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1998-05-15 第142回国会 衆議院 文教委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月十五日(金曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 高橋 一郎君    理事 稲葉 大和君 理事 遠藤 利明君    理事 小川  元君 理事 河村 建夫君    理事 肥田美代子君 理事 藤村  修君    理事 富田 茂之君 理事 西  博義君       今井  宏君    大野 松茂君       奥山 茂彦君    小杉  隆君       佐田玄一郎君    下村 博文君      田野瀬良太郎君    中山 成彬君       野田 聖子君    渡辺 博道君       安住  淳君    鳩山 邦夫君       池坊 保子君    旭道山和泰君       松浪健四郎君    石井 郁子君       春名 直章君    保坂 展人君  出席国務大臣         文 部 大 臣 町村 信孝君  出席政府委員         文部大臣官房長 小野 元之君         文部大臣官房総         務審議官    高  為重君         文部省生涯学習         局長      富岡 賢治君         文部省初等中等         教育局長    辻村 哲夫君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         文部省高等教育         局長      佐々木正峰君  委員外出席者         文教委員会専門         員       岡村  豊君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十五日  辞任        補欠選任   山原健二郎君     春名 直章君 同日  辞任        補欠選任   春名 直章君     山原健二郎君      ――――◇――――― 五月十四日  中高一貫教育の推進に関する法律案藤村修君  外三名提出衆法第一四号)  学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七七号) 同月十五日  サッカーくじ法案の廃案、スポーツ予算の大幅  な増額に関する請願石井郁子紹介)(第二  三四〇号)  同(大森猛紹介)(第二三四一号)  同(金子満広紹介)(第二三四二号)  同(木島日出夫紹介)(第二三四三号)  同(穀田恵二紹介)(第二三四四号)  同(児玉健次紹介)(第二三四五号)  同(佐々木憲昭紹介)(第二三四六号)  同(佐々木陸海紹介)(第二三四七号)  同(志位和夫紹介)(第二三四八号)  同(瀬古由起子紹介)(第二三四九号)  同(辻第一君紹介)(第二三五〇号)  同(寺前巖紹介)(第二三五一号)  同(中路雅弘紹介)(第二三五二号)  同(中島武敏紹介)(第二三五三号)  同(中林よし子紹介)(第二三五四号)  同(春名直章紹介)(第二三五五号)  同(東中光雄紹介)(第二三五六号)  同(平賀高成紹介)(第二三五七号)  同(藤木洋子紹介)(第二三五八号)  同(藤田スミ紹介)(第二三五九号)  同(古堅実吉紹介)(第二三六〇号)  同(不破哲三紹介)(第二三六一号)  同(松本善明紹介)(第二三六二号)  同(矢島恒夫紹介)(第二三六三号)  同(山原健二郎紹介)(第二三六四号)  同(吉井英勝紹介)(第二三六五号)  中学校における和装教育実施に関する請願(森  喜朗君紹介)(第二三六六号)  同(奥田幹生紹介)(第二五一四号)  同(粕谷茂紹介)(第二五一五号)  同(高鳥修紹介)(第二五一六号)  定時制通信制教育充実に関する請願肥田  美代子紹介)(第二三六七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 五月十三日  スポーツ振興くじ導入反対に関する陳情書  (第二三〇号)  同外一件  (第二七一号)  同外一件  (第三一五号)  学校図書館に専任で専門司書教諭の配置に関  する陳情書  (第二七〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  学校教育法等の一部を改正する法律案内閣提  出第七七号)      ――――◇―――――
  2. 高橋一郎

    高橋委員長 これより会議を開きます。  内閣提出学校教育法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。町村文部大臣。     —————————————  学校教育法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 町村信孝

    町村国務大臣 このたび、政府から提出いたしました学校教育法等の一部を改正する法律案について、その提案理由及び内容概要を御説明申し上げます。  今日、教育改革は国政の最重要課題となっており、来るべき二十一世紀において、一人一人がそれぞれの個性創造性を伸ばし、我が国が活力ある社会として発展していくためには、学校教育制度について、できる限り一人一人の能力・適性、興味・関心、進路希望等に応じた多様で柔軟なものとなるよう改革を図っていく必要があります。  このような観点から、この法律案は、中等教育多様化を推進し、生徒個性をより重視した教育を実現するため、現行中学校高等学校制度に加えて、中高一貫教育制度を導入するとともに、高等教育の段階において、専修学校専門課程修了者について大学編入学できる道を開くこと等制度弾力化を図るものであります。  次に、この法律案内容について御説明申し上げます。  第一は、新しい学校種として中等教育学校を創設することであります。中等教育学校は、小学校における教育の基礎の上に、心身の発達に応じて、中等普通教育並びに高等普通教育及び専門教育を一貫して施すことを目的とするとともに、国家及び社会の有為な形成者として必要な資質を養うこと等の目標を定めることとしております。修業年限は六年とし、前期課程及び後期課程に区分することのほか、教科及び学科教職員等につい て必要な規定を設けることとしております。  第二は、同一の設置者が設置する中学校高等学校における中高一貫教育についてであります。地方公共団体等中学校及び高等学校を併設し、これらの学校の間のより緊密な連携を図り、中等教育学校に準じて一貫した教育を施すことができるものとしております。  第三は、中高一貫教育に係る行財政措置についてであります。公立中等教育学校に関する教職員定数の算定、教職員給与費及び施設費等に係る国庫負担については、現行中学校及び高等学校と同様の措置を講ずることとするとともに、中高一貫教育を実施する公立中学校に係る教職員給与費及び施設費について新たに国庫負担措置を講ずることとしております。  第四は、専修学校専門課程修了者大学への編入学等についてであります。専修学校専門課程文部大臣の定める基準を満たすものを修了した者は大学編入学できることとするとともに、大学学生以外の者で大学の単位を修得した者が当該大学に入学する場合に、相当期間を修業年限に通算できることとしております。  このほか、所要の規定の整備を行うこととしております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容概要であります。  何とぞ、十分御審議の上、速やかに御賛成くださいますようお願いをいたします。
  4. 高橋一郎

    高橋委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 高橋一郎

    高橋委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。渡辺博道君。
  6. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 おはようございます。自由民主党の渡辺博道でございます。  本案の質問に入る前に、本日、新聞やテレビで報道がありましたインドネシア状況、大変厳しい状況にあるということの報道でありました。また、日本人学校生徒が拘束されている、帰れなかったというような報道でありましたが、この辺の状況についておわかりになりましたらまず大臣から御報告をいただきたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。
  7. 町村信孝

    町村国務大臣 今渡辺委員指摘のとおり、ジャカルタあるいはインドネシア状況大変緊迫をしているというふうに聞いております。けさの閣議でも、外務大臣から、その状況の一端について御報告があったところでございます。  さて、このジャカルタにございます日本人学校でございますが、現在、幼稚園部が百二十八名、小学部七百二十二名、中学部二百九十一名、小中学部合わせまして千十三名というかなり大規模な学校でございます。昭和四十四年に設立されまして、現在、派遣教員数四十二名、現地採用教員数十五名という状況でございます。このほか、バンドンとスラバヤに各日本人学校がございますが、これらの地域は今のところ安定した状況だということでございますが、十五日は臨時休校としたようでございます。  このジャカルタ日本人学校でございますが、昨日、帰ろうと思ったところ、なかなか下校のルートが難しいでありますとか、暴動がまだ続いているといったような状況を踏まえて、一部の生徒学校に泊まらせるということにしたようでございまして、正確なところはあれでございますが、日本時間の昨夜十一時現在で、七百五十一名の児童生徒が宿泊をするという状況になったようでございます。その後、ばらばらと父兄が迎えに来たりして、抜けていったようであります。  日本時間の六時過ぎからバスが出発をいたしまして、スクールバスで帰宅するという形でございますが、一時間あるいは一時間半のうちには全員が無事に自宅に帰り着いたという状況で、私どもも、その報にけさ接しましてちょっと安心しているところでございますが、当然きょうは休校ということでございましょうし、その後、こうした子女を含めて、邦人の保護、安全に万全を期していきたいということで、きょうの午後、臨時閣僚会議もあるようでございますけれども、いずれにいたしましても、この日本人学校生徒、そしてそこに働く皆さん方が安全に過ごせますように、今後しっかりとした情報収集に当たりますとともに適宜適切に対応してまいりたいと考えているところでございます。
  8. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 ありがとうございました。  アジアの一員として、やはりインドネシア状況大変気になるところでございまして、子供たちの生命の安全を確保していくこと、これが本当に大事なことだと思いますので、適切な対応をよろしくお願い申し上げまして、順次質問に入らせていただきます。  今回提出のありました学校教育法等の一部を改正する法律案、この内容についてでありますが、内容に入る前に、実は、大臣大変お忙しい中、毎日政務に携わっているわけでございますけれども、今文部省の中で一つの方針としてありますが、ゆとりある学校教育、そして生きる力をはぐくむ、こういったものを推進しているわけでありますが、大臣仕事ぶりというのは、まさにお忙しい中に、本当にゆとりがあるのかなという感じがしております。  そんな中でも、私は大臣ほど全然忙しくありませんものですから、忙中閑ありで、実は先般、東京芸大奏楽堂オープニングコンサートに行ってまいりました。さらには、「プライド 運命の瞬間」という副題がついておりますが、東京裁判の様子をテーマとした映画試写会にも行ってまいりました。  まずは、東京芸大奏楽堂内容でありますが、奏楽堂は大変すばらしい状況でありまして、木の香りがまだまだぷんぷんとにおうところでありまして、その中ですばらしいコンサートを聞かせていただきました。やはり音楽というものは人の心を和ませるものだとつくづく実感させていただいたわけであります。我々国会議員というのは、まさに忙しい中で、とかくそういった心のゆとりというものをなくしてしまうことがあると思います。そうした中で、いっとき、心を休ませていただいたことに感謝を申し上げたいというふうに思います。  さらには、この「プライド」という映画であります。津川雅彦さんが主演でありますけれども、これは今月の二十三日に一般公開されますが、その前に議員皆さん方への試写会ということで、その試写会に参加させていただいたわけであります。  この「プライド」という映画東京裁判がどのような形で進展していったかというような内容でありまして、東條英機一つテーマとして、人間の生きざまを描いた映画であります。この中では、当然のことながら、連合国の、勝利者側の論理というものが貫かれておりまして、日本がやはり悪の象徴であるというような意味合いのものがこの中にうたわれております。そういった中で、裁判というものが公平に、本当に公正にできたのだろうか、こういったものが一つテーマになっております。  その裁判の中で、唯一反対意見反対判事インドの出身でありますパール判事であります。パール判事は、この裁判正当性について疑問を持っている、日本が負けて、そしてこれから復活する新しい道を歩んでいく上においては全員が無罪であるというような内容コメントをしております。  インドにはこういったすばらしい判事がいたわけでありますけれども、今日、インドにおいては、先般、核実験の開始というようなことで大変残念であります。本来インドという国は、もっともっと人権を大事にした国であるのではないかというふうに思うわけであります。  私は、この「プライド」という映画を見たときに、やはり戦後の日本は、まさにここが起点になるのではないかなというふうに思うわけであります。戦後教育の中で、自由や平等、こういったものが植えつけられて、教育の中にしっかりと根づ いてきたわけでありますが、この自由や平等というものが本当に正しい意味で理解されてきたのかな、こういったものが私自身、一つの疑問としてあるわけであります。  その中で、私の意見と同様な形で、実は自由新報の中でコメントをなさっている奥野先生の言葉がありますので、これをちょっと引用させていただきたいと思います。「荒む学校教育問題への提言 取り戻したい日本のこころ」という題でありますが、戦後七年間の占領政策にそれは起因しているということであります。  その中の一節でありますが、   われわれは、歴史、とくに戦後七年間の占領  時代に何があったのかを、丁寧に調べ直してい  く必要がある。例えば、国会の採決さえ「それ  ぞれの担当部局が事前に占領軍側の承認を得て  おかなければならなかった事実を、知らなけれ  ばならない。当時の日本政府占領軍の一機  関、傀儡政府だったことの認識に立って、検証  するならば、冒頭に述べたような学校教育の  問題の"病巣"が初めて明らかとなり、というような内容であります。  したがいまして、これからの問題の中で、この教育改革を考えるに当たっては、やはり根本から見詰め直していく必要があるのではないかというふうに私は思うわけであります。そういった中においては、まず、この教育改革にあって、何をどういうふうに変えていくか、ぜひともこの理念というものをしっかりと掲げていただきたいというわけであります。  その中で、今般、四月二十八日付でありますが、教育改革プログラム文部省より出されました。この中に「基本的考え方」というものが載っております。この「基本的考え方」の中で「第一は、心の教育充実である。」ということをうたっております。心の教育充実をしていくことが一番必要である。そしてまた、その前提として、「我が国歴史と伝統、文化を大切にし、豊かな国際感覚独創性に富み、チャレンジ精神と大胆な行動力を持ったたくましい日本人を育成することが不可欠」であるというふうにうたってあります。  しからば、こういった基本的な考え方に立って、どのような形で具体的な教育改革を目指していくのか、これを具体的に挙げていただきたいわけであります。ここに述べられた基本的な考え方がまさに理念であるのかなというふうに思うわけでありますが、改めて、文部大臣より、この教育改革に伴う、その柱となります理念についてお聞かせいただきたいと思います。
  9. 町村信孝

    町村国務大臣 今の御質問にお答えする前に、先ほど私、日本時間で午後十一時と申し上げましたのは現地時間の午後十一時で、七百五十一名の児童生徒がというのを、ちょっと現地時間と日本時間を取り間違えましたので、訂正をさせていただきたいと思います。  今渡辺委員から、今次教育改革の基本的な理念は一体どこにあるのかという御指摘がございました。短時間で戦後教育を顧みるのは大変難しいことでありますが、一言で言いますと、戦後教育で大変すばらしいかった面もあると思います。これだけ教育が国民に普及をし、高校への進学率も九七%を超え、さらには高等教育への進学率も五 〇%になんなんとする、これだけ教育機会均等普及が図られたということは、間違いなく戦後教育のよかった点だろうと私は思っております。さらに、そこから生まれてきた人材が戦後の日本の発展を支えてきたということも間違いがないわけでありまして、そういう意味で、戦後教育のよかった点は積極的に評価をしていきたい、こう思っております。  ただ、他方、問題はなかったかと言えば、幾つかの問題がやはりあっただろうと思います。その一つが、今委員言われたような戦後の教育のみならず、戦後の日本社会を形づくってきた、例えば平等という考え方がございました。それもいい面があったと思います。みんな平等だということで、そのことがいろいろな面で日本の民主的な改革というものが進み、戦後それが憲法で保障されていくという中で、教育の面でもこの平等、みんなが教育を受ける、そうした形で普及していったという点があったと思います。  他方、それが今日いささか行き過ぎて、中教審の答申にも書いてございますが、やはり行き過ぎた平等主義、それがむしろ悪平等になってきている面もある。この際、この辺を脱却していきまして、やはり子供の一人一人の個性を伸ばしていくということが、裏返せば、余りにも平等だ、平等だということで、子供個性を圧殺してきた面があるのではないだろうか。そうした反省にも立たなければなりませんし、今回御提案を申し上げております例えば中高一貫制度の仕組みというものも、余りにも画一的、平等的であったそうした教育制度を、少しずつ弾力性を持たせ、選択制を持たせていくということ、それが基本的な考え方だ、こう思っております。  あるいは、戦前の反省に立って、戦後、個人権利あるいは個人の自由の主張というものが大変強く叫ばれました。これも戦後のよかった面であろうと思います。ただ、それもいささか行き過ぎると、本来、自由とか権利というものは公共の福祉のもとでという限定があることを忘れてしまって、無制限の自由の主張、無制限権利主張というものが行われがちになってきたということがあるので、当然それには義務とか責任が伴いますということを、日本社会全体もそうですし、日本教育現場でもそのことがバランスよく子供たち教育されてこなかったという面もあろうかと思います。そうした面を是正していくといったこと。  あるいは、余りにも知育偏重、知識の詰め込みといった戦後の教育の行き過ぎた面をこの際是正していって、子供創造性をどうやって育てていくか、子供個性を生かしていくにはどうしたらいいだろうかといったようなことを教育改革の今回の視点として据えて、戦後五十三年かかって築き上げてきたいい面は残しつつも、やはりこの際改めるべき点は改めていくということで、昨年の一月に教育改革プログラムを発表し、昨年八月改訂をし、またこの四月に改訂をしたという経過をたどっているわけでございまして、基本的な考え方は、今申し上げたようなことを重点として進めていきたい、かように考えているところでございます。
  10. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 基本的な視点というものは十分わかりました。  今回の学校教育法の改定の中には、中高一貫教育という一つ制度改正という大きな改正点があります。六・三・三・四制の新たな構築ということになりますけれども、そのほかに、専門学校からの編入という新たな制度もここに加えられるということであります。私は、この専門学校編入に関してのことについて中心にお聞きしたいというふうに思います。  専門学校そのものは、現在大変な生徒が通っています。資料によりますと、それぞれの八分野の中でそれぞれの学生が勉強をしておりますが、現在、専門課程では六十五万二千人余りの生徒が通っているというような状況であります。この専門学校成立そのもの昭和五十一年ということで、歴史が大変浅いわけでありますけれども、その間着実に専門学校に対する認識も変わってきております。その中で、新たな専門士という称号を与えることによって、そこに通っている生徒にとっても新たな目標ができたというふうに思うわけであります。そういった意味においては、今回の法改正においてはまた新たな第一歩が築かれるのではないかということで、大変喜ばしいことだというふうに思っております。  ただ、法体系または教育行政の体系の中から見たときに、第一条において書いてある「学校」というのは、大学から幼稚園まで第一条に規定されておりますね。そして、専門学校、実際は「専修学校」というふうに書いてありますが、専修学校については八十二条の二というところで規定されております。  そもそもそれぞれの目的が違うということで章立てが違うのではないかというふうに思うわけでありますが、こういった、そもそも目的の違うところの学校から編入をするというときに、片や短大という、同じように位置づけられておる大学があります。これらはともに競合関係にあるというふうに思うわけでありますけれども、今回の大学編入に関して、短大側から何か御意見といったものがあったかどうか、これをお聞かせいただきたいと思います。
  11. 佐々木正峰

    佐々木政府委員 大学審議会における専門学校卒業者大学への編入学審議に関連してお尋ねの点を申し上げますと、平成七年九月の大学教育部会審議報告に対しまして、日本私立短期大学協会から、短期大学専門学校とでは、現行学校制度上、その目的設置基準設置者の範囲、許認可権者等の基本的な要件が異なっていることから、専門学校卒業者大学への編入学については反対である旨の意見が出されたところでございます。  大学審議会においては、このような意見も踏まえながら、引き続き慎重に検討を行ったわけでございますが、学習ニーズ多様化への大学の適切な対応学生選択幅の拡大、専門学校における学習成果の適切な評価学校教育制度におけるいわゆる袋小路の解消などの観点から、一定の専門学校卒業者に対して大学への編入学の道を開くことが適当であるというふうなことから、平成九年の九月に審議経過概要を取りまとめたところでございます。  この点に対しまして、日本私立短期大学協会からは、専門学校卒業者大学への編入学を認める場合には、その専門学校教育課程大学教育課程整合性観点が重要である旨の意見が出されたところでございます。  大学審議会では、この意見を踏まえまして、専門学校に在籍した学科分野履修内容を考慮しつつ大学編入学を認めていくことが適当であるというふうな考え方を新たに導入いたしまして、専門学校卒業者大学への編入学の道を開くこととしたところでございまして、日本私立短期大学協会のおおむねの理解を得たというふうに考えておるところでございます。
  12. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 短期大学専門学校も、大部分が私立学校であります。したがって、お互いに競争関係にあるという中で、短大においては、自分の領域が狭まるのではないかというような危惧もあろうかと聞いております。片や専門学校においては、新しく編入学ができるということになれば、新たな入学の大きな魅力的な要因になると思うわけでありまして、両者の垣根というものがまさに低くなってきたなというふうに思うわけであります。  本来、制度が違うものを取り込むということ自体が、文部省、よくここまで決断したなというふうに思うわけであります。とかく文部省の場合は、制度にしっかりと守られて、こういった道だったらこれしかできないという形でいってきたのが今までの文部省であろうかなどというふうに思うわけでありますが、今回の改正においては極めて弾力的な運用をしていくということで、大変大いなる決断をしたというふうに思っております。  そして今回、専門学校短大との両者の関係を、やはり私はこれからそれぞれのすみ分けをしていく必要があるのではないかというふうに思うわけであります。それは、それぞれやはり設置の目的があるわけですね。その設置の目的があるわけですから、その設置の目的に沿った形の運営を必ずしていかなければならない。それがなくなってしまえば、その目的そのものもなくなってしまうわけでありまして、まさに垣根が全くなくなるということになってしまいます。  現実には、第一条の「学校」とあるのと、それ以外の学校であるというのは厳然と法の中で区別されている、この部分は明らかにしておく必要があると思うわけでありますが、ただ、そこに通っている生徒にとってみれば、学習意欲がある人間の受け皿として新たに制度としてこういったものができるということに関しては、大変喜ばしいことだというふうに思います。制度としてできた以上は、各種学校専門学校皆さん方のさらなる努力をぜひとも期待するわけであります。  それと同時に、短大の方は、もっともっと自分の短大の魅力というものを考えていかなければならないというふうに思うわけでありますが、文部省といたしましても、この短大というものをどのようにこれから位置づけていくのか、この辺についてお伺いしたいと思います。
  13. 町村信孝

    町村国務大臣 今委員指摘のように、短大専門学校専修学校の垣根が現実には低くなってきているというのは御指摘のとおりだろうと思います。むしろ専門学校専修学校の方が少し生徒数というのは伸びておりまして、短大が急激に減ってきているという状況であろうかなと思います。そういう意味で、実態的にも競争関係があるというのも御指摘のとおりかなと思っております。  私は、今委員指摘のように、それぞれ設置目的がある、専門学校専修学校はやはり一定の技術というものをしっかり身につける、言うならば、すぐ社会に出て即戦力といったような面があろうかと思います。ですから、むしろ、四年制の大学を出た後またそこに行く人さえある昨今でございます。  他方短大は、短期間のうちに、二年間のうちに教養教育と実務的な教育を両方得るというのが短大で、それを四年間というのが四年制の大学ということだろうと思います。ただ、その辺の境目が、言葉ではそう言えても、実態がどうなのかなというところがあります。そこで今、一つは、大学審議会の場で、大学院も含めてでありますが、それぞれの教育機関の本来期待される役割、果たすべき役割は何なのかということを議論していただいておりまして、この夏には審議会の中間報告をいただくという予定にしてございます。  今、短大のごとについてお触れになりました。今まではどちらかというと特に女子の学生が多かったわけでありますが、私は、むしろこれからは、例えば生涯学習ということを考えたときに、社会人とか高齢者の受け入れを促進するでありますとか、あるいは公開講座といったようなものを通じて地域社会とのかかわりをもっと深めていくといったような新しい分野での取り組みというのもあるのではないのかな。アメリカでいうと、例えばコミュニティーカレッジというのがそれに近い存在、もちろん同じではございませんが、近い存在なのかなという感じもいたしております。  いずれにしても、カリキュラムを見直したり新しい学科をつくったり、短大もやはり魅力を高めていくという努力をしていただきたいと期待をしておりますし、また、そういう際には、文部省といたしましても、私学の経常費助成の中で、特に特色ある教育というものについては助成をしてきているわけでございまして、そうした方策を使いながら、一層短大の役割をしっかりと見定めながらその振興も図ってまいりたいと考えているところでございます。
  14. 渡辺博道

