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1998-06-03 第142回国会 衆議院 文教委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年六月三日(水曜日)     午後六時二分開議 出席委員   委員長 高橋 一郎君    理事 稲葉 大和君 理事 遠藤 利明君    理事 小川  元君 理事 河村 建夫君    理事 肥田美代子君 理事 藤村  修君    理事 富田 茂之君 理事 西  博義君       今村 雅弘君    大野 松茂君       奥山 茂彦君    小杉  隆君       佐田玄一郎君    桜井 郁三君       実川 幸夫君    下村 博文君      田野瀬良太郎君    戸井田 徹君       中山 成彬君    野田 聖子君       保利 耕輔君    宮本 一三君       望月 義夫君    安住  淳君       川内 博史君    鳩山 邦夫君       旭道山和泰君    福島  豊君       松浪健四郎君    石井 郁子君       山原健二郎君    保坂 展人君       粟屋 敏信君  出席国務大臣         文 部 大 臣 町村 信孝君  出席政府委員         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君         文部省学術国際         局長      雨宮  忠君         文部省体育局長 工藤 智規君         文化庁次長   遠藤 昭雄君  委員外出席者        外務省総合外交        政策局国際社会        協力部人権難民        課長       貝谷 俊男君        文化庁長官    林田 英樹君        文教委員会専門        員        岡村  豊君     ————————————— 委員の異動 六月三日 辞任       補欠選任   今井  宏君     実川 幸夫君   金子 一義君     保利 耕輔君  田野瀬良太郎君     桜井 郁三君   渡辺 博道君     戸井田 徹君   中野 寛成君     川内 博史君   池坊 保子君     福島  豊君 同日 辞任       補欠選任   桜井 郁三君    田野瀬良太郎君   実川 幸夫君     宮本 一三君   戸井田 徹君     望月 義夫君   保利 耕輔君     金子 一義君   川内 博史君     中野 寛成君   福島  豊君     池坊 保子君 同日  辞任       補欠選任   宮本 一三君     今井  宏君   望月 義夫君     今村 雅弘君 同日  辞任       補欠選任   今村 雅弘君     渡辺 博道君     ————————————— 六月二日  中学校における和装教育実施に関する請願(堀  内光雄君紹介)(第三六九一号)  安心して学べる教育条件学校施設の充実に関  する請願吉井英勝紹介)(第三六九二号)  国立大学学費値上げ反対私学助成金文教予  算の大幅増額に関する請願大森猛紹介)(  第三九七一号) 同月三日  学費値上げ反対国立大学学費へのスライド  制・学部別授業料導入反対に関する請願(佐々  木秀典紹介)(第四〇五二号)  同(中川智子紹介)(第四一二六号)  中学校における和装教育実施に関する請願(高  市早苗紹介)(第四〇五三号)  同(船田元紹介)(第四一二五号)  同(井上喜一紹介)(第四二六八号)  同(白川勝彦紹介)(第四二六九号)  同(山本有二紹介)(第四二七〇号)  同(野田聖子紹介)(第四六四三号)  豊かな私学教育の実現のための私学助成に関す  る請願肥田美代子紹介)(第四六四二号)  国立大学学費値上げ反対私学助成金文教予  算の大幅増額に関する請願藤村修紹介)(  第四八七六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  教育職員免許法の一部を改正する法律案内閣  提出第六八号)(参議院送付)  美術品の美術館における公開の促進に関する法  律案内閣提出第一〇六号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 高橋一郎

    高橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付教育職員免許法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。松浪健四郎君。
  3. 松浪健四郎

    松浪委員 この前、大臣から、教育者は、生徒児童学生に対して愛情を持つ、またその愛情を持ってくれる先生をつくっていかなければならない、私どもも同感でございますけれども教師になった、けれども新任の先生が物すごく立派だというわけにはまいりませんで、やはり経験が必要になってまいります。それは、たとえどんなに長い間教育実習をやったといたしましても、実習生と、実際辞令をいただいて教壇に立つ、立場が異なりますので随分違ってまいります。私は、私の経験から照らしても、自分が教えることによって、学生たち生徒たち児童たちも成長していくけれども教員も成長していく、そしてやがてベテランあるいは熟練された立派な教師になっていくのだ、こういうふうな思いを持っております。  その意味で、余りこの免許法というものをくるくる変えるということよりも、実践を通して教員がどのような形で成長していくかを教育委員会等が見きわめていく必要があるし、若い先生教壇に立ったとしても、愛情がある、情熱があるということであれば、たとえ未熟であったとしても、児童生徒学生はそれを許してくれる、私はそういうふうな思いがあります。  けれども、やはりなかなかいい教員が育っていかないということであるならば、もしかしたならば一クラスの学生数が多過ぎるのではないのか、これはやはり文部省制度として学生の数を減らしていく、そういうふうな思いも持たなければならないのではないのか、そういうふうな考えを持っております。  もう一つは、やはりこの開放制という教員養成視点からすれば、今回の改正もそれを堅持するということでありますけれども、それを忘れるこ とのないように、とにかく多くの学生教職課程がとれるように、そういう思いでこの法の改正がなされなければならない、こういうふうな思いを持っておりますが、大臣から、以上二点をお伺いしたいと思います。
  4. 町村信孝

    町村国務大臣 委員各位におかれましては、夜分遅く御審議を開いていただきましたことに、私からまず御礼を申し上げさせていただきます。  ただいま松浪委員からの御指摘、確かに教員生徒とともに成長する、そういうことは十分にあることだろうし、また、多分多くの先生方がそうなんだろう、こう思っております。ただ、卒業後直ちに教壇に立つというのも、またこれは先生の、教師のやはり宿命でございましょう。たしか先般の審議の中でも、最初の一年ぐらいは、最初から教壇に立つのはむしろやめた方がいいのではないかというような御意見すらあったことを私は記憶いたしております。ただ、やはり何といっても、大学卒業後直ちに教壇に立つという現実を踏まえたときに、できる限りの、可能な限りの必要な資質というのを備えた上で教壇に立ってもらいたいと思うのは当然だろうと私も思っております。  そして、教員に要求される資質というものも時々刻々いろいろ変わってまいります。それは毎年とは申し上げませんが、やはり十年、二十年たつと、いじめが深刻化する、あるいは国際化情報化が進む、多分十年前にパソコンを自由に操れるという素養はさほどは必要なかったのではないだろうか、こう思います。やはりそうした時代の変化というものを踏まえながら、そうした素養学生時代にできるだけ身につけてもらうということもまた大切なことなんだろう、こう思っておりまして、そういう観点から、今回必要最小限教員養成カリキュラムを改善しようという目的であることにぜひ御理解を賜れば、かように考えております。  もとより、現職になった後も、各種研修等々を通じて、あるいはやはり現場の体験を通じて、まさにオン・ザ・ジョブ・トレーニング的な意味でレベルアップを図ってもらうということもまた当然大切なことだと思います。  なお、二点目の開放制の維持ということでございますが、これも先般来の各委員からの御指摘でその重要性文部省十分認識をいたしておりまして、開放制重要性というものを今後ともしっかり堅持しながら、よりよい教師が誕生できるように努力をしてまいりたいと考えております。
  5. 松浪健四郎

    松浪委員 一部を改正するということでございますけれども、各大学において教職課程を持たれている教員からすれば、これは一部の改正ではなくて大きな改正である、こういうふうにとらえられ、そのような声もたくさんあるわけでございます。  何と申しましても、教科に関する科目、この単位数が半減し、そして教職に関する科目に振りかえられるというふうな形になりました。いきなりそのような形になって、各大学、とりわけ一般大学が対応できるだろうか、このように考えますと、これはなかなか大変な作業である、そういうふうに私自身想像することができるわけですが、その視点から幾つ質問をさせていただきたい、こういうふうに思います。  それで、教員養成に対する基本的立場、それに基づいて具体的な要望があるわけですけれども教職への志向一体感形成に関する科目、これは二単位であるわけですが、教職意義については、四年間、短大では二年間でありますけれども授業でもあるいは授業外でも、大学はいろいろな教材を使ったり、あるいはいろいろな機会を通じて学生に提供している、それゆえに科目としてわざわざ設ける必要はないのではないのか、私はそういうふうな気がしておるわけです。  もし設置するといたしましても、教職意義を客観的に考えることが必要でございますから、志向であるとかあるいは一体感というふうな表現は不適切であって、私はむしろ、教職意義に関する科目というふうな表現の方が望ましいのではないのかというような気がしているのですが、御手洗局長、その辺はいかがですか。
  6. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘のとおり、今回教養審で提言されております教職への志向一体感形成に関する科目につきましては、現在でも、例えば教育原理あるいは教育行政教育制度、そういった科目の中で大学では扱われているところでございます。今回は、教職に明確な目的意識を有する者に教職課程を履修していただきたい、こういう考え方のもとに、一つのまとまった科目として構成をしてもらいたいという御提言でございます。  内容的には、御指摘のとおり、教職意義や役割、あるいは教員の客観的な職務の内容、あるいは教職進路選択に資する各種機会提供等教養審答申でも提言されているところでございますので、そういった点も含めまして、具体的に省令にどのような書き方をするかという点につきましてもいま少し検討をさせていただきたいと思いますけれども、具体的に各大学がどのような形で科目名設定するかということは、各大学の自由に任されているところでございます。
  7. 松浪健四郎

    松浪委員 科目名は自由だということでございますけれども、例えば教職概説だとかあるいは教師論教師の使命とその一生というようなことを考えられているということでございますが、これに類似するような科目であれば各大学自由裁量に任せるということなんですか。
  8. 御手洗康

    御手洗政府委員 あくまでも一つの例示としてそういう名称を申し上げているだけでございますので、具体的な科目名称につきましては、今申し上げましたような教養審答申趣旨を踏まえた内容が客観的に、網羅的にカリキュラムの中に入っているということでございますれば、どういっだ名称でも差し支えない、こう思っております。
  9. 松浪健四郎

    松浪委員 次に、総合演習というのがございまして、文部省の資料を読ませていただきますと、人類の課題と児童生徒への指導法地球環境問題演習、少子・高齢化問題指導法、これは何か社会演習のような気がします。教師として持たなければならない人間性の問題、あるいは一般教養的問題、そして今日的課題、これらも教師になろうとする者がこの総合演習の中で学んでもらいたい、こういうふうに文部省は考えているわけなんですか。
  10. 御手洗康

    御手洗政府委員 教養審答申指摘されております総合演習は、確かにかなり欲張った内容でございまして、従来の学問体系に沿った縦割り専門性教職ということではなくて、むしろ現代社会が直面しております、また子供たちが生きている現代社会において解決しなければならない幾つかの問題を、各学問分野を横断的にあるいは総合的に、例えば人類に共通するテーマといたしまして、高齢化と福祉の問題であるとか環境の問題であるとか、そういったような形で設定をしていただきまして、なおかつ履修形態も従来の講義形式中心授業ではなくて、実際にフィールドワークや施設等体験等も含めて、それらをレポートにまとめ、学生がディスカッションしていく演習形式というような形で、新しい科目という形で設定をしていただきたい、こう考えているところでございます。
  11. 松浪健四郎

    松浪委員 それで、この教職に関する科目を、大学判断によって、卒業するのに必要な百二十四単位の中に含める、それを可能にする、これは学生の負担を緩和するということなんですが、文部省としては、それは各大学に働きかけていくということ、そしてそれを何らかの形で担保することができるのですか。
  12. 御手洗康

    御手洗政府委員 現在も教職に関する科目、例えば中学校高等学校、十九単位卒業要件の百二十四単位とは別にカウントしてほしいということは文部省指導レベルでお願いをしているところでございます。したがいまして、今回は十九単位が、中学校では三十一単位に、高等学校では二十三単位にふえるということでございますので、従来の方針を改めまして、各大学判断によりまして、卒業の百二十四単位の中に入れるようなカリキュラムの取得の扱いということができるよう にということで臨みたいと考えておりますので、具体的には、課程認定の際の指導、あるいは今回法改正をいただきました後の指導通知等で明確にしていきたいということを考えているところでございます。
  13. 松浪健四郎

    松浪委員 この基準改正に伴う文部省配慮事項といたしまして、課程認定に際しての教職に関する科目専任教員基準緩和していくということでございます。入学定員が四百人であれば二人でよろしい、八百人までであれば三人でよろしい、千二百人までであれば四人でよろしい、千二百人からふえれば五人でよろしい、こういうふうに緩和をしますと、密なる教育がやりにくいのではないのかというふうに私は思うのですが、なぜここは緩和をされるのですか。
  14. 御手洗康

    御手洗政府委員 課程認定に際します教職に関する科目専任教員基準につきましても、本来の大学設置認可要件でございます各大学学部設置に必要な専任教員等基準とは別途に、課程認定を行います際に、今委員指摘のような基準でぜひとも教職に関する科目についての専門的な識見を有する教授を別途置いていただくということで課程認定に当たっているわけでございます。  今回、従来からの、特に一般教員私立大学等におきます一般大学学部において教員養成を行っております大学等の要請もございましたので、今回、まだ具体的にどこまで緩和するというところまでは詰め切っておりませんけれども、一定の基準学生には厳しくしていただく、あるいは新しい科目を、大学全体の中で、教職員の課程認定部分も、あるいは各大学学部専任教官部分も、あるいは非常勤講師等部分も含めましてさまぎまな形で御協力していただくということとの関連で、この専任教員基準部分につきましては、これを軽減させていただくということでございます。
  15. 松浪健四郎

    松浪委員 いずれにいたしましても、この改正案が成立いたしますと、比較的小さな一般大学あるいは短大等では教職課程を持つのはやめようではないかという大学幾つか出てくる可能性もございます。  そこで、単位をお互いに認め合おうじゃないか、その互換制度をきちんとつくればいいではないか、このように文部省はおっしゃいますが、なるほど都内のように比較的近隣に他大学がある、自分大学ではこの科目を持っていないから隣の大学で履修できるようにしようじゃないかということは容易に可能である、こう思うわけですけれども地方におきましては、隣の大学といいましても随分離れたところに大学がある。そうしますと、ちょっと行ってその単位を取るということは、これは一日仕事になってしまう。結局は、制度はあるけれども学生自身が実質的にはこの教職課程を履修することができなくなるのではないかという心配を私はしておりますけれども、そのように単位互換制度を設けにくいと思われる地方大学についてはどのように文部省は考えられているのか、局長にお尋ねしたいと思います。
  16. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘のとおり、特に私立の短期大学単科大学等地方の小都市に一つ程度しかないというような場合には、同じ町の中で単位互換をしていくということで学生が通っていくことはなかなか難しいということは御指摘のとおりでございます。この点につきましては、できるだけ県内あるいは隣接の教職課程を有します国立あるいは大きな私立大学学部等からの非常勤講師の派遣という形で御協力をいただくというようなことも必要であろうかと思います。  また一方で、大学履修形態につきましても、大学審議会答申におきまして、双方向によりますマルチメディアの授業というようなものにつきましては、それを単位互換の三十単位という範囲の中で行えるといったような新しい弾力化の動きもございますので、こういった教授方法等の進展と大学制度弾力化の中でできるだけ工夫をしていただくよう、私どもといたしましても努力をしてまいりたいと考えております。
  17. 松浪健四郎

