○岩切参考人 私は、今年の三月まで、今お話に出ましたように、
宮崎県の
五ケ瀬中学校・
高等学校に勤務しておりました者でございます。
今御案内にありましたように、
五ケ瀬中学校・
高等学校は九州のちょうど真ん中にございまして、九州脊梁山脈のふもとといいますか、非常に環境のいいところに
設置してございます。この
学校での
中高一貫での体験をもとに、きょうはお話をさせていただきたいと思っております。
まず初めに、
五ケ瀬中・高校についてでございますが、お手元にパンフレットをお配りしてございますけれ
ども、三つぐらいに特徴をまとめてみますと、第一番目に、先ほどから出ております、
中学校と
高等学校を接続した
学校であるということでございます。
ですから、当然教師は中高兼務発令になっております。
中学校籍の
先生には
五ケ瀬高等学校勤務を、
高等学校籍の
先生には
五ケ瀬中学校勤務をということで、中高の
先生が相乱れて授業に行っておる。ですから、横に座っておられる
先生が今まで顔も見なかった
中学校からの人、高校からの人で、お互い教科書を見せ合いながらそういう継続的な話もできるというようなこともございます。
それから、
生徒も一緒に、
学校行事等すべて、
生徒会活動から全校朝礼から、すべて中高一緒に生活をしております。そういうような県立の
中学校と
高等学校を接続した
学校であるということ。
それから
二つ目に、
全寮制の
学校ということでございます。
宮崎県の全県一円から募集してございますので、僻地というところでもございますので、
全寮制になっております。
生徒たちは、中学、高校、すべて同じかまの飯を食べ、ふろに入り、和気あいあいと、クラス全体が兄弟のような、すべていいことも悪いことも知り尽くしたような
全寮制の生活を送っておるということであります。
寮生活というのはいろいろ大変な面もございますけれ
ども、簡単に言えば
人間学を学ぶといいますか、自分の主張もあるときには必要なこともありますし、そればかりでは協調性がないと皆からいろいろ言われたりということで、
全寮制ならではのいろいろな生活を送っておる。そういうことで、
全寮制のためにハウスマスターという、簡単にいいますと舎監でございますが、教諭が寮に家族で泊まり込んで、生活、学習面の全般の
教育を面倒を見ておるというようなところでございます。
また、ホームステイということで、
全寮制で
地域との連携がとれないといけませんので、
地域の家庭に全
生徒をホームステイに出しまして、いろいろなものを
地域の方から指導してもらっております。
それから三つ目が、
地域を生かした体験学習をやっておるということで、
中高一貫から生まれたゆとりを体験学習の時間に回しております。
中学校で年間七十時間、
高等学校で二単位ということでやっておりますが、
地域のいろいろな方々に来ていただきまして、また
地域の役場関係、関係機関の方なんかの連携もいただきましてやっておるということで、簡単に申しますと、五ヶ瀬中・
高等学校というのは、御案内のように
中高一貫、
全寮制、体験学習をふんだんにというようなことが主な特徴ではないかと思います。
そこで、二番目に参りますけれ
ども、この
学校での
中高一貫の
部分、今お話に出ておりますこのところだけを取り上げまして、私の考え、体験からくるものをお話しさせていただけたらと思っております。
三つほどまとめておきますと、まず
一つは、異年齢、異なる年齢での集団生活、これは非常に大きいことではないかと思っております。
中学校一年から高校三年までの幅広い年齢集団が一緒に生活するということは、物すごい、やはり経験からしますと、勉強してくれているのではないか。
先ほ
ども申しましたように、行事、
生徒会活動、部活動、クラブ活動、すべて、全部一緒でございます。私も、初め行くまではどんなものかと思ったのですが、全校朝礼にしましても、中一生から高校三年生まで同じように並んで同じように私の話も聞いてくれます。最初はどこを視点にと思っておりましたが、結構後はもう全体的に話しておるということをやりました。中に、高校三年生の体験談なんかを中学一年生が目を真ん丸にして聞いている面もありますし、中学一年の
子供のかわいい状態を高校三年生が見まして、逆に教えられるとかいうことで、お互い教えたり教えられたりという、異なる年齢集団の中での生活ができるというようなことでございます。
中に、私
どもは、今いろいろな
学校で大変なところもありますが、発想としましては、
先生が指導するだけではなくて、同じ仲間同士であります
生徒同士の先輩が指導するチャンスもあっていいのじゃないか。旧制
中学校ではありませんが、先
輩の言うことを後輩が聞くというような、いい
意味での縦の指導といいますか、リトルティーチャーということで発想いたしましたが、そういうことをさらに進めていきたい。
今、さらに
学校の現場の
先生が言っておりますのは、ミドルティーチャー、卒業生が
大学生になったらまた来てもらって指導してもらおう、さらにラージティーチャーということで、大人になったらまた母校に帰って指導してもらおうということで、どんどん指導する者をふやしていったらというようなことを今考えております。
それから、ファミリー
制度ということで、中学一年から
高等学校三年まで、私学の一貫校あたりではいろいろなされているところもあるやに聞いておりますが、各学年の一人、二人の
