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1998-03-19 第142回国会 衆議院 農林水産委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十九日(木曜日)     午後二時十六分開議 出席委員   委員長 北村 直人君    理事 赤城 徳彦君 理事 鈴木 俊一君    理事 松岡 利勝君 理事 松下 忠洋君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       石破  茂君    小野寺五典君       大石 秀政君    金田 英行君       岸本 光造君    熊谷 市雄君       古賀 正浩君    園田 修光君       高鳥  修君    中山 成彬君       丹羽 雄哉君    萩山 教嚴君       二田 孝治君    御法川英文君       宮本 一三君    矢上 雅義君       石橋 大吉君    神田  厚君       今田 保典君    仙谷 由人君       鉢呂 吉雄君    堀込 征雄君       木村 太郎君    丸谷 佳織君       佐々木洋平君    菅原喜重郎君       二階 俊博君    中林よし子君       藤田 スミ君    前島 秀行君       岩浅 嘉仁君  出席国務大臣        農林水産大臣   島村 宜伸君  出席政府委員        農林水産政務次        官        岸本 光造君        農林水産大臣官        房長       堤  英隆君        農林水産省構造        改善局長     山本  徹君        農林水産省農産        園芸局長     高木  賢君  委員外出席者         農林水産委員会         専門員     黒木 敏郎君     ————————————— 委員の異動 三月十九日  辞任        補欠選任   木部 佳昭君     大石 秀政君   中尾 栄一君     萩山 教嚴君   仲村 正治君     古賀 正浩君   漆原 良夫君     丸谷 佳織君 同日  辞任        補欠選任   大石 秀政君     木部 佳昭君   古賀 正浩君     仲村 正治君   萩山 教嚴君     中尾 栄一君   丸谷 佳織君     漆原 良夫君     ————————————— 三月十九日  遺伝子組換え作物環境生態系調査・検証  に関する請願土井たか子紹介)(第七四二  号)  同(北沢清功紹介)(第七八五号)  小麦民間流通移行反対価格安定と品種改良  による国内小麦振興に関する請願児玉健次君  紹介)(第七八三号)  同(藤田スミ紹介)(第七八四号)  国有林野事業累積債務処理に関する請願(北  沢清功紹介)(第七八六号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定  措置に関する法律の一部を改正する法律案(内  閣提出第一九号)  青年就農促進のための資金の貸付け等に関す  る特別措置法の一部を改正する法律案内閣提  出第二〇号)  主要農作物種子法の一部を改正する法律案(内  閣提出第四二号)      ————◇—————
  2. 北村直人

    北村委員長 これより会議を開きます。  内閣提出農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案青年就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案及び主要農作物種子法の一部を改正する法律案の各案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。木村太郎君。
  3. 木村太郎

    木村(太)委員 大臣、連日御苦労さまです。また、委員長、昨日はありがとうございました。  ただいま議題となっております三つ法案、この法案を着実に実施するためにも農業全体がやはりしっかりしていなければならないと思いますし、また、裏返して言えば、各関係法律がしっかりした内容を持って、そしてこの厳しい状況にある農業振興を図ることができる、私はそう信じております。  そういった思いから、特に、議題となっております三つ法案のうち、青年就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案というものは大変重要な法律だと思っております。今回、農業担い手確保育成についてさらに充実をさせたい、そういう意義あって今回の一つの提案、私はこう理解しております。この私なりの思いを持ちながらお尋ねしてまいりたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。  まず、新たな農業基本法制定に向けて先般中間報告がなされたわけでありますけれども青年中高年齢者新規就農あるいはまた就農促進を図るためにも、新しい農業基本法、この農業基本法に対する期待も大きいものと私は理解しております。  そこでお伺いしますが、まずはこの中間報告、これに対して大臣の御認識、さらには、最終答申に向けて本格的に議論が始まっていくと思います。どういつだ議論期待するのか、その点、大臣の御認識をまずいただきたいと思います。
  4. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  社会情勢の変化や国際化の進展に伴いまして、新たな基本法制定を含む農政の改革が当然に求められてきておるところであります。御高承のとおり、ただいままた御指摘がございましたが、食料農業農村基本問題調査会におきまして、昨年四月以降、まさに精力的に各分野代表が集まられていろいろ御討議を願っているところでございまして、十二月に中間取りまとめが行われたところであります。  具体的な検討事項につきましては、まず第一に、食糧安定供給確保をいかに考えるべきか。第二が、消費者、国民のニーズヘの対応をいかにすべきか。第三に、農業構造の変革と農業経営の安定をいかに図るべきか。第四が、農業農村の公益的、多面的機能の発揮をどのように維持するか。またもう一つは、中山間地域等を含めた農村地域をどのように振興していくか。これらを中心として検討がなされているところでございます。  私どもは本年夏をめどに最終答申をいただく予定でございますが、私といたしましては、それはそれとして、農林水産省としても、これらに注文をつけるとか、何か方向づけるということではなくて、我々なりに、どのようなことにも対応し得るような柔軟な、前向きな取り組みを指示しているところでございます。  今後、調査会での議論を踏まえまして、国民的な合意の形成を図りながら、二十一世紀に向けて、農業農村皆さんがそれぞれにまさに将来に誇りと希望を持って農業あるいは漁業、林業等にお取り組みいただけるように私たちは頑張っていきたい、そう考えているところであります。
  5. 木村太郎

    木村(太)委員 柔軟な姿勢をということでありますが、今、いわゆる農業後継者確保担い手確保、あるいはまた新規就農、こういうことに対してこの中間報告段階でどのようにとらえていると大臣認識しているのか、また、最終答申に向けて、その担い手確保就農促進、こういったものがどのように位置づけられていくべきと考えているか、もしあれば御答弁をお願いします。
  6. 島村宜伸

    島村国務大臣 農業の将来を考えますときに、これは林業水産業同じでございますが、我々が一番心配いたしておりますことは、まさにそれぞれの分野高齢化担い手の減少ということでございます。そういう意味では、我々が農政をどのように考えましても、後を担う方々がきちんとそろっていただかないことには、これは絵にかいたもちに終わってしまいます。それらにつきましては、我々は、少なくも農業者の子弟を含む若い世代が、農業に魅力を感じ、かつ生きがいを持って取り組むことができる条件整備、これがやはり基本になるのだろうと思います。  私ども都会生活をいたしておりますが、やはりこれは、都会というものにあこがれる若い人たち考え方がよく理解できるわけでありまして、そういう意味で、最近は非常に交通機関が発達し、都会へちょこっと旅行をしてくるということが割と容易に行われるようになっておりますものの、やはりそれはそれとして、自分たち地域にあってお互いにコミュニケーションを図り、かつそれぞれに充実した文化生活を営むことができる、これを基本に置かなければならないと私は思っています。  そういう意味では、人が住まないところに社会資本は育たないわけですし、具体的には交通機関も成り立たないし、例えば商店街も寂れるでしょうし、あるいは娯楽施設スポーツ施設も、つくってみても利用者がいないということになったのでは、これは何もなりません。それらを含めて、まず定住をしていただく、そして、若い人たち意欲的に生活をエンジョイしていただく中に、新たな英気を培って、また農林業あるいは水産業に取り組んでいただくという環境が必要でありますから、それらについては、当然に我々なりにそのお立場をそんたくした対応が必要なのだろうと思います。  具体的な問題としては、やはり若者が、仮に志がある人がわずかに残られても、数が少なければ今申したようにいろいろなものが成り立たない、そういう意味では、こぞってみんなで自分たち地域を守ろう、農林水産業を通じて日本の将来の一翼を担おう、こういう気概を持っていただくことが我々は基本的に大事なのだろう、こういうふうに実は思っているところであります。  そういう意味では、よく指摘されますけれども、当然に生活環境整備のおくれということも無視できません。なるほど都会の人は、うかつに、人のいないところに道路をつくる、橋をかける、けしからぬということを言いますが、やはりそういうものもなければ人は住まないわけですし、自分たち地域が捨てられていると思ったら、若い人が義理で一生住むわけないわけですから、その辺も問題がありますし、生活の周辺を考えれば、例えば水洗便所もないところにお嫁になんかとても行けないという都会女性たち気持ちもよくわかります。他国にそういう道だけを選ぶのでなくて、国内でお嫁さんが喜んで来てくれる社会環境整備というのは我々の大事な役割だと思っておりますので、それらすべてを含めて、嫁不足解消問題等も、環境がそういうものをある意味では消化していくといいましょうか、解消していくといいましょうか、それらを含めて我々は努力をしたい、こう考えております。
  7. 木村太郎