    松浪委員 いずれにいたしましても、どのように法を改正したといたしましても、文部大臣がおっしゃられるように、その教員がどのような心を持っているか、これが問われると思います。  従来、教員採用試験はペーパーで行われやすい一面があり、それを是正するために面接もかなり行われておりますけれども、私はそれだけでも採用していくというのは非常に難しい、このように思います。  いずれにいたしましても、子供たち生徒たちにふさわしい立派な教員採用するために、採用方法についてこれからいろいろな工夫をされて、よりすぐれた先生採用していただきますよう大臣にお願いしまして、時間が参りましたので、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。
  18. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、石井郁子さん。
  19. 石井郁子

    石井(郁)委員 日本共産党石井郁子でございます。  本当に短い時間ですので限られた御質問だけさせていただきますが、まず、教育職員養成審議会で述べられていることで一点お尋ねしたいと思います。  それはこういう部分なんですが、   各教科、道徳及び特別活動指導法等に関す  る各科目等については、学習指導要領に掲げる  事項に即して包括的な内容教授する必要があ  り、制度的にもその旨を明確化する必要があ  る。こう書かれているわけですが、この「制度的にもその旨を明確化する」、これは一体どういうことなのか。省令などの中に具体化されるというふうな意味でとらえるのか、ちょっと御説明ください。
  20. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘のとおり、本法案改正後の教育職員免許法施行規則におきまして具体的な科目等につきまして規定をしてまいりたい、こう考えているわけでございますけれども、その中で、御指摘教養審答申趣旨というものをしかるべく書き込みたいと考えているところでございます。
  21. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は大変重大な問題だというふうに思うのですね。  前回、一九八七年の教養審では「学習指導要領教科書等の基本的な事項について十分な研究を行う必要がある。」ということで、研究必要性を述べていたと思うのですが、今御答弁のように、今回の答申で、学習指導要領に即してと、これは事実上大学教育内容まで学習指導要領によって規制するということになるわけで、本当にこのことは、きょうはもう残念ながら議論できませんけれども大学教育研究の自由という点から見て重大な問題であるということを指摘しておきたいと思います。  次は、国立教員養成大学学部の問題なんです。  文部省は、二〇〇〇年度までに国立大学教員養成課程入学定員五千人削減ということを出されています。これはピーク時から見ると二分の一以下ということになるわけで、今年度既に千二百六十人削減ということになっているかと思うのです。  この五千人削減計画内訳で、小学校が二千人、中学校が三千人ということを聞いているわけですが、昨年度の中学校教員養成課程入学者数の総計が三千二十五人ですよね。というごとは、教員養成系大学中学校課程は今後丸々なくなるというふうにとっていいのかどうかということを含めまして、伺いたいのは、大変大きい問題なんですが、この五千人削減計画と、今、教員養成系大学学部にいろいろ改組改革が要請されているかと思うのです。  もちろん各大学は自主的な取り組み、改革をしているところだと思いますけれども文部省として、この削減計画学部改組と新しい教免法改正ということで今後の教員養成大学がどういうふうになるのか、その将来像を含めてちょっとお聞かせください。
  22. 町村信孝

    町村国務大臣 今から十年ちょっと前、昭和六十二年の時点を見ますと、教員に就職した人の率が六割ございました。最近は四割まで落ちてきております。当然これは児童生徒数が減少しているという実態のあらわれなわけでございますが、その実態をやはり、厳密にパラレルとは言いませんが、相当程度反映をする必要があるというようなことで、今委員指摘のような形で五千人程度削減して約一万人程度にしようと。内訳のことは後ほど局長の方から答弁を申し上げたいと思います。  いずれにしても、義務教育学校教員を養成する、しかもできるだけ質の高い人を養成する、同時に、現職教員研修機会を提供するという二つの目的を持って教員養成大学があるわけでございまして、そうした目的というのはこれからも変わらないだろう。ただ、人数に関して言うならば、そうした実態を踏まえて適正化を図っていくということが、やはり国民の税金を使ってやっているわけでございますので国立大学は当然でございますが、そこの点はしっかりと考えてそうした対応をしていかなければいけないのだろう、こう考えているわけであります。
  23. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 平成十二年度までに約五千人の削減を考えておるわけでございますが、具体的な削減につきましては、各大学所在地域中心として、中期的な教員需給の動向あるいは地域内の他の養成機関の状況などを見ながら総合的に決めてまいりたいと考えておるところでございまして、小学校教員を何人減らす、あるいは中学校教員については何人というふうな具体的な内訳を持っているわけではございません。  いずれにいたしましても、各大学と個別に調整しながら入学定員削減等を進めてまいりたいと考えておるところでございます。
  24. 石井郁子

    石井(郁)委員 学部改組改革との関連で伺っているのですが、全然お答えがありませんけれども
  25. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 平成十年度におきましては、秋田大学教育学部教育文化学部に、新潟大学と山梨大学教育学部教育人間科学部改組をいたしたわけでございます。  この学部改組は、地域要望も踏まえ、同時に、教員以外のさまざまな分野のニーズにこたえるということで改組を行ったものでございまして、これらの改組も含めまして、今回、全体として千二百六十人の削減を図ったということでございます。
  26. 石井郁子

    石井(郁)委員 もっとお尋ねしたいのですが、残念ながら時間がありません。  教員の年齢構成比でいいますと、今大変いびつな形になっているということは指摘されているとおりです。これは、昨年三月の時点で、小中の教員で四十代が三四・二%、三十代が三四・八%です。これに対して、二十三歳から三十二歳の先生が二〇・五%なんですね。若い先生が今いない。教師は若ければ若いほどいいというふうに言ったのほかのルソーなんですけれども、このことが学校の活力というか、子供との関係でもいろいろな問題を生んでいるということは、言われるとおりなんですね。  私は、残念ながら今文部省から、将来の教員養成大学のあるべき姿というか、こういう話を聞くことができませんでした。先ほどの大臣の御答弁ですけれども、今、削減計画採用数が減っている、税金を使っている大学はいかがなものかという話があったのですけれども、本当に教員養成大学をいわば目的大学というふうにして、とにかく教員養成にならなければその大学の存在価値というか存立の意味がないというふうにしてしまうのかどうかということも一から今議論すべきところではないのか、大学のあり方として。  例えば、教員の免許を取るだけが教育者ではないということも含めて、やはり広く教育者を養成するということも考えられるし、それから総合大学的な考え方をもっと導入するということもあるというふうに思うのですね。その辺は、大変議論をしなければいけないところなんです。  ですから、それを拙速に、削減そして改組という形で一方的に縮小するという方向をぜひとらないでほしい。大学の中の自主的な改革や各界の国民的な議論を経てこういう問題は対処すべきだということ。また、もちろん財革法の問題に私たちは反対ですけれども、そういう財政難を理由に大学削減計画を一方的に押しつけるということをすべきでないということを強く申し上げておきたいというふうに思います。  あと最後に一つだけ。  教育職員養成審議会のメンバーに公正さを欠いているのではないかということが指摘されております。これは課程認定という重要な仕事をする機関ですから、ぜひ教員養成の現場を踏まえていらっしゃる方、団体、そういう方々を審議会に加えていただきたいということを一言申し上げておきたいのですが、大臣、いかがでしょう。
  27. 町村信孝

    町村国務大臣 できるだけ現場のことがわかっている方が委員であってほしいと私どもも思っております。  そんなこともございまして、昨年七月の答申の正員二十七名について見ますと、八人が国立大学の関係者、一人が公立大学の関係者、九人が私立大学短大の関係者、その中には実際に教員養成に携わっていた方々がかなりいらっしゃるわけでありまして、そういう意味で、バランスがとれた人選の結果こういう答申が出てきた、私どもはこう思っておりますが、委員の御指摘もございますので、今後とも、委員の改選等に際しては適切な委員構成になるように努力をしていきたいと思っております。
  28. 石井郁子

    石井(郁)委員 終わります。
  29. 高橋一郎

    高橋委員長 この際、山原健二郎君から関連質疑の申し出があります。石井郁子さんの持ち時間の範囲内でこれを許します。山原健二郎君。
  30. 山原健二郎

    ○山原委員 高知大学大学院の教育研究科への現職教員派遣中止問題についてお伺いをいたします。  本年三月二十五日の高知県議会で、現職教員の派遣中止決議が多数決でなされまして、県教育委員会は、今年度派遣が決まっていた五人の現職教員の派遣中止を決定しました。県議会決議による派遣中止などということは前例のないことでございまして、私も突然、新聞を見て驚いたわけでございますが、早急に打つべき手は打ち、事態を打開し、現職教員の受け入れを再開すべきであると考えておりますし、また県民もそのことを圧倒的に望んでおるのでございます。このような事態を文部省としてどう受けとめ、どう打開しようとしているかをお伺いしたいのです。
  31. 町村信孝

    町村国務大臣 経緯は、今委員指摘のとおり、本年の三月下旬に県議会でかなり圧倒的な数で現職教員の高知大学教育研究科への派遣を中止するという決議を決定した、かなりの大差で可決をされた、こう聞いております。これは平成八年度に設置された研究科でございますから非常に期待も大きかったわけでございますが、現実には、地元現職教員に対する研究指導体制の不備といったものを理由として派遣が中止になったことは残念なことであります。  文部省といたしましては、その中止決定を受けて、三月二十六日それから四月七日、二回にわたって高知大学指導を行っておりまして、まず第一には、現在欠員となっている教員の補充など、生徒指導、道徳教育等の指導体制の速やかな改善を図ってもらいたいというのが第一点、それから二点目は、地域教育委員会の期待にこたえ、学校現場の困難な課題に対応し得る実践的な能力の育成を目指した指導が行えるようにしてもらいたい、三番目は、この問題は大学のあり方が問われる問題でございますから、教育学部だけの問題ではなくて大学全体として重要な問題だ、このように受けとめて、地域の信頼を回復すべくあらゆる努力を傾けてもらいたい、こういう指導を行っておりまして、今学長を中心にいろいろ努力をしていただいていると承知をいたしております。
  32. 山原健二郎

    ○山原委員 この問題は、とにかく県議会で取り上げて多数決で決定をして、派遣をしないという こともいろいろ考え方がありますけれども、私どもがここで論議してきた問題は、大学の自治に対して政治権力が介入するなどということは好ましいことではありませんけれども、今度の場合は学部長の有責辞任など新たな問題も出ておりまして、教員確保など体制の充実を図り、来年度の現職教員の受け入れば必ず再開することができるように文部省として全力を挙げるべきであろう、こういうふうに思っているわけでございますが、この点について、見通し、あるいはそれができる、そういう可能性があるのかどうか、伺っておきたいのです。
  33. 町村信孝

    町村国務大臣 大学の自治という考え方もありますが、やはりそれは県民にとって、あるいは国民にとって受け入れられるものでなければならない、私はこう思っております。  したがいまして、議会でもこれは、県民クラブ及び未来会等三会派が派遣中止を求める決議ということで、三十五対五ということでございましたので、むしろ圧倒的に県民は、今の高知大学の状況ではとても現職教員を送れないという、地域の皆さん方の圧倒的多数はそう判断をした、私どもはそう思いますから、したがって、そうした県民の不信感を解消できるような努力を高知大学が最大限にしていただく、それなくしていたずらに、とにかく文部省立場で受け入れなさい、受け入れなさいということを言うわけにはまいらないわけでありまして、まず高知大学のそうした県民の不信感に対する自助努力がどこまで行われるかというものをしっかり見守っていきたいと考えております。
  34. 山原健二郎

    ○山原委員 県民の多数は、今現在でも投書が次々と新聞にも発表されておりますように、非常にはっきりしているのです、早く再開してもらいたいというのが熱望でございますから、この点を文部省としてはっきりと確認をされまして、ぜひ早く解決をしていただくように要請をしまして、私の質問を終わります。
  35. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、保坂展人君
  36. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  今回の教育職員免許法改正案の中に保健室の先生、養護教諭なんですが、これについて重要な問題が含まれていますので、この点をまず集中的にきょうはお尋ねをしたいと思います。  今学校で起きているいじめ、不登校、あるいは、子供たちの心の悩みということで保健室が、昔いわゆる医務室というふうに言われていた時代と違って、子供たちのさまざまな心の部分の悩みも受けとめるというような場に性格を変えてきたというふうに言われて久しいわけですが、文部省としては、いっこのように保健室に新しい役割が生まれてきたと、いつ、どの時期に認識をしたのかという点についてまずお尋ねをしたいと思います。
  37. 御手洗康

    御手洗政府委員 申しわけございません、私ども正確にいつからという認識は申し上げるのは非常に難しいわけでございますけれども、最近の児童生徒をめぐりますいじめであるとか、あるいはさらにそれを原因とする自殺であるとか、不登校の子供が長引くとか、そういった状況の中で出てきたもの、こういうぐあいに理解しているわけでございます。
  38. 保坂展人

    ○保坂委員 それは、逆にお答えするのも変ですが、八〇年代の半ばからだと思うのですね。  私は、ジャーナリストとして保健室の取材をずっと重ねた時期がありまして、全国三十カ所近くの保健室を九〇年、九一年ぐらいにお訪ねをして、協力をいただいて一日ずっと保健室の様子を見たり、そういうことを随分いたしました。  文部大臣に伺いますが、いわゆる保健室登校というのがあるわけです。つまり、教室には行けないけれども保健室になら来ることができるという子供たちがどの学校でもふえているのですね。大臣、その保健室登校をどのようにお考え、あるいはお受けとめになりますか。
  39. 町村信孝

