○若松謙維君 私は、平和・
改革を
代表して、税制改正関連三
法案につきまして、橋本
総理並びに
関係大臣に質問いたします。
税制を論議する前に、私は、三月五日の証券局総務課長補佐榊原容疑者の逮捕に関して触れないわけにはまいりません。松永
大蔵大臣は、大臣就任後間もなく開かれた二月三日の
大蔵委員会で、
大蔵省の中でまた司直の手が及ぶというケースが出てきた場合の
対応について聞かれました。そのとき大臣は、
政治家としてのきちっとした身の処し方をしたいと答えられましたが、この意味は辞表を出すことが一般的な理解と
考えますが、
大蔵大臣の見解をお尋ねします。
また、近日中に
大蔵省キャリアから追加逮捕が出るとの報道も出回っています。昨日の
予算委員会でも、現職証券局長が八百六十万円の接待贈与を受けているという議論がありました。司直の手が及ぶ前に、大臣みずから接待等の贈与を受けた職員を処分するお
考えがあるのか伺います。
さらに、今までの
大蔵省体質から
考えて、新たに追加逮捕が出るものと認識しているのかお伺いします。そしてそうなった場合、大臣みずからの
責任をどうとられるのか、あわせて伺います。
それだけではなく、近日中に日銀幹部の逮捕もあると伝わっています。もしそれが事実となれば、
国民は
大蔵省不信だけでは済まず、
金融の番人である日銀からも逮捕者が出れば、
大蔵大臣だけの辞任では到底不十分であり、元
大蔵省事務次官であった日銀総裁の辞任も当然と
考えます。そうなったら、
国民はもうだれを信用してよいのかわからず、混乱のきわみとなります。そのときは、結局
総理大臣を筆頭に、
大蔵大臣、日銀総裁の同時辞任しか
金融財政の信頼を
回復する
方法はありません。
昨年以来官僚をかばい続けた
総理の認識の甘さ、そして
責任は極めて重大であります。大勢の
国民を
代表して伺っておりますので、
総理の
責任ある答弁を聞かせてください。
さて、税制という、
国民にとって極めて関心の高い
法律を扱う
大蔵省は、どの省庁よりも高い倫理性が求められるのは当然であり、また、今後の
大蔵省不祥事を阻止し、早急にその
信頼回復を得なければなりません。このため、私たち全野党は、国家公務員の接待贈与及び資産に関する報告に欠陥が明らかになったときには懲役または罰金の
規定を盛り込んだ国家公務員倫理
法案を二月二十七日衆議院
議長へ共同提出いたしました。
一方、
政府・与党も同様の
法案を準備していると聞きますが、具体的な中身が見えません。単なる口約束なのか、または野党提案より厳しいものなのか、
総理の答弁を求めます。
また、国会
議員の株
取引についても一言申し上げます。
本年一月に訪米された額賀官房副長官の発言により、一万四千円台だった株価が一挙に一万七千円台にまで上昇しました。このほかにも、意図的に株価の操作をねらった、いわゆる口先介入もことしに入って数多く見られます。こうした
状況を踏まえれば、
政治家、特に与党の幹部や閣僚は、
政策立案過程の最高の
責任ある当事者であるため、インサイダー当事者と解釈するのが妥当ではないかと
考えます。このため、新党平和の三十七名の所属
議員全員は、既に国会
議員在職中の株
取引を行わない旨の誓約書を神崎
代表に提出しています。
私は、アメリカでの法規制のように、国会
議員及び高級官僚は何らかの制約が、道義的だけではなく法的にも必要と
考えますが、
総理のお
考えをお尋ねいたします。
さて、税制を議論する前に、私は、
総理が突然決断された二兆円
減税について触れないことはできません。
総理は、与党が税制大綱を決定した直後に、突如二兆円の
所得税、住民税
減税を指示されたわけですが、
総理の
減税決断について、
政府税調会長の加藤寛氏の談話が、ある雑誌に次のように紹介されています。ASEAN非公式首脳会合に出席された
総理は、ASEAN各国の
状況の深刻さを改めて
思い知らされました。さらに、アメリカの要求もあり、
