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1998-05-06 第142回国会 衆議院 大蔵委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月六日(水曜日)     午前九時三十分開議 出席委員   委員長 村上誠一郎君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 浜田 靖一君    理事 池田 元久君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君       飯島 忠義君    今村 雅弘君       岩永 峯一君    大石 秀政君       奥山 茂彦君    鴨下 一郎君       河井 克行君    桜田 義孝君       菅  義偉君    砂田 圭佑君       園田 修光君    田中 和徳君       中野 正志君    根本  匠君       宮路 和明君    村井  仁君       目片  信君   吉田六左エ門君       渡辺 具能君    渡辺 博道君       渡辺 喜美君    上田 清司君       北脇 保之君    末松 義規君       中川 正春君    日野 市朗君       藤田 幸久君    赤松 正雄君       石田 勝之君    河合 正智君       江崎 鐵磨君    鈴木 淑夫君       西田  猛君    佐々木憲昭君       佐々木陸海君    濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 松永  光君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁調整         局長      新保 生二君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房長 武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局次         長       細川 興一君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省証券局長         心得      山本  晃君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君  委員外出席者         労働省職業安定         局業務調整課長 浅野 賢司君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      藤原 作弥君         参  考  人         (日本銀行人事         局長)     横内 龍三君         参  考  人         (日本銀行審議         役)      引馬  滋君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      山口  泰君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君     ————————————— 委員の異動 五月六日  辞任         補欠選任   桜田 義孝君     目片  信君   杉浦 正健君     飯島 忠義君   渡辺 博道君     奥山 茂彦君   並木 正芳君     石田 勝之君   小池百合子君     江崎 鐵磨君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     杉浦 正健君   奥山 茂彦君     田中 和徳君   目片  信君     菅  義偉君   石田 勝之君     並木 正芳君   江崎 鐵磨君     小池百合子君 同日  辞任         補欠選任   菅  義偉君     桜田 義孝君   田中 和徳君     園田 修光君 同日  辞任         補欠選任   園田 修光君     渡辺 博道君     ————————————— 四月三十日  国民の生活安定のための十兆円減税実施に関す  る請願長内順一紹介)(第一九九三号)  同(丸谷佳織紹介)(第一九九四号)  同(丸谷佳織紹介)(第二〇一四号)  同(丸谷佳織紹介)(第一二〇三号)  所得税恒久減税実施に関する請願佐々木憲  昭君紹介)(第二〇一二号)  同(佐々木陸海紹介)(第二〇一三号) は本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  金融システム改革のための関係法律整備等に  関する法律案内閣提出第八六号)  特定目的会社による特定資産流動化に関する  法律案内閣提出第八七号)  特定目的会社による特定資産流動化に関する  法律施行に伴う関係法律整備等に関する法  律案内閣提出第八八号)  金融機関等が行う特定金融取引一括清算に関  する法律案内閣提出第八九号)      ————◇—————
  2. 村上誠一郎

    村上委員長 これより会議を開きます。  内閣提出金融システム改革のための関係法律整備等に関する法律案特定目的会社による特定資産流動化に関する法律案特定目的会社による特定資産流動化に関する法律施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び金融機関等が行う特定金融取引一括清算に関する法律案の各案を議題といたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、来る八日金曜日、参考人として高岡短期大学長蝋山昌一君、東京大学法学部教授神田秀樹君、慶應義塾大学経済学部教授池尾和人君及び早稲田大学法学部教授上村達男君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  4. 村上誠一郎

    村上委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。末松義規君。
  5. 末松義規

    末松委員 民主党の末松義規でございます。きょうは金融システム改革法案中心質問をさせていただきたいと思います。  この金融システム改革法案といいますのは、総理がずっとおっしゃってきたフリーフェアグローバル、こういう原則を具体化してきたものであるということでございます。ただ、一般の人からいって、やはり金融というのはなかなかわかりにくいという面がございます。そういった意味で、国民一般から見て、利用者として利便性がこ れからふえるということでございましょうけれども、一方では、自由というのは、フリーというのは自己責任というものを伴っております。そういった意味で、この危険性に対してどういうふうに対応するかという観点、及びその他の幾つかの観点から質問をさせていただきたいと思います。  まず、利用者利便性ということと危険性ということから質問をさせていただきたいと思います。御説明の中に投資信託の新商品とかそういったものがいろいろと紹介されておりますが、どういつだものがあるのか、この種類等について御説明をまずいただきたいと思います。
  6. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  証券投資信託は、投資家資産運用の有力な手段でございまして、これを従来にも増して魅力あるものとし、投資家ニーズ多様化対応する、こういう観点から、新たな商品といたしまして、私募投資信託証券投資法人制度、この証券投資法人制度というのはいわゆる会社型投信でございますが、これを導入することとしております。  このうち、まず私募投資信託でございますけれども現行証券投資信託といいますものは、不特定かっ多数の受益者を対象とする定型型商品でございます。これに対しまして私募投資信託というのは、特定または少数受益者ニーズにきめ細かくこたえるスキームでございます。  また、いわゆる会社型投信でございますが、現行証券投資信託というのは契約型と言われておりまして、いわゆるこの契約型投信というのは、あらかじめ結ばれる信託契約商品内容が定められますいわばレディーメード型であるのに対しまして、この証券投資法人制度によるいわゆる会社型投信と申しますものは、投資家会社株主として出資をして、成果を会社からの利益配当の形で分配することを通じまして、いわば株主たる投資家ニーズにきめ細かくこたえるいわばオーダーメード型のスキームであるというものでございます。
  7. 末松義規

    末松委員 そういった新しい商品ですけれども、主に欧米系会社なんかが開発してきたという話を私も聞いておりますけれども日本ではそういった商品の企画というのですか、そういうことは、法律上もそれは許されていなかったし、そういうふうなコンセプト商品を認めてほしい、そういうふうな欲求といいますか、そういう要望というのは民間側からは過去出ていなかったのでしょうか。
  8. 山本晃

    山本(晃)政府委員 今お答えいたしました私募投資信託あるいは会社型投信、いずれにつきましても民間の方からは前々から強い要望が出されておりました。  まず、私募投資信託につきましては、現在の証券投資信託法といいますものが、不特定かつ多数の受益者のための投資商品、こういう形でもって構成されているということから、いわば特定かつ少数といいましょうか、具体的に言いますと、二人から四十九人までの部分がいわば法的に欠缺をしていたということでございます。これに対しましては、特に年金関係の需要が非常に強いというふうに言われております。  また、会社型投信につきましても、これまでもいろいろな議論がなされてきておりまして、特に、これはいわば欧米では主流になっているわけでございます。それに対しまして、この会社型投信ということになりますと、商法上の問題等いろいろございまして、新たな立法措置が要るということで、その導入を今回お願いをしているというものでございます。
  9. 末松義規

    末松委員 そうしますと、この少数特定型というのですか、それから不特定多数型、そういうふうな考え方の違いなんですけれども、このビッグバンの機会じゃないとやれない仕組みになるのか。あるいは、私が言いたいのは、これから新しいコンセプト商品が生まれてくる、あるいはそういうふうな要望が、先ほど民間からずっと要望が多かったという話がございましたけれども、これからはそういうふうな商品が、例えば、何か法律にも個別の承認事項から届け出制に変わるというようなこともちょっと私も見たのですけれども、その届け出制という話になるならば、それは、新しい例えば民間方々発想したもの、あるいは新しい商品、そういったものがどんどんたやすくあるいはそれほど複雑な手続を経ずに開発されていって、それが認められていくというふうな手続をこれから踏むようになるのか。それとも、また別途、さらに自由化というような大きな波が来ないと次の商品が認められていかないのか。その辺のシステム上のことについてはいかがでしょうか。
  10. 山本晃

    山本(晃)政府委員 この投資信託につきましては、今までは事前承認制ということでやってまいりました。今回お願いをしている法案では、これを届け出制に改めるとともに、いわゆる証取法上のディスクロージャーをかけるということによりまして、いわば自由な発想でもっていろいろな商品というものができる。そういう仕組みにしたいということでございます。
  11. 末松義規

    末松委員 そうしますと、それは投資信託に限らず、デリバティブも完全に認めるという話なので、そういうふうな投資信託的な発想とかデリバティブ的な発想とか一あるいは日本市場で新しい商品、そういうコンセプトができたときに、それを日本から認めてそれが世界に広まるというような商品も出るということでよろしいのでしょうか。
  12. 山本晃

    山本(晃)政府委員 今までの世界というのは、どちらかといいますと、欧米で開発された商品、それに対しまして、それがいろいろな角度から検討が加えられて、まあいいだろうということでその商品が構成される、いわばそういうコンセプトだったわけでございます。  そういう意味からいいますと、どうしてもその商品そのものもいわば横並び的になっていたわけでございますけれども、これからの世界というものは、まさにそういう資産運用業者創意工夫というものが発揮される世界にしていこう。ただし、フェアといいましょうか、公正取引ルールはきちんと守っていただく、あるいはきちんとディスクロージャーもしていただく、これが当然のことながら重要でございますけれども、基本的には、そういう商品開発につきましても創意工夫を発揮できるような、そういう環境を整備したいというものでございます。  したがいまして、今委員お話しになられましたように、日本商品世界に向けて発信するということもあり得る、また、それを期待したいというふうにも思っております。
  13. 末松義規

    末松委員 なかなか頼もしい御回答でありました。  そういった意味で、日本金融技術というのは世界に比べて何年も何十年もおくれているといった指摘について、私も本当にそうだなという気がするわけですね。特に日本のビジネスというと、例えば海外に出た日本銀行なんかも、どちらかというと中心海外に出た日本の企業のための銀行であって、その地域における会社をどんどん取り込んでいくというような状況でもございませんし、そういった意味で、これは、資本主義根幹となる証券市場が、日本から発想される金融技術をこれからどんどん開発していけるようなシステムになっているという理解でよろしいですね。先ほど局長が言われたとおりだと思うのですけれども、そういうふうに私は理解しました。  念のため、ちょっと済みませんが、その確認は、システム的に保証されていますねということなんですけれども
  14. 山本晃

    山本(晃)政府委員 基本的にはそういう理解でよろしいかと思います。
  15. 末松義規

    末松委員 一方、そうしますと、例えばデリバティブで何十億ドル損をしたとか、世界的に見れば大変ないろいろな事件も起こっているわけですね。そういったときに、今度は、一般国民サイドから見て、やはり窓口販売がかなり自由化されると聞いておりますから、そうしたときには、取り扱うリスクについてもあらかじめ投資家あるいは一般国民方々が知っておく必要がある し、それがわかりやすくされないと、今度は訴訟という形でどんどん裁判に持ち込まれるという事件が多発することになりますが、そのことを避けるためにも、リスク危険性について周知徹底するような、そういった仕組みというのはここのシステム改革ではどういうふうに明示されておられますか。
  16. 山本晃

    山本(晃)政府委員 今の末松委員の御質問は、今話題になっております投資信託関係のことかと思います。また、それ以外の一般議論もあったわけでございますけれども、基本的には、今までの枠組みというものは、例えば投資家保護という場合に、投資家からいわばリスクを遠ざけるというような形で投資家保護が図られていたという面は否めないわけでございます。むしろ、今末松委員お話しのように、投資家リスクを周知徹底させるということ、これが投資家保護の眼目であろうというふうに思います。そういう意味で、例えば投資信託銀行窓口販売するということになりますと、これは、元本保証のないいわばリスクキャピタル、これを銀行等販売をするということになるわけでございますので、当然のことながらこの商品性の違いについて十分認識をしていただいた上で販売あるいは購入をしていただく、こういうことが重要であるというふうに考えております。  このような観点に立ちまして、証取法上では、有価証券販売に係ります誠実公正義務等販売ルールというもの、これが当然のことながらこういった投資信託にもかかってまいります。また、銀行法等におきましても、顧客に対する預金との誤認防止ルール等が適用できるような手だてを講じているわけでございますが、それを講じた上で銀行などの金融機関による証券投資信託窓口販売を導入することとしているところでございます。
  17. 末松義規

    末松委員 そういった形のルールを引けば、かなり個人の責任でやったと。日本人というのは、どちらかというとそういったときに自己責任を意外と否定して、それは政府が悪いあるいはシステムが悪かったんだということになりがちなように評価されやすい国民というふうに私も考えておりますけれども、そのシステムがあれば基本的に裁判所に頼らずともある程度防げるという自信のほどはいかがでしょうか。
  18. 山本晃

    山本(晃)政府委員 基本的には、こういったフリーという面で制度的に自由になってまいりますと、むしろ、先ほどからも申し上げていますように、フェアという面、これがまた重要になってまいります。恐らく民事的な紛争というものも起こり得る。増加するかどうか、この辺はわかりませんけれども、当然それに対する備えというものもしておかなければいけないわけでございます。  そういう意味におきまして、不公正取引規制あるいはディスクロージャーの徹底をするとともに、業者については、利益相反等行為規制、こういったものもきちんとやっていかなければいけませんし、いわば紛争処理の体制というものもきちんと整備をしていかなければいけない。そういう意味におきまして、例えば証券世界では、こういった民事紛争というものにつきましてもできるだけ円滑に、また通常、裁判ということになりますとなかなか時間がかかりますので、証券業協会によるあっせん制度というものを法的にもきちんと確立した上で充実をしていきたいというふうに考えております。
  19. 末松義規

    末松委員 紛争処理というか、言葉は大きくなりますけれども係争処理ですね。この辺、迅速な処理ができるように、そしてそれがきちんとしたシステムでやっていけるように、早急にお願いをしたいと思います。  今、局長の方からお話がございましたディスクロージャーなんですけれども、この前、私も年末に、銀行ディスクロージャーで任意でやるというのは不徹底で、義務化すべきであるということを申し上げまして、今度それが法案に入っているようですので、私もそこは非常に評価しておりますが、そのディスクロージャーレベルなんですけれども欧米窓口ディスクロージャーがなされているレベルと、これは金融商品とか、あるいは金融機関ディスクロージャーも含みますけれども、そのディスクロージャーレベルでは、今度のシステム案はそれと比較するとどういうふうな位置づけになりますでしょうか。
  20. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  私も記憶しておりますが、昨年の臨時国会末松先生大分長時間にわたってディスクロージャーのあり方の議論をさせていただきました。義務化すべきではないかという御指摘をいただき、私の方は、一方で、自主的なディスクロージャーというものがより推進する原動力になるのではないかというような御議論もさせていただきました。  その後、いろいろ私ども検討を重ねまして、これから自己責任預金者投資家にとってもらうという時代になる以上は、やはりディスクロージャーのうち、どうしてもこれだけはやってもらわなければいけないというものは義務化させていただきたいというふうにしたわけでございます。御指摘のとおりでございます。  また、その内容でございますけれども、これも当委員会でも御議論ございましたが、やはりおくれているのではないか、特に不良債権状況についての御指摘がございました。したがって、それでは世界で一番進んでいるところは何か。それはアメリカのSECの基準であるということで、これも急ぎ、昨年のちょうど臨時国会が終わった直後だったと思いますが、全銀協の方に強く働きかけまして、これも今度の三月期から実現をする。それで、来年の三月期からは連結ベースでもこれは義務化すると同時に、この不良債権の公表についてもいろいろ進展を図るというふうにしておるわけでございます。  一方、商品等につきましても、これはある意味では金融機関がいかに自分をPRするかという面もあるわけでございます。したがって、最低限、商品の性質というものを顧客の皆様に説明をすることをやはりこれも義務化させていただきました。ただ、それ以上どういう魅力的なものがあるかということになりますと、これはむしろ自主的に、PRの話でございますから、これはディスクロージャー誌創意工夫を持って各金融機関がディスクローズするというふうにさせていただいたわけです。  こういった諸措置をとりますと、私どもの感じとしては、これまでおくれがちであったディスクロージャーというものの概念が、少なくとも制度的には国際的に比肩し得るものになるのではないかというふうに思うわけでございますけれども、実際それをやる金融機関の姿勢も重要な要素だと思いますので、各金融機関には、このディスクロージャーの大切さというのをぜひわかっていただくように努めていきたいと考えております。
  21. 末松義規

    末松委員 消費者サイドへのわかりやすさ、配慮、それが工夫を凝らされるようなことをシステムとしてある程度できるかできないかというのが私の次の質問だったのですけれども、今山口局長が言われたように、それはある意味では各社の自助努力といいますか自己PR、そのわかりやすさ商品になるのである、あるいは商品の一部であるというような認識だというふうに私も今理解させていただきました。それが、欧米との間で比較しても比肩し得る。今の局長言葉で言えば、比肩し得るというのは、欧米同等レベルであるという認識であるという位置づけでよろしいですね。
  22. 山口公生

    山口政府委員 そのように考えております。
  23. 末松義規

    末松委員 今までの質問は、どちらかというとフリーということについて話を進めてきたわけですけれどもあとフェアグローバルということについて、ちょっと私も問題意識を持ったところを質問させていただきます。  特にビッグバンを進めるに当たっては、日本金融会社外国金融会社、ここで別に対応に差をつけていませんね。例えば、ダブルスタンダードというようなことがあるのかないのか、そこの 点についてはいかがでしょうか。
  24. 山口公生

    山口政府委員 これも、さきの臨時国会先生大分長く御議論させていただいた例の預金保険の取り扱いの問題は、ひとつ検討課題として私も意識しておるところでございますけれども、それは引き続き検討をさせていただきます。  今回の金融システム改革法におきまして、外国金融機関在日支店と我が国の金融機関とは同様に扱うということを原則にいたしております。なぜ原則と申し上げるかといいますと、在日支店特有の事情、支店であるがゆえに同一にならないもの、例えば株式を保有する、出資するというときは支店ベースではやらない、これは本店ベースになりますから、そういった形での規定は適用にならないということでありますけれども、それ以外のものについてはこれは日本金融機関と同等に扱うというふうに、その性格上、同等に扱えるものは同等に扱うというふうにしてございます。
  25. 末松義規

    末松委員 私も、との前質問したときに、預金保険機構との関係で、外国支店日本金融機関が差があるではないかという、その点は本当にまた御検討を進めていただきたいと切に願うわけです。  今の山口局長の御説明でいきますと、外国金融機関日本にどんどんこれから参入をしてくるというビッグバン時代を迎えて、外国金融機関であるがゆえに不利益をこうむることは一切ないのである。ただ、支店という特有性格からくるだけのものである。そのこと自身は、海外においても、日本銀行あるいは金融機関海外に行って支店ということでやった場合、その国の政府、現地の政府対応がその支店という位置づけからくる差があるという、ある意味ではグローバル、相互にグローバルという形なんだということで、不利益海外金融機関が受けるということはないという位置づけでよろしいですね。
  26. 山口公生

    山口政府委員 今の御指摘のとおりで結構だと思います。
  27. 末松義規

    末松委員 次に、ちょっとテーマを移しまして、まさしく一つの根幹なのかもしれません。ビッグバン根幹ともいうべき垣根を外そう、銀行証券と保険の相互参入を促進しようということがこの法律案でうたわれているわけですけれども、ちょっと私自身が、このキャッチフレーズは非常にいいし、いかにも自由化しているなという気はするわけですが、実際に相互参入といった場合にどこをどういうふうに変えていくのかということがやや気になるところであります。  ちょっと分けて、つまり、銀行証券、あるいは銀行と保険、あるいは証券と保険、この相互参入のイメージを具体的にこの法律案システムに沿って説明をいただきたい。これも三者三様に言われるとまたわかりませんから、まず、銀行証券の相互参入がどういうふうな形で行われるのか、そこからお聞きをしたいと思います。
  28. 山口公生

    山口政府委員 銀行証券との相互参入でございますが、まず証券会社による銀行業への参入ということでありますと、本体ではこれはできません。あと、子会社でありますと既にこれは可能でございます、マルということですね。それから、持ち株会社の子会社、すなわち兄弟で並ぶということについてもマル、可能であるということでございます。  それから、銀行による証券会社への参入ということになりますと、これは、本体ではかなり制限された業務だけができるということで、どっちかというと三角、こういう感じです。  それで、子会社、つまり銀行が子会社として証券会社を持てるかということについてはマル、可能でございますが、九九年度下期中に業務制限の撤廃を予定しているということで、今は子会社であっても業務が少し制限されておる。だから、行く行くはこれはマル、完全なマルになるということでございます。九九年度下期中に業務制限の完全な撤廃を予定しております。  それから、持ち株会社の子会社、つまり兄弟会社銀行証券が並ぶ場合でございます。これも同じように九九年下期中に業務制限の撤廃ということでございますので、行く行くはこれもマル、こういうふうになるわけでございます。これは、今回の制度改正をお願いしている結果でございます。
  29. 末松義規