    渡辺(博)委員 短大につきましては、今大臣にそのような形でお話ししていただいて、短大自身も努力して、本当に魅力ある短大づくりを目指していくことが大事だというふうに思うわけでありますが、今度新しく学校教育法が改正になることによって、専修学校大学への編入という新しい門戸が開かれました。  当然のことながら、専修学校専門学校短大というのは、今言ったように、目的は違うけれどもまさに競争の中に入ってきているわけであります。その中で、やはり規制というものが短大の方から言われるわけでありまして、短大に数々の規制があるというようなことも言われるわけであります。  こういった具体的な内容については今回申し上げませんが、これからそういった垣根がだんだん低くなるのであれば、短大に課せられている規制ももう少し緩和してもらいたい、こんな意見も出 されているところでありますが、そういった意味においては、ぜひともこれからの審議の過程の中で十分に短大側の意向も採択していただいて、お互いにいい方向に進んでいくように方向づけをしていただければ幸いかと思います。  質疑時間が参りましたので、これで終わりにします。ありがとうございました。
  15. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、佐田玄一郎君。
  16. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 今回の学校教育法等の一部を改正する法律案について御質問をさせていただきます。  最近においては大変景気も低迷してまいりまして、当初予算も、文教予算は随分と皆さん方に頑張っていただきました。そしてまた、今回の緊急経済対策の特別委員会でも今議論をしておるところでありますけれども、私は、確かに今、景気の回復を図っていく、そしてそのための予算を割いていかなくてはいけない、そういうことももちろん大事なこと、一番大事なことであろうかと思いますけれども、もっと大事なことがあるのではないか。それは、橋をかけたり、道路をつくったり、土地改良をしたり、そして商工業の振興を図る予算をつけてみたり、それ以外にももっと大事なのは、何といっても人づくりではないか、私はこういうふうに思っているわけでございます。  そういうことを考えますと、どんなに社会資本が整備されても、その中におる人間がやはりしっかりしていなかったら二十一世紀の日本はないのではないか、そういう意味におきましては、ぜひともこれからも大臣を中心に頑張っていただきたい、私はかように思っております。  先ほど緊急性ということを申し上げましたけれども、文教政策の中で今一番大事なのは何か、こういうふうに問われたときに、これは当然のことであろうかと思いますけれども、やはり心の教育、そしてまた、それに伴うところのいろいろな犯罪に対する対処、どういうことが重要になってくるのではないかと私は思っております。  先般、ある書類を見ましたら、平成八年度において、公立小中高等学校及び特殊教育学校で発生したいじめの件数は、前年度より減少はしたものの五万二千件、そして公立高等学校で発生した校内暴力の件数は、過去最多の一万件に及んでいる。これは大変ゆゆしいことだと思うのです。多少減っているからこれはよかった、とんでもない話なんです。  これは皆さん方も御案内のとおり、神戸の須磨区で起きた事件であるとか、また栃木県の黒磯市で起きました中学生による教師殺害事件、こういうことを考えますと、一つ一つの事件が非常に悪質になりつつある。我々はこういうことに直面をして、しっかりとこれを理解し、そして短期的にも長期的にも対策をしっかりと練っていかなくてはいけないのではないか、私はそういうふうに思っているのです。  そういうことを考えますと、今一番大事なのは何か、文教行政もしっかりと、今何をしなくてはいけないのか、総花的であっては今いけないのではないか、私はこういうふうに思っているのです。例えばいろいろな局の中で、高等教育局であるとか生涯学習局であるとか、そういう局々が連携をとりながら、今緊急に何をしなくてはいけないか、再発を防ぐためには何をしなくてはいけないのか、こういうことをしっかりと踏まえてやっていかなくてはいけないと思っているのです。  私も実は政務次官をやらせていただいて、その中で神戸の事件が起きました。神戸にも行かせていただきました。そういう中において、この五十年のひずみというかいろいろな制度的な疲労、こういうことを痛切に現場で感じさせていただきました。そして、それを機会に私も、もう一度、自分の地元も含めて学校等を視察もさせていただきました。  その中で、書類上だけではわからない非常に大事なことがある。例えば去年の予算の中には、定数改善の問題、チームティーチングの問題、一見すると、これは過剰な教師の量じゃないか、こういうふうに誤解はされますけれども、その中で、きめ細かい子供たちへの対応、私は、こういうことはやはり非常に大事になってくるのではないかと思っているのです。  わけても、チームティーチングの問題もありますし、スクールカウンセラー、当初は、スクールカウンセラーなんてそんなことをやってもしようがないんじゃないかという意見がありました。しかしながら、私が神戸に行って一番感じたのは、このスクールカウンセラーの効果の絶大さ、そして必要性、こういうことをつくづくと感じました。であるからこそ、こういうふうなスクールカウンセラーであるとかチームティーチング、こういうことを皆さん方に理解していただき、なおのことこれが発展していくような方向でやっていかなくてはいけないのではないか、私はこういうふうに思っておるのでありますけれども、その点につきまして大臣はどういう御見解がございますか。
  17. 町村信孝

    町村国務大臣 佐田委員、大変熱心に文教関係、教育に取り組んでいただいておりますことを感謝いたしております。  今、戦後の五十年のひずみという観点から、あるいは政務次官時代の、例の神戸の事件の御経験、さらには地元のチームティーチングでありますとかカウンセラーの話をいただきました。確かに、私ども、当面できる緊急対応と、それから若干時間がかかるかもしれないけれども中長期の対応と分けて、それぞれ、こうした事件が起きないように、そして、事件が起きないという消極的な面にとどまらず、積極的に、もっと豊かな心を持ったたくましい児童生徒が育つにはどうしたらいいのだろうか、こういう観点で政策を展開し、教育改革を進めているわけでございます。  緊急対応ということで申し上げれば、今補正予算の御審議をお願いしているところでございますけれども、一定規模以上のすべての中学校に心の教室というものを置いて、少し間仕切りをしたり一定の整備をしまして、そこに心の教室の相談員を置く。御承知のように、スクールカウンセラー、平成九年度約千校、そして平成十年度は約千五百校という形で拡大はしておるのでありますが、専門の資格が要るということで供給源が非常に限られております。  したがいまして、例えば中学校全員配置といっても、そうした専門の方の養成が間に合いませんので、例えば、最近学校をおやめになった先生でありますとか、あるいは地域の青少年団体の指導者でありますとか、そういう方々に常時学校にいていただいて、そして子供たちの相談に乗る、常時何でも話してもらう。今、言うならば保健室登校といったような一つの形をとって養護教諭にみんなそれがいって、一日に三十人も四十人も来て、養護教諭もとても対応できないという実情がありますので、とりあえず、これは二学期からでございますけれども、そうした方々を配置して、そしてすべての中学校に三年がかりで配置をして対応していくというようなことを緊急対応として考えているところでございます。スクールカウンセラーの養成というものもこれから系統的にやっていかなければならない課題だろうと思います。  こうした緊急対応にあわせて、若干時間はかかっても、子供たちと先生方にも少しくゆとりを持ってもらおうということで、学校の週五日制といったようなものを一年早めて平成十四年度から完全に実施をし、それに合わせて指導要領等の改正も厳選してやるというようなことで、子供たちゆとりを持ってもらう、豊かな心をはぐくむ、土曜日、日曜日はまさに親子の触れ合いの時間として活用してもらう、そんなようなことで我が省の施策を進め、総力を挙げて今言ったいろいろなひずみの問題に対処をしていかなければいけない、かように考えております。
  18. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 大臣、今のお言葉にありましたように、スクールカウンセラーをふやしたいという気持ちはあるのですけれども、確かにこれは、たしか資格が、臨床心理士だとか大学の教授であるとか非常に限られておりまして、そういうことを考えたときに、ぜひとも早く文部省の方にも、こう いう資格が取れるような制度面の整備であるとか、そして、できるだけそういう方々が心置きなく学校で働けるような形に持っていっていただきたい、私はかように思っておるわけであります。  今回、教育改革の中で、教育改革プログラム、その前には当然中教審の中間報告、こういう文献が出てきておるわけでありますけれども、中を拝見させていただきますと、何か総花的なところがあるわけであります。もちろん各局で、何としてでも、少しでも文教行政を発展させるために御苦労はにじみ出ておるのでありますけれども、できるだけそういう調整をしながら、一つの大きな方向、国民の理解を得られるような方向をぜひとも総合的に考えていっていただきたい。その中で、お子さん方に対する教育について共通するものというのは、何といっても家庭と学校と地域の教育、私は、それはもう当然だと思うのですね。  私は前にも、財政構造改革のときに御質問させていただいたのでありますけれども、あのときは時間がありませんでした。そういう中で一番感じたのは、私、神戸に行ったときにも感じたのですけれども、教育委員会学校との立場。  教育委員会制度自体は、もう申すまでもなく、昭和二十三年から旧教育委員会法によるということなんですけれども、内容を見ますと、教育委員会の果たす役割というのは非常に多岐にわたっております。学級担任などの学校分掌の決定や教職員の服務監督などの人事管理であるとかカリキュラムの編成、実施、そして施設管理、児童生徒の在籍管理と、もうほとんどのことをやっておるわけであります。  この間も大臣には質問させていただいたのですけれども、では現状はどうか。この中においては、当然ながら、制度的には教育委員会学校管理規則というものをつくりまして、それにのっとって学校が運営されておるわけでありますけれども、実際問題、実際とそういう制度の面のギャップがある。これも五十年のひずみの中に入るのではないかと思うのですけれども、やはりちょっと違いがあるのではないかと思うのです。もちろん政令指定都市であるとか町村教育委員会とでは規模的にも違うと思うのでありますけれども。  本来でしたらば、教育委員長委員会の中で決定をされ、その下におります教育長が事務的な行為をされ、そして学校がそれにのっとって行っていく、学校においてはある程度の自主性を持ってやっていく、こういうことが述べられておるわけでありますけれども、現実的には、教育委員長というのは、本当にどこかの会社の社長さんが兼任でやっておったり、全く今まで関係のなかった方が、例えば町村あたりへ行くと全く関係なかった方々がやっておって、事務的な教育長がもうほとんどの権限を握られておる。こういうことを考えてみると、この形骸化した制度について、これでいいのかなと私は思うのですけれども、大臣はどうお考えですか。
  19. 町村信孝

    町村国務大臣 先ほど教育改革全体について、いささか総花的ではないかという御指摘もありました。  確かに、各局各課の仕事、これからやりたいことを全部連ねて何十ページかのものになっておりますのは、その中で、私どもも特に重点を主要事項ということで絞って、心の教育でありますとか、あるいは選択肢のある学校制度でありますとか、あるいは現場に自主性を持たせた学校制度あるいは二十一世紀を展望した研究の振興、四本柱という形で今展開をしてございまして、その辺はぜひ御理解を賜ればと思っております。  そういう中にあって、今、教育委員会のあり方あるいは教育委員長の選任の仕方等々の御指摘がございました。  私は今、学校を再び生き生きとしたものによみがえらせるためには、できる限り現場に近いところで物事が決まるようにしたらいいな、こう思っておりまして、学校現場にいかにいろいろな決定権をお渡しすることができるかということを中心として、今、地方教育行政のあり方ということを中央教育審議会に諮問をしておりまして、この夏にはまた答申をいただくことになっております。  できるだけ学校現場が決定権を持つ、問題があったとき、相談があったとき、教育委員会がそれを強力にサポートする、一番最後に文部省がいて全体をサポートしていくという姿。もちろん国は国として、基本的な、指導要領といったようなスタンダードを示したりとか、あるいは学校制度の枠組みを決めるとか、あるいは人件費なり施設なりのそうした条件整備のための支援をするという、国の一定の役割はこれからもあり続けると思いますが、しかし、それ以外のことは基本的に学校現場にお任せをする、それを教育委員会がどれだけしっかり支えられるかというのがポイントであろう、こう考えております。  今までややもすると、現場は教育委員会の方の顔色をうかがい、さらに文部省の方を見ていくという姿があったわけでありますが、そうではなくて、学校現場を中心にして、それをサポートするのが教育委員会でありそして文部省である、こういう構造に変えていくことが今次教育改革一つの大きなポイントであろう、こういうふうに考えております。  そういう中で、教育委員会の今のあり方が十分であるかという委員の御指摘がございましたが、決して十分であるとは私も思っておりません。制度的な面で変えていかなければならない部分もありますし、運用の面で変えていかなければならない面も多々あろうと思います。そのうち、必要なものは法律を改正し、あるいは政省令を改めるということも必要だろうと思います。したがって、この夏にいただく審議会の答申を受けて、次の通常国会になろうかと思いますが、必要な法律の改正等々をやりまして、より教育委員会の活性化を図っていきたい、かように考えております。
  20. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 大臣の言われたことにつきましては、「地方分権推進委員会勧告の概要」ということで、当然これは閣議決定されておりますが、この中に「教育長の任命承認制の廃止、その際、教育委員会の活性化のための方策についての検討」「文部省と都道府県、市町村教育委員会との関係の見直し」とある。  こういう中において、今まではガラスが一枚割れたからすぐ教育委員会報告するとか、ちょっとした器物破損ぐらいのことで教育委員会に、地方分権の中で、そんなことまでやる必要はないと私は思うのです。  と同時に、中央教育審議会の方でも、「教育分野の地方分権の推進のため、以下のような観点から審議。」ということで、「校長が責任をもってリーダーシップを発揮し、学校運営の自主性を確立していくこと」、これは確かにそうだと思います。  ただ、大臣に御理解いただきたいのは、もう学校の中だけで対応できないこともあるということ。その中で教育委員会なり文部省がサポートをしていく、これは確かだと思うのですね。今現場でどういう問題点があるのか、それに対してどういう対処をしていかなくてはいけないかということをぜひともしっかりと御理解いただいて、これからも対応していただきたいと思うのです。  例えば、さっき私が申し上げましたスクールカウンセラーの問題。神戸の事件が起きる前は、スクールカウンセラーが実験的に学校に行きますと、ほかの教師に非常に排他的な態度をとられる、こういうことが実際あったわけですよ。何か事が起きたときには大変に頼りになるわけでありますけれども、ふだんはなかなかそれを現実として学校側も受け入れづらいというところもあるわけであります。  それでは今のいろいろな事件であるとかこういうことに対処できないわけでありますから、例えば器物破損であるとかカリキュラムであるとかいうところの自主性はいいのですけれども、そういう中においてむしろ文部省なりが、ぜひともそういうところにしっかりとしたスクールカウンセラーの方々を配置し、しっかりと学校の中で心の教育ができるような体制づくりをやっていかなく てはいけないのではないかと私は思っているのです。  これは私見でありますけれども、そういうことを考えたときには、ある程度地位の高い人たちがサポートしていかなくてはいけないのではないかと思うのですね。これは一つの例ですけれども、例えば教頭クラスの事務官をしっかりと派遣して、そういう人たちによって常時対応していく。やはり見ておると、スクールカウンセラーも常時いらっしゃるわけではありませんで、期間を決めて行くとか、その中でやっているわけですから、どうしてもその辺でいろいろな事件が起きたり、そういうことが起きるわけでありまして、ぜひともそういう対応を考えていただきたい。この点につきましては、文部省の方はどういうふうにお考えですか。
  21. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 御指摘ございましたように、学校におきましては、校長、教頭の管理職を初めといたしまして、その他、例えば今御指摘の問題に絡めますと、生徒指導主事あるいは保健主事等連絡調整に当たります校務分掌組織が整えられておりまして、学校全体として一致した管理運営を行わなければならない、御指摘のとおりでございます。  また、教頭につきましても、現在、管理職選考試験等によりまして、各都道府県教育委員会におきましては適格者を確保するということを図っているわけでございますけれども、その際もできるだけ、学校内の経験だけではなくて、社会教育の経験や指導主事等の行政経験を経た方を積極的に評価するというような形で選考に当たりましたり、あるいは教頭の研修等におきまして、社会体験研修を、実質の幅広い経験を積ませることに意を用いておるところでございます。  中教審の今回の御審議におきましても、校長、教頭を含めまして管理職に幅広く適用するという観点から、任用資格の見直しについても御提言がございますし、現在引き続き検討をしているところでございますので、文部省といたしましても、その審議の結果も踏まえながら、御指摘のような趣旨ができるだけ各任命権者において実現できるような形で指導し、検討も続けてまいりたいと考えております。
  22. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 今、子供たちも大変に苦しんでおりまして、そういう意味におきましては我々に救いを求めている、私はそういうふうに感じておるわけでありまして、そういう中におきましては、ぜひともしっかりした体制づくりをお願い申し上げる次第であります。  それで、私が一番感じるのは、この間もいろいろな事件があって、これは地方分権には逆行するかもしれませんけれども、お聞き願いたいのであります。  黒磯市の事件を見ておっても、その中で、校長先生だけ一人で出てきて記者会見をされておる。その前の神戸の事件のときもそうでありました。校長先生だけが出てきておる。表面的かもしれませんけれども、そういうふうなことではなくて、むしろ私は、共同責任というのは変でありますが、管理監督している教育委員会も、決して校長先生のみに押しつけるのではなくて、そういうときには一緒に記者会見をされて、どういうふうに善処をするかとかも一緒に考え、対外的にも接していただきたいと思うのですけれども、この点、文部省はどう考えておりますか。
  23. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 先ほども御指摘ございましたように、教育委員会はそれぞれの市町村、都道府県におきます学校教育等の教育事業の行政的な全責任を負うという形で法令上規定されておるわけでございますので、通常の学校教育活動におきましては、もちろん校長が全責任を持ちながら所属職員を監督して学校運営に当たるということでございますけれども、御指摘のような地域社会に大きな影響を及ぼすような事件等が生じました際には、地方自治において教育行政の責任を持つ立場といたしまして、教育委員会がやはり積極的に校長を支援し、場合によっては担当の職員等を現地に派遣するなどの具体的な支援を行うということも非常に大切なことであろうかと思っております。  私どもといたしまして、個々の教育委員会の業務のあり方につきまして一つ一つ指示をするというわけにもまいりませんけれども、教育委員会委員あるいは教育長や職員等の研修会等におきましては、御指摘のような点の危機管理の状況も含めまして、具体的な職務のあり方等につきまして研修等で十分注意を喚起してまいりたいと考えております。
  24. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 教育改革プログラム、そして中教審の答申にも載っておりますし、地方分権推進委員会もそうでありますけれども、これから、任せるべきところは任せると同時に、ぜひとも校長先生にもしっかりとした権限を持ってもらって、毅然たる態度で私は対処していただきたい。同時に、校長先生に処理できない部分につきましては、しっかりと連携をとって、全体的な形で地域が一丸となって対応していただきたい。その中心になるのが教育委員会であるべきだと私は思っております。  例えば、今の事件のいろいろな状況を見ておりますと、前もっていろいろな予兆があって、その中においてやはりそういうお子さん方をどういうふうにしていくのか。急に外部機関が入ってくれば、お子さんのプライバシーもあるわけですから、そういうことを直接的にやるということではなくて、やはり常に教育委員会が、例えば児童相談所とか、大変凶悪になってきた場合には警察であるとか、他機関と連携をとりながらそれをしっかりと実行していただきたい、かように思っているわけであります。  ですから今回の法案も、私は、そういう意味におきましては一つの心の教育の延長線上にあると思っているのです。そういうことを考えた場合は、私が先ほど一番最初に申し上げたとおり、そういう意味におきましては同じ方向に向かっている法律でありますから、ぜひとも中高一貫、少子化が進んでおるわけでありますから、もう全部高校に行けるんだったらば全部高校に行けるようにしていく、私はこういうことが大事なんじゃないか、こういうふうにも思っておるわけであります。ぜひとも今回の法案につきましてもしっかりとやっていただきたいと思っております。  それと同時に、ちょっと話はずれるのですけれども、今回の法案は、専修学校から大学編入できるということが書いてあります。ただ、専修学校の中には、設備的にも、学科の問題にしろいろいろな学校があると思うのですね。そういう点につきまして、しっかりとこれは審査した上でやられるのだと思いますけれども、どういうふうにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  25. 富岡賢治

    ○富岡政府委員 このもとになりました大学審議会の答申におきましては、「修業年限が二年以上で総授業時数が千七百時間以上のもの」を基準にする等のこととか、「在籍した学科分野履修内容を考慮しつつ、大学等において編入学を認めていくのが適当である。」ということで、そこら辺の実施につきましては、すべて緩くというのではなくて、そういうふうなことで条件をつけるということで考えているわけでございます。
  26. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 要するに、勉強したいという方にはできるだけそういう場を与えていく、こういうことが大事なことだと思っております。  またもとに戻って恐縮なんでありますけれども、地方分権推進委員会、そして中央教育審議会において示されたように、校長が責任を持ってリーダーシップを発揮する、非常に大変結構なことであって、そして私も今申し上げたとおり、教育委員会のやらなくちゃいけない職務はこれから非常に大きくなってくるんじゃないかと思っているのです。そういう中において、しっかりと筋道を立てて国民にも理解できるような形でこれは訴えていっていただきたいと思っているのです。校長先生の身にちょっと余るようなことでも、何でも校長先生に任せるというのではなくて、そういう方向性をしっかり持ってやっていただきたい、かように思っておるわけであります。  児童生徒の問題行動等に関する調査研究協力者会議というのがあるのですけれども、簡単で結構ですが、これはどういう機関なんですか。
  27. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 これは、いわゆる神戸事件が起こりました後、学校の校内体制のあり方、それから学校と関係機関とのあり方について十分かどうかということについて、専門家のお知恵もかりながら検討してみようということでスタートしたものでございます。  先般、ただいま先生御紹介されたような会議の名前をもちまして報告が出されたところでございまして、校内体制につきましては、校長を中心にしっかりとした組織をつくるということ、それから関係機関について、例えば警察との関係等につきましては、従来、ややもすると警察との連携ということだけでちゅうちょする向きがあったわけでございますけれども、常に関係機関との連携を保って迅速、適切な対応をする、こういう趣旨の御報告をいただいたという経緯のものでございまして、今これを踏まえまして、各学校に、校内体制、関係機関との連携の充実強化ということについて私ども御通知申し上げ、その趣旨の徹底を図っている、こういう現状でございます。
  28. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 もう時間がなくなりました。この協力者会議の関係なんでありますけれども、この報告書には、「学校だけで問題をすべて解決しようとする「抱え込み」意識を捨てるべきこと、また社会全体がそのような意識転換を行うべきことを明言。」とあります。一見これを見ると、今までの地方分権と逆行するのじゃないか、こういうふうな誤解を招くのですね。  しかし、決して誤解じゃないのです。初中局長も大したもので、すぐその後にこういう通知を各教育委員会に出している。こういうふうに、どんどん連絡していただくというのは結構なんですけれども、よく説明をしていただいて、例えば地方分権推進委員会であるとか、そしてまた中央教育審議会の中間報告、ちょっと矛盾しているのじゃないかという印象を与えないように、これはぜひともそれをしっかりと仕分けをして理解できるような形でやっていただきたい。  まだまだ質問したいことはたくさんあるのですけれども、時間になりましたので最後になります。  学校教育だけで終わってしまったのでありますけれども、ほかに地域、そして家庭の教育があるのであります。今度サッカーくじなんかも通りまして、その中で青少年の健全育成と、そしてスポーツ振興でありますから、そういう意味におきましては、地域においては、老人会であるとか自治会であるとか子供育成会であるとか婦人会であるとか、各種団体を利用して、ぜひとも道徳面においても、そしてお年を召した方は昔の修身なんかも勉強されていますから、そういう面からしっかりと教育していただきたい。人のうちの子もしっかりとしかっていただきたい。  それと同時に、家庭の教育が一番難しいのですけれども、家庭の教育につきまして大臣はどういうふうにお考えでしょうか。
  29. 町村信孝

