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1998-03-11 第142回国会 衆議院 農林水産委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十一日(水曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 北村 直人君    理事 赤城 徳彦君 理事 鈴木 俊一君    理事 松岡 利勝君 理事 松下 忠洋君    理事 小平 忠正君 理事 木幡 弘道君    理事 宮地 正介君 理事 一川 保夫君       石破  茂君    小野寺五典君       金田 英行君    岸本 光造君       熊谷 市雄君    園田 修光君       高鳥  修君    仲村 正治君       丹羽 雄哉君    二田 孝治君       御法川英文君    宮本 一三君       矢上 雅義君    石橋 大吉君       神田  厚君    今田 保典君       中桐 伸五君    鉢呂 吉雄君       堀込 征雄君    漆原 良夫君       木村 太郎君    佐々木洋平君       菅原喜重郎君    二階 俊博君       中林よし子君    藤田 スミ君       前島 秀行君    岩浅 嘉仁君  出席国務大臣        農林水産大臣   島村 宜伸君  出席政府委員        農林水産政務次        官        岸本 光造君        農林水産大臣官        房長       堤  英隆君        農林水産経済        局長       熊澤 英昭君        農林水産省構造        改善局長     山本  徹君        農林水産省農産        園芸局長     高木  賢君        農林水産省食品        流通局長     本田 浩次君        食糧庁長官    高木 勇樹君        林野庁長官    高橋  勲君        水産庁長官    嶌田 道夫君  委員外出席者         外務大臣官房審         議官      薮中三十二君         外務省経済協力         局無償資金協力         課長      八木  毅君         海上保安庁警備         救難部管理課長 後藤 光征君         農林水産委員会         専門員     黒木 敏郎君     ————————————— 委員の異動 三月十一日  辞任        補欠選任   仙谷 由人君     中桐 伸五君 同日  辞任        補欠選任   中桐 伸五君     仙谷 由人君     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業振興に関する件(農林水産業の基  本施策)      ————◇—————
  2. 北村直人

    北村委員長 これより会議を開きます。  農林水産業振興に関する件について調査を進めます。  農林水産業基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。赤城徳彦君。
  3. 赤城徳彦

    赤城委員 おはようございます。自由民主党赤城徳彦でございます。  昨日の島村大臣の所信に対しまして何点かお伺いをしたい、こう思いますが、その前に、まず大臣、先般のOECD大臣会合、それから五カ国農相会議出席をいただきまして、大変お疲れさまでございました。予算委員会の合間を縫って、しかも二泊六日ですか、大変な強行軍でございました。また、OECDの場は二十九カ国プラスEU、ほとんどが農産物輸出国という立場輸入国として大臣出席されたのは我が国だけ、こういうことでございますので、まさに孤軍奮闘といいますか獅子奮迅の御活躍をいただいた、こういうふうに聞いております。大変感謝いたしております。  ところで、OECDというのは、かつては先進国のサロンのような場だ、また交渉の場でもない、そういう姿でありましたけれどもウルグアイ・ラウンド交渉、あのウルグアイ・ラウンドに先立つ八七年のOECDコミュニケ、あのときには、まさにそのOECDコミュニケがその後の国際交渉の大きな流れをつくった、それがウルグアイ・ラウンド交渉にもつながってきた、こういうふうに見られております。  そういう意味では、このOECD大臣会合、また今回出されましたコミュニケ、具体的な交渉を決めるということではありませんけれども次期ポスト交渉に向けて大変大きな意味を持つ、また、我が国としてもそういうことをにらみながら、積極的にその国際世論流れをつくっていかなければならない、そういう意味では大変重要な、決定的な意味を持つ会合であった、こう思います。そうした会合我が国島村大臣大臣にお出ましをいただけた、これは大変意義のあることだ、こういうふうに考えております。  私どもは常に思い出すわけですけれども、今回のウルグアイ・ラウンド交渉大変我が国にとって厳しい、不利な条件をのまされた、そう思います。あのウルグアイ・ラウンド交渉最終局面で、果たして我が国対応がどうであったかということを思い出さざるを得ないのであります。当時は、自由民主党は野党でありました。時の政権が、農林水産大臣あるいは外務大臣がその最終局面でどういうことをしていただいたかと考えてみますと、ほとんど現地に飛ぶこともなく、十分な日本側主張をする機会もなく、ほとんど一方的に農産物輸出国自由貿易経済合理性、そうした原理で押し切られてしまった、このことは海やんでも悔やみ切れない、あるいはもう取り返しのつかないほどの大きな影響を今に残しております。それを挽回していかなければいけない、次の交渉に向けて取り返していかなければいけない、そういう任務を私ども負っているわけでございます。  ところで、私もこれまでいろんな国へ参りました。いろんな方と話し合う機会がございました。農業の問題を話し合うときにいつも考えますことは、我が国国土が狭くて厳しい競争条件を持っているから何とか自由化の速度を緩めてくれとかそういうふうな言い方では、それはおたくの国の事情でしょう、こういうことでなかなか理解は得られない。  むしろこれからは、常に我々主張しています、農業の持つ多面的な機能でありますとか食糧安全保障でありますとか、そうした課題というのは日本にとっての課題ではなくて、世界全体が共通認識しなければならない課題である。それは、今のアジア食糧事情を見ても、また、世界がこれから人口爆発する、食糧供給が非常に不安定化する、そう言われている中で、それぞれの国が自分主食食糧を十分生産し供給をしていく、そして、余ったらそれは国際市場に出すし、不足すればそれを輸入するしという、まずそれぞれの国が食糧生産供給に責任を持つ、そういうルールをつくっていかなければいけない。そのことは世界共通のものでありますし、これまでのウルグアイ・ラウンドWTO体制で言われるような経済合理性ではもう既に立ち行かなくなっている、そのことが随所にあらわれているのではないか、こう思います。  そういう意味で、大臣OECD大臣会合出席をされて、あるいは五カ国農相会議の場でそういう世界共通認識を醸成をしていく、そういう意味からの主張をしていただいた、こう考えておりますけれども、どういう主張をされて、その結果どういうふうに各国共通認識ができてきたか、その辺のところをまずお伺いいたします。
  4. 島村宜伸

    島村国務大臣 赤城委員にお答え申し上げます。  今回、国会の了承を得まして、OECD農業大臣会合及び五カ国農相会議出席をさせていただきました。両会議とも、ただいま御指摘のとおり、今後の農業に関する国際的な議論方向づける極めて重要な会議でありました。その内容に対する認識は、今回二十九カ国プラスEU、三十になるわけですが、その中で大臣が二十六人出席、このことにも示されるように、従前の国際会議とまた趣を異にした面がありましたけれども、ただいま御指摘いただきましたように、特にお許しをいただいて私本人が出席させていただいたことは、私は率直に言って大変に意義があった、そう思っております。  それはどういうことかといいますと、やはり国際会議でございますが、各国中二十六も大臣が出てきている意欲が示される中で、もし我が国が、たとえ能力があっても、代理者を差し向けたということになれば、今ほど御指摘がありましたように、いろいろな意味でこちらの主張というものがネグられてしまう可能性が十分にある。  特に今回は、OECD農業大臣会合では副議長国を仰せつかって、問題提起もさることながら、最終コミュニケの取りまとめにおきましても、いわば代表してその会議に出て、最終確認をいたすまで当事者としての対応ができたということの中で、我が国主張というものをかなりの意味で盛り込むことができたと、ある意味では自画自賛しているわけであります。  具体的な両会議においての内容につきましては、我が国水田農業の特徴や、最大の農産物輸入国である我が国における食糧供給重要性を説明しつつ、共通に取り組むべき課題として、国土保全環境保護、あるいは洪水防止水資源涵養等農業の果たす多面的機能の重要な役割、あるいはまた、国際需給が中長期的に逼迫する可能性がある中での食糧安全保障重要性等主張したところであります。  こうした我が国主張に対しましては、各国から一定理解が得られ、思いがけずたくさんの援軍があらわれたりいたしまして、事前にはいろんな角度で不利な立場に追われることを覚悟の上で臨んだ会議でございましたけれども、だんだん会議が進むにつれて、むしろこちらの主張が非常に有利に展開するという結果につながりました。その意味で、OECD農業大臣会合コミュニケにもこのことは明確に盛り込まれたと考えているところであります。
  5. 赤城徳彦

    赤城委員 私どもは、新聞や何かでそういう状況を拝見させていただいておりまして、副議長という立場で大変重要なポストで御活躍をいただきましたし、大臣のその御主張各国からの支持を得られた。今手元にあります新聞記事を見ましても、オーストラリアのアンダーソン第一次産業エネルギー相が、島村大臣の言うように、農業食糧生産以外の機能もありますね、こういうふうに同調してくれたとか、いろいろそういう話も伺っていました。  やはり、大臣が行っていただいて、その主張をしていただいた、そのことが十分各国に伝わって、コミュニケの本文もございますが、その中にも随所に、食糧安全保障とか、農業の持つ多面的な役割、そうしたものが盛り込まれている、こういうふうに大変ありがたく受けとめております。もちろん、これで安心していいわけではなくて、これを一つの大きな足がかりとしてさらに将来につなげていく、こういうことが大事だと思います。  それからもう一点。コミュニケの中で確認をしたいのでありますが、今回の会議が始まる前に、このコミュニケが、ウルグアイ・ラウンド農業交渉を先取りをする、あるいは自由化をさらに進めるような、そういうふうなことが盛り込まれるのではないか、そういうことを大変心配しておりました。今回のコミュニケで、さらなる貿易自由化とか、交渉前倒しとか、そういうふうな方向にはなっていないかどうか、そこのところを一点確認いたします。
  6. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  両会議は、各国農業大臣が集まって、各国の異なる農業事情への理解を深め、今後の農政の展開方向等について率直な議論を行ったものでありまして、交渉事項交渉前倒し議論したものではありません。しかしながら、農業農村の実情や農業問題に関する我が国基本的な考え方を伝える貴重な機会であり、私どもとしても積極的に議論に参加したところであります。  こう申し上げますと非常に行儀がいいわけでありますが、当然のことに、WTOに向けて、次期のその交渉に向けていろいろな含みが各国に感じられまして、その意味で今回非常に活発な議論になったのではないか、こう受けとめておるところであります。また、輸出国からは、農産物貿易の一層の自由化農業保護削減を求める主張がかなりしつこく実はなされたところでありますが、私といたしましても、農業多面的機能食糧安全保障重要性というものを強く主張いたしまして、各国からは、先ほど申したように、一定理解が得られた、そう考えておるところでございます。  そういう意味では、私は、今回出席させていただいたことは、考えれば考えるほど非常にいい機会を与えていただいたなと思いますし、今後の国際交渉に向けても、私は、こういう姿勢がこの国にとって必要なのではないか。特に、私は非常に有益だったと思うことを申し添えたいのですけれども、我々の前の内閣の閣僚経験者として政務次官を務められた保利耕輔氏から、この手の国際交渉にいきなり国の代表が行って自分のところはこうだという事情を言ってみてもなかなか通りにくい、各国常々会合を持ち、お互いがもうすっかり親しみを持ってファーストネームで呼び合うような関係にある、しかしながら、日本代表は、そのときに行って初めて名刺を配るようなことをやっているのでは、ただでさえ特殊性を持つ我が国農業に対する説明は届かない、こういう御指摘がありました。  これを受けて、私は、一月六日から十一日まで、実はヨーロッパへ行かせていただきまして、たまたまそちらへ出向いているということを情報として得ていたアメリカのグリックマン農務長官とか、EU議長国であるカニンガム・イギリス農相とか、OECDジョンストン事務総長、あるいはまたEUフィシュラー農業委員代表者ですが、こういう方々といろいろ話し合いをする機会がありました。  その結果が、今回、いろいろな議論をする場合に非常にやりやすいのと、我々が特殊事情をくどくど説明しなくても、事前にわかっているという感じの中で好意的に我々の意見を受け入れてくれた、こんなふうに思っているわけでありまして、これはぜひこの機会に皆様に御報告をする必要があると思って申し添えさせていただきました。
  7. 赤城徳彦

    赤城委員 まさに今回の成果が得られた大きな要因といいますかその陰に、島村大臣人間関係各国との間でつくり上げてこられた、そういう共通の土俵がある、その積み上げの中にこの農業問題についても各国共通認識ができ、その成果としてこのコミュニケができた、大変いいお話を伺いました。  私も、全くそのとおりだ、我が国が急に行って我が国事情ばかりを説明しても各国理解は得られない、そういう意味で、大変大きな先例をつくったと思いますし、ぜひ島村大臣に、これからもいろいろな交渉の場、またカナダでも来年会合がございます、さまざまな会合、そしてWTO次期交渉に向けてさらなる御尽力、お力をいただけますよう心からお願いをいたします。  次に、世界食糧供給、非常に不安定になっている、特にアジアではそうでございます。  昨日、インドネシアスハルト大統領が再選をされました。しかしながら、インドネシアでは、経済危機あるいは食糧難、大変な状況であるということが伝えられております。また、特に食糧については、米を中心とした支援要請が来ている、こういうことを聞いておりますが、具体的な要請、どういう要請があるのか。  伝えられますところによると、百万トン米が不足している、こういうふうに聞いておりますし、政府部内では五十万トンぐらいはというふうな検討をしているということも聞きますが、インドネシア状況はどうなのか、具体的に要請としては何万トン必要なのか、そこら辺のところをお伺いします。
  8. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  インドネシアからはいろいろなレベルでその食糧事情の厳しさが伝えられてきております。ただ、数量的に何万トンということは、いろいろなレベルでの話としては伝わってきておりますが、正式に政府がそれを受けとめて何万トンということには今の段階なっておりません。  いずれにしても、大変厳しい情勢にあるということでございますので、現在、政府内でどんな対応ができるかを検討しているということでございます。
  9. 赤城徳彦

    赤城委員 正式な数量というのは御回答がないわけですけれども、具体的にもう足りないということは明らかでありますし、二月二十日に米を中心とした支援検討していく、具体化していくということは閣議決定もされております。相手国が、特に友好国が困っている、そういうときに、我が国事情でなかなか援助が決まらない、あるいはその数量を少し削減といいますか、けちってしまうということがあっては、せっかくの支援も価値が半減してしまいます。  私は、インドネシアが困っている、必要としているその数量全量即刻おこたえをする、そういう姿勢がまず大事だ、政治的な意図の表明、態度の表明ということも大事でありまして、そういう意味では、今回、政府部内で一番困っている点は財政負担の問題だと思います。  要するに、国内国産米あるいはミニマムアクセス米を活用すると差損が出ます。従来ですと食管会計で持て、こういうことでありましたけれども、今の食管会計ではとてもそれは持てる状況にはない。では翻って、食管が赤字ですから、援助の量はこれだけですとかいうふうなことがあってはいけない。それは、今申し上げたように、まず全量おこたえをする、これが大事であろう。  そこから、ではどの米で対応するのか。一部には、これは外務省検討の中では、外国の市場から調達してそれを援助に充てたらいいではないか、こういうふうな話もあるようですけれども、一方で困っている国がある、一方で日本は、我が国はそれにこたえられるだけの数量がある、十分な備蓄がある、しかし問題は、食管会計では負担し切れない、そこにあるわけですから、しからば新たな枠組みで、新たな財政で、負担で、それをクリアしていく、こういうことしかないのではないか、そう思います。  そこで、自由民主党としては、これからの食糧援助について三点確認をいたしました。  一つは、まずどの米かということにつきましては、国内に備蓄されている米、国産米もありますしミニマムアクセス米もありますが、いずれにしても国内に備蓄されている米で対応する。外の市場から調達してということではなくて、我が国の持っている米で対応する、これが一点であります。  二点は、食管特別会計負担を生じないようにする、こういうことであります。  三点は、そのためには、これからインドネシアに限らずこのような問題が出てくると思いますが、そうした問題に対応できるような新たな枠組み、国際的な枠組みをつくるべきだ、こういうふうに考えております。  このことについて、大臣の御決意、お考えを伺いたいと思います。
  10. 島村宜伸

    島村国務大臣 この具体的な内容については、公式、非公式、いろいろ伝えられてきておりますし、特にインドネシア米事情が大変厳しいということはもう重々承知を、米というよりは食糧事情が厳しいということは、これはもう間違いない事実として伝えられてきているわけですが、まだ具体的な公式の何かお申し入れをいただいておりませんので、これに対する我々の対応ということについては、現在、先ほど食糧庁長官がお答え申し上げたように、数量を含めどのような対応が考えられるのか、また財政措置をどのように講じていくのかということの検討を行っている段階であります。  さはさりながら、今御指摘がありましたように、党の側の、いわば国内に備蓄されている米を活用すること、食管会計負担を生じない、また新たな援助のための国際的枠組みを確立すること等、既にお申し入れをいただいているところでございますから、そういう御趣旨を十分我々はそんたくをいたしまして御理解の得られる対応に結びつけたい、こう考えております。
  11. 赤城徳彦

    赤城委員 今後こういう問題がいろいろ出てくる、こう思いますが、その新たな支援策枠組みをつくる中で一つ問題になると思いますのは、相手国が必要としているような種類の米、それでできるだけ財政負担も少なくなるような米で対応したい、それが基本だと思います。そうしますと、例えばインドネシアとかそうした国は長粒種が主食だ。そうすれば、その食味に合ったようなもので対応したい。そうすると、まず第一義的にはミニマムアクセス米ということになるかな、こう思うのですけれども、今六十万トンあるいは六十八万トンとミニマムアクセス米が入ってきます。では、それをすぐ支援に活用したいな、こう思っても、国内市場にまず提供する機会を与えて、一年置いて初めて援助に使える、こういうふうなルールが本当にどこかで決まっているのかどうか私は疑問なのですけれども、そういうことになっていると言われております。  これは、今緊急事態でありますから、今後入ってくるミニマムアクセス米、それを援助用の品種あるいは価格で入れて即刻それを援助に振り向ける、新たな枠組みの中でそのことを考えていかなければならないであろう、私はこう考えますが、この点についてはどうでありましょうか。
  12. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  ただいまの御提案でございますけれども、これは、今先生もお触れになりましたように、いわゆるWTO協定上の内国民待遇、いわゆる内外無差別の原則というのがございます。今先生おっしゃったようなことになりますと、恐らくその問題に触れるというふうに私ども考えております。したがって、そこのところは慎重な対応が必要かと思います。
  13. 赤城徳彦

    赤城委員 こうした問題は、まさにWTO協定経済合理性だけで貫かれているために今の新たな事態対応できない、その一つの証左であろう、こう思いますので、こうした問題も含めてぜひ大臣、これからの新たなルールづくり枠組みづくりを積極的に進めていただきたい、こうお願いを申し上げます。  ちょっともう時間もありませんので、もう一点非常に大事な点を少し議論させていただきたいな、こう思ったのですが、それは、新たな農業基本法をいよいよ策定する、こういう時期に参りました。食料・農業農村調査会の中で各界の意見をいただきながら議論を進めていっております。これは大変結構なことでありますけれども、例えば、この委員会の場でその中身について御質問させていただくと、いや、それは今調査会検討しておりますから、こういうことでなかなか議論がかみ合わないような状況がございます。  私は、この基本法、次の基本政策を決める、これはまさに政治が決める課題であって、調査会と並行して我々はそのことを議論し、そして最終的には我々が決定していかなければいけない、政治が決定していかなければならない、そういう課題だと思います。  特に、両論併記になっている、議論が分かれる部分、例えば株式会社の参入問題でありますとか、デカップリング対策でありますとか、そうしたものはきちっと政治が決断を下していくべきだろう、こういうふうに考えております。  さらに言いますと、一見、意見が真っ二つに割れているように見えますけれども、それは単に株式会社の参入が是か非かとか、デカップリングをやるとマイナスだとかプラスだとか、そういう二元論で考えるべきではないと思います。  例えば、デカップリング対策というのはいろいろな類型がありますし、既に新たな米政策では一部経営安定対策ということで導入をしております。あるいは、価格政策に振りかわるような所得政策というのは当然価格支持政策がどうなるかによってはやらなければならないものでありますし、条件不利地域対策につきましても、一定の公益的な役割を果たしていて、そこで農業を維持しなければならないのであれば、その条件不利性を減殺するといいますか、穴埋めをするような補償対策というのが必要であろうし、いろいろな類型、パターンに応じて対策をどうつくるか、どういうふうに組み立てていくか、そういう問題であって、単純に是か非か、やるかやらないかというふうな議論をどうもされているように見えまして、それは全く残念なことだなと。  むしろ、我々の場でみずからその対策をつくる、私なりにもう考え方はありますし、大臣にもお考えがあると思います。調査会議論を尊重する、それはもちろんでありますけれども、今後の基本政策基本法策定に当たって、大臣がみずからの考えあるいはリーダーシップを発揮して、政治の決断でこれをつくっていく、こういうことが大事だと思いますが、大臣の御決意を伺います。
  14. 島村宜伸

    島村国務大臣 社会情勢の変化や国際化の進展に対応いたしまして、新たな基本法の制定を含む農政の改革が必要になっております。そして、御高承のとおり、現在、食料・農業農村基本問題調査会におきまして議論が進められているところでございます。昨年十二月、中間的な取りまとめが行われたところでありますが、本年夏ごろをめどに具体的な施策方向について最終答申がいただける、そういう予定にいたしております。今後、調査会議論を十分踏まえまして、幅広く国民の皆様の意見を伺いながら、二十一世紀における我が国農業農村の発展と国民生活向上のための新たな農政の指針をつくり上げていきたい、こう考えているところでございます。  なお、ただいま御指摘がありましたように、例えば自給率の問題とか、あるいは株式会社の農地取得の問題とか、まだ両論併記の段階にあるものもございます。しかし、今後における農政のあり方全般につきまして、調査会最終的なおまとめをいただくように、私どもからも強く申し入れているところでございます。  なお、先ほど私は、あえてつけ加えて御答弁申し上げようと思いましたのは、ミニマムアクセス米につきまして、我が国がこれだけ米の豊作に苦しみ、余剰米を抱えている段階で、なおかつMA米を買い入れている国際的な協力の姿勢、また我々日本人の味覚に必ずしも合わない米もあえて買って、しかもこれを他国への援助に向けることが云々という、手かせ足かせをはめられたことのいわば論理的な問題等につきましては、あえてぬけぬけと私は議論の中でそのことを言いました。そして、今後はこういうものから解放してほしいということを強く申し入れたことを御報告いたしたいと思います。
  15. 赤城徳彦

    赤城委員 ありがとうございました。  きょうはちょっと時間がなくなりましたので、中身の議論ができなくて残念でありますが、またの機会議論をさせていただきたい、こう思います。  以上で質問を終わります。ありがとうございました。
  16. 北村直人

    北村委員長 次に、小平忠正君。
  17. 小平忠正

    ○小平委員 おはようございます。  島村農水大臣、昨日は大臣としての、今次通常国会に当たり、農林水産行政全般にわたり、この推進がための所信表明をお伺いいたしました。大臣表明どおりに進めばこれにまさるものなし、こう思っております。ただ一点、OECD会合を含めて精力的に頑張ってまいるという、ちょっと時期的に少しずれがあるようなこともありましたけれども、いずれにしても、この方向で進んでいくことを心からまず期待しておる次第であります。  さて、今も自民党の赤城委員からも質問がありましたが、過般、三月五日、六日、七日とパリにおいて行われましたOECD農業大臣会合、また、さらにはその後続いて行われました五カ国農相会議というのに出られてまいりまして、御苦労さまでありました。  数年前に、ウルグアイ・ラウンドのあの大事な交渉時に、時の農水大臣がなかなかその場面に出られずに果たして適切な交渉ができ得たのか、そういうような発言が今ございましたが、当時は私ども与党でもありまして、大変苦渋の選択を余儀なくされた、私もその一人であります。あの当時を振り返ってみても、その所管の大臣が必要に応じて即座に、速やかに、もう狭くなった国際社会を縦横無尽に飛び回って国益のために頑張っていただくということは、これはもう当然であって、私どもはそのことを思うときに、あの時点でも果たして、当時は畑大臣でしたか、縦横に海外に出向いていける、そういう国会内の状況があったかということを思うと、私は非常に複雑な思いがございます。  と同時に、今回大臣が行かれました。私も、予算委員会の最中でありましたけれども、これは大臣みずからが、しかも副議長ですから、大臣みずから行かれて、堂々と我が国主張を論陣を張って頑張っていただきたい、そういう思いで私も党内において、ぜひ大臣を行かせろ、そういうことで頑張った一人であります。  そういう中で、さらに今大臣のお考えの中で、そのときだけに行ったのではだめだ、やはり事前にも行って、数次、諸国の要人とも会って、まず面識を深め合うこと、これが大事だとおっしゃいました。そのとおりであります。  しかし同時に、私は、それはもっとやっていただきたいですよ。しかし今の、現行のこの仕組みの中では、いわゆる官僚の仕組みというか、事前に官僚、役人ベースのそういう下交渉があって初めて大臣が行けるのであって、忍者外交というか、大臣がそういうのを飛び越して行って、関係国の要人と会ってトップ会談ができるなら、これは最高ですけれども、でも実際にはそれは大臣もできないと思いますよ。事前にいろいろなそういう役所ベースの各国との積み重ねがあってそういうことになっているのであると思います。  確かに私は、大臣がそういう意気込みでしたら、逆に、各級の政府、役人ベースの交渉をもう度外視して、堂々乗り込んでいって、江戸っ子大臣農業を愛する大臣ここにありとぜひ頑張っていただきたい、こう思います。その意気込みを私は大いに期待していますので、これからもそんないろいろなことは乗り越えてあちこち出かけられていって、頑張っていただきたい、こう思っております。  それはそれとして、幾つか私も質問したいことも用意したのでありますが、まずOECDの農相会合においての問題であります。確かに、今回こういうことで、次回のWTO農業交渉に向けての前哨戦というか、非常に出席率もよかったようで、多くの国の大臣等が出席されてこの会合があったわけであります。これは、いかに次回のWTO交渉が大事かということを各国認識をしている、そんなことではないか、こう私も伺いました。  今回大臣は、その場においては、共同宣言、コミュニケを発表するに当たり、我が国が従来から主張しております農業保護のために、削減等従来原則に加えて、食糧安全保障、また農業が有する多面的機能、さらに食品の安全性、これらを大いに配慮をしながらこのコミュニケの作成に当たった、それに対しては、私もその御奮闘に敬意を表したいと思っております。  そこで、いよいよ次期WTO交渉も二年後に迫ってまいりました。私は前回の農水委員会でもお聞きしたと思うのですけれども、既にそういう交渉をもうやっているのかと。そのときは、まだやっていない、そういう返事を、たしか外務省だったか、お聞きした経緯があるのですけれども。既にアメリカやEUはもう水面下、次期に向けての交渉をいろいろなレベルでやっていると思うのですね。しかし、我が国はやっていないと。  確かに、新農業基本法我が国の次世紀に向かっての農業の方針がまだ定まっていないですから、非常に基本的な論陣を張る意味においてはできづらいことはわかりますけれども、このままずるずるいって、その場面で急遽やったって、私は、やはり他国の後塵を拝する、こんなふうに危惧しております。  いずれにしても、大臣我が国として、次回のこのWTO交渉、特にウルグアイ・ラウンドの再交渉のとき、これは大変な局面が迫ってまいります。これに向かっては、今回のこのOECD会合を総括しておられると思うのですが、次回に向けても含めてどのようにお考えになっているか、そこのところをお伺いをしておきたいと思います。
  18. 島村宜伸

    島村国務大臣 まずもってお礼を申し上げたいのですが、今回の私の出張に際しまして、大変御熱心に御理解と御支援を賜りまして、おかげでOECD農業大臣会合、そして、五カ国農相会議出席を許されました。その御尽力に心から感謝を申し上げたいと思うのであります。  今回、先ほども申したことですが、二十九カ国プラスEUという各国で、いわば三十のそれぞれの代表会議に集まりましたけれども大臣が出なかったのはわずか四名であります。その四名は、一つは、スイスの大臣が入院中、それからもう一人は、韓国の大臣が、まだ内閣ができたばかり、そしてデンマークとドイツはちょうど選挙中である、こういうところでありましたし、フランスの大臣も、実は自分の選挙中であったのですが、それをあえて差しおいて出席をするというくらい各国代表が一堂に会しました。  私は、今回、OECDのこの会合並びに五カ国農相会議に出していただいて、つくづく、将来に向かって日本が非常にいい機会を持てたのかな、こんなふうに思わせていただくわけです。それは、私の能力を超える方はもうたくさんおられますけれども、少なくとも、農政の責任者として、こういう国際会議にきちんと出て言うべきことを言う、こういうビヘービアというものはこれからの国際交渉においてはやはり不可欠だと思いますし、特に我々はふだん彼らとのつき合いがあるわけではございませんので、初めて会って、自分の言い分も聞いてほしいと細々と物を言っているようでは、とてもとてもこちらの主張は通らない。  事実、なるほど、結論的には、いわば農業多面的機能あるいは食糧安全保障についてかなり突っ込んだ理解が得られたつもりでありますけれども、初日の段階では、輸出大国である豪州とかニュージーランドとかアメリカ、カナダ等々、それぞれの立場から、やはりこれは国際的な分担であるということで、自由貿易を前提とした行き方に水を差すような、余り特殊事情というものを考慮に入れることはふさわしくないという意見が実はありました。  ところが、それが二日目になって、いろいろ意見が交わされる中で、やはり多面的機能というものを重視すべきであるし、我々が主張いたしました世界食糧安全保障というものに対して、例えば世界人口の急激な増大とか、飢餓人口が既に八億四千万に及んでいることとか、あるいはまた、最近の我々にはとても理解できない自然のいろいろな現象に左右される農産物の出来高の問題とか、地球の温暖化等々、特にアジアについては非常に不安要素も多いというようなことを訴えたところでございます。これらについても、最終的には、なるほど、聞いてみるとそういう面もあるらしいということを向こうの発言の中にあえて盛り込まれ始めたところの中に私は今回の成果が得られたのかな、こんなふうに受けとめているところです。  それで、主張につきましては、まさに多面的機能、特に、我が国のこの非常に零細な、中山間地域が四割を占めるという大変厳しい自然状況の中で農業が営まれているという実情その他につきましては、特殊事情と言わずに、これがその国の食糧の自給を支える基本にあるということを理解してもらうために主張したところです。穀物自給率が二九%しかない日本、特に、一億二千六百万の人口を抱えてこの食糧の安定供給に責任を持つ立場になって物を考えてほしい、こういう訴えもしたところでございますが、これらについては、最終的には極めて好意的な姿勢に変わることができたということは申し上げられることであります。  私は、そういう意味をいろいろ考えますと、代理出席という不利な立場でなくて、本人が出ていろいろ物を言う機会を与えていただいた、特に、一月に事前に会った人たちが非常に好意的な援護射撃をしてくれた等々、私は、考えれば考えるほど、今回いろいろ御尽力をいただいた小平委員にも心からのお礼を申し上げたいと思うし、謹んで内容について御報告する次第であります。
  19. 小平忠正