    木村(太)委員 私の住む町も人口一万人足らずの農村地域でありまして、ただいま大臣から答弁があった水洗トイレというものもまだまだ普及していない、ゆえにまた集落排水なんかでも、国あるいはまた地方自治体の努力でまさに今その環境づくりを進めているところであります。  今、そこに住まなければならない、定住という言葉を重要視されて御答弁がありましたけれども定住するためにも、私は、いわゆる農業が、担い手から見た場合に、職業としてきちっと選択できる職業一つ農業だ、こういうことをきちっと位置づける条件づくりをしていくことが一層求められていると思っております。  先ほど私言いました中間報告の中でも、意欲のある多様な担い手確保あるいは育成というものをきちっと中間報告段階でも示しているというふうにも読み取ってはおりますけれども、ただ、日本の、我が国農業というものをこれまで見詰めれば、ある面では世襲的な一つ職業というか分野であった、これも否定できないと思います。だとすれば、これも、すべて否定するわけではありませんけれども、ある面では今までの世襲的な流れというものを打破するような、そういったことも取り組みとしては必要ではないかなというふうにも思っております。  ですので、私は、今回の改正、さっき冒頭言ったように、充実させる意味があるだろう、こう私は理解していますという点でプラスに私自身もこの改正を解釈しておりますけれども農業職業として選択できるための条件というものを大臣はどのように考えておられるのか、お尋ねしたいと思います。  例えば、私なりに具体的に考えれば、新規参入者のためにも、農地あるいはまた生産施設なんかのリース制度とか、あるいはまた経営流通を支援する各地域にある農協、この農協などに対しても一層のバックアップも必要ではないかなというふうにも思っております。  また、いま一つ大事なのは、農産物価格安定、価格を安定化させる、こういった制度ももう一回見詰め直してもいいのではないか、あるいはまた共済制度も今までと同じような制度考え方でいいのかどうか、こういったこともあらゆる面でぜひ見詰め直して、そして、一つ一つ積み重ねることによって職業として選択できる農業の姿というものをみんなで打ち出していただきたいし、大臣先頭に御努力をお願いしたいと思うのですが、御答弁をお願いしたいと思います。
  8. 高木賢

    高木(賢)政府委員 新たに農業につく人、また現に農業についている人が、農業職業として選択できる、あるいは職業として継続できるという条件整備は、今御指摘のように、大変重要な課題だと思います。  まさに、この基本問題調査会におきましても、食糧自給力の強化の問題とか、住みよい農山村づくりの問題とかというものとあわせまして、経営体の安定あるいは人材の育成ということも重要な柱になっておりまして、そのためのいろいろな施策を講ずるべき方向が現在示唆されているわけでございます。  それはそれといたしまして、私どもとしても、まさに農業本業としていこうという方がきちんと農業で生きていく、生計を立てていけるという条件づくりをしていかなければならないと思います。先ほど大臣から御答弁をいたしましたとおり、生産基盤整備施設整備とか流動化促進とか、今先生御提言がありましたように、農地施設リース制度、もうこれは一部新規就農者については始めておりますけれども、こういったもののさらなる検討、あるいは価格安定制度とか共済制度、御言及がございましたが、いろいろな諸制度が要は農業本業としてやっていこうという人のためになっているのかどうか、あるいはさらに改善点はあるのかどうかということにつきましては、今後議論の深まりとともに、私どもとしても検討していかなければならない課題であろうというふうに思っております。
  9. 木村太郎

    木村(太)委員 中間報告の中でも一つの提起をしているわけですね。それは、価格政策市場原 理というものを活用し、価格が下落したときには意欲のある農業者に対して経営安定措置導入するように提起しているのですね。だとすれば、私は、この考え方をもってして、先ほど大臣がおっしゃった、農村定住できる、そして、農業職業としてということを考えれば、いわゆるこの所得補償制度というものを大きくとらえて、可能か可能でないかというのは、それは議論して考えた上ということで結果は出てくると思いますけれども、大きな視点で見詰め、そして、やれるかやれないか、どうやったらやれるかというような、そのぐらいの取り組みがあってもいいような気がいたしております。  お米に関しては、いわゆる所得補償制度なるものが既に議論が始まっているわけですけれども、米だけに限らないで農業全体でのそういった制度のあり方というものを探るべきではないかな、こう思っております。また、そういう考え方から、具体的に私なりに考えますと、俗に言うサラリーマン皆さんのような、農家皆さんと話してみても、サラリーマン皆さんのように安定的な給料、給与という形でそういった農業なんかも今後考えることができないか、こういった声も時には聞きます。  こういったことも踏まえて、所得補償制度というものに対して、農林水産省考え方がもしあればいただきたいと思います。
  10. 高木賢

    高木(賢)政府委員 中間取りまとめ段階におきましても、例えば、中山間地域の問題につきまして賛否両論があることは御案内のとおりでございます。  一般に、就農希望者に対してサラリーマン並み所得が保障できないかということでございますが、この点につきましては、やはり、他の産業、他の自営業の方とのバランスとか、農業公共的性格がどの程度あるのか、こういった議論を十分尽くさないといけないのではないかというふうに思っております。今後、さらにさまざまな局面で議論が深められるとは思いますけれども、そういった議論をまず十分詰めていくということが今後の検討の大前提になるというふうに考えております。
  11. 木村太郎

    木村(太)委員 ぜひ検討をしていただきたい、こう思います。  少し視点を変えたいと思います。中間報告を私なりに解釈、読んでみまして、いろいろな印象を持ちましたが、いま一つ、私なりに思ったことは、食料農業農村の問題というものを地球的規模視点から議論している、これは私なりに評価はしたいと思います。ただ、世界の食糧需給あるいはまた環境問題、こういったことを視野に入れて、日本農業我が国農業がどうあるべきなのか、その姿はどうあるべきなのかということをもっと中間報告段階であってもわかりやすく記してもよかったんじゃないかなというふうにも思っております。  この理念や課題の分析などに時間をかけるのも大事でありますけれども、やはり農業者皆さん期待していることは、具体的な指針というものを明確にして、日本農業をどのように国が持っていこうとしているのか、また、進めようとしているのかということを具体的に知りたいというのも大きな期待だと私は思っております。  大臣は、先般の所信表明の中でも、新たな農政指針をつくり上げたい、こういう決意も示されております。ぜひ、この最終報告においては、それこそ大臣所信でもあります具体的な指針というものを打ち出すように私は期待したいと思いますが、その点、お考えをいただきたいと思います。  そして、私は、この青年就農担い手確保等あるいはまた新規就農、こういったことも考えれば、この指針指標というものを打ち出すこと、大事でありますけれども、もっと具体的に言えば、食糧安定確保のためのいわゆる食糧自給率あるいはまた自給力というものをきちっと示していく必要があるだろうし、あるいはまた地域別の、地域指標というものを示すことが大変大事ではないかな、こう思っておりますが、御答弁をお願いしたいと思います。
  12. 島村宜伸

    島村国務大臣 食料農業農村基本問題調査会は、御高承のとおり、生産者と、あるいは経済界代表、あるいは消費者代表労働組合、マスコミ、学識経験者等々あらゆる分野代表の方に審議会のメンバーになっていただいて、御検討いただいているところです。  それで、中間取りまとめという形になっておりますが、御承知のように、株式会社の土地の取得の問題とか、所得補償の問題とか、食糧自給率はどの辺を目指していくべきなのか、こういうことごとが実は両論併記になって、まだ結論が出ておりません。  我々は、せっかくそれだけ権威ある方々にお願いして御検討いただけるものに対して、こうあるべき、あああるべきという差し出がましいことは、これは差し控えなければいけませんが、当然、そういう方たちがどういうお考えで取り組んでおられるかということについては、大変な関心を持って見守っているところであります。  したがって、夏までに、私たちのいろいろなこういう国会質疑等もその専門家方々はごらんになっているはずでありますから、それらを踏まえて検討の結果があらわしていただけるもの、そう期待しているところであります。
  13. 木村太郎

