの手順をやはり踏みながらやっていかなければならない問題であろうという意見が大勢を占めております。
  48. 岡田克也

    岡田委員 それは当然のことだと思います。  そこで、内閣総理大臣が一定の手順を踏んで出動命令をする場合の国会の関与ということについてどういうふうにお考えか、お聞きしたいというふうに思っております。  まず、先ほど総理も言及されました、あるいはお手元に配付をさせていただきました、平成三年九月三十日の政府シビリアンコントロールについての考え方というのがございます。これは、PKOの法律を議論する際に、政府としてお考えをおまとめになったものでございます。私は、この政府考え方が今でも維持されているのかどうかということについて、まずお聞きをしなければいけないと思います。  というのは、その後、PKFについては国会の承認を要するという法律が、当時の自民党、そして野党の一部も含めて成立をしているわけであります。ここでは、これはPKFも含んでPKOというものは、そもそもシビリアンコントロール国会による承認というものは要らないのだ、そういうペーパーになっているわけでありますが、結果的には、PKFについては国会承認をするということが国会で決まった。したがって、このペーパーはそのまま通用するものなのか、政府の見解として。あるいは、その後PKFについて国会承認を必要としたということをもって何らかの変更があるのか、その点について、まずお聞きしたいと思います。
  49. 茂田宏

    ○茂田政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、PKO法案の審議の際に、政府シビリアンコントロールに関する政府見解を出しております。その中では、PKO協力のための自衛隊の参加について、それに先立って国会承認を求める必要はないという政府の見解を表明してございます。  しかし、その後、PKO法の審議を経まして、いわゆる参議院修正によって、PKFの本体業務の実施については国会の承認が必要であるというふうに法案が改正になりました。この改正された法案が成立いたしておりますので、政府としては、国会で採択された法律に従うのは当然でございますから、PKFの本体業務に関する参加については国会の承認を求める立場にあるということになっております。  したがいまして、最初の政府見解が、この点では変わってきているということであると思います。事前承認を求めるという制度になってきていると思います。  ただ、その際に、これ以外の点がこの政府見解にありますけれども、このPKFの本体業務について国会承認を求めるという点以外については、政府の見解は変わっていないということでございます。
  50. 岡田克也

    岡田委員 PKF、具体的には、例えば武力紛争停止の監視でありますとか緩衝地帯の巡回でありますとか放棄された武器の収集処分、こういうPKFについても自衛隊がそれに参加することについて国会承認が要る、こういうことになっていることとのバランスから考えても、私は、周辺事態において内閣総理大臣自衛隊の出動を命令する際に国会承認というものは避けて通れないだろう、そういうふうに思うわけですが、この点についていかがお考えでしょうか。
  51. 久間章生

    ○久間国務大臣 PKFにつきましては、あの当時の議論の中で、一応シビリアンコントロールは確保されておるけれどもより慎重を期すということで、立法府の意思としてあのようにされましたので、それに従っているわけでございます。  したがいまして、これから先、どういう法律になるのか、その法律の内容に従って私ども自衛隊は動くわけでございますけれども、ただ、若干違いますのは、周辺事態の場合、邦人救出等急ぐ場合が出てくるかもしれません、あるいはまた難民がたくさん押し寄せる場合があるかもしれません。そういうすべてに対して国会承認をつけなければならないというふうにするかどうか、これはやはり議論のあるところでございまして、やはり国会の御審議等を経ながら、私どもも立法作業においていろいろと検討しながら、これから先詰めていく問題じゃないか、そういうふうに思っております。
  52. 岡田克也

    岡田委員 私も、このガイドラインに定めるいろいろな対応すべてについて国会承認が要るのかどうかということについては、議論の余地はあるというふうに思っております。ただ、先ほどの後方支援米軍の活動に対する日本後方支援自衛隊関係する場合には、これはやはり国会承認が必要なのではないか、少なくともそういうふうに思っております。  この政府の御見解の中で、なぜPKOについては国会承認が要らないのかということを述べたくだりで、基本的に国会承認というのは、「そもそも我が国にとって重大な事態であり、また、国民の権利義務に関係するところが多い」というのを、治安出動防衛出動について国会承認を求めることの理由として挙げております。  この周辺事態の場合について申し上げれば、その定義上、周辺事態というのは、「日本の平和と安全に重要な影響を与える事態である」ということですから、当然、「我が国にとって重大な事態」であるということとほぼ同義であろうというふうに思いますし、国民の権利義務についても、先ほど申し上げましたように、いろいろな意味で国民の権利義務にかかわってくる、こういうふうに思います。  あるいは、そもそもを振り返れば、シビリアンコントロールの本来の趣旨からいえば、自衛隊という一つ武力集団を大きく動かすときに国会の承認というものがあるというのは私は基本的な考え方だと思いますが、この点について総理のお考えをお聞きしたいと思います。
  53. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今、議員の御論議の中で、要するに、非常に微妙なあるいは議論を今後必要とするところがあるということを認めていただいた上で述べられた点には、まず敬意を表したいと思います。  その上で、まさに引用されましたように、防衛出動及び命令による治安出動、こうしたものに対して国会承認の規定があり、また、命令による治安出動に対して事後の国会の承認を得ることが定められている。同時に、そのPKOの場合において、自衛隊の参加について、国民の権利義務に直接関係する面というものではないということから国会の承認までの手続を必要とすることは考えない。ただ、その場合におきましても、その自衛隊の部隊などが海外において行動することでもあって、国会に十分御理解をいただく、また、国会の御意向を実施面に反映させていく必要があるということをこの見解で述べておる点を非常に私は注意深く改めて目を通しておりました。  そして、先ほど防衛庁長官から御答弁を申し上げましたように、新ガイドラインに関する作業はいまだそのプロセスでありまして、結論を得ている状況ではありませんから、確たるものを申し上げる状況にはありませんけれども、今、議員が指摘されましたような問題点をも含め、我々としては検討をしていきたい、そのように思います。
  54. 岡田克也

    岡田委員 これは確認でありますが、ガイドライン関係立法というのは、この国会に提出されますか。
  55. 久間章生

    ○久間国務大臣 鋭意、早急に成案を得べくやっておりますけれども、とにかく各省各庁に広がる問題でもございまして、なかなか作業が進んでいないわけでございます。また、特にアメリカとの関係のいわゆるACSA等につきましては、これまた外国との関係もあるわけでございまして、そういう意味で、これから先も鋭意検討を急ぎ、できるだけ早く作業を終えて出せるようにしたい、努力していきたいと思っております。
  56. 岡田克也

    岡田委員 私は、これは邪推かもしれませんが、いろんな政治状況によって、この法案に対する対応が少しゆがんでいるんじゃないかという気がしております。  いずれにしても、この問題は、シビリアンコントロールという、非常に国にとって重要な問題をはらんだ問題でありますので、例えば個別に、つまみ食い的に現行法の修正をして認めるというようなことではなくて、先ほど防衛庁長官もお認めになった、例えば周辺事態の認定の手続の部分、そして総理大臣の命令の部分、国会の承認の部分、そういうことをきちんと骨組みにする、そういう立法をちゃんと出していただきたい。  目の前のいろんな政治的な配慮から、そういうものを先送りしたり、あるいはあいまいにして、いつの間にかシビリアンコントロールの大きな枠の中から自衛隊の活動というのが抜け落ちてしまう、そういうことにならないように、それを御要望しておきたいと思います。  それから、最初に御質問した周辺事態定義につきましては、私はきょうの説明では納得しておりませんので、引き続き別の機会をとらえて御質問していきたい、そういうふうに思います。  次に移ります。行政改革であります。  省庁再編成法案もまとまったようでありますが、私は、基本的にこの省庁再編成のやり方に対しては批判的であります。これはマスコミその他でもそういう論調が見られるわけでありますが、まずやるべきことは、国がやるべき仕事の減量である。国と地方の関係、国と民間との関係、そういったものをきちんとやった上での省庁再編成ならわかりますけれども、何か省庁再編成が先行して、数合わせに終わっているんじゃないか、そういう疑問はぬぐえないわけであります。  しかし、法案は出てきたわけでありますので、それを前提に少しお話をしたいと思いますが、私は、この中央省庁の改革基本法案について、いつこれを実行するのか、そして実行するときに、一遍にやるのかあるいは段階的にやるのか、そういう基本的な考え方についてお聞きをしたいと思います。
  57. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今議員が基本的に疑念を持つと言われました点は、大変残念であります。  と申しますのは、私が総理という大役を拝命いたしました時点で、既に地方分権については、分権推進委員会が活動を開始しておられました。また行革委員会の方で、官民のかかわりという点からも、規制緩和あるいは撤廃等についての作業は進行いたしておりました。そして地方分権につきましては、分権推進委員会から既に四次の勧告が出されておりまして、この勧告を今国会終了前のできるだけ早い時期に、政府の推進計画として実行に移していこうといたしております。  そして、それだけではなく、分権推進委になお引き続き、国と都道府県、都道府県と市町村、あるいは国から市町村、さまざまな角度での分権の御検討を願うということを私から正式にお願いも申し上げております。また規制緩和、撤廃の作業につきましても、着実に進んでおることは既に御承知をいただいておると存じますが、そうしたものを踏まえた上で、今回の行政改革会議の最終の報告というものはまとめられた。言いかえるなら、国の権限と仕事の減量を進めた上で、二十一世紀というものを目指してこの議論はなされてまいりました。  そして、そういう中で、私は本当に二〇〇一年一月一日からスタートをさせたいということを、移行を開始することを開始したいということを申し上げてまいりましたが、当然のことながら、その再編成のプロセスにおきまして時間差は生ずると私は思います。そして、それはしかし、いたずらに長引かせるということではない。当然ながら引っ越しの時間だけだってかかるわけですから、二〇〇一年一月には移行を開始したい、そのように考えております。
  58. 岡田克也

    岡田委員 この法案では、第五条で、「遅くともこの法律の施行後五年以内に、できれば平成十三年一月一日を目標として、中央省庁等改革による新たな体制への移行を開始するものとする。」こう書いてありますね。今総理は、時間差とおっしゃいました。その時間差が問題なんですね。  例えばこの中で、公共事業について四十六条で書いてありますね。公共事業については、これは行政改革会議総理がトップをみずから務められた行政改革会議の最終報告と同じ表現でありますが、基本的に、「国が直接行うものは、全国的な政策及び計画の企画立案並びに全国的な見地から必要とされる基礎的又は広域的事業の実施に限定し、その他の事業については、地方公共団体にゆだねていくことを基本とする」、それからもう一つは、途中を省きますが、「できる限り、個別の補助金等に代えて、適切な目的を付した統合的な補助金等を交付し、地方公共団体に裁量的に施行させる」、こういう方針が具体的に示されているわけであります。  ここに書いた、公共事業についての、例外は国に残るけれども基本的には地方だ、そしてそれは個別の補助金じゃなくて統合的な補助金でやるのだ、こういう基本的な考え方に基づいて、作業をいつやられるのですか。省庁再編成が終わった後なのですか、それとも今からすぐやるのですかということをお聞きしているわけです。
  59. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 関係閣僚からの補足をお許しいただきたいと思いますけれども、公共事業に関する実施の権限は、これは極力、地方支分部局に移してまいります。そして、地方において主体的に事業が進められるようにしていく所存でありますけれども、細部にわたりましては、関係大臣から御答弁することをお許しいただきます。
  60. 小里貞利

    ○小里国務大臣 要旨はただいま総理の方からお話し申し上げたとおりでございますが、特に公共事業に限定してのお話でございますが、これが公共事業を、ただいまお話がございましたように、中央から地方へできるだけ合理的に再配分していきますよ、むしろおろしていきますよという方向でございます。  そのためには、大変規模も大きいし、かつまた事務事業量も複雑多岐にわたっておりますこと、御承知のとおりでございます。したがいまして、先ほど先生の方からお話がございましたように、理想としてと申し上げましょうが、何が何でも二〇〇一年には総体的にわたって実現をしたいという悲願を私どもは持っております。  したがいまして、先ほど総理の方からお話がございましたように、それまでの間に、地方の税源あるいは財源等もきちんと再改組が行われます、地方財源はかくあるべしと。それは、地方分権は原則としてこういう展開を見なければならぬという具体的な絵がかかれてまいりますから。したがいまして、二〇〇一年の実現の時点におきましては、私どもは、行政事務もあるいは財政という視点から見ましても、これが相整って完全遂行できることを目標にいたしておるということでございます。
  61. 岡田克也

    岡田委員 今の御答弁は、二〇〇一年の省庁再編成のときには公共事業の統合補助金化というものは終了している、こういうことでよろしいですね。
  62. 小里貞利

    ○小里国務大臣 その案件によるかと思うのでございますが、少なくともその計画というものは整っていなければならない。しかも、先生がきょうお話しの含意にもあるようでございますが、趣旨にもあるようでございますが、二〇〇一年を待つまでもなく、可能なものは随時実践体制に入っていくということが必要であろう、かように思っております。
  63. 岡田克也

    岡田委員 はっきりしたお答えをいただけないわけでありますが、省庁再編成をやってから、またこういうことをやっていたのでは、それからまた五年、十年、二十年と、いつの間にか消えてしまうというのが私は予想される姿ではないかと思います。やはり、これをきちんとやって、やった上でスリム化した省庁を一つに再編成していくということが重要なのでありまして、ぜひ省庁再編成に先立ってこの統合補助金化をやっていただきたい、こういうふうに思います。  これは公共事業の統合補助金化だけではなくて、独立法人化、アウトソーシングですけれども、これについても同じことが言えると私は思います。
  64. 小里貞利

    ○小里国務大臣 大変基礎的に大事なことを御指摘いただいたと思うのです。  例えば、ただいまお話がございました官邸機能の強化、あるいは独立行政法人化の具体的な作業、あるいはただいまお話がございました地方分権に伴うさまざまの準備、あるいは実行できるものは二〇〇一年までにできるだけそれを実行に移した方が、二〇〇一年という目標は可能性がぐんと出てくるわけでございますから、そのような悲願のもとに作業をさせていただきたい。  以上でございます。
  65. 岡田克也

    岡田委員 ぜひ今の御発言を実行していただきたいというふうに申し上げておきたいと思います。  そこで、私は、その中でも内閣機能の強化、これは今からでも実行していいのではないか、こういうふうに思うのです。  具体的に、内閣機能の強化として内閣総理大臣の発議権、これは法律を変えれば済む話であります。別にほかに何か関係するわけではございません。あるいは、内閣官房の組織のあり方、こういうことについてはこの法律に書いてありますけれども、私は、その気になれば省庁再編成と切り離して今からでもできる話だし、それから、これから、これだけ日本の置かれた状況が厳しい中で、やはり政治のリーダーシップ、とりわけ内閣総理大臣のリーダーシップというものが求められるときに、全部一緒になって省庁再編成とセットで二〇〇一年などということを言っていないで、私は、この国会にでも法案提出をして、この点についてだけでも先行してやったらどうか、こういうふうに思いますが、いかがでしょうか、総理
  66. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 既に今までにも、例えば官邸機能の強化の一環として危機管理担当官の問題等、国会の御協力を得て、動かせるであろうことを期待いたしております。政府としては、行政改革会議の最終報告を忠実に、増減なくこれを今回の基本法の中にまとめ上げ、国会に御提出を申し上げました。そして、その上、国会の御審議の中において、今議員の御指摘のようなお考え国会が意見を集約された場合、政府としては、それを受けとめ、実行に移していくことは当然のことであろうと思います。  ただ、その上で、今回の基本法の中に、お目通しをいただいて御質問をいただいておりますけれども、従来であれば各省庁の権限とだれも疑わなかったものが、内閣あるいは内閣府の権限、役割として規定をされておりますものがございます。これは、各省の設置法等をその時点で改正するという作業も並行するわけでありまして、私は、内閣府だけを本当につまみ出して機能強化ができればという思いは、時に自分自身、自問自答する部分を持っておりますけれども、基本法の形態として既に我々は国会に御審議をゆだねましたので、今後の御論議の中からより適切な方向を指示していただくことを期待いたします。
  67. 岡田克也

    岡田委員 私も、確かに内閣府ということになると、他省庁の設置法との関係がかなり出てくるだろうと思いますが、内閣官房ということに限れば、かなり独立しているのではないかというふうに思います。そういう意味で、その改革というものを先行させたらどうかというふうに御提言申し上げたところでございます。  いずれにいたしましても、先ほど小里長官の方からも、統合補助金化あるいは独立行政法人化については、省庁再編成を待ってやるのではなくて、その前にもやっていくのだというお話がございました。できれば、政府の方で二〇〇一年の省庁再編成までの手順といいますかスケジュールを、何年には統合補助金化をやります、何年には独立法人化をやります、そういうことをお示しいただければ単なる数合わせという批判は消えていくのではないか、私はそういうふうに思いますので、ぜひそういったことも作業をしていただければありがたいというふうに思います。  何かございますか。
  68. 小里貞利

    ○小里国務大臣 これは国会がお許しをいただきましたことを前提にしての話でございますが、すなわち、中央省庁の改革基本法が国会の意思として決定をいただきましたときには、間髪入れず、直ちに中央省庁改革推進本部を設置いたします。本部長総理大臣でございます。直ちに、先ほどからお話がございましたようなもろもろの絞り込みを、行政機能を中心にいたしまして行ってまいります。  そして、先ほど結びとしてお話がございましたように、可能な限り二〇〇一年の時点を、しかも中身におきましても、最も改革という基本を前提にした理想とする姿を具体的に準備をして、そして実行に当たらしめなければならぬ、さように思っております。
  69. 岡田克也

    岡田委員 それから、定員の問題について触れたいと思うのですが、定員につきましては十年間で一〇%減らすということが書いてございます。  しかし、一〇%減らすというのは、これは純減ベースで減らす話なのか、それとも、定員として一〇%減らしますが増員については別に考えますということなのか、いずれなんでしょうか。
  70. 小里貞利

    ○小里国務大臣 これはもう先生御承知のとおりでございますが、まず、今行っておりまする純減という答えを求める方式は、まず定員削減を行います。定員削減数値を求めます。そしてそれに対しまして新規増員を、いわゆる新規増員する分を極力抑える、こういう二つの原資をもちまして、プラス・マイナス・イコール・ゼロでなくて純減。  その純減の結果を今お話があったと思うのでございますが、先生が言わんとしておいでになるところは、プラス・マイナス・イコール純減のところをきちんと固定目標化してかかった方がいいのではないかというお話だろうと思うのでございます。  私はお答え申し上げますが、結果として、決して否定はいたしません。同じ目的、同じ趣旨を持った話でございますから、純減数というものを年次計画を立ててやることも結構でございましょうけれども、ただ、今日、御承知のとおり、行政は日進月歩と申し上げましょうか日々変化をいたしております。したがいまして、結果の方だけを固定しておきますと、前段で申し上げましたいわゆる定員削減というものもなかなか決定をいたしにくい事情になるわけです。  あるいはまた新規増員も、ぐんと抑えられる省庁もあります。例えば、今までの昭和四十三年以降を見てみますと、顕著な数字を示していただいた、例えば農林水産省、建設省のごときは数万人も減らしてきております。逆に外務省なりあるいは科学技術関係なり等々は、特に文部省でございますが、文部省などは相当な増員を進めてまいっておりますという、大変な凹凸がございますので、その辺の状況変化を明らかに見通すことがなかなか困難な事情でございまして、従来、政府は、先ほど申し上げましたような純減計画を実践してきておるという状況でございます。  否定はいたしませんけれども、そういう複雑な事情があることを御理解いただきたいと思います。
  71. 岡田克也

    岡田委員 複雑な事情があることはよく承知をしておりますが、今までの政府の定員削減、これは前にも私、触れましたが、第一次定員削減計画が昭和四十三年に始まりまして、現在第九次であります。平成十年、今途中でありますけれども、約三十年間やってまいりました。その間、三十万人削減をした。昭和四十三年時点での公務員の定員の数は九十万人ぐらいだったと思いますから、三分の一減らしたというすごい話であります。ところが、その一方で二十五万人ふやした。だから結局、差し引きすると五万人しか減っていないという、一般の常識から見ると極めてわかりにくいというか、国民から見たらだまされたというふうに感じかねないような結果になっているわけであります。  ここでも、十年で一〇%という数字を見れば、なかなかやるんだなというふうな印象を与えるかもしれませんが、場合によっては、同じ数だけふえる、あるいはさらにふえるということもあるかもしれませんので、私は、せっかく法律へ書かれるのであれば純減ベースで書いていただきたい、そういうふうに御要望申し上げておきたいと思います。  最後に、一言総理に申し上げたいと思いますが、財政改革の面で、総理は、法律もつくって一生懸命推進してこられたということでありますが、私は、国民は本当に、総理が本当の意味での財政構造改革をやるのかどうかということは見ていると思うのです。  私は、本当の意味での財政構造改革は引き続ききちんとやっていくべきだという立場であります。これは時間がかかります、構造を変えるわけですから。ですから、景気の面で私どもは六兆円の減税ということを主張しておりますけれども、そのこととは別に、本当の意味での財政構造改革をやっていくべきだ。  そういう観点で見たときに、整備新幹線の問題というのは、私はゆるがせにできないわけであります。  三塚大蔵大臣はかつて、整備新幹線について、見送りを含め抑制する必要があるということを述べておられますし、基本的に、集中改革期間というのは、私は、会社でいえば会社更生法の申請をしているような、そういう事態だろうと思うのですね。
  72. 越智通雄

    越智委員長 質疑時間が終了していますので、手短にお願いいたします。
  73. 岡田克也

    岡田委員 はい。関連ですから。  しかし、そういう中にあって、その集中改革期間であるにもかかわらず、大きな投資の意思決定を、しかも、今すぐ必要とするものじゃなくて、新たな整備新幹線の決定というのは、恐らく完成は二十年ぐらい先の話であります。本格的な投資は大分先になるでしょう。そういうものについて、今の内閣総理大臣が、しかも、真の意味での財政構造改革をやっていかなければならない人が、今決める権利があるのかというふうに私は基本的に思います。  それはやはり、この財政再建が完成した暁に、そのときの総理大臣がそのときの有権者の意見を聞いてやるべきことでありまして、私は、整備新幹線についてだめだと言っているわけではありませんが、今のこの段階で今の橋本総理が決める権限はないんじゃないか。  今の若い人たちがこれから財政再建について、これは何とかやってほしい、でないとおれたちの未来はない。総理御自身も、このままでは日本は破滅するとまで国会で言っておられるわけでありますから。一方でそう言われながらこういう先の投資について今決められるというのは、私は、政治家として責任ある態度と言えないんじゃないか、こういうふうに思いますが、もし御意見があれば、一言お願いしたいと思います。
  74. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は長々と論議をしようとは思いません。しかし、整備新幹線と財政構造改革の関係というのは、昨年の六月に閣議決定をいたしますまでにも十分な議論をいたしました。そして、その閣議決定において、収支採算性などの基本条件というものを十二分に確認をする、そして、拙速に結論を出すことがあってはならず、集中改革期間を設けて財政構造改革を進めよう、これは議員が御指摘のとおり、そういう流れに矛盾しないようにしなければならないということを決めてきました。そして、それを受けて、政府・与党の整備新幹線検討委員会が結論を出し、その結論を政府としては受けとめております。  私は、財政構造改革と新規着工決定、今回のものが相反するものだとは考えておりませんけれども、将来の問題に対しおまえが決定をする権限があるのかという御指摘があったことは心にとどめておきたいと思います。
  75. 岡田克也

    岡田委員 終わります。
  76. 越智通雄

    越智委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  次に、海江田万里君。
  77. 海江田万里

    ○海江田委員 民友連の海江田でございます。  持ち時間も限られておりますので早速質問に入らせていただきますが、大蔵大臣、昨日の本委員会での、二見委員へのロンドンG7での共同声明についての御答弁でございますが、はっきり申し上げまして大蔵大臣の評価を下げることになった。  これは私の意見ではありませんで、きのうたまたまテレビ中継がありましたから、それを見ておりました日本におりますアメリカ人のエコノミストが電話をしてまいりまして、どうもやはり言っていることがロンドンで言っていたことと違うんじゃないだろうかというようなことを言っておりまして、私も早速、今し方できてきたばかりのこの昨日の速記録でございますが、やはりかなり問題のあるといいますか、発言があるんじゃないだろうか。  例えば、IMFの見方として「財政刺激の強い理由がある。」というくだりがあるわけでございますけれども、これはIMFの見方としてそういう見方がある、それを他の国がそのとおりだというふうに言っているわけではない、それについては日本は別の見解だ、こう言っているのですということです。  これをそのまま聞きますと、IMFが言っているということは事実でございますけれども、これはIMFだけが言っているので、ほかの国も言っているわけではない、あるいは、榊原財務官などが若干補足をしておったようですが、相当の国がIMFが言っていることと同じことを言っている、だけれども全部が言っているんじゃないですよというようなニュアンスで受け取ることが私らはできるわけですけれども、実際はそうじゃありませんで、G7の中で日本だけが合意をしなかったということは、これは事実のようでございます。  しかし、日本は合意をしなかったけれども、では、G7のほかの六カ国、日本を除いた六カ国は、この財政刺激の必要性、財政刺激の強い理由というもの、これはそれぞれこもごもに主張されたのではないですか。日本だけがこれに対して、それはノーだということを言ったのではないですか。ここのところを確認しておきたいのです。
  78. 松永光

    ○松永国務大臣 御答弁申し上げます。  その前に、七カ国蔵相・中央銀行総裁会合というのが正式の会合でありまして、その意味では、七カ国の蔵相と中央銀行総裁が正式メンバーでございます。それで、会合の声明にもありますように、その七カ国の蔵相・中央銀行総裁会議にカムドゥシュIMF専務理事がいわばオブザーバーの形で参加をされて、その議論にも参加をされた、まずこういういきさつがございます。  その会合で、世界経済及び金融市場の最近の動向等、あるいは各国の経済の動向等について、忌憚のない意見の交換がなされたわけであります。その中で、意見の相違点もあれば、あるいは合致した点もあります。それを取りまとめして、そして共同声明が出されたわけであります。ごらんになっていることと思うのでありますけれども、意見が一致したところは、これこれで合意した、こうなっておりますし、そうでないところはそうでないような表現になっておるわけであります。  それで、IMFの専務理事が、日本についての発言の中で、共同声明の中にもありますように、IMFの見方では「財政刺激の強い理由がある。」という発言があったことは事実であります。  これに対して私の方は、日本経済をさらに強いものにしていくために、我々は補正予算を組み、これを成立させていただき、二兆円の特別減税を法律を通していただいてやらせていただき、かつ金融システムの安定化が極めて重要であることにかんがみ、これまた特別法を通していただいて、そして直ちに日本の金融の安定化に向けての仕事を始めております、そしてさらに、九八年度の予算、そして九八年度の税制で、法人税制その他八千億ないし九千億近い減税もやることになっております、こういったことが速やかに実行できるような状況をつくり上げることができれば日本の経済は上向いてくるということを、私の方は強く申し上げたわけであります。  結果においては、IMF専務理事の話について参加国のすべての同意が得られなかったものですから、それはIMFの専務理事の発言の事実としてとどめる、こうなったわけであります。  日本に対する七カ国の蔵相・中央銀行総裁会議で話がまとまったところは、第五項の前段の方のパラグラフにあるように、「日本においては、経済活動は低迷し、見通しは弱い。回復のためには、金融システムを強化するための引続きの行動及び経済の開放度を高めるため金融その他のセクターの規制改革が必要である。我々は、金融システムの「ビッグ・バン」改革に関するこれまでの進展を歓迎した。」そこが合意したところなんです。次のパラグラフは、先ほど来申しているとおり、IMFの専務さんの発言があったということを事実としてとどめただけなんです。  そういう経過でございますので御理解賜りたい、こう思うわけであります。
  79. 海江田万里

    ○海江田委員 冒頭にもお話をしましたけれども、大変限られた時間でございますので、ひとつ手短にお願いをしたいわけでございます。  私のお尋ねは、日本がそれに対して合意をしなかったということは、もうわかっております。それ以外の項目は、すべて、我々、ウイ、ウイと、我々、我々ということで書いているわけですから、この中には当然日本も含まれるわけですね。この部分だけ我々という書き方でありませんで、まさにIMFはという形で書いておるわけですから、日本がそれに合意をしなかったことはわかるのです。  では、日本以外にこのG7の中で、中央銀行総裁、大蔵大臣、どなたでもよろしゅうございます。ですから、中央銀行の総裁と大蔵大臣を入れれば、七、二、十四のうち、日本は日銀総裁と松永大臣ですから、十四から二を引いた残り十二人のうち、一体どなたが日本の言うとおりだ、日本の言うことに対して、それは全くそのとおりだ、何もそんなことをわざわざ盛り込む必要はありませんよということを言った国、言った方がどなたか一人でもおありですか、一カ国でもありますかということを私はお尋ねをしておるのです。
  80. 松永光

    ○松永国務大臣 そういう会合でどの国がこう言った、どの国がそう言ったというふうなことは口外しないというか、公にしないというのが会議のエチケットだそうでありますが、日本以外のすべての国が、日本の言うことは違うという発言があったわけじゃありません。
  81. 海江田万里

    ○海江田委員 今、あるかないかを聞いたわけです。じゃ、あるということでございますね。(松永国務大臣「はい」と呼ぶ)あるのですね。  ところが、私が知り得ておりますG7各国の大蔵大臣あるいは中央銀行総裁は、これは皆さん、この会議が終わった後に記者会見をやっているのです。その記者会見でそれぞれ、こもごも、ルービン財務長官は言うに及ばず、ティートマイヤー・ドイツ連邦銀行総裁、ブラウン・イギリス大蔵大臣、ストロスカーン・フランス大蔵大臣、チャンピ・イタリア大蔵大臣、マーチン・カナダ大蔵大臣、全員がやはり日本に対して、そういう財政出動の必要があるということを記者会見で述べているのですよ。  これは違うのですか。記者会見で言っていることと会議の中で言っていたことが全然違うことを言っているのですか。どうですか。
  82. 松永光

    ○松永国務大臣 会議の席で、日本以外の代表がすべて、IMFの専務理事が言っていることは正しい、そうだという発言があったわけじゃありません。
  83. 海江田万里

    ○海江田委員 これはこれ以上言いませんが、ただ、大蔵大臣にもう一度確認をしていただきたいのですが、今回のこのロンドンG7は何のためのG7であったのかということでございますね。どういう認識を持っておられますか、ロンドンのG7の位置づけというものは。  もちろん、松永大蔵大臣が三週間前に就任をされて、お披露目ということもございますが、一番のこの会議の目的というのは何でございますか。どういう認識を持っておられるか。
  84. 松永光

    ○松永国務大臣 私の認識では、インドネシア、タイなど、アジア地域における通貨・金融不安、これに対して先進七カ国がお互いに協力し合って支援をし、そして改善をしていかなければならぬ、そういったことが主たる目的だという認識で私は参加したわけであります。  もちろん、そのためには、アジアの中で一番大きな経済を持っている日本でありますから、日本自身の経済を強くしていくという努力、これは必要なことでありまして、したがって、我が国はこういう努力をしつつありますということを強く述べてきた次第でございます。
  85. 海江田万里

    ○海江田委員 確かにアジアの経済危機でございますが、ただ、単なるアジアの経済危機だけではありませんで、アジアの経済危機の中で日本が果たす役割は何かということが実は重要なテーマであった。このことは、このG7の二十一日に先立つ二月二日に、G7Dという蔵相代理者の会議をやはりロンドンでやっているわけですから、その中ではっきりと、アジアの経済危機の中で日本が果たす役割が今度のテーマであるということをうたっているわけですよ。そういう報告は受けていませんでしたか。
  86. 松永光

    ○松永国務大臣 今申したとおり、アジアにおけるインドネシア、タイその他の国々の通貨・金融不安、これを解決するために先進七カ国が協力し合っていこうということが大事な課題であったわけでありますけれども、同時に、その中で日本自身の経済を強くしていくという努力も、これは当然大切なことなんでありまして、その努力として我々はこういうことをやってきましたし、これからやろうとしていますということを強く主張してきたわけであります。
  87. 海江田万里

    ○海江田委員 今回のロンドンG7での日本の役割というのは、私は、従来のG7の会議の中での役割と随分違ったということは言えるんですね。そのことは、コミュニケ、共同声明の中にも実は非常に如実にあらわれているんです。  この間、昨年九月に香港でやはりG7、このアジアの経済危機について議論をしましたけれども、ただ、そのときは共同声明はまとめていないんです。一番直近でG7で共同声明をまとめたのは、去年の四月のワシントンのG7でございます。ワシントンのG7でまとめた共同声明と今回のロンドンG7でまとめた共同声明、大変大きく内容あるいはその内容の構成といったものが違っているんですけれども、どういう点が違っているかということ、御存じでしょうか、大蔵大臣
  88. 越智通雄

    越智委員長 黒田国際金融局長
  89. 海江田万里

    ○海江田委員 いや、これは大蔵大臣に聞いています。おわかりにならないのならいいです。
  90. 越智通雄

    越智委員長 指名いたしました。
  91. 海江田万里

    ○海江田委員 いや、それは大蔵大臣にお聞きしたので、時間も限られていますから、じゃそれだったら質問を取り消しますので、私が自分で質問をします。(橋本内閣総理大臣「いや、大蔵大臣手を挙げているんですよ」と呼ぶ)
  92. 越智通雄

  93. 海江田万里

    ○海江田委員 では、お答えいただけるならどうぞ。
  94. 松永光

    ○松永国務大臣 私は思いますのに、今回の共同声明の中で特に重点が置かれておったのは、為替市場及び金融市場の動向について、十分監視しながら適切に協力していくということで合意ができたということ、それからアジアの動向についてこれまた合意ができたということ、これが私は特色ではないかな、こう思います。
  95. 海江田万里

    ○海江田委員 ありがとうございました。  実は、これ、私読み比べてみまして、この共同声明の構成というんですか、これが全然違っているんですね。ワシントンでやられました共同声明については、これは七カ国の問題点、現状認識というものをそれぞれ、例えば北米については云々かんかん、欧州については云々かんかん、それから日本については云々かんかんという形で、それぞれが並列的に書かれているんですね。  ところが、今度の共同声明は、見ていただければおわかり、見ていただけるというか、おつくりになったんですからよくおわかりだろうと思いますけれども、グルーピングをしておりますね。三つにグルーピングをしております。  一つは、まず、アメリカとカナダとイギリスでございます。これらの国々は、経済成長はうまくいっているよ、だけれども、経済成長がうまくいくとインフレの懸念が出てくるから、そこのところに注意をしなさいという形でグルーピングをしております。  それから、もう一つの三カ国、これはヨーロッパでございますけれども、ドイツとそれからイタリアとフランス、これもグルーピングをしております。これらの国々は、確かに経済は比較的うまくいっている、だけれども雇用の問題があるよということでグルーピングをしているんですね。  そうすると、残った一つ日本なんですよ。つまり、これらの六カ国とはむしろ別に、日本だけについては、もうのっけから「経済活動は低迷し、見通しは弱い。」という形で非常に厳しい書き方をしているということ。  このことはやはり、今回のロンドンG7が、まさにアジア経済の中で、アジア危機の中で、日本が果たす役割というものの重要性をもっとしっかりと認識をしてもらわなければいけないということを共通の認識として、日本はそういう認識を持っておられなかったかもしれないけれども、ほかの各国は共通をしてそういう認識を持っていたということ。  この認識はおありですか、おありじゃありませんか。
  96. 松永光

    ○松永国務大臣 認識はもちろん持って参加したわけでありますが、それだからこそ、日本の経済を強くするために、我々はかくかくしかじか、こういう政策をやってきたし、これから大いにやろうとしているということを強調してきたわけであります。  その点については、御指摘のとおり、「日本においては、経済活動は低迷し、見通しは弱い。」その回復のためには、金融システムを強化するための行動、それから、経済の開放度を高めるための金融その他のセクターの規制改革、そして金融システムのビッグバン、こういったものが指摘されたわけでありまして、この点については、日本のやっておることについて評価をしていただいて、「歓迎した。」と、こうなっておるわけであります。
  97. 海江田万里