    末松委員 では次に、銀行と保険の相互参入、これについて説明お願いします。
  30. 山口公生

    山口政府委員 銀行による保険業への参入でございますが、まず先ほどと同じような形で申し上げます。  本体では、銀行が保険業をやることはできませんので、バツでございます。  それから子会社、つまり銀行が保険子会社をつくるという場合はマルでございますが、当面の間は破綻保険会社の子会社化だけでございます。それで、二〇〇〇年度末までに完全に参入が可能というふうにしてございます。  それから、三番目のジャンルの兄弟会社として並ぶ場合でございますが、これも一応マルでございますが、当面の間は破綻保険会社の兄弟会社化のみでございまして、これも二〇〇〇年度末までに完全参入が可能、こういう形になっております。  ちょっとごちゃごちゃして申しわけございません。逆に、今度は保険会社銀行業へ参入をする場合について申し上げます。本体、つまり保険会社銀行業を本体でやるのはバツでございます。  子会社、つまり保険会社銀行を子会社として持つことについてはマルでございます。しかし、当面の間は破綻銀行の子会社化のみでございまして、一九九九年度末までに完全な参入が可能としてございます。  それから、兄弟会社でやる場合、これもマルでございますが、当面の間は破綻保険会社銀行の兄弟会社化のみ、二〇〇〇年度末までに完全参入が可能ということになってございます。  ただ、銀行における保険の窓販の一部の解禁がありますので、私は最初にバツと申し上げましたが、一部そういったものが本体でも可能になる規定もございます。
  31. 末松義規

    末松委員 では最後に、証券と保険、これの相互参入について御説明お願いします。
  32. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。証券会社による保険業への参入でございますが、これは現在でも、子会社形態あるいはいわゆる持ち株会社の子会社としてのいわば兄弟会社でございますが、いずれも参入は可能でございます、マルでございます。(末松委員「すべて」と呼ぶ)はい。保険業の引受業務への参入につきましてはマルでございます。  逆に、今度は保険会社による証券業への参入につきましては、現在は子会社形態で保険会社証券業に参入することは認められておりませんが、今回お願いをしております法律によりましてこれを可能にするということでございます。また、持ち株会社の子会社という形で兄弟会社になることにつきましては、現行でも可能でございます。
  33. 末松義規

    末松委員 ちょっと山口局長にお伺いしたいのですけれども、二〇〇三年までですか、破綻保険会社に限るという形でおっしゃいましたね、参入することができるというのを限定するという意味で、この理由をちょっとお伺いします。
  34. 福田誠

    ○福田政府委員 一部銀行局長の御答弁をもう一度確認いたしますが、二〇〇一年までにはできるということでございます。  それから、今答弁申し上げましたように、保険業と銀行業、保険業と証券業、それぞれにつきましては今まで相互参入が行われておらなかった分野でございます。しかし、保険業と証券業につきましては今申し上げたように直ちに可能になるわけでございますが、銀行業と保険業につきましては、いろいろ審議会等で御議論がございましたが、銀行業から保険業への参入については幾つか考慮すべき点があるということで、それはやはり、銀行証券は既に相互参入が行われていた実績が何年かございますが、銀行から保険というのは今まで行われておりませんので、その際には、利用者の保護とか、あるいは業務の健全性確保の 観点から必要な弊害防止措置というものをきちっと定めておかなければならないということがございます。それから、金融システムの安定性確保ということにも十分な配慮を払う必要があるわけでございます。  そういうことを踏まえまして、競争条件の公平性の確保という点で見ますと、比較的問題が少ないのは保険会社から銀行業へ参入する場合。これは、銀行日本におきます非常に強い立場、融資を通じた強い立場等々がございませんから、それについてはできるだけ速やかに参入を認めるということで、先ほど銀行局長が答弁申し上げましたように一九九九年までに実施できるということになっております。  銀行から保険業への参入につきましては、今申し上げましたように競争条件の公平性の確保等の観点でいろいろ配慮すべき点がございますので、やや時期がおくれる。そういう環境が整い次第実施するわけでございますが、総理の指示に基づきまして、ビッグバンの完成年度のしりでございます二〇〇一年までには必ず行うというふうになっているわけでございます。その辺の事情がちょっと違うということを申し上げたわけでございます。
  35. 末松義規

    末松委員 そうしますと、競争条件で不利があってはいかぬというのも一つの考慮にはなっている、でもデッドラインは区切りましたということで、業界を挙げて頑張りましょうという話ですね。  そのときに、これはつまらない質問かもしれませんけれども、例えば名前なんかも、保険会社で、三菱銀行保険とかそういった名前も当然許可されるんでしょうね。親会社、子会社関係をきちんとするんだという、例えば第一生命銀行とかというような話で、わけがわからなくなるかもしれませんけれども原則としてはそれは了承されるんですか。
  36. 福田誠

    ○福田政府委員 かつて、銀行証券の相互参入のときにも名称をめぐって問題になったわけでございますが、基本的な観点は、やはり利用者保護の観点から誤解のないようにということがございますし、それから、先ほども申し上げましたように、名称の問題も含めまして、やはり異なる業態が異なる商品を売るようになるわけでございますので、例えば役員の兼職禁止とか、いろいろな行為面での、例えば融資とのセット販売とか、いろいろなものを弊害防止措置として検討しなければなりませんので、名称のいかんも含めまして、今後その辺については検討してまいりたいと思います。
  37. 末松義規

    末松委員 今言われました弊害防止の弊害なんですけれども、弊害についてちょっと詳しく御説明ください。
  38. 福田誠

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  いろいろ審議会等で議論が行われましたが、例えば銀行から保険業に参入する場合の弊害としては、日本におきます銀行等のいわゆるメーンバンク制による影響力あるいは情報力が格段に違うというようなこともございます。そのほか、預金商品を持っているということから、預金商品と貯蓄性の面を持っている保険商品との混同がないように、あるいはそこを責任体制をきちっとできるようにというような、そのようないろいろな問題があるかと存じます。
  39. 末松義規

    末松委員 そこの情報力とか融資力、それからその責任体制というのがよくわからないのです。最後に言われた点、ちょっとまた説明していただきたいのです。これは一般国民から見て、その辺はどうでもいいじゃないか、要するに、きちんと我々の財産が守られて、しかも資金運用の手だてがいろいろと利用が拡大されるということであればいいじゃないかというふうに思うのですけれども、その点についてもう少し説明いただけますか。あなたの説明ではまだわからない。
  40. 福田誠

    ○福田政府委員 やや例示的でございますが、例えば銀行については、顧客の家計も含めた資金の状況を全部情報として持っているわけでございます。ですから、例えば何らかの理由で住宅ローンとか設備投資のお金とかを借りたいときに、その融資を受けたければ保険に入りなさいというようなこともあるかもしれませんし、それから、やはり特に生命保険ですと何十年も先の引き受けリスクを伴うわけでございますから、そういうものについて責任ある、トラブルの起きないような十分な説明ができるかどうか、そういうようなこともあるかと存じます。  そして、やや御説明不足だったかもしれませんが、この銀行、保険の相互参入については、当初からフルビジネスといいますか、業務に制限をつけずにすべて参入ということになりますので、例えば銀行証券ですと、その辺、例えばブローカレッジは最初禁止していたというようなこともあって、やはりそれは、フルビジネスで開始する以上は万全の体制がとれるように、そのような銀行の優越的地位を利用したゆがんだビジネスが行われないような措置が必要であろうということでございます。
  41. 末松義規

    末松委員 弊害の話を聞けば聞くほど、余り相互参入しない方がいいのかなという気にもちょっとなってくるんですね。  先ほど言われたんですが、ゆがんだビジネスですか。確かに銀行は、今は個人の預金機能をよく把握していますから家計が非常によくわかるのです。それにあえて保険が子会社をつくって銀行に参入する道を開いたわけですね。でも、本当を言えば何か弊害が多そうだ。でも、これは保険会社が、要するにかなり自分の足元を強くするということにもこれからつながるだろう。嫌々やるんであればやらない方がいいわけですが、そういう点を含めて、これをなぜやるのかという理由について、私自身、ちょっと今よくわからなくなってきたところなんですが、何かまだ説明がありますか。
  42. 福田誠

    ○福田政府委員 今まで御指摘について御答弁申し上げてきたわけですが、もちろんメリットもございまして、銀行等による保険商品販売につきましては、やはり利用者利便から見ますと、ワンストップショッピング、銀行に行けばいろいろな商品が買えるというようなメリットもございますし、それから保険商品そのもの販売チャネルの多様化ということもございます。それから、それに基づきまして商品の改善といいますか、より利用者にとって価値の高い商品が開発される等々、諸外国グローバルという点から申しましても、相互参入そのものについてのメリットはやはりあるということで私ども考えております。
  43. 末松義規

    末松委員 そうしますと、ワンストップショッピング、つまり、消費者にとって一番便利なのはその辺でしょうね。何とか保険会社に行ったら、銀行も全部、キャッシングサービスもあれば預金サービスもあれば何たらかんたらあるということで、それだけで総合的なサービスを受けられるということが、幾つかのいろいろな便益または弊害もあるかもしれませんが、それを比較考量した上で相互参入することが一番望ましいという結論に達したというのがこの本当の理由なんでしょうが、そこを大臣にお伺いしたいと思います。その相互参入の理由。
  44. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  先ほどから委員と事務方との質疑応答を聞いておりまして、消費者の保護、消費者の利便性、これが一番大事なことではなかろうかというふうに私は思いました。例えば、銀行窓口における投資信託販売などは、ややともすれば、投資信託元本保証はない、しかし、一般の消費者からすれば、預金と同じように元本はちゃんと保証されておるし、それに利息がつくんだという認識の人が多いだろうと私は思う。したがって、銀行窓口における投資信託販売などについては、先ほど委員から御指摘がありましたように、元本保証はないものだということ、預金とは違うんだということ、そういったことをはっきり説明をして、少なくとも誤認が起こらぬようなことをきちっとやってもらわぬことには混乱が起こるだろう、私はこういうふうに感じました。  今の相互参入の問題もそれと同様でありまして、結局、消費者の利便性という観点から容認す るのが妥当であろう。しかしそれには、先ほど事務方の答弁の中にもありましたけれども、弊害が起こらぬような措置だけはきちっとして、そうした上での相互参入でなければならぬというふうに私は思いました。
  45. 末松義規

    末松委員 大臣がそういった考えでやられることが私は非常に重要であろうと思います。今の大臣の御発言を評価します。  と同時に、業界といいますか、古いと言ったら今もあるからあれなんですけれども、これはちょっと私が今思いついた質問なので、答えられる方がいれば答えていただきたいのですが、そうすると、業界って一体何だろう、そういう疑問がふとわいてくるんですね。銀行業界、証券業界あるいは保険業界、今までははっきり分かれていた。でも、それがみんながみんなできるようになっていくというふうになると、どういうふうにその業界というのを認識しておられますか。そこの点をちょっと、答えられる方。
  46. 山口公生

    山口政府委員 今先生の御指摘の点は、これからの行政を見る視点としても大変重要じゃないかという感じがしております。  それは、例えば国際的な監督者の問題意識というものの最近出てきている傾向は、コングロマリット化した組織をどういうふうに監督していくのかということでございます。狭い意味の、例えば銀行証券だ保険だということをやっておっては本当の意味金融業というものがつかめない。また、その三業態だけでもないわけです。リースもある、クレジットもある、貸金業もある、いろいろあるわけですね。それを今度は、せんだっての持ち株会社もお認めいただきましたし、今回の子会社展開もかなり弾力的な措置を御審議願っているわけですから、そうしてみますと、私どもが国際的なそういう監督者と同じような立場に立たざるを得ない。そうすると、同じ金融業をやっていて、商品は仮に名称は違っても、切ってみればすべてリスクとリターンの関係に帰着するかもしれない。しかし、それをどうやってリスク管理をしていくのかというような視点から監督のあり方を考えていく。  ただ、まだこれは緒についた考え方でございまして、まだ私自身も答えを持っておりませんけれども、だんだん我々の金融行政もそういう方向になっていく、業界自身もそういうふうに脱皮せざるを得ないのじゃないかというふうに考えております。
  47. 末松義規

    末松委員 今の山日銀行局長の御指摘は非常に私も共有しているところがあって、ゆえに、外国の企業と日本の企業を区別しないというグローバルあるいはフェアという位置づけになるのかなと。つまり、コングロマリット化したものが、今度は海外も含めたものが一挙に大きな形で来る。あるいは、消費者のサービスそのものを中心に置けば置くほど、総合的でいろいろな多機能を備えたものが便利なことは事実なんですね、大臣も御指摘のように。そうすると、それをやればやるほど、日本だけではなくて今度は海外においても、巨大なもの、これをどういうふうに行政がコントロール、あるいはコントロールするという発想がそもそも間違いなんでしょうけれども、マネージするということなのかもしれませんが、そういったときに、私自身もちょっとまだよくわからないのですが、どういうふうにマネージするかということですね。  だから、イギリスみたいに、ルールだけあってあとは何でもありよという話が一つの整理の仕方であろうし、フリーフェアグローバルのほかに、例えば、先ほどちょっと保険部長の方が言われましたけれども、業界自体に情報量の差があるとかなんとか、業界の発展あるいは日本の企業の発展という形をそこに持ち込んでいけば、どちらかというとナショナリスティックな、日本のというふうなことをやっていけば、また大きなルールのもとではそういうものははじかれますよ。あるいは裏に回りますよ。そういったところ、つまりメガコンペティションになればなるほど、海外も含めた大きな企業形態、新しいコングロマリット形態が出てくる。  そういうことに対して行政もこれからまさしく考え始めたところだと思いますが、ぜひそこの方の研究は、欧米の、EUとかああいうふうなある程度まとまっている、そういうふうな事例も参考にしながらぜひ研究をしていただきたいと思います。そういうことについて、大臣の方もぜひ事務方を奨励して研究させていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  48. 松永光

    ○松永国務大臣 金融業界における外国日本の業界への参入、これはもう自由化時代でありますから、当然のことながら日本支店ができて、日本の本来の企業と自由な立場で競争するという事態、これは認めざるを得ないわけですね。  その場合に、当然のことながら、消費者保護のためのいろいろな義務があります。あるいは措置があります。そういったものはきちっと、外国企業の在日支店がその義務を履行しておく、その措置を受けておくということが自由な立場での競争の基本だろうと思う。日本における企業活動をする場合の予定されておる義務を履行しないという、そういう視点であるならば、破綻が起こった等の場合には日本の国内の企業とは取り扱いは異になるという問題がずっと残っていきはせぬか、私はこう思うのでありますけれども、そういった点を除けば、委員指摘のように、外国の企業の日本金融業界への参入、これは認めざるを得ない。開放された日本経済という立場で進むことになっておるわけでありますから、そういったものだろうと思う。  ただ、国民感情からいえば、やはり本来の日本の企業が発展することを望みたいという気持ち、これは相当の期間続くだろうと思う。だからといって、行政がその日本の企業について何らかの保護を与えるなどということをやれば、これは外国から非難を受けるということになりかねません。そういった点を十分配慮しながら開かれた日本経済という大原則のもとにこれから進んでいくことになるであろう、そういうふうに私は思っております。
  49. 末松義規

    末松委員 大臣がおっしゃられたように、日本の企業だ、日本という名がつけばそれもある意味では企業のメリットの一つだ、信用のスタンプの一つだというだけに終わってしまうような、そういう企業形態が多分これからの金融業の大きな発展形態になると思うのですね、グローバル化されて開かれた形になれば。その意味では、例えばメガコンペティションの中で日本企業を何とか成長させて打ちかたせたいというようにまさしく行政の方々が望むのは、それはある意味では当然のことだろうと思うし、私も日本の議員ですからそういうふうには希望しているわけですけれども、ある意味では、ルールというものはそれ以上に冷徹な形でないと機能しなくなって、それ以外のものはすべてはじき飛ばしてしまうという非常に冷徹なものがありますから、その辺はぜひ研究に研究を重ねていただければありがたいと思います。  ちょっと残りの時間、実は保険契約者保護機構のところも質問したいと思ったのですが、議論の流れから、もうちょっと今の議論を続けさせていただきたい。  相互参入といった場合、例えばアメリカでは、銀行の形態を非常に限定して、安定性が一番重要なんだよ、だから余分なことは一切やつちゃだめだよ、あるいは、ほかの業務に手を出してそれで足を引っ張られて銀行本体の経営が危うくなることは絶対避けなければいけないということで、非常に銀行そのものの経営の安定性を重視していると私も聞いておりますし、ヨーロッパでは、どちらかというとユニバーサルバンキングといいますか、ある程度いろいろな多業務がいいじゃないかというふうなことで銀行をとちえているという位置づけでありますけれども、今回の法案を見ますと、どちらかというとヨーロッパ型のユニバーサルバンキングシステム、これをかなり意識して念頭に置いた中で、銀行の本体が直接ほかの業種に参入しにくいという面をつくっているということであれば、アメリカ型もやや考慮したのかなと。 その中間型のような気もするのですが、日本の行政として、どこに銀行業のモデルあるいは考え方があるのかということについてはっきりさせていただきたいと思います。
  50. 山口公生

    山口政府委員 相互参入について御紹介しましたが、これがアメリカ型かヨーロッパ型かということに分けて考えてみますと、ちょうど中間、ややアメリカ型に近いかなという印象を持っております。  具体的に申し上げますと、例えば銀行証券との関係でいいますと、ヨーロッパは、御紹介ありましたように、ユニバーサルバンクで何でもできるという感じになっておりますけれども、アメリカはかなり制限されております。この場合も、日本の場合は自分でやることはちょっと困るよということなので、だからどちらかというと、アメリカと同様に少し制限した形かなという感じがします。  それから銀行と保険との関係からいいますと、これは世界各国ともかなり制限的にしておりまして、この点からいうと、しかしどちらかというと、よりそれが厳しいのはアメリカでございますので、そうすると、銀行と保険との関係からいうとヨーロッパにちょっと近いかなという感じがします。もちろん、本体ではやっていませんけれども。  それから最後に、証券と保険との関係からいいますと、これは大体欧米と同じという感じでございます。  だから、少しずつ違っておりますけれども、ただ、基本的には、子会社あるいは兄弟会社という形での相互参入というのを認めた形での展開ということを認めているという意味では、ある程度のグローバル化された姿と言えるんじゃないかと思うわけでございます。
  51. 末松義規

    末松委員 これで質問を終わります。どうもありがとうございました。     —————————————
  52. 村上誠一郎

    村上委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁藤原作弥君、日本銀行人事局長横内龍三君及び日本銀行審議役引馬滋君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  53. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、  そのように決しました。     —————————————
  54. 村上誠一郎

    村上委員長 質疑を続行いたします。上田清司君。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  55. 上田清司

