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1998-05-22 第142回国会 衆議院 文教委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月二十二日(金曜日)     午前九時二分開議 出席委員   委員長 高橋 一郎君    理事 稲葉 大和君 理事 遠藤 利明君    理事 小川  元君 理事 河村 建夫君    理事 肥田美代子君 理事 藤村  修君    理事 富田 茂之君 理事 西  博義君       今井  宏君    岩永 峯一君       大野 松茂君    奥山 茂彦君       小杉  隆君    佐田玄一郎君       下村 博文君   田野瀬良太郎君       中山 成彬君    野田 聖子君       渡辺 博道君    安住  淳君       中野 寛成君    鳩山 邦夫君       池坊 保子君    旭道山和泰君       丸谷 佳織君    松浪健四郎君       石井 郁子君    山原健二郎君       保坂 展人君    粟屋 敏信君  出席国務大臣        文 部 大 臣  町村 信孝君  出席政府委員        文部大臣官房長  小野 元之君        文部大臣官房総        務審議官     高  為重君        文部省生涯学習        局長       富岡 賢治君        文部省初等中等        教育局長     辻村 哲夫君        文部省教育助成        局長       御手洗 康君        文部省高等教育        局長       佐々木正峰君  委員外出席者        議     員  藤村  修君        議     員  肥田美代子君        議     員  島   聡君        文教委員会専門        員        岡村  豊君     ————————————— 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   金子 一義君     岩永峯一君   池坊 保子君     丸谷 佳織君 同日  辞任         補欠選任   岩永峯一君      金子 一義君   丸谷 佳織君     池坊 保子君     ————————————— 五月二十二日  教育職員免許法の一部を改正する法律案内閣  提出第六八号)(参議院送付) 同月二十一日  教育条件の改善に関する請願谷畑孝紹介  )(第二六九三号)  サッカーくじ法案の廃案、スポーツ予算の大幅  な増額に関する請願山原健二郎紹介)(第  二七六一号)  教科書の有料化反対等に関する請願中島武敏  君紹介)(第二七六二号)  同(中林よし子紹介)(第二七六三号)  同(春名直章紹介)(第二七六四号)  同(東中光雄紹介)(第二七六五号)  同(平賀高成紹介)(第二七六六号)  同(藤木洋子紹介)(第二七六七号)  同(藤田スミ紹介)(第二七六八号)  同(古堅実吉紹介)(第二七六九号)  同(不破哲三紹介)(第二七七〇号)  同(松本善明紹介)(第二七七一号)  同(矢島恒夫紹介)(第二七七二号)  同(山原健二郎紹介)(第二七七三号)  同(吉井英勝紹介)(第二七七四号)  安心して学べる教育条件学校施設の充実に関  する請願瀬古由起子紹介)(第二七七五号  ) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  中高一貫教育推進に関する法律案藤村修君  外三名提出衆法第一四号)  学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七七号)  教育職員免許法の一部を改正する法律案内閣  提出第六八号)(参議院送付)      ————◇—————
  2. 高橋一郎

    高橋委員長 これより会議を開きます。  藤村修君外三名提出中高一貫教育推進に関する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。藤村修君。     —————————————  中高一貫教育推進に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 藤村修

    藤村議員 ただいま議題となりました中高一貫教育推進に関する法律案について、民主党の提案者四名を代表して、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  本法律案は、戦後五十年を経過した現行学校教育制度である六・三・三・四制の三・三部分である中等教育については、専ら六年制の中等教育学校において実施することを明らかにするとともに、その設置促進に関し必要な措置等を定め、さらに、この法律施行後十年を経て中等教育が専ら中等教育学校において実施されることとなった後は、国立及び公立中等教育学校後期課程においては授業料を徴収しないことを定め、もって中高一貫教育推進を図ることを目的とするものであります。  その主な内容は、  第一に、この法律において中高一貫教育とは、小学校における教育の基礎の上に、心身発達に応じて、中等普通教育並びに高等普通教育及び専門教育一貫して施すことをいうものとすること、  第二に、中高一貫教育は、中等教育学校における教育目標のほか、ゆとりのある学校生活の中で、多方面にわたる交流及び体験を通じた教育並びに個性に応じた多様性のある教育を実施することにより、自助、自立及び共生の精神を養うことを目標として、専ら中等教育学校において実施されるものとすること、  第三に、中学校及び高等学校は、遅くともこの法律施行後十年以内に廃止され、中等教育は専ら中等教育学校において実施されるものとし、国立及び公立中等教育学校後期課程においては、授業料を徴収しないものとすること、  第四に、都道府県は、あらかじめその区域内の市町村の意見を聞き、かつ、区域内の私立中学校高等学校及び中等教育学校配置状況等を十分に考慮して、区域内の公立中等教育学校整備に関する基本的な計画である公立中等教育学校整備計画を定めるものとすること、  第五に、都道府県に、条例の定めるところにより、中高一貫教育推進審議会を置くことができるものとし、審議会は、都道府県教育委員会または知事の諮問に応じ、公立中等教育学校整備計画等中高一貫教育推進に関する重要事項について調査審議するとともに、これらの事項に関して、都道府県教育委員会または知事に建議するものとすること、  第六に、国は、中等教育学校設置促進に関する施策を実施するため、必要な法制上、財政上または金融上の措置等を講ずるものとすることなどであります。  なお、この法律は、平成十一年四月一日から施行することといたしております。  以上が、本法律案提出いたしました理由及びその内容概要であります。  私ども提案者は、本法律案が成立し、施行されましたならば、十二歳から十八歳の心身の重要な発達段階における教育が、地獄とも言われる受験競争から解放され、ゆとりのある学校生活の中で、生徒個性創造性を伸ばす教育全国的に行えることとなるものと考えております。  さらに、高等学校全入時代の要請にこたえて、国公立における現行高等学校部分授業料を無料とすることによって、保護者等教育費負担を大幅に軽減することができるものと考えております。  何とぞ、十分に御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて趣旨説明は終わりました。      ————◇—————
  5. 高橋一郎

    高橋委員長 これより内閣提出学校教育法等の一部を改正する法律案議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。大野松茂君。
  6. 大野松茂

    大野(松)委員 おはようございます。自由民主党の大野松茂でございます。  学校教育法等の一部を改正する法律案について、何点かお伺いをさせていただきます。  中等教育学校についてでございますが、中高一貫教育が世間の注目を浴びておりますのは、一部受験エリート校存在にもありはしないか、こうも思っております。名声を確立したこれら受験エリート校への進学競争が激しくなっており、小学校三、四年生から塾通いも多いと聞いております。  資料によりますと、全国中高一貫校平成八年度で国立十三校、私立五百七十四校とありますが、私立中高一貫受験エリート校と言われるものはせいぜい三十校か四十校ぐらいなのではないか、このようにも思いますが、これら受験エリート校と言われる一貫校からいわゆる有名大学ブランド大学への進学者の比率は極めて大きくなっているものがございます。  そして、その傾向はここ二十年の間に強まってきておりまして、国立私立中高一貫教育型エリート校合格シェアというのは、東京大学で二十年前三三・九%であったものが五二・一%になり、京都大学で一七・八%であったものが四四・七%と増大をしている、このようなデータがございます。この現象は、公立学校からの有名大学への進学難に対しまして、中高一貫型のエリート校独占受験競争の低年齢化へつながっていく、こうも思うわけであります。  その一方で、いわゆるエスカレーター型の優雅な中高一貫校も数多く存在していることも事実でありまして、よい事例もたくさん示されているわけであります。  中高一貫教育の最大のメリットは、子供発達にとって極めて不安定な思春期に、十五の春を泣かせる高校入試がないということであります。そして、六年の教育期間という豊富な時間的資源を効果的そして効率的に用いて、教育内容面での重複を避けながら、ゆとりを持って生徒それぞれの自己実現を目指して教育ができるということであります。関係者からお聞きいたしますと、この六年間の教育の中で六〇%に縮減、圧縮できるような状態になる、このようにも言われております。  既に実績を上げている私立中高一貫校の中で、受験エリート校存在のみが余りにも突出しているという感じもするわけであります。実は、先般のサンデー毎日には「「中高一貫教育校」強さの実態 東大合格者数ベスト二十を独占」このような記事もあるわけなんですが、こうした記事の中からも、受験教育という意味としてではなく、すぐれた才能をはぐくむことも個性重視教育として大事なことは私も十分承知をしているところでもございますが、要は設置者考え方設置者設置目的、また、父兄の期待像にかかっていると思うわけであります。  国立私立先進事例の中から学ぶべきことも極めて多いわけでございますが、こうした受験エリート校の問題、あるいはまた、こうしてゆとりを持った教育をされているような事例、このような事例の中から学ぶべきものも極めて多いように思うわけでございますが、大臣の御所見を聞かせていただければありがたいと思います。
  7. 町村信孝

    町村国務大臣 大野委員にお答えを申し上げます。  現在、全国私立高等学校は千三百十五校ございますが、このうち系列の中学校を持っている学校、いわゆる中高一貫校は六百四十校と約半分ぐらいでございます。残った半分は高校だけの学校でございます。  受験エリート校世の中一般には言われているわけでございますが、何をもってそう定義するのかというのはなかなか難しいところがあります。したがって、この学校はそうなのかそうでないのかというのを分類することもなかなか難しいのだろうと思います。  私もすべての学校を知っているわけじゃございませんけれども私立学校の中には、例えば宗教法人校宗教を基盤にした学校ということで非常に精神性を重んじた教育をやっている、そういう学校もございますし、あるいは高校大学を言うならば一貫でやっているような学校もございますし、あるいは女子校という形で、特に女子教育、健全な女子を育てるといったようなことを特色にする学校、あるいは非常に地域に根差した学校、私の地元の北海道にも、例えば高校を中退したりあるいは登校拒否になった高校生を集めてといいましょうか、そうした子供たちを対象にして大変特色のある教育をやっている、そんな高校もございます。  さまざまであろうし、その中には、今御指摘のようないわゆる受験エリート校というのも現実には存在しているのは事実だろうと思います。それを一概に否定することができるかどうか、それは、私立学校建学精神というものもございましょうから、一律に否定し去ることはできないわけでございます。  ただ、私の知り得る限り、一部の私立中学校あるいは高等学校の特に入学試験の問題が著しく難問奇問といいましょうか、とても通常学校教育を経たのではそれを解くことができない、通常学習指導要領をかなり逸脱したような試験問題を出し、そのことが大変受験競争をあおっているというような弊害も確かにあるのだろうと思います。そうしたことは、やはり行き過ぎがないように私どもも機会あるごとにお願いをしているわけでございますが、なかなか改まっていないという実態があります。  したがって、私ども、今回の中高一貫というのは、そうした受験エリート校をつくるということが目的ではもとよりないわけでございまして、特色ある学校公立学校であってもやはり特色を持たせる、私立学校でいうところのいわゆる建学精神にも匹敵するような、そうした特色のある考え方に基づいて、ゆとりの中でいい教育をやってもらいたい、そういう思いで御提案をしているわけでございます。
  8. 大野松茂

    大野(松)委員 ありがとうございます。  この中高一貫教育につきましては、昭和四十六年の中教審答申で初めて提言をされまして、以後、昭和六十年の臨教審、平成三年の中教審等でも同じような趣旨提言されまして、昨年の中教審第二次答申では、この中高一貫教育大学への飛び入学を打ち出した経緯がございます。  昭和四十六年ころの高校進学率というのは八〇%を超えたところでありまして、昭和六十年には九四%に、そして平成八年度には九六・八%という高校進学率になっているわけでございます。  過去、答申がありながらもその実施につきましては先延ばしを繰り返してきたわけですが、私立学校においては、言うなれば先取り導入を実施して、それぞれに相当の成果を上げてきていることも事実でございます。  高校入試弊害指摘され続けているわけでありますが、少子化の急速な進行によりまして、高校入試は一時期に比べると易しくなっているとも感じております。高校全入に近い状況になっているわけでございますが、そうした今までの経緯を踏まえまして、そしてこの時期に実施しようとした理由は何かをお示しいただければと思います。
  9. 町村信孝

    町村国務大臣 委員指摘のとおり、昭和四十六年、いわゆる四六答申と言われているものでございますが、そこでの指摘、あるいは昭和六十年の臨時教育審議会の第一次答申、こういう中で中高一貫教育導入提言があるわけでございます。  当時の議論としては、やはり受験戦争が低年齢化するのではないかというおそれ、そういう指摘があったり、今委員ちょうど御指摘があったように、まだまだ十五歳人口がふえていた、したがって進学率の上昇に対応して高等学校の新増設というものをむしろ優先しなければならなかった、そうした背景があったのだろうと思います。  しかし、その後、今委員指摘のように、進学率も大体もう頭打ちというか、もう上限に近づいている状態、あるいは十五歳人口平成元年度以降むしろ減少に転じたといったような実態、さらには、次第次第にそうやって高い進学率になっていき、そして、本人であれ親であれ、ある意味では教育に対する期待というものも、とにかく上の学校に行くということから、だんだんだんだんその子供個性に応じた、あるいは能力に応じた、興味・関心に応じた、そうした多様な教育ニーズというものにこたえられる、そうした学校制度というものが必要なのではないだろうか、そうした社会的な求めが、要請があったのだろうと思います。  文部省も、これまで、普通校職業校専門校との間のような総合学科というのを平成六年度からつくったり、あるいは単位制高校というものを、定時制昭和六十三年度から、全日制の方は平成五年度から導入をしておりまして、あるいは教育課程選択肢をだんだん広げていくといったような工夫、あるいは高校入学選抜方法も非常に弾力化多様化傾向を見せ始めている、こんな状況でございます。  したがいまして、そうしたいろいろな変化を踏まえまして、平成七年度からの中央教育審議会における審議で、平成九年度、昨年度の第二次答申で改めて中高一貫必要性というのがうたわれたわけだ、こう理解をいたしております。  なお、受験戦争の低年齢化ということにつきましては、前回の審議でも申し上げましたけれども、いわゆる学力検査でこの中高一貫学校選抜はしないということを今回明記いたしましたので、そうした懸念はかなり関係者では払拭されているのではないだろうか、このように考えております。
  10. 大野松茂

    大野(松)委員 この中高一貫校中等教育複線化として、あるいはまた制度改革として大きな意味を持っております。と同時に、制度的格差を生ずることにもなりはしないかとも思うわけでございます。  現行では、建学精神基本とする私立教育上の実験校としての国立公教育を実現し、教育機会を保障する機関としての公立という、設置主体について三つの立場がございます。この設置主体設置目的の違いがある中で、それぞれに今日まで機能してきたわけであります。  ところが、公立一貫校と非一貫校に二分されるということになりますと、実質的にも象徴的にも地位の分化が起きることになります。東京と地方によっても実情はさまざまであります。一律に導入することにも問題が多いことが想像できます。  文部省は、中高一貫校設置の方針をどのように考えておられるのか。各都道府県あるいはまた学区ごとに一校ずつ設置をする、このような目安を設けるおつもりなのかどうかをお伺いいたします。
  11. 辻村哲夫

    辻村政府委員 今先生お尋ねの点でございますけれども現行中学校高等学校制度に加えて中高一貫校設置する、それは中等教育多様化を進めるということが基本考え方であるわけでございますけれども、今先生指摘のとおり、その状況は、都会部とそうでないところ、その他さまざまにあるわけでございます。  したがいまして、この中高一貫校をどんな形で整備していくか、その内容はどうあるべきかということにつきましては、地域実情を踏まえ、あるいは生徒保護者ニーズ等を踏まえまして、それぞれの設置者の判断によって行われるべきものだ、こんなふうに考えております。  したがいまして、国として一律に、何校が中高一貫校でこうあるべきだ、あるいは何校は現行の中、高であるべきだというような具体の数的な目途というものを国が一律に示すのはいかがかと思っております。  ただ中高一貫校が、現行中学校高等学校に加えて、生徒保護者ニーズに応じて選択できるということが大切なわけでございますので、量的に何校ということは示しにくいわけでございますが、生徒保護者ニーズに合わせて実質的に選択可能な整備がそれぞれの地域において行われる、こういうことが大切なことなのではないか、こんなふうに考えております。
  12. 大野松茂

    大野(松)委員 要するに、この中高一貫教育を進めていく中で、選択的に導入をするということになると思いますが、恐らくこの一貫校というのは評判がよくなるはずであります。それだけの期待が私はあると思うのですが、そういたしますと、また新たな受験競争を生むことも想定できまして、その意味からも地域中学校との連携方式どもこの中では導入していくことが大事なのではないかと思うのですが、いかがですか。
  13. 辻村哲夫

    辻村政府委員 今回この法律改正お願いをいたしております中高一貫校形態は、ずん胴形と申しますか、中学校高等学校一貫した中等教育学校という新しい学校をつくるということと、もう一つは、中学校高校がそれぞれ独立をしておりますけれども、その間選抜なしでつなぐという、この二種類を法律上はお願いをしてあるわけでございます。  ただ、もう一つ、こうした形と並びまして、既存市町村立中学校都道府県立高等学校、現在あります中と高の関係の接続を緩やかにしていく、そういう形での中高一貫ということも私ども大変有効なあり方ではないか、こんなふうに思っております。  したがいまして、そうした形態も含めまして、各都道府県設置者等におきまして、どんな形でこの中高整備することがその地域実情にふさわしいか、保護者生徒ニーズに合ったものなのかということをそれぞれ御検討いただいて、整備していっていただけたらと思っております。その際には、今先生お尋ねの、既存の中、高を前提とした中高一貫教育あり方ということも重要なテーマとして御検討いただければありがたい、こんなふうに思っております。
  14. 大野松茂

    大野(松)委員 従来から、中等教育というのは、高等教育への準備教育としての役割、また職業生活に直結する実学的教育、言うなれば専門教育としての役割、そして進学率九七%を背景といたしました完成市民教育としての役割、こうしたことを担ってきていると私は思っております。  大学入試あり方現行のままである限り、高等教育への準備教育普通科教育が強調されます。そういたしますと、そのことはそのまま受験エリート校につながりはしないか、こう思うわけであります。  教育改革の視点からも、公立中高一貫校が目指すべきものは、今新しい高校像の中で総合学科制ということが強調されておりますが、私は、この中等教育学校の中で目指すべきもの、特に公立設置する場合にはこの総合学科制導入した学校とすべきではないか、こう強く思うわけでありま すが、大臣の御所見をいただければと思います。
  15. 町村信孝