    ○海江田委員 今の点、大変重要でございますが、肝心の財政構造改革が抜け落ちておりますね。これは御説明をしたんですか、それとも全然議論を、もうこちらからも持ち出さなかったんですか。  これまでの、香港のG7はもちろんでございます。これは大蔵省が取りまとめをしました、共同声明は出しませんでしたけれども、「ファイナンス」という、いわば大蔵省の機関誌のようなところでも、この財政再建についてはっきりと、そこで議論をしたということは書いてあります。  それから、ワシントンの共同声明でも、これはちゃんとはっきり、先ほどは読みませんでしたけれども、日本の財政構造、「日本には、力強い内需主導型の成長を達成し、対外黒字が大幅に増加するのを避けるとの目標がある。より広範な規制緩和措置及び適切な財政構造改革を含む更なる構造改革は、中期的に日本経済をより活性化する上で重要である。」という形で、財政構造改革のことがはっきりとうたわれているわけですよ。  今まさにこの国会では財政構造改革、財政構造改革ということが言われながら、しかも、この日本の改革の中で財政構造改革というのは非常に重要なテーマであるということは何度もここで言われながら、実際には盛り込まれていない。これはもう明々白々ですね、共同声明には一言も触れられていないということ。  それは、大蔵大臣議論をしたけれども退けられたのか、あるいは最初から全く日本の財政構造改革については議論をしなかったのか、一体どちらなんですか。
  98. 松永光

    ○松永国務大臣 私が先ほど申し上げましたけれども、日本は財政構造改革を目指しておるわけであるが、その中で、財政構造改革路線の中で許される範囲の最大限の努力をしてこういう政策をやることにし、それがすなわち二兆円の特別減税であり、あるいは補正予算意味するわけでありますが、そしてさらに、九八年度の予算及び税制改正では八千億余の実は制度減税をやる。これを速やかに実行すること、それで、先ほども触れましたけれども、金融システムの安定化のための仕事を強力にかつ速やかにやるということ、これを私は主張してきたわけであります。
  99. 海江田万里

    ○海江田委員 じゃ、財政構造改革ということはおっしゃったわけですね。(松永国務大臣言葉は」と呼ぶ)言葉はおっしゃったわけですね。  じゃ、それが今までは、ワシントンのところでは共同声明に盛り込まれている、それから香港のところでも大蔵省がつくりました報告にはっきりそれが書かれているということですけれども、何で今回は、どこから見ても、それから今まで私が指摘をするまで、財政構造改革ということはこのG7については大蔵大臣の口からも一言も話がなかったわけでございますが、これは大変に重要なキーワードでございますから、日本の経済を回復させていく、あるいは日本の構造改革をやっていく上では。  おっしゃったけれども、これは採用されなかったんですか。それとも、全然それが重要でないという認識をもう既に大蔵大臣、お持ちになっているんですか。
  100. 松永光

    ○松永国務大臣 日本の経済政策、財政政策の前には財政構造改革法というのが存在しておるわけでありまして、その範囲の中での政策をやらざるを得ないわけなんです。したがって、相当知恵を絞らなければならぬわけでありますが、そういう形で知恵を絞ってこういう政策をやることにし、九八年度でも新たなものをやることにしておりますと、こういうことを強調してきたわけであります。
  101. 海江田万里

    ○海江田委員 もう一度だけお尋ねをしますが、会議の席で、では、例えばこのG7の本会議の前に、九時十分から九時四十五分まで、大変お忙しい中、お疲れの中をルービン財務長官とお会いしていますね。その中で財政構造改革という言葉を、短い時間でございますけれども、お話しになりましたか、なりませんでしたか。
  102. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えします。  英国の蔵相との会談、これは言うなれば初顔合わせでありまして、内容に立ち渡った話はほとんどありませんでした。ルービンさんとはもう少し時間がありましたので、財政構造改革をやっている中で日本政府はこれこれしかじか、こういう努力をしていますということは、はっきり申し上げたわけであります。
  103. 海江田万里

    ○海江田委員 では、引き続いてのG7の中で、財政構造改革ということはおっしゃいましたか、おっしゃらなかったですか。
  104. 松永光

    ○松永国務大臣 私が、日本政府はこういうことをやりました、それから九八年度でこういうことをやりますという立論の前提には、財政構造改革の中で最大限の努力としてこういうことをしました、あるいは、これこれこういうことをします、こういう私の立論になっておるわけであります。前提になっておるわけです。
  105. 海江田万里

    ○海江田委員 前提にはなっておりますが、昨日と本日と、ずっと私は松永大蔵大臣のG7での報告というのを聞いておりましたけれども、その中からは、前提になっているから腹の中にはあるかもしれないけれども、少なくとも口に出して言っていないんですね。きのうもお話がありました。これはもう会議録の速記録に出ております。さっき私が質問したときの冒頭に幾つかおっしゃいました、これは補正から始まって言いましたけれども、財政構造改革というのは出ていませんね。言っていないんでしょう、これは。  余り決めつけてもいけませんけれども、私は、やはりこれは、正直申し上げまして、世界のエコノミストの理解では、日本はもう既に財政構造改革というものは放棄をしたんだという認識があるんですよ。ですから、わざわざ外に向かって、内に向かっては言い続けなければならないけれども、外に向かってはもう言う必要がなくなったんじゃないですか。これは二月二日の、先ほどもお話をしましたけれども、G7Dのあたりでもう既に消えておったことじゃないですか。  では、特別に事務方から、大蔵大臣はまだなって日も浅いですから、そのG7Dのこともおわかりにならないと思いますが、ここはひとつ財政構造改革が必要ですから、この財政構造改革というものをぜひ発言をしてくださいというような話を当局から受けましたですか。そういうレクチャーを受けましたですか、ここのところは大事なキーワードですよと。  これまでのG7では、全部大事なキーワードになっているんですよ。これはアメリカ側が入れたんじゃないんです、日本側が主張して入れたんですよ。香港でもそうです。それからワシントンの共同声明。香港でも、日本が口を開けば必ずこの財政構造改革ということを言い続けてきたわけですよ。だから記録として残っているわけですよ。  今回は、そういうような、この財政構造改革というのはキーワードですから、ここのところでは必ず言ってくださいよというようなことは聞いておりましたか。そういうような説明は受けていなかったですか。
  106. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、そこまでレクチャーを受けたという、記憶には残っていませんけれども、しかし、御存じのとおり、日本の経済政策、財政政策というものは、財政構造改革法という大きな網がかかっている。その中で知恵を絞って、最大限の政策をやっていかなければならぬ、こういうことでありますから、政治家として当然私は頭の中にあったわけです。したがって、その前提のもとに発言をした、こういうことでございます。
  107. 海江田万里

    ○海江田委員 頭の中にあるというのは、私なんかはわかるわけでございますけれども、ほかのG7の国々にはわからないわけでございますから、それはやはりおっしゃっていただかないと困るのです。あるいはもう既に放棄をしてしまったから言う必要がなくなったのかと、そういうことをやはり疑って考えてしまうのですね、大変残念なことではありますが。  総理も先ほどから黙ってお聞きになっておられまして、総理はこの会議に行っておられないわけですが、この後五月にサミットがあるわけでございますが、ここはもう総理が真剣勝負の場でございますから。  やはり総理に対する批判というのも、それこそ日本の国民として大変残念なことでございますけれども、この間のG7の問題あるいはこの景気対策の問題でかなり厳しい批判が出ております。これは大変耳に逆らう言葉でございますけれども、やはり聞いていただかなければならないと思います。  恐らく総理もお目通しだろうと思いますけれども、二月二十三日のタイムズの社説で、これは「入院中の日本」と題する記事がございまして、ちょっと引用します。  現在の日本で必要とされている早期の減税実施の本当の障害は、国益ではない。日本の国益ではないと。それは政治的権威のプライドである。そしてとりわけ、一九九七年の増税が誤りであったと認めることのできない橋本氏のプライドである。橋本氏は今単純な問題をじっくり考えてみなければならない。次の選択肢のうち、どちらが自分を傷つけるかを。つまり、増税が自分の非であることを認めるか、それともG7クラブの残りの人々によって無能な見捨てられた人とみなされるかの選択であるということをこの社説は書いているわけでございます。  これはお目通しになったかもしれませんが、このタイムズという権威のある新聞がこういう社説を書いていることに対する総理の御見解をお聞かせ願いたいと思います。
  108. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員から、G7、今度はG8ですね、そのサミットにおけるという御心配をいただきました。  私は、実は、それ以前に非常に私が試される場面があると思っております。それは四月の、国会のお許しがいただけるかどうか、いまだにわかりませんので確定ができませんけれども、四月の前半に行われます第二回のASEMの会合であります。そして、この主催国も、たまたまことしはイギリスであります。同時に、イギリスはEUの議長国も兼ねております。その中における第二回のASEMの非公式首脳会合、これはアメリカが主なプレーヤーの中で抜けておりますけれども、ヨーロッパ勢、同時にアジア勢、それぞれの首脳が相集う場面であります。  そして、当然ながら、アジアの経済の中において、一番先頭のカリの役割を果たしてほしいということは、いろいろ御批判を受けましたけれども、特別減税をいたす前の昨年十二月、ASEANプラス3、プラス1の会合でも出された議論でありました。  そして同時に、その時点で、一つ、アジア側のこのASEMに参加する首脳たちがユーロの誕生に向けて統一してどういう歩調をとるべきかという議論を私は提起をし、シンガポールのゴー・チョクトン首相とともに、この四月の段階までに代理レベルで少なくとも議論を整理して、アジア側として統一した見解を持って臨もうという意思の確認はその場でいたしたわけでありますが、その後の推移の中で、残念ながらそういう議論はまだ煮詰まっておりません。そして、ヨーロッパに新たな基軸通貨が生まれようとする場合に、アジアがこれをどう取り上げ、考え、対処するか、共通した方針は出ておりません。  ヨーロッパ側からは、先ほど議員が七カ国蔵相・中央銀行総裁会議のコミュニケの中から、グルーピングという言葉をはしなくも使われましたように、ヨーロッパ側の参加者も必ずしも一つではないわけですが、共通した立場を持ってこの席には臨みます。ですから、この時点における役回りが私は一番、むしろサミット以前の問題として大きい。  そして、その時点において、一つはアジアの立場からユーロをどう見るか、同時に、アジア経済の安定のために日本がどれだけの役割を果たし、また今後果たそうとし、同時に内部において論議を進めているかといったことも、日本の経済の問題とともに実は議論すべきことでありまして、国会ではこういう点にほとんど目を向けていただけませんけれども、私は、実はサミット以前にこのASEMは非常に大事な会議になると思っております。  そしてまた、金大中大統領が就任をされた直後でありますが、恐らく初めてお目にかかれるのもこの場になるでありましょう。そういった意味での大事さもこの会議にはございまして、私個人の思いといたしますなら、今G8になりましたバーミンガム・サミットよりも、その前の第二回のASEMの非公式首脳会合にいかなる立場日本が臨み得るのか、日本はどういう処方せんを国内のことだけではなく持っていけるかどうかを深刻に考えております。
  109. 海江田万里

    ○海江田委員 今のASEMのお話を聞きまして私は一つ納得がいきましたのは、総理が本委員会でもしきりと言っております、当初予算の早期成立ということでございますね。これがASEMに間に合いませんと、当然のことながら、今恐らく総理の頭の中にあることは、口に出しては言えませんけれども、まず当初予算を通してください、当初予算が通ったところからは補正について考えていますよということだろうと思うのです。  これは四月の上旬ですから、エリツィンさんが十一日ですから、恐らくそのもっと前ですね。七日とか六日とか、これは二日、三日でございますか。では、二日、三日は、正直申し上げまして、予算が本当に通るかどうか、これは大変難しいところ。恐らく私どもは通らないというような見方をしておりますけれども、そうなりますと、そういう意味での補正の措置というのは、まだできない段階だろう。  それからもう一つ、やはり私はこのASEMの中で、これは先ほど総理お話がありましたけれども、アメリカはここは遠慮をしていただくことになっております。遠慮をしていただくことになっておりますけれども、アメリカもこのASEMの会合というものには非常に大きな関心を持っておるでしょう。  とりわけ、このアジアとヨーロッパの中で、ヨーロッパはユーロという形で発足をするわけでございますから、今アジアで一番問題になっておりますのは、これまでドルとのペッグの制度でやってきたことによるいろいろなそごが起きておりますから、それぞれの国同士の通貨で貿易をやろうという話になるのか、あるいは、これは一たん破綻をしましたけれども、AMF構想のようなものがもう一回出てくるのかということ。  ここはかなりそういう意味では腹を据えてかかっていただかないと、これは大変大きな問題だろうということでございますので、そこのところはやはりかなり大事に考えていただかないといけないということ。そして、それはかなり厳しいことに恐らくなるだろうということでございますね。  それから私は、これ全部、補正だ補正だと。本予算のところでは、そういう減税の話でありますとか公共事業の話ですとか、これは決まっていない話だから議論にならないわけですね。そうしますと、補正は非常に日にちも限られておりますし、それから私は、補正にすべて逃げ込んでしまうということは、これは先ほどからのお話でございますけれども、財政構造改革法というのは補正についてはやはり抜け穴になっているわけですよ。  昨日、総理は、弾力条項云々の話もありましたけれども、実は我が国の財政構造改革法というのは、弾力条項が全くないわけじゃないんですよ。まさに、補正というところの抜け道があるわけですね。  これははっきり申し上げまして、補正でもって、しかもそれは減税は小規模にして公共事業等を膨らませてしまえば、公共事業は建設公債でございますから、この建設公債のところは財革法の法律では縛りがないわけですね。補正で建設公債、そして公共事業ということでやりますと、それこそさっき大蔵大臣が、心の中にはあったようでございますけれども、G7では余り口には出さなかったような財革法というものが、ほとんどもうこれは骨抜きにされてしまうということなんですね。  ですから、しかも国会での日にちも非常に限られたものになるから、むしろそういうことが、補正ということも頭の中にあるようでしたら、もう新聞なんかは完全にそういう書き方をしております、きょうの朝日新聞でございますが。それから、マーケットもそういうことを織り込み済みで動いているわけですけれども、私は、やはり公共事業の中身でありますとかあるいは減税の中身でありますとか、こういうことをもっともっと議論をすべきだろう、そういうふうに思っております。  その観点から、ひとつ減税の問題について私は議論をさせていただきたい。  これは、総理も減税の問題について議論をやることは少しもやぶさかでないということは、我が党の鳩山幹事長が冒頭に質問をしたときに、じゃ、鳩山さんは課税最低限の問題はどういうふうに考えているんですかという逆質問をされましたから。そのとき鳩山さんは、課税最低限は引き上げをしませんよというお話をしたんですが。  私は、やはり今回の減税、ちょうどきのうが二十五日で給料日でございましたから、かなり減税の恩恵を受けて、そして手取りがふえた人たちはたくさんいるわけでございますが、ただ、惜しむらくは、やはりこれが本当に消費に結びつくんだろうかどうなんだろうかということでございます。  民間の世論調査などでは、全く、これを全部貯蓄に回してしまう、これは消費に回さないよと。それぞれ額が違いますけれども、定額でございますが、夫婦と子供二人で国税レベルで四万五千円、これを消費に回さないよということを言っている人たちが三四%ぐらいいるというようなデータも出ております。  それから、やはりこの減税というものが一回限りの減税であるということは、せっかく同じ国税の四万五千円の戻しでありましても、それが消費に回るか回らないかというのは、実は一年限りの減税であるのか、あるいはこれから未来永劫、永劫というのは若干オーバーでございますけれども、これから将来にわたってもその分の負担が軽くなるのかということが違うということは、非常に大きなやはり消費性向に影響を与えるわけですね。そのあたりをどういうふうにお考えになっているのか。  これは経済企画庁にお尋ねをしたいんですけれども、この二兆円減税を一年限りでやった場合の景気刺激効果と、それから、これを恒久化したときの刺激効果というものをどういうふうにごらんになっておるのかということを教えてください。
  110. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 これは数字的に申し上げるのはなかなか難しいわけでございますが、仮定の計算といたしまして、経済企画庁の第五次世界経済モデルの乗数を使いまして計算をいたしますと、二兆円の特別減税一回限りということでございますが、実質GDPを〇・二%程度押し上げる効果があるというふうに見ているわけでございます。  ただ、しかし、この二月、三月という大変大事な時期にこれが行われることによります心理的効果を含めますと、私自身はさらに大きいものというふうに考えておりますし、先ほどのお話のとおり、特別減税一世帯四万五千円というものを、ぜひこれは国民の皆様にできるだけ楽しく使っていただく。その行動が実際に起こるかどうかということにもよるわけでございまして、私どもとしては、ぜひこの意味を御理解いただいて、大いに使っていただいて、貯蓄率を高めていただかないで消費性向を高めていただくようにお願いをしたい、こういうふうに考えている次第でございます。  恒久化した場合にどうかということでございますが、これも同じようなモデルによりましてやりますと、乗数効果が一年目で〇・四二、二年目で〇・七二、三年目〇・八三というふうになっているわけでございまして、仮にこれを二兆円規模に当てはめますと、一年目で〇・二%程度、二年目〇・三%、三年目〇・三%ということになるというふうに機械的に計算ができるわけでございます。  もし必要があれば、詳細はまた事務当局から説明をさせていただきます。
  111. 海江田万里

    ○海江田委員 まさに、今長官がおっしゃられたような、消費性向を刺激するかというか、消費に結びつくかどうかという点なんですね。  同じ二兆円でも、これは民間の研究所も試算をしております。大体、最初の場合は、消費性向が五〇%ぐらいで計算をすると、GDPを〇・一四%アップする。ところが、恒久減税にすれば消費性向が九〇%になって、GDPを押し上げるのが〇・三%になるとか、いろいろな数字があります。  これは、きのう当委員会で、なぜ消費が拡大をしないのかということで、特に可処分所得が減っておるから消費が拡大しないのだという議論がありましたけれども、あれも確かに一つはそのとおりなわけでございますけれども、ただ、本当に消費性向ということでいきますと、一年一年、毎年毎年の可処分所得ではなくて、やはり恒常所得仮説というのですか、これは実は仮説ではありませんでもう実際に実証されているわけですけれども、つまり所得がふえるということが恒常的な状態であるというときになって初めて人々はそのお金を、手取りがふえた分を消費に回す。これは当たり前の話でございますよ。  ところが、それを、一年限りなんだ、一年限りだということをもう何度もアナウンスをしている。それからさらには、ことしの秋口ぐらいには恐らく社会保険料の引き上げもあるのではないだろうかと。ちょうど去年の消費税のアップからその後の社会保険料の引き上げということと同じようなことが、実は今、せっかくこの時期に減税をしながら、そういうことが一般に流布をされている。  これは、ただ単に風説として流布をされておるのではなくて、現実にそういう状況があるということから、私はやはり、これを一日も早く、もし皆さん方が、政府がこれを補正予算でなどということをお考えになっておるのだったら、補正予算になったのではまさにこのお金が一回貯金になってしまうわけですから、しかも、今、一回貯金になったら、これはなかなかそこから払い戻しというわけにはいきませんから。  それから、経済企画庁長官がおっしゃるように、二月、三月という、ただ二月は余りこれは、きのうもせっかく手取りがふえたけれども、冷たい雨が降ってしまいましたから、そうしたらどこにも行きませんよ、これは。これから雪が降るかもしれない。そういう意味では、だけれども三月というのはやはり物入りのときですから、そのときにやはりそこに間に合うような形で、これは心配しないでいい、使っていいのだ、恒久化するのだ、ずっと永久にそれだけ手取りがふえてくるのだということをアナウンスするということは、私は非常に大切だと思うのですね。  それからもう一点は、やはり今回のような単年度の減税でありますから、定額控除、定額の減税。さっきも言いましたけれども、夫婦子供二人で国税で四万五千円、住民税も入れると六万円幾らになるという計算がございますが、これは定額でございますから、つまり言ってみると戻し減税みたいなものなんですね。つまり、これは日本の所得税の構造そのものには一切手をつけていませんね。私は、これは大きな問題だと思うのですね。  やはりこの所得税の問題にも、所得税の税率構造などにも手を入れる。私たち民友連は、その点では、この税率構造に手を入れた三兆円の所得税レベルでの減税というものを行っているということ。  私は、今下手をすれば、補正で出てきて、しかもその補正が定額の継続だなんというような話もあるくらいでございますから、定額控除の、定額減税の継続というのは、一番愚の骨頂でございますね。それをやるのだったら、きちっとした、税率構造にメスを入れた、まさに税制改正をやらなければいけないと思うわけでございますが、総理のお考えはいかがでしょうか。
  112. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に、特別減税であればこそ今回の仕組みを採用した、そしてこれが恒久化される、それは愚の骨頂という御指摘は、私もそのとおりだと思います。そして、私は、特別減税を継続する必要がない状態をつくるために努力をしたいということを申し上げてまいりました。  そして、その意味では、本当に所得課税の水準、体系というもの、今、だれも、税で増税を言うのは好きではありませんし、減税の方が楽しい話でありますけれども、今の我が国の所得税の水準というものも、やはり私は考えてみる必要があると思います。  私は、所得税中心主義のアメリカのやり方が必ずしも一〇〇%とは思いません。しかし、我が国が標準世帯別で見ましても、例えばイギリスは百五万円以上の方は全部所得税を負担していらっしゃる。アメリカは二百四十四万円。我が国の場合、三百六十一万円と、今度の改正で課税最低限が既に動いているわけです。そうすると、他の国であれば所得税を負担しておられる階層に列せられたであろう方々が今所得税負担をしておられないということも、やはりあわせてお互いが考えてみる必要があるのじゃないでしょうか。  これは決して、そういうことを我々が考えるという意味じゃありません。しかし、さらなる所得減税という場合にそれだけが議論になるということは、私は必ずしも税の議論として正確ではないように思います。私自身、本当に特別減税を継続する必要がないようにするためにも、ぜひ院の御協力を得たいということをお願いを申し上げております。  そして、先ほど議員は、ああそれでわかった、ASEMの時点までは成立してませんねと、非常に軽い口調でおっしゃいましたけれども、これは、国際的な場に出ていく私がどれだけのプレッシャーを持ちながら、しかも非公式首脳会合は本当に首脳だけの会議ですから、まさに一騎打ちの場です。どういう状況で臨むことになるかは御理解がいただけると思いますし、その限りにおいて、国益というものを背負う、これに対してはでき得る限りの力添えをしていただきたい、率直な気持ちを申し上げます。
  113. 海江田万里

    ○海江田委員 私も力添えするのはやぶさかではございません。ただ、これは私だけじゃありませんで、ほかの野党の皆さん方も、力添えをするためには条件がございます。今のこの予算案を修正すれば、これはたちどころに、まさにASEMの会合に間に合うように成立するということを言っても私はいいと思うのですね。  それは、申しわけありませんけれども、総理が、何が何でもまずこの当初予算をそのまま、一つも瑕疵もなく、一つも傷をつけずに、この間の金甌無欠という言葉が若干古いので今回は使いませんけれども、一つも、そっくりそのままとにかく成立をさせて、しかも心の中では実は補正のことも考えている。だけれども、それはとにかく本予算が入るまでは口が裂けても言えないということですから、これでは、大変残念ですが私どもも協力するわけにはいかないのです。  直してくれさえすれば、これは幾らでも協力するのにやぶさかでないということでございますから、決して私どもは軽い気持ちで、総理がお困りになればいいなんということはちっとも考えていないということは、やはりお考えいただきたいということでございます。  それからもう一つ、法人税の減税の問題も余り議論がされておりません。私は、この法人税の減税というのは大変重要だと思います。そして、政府は、基本税率を三%引き下げて実効税率四六・三六%という数字に置いておりますが、国税レベルではこの税率はもうしばらくこれ以上下げない、あとは地方税レベルでの見直しは若干やるということでございます。  この実効税率四六・三六%というのは、グローバルスタンダードと比べてやはり高過ぎはしませんか。所得税にもグローバルスタンダードという考え方は大事ですけれども、企業の法人税については、所得税以上にやはりグローバルスタンダードというものが大切でございます。  これも若干手前みそになりますが、私たち民友連は、法人税は一〇%下げまして、基本税率を三〇%まで下げて、それによって実効税率を四一・〇八%にしている。四一・〇八になりますと、ちょうどアメリカのカリフォルニア州の場合で四〇・七五%、フランスが四一・六七%。イギリスは三一%ですからイギリスには及びませんけれども、ほぼ実効税率が四〇%クラスというのが、これがやはり一つのグローバルスタンダードになっているのですね。  それに対して、やはりこの三%というのは余りにも低過ぎはしないだろうかという認識を私は持っておるのですが、これは大蔵大臣にお尋ねをしますか、総理にお尋ねをしますか。大蔵大臣にお尋ねをします。
  114. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えを申し上げます。  委員御指摘のとおり、平成十年度の税制改正で、法人の基本税率、三%下げて三四・五に、法律が通ればなるわけでございます。そうすると、アメリカの連邦法人税率三五%よりも低い水準になります。  しかしながら、今御指摘のとおり実効税率の面ではまだ問題があるわけでありまして、この点は、これから平成十年度答申で指摘された検討課題を踏まえつつ税制調査会で御議論が進められていくもの、こういうふうに理解をしておるわけでございます。
  115. 海江田万里

    ○海江田委員 減税の問題で、公共事業で建設公債を出して、そして補正でやるという場合は、財政構造改革法との抵触というのは比較的少ない、ほとんどないと言ってもいいでしょう。ただ、これをやるのは財政構造改革法の本来の趣旨からすれば、これは禁じ手ですよ、違法ではないけれども脱法に近い行為でありますよということは、これは私が先ほど指摘をした点でございますが、減税ということになりますと、やはり差し当たっての財源を赤字公債の発行にしなければならないということになるわけでございます。  私は今大変気にしておりますのは、当初この財政構造改革を国会議論をしておりましたときは、この中期財政試算でございますけれども、九八年度、特例公債を一兆二千五百億ずつずっと減らしていく。この予定が、実際には、当初予算では三千四百億円しか減らせなかったわけですね。それによって、この間、当委員会で私はお願いをしまして、財政構造のこの中期財政の試算をお出しいただきましたけれども、これによりますと、結果的に九九年度以降、一・四兆円ずつ、一兆四千億円ずつ減らさなければならないということになりました。これが、果たして毎年毎年一兆四千億ずつ減らしていくことができるのかという疑問が一つ。  それから、ただ、これはあくまでも仮置きの、仮定の数字だから、この数字には余りとらわれなくてもいいんだよということになりますと、もう一つ、これは法律の中に、財政構造改革法の中にはっきり明示されているわけでございますが、第四条の中で、「財政構造改革の当面の目標」で、平成十年度から平成十四年度までの間、各年ごとに国の一般会計において特例公債を発行する場合は、その縮減を図りつつ、一般会計の歳出は、平成十五年度までに特例公債に係る収入以外の歳入をもってその財源とする。  これは、後段の方は、平成十五年度までにはいわゆる赤字公債はゼロにしなさいよということでございますが、その前段の、各年度に一般会計で特例公債を発行する場合、その「縮減を図りつつ」という文言があるわけでございますが、この「縮減を図りつつ」ということは、毎年毎年必ず特例公債の発行量を減らしていかなければいけない、減らさなかったらこれは法律違反になるということでしょうか。どうでしょうか。  ことしについては、これまでに、去年は特例公債の発行額は七・五兆円、七兆五千億だったのが、ことしは既に七兆一千億という数字になっておりますね。そうすると、残りは四千億しかないわけですよ。特例公債の発行が四千億を超えてしまったら、これは、この法律で言うところのその「縮減を図りつつ」というところに抵触をして法律違反になるのか、それとも、その「縮減を図りつつ」というところはいわば精神規定だから、これは別に気にしないでいいんですよという話になるのか、ここのところをお教えいただきたいと思います。これは当局でも構いません。
  116. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  特例公債につきましては、財革法によれば、毎年度これを前年度の発行額に対して減らさなければならないということでございます。  それから、ちなみに、平成九年度の補正予算で特例債を一兆円増発しておりますので、その額は約一兆三千八百八十億円、今、前年度より減っているということでございます。
  117. 海江田万里

    ○海江田委員 もう一度確認をしますけれども、当然、これを上回ってしまったら、これは法律違反になるということでございますね。
  118. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 法律違反ということでございます。
  119. 海江田万里

    ○海江田委員 非常に明白になったと思いますが、これは大変厳しいですよ。一兆の枠があるということを言いましたけれども、これで本当にできるのかどうなのかという話は、これはやはり、この財政構造改革法というものをもう一度かなりしっかりと考え直しをしてみないといけないのではないだろうか。  時間が来ましたので、もうこれ以上質問をするのはやめにいたしますが、私どもは民友連としまして、やはりこの財政構造改革法の改正なども考えなければいけない、そういう段階に来ているのではないだろうか、そういう意見を述べまして、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  120. 越智通雄

    越智委員長 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。  次に、原口一博君。
  121. 原口一博

    原口委員 民友連原口一博でございます。  総理並びに関係大臣に、今議論がありました財政構造改革法について、特に経済の危機管理ということに焦点を当てて御質問をさせていただきたいというふうに思います。そして、後段では、総理が施政方針演説で何回も触れられました心の教育、心の危機の克服ということについて、関係大臣にお尋ねをしたいというふうに思います。  まず、財政構造改革法案の審議の中で、この財政構造改革法の性質をよくあらわした答弁がございました。これは特別委員会の中の大臣答弁でございますが、小泉厚生大臣答弁です。  厚生省予算がなぜ減量されたのか、そういったものを質問した委員に対して、小泉厚生大臣はこういうふうに答えておられます。  日にちは忘れましたけれども、財政構造改革会議に出てこいという会議がありまして、厚生大臣としてその会議に出席しました。そのときに、政府歳出を削減しなさいというのをみんな賛成しているけれども、厚生省予算というのは大変なんですよ、みんな総論賛成と言うけれども、もし来年の予算一般会計歳出マイナスにするということで各省庁マイナスにやるんだったら、一番反対が出るところは厚生省予算だと思う、本当にできるのですか、厚生省関係予算を前年度マイナスするのは容易ではないというか、ほとんど不可能ですと申し上げました。どうしてもやるんだというので皆さんが決めて一番反対するのは恐らく与党ではないかと言ったことがございます。しかし、最終的に、恐らく私のそういう発言も取り入れてくれたのでしょう。来年度予算は、九年度に比べて一般歳出はマイナスにするけれども、厚生予算はマイナスにしない、三千億円増を認めるという結果が出ました。これでみんないいですね。いいというならやりますけれども、やって、後で驚かないでくださいよということは申し上げておきました。  こういう答弁でございます。  非常に率直な御答弁で、財革法の性質をよくあらわしているというふうに思います。後で驚くなよと言って帰ってこられるあたり、小泉厚生大臣らしさがよく出ているのだろうなというふうに思います。  私は、ここで総理に指摘しておきたいのは、財政改革会議のメンバーが後で驚かれようが、あるいは与党の皆さんが驚かれようが、それは私たちのあずかり知らぬことであります。しかし、最も驚き悲しむ人が、病人やあるいは障害で苦しんでおられる人であるとすれば、これを私たちは容認することはできません。先ほど議論の中にありましたが、キャップをかぶせてある、このことが、最も社会的に弱い立場の人たち、あるいは地方で頑張っていこうという人たち、その人たちを直撃する予算を、そのデフレ予算を私たちは今審議しているのだ。  総理は何回も、この予算を通すことが経済を順調にする、まずその試金石だということをおっしゃいますが、私は、この小泉厚生大臣答弁からうかがい知る限り、そうではない。これが通った後に一体地方はどうなるのだろうか。障害を持った人たちはどうするのだろうか。あるいは、病気で苦しんでおられる方はもっと不安になるんじゃないだろうか、そういうことをまず指摘して、幾つかの質問に入らせていただきたいというふうに思います。  私は、総理、経済の危機管理というのは、最悪のシナリオを想定して、それを回避できるように対策を打つことが基本だというふうに考えます。  財革法のときに、この場で、私は三塚前大蔵大臣に御質問させていただきました。十月の二十九日だったと思います。そのときに、財革の委員会の中で、今は平時だけれども、平時のときに有事に備えるのが孫子の兵法なんだ、だから有事に備えているんだということをおっしゃいましたが、私は、そうではない、もうあの時点で既に有事に入っていたというふうに思います。  お手元に資料を、委員長、配らせていただいております。資料1は、九月二十二日にIMFがインターナショナル・キャピタル・マーケット、「国際資本市場」というレポートの中で指摘した事項でございます。このころは、まだ我が国にも主要二十行ございました。「主要二十行の不良債権は、公式統計では貸出総額の五%弱と見積もられているが、本当の額はもっと多いかもしれない」。そして、この不良債権の処理をずっと、フォーベランスポリシーと申しますか、低金利によって耐え忍ぶことでずっと先延ばしにしてきたことが、結局は不良債権問題に対して解決のタイミングをおくらせてしまったんだ。そして、どこに本当の不良債権があるのかということをわかる、そのモチベーションを失ってしまったんだということを言っています。  また、先ごろの委員会で、私は総理質問させていただきました。それは、総理が本通常国会の中で何回も御答弁になったことであります。それは、アジアの通貨危機の問題であります。  アジアの通貨危機、あのとき私が質問をさせていただいたときには、今IMFのプログラムが進行中だからお答えは控えさせていただきますというのが総理の御答弁でございましたが、もうあのときにアジアの通貨危機は引き返しのつかないところまで来ていたんではないだろうか。昨年の四月の終わりにタイのバーツが下落して、それから大体一カ月ぐらいすると為替のそういう乱高下というのはおさまる。ところが、それがなかなかおさまらない。  この財革法を閣議決定されたのは六月三日ですから、その時点でこの危機を予測してくださいとは申しません。しかし、九月において、あるいは十月において、もうその危機は顕在化していたんではないだろうか、そのことを強く思うわけでございます。現に、九月に我が国は、タイに対して輸銀を通して四十億ドルの支援を行っている。そして、IMFも同じように四十億ドルの支援を行っています。これは、クオータの五倍という大きな額でございます。  私は、まず総理に、経済の危機管理の基本をどこに置いておられるのか、そのことについて総理の御所見をお尋ねしたいというふうに思います。
  122. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、私は別に議員に対して反論をいたすのではございません。事実問題として申し上げたいことですが、あのとき、確かに議員からアジアの通貨危機に対しての問題提起がありまして、具体的にタイのバーツを挙げられたものですから、私は、お答えはここでは勘弁していただきたいということを申し上げました。  それは、タイではございませんけれども、他の国にIMFのスキームを受け入れさせるかどうかによってその後の対応が全く違う。その中で、国際社会から日本に、その国にIMFの構造調整プログラム受け入れについての協力要請を受け、受けたと言ってはいけないんでしょう、そういう中で私自身が一つの役割を果たしておるときでありましたし、そういうことが表に出ること自体がいいことではございませんから、大変申しわけありませんが、お答えを控えさせていただきました。その上で、問題意識がなかったのではございませんということは申し上げておきたいと思います。  そして、間違いなく、最悪のシナリオという言葉を今議員は使われ、それを回避するように考えるのが基本ではないかと言われましたけれども、私は、まさに民間需要中心の経済成長というものを安定的に実現していきたい、政府は常にそういう意味での経済運営には万全を期してきたと思います。また、私自身、現在そういう思いであります。  同時に、市場に立脚する経済、なかんずく国際化の進んでおります今の経済の中におきまして、経済変動というものを除去できないということも、これは間違いありません。  我が国自身も、急激な円高、バブルの発生、崩壊、そして、その混乱の中における再び急速な円高、下落、為替の変動というものにも見舞われてまいりました。この中には、日本自身で克服できる、また、しなければならないものもございました。それを私は隠しません。しかし、日本だけで対応できない要因があったことも間違いありません。  そういう中で、我々が今やらなければならないことは、まさにその金融システムの安定と景気の回復、そして経済構造改革を初めとする構造改革、そういうものを進めていく。その必要性については、私は議員に異論を申し述べるものではありません。  ただ、最悪のシナリオと言われました部分に対しては、それを想定し得る場合、し得ない場合、想定していてそれに対応する措置を公表できる場合、できない場合、さまざまな場面があることだけは御理解をいただきたいと思います。
  123. 原口一博