    ○上田(清)委員 民主党の上田清司でございます。  本日は、日銀の副総裁並びに関係の皆様、御苦労さまでございます。また、鴨志田理事におかれましては、大変な御不幸がありましたことを大変お悔やみを申し上げます。そういう悲しみを乗り越えて、日銀の本来のあり方あるいは国民から期待される日銀の運営方法についてもしっかりと議論させていただきたいと思います。  ただ、きょうは、連休中でもございましたし、そうした御不幸もございましたので、質疑の中身についてはお知らせをしていたものの、担当者が御不幸があったということもございますので、答弁は結構でございます。どうしても答弁したいということであれば構いませんけれども、きょうは答弁は要りませんので、私なりに問題点を指摘させていただいて、後日、きちっとした御報告なり、あるいはまた次の委員会できちっと答弁していただければいいかというふうに思っておりますので、どうぞ中身だけ丁寧に聞いていただきたい、こんなふうに思っております。委員長におかれましては、そういうことでございますので、どうぞよろしく御配慮のほどをお願いいたします。  それでは、早速お伺いいたします。実は、日銀から出されました平均給与でございます。平均年齢三十四歳、勤続年数平均十三年、平均給与月額四十七万七千円。これは、多分賞与ベースは入っていないものだというふうに私は理解をしております。そういう説明が出ておりませんでしたので、賞与ベースの平成七年度の六・一七五カ月を掛け合わせまして年収を把握いたしました。十二カ月に六・一七五カ月を加えまして十八・一七五カ月で約八百六十七万円、こういう数字でございます。  ところが、この平均年収から職員の数を掛け合わせていきますと、必ずしも決算上の職員給与の総額に当たらなくなってしまいます。例えば、日銀から出されました予算管理上の職員数が五千九百七十人、実人員は五千九百六十七人。あるいは、この中から嘱託を引いた部分においても必ずしも六百二十七億にならない、こんなふうになっておりまして、約百億から数字が変わってきます。  こういう私なりの試算がございますことをあえて申し上げておきますので、資料も添えておりますから、よろしく計算をしていただきたいと思います。  それから、平成五年度の一人当たりの職員給与推定額、しばしば私は、実人員で簡単に割り算をすると一人当たり一千百万円ぐらいになりますねということを申し上げておりましたら、とんでもない、一千万なんかならないよ、こういうことを事務方からずっと言われております。そういうことでございましたので、決算上の職員の給与総額があります、約六百七十億ですね、それから決算上の特別嘱託総額、決算上の退職金総額を全部引きます。そうすると決算上の職員給与の総額が出てまいります。それを実人員で割ります。あるいはまた特別嘱託の百二人を差し引いた数で割ります。あるいは、特別嘱託を最大限に見積もって、つまり、前年度の数に合わせて最大限に見積もって引き算をすると、ここでは一人当たり一千五十万前後になってまいります。そうすると、一千万なんかとんでもないというお話がなかなか食い違ってきます。この問題についても明らかにしていただきたい、こんなふうに思います。  これは、同じように平成七年度であります。こちらもやはり、逆に嘱託の数を減らしてこられたということで、平成七年度は役員の皆さんも職員の皆さんの給与もどんどん減らされてきている、五年よりも六年が少ない、六年よりも七年が少ない、七年よりも八年が少ないということになっておるんですが、実員から嘱託の数を減らすことで、逆に一人当たりの給与が高くなるような計算になってまいります。このこともあわせて申し上げたいと思います。  それはなぜそうなっていきますかというと、この間御説明がありました。特別嘱託の数が多いときは三百六十人ぐらいおられまして、平成四年度は百三十八人、そして平成五年度は百二人になりました。百二人で割りますと一人頭は一千万を超えますよと私が申し上げましたら、とんでもないと。前の年の百三十八人がずうっとぎりぎりまで続いておりまして、それがいましたから、資料で出ておりますが、実は平均年度で百二十九・九人という数字を、日銀の特別嘱託の給与、資料二でございます。平成五年度から九年度までの特別嘱託の給与が九億三千九百万円、七億、四億九千万、四億六千万、こういうことで総額が出ております。  それから、年度末の人員が百二人、六十九人、六十四人、五十五人、三十四人。これで割りますと一千万を超えたりしますがという御指摘をしましたら、実は、嘱託月平均人員が百二十九・九人であるとか、前の年の人たちがぎりぎりまでいたという、こういう想定になっております。  しかし、この特別嘱託の月平均人員の人たちがこういう平均で出てくるということは、二月にやめなくてはいけないことになりますよ。三月じゃなくて、ほとんどの人が二月いっぱいまでぎりぎり勤めておいて、二月にやめたらこういう数字が出てきますよ。こういう数字は、たまたまこの割り算でいけば通常で考えられる特別嘱託の職員の 年収に匹敵するかもしれませんが、しかし、突然二月ぐらいになってどかっとやめるというのもなかなか解せない。年度末だけは極端に数が減る、そういう数字ですよ。ここの部分で数字を合わせていくとこういうふうになってまいります。計算は合うかもしれませんけれども、全体の流れで見ると、先ほど見せましたように今度は逆に給与が高くなったりいたしますよ、こういうことを御指摘申し上げたい。  それから、もう一つ申し上げますが、この特別嘱託の人数で総額を割っていきますとどうしても一人当たりの特別嘱託の給与が高くなってしまっていますので、年度末ですという言い方をされておりますが、一番最初に出されました資料の一ですが、「日本銀行の人員推移」、この中で、百二人という平成五年度の数字は予算管理上の人数と書いてありますよ。あるときは予算管理上の人数になり、あるときは年度末のぎりぎりの数字になるというような矛盾を資料の中で同時に出されております。資料の二の中では、この特別嘱託の人数は年度末の人員だと言っておられます。資料一の中ではこれは予算管理上の員数。ダブルスタンダードになっております。このことも御指摘申し上げておきます。こういうところが常に疑惑を持たれる原因の一つになっているということも申し上げなくてはいけないと思います。  それで幾つか数字を計算していきますとこういう疑問点が出てきておりますので、今申し上げました疑問点と同時にあと二点だけ、次なる機会のときにきちっとした御答弁ができるように申し上げたいと思います。  先日も申し上げましたように、当委員会の砂田議員から昨年の四月二十五日、松下総裁に対して、職員の給与の中で二千万円以上の方は何人おられるのですかという御質疑があり、そのとき、八十人ぐらいだという御答弁があった。しかし、職員の中で局長支店長クラスだけで九十人が二千万円以上を現に報酬として受け取っておられること、それから課長級のクラスが百五十人の人数がいて、代表的な層で平均一千九百九十六万円の報酬をいただいていること、そうしたことを計算するならば、明らかに、昨年の委員会、しかも与党に対する答弁の中で、あるいはうその答弁ではなかったのだろうか、こういう指摘をせざるを得ないような状況がございます。御議論あるかもしれませんが、きょうは特別に求めておりません。どうしてもということであればお答えになっても結構ですが。一つのところでつじつまを合わせても、細かく追っかけていくとどんどん矛盾が出てきますので、ぜひ、洗いざらい改めてきていただきたい。  それから、給与については民間銀行の給与に準じておられるということでありますが、民間銀行といってもピンからキリまでございます。都市銀行の平均なのか、それとも都市銀行の中で一番高いところの給与なのか、こんなこともあわせてお伺いしておきたいと思います。  それから、なぜ七年間だけの資料しかないのか。私は、日銀というものは普通の民間会社とは違うという立場で、七カ年だけの資料を保存しておいてその他は廃棄処分するということで本当にいいのだろうかという疑問を持っております。このことも含めてお伺いしたいと思います。  最後になりますが、私は一貫してまだ日銀には、例えばリゾートのさまざまな施設がどのぐらいあるのかとか、いろいろ程度を超えている部分があるのではなかろうかという議論をこの席でしたことはございません。資料はいただいておりますけれども、したことはありません。  私の目的はそこではありません。むしろ、日銀が国民から与えられた最大の権限というのは、通貨に対する独占的な発行権であります。この独占的発行権によりまして得られる利益というのは毎年二兆円に上るはずです。この二兆円を正しく使い、国民に還元する。例えばアメリカの連邦準備金では、法律にのっとって九五%きちっと国庫に納付するような仕組みができております。そういう国民の利益を確実に国民に還元する、こういう仕組みを日銀は責任として負わされている。こういう視点からするときに、いろいろな意味でもう本当にわずかの疑念も生じるようなことがあってはならない。できるだけ国民に開示する、そのことによって大蔵省と堂々と対等の立場で渡り合う。あるいは金利政策、通貨政策、さまざまな点においても国民の利益のために独立性を断固守っていく、そういう姿勢を貫いてほしいからこそ、一点に至るまでも曇りがあってはならないし、そういう曇りを大蔵省からお目こぼしをいただくことによってあなた方のいわば独立性というものが失われていく、このことを危惧するからであります。  この点をぜひ踏まえていただいて今後対処していただきたいということを再度申し上げまして、とりあえずもうこれで結構でございます。何か申し上げることがございましたら、改めて問題点については、時間がなかっただろうということで、私なりの配慮で、生っちょろいと思われる同僚議員の方もいらっしゃるかもしれませんが、とりあえずはこんなところではなかろうか、そう思っておりますので、もし御感想があれば御感想を述べていただき、そして退出いただいて結構でございます。
  56. 藤原作彌

    ○藤原参考人 お答えいたします。  上田委員、今御指摘なさった一つ一つの問題については、資料を用意し、後刻御説明申し上げることをお約束しておきます。  それから、後段に述べられた通貨発行権を持った日本銀行の使命、御説のとおりでございます。私どももその重責を深く胸の中に秘めて、新生日本銀行として四月一日からスタートいたしました。旧法から新法への移行、新しい組織改革等々のトランジションといいますか移行期に当たり、ちょっと錯綜している面もありまして、御迷惑をおかけしたこともあるかもしれません。  それから、このたびの鴨志田理事の不幸につきましては、皆様に御迷惑をおかけし、かつ弔意もちょうだいし、私ども、ありがたく受けとめております。  鴨志田理事も、今先生のおっしゃったような独立性と透明性のためにその職責を一生懸命果たされましたが、心身の疲労からああいうような事態になりました。私ども、彼の遺志を受け継ぎ、かつ、新しく発足する日本銀行の使命感に御指摘の点も踏まえて燃えて、透明性の確保に特に専心し、国民経済のために尽くしていきたい所存です。これは、私だけじゃなく、全日本銀行員一同の決意であります。  当委員会におかれましても、そういう日銀の立場を理解されて、これからも御支援、御鞭撻、よろしくお願いいたしたいと思います。どうもありがとうございました。
  57. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございました。  それでは、幾つかの疑問点について、事務的なレベルで片がつくものはまた後で結構でございますし、幾つかはきちっと委員会で御報告をしていただきたいというふうに思っておりますので、どうぞ御退出いただければ結構だと思います。  それでは、本題の金融システム改革関連法案につきましてお伺いをさせていただきます。  まず、総じてそうでありますが、今回の金融ビッグバンに伴うさまざまな安全装置というような考え方で、いろいろなセーフティーネットにかかわる制度が用意をされております。特に、保険契約者保護機構並びに投資者保護基金、この二点にかかわる問題についてお尋ねをいたしますが、その前に、ずっと読み上げておりますと、やはり利用者を保護する、この視点がまだまだ弱いような感じがいたします。それは、総じて言えば、一括的に金融取引にかかわる法案になっていない、個々のところで継ぎはぎ的に形を整えてきている。  例えば、割賦販売法があります。これは多分私の知るところでは通産の管理ではなかろうかというふうに思っております。貸金業法がございます。保険業法あるいは銀行業法、それぞれ各法律で消費者の保護を何らかの形でやってきたわけで ありますし、今回は特に二〇〇一年まで、二〇〇〇年まで、あるいはこれから二〇〇一年以降どのような形で利用者、取引者を保護しようかという論点が用意されてきているわけですが、この消費者保護法の二条の中に、「国は、経済社会の発展に即応して、消費者の保護に関する総合的な施策を策定し、及びこれを実施する責務を有する。」同六条にも、「国は、この法律の目的を達成するため、必要な関係法令の制定又は改正を行なわなければならない。」とございます。こういう視点でいくと必ずしも十分じゃないというふうに思います。  この投資者保護基金と保険契約者保護機構については後でまた申し述べますが、例えば電子資金の取引、これからますますこういう時代になるわけであります。今のところ、いわゆるカードによりますところの電子決済は全銀協のマニュアルによって行われているというふうに私は理解しておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  58. 山口公生

    山口政府委員 電子取引につきましては、今カードの形態のものが若干ございますが、そういったものは先生おっしゃったような形でやっておる段階でございます。
  59. 上田清司

    ○上田(清)委員 以前に私は大蔵委員会で、たしかこんな事件がございますと。五十ccのバイクの免許証を割と簡単につくれます。その免許証を持って他人に成りかわり、紛失したといってすぐカードをつくってどんどん抜かれる、盗まれる事件が多発しております。しかし、これは消費者、利用者にもう全く責任がない。しかし、銀行も注意義務をきちっとやったということであれば補償の義務がない。結局、このカードを持った方が泣きを見るという仕掛けになっております。  こういうのを何らかの形で保護できないだろうかという問題意識は私にもございまして、やはり約款上だけの権利義務関係ではなくて、法的にきちっとそれぞれの関係者が責任を分担するような仕掛けというのをつくる必要があるのではないか、こんなふうに私は思っております。  特に、貸金業法や割賦販売法の中では、規制法の中では、必ず利用者と被利用者責任分担の仕掛けができておりますが、銀行業法というのはどちらかといえば管理法でありまして、消費者対銀行関係にはなっていません。あくまで約款、契約を通じてしか銀行利用者関係ができておりませんので、最終的には金融取引にかかわる統一的な法律をつくるのが一番ベストでありますが、段階的には、利用者をしっかり本当の意味で保護する意味で、銀行法と別個に何らかの形で銀行取引消費者保護法ともいうべき、仮称で恐縮ですけれども、そういうものが必要ではないかというふうな観点を持っておりまずので、この点について、局長、いかがでございますか。
  60. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  私、上田先生問題意識、大変重要な点だと思います。  それは、今先生も御紹介いただきました貸金業、割賦販売業あるいは銀行業一保険業、証券業とかいうこういった業が分かれておりますけれども、それぞれの法律は、例えば銀行法は免許制でありますから、基本的に悪いことはしないようにしていくということで、今度はお客様を守るという、健全性の確保のため、あるいは適正な業務運営の確保のための法律、したがって、立入検査もあるし厳しい指導がある、早期是正措置というような強権も発動される。それから一方で、例えば貸金業法となりますと、これは単なる登録でありまして、よほどの登録拒否要件がなければ受け付けられます。しかし、そこは今度は行為が禁止されていますという行為規制法になっておるわけです。  同じような業務と見れば見れるものが、そういった成り立ちから、やり方、つまり私に言わせていただければエンフォースメントのやり方、つまり実効性の担保のやり方がそれぞれ少しずつ違っております。それが今まで何とかうまくいってきたという面も評価されるとは思いますけれども、今後そういった問題について十分かどうかという点は御指摘のとおりだと思います。  そこで、統一的な何かそういった消費者信用の保護等を考えるべきだという御意見も当然出てきておりまして、私ども検討をしなければいけないと強く思っておりますが、一方で、現行体系がある意味ではエンフォースメントの役割を果たしているという現実もあります。したがって、今回の法改正でも、不十分だという御指摘はあるかと思いますが、例えば商品説明をする義務を課すとかいう、ある意味では銀行法ではこれまでには余りそぐわないような、今まで通達でよかったというようなものまで入れさせていただきました。あるいは、いろいろな行為規制的なものの要素を銀行法にも入れてきております。  したがって、各業法の中でも、そういった取引法的、行為規制法的な要素を入れさせていただいて対応させていただいてきておるところでありますが、行く行く将来はどうかということになりますと、やはりこれから金融技術が発展し、いろいろな商品が出てくるとなりますと、その商品という面では金融サービス法的な考え方、あるいは今度消費者に対する信用、つまり貸し出しという観点になりますと、また別の意味の、消費者を保護するというような意味からの、今先生がおっしゃった消費者の信用をどう守るかという法律というような統一的、横断的な考え方というのを少し取り入れることを考えていくべき時期に来ているのかなという考えがしております。  しかし、今すぐどうこうと言われましても、エンフォースメントの段階がそれぞれ違いますので、現時点におきましては、その先主のお考えもこの法律には入れさせていただいて対応させていただいているということでございます。
  61. 上田清司

    ○上田(清)委員 今の局長のお話の中で思い立ったんですが、まさに銀行業法が免許制で成っておりますので、悪いことをしないことを前提にしている。したがって、先般、日産生命の問題でも、福田保険部長は、問題があれば適切に処理されているはずだと言う。問題があれば適切に処理されているはずだという前提になっていくんですね。しかし現実は、適切に処理されていないから問題がずっと続出した部分があるんですね。  こういうことも考えると、何らかの形でやはり銀行に対しても、従来の銀行業法の枠の中ではなくて、対消費者としての関係の中でどのような形で保護ができるか。銀行が一元的に情報を持っておりまして、今回もいろいろ、情報開示のマニュアルについては後でまたお伺いしたいと思いますが、情報開示ができるような仕組みになりつつあるわけですが、これまでの関係でいえば、一元的に銀行が情報を持っていて利用者が持っていない。これは力の差がありますので、おのずから何らかの形で利用者を保護するような仕組みがない限り、銀行の過剰融資やそうしたものに対抗する手段を事実上持っていない、こんなふうに私は思っておりますので、ぜひ改めてこれを研究していただきたいというふうにお願いを申し上げます。  大臣、今の論議の中で御理解いただけたと思いますが、今、包括的に金融取引に係る法律がありません。それぞれ個別にできておりまして、もちろんそれぞれのなりわいがございましたので、一括的にできるかどうかということに関してなかなか疑問もないわけじゃありませんが、実は、一九六〇年代から七〇年代の初めにかけてアメリカでもそういう交通整理をして一括した経緯がございます。統一的にまとめていった経緯がございますので、その点も踏まえて今後、法律は簡単であればあるほど利用者国民にとっていいものだというふうに私は思っておりますので、そういう意味での整合性も含めた消費者保護のための金融取引にかかわる法律を統一的にまとめていくということについて御検討いただければ大変ありがたいというふうに思っておりますので、この点について御感想だけでも伺いたいと思います。
  62. 松永光

    ○松永国務大臣 今、銀行局長の答弁の中に、銀行は免許を受けて事業活動をやっているのである から悪いことはしないはずだという前提に立って云々という話がございましたが、確かに今まではそうだったと思う。しかし、バブル経済当時、あるいはその後のことを見ますというと、しばしば間違ったこともあったということを、これは認めざるを得ません。  実は、銀行に対して訴訟を起こすというケースはかってはほとんどなかったのです。銀行の方が融資先に対して返済をしないから訴訟を起こすというのはたくさんございました。ところが、数年前から、銀行を被告として銀行に対して訴訟を起こすというケースが相当ふえてきておるというふうに私は聞いております。そして、しばしば銀行側が敗訴したという例も私は承知しております。それは、いわゆる変額保険をめぐる銀行あるいは保険会社と消費者との争いでございます。  そういったことを考えますと、消費者保護という見地に立って、銀行といえども、まあこれは銀行の第一線で営業活動をしている人のミスというか、故意または過失による不法行為だと思うのでありますけれども、そういったことがあり得るという前提に立って消費者保護というのは当然考えていかなければならぬというふうに思います。  今委員指摘のように、金融機関一般消費者との取引の間に生ずるトラブル、それぞれの業法において消費者保護の規定が存しておるわけでありますけれども一般的に、全部の金融機関銀行も保険も証券も、あるいは現在通産省の所管になっておるノンバンクという連中も含めて、消費者保護の統一的な保護ルールをつくるべしという委員の御指摘も、これは無理からぬ点があろうかと思うのであります。しかし、非常に幅広い消費者保護の法律になるということになりますので、これは中期的な視点に立って、基礎的かつ理論的な検討を行った上で対応しなければならない課題だというふうに私は思います。
  63. 上田清司

    ○上田(清)委員 どうもありがとうございます。最も適切な御発言ではなかったかなというふうに思います。  ただ、最後にちょっと申し上げますが、消費者保護法の第二条に、「国は、経済社会の発展に即応して、消費者の保護に関する総合的な施策を策定し、」ということがございます。恐らく個々のケースにおいて若干無理からぬところもあるかもしれませんが、しかし、よりどころがない消費者にとってみればそれぞれの法をマスターしてというわけにいきませんので、包括的な法があればそこでカバーができるということが非常に消費者と金融機関関係者との信頼関係をつくっていくものにつながるのではなかろうかという視点を私は持っておりますので、引き続き積極的な研究をしていただきたいということを申し上げて、次の問題に移らせていただきます。  それでは、投資者保護基金の問題でございます。  三洋証券が破綻したときに、顧客の預かり資金の保護について、私の記憶ではたしか百億ぐらい足らなかったのではなかろうかというような記憶があるんですが、そのときに、たしかあちこちから拠出していただいたような記憶があります。この三洋証券の事例を見ますと、三百億からのスタートで本当にいいのかという心配がございます。ちょっとこの話は急な話ですので、必ずしも十分御答弁いただかなくても結構ですが、三洋証券のときは一体どうだったかしらという記憶が私もちょっと定かでなくなってきましたので、もしそのことを教えていただければこの論点はもう少しお話がしやすいので、教えていただければありがたいのですが。
  64. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  三洋証券会社更生法の適用申請をしたのが十一月の三日でございます。今お諮りをしております投資者保護基金、現在は証券業界の任意の財団法人でございます寄託証券補償基金、これがこういった投資者保護業務をやっているわけでございますけれども、当時の寄託証券補償基金は、破綻をした場合の補償の限度額が一社当たり二十億ということになっておりました。ところが、三洋証券のような準大手クラスになりますと、顧客からの預かり金の残高等でもう四百数十億ぐらいが見込まれていたわけでございますので、この一社当たり二十億の限度でということが到底無理であったということもございまして、顧客財産について会社更生法の適用除外に裁判所の判断でさせていただいたわけでございますが、その際に、寄託証券補償基金が顧客の資産をすべて肩がわりするということが条件になったわけでございます。その際に、実は当時の寄託証券補償基金の残高というのは、約三百六十億円程度でございました。  それで、一体この三洋証券の、いわゆる破綻とあえて言わせていただきますけれども、破綻によりましてどれくらい寄託証券補償基金からの補償額が出ていくかという点については、現時点においてもわからないわけでございますけれども、いずれにいたしましても相当程度の金額が出ていくことになるであろうということがございまして、実は当時の、山一証券も含めてでございますが、四社に基金への拠出方を要請した、こういう経緯がございました。
  65. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。たしか、私の記憶では百億ぐらい拠出していただいたのではなかろうかというふうに思っております。  それで、そういうことも考えますと、こういう基金の三百億からのスタートで本当に足るのかしらというふうな疑問を持っておりますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  66. 山本晃