    木村(太)委員 むしろ、あくまでも新しい農業基本法を目指す上で最終報告が大きな参考になっていくと思いますけれども、やはり大臣所信にあるとおり、大臣先頭にそれらの具体的な指標を、農水省サイドがリーダーシップを発揮して示していただきたい、そのことを私は現時点においても大きく期待をしておきたいと思います。  いま一つ、時に、人の考え方はさまざまでありますけれども農業にも市場原理導入、これをきちっとすべきだという意見をおっしゃる方がいます。ただし、私は、すべてを否定しませんけれども農業は自然が相手でもあります、また、自然とともにという分野でもありますので、全く市場原理というものを導入していいかどうか。私は、むしろ、全く導入するということには否定的な個人的考え方を持っておりますけれども、いわゆる就農促進ということも考えれば、農産物価格市場原理に任せておいていいのかどうか。価格は、ある面では、時にはどこまでも下落するときもなきにしもあらず、そういう場面もいろいろあると思うのですが、私は、むしろ何らかの歯どめなるものも一方では備えておく必要がある、こう思っております。  そういう点で、市場原理導入という意見があるというその意見に対しても、農水省考え方、今どの辺にあるのか、確認をさせていただきたいと思います。
  14. 堤英隆

    堤政府委員 御指摘のように、農産物につきましては、自然を相手にするということでございますので、これは市場原理のみにゆだねました場合には、価格は乱高下するということだろうと私どもも思っております。したがいまして、御案内のように、米、麦、芋、その他乳製品等々、かなりの品目につきまして価格安定制度ということを設けているわけでございます。  価格安定制度の中身は幾つかに分かれるわけですけれども最低価格を保証するもの、あるいは安定価格帯をつくってその中にできるだけ価格をおさめていこうとするもの、あるいは不足払いを行うもの、そういったふうに幾つかの類型に分けられるわけでございます。手法は違いますけれども、何らかの意味で、今御指摘のように価格の下落に対しましてはある程度これを下支えするという機能を持ったものというふうに理解をいたしております。かつ、現在の我が国農産物、十兆円以上ございますけれども、全体の約七割が何らかの意味価格支持制度の対象になっているということでございます。  他方でまた、今御指摘のように、これを人為的、行政的に需給実勢を無視した形で安定させるということになれば、結局のところ全体の需給状況が大きく狂ってくるということでございます。それから、零細構造をまた温存するというようなこ ともあろうと思います。そういう意味では、市場シグナル生産者方々に的確に反映される、やはりそういう意味での価格安定制度の中におきます市場原理導入ということもある程度必要なことじゃないかというふうに思っております。  いずれにしましても、生産者農家経営の安定ということと、それから消費者方々生活の安定、そういう両面を価格安定制度はねらっているわけでございますので、現実におきましては、今おっしゃいましたような農産品特殊性ということを踏まえながら、どういう形で市場原理も徐々にそこに反映させていくか、そういうような気持ちでこれからも価格安定制度の運用に努めてまいりたい、こういうふうに考えております。
  15. 木村太郎

    木村(太)委員 幾つか私なりに意見も述べながら御答弁をいただいてまいりましたけれども、これらのことをきちっと方向性を示していくことが就農促進対策にもつながっていくと思います。  そういう考え方でも、もう一つぜひ確認したいのですけれども、例えば私の地元ではお米とリンゴ中心地域でもあります。特にリンゴに関して言えば、若い青年農家農業者がグループをつくってお互いに協力し合っているというのが大変いい例としてあります。また、私自身地域にいてそういうことに期待をしているわけですけれども我が国考えた場合に、南北にも長いし、あるいはまた雪降る地域もあるしと、いろいろ地域の個性、特性というものがあるわけです。今後、我が国農業あるいはまた農村ということを考えれば、国の農政であっても地域重視型の思いを取り入れていく必要があるのじゃないかな。極端な言い方をすれば、国のいろいろな制度であっても地域ごとの違いがあってもいいような気がいたしております。  この地域重視ということに対しての農水省考え方、御答弁をお願いしたいと思います。
  16. 高木賢

    高木(賢)政府委員 農業が自然の影響を大きく受けるということで、その地域地域の立地条件に影響されるところが大きいということはまことに御指摘のとおりだと思います。それから、諸外国からの輸入の問題、こういうものに対処する上でも、各地域地域地域農業の力をつけていくということは非常に重要なことだと思います。  そういった意味で、地域農業の実情を踏まえまして、農業者の自主性と創意工夫というものが十分に発揮されるような、こういう方向農政としても目指さなければならないというふうに私ども考えております。  ただ、その場合、全国的な需給の調整とか、そういった全国的な視点から取り組まなければならない課題も一方にあることも事実でございます。どこかある地域で穴があくということになると全国的に需給を乱すということになってもいけませんので、そういった全国的な統一性を確保するといった施策は、これは全体的にやらなければいけないというふうに思いますが、そういった中でも地域地域の特性が生かされるような工夫をしていきたい、このように考えております。
  17. 木村太郎

    木村(太)委員 時間が限られておりますので、今まで御答弁、また主張させてもらったことをもってして、職業として選択できる農業、そしてそれが就農促進担い手確保につながっていくという思いでぜひ一層の努力をお願いしたいと思います。  大変残りの時間が短くなりましたが、せっかくの機会ですので、大臣初め農林水産省に確認したいのです。今まで議論してきたこととは全く違うことです。  実は、政府一体となって取り組むということでありますが、昨今の日本の景気動向、これによって我が国農林水産業に対してどういう影響があると受けとめているか、御答弁をお願いしたいと思います。  というのは、先ほど言いましたが、私の地元の例で言えば、リンゴの値段がこの二十年間で一番低い水準で推移しています。ミカンなんかでは出荷を停止している、こういうことも聞いております。この認識、御答弁をお願いしたいと思います。
  18. 堤英隆

    堤政府委員 現下の経済動向のもとにおきまして、家計あるいは企業の景況感の厳しさというものが個人消費支出等に非常に影響を及ぼしているということでございまして、さらに、その中におきまして、食料品につきましてもさまざまな影響が出ているという認識をいたしております。米類あるいは肉類、それから魚介類、外食等々につきまして、食料費の支出が相当な割合で落ちているというふうに私どもも理解をいたしております。  と同時に、こういったことの影響を受けまして、農産物生産者価格につきましても、品目別に見て相当な落ち込みがございます。米につきまして八・八%、果実が非常に、豊作等の影響ももちろんございますけれども、六〇%下落。それから、今おっしゃいましたリンゴにつきましても、主要品種であります「ふじ」、「つがる」がそれぞれ三〇%ないし一七%落ちているというふうに私ども認識をいたしております。肉類につきましても下落をしているという状況でございます。もちろんこれは、単に経済動向だけでなしに基本的に豊作ということもございまして、それが重なった形で農産物生産者価格に影響してきているというふうに認識すべきだというふうに思っております。  こういった状況の中で、粗収益が減少するということと農業経営費が逆に増加するということの中におきまして、農業所得につきましても対前年同期比で見ましても相当落ちているというふうに理解をいたしております。私どもは、そういった今の経済の状況農業あるいは農業経営にどういう影響を与えているかということについて的確な状況をつかみながら、今後また対応していかなければならないというふうに認識をいたしております。
  19. 木村太郎

    木村(太)委員 時間が来ましたので終わりますが、私は今の御答弁以上に厳しい見方を持っております。具体的な数字があっての答弁でありましたけれども、それ以上の、値段等にもいろいろな面で影響が出ていると私は思っていますので、確かに、影響があるということは否定できないと思います。ぜひ大臣、内閣の中においても、農林水産業に対してもこういう影響があるからということでしっかりと景気対策を進めるように、農林大臣の活躍に期待して、質問を終わります。  ありがとうございました。
  20. 北村直人