    町村国務大臣 先日、三月下旬だったでしょうか、養護教諭の方々の全国の代表者のお集まりがありまして、大会の方は行けなかったのですが、その日の夜に十名前後の方々とかなりゆっくりとお話をする機会をいただきました。そして、養護教諭の皆さん方の持っておられる現場の認識あるいは役割、あるいは先生方の持っておられる悩みとかあるいは生きがいとか、いろいろな話を伺うことができまして、大変に心強くも感じたし、また頑張ってもらいたいという思いもしたわけでございます。  保健室登校がなぜ多いのか、いろいろな理由があるのだろうと思います。一説には、それは保健の先生は評価をしないからだという見方もあると思いますし、また、保健室に一たん行って、それからまた次の教室に行く、何かワンステップとして行きやすいという面もあると思います。それからまた一部には、これはそう言うといささか酷な子供もいるかもしれませんが、中にはやはり怠慢といいましょうかサボりといいましょうか、そういう感覚で、教室に行くと勉強しなければならないけれども保健室ならば、適当にやっていいとは言いませんが、いささかそういう感じで、保健室が逃げ場所というような感じで行っている子供たちがいないとは限らない。そういう養護教諭の方々の認識を伺いました。そういうことなのかなと思って伺っていたところでございます。  したがって、私は、今回補正予算の中に、これから審議をお願いするわけでありますが、心の教室というものを各学校につくろう、こう思っておりますのは、中学校ですけれども、そこに相談員を置いて、常時子供たちがそこに行って何かあれば相談できる。今は言うならばそうした役割を養護教諭が担っているわけでありますが、養護教諭は教諭として結構忙しいし、また本来の職務というものもあるでしょうから、そういう相談的業務はそうした心の教室相談員の方々に肩がわりをできる限りしていただきたい、そんな思いで今補正予算でそうした予算要求をお願いしているところであります。
  40. 保坂展人

    ○保坂委員 今大臣から、十数人の養護教員の方とのやりとりでお考えになったことがあったわけですけれども、実は、保健室が心の居場所として位置づけられた。これは文部省が言っている言葉なんですけれども、これは、いじめ等がかなり激しくなってきた、大河内清輝君という少年が亡くなった時期に緊急に対策会議というのが持たれ、ここで養護教員、保健室の役割というのを位置づけているわけですね。  その時期に、保健室は心の悩み相談所という札をかけていないわけです。私なども、ずっと保健室にいると、まずは熱をはかる。それで、異常はないかと一応検査をした後に何となく教員との会話が始まるということで、案外これは、相談室という札がかかって、デスクがあって、カウンセラーがいて、悩みは何かなというふうに切り出すよりも、自然に悩みが受け取れたといういい面があるかと思うのです。  そこで、大臣にもう一言伺いたいのです。  実は、保健室が忙しい学校というのが物すごくふえているわけですね。その保健室の忙しさは、骨折とかあるいは風邪引きとかいうことだけではなくて、専ら心の問題、あるいはもう教室に行けない、いじめその他で保健室が物すごくごつた返している状態になっています。それから、保健の先生になら話せるということで、夜あるいは夜中にも電話がかかってくる。中には、もう自分は死にたいなんという電話がかかってきて、本当にそれに一つ一つ対応していく中で、物すごく過重負担、まさに保健の先生そのものが追い詰められている。  そこまで頑張っている役割をしているということについて、ここを見たときに、どうでしょう、カウンセラー、心の教師という形で配置していくスタイルもありますけれども、保健室を一つではなくて、例えば養護教員をもう一人配置してみようという考え方もあろうかと思います。そのあたりは、大臣、いかがでしょうか。
  41. 町村信孝

    町村国務大臣 委員御承知のとおり、今、三十学級以上の学校には複数配置ということになっております。これが適正かどうか、先般の養護教諭の皆さん方の話を聞いても、多い日は一日三十 人、四十人と生徒が来る、とても手が回りません、率直なそういうお話も伺いました。  財政事情がもうちょっと許せば、そこのところはそれは基準を下げたいなと思っておりますが、なかなか一挙にはいかないという状況もございますので、私どもとしては、保健室の一部を、何かつい立てを立てて、そこである種の相談ができるような工夫をしている学校もかなりあるのだ、そんな実情も聞いたものですから、それならば別の部屋をつくり、そして、つい最近おやめになった学校先生とか、あるいは青少年団体のリーダーでありますとか、常時そこに足を運べるような方で、今保健の養護教諭が担っておられる一定の役割を少し肩がわりができないのかな、そんな思いでいたわけでございます。  いずれにしても、養護教諭が学校によっては大変忙しいという実態があることを、私どももよく認識はしているつもりであります。
  42. 保坂展人

    ○保坂委員 それでは、もう一問だけ、ちょっと根本的な問題について。  文部省で、先ほど触れましたように、子供たちの心の居場所として保健室を位置づけたという時期があるわけなんですね。心の居場所という言葉をたしか使ったと思います。  さて、ではその心の居場所の必要条件、心の居場所というのはどういう状態であるべきなのかということについて、ちょっと思う限りお考えをお聞かせいただけますでしょうか。
  43. 御手洗康

    御手洗政府委員 私ども、行政をしていきます上で、どうお答えするかというのは大変難しいわけでございますけれども、保健室におきましては、養護教諭は、ともかく心身の健康に問題がある児童生徒へ個人的なカウンセリングをするというところから始まるということでありますと、そこにおきます保健室が、言ってみればベッドだけがあるという形じゃなくて、やはりいつでも子供たちが相談に来て、一人で相談を受けたいというときもあるでしょうし、またあるいは集団で何人かがグルーピングしながらそこにいたいということもありましょうから、やはり物理的にもそれなりの広さなりあるいは設備なりというようなものは今後必要になっていくのではないだろうかと考えているところでございます。
  44. 保坂展人

    ○保坂委員 大臣にはまた後ほど聞くことにして、今の点、もう一度重ねて政府委員の方にお尋ねします。  物理的な広さ、もちろん狭ければ心の居場所になりませんよね、二人、三人しか入れなければそれは無理だと。しかし、ゆとりがあること、せわしくないこと、そこにいることが許される空気というか、そういうものが必要じゃないでしょうか。こういう私の理解は間違っていますか。
  45. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘のとおりでございまして、先ほど大臣からもお話がございましたが、補正予算におきまして心の教室整備ということで用意しておりますのは、現在、保健室自身につきましても平成九年度に国庫補助基準面積の改定を行いまして十平米近く改善をしたところでございますけれども、今回の補正予算におきましては、当面、三年計画程度で、カウンセリングルーム等が一つしかないところにはまずそれをつくる、あるいは、既にカウンセリングルーム等があるところにつきましては、余裕教室や保健室に隣接する部分等を改善いたしまして少しでも余裕のあるスペースをつくり、そこに必要な設備等を置いていくというようなことで整備を図りたいと考えているところでございます。
  46. 保坂展人

    ○保坂委員 今回の提案の趣旨、突っ込んで考えると少しよくわからないのですね、正直なところ。といいますのは、文部省が言われるように、いろいろな子供の問題について保健室が結果として役割を果たしてきたということは評価をしているわけですよね。  そしてもう一つは、保健の授業でそういうことをやらなければいけないですよと。本来なら保健の授業について必要な教員を養成するプロセスが必要だが、しかし間に合わないので、当分の間養護教員授業をすることができるというふうに読み取れるのですけれども、養護教諭はこれまでも授業はしてきていると思いますね。性の授業、今の授業、あるいは場合によってはエイズについて語りかけるということもやっている方もたくさんいらっしゃいます。  しかし、レギュラーで保健の授業を担当するとなると、その間、保健室のお留守番というのはどういうふうに考えられているのでしょうか。あるいは、必ず授業を持たなきゃいけないという趣旨じゃなくて、やりたいという場合はやれるということなのか、そのあたりのニュアンスがわかりにくいので、もう少し説明してください。
  47. 御手洗康

    御手洗政府委員 御指摘のとおり、今回の法律改正趣旨は、必ずやりなさいという趣旨ではございませんで、やれる状況があるところで、学校内の教職員の関係者の理解が得られるところと。それは、校長の判断において、任命権者の兼務発令等の手続を経ながらやっていただければということでございまして、決してやらなければならないという趣旨のものではございません。  また、保健室を外れていった場合どうするかということでございますけれども、これは現在でもチームティーチング等で保健室をあけて今御指摘のエイズの授業をやるとか、あるいは薬物乱用に対する指導を行うといったような、どうしてもそういう場合が出てくるわけでございます。  これは、小学校におきましても中高等学校におきましても、場合によってはいわゆる空き時間といいますか、授業を担当していない先生というのは必ず小規模校でも一人あるいは二人とあるわけでございますので、そういったときにやはり保健室にだれもいないということでありますと、保健室に実際に来ている子供たちに対しての目が届かない、あるいは相談相手がいないというようなことがございますので、そういった点も含めまして、学校内で関係者の理解を得て、空き時間の先生方がそこに行く、あるいは、保健体育の先生が正規にかわるということであれば保健体育の先生がそちらの方に回っていく、あるいは、場合によっては事務職員や用務員の方々も含めまして、学校全体としてそういった工夫をしていただく、そういった状況がやはり整った上でやっていくということは大事であろうかと思っております。
  48. 保坂展人

    ○保坂委員 強制ではないということで、そこは押さえていただきたいと思います。  文部大臣からもありましたけれども、評価をしない先生なんだというところで、通知表、指導要録その他の評価、身長、体重とかそれはまた別ですけれども、いわゆる成績の部分の評価というのが直接は関係ないという安心感から子供たちへの対応がいわば肩ひじ張ったものにならなかった、したがって、結果としてコミュニケーションがスムーズにいっているという現状があると思うのです。  文部大臣にここのところをもう一度お尋ねしたいのですけれども、今言われた、新しく心の教師ですか、地域からとか、いろいろな方を派遣するということもそれはおやりになってぜひ進めていただければと思うのです。しかし、今までの保健室の養護教員の方が、いろいろ体重や身長の資料をまとめたりしながら横顔で子供と相対して、カウンセリングするんですよとか、あなたの悩みは何というふうに正面から向かうというよりは、側面から寄り添う、言葉で言うと寄り添うという言葉がよく使われるのです、養護教員の中では。こういうやはり関係性というのは、僕は大事にしてほしいと思うのですね。  ですから、そういう関係が非常に入り組んで複雑な場合には、無理をして、この法改正があったからといってどうしてもみんなが授業を背負わなければいけないということはないんだということも含めて確認をしてみたいと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。
  49. 町村信孝

    町村国務大臣 先ほど局長がお答えを申し上げましたように、これは必ず強制をするという性格ではもとよりないわけでございまして、養護教諭が今現実に果たしている生徒とのある種の信頼関係、人間関係、またそれはケースによって相当違 うと思います。したがって、そうしたものをやはり見きわめながら、例えばある授業を担当するという場合に、どういう授業、時間はどのくらいにしたらいいか、内容はどうしたらいいかとか、あるいは評価への関与の仕方、そこはそれぞれのまた学校での工夫の余地なんだろうなと思います。  ただ、私が先般養護教諭の皆さん方と話した折には、やはり教壇に立てるということが大変にこれは生きがいであります、我々、そういう機会をなかなかもらえなかった、たまにはあったけれども、なかなかそういうことを期待しても余り振り当てられなかった、しかし、今回そういう形で法律改正が行われることはまた一段と励みになりますということを異口同音に言っておられたことなどを考えますと、しかし、今委員指摘のようなそうした微妙な信頼関係がそれによってまた崩れてしまっては元も子もない、その辺をうまく総合勘案しながらプログラムをそれぞれの学校で組んでいただきたい、こう思っております。
  50. 保坂展人

    ○保坂委員 今の大臣の御答弁でしっかりわかりましたけれども、恐らく意図して積み上げてきたわけではない、子供たちと自然体のつき合いの中で実際には心の問題や悩みにも深く入り込んでしっかり子供を支えている養護教員が頑張っているわけで、その方たちがしつかりこれからも頑張っていけるという日常の土台、条件をぜひ整備していただきたい。その上で、授業をやろうという場合には、できるということでやっていただけたらと思います。  これで終わります。
  51. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  52. 高橋一郎

    高橋委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。石井郁子さん。
  53. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、日本共産党を代表して、教育職員免許法の一部改正案に反対の討論を行います。  反対の第一の理由は、この改正案が、戦後教員養成制度の根幹をなす開放制の原則を崩すことになりかねないからであります。  戦後の教員養成は、戦前の師範教育の閉鎖性と国家の教育支配の反省の上に立ち、開放制という原則のもとで進められてきました。しかし、本改正案は、教職に関する科目中学校一種免許で十九単位から三十一単位にふやすなど、一般大学などでの教員養成に大きな困難を持ち込み、開放制教員養成制度を縮小、崩壊させるおそれがあります。  また、学習指導要領によって大学教育に枠をはめることは、学問研究の自由と大学の自主性を損ない、戦前の閉鎖的な師範学校制度へ逆戻りさせるものと言わなければなりません。  反対の第二の理由は、社会人の活用の拡大が大学における教員養成と免許状主義を否定するものとなりかねないからです。  教員免許を持ち、教師を希望しながら教職につけない人や臨時教員が多数存在する現状を放置する一方で、特別非常勤講師制度と特別免許状制度の拡大という形で、教職について専門的に学んでいない社会人の活用を安易に広げることは問題があります。  今、いじめ、不登校、ナイフ事件など、学校教育現場はかつてなく厳しい課題を抱えています。そういう中での教員養成の課題として重要なことは、子供と教育に関する大学での自由な研究を活発化させ、教師の自主的で集団的な実践・研究活動を励ますことであって、大学教育内容を子細に規制したり、過大な単位学生に押しつけることではありません。  今行政がやるべきことは、三十人学級の実現などで教員採用枠を大きく拡大し、教育労働条件を改善する道に踏み出すことです。  以上の点を指摘して、私の討論を終わります。(拍手)
  54. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  55. 高橋一郎

    高橋委員長 これより採決に入ります。  内閣提出参議院送付教育職員免許法の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  56. 高橋一郎

    高橋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  57. 高橋一郎

    高橋委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、河村建夫君外五名から、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党、社会民主党・市民連合及び粟屋敏信君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。富田茂之君。
  58. 富田茂之

    ○富田委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     教育職員免許法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、教員免許制度重要性にかんがみ、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 教員養成における「開放制」の原則を堅持し、教員養成系大学を含む教員養成を行っている全ての大学学部における教員養成に係る諸条件に十分に配慮し、一層の充実に努めること。  二 教員養成における大学学校現場との連携を積極的に推進すること。特に、教育実習への参加を希望する学生は、総てその機会を得ることができるよう、また、充実した実習指導を受けることができるよう、引受け先学校への支援に努めること。また、教員養成の充実のため、学校での教職経験を有する者を大学教授等に積極的に登用することや、大学教職課程における実践的な教員養成カリキュラムの開発研究を重点的に進めること。  三 教員養成大学学部以外の一般大学学部における教員養成が、今後も引き続き円滑に実施することができるよう、「教職に関する科目」の単位卒業単位に算入することを可能とすることや、教職課程における単位互換制度の導入などにより弾力化を図り、また、専任教員基準緩和を図るなど十分な対応措置を講ずること。  四 養護教諭の特例措置の実施に当たっては、養護教諭の本務や保健室の機能が低下することのないように配慮するとともに、保健室の一層の機能充実や養護教諭の適正配置など諸条件の整備充実に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  59. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  60. 高橋一郎