    ○小平委員 確かに、本当に御苦労さんです。大臣、そういうような外交交渉ですか、行動に対しては、大いに頑張っていただきたいと思います。特に、役人が敷いた、政府が敷いたレールといいますかスケジュールにのっとってやるのではなくて、島村大臣ここにありと、世界の場面において、お名前、お顔が見えるような、そういう発言なり行動をしていただきたい。そして、我が国の置かれた農業の環境改善のために大いに頑張っていただきたいと思います。  次に、今も大臣からお話があったことにもあるのですが、今、インドネシアから我が国に対し、大変なお米の支援要請が届いております。これは、こういう話が出てからもう一月ですか。私どもも何度か、外務省や農水省、さらには財政当局であります大蔵省、いろいろとお話をお伺いしておりますが、具体的な方向がまだ見えていないようであります。これにはもちろんいろいろな問題がありまして、そう簡単にはいかないということも承知をいたしております。  しかし、この問題は、インドネシアの国民といいますか、あの国は経済的にも非常に今混乱期にある。そして、昨日ですか、スハルト大統領七選が正式に決まりました。しかし、依然として、あの国の経済社会情勢といいますか政治情勢も、まだまだこれからしっかりと見守っていかなければならぬと思います。そして、インドネシアは、雨季、乾季に分かれている国で、冬場の端境期が過ぎて、三月、四月、収穫の時期に入っていくと思うのですけれども、お聞きする情報では、言うならばことしの収穫も非常に乏しい、そんなようなことが聞こえてきますので、やはり早急に手を打つ必要があると思いますね。これについては先ほど赤城委員の方から質問がありましたので、これは御返事は結構です。聞いてもどうせはっきりとした回答は得られないと思うので、そこは結構です。  したがって、今の食管会計ではもう無理だ、また、外務省のODA予算でもやはり予算的な限界がある、だから新しい枠組みをつくれ、そういうお話をされましたですね。私も同意見です。そういう状況であるのですが、私は、新たな方式をつくっていただきたい。そのことを、この後もう少しお話をお聞きしていきますので、まずそれを申し上げておいて、ちょっと違った観点から、今、日本という国は援助ということに対してどういうことをやっているか、国際社会に向かってどのような姿勢を見せているか、これが私は非常に薄いというか弱いというか、こんな状況ではいかぬ、こう思っています。  その一つの例がケネディ・ラウンドですね、ウルグアイ・ラウンドの前のケネディ・ラウンド。今、大臣、いみじくも世界的に八億余の人口が飢餓・栄養不良人口、こう言われました。私も、一昨年、西サモアというところで、特にアジア、アフリカ含めた中でのこの深刻な問題というのを自分でつぶさに感じてきました。そういう状況の中で、ケネディ・ラウンドで、先進国はそういう飢餓の状況の国に対して、援助をする義務を負ったわけですね。そこで、年間最小拠出義務量というものをつくりまして、それにのっとって援助を進めてまいりました。  こういうことに対して、これは、きょう外務省も見えていますので今お聞きしますが、まず大臣、このケネディ・ラウンド、これは小麦換算ベースでやっていますけれども我が国支援援助ということに対して十分とお考えになっておりますか。そこのところを、まず基本的な御認識をお伺いしておきたいと思います。大臣に、まずその十分かどうかということを、後で長官には詳しいことを聞きますから。ですから、その基本的な、我が国支援の体制がもう既に今これで十分かということの御認識をまずお聞きしたいのです。それだけで結構です。
  20. 島村宜伸

    島村国務大臣 失礼いたしました。今語尾がちょっと聞き取れなかったので、後ろへ聞きに行っておりました。  決して十分だとは思っておりません。しかし、やはりこれだけの大国でありますから、そしてまた、世界を相手にこの日本の富が築かれているわけでありますから、援助すべきものは最大限のものをしていくのは当然だろう、こう考えます。  そこで、今も御指摘ありましたけれども、MA米等、こちらの好むと好まざるとにかかわらず引き受けさせられるとすれば、可能な限りこういうものをそういうものに置きかえていくことができるというようなものになれば好ましいのかな、こう思います。もとより財政上の負担その他がございますから、確かにこの新たな方式を今つくり出さざるを得ませんけれども、少なくも現状で十分その体制ができているというふうには受けとめておりません。
  21. 小平忠正

    ○小平委員 そのような御認識を持っていただければよろしいのであって、これからあそこについて我が国はどうそれを充実していくかということについて検討を進めていただきたい、こう思っております。  そこで、高木長官、何か発言されたいようなのでお聞きします。今我が国は、これはもう数値が出ていますから先に申し上げますけれども、アメリカやEUに比べたら日本は非常にこの支援量が少ないですね。ずっとここ一貫して小麦換算で三十万トンベース、こういう状況で来ています。こういうことでありますので、まず長官にも、今大臣はそういうふうにお話がございましたので、同じ趣旨の御答弁があると思うのですけれども、もう少し具体的に我が国のこの支援のあり方、食糧庁長官としてどう考えていらっしゃるか、お聞きいたします。
  22. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 食糧援助基本的な考え方は、大臣がおっしゃられたとおりでございまして、具体的な数値等については、これは外交的ないろいろな兼ね合いの中で決定されてきていることだと承知をしております。  それが、今後の世界食糧事情ということ等を考えた場合に、私ども、いわゆる国内食糧行政との関連で、今度のインドネシアの問題も含めましてどんな対応が可能か、これは先生も御案内のとおり、既にいろいろな国際的な支援システムができておりますから、我が国だけでなかなかこれと言えば決まるようなことでもございません。当然のことながら、政府内での調整、それから各国との調整ということがあるわけでございますが、我が国食糧行政との関連でどういう対応をしていくべきかということについては、私ども今、インドネシアの問題を一つのきっかけに、考えているところであります。
  23. 小平忠正

    ○小平委員 確かに、現在のこの取り決めが、各国との関係もありますから、そうなっている、その中でやっていらっしゃる、それはもうそのとおりであります。それではいかぬという思いを込めて、私はお話をしているのであります。  もう少し数値のことを申し上げますと、一九九五年に、この年間の最小拠出義務量が、また新たに規約がここで改正されまして、日本は相も変わらず三十万トン、小麦換算ベースで。しかし、EUは百七十五万五千トン、これはいただいた資料にのっとってお話ししているのですが。ちなみに、アメリカは二百五十万トン、こういう拠出をいたしております。これは有償、無償ございますが、こういう状況で、比較すると世界に向けての日本援助というものは非常に微々たるものだ、このように指摘せざるを得ないと思います。  そこで、外務省にお伺いいたします。一応三十万トンということでありますが、昨年度においては四十七万トンの援助をしたようであります。これについての内訳はどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。
  24. 八木毅

    ○八木説明員 御説明申し上げます。  九五穀物年度の実績の大半は米と小麦になっておりまして、九五穀物年度について申し上げますと、小麦換算で、米が約二十万トン、小麦が約二十二万トンというふうになってございます。
  25. 小平忠正

    ○小平委員 その援助したものは、言うならば現物供与じゃなくて、日本からいわゆるお金が行っているわけですね。それで、援助をしたものに対して、その受けた国は、日本から何を買い求めているのですか。そこのところはどうなっているのですか。
  26. 八木毅

    ○八木説明員 先生御指摘のとおり、日本の今の食糧援助のシステムは、途上国が穀物を購入するための資金を供給する、こういう形で行われております。したがいまして、途上国がその資金に基づきまして穀物の供給国から穀物を調達する、その中身が小麦、米あるいはメーズ等である、こういう仕組みになってございます。
  27. 小平忠正

    ○小平委員 その米なのですが、我が国支援をした国は、日本から米を買い求めているのですか。
  28. 八木毅

    ○八木説明員 先ほど御紹介申し上げました九五穀物年度、これは私どもの会計年度ですとほぼ平成七年度と重なるわけでございますが、平成七年度の食糧援助供給実績の中には、政府米は入ってございません。政府米は、御存じのように、平成八年度から食糧援助の中で一部供与しておるということになってございます。(小平委員「量的には、平成八年度」と呼ぶ)平成八年度につきましては、約十万トンの政府米をアフリカを中心とする国々に供与してございます。供与総額は四十七億円でございます。
  29. 小平忠正

    ○小平委員 私の方からそれをまとめますと、昨年度の場合、初めて日本から米が出ていった、しかし、それ以前は、日本からはその援助義務に基づいてお金をそれぞれの国に支援をし、それらの国は自由裁量で、ということは、日本以外の国から小麦や米を買い求めて対応した、そういうことでありますね、一昨年までは。いや、イエスかノーで結構です。
  30. 八木毅

    ○八木説明員 御指摘のとおりでございます。
  31. 小平忠正

    ○小平委員 少しやりとりで時間がかかりましたけれども、私が問題視しているのは、日本は米が余っている。しかし、この余っているというのは何もむだに余っているのではなくて、年輩の方は御承知のように、我が国はあの第二次大戦直後、ついこの間までですよ、米が不足し、基幹食糧である米の自給体制がなかった。その中で国策として増産体制をつくるために大変な努力をしていったわけですね。それでやっと自給率が達成されて、その後いろいろな条件、環境の変化というか、消費の変化等もあって今こうなってしまった。そういう中で、せっかく国費を、公金を投入して田んぼをつくったわけです。増田したわけですね。だから、これをむだにしないためには、やはりこの水田を、田んぼを有効利用せんければならない。  そのためには我々は今何をすべきかということ、これを考えるときに、爆発的に人口が増大する、いずれ百億になる、こういう状況の中、しかもますます地球環境の悪化によって、気象条件の異常によって食糧というものが不足していく、こういうときに、我が国自分たちの国が持っている力を発揮するには、あるものを利用して、そして世界に貢献しよう、そういうことをやっていくときに今日本という国は来ていると私は思います。そんな思いがあるものですから、このことについて確認をした次第であります。  そこで大臣日本は、まず一つにはケネディ・ラウンドのほかにもWFPもあります。いろいろな支援もありますけれども、いずれにしましても我が国は現物供与というのができないのですね。この現物供与をする形になぜ持っていかないかということ、このことに私は大いに疑問があり、これをたださなければならぬと思っています。  そこで、まず最初に、これは順序があれになりますが、今現在、我が国は法的に海外に、政府が現物供与、米を輸出できるか、それから援助できるか、この二点についてどうなっているかをお聞きしておきたいと思います。
  32. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃられていることは、現物でいわゆる外へ出すということだと思いますが、このこと自体は前の食管法でも今の食糧法でも可能でございます。  今おっしゃられている現物供与というのがどういうことなのか、ちょっとわからない点があるのですが、例えばKR援助我が国の米を八年度からですか、使っておりますが、これもある意味では現物の供与、我が国の米を供与している、その代金をいわゆるKR援助の金でやっているわけでございます。ただ、その場合に、御案内のとおり、国際価格の水準まではそういうことでKR援助いわゆるODAの負担になるわけでございますが、それを超える部分、それは食管負担になっているわけでございます。  したがって、現物で供与する、これは貸し付けも含めてでございますが、そういうことであっても、問題は要するに国際価格との差がどこかの負担になる、これが最大の問題だというふうなことではないかと思います。
  33. 小平忠正

    ○小平委員 長官、すりかえないでいただきたいのです、答弁を。  私がお聞きしたのはそんな今の状況を聞いているのではなくて、我が国は法的に海外に米を輸出することができるか否かということ、それからもう一つ援助ができるかできないかということ、このことをお聞きしたわけなんです。そのようなことは私はわかっていますから。
  34. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 その点につきましてお答え申し上げますと、かつて過剰米の処理のときに数百万トンの規模で、輸出といいますか、支援をしたり輸出をしたりしております。
  35. 小平忠正

    ○小平委員 それは北朝鮮のことを意味しているのでしょうけれども、私は、日本の港から現物で米を輸出することができるか否かということ、それをお聞きしているのです。
  36. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 その現物で出せるかということになれば、これは現物で現実に出したこともございます。例えば、かつて韓国に貸し付けをした、これは現物で出しているわけでございます。
  37. 小平忠正

    ○小平委員 そうすると、現行の国内法では、我が国は米を輸出することができるということですね。そうとらえてよろしいですね。
  38. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 輸出の定義とかいろいろなことはあると思いますが、要するに外へ出すということを輸出だということであれば、お尋ねのとおりだと思います。
  39. 小平忠正

    ○小平委員 同時に、海外援助も現行法では、これは可能でありますね。援助援助です。
  40. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 そのとおりであります。
  41. 小平忠正

    ○小平委員 私は、手元の主要食糧の需給及び価格の安定に関する法律というのにのっとって今お聞きしたのでありますが、解釈によって非常にわかりづらい面もありまして、今長官から明確に、我が国は米を輸出できる、それから援助ができる、こういう御回答をいただきました。それなら問題ないと思います。  そこで私がお聞きしたいことは、今回我が国は、ケネディ・ラウンドも含めて昨年は十五万トンの海外援助というものをいたしました。これは、実際には金額でもって支援をし、それでもって相手国我が国から食糧の、米の買い付けをするという、言うならばひもつきの状況で初めて昨年なされました。ことしからはまた、その保証はありませんけれども、わずか十万トンという微々たる量であります。  しかし今、現にインドネシアからは五十万トン、百万トン、けたの違う量の支援要請が来ております。現行では、とても農水省は食管会計ではこれは無理だ。もちろん外務省でもこれはもう処理できない。新たな視点で新しい枠組みをつくって、政府全体としてやらなければこれはいかぬですよね。そういうことで、それぞれ今関係省庁がこれについて大いに検討を続けている最中であると思います。  これは、まず今回、相手がインドネシアと限った中において、ぜひ実現の方向でやっていただきたい。しかも同時に、我が国が資金的なものを用意して、そしてインドネシアに資金を渡してその資金でもって日本から米を買い付けるというのではなくて、もうダイレクトに日本から米を船積みして届けてもらいたい。  それは、現に今ケネディ・ラウンドでアメリカやEUは、このKRでもアメリカは昨年二百八十四万トン、それからEUは二百四十一万トン援助しています。聞くところによると、EUは大体半分が有償、残り半分が無償、そういう形で、無償については現物で送り出している。アメリカもしかり。アメリカからダイレクトに小麦を支援している。私は、それが援助のいわゆる本来の姿だと思います。それを、今までのいろいろな仕組みの中で、我が国はまず資金的に援助をして、そして相手の国が自由裁量で、自由にどこからでも買い付ける。主にアメリカやタイから小麦や米を買い付けた。しっかり日本日本の米が、世界援助として出回っているんだというこの歴然たる事実をこれからつくっていくのが私は大事だと思います。  そういう中で、ぜひ私は、今回このインドネシア要請というものを一つの好機ととらえて、今回はそういう要請がありました。しかし、今こういう世界的な異常気象というか、それからさらに人口の爆発的な増大というか、そういう中で、これから二十一世紀に向かっては食糧が不足することはもう目に見えています。同時に、ことしも来年も日本インドネシア援助をすれば、必ずほかの国からも日本に向かって、日本政府に向かって、友好国の日本の皆さんに援助をしてほしい、そういう要請が来ることは、これはもう私は疑いないと思うのです。  そういうことがはっきり目に見えているときに、単に今回インドネシア援助だけにとらわれず、これからに向けてどうやって我が国がこういう援助の体制をつくっていくかという、このことを千載一遇のチャンスととらえて、好機ととらえて新しい体制づくりに進んでいけば、来年、再来年、いろいろな事態に向けて、私はやっていけると思うのです。  そういうことをこの機会に、特に大臣、これに着手されれば非常に後世に歴史が残ることになると思うのですけれども、いかがでしょうか。
  42. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  今先生おっしゃられましたように、このインドネシアの問題をどうとらえるか、いわゆるこれからの食糧事情というものをどういうふうに考えるかということも、私ども、今いろいろな角度から検討しなければなりませんし、それから、先生も既に御案内でおっしゃられていると思うのですけれども、どんな形で米を出そうが、現物で出そうが、何しようが、政府の、国産米であればトン三十万円財政負担がかかる。これをどういうふうにするかということが解決できないとシステムは構築できないわけでありまして、そういった問題とか、国際的な問題とかいろいろございまして、今いろいろな角度から大臣の御指示もいただいております。いろいろな角度から検討政府内で進めているという段階であります。
  43. 小平忠正

    ○小平委員 確かに、トン当たり三十万円という御答弁がありましたけれども、そのとおりですね。最近は多少それが下がっていますけれども。  ですから、私はこう思うのです。今、この二年間で、新たな米の政策大綱、これを昨年の十一月に策定をして、ことしからそれに入っていますね。そういう中で、この二年間で急激な減反強化を、さらに十七万ヘクタール強の上乗せですか、九十六万ヘクタールからの減反面積ですね。そういう中で、今農地が非常に大きな問題になっています。そういうところで、このことも私は視野に入れてお話をしているのです。  ですから、確かにトン当たり三十万円する。これではとても日本政府財政的にもたない。そんな高価なお米を使って海外援助なんてことは、とてもこれは間尺に合わないですね。おっしゃるとおりですよ。  しかし、もし日本のこういう新たなスキームというか、そういう枠組みができまして、日本はこれからも継続的にアメリカやEUのように、アメリカやEUは小麦を中心援助している、先進国としての義務を負っている。日本は、一方でこれだけの経済大国として、お米がこれだけ余裕を持っているわけだ。だから、日本は米の分野で世界に貢献するんだ、こういう柱ができましたら、先ほども何かお話があった、インドネシアは長粒種を好む国だ、そういう米について日本は進んでいくべきではという意見もありましたよね。  ですから私は、そうなっていけば日本の水田においてそういう海外援助用の米づくり、言うならばコストをもっと下げた、低コストの安価な米づくり、例えば直播体制をもっともっと開発研究をしてそれを実行に持っていくとか、手間暇かからないそういう水田営農体制をつくって、そしてコストの安い米をつくっていく。用途が決まればできると思うのですよ。  しかし一方で、上質米、そういうものを志向する消費者にはそういう米をつくればいい。ですから、何も一律、同じレベルの米をつくる必要はないわけですよ。用途に応じた米をつくる。同時に、それは農地の有効利用にもなってきますよね。そういうことを進めていくためのこれは大きないわゆる突破口にもなっていくと思うのですね。  そんなことを含めて、私は、この機会にこれからの日本援助のあり方を大いに検討していただきたい。これは今大臣にお聞きしましても明快に答弁できないと思います、そうなっていませんから。でも、この機会をとらえて今やれば、私は間に合うと思うのだ。そうすれば、今後に向かって、我が国は、今、これだけの農地を今後どうしようか、それから、これからの農業後継者をどうしようか、そういう問題にもつながっていくと思います。そういうことで、これはもう答弁は結構です。そういうことをぜひ検討していただきたい。  そして、これにちょっと関連のあることなんですが、今申し上げました新たな米の政策大綱、これを昨年の秋に決めまして、これは二年間のスパンで総額六千百一億円で今いろいろな、生産調整を含めてその対策に入っていますね。そういう中で、生産調整せい、そういうことで今九十六万三千ヘクタールですか、こういう調整面積になりました。  となると、これは現に現場で玉突き現象が起きているのですよ。米をつくるな。しかし、農民は農地から何らかの収入を上げなかったら食べていけません。ですから、ほかの作物の転作に入っていっている。そこから玉突き現象が起きている。ほかのものが今あふれてきてしまっているのですよ。  一つの例ですけれども、私の選挙区では有名な夕張メロンというのがあります。これは、昨年の結果では、幸いに採算が合ったそうです。少し、異常気象で四徳ばかり減収があったのですけれども、何とか採算ベースに合った。しかし、ほかの農協では採算割れしている。なぜならば、メロンをいっぱいつくってしまっているのです。でもほかにつくるものがないから、仕方なしにつくっていこう、そんなことが起きています。一つの例です。ほかの野菜や作物も含めてそういう現象です。  そういうときに、私は、いろいろと前に長官にもお話し申しました、何でもいいから知恵を絞って財源を捻出しろと。いろいろな策を講じてこれだけの、六千百一億円の財源を捻出してこういう対策に入った。しかし、その中で、一つの例として生産調整推進対策がありますね。そこで、生産調整実施者の受取単価というところで、調整水田、水張り水田だと一万円、それから保全管理なら四千円、こういうことで生産調整の補助がされている。私から言わせると、これはまさしく中途半端で、何ら効果がないんです。こんな額ではとてもその年の営農計画ができ得ないのですよ。したがって、これじゃ何らの効果もない。  私は、提案なのですが、生産調整が始まったころを振り返って、あのころは単純休耕というのがありましたね。その補償額が金額的にもっと高かった。しかし、同時にそれは、何もつくらないでお金をもらうのか、そういういろいろな世論の批判もあり、また、いろいろな複雑な仕組みづくりでこれがだんだんとわきに追いやられていきました。その状況を私も思い起こしております。  しかし、今は緊急事態ですよね。この二年間で急激に減反をし、大体二百万トンの備蓄体制へ持っていこう、そういう状況にありますね。このときに、例えばこの二年間だけでもいいですよ、単純休耕をしっかり認めて、そこにもつと補助を与えて、そして農作物のバランスが崩れないように、そういうことをしていくことは私は割に効果があると思う。いかがでしょうか。
  44. 高木賢

    高木(賢)政府委員 米の生産調整のやり方につきましては、もう先生御案内のとおりでございますが、単に生産を抑制するというだけではなくて、水田の有効利用を図るという観点、あるいは自給力の維持向上を図るという観点から、他の作物への転換を基本として対策を講じてきております。現に、全国ベースで見ますと、約七割が転作ということになっておりますし、都道府県によっては九〇%以上転作というところもございます。こういう基本的な体系で進めているということについては、御理解をいただけるのではないかと思っております。  それからまた、転作がなかなか需給上難しいとか、あるいは手間とか取り組みやすさという点もございまして、物はつくらないけれども景観のために役立つ作物をつくる多面的機能水田とか、今御指摘がありました、水田に水を張って雑草の発生を抑制するとか、病害虫の発生を抑制するという形での調整水田、あるいは、翌年水田に耕作ができるような状態に管理する保全管理というような形も認めているところでございます。  端的に申し上げますれば、作物の作付あるものに助成を手厚く、ないものに薄く、また作付のあるものの中では、今御指摘がありましたけれども、自給率の向上を図る必要がある麦、大豆、主要作物などにつきましては手厚く、野菜とか果樹とか、需給上問題がなしとしない、過剰となりかねないというものにつきましては薄くという形で整理をしておるわけでございます。  そこで、御指摘がありました、いわゆる単純な休耕が位置づけられないかということでございます。今申し上げたような水田の有効利用上の点から見てどうか、あるいは自給率の維持向上という点から見てどうかということがまず基本的な問題としてございますが、何よりも、ただ単純に、生産しないことに対して国費をもってこれを助成するということにつきましては、やはり都市住民の方を初め大変批判が強いと思います。これを生産調整の態様として推進するというのはなかなか難しいのではないか、やはり最低限、保全管理ということはしていただく必要があるのではないかというふうに考えております。
  45. 小平忠正

    ○小平委員 高木局長の御答弁を聞いていますと、何かさらに質問するのがもう嫌になってきてしまうのですね。そういうことはもうそのとおりですよね。  ですから、私もお話ししたように、何もつくらずに助成を受けるということに対しての世の批判もある、それはもうそのとおりですよ。しかし、今回は緊急事態で、この二年間、どうやってやるかというときなのですね。そこにたまたまインドネシアのこういう要請が起きてきた。そうすると、一方で、もう農民は短絡的に、そうか、それじゃすべての米がそっちで処分、消化されるのだから減反強化は大分よくなるな、そういう淡い期待を持ってしまうのですね。現実はそんなものでないでしょう。だから、私は、先ほどの援助の新しい枠組みをつくろうということもそうですし、今回のこのことも、やはりそこはもっと、そういう批判があったらあったで、しっかりと切り返すだけの理論武装をされて進めていただきたいと思うのですよ。  私は、これについては難しいと思うこともわかるのです、だから私は申し上げたのですよ。では、その水田を有効利用する方法を考えようじゃありませんかと。今言われたようなことでしたら、水張りで一万円助成します、ところが、そんなのでは食べていけないのですよ。ほかの作物に転作する、そうしたら玉突き現象が起きて産地間競争が激化する。だからもう行き詰まってしまっているのですね。だったら、そういう水田に対して有効利用するには、先ほどもおっしゃいましたように、海外援助に向けて低コストでつくるそういう米の生産体制をやろうじゃないか、アメリカや豪州やそういう国に価格的に対抗できるコストを考えていく。それは用途によって私は持っていけると思うのですよ。ところが、それも余り乗り気でない。  そして一方では、こういうことで、こんなせっかくつくった政策大綱を見ても、なかなか効果があるのかなと思うと、非常に私は疑問視しています。また、麦、大豆についての転作奨励にしても、いろいろと条件も厳しい。これもいろいろと現場から声も上がってきております。  そういう中で、これを大きく打開するには、国内の体制づくりと同時に、世界が求めていることを日本がやっていけるのではないか、そんな思いがあって、私の考え等も申し上げながらお聞きした次第であります。  もうこれぐらいにします。これ以上お聞きしてもなかなか答弁が得られないと思うので、時間も余りないので、次に、新農業基本法のことについてお伺いをいたします。  昨年の十二月に調査会で中間報告がなされまして、もう御存じのように、大事なところが両論併記で出ておりました。今後、この夏に向かってでき得るのかどうか、その作業に今向かっているようでありますが、私は、この調査会のメンバー構成からいっても、こういう結果が出るのはあり得ることだなと思っておりました。はっきり言って、私は、農水省はもっともっと主導権、イニシアチブを持って進めていかなければ、単なる評論家的な結論に終わってしまう。それは八方美人的な形で終わってしまう。本当に、これからの二十一世紀に向かって日本農業をどうしよう、そういう形が私は何らできないと思う。まず冒頭に、そこのところを私は大変危惧をいたしております。  それで、そういう状況ではいかがかということもありて、今、国民各界各層の代表者から成る調査会も設置をしていきたい、そんなようなこともあるようでありますけれども、私は、こういう今の体制ではそう期待はできないと見ているのですが、大臣、このことについて、もう中身は申し上げなくてもおわかりと思います、どのように今後進めていかれるのか、お聞きいたします。
  46. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答え申し上げます。  農業は、国民食糧の安定供給はもとより、地域社会の維持や国土の保全、水資源の涵養、自然環境の保護といった多面的かつ公益的な機能を有しておるところでありまして、二十一世紀におきましては、人口、食糧、環境、エネルギーの問題が人類共通の地球的規模での課題となると見通されている中で、農業は将来にわたり我が国経済社会の発展の基礎をなす重要な産業であり、こうした農業を意欲ある農業者にとって魅力とやりがいのあるものにしていくことが重要である、こう考えているところであります。  このような考え方に立って、幅広く国民の意見を伺いながら、ただいま御指摘のありましたように、我が国農業農村の発展と国民生活の向上のための新たな農政の指針をつくり上げていく所存であります。
  47. 小平忠正

    ○小平委員 何か、どう言ったらいいのか、いや、確かに御答弁お聞きしました。どう切り返せるのかと苦慮しているのですけれども……。  いずれにしても、私は、この夏に向かってもうリミットが迫ってきていますし、そういう中で、今のこの私どもが受けております報告だけでは、結果的に効果ある農業基本法には私はいかないと思うのですね。  例えば、一つの例として、日本は、農業といっても、大宗を占める二種兼農業、それから、あと専業ですね。そういう、同じ農業といっても、実態は、もう中身は違いますよね。そういうことで、別々にとらえていかなければならぬと思うのです。  確かに、中山間地区対策とか、そういうことはうたわれていますよ。でも、それはその地域地域の問題等のことであって、基本的に、いろんな農政、基本的なものを、専業農業と二種兼農業、兼業農業とは、まるっきり分けたことをしていかないと、私は、実際に効果ある、実効ある農政というのは展開できないと思うのですね。だから、そういう具体的なことも何ら見えないのですね。そんなことを思うと、今回のこの農業基本法の作業に向けて、大変心配いたしております。  それで、これは抽象的かもしれませんけれども大臣は、昨年就任のときに、私は江戸っ子だ、大都会選出の農業大臣で、農業をこよなく愛する政治家であり、そういうふうにおっしゃいました。ということは、いろんな意味農業世界とは違ったところにおられる。要するに、しがらみとかそういうものがないフリーな立場ですね。ということは、自由に、何といいますか、御活動を展開できると思うのです。  そんな意味においては、大所高所に立って、我が国の、都会から見た視点でも結構ですけれども農業というものをどうあるべきかという、これについて、もちろん国際社会での活躍も期待していますけれども国内においても、この農業基本法の制定に向かって、ぜひ島村大臣が在任中にすばらしい新農業基本法をつくって、我が国の二十一世紀の農業の柱をつくり上げた、そういうことを天下に知らしめていただきたい、こう申し上げて、私の質問を終わります。
  48. 北村直人

