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1998-03-31 第142回国会 衆議院 農林水産委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月三十一日(火曜日)     午前九時五十一分開議 出席委員   委員長 北村 直人君    理事 赤城 徳彦君 理事 鈴木 俊一君    理事 松岡 利勝君 理事 松下 忠洋君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       稲葉 大和君    岩永 峯一君       小野寺五典君    大石 秀政君       金田 英行君    熊谷 市雄君       栗本慎一郎君    河本 三郎君       園田 修光君    高鳥  修君       竹本 直一君    中尾 栄一君       中山 成彬君    仲村 正治君       丹羽 雄哉君    萩山 教嚴君       御法川英文君    矢上 雅義君       石橋 大吉君    仙谷 由人君       永井 英慈君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    木村 太郎君       若松 謙維君    佐々木洋平君       菅原喜重郎君    中林よし子君       藤田 スミ君    前島 秀行君       岩浅 嘉仁君  出席国務大臣        農林水産大臣   島村 宜伸君  出席政府委員        農林水産省食品        流通局長     本田 浩次君        水産庁長官    嶌田 道夫君  委員外出席者        総務庁政管理        局管理官     伊藤 隆一君        国土庁計画・調        整局総務課長   知久多喜真君        外務省アジア局        東北アジア課長 佐々江賢一郎君        厚生省生活衛生        局乳肉衛生課長  森田 邦雄君        農林水産委員会        専門員      黒木 敏郎君     ――――――――――――― 委員の異動 三月二十六日  辞任       補欠選任   神田  厚君    奥田 敬和君 同月三十一日  辞任       補欠選任   石破  茂君    岩永 峯一君   木部 佳昭君    稲葉 大和君   中尾 栄一君    大石 秀政君   二田 孝治君    竹本 直一君   御法川英文君    河本 三郎君   宮本 一三君    栗本慎一郎君   奥田 敬和君    永井 英慈君   漆原 良夫君    若松 謙維君 同日  辞任       補欠選任   稲葉 大和君    木部 佳昭君   岩永 峯一君    石破  茂君   大石 秀政君    中尾 栄一君   栗本慎一郎君    宮本 一三君   河本 三郎君    御法川英文君   竹本 直一君    二田 孝治君   永井 英慈君    奥田 敬和君   若松 謙維君    漆原 良夫君     ――――――――――――― 三月二十七日  原材料供給事情及び水産加工品貿易事情の  変化に即応して行われる水産加工業施設の改  良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に  関する法律の一部を改正する法律案内閣提出  第五六号)(参議院送付)  真珠養殖事業法を廃止する法律案内閣提出第  五七号)(参議院送付) 同月三十一日  食品製造過程管理高度化に関する臨時措  置法案(内閣提出第六五号) 同月二十七日  遺伝子組換え作物の環境・生態系の調査・検証  に関する請願(古川元久紹介)(第八九三号  )  同(瀬古由起子紹介)(第一〇二〇号)  同(秋葉忠利紹介)(第一〇五八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月三十日  稲作経営安定化確立政策に関する陳情書  (第一五四号)  稲作経営の安定をめざした新たな米政策確立  に関する陳情書外一件  (第一五五号)  水稲減反に関する陳情書  (第一五六号)  WTO体制見直し改善及び新たな米穀政策の  確立に関する陳情書  (第一五  七号)  学校給食用の米・牛乳に対する補助金継続等に  関する陳情書外一件  (第一五  八号)  学校給食用米穀への補助継続に関する陳情書外  五件  (第一五九号)  学校給食用牛乳予算確保に関する陳情書  (第一  六〇号)  林野行政抜本的転換に関する陳情書  (第一六一号)  国有林野事業改革に伴う適切な組織再編成に関  する陳情書  (第一六二号)  中新田営林署の存続に関する陳情書  (第一九〇号)  酪農・畜産振興施策に関する陳情書  (第二〇  九号)  函館営林支局の存置に関する陳情書  (第  二一〇号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  原材料供給事情及び水産加工品貿易事情の  変化に即応して行われる水産加工業施設の改  良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に  関する法律の一部を改正する法律案内閣提出  第五六号)(参議院送付)  真珠養殖事業法を廃止する法律案内閣提出第  五七号)(参議院送付)      ――――◇―――――
  2. 北村直人

    北村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付原材料供給事情及び水産加工品貿易事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案及び内閣提出参議院送付真珠養殖事業法を廃止する法律案の両案を議題といたします。  順次趣旨説明を聴取いたします。農林水産大臣島村宜伸君。     ―――――――――――――  原材料供給事情及び水産加工品貿易事情の   変化に即応して行われる水産加工業施設の   改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措   置に関する法律の一部を改正する法律案  真珠養殖事業法を廃止する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 島村宜伸

    島村国務大臣 原材料供給事情及び水産加工品貿易事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、その提案理由及び主要な内容を御説明申し上げます。  本法は、北洋における外国政府による漁業水域設定等に伴う水産加工原材料供給事情の著しい変化にかんがみ、これに即応して行われる水産加工施設改良等に必要な長期かつ低利の資金貸し付けを行うことを目的として、昭和五十二年に制定されたものであります。  その後、本法は、昭和六十年代に入ってからの二百海里体制強化及び水産加工品輸入の増大に対処するため、昭和六十三年の改正により、水産加工業体質強化するための研究開発等に必要な資金についても貸し付けを行うこととされたところであります。  この間、政府といたしましては、本法に基づき、我が国近海の低利用資源食用水産加工品原材料としての有効利用と、新製品、新技術開発導入等による水産加工業体質強化の促進に努めてきたところであります。  本法は、本年三月三十一日限りでその効力を失うこととされておりますが、最近における水産加工業を取り巻く状況を見ますと、国際的な水産資源保存及び管理のための措置強化により、水産加工品原材料供給事情がさらに悪化していることに加え、水産加工品輸入も引き続き増加する傾向にあります。さらに、一部の外国において水産加工品衛生に係る規制強化されており、これにより我が国水産加工品貿易に著しい影響が生じることも懸念されております。  このような状況にかんがみ、引き続き、水産加工施設改良や新製品、新技術開発導入等に必要な資金貸し付けを行うこととするため、本法有効期限を五年間延長し、平成十五年三月三十一日までとするとともに、平成十一年三月三十一日までの間において、外国政府による水産加工品衛生に係る規制強化に即応して緊急に行われる水産加工施設改良等に必要な資金貸し付けを行うことができることとし、あわせて、法律の題名を簡潔なものとする観点から、これを「水産加工業施設改良資金融通臨時措置法」に改めることとした次第であります。  以上が、この法律案提案理由及び主要な内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。  次に、真珠養殖事業法を廃止する法律案につきまして、その提案理由及び内容を御説明申し上げます。  真珠養殖事業法は、品質向上を図るための国営検査実施等措置を講ずることにより、真珠輸出を促進すること等を目的として昭和二十七年に制定されたものであります。  その後、世界市場において我が国真珠に対する高い評価が確立していることや、真珠国内消費の増加に伴い輸出割合が低下していることなど、我が国真珠産業をめぐる状況は大きく変化しております。  このような状況の中で、規制緩和に対する要請の高まりを考慮すると、輸出真珠に対する国営検査実施等措置によって真珠品質向上等を図る意義はなくなっているものと考えられます。  このため、平成十一年一月一日をもちまして真珠養殖事業法を廃止することとし、本法律案を提出した次第であります。  以上が、この法律案提案理由及び内容であります。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決いただきますようお願い申し上げます。
  4. 北村直人

    北村委員長 これにて両案の趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 北村直人

    北村委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。石橋大吉君。
  6. 石橋大吉

    石橋(大)委員 大変久しぶり質問でありまして、ちょっと質問の要領を忘れたみたいな感じもしないこともないのですが、幾つか質問をさせていただきます。  まず初めに、せっかくの機会でありますので、日韓漁業交渉関係について、何点か質問をさせていただきたいと思います。  去年、おととしの通常国会海洋法批准になりまして、そのときに、私もかなり深くかかわったのですが、海洋法批准後一年以内に日韓漁業交渉妥結をさせる、もしできないときには、現在の漁業協定終了通告をして、どんなに遅くなっても二年後には海洋法条約精神が具体的に我が国周辺海域においても実現をするようにすべきだ、こういうことで交渉期限を設けてきたことは、御承知のとおりであります。  去年の七月二十日に一年間過ぎまして、その後、約半年後の一月二十三日に、ついに現行日韓漁業協定終了通告をせざるを得ない、こういう結果になったわけですね。  このことに関連をして、韓国は、直ちに大変厳しい反応をいたしまして、一種の報復措置というか、自主規制の撤廃をする、こういうことで、早速北海道太平洋岸襟裳岬周辺に八隻のトロール船を出動させて、自主規制措置を中断する、こういう挙に出たわけであります。  今後の日韓漁業交渉に深刻な影響をもたらすのではないか、そういうことが漁業関係者から、あるいは交渉の当事者も含めて大変心配をされていたわけでありますが、その後の韓国漁船自主規制水域の中における操業状況、あるいは、北海道だけじゃなくて、その他の自主規制水域における操業状態も含めて、最近の状況について、まず水産庁の方からお伺いをしたいと思います。
  7. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 日韓漁業交渉におきます終了通告に至る経緯は、先生がおっしゃったとおりでございます。  一月二十三日に日本側から終了通告をしたわけでございますが、同日に韓国側自主規制措置を停止するということで一二十四日に自主規制水域内で韓国漁船操業しているのが認められました。その後、韓国漁船は、主に襟裳岬の東側から南側を中心に、自主規制水域内の内外にわたりまして操業を行っております。一月二十四日から昨日まで六十六日間に自主規制水域内で操業をした韓国漁船合計隻数は、延べでございますが、四百十八隻というふうになっております。  なお、北海道以外の、西日本水域におきます韓国漁船操業につきましては、現在のところ自主規制ライン内での操業についての報告は受けておりません。
  8. 石橋大吉

    石橋(大)委員 今水産庁長官の話を聞きますと、六十六日間に四百十八隻ということですから、これはこれで大変な隻数が出動しているな、恐らく北海道沿岸漁民の皆さんは、ますます深刻な状況で、こういうことが一日も早く解消されることを祈っておられるのじゃないか、こう思っているわけですが、そのためにもできるだけ早く日韓漁業交渉を成立させて、資源確保あるいはお互いルールにのっとった正常な操業ができるようにしなければいかぬ、こういうふうに思っているわけです。  そういう意味で、日韓漁業交渉の成立が急がれるわけですが、このことに関連をして、三月の二十一日に小渕外相が訪韓をされまして、金大中大統領金鍾泌首相代理朴定法外交通商大臣と相次いで会談をして、そして、中断をしている新漁業協定締結に向けた政府間交渉を四月中にも再開することで合意した、こういうふうに新聞で伝えられているわけであります。  この際、今後の日韓漁業交渉に向けての日本政府基本方針、さらには交渉決着の目途、現行協定終了通告をして一年後にはそれは失効することになっていますから、そういうことから考えると、来年の一月二十三日がどう頑張ってもぎりぎりの期限になるかな、こう思ったりもしています。できるなればぎりぎりの期限まで待たずにもっと早く解決をしてほしい、こういうふうにも思うのですが、そういうことに関連をして、外務省、来ておられると思いますから、まず外務省の方の考え方方針を承りたいと思います。
  9. 佐々江賢一郎

    佐々江説明員 お答え申し上げます。  日韓漁業関係につきましては、先生が今おっしゃられましたとおり、先般の小渕外務大臣朴定洙外交通商部長官との会談におきまして、漁業関係者対話を通じた雰囲気づくり政府としても支援しながら交渉早期再開することにつき原則合意したわけでございます。また同時に、できれば四月中にも次回交渉を行うことで意見の一致を見ております。  外務省といたしましては、農林水産省と連携、協力しながら、海洋生物資源のより的確な保存管理のために、国連海洋法条約趣旨を踏まえました新たな漁業協定早期締結のために真剣に交渉に取り組んでいきたい、こういうふうに思っております。  交渉のめどでございますが、交渉決着ということを考えますれば、相手のあることでありますから、現時点でいつになるということはお答えすることは非常に困難でありますけれども、我々としては、韓国側の協力も得ながら交渉を着実に進めていきたいというふうに考えております。  先生がおっしゃられましたとおり、現行協定は明年の一月二十二日まで効力を有することになっております。新たな協定ができれば当然のことながら国会に御審議いただかなければいけませんので、そういう意味でも交渉早期妥結に向けて真剣に取り組んでいきたい、こういうふうに考えております。
  10. 石橋大吉

