○福島豊君 新党平和の福島豊でございます。
平和・
改革を代表いたしまして、ただいま
趣旨説明のありました
国民健康保険法等一部
改正案について、
総理並びに
関係大臣に御
質問をさせていただきます。
具体的な問題点について御
質問をする前に、
財政構造改革法によって課せられた
社会保障費に対するキャップの問題並びに今後の
社会保障制度改革についての御
見解を
お尋ねいたしたいと思います。
平成十年度
予算の編成に当たりましては、
社会保障費の自然増八千億円に対して、これを三千億円にとどめるという大変大きな制約が課せられました。この自然増における五千億円の
削減を実現するためには、さまざまな
制度改正が盛り込まれなければなりませんでした。私どもが
予算の
審議においても繰り返し
指摘をいたしました、児童扶養手当の所得制限の
強化、また公費
負担で行われていた難病患者の
医療への自己
負担の導入など、さまざまな
社会保障制度の
削減策が講じられております。
しかし、
予算案が衆議院を通過する前から、
与党からは大型の
補正予算編成についての声が聞こえてまいりました。
こうした動きに対しましては、当然、
予算委員会、厚生
委員会で批判の声が上がりました。大型の
補正予算をするつもりがあるのであれば、さまざまな形で
社会保障制度の
削減策を盛り込んだ
平成十年度の
予算案そのものを見直すべきではないかという批判であります。まことにもっともな批判であります。
しかし、
総理を初めといたしまして閣僚の皆様の御答弁は、
平成十年度
予算案は最善のものと
考えるという逃げの一手に終始したわけであります。そして、衆議院を
予算が通過して極めて短
期間のうちに、
自民党から
補正予算を想定した大型の景気
対策に取り組むという発表がなされました。
総理は
自民党の総裁であります。
政府としての立場と、党の立場を使い分けられることは、理屈としては成り立ち得ても、
国民の目には詭弁としか映りません。
改めて、
補正予算を組むつもりが最初からあったのであれば、
平成十年度
予算を修正すべきであったと
総理には申し上げざるを得ません。大変に失礼な表現でございますが、終始一貫して欺瞞的な答弁をなされた責任をどう
考えられるのかお答えをいただきたく思います。また、事態が変わったというのであれば、一体、何が変わったというのか御
説明をいただきたいと思います。
また、
小泉厚生大臣は大変に御苦労をなされて
平成十年度の
予算編成に取り組まれたと伺っております。
予算委員会、厚生
委員会で、大臣は
補正予算の編成についての
質疑に対して、そういうことであれば話が違うと言わざるを得ないと御発言になっておられます。今ここで改めて、発表された大型の
補正予算を
前提とする景気
対策について、
小泉大臣はどのようにお
考えか
お尋ねをいたしたいと思います。
また、
財政構造改革法の
改正についての議論もなされております。
財政構造改革法のもとでこの国保法
改正案も出てきたとも言えるわけでございます。
予算編成とのイタチごっこのような
制度改正を細切れに重ねていくことは、
制度の複雑化を生むだけではなく、
国民の
制度に対する
信頼感を低下させるとの
指摘があります。
むしろ、求められているのは、細切れの
制度改革ではなく、
信頼性と持続性のある抜本的な
制度改革であります。この点については、
社会保障制度審議会の答申でも、「
財政対策を優先した
改正を繰り返すことは
国民の
社会保障制度全体への不信感を強めることにもなりかねない。」と批判いたしております。
今、
財政構造改革法を
改正するのであれば、
社会保障関係費に関しては、その増加に対して一定
期間のモラトリアムを設け、キャップの制約のもとでの細切れの
制度改革を行うのではなく、
期間中に抜本的な
改革の実現を要請するように改めるべきではないかとの
指摘もあります。
厚生大臣として、
財革法の
改正をどのように
考えておられるのか、また、
改正があるとすればどのようなものであるべきか、お
考えを
お尋ねいたしたいと思います。
次に
お尋ねをいたしたいことは、
国民負担率の
考え方でございます。
国民負担率の
考え方は
財革法における
財政運営上の一つの基本的な
考え方となっておりますが、これは必ずしも世界的に共通の概念ではないことも知られております。
また、
国民負担率にかわって純
負担率というものを唱える論者もおります。これは
負担と給付の差を評価する
考え方であります。
高
負担と言われるスウェーデンでは、一九九二年の
負担率は五一%に対して、
社会保障給付率は三七・八%であり、その差は一三・二%にとどまります。しかし、日本の
負担率は二九・二%で低いようでありますが、給付率も一一・四%と低く、その差はむしろスウェーデンよりも高く一七・八%となります。
これは
