○赤松正雄君 新党平和の赤松正雄でございます。会派平和・改革を代表いたしまして、ただいま
議題となりました
内閣提出の
国際連合平和維持活動等に対する
協力に関する
法律の一部を
改正する
法律案、いわゆる
PKO法改正案につきまして、
総理大臣ほか
関連大臣に
質問をいたします。
ただ、今も
石井紘基議員から
質問がございましたように、この
法案の
質問に先立ちまして、私からも、
大蔵省の今回の
不祥事に対する百人を超える
処分者を発表した点に
関連して、
総理に御
質問をいたします。私、一昨日、大蔵
委員会で
大蔵大臣にいろいろ
質問をいたしましたので、今からはエッセンスのみ
質問をいたします。
まず、今回のようなこうした
過剰接待の実態は、本質的には、
大蔵省が持つ、
政府の中の
政府とまで言われる強大な
権限に由来するいわば構造
腐敗だと
考えるものであります。
行政改革の
観点からいいまして、
権限の分散が必要であり、その意味から、
大蔵省は、予算編成、財政、
金融、税制等、おのおの分野に応じて分割すべきが妥当だと
考えます。
国民感覚からすれば身内に甘いと思われる今回の
処分内容、いわゆる天下りがもたらす弊害あるいは構造的な
腐敗に関する認識、さらには
大蔵省分割についていかがお
考えか、また他の
行政部局に関してこうした内部
調査を行う
考えはないかどうか、お聞きしたいと存じます。
あわせて、さきの
大蔵省に関する
不祥事としては、中島元主計局次長や田谷元東京税関長の
不祥事の際も、その詳細かつ具体的な
調査報告は一切なされておりません。欧米では、こうした場合、詳細な
調査報告書が作成されることが当然だと聞きます。今回の大蔵
不祥事も含めて、一連の
大蔵省関係の事件に関して、具体的な経緯、原因、今後の対処等について
国民の前に明らかにする意味からも、詳細な
調査報告書を作成すべきだと
考えますけれども、
総理の御
見解を伺います。(
拍手)
さて、
PKO法は、九〇年代劈頭の湾岸戦争をきっかけに、
日本の国際社会への貢献についての議論が起こり、まさに大騒ぎの末に九二年六月十五日に成立、同八月十日に施行されたものであります。この間の歳月を振り返りますと、同
法案成立は、いわば国際社会における
日本の市民権獲得的な側面があったと言えます。あのとき、衆参本
会議での牛歩戦術のあげくにバッジ返上騒動まで起こして反対した当時の社会党が、今は自民党と政権を組んでおられるわけですけれども、まさに隔世の感がいたします。
成立時に三年後には見直すとの条項が入っていたにもかかわらず、六年たった今日に、ようやく三点だけの
改正案がいわば恐る恐る提出されたことは、一体どういうわけでありましょうか。いささか遅過ぎますし、
見直しの中身も小ぶり過ぎると言わざるを得ません。社民党と名を変えられたとはいえ、あれだけ反対した人々がパートナーだけに、
政府・自民党にとって、大きな
改正を持ち出すには危険がつきまとう、用心するにこしたことはないということの結果なのではないのかと疑念を持たざるを得ないのであります。
先ほど、イラクに対するアメリカの武力攻撃の可能性が取りざたされたとき、再びあの湾岸戦争の際のように、
日本への多国籍軍
参加の
要請が来るといったふうに発展するのではないかとの悪夢がよぎった向きもあったのではないでしょうか。幸いなことに、アナン
国連事務総長らの仲介によって一応事なきを得ていますが、いつ何どき再燃するかもしれません。このことは、去る二十八日に閣議決定を見たばかりの
日米ガイドラインの
見直しに伴う
関係法整備の問題とはまた違った意味で、極めて重要な問題だと言えます。
つまり、
日本の平和を直接脅かすような
事態が起きたときにどうするのかが日米安全保障論議、具体的には
日米ガイドライン関係論議だとすると、この国際社会の一員としてどう義務を果たすか、いわば警察的行動ともいうべきテーマにどうかかわるかが国際安全保障論議であると言えます。
日本に直接かかわることは、周辺
事態などといった新しい概念の導入もあり、日米
ガイドライン関連法に関心が高まっておりますけれども、のど元過ぎれば熱さ忘れるのことわざどおり、国際安全保障の分野については忘れられがちであります。このことは、
PKOというと、
政府の政策不況も相まって、プライス・キーピング・オペレーションと間違う向きが多いことなどが何よりも裏づけているのではないでしょうか。
日米ガイドライン論議も、また
PKO論議も、双方とも
日本にとって極めて重要な問題であることをここで改めて強調したいと思います。
九〇年代の国際社会は、湾岸戦争とともに幕があけました。あのときに
日本という国が問われたのは、まさに激動を続ける世界の中でどう生きていくのかということでありました。それまでの
日本は、ともかく平和であればいい、戦争に巻き込まれなければいいという、いわば一国平和主義とでもいうべき