    石橋(大)委員 次に、政府間交渉民間交渉との関係について、念のためちょっとお尋ねをしておきたいと思うのです。  「漁業交渉を来月再開」、こういう日韓外相合意を伝える新聞報道によりますと、「今後は、ソウルで二十七日に行われる」、三月の二十七日ですからもう行われておると思いますが、「漁業団体による対話を促進していくことになった。」こういうふうに報じられています。  また、この点に関連をいたしまして、三月十九日付の朝日新聞によれば、韓国朴定洙外交通商大臣は、十八日の日本人記者団との会見で、「日韓両国の懸案となっている新漁業協定締結交渉について、両国民間レベルでの対話を先行させる考えを明らかにした。」こういうふうに伝えられているわけであります。すなわち、朴外交通商大臣は、「新協定問題について、「両国漁民代表だけでこの問題を話し合うなど、まず民間レベルで始めるのが望ましい。微妙な問題なので、小渕外相と私の間ですぐに妥協できるとは思わないが、民間対話を見て、どこかの段階で政府間の実務接触をしなければならないと考える」と語った。」と伝えられているわけであります。  そのことに関連をしてここで二、三、念のために聞いておきたいのは、一つは、日本政府現行協定終了通告が、竹島周辺暫定水域設定をめぐって合意に達しなかったことなどからすれば、今後の交渉を軌道に乗せるためには、政府間交渉によってこの点の現状打開が図られない限り無理ではないかという感じがするわけですけれども、そういうことはないのかどうか。今の点をクリアすることなしには民間レベルで話し合うといっても難しいのじゃないか、こういうことであります。  二つ目には、それにもかかわらず民間先行とすれば、そこでどういうことが話し合われることになるのか、その内容、さらに、日本側民間交渉団メンバー、構成、こういうことについて簡単にひとつ、これも外務省だと思いますが、お答えをいただきたいと思います。
  11. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 まず、今先生が御指摘されました二点でございますけれども、基本的には、日韓漁業交渉につきましては、政府間レベルでもって解決していかなければならないことでございます。  そういう意味で、先ほど外務省の方から答弁がございましたように、三月二十一日にソウルで開催されました日韓外相会談におきまして、漁業交渉を四月中にも開催させるということで合意を見ていまして、今後、具体的な日程につきましては、外交ルートで調整するということとなっているわけでございます。  他方、今言われました民間協議でございますが、これは三月二十七日に日韓両国漁業団体間の協議が行われました。メンバーでございますが、日本側は、佐野大日本水産会長、それから遠峰北海道指導漁連会長、それから高岩石川県の漁連会長、さらに全漁連の菅原専務が出席しております。韓国側からは、朴鍾植韓国水産業協同組合中央会会長朴厚根韓国水産会会長鄭昌世韓国遠洋漁業協会会長ほかが出席しているというようなことでございます。  いずれにいたしましても、三月二十七日に行われました日韓両国民間協議でございますが、この協議におきましては、漁業交渉ではございませんで、最近の双方の情勢につきまして忌憚のない意見交換を行ったということでございまして、日韓双方とも国連海洋法条約に基づく資源管理を行っていくというその重要性につきまして話し合ったということでございまして、今後も引き続き対話を続けていくということで意見が一致したというふうに承知しているところでございます。  このように、日韓両国漁業団体の率直な意見交換は、漁業者団体同士相互理解を深めるということで非常に有益であると考えていまして、まず漁業者団体間の相互理解を深めた上で政府間の交渉が行われるということで、今後の政府間の漁業交渉を円滑に進めるためにも、このような民間間の漁業協議というのは有益であるというふうに考えているところでございます。
  12. 石橋大吉

    石橋(大)委員 今初めて水産庁長官説明を聞きますと、民間レベルとはいってもかなり高レベル代表者による話し合い、こういうことのようですから、そういう意味でいえば政府間交渉民間交渉を表裏一体にしてできるだけ早く所期の目的を遂げる、こういう意味では有効な布陣になっているのかな、こういうふうに拝聴したところでありますから、ぜひひとつなるべく早く交渉をまとめていただきたい、こういうふうに思います。  四番目に、今のことに関連をして暫定水域扱いをどうするのか、ちょっと答えにくい問題かもわからぬな、こう思ったりもしますが、念のためにちょっと聞いておきたいと思うのです。  さっきも言いましたように、我が国政府現行協定終了通告を決断せざるを得なかった最大理由は、相当いいところまで来たと思われたにもかかわらず暫定水域設定問題をめぐって交渉がついに山に上がった、こういうことだろう、こう思うのですね。  そこで、伝えられるところでは、韓国側東経百三十六度以西沿岸から三十四海里を主張し、我が国政府の方では東経百三十五度以西沿岸から三十五海里は譲れない、こういうことでついに合意に達しなかった、こう言われてきたわけであります。まあ経度で一度、距離で一海里の差、こう言っても海の上ですから現実にはかなり広い、こう見ておかなきゃならぬ、こう思いますが、このことに関連をして、一番この暫定水域に直接関係のある私の出身県島根県だとか鳥取県など山陰沿岸漁民漁業関係者、特にこの暫定水域設定のいわば最大の原因になっている竹島の所属する島根県隠岐島などの漁民からすれば、できるだけ暫定水域は狭くしてもらいたい、こういう希望は切実にあるわけです。  このことについて、これからの交渉、さっき言ったようにちょっと言いにくい話かなと思ったりもするのですが、この点について、ここで沿岸漁業者の要望を披瀝をしながら、改めて水産庁なり、外務省が言うかどうか知りませんが、政府側考え方を聞いておきたい。  以上であります。
  13. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今先生言われましたように、終了通告をするに至るまでの過程におきまして、二年弱にわたりまして日韓双方いろいろなレベルにおきまして三十回以上にわたって協議を行ってきたわけでございます。  暫定水域範囲の話などいろいろございました。ただ問題は、暫定水域、今言われましたそういう範囲の問題だけではございませんでして、性格の話でございますとか漁枠実績扱いをどうするかとかいろいろ難しい問題も残されておりまして、そういう意味では必ずしもそういいところでもっていったということではないだろうというふうに考えています。まだ残された問題は相当多いというふうに私どもは理解しております。  そういう意味で、今後四月中にも再開というようなことで外相間で話し合いが行われておりますので、今後されることになるわけでございます。当然のことながら、やはり暫定水域扱いにつきましても大きな問題になると思います。ただ、ここにつきましては、今後の交渉に当たっての具体的な方針にもかかわってくることでございますので、そういう意味ではひとつ詳しいことは差し控えさせていただきたいというふうに考えております。  いずれにいたしましても、日韓両国国連海洋法条約締約国としまして、お互いにこの条約精神であります資源保存管理の責務を全うするという共通認識を持ちまして交渉に取り組むことが最も重要であるというふうに考えておりまして、そういう意味で、この暫定水域設定の問題につきましても、またその範囲につきましても、このような考え方を踏まえて今後交渉に当たりまして対処していきたいというふうに考えております。
  14. 石橋大吉

    石橋(大)委員 ここでちょっと考えてみたら、きょう大臣に対して私は質問することを予定しておりませんでしたが、やはりこの問題は非常に重要な問題ですし、まあ細かい話を改めて聞くまでもなく大臣はすぐ答弁できると思いますから、水産漁業関係所管大臣として、これからの日韓漁業交渉妥結に向けての決意なり所信を一言承っておきたいと思います。
  15. 島村宜伸

    島村国務大臣 いろいろな機会に私は何度も皆様に御答弁申し上げてきたのですが、日韓両国はまさに運命共同体ともいうべき関係でございますし、まさに一衣帯水、日本海を隔てて両国があるわけでございます。また、日本海を初めとする漁業資源を共有するという立場にもあるわけでありまして、昭和四十年の日韓漁業協定締結以来ずっとこのまま経過してきたところでございます。  しかし、やはり国連海洋法条約批准等を踏まえまして、新たな日韓漁業協定締結をしようという交渉をいろいろ進めてきたところであります。首脳会談六回、外務大臣実に十三回、農林水産大臣が一回、実務者十回と、三十回を超えるまさに真剣な話し合いが進められてきたところでございますが、両者妥結に至らなかった。  先ほど先生御指摘がありましたように、国連海洋法条約批准後の一年以内に妥結すべきであるという与党三党の御意思もありましたし、その後少しく延長させていただきましたけれども、九月十七日に再度にわたるそういう勧告もございました。しかし、その間もう我々は何としても妥結を見たいというので、交渉窓口であります外務省を通じ、我々も水産庁長官以下が加わっていろいろ検討してきたところでございます。結局このままずるずるいきますと、いつまでたっても妥結に至らないというようなことがある程度見通されましたことが一つと、いま一つは、私どもの立場からいたしますと、これは日本海水産資源を共有するそれぞれの日本と韓国、中国あるいはロシアにしてもそうですが、将来の漁業資源確保という意味合いも含めてこれは少しく慎重に事を運ぶ必要があるという判断がありましたので、むしろ仕切り直しをして、一日も早い前向きの妥結を図るためにはこれはこのお互い協定を終了すべきではないか、こんな判断に立ったところでございます。  そういう意味で、我々は、当然のことに何としてもこれをまとめたいという意識はあるわけでございますから、外務省を窓口にいろいろな交渉を今日までにももう始めておりますし、特に民間ベースで現場のそれぞれの責任者の方々が定期的に話し合いを持っておりますので、これらを生かして円満にお互いが納得のいく線で妥結を見たい、こう考えているところでございます。
  16. 石橋大吉

    石橋(大)委員 関係水域の漁業関係者はとにかく一日千秋の思いで待っておりますので、せいぜい頑張っていただきまして、一日も早く交渉を仕上げていただきますようにお願いをしておきたいと思います。  次に、水産加工業施設改良資金融通臨時措置法関係について幾つか質問をしたいと思います。質問時間が非常に限られておりますので、一まとめにして幾つか申し上げますので、一括してお答えをいただきたい、こう思います。  まず、HACCP方式導入と国内体制の整備について総括的にちょっと聞いておきたいのですが、今回の法律改正による期間延長は、新しい問題として、EUやアメリカなどにおける輸入水産物に対するHACCPによる管理方式が導入されることに伴う国内体制を整備することが最大のねらいではないか、こういうふうに理解をしているわけであります。そして、このHACCP方式による管理は、別途、食品全般を対象として、税制、融資等総合的な支援方策を講ずる食品製造過程管理高度化に関する臨時措置法案が今国会に提出されておりまして、この新法施行後は、同法に基づく融資が可能とされているわけであります。そういう意味でこれは二つ連続して考えることが必要ではないかな、こう思ったりするのですが。  ところで、このHACCP方式の導入に当たっては、その前提として良好な施設設備と作業員等の管理と、工場内における衛生に関する作業手順マニュアルの整備と実行が必要、こういうふうにされているわけであります。  そこで、幾つかの基本的なことを伺いたいのですが、一つは、本法案の目的の一つが、外国政府による衛生規制強化に緊急に対応するための施設改良等に必要な資金貸し付けの一年間の暫定的実施、こういうことになっておるわけですから、当面のところ、このアメリカとEU向けの水産物に限定して行うものかな、こう考えられるわけです。  アメリカでは国内に流通するすべての水産物が対象になっている、こういうことでありますから、国際的な趨勢も含めて、我が国でも遅かれ早かれ水産物全般を対象とせざるを得ない。そのために、さっき言った、別途法律の制定が、法律案が出されている、こういう状況だと思うのですね。そういう意味で全般を対象にしてやる、こういうことになると思いますが、念のため、その点まず一つ。  それから二つ目に、平成八年のアメリカ向け食用水産物の輸出額は百二十億円、関係する加工場の数は約百二十、こういうふうに言われているわけでありますが、これだけだと比較的HACCPの導入も簡単かな、こう思われるのですけれども、これを超えて水産加工を行っている全事業所が対象だ、こういうことになると、これは容易ならざる問題ではないかな、こういうふうに受けとめざるを得ないわけであります。  そういう意味で、水産加工を行っている全事業所が対象だとすれば、平成八年の主な加工種別事業所の総数、水産庁の調べでは一万四千十二事業所になっているわけですね。そしてことし一月の水産庁の水産加工課の調査結果によると、主な加工種類として十四の事業が挙げられているわけであります。これらの事業所あるいは事業種類のうち、HACCPの対象外になるものが業種によってはあるのかどうか、あるとすればその事業所の数あるいは対象事業の種別について伺っておきたいと思います。これが二つ目であります。  三つ目には、HACCPの前提条件を満たしている事業所が一体どれぐらいあるのか。  水産加工を行っている各事業所の従業員規模別事業所数を見ると、従業員四人以下が三四%、五人ないし九人が二五%、十ないし二十人が二二%、二十一ないし三十九人が九%で、三十九人以下の事業所が全体の九〇%を占めている。特に九人以下の事業所数が全体の五九%で、零細経営が圧倒的であります。しかも従来のこの加工場があるところはほとんど魚の水揚げに近いところで、かなり小さいものが広域にわたって分散をしている、こういう状況ではないか、こう思うのです。それにもかかわらず、缶とか瓶詰、魚肉ハム・ソーセージ、冷凍水産物、冷凍すり身、冷凍食品は比較的規模の大きいものの割合が高くなっている、こういうふうに言われているわけです。こういう実態から推察すると、HACCPの前提条件を満たしている事業所の数は非常に少ないのじゃないか、こういうふうに思うのです。  そこで、二つ、三つ聞きたいのですが、まず一つは、現段階でHACCPの前提条件を満たしている事業所の数はどれぐらいあると把握されているのか。  二つ目は、九〇%の零細企業において、良好な施設を整備したり、適切な管理や作業マニュアルの整備や実行をすることは、現在の設備、作業員の数あるいは質などからいってかなり難しいことではないか、こういうふうに思うのです。結果、この過程を通じて相当な事業所のスクラップが必要になってくるのじゃないか。数も、結果として大幅に減少することが考えられるわけであります。いずれにしても、業界全体の再編成や設備の近代化、従業員の再教育も必要になってくる、そういうことになりますと、かなり計画的に、しかも期間をかけてやらないと不可能ではないかというふうに考えられるわけであります。  さっき言いました、後で審議の俎上にのせられてくる予定の、食品製造過程管理高度化に関する臨時措置法案の有効期間、これも「法律の施行の日から五年以内に廃止するものとする。」こうなっているわけであります。これが今度の法律改正に伴う融資が一年間、後が五年間プラスして六年間になるのかどうか知りませんが、それにしたって一万四千の事業所全体を対象にして、外国輸出するものだけでなくて国内流通の水産加工物も含めてこれを適用する、こういうことになったときには大変な作業と時間と金が必要だな、こう思っているわけですが、幾つか申し上げましたけれども、これを一まとめにしてひとつお答えをいただきたいと思います。
  17. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 先生今いろいろたくさん言われました。  まず最初の、HACCPの導入につきまして、外国政府と言っておりますので、アメリカ、EU向けに限定して行うだけではなくて、国内に流通するすべての水産食品を対象に推進するのかというお尋ねでございました。これにつきましては、当然のことながらEUやアメリカのHACCPの義務化によりまして、我が国はこれらの国へ輸出する水産食品につきましてHACCPの導入を義務づけられますために、早急にこれに対応する必要があるというふうに考えておりまして、今回の法律におきましても、これに対応するための施設資金でありますとか管理経費の改善資金につきまして手当てをしているところでございます。  また、国内におきましても、先般のO157によります食中毒事件を契機に、消費者の食品衛生品質向上に対する関心は早急に高まっておりまして、国内流通するものにつきましてもHACCPの導入は必要であるというふうに考えております。しかし、水産加工業は中小零細なものが多いということで、HACCPの導入につきましては困難な点も多いわけでございます。そういうことから、それぞれの水産食品の製造実態を勘案しながらHACCPの導入のための支援策を講じていく必要があるのだろうというふうに考えております。  なお、水産加工品の特徴といたしましては、他の食品産業に比べますと、少量多品種という特徴を持っております。また、伝統的な食品も多いというようなことで、その製造及び加工は我が国独特のものも多いというようなことでございます。さはさりながら、消費者のHACCPに対する要請も強うございますので、こういうような実態に応じましたマニュアルの作成でありますとか、それを運用するための人材の育成、よりきめ細かな対応を図っていく必要があるということでございます。  さらに、HACCPの導入の前提を満たしているのは、事業所としてはどのぐらいであるかというようなお尋ねでございました。  これは、農林水産省平成十年二月に行った全国調査によりますと、水産加工業者の約七%が既にHACCPを導入しておりまして、約一八%が導入を実施している、言うなれば着手したがまだ完了していない段階でございます。このほかに、実施の計画があるものというのが四〇%となっておりまして、全体といたしますと六二、三%程度がHACCPについての導入の意思ありというようなことになっておりまして、これにつきましては、農林漁業金融公庫が平成九年七月に行った調査におきましてもほぼ同様の数字となっております。  このように、水産加工業者におきましては、現在のところHACCP導入はまだ低い状況にあるわけでございますけれども、水産加工業者に対する消費者でありますとか流通サイドの要請が強うございますので、今後、HACCP導入を行う加工業者の数というのは相当ふえていくんじゃないだろうかというふうに考えております。  なお、その中小零細業者が非常に多い加工業界に対しましてHACCPをどのように推進していくかというようなお尋ねでもございました。これは先ほども御答弁いたしましたように、水産加工品は少量多品種という性格を持っておりますし、それから伝統的食品も多い、それからまた加工業者は全国津々浦々に分布しているというようなことでございまして、簡単に言いますと、なかなかHACCPの導入といいましても中小零細なものにとりましてはなじみが薄いという管理方式でもございますので、導入に当たりましては困難な点も多いかと思います。  さはさりながら、消費者のHACCPに対します、ないしは衛生管理に対します要望の強さということから、やはりこれにつきましては、こういうものにつきましてもHACCPの導入は今後とも必要であるというふうに考えておりまして、これに対しますさまざまなマニュアルの作成でございますとか技術者の養成などはやっていきたいというふうに考えております。  最後のお尋ねでございましたが、そういうことで、全体に、HACCPの導入に当たりましては少し長い時間にわたってやったらどうかというようなお尋ねだったと思います。そういう意味では、これまでも、このHACCPを導入するためのマニュアルにつきましては、平成七年から水産加工品品質確保対策事業というのを大日本水産会が作成いたしまして順次やってきているということでございます。八年度からは、このマニュアルの作成に加えまして、水産加工業界に専門的な知識を有する人材の養成を行うためのHACCPの講習会等を実施しておりますし、さらに、平成十年度からは新たに水産食品品質管理高度化センターというものも設置いたしまして、このHACCPのマニュアルの作成でありますとか講習会の開催を五カ年計画で総合的に行うということを考えております。  こういうことで、期間を相当かけながら、水産加工業全体のHACCPの導入につきまして計画的に取り組んでいきたいというふうに考えているところでございます。
  18. 石橋大吉

