○青山丘君 私は、
自由党を代表して、
平成十
年度予算案外二案に
反対する立場から
討論を行います。
平成十年を迎え、
日本経済は深刻な
危機に直面しております。対応を誤れば大恐慌になりかねない危険をはらんでおり、
国民は生活不安におびえております。今、
我が国に必要なものは経済構造
改革、つまり民力の回復であります。この不況の原因が
橋本内閣の経済
財政政策の失敗によるものであることは明らかであります。しかしながら、
経済危機の本質は、今までの不況とは異なり、
日本経済が構造変革を迫られている、にもかかわらず、
橋本内閣が何ら抜本
改革をなし遂げてこなかったことにあって、事態を一層深刻化させていることをまずもって指摘しておきます。
総理自身が、我々のたび重なる
減税要求を無視して、自信を持って行ってきた九兆円の
国民負担増、これを初めとする
財政帳じり合わせを進めた九七
年度は、二十三年ぶりの実質マイナス成長になることは確実であります。アジアの通貨
危機も不可抗力ではありません。海外からも、
日本の弱さがアジアの原因であるという指摘がなされているところであります。
みずから招いたこの不況に反省も謝罪もなく、かたくななまでに拒んできた二兆円の
特別減税を
平成十年にずれ込みながら復活するなど、まさに支離滅裂であります。
本
予算案の
審議中に、
政府・
与党幹部が大型
補正予算に言及するなど、二枚舌も甚だしい、言語道断であります。
日本経済が単純な循環的要因による不況ではない以上、これらの従来型
景気対策はすべて小手先のびほう策、つじつま合わせであって、かえって
財政を悪化させるのみ、何ら問題の解決にはならないのであります。
橋本総理は、総
選挙後、我々の「
国民との五つの契約」を後追いして「六つの
改革」を掲げました。しかし、現状に対する総理の
危機感の欠如は目を覆うばかり、構造
改革をすべて先送りして、
改革の名に値するものなど
一つもありません。
財政構造改革は
財政の帳じり合わせのみ、制度の
見直しを伴わず、
歳出を一律に
削減していくだけのものであります。
行政
改革は、戦略もなく、単なる機構いじり、看板のかけかえにすぎません。中央省庁の
数合わせに終始して、ただ大
規模官庁を生むだけであります。中央から
地方へ、官から民へという権限の移譲、規制緩和や中身の
見直しは一切ありません。巨大官庁の誕生により、ますます権限、財源が集中してチェックも困難となり、
政官業癒着の構造は今以上に強化されるおそれがあります。このような行革では構造
改革を妨げるのみ、行わない方がましであります。
刑事事件にまで進展している
大蔵省、
日本銀行不祥事も、護送船団行政に起因しております。事前
指導型の裁量行政から事後チェック型のルール行政へと
改革しない限り、金融監督庁をつくっても、金融機関がMOF担を廃止しても、これら不祥事の根絶はできるわけはありません。
社会保障改革は、社会保険制度の維持に主眼を置き、
国民にツケ回しをするのみ、ナショナルミニマムの確保という視点は一切なく、消費落ち込みの要因となっております。
教育
改革においても、その姿は全く見えません。教育の基本である、何を教えるべきかという哲学も理念もありません。
金融システム改革については、まず
不良債権を一掃して、健全金融機関で金融ビッグバンを迎えなければならないところを、
不良債権処理の
見通しを誤った上、早期是正
措置をビッグバンと同時並行させたために信用収縮を招きました。貸し渋りを引き起こして経済を混乱させてしまいました。さらに、
公的資金による資本注入によってビッグバンを乗り切ろうなどというのは、フリー、フェア、グローバルのいずれにも該当しない護送船団行政の復活であり、邦銀の格付も少しも上昇しておりません。
経済構造
改革については、超少子・高齢化社会を目前に控え、またグローバル化、ボーダーレス化する経済に対応するため抜本的な構造
改革を行う必要があるにもかかわらず、
橋本内閣は、目先の
景気状況、
財政状況にとらわれて、従来型のばらまき型
景気対策と
財政帳じり合わせを交互に行うのみであります。年金基金を
破綻させ、民間生保の経営を圧迫し、税収をも落ち込ませ、経済をゆがめて、金利や年金に頼る
人たちを圧迫し、
国民の怨嗟の的となっている超低金利を是正することもできません。
まさに
橋本内閣の六つの
改革には、
一つずつ、この国をどうするのか、何をやるべきかという理念も戦略もなく、
日本が抱える課題を羅列しているにすぎません。
内外情勢激変の中で閉塞状態に陥っている今日のシステムを打破するために、今
我が国が行わなければならないのは、
政治、行政、経済、社会のすべてにわたって構造
改革の断行であります。特に経済
改革においては、民間活力が最大限に発揮され、
世界経済とも調和可能な経済の根本からの再構築であります。そのためには、
国民の可処分所得をふやし、民間
企業の活力を刺激するサプライサイド政策、つまり民力の回復の政策が今必要であり、経済の根本からの立て直しを何よりも優先しなければなりません。