    山本(晃)政府委員 三洋証券の場合に一番問題になりましたのは、保護預かりの有価証券、これは顧客に所有権があるわけでございます。また、それ以外の預かり金等につきましては、経営破綻ということになりますと、この場合には一般債権化してしまうということがございまして、結局、最終的にはまだわかりませんけれども、相当額の補償が要る、こういうことになるわけでございます。  今回の法案お願いをしておりますのは、この預かり金等のこういった資産につきましても分別義務というものを法律上求めまして、これを徹底させるということによりまして、こういった全体としてのいわば補償額というもの、これが相当減殺されるであろうということも考えておるわけでございます。そういう意味からいいますと、当初三百億円で一応スタートするということになっておりますけれども、もちろん、この分別管理の定着度いかんにもよってまいろうかと思いますけれども、こういつたことを前提とすると、あるいはアメリカやイギリスのこの投資者補償制度の支出実績、こういったものを勘案すれば、基金の発足に当たりましては、証券界として目指すべき基金の規模としては妥当なものではないのかなというふうに考えておる次第でございます。
  67. 上田清司

    ○上田(清)委員 おっしゃるとおり、分別管理がうまくいけばさほど問題でないだろう、私もそう思います。  そこで、分別管理されないで流用された場合には、罰則はどんなふうになっているのでしょうか。
  68. 山本晃

    山本(晃)政府委員 懲役二年、罰金三百万ということでございます。
  69. 上田清司

    ○上田(清)委員 それ相応に重いですね。それはあるいは担保になる可能性は高いですね、そのことがあれば。それをぜひきちっと徹底することによって、比較的少ない基金でもって投資者の保護が可能になるかなというふうに思います。  ただ、そうした問題があった、それをクリアしたとしても、世の中のことですからいろいろなことがあって、突然まさかといったような、山一証券みたいなのが自主廃業するというようなこともあり得ますので、いざというときの担保のために日銀から政府保証の借り入れが可能になるというようなことを法律の中に明記されてあるわけでございます。  しかし反面、いつでも日銀からの借り入れについて政府保証がなるということ自体が、また逆に言えば業界のモラルハザードになるのではなかろうかというような懸念もあります。例えば七割と かというような、日銀にも、やはり出しっ放しというのもよくない。必ずしも日銀もひとり立ちができないような傾向がちょっとあるなというふうにこのところの答弁で思っておりますので、なおさら出しっ放しで回収できないということもあり得るのではなかろうか。むしろ政府保証を一〇〇%しないことの方が日銀のためにもなるのではなかろうか、こんなふうに私は思っておりまして、この日銀の借り入れに関しての政府保証の考え方というのは一〇〇%なのか、それからかなり無条件に日銀に対して政府保証されるのか、この点についての所見を伺いたいと思います。
  70. 山本晃

    山本(晃)政府委員 投資者保護基金についての日銀の借り入れの規定でございますけれども、これは二〇〇一年三月までの破綻の処理についてのいわば時限的な措置でございます。  第一義的には、仮にこういった投資者保護基金で補償業務が発生をした場合に、資金手当てという面で投資者保護基金が借り入れをするという場合には、まず、当然のことながら民間銀行からの借り入れということが第一義でございます。ただ、なかなか民間銀行から借り入れるのが難しいような場合には、場合によれば日本銀行からの借り入れをする、これを可能にしているわけでございます。  この場合に、それでは政府保証との関係でございますけれども、これは、実際に日本銀行から借り入れをするという事態になりましたときに、日本銀行当局と政府保証をつけるかどうかという点につきまして協議をして決めていくということでございますので、あらかじめということではないという点についてだけは申し上げておきたいと思います。
  71. 上田清司

    ○上田(清)委員 日銀の保証については、全面的にすぐオーケーというふうな認識でないという理解でよろしいですね。
  72. 山本晃

    山本(晃)政府委員 実際に借り入れが生じた時点におきまして慎重に検討してまいりたいというふうに思っております。
  73. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  それでは、保険契約者保護機構についてお伺いいたします。  ここも、案文の中で、「必要な措置に関し、大蔵大臣に協議しなければならない。」こういう形で法案が出ておりますので、この「必要な措置」という考え方についてどのような認識なのかということについてお伺いをしたいと思います。
  74. 福田誠

    ○福田政府委員 お尋ねでございますが、支払い保証機構におきましては、あらかじめ保険会社が強制加入をいたしまして、破綻処理のための資金として、毎年度事前に負担金を積み立てていくわけでございます。ただ、積み立てられた負担金によって賄い切れない規模の破綻が生じた場合には、機構としては、契約者保護のために金融機関等から借り入れを行って対応するということになっているわけでございます。その場合に、やはり保険会社の返済能力、支払い能力等勘案しまして、その機構による借り入れについては政令によって一定の限度を設けることにいたしております。  万が一、破綻処理に要する費用を賄うためにその政令で定める借入金限度額を超えるような事態が生じた、例えばそういうような場合には、機構の利用可能な資金の状況が著しく悪化するわけでございますので、そのような事態におきましては、無制限にまた借入金を延ばしていくわけにはまいりませんので、制度の見直し等について必要な措置検討をされることになっている。その必要な措置につきましては、あくまで契約者保護のためにどのような手段が講じられるかという観点でございますので、その場になってみないとわかりませんが、あらゆる必要な措置ということが考えられるかと思います。
  75. 上田清司

    ○上田(清)委員 できましたら、そういう具体的な事例を少し整理していただきたいというふうな思いがあります。多分、この点についてまた後で同僚議員も御質疑があるかと思いますので、順次私も研究させてもらいたいと思います。  それで、やはりこの問題に関して、一般的に消費者というのでしょうか、利用者は本当に二〇〇一年まで保護されるのだろうか、あるいは二〇〇一年以降どうなんだということでございますので、ここで改めて、きちっと議事録に残す意味で、保護される商品名を生保、損保ともにきちっと挙げていただきたいというふうに思いますので、よろしくお願いします。
  76. 福田誠

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  御指摘のように、二〇〇一年までは、他方で預金者保護が全額保護されるという手厚い措置になっておりますので、保険におきましても一〇〇%保護する商品を設けることといたしております。  御指摘に対してお答えいたしますと、二〇〇一年三月末までに保険会社が破綻した場合でございますが、次のような経過措置で手厚く保護することとなっております。  まず、保険商品につきましては、大きく分けますと、第一番目のカテゴリーは、死亡したときにお支払いするようないわば保障性の商品がございます。保険本来の目的でございます。そのような偶発的な事故発生に対する保障性を確保するという観点から、経過期間中に支払い事由が生じた場合につきまして、生命保険の場合には、個人保険、団体保険、これはいずれも死亡したときにお支払いする商品でございます。それから、損害保険につきましては全種目、これは足の短い損保の商品性格上、全種目、これにつきましては契約時の保険金額を一〇〇%支払うということといたしております。  それから、二番目の商品のカテゴリーといたしまして、預金等とのバランスに配慮しまして、いわゆる生存型の商品、将来にわたる生活の保障ということに着目いたしまして、また、かつ、高齢化社会に向けての公的年金を補完する、あるいは勤労者の財産形成を促すというような政策目的を達成するという観点に立ちまして、生命保険の場合は個人年金保険及び財形保険につきまして、また損害保険にも同様な商品がございまして、年金払いの積立傷害保険及び財形傷害保険につきまして、これにつきましても責任準備金の全額を補償することといたしております。  以上でございます。
  77. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  今まさに、責任準備金の範囲内でということでありますが、まさに日産生命が破綻したとき、責任準備金の部分は補償されましたけれども、予定利率が大幅に引き下げられることによって現実的には平均的に言えば六割ぐらいの補償しかできないという状況になった経緯がございます。これは今の金利動向等を考えるとやむを得ないなという感じがありますが、この予定利率が引き下がるということを前提にした考え方ということについての大蔵省としての基本的な考え方についてお伺いしたい。どのようにお考えになっておられるか。
  78. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えを申し上げます。  大変難しい御質問でございますが、保険の契約者保護の場合には、まずもって保険契約をそこで切らずに継続するということが最も契約者保護に資するわけでございますので、年金型のものにつきまして、これにつきましては、これも今回御提案申し上げております支払い保証機構が引受機関があらわれない場合でも必ず継続するということにさせていただくわけでございます。  ただし、引き受ける側の支払い保証機構も、これは破綻していない保険会社の負担金によって運営されているわけでございますので、やはり引き継いだ契約そのものに大幅な逆ざやというのがございますと、そのまま継続しかねる場合もございます。そういうことで、あくまでその破綻時の金利水準、あるいはもろもろの商品、その引き継ぐべき商品性格によりますが、場合によりましては、そのときの条件、環境によりまして契約条件の変更もあり得るということでございます。  ただし、これはあり得るということでございまして、通常、もしそのような逆ざやが大幅でなければ、契約条件の変更は必ずしも行われない場合 もあろうかと存じます。日産生命の場合は、もう御案内のとおり、バブル期に大変高利回りのものを売ってしまいましたので、やむを得ずかなりの引き下げになったということでございます。
  79. 上田清司

    ○上田(清)委員 現在の状況でもし破綻した場合、積み立ての部分はいいとしても、この予定利率が引き下がっていくという形になったときに、一般的には、個々の保険会社の財務内容等も見なくてはいけませんが、例えばどのくらいのイメージですか。八割ぐらい確保できるのではなかろうかとか、そういうのはありますか。
  80. 福田誠

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  これも大変難しゅうございますが、破綻した保険会社がどのような商品をどのくらい持っていたかということでございますし、そして、今また高利回りの商品は毎年毎年契約が終了してはげ落ちていっているわけでもございます。他方で、金利環境等が保険業界にとっては最も厳しい状況にございますが、今後その辺が好転する可能性もございまして、やはりどのくらいかということにつきまして現時点で見通しを申し上げるのはなかなか難しいかと存じます。.
  81. 上田清司

    ○上田(清)委員 やむを得ない答弁だと思います。  そこで、一番大事なのは、やはり情報開示だという形になってくると思いますね。消費者にとってどの保険がいいのか、あるいはどの企業がいいのか、そういうものをきちっと把握する中身がありません。いわば早期是正のための一つの目安になっておりますソルベンシーマージン比率においても、これは開示されているわけでもございませんし、今回、法案の中で、いろいろ店頭で経理の内容を縦覧されるようにしなければならないとかというのがございますが、例えば、約款上に見られるようなああいうものが店頭に置かれていても、果たして利用者はそれをもってこの企業は非常に安定的な経理内容であるとかそういうことが本当に把握できるのだろうかという疑問がございます。  このマニュアルというのはどんなふうなイメージなのでしょうか、経理について縦覧に供しなければならないというのは。そういうのがきちっと本当にできるのだろうかというのが私は非常に疑問があります。せめてこのソルベンシーマージン比率だけでも対外的にオープンになるというものであれば相当わかるかと思いますが、今の改革関連法案の中で出てきている部分で、例えば、保険会社は、業務及び財産の状況に関する説明書類を本店及び支店等に備え置き、公衆の縦覧に供しなければならないこととする、こういう文言だけでイメージがなかなか出てこない。もう少し利用者に情報開示ができる仕組みというものをきちっとできないのだろうかというのが率直な疑問でありますので、この点についてお答えください。
  82. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  今般御提案申し上げている法案におきまして、ディスクロージャーについても、今までの訓示規定から義務規定に移行することになっております。そして、具体的な開示項目については今後省令で確定することになるわけでございますが、現時点で考えておりますのは、当然のことながら財務諸表あるいは不良債権状況有価証券の時価情報等に加えまして、やはり関心の高まっておりますソルベンシーマージン比率につきましても開示項目にさせていただくつもりでおります。  なお、余談でございますが、保険業界におきましてもこれまで自主的にディスクロージャーの拡充を図ってきておりますが、現在、この九年度決算からソルベンシーマージン比率についても自主的に開示する方針を決めたというふうに聞いております。  以上でございます。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  83. 上田清司

    ○上田(清)委員 それは大変結構なことだというふうに思います。  それでは最後に、大蔵大臣、生保関係、損保関係、それぞれ基金がございます。損保で五百億、生保で六千九百億、これではちょっと不安だというようなことで、業界の方から、政府もきちっとこの中に出資をしていただいた方がいいのじゃないかというような要請がありますが、この点については政府として、特に大蔵省としてはどのようにおこたえになるのか。私はいかがなものかと思っておりますが、大臣はどんなふうに御理解されているのか。最後でございますので、事務的にどうしてもお答えしたいということであれば。
  84. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  今御指摘の点も法案提出までいろいろ議論があったところでございます。しかし、本質的にこの破綻保険会社処理に要する費用は、保険契約者保護機構が会員である保険会社から負担金を徴収して充てるということが基本でございますので、機構に対する政府出資は考えておらないところでございます。
  85. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございました。質問を終わります。
  86. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、北橋健治君。
  87. 北橋健治

    ○北橋委員 民主党の北橋健治であります。  さきに、金融システム改革法案の審議に入るに当たりまして、野党側といたしましては、ことしの年初以来、大蔵省の不祥事に内外が大きく揺れてまいりました。これに対する内部調査をきちんとしていただいて、これに伴う処分というものをけじめをつけていただく、それがこのただいま提案されました法案審査に入る条件だと申し上げてきたわけでございます。既に衆議院本会議においても質問がされました。そしてまた、当委員会におきましても、同僚委員より、この不祥事につきまして、けじめにつきまして、基本的には甘過ぎるのではないかという観点からるる質疑があったわけでございます。重複するところがあるかもしれませんが、私も、この法案審査に当たりまして、けじめというものを強く求めた一人といたしまして、まず冒頭にお伺いをさせていただきたいと思います。  まず、大蔵大臣、今回の処分をもって一連の大蔵不祥事にまつわる案件は決着がついた、そのようにお考えでしょうか。
  88. 松永光

    ○松永国務大臣 委員もよく御承知のとおり、一月の下旬以降、金融関連部局に在職した者について、過去五年にさかのぼって、金融機関等との間で好ましくない関係を持った者がいるかどうか、どの程度いるのか、どういう過剰接待等を受けたのか、こういったことを中心にして内部調査を進めてきたわけであります。  その結果、それぞれの職員の行為の実態を勘案いたしまして、既に発表いたしましたような国家公務員法上の懲戒処分あるいは内部規律に基づく処分等々を実施したところであります。その詳細は、四月三十日付で大蔵委員会に提出申し上げたとおりでございます。大蔵省職員の中で、金融機関等との間の好ましからざる関係、あるいはまた公務員としての信頼性を損なうような関係があったかどうかという点についての大蔵省としての内部調査は、数カ月かけて、御提出申し上げたような結果になったということでございます。  世間の中では、ほかの部局の者もという話もございますけれども、その点については、具体的に重大な疑惑が指摘された場合には、これは任命権者としてその真相を解明して適正な措置をすることは当然のことだ、こう思っております。
  89. 北橋健治

    ○北橋委員 既に民主党としましては、ほかの部局についても、ぜひこの際大蔵省に対する信頼を確かなものにしていくためにもやっていただきたいという要求をしております。  さて、この処分につきまして同僚委員から指摘させていただいておりますが、今回辞表を出して受理された方について、国民の受けとめるところは、高額の退職金を受け取るというのはいかがなものか、この受け取りを辞退するぐらいの勧告をすべきではないか、そういう声がやはり国民の間には強いと思います。この点についてはどうお考えでしょうか。
  90. 松永光

    ○松永国務大臣 杉井前審議官、長野前証券局長については、その会食等の実態が非常に過度にわたっておるということ、それからまた地位も比較 的高いにもかかわらずそういう行いがあったということ、そしてまた平成八年の十二月に倫理規程が発出された後にも一部そういうことが見られるということ等を考えて、国家公務員法に基づく懲戒処分としては、過去の事例に比べてみれば非常に重い処分をしたわけでありますが、それを受けて両名はみずからの責任を反省されまして辞表の提出があったわけであります。その提出を受理をいたしましたので国家公務員としての身分を失ったというのがこの両名であります。  国家公務員退職手当法によりますというと、国家公務員法第八十二条の規定による懲戒免職の処分またはこれに準ずる処分を受けた場合には退職手当を支給しないということになっておるわけでありますが、それ以外の処分、停職、減給、戒告等々の懲戒処分を受け、みずから申し出て辞職した場合には、退職手当は支給するということに法律の規定はなっております。しかし、委員指摘のように、退職金をもらうべきじゃない、そういう世間の声があることも私は知らないわけではありません。  しかし、こうなってまいりますというと、退職金というのは、ある意味では職員が長年公務員として奉職したということに対する退職規程に基づく言うなれば請求権を持っておるという立場にあります。国の方はそれに対して、支払わなければならぬという債務者の立場にあります。したがって、債務者の側から物を言うのではなくして、まず退職金を受ける言うなれば請求者の側の気持ちを先に聞くのが筋だろう、こう思っておるわけでありまして、両名の気持ちを、どういう気持ちでおるのかということをまず聞いてみたい、こう考えているところでございます。
  91. 北橋健治

    ○北橋委員 衆議院本会議における答弁でもそういう御趣旨のことを言われましたが、連休もあったわけですけれども、まだそのお二人の気持ちを確認されていないわけでしょうか。
  92. 松永光

    ○松永国務大臣 国家公務員法上の懲戒処分をして、そして御両名が過去のみずからの行為を省みて辞職をされた。その直後は心の動揺もあるだろうということも考えてすぐは聞けなかったわけであります。そして、連休に入ったということがありますのでまだ聞いておりませんけれども、近いうちに本人の気持ちを聞いてみたいというふうに考えております。
  93. 北橋健治

    ○北橋委員 いずれにしても、これから大蔵省が再生を期して新たな気持ちで再出発をするために、関係者には、確かに胸中察するに余るものがありますけれども、きちんとしたけじめをぜひともつけていただくのが私は国民世論だと思っておりますので、その点での引き続いての努力を大臣にお願いしておきたいと思っております。  いずれにしても、今回の処分がありまして、私はどうしてもやはり釈然としない点があります。基本的には、昔から政官業という言葉がありますが、この不明朗な関係というものが、例えば大蔵の場合は護送船団方式という言葉にもありますように非常に強過ぎたのではないか。そこに今回過剰接待という温床といいますか、そういう原因があると思います。  そういった意味では、私は、この天下りという問題についても、きちんとしたけじめをつけなければ、大蔵省が変わったというふうにはならないのではないか。既に野党の資料要求でも明らかにされていますように、大蔵省を退官して銀行証券、生保などの金融機関にたくさんの方が重要な役職について、いわゆる天下りをされているわけでございます。  こういった問題について、やはりかつての護送船団方式ではもうないのだ、金融行政は、今回の接待疑惑、汚職そして処分というものを契機として大蔵省は生まれ変わるのだという気持ちを内外にはっきりと示すためにも、今後こういった金融機関に対する天下りというものはやめる、それぐらいの御決意を示していただかないと、私は、やはり国民から見ていて、今回の処分を見ておりましても、本当に変わったな、これで新しい第一歩を踏み出すのだなという期待感にはつながらないように思うのです。そういった天下り問題についての大臣の御所見をまず承りたいと思います。
  94. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、いっかのこの委員会でも申し上げたわけでありますけれども、どうでしょう、天下りという言葉はもう使わぬようにしょうじゃないですか。天下りという言葉が今まで使われてきたのでしょうけれども、天下りといえば、大蔵省が天で民間会社の方が下みたいなことになっておるわけでありまして、私はこれは転職者あるいは再就職者というふうに呼ぶのが筋だろうと思うのです。天上がりもおかしい話でございますし、そういう観点にみんなが意識を持つ必要がある。言葉を使う場合にも、天下りという言葉は使うべきではないので、再就職ないしは転職というふうに言うのが妥当ではないかな、私はこう思っております。  そういう見地に立ってこの問題を考えるわけでありますが、しかし問題はもう一つございまして、人間の平均寿命が延びたということもあって、比較的まだまだ働けるときに役所をやめる。これは大蔵省だけの問題ではありません。ほかの役所も同じ問題があるわけでありますけれども、その人たちが残りの人生、まだ十分働ける能力もある、意欲もある、そういう人たちの職をどうするかという問題になってくるわけでありまして、そういったことから実は公務員全体の再就職問題にかかわってくる。先般、総理が関係機関に指示された、この問題に関連した公務員制度に関する検討委員会といいますか、そこの検討状況を厳粛に見守りつつ対処していくのが妥当であるというふうに思っております。  少なくとも、大蔵省にかつて在職したということをかさに着て、従来から民間機関で努力をして上に上がってきた人のつくポストを大蔵省からの転職者が奪ってしまうような形になることは、その民間企業のためにもなりませんし、また世間一般から見ても、いつまでも使ってはならぬ言葉である天下りは云々というふうに言われかねない。ここらあたりで天下りという言葉をなくす。少なくとも民間で苦労してきた人の職を奪うような形での再就職は慎むという形にいくのが望ましい姿ではないかというふうに私は思います。
  95. 北橋健治