姿勢だったのですが、それでよいのかということが突きつけられたわけであります。平和が壊れた、世界がその平和を回復しようというときに、
日本は何ができるのか、何をするのかが問われたのであります。
そうした中で、九十億ドル支援というお金による
国際貢献論やら、また
国連平和
協力法案という
国連の決議があれば海外での武力行使も正当化されることをねらいとした
法案などが、当時の自民党
政府によって提出をされました。特に、この
法案をめぐっては、多国籍軍への
後方支援がどこまで可能か、どこからが武力行使と一体となるか、つまり憲法が禁止している集団的自衛権の行使につながるかどうかということが論争の的となったわけであります。当時の公明党などが、
国連の一員としてでも自国の防衛目的以外のために海外で武力行使をすることは憲法上許されないとの主張を貫き、廃案に追い込んだのでありました。
それから約一年の論議の結果、
PKO法が成立しました。この
法律によって
日本が
協力することにした
PKOとは、直接的な武力行使で紛争を抑える集団的安全保障に位置づけられるものではなく、むしろ紛争が終わった後に再発を
防止するためのものであるがゆえに、冷戦下、米ソ対立で
国連軍が機能しないため、集団的安全保障の補完的なものとして国際社会で高く評価されていました。しかし、
日本では、それまで全くと言っていいほど関心が寄せられていませんでした。世界の紛争には、終わった後にせよ何にせよ、ともかくかかわりたくないという一国平和主義の悪弊が色濃く反映していたからであります。
粘り強い与野党折衝の末に、当時の公明党などの主張が受け入れられ、一つは
停戦合意の成立、二つは紛争当事国の受け入れ同意、三つは
PKOの中立、四つは三つのいずれが欠けても任務を中断、撤退する、五つは
武器の
使用は護身に限定するといった
PKO参加五
原則が
法律そのものに盛り込まれました。あわせて、当面
日本が
参加する
PKOは、
後方支援に限り、停戦監視、武装解除監視といった
PKF、
国連平和
維持隊本体
業務については凍結することになったのであります。その後の展開は、残念ながらボランティアの中田さんらのとうとい犠牲もありましたけれども、明石康
国連事務次長らの活躍もあって、カンボジア
PKOへの
協力を初めとして、それなりの評価を得ることにつながっていったことは周知の事実であります。
以上、申し上げまして、この
法案についての問題点を、時に日米
ガイドライン関連法との
関係性もあわせて具体的にお聞きしたいと思います。
まず第一に、今回の
法改正の最大のポイントである
武器使用をめぐって、
個人判断から
原則上官の
判断に変えるということについて、かつて
自己防衛なので
個人判断で可能としていたのを今回のように変える
政府答弁の整合性の食い違いをどう
考えられるのか、改めて明快にお示し願いたい。この
法律が最初に論議された当時、
個人としての正当防衛が結果としての
部隊、組織防衛になる可能性があり、その際における憲法との整合性が不明確だとの主張がなされましたけれども、今度の
改正では、まさに直接その危険性が起きてくるのではないかという点であります。
さらに、
上官の
判断に従うというのが世界の軍事における常識であるという点でありますけれども、では、
上官の
判断にゆだねるとどういうことが起こりかねないかといいますと、極端な例かもしれませんけれども、今話題の麻生幾さんの小説「宣戦布告」で詳細に描かれていますように、上の指示を待っている間に、瞬く間に攻撃の的にされてしまい、悲惨な状態を招かないのかどうか。創立以来戦ったことのない、誇るべき気の毒な軍隊ではない軍隊の我が
自衛隊だけに、心配されるわけですけれども、いかがでしょうか。
橋本
総理と思われる諸橋太郎という名のかなり短気な
総理大臣がこの本には登場しますけれども、
総理は読まれておられると思いますけれども、かの戦闘場面についての著述への御
意見も含めて、ぜひお
考えをお聞きしたいと思うのであります。
また、
武器の組織的
使用が、
状況の新たな展開の中で結果的に武力の行使につながっていく可能性なしとしないと思います。どういうケースが武力の行使と認定されるのか。憲法の禁止するところの武力の行使について、改めて、この場合に即して定義を示していただきたい。
さらに、
武器使用について、周辺
事態法案との連動性についてお聞きしたい。
まず、周辺
事態法では
武器の
使用は
上官の
命令で行うことが明記されていませんけれども、これはどういう
理由か。今回の
PKO法改正内容と合致させることが自然ではないのでしょうか。
また、船舶検査
活動、いわゆる臨検に当たっては、事の性質上、当然のことながら、艦砲でありますから、射撃を伴うこともあり、
PKOの陸上での
個人あるいは
部隊対応と違って、武力行使に発展する可能性が高いと