    町村国務大臣 地域、家庭、学校、三位一体でしっかりとした健全な子供たちを育てていくというのが基本であろうと思います。  家庭教育について特に御質問がございました。正直言うと、家庭というのはある意味では一番プライベートな部分でございますから、余り行政なり政治なりが立ち入ってはいかがかということでずうっと今まで自制してきて、余り物を言ってこなかったろうと思います。  ただ、昨今の状況を見ると、率直に言って、これをもう全く何も言わないでいいんだろうかということを考えまして、多分戦後初めてではないかなと思いますが、文部省あるいは中教審で、家庭教育の重要性、家庭のしつけの重要性ということを取り上げたわけでございます。もう学校に入ってくる前にかなり子供のいろいろな面での形成ができてくるわけでございますので、そういう意味で家庭教育の重要性というのは、私ども、これから声を大にして訴えていきたいし、そのためにじゃあ具体的に何をやるのか。  今厚生省とも相談をし、今回の補正予算でもそれをお願いをしているところでございますが、例えば女性が妊娠をしたとき、あるいは一歳半の健診、三歳あるいは六歳、そうした健診の都度にお父さんとお母さんに対して、今母子手帳というのがありますが、母子手帳にもう一つ親子手帳とでも名をつけて、それをすべての御家庭に配って、ただ渡すだけではなくて、できればそれを少し御説明し、研修会といったようなものも公民館などで開いて、そしてお父さん、お母さん、こういうことを考えてくださいということを試みてみょうがなと。どれだけうまくいくかわかりませんが、そういうことでもして一つの家庭教育のあり方をともどもで考えていく、そういうようなことを私どもとしては厚生省とタイアップしながらやっていきたい。  あるいは、父親不在の家庭教育ということが非常に多く言われております。そんなこともあるものですから、今経済団体等にもお願いをして、できるだけ残業をしないように、あるいは土曜日は休みなんだから、土曜日出勤などは命じないように、単身赴任も命じないようにというようなことをお願いしたり、さらに家庭教育に当たっては、土日の活用ということが非常に重要だろう、その辺も今、週五日制ということを念頭に置きながら、しっかりとした家庭教育ができるように、もちろん政治、行政がやることには限界があるし、ある一定の限界を超えてはいけないと思いますが、しかし、それでも一定の、できる限りのことはやっていかなければならない、こんなふうに考えているところであります。
  30. 佐田玄一郎

    ○佐田委員 終わります。
  31. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、中山成彬君。
  32. 中山成彬

    ○中山(成)委員 本日は、質問の機会をいただきましてありがとうございます。私は、中高一貫教育について御質問したいと思います。  今回の学校教育法の改正によりまして、中高一貫教育を導入することとされておりますが、私の地元である宮崎県では、既に全国に先駆けまして平成六年度から県立の五ケ瀬中学校高等学校を設けて、公立学校では唯一の中高一貫教育を行っております。私もいささかこの設立に関しまして関係した者として、学校紹介をいたしながら御質問いたしたいと思っているところでございます。  宮崎県は、県土の七六%が森林に占められておりまして、豊かな森林資源に恵まれているところでございます。日本文化の基礎をなす森林と人間の共生による「森とむらの文化圏」を形成しようとするフォレストピア宮崎構想を推進しておりまして、この学校はいわばそのシンボル的な意味を持っております。進展する科学技術文明と自然のもたらす恩恵との調和を図り、新しい文化の創造的担い手を育成しようという全寮制の学校として創設されたものでございます。  中高一貫教育を提言しております昨年六月の中教審答申でも、「公立については、平成六年に、それまでに例のなかった県立中学校が、県立高等学校と接続する形で設置され、実際上、初めての中高一貫教育が緒についている。」として、この学校紹介されております。  この学校は、宮崎県の五ケ瀬町という、宮崎市から車で約三時間、熊本県境に近く、刈干切唄で有名な九州山脈の懐に抱かれております。お酒好きの方は御存じだと思いますけれども、そば焼酎「雲海」の生まれたところでもあります。自然に恵まれた環境の中で、全寮制による六年間を通じたゆとりある学校生活を生かして、計画的、継続的な教育指導が行われておりまして、自然体験や社会体験を通じて豊かな人間性を育てるとともに、個性の発見やその伸長を重視した教育が行われております。  例えば、地元のことを学ぶ「五ケ瀬学」あるいは「環境と人間」といった独自の教科を設けまして、独自の教材を使って天体観測あるいは動植物、化石調査あるいは民謡等の伝統芸能の学習等も行われております。さらにまた、ここには日本で一番南にある天然のスキー場がございまして、 こういったところを利用しまして野外活動等も盛んに行われております。  また、六年間の寮生活を通じまして年長者が後輩を教えるリトルティーチャー制度によりまして、学年を超えた交流とか、あるいは寮に家族で居住しておりますハウスマスターと呼ばれる先生方、それこそ献身的な協力をいただきまして、家族的な交流も積極的に行われております。  昨年からは、この学校学習した卒業生たちがそれぞれ多様な進路を選択しておるところでございます。  私も三回この学校に参りました。また、私の知り合いの子供たちも入っております。この学校につきましては、一昨年小杉文部大臣が訪問され、また先般は、大変お忙しい中を町村文部大臣もわざわざ訪問していただきました。まことにありがとうございます。  さて、今回の中高一貫教育制度の導入に際しまして、五ケ瀬中・高等学校につきまして大臣はどのように評価されているのか、まずお伺いしたいと思います。
  33. 町村信孝

    町村国務大臣 先日、委員のお勧めもいただきましたものですから、私も前から一度行ってみたいなと思っておりまして、二月下旬に宮崎県立五ケ瀬中学校高等学校を、短時間ではございましたが拝見をさせていただきました。大変に豊かな自然に恵まれたところ、かなり山奥だなという印象も持ちましたが、まさに学ぶには最適の環境、こういうふうにお見受けをいたしました。  全寮制だったということが一つ特色なのかもしれませんし、仮に全寮でなくても、大変にいい教育をしているなという印象を私は受けました。ある教室に行きましたら、ちょうど地域の方々と一緒に草履をつくっておりまして、なれない手つきで一生懸命草履をつくっておりました。そこには、ナイフなども使っておりましたけれども、全くそんな危険だという感じではなくて、ナイフをうまく使いながら草履をつくったりなんかするというようなこと。あるいは、これはみんなでつくったシイタケですというようなことで、それを拝見したり、非常に地域と密着し、自然とも密着した形でのいい教育が行われているなというふうに思いました。先生方ともお話をしましたけれども、非常に自信を持って今のこの中高一貫というものに取り組んでおられる。もちろん試行錯誤する面も多々あるようでございますが、しかし、いい子供たちをここのいい環境の中から育てたいということで、私は非常に感銘を深くしたところでございます。  平成六年からでございますから、一番最初に中学校に入った子供たちが今高校の二年生ぐらいになるのでしょうか、いずれこの子たちが六年間の教育を終えて、社会に出てどのような活躍をするか、期待をしているところでございまして、全国のモデルとして非常に数多くの都道府県あるいは学校関係者が訪問しているという、その訪問者リストも拝見しましたが、一日に三組も四組も訪問される。校長先生も相当御多忙であろうな、こう思いましたほどでありました。  それだけ全国の関心を集める、こうした宮崎県立の五ケ瀬中学校高等学校の御努力に対して、本当に心から感謝を申し上げ、さらなる発展を期待し、これを一つのモデルとしながら今回の法律を出させていただいたという背景があるわけでございます。
  34. 中山成彬

    ○中山(成)委員 遠いところを本当にありがとうございました。  私は、この五ケ瀬中・高等学校設立の構想が持ち上がりましたとき、たまたま文部政務次官を拝命しておりました。当時の県の教育長から、魚とりの名人の秀才を育てるのだという話を聞きまして、秀才ではありませんでしたけれども、魚とりが大好きだった小さいころを思い出しました。  また、私、実は私立の高校へ行ったのですが、その高校は中高一貫の全寮制の高校でございました。私は、高校から入りまして三年間寮生活を送った者として、すばらしい構想だなということで、もろ手を挙げて賛成したわけであります。  しかし、既に昭和四十六年の中教審あるいは昭和六十年の臨教審の答申に中高一貫教育が提唱されておりましたにもかかわらず、先進性といいますか、余りにも早過ぎたのか、あるいはまた、義務教育国庫負担法等の壁もありまして、文部省の姿勢は必ずしもあの当時前向きではございませんでした。いろいろとお願い等もいたしまして、当時、文部省としてもできる限りの支援をしてくれたということにつきましては感謝しているところでございます。  そしてまた、ただいまは文部大臣に御答弁をいただきましたけれども、積極的な評価をいただいておりまして、大変うれしく思った次第でございます。  私は、文部省が、そういう制約があったにもかかわらず、これまで五ケ瀬中・高等学校の設立、運営につきまして、いろいろと財政的な支援を行ってきていただいたところにつきまして御説明をお願いしたいと思います。
  35. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 御指摘ございましたように、宮崎県立五ケ瀬中学校高等学校につきましては、特に県立中学校という観点で、御指摘ございましたような義務教育国庫負担法、教職員の給与、経費、あるいは義務教育学校施設費国庫負担法、施設整備関係の負担制度でございますけれども、こういった現行制度は、義務教育学校の設置義務を課した市町村に対しまして国が一定の国庫負担をするという形で法律がつくられているものでございますので、それが適用できないという状況がございまして、実際にどういう形で支援するかということで、当時、県や財政当局や地方財政当局ともいろいろ相談しながら知恵を出したわけでございます。  その結果、主として予算的な補助で現在の中学校高等学校対応できます経費といたしまして、例えば施設としては、家庭科の産業教育施設、あるいは寄宿舎、セミナーハウス、水泳プールや武道場や弓道場、運動場、こういった整備に対しまして三億三千万円、それから設備につきましては、理科教育設備や教育用コンピューター等の整備に二千万円、平成五年度から七年度まで助成をいたしたところでございます。  また、教職員定数につきましては、先ほども申し上げましたように、義務教育国庫負担法が適用できないということで、義務教育標準法についても適用できなくなっておりますので、中学校の教諭につきましては県が独自に対応するということでございますけれども、高等学校部分につきましては、現行の高校の定数に関します標準法を適用いたしまして、現在教員で十五人、実習助手一人、事務職員一人ということを定数措置いたしまして、これは地方交付税によりまして手当てをさせていただいているという状況でございます。
  36. 中山成彬

    ○中山(成)委員 ただいま局長からお話がありましたが、制約のある中で文部省にいろいろと御支援いただいたことにつきましては、心から感謝申し上げたいと思います。  このように、五ケ瀬中・高等学校の設立の際には、まだ中高一貫教育が導入されておりませんでしたため、国からの支援にも限度がありました。そういう中で、基本的には宮崎県の自助努力によりまして設置、運営されてきたわけでございまして、私はその点、宮崎県の先見性を高く評価したいと考えているところでございます。  今後、全国的に中高一貫教育を導入していくためには、国からの財政支援がどうしても必要かと考えます。今回の制度化に当たりまして、まず公立の中、高等学校の教員についてだれがその給与を負担するのか、また国はどのような措置を講ずるのか、さらに公立の中、高等学校の施設整備に当たりまして国はどのような支援をすることとしているのか、御説明をお願いいたします。
  37. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 先ほども御説明申し上げましたが、現行制度が、中高一貫教育制度的に実施する上では特に財政面の手当てが不十分であるという観点から、今回お願いいたしております学校教育法等の一部を改正する法律案におきましては、基本的には、中等教育学校前期課程現行 の市町村立の中学校、それから後期課程につきましては、市町村立または都道府県立の高等学校に相当するものとして同じような財政支援措置を講じたいということで所要の法律改正をお願いしているところでございます。  具体的には、市町村立の中等教育学校につきましては、市町村学校職員給与負担法を改正いたしまして、前期課程に係る教職員の給与費並びに後期課程に置かれます定時制課程に係る教員の給与費につきまして、これを現在の市町村立の中学校あるいは市町村立の高等学校定時制課程と同様に都道府県の負担とすることとしたいと考えているところでございます。  したがいまして、市町村立の後期課程に係ります教職員給与負担につきましては、定時制課程を除きまして、これは現在の高等学校と同じように市町村が原則どおり負担するということにさせていただきたいと考えているところでございます。  また、都道府県立の中等教育学校につきましては、これは当然のことでございますけれども、現在の高等学校と同じように、都道府県が設置者ということで給与を負担するという現行どおりとさせていただいているところであります。  これに対しまして、国は、市町村立、都道府県立、いずれにつきましても、中等教育前期課程に係る教職員の給与費につきましては、義務教育を負担する公立学校という観点から、現行中学校と同様、給与費の二分の一を負担するということで、これも義務教育国庫負担法の改正をお願いをいたしているところでございます。  なお、これに伴いまして、学級編制の基準並びに教職員定数の標準につきましても、中等教育学校前期課程につきましては、現行の義務教育に係ります標準法の規定を適用できるようにいたしまして、中学校と同じように、学級編制を四十人を原則として行い、それに基づいて必要な教職員定数を算定するという改正もお願いをいたしているところでございます。  また、施設設備に対します国の支援につきましても、今申し上げました給与に関する負担と基本的には同じでございまして、中学校に相当する前期課程に係る建物、校舎や屋内体育館でございますけれども、これにつきましては、義務教育学校施設費国庫負担法の改正を本法律案でお願いをいたしまして、校舎、屋内運動場や寄宿舎の新増築に要する経費については二分の一を国庫負担する、また危険建物の改築に要する経費につきましては三分の一を国庫負担するということでお願いをいたしているところでございます。  なお、高等学校につきましては、現在、危険建物につきましての補助制度しかないわけでございますが、これにつきましては、今改正法案の中に公立高等学校危険建物改築促進臨時措置法の改正をいたしまして、現在、危険改築建物を、高等学校の建物全体に三分の一の国庫補助をするということにしておりますけれども、国と地方の役割分担等の観点から、基本的には各都道府県の計画的な措置にゆだねられるということにいたしまして、今後は定時制課程と通信制課程に係ります建物の改築事業につきまして三分の一の国庫補助をしたいという改正案を提出いたしております。  後期課程高等学校の建物につきましても、本改正法案によります改正後の高等学校危険建物改築促進臨時措置法の規定によりまして、定時制、通信制課程を置く場合には同じような措置をいたしたいと考えておりますが、そのほか、中等教育の設置の推進を図るという観点から、来年度以降の予算編成過程におきましては、後期課程に係ります校舎や屋内運動場や寄宿舎の新増築に係る経費につきまして適切に対応してまいりたいということで、今後努力をさせていただきたいと考えているところでございます。
  38. 中山成彬

    ○中山(成)委員 国からの支援はぜひ必要だと思いますし、今の話を聞きまして宮崎県も安心するんじゃないかと思いますので、よろしくお願いいたします。  なお、あの学校を見られたと思いますけれども、木の校舎ですね。それとエコスクールといいますか、OMソーラーが入っておりまして、中に入ってみますと、自然の冷暖房ができているわけでございます。これは通産省の補助でできたということでございますけれども、文部省も、これからはエコスクールとかそういったものにつきましても十分に考えていただきたいと思っております。  なお、宮崎県に何か要望等はないかと聞きましたら、おかげさまで順調に進んでおりますということでございましたけれども、二つ要望をいただきましたので、お願いをしたいと思います。  一つは、学校設置基準等の標準法の制定において、中高一貫校については六学年二百四十名定員が可能になるような改正をお願いしたい。二つ目は、現改正案では、教職員定数について現行中学校及び高等学校規定を準用することになっていますが、これに、中高を接続することによる定数の加配と、全寮制であることによる加配ができるような配慮をお願いしたい、こういう要望が出ておりますけれども、この点、どうですか。
  39. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 現在、中学校につきましては学校規模の下限等の制限はないわけでございますけれども、高等学校におきましては、公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の第五条の規定によりまして、本校の場合は原則として収容定員が二百四十人、学級数に直しますと六学級、したがいまして、一学年二学級ということを下回らないということになってございます。これは、高等学校教育効果あるいは行財政上の措置の効率の観点等から、生徒の収容定員の最低規模の目安を定めたものでございます。  しかしながら、中等教育学校につきましては、全課程、各学年一学級といたしましても、前期課程三年、後期課程三年ということで、六学年二百四十大規模に当然想定されますので、今回、中等教育学校については、この規定をあえて適用する必要はないであろうということで、このような制限を設けなかったものでございます。  また、現在、現実にもこういう規定はございますけれども、実際、全国の高等学校におきましては、一学年が、本校におきましても一学級規模で三学級で成り立っているというような生徒数の減少等にございます都道府県も存在しておりますし、また、分校につきましては百人以上というような弾力的な規定もございますので、中等教育学校につきます限りはあくまでも前期課程後期課程ということが一緒になるということでございますので、最低二百四十人以上は確保されるものと私どもは考えているわけでございます。  また、定数の具体的な適用につきましては、現在中学校に適用しておりますいわゆる義務標準法、それから高等学校に適用しております高校標準法を、それぞれ前期課程後期課程をそれぞれの一校の学校とみなしまして、原則として教職員を算定いたしまして、必要な調整、例えば校長は一人で済むというようなことをいたしているわけでございます。  私ども、現実の学校運営からいたしまして、それぞれの標準法の適用の中で効果的な運営をお願いをいたしたいと思っているわけでございますけれども、例えば後期課程につきまして、単位制を運用するとか、あるいは総合学科を置くとか、場合によっては専門学科が大規模で置かれるというような場合には、現行の高校標準法におきましても必要な定数が加配して算定されるという仕組みがございますので、こういった現行規定を積極的に活用していきたいと思っているところでございます。  なお、寄宿舎につきましては、現在の標準法におきましても、寄宿舎が設置されることに伴いまして、寄宿舎の舎監としての昼夜をわたります業務が加わるということを考慮いたしまして、前期課程後期課程、それぞれ寄宿生徒数に応じた所要の定数を加算するということもしてございますので、こういった定数で運用していただくということで法律改正をお願いしているところでございますが、各学校教育課程の実態に応じまして、 個別の対応というようなことも全くないわけではないわけでございますので、個々の学校の具体的な教育課程のカリキュラムの編成状況等を踏まえながら、個別の設置の段階におきまして、できる限り御相談に応じてまいりたいと考えております。
  40. 中山成彬

    ○中山(成)委員 ぜひよろしくお願いいたします。  さて、中高一貫教育が導入される場合、心配されますのは、一部の私立学校に見られますように、五年間で教科書を終えて、最後の一年間は受験勉強だけを行うというような、いわゆる受験エリート校が公立学校でできてしまったり、また中高一貫学校への入学をめぐって受験戦争が低年齢化するということが心配されるわけでございます。  この点、五ケ瀬校では、入学に当たりペーパーテストによる学力試験は行っておりません。小学校から提出された調査書、あるいはグループ面接、グループでの壁新聞作成といった適性検査による選抜を行い、最終的には公開の抽せんで入学者を決定しておるわけでございまして、まさに中教審の答申で提言しております、子供たちゆとりを与え、生きる力をはぐくむという基本的な観点に立脚したものであります。今後中高一貫教育が各地において設立されるに当たり、参考になるべき事例ではないか、このように考えております。  私も、この設立の話が出ましたときに、子供たちが有名大学だけをねらうようになると、県が受験戦争をあおっていると非難されることになりますし、逆に子供たちが希望した進路に進めないとかわいそうだなと思っておりました。しかし、過去二回の卒業生を見ていますと、非常にバラエティーに富んだ、そしてユニークな学校にも進んでおりまして、その心配は当たらなかったなと、ほっとしているところでございます。  そこで、文部省はこのような受験エリート校あるいは受験戦争の低学年化の懸念を払拭するためにどのようなことを考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  41. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 ただいま御指摘のとおり、この中高一貫教育趣旨といたしますところは、ゆとりのある安定的な学校生活を送る中で個性あるいは創造性を伸ばすための特色ある教育を行うということでございます。したがって、いやしくも受験準備に偏した教育を行うという、いわゆる受験エリート校というようなものになることがあってはならないと考えているわけでございます。  この点につきましては、中教審の答申におきましても特に留意すべき点として指摘されているところでございますけれども、一つは、現在、この中教審の答申以降、各都道府県におきまして中高一貫教育の実施に向けたさまざまな検討が開始されておりますけれども、いずれの都道府県におきましても、いわゆる受験エリート校をつくるということは考えていないというふうに承知をいたしております。  それから、二つ目といたしまして、各都道府県におきまして、今年度から国の予算等も受けまして、中高一貫教育実践研究事業といったものを活用しながら、幅広く関係者の参加も得て、この中高一貫教育を今後各県、市町ごとにどのように整備していくかということについての検討を行うわけでございますけれども、幅広い関係者の意見の参加を得る中で、この点についても十分な留意がなされるものというふうに思っております。  また、受験競争の低年齢化を招かないということで、ただいま御指摘になりましたような入学者の決定ということが大きなテーマになるわけでございますけれども、中教審の答申にも指摘されておりますように、公立学校におきましては、学力試験を行わず、学校個性、特色に応じて、面接、実技、あるいは小学校からの推薦、あるいは抽せん等の方法を組み合わせて行うこととすべきと考えているところでございます。  各県におきましても、こういった趣旨を踏まえた検討が行われているわけでございますけれども、文部省といたしましても、各都道府県に対しまして、そうした趣旨の徹底を十分に図る、こういう努力をしていきたいということで、先生御指摘の懸念を払拭していきたいというふうに考えております。
  42. 中山成彬

    ○中山(成)委員 これから各地域におきましていろいろな学校が考えられると思いますけれども、子供たちや保護者の意見を十分勘案して、それぞれ特色のある中高一貫校が整備されていくということが望ましいと考えておるところでございます。  五ケ瀬中・高等学校につきましても、木の校舎で学び、土のグラウンドで遊ぶ、そして古きよき伝統と大自然と村人の温かい愛情に包まれて巣立っていく子供たちでございます。また、六年間の全寮制の生活ということで、私自身の経験でも、これは兄弟以上の深いきずなで結ばれる子供たちでございまして、これからどういう人生を歩んでいくのか、大きな期待と楽しみを持って見守っていきたい、このように考えているところでございます。  今回の制度化に当たりまして、ぜひ全国でそれぞれ独自の創意工夫を生かした中高一貫教育が進むことを期待いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  43. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、今井宏君。
  44. 今井宏