    ○北橋委員 名称は天下りは余り使いたくないということなんですが、名前はどうでもいいのですけれども民間の職を奪うとかそういうことではなくて、関係する業界に対して非常に大きな監督権限を持っている、そこのOBがそこの関連業界に行くことによって不明朗な関係になるのではないか、そこが問題なのであります。  官房長、お越しになっているので、ちょっとお伺いしますが、通告はさせていただいておりませんが、一人の大蔵官僚OBが金融機関に再就職するときにはどういう手続を踏むのでしょうか。私の聞き及ぶところによりましては、大臣官房の中では、官僚が次の再就職のためには関係先との関係だとか折衝だとかそういうようなことをいろいろとお世話をされているという話も聞いているのですが、どうでしょうか。
  96. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 大蔵省を退職した方が民間に再就職する場合、金融機関も含めてでございますけれども、これは基本的には、採用する民間の企業とその退職者との間のことでございます。もちろん、例えば民間の企業の方から大蔵省に何かこういう条件で適任者がいないかということが問い合わせされてくることもたまにはございますので、そういう場合には、その意味で、いろいろこういう人物がいますといったようなことをお話し申し上げることもございますが、基本的には当事者同士のお話。  ただ、御承知のとおり、退職後二年間は関連あるところに行く場合には人事院の承認が必要でございますので、その手続は私どもでとらせていただく。それから、現時点におきましては、自粛措置がいろいろ講ぜられておりますので、その自粛措置に沿うようなそういうお話をさせていただくということはあるわけでございます。
  97. 北橋健治

    ○北橋委員 私が耳にしている状況とは少し違うようでございまして、かなりどこの官庁でも大臣 官房にいらっしゃる方の一つの大きな仕事として、先輩の次の再就職先をお世話するということが大きな仕事だ、とう聞いておったわけでございますが、今のお話では必ずしもそうでないようでございます。  要するに、やはりMOF担というのは金融業界は持っていて、今回の事件を契機としてもうやめるというふうに民間の方も変わってきているわけです。何でMOF担があるかといえば、やはり情報もある、いろいろなことを、監督者でありますし、検査なんかのことでも手心を加えてほしいという思いがあったかもしれませんが、要するに強い監督権限を持っているからこそ民間企業は受け入れているのではないでしょうか。  そういった意味におきましては、民間企業もMOF担というのは廃止していくということをみんな各社言ってきているわけでありますから、これを機会に大蔵省も再出発を期すのであれば、検討委員会で官房長官のもとで議論されていることは知っておりますけれども、その後も自粛をするという形ならば、官房長が決断すればできるわけでございまして、今後、金融業界に天下り、再就職はしない、それぐらいのことをおっしゃっていただかないと、変わった、これで再出発だということにならないと思うのであります。その点についての毅然たる姿勢を示していただけませんか、大臣。
  98. 松永光

    ○松永国務大臣 世の中大いに変わってまいりまして、来月以降になりますというと、金融機関等に対する監督権は大蔵省にはない形になってまいります。そういう意味では、六月以降は大蔵省というのは、民間金融機関に対する、少なくとも監督権はない役所になるわけであります。  しかし、同時にまた、そうであっても、大蔵省の職員として非常に有能だった、人柄もいい、あの人が退職するそうだ、ならば、あの人の能力を生かしてもらって自分の会社で働いてもらいたい、そういう要望があった場合にまで拒否しなければならぬのかという問題になってまいりますというと、それまで拒否するということは私は言うことはできません。少なくとも、監督権限がある、そういう役所のOBだとかそういったことで、半ば強制的な形で民間会社に行くということは、これはいいことではないということだけははっきり申し上げておきたいと思います。
  99. 北橋健治

    ○北橋委員 いずれにしても、官房長官のもとで研究されるということなんですけれども、やはり定年までしっかりと官庁で働いていただくということが基本であるべきだと思います。  ここで、再就職について、大蔵省として他の省庁に先駆けて、今回の接待不祥事を契機に踏み込んだ方針が出ることを期待しておりましただけに大変残念でありますけれども、この点については、やはり民間もMOF担をやめる、そして金融ビッグバンが始まっていく、そして護送船団方式というものを抜本的に改めていくんだと。外資系の企業はどんどん入ってくるわけでありまして、海外からの注文も多くなる。そういう中において、やはり監督官庁から金融機関に対して天下りしていくことは私は正常な姿ではないと思っておりますので、今後とも引き続き政府の動向を見守ってまいりたい、こう思っております。  最後に、大蔵大臣、就任早々のこの大蔵委員会におきまして、同僚の日野委員質問に対しまして、今後新たな不祥事が出た場合には自分としても身の処し方を考えるという御発言がありました。今日までは、この不祥事問題を決着つけるために内部調査の徹底という、その監督という仕事があったと思いますけれども、一段落した時点におきまして、やはり行政の最高の長である方が道義的、政治的な行政の責任をとるということは、私はこれは必要ではないかと思っております。現に大蔵大臣も就任早々ここでおっしゃったものでありますから、御所見を承っておきたいと思います。
  100. 松永光

    ○松永国務大臣 私が就任した以降、新たな不祥事に該当するような行為をした人は、私はいないものと思っております。  私は、前三塚大臣の後を受けて、既に開始されておった内部調査、それを徹底してやった上で、責任のある者について厳正な処分をして大蔵省の再出発を図る、そのことのために努力するというのが私の責任だと思っております、こう申し上げたつもりであります。私は私なりにその責任を果たしてきたというふうに思っております。  同時にまた、今御審議を願っておるこの法案にしろ、さらにはまた、経済、景気の情勢が厳しい状況でありますので、それに対処するためのいろいろな法律とか予算案とかがいずれ出てくるだろうと思うのでありますが、今大蔵省に課せられておる使命は極めて大きなものがある、こう思うのでありまして、そうした使命を果たすために全身全霊をささげて働いていくことが私の責務を果たすゆえんだ、こう私は思っております。
  101. 北橋健治

    ○北橋委員 この責任感という言葉は、人によって、党によって物差しが大分違うようでございます。百名を超える処分者が出た、そして世論の一般的な受けとめとしては、甘過ぎるのではないかという声がいまだにある。そういう中にありまして、大蔵省が過去の不祥事と決別をして新しい体制で再出発をするというときに当たりましては、大きな山を越えた時点におきまして、行政の長がきちんとけじめをつけるということがやはり私は一番最善ではないかと思っております。これに対しては、大臣の見解とは意見が違うようでございますので、大変残念であります。  さて、今回の金融システム改革法案につきまして、以下質問をさせていただきたいと思います。  この法案政府・与党内で固まり、そして閣議決定される段階に当たりまして、マスコミはどのように報道したかといいますと、専ら消費者保護という観点が弱過ぎるのではないかということを、どのマスコミも社説その他で論評をしております。  例えば、これは弁護士会、日弁連でございますけれども、大蔵省に既に意見書を出されていると思いますが、例えば、金融破綻が起こったとき、あるいはこれまでよく訴訟になっております元本割れの商品、こういった問題を考えると消費者保護を充実する必要がある、金融サービス法を急げという趣旨があります。新聞によりましても、複雑な取引に免疫はない、不祥事で対応もおくれているけれども消費者保護の整備を急ぐべきだ、ビッグバン金融商品があふれ出る、金融サービス法を急げ、あるいは、ブローカーリスクを抑制せよ、そういった趣旨の論評というものが一斉に出ているわけであります。  私も、今回の法案を見るに当たりまして、その内容におきましては一部評価できる面もあるわけでございますが、やはり基本的に、ビッグバンが進んでいく、そして世界じゅうが注目する千二百兆円の個人資産というものがあるわけでありまして、どんどん外資系の企業も進出してくるだろう。市場のウィンブルドン化という言葉が本当に日本でも起こるかもしれない。そういう状況の中にありまして競争が激しくなってくる。そうすると、残念なことに金融機関で破綻というものが場合によっては出る可能性もあるし、あるいは、競争が激しくなることによってノルマを課せられた営業職員がどんどんお年寄りを中心にいろいろなところに売りに行く。そうなると、いろいろと消費者問題、トラブルというものが派生する可能性は確かに大きくなる、こう思うわけであります。  そういった意味で、政府の姿勢としては、去年の六月でしたが、金融制度調査会におきましてもこの問題について触れております。保険審議会でもそうです。証券取引審議会もそうでございますが、この法案の立案に当たりまして、それぞれ大蔵省の審議会におきましては、消費者の保護というものが大事だ、契約者、消費者、投資者の保護が大事だという基本姿勢があるということは、私も認めるにやぶさかではありません。  それで、金融制度調査会によりますと、既にいろいろと、「幅広い金融サービスに対して整合的な規制を行う新しい法的な枠組みを検討すべきで あるという基本的な方向性については、概ね意見の一致が見られた」、こう書いてありまして、今後、先進各国の例も参考にしながら幅広く検討を進めていく必要がある、そして参考資料として、英米の消費者保護のルールについてもいろいろと記述がございます。  つまり、政府・与党内部におきましても、この金融システム改革法案と並んで、またこういった消費者保護のルール化が大事だという認識はお持ちではないかと思うのです。そういった問題につきまして、まず基本姿勢として、こういった法制化について、いわゆる金融サービス法的な消費者の保護を明確な立法趣旨とするような作業につきましてはどこまで進んでいるのでしょうか、お伺いします。
  102. 松永光

    ○松永国務大臣 一般論について私から申し上げて、さらに細かい点は事務方から必要に応じて答弁をさせることにいたします。  委員指摘のように、この金融ビッグバン法が成立をして、そして例えば銀行におけるいろいろな商品窓口販売できる、こうなってまいりますというと、消費者の側は、今まで銀行で購入しておった金融商品は、定期預金であったり、すなわち元本保証のものを実は取得しておったわけでありますが、今度、投資信託商品などを定期預金と同じような気持ちで銀行で消費者が購入すれば、時によってはえらいトラブルが起こらぬとも限りません。そのために、元本保証のないそういう商品については元本保証のある商品とは違うんだということをはっきり認識させた上で取引はしなければならぬことになってくるわけであります。  その場合に、証書にはそういうことは書いてあるでしょうけれども一般の消費者はそれを知らないまま買うこともあり得るでしょう。そこで、そういう場合には、消費者が元本の保証のある商品だなどというふうに誤認することがないようなそういう措置をきちっとやった上で、あるいは説明を十分した上での販売でなければならぬ、こういうふうに思うわけでありますが、そういったこと等を含めて消費者の保護というのは極めて大事なことだというふうに思っております。  そういう観点から、まず第一には、ディスクロージャーの充実、公正取引ルール整備、拡充、あるいはまた金融機関等行為規制の拡充、そしてさらに、先ほど議論のなされておりました投資者保護基金という仕組み、あるいは保険契約者保護機構といったものの創設等々をやって消費者の保護に努めていくわけでありますが、今委員の御指摘は、包括した消費者保護のための法律、すなわち金融サービス法を制定すべしという御意見でございます。  趣旨としては私も理解できないわけではありませんけれども、包括的な消費者保護法ということになってくるわけでありまして、基礎的かつ理論的な検討を行って対応していくというのが現在のところ答弁できるところであります。このことは先ほど上田議員にもお答え申し上げたとおりでございます。
  103. 北橋健治

    ○北橋委員 この提案されております金融システム改革法案と一緒に国会に提出されるべきではないでしょうか。その点が、やはり今回の政府提案の中身について各方面から、消費者保護、ビッグバンの中で日本人は金融に対する知識も十分でない方も多いわけでありまして、こういったものを一緒に出さなければ私は非常に問題点が出てくるのではないかと思います。  そこで、お伺いしますが、今回デリバティブを解禁されますけれども、その場合に、これまでワラントをめぐりましてかなりの訴訟が起こっているでしょう。そして判例も一部出ておりますけれども、やはり売る側が、営業マンがこの商品は場合によっては非常にハイリスクであるということを、注意義務を怠っているという場合には消費者の方が勝っているのですけれどもデリバティブだけじゃありませんね。今度は投資信託というものがかなり市場に出回るという思い切った改革措置があるわけです。  確かに欧米を見ると、投資信託等のシェアが個人の金融資産でも非常に大きいわけでありまして、そうなりますと、投資信託におきましてもこれまでいろいろと訴訟というのがあったのじゃないでしょうか。つまり、変額保険でありますとか投資信託であるとかワラントであるとか、そういったものについて非常に訴訟というものが多数日本では行われてきていて、これもいろいろと調べてみると、裁判に持っていくというのは消費者にとって、財政負担もそうでありますし、精神的な負担も大変に重いということで泣き寝入りしている人がほとんどで、意志の強い人が、そして大変大きな被害を受けた場合に意を決して訴訟に持ち込んでいるというのが実例でありまして、既に今までの金融商品の中でもそういうトラブルはいっぱいある。  今後は、どこの金融機関が破綻するのだろうかとマスコミ、雑誌でいろいろと言われている御時世でございますから、競争は相当に激しくなってくる。そして今回、政府提案の法案によれば、デリバティブであるとか投信だとか、新しい金融商品を大々的に市場に送り込もうとしているわけです。それは、供給側の理屈としてはわかっていても、消費者側という視点が極めて欠如しているのではないか。過去の訴訟の実態をよく押さえているのですか。
  104. 山本晃

    山本(晃)政府委員 今回の金融システム四法につきまして、北橋委員の御指摘は、消費者に対する保護が不十分ではないか、こういうお話でございます。  今回の法案におきましては、多様な金融商品やサービスが提供されるようになる中で、投資家等の利用者の保護上問題が生じることのないように、顧客の知識、経験及び財産に応じた勧誘をすべしといういわゆる顧客の適合性の原則や、取引概要を記載した書面の事前交付義務等が有価証券店頭デリバティブ取引等の新たな取引にも適用されるようにするための規定の整備であるとか、あるいは銀行や保険会社等による商品の性質に関する顧客への説明義務の導入、あるいは証券会社銀行、保険会社等の業務及び財産の状況を記載した書面の公衆縦覧の義務づけ、あるいは投資者保護基金、保険契約者保護機構制度の創設等、破綻処理制度の整備など、利用者保護のための各般の措置を講じているところでございます。  また、こういった包括的なものをというお話でございますが、私どもとしては、今回、できる限りそういった消費者保護のための条項というものを盛り込んだつもりでございますが、今後いろいろと金融システム改革というものが進展をしていくことに伴いまして、またいろいろな御指摘のような観点も十分に勘案をいたしまして、中期的な視点に立ってこの例えば金融サービス法等について検討していきたいということを、先ほど大臣も答弁をされたところでございます。  こういう時代に入ってまいりますと、確かにおっしゃられますように、いろいろな紛争、今までにも先ほど北橋委員指摘のようなワラント等の訴訟の問題等いろいろあったわけでございますが、今後ともいろいろとそういったことはあるいはふえていく可能性なきにしもあらずでございます。そういった点につきましても、先ほども末松議員に御答弁をしたところでございますけれども、例えば証券取引の分野では、こういういわば民事紛争をあっせんをする証券業協会あっせん制度というものを充実をするというような措置も盛り込んでいるところでございます。
  105. 北橋健治

    ○北橋委員 この法案施行はおおむね年末なんですが、保険の算定の問題については、外国との約束事で待って七月一日だというのです。それだったら保険の算定のところだけを抜き出して成立させてもいいわけで、やはり一緒に成立させるべきではないですか。金融制度調査会が具体的に指摘をして、包括的な金融サービス法をつくるべきだ、消費者保護はやはり大事なんだという指摘まであるわけでありまして、なぜこれを先行させるのですか。なぜ一緒に出さないのですか。アメリカやイギリスの事例を調べられたのですか。そ して、過去の訴訟がどういうふうにして行われてきているか。  今回は銀行窓口販売というものが一つの大きな特徴になっています。証券会社だとか信託銀行とかそういうことになりますと余り普通の庶民は行かないかもしれませんが、いつも行きなれている銀行窓口でいろいろな商品が売られるわけです。それは訴訟というのはふえるかもしれないというお話だけれども、間違いなくこれはいろいろなトラブルが起きるのじゃないでしょうか。日産生命のときもそうでありますけれども銀行の方からそういった資金を提供して、そして一時払い養老保険であるとかそういったものにたくさん勧誘していたわけでしょう。そういった事例を見てもわかりますように、銀行が提案するような形での商品というのはトラブルは結構起こっているわけですね。  少なくともこの法案作業が頭から否定はされていないと思うのだけれども欧米ビッグバンが進んでいる国の実態もあわせて、そして日弁連等の訴訟に携わってきた人たちの言い分もよく聞いた上で、この法案が成立して施行するまでに、この国会にぜひとも出していただきたい。その約束がなければ、消費者保護というものを軽視したまま、供給側の立場だけでこの法案を成立させるわけにいかない。大臣の答弁を求めます。
  106. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども私は申し上げたのです。一番問題になり得るところはどこかというと、銀行における有価証券販売、これが相当注意しないと問題になり得るところがあるな、私はそれほど研究はしなかったけれども、そう直感的に感じたのです。  何となれば、銀行というのは、預金者から見れば元本保証で間違いないという信頼感を持っておる。大体今まではそう間違いはなかった。こう言えば証券業界に対する失礼な言い方になるかもしれませんけれども銀行はかたい、証券は株屋だ、こっちはかたくないというのが大体の国民認識だろうと思った。ところが、最近は、かたい銀行も少しかたさが少なくなってきたかもしれませんけれども、そういうことでありますから、銀行窓口有価証券販売がどんどん行われるということになりますというと、よほど注意しなければ被害を受ける人が出てくるおそれがある。もっとも、有価証券には細かい字でいろいろなことが書いてあるはずなのです。しかし、消費者は必ずしもそれは読まないかもしれませんし、それからまた、窓口の人が言葉巧みに、これも元本保証と同じようなものですよというふうに言わぬとも限りません。そこが問題だと思うのであります。  そこで、有価証券販売に係る問題につきましては、証券取引法上の誠実公正義務に基づく販売ルール、こういったものがきちっと守られていなければなりませんし、また、顧客に対する預金との誤認防止ルール、こういったものがきちっと行われる、そういう手だてを講じた上で証券投資信託等の窓口販売を導入する、こういうことにしておりますので、私は、必ずしも委員指摘の包括的な法律をつくらなければ窓口販売は認めないということにはならぬだろう、誤認防止ルール等がきちっと適用されていけば、まずは消費者の保護は果たされるというふうに思っております。  消費者保護のための一般的なルールづくりというのは、先ほども上田議員の質問に対してお答えしたとおり、理論面その他、もう少し詳細に検討した上で中期的な課題として対処していきたい、こう考えておるところでございます。
  107. 北橋健治