    原口委員 当時の総理のお立場はわかります。  ただ、私たちは、きょう、ちょっとパネルを持ってまいりました。  これは、もう先進諸国では、今総理がおっしゃった構造改革、自由主義的な改革をやるということは、ある意味じゃ決着がついている。やるかやらないかということは、もう決着がついている。私たちもやるべきだというふうに思います。  ずっと長い間、市場経済の失敗を補うために、公的部門が拡大を続けてきた。その公的部門で、今度は失敗が起こった。その公的部門の失敗、あるいは癒着、官僚政治、そういったものから脱却するために、市場や政治や、あるいは地方に分権していこう、こういう自由主義的な改革はやるべきだということは、もう決着がついている。だけれども、その改革をこれからどういうふうに行うかが、私たちがずっと議論をしてきたことだというふうに思います。  先ほど海江田委員質問をされましたように、一直線で財政構造改革に突っ走ったときに、果たしてこの国がまだそういう余力を持っているのだろうか。大変大きな経済の国が、我が国だけの財政構造改革にとらわれて、そして、今回G7に行かれた松永蔵相が正直におっしゃった。財政構造改革法案の中で精いっぱい知恵を出す、このことが大事なのです。ところが、この中でやれることは非常に限られているのではないだろうか。また、現実に、もう処理のスキームがいろいろなところで破綻をしてきているのではないだろうか。  きょう、ここにお示しした要調整額の推移は、先日、当委員会に大蔵省が出された数字を単にグラフにしたものであります。先ほど海江田委員お話しになりましたように、二〇〇三年では、一般歳出の伸び率を最大二%にして、名目成長率が一・七五%の場合は、八・一兆円もの歳入歳出ギャップが出てしまう。これは仮置きしたものですから、単なるシミュレーションだろう。三・五%の場合は、五・三兆円の歳入歳出ギャップが出る。  これはどこで埋めるのですか。埋めることができるのか。財政構造改革ということで、後世に負担を残さない、そのことをやったけれども、実際には負担はかえってふえてしまうのじゃないかというふうに思うわけでございます。  大蔵大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  124. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 中期財政試算においてお示ししてあります要調整額でございますが、これはあくまでも機械的に計算したものでございます。それぞれの要調整額は、毎年度の予算編成の過程におきまして歳入歳出全般を見直して、最終的に要調整額をゼロにしていくということでございます。  ですから、例えば先生御指摘の平成十五年度のケースでございますが、これも例えば、歳出を二%からゼロ%にして、それから成長率が名目三・五を維持した場合には、八・一というものが二・六ぐらいまで減るとか、それから、このほかに歳出の、十年度予算案でもそうですけれども、国債費とか地方交付税、一般歳出だけでなくて、税外収入等を含めて、毎年度予算編成で見直して要調整額を減らしていくということでございます。
  125. 原口一博

    原口委員 恐らくそういうお答えになるだろうというふうに思いまして、私は、前回、昨年の国会で皆さんがお示しになった要調整額、そのときより今の方がこのギャップが埋まっていればいいですよ。ただ、たった三カ月で、このギャップはもっともっと広がっているじゃないですか。  そして、実体経済を先日たくさんの委員の方がお話しになりました。私も九州で、朝電車に乗っていると、今まで私のふるさとの町でお仕事をなさっていたはずの方が、電車をたくさんお待ちになっている。なぜか。これは、自分の町でもう仕事がないからです。どうしてこの電車に乗るのですか、出張ですかと聞くと、いや、もう自分の事業所は閉鎖されたんだ、隣の福岡市でしか仕事ができないんだ、そういう状況になっています。  あるいは、自殺をする人たちも随分ふえてきている。自殺のさまざまな理論、デュルケムの自殺論というのが有名ですけれども、人間はどん底のときには死なない。どん底から少し上がったときに、ほのかに光が見えたときに、その光を切られたときに、たくさんの人たちが死んでしまう。もう悲鳴に似たような声が私たちの耳に入っています。  現に政府も、この財革法の処理スキームを変えなければいけない、そういう声が与党の中からも出ているじゃないですか。このことにいつまでもとらわれる必要があるのかどうか。  もう一つ、別の視点からお尋ねをいたします。  資料2です。資料2は「国民負担率の推移」、これも大蔵省がきのう私にお出しいただいた数字でございます。財革法の六条の六は、言うまでもなく、国民負担率を百分の五十に抑えるんだということを明示いたしています。ところが、もう既に、この法律が通ってから間もないというにもかかわらず、平成十年度では五〇・七%になっている。これは財革法の違反になるのじゃないですか。  これは大蔵大臣に聞きたいのですよ。これは大変な重要な問題なんです、国民負担率。  あのとき私たちは何を言ったかというと、国民負担を上げないということがどこかに明記されていなければ、後で増税することによって、国民からこの歳入歳出ギャップを埋めていただくことができるのです、それはないでしょうねという話をして、そうしたら答弁はどうだったかというと、いや大丈夫ですと。この六条の六があります、六条の六で国民負担率については一定に抑えていますから、それを超えることはありませんという答弁でしたが、これは違反になるのですか、ならないのでしょうか、大蔵大臣
  126. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  高齢化が進展していきますと、委員よく御承知のとおり、国民負担率は長期的にはある程度上昇していくことは避けられない、こういうことでありますけれども、しかし、極力その上昇を抑えていく必要がある。こういった考え方で、踏まえるべき留意点の一つとして、国民負担率を五〇%を超さないようにと、留意点として掲げたものだというふうに私は理解をしております。
  127. 原口一博

    原口委員 法律にはそうなっていません。留意点なんてどこにも書いてありませんよ。六条の六をごらんになってください。これは方針だと書いてあるわけです。  きのうもレクチャーの中でそんな話をされた。ところが、去年の、平成九年の三月十八日、財政構造改革五原則ということを皆さんは確認されたんじゃないでしょうか。この中では、国民負担率(財政赤字を含む)が五〇%を超えない財政運営をする、これが原則だというふうに言われたんじゃないでしょうか。そのことが、いやいや、これは留意事項であると言うんだったら、これはこの後の質問は入れません。幾らでもこの間を増税で埋めるということじゃないですか。  大臣、もう一回御答弁をお願いします。
  128. 松永光

    ○松永国務大臣 平成十年度で五〇・七ということになる点についての御指摘だと思うんですが、これはもう委員も御承知と思いますけれども、国鉄長期債務の問題、そして国有林野累積債務の問題、これを処理するという関係から一時的に膨らんだものであるというふうに理解をしております。平成十一年度はそれがなくなりますので、国民負担率は五〇%以下になるというふうに見ておるわけであります。
  129. 原口一博

    原口委員 何で膨らんだかというのはわかります。今大臣がおっしゃったとおりです。  ところが、現にこの六条の六の、もう文面を読んでも結構です。「国民負担率を百分の五十を上回らないように抑制すること。」というふうに明記されているんです。  それから、先ほど、これはもう一回視点を変えますと、GDPの、二〇〇三年の三%、これは、毎年毎年赤字国債は減らすべきだということをさっき主計局長おっしゃいました。建設国債については、これは縛りがかかっていないと言いますが、二〇〇三年の目標時においては、これはやっぱり縛りがかかっているんですね。それで、非常に限定的な、手や足を縛られた中で私たちは経済運営あるいは財政運営をしなきゃいかぬ。わざわざ自分たちで自分たちの手や足を——私は、何回も申し上げています。この六月三日の閣議決定の時期には、こういうたくさんの金融機関に金融不安が広がることも、あるいは通貨危機が伝染病のように広がっていくことも。  私は、きょう実は財務官に、政策転換とはどういう意味お話しになったかということを聞きたいということできのうお願いをしましたが、大変危機的な状況がいろんなところで起こっている、まあきょうは忙しいんで勘弁をしてくれということでございます。  そういう状況であるにもかかわらず、まだ財革法にこだわろうとされるのか。私は、ここは総理御自身の、虚心坦懐に御自身の胸にお聞きになって、この国民の今の経済を救おう、そのためには、私たち野党にもあるいは積極的にお働きかけになって、きのう神崎委員質問については、弾力条項について少し勉強してみたいということを御答弁になったと思いますが、財革法をこのままにして、またその後、補正だ何だのと言っても、補正もこの財革法の中での話になってしまう。  小さなコップの中の話を私たちはしているわけではありません。そうではなくて、本当に大事な国民生活が危機に瀕している、そのことに思いをいたしていただきたい。  総理、どのように御検討なさるのか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  130. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員から幾つかの点についての御指摘がございました。  しかし、私は、議員も財政構造改革の必要性を否定はされないと思います。そして、その上で、今まで私が繰り返してきた答弁も御承知のとおりであります。そして、それを、別に今また私はここで繰り返す愚かさは避けたいと思いますが、今、議員が、例えば国鉄の長期債務、国有林野の累積債務の処理で、確かに一時的に国民負担率五〇%を〇・七%超えているということを御指摘になりました。  留意すべき事項として掲げております点に、厳密に言うならば、確かに瞬間風速でこれは問題があるのかもしれません。しかし、長い目で見て、これはこの国の将来のために必要な措置だと私は思いますし、これをもって財革法違反と直ちに言えるものではないと思っておりますけれども、予算を編成するに当たりまして、たしかこの部分を除けば四四・幾らか、国民負担率はとどまっていたと思います。  そして、今後考えていきます上に、今議員は幾つかの問題点に触れられました。あるいは財政構造改革法、確かにきのう神崎議員は北側議員に次いで免責条項の問題を提起され、私は北側議員が提起をされましたときにも、財革法の論議のときにこの御論議はありませんでしたねということを申し上げながら、勉強してみたい、ただし難しい問題点を含んでいる、実際上大変ルールづくりが難しいということも率直に申し上げております。  そして、この国の景気、経済を安定させなければならないという意味では、私は、議員がどう私を評価しておられるのかはわかりませんけれども、私なりに真剣に考えているつもりです。
  131. 原口一博

    原口委員 どう評価するかということでございますが、昨年の予算委員会総理はこんな話をなさいました。  まだ総理になられる前の、国会議員のまだお若いときのお話だったと思いますが、自分は信念を通して、ある予算だったか法案だったか頑張った。そうすると、自分のふるさとの子供さん、その子供さんにも非常に大きな心配があった。それを陰で心配そうにごらんになる御自身のお姿を、この場で披露されました。  私も、十歳になる子供とそれから七歳になる子供を持つ親として、私たち政治家が私心を持って、自分のために政治をやっている、あるいは総理がそういうふうに思っておられる、そうは思っていません。懸命に頑張っておられる。私も地元に帰りまして、総理はお昼もお食べになれないで答弁やさまざまな政策に頑張っておられます、そのことをしっかり申し上げています。  しかし、その姿勢は姿勢として、今これだけ経済状況が厳しくなっている中で、臨機応変という形で、あるいはタイムスパンという形で対応できるものは限られていますね。限られているとしたら、神崎議員や北側議員がおっしゃったように、この財革法を一時凍結したらどうですか、あるいは財革法の中に少し弾力条項をお入れになったらどうか、そのことを素直に私たちと話し合っていただきたいということを申し上げておるわけでございますが、いかがでございましょうか。
  132. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 困りましたね。ですから、きのう私は、北側議員に続いて神崎議員から免責条項、アメリカの例を引かれてお話がありましたときに、私は、政策としての一つ考え方であるという素直な評価もいたしましたし、北側議員に申し上げたときにも、私は勉強してみたいということを率直に申し上げましたということを申し上げました。  そういう意味では、先刻質問に立たれた海江田議員に建設国債と赤字国債の区分をなくせという御指摘を受けたときに、そういう手法もある、しかし、むしろ五年とか十年とかいう、そうした国債の出し方も考えてみたいんだということも私は率直に申し上げてきました。  そしてその上で、今予算の御審議をいただいております。私は、予算の成立についての御協力を心から願います。
  133. 原口一博

    原口委員 財革法については、今積極的に勉強をしてみたいというお話をいただいたということで、別の視点から……(橋本内閣総理大臣「免責条項について勉強してみたい」と呼ぶ)条項についてですね。勉強してみたいというお話をいただいたというふうにとらえます。  今度は、金融の安定化ということについても、政府がお考えになっている今回のスキーム、自由民主党の有力な政治家の方、梶山先生だったと思いますが、金融システム安定化のスキームをお出しになりました。あのスキームと、今回の、政府が先日御提案なさってこの国会で通ったスキームは大きく違うところがある。そのところだけ一つお話をしたいというふうに思います。  私は、きょう日銀の参考人の方がお見えになっていますが、日銀の独立性というのは、これは国家の経済の安定、これには欠かせないものであるし、日銀は絶対に政府の財布になってはならない、死んでも政府の財布になってはならないというのが日銀魂ではないかというふうに思うわけでございますが、御所見をお尋ねしたいというふうに思います。
  134. 本間忠世

    ○本間参考人 お答えをさせていただきたいと思います。  今回のこの金融二法、新しい法律によります金融機関の自己資本充実策、これにつきましては、御承知のとおり、昨年の十一月、いろいろな金融機関、証券会社が相次いで破綻をいたしました。こういうことから、我が国の金融システムに対します国内、海外ともどもの信頼が遺憾ながら大きく揺らぎまして、信用秩序の維持、それから国民経済の円滑な活動に重大な影響が及ぶという懸念が大きくなりました。こういった事態に対応いたしますための緊急の特例措置として行われるものだというふうに承知をしておるわけでございます。  そうした中で、今御指摘いただきました日本銀行、この中央銀行としての日本銀行等が、預金保険機構に今度できますことになります金融危機管理勘定、これに向けて貸し出しを行う、こういうスキームが法律の中に予定されておるわけでございますが、ここでは、先生御承知のとおり、預金保険機構の委託によりまして整理回収銀行が引き受けを行いました優先株等、優先株あるいは劣後債等でございますが、これが売却等によって処分されますまでの間、この間のいわばつなぎといいますか、ファンディング、これを行うために実行されるものだというふうに私どもは理解をしております。  このように、日本銀行が預金保険機構の金融危機管理勘定、それに向けて貸し出しを行うこととなりました場合に、その最終的な目的がいわゆる信用秩序の維持、こういう大きな目的にありますことにかんがみますと、新しい日銀法の趣旨に照らしましても、私どもは問題ないものだというふうに考えております。
  135. 原口一博

    原口委員 私はそうは思いません。実際にこれは、梶山構想の場合は、一般会計でしっかりと幾ら幾ら使いますというのがありました。これは会計の健全性の原則からいって、かかる費用はあらかじめ算定しておくということで、大変大事なことだというふうに思います。それを御提出になった先生の御見識を、私は高く評価するものであります。  しかし、今回のは違う。今回のは、今つなぎ融資というお話をされたけれども、実際は国債の日銀引き受けと同じ効果を持つじゃないか。つまり、主要の十九都市銀行を救おう、あるいは金融システムを救おうということで、もっと大事な、金融の中の金融、心臓部である日銀そのものの信用失墜を招いてしまうのじゃないか。その危機についてはどのように検討がされたのか。  これも、もし財革法がなければ梶山先生のお話しになったことで十分やれた話です。ところが、財革法のスキームがあるために、こういう非常に厳しい、ひょっとしたらこの日銀の融資が返ってこなければ、これは次にどうなるかというと、日銀そのもの、円そのものに対する信頼を失墜してしまうのです。  これは政治家の側も、これは大蔵省から、政府の方から日銀に対してそういう申し入れがあって、日銀がそれを受けたという形になっていると思いますが、私たちは、ここから先は別の人たちがやることだ、のりがある、ここから先は足を踏み入れてはいけない線があるというふうに思います。その線を踏み入れてしまう。そのことは、もっと大きな危機を生んでしまうのじゃないかというふうに思うわけでございますが、大蔵大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  136. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今回の十三兆円の公的資金の投入の方のスキームは、資金を金融機関に贈与するという性格のものではございません。先生非常によくおわかりのように、これはあくまで市場のすくみ現象を解消するためのファイナンスでございます。したがって、優先株を買い取ったり、劣後債を買い取ったり、あるいは劣後ローンを供与したりということでございますし、それで状況が改善しますと、それを市場に放出しまして回収をするわけでございます。その資金が十三兆という資金でございます。  したがって、日銀とか金融機関からの借り入れは十兆という枠でございますが、それについては政府保証を付しておりますので、少なくともその限りにおきましては日銀を毀損することはない。また、いざ売却したときに万一損が出たというときは、この三兆円の国債の方を現金化することによって穴埋めできることになっておりますので、およそ日銀が、これで円の信認が低下するというようなことはないというふうに考えております。
  137. 原口一博

    原口委員 私は、財政法の第五条、これは、日本銀行からの借入金等の制限、こんな頭で、「すべて、公債の発行については、日本銀行にこれを引き受けさせ、又、借入金の借入については、日本銀行からこれを借り入れてはならない。」というふうに書いてあります、後で特別条項がありますけれども。こういったことが何で書いてあるかというと、最も大事な金融のセーフティーネット、これを確保するためじゃないでしょうか。  銀行局長が今御答弁をいただいたのも、もう何回もこの国会で聞きました。しかし、本当にそこで穴があいたときの担保については、だれも何も言っていない。このことは大きな問題だというふうに思います。  現実に、さっき冒頭にIMFの指摘を資料として提出させていただきましたが、長い間、住専という、最初にああいう不公正なスキームを使ったことによって公的資金を投入するタイミングを失ってしまった、あるいは不良債権を処理するタイミングを失ってしまった。  私は、尾身経企庁長官にお尋ねをしたいのは、尾身長官は、この不良債権がしこっているということを何回も何回もこの国会答弁をされました。私は、尾身長官は率直にお話をしていただいたというふうに思いますし、この不良債権の現状を憂えておられる方の一人だというふうに思います。このことについて、私は、尾身長官に質問をしたときに、不良債権というのは、実際には今減っているけれども、それだけじゃないんだ、帳簿に載らないようないろんな不良債権があるんだという、ちょっと今乱暴な話をしましたけれども、そんな話をされました。  それで、この間、大蔵省からいきなり資料が出てきた。それは、今まで二十七兆、二十九兆とおっしゃっていたものが、全く別の額の七十七兆というものが出てきた。これでは、だれを信用して、どこを信頼して経済運営をしていいのかわからない。  こういうティア1からティア4まで、これは分類が違うんですよと大蔵省はおっしゃいます。しかし、比較のしようがないじゃないですか。今まで二十七兆だとおっしゃっていたことと、今回出てきたことが余りにも違う。いわゆる行政府が、情報を私たち政治家に意図的に出しているんじゃないか。今回のことも比べられませんよ。これは、主要銀行に、自分たちで算出してくださいという数字でしょう、大蔵大臣。  私は、やはり行政府立法府の仕分けをすることが絶対に大事だ。立法府に判断の材料を正確に出す、そういう大蔵省をつくっていただきたいというふうに思うんですが、大蔵大臣の御所見をお伺いします。
  138. 松永光

    ○松永国務大臣 委員の御指摘は、去年の暮れに不良債権額として各金融機関が自主的に開示した額、これが二十八兆として各金融機関が集計したものがそれでございますが、今回、今回というかその後に発表したやつが七十七兆になっている、数字が違うじゃないか、こういう御指摘でございます。これは委員御承知と思いますけれども、前に発表したやつは全銀協統一開示基準に基づいて出したもの、今度の分は各金融機関が実際の回収可能性に着目して分類した自己査定結果に基づくものでございます。  各金融機関が、もう実質破綻先の債権だというもの、それから破綻懸念先債権、それから要注意債権。それで、要注意債権から下の方を全部合わせれば七十七兆になるわけでありますが、しかし、要注意債権というのは十分注意してやっていきなさいよという債権でありますから、その中で相当程度が回収可能債権、こうなるわけでありまして、したがって、二十八兆の不良債権が急に七十七兆に膨らんだものじゃない、こういうふうに私は理解をしておるわけであります。
  139. 原口一博

    原口委員 理解の仕方にはいろいろあるなというふうに思います。ただ、私たちが比べられるような、いろいろな実験だって、条件を同じにしなければ、これは比べられないのですよ。  それで、私たちは、今大変経済活動が低迷している状況にある。手元に、先ほど議論になりました七カ国蔵相・中央銀行総裁会合声明というものを持っています。この五に、「日本においては、経済活動は低迷し、見通しは弱い。回復のためには、金融システムを強化するための引続きの行動及び経済の開放度を高めるため金融その他のセクターの規制改革が必要である。我々は、金融システムの「ビッグ・バン」改革に関するこれまでの進展を歓迎した。」というふうに書いてあります。  これについては、我々という言葉がございますが、日本も含むわけですね。日本の経済活動は低迷しているというふうに大蔵大臣も思われるわけですね。いかがですか。
  140. 松永光

    ○松永国務大臣 これはG7で合意した内容でございます。  その中で、私が申し上げたいのは、それが回復のためには、金融システムを強化するための引き続いての行動、それから経済の開放度を高めるための金融その他のセクターの規制改革、これが大切と。我々はそれを今やりつつあるわけでありますし、そして、ビッグバン改革に関する今までの日本政府の行動について歓迎をしてもらうことができた、こういうことであろうかと思います。
  141. 原口一博

    原口委員 お認めになったということだと思います。  そして、その後段の添付資料の中で、「国際社会の役割」ということで、同じく、「IMFの助言に対して各国が素早く対応することは極めて重要である。国際金融機関によって支援された各国の早急かつ適切な行動が、経済上の問題が危機に陥ること及び他国への波及を防止するために不可欠である。」ということも書いてあります。  これは、資料の文脈から見ると、アジアの通貨危機に陥った国々についてのことをここでは言っているのだというふうに思います。しかし、このことは、同時に、返す刀で我が国にも言えるのじゃないでしょうか。今お認めになったような弱い経済の状況、これをしっかりとした堅調な経済運営にするためには、やはり先ほどの、その後段にある、「IMFの見方では、今や、一九九八年における経済活動を下支えするため財政刺激の強い理由がある。」と、オブザーバーがわざわざここでおっしゃっていることに謙虚に耳を傾けるべきじゃないかというふうに思うのですが、大蔵大臣の御所見をお尋ねします。
  142. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども海江田委員質問に対してお答え申し上げたわけでありまして、そのことの繰り返しになるわけでございますけれども、とにかく財政構造改革ということの中で最大限努力をして、我々は、二兆円の特別減税もやらせていただき、あるいは補正予算も成立をさせていただき、今それが実行中でありますが、平成十年度の予算、そしてそれに関連する法案の中で、先ほど海江田委員お話に出てきました法人税の税率引き下げ、あるいは所得税については教育減税等の制度減税、そして住宅土地に関する減税、こういったもろもろの減税で九千億近いものが十年度の政策減税になるわけでありますが、そういったものを着実に進めていって、そしてこの厳しい状況を乗り越えて、経済が上昇するようにやっておるということを強く訴えてきたわけでございます。
  143. 原口一博

    原口委員 大臣の御見解と私の考え方がやはり違うわけですね。この財革法のスキームがあれば、その中でしかやはりやれないんだということを私はここで強く指摘をしておかなきゃいかぬし、このG7が他のアジアの国々にIMFの言うことをしっかり聞きなさいとおっしゃっているのと同じように、我が国も、責任ある経済大国として、だれかのメンツやだれかの政権の維持とかそんなものにこだわるのではなくて、しっかりとした改革を堅調にしていく、その努力が必要であるということを指摘して、次の質問に入ります。  心の教育の問題については、私は総理の対応を評価するものであります。今、学校の中でどういうことが起こっているのか。暴力、あるいは、子供たちの目の前から、赤ちゃんの目の前からお母さんが消えてしまっている、こういう現状の中で、私は、きょうは具体的に幾つかの御提言と、そして政府の御見解をお伺いしたいというふうに思っています。  総理は、施政方針演説で、学歴が一生を左右しかねない現状を改めるということを述べられました。総理の御認識を伺いたいというふうに思います。  実に八五%の子供たちが高校までに自分の学業のことを、ある意味では非常にいろいろな障害を受けながら、あきらめている子供もいる、そういう報告もあります。私は、こういう学歴社会の弊害から抜けるためには、今すぐ私たちができることがあるのではないか。  企業では、例えばある電機メーカーを中心に、もう学歴不問なんだ、入社するときに学歴を問わないということももう出ています。ところが、私たちのこの行政はどうでしょうか。自分がどの大学を出た、どういうキャリアがある、そういったことを一々聞くんではないでしょうか。国家公務員の採用をこの学歴重視から改めることは、今すぐにでもできることではないでしょうか。そのことを前段、総理の御認識をわかりやすくお伺いしたいというふうに思います。
  144. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、国家公務員あるいは地方公務員を含めまして、公務員は国民全体あるいは地域住民全体への奉仕者という立場が必要でありますから、一定のルールはやはり必要になるだろうとは思います。ただ、それは単純に学校のときの成績だけでいいのか、あるいは、その人がたまたま入学試験の当時能力が高く入れた、しかし、卒業するときには勉強ですり減らしてしまった神経で卒業していく、そういう形が本当にいいのか、これはおのずから別の問題だと思います。  そして、政府自身、行政官に、言いかえれば行政を担う公務員には優秀な人材を集めたいと願っております。これはただ単に能力だけではありません。今、倫理の面でも高いものを求める、そういう状況にあることは御承知のとおりです。そして、昨年十二月三日の行政改革会議の最終報告にも、採用試験の種類ですとかあるいは区分などを見直すこと、さらに、むしろ海外で学位を取得されたような人材をどう確保するか、採用の拡大、いろいろな人材を確保するためにこれから先検討していかなければならない基本的な方向が示されました。  私どもは、公務員制度調査会で今いろいろな角度からの検討をいただいておりますけれども、当然ながら、こういう点は、一方での国家公務員としての全体の奉仕者に求められるべき姿、能力及び倫理性といった問題とともにあわせて考えていくべきことだと思います。
  145. 原口一博

    原口委員 一定の前進をしていただいて、学歴やあるいは自分がどういう学校を出た、あるいはどういう出自である、そんなことで人が差別を受けあるいは子供たちが無用な挫折感を持つことのないような、そういう社会を私たちは目指していかなければいけないというふうに思います。  今、暴力の話を、校内暴力あるいはさまざまな幼児虐待ということは、もうこれは見逃せないぐらい深刻な事態になっている。厚生省からいただいた資料では、虐待体験のある子供たちが大変な数でふえている。そしてまた、その虐待を受けた子供が、例えば厚生省の資料でいくと、九百四十八人の虐待を受けた子供の親のうち、二百十九人は、何らかの形で子供のときにまた自分の親から虐待を受けている、そういう状況、報告がございます。  私は、本格的に子供たちの心の教育、そして乳幼児の心の健康のために施策を用いていかなければいけない、予算を用いていかなければいけないのじゃないかというふうに思いますが、厚生大臣の御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  146. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 子供に対する虐待というのが現実にかなりあるということは、大変残念なことであります。この子供の問題というのは、実は私は親の問題だと思っています。大人の問題だと。本来、一番愛されなきゃならない人に虐待を受ける、こんな悲惨なことはないと思っております。  そういう意味において、昨年児童福祉法を五十年ぶりに改正いたしましたが、この問題につきましても、今までの教護院、これが児童自立支援施設という形で名前を変えましたけれども、親元から離れて施設が預かる場合に、実に難しい問題があるのです。  というのは、肉親の間ですから、家庭の問題、親子の間にどの程度まで行政が介入していいのか。親に、これは自分の子供だ、虐待なんかしていない、他人が関与するなと言われて、どこまで行政側が、あなたみたいな親は信頼できないと言えるか、実に難しい問題があるのですが、その点まである程度踏み込んで、むしろそういう状況もよく行政側で注意して見て、そのような親に対してはむしろ他人であっても子供は守るという姿勢を持つべきだという点も入れて改正をした。今後、そういう点に注意して、幼児虐待がないような社会を、むしろ大人に対して、親に対して自覚を持ってもらうということが必要でないか。  また、必要な施策、例えば、今核家族になりまして、親御さんが子供にどう接していいかわからない家庭が実にふえています。おばあちゃんもおじいちゃんもいない、兄弟も付近にいない、どうしたらいいんだということで、こういう点に対しましても、市町村の保健センター等では母親学級を実施したりとか、むしろ親にいろいろ指導していく。  さらには、子育ての育児不安に対しましては、地域の保育所にそのような窓口といいますか、相談所、遠慮なく相談してくださいよ、お子さんを預けなくても、実際家庭でお子さんを育てている親に対しても、子育てに対する相談に乗りますよというような窓口を設置するという点につきましても鋭意取り組んでいきまして、限られた予算でありますけれども、この育児、幼児に対して社会的に支える面は鋭意努力していかなきゃならない。  これは、本来は、私は半分以上は親の役割、家庭の役割だと思います。親に、大人に自覚してもらわなきゃならない。しかし、それでも限界があるという場合には、どこまで行政がしていいのかという問題でありますので、これは大変深い問題でありますけれども、その点を考えて、自立ある社会を目指す意味においても、まず親が自立する、子供の成長に対しては親が責任を持ってもらう。その中で、そのできない分をどこまで社会が支えるか、行政が支えるかという問題を、皆が心して考えていかなきゃならない問題だと思っております。
  147. 原口一博

    原口委員 ぜひ心してやっていただきたい。  ただ、これはある国の調査だったと思いますが、子供やあるいは乳幼児期にそういう予算を一ドル削減すると、それが七ドル分の後の治安のコストとして返ってくる、そういう調査もございました。  この間私たちは、与野党を超えて、小杉前文部大臣を筆頭に、チャイルド・ライン議連というもので、カウンセラーの方にお見えいただいてお話を伺いました。そのときに、カウンセラーの方が非常にショッキングな話をされました。二歳ぐらいの子供さんを連れた親御さんが、二歳の子供が泣いている、ずっと泣き続けている。おなかが減ったかあるいはどこかが痛いか、泣き続けている。しかし、泣き続けている理由を聞こうとしない。子供というのは二歳ぐらいまではずっと泣き続けているものなんだというふうに思い込んでしまっている。  今大臣お話しになったように、相手の気持ちをわかる、あるいは子育てをする、そういうプログラムを学校教育の中やさまざまな地域教育の中で入れていかなければいけないというふうに私は思います。私は、専門的な援助を必要とする生徒が増加したというよりも、専門的な援助を必要とする状況、環境が増加した、こういうことも一番大きな問題だというふうに思います。  そこで、文部大臣とそれから郵政大臣にあわせてお尋ねをしたいのは、子供たちがメディアから受ける影響についてどうお考えになっているのか。  資料3は、このごろ、一九九六年、「アメリカ電気通信法第五百五十一条 親のテレビジョン番組の選択」ということから抜粋して、和訳してつくったものでございます。確かに、報道の自由はある、放送の自由もある、表現の自由もある、しかし、子供たちには自分たちが健やかに育つその自由もあるんだ。私たちは、その子供たちの自由を守るためにも、こういう事実認識を一つにしておく必要があるのではないか。  郵政省やさまざまな機関に子供の発達に対するメディアの影響をお尋ねすると、なかなかこれという資料は出てきません。ですから、この資料3の五をごらんになっていただきたい。「合衆国の児童は、小学校を終了するまでに平均して、テレビジョンで推定八千件の殺人事件と十万件の暴力行為に接している」。このことを議会は問題にしております。  また、こういう番組を見た子供たちはやはり同じような暴力性を持っているということを認識して、資料4にございます「V—Chipにおけるテレビ画面で表示されるマーク」、あらかじめ子供たちの自由を守るためにこういう制度をつくろうということで立法化がされました。  私たちも、こういったものについて前向きにとらえていかなければいけないというふうに思いますが、文部大臣、そして郵政大臣は、このVチップについて、一回、去年ですか検討されていますが、まだ時期尚早ということで見送られたというふうに聞いておりますが、それがなぜなのか。そして、郵政省がたった一つお持ちの特殊法人は、主に放送技術ということに中心が置かれていて、それは発信する側の立場に立った技術の開発であって、放送と子供たち、放送と私たち大人、放送と人間ということについては多くが触れられていないのであります。  私は、今だからこそ、受け手の立場に立った放送の研究あるいは提言というものが必要ではないかというふうに思いますが、お二人の大臣に御所見をお尋ねします。
  148. 町村信孝

    ○町村国務大臣 御指摘のような、テレビを通じての性的な描写あるいは暴力的な描写が非常に子供に悪影響を与えているという先生の御指摘、まことにそのとおりであろう、こう思っております。やはり、大人の側からきちんとしなければいけないという一つの典型的な例だろう、こう思います。  既に衛星デジタル多チャンネル放送では、親の判断で問題ある映像を規制できるという仕組みがもう導入され始めております。これは大変一つのいいことだと思っておりますが、今後の地上放送において、今委員御指摘のようなVチップ制度というのがアメリカであるわけでありますが、こうしたことについても私どもとしてはぜひ前向きに検討すべきだろう、こう思っております。  ただ、御指摘のような、別途いろいろな権利の制限にかかわる話でもありますから慎重な検討も要るのかもしれませんが、いつまでも慎重な検討とも言っていられないという状況であると私は思いますので、ぜひこうした青少年健全育成の観点から前向きに役所の方でも検討したいし、ぜひ議会の方でもそういう形での御議論を深めていただければと期待をいたしております。
  149. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 原口委員からVチップのことが紹介されまして、アメリカにおけるアメリカの連邦通信法の審議に係る資料も御紹介があったわけでございます。  御存じのように、放送番組につきましては、表現の自由の確保が、これはもう言うまでもなく民主主義国家において基本的理念とされておりますが、同時に、放送というのは、表現の自由と同時に公共の福祉という二つの理念をどう調和をとるかということが大変大事な問題でございます。そういった意味で、放送法にもやはり公共の福祉のために放送を規律せねばならない、こういう目的もあるわけでございますから、そういったことを踏まえて、青少年に対する影響という観点から、放送における今の先生の御指摘のような青少年対策も世界的に大変大きな問題でございまして、青少年対策あるいは青少年の健全育成ということ、これは本当に世界的な大きな問題になっておりまして、日本でもこのことをきちっと受けとめております。  先生今御指摘にございましたように、平成八年、一九九六年にアメリカでいわゆるVチップの内蔵を義務づけまして、これはもう先生今御紹介がございましたように、十三インチ以上のテレビ受信機に、暴力や性的シーンの多い番組をブロックする。これも暴力あるいは性的な格付と申しますかレーティングは、あくまで放送事業者にしていただく。それを一般に公表いたしまして、うちの子供には、例えば十四歳未満の子供には好ましくない番組、あるいは非常に写実的な暴力のシーンは見せたくないということがあれば、親の権利において、実はVチップを操作すれば自分の家庭では見ることはできない、こういった仕組みでございますが、これはアメリカで法制化されまして、今実際にアメリカの民間放送事業者でレーティングをやっております。  いよいよFCCが二月以降定めた日から始まるわけでございますが、そういったアメリカの現状もこれあり、大変大事な問題でございますので、郵政省といたしましても、以前は、平成八年には、多チャンネル時代の懇談会で、ちょっとまだ様子を見た方がいいんじゃないかという話でございましたが、先生の御意見もあり、これは具体的に来年度予算から視聴者保護政策に関する調査研究といった予算をいただき、このことできちっとこの問題に前向きに検討させていただきたいと思っております。  今、最後に文部大臣も言われましたように、衛星デジタル多チャンネル放送では、これはペアレンタルロックと申しまして、親が管理する暗証番号の確認が行われない限り番組を聴視できないということを既にやっておりまして、これはもう二百チャンネル現在ございます。ことしの三月から三百チャンネルになりますが、これについては既にデジタルということもございまして、ペアレンタルロックを付加しているということを御理解いただければというふうに思っております。  以上でございます。
  150. 原口一博

    原口委員 子供の心身ともに健やかに育つ自由を私たち民友連は守りたい、このことを御指摘して、質問を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  151. 越智通雄

    越智委員長 これにて原口君の質疑は終了いたしました。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時四分休憩      ————◇—————     午後一時開議
  152. 越智通雄

