○赤羽一嘉君 新党平和の赤羽一嘉でございます。平和・
改革を代表し、ただいま
議題となりました
日本国有鉄道清算事業団の
債務等の
処理に関する
法律案等につきまして、
総理並びに関係大臣に質問をいたします。
冒頭、まず申し上げたいことは、本
法案を修正することなく成立させることは、行
財政改革の模範的モデルである
国鉄改革に大きく傷をつけてしまうということであります。
そもそも、旧
国鉄長期債務は、抜本的な行
財政改革の一環として
処理すべきものであるはずでございます。本
法案のように、理屈も何もなく、
負担させやすいところに
負担を強いることは、
国鉄民営化の意義を風化させてしまうばかりか、内外から信用を失墜させかねない悪法であります。自民党内にも大いに異論があるとのことでありますから、今からでも撤回をすべきものであると、まず強く指摘するものであります。
以下、具体的問題点について質問をさせていただきます。
今回、
処理が求められている
長期債務の本体、つまり昭和六十二年の
国鉄民営化の折に国が
承継した
債務二十二・七兆円が約二十八兆円に膨らんだ原因が、
国鉄民営化直後の六十二年十月、旧
国鉄所有の
土地売却凍結を
政府が決定したことにあったことは間違いのない事実であります。
先日の予算
委員会において、橋本
総理は、
土地売却凍結一年後の世論でさえ旧
国鉄用地の売却再開を許す雰囲気ではなかったとの答弁がありました。なるほど、当時のバブルによる
土地急騰を助長したくなかったということは、理解できないことではありません。しかし、
国鉄清算事業団の
収入の手だてが
土地と株式の売却しかなく、それらが
債務返済の唯一の方法であったことを考えれば、少なくとも、
土地売却の凍結と同時に、
債務を膨張させないための対策を速やかに講ずるべきであったはずであります。
二十二・七兆円もの
債務を放置しておけば毎年一兆円前後の利子がかさむのは、小学生でもわかる理の当然であります。当時の
政府は、金利レートより
資産インフレの方が大きいと甘く見ていたのではないでしょうか。この失政の責任を明らかにせずに安易に
国民に
負担を求めることは、まさに責任転嫁の見本であると言わなければなりません。当時の
運輸大臣であり、現
政府の最高責任者であられる
総理の明確な御見解を伺います。
次に、
JRに追加
負担を求めている年金移換金三千六百億円の問題であります。
鉄道共済年金と
厚生年金の統合において発生した移換金
債務の九千四百億円の分担に関しては、
平成八年当時の厚生
委員会において議論がなされ、野党各
委員より、七千七百億円もの
負担に
国鉄清算事業団はたえられるのかとの懸念が表明され、大変激しい論戦が展開されました。が、結局、旧
国鉄期間分の七千七百億円は
国鉄清算事業団が、
JRになってからの
期間分の一千七百億円は
JR各社が
負担することが決定されました。また、将来返済できずに終わる移換金
債務については、
事業団の既存の
債務と同様に、最終的には国において
処理するとの決定がなされ、あくまで国の
債務として、
JRに
負担を求めないことが決められたのであります。
このような経緯の末に決定されたにもかかわらず、二年もたたぬうちにその
負担区分を変更し、
JRに三千六百億円の追加
負担を求めているのが今回の
法案であります。これは、当時の議論を全く無視した国会軽視そのものであり、余りに御都合主義が過ぎるものであると思います。
総理は、過日の予算
委員会の場で、
JRの皆さんが過去の自分たちのOBの分の
負担は嫌だ、それは一般
国民の税金で
負担をしろと言われるのは随分乱暴だと正直思うと発言されました。また、
運輸大臣は、移換金の問題は、本来当事者である共済関係
事業主で
処理し解決すべき性格の問題である、
JR社員分の移換金はその
事業主である
JRの
負担とすることが合理的であり、この分まで一般
国民の
負担とするわけにはまいらないと発言されております。
このお二人の御発言の真意は、先ほどの御答弁にもありましたが、企業年金は
事業主が
負担するのが当然であり、
事業主の
JRが
負担することが筋であるとの
趣旨であると思いますが、この御発言には二つの大きな問題があります。
まず、問題の一つは、旧
国鉄時代の
事業主体をあたかも
JRであるかのように考えている点であります。
旧
国鉄出身の
JR社員は一つの人格でありますが、雇い主の旧
国鉄は国の企業であり、
JRは民間企業なのであって、両者は全くの別人格であります。
国鉄の時代の分は国の責任であることは法的にも政治的にも既に決着がついていることであり、旧
国鉄時代の移換金を
JRの
負担とすることに合理性は私は全くないと言わざるを得ないのであります。
にもかかわらず、
JR各社に、
JR社員のための年金だからといって旧
国鉄時代の
期間分を今回追加
負担させることは、
政府がいまだに
JRを国の子会社であるかのように錯覚し、この程度なら許されると考えている証拠であります。この考え方をあいまいにすることは、今後の行
財政改革に多大なる禍根を残すものであると危惧いたします。