    北村委員長 次に、一川保夫君。
  21. 一川保夫

    ○一川委員 自由党の一川保夫でございます。  いよいよこの三法に対する質疑も大詰めを迎えてまいりまして、これまでいろいろな質問が相当重複しがちでございます。私が事前に通告いたしました中身が若干ずれるところもあるかもしれませんけれども、そのあたり、大臣並びに政府委員皆さん方、常日ごろいろいろな勉強をされていらっしゃいますので、そういう見解でまた御答弁をお願い申し上げたい、そのように思います。  まず最初に、今回、俗に暫定法と称します災害復旧事業の農林水産業施設関連の法律の一部改正ということに関連しまして御質問をさせていただきたいと思います。  この法律は、御案内のとおり、相当古い法律でございまして、戦後間もないころにこの法律制定されてから、なぜか知らないですけれども暫定法という名前のままで今日までずっと来ているわけでございますが、その間、いろいろな経済社会情勢の変化なり、また農業なり農村を取り巻くいろいろな状況の変化に合わせながら、この法律も一部改正が繰り返されてきたというふうに私は思います。  それが今回、十四年ぶりだったと思いますけれども、一部改正をされる。改正の中身そのものは非常に単純な中身だというふうに思いますけれども、現時点で、この法律の果たしてきた役割、そういった評価について、基本的にどういう見解をお持ちなのか、そのあたりをまずお聞かせ願いたい、そのように思います。
  22. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  構造改善局で敏腕を振るわれた委員のことでございますから、むしろ答弁はそちらがなさった方がより的確なのかもしれませんが、少なくも我が 国は、アジア・モンスーン地域に位置をいたしまして、地形が急峻であり、気象あるいは地理的な条件からいきましても、災害が起きやすいという状況下にあるわけでございます。  このため、重要な農業生産基盤である農地やあるいは農道、農業用水路のような農業施設などへの災害は毎年多大な額に上っているわけであります。それがそのまま農林水産業にいろいろな影響をもたらしていることも事実でございます。  また、農地農業施設は国土保全等の多面的な機能を有しておりまして、この機能を維持するためにも迅速な対応が求められるわけであります。  そういう意味で、この災害復旧暫定法は、昭和二十五年に制定されて以来、国庫補助の制度を通じ災害復旧を円滑に推進し、農林水産業経営農村の安定を図る上で少なくも今まで大変大きな役割を果たしてきている、そう認識しているところでございます。
  23. 一川保夫

    ○一川委員 若干具体的な質問をさせていただきたいと思います。  私自身農村地域に住まいをしている人間の一人でございますけれども農業用のいろいろな施設の中でも、かつていろいろな面で役割を果たしてきた施設の中にため池という施設がございます。このため池という施設は、第一の目的は、農業用水を確保するということでつくられたものであることは当然でございますけれども、しかし、その地域のいろいろな水辺環境という観点からも重要な役割を果たしていると思いますし、また集中豪雨的なものがあった場合でも、それなりの貯留能力というものは持っておりますから、いろいろな面で国土保全等に果たしてきた役割も相当大きいと思うのです。  それが最近農村地域で、米の過剰現象を背景にして、農業用水そのものが全体として少し減ってきているということも当然言えますし、それからまた水田の転作または休耕的なもの、生産調整的なものがふえてきておりますので、どうしてもため池という施設に対する維持管理、そういうものに従来ほど熱心に取り組んできていないような、そういう機運がだんだん薄らいできているというふうに感ずるわけです。  そうしますと、やはりため池というものは、御案内のとおり、ある一定の量以上のものが、雨が降ったり何かしますと、オーバーフローしまして決壊をするという危険性を十分はらんでいるわけでして、その下流には、それぞれの地域で異なるとは思いますけれども、若干の平野部また農村地帯が広がっているわけでございまして、ため池が決壊すれば、相当の被害が及ぶことは間違いないわけです。  一方、そういったため池の施設の現状そのものが、非常に管理がおろそかになってきているということもございますので、まずため池というものの実態といいますか、全国的に今どういうふうな状況になっているかというところが、もしわかりましたら、ちょっと御説明を願いたいと思うのです。
  24. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先生御指摘農業用のため池の賦存の状況でございますけれども、東京にはこのため池はほとんど存在しないようでございますけれども、北海道から沖縄に至るまで、全国津々浦々に農業用水の確保のためのため池は存在いたしておりまして、全国、箇所数で二十一万のため池が存在いたしております。  このため池、大体三分の二は江戸時代以前に築造されたものでございまして、時代の変化とともに老朽化、あるいは一部、先生も御指摘のように、農業事情の変化、あるいは都市化の進展等々で十分に整備されずに危険になっているものも多いわけでございます。平成元年度の調査によりますと、老朽化し危険なため池、受益面積二ヘクタール以上、これは県営のため池の整備事業の対象となるものについて調査いたした資料がございますけれども、約六万九千のうちで二万三千、したがって約三分の一が老朽化して危険なため池であるという調査結果がございます。  平成九年度、今年度もまた新しくため池の状況調査をいたしているところでございます。
  25. 一川保夫

    ○一川委員 今ほどの御説明のように、ため池そのものが非常に老朽化してきて、ある面では危険性をはらんだそういう施設が全国に相当ふえてきているというのが実態であろうというふうに思います。  特に、私の記憶でも、関西方面等々では、こういったため池が非常に多い場所があるわけですし、しかもそういった周辺が最近宅地化が進んできているということでもございまして、かつての農村地帯の風景とは全然違うのかもしれません。ため池そのものの果たす役割も、そういった住宅化された周辺では、またその持つ意味合いも違ってくるかもしれませんけれども、ただしかし、こういう施設が万一決壊した場合に及ぼす影響というのはますます大きくなる可能性を秘めているというふうに考えるわけです。  そういった場合に、この災害復旧制度そのものは、従来から、割といろいろな制度の中でも手厚く、関係者に余り負担をかけないという面で制度が成り立ってきているというふうに思いますけれども、昨今のこういった農業情勢が非常に厳しい状況の中にあって、しかも最近の一般の事業、例えば農業農村整備事業と称する一般の事業で整備されてきている農業用の施設というのは相当大規模になってきていると思うのですね。施設そのものも当然ながら機能がアップしておりますので、一たんそれが被災した場合に、その及ぼす影響というのは、従来、昔からある施設に比べるとはるかに被害が大きくなる危険性をはらんでいるというふうに思いますし、また関係する範囲も広くなる可能性も当然あるわけです。  また、農村地帯には、農業に従事する方だけではなくて、それ以外の産業に従事する方々等を含めて、農家なり農業従事者以外の方々農村地域にたくさん住まいをしているわけでございまして、こういった農業施設の被災によって影響を受ける方々というのは非常に不特定多数の方々に及ぶ可能性というのは十分あるわけです。  そういうことを考えた場合に、こういった農業施設の災害復旧制度の中での受益者の負担制度というのは、ある面ではもう一回見直しをかけて、基本的には余り関係者に直接負担を課さないような方向へ持っていくべきじゃないかなというふうに私は思うわけですけれども、何かそういったことに対する見解がございましたら、御答弁をお願いしたいと思うのです。
  26. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 先生御指摘のとおり、水利施設を初め農業関係の施設は、規模が大きくなっているのも事実でございまして、まず何よりも災害を未然に防止するために、これらの施設の建設に当たっては安全性を十分見込んで設計し、建設することが重要でございまして、こういった点については、私ども十分に配慮して事業に取り組んでいるところでございます。  また、不幸にして災害が発生した場合に、災害復旧事業について、その施設の規模が大きいこと、また、非常に混住化が進んで、受益が農家以外の方々にも及んでいる場合も多くなっているというようなことを考えますと、農家負担はできるだけ軽減するのが適当であるという御指摘でございます。  私どもも、この農家負担の軽減については、災害復旧事業、これまで努力してきたところでございまして、農地についても国の補助率がおおむね八五%前後、それから、農道等の農業施設については九五%前後が国の補助率でございまして、残りの負担部分についても、多くの市町村で、特に受益者が非常に多数にわたります農業施設については、その全部を市町村が負担されるようなところも多く見られるところでございます。また、これらの市町村の負担部分につきましては、地方財政措置も充実されているところでございます。  しかしながら、全く受益者負担をなくするのが適当かどうかということでございますけれども、これは、このような農業施設の利用によって農業経営を行っておられる受益者である農家という のは特定しているわけでございますので、できるだけ受益者の負担を軽減するとしても、受益の関係が明確にしているという限度においては農家にも一定の範囲で御負担いだだくのが、これまでの受益の関係、またこれからの施設の責任を持った維持管理、また効率的な利用を図るという観点からも適当であると考えております。
  27. 一川保夫

