○石井啓一君 新党平和の石井啓一でございます。平和・
改革を代表いたしまして、ただいま
議題となりました橋本総理の経済財政
運営に関し質問をいたします。
総理は、先日、経済財政
運営の
基本的な路線を変更することを明らかにされました。従来かたくなに固執してきた目先の財政赤字削減という
基本路線を、何のまともな
説明もないままに、突如記者会見によって変更したのであります。
その変更自体は、当然過ぎるほど当然のことであり、逆に、余りにも遅きに失したと言わざるを得ません。しかし、従来からの態度を突如変更したその理由や、今日の経済の危機的な事態を招いたみずからの
責任に対する反省など、全くうかがえないのであります。しかも、表明されたその
内容たるや中途半端なもので、その手法は小出しでこそくそのものであります。しかも、子細に
内容に接するとき、
内外から厳しく求められている景気対策の要請に対して十全にこたえるものとは到底言えません。これでは総理としての資質を問わざるを得ないのであります。
以下、順次具体的に伺います。
私どもは、今国会において、冒頭から、この未曾有の経済危機から脱するためには思い切った対策を講ずるべきであり、そのために財政構造
改革法を修正すべきだと提案してまいりました。もちろん経済政策の誤りの指摘は今国会だけにとどまりません。我々は、財政再建はまず経済再建からだと強く主張してまいりました。しかし、政府は一顧だにしてこなかったのであります。
住専国会は言うに及ばず、政策不況の直接的な引き金となった九兆円
国民負担増の
平成九年度予算
審議の際も、また昨年の秋の財政構造
改革法
審議の際も、幾度となく政府の経済
運営の誤りを具体的に強く指摘してきました。その都度、政府は詭弁と強弁を繰り
返し、我々野党の反対を強引に押し切って誤った施策を強行してきたのであります。
橋本内閣の重大な経済失政を数え上げれば切りがありません。住専への税金投入、消費税率の引き上げ、大型減税を
実施するしないという問題、予算編成のあり方、財政構造
改革法、金融機関救済のための公的資金
導入、景気認識の誤り等々、橋本内閣の成立以来、その経済政策はまさに間違いの連続だと言わなければなりません。(
拍手)そして、その根っこには、目先の財政赤字の削減をすべてに最優先するという硬直的、近視眼的な経済財政政策があるのであります。
総理は、今日の深刻な経済状況をもたらした原因をどのように認識されているのか。金融機関の破綻やアジア経済の破綻等外的要因に
責任を転嫁し、今でもみずからの政策
運営を正しかったと思っていらっしゃるのか、明確に伺いたいのであります。
次に、政策変更を表明するに至ったその具体的な理由、経緯であります。
総理は、経済の現状認識として、
内外の悪条件が一斉に重なり、
我が国経済は極めて深刻な状況にあると述べられています。その認識はいつなされたのでしょうか。
去る四月八日に
平成十年度当初予算が成立いたしました。その
審議の間は一貫して最善の予算と主張し、翌九日には、経済が極めて深刻な状況と
説明し景気対策を講じると言われる。四月の八日から九日へとたった一日日付が変わる間に、それほど急激な景気動向が変わるような
変化があったのでしょうか。景気が悪化しているのははるか以前からであります。株価、地価、為替相場などの経済的数値が示すとおりであります。景気は後退ではなく停滞であるとしてきたのは、政府ただひとりであります。総理は、いつの時点で経済の深刻な状況を認識したのか、また、そのように認識するに至った根拠は何か、明確な答弁を求めます。
総理は、自身の
政治責任について、
政治責任の追及を恐れて必要な対策を講じない方が
政治責任があると述べられました。しかし、むしろ全く逆であります。これまで
政治責任の追及を恐れて必要な対策を講じてこなかったのは、総理自身であります。
総理は、昨日の予算
委員会で、追加の景気対策について考え始めた時期に関し、インドネシアとIMFとの対話を継続させる努力のプロセスの中でと答弁をいたしました。本年一月ごろの早い時期であるかと思いますが、それにもかかわらず、予算成立まで
平成十年度当初予算が最善のものと言い続けてきたのは、自身の
政治責任の追及を恐れたからではないでしょうか。
総理がそうしたこそくな態度をとっているからこそ、
内外の信用を失い、総理の辞任説が市場を駆けめぐっただけで株価が好感し、高騰するのであります。経済政策の路線変更の記者会見では、その翌日に株価が下がり、総理の辞任説が流れると、逆に急騰する。市場の橋本内閣に対するノーの声に率直に耳を傾けるべきであります。いかがお考えか、見解を伺います。
次に、
経済対策の具体的
内容についてであります。
総理は四兆円を上回る大幅減税を表明しましたが、その
内容は、二兆円の特別減税をことしじゅうに追加し、来年も継続することが中心であります。しかし、この特別減税の
実施方法は大いに疑問であります。そもそも、先行して
実施した二兆円特別減税の景気浮揚効果をどのように把握しておるのでしょうか。本年二月の消費性向は、特別減税が
実施され所得がふえたにもかかわらず、過去最低の六八・四%を記録いたしました。二兆円特別減税の効果が上がっていないことが明らかになっています。先行
実施した二兆円特別減税の景気浮揚効果についての見解をまず伺います。
経済は生き物であり、心理的効果が大きく影響いたします。総理御自身も、昨日の予算
委員会で、特別減税の景気浮揚効果に関して、減税を求める心理的要因を考慮してほしいと答弁をされております。心理的効果を考えるとするならば、同じ減税を
実施するにしても、一時に大幅な減税を
実施すべきであり、減税を小出しに細切れに行えば、心理的効果は損なわれます。こういった点についてどうお考えか、見解を伺います。