社会保障を支える
負担が大きいと言われながらも、日本の場合にはそれ以外の公共投資などを含めた
負担こそ高水準であるという事実であります。
財政構造改革というと真っ先にやり玉に上がるのは
社会保障の
負担でありますが、むしろ
国民にとっては
負担から給付を差し引いた純
負担こそが問題なのであり、ここに大きくメスを入れるのでなければ、本当の意味での
財政構造改革にはなり得ないと
考えます。(
拍手)
二十一
世紀の
少子・
高齢社会において、
社会保障制度を安定して維持していくためには、抜本的な
制度改革が必要であるという点では私も同
意見でございます。しかし、
財政構造改革と称して
社会保障給付を含め一律にこれを
削減するというのであれば、誤りと言わざるを得ません。むしろ、純
負担率を引き下げるための施策をまずもって行うことこそが必要であると
考えます。この点についての
総理並びに
厚生大臣のお
考えを
お尋ねいたしたいと思います。
次に、
医療保険の抜本的
改革の見通しについて
お尋ねをいたします。
今国会に提出が予定されておりました
健康保険法改正案、いわゆる日本型参照価格
制度の導入を断念したとマスコミでは報道されております。
平成十二年度を目途にする
抜本改革の第一段階と言われている
改正案であります。
政府として、今国会での提出を断念したのかどうか、また、断念したとすれば今後の見通しはどうなるのか、明快な御答弁を求めます。
私は、抜本的
医療制度改革の中核は、
老人医療制度をどうするのかという点にあると
考えております。現在、さまざまなアイデアが
提案されております。高齢者のみの独立した
医療制度をつくるというのも一つの
考え方であります。また、退職後も組合健保への加入を継続するという
考え方もあります。さらに、
地域で一本の
保険制度とするという
考え方も提出されております。
いずれにしても、
保険料の三分の一近くが拠出金として
老人医療に回るような間接的な
財政調整によって
老人医療の財源を確保する
制度を維持していくのは、今後難しいとだれもが
考えているのは事実であります。今回の
改正のような細切れの
制度改革を繰り返していては限界があります。
社会保障制度についても造詣の深い
総理は、どのようにこの点についてはお
考えか、御
所見をお伺いいたしたいと思います。
また、先ほどの薬価
制度の
見直しについても、実現はなかなか難しい、それが現実だと思います。
平成十二年度に向けて、果たして抜本的な
改革をやり遂げることができるのか、懸念しているのは私だけではないと思います。重ねて、この点についても
総理の御
決意をお伺いいたしたいと思います。
次に、
改正案について何点か
お尋ねをいたします。
まず、最初に
お尋ねをいたしたいのは、今回の結論に至る
審議の経緯についてであります。
日経連、連合、健保連の三団体からは、
平成十年度の
医療費関連
予算案に対する共同声明が昨年末の二十二日に表明されました。その中では、「この決定は、
医療保険福祉審議会並びに中央
社会保険医療協議会における
審議を無視し、正当な手続きを欠いた一方的なものであり、
医療制度及び
医療保険制度の抜本的
改革を遅らせるその場しのぎに他ならない。」と厳しい姿勢で批判をいたしております。
また、
社会保障制度審議会の答申でも、「
老人医療費拠出金に関する
事項も
抜本改革の
課題の一つであり、今回の諮問案がその一環であると理解できないことはないが、
予算編成上の緊急
措置的な面が強く、
国民の
納得を得るうえで、
提案が拙速のきらいがあり、
抜本改革との関係も明確ではない。」と批判的な評価を同じく下しております。
政策決定の不透明さはさまざまな事柄で
指摘されるところでありますが、三団体からのこの批判に対してどのように受けとめておられるのか、
厚生大臣のお
考えを
お尋ねいたしたいと思います。
今回の法
改正の一つのポイントは、
老人加入率の
上限を二五%から三〇%へ
引き上げること、また、
退職者医療制度老人医療費拠出金の
負担を
健保組合に半分
負担してもらうことにより、国保の
負担を相対的に軽減し、健保の
負担を
引き上げ、同時に
国庫負担の軽減を図るという点にあります。
先ほどの三団体からは、この点についても、「
医療費の
負担者である企業・労働者・
保険者を代表し、
老人医療費の
負担構造の歪みをますます拡大することとなる
被用者保険への
負担転嫁」には反対であると表明いたしております。
厚生省は、薬価の引き下げ、さらには昨年の法
改正による自己
負担の大幅
引き上げが
医療費を大きく抑制していることから、全体としては各
制度においても
財政的には
負担が軽減されると
説明しておりますけれども、
経済状況が低迷する中で、組合の中には
財政状況が厳しいところも数多く存在いたします。
健保組合の