    ○今井委員 自由民主党の今井宏でございます。  本日は、限られた時間でございますので、中高一貫教育について、それから通学区の自由化について、二つの項目について御質問をさせていただきます。  さて、現在世紀末を迎えまして大転換期であるわけでございます。日本のすべてのシステム、分野改革が求められている、現状維持ではない改革が求められている、こういう時代かと思うわけであります。それらのすべての改革の原点は、実は根っこになる部分については教育ではないか、教育がすべてと言っても過言ではないと実は私も思っておるわけであります。したがって、あらゆる分野教育力をどう高めていくかということが一番大切なこととも思っておるわけです。  さて、一貫教育でございますが、学制を変えれば済むという簡単なものではないと十分承知はしておりますけれども、この一貫教育につきましては、私は大変期待をしているわけでございます。  そういう意味では、事務方の局長さんで結構でございますので、公立あるいは私立を含めて、この一貫教育に対してどういう評価をなさっていられるのか、その辺につきましてまず御質問をさせていただきます。
  45. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 現在行われております中高一貫教育は、いわゆる中、高一貫教育ということでございまして、制度的には中学校高等学校がそれぞれ独立してあるわけでございます。ただ、国立の一部、それから私立の一部には、事実上、中学校を卒業いたしますと高等学校につなぐというような形での中高一貫が行われております。  それに対します評価は、数多くの中高一貫校がございますのでさまざまであるわけでございますけれども、六年間中学生と高校生とがともに生活をする、その中での、幅広い異年齢集団を通しての人間形成という面で評価を得ているということ、それから、学習面あるいは教育面におきまして、六年間を継続してこれを行うということからくるメリット、それから、六年間という長い期間を通しまして生徒を把握するということによります個性尊重あるいは才能の発見という面でのメリット、それから、形式的に入試は行われているといたしましても、中学校を卒業いたしますと高等学校に進学できるということで、ゆとりを持った安定的な生活が行われているというような評価があるところでございます。  ただ、一方におきまして、六年間という長い、ある意味で固定化された生徒集団の中での学生生活でございますので、環境になじめない生徒がいて、中途から転校を余儀なくされるというような生徒がいるということ、それから、いわゆる中だるみというような事態もあるということ、それか ら、いわゆる受験ということを意識いたしまして、大学受験に偏したと申しましょうか、そうした形での準備教育が行われる、そういう形で六年制のメリットを生かしているというような指摘もあるわけでございます。  それぞれに各学校特色がございまして、一律に評価をするというのは難しいわけでございますけれども、総じて申しますと、今のような評価と、それから課題と申しましょうか問題、これらがあるのではないか、こんなふうに私ども承知しているところでございます。
  46. 今井宏

    ○今井委員 ありがとうございます。  すべてのもので、メリットだけが一〇〇%ということはあり得ないわけです。ただいまの局長のお話を聞きますと、メリットの方がより多いよ、だから思い切って取り組もうという姿勢を感じるわけでありますけれども、評価の部分で、六年間というこの時間の大切さがございました。まさに今回の中等教育学校では、この六年間の時間をどう生かしていくかというのが一つの大きなポイントかと思うわけであります。  私たち、あるいは私の子供などを見ましても、中学校の三年で、二年生が終わるとすぐ受験を控えてしまう。実は、中学の二年、三年、あのくらい感受性が豊かで多感な時代というのは、自分の経験からしてもないですよね。本当に多感です。このときに、いわゆる詰め込みといいますか、暗記教育だけをさせて受験をさせる、果たしてこれでいいのかねといつも思っておるわけであります。  そういう意味では、この六年間の中でどういう教育課程、どういうカリキュラムが用意できるかということも大変大事なことであるし、しっかりと豊かな生きる力を思春期に身につけさせるかということがとても大切だと思うわけではございますけれども、教育課程についてどう取り扱っていくか、御質問をさせていただきます。
  47. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 教育課程につきましては、各学校がそれぞれ創意工夫をして決めていただくということになるわけでございますけれども、やはり中等教育学校、中高一貫校の前段階は中学校段階であるわけでございます。そして、後段は高等学校段階に当たるわけでございます。したがいまして、教育課程基準として定められております学習指導要領につきましては、前期の課程につきましては中学校の、後期の課程につきましては高等学校基準を準用していただくということを我々考えております。  しかし、中高一貫教育の特色を生かすということで、その間に、原則は中、高それぞれの学習指導要領を準用するということであるわけでございますけれども、特色ある教育課程ができるだけ行われ得るようにということで、このカリキュラムにつきまして特例措置等を講じて、創意工夫の余地を広げるようなことを検討してみてはどうか、こんなふうに考えているところでございます。
  48. 今井宏

    ○今井委員 大臣に何点か御質問させていただきます。  残念ながら、日本は大変な少子化時代を迎えているわけであります。この時代における中等教育はどうあるべきか、この辺につきまして御見解を御披露いただきたいわけですが、高校の進学率が九六、七%になっているし、大学も、過半数の人が大学に進学する、こういう時代になっているのですが、これだけでいいのかね、こんな感じも実はするわけです。  例えば、多様な選択があってしかるべきですし、あるいは出直しができるような複線思考のシステムがあっていいでしすうし、このごろ工業高校、商業高校というのも大変少なくなっているようですね。情報化の時代を迎えて、工業高校ももっと必要ではないのかな、あるいは、国際金融の時代などと言っていますから、商業高校ももっと特色ある高等学校として生かす必要があるだろう、こういうように思っています。ドイツなどのマイスターではありませんけれども、技術だとかたくみというもの、これを磨けるようなシステムがあってしかるべきだし、それが尊敬されて社会評価を受けられる、そういう環境づくりということも必要だろうと思うわけであります。  私も、自分の同級生などを見ましても、いろいろな人間がいますけれども、大人になってみて、私の世代になってみて、中学校を卒業して立派な社会人としてやっている人がかなりおります。彼らがむしろ無理して高校や大学へ行って果たしてどうだったのかな、こんな感じもするわけですよね。  そういう意味では、こういった時代を迎えての中等教育のあり方につきまして、大臣の御見解を賜ればと思う次第です。
  49. 町村信孝

    町村国務大臣 中等教育、前期はこれは義務教育で、後期は必ずしも義務ではないわけでございますが、現実は、もう九十数%ということで、大変高い高校進学率になっております。  私も委員の御指摘のような感じを持っております。高校の進学率が、それはもちろん、皆さんが学びたいという意欲に燃えて九十数%という高さであるならば、それは大変結構なことだと思いますけれども、現実はむしろ、隣の太郎ちゃんも次郎ちゃんもみんな行くから自分も行く、あるいは親御さんに、あんた、高校ぐらい出ていなさいよと言われて渋々行くというようなケースもあると思います。余りさしたる目的意識がないまま、結局何かみんなが行くからという、さっきちょっと申し上げましたある種のあしき平等主義みたいなことでみんなが高校に行くということが本当にいいのだろうかという疑問を私も持っております。ただ、率が低いのと高いのとどっちがいいかといえば、それはやはり高い方がいいんだろうとは思っております。  ただ、中学校から高校に進む段階というのは、そろそろ自分の将来のことも考え、決め切るわけにはいかないだろうけれども、やはり自分が人間としてどうこれから社会の中に生きていくかといったことを考える時期でもあろうし、自分の能力、適性はどの辺にあるんだろうかということを考え始める時期でもありましょうし、あるいは自分の興味とか関心はどの辺にあるんだろうかということを真剣に考え、悩む時代なんだろう、そう思います。  そういうことを考えたときに、先ほど委員おっしゃられましたように、多様な選択が高校の段階であっていいと私も思いますし、あるいは複線思考とおっしゃいましたが、そういうことも私はいいんだろうと。あるいは、一たん中学を出て社会人になって、また高校に入り直す。あるいは、高校を中退するケースも最近ふえているようでありますが、何か中退というと一種の罪悪感がありますけれども、私は、むしろ豊かな経験を積んでからもう一度高校に入り直すというようなとらえ方をすれば、それを悪い悪いという観点だけでとらえるのはどうなんだろうかなとさえ思っております。そうした柔軟な仕組みというのがあった方がいいと思います。  あるいは、今専門高校のことをお触れになりましたが、工業、商業あるいは農業。ちょうど私、先日群馬県で植樹祭がございまして、そこで群馬県にある林業の専門高校に学ぶ生徒が、この美しい群馬の森林は我々の手で守っていきたいという大変力強いあいさつといいましょうか決意表明がありまして、感動を覚えたのでありますが、やはり自分の将来はこういうことで生きていきたい、そのことがまさに世界の環境をよくし、日本の環境をよくすることにつながるんだ、そういうような発言もありました。  いずれにいたしましても、今回のこの中高一貫制度の導入の主たる目的は、中等教育多様化弾力化を進める、選択肢を拡大をするというところにあるわけでありまして、その一環としての今回の中高一貫制度の御提案である、私どもはかように考えているわけでございます。  委員指摘のとおり、より個性を重視した中等教育というものが実現できるようにというのが私の基本的な中等教育における考え方でございます。
  50. 今井宏

    ○今井委員 ありがとうございます。  引き続き大臣に御質問させていただきますが、過密の都市部でも過疎地域でも、実は少子化ということで、小中学校、高校まで、間もなく大学ということですが、空き教室が多くなっています。空き教室と言うと教育委員会は嫌いまして、転用可能教室、こういうことをどうしても教育委員会は言うわけでありますが、はっきり言ってあいているわけであります。  これを例えば、今回の中高一貫教育の中で、あいている、校地の広い高等学校中学校を併設する。あるいは逆に、公立中学校に高校を併設する。そうすることによって、学校の統廃合も可能でしょうし、実は、その地域の市民あるいは町民の共有の財産が学校敷地という、その地域で大変広い面積を持つ財産になるわけですね。そういう中で、例えばそれを教育関係あるいは福祉関係、環境関係という形で転用が十分可能だと私は考えておるのです。  そういう切り口から、統廃合を含めた、さらに、マイナス思考ではなく、プラス思考の活用という視点での御指導はいただけるのでしょうか。
  51. 町村信孝

    町村国務大臣 空き教室につきましては、現実に相当ふえてきております。今まではややもすると、どんどん転用してもいいですよというふうなことは余り言っておりませんでしたけれども、ここ何年間の間に相当そこは弾力化しておりますし、特に昨年十一月に、福祉施設への転用も含めて手続を非常に弾力化、簡素化しておりまして、寝泊まりをされるような特別養護老人ホームスタイルまではちょっといかがかと思いますが、例えば、高齢者の皆さんが集まってそこでいろいろな会合をやる、催しをやる、それを見てまたそこに参加をする小中学生がいるというようなこともとてもいいんだろう、教育上の効果を含めてもいいんだろう、こう思っておりまして、そういうことで、三月に、厚生省と連携をして余裕教室の社会福祉施設への転用に関する例えばパンフレットをつくって、こんな形で周知徹底を図るというようなことまでも今やっているわけでございます。  もちろん、今委員指摘のように、福祉の面のみならず、学校の統廃合に役立てる、あるいは中高一貫に役立てるというケースもいずれは出てくるのかなと思っておりますが、いずれにいたしましても、そうした形で、貴重な税金でつくった財産でございますからそれを有効に活用していくという観点で、今後もその活用を図ってまいりたいと考えているところであります。
  52. 今井宏

    ○今井委員 どうしても行政というのはかたいのはわかるのですけれども、例えば、私も自分の経験からいいますと、私は首長をやっておりましたから、平成元年に、平成塾と称しまして、空き教室を使って、地域のお年寄りから何から全部勝手にルールなしで使ってほしいということで、畳を敷いてやって、大変好評で今でも毎年一つずつやっているのですが、私がこの国会に五年前にお世話になっても、やはりクレームがつくのですよね。最近でこそどんどん活用せいと言っていますが、対応が遅いのですよ、かた過ぎて。多目的利用はまかりならぬとか、事前の手続がきちんとできてないからもう一回文書を出せとか、やれ補助金を返せとか、非常に遅いのですね。スピードが加速化された時代転換期ですので、怖がらずに、文部省、かたいのは結構ですが、ぜひ前向きにもっともっと取り組んでもらいたい、こういうふうに思うわけであります。  さて、この時期になるとビールがうまいわけですが、ビールにはつまみは枝豆ですよね。うちは草加なんですが、かなり立派な枝豆がほんのわずかの畑が残っているところにできるのです。私も酒が好きで枝豆を植えたのですが、農家でこしらえますとかなり密植するのです。当然のことながら、少し風通しがいい方がいい枝豆ができるだろうと思いまして、家庭菜園でちょっと広げて植えたら全然だめなんですね。これは競争がないからです。植物ですら競争するというふうに農家のおじさんから指導を受けました。もっといわゆる密植しなければだめだというのです。競争させなければだめだ、枝豆には根があるんだよ、こういうことを言われたわけであります。  そういう意味では、次のいわゆる学区の自由化について大臣の見解をいただきたいわけでありますが、通学区を自由にする、当然のことながら、今の枝豆の話じゃありませんけれども、公立学校同士の競争が生まれてきますし、教師の質も上がってくるでしょう。優秀なというか、いい教師のいるところには子供が集まってくるわけでしょうし、子供が集まらない学校は教師もこれまた頑張るだろう、こういうふうに思うわけであります。教育委員会も、子供が集まらない学校にはいわゆる優秀な先生を振り向ける、そういう努力もしてもらえると思うわけであります。  競争がすべてとは言いませんけれども、先ほど大臣にお話しいただきましたように、やはり結果の平等を余り追い過ぎた嫌いがすべての分野にあると思います。そういう意味では、チャンス、機会の平等さえ与えれば、結果はそれなりの凹凸があるのは当たり前で、その人の持つ能力というのはおのおの違っているわけでございますから、そういう意味では、いい意味での競争社会をどう創造するかということが活力になってくるのだろう、こういうふうに思っておるわけであります。  このごろ、個性ある教育と盛んに文部省でも教育委員会でも言うのですが、大体、学校個性がなくて、教職員に個性がなくて、何で子供だけ、個性ある、創造性のある子供を育てると言うのか。やはり自由学区にすることによって、おのおの特色、個性、特徴がある学校、それを親や子供が選んでいく、そこの中で本当のこれからの二十一世紀を背負う日本人が育つのではないか。したがって、多少いろいろあっても、学区は、小中学校においても公立の高校においても自由学区にするべきである、私はそう思っておるのですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  53. 町村信孝

    町村国務大臣 現状は、委員指摘のとおり、公立の小中学校の就学に当たりましては、市町村教育委員会が就学すべき学校の指定を行うという形によって、子供あるいは親にとって選択の自由は今ないわけでございます。  ただ、特定の場合にはというようなことで、平成九年の一月に指導通知を出しまして、保護者の意向に十分配慮した多様な工夫を行ってくださいねという通学区域の弾力化というのを出しましたし、また、昨年の九月には、そうした事例集を取りまとめて各市町村教育委員会に送付して、各市町村教育委員会における取り組みを促すということをやってまいりました。  そうしたことなどを受けまして、ことしの平成十年三月三十一日閣議決定の中でも、規制緩和推進三カ年計画の中にこのことが触れられておりまして、学校選択の弾力化ということで、平成十年度もよくそれをフォローアップしていきなさいということになっております。そういう形で一歩一歩進めていきたいと思っております。  ただ、委員指摘のように、個性ある子供たちを育てていきたい、個性ある学校づくりをしていきたい、子供の適性に応じた教育ができるようにしていきたいということを考えれば、当然多様な選択肢ということが重要であるという委員指摘、まことに私もごもっともであると思います。  そうした方向を今教育界全体でとるということになりますと、これは論理的な必然性として、必然的な結論として、小中学校段階から学校の選択肢があった方がいい、私はこう思っております。  ただ、余り小さいうちから通学時間に余計に時間がかかるというのはいかがかというような観点もあろうかと思いますので、例えば小学校のころであれば三つ四つの学校とか、中学校なら五つ六つの学校とか、高校ぐらいになればもう一つの市で十分どこでもいいということになるのだろうと思いますが、そういう形で、幾つかの学校の中から選択できるという仕組みをだんだん私は取り入れていきたい。現にそういうことをやっている地域も出始めております。  先般、ある新聞を見ておりましたところ、三重県の紀宝町というところでは学区を小学校の段階から廃止をしたという記事さえ載っておりまし た。そういう形で選択を認めることによって、当然、やる気のある校長先生は望むところであるということを私によく語ってくれます。  そういう形で、学校がそれぞれ切磋琢磨し、努力をし、特色ある学校をつくる、そこには生徒さんが余計集まる、集まらない学校も出てくる、どうしてだろうか、みんなで反省をする、そういう形で、私はよりよい学校づくりが行えるようにしていきたい。  ただ、一挙に進めますと、混乱が生じてもいかがかと思いますので、ステップ・バイ・ステップでありますが、最終的な方向としては、私は、学区の自由化ということが、言うならば、今次教育改革一つの論理的な帰結であるし、大きな目標であるとさえ考えておりまして、一遍にはそれは進まないかもしれませんが、そういう方向性を持って取り組んでまいりたいと考えております。
  54. 今井宏

    ○今井委員 大変心強く感じますし、ぜひ大臣のリーダーシップで積極的に進めていただきたい、こういうふうに思っております。  まさに分権型の社会をどう構築していくか、こういうことでもありますし、等しからずを憂えてはいけないのだろうと思うのですね。すべて等しいことがいいことではないという共通の認識をやはり持つべきだ、こういうふうに思うのですね。  実は、例えば今四十人学級、生徒が四十一人になりますと二教室できるわけですが、一、二名多いか少ないかによって一教室になるか二教室になるか、それできゅうきゅうとなるわけです。教育委員会としては当然そうだと思います。でも、よく児童生徒本位で考えると、そちらサイドの視点で考えていただければ、この自由学区の中でも、いや、そんなことをやられたら、もう入る寸前まで、教育委員会は先生を配当するにも大変なんだ、そんなことをされちゃ困るんだ、だからこの地域は特殊な事情がない限りはここへ行きなさいと、どうしてもやるわけですよね。とにかく県の教育委員会がやかましいのですよ。そういったことで、実は市町村レベルはというと、県にもうしっかり顔を向けちゃうわけです。県の教育委員会文部省が怖いんですよ。文部省へしっかり顔を向けちゃっているのですね。そういうのが今残念ながら現状であります。すべて今の教育行政が悪いとは言っていません。いい部分も私も十二分に認めておりますが、そういう部分もかなり目につくわけであります。そういう視点もひとつ配慮をしていただきたい、こういうふうに思っております。  最後に文部大臣の御見解をいま一度いただきたいのです。  私、過日のナイフ事件のとき、たしか三月十日だと思いますが、大臣は、子供あるいは親、学校関係者、保護者へということで、緊急アピールを御自分の言葉で会見をして発表しました。私、感動いたしました。顔の見える大臣だと思いました。  それで、その後、所沢高校の卒業式のあの問題、これについても文部大臣としての見解というのを間髪入れずに、あのタイミングで談話をぽんと出してもらいました。もしあれがなかったならばその後どうなったのかな。これはタイミングということが非常に大事だと思うのですよね。  通常のやり方ですと、生徒側も先生方も父兄も十分よく話し合って何とかうまい着地を考えてというふうなことをやっているうちにタイミングを逸してしまうんだと思うのですね。そこで、いわゆる行政あるいは政治がバックアップをするんだという強い姿勢をぽんと出すことによって問題が解決してくる、こういうふうに思っておるわけであります。  家庭の親が子供をしつけるのは当然であります。当然子供の意向を聞くということは前提にあるにしても、親が責任を持つというのは当然、常識、当たり前のことであります。その常識、当たり前、当然のことが、実は意外と権利、何といいますか、生きる権利がすべてに優先するのでありまして、子供の人権というのはわからなくはないですが、それを強烈にアピールされている、変な時代だなと実は個人的に感じているわけであります。  そういったところ、果敢に指導力を発揮された大臣に、その辺、二つの事件の問題について御見解を再度お聞かせいただいて、私の質問を終わらせていただきたい。よろしくお願いします。
  55. 町村信孝

    町村国務大臣 ナイフ事件、一月の下旬でしたか、栃木県の方で発生をし、何か堰を切ったようにといいましょうか、あちこちで相次ぎました。何とか食いとめたい、ただ緊急になかなかいい方法もないということで、思い余って三月に入ってからあのアピールを出したわけでございまして、相当数の学校で、それぞれの生徒さんあるいは保護者に対してもそうしたアピールがコピーで出回って配っていただいたりしたようでございまして、どういう効果があったかわかりませんが、とりあえず何かやらなければいけないという思いであれを出させていただきました。  ただ、あくまでそれは緊急対応でありまして、先ほどちょっと申し上げましたように、平成十年度の補正予算の御審議をお願いしておりますが、そこで心の教室をつくり、心の教室相談員を配置するという形で、子供たちと正面から向き合って、親も先生たちも大人も、どうも親がというか大人が逃げてしまっているのじゃないかなということも感じたりもしますので、子供たちの悩みとか主張をちゃんと向き合ってしっかり受けとめる、そして十分議論をする、向き合わないで逃げちゃうことがどうもよくないんだろうなと思っておりまして、そんなことも含めてアピールを出させていただいたわけでございます。  しかし、基本はやはり家庭でありますし、そして学校であろう、こう思っております。そうしたよりよい家庭教育学校教育ができるように努力していくことが文部大臣としての務めかな、こう思っております。  所沢高校の問題につきましては、それぞれの学校の個別の事情を私ども全部つまびらかにしているわけでもございませんし、余り一々の学校状況について大臣意見を言うというのもいかがかなと思いました。思いましたけれども、記者会見等々でお問い合わせがございますので、私なりの考えを申し上げたわけであります。  入学式というのは非常に重要な行事であります。そこで、私は、当然新入生はすべて出席すべきであろう、こう思っておりましたし、その中で六割が出席したというのはよかったのですが、四割近くが欠席をしたというのは、やはり残念な思いがいたしております。  しかも、埼玉県の教育委員会報告によりますと、所沢高校では、従前から教員の中に、校長の経営方針に同調しない教員がいる。同調しないのみならず、卒業式とか入学式とかの実施に際しても、校長の方針に職員会議反対をする。職員会議に何か決定権があるかのごとき誤ったルールもあるようでございますが、そうした職員もいたり、さらに、入学予定者や保護者への説明会で校長の方針に反する説明をした教員がいたというようなこと、どうも適正な学校運営ができていない実態にあるなと。  中には、PTAの中にも、そうした教員と同じ考えの人たちがいるというような話もあるものですから、各学校でだれが最終的な判断権を持っているか、決定権を持っているかということは、これはもう校長であることは間違いがないことでありまして、こういう当たり前の常識が当たり前のようにそれぞれの学校で守られるべきだということを私はただ言っただけでありまして、何も奇抜なことやら特殊なことを言ったつもりもありません。  そうした最低限のマナーとかルールとか常識が行き渡っていない学校はやはりいささか問題があるのだろう、こう思っておりまして、校長先生のしっかりとしたリーダーシップというものを確立する中で、それを教育委員会も支え、文部省も支えていく。先ほど申し上げましたそうした学校制度をつくっていくという意味からも、この所沢高校の実例というのは、いいか悪いかは別にして、 一つの典型的なサンプルであったのかな、こんなふうに思っているわけであります。
  56. 今井宏