    ○北橋委員 大臣の話を聞いておりまして、もう夜なべする気持ちもなくなりましたね。そこまでしておつき合いする必要もないのではないか。  きょうは時間が限られておりますから、私ども一人四時間要求しておりますので、またチャンスがあると思いますが、これまで金融商品をめぐってどういう訴訟があったか、それを全部、それまでに調べておいてください。そして、今回の法案が成立した場合にそれは解決される、心配ないというのだったら、それをはっきりさせてもらいたい。まずは、具体的な現場でのトラブルというものがどの程度あるか、それも恐らく氷山の一角だと思いますけれども、そこから議論を始めましょう。私は、この法案施行されるまでの間に金融サービス、消費者保護の法制化は絶対に不可欠だ、こういう立場でございますので、改めて来週でも、昼間の審議のときにやらせていただきたい。それまでによく調べておいていただきたい。それは法務省の所管だとかおっしゃらないで、よく調べておいていただきたいと要望しておきます。  今回、大きな制度改正の中で、生保の問題がございます。日産生命の破綻は、これは国民全体にとりましては大変ショックなことでありました。生保は銀行預金と違いまして一生の問題でございまして、途中で解約などになりますと、保険料が上がったり、いろいろと不利益というものが出てまいります。そういった意味では、日産生命の破綻というときに、しかも途中で解除をするときのペナルティーがついておりますだけに、大臣はあのとき、契約者は守ると一たん大見えを切って、その後泣きを見ているものですから、余計に私は、日本の生保に対する国民の信頼が動揺したという意味においては大事件だった、こう思うわけです。  そういった意味では、国民ひとしく皆生命保険に入っていると思いますから、国民にとっての社会保障的な見地からも、この制度を、もしも不幸にして破綻するような場合に万全の措置をとるというために政府がいろいろな対策を講ずることは当然でありまして、去年、日産生命が破綻してから今日まで、その制度が空白のまま来ている。幸いにも、その後に生保というものが破綻するものがなかったからよかったものの、そういった意味では最近、生保の契約が物すごく激減しているというのだけれども、それはそうですよ、心配ですから。銀行の場合はすぐに手を打ったわけであります。そういった意味では遅きに失したけれども、保険契約者を保護するための制度化に踏み込んできたこと自体は私は評価をさせていただきたい、こう思っています。  ところが、具体的にどこまで守られるのか。そして、逆ざやのために、超低金利が数年間続いておりますから、業界全体だけでも十八兆円だとかいろいろな説がありますけれども、これは株価の下落とあわさって深刻な経営環境の中にあるわけです。そういった意味では、今後この保険契約者保護機構の運営に当たっては、かなりの部分が政省令にゆだねられておりますので、以下六点につきまして政府対応をお伺いしておきたいと思います。  まず、負担金率の引き下げでございますけれども、これは法案の二百六十五条の三十四、六項によりますと、保険会社の経営の健全性が維持されなくなるときは負担金率を一時的に引き下げることができるという、そういう条項でございます。  では、この保険会社の経営の健全性が維持されなくなるときというのはどういう状況を言うのでしょうか。保険会社の健全性にはさまざまな指標があると思いますけれども、あらかじめここで特定することは困難かもしれませんが、具体的な基準を今後どのように設定するのか、お考えがあれば聞かせていただきたいと思います。
  108. 福田誠

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御指摘の規定は、支払い保証機構が負担金によって運営されるわけでございますが、負担金の納付の結果、会員である保険会社、健全な保険会社の経営が維持されなくなる場合には一時的に負担率を引き下げることができるという条文でございます。  これは、いわゆる共倒れを防ぐというような趣旨でございまして、御指摘の、どのような事態かということになりますと、それはやはり個々の状況に応じて判断されるものと考えております。例えば、今後どうなるかはわかりませんけれども、将来、業界全体について経営環境が著しく悪化いたしまして、まさに負担金の納付自体に耐えられないような状況になるというようなことが考えら れるわけでございますが、いずれにしましても、この点につきましては、今後、第一義的には機構においてそのような種々の状況を勘案して、その時点で検討すべきものでございますので、現段階で具体的な基準のようなものを想定することは困難でございます。
  109. 北橋健治

    ○北橋委員 機構といっても、大蔵省が全く関知しないところで運営されるわけではないわけでしょう。この法案が通ってから、政令なり省令なり、機構でとなるのだけれども、やはりそういうふうな裁量の範囲といいますか、重要なことをこの国会の場で、成立する段階において明言できないというのは、これは極めて問題だと思うのですよ。そういう従来の発想をやめて、やはりきちんと法律で、論議するときにやりましょうよ。ですから、この問題については、保険契約者に対する配当金が減少する場合とか、そういう場合は確かにひどいから該当するとか、具体的に言ってくださいよ。
  110. 福田誠

    ○福田政府委員 先ほど御答弁申し上げましたが、支払い保証機構自体は保険会社相互間で保険契約者のために設ける機構でございまして、基本的に、契約者保護機構の運営等についてはできる限り機構の自主性を尊重して運営することになっておりまして、今御指摘の負担金率につきましても、具体的には、条文にございますように、一定の算式に基づいて支払い保証機構が総会の議決を経て定めることになっております。そして、先ほど来の条項の適用につきましても、やはりその時点での機構の判断が第一にあるというふうに御理解いただきたいと存じます。
  111. 北橋健治

    ○北橋委員 それでは、二番目に、年間負担額の水準につきましても、これも総会の議決を経て機構が定めるということになっているのですが、保険審議会の資料には具体的に数字がありますね。平成十二年度までは四百六十億円、十三年度以降は四百億円。具体的に法令にはこの年間負担額というのは規定されておりませんけれども、どの程度の水準を目安とすればよろしいか。先ほど申し上げた保険審議会の資料というものが目安と考えてよいか。そしてその場合に、もし不幸にして保険会社が破綻した場合に十分対応可能な水準と言えるかどうか。こういった点についての認識をお尋ねします。
  112. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  どれくらいの金額が必要かということにつきまして、今後発生し得る保険会社の破綻を予測することは困難でございますが、あくまで本法案提出時の制度創設に当たっての考え方を申し上げますと、まず、十年間という期間を念頭に置きまして、複数の破綻が起きた場合にも対応できるようにということから、御指摘のように、生命保険の場合には四千億円程度、損害保険の場合には五百億円程度を用意することを考えているわけでございます。  年間の負担額につきましては、この今申し上げた必要額を念頭に置きまして、保険審議会の資料にも記載されておりますように、生命保険の場合は、その四千億円程度を十年で除した、年間は四百億円程度、損害保険の場合は、五百億円を十年で除しました五十億円程度が一つの目安となるのではないかというふうに考えております。
  113. 北橋健治

    ○北橋委員 その場合、今の御説明では、将来の破綻した場合の想定は難しいというのはわからないでもないのですけれども、場合によっては、この程度の負担金の水準ではやっていけない、つまり、この負担金の水準の引き上げを余儀なくされるような場合、これは負担する側の生保もまた大変だと思うのですけれども、その場合の健全性の維持ということは、皆さんどう考えておられるのでしょうか。
  114. 福田誠

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  まず、支払い保証機構自体は破綻した保険会社契約者の保護の万全に当たらなければなりませんので、そちらを必ずお支払いするということになりますので、その時点で、積立金が仮に不足していた、あるいは十分に積み上がっていなかった場合には機構が借入金で対応するということになります。  ただ、その借入金も無制限にできませんので、先ほど申し上げたような規模を想定しているわけで、それを超えるような、先ほどの御指摘のそれ以上負担金を納付する場合、健全な保険会社の方が維持できなくなるような場合には、先ほどのような負担金率の一時的な軽減ということも考えられるわけでございますし、さらに、破綻の規模が予想外に大きくなりまして、保険会社の負担能力あるいは機構の利用可能な資金の状況が著しく悪化してしまったというような場合には、制度の見直しなどの必要な措置検討され、適切な措置が講じられることになるわけでございます。  この見直し規定については一御提出申し上げている法案の中に、大蔵大臣への協議規定として、三百十一条の二というのと、それから全体の検討条項として、金融システム改革法の附則の百九十一条、二カ所にその制度自体の見直し条項も含まれているわけでございます。
  115. 北橋健治

    ○北橋委員 今見直しというお話をされているわけですけれども、確かに法案にはそういう条項が含まれました。  銀行預金の場合には、三十兆円というものが預金者保護のためという名目で既に手当てが済んでいるわけですけれども、そうなると、このように生保関係会社が機構に積み立てをしていく場合に、どうにもならないような状況になった場合には具体的にどういう措置を講ずるのですか、見直すとおっしゃっているけれども。例えば、預金保険機構に対してとったような措置を考えておられるのですか。
  116. 福田誠

    ○福田政府委員 その時点でどのような措置をとるかというお尋ねにつきましては、現時点で特定することはできないわけでございますが、例えば、補償限度や補償対象となっている契約の範囲を見直すとか、あるいは公的支援、それから一時的に保険金の支払いの留保等々、制度自体の見直しという言葉の中には、この制度を維持するためのあらゆる措置検討の対象となると考えております。
  117. 北橋健治

    ○北橋委員 もう一点聞いておきますけれども、借り入れることができるという条項があるわけですが、機構の借入金には政令で限度を設定するということになっています。ここでもやはり政令というのが出てくるのです。限度を設定することは私ども理解はできますけれども、その水準だとか限度の設定方法が不明確でありまして、そういった意味ではこの点をどう考えておられるか。この法案が通らないと明らかにできないのでしょうか。
  118. 福田誠

    ○福田政府委員 政令についてのお尋ねでございますが、先ほど、十年間で生命保険の場合約四千億円程度を用意するというようなシミュレーションといいますか、想定をいたしております。したがいまして、借入金の限度額についても、今後、政令の段階で詳細を検討させていただきますが、やはり年間負担額の十倍程度というものが一つの目安ではないかというふうに考えております。
  119. 北橋健治

    ○北橋委員 あともう一点、現行の保険契約者保護基金というのがありますが、それについての負担の扱いが今後どうなるのかであります。  今回の法案によると、保護基金の資産及び負債は機構が承継できるということなんですけれども、機構がその負債を承継した場合に、その負担はだれがどのように負担をするということにするのか、具体的に決めておられるでしょうか。
  120. 福田誠

    ○福田政府委員 御指摘の点につきましては、金融システム改革法の附則の第百四十条の規定によりまして、現行契約者保護基金の資産及び負債につきまして、基金側からの申し出、そして支払い保証機構の総会における承認、そして大蔵大臣の認可がありますと、その時点で機構が基金の資産及び負債を承継することができることとなっておりまして、その際には、機構におきます他の経理と区分して整理することといたしております。  その機構が承継いたします基金の資産、負債の中には、当然基金に加入していました保険会社に対する負担金の請求権が含まれるというふうに考 えておりますが、仮に基金に加入していなかった保険会社がどうかということになりますと、そのような会社が負担することまでは想定しておらないわけでございます。
  121. 北橋健治

    ○北橋委員 これから外国資本の生保関係が相当入ってくると思います。去年話題になりましたのは、日本の生命保険会社外国のGEキャピタルとが合弁子会社方式で設立した。これについてはいろいろな見方があると思うのですけれども、要するに、予定利率その他で比較的良好なお客さんについてはそっくりそっちに移管して、場合によっては、非常に運用が難しいようなお客様については、結局この支払い保証機構で助けてもらうのじゃないか。そうすると、物すごく強い新しい外資系生保が誕生する、そしてそのツケは周りの生保会社がみんな負担をするということになってしまっては、これはまた重大な問題になるわけです。  今後、こういった形で外資系の生保会社の参入がいっぱい見られるわけでありますが、そういった意味では、この基金のときに、日産生命破綻に伴ってみんなが借金して苦労しながらこれを抱えているわけでありまして、それは知らぬよ、その債務はおれたちは知らないよとなったら、これはやはりみんなで支え合っている生保の契約者を守るためにやった措置なのでありますから、私は、そういった意味でも新規参入者についても当然負担はすべきである、こう思うのですけれども、そうなるのでしょうか。
  122. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  本法案におきます支払い保証機構が発足いたしました暁には、これは全保険会社強制加入というふうになるわけでございます。  それから、GEキャピタル、東邦生命の例示を今御指摘ございましたが、こういうように新しい保険会社を設立するいろいろな形態が今後もあり得ると考えております。私どもといたしましては、そのような新会社の設立等に際しては、免許、認可等の申請が出された場合に、法令等で明示されている基準に従って審査していくわけでございますが、そもそも、既存の契約者が一方的に不利益となる形での提携は、そのような契約者を抱える保険会社自身が選択することは想定しにくいところでございますし、私どもとしましても、審査等を行う場合には既契約者の保護が図られるように、今後とも十分に対応してまいりたいと思います。
  123. 北橋健治

    ○北橋委員 先ほど日弁連の提言を申し上げたのですが、その中にも生保について指摘があります。それは、日産生命の破綻のときに、大臣が大見えを切ったにもかかわらず結局契約者がかぶったということもありますが、続いて、今回の制度では、責任準備金の九割までは二〇〇一年度以降補償することになっているのですが、それでも、日産生命のときの保険契約者の救済よりももっと負担が大きくなるのではないか。そういうところを、やはり日弁連の立場では、生保が長期的にリスクの多い運用に対して責任を持っているのだからきちんとすべきだということなんですが、私もその議論はわからないでもないのです。  しかし、現実に現在の生保の経営体力を見ていくと、どの数字を見ても大変に厳しい状況なんですね。そしてそれは、基本的には超低金利が続いているということだと思うのですよ。だから、そういった予定利率との間の逆ざやというものがどんどん深刻になっていく。そして、生保に対する信頼感がこの間の政府対応によって大分揺らいでいると思うのですね。そうなると保険料収入も落ちてくるとなれば、どんなに自助努力、リストラをやってみても追いつかないことだと思うのです。  その場合に、私はここで、時間が参りましたので、大臣にも最後に聞いておきたいのですけれども、確かに、生保というのは金融機関なのかどうか、決済機能は持っていない、そういう議論はあるかもしれませんが、しかし、これは国民の社会保障という見地から見て非常に重要なシステムでありまして、もしここが日産生命のときのように守られない、不安だとなったときに、日本国民全体がこうむる損失ははかり知れないと思うのです。  政府・与党内部で、この支払い保証制度をつくるときに随分議論があって、決済機能を持ってない生保に対してなぜ公的資金を導入するのか、議論があったと思うのだけれども、私は、それはとんでもない暴論だと思うのですね。どうやって守るんだと。生保が全部自分のところの経営努力によって守られる状況があればいいのですけれども、今の状況で超低金利のもとでどうにもならない。逆立ちしてもどうにもならない。そういう状況の中にあって契約者を守るということ、これに対して、三塚大蔵大臣が日産生命の契約者を守ると言ったように、やはりきちんとしたポリシーというものを大臣がはっきりさせるということが、今後の政令、省令を決めていくのに重要だと私は思っているのですね。  そういった意味で、私は、保険契約者を守るということが日本金融システム全体にとっても重要なかかわりのあることだ、そういう認識に立つて万全の体制を政省令の整備の中でつくると明言していただきたいと思います。
  124. 福田誠

    ○福田政府委員 大臣の前に、一言補足をさせていただきます。  今回の制度の本則、経過期間後におきましては、御指摘のように責任準備金の九〇%を保護することとなっておりますが、この辺につきましては、できるだけ手厚くすることが保険業に対する信頼の確保につながるということであります反面、保険会社の健全性、ほかの保険会社の健全性、あるいはその保険会社契約者との公平の確保という問題もございますし、やはりモラルハザードの発生を抑止するということもございます。諸外国の制度等も参考にして九〇%という補償水準を考えたわけでございますが、ただ、御指摘のように、保険会社の場合は、なかなか契約者の側で十分に保険会社の実態がわかりにくい、自己責任をとりにくいということもございまして、二〇〇一年三月までの間は手厚い保護をすることにいたしておるわけでございます。  そして、保護機構そのものは、繰り返しになりますが、保険会社がその負担金において運営するところが基本でございますが、万が一、そのような保険会社で支え切れない事態が起きる場合には、先ほど申し上げた見直し規定を発動して、その時点で適切な対応をとっていくということが考えられているわけでございます。  いずれにしましても、保険契約者の保護というものは、現行の保護基金に比べましてかなり透明性のある、充実したものになるというふうに考えているわけでございます。
  125. 松永光

    ○松永国務大臣 保険契約者保護機構というのが設立されるわけでありまして、それは保険契約者保護基金を承継して、そして今度の機構は、全保険会社に加入義務を課して、負担金を徴収してやっていくという仕組みになるわけであります。そして、責任準備金の九〇%まで補償、こうなっているわけでありますが、今保険部長も申したとおり、公的支援の関係では、二〇〇一年三月までの経過期間については、政府保証及び日銀借り入れを可能にするという形で加入者の保護を図っていくという仕組みになっております。  この仕組みをスタートさせることによって、十二月一日を発足日に法律上決めてあるわけでありますけれども、これをスタートさせ、かつ、今申したように全保険会社に加入義務を課して加入をさせて、そして負担金の納付をさせるということを着実に行うことによって保険契約者の保護を図ってまいりたい、こう考えているところでございます。
  126. 北橋健治

    ○北橋委員 時間が参りましたので終わりますけれども、やはり銀行預金と違いまして、生保は人生設計、長い中での商品でございますから、そう簡単に解約だとかそういうわけにはまいりません。そういった意味では、日産生命の破綻というものが国民に与えた衝撃ははかり知れないわけでございまして、生保の契約者を保護するという見 地から今後とも努力をお願いいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  127. 村上誠一郎

    村上委員長 午後一時に委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時三十八分休憩      ————◇—————    午後一時開議
  128. 村上誠一郎

    村上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。藤田幸久君。
  129. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 藤田幸久でございます。  まず、今回の金融システム改革法案について、概括的なお話から質問させていただきたいと思います。  今回、政府が考える金融システムの改革法案によりまして最終的に政府はどんな形の金融システムというものを考えておられるのか。つまり、この金融システム法案によってどこまでそういった政府が描く金融システムの形というものが達成されるのか。とりわけ、本法律案が仮に成立をいたしましたとしますと、その次の段階でどのような改革をいつまでに行うのか。そういう見通しについて、まず大臣の方からお答えいただければ幸いです。     〔委員長退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  130. 松永光

    ○松永国務大臣 お答え申し上げます。  今回の金融システム改革の基本的な考え方は、国民が働いて蓄えたお金、そのお金を有利に運用できる、そういう選択肢を広げることによって国民の利益を図りたいというのが一つ。一方、事業者等は事業資金が必要なんでありまして、事業者にとっては我が国の金融市場から有利に必要な資金を入手することができる。特にベンチャー企業その他が想定されるわけでありますが、そういったことを通じて一方においては国民の有利な資金運用の機会を広げる、一方においては事業家にとっては事業資金を有利に必要な額を入手できる、こういう仕組みをつくることによって国民の利益を図り、我が国の経済の発展を図る、そういう考え方で今回の法案というものは制定していただくべく提案したものであるというふうに私は考えます。
  131. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 さらに、理想的にはどういったところを目標にし、そして、もしこれが成立した後、どのような改革をいつまでに行っていくのかという後段についてもお答えをいただきたいと思います。
  132. 松永光

    ○松永国務大臣 まず第一は、先ほど申したように、国民にとっては、持っていらっしゃる資産運用の手段を拡充、充実する。具体的には、新しい投資信託商品を入手できる、それから銀行等による投資信託窓口販売、それを通じて投資信託販売が促進される、一方においては、消費者はそれを買うことによって自分の持っている財産の有利な運用を図る、こういつたことがまず一つであります。二番目は、保険契約者保護機構というのを設立をして、そして保険契約者の万が一の場合の保護を図っていく。三番目には、投資者保護基金というのをつくることによって投資者の万が一の場合の保護を図る。こういった仕組みをつくり上げていこう、こういうことであるというふうに思っております。
  133. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 国民あるいは事業主あるいは投資者それぞれについてのこの金融システム改革法案が目標としております。その結果について、見通しについてお答えいただきましたが、いずれにしましても、そういったことが実現されるためには金融機関の情報開示というものが前提になっておると思います。今までも、ことしの大蔵委員会でいろいろ出ておりますけれども、いろいろな情報開示が不十分であったということがやはり根底にあると思います。  本法律案で本当に必要な望ましい情報開示がなされるのかどうかについて、大臣から同じように答弁をいただきたいと思います。
  134. 山口公生