    町村国務大臣 先ほどもちょっと申し上げましたが、この中高一貫校受験エリート校目的とするものではない、また、そうならないような選抜というものを考えていこうということを申し上げました。  幾つかの中高一貫校特色パターン化中教審答申はやっておりまして、例えば、じっくりと学べるような学校にしようとか、あるいは国際化対応ということを中心とした学校にしていこうとか、あるいは情報化対応ができるとか、あるいは地域伝統文化というものを重視した学校にしていこう、七つほどの考えられるパターンというものを描いたわけですが、当然でありますけれども、その中には、受験戦争に強い中高一貫校という、そういうパターンはもちろん入っていないわけでございます。  したがいまして、今委員指摘のような総合学科というのは、確かに中高一貫教育趣旨に沿ったタイプの一つであろう、御指摘のとおりだろうと思いますが、それしかいけないというと、また選択肢をある意味では狭めてしまいますから、それも一つパターンとして十分考えられるわけでございますが、逆に普通科中高一貫というのがあったとしても、それは受験エリート校ではなく、先ほど申し上げましたような特色あるそうした学校に育てていくということが大切なのだろうと思います。  なお、ついでにもう一つ申し上げたいのは、中高一貫ばかりが特色ある学校ということではもとよりございませんで、既存公立中学校高等学校も、あるいはもっといえば小学校でさえも、もっとこれからは特色をいかに持つか。中高一貫だけが特色があって、他の既存学校には特色が要らないのかといえば、決してそうではない。既存の六・三・三も、それぞれ校長先生のリーダーシップのもと、あるいは地域皆さん方協力保護者協力を得て、できるだけ特色のある学校づくりというものをこれから目指していくこと、そのためのいろいろな工夫が必要なのだろう、こう思っております。
  16. 大野松茂

    大野(松)委員 すぐれた才能をはぐくむということも実は大事なわけなのでして、受験受験ということの中ではなくて、やはりそういう個性を伸ばしていくということも教育の中には大事であるということを大臣もお話しなすっておられると思うわけでありますけれども、私も大事だと思っております。  ところで、こうした学校をつくっていく上での心配事の中に、進路変更の問題がございます。  中等教育学校では、心身の変化や、あるいは個性、適性が明確になってくるこの時期に、同じ学校で六年間通うということになるわけなんですが、その過程におきましては、六年制学校に適応しないことが明らかになったり、あるいはまた、十二歳とか十五歳という時代でありますから、みずからの進路選択に疑問を持つことがあっても決して不思議ではないと思います。中等教育学校制度生徒の選択の幅を広げるということを目的としていることからいたしますれば、途中の進路変更についても柔軟に、そして円滑に対応すべきものと思っておりますが、いかがでしょうか。  実は、現在、高校中退者が十万人ということがよく言われるわけでありますが、大きな問題でございます。私は、この中退という言葉、中途退学という言葉は非常な挫折感ばかりが強調されている、このような感じを持っておりまして、生徒自身の負うハンディも極めて大きいと思うのです。  生徒の意欲やさまざまな可能性を期待する上からも、中退、中途退学という表現を進路変更という言い方に変えたらいかがか、このことが生徒にさらなる挑戦への自信を持たせることになると思うのですが、こんなことの意味も含めまして、進路変更についてお尋ねいたします。
  17. 辻村哲夫

    辻村政府委員 ただいま先生から二つのお尋ねがございました。  一つは、中高一貫校入学後の進路変更の問題でございますが、これは当然制度として担保しておかなければならないことだと思っております。前期課程を終えて後期課程に入る段階で進路変更する、それは当然中学校卒業ということで新しい進路を開かれていく、これはもう制度的にそのとおりでございますが、加えて、中途で進路を変更するということの場合にも柔軟に対応できるようにしておくことが必要だと思っております。  したがいまして、前期課程の中途で進路変更するという場合、これは中学校間の転校と同じような形で行うということでございます。それから、後期課程に進んだ後に進路変更という場合、これは現在の高校間の転校ということと同様の形で行い得る、こういうふうな形で対応していきたいと思っております。  それからもう一点の、中途退学という言葉は大変マイナスのイメージを与える、むしろ進路変更というふうな名前にすべきではないかというお尋ねでございますが、私どもも、この中途退学というのは常にマイナスだけにとらえるのではなく、新しい進路の開拓、進路変更だという形でとらえるべきだという趣旨は十分に理解するところでございます。  ただ、その中途退学、退学という言葉をすべて進路変更というふうに変えてしまうということになりますと、それぞれに定義が異なりますのでかなりダブりますけれども、ということで、その点は、言葉としては残さざるを得ないと思いますが、そういう積極的な面をとらえた形で退学というものを考えていくということ、そういう趣旨につきましては十分理解をするつもりでございます。
  18. 大野松茂

    大野(松)委員 高校入試の改善についてでありますが、こうした新しい学制上の取り組みも始まるわけでありますが、ゆとりの中で生きる力をはぐくむためには、過度の受験戦争の緩和、これが何よりも必要だと思っております。中高一貫教育導入の意義もここにあるわけでありますけれども高校進学率九七%、生徒の減少する現状からいいましても、ほぼ全入が可能になってきております。  入試というのは、人生の大きな試練として私は意味はあるとは思いますが、高等学校における入学選抜の改善を進めることもこの際大事なことだと思っております。どのような取り組みをお考えか、お伺いいたします。
  19. 町村信孝

    町村国務大臣 御指摘のとおり、高校入学者の選抜問題、これは昨年六月の中央教育審議会答申の中でも、いわゆる影響力のある特定の高等学校において受験競争が依然として厳しい状況にあるとともに、その選抜方法についても、十五歳の時点で知識量の多寡を競い合うことに集約されているといった画一的な面がある、こういう問題点が指摘をされているところでございますし、私どももそういう認識を持っているわけであります。  したがいまして、さっき申し上げましたが、各学校特色をこれからは競い合う時代だろう、こう思いますので、その学校特色に合った選抜方法というものを公立高校でも工夫をしてもらうということが必要だろうと思います。現実にも、推薦入学の拡大でありますとか、あるいは面接を行ったり、小論文あるいは作文をやったり、実技検査を活用したり、あるいは調査書の適正な活用をしたりといった努力、工夫が各都道府県において従前よりはかなり積極的に進められてきているということは委員御承知のとおりでございますが、それをさらにまた進めていってもらいたいな、こう思っております。  ただ、一切、もうここまで来ているんだから高校選抜、入試は要らないのじゃないかというお考えもあろうかと思いますが、やはり義務教育を終えてさらにその上の段階に進むとき、そこで一つの自分の進路、適性、自分がどこに興味があるのかということをよくよく考えて、ただみんなが行くから、大部分の人が行くんだから普通科に行けばいいんだということではなくて、自分の職業観からすると、まだ未熟ではあってもそれなりに考えて、専門高校、例えば農業高校に行こうかとか林業学科のあるところに行こうかとか、やはりそういうことを考える一つのいいチャンスなんだろう、私はこう思っております。  したがいまして、私は、高校入試を一概に否定すべきではない、ただ、試験のやり方そのものは、先ほど申し上げましたような画一的な、とにかく一点の差を争うようなということではなくて、特色あるものにさらに各都道府県の御努力を願いたい、かように考えております。
  20. 大野松茂

    大野(松)委員 ありがとうございました。  時間がなくなりましたが、最後に文部大臣にお伺いしたいのですが、教育改革に関する論議では、入り口、入学試験についてのことが中心になっております。入学試験の改革、入試改革についてでございますが、反対に、出口に関する議論が少な過ぎるように思っております。  大卒の就職に際しまして、企業が出身大学の名前を一切考慮せず選考するようになったら、試験の制度も随分変わるのではないかと思います。例えば、有名大学であろうがなかろうが、大学で何をやってきて、どんな実力を備えているか、何ができるか、これが問われるようになったら、受験準備の学習というものは意味がなくなってくるように思います。  経団連が一昨年の三月にまとめた調査では、採用の際重視する事項、このトップは熱意、意欲でありまして、八六・七%でありました。出身学校はという問いには、五%にすぎないものがあります。一方で、経済同友会の昨年三月調査では、学校名は聞かないが一五・五%にすぎないのであります。また、八一%の人が、学歴偏重の意識は是正される、こう答えているわけであります。  このことは、大学のブランド名で人間を評価していたことが錯覚だったと企業が気づき始めたと思うところでありますが、この風潮が広がれば加熱な受験競争が緩和され、それこそ教育改革が進められることになる、こう思うわけでありまして、大臣の御所見をお伺いできればと思います。
  21. 町村信孝

    町村国務大臣 委員指摘の点、私どもも大変重要だ、こう思っております。私も、大臣に着任して早々の時期に経済関係の幾つかの団体を回りまして、じきじきにそのことはお願いをしてまいりました。すなわち、今委員指摘の、学歴を問わないで企業が採用をやっているというところも随分ふえてきていますよ、ぜひそれぞれの傘下企業にそういうことを指導方願いたいということをお願いしてまいりました。  まさに子供が、大学なりあるいは高校なりで何がその子供に身についているか、何を学んだかということが大切であって、どこの学校を出たということは本来であれば二の次、三の次であろうかと思います。だんだんそういうふうになってまいりますし、逆に、本当に真剣に採用をやっている会社は、学歴だけで採用していったらこの会社はつぶれてしまいますとまで断言をする経営者も随分ふえてきております。  私は大変いい傾向だと思っておりまして、そういう意味では、逆に言うと、大学生になって遊びほうけていたらば何も身につかないんだから、ちゃんとした希望するところには行けないよということをもう一度改めて大学でしっかりより徹底することが、レジャー大学ではなくて勉強する大学、しっかり学ぶ大学に変わってくる非常にいいきっかけになるのだろう、こう思っております。  学歴主義ではなくて、実力本位とでもいいましょうか、そういう人物本位の採用が行われるようになること、まさに私どもが念願をするところでありますし、そういう方向でさらに今後も働きかけを強めていきたいと考えております。
  22. 大野松茂

    大野(松)委員 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  23. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、安住淳君。
  24. 安住淳

    ○安住委員 民主党の安住でございます。  これまで、この学校教育法の改正案について、参考人の意見聴取を含めて随分と議論をしてまいりました。それぞれにメリットもわかったしデメリットも認識をしましたが、私は、今までの議論を聞いておりまして、きょうは締めくくりの総括でございますから、最初に、今なぜ中高一貫教育を前向きにとらえてやろうと思っていらっしゃるのか。  つまり、一九七一年に初めてこの問題が出たころ、受験競争が大変激化をして、そしてそれぞれの学校現場が荒れ始めた時期なわけでありますが、それ以来、何度かにわたって中高一貫をやるべきだという答申が出たにもかかわらず、文部省は一切そのことは、ある意味ではその答申というものを生かさずに来た。しかし、ここに来てこの改正案を出して、中高一貫に踏み出そうとしている。  今なぜこの法案を出したのかということに対しては、実はこれまで納得のいく御答弁というかお話を聞いておりませんでしたので、きょうはその点について、まず町村文部大臣にお話をお伺いしたいと思います。
  25. 町村信孝

    町村国務大臣 安住委員指摘のとおりでございますが、四六答申以降、中教審等々でも指摘がありながら、実施はしてまいりませんでした。  基本的には、当時まだまだ十五歳人口がふえている、したがって、進学率の上昇への対応人口の増加、したがって、高校の新増設を優先するというのがやはり一番大きな課題であったのだろうと思います。それが昭和五十年代までの文部省基本的な務めだったろうし、考え方であったと思います。  しかし、その後次第に十五歳人口も平準化し、むしろ減少に転じてきた。さらには、もう平成二年度ごろには進学率が九五%を超えるという今日とほぼ近い状態が生まれてまいりました。そして、そういう中で、非常に多くの子供たち高校に進むわけでありますから、その能力・適性も相当多様化してまいりますし、興味・関心も非常に多様化してくる。では、そうした多様化対応した学校制度はどうかというと、ある意味では非常にシンプルな六・三・三という形で、他の選択肢がないということであったわけであります。  もちろん、その中でも、今まで強調されてきませんでしたが、既存小学校中学校高等学校公立てあっても、私学でいうところの建学精神といったような特色のある学校づくりをこれからやっていってもらいたい、そういう時代が今まさに来ている。また、その特色に応じて選択ができるようにするということが必要なんですが、やはり中高一貫という制度的な特色も持たせる。そして、その中で特色のある教育、六年一貫してゆとりのある教育が行えるようになるということがまさに生徒ニーズであろうし、保護者ニーズであろうし、また社会のニーズにこたえた姿になるというふうに私ども考え、今回改めてというか初めて中高一貫制度導入してはどうだろうかという御提言、こういう法案を出させていただいている次第でございます。
  26. 安住淳

    ○安住委員 大臣のおっしゃっていることは私もわかります。しかし、それは七一年というよりも、もっと前から私立学校ではそういうことをやっていたわけです。  私が伺いたいのは、なぜ公立て今これをやるのか。逆に言えば、今の学校の現状に対する認識というのはどういうものなのかということを私は質問をしたいわけですね。  私は、前に文教委員会でも質問申し上げましたが、私の地元の高校も、中学校から高校に上がるときも、商業高校や工業高校等の専門学校はいっぱいあります。しかし、本当にそこに希望して行く子供たちというよりは、成績に応じて、何点ぐらいとれるからここの学校という、日本の教育の現状というのは、現場は今そういう傾向というのが残念ながら強くて、否定できないものがあると私は思うのです。  しかし、六・三・三制を守って、そのいわば硬直した現状を五十年近くにもわたって、言葉は悪いですが、放置をしてきた責任というのは私はあると思うのです。やろうと思えばもっと早くに、十五の春は泣かせないと言った知事さんがいらっしゃいましたけれども、この現状というものにきちっと目を向ければ、早い段階でこうした改革案や柔軟な対応というのは文部省はできたのじゃないかと私は思うのですが、それを今までやってこなかった。そして、今なぜそれをやろうとしているのか。もう少し現状に対する認識、これは反省を踏まえてやはりきちっと総括をしないといけないと私は思うのですが、いかがですか。
  27. 町村信孝

    町村国務大臣 確かに、委員指摘のような反省を私どもも持っております。そうした反省の上に立って今回の中高一貫法律を出させていただいているというふうに御理解をいただければと思います。  ただ、やはり量的拡大に対応していくというのは、実際本当に大きなニーズであったことは間違いがない。しかし、今委員指摘のように、まさに偏差値というか点数というか、そのたった一つの基準で、学校特色もないままに輪切り状態をつくられ、君の点数はこの辺だからこの学校だよという、本人の個性なり将来展望もないままに振り当てられていく、全員が入れるという姿というのは、私は、決していい姿だとは思っておりません。  だから、問題は、例えば農業高校とか商業高校、工業高校、そうした本来の特色のある学校はいざ知らず、普通科高校が、あるいはもっと言えば今までの小学校中学校もそうですが、特色がないことをもってよしとした。どこへ行っても同じだよという教育の機会均等を主張してきた。そうした大きな歴史的背景が戦後あったわけでありますが、私は、もうこれだけ普及してきた暁に、なおかつ機会均等、どこの学校も同じであることをもってとうとしとなすという、そうした平等の行き過ぎた考え方、もっと言えば戦後教育一つ弊害である悪平等をこの際変えようではないか。そういう考え方に立ちまして学校制度多様性というものを求めていく、そういう意味選択肢を拡大するという必要性を私どもは考えております。  だから、既存の小中高も、学校がいかに特色を持つか、校長先生のリーダーシップのもとに持たせるか。ただ、個々の学校特色にとどまらず、制度としての特色もあった方がいいのではないだろうかというようなこともあり、また、委員指摘のような、やはり高校入試の点数だけでということをやめる一つのいいきっかけになってくるのがこの中高一貫学校考え方である、このように私ども理解をし、反省の上に立って今回の法律を出させていただいている次第でございます。
  28. 安住淳

    ○安住委員 私どもは、多様化、それから学校特色を生かした、いわば地方自治体における自主性の尊重、こういうことをずっと訴えてまいりました。だからこそ、この中高一貫に対してはより積極的に推進をすべきであるという考えなわけですね。私は、今のお話を聞くと、大臣もそういう認識でいらっしゃるのかなとは思います。しかし、この法案というか、これが設置されていくまでの個別の問題については後でちょっと触れさせていただきますが、あと一、二問少し質問させていただきたいと思います。  多様化というお話を何度も今回の委員会文部省の方々は使いました。しかし、中高一貫のこの法案で見る限り、とりあえずスタートしたときに、私は、多様化というのは、日本全体から見れば、確かにこういう制度が風穴をあけたという認識はあるかもしれません。しかし、言葉は大変悪いのですが、つまみ食いというふうな別の使い方をする人もいるのです。  つまり、エリート校化、それから特色があるということは、結局は、例えば野球の非常にうまい子供たちだけを集めて、今甲子園で優勝しているのは私立学校ばかりですけれども公立中高一貫であれば、そうしたところに食い込んでいく生徒を集めることだって可能なわけですね。  それは何を意味しているかといえば、多様化の裏返しにやはり差別化という問題がどうしてもついてきているのではないかと私は思うのですね。これを、多様化というか、特色のあるというふうなものに変えていくというか、差別化ではなくて多様化というものにしていくというのは、私は、実は相当努力が要る話ではないかと思っています。  ですから、最初にこれをやって、何校かできて、しかしそこでとまっては、五ケ瀬じゃありませんけれども、やはり競争率が十倍にもなって、実はなかなか入りにくいいい学校で終わってしまうのではないか、そういうふうに思っておりますが、その点についていかがでございますか。
  29. 町村信孝

    町村国務大臣 経済学の用語でいうと、多様化も差別化も同じなんですね。違わないのですよ。ただ、教育の世界で今まで差別というと、これはとんでもなく、まあそれは教育以外の世界でもそうでしょう、差別というと非常に悪い意味合いに使われます。しかし、子供なり親なりが選択肢があるという意味では、多様化と言おうが差別化と言おうが違いがないのだろう、こう思います。ただ、余り差別という言葉がよくないので、そういう言葉は使わない、多様化だということだろうと思います。それは何を意味するかというと、まさに子供の一人一人の個性に応じた、そうした学校を多様に準備しておくということであろうと思います。  では、それが例えば全県に一つとかあるいは二つとかということにとどまったのでは差別化になるのではないかという今委員の御指摘がございました。最終的にどのくらいの数になるかということを今予断を持って言いづらいのでありますが、なるほどこれはいいものだということでだんだん認識が深まっていけば、それぞれの地域設置される学校はどんどんふえていくでしょうし、先ほど民主党初めの御提案で、たしか十年後にすべてという趣旨説明があったかと思いますが、私どもはそれを全く否定するつもりはありません。そういう姿になることもあり得るかもしれないが、あらかじめそれを目標としてというほど言い切れるかどうか、まだ私どもも、もう少しやはり試みてみないとならないな、こう思っております。  したがって、非常に皆さんから評判がいいといいましょうか、これはいいねということにだんだんなって、そうした学校がどんどんそれぞれの地域設置をされていくということになれば、いわゆる差別化ということに多分なってこないのだろうと思いますが、最初から一気に一つの県で何十校もというわけにはなかなかいかないのではないのだろうかな、こう思っております。
  30. 安住淳