また、今回のように、いわば三段階に
実施するのでは、課税最低限が一たん上がった後に、さらに特別減税を重ねることになります。さきの特別減税を
実施する前は平均的世帯で三百六十一万円だった課税最低限が、
実施後は四百二十三万円となり、その分だけ、今後の特別減税ではさきの特別減税より所得が高くないと減税効果が及ばないのであります。所得が高くなるほど消費性向は低くなりますので、継続される特別減税の効果は、さきの特別減税の効果より小さくなります。さきの特別減税自体、目立った効果がないと指摘されているのでありますから、継続される特別減税の効果が極めて小さいことは明らかであります。こういった点に関して、総理並びに大蔵大臣の見解を伺います。
これらの問題点を解決するために、私どもは、特別給付金を主張しております。
平成九年度当初予算によって九兆円を超える規模を家計から吸い上げたことが消費を冷やす直接的な引き金となっているのでありますから、この景気を回復するには、家計に直接戻す
措置を講じなければ意味がありません。十兆円規模減税を通じて大幅に可処分所得をふやす
措置を講ずるべきだと考えます。少なくとも消費を喚起し、経済社会構造
改革のための六兆円規模の恒久減税とあわせて、四兆円規模の給付による特別戻し金の
実施が必要だと考えます。当面する危機を克服し、二十一世紀の
我が国社会を確かなものと切り開くための
措置として、恒久減税六兆円、特別戻し金四兆円を
実施するお考えはないか、総理の答弁を求めます。
関連して、教育、福祉等の政策減税についてはどう対応するつもりか伺います。
いかなる状況であれ、
国民生活向上のための施策は追求していく、それは
国政に携わる者の当然の責務だと考えます。少子・高齢化社会の到来を踏まえれば、そのための施策は最重要課題であり、政策減税はそのための重要な施策の
一つであります。具体的には、象徴的な施策として子育て減税を
実施すべきと考えますが、総理の見解を伺います。
また、総理は、所得税や住民税のあり方について幅広い観点から深みのある見直しを行いたい、あるいは
法人税については今後三年のうちにできるだけ早く総合的な税率を国際的な水準にしたいと今後の恒久減税の検討について述べております。しかし、総理の発言の延長線上で恒久減税を
実施するつもりならば、その財源をどうするつもりなのか、総理並びに大蔵大臣に答弁を求めます。
恒久減税の財源を歳出の削減あるいは増税で賄うつもりであればともかく、特例公債で賄うつもりであれば、財政構造
改革法との関連を整理する必要があります。総理はどのようにお考えになっているのか、明確にお示しをいただきたいと思います。
次に、社会資本整備の具体的な
内容について伺います。
私は、今最も必要な社会資本の整備は、構造
改革につながる投資、
生活関連や二十一世紀を安心した社会に導くことに真に必要な社会資本の整備であると思います。従来型の公共
事業を大規模に
実施することは、その分の経済に対するカンフル剤になることはあったとしても、産業構造のおくれを温存する結果に陥り、カンフル効果がはげた後は、また景気の落ち込みが生ずるのであります。総理は、環境、福祉、科学
技術、
情報関連等に言及をしておられますが、何をどれほどの規模でやるのか、一切明らかにされておりません。大半が従来型のばらまき公共投資に終始し、
経済対策に名をかりた参議院
選挙対策になるのではないかと考えます。総理の見解を伺います。
最後に伺いたいことは、総理は巨額の経済的な損失をもたらした
責任をどうとられるのかということであります。
総理、政権延命とメンツのためにいたずらに時間を費やしている間に、どれほどの多くの犠牲を生じさせたとお考えでしょうか。中小企業を初めとした企業の倒産は深刻で、
平成九年度だけで倒産企業の負債総額は戦後最悪の十四兆二百十億円に上ります。失業者は二百四十六万人を超え、完全失業率も三・六%を超える、いずれも
昭和二十八年以来の戦後最悪の数字であります。
企業は厳しい貸し渋りに苦しめられており、また預金者、
生活者の犠牲を強いる傍らで、銀行等には超低金利という事実上の公的資金を
導入し空前の
業務純益を計上した上に、金融機関の救済に投入する公的資金は三十兆円もの巨額を準備いたしました。地価も七年連続で下落の一途であります。しかも、アジア各国への邦銀の融資の総額は二十兆円を超えると指摘されておりますが、この大半が不良債権化しかねないと指摘をされております。政府の経済政策の失敗により、そして政策転換のおくれにより、巨大な経済的損失が生じてしまったのであります。総理、あなたにはこうした経済危機を招いたという
責任の自覚がないのでしょうか。
総理は昨日の予算
委員会で、
政治責任のとり方について、
責任を回避するつもりはなく、日々
責任を感じている、あるいは
責任のとり方は与えられた職責の中で全力を尽くしていくことであると答弁をされました。今日の経済危機をもたらした反省もなく、居直りとも受けとめられる発言であります。経済
運営の失敗について、総理御自身一体どう総括し、反省をしておられるのか、改めて見解を求めます。そして、その
責任の自覚の深さ、大きさについて、
国民のだれの目にも明らかにわかるようなけじめのつけ方を求めます。総理の見解を伺います。
総理、今や多くの
国民が、そして市場の評価が総理の続投を望んではおりません。総理の退陣こそが、当面する最大の景気対策であり、
責任ある
政治のあり方と言わざるを得ません。いたずらに言を左右にせず、国家
国民のために明確な意思表示を求め、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