    山口政府委員 個別金融機関不良債権ディスクロージャーが大変重要だということは御指摘のとおりでございまして、先般、全銀協において、グローバルスタンダードというか、正確にはデファクトスタンダードであります。アメリカのSEC基準に合わせた拡充が決定されておりまして、リスク管理債権に関する情報として本年三月より開示される予定であるというふうに聞いております。  また、ディスクロージャー制度そのものを抜本的に見直す必要があるという考え方から、この御審議賜っております金融システム改革法案におきまして義務づけをしておるわけでございます。しかも、来年三月より、SEC基準並みの不良債権額の開示を連結ベースで行うということにいたしまして、開示の内容の正確性や預金者等への確実な開示を担保していきたいというふうに考えておるわけでございます。  御指摘外国との比較でいいますと、制度面でも、米国並みに透明性の高い金融機関の財務状況ディスクロージャーの拡充が図られていくものと期待しております。
  135. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 情報開示ともう一つ関係いたしますのは、北拓銀行あるいは山一証券の破綻などによりまして明らかになっておりますけれども、いわゆる大蔵省の護送船団方式といいますか、あるいは裁量行政がもたらすいろいろな問題が出ております。今後、金融当局はどのような形で金融業界とのかかわりを持っていくおつもりなのか、この基本的な姿勢について、大臣の方からお答えいただきたいと思います。
  136. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  まず第一には、六月中に金融監督庁が設立されまずというと、金融業界の監督あるいは検査は金融監督庁の業務になります。したがって、総理府金融監督庁に移っていくわけでありまして、大蔵省の手からいわゆる業界行政というものはなくなってくるわけであります。  それを前提にして申し上げますと、今まで金融機関に対するかかわり方としては、委員指摘のように、事前指導型の裁量行政と言われる面がたくさんあったことは事実でありますが、これからそれを徹底してなくしていこうというわけで、まず、早期是正措置の導入に伴いまして金融機関はみずからの財務内容をみずから明らかにする。そして、公認会計士等の監査も受けて明らかにする。役所の方は、その金融機関等がみずからつくった書類が適正なものであるかどうか、法令に従っておるものかどうか、それを事後的にチェックするという形の行政に実はもう変わっておるわけなんであります。そういった前提の上に立って金融監督庁は金融機関に対する監督や検査をなされるものというふうに私は理解をしておるところでございます。
  137. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 情報開示それから金融行政、政府金融機関とのかかわりのほかにもう一つやはり重要な点は、今日の金融システム全体が抱えております不良債権問題があるわけですが、今回の金融システム改革法案不良債権問題について根本的な解決がなされるのでしょうか。これについても大臣の方からお答えをいただきたいと思います。
  138. 山口公生

    山口政府委員 先ほど御答弁申し上げましたように、不良債権につきましてもSEC基準並みの開示をやってまいるわけでございますので、その点から市場の方からのチェックが十分に働くというふうに思うわけでございます。各金融機関は、不良債権処理をおくらせるということは、ある意味ではそういうマーケットの評価を得られないということで、最大限のリストラをやりながらそれを進めていくということになろうかと思うわけであります。  またさらに、不良債権の早期処理のために、今回御審議賜っておりますSPC法案によりまして、特定目的会社を活用した資産の流動化というものを促進させていただきたいというふうに考えておりまして、この法案お願いしてございますものによってできるだけ早期に不良債権問題の解決を図ってまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  139. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 先ほどの大臣の答弁の中で、投資者保護基金あるいは保険契約者保護機構ということが出てまいりましたが、大臣、こういったものに対して、将来、公的資金を導入するということはございませんでしょうか。
  140. 松永光

    ○松永国務大臣 委員指摘のように、今御審議を願っておる法律案が成立を見ますというと、投資者保護基金それから保険契約者保護機構というものが設立されることになります。  これは、消費者の保護のためにつくられる基金ないし機構であるわけでありますが、二〇〇一年三月末までに破綻した証券会社及び保険会社処理に関する資金調達については、日銀借り入れ及び政府の債務保証を可能としておるのであります。この措置は、基金及び機構の資金調達の円滑化を目的としたものであり、調達資金については、あくまでも証券会社及び保険会社が納付する負担金により返済されることが基本であると考えております。
  141. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 証券会社等が拠出をする負担金が基本ということでございますが、基本はそうであっても、いろいろな状況の変化あるいは必要に応じて公的資金の導入ということもあり得るということでしょうか。
  142. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど申し上げましたように、二〇〇一年三月末までに破綻した証券会社及び保険会社処理に関する資金調達については、日銀借り入れ及び政府の債務保証を可能としておるのでございます。
  143. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 今まで幾つか、この金融システム改革法案に関する基本的な要件について御質問いたしましたが、そういったことに関連をいたしまして、北海道銀行不良債権処理につきましてこれから御質問してまいりたいと思います。  委員長の御了解をいただきまして、三月と四月に北海道新聞に、北海道銀行不良債権、破綻先債権が、実は分割して償却をしておったということが出ておるわけでございます。つまり、一九九五年に大蔵省が北海道銀行に対して検査を実施したわけですけれども、この処理は、当然、当該会計年度中に行うべきことである債権の償却を、九五から九九年度の五年間に繰り延べるということを認めておったということが明らかになっておるわけでございます。この検査で判明した貸国債権の欠損見込み額が大体合計二千億円と見られておりますけれども、このまま行って原則どおりにその会計年度内で処理をしておった場合には自己資本比率が二%以下に下がるおそれがあった。それを五年に分けて分割償却をしたということが出ておるわけです。これが事実であるということは大変ゆゆしいことだろうと思いますけれども、この関係について御質問をしてまいりたいと思います。  まず、北海道銀行の頭取ですが、藤田頭取、私とは赤の他人でございますけれども、その藤田頭取は大蔵省の元証券局長であった。それから、この北海道銀行の歴代の三代の頭取が全員大蔵省出身であるというふうに報じられておりますが、この藤田頭取の経歴、及び過去三代の頭取が大蔵省OBであるという事実関係について、確認をしていただきたいと思います。
  144. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  藤田頭取は、昭和六十二年に大蔵省を退官なさっておりまして、平成二年に道銀の副頭取、平成四年に現職の頭取に就任されております。それから、二代さかのぼりました方、これも大蔵省の出身だと記憶しております。
  145. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 この報道あるいは内部文書によりますと、一九九五年六月における大蔵省の検査にのっとった不良債権といいますのが、第二分類が二千七百六十億円、それから第三分類が三百六十億円、第四分類が千三百十億円、合計で四千四百三十億円。そのうち、損失見込み額というものを足しますと、結局二千八十億円に上ったと報道されておりますが、これは事実でしょうか。
  146. 原口恒和

    ○原口政府委員 お答えをいたします。  御指摘の数字を挙げての御質問でございますが、個別の金融機関に対する検査の結果につきましては、当委員会でも、ほかの金融機関でもお答えを差し控えさせていただいております。この点については御了解をいただきたいと思います。  ただ、一般論として申し上げますれば、金融機関を検査いたしました場合、業務の健全かっ適正な運営を確保する観点から、資産の内容その他について的確な実態把握に努めているところでございます。
  147. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 報道によりますと、当時のこの検査にかかわった一人が、東京地検に逮捕された大蔵省の宮川宏一容疑者であるというふうに出ておりますが、宮川宏一容疑者もこの検査にかかわっておったのでしょうか。
  148. 原口恒和

    ○原口政府委員 当時、上席金融証券検査官として検査に参加しております。
  149. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 個別の銀行内容については答えないということでございますけれども、私は、前も琉球銀行の件について質問をいたしましたが、そのときには琉球新報あるいは沖縄タイムス等におきまして新聞報道がされた。琉球銀行が非常に危ないということに対して、その風説の流布を否定するという意味で、沖縄総合事務局の財務部長あるいは日銀の支店長が銀行の会長と一緒に共同記者会見をして否定をしているわけです。  そういった論理からしますと、これは、北海道のこれだけの新聞にこれだけ出ているわけですから、当然、個別の銀行内容について答えないというようなことではなくて、むしろ、その風説の流布を否定するというようなことで、これを否定するような会見なりなんなり大蔵省の方でしているべきではないかと思うのですが、大蔵省はそういったことをしたわけでしょうか。
  150. 山口公生

    山口政府委員 先般、藤田先生からのお尋ねでは、琉球銀行の件では、風説の流布で大変な事態だということで、それを静める意味で日銀あるいは大蔵の出先が対応したということであります。  今度の御指摘の件につきましては、過去のことでもありますし、また、現にそういう取りつけが起きているとかそういった事態で政府あるいは日銀が出て対応をしなければいけないような事態ではないわけでございまして、そういう意味では琉球銀行のケースとは違うというふうに思います。
  151. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 先ほど大臣の方から御答弁がございましたけれども国民金融で有利な情報を得て適切な対応をしていくという観点からいたしますと、こういつたいわば異例の処理を認めたということ自体は、これは、個別の銀行ということではなくて、当然やはり政府の方で開示をしなければいけない。ましてこういつた事実が明らかになった以上は、その理由について説明をする説明責任というものがあるのではないですか。今まで、冒頭で大臣がおっしゃったようなこととの整合性でいいますと、当然そういったことについてやはり開示をしなければいけないということになるのではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
  152. 山口公生

    山口政府委員 各銀行がどういう償却、引き当てをするかということにつきましては、まず、当該金融機関がみずからの資産の回収可能性を判断するわけであります。それで、必要な償却、引き当てを行い、その適正性については監査法人が監査をいたします。これは、企業会計原則にのっとってやるわけであります。しかも、いかなる償却、引き当てをやったかということについてはディスクローズがされるということになるわけであります。
  153. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 この新聞にも出ておりますけれども、「札幌市内のある公認会計士が「企業会計原則の上からも、当期中に償却することは当然。やむを得ず、償却の繰り延べをしなければならない場合は、株主などにきちんと説明する必要がある」」と言っているわけですね。  当然これは株主及び国民に対して説明をすべき内容ではないでしょうか。大臣、いかがでしょうか。
  154. 山口公生

    山口政府委員 公認会計士あるいは監査法人が監査をして、企業会計原則にのっとっているということを判断してこういつた処理をするわけであ ります、もし企業会計原則にのっとっていなければそれは問題でありますけれども。  ただ、その説明をどういうふうにするかということは各金融機関が行うものでありまして、私どもは、これからの将来としては、どういう考え方でどういう償却、引き当てをやったのかということをできるだけ金融機関がディスクローズしていくことは望ましいことだというふうに考えておる次第でございます。
  155. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 この内部文書では、私と同姓であります藤田頭取が大蔵省OBであるということを配慮してしかるべきということで、大蔵省の方がこういった異例の処理を認めたというふうになっているわけですが、認めたわけでしょうか。
  156. 山口公生

    山口政府委員 認める、認めないというよりは、公認会計士あるいは監査法人が企業会計原則上妥当であるということでそういう処理がなされたわけであります。それは、頭取がいかなる出身の人であれ、企業会計原則を曲げるというわけにはいかないと思います。
  157. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 この分割償却をするということ自体については、大蔵省はどう考えているのですか。
  158. 山口公生

    山口政府委員 企業会計原則上それなりの理由があれば、それは認められるものだと思います。  私、この個別事案について詳しく存じませんが、一般的に申し上げて、例えば、不良債権化している貸付金があった、それが相手方が例えば三年あるいは五年かけてその再建計画を立てた、そうするとどの部分が不良債権化するかということになりますと、それは、一括というよりは、その年その年に確定していく額を償却していくということはあろうかと思います。いずれにせよ、企業会計原則にのっとった処理をしていくということでございます。それは、余裕があれば、その銀行に体力が非常にある場合には、もう一括して償却する、引き当てするということも可能でございます。
  159. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 これは、分割償却をしなければ自己資本比率が二%以下になるということは金融検査をしているからわかっているのではないですか。それはいかがですか。
  160. 山口公生

    山口政府委員 ただ、申し上げたいことは、どういう償却をするかは企業会計原則にのっとるわけでございますので、仮にそういうことがあれば自己資本比率が下がったであろうという議論は、それは間違っているとは申し上げませんけれども、その償却、引き当ての処理が違反しているということではないと思います。
  161. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 しかしながら、個別の銀行のことについては言及を避けるということでございますけれども、少なくとも、今までの行政からしますと、個別の銀行が非常に危ない状況にある場合には、やはりそれに対する対応というのは大蔵省で考えておるわけでございまして、まさに預金者保護等々の関連からも当然対応していかなければいけないわけでございますが、ということは、このいわゆる分割償却を認めたということは、やはり分割償却を認めなければ預金者保護はできない、そういう配慮もなければ、銀行に対する行政の、今までのやり方ですけれども責任を果たしていないということになるのではないでしょうか。いかがでしょうか。
  162. 山口公生

    山口政府委員 あくまで、自己査定をやり、それが企業会計原則にのっとった処理であるということを前提として自己資本比率がはじかれるわけであります。それをもって透明な行政として早期是正措置が打たれるということでございます。どういう償却をするか、どういう引き当てをするかは、それは、何度も繰り返して申しわけございませんが、企業会計原則にのっとってやるべきもの  でございます。
  163. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 しかしながら、ここに出ているようなことが実際行われるとしますと、これはやはり粉飾決算になるのではないでしょうか。どうでしょうか。
  164. 山口公生

    山口政府委員 粉飾決算は、私の理解では、企業会計原則にのっとらないで行うもの、あるいはそれを意図的にやるものというように思います。そうしますと、このケースはそれには当たらない。監査法人が責任を持ってチェックした上でディスクローズもされているということでございます。
  165. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 先ほど来、監査法人の形で局長は逃げておられますけれども、実際にこういったことが出ているということは、北拓銀行もああいうふうになったわけでございまして、次の北海道銀行がこういう状況であるということになると、北海道の皆さんは、預金者にしましても、あるいは業界の一経営をされておられる方にしましても、これではやはり北海道の金融に対して信頼が持てないということで、いろいろな意味で、この不況も待っておりますから、これは大変な連鎖的な事象が起こりかねない。そういったことに対して、これはその監査法人が責任を持ってやっておればということで、大蔵省の責任はそれで済まされるのでしょうか。
  166. 山口公生

    山口政府委員 大蔵省としては、これから早期是正措置によりまして早目早目の対応をしていただく、また、十分なリストラをやって地元経済に十分に貢献できる銀行になっていただくということを願っているわけでございます。私ども、北拓が残念なことに破綻しましたけれども、その後、北洋銀行がその機能を北海道の部分については受けていただいております。北海道銀行も懸命なリストラをやり、地元に貢献すべく努力をしているというふうに考えておる次第でございます。
  167. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 実際にこの北海道銀行は、昨年の十一月には、本年三月期は十億円ぐらいの黒字になると予想を発表したわけです。ところが、この半年間で今度は赤字ということを見通しとして挙げておるわけです。この半年間でこれだけ変化が起こっているわけです。それから、九六年三月期が初めて赤字決算になったわけですが、当時は、北海道銀行は、赤字決算は一九九六年のみと発表したわけです。ところが実際には、九七年、昨年の三月期も赤字決算百六十七億円、それからことし三月期も五百十億円の赤字決算というふうに、黒字決算から赤字決算に見込みを変えているわけですね、半年間の間に。ということは、三期連続赤字決算の銀行になっているわけでございます。こういう三期連続赤字決算の銀行はあるのですか。
  168. 山口公生

    山口政府委員 三期連続して当期利益赤字の銀行は最近はないというふうに思います。
  169. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 そういう例がない三期連続赤字の銀行が北海道第二の銀行であって、第一の銀行の北拓銀行がああいうことになってしまった。こういう状況の中で、しかも分割償却を行っていた。これはすべて、拓銀に対してもあるいは北海道銀行に関しても、大蔵省の行政のもとでこういうふうに実態がなってしまっているわけですね。それを監査法人の企業会計上の責任だけにして、自分たちの方に責任はないと言い切れるのですか。
  170. 山口公生

    山口政府委員 今先生は三期連続赤字だということをかなり問題視されましたけれども、業務純益がプラスになっているところを見ますと、それを踏まえた上で当期利益を赤字にしているということは、思い切った償却をしているということを意味するわけであります。私は特別にそれを評価を加えているわけではありません、個別銀行のことですから。ただ、全く利益が上がらないという状態ではなくて、利益は数百億上がっている、それが赤字を続けているということは償却をかなりやっている、こういうふうに理解をするのが妥当であろう。ただ、個別銀行の話ですので、私は余り立ち入った評価はいたしたくないのでございますけれども、そういうふうに考えれば、この銀行の一つのポリシーとしてそういったものもあるのではないかというふうに考えます。  いずれにせよ、各銀行がみずからを律し、公認会計士の厳しいチェックあるいは当局の厳しいチェックを経ながら健全化のために思い切ったリストラの努力をする、これが基本だというふうに考えておる次第でございます。
  171. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ここの内部文書にあるようなやりとり、これは実際行われたわけですね。ここまでいろいろな形で新聞に出て報道されている、そしてこれを風説の流布として否定しないということは、これは実際にそういった内部文書があって、実際に大蔵省とこの北海道銀行の間でやりとりがあったということですね。
  172. 山口公生

    山口政府委員 個別の銀行の話でもございますし、いろいろなことがある中での一つの事柄でありますので、その存否あるいは正否についてもコメントは差し控えたいというふうに思います。
  173. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 個別の銀行とおっしゃいまずけれども、北海道の場合には、結局、北海道銀行は一たん北拓銀行との合併を決めたわけですね。ところが、合併は流れたものの、北海道に残るあと二つの銀行、片方の銀行の方は北拓銀行を継承中、一方この三期連続赤字の銀行、こういうことでは北海道の金融は結局これから成り立たないのではないですか。そういうふうなことをもたらした状況に対して、個別の銀行内容については差し控えるということでは、北海道の方々は、先ほど来金融四法について大臣がおっしゃっているような、預金者もあるいは企業経営者もあるいは投資家にとっても、この三者それぞれにとってこれからの金融に対して信頼は持てないということになるのではないですか。
  174. 山口公生

    山口政府委員 お聞きいたしますと、何か北海道の金融が危うくなるような印象を与える危険性もあるのではないかと思いまして、私は発言を控えさせていただいておるわけでございますが、北拓が破綻しまして大変心配いたしました。しかし、北洋銀行が名乗り出ていただきました。今そのできるだけの貸し出しを引き継ぐべく努力をしていただいております。預金保険機構も応援をいたします。一方、北海道銀行も、先ほど来のお話のようにいろいろなリストラをやっております。北海道金融の円滑化に努力しています。また、それだけではありません。信用金庫も北海道では大変頑張っております。それから、政府金融機関も、北拓が破綻した後の混乱を最小限に食いとめるべく努力をいたしております。北海道は、北海道の銀行だけではなくて、もちろん都銀とかそういったものも進出しておりますけれども、力を合わせて今北海道の経済のために努力をいたしておりますので、どうぞ先生も応援していただきたいというふうに思います。
  175. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 応援をするためには、やはり先ほど来申し上げております情報の開示というものが必要であると思いますし、それから、いわゆる償却をする前の不良債権をはっきり実態を示すということ、あるいはその不良債権の全貌が明らかになった段階で適正な償却を行う。その際に、適正な償却をしないで、例えばこの分割償却というような形で便法を使って逃げようとしている、そういった一連の問題、システムあるいはその手法そのものが問題なんじゃないですか。そういったことを正していくということが、私はやはり北海道の経済、金融、産業というものを本当の意味で応援をするということになると思うわけですが、ところが、応援しようにも、一番肝心のところの情報を出さない。しかも、これだけ明らかになった後でも、これが出る前でしたちまだしも、出た後もそういったことに対して開示をしないということは、むしろ非常に不安を増長させることになるのではないですか。それでは応援ではなくて、むしろ足引っ張りではないのですか、どうですか。
  176. 山口公生

    山口政府委員 ことしの四月から早期是正措置が導入されました。各金融機関は厳しい自己査定をやっております。公認会計士も新しい目で厳しくチェックをしております。また、不良債権ディスクロージャーもSEC並みになります。そういったことで、今先生がおっしゃったような方向で行政も進んでおりますし、各金融機関もそういう対応をしております。これから市場の目というものを十分に認識しながら、各金融機関が努力をいたすわけでございます。そうした行政の変化、金融機関の考え方の変化が相まってこれからの金融システムの安定に資するというふうに考えておる次第でございます。
  177. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 結局、五年前ですけれども、もしこのまま九五年に償却を分割せずに行った場合には自己資本比率が二%以下になっていたということが出ておるわけですけれども、先ほど来早期是正措置ということを何回もおっしゃっておりますが、もしその早期是正措置というものが制度化されておるならば、大蔵省は業務改善命令を出していたのではないですか、どうですか。
  178. 山口公生