    ○安住委員 法律的に言えば、教育の世界というのは地方分権が大変進んでいるわけですね。つまり、教育委員会設置者がかなりの部分ができる。しかし、私の認識では、これは意見が分かれるかもしれませんけれども、地方にいて何か教育の問題で困ったときには、今までずっとどうしてきたかというと、必ず文部省に意見を聞いて、文部省がしかるべき行政指導をやってきて、そこである程度の地方の教育者は安心感を持って、そしていろいろなことを運営してきた。  実は、自立のできない地方、自立のできない自治体、それ以上に自立のできない教育委員会、それから自立のできない学校というのが公立高校には非常にあって、それを自立させようという意識が本当に文部省にあったのだろうかどうかというごとに対しては、私は実は非常に前から疑問を感じておりました。  つまり、どこかのところで、自分の手の中で、市町村教育委員会、それは歴史的に、思想的な教育を含めて、日教組との対立等非常に深刻な問題があったということは認識します。しかし、そうとはいいながら、自分たちの自主性に応じて何でも思い切ったことをやろうという意欲を地方自身が本当に持たなかったという地方の問題プラス、文部省がそれに対してどういう姿勢であったのかという、ここに教育の言ってみれば中央集権といいますか、そういうものというのは暗黙の了解の中にあってきたと私は思うのです。  しかし今回、辻村局長の答弁でも何度も伺いましたけれども、このことは設置者が決めるのだ、地方自治体がそういうことをどんどんやってくださいと言います。しかし実際、各種調査等々を見ても、非常に地方は、文部省が果たしてこれを積極的にやろうとしているのかどうか、文部省エリート校だけ一つつくればあとはいいのかとか、顔色をうかがって、実際に——本当に地方が、こ のいい機会というか、せっかくのチャンスを生かしていって、どこよりも最初に学制改革をやろう、自分の県や自分の市町村で生まれ育った子供のために、今の閉塞的な、私は閉塞感がはっきりあると思いますが、閉塞的な高校中学校の現状を改めていこうという意欲が本当に出てくるかどうかということに対しては、私は非常に疑問を持っておるわけです。  ですから、このことを機会に本当に自立をしてもらう、自己責任に基づいて、教育行政は地方が責任を持ってやってくださいということをやはりちゃんと文部省は姿勢で出していかないといけないと私は思うのですけれども、いかがでございますか。
  31. 町村信孝

    町村国務大臣 今、委員は大変重要なポイントを御指摘いただいたと思っております。  今回の教育改革、特に教育改革プログラムというのを昨年の一月に出しまして、この四月にも再改訂をしたわけでございますが、非常に幅広いものでありますので、私はあえて四本柱という形で今の教育改革プログラムを皆さん方に御説明しております。第一番目は、心の教育、それから二番目は、今回の中高一貫を含めて多様な選択ができる学校制度の実現、それから三番目が、学校現場の自主性を尊重した学校づくり教育づくり、それから四番目が、研究の振興とか大学の改革ということでございます。  もちろん、それぞれオーバーラップする部分があるわけでありますが、今、例えば現場の自主性を尊重した学校づくりということで、中央教育審議会が三月の末に中間報告を出しました。夏には最終答申を出してもらおうと思っておりますが、そこの課題は、今後の地方教育行政のあり方、要するに一言で言うと、教育の分野でどれだけ地方分権を進めることができるかということがその最大の課題であります。  既に先般、内閣が決めました地方分権推進計画の中でも、例えば教育長の任命承認制度をやめますといったようなことがその中に含まれておりますが、それをさらに超えて、文部省役割を明確にしつつ限定する。そして、できるだけ都道府県市町村教育委員会にその権限をお渡しをしていく。そして、都道府県市町村教育委員会もさらに、それらに権限をとどめずに、学校現場、学校校長先生にそうした予算、人事、どこまでそれができるか今議論をしているわけでありますが、学校の管理を含めて、できるだけ学校現場が物事を決められるような仕組みにしましょうと。それだけ大変大きな責任を学校現場、校長先生中心に負っていただくということを、今、中教審で議論をやっていただいている最中でございます。  そのことは、まさに委員が言われました、今までややもすると中央集権的であったという批判があるし、そうした一面があったことを私はあえて否定はいたしませんが、本格的に、この中高一貫もそうでありますし、同時に、教育行政全体をできるだけ地方中心というか、学校現場中心に推進できるようにしていくということが趣旨でございます。  ただ、その話をすると、ちょっと待てよと。例えば最近の広島県の学校実情などを見て、ああいう状況があるにもかかわらずどんどん地方分権していいのか、そういう批判といいましょうか懸念をあらわされる向きもございます。確かに、私もそういう懸念がないではございません。しかし、それを恐れるが余り、基本的な地方分権をやらないというわけにいかない、私はこう思っております。  ただ、余りにも目に余る事態等々については、文部省が指導助言できるようにはしておきましょうという最後の一線だけは持たせていただきますが、基本的なことはどんどん学校現場中心に物事が決められるようにする、そして生き生きとした特色ある学校づくりをやれるようにしていくということが今次教育改革の非常に大きな柱である、このように御理解を賜ればと考えております。
  32. 安住淳

    ○安住委員 私は、ちょっと例えが悪いかもしれませんけれども、こう思っているのですよ、大臣。  野球をやっていますよね、私は、文部省というのはアンパイアであるべきだったと思うのです。ところが、いつの間にかアンパイアが、言ってみればそれぞれの学校が野球のチームだとすれば、監督やコーチがアンパイアの顔を見ながら、選手のユニホームをどうしましょうか、それから次は何を投げましょうか、ストレートを投げましょうか。つまり、アンパイアがいつの間にか中心になって、グラウンドも仕切ります、チームも仕切ります、末にはバッターの打順まで全部決めますという。法律上は、選手の皆さん、監督の皆さん好きにやってくださいと言っておきながら、実際はそうなっていない。  私はそこが非常にやはり、いや、そんなことはありませんよとおっしゃるかもしれないけれども、しかし現実に我々が、例えば私の地元の宮城に帰ってだれに話を聞いたって、極端なことを言えば、国会議員の先生お願いしますみたいな話になるわけですね。  私は前の委員会でもお話ししましたけれども、そこに学校長を含めた自主性のなさ、学校の校長室の写真が、創立当時は立派な校長先生の顔だったけれども、最近は何かサラリーマンのような顔ばかりが学校の校長室の写真に並んでいると言ったPTAがいたと言いましたけれども、私はそういうふうになってきたと思うのです。だからこそ、本当の意味で分権をしていく。それは地方の責任に応じてやっていく。  しかし、大臣、それは財源もそうであるべきだと思うのですよ。財源の部分だけ国が持って、制度的な問題は、地方の皆さん、好きにやってくださいといったって、なかなかそうはいかないと思いますから、そこまでちゃんと踏み込んでやっていただけるかどうかということが、私は教育の分権にとっても非常に重要な問題だと思います。これはちょっと法案と趣旨が外れますから、手短で結構ですから、意見を聞かせてください。
  33. 町村信孝

    町村国務大臣 アンパイア、プレーヤーの例えば大変わかりやすいお話かなと思います。確かに大きな政治状況として、日教組対文部省という構造があったことも事実でございましょう。しかし、日教組もここ三、四年大分方針を変えてこられたという意味で、ある意味では安心して地方にお任せできる政治状況も生まれてきたということを、私、先般も申し上げたわけでございます。  確かに、何かというと教育委員会の方を見たり文部省を見たりという、長年のそうした習慣が身についちゃっているという面もあります。それはいけない、もうそれは変えていこうということがまさに今回の教育改革であるし、そのための意識改革も当然必要でございます。  じゃ国がどういうことをやるかというと、例えば、さっき財源というお話をされましたが、施設整備学校を建てたり改築したり、あるいは一番大きいのは人件費の二分の一補助でございます。これは確かにあります。本当は大蔵省あたりは、全部地方の負担にしてもらった方がこれは物すごく楽になりますから、どうぞお渡ししますと言って、歳出権だけ与えて財源を渡さない。これは最悪だろうと思います。でも、私ども、その半分の人件費補助を出しているから、それをてこにあれこれ地方のあり方学校あり方に、個別にまで口を挟むということはない。  しかし、委員がおっしゃるように、そもそも日本の財政構造全体を変えなければというお話であれば、それはそういうことがこれからまさに検討されるのだろうと思っておりますが、教育の分野だけの財源というのが、特に特定財源が歳入という意味ではあるわけじゃございませんので、それはいかんともしがたい。国全体の財源、財政構造のあり方という意味では御指摘のとおりかな、こう思っております。  それから、さっき私、地方分権推進計画はもうできたと申し上げましたが、ちょっと記憶違いでありまして、五月末ごろに策定をする予定であるということで、ちょっと訂正をさせていただきます。
  34. 安住淳

    ○安住委員 それでは、現実にこの中高一貫教育推進するという点での個別の問題点について少し触れさせていただきたいと思います。  大きな方向性というのは、私どもが考えている現状の認識等は御理解を今いただいたのではないかなと思いますので、その上に立って少し問題点をお話ししたいと思います。  まず最初に、先日、五ケ瀬の前の校長先生のお話を委員会で聞かせていただきました。私は非常に感じたのですけれども、よく考えてみると、五ケ瀬の中高一貫校現行法でやっているわけですよね。そうですね、大臣。法改正をしなくても、現行法でもやろうと思えばできるということでございますか。つまり、県立の中学校をつくって設置者一つにするというふうな形であれば、これはやろうと思えばできると思うのですけれども、できるかできないか、簡単に答えていただけないですか。
  35. 辻村哲夫

    辻村政府委員 五ケ瀬の中・高をどう見るかということでございますけれども、この間、参考人としての前の校長先生のお話を聞いて、ああいう形の中高、それはそれでやり得るわけでございます。運用としてやられている。  ただ、例えば、財源について申しますと、現在の制度では、給与費あるいは施設整備費に対する国庫負担というのは、市町村中学校設置義務がかぶっているということで、市町村立の中学校については国庫負担の対象になっておりますけれども都道府県立中学校については国庫負担の対象になっておりません。  したがって、五ケ瀬につきましては宮崎県が県の単独負担という形で行われているわけでございます。これは、全国的に中高一貫校を本格的に整備していくというところで大変大きな問題でございます。そういう意味では、ある特定の学校で事実上の中高一貫が行われるということがありますけれども、そこに一つの大きな問題があるということでございます。  それからもう一つは、やはり制度としては、中学校高等学校という別個の形で行われております。中高一貫形態として併設型や連携型もありますから、そういうものでとどまるということであれば、それは事実上類似のこともあり得るかもわかりませんが、形として、例えば中等教育学校のような本格的な新しい別種の中高一貫校ということになりますと、できません。そこで、教員の人事の問題ですとか、あるいは教育課程の編成でありますとか、一応別個の独立した学校がそれぞれ協議しながらという形をとらざるを得ないわけでございます。  そうした運営の面におきましても、法律整備のない段階とそうでない段階とでは大きな違いがあると思います。そうした点、大きな課題があるというふうに思っております。
  36. 安住淳

    ○安住委員 我が国の公立中学校というのは市町村設置母体ですよね。県立の中学校というのは、全国でこの五ケ瀬しかないはずです。  ということは、今の話を聞くと、どういうことですか、県立の中学校をこれからふやしていくということですか。要綱の中ではそういうことを書いてありますね。そうなのか。それとも、市町村設置者になる場合に、それに対して財政的な支援も含めてやっていくのか。どっちの方にウエートを置いているのですか。
  37. 辻村哲夫

    辻村政府委員 説明がちょっと不足していたかと思いますが、県立の中高一貫校ということで、中に前期課程として中学校が入ってくるわけでございますが、そうした形のものを県がつくる場合、それから、併設型といいまして、別個に独立はしておりますが、その間は入試なしでつなぐという、そうした形の中高一貫校、こういった二つの種類につきまして、中学校部分あるいは前期課程の部分につきましての教職員給与費とか施設整備費とかというものについて国庫が負担をするということでございます。  ですから、設置義務をかぶっております市町村と県とを対等に扱うということではなくて、中高一貫校という観点に立って、県がこれを行う場合につきましては、現行市町村に対して行っているのと同じような国庫負担をするということであります。  県が単独の中学校をつくった場合というのは国庫負担の対象になりません。あくまで中高一貫校として中学校あるいは前期課程をつくった場合に国庫負担の対象とする、そういった形で中高一貫校推進していくという考え方でございます。
  38. 安住淳

    ○安住委員 今学校をつくるとなれば、例えば高校標準法がありますよね。こうしたことを考えると、私は、これは想像ですけれども市町村が結果的には設置者になる可能性が非常に大きいのではないかなと思うのです。県が一々県立の中高一貫をつくってやっていくというのはやはりどう考えても財政負担が非常に伴いますので、私は、市町村が今持っている中学校と、近郊にある例えば高校や何かが、連携型、併設型という形でアクセスをするといいますか、そういうやり方で実は進んでいく可能性が今のままでいくと高いのではないかなと思っております。  しかし、それにつけても、今の高校標準法、例えば三条の二項では設置条件等が書いてあります。こうした問題は、改正をしないと実はこれは進まないのではないかなと思っておりますが、中高一貫をめぐる周辺の法整備、これをどうお考えになっておられるのか、お伺いします。
  39. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 御指摘がございましたように、現在小中学校につきましては、義務教育を実施する学校ということで、学校教育法の二十九条及び第四十条におきまして、市町村設置義務を課すという法令上の規定になっております。  これに対しまして、高等学校につきましては、高等学校に係る財政負担あるいは教職員の人材確保等から見まして、都道府県が広域的に処理をすることが適当であろうという観点から、御指摘がございました高校標準法におきましては、原則として都道府県がこれを設置するということにいたしまして、一定の人口規模、十万人以上、かつ高校設置するだけの十分な財政上の能力を有する、こう認められる市につきましてこれを設置することができる、こうしているわけでございます。  今回、中等教育学校につきましては、中等教育学校が義務教育相当部分を持っていること、また一方で高等学校相当部分を持っているということから、高校標準法三条の設置能力に関する規定は中等教育学校には適用しないということにしてございます。したがいまして、法令上は、市町村及び都道府県、いずれもが原則として設置できるというような規定のしぶりにしているところでございます。
  40. 安住淳

    ○安住委員 御手洗さん、それは、要するに適用しないというふうな改正案を出すということですか。
  41. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 現在、公立高等学校設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律第三条におきましては、「公立高等学校は、都道府県設置するものとする。」第二項で、「政令で定める基準に該当する市町村市町村の組合を含む。以下同じ。)は、高等学校設置することができるものとする。」こういう規定がございまして、この規定につきましては一切改正をしておりません。  したがいまして、中等教育学校につきましては、新たにこのような規定を置くことをいたしておりませんので、法令上は、市町村都道府県も、法律論から申し上げますと、どちらも自由に設置することは可能であるということにしているところでございます。
  42. 安住淳

    ○安住委員 法律的にはいろいろな問題をクリアして、中高一貫が、より多くその学校設置できるような環境整備をするという点では、これは文部省の大きな責任があると思います。  もう一つ大きな責任として、大臣現行の財政状況の中で市町村中高一貫推進しようとしたときに、地方分権とはちょっと矛盾しますけれども現行の行政体系の中でこれを推進していこうということになったときには、いろいろな意味でやはり財政的な支援というのは不可欠ではないかなと私は思いますが、そのことをきちっとサポートするということを現時点ではやはり文部省はしていかなければならないのではないかと思いますけれども、いかがでございますか。
  43. 町村信孝

    町村国務大臣 財政支援、どのくらい、どういう分野でやるつもりか、こういうことであるわけでありますが、現在も、その支援を拡大するために、今回の御提案の中にも、公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律公立高等学校設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の改正、市町村学校職員給与負担法の改正、義務教育費国庫負担法の改正、義務教育学校施設費国庫負担法等々の法律改正を一括してお願いしているわけでございます。  さらに、法に基づいて国の助成をふやすこと以外にも、予算補助という形もあろうかな、こう思っておりまして、例えば中高一貫校設置を奨励するために、中等教育学校後期課程、すなわち高校部分、それから併設型の高等学校に係る施設整備、これは法律上の補助も予算上の補助も今ないわけでありますが、今回、これは来年度以降の話でありますけれども、来年度以降の予算補助で、そうした高等学校対応部分の施設整備費についても予算補助をするという形で支援をしていきたいな、このように考えているわけであります。
  44. 安住淳

    ○安住委員 その点については、文部省のサポートといいますか、そういうことをぜひやっていただいて、さっきの野球の例えで言えば、いい方向にとりあえずはそれぞれのチームを導いていかないといけないと思うのです。しかし、そのうち必ず、また文部省自体がスリムになって、アンパイアはアンパイアに徹するときというのは絶対来ないといけないと私は思うし、前向きに評価すれば、私は余り前向きには評価しないけれども、橋本行革というのは、本来そういうことをやるのが行革ではないかと私は実は思っておりますから、その点を御要望しておきたいと思います。  ところで、大臣、これはきょう衆議院で通るわけですけれども、十年後の日本の教育現場では、今の中学校高校の割合とこの中高一貫、どのような割合でどれぐらいになっているというふうに、これは答えられないと言うかもしれませんけれども、やはりそういう想定を考えながら行政というのはやるべきだと私は思いますからお伺いしますけれども、例えばこれは推進する方向を前提に考えれば、十年後の我が国の中等教育というのはどういうふうなイメージになっていると思っていらっしゃるか、その点をちょっと、大臣の見通しで結構でございますが、お話ししていただけますか。
  45. 町村信孝

    町村国務大臣 しかし、これはとにかく初めてつくる制度でございますし、率直に言って、それぞれの地域実情に応じて、それぞれの自治体がお考えをいただくわけでございます。また、そのパターンも、さっきから申し上げているように三つのパターンがある、こういうことでありますので、逆に今文部省がこれこれを目標にしてそれを進めていくと言うと、むしろそれこそ、今思い切って地方分権を進めていこうかという折に、また各県に一定の枠をはめるといいましょうかね、というようなことになってもいかがかと思いますので、あえてその数字をつくっておりませんし、また持ってもおりません。  ただ、御参考までにということで、本当に参考になるかどうかもよくわかりませんが、例えば平成六年度に創設をされました総合学科という制度がございます。これはなかなか評判もいいということで、現在全国で百七校が設置をされておりますし、またさらにこれが年間二十とか三十とかいうペースでふえていくような流れになってきていると思います。ここらあたりは一つの、あくまでも一つの参考になるのかなとは思っておりますが、実際にこれは動かしてみないと率直に言ってわかりませんので、現在、十年後の姿はこれこれであるということは、私どもとしては数字を持っていないわけであります。
  46. 安住淳