    石橋(大)委員 ちょっとこれは通告をしていないのですが、小さくて、考えようによっては面白い問題かと思うので、ちょっと念のために聞いておきたいのだが。  このHACCPの導入をしたときに、これはそれぞれの国の食文化と非常に関係する話だけれども、我々日本人に非常になじみの刺身だとかすしたとか、こういうものは一体HACCPの導入に当たってどういうことになるのか、外国人の目から見れば極めて問題だな、こういうふうになるのかなと思っておりますが、答えられれば答えてください。答えられなければしようがないですが。
  19. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 確かに、水産加工食品の場合には、刺身は加工ではないと思いますが、例えば塩辛でありますとか、あと天日干しのものでありますとか、それから、今言われました刺身なんかも含めまして非常に非加熱食品が多うございますし、また、伝統的なものも多いわけでございます。そういう意味では、その各製造過程におきましてチェックするための管理点を置きましてチェックしていくというこのHACCP方式、なかなかなじみにくい面もあるわけでございますが、しかし、先ほど来言っていますように、消費者の水産食品に対します衛生管理の言うなれば要望の強さということを考えますと、こういうものにつきましても、HACCPと言うかどうかは別にいたしまして、何かそういう品質管理衛生管理ができないだろうかというようなことも考えております。  HACCPの場合にはその製造過程だけでございませんでして、その前提となります漁労の段階、例えば、漁船でありますと魚倉でありますとか、それから陸揚げするときの陸揚げ施設でありますとか、あと漁港内におきますいろいろな施設、全部各段階におきましてあるわけでございます。そういう意味では、刺身といえどもそういう前段階のものがあるわけでございますから、HACCPと言うかどうかは別といたしまして、そのような品質管理の問題につきましては、今後いろいろ検討していきたいというふうに考えているところでございます。
  20. 石橋大吉

    石橋(大)委員 日本人に非常になじみの深い刺身やすしが食えない、こういうようなことにならぬようにお願いをしておきたいと思います。  次に進みますが、水産加工資源確保関連をして、一つだけ聞いておきたいと思うのです。  今回、法律改正で出ている法律そのものが制定されるに至った背景は、昭和五十一年、一九七六年のアメリカの二百海里内における漁業管理法の制定、あるいはそれに続くソ連、カナダ、EC等の二百海里経済水域の設定などに伴う漁業生産量の減少に対して、我が国近海水産資源を食用加工品の原材料として一層利用することとあわせ、新製品、新技術開発導入や共同化を促進することにより経営体質強化を図ることを目的として制定されたものであります。  その後、最近の我が国の漁業をめぐる状況は、いろいろな意味で一段と厳しさを増しているわけであります。最盛期千二百万トンぐらいあった漁業生産量も、最近は七百万トン台まで落ち込んでいる。なかんずく加工原材料として一番利用度の高いマイワシの漁獲量が激減をして、最盛期四百五十万トンぐらいあったと思いますが、平成八年では三十万トン台にまで落ち込んでいる。こういう状況で、そういう意味では、水産加工資源確保の問題が非常に深刻な問題になっている、魚種によっては存亡の危機に直面をしている、こういう状況にあろうか、こういうふうに思うわけであります。  そういう意味で、一層厳しさを増している水産加工資源確保について、どういうふうに考えていくのか、あるいは手当てをしていくのか、このことについて水産庁の見解を承っておきたいと思います。
  21. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今先生言われましたように、例えばマイワシでございますと、昭和六十三年には四百五十万トンありましたものが、平成八年には三十二万トンというような状況になっておりまして、このような原料の面での変化が非常に多うございます。  このような状況に対応いたしまして、原料の多角化を図ることが必要であろうと思います。そういう意味では、現実に相当原材料輸入が行われておりますので、輸入の安定化ということも一つあるわけでございますが、何といっても一番大事なのは、我が国の近海資源最大限の活用を図ることだというふうに考えております。近海資源の活用という意味で、近海の低利用資源の有効活用を図るということが必要でございます。そのための施設改良に必要な資金貸し付けを行うということで、今回もまた延長をお願いしているところでございます。  近海におきます例えばアジなんかの場合ですと、これは約半分程度が食用ではなくてそれ以外の、養殖用のえさとかそういうものに向けられているというような実態にございます。これはどういうことかといいますと、小型魚が多いというようなことで、小型魚を中心としたアジの漁獲がふえているというようなことが一つの理由になっています。このような小型のアジを食用加工向けに利用できないかという問題もございます。  同じような問題が、今回、TAC制度の導入に伴いまして、当然ながら漁獲量の上限が定められますとその漁獲魚種の中に小型魚も相当入ってくるわけでございます、そういう小型魚をいかにこの食用向けに利用するかということで、今言いましたアジのほかに、サバでありますとかサンマとか、そういう小型魚をいかに食用向けに利用していくか、そのための施設を言うなれば導入していくための資金を融通する、それを一般貸し付けよりもさらに低利で貸し付けていくというようなことを考える必要があろうということを考えているということでございます。  また、新たに平成十年度からはブナザケでございますとか、それからスルメイカをペースト化ないしはシート状化いたしまして、これをもちまして中間素材といたします。それで、この中間素材としたものをさらに加工用にしていくというようなことでございまして、このペースト化とかシート化の技術開発を支援することによりまして、原料の安定供給にも資していくというようなことを今行っているところでございます。
  22. 石橋大吉

    石橋(大)委員 次に、加工水産物の対米輸出問題に関連をして二、三伺っておきたいと思うのです。厚生省も来ておられると思いますから、厚生省に関係するところは厚生省から、農水省に関係するところは農水省からお答えをいただきたい、こう思います。  アメリカに対する加工水産物のHACCP方式による輸出については、当面、我が国とFDAの協議により、米国と包括的合意を得られるまでの間暫定的措置が講じられることとなり、都道府県、大日本水産会によってHACCP方式製造証明書なるものが発行されることになっているようであります。  これに関連して次の点を伺っておきたいと思うのですが、一つは、米国との間の包括的合意がつくまでとは具体的にいつまでなのか。  二つ目に、有効期間一年とはどういう根拠によるものか。HACCP方式製造証明書、都道府県や大日本水産会が発行するものの有効期間一年とは一体どういう根拠によるものか。これは、せいぜい一年以内に日米間の合意ができる、こういうことが前提になっているのかどうか知りませんが、この点について、どういうことなのか念のために聞いておきたいと思います。  三つ目は、認定後は指名食品衛生監視員が年間六回以上定期的に監視、検査を実施することとされているわけであります。今の食品衛生監視員の体制からいって、新たにこういう検査に対応する体制があるのかどうかちょっと心配な感じもいたしますので、以上三点について伺っておきたいと思います。
  23. 森田邦雄

    ○森田説明員 初めに、米国との間の包括的合意がつくのはいつまでなのかということでございますが、先生お話しのとおり、アメリカFDAと厚生省と十分協議してまいりまして、水産食品の検査制度が同等であるということを合意した後に、厚生省が保証する施設のリストを提出して、その工場からは輸出が可能になるような仕組みに早くやりたいと思って今まで協議を行ってきたところでありますけれども、現在までのところ、この検査制度の同等性に関する判断基準となるアメリカの規則がまだ公布されておりません。したがいまして、公布されるまでの間について暫定的に、都道府県知事等によって米国の連邦水産食品HACCP規則の要件を満たしている旨を保証する施設認定書を発給して、対米輸出を可能としているところでございます。  このアメリカのFDAにおける包括的合意の判断基準の規則の公布についてでございますけれども、現在アメリカ側で作業中と聞いておりますが、まだその時期は明らかになっておりません。私どもとしては、情報収集に努めて、規則が公布され次第アメリカ側とまた協議に入りたいと思っております。  次に、年六回指名食品衛生監視員が監視することとなっているけれども可能かというお話でございます。これも、昨年十二月に、厚生省から各都道府県知事等に対しまして対米輸出水産食品の取扱要領を出しておりますが、この中で、対米輸出水産食品の監視方法について教育訓練している指名食品衛生監視員による年六回の監視を行うこととしております。現在、対米輸出施設としては、五十四カ所の水産加工場あるいは水産食品の保管施設がございますけれども、都道府県におります百七十三名の指名食品衛生監視員がこの仕事に当たっておりまして、今後とも都道府県の指名食品衛生監視員の育成等を図って監視、指導体制の整備に努めてまいりたいと思っております。  以上でございます。
  24. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 認定書の有効期間一年間、それの根拠ということでございますが、これにつきましては、アメリカの食品医薬品庁、FDAと言っていますが、この定めました水産物HACCP規則に基づいて行われているものではございません。この規則では証明書の有効期間についての具体的な規定はないわけでございます。  しかしながら、アメリカの水産物HACCP規則の解釈、運用に当たりまして、FDAがアメリカの輸入業者及び日本を含みます海外の製造者のガイドラインとして作成した質疑応答集というのがございまして、これによりますと、この証明書の有効期間は最長でも一年間とするのが妥当であるという記載がございます。こういうことから、今回の有効期間一年の設定は、このFDAの考えに基づいて行ったということでございます。
  25. 石橋大吉

    石橋(大)委員 もうあとわずかの時間になりましたので最後の質問にしますが、真珠養殖事業法を廃止する法律案について一点だけ伺います。  この法律は、そもそも、真珠品質向上を図って輸出産業としての真珠産業を育成する、こういうことを目的にして制定された法律でありますが、最近は、我が国真珠の質が非常に優秀なものになって、殊さら従来のように政府が直接検査をしたり、監視をしたり、指導したりすることの必要性はなくなった、あるいは、最近は外国よりも国内消費が非常にふえてきた、こういうようなこともあり、臨時行政改革審議会の規制緩和の動きに呼応して、この際法律を廃止したい、こういうことですから、まことにもって結構な話だ、こう思っております。そういう意味では賛成ですが、この際、アコヤガイのへい死問題について一点だけ聞いておきたいと思うのです。  去年の農林水産委員会の国内視察でも、愛媛県の真珠の養殖場を訪れまして、アコヤガイのへい死の状況をつぶさに見る機会があったのですが、真珠養殖をやっている人たちにとっては非常に深刻な問題であることはもう説明するまでもないことだ、こう考えております。  そこで、水産庁に設置をされている平成九年度第二回アコヤ貝大量へい死緊急調査対策研究担当者会議の調査結果によると、「大量へい死の主な原因は感染症によるものと確認するとともに、その病原体として寄生性原虫類の可能性が大きい」、こういうふうに判断されているようですが、この問題は、さっきも言ったように、関係者にとっては非常に深刻な問題でありますので、できるだけ早急な解決をしなければいけない、こういうふうに思うのです。  そこで、今後、この病原体の特定のためにどういうような調査研究を推進していくのか、この点だけ承っておきたいと思います。  以上です。
  26. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 養殖研究所で実施しました感染実験によりまして、今回のアコヤガイの大量へい死の主な原因が感染症であることが判明したわけですが、今後、その予防、さらに被害の低減等の対策の確立に向けまして、この感染症の病原体を特定することがまず急務であるというふうに考えております。  このために、水産庁といたしましては、関係県の試験研究機関と協力いたしまして、まず、病変したアコヤガイの体内におきまして寄生性原虫など病原体がどのように発育、繁殖していくかという、その過程を調べることによりまして病原体を確認していくということと、さらに、病原体を純粋に分離、培養することによりまして病原体による感染一発病を確認していくということ、さらに、病害発生地域におきまして病原体が普遍的に存在していることを確認するというための検査手法を簡便化していくというようなことを行いまして、今後病原体の特定に努めていきたいというふうに考えております。
  27. 石橋大吉