    北村委員長 次に、神田厚君。
  49. 神田厚

    ○神田委員 私は、民友連を代表いたしまして質問をいたします、新党友愛の神田厚でございます。  まず、昨日、大臣の所信をお聞きをしまして、極めてまとまった何点かについて御質問を申し上げます。  最初は農業基本法の問題でございますが、現在、食料・農業農村基本問題調査会において論議が続けられております。昨年十二月に中間取りまとめが出され、本年夏には本答申が出されることになっております。この農業基本法において、いろいろ、理念がないとか哲学が欠如していると指摘されてきたところでありますが、新基本法の制定に当たっては、農業に対しどのような理念なり哲学を盛り込もうとしているのか、特に農業農村の持つ公益的機能をどのように位置づけをしようとしておるのか、お聞きしたいと思っております。
  50. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答え申し上げます。  社会情勢の変化や国際化の進展に対応いたしまして、新たな基本法の制定を含む農政の改革が必要となっておりまして、現在、食料・農業農村基本問題調査会において鋭意御検討いただいているところでございます。  その内容とするところは、まず第一に、食糧の安定供給の確保、続いて、消費者、国民のニーズヘの対応、さらには、農業構造の変革と農業経営の安定、また、農業農村の公益的、多面的機能の発揮、そして、中山間地域等を含めた農村地域の振興といった事項を中心議論が進められているところであります。  今後、調査会での議論を踏まえまして、本年夏をめどに最終答申をいただく予定でございますので、二十一世紀における我が国農業農村の発展と国民生活の向上を図るための新たな農政の指針をつくり上げていきたい、こう考えているところであります。
  51. 神田厚

    ○神田委員 次に、食糧自給率の問題でございます。  食糧自給率は、平成八年度、カロリーベースで四二%と、先進国の中では最低水準にあります。今後の食糧政策を安全保障の観点からとらえるとき、国内事情に加え、世界の人口、食糧、環境、エネルギー等の事情も幅広く視野に置く必要があると思っております。こうした点をどのように認識し、世界の中長期的に見た食糧の需給動向をどのように見通しているのか、また、我が国食糧自給力の維持向上を図る上での基本課題をどこに置き、どのような施策を講じようとしておるのかをお聞かせください。
  52. 島村宜伸

    島村国務大臣 御指摘のとおり、我が国の自給率はカロリー換算で四二%、そして、穀物自給率二九%でございまして、まさにぎりぎりの状況にあるわけでございます。そういう意味では、カロリー換算でいきますと、昭和四十年当時、たしか七〇%台を維持していたわけでありますが、三十年を経過して、現在ここまで落ち込んできていることを考えますと、これは常に有事に対する備えを含めて対応していくことが必要である、こう考えます。  特に中長期的な世界食糧需給の動向を考慮いたしますと、国民が安心して暮らすことができるためには、何といっても、輸入に長期的、構造的な障害が生じても最低限度国民が必要とする栄養を国内供給できるような食糧供給力を確保していくということがどうしても基本になければなりません。このため、平素から優良農地の確保、整備、また担い手の確保、さらには農業技術の開発普及等を図ることによりまして国内生産基盤の確保に努めていくことが重要である、こう考えているところであります。
  53. 神田厚

    ○神田委員 先ほども小平委員の方から質問がございましたが、WTO農業問題につきまして、二〇〇〇年までのスキームができておりますが、二〇〇〇年以降は、一九九九年から話し合いが行われることになっております。  歴代の農林水産大臣は、これまで、我が国主張を通すために、国際的な場でいろいろ理解を得るため努力をしたと述べておりましたが、島村大臣はどのような努力をしてきたのか。あるいは、さきのOECDの農林大臣会議出席をし、我が国立場を伝えたとされますが、いかなる主張をし、いかなる成果を得られたか、具体的に説明をいただきたいのであります。
  54. 島村宜伸

    島村国務大臣 OECD農業大臣会合には、ある意味では立場を異にする二つのグループがあったと大別できると思います。片やまさに農業生産大国、片や輸入に依存し、国内食糧供給を維持していかなきゃならない国々ということがございます。  我が国の場合は、他国とは比較にならない狭い農地で非常に非効率的な農業を強いられるという状況にかんがみまして、我々は、あくまで将来に向かって、食糧供給の安定を含めて、この農業の果たしている多面的機能役割というものはいかに大きいか、農業というものを果たして経済合理性やあるいは貿易面だけで判断していいものであるかどうか、それが否であるということを強く主張してきたところでございます。そういう意味では、単に市場経済的な感覚だけに立った農業というものの考え方が間違いである、あえて私はそういうことを主張してきたところでございます。  最近、アジア各地におけるいろいろな問題もございますが、歴史的にも、いわば農業大国と言われる国にも凶作に見舞われて輸出に制約等を設けた時期もございますので、これらを含めて、長期安定的な我々の農政というものは、やはり生産と輸入と備蓄、それぞれの角度から考えていくのが適当である、そう考えている旨を訴えまして、結果的には理解を得た、こういうふうに考えております。
  55. 神田厚

    ○神田委員 次の交渉に際して最大の問題は、現在特例措置となっております米のミニマムアクセスを継続するか否かであると考えておりますが、どのような方針で交渉に臨むおつもりでございますか。
  56. 島村宜伸

    島村国務大臣 我が国は、米につきましてWTO農業協定上の特例措置を適用して、関税化を行わず、輸入数量制限と国家貿易を維持いたしたところであります。このことから、ミニマムアクセスを超える輸入は確実に避けられることとなり、国内産米と輸入米を通じた全体的な数量の調整が可能となったところであります。  現在適用されている米の関税化の特例措置の七年目以降、すなわち平成十三年以降の取り扱いにつきましては、六年目に当たります平成十二年の交渉で決められることとなっております。  その際には、長期的な視点から主食である米の安定供給を図るとの観点に立ちまして、我が国農業重要性や特例措置の継続に伴う代償等を総合的に検討し、交渉に臨むことになると考えています。
  57. 神田厚

    ○神田委員 次に、林野問題をお伺いいたします。  国有林野の管理経営の方針が、昨年十二月、林政審議会から答申をされました。これは、木材生産機能重視から公益的機能重視へと転換することが高く評価されているところでありますが、従来と比べどのように変化をした管理経営が行われていくことになるのか、お聞きをしたいと思っております。
  58. 高橋勲

    ○高橋政府委員 国有林は、我が国の脊梁山脈等奥地水源地域にその大半が所在しておりまして、国土の保全等森林の有する公益的機能の十分な発揮が国民から強く要請されているところでございます。  こうした要請にこたえまして、今回の抜本的改革におきまして、国有林野の管理経営を木材生産機能重視から公益的機能重視に転換することとしております。  具体的には、公益的機能として水土保全及び森林と人との共生を重視する森林を国有林野面積のおおむね八割にするとともに、長伐期施業や複層林施業、針葉樹や広葉樹の混交林の造成などを推進することとしております。  それから、独立採算制を前提とした特別会計制度から、公益林の適切な管理等のための一般会計繰り入れを前提とした特別会計制度に移行することとし、国有林の持つ公益的機能を発揮させるために必要な業務を確実に実施することとしております。
  59. 神田厚

    ○神田委員 国有林野の問題は累積債務の問題と密接に関係しておりますが、今おっしゃいましたような林野事業の管理経営で、将来にわたりましてこういう状況が確保できる見通しでありますかどうか。
  60. 高橋勲

    ○高橋政府委員 お尋ねの国有林野事業の累積債務の処理につきましては、国有林野事業で返済可能な債務約一兆円につきましては、今後債務の累増防止のため一般会計による利子補給措置を講じつつ、約五十年かけて返済する、そして、残りの債務約二・八兆円は一般会計に承継することとしており、これにより元利負担が大幅に軽減されることになるわけであります。  こうした累積債務の本格的処理のほか、公益林の適切な管理等のための一般会計繰り入れ措置、組織、要員の徹底した合理化等による事業の効率的な実施体制の整備等によりまして、国有林野事業の財務の健全化が図られるものと考えております。
  61. 神田厚

    ○神田委員 もう一つは、組織の再編問題でございますが、国有林野事業の抜本改革のために、平成十一年一月に、現在十四ある営林局及び営林支局を七つのブロック単位の森林管理局に改組するとともに、同じく二百六十四ある営林署を九十八の流域単位の森林管理署に改組するものとしております。  国有林の所在する地域と密接な関係を有し、地域振興にも一定の寄与をしてきました国有林野事業の営林局や営林支局、さらには営林署の廃止に当たっては、地元地域事情に対する配慮が必要と考えられております。  これらの組織の改組に当たっては、その手順、地元意見の反映など、どのような方針で取り組むのか、お知らせいただきたいと思います。
  62. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  国有林野事業の抜本的改革におきましては、組織について、平成十一年一月をもって現状十四の営林局、営林支局をブロック単位の七つの森林管理局に、また、今年度末に二百二十九となります予定の営林署を、流域を単位といたしまして九十八の森林管理署にそれぞれ再編することとしております。  この組織機構の再編に当たりましては、国有林野事業がその所在する地域社会と密接な関係を有し、重要な役割を果たしていることから、それぞれの地域における社会的、経済的な事情や地元自治体等の意向を考慮しつつ、適切に対処してまいる所存であります。
  63. 神田厚

    ○神田委員 次に、海洋問題でございまして、日中、日韓問題におきまして、日中では、昨年十一月に新協定の署名が行われました。ただ、日韓問題では、現在も合意に至らず、我が国は、本年一月二十三日、韓国政府に対して現行協定を終了する旨の通告をしました。これに対し韓国政府は、報復措置として、一方的に日韓操業自主規制措置の無期限中止を通告し、韓国の漁船八隻程度が北海道沖合の自主規制水域で操業を行ったのであります。  また、一部新聞などの報道では、韓国は北方領土周辺で操業を検討しているとの報道がされております。この北方領土の水域での韓国漁船の操業は、甚だ問題があると考えておりますけれども、現在の自主規制水域内での韓国の漁船の状況はどういう状況でありますか。その点をお聞かせいただきたいと思います。
  64. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 今お話ありましたように、一月二十三日に韓国側が自主規制措置を停止いたしまして、二十四日から自主規制水域内で韓国漁船の操業が認められておるわけでございます。二十四日からきのうまででございますが、この四十七日間に自主規制ライン内での操業が延べで二百八十七隻というふうになっております。  現行の自主規制措置は、資源保護の観点から我が国漁業者が守っておりますのとほぼ同じ規制を韓国側が守るということとしておるものでございます。韓国がこの自主規制措置を遵守しないということは、国連海洋法条約に基づく資源管理体制を構築しようとしている方向に沿わないものと考えております。  今後、韓国トロール漁船が自主規制措置を守らず、我が国二百海里水域において操業を続けることとなれば、我が国漁業者がこれまで行ってきました資源管理の努力を無にしますとともに、当然のことながら漁業者の反発が高まり、韓国側にとりましても、これは決して得策ではないというふうに考えております。  水産庁といたしましては、韓国側に対し強く自制を求めますとともに、漁具被害の発生にも備えまして、現場に水産庁の取り締まり船を派遣いたしまして、常時監視活動を行っているところでございます。  なお、またさらに北方領土等のお話ございましたけれども、私どもとしましては、これらの措置につきましては、現在のところ何ら情報を得ていない状況でございます。
  65. 神田厚

    ○神田委員 金大中韓国新大統領が、二月二十六日の中曽根元総理との会談で、民間漁業団体同士の話し合いから打開を探るとの提案に同意されているというふうに聞いておりますが、今後、民間の協議のスケジュールはどのようになるのか。  また、本日、内閣外政審議室長を韓国に派遣しておりますが、今後の政府間の見通しはどうなっておりますか。
  66. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 現行の日韓漁業協定につきましては、今お話しのように本年の一月二十三日に終了通告をしたわけでございますが、協定上は、終了通告後一年間は現行協定が有効でございますので、この間、国連海洋法条約に基づいた水産資源の保存、管理を図るための新協定を締結するために交渉を行う考えでございまして、再開に向け、鋭意努力していきたいというふうに考えております。  また、日韓の漁業団体間におきましては、これまでも定期的な協議を行ってきております。これらの協議を通じまして、双方の理解を深めることも必要であると考えております。  なお、この具体的なスケジュールにつきましては定まっていないというふうに承知しております。  さらに、外政審議室長のことにつきましては、ちょっと私どもよく承知しておりません。
  67. 神田厚

    ○神田委員 最後になりますが、インドネシア援助米、さっきも質問に出ましたけれども、この問題につきまして、インドネシアからはどういう支援要請が来ておるのか、明らかにしていただきたいのであります。そして、米が余っている我が国としては最善の支援をするべきだと思うがどうか、という点も同時にお聞かせをいただきたいのであります。  支援を行う上で問題となる点は何なのか、また政府はどのような対処方針を持って臨むのかを明らかにしていただきたいと思います。
  68. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  まず、支援をする場合の問題でございますけれども政府米を利用するということになりますと、WTO協定との関係がございます。また、国産米を使えばトン当たり三十万円の財政負担になるというこの財政負担についての財源をどうするのかという問題がございますし、また一方では、伝統的な食糧輸出国との関係をどういうふうに配慮するかというようないろいろな問題がございます。  いずれにしましても、インドネシアに対する食糧支援につきましては、二月二十日の閣議決定で、食糧支援を早期に具体化するということになっております。それを踏まえまして、現在、政府部内で、どういつだ対応が可能かという点での検討を急いでいるところでございます。
  69. 神田厚

    ○神田委員 大体のことにつきましてお聞かせをいただきましたが、どうぞ大臣におかれましては、力いっぱい、所信に沿って頑張っていただきたいというふうにお願いいたします。終わります。
  70. 北村直人

    北村委員長 午後零時四十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     午後零時四十三分開議
  71. 北村直人

    北村委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。木幡弘道君。
  72. 木幡弘道

    ○木幡委員 午前中の同僚議員の質問に引き続きまして、大臣初め関係局長に御質問を申し上げたいと思います。一部重複がありましたらば御勘弁をいただきたいと思っております。  この種の大臣の所信表明のときに、決まって我々野党は、具体性に乏しい、こういう批評をするのが慣例でありますが、それはもう当然でありまして、わずか十分ぐらいの所信表明の中に具体的なことを盛りだくさんにするということは不可能であるということも承知をしておるわけでありますから、この抽象的な文言の裏にある大臣並びに農水省の各局長考え方をつぶさに国民の前に明らかにして今次の我が国の農政の進展に寄与したい、こういう一念でございますので、大きいものから小さいものにわたると思いますが、大臣並びに局長の簡潔な御答弁をお願いしたい、こう思うわけであります。  最初に、恐らく同僚の小平議員から質問があったであろうと思うのでありますが、さきのOECDの閣僚会議に御出席、大変御苦労さまでございました。実はこのOECDの閣僚会議といいますのは、恐らく、仄聞するに、ことしの五月に再度開かれるというふうにもお聞きしておりますし、ウルグアイ・ラウンドの再交渉に当たっての非常に重要な時期であるというふうに認識をしておるわけであります。  思い起こすと、細川政権の時代に、第一次産業従事者はもちろんのこと、第二次、第三次産業従事者、大げさな言い方をすれば国論がすべてこのウルグアイ・ラウンド交渉に対して関心を持ち、国益がいかに守られるかということの論議がされたということはついきのうのように記憶をしております。  あれは当然、前内閣でありました宮澤内閣のときに、それぞれ担当の、総理初め各大臣あるいは各局長が御苦労なさって、それを引き継いで細川政権のときも同じように、あの当時のことを思い出しますると、門戸開放を強力に迫るアメリカを初めとする各国、その中で最大限の努力をして、MA方式を言ってみればかち取ったという見方もできないわけではない。  そういう意味では関係当局並びにそれぞれ御尽力をいただいた方々に敬意を払うわけであります。しかしながら一方で、特に大臣の所属していらっしゃる政党の議員の方は、向こう受けをねらってかどうかわかりませんが、米を一粒たりとも輸入をしないという我々の主張を聞かなくて細川政権がこれを門戸開放したんだというふうに言っていらっしゃる。それはそれで、選挙運動絡みでもって言っているとすればまあしょうがないのかな、こう思いますが、しかしながら、こういった米鎖国主義の考え方をいまだに国民に話をし、選良たる国会議員がそれをあまねく全国の農家あるいはその他の従事者の方々に話をするということになれば、これはやはりこの国の農政の改革あるいは今次抱える難しい問題に対処するには、甚だ有害でこそあれ益はないというふうに考えるわけであります。  話はこのぐらいにいたしまして、実はOECDのかつての、宮澤、細川政権の当時の状況は、ヨーロッパ統合という話もまだ緒についたばかり。でありますから、当然、フランスやドイツを初めとする農業国というのは、顔はアメリカを向けていたかもしれませんが、心は我が国主張に大変同情をいただいた、あるいは隣の韓国についても当然私どもと同じような考え方でもって、連係プレーがとれた。  それは当然、当時の国論をバックにして、当事者の方々が世論を背景に勢いづいてこれをかち取ったという経緯があるわけでありますが、今次のOECDからお帰りになった大臣から国民に理解を求めることあるいは国民の協力をいただくことがどちらも欠けていれば、ことしの五月、あるいは引き続き行われるラウンドの第二ラウンドの、第二の大変重要な交渉に極めてゆゆしき事態になるというふうに考えるわけでありますが、そういうことを踏まえて、OECDの取り組み方、そしてまたこの五月に開かれるであろう閣僚会議にどんな考え方で臨もうとしているのか、その辺の決意のほどをまずお聞かせいただきたい、こう思います。
  73. 島村宜伸

    島村国務大臣 冒頭大変御理解をいただきまして、まず感謝を申し上げます。  OECDの今回の大臣会合の主たる、いわば絞り込んだ課題といいますと、何といっても、農業多面的機能その他そういう特性を認めるべきか、あるいは経済合理性だけでこれからの農業というものを割り切って、世界一つの単位で考えていくかという考え方と、いま一つは、同様に、食糧安全保障というものをどうとらえるのか、各国の自給率はともかく、これまた経済合理性である意味で割り切っていかなければ時代の流れにむしろ反するのではないか、こんなような意見の対立が実はあったところであります。  しかしながら、私ども、当然のことに、極東に位置する島国であって、かつ周辺を取り巻く各国、特に中国とかインドの大国も控えて、それぞれに食糧事情が、いわば将来的に安定的な保障があるということにはならない。そして、一億二千六百万の人口を抱える我が国食糧の安定供給ということを確保していくという保障、今までの歴史的な経過に照らしましても、農業大国といえども、いわば凶作に見舞われ輸出を制限したり、あるいはその反動として価格が高騰したり、いろいろございました。そういう事実も我々はきちっと指摘をしまして、将来ともに安全保障をかち得るということは、どの辺の立場で考えることか。  例えば、我が国の場合には、穀物自給率二九%、カロリー換算四二%しかない。そういうことで、我々とすれば、最低限度のものはいかに不採算であろうとも自国でこれを賄っていかざるを得ないということを説明したところであります。  当初は、先般の、二年前の世界食料サミットの際に、農業多面的機能とかあるいは世界食糧安全保障とかいうことについて、いささか譲歩し過ぎたのではないか、こんな農業大国側の反省もありまして、相当おかしなスクラムめいたものを感じたわけでありますが、我々はこれに敢然と立ち向かいまして、だんだん数がこちらにふえましたら、初日にはかなり過激なことを言っていた国々も二日目にはほとんど物を言わなくなったというようなことの中で、いわばコミュニケに盛り込まれる形になっていったことが、現実の経過としてあったわけであります。  そういうことごとを含めまして、将来に向かって、なるほど、米鎖国は、いわばこれも国際化時代に逆らうものではないかという御指摘もごもっともでございますが、御承知のように、我が国の場合、稲作というものはやはり農業基本にありまして、例えば、米の場合は、なるほど、現状は一〇三%くらいだと思いますが、大豆は二%しかありません。小麦は七%という状況ですから、私は、たしか昭和四十九年と記憶するのですが、その当時百七十七万ヘクタールあった水田のうち、ざっと百五万ヘクタールぐらい土地改良を進めまして、水田の汎用性を進めた結果が残されてきておりますから、今回の新たな対策の中で、いわば転作をしていただく方々には積極的な支援を行い、我が国が大量に輸入に依存している大豆とかあるいは小麦等も国産である程度確保することができるときに初めて、今度はお米に対しても、すべては国産でやるんだ、こういうことでない時代が迎えられるのではないかな、こういうふうに思います。  少なくも、現状ではどうでしょうか、やはり、米というものだけしか頼るものはないということを考えまして、しばらくはこれを基本に置かざるを得ないのではないか、そう考えます。
  74. 木幡弘道

    ○木幡委員 そうすると、私ども理解では、次期行われる交渉に向かっても、我が国基本方針はMA方式で頑張る、こういうふうに理解をしてよろしいのでしょうか。
  75. 島村宜伸

    島村国務大臣 それを基本に置いていくことが我々の基本の方針になるだろうとは思います。
  76. 木幡弘道

    ○木幡委員 とすると、先ほどの質問の中で、かつてはフランスを初めとするヨーロッパの諸国から温かい理解、これは表でもあるいは水面下ででも、一部は協調することができた。しかしながら、EUがあのような状態になって一つの経済体という動きになってきたときに、果たして、フランスやドイツがかつての交渉時と同じような考え方我が国に対して協力態勢がとれるのかどうか。この辺のことについて、感触をお聞かせいただきたい。
  77. 島村宜伸

    島村国務大臣 将来を見据えた場合にはどういうふうに変化するかはわかりませんが、今回の議論内容をいろいろ考えますと、当面は従前と同じ姿勢が保たれるものと私は考えます。
  78. 木幡弘道

    ○木幡委員 それから、もう一つ重要なファクターが、アメリカの議会がここに来て保護貿易主義が大変強くなってきているということになれば、かつての状況のときと今のアメリカの我が国に対する外交に臨む姿勢がどのように変化していると考えていらっしゃるか、大臣考え方をお聞かせいただきたい。
  79. 島村宜伸

    島村国務大臣 これは個人的な対話の中ではありましたけれどもグリックマン農務長官が、島村大臣に私はかたくお約束をする、将来に向かって我が国が責任を持って食糧供給をするよというような話が実はございました。  しかしながら、やはり、約束事は約束事といたしましても、これは自然が相手の面もありますし、アメリカですら凶作に見舞われたことが現実にあるわけですから、そういうときに、自分の国のものを削ってまで供給ということには期待ができませんので、特に、私は、将来に向かって地球の温暖化が進み、あるいは人口が急増している現状を考えますと、中国やあるいはインドその他、ああいう大国も含めまして、将来的な保障ということは、どこで見きわめるかはこれからのお話し合いを進めていくにいたしましても、安閑として、余り相手を信頼ベースだけでは割り切れないものがある、こういうふうには考えております。
  80. 木幡弘道

    ○木幡委員 とすると、MA方式で臨み、しかも理解をいただける国を外交努力で理解をしていただいてということで精いっぱい臨む、こういうことでありますが、その中で、先ほど申し上げたとおり、OECDの閣僚会議からお帰りになっても、もう世論はほとんど言及しておりませんね。国内における状況の変化、いわゆる応援団も余りいない、逆に言えば批判をする方も少ない、言ってみれば静かな状況ということになったときに、やはり、国民に理解を求めるものは理解を求めるようにアピールをする、あるいは応援をいただきたいものは応援をいただくということを今考えていらっしゃるのかどうか、お聞かせいただきたい。
  81. 島村宜伸

    島村国務大臣 御高承のとおり、一〇九、一〇二、一〇五、一〇二と四年来の豊作が続きまして、自主流通米が一時はたしか一一・五%落ち込んだ時期がございます。こういうことごとを見まして、私は、農業関係者もかなり認識といいましょうか、意識を大きく変えてきたように実は感じているところです。  そういう中で、十七万六千ヘクタールの減反の増加というのは、これは大変なことで、二二%増ですから、我々は大変苦しい中にそういう線を打ち出したわけですけれども、むしろ、私たちがいろいろな角度から転作その他に対しての手当てその他を進めました結果、よくぞここまで努力をしてくれたというような反応が、全国規模でいろいろなところで、公私にわたって私は聞けるわけであります。農民の意識というのは、私は、十五年前に政務次官をやった当時とは随分変わったものだな、こう受けとめているわけでして、昔のように、農業という特権意識に浸り込んだという、そういう誤解を都会の人たちから指摘されましたけれども、今はそういうものも大分もうなくなった、非常に前向きな農家の姿勢に変わったと私は受けとめている次第であります。
  82. 木幡弘道

    ○木幡委員 先ほどの大臣の答弁の中にありましたとおり、この食糧安保と農業の持つ多面的機能、これはもう当然世論もすべて周知をしておる、こう解釈をしておるんですが、しかしながら、その食糧安保の中の位置づけで一番大事なのは、食糧自給率でありますね。食糧自給率が上がらずして食糧安保を論議しても、これはもう空虚感が漂う。  しかし、今大臣からお話しのとおり、我が国食糧自給率は、もうどんどん下がり放題下がって、平成七年でもって四二%、平成八年で四二%、これが下げどまりという認識をなさっているのか、あるいは、いかほど食糧自給率を上げていかなければならないとお考えなのか、どうしたらいいのかということが大変重要な問題でありますね。これはもうここ十数年来一貫して言われていることでありますが、この食糧安保を声高に主張されるとするならば、一方でもって食糧自給率を上げるためにどんな目標でどんな手だてがあるんだというふうに大臣はお考えですか。
  83. 島村宜伸

    島村国務大臣 御承知のように、我が国の国民の主食は米でありますが、米の消費は相変わらずどんどん減少の一途をたどっております。  特に、この傾向を将来的に見て必ずしも明るいと思えないのは、一家の戸主が、年齢層で分類しまして、二十歳以上五歳刻みで、大体どういうあるじの家庭が米を食べるかという比較を見ますと、大体六十前後のあるじの家が一番米を食べまして、一番食べないのは二十歳から三十歳までのあるじの家で、その量たるや半分ぐらいしが食べません。ということは、これからの時代を担う若い方たちの御家庭が米というものを余り愛していないということを考えますと、もっともっと米の質を高めると同時に、米食というものを推進するという努力も一つ必要だろうと思います。  いま一つは、御承知のように、食糧の自給率が大きく落ち込みましたのは、一つは生活水準が向上したこともございますけれども、畜産物に対する志向が非常に高まって、これに対する飼料作物その他について大量に輸入せざるを得なくなったということが一つございます。もう一つは、やはりこれも輸入原料に頼らざるを得ない油脂ですね、この油脂類が非常に大きくふえて、大豆とか菜種とか、これを大量にまた輸入するということが自給率を大きく落とし込んだわけであります。  そこで、我が国の自給率を高める方法としては、米消費の減少を食いとめるという一方で、先ほど申し上げましたように、今までただ減反をしていたという地域にむしろ転作可能の汎用性を高めて、要するに大豆とか小麦とか、いわば国産のそういう分野のものをふやして、トータルで穀物自給率を上げるということが非常に大きな課題ではないか、こんなふうに考えます。
  84. 木幡弘道

    ○木幡委員 今の話をずっと聞きますと、農業問題というのはすべてリンクをしておりまして、やらなければならない問題がごまんとある、こういうことでありますね。もちろんそういうことでありますかち、従来の基本法の中には、こう言ってはなんでありますが、農家を見る、狭い視野でもってという表現が当てはまるかどうかわかりませんが、かつての基本法、今の基本法は農家を見て農業を見るということだけであった。しかしながら、今多面的機能とかあるいは環境を考えたとかあるいは二種兼業、三種兼業がふえて専業農家が減ったということになれば、ただ単に農業だけを考えていくということでは、農家の暮らしあるいは農村地域の環境保全その他が守れない、そういう世論あるいは皆さん方の考え方、私ども考え方でこの食糧農業農村というものをとらえてこの基本問題を幅広く意見を聴取しようということで今なされている、こういうことでありましょうが、しかしながら、大臣の所信表明の中にもありますとおり、基本的には従来の戦後五十年の農政の中で改革すべきものは大胆に改革しなきゃならない、こううたわれていますね。  ということだとすると、大臣以下農水省が挙げて改革に取り組んでいるとするならば、やはり、今食糧自給率の問題でいろいろ出ました。結局、米だけを考えるわけにはいかなくなったということを言外に話されている、丁寧な言葉ではありますが、米だけを考えているということでは食糧自給率の向上もできないであろう。とすれば、そのほかの転作作物をつくるとするならば汎用水田化等々の問題もあるであろうというふうに、今短い答弁の中にいろいろ問題が提起された。  そういうことを盛り込んで新しくできるでありましょう農業基本法については、やはり思い切った改革をしようということが大臣の所信表明の中に、言外に強い意思が見えるのであります。しかしながら、ことしの予算編成を見てみますと、相も変わらず数少ない、私どもからすれば非常に財政が厳しき折であるからやむを得ないのかなとは思いますが、大変厳しい農業関係予算の中で、やはり従前どおり公共事業に占める比率というのは相も変わらず高いということを考えますと、じゃ果たして、これはただ単に公共事業のみに力を入れて、そのほかの多面的機能を充実させるためのソフトに対する予算化とか、その他の問題に対する予算化というのはこの予算書を見た限りでは私どもには伝わってこないのでありますが、その辺についてはどうお考えですか。
  85. 島村宜伸