    ○安住委員 少し無責任ではないかと私は思うのですよ。やはりそれは、逆に言えば、流れに任せるという話にもつながると思いますよ。だって、それぞれの学校がそれぞれ自主的にそういうことをやってください、文部省はそのことに対しては見通しを持ちませんと。  しかし私は、これは容易に想像できることはあるのですよ。つまり、これは事実上、六・三・三制をある意味では変えるわけですからね。現状の、中学校三年から受験をして普通の高校なり商業高校なりの三年に行くのと、もう中学校のときから、事実上、これはエスカレーターで上がれるというふうにみんな認識しますよ。それぞれの地域の中にその学校が二つ。  例えばこっち側に四校あって、こっち側に一校あれば、それは、みんなとは言わないけれどもかなりの、もう定数割れの学校がある中で、多分小学校からこの中学校に行くときは何倍にもなると私は思いますよ、大臣。つまり、やはり人気が出るのではないかなと思うのですよ。  それほどまでに今の受験戦争は厳しいということの裏返しでもあるし、また、中学校三年で人生を決めろと言われたってそれはなかなか難しいというか大変だというふうに親御さんも思っているし、子供さんも思っていいらっしゃる。そういう中で、これをぽっとつくっていけば、やはりそれは人気が出るのではないかなと私は思っている。またそういうふうにしないといけません、それぞれの地域特色のある学校をつくっていくと言っているわけですからね。  それならば、それを果たしてこれからふやしていくのか、すべてをそういうふうな学校にしていくのか、いやいや、今の六・三・三制はそのまま、それはそれと、どちらかを選んでくださいというのは、これはちょっと私は政治家として少し無責任ではないかなと。やはりどちらかに将来的にはいくのだという強い見通しの上でやらないと、私がなぜそういう話をしているかというと、先ほど私は地方の認識の話をしましたが、つまり地方は、自立自立と言っても、実際は文部省を見ているわけですよ。何をやるにもと言ったら変ですけれども、はしの上げ下げまで文部省の御指導をいただくなんという意識は、残念ながら、いまだに私はあると思うのですよ。  そういう中で、文部省が中途半端なことをやって、いやいや、やるのも結構だし、今のままでも結構ですと言っていたら、私は実際進むものも進まなくなるのじゃないかなという、実はこれは現状の認識の上に立っての私の心配であるし、また、そのことについては、やはり文部省はどちらかにアクセルを踏まないと私はいけないのではないかなと思っておるものですから、危惧を含めてそういう心配をしているのですけれども、いかがでございますか。
  47. 町村信孝

    町村国務大臣 前段に申し上げましたが、今次私どもが進めております教育改革は、戦後のいろいろな制度の見直しと同時に、戦後の教育制度を支えてきた、あるいは日本の社会全体を支えてきた、その基本的なコンセプトなりあるいは考え方、理念というものを変えていくことが教育改革目標であろうと思っておりますし、あるいは橋本六大改革の共通項ではないだろうか、こう私は考えているわけであります。したがいまして、私は個々の、先ほど申し上げましたが、小学校であれ、中学校であれ、高校であれ、それぞれの学校特色を持ってもらうということ、それが非常に重要だと思っております。  その際に、従前と同じ発想のもとに文部省の顔色を見ていたのでは、とても特色ある学校などできるはずがないのです。私はそういう意識改革をそれぞれの学校に、まさに今委員が言われたような地域皆さん方に求めているわけであります。だから、半分は例えば中高一貫がいいよとか、もう八、九割いったらいいよ、あるいは全部いったらいいよということをあえて申し上げません。そういう意識を払拭していただくいいチャンスではないだろうかとさえ、あえて思っているわけであります。  もちろん、先ほど申し上げました法律改正までし、あるいは予算補助まで新たにつくってやろうとしているわけですから、当然私どもは完全ニュートラルではありません。もちろんお勧めをしていくわけであります。ただ、それを具体的に目標として何割だとか何校だとかというところまで言ってしまった瞬間に、今までの同じ文部行政の繰り返しになってしまうではないかということですから、あえて、どれだけの具体的な比率とか数字でそういうことを申し上げるのは避けているわけでありますので、御理解を賜ればと思います。
  48. 安住淳

    ○安住委員 いや、そういう認識であれば、それで結構です。  それでは、逆の方向から伺います。  これは非常に重要な改革だと私は思っているのですよ。もしかしたら六・三・三制のところに踏み込むという点では、例えば今までも教職員の増加を目指した法案等々がありました。しかし、もしかしたら、これは戦後の文部省の出した法案の中でも、かなりこれは骨の部分まで削るような話ですから、私は非常に重要だと思うのですよ。  しかし、では逆に、大臣に伺いますけれども、その割には、なぜこれは国民世論が盛り上がらないのかなと思うのですよ。いや、残念ながら、私だけかもしれませんけれども、私の田舎に帰ったって、だれも、えっ、そうなんですかというようなもので、認識がないのですね。  つまり、文部省は本当にこの問題を当事者である国民やPTA、それから中学生もそうかもしれません、当事者に対して本当にこの問題を投げかけているでしょうか。これは広報を含めてアピールしているのかということを私は申し上げているのですよ。そうでないんじゃないですか。  まさに教育関係者が−教育委員会の人たちは幾らかは知っているかもしれません。しかし、私どもの党の部会でやったときには、その教育委員会の人も、回ったら、その人が知らなかったという報告をしたある代議士もいました。これほど大きな、中学校小学校子供さんを持っている親から見たら大変なニュースなわけですよ。だって高校受験が、今とは違うルートがこうやってできるわけですからね。  しかし、その割にはと言ったら大変失礼なんですけれども、どうも世論の盛り上がりに欠けるというのと、それから国民がもっとこの問題、つまり受験の問題について、不景気だということもあるかもしれませんが、国民がこの問題について目を向けていないということに対しては、文部省が、何か大変失礼ですけれども、おっかなびっくりというか、こそっと出して大きなところを変えようという気持ちがちょっとあるのかなと。  私は、この法案は、この中高一貫は非常に前向きでいい話だと思うし、もちろん大賛成でありますから言うわけではありませんけれども、もっと大々的に問いかけるというか投げかけて、やはり国民的な議論を巻き起こしていかないと、本当は民主主義からいうと、簡単に教育制度というのは我々だけで変えていいものかどうかというのは、私は少し疑問があるのですよ。いかがですか。
  49. 町村信孝

    町村国務大臣 これは、昨年の六月二十六日の中央教育審議会の第二次答申という形でこの中高一貫を出させていただきました。一年弱であります。法案という形で出させていただいたのはこの国会でございます。  これは非常に、私どもいつも悩むのでありますが、法案が通る前に大々的に宣伝をすると、法律が通っていないのに何という国会軽視だと言って、いつも怒られるわけですね。したがいまして、せいぜい私どもとしては、答申が出ましたよということを、各種のメディアを通じて、あるいはインターネットを通じて、文部省広報を通じていろいろやっておりますが、これは、やはり法案が通ると初めて本格的に国民の皆さん方にそのPRができる。これは今まで何度も、法案も審議しない、通過していないのに、政府の広報予算を使って何事だと。例えば消費税を導入するとき、あるいは消費税率を上げるときも、法律が通っていないのに何じゃと言って随分しかられました。そういう悩みがあるということはぜひ御理解をいただきたいし、やはり国会の審議は国会の審議として、非常に私どもも大切だ、こう思っております。  ただ、一応通るということを前提にいたしまして、今年度の平成十年度予算の中でも、中高一貫教育推進にかかる実践研究事業という約一億円余の予算がございますが、その中でパンフレットの作成、配布というような予算も計上してございますし、相当部数を用意し、できるだけ皆さん御理解をいただけるような形のPRもやっていきたいと思っておりますし、内閣のPR予算もできるだけ使っていきたいと思いますし、また、小学校中学校等々の場でも、こうしたいろいろな情報提供を行う努力をしていきたい、かように考えているところでございます。
  50. 安住淳

    ○安住委員 いや、やはり大臣も通産省の御出身で、私は今の発言は少しがっかりしているのです。それは役所的な広報の話でしょう。私が言っているのは、法案の賛否の問題を含めて、この問題は非常に大きい問題で、自分の子供が、大臣もお嬢さんが二人いらっしゃいますけれども、いざ、これは六・三・三・四制をある程度、複線をというか別のルートをつくりますというのは、もっとやはり当事者たる国民に親切に投げかける問題だと私は思うのです。  そんな、国会を軽視するとか、失礼ですけれども、そんな次元の問題ではなくて、私はもっと認識を深めて、国民議論を巻き起こして、その上でこれを推進していくということになって初めて、ああ、なるほど、今の中学校高校の抱えている制度的な欠陥というか問題に国もようやくメスを入れるのだなという認識が私は国民に生まれてくると思うのですよ。  これは正直なところ、残念ながら、そういう雰囲気は今全くない時点でこの中高一貫がスタートするということは、私は中高一貫推進する立場でいうと、私自身は実は非常に残念だと思っているのです。大臣、私はそういうことを申し上げているのですよ。いかがですか。
  51. 町村信孝

    町村国務大臣 その中高一貫の持つ意味の大きさというのは私は委員指摘のとおりであろうと思っております。  そういう意味での問題提起の仕方、国民の皆さん方に対する問いかけの不足、PRの不足等々を含めて、今まで十分であったかといえば、それは確かに欠けていたのかな、こう思ってもおりますが、今回のこうした法案の審議を通じ、さらに、願わくは、成立後、私どもとしては、非常に大きな意味があるのだという今の委員の御指摘を踏まえながら、国民的議論を巻き起こすような最大限の努力をしてまいりたいと考えます。
  52. 安住淳

    ○安住委員 私は、時間がもうあと十分弱ですから、二つの問題を取り上げたいと思います。最大の問題だと思います。  一つは、受験の低年齢化ですね。この問題は、中学校高校というそこの部分での受験戦争がいわば低年齢化して、小学校から中学校に上がるときに、エリート校に入るために、現実には東京ではもう既にそういう問題というのは起きているわけです、私立中高一貫に入れるために。しかし、公立学校でそれを中途半端にやれば、ある意味での特色のある学校、つまり学校の成績がいい学校、それから野球がとても強い学校、そういう意味では、入るのが難しくなれば小学校にその問題がただ低年齢化して落ちていくだけ、そういう問題は、これはずっと中教審でも指摘をされてきたわけです。  だから私が一番最初に質問をしたのは、なぜ今やるのかと。つまり、なぜ今やるのかということは、この課題をちゃんと克服する見通しができたから多分おやりになるのでしょう。この問題を残したままでエリート校化するおそれのある中高一貫をやるということに対しては、私はちょっと慎重な立場であります。  ですから、この低年齢化は、問題を下におろしていく、これに対する歯どめというものを明確に示していただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  53. 町村信孝

    町村国務大臣 四六答申のときも臨教審のときも、学力検査をやりません、やはりそこまで議論が行き着かなかったのです。  そして今回の答申、今回のもそうなんでありますが、入学者の決定方法については、学力試験を行わないということを明記したというか、はっきりこの答申の中でも指摘をしていただいております。学校個性特色に応じて、面接、実技、小学校からの推薦、抽せんなどの方法の組み合わせで行う。先般、五ケ瀬のお話をお聞きいただいたと思いますが、あそこでもそういう意味の学力試験はやっておりません。そのことが多分、今委員が御心配をされます受験競争の低年齢化に対する一番の歯どめになるだろう、私はこう思っております。
  54. 安住淳

    ○安住委員 思い切った入学の方法、まさに抽せんという話は非常におもしろいと私は思います。  しかし、私が非常に心配するのは、中高一貫は、将来的にはだれでも入れる身近な学校であるべきだと私は思っているわけです。だれもがなかなか入りにくくて、敷居の高い学校にしてはならないということだけは申し上げておきます。このことについては我々の党も、これが運用され初めてからしつこいくらい文部省にも申し上げるし、各市町村にも働きかけていきたいと思います。  もう一つの問題、私は、なかなかこの委員会では質問が出なかったような気がしますが、やはり私立との共存という問題はどうしたってあると思うのですよ。  私立て今ずっと中高一貫をやっているわけですね。私立中高一貫公立が新たに加わっていく。まして少子化社会ですから生徒数が激減していく。私立との競争、共存というのはある意味では必要ではないかなと私は思うのですけれども、いかがですか。
  55. 町村信孝

    町村国務大臣 学校間競争、これは公立の中でもあるでしょうし、公私の間でもあるだろうと思います。いい意味の競争を私は否定するつもりはありません。それどころかむしろ、先ほど来申し上げておりますように、学校特色で競争をする。受験の際の点数で競争するのではなくて、私立てあれ公立てあれ、私立建学精神に匹敵する公立のそれぞれの学校特色というもので競い合っていくという意味での競争は必要だろうと思いますし、そういう意味で十分共存は可能であろう、または共存していてほしいな、私はこう思っております。  全部を私立にするのも行き過ぎだし、全部公立というのも行き過ぎであって、そういう意味で、公立私立もそれぞれの特色を生かしながら子供たち教育していくという姿になってもらいたいと考えております。
  56. 安住淳

    ○安住委員 先日、参考人の東京工業大学の木村先生が、教育の根本の問題というのを我が党の藤村委員の質問に対して答えていました。  学歴社会は、つまるところは就職の問題、企業がどういう人間を採用するか、それから大学の入り口の問題、つまり中高一貫をこれから推進していって中等教育だけが直っても、結局は大学に入る時点での受験の問題をどう克服するか。それから社会そのものが、つまり大人の社会がいまだに、そうはいったって、個性を尊重するだのやっていますけれども、しかし大臣、現実に大企業、安定した給与の高いところ、まさに役所だってそうじゃないですか、それはもう否定できない厳然たる学歴社会というのは、やはりちゃんと日本の中にはあると私は思うのですよ。  その中で価値観を多様化させて、本当に一芸に秀でた人間を尊重し、そしてある意味では大学なんか出なくても同じぐらいの給与をもらって、社会の中でちゃんとスペシャリストとしてそれなりに身分も何も含めて尊重されるような社会、つまり大人が価値観を多様化しないと教育というのは直っていかないのだという、木村先生の話はそういうふうに私も受けとめました。まさにそうだと思うのです。  であれば、中高一貫というのはまさにその入り口であって、本丸というのは、これから文部省が、ある意味では一番大事なこの大学の入試、学制改革も含めてですけれども、これに本当にメスを入れて、そして世の中に出た社会全体の価値観を変える必要はやはりあると思うのですよ。  価値観を変えるのではなくて、価値観を多様化させるといいますか、そのことをやらなければ、幾ら真ん中の部分をかなり多様化させても、結局は日本の持っている教育の根本の問題というのは改まらないのではないかな、私はそういう危惧を持っておりますが、いかがでございますか。
  57. 町村信孝

    町村国務大臣 木村先生の御指摘、私も同感をしているわけであります。  先ほど大野委員からの御質問もございましたが、やはり企業の採用の仕方というのは非常に大きな影響があります。相当変わりつつあるなという印象を持っておりますし、大学卒業のラベルだけで就職試験をやっているような会社は早晩つぶれる、私はこう思っておりますし、そういうことを言う企業の方々も相当ふえている。ただ現実に、では学歴が重視されているかいないかと言われれば、委員指摘のように、まだまだそれが存在しているのは事実であります。  ただ、私もちょっとうろ覚えでありますが、学歴と年収、所得という観点だけ見ても、かつてのような差はなくなってきていると思っております。あるいはむしろ、収入はそこそこでどこに行ってもそう変わりがないから、自分の自由な時間が持てる職業の方がいいと言って、そういう種類の職業を選択される方もふえているという意味で、今委員が言われた価値観の多様化というのは着実に進んでいると私は思います。  それからもう一つ大学入試あり方であります。  平成二年度から、いい悪いの評価はありますが、入試センター試験というのが実施をされてきておりますが、もうちょっと前から比べますと、たまたま手元にあるのは昭和五十三年と平成十年の違い。例えば、面接をやっている国公立大学が、昭和五十三年には百二十校中四十二校だったのが、現在は百五十二校中百四十校はやっているとか、あるいは小論文も四十校だったものが百四十二校とか、海外子女特別選抜をやっていたのが一校だったものが百五校とか、あるいは推薦入学が三十九校だったのが百三十一校、社会人特別選抜は今や六十九校もやっているとか、多様化の努力をそれぞれの大学が相当やっている。  さらにこうした努力が進み、さらには最近はアドミッションズオフィスというのがありまして、そういったようなものも含めていろいろな多様化が図られることが必要なんだろう、私はこう思っております。
  58. 安住淳

    ○安住委員 時間が参りました。  私は、前からずっと申し上げていますけれども、本当に個性豊かな人間というか、日本は資源も何もない国なんだから、やはり立派な人間をつくるということが一番の政治の課題ですよ。中途半端なことをしないで、今の閉塞的な教育あり方を改めていくために、ぜひひとつ、我々も協力をいたしますので、御尽力をいただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  59. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、旭道山和泰君。
  60. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 新党平和の旭道山和泰です。大臣各位、よろしくお願いします。  本日の議題となっております学校教育法等の一部を改正する法律案の質問をする前に、インドネシア情勢の関連で質問させていただきます。  インドネシアにおける反政府暴動による混乱と緊張が続く中、先週、ジャカルタの日本人学校の児童生徒ら約七百人が、下校途中にスクールバスの通過箇所が封鎖され、途中で学校に引き返し、帰宅することができず、学校で不安な一夜を過ごすという事態が発生しました。暴動が拡大し、途中で授業を切り上げたとはいえ、既に死亡者が出るという混乱の状況下にありながら、果たして的確な判断がなされていたか疑問を抱かざるを得ません。  一連の反政府暴動が発生してから、文部省としては、現地の情勢や日本人学校に対し、どのような情報収集に努め、また、指示を出されていたのか、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  61. 町村信孝