    高橋委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。町村文部大臣
  61. 町村信孝

    町村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に十分留意して対処してまいります。     —————————————
  62. 高橋一郎

    高橋委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  63. 高橋一郎

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  64. 高橋一郎

    高橋委員長 内閣提出参議院送付美術品の美術館における公開の促進に関する法律案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。川内博史君。
  65. 川内博史

    川内委員 民主党の川内博史でございます。  文教委員会としては異例の夜間の審議でございまして、今、鳩山邦夫先生から、三十五分も時間をとるなんてとんでもない、十分で終われというふうな御命令があったわけでございますが、私も聞きたいことが何点かございますので、文部大臣にお伺いをさせていただきたいと思います。  今回のこの美術品の美術館における公開の促進に関する法律案に関して、国民の皆さんに少しでもすぐれた名品を鑑賞していただく機会をふやそうという、その観点は基本的に私は賛成をしているわけでありますが、ただ、私自身大変に絵が好きというか、美術品を大変に愛する者の一人として、今回の法案に何の問題もないかというと、若干の問題があるのではないか。それで、私なりに幾つかの問題点を指摘させていただいて、それに関する文部大臣の御見解をお伺いをさせていただきたいと思います。  まず、文部大臣にお伺いをいたしますけれども、今回の法案は、埋もれている美術品を掘り起こして、登録をして美術館で公開することを促進するというのがねらいだということですけれども、基本的に私は、公的な機関が美術品を格付というか登録する、そしてその作品にお墨つきを与えるということに関して疑問を持っております。また、実際にどういう作品が登録に値するものであるのかという具体的な審査の方法などについてもいろいろと問題があるのではないのかなというふうに思っています。  具体的な審査の方法等については後ほど詳しくお伺いをしますけれども美術品を格付するということ自体が非常に主観的な作業にならざるを得ませんし、現在、既に国宝とかあるいは重要文化財等の制度があるわけでございまして、これに加えて今回登録美術品という制度ができる。権威や格付に日本人というのはある意味では大変に弱い国民性を持っているのではないのかなというふうに私は感じているわけですけれども、文化庁のお墨つきがその美術品の価値になる、その登録美術品をありがたがるということが、本来養わなければならない美術品に対する鑑賞眼を逆に損なってしまうことになるのではないかというふうに危惧をしておりますので、そのあたりの文部大臣の御見解というのをまずお聞かせいただきたいと思います。     〔委員長退席、河村(建)委員長代理着席〕
  66. 町村信孝

    町村国務大臣 委員指摘のように、これはただ単に登録制度というものだけをつくるのであれば、重要文化財あるいはその次のランクとか、何か単なるランクづけのためだけのことになってしまうと思いますが、これはあくまでも手段でありまして、目的は、今委員まさにおっしゃっていただきましたように、埋もれているすばらしい美術品を美術館に置いて、そして公開を促進するというためのものでございます。多くの美術品を大勢の国民が見ることによって、鑑賞眼といいましょうか審美眼といいましょうか、そういうものがむしろ高まるのではないかということさえ逆に期待をしているようなところでございます。  同時に、ただ登録して並べるというだけでは、これもまた不十分なのだろうと思いますので、私どもとしてはミュージアム・プランというのをつくっておりまして、これは平成八年七月につくったわけであります。これによりまして、例えば、キューレーターというような上級学芸員を研修したり、できるだけ収蔵品を充実したり、あるいは全国の巡回展を頻繁に開催したりといったような各種の施策、予算は決して十分とは言えないかもしれませんが、それでも、その予算を充実し、施策を充実する。こうしたこととあわせて、今回の登録美術品の公開ということによって、先生を初め多くの美術品愛好家の方々により喜んでいただける、そして鑑賞眼がむしろ高まる、向上するということを期待しているわけであります。
  67. 川内博史

    川内委員 今町村大臣から御答弁をいただきましたように、本法が予定をしている目的がその目的どおりに達せられるのであれば、それはそれで大変にすばらしいことであるということでは私も認識を一致させているわけでございますけれども、必ず制度を悪用するというか、その制度を利用して御商売をしようとされる方々も逆にいるわけでございまして、この登録制度が、その運用によっては、作品のステータスを上げるために、あるいは一定の評価を得るために使われる、すなわち商売の道具にされるということも十分に考えられると思うのですけれども文部省さんはこの点に関してはどのように対処をされるおつもりであるのかということをお聞かせいただきたいと思います。
  68. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 お答えいたします。  本制度の登録につきましては、国民の鑑賞機会の拡大の観点から行うものでございまして、美術品の歴史上、芸術上あるいは学術上の価値を判断するということとしておりまして、経済的な価値というものは考慮しないというふうに考えております。そのため、登録に当たりましては、美術品のいわゆる価格評価というものは行わないというふうに考えております。  また、その公開契約を締結しなかった、あるいは、一たん公開契約を締結したけれどもそれが終了して公開されなくなったというときには、この登録というのは取り消されるというふうになっております。  そういった配慮とか、あるいはこの案を考えますときに、登録証というのも発行したらどうかということも一部考えたのですが、そうしますと、今の御指摘のようにいろいろな心配な点が出てくる。それで、これは発行しないことにしようというふうなことなど、我々、今の段階で考え得る中で、御指摘のようなことができるだけ起こらないように考えているつもりでございます。  なお、我々もこの点に関しては問題意識を持っておりますので、今後、十分留意しながら、この制度の適切な運用を図ってまいりたい、そのように考えております。
  69. 川内博史

    川内委員 今、文化庁の遠藤次長から、歴史的、文化的価値をはかるのであって、その作品の持つ商品としての価値、金銭に換算できる価値は考慮をしないのであるという御答弁があったのですけれども、歴史的、文化的価値がすなわちその作品の持つ、商品というか、金銭的な価値に換算をされるのであろうというふうに私は思うのですね。ですから、歴史的、文化的な価値だけで、商品としての価値は考慮をしないので商売には悪用されないよというのは、にわかにはちょっと私には理解ができないことでございます。  先ほども申し上げましたように、美術品の格付というのは大変に難しい側面があるというふうに思いますし、真贋、本物であるかにせものであるかという問題をとってみても、登録美術品であるということになれば、それがたとえにせものであっても本物として認定されるわけですから、文化庁さんが登録美術品をどうやって認定するのか大変に難しい部分があると思うのですが、その辺をどうやって審査するのかというようなことをちょっと教えていただければと思います。
  70. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 御指摘のとおりでございまして、この登録に当たりましては、真贋も含めました価値評価ということもやるわけですが、これはこの制度の大変根幹をなす重要なことであるというふうに考えております。したがって、その登録に際しての価値評価に当たりましては、この法案の第三条第四項に基づく省令によりまして専門家の委員会設置して、可能な限り客観的な価値判断を行っていきたいというふうに考えております。  また、美術品の真贋につきましては、これら専門家によります慎重かつ十分な審査を行っていただきまして、その認定に誤りがないように十分注意をしてまいりたい、そのように考えておりま す。
  71. 川内博史

    川内委員 専門家による委員会をおつくりになられて十分慎重に審査をするという御答弁なわけですけれども、その十分に慎重に審査をするというのは、それはなるほどそのとおりなんでしょうけれども、先ほども申し上げているとおり、美術品の価値、それが名品であるか否かというのは非常に主観的な部分というのが多いと思うのです。もちろんそれが、歴史的にも文化的にも大変物すごい高い評価を受けている逸品であれば、それはだれも異論のないところだと思うのです。  例えばピカソなどは、非常にたくさんの作品を残していらっしゃる作家ですよね。絵とか彫刻、とにかくたくさんの作品をつくって、彼自身まだ生きている間に、それが高い値でたくさん取引をされた大変珍しい芸術家なんですが、そういうピカソの作品にしても、日本人というのは名前に弱いと先ほど申しましたけれども、ピカソだからでは買おうかとか、ピカソだからいいのではないかというような傾向はあるのですけれども、決してそうではなくて、ピカソも、ある特定の女性を大変に愛しているときにかいたその女性の絵というのは大変すばらしい絵である場合が多くて、その女性に飽きたころかいた絵というのは案外つまらなかったりするという評価があるのですね。  では、そういう名品をどうやって審査するのか。何が名品なのかというと、その審査委員会の方々が、専門家委員会が十分に慎重に審査をするといっても、今度は、その専門家の先生方の主観というものが十分に入り込む余地があると思うのですね。  例えば、美術品等の流動性を高める方策に関する調査研究協力会議というところがお出しになられた「美術品等の流動性を高める方策について」という、本法を作成された文化庁長官官房総務課の方たちが事務局となって会議を開かれた中間報告ですけれども、この中に、佐谷和彦さんという佐谷画廊の社長さんが入っているのです。この方なんかは、モダンアートの日本の今第一人者で、モダンアートについては大変に詳しい方ですね、すばらしい作家を発掘される方であるという評価が、アートディーラーの中ではある程度一定の評価がある方ですけれども、しかし、この方にしても、日本画とか洋画とか、あるいは書画骨とう等については恐らく余り御存じないだろうと思うのです。  では、その審査委員会をどういうメンバーで構成するのか、そのメンバーを選ぶのは一体だれなんですかということをちょっとお聞かせいただきたいと思います。
  72. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 お答えいたします。  確かに先生がおっしゃるように、美術、そういったものは個人の主観というものが基本にあるわけでございまして、人によって評価がいろいろ違うというのは当然だと思います。  ただ、これまでの長い世界の歴史の中で、これは名画だというものはやはりある程度固まってきているものがある。もちろん、ピカソの中でもいろいろなものがあるというのも、時間がかかってくるとはっきりしてくる。私どもとしては、ある程度の時間をかけて、これは大丈夫だ、国民の皆さんにすぐれた作品として見ていただけるだけの価値があるんだ、そういったものについて対象にしていきたいというふうにまず思っております。  では、どういつだ人たちでそれをやるんだということですが、現在考えておりますのは、学芸員などの美術館関係者、それから学識経験者、美術商などの関係者というふうにできるだけ幅広くとっていきたいということと同時に、もう一つ、今、佐谷さんの例が出ましたけれども、やはり専門分野別に分けて、洋画の専門の人が日本画の方がわかるかというと必ずしもそうではありませんから、そういう分野別に分けて、的確な資格を持った方々に委員となっていただいて、その上で慎重に判断をしていただくようにしたい、そのように考えております。
  73. 川内博史

    川内委員 この辺はぜひ慎重におやりをいただきたいというふうに思うのです。  というのは、アートというのは必ずそれをディールするアートディーラーが密接に関係しているわけでございまして、国が登録美術品を認定するというときに、審査委員会の中に入る美術商並びにアートディーラーが発言する、認定することというのが、日本の美術界あるいは芸術界に大変に大きな影響を与えることになると思うのですね。  その審査委員会の中のある一人の美術商が、美術界の中において力を持っていく、そこまで考えるのはちょっと私の考え過ぎなのかもしれないですけれども、しかし、実際に日本の今のアートディーラーの世界というのは、幾つかの、派閥と言ったら申しわけないですけれども幾つかの派に分かれている。その派の親方的な画廊の社長さんが大体大変な目ききでいらっしゃって、その方が、これはいい、これは悪いというようなことを判断してオークション等をしていらっしゃるというのが実態でありましょうから、私、この審査委員会というものを公正中立な偏りのないものにすることに最大限の御注意を払っていただきたいということをまず一点申し上げさせていただきたいと思います。  次に、この法律が予定をする登録の対象、遠藤次長は、だれもが認める名品をその対象とするんだというふうに御答弁をいただいているわけでございます。しかし、本法がもう一つその目的として予定をしている物納、美術品を税金のかわりとして納めることができますよというこの制度にもこの登録美術品という制度がかかわってくるわけでございますから、どの範囲のものを登録美術品とするかということに関しては、だれもが認める名品というのが、では、一体どういう作品がだれもが認める名品なのかという基準を明らかにする必要があるのではないか。  歴史的、文化的価値が重要であって、金銭に換算した価値は考えないということですけれども、税務署は当然金銭に換算して、では、税金のかわりにこの絵を納めてもいいですか、はい、いいですよということで、これは幾らぐらいですねということは、当然価値を推しはかられるわけでありますから、例えば、大体幾らぐらいの絵であれば登録美術品になる可能性があるのかとか、その範囲を明確にしていただく必要があるのではないかというふうに思うので、そのあたりはいかがでしょうか。
  74. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 登録制度の対象につきましては、法案の第三条第二項で二つ言っております。国宝または重要文化財、これは対象がはっきりしております。もう一つは、「世界文化の見地から歴史上、芸術上又は学術上特に優れた価値を有するもの」というふうに、かなり抽象的な規定になっております。  この点につきましては、どういうものかといいますと、歴史上、芸術上または学術上の価値が他の美術品に比べて著しく高くて、普遍的な価値を有するものが対象となるというふうに考えておりまして、例えば、極めて価値の高い外国作品、だから、国内の国宝、重要文化財並み、それの外国作品、そういったもの、それから、国内のものでも、指定文化財と同等程度の価値を有する日本の作品など、そういったことを念頭に置いておるわけでございます。
  75. 川内博史

    川内委員 どうも抽象的な御説明でよくわからないのでございますけれども。  では、もう一度、視点を変えてお尋ねをさせていただきますが、例えば、私が税金を払えなくて大変困った。しかし私には、さっきピカソの例を出しましたからピカソでいきますと、例えば自分はピカソのかいた絵をなぜか持っていた。それを税務署に納めようというときに、先ほども次長は、それはピカソの作品でもいろいろあるでしょうということはお認めになられたわけですけれども、では、それを物納できるかどうかということに関して専門家の先生方が判定をされるわけでしょうけれども、そうすると、ありとあらゆる作品が審査のために持ち込まれるというような可能性もなきにしもあらずだと思うのですね。  文化庁さんが予定しているのは国宝あるいは重要指定文化財に準ずるものだといいながらも、しかし、名品と呼ばれるものは数多いですし、何が名品かというのも客観的な価値の基準というのはないわけですから、若干そのあたりを明確に範囲を明示する必要があるのではないか。そうでなければこの制度そのものが大変に混乱を来すのではないかなというふうに思いますが、もう一度、具体的に御答弁をいただければと思います。
  76. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 確かに、基準は抽象的な規定になっております。これも、一つは、文化財保護法という別な体系がありまして、国宝とか重文に指定するということをやっておりますが、法律に書かれたこの基準というのも非常に抽象的でございまして、さらに具体的な基準というのも抽象的になっているのです。それを長年、専門家の方が集まって判断をして、江戸時代だとこのクラスだというふうなことが少しずつ積み重なってきて、ある程度イメージとして出てきたということがございます。  したがって、この法律も、そういった実際の運用を積み重ねることによってイメージというのがある程度固まってくるというふうには基本的には思っていますが、先生がおっしゃるように、これからPRしていこうというときになかなか具体的なイメージがわかないではないかというのもおっしゃるとおりだと思います。  今、私どもとしては、例えば具体的なイメージとしては、重文、国宝クラスというのは当然対象になりますからあれですが、そのクラスでいうと、例えば横山大観の「生々流転図」とか、速水御舟の「名樹散椿図」とかいったもの、それから洋画でいいますと、ミレーの「種まく人」とか、あるいはクールべの「眠れる裸婦」とか、そういったクラスを一つの参考事例として考えておりますよというふうなことを、この法案が通りましたら国民の皆さんに、こんなことを考えておりますということを周知徹底して、少しでもイメージを抱いてもらおうという努力は必要であるというふうに考えております。
  77. 町村信孝