    ○一川委員 今ほどのお話はおおよそ理解できるわけですけれども、我々、農山村に出かけながらいろいろ実態を見ておりますと、最近の米余り現象から、農村地域でも、条件の悪いところになればなるほど水田の作付面積というのは当然減ってきておるわけです。それ以外の農地というのはある程度荒れつつあるわけですけれども。  そういった、農村地域でも、山間部に近づけば近づくほど水田を作付けする面積が減少してきておるわけですけれども、その奥地にため池というのは位置しているわけです。  例えば、そのため池がちょっと災害を受けて、それを改修しようとした場合でも、当然受益者負担というのはかかってくるわけでございまして、従来は例えば関係者百戸でそのため池を管理していたものが、現状では二十戸、三十戸でそれを管理せざるを得ないというような実態があるわけですね。そうすると、戸当たりの負担ということになれば、当然だんだん大きくなってきているというのは間違いないわけでございまして、そんなに負担金がかかるのであればもう復旧しないで、そのまま放置状態で残してしまうというようなことも中にはあるわけです。  こういったことは非常に、例えばため池というような施設を取り上げてみましても、農村地域では大変重要な農村の資産だと私は思います。そういうものに対する支援施策をしっかりと心がけていただくということが、これからの農業なり農村というものをしっかりと力強いものにしていくためにも非常に大切なことではないかなと考えますので、この災害復旧制度というものを見直すに当たりまして、一般の事業も当然そうだと思いますけれども、特にこの災害復旧という制度の中では、直接そういった農家方々に余り大きな負担がかからないような仕組みというものを、いろいろな時代の流れに応じてしっかりと考えていただくということが非常に大切なことだろうというふうに思いますので、ぜひ御配慮をお願い申し上げたいと思っております。  それから、これも最近の農政のいろいろな動きに連動するわけですけれども、そんなに大きな平野部でなくても、大きな災害を受けた場合に、ある程度まとまった面積の農地が被害を受けるということも時々あるわけです。  そうした場合に、今現在、生産調整で水田として使わない、稲をつくらない面積というのは、もう三割、四割、五割と、場所によってはだんだんふえてきているわけですね。そうした場合に、もともと被災前は当然水田であったのだろうと思いますけれども、不幸にして災害を受けた場合に、ではそれを一〇〇%もとの水田として復旧するかどうか。  それは災害復旧制度の原則からすれば、原形復旧ということですから、もとの姿に戻すということなのでしょうけれども、しかし、その地域の関係者の皆さん方のいろいろな意向なり合意でもって、その地域の土地利用というものを災害を受けた後はこういう方向に持っていきたいという一つ方向づけがあれば、そういう土地利用に即した復旧の仕方というのは当然考えられるべきだというふうに思います。そうすることが、ただ単純にもとの水田に戻すということではなくて、また、もとの水田に戻せば当然ながら生産調整の対象になり得るわけでして、米をつくりたくても米をつくれないという状況をつくり出すわけです。  そういうことを考えれば、災害を受けること自体は非常に不幸なことなのですけれども、それを復旧する場合に、ただ単純に原形復旧ということではなくて、先ほど言いましたような観点で、その地域振興に役立つような、そういう考え方での復旧というのはありていいと思います。そのあたりの考え方基本的にどういうふうにお考えでしょうか、お聞かせ願いたいと思います。
  28. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 災害復旧という国の制度は、暫定法及び予算によって実施しているわけでございますけれども、復旧事業の国の補助が八五%から九五%、あるいはそれを超えるような極めて高い補助率で実施いたしておりますのは、これは、災害から一日も早く復旧し立ち直っていただいて、農業経営と、また地域農村生活の安定を図るという趣旨のものでございますので、この災害復旧という制度に限って見ますと、これは原状に復旧するという範囲のものに限らざるを得ないと思っております。  しかし、災害を受けた機会に、その地域をまた新しい用途に利用すべく整備をしたいというお考えの場合には、農村総合整備とか中山間の整備等々、さまざまな公共、非公共の事業も用意されているところでございますので、そういった事業によって、例えば先ほど御指摘のあったため池でございますけれども地域のそういった跡地を利用して農村公園にするとか、あるいはこれを宅地にする。宅地にする場合には、住環境整備ということで、圃場整備を行いながら三割までは非農地が生み出せる制度があるわけでございますが、こういったさまざまな事業を地域で御検討、御活用いただきまして、災害を機会に、農業用の施設あるいは農地地域振興にとって役立つような施設整備は可能でございますので、私どもとしては、そういった地域の御計画にはさまざまな農業農村整備で用意されております事業をもって御支援申し上げたいと思っております。
  29. 一川保夫

    ○一川委員 今の御答弁は、現行制度ということを基礎に置けば当然そういうお考え方が成り立つわけです。現行制度制度として当然尊重しなければならぬと思いますけれども、これからのあり方としましては、最近の地域社会のいろいろな変貌なり、また農業を取り巻くいろいろな情勢の変化というものに合わせながら、あらゆる制度というものをしっかりと見直すときには見直しをかけていく、そういう考え方というのは非常に大切だろうというふうに思っております。  確かに、一般のいろいろな施策と組み合わせをして物事をやっていくということも当然必要なわけですけれども、災害復旧という制度そのものも、時代の変化に応じて、見直すときには見直していくということの問題意識も私は当然持つべきじゃないかなというふうに思います。  今回の改正の要点が、例えば一カ所当たりの採択下限値を引き上げるとか一カ所扱いの範囲を広げるという、ごく単純な改正にとどまっております。これはこれとして現状ではやむを得ないとしたとしましても、ただ、こういう改正も何年かたてばまた上げていくという、余り短絡的にこういうものを変えていくというのもちょっとおかしいなという感じは私もするわけでして、やはり一つ施設のまとまりとか、今まで災害を受けたいろいろな実績というものをしっかりと分析する中で、被災する一カ所当たりの規模というのはおよそ過去の実績からすればだんだん決まってくると思いますので、そういう中で、そういうものが落ちこぼれしないような制度というものをしっかり配慮していく必要があるだろうというふうに思いますので、そのあたりはよろしくお願いをしておきたい、そのように思います。  この法案に関して、最後にちょっと大臣に決意を含めてお伺いしたいわけですけれども、先ほど来いろいろお話ししていますように、農業なり農村を取り巻く状況というのは当然ながらいろいろと変化してきております。そういう中にあって、こういう災害復旧事業制度というものは今後どういうふうにあるべきかということも含めて、農林水産大臣としての御決意をお聞かせ願いたい、そのように思います。
  30. 島村宜伸

    島村国務大臣 今日さまざまな課題を抱える我が国農業農村におきまして、適切な災害対策の実施は農業経営の安定と希望の持てる農村づくりを図る上で欠かすことのできない案件であります。このためには、まず災害の未然防止を図るこ とが必要でありますが、農林水産業の基盤整備事業により災害に強い国土づくりに取り組んでいくのが基本である、こう考えます。  また、不幸にして災害が発生した場合につきましては当然早期復旧が重要でありまして、迅速な査定と災害復旧事業の実施を基本に、被災地域に対する災害復旧に関する専門家の派遣、あるいは災害事務の簡素化のさらなる推進、市町村の事務処理に対する助成の拡充などを我々は行うことといたしております。  ただ、ついせんだっての経験でございますが、山梨の豪雪がございまして、一回目の雪というのはもう測候所始まって以来ということだったのですが、恐らくこれで終わりであろうと思ったらまた重ねて来た。すると、その一回の部分にまた次の部分が重なりまして、その荷重に耐えられず大変な太いパイプがひん曲がって壊れるという結果になりました。ところが、ずるずると見送って、雪が解ける段階の復旧作業に国に力をかせというところで実はちょっと壁に当たりまして、山梨県側でも非常に即時に適切な対応をしておったために、国の災害復旧の対応がいわば必要なくなってしまったというのはおかしいのですけれども、ある意味では災害復旧がもうかなり軌道に乗っていたということで、実は我々はお手伝いをしようという姿勢は十分評価していただいたのですが、今回は県側で対応できたというような事態もありました。  こういう経験のない災害に対する対応その他を含めて、こういう経験を生かしてこれからの災害復旧に努めたい、こんなふうに考えております。
  31. 一川保夫

    ○一川委員 今大臣のお答えになったことはごもっともでございますけれども、最近、農業施設といいますか、農業にかかわるような施設というものも従来と違いまして非常に種類がふえてきております。今、建設省関係の負担法の世界では都市公園も対象にするというような改正を持ち込んでおるというふうに聞いておりますけれども、従来からそういった農村整備的ないろいろな施設というものも、単純に言えば農業施設とか、農地の災害のほかに、いろいろな施設というかそういうものがふえてきておるはずでございますので、そういうものも当然これから災害が起こり得る可能性を秘めております。一部そういうものも対応できるような制度改正されてきているとは思いますけれども農業なり農村地域にかかわるいろいろなそういう施設に対しても十分対応できるように、災害復旧制度というものを常に点検をしながら完備していただきたい、そのように最後にお願いを申し上げまして、この法律に対する質問はそれで終わらせていただきたい、そのように思っております。  では次に、青年就農促進のための法案ということについての質問をさせていただきます。この法律に関連しましてこの委員会でもいろいろな質問が相当出ましたので、若干重複する点もあろうかと思いますけれども、確認と整理という面でひとつ御答弁をお願い申し上げたいと思います。  まず、私は、今回この法律そのものを改正するということに対して、やむを得ないといえばやむを得ないのですけれども、ただしかし、ガット・ウルグアイ・ラウンド対策で物事が動き出したときに、平成七年ですか、そのころにこの法律制度がスタートしたというふうに聞いておりますけれども、その時点である程度今日の状況が予測できたのではないかというふうに思います。  といいますのは、ここに農林水産省の平成八年度版の農業白書がございますけれども、こういうものを見ておりましても、農業労働者のいろいろな動向とか農業構造の変化みたいなものが割とこういうものの中にも細かく分析されていると私は思うのです。それは単なる過去の分析だけじゃなくて、そのトレンドからすれば近い将来もこういう方向でいくだろうというようなことが当然ながら予測できるわけですね。  そういうことをいろいろ考えますと、この法律改正せざるを得ないというか何らかの手当てをせざるを得ないということは理解できるわけですけれども、なぜこの制度制定当時こういうことがある程度予測できなかったのかなということがまず考えられます。そういうことも含めて、今日までこの制度が二年余りの間に果たしてきた役割といいますか、そういうことについての評価をちょっとお聞かせ願いたいと思うのです。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  32. 高木賢