    町村国務大臣 大変に関係者また国民の皆さん方に、本件では特に日本人学校のことで御心配をおかけをしているわけでありますし、私ども、大変心配をしながら情報収集なり対応なりに取り組んできたところでございます。  現状を申し上げますと、インドネシアにはジャカルタ、バンドン、スラバヤ、この三つに日本人学校がございまして、児童生徒が総計千百十名おります。現状では、両親のいずれかがインドネシア国籍であることを主たる理由として残っている方を除いて、千百十名中千三十三人が出国をして日本に到着をしております。また、派遣教員六十二名中六十名が既に帰国をしておりまして、あとの二名はスラバヤの学校の方の二名でございまして、ちょっと空港へのアクセスが悪いというようなことでホテルにいるようでございますが、これもアクセスが確保でき次第帰国をするという状況であることをまず御報告させていただきます。  一時帰国かもしれませんし、場合によったら長く日本にいることになるかもしれないということもありますので、先般、教育委員会に対しまして、一時帰国した児童生徒を円滑に地元の学校に受け入れるようにという通知も出しました。今後、現地の状況をしっかり踏まえながら、いずれの日にか学校を再開をしたいという子供たちも大変多いようでございますので、そうしたことができるかどうか、現地の大使館等々ともよく相談をしながらやっていきたいと思っております。  問題は、十四日の夜というか、十四日授業をやっていたために十四日の夜、一晩を学校の中で送らなければならなかったわけでありますが、そのことに関して適切な状況判断が行われたかどうかという御指摘がございました。  いま少し事態が冷静になってからその辺は少しくよく詳細に分析をしてみないといけないな、こう思っております。もちろん、日本人学校の校長さん以下は、現地の大使館、領事館ともかなり綿密な意思疎通を図った上で十四日は授業をやったようでございます。ちなみに、ほかのインターナショナルスクールなども授業をやっていたところもあるようでございます。  ただ、その判断が本当に適切であったかどうか、もう少し事態が冷静になった後よく検証をして、反省すべき点があれば反省をしなければならないだろう、このように受けとめている次第でございます。     〔委員長退席、河村(建)委員長代理着席〕
  62. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 初期動作というのは本当に大切ですから、そういう対策をすぐ講じてください。よろしくお願いします。  十九日午後六時の時点における文部省のまとめによりますと、インドネシアにある日本人学校三校の児童生徒千百十人の九割に当たる千二十四人が出国したか、出国すると学校に伝えたとあります。今、スハルト大統領が辞任されたのですけれども、帰国するケース、あるいは一時的に他の国に滞在するケースなど、いろいろなケースが想定されると思います。児童生徒、派遣されている教員のスムーズな受け入れ、学習への支障を最小限にとどめるため、文部省としてはどのように取り組んでいくのかお聞きしたいと思います。
  63. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 現在、帰国いたしました児童生徒状況については、大臣から申し上げたとおりでございます。  文部省といたしましては、とりあえず、こういった事態に対処するということで、五月十八日付で各都道府県教育委員会に対しまして文書を発出いたしまして、一時帰国した児童生徒の最寄りの小中学校等への受け入れというものが、住所が移ったか移っていないかというようなことにかかわりなく、円滑に行えるよう、各市町村教育委員会に指導を行っていただきたいという依頼をいたしております。  また、その旨を既に十七日の段階で、ファクス、あるいは文部省の情報掲示板等に入れましてだれでもその情報が得られるようにしているところでございますし、さらに都道府県教育委員会の連合会、さらには全国連合小学校長会や全日本中学校長会等の会議におきまして、直接担当者からその旨お願いをいたしているところでございます。  現在、文部省内に、帰国をいたしました三校の管理職等を中心といたしまして、勤務場所を設定いたしまして、この方々を中心に、帰国した、あるいは他国へ出国している、あるいは現地におります児童生徒等の具体的な所在等の確認に努めているところでございますし、今後の事態の推移等につきましても、三校の管理職等を中心といたしまして、文部省と一体になって、状況の推移、あるいは今後の児童生徒の具体的な状況把握等、詳細に把握しながら対応してまいりたいと考えているところでございます。
  64. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 今後とも、正確な情報収集、迅速な対応、そして適切な判断による安全確保の徹底と、児童生徒のために不安を取り除くとともに、現時点における授業を含めた万全な対策をよろしくお願いします。  それでは、これから議題に入らせてもらいます。  今回の改正で大きな焦点である中高一貫教育制度導入の問題ですが、これは入試改革などとは違い、一度導入したらほとんど後戻りができないという大きな教育改革ではないかと思います。それだけに、この制度が国民に広く理解され、十分な対策を講じることが非常に重要なことだと思います。  現行の義務教育制度が発足して既に五十年経過しました。この間、社会情勢の変化や児童生徒の減少、また教育多様化国際化などにより、現在の教育制度のもとではかなり無理が生じ、いわゆる制度疲労の状態にあると指摘する人も少なくありません。  そこで、まず最初に、二十一世紀に向けた義務教育制度あり方について文部省はどのようにお考えになっているか、よろしくお願いします。
  65. 辻村哲夫

    辻村政府委員 先生御案内のとおり、義務教育につきましては、憲法に規定がございまして、その能力に応じてひとしく教育を受ける権利を有しているということでございます。この規定を受けまして、教育基本法あるいは学校教育法によりまして、我が国では九年間の義務教育制度というものが設けられているわけでございます。  この義務教育目的は、子供たち一人一人が、個人として知、徳、体のバランスのとれた成長を遂げ、健康で文化的な生活を円滑に営んでいけるようにすること、あるいは国民として自立していくための基礎的、基本的な事項をしっかり身につけていくということだと思っております。したがいまして、こうした義務教育考え方、これは二十一世紀に向けましても変わらない大切な理念であろうというふうに思います。  ただ、先生ただいま御指摘になりましたように、社会の変化が急激に生じている、こういう中で、その社会の変化にいかに対応していく生きる力を培うか、その際、生徒たちの興味・関心ですとか、あるいは進路の希望といったものが多様化している、そういう現状を踏まえまして、一人一人の個性といったもの、あるいはそのよさを生かしていくということ、これは今後義務教育におきましても大変大切なことになるのではないかと思います。  基礎、基本を共通にしっかりと身につけさせるということにあわせまして、今後は、そうした一人一人の個性を伸ばす、そういうことに着目した教育あり方というものが我が国の義務教育におきましても求められてくるというふうに考えております。
  66. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 次に、今回の中高一貫教育制度に伴う義務教育制度との整合性についてどのようにお考えか、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  67. 辻村哲夫

    辻村政府委員 今回実施をお願いしております中高一貫教育は、ただいま申し上げました現在の義務教育制度を前提として導入するものでございます。  若干具体に申し上げますと、今回の中高一貫教育におきましては、六年間の計画的、継続的な教育指導を行う、あるいは六年間を通じた異年齢の生徒集団で学校生活を送る、そしてまた、教師も六年間を通した教育指導に当たる、こういった特色を持っておるわけでございますけれども、そこで行われます教育基本のところは、前半のところは中学校教育、後段のところは高等学校教育基本にしつつ、中高一貫ということで特色を生かしていく、こういうことで行うわけでございます。  したがいまして、義務教育段階におきましてこの中高一貫教育制度導入というのは、現行中学校と異なる目的目標を有するというものではないわけでございまして、そうした形で、中高一貫制度導入と義務教育制度というものは整合性が十分に保たれているものだというふうに思っております。
  68. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 ありがとうございます。  あと、中高一貫教育導入に伴う学校教育のビジョンについてお聞きしたいと思います。  教育における平等性を重視しながら、その普及を図りつつ教育水準の維持向上を目的とした結果、我が国の教育は、量的に著しく普及発展を遂げるとともに、高い教育水準を達成するなど、質の面でも大きな成果を上げました。また一方で、今日の日本の教育子供をめぐる諸問題は、かつてなく複雑かつ深刻な事態を呈しており、その内容も拡大、多様化しているのも周知のとおりです。  今回の中高一貫教育制度導入が、社会状況の変化や家庭教育の重要性や心のゆとりを重視し、子供個性・能力をゆとりのある教育の中ではぐくむことを目的としているのは理解しています。しかし、法案の条文を読んでも、何をどうするのか具体的なことについては何も見えてこないのが私の率直なところの感想です。  文部省としては、中高一貫教育制度導入をすることによって我が国の学校教育あり方をどのように示そうとしているのか、また、いかにして教育機会の平等を維持しつつ、多様化する環境の変化に対応し得る教育環境をつくり出そうとしているのか、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  69. 町村信孝

    町村国務大臣 中高一貫教育導入目的でありますが、現実に高校進学率が九七%とほぼ全入に近い状態になってきておりますが、今委員指摘のように、生徒の能力でありますとか適性でありますとか、あるいは抱えている問題点でありますとか、興味・関心、非常にばらつきがあるといいますか多様化している。それに対応する教育制度が、委員指摘のように六・三・三、こういう戦後でき上がった仕組みの中で、言うならばたった一つしかないということでは、やはりうまくそうしたニーズあるいは子供たちの変化に対応できないのではないだろうかなということを考えたわけであります。  そこで、一つの試みとして中高一貫というものを考えました。特にこの段階というのは、御承知のように、自我意識もかなりしっかり確立をしつつある段階であったり、自分が将来何になろうかということを一生懸命模索する段階であったり、いろいろ変化が多い年でありますので、その六年間を一貫した教育課程のもとでじっくりと学ぶことが可能になるというようなメリットがあるのだろうな、私はこう思っております。要するに、生徒一人一人の個性を今まで以上に重視した、そういう教育が実現できるのだろう、かように考えております。  また、教育の機会均等とのバランスをどうとっていくのかということであります。確かに、出だしのころは、仮に県に一つしかないということになりますと、いささか不平等ではないかなということも言えるわけでありますが、ある一定の期間がたてば、一応、かなり近い通学区域内の児童については平等に応募する、志願する機会が与えられる、こう思います。  また、教育内容についても、現行の中学、高校学習指導要領ともちろんオーバーラップは避けるとか、一貫したカリキュラムをつくるという工夫、努力がなければ中高一貫学校意味がないのですが、さりとて今の学習指導要領からまるで違う姿になるかというと、そうではなくて、基本的には、今ある中学校高等学校学習指導要領をかなり生かしながら、よりよいカリキュラムをつくっていくという意味からも、教育内容からもそうした機会均等というものは維持される、こんなふうに考えておりますので、中高一貫教育導入したからといって、一遍に教育の機会均等から外れるではないかということにはならないのだろう、こう思っております。     〔河村(建)委員長代理退席、委員長着席〕
  70. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 どうもありがとうございます。  偏ってエリート校みたいになることもあるかと思いますので、そういうことに配慮しながら、十分注意していくようによろしくお願いします。  では、制度の中身についてお聞きしたいと思います。これまで当委員会で多くの委員から指摘されたと思いますが、改めてお聞きしたいと思います。  中高一貫教育導入に当たっては、各都道府県にどの程度の割合で設置をするのか、改めて聞きたいのですけれども、よろしくお願いします。  また、本来、学校選択の自由と進学機会の平等ということが前提になければならないと考えていますが、その場合、募集、選抜においてはどのような方法で実施されるのか。特に選抜方法については、学力検査は用いないで入学者を決定した場合、六年間に生徒の学力差が拡大するのではないかという懸念をいたします。  さらに、文部省としては、中高一貫教育学校をつくる設立者に対してどのような取り組みをされているのか、それをお聞きしたいと思います。
  71. 辻村哲夫

    辻村政府委員 各都道府県におきまして、現在、この中高一貫教育をどのように導入していくかということの検討が始まっております。  一つ具体的なお話を申し上げますと、岡山市の例でございますけれども、現在、市立の工業高校、各学年三クラスでございますが、それと商業高校、これも同じように各学年三クラスでございますが、それを統合いたしまして、それに中学校をあわせまして併設型の中高一貫教育を実施しよう、これを平成十一年度からスタートさせようということで検討いたしております。その高校では、学科は総合学科ということにいたしまして、国際文化、情報科学、健康福祉、工業技術といった四系列で構成する、そうした中高一貫校を検討しているようでございます。  それ以外にも、宮城県でございますとか北海道でございますとか東京都等におきましても、さまざまな検討が行われております。それ以外の県におきましても検討が行われておるところでございます。  将来、それぞれの都道府県が具体的にどの程度どんなふうに設置していくかということは、各都道府県におきましての慎重な検討を経て決定されてくるわけでございまして、現在、文部省として、各都道府県ごとに具体的にどう設置されるべきかということにつきましては、これを示すというような立場にないということを御理解いただきたいと思います。  それから、第二点目の入学者の決定についてでございますが、これは中教審答申におきましても繰り返し指摘されているところでございますが、受験競争の低年齢化を招くことがないようにということで、入学者の決定に当たりまして、公立学校につきましては学力試験は行わない、そして学校の特性、個性特色に応じまして、面接とか実技とか、小学校からの推薦ですとか、抽せん、そういった方法を組み合わせて行うということになります。  こうして入学してきた子供たちが六年間過ごすというわけでございます。その間にさまざまな形で、長期間同じ子供学校生活を送るわけでございますので、課題が出てくるかもわかりません。まずは、私ども、各学校において指導面でさまざまな努力をしていただきたい、保護者の方々との協力を得ながら、さまざまな努力をしてこれに対応していただきたいと思うわけでございますが、いよいよやはりその学校に適応できないというような場合につきましては、中途での他校への進路変更というととも考える、それも対応できるような形で制度を考えているところでございます。  以上でございます。
  72. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 どうもありがとうございました。  次に、弊害についてお聞きしたいと思います。  中教審では、中高一貫教育導入することによって、十五歳でやる入試を避けることは、人格の完成を図る上で意味があるという見解がありましたが、今度は、中高一貫教育制度導入に当たり、十二歳の段階で、一般の中学校に進学するのか、中高一貫教育校に進学するのかという選択をしなければならなくなります。これは、単に教育機会の選択の幅を拡大するとか、教育多様化対応するためというより、小学生にとっては、非常に難しい決断を求められることとなるのではと危惧いたしております。  結局、選択の段階で予想されるのは、親の関心度を反映することになるのではないかと思います。つまり、中高一貫教育校は特別な学校というような認知をされる可能性があると懸念されています。この点をお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  73. 辻村哲夫

    辻村政府委員 進路の選択というのは大変重要な課題だと考えております。  まず、学校設置いたします場合に、どういっだ内容のどんな規模の中高一貫校設置するか、まずその設置の段階において、生徒たちのニーズ子供たちニーズ、それから保護者たちのニーズ、そうした幅広いニーズを的確に設置者がつかんで、慎重な検討を経て学校を設立するという、まずその準備段階での十分な考慮というものが求められるだろうと思います。  しかし、なお、小学校の段階で的確な進路選択ができるかどうかということでございますけれども、それにつきましては、例えば現在行われております宮崎県の五ケ瀬の中・高等の例を見ますと、これは中、高トータルでございますけれども、みずから意思決定を行ったといった生徒が八割余になっているような状況もございます。また、現実には、国立私立て、相当数の子供たち小学校の段階での進路決定を行っているというような実態もございます。  また、中教審におきましての審議の過程で、全国小学校長会の代表であります全国連合小学校長会といたしましても、途中での進路変更、途中でその学校になじまないといった場合には、十分円滑な進路変更がなし得る、そういう配慮を求めつつも、子供たち小学校の段階で選択の幅を広げるというごとについては賛成であるというような意見の表明も伺っているところでございます。  そうしたことを踏まえまして、先ほど申しましたように、学校設置段階におきます十分な考慮ということ等を考え合わせますと、この小学校段階におきましての進路決定ということにつきましても十分に対応していけるのではないか、こんなふうに思っております。
  74. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 御答弁、ありがとうございます。  義務教育修了者の教育機会の拡大について質問させていただきます。  現在の我が国の社会は、完全な高学歴社会となっています。私は一経済的な理由により中学校しか卒業していません。単純に言うならば、高学歴に対して、その反対の低学歴に当たります。以前、私が所属していた角界は特殊な勝負の世界ですから、中学卒業でも何の弊害もなく、疎外されることもありませんでした。しかし一般的には、中学校卒業後、直ちに社会に出ていく少年たちの環境や彼らの社会的適応は、決して良好とは言えないのが現実となっています。現在の高学歴社会と、義務教育卒業後社会に出ていく少年とのギャップは余りにも大きいと言えます。  中学卒業後、社会に出ていく場合の理由はいろいろあります。少し古いデータですが、進路指導に関する総合的実態調査結果報告を見てみますと、中学校における就職希望生徒理由としては、これは複数回答ですが、自分の成績では進学できそうもないからが三〇%、また、学校の勉強よりも仕事をする方が自分の適性に合っているからが六一%という結果があります。進学より仕事をする方が適性に合っているという実際の内容も、多くは進学に対する不安があるのではないかと思います。  一度社会に出た少年が改めて進学を目指す場合、また最近急増している不登校問題や中途退学者問題の対応についても、今回の中高一貫教育制度導入が、彼らの門戸を狭くするような障害となるようなものであってはならないと思います。この点についてお聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  75. 辻村哲夫

    辻村政府委員 中学校卒業時点で高等学校に進まなかった子供たちに対しましての対応についてまずお話をさせていただきたいと思うのでございますけれども、現在でもさまざまな努力をいたしております。  従来は、中学校を卒業いたしまして直ちに高校入試をパスして高等学校に進む、そういう道を違えた場合には、高等学校に進むということがなかなかしにくい状況があったわけでございます。例えば年齢が高くなってくる、そのことによって学年がずれてしまうというようなことがあったわけでございますけれども、現在は、学年制をとらない、単位を積み上げていくことによって高等学校の卒業資格ができるというような単位制高校というものも随分できてまいりました。  また、教育内容におきましても、総合学科というような、選択の幅を広げた内容構成で学科を構成するというような高等学校もできてまいりました。そういう形で、高等学校もそのシステムにおいて大変柔軟なものができてきております。  したがいまして、中高一貫教育に進み、中学校高等学校へと選抜なしに行ける子供、これはこれでそうした特色を生かした形で教育を行うということの必要性があるわけでございますので、それはそれとして整備をしていく。  一方、そうでない形で進路を選択していく子供たちにつきましても、今、高等学校内容につきましてその一例を申し上げたわけでございますけれども、そうした措置を講ずるという形でこれを受けとめていく。そういうさまざまな施策が組み合わさって対応していく、こういうことで対応してまいりたいと思っております。
  76. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 全国にも本当に門戸を広げて、そういう対応を、障害なく、そして迅速によろしくお願いします。  中高一貫教育というと、すぐに私学の受験エリート校というイメージが思い浮かびます。それは、東大、京大などに多くの合格者を輩出している学校の上位が私学の中高一貫教育校によって占められていることから当然のことだと思います。  同じ、私学の中高一貫教育校であっても、進学に重点を置く学校もあれば、附属大学との関係を重視する学校など、多くの特性があります。しかし、現状を見ますと、学校も含めて、中高一貫教育校志向の広がりが、一方では中学受験準備の拡大とエスカレートを生んでいるのも事実だと思います。子供大学進学を希望する親がふえ、受験を意識した私学の中高一貫教育校への関心が高まる中、今回の公立中高一貫教育校に対する関心も当然高まり、注目されると思います。  先ほど、我が国の学校教育のビジョンについてお聞きしましたが、公立ということで、どのような目的と使命を持ち、私学の中高一貫教育校との特性の違いをつくり出そうとしているのか、お聞きしたいと思います。よろしくお願いします。
  77. 辻村哲夫