    石橋(大)委員 久しぶりの質問でちょっと時間をオーバーしまして、後の人に迷惑をかけましたけれども、これで終わります。ありがとうございました。
  28. 北村直人

    北村委員長 これにて石橋大吉君の質疑は終わりました。  次に、木村太郎君。
  29. 木村太郎

    ○木村(太)委員 委員長初め、皆さんおはようございます。  限られた時間でありますので、早速質問に入らせていただきたいと思います。まず、私なりに昨今の我が国の水産業を取り巻く環境、情勢というものを考えてみますと、いわゆる遠洋、沖合、両漁業における漁獲量の減少あるいはまた生産面におけるコストの増大、こういったことによりまして経営の悪化を余儀なくされているということを聞いておりますし、さらに、資源の減少、魚価の低迷などによって厳しい状況が今なお続いている、こういうふうに私なりには認識いたしております。  特に、そういう中でも、我が国は一昨年、国連海洋法条約批准し、世界的にも二百海里という体制が定着してきたことを踏まえまして、今後、二百海里水域内の資源の維持あるいはまた管理の面でも適切、効率的な取り組み、対応というものがそれこそ急務である、こう思っております。  島村農林水産大臣は、先般の所信表明の中でも、我が国の漁業というものは大きな節目の時期を迎えているというふうに述べられました。大臣にお尋ねしたいのですが、大臣は、どういった思いから節目の時期ととらえているのか、御答弁をお願いします。
  30. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答え申し上げます。  我が国水産業は、水産物の安定的な供給を通じ、健康的で豊かな日本型食生活の一翼を担うとともに、地域にありましては社会経済の発展に寄与するなど、重要な役割を担っているところであります。  こうした役割を担う水産業につきましては、一昨年、国連海洋法条約我が国について発効し、我が国二百海里水域内に排他的経済水域が設定されるとともに、漁獲可能量制度が導入されるなど、本格的な二百海里時代という節目の時期を迎えております。  このような新たな海洋秩序のもとで、我が国水産業の振興を図り、かつ水産物を安定的に供給していくためには、まず我が国二百海里水域内の水産資源の適切な管理、またつくり育てる漁業の推進、さらには流通、加工、販売体制の整備並びに漁港、漁村の整備など、諸般の施策を積極的に推進していく必要があります。  私どもはそれらの考えから今国会の所信を述べた次第でありまして、まさにこの節目を、将来的な展望に立った施策を行うことによってしっかりと乗り越えていきたい、こう考えているところであります。
  31. 木村太郎

    ○木村(太)委員 新たな漁業の秩序の中で積極的に諸施策を展開していくという決意でありますが、裏返して考えれば、それだけ厳しい状況にあるからこそ今後力を入れていきたいという大臣の今の御答弁だと思っております。認識は、私も大臣も、また委員長初め各委員も同じだと思っております。  そういう中でも、漁業そのものが厳しいとしたならば、漁獲量の減少などによりましてその供給事情というものも思わしくなくなりますし、さらに、最近、輸入加工品の増大ということによりまして製品の価格が低迷しているということも聞いております。こういったことも考えれば、今提案されている法案に関係してまいります水産加工分野というものも、漁業そのものに比較しても劣らず厳しい状況にあるというふうにも思っております。  加えて、先ほど石橋大先輩が議論されておりました、アメリカなどがHACCP方式を導入する、こういったことによって、もちろんこのことは、衛生管理という点においてもプラス面が大きい、こう思っておりますけれども、しかし、それに対応する我が国の水産加工の分野が、ある面では影響が大きいというふうにも思います。かつてない厳しい状況がこの水産加工業界にも押し寄せてきているというふうにも思っております。  今回、この法律、題名そのものも簡潔なものとして提案しているわけですけれども、いわゆる水産加工資金法というものが最初に制定されたのが昭和五十二年というふうにも聞いております。その昭和五十二年と比較した場合に、現在の水産加工業を取り巻く環境をどのようにとらえているのか、まずそこをお尋ねしたいと思います。
  32. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 水産加工資金法が制定されました昭和五十二年当時、我が国水産加工業は、原材料面で一千万トンを超えます我が国の漁業生産を背景に、約二万三千経営体が七百万トンの水産加工品の生産をしていたという状況でございます。  しかしながら、昭和五十二年、アメリカ、ソ連等の二百海里漁業水域設定に伴いまして北洋漁業が縮減を余儀なくされた、それから、水産加工品原材料供給事情の不安定化も当然ながら余儀なくされたというようなことで、現在に至るまで、外国の二百海里水域におきます規制強化を初めといたします国際的な水産資源保存管理強化によりまして、現状におきましても、今先生言われましたように、非常に厳しい状況原材料面からもなっているという状況にございます。  昭和六十年代以降、さらに、諸外国におきましては、自国水産資源の付加価値を高めるという観点から、水産加工品の形態での輸出が強まったということもございまして、我が国水産加工品輸入もふえてきている。そういう意味では国産品との競合が激化してきているという状況にございます。  このような背景のもとに、水産加工経営体数、それから生産量ともに減少を続けてきているという状況になっているわけです。  ただ、生産量を品目別に見てみますと、練り製品でございますとか缶詰が減少している一方、冷凍食品であるとか調味加工済み食品が増加しているというようなことで、消費者の需要の変化を反映しながら水産加工業が現在まで推移してきているというような状況にあるところでございます。
  33. 木村太郎

    ○木村(太)委員 国際的な変化あるいはまた消費者のニーズの変化もあるでしょうし、いずれにしましても、我が国の水産加工製品外国産のものと大変競争が激しくなってきているというふうにも思っております。それに対応するためにも、今回の一部改正というふうに私なりに理解しております。水産加工業体質強化というものを、農林水産省水産庁がいま一度努力していくんだという今回の改正案と認識をしております、  先ほどもありましたけれども、今、この国会にいわゆるHACCP手法支援法案というものを既に提出しておりまして、今後その法案も審議されると思いますけれども、私なりの感想では、このHACCP手法支援法案なるものが実際に行われる前に、水産加工に限って、またそれを重視しての、ある面ではただいまの水産加工資金法改正なのかなという印象を持っております。その辺を確認したいと思います。
  34. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 水産食品につきましては、もう御承知のように、アメリカが、昨年の十二月から、輸入品も含めまして、新たな衛生品質管理手法でありますHACCPによる製造を義務づけるということで、我が国水産加工業者も緊急にこれに対応しなければ、アメリカへの輸出を継続し得なくなるという影響が生じているところでございます。このようなために、水産加工資金を拡充いたしまして、外国政府によります水産加工品衛生規制強化に対応するための融資措置を緊急に実施するということにしているわけでございます。  この融資措置と、それから今言われましたHACCP全体に係ります食品製造過程管理高度化に関する臨時措置法案、これは今国会に提出されているところでございますけれども、この法律が成立いたしまして施行された後は、この法律に基づきます融資を受けることが水産加工業にとりましても可能となるわけでございます。こういう観点から、水産加工業におきましては、アメリカ等のHACCP導入に対する緊急の措置として、この水産加工資金法におきます資金対応をやらなきゃいけなかったということでお願いしているところでございます。  そういう意味で、まず、この新法によります融資措置ができるまでの間、一年度というような措置としてこの法律案をお願いしているという段階でございまして、新しいHACCP全体の法案が成立された場合には、この新法に基づきます融資措置によりまして水産加工業につきましても対応していきたいというふうに考えているところでございます。
  35. 木村太郎

    ○木村(太)委員 アメリカなどのHACCP導入に対応する、緊急性ということで今の答弁を聞いておりますと、HACCP法はもちろん水産物に限ったわけではありませんけれども、しかし、緊急性があるからこそ一ある面ではつなぎ役的なものというふうに、私、今の答弁で認識をさせていただきました。  しかし、今回のこの水産加工資金法改正、この法案の趣旨でも、以前説明いただいたときに、HACCP方式導入などの諸情勢に対応するためというふうにも聞いておりました。いわゆるそのHACCP方式導入に向けての水産物の生産あるいはまた加工、流通という段階において先ほど来あったアメリカなどの導入に対応すべく、日本の水産加工面での各段階での対応も急務だ、緊急性があるというふうにも理解しております。  そこでまた、幾つかお尋ねしていきますけれども、先ほど石橋大先輩もお尋ねしてダブる点もあろうかと思いますけれども、このHACCP方式の導入に対応する体制を築くとすれば、さらなる新たな整備、改善というものが考えられるし、またそれに対しての費用面、お金の面での負担も強いられてくることが予想されます。その点、どう考えているのかお尋ねしたいと思いますし、特に、水産加工、我が国の場合は中小零細の業者が多いわけであります。この中小零細業者に対しての取り組み方をどのように考えているのか、お尋ねしたいと思います。  また、いま一つここで確認したいのですけれども、今回、この改正の内容を見た場合に感じたのですけれども、資金融資の枠そのものは今までと同額というふうに、私、認識しておりますけれども、増額する必要はないのでしょうか。ないとしたならば、この資金の需要見込みというものを水産庁はどのようにとらえているのか、確認をさせていただきたいと思います。
  36. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今先生言われましたように、我が国水産加工業、中小零細業者が多うございます。また、水産加工品も少量多品種にわたっておりまして、その製造及び加工は我が国独特のものも少なくないというような状況にございますし、加工業者も全国津々浦々に分布しているというような状況にございます。  こういう中で、新たなHACCP、製造工程管理方式でございますHACCPの導入は、このような水産加工業界にとってはなじみの薄い管理方式でございまして、この方式を導入しようとする場合、特に中小零細業者にとりましては困難な点が多いというのも事実だろうと思っています。  このようなために、水産加工品製造過程にHACCPを導入するためのマニュアルにつきましては、大日本水産会が平成七年度から順次作成しているところでございまして、これも年を追いまして平成十年度からは新たに品質管理高度化センター事業というものをつくりまして、多くのマニュアルを作成していく、さらに専門技術者の養成を行っていくというようなことを通じまして、水産加工業者がHACCPを導入し得る体制の整備を推進していきたいというふうに考えているところでございます。  さらに、その融資の話がございました。融資をする際に、融資枠が前年同額でもって十分足りるのだろうかというようなお尋ねでございましたけれども、平成九年三月現在、アメリカ向け水産食品輸出事業所は百二十七の施設となっております。このうち平成十年、ことしの二月現在でアメリカの衛生規制の基準を満たしております製造施設は三十四となっておりまして、したがいまして、百二十七から三十四を引きます九千三の施設が、言うなればアメリカの衛生基準を満たしてなく、今後、施設改良に取り組むことが予定されている施設ということになっております。  このような事業所の施設に要する資金需要、それからさらに平成八年度ないしは九年度も現在取りまとめ中でございますが、その融資実績を勘案いたしますと、現在百八十億という融資枠がございますが、この融資枠でもって十分対応できるというふうに考えております。  なお、このHACCPの導入に伴いまして、このようなハードの施設資金だけではございませんでして、HACCP方式を的確に導入する上で必要となりますコンサルタントからの助言、指導に要する費用でございますとか、それからHACCPに関します教育訓練に要する費用とか、そのような管理経費もございます。こういう費用につきましても、平成十年度から水産加工経営改善資金というのがございまして、これによりまして新たな低利融資を実施していくということを考えているところでございます。
  37. 木村太郎

    ○木村(太)委員 今の御答弁ですと、当面は大丈夫だということでありますが、この資金の需要見込みというものを注視しながらぜひ適切な対応をとっていただきたい、こう思います。  いま一つ、HACCP方式に対してのお尋ねをしたいと思うのですが、この水産加工業へのHACCP方式の円滑な導入をするに当たっては、施設整備などのハード面のみならず、先ほども少しありましたけれども、人材の育成や普及啓蒙なども必要だと思っております。この点をどのように考えているのか、お尋ねしたいと思います。  また、あわせて聞きたいのは、漁船や漁港あるいはまた卸売市場などのこういった場面での対応というものも必要になってくるかと思いますが、この点もどのように考えているのか、お尋ねしたいと思います。
  38. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 HACCPの導入に当たりましては、その前提となります施設の整備だけでございませんで、品質衛生管理を行い得る人材の適切な配置等を行う必要がありまして、このための人材育成が極めて重要であると考えております。  これまでも、作業員の衛生管理手順を具体的に記しましたHACCP導入マニュアルを作成しているところでございますが、さらに平成十年度からは先ほど申しました品質管理高度化センターというものをつくりまして、このようなマニュアルの策定、講習会の開催によります人材の育成を総合的に推進する体制を整備することとしているところでございます。  水産加工業へのHACCPの導入に際しましては、単に加工段階だけではございませんで、その前段階の原料供給段階におきましても、HACCPの考え方に基づく対応が必要であるというふうに考えております。  そういう意味で、今御指摘になりました、例えば漁船の段階でございますが、これにつきましては、平成十年度から漁船の段階でもってHACCPを念頭に置いた魚倉の改造等の技術的な対応を検討しているところでございます。さらに、陸揚げ、荷さばき、加工、出荷等の工程は、主として漁港内で行われることが多いものですから、漁港施設の整備におきましても、HACCPを念頭に置いた施設計画、設計が今後行われる必要があるというふうに考えております。このために、平成十年度から、これらを考慮した漁港施設整備のあり方について検討していきたいというふうに考えております。
  39. 木村太郎