    高木(賢)政府委員 青年就農促進法が果たしてきた役割についての評価というお尋ねでございます。  農業からリタイアする人が昭和一けた世代を中心に逐次増加をしていくということがかなり前から予測されていたのは事実でございます。特にいわゆる新政策を策定し発表した際には、その昭和一けた世代のリタイアを契機に、若くて意欲があるそういう方々中心的に担ってもらおうという考え方が色濃く出てきたと思います。そうした流れに立ってガット・ウルグアイ・ラウンドという事態に遭遇いたしまして、それに対する対応策が必要になった、そういうときにまさに青年就農促進ということを現実の制度化したというのが経過であろうと思います。  その結果、平成二年に四千三百人ということで非常に少なくなった青年新規就農者数が、平成八年に八千五百人とほぼ倍増になるまでに来ました。これはやはりこの法律制定の効果がそれなりにあったというふうに思います。やはり法律に基づく制度ができたということは国の意思の表明でありますから、天下にその方針が宣言され確定した、こういうことでございますし、まさに四十七の都道府県におきまして青年に対する就農の支援体制が確立されました。県の方、市町村の方、関係機関の方、そういった方々がこれに取り組むという体制ができたわけでございます。  それから、それに基づきます現実の運営といたしましても、認定就農者の数あるいは就農支援資金の貸付実績、これも着実に伸びております。そういう母集団の増大を背景にいたしまして、先ほど申し上げたように、現実の就農者がふえてきているというふうに理解をいたしております。また、それを裏づけるように、センターにおきます相談活動も年々活発化しております。そういう実態にございます。  ただ一方、最近の就農希望者の動向を見ますと、ある一定の年齢で機械的に区切るということが必ずしも適当でない実態が出てまいっております。各種の就農に関する雑誌とか本というのが今かなりの量が出版されておりますし、また、その発行部数といいますか購入部数も相当伸びているというふうに本屋さんサイドの情報で聞いております。  そういう中で、現在の青年、三十九歳以下ということでございますけれども、そこではっさり就農促進対象者とそうでない方を区切るというのが甚だ実態上見てどうか。そしてまた、意欲等あり、能力のある方々就農するということであれば、必ずしも年齢を限らなくていいのではないかということは、各都道府県の例えば県単での助成の措置とか市町村におきます市町村単独の助成措置などを見ましても出てまいっております。  そういった意味合いで、国としても、この際、青年だけでなくて、もちろん青年に引き続き力を入れるのは当然でございますが、農業にっこうという意欲希望を持っている方につきましては広く支援をしていこうという趣旨で、今回の就農促進法の改正の御審議をお願いしているわけでございます。やはり経営体育成とそれを裏づける人材の育成ということは極めて大事でありまして、幅広い観点からこれを推進していこう、こう考えている次第でございます。
  33. 一川保夫

    ○一川委員 現状認識としまして、そういう幅広い人を対象にしながら農業担い手をいろいろとふやしていきたいという施策は私も理解できるのです。ただ、平成七年当時、こういう制度をスタートする時点で、そういうことがある程度予測できたはずだというふうに思うわけですね。  といいますのは、こういった白書にも書いてございますように、昭和一けた台ですか、こういっ た高齢者の方々が相当農業に戻ってきているというような現象も当然あったわけでございますし、また、そういう方々もそれなりに問題意識を持って農業に飛び込んできているわけでございます。それをあえて当時、青年層に限ってこういう制度をつくって、まあ若い人たち農業に引っ張ろうとする気持ちは当然わかるのですけれども、なぜ当時青年層に着目をしてあえてこういう制度をスタートさせたかというところの理由がもうちょっとはっきりしないのです。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  34. 高木賢

    高木(賢)政府委員 先ほど、平成二年におきまして青年四千三百人の新規就農者ということを申し上げましたが、実は、その内訳を見ますと、学校を出て新たに就農する方が千八百人ということでございました。それで、いわゆる千八百人ショックというものが私ども政策担当者の方にも非常に響きまして、青年を何とかしなければいかぬぞということがまず第一の喫緊の問題意識として頭の中に生じたというのが率直な対応だったと思います。  まずそこを突破口にしていこうということで、無利子で、例えば中山間地域ですと償還期間が二十年という、私どもとしては大変思い切った措置というふうに当時考えておりましたが、その実現にまず全力を挙げたということでございます。
  35. 一川保夫

    ○一川委員 そういうことをちょっと振り返っていろいろ考えますと、今回、こういうふうに中高年齢層まで対象を一気に広げてしまうという施策は、単純に見ますと、従来、農林水産省担い手施策としてある程度若手に焦点を当てて施策を展開してきた一つの施策の方向を軌道修正した、転換したというふうに受け取れる面もあるわけです。  これはある面では非常に重要な問題をはらんでいると思うのです。従来は、農業従事者の質に割と着目して、若い、これから意欲のある、可能性を秘めた人間に農業に従事してほしいということで、若い層に焦点を当てたと思うのですけれども、どうもそれは絶対量を確保するのはなかなか難しいということで、要するに質よりも量がいいというような観点にだんだん担い手施策を軌道修正しているのじゃないかなというふうに私自身は受け取れるのです。そのあたりいかがですか。
  36. 高木賢

    高木(賢)政府委員 御指摘のとおり、これまで青年に相当力を入れてきたことは事実であります。それは、これからの近代的な農業経営を担うという点を考えまして、将来性のある人材確保ということが大事だという認識でまいったことは事実でありますし、また、この考え方は今後とも基本的に変わるものではないというふうに思っております。  ただ、中高年齢者ということでありますが、これは単に、年齢は確かに青年よりは上ではありますけれども、逆に言えば、中高年齢に達するまでの間に、まさにさまざまな社会的、経済的な経験を積んでおられます。その点は、若い方と遜色のない、別の意味での知識や経験、技能を積んでおられるわけでありまして、そういった方々就農ということは、日本農業にとりまして別の意味で質的強化に役立つ。我々がずっと推進してまいりました、御指摘のありました経営体育成発展とか人材の育成、こういう点から見ますと、これはこれで非常に意味のあることではないかというふうに思っているわけでございます。いわば担い手のウイングを広げたということでございまして、単純な量というだけでなく、質の充実という点でも重要ではないかと思います。  引き続き青年につきましても力を入れていきますし、また、我々の取り組む発想としても、青年か中高年かという狭いある種の範囲があってその中でとり合うというよりは、幅広く、むしろ担い手の範囲を広げるといいますか質的な充実を図るということを、量の問題はもちろんありますけれども、あわせて考えていきたいというふうに考えているわけでございます。
  37. 一川保夫