    ○今井委員 ありがとうございました。  新しい二十一世紀を産み落とす陣痛の世紀末だと思います。そのためにも、どうぞ文部大臣のお考えを文部省一致団結して支えていただいて、新生日本、二十一世紀の日本を生んでいただきたいと強く期待を申し上げまして、私の質問を終了させていただきます。ありがとうございました。
  57. 高橋一郎

    高橋委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時十二分休憩      ————◇—————     午後一時三十六分開議
  58. 高橋一郎

    高橋委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。肥田美代子君。
  59. 肥田美代子

    肥田委員 民主党の肥田美代子でございます。  本日議題になっております学校教育法改正案と、それに関連した課題について質問いたします。よろしくお願いいたします。  本法案に対する質問の前に、私はまず、国の大方針として教育改革が叫ばれ、文部省も受験戦争の緩和やゆとりある教育の実現など数多くの提言をされながら、それらの願いがなかなか実現されず、結果的には学級崩壊と言われるような現状にまで至っている、このことに対する厳しい反省が必要であろうと思っております。  例えば、学習塾に通っている中学生は、ある調査によりますと、この十年の間におよそ二〇%増加して六四%に達しております。学習塾に通い続けた理由はと尋ねますと、学習塾で教えてもらうとわかる、そういう回答が断然多くなっております。それから、学習塾に行くようになった理由としては、子供たちの七割近くが、高校入試に合格するためと、学校の勉強がよくわかるようになりたいなどと答えております。  これまで、なぜそうした子供の声に耳を傾け、わかる授業への改革ができなかったのか。できなかった原因はどこにあるのか。まず、大臣の御見解をいただきたいと思います。
  60. 町村信孝

    町村国務大臣 今の御指摘はなかなか難しい御指摘でありまして、学習塾は、今ちょうど委員がおっしゃったような、よくわかるとか入試対策であるという実態があるのだろうと思います。  では、逆に学校は何をしているのかなということだろうと思います。確かに学校は、指導要領等に決められたいろいろな教科をバランスよく、あるいは特別活動などを含めて時間を配分しているわけでありますが、学習塾というのは、私もそうつまびらかにはわかりませんが、話を聞くところによりますと、要するに、これこれの学校に受かるためのという非常に限定された目的の受験対策をしっかりとやるところである。そういう意味で、どうしてもその目的が絞られているだけに、教え方等もそれに合った教え方をするということで、ある意味では合目的的なんでしょうけれども、しかしそのことが、長い目でその人間としての成長を見たとき、本当にいいことなんだろうかどうだろうかということを考えたときに、私は必ずしもそうは言えないのではないのだろうかな、こう思います。  ただ、入試ではなくて、一般的な勉強そのものが、塾に行った方がやはりわかるという小学校高学年あたりの子供たちの話を聞きますと、これは必ずしも中学入試ということではないはずでありますから、どうしてなのかなと思うと、やはりそこはそれぞれの学校で、例えば先生方の教え方の工夫がややもすると欠けている部分がありはしないだろうか。あるいは、学習指導要領の中でも、余りにも多岐にわたって教えることを求め過ぎているのではないだろうか。そうした反省がやはり出てくるわけであります。  したがいまして、例えば教師の指導力の向上といったようなことを考え合わせまして、教育職員免許法改正案というのをお出ししておりますが、こういう形でさらに指導力のある教師を養成をするといったようなことも必要でしょうし、また、学習指導要領も、ややもすると多岐にわたり過ぎ、それをまた事細かに全部知識を教えようとするというところに余りにも走り過ぎていて、子供の考える力、自分の頭で考え、そして行動するという力を育てるという観点に欠けていたかもしれない。個性を伸ばそうという点に欠けていたかもしれない。  そういう面を反省しながら、昨年十一月に教育課程審議会の中間まとめが出まして、今指導要領の改正の作業に入っているわけでございますが、できるだけ指導内容を厳選して見直していくといったような改善を図っていくことが必要なのではないだろうか。そうした現状の反省の上に立って、今教育改革プログラムを進めている、このように私どもは考え、作業をしているところでございます。
  61. 肥田美代子

    肥田委員 今回の法改正は、高校選抜入試の影響を受けない中等教育学校をつくるということであります。しかし、大半の中学校高等学校も現在のまま残って、入試も残ります。選択の自由という名のもとで、受験戦争にさらされる子供とそうでない子供とが出てくるわけですね。しかし一方では、事実上、高校は全入に近い状況がございます。また、少子化時代で生徒数が減っております。  もし、高校入試が深刻な問題として、大臣が今おっしゃいましたように重い問題と認識されるならば、文部省はすべての子供たちに対して、学力中心の高校入試を廃止しますよとか、十五歳の春に苦しまなくてもいいんだよ、じっくりと人生について考えていってほしい、そういうメッセージを発信すべきではないかと思うのですけれども、いかがですか。
  62. 町村信孝

    町村国務大臣 義務教育というものが本当に六・三だけでいいのかどうかというのは現実に議論があるところでありますが、一応それを前提として考えたときに、高校が確かに現実九十数%という大変高い進学率であることは事実でありますが、午前中他の委員の御質疑にもありましたように、本当にその率が高いことがいいのだろうかどうだろうか。  もちろん低いよりは高い方がいいのだろうと思いますが、一定の目的意識を持って自分の人生を考え、進路を考え、答えが出ないまでも、その中で高校へ進むというときに、みんなが行くから行く、目的意識がないまま行くという高校であってはならないと私は思います。  一応義務教育が終わった、中には、義務教育が終わったら、自分はそこから自分の力でしっかりと人生を切り開いていくために仕事につくという目的意識を持って働き始める人も、数は少のうございますが現実にいるわけであります。でありますから、私は、九十数%という高い率があるのだから、もう高校を全入にしたらいいのではないかということには必ずしもならないのだろうと思います。  やはり、本当に中学まで学んだことがどこまで理解されているのかなというあたりも、一たんそこで立ちどまって見てみるということも必要だろうと思います。現実に、高校に入ってもう一度小学校の五、六年のレベルの授業をやらないと、それから中学の授業をもう一度高校に入ってやらないとどうしようもないという子供たちも現実にいるということを考えたときに、それはまたいろいろな要素があるわけでありましょうが、とにかく全員高校に入れれば十五の春は泣かないで済むのだということには私はならないのだろうなと思っております。  さらに、かつて、十五の春は泣かせないという名せりふを吐いた知事さんもいらっしゃったわけでありますが、その結果何が起きたかというと、その当該地域の高校生は十八の春にみんな泣いたわけであります。したがいまして、私は、ただ単にある時期の苦しさを逃れるということだけを余りにも考え過ぎると、いささかそこにはいびつなものが生まれてくるのではないのかな、こう思います。  では、今の高校入試のあり方がそのままでいい のかといえば、それはもちろん改善の余地があるわけでございまして、それぞれの県、市町村あるいは各学校の特色を生かした高校入試を実施をしていく。ただ単に一点違えば入れないといったようなことではなくて、そうした学力検査に加えまして、調査書の活用でありますとか面接の活用、あるいは論文を書かせてみるとか実技をやってみるとか、相当バラエティーに富んだ高校入試がそれぞれの地域、それぞれの学校で今行われ始めております。  そうした動きを私どもは大変歓迎をしておりますし、そうした形で、高校入試がただ単に点数だけ、ペーパーテストだけということでないような、バラエティーに富んだ、そうした入試により一層改善されていくようにということを期待いたしております。
  63. 肥田美代子

    肥田委員 本年度の予算で中等教育学校の調査検討費が計上されているわけでありますが、実施主体の都道府県等の感触から、実施初年度で中等教育学校は全国でどのくらい実現すると考えていらっしゃいますか。
  64. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 各県の検討状況でございますけれども、各県では、昨年の中教審の答申を受けまして、検討自体はすべての県で始まっております。ただ、ただいま御審議をいただいているわけでございますけれども、制度としてまだスタートしていないということでございますので、どこの県も、具体的にということになりますと、なお慎重な検討が続いているというのが現状でございます。  私ども、各県としばしば情報交換をいたしておりますけれども、例えば岡山市におきましては、来年の四月一日から中高一貫教育を実施すべく具体の検討に入っているとか、その他市、県におきまして具体の情報が入っておるわけでございますけれども、今先生お尋ねの具体的に何校がということになりますと、詳細は承知しておりません。ただ、例えば岡山市におきましては制度発足時においてはスタートさせるというような情報は得ているところでございます。
  65. 肥田美代子

    肥田委員 来年の四月一日から実施されるとなれば、おおよそのシミュレーションは持っていらっしゃると思うのですけれども、今の御答弁は全く数が想定できないということですか。
  66. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 ただいま申し上げましたとおり、各県でいろいろな検討が行われているわけでございますけれども、具体的にどのような形でということで具体化したものにつきましては、正確な数字としてはまだ承知をいたしていないのが現状でございます。
  67. 肥田美代子

    肥田委員 中等教育学校生徒募集については、これから設置主体で検討するということになっているようでございます。つまり、設置主体者の態度一つで、広域募集にするか、広域選抜になるか、それとも地域密着型の六・六制の学校になるかが決まるわけですね。  設置主体者が広域募集校を選択した場合は、いろいろな地域から子供たちが進学希望を出すことになると思います。そうなれば、学力中心の受験戦争にかわって入学戦争が激しくなり、選抜の低年齢化が引き起こされる懸念があると思います。逆に、設置主体者が学区内の中学校と高校の連携を選択すれば、学区内の子供はその学区の六・六制学校に通えるということになりますね。設置主体者の胸先三寸で子供の運命が決まると言っても私は過言ではないと思いますが、大臣、いかがでしょう。
  68. 町村信孝

    町村国務大臣 運命は決まらないと思っております。  なぜかといいますと、これは選択の幅を拡大する、選択肢を拡大するというのが目的であります。したがいまして、ある地域に中高一貫ができますと、全部そこにしか行けないかというと、そうではないはずでありまして、特に高校の場合はかなり広い学区をとっているわけでありますので、あなたはこの高校しかありませんよということにはもともとなっておりません。  中学はどうかというと、中学は一応指定する形になっておりますが、私は、ある程度その場合には中学校の選択肢も少し広げておかないと、そこで一つの矛盾が起きるのかなというふうには思います。  それから、広域の場合はどうか、学力中心の選抜になってしまうのではないかという御懸念を今委員示されました。  先ほど他の委員の御質疑にもございましたが、宮崎県の五ケ瀬中学校高等学校では全県からの募集ということにしてございますが、そこでは、学力という選抜方法にはよりませんで、各小学校からの推薦でありますとか、面接でありますとか、あるいは適性検査といったようなものでありますとか、そういう形で選んだ上で、なおかつ最後は抽せんという形をとります。  したがいまして、私は、仮に通学区域が広くなったからといってにわかに小学校にまで受験戦争が広まるというものではなくて、現実に宮崎県のケースを見ても決してそういうことにはなっていなかったというのは非常にいいサンプルではないのかな、こう思っております。  いずれにいたしましても、どういう通学区域にするかどうかというのは、まさにこれは設置者の判断でお考えをいただき、関係者ともよく相談をしてお決めをいただければいいのではなかろうか、こう思っております。
  69. 肥田美代子

    肥田委員 多分、今大臣は私の質問を聞き違えられたと思うのですが、学力中心の受験戦争にかわって入学競争が激しくなるというふうに申し上げました。競争が激しくなるわけで、学力中心かどうかということは私は申し上げておりません。  それで今、運命が決まらないとおっしゃったのですけれども、もう少し具体的に申し上げますと、例えば私の地元の大阪に必ずしも中等教育学校ができなかったとしますね。そこの子供たちは、行きたいけれどもということになれば、じゃ、どこを選択すればいいのですか。中等教育学校を望む子供たちがいて、その地方自治体にもしも一つもできなければどうしましょう。
  70. 町村信孝

    町村国務大臣 私どもは、できるだけ各県幾つかずつはできればいいな、こう思っているわけでありますが、それは、例えばそれぞれの県なり市町村なりの判断で要らないという判断をされた場合には、それを乗り越えて文部省がつくれと命令をするわけにはまいりません。それは、あくまでも設置者の判断であります。ただ、その地域で、多くの保護者の皆さんあるいは生徒の皆さんが、あった方がいいというお声が強ければ当然そういったものはつくられるでありましょうし、つくる際には文部省としても応援をしていくということになるのであります。  ある時期、一遍にそれはそろわないと思います。どこかの地域では早く、どこかの地域では遅くという、早い遅いが出てくるのはこれはやむを得ないのじゃないのかな、こう思いますが、ある時期たってみれば、中高一貫も選べるし今までのコースも選べるという、選択肢が拡大をずるということが今回の目的でございますので、ある意味ではそれぞれのお取り組みでございますが、文部省の希望としては、一刻も早く幾つかのそういう選択肢ができるようになればいいなということを期待し、そのためにこの法律を御提案申し上げているところでございます。
  71. 肥田美代子

    肥田委員 選択の自由を広げると言えば聞こえはいいのですけれども、やはり選択的に導入される中等教育学校は、私は、選ばれた生徒だけの特別な学校ということには違いがないと思うのですね。  また、一般的には、小学生が自分の意思で学区外の中等教育学校を選ぶということは余りないと思うのです。そうしますと、親の意思が優先されると思うのですね。つまり、教育に熱心な親ほど中等教育学校を選ぶようになることがある程度想定されます。  また、中等教育学校教育実践が評価されればされるほど、中等教育学校社会評価も高まるわけですね。そうなれば、希望しても入学できなかった子供の心には劣等感を植えつけますし、入 学できた子供の心には優越感を生み出すという深刻な状況が生まれるのじゃないか。そして、それが親の中等教育学校への選択行動を高めて、そのことが結果的には中等教育学校をエリート校にしていく、そういうことになるのではないかと私は危惧いたします。  そうしたエリート校にしないために文部省はどのような措置をお考えであるか、伺いたいと思います。
  72. 町村信孝

    町村国務大臣 御心配はわかるのでありますが、しかし、悪い方悪い方へと全部考えていくと、なかなかいろいろな新しい政策はできないのじゃないのかな、こう思っておりまして、もちろん悪い事態が起きないように配慮しつつも、私どもは、いい方向にこれが進む、そういうふうに考えているわけであります。  たまたま私は五ケ瀬に行ったときに子供たちとお昼御飯を一緒に食べまして、幾つかのテーブルで子供たちと話をしてみました。何でこの新しい学校を君たちは選んだのと聞いたらば、学校にまずリーフレットが置いてあった、自分が関心を持ったので、先生と親に相談してみた、そうしたらば、一度見に行ってみようかというので、例えば宮崎市内から車で三時間ぐらいかけて行ってみて、これは自分がいいと思ったからここを選んだという子供たちが半数以上でありました。  決して親が、これはエリート校だから、すぐれた学校になることは間違いがないんだから行きなさい行きなさいというケースではなくて、むしろ子供たちが、いろいろなそのパンフレットの写真を見ながら、説明を読みながら、関心を持ってそこに行ってみようと言ったというのが多かったことに私はある種の安心感も得ましたし、決して親に強制させられて行ったわけではない。まして、ある意味じゃ、子供たちが週末遊びたいと思ったときに、かなり山の中でありますから、例えば無理やりあそこに入れられてしまったというと、自分は行きたくないという子供は、週末あんなところは嫌だよと、こう思うかもしれない。しかし、やはり本人の判断というのは相当既に、もう小学校六年の段階でもあるんだなということをまず感じたわけであります。  それから、受験エリート校にならないようにするためにという意味では、要するに入試の段階で点数主義にならない、難問奇問的な一部私立中学校に見られるようなそういう試験をやらないということと、もう一つは、学校の中で単なる受験勉強、大学入試のカリキュラムに合わせた形でのそういういささか偏ったカリキュラムにしないという二つのメルクマールがあるだろう、こう思っております。  まず、入試の段階の話で言うならば、そこは先ほど申し上げましたように、学力検査という方法はとらない、学力試験をとらないということで、学校個性や特色に応じて面接とか実技とか小学校からの推薦とか抽せん、こうした方法を組み合わせていくことがいいんじゃないか。それは、中教審の答申でも指摘をされているところでございます。  また、入学後のそうしたカリキュラムのつくり方というものも、実際に教育委員会が最初の段階にはどういうカリキュラムでやるのかというのを各学校とかなりよく相談をしてもらって、ある意味ではいびつな時間表にならないような指導をしていただければ、今委員指摘の御懸念というものはなくなるのではないのだろうか、こう考えているところであります。
  73. 肥田美代子

    肥田委員 今大臣にお答えいただきましたが、あと、これから政令とか省令とかを定めていかれるわけですが、その上で何かそういうエリート校にならないための歯どめということも考えていらっしゃいますか。
  74. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 今後、この中高一貫教育のさらに実施の細則につきましてどのような政省令等を定めていくかということにつきましては、この国会での御審議等を踏まえながら我々検討していかなければならないわけでございますが、ただ、先生御指摘のいわゆる受験エリート校というもの、これはどういうものかということになりますと、ただいま大臣からも答弁がございましたように、いわゆる大学受験というものを過度に意識したあるいはその準備を最優先させた形でカリキュラムを組み、教育を行う、こういうようなものになろうかと思うわけでございます。しかし、そういうものを許さないというようなものをどういう形でルール化できるかどうかというのは、大変難しい課題になるのではないかというふうに思っております。  それよりも、ただいま大臣からも答弁がございましたように、各県でどのような中高一貫校をつくっていくか、幅広い関係者の意見を踏まえながら慎重な検討を経てつくっていく。親たちあるいは子供たちのニーズを踏まえた形で、どのような形で中高一貫校をつくるのがいいのかという慎重な検討を経、そしてでき上がった後、そこに教師として加わります人たち、校長をトップとして学校が運営されるわけでございますが、そこでそのようないわゆる受験エリート校というようなものは、中教審答申でも、これはあってはならないという形で特に留意をされているという、そういう中で生まれた中高一貫校であるという趣旨を十分に踏まえて、そのようなものにならないような努力がなされるものではないか、こういうふうに思っているわけでございます。  したがいまして、ルールで云々といいますよりも、まずは設置者等の御努力というものに我々は大いに期待をし、そのことによって貫かれ得るのではないか、こんなふうに考えております。
  75. 肥田美代子

    肥田委員 そうしますと、地域で、例えば親でありますとか先生だとかを加えた検討会議を設置するよう指導していかれる向きはございますか。
  76. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 平成十年度の予算におきまして、私ども中高一貫教育の実践研究事業というものにつきまして一億円余ほどの予算を計上いたしておりますが、それらの予算等も活用していただきまして、各県におきまして、教育関係者、校長、教師、地域の人たち等を踏まえた形での幅広い検討の場を設けていただくようにお願いをするつもりでございます。各県ともそのような検討の場を設けて検討する方向にあるというふうに私どもは承知をいたしておるところでございます。
  77. 肥田美代子

    肥田委員 その検討の場といいますのは、ことし一年ということではなくて、今後、もしもこの法案が通った場合には、五年、十年と、やはり地域で検討の場をつくっていかれるという意識でよろしゅうございますか。
  78. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 私どものこの平成十年度、新規に計上いたしました予算につきましては、私ども、今年度に限らず、引き続き来年度以降も財政当局の御理解を得て予算措置を講じていきたいというふうに思っております。  しかし、なお、各県におかれましては、この予算を活用しつつ、仮にこの予算の増減等がございましても、こうした場を引き続き設けて検討していっていただきたい、こんなふうに思っております。
  79. 肥田美代子

    肥田委員 その検討会議にはどういうメンバーが入るのが好ましいと思っていらっしゃいますか。
  80. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 私ども、このたびの予算計上に当たりまして考えてございますのは、まず、学校でございますので、校長を初めとする教師、それから学識経験者、教育委員会の関係者、PTAの関係者等幅広い方々に御参加をいただければというふうに思っておりますし、県に設ける場合におきましても、市町村の関係者あるいは保護者の方々、地域の方々、幅広い方々の御参加が得られればよろしいのではないか、こんなふうに思っております。
  81. 肥田美代子

    肥田委員 都立大学中高一貫教育の六年制附属校についての検討会議の提言で、小学校を受験戦争に巻き込まないことを基本とはしているものの、具体策の面で意見の一致ができず、各論併記になったという報道がございました。  大臣も御承知のように、中学受験戦争は、中学校高等学校を併設した私立学校でより激しいも のがあります。そのために、父母の間には、中等教育学校が導入されると、その中学段階での受験戦争が公立にも及び、しかも全国に広げることになるのではないかという不安がまだあるわけですね。都立大学の提言も同じ不安を表明したものだと私は思います。  受験戦争の低年齢化が心配されているわけですが、大臣は本改正案で小学生を受験戦争に巻き込まないと断言できますか。
  82. 町村信孝

    町村国務大臣 世の中的に見て、まだまだ私どもも、法律も通っておりませんし、PRが行き届いていない点も多々あるのだろうと思っております。  中高一貫というと、ちょうどそれに対比される公立の中高一貫、私立の中高一貫というのは、確かにそういう意味では、受験の名門校といいましょうか、そういう私立が多いものですから、それに対抗して公立のものをつくろうとしているのではないかという誤解が私はあると思うのです。決してそうではない。むしろ、中高一貫でゆとりを持たせ、そして特色を持たせていく。その特色は、またいろいろあろうかと思います。  例えば先ほど五ケ瀬の例、宮崎県の話が出ましたが、まさに森の中での学校ということで、自然と共生をする、あるいは地域の皆さん方と一緒になって学ぶ、地域の歴史も学ぶ、自然も学ぶという形で、環境教育、自然教育、自然体験というのを特色でやっている。あるいはほかの地域では、またそういうものも考えられる。場合によったら、それはスポーツであるかもしれないし、自然科学であるかもしれないし、あるいは芸術分野かもしれないし、あるいはまた別の次元での話かもしれない。  そうした特色を出し、それを選んでもらうということがメリットであろうかな、こう思っておりますので、受験のための学校という意識は、これは一部そういう議論が、都立大学の方ですか、何か研究であったやにも聞きますけれども、私どものそもそもの中高一貫の目的というのはそういう部分ではございませんし、中教審の御答申もそういう形で出されておりませんので、私どもとしては、そういう意味で、小学生に受験勉強を強いる、受験戦争に巻き込ませるという形にならないような、先ほど申した入試面での十二分の配慮、入試と言わないで、選抜の段階での十二分の配慮でそれは可能であろう、巻き込まないと断言することができるのだろう、私はそう思っております。
  83. 肥田美代子