    ○木村(太)委員 先ほど来答弁いただいたことを踏まえて、ぜひ対応をお願いしたいと思います。  次に、真珠養殖事業法廃止についてお尋ねしてまいります。実は先般、宮地大先輩と同僚の漆原委員と一緒に、東京真珠検査所というところを視察させていただきました。所長さん初め職員の皆さんから丁寧なる御案内をいただきまして、その場でも、我が国日本の真珠というものは高いレベルにあるというふうな印象を改めて持ったわけです。ただ、今回の法案というものは、その法案の役割を終えて、民間でも任せることができるということだと思いますし、いわば規制緩和の一つなのかなというふうにも思っております。  そこで確認したいのですが、廃止するというこの法案について、真珠に関する業界そのものはどのように受けとめていると考えているのかお尋ねしたいと思いますし、もう一つ、廃止されたならば、今まで国営の検査ということでありましたけれども、聞けば、日本真珠輸出組合というところが自主的に任意の検査を行うというふうに聞いております。しかし、ある程度、あるいはまた当面、国の何らかのバックアップみたいなものが必要なのかなという印象を持っております。この点についても、お考えがあれば御答弁をお願いしたいと思います。
  40. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 真珠養殖事業法は、真珠輸出促進を図るということから、国営検査によります輸出真珠品質向上内容といたしまして、昭和二十七年に制定されたわけでございます。その後、我が国のアコヤガイ真珠につきましては、もう海外で既に高い評価が定着しているということと、それから国内消費が増加しているというようなことで、我が国真珠産業をめぐる状況は大きく変わってきております。  このように、真珠産業は既に成熟した産業となっておりまして、業界全体としては、南洋真珠やそれから中国真珠輸入の増加、さらに、国際市場におきます中国真珠の進出といった最近の真珠をめぐる情勢に対応いたしまして、業界みずからが競争に生き残っていく産業を育成していくという意識づくりが急務であるというふうに考えております。業界としても、法律によります規制措置などに頼るだけではなくて、高品質真珠養殖と生産性の向上に取り組んでいく必要があるというふうに感じているところでございます。  他方、真珠事業法の廃止に伴います民間検査への移行に当たりましては、国の支援と指導が求められておりまして、これに対しましては、水産庁としても今後適切な支援をしていきたいというふうに考えております。  民間検査によります新しい仕組みが今後真珠関係者に正しく理解されまして、新しい制度が円滑に受け入れられる必要があるわけでございますが、このために、国内だけではございませんで、国外の関係者に対します、民間検査への移行ということにつきまして周知徹底するというようなことでありますとか、さらに、民間検査にするに当たりましての基準の作成というものがまず必要でございますので、これらにつきましても水産庁としては支援していくということで、平成十年度の予算においても所要の金額を計上しているところでございます。
  41. 木村太郎

    ○木村(太)委員 時間がなくなってまいりましたので、国の一つの役割は終えたとしても、真珠産業、これからも振興を図っていくために、水産庁、国の果たすべき役割というものを踏まえて、ぜひその振興策に御尽力をお願いしたいと思います。  次に、私は、漁業振興を図らずして水産加工振興あらず、こういう思いで幾つかお尋ねしてまいりたいと思います。  まず、昨今のアジア地域における通貨、経済危機によって、加工業を含めて我が国水産業に対しての影響があるのかどうかお尋ねしたいと思いますし、いま一つ、昨今の我が国の景気停滞という状況の中での影響があるのかお尋ねしたいと思います。
  42. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 昨今の、韓国、東南アジア諸国の景気低迷、さらに通貨の下落等によりまして、水産業への影響もいろいろ出ております。そういう意味では、当然のことながら、通貨下落によりまして、これら諸国からの水産物輸入が増加するとか、それから、第三国からこれら諸国への水産物輸出が減少することによりまして、輸出先ということで、それが我が国へシフトしてくるというようなことが当然考えられるわけでございます。ただ、現時点では、これによりまして水産物の輸入が急増したというようなことにはなっていないわけでございます。  また、水産物の価格動向を見てみますと、平成九年の水産物の産地卸売価格は総じて前年並みでございますが、ただ、景気動向の影響等から、マグロなどの中高級魚種の一部におきましては価格の低下が見られているというような状況にございます。  このようなことで、水産業におきましても国内外の景気動向が非常に気になるところでございます。国内外の景気動向が我が国水産業に及ぼす影響につきましても、今後十分注視していきたいというふうに考えております。
  43. 木村太郎

    ○木村(太)委員 世界の経済あるいはまた我が国の経済、これもやはり水産業あるいは加工業にも影響があろうかと思いますので、大臣としてもまた御活躍を期待したいと思います。  次にもう一つ、大臣の先般の所信表明の中で、「研究開発・普及の推進」ということも触れられておりました。だとすれば、水産加工業に関する、言うなれば水産加工業研究所なるものが民間の方々でも利用できるような、そういった施設が現在十分にされていると判断しているかどうか、お尋ねしたいと思います。
  44. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 水産加工業は零細な企業が多いということから、個々の企業によります新製品、新技術開発には限界があります。このようなことから、産学官の連携を図りながら、効果的な支援を推進していくことが必要だろうというふうに考えております。  このようなことから、水産加工業の原料確保の安定を図るというために、食用利用の低い多獲性魚、これは例えばカタクチイワシでありますとか、アメリカオオアカイカというようなものがございます、これらの加工利用技術開発を実施していくというようなことと、それから水産加工資金の融通によります近海の低利用資源の新製品、新技術開発導入を行っていくというようなことがございます。さらに、平成十年度からは、ブナザケ、スルメイカのペースト化、シート状化等によりまして中間素材をつくりまして、地域水産物の有効利用に関する技術開発を産学官が一体となって推進していくというようなことも行っております。  さらに、各都道府県の水産試験場の指導のもとに、漁業者及び加工業者が連携、共同いたしまして、加工技術開発研究を行います試験研究施設、これはオープンラボと言っておりますが、このような整備を図っているところでございます。これらのいろいろなことによりまして、水産加工業の振興のための基礎研究でありますとか応用研究を産学官によりまして行っていきたいというふうに考えているところでございます。
  45. 木村太郎

    ○木村(太)委員 時間が来ましたので、最後に一つだけお尋ねしたいと思います。  きょう、多分開議決定されたと思いますが、いわゆる次期、新しい全国総合開発計画であります。この中で四つの国土軸が設定されておりますけれども、ただ、この国土軸を考えた場合に、日本は周りが海ということでありますし、親潮などの寒流あるいはまた黒潮などの暖流等があって、我が国の周辺海域には海の特性というものがあると私は考えております。  この新全総の中にいわゆる海洋軸というもの、例えば太平洋軸、あるいはまた日本海軸とか、こういったものも記されて、我が国の二十一世紀に向けての全国総合開発計画というものを示されてもいいのではないかなというふうにも私は思っております。ただ、これは所管そのものは国土庁というふうに聞いておりますので、国土庁にきょうは来ていただいておりますので、簡単で結構です、この辺の考え方をお示しいただきたいと思います。  また、水産、漁業、加工業、こういったものを考えた場合に、水産庁として、農林水産省として、一つのビジョンというものをきちっと踏まえているのかどうか。また、ないとしたならば、どうしていこうとしているのか。今後、こういったビジョンを示す中でも、海洋軸というものをきちっと位置づけていただきたいと思いますが、簡単で結構ですので、この点について御答弁を願います。
  46. 知久多喜真

    ○知久説明員 おっしゃるように、本日閣議決定されました全国総合開発計画においては四つの国土軸を掲げております。  一つは、北東国土軸、関東北部から東北地方の太平洋側を経て北海道に至る地域でありますけれども、これはおっしゃるように、親潮に大体対応しております。では、二つ目日本海国土軸は、九州北部から日本海側を経て北海道に至る地域でありますけれども、これは対馬海流に沿う地域。それから、太平洋新国主軸と申しておりますのは、沖縄から九州中南部、四国、紀伊半島を経て伊勢湾に至る地域ですけれども、これは黒潮に対応している。それからもう一つ、西日本国土軸と銘打っておりますけれども、従来の太平洋ベルト地帯から瀬戸内に至る地域、やはり瀬戸内海等に対応しております。こうしたそれぞれの軸が、これらの地域特性を生かして、全体として望ましい国土構造の形成に寄与していくこととされております。  以上のように、全総における国土軸は、ただいま御指摘の海洋軸という言葉そのものを用いているわけではございませんけれども、海流、海洋等を十分意識したものとなっております。
  47. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 水産庁におきましても、海域ごとの特徴に応じました施策の展開を図っているところでございまして、例えば平成十年度からは親潮、黒潮などの海域特性に応じました試験研究体制の再編を図ったところでございます。  今後、水産行政の基本的なあり方を検討していくに当たりまして、我が国二百海里水域におきます水産資源、すなわち海域の実態をも十分踏まえた上で検討していきたいというふうに考えております。
  48. 木村太郎

    ○木村(太)委員 ありがとうございました。
  49. 北村直人

    北村委員長 木村太郎君の質疑は終了いたしました。  次に、一川保夫君。
  50. 一川保夫

    ○一川委員 この法律関連しての質疑、大分質問等も重複しがちでございますので、私の方から事前に通告してありました内容と若干ずれるケースもあろうかと思いますけれども、そのあたり、よろしく御答弁をお願いしたいというふうに思います。  これまで、いろいろ議論はございましたけれども、この水産加工業を取り巻くいろいろな情勢というのは、いろいろな面で厳しい状況にあるということは理解できるわけでございますけれども、ここで一度、もう一回整理をされて、今何が本当に問題なのか、そのあたりをどういうふうに御認識をされているのか、水産加工業を取り巻くそういう課題も含めて、水産庁の方から現状の御説明をひとつよろしくお願いしたいと思います。
  51. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 水産加工業の現状と課題でございますけれども、まず水産加工業は、食品製造業の中で事業所数でありますとか従業員数、出荷額のそれぞれにつきまして、二割弱のシェアを占めている産業でございます。しかしながら水産加工業は、他の製造業、食品産業に比べますと、零細規模の事業者が多くて、経営におきます収益性につきましても不安定なものが多いということになっております。  ただ一方、水産加工業は、漁獲物に対します主要販路の提供、これは我が国の漁業によりまして水揚げされました水産物の六七%が加工向けになっております。また、漁期によりまして漁獲高が大きく変動する水産物の周年安定供給にも資している。さらに、消費者ニーズに対応した製品や水産物の栄養特性を生かした製品開発等によります消費の拡大にもなっている。さらに、従来食用に供せられなかった未利用の近海資源等の食用資源としての有効活用にもなっているというようなこと。さらには、漁業と結びつきながら地方の基幹的な産業として雇用の場を提供するなど地域経済へ貢献しているというようなことで、非常に大きな役割を果たしているわけでございます。  このように水産加工業は、我が国漁業と言うなれば車の両輪のような関係にございまして、水産施策の中で水産加工業対策をしっかりと位置づけまして、これを積極的に推進することが、国民生活の向上に寄与するということは当然でございますが、我が国漁業の発展、漁村の活性化を図る上で不可欠であるというふうに考えております。
  52. 一川保夫

    ○一川委員 今、水産加工業が抱えている課題というか問題点、それとあわせまして、水産加工が果たしている役割といいますか重要性、そういったものをある程度整理されて御説明があったと思います。今説明があったことに対しては我々も十分理解できるわけですし、そういう面で水産加工が水産施策の中で果たしている特に重要な役割めいたものをしっかりこれから伸ばしていただく対策ということが非常に大事なことだというふうに思います。また、今現在抱えている問題点というか悩み、そういったものに対する対策ということも、これを機会にしっかりと樹立しながら促進させていただきたいというふうに思いますけれども、それに対する大臣としての御見解、決意のほどをお聞かせ願いたいと思います。
  53. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  我が国水産加工業を取り巻く環境は、国際的な漁業規制強化等に伴いまして、原材料供給の不安定性の増大、あるいは輸入水産加工品との競合、あるいは輸出相手国における衛生規制強化等々大変厳しい状況下に置かれております。  このような状況の中で、水産加工品の生産量は、昭和六十三年をピークに減少傾向にあり、また水産加工業の経営体の数につきましても減少傾向にあるところであります。  このような状況に対応するために、まず地域水産物の高付加価値化等の水産加工技術高度化の推進、第二に、水産加工品の競争力を強化するための水産加工施設の計画的、効率的な整備、第三に、近海低利用資源の利用促進及び新製品、新技術開発導入に係る施設資金水産加工業者の経営の維持安定のための運転資金の融通等の施策を講じていくこととしております。  以上でございます。
  54. 一川保夫

    ○一川委員 最近のいろいろな問題点の中の一つとして、加工原材料の不足といいますか、そういうものがタイムリーにうまくかみ合わないというような話も聞いております。そういう面では、新たなそういう加工の技術開発、新たな付加価値をつけていくという面では、原材料の面からも、また消費者のニーズの面からも、まだまだ努力する余地もあろうかと思いますので、そういう面に対する対策もひとつよろしくお願いをしておきたい、そのように思っております。  それと、今回、この法律関連しましてHACCP方式導入の議論があるわけでございまして、その問題に関連して今回もいろいろなやりとりを聞いておりまして、若干理解しがたい点といいますか、もっと具体的な説明があってよろしいのではないかと思うのです。  これは事前に通告していなかったかと思いますが、今回こういうふうな法律の一部改正をせざるを得ない状況は、アメリカ等のそういう規制が急に強化されたことに対する対応だというふうに理解するわけですけれども、こういった事態というのはある程度予測できなかったのでしょうか。そのあたり、どうでしょうか。
  55. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 アメリカが、HACCPの導入につきまして、昨年の十二月、そういうふうに決めたわけでございますが、この動きというものは、たしか六一年か二年ごろからございました。そういう動きがありまして、水産加工業の中におきましてはこれまでもその対応をしてきたところもございます。  しかしながら、現実にこのようなことができまして、また、その基準に合わないとアメリカに対しても輸出できないということになったわけでございますので、これに緊急に対応せざるを得なくなったというのが実情でございます。
  56. 一川保夫