    町村国務大臣 遠藤次長の答弁を私が補足するのもなんなのでありますが、ちょっとどうも誤解がおありになるのかなと。  さっき、自分はピカソを持っている、それを物納したいというお話があったけれども、そういう言うなら駆け込み登録、そして物納というのはだめなんです。立派なものをあらかじめ登録しておいて、そして公開するというのが目的ですから、たまさかそういうものを相続した、さあこれを何とか物納するために登録しようかというのは、そもそも受け付けないわけです。そういうあたりがちょっと、仕組みの問題としてそうなっているということを御理解いただきたいと思います。  逆に、駆け込み登録を認めると、じゃそれまでじっと抱えているか、だれにも見せないでおくということになって、公開に逆行してしまうことになるものですから、そういう時間の流れからすると、そういうことで、登録というのは亡くなる前にきちんとして、公開促進ということがなければだめだという、その仕組みのところだけちょっと説明させていただきます。
  78. 川内博史

    川内委員 文部大臣に教えていただいて、本当にありがとうございます。私は、美術には詳しいのですが、法律には弱いものですから。その仕組みは仕組みとしてわかりました。  それで、今遠藤次長が御答弁をされた、予定をしているような作品群というか、対象となるような作品の種類についてもよくわかります。  日本画で横山大観の名前を出されましたけれども、大観がなぜ評価が高いかというと、大観を扱っているアートディーラーが非常にしっかりしているからなんですね。だから、値崩れもしないし、非常に高い評価を現時点でも大観の場合は得ているのです。そういう実際のマーケットでその作品がどういうふうな扱われ方をしているかというのもその作品の評価に大きくつながっているという事実もあるのです。  そこで、もう一点お尋ねをさせていただきたいのは、どんな作品を審査委員会の審査の対象とするのか、あるいは登録美術品として認定するのかということに関して、せめて、少なくとも、現に生存をしてというか、現に生きて創作活動をしている作家の作品についてはその審査の対象とはしないというような、国宝とかあるいは重要指定文化財と同じような運用の仕方というものが必要なのではないかなというふうに思うわけでございますけれども、その辺の文化庁さんの御見解というものを伺いたいと思います。
  79. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 お答えします。  この登録の審査基準につきましては、この法案が成立いたしました後、専門家による委員会を開いていただきまして、そこで検討した上で具体的に決めていきたいとまず考えております。  それから、現存作家の件でございますけれども、これに関しましては、文化財保護法上はどうなっているか、似たような程度で。そちらの方は、重要文化財の指定に当たりまして、制作者の生死というものについて基準は明定されておりません。しかしながら、それの価値判断をするというためにはやはりある一定の期間が必要である。価値判断が固定される必要があるということから、今までの長年の積み重ねの結果として見ますと、制作者が死亡した後に結果として指定をいたしております。  したがいまして、この登録制度におきましても、作品の評価というものがある程度確定するまでに一定の期間がどうしても必要となるというふうに考えておりますから、この文化財保護法と同様の運用で対応していくことになるのではないかというふうに考えております。  なお、御指摘いただきました点につきましては、先ほども申し上げました委員会に諮るわけでございますので、そこの委員会の意見を聞きながら、この審査基準を検討する際に検討していきたいというふうに考えております。     〔河村(建)委員長代理退席、委員長着席〕
  80. 川内博史

    川内委員 確認をさせていただきますけれども、法律の中にその明示はないわけですけれども、名品であるか否かの認定をするには一定の時間を必要とするので、本法が予定をしている登録美術品については、現に生きて創作活動をしている作家については恐らく審査の対象とはならないであろうというのが文化庁さんの御見解であるということでよろしいですね。
  81. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 そのとおりでございます。  そのときに、専門家が集まった委員会の意見も伺ってということでございます。
  82. 川内博史

    川内委員 ぜひそういうふうな運用をしていただかないと、バブルの時期にも大変に政治的な絡みでアートが利用されたりする側面があったこと、事実があったことは皆さんもよく御存じだと思いますし、ぜひ文化を文化として後世の人々に残すという観点からは、ある一定の時間というものを私も置く必要があるというふうに考えておりますので、厳格な運用をお願いをしたいと思います。  私の時間が来ましたので、文部大臣に最後に御答弁をいただきたいと思いますけれども、今回の法案は、すぐれた美術品の鑑賞機会を拡大するための第一歩として大変評価をいたしておりますが、これ以外にも、美術館の活動を支援し、文化の振興を図る、あるいは若手の作家を育成する、いろいろな方策をとっていく必要があるというふうに思いますが、文部大臣として特に今後優先的に取り組みたい文化政策等がございましたら御答弁をいただきたいと思います。
  83. 町村信孝

    町村国務大臣 もう少し財政事情が豊かならば、あれもやりたい、これもやりたいと思うことは本当に多々あるのでありますが、一応、文部省、文化庁といたしましては、先ほどちょっと言いかけましたが、ミュージアム・プランというのをつくりまして、二十一世紀を目指した美術館・博物館の振興方策というのを体系的に打ち出したところでございます。  それに沿って、ささやかではありますが、人材の養成の予算とか、より魅力的な国立美術館、博 物館をつくったりとか、現に今、東京国立博物館の平成館というのが近々完成をする、あるいは国立国際美術館新館を整備するといったようなことなども、これは実は入れ物をつくるのでかなりお金がかかるのでありますが、そうした予算を充実したり、あるいは九州国立博物館あるいは新国立美術展示施設(ナショナルギャラリー)の設置といったようなことなども考えたい。あるいは、すぐれた美術品に親しむチャンスを、機会を拡大するといったようなこと、あるいは美術館、博物館の活動基盤を整備するというようなこと、例えば情報システムを整備して、どこにどういうものがあるかというのが全国至るところでわかるようにしておいて、すばらしい美術品は限られていますから、それを順繰りにうまく回していくとかネットワークをつくっていくといったようなことなどいろいろございます。  今回のこの法律を成立させていただいて、さらに今後とも努力をしていかなければいけないな、こう思っているところであります。
  84. 川内博史

    川内委員 ありがとうございました。
  85. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、富田茂之君。
  86. 富田茂之

    ○富田委員 平和・改革の富田茂之でございます。  今の川内委員遠藤次長のやりとりを聞いておりまして、この法律が衆議院を通れば成立して施行されることになるのでしょうけれども、本当に美術品の美術館における公開の促進に役立つのかなという非常に素朴な疑問がやはりふつふつと出てきてしまうんですね。物納の特例という制度を設けまして、ひとつメリットを美術品の所有者に与えるということなんでしょうが、それだけで、今公開されていない美術品、あるいは高価なものを所有者が持っていて自分だけ楽しんでいるというようなものが本当に外に出てくるのかなという非常に素朴な疑問を持っております。  この法案はもう参議院で審議されてこちらに回ってきたわけですから、こういう法律案を文化庁の方で考えて国会で今審議しているというのは、結構いろいろなところに情報として流れていると思うのですが、この法律が成立した場合にこの制度を利用したいのだ、そういうような問い合わせ等は文化庁に来ているのでしょうか。その点ちょっと教えていただければと思うのです。
  87. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 数までは掌握しておりませんが、問い合わせば担当課の方に来ておるというふうに聞いております。
  88. 富田茂之

    ○富田委員 それはどういう問い合わせで、どの程度の作品なのか。先ほどの遠藤次長の御答弁ですと、横山大観とかミレーの「種まく人」なんて、そんなものをだれが持っているかなんというのはもうある程度わかっていると思うので、そこでこの法律ができたからといって突然、今まで行方不明だったのがぽっと出てくるとはちょっと思えないのですが、差し支えない範囲でちょっと教えていただけますか。
  89. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 何件かわかりませんが、かなり問い合わせが来ていまして、つまり相続が近いような方からとか、また物については、文化財関係を持っておるのだけれども、今度のやつはどうなるのだろうか、あるいは西洋美術品で持っていて、これはどうなんだろうかというふうな問い合わせというのは担当課の方に来ておるわけでございます。  先生おっしゃるように、メリットはどうなんだという点でございますけれども、御承知のように、これのメリットとしましては、美術館の負担によりその美術品を安全かつ適切に保管できるというのが一つあります。それから物納制度、あと、国による情報提供がある、PRになる、そういった点を私どもメリットとして考えておりまして、これはこれで、ある程度の所有者に対するインセンティブになるというふうに考えております。  ただ、私蔵といいますか、隠しておきたいなという方もいらっしゃって、そういった人たちに対してどの程度効果があるかといいますと、それはやはり限界は確かにあると言わざるを得ないと思っております、ですから、こうしたメリットを踏まえて、制度の周知徹底をまず図るというのが私どもの役目ではないか。  それからもう一つは、これをきっかけにして、これ自体はまだ、必ずしもそれだけで続々出てくるというわけでもありませんので、これを第一歩として、今後この制度が活用されるようないろいろな方策というものをこれを土台にして考えていきたいな、そのように考えているわけでございます。
  90. 富田茂之

    ○富田委員 インセンティブが働くんだという次長のお話でしたけれども、いろいろ資料をいただきましたけれども、これまで美術品の物納というのは一件しか例がなかったというふうに資料に書かれているのですが、なぜ一件しかなかったのか。物納の順位が一番下の動産に含まれるということもあると思うのですが、かなり高価な美術品もあると思うのです。それがなぜ一件しかなかったのか。今回この法律で、物納の特例で順位を一番上に上げることによって実際美術品の物納がふえる見込みが本当にあるのか。そのあたり、大蔵省といろいろ打ち合わせ等されたと思うのですが、文化庁としては今どのように判断されているのでしょうか。
  91. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 これはもう釈迦に説法ですが、相続税は、まず金銭が第一ですね。それが困難な場合、税務署長の許可を受けた場合に物納が認められるという特例になっていまして、その場合に優先順位が決められております。一位は、国債、地方債、不動産、船舶、二位が社債、株式、動産は三位、美術品は第三位でございまして、そうなりますと、その順番でいきますから、動産にたどり着くまでにもう不動産とかそっちの方で対処してしまうということになってしまいまして、その結果として、最下位の動産に該当するというのが非常にこれまで例がなくて、わずか一件しかなかったのではないか。  したがいまして、これが一位になりますと、そこの量というのがちょっとわからないのですけれども、ある程度は出てくるのじゃないか。例えば指定文化財でいいますと、年間の相続件数と、それから美術館に寄託しているもの、これらのデータで計算をしますと、年間三件くらいはそういったものが発生するのではないか、相続税を物納するというチャンスが生まれるのは、三件ぐらいはデータ上は出てくる、そんなふうに考えております。
  92. 富田茂之

    ○富田委員 年間三件のために夜なべして法案を通さなきゃいけないのかなというのは非常に残念だなと思うのです。  やはり美術品は、不動産と違って、先ほど川内委員もバブルのときのお話をされていましたけれども、値段の上下が随分あると思うんですね。不動産は今、私も弁護士ですからよく相談されるのですが、譲渡するよりも物納した方が評価が高いものですから、ある程度不動産を持った方は不動産で物納してしまえというふうになるのですよね。美術品について、本当にそういうふうになるのかなというのが非常に疑問なんですね。  先ほど川内委員の方も御紹介されておりましたが、「美術品等の流動性を高める方策について」の中間報告の中に「現行税制優遇措置の概要と問題点」という項目がありまして、その中に所得税に関して、寄附をした場合の優遇税制で、当該年度のみ控除されるので、高額な美術品を寄附した場合は控除し切れない場合がある、だから国等になかなか寄附しないのじゃないかというような指摘がされておりました。  この指摘はもっともだと思うのですね。物納の特例だけにとどまらずに、複数年にまたがって控除を可能とするような税制上の優遇措置等もう一歩突っ込んだものを考えないと、なかなか美術品が外に出てくるということはないのじゃないかと思うのですが、そのあたりは文化庁と大蔵省とのせめぎ合いになると思うのですが、文化庁の方としてはどのように考えているのでしょうか。
  93. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 御指摘されましたとおり、高額で取得した美術品を寄附したという場合に は、美術品の取得価格に相当する金額が、別途計算した所得控除限度額を超えるという事態が生ずる場合があるのですが、そういった場合には、超えた金額について所得税が課されてしまうことになるという問題があります。  私どもも、この点については、取得価格じゃなくて時価でやってもらいたいとか、いろいろな税制改正というのはその折々にやってきておるわけでございます。先と言われましたように、複数年度にわたって所得控除を可能とする措置というのも寄附を促進するという観点からは非常に効果的な方法だと私どもも考えております。ただ、さっき言ったように、いろいろこれまで税制改正努力はしてきたのですが、なかなか実現しないというのも事実でございまして、相当な努力が必要だということでございます。  しかしながら、今回こういう法案ができましたら一つの土台となりますし、美術品の寄附を促進するためにも、他の税制上の優遇措置の充実を含めまして、今後私どもとしても広く積極的に検討していきたいというふうに考えております。
  94. 富田茂之

    ○富田委員 今回の物納の特例が文化庁にとって突破口になるように祈っておりますので、ぜひ頑張ってやっていただきたいと思います。  先ほど御紹介しました「美術品等の流動性を高める方策について」の中にもう一点、「当面実施するべき対応策」として「美術品等特別評価システム」の項をわざわざ設けて、この点については先ほど川内委員がかなり具体的に質問されておりましたが、相続開始前においても、美術品等の価値の評価等を事前に行って適切なアドバイス等を行うことができるよう、仮審査制度の導入についても検討するというような中間報告が出ております。  この仮審査制度の導入ということについて、文化庁は今どの程度のことを考えられているのか、教えていただければと思います。
  95. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 御指摘の点につきましては、平成九年七月に協力会議から中間報告を受けた中で述べられている内容でございます。これは、相続税の物納制度の活用、そこに着目して出されておりまして、相続開始時以後に名品を認定して物納の特例を適用すべきだという提言をもらったわけでございます。  今回、この法案では、この提言を参考として一部活用させていただいているのですけれども、今回のもののメーンは、すぐれた美術品を登録して、その公開を促進する制度を導入しようというものにしております。そして、相続税の物納の特例につきましては、この登録に対する奨励策として位置づけたいということで附則で改正をしていただいておりますので、したがって、この法案の制度のもとにおきましては先に登録をして進めるということになりますから、この報告で言っているような仮審査制度ということについてはこの中では盛り込んでいない、そういうわけでございます。
  96. 富田茂之