    島村国務大臣 いわば農村に対する公共事業の充実というのは、私は将来に向かってまだまだ大事だと思いますし、我が国の場合、大都会においてはともかくとして、農村部に関する社会資本の整備というのは他の先進国に比べて大変おくれていると思います。  問題は、そういう面に力を入れて、道路であれ橋であれ交通機関であれ、いわば公共事業というものをきちっとして、排水、下水その他に至るまですべての面で近代的ないわば都会というものをだんだんにつくっていきませんと、例えば、先生よく御存じだと思いますが、農村は嫁不足である。なぜ嫁不足かといえば、文化の水準が大きく落ちて、とてもカルチャーショックを受けるようなところに嫁に行くのは嫌だという方もいるでしょうし、水洗便所じゃないところは嫌だというし、あるいは一時間に一本あるかないかの汽車じゃ嫌だという面もあるでしょうから、私はそういう面も含めての国土の総合的な開発の推進というのは当然必要なんだろうと思います。  それで、最近でこそ多面的機能ということが前面に出てきましたけれども、私実は十五年前に政務次官をやって以来、方々で講演する際にいつも言ってきたのは、特に都会では、農村の果たしている役割というのは単なる農産物を提供するだけじゃないんですよと。農村にそれぞれ業を持ち、たとえ専業でなくても農業を営み、その地域を管理する方がいるから自然が荒れ果てないで国土が保全されているという面も大きいし、それから、それぞれの地域に定着している方々がおられるから交通機関が成り立ち、それぞれの地域に商店街もあれば文化施設もあるんですよと。そういうことは、ひいては都会の過密に対する対策でもあるし、地方における過疎対策でもあるんだ、こういうことを言ってきたところでありまして、私は、公共事業というふうにとらえますと、前のようにむだなものをつくるというようないろんな意識にとらえられましたけれども、最近はこれだけの財政事情ですから、厳しい調査あるいは検討の結果における公共事業というのは立派にこれからの農村開発に向けて大きく貢献するもの、そう考えております。
  86. 木幡弘道

    ○木幡委員 それは一つ大臣考え方として承りましたが、しかし私の考えでは、限られた予算の中、これから先我が国の経済が右肩上がりにどんどん伸びていくということはなかなか予想しにくい。とすれば、税収も横ばいもしくは精いっぱい努力をしながらほんの少しでも税収が上がっていくということを望むというのが、今日においては予想し得るぎりぎりの状態であろうと思うんですね。予算もこれから急激に伸びるということはあり得ない、あり得ないというよりはなかなか難しい。とすれば、限られた予算の中で従来と同じような農政に対する取り組みの予算執行で果たして、新農業基本法をつくって、これはただ新しい法律はっくりました、手法は同じでございますよということになれば、何が農村にとって、農業にとって、我が国にとってプラスになると思うかというか、私どものような考え方理解をしていただかなければならない。  それは当然、今大臣がおっしゃるとおり、公共事業の中にはもちろん面工事の圃場整備事業もある、老朽ため池の補修、改修事業もある、農免道路の問題もある、あるいは湛水防除事業といって干拓地の水を吐き出す事業もある、いろいろある。あるいは今大臣指摘のとおり、農村集落排水事業といって農村地区の下水道事業もある、あるいはひいては、今回は若干減らしたようでありますが、農村公園の設置まである、盛りだくさんにいろいろある。  しかしながら、つぶさに私どもの地方を見た場合に、農村公園はできたがそこで遊ぶ子供がいない、あるいは立派な道路はできたがそこを通行するような通勤客がほとんどいない。それはなぜかといえば、農村の疲弊化というのは、農村でお金を稼げる場所があるかないかということなんでありますね、それがなければこれは生活ができないのでありますから。  とすれば、農村で生活ができるための所得を獲得できるような施策を講じるということが農村を守ることなんであって、ですから、新農業基本法考え方というのは、専業農家だけではない、もう二種、三種兼業農家がふえている農村の現状を考えたときには、公共事業だけに比重を高くする予算ではなくして、そういったまさに大臣がおっしゃるような多面的な機能を充実させるため、そしてまた農村を疲弊させないために、農村地区に住んでいる方が生活ができるための所得を得るような施策にまで広げて考えていかなければ私どもの国の農村は守れない、こう思うのであります。  そういうことを考えますと、やはり再度お尋ね申し上げますが、これから先の農業関係予算の中で、この公共事業の比率を大胆に改めていくという考え方がありやなしやを、大臣の答弁からお聞きしたい。
  87. 島村宜伸

    島村国務大臣 当然に、おくれている農村と言っても決して言い過ぎじゃないと思いますから、これからも改革に次ぐ改革を進めていくというのが当然でございます。  ただ、先ほど来の御意見の中で、私が少しく考えを異にいたしますのは、私はかつて工場誘致を推進した立場にあったことがございます。そういう場合にも、やはり当然問われるのは、交通機関その他の社会資本がどういう状況にあるか、そしてまた働き手をどういうふうに確保することができるか、そういうことごとの両者の言い分、両者の要求がございまして、そういう中で初めて工場誘致が成り立ってくるわけです。  今はなるほど不況のどん底ですから、その意味では多少、人手その他について何も農村まで行かなくてもということになりますが、再び経済がある程度力を盛り返して、そしてまた人手を大きく要求するような段階では、私は、立派にそういう整備を進めておけば、農村にも工場その他の進出が十分あり得るだろうと思いますし、それらの整備を進めていくこともまた、全国の総合的な、公平な開発という意味合いからも必要だ、そう考えております。
  88. 木幡弘道

    ○木幡委員 農村地区に企業を導入するという農村工業導入法という法律がありますが、これはもう農家すら覚えておりません。それから、私どもも、頭の隅にあるから、今大臣の話でもってぼんぼんと頭をたたいて思い起こしたほど、もう実態は農村工業導入法などという法律は生きていないのですよ。ですから、新農業基本法を作成するに当たっては、農村地域にお金が稼げる、農家の方々がお金が稼げるような施策のために、これらいろいろもろもろの法律はあるが、ここは思い切って、新農業基本法の中で幅広く意見を聴取して、もって農村地域の疲弊化を防ごうということになれば、やはり単に農業関係の公共事業の予算の枠をそのまま維持しているということには何ら抗弁権が成り立たないと私は考える者の一人なのであります。  これをずっと言っておるとこれだけで終わりますから、具体的に話しますと、実は、それじゃ、しからば、農業関係の公共事業の予算の中身についてでありますが、実はこれらの予算はすべて受益者負担が伴うものであります。受益者負担が伴い、そして市町村の負担が伴い、都道府県の負担が伴い、それで国費と相まって行う事業がほとんどであります。すべてではありません。  とすると、今、例えば面工事一つをとりましても、ようやくここ二、三年来、従来の圃場整備事業の間違いに農水省当局も気がついて、今までですと、ただ、六角形や八角形の田んぼを真四角にすれば省力化になるであろう、機械化農業対応できるということで、面工事、区画工事だけに主力を置いてきた反省に基づいて、やはり省力化のためには水回り、要するに、かんがいと暗渠と排水の一体工事、しかも、水が行かなければ乾田になり汎用化ができるというふうに、ここ数年ようやく気がついてきた。それはそれでいいことであります。  しかしながら、この状態の中でいつも論議をされることは、一方で国費を使い、そしてまた受益者負担を伴って工事をしている片一方でもって、良田が転作あるいは休耕田になっているということを考えますと、総合的な施策がマッチしていないということは、もう黙っていて農村部を歩けばわかるわけですね。まあ、その問題は別にして。  しかも、こういう状態であるからこそ、農家の負担が物すごく重圧になってくる。つぶさに見ますると、農家の方々は率直に言うのですが、自分でブルドーザーを借りて、そして面工事をすれば安く上がるのじゃなかろうかと。土地改良区にお願いせずに、自分たちで表土をとって土を動かして、これに水平勾配もしくはある程度の勾配さえとれば、もっと安くできるのじゃなかろうかという考えを常に持っているのであります。  とすると、ここでお聞きしたいのですが、私の浅知恵で、すべて農地関係の工事は高いものなのかどうなのか、あるいは物によっては実際のぎりぎりのものもあるでしょうしという答えが出るやもしれません。しかしながら、一方で、国全体の公共事業をこの三年の間に一〇%の単価切り下げ、一〇%以上ですね。とすると、農地関係のもろもろの工事、今ずっと言いましたが、これは全部言うと時間がないですから、一つ、二つ答えていただければいいのですが、これを安くする努力というものはどのように行っているのか、お聞かせいただきたい。
  89. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 ただいま先生の御指摘にございました土地改良事業を安くする努力、これにつきましては、昨年、総理の御指示に基づきまして、三年間で一〇%事業のコストを引き下げるという目標のもとに、私どもコスト引き下げの具体的な方策を見出すことに全力を挙げております。  例えば今、具体的に申し上げますと、部材でございますが、これを現地で施工する方式から、既製品を使うとか、あるいはリサイクル材、中古品を使うとか、あるいは輸入した部材を使うとかというような部材、資材のコストダウン。それから、労務費等につきましては、これは適正な単価であることが、今度は適正な施工あるいは適正な賃金水準を維持するという点から必要でございますので、これは三省で協議いたして適正に決定しているところでございますけれども、土地改良の現場現場におきまして、先生がおっしゃいましたように、例えば四角にするということから、自然の、例えば棚田等につきましては等高線に沿った用排水路、あるいは畦畔、これに沿った工事をするというような、最も現場に即した工法による施工といったような工夫をいたしております。  私ども、この三年間で一〇%を目標に年々少しずつ工事の単価の見直しを行っておりますし、また現場でも、できるだけ公正な競争のもとに効率的な、かつできるだけ安いコストでの事業の実施を努力いたしているところでございます。
  90. 木幡弘道

    ○木幡委員 これは、さらなる努力をお願いしませんと、市町村が負担金を捻出できないために、農家が望んでもできないという事業がこれからどんどん出てくる、それから逆に、市町村が一生懸命地域の農家のため、農業振興のために努力をして一般財源から捻出をしても、今度は農家が負担がし切れないということを考えますると、この種のものは厳正に単価切り下げのための努力をしなきゃならない。  大臣、ちょうどこの辺でもってきついことを一つ言いますから。一つは何かといいますと、実は土地改良区というのがございますね、土地改良区の上に土地改良区連合会というのがある。これは土地連といいますが、土地連というのは、恐らく大臣あるいは大臣の所属する政党にとっては大変ありがたい組織であります。  今、昔農協、今土地連、こう言われていますから、選挙に一番強い組織と言われております。その土地連は、これはあまねく、ほとんどの都道府県がそれぞれの市町村から拠出金をいただいております。言ってみれば国民の税金をいただいて運営している。にもかかわらず、一方でもって土地連そのものはどういう仕事をしているかといえば、ほとんど受けたものは外注にしている、ほとんどの場合外注が多いのですから。とすれば、あの団体は何だ、かすめ取り団体ではなかろうかという極論をする者さえいる。それが果たして単価の高騰につながっているのではなかろうかという率直な農家の疑問にどう答えるか。土地連が必要ならば、こうこうこういう理由で土地連が必要だということを言っていただかなければならない。  それから、政治活動は、あまねく一億二千万、成人たる者自由だということは、それはもう当然論を待ちません。しかしながら、拠出金をいただいている団体が、法律上あるいは制度上、ただ名前を変えて政治連盟を使えば、土地改良区の役員が打って一丸となって、この地区の農地の予算をもらうためにはこうしなければならないというような選挙運動をするようなことは、もうそろそろ企業ぐるみ、組織ぐるみの選挙はなしにしようということからすれば、厳に戒めるということが必要であろうと思う。もう時間がない、あと十三分しかないもので、答弁は要りませんが、それもぜひ頭に入れていただきたい。  実は、一つその基盤整備事業と一緒の予算の問題で、大臣の所信表明の中に、今次の財政構造改革法案に基づいて、ウルグアイ・ラウンド関連事業は二年延長、こう書いてあります。しかし、一方で新聞を見れば、大臣の党から、十兆円の補正だと言われています。十兆円の補正ならば、私どもは、エゴかもしれませんが、ウルグアイ・ラウンドの二年延長なんかしないで、それはもう当初計画どおり存分な予算でもってこれを実施できるのではなかろうかという意見が出てきているのです。この補正予算の問題、今、当初予算の大臣の所信表明を聞いて論議をしている中で十兆円の補正予算だということになれば、これはここでもってちんどん屋の紙芝居みたいな形になるというふうに思うのですが、今の一連の問題について簡潔にお答えいただきたい。
  91. 島村宜伸

    島村国務大臣 ウルグアイ・ラウンド農業合意に基づく例の補正につきましては、昨年、御承知のように自主流通米価格が急落をいたしまして、これに対する対策を講じないことには農家は年を越せないという悲鳴がそこここに上がりまして、これに対する対策を私どもは誠心誠意大蔵当局に訴えたところであります。  またその一方で、二年延長の問題は、これは可能な限り急がないで済むものは後回しにする、とりあえず、農家が活性化するためのいわば費用対効果といいましょうか、あるいは即効性といいましょうか、そういうことごとを含めて考えた結果、あのように割合を改めた、こういうことでございます。
  92. 木幡弘道

    ○木幡委員 残り七、八分ですから、最後の、もういっぱい聞きませんので、系統農協組織についてお尋ねをします。系統農協並びに農業委員会の問題。端的にお答えください、時間がないものですから。  一つは、農業委員の問題、農業委員会の問題です。現実をずっと列挙すると、農業委員というのはもちろん公職選挙法に基づいて選挙をするということになっていますが、実際はもう立候補する人がいない。一生懸命探して歩くという状態。  それからもう一つは、農業委員の本来の仕事というのは、戦後の農地解放以降、農家の利益を保護し、もって地域の農業振興のために寄与するための自由濶達な意見の交換をするということまで幅広く入っていったのでありますが、今残されている顕著な仕事は二つしかない。  一つは何かといえば、農家の方々がついうっかりして、当然農業に使うことができないような農地をうっかり手続をしないで物置なんかつくっていたときに、農地法の違反として摘発をする業務。もう一つは何かといえば、これも先ほどの土地連と同じように、農業委員会そのものが、大臣の所属している政党の大変有力な支持推薦母体になっている。この二つしかない。  とすれば、農業委員会制度というものは、恐らく仄聞するに、この調査会の中にも見直しについて意見があったとお聞きしておりますが、この件について一つ。  それからもう一つは、系統農協の中で、ついこの前の新聞では債務超過の農協が八十四あったとか百近くあったとかということでありますが、この中で、私が思いますに、六千八百五十億円の住専の問題、大変私ども反対したにもかかわらずこれが強行されてしまったという思いが強い。  その一方で、私がこの同じ農水委員会で、農林中金を初めとする系統農協でアメリカの財務省発行のTB、いわゆるトレジャリーボンドですね、アメリカ財務省発行の国債を系統農協が幾ら持っていますかという質問をしたときに、四兆三千億と記憶しておりますが、系統農協で四兆三千億程度のTBを持っておりますという答弁をいただいたことがある。とすれば、あのTBが今あるのかないのか。あるとするならば、火急の事態のときに六千八百五十億円を国民の税金から奪うことなく、このTBを、四兆三千億円のうち一兆円でも売れば系統農協の今次の厳しい状況を救うことができたのではなかろうか、こう思うのでありますが、その問題について答弁をいただきたい。  それからもう一つは、矢継ぎ早に言いますから、時間ないですから。もう一つは、系統農協の中で、実は住専に絡んでと言ったらおかしいのでありますが、ほとんどが開発行為による員外貸し付けでありますよ。とすれば、その後六千八百五十億円の後始末として、系統農協の中で背任、横領あるいはその他の問題で刑事責任を追及されたというのは一言も聞かない。どこからも出てこない、私の記憶では。  とすれば、これも大蔵の問題と同じでありますが、こういった問題については何ら責任を明確にせずして国民の税金を投入するということがまかり通ったならば、これは、この国は税そのものに対する意識が、政府並びに国会は何をやっているんだということになるのであります。その問題について、これ、二分ぐらいで答えてください、最後に質問ありますから。
  93. 熊澤英昭

    ○熊澤政府委員 お答え申し上げます。  まず第一点の農業委員会についてのお尋ねでございますが、確かにある意味では、今先生が御指摘になったような問題が提起されているということは私ども承知をいたしております。  そこで、私ども農業委員会制度の役割あるいは今後のあり方について検討を進めているところでございますけれども、ただ、現在の農業委員会役割につきましては、先生が御指摘になられましたように、農地法関係の権限、それと同時に地域における農地の流動化のあっせん、あるいはその地域の農業の担い手を育成していこう、そういう農政活動の面もかなり最近では力を入れてきているということは、これは先生御承知のとおりだと思います。したがいまして、今後の農業委員会のあり方を考える上ではへそういった農政面での活動をさらに強化していくような方向での議論をすべきだというふうに考えております。  そういう観点から私ども検討いたしておりますが、他方で農業委員会、さらに県の農業会議あるいは全国の農業会議所自身におきましてもそういったあり方についてみずから検討するということで、昨年の全国大会におきまして農業委員会制度、農業会議所のあり方についてみずからそういった点も含めて検討するという方向を打ち出しておりますので、私ども十分連携をとりながら検討を進めてまいりたいというふうに考えております。  それから、第二点目の農協系統の再建の問題でございますが、今先生が御指摘になりました八十四農協、私ども昨年、平成八年度の決算をベースにいたしまして試算したところで、大体八十四の農協ぐらいが債務超過に陥っているのではないかというふうに考えております。  そこで、私どもこうした農協につきましては、ことしの四月から早期是正措置が導入されますので、そうした状況を解消しなければならないわけであります。したがいまして、現在一部の農協については、出資を追加するということで債務超過を解消できる農協がございます。また、多くの農協につきましては、やはり近隣の農協と合併ということによって自己資本率を維持するという手法をとらざるを得ないということで、昨年の臨時国会でそうした合併促進のための貯金保険法の改正も成立させていただきました。  そうした法律の活用等によりまして、今後ともこうした破綻農協につきましての処理についてそれぞれの系統組織あるいは県とも十分連絡をとりながら、全力を挙げて取り組んでまいりたいというふうに考えております。  なお、最後の点で、農協の不祥事における責任追及の問題の提起がございました。これは、それぞれのケースでかなり違っておりますけれども、私ども承知をいたしております限り、農協の役員あるいは職員が不祥事によりまして当該組合に損害を与えたという場合には、ほとんどの場合、刑事訴追、民事訴追がなされているというふうに承知をいたしております。  それで、そうした個別の単協以外に、ここでもう一つ追加して申し上げたいのは、貯金保険機構が発動した事例が過去に四件ございます。つまり、全国段階でそうした破綻農協の処理をした事例が四つございますが、その四件につきましては、すべて民事責任、刑事責任の追及、つまり告訴が行われております。また、役員が私財を提供したという事例もございます。そういう意味で、全国段階で支援を発動した事例については、すべて刑事、民事の責任が追及されているというふうに承知をいたしております。  以上でございます。(木幡委員「TBの問題、大至急」と呼ぶ)  農林中金の運用につきましては、貸出率はもちろんほかの銀行に比べて低いわけでございますので、どうしても債券の運用になるわけでございます。先生が御指摘になりました数字は、外国債券の総体の数字であると思います。今後とも、中金としては、やはり健全な経営を志向しようと思いますと、どうしても安全な債券の運用ということを心がけざるを得ないと思われますので、そういう意味では、今後とも運用の主体として債券はかなり有力な手段になろうと思われます。  なお、先生の御指摘になりました点に関連して申し上げれば、今後、農協の再建に当たりましては、基本的には県段階におきます合併を中心として再建を進めてまいりたいというふうに考えておりますけれども、そういう手法の中で、貯金保険機構あるいは貯金保険機構の中で系統の相互援助システムがございます。そういう中で農林中金は出資をし、また資金支援をしておりますので、そういう方面で中金の努力をさらに期待したいというふうに考えております。
  94. 木幡弘道

    ○木幡委員 時間がありませんが、実は、四兆数千億、いまだにあるのであろうと思います。まだ今精査していないようでありますが。  ついこの前、経企庁長官、大蔵大臣が、我が国の外貨準備高が二千億ドル、こう言っています。二千億ドルの中に、今言った農林中金等々で持っているアメリカ財務省発行のTB、四兆なのか、実数は八兆なのかわかりません。私どもが聞いているのは、ついこの前発表された四兆数千億。とすれば、都市銀行を初めとする大手銀行も、恐らくこれの十倍あるいは十数倍あるのであろうと思うのですね。  これを売却できない。アメリカからの圧力でもって売却ができない。そして、いわゆる政府あるいは関係当局からぜひアメリカの国債を買ってくれといって、買ったものなのかどうなのか。恐らく買ったのであろうと思います。すると、苦しくなったからこれを売りますよと言う。売らないでくれ、じゃ、しからば助けてくれということで、住専の問題や今次の三十兆円の問題が出てきているのではなかろうかということ、これが邪推であればいいのでありますが、本当だとすれば大変ゆゆしき問題になるのであります。これがすべてやみの中であります。  とすれば、こういう問題をまたの機会に明らかにしたい、こう思いますので、大臣初めそれぞれの局長はそういう問題を認識して、この次のこのような機会のときにお願いをしたい。  最後に一言。今、冒頭から申し上げましたが、大臣の所信表明の中に、今次の我が国の農政を考えたときには改革すべきものは改革をするという不退転の決意がにじみ出ていると私は解釈をしておりますが、残念ながらきょうの答弁では、言葉ではそうなっていましても、公共事業の比率の問題は、これはこれでいいんだと、従来の手法をそのままお聞かせいただいたような感がぬぐい切れない。  とすれば、またの機会に論戦をいたしますが、ただ単に調査会を開いて意見を聞いても法律をつくっても意味がない。どういう形でもって具体的行動を起こすかということがなければ、私どもの国の農政の進展はあり得ないと思っておりますので、今後さらなる、考え方を変えるべきものは変える勇気を持っていただき、そして実行するものは実行するという勇気を持っていただきたいことをつけ加えまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  95. 北村直人

    北村委員長 次に、宮地正介君。
  96. 宮地正介

    ○宮地委員 新党平和の宮地正介でございます。  きょうは、平和・改革を代表いたしまして、島村農林水産大臣の所信表明に対しまして、一時間程度の質問をさせていただきたいと思います。  最初に、私は、今国会の大変重要な国民に対する政治課題一つに、我々政治家並びに官僚のいわゆる政治倫理、公務員の倫理の問題が、国民から今大変に注目をされていると思うわけであります。  特に今回の大蔵省における不祥事件は、これはまさに橋本内閣の大変重要な責任の問題であろう、単に大蔵省における不祥事件の問題として終わらせてはならない、橋本内閣の責任の名において、各省が襟を正して国民の信頼にこたえる重要な局面にあると私は考えております。  そこで、農林水産大臣に最初にお伺いをいたします。  この大蔵省不祥事件をどのように、橋本内閣の重要閣僚の一人として責任を感じておられるのか、また、この問題を通じて、農林水産省の官僚に対してどのような指導監督をしてこられたのか、この点についてまずお伺いをしておきたいと思います。
  97. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答え申し上げます。  まず第一に、今回の大蔵省の不祥事の問題でございますが、これは、多年にわたります慣習に身を堕して、知らず知らずのうちに落ち込んでいる面もあろうと思いますし、また、予算編成の中枢を握るといういわば権力を背景に、世間の動きに甘えたといいましょうか、あぐらをかいたといいましょうか、そういうことの中にだんだんに醸成されたものということでございまして、これは、基本から、根本からこれを改めなければならないと思っているところであります。  また、私ども農林水産省につきましては、私は本年の年頭の訓示の際にも申したところでございますが、型どおりのあいさつをむしろ抜きにいたしまして、私は、この役所にやる気で来て、全力投球で取り組む、まことに恐縮だけれども、本気でやる気のない、惰性に身を任すような方は、もうこの際やめていただきたいと。二つ目には、何といっても権力といいましょうか大きな権限を持って仕事をするわけですから、通常の対応をしている場合に、ともすれば権柄ずくにとられても仕方がない面がある、やはり公務員たるものは謙虚、誠実を旨としてやってほしい、このことも守れない人はやめていただきたいと。三つ目は、明治十四年以来百十七年に及ぶこの輝かしい歴史と伝統、これは一朝一夕にでき上がったものではない、この先輩の築いた伝統というものをよりょく磨いていくのが我々の責務であって、これを汚すようなことは全く言いわけの余地がない、これまたそういう立場の方はやめていただきたい、そこまで私は突っ込んで申したところでございますが、私は、少なくも、愛する農林水産省職員は今、そういう気持ちを皆さんがそれぞれひとしく持って頑張ってくれていると信じておるところであります。  なおまた、具体的には、職員の綱紀粛正につきまして従来から機会あるごとに注意を喚起し、いわば指導者たる者はそれぞれの責任に立っておりますが、一昨年十二月には農林水産省職員倫理規程というものが定められておりまして、綱紀の粛正に努めているところでございます。我々は、少なくも国民に胸を張って、誇りを持って仕事をさせていただく、そういう気持ちに貫かれているつもりであります。
  98. 宮地正介

    ○宮地委員 平成八年の十二月に、いわゆる事務次官の申し合わせ事項に伴いまして各省が職員の倫理規程をつくられました。大蔵省の職員の倫理規程、また農林水産省の職員の倫理規程は全く中身は同じであり、恐らく各省同じ中身の倫理規程ができ上がっていると思います。その倫理規程に基づいて、今日まで官僚の諸君の倫理が守られてきたのかどうか。特に、昨年来、事務次官通達の「特殊法人等の綱紀粛正について」という、そうした内容の通達が省内に出されております。もう一通、「官庁綱紀の粛正について」、こういうことで、本年一月二十九日に二通の通達が出ているのみであります。  規程をつくった、そして大蔵省の不祥事件が起きて逮捕者が続出した、そして本年一月二十九日に事務次官通達が二通、全く抽象的な内容の通達が出されているわけであります。果たして、これで本当に農林水産省内の綱紀の粛正が守られ、実行される、そうしたものになるのかどうか。  大変残念でありますが、農林水産省におきましても過去において収賄罪で逮捕された、そうした幹部の実績もあるわけでありまして、決して大蔵省の事件を人ごとに済ましてはならない。今大臣が答弁したように、本気になって、心身ともに健全な、まさに官僚としての、国民に奉仕をするというその精神に立って今取り組んでいらっしゃると思いますが、果たして大丈夫なのかな、こんな感じがしているわけでございます。大臣、この点について再度御確認をさしていただきたいと思います。
  99. 島村宜伸

    島村国務大臣 ただいま申し上げたとおりでございますが、また御指摘のありましたように、大蔵省の金融検査官の逮捕という事件がございました。この際にも、一月二十九日、厳正なる綱紀の保持について努めるよう再度周知徹底したところでございますし、私が知る範囲においては、例えば省内においては、各庁各局それぞれに長官、局長を先頭に、これらについては鋭意、こういう問題を我が省からは出さないという基本に徹した周知徹底が行われている、私はこう確信をいたしております。
  100. 宮地正介

    ○宮地委員 それでは、大臣の決意はわかりましたから、食糧庁長官水産庁長官と、そして林野庁長官代表して一言ずつ、私の今の質問に対し決意の表明をしていただきたいと思います。
  101. 高木勇樹

    高木(勇)政府委員 お答え申し上げます。  ただいま大臣が答弁されましたように、ことし一月の大臣訓示の中で三点申されたわけでございまして、また倫理規程等も定められております。そういったことについてきちっと、私ども、職員ともどもしっかりと公務を遂行するということで頑張っていきたい、こう思っております。
  102. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 もう基本的には、今食糧庁長官が述べたと全く同じでございます。  我々公務員といたしまして、公務員としての倫理をしっかりと頭に置きながら仕事をしていきたいというふうに考えております。
  103. 高橋勲

    ○高橋政府委員 公務員としての倫理をきちんと守ってしっかりと職務を遂行するように職員に徹底し、仕事に励んでいきたいと思っております。
  104. 宮地正介

    ○宮地委員 各局長代表して堤官房長
  105. 堤英隆

    ○堤政府委員 綱紀の粛正につきましては、大臣から常日ごろから厳しく指導を受けているわけでございますし、私ども、公務員としまして一人一人が自覚を持って対応するということと同時に、監督者として、職員の中にそういうことにつきまして周知徹底を図ってまいりたいというふうに考えております。
  106. 宮地正介

    ○宮地委員 大臣大臣の決意は私わかりました。また、今、代表の長官、官房長からの決意を伺いました。  ただ、今回の大臣の所信表明の中身を私も精査をさしていただきました。確かに、農業、水産業、林業等の政策についてはしっかりとそれなりに所信表明の中に書かれております。しかし一大臣がおっしゃったその決意の、綱紀粛正の問題については、残念ながら一言半句たりともこの所信表明の中には入っておりません。私は、この所信表明は官僚の手でつくられたと思います。当然大臣がチェックをされたと思います。しかし、大臣が橋本内閣の有能な、また重要な閣僚の一人であるならば、今この国会に国民が求めているものは何なのか、また各省の官僚に国民が求めているものは何なのか。それは倫理です。せめて綱紀粛正の四文字あるいは倫理という二文字、この所信表明に入ってしかるべきではなかったか、私は大変残念に思っております。  この点について大臣の見解を伺っておきたいと思います。
  107. 島村宜伸