    肥田委員 大臣の力強い断言でございますので、しっかりと伺っておきたいと思います。  この法案は、また、制度の上において、学校選択の面で不公平な事態を生むということも想定されます。  今、例外として区域外就学や指定校変更が認められております。しかし、私立か国立へ入学する場合を除いて、中学校を選択する自由はございません。本法案では、六・六制か六・三・三制のどちらかを選択できるようになります。しかし、もし設置主体者が広域募集の中等教育学校を設置した場合には学区外に住む子供も選択できるのに対しまして、三年制中学校を選択した子供は学区内の中学しか入学できない、そういうことになりますね。学校選択の自由という名のもとに、不公平なことが起きるのではないかと思うのですが、こうした矛盾を解決するために、三年制中学においても学区外入を認めていかなければいけない時期になっていると思うのですが、いかがでございましょうか。
  84. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 二点ほど申し上げさせていただきたいと思うのでございます。  今先生、六・六を選択するか六・三・三を選択するかという御提示でございましたけれども、今回の制度は、現在、市町村教育委員会の就学指定を受けまして就学する中学校、これはどの子供にも共通に開かれているわけでございます。  しかし、その中で、今度できます中等教育学校等を希望する者がそれに志望を出す、そして入学者の決定を経てそちらを選択する場合もありますし、その決定から漏れまして従来の中学校に通うことになるのか、こういうことになるわけでございます。したがいまして、この中高一貫校へのアプローチと申しましょうか、応募の道というのは共通に開かれているというのが一点でございます。  それからもう一点でございますけれども、現在の就学指定制度あるいは通学区域制度についての御指摘でございます。  これは現在は、通常、通学区域というものを設定いたしまして、それに沿って市町村教育委員会が指定をする、そういう形になっているわけでございます。しかし、身体的な事由あるいは地域の事由、不登校その他さまざまな事由によってはこれの例外を求めていくということで、それをさらに柔軟に弾力にしていこうというような方向に動いているわけでございますけれども、今御指摘の、それをさらに柔軟化し、弾力化していくべきではないかという御指摘でございます。  これは、先ほど大臣からの答弁もあったわけでございますけれども、保護者の学校を選ぶ気持ち、意向というものをさらに踏まえた形での運用という御指摘と承りまして、私ども、十分にその点につきましてはさらにそれを推進すべく取り組んでまいりたい、こんなふうに思っているところでございます。
  85. 肥田美代子

    肥田委員 先ほどからの質疑の中で、答弁をされたところでちょっと具体的にお聞きしたいところがあるのです。  指導要領は中学校、高校のものを準用する、しかし各学校がそれぞれ自主的に決定してほしいということがありましたね。そのために中高一貫に関しては特別な措置をするということのようですが、もう少しこの特別な措置ということを具体的にお話しいただきたいのです。
  86. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 現在の中学校高等学校学習指導要領におきましても、各学校の判断によりまして選択の幅は相当にあるわけでございます。しかし、それはすべての中学校高等学校に共通に与えられている余地であるわけでございます。  私ども、このいわゆる中高一貫校は、中学校高等学校が、義務教育と非義務教育という二つの部面を担うわけでございますけれども、一貫して教育を行うというところに特色があるわけでございますので、基本的な基準のところは中学校学習指導要領、高等学校学習指導要領に準拠しつつ、その間を他の学校に比しさらに柔軟に、弾力的に教育課程の編成を行い得るようにして、何もないということは、義務教育の関係等からいってそれはいかがかと思いますけれども、できるだけその選択の幅をさらに認める、学習指導要領の一般的なルールよりもさらに広げるような形で必修、選択を編成できる、そういう形での弾力条項のようなものをルール化して適用するというようなことを今事務的に検討している、こういうことでございます。
  87. 肥田美代子

    肥田委員 不登校は、今小学生で四百人に一人です。ところが、中学生になりますと六十人に一人が不登校になっているわけですね。子供たち学習から逃避している、教師たちは教育に対して自信を失っている、いじめによる自殺は後を絶たない、親の受験競争への意識はいまだに過熱ぎみである、そして、言葉で十分表現能力を持たない子供たちはナイフに走る、大人から見ましてもそういう大変つらい状況が今子供の世界にあるわけです。その状況に対して文部省も一生懸命努力していらっしゃるということは私もよくわかります。  そこで、お尋ねしたいのですが、今いろいろな教育改革も実行され、そしていろいろなシステムを変えようとしていらっしゃいますけれども、恐らくこれが実際にいい形になってくるのは、一年や二年ではないと思うのですね。それで、大臣にお尋ねしたいのは、十年後にどういう教育ビジョンを描いていらっしゃるか。いかがでしょう。
  88. 町村信孝

    町村国務大臣 なかなか一言で言うのは難しい御質問でございますが、平たく言ってしまいますと、私は、文部大臣に着任したときそういうこと も言ったのですが、今の小中高は厳しいのですね。いろいろな意味で厳しい。大学生が一番楽しくやっている。もちろん勉強する大学生もいるわけですが、どちらかというと楽しい。そして社会に出て、厳しい社会に入っていくという感じなんですが、私は、小中高ぐらいは楽しくて、そのかわり大学へ入ったら激しく勉強する、大学院へ行ったらもっと激しく勉強する、こういう方が本当はいいのだろうと思っております。  そういう方向に今学校制度の中身を、全体、方向を変えることができないかなというふうに思っておりまして、そういう意味で今の教育システムを、できるだけ学校の中にもゆとりを持たせるため、例えば週五日制というようなものもやり、覚える内容、指導する内容も精選をしていくといったような指導要領の改正も今作業中でございますが、そういったこともやっていくし、あるいは子供個性というものをいかに伸ばしていくのかということをやはり考えなければなりませんし、そういう意味で、生き生きとした個性が発揮される、そういう子供たちが育つための学校制度であり、個々の学校のあり方であろうということだろうと思います。  また、画一的なシステムではなくて、できるだけ柔軟で選択肢のあるシステムをつくっていく、それがまさにこの中高一貫であったり、あるいは専門学校からも大学に行けるという今回の法律の御提案であったり、あるいは、今回たまさか十七歳から特定の分野大学に進めるようにしましたけれども、今回一挙にそこまで行きませんが、何で十七歳なのかな、十六歳、十五歳でもいいのかもしれないし、逆に二十歳で高校に行っていてもいい。あるいは二十歳になっても、ある意味では一たんドロップアウトして、ドロップアウトという言葉自体僕は余り好きじゃないのですが、一たん別の系列に行って、また高校に戻ってくるとか、そういう柔軟な仕組みができていたらいいなと。  ちょっと要領を得ないお答えになりましたけれども、そんな姿を頭に描きながらこの教育改革全体を進めていきたい、こう思っているところであります。
  89. 肥田美代子

    肥田委員 最後の質問をさせていただきます。  先日、私の質問に対して大臣が、長い間の対決があったというふうにほろりとおっしゃっていただいたことを思い出すわけですが、私、このごろとても残念に思うことがあるのですね。それは、私が町村文部大臣とこうやってお話しさせていただいておりますと、文部省というのは随分やわらか頭になられたなと感じるのですね。文部省は、学校が主体になってこれからやっていってください、私たちはそれを支えていきます、調整役でありたいというふうにも言い切っていらっしゃるわけですね。  ところが、学校現場に行きますと、例えばこれは小さいことを申し上げますが、学校図書館の本が、備品であるから一冊たりとも失うと大変だということでチェックされて、検査があるときは大変らしいのですよ。古い本を廃棄するときにも、これは大変な作業があるわけでございまして、こういう小さな事柄についても、現場ではどうもまだまだ文部省の本意がわかっていないというか、本意が伝わっていないと思うのですね。  私は、ひょっとすると文部省はこの本意をあえてお伝えにならないのかなというふうに勘ぐったりもいたしましたが、町村文部大臣の人柄からすると、どうもそうではないだろうと。そうすると、伝える方法が少な過ぎるとか間違っているとか、狭い日本の国土ですから、文部省のお考えが学校の末端に伝わるというのは、そんなに長い時間がかかるはずはないのですね。ですから、もう少しそういう文部省の今のやわらかい発想が伝わるように何とか工夫していただけませんでしょうか。  例えば、学校現場ではこれだけのことができますよというふうに、文部省がもう少し具体的な伝え方をなさっていかれた方がいい。どうも現場の先生方はとてもかたくなっていらっしゃって、こちこちというか、それは今までの歴史がありますから仕方がないとはいたしましても、もうお互い氷を解かしていただきたいと思うのですね。その点ぜひ頑張っていただきたいと思うのですが、いかがでございましょうか。
  90. 町村信孝

    町村国務大臣 どうも、外から見ると、文部省というのは非常にかたい役所であるという印象があるわけでありますが、私、中に入ってみて、かなり大胆に、また柔軟にいろいろなことを議論したり仕事もしているな、こう思っておりまして、私一人が浮き上がって何かいい格好をしているわけでもない、こう思っております。私も、たまにはちょっと独断的に物を言ってしまうことがありますが、ほとんど皆さん方とよく議論した上で私は発言しているつもりであります。  今、ちょうど去年の九月三十日に中央教育審議会に、現場の自主性を尊重した学校づくりをどうやったらできるだろうかということで諮問をいたしまして、先般その一部が三月二十七日に中間報告をいただきました。夏ごろには答申を全体としていただこうかなと思っておりますが、そこには、当然のこととして、現場の先生方の代表でありますとか教育委員会の方々、いろいろな方々が入って、今この中教審の作業をやっております。そこで一つの体系的な答申が出てくると、それに従って法律を来年の通常国会に出させていただいたり、あるいは予算要求をしたり、あるいは政省令を変えたり、通知をまた全部見直していったりという作業が進んでくると、かなりその辺は姿形が変わってくるのではないか、こう思っております。  また、どうしても長年やってきた頭の切りかえというのが、それは文部省自身も率直に言ってできていない部分もあると思いますし、また、教育委員会も現場の先生方も、あるいは保護者の皆さん方も、どうも今まで一定の方向で頭を動かしてきたものですから、それを切りかえようといっても、例えば今、総合学習の時間をつくろうという話を教育課程審議会で御議論いただいておりますが、もう既に学校現場の方から、そんなことを学校の現場で考えろといったってできるはずがない、文部省がモデルを示さないのは怠慢であるぞよという逆のおしかりまで実はいただいたりしてしまっておりますので、すぐ図に乗ってモデルを示すことがいいかどうかは別にして、やはりみんながこれまでの思考回路を切りかえていく努力をやらないと、今までの惰性に流れてしまうという面があると思いますので、文部省も努力いたしますが、それぞれの分野皆さん方が努力をしていただくことがやはり大切なのではなかろうか、こう私は考えております。
  91. 肥田美代子

    肥田委員 ありがとうございました。
  92. 高橋一郎

    高橋委員長 次に、藤村修君。
  93. 藤村修

    藤村委員 民主党の藤村修でございます。  引き続き、中高一貫教育制度導入を中心に質問をさせていただきます。  きょうの朝からの議論の中でも少しは出てきているとは思いますが、そもそも橋本内閣は、昨年の一月に、六つ目の改革として教育改革をつけ加えられて、教育改革は重要な位置づけにありますが、橋本総理、教育改革、中高一貫、このぐらいのワードで議事録などを検索いたしましても、余り発言がないのですね。  例えば、昨年の一月の通常国会冒頭で、いわゆる六つ目の改革として教育改革をつけ加えて、そこでお話しされているのが、これはその後何度も常に同じことをおっしゃっていますが、教育というものがすべてのシステムの基盤であるという認識のもとに、平等性、均質性を重視したこれまでの学校教育を、これから個々人の多様な能力の開発と創造性チャレンジ精神を重視した生涯学習視点に立った教育に転換する教育改革をとおっしゃっている。  また、去年の四月の決算委員会でありましたが、ここでおっしゃっているのも、やはり「均質、平等、あるいは等質という言葉で置きかえられるような教育でよいのかといえば、私は、絶対にこれではもうだめな時代が来ていると思ってい ます。」ということで、ほとんど今の言葉の域を出ていないわけであります。そして、具体的にということでは、中高一貫教育の導入であるとか五日制を大体挙げていらっしゃいます。  昨年の一月以来、教育改革が声高く唱えられておりますが、いわゆる内閣のリーダーとしては余りに発言が少な過ぎるので、そのかわりに多分町村文部大臣はたくさんの発言をされているはずでございます。  ここで、いわば教育改革を進める基本的理念はいかんということで、その辺をはっきりさせていただきたいと思います。
  94. 町村信孝

    町村国務大臣 昨年の一月、教育改革プログラムを決定し、これまで昨年の八月、今年の四月と二回改訂をしてまいりました。いささか多岐にわたっておりますので、ポイントが絞られていないといいましょうか、理念が見えない、具体像が見えないという御批判を各方面からいただいております。  どうも文部省のPR下手といったようなこともあるのかなと思ったり反省もしたりして、いろいろな機会に御理解をいただく努力をしておりますが、その中で、先般四月二十八日に改定を行ったプログラム、先生のお手元にも届けさせていただいたと思いますが、余りにも多岐にわたっておりますので、その主要事項を四本柱にしてまとめさせていただきました。  一番目が心の教育充実、二番目が個性を伸ばし多様な選択ができる学校制度、主番目は現場の自主性を尊重した学校づくり、そして四番目が大学改革と研究の振興ということで、もちろんこれに含まれなくても重要なポイントはありますが、大きく言ってこの四点が今次改革の柱であろう、こう思っております。  そして、その中身がそれぞれ出てくるわけでありますが、もう一つさかのぼって、じゃ、どういう考え方観点でこの四つが出てくるのですかということが御質問趣旨であろうかと思いますが、先ほど午前の質疑でもちょっと申し上げましたけれども、一つは、戦後の日本教育、あるいはもっと広く言えば日本社会のあり方というものを支えてきたいろいろな平等でありますとか自由でありますとか権利でありますとか、そうしたもののよかった面が行き過ぎると、むしろいささかそれが制約要因になってくる、そうしたものを見直していこうということが一つあるわけであります。  もう一つは、戦後の教育の中で、戦前もそうだったかもしれませんが、ややもすると知育偏重、知識詰め込み型の教育ということがどんどん進んでいって、肝心かなめの、個人の、一人一人の正義感とか倫理観とか豊かな感性とかたくましさ、そうしたものがはぐくまれてこなかったという戦後の教育反省というものもある。そうしたものを変えていこうじゃないか、その辺を総称して、橋本総理は、多様な能力を生かした教育をやっていこう、幾つかの表現をされておりますが、そういう表現をとっておられるのだろうと私どもは理解をしております。  そういう考え方に立って、教育改革プログラムの四本柱を中心にこれから教育改革そのものをどんどん進めていきたいな、かように考えておりますし、その一環としての中高一貫、すなわち多様な選択ができる学校制度をつくるという位置づけの中でこの中高一貫の仕組みがあると御理解を賜れば幸いでございます。
  95. 藤村修

    藤村委員 四本柱、あるいは今の大臣のお言葉、それはそのまますんなりと受けとめられるのですが、では、実際の教育をどう改革するかという各論になりますと非常にこれは難しいし、それだけに中教審も、中間とかいろいろなヒアリングもしながら意見をまとめてこられている中で、多様な意見もあってなかなかまとまり切らぬ、こういうところが現状かとは思います。  今も戦後教育という大臣のお言葉がございました。今回のいわゆる中高一貫というのは、ある意味学校教育制度、いわば学制に戦後五十年余りの間で初めて手をつけるものであります。  では、この戦後の六・三・三・四、上の四を外しても結構です、六・三・三と考えてもいいですが、この制度に対する総括を文部省は一体どのようにしていらっしゃるのでしょうか。
  96. 町村信孝

    町村国務大臣 やはりよかった点もあるし、逆に問題が生じてきた面もあろうかと思います。これだけの教育普及発展、そして戦後の日本社会を支えてきた人材を生み出してきたという中には、この六・三・三・四制というのは間違いなく貢献をしてきただろう、こう評価ができるわけであります。  ただ、余りにもそれが、もうそれしかだめだみたいな感じで運用されてきたものですから、いささかシステムが画一化し、硬直化してきたということで、その中で生徒や保護者の主体的な選択というものがされてこなかった、あるいは生徒一人一人の個性なり能力に着目した教育が行われてこなかったのではないかということが問題点として挙げられるわけであります。  特に、中等教育の段階では、非常に子供たち自身も興味、関心もさまざまになりますし、能力、適性もだんだん分かれてまいりますし、将来の進路の希望というのもだんだん分かれてくるので、特に中等教育の段階ではもっと多様性があった方がいいという考え方から、その一つの選択肢として六・三を六・六という形にしてみたらどうだろうか、それも、六・三・三と六・六という両方で選択ができるようにしたらどうだろうかというのが今回の提案趣旨でございます。  ここから先はまだ十分な議論が行われておりませんけれども、私は、将来、例えば幼稚園と小学校をより連携された形で動かすとか、あるいは小学校中学校をより連携された形で動かしていくとかいうものもあってもいいのじゃないのかな。  ただ、そこから先、例えば六・三・三ではなくて五・四ではどうかとか、いろいろな議論があります。残念ながら実験ができないし、本当はやってみてもよかったのかもしれませんが、今までそういうあれもありませんし、なかなかそこは決め手のない議論なのかなという感じもしたので、あえて六・三・三というそのものを全面的に変えてしまおうというところまで今回至っておりません。いずれまた議論が深まってまいりますれば、多様な選択肢という中でそうしたこともさらに今後あり得るかもしれない、ここはもう少し議論と検討が必要なのではないだろうか、こう思っております。
  97. 藤村修

    藤村委員 今の前段の方で、戦後の教育の総括についてですが、人材養成にそれなりに非常に効果があった、あるいは教育が世界的にも高いレベルで普及した、これは何も、六・三・三であったからということが直接言えるのかどうか、いや、五・三・四でもできたのではないかとか。  重要なポイントは、やはり六・三の部分の義務教育制度というもの、これはちゃんとその義務教育制度評価し、総括をするべきではないかと私は思うのですね。六・三・三・四だったからという理由で、今の大臣の、戦後の教育制度評価ということと直接因果関係はどうか、ちょっと疑問があるのです。  それで私は、この六・三部分を九年の義務教育にした、かつそれを無償ということでやった、それが普及につながっているとは思います。世界的に見ても割に高いレベルの、国が保障する無償教育、これを義務教育期間とした、このことが多分戦後の最も大きなところであったと私は思うのですね。そこで六・三にしたので、だから中等教育後期は三年にしている、そういうところが大きいとは思うのです。  ただ一方で、そういう六・三・三ときたときの、いじめ、不登校など近年の問題がおおむね初等、中等教育前期、いわゆる中学校部分でやはり非常に多発している。それが、三・三で細切れになっているとか、あるいは十五の春、高校受験というもののいろいろな弊害が大きいことなどからきているというふうに私はとらえております。  では一点、そもそも論ではございますが、日本におけるこの六・三の九年の無償とした義務教 育、これをどう評価し、あるいは現時点でどう総括されているかお尋ねを申し上げます。
  98. 町村信孝

    町村国務大臣 委員指摘のとおりでありまして、義務教育であったという面が普及等々に寄与しているのではないかという御指摘は、確かにそうかなと。別に六・三でなくても、これが五・四であっても、それは確かによかったのかもしれません。  言うまでもありませんが、義務教育制度というのは、戦後憲法そして教育基本法に基づいて、学校教育法によりまして、小学校中学校でこれを提供するという法律の定めができてやってきたわけであります。そういう意味では、義務教育ということで間違いなく普及もしてきたし、発展もしてきた、広く国民にも定着をしてきたということであろうかと思っております。  したがいまして、この六・三の九年間の義務教育制度、中には、もう義務教育制度をやめてもいいのではないかとか、小学校だけでもいいのではないか、あるいは、もっと高校まで義務にしたらどうか、いろいろな御議論があるわけでございます。それぞれの議論、一長一短あるのだろうと思いますが、残念ながら、今私ども、積極的にこの義務教育九年間というものを変えなければならないという特に強い理由は見出し得ていないという状況にあるわけでございます。
  99. 藤村修

    藤村委員 私もその点はほぼ同意見でございます。ただ、義務教育という言葉の受けとめられ方といいますか、これが子供にどう受けとめられているかというと、何か中学へは行かねばならない。これは正しく言えば、別に子供の義務ではなくて、親の義務であったり教育委員会の義務であったり国の義務であるだろうと思うのですね。ですから、その義務教育、義務、六・三、九年、これはもう学校に縛られるみたいな、そういう概念というか考え方はむしろこれを変えていく必要がある。しかし、九年の無償という部分は非常に重要で、今後も大切にしていかねばならない、そんな気がいたしております。  これは文部大臣もおっしゃっているわけですが、教育を受けるのは別に学校だけではないんですよ、地域や家庭、これは非常に重要なんです。つまり、教育を受ける場は学校だけととらえずに、むしろ教育子供が受ける権利というものは十分に尊重して、そこで子供や保護者の側の選択権に配慮をする、こういうことかと思うのですね。  その配慮をした一つの例が、今回、六・三の間に、つまり小学校六年を終わった時点の選択が初めて入ったわけであります。今回の中高一貫教育制度導入の趣旨というのが、中高一貫教育をも選択できるようにし、中等教育多様化を一層推進する、こういうふうに簡単に書かれております。  私は、先ほど来の議論で、選択肢が広がるというか、新たな選択ができるということが相当強調されていて、実はその中身の議論がまだないと思うのです。つまり、三・三を六年にして一貫で教育をすること、このことに対して、これは午前中の今井委員質問に対して、初中局長は、幾つかメリット、デメリットも含めてお答えいただきました。  そこにちょっと欠けていた視点が、人間の成長発展の段階で、やはり十三歳から十七、八歳ですか、この時期の教育をどう考えるかという、これは文部省が本当に基本的に考えないといけない部分なんですが、この視点が午前の答弁では若干なかったのですね。中高一貫の六年で教育をすることのいろいろないい点、それから逆な問題点もあるとおっしゃった中に、人間の十二、三歳から十七、八歳あたり、この辺の教育をどう考えるかという視点がなかったのですが、あれば追加してください。
  100. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 十分なお答えができるかでございますけれども、私ども、義務教育、つまり小学校の段階を終えまして中学校から高等学校の段階にかけて、この年齢は精神的にも肉体的にも大変成長の著しい、それから個性の分化の著しいときであるというふうに考えております。思春期と言われたり、さまざまに言われるわけでございますけれども、そういう中で子供たちがそれぞれ内面化を深める、したがって精神的な葛藤も深まる、そういうような時期とも言われております。  そういう意味で、能力・適性、興味・関心、進路希望等多様化するというような言い方をよくされるわけでございますけれども、まさに中等教育に学ぶ子供たち状況というのはそういう状況なのではないか。したがって今、中等教育多様化とか個性化というようなことで言われるわけでございますけれども、そういうことが学校のシステムとしても大変重要なものとして求められているのではないか、こんなふうにも思っております。
  101. 藤村修