    ○富田委員 この法案に入っていないにしても、これは今後の検討課題として文化庁の方はまだ認識はされているのですか、そこはどうなんでしょうか。
  97. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 今回の法案のシステムでいきますと、論理的にそういう仮審査制度というのが入ってこないというふうに現在のところは考えております。
  98. 富田茂之

    ○富田委員 ただ、この法案だけじゃなくて、できるだけ美術品が表に出てくることを考えると、こういう制度を準備して、美術品の所有者にとってもメリットのあるような方向になると思いますので、その点も、この法案とは別に、せっかく中間報告で指摘されているわけですから、ぜひ検討していただきたいなというふうに思います。  もう時間もありませんので、最後に、通告しておりましたことですが、実はサッカーくじについて工藤体育局長のインタビューが五月三十日付の日本教育新聞に載っておりました。この教育新聞を見たとき、一面に「総合的スポーツ計画策定へ」というふうに書いてあったので、なかなかいいことをやるなというふうに思ったのですが、中身の四面にインタビューの詳細というのが載っておりまして、四面を見ましたらちょっとがっかりしました。  インタビュー詳報と書いてあって、これは多分日本教育新聞の方でまとめられたので、もしかしたら局長は私はそんなこと言っていないと言われるかもしれませんけれども、こういうふうに書かれておりました。「先日、いわゆる「サッカーくじ」法案が成立した。しかし依然として青少年の悪影響が指摘されている。」という問いに対して、局長は「国会審議では感情論になってしまったきらいがある。反対の人たちはギャンブルであり、青少年に悪影響をおよぼすと決めつけていた。」というふうに答弁されているのですが、私も質疑させていただきましたけれども、こんなふうに決めつけて質問したとも思っておりませんし、問題点は指摘させてもらいましたけれども、その問題点について大臣も、コンビニでの販売はどうなんだとか、十九歳未満の青少年に対するくじの販売が行われないような実効性の確保について、かなり突っ込んだ答弁をしていただいたと思うのですね。  法案は成立してしまいましたけれども、やはり反対の意見があるというのをきちんと聞いていただいた上で、また法案にも問題点があるのだから、その実行に当たってきちんと文部省の方としても委員会審議を重視して、委員会審議の意向を受けて実施に当たるべきだと思うのですが、こういうインタビューを日本教育新聞に載せるということ自体ちょっと私は問題だと思うのです。  こんなこと言っていないというならそれでいいのですが、今後、サッカーくじの運用に当たってどういうふうな方向で臨まれようとしているのか、ぜひ一言御答弁をお願いしたいと思います。
  99. 工藤智規

    ○工藤政府委員 私のあるいは言葉足らずのインタビューが先生の御不興を買ったとすれば、まことに申しわけないことで陳謝したいと思います。  このインタビューは、実は当新聞社が各局ごとに文部省のそれぞれの所管事項についていろいろインタビューということの企画の一環だったそうでございまして、私もたまたまあいている日に受けさせていただいたのでございますが、その際、いろいろ体育局として懸案として感じておりますことを申し上げた中で、ちょうど関係法案が成立した後でございましたから、実はいろいろな御議論の中でいよいよ私どもの方に責任がかぶってまいりましたので、その中でいろいろ申し上げたのがこういう形で載ったのでございます。  言葉足らずの面があったと思いますけれども、逆に、先生も今御指摘になりましたように、私が申し上げたのになかなか記事にならない部分もありますし、表現ぶりもちょっとこれは不本意だなという部分もあるのでございますが、いずれにしましても、衆参で長い時間をかげながら御審議いただいたわけでございますので、私どもは実施の責任をとる立場から、それぞれの御意見を踏まえながら、国会の立法者意思を踏まえながら公明公正な運営に努め、かつ、この法案の趣旨でございますスポーツ振興、ひいては青少年の健全育成のために、国民の皆様方にも喜ばれるスタートをぜひ切るような形での運営に努めてまいりたいと思っているわけでございます。
  100. 富田茂之

    ○富田委員 わかりました。よろしくお願いします。どうもありがとうございました。
  101. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、松浪健四郎君。
  102. 松浪健四郎

    松浪委員 自由党の松浪健四郎でございます。  美術品の美術館における公開の促進に関する法律案について、幾つ質問をさせていただきたいと思います。  平成八年の総理府の文化に関する世論調査によりますと、調査対象の四人のうち一人が博物館、美術館に行って鑑賞した経験がある、そして五人に一人がこれからそういう鑑賞をしたい、こういうふうに述べられておりまして、国民の皆さん方の美意識が高まりつつあるというふうに思うわけでございます。  そしてまた、全国各地にたくさんの博物館、美術館等が設置されました。ところが、その中に入 れるものがどうも、つまりソフトが十分ではない、そこで充実させていかなければならない、他言をまつまでもございません。多くの人々が、美術館に行こう、博物館に行こうというのは、常設の展示を見に行くというのじゃなくて、おおむね大型の企画展を見に行かれる。今回のこの法律は、その企画展はとりあえず横に置いて、いろいろな美術品をうまいこと常設展示できるようにしようじゃないかという法律だというふうにとらえております。  詳細はいろいろな先生方から質問がありましたし、大して時間がございませんので、単刀直入にお聞きしてまいります。  まず第一点は、おじいさんあるいはお父さんが高価な美術品を購入していた、表に出すと税務署がにらむ、そこで登録美術品にしようということで、なったとします。そして、その所有者のお父さんが亡くなった。それは息子のものになるわけですね。となると、課税されるのではないですか。
  103. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 おっしゃるとおりだと思います。
  104. 松浪健四郎

    松浪委員 となれば、やはり隠して持っておった方が利口ではないのか。結局、登録美術品として認める、国家も、これは多くの国民の皆さんに見せるべきだ、そして表に出た、相続する、税金をかける。だれが出しますか、それ。その辺はやはり大蔵省とよく相談をしてつくっていかなければならない。  これは、物納についてもほとんど大蔵省と真剣な論議がなされていないのですね。物納で一番最後の動産が一番に来ました、こうなっていますけれども、そうしたら、お尋ねしますが、例えばの話ですが、税金を百万円納めなければいけないけれども納めることができないから物納する、ところがその美術品が二百万円の価値がある、ということは、百万円税務署は返してくれるということですか。
  105. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 超過物納の場合ですね、超過物納の場合には、その差額は税務署の方から返していただくことになります。
  106. 松浪健四郎

    松浪委員 これはもう余り深くやりませんけれども、隠していた美術品を登録美術品として認定されました。これは歴史的に、学術的に、文化的にすぐれたものである。諸外国のものなんです。そうしますと、例えばXという国は、自分のところのものが日本のあそこにあったじゃないかということになるわけですね。そこで、返してくれという問題になりました。文化庁は責任を持ってそれを返すのですか、それとも、持っている人の側に立って、返す必要はありませんよとおっしゃるのですか。
  107. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 この制度は、法案に定めてあります登録の要件を満たす美術品につきましては、真正な所有者から申請があったとき登録をするというふうにしております。だから、本当に真の所有者かどうかということは一つの大きな要素になってくるわけです。専門家にも集まっていただいて十分審議していただくということが必要だと思っております。  それで、今御指摘のありましたように、万一それが国際的な盗品であって、もとの国あるいはもとの所有者からその返還を求めてきたという場合にどうなるかということでございますが、この場合は、基本的には国内法に従うことになると思います。つまり、所有者と返還請求者との関係になってくるわけです。  さらに具体的に申し上げますと、例えば民法第百九十三条の盗品等の即時取得に関する規定というのがございますが、これによりまして、現に持っている所有者が、取引をしたときに善意無過失で取得をしたときには、取得後二年以上経過しておれば即時取得が認められるということになりますから、この場合には返還する義務はないということになります。
  108. 松浪健四郎

    松浪委員 返還する義務がないと。  そこで、文部省は体を張って、Xという国は返せ返せと言っているけれども、我が国の国内法に基づいて返還はしませんというふうにおっしゃるわけですね。
  109. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 そのような場合は、基本的には民間同士の話でございますから、それに対して国としてどうこうするという立場にはないわけでございます。
  110. 松浪健四郎

    松浪委員 ということは、やはり登録美術品にするのはやめておこうということになるのですよ、国が守ってくれないのですから。そして、そもそも諸外国のものは、おおむね九九%は盗品なんです。それは、いつ盗まれたかどうか、あるいはいつ略奪されたかどうか、これはわかりませんけれども、なぜ諸外国の歴史的、学術的、文化的に重要なものをただでくれる人がいらっしゃいますか。それは、向こうのオークションで買った、そして持ってきたとしても、そこでのオークションは、おおむね最初は盗品であった、こういうふうに私は思うわけです。  結局はっきりしていることは、文部省や文化庁は、登録品でいいものを持ってこい、そして展示する、外国からクレームがついた、返してくれ、返還要求があっても、それはどうすることもできませんとおっしゃるわけです。  そこで、一九八五年の十一月二十一日、   国連総会本会議は二十一日夜、先進国が主として保有している人類共通の文化財の原保有国返還を勧告する、エジプト、ザイールなど第三世界諸国提出の決議案を賛成一二三、反対〇、棄権一五で採択した。   同趣旨の決議案は昨年の総会でも採択されているが、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「文化財の原保有国返還ないしは違法専有の場今の権利回復に関する政府間委員会」への協力を求める穏やかな趣旨で、日本も昨年に続き賛成した。 との報道があった。  返さなければいけないのですよ。だけれども文部省は、知らぬと言うわけですね。これは問題を通告していたでしょう。次長、しっかり勉強してくれなきゃ、問題通告しているのですから。
  111. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 それは勧告でございまして、私ども承知いたしておりますのは、一九七二年に発効しておりますユネスコ条約というのがございます。これは、文化財の不法な輸入、輸出、所有権譲渡を禁止するという条約で、一九七二年に発効したものでございます。これについては、我が国は、国内法制との調整がなかなか難しいということで、批准をしておりません。
  112. 松浪健四郎

    松浪委員 これは批准はしていない。だけれども、国連でこういう決議がなされて、そして日本もこれには賛成しているわけですよ。わからないのですか。コピーを見せましょうか。賛成しているのですよ。  となると、これは非常に難しい問題であって、国内の登録美術品についてはそれほど難しいと思わないわけですね。だけれども、諸外国のものをも我々が登録美術品として認める場合、このような問題も生じるということを想定しておかなければならないし、バブル期にかなりなものが我が国に輸入されてきておるということは、名前のある絵画であるとか彫刻であるとか、そういったものについてはおおむね把握はできるけれども、歴史的に、学術的に、文化的にというようなものになってまいりますとなかなか把握し切れない。それらの点についてこの法律は欠落しているように私は思っているわけであります。けれども、登録美術品をふやすということは、やはり私は、この国の文化的な美術品を諸外国に散逸させない意味において非常にいいことだと思っております。  御存じのように、北斎の肉筆画八十八点、これは重要美術品でしたけれども、海外に流出したことがありました。けれども、これは文化庁がクリスティーズにクレームをつけて、そして阻止し日本に戻した。戻ったか戻っていないかよく知りませんが、そういうふうに報道ではなっております。そういう意味においては、すばらしいものをそういう形にしておくということはいいことだ、こういうふうに私は思っております。  それともう一点、すばらしいものを登録美術品 にする。余りすばらしくないものもある。すばらしいものはどこにあるのかというと、Aという国にあります。そのAという国の美術館、博物館が戦乱のために焼失し、そこですばらしいものが全部なくなってしまった。となれば、大したことがなかったものが日本にあるのですが、それは登録美術品というようなことに格上げされる可能性はあるのですか。
  113. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 ただいまの件につきましては、対象となる要件として、歴史上、芸術上または学術上の価値が他の美術品に比べて著しく高く、普遍的なものが対象となる、極めて価値の高い外国作品などが該当するというふうに先ほど来お答えしておりますが、この価値判断は、今申し上げました歴史上とか芸術上とか学術上、そういったいろいろな総合的な価値判断のもとで結果が出ると考えております。  したがいまして、先生が今おっしゃったように、一級品が別なところ、ある国にあったけれども、それがなくなってしまった、そうすると、その次のクラスのものが今や非常に貴重になってきたということも、当然その判断一つの重要な要素として考慮されてくるだろうというふうに考えます。
  114. 松浪健四郎

    松浪委員 実は、これは実際にあった話でございまして、私は長い間アフガニスタンに住んでおりました。アフガニスタンには、歴史のある国ですからたくさんのすばらしい出土品がございまして、正倉院の御物の中にあるような銀製八曲長杯であるとか、あるいは白瑠璃碗であるとか、それと似たようなものまで、もちろんシルクロードを経て日本に運ばれたものですから、アフガニスタンにもありました。それが、内戦によってその博物館がつぶれ、中のものが全部だめになってしまった。そこで、二番手、三番手のものがある。その二番手、三番手の作品を、これはすばらしいと思って、文化庁に持っていって審査をお願いした。だけれども登録美術品として認定されない、いわゆる烙印を押された。  それで、そういう事故が起こった。そしてもう一回、それは持ち主が自分の足で運んで登録申請をし直すのか、それとも、文化庁の方から、あなたのものが登録美術品として認定されるようになりましたよという通知を出すのか、それとも、すっかり忘れてしまっているのか、これはあり得る話なんですよ。  なぜこんなことを聞くかといいますと、この法律は、コレクターの立場に立ってできた法律と違うのですよ。大衆、国民の持っているものを全部吸い上げてこましてやろうという法律なんですよ。だから、コレクターの心理から私は言わせていただいているのです。
  115. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 形としては、一度登録申請をしてたまたま入らなかったというものについて、そういった状況の変化が起きた場合にどうするかといった場合には、やはりもう一度再申請をしていただくということになると思います。  ただ、この法案の趣旨は、できるだけいいものを公開していこうということですから、当然、事務局なり委員の方で、ああ、そういえばあれがあった、あそこでああいう状況があったから、あれは非常に重要であったという情報をつかんでおれば、それは所有者にこちらから連絡をして、どうぞということは当然あり得ることだろうというふうに思っております。
  116. 松浪健四郎