判断されます。先般、衆議院安全保障
委員会で
防衛庁長官に私がそのあたりについてお尋ねをしましたけれども、長官からは、相手船がこちらの臨検を阻止して逃げてしまったらそれはしようがないとの
答弁がありました。
改めてここで確認をいたしますが、臨検に当たる自衛艦は、ほかの
国連加盟国海軍と同じように実弾を
使用して阻止行動を行えるのかどうか。もし行えないということなら、検査を拒否する船舶は我が海上
自衛隊の担当する海域に競って集まってくるという極めて異常なことになるのではないでしょうか。この点について明確な
考え方をお示し願いたい。
とともに、臨検について、
総理は、
国連安保理の決議に基づく集団安全保障としてのものだから憲法に抵触するものではないという
答弁を、
日米ガイドラインをめぐる参議院本
会議の
質疑の中でされておりますけれども、その場合の集団安全保障への
参加なら武力行使は許されると
考えておられるのではないかとの疑念が強く起こってまいります。この点についても明快な
答弁を改めてお示し願いたいと存じます。
次に、人道的
国際救援活動に限って、
停戦合意がなくても緊急
物資が送れるように
改正することについては、五
原則の一つを外すわけでありますから、強い自覚が必要であると思います。歯どめ外しについては、慎重であるべきだからであります。
五
原則が
法律に盛り込まれているということは極めて重要で、これからも遵守されなければならないと思いますけれども、
停戦合意をめぐって、カンボジア
派遣の際、特に第二次隊の場合に、その後に派生した
状況の変化により、かなり
見解が分かれた場面がありました。現地で停戦監視員が、国内と現地の乖離という言葉を使って物議を醸しましたけれども、この際、改めて停戦の合意についての定義をはっきりさせるべきだと
考えますが、お尋ねしたいと思います。
さて、次に、施行後六年たってのこの
法律をめぐる問題点を若干指摘したいと思います。
まず、カンボジア
PKO派遣の際に、
我が国の
PKOの目標は道路、橋のかけかえであったのに、第一次隊の場合、着くとすぐに
物資の補給やら水の輸送、さらには駐屯地の建設などの任務についたり、第二次隊のときは、選挙支援のために完全に道路補修が中断され、さらには凍結されている任務のはずの巡回までしていたことが、現地を実際に見たジャーナリストたちによって指摘をされております。
任務と
参加領域の実質的な拡大がなし崩し的に進められていたことをどう認識しているのかどうか、お尋ねしたい。これはまた、凍結されている
PKFへの実質的な接近を意味しているのではないか。今日までの
PKO参加の経緯の中で、
PKFに
日本も
参加、
協力してほしいとの
要請はなかったかどうかについても、あわせてお聞きしたい。
日本が
PKF本体
業務の凍結を解除したとしても、他の国の
PKFと同じようにいわゆる警護
活動ができるということではないということは、護身という
武器使用の
原則が
PKO法全体にかかっているために当然のことであります。しかし、それでは
PKF凍結を解除しても不十分ではないかとか、逆に
PKF凍結解除をすると極めて危険であるという、双方の立場からの誤解が生じてきております。
このことは、ともに、五
原則がこの
法律全体を覆っているということを十分に理解されていないところから起こっております。一部に、今の
PKFは解除すべし、単に解除しただけでは役に立たないから五
原則を見直せという主張があるようでありますけれども、私たちは、五
原則を外すということは、即憲法の問題につながり、危険であるということがあると思います。このあたりのことについて
総理はどう
考えられるか、改めてお伺いしたいと思います。
PKO大国と言われるカナダでさえ、今大きな挑戦を強いられ、試練を受けつつあると言われる
状況の中で、
PKOへの積極的取り組みを積み重ねることが
日本の
国際貢献の名を高めることになることは間違いありません。また、この地上でのさまざまな紛争の発生に際して、
日本も人的な貢献をすべきだ、多国籍軍にも
参加してほしいといった、いわば
日本への無理な
要請を
PKOでの実績がはねのけることになると私には思われます。この点について、つまり
日本の
PKOへの
協力についての根本的な認識について、改めて
総理の
考え方をお聞きしたいと存じます。
さて、日米
ガイドライン関連法案の閣議決定をめぐって、元自民党の
政府有力高官からでさえ、この時期になぜ日米安保は強化なのか、
国民にはわかりにくいとの声が上がっております。日米
関係強化への気遣いの余り、米軍のアジア太平洋戦略への追従から、さらに進んで世界戦略への無批判な迎合へと進むかに見える橋本政権の
外交・防衛
姿勢には大いに問題あり、こう指摘をさせていただいて、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