生徒と
先生一人入りました八名、九名のグループ、ファミリー
制度というので、清掃活動とかいろいろな日常活動をやっておるということでございます。修学旅行に行きましても、ファミリーの先輩に土産を買ってくるとか、いろいろな面でグループでまとまっているようでございます。
そういうことで、卒業生がいろいろな行事のたびに
学校に帰ってきております。中には、
学校に帰ってきて、夏休み家に帰らずに
大学に帰ったりということで、おしかりを受けることもありますけれ
ども、そういう面で先輩後輩というのは、ある面では母校愛につながるといいますか、そういうような面があるのではないかと思っております。
それから、
二つ目でございますけれ
ども、さまざまな体験活動を行っているということで、
中高一貫で生じたゆとりを本校の場合は自然体験、
社会体験、いろいろな体験学習にフルに使っておるということであります。環境のよい、四億三千万年前の化石も出てきます、天文台も近くにございます、いろいろな面で、
生徒が入学するときには、そういうことができる、南国
宮崎でもスキーができるということで入学する子がたくさんおりますので、そういう体験学習を入れながら、フォレストピア学、
五ケ瀬学というようなことを、今
文部省の研究開発
学校で体験学習の教科書づくりに当たっているというところであります。
古老の方、名人の方、それから営林署にお頼みしていろいろな面で力をいただいたり、
地域との連携もその中で行うことができます。
特に、この体験学習で私が今思っておりますのは、
中学校時代にいろいろなこういう体験をさせますと、その中で自分の適性といいますか、自分に合ったものを見つける
子供が多うございます。そうすると、この方向の職業につきたい、ああいうことに行きたいということで、高校になったらある
程度そういう勉強をし始めます。ですから、現在、やはり体験の少なさが進路決定には問題があるのではないかと。特に
中学校の場合、いろいろなことをやるチャンスがございますので、高校入試で途絶えることがございませんから、いろいろなことを経験することが進路決定に非常にプラスになっているというのは感じることができました。
それから、教師の方も、いろいろな体験学習の課題研究等がございます。グルーピング研究がございますので、教師自身も勉強になる。教科書だけの、自分の範囲内で教えるというのではなくて、
生徒からいろいろなものを持ってきますので、教師も常に新鮮な気持ちで前向きに動かざるを得ないというような面もございます。
中高一貫の場合は、出てきたゆとりを何に使うかということで、その
学校のスタンスが決まるのではないかと思っております。
それから三つ目でございますが、六年間というスパンで物事が見られるというのは大きいのではないかと思います。高校入試で途切れることがございません。ですから、いろいろな面で、
生徒指導面でも進路指導面でも長いスパンで
子供を見ることができます。
現在でも
中学校、
高等学校それぞれ頑張ってもらっておりますが、どうしても高校入試という
一つの途切れがございまして、
一つの視点で中高つながった職業指導といいますか、六年間を見越して、中学一年ではいろいろな職業体験的なことを教えてみたりとか、それをどう高校につなぐかということができます。
生徒指導面でも、長いスパンで
子供を見ますので、今まで三年勝負、三年勝負というのがどうしても現場にはありますので、
子供たちをそういう逆の面で追い詰める面もあります。そういうことがございませんので、心のゆとりといいますか、職員側にも
生徒側にもある面では出てくるのではないかなと思っております。
そういうことで、六年間のスパンの発想、高校入試で途切れないというのは、教師の視野も広がる。今の教師は、ほとんど高校の
先生は
中学校を知りません。
中学校の
先生は高校を知らないという面が多いのですけれ
ども、現に高校の
先生が本校に来まして、中学一年のあのまとわりつくようなかわいい時期から、どんどん反発的になり、高校三年になりますと大人になっていく状態を見ますので、そういう流れの中で
子供が指導できるという面はあるかと思います。
最後になりますけれ
ども、いろいろな面で六・三・三制のよいところもたくさんあると思いますが、ある面ではこういう
中高一貫というのも
一つの方法ではないかと。こんなに世の中が多様化しております。私としましては、やはりいろいろな場面で、みんな一緒という考えではなくて、違いを認める
社会といいますか、それぞれの
個性によって、六・三・三制に行く子もおれば、六・六で行く子もおれば、それを、違いを認めるような、
個性を認めるような
社会にもうそろそろなっていっていいのではないかなというような気がいたします。
そういうことで、
中高一貫のいろいろな経験というのを生かしていただくと、やはりすばらしい複線化の
一つの方法ではないかなということを感じておるところであります。
ただ、新しいことといいますのは、どうしても、スタートラインというのはいい面もありますし課題もあります。ですから、しばらくはやはりいろいろな面で行政のバックアップは必要ではないかなと。本県の場合は、県知事さんを初めいろいろな英断をいただいておりますので、ある面ではやりやすい環境であったと思っておるところでございます。
以上でございます。どうもありがとうございました。(拍手)