    松浪委員 はっきりしておるのは、横山大観等の例で出ましたように、我々が既成の事実として知っている名立たる美術品、あるいは名立たる作者のものを念頭に置かれてつくられたというふうな印象をも受けるわけです。  すばらしいものがある、ところがコレクターは、このすばらしいものを一発で買うということはないのです。いろいろなものを買いあさっていく、コレクションするうちに物すごいすばらしいものに行き当たり、どうしてもこれを欲しいということになるのです。いきなりそれに手を染めるということは、やけどをするのです。そしてコレクターというのは、実は、学者よりも道具屋さんよりも、コレクターの目の方が肥えてくるのです。なぜならば、一品一品真剣勝負するからなんです。  だから私は、この世界の学者というのは余り信用しないのです。身銭を切っていないから、コピーを手にしていないから、それほど力があるとは思わない。ただ表現力と情報収集能力、調査能力があるから論文が書ける。それだけであったから、かつて、この国での真贋のいろいろな問題で、文化庁、文部省がみそをつけてきたわけです。というよりも、文部技官がみそをつけてきたと言った方がいいと思うのですけれども。  そこで、コレクターはすばらしいものを持っている、これを登録美術品にと。文化庁はこれ一つだけ認めて、あとは認めないということになるのですね。コレクションというのは、そろってコレクションであって、それをひっくるめて認めてもらわなければ、すばらしいもの一点だけということになりますと、それなら出すのをやめようということになってまいります。そういうふうな際は、次長、どういうことになりますか。
  117. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 ただいまの先生の貴重な体験に基づく……(松浪委員「いや、体験じゃない」と呼ぶ)御意見をありがとうございます。  これにつきましては、先ほど来も申し上げていますように、登録の対象というのは要件として二つあるというふうに申し上げていますが、これらにつきましては、何も単体に限定されるものではないというふうに考えております。歴史的または系統的にまとまっているとか、あるいは複数で一つ意味をなす作品を構成しているというふうなものも、それを一括して登録するということも十分考えられるというふうに考えております。
  118. 松浪健四郎

    松浪委員 文部大臣にちょっとお尋ねしたいのですけれども、見直し条項もあるわけで、今後、すぐれた美術品の登録を促進するためには、登録美術品の所有者のみならず、美術館に対しても、登録制度の魅力を一層感じるようなさまざまな奨励策について検討される必要がある、こういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  119. 町村信孝

    町村国務大臣 松浪委員がこの方面にお詳しいことに、先ほど来から大変感服をしながら質疑を聞かせていただいておりました。  確かに、所有者にとっても美術館にとってもこれだけのインセンティブで十分集まるのだろうかという御指摘、私もわからないではございません。もう少しくメリットを強めるということがあってもいいのかなと思ったりもしておりますが、先ほど来御説明のように、あくまでも第一歩ということで御理解をいただければと思っております。  美術館については、基本的には所蔵品がまだ足りないわけですね。したがいまして、登録されたものをあたかも自分の館が持っているような形で公開できるというのは、まず基本的に、これが美術館にとってのメリットだろうと思います。  それに加えまして、今回の法律によりましても、公開とか保管に関する国の指導助言があるとか、あるいは国による登録美術品の所在とか公開の状況について情報提供がある。先ほど申し上げましたネットワーク化する際の素材にもなってくるという意味でのメリットはあろうかと思いますが、これだけで十分かと言われると、まだまだ検討の余地もあるとも思われますので、今後さらにまた委員のお知恵もおかりしながら拡充について考えていきたいと思います。  ただ、私、たまたま先般、上野の近代美術館に行って、結構個人所有者が寄託をした美術品がそこそこに、松方コレクション初め並んでいることに実はびっくりいたしまして、ああ、こんなに個人の方が、やはり自分の家の奥にこっそりとしまって一人で楽しむという姿ばかりでもないんだなという状況も先般見て、実はある意味ではびっくりしたのでありますけれども、もっともっと多くの方がそういう気持ちになっていただけるように、今後とも施策の充実にはより一層努めていきたいと考えております。
  120. 松浪健四郎

    松浪委員 それで、どうしてもこういう問題で は避けて通れない問題に真贋論争があろうかと思うわけですけれども川内委員からの質問でも聞いておりましたが、川内委員の突っ込みが弱いものですからあいまいになってしまいましたけれども。  Yという会社が五十八億円出して買ったゴッホの「ひまわり」、これはにせものだと言う人が出てまいりました。だけれども、それまでは本物だと思われていました。これも仮定の話ですけれども、物納する前に登録美術品として文化庁に持っていきました。文化庁はどのようにして真贋をされるのですか。
  121. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 この登録制度を動かすに当たりまして審査をするわけですが、そこでの一番根本となるのが真贋だと思います。そこから本当だということが決まって、いわゆるすぐれた作品として認めるかどうかということですから、最も大事な部分だというふうに思っております。  したがいまして、これについては大変難しい面もあるというのはおっしゃるとおりだと思いますが、我々としては、できるだけそれぞれの分野で一線級の方というか、高くかつ広い識見を持った専門の方々に、しかも分野別にお集まりいただきまして、その点については慎重の上にも慎重に審査をしていただくということかなというふうに思っております。
  122. 松浪健四郎

    松浪委員 ということは真贋をはっきりさすことはできないということですね。なぜならば、ゴッホの研究の第一人者が我が国にいるのか。私はいるとは思いません。  となりますと、どういう委員会をつくられるのか、るる次長から御説明がありましたけれども、日本人だけでは難しい面が出てくる。そうしますと、この委員会を設けられるときには、その真贋をただすときには、かなりお金がかかったとしても、それだけの立派なものであるならば、諸外国から第一人者と呼ばれる権威を招聘し委員会の中に加わっていただかなければならない、私はそういうふうに思うのですが、そのようにやる用意はあるのかないのか、お尋ねしたいと思います。
  123. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 先ほども委員としては、学芸員等の美術関係者とか学識経験者、美術商、そういった関係者でかつ美術品について広くかつ高い見識を有する方々を任命したいというふうに申し上げましたけれども、その際、専門性に応じましては、必要があればその国籍を問わず委員を任命するということも必要になってくるというふうに考えております
  124. 松浪健四郎

    松浪委員 ぜひそのようにやっていただきたいと思いますし、永仁のつぼの恥をかくことのないようにお願いしておきたいというふうに思います。  昭和三十七年二月十四日に本委員会で佐野乾山の焼き物についての議論がありました。これを読みましても、結局、文化庁は、文部技官が本物だ本物だというふうに言いましたけれども、いまだに結論が出ないでうやむやになっておる。権威だ権威だと思いましても、本当は権威でなかったりするということもございますし、この世界は業者と研究者と学芸員が結びついて、建設会社の談合以上に腐敗、堕落しておるということをまず、心しておいていただきたいということをお願い申し上げます。  最後に、バブル期にたくさんのすばらしい銃が我が国に輸入されました。有名な名立たる会社の二百年記念あるいは三百年記念、金ででき、そして立派な彫刻の装飾がついているような銃が我が国に輸入されました。  ところが、この国は、火縄銃までは美術品として認められているわけですけれども、それ以外の銃は美術品として認められていない。したがいまして、相続する際に、息子は銃刀法の、その持つ資格がなければ、その銃は、せっかく美術品的価値があったとしてもつぶしてしまわなければいけない。現にそういうことがあったわけです。  文化庁としては、銃を美術品として今後認めていく気があるのか、それとも、我が国の文化と余り関係がないからそれは今までどおり認めないという方向でいくのか、その辺をお尋ねしたいと思います。
  125. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 二つあると思うのですが、銃刀法関係で、一定の銃については登録をすれば所持ができるという一つ分野があります。こちらについては、一定の基準を設けまして、これにかなうものは登録をすれば持っておれます。これも、余り緩くやりますと、例えば発砲できるものが登録をされて事故が起きたというふうなことがここ数年起きておりまして、そこはきちっとやらなければいけないというふうな問題が一つあります。  それからもう一つ先生の方からお話がありましたように、火縄銃とか、そういったほかの銃でも歴史的価値がある、そういったものについては今回の登録関係でどうするのか。そういう点につきましては、指定文化財に指定すべき価値の高いものであるというふうに認められるものにつきましては、現に重要文化財として指定しているものもございますし、当然それに相当するものは登録の対象になる。  例えば、今でも重要文化財に指定している例として二つ挙げますと、徳川家康関係資料の中に日本製火縄銃二丁が、これは幾つかの中の一つとしてこの火縄銃が指定をされておったり、あるいはフィリップ・フランツ・フォン・シーボルト関係資料の中に英国製短銃が一丁、重文に指定をされておる。そういった現状になっておりますので、これらクラスになるとそういう登録の対象にもなり得るというふうに考えております。
  126. 松浪健四郎

    松浪委員 時間がなくなりましたので、最後に一つだけお願いしておきたいわけです。  とにかく企画展は大変な人気がある。とりわけ諸外国の美術品をお借りして企画展をする。ところが、その保険を掛けるのに、物すごい高くてなかなかできない。先進国では、おおむね国がその保険金を補償する、そうすることによって企画展が行われております。それで、文化庁の調査研究協力会議の中でも、補償制度といいますか、国がそういう方向に行かなければならない、国による補償制度をとるべきであるというふうな報告があるのですが、今後、それらについて文化庁は、積極的に法制化し、取り組む用意があるのか、なければ、声を大にしてお願いしたいというふうに思いますが、いかがですか。
  127. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 この点につきましては、普通、美術品を借りる場合は、借りる側が、過失の有無を問わないですべての損害を補償するというのが美術の世界の慣例になっておりまして、このため、多くの国では国による補償制度というものを導入いたしております。特に大規模な国際展なんかの場合には、万一事故があった場合には政府が補償するということが国際間の貸し借りというものを非常に円滑に進めていく上で重要な役割を果たしております。そういったことによって、よりすぐれた美術品が日本にも入ってくるという可能性が出てくるわけでございます。  先生も今お話しいただきましたように、昨年の七月に調査研究協力会議の報告書をまとめていただきまして、そこでは、国による補償制度の導入を検討すべきだという中間報告をいただいております。  私どもとしては、これを受けまして、ぜひこれは実現したいというふうに考えておりまして、現在、実践的な調査研究を進めております。十年度も予算を計上いたしておりまして、幾つかの点について実践的な研究をしておる、その上で、将来的にといいますか、ある時期にはぜひ実現をしたいというふうに考えておりますので、ぜひ御協力のほどをお願いしたいと思います。
  128. 松浪健四郎

    松浪委員 時間が参りましたので、これで終わります。どうもありがとうございました。
  129. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、石井郁子さん。
  130. 石井郁子

    石井(郁)委員 本法案は、個人や法人が所蔵している価値ある美術品などを、所有者の自発性を前提に文化庁に登録させ、全国の美術館、博物館などで広く国民に公開していこうとするものでありまして、我が党は賛成するものでございます。  一点お伺いしたいのは、所有者の自発性に基づいて美術品の公開を促進するということにかかわってですけれども、いろいろ出ておりますように、所有者の方で、諸般の事情からためらいが生じるということは考えられるわけでありまして、価値ある美術品を持っている所有者が、この法案の目的に共鳴して積極的に登録しよう、そして公開しようという意欲を引き出していく上で、この法案自身にどのようなプラスのインパクトといいますか、そういうものがあるのかどうかという点を改めてちょっと御説明願いたいと思います。
  131. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 所有者に対する登録のメリットといたしましては、三点ございまして、一つは、美術館の負担により美術品を安全かつ適切に保管できるというのが一点でございます。ある程度のすぐれた作品になりますと、保管をしているというだけで経費等が相当かかるものですから、これは所有者にとってかなりプラスになるのではないか、大金持ちの場合はちょっと別かもしれませんが、そういうメリットがある。それから相続税の物納の特例の適用がある。それからもう一つは、国による情報提供を行わせていただく、それも所有者にとりましては、場合によってはメリットになるのではないかという、メリットとしてはこういった三点くらいがあるのではないかと考えております。
  132. 石井郁子

    石井(郁)委員 私は、次に価値あるそういう美術品の国民にとっての鑑賞の機会の問題について伺いたいと思います。  この点は、法案にも、国民の鑑賞機会を拡大するということが述べられていると思うのですが、まず、もうすぐ学校五日制に移行するわけで、特に子供たちにとって、美術品の鑑賞ということが人間形成の上でも大変重要なことはもう言うまでもありません。  国立の美術館、博物館の無料の観覧日をもっとふやしていく必要があるかというふうに思うのですね。現在どのくらいそういうことが実施されているのか。これは割引制度の拡充も含めて、無料観覧ということをさらに拡大するということに積極的に取り組むべきだと思うのですけれども、いかがでしょうか。
  133. 遠藤昭雄

    遠藤(昭)政府委員 無料観覧を拡大していくということは、こういった美術品や文化財の鑑賞機会を拡大していくという点で大変有効な方策だというふうに私どもも考えております。  無料観覧の拡大につきましては、七つの国立の美術館、博物館があるわけなんですが、そこの状況を申し上げますと、毎月第二、第四土曜日の常設展、これは広く無料観覧としております。ただし、博物館によりましては小中学生のみに限っている場合もありますが、それ以外のところでは広く無料観覧としております。親と子供が一緒に行って見られるようにという配慮をしております。  このほか、これらの国立の美術館、博物館におきましては、文化の日とか成人の日、敬老の日など、館によって違うのですけれども、それぞれ無料観覧日としておるわけでございまして、その意味では、国立関係はかなり努力をしておるというふうに考えております。  それから地方公共団体が設置する美術館、博物館に関しましては、市町村立の施設につきましては私ども必ずしも十分に把握しておりませんが、都道府県の施設についてデータを集めてみましたら、かなりの施設で、これは二十六道府県でございますが、学校休業土曜日などに子供たちに無料観覧を行う、これも若干、県によってやり方が違いまして、常時小中高は無料だとか、あるいは授業の一環として来たときには無料だとか、いろいろパターンはありますが、そういった努力をしております。  それから私立の美術館、博物館についてですが、これは各館の、それぞれの経営とかお考えもありまして、一律に実施するというのはなかなか難しいのだろうというふうに思います。  博物館法に基づく登録を受けた私立博物館で、年間開館日数が二百五十日以上とか、かつ学校休業日に児童生徒の入場を無料とするなど、青少年、親子等の利用に対する優遇措置を講じている私立の博物館については、特定公益増進法人として税制上の優遇措置を受けることができるという措置を講じておりまして、これによって、間接的ですけれども私立の美術館に対しても無料観覧を奨励いたしているところでございます。
  134. 石井郁子