減税をひそかに決断され、与党に持ちかける前に加藤さんに大丈夫だろうかと相談、そこで加藤さんは、これはサッカーで言うとロスタイムの一発シュート逆転ですよと答えられたというのです。これは
補正予算のことを言っているようですが、そのとき
総理は、でも、あのときは監督が交代したじゃないかと言われました。
我々野党が、昨年からあれだけ強く個人
所得税の
恒久減税、
法人税の一〇%
引き下げ等を主張し、そして今回、
総理が首を横に振り続けてきた
所得税減税を決断した以上、
政策の
誤りを素直に認め、
責任をとっておやめになる。そうです。監督交代こそが、
日本経済だけでなく、
世界にとっても最高の選択であると確信しますが、
総理の御見解を伺います。
そして、五月のバーミンガム・サミットに向けて、海外の圧力に配慮し、
政府・与党は大型
減税もしくは
財政出動による
補正予算を組むお
考えがあるように見受けられます。例えば、野中
自民党幹事長代理は、実質的に
財政構造改革法の枠から出た行動を既に示している、アナウンスなき
政策転換と言っていいと明言されたと伝えられています。
財政構造改革と
景気対策は矛盾しないなどの口先だけの逃げ口上に終始したり、
補正予算は財革法の制約を受けないなどと法の抜け道を探すようなこそくなやり方は、一国の首相がとるべき態度ではありません。
政策転換したのなら、男らしくはっきりとお示しいただきたい。そして、これまでの失政を認めた上で、
平成十
年度予算案を抜本的に修正すべきであります。
総理のくれぐれも男らしい答弁を求めます。
引き続き、今回提出された
公債発行特例法案に関しまして、加藤
自民党幹事長が述べた、
特例公債と建設
公債の区分をなくすことの議論の内容について、
総理に伺います。
財政構造改革法では、明確に
特例公債と建設
公債について
法律を分けて
規定していますが、この
法律作成に関与した張本人は加藤幹事長
自身であり、
余りにも無
責任な発言であります。
総理は、
特例公債と建設
公債の区分をなくすことについてどのようなお
考えをお持ちなのか、また、加藤氏の発言に従うなら財革法を改正しなければなりませんが、
総理がそういう意思がおありなのか、御答弁願います。
続きまして、天然資源はなくとも
経済、資産大国となった
日本が、今後さらなる人材育成を図り、投資つまり
消費を促す
システムを構築するための今後の税制の
方向性について、二点について提言しますので、
総理の御
所見を伺います。
まず一点目に、現在、
世界経済は、インターネット等により情報のグローバル化が加速度的に進んでいます。一方、これらの情報の言語の約八割が英語であり、
日本語は一%未満であります。このような現状を
考えますと、二十一
世紀の
日本をさらなる高付加価値創出国家へと飛躍させるためには、語学教育投資とコンピューター等の情報教育投資が絶対不可欠の条件と
考えます。そこで、これらの教育投資支出に対して、医療費控除
制度と同じように個人に所得控除を認める
制度を
導入すべきであると
考えますが、いかがでしょうか。
これまでの
日本の税制は、事業者
中心の優遇
政策をとり続け、個人税制には際立った優遇
政策が見当たりません。個人
所得税には、サラリーマン所得控除
制度として一定額の所得控除を認めていますが、個人の能力
向上のための投資に対する税制のインセンティブが不足しております。今回改正となる中堅所得者層への税負担の配慮として、基礎控除額が五万円増額されましたが、これではめり張りのある内容とは言えません。教育投資に対する所得控除
制度の創設に関して、ぜひとも前向きの答弁を期待します。
二点目は、昨年十二月のCOP3京都
会議で二酸化炭素削減目標が辛うじて合意となりました。しかし、環境と持続可能な
企業活動を促進するには、ISO14000シリーズに見られるEMSと呼ばれる環境管理
システムを、
企業が率先して
導入する必要があると
考えます。また、