総理並びに
運輸大臣の御見解を伺います。
発言の問題の二つ目に、もし今でも
政府が、年金移換金については
JRが追加
負担を受け入れるのが筋であるとあくまで主張されるのであれば、
平成八年度の
鉄道共済年金と
厚生年金の統合の際に、なぜ
政府の主張どおりの
負担区分を決定しなかったのでしょうか。二年前には異なる主張をしておきながら、今改めて、本当はこうあるべきであったなどということは、理念不在、朝令暮改もきわまれりだと言わなければなりません。既に確定した
国鉄清算事業団の
債務の一部を、
JRの同意なくして、
法律によって一方的に
JRに転嫁することは許されないことであると思いますが、あわせて
総理並びに
運輸大臣の御見解を伺います。
第三の問題点は、民間企業に追加強制
負担を求めることがいかにナショナルスタンダードに適合しないかということであります。
JR各社の年間利益が二千億円強しかない
状況で、急に三千六百億円もの追加借金を背負わせることは、業績の悪化につながり、
JRという企業の経済価値を下げ、その結果、
JR株の下落を招くことは必然であります。
JRの株主の合理的な予測を超えた理不尽な追加
負担を株主総会も開かずに決定することは、株主代表訴訟の対象となることが予想されます。
また、株主、
投資家への裏切りとも言える民間企業
JRへの追加
負担を国が政治主導で行うことは、
日本の会社の株は危なくて買えないということになり、国際社会において、
日本という国はまともな国ではないという信用失墜の評価を受けてしまうのではないでしょうか。
JRは、これまで
投資家への情報開示も積極的で、本来ならば株価上昇は間違いなく、二次売却すれば一兆円の
収入が見込めると言われております。しかし、
JR株が政治的なリスクを抱えていることが本件を機に明らかになれば、二次売却は困難になり、NTTなど他の
政府保有株式の売却にも大きな影響が出ることが予想され、この点からも、今回の
JRに対する追加
負担は避けるべしと考えますが、
総理の御見解を伺います。
第四の問題点は、恣意的な
財政運営ではないかということであります。
本
法案では、
郵便貯金特別会計から特例
繰り入れとして一兆円、さらに、
たばこ特別税を
創設して二千三百四十五億円をこの
債務処理に充当することとしております。
国有林野の
債務処理にも、
たばこ特別税より単年度三百五十五億円充当することとしております。これらはまさに理屈も何もなく、取れるところから取ろうとするものであります。たまたま
郵便貯金特別会計に黒字があるからといって、預金者に還元することなくそれを充当したり、因果関係のない新税を借金の穴埋めのための
目的税として
創設するというのでは、
国民はたまったものではありません。
財政の論理も節度も無視し、またなりふり構わずにけじめのない
財政運営をする、そうした姿は、まさに
政府・与党みずからの
財政政策が破綻したことを示す以外の何物でもないと考えますが、
総理の明確な御見解を伺います。
第五の問題点は、毎年度、元本
償還のための
財源として、四千億円の捻出について、当面、一般歳出の歳出歳入両面にわたる努力により対応することとしている点であります。
国有林野の
債務処理においても、毎年度、元本
償還のため、四百七十億円を同様に捻出努力することとしております。
現在の橋本連立内閣の手法では、この
実現性は到底不可能だと断じざるを得ません。
財政構造改革法によってキャップ制が導入され、上限が決められている上に、さらに、歳出削減等によって約四千五百億円もの
財源を捻出することなど、一体どうしたら可能だと言うのでしょうか。あるいは、これは、今、与党内で議論百出と伝えられておりますように、事実上、
財政構造改革法のキャップ制をすべてなくしてしまうことを意味しているのでしょうか。そうでない限り、結局は
国民への新しい
負担増を求める以外に
財源がないことは明らかであります。新たな
財源捻出の方法を明言できるのであれば、どうかお示しいただきたい。それこそが
財政民主主義というものではないでしょうか。
こうした見切り発車的な
法律の提出は、当面をごまかすためのまやかしの手法でしかないと言わざるを得ないのであります。キャップ制を外すことを想定しているのか、新たな増税を意味しているのか、
総理の明確な答弁をお願いするものであります。
最後に、今回
議題となりました
長期債務の
処理と
財政構造改革法の改正並びに行政
改革の
推進は、相互に密接に関係しております。
長期債務の
処理は、国、地方を挙げた行
財政改革の一環として明確に位置づけられて
処理されるべきであります。その意味から、
財政構造改革法の改正
法案が提出されようとしている中で、本
法案だけ修正することなく成立させることの妥当性を疑うものであります。この点につき
総理の御見解をお伺いし、私の質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。(
拍手)
〔内閣
総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