    島村国務大臣 今は倫理法の検討がなされている段階で、私はこの行き方に水を差す気は毛頭ございませんが、私は、倫理というのは本来心の持ち方にあると考えておりまして、文字にあらわすことの前に、個人個人がそのことをわきまえて行動するということが必要であると考えております。  現に、私はもう政治活動を始めて二十年を超えるわけでありますが、単なる代弁者でなくて、我々の一挙手一投足が我々の地域のいわば知性とか品性とか道徳観を代表するという役割を担っていると、私は地元の有権者に対しても再三このことを申し続けてきた人間でありますので、活字について、あえて入れなかったことについて御不満はあろうかと思いますが、私は平素の活動の中でそのことについては周知徹底をいたしているつもりでありましたので、その点、書き落としたところでございます。
  108. 宮地正介

    ○宮地委員 わかりました。活字にはないけれども、それなりの決意として、農水省に対しては厳しく倫理観を持って今後とも監督指導していく、こういうふうに私は理解をして、活字にはないけれども大臣所信の中には、心の中には、厳しく対応しているのだ、書かれているのだ、心の中にはしたためていられるのだ、こういう理解で了としたいと思います。ぜひ、省内におきましても、大蔵省の二の舞のような不祥事件が今後生じないよう、厳重によろしくお願いしたいと思います。  蛇足でございますが、今回の大蔵省のこの不祥事件の発覚の経過も、御存じのとおり、総会屋に対する利益供与、この問題が発端になって捜査当局のガサ入れが入って、そのガサ入れの中から物が捜査当局の手に渡って、銀行、証券、そして大蔵省等の内部資料が全部捜査当局の手に入って、そのチェックの中で芋づる式にこうした多くの逮捕事件という大変残念な事件が次々と発覚をしているわけであります。  捜査当局の、司直の手が入らなければわからない、こういうことも過去においては往々あったわけであります。農水省の官僚の諸君におかれましても、こうした経緯の中で、大蔵省の不祥事件がどんどん今暴かれている、おれたちのところには司直が入ってないからなどという甘い考えはないと思いますが、国民の大事な奉仕者の官僚の諸君でありますから、ましてや、これから二十一世紀に向けて、農業、水産業、林業という重要な改革をして、まさに蘇生じ、生まれ変わった新しい農業、林業、水産業をつくり上げていかなくてはならない重大な局面にある農水省でございますので、ぜひそうした重大な受けとめの中で今後頑張っていただきたい、このことを強く要請をさせていただきたいと思います。  そこで、限られた時間でございますので、若干順序は異なりますが、最初に、水産業関係から重要な案件について少し質問をさせていただきたいと思います。  まず、日韓漁業協定の終了通告に対しまして、これから一年間、韓国側と新協定に向けていろいろ折衝をしていかなければならない、そういう段階に来たと思うわけでございますが、農水大臣、今回の終了通告の後、韓国側に対して、新協定締結へ向けて大臣として今どのような御努力をされているのか、この点についてまずお伺いをしたいと思います。
  109. 島村宜伸

    島村国務大臣 この日韓漁業協定は、昭和四十年締結以来、三十有余年にわたってずっとその経過を見てきたところでございますが、一昨年、国連海洋法条約の批准を機会に、日韓両国はいろいろ機会を持って話し合いをしてきたところでございます。首脳会談六回、外務大臣の会談が十三回を初めといたしまして、三十有余回いろいろ熱心なお互いの話し合いを進めてきたところでございますが、ついに妥結に至らず、本年一月二十三日に終了通告を行ったところでございます。  我々は、これから一年間猶予期間がございます。この交渉期間に可能な限り機会をとらえて、この新協定締結のために努力をしていきたいという基本に立っております。特に、民間ベースの定期的な話し合いというのはずっと持たれてきておりますので、例えばそちらの側からは実際の当事者同士の話し合いも今行っているところでありますから、それらも当然に参考にいたしますし、我々も、先方とそういう機会を持ち得れば、早速にその話を再開をしたいと思います。  現に、OECD会合で、それこそ内閣ができたばかりでありましたので、閣僚経験者であるOECDの大使と話し合う機会がございましたので、私は、我が国考え方というものをつぶさに話をしまして、何か一方的に日本から終了通告をされたというような印象にとらえられたとすればそれは実際は間違いであるということを言って、事実のままに今までの経過を話したところであります。  したがって、我々とすればいつでも話し合いに応ずる用意があるので、向こうもそういうことを言いましたので、あなたの方からそういうことを言われるまでもなくまた前向きな話し合いが再開されることを希望している、こう申したところでございまして、これから可能な限り早い機会にまた話し合いの場を持っていきたい、こう考えております。
  110. 宮地正介

    ○宮地委員 実は、ちょうど一月二十三日に終了通告を日本側がいたしまして、その後、金大中大統領の就任式が二月二十五日に行われた。日本から総理大臣経験者の中曽根元総理と竹下元総理が御出席になった。竹下元総理は日韓議連の会長をされておりまして、そのとき竹下元総理が金大中大統領とお会いになったそうであります。その席で、この日韓漁業協定の問題について話題になったということを伺っております。  私が聞くところによりますと、竹下元総理は、特に民間レベルでのいわゆるトップ会談をやったらどうか、日本側においても、全漁連あるいは大日本水産会等の民間団体については水産庁を通じて今根回しをしておる、非常に好感を持って民間団体は受けとめておる、韓国の民間団体、向こうにも遠洋漁業協会あるいは水協中央会という日本の全漁連等と同じような団体があるようでございますが、そちらの方に金大中大統領の方からもぜひ要請をして、何とか三月中に民間レベルの団体同士のトップ会談ができないか、こういうお話をされたという報告も私は外務省から受けているわけであります。  これは私は大変結構な話だと思う。北海道においては、四隻から九隻ぐらい、トロール網で、自主規制を破って韓国船が来ておる、スケソウダラ等大量な魚が、資源が今とられておる、北海道の漁業団体も大変苦労されておる。そういう中でありますから、大いにこれは大臣、三月中にトップ会談ができるように、国内の民間漁業団体に対する根回しはもちろんでございますが、今、パリでOECDの韓国の代表ともお会いしたと、そういうパイプができたわけですから、大臣大臣なりに、韓国の水産担当大臣なりそうしたところとホットラインをつくられて、電話でも、あるいは水産庁のしかるべき幹部を派遣するなりして、根回しにさらなる御努力をされたらいかがかな、私はこう考えますので、大臣のその決意を伺うと同時に、水産庁長官、今申し上げたような根回しを国内の民間団体にどういうふうにされているのか、この御報告もあわせてお伺いしたいと思います。
  111. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 今先生が御指摘なさいましたように、竹下元総理ないしは中曽根元総理が金大中大統領就任式の際にそのような話をされたということは、我々は承知しております。  そういうことで、水産庁といたしましても、一つの日韓の協議の取っかかりということでございましょうか、そういうことのために従来から定期的な協議を日韓の漁業団体間において行ってきておりまして、先ほど先と言われましたように、日本側でいいますと大日本水産会ないしは全漁連、またそれに相当いたしますのが、韓国では、先ほど先生も言われました水協中央会というのがございます。また、韓国におきましては、韓国遠洋漁業協会というのもございます。そういう団体と従来から定期的に会長間で会議を行ってきておりますので、今後ともこれらの会議を通じまして、まず双方の理解を深めることも必要だというふうに考えています。  そういうことで、水産庁といたしましては、大日本水産会ないし全漁連の方にはそのようなことを今までいろいろ話しているところでもございます。ただ、これは相手のあることでございまして、現在のところ具体的なスケジュールについてはまだ定まっていないという状況になっております。
  112. 島村宜伸

    島村国務大臣 今回、OECDの大使との話し合いにつきましても、別にこれはあらかじめバイの話し合いを持つという約束も何もなしに会ったところでございますが、先方からまず表敬を受けまして、その際、その機会をとらえて私の方からも、ちょうどいい機会だから、日韓両国のこれからの友好のためにも実態をよく把握しておく必要があると思うというので、いろいろ話をしたら非常に興味を持ちまして、先方も大変な紳士でして、自分たちの非は非としてきちっとお話しになりましたし、お互いにまさに胸襟を開いていろいろな話し合いをしたところでございます。  したがって、別にお互い当たりさわりのない話をしたのではなくて、日韓漁業協定の話も当然出ましたからへ韓国の側では正しい事実の把握がなされていないために誤解があるようだけれども、現実はこういうことなので、我々はあくまでも前向きな姿勢でいるということをきちっと伝えたところでありますし、私はしかるべき機会、できるだけ早い機会に、そういう機会が持てるならば当然に先方との話し合いをしたいと思っております。  ただ、御高承のとおり、外交の窓口は一応外務省ということになっておりまして、したがって、今まで外務大臣との会合が十三回あり、農林水産大臣は一度しかないということでございます。しかしながら、外務大臣が先方と話し合いをする場合には、必ず水産庁長官またはそれに次ぐ者がこれを補佐して同時に会合に加わっておりますので、通常はこちらが一方づいてしていることではありません。また当然に、実務者の交渉の際には我が水産庁の側から出向いてもおりますので、これからも積極的にこの話し合いを進め持ちたい、こう考えているところです。  ただ、一つぜひ御理解をいただきたいのは、これは単に水域だけの問題ではなくて、将来に向かっての日本海の漁業資源の問題が私は大きな問題だと思っております。  それは一つは、要するにメッシュをもっと大きくして、稚魚はとらないようにしてほしいという申し入れをしても、これが全く無視されてしまう。稚魚から根こそぎとったあげく、今度は底びき漁船で下を削るようなことをやられてしまいますと、これは日本海の水産資源を共有する、日本であれ韓国であれ中国であれ、全体が先のドアを詰めてしまうということが現実にあるわけでございますから、この点もやはり詰めた話し合いをする必要があるのだろうと思います。  また、漁具の被害等もこれまた全く本当に後を絶たないわけでありまして、こういうことごとを含めて、両国が責任ある管理を徹底することの話し合いを進めるのは、将来に向かってのあるべき姿ではないか、そう考えております。
  113. 宮地正介

    ○宮地委員 確かに私もそのとおりだと思います。当然、一年後のこれからの新協定を結ぶ、いわゆる二百海里の新時代に向けての日韓新漁業協定を締結していく、そこに向けてのスタートですから、民間レベルから入っていこう、今こういうことですから、そこを私はぜひ大臣もフォローしてあげてもらいたい。当然また、小渕外務大臣と連携をとりながら、政府間の交渉も、新大統領また新内閣との新しいパイプのもとに、ぜひ農林水産大臣が、この問題は新しい二百海里新時代の一番大事な、直接かかわる新漁業協定に向けてのスタートですから、それなりの重大な決意を持って進めていただきたい、私はこう思っているわけでございます。  そこで、私はやはりもう一つ大事なポイントがあると思うのです。それは、四月にロンドンで行われる予定のアジア欧州会議、ASEM、ここで恐らく金大中大統領と橋本総理の会談が十分予想されるわけであります。ここが私はまた一つの重大な、重要なポイントだと思う。  ここで大きく日韓関係、恐らくこの漁業協定の問題のみならず、特に韓国経済の問題等、韓国は今大変な状態にあるわけでございますから、韓国も日本の経済的な協力というものは当然に重要視していると思います。そうした財政、経済と、この漁業問題というのは当然切り離して考えなければいかぬ。しかし、総理レベルのトップであれば、これは政治、経済、財政、すべてが包含されるわけであります。  私は、そういう中で、新しい日韓漁業協定を来年二月以降につくり上げる、その重大、重要な政府間のトップ会談がこの四月のASEMで行われると思うのです。やはりそれに向けて、農林水産大臣外務大臣が総理と連携をとっていただいて、橋本内閣としてこの問題について大きく前進をさせる、この政府としてのポイントの会談になるべきであろう、私はこう考えておるわけでございます。このロンドンにおけるASEM会談に対して、今後農水大臣として、総理とどのような連携の中で韓国対応をされていこうと考えておられるか、この点についてお伺いをしておきたいと思います。
  114. 島村宜伸

    島村国務大臣 日韓漁業協定のいわば新協定の締結につきましては、再三いろいろな機会に御質問いただいたり、それに対する答弁を行ってきているところでありまして、我々もその場しのぎの答弁をしているわけじゃございませんので、週二回の閣議、あるいは総理とはよく顔を合わせる機会もございますので、当然これらについての機会をうかがっていることについての話し合いは既にしているところでございます。  当然、ASEMも重要な機会と考えますけれども、私は当初、可能な限り円満に話を進めたいという総理の意向を受けましたものの、過去一年七か月余に及んだ両国間の話し合いのいろいろな経過をひもとくときに、少なくも従前の交渉のお相手の方々は、果たして本当にこの話を煮詰めようとしておられるのかどうか、いささか疑問を持たざるを得なかった。しかし、新政権になりましたわけですから、心新たにこのわずかに残された一年足らずの期間、有効に生かして、一日も早い円満な妥結を図りたい、そういうように率直に願っております。
  115. 宮地正介

    ○宮地委員 農林水産大臣、釈迦に説法で申しわけないのですが、既に、日中漁業協定、この締結が終わっております。もう一つは日ロの漁業協定、これも終わっております。中身は、もう御存じのとおり、質的に違う。日ロの場合は行政取り決め、日中の場合はきちっとした条約として取り決めた。これも、エリツィン・橋本トップ会談が昨年十一月に行われて以来、二〇〇〇年までに平和条約を結ぼう、こういう流れの中で、非常にいいムードの中でこの行政取り決めができた。これはそれなりに、四島返還の問題、四島が日本の固有の領土という帰属の問題があるので、それなりに行政取り決めとなった、こう私は理解をしております。  今回の日韓の新協定については、これは当然日中方式でいくべきであろうし、またそういう形になると私は思うのであります。そうしますと、やはり同じようなことで、竹島の問題を中心としたところが、いわゆる日中の暫定水域と同じように、要するに、ここの共同資源管理の問題というのが新協定を結ぶに当だっての最大の重要な事項になってくると私は思うのであります。  それだけに、私はまず、日本と韓国の民間団体同士あるいは政府間同士の相互の信頼関係、また、国民同士の信頼関係があって、この竹島問題もクリアできると思うのであります。この信頼関係なくしては、私は、日韓新協定もまた大変デッドロックに乗ってしまうのではないか、こういう危惧をしているわけでございます。この一年の期間というのは、単に一つの時効が切れるというような、そんな短絡的なお考えはないと思いますが、この一年間に、国民同士あるいは民間の漁業団体同士、金大中政権と今の橋本政権の政権同士の信頼関係、あるいは、私も入っておりますが、竹下会長を中心とする超党派の日韓議連、こういう国会議員同士の友好交流、こういう信頼関係の中でこの日韓問題というものを解決していくべきであろう、私はそう考えておる一人であります。  そういう意味合いにおきまして一番のキーステーションは、外務大臣は当然外交上の重要な窓口でありますが、事この日韓漁業新協定においては、農林水産大臣がキーステーションだと私は見ているわけであります。ですから、その点、大臣、御就任中にこの問題にある程度の決着がつけられる見通しをつけるためにも、本気になって、真剣になってこの問題にぜひ取り組んでもらいたい、こう要請をするわけでございますが、その御決意を伺っておきたいと思います。
  116. 島村宜伸

    島村国務大臣 私も宮地委員のお考えに全く賛成でございます。同時に、私もあなたと同様、日韓議員連盟の古い所属議員の一人であります。政権同士、また議員の連盟同士、そしてまた漁業担当者同士、いろいろな角度から日韓両国が話し合いを進め、一日も早く円満な妥結に至りたい、こう願っているところです。  ただ一つ、別にこれに何かおかしな注釈をつけるわけではございませんが、少なくも、いわば韓国漁船の違反操業につきましては、漁業関係者にずっと長く忍耐を強いてきたところでございまして、やはりそれらも含めて、まさに胸襟を開いて、ありのままを突き詰めて、お互いに妥協したいものだと願っているところであります。  今御指摘があったように、既に締結をいたしております日中漁業協定、これに基づきまして、中国漁船についても、いわば我が国二百海里内の資源管理というものについては規制が行われるわけでありますから、両国等のバランスということも含めて十分考えながら、この妥結が一日も早くなし遂げられるように頑張りたい、こう思っております。
  117. 宮地正介

    ○宮地委員 ぜひ、農林水産大臣初め水産庁長官の今後の御努力、御奮闘を期待して、この案件はまた次の機会に譲らせていただきたいと思います。  そこで、次に林野事業の問題について少しお伺いをしてまいりたいと思います。  今国会に農水省関係で、議員立法を含めますと十三本、条約、いわゆる承認事項を入れますと十四本、そういう中で最大の重要案件は、国有林野事業の抜本改革、この法律案が二本国会に提出をされているわけでございまして、これは、これからの我が国の国有林野事業の大転換になる、それだけに非常に慎重審議、また大いに議論をさせていただきたい。大臣の所信表明の中にも当然触れておられるわけであります。  私は、やはり率直に、謙虚に認めるところは認めて、それから改革はやっていく、この基本姿勢があってしかるべきであろう。今回、いわゆる国有林野事業の改革に当たって、先ほど林野庁長官は、国民の要請にこたえて、こういう言葉を答弁の中で言っておりました。確かにそのとおりでありましょう。しかし、やはり国有林野事業が累積債務三兆八千億を抱えて、厳しく見れば、ここに来て経営破綻をした、この認識がまず林野庁あるいは農水省の皆さんの中にきちっとあるかどうか、これが私は大事だと思う。  三兆八千億の累積債務ができた、そのうち二兆八千億はこれから一般会計に繰り入れをして国民の皆さんにお世話になります、一兆円は今までどおり特別会計の中で自助努力いたします、資産の処理もします、これからいわゆる伐採もして、利益が出ればそれで返済をします、五十年かけて頑張ります、結構であります。しかし、経営破綻をして国民の皆さんにこれからお世話になるのです、この原点をまずしっかり確認してもらいたい、認識してもらいたい、そこから改革が始まると私は思うのであります。  まずこの点について、大臣、どのように考えておられるか。
  118. 島村宜伸

    島村国務大臣 国有林野は、御承知のとおり、独立採算制を基本に今日まで運営されてきたところでございます。しかしながら、いわば戦中戦後かなりの伐採によりまして、現在、いわば製品として販売し得る材木は大きく減少いたしておりますし、昭和三十年代に入りまして外材の輸入が自由化され、昭和三十九年と記憶しますが、完全自由化をいたしましたけれども、いわば外材と国産材とでは価格その他において全く開きがございまして、抵抗しがたく、最近では、まさに林野事業というのは、国有、民有を問わず、大変厳しい財政状況に置かれているわけであります。  そして、国有林野の部分で申し上げるならば、今御指摘がありましたように、本年十月で三兆八千億に及ぶ、しかもこのまま推移すれば、それこそ赤字の積み上げが続くわけでございまして、第二の国鉄と言われても仕方のない先行きが予測されるところから、この際、思い切って我が身を削るべきは削り、それらを土台にして、いわば一般会計への繰り入れをお願いしたところでございます。  また、内容につきましては、これもお話がありましたけれども、一兆円については自助努力、二兆八千億については国の側でお願いをする、こういう形にしたところでございまして、これ以上のことは不可能であるというくらいぎりぎりに身を削り込んで、今回のお願いをいたしておるところです。  以上でございます。
  119. 宮地正介

    ○宮地委員 要するに、経営破綻をしたという認識がおありですか、これが私の質問なんですよ、大臣。そこのところ、さっと肩透かししているのですよ。そこをもうちょっときちっと言ってください。
  120. 島村宜伸

    島村国務大臣 このまま従前の独立採算制を維持することが不可能である、そういう状況に立ち至った、こう思います。
  121. 宮地正介

    ○宮地委員 事実上経営破綻を認めているわけです。  そこからどうするか。そこで、いわゆる公益化という問題が出てきている。公益重視八〇%、二〇%が今までと同じように営利事業をやります、こういうふうに基本的な哲学がなっている。  それで、今後、国有林野事業は、もう木を伐採して余り金もうけはしない、これからの約七百六十万ヘクタールある国有林というのは、これは国土の保全、環境保全、その管理を重視した、そういう公益化に改革をいたします、私は大変結構だと思うのです。これでこそ、私は本来の国有林野の守り手だと思う。  むしろ、昭和三十九年、オリンピック時代から、あの木のたくさんあったころ、住宅の木材だ何だかんだではさばさ切ってはげ山にした方がむしろ問題だったんだ。そのときは、確かに特別会計も非常に黒が出て、まあ林野様々だったんだ。そのツケが今回ってきているわけです。これからやはり、今、地球温暖化現象とか自然林を守ろうとか森林を守ろう、新しい環境保全の時代が二十一世紀ですよ。地球をいかに守るか、そういう時代で、やっと経営破綻がきっかけになって、まさに災い転じて福となす、そういう重要な局面に来たな、結構なことだな、願わくは八〇%じゃなくて一〇〇%を国土保全、環境保全管理事業にしたっていいのではないか、このくらい私は個人的に思っております。  さて、そういう本来の、私は国民の皆さんもそうした期待をしていると思うのです。国有林野の緑を守って、そして日本列島、また緑豊かな森林を取り戻そう、環境保全、国土保全あるいは治山治水保全、そのための森林にしていこう、もう結構なことです。恐らく反対をする国民の皆さんは私はいないと思う。  問題は、その七百六十万ヘクタールの国有林を、今後、今申し上げたような公益化をする、そうした目的に沿った国有林、森林を守るために、それではどの程度の機構があってどの程度の職員がいれば守れるのか、この精査を私はやっていかなくてはならないと思うのです。これは大臣、わからないと思います。林野庁長官、精査いたしましたか。
  122. 高橋勲

    ○高橋政府委員 新しい体制に移りまして、木材生産機能から公益的機能中心の国有林野事業に変わる。そのために、組織につきましては、これまでは木材生産を中心に、やはり木材資源があるところに営林局を置くというふうな考え方でありましたけれども、今後はやはり管理を中心にして、行政機能を十分に発揮させるというふうな形で、現在十四の営林局、支局がございますけれども、それをブロック単位に七つの森林管理局に再編することといたしております。  それから、要員につきましても、これまでは直営で国が直接人を雇ってその仕事をしてきたというところでありますが、効率性の点からいって、やはりこれは民間に、地元の林業事業体にそういう仕事をしてもらおうというふうなことで、国がやるべき業務は治山事業あるいは森林計画、治山の計画、森林保全、こういうふうな業務に限定をして、それ以外は全面的に民間に委託をしていこう、それに必要な最小限の要員でやっていこう、こんなふうな形で組織、要員につきましては精査をしております。
  123. 宮地正介

    ○宮地委員 長官、あなたのその発想は、財政当局からのリストラの発想なんですよ。人員を、現状一万五千人を五年後に五千人にする、現業の六千人、これは全部、全面的に委託する、九千人の職員は五千人に削減する、機構改革も今おっしゃったような内容に圧縮する、それはいわゆる財政当局の意向に沿って、財政的な視点からのリストラ計画なんですよ。  私は、それを言っているのじゃない。七百六十万ヘクタールというこの国有林を、国土保全、環境保全管理事業として今後守っていくためには、どの程度の機構があって、どの程度の職員ならきちっと守れますか、ここなんです。この視点から今おっしゃった機構が検討されたのですか。
  124. 高橋勲

    ○高橋政府委員 御指摘のような視点からの検討でございまして、国有林をきちんと守っていくというためにどういう事業が必要か。中心が木材生産機能であったものを、公益的な機能を発揮させるための考え方に変える。しかしながら、二〇%程度の木材生産林、これは我が国といたしましても、今一億立方の木材消費がありまして、そのうちの八割を輸入している。熱帯林ではその伐採の行き過ぎ等の批判もあるわけでありまして、我が国としても、やはり必要な木材の自給というものも考えれば、国有林としても二割程度の木材生産は残すべきであろう、そんなふうなことを考えました。しかしながら、中心としては、やはり国有林の賦存の状況から、脊梁山地の一番大事なところにある、公益的な機能を発揮させよう、そういうふうな観点から組織あるいは要員の見直しをしておるわけでございます。
  125. 宮地正介

    ○宮地委員 ということは、長官、五年後に職員を九千人から五千人、六千人の現業職員は委託に全部お願いする。要するに、木を切ったり間伐したり植林したりする職人は、全部これは委託事業で、六千人の現業職員はもう要らない、こういうことになるわけですね。  ところが、私も先日、二月二十三日に那須塩原の国有林を現地視察させていただきました。中学校を出て十六歳の青年が二十二年勤めて、あの山系の生き字引になって、すべて森林のことは知り尽くした経験者にお会いしました。その青年は目が輝いていましたよ。三十八歳。ああ、この方も五年後にはリストラでどこかに配置転換されてしまうんだな。あなたは今後配置転換をされる、そういう要員の一人だけれども、どう思いますか。大変な失望感を持っていましたよ。何のために二十二年間、中学校を卒業して、汗みどろになってこの森林を、山を守ってきたか。森林官という国家公務員の職員の皆さん、若い人が赴任してくる、二年ぐらいで帰られてしまう。そういう人たちを案内して、山のあそこには何の木がある、この木は何年物、そろそろこの地域は間伐を入れなきゃならない、もう体にしみ渡ってその山を知り尽くしている現業職員ですよ。まだ三十八歳。こういう方をリストラしていいのか。まさに、林野庁の、国有林の守り手の宝じゃないですか。これが宝に見えなかったら、これはもう節穴官僚ですよ。  私は、こういう方を残すべきだ。むしろ宝として、これからの公益化する国有林の守り手に残すべきだ。配置転換してほかの省庁なんかに渡すのはもったいない。そういう方々がたくさんいるんです、現場に行けば。  委託をされた森林組合の民間会社の親子のきこりさんにも会いました。なぜ林野庁に入職しなかったんですか。いや、おやじの後を継がせていただくために、私はおやじと一緒に山に入っています、きこりをやっていますと。ああ、すばらしいですねと。そういう姿を見て、その今の職員の三十八歳の青年は大変うらやましがっている。  私は、ただ机上の計画でそうした現業六千人の人を全部委託でもって配置転換するようなことをやってはならない、むしろ適正な、そうした現業職員は宝として残し、今後、二十一世紀の新しい国有林野事業の守り手として残すべきだと考えた一人であります。  大臣、ぜひ一度、行かれているかもしれませんが、国有林野事業のこの法案の審議に入る前、ぜひ現地を見て、現地の生のきこりの職員、そうした木を植えて苦労されている職員と裸のつき合いでぜひ会っていただいて、大臣の決断で、この六千人の現業職員のリストラについては十分に再検討していただきたい、こう思いますが、いかがでございましょうか。
  126. 島村宜伸

    島村国務大臣 大変大切な御提言だ、そう受けとめます。  時間が許せば、ぜひそういう機会を持って、現地の実態に触れたいと思います。
  127. 宮地正介

    ○宮地委員 さらに、私は、ぜひ、新しい改革をするときには、もっと思いやりのある、ぬくもりのある改革をしてあげてもらいたい。まして、人の問題です。生活権がかかって、その人の、いわゆる木と同じ年輪の生きざまが現業の職員にはきちっとおさまっているんですよ、大臣。ただ机の上でデスクワークをやっているんじゃないんですよ。みんな、中学校、高校を出て山に入って、もう木を見れば、自分の弟や妹、あるいは息子や娘に見えるんですよ、彼らは。その思いを、やはり我々政治家や官僚が理解してあげなかったら、単なる血の通わないリストラに終わってしまいますよ。私は、そうあってはならない。  そういう点で、今回のこの改革については、私は、大変新しい時代の、新しい国民のニーズに沿った改革であろう、こう理解しております。それだけに、ぜひもっと血の通った改革に、大臣、目を光らせていただきたい。単なるリストラに終わってはならない。特に、現業職員六千人のこの対応、これについては、ぜひ厳重なチェックをして当たっていただきたい、このことを強く改革に当たって要請をしておきます。  細かい問題については、また、法案が委員会に付託された段階でお伺いをさせていただきたいと思っております。  最後に、時間もあとわずかでございますが、特に農業関係について、少しお伺いをしてみたいと思います。  先ほど来、新農業基本法の問題等については議論されましたから、もうわずかな時間ですから、大臣OECDでパリに行ってこられましたし、これからのWTOへの対応策についても、食糧安全保障の問題あるいは農作物の多様化の問題等々、非常に汗をかいて頑張ってこられたことには、私は敬意を表したいと思います。やはり大臣出席してそれなりの成果がありたな、よかったな、予算委員会の大変な中でございましたが、御苦労いただいて、敬意を表したいと思います。  そういう中で、先日、クリントン大統領が議会に通商報告をされました。日本については、米の市場開放をもっとしっかりやれとか、あるいは大店法の廃止をやれとか、いろいろなことを報告されたようであります。  しかし、私は、これはアメリカの率直な、今持っている状況を報告したのではなかろうか。特に米については、ウルグアイ・ラウンド交渉の中でいわゆる部分自由化が進みまして、関税に置きかえられた。二〇〇〇年に見直しがやってくる。その辺をにらんでクリントン大統領もそうした報告書を議会に出されたのかな、こんな感じがしているわけでございますが、この問題については大臣、どのように受けとめられたのか、この点についてお伺いしておきたいと思います。
  128. 島村宜伸