    ○一川委員 EUなりアメリカなり、そういったところで規制がだんだん厳しくなってきておるわけですけれども、日本のこういった加工品がどういう国にどれくらい輸出されているかというところ、詳しい中身は掌握しておりませんけれども、これはどうでしょうか。アメリカとかEUに対して、現在日本の水産加工品というのはどの程度輸出されているのですか。また、そういうことが、我が国水産加工業に対する影響の度合いというのはどの程度なのですか。そのあたり、ちょっと御説明願いたいと思うのです。
  57. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 今、食用水産物のアメリカに対する輸出でございますが、ちょっと手元には金額ベースしかございません。  金額ベースでいいますと、アメリカに対しましては平成八年で百二十億、EUに対しましては十一億、香港に対しましては二百五億というような状況になっているところでございます。
  58. 一川保夫

    ○一川委員 これは、我が国水産加工業全体の中ではどの程度のウエートを占めるのでしょうか。
  59. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 我が国水産加工業の総生産額は約四兆円でございますので、アメリカに対しまして輸出していますのが百二十億ということでございますので、四兆円分の百二十億というようなことになります。
  60. 一川保夫

    ○一川委員 その金額というものをにらんでみた場合に、そう大きなウエートを占めているという感じは受けないわけです。しかし、アメリカ向けとかEU向けにいろいろと製造されているそういう業者というのは当然いらっしゃるわけですから、そういう面では当然その対策が必要だということになろうかと思いますので、EUなりアメリカ以外の国で日本のそういった加工品を輸入している国がもしあるとすれば、これからそういったところの動きといったようなものも十分事前に掌握されて、その対応をしっかりとしていただきたい、そのように思っております。  HACCP導入問題ですけれども、我々地方におりまして、そんなに大型の加工業者がいるというわけでもございませんので、零細的な加工業者がおりますけれども、このHACCP導入という問題についての認識度合いというのは非常に低いような感じも一方では受けるわけです。そのあたり、現状としてどういうふうに認識しているのか、いかがでしょうか。
  61. 島村宜伸

    島村国務大臣 食品の安全性の向上品質管理の徹底を図る上で、食品産業がHACCP手法に取り組むことは非常に重要なことだ、まずそう受けとめておりますが、確かに、今御指摘のとおり、そう大きな近代的な企業ばかりではございませんので、これらに対する認識が十分だろうとは私たちも考えません。  しかし、これからの国際社会あるいは国内で食品産業としての役割を十分担っていくためには、当然にこれらに対する認識を深める必要があるわけでございまして、農林水産省といたしましては、冷凍食品あるいはロースハムなど個々の食品についてのHACCP手法導入のためのマニュアルを作成いたしまして、支援してきたところであります。  また、平成十年度におきましては、さらに、HACCP手法の導入を図る食品企業に対して金融、税制上の支援措置を盛り込んだ食品製造過程管理高度化に関する臨時措置法案を二月末に国会に提出したところでありまして、この法律の成立を待って我々は、啓発用のパンフレットの作成あるいは講習会開催に対する支援等を通じたいわば食品企業関係者に対する啓蒙普及に努めてまいりたい、そう考えているところであります。
  62. 一川保夫

    ○一川委員 これからのそういう啓蒙普及、いろいろなマニュアル等なり人材育成を図りまして、この必要性といいますか、政府としましても、こういうHACCP方式を本格的に導入していくんだという方向で施策を展開するのであれば、そういった啓蒙普及的な活動というものにもつともっと積極的に取り組んでいく必要があるのではないかなというふうに私は思います。  それとあわせまして、ちょっと気になりますのは、このHACCP方式等を導入して製造された加工品と、まだそういう方式を導入しないででき上がってきている加工品というのは、これは消費者にとっては何かの表示があればわかると思いますけれども、表示がない限りは恐らくわからないというふうに思いますし、また一方では、それだけのコストをかけ、新しい方式を導入して製造している業者にとっては、そういうものをしっかりと消費者向けにPRしたい、そういう中で消費を伸ばしたいという意向が働くのは私は当然だと思うのです。  そうしますと、このHACCP方式を導入して製造された加工品か加工品でないのかというところの表示といいますか、そういうものを消費者にどういうふうに知らしめるのか、あるいはそういうことは知らしめないのか、そのあたりに対する考え方をお聞かせ願いたいと思います。
  63. 本田浩次

    ○本田政府委員 HACCP手法を導入した食品についての表示の問題でございますけれども、現在、食品企業のHACCP手法の導入につきましては、先生御案内のとおり、まだ緒についたばかりでございます。ちなみに数字で若干の調査結果を申し上げますと、平成九年、昨年の一月なり、それから七月段階の事例的な調査でございますけれども、まだ導入済みは数%というような状況でございます。  また、食品企業のHACCP手法の導入につきましては、直接的な意味を持ちますのは、その取引先でございます量販店などの流通関係者でありますとか外食チェーンとの取引関係がまずもって問題になるのだろうというふうに私どもは認識をしております。したがいまして、その施設整備をとりあえず図ることが緊急の課題であろうというふうに思っているところでございます。  そのために、先ほど大臣からも御答弁させていただきましたように、まずHACCP手法の導入につきまして、啓蒙普及に努めますとともに、HACCP手法の導入を図る食品企業の施設整備につきまして特別の法律をつくらせていただきたいということで国会に提出をさせていただいているところでございます。  それから、HACCP手法の導入工場で製造された食品の表示につきましては、したかいまして、とりあえず食品企業におきます施設整備なり人材育成、それから管理運営等の状況をまず見きわめていきたい、こういうふうに考えているのが現在の私どもの認識でございます。  それから、食品の表示制度問題一般、全体的な問題につきましては、現在、JAS調査会の基本問題委員会において幅広く検討しているところでございます。
  64. 一川保夫

    ○一川委員 今、現状ではHACCP手法の導入の実績が非常に少ないということで、まだはっきりした格好にはなっていないと思うのですけれども、しかし、これからの課題としては非常に大きな問題ではないかというふうに思います。これは、そういった新しい手法を導入すれば、それだけの経費がかかるわけですし、当然それが製品の価格にはね返っていくということにもなろうかと思いますので、そういうものがある程度消費として伸びていく見込みがなければ、なかなか新しい手法を導入するということにもならないというふうにもなりますので、そのあたり、しっかりとした指導、諸施策の展開をお願い申し上げたい、そのように思っております。  それから、ちょっと話題を変えますけれども、先ほど水産庁長官からも、魚全体の水揚げ量の六七%が加工に回っているということなんですけれども、私は、水産行政の中で、やはり基本的には加工しない鮮魚の段階で、消費者向けにしっかりとおいしい魚を食べていただくという施策も忘れてはいけないというふうに思うわけです。  そのことについて若干気になりますのは、最近、私たちも時々地元の魚市場とかそういうところに出入りさせてもらいますと、毎年活気がなくなっているというのが現状だと思うのです。それからまた、昔からの、伝統的にその地域、その町でいろいろと周辺の住民の方々から支えられ、いろいろな面でかわいがられている俗に言う魚屋さんですね、魚の小売店、そういう世界も今大変厳しい状況にあろうかと思うのです。  こういったところに対して、今の新しいいろいろな動きに即応して、またいろいろな地域の振興策等を兼ね合わせて、こういう魚市場なりまた鮮魚の小売店、こういったところに対する施策というものも、やはりしっかりとしたものを展開していただきたいというふうに考えるわけですけれども、そのあたりの農林水産省の見解を伺っておきたい、そのように思います。
  65. 本田浩次

    ○本田政府委員 先生御指摘のとおり、消費の低迷でございますとか競争の激化の中で、卸売市場関係業者の皆さんそれから鮮魚商の皆様方を取り巻く経営環境が大変厳しさを増しております。特に卸売市場は、産地と消費地の結節点であると同時に食の流通拠点として、鮮魚商の皆さんそれからスーパーなどの重要な仕入れ先となっているわけでございます。また、卸売市場のほとんどは中心市街地に位置しておりまして、都市における貴重な公共空間としての側面も有していると私どもは考えております。  このために、卸売市場の活性化を図ることは、地域の活性化を考える観点からも極めて重要であるというふうに認識しておりまして、私どもといたしましても、このために、平成八年三月に定めました第六次卸売市場整備基本方針におきまして、三点の重要事項を定めてございます。第一点は卸売市場の機能強化に重点を置いた卸売市場施設の整備、それから関係業者の体質強化を図るための経営コストの縮減等の合理化、それから三番目は小売支援機能の強化などを打ち出しているところでございます。  このために、平成十年度予算案におきまして、特に卸売市場整備関係におきましては、機能強化面に重点を置いた施設整備を推進いたしますとともに、卸売市場の小売支援機能の強化も念頭に置きまして、生鮮流通ロジスティックス構築モデル事業を仕組んでいるところでございます。  また、水産物小売業におきましても、消費者ニーズの多様化でございますとか後継者難、大型店などの進出による競争の激化などが進行しているところでございます。したがいまして、先生御指摘のとおり、鮮魚商の皆さんの数も減少の傾向にございます。  このような中で、まず第一には、地域密着型商業としての対面販売の利点の発揮を図っていくということ。それから、青果、食肉などの他の食品小売業との交流、連携による活性化が必要だ、商店街全体を活性化するために、魚屋さんだけではなくて、八百屋さんそれから肉屋さんなどと一緒に活性化方策を考えていこう、こういうこと。それから、鮮度、品質、価格、サービスの面で大型店に負けない競争力の強化などを図っていくことが必要であるというふうに考えております。  このために、私どもといたしましては、食品流通構造改善促進法に基づきまして、食品流通の構造改善を積極的に推進するために、まず第一点には後継者の育成でございますとか経営の近代化の推進、それから情報機器を活用した共同受注宅配実験事業、これは電子御用聞き事業というふうに称しておりますけれども、こういった事業、それから食品小売店の集積事業に対する支援など、ソフト、ハード面での施策を実施しているところでございまして、今後とも、水産物小売業界の方々の意欲的な取り組みに対して積極的に支援していきたいというふうに考えているところでございます。
  66. 一川保夫

    ○一川委員 この鮮魚の世界も、そういう面ではたくさんの課題を抱えておりますし、市場なり小売店を取り巻くいろいろな状況も非常に厳しいわけでございますので、それぞれの地域、いろいろな特性があろうかと思いますけれども、そういった地域の特性に応じた、しっかりとした施策を実施していただきたい、そのように思っております。  では次に、今の真珠養殖事業法関連しまして若干御質問をさせていただきますけれども、総務庁の方は来ていらっしゃるでしょうか。まず、これまでに規制緩和等に関連しまして、いろいろな法律の見直し、場合によっては廃止、それから制度の抜本的な見直しということを、これまでいろいろと答申もされ、いろいろな経過があったわけですけれども、今現在農林水産省が所管している法律等で、こういう一つの流れというか課題に対して、今回本法の廃止をするわけですけれども、こういうような措置というのは、現状どういうような動きになっているのでしょうか、そのあたりの御説明をお願いしたいと思います。
  67. 伊藤隆一

    ○伊藤説明員 御説明させていただきます。  本日御審議いただいております真珠養殖事業法に関しましてもととなったものは、行革審、臨時行政改革推進審議会が昭和六十三年十二月一日に行った公的規制の緩和等に関する答申というものでございまして、それについては、本日までずっと継続して行われております規制緩和の、ベースとなっているものの一つということでございます。真珠検査制度を含む検査・検定制度、資格制度はもちろんそれに含まれておるわけですが、この答申の中には、さらに流通、運輸、情報通信、金融、エネルギー等、非常に広範な分野にわたりまして規制緩和の方向を示していただいております。  政府といたしましては、この答申等を受けまして、累次の閣議決定に基づいて規制緩和を着実に推進してきたところでございまして、近年は、平成七年三月に規制緩和推進のための三カ年計画を取りまとめ、毎年見直しをしてきておりますし、さらに、本日新たな規制緩和三年計画を閣議決定いたしまして、引き続きその推進を図っているところでございます。  これに関連いたしまして、近年、数多くの規制緩和関連の法案が政府から国会に提出され、御審議いただき成立させていただいているところでございます。例えば、一昨年の通常国会では十六本、昨年の通常国会では二十二本の法律案について、御審議いただき成立させていただいているというところでありまして、今国会にもまた数多くの法案を出させていただいている。  こうした法律改正を伴う抜本的な見直しの中で幾つか例を挙げますと、農水省の関連といたしましては、代表的なものといたしましては、食糧管理法を廃止し主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律を制定したというものが代表例であろうと思います。その他、製糸業法及び蚕糸業法を廃止した法律というものもございます。  また、他省庁関連も含めて考えれば、輸出検査法、輸出品デザイン法というものを昨年の通常国会で廃止いたしまして、これは、眼鏡とかおもちゃ、あるいはお茶とか缶詰、そういったものの輸出についての検査を廃止する法律でございます。また、独禁法の適用除外制度の整理等に関する法律というものがございまして、これについては、農水省の関係を含め、運輸省の関係、通産省の関係、いろいろございますが、二十法律三十五制度についてのさまざまな措置を講じたというものでございます。  総務庁といたしましては、引き続き、各省と協力しつつ、規制緩和の推進に努めてまいりたいと考えております。
  68. 一川保夫