日本企業の環境管理
システム導入がおくれると、欧米
企業にますます差をつけられてしまいます。このため、このEMS投資コストに対して割り増し償却
制度または税額控除
制度等を創設して、環境
企業の育成、そして環境先進国
日本の地位をさらに高めるべきと
考えますが、答弁をお願いします。
続きまして、議題となっております税制
法案に関し、三点について
大蔵大臣に質問します。
一点目は、退職給与引当金の累積
限度額基準を今後五年間で四〇%から二〇%に
引き下げますが、その理論的根拠を見出すことが極めて困難です。従来は、退職金の要支給額の四〇%が、運用利回りを考慮して現在価値に直した
金額としてきました。近年の低
金利下で運用利回りが低い現状では、要支給額の二〇%だけを損金として認めるのは
財政当局の御都合主義であります。それなら、要支給額を未払い費用として全額損金と認めるべきであり、それを認めないとするのは、
大蔵省が現在の税務申告の根幹であります確定決算主義を放棄したとしか
考えられません。明快な答弁を求めます。
二点目は、少額資産の取得時償却基準額を二十万円未満から十万円未満に
引き下げる
措置をとりましたが、これが実施されると、例えばパソコンを購入したときに全額一時償却ができなくなります。情報化時代を
推進する必要のある
企業並びに個人事業者にとって極めて大きなマイナス
効果が生ずるものと懸念せざるを得ません。
三点目は、これから提出される
法案になりますが、コンピューター時代では帳簿書類として電子データを活用するのが常識となり、そのための安価で利用しやすい経理ソフトが市販されています。そのような中、本年七月より、税務署長の承認を受けた場合にのみ電子データ等による保存を認めるという時代錯誤の
制度を
大蔵省は
導入しようとしています。この
程度のものは届け出
制度で十分であり、相変わらずの事前監視行政の意図がありありと見られます。電子データ
制度の簡素化を求めますが、お
考えを尋ねます。
最後に、二点質問します。
一点目は、年金に関し、二重
課税防止国際租税条約に
相当する国際年金通算協定のことです。現在、年金協定を
欧米諸国は既に十数カ国と締結しているにもかかわらず、
日本はまだ一カ国ともこの国際年金通算協定を締結しておりません。現在ドイツと交渉中とのことですが、海外で勤務する
日本人はいつになったら年金の二重払いが回避できるのですか。厚生大臣及び外務大臣に伺います。
二点目は、私は税理士登録をしており、税務署で無料申告相談をこの二月にも二日間行いました。この
程度の相談はボランティアの感覚で喜んで引き受けられるのですが、現在、税務署の要請で、個々の会計事務所に相談を希望する納税者を送り、税理士の方々に無料納税相談を受けさせています。これでは、まさに国税庁が自由職業会計人にまで公務員と同じように税務署の下請をさせている現状を見るにつけ、どこまで国はのぼせているのかと怒りを覚えます。
大蔵大臣はどのように認識しているかお答え願います。
最後になりますが、五月のバーミンガム・サミットを控え、内需拡大
中心の
景気対策を
世界に公約せざるを得ない
状況下において、
政府・与党は明らかに時代認識を欠いている緊縮
財政政策を転換させる動きを
具体化させています。しかし、従来の垂れ流し的な
公共投資増加
政策では単なる
選挙目当てとしか映りません。
バブル崩壊後の幾つかの政権が実験に
失敗し、
景気対策にさほど貢献しなかったことは歴史の教訓であり、かえって
財政悪化を加速したことを今こそ
思い浮かべるときです。
今回の
平成十
年度予算案を、旧新進党時代から我々が一貫して主張してきた六兆円大型
減税と行革断行を盛り込んだ内容に修正するよう再度強く要請します。それが大勢の
自民党幹部の発言とも一致するものと確信し、
代表質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣橋本龍太郎君
登壇〕