    石井(郁)委員 かなりいろいろな形で行われているということがわかりました。子供たちのために、もっとその方向を進めていっていただきたいというふうに思います。  もう一点、大人にとっても美術鑑賞への希望というものは高くなっていく、入館者数もふえ続けているかというふうに思うのですね。この辺は、文化に関する世論調査にも出ているところかと思うのですけれども、一方で、サラリーマンの方々あるいは都市勤労者の方々は、平日の開館時間帯になかなか足が運べないという問題が言われているところであります。せめて週末での美術館、博物館の開館時間を延長してもらいたい、あるいはそうしてはどうかという声がいろいろあるわけでありまして、この辺は、欧米諸国ではもう当たり前のようになっているということもあるかと思いますけれども、我が国の場合、大変不十分です。  この点は、職員の方の労働強化の問題等々、いろいろあるかと思うのですけれども、職員の配置とかローテーションだとか、そういった工夫などをしながら、美術館、博物館のせめて週末の開館時間の延長ということを積極的に検討すべきだというふうに思いますけれども、この辺は、大臣の御決意はいかがでしょうか。
  135. 町村信孝

    町村国務大臣 国立の博物館、美術館は、大体毎週金曜日には閉館時間を二十時にするというようなことで、仮に五時、六時に終わると、それでも二、三時間のことですが、社会人を含めて広く一般に見ることができる。公立、私立の方につきましては、今委員指摘のような人の問題などもありまして、なかなかそう順調にというわけにもいかないようですが、平成九年度の調査、サンプル調査ですが、夜間に開館しているという博物館は一七%程度で、それでも四年前と比べると六ポイントぐらい上昇しているということですから、次第にそういう方向に向いているのかな、こう思っております。  いずれにしても、先ほどの無料観覧とか開館時間の延長、こうしたことにつきましてはできるだけの働きかけをし、大勢の皆さん方が鑑賞の機会が持てるように努めていきたいと思っております。
  136. 石井郁子

    石井(郁)委員 ぜひそのような方向も進めていただきたいというふうに思うのです。  次に、私はこの法案には基本的に賛成ですけれども、今政府が進めている動きの中で、一方でこの法案の立法目的を危うくするような事態もあるのではないかということでちょっとお伺いをいたします。  中央省庁等の改革基本法案の問題でありまして、これは現在、参議院で審議中ですけれども、この法案の第三十六条に、独立行政法人制度の導入ということがございますね。そこでは具体的な名前等々は出ていないわけですが、行政改革会議の最終報告には、この独立行政法人の検討対象として、東京、京都、奈良の国立博物館三館、東京の西洋美術館、東京と京都の国立近代美術館、大阪の国立国際美術館の四美術館、計七館が含まれているということであります。  これも大臣にお答え願えたらいいかと思うのですけれども、独立行政法人のキーワードは、この法律の性格から考えても、効率性、効率化ということにあるかと思うのですね。美術館とか博物館の問題をそういう効率性という角度から考えていいのか、そして、それを適用をしていいのかという点がありますので、この七館を独立行政法人の適用対象にしているのかどうかということを伺いたいと思います。
  137. 町村信孝

    町村国務大臣 きょうも一日、参議院で、この独立行政法人のことも含め、中央省庁再編等の法律の議論をやっていただいたところでございます。  確かに、行革会議の最終報告には一覧表が載っておりまして、委員指摘のものがそれぞれ検討対象ということでリストアップされています。文部省も、こうやってリストアップされている以上、そのメリットあるいは問題点ということを整理し、また検討をしているということでございます。  その際には、当然のことでありますが、まず、そもそも独立行政法人というのは基本的にどういうものなのかということについて、まだ必ずしもはっきりとしたイメージなり内容なりが固まっているわけでもございません。いずれもしつくる場合にしても、そうした独立行政法人に関する法律というものが一本できて、その後にまた各論がついてくるということのようでございます。そしてさらには、具体的にどの機関をそれに該当させるかといったようなことは、法案が成立後に設置される予定の中央省庁等改革推進本部、ここを中心に検討が行われることになろうと思いますので、文部省としても、その本部と十分連絡をとっていきたい、こう思います。  ただ、委員指摘のように、国立の博物館、美術館は、日本に数多くあります。そうしたものの言うならばセンターでもありますし、基本的にはもとより採算性が低いものだと私も思います。私も、個人的な体験で、諸外国の例を若干見たり聞いたりしておりますが、なかなか独立採算で成り立つというようなところはほとんどないと言っても過言ではない状態だろう、こう思いますので、やはり相当程度国による財政支出を続けていかないと多分成り立たないのだろう。そのことと独立行政法人という基本的な性格がなじむのかなじまないのか、その辺はやはり慎重に検討していかなければいけないのだろうなと。  したがって、私ども、頭からそうするとも決めておりませんし、頭からだめですと決めているわけでもございませんが、そうした数々の問題点があるということを認識しながら、ただ、別途、今まで国民の皆さん方にいろいろな展示物を見ていただく努力が十分行われていたかどうかという点に関しては、いま少しそれぞれの美術館、博物館の努力も必要なのかな、そういう意味の、ある種の民間的感覚という表現が適切かどうかわかりませんが、そうしたことなどもやはり考えてもらう必要もある、そんなことで、今後のあり方を慎重に、また幅広く検討していきたいと考えているところであります。
  138. 石井郁子

    石井(郁)委員 この三十六条では、もう全部を読み上げる時間はありませんけれども、独立行政法人にするに当たって「国が自ら主体となって直接に実施する必要はないが、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがある」云々というふうにあるわけでしょう。私は、美術館、博物館というのは、採算性で云々できない性格のものがありますから、まさに国がやらなければいけない、そういう種類のものであるという点では、やはりこの三十六条から外して考えるべきだというふうに思うのです。ぜひ大臣には、そういう立場でやっていただきたいなと思うのです。  採算性ということで言われましたけれども、その点でも「独立行政法人の会計は、原則として企業会計原則によるものとする」という規定もありますよね。これは三十八条第三号なんですね。それから第六号では「職員の給与その他の処遇について、当該職員の業績及び当該独立行政法人の業務の実績が反映されるものとする」というような規定になっているということになると、やはりいろいろと厳しい条件になるのだろうというふうに思うのですね。  先ほど私は、子供たちには無料で観覧をというふうに言いましたし、国民にも本当に広く美術品の鑑賞の機会をということで言いますと、やはり観覧料が高くては美術館に行けないわけですから、国民の文化を享受する権利というか、そういう点からしてもこれは本当にそぐわないものだというふうに思います。  ぜひ大臣のその点での御決意をもう一度お伺いして、質問を終わりたいと思います。
  139. 町村信孝

    町村国務大臣 今委員が御指摘になられたことを十分に踏まえながら、しかし、今この時点で外しますということを頭から申し上げるのはいかにも時期尚早でございますが、委員の御指摘などをしっかり踏まえ、また、この問題について非常に関心をお持ちの方々もたくさんいらっしゃいます。当然、国立の博物館、美術館に働いておられる、一生懸命頑張っておられる方々のお気持ち、考え方もあろうかと思います。そうしたことを踏まえながら、対処をしてまいりたいと思っております。
  140. 石井郁子

    石井(郁)委員 終わります。ありがとうございました。
  141. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、保坂展人君
  142. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  今回の美術品の美術館における公開の促進に関する法律案につきましては、私は賛成ということで、バブル時代美術品が投機の対象になって、金に任せていわば市場を荒らしてしまった、そして、ここに提案されているように、我が国にはいわゆる私蔵されている美術品があるわけですけれども、それが文化的に、あるいは日本の文化水準ということからさして評価されているわけじゃないというあたりが非常に悲しい現実としてあるということを一言指摘しておきたいと思います。  絵や彫刻には言葉や民族を超える力があるわけで、言ってみれば、文化の力、あるいはまさに言葉や人々の暮らしの違いを超えた力があるわけですけれども、今回は文教委員会での実質審議の最後になろうかとも思いますので、人権上の問題について緊急にそちらの方を質問させていただきたいと思います。  外務省に来ていただいているのですが、当委員会で私がたびたび質問をしてきました、いわゆる外国人学校卒業生の国立大学の受験資格、日本の国立大学を受験できないという問題について、国連の子どもの権利条約の遵守状況を審査する委員会でこれが問題になり論議をされたというふうに伝えられておりますが、どの国の委員からどのような発言があり、どのように問題になったのか、外務省の方からお聞かせをいただきたいと思います。
  143. 貝谷俊男

    ○貝谷説明員 お答え申し上げます。  児童の権利に関する条約の実施状況に関します我が国の第一回報告書につきましては、先月二十七日、二十八日の両日にわたりまして、児童の権利委員会におきまして審査が行われたところでございます。  その際、数名の委員より、在日韓国・朝鮮人の方々が大学進学で差別されているのではないかとの質問などが出されまして、これを受けまして政府の方より、このような制度は差別ではない旨を御説明をしたところでございます。
  144. 保坂展人

    ○保坂委員 もう少しちゃんと答えてください。  その数名の委員というのは、全体で何人の委員がいて、どの国の委員の方がどのように発言をされたのかぐらいはきちっと掌握されていないのですか。その程度しか把握していないのですか。
  145. 貝谷俊男

    ○貝谷説明員 お答え申し上げます。  今回の審査に当たりまして、児童の権利委員会におきまして、当初第一セッションでは六名の委員が出席し、その後七名にふえましたけれども、そのうち五名の委員の方々が本件に関連をして質問等をされたということでございますけれども、その記録の詳細はちょっと今手元にございませんので、詳細はまた追ってお伝え申し上げたいと思います。
  146. 保坂展人

    ○保坂委員 今数名というふうにおっしゃいましたが、七名の委員の中で五名の方が触れたのであれば、これは多数の委員の方がというふうに大体なると思うのです。  外務省は、この事態を深刻に受けとめているのか、あるいは従前の姿勢で終始して、それでよいというふうに思っているのか、国連あるいは国際社会でこの事態がどのように受けとめられていると認識しているのか、簡潔に答えてください。
  147. 貝谷俊男

    ○貝谷説明員 今回の審査の際に、このような点が触れられたということでございますけれども、 これにつきまして政府といたしましては、ただいま申し上げましたように、このような制度は差別ではない旨を御説明申し上げたところでございます。  児童の権利に関する条約第二条につきましては、国民的出身に基づく差別というものを禁じておりますけれども、これは合理的な区別までをも禁ずる趣旨ではないというふうに解しているところでございまして、御指摘制度につきましては、同条約が禁ずる差別には当たらないというふうに考えているところでございます。
  148. 保坂展人

    ○保坂委員 実はこの国連の子どもの権利条約の審査の場、大きな場ですけれども、それ以外にも人権委員会のマイノリティーの作業部会でこれは話題に上る。それから、これは我が国で初めてということですが、ユネスコの個人通報手続によって告発がされたという事態になってきていますが、文部省は、このユネスコに対しての告発がいかなる論拠に基づいてなされたのか、どういう内容を持つものなのか、把握、認識をしていますか。
  149. 雨宮忠

    ○雨宮政府委員 新聞報道におきまして、ユネスコに、日本政府が民族学校卒業生に大学受験資格を認めないのは国際条約違反であると在日朝鮮人教職員同盟が告発したという記事がございます。そのような記事につきましては私ども承知しているところでございますが、これは正式には通報という言葉を使っておるわけでございますが、具体的な通報内容につきましては、現在外交ルートを通じて調査中ということでございまして、承知しておらないところでございます。
  150. 保坂展人

    ○保坂委員 そうしますと、もう一度外務省に伺いますが、こちらの権利条約の委員会にNGOからも六十名ほど、大分大量の方々が傍聴にも詰めかけたそうですが、七人中五人が話題にされて、いわば委員会勧告として六月五日に発表されるという可能性が大きいというふうに私ども国連のジュネーブの現場に行っておる友人からきのう伝え聞いたところですが、この勧告ということがなされたとすれば、政府としてはこれはどういうふうに受けとめるのか。  今までの、差別ではありませんということをただ言い続けるということだけで済むのかどうか。この委員会の勧告はどういう意味を持つのか。権利条約の中にこれを遵守するという規定があるのではないかと思うのですが、そこについてお答えいただきたい。
  151. 高橋一郎

    高橋委員長 答弁の前に、委員長として、理事会でも一切お話しのない、本件に関係のないことでの質疑はちょっと不満です。  ただ、御質問に入りましたから、答弁してください。貝谷人権難民課長。
  152. 貝谷俊男

    ○貝谷説明員 委員会委員の人数でございますが、ちなみにフルメンバーでございますと、十名で構成されておりまして、欠席者がいたということがございますので、一言つけ加えさせていただきます。  御指摘のとおり、六月五日にこの児童の権利に関する委員会が今回審査をいたしました締約国の報告書につきまして、それを踏まえて最終見解というものを出すであろうというふうに考えているところでございますけれども、この委員会が各国の報告書の審査をしました後に、各国に対して出します最終見解の中では提案及び勧告が含まれ得ますけれども、この提案及び勧告は法的拘束力を有するものではございません。  いずれにいたしましても、この委員会が今般の審査を踏まえまして日本に対し提案及び勧告を行います場合には、その提案及び勧告の内容を十分に検討いたしました上で、政府として適切に対処してまいりたいというふうに考えているところでございます。
  153. 保坂展人

    ○保坂委員 私もこの答弁内容に大変不満ですけれども、時間が参りましたのでおしまいにしますが、このやりとりを、国境を超えて本当に多くの人たちが見守っているということを踏まえて、文部省、外務省ともに善処していただきたいと思います。  終わります。
  154. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  155. 高橋一郎

    高橋委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  内閣提出参議院送付美術品の美術館における公開の促進に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  156. 高橋一郎

    高橋委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  157. 高橋一郎

    高橋委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、河村建夫君外六名から、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党、日本共産党社会民主党・市民連合及び粟屋敏信君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。河村建夫君。
  158. 河村建夫

    ○河村(建)委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     美術品の美術館における公開の促進に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、国民の優れた美術品を鑑賞する機会の拡大を図る観点から、次の事項について特段に配慮すべきである。  一 美術品登録制度社会的に幅広く活用されるよう、広く国民に対しその周知に努めるとともに、本制度を利用する美術品の所有者及び美術館に対する一層効果的な奨励措置を講ずるよう努めること。  二 美術展覧会の保険の在り方等について調査研究をすすめ、美術品の公開促進のための多様な方策を検討すること。 以上であります。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  159. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  160. 高橋一郎

    高橋委員長 起立総員。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。町村文部大臣
  161. 町村信孝

    町村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に十分留意して対処してまいります。     —————————————
  162. 高橋一郎

    高橋委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  163. 高橋一郎

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  164. 高橋一郎

    高橋委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後九時二分散会