    辻村政府委員 今回、制度化をしようとしております中高一貫校は、ゆとりのある安定的な学校生活を送る中で、生徒一人一人の個性創造性を伸ばす、そのための特色ある教育を行う、そのためには、六年間を継続した形で教育を行い得る、そういう仕組みを整えようというわけでございます。その際に、これは中教審でも繰り返し指摘されているところでございますが、今先生が御指摘になりましたようないわゆる受験準備というものを最優先させる受験エリート校というものになってはならない、これは大変重要なことであるわけでございます。  そのために、特に公立学校をどうするかというお尋ねでございますが、公立学校につきましては、入学者の決定に当たって、学力試験は行わない、そして、学校特色に応じまして、面接や小学校からの推薦、実技、抽せん等の方法によって行う。学力試験を行わないということで入学者の決定が行われるということがまず一つでございます。  それからもう一つは、規模も含めて、どういう内容のどういつだ教育特色とする中高一貫校をつくるかということにつきましては、それぞれの設置者の御判断であるわけでございますけれども、その判断を下すに当たっては、さまざまなお立場からの人たち、校長、教師、保護者等さまざまな各界からの人たちにお集まりいただいて、そこでの大所高所からの議論を経て、そして中高一貫校をつくっていく、こういうことでございまして、その際にも、今問題になっておりますいわゆる受験エリート校のためにこの学校をつくるというような、そういう判断は当然なされないものだというふうに思っております。  そうしたさまざまな取り組みを通しまして、公立高校中高一貫校特色というものが生かされていくものではないか、こんなふうに思っております。
  78. 旭道山和泰

    ○旭道山委員 本当に門戸を広げて、だれでも入れる、そしていい学校をつくってください。  質問を終わらせてもらいます。どうもありがとうございました。
  79. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、西博義君。
  80. 西博義

    ○西委員 再び文部大臣に御質問申し上げます。  まず初めに、大きな内容で、先ほど安住委員からも若干質疑がありましたけれども、総理大臣からも六大改革ということで、教育改革が大変重要な政府としての方針であるという中で、教育改革推進方法についてまずお伺いを申し上げたいと思います。  この点につきましては、近年の文部省教育改革の施策についてはずっと眺めてきたわけですが、何を目的にしてどの程度の姿を描いているのかということがなかなかはっきりあらわれてこないという問題がすべての問題にわたってあると思うのですね。これはもちろん国立大学とか、そういう国が直接管轄する部分においてはかなり文部省自体が方向性をはっきり出したり、直接指示をしたりということができるわけですけれども、多くの場合は地方に任されている。地方の教育委員会だとか、そういうところに任されているために、文部省が主体的に実施するに至らない、そういういわば半分面映ゆいような部分もあるのかもしれませんけれども、そういうことが実態ではないか、こう思います。  一方、改革というのは、これはあくまでも実施してこそ改革でありまして、絵にかいたもちのままではいつまでたっても実行に移されないわけです。そういう意味では、この施策の策定に当たって、法的には拘束力を持たせるというだけの強制力を働かすということはできないと思いますが、この実施主体である教育委員会に、施策の意義、目的、これをよく理解をしていただいて、そして文部省の考えでいるその施策そのものを十分実現できるような、そういう各地方自治体の動きというものを促していく必要があるのではないか、そこに文部省の責任があるのではないか、こう思うわけでございます。  単なる形式上の数値目標だけではこれは何も意味がないのですが、その施策が効果的に実施できる、こういうことであれば、私は、数値目標そのものにも意味があるのではないか、またある程度の数値目標を出すことによってその姿が描けていくのではないか、こういうふうに思うわけでございます。大臣は、政策を立案したり法整備を行えばそれでいいとは考えておらないと思うのですが、その点についてまずお伺いをしたいと思います。  現在も議論されている中央省庁の再編の問題でも、これは関連して、政策評価ということが考え方として上がっているわけでございます。評価をするということは、あらかじめ何らかの基準があって、その官庁なら官庁が目指しているもの、これがはっきりしていてこそこれは評価ができるわけでございまして、そういうことを将来考えていくならば目標というのははっきりと出していくべきだ、こう思います。  その具体例として、今回、我々審議をしておりますこの中高一貫教育導入に関して、目的それから政策的な評価、これを文部省としてどう行っていくのか、またその基準となるべきものはどういうものなのかということをまず大臣にお伺いしたいと思います。
  81. 町村信孝

    町村国務大臣 委員指摘のように、その政策をきっちり評価をしていく、そしてその評価基準をつくって、またその後の政策の遂行に役立てるべきということは大変重要なことであると私どもも思っております。そんなこともありまして、今御審議をいただいております中央省庁等改革基本法案でも、「客観的な政策評価機能を強化する」という条項があるのも、まさにそういう考え方のあらわれであろう、こう思っております。  ただ、今委員からもお話ありましたように、この教育の分野で数値化できるようなことも確かにあるのですね。例えば、私ども今進めております、すべての学校をインターネットに接続しよう、小学校平成十五年度まで、中高、特殊教育学校平成十三年度まで、こういうことになりますと、目標年次とその対象が大変はっきりしているから、これはわかりやすいのでいいのでありますが、しかし、例えば子供個性を育てる教育となると、いささか抽象的な目標になるのですが、これをどうやって評価をするかというと、これはなかなか難しい部分もございます。  特に、教育の効果というのは、ある意味では世代を超えて評価をしていかなければならないものもありますし、また委員指摘のように、小中高の段階では基本的には都道府県市町村に権限をゆだねておりますし、大学国立大学もありますが、それとても、いい悪いは別にして、大学の自治というものもありますから、すべてを文部省が言いなりにできるというものでもない。また、それが大学特色でもあろうかと思います。そういうことを考えたときに、この目標を定性的に書くことはできても、それをどう評価するのかというのはなかなか容易ではないな、こう思っております。  ただ、そんなことを言っていたら、いつまでたっても事態は改善をいたしませんと思いますので、例えば、では、この中高一貫についてはどういうことを判断基準にするのかなということでありますが、量的整備の面、具体的に申し上げるのはなかなか難しいのですが、要するに、県に一つとかいうことでは、確かに選択肢は全県の人たちにあるとはいうものの、実質的にまだまだその選択可能な範囲だとは言えないのだろうと思います。  そういう意味で、ある程度、実質的に選択可能なということが一つの判断の要素になるのかなと。また質の面では、これは実際のカリキュラムを見てみたり、あるいはその学校が決めます学校目標とか指導方針みたいなものがございましょう。そうしたものが実際どのように決められているか、そしてそれに沿った教育がどう行われているのかということを、各県それぞれ、設置者ともよく話をしていただいて、その結果をまた我々も御報告をいただいたりというような形で確認をして評価をしていくということなのだろうと思います。
  82. 西博義

    ○西委員 続きまして、高校改革の推進状況についてちょっと申し上げたいと思います。  今、中高一貫教育推進するに当たって、中学校部分につきましては義務教育ということもあり、余りバラエティーに富んだものには実態的にはなっていない。それに先立って高校部分が随分文部省も努力されて改革の推進をされている、こういう実態がございます。その中で今、中学の時点におけるいじめだとか、また不登校だとか、そういう実態的に大変難しい課題として残されて いるわけですけれども、その中等教育において、高校入学選抜制度、これが学力試験に今まで偏っていた、このために中等教育がある意味では大きくゆがんだ姿になってきた、こういうことから、高校改革ということが言われ、総合学科を初めとする改革が今進行中であります。  それで、その実態は私も評価をしておりますし、ますます推進していくべきだ、こういうふうに思っているのですが、これもまた統計なんですが「高等学校教育の改革に関する推進状況」こういう冊子がございます。そこで、実態はどうなっているかということを見てみますと、平成十年度には、総合学科で百七校、それから単位制で二百三十三校、それから学校間の連携では百五十二校が今行っている、こういう数字が出てまいります。高等学校の総数は、国公私立合わせて、全国で五千五百校あるのですね。我々は、この改革推進状況に大変期待をしているのですけれども、パーセントでいきますと、総合学科でまだ全体のわずか二%、単位制で四・三%、学校間の連携が二・八%という推進状況でございます。学内でやれるコースの変更だとか学科の変更、これはもっと、千校ぐらいありまして、五分の一ぐらいは努力をされているのですが、こういう推進状況実態でございます。  そういう意味で、今回の中高一貫制度推進状況も、大ざっぱに見て大体こういうぐらいのペースで進んでいくのかな、こう私自身は思っているのですが、この点について、大臣、なかなか実態としてはスローペースでしか立ち上がらないな、こういうもどかしさも含めて、私の感じていることについて、大臣の御所見をお伺いいたしたいと思います。
  83. 町村信孝

    町村国務大臣 高校改革の進みぐあいが甚だ遅いではないかというおしかりをいただきました。私どもも、もっとスピードアップできたらいいな、こう思っておりますが、そこはやはり地方の自主性ということもありますので、やみくもに強制、命令ができる性格のものでもございません。ただ、例えば今総合学科のお話もされましたが、平成六年度、五年前に始めて、平成九年度は四十都道府県、七十四校であったものが、平成十年度、今年度には四十五都道府県一市、そして百七校ということで、三十三校ふえているというのは、私はかなりのスピードではないだろうか、こう思っております。  ただ、いろいろな御指摘を受けました単位制高校でありますとか学校間連携等々を含めて、十分なスピードかといえば、必ずしもそうではないな、さらに一層の努力をそれぞれの都道府県にしていただきたい、こう思っております。  したがって、この中高一貫も、大体カタツムリの歩みのようになるのではないかという御心配をいただきました。これは何せ新しい制度でございますから、初年度から物すごいスピードで進むというわけにもいかないと思います。ただ、先般、五ケ瀬中学校高等学校関係者が参考人としてお見えになったようでございますが、物すごい数の関係者があの学校を訪れているということは、全国の方々が並々ならぬ関心を寄せているのだなということも逆に類推できるわけでございます。  そうした皆さん方の熱意、努力というものを私ども国としても支えていかなければならないということで、今回法律を出し、法律上の補助あるいは予算上の、財政上の補助、さらには、そうした努力をさまざまな形で援助をしていかなければなりませんし、何よりも、先ほど安住委員からも御指摘がありましたが、もっと国民の理解を得て、共感を得ながら進めていく必要があるというのは全く御指摘のとおりだと思っております。そうした幅広い国民的関心、議論も含めて最大限の努力をして、できるだけ多くの地域中高一貫校が誕生するようにという願いを込めて努力をしていかなければならないな、改めてこう思っているわけでございます。
  84. 西博義

    ○西委員 先日の文教委員会で、今回の中高一貫校設置するに当たって地方が直面するさまざまな課題を大臣お尋ねいたしました。  そこで、一つは、既存公立中学校一つしかない場合、自治体は中高一貫校設置できない、今回の法律ではそういうふうになっておるわけでございます。二つ目には、普通の中学校に行く人の場合は、既設の施設を使いますと、高校段階において、進学できる高校の数や定員などが逆に少なくなるので、その辺の配慮が必要である。この二点を申し上げたところでございます。  この第一点の問題でございますが、最近、地方でも中学校の統合ということが起こっておりまして、町内で一つ中学校にするとか、事実上はそんなケースも大変多いわけでございます。そういう意味で、学校教育法第四十条の、中学校設置しなければならないという地方自治体に関するこの条文を、中学校もしくは中等教育学校、こういうふうにしていただければどちらかということになるのですが、そういう修正ができるのかどうか、できれば、そういう可能性もつくってあげたい、これが私の思いでございます。そういう意味で、すべての生徒中高一貫を味わえる、味わえるというか経験できる、その可能性をつくっていただきたいなというのが提案でございます。  これはどういうことかといいますと、結局、今過疎ということが日本の一つの問題点になっておりますが、私は、教育を受けさせる機会というのが、特に山間部なんかに参りますとどうしても下宿とかいうことになりまして、これが一つの大きな課題であろうと。もう一つは、就職、職業の機会、これが大きな課題。あとは、高齢化を控えて医療、これあたりが三つ大きな課題として自分自身はとらえているのです。  そういう意味で、やはりその地方地方で、この時代ならせめて高校までは親元を離れて行かなくても、経費の面でもいろいろな面でも節約になりますから、その地方自治体が、道よりも子供だ、こういう選択をすれば、その場で高校教育まで受けられる機会をつくれるという法的な整備、これは必ずしも全部が全部そういう必要はないとは思うのですが、できる可能性をつくっていただきたい。こういうことも兼ねて、大臣に再び提案を申し上げたいと思いますが、御答弁をお願いします。
  85. 辻村哲夫

    辻村政府委員 先回の先生お尋ねに対しまして、私どもは法制度につきましての立場から御説明を申し上げました。  今回の中高一貫教育の選択的導入、これは現行中学校高等学校制度に加えまして、生徒保護者の判断で中高一貫教育制度をも選択可能とするような、そういう趣旨のものであるということを申し上げました。そこで考えられておりますいわゆる中高一貫校は、収容定員を決めて入学者の決定をして、受け入れて、六年間の一貫教育をするという学校であるわけでございます。  それに対して現在の中学校は、そこに学齢生徒がいれば必ず受け入れねばならない、いわば入学定員のない、そういった形で運営される学校であるわけでございます。そういうことで法制上の整備を申しました。  ただ、今先生過疎というお話があったわけでございますが、例えばある自治体で学齢生徒が少ない、そして、その全員が、現行中学校ではない、中高一貫校への就学を希望する、こういうような場合でございます。  その場合に、例えばその自治体が中等教育学校をつくりました、これに全員が希望していて、いわゆる現行中学校への希望者はいない、こういうようなことも想定されるわけでございます。その場合には、やはり中等教育学校と必ず中学校をということで、法制的にはそういう縛りがかかるわけでございますけれども中学校は開設はされているが事実上は休校のような状態になって、そして中等教育学校のみがその当該自治体にはあって、みんな希望するからということでみんなが中等教育学校に行っている、中学校としては組織としてのみある意味では存在する、そういうようなことは運用としてはあり得るというふうに思います。  先回は法制的な解釈につきまして申し上げたわけでございますけれども実態の運用としては、今先生指摘されたような点につきまして、私どもはそんなふうに考えております。
  86. 西博義

    ○西委員 大変明快なお答えをちょうだいいたしました。  本当にこの中高一貫制度というのは使いようによってはいろいろな可能性がある、考えれば考えるほど、現場の教育委員会の皆さんがいろいろなことを可能性としてお考えになると思いますが、その一助となればと思って、いろいろなケースを今お伺いしているのです。  続いて、また妙な話になるかもしれませんが、中等教育学校と併設型の学校の違いについて御質問申し上げたいと思います。  この相違点は、お伺いしたところ、教員の任免権が違う、それから学校の組織体が同一か同一でないか、こういうことが基本的な違いである、こういうことを伺っております。これは地理的な条件、例えば同一の地域にあるのか、離れているということが要件なのか、これが一つでございます。  中等教育学校のイメージは、今までずっと議論している中で図の上では長方形にかきますので、ずん胴形というイメージがどうしても強いのですが、それに対して併設型は高等学校中学校を併設するということで、かぎ型といいますか、上が少し広がって、高校の方が大きくて中学部分が小さい、こういうような形が一般的に図の上ではずっとイメージされてきたわけですが、中等教育学校でも上の方を少し広げるというような形が可能なのか。それから、併設型の学校でもそのままずん胴で同じ形が可能なのか。  それから、中学校高等学校のそれぞれ何校かで構成されて、例えば複数の中学校から一つ高校というケースもありますし、複数の中学校から複数の高等学校という構成の一体型の中高一貫というような形もあり得るのかどうかということを担当者の局長お願いしたいと思います。
  87. 辻村哲夫

    辻村政府委員 二つの形態中等教育学校と併設型の学校の違いでございますけれども基本的なところは、今、西先生がおっしゃったとおりでございます。  教師の任免権の違いでありますとか、より本質的には学校の組織体としての同一性ですね、六年間原則として同じ生徒学校生活を送るということ。その際に、一つ学校としてこれを運営するのか。その強まりぐあいが少し緩やかで、一応中学校高等学校は独立しておりますけれども、その間を選抜なしでつなぐというか、これが併設型と中等教育型の基本的な違いだと思います。  地理的にどのくらい離れているかどうかということは、これはもうそれぞれの物理的な事情等によってあるわけでございまして、何メートル離れていたらこちらでなければいけないというふうなことはないわけでございます。そういうふうに御理解をいただければと思います。  それから二つ目の中等教育学校と併設型のイメージであるわけでございますけれども中等教育学校は六年間同一の生徒が原則過ごす、そこでの教育効果をある意味ではメリットとして生かしているわけでございます。そういう意味では、通常は、ずん胴形と申しますか、同じ生徒が同じ定員で推移するということであるわけでございます。  したがいまして、中途でそれをふやす、欠員補充とかということはもちろんあり得ると思いますけれども、それを大幅にふやすというようなことになりますと、いわゆる中等教育学校型の趣旨というものはいかがかなと思います。しかし、法制的にこれがノーかどうかと言われれば、それはいろいろな考え方があり得るだろうというふうに思います。  それから、ずん胴形と言われるものでございますけれども、これは中学校高等学校が、それぞれは独立している、しかし入試選抜なしにつながれるということでございますので、その長所を生かす意味では、中学校から進む子はもちろん選抜なしに高等学校部分に行きますが、それ以外に高等学校のところで新たな他校からの生徒を受け入れやすくするという仕組みとして我々は考えているわけでございますけれども、それでもそういう、中、高が半ば独立しつつ、中学校を終えて高等学校、それも六年間、いわゆるずん胴形で過ごすということも理論的にはあり得るだろうというふうに思います。  それから、さまざまな高等学校中学校の組み合わせで中高一貫校をつくるわけでございますけれども、それはさまざまなケースがあり得るというふうに思います。趣旨といたしましては、先ほど申し上げておりますように、六年間の一体的な教育を系統的に行う、そういう趣旨に立っていろいろな組み合わせが考えられるのではないか、こんなふうに思っております。
  88. 西博義