    ○一川委員 今回のこの真珠の検査にかかわるこういった指摘というのは、昭和六十三年の臨時行政改革推進審議会ですか、そういったところで初めて指摘された事項であるというふうに聞いております。それから約十年たっておるわけでして、そういう面では、こういうものは、具体的に、こういった国営検査民間に移行するということも含めて、非常に長い年月を要するものだなということをつくづくと感ずるわけでありまして、これからも、総務庁においても、こういったいろいろな、これまで答申、指摘等されたものについてのフォローアップをひとつしっかりとお願いを申し上げたい、そのように思います。  それで、最後に、本法の廃止に伴って、廃止に伴うメリットというのが幾つかあると思うのですけれども、当然、この廃止に伴っての今後の課題も残されるわけでございまして、そのあたりについて、農水省の見解をお聞かせ願いたい、そのように思います。
  69. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 従来は、真珠輸出する際には、全量が国営検査を受ける必要がありまして、また、輸出入取引法に基づきます日本真珠輸出組合のカルテルによりまして上級品しか輸出できなかったということでございました。これが、規制緩和によりまして、輸出カルテルの廃止並びに国営検査制度の廃止によりまして、今後は、真珠輸出する際には、上級品、下級品を問わず、みずからの判断におきまして自由に輸出ができるということになったわけでございます。  世界市場におきましては、真珠養殖では後発国の中国の安い淡水真珠などがもう既に大量に流通しておりまして、大きな市場が形成されております。そういう意味で、従来は上級品だけの輸出ということであったわけですが、今後はこの分野にも我が国としても積極的に市場に対応していくことができるということを考えますと、これが一つの業界のメリットにつながるのではないかというふうにも考えております。  他方、輸出カルテル及び国営検査制度の廃止によりまして下級品が自由に輸出できることになりましたことから、下級品の輸出によりまして我が国真珠の声価が低下するおそれもあるというデメリットもあるわけでございます。  このようなことにつきまして、業界におきましてここ数年議論した結果、国営検査の廃止の後、従来の上級品につきましては、民間検査への移行によりまして、よりきめ細やかな品質保証を行うというようなことで今までの声価を維持することが可能ではないかというふうに考えまして、現在、業界におきましてその準備を進めているところでございます。
  70. 一川保夫

    ○一川委員 今回のこの法律の廃止に伴いまして、これまでの真珠検査所の運営に必要な経費というのが年間約一億あったというふうに聞いておりますし、また、この検査を受けるためのいろいろな業者の方が払う手数料、こういったものも年間約一億近いものがあったというふうに聞いておりますので、本法廃止に伴うそういう経費の節減ということからすれば、官民合わせて約二億ぐらいのものがあるわけでございまして、こういう中で、今後、残された課題をしっかりと民間サイドで実施できますように、これまた農林省の方からもひとつよろしく指導の方お願い申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  71. 北村直人

    北村委員長 一川保夫君の質疑は終わりました。  次に、中林よし子さん。
  72. 中林よし子

    ○中林委員 私は、まず、水産加工臨時措置法について質問をさせていただきます。  実は、かつて、一九九五年だと思いますけれども、EUが、日本の水産加工品衛生管理が不十分だ、つまり、HACCP対応していないということを理由に、輸入を拒否したことがあったというふうに思います。輸出再開するためには、設備や施設を大幅に改善しなければならない、こういうことになったわけですけれども、当時は融資制度も助成制度もありませんでした。そして、輸出禁止の前に、八十社、EU向けの事業所があったと思うのですけれども、実際、輸出が解禁になったときには、この輸出業者は自力で改善できた大手の六業者しか残らなかった、こういうことになったと思うのですね。  この大手の中には、マルハだとかあるいは紀文だとかヤマサだとか、まさに日本の水産加工の大手だというふうに思うのですけれども、今回、EU、アメリカ向けの水産加工ということで、百二十社で、既に準備をしているところが四十社ないし五十社あるというふうにお伺いして、残りの業者が融資の対象にならなかったりあるいは受けられなかったりすることがないように、中小零細企業が非常に多いわけですので、HACCP対応の改善を希望する業者はすべてそれが受けられるようにすべきだ、このように思い、EUのときの二の舞にならないように、水産庁としての対策が求められているというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  73. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 アメリカへの水産食品輸出のためには、現在、アメリカの輸入業者が個別に輸出国の加工業者のHACCPの実施状況を確認するという方式によることとなっておりまして、我が国の多くの加工業者は、これは保健所など、もしくは大日本水産会などによりますHACCP方式で製造する施設等の証明というのを受ける必要があるわけでございます。そういうことで、多くの事業所はそれを受けるべく準備をしているところであるわけです。  水産加工業者は、この保健所や大日本水産会の証明を受けることを前提に、これら機関の指導を受けることによりまして施設の整備計画を作成することとなるわけでありまして、水産加工資金貸し付けに当たりましては、これらの計画が妥当なものであれば貸し付けを行うこととなっております。  なお、施設整備やHACCP計画の作成についての指導を必要とします業者がありますれば、大水の場合でございますと、大水が、傘下の検査機関、これは日本冷凍食品検査協会などがございますので、これら機関との協力のもとで、この計画の作成に当たりまして指導を行うというようなことを考えておるところでございます。
  74. 中林よし子

    ○中林委員 今回の改正は、アメリカ、EUへの水産加工品輸出に際してのHACCP導入の施設改善のための資金支援ということになっているわけですけれども、実際の加工業者の方々の話を聞けば、もう既に、国内向けの加工品へのHACCP導入をどうするかというところに移ってきているというふうに思うのです。  私は、先般、鳥取県の境港に行って、漁業者やそれから加工業者の方々と懇談してきたわけです。境港は、従来は漁獲高日本一を誇っておりましたけれども、イワシがとれなくなって、今や、昨年は七位にまで下がったということで、原材料が手に入らないということで漁業者も加工業者も大変経営困難に陥っておりました。  その中から出されてきたさまざまな声は、HACCPの必要性はわかるんだけれども、もう現状維持で精いっぱいだ、こういうことだとか、資金を借りても価格に転嫁するしか返す方法はないんだけれども、今、大変不況で価格に転嫁できない、そうすれば本当に事業そのものを、事業所を畳まなければならないのじゃないか、こういう声が次々に出されました。  実際、HACCP対応だ、このように称された、もう既に改造したカニ加工工場を見させていただきました。二億円かけて改造したのだ、そういうことだったわけですけれども、この業者の方も、今はHACCP対応の工場が少ないので引き合いもあるのだけれども、今後すべての業者がHACCP対応をしていくならば一体どうなるのか、二億円借りたお金も返せるのかどうなのか非常にわからない、こういうことを言われたわけです。  さらに、この懇談会に出席された皆さんは、大日本水産会のHACCP導入のビデオというものをごらんになったそうなんですけれども、それを見ると、魚をとるところから、船から荷揚げ場から加工場、そういう空間も含めてですけれども、すべてをHACCP対応にしなければならないというビデオだった、もしそういうことになれば、とてもじゃないけれども対応できないというふうにおっしゃっておりました。  これまでの論議の中でも、日本の加工業者、一万四千業者だと言われているわけですけれども、そのうちの大半が零細、しかも本当に数人しか使っていない加工業者だということで、HACCP対応に対する導入の意向調査というのを農林漁業金融公庫が昨年行っているわけですけれども、実は売り上げ五億円未満のところは五八%の方が導入しない、こういう意向を示しているわけです。  それでは今後の対応としてはとても済まされない状況になると思うわけですけれども、今後すべての水産加工業者がHACCP対応をしなければならない、そういう状況に対して、水産庁としてどういう支援をしてやっていくおつもりなのか。これによって業者の方々が廃業せざるを得ない状況を私は起こしてはならないと思うわけですので、その点についてお伺いしたいと思います。
  75. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 HACCPは、衛生管理品質管理ということでございまして、これは消費者並びに流通業者からも強い要請があるということで、基本的には水産加工業としてもこれに対応していかざるを得ないというような状況にあるわけでございます。  そういう意味で、さはさりながら、このHACCPは、これまでの我が国水産加工業界にとりましてはなじみが薄い管理方式でもございますし、この方式を導入しようとする場合、特に中小零細業者にとりましては困難な点が多いというふうにも考えております。  特に、我が国水産加工品は少量多品種にわたっておりまして、その製造及び加工は我が国独特のものも少なくありません。このような伝統的な加工食品につきましても、現状の製造施設や加工工程を踏まえた改善点を明確にしますとともに、設備の洗浄でありますとか消毒方法及び作業員の衛生管理手順等をより具体的に記述いたしましたHACCPの導入マニュアルを作成いたしまして、中小零細な加工業者が円滑に導入できるように努めていく必要があるというふうに考えております。  このために、水産加工品のHACCP導入マニュアルにつきましては、このような点を配慮いたしまして、既に平成七年度から大日本水産会によりまして、これまで冷凍すり身でありますとか冷凍二枚貝のむき身など、マニュアルを作成しているところでございますけれども、さらに平成十年度からは水産食品品質管理高度化センターというのを新たにつくりまして、引き続きより多くのマニュアルを作成いたしまして、中小企業者の多い水産加工業者に対しまして、よりきめ細かな対応を図っていきたいというふうに考えております。
  76. 中林よし子

    ○中林委員 続いて、真珠養殖事業法廃止法案についてお伺いします。  今、真珠養殖業者の一番の問題は、大量へい死が起きて二回目の夏を終えて、三回目の夏を迎えようとしていて、この夏も同じようなことが起きれば、半分は廃業に追い込まれることになると三重県の英虞湾の業者の方々がおっしゃっておりました。  そこで、今最も切実な問題としては、このへい死の原因解明、そして対策、これが最も急がれていることだというふうに思うわけですけれども、原因は先ほどから言っておられましたので、ごく簡単にお答えいただいて、対策の方をどうするかということをお答えいただきたいと思います。
  77. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 先と言われましたように、平成八年、平成九年と二年続きましてアコヤガイの大量へい死の問題が生じまして、これが非常に真珠養殖業者並びに母貝養殖業者にとりまして大きな打撃となっております。  これまでの原因調査でございますが、これにつきましては、感染症であるということが判明しております。この感染症の病原体につきましては、海外におきましてカキ等の二枚貝に病害をもたらすことが知られております寄生性原虫類が、異常アコヤガイ中に存在していることが確認されておりまして、今回のへい死が海外の症例と類似していることから、この原虫類の関与の可能性が大きいと判断いたしまして、引き続きその確認についての調査研究を継続しているところでございます。  なお、ウイルスの問題もございます。ウイルスにつきましては、貝類の病原体として既に知られているウイルスは存在しないことは確認されていますものの、未知のウイルス等の感染の可能性は残されておりますので、引き続き調査研究を継続しているところでございます。  今後は、早急に病原体の特定に努めまして、感染・発症機構の解明を行いますとともに、感染症であることが判明しましたことから、その予防、被害低減等に努めていきたいというふうに考えております。  なお、対策でございますが、貝の健全な生育及び病原体の拡散防止が重要でございますので、過密養殖改善、貝の移動の抑制等の実施につきまして、業界とも現在協議しているところでございます。
  78. 中林よし子

    ○中林委員 感染症の原因究明については、これからまだまだやらなければならないということなので、それは早急に、アメリカのカキの同じように原虫による感染症の研究なども発表になっておりますので、そういうのも参考にされながら対策を講じていただきたいということを強く要望します。言われましたように、これまでの経験から密殖を避けること、これが今の段階としても必要だ、こういう御答弁だったと思うわけですけれども、今回議題になっております真珠養殖事業法を廃止するということになりますと、実はこの対策にとっては逆行につながっていくということを私は思うわけです。  真珠養殖業者の皆さんが、法第三条の施術数量目標の公表制度は生産業界にとっての基本的性格を持つものとして、この事業法廃止そのものに強く反発をしてこられました。法律制定当初の増産目標としての役割は確かに終わったかもわかりませんけれども、今日では、先ほど言われた過密養殖を防ぐための上限目標の役割を、十分とは言えないけれども果たしてきたのがこの法律です。この制度の廃止による混乱だとか養殖場や海の環境破壊を防ぐためにも、この事業法の条項は残すべきだというふうに思うわけですけれども、いかがでしょうか。
  79. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 真珠養殖事業法に基づきます施術数量目標、これは真珠輸出の促進と計画生産についてのガイドライン的数値を示すにとどまっておりまして、実際の生産数量が必ずしもこの施術数量目標に縛られるものではありません。したがって、この法律が積極的な需給調整を行っていたというわけではないために、施術数量目標を廃止いたしましても、この面からの問題は特にないだろうというふうに考えております。  ただ、しかしながら、養殖漁場の環境を維持するために、密殖を避け、適正規模での養殖を行う必要性はございますので、今後各府県ごとの生産計画についての情報を集め、これを公表するなどの仕組みにつきまして、関係府県及び生産、流通関係者とも検討していきたいというふうに考えております。
  80. 中林よし子

    ○中林委員 私、三重県に行って関係者の方々とこれまた懇談してきたわけですけれども、また業界新聞を見ても、これまでの経緯は、水産庁は漁業法で対応する、何らかの法律的な縛りをかけるというふうにずっと関係者に言ってきた経緯があるというふうに思うわけですね。三重県の関係者の方は、組合員だけの話し合いで自主的にというようなことでは、それぞれ漁業者の意見も違うわけだから、なかなかそうはならない、だからこそ漁業法という法律で対応してほしいんだ、こういうことをおっしゃっておりました。  今、各都道府県でという話があったわけですけれども、密殖を防ぐためということですと、例えば、今真珠養殖をやっていない府県が手を挙げた場合、これまでやってきた、三重県だとか愛媛県だとか、そういう養殖業者に、今までの数よりも少ない数で対応するということを水産庁は言っておられると思うのです。そうなると、これまでどおりの養殖ができなくなってしまうのではないかという懸念があるのですけれども、当然そういう公平性をちゃんと保つということと、それから、これまで努力をしてこられた業者の方々が、そういう各都道府県の自主的な判断でとおっしゃることで泣くことのないようにすべきだというふうに私は思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。
  81. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 先ほど御答弁いたしましたように、密殖でありますとか、養殖漁場の環境維持というような観点から、関係府県及び生産、流通関係者とも集まりまして、今後ともその情報をお互いに交換するというようなことをしていきたいというふうに考えているところでございます。  ただ、業界全体といたしましては、南洋真珠や中国真珠輸入の増加、さらには、国際市場におきます中国真珠の進出といった最近の真珠をめぐる情勢に対応いたしまして、業界みずからが競争に生き残っていく産業を育成していく意識づくりが急務であるというふうに考えておりまして、業界としても、法律による規制措置などに頼ることではなくて、高品質真珠養殖と生産性の向上に取り組んでいく必要があるというふうに考えているところでございます。  したがいまして、農林水産省といたしましても、今後適切な支援をしていきたいというふうに考えているところでございます。
  82. 中林よし子