橋本内閣にはこれらの視点がないのであります。
特別減税の復活を初めとする税制
改正は、本気でアジア通貨
危機を回避するためであれば、GDPの〇・四%程度、二兆円では余りにも少な過ぎます。
法人税減税は三%程度でお茶を濁し、
有価証券取引税の半減に至っては、東京金融市場の空洞化を防ぎ活性化を図るためであるならば、本来全廃とすべきところであります。
橋本総理は、
財政構造改革法に拘泥する余り、税制をゆがめ、
経済危機を悪化させ、アメリカを初めとする対外
関係を悪化させています。
財政構造改革法は、目先の
財政の帳じり合わせにのみとらわれ、
歳出の一律
削減を規定し、構造
改革、経済再建を不可能にしてしまいました。
財政再建は、国、
地方をあわせた行
財政構造の
見直しによる
歳出削減と経済再建による
租税増収によって行うべきであり、それこそが真の
財政構造改革であります。
平成十
年度予算案も、
財政構造改革法に縛られた史上空前のデフレ
予算であり、
日本経済に致命的なダメージを与えかねないものであります。
日本経済は、小手先の従来型
景気対策では立て直せない
状況にあります。超少子・高齢化社会にあっても、
世界経済と調和し、活発な経済活動が行われるよう大胆な経済立て直し策を行わなければなりません。つまり、民力を養う政策をとるべきです。
国民の可処分所得をふやし、民間
企業のやる気を刺激することが重要であります。当面は、
財政デフレ政策を断じて行ってはならないのであります。
したがって、
所得税、
法人税を国際水準にまで
引き下げるべきで、税制全体の抜本的な
改革の
必要性を踏まえつつ、民力が最大限発揮される経済
対策を実施することであります。また、金融不安を解消するために、
不良債権を一掃し、ルール型の透明な行政によって市場の信頼を取り戻さなければなりません。
自由党は、かかる観点に立ち、
日本再構築のための構造
改革の断行を提唱しておりますが、そのためには、何よりも経済の立て直しとその構造
改革を優先すべきであると考えます。これ以上の
景気の悪化を防ぎ、
国民生活を守るため、そして経済構造を抜本的に
改革するため十兆円
減税が必要であります。抜本的
対策を講じることが当面の
景気対策にもつながるわけであります。
産業政策を国が策定し保護育成する旧来の事前
指導型行政、
日本型システムから脱却して、
国民が主役であり民間活力が存分に発揮される民力中心の経済構造に改めなければ次代の展望は開けません。官が民から金を吸い上げ、使い道を決めるのではなく、
国民がみずからの才覚と自己責任で金の使い道を決めることができるよう
制度改革を実施すべきであります。
つまり、
一つ、所得課税の最高限界
税率を五〇%として、
税率構造のフラット化、簡素化を実現してすべての
税率を下げ、六兆円
規模の
減税を恒久化することであります。
一つ、
法人課税の
実効税率を、
基本税率の
引き下げ、連結納税制度の導入によって四〇%に
引き下げ、四兆円
規模の
減税を
恒久減税として行うこと。
一つ、規制の撤廃と緩和により、事前
指導型の裁量行政から、事後チェック型のルール行政への転換を図ること。
一つ、公共投資は、入札制度などの
制度改革、構造
改革により単価を
見直した上で、
事業量の拡大を図ること。また、
我が国の構造転換に資するため、情報通信関連を初めとする新社会資本整備、高齢者福祉施設等に重点投資を行うことなどであります。
緊急に十兆円、中長期的には十八兆円の
減税が
日本の再構築のために不可欠であります。財源はあくまでも行
財政の徹底した構造
改革と経済再建による
租税の増収で十分賄えます。
思えば、
橋本内閣は、経済の
見通しを繰り返し誤ったばかりでなく、
不良債権処理の
見通しを誤り、本当の
改革を避け続けております。
国民が不安、
不信を抱いているのは、政策の失敗についてももちろんのこと、総理のこの先見性のなさ、
改革を避け続ける
政治姿勢であります。
また、本日、
国会の同意なしに新
日本銀行総裁の任命が行われたとのことでありますが、新
日本銀行法の附則第一条には、両議院の同意を得る人事については、公布の日から施行するとしております。
総理はまた、
予算審議の際も、臨機応変の
措置という言葉をたびたび使いました。臨機応変ではなく、何でもありであります。
総理は、常に言葉巧みに本質論を避け、当面をしのぐことに専心しておられる。
橋本内閣が続く限り、
日本経済が立ち直りません。国際信用が回復することはあり得ない。もはや
橋本内閣は、この
経済危機に対処する能力も責任も持ち合わせてはおりません。
改革を実行する意思も持ち合わせてはいないのであります。
我が国に残された時間はあとわずかしかない。
橋本総理は速やかに
財政構造改革法とともに退陣すべきであります。
橋本内閣の退陣こそが、
日本再構築の第一歩であります。
平成十
年度予算案外二案に
賛成できる
理由は何
一つありません。