    越智委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。西川知雄君。
  153. 西川知雄

    ○西川(知)委員 平和・改革の西川知雄でございます。  私、通常は、法律家ということもございまして、法律論でぎりぎりとやるということで、一部の方からは煙たがられていたわけでございますが、きょうはちょっと一部観点を変えまして、まず総理に、いわゆる総理が目指しておられる国家像の中で具体的にどのようなことをお考えなのか、ここからまずお尋ねをしたいというふうに思います。  この予算委員会の初日に、総理は、六つの改革の中で求めるものということに関しまして、こういうふうにおっしゃっております。「一人一人がみずからの夢に挑戦するチャンスがあり、しかも成功する確率があるということに要約できるかもしれません。言いかえるなら、個人というものの確立であり、同時に、そのみずからの行動に対する責任というものに尽きるのかもしれません。」  さらに、機会の平等及び結果の平等について、同じくこのようなことをおっしゃっております。「同時に、機会の平等なのか、結果の平等なのかということも、改めて問いかけていかなければならないと思います。」「私は、」これは総理ですが、「やはり結果の平等というより、チャンスの平等というものはどんなことがあっても確保しなければならない、そして、その結果として開くであろう可能性を持つ格差というものに対しては、むしろ国民生活のセーフティーネットワークとしての社会保障がカバーしていく部分を持つ。」こういうふうにおっしゃっております。  私は、基本的な概念、そのお考えには、方向性としては賛成でございます。しかしながら、実際の社会、現実がそういうふうになっているかということは、これまた別の問題でございます。  理想的には、やはり個人の自由というものが、この国際社会の中で、またこれからの競争社会の中で養われていかなければならない。しかしながら、その中で、やはり同じ土壌に立って出発することができない人を競争の中に置くということは、これまたできない。そのためには、そういう人たちには社会保障という部分で国家が対応していく、これはもちろんのことでございます。  しかし、それを超える部分については、基本的には自分の自由、取捨選択によっていろいろなチョイスができる、それが私は合理的なこれからの社会ではないかというふうに思っております。すなわち、同じ条件で競争できる土壌をつくっていくということが私は最も重要なことではないかというふうに思います。  そこで、いろいろな観点から、具体的に総理の御所見等をお伺いいたしたいと思います。  今、国会議員の中のかなりの部分の方が、いわゆる世襲議員であるというふうに言われております。その定義はいろいろとあると思います。また、世襲議員が一概にいいとか悪いとかいうことも、これはいろいろな議論があるかというふうに思います。しかしながら、現実問題として、今の小選挙区の制度においては、その地域において立候補する人の名前がよく知られていないと、とてもじゃないが当選することはできない。これからの日本をよりよくしていこう、立派な国にしていこう、そして一生懸命国会で頑張って、国のために、未来のために頑張っていこうと思っても、当選できなければ、また地盤、看板、かばんがなければ、そういうことができないというのが現状でございます。  私は、総理にお伺いいたしたいのでございますが、まずこの世襲議員制度、こういう制度というものが、制度としてないということは、私も当然わかっております。しかしながら、先ほど申しましたように、かなりの部分の方がこういう世襲であるということは一つの事実ではないかと私は思います。  そこで、先ほど申し上げましたように、メリットとデメリットが私はあるというふうに思いますが、このデメリットの部分について、どういうところがデメリットであるのか、個人的な御見解で結構でございますので、総理と小泉厚生大臣にお伺いをいたしたいというふうに思います。
  154. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 火曜日、本委員会におきまして鳩山議員の御質問お答えした内容を、ポイント、ポイントを御紹介になりながらお尋ねをいただきました。  そして、私自身が、議員の言葉をかりますならば世襲議員の一人であります。私の父親も国会議員でありました。そして、父の没後、他の方が、立候補されるはずでありました方が取りやめられまして、亡くなりましてしばらくたってから家族でということになり、私も立候補をいたしました。そして、当時は中選挙区制でありますけれども、その中の競い合いで私は幸いに国政に参画をさせていただきました。  そして、そのとき、外務大臣小渕さん、私、先日長崎の知事選に出馬された西岡さん、そしてもう一人塚田徹さん、二十代で初めて四人当選をいたしました。そして、それ以前にも若い議員はおられましたが、二十代が四人というのは初めてでしたから、それ自体が二世議員の集団というような言われ方もいたしました。そして、恐らく次の選挙では全員落選だろうと、当時報道機関からもやゆされました。  しかし、今逆に、議員が言われるような世襲でない中からも若い議員がどんどん育っております。そして、若いからということで批判を浴びるという状況は、私は、少なくとも私どもが議席を占めましたときから見ますと、大きく変わったと思います。むしろ、立候補されるときの年齢の若さというものは、将来に対する可能性というもの、期待を膨らませる一つの材料になってきたのではないでしょうか。そして、そういう意味では、私は世の中は大きく変わりつつあると思います。  そして、議員は小選挙区制の中でと言われましたが、小選挙区制度であることは現在そのとおりでありますけれども、中選挙区のときでありましても、また参議院の今の比例代表が全国区で個人に対する投票を求めましたときでも、知名度というものが大きな要素を占めたことは、私は事実だと思います。しかし、そればかりで国民に選ばれたとは思っておりません。  そして、口幅ったい言い方かもしれませんけれども、当時、二十五をちょっと過ぎたぐらいの若造が何ができるとさんざん言われました私どもが、今、当時先輩方がごらんになったのとは違った目で、年齢的に若い議員の方々の誕生を喜んでおります。私は、それだけの変化が生じておる、そう思います。
  155. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私も、俗に世襲議員と言われて当選してきました。私は、最初の選挙は落選いたしましたけれども、世襲けしからぬという批判が出ておりました。二回目の選挙で当選させていただきましたけれども、やはり親が政治家、祖父が政治家、私の場合は三代目でした。親の七光りがなかったら、私は当選できなかったでしょうね。  それで、俗に世襲議員、親が政治家であったという議員のプラスは何かというと、若くして出られること、これは最大のプラスだと私は思っています。選挙に出る前に基盤をつくる必要がない。既に親が基盤をつくってくれているという面においては、若くして議員の経験を積むことができる、勉強ができる。そして、議員になる前の努力というものが、同じ世代に比べて議員になってから努力できる、これは大変な違いだと思います。  それと、議員になりたい人から比べれば、いわゆる地盤、看板があっていいなという点では大変恵まれていると思います。私も、恐らくおやじが政治家でなかったら議員になっていなかったでしょうし、当選もできなかったと思います。そういう面においては、いわゆる親の七光りといいますか、私の場合は祖父も政治家でしたから、十四光りによって当選できたと思っております。  ただし、要は、選挙民がいるわけですから、そういう世襲批判と、おやじが信頼できるからあの息子も信頼できるだろうと思ってきた方の期待にこたえなきゃいかぬという努力をするのは、やはり本人の自覚にまつしかない。  私は、日本人はいわゆる世襲が好きだと思うのですね、批判しながらも。お菓子屋さんにしても、魚屋さんにしても、八百屋さんにしても、あのお店は代々やっていると信頼があるのです。お医者さんにしてもそうです。最近は、お相撲の世界でも、芸能人でも、官僚の世界でも、親子が随分ふえてきました。野党の中にも世襲議員が出てまいりました。  こういうことを見ると、小選挙区になったら世襲議員が出るのとは違います。今、小選挙区になったら世襲議員が強いと言いましたけれども、小選挙区制導入論者は、中選挙区だから世襲が出るんだ、小選挙区になれば世襲は出ないと言ったのです、私はそんなことはないと言って反対しましたけれども。中選挙区、小選挙区制度にかかわらず、日本人というのは、そういう代々信頼できる家庭から続いているというのが好きなんじゃないでしょうかね。  ただ、これからは、やはり選挙民にこたえられるような活動をしていくのは本人次第だ。私も、最近ようやく世襲議員の批判を免れて、独自のものが出てきたかな、これからも独自のものを出すように精いっぱい頑張っていきたいと思います。
  156. 西川知雄

    ○西川(知)委員 今、総理からは非常に客観的な御答弁を、また小泉厚生大臣からは、私は質問では、世襲のデメリットというのはどういうふうにお考えかと申し上げましたところ、メリットのみを述べられたところでございます。  最後にこの問題について一点だけ確認をさせていただきたいと思うのですが、両大臣ともデメリットはないというふうにお考えだというふうに理解してよろしゅうございますか。
  157. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは本人の自覚の上でどうかはわかりません。親の名前というのは大変重いものです。だからこそ最初、父が死んだ直後、私は立候補するつもりを持ちませんでした。そして、自分で選んだ自分の好きな仕事を続けたいと思っておりました。数カ月たって、候補者がないということから、もう一度家族の中からと言われ、私は立候補いたしました。そしてその限りにおいて、外から見る限り、デメリットというものはないと思います、選挙に関しましては。  その上で、それを受ける本人の気持ちの中において、親の名前の重さと、それに打ちひしがれないような努力をしていこうという気持ちをメリットととるかデメリットととるかは、本人次第だと思います。
  158. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 デメリットは何かといいますと、私も自分では、政治家になってみて、ほかの世界の職業につくよりも、いわゆる親が政治家をしていたから政界に入ってよかったんじゃないかなという気持ちの方が、当選してみて実感として思います。  そしてデメリットは、私自身、むしろおやじが早く死んで、早く選挙に打って出て当選できたことはもうデメリットよりもはるかにプラスが多かったということで、なかなか自分で政治家になった場合のデメリットというのは探しにくいのです。  ただ、ほかの人から見れば、世襲でない、親が政治家でない、裸一貫でやってきた人から見れば、おまえは苦労が足りないと言われますね。これは私は事実だと思うのです。その分はやはり自分の勉強と努力で補っていかなきゃならないなと、恵まれた立場に立ったと、親の信頼、祖父の信頼を裏切っちゃいけないなという気持ちを持っていくことによってその世襲批判をかわしていかなきゃならないという気持ちを持てば、私は議員としてプラスの方が、メリットの方がはるかに多いのじゃないかと思います。
  159. 西川知雄

    ○西川(知)委員 世襲の話はこの辺で終わりまして、ただ、機会の平等ということについてもう一つ質問をしたいというふうに思います。  新井議員が、これは報道でございますが、地盤、看板、かばんがないということで、いろいろな、政治資金等々も集めないといけない、そういうことで不正な株取引に手を出したというようなことが報道をされております。今、政党交付金というもので、国民の皆さんにお一人当たり二百五十円いただいて、それを政治活動に使うということになっております。しかしながら、それでは足りないということで、またいろいろな活動をしないといけないということで、それぞれ企業、個人等々から献金を、また団体から受けている方もたくさんいられると思います。  例えば、こういう国会議論を自分の選挙民の方に毎回お教えする、どういう活動をやってきているのか、またどんなことが国会で問題になっているのかということを、これを選挙民、私の選挙区の鶴見区と神奈川区だけでも二十万世帯以上の方がいらっしゃいます、その人たちに毎回毎回国会報告書をつくってお送りすることは、現実的には不可能でございます。私は、それでも、国会のこういう質問がありますと、必ず毎回国会報告を一万部刷って、それを手渡ししたり郵送したりして、どういう国会活動が今行われているのか、自分はその中で何をしているのかということをお知らせするようにしております。  しかしながら、私は、そういう活動というものは必要な活動であり、またお金もかかるというふうに思います。いろいろな御批判は私はあると思いますが、一つのやはりアイデアとして、その二百五十円というものを例えば五百円にしていただいて、また七百五十円にしていただく。そのかわりに、団体また個人からそういう献金は一切受け付けない、また受けない。そして、その使途も当然限定をされていく。国会活動がどんな形でなされているのか、どういうことが行われているか、そういうことに使うのはいいけれども、その他については厳格に判断をしていく。  そういうような方向性がなければ、今、経済財政危機にあるという日本をどうやって救おうかということを、それに集中してやはり国会で一生懸命みんなが議論していかないといけないそのときに、資金がないからどうしたらいいんだろう、パーティーをやらないといけない、何かをやらないといけない、そういうことでは、私はこれからの日本国家は立ち行かないんじゃないかというふうに思っております。  そこで、私の今の提案、そして意見に対して、総理はどういうふうにお考えになっているか、ぜひ御意見をお伺いしたいと思います。
  160. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、議員は大変大事な問題点にお触れになりました。それは何かというならば、政治活動にはそれだけの費用が要るということであります。そして、議員の御提案は、それを国民からの費用、すなわち政党助成金によって賄い、その使途を限定し、その範囲内においての活動を行うかわりに、他の手段を禁止すべきだということでありました。  最初の選挙が終わりまして、二度目の選挙の前に、私は、父から譲られました土地つきの家を売りました。最初の選挙から二度目の選挙の途中であります。相続税と二度目の選挙資金というものを用意しなければなりませんでしたから。そして、その差額で私は六本木にマンションを買い、今もそこに住んでおります。幸いに、その後、支援をしたいと言ってくださる方々がふえ、その浄財というものによって私は政治活動を賄ってまいりました。  私は、政治家の政治活動に対して支援をしたいと言ってくださる方々の浄財というのを、民主主義社会の中で認められるべきものだと思っております。そして、政党、政治家、その活動の費用というものがすべて国民の納められた税金のうちから政党助成金として交付をされ、それによって政治活動を行うことがベストの選択だと、私は率直に申し上げれば、思いません。  むしろ、重要なこと、それは、委員が言われた言葉をかりますならば、透明性という言葉になりますか、あるいは公開していくという言葉になりますか、私はむしろ公開とか公表とかいうことの必要性を主張される点については同じ感じを持ちますけれども、私は、すべてを国民の税金の中から政党助成金として賄い、政治活動を行うということが望ましいものだという議員の御意見には、必ずしも賛成できません。
  161. 西川知雄

    ○西川(知)委員 この議論はまた後にさせていただくといたしましても、私が申し上げたいことは、やはりこういう予算委員会でどういうような議論がされているのか、また、今審議しているこの分厚い予算書の内容、これを国民の前でどんなふうに我々が議論をしていくべきか、こういうことを有権者の皆さんにお知らせする、それは私は極めて重要なことであるというふうに思います。  そのための手段に限定して、いろいろなパーティーのこととかそんなことを考えなくても済むような、そういう体制につくっていかないと、国会議員はいろいろと政策立案をするのが役目でございますから、そういうことに対して十二分な対応ができない。そうすると、だれに依存することになるかというと、官僚の皆さんに依存をせざるを得ない場合がたくさん出てくる。そうすると、ますます官僚社会、官僚支配がふえていくんじゃないかというふうに私は懸念をしているところでございます。  実は、大蔵大臣、きのうIMFの件について、声明の内容について議論がありました。私はその前に大蔵省から英文と日本語の仮の訳、これをいただいておりましたので、それを見て、そしてまた大蔵大臣答弁をお聞きしました。わからないところがありましたので、夜八時過ぎですか、大蔵省に電話をいたしました。  大蔵省から電話があって、私にちょっと補足の説明をしたいというので、私がたまたまおりませんでしたので、電話をしました。私が、西川知雄です、IMFの件について、この間のステートメントについて若干の質問があるので担当者を出してほしいというふうに申し上げました。そうしたら、電話というのは気をつけてとらないといけないものであるということを私も自覚しましたが、そのときに、電話に出た人は、おい、あの西川知雄から電話だよ、西川知雄だよ、こういうような声が聞こえてまいりました。  これは何たることだと私は言わざるを得ないのです。大蔵省の、今不祥事とかいろいろな問題があって、きのうここで榊原さんが出てきたら、やじがあって、わいわい言われて、引っ込めと言われたその日の夜に、人が聞いていないものだと思って、おい、あの西川知雄から電話だよと。こういうことは、官僚の中に、私は、国会議員だからと言っているわけじゃなくて、国民の代表としてあした質問をするからその内容を詳しく聞きたいというときにそういう対応では、これは一体どうなっているんだろう、反省が何にもないじゃないかというふうに私は思わざるを得なかった。  きょうの質問はこれをしようとは思わなかったのだけれども、きのうの八時半ごろにそういう話があって、余りにもひどいと思ったので、私は、大蔵大臣総理のその点についての御所見をお伺いしたいと思います。
  162. 松永光

    ○松永国務大臣 西川先生にお答えしますが、それは大変申しわけない応対の仕方であったと思います。それは役人であろうと一般人であろうと、人様からかかってきた電話を取り次ぐ場合に、今申したような形で取り次ぐというのは、私は、人間として、少なくとも大人としての基本的なマナーといいますか、そういったものが身についてない、こう言わざるを得ないと思うのです。  大変申しわけないことであった、こう思います。
  163. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、今松永大臣がマナーということを言われましたが、社会人としての基本的な常識の欠如という一言だろうと思います。  私も実は、橋龍からの電話と言われたことがあるのです。ただ私は、議員のようにそれをもって怒りはいたしませんでした。ただ、送話の部分を押さえて渡すぐらいのことをすればいいのになと、そのとき実は感じました。私は、やはりそういう点で礼儀というものはあってしかるべきだ、そのように思います。
  164. 西川知雄

    ○西川(知)委員 そこで、機会の平等と結果の平等のことについてぜひお伺いをいたしたいと思います。  総理は、改革クラブの小沢辰男議員の二月十八日の本会議での代表質問答弁されまして、本年度の一般会計予算も含む予算案、これは十分検討して、最善というふうに認識をした、最善であるというふうにおっしゃいました。また、この予算委員会でも、松永大蔵大臣は最善であるというふうにおっしゃいました。  私は、今持っているのは一般会計予算だけでございますが、これをずっと見せていただいて、どこが最善かよくわからない。私は、総理大蔵大臣は、この予算書を十二分に読まれて、そして最善であると吟味して、他と比較して最善であるというふうに当然のことながら言われると思います。  この間、大蔵委員会で私が質問をいたしました。金融安定化法案についての質問でありました。法律の内容を審議するわけですから、当然、松永大蔵大臣はこれを何回も読まれたというふうに御答弁をいただきました。その上で、大変難解な法律であるというふうにおっしゃいました。私は、法律自体はそんなに難解じゃない、ただ、あいまいさがたくさん残っているというふうに思いますが、いずれにしろ、最善だとか最良だとか言うときには、全部十二分に吟味して、そして最善、最良だと言われるのが私は筋であると思います。  ところで、この予算書の中で、六百三ページを開いていただけますか。これは当然——予算書をだれもお持ちでないのですか。今我々がやっているのは予算審議で、予算書ぐらい持ってきていただかなければ私は困ると思うのですけれども。  ちょっと委員長、持ってくるまで時間をとめていただけますか。
  165. 越智通雄

    越智委員長 持ってきたようです。
  166. 西川知雄

    ○西川(知)委員 それじゃ、時間がもったいないので松永大蔵大臣に聞きますが、ここに児童扶養手当給付諸費というのがございます。これはどういう観点から去年と比べて最善であるというふうに思われたのか、御答弁をお願いします。
  167. 松永光

    ○松永国務大臣 政府国会予算を提出して御審議をお願いするものを、最善じゃありませんという形での御審議のお願いの仕方はできないはずでございます。したがって、現段階においてはこれが一番いいもの、こう信じて御審議をお願いしておるのですから、どうぞよろしく、こういうことで申し上げているようなわけでございます。
  168. 西川知雄

    ○西川(知)委員 松永大蔵大臣、この予算書を全部ごらんになりましたか。
  169. 松永光

    ○松永国務大臣 恐縮ですが、隅から隅までは読んでおりません。
  170. 西川知雄

    ○西川(知)委員 ちょっと後ろからやじがあって、最初の最善という意味、どういう意味かという御説明がちょっと聞こえなくて理解できなかったのですが、今は、細部までは、最初から最後まではお読みになっていない、だけれども最善である、こういう御説明ですが、もう一度、なぜ最善だと思われるのか、これについてお答え願いたいと思います。
  171. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども申し上げましたとおりでございますが、内閣が閣議決定をして、そして国会予算を提出し御審議をお願いする以上、これは最善ではございませんということでお願いするわけにはまいりません。やはりこれが一番いいと信じて審議をお願いしているのでございます、こう申すしか言いようがないのです。実際、最善だ、そう私は思っております。
  172. 西川知雄

    ○西川(知)委員 総理総理は、これが閣議決定をされて、そして内閣の責任者としてこれを提出されております。先ほどの小沢辰男代議士への御答弁でも、最善である、今の現状では最善であるというふうに御答弁をされました。総理の御見解での最善というのは、十二分にこれを検討されて、そして提出されるからには、全部お読みになって、そして最善であるというふうに御判断されたと思うのですが、その点についての御見解をお願いします。
  173. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に、私は全部を読んでおりませんので、それは正直にまず申し上げておきます。  その上で、社会保障関係費全体の中において、この児童扶養手当、議員が恐らく問題とされようとしているのは、児童扶養手当関係予算額が前年に比べてなぜ減少しているかということをおっしゃりたいのだろうと思います。そして、その影響が出てきておりますのは、所得制限限度額、収入ベースの部分で最高限度を抑えたからというお答えをすることを想定して既にお尋ねだろうと思います。  また、難病の関係も同じような問題点はあるわけですが、社会保障全体の中で厚くすべきところ、制度を見直していくべきところ、高齢・少子社会の中で将来ともに守っていくべき制度、こうした諸点を勘案した上で、厚生大臣大蔵大臣の間における閣僚折衝をもって予算は最終的にセットがされ、そしてそれが与党の了承を得て、今、閣議決定もされ、予算書として議員の前に配付をされております。  そして、先ほどからチャンスの平等ということに触れられながらの御質問でありますので、私は一点、私ごとをつけ加えさせていただきたいと思います。  今、この質問をされるもとの、最初の本会議質問をされました小沢辰男大先輩がここにおられます。小沢辰男大先輩は私の父親をよく御存じでありますが、私の父親は、小学校時代の病気を原因とした肢体不自由者でありました。そして、そのために受験のチャンス等から、そのチャンスを与えられることに苦労しながら育ってまいりました。その人生を見ておりまして、私はチャンスの平等というものは本当に必要なことだと思います。同時に、セーフティーネットの必要性も痛感をいたしております。  この児童扶養手当の最高所得の方々の切り下げというものは、負担のできる方には大変申しわけないが御自分で負担していただきたい、それによって、むしろ所得の低い御苦労の多いところはきちんと維持していきます、制度は維持していきます、そういう考え方で私は両大臣の間の議論は整理されたものと思います。
  174. 西川知雄

    ○西川(知)委員 内閣の情報網というのは非常に速いということで私は驚いておるのですが、きのうは、私が質問をするということではなくて、この児童扶養手当の制度の概要と難病対策見直しの問題について厚生省の方から改めてレクチャーを受けたわけですが、それが既に総理のところに行っているということは、非常に情報が速いということで私は驚いておるところでございます。  ところで、物事というのは、総理も十二分に御配慮される、またされていたと思うのですが、今度の児童扶養手当、これが一部支給者は上限が四百七万八千円から三百万円に下がるということで、一部支給の約二万八千円、これがその方には、三百万円以上の方にはもらえないということになります。また、難病対策についても、今まではある一定の難病の方に対しては公費負担の対象となっておりましたが、それが、入院される方は月に一万四千円、外来の方は二千円、個別に負担をしていただく、そういうようなことになっております。これは金額としてはそんなに多いものじゃないというふうに思われるかもしれませんが、当の当事者にとっては大変なことです。  ところが、この一方、今度の不良債権、この問題があって、そして大手の銀行が、我々国民には本当の不良債権は幾らなのであるか全然明確にわからない。七十六兆幾らかの不良債権と言われている。また問題債権と言われている金額も、これは全体での話ですから、個々に、具体的にどういうようなところでどんな問題があるのかも全然明らかにされない。  また、公的資金を導入する対象になっている金融機関が一体幾らの、どのような不良債権、問題債権を抱えて、また過去の大蔵省の検査でどんな問題点を示達書で指摘されたのか、そしてどういうふうにそれに対して回答したのか、またその回答がそのように訂正されているのかということについての情報の公開も一切ない。  そして、先ほどの山口銀行局長説明では、必ずしも十三兆円というお金が金融安定化のためになくなるわけではないというふうな旨の答弁をされましたが、しかし、例えば優先株、劣後債の価格が落ちた場合には、それは公的資金でその十三兆円の中から補てんをするということになっているわけですから、最悪の場合はその金額が使われることになるわけです。  そういういいかげんな、我々が何の形も見えない、はっきりしないところにそんな金をどんとぶち込んで、片っ方は本当に社会的に困っている人、そういう人たちの負担を上げていく。それが、大蔵大臣、最善の予算案ですか。
  175. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  特別児童扶養手当関係予算というのは、委員もよく御承知と思いますが、少子・高齢化が進んでまいりますというと給付と負担の増大が見込まれます。そうした中で、将来にわたって安定した社会保障制度を構築するために、必要な給付は確実に保障しつつ、給付の効率化、重点化、これを図っていくということで、委員御存じのような予算措置になったわけであります。  一方、金融システム安定化のための施策というのは、我が国の金融システムが安定化していかなければ、実は金融機関からの必要な融資が十分受けられなくなる、そういう企業が出てくるおそれもあります。いずれにせよ、順調に必要な資金が回っていくことが経済の運営、発展にとって必要なことでありますので、この間、御審議を願って法律を成立させていただいたわけであります。  そして、先ほど、資金注入を受ける銀行等についてのいろいろな情報がまだ開示されていないという御指摘がございました。そういう点があることは事実でありますけれども、実際に当該銀行に資本の増大のための措置をするという場合には、審査委員会にその関係の資料は十分提出されることになるはずであります。提出されましたならば、審査委員会における審査の概要は公表することになっておりますので、その中で必要な資料というものは明らかになるものだというふうに思っております。
  176. 西川知雄

    ○西川(知)委員 ちょっと、今非常に重要なことを言われたので確認をさせていただきたいと思いますが、そうすると、審査委員会に対して過去の大蔵省の検査結果とか示達書の内容とか、回答書の内容とか日銀考査の結果とか、それについて提示をされて、それが将来国民に開示される、そういうふうに理解してよろしいのですか。
  177. 松永光

    ○松永国務大臣 私が申したのはそういう意味ではございません。  当該銀行の現在の状況、将来どういうふうに改善していくのかという計画、そういったものについては審査委員会に提出がされます。それをもとにして審査委員会が審査し、そして審査の概要は公表することになっておりますので、その範囲内のものは明らかになるものだ、こう思います。  なお、詳しい点は担当者がおりますので、詳しくは答弁させます。
  178. 西川知雄

    ○西川(知)委員 それはまた別の機会にやらせていただきますので、結構でございます。  そこでちょっと、最後の質問に入る前に、厚生大臣大蔵大臣もやられて、そしてその上でいろいろなバランスをとって今は総理としてこの予算、これは内閣の提出に係るもので、こうやってここで審議をさせていただいている現状でございますが、今私が申し上げた、社会的弱者に対する本年度の予算案、この側面と、今言いました、情報公開も十二分にされない、そして、本当にこれは、ビジネスの社会で損をした人、または損をするかもしれない人、そういう人たちを救おうという、そしてそれを、場合によっては何兆円という公的資金が要るかもしれない、そういうアンバランス、私から言わせると非常にアンバランスなこの予算が最善の予算である、予算案であるというふうに総理は思われるんでしょうか。もう一度御回答をお願いします。
  179. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 全く異質の問題をそのまま対比されることに困惑の気持ちを覚えます。  なぜなら、一方において、我が国の金融システムの安定、これは景気の回復のためにも欠くことのできないことであります。国際的にも非常に大きな影響を及ぼしかねない重要なことであることは委員もおわかりのとおりです。そのために、安定化のシステムというものを御審議をいただき、お認めをいただき、これを動かそうといたしております。そして同時に、その中に預金者保護が含まれていることも、むしろ金額からいきますならばその方が大きなウエートを占めていることも、よく御承知の上でのお尋ねだと思います。  同時に、本年度予算の編成に際し、概算要求の時点で全体にマイナスを掛けながら、社会保障関係は、当然増の伸びを考え、一定額の増額要求を認め、さらに中を精査しながら、制度としての整合性を持つように、厚生大臣以下、また財政当局も努力をしてまいりました。そして、それぞれがセーフティーネットとして十分に役立つ仕組みに、今のままを守るのではなく、前進させていかなければならないと考えております。  今難病にお触れになりましたけれども、その難病についても、他の疾病とのバランス等もあり、そちらからの不満というものを見ながら、真に続けなければならない部分はカバーしておりますし、むしろ希少重症疾病として新たなものも取り入れられていくでありましょう。そういった工夫を凝らしながら予算編成は行っている、議員も官僚経験をお持ちでありますから、よくその辺は御承知のことだと存じます。
  180. 西川知雄

    ○西川(知)委員 最後の質問は、財革法と臨機応変措置ということについてでございます。  これは何人かの方が既にこの場で議論をされ、御答弁もいただいております。  そこで、アメリカのOBRAの条項等々を引用されて、平和・改革の議員、神崎代表、それから前国会では北側委員が凍結案について説明をされ、それについて十二分に検討をしてみたいというようなことを総理はおっしゃいました。(橋本内閣総理大臣「十分に検討したいと言ったんだよ」と呼ぶ)いや、十分に検討したいというふうにおっしゃいました。  ところが、この弾力的な運用については、総理は覚えていらっしゃると思いますが、私が昨年の十月二十一日に総理に対して御質問をしております。  というのは、この財革法の中にも再検討条項というのがございます。そして、その再検討条項では、この法律の施行後必要に応じて、財革の実施状況等を勘案して検討をするという条項が入っております。私は、これについて総理質問をいたしました。そして、どういう状況がこういう状況に入るのかという質問をいたしました。そのときは、例えば前のイラクの戦争、それによってもたらされた非常な経済の混乱、そういうことを例に挙げられました。  その後、私は、そのほかにどんなものがあるのかということについて御質問をしようというふうに思っておりましたら、十月二十八日の委員会では、総理はお出にならなくて、どういう状況かということを当時の三塚大蔵大臣と尾身経済企画庁長官に御質問をいたしました。答えはよくわからないというのが私の印象でございました。  すなわち、例えばそのときに起きていたことは、いわゆる株の世界的な大暴落というのが十月二十七日の現在にあったわけです。私は、その十月のときに、こういう状況のときには、もはやこの財革法のような弾力性のないものについては法律を通すべきでない、今改正をして、もっと状況に合った、そういうものに修正をすべきじゃないかというふうに申し上げました。  もともと私は、この財革法というものが法的な効果があるかどうかわからないようなものでございますから、そもそもそれについての法的な拘束力について疑問をいつも持っているわけでございますが、この附則のところにも検討条項があり、そして弾力的な措置をとった方がいいじゃないかということを十月二十一日から言い続けております。  私は今、尾身長官に、どう言ったかということをお聞きするつもりはございません。私が申し上げたいのは、総理はその時点から、どういうような状況になったらこの検討条項を弾力的に適用するのか、またどういう状況になったらこの財革法の規制に縛られない、そういうような条項を設けようというふうに検討されてきたのか。もう十一、十二、一、二と四カ月もたちますから、きのうやきょうのことでないと思いますが、どういうふうに御検討されてきたのか、御答弁を願いたいと思います。
  181. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員が述べられました十月二十一日の議員とのやりとりそのものをお答えにさせていただきます。  私の手元にありますその問答、議員の御発言は、「集中改革期間中にいろいろ経済社会の情勢が変化して、その結果、この法律に規定された施策とか措置が今度は逆に財政構造改革の趣旨に反する、この三条、四条を守れなくなるということになると法律改正をする、」というふうに私は言ったということになっております。「ということは、社会経済の変化に従ってこの法律を中身を変えていくのならば、社会経済というのは刻々と変わるわけですから、こんな法律なんか要らないのじゃないですか、総理。」これが御質問であります。  そして、私はそれに対して、この法律を本当に通していただきたいということを申し上げた上で、「その上で、例えば湾岸危機から湾岸戦争の時期のような事態というものは、通常の情勢で予見できるものではございません。そして、国家においてそのような、全く現時点において想定できない事態を全く否定することもできないのであります。そういう場合には、これは逆に言えば国会においても、その変化の状況というものは、その結果として採用する施策のいかんとは別として、その状況というものはお認めをいただけるでありましょうから、その場合には法律の改正をお願いいたすことがあるか、それは私はあり得ることだと存じております。」このように御答弁を申し上げております。  今も同じ御答弁を申し上げます。
  182. 西川知雄

    ○西川(知)委員 時間が来ましたので、太田議員にかわりますが、いずれにしろ、この弾力的な運用等々が今いろいろなところから叫ばれております。財政危機だと言うけれども、国債のほとんど、九七%は日本国法人または個人が持っているわけで、ほかの、外国人が持っている、外国法人が持っているわけではございません。また、地方債においては、これは統計がないということでございますが、恐らく一〇〇%は日本の国民、個人、企業が持っているということでございます。  私は、そういう状況もかんがみて、ぜひ今の経済を立て直すために、弾力的な、いろいろな、与野党を問わず、また業界からもそういう要請が出ておりますので、ぜひそのところは十二分にお考えいただいて、そして積極的な答え、これを早急に持ってきていただきたいというふうにお願いいたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  どうもありがとうございました。
  183. 越智通雄

    越智委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、太田昭宏君。
  184. 太田昭宏

    太田(昭)委員 新党平和の太田昭宏です。よろしくお願いします。  総理、この四カ月、三カ月の間、いろいろな意味で、国民のいらいらといいますか、それが募っていると思います。不という字がこんなに多い年明けはなかったと思います。不況や不満や不正やあるいは不公平、さまざまな不というのがあると思います。政治不信の不というのもありますが、私は政府あるいは政治家の発言というものが何か軽くなっているのではないのかなという気がしてなりません。  例えば、先日もそうですが、外務委員会で午前中にイラク問題の発言を聞く、午後になるとそこでの答弁とは違って、一つの方向性を記者会見等で発言をしたりする。あるいはまた、本会議等で、減税についても、前国会でやらないというような発言をしたのが、これが直ちに覆って、これは悪いことではないですけれども、やるというようなことになったりする。あるいはまた、いろいろな自民党の有力政治家が、ここでは最善の予算と言いながら、さまざまな話が出る。  そして、きのうのそうした動きとは別に、例えばきょうの朝日新聞のトップには、大型財政出動の方針である、補正で公共事業をやるのだ、追加減税も検討する。これは新聞の論調と言えば論調なのでしょうが、一つ一つが、ここの場で明確な発言をするということが私は大事なことだろうというふうに思っております。IMFによればと、確かに日本語で「によれば」と書いてある。どちらの言い分ということは言いませんけれども、しかし、わかりにくいということについては間違いない。  総理、冒頭に、政府の発言というのは、この委員会あるいは本会議、責任を持つということが大事であるというふうに私は当然のことながら思いますが、いかがですか。
  185. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 本会議であれ、委員会であれ、国会における閣僚の発言、それは大変重いものであるということは議員の御指摘のとおりであります。そして、私自身そのつもりで今までもお答えをしてまいったつもりでありますが、これから先もその点は常に心にとめておき、行動していきたいと思います。
  186. 太田昭宏

    太田(昭)委員 昨年の臨時国会で、私は、財政改革論議の中で、三塚大蔵大臣でしたが、この財革法は、補正も、そして建設国債も、ある意味では規制がない、しかし、精神からいって大事なのは、補正というのは財政法二十九条の厳正な適用が大事ですね、ウルグアイ・ラウンド費は補正には入りませんねという質問を私はした。そうしましたら、ここにありますけれども、三塚大臣は、このウルグアイ・ラウンド費については、農政の根幹にかかわるものであって、当初においてやるべきものであるというふうに明確に答えている。  例えばウルグアイ・ラウンド費。今は大蔵大臣は違いますけれども、例えば財政法二十九条の適用というのを厳正にやるというこの方針、ウルグアイ・ラウンド費についてはどうなのか。ことし行われた補正予算、これは大蔵大臣にとって正しいことだったのかどうか、見解を伺いたいと思います。三塚大臣の言ったことを踏襲できるのかどうなのか。
  187. 松永光

    ○松永国務大臣 委員御指摘のように、補正予算については、その編成事由が財政法第二十九条により定められておるわけでありまして、財政構造改革を進めるという立場でありますから、補正予算の取り扱いについては、財政法第二十九条の趣旨を厳正に判断して適切に対処していかなければならぬ、こういうふうに思っております。  なお、既に済んだ補正予算のことについて、正しいと思うかどうかという御質問でございますが……(太田(昭)委員「ウルグアイ・ラウンド費について」と呼ぶ)あれは、米の緊急対策ということでの予算だということでありますので、まあ妥当と私は思います。
  188. 太田昭宏

    太田(昭)委員 昨年十月十七日、衆議院の本会議、これは財革法の冒頭でした。三塚大蔵大臣は、減税の財源につきまして、財源を特例公債によらざるを得ない特別減税を実施することは、後世にツケ回しをすることに相なる観点からも適当ではない、こういうふうに答えています。  これが十二月十七日、総理の発言から変わるということについて、何らかの、私は政治家としてかくかくしかじかですからこうですよということを国民に向かって明言をしたかどうか。ここは非常に大事なところだと思いますが、いかがですか。
  189. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは私自身が、ASEANプラス3といいますより、ASEANプラス1の論議の中から決断をしたことでありまして、当時、ぎりぎりの判断として決断をいたしたものでございます。  そして、国民に説明をしたかと言われますならば、記者会見の場を利用し、その記者会見の場から国民に対しての御説明は申し上げたと記憶をしております。
  190. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私は、この間の榊原財務官の発言といい、一つ一つの発言というものの政府として整合性を持ってしっかりと国民に話をし、また、本会議の場でこういう発言を大蔵大臣がして、そしてそれを変更するならば、あるいは本会議とかしかるべき場で、単なる記者会見ではなくて、発言を、かくかくしかじかでこうですというようなことを、けじめをつけるという姿勢が非常に今の政府に足りないのではないか、こう私は思いますが、いかがですか。
  191. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 記者会見という場を利用し国民に語りかけただけではないかという御指摘であるならば、これは私は甘んじておしかりを受けなければならないと思います。国会が開会中であれ閉会中であれ、どういう形で御連絡をすべきかということは、あるいは工夫をすべき点はあるかもしれません。  その上で、しかし記者会見という場は、私は国民に語りかける場として意識をいたしておりました。それだけに、その席上で報告をさせていただいたと自分では考えておりました。
  192. 太田昭宏