    藤村委員 六年制の中高一貫に課題もあるというのが午前の答弁でありまして、それはわかります。  ただ、今回踏み切ったというのは、中高一貫の六年制というのはやはり相当必要だよという意思が当然あったし、その場合に、基本的に、今おっしゃった、精神的あるいは肉体面でのまさに一番重要な成長期である、思春期である、将来の選択も決める時期である、この時期の教育をどうするのかということが文部省の大きな仕事だと思うのですね。それが制度として六年制を導入するというのならば、もう少しこの時期の六年制の教育の効能といいますか効果、評価、やはりこれをある程度大きく宣伝していただかないと、これもできますよ、地方に任せますよという程度では非常に生ぬるいのではないか、あるいはそれこそが国の、文部省の仕事ではないかと思うのですが、何かございましたら。
  102. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 私ども、六年制の中高一貫教育のよさというのは、先ほどもお話し申し上げましたとおり、幾つかといいましょうか、数多くの面であるという認識には立っているわけでございます。  ただ一方では、現在の中学校高等学校制度におきましてもさまざまにメリットがあるわけでございます。卑近な言葉で言いますと、小学校から中学校の段階で、希望する高等学校に学んで大学に進みたい、あるいは就職したいというような気持ちで小学校中学校時代を過ごしている子供たちも相当数いるというわけでございます。  そういうことで、中高一貫教育のメリット、よさというのはもっともっと訴えていかなければいけないという御指摘はそのとおりかと思いますけれども、一方で、現行中学校高等学校制度においてメリットを見出しているという親や子供たちもいるということもございまして、今申し上げました選択的な導入、しかし、実質的に選択が可能なような整備は必要である、こういう言い方で、今私ども説明をしているわけでございます。
  103. 藤村修

    藤村委員 先ほどの大臣の答弁にもございましたが、今回の中高一貫教育制度の導入に関しては、選択肢を広げるのが目的と、もし間違いがあれば修正いただいて結構です。  いや、私は、それは一つ目的かもしれませんし、目的というほど選択肢を広げることはそんな大したことはないのじゃないかと思うのです。やはりこの重要な時期に、中高一貫の六年制の教育もできます、あるいは六年制の教育を今からやりますということの中身の方がより重要じゃないかなと思うのです。  そこで、では、選択肢ということが大分重用されておりますので、これもそもそも論でございますが、選択肢が広がる、うん、いいことだと私も最初は受けとめましたが、いろいろな方の御意見を聞いていると、ううんと考えるところがあるのですね。つまり、小学校六年生の子に、確かに私立を考えれば選択肢はありましたけれども、基本的にきょうまでは公立においては選択肢はなかったのです。ゼロです。今度は初めて選択肢ができた。これは激変であります。数学でいうと、ゼロから一になることは無限大を掛けたってなりませんので、やはり大変な変化であります。  そうすると、これは選択肢をふやすというよりは初めてつくるということでありますから、この 選択肢を初めてつくるというときに、小学校六年生の子供に、先ほどの五ケ瀬の話は子供たちがみずから選んで来たという、それはそれで選べる人はいいし、選んで行く人もいいのですが、これは全員に選択肢を与えるわけですから、困るな、あるいは保護者にとってもどうしたらいいのでしょうという、今こういう相当大きな心配や不安も出ているのではないかなと。  かつ、実際、想像しますと、この法律ができてどうなるかというと、研究実施協力校か何か、今県で三校程度ですよね、まずは三校程度各県にできるかなとは思います。そうすると、では、日本の小学校六年生の子供たちにみんな選択肢ができましたよと大きな声で言えるのかなと。いや、うちからはとてもあんなところへは行けませんよと言う人の方がずっと多いのではないかなと思うわけであります。  だから、選択肢ができた、選択肢を広げるのが目的という、そこに余り重点を置かない方がいいのではないかと私は考えるのですが、その点について大臣はいかがお考えでしょうか。
  104. 町村信孝

    町村国務大臣 もちろん中高一貫はそれ相当のやはりいい面があるからそれは導入を今回考え、お願いをしているわけでございます。ただ、選択肢があるというのは、ただ単にどっちでもいいのだよという程度の話ではなく、私は非常に重要だと思うのです。  なぜかというと、今委員指摘のように、小学校中学校は選択肢がない。もちろん私立というのがあるわけでありますが、私立を除いて考えれば、確かにあなたはA小学校に行きなさい、B中学校に行きなさい、言うならば割り当てられていたわけですね。そこに選択肢があるということは、私は非常に大きな意味がある。  そのためには何が今度は必要になってくるかというと、今は公立のどの小学校中学校も、むしろ特色がないことをもってよしとするとまでは言わないまでも、どこをとってもそう違いはないということをむしろ強調してきたのだろうと思います。それはまさに平等という概念であり、それでみんな一斉にやってきた。ある時期まではそれでよかったかもしれない。私は、これからは公立学校も特色のある学校づくりをやってもらうということが、選択肢を拡大する前提としてどうしても必要だと思います。  したがって、それぞれの校長先生が、我が小学校は、我が中学校は、こういう学校としてこれからやっていきたい。言うならば、私学で言うならば建学の精神という言葉がありますが、それに匹敵するぐらいの心意気で私は公立の小学校中学校もやってもらう。そして、そのことがただ学校の中で行われていたのでは意味がないのであって、それが地域の住民の方々やらあるいは子供を持っている親にその情報提供がしっかりと行われる、そのことが相まって、初めて子供にしろ親にしろ選択ということが可能になってくるわけですね。どこをとったって同じだ、情報もないのでは、これは選択のしようがありません。  したがって、選択肢の拡大というその裏には、私が今言った特色ある学校づくり、校長先生がリーダーシップを発揮して、特色ある学校づくりということと、外に開かれた学校、情報提供がどんどん発信できる学校にしていくということが前提として必要だろう。そこで初めて選択というものが出てくるのであって、ただ単にどちらでも選べますよということ以上に、私は、そうした今までの学校のあり方をかなり根本的に変えていかないと、この中高一貫というのは導入できないとさえ思っております。そこまでの深みと広がりを持った内容を持つものである。  逆に、中高一貫に踏み切るというのは、小学校中学校の今までのあり方をある意味では根本的に見直してくださいという意味合いを持った提言であるというふうに、それぞれの学校で、それぞれの都道府県、市町村で受けとめていただきたいな、私はこのように考えているわけであります。
  105. 藤村修

    藤村委員 つまり、選択肢は児童や保護者の側だけの問題ではなくて、むしろ現状の、あるいはきょうまでずうっと長年やってきて、ある意味ではマンネリ化している中学、高校に大きな風穴をあけるのだというぐらいの意気込みである、その点は非常にいいことだと思います。ただ、そのことを中高の先生たちや現場の校長さんはみんなわかっているのであろうかな、やはりこの辺は議論の中で明らかにしていかないといけないと思うのです。  それと、もう一つ視点としては、今おっしゃった、子供たちのためにもあるいは今の学校の現状のためにもという、これは改革でありますが、このときに、ちょうど中高というのがいわゆる中等教育という意味で、そしてここにいわば風穴をあけるという話でございますから、その意味では今後の中等教育全体の改革というものを展望していかねばならないわけであります。それについて、文部省の現時点の考え方をお示しいただきたいと思います。
  106. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 中学校高等学校中等教育と言われるわけでございます。この中等教育改革につきましては、さまざまな面の改革があり得るわけでございますが、一つ内容の面、もう一つ制度の面、両方のアプローチがあろうかというふうに思っております。  制度の面といたしましては、ただいま御審議いただいておりますいわゆる中高一貫教育の選択的導入という形で、個性化、多様化と言われる中等教育の課題を制度の面から対応していこうというのが一つでございます。  それからもう一つ内容の面でございますが、これは現在教育課程審議会におきまして、中学校高等学校においてどういう教育活動が展開されるべきかということで鋭意検討が行われているところでございます。その基本的な考え方といたしましては、中高を通じまして、一人一人に生きる力を、ゆとりの中で生きる力をということをキーワードにして、私ども教育内容のあるべき姿を今模索しているところでございます。  ただ、中学校の段階はまだ義務教育の最終段階ということで、やはり基礎、基本の徹底ということに留意しつつ、しかし中学校の段階からも個性化といった点を重視していくべきであろうということ、しかし高等学校の段階になりましたならば、むしろ一人一人の個性、特性というものを教育内容の面からも伸ばしていく、そういう視点に立って今教育内容面での検討が行われております。こうした制度の面と内容の面と両々相まって、この中等教育改革というものが進められていくべきものだろうと思っております。  もちろんそれ以外に、例えば人的条件整備でありますとか物的条件整備でありますとか、あるいは学校の運営のあり方でありますとか、いろいろあろうかと思いますけれども、私どもが今所管しておりますものといたしましては、この二つが大きな柱であるというふうに認識をいたしております。
  107. 藤村修

    藤村委員 でしたら、中等教育改革は、いわば制度面で今回風穴をあけるということですから、これはスタートと考えてよろしいのでしょうね。
  108. 町村信孝

    町村国務大臣 スタートとか第一歩というと、何か最終的に一つのこういうのがあって、その第一歩という意味では、必ずしもまだ私どもも最終的にどういう姿がいいかということを描き切っているわけじゃございませんので、第一段階、第二段階、第三段階の第一段階ということでは必ずしもございません。  ただ、例えばこの中高一貫も、まずはやってみて、どういうふうにいくか。実際、むしろ弊害の方が圧倒的に多い、ちっとも広がらない、あるいは、一たんやったけれども、やめていく学校もどんどん出てきたというふうになれば、またこれはその時点では考え直さなければならないのだろうと思いますが、私どもは、しかし今回これをまずやってみる。  そしてその先、またいろいろ試行錯誤しながら、ここから先は本当にまだ議論が煮詰まったわけでも何でもございませんが、先ほどちょっと申 し上げた幼稚園と小学校、小学校中学校とか、あるいは小中高とか、いろいろな形があり得るのだろう、こう思っておりまして、そこまでを全部見通した第一段階と言われるとそうじゃございませんが、しかし、学校制度をよりよいものに変えていくためにとにかく足を踏み出したということかと言われれば、私はそういう思いで今回のこの中高一貫を位置づけたいな、こう思っております。     〔委員長退席、小川委員長代理着席〕
  109. 藤村修

    藤村委員 やはりそうでなければ改革に値しないと思うのですね。  つまり、五十年余りやってきたものを先ほど総括やら評価をしていただいて、その上で、二十一世紀という新しい世紀を迎えるに当たっての日本教育制度を、これは制度面の方ですが、どうするのかというものの第一歩か一つのスタートかということが今回の学制の選択的導入であるし、それから内容面でも、先ほどの辻村局長のお答えの中では、どうしても義務教育の三年が残っていて言いにくいのでしょうが、やはり十二歳から十七、八歳の教育制度というか中身をどうするかという考え方でもってぜひ改革に向かっていただきたいわけですね。  確かに、六・三の義務教育と残りの後期中等教育の部分とで、きょうまではずうっと法律がそれで来たからその発想しかない。しかし、ひょっとしたらその法律を変えればいいわけですから、より重要なことは、十二、三歳から十七、八歳の間の教育の中身をどうしましょうか、こういう方向で考えていただかなければいけないのではないかなと私は考えております。  もう少し今回の具体的な話について質問をさせていただきたいと思うのです。  中高一貫教育研究会議、これは今年度の予算で一億円をつけていただいて、一応四十七都道府県で設置をするという方向でありますが、聞いてみると、まだ動き出していないということです。むしろ今から通知、通達されるので、これは市町村でもやれるのでしょうか。  それからさらに、これは先ほどの肥田委員質問にもありましたが、この会議というものは、中高一貫という新しい制度の導入をしていって、それをフォローしていくためには、少なくとも今後十年ぐらい継続してやっていかないといけないので、その意気込みがちゃんとあるのかどうか、お聞かせください。
  110. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 平成十年度にスタートいたしましたこの事業でございますが、これは、私どもの事業の積算の考え方といたしましては、都道府県とそれから希望する政令市ということになってございます。したがいまして、市町村におきましては、ぜひ県なりの協議の中に参加をしていただいて、中高一貫教育について同じ土俵で検討していただくような形で加わっていただいたらと思っております。  それから、この検討の場でございますけれども、私どもとしては、できるだけ長く予算措置も講じて、中学校高等学校の接続という大変重要な問題でございますので、各県において検討する、それを私どもも財政支援という形で続けさせていただきたいなというふうに思っております。財政当局の御努力を得ながら、できるだけそういう方向に続きますような努力をしていきたい、こんなふうに思っております。
  111. 藤村修

    藤村委員 それで、今回の改正法律案等からいいますと、中等教育学校の六年制と、同一設置者による中学校、高校の併設と二つが対象ではございます。中教審ではもう一つ設置者が違う中高の連携型、おおむね今この三つが中高一貫教育というふうに言われているのですが、この辺、手短にこの三つの違いをくっきりと説明しておいていただきたいと思います。
  112. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 今回法律で規定をいたしておりますのは、中等教育学校という一つの新しい学校種として中高一貫六年制の教育を行うもの、これが一つでございます。  それから、もう一つ法律で規定をしておりますのは、併設型、私どもこういうふうに呼んでおりますが、同一の設置者、都道府県なら都道府県、市町村なら市町村中学校高等学校を併設して設置をする。それぞれ中学校高等学校は、形の上では独立をしているわけでございますけれども同一の設置者が設置しているということで、この間を入試選抜なく接続して中高一貫を実施するというものでございます。  これはどういうメリットがあるかということでございますけれども、中高一貫教育の利点として、同一の生徒が六年間生活をともにするという形での利点ということを追求いたしますと、教育職員の組織も教育課程生徒の集団も一元的な単一の組織が適当であるわけでございます。そういう判断をいたしました場合は中等教育学校ということが選ばれるでありましょう。  しかし、先ほどの答弁でも申し上げましたけれども、六年間という長い期間でございますので、同じ生徒が長期間同一メンバーでいるということで固定化されることによる問題、あるいは高等学校段階でもう一度進路変更の一定程度の機会を確保するというような要素も入れてはどうかというように考えますと、少し緩やかな組織形態ということが考えられるわけで、そういたしますとこの併設型の中高一貫校というものが想定されるということで、この二つを法律上規定したわけでございます。  もう一つのいわゆる連携型と申しておりますのは、現在の市町村中学校と都道府県立高等学校、したがいまして、前の二つと違いまして設置者が違うわけでございます。異なった設置者中学校高等学校を連携させる。例えば教育課程を両校で協議して決めるというような形、あるいは教師が相互に交流をするというような形、そういった形で連携して前の二つの中高一貫教育に準じた教育を行っていく、こういったものを想定している。この三つを私どもは想定しているということでございます。
  113. 藤村修

    藤村委員 実態的には実は三つ目が多分一番多くなりそうでありますね。実態としても都道府県立の高校が多いし、市町村立の中学校が多いわけですからね。  では、三つ目の連携型については、今回の法律とどうかかわるのか、政令でどのように考えていらっしゃるのか。それから、これは高校入試はどうなるのか、その辺ちょっとお答えください。
  114. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 連携型は、ある意味で事実上中高一貫教育を行うという形を想定してございます。ただ、ある中学とある高等学校が、では何らかの形で連携といえばいいかということでありますと、それは今もあるわけでございまして、何も連携型とわざわざ呼ぶ必要はないわけでございます。  私どもは、これから国会の御論議等を踏まえながら検討してまいりたいと思っておりますが、今の考え方といたしましては、中学校高等学校とで教育課程の編成につきまして協議をして教育課程を編成していく、そしてできれば教師たちの交流とか、あるいは学校行事等を共同してやりますというふうな形での連携が深まる、そういうものを想定してございます。  それで、入試の方でございますけれども、そうはいいましても、連携型の中高一貫学校といいますのは、あくまで通常の設置義務を負って設置されます中学校と都道府県が設置しております高等学校の間の連携でございますので、それは他の一般的な連携に入っていない中学校と何ら性格が違うわけではないわけでございます。したがいまして、その中学校の卒業生のみを例えば無選抜で高校につなぐということになりますと、やはり他の中学校との間での不公平ということになろうと思います。  しかし一方で、連携型という形で中高の間の連帯と申しましょうか連携が深まっているわけでございますので、そういう要素を考慮いたしまして入学者の選抜は行うわけでございますけれども、できれば、これはまだ検討中でございますけれども、各設置者によっては緩やかな形の、簡易な形 の選抜ということも認めていっていいのではないか。というのは、中学校高等学校の間で先ほど申しましたような連携が日常図られているわけでございますので、そんなことを考えていってはどうか。ただ、入学者の選抜というのは、そういうものは行わないと他の中高との関係でのバランスを失する、こんな認識を私どもは持っております。
  115. 藤村修

    藤村委員 確かに、今のは全然わかりにくい。要は、連携をするのも中高一貫教育なんですよとおっしゃったのですね。  であるならば、小学校六年生の人は、連携であれ中高一貫教育を望んで行くわけです。その中学校へ行った人は、連携している高校へやはり全員入らないといけないのですよ。そうすべきだと思うのですが、いかがですか。
  116. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 先ほど申しましたように、この中学校は、就学指定を受けまして、通常は通学区域をベースにいたしまして就学をする学校であるわけでございます。その学校に入った、そのことによって特定の高等学校は無選抜であるということになりますと、他の中学校との不公平というものがあるということが一つ。  それから、仮にその高等学校とその中学校の間で協議をしてこういう教育課程だということでそれに従わなければならないというようなことになりますと、通学区域をもとにして指定されて就学したその中学校に特別の負荷がかかるということにもなるわけでございます。  当該生徒は、他の高等学校へ進学するということを希望しながら、たまたまその区域にあったということでその中学校に学んでいるというわけでございますので、たまたまその中学校に就学した、そのことによって特定のカリキュラムあるいは特定の高等学校との連携という形での教育課程というものが義務づけられるということは問題であろうというふうに思うわけでございます。  そういうことで、先ほど申し上げましたような仕組みを今私どもとしては検討しているということでございます。
  117. 藤村修

    藤村委員 中高一貫を今回導入するからには、小学六年生での選択があるわけですよね。そこで、連携校が近くにあって、それも中高一貫教育ですよということだとおっしゃったので、それならば基本的にやはりそこを選択するか、それとも別な三年制の中学を選択するかをまず六年生で選択しているわけですね、保護者も。  そこで、連携である中高一貫教育に自分はやはり行きたいというので行ったときに、その連携の高校に行けなかったら、これはだまされたということになりませんか。
  118. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 中高一貫には三つの型があるわけでございますけれども、いわゆる中等教育学校、これは本人が希望をして、入学者の決定を受けて入っていくわけでございます。それから、もう一つの併設型につきましても同様でございまして、一般の通学区域をベースにした中学校でない併設型の中等学校を希望して、そして入学の決定を受けて学ぶわけでございます。しかし、連携型の中学校は、通学区域をベースにして就学指定を受けてそこに就学する、その学校を前提にしてございます。ですから、藤村先生のお話のように、もし通常の地域の通学区域とは別の中学校ということでありますれば、それは併設型の中学校というようなものを選択していくということになろうかと思います。  私どもが想定しております連携型の中学校高等学校と申しますのは、通常の今の就学指定を受けて入った中学校、その中学校につきましても連携型という形で中高一貫に準ずるものを実現していってはどうかということで今検討しているものであるわけでございます。
  119. 藤村修

    藤村委員 連携型について、まだやや方針が揺らいでいるような気が私はいたしますので、ここは連携型も含めた三つを中高一貫教育導入のこの際に考えていただきたい。少し積極的にその連携型の方も考えていただかないと、多分実態としても一番多いわけです。  連携型だって、ある意味では小学校六年から選択制にすべきではないか。かつ、中高一貫教育のいわばメリットを生かそうというなら、当然連携型の六年制でいくのだという、ここは確実に保障をしてもらわないと、もちろん制度的に一部入試がありますよというのはいいですけれども、しかし、それは後期の課程へ入るときのまさに入学者選考方法によるわけですから、そこは弾力的に考えたらいいわけです。その辺、これは政令でやるということですから、ちょっとくぎを刺し、念を押しておきたいと思います。  さらに具体的には、今度は通学区域の問題。これは、先ほど肥田委員の方からもありましたが、今の連携型は、いわゆる決められた通学区域の学校がたまたま連携型であるのかそうでないのかという、これは本人の選択でなくするのですか、政令によって。
  120. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 私ども、先ほどの先生の御提言で、むしろ現行中学校の就学のあり方、そのこと自体も見直しをしまして、そのルールも変えて、公立中学校につきましてどこで学ぶかということにつきましても、そこに選択を基本的に入れて中学校を決めていくということになりますと、それはまたいろいろな検討ということになろうかと思います。  私どもが考えております連携型と申しますのは、現行の就学指定制度を前提にいたしまして、通学区域をベースにして指定を受けた中学校、その中学校が近傍の、恐らく近くにあると思われます高等学校とさまざまな形で連携を図っているときに、その高等学校に進学を希望する者につきましては、今のような形での扱いになるということを申し上げたわけでございます。  したがいまして、そもそもの中学校の就学指定のあり方そのものを基本的に見直すべきであるという御提言になりますと、それはまた別途検討をしなければいけない。私どもが想定しておりました、この場で検討しておりました連携型とは違ってくるわけでございます。
  121. 藤村修

    藤村委員 ですから、この際に、中高一貫教育学校教育制度の中で一つ位置づけて導入しよう、その中には中等教育学校がある、併設型がある、連携型がありますと。そこへ入れないと、連携型だけ外して、これは今までどおりですよというとちょっと、改革をしようというのですから、それも一番重要な時期の、成長期の六年制教育をやろうと。やはりこれは、積極性がないと腰が引けているように思われるのですね。だから、何のための法改正かということになってきかねないわけでございます。  そうすると、今度は中等教育学校、新種の方ですね、これは今文部省はどう考えているのですか。全県一区なんですか、それともそれなりの指定を、ある地域というふうに想定するのですか。
  122. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 まさにどのように中等教育学校を、併設型も含めまして設置していくべきか、そしてそれはどのような内容のものにするのか、あるいはどのような規模にするのか、そしてその場合の入学者の通学区域はどうあるべきか、これは私ども、先ほど予算措置を講じたということを申し上げたわけでございますけれども、その事業等を活用していただいて、そして幅広い検討の場を経まして決めていただく、それぞれの設置者の御判断によって決めていただくべきことであろう、こんなふうに思っております。
  123. 藤村修

    藤村委員 設置者の判断というときに、設置者もなかなか困っているようであります。  全県一区にしたときには、当面はそんなたくさんないわけですから、そうすると県内からずっと希望者がある、そこでやはりどうしても小学校六年生の人たちを対象とした一応入学の選考というものをせざるを得なくなりますね。選考方法については午前の質問でも大分ありましたので、余り深入りいたしませんが。例えば、それが六年制で、結局、今度は公立の進学校ができたみたいな評判が立って、全県から人が集まり出すと、またこれは雪だるまのようにそういう方向へ流れていく可能性がある。そうすると、受験年齢の低年齢 化だと言われるのです。  私は、現在のいわゆる公立有名進学高校というのですかね、ここいらは逆に中高一貫の連携も併設も、もちろん中等教育学校に変身することもしない、こんなことが起こりはしないかなと思うのです。そういう御心配はないのでしょうか。
  124. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 それは各都道府県のそれぞれの御判断、そしてそれぞれの地域の実情が違うわけでございますけれども、例えばいわゆる有名校、伝統校と申しましょうか、そして中学生たちがだれもがそこに学びたいという高等学校があったとした場合に、それが併設型の中等教育学校になった、そういたしますと、その併設型の中学校に入りますと無選抜でその高等学校に学べるということになるわけでございますので、その場合は中学校段階での入学者の決定というのが大変な、どういつだらいいのでしょうか、関心を呼び、過熱化するということは想定されると思います。  そういう場合は、したがって、通常の中学校高等学校という形で中学校を卒業した者が、そこは従来どおりの入学者選抜を経てその高等学校に進学していくという形の選択は予想されるだろうというふうには思われます。
  125. 藤村修