    島村国務大臣 このクリントン大統領の報道の中では、九三年のガット、関税貿易に関する一般協定、いわゆるウルグアイ・ラウンドの決着以来初めて日本の米市場にも言及をし、いわば自由化の圧力をかける、こういうことを盛り込んだ、こういうふうに報道されているところであります。  たまたま私は、OECD農業大臣会合グリックマン農務長官とお会いをしました。彼とは一月にもイギリスで会いまして、いろいろ話をしたところでございますが、今回は、やはり前回と大分打って変わって、本当にくつろいだ雰囲気の中でいろいろな議論もしたところでございます。将来に向かって食糧安全保障にいろいろな配慮をされることは当然のお立場だけれども、我々は我々で責任を持って供給するということをお約束する、ここに誓約書を書いてもいいですよ、こんなような話し合いもあったくらいでありまして、我々は、少なくも、アメリカはアメリカとして米の開放を迫るにしても、先ほど来御答弁申し上げているように、我が国の最低限度の穀物の自給率というものを確保していかないと、将来に向かって保障がない。  例えて申し上げますと、穀物自給率、ざっと先進国で比較しますと、例えばフランスなどは一八三でございますし、アメリカが一二九、ドイツが一一八、それからイギリスが一一四、そして一番低いイタリアあたりでも八八を誇っているわけでありますが、残念ながら我が国は二九でございます。こういう数字の比較を一つ考えましても、いかに日本の自給率が低過ぎるかということだけは、これは話をすればわかることでありまして、このことを私は再三口を酸っぱくして申したところです。  最終段階では、なるほど大変だよね、こんなような話が向こうからも持ち出されるようになりましたので、私どもは、何も米を死守するというかたくなな考えであるよりは、多角的に穀物の自給率を確保するという方向に向けながら、先行きに向けての安全保障というものを考えていきたい、こう考えております。
  129. 宮地正介

    ○宮地委員 きょうは、一時間程度の質問でございましたが、ぜひ農水省の皆さん、また大臣、今後の御活躍を期待して終わります。
  130. 北村直人

    北村委員長 次に、佐々木洋平君。
  131. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 自由党の佐々木洋平です。  きょうは、日韓及び日中漁業問題について質問させていただきます。  大臣の所信表明の中で、この国連海洋法条約の批准あるいはまたTAC制度の導入ということで、我が国漁業は大きな節目の時期を迎えておるというくだりがございます。そしてまた、我が国周辺における水産資源の適切な維持管理を図るために、中国及び韓国との新たな漁業協定に向けて協議を進めてまいりました、またその結果、日中間では新協定の署名を行いましたが、韓国とは合意に至りませんでしたと、今後とも漁業交渉に向けて鋭意努力をするという決意のほども見えたわけでございます。  御案内のとおり、この日本、韓国、中国、これはもちろん竹島の問題あるいは尖閣諸島、領有権の問題が障害となっておるわけでございまして、中国との関係につきましては、共同管理、暫定水域を設ける、そして具体的な実施については協議をするということで合意を見たわけでございます。  一方、日韓漁業交渉については、三十数回に及ぶ交渉が行われたわけでございますけれども、竹島の問題あるいは韓国漁船の拿捕事件など韓国世論というものが非常に強かった。そういうことで、平成十年一月二十三日に漁業協定の終了通告をした、こういうことでございます。その後、韓国は、この通告に対しまして、非友好的で今後発生する事態の責任はすべて日本にあるというコメントを発表し、あわせて、北海道近海での漁業の自主規制、これを無期限に中断するという報復措置をとってきたわけでございます。  当然ながら、翌二十四日には、北海道の漁業自主規制水域に韓国のトロール船が、九隻近いと聞いておりますが、実際にトロールをし、操業を始めた。北海道の周辺の資源の問題あるいはまた日本漁船とのトラブルが大変心配をされるわけでございます。  先ほど宮地先生からこの件につきましてるる質問がございましたので、極力重複を避けたいと思いますが、まず、この日韓交渉がまとまらなかった原因、問題は何だったのか、まずその辺からお伺いしたいと思います。
  132. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  日韓漁業交渉、いろいろ重要な要素を含んでおりますけれども一つには水域の問題がございました。もう一つは、先ほど来申し上げているように、水産資源の将来に向かっての確保の問題がございました。いま一つは、新たに日中漁業協定が締結されまして、中国の漁船に関しましては一我が国の二百海里以内においては我が国の規制に従っていただく、しかし韓国とは野放しであるということではバランスがとれないという面がございました。  そういうことごとに照らしまして、我々は鋭意努力をしましたし、特に私は、網目の細かい漁網で根こそぎとってしまうような、将来の水産資源を枯渇させるような漁業に関しては、やはり極力メッシュを大きくして避けてほしいし、ましてや底びき漁船で根こそぎ魚礁を削ってしまうことも問題であるというようなことごとについても大変心を痛めたところでございます。  首脳会談六回、外務大臣会合十三回、農林水産大臣一回、実務者十回以上というようなことで、三十回を超える交渉の過程をいろいろ見てみますと、果たして前政権において本当に漁業交渉を円満に妥結する姿勢がおありだったのかどうか。少なくも、我々は最善を尽くしてこの妥結に向けて努力をしたということの結果の所産として、一月二十三日に終了通告をしたところでございます。
  133. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 隣国である韓国との友好関係、これは当然これからも大事にしなければならないというふうに思いますが、この竹島問題、これをどのような形で解決をすべきものなのか。我々、もちろん国民もこの問題について非常に関心を持ちつつあるわけでございまして、今後の交渉というものがどうあるべきなのか、また日本政府基本的なスタンスというものをお聞きしたいと思います。
  134. 薮中三十二

    ○薮中説明員 お答えいたします。  竹島の領有権問題につきましては、我が方の立場、先生御案内のとおり、一貫したものがございます。この竹島の問題につきましては、従前からこれを解決すべく一生懸命やってきておるところでございます。  ただ、御案内のとおり、非常に難しい問題が双方にあるということでございまして、引き続きこれについては粘り強く努力して、我が方の立場をしっかりと守っていきたいというふうに考えております。
  135. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 粘り強くという話でございますけれども、韓国の国民は、この竹島は、独島というのですか、国民すべてが当然自国の領土だ、こう思っております。そしてまた、教科書でもきちっとその歴史観を書いておるんですね。しかしながら、その辺は我が国民は、本当に竹島問題についてどういうふうに意見集約されているのかなと、ふと疑問に思うところがございます。  そういう意味で、もっともっと国民の世論形成といいますか、そういうものまで含めて、私は広報あるいは啓発活動をすべきものだというふうに思っております。これは要望にとどめます。  先ほど大臣から、韓国はこの漁業協定をまとめようとする意思があったのか、なかったのかというような、そういう発言にとれたのですが、この辺もちょっとお伺いしたいと思うのです。  中国の交渉と韓国の交渉の推移の中で、どういう違いがあったのか、私は、そんなに難しい問題じゃないというふうに思うのです、同じような条件だと思うのです。その辺、その違いが何であったのか、また逆に言えば、日本が作戦的にちょっと甘かったのではないのかなという感じもするのです。韓国側のそういう戦略といいますか、漁業協定をまとめようとする意思がなかったのかなというふうに思うのですが、その辺、大臣どうですか。
  136. 島村宜伸

    島村国務大臣 そういう御心配はごもっともかと思いますけれども、現実はそういう姿勢は私たちにはございません。ただ、日本も中国も韓国も、一昨年、国連海洋法条約を批准いたしておりまして、無秩序状態でないことだけは事実でございます。しかしながら、この協定を結ぶ過程におきましては、いわば水産資源の確保ということ一つをとりましても、将来に大変な不安を残すような実情にあったことは事実でございますし、このことに対してこちらから要請をいたしましても、韓国の政府側では、少なくも当時の政権では、その周知徹底を図り、これに対して約束をすぐはできないというふうに私は受けとめております。これでは、やはり将来、お互いが信頼し合うということになっても先を詰めてしまいますので、この辺もきちっとこれからは対応していただく必要があるのだろうと思います。
  137. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 それでは、韓国側から、国民からこの件について素朴な意見があるのです。今韓国は、このとおり大変な経済危機である、それから、日本からのいろいろな経済協力も含めてお願いをするというような試練のときなわけですが、また、政権移行という政治空白、そういうときにこういう事態が起きた。協定破棄という言い方をしておりますが、破棄をしたということは、今後、両国の友好関係の維持に、また再交渉に対して非常に大きな問題がないのかなと私は危惧するのですね。でしたら、もっと前にやるか、あるいは新政権のときにこれを行うか、その辺はどうですか。  そしてまた解決方法として、さっきも話が出ましたけれども、まず、当然ながら当事者間の協議はもちろんやるわけですけれども、民間ベースでも今後積み上げていくんだというお話がございました。いずれ第三者機関への付託ということも考えられるのでしょうが、そういう時期的には非常に難しいときの終了通告でなかったのかな、韓国側から言わせればそういう感じがするのですが、その辺いかがでしょうか。
  138. 薮中三十二

    ○薮中説明員 先生御案内のとおり、日韓の漁業交渉ということで、新しい漁業協定をつくるべく、国連海洋法条約の趣旨を踏まえたものできっちりとしたものをつくらなきゃいけないということで、我々も一生懸命努力をしてまいったわけでございます。最後の最後まで、何とかいい協定がっくれないものかということで努力してまいりましたけれども、それが達成できませんで、現行協定の終了通告を行ったその時期が、今先生御指摘のとおり、本年の一月ということになったわけでございます。  それは、最後まで一生懸命努力したということで、その結果として、たまたま時期がそうなってしまったということではございますけれども、これからが問題であるというふうに思っております。まさに、新しい政権ができて、これから日韓関係、きちんと前へ進めていかなければいけませんので、その中で、この漁業交渉についても、新しい漁業協定の早期締結のための交渉に真剣に取り組んでまいりたいというふうに考えております。
  139. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 ひとつ、やはり相手国はそういう気持ちで受けとめていることもあると思いますので、その辺も十分に配慮しながら今後の交渉に臨んでもらいたいというふうに思います。  次に、領有権問題が障害となって、当然ながら境界線が設定されないということになるわけですが、そういうことになれば、日本の領海というのは当然十二海里。この十二海里の外にいる、韓国漁船でも何でもいいのですが、それが仮に二百海里内で違反操業しても、これはどうにもしようがないといえばしょうがないのですが、これは後で質問します。  例えば、九州で、平成八年一年間で韓国漁船が三千六百三十二そう、中国船が四千百七十九そう操業したと確認されておるわけです。その中には、領海侵犯あるいは休漁区あるいは禁漁区での操業違反など、九州だけで約百六件。また、漁具の被害等が六千四百万円という数字が出ておるわけでございますが、全国の海域で起きていると思われるいろいろな被害、その操業状況、実態というか、そういうものをお知らせ願います。
  140. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 今先生言われましたように、現在の協定は旗国主義ということになっておりますので、なかなか日本側の取り締まりが十分できないという限界がございます。  そういう中でもって、中国並びに韓国漁船がどのような操業を日本近海で行っているかということでございますが、まず中国漁船について申しますと、対馬周辺を中心にいたしまして、底びき網漁船及びまき網漁船が操業を行っております。専らイカでありますとかアジ、サバを対象にしている。それから、日本海及び北海道の太平洋側では、イカ釣り漁船が操業を行っております。  これら中国漁船と日本漁船との関係におきましては、特に対馬周辺水域におきまして、我が国漁業者との間で漁場競合なり漁具被害の問題が発生しているという状況にございます。  さらに、韓国漁船でございますが、韓国漁船につきましては、北海道周辺水域におきまして、三百トンから一千トンクラスの大型トロール漁船がスケトウダラを対象に操業をしております。西日本周辺水域におきましては、底びき網漁船、まき網、刺し網漁船などの操業が行われております。  ただ、韓国漁船につきましては、日韓漁業協定等に違反した操業は依然として根絶しておりませんでして、昨年の違反件数は一昨年の件数を上回っております。また、韓国の国内法に違反している小型トロール船があるわけですが、その漁船の操業も依然として続いております。  最近の特徴といたしましては、これら違反操業船は、船名を隠ぺいしたり日本漁船の操業を妨害するなど、内容は悪質化してきているという状況にございます。また、こうした韓国漁船の操業によりまして、我が国沿岸漁業者の漁具にも被害が多数生じているという状況にございます。
  141. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 漁船の被害の状況ですが、漁民の皆様に聞くと大変な被害が出ておるのです。漁具を破られたり壊されたり、そういう場合に補償がないというようなことで、民間ベースでの補償といいますか、本当に少ない補償だと漁民が大変訴えておられるわけでございますが、こういう場合の補償というのは何か法的にできないものかどうか、ちょっとお伺いしたいと思います。漁具の破壊をされたり、そういう場合の補償です。
  142. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 韓国漁船によります漁具被害、例えば平成八年度で申しますと、北海道、西日本、全部合わせまして二千七百十二件、金額にしまして一億六千万円ぐらい出ているわけでございますが、このような漁具被害につきましては、従来から、日韓間の民間団体間で協議機関が設けられております。日本側の窓口といたしましては大日本水産会がなっておりますし、韓国側の窓口は遠洋漁業協会というのがなっておりまして、この協議機関において従来処理されてきているというところでございます。  今回の被害、例えば自主規制の停止によります漁具被害も最近出ておりまして、こういうものにつきましても、この民間団体間での協議によって処理されるということになりますけれども政府としては、このような処理が円滑に行われますように韓国側へ申し入れを行っているところでございます。
  143. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 韓国側に申し入れをするということですか。ひとつ責任を持ってこの辺は対応していただきたい、こういうふうに思います。  ちょっと視点を変えまして、この対馬の対岸に福岡市がありますが、ここに中央卸売市場があります。ここには中国、韓国の鮮魚運搬船が連日大挙して入港しておるわけです。多いときには二十隻、三十隻とも言われております。この中には、漁民の方が申すのですから私は信じたいと思うのですが、日本海でとって船の上で運搬船に積み込み、積みかえて、これは違法操業でございますけれども、それを市場に持ってくる、このようなやり方をされておるというふうに聞いております。  このごろの調査では、中国からの最近の輸入量は、この市場に対する輸入量ですよ、平成八年が一万九千六百トンなんですね。五年前のちょうど五倍以上輸入をされておる。また、金額においても、一千九百四十二億円ということで、アメリカに次いで二位の輸入額ですね。韓国も約一千二百十八億円ぐらい輸入しているというようなことなんですね。  そこで、これは違法なんです。積みかえですから違法なんですが、こういう実態を関係者は聞いていると思いますが、どうですか。これは実態を承知していますか。  そしてまた、こういうことは、近くに幾らでも買ってくれる大変な市場があるというようなことで、逆にこの違法操業がエスカレートしているという話も聞くわけでございますが、この辺に対する見解と、もし対策があったらお示しをいただきたいと思います。
  144. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 外国人漁業の規制に関する法律というのがございまして、この法律によりまして、外国の運搬船が外国の漁船から洋上で漁獲物を積み込む、言うなら転載でございますが、転載いたしまして、そのまま我が国の港に直行してその漁獲物を陸揚げするということは禁止しております。この制度の実施を担保するために、従来から、税関でございますとか海上保安庁など関係省庁と連携いたしまして、これまで対処してきているところでございます。  外国のこの運搬船によります水産物の輸入につきましては、税関におきまして、輸入に必要な書類、例えば輸入申告時に提出されます船荷証券などでその船積み地域が書いてございます、そういうことで、言うなれば外国漁船、外国の運搬船が外国から水産物を積み出していることを確認しているということであるわけでございますけれども、なかなかその辺が十分確認し切れない面もあろうかと思います。  一つ、一番よろしいと思いますのは、例えば、そういう海上での転載行為等につきまして取り締まることが何らかの形でできますならば、よりもう少し担保措置ができるのだろうと思っておりますけれども、先ほど来お答えしておりますように、現行協定におきましては旗国主義でございますから、なかなか取り締まり行為につきましても限界があるということでございます。  一昨年、海洋法条約が発効いたしますとともに、日本におきましては、EZ漁業法、正確に言いますと、排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律、我々は二百海里漁業法と言っておりますけれども、このEZ漁業法におきましては、我が国の排他的経済水域での外国人によります漁業行為、これは当然農林水産大臣の許可制になっておるわけでございますが、そのほかに、漁業行為に附属いたします漁獲物の運搬行為につきましても農林水産大臣の許可が必要だというふうになっているわけでございます。  そういうことから考えますと、やはり、一刻も早く国連海洋法条約の趣旨を踏まえた新しい協定を締結することが何よりも大事じゃなかろうかというふうに考えているところでございます。
  145. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 今大変力強い御答弁をいただいたわけでございますけれども、韓国の漁船は自国に戻るまでの冷凍設備が非常に悪いということで、腐ってしまうのだそうですね。ですから途中で積みかえるということも聞いておりますが。いずれそういう輸入条件の中に、もしそういうことがあったら禁止する、停止をするというぐらいの強い姿勢対応してもらいたい、このように思います。  次に、この日韓漁業交渉の終了から、いろいろ、北海道十勝沖で韓国船が操業しておるわけですが、我々自由党は実は調査団を派遣いたしまして、私もその一員として視察をしてまいりました。その状況を踏まえながら、二、三質問させていただきます。  ちょうど今年二月二日ですけれども、北海道十勝沖を出まして、十勝沖十三海里、約三十キロぐらいのところで韓国船を二そう発見いたしました。まさにトロールしておりまして、短冊状のトロールをしておったということで、その韓国船の船体には「KOREA PUSAN」という船名が書いてありました。大体二百メートル近くまで接近をいたしまして操業状況を視察したわけですが、ゆっくりとトロールを引いておりました。当然いろいろな巡視船等も監視をしておられたわけでございますが、特に商品価値のない先ほど大臣おっしゃった小さな小魚を全部投げてあるわけですね。本当にもったいないなと思いますが、それと同時に、何千羽というカモメが群がっておったわけでございます。  そういうことで、このトロール船を見て、韓国では、実は十六海里内でもしこういうトロールをしたならば、恐らく、間違いなく、船はもちろんですけれども、会社まで焼き討ちに遭うというふうにも言われておりますね。しかし、それを平気で日本に来てやっているわけです。その辺を我々は非常に残念に思うわけでございますけれども、この終了通告をするということで、多分こんなことになるのかなという大体のあれを持って終了通告したのかどうか、まずちょっとお伺いしたいと思います。
  146. 嶌田道夫

    ○嶌田政府委員 まず、日韓とも国連海洋法条約を既に批准しておりますし、それぞれの水産資源の保護管理を行うという共通認識を持っているというふうに我々は考えておるところでございます。  そういう立場に立ちまして、これまでも日韓の新しい協定をつくるべく二年余にわたりまして交渉を行ってきたという経緯からいたしますと、今先生が言われましたように、日本の資源管理を無にするような韓国側の行為というのは非常に残念であるというふうに考えております。  そういう意味で、このような措置といいますものは韓国にとりまして決して得策ではないというふうに考えておりますし、我々といたしましては、韓国側に対しまして強く自制を求めたいということでございます。
  147. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 国際法上ですが、条約によりますと、海上衝突予防法という法律がございまして、これは、船の衝突を回避するための法律でございまして、漁労中の船がいろいろな形象物を掲げるわけでございますが、例えば、トロール船は、昼間は黒の鼓型の形象物を船首に上げる、こういうふうになっております。また、夜間には、白と緑の全周灯ですか、全部見えるような、あるいは後ろの、尾灯をつけるといったことが定められておるわけでございますが、実は、私たちがこの韓国船を確認したところ、そういう、もちろん国旗もないのですね、国旗もありません。そしてまた、形象物ももちろん、二回見ましたけれども、ありませんでした。  そういうことで、漁業関係者に聞けば、韓国船は、夜間はほとんどこういう全周灯といいますか、あれをつけないで走行している、非常に危険だという話を聞いたんですが、これは違反だと思いますが、どうでしょう、保安庁。
  148. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  外国漁船が公海上で操業する場合には、国際条約であります千九百七十二年の海上における衝突の予防のための国際規則、これに従って適正な灯火あるいは形象物を表示しなければならないことになっております。表示していなかった場合には、その条約を遵守していないことになるわけでございます。  現在、北海道沿岸の沖合の公海上で操業しております韓国のトロール漁船につきまして、海上保安庁の巡視船が確認する限り、遵守されている状況にございます。
  149. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 といいますと、これは不法操業ということになりますか、なると思いますね。仮に不法操業だとすれば、領海内ではないのですが、しかし、二百海里以内にあるということになれば、海上保安庁は臨検はできないのですか。
  150. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  北海道周辺海域において操業する韓国漁船につきましては、現行の日韓漁業協定が存在しておりまして、いわゆる排他的経済水域における漁業等に関する主権的権利の行使等に関する法律の適用が除外されておりますため、立入検査を含め、取り締まりはできません。  海上保安庁としては、領海侵犯操業の防止などの観点から、巡視船、航空機により監視、警戒を実施しておるわけでございます。
  151. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 今、監視をするというお話ですけれども、例えば、こういう違法な行為をしているわけですね、形象物もつけていない、立てていないというふうになれば。だったら、保安庁はそれを、例えば警告をするとか、つけてませんよと、これはできないのですか。警告をできないのですか。もし臨検ができないとするならば、警告はできないのですか。そういうたぐいはできないのかどうか。
  152. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  海上保安庁としましては、公海上で操業しておる外国漁船につきましては、適正な灯火あるいは形象物を表示していないからといって取り締まることはできませんが、必要な場合には、その外国漁船に対しまして、千九百七十二年の海上における衝突の予防のための国際規則、これに反しているということで、注意喚起をすることなど、航行安全の確保のための適切な措置で対応してまいりたいと思います。
  153. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 なかなか、ちょっと理解がしにくいのですが、まあ必要に応じてという言葉で……。形象物は立てていないということですから、当然違法なんですね。となれば、少なくとも警告をするなり、そういうことはやってもいいのじゃないでしょうか。国旗も立てていない、形象物もやっていないとなると、公海上とはいえ、もしかして何かの事件に巻き込まれたりする可能性だってあるわけですから、私は、ああいう場合は、やはり少なくとも形象物を立てて、そして国旗を立てて、それを指導するのが皆さんのお仕事じゃないでしょうか。  もう一度確認したいと思います。
  154. 後藤光征

    ○後藤説明員 ただいま申し上げましたとおり、先ほどのお答えのとおりでございます。
  155. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 それでは、もし、韓国との、あるいは中国とのそういう協定が結ばれまして、まさに二百海里の範疇で仮にそうなった場合、そういう協定が結ばれた時点でもし二百海里水域でそういういろいろな違法操業があった場合には、海上保安庁は臨検はできるのですか。意味、わかりますか。
  156. 後藤光征

    ○後藤説明員 お答えいたします。  先生、ただいま、二百海里内での韓国漁船による違法操業というふうにおっしゃられたと思いますが、先ほどもお答え申し上げておりますが、現行の日韓漁業協定、これによりまして、いわゆる排他的経済水域法の適用が除外されておるために、立入検査を含める取り締まりはできないということでございます。  したがって、海上保安庁といたしましては、領海侵犯操業、これの防止の観点から、巡視船、航空機により監視、警戒を実施しているということでございます。
  157. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 それでは次に、中国あるいは韓国漁船が日本海で操業しておってしけに遭った場合、緊急避難として日本の港に避難する、これは当然なことであるわけですけれども、対馬沿岸等では百隻以上が湾に入ってくる、こういうことで、まるで外国の漁業基地のような状況になっておるという漁民の報告がございました。そういう中で、漁具の被害とかあるいは船の中からいろいろな廃棄物を投棄するというようなことで、いろいろとトラブルが起きているやに聞いておるわけでございますが、これらの交渉の際にもきちんとそういう話をしていただければというふうに思います。  この漁民の皆様の声を聞くと、どうも日本交渉は弱腰だというようなおしかりも大変賜るわけでございますが、お互いに公平な立場で、そして公平な解決を図る努力をするべきだと私は思いますが、この辺についていかがでしょうか、お伺いします。
  158. 薮中三十二

    ○薮中説明員 ただいま先生御指摘のとおり、緊急入域ということで、中国船あるいは韓国船がしけなどのときに狭い海域に一挙、一時期に大挙入ってくるということがございます。そしてまた、その結果として、漁具の被害等が出ているということ。これにつきまして、我々は、中国側あるいは韓国側に対しまして、速やかな退去あるいはこういうことのないようにということ、これを、例えば中国との間では日中漁業共同委員会等の場で、あるいは韓国との間では日韓漁業指導取り締まり協議等々の場で強く申し入れておりまして、今後とも、必要に応じ適切に対応してまいりたいというふうに考えております。
  159. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 時間ですので最後になりますけれども、本当に、現場に行ってみて、この襟裳岬のすぐ近くにある、そして、そこで韓国トロール船が何そうも来て根こそぎとっていく、そして魚礁も壊しちゃう、そしてまた、我が漁民はTACという漁業規制をしながら指をくわえて見ているという状況を見て、私、この漁民を思うときに、非常に心が痛むのです。  大臣、ひとつその辺も踏まえて、やはりもっとしっかりとした、お互いに対等の立場で漁業交渉に臨んでもらいたい。先ほど外務省がという話があったのですが、やはり農林水産大臣中心になって、しっかりとこの協定をしてもらいたいというふうに思うのです。  最後に、決意のほどをお願いします。
  160. 島村宜伸

    島村国務大臣 私は、就任以来、今、委員がおっしゃったとおりの姿勢を貫いてきているつもりであります。これは、将来、ともに両国が友好的な関係を深め、さらに前進していくためにも、イコールフッティングの基本に立って、お互いがこれからも取り組んでいくことが当然必要でありまして、どちらかが一方的に何かをして、それで片方は泣き寝入り、こういう形は長続きしない、そういう確信に立って行動しているつもりであります。
  161. 佐々木洋平

    ○佐々木(洋)委員 ありがとうございます。終わります。
  162. 北村直人

    北村委員長 次に、一川保夫君。
  163. 一川保夫

    ○一川委員 わずかな時間ですけれども、私の方からちょっと基本的なところを幾つかお尋ねしたいと思います。大臣は、大分時間も経過しておりますので、お疲れかと思いますけれども、ひとつよろしくお願い申し上げます。  先般、代表質問で、我が自由党の野田幹事長の方から、あえて代表質問で総理大臣に質問させていただいたわけですけれども、今日の農業の問題をいろいろ考えるに当たりまして、特に、先ほど来いろいろな議論がございますように、我が国食糧自給率が非常に低下してきている現状なり、また一方では、農業に従事している皆さん方が非常に高齢化を来してきているという現状、それから一方では、国際化のそういった厳しい波の中にさらされておるというような現状の中で、農村地域が非常にいろいろな面で活力が低下してきているといいますか、先行きの展望がはっきり見出せないという中で、特に意欲のある農家の皆さん方がそういう失望感を何となく持ちつつあるというような心配をいたしておるわけです。  そういう観点で、先般総理大臣の方にいろいろなお話を、基本的な考え方をお尋ねした折に、総理の方からの答弁も、そういう具体的な御答弁はないわけですけれども、先ほど来大臣の方からも答弁がございましたように、現在の食料・農業農村基本問題調査会において、そういった幅広いいろいろな意見をこれから集約をして、我が国農政の基本的な方向づけをしたいというような趣旨の御答弁があったわけです。  きょうの午前中の質問の中にも幾つかあったと思います。確かに幅広い御意見をいろいろと聞いていただくということは非常に大事なことだというふうに思いますけれども、やはりこれから二十一世紀の我が国農業基本方向を定めるということであれば、一つの大きな方向づけというものをしっかりと農林水産省の方にリーダーシップをとってやっていただきたいというのが私たちの考え方でございまして、実際の現場で農業に従事している方々の意見というのは非常に大切なものがあるというふうに思っています。特に、意欲を持ってこれから取り組もうとしている農家の方々というのは、私は結構地方にはたくさんいるというふうにも思いますので、そのあたりのところを十分反映させるということは、非常に大切なことであろうというふうに思っております。  先般、我が自由党におきましても、実際の全国それぞれの地域で頑張っておられる農家の方々なり漁業者の方々に参加していただきまして、第一回のそういったシンポジウムを我々なりに開催させていただいたわけです。やはりこれからの日本の農政のあり方ということに対しては大変な強い関心は抱いておりますけれども、なかなか先行きの展望がはっきり見えてこないという中では、非常に皆さん方心配をされております。  そういう中にあって、これからの農業の中で、大臣も御就任以来いろいろな会合出席され精力的に自分の思いを語られ、またいろいろな方々から御意見を拝聴されておるというようなお話をよくお聞きするわけですけれども、この時点で、農林水産大臣として、これからの我が国の農政に対する思いみたいなものを、大臣の一種の哲学めいたものをこの場でちょっと御披露していただければ非常にありがたいというふうに思いますけれどもお願いします。     〔委員長退席、鈴木(俊)委員長代理着席〕
  164. 島村宜伸