    ○西委員 具体的なことを細かくお教えいただきましてありがとうございます。  時間ももうほとんどございませんので、最後に、今までずっと皆さん方の中で大変気にされてきたことは、中高一貫を行うことによって受験が低年齢化する、こういうことでございます。  前回の大臣の答弁をお聞きしていますと、それぞれの専門の先生が調査書を書かれるから余り影響力がないというような話をされていたように思うのですが、特に小学校の場合はお一人の担任の先生が中心になってほとんどの科目並びに生活指導的なことの評価をされるわけでして、そういう意味では、過剰な競争率を引き起こすような制度になりますと、大変先生方にも負担がかかるといいますか、先生への影響というのは大変大きくなるということが中学校との大きな違いだと思うのですっ現場の先生に聞きますと、そうなると五、六年生はエース級を投入しないとだめだな、こういうふうな話もしておりましたけれども。  やはりそういう意味で、私は、入学時の競争率というのは余り上げない方がいい。もしも、例えば十倍が二十倍になるとするならば、初めに抽せんをして、ある程度のところでいろいろな内容を、調査書だとか面接だとかいう形にしていただいた方がむしろ当初の私たちの考え方に近くなるのではないか、こういう考えさえ持っております。  最後にその点を一言、大臣に御感想をお願いして、終わりたいと思います。
  89. 町村信孝

    町村国務大臣 いろいろな方法が可能だろうと思いますし、事前に抽せんである程度人数を絞るというのも、私は、考え方としては十分あり得るのではないのかなと。  いずれにしても、学力試験、点数で入学者を決めるということだけはやめてもらいたいという点がはっきりしておれば、あとの方法は多様でいいのだろう、こう思っております。
  90. 西博義

    ○西委員 どうもありがとうございました。
  91. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、石井郁子さん。
  92. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 日本共産党の石井郁子でございます。  新しくつくるという中等教育学校について、類型という問題がございますので、質問させていただきます。  中教審の第二次答申によりますと、中高一貫教育教育内容の類型を、現在の高等学校の学科のタイプに即して、(a)普通科タイプ、(b)総合学科タイプ、(c)専門学科タイプに分類し、三つ目の専門学科タイプについては、いわゆる職業学科、芸術科、理数科、体育科、外国語科などに分けてございます。  これは中等教育学校として、この三つ、あるいは今具体的に挙げられた専門学科のこういうタイプの学校ができるというふうに理解していいのでしょうか。
  93. 辻村哲夫

    辻村政府委員 後期課程の段階あるいは併設型の場合の高等学校におきまして、そういった三つのタイプがあるということでございます。(石井(郁)委員「専門学科もいいですか」と呼ぶ)はい。専門学科もある。  普通科総合学科も専門学科も、一般の高等学校と同じように、中高一貫教育におきます後期の段階での学科のあり方としてはあり得るということでございます。
  94. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 特に専門学科でいうと、大変具体的に出ていますので、ここは芸術科の中等教育学校もあるということですね、今の御答弁ですと。  そうしますと、この中等教育学校の前期課程に入学するときに、私はこういうタイプの学校を選びますということになるわけですね。そう考えていいですね。
  95. 辻村哲夫

    辻村政府委員 中学校に入りますとき、あるいは中等教育学校の前期課程に入りますときに、後期課程あるいは併設型の高等学校の段階でどういったカリキュラム、教育内容が用意されているか、学科が用意されているかということを見通しながら志望者は志望をするというようなことになると思います。
  96. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 そういうふうに考えますと、結局、中等教育学校の前期課程に入学をする、つまり、現行でいうと小学校から中学校入学するという時点でいわば専門を選ぶということになってしまうわけですね。あるいは、自分の将来の職業を選ぶということにも重なるかもしれないということになるのですね。これはやはり大変重大な問題だろう。少なくとも現在の公教育ではそういう体系をとっていませんから、私はこれでいいのかなというふうに言わざるを得ません。つまり、学校教育法では、中学校専門教育をするということになっていないわけでしょう。  それから、特に進路にかかわって言いますと、進路を選択する能力を養うということになっているかと思うのですね。しかし、ここではもう進路そのものを決定するということになるわけで、今回の改正でも、中等教育学校というのは、後期課程現行高等学校目的目標、前期課程は中学校目的目標というふうに書かれていますよね。そうすると、これは私はちょっと矛盾するのではないのかと言わざるを得ないのです。つまり、学校教育法から見てもこういうことがあり得るのかというふうに思うのですけれども、いかがでしょうか。
  97. 辻村哲夫

    辻村政府委員 先生お尋ねは、小学校の段階で、三年先と申しますか四年先を見通しての選択ということについての御疑義についてのお尋ねであろうと思うわけでございますが、現在におきましても、小学校を卒業した、あるいは小学校の段階からそれぞれの適性を発揮する子供たちはいるわけでございます。したがいまして、中等教育学校の後期の段階において、普通科だけでなく、総合学科という形でいろいろなコースを用意するということだけでなく、芸術とか音楽とかスポーツとかというような形の専門教育を行う学科が想定されていて、それが中等教育学校の後期の課程において用意されているということはあり得るというふうに思います。  ただ、実際に、それぞれの中等教育学校をどういう規模で、そしてまた専門学科を含めてどんな内容の学科を用意するか、どういう特色を持った中等教育学校をつくるかということはそれぞれの設置者が判断するわけでございますが、生徒実態保護者ニーズ、そういったさまざまなものを十分に調査して決定するわけでございます。  したがいまして、その当該地域において、仮にでございますけれども、およそそういったものが求められていないというところに、そういう中等教育学校がつくられるということはないだろうと思います。  そういうことで、さまざまな調査を踏まえた形で慎重な検討を経て設置されるということであれば、それはあり得る。それぞれの設置者の判断によって専門学科が設けられるということも当然あり得る、排除する必要はない、こんなふうに考えております。
  98. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 小学校卒業時点でいろいろな自分の能力に合ったことを選ぶというのは、例えば私学へ進む場合にはあり得ることですよ。それからまた、そういう特別な才能を持った子供さんたちもあるでしょう。  今私が問題にしているのは、学校教育法で定められている公立学校あるいは公教育、義務教育というものの考え方を言っているわけです。それにはそういう規定などないわけですから、私は今回、今局長の御答弁などを聞いていましても、これは学校教育法を事実上逸脱するというか、そういう考え方に立たない限りこれはっくれないのではないかというふうに思うのですよね。これは私は、どうしても今の御答弁では大変問題を含んでいるというふうに思っています。  それから、もう一点ですけれども、私はあるところでこんな話を聞きました。あるお母さんが、今中学校はどうなっているのか、中学校入学すると途端に将来何になるかをアンケートをとらされる、それで答えなければいけない、子供も親も、この子の将来なんて今から決められませんと。それは本当にそうですよね、私は大多数はそうだと思うのですよ。  ところが、これは後でも出てくると思いますけれども、現在は非常に早くその子の、個性あるいは多様化という名のもとに、将来までも中学一年で決めなければ、コースを選ぶのに学校として振り分けが困るというような形で言われているのですね。そういうことが事実上も進んでいるのだけれども、だから私は、学校教育法にちゃんと沿った考え方からすると、やはり逸脱ではないのかと言わざるを得ません。もう一遍、これは大臣お願いしましょうか。
  99. 町村信孝

    町村国務大臣 中学一年でのアンケートというお尋ねがありました。  どういう状況かはよくわかりませんが、多分、漫然と学校に行ってはだめだよ、自分の将来というものを考えながら今一生懸命勉強したり遊んだりするんだよという、一つ教育的な手段としてそういうことをやっているので、そこで例えば私は弁護士、お医者さんと書けば、それに必ず行かなければならぬといったぐいの調査とは違うのではないかなという印象を持ちました。  それから、学校教育法との関連をお尋ねでございます。  これも累次御答弁を申し上げておりますけれども、確かにそれは、特色あるという意味では、中学一年の段階から一般の中学校とは違ったカリキュラムがあってもいいのだろうと思います。ただ、基本中学校学習指導要領高校学習指導要領をベースにしながら、そしてだんだん上の学年に行くほど選択肢が広がっていくということを考えているので、例えば商業高校に併設をされる中学校の、その中学一年で専ら商業のことばかりやるということには、それはならないのだろうと思います。  ですから私は、必ずしも小学校六年の段階で一種の進路を決定しなければならないということを意味するものでもないのだろう、こう思いますものですから、委員の御指摘趣旨はわかりますが、別に法令的に見て問題はないのではないのかな、こう思っております。
  100. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私は、この点は大変重大な問題を含んでいるなと思っておりますので、今後とも問題にしていきたいと思うのです。  いずれにしても、いろいろ質疑でなされていることでいいますと、子供がいろいろ多面的な能力を持っているということと、それを固定的に見て将来こういうコースあるいは職業に行かなければいけないかのような、やはり職業選択と能力の多面性というのは簡単ではないというふうに思うのですね。イコールではない、まず。だから、どうもこの中等教育学校は、併設型を含めて、その辺が非常に狭く考えられているのではないかということを、これは私の考えとして申し上げておきたいというふうに思います。  次に、いずれにしても、十二歳の選抜ということが大変問題になっているわけですよね。このことで、一昨日の質疑とかかわって、もう少しはっきりさせていただきたいというふうに思うのです。  一昨日は、きょうも御答弁いただいていますけれども、新しくできる学校の収容定員、そして学校特色がある、だから選ぶことが必要であるし、妥当性を持っているというような御答弁かと思います。その学校特色に合うかどうか、学校の理念に合うかどうかとか、その学校の理念を実現し てくれるかどうかということで生徒を選ぶ、その選抜が必要だということでございますけれども、そこで、この特色ということで、一方、大臣の方は、それぞれの小学校中学校もこれからは特色が必要であるということを強調されていらっしゃったと思うのですね。  そうしますと、要するに中等教育学校以外の公立学校、その小学校への入学も、あるいは小学校から中学校への入学選抜が必要になるというふうにならないでしょうか。いかがでしょうか。
  101. 町村信孝

    町村国務大臣 それは必ずしもそうではないと思います。  通常のというか一般の公立小学校中学校高等学校特色をぜひこれからはつくり出してもらいたいということは申し上げました。しかし、そこはやはり公立学校ということでありますから、一定の制約があって、定員というのはやはりそれなりに、先ほど答弁にあったように設けなくてもいいのだろうと思いますが、ただ、私は今一遍にそれは進まないと思いますが、通学区域弾力化ということを少しずつ進めているわけでございます。  もう少し先に行った姿を考えたときに、例えば歩いて十分、十五分、二十分ぐらいのところに三つの小学校があるという場合に、その三つの学校にそれぞれ特色があるとします。それは比較の問題ですが、私はこの学校がいいなと思っても、今の仕組みだと、あなたはAという学校に行きなさいという形で教育委員会から指定が来てしまいます。そうすると、どうもBという学校へ、特色があって、本当は私は、距離もそんなに変わらないのであっちに行きたいのだけれども教育委員会の指定だからAという学校に行かざるを得ないということになると、やはりそこで特色ある学校づくりというのが阻害されてしまうのではないのかなという意味で、そういう方向というものが僕は今すぐできるとは思いませんし、それこそまさにそれぞれの市町村のお考えになることだと思うのですが、私は、義務教育だから、小中学校だからもうこの学校しかないという今のやり方では、特色のある学校というのがっくりづらいのではないか。そこはそこで、やはり選択肢があってもいいのではないか。  そうすると、A、B、Cとあって、Aというところにほとんど集中してしまって、定員といいましょうか、物理的な収容能力を超えてしまったらどうするのだという御疑問が多分出てくると思います。私は、その場合には一定のルールで、それこそくじでも何でもそこはやって、物理的に入れないのだからそれはしようがないですよといって、Bという学校に若干の方々は移っていただくというような形はあろうかと思いますが、しかし、だからといって、Aという学校にたくさん集まるのだからそこで選抜をやるかというと、それは違うのだろうなと私は思います。
  102. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 私は、やはり通学区域弾力化とか、いろいろ文部省で議論されているわけですけれども、今の大臣の御答弁を伺っていましても、これはちょっと大変なことになるのじゃないのかなと思うのですね。  特色を出す、そして選べるということの行き着く先は、やはり選抜になるわけですよ。それもやむを得ないということまで大臣はおっしゃっているわけで、その方法はいろいろあるけれどもと。これは文部省はそういう方向で、今後、公教育についてそういう弾力化を進めるということとして確認してよろしいのでしょうか。
  103. 町村信孝

    町村国務大臣 誤解があったら大変失礼をしたということになります。  これは、今いささか私の個人的な考え方を、そのA、B、Cなどというのは申し上げたのでありまして、まだそこまで文部省全体が踏み切ったわけではございません。ただ、必然的にそうならざるを得ないのではないかという、ちょっと論理的帰結の話をしただけで、現実はまだそこまで行っておりませんし、そこまでの方針を文部省が固めたわけではございません。まだ内部で議論している段階。  ただ、通学区域の拡大といいましょうか弾力化といいましょうか、これは既に事例集を昨年出したり、例えばいじめがある場合はこうですよとか、こういう場合はこうですよという事例集を昨年出して、できるだけこういう事例のときは現実に教育委員会でも認めていますよ、そんなことを全国に周知をしているということで、一遍にどこまで進むかどうかは別にして、方向としては今私が申し上げた方向にある。ただ、一遍に私が先ほどちょっと御説明をしたところに今すぐ行くかというと、そこまではまだとても行かないだろうな、こう思っております。
  104. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 大臣の個人的な御見解ということでございましたけれども、しかし、大臣の御答弁はやはり文部省を規定するのではないでしょうか。私は、そういう意味ではこれは本当に大変な発言を聞いたと思ったものですから、ちょっと一昨日の御答弁も精査をさせていただきましてきょう伺ったわけです。  しかし、どう言ったらいいのでしょう、あくまでも大臣の、個人的な見解ということで済ませていいのかなというふうには思いますが、まあ、それはおいておきます。本当は撤回していただきたいなという気はあるのですが、おいておきたいというふうに思います。  さて、もう時間が少しなんですが、私はどうしても伺いたいのは、新しくできる中高一貫と併設型と、大多数が既存のまま、この矛盾です。  先週土曜日に、いつも「教育トゥデイ」という番組をNHKで報道しておりますが、ちょうど中高一貫の特集でございまして、そこでは八〇%近くの保護者中高一貫教育導入の動きを知っているということがございました。先ほどは、国民的な議論になっていないという意見が一方ではあるのですけれども、そういう関心も高いということも事実だと思うのです。  しかしその中で、あるお母さんが、全部を中高一貫校にするための第一歩なのでしょうかと。だから、普通皆さんは中高一貫についてそういう認識をされていると思うのですね。つまり、高校入試がなくなる、何度も言われるような、この地獄のような高校入試がなくなる、こういう中高一貫なら望ましいし、あってほしいというふうに願っていると思うのですけれども、しかし、最初に申し上げましたように、これは一部の特別な学校高校入試がなくなるという話であって、大多数はそれは残るわけですね。  この問題は、本当に文部省としてこれでいいのかということなんですよ。既存中学校高校のつなぎ、入試の問題について、これも文部省の方は、入試の方法をいろいろ変えるとか、変えていただきたいとかいう形での御答弁かなと思うのですが、そうではなくて、ちょっと先を急ぎますけれども、本当に既存の中、高のつなぎをどうされるのか。この高校入試について、今後、今のような入試をずっと続けるのかということをちょっと踏み込んだ御答弁をいただければと思うのですが、いかがですか。
  105. 辻村哲夫

    辻村政府委員 高等学校の現状でございますけれども進学率九七%という中で、特定の高等学校にということでない限りにおきましては、ほとんどの志望者が高等学校には進学しているという状況にあります。  そこで、問題は、いわゆる特定の学校に志望者が集中し、そのことが受験競争を過熱化しているということ、それから、その際の選抜の方法が知識の量の多寡を競い合うという、その点にあるという認識を我々は持っているわけでございます。  そういうことで、やはり各高等学校教育を展開する、責任を持って預かって、責任を持って教育をするわけでございますから、それぞれの高等学校特色等を踏まえた、選抜自体は必要であるというふうに思いますが、ただ、そのあり方につきましては、今言いましたような点が主な課題であろうかと思うわけでございますけれども、そういう課題を踏まえまして、この入試改善につきましてはさらに努力をしていく、こういうのが今の文部省の立場でございます。
  106. 石井郁子

    ○石井(郁)委員 今すぐはそういう踏み込んだ御答弁にならないのかと思いますけれども、これは明らかに矛盾ですよ。  だって、ある子供にとっては本当に、今国民的に、地獄のようなと先ほど民主党さんの議員立法にもありましたけれども、この受験戦争をやはりなくしてほしい、中学校教育をゆがめているという問題が指摘されながら、できる新しいところでは、それはありませんよと言いながら、大多数はそこを残しておく、こんなことが私は許されるのかというふうに思うのです。  教育というのは、特に子供の側から見て、公正で公平が原則だと思うのですよ。しかも義務教育という問題があるわけですから。そこをこんな形で踏み破るということは、私は許されないというふうに思っています。今の高校入試というのは、方法をいろいろと変更というか、考えれば考えるほどますますがんじがらめになっている、決して入試は緩和していないわけですから。  それから、特定のところに集中すると言いますけれども、やはり子供たちからしたら、厳しい入試での振り分けになっているのですよ。そこが中学校をゆがめているという問題なんですよね。子供たち一人一人の心をゆがめているという問題ですから、本当に今英断をもってこの高校入試を廃止する。学校教育法の施行規則五十九条にあるわけでしょう。高校入学選抜を課すというところがここから来ているわけですから、私は、学校教育法を変えるのだったら、今こここそを本当に変えてほしかったという思いなんですね。  そういう意味で、希望する者、子供たちが全員入学できるという条件は客観的にある。そして、そこでみんなが、高校中学校もやはり英知を絞るという段階に来ているわけです。ぜひそのことを心からお願いをします。  それから、私は多様化ということで言うと、高等学校多様化ということでここ数年進んできたこの高校実態が本当に何なのかということについても分析、検討を加えた上でこの問題にも接近をしたいというふうに考えています。  大変時間をオーバーいたしましたが、以上のことを強く申し上げまして、質問を終わりたいと思います。どうもありがとうございました。
  107. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、保坂展人君
  108. 保坂展人