財政状況並びにこの
改正による
負担増がもたらす影響についてどのような見通しを持っているのか、また、厳しい
財政状況に置かれた組合に対してどのように対応する
考えであるのか、
厚生大臣のお
考えをお聞かせいただきたいと思います。
また、今回の法
改正には、
老人医療費拠出金の
制度改正とともに、
不正請求に対する罰則の
強化、過剰
病床地域における
保険医療機関の
病床の
指定の
見直しが第二のポイントとして盛り込まれております。
不正請求については、確かに悪質な
不正請求を行った場合には厳しい対応が必要であるという点については私もこれを認めますが、しかし、すべてが
不正請求ではありません。過誤請求と言われるように、誤って請求する場合もあります。こうした事例と故意の
不正請求とは区別される必要があることは言うまでもありません。
加算金についての罰則も、一〇%から四〇%に
引き上げられるわけですから、
診療報酬の審査における評価というものの
あり方が公正公平であることが今まで以上に必要であります。この点についての
厚生大臣のお
考えを
お尋ねしたいと思います。
また、
医療計画上の
病床数の制限を図るための
保険医療機関指定の拒否という新たな規制手段の導入について
お尋ねいたします。
保険医療機関指定の拒否という手段は
都道府県知事の判断によって下すことができるとされておりますが、問題は
都道府県知事の意思決定の透明性がどれだけ保障されるかということであります。このような極めて強制力の強い権限の行使に際しては、その意思決定のプロセスが明確でなければならないのは論をまちません。今回の法
改正においては意思決定の透明性について十分に保障されているとは私には思えません。この点についての
厚生大臣のお
考えを
お尋ねしたいと思います。
また、
地域医療計画についても
お尋ねいたします。
必要
病床数の
考え方自体は、
医療提供体制についても一定のコントロールが必要であるという意味において、私も基本的に
賛成いたしております。しかし、問題は、
既存の計画が今日的な
医療のニーズに十分こたえ得るものであるのかという点であり、また、
医療機関同士の競争による質の向上が求められる今日にあって、この計画自体が競争阻害的なものとなっているのではないかという点であります。
医療計画における必要
病床数については、特定の目的の場合にはその枠により制限されないこととなっておりますが、救急
医療や小児
医療に対しての体制の充実、また療養型
病床群の位置づけなど、時代に即応した機能的な
供給体制が
構築されるように、抜本的な
見直しが必要であると
考えます。
また、
医療計画自体は、
経済的な観点からは参入規制ともとらえられるわけですが、
医療の性格から、
一般的な市場
経済の原則がそのまま適用されるとは私も
考えておりません。しかし、その中にあって
既得権益が発生し、質的な向上を目指す競争が阻害されることは防がなければならない
課題であります。その意味でも
見直しは必要であります。
厚生大臣のお
考えを
お尋ねいたします。
最後に、先日報道されました健康
保険証へのICカードの導入について
お尋ねをいたします。
現在までにさまざまな試みがなされてきておりますが、なかなか全国的な体制となるには至っておりません。どういった情報を書き込むのか、また、読み取りの機器はどうするのかといったさまざまな論点があることは承知をいたしております。私は、ICカードの導入に当たっては、最初からさまざまな機能を盛り込むのではなく、むしろできるだけ最初はシンプルにして、徐々にバージョンアップをしていけばよいと
考えております。当初は、重複診療や重複投薬をチェックするぐらいの機能でスタートすればいいのではないかと思います。
いずれにしても、情報技術を
医療制度改革の強力なツールとして活用していくことが重要であります。この点について、
厚生大臣のお
考えを
お尋ねいたします。
以上、
改正案も含め、より広い観点で
お尋ねをさせていただきました。
経済の低迷の中で、失業率の上昇、就職難は
国民の不安をひときわ大きなものといたしております。それをさらに増幅しているのが、
年金、
医療、介護という
社会保障制度への不安感でございます。
補正予算を組むよりもさらに大切なことは、
国民の不安を払拭することであります。そのためにも、
社会保障制度に対する
信頼感が損なわれることがあってはなりません。
国民の声を聞きながら、二十一
世紀においても安定して運営が可能な
社会保障制度を構想し、実現することは、
政府の最大の
課題であると言っても過言ではないと思います。その意味で、
財政至上主義に安易に流されるのではない、未来を見据えた
政府の対応を求め、私の
質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