    島村国務大臣 ただいまいろいろ御指摘がありましたように、農村におきましては、まさに高齢化がかなり急速でありまして、担い手の減少等含めて将来が大変憂慮されるところであります。  それで、我々は、OECD会合ではございませんが、農業多面的機能についてさんざん訴えてはまいりましたものの、これは国内にあっても非常に重要な問題だと思います。そして、国家におきましても、あるいは大都市においても農村においても同じでありますし、また生産者、消費者それぞれの立場に立ってもこれは言えることでありますが、お互いにそれぞれの持ち場をきちっと将来に向かって、希望を持って、誇りを持って取り組んでいただく環境を維持していかないことには、この国の将来、必ずしも全きと言えない、まずそう思います。  そういう意味では、先般もこの引用をしたのですが、私は、自分の生活信条の一つなんだけれども、人には添うてみよ馬には乗ってみよ、相手の立場になって物を考える、それでないと本当の理解は生まれない、そういう基本に立って今まで行動してきた人間で、これは国家間にもそのまま当てはまることだと思う。  そういう意味で、豪州やニュージーランドがさんざん農産物自由化を最初のうちは吹いていたわけでありますが、例えばニュージーランドの皆さんと会って私がその問いに答えるならば、我が国とおたくとは国土面積は一〇対七だ、しかし住んでいる人口は、こちらは一億二千六百万、おたくは三百五十万、そういうそれぞれが食糧危機に直面したときに、これをお互いに埋めるということの苦労は、これは均一ではないですよと。同時に、食糧の自給率一つ見ても、穀物自給率は、新しい数字で、おたくは一一七に対してうちは二九ではないか、そういうことごとを一緒くたにして、単に農産物自由化というふうにあおるのは、お互いが友好的でないと私は受けとめる、こんなことも言ったくらいであります。  少しく話が広がりましたけれども、これからの農村に対しては、私は都市の出身者ではございますが、十分農家に住まい、そこに定着してその地域を守っていこう、こういう気持ちになれるような環境づくりをしていくことが必要なんだろうと思います。また一方で、都市の住民の方々には、農村は過保護だという言葉に対しては、私はきちんとそのことに対して、しからば、あなた方が二カ月でも三カ月でも農村に居を移して生活ができますか、あるいは農民のお立場に立って将来夢を持って生活ができますかと逆に問うわけでありまして、これらについては、話してみれば必ずわかる。しかし、わかるだけでなくて、それを現実にどちらにもそれぞれ魅力のある地域だというものがつくり出されないことには、やはり将来の展望は開けないんだ、こんなふうに思っているところです。
  165. 一川保夫

    ○一川委員 ちょっと具体的なお話を確認させていただきますけれども、今現在、新しい農業基本法の改定に向けての具体的な作業にいろいろと入っておられると思います。今、現状ではどの程度そういった作業が進展しているかということ、それから、こういった最終的な報告が出れば、それを受けて当然法制化に入ると思いますけれども、そういった今後の大まかなスケジュールめいたものをちょっと御説明を願いたいと思います。
  166. 堤英隆

    ○堤政府委員 先ほど御指摘がございましたように、昨年十二月に基本問題調査会から中間報告をいただいているところでございますが、ことしに入りましてさらに会合を開きながら、かつ三月にはさらに全国四カ所で地方公聴会を開催いたしまして、先ほどから御指摘のように、農業者の方々、関係者の御意見をさらに聞いていこうということでございます。  そういうものを踏まえまして、本年夏ごろには最終的な答申をいただきたいなというふうに考えておるわけでございますが、私どもとしましては、これは戦後農政のかなりの大幅な見直しにつながりますし、さらに二十一世紀に向けての農政のあり方ということを規範するものでございますので、かなり大がかりな作業になろうかと思いますが、来年の通常国会には新しい基本法その他の法律を含めまして御審議を賜りたいというふうに思っておりまして、それに向けて努力をいたしたい、こういうふうに考えているところでございます。
  167. 一川保夫

    ○一川委員 きょうもいろいろと話題が出ていますように、これからの新しい基本法の制定のタイミングといいますのは、この二十世紀から二十一世紀にかけて、特に農業政策の中でも、例のウルグアイ・ラウンド対策、若干延期したというお話もございますけれども、一応めどが立つ、そういう段階を迎えるわけですし、また、ことしから新たな米政策というものが、おおむねこの二年間はそういうものを固定してやろうとしているというふうに聞いておりますけれども、大体そういう時期が重なってくるわけですね。  そうしたときに、これからの我が国の農政の基本的な方向づけというのは、やはりある程度は早目に基本方向を示す中で、二十一世紀に突入する我が国農業の大変重要なポイントが幾つかあるわけでございますので、そのあたりに対する大臣としてのお考えを確認したいわけです。  我々現場の声をいろいろ聞いている中では、基本的に我が国農業をしっかりとどういう方向で守ってもらえるのかというところの方向づけをはっきりさせてほしいとか、米をつくっている農家の方々にすれば、何か規模を拡大すればするほど、何となくそういった農政上の矛盾が出てくるとか、例えば農協との関係がおかしくなってくるとか、法人化した場合余りメリットがないのじゃないかとか、あるいは生産調整の大きな影響を受け過ぎるというようなことも含めて、一方では規模拡大を奨励しておきながら、規模拡大を積極的にやろうとするといろいろな障害にぶつかってしまうというようなこともいろいろと聞くわけですね。  それから、畑作農家の方々にとっては、自分たちが実際に生産して、それを所得として得る生産者の価格に比べて、末端の消費者価格というのはべらぼうに高い、もう数倍の値段で消費者に渡っているじゃないか、その流通段階はどうなっているんだというようないろいろな指摘もございました。  そういう問題も含めて、これからの農政の基本的な方向づけをするに当たって、これからのこの調査会中心にした取りまとめは非常に大切なものがあるというふうに思いますので、ぜひそのあたりの現場の声をこれからもしっかりと受けとめていただきたい、要望をさせていただきます。  それから次に、ウルグアイ・ラウンド対策のことについて、若干確認も含めてお聞きしたいわけです。  先ほどもちょっと質疑の中で出ておりましたけれども、私は、細かいいきさつは別にしまして、当時農業関係者なり農村地域の方々にUR対策としてそういうものを約束した以上は、基本的にはしっかりと履行してほしいという気持ちがございます。ただ、その後の農業情勢なり経済情勢、社会情勢、もろもろの変化もございますし、最近の農政に対するもろもろの批判もございます。そういうものを受けとめて、見直すところは徹底的に見直す、それは大変大事なことだと思います。ただ、当初、このレベルまでは次の交渉までには日本農業の足腰を強くしたい、体質を強化したいというねらいがあったはずなんですね。そこを余り先延ばしにしてもらっちゃ困るわけですけれども、そこのところの基本的な考え方はいかがでしょうか。     〔鈴木(俊)委員長代理退席、委員長着席〕
  168. 堤英隆

    ○堤政府委員 UR対策につきましては、このUR対策のできたときの経緯からしまして、今先生御指摘のように、農業の体質強化ということを国際化の中でも図っていこうということでできたものでございますから、その基本はきちんと据えていかなきゃいけないと私どもは思っております。  したがいまして、UR対策につきましては、全体の計画自体は六カ年間の事業計画ということで変更はございません。ただ、そのうちの公共事業につきましては、全体的な財政が非常に厳しいものですから、UR対策の中の公共事業分につきましては二カ年間延長させていただいたわけでございます。しかし、これは、全体的な、効率的な事業とかそういうことに努めることによって、二カ年間の延長分をできるだけ減殺するということについての事業効果を図っていきたいというふうに考えております。  そういう意味では、全体的なウルグアイ・ラウンドの計画のスキーム自体は基本を維持しながらも、財政の非常な厳しさという中で、公共事業につきましては見直しをさせていただいたということでございます。  それ以外にもまた、三カ年ないし四カ年の実績が徐々に出てきつつありますので、そういう実績の検証を踏まえて、さらに農家の方々あるいは農村の方々のニーズの高いところに事業をできるだけシフトしていくことの方が重要ではないかという御指摘もこの委員会でもたびたびいただきましたので、そういう意味で、公共、非公共を問わず、かなり地域のニーズを積み上げた形での見直しを今回させていただいた、そういう基本的な姿勢でこの問題に臨んでおります。
  169. 一川保夫

    ○一川委員 UR対策費の中の公共事業部門のお話もちょっとありました。最近、新たな米政策の推進の中で、当然生産調整の面積が相当ふえてきておるわけですけれども、やはり米以外のものを作付できるような、そういう農地、圃場を用意してやるということが非常に大きな課題だと思うのです。畑作を導入しようと思っても畑作を導入できないような非常に条件の悪い農地というのはまだ相当残されていると思います。  そういうことをいろいろと考えたりしますと、公共事業部門の枠の中には入っているかもしれませんけれども、いろいろな事業の仕組みとして、見直すところは見直しをかけるのは当然でございますが、やはり基本的にそういった構造改善的なものをしっかりと進めていくということは、当面の農業政策を実行する場合でも本当の基礎の部分ですから、水の手当てとかそういったところをやはりしっかりと公的に責任を持って実行していただくということが非常に大切なことだと思います。そのあたりの基本的な考え方をもう一度お聞かせ願いたいと思います。
  170. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 ただいま先生御指摘のURの公共事業でございますけれども農業の体質強化、最近の米の過剰に対してできるだけ円滑に転作が推進できるように農業の経営基盤を改革するといったような視点からこの事業を推進しているところでございますが、昨年六月の財政構造改革の方針に沿いまして、期間の二年延長、また事業費について、非公共との割合を六、四から五、五に縮減するといったような厳しい見直しを行ったわけでございます。先生御指摘のような、これからの農業のあるべき姿、一日も早くこれを実現するために、圃場整備、それからかんがい排水、農道等の各種事業をできるだけ有機的な連携を持って現場で実施し、事業効果の一日も早い実現を図るという点が第一点でございます。  それから二番目には、担い手への農地利用の集積、また水田の汎用化を進め、米から他作物への転作を円滑に推進し、その定着を図るといったようなあるべき農業の姿、構造に持っていくための事業効果の早期発現を図るために、圃場整備等を中心に、重点的、効率的な予算の配分を図る。  それから、大変大事なことでございますけれども、公共事業のコスト縮減、これを最大限徹底し、農家の御負担を少しでも軽減するといったような点に留意しながら事業を推進しているところでございます。
  171. 一川保夫

    ○一川委員 ぜひ、日本農業の体質強化といいますか、国際化の厳しい波の押し寄せる中でもしっかりと自立できるような、そういう基盤づくりというものをしっかりと進めていただきたいというふうに思っております。  ただ、私の方からの要望ですけれども、コスト削減という言い方がいろいろ最近出てきますけれども、余りコスト、コストということを言い出しますと、例えば変にコンクリートの二次製品をずらずらと並べてみたり、そういうことを余り農村地域でやってもらっても非常に困るので、やはり環境に配慮したといいますか、環境にマッチした、そういう工法というものをぜひ心がけていただきたいというふうに思います。  特に、農業全体というか、農村全体が環境問題に配慮しなきゃならない、そういう時代でもございますから、単なる効率面だけを追いかけたような工法じゃなくて、環境面に十分配慮したやり方をぜひ実施していただきたい、そのように思っております。  それから、最後に一点お聞きしたいのですけれども、この前の代表質問でもこの点のお話をちょっとさせていただいたと思うのですけれども次期農業交渉、二〇〇〇年に行われるわけでございますが、例えば総理大臣の答弁なんかを聞いておりましても、その時点における我が国農業状況あるいは農政の展開方向を踏まえて、その時点で対応するというような御答弁があるわけです。ただ、私は、ちょっとそういう答弁というのは、ある面では非常に寂しいと思うのですね。やはり二〇〇〇年、もうすぐですよね。そういうところのあるべき姿みたいなものは、ある程度農林省の方で、こういう方向へ誘導していくというような一つ考え方を持ってしっかりと我が国農業農村を導いていただきたいという考えを持っておりますし、何となくそのときの農業状況を見て国際交渉に臨むんだというようなことでは私は困ると思うのです。  やはりしっかりとした考え方を持って次期交渉に臨むということが大変大事なことでありますので、先ほど来農林大臣の御答弁を聞いておりましても、大変いろんな面で積極的に対応しておられるというお話なんですけれども、そういった考え方に対する大臣の所見をちょっとお伺いしたいと思います。
  172. 島村宜伸

    島村国務大臣 全くおっしゃるとおりでありまして、先般の会議でも、食糧安全保障そして農業多面的機能というものを国際的な場においてきちんとお互いがまず確認し合う、その上で、それぞれの国がそれぞれの国の食糧供給についての責任をまず基本的に持ち、今度は世界的な規模でこれをどうお互いが確保していくかということを我々は話し合ったところでございます。  国内におきましても、先ほど来御指摘がありますように、土地改良事業その他も、昭和四十九年当時百七十七万ヘクタールあったものが、その後のいろいろな土地改良工事の進行によりまして、現在時点では七十二万ヘクタールに大きく減少しておりまして、湿田を改良し、いわば汎用性を持たせるということが現実のものになってきております。これらをさらに進めて、全国的に効率のいい農業というものが展開できるような環境づくりに努めていきたい、こう考えます。
  173. 一川保夫

    ○一川委員 以上で私の質問を終わりたいと思いますけれども、私の方からちょっと委員長さんにお願いなんです。大事な審議中に余りにも、我々も含めてそうなんですけれども、特に与党の皆さん方の出席が悪いような気がするのですけれども、そのあたりをぜひ、もっと出席をしていただけるように、委員長さんの方からひとつよろしくお願い申し上げます。
  174. 北村直人

    北村委員長 わかりました。
  175. 一川保夫

    ○一川委員 以上で終わります。
  176. 北村直人

    北村委員長 次に、中林よし子君。
  177. 中林よし子

    ○中林委員 日本共産党の中林よし子でございます。  先ほどからの今後の農政のあり方などお聞きしましたし、今の日本農業の現状を考えるときに、やはり食糧自給率の問題をどうするかということが非常に大切な問題、課題になっているというふうに思います。  ちなみに、一九六〇年から一九九五年までの日本食糧自給率の問題、カロリーベースでは三七ポイント下がり、それから穀物では五二ポイント下がる、こういう事態になっております。先進国ではこれだけ下がったのは我が国だけだというふうに思うわけです。カロリーベースの食糧自給率は、先進国では最低のランクだということは言うまでもありません。  FAO、国連食糧農業機関が一九九二年に統計を出しておりますけれども、ここで、穀物の自給率が、世界百五十一カ国中、日本が何と百八位だ。本当に驚くような位置にあるわけです。ちなみに、百九位がキプロス共和国、百十位がフィジー共和国ということです。日本より下の国というのは、国土が砂漠だとか、あるいは非常に耕地が狭くて穀物が育たない、そういう自然的な条件でつくれないようになっております。日本では、もうほとんどの品目で、すべてにわたって、砂糖以外は全部自給率が下がっている、こういう状況になっております。  そこで、考えてみなければならないのは、自然的な条件だとかあるいは気候だとか、寒冷地だとか砂漠だとか、そういうような制約されている国で低いのはわかるわけですけれども日本のように非常に気候的に穏やかなところで、しかも作物に適しているような条件の中でこれだけ自給率が下がったということは、これはやはり政治的な意味合い、まさに政治の責任、そこにあるというふうに断言してもよいのではないかというふうに思うのです。  そこで、大臣にお伺いするわけですけれども、今のような日本の自給率の低下の問題を国際的に見ても異常だとお考えになっているのかどうなのか、それから、これだけ下がった原因はどこにあるとお考えになっているのか、お答えいただきたいと思います。
  178. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  当然、異常なくらい低い、こう受けとめておりますし、この自給率をこのまま放置していてはならない、こう基本的に考えております。  また、我が国食糧自給率は、昭和四十年当時カロリー換算で七三%が現在は四二%、それから穀物自給率は六二%から二九%と、それぞれ大きく減少をしております。  この理由は、一つには生活が豊かになったという面もございますが、米の消費が減少する一方で、輸入の飼料に頼らざるを得ない畜産物の需要が非常にふえたということ、また一方で、輸入原料に頼らざるを得ない油脂の消費が非常に増加したということから、別の輸入量が大きくふえたことによって、いわばその他の自給率が下がったという結果につながっております。  いずれにせよ、世界食糧需給を考えましたときに、このまま放置しておいて、ある日突然いわば自然の災害ともいうべき食糧危機を招いた場合には、大変危険な状態になりますので、ぜひこれらについては、将来に向かっての展望を開く必要が今あるだろう、こう考えております。
  179. 中林よし子

    ○中林委員 食糧自給率の原因を幾つかお挙げになりました。米の消費が減ったなどということも言われたわけですけれども、それも卵と鶏がどちらが先かという話に起因すると思うのですが、昭和三十年代、小麦戦略と言われて、日本にキッチンカーを走らせ、そして学校給食にパン食をやり、そういうアメリカからの大々的な小麦戦略の中で、日本の食生活そのものが大きく変えられた。畜産の方もという話なんですけれども、これも牛肉の輸入自由化などによって日本の食生活そのものも大きく変えられたということに私は原因があるのではないかというふうに思うのです。世界の中での日本食糧輸入の問題を考えたときに、私は、非常に大きな意味合いがあるのではないかというふうに思うのです。  これは食糧輸入額の問題ですけれども、九四年に統計が出ております。全世界食糧輸入、水産を除いて、二千六百六十億ドル、そのうち日本は二百五十三億ドルと約一割を占めております。それから、水産ですけれども、これは一年前の統計しかありませんが、世界で四百四十六億ドル、日本がそのうち百四十一億ドルで約三割を占めているということで、ほかの先進国に比べて二、三倍日本が輸入額に換算して多いという状況ですから、これは世界に与える影響も非常に大きいというふうに思います。  財団法人日本農業土木総合研究所が出した報告書、これは九六年の九月ですが、「わが国の食料輸入が開発途上国に与える影響の検討」で、我が国の海外依存熱量で、全世界の栄養不足人口、約八億四千万人と言われているのですけれども、何とぞれの三三・五%の二億六千万人を、日本が輸入している熱量で換算すると救済できる、こういう統計が出ております。  それから、総理大臣の諮問機関、きょうも話題になっておりますが、食料・農業農村基本問題調査会の中間取りまとめ、これによりましても、長期的には世界食糧需給が逼迫する事態も想定しておく必要がある、こういうふうに述べておりますし、平成八年度の農業白書、これを見てみましても、世界の穀物需給は、一時の逼迫を脱しつつあるものの、中長期的には人口増加圧力や砂漠化等の地球環境問題により不安定な局面があらわれることも考えられる、こういう指摘をしているわけですね。  だから、日本の自給率を高めるということは、日本食糧安全保障を確保するのは当然のことながら、世界的に見ても、栄養不足の人たちを救済する、こういう意味合いを持って考えてみれば、農産物の輸入自由化に頼って輸入農産物に依存する、そういうところから脱して、我が国で計画的に自給率を高めていく、こういうことが政治の責任であり、国際的にも貢献する道ではないかというふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
  180. 島村宜伸

    島村国務大臣 これから私たちは、将来に向かって、まさに英知を集め、我が国の自給率をどう高め、確保していくかということを考えなければいけないわけでありますし、現に、今、食料・農業農村基本問題調査会でも、このことを一つの主眼に置いて御検討をいただいているところでございます。  先ほど御指摘もありましたけれども、今、最新の数字を見ますと、FAOの一九九五年の統計によりまして、世界百六十カ国中百十番目、また、OECD加盟国二十九カ国中二十七番目と大変厳しい状況にございます。いずれにせよ、食に対するニーズの多様化といいましょうか、こういうことが一気に日本食糧の自給率を下げたということは事実でございますが、私たちは将来に向けて、やはりこれをどう高めるかということについてはまさに党派を超え、国民の英知を結集してこれに取り組む必要があろうかと思います。  なお、この四年来、米余り現象で、農家は大変豊作貧乏という悲鳴を上げておりますが、例えば、男物の茶碗一杯を食べていただいて、国民が一日一杯余計に食べていただくとどのぐらいになるかというと、これは試算にすぎませんが、二百五十万トンに匹敵するそうであります。  こういうことごとも含めて、余計に食べて太っていただくという言い方は、女性にはこれは嫌われるかもしれませんが、しかし、それはそれとして、やはり将来ともに我々が食の安全というものを確保するためには、単に、安直に調理ができるからという方向流れずに、自分たちの生活の中にもそういうものに対する協力を盛り込むという、国民のいわば教育といいましょうか、指導といいましょうか、そういうことも必要なのかな、こんなふうに考えております。
  181. 中林よし子

    ○中林委員 もちろん、消費拡大の運動も必要だというふうには思うんですけれども基本的には、先ほど一九六〇年代からの数字を私が引用したのは、やはり農産物の輸入自由化攻勢がどんどん強まってくる中でだあっと下がっていったというために、そこから数字をとりました。  OECD大臣食糧安保についてかなり強調したというふうに報道もされていますし、先ほどの発言を聞いておりましても、そういう主張をして帰ってこられたというふうに承りました。  そこで、アメリカのクリントン大統領の九八年の通商政策課題と九七年の年次報告、そこで出された、日本市場の規模に比べて米国産米の輸入が少ないと不満を表明して、自由化圧力をかけると公言をして一層の米市場開放を迫っている、こういう報道があるわけですね。  これについての大臣の、きょうの委員会でも発言はあったわけですけれども、私は、極めて内政干渉も甚だしいというふうに思うんですね。こういうアメリカの内政干渉をきっぱりはねのけて、先ほどから出ておりますが、二〇〇〇年のWTO協定の改定に向けて、本当に、農産物は違うんだ、もう改定すべきだという厳しい態度で、OECDでかなり頑張られたけれども、もっともっと厳しい態度で臨むべきだと私は思うんですが、アメリカの内政干渉に対してどうなのか、WTO改定をする気持ちがあるのかどうか、その点についてお伺いしたいと思います。
  182. 島村宜伸

    島村国務大臣 クリントン大統領の発言がもし事実であるとすれば、率直に申し上げて、大統領御自身が、日本にどれだけのものを買ってもらっているかということに対する勉強が少しく足りないのではないか。我が国は、まさに最大の農産物輸入国でありますと同時に、アメリカからもきちんと買うべきものは買っているわけでありまして、これを超えて云々ということは、まさにこれは、大統領として政治的な発言であったらともかくとして、事実に即した話し合いであるとか、あるいはお互いの立場を尊重し合ったいわば印象であるとすれば、それは少しく認識が違うのではないか、こんなふうに思います。  我々は、少なくも、これからも正当な手段で輸入を図っていきますが、先ほど来申し上げているように、生産と、それから輸入と備蓄のバランスをよく考慮しつつ、将来に向かっての食の安全というものを確保していきたい、こう考えます。
  183. 中林よし子

    ○中林委員 バランスを図っていくとおっしゃいますけれども農産物自由化がここまで来ているというのは、もうバランスを欠いているわけですよ。だから、そこで、バランスをとるというよりも、本当に真剣に自給率を高めていくということにならなければいけないのではないか、むしろ、今、農水省がおやりになっている、政府がやっていることは、それに逆行していることではないかということを指摘しておきたいと思います。  そして、先ほどから大臣の今後の農政に当たる姿勢についてお聞きすると、本当に、農業が持っている公益的な機能の問題をかなり強調しておられるわけですね。  平成八年度の農業白書で、水田の有する洪水防止機能だとか、農村景観だとか保健休養機能等について、代替法で、一年当たりおよそ四兆六千億円の価値があるという試算があります。  ここに、自由民主党の総合政策研究所が「強さといたわりのある国家をめざして」ということで、政策集を見せていただきました。この中で、実は、六十キロ当たりの米の値段、これをこういう公益的な機能に代替して価値を計算してみると、二万八千二百円の値打ちがあるんだ、こういう試算をレポートの中でされております。私は、これはすばらしい試算だなというふうに思ったのですね。  同じように、農業白書で、近年、農業農村の公益的機能への関心が高まる中で、地方自治体では、特に水田の持つプラスの外部経済効果を積極的に評価し、交付金等による水田を維持、保全する事例が各地にあらわれているということで、図面入りで、実は自治体独自のさまざまな公益的な機能に対して交付金、補助を出しているということが紹介をされております。  そこで、私は、自民党自身も一俵当たりの米の値段が二万八千二百円の価値があるんだよとおっしゃっているし、そういう公益的なさまざな機能を換算すれば、当然、米の価格は引き上げるべきだというふうに思いますし、ほかの農産物についても価格保証をやるべきだ、これがやはり自給率を高めていく道につながっていくというふうに思うのですけれども、その点はいかがでしょうか。
  184. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答えいたします。  確かに一々ごもっともですし、むしろありがたいお話もかなり聞くわけでございますが、ただ、現状でも、我が国の米というのは国際価格との比較ではかなり割高でございまして、それらを慮外に置いて、またこれをさらに買い進めていくということ自体には、今度は財政上の負担が絡むわけでありますから、国民の理解がどこまで得られるかということが前提になるかとは思いますが、それらについては、将来に向かって、もっと事実を事実のままに知っていただいて、認識を深めていただく中で、いわばそれらに対する御協力を願うというのが筋道かと考えます。  今、農業多面的機能の面の別の評価においては四兆円云々というお話がございましたが、森林においてもたしか三十九兆円とかいうのがあるんだそうでございまして、確かにいろいろ勉強すればするほどこのあれは大きいわけですね。  ただ、つい先般、いろいろなことを調べましたら、牛乳価格でも、日本と、例えばアメリカあたりですと、多分今は大体半分くらい、豪州はさらに半分くらい、だから、日本と豪州の比較においては四分の一ぐらいになるというのが、たしか数年前の記録であったわけでありまして、サトウキビにしても七対一の国際価格の比較がありますし、いろんなもので大変に不利なものをあえて日本の国の保障の中で維持していかなきゃいけない、こういう現実といわば我々の将来の方向づけとの中でどう絡ませていくか、これからの私たちの真剣に取り組まなければいけない検討課題だ、こう思っております。
  185. 中林よし子

    ○中林委員 国民的な合意が必要だというお話があるわけですけれども、九六年九月の総理府の調査で、将来の我が国食糧事情について不安を持つ人が七一%、それから、外国産より高くても生産コストを引き下げながら国内でつくる方がよいとおっしゃっている方が八三%と回答しているわけです。だから、国民的な合意はかなりとれるというふうに思います。  先ほどから諸外国の例を大臣もいろいろ引き合いに出しておられます。イギリスの例も出されましたけれども、イギリスの例を考えてみますと、戦前三三%まで穀物の自給率が下がりました、植民地がどんどん独立するというような状況もありましたから。実はイギリスの状況を調べると、戦後、一九四七年ですけれども農業法というのができて、本格的に自給率を高める政策へ転じていきます。その中で農業者のための報酬を、生活水準を保障するという意味で補助を出したりあるいは価格保証をしたり、これは財界も含めてイギリスでは支持をされて、先ほどもおっしゃったように穀物自給では百十数%まで上がっているというふうになっているわけです。  だから、問題は、大臣の決意あるいは総理の決意ともいいましょうか、そこにかかっている。本当に自給率を高めようと思えば、外国に依存するのではなくて、財政的にも十分やって自給率を高めていく、価格保証だとかあるいは所得補償だとかそういうことがとりわけ求められているというふうに思います。これではちょっと答弁を求めません、時間が限られておりますので。  そこで、財政が必要だ、莫大なお金がかかるというふうに先ほどからも財政問題もおっしゃっております。私は、今農水省の中でもやはりむだ遣いがあるんじゃないか、だからそこを削ればやれるという一つの問題をこれからちょっと質問をしてみたいというふうに思います。  わけても、今さまざまな角度から問題になっている干拓事業の問題ですね。諌早干拓を初めとしてさまざまな干拓事業、これまで完成しているところでも約四千ヘクタールはさまざまな形で、農業には使われていなかったりほかに転用されていたりというような新聞報道もございました。そこで、私は具体的に国営の中海土地改良事業についてお伺いしたいというふうに思います。  これは昭和三十八年に着手して、ことして三十五年たっております。これまで大体五つの干拓地を農地にして、それから宍道湖、中海を淡水化するという計画でありました。四つの地域は干拓は完了しております。あと残されているのが、一九八八年に淡水化が延期された、と同時に最大面積を持っている本庄工区というところが千六百ヘクタールという、実際農地になるのは千四百ヘクタールぐらいですけれども、それがまだ中海の底にあるという状況でございます。  ところが、二年前に島根県知事が本庄工区を農業用として全面干拓したいんだ、こういうことを農水省に申し入れをして、そこで、農水省それから島根県あるいは反対している住民団体などとのさまざまな動きの中で、二年かけて、農地として使うのかそれとも中海を漁業振興として使うのか、公正な調査をしようではないかという取り決めがあって、今ちょうどその調査の一年目が終わろうとしております。  この調査は、土地利用、営農あるいは西部承水路の問題、地下水対策、水質保全、農業用水対策、環境の問題、生物、生態系の環境などという七つの項目があって、特に水産振興について特別に調査をするという項目があります。その水産振興調査のために本庄工区水産調査専門委員会というのが設置されておりますが、この委員会の目的そしてこの一年間この委員会ではどういうことをやってきたのか、さらに、平成九年には調査費が三億三千三百万円計上されておりますが、その内訳はどうなっているのか、お答えいただきたいと思います。
  186. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 御指摘の本庄工区の水産調査専門委員会でございますけれども、これは中国四国農政局に設置されたものでございまして、中海の本庄工区の水産利用に関して行う調査につきまして専門的な立場から助言をいただくために学識経験者から構成されているものでございまして、昨年の九月、十月それから本年の一月と既に三回開催されているところでございます。  この専門委員会にお諮りし御検討いただいております具体的な内容は、水産に関する調査、全体についての調査設計、また、個別具体的な調査についての具体的な調査地点あるいは調査の方法等々についてお諮りし、専門的な見地から御助言いただき、これに沿って調査を進めさせていただいているところでございます。  それから、平成九年度の予算として三億三千三百万を中立的な立場からの調査費として計上させていただいております。この内容でございますけれども、大きく分けて三つございます。  第一点は農業利用に関する調査でございまして、これは具体的には土地の利用の問題あるいは営農、農業用水対策、これは地下水の利用あるいは周辺の河川の利用等について農業用水としてどうするかというような調査をいたすものでございまして、おおむね八千七百万円程度を予算として充てております。  それから二番目は水産利用に関する調査でございまして、水産生物の状況調査あるいは漁業の実態、それから、本庄工区と外との潮通しのためのパイプ方式による漁場の環境調査、それから、この潮通しをした周辺での漁場環境を改善いたしますが、これは具体的には、底に砂をまきます、こういった方法につきましても専門委員会の御助言をいただいて実施しておりますけれども、漁場環境の改善実証実験のための底質改善調査等々、これは水産利用に関する調査として一億三千二百万円を充てております。  それから三番目は環境や資源への影響を把握するための調査でございまして、動植物あるいはこの地域の水質等々のさまざまな調査を行うことといたしておりまして、一億一千四百万円おおむね計上いたしておりまして、現在こういった調査を鋭意進めておりまして、データが逐次集積されているところでございます。
  187. 中林よし子