    藤村委員 それで、この法律を変えるということは、これは公立学校だけでなくて、当然私立学校も、今までは私立中高一貫教育を実態的に実施していても中学校と高校であったのが、まさに中等教育学校私立てしっかりとできるようになるわけであります。  このときに、私は、私学の独自性といいますか、ある意味では、今まで中高一貫の教育大学進学予備校的なイメージを持った私学があって、それが中等教育学校でさらに拍車がかかる、それは、私は私学の自主性でそういうことがあっていいと思うのですが、ただ、そういうことに対して心配をされる方もあるし、文部省だって、中等教育の段階でまさに大学予備校化してもらっては困ると当然思われますよね。そういうことに対しては、どう措置するのか、あるいは対応するのか、あるいは考えていくのかということ。  それから、都道府県にできる中高一貫教育研究会議なり、この中高一貫教育を考えようという枠組みに私学はどういうふうに参加していくのが望ましいと考えるか、あるいは参加するべきであると考えるか。いわゆる教育委員会と都道府県知事部局という、役所流に言う縦の違いがあるので、これをどう乗り越えられるのか、その辺のお考えを示してください。
  126. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 この中等教育制度、いわゆる中高一貫制度は当然私学にも適用されるわけでございます。ただ、私立学校が、新しく法律で規定されます中高一貫制度を選択するかどうか、これは私学の判断に任されるわけでございますけれども、国公私を通じてこれは適用されるわけでございます。  したがいまして、私どもといたしましては、各都道府県等に設けられます検討の場にはぜひ私学の関係者にも参加をしていただきたい、そして各都道府県、市、それぞれにおける中高の接続の問題につきまして御関心を持っていただき、御検討に加わっていただきたい、こんなふうに思っております。
  127. 藤村修

    藤村委員 それで、少しイメージとして考えていきますと、現在ある商業高校なり工業高校なり、いわゆる専門高校が地域の中学校と一体化する、こういうケースも相当出てくるかと思うのですね。このときには、中高一貫教育学校の特色というのは、やはり以前の、商業高校であったら商業、工業であったら工業というふうな、そういう特色がある程度あっていいのじゃないか、あるいは、あることが望ましいのじゃないかと考えるのか。  一方で、今高校の総合学科制に向けての動きは相当むしろ好感され、ある意味では少し加速しているかと思うので、そうすれば、むしろ今まで工業であったり商業であったところも相当総合学科一に移行していったらいいのじゃないかというのと、二つの考え方があると思うのですね。この辺、今何か想定して考えていらっしゃるかどうか、教えてください。
  128. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 私どもといたしましては、中等教育学校中高一貫制度の実施の有無にかかわらず、各学校生徒たちの実情を踏まえまして、それぞれ魅力のある学校をつくっていってほしい、こんなふうに思っております。  そこで、総合学科という制度平成六年度からできておるわけでございますけれども、十年度には百校を超える総合学科が全国で見られるようになっております。それは、普通科からの転換もございますし、いわゆる専門高校からの転換もございます。それはそれで、各設置者におかれて慎重な検討を経た学校の活性化策として評価していきたいなと思っております。  したがって、じゃ何でも専門高校は総合学科に変えればいいかというと、そうでもないだろうと思います。仮に無理してつくりましても、地元のニーズあるいは生徒たちのニーズに合わなければ、そこは生徒たちが志望しないというようなことにもなるわけでございますので、したがいまして、どういう内容のどういうコースをどんなふうにつくっていくかということにつきましては、先ほどの検討の場等を中心に慎重な検討をしていただければ幸いだというふうに思っております。  なお、参考に申し上げますと、先ほど肥田委員の御質問にお答えしまして、岡山市でこの中等教育学校の設置の検討が行われているということを申し上げたわけでございますけれども、それは工業高校、商業高校というものを総合学科に変える、そして中学校もこれに加わって中等教育学校をつくるわけでございますけれども、その場合は従来の工業高校、商業高校をベースにしつつ、国際文化、情報科学、健康福祉、工業技術という、この四つの系列に生まれ変わらせた形で併設型の中学校高等学校を検討している、こういう実情はございます。
  129. 藤村修

    藤村委員 ですから、いよいよ今の専門高校についてどうしていこうかということも、この際に相当これは方向を出していく必要があるかと思うのです。  高校レベルでの商業、工業その他専門学校を今後やはり育てて、十分にその分野での技術者養成だとか職業人養成に期待をするのか、それとも、その辺の部分については少し総合学科的に移行させていくのか、国の方針というのが少しないと地方も困るのじゃないかなと思うのですが、今お考えがありますか。
  130. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 私どもは、専門高校につきましては、数年前、有馬先生を座長にいたしまして、今後の専門高校のあり方についての検討をいたしました。「スペシャリストへの道」という形での御報告をいただいたわけでございますけれども、やはり専門高校はそれぞれにニーズがあるわけでございます。しかし今のままではいけないという形で、この充実、活性化策が提言されたわけでございます。したがいまして、私どもとしては、専門高校は専門高校として、そうした御報告趣旨等も参考にしながらその充実を期していきたい。  ただ、専門高校、総合高校、普通科、大きくこの三つの型があるわけでございますけれども、それぞれをどんなふうな形で組み合わせて、それぞれの都道府県内の高等学校教育をシステムとして構築するか、これは各都道府県等におきまして幅広い検討を経て御決定いただければいいのではないか、こんなふうに思っております。     〔小川委員長代理退席、委員長着席〕
  131. 藤村修

    藤村委員 それでは、今度は中高一貫教育における教育内容という面で、先ほどいわゆる中等教育改革の柱として、当然、内容それから制度ということでございましたので、内容について、まず、学習指導要領という現存のもの、これを新種の中等教育学校ではどういうふうに扱うのか。  法律で見る限り、単純に今の中学校と高校をくっつけただけの話なんですが、それでは中身がやはり、せっかくの一貫教育をやるのですから、ちょっと工夫が必要であろうと思うのです。多分、中学三年時点あたりから割に弾力的に選択制 をふやしたり、そういうことは中教審では言われておりますが、今考えている文部省の方針、学習指導要領の取り扱いはいかんということであります。
  132. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 現在私どもが考えておりますのは、形式的に申しますと、中学校高等学校中等教育学校というのは別種の学校でございますので、学習指導要領は、中学校学習指導要領、高等学校学習指導要領ということで、そのまま適用ということにはならないわけでございます。  したがって、私どもといたしましては、では新しい中等教育学校学習指導要領をつくるのか、それとも中、高のを準用するのかという二つの選択肢があるわけでございますけれども、基本的に、中、高の学習指導要領を準用するという方向で今検討いたしております。  ただ、中教審からの御指摘もございますけれども、中等教育学校中高一貫教育のよさを生かすということで、単純に二つ足すということではなく、特例措置を講じまして、許される範囲で弾力的な教育課程の編成、実施ができるような、そういう仕組みを付加するという形で準用してはどうか、こんなことを今検討いたしておるところでございます。
  133. 藤村修

    藤村委員 午前中にもそのお答えがありまして、特例措置を検討ということであります。これはどういうことなんでしょうか、政令とか省令でやっていく。それをやるに当たっては一体だれが検討していくのでしょうか。
  134. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 最終的には、学校教育法施行規則でございますので、文部大臣が定めるということであるわけでございます。ただ、国会の御審議等を踏まえながら、教育課程審議会の場にも御検討を煩わすということも考えているところでございます。
  135. 藤村修

    藤村委員 これは国会審議も重要になりますので、私は、まず中等教育の六年制をやるならば、新種の学校種でありますから、六年制のいわゆる学習指導要領を新たに、これは今から時間はかかっても構わないと思うのですが、当然つくるべきで、それがないと、単に中学校の三年と高校の三年を足しました、若干の特例で弾力的にはできますという程度にしか期待をしていないのかということになりかねないと思うのですね。これは教員免許もそうだと思いますが、やはり新たな学校種に新たな学習指導要領という方向をぜひ検討されるかどうか。
  136. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 この点は我々も種々検討したわけでございますけれども、中学校の段階は義務教育ということでございまして、国民すべてに最低限の知識、技術を身につけさせるということに立ちますと、中等教育学校を選択した子供と既存の中学校高等学校で学ぶ子供の間に、そこに不公平と申しましょうか不公正があってはならない、不公正と申しましょうか不均衡があってはいけないということで、中学校学習指導要領、高等学校学習指導要領を原則準用するということで私どもは今検討いたしております。  ただ、文部省には研究開発学校という制度がございまして、この研究開発学校になりますと、学習指導要領によらない教育課程を編成、実施するということが法制的にできるわけでございますので、そういった仕組み等もあわせ、そしてこの中等教育学校、中高一貫校の教育課程につきましては、弾力的な運用ができる、どのようになすべきか、そういう検討をあわせてしていきたい。しかし基本的には、中、高それぞれの学習指導要領を準用するということを基本に対応していきたい、こんなふうに今は考えております。
  137. 藤村修

    藤村委員 そこで、六・三の義務教育というものが何かちょっとネックになるような気が今したのです。  そこで、そもそも論の最初にやりました義務教育制度の過去の評価とか現時点の見解を伺ったわけですが、義務教育というものが、確かにいわゆる無償という意味で九年間保障している。これは憲法にも書いてある。これでこれはいいのですが、その中身までをそんなに縛る必要があるのか。ある意味では、六年制の小学校に手をつけないでもいいですけれども、三年制の中学校と今から六年制の中等教育学校をつくろうというときには、ここの部分の中身は、教育内容、課程というものは、義務教育だからというその法的制限でなしに、少し別な発想で、やはりこの期間に、時代も相当変わってきている中でこういう教育目標を持たせる、これは学校教育法のいわゆる中学校目的を変えるわけですが、そこまで考えられないのか。これは文部大臣にお尋ねした方がいいかと思います。
  138. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 今回の中等教育学校制度でございますけれども、この法律にもそこのところにつきましては明確にしてあるわけでございます。  最終の目標目的高等学校に倣う、しかし前期課程後期課程という区分を設けまして、その前期課程教育目標目的というのは中学校に倣った形で書いてございます。これは義務教育ということもあるわけでございますけれども、そこを終えた者に対してさまざまな資格が派生してございます。その課程を終えた者は中学校卒業としてみなすという形で、中学校卒業という資格がさまざまな分野にかかわってくるわけでございます。  そういたしますと、その中等教育学校を六年間一つに見て、そして、五年生でやるべきところを二年生でやる、二年生でやるべきところを五年生でやるという形で自由にやったとした場合に、ぎりぎりした議論になりますと、義務教育の段階で、前の三年間の間に中学校と同様の内容を修めておくべきなのではないか、修めていないのに中学校卒業という資格を与え得るかどうかというような議論が出てくるわけでございます。  そういうことも考慮いたしまして、そのあたりの疑義をなくすという意味で、この中等教育学校につきましては、三年のところを中学校卒業と同等という内容を形式におきましても実質におきましても明確にする、こういう形で今回の法律案をつくっているわけでございます。したがいまして、その帰結といたしまして、内容面におきましても原則、中学校学習指導要領に倣う、それが妥当であろう、こんなふうに考えているわけでございます。
  139. 藤村修

    藤村委員 局長が答えるのは、そうしか答えられないのだろうと思います。  ただ、中学卒業という資格が非常に重要であった時期、当然、過去、戦後ずっとあったわけですが、今や何度も言われる、高校まで行く人が九六、七%という中で、高校全入時代を迎えて、中学卒業の資格にこれだけのものがなければならないという中身をこだわる必要があるのかな。むしろ、九年間の義務教育というのは、九年間いわば国が無償で教育を受ける権利を保障します、ここが重要であって、その中身の限定までをそんなに今までどおりに、戦後のすぐのときからのとおりに考えていく必要があるのかな。  かつ、ここで中等教育という六年制のものを新たに文部省でつくってやれることにしているわけですから、それならできるだけそれがうまくやれるための、かつ、その六年教育が非常にうまく機能するための方策を考える中で必要なら今の中学校目的を変えていいのではないか、あるいは考え直して、見直しを始めていいのではないか、こう考えるわけでございます。  それで、もう一つは教科書の取り扱いということになりますが、一貫校、つまり中等教育学校、それから併設校、それから連携校と三つの種類で教科書選定というものはどういうふうに想定されるのでしょうか。
  140. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 今回の制度化されますいわゆる一貫校、併設校、連携型とあるわけでございますけれども、一貫校と併設型の中高学校につきましては、それぞれの学校において教科書の採択の決定をするという形を考えてございます。  ただ、連携型につきましては、先ほど通学区域の関連で申し上げましたが、現在、連携型の中学校高等学校と申しますのは、就学指定を受けて就学する中学校、したがいまして、その点では他 の一般の中学校と異なるところはないわけでございますので、この点につきましては、現在、一般の中学校について行われております広域性の採択制度のもとで教科書を採択する、こういう仕分けにして法律案提出させていただいております。
  141. 藤村修

    藤村委員 今の三つ目の連携校は法律では別に何も言っていないわけですから、教科書採択も連携校についでは省令で今からいろいろ考えていくし、教育内容のことやら、それから通学区域のことやらもまだ決めたわけではないのですよね。さっきおっしゃっていることは、もう全部決まったことなんですか。
  142. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 教科書の採択制度につきましては、教科書関係の法律の段階で規定されることになってございます。したがいまして、特例措置を講じない限りにおきましては、一般の原則に戻りまして、一般の広域採択制度によるということになるわけでございます。そのようにすることが今回適切であろうということで、一貫校と併設型につきましてはそれぞれの学校採択、いわゆる連携型につきましては一般の中学校と同様の採択制度を適用する、こういう判断でございます。
  143. 藤村修

    藤村委員 先ほど連携校の御説明をいただいたときに、中学校と高校の先生方の交流もある、それからカリキュラムのそういう調整もあるとなれば、教科書だってということに当然なりませんか。だから、余りかたくなに、連携校は今までどおりの教科書選択区でやると言わないで、これも少し柔軟に考えられませんか。
  144. 辻村哲夫

    ○辻村政府委員 この採択制度につきましては、法律段階で制定されるルールになってございます。したがいまして、ただいまのような考えに基づきましてこの採択制度の区分けをして整理をしたところでございます。
  145. 藤村修

    藤村委員 それからもう一つは、これはなかなか今の行革の中で答えにくい部分もあるかと思いますが、新しい学校種である中等教育学校は六年制で一貫した教育が行える、ある意味では、教科的にも内容のダブりなんかが、繰り返しが減らされる。そうすると、学校の教員定員というのは減らされるのですか。どういうふうになるのでしょう。
  146. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 教職員定数につきましても、本改正法案におきまして、公立義務教育学校の学級編制及び教職員定数の標準に関する法律と公立高等学校の設置、適正配置及び教職員定数の標準等に関する法律の一部改正をお願いしているわけでございます。  現在、義務教育に対する国の制度的なかかわり方と義務教育でない高等学校に関します制度的なかかわり方は異なっておりますけれども、中等教育学校前期課程並びに県立の併設型の新たに設置される中学校につきましては、中学校にかかわります義務標準法の規定を原則としてそのまま適用して、一つ学校として教職員定数を算定するという基本的な考え方にしています。  同時に、中等学校後期課程につきましては、これは高校標準法の規定を適用いたしまして、独立した高等学校とすれば何人の定数が算定されるかという考え方のもとに定数を算定する。その上で、例えば、中等教育学校ということになりますと、前期、後期あわせて一つ学校でございますので校長は一人で済むということになりますので、そういう調整はしてございます。これは現在、同じような形で、義務の教育段階でございます盲・聾学校の小中学部とそれから高等部を一緒に持っております盲学校、聾学校、養護学校につきましては、基本的に今言った同じような考え方で適用して、その上で必要な調整をするということでございますので、基本的には、現在、中学校部分につきましては、前期課程並びに県立の併設型の中学校につきましては義務標準法を適用する、中等教育学校後期課程につきましては高校標準法を適用するという形の法律改正をお願いしているところでございます。  なお、併設型の高等学校の場合につきましては、これはあくまでも高等学校ということでございますので、現在そのままの規定で高校標準法は適用されるということで考えているところでございます。
  147. 藤村修

    藤村委員 併設型の場合は設置者一つだから、公立義務教育学校の定数法とそれから公立高等学校ですか、この二つの法律を一つに合わす。でも、原資は違うのですかね。地方交付税と、それから片っ方は教員のですね。原資が違うのを一緒にするということになるのですか。設置者に対しては一つは入ってくるわけですが、その支払い方法みたいなのはどうなるのでしょうか。
  148. 御手洗康

    ○御手洗政府委員 教員の給与の取り扱いにつきましては、午前中もお答えを簡単にさせていただきましたけれども、これは義務教育に係る部分につきましては、基本的に中学校と同じ取り扱いをしたいということで、本改正法案におきまして、市町村学校職員給与負担法を改正いたしまして、中等教育学校前期課程に係る教職員の給与費につきましては、これは現在の中学校と同じようにすべて都道府県が負担するという形にいたします。さらに、義務教育国庫負担法の一部を改正いたしまして、国が二分の一を都道府県に補助をするという形にしてございます。  それに対しまして、後期課程につきましては、当然、市町村立の学校でございましても、原則として、現在、高等学校設置者である市町村が負担するということになってございまして、その財源措置は地方交付税で措置するということにしてございますので、現在ございます定時制課程に係る部分を除きまして、原則として市町村が負担するということにしているところでございます。  もちろん、県立の中等学校の前期、後期につきましては、これは原則どおり都道府県が負担するということになりますし、また県立の併設型の中学校につきましても、これは都道府県が負担するということになってございますけれども、いずれにしても、国の方は、この義務教育に係る部分、県立の併設型の中学校、県立の前期課程の部分につきましては、義務教育国庫負担法を改正いたしまして二分の一を負担するという形にしているところでございます。
  149. 藤村修

    藤村委員 大分細かい話まで至りましたが、もう一度基本のところに戻って、大臣にも少しお答えいただきたい部分もございます。  つまり、はっきりしてきたのは、学校制度を、これは戦後五十年余り六・三・三・四で来たものを、六・六もできる、その中身は中等教育学校という六年制の新しい学校種ができる、あるいは併設型で六年の中高一貫教育ができるというのが今回の法の範囲であり、それにさらに政令、省令などで今度は連携の部分も加味した中高一貫教育もこの際に相当考えてやりましょう、こういうことでありますから、法対象は二つでありますけれども、まずこの三つをきっちり同じような発想で考えないといけないと私は思います。  かつ、そのときに、中高一貫教育が、何度も言われているその選択肢、六年生から上へ上がるときの選択肢ができましたというだけでなしに、やはり十二、三歳から十七、八歳の間の六年一貫教育がひとついいですよ、だから取り入れるのですよ、こういう言い方をしていただきたい。  では、どういうふうにいいのですかと。それは、教育のカリキュラムがこうであります、あるいは学校の先生もこうして六年間一緒に見てという、その局長のメリットのお話の部分に加えて、この重要な成長段階に、一つ、例えばスポーツでいってもそうなんですが、中学校のサッカーと高校のサッカーが今分断されて、コーチも監督も指導者も違う中で、やはり一つのスポーツをきわめていくに当たって、あれは非常にそごがあるらしいです。それは芸術の分野もそうかもしれません。つまり、そういう特色のある、スポーツにしても芸術にしてもできるのですよと。こういうふうな六年教育を入れるに当たって、何か、それもできますよ、それも地方に任せますよというのじゃなしに、文部省はやはりこれはもうちょっと鳴り物入りで言ってもらわないといけないのじゃないかと。  そこで、私どもは今、一つ国会提出させてい ただいたのは、結局実態としては同じだと思うのですが、やはり国は方向を示さないといけない、そのときに六・六制というものを視野に入れて、我々は六・六制を目指して将来十年間でやっていこうというはつきりとした方向を示しておりますが、今回、文部省はこの六・六制ができますよというふうに端緒を開いた。ただ、やるかどうかは地方に任せますというのでは、ちょっと地方も困る。国の、文部省の大きな仕事の一つは、やはりそういう教育制度をつくることであります。  その中身に余り立ち入らなくても、それは地方に相当任せますよ、しかし、基本の制度はこうですよというときに、この六・六制を、今後、今回この法改正によってその方向を少し模索する、実験協力校とかを、幾つか各県でやりますけれども、これでよければ、その方向をある程度模索する、当然そういうふうな意図はわかるわけですが、そのことを、やはり千里の道も一歩からですが、その一歩がどっちを向いた一歩なのかということを少し大臣に示していただきたいと思います。
  150. 町村信孝

    町村国務大臣 大分詰めた御議論をしていただいたこと、感謝をいたしております。  それは、十年で全部という姿になることを、私ども否定をしているものではございません。これは非常にいいということでどんどん広がっていく、結果的にはそうなるかもしれない。しかし、今この段階で、私どもとして、すべてそれにいたしますということを言うにはいささかまだ、それは私立の経験はあるとはいうものの、現実に公立段階では初めてこれをやっていこうということでございますから、一定程度やはりならし運転をやってみて、なるほど、いいなというのでどんどん広がっていくということを私どもは何ら妨げようとは思っておりません。ただ、一挙に全部、それがすべてだ、また、それしか選択肢がないという姿に今法律で定めてしまうことには、やはり私どもはいささかのためらいを覚えざるを得ません。  そういう意味で、とりあえずこれでスタートをさせていただきたいという姿勢にならざるを得ないのでありまして、何だ、及び腰ではないか、こういうおしかりもあるかもしれませんが、なかなか、ここが教育改革の難しいところかなと思うのであります。  金融ビッグバンであれば、四月一日を期してすべての銀行が外貨預金を全部受け入れられますよといったようなことができますが、教育制度というのは、ある面では大変大きな船でございますので、余り急にハンドルを切り過ぎてしまうと船が沈没しても困るという面もございます。したがいまして、まず第一歩を踏み出させていただきたいなというのが私どもの法案の趣旨であるという点は、委員も御理解をいただけるのではないかな、かように思っております。
  151. 藤村修

    藤村委員 その方向を目指していただくということで、その際に、もう一点注意していただきたいのが、先ほど来、大分詰めた話で、やはりこの時期の六年制の一環教育というものは非常にいいのですよ、それは、やはり教育内容がこうだと。それは、常にきょうまで引きずってきた三・三の頭で考えてはいけないということをずうっと言い続けてきたわけであります。  その辺は、先ほど来、文部大臣はやわらかいけれども文部省はかたいと言われている。しかし、このかたさは相当大きく変わっているわけですし、時代とともに本当に文部省も新しい発想もされている。私は、そういう意味では評価しておりますので、これは余りこだわらずに、きょうまでの五十年やってきて、それに対してやはりいろいろな問題があったから今回こういう新しいものに踏み切るのであれば、その発想の部分で相当柔軟に、あるいは弾力的に考えていくように、これは政令、省令を今からつくられるわけですから、その点をお願い申し上げまして、長時間にわたりましてありがとうございました。  終わります。     —————————————
  152. 高橋一郎

    高橋委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております本案審査のため、参考人の出席を求め、意見を聴取することとし、日時、人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  153. 高橋一郎

    高橋委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る二十日水曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時四十三分散会      ————◇—————