    ○一川委員 私は、個人的には、農業という産業は別に若い人にそうこだわる必要もないというのが私の持論です。  確かに、農村地域には高齢化が当然顕在化してきております。そういう面で、もう余り施策にコストをかけないで、しかもその地域に割となじんだ皆さん方にしっかりと農業に従事してもらっていろいろな経験を生かしてもらうという面、あるいは体力的にも、今はいろいろな機械が進んでいるということも含めて、また農村のいろいろな基盤はもう整備されてきているということからすれば、ほかの産業に比べれば、高齢者の方々でも農業というものに従事してそれなりに生きがいを感じてしっかりと取り組める、そういう職業ではないかなという感じを私自身は持っております。したがって、今回、こういった制度改正でもってそういう方々に対象範囲を広げていただくということは、私はある面ではいいことだというふうに思います。  ただしかし、農林省の施策全体というものを眺めた場合に、こういった改正と現在のいろいろな施策が整合性がとれているかといったときに、若干疑問を感じるわけです。  といいますのは、当然ながら、農林省の今の施策は、基本的には農業生産のコストを下げていくということに相当焦点を当てた施策が展開されております。そうすれば、例えば圃場にしてもできるだけ大規模なものをつくろうというものを今志向しているのは間違いないわけでございますし、また、大型の機械を導入しようということで志向していることも間違いないわけです。また、いろいろな面で農業というものの効率を上げようということで、いろいろな施策を展開していることも間違いないと思うのです。  そういう、非常に大規模化とかあるいは効率化ということで、農業そのものをもっと効率のいいものにしていこうというような一般の施策が片や動いていて、一方である程度高齢者も対象にするという施策が動き出すというのは、ある面ではちょっと整合性が欠けているかなという感じがするのです。そういった、高齢者を農業就業者として新規に受け入れていくというような施策を動かすのであれば、ほかの施策についてもやはり若干そういう配慮というものを常にしていかないとまずいのではないかなという感じがするわけですけれども、そのあたりいかがでしょうか。
  38. 高木賢

    高木(賢)政府委員 我が国農政基本方向が、担い手の問題につきましては、経営感覚にすぐれた、効率的、安定的な経営体育成するということと、これらの経営体が大宗を担う農業構造の改善を図るという目的で実施されてきたことは御指摘のとおりでございます。  その場合に、大規模な経営体といいますか、経営感覚にすぐれた経営体ということになりますと、当然、それを担う人材といたしましては、経営管理とかマーケティングとか、こういった能力、資質を持った方が担い手として経営をしていただくということが、経営体の内実として必要になるというふうに考えております。  これまで青年に重点を置いてまいりましたのは、青年は当然可塑性に富むということで、今はそういう能力は必ずしも十分でなくても、経験を積んでいけばなるであろうという、いわば予定調和的な位置づけもありまして、青年就農促進ということを重点的にやってきたわけでありますけれども、先ほど来御指摘もございますが、量の問題が一つあるということと、逆に、中高年の方でも、他産業で鍛えたそういう知識、経験をお持ちの方で就農希望している方がおられる、こういう実態をむしろ農業のサイドとして積極的に、活用と言っては失礼ですが、お力をかりるということも、地域農業振興とか農業経営の体質強化を図る上で有効ではないかというふうに考えたわけでございます。  そういう意味で、今回の貸付対象となる中高年齢者ですけれども、他産業従事で得たマーケティングとか経営管理とか、こういった知識や技能を農業経営に生かすことが期待できる人、こういうことを想定しておりまして、実務的な話になりますが、そういう意欲と能力を持った方を、県知事 が就農計画を認定してその支援を図る、こういうシステムで運営したいと考えているわけでございます。
  39. 一川保夫

    ○一川委員 今、農水省のいろいろな施策の中で、こういった農業担い手と称する人材を確保しようとする施策というのは、何か幾つもあるような気がするのですね。今回は、確かに、こういうことで従来の青年層の年齢を広げて資金的にいろいろ手当てしていこうということなんですけれども、そのほかにも、要するに名前を見ただけでも、人材確保に関するような政策が結構あるような気がするわけです。  私が若干記憶しておる中では、農業人材確保育成総合対策というようなものがあったような気がするのですけれども、まさしくこれを読む限りでは、今法律改正議論しているこういう制度と、考え方としては非常に似通ったところがあるわけです。こういう、農林省が今現在動かしているいろいろな担い手対策なり人材確保なり、いろいろな対策と今回のこの法改正というものがどういうふうに連携をされていくのか、そこのところをちょっとお聞かせ願いたいと思います。
  40. 高木賢

    高木(賢)政府委員 新規就農者に対する支援対策としては、これまでアプローチの仕方が、技術や資金の面から大いに支援していこうというアプローチと、農地確保という農地の方からのアプローチと、二つの大きな流れがあったというふうに思います。  今御指摘の、農業人材確保育成総合対策事業という、名前が非常に包括的で、何から何までこの事業でやるような名前になっておりますけれども、これは実は、実質的には、農業委員会の系統組織であります都道府県の農業会議とか全国農業会議所が、農業委員会の持っている情報などを活用いたしまして、農地に関する情報を集積する、そしてまた、農地の取得に関する就農相談活動をする、こういう農地の取得という面での取り組みということに比較的特化した形で進めております。それは、農業委員会系統組織ということで、いわばもちはもち屋というような考え方で推進しているわけでございます。  一方、この青年就農促進法に基づきます仕組みは、青年農業者育成センターというのを各県で一つずつつくるということで、これは、いわば人に着目いたしまして、技術の習得とか経営能力の取得とか、こういう人の育成過程に着目して、それに応じた就農支援資金の貸し付けを行うとか、改良センターとの連携をとって技術の習得を進める、あるいはもうちょっと進みますと、大学校でもう一度、生涯学習的な意味合いでその時々の研修をするとか、そういった、初期の段階から農業経営が定着して発展するまでの間、ずっとその育成過程に応じての支援業務を行う、こういうことにしております。  その二つが現実問題としてあるわけですが、まさに就農を効果的に推進していくためには、これらの関係機関、団体相互間の連携協力というものの重要性が非常にあるわけでありまして、実はこの青年就農促進法におきましても、各県の就農促進方針、これは法の第三条二項三号で定めるということになっているのですが、就農支援業務を行う各関係機関、これの連携を図るべき旨が規定されておりますし、また、情報交換をいたしまして、青年就農促進という目的に沿って相互に協力せよという規定も二十四条にあるわけでございまして、それぞれの特徴、特質を生かしながら、大目的としては、新規就農者の営農の安定ということを目指して取り組むということで対処していきたいと考えております。
  41. 一川保夫

    ○一川委員 そういったいろいろな制度が一般の関係者の方々なり農家皆さん方にもわかりやすいような形に、やはりいろいろな制度を整理しながら説明していくということを心がけないと、せっかくいろいろな制度を用意してもなかなか使いこなしていただけないということにもなりますので、そのあたりの配慮方をよろしくお願いを申し上げたいと思っております。  私は、今回、この特認ですか、それに六十五歳までというような、逆に年齢制限を設けた格好になっておりますけれども、逆に言うと、こういうものは余り設けない方がよろしいのではないかと、個人的にはそう思います。  御存じのとおり、それぞれ年をとってからの体力なりいろいろな思考力というのは、もう個人によって相当大差がございますので、一律に六十五歳で線引きするというのは、私はある面ではちょっと問題を残すなというふうに思います。そういう面では、今農村地域というのは、場所によっては相当高齢化が進んできておりますし、また、過疎化も進んできております。逆に言えば、高齢者の方々にそういう場所で生きがいを感じていただくという面では、そういう方々にもある程度配慮したような制度が動き出すということはその人たちを非常に元気づけることにもなりますので、余り画一的な形でいろいろな制度を用意しない方がよろしいのではないかというふうに思っております。  最後に、農林水産大臣に、決意を含めて御見解をお伺いしたいと思いますけれども、最近の農林省のいろいろな施策の中でも、中山間地域対策ということがよく言われております。今回こういった中高年齢者向けにいろいろな制度が動き出すということであれば、こういった中山間地域農業というのは、常にコストを下げていくという効率を目指す平地部の農業に比べて、基本的にはやはり自然条件、その特性を生かす中で農業というものを展開する必要がある。そういうことになれば、当然、自然環境に配慮したような、今でいう環境保全型農業ですか、そういう方向とか、高付加価値的な農産物を生産していくということも含めて、やはりそういった中山間地域農業というのは非常に大切なわけでございます。  そういう中でこういう中高年齢者方々がしっかりと位置づけをされていろいろと能力を発揮していただくというのは、今後の中山間地農業というものを考えた場合に、これは新規就農者だけではないのですけれども、高齢者の方々、一般も含めて、そういう皆さん方をこれからのそういう農業体系の中にしっかりと位置づけをしながら働いていただくということが非常に大切なことだろうというふうに私は思っております。  特に青年層の話も先ほど来出ておりましたけれども、常々大臣もおっしゃっておりますが、私の感じでは、やはりこれからの農業従事者、担い手というのは、国民全体から農業というものがしつかりとサポートされている、また農政という施策がしっかりと国民合意の中で物事が進んでいるということがある程度わかってくれば、所得が多少低くても農業に生きがいを感じてしっかりと働いていただけるというふうに私は思います。  そういう面では、農林水産大臣は東京御出身だということで、私もかねてからお願いしましたけれども農業に直接かかわりのない層の皆さん方とか、その地域方々にこういう施策をしっかりと理解していただくということが担い手確保していく上で非常に大事なことだというふうに思いますので、そういう面も含めて、最後に大臣の御見解を伺いたい、そのように思います。
  42. 島村宜伸