    ○中林委員 実はこの質問の作業中にこの予算の配分についての資料要求をしたんですけれども、質問してくれればその場でということで事前に私のもとに来なかったので、ちょっと余分な時間がかかったということを苦言を呈しておきたいというふうに思います。  さてそこで、実は、この本庄工区水産調査専門委員会の議事録の要旨というのが三回公表になっているんですが、ここで専門委員会のメンバーの方々がいろいろな意見を述べておられます。これだけの費用を使って調査をするわけですけれども、かなり疑義が出ているのではないかというふうに思います。  例えば、第一回の中では、覆砂の調査期間は最低でも三年間は必要であり、調査期間が短いので科学的なデータが得られないのではないかというような意見。第二回では、潮通しパイプの設置は漁業振興に直接結びつくものではなく、中海、宍道湖で水産振興を行う場合になすべき改善事業を予測するための小さな試験的措置であるというふうに、これではできないというような意見も述べられております。そして、実は議事録そのものができていないということもありまして、第三回を終わった時点で、この専門委員会のメンバーの一人の島根大学の徳岡教授が、本庄工区水産調査専門委員会委員としての意見発表というものをされております。この意見発表を少し引用させていただきたいのです。「残された期間での科学的調査可能性について」、今後の問題ですので、ぜひお聞きいただきたいというふうに思うのです。  パイプによる潮通しの後の調査は、農政局の計画によると、平成十年五月から十月の間で行われることになります。これでは季節ごとに変化する潮通しの影響を全体として把握することは困難で、科学的な調査としては失格と言わざるを得ません。  漁場環境改善実証実験、覆砂ですが、これについては当初本庄工区外の中海での実験が農政局によって提案されましたが、第三回委員会ではそれでは意味がないということになり、本庄工区内での覆砂実験に変えることになりました。本庄工区外で行う覆砂のスケジュールは、農政局の計画によると、平成十年二月に一回の事前調査、二月から三月工事、五月から十月に事後調査となっています。覆砂実験のために少なくとも二、三年の期間が必要であるということは三回の委員会のたびごとに強く主張されていたことで、当初の計画からして無理があったわけです。これは委員会共通認識であったと言ってよいと思います。本庄工区内で実験を行う場合、上記のスケジュールを踏襲するとすれば、事前調査なしに、工事後の調査を平成十年五月から十月に行うことになります。底質を改良してからそこに生物が定着するのには一定の期間が必要ですので、これでは検討に値するデータそのものが全く得られないことは明白です。  先ほども覆砂などのための予算配分をお答えになりましたけれども、これだけ国費を使ってやるんだけれども、実際の専門家の方々は、これでは公正なデータは得られないということを指摘をしております。ですから、私は、当然、二年間の調査というのは公正公平なものでなければならないというふうに言われているんですけれども、これで本当にまともな調査ということが言えるのでしょうか。この徳岡教授が指摘しているような改善方法、例えば期間を延長するなどということがあり得るのでしょうか。
  188. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 九年度、十年度、二年間で実施いたします調査につきましては、平成八年度から長い期間をかけまして、必要な期間、あるいは方法、必要な金額等につきまして、先生も先ほど御指摘されましたように、さまざまな立場の御意見を承り、また、専門家の御意見も聴取しながら、現在のような枠組み調査を実施することといたしたものでございます。  ただいま徳岡教授の御意見、あるいは、第一回目及び第二回目についての御意見、御紹介ございましたけれども、この委員会につきましては既に三回開催いたしております。議事の要旨につきましても、委員の御了解のもとに公表し、委員会の開催の都度、委員長より議事の概要について御紹介申し上げているわけでございます。  八名の委員がおられまして、いろいろな専門的なお立場から御意見がございますのも事実でございます。今のような期間の問題、また事業の効果の問題等々につきましても、御指摘のような御意見もございましたけれども委員会全体としては、現在私どもが実施しております調査、これは委員会の全体の総意として私ども承りながら進めているわけでございまして、先ほど御指摘されました御意見も、貴重な御意見ではございますけれども委員会全体の御意見ではないということを御理解いただきたいと思っております。
  189. 中林よし子

    ○中林委員 当然そういう懸念があるからこそ徳岡教授は自分意見表明として出さなければ全体の意思が伝わらないということで、この点は全体の意思だということも加えて述べているわけですから、そこは十分本当に、専門家の方々の指摘ですので、よく今後の調査に生かしていただきたいし、必要ならば期間も延ばしていただきたいということを重ねて要望しておきたいと思います。  そこで、時間が大変残り少なくなりましたけれども、実はこの中海干拓事業の問題でクリアしなければならない問題はたくさんあるわけです。一つは地震対策の問題。阪神大震災が起きて以降この問題が一体どうなっているのか。それから、中海に浮かぶ大根島、八束町、一つの町をなしておりますけれども、この島の地下水対策は一体どうするのかということも非常に重要な問題でございます。これがクリアできなければ、とてもこの干拓事業は進めるわけにはいかないという問題です。  そこで、私はお聞きしますけれども、農水省が農業土木学会に中海干拓堤防施工管理委員会調査を委託しております。これは昭和四十九年、一九七四年から一九九一年、実に十七年間という委員会が存在して、平成四年、九二年にその報告書が出ていると報道されております。ところが、私は、もう随分この資料を要求しましたけれども、これは公表すべきものではない、非公開だということで出てまいりません。その理由は一体何でしょうか。
  190. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 御指摘の報告書は、平成四年度の中海干拓事業の休止に伴いまして、これまで堤防の管理方法等について検討途上の資料が散逸するのを防ぐために整理したものでございまして、これは委員会としての結論を得たというような性格のものでございません。これまでのさまざまなデータあるいは資料を整理しただけでございますので、これは委員会としての報告という性格のものでございませんので、これは公表、公開することを差し控えさせていただいておりますけれども、こういった委員会での論点等につきましても、今回の二カ年の調査調査検討を行い、いずれ取りまとめることになると思います。
  191. 中林よし子

    ○中林委員 国民の税金を使って十七年間にわたるいわば蓄積がある、それが基本的な資料として提出されないということは、私は、何かそこに農水省にとって不都合な問題があるのではないかと疑わざるを得ないわけです。同じ農業土木学会でも、生態系に関する中間報告というのは、五十八年に、もう膨大なものですけれども、公表されて、私も見ました。だから、同じ趣旨からすれば、当然出されてしかるべきではないかというふうに思います。  そこで、もう少しきめ細かく聞こうかと思いましたけれども、実は時間が残り少なくなりましたので、大臣にちょっと見ていただきたい。見えますでしょうか。  先ほど、地震対策がなされていないんじゃないかという話をしました。実は、これが大根島と言われる島で、これが本庄工区、今、海の底ですけれども、中海の千四百町歩の農地にしようとしているところですが、ここに北部承水路堤、ここに西部承水路堤という堤防ができております。ここでオレンジに塗ったところ、これが実は、断層がある、宍道断層だ、このように指摘をされているところです。ピンクのところが堤防なんですね。そうすると、断層の上に堤防がある。しかも、研究者の間では、これは活断層だと言っております。そうなると、建設省にも伺いましたけれども、活断層の上に、例えば建設省がダムを建設するなどということは到底考えられないということをおっしゃっておりました。ということになると、これは非常に物騒なものだというふうに言わざるを得ないと思います。  また、もう一面ですけれども、これが中海に浮かぶ大根島という島なんですけれども、これは火山です。火山で成り立っております。火山で成り立っている島ですから、実は周辺を海で囲まれております。塩分は非常に少ないですけれども、汽水域で囲まれているという状況になっております。玄武岩でできておりますから、上から降った雨がそのすき間からおりて、実は周辺の海水によって、比重の関係でこの島に地下水としてたまっているんですね。そうなりますと、もしもこちらの本庄工区側が干陸、農地になりますと、塩分との関係で、全部地下水がこちらに流れて出る。しかもこれは、堤防の役割はこの島自体がならなくて、常時海水が入り込むという状況になる、こういうふうに地質学者たちは指摘をしているわけです。  だから、堤防のこと、それから地下水対策、これはクリアできるのでしょうか。
  192. 山本徹

    ○山本(徹)政府委員 まず、地震と堤防のことでございますけれども、北部承水路堤の近くに活断層が存在する可能性は確かに一部の学者が御指摘になっておりますので、農林水産省といたしましても、周辺地域を含めまして断層の調査を実施いたしました結果、活断層でないということが確認されておりまして、本庄工区周辺には活断層は存在しないと考えております。  ただ、活断層の存在の有無にかかわらず、日本列島すべて地震の可能性はございます。堤防の耐震性の問題でございますけれども、本庄工区の干拓堤防は、底幅が百四十から百七十メートルございます。それから高さが十メートルと非常に傾斜の緩いカーブの堤防でございまして、かつ砂と石で構築されておりますので、コンクリートでできておりますビルのようないわゆる剛性構造物と異なっておりまして、地震等の力による変形に対しては非常に適応性が高い、地震に対して安全度が高い構造物だと言われております。したがって、過去にも、このような緩い傾斜の砂と石で構築されました干拓堤防が地震によって決壊したというような事例はございません。  ただ、堤防の耐震性につきましては、十分な安定性があると思っておりますけれども、現在実施しております調査の中で、さらに干拓堤防の安全性を確認したいと考えております。  それから、二番目の大根島の地下水の件でございます。  これも、島根県知事からもこの調査検討を要望されておりまして、私ども、二年間にわたる調査の中で地下水位の観測等を行いまして、これに基づく解析モデルを作成いたしまして、仮に干拓をした場合に、干陸に伴って地下水がどういう水位になるか、あるいはどういう動きをするかというような、挙動予測と言っておりますが、挙動予測等を行いまして、どういう対策になるのかでございますけれども、必要な対策あるいは必要な措置等を検討したいと考えております。
  193. 中林よし子

    ○中林委員 時間が参りましたので終わりたいと思いますけれども、今言っただけでも相当解決をしなければならない問題を含んでおります。しかも、調査は、先ほど言った堤防管理委員会の方、十七年間やった蓄積があるのに、この二年間さらに調査をしてなどと言わないで、もうあるものを公開されて、研究者に見せて、きっちりさせる必要があるのではないかというふうに思います。  それから、大臣、本当に財政的な問題で言うならば、こういうことじゃなくて、既存の農地をもっと大切に、あるいは価格保証をする、そちらの方がどれだけ経済効果が上がるかわからないということを申し、この中海干拓事業は直ちに中止されるよう申しまして、質問を終わります。
  194. 北村直人

    北村委員長 次に、前島秀行君。
  195. 前島秀行

    ○前島委員 時間も余りありませんものですから、二、三、国有林の問題で最初に聞きたいと思います。  昨年の八月、平成十年度の概算要求のときから、国有林の抜本改革ということが議論されてきました。そして、予算編成に当たって、債務処理というところから発して、かなりいろいろな改革案が提示されているわけであります。  この改革案の中で、施業的側面での特徴というのは、木材生産重視から公益性重視ということ、それから徹底した民間委託といいましょうか、民間実行という方向性を出してきた、こういうことであります。  ここで心配になるのは、今度の改革案というのが、債務処理というところに大きなウエートといいましょうか、視点があって、本当にこれからの国有林をどうしたらいいのか、また国民の国有林に対する期待にどうこたえていくかという議論というのはどっちかというと後を追いかけていったという感じが実はしなくはないわけでございます。国有林に対する我々国民の期待というのは、もう既に言うまでもなくして、森林資源をどう確保していくのか、維持していくのかとか、環境、自然、あるいは水源の確保だとか、あるいは国有林の持っている山村振興における重要な役割等々、こういう国民の期待にこたえていくというのが公益的機能の持っているところを重視していくという側面だろう、こういうふうに我々は期待をしているのであります。  逆に心配するのは、生産重視から公益的機能重視ということによって、結果的に、手間暇抜いていく、金も抜いていくということになりはせぬのかなという心配なんですね。ここがどうしても心配になるわけで、この木材生産林の比率というのが、国有林の中で五四%から二一%という形でがたんと減った。逆に、公益林の比率というのが四六%から七九%になった。具体的な施業の方法というのは、伐期を長く、長伐期にしていくとか、複層林にしていくとか混交林だとか天然林化していくということですね。公益性重視という意味で、水源を確保していくとか自然環境を確保していくという意味では、それが木材生産林であろうが公益林であろうが、手間暇かけるか、どうかけるかということは同じことなんです。両方、公益林であろうが生産林であろうが、やはり手を入れる、あるいは特に間伐というものをやっていくということでなければ、公益林も生産林もその目的は達成できないということは同じなんですね。  そんなことを思うと、今度の改革案の中で、公益性の重視というのは、手間暇をかける生産林の部分の比率を落としていって、人を減らしたり金をかけるのを減らしたり、結果的には手を抜いていくという結果に陥らないのかなという心配が非常にある。やはりこの三兆八千億の処理をするために、いかに金を減らしていくかと言ったら語弊がありますけれども、経費を削減していくかということに大きなウエートがあったような気がするわけでして、今度のこの森林整備方針の転換が、そこに一つ心配がある。  そういう面で、そんなことはないというのなら具体的に、特に間伐等々の経費というのは、生産林であろうが公益林であろうが、ちゃんと予算措置をしていくよというところが保証されなければ意味がないだろう。また、そこは言うだけに終わっていやせぬかな、こういうことがあるわけで、この国有林が荒廃しない、あるいは、本来期待されるこの国有林の任務というものを放棄しないためにも、その辺のところの担保というのはちゃんと、国民に向かって心配するなと言えるかどうか、その辺のところをまずお聞きしたい、こういうふうに思います。
  196. 高橋勲

    ○高橋政府委員 今回の国有林の抜本的改革を推進するに当たりましては、平成八年の十一月に閣議決定されました森林資源に関する基本計画、その森林整備の推進方向対応しまして、公益的機能として、水土保全それから森林と人との共生、こういうものを重視する森林を国有林野面積のおおむね八割に拡大することとしたわけでございます。  この公益的機能の発揮に重点を置いた管理経営を行っていくためには、そこを複層林施業や長伐期施業、それから針葉樹広葉樹混交林、そういうふうなものにして公益的機能を高める施業をいたしますし、それから、事業の民間委託によりまして、これを事業として推進し、公益林の管理、それから水土保全を重視する森林における造林、林道整備、こういう経費につきましては、従来よりも一般会計から繰り入れを行うこととしておりまして、予算的に申し上げますと、公益林保全管理費で、新規で、平成十年度で百十億、それから水土保全森林ということで三十八億というふうな予算計上もしているところでございます。  こういう措置を通じまして、適切な森林整備を推進したいと思っております。
  197. 前島秀行

    ○前島委員 また、いずれ法案が出たときに聞きますけれども、それなら、間伐の経費というのはどれだけ具体的に計上されるのか。そのことによってどれだけ間伐の実施率が進むのかということは、きょうはいいですよ、いずれまた法案が出たら聞きます。  要するに、国有林の中で間伐をやらにゃいかぬなという必要な地域の達成率はどうだったかと今日までのことを考えれば、実際、そんな簡単なものじゃないだろうと思いますけれども、いずれまた法案審議のときに聞きたいと思います。いずれにせよ言えることは、やはり公益林の比率を増したということは、結果的に手間暇を抜くことになる心配があるということだけは間違いないと思いますので、今後ちゃんとお願いをしたいということです。  それから、今度の中で徹底した民間委託、民間実行、こういう方針でありますが、本当にこの受け皿となる民間はあるのか、体制が整っているのかということです。  私の周辺の国有林の仕事をしている関係者というのは、ほとんど六十代、七十代でして、その人たちに会うと、もうおれの代で終わりだ、こう言うわけですね。それで、後を継ぐ人もいないし、と言うのは大体間違いない、みんなが言うことなのですよ。  そんなことを考えて現実に統計的に見ると、まず、そもそも労働力そのものの絶対量が減ってきているし、国有林登録事業体で六十歳以上というのは実に四二%だという数字が具体的に示しているし、また、その国有林事業体で働く人たちの通年雇用などというのは五〇%を切っておる、あるいは月給制で働いている人なんというのは実に二三%足らずというのがこの国有林野の登録事業体の皆さんの現実、実態ですね。  こういう実態で、これから全部民間委託していくよといって、果たしてどれだけ事業ができるのか、国有林をちゃんと管理できるのかについては、率直に言って、私は、不安いっぱいと言わざるを得ない。現に、流域流域と言っているけれども、この流域で、民間で受けてくれる人も現実には不可能だということはあちこちから聞くわけでして、民間委託、民間実行というけれども、受け皿となる民間事業体は大丈夫か、今後どうしていくのか、この辺のところをちょっと聞かせていただきたい。
  198. 高橋勲

    ○高橋政府委員 御指摘のように、確かに、林業事業体を取り巻く環境につきましては、林業生産活動の停滞とか林業就業者の減少、高齢化、厳しいものがあると認識をしております。  国有林野事業としましては、林業事業体の育成、整備を図るために、これまでも、技術力とか経営能力の高い林業事業体を育成するための登録制の実施、それから素材生産、造林事業等を組み合わせた長期協定システムの締結、それから、立木にかかわる安定供給システムの導入、こういうことによりまして、事業の安定的発注を推進しております。それから、零細性の克服のための共同事業体の結成の指導、社会保険等への加入促進の指導、このような措置を講じておるわけでございます。  今後とも、林業労働力確保法に基づく就業者の確保、機械化の促進、こういうことによりまして、林業事業体に対する支援や事業の安定的な発注に努めまして、林業事業体の育成、整備を図っていく考えでございます。
  199. 前島秀行

    ○前島委員 今言われたようなことは、もう十年も十数年も前から言われている方針、一般論で、それが今日まで一向に解決していないというのが偽らざる実態だろうと思います。そして、国有林で働いている皆さんの技術、能力というのは、これはまた貴重なものがあるだろうと私は思いますけれども、これを民間実行していく場合にどうしていくのか、どう受け継いでいくのかということも、またこれは重要な問題なんですね。だから、処理のために、あるいは経営、金のことだけを考えて、ただ民間実行して事が済むというものではない。その受け皿は全然用意されていないというのが現実だろうと私は思いますので、この辺のところは、これから実施していく以上、ちゃんとそこのところの受け皿としての民間の対応を考えてほしいということを強くお願いしておきたいと思います。  それから、組織の改革、合理化として、これから営林局を七にしていく、営林署を九十八とする、こういう組織案が検討されているわけですが、この七営林局、九十八営林署、あと森林事務所がどうなるのかなというところは今は論じないとして、何を根拠にこの数字が出てきたのかということなんです。この数字を出してきた組織案に基づいて今後やっていけば国有林はちゃんと管理できる、その保証といいましょうか、めどというのはちゃんとあっての数字なのかということなのであります。  よく言われてきたのが、営林局が十四から七になれば管理面積がどのぐらいになるかとか、いわゆる五十四万ヘクタールが、今度、百八万ヘクタールを対象としなくちゃ、物理的には倍になるということですね、倍になる。あるいは、営林署が二百六十四ありますね。今度は三十五減らすとしても、現在二百六十四あって、それを九十八の流域に減らしていく、統合していく。一営林署のエリアといいましょうか、管理対象が二万九千ヘクタールから七万八千ヘクタールに変わっていく。おおむね倍以上の範囲になっていく。森林事務所、今、千二百五十六あるけれども、これが幾つに整理されていくのかというと今後の検討のようでありますが、ここも、相当数を減らしていけば、対象の面積というのは大幅に変わる。  本当にこれだけ、それぞれの局、営林署、森林事務所が対象を広げてしまって大丈夫かという問題も、間違いなく心配ですね。私は、毎年地域の人たちと山を見る会というようなことで、毎年富士山へ行っているわけですね。やはり明らかに年々、我々素人が見ても荒れているなと感ずることは間違いない事実でして、一体この数というのはどういう根拠を持って出てきたのか。  例えば、地域地域の実情、業務の量、あるいはこれから国有林の収穫量などの実態等、シミュレーションとあわせて現実にはじき出してきた数字なのかどうなのか。先ほど言いました、民間の労働力というのは大丈夫なのか等々を考えた上で出てきた数字なのか。あるいは、これから重要た実行のシステムとして、流域管理システムというのをやっていこう、民間と国とが一体になって流域単位で山を管理していこうではないかという構想があるが、百五十七流域あるはずですね。ここのところ四、五年、この百五十七流域でもって民間と一緒になってつくっていこうではないかとやってきたけれども、これを、百五十七の流域を九十八の流域にするけれども、一体それとの関係はどうなるのか。  あるいは、資料を見ますと、林野庁自身が、この流域管理をやっていく上には、流域の担当者といいましょうか、調整官の配置が必要だぞというふうな、営林署は百十二流域営林署でもって、それは、林野庁、認めているはずなのですね。それを配置していこうとやっている真っ最中、百十二の流域営林署にそういう流域管理システムを運営していくといいましょうか、担当者が必要だぞと言っていながら、九十八の営林署に整理統合する。一体この矛盾をどうするの。現にこの流域管理の調整官は、現在二十四しかまだ配置していない、目的達成されていないという状況の中で、本当に大丈夫なのだろうか。  この数は一体、ちゃんと根拠を持って示してきた数なのか。これから十分地域の実情に合わせて、ちゃんとやっていくように今後していくという方針なのか。その辺のところをひとつ聞かせていただきたいというふうに思います。
  200. 高橋勲

    ○高橋政府委員 今回の、十四営林局、営林支局を七つの森林管理局へ再編する、あるいは今年度末で二百二十九となる営林署を九十八の森林管理署へ再編する、このことは、累積債務の本格処理を含めた国有林野事業の抜本的改革を行う上で、国民の理解と協力をいただくためにもぜひ必要なことと考えております。  その考え方でありますけれども、森林管理局につきましては、森林整備の方針を、先ほどのお話のように木材生産機能重視から国土保全等の公益的機能重視に転換すること、そして造林や丸太生産等の事業実施は全面的に民間に委託すること、そういうことによりまして、業務内容がこれまでの事業実施から森林管理等の行政的な管理に移っていくこと、これを勘案しまして、ブロック単位に七つの森林管理局に再編する考えでございます。  この場合のブロックにつきましては、現在の営林局、営林支局の所在状況、国のほかの行政機関の地方支分部局の所在状況等を勘案しておりまして、具体的には、北海道、東北、関東、中部、近畿中国、四国、九州の七つのブロック単位に森林管理局を置くと考えております。  それから、森林管理署につきましては、委員指摘のように、流域単位という考え方で、民有林の流域管理も含めて、その考え方をベースに置きまして、それを推進するということで、森林法に基づく全国百五十八流域の流域につきまして、国有林野の賦存状況でありますとか、あるいは現存の営林署の配置状況、こういうものを勘案しまして、九十八の森林管理署に再編する考えでございます。
  201. 前島秀行

    ○前島委員 今の説明で出てきた根拠というのは机上の数字でして、私のところでいえば、静岡の伊豆半島の天城の南端と神奈川県の平塚を一緒にして、どんな管理ができるかということになるのですよ。だから、これは数字の上での机上のプランだろうと思うので、やはり地域の実情に合わせた上で、ちゃんとできるようなことをぜひやってほしい。  それから、大臣、今現在一万五千人いるのです、それを五千人にしよう、こういうのですね。平成九年期首の要員数は一万五千四百四十。これを平成十五年、そのあたりに五千人に減らそうということは三分の一に減らせということですね。当然、要員、働く人たちの雇用の問題が心配になります。  そこで、大臣に決意を聞きたいのですが、今までは、今日国有林の問題については、昭和五十三年以来四度にわたってやってきたのですね。その間、六万五千人いたのが一万五千人になったのですよ。その間の負債は、逆ですね。人を減らせばいいという問題じゃないことはその事実が示しているのです。  問題は、今まで労使間でいろいろやってきたこと、その経過は尊重して今後もやっていくということと、それから、一万五千人を五千人にするのだが、いわゆる意に反した解雇といいましょうか処置、平たい言葉で言えば生首を飛ばさない、こういう大きな原則で今日まで今度の改革の問題についてもやってきましたけれども、そのことはやはり大臣としてちゃんと今後も守っていかなければいかぬ約束事だと思いますが、その辺のところを大臣の決意としてお聞かせを願いたいと思います。
  202. 島村宜伸

    島村国務大臣 なるほど、今先生御指摘のとおり、昭和三十九年当時は八万九千、五十三年に六万五千、現在が一万五千、これをまたさらに思い切って削減をし、可能な限りいわば民間に委託をしていこう、こういうことを基本にしていることは事実でございます。  実は私、就任以来、森林を守るという非常に貴重な仕事に取り組んだ方々の先行きについていろいろ心配をしまして、再三このことに対して事実を確認をしたところでございますが、一つは、先ほど来御指摘がありますように、非常に高齢化している向きがありますのと、それからいま一つは、御本人も納得ずくのいわば配置転換というものの道が開ける場合等を考えまして、俗に言う生首は切らない、その方たちに対して強制的ないわば要員調整をするようなことはしない、こういうことはきちんとした説明を受けているところです。  そういう意味で、今後とも御本人の意思に反して退職させないとの考え方のもとに、職員及び労働組合の理解と協力を得て、円滑に進められるよう適切に対処していきたい、そう考えております。
  203. 前島秀行

    ○前島委員 ぜひ今までの話し合いの経過、それから意に反したことはしないという、このことだけはちゃんと守ってほしいなと思います。  最後に、ちょっと農業基本法の問題について質問して終わりたいと思いますが、先ほど、いろいろ皆さんからこれからの農業基本法方向性についての議論がありました。  そこで、私は、この基本法の制定というのは今後どういう作業でいくのかなということが一つと、それから、私たちの党も、案を考えまして、今、全国五カ所でいろいろな意見を聞いたりシンポジウムをやってきているわけですね。その中での大体の皆さんの要望というのは、これからの農業というのは、経済効率性中心から安心、安定な農政理論に変えていくべきだな、いわゆる食糧安保の考え方が大切ではないかだとか、あるいは、農業の持っている多面的な機能を重視していくべきだとか、持続可能な農業ということに変えていくべきだとか、そして、これからは農業問題も同時に都市の問題として、都市、農村が共生していく、国民合意でこのことは進めていかなければならぬなという、基本的な課題というのは大体一致している。  そこで、具体的に、そんなことを前提にしながら、この基本法の中に織り込んでいってほしいというものとして、いわゆるこの基本法というのは、宣言法ではなくして、実施法という方向でぜひ頼みたい。具体的な生産目標なんかも出して、一定の期間があればそれを見直すような、宣言法から実施法であってほしいなというのが一つ意見、要望。  それから、基礎的食糧というのはぴしっと定義をして、基礎的食糧とは何か、そのことの生産、供給の目標というのをちゃんと位置づけてほしい。何も、すべての基礎的食糧国内で生産するのじゃなくして、いろいろな方法をもって供給していくということを含めて、そういうことを明確にしてほしい。  あるいは、日本デカップリングの導入といいましょうか、生産、供給の実効性を担保するためには、そういう概念というものもこれからは必要ではないだろうか。  あるいは、これからの農業の手法として、いわゆる家族農業、家族経営というのが柱になって、それを集落営農といいましょうか、生産法人という形でいくのが筋ではないだろうか。そのための農地は、例えば五百万ヘクタールぐらいはちゃんと目標としていく。  こういう基本的な柱みたいなものをぴしっとこの基本法の中で入れてほしいという希望が強いわけでして、私たちも、そういう、今論点になっているところはそんな方向で整理してほしいな、また、すべきではないだろうかというふうに思っていますので、その辺のところの最後の御意見を伺って、私の質問を終わりたいと思います。
  204. 島村宜伸

    島村国務大臣 お答え申し上げます。  社会情勢の変化や国際化の進展等に対応するために、新たな基本法の制定やあるいは農政の改革が必要となっており、現在、食料・農業農村基本問題調査会でいろいろ御検討をいただいているところでございます。  具体的検討事項の主なものは、食糧の安定供給の確保、それから消費者、国民のニーズへの対応農業構造の変革と農業経営の安定、そして、農業農村の公益的、多面的機能の発揮、そして中山間地域等を含めた農村地域の振興等でございます。  調査会は、御高承のことと思いますが、学識経験者六名、食糧中心とする経済界四名、生産者四名、消費者一名、労働団体一名、地方公共団体一名、マスコミ関係者三名、計二十名の委員の方々に御検討いただいているところでございまして、昨年十二月、中間取りまとめが行われ、本年夏ごろをめどに具体的な最終答申をいただくということになっております。  我々からいろいろ注文をつけたり、内部にいろいろ指図めいたことはできませんが、これらの方々の中には農政に極めて通じた方々がおられますし、それぞれ皆さんが御理解いただけるような立派な答申がいただけるものと今から期待をしておるところでございます。
  205. 前島秀行

    ○前島委員 終わります。
  206. 北村直人

    北村委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十四分散会