    太田(昭)委員 私は、議会というものを重視するという姿勢を重ねてやる必要がある、このように思います。  私は、この財革法というものは、今考えてみると、余りにも手足を縛り過ぎているということを政府みずからが実感をしていると思います。矛盾が非常に内包されている。一方ではキャップをかけて手足を縛る、一方では補正はいいんだ、建設国債もいいんだと。財政構造改革とは名ばかりで、構造に踏み込んでいない。そして、今になってみますと、我々が主張したとおり、このしり抜けの部分にしがみついて、結局は補正ということに重点を置いていく、建設国債なら何とかなるだろう、こういうような非常にいびつな形で今後の経済運営がなされていくんではないかという大変な問題点をはらんでいると私は思います。これが、補正予算のこの委員会、あるいは今本予算の一番大事な今までのやりとりであろうと思います。  そこで、総理、追加経済対策あるいは追加景気対策、いろいろなところで出ています。公共事業か減税か、公共事業も減税もか、これについてどう心の中で思っているのかということについて明言をお願いしたいと思います。
  193. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 率直に申し上げます。  今御審議をいただいております平成十年度予算並びに関連する予算関連、税制関連の法律案、これを一刻も早く通していただきたい、それが今、私の願いであります。
  194. 太田昭宏

    太田(昭)委員 率直という言葉の割には率直じゃないと思いますが、公共事業か減税か、公共事業も減税もか、これについてお答えいただきたいと私は質問しています。
  195. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、十年度予算の御審議を願っており、今議員にお尋ねをいただきますことも含め、今まで私自身が、補正、今後あるなし、あるいは減税あるなし、一切申しておりません。今お願いをしておりますのは、切れ目を生じないように十年度予算を成立させていただきたい、法人課税を初めとする政策減税を遅滞なく実施できるように国会の御審議の御協力をいただきたい、そこから私は全く動いたものを申したことはないと存じます。
  196. 太田昭宏

    太田(昭)委員 大変警戒をしながら御答弁をいただいたわけなんですが、減税について、私は、減税は必要である。総理も恐らく減税ということは頭に当然あろうと思います。公共事業ということについても当然頭にあろうと思います。これから経済が大変になった場合に、減税も使う、あるいは公共事業も使わなくてはいけないという頭の中で、また大蔵大臣も、財政的にはどういうバックアップ体制をとるかということを含みながら、まずは本予算を通せというお話であろうと思います。  ところが、財革法で、午前中の審議の中で海江田委員も言っておりましたが、私は、細かい問題ですが、非常に本質的な問題であろうと思いますので申し上げます。財革法では三つの原則があります。この三つ、これは涌井さんでしょうか、言ってください。
  197. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  財革法の中では、まず第一に、特例債につきましては毎年度減額していくこと、それから二〇〇三年度にはそれをゼロにしていくこと、それから、国、地方を通じた財政赤字を二〇〇三年度にはGDP比三%以下にすること、それから、二〇〇三年度には公債依存度を下げること、以上三点でございます。
  198. 太田昭宏

    太田(昭)委員 これは、総理が帰ってから申し上げますが、非常に難しい問題をはらんでいると思います。特に、財革法のこの原則の、今言った赤字公債、特例公債を二〇〇三年にゼロにする。これは、途中、毎年毎年減らしていくということが書かれていて、そして、その毎年毎年という意味は、補正ということも含めて、それが毎年ということになっています。ですから、九七年度予算、特例公債は七兆四千七百億円を発行した。そして、九八年度、平成十年度予算、特例公債七兆千三百億円を発行した。つまり、当初においては三千四百億円減らしたわけですね。  ところが、この間の補正で、これは財政論的には非常に、まあ駆け込み的というか、助かったというふうに大蔵は思っているでしょう。結局、この補正予算で一兆四百八十億の特例公債が加わったから、これから平成十年度の枠は一兆三千八百八十億に広がった。  これは逆にいいますと、いろいろな、減税をしなさいよ、ことしの秋口は特に危ないですよ、そうしたら同じような特別減税二兆円というようなことをやらなくちゃなりませんよ、こういうふうに私たちは言うわけなのですが、現実には、この財革法の縛りからいきますと、平成十年度の枠はもうあと一兆三千八百八十億しか残っていないというときに、もうそういうような状況の中でどういう減税というものが行われるのかというような論議に実際はなっているんだと私は思います。  臨機応変というふうに総理はおっしゃるけれども、この減税ということで臨機応変は、来年度ということが臨機応変ではなくて、今一番大変なときに臨機応変でなくちゃなりませんから、あるいは実際は五月かもしれない、六月かもしれない、七月かもしれないというときに減税というのは一体どれだけできるのかというと、財政当局は、この財革法からいきますと、一兆三千八百八十億という枠しか使えないということは深刻な事態ではありませんか。弾力性をまさに奪っているのはこの財革法の第四条二号、ここにあると思いますが、いかがでしょうか、大蔵大臣
  199. 松永光

    ○松永国務大臣 今、涌井主計局長が申し上げましたとおり、財革法には三つの大きな縛りがあります。一つは、先ほど話がありますように、毎年特例公債を減らしていくということ、二〇〇三年にはそれをゼロにするということ、同時にまた、国、地方を通じての財政赤字をGDP比三%以下にすること、この三つが縛りとしてあるわけであります。  その三つが縛りになっておるわけでありまして、そういう点からいえば、今委員御指摘のとおり、平成十年度においては、残りは、特例公債を出す余地は一兆三千八百億しかない。数字のとおりでございます。
  200. 太田昭宏

    太田(昭)委員 そこが弾力性を奪うということになりませんかと私は聞いているわけです。総理、どうですか。
  201. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 中座をお許しいただきましたので、一部、議員の御論議の中、伺っていない部分があるかもしれません。要は、財革法における余裕の問題、それと同時に、減税を考えた場合の財源ということであろうと思います。  私は、特別減税の審議をお願いいたしましたとき、恒久化すべきである、継続すべきであるという御意見に対し、これを恒久化あるいは継続しなければならないような事態にならないよう進めていきたいということを申し上げました。そして、現在、平成十年度予算、それ以前に御審議をいただきました九年度補正あるいは特別減税、さらに金融システム安定化策、本予算と並行して御審議をいただく税制改正等々、諸般の施策が相まち、特別減税の継続を必要としない状態にすることに全力を注ぎたいと思います。
  202. 太田昭宏

    太田(昭)委員 総理、減税要求というのは非常に今国民からも、まあ世界が何と言おうとそれは自由かもしれませんが、あります。来年は減税をやる、そういう可能性、余地というのはありますか。
  203. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 逆にお尋ねしてはいけないのですけれども、その議員の言われる減税というのは、税制のうちの何を指すのでしょうか。  今までに実は、減税という形で触れられましたものの中にはさまざまなものがございました。法人課税にも減税を求められた方がございます。所得税にもございました。あるいは証券関係税制でも御論議がございました。それぞれに私は、その御要求には御要求をされるなりの理はあるものと思います。しかし、その内容は、実は多少問題のある部分がございます。  今議員は所得課税を中心に言われました。そうしますと、他の議員にもお答えを申し上げ、とっさに立ちましたとき数字を手持ちをいたしませんので、細かい数字はお許しをいただきますが、二つの問題があろうと思います。  その財源をどうするかという問題。同時にもう一つの問題として、他の先進諸国と我が国の税体系を対比いたしました場合、我が国は課税最低限が非常に高い国の一つでございます。ヨーロッパあるいはアメリカの多くの国々で所得税を負担しておられる階層よりも、はるかに高いところから所得税課税が始まっております。言いかえれば、日本で所得税を負担していない方々の中、相当部分の収入の方が他国においては所得税を負担しておられる。この辺をどう考えるか。  これは、一つは財源の問題、租税の体系、各国との対比の問題、私は二様の問題があろうかと思います。
  204. 太田昭宏

    太田(昭)委員 総理のおっしゃるとおり、もしこれを本格的にどうするかということになると、これは税体系全体の問題になるかもしれません。もう一つは、今度は行政改革をどういうふうにしていくのか、そういう問題になるかもしれません。  しかし、例えばことしの夏から秋にかけてもう一遍補正なら補正をやるという場合の減税幅というのは、これは先ほど私が申し上げましたように、一兆三千八百八十億しか余裕はないわけです。  同時に、いろいろな方が、有力政治家が、公共事業をやれ、あるいは公共事業といっても情報インフラというのが大事であると言っておりますが、情報インフラというのは、これは建設国債の範疇ではありません。建設国債という範疇の中におけるものではないということを考えると、これからどのように、公共事業をやるとか、あるいは減税をやりますとか、臨機応変といっても、ことしの例えば秋口なら秋口というところの対策というものは、現在の財革法をそのままにしては乗り越えられないのではないですかということを私は聞いているわけですが、これについてはいかがですか。
  205. 松永光

    ○松永国務大臣 率直に申し上げます。私には、秋口のことの頭はございません。  今御審議をお願いしておる平成十年度予算、そしてそれの関係の減税法案が予算関連であるわけでありますが、その減税法案は、御存じのとおり、法人税減税、それから教育減税やその他の減税、それから金融関係の減税、土地住宅関係の減税、これが合計すれば八千五百億近くあるでしょう。そういったものがスムーズに実行に移されるように、ぜひ十年度予算とともに、今申した減税法案も速やかにひとつ成立をさせていただきますようにお願いしたいという気持ち、その頭でいっぱいでございます。
  206. 太田昭宏

    太田(昭)委員 頭がそれでいっぱいというのでは本当はないんだと思います。それは秋口のことは当然考えていらっしゃらなくては困るし、本年度予算というのは、そんな三カ月、四カ月のためにこの予算委員会が行われているわけではないと思います。今の発言は取り消してください。秋口は頭にありませんなんというのはとんでもない発言ですよ。
  207. 松永光

    ○松永国務大臣 取り消せとおっしゃいましても、今お願いしておるこの十年度の予算、そしてその関連の法案、特に減税関係法案、それを速やかに成立をさせていただきますようにお願いしたいという気持ちで実は頭がいっぱいでございます。
  208. 太田昭宏

    太田(昭)委員 それはそうでしょう。しかし、その後のことを心配だという声は、この間深谷委員が話をしたり、私が後から申し上げようと実は思っておりますが、手を目先のもの目先のものに打っていく。そして秋口は、さあどうなんだ。秋口というよりはむしろ、六月終わった後ぐらいがどうなんだ。  例えば、株価の低落というのが八カ月後に景気に影響するというのが今までのデータとしてはある。エコノミストの植草さんでも、リチャード・クーでも、例えばそういうことを言っていますよ。図表をずっとかいてみると、株価の低落というものと景気の動向というのは本当に八カ月です。そうしますと、十一月から始まったこういうような状況というふうに考えると、七月とかいうときは非常に危ないということを言うエコノミストは多いですよ。  だから今、いろいろな発言がされて、そして公共事業だ、補正予算だという話になっている。それを、頭がいっぱいだからというわけではなくて、ちゃんと考えているはずで、だから補正ということがあるわけでしょう。ですから、私は、この一年間ということについて政府はそういう方針というものを当然持っていってもらわなくちゃ困るという意味で、秋口のことは頭にはありませんという発言は、言葉としては使い方が間違っているのではないかと思います。  もう一度発言をお願いします。
  209. 松永光

    ○松永国務大臣 大変恐縮ですが、同じことを言うしかないんです。  私は、今御審議をお願いしておるこの予算、これを切れ目なく実行に移させていただきますように、速やかな成立をお願いしたいというその気持ち、それからもう一つ予算関連の法案、特に減税法案、これも速やかに実行に移すことができますように御成立をぜひお願いしたい、そのことで実は、余り頭が大きくないものですから、もういっぱいになっておるわけなんでございます。
  210. 太田昭宏

    太田(昭)委員 総理、先ほどちょっと出ていらっしゃったんですが、結局、補正をやったということで枠が一兆三千八百八十億に広がった。このことをずっと突き詰めて考えてみると、大蔵の出している中期財政の試算、赤字国債は毎年目安として一・四兆は減らしていかなくちゃならない。そうすると今度は、毎年毎年減税どころではないという財革法の縛りというのが相当きついものになっていきますね。  じゃ、建設国債はどんどんできるかというと、建設国債の対象というのは、これは継続事業が非常に多いですから、二〇〇二年までずっとどんどん膨らましておいて、二〇〇三年になればすとんと落として、そしてつじつまを合わせるというわけにはいかないということになると、GDP比三%という条項というのは、実は建設国債にもかなり頭打ちという形で響いてくる。  結局のところ、弾力性を欠いているというこのことを考えますと、今の経済情勢、それはこの本予算を早くと言うんでしょうが、私たちにとりましては、本予算自体を変えていかなくちゃならないし、財革法を、これは改正しなくちゃいけない、こういう主張になるわけなんですが、少なくとも、私が聞きたいことは、この財革法の第四条第二号というのは非常に弾力性を欠いたものになっているというお考えを持っていると思いますが、いかがですか。
  211. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、議員の組み立てられた議論を真っ向から私は否定をいたしません。と申しますのは、要するに、一兆三千八百億のすき間を補正予算に使用する、その使途が何であるかというところから議員は議論を組み立てておられます。そして、その限りにおいて、御指摘の条項に影響があることを私は否定をいたしません。  ただ、先ほどから、かみ合わないな、率直に申し上げてという感じを持っておりましたのは、私どもは、この平成十年度予算が成立をし、しかも年度初めにおいて空白を生じないようにしていくこと、殊に政策税制改正を含めた税制が年度当初から動いていくこと、こうしたことが、今まで積み重ねてまいりました各施策、殊に、例えば九年度補正の中には、議員からウルグアイ・ラウンドに関連しての御指摘がありましたけれども、災害復旧等を中心とした一兆円の公共事業費、一兆五千億のゼロ国債、こうしたものを含んだ施策が用意をされておりますし、さらに、金融システム安定化対策についても、いろいろな御議論はありますけれども、預金者保護と同時に、不安除去の措置が対応を許されるという状況の中で、私は、この予算執行で相乗効果を出していく、また出していくように運営していかなければならないと考えております。
  212. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今総理がおっしゃったり、この間テレビでも尾身長官が発言をされていて、今の予算、法人税の減税もある、特にゼロ国債一・五兆、これは史上最高ですよと。  そうしますと、この間の深谷委員の話のように、公共事業というものについても、この執行の前倒しというお考えはありますか。
  213. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは私がまとめてお答えをするのが適切かどうかよくわかりませんけれども、予算を成立させていただきました段階で、経済の実態とあわせながら、また、それぞれの地域の状況等もよく見た上で、中小企業に対する受注機会の拡大の積み上げの数字等々とあわせながら考えていくこと、そのように思います。
  214. 太田昭宏

    太田(昭)委員 財革法に戻りますけれども、この財革法は歳出削減あるいは行革によって実現するということが大事ですが、くぎを刺しておくということになるかと思いますが、増税によって赤字削減をするということは厳に慎むべきであると思いますが、これについてはいかがですか。私は財革法論議のときにこういう話をしましたが。大蔵大臣でも結構です。
  215. 松永光

    ○松永国務大臣 今の状態は国民に増税をお願いするような環境にはない、そう考えております。
  216. 太田昭宏

    太田(昭)委員 そこだけはくぎを刺しておきたいと思います。  減税について触れましたけれども、もう一つ、私は公共事業についても触れたいと思います。  十年度予算、大蔵からの説明を聞きますと、大きな目玉として二つ言われています。一つは再評価システムの導入、いわゆる時のアセスメント、もう一つはシェアの大幅な見直し、この二つが目玉です、私は、こういう書類を見ましてびっくりしました。全く納得できないという感情がまずよぎりました。  シェアの大幅な見直しについてまず申し上げますと、この十年度予算の公共事業の目玉としてシェアの大幅な見直しがうたわれていますが、私にはどうしてこれが大幅なシェアの見直しかわかりません。どうしてこれが大幅な見直しですか。
  217. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  毎年度予算編成に当たってシェアの見直しに努めてきたところでありますが、平成十年度予算のシェアの見直しにつきましては、そのシェアの変化幅で見ますと、事業別で見ますと二・四%、所管別で見ますと一・〇。ちなみに七、八、九年度ですと、事業別でそれが〇・六から〇・七、それから所管別では〇・三から〇・四ということで、そういう意味では、小さいではないだろうかという御批判はあるかもしれませんけれども、今までの努力の中では、十年度予算では最大限努力したということと考えております。
  218. 太田昭宏

    太田(昭)委員 大蔵からいただいた書類に、「シェアの大幅な見直し」、ここに「農業農村整備事業の見直し等実額では千八百億円程度の大幅なシェア変動」とありますが、この千八百億円というのはどういう数字ですか。私はいろいろ話を聞きましたが、これは積分の世界みたいな感じがしたんですが、千八百億円どうシェアを動かしたのかということを、できるだけ短く、わかりやすく説明してください。
  219. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先ほどはパーセンテージで申し上げましたが、全体として千八百億円程度のシェア変動を行っております。  その内訳でございますが、まず、物流効率化による経済構造改革特別枠千五百億円の配分に当たりまして、省庁間共同プロジェクトについて緊密な連携を確保する観点から、予算を国土庁に一括計上するということで、これが七百九十四億円、それから農業農村整備事業の見直しによるものが四百四十億円、それから旧国鉄及び国有林債務対策の一環として公共事業の削減を行ったもの三百三十二億円ということでございます。
  220. 太田昭宏

    太田(昭)委員 財革法では公共事業の七%削減ということを言いましたが、結果として、平成十年度予算というものを見ますと七・八%と、〇・八%。非常に現場ではきついわけですね。七%でも死活問題だということで、私は、財革法のときに、こんな急激に落とすというようなやり方はまずい、激減緩和措置とかそういうようなことが今まで行われたのではないか、あたかも、すとんと落ちるというのは、野茂のフォークみたいな落とし方だったらだれも打てませんよという話を昨年しました。  そして、現実には、七%削減ということは、これはある地建の報告によれば、公共事業はいろいろな継続事業が多いわけですから、新規事業ということになりますと三〇%以上の削減ということになります、死活問題です、大変な状況だ、助けてくれと悲鳴が上がっていると。こういうときに、七%をなぜ七・八%、〇・八%何で多くしたんですか。お答えください。
  221. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  十年度の公共事業関係予算につきましては、財政構造改革法によりまして、対九年度比マイナス七%を上回らないということになっておりますが、これの予算編成過程におきまして、旧国鉄及び国有林の債務対策の一環としての予算額の削減、これが三百三十二億円、これを公共事業からカットしております。それから、農業農村整備事業の見直し四百四十億円を行った結果、マイナスの七・八%ということになったわけでございます。
  222. 太田昭宏

    太田(昭)委員 例えば今お話しになったこの四百四十億円、農業農村整備事業の見直しの四百四十億円をカットして、シェアが大幅に見直されたという論拠にしておりますが、この農業農村整備事業の見直しの四百四十億円というのは、一体、内容はどういうものですか、農水大臣
  223. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 四百四十億円の内訳ということでございますが、稲作経営をめぐる厳しい状況に対応するため、新たに基盤整備促進事業として非公共予算に四百四十億円を計上し、中山間地域にも配慮した用排水施設や区画整理等のきめ細かい土地基盤の整備を緊急かつ加速的に推進するというものであります。
  224. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今お話のあったとおり、これは公共事業予算を非公共事業予算に移したというだけにすぎないのではありませんか。どうですか。
  225. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 これは、要するに機動的な対応を可能にするというために、従来の二十ヘクタール以上としたものを五ヘクタール以上という細かいものには即時適切に対応できるために改正を行ったものであります。
  226. 太田昭宏

    太田(昭)委員 よう説明してやれというお話もありましたが、私は一応、今の説明ではよくわかりませんけれども、内容については調べてわかっているつもりです。  農水省としては、そういう方向の方がいいであろう、これからの機動的な対応というのが必要であろう、二十ヘクタールを五ヘクタールにした方がいいであろうと。それを縦割りの考えだとかそういうものではないという、公共事業予算ではない方がいいだろうという論拠は、私は成り立つと思います。  しかし、そういうことが、今度は大蔵省が、公共事業のシェアの見直しでございます、こんなすごいことをやりました、二大柱の一つとして、ここにシェアの大幅な見直しで四百四十億円を削りましたというような意味合いの表現をしていくということは、これは間違いじゃないですか。こんなことを胸を張って、公共事業の移しかえを公共事業を削減したようなふりをするというのは、これはやり過ぎじゃないですか。胸を張れることじゃないんじゃないですか。大蔵大臣
  227. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先生御案内のとおり、いろいろな各種の建設事業の中におきましても、いわゆる公共事業関係費という範囲で整理しているものと、非公共事業の範囲内で整理しているものとがございます。  今回の農林関係予算につきましては、農業農村整備事業を見直しまして、より機動的な対応ができる非公共事業の方の増額を図り、公共事業予算の方はカットするということで、こういう形の予算になったわけでございます。
  228. 太田昭宏

    太田(昭)委員 大変わかりやすい、そういう話ですよ。ですから、胸を張って言えるような話ではないですよ。  もう一つ、私は再評価システムの導入という、このもう一つの大きな項目について聞きたいと思います。  総理は、昨年の十二月五日、これからの公共事業ということについては再評価システムの導入ということが非常に大事であるという指示を出されて、一つはダムを初めとする休止とかそういうことをやるべきだ、もう一つはその基準づくりとしての物差しというものをしっかりやるべきだという二つの指示を出されたと思いますが、そのとおりですね。
  229. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まさに御指摘のように、新たに公共事業の再評価システムの導入の指示を出しました。  具体的には、実施段階におきまして、事業採択後一定期間経過後で未着工の事業あるいは長期にわたる事業等に対する再評価を行う、そしてその結果に基づいて必要な見直しを行う、継続が適当と認められない場合には休止または中止する、こうした考え方を公共事業に導入する。同時に、費用対効果の分析の活用、これは全事業においてこれを活用する、こうしたことを私は指示をいたしました。  実際上、既にこの再評価システムは本予算にも生かされており、ダム、港湾、農業農村整備事業等において事業の中止、休止等が現実に発生をしております。
  230. 太田昭宏

    太田(昭)委員 問題は、この総理の発言が十年度予算にどう反映しているのか、具体的にどうメスを入れたのか、私はそこは非常に大事なことであろうと思います。  私は、公共事業が要らないという立場に立ってはおりません。それはかねてから総理も存じていることだと思います。私は、めり張りをつけて、今こそやるべきものはやる、グランドデザインをつくった方がいい。そして、めり張りをつけてやるということが大事で、そのためには再評価システムも大事であるという観点に立ってずっと私は一貫して主張してきたつもりですが、やはり国民から見ますと、あそこはむだだ、ここはむだだということが多いわけですから、それが具体的に平成十年度予算でどう反映したのか、私は、そこを示すことが非常に大事な、この公共事業への不信感を払拭することになろうというふうに思います。  それでは、具体的にどこにメスを入れたのか。例えば、昨年の八月に建設省は全国のダムあるいは貯水池三百八十カ所を調査した。そして、中止とか休止とか一時休止の十八カ所の予算を削るというようなことで、私も昨年のこの予算の総括に立たせていただいて、細川内ダムなどの撤退あるいは補助金適化法等について申し上げて、そして細川内ダムはそのような一つの結論が出たわけなんですが、しかし本年、政府の売り物にしているこの再評価システム、具体的にどこのダム、どこの農道、どこの港湾、どこの干拓等に踏み込もうとしているのか。  まず、建設省、十年度予算で、この総理の指示に基づいて何を削りましたか。
  231. 瓦力

    ○瓦国務大臣 太田委員お答えをいたします。  昨年十二月五日、総理の再評価システム、この指示を受けまして取り組んだわけでございます。平成十年度予算におきまして中止、休止等を決定した事業につきましては、今委員から御指摘のありましたとおり、ダム事業につきましては十八件、これはお示しすればあれかと思いますが、資料はお届けしても構いませんが、十六億三千万、また海岸事業につきましては五件、六億一千八百万、合計二十三件、二十二億四千八百万でございます。  当然、十年度予算につきましては、これらの見直しにより、今回の措置上、予算には計上されておりません。  なお、中止、休止した事業の総額はどのくらいになるか、こういうようなことはよろしゅうございますか。
  232. 太田昭宏

    太田(昭)委員 結構です。  今建設大臣お話ですと、継続された場合、ダム等で十六億、そして海岸事業等で約六億ということで、二十二億ぐらいはもしそれがついた場合はかかったのだけれども、それは削りましたと。  私は、ダムについてはもう去年の八月、ほとんどけりがついたんだなというふうに思っていますが、例えばそのほかに、さまざまなダムで問題になっているところがありますね。そういうようなところが、ことしになりましてさらに検討がされておりますか、どうですか。これは今年度予算ということじゃなくて、来年度予算ということになるかもしれませんが、そういうことも急ピッチで私はやるべきだと思いますが、いかがですか。
  233. 尾田栄章

    ○尾田政府委員 お答え申し上げます。  先ほど先生の方から細川内ダムの事例が出ましたが、これにつきましては、一時休止ということで、ダム等の審議委員会の設置の動向を見守っていくということにいたしております。  その他、全国いろいろな形で議論がされておるダムがあるわけでございますが、個々のダムそれぞれにおきまして、賛成の意見、反対の意見、それぞれの立場から、現地におきましていろいろな議論がされております。そういうものを受けまして、それぞれのダムにつきましてダム等の審議委員会を設ける等、個別のダムごとによく実態を見て対応を考えてまいりたいと考えておるところでございます。
  234. 太田昭宏

    太田(昭)委員 農水省は、具体的に何を削り、金銭的には、例えば継続された場合には幾ら平成十年度予算では削ったということになりますか。
  235. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 農林水産省といたしましては、かねがね、公共事業のむだをなくするために徹底的な検討を行っていたところでございますが、昨年十二月五日、総理から特に御指示をいただきましたので、この結論をまとめたところであります。  その結果、農業農村整備事業の国営事業におきましては、熊本県の羊角湾の干拓事業あるいは静岡県の静清庵のかんがい排水等、十一地区の事業を廃止することといたしました。これらの地区については、事業が休止になっている実情を踏まえて、平成九年度においても予算計上はなされておりません。  なお、これらの地区において執行を予定していた総事業費約二千億円に伴う予算の計上は、今後行わないことになります。  以上です。
  236. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今、農水大臣お話しになった羊角湾あるいは静清庵、特に羊角湾については思い切った措置をとったという評価を私は聞いております。  しかし、今、お話にあって、これらの事業は、よく調べてみますと、今まで休止されていたというものを追認した。これは、羊角湾などについてはかなり思い切って踏み込んだことなんでしょうが、結局のところ、休止したところがなくなったということにすぎない。これは言い過ぎかもしれませんが、そういうことになりませんか。
  237. 島村宜伸

    ○島村国務大臣 お答えいたします。  農業農村整備事業は、土地改良法に基づいて、地元の要請や要望を受けて事業を実施しております。そういう関係で、事業を廃止する場合にも地元の意向を十分伺ってこれを行うという法律上の仕組みがございます。このため、農業情勢の変化に伴い、事業の推進が適当でない状況となった場合、まず地元とのいわば協議、調整により事業の休止を行った上で、その後の検討を十分経て廃止するというふうに至るわけでございます。  したがいまして、農業農村整備事業に関しましては、例えば建設省とか運輸省の場合と異なる点がございますので、御理解をいただきたいと思います。
  238. 太田昭宏

    太田(昭)委員 運輸省は何を削り、十年度予算で幾らぐらい削減したんでしょうか。
  239. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  宮城県の松島港を初めとしまして、十八の港の港湾整備事業を休止いたしまして、その削減額は事業費約三十三億円でございます。
  240. 太田昭宏

    太田(昭)委員 総理、今までそういうことがないという中に踏み込んだと。それで、金額にして約五十億円ぐらい。これは少ないという見方もあるかもしれませんが、そういう芽が出たということは一面評価をしなくてはならない。  去年の十二月五日の総理の発言からいけば、もっともっとこれは進めていく。それは同時に、削減をするということは公共事業への不信感を払拭することにもなるというふうに思います。リーダーシップを発揮していただきたいと思いますが、いかがですか。
  241. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今の御指摘の点について二つお答えをしなければなりません。  一つは、議員もお述べをいただき、ほっとしたところでありますけども、先年来、ややもすると公共事業イコール悪のような議論がありました。そして私は、それは違う、必要な事業は必要なんだということを申し上げてきました。議員も同じような視点で、なおかつ、公共事業のむだを省くという視点からの御指摘を受けたことを感謝いたします。  その上で、当然のことながら、この再評価システムというものを適切に運用しながら、公共事業をより効率的なものにしていかなければなりません。より効果的なものにしていかなければなりません。そして、この点では、残念でありますけれども、費用対効果分析の方は、今回それほど十分に生かされたという状況まで、すべての事業にわたって行えたというところまでの自信は、率直に申して私はまだありません。  ですから、時のアセスとあわせ、この費用対効果分析というものが事業実施の前後において行われ、これが公表される。それによりまして、決定のプロセスの透明化と評価の適正化を図ることができる。これは今回、国会に提案をいたしました中央省庁等改革基本法にも規定をいたしましたけれども、この費用対効果分析の一層の活用を図ることなどによりましても、より効率的な公共事業の運営が図れるもの、そうした方向で努力をしてまいりたいと考えます。
  242. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今、私がこれから聞こうとすることについてもお答えをいただいたんですが、費用対効果分析ということは非常にある意味では難しい。ヘドニック法等の、地価に換算をして、A事業、B事業、同じ河川なら河川、道路なら道路とか、同じ河川でも、今建設省等では環境という面を入れた費用対効果分析というものをし始めた。それぞれのところがそういうような営みがある。  しかし、これは一つは、私は、住民の側からいくと、国がそういうようなことをやるのも大事だが、できるだけ現場に任せて、Aがいいか、Bがいいかということをさせるというような、アンケート方式みたいなものも加味するというようなことも必要だろう。あるいは、ヘドニック法等をさらに拡大をしながら、そうした地価に換算するとかいう面で、事業と事業との間の違いのある事業の中での分析も必要であろう、私はそのように思っております。  私が昨年の同じ時期に、こうしたことについて質問主意書を提出いたしましたが、この質問主意書の中では、なかなかそういうことは困難であるとか、あるいは検討していきますというような答弁書になっておりまして、総理の今の発言でありますと、さらにこれは研究をしていく、踏み込んでいくというお答えだったと思いますが、私は、もう一つ、こういうものが非常に総合的に、どこの場所でどこの官庁といいますか、だれがどういう形でやるかということは非常に大事な、どこがコントロールタワーになるかということは非常に大事な問題であろうと思います。  この間は関係閣僚の六閣僚を集めてのお話だったと思いますが、その中心となるのはやはり内閣だろうと思います。そこがさらに力を注いで私はやっていただきたいと思いますが、御答弁をお願いします。
  243. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、あえて議員の御質問に二つの面からお答えをしなければならないと申し上げましたけれども、私は、再評価システムだけではなく、事業の実施前後の費用対効果分析というのは本当に大事だと思いますし、その結果を公表していく、これが公共事業というものに対する信頼性を増していく上でも大事なことだと思います。  さらに、今議員は、ほかにも幾つかの視点、例えば住民の視野をどう取り入れるかといったことの御指摘もありました。今回、中央省庁改革の中で、公共事業に係る費用効果分析の一層の活用を図ることで公共事業の機動的、弾力的な実施が図られていくように、そうした趣旨は中央省庁改革基本法にも含んでいるところであります。  こうした方角に全体が動いていきますように、委員のお手助けも得ながら努力をしていきたい、そのように思います。
  244. 太田昭宏

    太田(昭)委員 もう一点だけ最後に申し上げたいと思いますが、今、公共事業という問題については、建設国債の対象を広げよ、あるいは別角度で、今までのいわゆる土木建築よりも情報通信産業にというような話があって、いかにもわかりやすい話のように聞けるのかもしれませんが、私は、現実問題としては、光ファイバーか道路かとか、箱物かパソコンかとか、こういうような二者択一的な発想ではなくて、河川と光ファイバーと道路とそして情報インフラを持った都市づくりというように連動していくという、コンプレックス、統合型のそうしたあり方に変換をしていく必要がある。  そして、いたずらに、例えば建設国債といっても、これから私は若干変えていかなくてはならない面もあると思います。例えばGISというようなものについては、ある意味では建設国債の対象ということも、これは大蔵の方からいくとなかなかどこで切るかというのは難しいですよ。しかし、ある意味ではそういうようなことも検討するという時期に来たのかなと私は思いますが、最後の質問ですが、お答えをお願いします。
  245. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員から御指摘をいただきましたような考え方、これは私どもも昨年六月の閣議決定、財政構造改革の推進についての中で、情報通信の高度化、研究開発の推進に資する事業への配慮というものを、公共事業を実施していく上に当たっての留意事項の一つといたしております。そして、十年度の公共事業予算におきまして、道路整備事業の中で光ファイバー網整備のための共同溝等の事業への重点化を図っております。  今後ともにそうした視点を持ち、特に議員は情報通信基盤にお触れになりましたけれども、官民の役割分担なども踏まえながら適切な支援を行いたい、そのように考えます。
  246. 太田昭宏

    太田(昭)委員 終わります。
  247. 越智通雄

    越智委員長 これにて太田君の質疑は終了いたしました。  次に、中井洽君。
  248. 中井洽

    ○中井委員 先ほどからいろいろと御議論のありました昨年の行革特の質疑、その中で、野村証券のVIP口座の問題が出ました。いろいろな交渉があったのでありますが、最終的に、当時同じ党でありました石田幸四郎議員が総理に御質問をいたしました。  総理から、「捜査の進捗状況も踏まえながら、善良な顧客の方々のプライバシーには配慮をしながらも、いわゆるVIP口座というものの正確な把握など、今議員から御指摘をいただきました問題に対しては、適切に、かつできる限りこれに取り組んでいき、国民の素朴な疑問というものに答えていきたいと思います。 また同時に、これは証券市場、そこにおける取引をより透明で、より公正なものにしてまいりますためにも、野村証券自身、また自主規制機関であります取引所あるいは証券業協会、さらに行政の、それぞれの立場から、なお何かできることがあるのじゃないか、そういう認識に立って真剣に検討させていただき、それを受けて適切に対応してまいりたい、」こういうお答えをいただいております。  きょうは、実は証券協会、お越しいただこうと思ったのでありますが、残念ながらお越しいただくということができませんでした。それ以外で、総理がこの野村のVIP口座解明に関してどういう指示を出されて、どういう行動をおとりになって、何が今日までに判明をされておるのか、御報告をいただきます。     〔委員長退席、伊藤(公)委員長代理着席〕
  249. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 証券局長を初め、事務方からお答えをすることをお許しいただきたいと存じます。
  250. 長野厖士

    ○長野政府委員 お答えを申し上げます。  事実関係の解明の点につきましては、証券取引等監視委員会の方から御答弁をさせていただきたいと存じます。  先生が読み上げられました総理の御答弁の後段の部分、すなわち、ああいった問題を踏んまえまして、証券業協会あるいは証券業界としてどういう改善の点があるかという点につきましては、その後総理より御指示をいただきまして、証券業協会において検討させていただき、いわゆる特殊な株式、転換社債でありますとかそういった株式の配分割り当てのルールにつきまして、明瞭な、経済合理的なルールに基づいてやる、そういう社内規則をそれぞれの会社において設定し、わかりやすい言葉で申し上げれば、政治家であるから割り当てたとかそういったことのないように改めるということを決定し、実施に移されたところでございます。
  251. 中井洽

    ○中井委員 証券取引等監視委員会にもお越しいただいております。  監視委員会におきましては、別に業界の自主ルール違反ということについて調査をされるわけではなしに、自主ルール違反は自主ルール違反で、これは証券業界でおやりになるのだろうと思っております。証券監視におかれては、疑惑のあるものについてチェックをされる、調べをされる、こういう役割分担だろうと考えております。  この野村証券のことに関して、VIP口座と言われるもので、今日までお調べになった事実はあるのですか。
  252. 堀田隆夫