    島村国務大臣 我が国農山漁村のいわば高齢化担い手の減少というのはある意味で共通した傾向でございますが、特に顕著なのがまさに中山間地域でございまして、我が国の場合には、農業のうち約四割がその中山間地域に該当すると承知しております。  そういう意味で、今委員がお話しになったように、確かに、農業というのは年齢で云々するよりは、むしろ自然に親しみながら農業というものをやっていく場合には、意欲さえあれば、そう大きな進展はないにしても、非常に安定的な、しかも健康にもいい就労の場でもある。これらについて我々が十分配慮をめぐらすことでこれからの中山間地域の維持というものを図っていくことは、まさに農業の持つ多面的機能というものを確保するためにも、全国の総合的な、公平な開発を進める上でも非常に重要だと私は思います。  そういう意味で、この青年就農促進法の改正に ついて説明を受けた際にも、何で六十五歳で切るのかと。六十五歳はおろか七十五歳でもぴんぴんしているのは結構おるぞ、現に七十歳以上はもう古希にあらず、一千二百四十六万人ですか、東京都民より多い数を擁して、十分使える、こき使える古希だと私は言っているので、そういうふうに働ける能力と意欲を持った方に就農の機会を与えるといったことは必要ではないかということを実は申したところであります。  ただ、国費を使って支援するとなりますと、やはり常識的に、将来的な永続性を期待するという意味合いからすると、おのずから年齢制限というものが必要になってきます、こんなところで私もそれ以上は追及しなかったというのが今までの経過でございます。  さはさりながら、今いろいろ御指摘がありましたように、そういう方たちがむしろ残りの人生というものを楽しみながら意欲を持って地域を守っていくということがあれば、そういう方たちに対する積極的な支援をするのが我々のとるべき道である、そう考えます。
  43. 一川保夫

    ○一川委員 今ほどの大臣の御見解に沿ってこれから農政をしっかりと展開していただきたいと思いますけれども、全国各地域にそれなりに意欲を持って農業に取り組もうとする担い手が、数は少ないですけれども徐々に目立ってきているのは事実でございまして、そういう方々も含めて、これからしっかりと農業に取り組んでいただけるような、そういう割ときめ細かな施策、各年代層なり各地域のいろいろな特性というものを十分生かせるような農政をぜひ展開していただきたいということを御要望いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  44. 北村直人

    北村委員長 これにて各案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  45. 北村直人

    北村委員長 ただいま議題となっております各案中、まず、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案について討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子さん。
  46. 中林よし子

    ○中林委員 私は、日本共産党を代表して、農林水産業施設災害復旧事業費国庫補助暫定措置に関する法律の一部を改正する法律案に対して、反対の討論を行います。  まず第一に、採択基準の引き上げは、主に被災農民に財政的な負担を強いるものであるからです。  今回の改正で、一件当たりの工事費が三十万円以上四十万円未満のものは暫定法の対象から外され、その結果、約四億八千六百万円もの国庫補助金が削減されることになります。幾らかは自治体が発行する地方債で救済することができますが、被災した農民に財政負担を強いることは明らかです。  第二に、今回の改正は、財政構造改革法の具体化であるとともに、政府の地方分権推進委員会が進めている補助見直しの一環となるものであるからです。  財政構造改革法は、災害復旧に係る補助金等の削減、第三十五条一項二を決め、また政府の地方分権推進委員会は、政府の役割を全国的規模、視点で行わなければならない施策及び事業などを重点的に担うとし、地域的なものは補助対象から切り離すことを提起しました。  国民の生命と財産を守るのは国の責務です。財政危機を理由に、国の責務を被災農民や地方に押しつけることを容認することはできません。  以上、申し上げまして、反対討論を終わります。(拍手)
  47. 北村直人

    北村委員長 これにて本案に対する討論は終局いたしました。     —————————————
  48. 北村直人

    北村委員長 これより採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  49. 北村直人

    北村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  50. 北村直人

    北村委員長 次に、主要農作物種子法の一部を改正する法律案について討論に入ります。  討論の申し出がありますので、これを許します。中林よし子さん。
  51. 中林よし子

    ○中林委員 私は、日本共産党を代表して、主要農作物種子法の一部を改正する法律案について、反対の討論を行います。  本改正案は、昨年七月八日の地方分権推進委員会第二次勧告を受けて、圃場審査等に要する都道府県の経費に対する国の補助を廃止するものですが、これは主食の安定的供給のために主要農作物の種子を生産、供給するという国の基本的な責任を大幅に後退させるもので、到底容認できません。これが本法案に反対する第一の理由であります。  第二に、政府は、所要の経費を地方交付税等の地方一般財源として確保した上で国庫補助負担金を廃止すると説明しておりますが、主要農作物種子法改正絡みで交付税が幾ら上がるかは計算困難とされるなど、事実上、都道府県の負担に転嫁される可能性が強く、その結果、都道府県が主要農作物種子法に基づく諸業務を縮小するなどの事態も想定され、主要農作物種子の生産、供給に民間業者の参入を可能にした一九八六年の法改正とも相まって、種子の公共性を脅かし、国民への主食供給や農家経営の安定に否定的影響を及ぼすおそれは否定できないのであります。  以上の理由により、本改正案に反対するものであります。(拍手)
  52. 北村直人

    北村委員長 これにて本案に対する討論は終局いたしました。     —————————————
  53. 北村直人

    北村委員長 これより採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  54. 北村直人

    北村委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、青年就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案について討論に入るのでありますが、その申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  55. 北村直人

    北村委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     —————————————
  56. 北村直人

    北村委員長 この際、本案に対し、小平忠正君外六名から、自由民主党、民友連、平和・改革、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合並びに岩浅嘉仁君の共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を聴取いたします。赤城徳彦君。
  57. 赤城徳彦

    ○赤城委員 私は、自由民主党、民友連、平和・改革、自由党、日本共産党、社会民主党・市民連合及び岩浅嘉仁君を代表して、青年就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議案の趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     青年就農促進のための資金の貸付け等に関する特別措置法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   我が国農業を担うべき農業者は、慢性的に減少傾向にあり、又次代を担うべき若い農業者の数は極めて低い水準にあることから、日本農業の将来を考えた時、誠に憂慮すべき状況にある。   農業経営を取り巻く環境が一段と厳しくなることが懸念されるなかで、次代を担う経営感覚に優れた農業者育成確保することが急務かつ重要な課題となっている。   よって政府は、本法の施行に当たり、左記事項の実現に努め、新規就農者確保に遺憾なきを期すべきである。       記  一 今回新たな貸付け対象となる中高年齢者就農計画の認定等について、地域農業の実情、近代的農業経営を担いうる年齢、知識、技能を十分踏まえたものとなるよう、指導すること。  二 研修受入れの農家及び農業大学校等関係機関の指導者の養成、教える側のレベルアップ、研修施設整備等に対する支援を充実させること。  三 ウルグァイ・ラウンド対策として設定された就農支援資金が当初計画に到達していないことにかんがみ、今後とも本資金の一層の効果的な活用に努めるとともに、就農促進のための総合的な対策のあり方につき引き続き検討を行うこと。  四 農業後継者として就農しようとする青年及び女性が、魅力ある農業として従事できるように、農業改革に取り組むこと。   右決議する。  以上の附帯決議案の趣旨につきましては、質疑の過程等を通じて委員各位の御承知のところと思いますので、説明は省略させていただきます。  何とぞ全員の御賛同を賜りますようお願い申し上げます。(拍手)
  58. 北村直人

    北村委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  小平忠正君外六名提出の本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  59. 北村直人

    北村委員長 起立総員。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、ただいまの附帯決議につきまして、農林水産大臣から発言を求められておりますので、これを許します。農林水産大臣島村宜伸君。
  60. 島村宜伸

    島村国務大臣 ただいま御決議いただきました附帯決議の趣旨を尊重し、今後最善の努力をいたしてまいります。     —————————————
  61. 北村直人

    北村委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました三法律案委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 北村直人

    北村委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕     —————————————
  63. 北村直人

    北村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後三時五十四分散会