    ○中林委員 高品質真珠ということをおっしゃったわけですけれども、そうなると、輸出向けの国の検査を今回民間に移すということになると、その高品質真珠そのものから後退しかねない懸念を私どもは持つわけです。これは、業界の方々もこういうことをおっしゃっているんですね。民間の検査では、検査料が上がったり、それから任意の検査であるわけですから、受けないで粗悪品が出回っていくのではないか。今の日本の加工して出す技術というのは相当高度になっているので、粗悪品が出回る要素というのは物すごくあるということなんですね。だから、今まで日本の真珠を高品質に保とうと思って本当に慈しみながら育ててきたものが、その価値が評価できなくなって、ひいては日本の真珠全体の価値が下がっていくのではないか、こういう懸念を表明されておりました。  そこで大臣、もう時間が来ましたので最後なんですけれども、こういう形で今、真珠養殖業者の方々は本当に、大量へい死の中で廃業になるかどうかという瀬戸際であえいでおります。そうはいっても、日本の真珠を本当に高品質で自分たちがやっていくんだ、こういう誇りも持って取り組んでおられますので、養殖業者の方々がこの事業法の廃止で、私たちは、廃止してはならない、むしろ生かすべきだということを主張しているわけですけれども、本当に養殖業者の方々の願いにしっかりとこたえるという立場を貫いていただきたいと思います。どうでしょうか。
  83. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  まず、真珠我が国の世界に誇る特産物と言っても言い過ぎではございません。  真珠の問題につきましては、最近、アコヤガイの大量へい死というような重大問題が起きたりいたしまして、この問題については、現在、水産庁研究所を中心に、水産試験場及び大学の参加のもと、原因究明及び対応策の検討に取り組んでいるところであります。  また、真珠養殖業を取り巻くさまざまな問題に対処するためには、まず過密養殖改善のための指導の強化や、高品質なアコヤガイをつくるための助成、さらにはへい死率を下げるための養殖技術開発に対する助成を行っているところであります。  さらに、融資につきましても、経営状況の厳しい真珠養殖業者や母貝養殖業者に対し、漁業近代化資金等各種制度資金の円滑な融通について、関係金融機関及び関係県を指導しているところであります。  今後とも、必要に応じ適時適切な措置を講じつつ真珠を守っていきたい、そう考えます。
  84. 中林よし子

    ○中林委員 終わります。
  85. 北村直人

    北村委員長 これにて中林よし子さんの質疑は終わりました。  次に、前島秀行君。
  86. 前島秀行

    ○前島委員 簡単に、水産加工業とHACCPとの関係について二、三質問をしたいと思います。  まず、水産加工業の振興という側面から、HACCP、いわゆる安全性の強化という問題をどう受けとめているかということであります。  というのは、どうも、去年の暮れにアメリカが規制に出たので、慌ててばたばたという感じが率直にしなくはないのですね。やはり私は、これから水産加工食品に限らず、食糧というものは安全性ということが大きなキーポイントになってくるんじゃないだろうか、とりわけ、食糧の付加価値というのは、これからは安全性強化によって高められると言ってもいいと思うわけであります。したがって、EU、アメリカに限らず、先進諸国では、安全性の強化、HACCPの導入ということが世界の流れになってくるのではないだろうかな、こういうふうに思います。  食品産業業界を取り巻く状況は厳しいということが言われているわけでして、これから、さらにHACCPによってさまざまな対応を迫られるということになってくると、より厳しい状況に追い込まれてくる要素が考えられる。しかし、安全性の強化ということが、また一面これからの水産加工食品の勝負のしどころにもなっていくのではないだろうかなとも思うわけであります。輸入食品が非常にふえているというのも、やはり輸出国との対抗上も、安全性の強化、HACCPの導入というのをそういうふうに前向きに、積極的に受けとめるべきではないだろうか。今度の場合は、どうも後手後手になって、ばたばたしちゃっている、こういう感じがするわけであります。  そういう面で、これからの食品産業の振興という意味で、安全性の強化、HACCPの導入ということをどう受けとめようとしているかについて、ひとつ基本的な認識を聞いておきたいと思います。
  87. 本田浩次

    ○本田政府委員 御指摘のとおり、HACCPの導入は現下の重要な課題でございます。このために、農林水産省におきましては、これまでも冷凍食品でございますとかロースハムなどの個々の食品につきまして、HACCP手法導入のためのマニュアル作成を支援して、その普及啓発に努めてきたところでございます。  特に、平成十年度におきましては、まず一つは、食品企業などにおきますHACCP手法を導入した安全確保のためのマニュアルを作成し、その普及を図ること、それからJAS認定工場へのHACCP手法の導入を図ることなどを進めていきたいと考えております。  さらに、先ほど来御説明しておりますように、HACCP手法の導入を図る食品企業に対しまして、金融、税制上の支援措置を盛り込んだ食品製造過程管理高度化に関する臨時措置法案を二月末に国会に提出したところでございます。  したがいまして、この法律早期成立を待ちまして、関連施策の推進とあわせて、HACCP手法の導入促進を積極的に進めてまいりたいと考えているところでございます。
  88. 前島秀行

    ○前島委員 このHACCPの今度の法案でも、導入するかしないかというのは個々の業界あるいは個々の企業の判断に任す、こういう形になっているわけでして、そうじゃなくして、例えばこれから重要な食品加工の食品だとか産業というものは積極的に義務化することによって輸入との対抗策をしていくとか、あるいはそういうことによって共同化を図って、この最大の弱点である中小零細ということをカバーしていくとか、何か個々の企業の自主的判断に任すのじゃなくして、もう少し積極的に、この業界の持っているさまざまな課題を克服するために努力すべき、そういう方向をリードすべきではないか。  そういう面では、ある食品だとか重要なものについてはHACCPの導入を義務化する、このような考え方水産庁の方の水産加工業界をリードする、指導する過程の中で、方法としてその辺のところは考えられませんか。
  89. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 HACCPの義務化の話でございますが、確かに、もう既にEUやアメリカへ輸出するものにつきましては、これは言うなれば導入が義務づけられておりますから、これに対応せざるを得ないという状況にあるわけでございます。  ただ、国内において流通するものについてでございますが、これにつきましては、先般のO157によります食中毒事件を契機に、消費者の食品衛生品質向上に対します関心は非常に高まっています。そういう意味で、国内流通するものにつきましてもHACCPの導入は必要であるというふうに考えております。  しかし、水産加工業の場合には、先般言っておりますように、中小零細なものが多いということから、HACCPの導入につきましても困難な点が多いということから、言うなればそれぞれの水産食品の製造実態を勘案しながらHACCPの導入のための支援策を講じていく必要があるのではないかというふうに考えております。
  90. 前島秀行

    ○前島委員 これから安全性が厳しくなると、個々の企業を超えて港だとか市場だとかあるいは魚倉、倉庫等々にも相当な基準が出てくる。したがって、それに対応するためにはハードの面とソフトの面でそれぞれ資金手だてというのが必要だろうと思いますね。本法での百八十億の資金枠というのはそのまま、それからソフトの方の改良促進の方が五億ほど足して百四十五億と若干の上積みがあるようでありますが、その辺のところもやはりこれから強化していくためには、手だてとしては大丈夫なのかな、こういう点も考えられるわけでありますが、その辺の資金手だては大丈夫なのか、今後どういうふうに考えているのか、その辺を聞いて質問を終わりたいと思います。
  91. 嶌田道夫

    嶌田政府委員 平成十年度から、水産加工資金によりまして、アメリカ等のHACCP方式の導入によります衛生規制強化に緊急に対応するための施設改良に必要な資金、これを貸し付けることにしておりまして、融資枠につきましても、平成八年度、九年度の実績等を考えますと、十分百八十億の中でこれは賄えるのではないかというふうに考えております。  さらに、水産加工経営改善促進資金によりまして、HACCP方式を的確に導入する上で必要となりますコンサルタントからの助言、指導に要する費用でありますとか、HACCPに関する教育訓練に要する費用等の管理経費につきましても、新たに低利資金の融通を実施することとしております。  いずれにいたしましても、このハードの資金、ソフトの資金両方合わせまして、水産加工業者がHACCPを円滑に導入できるように努めていきたいというふうに考えております。
  92. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  93. 北村直人

    北村委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  94. 北村直人

    北村委員長 ただいま議題となっております両案中、まず、原材料供給事情及び水産加工品貿易事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案について議事を進めます。  これより討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  95. 北村直人

    北村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  96. 北村直人

    北村委員長 この際、本案に対し、松岡利勝君外六名から、自由民主党、民友連、平和・改革、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び岩浅嘉仁君の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。一川保夫君。
  97. 一川保夫

    ○一川委員 私は、自由民主党、民友連、平和・改革、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び岩浅嘉仁君を代表して、原材料供給事情及び水産加工品貿易事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     原材料供給事情及び水産加工品貿易事情変化に即応して行われる水産加工業施設改良等に必要な資金の貸付けに関する臨時措置に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   我が国水産加工業は、国際的な水産資源の保全及び管理強化による原材料供給事情の悪化に加え、加工品の輸入も引き続き増加する傾向にあるなど誠に厳しい状況にある。   加えて、米国等におけるHACCP方式の導入等水産加工品の安全性確保のための衛生規制強化により、我が国水産加工品貿易への著しい影響が懸念されている。   よって、政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に努め水産加工業の安定的発展に遺憾なきを期すべきである。       記  一 新たな衛生品質管理手法であるHACCP方式が、我が国水産加工業の実情に配慮しつつ円滑に導入されるよう、工程管理マニュアルの策定や人材の育成等所要の措置を講ずること。    また、漁獲、養殖から流通に至る各段階における水産物の衛生品質管理強化に努めること。  二 中小企業・零細企業が大宗を占める水産加工業の実態を踏まえ、組織化・共同化を促進し、経営基盤の強化に努めること。  三 水産加工原料の安定的供給の確保にも資するよう、漁獲可能量制度の適切な運用を図ること。  四 近海資源有効利用を一層促進するとともに、環境問題に対する関心の高まりに対処し、廃棄物の処理や再利用のための技術開発等を推進すること。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑過程を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。  以上です。(拍手)
  98. 北村直人

    北村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  松岡利勝君外六名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  99. 北村直人

    北村委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣島村宜伸君。
  100. 島村宜伸

    島村国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議の趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。     ―――――――――――――
  101. 北村直人

    北村委員長 次に、真珠養殖事業法を廃止する法律案について議事を進めます。  これより討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。藤田スミさん。
  102. 藤田スミ

    ○藤田(ス)委員 私は、日本共産党を代表して、真珠養殖事業法を廃止する法律案に対し、反対の討論を行います。  真珠養殖事業法は、日本の真珠の生産を守る唯一の法律として機能してきました。輸出真珠の増産という当初の目的は達せられたということですが、真珠養殖産業が、アコヤガイの大量へい死という未曾有の危機に直面しているもとで、この産業を守る点で、同法は廃止ではなく、むしろその条項を生かすことが求められています。  施術数量目標の公表制度は、生産調整のために一定の役割を果たしてきており、問題になっている過密養殖を防ぐ機能として活用すべきであり、真珠貝の養殖業者への助成も、現在の大量へい死の危機的な状況の中では、むしろその条項は残し、必要な場合には発動できる余地を保障しておくべきです。さらに、日本の真珠に対する内外の信頼を維持する国営検査、また真珠養殖事業審議会の調査審議の充実も今こそ求められているものであります。  以上の理由により、真珠養殖事業法は存続すべきであり、本法律案に反対する討論とします。(拍手)
  103. 北村直人

    北村委員長 これにて本案に対する討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  104. 北村直人

    北村委員長 これより採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  105. 北村直人

    北村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  106. 北村直人

    北村委員長 この際、本案に対し、松岡利勝君外五名から、自由民主党、民友連、平和・改革、自由党、社会民主党・市民連合及び岩浅嘉仁君の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨説明を聴取いたします。一川保夫君。
  107. 一川保夫

    ○一川委員 私は、自由民主党、民友連、平和・改革、自由党、社会民主党・市民連合及び岩浅嘉仁君を代表して、真珠養殖事業法を廃止する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     真珠養殖事業法を廃止する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法が廃止されるに当たり、左記事項の実現に努め、真珠養殖事業及び真珠母貝養殖事業の発展に遺憾なきを期すべきである。       記  一 真珠民間検査への移行に当たっては、国際的に信用を保持しうる検査機関が育成されるよう必要な措置を講ずるとともに、輸出に係る日本真珠の評価が確保されるよう十分な指導を行うこと。  二 真珠をめぐる厳しい状況にかんがみ、安定した真珠養殖事業及び真珠母貝養殖事業経営が維持できるよう、必要な支援措置を講ずること。  三 平成八年度以降全国において発生しているアコヤ貝の大量へい死に対し、原因の特定と今後の対応策の確立に向けた調査研究を鋭意推進すること。    また、養殖場環境の保全対策に万全を期すること。   右決議する。  以上の附帯決議の趣旨につきましては、質疑過程を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。  以上です。
  108. 北村直人

    北村委員長 これにて趣旨説明は終わりました。  採決いたします。  松岡利勝君外五名提出の動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  109. 北村直人

    北村委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣島村宜伸君。
  110. 島村宜伸

    島村国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議の趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。     ―――――――――――――
  111. 北村直人

    北村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 北村直人

    北村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  113. 北村直人

    北村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時三十六分散会      ――――◇―――――