    ○堀田政府委員 監視委員会からお答えを申し上げます。  いわゆる野村証券のVIP口座につきまして、国会におきまして野村証券側がその概要を説明したということでございますが、私どもは、VIP口座と称するものであるかどうかは別にいたしまして、結局は、今先生お話しになりましたけれども、個々の口座を利用して違法行為が行われているかどうかというのが我々の関心事項でございまして、そういった観点から野村証券に対しまして調査をいたしまして、証取法に違反する不公正な取引があるということで、損失補てんにつきまして、去年でございますけれども、告発をしたということでございます。  私ども、犯則調査の過程でいろいろな資料、情報を集めるわけでございますけれども、それはあくまでも、ただいま申し上げましたように、証取法に違反する行為について告発をいたしまして、刑事訴追を求めるために行うものでございますので、私どもがこの過程で集めました資料、情報の内容とか、あるいはその存否について公にすることはお許しをいただきたいと思うわけでございます。
  253. 中井洽

    ○中井委員 今回の総括質問をこの証券業界の問題から入らせていただきましたのは、ちょうど総理大蔵大臣のころ私も国会にカムバックをしてまいりまして、大蔵委員会をやらせていただき、いろいろな議論をいたしました。しかし、そのときの大半は金融不祥事問題でありまして、今それらの速記録を読み戻してみましても、今日と同じようなことをまたやっているな。あの当時には損失補てん、飛ばし、こういう言葉であって、今回は一任勘定あるいは借名口座、仮名口座、こういう言葉が国民の中に広く伝わって、何かおかしなルールでインチキやっている、こういう空気をつくり出して、それが金融あるいは証券業界全体の信頼を失墜させておる。このことを本当に残念に思いながら、質問に立っているわけであります。  そういう意味で、この仮名、借名の口座という問題で、過般から、議員の仲間からも容疑者が出たりしまして、大変な騒ぎになりました。この仮名、借名口座につきましては、自主ルール違反ということになります。  この違反の中身あるいはどういう対応をしておるかということは、証券協会に聞きたかったわけでありますが、聞けません。またの機会に聞くといたしまして、証券等監視委員会では、この仮名、借名口座、ここでおかしな取引がされておるかどうかということを御調査なすったことがありますか。あれば、どういう形で、あるいはどのぐらいの数を今日まで御調査なすったのか、御報告をいただきます。
  254. 堀田隆夫

    ○堀田政府委員 お答えを申し上げます。  先生お話ございましたように、いわゆる仮名口座、借名口座は証券業協会の自主ルールにかかわるものでございますけれども、その口座を使いまして証券取引法に違反する行為を行っている、その口座の裏に違法行為が潜んでいるということは十分あり得るところでございまして、私どもの立場でも、そういった意味で、いわゆる借名口座、仮名口座を把握いたしまして、把握したときには、その証券会社に対しまして改善指導をいたしますとともに、その会社を通じて証券業協会に連絡をさせる。証券業協会のルールでございますので、証券業協会はまたそれなりの処分をするということになっておるわけでございます。そういった対応を今までしているということでございます。  数字のお尋ねがございましたけれども、私ども監視委員会が平成四年に発足いたしまして、去年の六月末までの五年間に把握いたしました、あるいは指摘いたしましたいわゆる仮名口座、借名口座でございますけれども、証券会社の検査は全部で三百九十九社、約四百社について実施しておりますが、そのうちの延べ八十六社、口座数にいたしますと五百八十口座につきまして仮名口座が把握されておりまして、その改善指導をしているということでございます。  もう一つ、背後にいろいろ違法行為がございまして、一任勘定、損失補てんというのもございましたし、場合によりまして、いわゆるインサイダー取引それから相場操縦というものにもこの仮名口座が使われているということも把握したことがございます。  以上でございます。
  255. 中井洽

    ○中井委員 その五百八十に余ります仮名口座、もう今や実名をおつかまえになっていらっしゃって、適正に処理されたと思いますが、その中に、政治家あるいは中央官庁の高級官僚と言われる人たちがおった事実はありますか。
  256. 堀田隆夫

    ○堀田政府委員 私どもが把握いたしました五百八十口座につきましては、もとより真正な名義人を把握したということでございますけれども、その中に、政治家とか今おっしゃいましたような中央官庁の役人がいるというような事実は把握しておりません。
  257. 中井洽

    ○中井委員 過般、今委員長席にお座りの伊藤予算理事のところに、日興証券から借名口座の数、御報告があったと聞いております。三十二口座。ほかに政治家で二十五口座、あるいは中央官庁の役人四十五口座という報告を私どもは聞いておりますが、今五百八十と御報告いただきました仮名口座の中に、日興証券三十二口座が入っておりますか。
  258. 堀田隆夫

    ○堀田政府委員 ただいま御指摘の三十二口座は、日興証券が借名口座の疑念があるということで当委員会に資料を提出したものであるというふうに承知をしております。  私どものこれまでの検査で把握いたしました五百八十口座との関係というのは、ちょっと直ちにわかりませんけれども、恐らくその五百八十の中には入っていないだろうと思われます。
  259. 中井洽

    ○中井委員 政治家の名前が入っていないし、日興証券の三十二の中には政治家がおったわけですから、当然日興証券は入っていないんだろうと私は思いながら聞きました。  四百余りのうち、八十六を調べて五百八十あった、こういうことでございます。証券等監視委員会におかれては、疑惑があって初めて入れるわけでございます。しかし、この仮名、借名口座というのは協会の自主ルールでございます。協会みずからが、こういうときにきちっと調べてもらわなければなりません。  きょうは、そういう意味で私はお願いをしたわけでありますが、残念ながら、総括の間には民間人を呼べないというふうなことで呼べませんでした。  そういう意味で、大臣からひとつ、証券協会、自主ルールちっとも守られていないということであります。三百九十九社きちっと調査して、そして報告をする。幾ら仮名があるんだ、借名があるんだ、いつまでに直すんだ、政治家は何人おるんだ、それから高級役人何人だ、こういうことを含めて御報告をさせてほしい、このように思いますが、いかがですか。大蔵大臣、調べるのは得意じゃないですか。
  260. 長野厖士

    ○長野政府委員 お答え申し上げます。  先ほど堀田事務局長が御答弁いたしましたように、協会の自主ルールといえども、証券取引等監視委員会の対象になっております。  それから、御指摘のとおり、証券業協会におきましても調査をいたしまして、私どもが承知しておりますところでは、数字で申し上げますと、証券業協会は仮名、借名口座に関しまして、平成七年度では五十五件、八年度では五十一件、九年度は、ことしの一月まででございますけれども、三十二件の処分を行っておるというふうに承知いたしております。
  261. 中井洽

    ○中井委員 長野さん、僕はそんなこと聞いていません。今の数、聞かせていただいただけでも五百八十に足りません。自分たちでルールを破ったことをしながら処分していない、こういうのもあるんでしょう。  そういうことを含めて、やはり、公正なルールでやっておる、こういうことがわからない限り、どんな経営安定の、あるいは金融秩序維持のルールをつくってあげても国民が参加してこない、私はそう思います。それも、もう何年も何年も議論をしてきておる問題であります。  そういう意味で、局長はああ言いますが、大臣、きちっとお答えをいただけるように、大臣として協会を御指導いただけますでしょうか。
  262. 松永光

    ○松永国務大臣 協会で定めた自主的なルール、そのルールに従わない、違反している者がどれだけおるか、それを調べて報告を求めなさい、こういう趣旨でございますか。(中井委員「口座数、借名、仮名」と呼ぶ)事務方と相談して、可能ならばぜひやらせたい、こう思います。
  263. 中井洽

    ○中井委員 御就任のころに比べて随分御慎重になられたなと思いますが、ひとつぜひ御調査をいただきますようお願い申し上げ、また、私ども、ぜひこの協会にこちらへお出かけをいただきたいということでありましたが、きょうはだめだということで、委員会でだめだということになったわけであります。委員会でお呼びをいただいて、きちっとこれらについてお約束をいただけるよう、委員長としてもお取り計らいをいただきますようお願いを申し上げておきます。  次に、昨日、我が党の二見議員がG7の問題について議論をいたしました。本日も他党の皆さん方から御質疑をいただいたわけでございますが、同僚としてもう一度、大蔵大臣にあえてお尋ねを申し上げたい、このように思います。  大臣は、このG7共同声明の第五項のことにつきましていろいろと言われた中で、財政出動の必要性があるということを私が認めたわけじゃありません、IMFの報告について私の方が拘束されるということはないのです、こういうふうにお答えになっていらっしゃいます。また、IMFの見方として、そういう財政刺激の強い理由があるというのがIMFの見方なんです、それを他の国がそのとおりだというふうに言っているわけじゃないし、日本もそれについては、日本は別の見解だ、こう言っているのです、こういうふうにお答えになっていらっしゃいます。また、他の国々はどうだということについては先ほどからお答えになられています。これはお変えになるつもりはありませんね。そのままですね。
  264. 松永光

    ○松永国務大臣 午前中の質疑の場合に詳しく申し上げたつもりでありますが、IMFの専務理事さん、この方は、実はG7の正規のメンバーというよりはオブザーバーの立場で御出席なさって、そしていろいろ意見を述べられたわけであります。  七カ国蔵相・中央銀行総裁会議の声明、この声明というのは、その会議で合意された事項、これを中心にして声明に盛られておるわけであります。  日本に関する事項については、午前中も申し上げましたとおり、その第五項に、「日本においては、経済活動は低迷し、見通しは弱い。回復のためには、金融システムを強化するための引続きの行動及び経済の開放度を高めるため金融その他のセクターの規制改革が必要である。我々は、金融システムの「ビッグ・バン」改革に関するこれまでの進展を歓迎した。」ここは、午前中も申し上げたとおり、G7が意見の一致を見た、合意を見たところであります。  そのとおりになっておるわけでありまして、その次のパラグラフのところがあるわけでありますが、これはこのIMFの専務理事さんが、IMFの見方としては、経済活動を支えるための財政刺激の強い理由があるという意見を述べられたわけです。これに対して私は、日本としてはこれこれしかじか、こういうことをやっているのであるから、日本の経済、立ち直っていくということを強く申し上げたわけです。  この私の主張に賛同した人がどれだけおって、IMFの見方に賛同する人がどれだけおったかということの数字は申し上げられませんけれども、いずれにせよ、このIMFの見方についての全体としての合意が成立しなかったものですから、IMFの見方というわけでここに記述がなされた、こういうことでございます。
  265. 中井洽

    ○中井委員 ちょうどきょうは、公定歩合のことで日銀総裁に御出席をいただいております。日銀総裁も、もちろん正規のメンバーとして御一緒に御出席でございます。  昨日からの論議のやりとり、御存じかどうかわかりませんが、この共同声明の中で、「IMFの見方では、今や、一九九八年における経済活動を下支えするため財政刺激の強い理由がある。」こういうことが第五項ですか、載せられております。これをめぐって、今大臣答弁ありましたように、いろんな論議がございます。日銀総裁として、そこに御出席されて、どういうやりとりであったか、どんな空気であったか、率直にお教えいただければありがたいと思います。
  266. 松下康雄

    ○松下参考人 私もG7の会議に出席をいたしておりました。ただ、私の立場といたしまして、金融政策、金融事情というものを説明申し上げ、また御質問に答えるという形で出席をいたしておりましたわけでございます。  私の方の金融政策の点につきましては、私は、会議の席上でも、また個別の会談でも、現在の金融政策の説明をいたしまして、日本銀行としては、現下の景気情勢を踏まえて、金融面から経済活動をしっかりと下支えをしていくために思い切った金融緩和基調を維持しているということ、また、金融調節の面におきましては、市場に潤沢な資金供給を行って金融市場の安定に努めているということを説明いたしまして、各国の理解を得たと考えております。  今回のG7におきましては、金融に関しては、参加国の関心はアジアの通貨・金融不安の問題に集中をいたしておりましたので、これ以上、特段、各国から我が国の情勢についての御議論はございませんでした。
  267. 中井洽

    ○中井委員 特にアジアの通貨危機の問題等がありますから、IMFもかなりいろいろなことで発言があったのだろう、こんなふうに私どもは拝察をいたしております。  二見議員も他の同僚議員も、議論をいたしましたのは、大蔵大臣、何もあなたがうそをついているとか間違えているとか、そういったことを言っているわけではありません。私どもから見ますと、確かにIMFが言われて、各国がみんな賛成されて、それに対して日本がいろいろなことを説明されて、大臣のお言葉では、財政出動もできない、こう言ったというような言葉もございます。  これらをずっと聞いていますと、僕はそうじゃないと。そうじゃなくて、やはり今予算審議中だ。だから、予算案が通るまではそういうアメリカや他の国々の要請にはこたえられない。しかし、予算が成立した後、財政出動してでも景気刺激をやる、したがって、合意にしないでくれ、こういうことでこういう文章になったのだろうと私どもは思うわけであります。そういうことではありませんか。
  268. 松永光

    ○松永国務大臣 私が申し上げたことは、要するに、我が国がことしになってからとった施策、すなわち二兆円の特別減税、補正予算、それを実行に移しつつありますし、それから金融システム安定のための公的資金三十兆を使っての措置、そういったことを説明した上、これから九八年度の予算の速やかな成立をお願いし、かつ、その予算と一体をなしてもろもろの減税も実は法案を出してある。これが成立をすれば、その減税もさらに加わって日本の景気は上向いてくる、くるはずといったことを強く申し上げたわけであります。
  269. 中井洽

    ○中井委員 大蔵大臣が言われたということは、僕らはわかっています。しかし、他の国々は、それはわかるけれども、財政出動による景気刺激を、こういうことでああいう話になった。それに対して日本は、合意にはしない、しかし、文章に出るということは、日本が反対だと書いてないわけですから、文章に出るということは要するに予算が通ったらやります、こういう約束をしてこういう書き方、こういう共同声明になったんじゃないのですか、こうお尋ねをしておりますが、率直にお答えになられません。  ルービン財務長官やサマーズ副長官はもう去年あたりから盛んに言われているわけでありますから、その状況からもっと厳しくなっておるこのアジアの状況、日本経済の状況、これを考えられると、言われて当然のことだろう。IMFがこう言ったということは、それは他の六カ国が思っておる圧倒的多数の意見だったと私どもは思っております。  アメリカの斉藤駐米大使に対しても、サマーズ副長官がこの間から会われて、内需刺激策をとれ、それは減税だ、こういうことまで言われたというニュースまで報じられているわけでございます。これらに対して、日本が断った、いやいや、それはできないと言った。それだけで通用するとは私は思いませんが、いかがですか。
  270. 松永光

    ○松永国務大臣 サマーズさんが駐米大使に言ったということの記事を私は見ましたので、その点については実は榊原氏に確かめさせたわけです、サマーズさんに対して。そうしたら、あの記事は正確じゃないという返事が榊原氏にあったということでございます。
  271. 中井洽

    ○中井委員 このごろは、アメリカから報じられた景気刺激の日本に対する要請のニュースは、すべて新聞社やマスコミが間違って伝えている、こう答えるのがはやっているようでございますが、しかし、外国から見ても、財政出動による景気刺激をしないと、アジアはもとより日本もおかしくなる、こういう心配がどんどんとふえておるのは事実であります。また、私どもも大変このことを憂えて、昨年から、減税の問題を含めていろいろな提言を続けてまいりました。  その一つに、公定歩合、もう〇・五%というのを二年半以上もお続けになっていらっしゃる、このこと自体が異常な事態でありますし、逆にこのことがあるために、いろいろな政策を続けてもうまく経済が回転をしないというところまでもう来ているんじゃないか。今の経済が順調なのは輸出だけ、こういう状況下にありますから、この輸出を下支えしておる公定歩合〇・五%という低い水準を維持せざるを得ないというところもわからないわけではありません。  しかし、去年からことしにかけて日銀総裁がたびたび言われております、家計にしばらく御迷惑かけているけれども、設備投資意欲を刺激して、そのことが雇用を守り、広い意味で家計に戻っていくんだ、だからしばらくの間我慢ください。こういう議論は、もう、設備投資意欲等も本年に入ってから全く冷え込んで、金利が低いから設備投資をしよう、こういう意欲が出てくるような状況にないと私どもは考えています。  そういう中で、日銀総裁として、まだこの〇・五%という超低利の異常な金利をお続けになるおつもりでしょうか。
  272. 松下康雄

    ○松下参考人 私ども、これまで日本経済を自律的な回復軌道にしっかりと乗せていくということをねらいといたしまして、思い切った金融緩和措置を継続してきたところでございます。こうした金融緩和は、企業収益を回復させ、また設備投資を促すというようないろいろな側面から、これまで経済活動の下支えに貢献をしてきたと考えております。  しかしながら、我が国の経済は、企業や金融機関の不良債権問題というおもしを引きずりながら、今日なお自律的に回復をするまでには至っておりませんで、最近ではむしろ停滞を続けているという情勢でございます。  私どもとしましては、こういった金融緩和に対しまして、さまざまな御意見があるということも承知をしております。ただ、しかし、現在のような経済情勢のもとにおきましては、まずもって経済全体の足取りをしっかりとさせるということが大事なことであると考えております。  こういった観点から、本日、午前に開催をいたしました日本銀行政策委員会の金融政策決定会合におきましても、当面の金融政策の運営につきまして、委員間で種々討議をいたしました結論として、現状維持をするということを決定いたしたところでございます。  金利のあり方ということにつきましては、私どもも、その時々の経済の実情に応じまして、引き続き今後も真剣に検討してまいる考えでございますけれども、ただいま申し上げましたように、現在の経済情勢を踏まえますというと、これまでの金融緩和基調を維持いたしまして、金融面から経済活動をしっかり下支えするということによりまして、経済全体の活力を高め、自律的な景気回復が実現をするように促してまいりたいと考えているところでございます。
  273. 中井洽

    ○中井委員 日銀の金利政策、過般の法律改正で、さらに一層日銀独自の御判断、こういうことになりました。これはこれで、私どもは、本当に日本経済のために全力を挙げてよりよい御判断をいただきたいと思いますし、尊敬する松下さんですから間違いなくおやりいただける、こう思っています。  しかし、私みたいに経済のことが素人の者から見ましても、日本はどうも、円高に振れたときにいろいろな騒がれ方をして、金利をすぐいじってしまう。この金利をいじった後、長引いてしまう低金利がある。そのことで実はバブルを起こしてしまった。今回もまた、〇・五%という世界の国がかつてやったことのない超低金利政策を、円高ということのためにあえて踏み込まれて二年数カ月になっております。私は、このことが逆に言えば東南アジアのバブルをつくったのだ、こう思っております。  東南アジアがいろいろな経済努力をされて伸びたということもあるのでしょう。しかし、日本でバブルをやれない分、公定歩合〇・五%、この安い金利で東南アジアで、かつての日本の国内でやったバブルと同じことをやった。そして、三月三十一日BIS規制達成等を控えて、去年あたりから資金回収を始めた。そのことが、結局、東南アジアの急激な通貨不安をもたらした一因になっている、私はそう思っています。  また、いろいろなことをお思いになるかもしれませんが、今、とにかく中小企業への貸し渋り、大企業ですら資金回収に遭っておる、こういう時期ですから、資金需要というのはかなり逼迫している。そのときに、〇・五%という超低金利がいいのか。あるいは、〇・五%という超低金利を続けながら株価が一向に回復をしない、こんなことを考えたら、この超低金利をやっておる理由がわからない、私はこう考えています。また、株だけではなしに、円安にも随分なってまいりました。  過般、私どもは一つは賛成して、一つは反対しました金融二法が国会を通過いたしました。マスコミ等の報道を見ますと、大手の銀行等が横並びでこの制度を使われる、こういうことのようであり、表面的な金融秩序に対する不安、こういったものは解消されるのが目に見えております。三月三十一日に、何か申し込んで、資金が導入される、劣後債ですか優先株ですか買われる、こういうことのようでございます。そうしますと、一応、金融機関は不安感がなくなるわけでありますから、そういうタイミングを見て金融政策というものをいじられた方がいろいろな政策が生きてくるのだろう、私はこういうふうに思います。  大変素人っぽい議論で、日銀総裁にたびたび煩わせて恐縮でありますが、あえてそういう私の意見に対してお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  274. 松下康雄

    ○松下参考人 ただいまの御指摘の中で、過去のバブルとその前の金融政策の関係の点につきましては、私どもも、過去のバブルの発端になった一つに、非常に長きにわたる金融緩和というものがやはり一つの原因になっていたということは感じておりまして、その点からの私どもの反省といたしまして、金融政策の目的、目標というものは国の中の物価の安定と持続的な経済の安定成長を確保するように運営をすべきもので、対外的な為替等の水準に対する配慮は二の次のことだという一つの反省を持っているわけでございます。  それからまた、ただいまの中小企業等の現状の御指摘でございますけれども、私は、現在の金融市場におきまして、短期の資金の出し手の態度が非常に慎重になっておりますために金融の資金の流れがやや滞っておりまして、このために、私どもの低金利政策にもかかわりませずやや長めの短期資金の金利が上昇する傾向がございました。この点については、やはり経済の回復を図っていくためには問題のところだと思っておりまして、このような状況を改善しますために非常に多額の流動性を市場に供給し続けております。  その結果、現在やや金利の水準が落ちついてきかかっていると見ておりますけれども、なお年度末を控えまして、この点については、私どもとしては強い決意を持って金利の安定を図っていくということに努力をしなければならないと思っております。現状、そういった情勢のもとでございますので、いろいろ御指摘の事項が、もちろん私どももよくわかっている点がございますけれども、私どもの政策姿勢としては現在の姿勢を続ける必要があると考えております。  ただ、私どもも、先ほども申しましたように、金利のあり方というものはそのときそのときの経済情勢を誤りなく判断をして適切に決めるべきものであると思っておりますから、今後におきます金利の動向に、あるいは経済の情勢につきましては十分注意をしながら見守ってまいりたいと思っております。
  275. 伊藤公介

    ○伊藤(公)委員長代理 松下総裁、どうぞお帰りください。御苦労さまでした。
  276. 中井洽

    ○中井委員 今お話を申し上げました貸し渋りについて、お尋ねをいたします。  けさのニュースで、中小企業庁が、最近、去年の十二月時点に至るまでの貸し渋りの実態、中小企業だけじゃなしに、大企業に至るまで調査をされた結果が流されております。やはり貸し渋りの増加がかなり見られる、しかも大企業にまで見られる、こういう実態が明らかになってまいりました。  問題は、二月、三月の決算期、本当にどういうふうに乗り切っていくんだ、こういうことだろうと思います。過般の金融二法も、金融秩序の維持、こういうこともありますが、貸し渋り対策としてとられた。ある都市銀行なんかは、三月までに二兆円の資金の回収をやはり支店長会議で言われて、日本のサラリーマンですから、割り当てられた以上に回収してしまう。貸し出ししない。こういう中で、本当に厳しい状況を私どもは心配をいたしております。  政府関係機関もかなりの枠を広げてこれらに対応をしていただいておりまして、私の手元にあります平成九年四月から十二月までのいわゆる保証協会、「各県の保証協会代位弁済」を見ますと、もう四月から十二月までで、あと三カ月残して、山梨、岐阜、福井、大阪府、兵庫県、奈良県、佐賀県、平成八年度分の代位弁済を金額的に上回っておる、こういう状況が出てまいりました。特に大阪府等は、もう五千件、一千億円を突破する代位弁済を行っておりまして、過日も、新たに府の方も援助をする、保証協会に対する基金を予算の中で出していく、こういう状況になってまいりました。目いっぱいやっていらっしゃる。  そうすると、この二月から三月の貸し渋りに対して、あるいは中小企業、民間企業の危機に対して、政府としてどういう対策のもとにこれを乗り切ろうとされておるのか。これは通産大臣ですか、大蔵大臣ですか、お答えをいただきます。
  277. 林康夫

    ○林(康)政府委員 お答え申し上げます。  御指摘の大阪等における代位弁済額が大変大きく膨らんでおりまして、特に大阪においては、他の保証協会と比較して高い水準にあるというのは事実でございまして、特に最近の傾向でこの代位弁済額がふえ続けているのも事実でございます。  私どもといたしましては、今年度の補正予算におきまして六十三億円、信用保証協会基金補助金を積み増していただきまして、また、現在御審議いただいている平成十年度予算案におきましても、この補助金を百億円計上させていただいているところでございまして、こういった予算措置が信用保証協会の財政基盤の強化ということで、貸し渋りについてはかなり緩和をされるベースになるのではないかと期待をしているわけでございます。
  278. 中井洽

    ○中井委員 そういう対策をされておるほどひどいので、二月、三月、本当に大丈夫ですか、どうするんですかとお尋ねしたつもりでありますが、あえて、おやりになっておる制度を御説明いただきました。  本当に二月、三月を心配いたしておりまして、そういう意味で、私どもは、さらなる本年度予算での減税あるいは景気対策、こういったことを口酸っぱく求めているところでございます。  橋本総理は、一生懸命、六つの改革を含めてお取り組みになっていらっしゃる。それはそれで、私は敬意を表するところでございます。  ただ、かつて我が党の西田議員が質問したときに率直にお認めになられたことでありますが、一九九七年、やはり一月、これから三月の年率換算の成長率、八・六、この高い数値のもと、あるいはまた十月から十二月、三・八、こういう数値のもとで、いけるということで消費税を上げられた。あるいはまた、減税をやめられたり、医療費を上げられた。このタイミングを逸した施策が今日まですべてマイナス、マイナスと働いてきておる。一生懸命おやりになっても悪い方に悪い方にしかいかない、そこら辺のもどかしさを総理自身がお感じになっていらっしゃるのではないかと僕は思います。  かつて、先ほど議論いたしました〇・五%という超低金利政策、その中で消費税を上げたのはどうだったろうか、こういう述懐を総理はなさったこともございます。これらを含めて、今日、一生懸命おやりになってもうまくいかないというのはそこら辺にあるのだという認識を改めてお聞かせをいただきたいと思います。     〔伊藤(公)委員長代理退席、委員長着席〕
  279. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、率直に申し上げまして、金利の水準の問題について、少なくともこの職につきましてから、お答えあるいは感想を申し上げたことはないと思います。これは日銀の専管事項でありますから、これについて私は、それが云々ということを申し上げたとは思いません。  その上で、再び消費税率の二%引き上げのタイミングについてのお話をいただきました。そして、その影響というもの、言いかえれば、消費税率の引き上げ前の一—三月期における消費者心理が、買い走りといいましょうか、消費性向を高め、四—六の落ち込みを想定はしておりましたけれども、吸収され、やがて秋になれば回復するであろうと考えておりましたものが、いずれも大きく振れたということは、私はそのとおり認めております。
  280. 中井洽

    ○中井委員 私どもも、そのときそのときで、与党と野党でありますから対立もありますが、日本のことを思い、まじめに議論をしてまいりました。私は、総理自体も本当に一生懸命お取り組みになっていらっしゃる、このことは、先ほども申しましたけれども、ひしひしと感じております。  しかし、それでもなおうまくいかない、どんどんとアリ地獄に入っていくような経済環境に見舞われておるというのは、もともとそういったところのスタート、ここに間違いがある。やはりここのところを間違えたという率直な思いや反省をして、やり直しをする以外にないのではないか、こう思います。  例えば、住専のときにいろいろなことを言われました。その後、何回、金融秩序の維持のためにいろいろな法案をやったのかと私は思わざるを得ません。この国会におきましても、少し違いはありますけれども、金融特別委員会、行政改革特別委員会、財政改革特別委員会、もう国会のたびに特別委員会がつくられる。また、私もそのたびにそこらの理事にさせていただきますが、いろいろな対策をやって、今度は大丈夫、これで大丈夫、こう言われるけれども、やはり銀行株は上がらない。金融秩序の維持、これがなかなかできない。  タイミング悪く不祥事が出るということもあります。しかし、結局は根幹的な景気対策、これが違っておる、ここが市場が反応しない最大の原因だ、私はこう思っています。  そういう意味で、私どもは、総理が過般補正予算で減税をやられたことを、自分たちで要求しながら、タイミングは悪いし少な過ぎるということで反対をいたしました。これなども、もっと早く、もっと違う形で継続的な制度減税をおやりになっておれば、反応があったと私どもは思っております。  そういった意味で、これは予算の修正をしてでも、あるいはこの年度内にそういう制度減税を思い切ってやる、こういったことを当然お考えになるべきだと思いますが、あえて御返事をいただきます。
  281. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、あえて答弁を想定された上でのお尋ねでありましょうから、改めて私も申し上げたいと思います。  私どもは、現在、平成十年度予算国会に提出し、その御審議をいただいております。その中にはさまざまな施策が盛り込まれておりますし、関連して、予算関連法案、あるいは政策減税等お願いを申し上げております税法の改正案もございます。三月三十一日から四月一日という新しい年度にかわります時点で予算の執行の切れ目を生じませんように、国会として、ぜひ予算を通過、その時点までに成立をさせていただきますように心からお願いを申し上げたい。  全力を尽くして、原案を今御審議をいただき、成立に努力をしてまいりたいと考えており、御協力を願う次第であります。
  282. 中井洽

    ○中井委員 あえてお尋ねすると申し上げたのは、もう何遍も何遍も御答弁なさっておることに対してお尋ねするのもつらい、こういう思いで申し上げました。  総理は、かつて湾岸戦争で、多国籍軍に対する負担を提供するために予算を修正して提案をなさいました。私は当時民社党でありましたが、賛成をして、公明党さん、自民党さんともどもの賛成の中で成立をいたしました。このときの総理予算修正に対する思いというのはいろいろと当時も聞かせていただきましたし、今もお聞かせをいただきました。ああいう大きい金額で、みずから修正をなすって、予算が通った。これは、過去、自民党の大蔵大臣総理の中でただ一人御経験であろうか。  私は、その経験を堂々と生かされて、三月、景気をまだ十分見られて、四月一日、そうやって日にちをあけずにこの予算をということであるならば、私どもの申し上げる減税あるいは景気対策、こういったことに率直に耳を傾けられる、またそういうチャンスを逃さないようにされるべきだ、このようにあえて申し上げて、次の質問に移らしていただきます。  予算の中で、またいろいろと委員会等で御質疑があろうかと思いますが、旧国鉄の長期債務あるいは林野の長期債務、これらが新しい制度のもとに国の借金として正式に取り込まれ、返済方法等が法律のもとに出され、国鉄の、現在のJRの各社が反対をされておる、労働組合の方々はこの間から反対で議会前で座り込みをなさる、こんな大きな騒ぎになっております。  この仕組み等につきまして、担当は運輸大臣ですか、簡単に御説明を願います。
  283. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  先生御承知かと思いますけれども、今般のJR各社に対しまして負担につきましての御協力、これにつきましては、さまざまな御意見があることは承知をいたしておるところであります。  平成八年の閣議決定を見まして、抜本的な国鉄長期債務の処理策を講ずるということで、具体的には平成十年度からそれを講ずるという閣議決定に基づいて、政府・与党におきましても、財政構造改革会議の企画委員会で論議がなされ、そしてそのことに基づきまして一つのスキームができ上がったわけであります。  その中で、JR各社にお願いした厚生年金移換金につきましては、これは先日、民友連の鹿野委員からの御質問のときにもお答えいたしたわけなんですが、国鉄改革時、昭和六十二年の改革時の債務のツケをJRに負担をさせていくんではないかな、そういう疑問がなされておりますが、今回のこの年金移換金につきましては、鉄道共済の厚生年金への統合という国鉄改革後に生じた事情に基づき、平成八年の法律によって国鉄清算事業団が負ったものであり、国鉄改革においては予定されていない、国鉄改革と申しますと、六十二年には予定されていない問題でございました。  今回の具体的処理方策におきましては、この国鉄改革によって事業団が負った債務は、すべて国、いわゆる一般会計及び鉄道建設公団の負担で処理することといたしておりまして、JRには一切負担を求めていないということをまずもって申し上げておきたいと思うわけであります。  そこで、そういう中で、厚生年金の移換金は、本来、当事者である共済関係事業主、いわゆる身内の中で負担すべき性格のものでありまして、平成八年の法律もこの原則に従って、関係事業主といたしましてJRと国鉄清算事業団が負担をしたことであります。  今回、この抜本的な処理策を講ずるに当たりまして、この移換金の七千七百億円のうちJR社員分の三千六百億円は、JRの社員に対して年金を給付するための費用でありまして、JRの社員の福利厚生のための費用である。このような特定企業の社員の福利厚生のための費用は、その事業主である企業の負担とすることが合理的であると考え、この分まで、いわゆる一般国民の負担、税金による負担とすることは合理的でない。こういうことで、このJR社員分につきましてはJRの方にお願いしたところでございます。  そういうことで、申し上げましたように、決して六十二年の改革当時の債務を今回負担をお願いしているわけではありませんし、いわゆる厚生年金の基本である、社員の福利厚生のためにはその事業主とその所属する社員によって賄われるもの、そういった原則に基づいてJR各社にお願いしたところでございます。
  284. 中井洽

    ○中井委員 運輸大臣から、旧国鉄債務の処理方法につきまして、主に、JR各社に無理な、非合理な負担をお願いしているわけじゃないということを中心とした御説明をいただきました。これはこれで、また今後御議論もあるのだろう、我が党もまだこれから対応を十分考えていきたい、こう思っています。  しかし、その前に幾つか、大蔵大臣も含めて御質問を申し上げたい、こう思います。  この金利、利息、当分の間たばこの値上げで払う。これは何の関係があるのでしょうか。税というのは、僕はきちっと理屈が要ると思うのですね。湾岸戦争のときにたばこを上げたというのはまだ理屈がわからないわけではありませんが、この旧国鉄の債務をどうしてこういうことがやれるのか、これが一つであります。  それから、もう一つは、資金運用部の分あるいは簡保の分、これは一部を、簡保なんかは全額だと思うのですが、借りかえて、金利を数千億安くしておる。これ、できるのですか。地方自治体を含めて、今財政的に苦しんでいる公団を含めて、みんな高い財投の金利を払っております。借りかえさせてくれ。とんでもない。こう言って、やらさない。ところが、これだけは簡単にほいとやると決めちゃう。ここら辺は、私、当然今後とも議論をしていかなきゃならないのだろう、こう思っております。  御答弁いただきます。
  285. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  国鉄長期債務の問題、国有林野債務の問題、これはもう先送りの許されない重要な課題だというふうに認識しておりまして、この選択肢につきましては、十二月十七日の財政構造改革会議において処理方策がまとめられたところでございます。  たばこ税について申し上げますと、この処理方策で、まず自助努力においてできるだけ返済する。残る債務を一般会計に承継することになります。その上で、可能な限りの財源捻出努力を行う。どうしても足らざる部分をどうするかということになってきたわけでございます。  御承知のように、一般会計にそのまま債務を引き継ぎますと、財政赤字のさらなる拡大要因になるわけでございます。これに対処するために、どうしても足らざる部分につきまして、たばこ、これは特別な財政物資と心得ております、これにつきまして、特別たばこ税といたしまして、最近の価格に占めるたばこ税の負担割合が低下している、それを回復するという意味を込めまして、税負担をお願いするということにしたものでございます。
  286. 中井洽