    ○保坂委員 社会民主党の保坂展人です。  先日来の参考人の皆様のお話にもあったように、今回の中高一貫、こういうものを社会的に承認させていくためには、とりわけ大学入試における選抜のありようがいわば劇的に変化をしていかなければならない、そこが変わらなければ、この中高一貫ということのある方向の転換の趣旨がうまくいかないのではないかという指摘がございました。  この点についてまず文部大臣に伺いますが、大学入試における転換、これをいっ、どのように始めようとされているのか、具体的なそういったプランが今明快に見えているのか、そこを伺いたいと思います。
  109. 町村信孝

    町村国務大臣 先ほど、前のどなたかの御議論にもございましたので、若干重複になるかもしれませんが、大学入試選抜方法、私は相当変わってきた、こう思っております。もちろんまだまだ従前型のところもありますが、例えば国公立大学で見ても、面接、小論文、実技、英語のリスニング、推薦入学、帰国子女特別選抜、社会人特別選抜などなど、非常に多くの国公立私立もそうなんですが、変化を遂げてきております。そうした動きをさらに求めていっていただきたいな、各大学で努力してもらいたい、私はこう思っております。  また同時に、現在大学審議会では、二十一世紀の大学像を描きながら入試のあり方も議論をしていただいております。例えば、アドミッションズオフィスというのでしょうか、大学の入試担当部門、これを、今慶応とか同志社とかでやっているようでありますが、慶応の総合政策学部というのでしょうか、そこでは、もう年に三回やっていたり、このほかにも九月入学のために二回試験をやったりというような形で、相当いろいろな工夫、努力が国公私立を通じて行われている。こうした方向でさらに努力をしていきたいし、また文部省としてもこれからよりよい方策を求めて考えていきたいと思っております。
  110. 保坂展人

    ○保坂委員 重ねて伺いますが、何度もの中教審答申も、他の答申もそうなのですけれども、例えば、小学生が十時、十一時に塾から電車で帰ってくるという状態がありますよね。それから、この点は当委員会で昨年も指摘したところなんですけれども、ゼロ歳、一歳、二歳、そのころから幼児に対して、幼児じゃないですね、乳幼児に対していわば早期教育ということがなされて、これは大変子育て環境を激変させている。  文部大臣に伺いたいのですが、今、指摘されてきた受験競争あるいは偏差値一辺倒の価値観は依然として深刻な状態なのか、あるいはそういうものはもう過去のものになっているのか、どちらだとお考えでしょうか。
  111. 町村信孝

    町村国務大臣 なかなかどちらかということを明確に判断する基準がないわけでありますが、依然として、偏差値といいましょうか、点数でしか物事を見ないというような傾向は、親御さんにもあるし、社会にもあるし、また子供たち本人にもあるのだろう、こう思います。ですから、先ほど来どなたかの御議論にもありましたが、まず、要は、例えば社会に出るときに、ある大学を出ていればどこでも入れるという状況がおかしいので、そこは実際随分変わりつつあるなと思っております。それがどんどん下の方へおりていきますと随分変わってくるのだろう、私はこう思っております。  まして、早期教育弊害委員言われました。先般の中教審の中間報告にも書いてございましたが、それは一般的に言えば決して好ましいことではないということをかなり明確に、子供には遊びが必要だとか、いろいろな説明が入っておりました。そうしたことも含めて、全体として見たときに、決してそうした塾通い等々が緩和している状況ではない、むしろ統計的に見ると塾通いが若干ふえているという状況でありますから、やはり何とかそれをよりよい方向に持っていきたいとは考えております。
  112. 保坂展人

    ○保坂委員 率直に言って、子供が少なくなって少子化が進んで、いわば受験の門の広さは変わらないわけですけれども、行く人数は減っているわけですね。そうすると、まあ緩和されるのかなと思いきや、そうではなくて、社会に対する不安も重なってか、教育投資だけは、どうしても親はよい学校、少しでもよい偏差値というところから、まだその呪縛から抜け出していないというのがやはり率直な現状だと思います。  しかしながら、今回の中高一貫は、そういった受験エリート校化しないというところに重きがあるわけで、これは前提条件となっていると理解をいたします。  そうすると、父母に対して、大学受験に有利かどうかという、父母の持っている、あるいは今のお父さん、お母さんたちが育ってきた子供時代の学校体験から何から、人生の過半を占めた価値観をいわば転換していただく必要がある、その定規を一回変えていただく必要があるわけだと思います。  どのようにそういう父母に説得力を持った呼びかけができるのか、その点について文部大臣にまた伺いたいと思います。
  113. 富岡賢治

    ○富岡政府委員 事務的にちょっと御説明いたします。  先生指摘のように、先ほどの中教審の中間報告でも、家庭が、平均値との比較とか偏差値などの相対的な順位ということにとらわれている状況というのが浮かび上がっているわけでございます。日本の親に対しまして、そういうことでは決して子供たちがうまく育たないということで働きかけていく必要があるという御指摘をいただいておりますので、私ども文部省といたしましては、中高一貫ということだけでなくて、むしろ全体の家庭教育におきましてそういう配慮をしていただく必要があるということで、例えば今回のこれから御審議いただきます補正予算案等におきましても、ゼロ歳、一歳、三歳のあたりから、例えばお母さん、お父さん方に家庭教育手帳などで、いろいろそういう点の配慮が必要だというようなことで働きかけてまいるというようなことも今いろいろ考えているわけでございます。
  114. 保坂展人

    ○保坂委員 もう時間も短いので、十分大臣が答えられる内容ですから、ぜひ直接お答えください。  実際に受験至上主義的な価値観はあります。そして、そうじゃない中高一貫をこれからつくっていこうというのが今回の趣旨なんですね。そうすると、いわゆる私立中高一貫で、個性的な教育をしよう、あるいは比較的今の受験至上主義的なものにとらわれずにやろうといういわばポリシーを掲げてやっている学校が幾つかあるのですが、そこの学校はいいのですけれども、しかし一つだけ困るのは、大学に入れないということが起きるわけですね。少なくとも塾に行きながらじゃないと大学進学は不可能、こういう事態がこの中高一貫のプログラムの中で起きてくるのではないか、日本社会全体の転換が起きないとそういう心配がかなり現実的、具体的にあるのです。  どうでしょう、この中高一貫がスタートして、親の中の根底にくすぶっている受験・偏差値至上主義がやはりどこかで払拭し切れなくて、中高一貫にも通いながら塾にも通うという事態は御心配なさっておりませんか。
  115. 辻村哲夫

    辻村政府委員 中高一貫を構想するに当たって今の点は大変大きな課題で、中教審でも繰り返し議論されたところです。中高一貫教育内容の豊かなものにしていくということにあわせて、社会の評価観、それから大学における評価のあり方、具体的には選抜の方法、そのあり方ということもあるわけで、そういう全体を改革する中で中高一貫教育のよさもより生きていくであろう、こういうふうには思っております。
  116. 保坂展人

    ○保坂委員 文部大臣にお聞きしているので、ぜひお答えいただきたいのですけれども、今の点も先ほど聞いた点も含めて、今回のもとになった中教審答申は、やはり個性ある学校というのを、みんな同じような中高一貫である必要はないのだ、特に地域ニーズあるいは文化、伝統、そういうものに着目しつつそれぞれの個性をつくり上げていこうということをうたっております。  さて、ここで日本社会全体が転換をしなければ、うちの子の中高一貫校は受験校もいいじゃないか、受験校も一つのポリシーである、いわば特色である、個性であるという主張が地域、父母、くまなく持ち上がってきたときに、日本全国あちこちに行けば、いまだにうちの県から東大に何人入ったかどうかということが教育界の皆さんの関心事であり、けたがこれでは少な過ぎるということで大変な論議がまだ今だってあるわけですね。  どうでしょう。そういう個性が受験校化であるという地域の声がほうはいと起きてきたときに、そこをはねのける方策はあるのでしょうか。
  117. 町村信孝

    町村国務大臣 確かに、鶏が先か卵が先かというような部分が社会と学校関係であり得るのかなとは思います。  ただ、今私どもは、いろいろ各都道府県で検討している状況ども聞いているわけでありますが、いずれもそういうことではなくて、いかにそうではないところで特色を出していくかということで検討が進んでいるというふうに聞いております。  それから、ことしから中高一貫教育実践研究事業というのを各都道府県でやっていくわけでありますが、そういう際にも、例えばきょう出ましたいろいろな御議論を紹介しながら、そうした方針、考え方でできるだけ皆さんの御理解を得てやっていきたいな、こう思っております。  それから、何といっても、要するに学力試験をやらないという中高一貫学校でありますから、そこでいい点数をとれる子をもしとろうと思えば、やはり学力試験をやらざるを得なくなるでしょう。私どもは、学力試験をやらないというのは言うならば大前提として置いておりますから、この学校が直ちにそうしたいわゆる括弧つきの受験エリート校にはなり得ないのじゃないのかな、こう思っております。
  118. 保坂展人

    ○保坂委員 それじゃ文部大臣、最後の質問でございます。  ちょっとこれは通告に入りませんでしたので聞いていただきたいと思いますけれども、各同僚議員からあったように、そういう実験的なタイプの学校をつくるのは大変よいことだ。しかし、その実験的な学校に通わない、通えない、普通の現存の中学校に通っている多くの子供たちにとって、今回の改革は特別日常に関係をしないわけですよね。  そうしますと、例えばダイナミックに日本の学校制度を一挙に変えるというのはなかなか私も難しいというふうに思っているのですが、例えば、経済同友会が「学校から「合校」へ」ということで、学校の機能をもっとシンプルにして、そしていわば地域社会の参加なり子供たちの自発的な学びを組み合わせていく上でいろいろな提言をされています。  私自身も、一つの方向として大臣に聞いていただきたいのですが、例えば学校半日制、お昼で全部の授業は終わってしまう、そして午後の時間というのは、子供たちはスポーツをしたり、あるいは自立的なクラブ活動というか、例えばヨットを設計してつくったりとか、あるいはアニメーションをつくったりとか、さまざまな文化的な、あるいはスポーツも含めた活動の場にする、そういう実験校であれば、現存の学校を使って、校舎など別に施設は要らずにできるわけなんですね。例えばそういう方面での挑戦もぜひ考えていただきたいというふうに思うのですが、いかがでしょう。  要するに、今の日本の詰め込み教育が非常に過重負担になっている、そこのところを思い切って発想を変えていく、そういう提案に対して、お考えはいかがでしょうか。
  119. 町村信孝

    町村国務大臣 私もかつて、こういう職業につく前に、そういう議論をし、学校半日制という、そういう書き物を実は書いたこともございます。大変おもしろいアイデアだろうと思います。  ただ、やはり必要なことは、基礎、基本というのはいかなるレベルでもしっかりやっておかなければならないのだろうな。基礎、基本が午前中だけで全部済むのかどうか、それは私もよくわかりませんけれども、今の学習指導要領は確かに盛りだくさんですから、それを思い切って絞って、厳選をして、その中から、あと、どう自由にそれを展開していくのかな。やはり基礎、基本を押さえるというところだけは私どもは忘れてはならないのだろう、こう思います。
  120. 保坂展人

    ○保坂委員 これにて終わります。
  121. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  122. 高橋一郎

    高橋委員長 これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。山原健二郎君。
  123. 山原健二郎

    ○山原委員 私は、日本共産党を代表して、学校教育法の一部を改正する法律案に対し、反対の討論を行うものであります。  この法律案の主たる内容は、現行中学校高等学校に並立して六年制の中等教育学校設置できるようにするものであります。  本法案に反対の第一の理由は、この中高一貫教育の選択的導入が、選抜受験競争の低年齢化をもたらすということであります。  今、私立中高一貫校を目指しての塾通いで、小学校に新たな荒れや学級崩壊が起きています。また、受験に失敗した十二歳の挫折が大きな心の傷を残すことも参考人から報告されました。  唯一、公立て実施されている宮崎県五ケ瀬中学校高等学校選抜も、約四百名の中から調査書や面接など点数化したもので六十名を選び、その中から四十名を抽せんで選ぶというものでございました。  この中高一貫校入学選抜を課す以上、小学校段階からの熾烈な競争と選別に拍車をかけることは明らかであります。  しかも、同じ義務教育でありながら、中等教育学校に入れた一部の生徒は、高校受験のないいわゆる安定的な学校生活や効果的な一貫教育などを享受し、ほかの多くの生徒は、これまで同様、高校受験の重圧にさらされる中学校生活を余儀なくされるのであります。  第二の理由は、この中高一貫校に多様なコースを設けるとともに、専門学科タイプの一貫校もつくろうとしていることであります。まだ判断力の不十分な小学生に進路の選択を迫り、将来の進路をも固定化してしまうというとんでもない結果になりかねません。  このように、六年制中等教育学校設置法案は、子供教育に一層困難を持ち込むとともに、教育の機会均等保障の原則を崩すものとして断じて認めることはできません。今なすべきことは、中学校の生活が高校受験の重圧によってゆがめられているという状況からの解放であります。  私は、公選制教育委員会のもとでの教育委員として高校全員入学を実現した経験がありますが、生徒たちは生き生きと勉学に励み、学園に自由濶達な空気があふれたことを覚えております。今こそ高校進学に当たっての選抜をなくすべきであります。そのために、高校入学を希望する者すべてに高校教育を保障すべきであります。  今、中学生の人口は減少しており、高校を新たに建設しなくとも可能であります。高校希望者全員入学を実現し、中学校高校教育一貫性のある豊かなものにすべきであります。このことが国民から求められている改革の方向であります。  このことを強調いたしまして、私の討論を終わります。  なお、専修学校専門課程卒業生に大学への編入学の資格を与えることなどは賛成であることを申し添えまして、討論を終わります。  以上です。
  124. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて討論は終局いたしました。     —————————————
  125. 高橋一郎

    高橋委員長 これより採決に入ります。  内閣提出学校教育法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  126. 高橋一郎

    高橋委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  127. 高橋一郎

    高橋委員長 ただいま議決いたしました法律案に対し、河村建夫君外五名から、自由民主党、民主党、平和・改革、自由党、社会民主党・市民連合及び粟屋敏信君共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を求めます。藤村修君。
  128. 藤村修

    藤村委員 私は、提出者を代表いたしまして、本動議について御説明申し上げます。  案文を朗読して説明にかえさせていただきます。     学校教育法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び関係者は、中高一貫教育の選択的導入にあたり、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 中高一貫教育導入は、新しい学校種を設けるなど今後の中等教育全体の改革の端緒を切るものであることを踏まえ、「中高一貫教育研究会議」等において児童・生徒保護者ニーズ地域実情に十分に配慮して実施されること。  二 中高一貫教育内容は、「ゆとり」のある学校生活の中で、児童・生徒個性創造性を大いに伸ばすという本旨にのっとり検討され、受験準備に偏したいわゆる「受験エリート校」化など、偏差値による学校間格差を助長することのないように十分に配慮すること。  三 中高一貫教育を行う学校では、入学者の選抜にあたって学力試験は行わないこととし、学校個性特色に応じて多様で柔軟な方法を適切に組み合わせて入学選抜方法を検討し、受験競争の低年齢化を招くことがないように十分に配慮すること。  四 各都道府県等においては、中高一貫教育導入に際して、「研究会議」等を通じて、幅広い関係者による協議を行い、一貫教育内容入学者の決定方法、通学区の設定など地域実情等を踏まえたものとなるように努めること。  五 国は、中高一貫教育推進にかかる実践研究事業の一層の充実に努めること。 以上であります。  何とぞ御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  129. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  130. 高橋一郎

    高橋委員長 起立多数。よって、本動議のごとく附帯決議を付することに決しました。  この際、本附帯決議に対し、文部大臣から発言を求められておりますので、これを許します。町村文部大臣
  131. 町村信孝

    町村国務大臣 ただいまの御決議につきましては、その趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。     —————————————
  132. 高橋一郎

    高橋委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  133. 高橋一郎

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  134. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、先刻付託になりました内閣提出参議院送付教育職員免許法の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。町村文部大臣。     —————————————  教育職員免許法の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  135. 町村信孝

    町村国務大臣 このたび、政府から提出いたしました教育職員免許法の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  二十一世紀を控え、今日の社会は大きく変化し、学校教育においてもさまざまな課題が生じております。特に最近、児童生徒の校内暴力、いじめ、登校拒否等は極めて憂慮すべき状況にあり、学校教育の主たる担い手である教員の役割はかつてなく重要になっております。  教員の資質能力は、その養成、採用、研修の各段階を通じ形成されるものでありますが、とりわけ、大学での養成教育において、使命感を持ち、子供の悩みを受けとめられる、真に教員にふさわしい人材を育成することが緊要と考えます。  また、社会人の有する専門的な知識、技能を広く学校教育に生かすため、学校教育への社会人の活用をより積極的に進める必要があります。  さらに、現場の要請に適切にこたえ、現行免許制度を一層柔軟なものとする必要があります。  今回御審議お願いする教育職員免許法の一部を改正する法律案は、昨年七月の教育職員養成審議会答申を受け、以上の観点から、教員免許制度の改善を図るものであります。  次に、この法律案内容概要について御説明申し上げます。  まず第一に、普通免許状の授与基準に関し、大学の養成教育において、教え方や子供たちとの触れ合いを重視し、教科指導、生徒指導、教育実習等の教職に関する科目の単位数の充実を図るものであります。  あわせて、得意分野と個性を持つ教員を養成するため、一種免許状及び二種免許状に係る教職課程に新たに選択履修方式を導入するものであります。  第二は、社会人の学校教育への活用を一層促進するため、特別免許状制度及び特別非常勤講師制度小学校並びに盲学校、聾学校及び養護学校のすべての教科に拡大するとともに、特別免許状の有効期間の下限を延長し、特別非常勤講師については許可制から届け出制へと改めるものであります。  第三は、いじめ、登校拒否、薬物乱用、性の逸脱行動等の問題に適切に対応するため、三年以上の教職経験を有する現職の養護教諭が保健の授業を担任する教諭または講師となることを可能とするものであります。  第四は、盲学校、聾学校及び養護学校の各部において、精神薄弱者である幼児、児童、生徒に特殊の教科以外の教科の指導を行う場合、盲学校等の普通免許状に加え小学校等のいずれかの学校の普通免許状を有していれば、部及び教科の種類にかかわらず全教科の指導を可能とするものであります。  第五は、一種免許状授与の基礎資格に、大学に三年以上在学し大学院への入学が認められた場合を含めることとするものであります。  第六は、学位授与機構の認定に係る短期大学専攻科において、一種免許状の授与を受けるための単位修得を可能とするものであります。  最後に、この法律平成十年七月一日から施行することとするものであります。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださるようお願い申し上げます。
  136. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時二十八分散会      ————◇—————