    ○中井委員 私的なことで恐縮ですが、さっきから出てくる大蔵省の人はみんな弟の同級生ですから、文句を言うに言いにくいので、もうやめますが。  例えば、国鉄の債務、運輸大臣のときにやられて、これから処理して六十年、七十五年かかるのですよ。七十五年。当分の間たばこと書いてあります。七十五年というと、みんな死んでいるじゃないですか。こういうやり方をしているから、大蔵省は信頼されないのだろうと僕は思っています。  国鉄の借金は大蔵省だけの責任ではありません。しかし、もう最後の赤字のころには、高木さんが総裁になられて、わけのわからぬやり方ばかりやって、ずるずると借金をふやしてきたのじゃないですか。それをこういう形で、十何年たってから、これから六十何年かけてふくんだ、こういう処理になってくる。ここら辺が、私は、大蔵省がすごいといえばすごいですよ。だけれども、今国家存亡の時期に、本当にこういうやり方でいいのか。  私は、さっきから言おうか言うまいか、いろいろと迷っておりましたが、あえて申し上げたいというのは、与党の中で大蔵省の存在のあり方についていろいろな議論がなされる。今回、中央省庁の基本法が出されて、その中でもいろいろな議論があって、方向づけが出されておる。しかし、私はそれは、大変申しわけないが、間違っておる。大蔵省の今のこういう財政のやり方、あるいは景気対策のいつもタイミングを逸したやり方等を考えると、主計局というものをやはり外へ出すべきだ。主計局が大蔵省の主流で、それが銀行行政から財政まで、ありとあらゆることまでやられるけれども、みんなとんちんかんになっておる。ここら辺の過去の反省というのができていない、私はこう思います。  内閣の中に財政の委員会ができて、予算の基本をそこでお決めになる、こういうことのようでありますが、私は、金融監督庁だ何だというのをおつくりになるのじゃなしに、大蔵省の中から逆に主計局を出されて、予算局というのを内閣の中へおつくりになる。予算編成というのは、私は、政治家やらがどんどん物を言って決めていけばいいんだろう、こう思っております。そういった方がよっぽどいいんだろう。こういう、本当に物の言いようのない処理方法を出される、本当に残念なことだと思っています。  そういう意味で、私は、大蔵省の分割、こういうことに関して考えを申し上げました。総理御自身のお考えをお聞かせいただきます。
  287. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、予算編成権を大蔵省から分離すべきだという御指摘でありますけれども、これは理屈の世界かもしれませんがまずお聞きをいただきたいと思うのでありますが、予算を作成して国会に提出をすることを内閣の権限としております憲法のもとで、内閣は現在でも、概算要求に当たっての基本方針の策定、あるいは経済見通し、予算編成方針、税制改正大綱、これらによりまして基本方針を策定してきました。  そして、個々の経費を積み上げていき、それを踏まえた予算の編成状況というのは、私自身も機会をとらえて大蔵大臣や事務方から説明も受け、具体的な指示もしてきました。例えば、平成十年度の予算編成では、環境、科学技術、情報通信など経済構造改革の特別調整措置、あるいは公共事業関係費における物流効率化による経済構造改革特別枠、こうしたものは具体的な指示をし、所管の枠を超えて総合調整をさせていただいてきました。  しかし、私は、議員が指摘をされるような面が全く間違いだなどと申し上げる気はありません。  そして、予算編成体制の問題につきましては、行政改革会議の最終報告でも、内閣府のもとに経済財政諮問会議を置いて、そこで予算編成方針などについて審議をするという指摘がなされております。そして、そういう前提のもとに、この行政改革会議最終報告の内容を忠実に盛り込んだ中央省庁等改革基本法を、今私どもは国会に提出させていただきました。  この内閣機能を強化するという観点から、経済財政政策上の、国政上重要な事項に関する企画立案、総合調整を任務とする、こうした役割は内閣府が負うわけです。その内閣府に経済財政諮問会議を置いて、まさにここがその予算編成の基本方針等につきましても役割として担っていく、そうした考え方を基本法の中に盛り込んで、国会に提出させていただいております。
  288. 中井洽

    ○中井委員 もう一つ大蔵省のことで、金融監督庁設置のときに、私もあえて議論をいたしましたが、与党内のいろんな調整の中で、地方の検査官が大蔵省に残る、こういう与党内での取りまとめのもとに法案がつくられました。私どもはかなり、これはおかしい、こういうことを申し上げたけれども、結局はそれが通過をして、間もなくできようといたしております。  しかし、過般の金融検査の不祥事等を考えますときに、あるいはまた天下りの問題等を考えましたときに、これは、金融監督庁は金融監督庁として、地方の検査官も含めて自立をされた方が素直なことだろう、こう思いますが、いかがですか。どちらがお答えになりますか。
  289. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、金融監督庁設置法の審議の際にそうした議論がございましたこと、私も記憶をいたしております。一方、行政改革という視点から、省庁の地方支分部局について、むしろ統合を含めて整理合理化の方向で考えろという御意見もありました。  そうした中で、地方の民間金融機関などの検査監督について、新たに財務局とは別に金融監督庁の地方支分部局を設ける場合、非常に小規模な地方支分部局が増加をすることになって適切ではない、そういう考え方から、昨年の通常国会で成立をした金融監督庁設置法及び関連法におきましては、既存の財務局の組織を活用することにいたしました。そして、そのために、金融監督庁長官が地方の民間金融機関などの検査及び監督に係る権限の一部を財務局長に委任する、この委任される事務に関しては、金融監督庁長官が財務局長を直接指揮監督するなどという所要の規定を整備いたしました。  同時に、金融行政機構の改革によって、大蔵省が民間金融機関などの検査監督権限を有しなくなるわけでありますから、大蔵省が地方の民間金融機関などの検査監督に対して財務局に指示等をするケースは、関与はないわけであります。  こうしたことを申し上げて、我々としてはこういう道を選択いたしましたということを申し上げなければなりませんが、同時に、先ほども申し上げました中央省庁等改革基本法案におきまして、金融監督庁がもう一つ発展して金融庁という方向に動いていくことをこの中では想定をいたしております。そして、その金融庁を編成する際の方針の中に、「金融庁の地方組織の在り方について検討すること。」とされておりまして、議員のような御論議も、改めてこの場面においても私は検討する部分はあろうかと存じます。
  290. 中井洽

    ○中井委員 時間がありませんから先に進みたいと思いますが、あえて御丁重にお読み上げをいただきましたから申し上げますが、その小さい財務局というのは四国のことでありまして、四国なんかは中国地方と合併して一つでやれば、十分実は金融監督庁としてやれると私は思っております。そういうことを進めるのも行政改革であろうかとつけ加えさせていただきます。  次に、私は余り得意じゃありませんが、外交問題について、イラクのこの間からの問題、これに関連して、そして沖縄の問題、二つの点でお尋ねをいたします。  まず、外務大臣にお尋ねをいたします。  あのイラクに対する武力行使というものが行われたとして、外務大臣は、当委員会、あっちこっちでも、あのイラクの問題は周辺事態に当たらない、こうお答えになっていらっしゃいますが、その認識は、御確認をさせていただきますが、変わりませんね。
  291. 小渕恵三

    小渕国務大臣 変わっておりません。
  292. 中井洽

    ○中井委員 防衛庁長官、いかがですか。
  293. 久間章生

    ○久間国務大臣 周辺事態に当たるとは考えられません。
  294. 中井洽

    ○中井委員 防衛庁長官、そうしますと、あなたが参議院等で、周辺事態に当たるとか当たらないとか、そういう事態が発生した場合には、それを今度の新しいガイドラインでどう判断するか云々とかいう答弁は違いますね。もう当たらないと考えておる、これでいいですね。
  295. 久間章生

    ○久間国務大臣 今、当たるとは考えられませんというような言い方をしたわけで、当たらないと言わなかったわけですけれども、というのは、事態が発生してみないとどういう事態かわかりませんけれども、ガイドラインの場合は、我が国周辺事態であって、我が国の平和と安全に重要な影響がある場合というふうになっておりますから、こういう意味でも重要な影響があるとは通常は考えられないということで、当たるとは考えられないというふうに申し上げたわけでございます。
  296. 中井洽

    ○中井委員 わかりました。  先ほど総理にお尋ねをしたわけでありますが、私どもは七年前の湾岸戦争のときに、実はいろんな方から情報を聞きました。このときに、イスラエルの大使から聞いた話が一番正確でございました。それは、武力行使が始まったらすぐに終わる、こう言われたんですね。これは延々と御説明いただきました。  その考えをもとに、当時民社党でありましたが、人的貢献を早く決めるべきである、日本が何ができるか早くやるべきだ、掃海艇も送るべきだ、こういうことを申し上げました。しかし、実際には、掃海艇を派遣をしたのは、御承知のように終わってから、こういう状況。お金は世界一出したけれども、日本が貢献したとは、アメリカを除いては余り言ってくれない、感謝してくれない。大変寂しい状況でございます。  今回ああいう形で、事務総長の御努力で武力行使が当面回避された、こういう状況であることは歓迎をいたします。しかし、これからまた何がどの地区でどう起こるかわかりません。そういったときに、本当に日本危機管理として何ができるのだろう、こういうことについてお尋ねを申し上げたい、こう思います。  これはやはり、紛争中には掃海艇を国連軍から頼まれても、国連平和活動という形で御依頼を受けても、掃海艇の派遣あるいは機雷の捜査、こういったことはできない。これは防衛庁長官、どのようにお考えですか。
  297. 久間章生

    ○久間国務大臣 御承知のように、我が国自衛隊が機雷の掃海をできます場合は、我が国が防衛のために防衛出動として自衛隊法七十六条で出るか、我が国の船舶の航行の安全のために、いわゆる危険物の除去として九十九条で出るか、どちらかでございます。  したがいまして、紛争途中におきまして、そこに九十九条で出ていくのは非常に無理があるじゃないかということでございまして、先般ペルシャ湾に行きましたときも、この九十九条を適用して紛争が終わってから出ていったわけでございますので、あそこで仮に何かありましたとしても、紛争中に出ていくというのは非常に困難だと思っております。
  298. 中井洽

    ○中井委員 そうしますと、当時、クウェートの邦人の退去に関して、自衛隊機を派遣する、しない、結局できずで、民間の飛行機、パイロットも志願して行っていただいた、こういう事態がございました。  また、日本のクウェートの大使館なんかは、大使以下職員の方が早くに撤退をされた。なぜなら、よその国の大使館は大使館の中に自家発電機があって電力を確保できた、プールをつくってあって水が確保できた。ところが、日本の在クウェート大使館はそういうことができていなかったから、邦人がおっても大使館が先に撤退しなければならない、こういう問題がありました。  あるいはまた、当時日本と同じような立場にあった西ドイツは、ドイツから湾岸戦争へ出ていったアメリカの兵隊に対して、ドイツにあった武器弾薬一日分を残して全部供与した。日本はそれができるのかといったらできなかった等々、考えてみると結局何もできなくてお金になった。これは去年の十月に、橋本総理と当時の新進党小沢党首との議論でも、その当時のことを踏まえて論議が行われました。  七年たちました。この間に、ペルーの大使館のああいう想像を絶する状況もありました。しかし今日、今こういった私が申し上げたようなことができるようになったかというと、一つもできていない。危機管理というのはちっとも進んでいないじゃないか、こんなふうに思いますが、いかがですか。
  299. 小渕恵三

    小渕国務大臣 九〇年の湾岸戦争時、私も海部内閣の小沢幹事長の後を受けまして幹事長をいたしておりましたので、当時のことを思い起こしております。  先ほどの掃海艇につきましては、委員御指摘のような批判がいろいろ当初ありましたが、私もその後クウェートに参りましてジャビル首長に会いましたところ、大変我が国の対応について感謝の意を表しておりまして、今なお同じ気持ちを持っておると思っております。  そこで、お尋ねの点につきましては、当時、そうした我が国の大使館等の対応についての御批判のあったことは承知をいたしております。したがいまして、こうした事態の反省、経験を踏まえまして、平成四年度より危機管理体制強化の計画を策定いたしまして、緊急時の通信連絡体制、公館の機能の維持、能力、及び移動、輸送等の機動力等の一層の強化を進めてきておりまして、平成十年度外務省予算の中でも、大変厳しい環境ではありますが、これまたペルーの事件の教訓を踏まえて、危機管理体制の一環として警備体制の強化等に取り組んでおるところでございます。  御指摘のように、満足すべきかと言われれば、なかなか予算上すべてを網羅できませんが、一つ一つ、あの経験を踏まえ、反省の上で改善をしておることについては御理解いただきたいと思います。
  300. 中井洽

    ○中井委員 防衛庁長官は。
  301. 久間章生

    ○久間国務大臣 先生御承知のとおり、自衛隊がいろいろと補給あるいはまた応援その他できる場合、これは全部法律で規定されているわけでございまして、そういうものにのっとらないものについては、なかなかできないわけでございます。  お気持ちとしてはよくわかります。いち早く行って邦人救出等もという話もございますけれども、やはりそういうときの状況によって、武力行使にならないような範囲内でしかやれないという憲法上の制約等もございまして、なかなか思うようにまいらないというのが実情でございます。
  302. 中井洽

    ○中井委員 今回は、クウェートのようにイラクから占領されたわけでも何でもありませんし、当時は、クウェートには二百四、五十人邦人がおられた。今回、イラクは四人ぐらいしかおられないということでありまして、また別のものであろうかと思いますが、法律のもとにしかできないというのは、けさの岡田君の議論等でも、私どもは十分承知しております。足りない分はどんどん法的に整備をして、当たり前のことが当たり前にできる、こうあるべきだ。私どもは、こういうことは別に与党、野党じゃないだろう、こう思っておりますので、どうぞ御努力いただきますことをお願いいたします。  ついでに、ちらっと思い出したものですから大蔵大臣にお尋ねして恐縮ですが、そのときに、日本はクウェートの資産を凍結したんです、イラクに使われないように。これ、法律でないんですね。法律が日本にはなかったから、通達でやりました。こういうことも、そのときの質疑で、整備をする、こういう約束になっていますが、できているかどうか御存じですか。
  303. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 最初に結論を申し上げますと、今回の外為法改正によりまして手当てがなされました。  すなわち、改正外為法はこの四月から適用でございます、施行でございます。したがいまして、まだ、この三月三十一日までの現行の外為法の規定によりますと、国連の安保理決議等のいわゆる条約その他の国際約束がない場合には、外為法に基づく支払い規制、御指摘の例えば資産凍結等を行うことができないということになっているわけでございます。したがいまして、安保理決議を待たずして経済制裁を行うというような国際的な要請がなされた場合、先進諸外国の中でひとり我が国のみが機動的な対応をとり得ないという事態が生ずる可能性があるわけでございます。  現に、御指摘のように、クウェートがイラクによって侵攻された際、主要国はその直後から経済制裁を発動したわけでございますが、国連安保理決議の採択がおくれたため、我が国としては、その採択がされるまでの間、外為法に基づく制裁を実施することができませんで、そのかわりに、クウェート政府等との取引について、真正の権利者からの正当な指図、依頼であるかどうかについて十分慎重に確認するよう、大蔵省から銀行協会及び証券業協会に要請したわけでございます。一週間ほどたちまして安保理決議が採択されましたので、外為法に基づく制裁として施行をされました。  したがって、こういった指摘も考慮いたしまして、先ほど御指摘申し上げたように、この四月に施行される改正外為法においては、安保理決議がなされていない状況であっても先進諸外国との協調的な対応が可能となるように、国際平和のための国際的な努力に我が国として寄与するという発動要件を加えまして、規定の整備を行いました。
  304. 中井洽

    ○中井委員 では、沖縄の問題に移ります。  さっきも言いましたように、私自身、関心がないわけではありません。私の母親のいとこは沖縄で割腹自殺をいたしておりまして、三重県の慰霊碑はこれの子供が、私の又いとこが除幕式を行いました。したがいまして、本当に人並みに沖縄の問題について心配もいたしております。  この沖縄の特措法の法案が通りますときには、小沢党首と総理と会われて、合意のもとに私どもは法案に賛成をしてまいりました。また、総理のアメリカや沖縄を挟んでのいろいろな交渉の御苦労も、私どもは承知をしてまいりました。それだけに、今回、沖縄の大田知事の海上ヘリポート反対の決意表明というのは、大変残念であり、びっくりすべきことでございます。  今日まで、いろいろおありだろうけれども、知事として当然お引き受けをいただけるのだろう、私どもはこういう思いでまいりました。しかし、ああいうふうにあっさりとおやりになるところを見ると、今日までいろいろな交渉の中で、公有水面の許認可権をお持ちになる沖縄知事が、あそこへ海上ヘリポート基地をつくるということについて了解をしていなかったのか、あるいはしておったのに途中でお変わりになったのか、ここら辺、率直に思わざるを得ません。  デリケートな問題ではありましょうが、橋本総理の、この間の事実、どう御認識か、お尋ねをいたします。
  305. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 たまたま今、公有水面に係る占使用についてのお話がございました。  平成九年八月一日、沖縄県は公有水面の占使用についての承認を与えていただいております。そして、長々とお話をすることもいかがかと思いますが、普天間飛行場の代替海上ヘリポートにつきまして、政府としては、沖縄県も正式のメンバーでおられる沖縄米軍基地問題協議会、また普天間飛行場等の返還に係る諸課題の解決のための作業委員会の場におきまして、検討状況等御説明し、御意見も伺いながら事を進めてまいりました。そして私自身も、知事と何回もお目にかかって、御相談もし、会談もしてきております。  今回、知事が、昨年の末お目にかかりましたときには、県内の意見集約などに一月中旬ぐらいまで時間が欲しい、その後再度会談をということでありましたが、双方の日程調整がつかないこともありまして実現できませんでした中で、去る六日、知事が受け入れ拒否という表明をされました。  私は、なお今日におきましても、知事から御要望があればお目にもかかりたいと思いますし、御意見も伺いたいと思っております。これは繰り返し申し上げてきているところであります。そして、知事が提起をされた普天間基地の返還というものに向けて、日米両国政府として関係者全員が真剣に検討をしました結果というものを、ぜひ理解をしていただきたい、その気持ちは今日も変わりません。
  306. 中井洽

    ○中井委員 私どもも、本当に難しい普天間の基地移転、こういったものが実現する、また海上ヘリポートをつくらざるを得ない、こういうところも思い、日米安保条約の重要性を考えて、あえて特措法にも賛成をしてまいったところでございますだけに、今回の経過は非常に残念であります。  十一月に知事選挙があるようでありますが、結局、今の状況でいきますと、知事選挙が終わるまでは何もできないのか、こういう思いに駆られます。  ここら辺の率直なお考えをお聞かせをいただきますと同時に、長期的に、やはり一つの県に安全保障の大事なことをお任せをしていく、地方自治体にゆだねる、こういう仕組みを変えていく。やはり、国が最終的に責任を持つ仕組みというものをみんなで考えていかなきゃならないんじゃないか。こういったことを私どもは、小沢党首、総理との会談でも御提言を申し上げ、その後もたびたび、党は変わってまいりましたけれども、言ってまいりました。ここら辺をどういうふうにお取り組みをいただくのか、これを含めてお聞かせをいただきます。
  307. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 SACOの最終報告というものについては、見方によっていろいろな御評価があることは承知をしております。そして、国土のわずか〇・六%しか占めていない沖縄県に在日米軍施設・区域の七五%が集中している、これが沖縄の方々に大変な御負担をかけてきている、これは政府としても痛切に認識しているつもりでありますし、それを少しでも減らしたい。そのために、SACOの最終報告に至るまでの日米両国政府の努力を続けてまいりました。  そして、この最終報告におきましては、県内の移設というものを条件とする案件が多いことは事実です。しかし、例えば、KC130を岩国へ移転する、あるいは県道一〇四号線越え実弾砲兵射撃訓練の本土演習場への移転、本土への移転案件も含まれておりますし、既に、実弾砲兵射撃訓練につきましては本土の演習場で実施されてきておりますし、KC130の移転についても、関係自治体からこれを受け入れるという表明をいただいております。  我々としては、沖縄県から伺った要望も踏まえながら、日米両国政府が最大限の努力を払った結果として取りまとめたSACOの最終報告の内容を着実に実施すること、これが沖縄の方々の御負担を少しずつ、一歩ずつでありましても軽減するための確実な道だと考えておりますし、関係自治体にぜひ御協力もいただき、実施に向けて最大限努力をしてまいりたい、今はそう申し上げたいと存じます。
  308. 中井洽

    ○中井委員 次に、時間がありませんので、あと三つぐらいの問題を質問させていただきたいと思います。  過日、長野オリンピックが終わりました。想像以上の盛り上がりで、大成功のオリンピックだったと私どもも喜んでおります。特に、日本選手が大変御活躍をいただいて、さわやかな笑顔や、本当に思わず一緒に泣くような涙やら、共感を覚えるすばらしいオリンピックであったと思っております。  そのオリンピックの中でたった一つだけ、おやっと思ったことがございまして、それは、金メダルをおとりになった若い女子選手が、表彰台、国歌が吹奏されているときに帽子をおとりにならなかった。終わってからのインタビューで実にあっけんからんと、君が代を習ったことないから知らない、こう言われたのであります。  実は、私どもの三重県も、学校でこれを教えない、掲げない、こういうところでございまして、いろいろと御努力はいただいておりますが、やはり君が代を知らないという子がたくさんいらっしゃる。学校だけで教えることでもなければ、地域、家庭それぞれで常識として知っていなければならないことだろう。あるいは、国際人として、国旗をどう思うかどうかということは別にして、礼儀としてこうあるべきだということは知っていなければならないんだろう、私はこう思っています。  町村文部大臣、あなたの北海道の子でございます。北海道も教えていないという話が実は聞こえてまいりますが、この辺はどういう対応をなさっておるのか、お聞かせをいただきます。
  309. 町村信孝

    ○町村国務大臣 国旗・国歌についてのお尋ねでございます。  委員御承知のとおり、学習指導要領におきましては、入学式あるいは卒業式あるいは校内行事、そういう場合に国旗を掲げること、あるいは国歌を歌うこと、そして社会科などで国旗の意義とかその扱い方ということを指導するということになっております。  かなり数多くの学校、そして県、それぞれで努力をしていただいておりまして、うまくいっているところもありますが、残念ながら、議員御指摘のとおり、一部の地域におきましては、一部教職員組合の反対運動によりまして十分なそうした指導が行われていない実態があるということは、率直に認めなければなりません。  実を言いますと、私の娘も札幌の小学校に通っておりました。そのモーグルの選手と同じ札幌市でございます。小学校の音楽の時間で、学校の先生が、この歌は覚えなくてもいいのよと言って飛ばしたそうであります。そのことをうちでは大分時間がたってから娘から聞きまして、急いで、慌ててうちの妻が娘に国歌を教えていたようでございます。  いずれにいたしましても、そうした形で、日本の国旗・国歌はもとより外国の国旗・国歌に敬意を払う、これは当然のマナーであろう、こう思っております。  したがいまして、先生の御指摘をまつまでもなく、今まで文部省においてはそうした指導を各県、市町村教育委員会を通じて指導しておりますが、さらに今回のこともございますので、引き続き指導をしてまいりたい。  それから、特にああいったオリンピックの選手とか、こういう選手は国際舞台に行くことも多いわけでございますので、実は、今回のオリンピックの団長さんには急いで注意を喚起いたしまして、団長の方から各選手に対してもそういう指導はあったやに聞いております。
  310. 中井洽

    ○中井委員 あの選手個人を責めるつもりはありません。教えていないということがおかしいのです。それを教えるようになっておると言いながら、教えられていないということがおかしい。あえて申し上げます。  私どもは三重県で知事選挙を戦いました。皆さん敵でございました。これは、何を変えたいかといったら、幾つか変えたいうちの一つはこれなんです。僕は、三年たって変えているかとこの間から教育長を呼びまして聞きましたら、この三年間で新しい教頭と校長の行ったところはやっています、従来のところはやっていません。そうすると、何年たったら全部なるんだ、こう言ったら、二十年でしょうかと。これではおかしいでしょう。  この教職員組合と皆さんは仲よくやっていらっしゃる。僕は、それはそれで結構だ。当然、教職の現場でお働きの皆さんと文部大臣お話し合いなさるのは結構だ。しかし、ルールはちゃんと守らせてもらう、このことをあえて申し上げます。お答えください。
  311. 町村信孝

    ○町村国務大臣 なかなか教職員組合も、全国団体とまたそれぞれの県の団体とが同じような行動をとっていないという事実は、先生もう既に御承知の上でのお尋ねであろう、こう思っております。  私どもは、各組合は組合として、教育委員会を通じ、それらのことを徹底するようにということでございますので、こうした今先生の御指摘もございますので、改めてその面でさらに文部省として指導助言を強めてまいりたいと考えております。
  312. 中井洽

    ○中井委員 それでは、次に少年法の問題。過日の委員会で、自民党さんからも私とほぼ同じような御議論がありまして、重複の部分もありますが、あえて質問をさせていただきます。  少年法による犯罪というのですか事件、子供の数も減ってまいりましたし、貧困という要素も大分減ってまいりましたから、かなり件数的には少なくなっておると僕は聞かせていただいております。ただ、昨今、神戸の少年殺人事件、あるいはまたつい最近の栃木の教員殺人事件等々、凶悪な、世間を驚かす事件が続きました。また、これらの事件を起こした人はかなり低年齢の方々であります。そういう中で少年法というものがマスコミ等で報じられて、いろいろな議論を呼んでおります。  これは一九九三年、山形県の中学校で七人の生徒によるマットの、同級生を蒸して殺しちゃったという事件がございました。それ以降、少年法の改正について法務省は議論を始めました。二十年間ぐらい、実は法制審議会の少年法部会、これは開かれていなかったわけでございます。僕は、ちょうど法務大臣のときにこの時期でしたから、どうしてだと聞いたら、司法制度の改革については、法務省、最高裁、日本弁護士会一致をしないとなかなか改正できない、これが慣習であり、昭和四十五年に衆参の附帯決議の中にもそういう趣旨が盛られておる、こういうことでございます。  司法制度の改正についてなかなか難しいのは、弁護士会と一致するというところが時間がかかってしまう、タイミングを逸してしまう、ここにあるんだろう。今こういうことを続けているというのは、僕はちょっと、法の世界に携わる人たちの権威主義である。最高裁といえども、弁護士さんといえども、まして法務省といえども、批判されるべきは批判される、変えるところは変えていく、これは当然のことだ。法律をつくって変えるのは国会であると私は思っております。しかし、専門家の御意見は十分聞いたらいい。  そういった意味で、二十年ぶりに議論をされております少年法の論議。この間、法務大臣は答えにくそうにお答えになられておりましたが、答えるとまたこの議論が二十年間ぐらいとまってしまうのかと心配をしておりますが、どういう状況にあるのか、どこまで来ておるのか、具体的にお答えをいただきます。
  313. 下稲葉耕吉

    ○下稲葉国務大臣 お答えいたします。  一昨日も深谷議員の御質問お答えしたわけでございますが、最近の少年を取り巻く事件はなかなか厳しいものがございますし、その対処を迫られているわけでございます。私は、少年の保護育成を基本にするという少年法の精神そのものはいいと思うのでございますが、現下のこのような厳しい情勢に対応できるかどうかというふうなことを痛感いたしております。  そこで、今お話がございましたように、衆議院、参議院の法務委員会の附帯決議等々もありまして、建前として、法曹三者で意見をまとめてきなさいということになっておるわけでございます。そういうふうなこともあって今日まで参っておるわけでございますが、私どもは、やはり何といっても現実の厳しい情勢に対応できるような法制でなくちゃならぬわけでございますので、何とかその辺のところを進めてまいろう。  具体的には、平成八年の十一月に法曹三者で話し合いの場ができました。そこでどういうふうな問題があるのかということを相談いたしました。それで、その結論を受けまして、具体的に法制の改正を視野に入れまして、ことしの一月から三者の会合を重ねているところでございます。  まず、事実解明の手続の面から申し上げますと、現在、裁判官が一人でなさっている。重要な事件について一人でいいのだろうかどうか。それから、期間が原則として四週間ということになっている。殺人事件等の難しい事件の事実解明が四週間でできるかどうか。あるいはまた、検察官の立ち会いもできません。それから、抗告も検察官側からはできません。そういうふうな点等を中心に今議論いたしております。  それから、年齢の問題につきましては、もう既に御承知のとおり、現在の刑法の規定によりますと、十四歳未満の者の行為は罰せずということになっております。したがいまして、栃木の例の学校の先生の事件につきましては、家裁の決定で教護院送致ということになりました。教護院につきましては、厚生大臣の御説明がございましたが、児童自立支援施設というふうなことで、四月一日からなるわけであります。十四歳以上は少年院に送られますが、十六歳以上になりますと刑事処分ができるわけでございます。  そして、刑事処分ができる実態というのがだんだんふえてまいっております。平成八年の資料しか手元にございませんが、殺人でございますとかあるいは強盗強姦で、十八歳ないし十九歳で懲役七年以上十年以下というふうな判決の事例もございますし、十六歳の少年で、傷害致死で三年以上五年未満というふうな判決等々もございます。だから、そういうふうなことで、高年齢になれば、少年院に送るよりも検察官に逆送致して正式裁判を求めている事例というのが最近多くなっております。  そういうふうなこと等も踏まえ、年齢の問題等々、今後精力的に前向きに検討してまいりたい、このように思っております。
  314. 中井洽

    ○中井委員 大臣が具体的に問題となっておることを検討しておる、こうおっしゃいましたから、私どももできるだけ早くこの少年法の改正ということについて図ってほしい、ここら辺を強くお願いしておきます。  年齢について、なかなか難しいんだろうと思っています。私は、二十というのを十八までに引き下げるというのは、これは選挙権とやはり同じでなければならない、少年法の適用を十八以上にするのなら選挙権も与えるべきだ、ここら辺があるのだろう、こう思います。  しかし、十四歳以下は罪にならず保護処分、これを決めたのは実は明治四十年であります。明治四十年にどうして十四歳、こう決めたのかわかりません。江戸時代の元服が十五歳であったのかもしれません。しかし、その当時の十四歳と今の十四歳では、医学的にも情報収集においてもはるかに違う。ここら辺をお考えになって、十四歳は十二歳、小学校、こういう形での年齢をお考えになる、このことは大事だと思っております。  それから、教護院とか少年院。日本は、そこに働く人たちは世界一優秀だと、僕は経験者だから褒めるわけじゃなしに思っております。ただ、そこでいい子にして早く社会へ出てやるんだよということだけで、医学的に、病的に犯罪、再犯の可能性のある人の芽を本当に摘み取っているかというと、そこのところは少し足りないんだろう、こう思っています。  そういう意味で、罪を犯してこの制度のもとで社会復帰、家庭復帰する人が大人になって凶悪な犯罪を犯さない、そういったことの予防を十分できる精神医学的な分析とかあるいは治療、そういったことを私は取り入れるべきだ、このように思います。  そういったことを法務大臣にこの際強く要望して、この少年法の問題は終わりたい、このように思います。  最後に、議員立法のことでひとつ総理のお考え、また自民党総裁としての御協力、お願いを申し上げたいと思います。  最初に運輸大臣にお尋ねをいたしますが、私どもは、祝日三連休化、こういう問題を前国会から提案をいたしております。これは、成人の日、それから七月の海の日、敬老の日、体育の日、この四つの祝日を月曜日に指定する、そして土、日、月と三連休でそれぞれの祝日をお祝い申し上げる、こういう議員立法でございます。  このことは、それぞれを十分お祝いすると同時に、はっきり言えば景気対策。私も、娘は二十五で一緒に住んでおりますが、もう連休というとどこかへ遊びに行っている。うらやましい限りだ。本当に今の若い人たちは、休暇、人生楽しくということを実にうまくやっていらっしゃる。そういう意味では、飛び石連休があったりするよりも、本当に連休を続けるということは、レジャー、こういったことを振興する意味でも、またこの不景気な時代に明るい空気をつくり出す意味でも大事だ、こう思っています。  そこで、運輸省に非常に関係のあることでありますが、この三連休をもし行えばどのぐらいの経済効果があるか、計算をなすったことがおありでしょうか。
  315. 藤井孝男

    ○藤井国務大臣 お答えいたします。  一部の祝日を月曜日に指定することによって三連休を創出する、いわゆる祝日三連休化につきましては今先生御指摘のとおりでありまして、景気対策等々にもプラス効果があるんではないかというお話でございます。  今、たしか四日間の祝日のことに触れられました。例えば、成人の日を月曜日に指定した場合の経済効果は二千六百六十億円、海の日を指定した場合は三千五百八十六億円、敬老の日の場合は三千四百十二億円、あるいは体育の日の経済効果は五千四百九十四億円という一つの経済効果の試算が出ております。  確かにこういった経済効果等もございますけれども、もう一つは、先ほど先生御質問にありましたように、教育問題に触れられましたけれども、やはり家族との触れ合い、例えば成人の日あるいは敬老の日ということになりますと、成人の日、二十になった、そして父親、母親に感謝する、そういった親子の触れ合い。あるいは敬老の日は、例えばふるさとを離れたら、連休であるのでふるさとへ帰って、おじいちゃん、おばあちゃん元気かねというような、そういった触れ合いという面からも私はぜひ必要であると思いますし、そういったことにつきましての議員立法の動きがあるということを承知いたしております。また運輸省としても、そういった動きに支援をしてきたところでございますので、その法案の行方を見守っているところでございます。
  316. 中井洽

    ○中井委員 この法案、昨年十二月、当時の新進党それから民主党、太陽党、有志の人たちで国会へ提案なされました。今、与党を含めてと申し上げたら失礼ですが、与党を中心に私どもの仲間が加わって、議員立法でというお話がございます。  四日一遍じゃなしに、二日ぐらいとかいろいろな議論があるようでございますが、しかし、これはざっと足しても一兆円を上回る経済効果。この税収を考えただけでも、国鉄の長期負債の金利なんかすぐ出てくるというところかと思いますけれども、こういう制度による国民のゆとり向上あるいは景気刺激、これらについて、総理、どのようにお考えか、率直にお聞かせください。
  317. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、祝日というものは、それなりにそれぞれ定められた日、その日に意義のあるものだと思います。そして、その日が指定されていることをもって意義あらしめている。  当然ながら、議員は、そうしたことは十分に御勘案の上で、今、一部の祝日を月曜日という特定の曜日に集中することのメリットを言われました。  私は、一つの御意見だと思いますし、注視してまいりたいと思いますが、同時に、その対象とする祝日の選び方については、やはり国民的な合意を必要とする部分があろうかと思います。そして同時に、いかにしてそれがゆとりとなり、家族との触れ合いとなり、それがよき結果を生むか。これは、せっかく祝日を月曜日につくった、そうしたら塾に行っちゃった、子供はいないというようなことであったのでは意味がないわけでありまして、そうしたことまで含め、十分関心を持って見守りたい、そのように思います。
  318. 中井洽

    ○中井委員 お話はよくわかりますが、敬老の日あるいは体育の日、お互い忙しく飛び回るわけですが、雨になったら大変なことでございます。そういう中で、三連休をつくっておけばまあやれるとか、いろいろなプラスもあるだろう。  私どもは、仲間と十分ここら辺、また総理の御意見等も、たくさん同じお考えの方もいらっしゃる、そういった人たちにも呼びかけて実現を図ってまいりますので、御協力のほどをお願い申し上げ、質問を終わります。
  319. 越智通雄

    越智委員長 これにて中井君の質疑は終了いたしました。  次に、上原康助君。
  320. 上原康助

    ○上原委員 総理を初め各閣僚の皆さん、どうも長時間御苦労さまです。  実は私、久しぶりに風邪を引いておりまして、大変お聞き苦しい点もあろうかと思うのですが、何とか役目を果たしたいと思いますので、よろしく御答弁を願いたいと存じます。  まず、一昨日からきょうにかけて各党の御質問者の方々から触れられておりましたが、いつもは沖縄問題については後段に回しておりましたが、きょうは、事が重要なだけに、最初に沖縄の基地問題、振興策等についてお尋ねをさせていただきたいと存じます。  質問通告、いろいろやってありますが、流れによっては全部はできないかもしれませんので、また予定なさっておった閣僚に御迷惑あるいは御無礼になるかと思いますが、その点もお許しを願いたいと存じます。  そこで、もう詳しい経過とかそういうものは、私も本席で何回か橋本総理初め関係閣僚にもお尋ねをしてまいりましたので、その点はあえて私の方からはもう触れません。  そこで、まず総理に御所見といいますか、御心境と言った方がいいのかもしれませんが、先ほど来あるいは一昨日から指摘がありましたように、この二月に入ってから普天間の海上基地問題をめぐって、沖縄側と日本政府との間に、もちろんこれは米国を含めてになりますが、重要な変化がございました。あえてこのことに私個人のコメントは、今、冒頭は控えますが、この事態というのはなかなか接点がないまま膠着状態が続く可能性なしとしません。それをぜひ打開しなければならないと思います。そういう点もあって、恐らく、橋本総理の特別補佐官に二月のそういう変化後にアメリカに行っていただいたのじゃないかと私は理解をしている一人であります。  その特別補佐官の訪米の御報告は受けておられるかと思うのですが、そういう関連で、今申し上げたこの事態総理はどう御認識なされ、またどのようなお立場で打開策を講じようとしていかれようとお考えなのか、その点からお聞かせを願いたいと存じます。
  321. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員の御質問でありますだけに、一層、私にとってこの問題についてお答えをすること自身がつらい思いがいたします。しかし、長々と繰り返して申し上げることはできるだけ避けたいと思います。  私自身、昨年の十二月、知事にお目にかかり、また当時の名護市長にお目にかかり、そして、知事と名護市長とお会いになってお話しになってはいかがですか、場合によっては官邸の私の部屋をあけますからとまで申し上げましたが、会談のかなわない状態の中で、知事は県内の意見集約のために一月の半ばまでは時間が欲しいということで、その後お目にかかる約束をいたしておりました。  これは双方の日程がうまく合いませんでしたので、お目にかかれないうちに今議員から述べられたような変化が生じておりますが、私自身としては、依然として知事とお話をしたいと思っておりますし、この問題を提起された知事さん自身でありますから、ぜひ解決のために、お互いに地元の皆さんの理解と協力が得られるように粘り強く取り組んでいきたいと思います。  これは繰り返し申し上げてきたことでありますが、これに関連して、今議員から岡本補佐官の訪米についてお尋ねがございました。マスコミにはさまざまな報道がなされておりましたけれども、岡本補佐官が訪米をいたしました際、米国政府関係者は、米国政府としてもSACOの最終報告を着実に、誠意を持って実施していきたいということを述べております。そして、それは当然のことながら、現在、海上へリポートというものを想定してSACOの最終報告ができているわけでありますから、この問題をも含めてでありますが、着実に実施していきたいという意向の表明があったことの報告を受けております。
  322. 上原康助

    ○上原委員 今総理お答えになった点は、私が冒頭指摘をしたように、これまでの御質問者の方々にお答えになった面とさして変わらないし、また岡本特別補佐官の訪米後のマスコミ等でのインタビューについても、私も読ませていただきました。  そうしますと、特に岡本補佐官が訪米をして、もちろんそこで軽々に、新たなとか、あるいは打開策がすぐ見つかるとは、私もそう簡単にいかない難しい課題だという理解はいたしておりますが、総理としては、そのことによっても、沖縄側と新たな話し合いをするとか、あるいは日米間で話し合いをするとか、何らかの糸口とか、そういうことは今のところ持っていらっしゃらないというか、そういう感触ではなかった、そういう理解でよろしいんでしょうか。
  323. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もし私が質問の御趣旨を取り違えておれば、これはおわびを申し上げなければなりませんけれども、岡本補佐官をアメリカに出張許可いたしましたのは、状況の説明と相互の対話でありますけれども、それは新たな提案を求めるとか新たな対案を求めるとか、そういうことを模索するために派遣をしたものではございません。  そして、私どもは、またこれは繰り返しと言われるかもしれませんけれども、県も正式のメンバーで入っておられる沖縄米軍基地問題協議会を初めとした場で、御説明もしながら、また御意見も伺いながら進めてまいりまして結論を出したもの、今これを御理解いただくという努力を、なお粘り強くしていかなければならないもの、そのように思います。
  324. 上原康助

    ○上原委員 私は、総理の御心境も、御答弁が非常にやりづらいというか、わかるんです、その気持ちは。しかし、率直に申し上げさせていただきますが、SACOの最終合意事項というのが、どうも総理の御答弁を聞いても、これは関係閣僚もそうですが、あるいは政府委員もそうですが、あたかも沖縄側の意向が十分反映をされて決められたというふうに政府は理解をしているやに映るんですね、思われるんですね。決してそうではないわけですよ。  問題の基本というのは、戦後五十年余が経過をした、復帰して、申し上げるまでもないが二十五年が経過をしても、しかも冷戦構造は終わった、なぜ沖縄にあれだけの米軍基地が依然として存在しなければいかないのか、その基本をどうしてくださるんですかというのが沖縄県民の、素朴で明快で、しかも現実の基地被害にあえいでいるというか、その事態、その根本をどうするかということが、今度のSACO報告でも方向性が出なかったわけですね。  ですから私は、沖縄県知事がああいう県民の意向を体して意思表明をせざるを得なかったというお立場もよく理解できるし、一方、政府としてはそれなりの御努力を、二カ年間本当に総理を先頭にやってこられた、それは多とします。だが、それでもなおかつ、溝が埋まって一つの方向に、明るい方向に解決策が生まれるかとなると、生まれてきていないところにみんなが今、今後どうしようかと悩んでいる、苦悩しているところなんですね。  ですから、政府政府立場をずっと主張する、あるいは各党も、どうも県知事が拒否したからけしからぬというような、私はそういう性格の問題じゃないと思う、これは。  今私が述べたことについては、総理はどういう御理解を持っておられますか。
  325. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員にお言葉を返すようですが、私、一回も知事の行動に対し批判がましい言葉を使ったこともないと思います。プロセスとして事実を申し上げたことはありましたが、その行動をとやかく申し上げたことは私はありません。そして、なお今日も、お目にかかるチャンスがあるならばお目にかかりたいということも、今も申し上げております。  その上で、事実問題として、私は、SACOの最終報告を受けましたとき知事さんが出されたコメント、あるいは最終報告を受けての会見というものから引き続いてまいりました、あるいはそれ以前から続いてまいりましたお互いの間の話し合いのプロセスと中身というのは、私は大事にしたいと思います。そして、これは、お互いが何を語り合ったかは、私たち二人が論じてきたことであり、それなりに確認をするために途中から他の人を交えたことはございますけれども、その二人の話し合いというものは、先ほど他の議員から御指摘がありました公有水面の占使用といった手続の許可につきましても生かされてきたと存じております。  私の方も、この基地の問題とはかかわりなく、例えば留学生の問題その他、お約束をしたことは着実に実行してまいりました。そして、私は今も、そうした意味で、知事さんの方から再度訪ねますと言ってくださったのですから、そういう時間ができることを期待しています。
  326. 上原康助

    ○上原委員 今、総理の御答弁は、大田知事との信頼関係というか、あるいは話し合いの余地はまだ十分ありますというふうに、私は善意に受けとめました。ぜひそうしていただきたいと思いますね。  そこで、各閣僚もいらっしゃるし、委員会には各党の先生方もいらっしゃいますから、私はあえて、SACOの最終報告の進捗状況と、いかに沖縄県民がこの報告に、関係基地を所有している市町村を含めて不満を持っているかという点を、ここで二、三、例を挙げておきたいと思うのです。  よく言われておりますように、SACO報告というのは十一案件ありますが、ほとんどが県内移設を前提としたやり方なんですね。この返還のあり方に不満を持っているわけです、これでは無理だと。しょせん整理、統合、縮小といってみたって、狭い沖縄で持っていきようがないのです、それ以上。その基本に対する認識が、沖縄側と私を含む政府、私は中間的にいると言われる場合もあるのですが、そこの根本が入れられていないということ。  このうち、例えば安波訓練場の共同使用解除、ギンバル訓練場の返還が来月末に迫っております。ギンバル訓練場の返還については、御承知のように地元金武町では、近隣のブルー・ビーチの返還を先行させてもらいたいということを再三国に要請したはずなんですよ。だが、それは認められなかった。認められていない。ギンバルしか返さぬと言う。また、ブルー・ビーチの返還については、地元が強く要求しているのに反対しているわけでしょう。こういう矛盾があるということ、SACOの内容には。  さらに、平成十九年度末返還予定のキャンプ瑞慶覧の中にある住宅地区の一部地域については、跡利用が困難な細切れ返還であるということで、これも、地元北中城村、宜野湾市等は返還についてむしろ反対をしているんですよ、こういう細切れ返還では跡利用もできないと。そういう実態がSACOの中にはあるんですよ、普天間の基地問題だけじゃなくして。  ですから、これは総理でなくてもいいかと思うんですが、地元の意向を無視した返還のあり方をどう正していくかということが、この普天間問題だけでなくして、SACOの合意事項の中身を吟味をせにゃいかないということですね。  地元の意向を無視した返還、細切れ返還は、以前から速やかな跡利用を実現する観点からも強い批判があったのは、政府もよく知っていらっしゃると思う。だから、政府は、今回のギンバル、瑞慶覧に見られるような、地元が全く望まない形での返還計画を今後も推し進めていくつもりなのか。計画の見直しとか凍結等は全く考えないのか。  こういうものが複合的に積もり積もって、いろんな面で、海上基地に対しても、普天間の返還は望むけれども新たにつくるということには、こういうことを含めて反対をしているということをどう政府が理解をしておられるかということ。そのほかにもいろいろありますけれども、今私が指摘をしたことについて、これはどなたが述べるのかわかりませんが、ぜひ見解を示していただきたい。  それともう一点は、県内移設条件を前提とした基地の返還交渉のあり方を根本的に改めていただきたいということ。我々はこれはもう口酸っぱく言ってきたはずだ、これまで。私も何回か指摘をしてまいりました。  ですから、私は、県内移設をすべてノーとは言いませんけれども、やはり基本はもう少し考えていただかないと、普天間の問題にしても、SACO全体の案件というものを、あるいはこれまでそのほかに合意をした案件にしても、具体的に進めていくということが困難な事態にあるということ。この打開策を含めて、政府としてどうおやりになろうとするのか、御見解があれば。これはどなたがお答えするかな。
  327. 久間章生

    ○久間国務大臣 確かに、SACOの最終報告の中身につきましては、県内移設が前提になっておるものが大半でございますために、なかなか進んでいないのは事実でございます。  しかし、そういう中でございますけれども、施設庁も各市町と今協議しながら、できるだけ協力を得べく努力しておりまして、少しずつ先へ進んでいるところでございますけれども、今委員が御指摘になられました、特にその辺の案件については、基地の強化につながるとか、あるいはまた返還した場合には跡地の利用が困難であるとか、いろんな理由からなかなか先へ進んでいないのも事実でございます。  私どもとしましては、これから先もまたいろいろと対応を重ねながら、とにかく粘り強くやっていきたいと思っております。
  328. 上原康助

    ○上原委員 具体的に問題点を指摘しても、そういう御答弁を、失礼ですが、もう私は本当に耳にたこができるというほど聞かされてきました、野党時代から。  そこで、これは総理外務大臣防衛庁長官にぜひお考えいただきたいんですが、私は、そう簡単にいくとは思いませんが、こういう提言をしておきたいと思います。  日米両政府がこれまでのように進めてきたいわゆる沖縄県内完結型、沖縄県内で条件をつけて移設、集約するといっても無理がある、基地の整理縮小は極めて困難である、その基本認識に立って、次の三つの柱を軸にして、沖縄の基地の整理縮小等の具体案をぜひ御検討いただきたい。  一つは、目に見える米軍基地の質、量の整理縮小を再検討する。私はかねがね申し上げているんですが、なぜ、冷戦が終わって、占領時代でもないのに、あの狭い沖縄に海兵隊を含めて四軍の米軍がそれぞれのキャンプを、ベースを持たにゃいかぬのですか。おかしいと思います、それは。それは、本気になって日米間で話し合えば必ずできる話なんです。それをやっていただきたい。  二番目は、整理縮小の方途は、県内、国内、国外、これは太平洋地域内という意味です、国外というのは。太平洋地域内への移設も同等に扱うこと。沖縄県内だけでやりなさいということでなくして、日本本土も、あるいは太平洋地域内も同等に扱ってもらいたい。  三番目は、これは日米共同宣言にもありますが、何回も取り上げましたが、在日米軍、特に沖縄駐留の兵力構成についての見直し、これはやっていただかなければいかない。  この三つについて日本政府が本気になってお考えになって、これは私は、何も安保全面否定の立場で申し上げているわけではないのですよ。ここへこの程度のことはやっていただかないと、私は沖縄県側の、知事を含めて、御協力をいただくというのは大変無理があると思いますよ。これについて総理の御見解を聞かせてください。
  329. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員からは、この程度のことはやってもらわなければというお言葉が出ました。しかし、今議員が述べられました三つの提案のそれぞれがいかに重いものであり、また、かつて政府部内において閣僚の座におられた議員とすれば、困難な課題をおっしゃっているかは御理解がいただけると思います。  米軍我が国における駐留がアジア太平洋地域の平和と安定のために不可欠だ、私たちはそう考えてまいりました。そして、その中において、在日米軍の能力や即応態勢を十分に維持しながら、沖縄の方々の御負担をできる限り軽減しようという観点から、村山前総理からバトンを引き継ぎまして以来、私にとりましても、またクリントン大統領を初めとするアメリカ政府にとりましても、これは大変大きな課題でありました。そして、日米両国政府が最大限の努力を払った結果取りまとめたものが、SACOの最終報告です。  沖縄に米軍が駐留する要因、これは沖縄県の皆さんからすれば、そんなことは理由にならないというおしかりを受けるのだろうと多分私は思います。しかし、地理的にアメリカ本土あるいはハワイ、グアムよりも、日本自体を含みます極東の各地域に近い。そして、この地域に急速な戦力投入を行うに際しての迅速性も確保できる。一方で、周辺諸国との間に一定の距離があり、本土では得られない縦深性を確保し得る。また、練度、即応性の維持向上というものに必要な演習場あるいは後方支援施設が存在している。そういった中で、沖縄県内において対応を考えざるを得ないというのが、実際の問題解決に取り組もうとしたときの我々の与えられた条件であります。  県内移設に御批判があることは承知をいたしておりますけれども、先ほど来他の議員にも申し上げましたように、沖縄県も正式なメンバーでおられる沖縄米軍基地問題協議会、また普天間飛行場等の返還に係る諸課題の解決のための作業委員会の場におきまして検討状況などを御説明し、意見もお聞きしながら進めてまいりましたものがSACOの最終報告でございました。  私は、今議員が軽々と述べられましたような三つの選択肢、それを選べと言われまして、お答えをする自信は残念ながら持てません。むしろ、何とかここまで続いてきた話し合いの糸を、県との間で、また地元の皆さんとの間で保っていきたいと思います。
  330. 上原康助

    ○上原委員 総理にお言葉を返すわけにはいきません。私は決して軽々と申し上げているわけではないので、いずれそういう方向に基地問題の根本的解決策というか、やるぐらいの、冷戦構造下で培われた日米関係というものを打開するというぐらいの骨太のやり方をやらないならば、やれないならば、今の状態は続くということにもなりかねないということを申し上げておきます。  そこで、問題は、総理のおっしゃることはわかるのです、私も。わかるのですが、それでは接点は見出せないということを申し上げたいわけですね。これだけはだれも願うことでもないし、そういう問題のさらなる紛糾というか行き詰まりはあってはいかないことなのですが、外務大臣防衛庁長官も、もし普天間というものが移設できない、現状維持でいくと言って、万が一事故が起きるとか、あるいは新たな、一昨年のような不幸な事件が起きたという場合は、皆さんがどういう弁解しようが、これは基地もたぬですよ、沖縄の基地、安保体制というのは。正直申し上げる。そういうぎりぎりの状況も、よく危機管理は万が一のことを想定してやりなさいと皆さんが言うわけでしょう、そこまで考えていただかないと、これは、そうSACOで決まったから沖縄側の理解と協力を求めたいと言っても無理があるということを申し上げておきたいと思います。  私は、今申し上げたような三つの方法というのは、何もきょうあすにやれとは言いません。アメリカ側にそういうことも提起をしていただいて、真剣に、SACOの内容というものがいかに沖縄側の不満があるかということについて申し上げて、やっていただきたいと思います。  それともう一つ、きょうは基地問題でちょっと時間とりますが、きょう私が沖縄のことを質問すると言ったからか、きょう、日米合同委員会では何かこのSACOの関連問題で三項目決めたというペーパーがさっき入ったのですが、大した中身じゃないですね。  きのう共産党の志位書記局長が取り上げておった点を私もちょっと触れておきたいのですが、要するに米軍機の低空飛行の問題なんですよね。このイタリアで事故を起こした米海兵隊電子戦機EA6Bですか、これは岩国に駐留しておったんじゃないの、以前。事実かどうか答弁してください。
  331. 高野紀元

    高野政府委員 突然の御質問で、確認いたしますが、事故を起こしましたのはEA6プラウラーという機種、海兵隊の機種でございまして、その任務は、ボスニアにおける軍の任務についていたというふうに承知しております。  岩国との関係については、ちょっと調査の上お答えしたいと思います。
  332. 上原康助

    ○上原委員 これは私は、岩国に駐留しておって、岩国から、ボスニアの今のいろいろな事態があって、イタリアに何か配置がえになったんじゃないかという気がするわけですね。  問題は、以前から申し上げておったように、要するに地位協定の解釈の問題なんですよ。防衛庁長官自衛隊はそういう低空飛行できるんですか、我が国自衛隊は。航空法違反してできるんですか、国内で。それははっきりして答弁してください。
  333. 久間章生

    ○久間国務大臣 自衛隊は具体的に航空法が適用されるかどうか、つまびらかでございませんので、後ほど調べて御報告いたします。
  334. 上原康助

    ○上原委員 自衛隊はできない。できないというか、まあそれはまた、それならやるように法律を改めようという意見が出ても困るのだが、恐らくできないです。国内法適用ですよ、航空法適用。なぜ、我が国自衛隊でもできないことをアメリカ側は勝手気ままにやるんですか。そういうことを我が国でもやっておったんだ。  ですから、今度のSACOの関連問題でも、皆さん、SACOの中でも日米地位協定の見直しというものをやると言った、解釈の。これは国内法の適用をするとか、あるいは環境を守るとか。そうであるならば、こういうことについては、もう少し毅然たる態度でアメリカ側に対して物を言うべきだと私は思う。その点について、総理の御見解を聞いておきたいです。
  335. 高野紀元

    高野政府委員 我が国における米軍の低高度における飛行の問題でございますが、国内法との関係についてお答え申し上げたいと思います。  御存じのとおり、航空法との関係においては、一部米軍との関係においては適用除外になっております。他方、いわゆる飛行訓練等に係る航空法に言う最低安全高度、例えば政令で、有視界方式により飛行する航空機については、人家の密集していないところにおいては、人または物件より百五十メートルの距離を保って飛行できる高度とされておりますが、こういうものは尊重しなければならないということになっておりまして、基本的には、米軍がかかる訓練をする際においても日本の航空法の関連規定の尊重を行うことは、米軍として行っているところでございます。
  336. 上原康助

    ○上原委員 私も地位協定上、特別協定があるということもわかるのだ、それは。しかし、わかっても、それは昭和二十七年ごろの問題でしょう。運用の問題だと言うのだ。日本政府の主体の問題、主権の問題を言っているのですよ。そういう概念が、沖縄基地の問題についても一向に進まない根本原因だということを言いたいわけなんだ、私は。ですから、その点はぜひ改めていただきたい。
  337. 小渕恵三

    小渕国務大臣 イタリアで起こりましたあの不幸な事故を十分承知いたしております。我が国においてさようなことが起こるということになりますれば、まさにアメリカに対する信頼感、また日本の安全にとっても極めて重要なことでございますので、どのようなことができ得るか、十分検討させていただきたいと思います。
  338. 上原康助

    ○上原委員 これは、その飛行機が岩国に駐留しておったかどうか調べて報告するということでしたからね。  私は、地位協定の問題、安保の運用にしても、事前協議だって何遍やってきたか、本当に。日本も少しは主体、主権をどうするかということを考えてくださいよ、本当に。私は、そこに根本的な問題があると思う。だから沖縄の基地問題が一向に進まない。これは、何遍やったってこういう状態じゃ、これは本当に総理、困ります、接点を見出せるように努力していただかないと。  そこで、振興策については聞くだけやぼかもしらぬが、きょうはよしましょう、もうこれは。これも、やらなければやらないで、またいろいろ出てくるでしょう。  次に、今非常にホットな日韓関係についてちょっとお尋ねをさせていただきたいと思います。  きのう、御承知のように、金大中大統領、御就任をなさいました。恐らく、日本側としても相当御関心を持っておられると思うのですね。南北関係あるいは日韓関係で従来以上に前進というか、諸懸案が解決する方向に発展するかもしれない。しかし、御承知のように、組閣その他なかなか厳しいようですから、よくわかりません。  そこで、金大中氏が大統領に御就任なさったことで、今後の日韓関係をどう見ておられるのかということ。懸案の竹島問題というか、竹島をめぐる主権、これも領有権があって漁業問題が相当難航している。日韓漁業協定も、日本側の破棄通告で、一年間の交渉期間はあるにしても、大変懸念されている。いま一つは朝鮮半島のエネルギー開発機構、KEDOの資金問題等々、いろいろあると思うのですが、こういうことについて日本政府としてはどのように考えて、どう対処していかれようとするのか、御見解を聞いておきたいと思います。
  339. 小渕恵三

    小渕国務大臣 まず、昨日、金大中新大統領、第十五代目の大韓民国大統領に御就任、心からお喜び申し上げます。  また昨日は、中曽根元首相、竹下日韓議連会長、また土井社民党委員長、田英夫委員ほか参加をされまして、就任式が挙行されました。昨日の大統領の格調高い演説も拝聴いたしましたけれども、大変な国難に際して、これから経済を立て直し、かつ南北の対話を深めていきたいという強い御意思を理解いたしました。  そこで、今お尋ねの日韓の問題も、全般的にはよき友好関係をつくり上げていくという御意思をお聞きいたしまして、それを進めて、日本側もそれにこたえていかなければならぬと思っておりますが、漁業問題につきましては、大変残念でありましたけれども、条約に基づきまして、一年間の猶予をもって終了通告をせざるを得なくなりました。前政権時代でございましたので、新政権になりまして新しい外務長官も任命をされれば、できる限り早い機会にこの問題についても新協定を結ぶよう、我が方としても全力でお話をいたしてまいりたいというふうに思っております。  ただ、長い間の懸案でございまして、終了に至りましたことにつきましては、種々、両国の漁民の問題等もございまして、そう易しい問題ではありませんけれども、まず漁業組合、漁民同士の率直な話し合い等も深めながら、政府ベースでの決着に向けて努力をいたしていきたいと思っております。  KEDOにつきましては、一応全額約五十二億ドルということで総額決まっておりますが、しかし、なかなかこの出資につきましては、特に、主体的に行う韓国の現在の経済状況でございますので、いまだそのクオータがはっきりいたしておりませんが、日本も相当の責任を持って対処してまいりたいと思っておりますので、本件につきましても最善の努力をいたしていきたいと思っております。
  340. 上原康助

    ○上原委員 総理は、今後の日韓関係について、金大中大統領の御就任とのかかわりでどのようにお考えですか。
  341. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、この大変な時期に重責を担われる金大中大統領に対しまして、就任への祝意、そして日本としてもできる限りの協力を惜しまないという気持ちを伝達する親書を、先日、今回の就任式に招かれました中から最先任の中曽根元総理に託してお届けをいたしました。  私は、本当に、二十一世紀に向けてより強く幅広い日韓のパートナーシップというものをつくり上げていくために、緊密な対話や意見交換の場をできるだけ多く持ちたいと思っておりますし、それがまた日韓関係の一層の発展に役立つことを心から願って、努力をしていきたいと思います。
  342. 上原康助

    ○上原委員 日韓関係は、私なんかが申し上げるまでもなく、過去の経過もあり、より慎重かつ積極的にやっていかなきゃいけない外交課題だと思うのですね。特に南北の和解についても、恐らく従来の大統領よりは積極的におやりになる可能性が強い。  なぜそういうことを申し上げるかといいますと、沖縄の基地問題にしても何にしても、朝鮮半島情勢というものがしばしば引用される。そういう面では、日本政府の果たしていかなきゃいけない役割は私は総合的に大きいと思う、総体的に。その点を御留意の上に、総理、外務、関係大臣、ぜひ御努力をいただきたいと思います。  次に、私は、景気対策と特別減税の恒久化ということ。これは野党の皆さんからも、もちろん与党の方々も、そのものずばりじゃないけれども、そういう必要性をおっしゃっているわけですよね。  国民の消費志向が非常に減退をしている。百貨店、スーパー等の売り上げも、一、二月も低迷をする。三月の年度末、年始などに続けて出費は多くなる。ますます消費というものは、私は、教育費等々の面は別として、減退、足踏みすると思うのですね。  そういう意味では、この特別減税二兆円というものは総理の決断でおやりになったわけですが、まあ新年度予算を優先して通すということは、与党であり内閣として当然でありますけれども、私は、そのことを前提として、春以降、夏にかけての景気対策、浮揚というものをどうするかということは、もっと真剣に内閣として方針を出すべきだと思うのですね。その点、ぜひ継続してやっていただきたいということ。  それともう一点、減税については、確かに総理がおっしゃるように、課税最低限が国際的には日本の水準は高いでしょう。また、特別減税でなくして、税率そのものを根本的というかいろいろ検討しなきゃいかぬでしょう。それはそのとおりなんですが……。  もう一点は、二月二十四日の産経の「正論」の中で出ておる佐藤欣子弁護士先生の御意見ですが、いわゆる低金利政策は違憲性が強いという御指摘があるわけですよね。ですから、年金生活者は、低金利で本当にもう悲鳴を上げているのですね。こういうことについて、もう少し政策的に配慮することはできないのかどうか。これをやらぬと私は景気は一向に上向きにならぬと思うし、また、国民の強い政治不信とかいろいろな面についての要求が強いだけに、どうなるのか。  ここいらの点について、ぜひひとつ、これは大蔵大臣になるのか総理になるのかわかりませんけれども、御見解を聞かせてください。
  343. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今政府は、御承知のように、既に実施をいたしております緊急経済対策、そして特別減税、さらに九年度補正予算に加えまして金融システム安定化対策を速やかに、また的確に執行に移していこうとしております。そして今、その上に立ちまして、景気回復を確実なものとするためにも、十年度予算を一日も早く成立させていただきたいと心から願っております。  議員からは今御指摘がございましたけれども、私は、こうした中で、特別減税が平成十一年度以降も必要となるような状況にならないように全力を尽くしていきたいと考えておりますし、三月の半ば過ぎぐらいには、今まで申し上げてまいりました緊急経済対策、経済活性化策のフォローアップを行うとともに、新たな対応もしてまいりたいと考えており、ぜひとも早期の予算成立に御協力を賜りたいと考えております。
  344. 上原康助

    ○上原委員 その総理の御答弁は、補正のときにも、私も素人ですが質問をして、今の御答弁がありました。  要するに、特別減税が十一年度、十二年度に必要にならないようにやる。その決意はいいのですよ。しかし、今野党の御指摘も含めて、どうもその必要性ありというのが国民の声であり、また大方の見方でしょう。それにはこたえていただきたいと思うのですね。  そして、確かに公定歩合については、先ほど日銀総裁の御答弁もありましたが、私はあの答弁は納得できませんね、正直申し上げて。幾ら専管事項であっても、これだけ低金利で、国民の負担にあぐらをかいている銀行で、生活設計そのものが、年金者や弱いお立場にある人々、所得の低い人々も含めてあっぷあっぷさせられながら、いつまでも公定歩合が〇・五で銀行の債権処理に充てさせる、あるいは預貯金金利も低いということでは納得できませんよ。その打開策をぜひやっていただきたい、こう強く要望をしておきます。  そこで、なぜそういうことも申し上げるかといいますと、おととい深谷先生もこれをお取り上げになったのですが、また私も、野中自民党の幹事長代理の御見解なんかもあって、郵政省にもいろいろ聞いてみました。そういう財源はあるのですよね、財源というか、そういった捻出方法は。  恒久減税ができない、難しい、財革法との関連があるから政府としてはなかなか言えないというお立場はよくわかります。だが、低所得者に対する預金金利の問題が難しければ、政策的にそういうことについてはこういう原資を充ててやっていくということを橋本内閣がなさるならば、私は、橋本内閣の支持もぐっと上がるだろうし、明るい話題が出てくると思うのですよね。そういうことをお考えになったらいかがでしょう。これは大蔵大臣かな。
  345. 松永光

    ○松永国務大臣 野中さんの御意見、これは前にも聞いたことがございます。ただしかし、まだまだ不確定な要素があるようでありますので、今直ちにそれを財源にして云々というところまで行くのには非常な困難性がある、こういうことでございます。  なお、これからの景気対策等については、先ほど総理からお答えがありましたように、何としてでも平成十年度の予算の速やかな成立をお願いし、そしてそれに関連する法律あるいは減税法案、これを通していただければ、二兆円の特別減税のほかに八千五百億程度の実は恒久減税があるわけですね。そういったものも、景気をよくする上には十分力になるのじゃなかろうか。  それに、もう一つ大事なことは、この間のG7でも指摘された点でありますけれども、「日本においては、経済活動は低迷し、見通しは弱い。回復のためには、金融システムを強化するための引続きの行動及び経済の開放度を高めるため金融その他のセクターの規制改革が必要」、こういうふうに指摘がなされました。  実は、この金融システムの強化ということについては、上原先生等の御協力もいただいて先般法律ができたわけでありまして、これは急いでやるべしという意見がありますので、急いでそれをやって金融システムの安定化を図る。こういったことを通じて明るい状態に持っていけるように努力をしたい、こう考えているところでございます。
  346. 上原康助

    ○上原委員 ぜひそれは、いろいろ対策をやっておられることはわかるし、また自民党さんというか与党の方でも、第五次というか五回目の景気対策を近々講ずるということも検討されているようですから、それは何とか打開策は講じて、明るくなる方向に行くかもしれません。だが、今私が指摘したようなことなども検討に値すると思いますので、お願いをしておきたいと思います。  それと、最後に政治倫理について。きょう、人事院総裁に来ていただいたんですが、ちょっと時間がありませんが。  これはいろいろ議論がありましたが、やはり、公務員の倫理を主張するからには、私は、政治家というか政治に携わる者の倫理というか襟も正さなければいかないのは当然だと思うんですね。そこで、私たちは、やはり政治家の株取引については、これは商取引だから、自由市場だからいいということではいかないと思うね。これだけ不祥事が出た以上は、政治家の株取引については全面禁止をするという方向でやっていきたい、こう思っております。  そういうことについて橋本総理はどうお考えかということと、それともう一つ……(発言する者あり)努力しますよ、それは。それとの関連で、公務員の倫理規程の問題ですが、これは、総理は今の規程があるから法律をつくらないでもというお考えだったようだが。私もこの間も指摘をしましたが、中島人事院総裁は、「倫理規程について、欠陥と言えるのかどうか、少し考え直した方がいい」、こういう御見解を述べておられるんですね、これは決算行政監視委員会で。  もう一つ、これは閣僚の皆さんももうおわかりと思うんですが、「不祥事というものの嫌疑をかけられた職員が、そういう職員よりも上位の職位の職員の場合があったということでございます」。要するに、大蔵省とか、いろんな面での不祥事というものは、総務管理官とか総務課長さんなんかが中心になっていろいろ倫理規程を設けようとしたって、自分の上の方の職位の方が不祥事をやっているわけだから、できるはずがないですよ、それは。そういうものを任命権者と人事院との間に調整する権能というか機構というものができなかったから、公務員倫理法とか規程とか、そういうものが十分発揮できなかった。こういう指摘は人事院総裁自体がなさっているじゃないですか。  昔の佐藤達夫さんなんて、私が青いころ、人事院総裁をしておったが、もう少し偉く見えよった、本当に、失礼だが。あなたも偉く見えるけれども。本当に権威があった、人事院総裁というのはね。大臣だろうが何だろうが、きしきし法律に基づいてやればいいんじゃないですか。喚問もできるようになっているんじゃないですか、十七条でしたか。  総理は、政治家の株取引の問題について、自民党総裁としてどうお考えなのか、総理としての。  もう一つ、今人事院総裁は私が言ったことについて、どのようにこういうことを是正する倫理法をつくるのか、御答弁願いたい。
  347. 中島忠能

    ○中島政府委員 お答え申し上げます。  ここ一、二年、公務員の幹部についていろいろな不祥事がございました。その経過というものをやはり私たちはよく観察して、その反省の上に立った新しい倫理法をつくらなきゃならないというふうに思います。  そこで、まず倫理についての予防規定を、どういう予防規定をつくるか。その予防規定を担保するためにどういう制度というものをつくっていかなきゃならないか。不幸にして不祥事というものが発生した場合に、どういう対応をするか。調査とか、あるいは懲戒というものが考えられますけれども、そういうものを含めて、本当に実効性のある法令というものをつくるために、現在、政府の中に検討委員会というものをつくって検討いたしております。人事院もその一員として入っております。  したがいまして、その経緯というものを今詳しく申し上げる段階でございませんけれども、私たちは、以上のような観点から現在検討いたしておりますけれども、そのときの視点が二つあるだろうというふうに考えております。  一つは、やはり何といいましても、公正中立な立場にある人事院が、そのようなときに、どのような権能、どのような役割を果たすべきかということが一つあるというふうに思います。私たちは、そういう意味におきまして、この検討委員会の中でいろいろ議論をいたしております。  それともう一つ、今先生がいろいろ国家公務員法の規定をお挙げになりましたけれども、新しい倫理規程の中で、国家公務員法の既にある規定との調整といいますか、整合性というものをどのように図っていくかということをよく考えなければならない。そういう観点から議論を詰めて、いろいろ実効性のある倫理規程というものをつくるように努力いたしたいというふうに考えております。
  348. 上原康助

    ○上原委員 検討をして、いつごろまでに成案になさるのか、そのめどをはっきりさせてください。
  349. 中島忠能

    ○中島政府委員 私たちの方では、現在検討を進めております。その過程におきましては、与党三党の調整会議にもいろいろの御議論があるようでございますから、その間の調整というものもございますので、できるだけ早くその調整を図って成案を得たいというふうに考えております。
  350. 上原康助

    ○上原委員 総理の御答弁をお願いします。
  351. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 政治家の倫理と公務員の倫理と、二つの点についてのお尋ねがございました。特に議員から、公務員倫理法関連で、国家公務員法九十九条あるいは十七条、二十二条、こうしたものを活用すること、また審査機構等についても御意見をちょうだいいたしております。今、それにのっとって、また人事院総裁との議論もしておられました。  私は、本当に、倫理法の制定をしなければならないことは残念だという思いがありますけれども、今の状況の中で倫理法を必要とすることは当然のこととし、既に政府側としても作業に入っております。  その中で、やはり綱紀の保持の実効性を確保するための方策、これは、議員からの御提案もありますが、その審査機関の設置を含めて、相当幅広い検討を必要とするだろうと思います。特にそのような場合に、こうした機関の性格あるいは位置づけ、これを公務員の使用者としての立場で審査をするのか、あるいは中立、第三者の立場で行うのか。さらに、その対象とする公務員の範囲をどうするのか、あるいは審査機関そのものに懲戒権とか調査権を付与するのか。その場合には、各省庁あるいは人事院の持つ既存の懲戒権との関係はどういうふうにするか、こうしたいろいろな問題点があると思います。  しかし、これは早急に詰めてまいりたいと考えておりますし、そうしたものを考える以上、政治家の倫理が問われるという御指摘も、そのとおり、私は全くそれに異論があるものではありません。  そして、既に与党三党首の話し合いのもとに、三党の話し合いがスタートをいたしております。  その中で、今議員は、政治家の株取引は禁止という言葉を言われました。私たち閣僚、政務次官がこれを完全に停止しておることは御承知のとおりでありますが、その上で、全国会議員が禁止ということが望ましい姿なのか、むしろすべてを公開する方が望ましいのかといえば、私は公開の方がいいと思っております。  なぜなら、他の仕事をしておられ、実業家として株を保有しておられる方が後で政治家になられたといったような場合を考えますと、私は、その方々にその株をそれじゃ一切動かすなと言えるかといえば、言えないと思うのです。むしろ、その取引というものを含めて全部透明にしていただく、その方が大事なような気がいたしますが、いずれにしても、この問題は大事な問題として論議をこれから詰めていかなければならないと思います。
  352. 上原康助

    ○上原委員 時間ですから終わりますが、今総理が後段お述べになった点も傾聴に値すると思います。閣僚や政治家ですかが自粛をしておれば、やはり政治家が襟を正すというのは当然だと思いますし、そういう面で御努力をいただきたいということと、公務員倫理法というのは、法律がなくても倫理を守るのが普通であって、罰則規定が無理だとか、また骨抜きにならないように、我々も与党協議や党内でも努力いたしますが、その点を強く要望申し上げて——防衛庁長官、何かあるのですか。いい答弁だったらやってください。悪いのだったら要らないです。
  353. 越智通雄

    越智委員長 先ほど上原議員の質問お答えできなかった分について、防衛庁長官から発言を求められております。これを許します。
  354. 久間章生

    ○久間国務大臣 先ほどは失礼でございました。  自衛隊の飛行機の場合は、航空法の適用を、防衛出動治安出動、災害派遣の場合は適用除外になっておりますが、それ以外については受けております。したがいまして、規定に従ってやっておりまして、低空飛行をやる場合には運輸大臣の許可を得てやっております。  以上でございます。
  355. 上原康助

    ○上原委員 そうであるならば、自衛隊がやっている程度のことは、程度と言ったら失礼だが、同等にやはり米軍も扱うべきだ。
  356. 越智通雄

    越智委員長 質問時間が終了いたしております。
  357. 上原康助

    ○上原委員 はい。
  358. 越智通雄

    越智委員長 これにて上原君の質疑は終了いたしました。  次回は、明二十七日午前九時より委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時七分散会