    山口政府委員 余り仮定の話を個別銀行についてやりたくはないわけでございますけれども、現時点で、一般論として、早期是正措置のあの区分に当たる銀行が出ますと、それは明示された行政措置がとられるということでございます。
  179. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ということは、実際にこれはかなり明らかなことだろうと思いますけれども、これだけの、合計二千八十億円に上る損失見込み額を分割償却をした。本来ならば、自己資本比率が二%以下に下がってしまうということで、早期是正措置によって業務改善命令、あるいは早期是正措置が行われていないまでも、当然金融検査にのっとって業務改善命令を出しておるべきところを、実際には分割償却をさせることによって粉飾決算のような形にして救済をした、そういうことが言えるのではないですか。
  180. 山口公生

    山口政府委員 先ほどの御答弁と同じになるわけでございますけれども、償却をどうするかということは企業会計原則にのっとって行われるわけでございますので、それを直ちに、分割があったから粉飾だ、粉飾はそういった措置を逃れるためだというふうに決めつけることはできないというふうに思います。  これからの行政も、あくまで償却、引き当ては企業会計原則にのっとった処理をしているということを前提にしておりまして、そこは厳格にやっていくつもりでございますけれども、その前提としてはそういった考え方でやらせていただきたいと思っております。
  181. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 そうしますと、今の北海道の銀行状況を見ますと、先ほど来申し上げておりますが、北拓銀行を継ぐ銀行ときょう取り上げております北海道銀行と二つあるわけですけれども、どうも今の業務内容からいたしますと、やはり健全な銀行をつくるような金融界の再編のようなものが当然必要ではないか。  これは、私はそういったことをスキャンダラスに取り上げているわけではなく、この金融改革四法案、まさに冒頭に大臣がおっしゃられましたように、預金者、企業家あるいは投資家、それから、そうでなくても、今まで北拓銀行状況によって随分健全な企業も資金の調達ができない、結果的にかなり有望な企業であってもなかなか金融機関からお金が借りられないというふうな状況も私もいろいろ聞いておりますけれども、むしろそういった投資家、あるいは経営者に必要な資金を与えるという状況から考えましても、健全な金融の再編というものが必要ではないか。まして、これだけ情報が伝わった後のことでございますから、そういった対応が必要ではないかと思うわけですが、その点について、大臣、いかがでしょうか。
  182. 山口公生

    山口政府委員 北海道の金融についていろいろ御心配をいただいていることはありがたいことだと思います。ただ、いたずらに北海道の金融が危ないというイメージを与えてはいけないということで私は控えた発言をしておりますけれども、今御指摘になったような銀行も大変努力をし、また健全化を図っておりますので、先生がおっしゃられたように、何か行政の方で再編をしていくというようなことを考えることはしておりません。あくまでそうした各金融機関の経営判断というものを最大限尊重し、早期是正措置と絡みながらそういった健全化への努力をしていくということでございます。当局の方で、余りにも主導的にそれをやるということが果たしていいのかどうかという問題があろうかというふうに思います。
  183. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 別の聞き方をいたしますが、北 海道銀行にこれまで政府の方で公的資金による資本注入を検討したことはありますか。
  184. 山口公生

    山口政府委員 申請もありませんのでございません。
  185. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 申請があった場合に、この内容のような銀行に投入をすることはあり得ますか。     〔浜田(靖)委員長代理退席、井奥委員長代理着席〕
  186. 松永光

    ○松永国務大臣 今局長が答弁いたしましたように、公的資金による資本注入というのは、銀行の申請に基づいて審査の上、決定をするわけであります。  ところで、審査の基準というものが審査委員会で決められておるわけでありまして、それによりますというと、合併等の受け皿銀行の場合と一般金融機関の場合と二種類あるわけであります。この場合には一般金融機関の場合に該当するのだろうと思いますけれども、その場合にはどういうふうに定められておるかというと、経営状況が著しく悪化していないこととされており、三年連続無配の銀行は資本注入はできないという審査基準が定められておるところであります。
  187. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ということは、仮に申請があったにしても注入はできないということでしょうか。
  188. 山口公生

    山口政府委員 あくまで審査委員会が審査基準に基づいて御判断をされます。
  189. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 きょう私、たまたま一つの銀行についてこれだけの資料がございますのでお聞きしておりますけれども、今までの答弁と、冒頭の金融システム改革法案に関する優等生的な答弁というものが、答えが非常に違っておるわけですね。  不良債権については、この前の琉球銀行の場合には、いわばリスケ債権というような形で実際の不良債権があらわれないようなシステムが実は存在した。きょうの北海道銀行の場合には、明らかになってもそれを償却する方法を便法で逃げている。こういう不良債権に対する対応が行われている限りは、日本金融システムに対する信頼というものはやはり世界から信用されないのではないか。  たまたまおとついのワシントン・ポストに、私がこの前琉球銀行について取り上げたことが一面で出ておりますけれども、結局、今回の金融システム法案というのはグローバルスタンダードにできるだけ整合性を持たせていこうということが趣旨でございます。それに対して、私はたまたま二つの銀行の例を取り上げておりますけれども、それに対する対応を聞いておりますと、まるで逆行しているようなやり方を実際にはとっておられるという思いを禁じ得ないわけです。  その点について、大臣、本当にフリーフェアグローバル金融というものをされようとされておられるのか、その基本についてもう一度確認をさせていただきたいと思います。大臣の方からお答えいただきたいと思います。
  190. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど来局長も答弁しておるところでありますが、個別の金融機関の経営状態その他について、銀行法に基づいて、現在のところ大蔵省が検査をすることになっておりますから、その規定に基づく検査をし、検査の結果、指摘すべき点は指摘をして是正をさせるということはあるとしても、一般的にそう深く介入するということは、場合によっては、今までよく非難されておった行き過ぎた行政指導であるとかあるいは護送船団方式であるとか、そういうふうに非難を受けるわけであります。  したがって、局長が答弁いたしましたように、不良債権をどういう手順で償却していくかというのはまさに個々の金融機関のみずからの判断でなされるものであり、それが適切であるかどうかというのは企業会計原則に基づいて監査法人がきちっと監査をする、そうした結果はディスクローズされる、こういうことで透明性の高い金融行政、こういつたことをやっておるわけでありますので、そういう経営をされた結果、検査の場合には、みずからのその措置というものが適正であるかどうか、あるいは法令に合っているかどうか、そういったことの検査はするけれども、そうでない一々のことについてまで介入するということは慎んでいくというのが新しい行政のあり方だろう、こう思っております。
  191. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 先ほどから、結局、一番重要な情報開示のことについて、あるいは裁量行政のことについて肝心な答弁がないわけであります。私は、新聞にも出ておりますけれども、この内部文書そのもの、これをぜひとも大蔵委員会の方に提出をしていただくように、委員長の方で御検討お願いしたいと思います。
  192. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 理事会で諮らせていただきます。
  193. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 きょう北海道銀行の事例を通して聞いてまいりましたけれども、監査法人とか公認会計士という形で逃げるわけですけれども、最も基本的な問題は、結局、日本金融市場をある意味でゆがめてしまったのは、企業会計の簿価とそれから市場経済の時価、それから財政会計の現金という、いわば三つのメーターを便宜的に併用してしまったということが問題ではないかと思います。  つまり、時価をつくり出す市場の競争が縦に小まめに細分化されて、横軸にあるような完全な時価による競争が阻まれて時価そのものがゆがんでしまっているということが現在のシステムの問題だろうと思うのです。結局、簿価と時価の物差しを裁量で恣意的に使って一元的に制御できない。したがって、簿価と時価の差を含み資産とか含み損とかして温存してしまうわけであります。  それからもう一つは、不良債権の問題ではっきりしておりますけれども日本においては、赤字を計上しない現金会計といいますか、つまり支払いを後年度負担にしてしまう。それから、利益時価を先取りして損失簿価の繰り延べをするというような恣意的な手段をとってしまう。こういったシステムを容認してきた。ですから、名目的な富とは逆に、負債、コストは隠匿され、消費や不正支出によって分配がゆがめられる、経済の活力を奪う大きな原因となっているわけであります。ですから、日本は個人金融資産も随分あるし、それから最大の債権国であるにもかかわらずこれだけ財政赤字をもたらしている。  もう一度繰り返しますけれども、名目的な富とは逆に、負債とかコストというものが隠されて消費や不正支出によって分配がゆがめられる、結局こういったシステムになっていること自体が先ほど来の答弁に非常にはっきり出ていると思うのですね。それを変えていくことが今回の金融システム法案の一番の重要な点だろうと思うのですが、その点も、私は個別の例を出したのは、非常に具体的に様子がよくわかるのでこれを出しているわけです。個別の銀行たたきではなくて、こういう具体的な例がわかった方がこのシステムのゆがみということが非常にはっきりわかるので、こういった例を出して質問しているわけです。  大臣、改めてお伺いしますが、結局、今のような答弁をされているようでは、根本的なシステムのゆがみというものが是正されずに、せっかく金融システム改革法案を出しても根本のところが変わらないという不安を私は非常に抱いてしまうのですが、いかがでしょうか。
  194. 山口公生

    山口政府委員 私ども説明の申し上げたい趣旨は、これからの行政も、企業会計の原則を尊重する、あるいはマーケットの評価を尊重するというような考え方で貫いておるというふうに思うわけであります。企業会計原則にのっとって監査法人が監査をやると、それがまた時代時代によっては監査のやり方も変わってくるでしょう。それはそれとしてそういった発展を認めないつもりはありませんし、また、そういうものを逆に尊重していきたいということが基本であります。  今回の金融システム改革の基本は、私どもは、こうあるべし、あああるべし、先ほど先生、例えば北海道で今すぐ金融の再編を役所がやったらどうかという御提案がありました。これは一つの見識だと思いますが、私どもの基本的な考え方は、 意図的にそれをどうこうするというよりは、もう少しマーケットに任せ、そういった企業会計の原則という万人が認めるものに任せていくという考え方でございますので、私どもがるる申し上げてちょっとおわかりにくかったと思いますが、その点もこの金融システム改革の考え方には沿っているというふうに思うわけでございます。
  195. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 それでは、その会計原則の基本的な理念はどういうことなのか、局長、お答えください。
  196. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  企業会計原則の基本的な理念と申しますのは、一番のあれは投資家が投資判断をする際の材料の提供ということでございまして、そういう意味から申しますと、非常に透明性の高いものでなければならないというふうに認識をしております。
  197. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 この会計原則で重要なことは、真実性の原則ということを柱にして、明瞭性の原則、つまりディスクロージャーということと継続性の原則ということが重要視されているというふうに私は理解をしております。これは、やはり政府の方で主権者に対して、つまり国民に対してそういったことを知らしめるということが基本的な姿勢だろうと思うのです。  そうしますと、先ほど来、個別の銀行のことなのでと言っていますが、これは、例えば北海道という地域を考えてみた場合に、北海道の道民に対して知らしめるということがこの会計原則からいっても当然のことだろうと思うわけですが、結局まともな答弁をされない。これでは本当の意味での真実性あるいは明瞭性というものは生まれないのではないか。  企業会計基準というのは、これはもちろん釈迦に説法ですが、複式簿記の流れをくむ会計原則でございますから、そういった意味で本当に市場を大切にして、それから会計原則を大切にするということをおっしゃるならば、やはり当然、実際にこういった分割償却をしたというようなことに対してもしかるべき説明がなければ、私は結局、本当の意味での現在のシステムのゆがみを正していくということはできないのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  198. 山口公生

    山口政府委員 仮定の話としまして、今後、こういった処理金融機関がやった場合、あるいは監査法人がそれを妥当だと言った場合には、そういったことについて説明が求められれば説明をするということが市場に対する評価を得ることだろうというふうに思うわけであります。
  199. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 さらに申し上げるならば、この会計原則の基本的な流れの、あるいは基本的な哲学の基盤には、やはり国民の生命、自由及び幸せの追求、こういつたことを保障するために政府というものがあるというのが近代国家の理念だろうと思いますけれども、そういった観点からいたしましても基本的な面でまともな答えをまだいただいていない。  大臣、これはせっかく今重要な金融システムの改革の時期に来ておりますので、その点を国民のためにしっかりと開示をしていく。それから国民の生命、自由及び幸せの追求、これは当然、財産といいますか富ということも含まれるわけですが、本当にそういったことを念頭に置いた法案になっておるのか、あるいはそういう考えがあるのか、これは大臣御自身から御自身の言葉でお答えいただきたいと思います。
  200. 松永光

    ○松永国務大臣 今の北海道銀行の話ではなくして、今提案申し上げておる金融改革関連法案のことに対する質問だと思うので、それをお答えすればよろしゅうございますか。  それは午前中もお答え申し上げたわけでありますが、国民金融資産、これを有利に運用できるという選択肢を広げていく、消費者の立場からすれば。一方、事業を行う人の立場からすれば必要な資金を円滑に手に入れることができる。そういうことにするために金融市場の自由な活動がなされるようなそういう仕組みをつくっていこうというのが、この審議をお願いしておる法案の根本趣旨だというふうに思っております。  したがいまして、この関連法案が成立いたしますというと、一般国民の側からいえば自分の持っておる金融資産を有利に運用できるという機会がたくさん生まれてくる、企業活動をしている人の立場からすれば必要な資金の供給が円滑に行われるようになる、それを通じて我が国経済が発展していくようになる、それがこの御審議をお願いしておる法案の趣旨だというふうに思っておるわけでありまして、その意味で、ひとつ速やかな御審議の上、成立を図らせていただきますようにお願い申し上げる次第でございます。
  201. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ということは、繰り返しになりますけれども金融機関の財務内容等に関する情報等に関しましても、今までは金融機関はある意味金融当局にだけ情報を示しておればよかったわけですが、これからはやはり預金者株主等に対しても十分に情報を提供して、そして預金者の選択肢が広がるように、有利になるような情報開示というものをしていく必要があると思いますが、いかがでしょうか、大臣。
  202. 松永光

    ○松永国務大臣 ほとんどの金融機関は株式会社であろうと思いますから、まず第一に、株主に対しては会社内容を正確に報告をして、そして株主のチェックを受ける、最終的には株主総会で承認を得るという仕組みになっておるのだと思いますが、一般社会に対しましても、先ほども話が出ておりましたように、企業会計基準に基づいた事業内容等についての計算書をつくり、しかもそれについては監査法人の監査を受けた上でディスクローズをするというふうなことになるわけでありますから、その意味では投資家に対するディスクローズもなされる、こういうふうに私は思います。
  203. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 そうしますと、例えばこういう報道がなされたということは、預金者株主にとりましても非常に不安をもたらしてしまう。ということは、そういったものに対してむしろそれを否定する、あるいはそういった見方、風説の流布ではありませんけれども、そういったものを変える適正な情報を発信していくということがむしろ整合性を持つのじゃないかと思いますが、その点いかがでしょうか。
  204. 山口公生

    山口政府委員 銀行の方でそれを必要とすればなさると思いますけれども、琉球銀行のときのような事態とは全く違うというふうに思います。それは、この場合は銀行の御判断だと思います。
  205. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 そのことと、例えば今回の場合ですと、琉球銀行の場合にはほかに沖縄銀行等がございますけれども、北海道の場合には拓殖銀行が御承知のような状態になっておるわけですから、本当に北海道の人々にとって、預金者であれ投資家であれ株主であれ、非常な不安な状態にあるわけです。そういった中でこういう状況でありますと、例えば健全な中小企業においても結局また貸し渋りに遭ってしまうのではないかというような、むしろ不安を増長させることになりかねない。そういう状況に対してはどうお考えでしょうか。
  206. 山口公生

    山口政府委員 現在とりたててそうしたことがこの記事に関して起きているというふうには聞いておりませんが、一般的に、北海道で北拓が破綻したことによって企業金融の方が不安が生じたということで、いろいろ政府系の金融機関等が本当に真剣になって対応をしてくれました。他の金融機関も本当に努力をしていただいております。そういったことで問題が解決されつつあるというふうに私は考えておる次第でございます。
  207. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 気がついてみましたら時間が余りありませんので、ちょっと過剰接待問題について最後に幾つか質問をしたいと思います。  四月二十七日に公表された報告書においても、それから三十日に大蔵委員会理事会に提出された資料においても、だれが、どの銀行から、何のために、どのくらいの金額に相当する接待を受けたのかという具体的な内容が明らかにされておりません。こういった具体的な内容について詳細な報告を公表する必要があると思いますが、それについていかがでしょうか。
  208. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 このたびの調査は、個々の職員につきまして、民間金融機関等との節度を超えた関係によって公務員としての信頼が損なわれていないかどうかということを調査いたしまして、問題のある者に対して厳正な処分を行うことを目的として行いました。  調査は過去五年間にさかのぼって行われましたけれども、資料や記憶等の制約から、過去にさかのぼるにつれまして一件一件の事実関係を正確に調べるということはなかなか困難でございます。そこで、調査の主眼は、各人の調査期間中の行為全体を総合的に勘案して行き過ぎがあったかどうかということを判断することに置かれたわけでございます。  金融機関側がどのような意図を持って会食等を行ったのかということにつきましては、私どもとしては把握しておりません。それから、金額についてもお尋ねがございましたけれども、相手方が負担しておるのでございますので、私どもとしては把握できませんでした。また、金融機関名を具体的にというお話がございましたけれども、相手方があることでございますので、公表は差し控えさせていただきたいというふうに考えます。  そういうことで、今回の調査結果につきましては、全体の姿がわかるような形で既に発表させていただきました。また、資料も当委員会に提出させていただいたところでございまして、詳細な報告書を公表するという必要があるとは考えておりません。
  209. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 全体的な姿はわかっていないと思います。全体的な姿がわかるためには、具体的な内容がわからなければ意味がない。  それから、今の御答弁の中で、相手方があることでその相手方の金融機関側の意図がわからないというならば、相手方の、つまり金融機関側の過剰接待に対する報告を受ける。そうでなければ全体がわからないというならば、これは金融機関の側から報告書を提出させなければ全体がわからないのじゃないですか。どうですか。金融機関の方から具体的な調査をするなり、つまり、これは出す側ともらう側があるわけですから、出す側からの意図とか目的とかを聞かなければ調査が全体的に把握できたとは言えないのじゃないですか。
  210. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 金融機関との関係でございますけれども、三月の下旬以降、省内の調査を補完するという観点から、金融服務監査官室の者が金融機関に出向きまして担当者に面談いたしました。また、必要によっては補足的に追加の問い合わせ、照会なども行うなど、事実関係についての問い合わせを行ったわけでございます。これは強制的なものではなく、任意のものとして先方の協力を得て行うものでございますので、資料の有無等によりまして回答内容に若干の違いはありましたけれども、私どもとしては御協力いただけたというふうに思っております。  そういう意味で、金融機関側から報告書を提出させる必要があるというふうには考えておりません。
  211. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 先ほど来のお話で、総合的に判断をして妥当な報告ができたと。だれがどういう観点から総合的に判断をしているのでしょうか。
  212. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 私どもの事実の把握のための調査をする一方で、その事実に基づく判断の基準をどのようなものにすべきかということにつきまして、松永大臣にいろいろな御指示をいただきました。その御指示に基づき我々なりに整理をし、何度も大臣と相談をさせていただきましたけれども、最終的には大臣に御判断をいただいたということでございます。
  213. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 その判断の基準となったメルクマールといいますか、どういつだ要件が判断の基準であったのか、それに基づいて指示をされたのか、大臣の方からその判断の基準を御紹介いただきたいと思います。
  214. 松永光

    ○松永国務大臣 まず一つの基準は、平成八年十二月に倫理規程というものが定められて、全職員にそれは通知されております。したがって、平成八年十二月以降のものについては重く見る。もう一つは、平成七年の春に、倫理の保持についてという、これは大蔵省だけの内部の定めがなされまして、それも全職員に通知をされました。したがって、二番目には、平成七年の春から平成八年の十二月までの分、これが平成八年十二月以降の分に次いで状は重く見るのが妥当ではないか。三番目がそれ以前の分、すなわち平成七年春以前の分、これが三番目になるという、いつ受けた接待かという時期の点からの判断基準が一つ。  もう一つの判断基準は、同一者との間に反復、継続して受けた接待であるかどうかという点、これも二番目の判断基準になる。  三番目は、その職員の地位ですね。やはり地位の高い人は重く見なければならぬし、地位の低い人はそれに比べればその責任の重さは軽い。  こういった三つないし四つの判断基準を設けて、それに基づいて一覧表もつくって、そして総合的に判断を加えたわけであります。
  215. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 大臣は、弁護士で検事もされた方ですからおわかりと思いますが、こういった事柄については目的といいますか動機、モチベーションが重要だろうと思うのです。つまり、出す側が、地位にかかわらずこの人は実際に行政を仕切っていると思ったならば接待をするわけでありますし、あるいはこの人はやがて出世するというふうに見られているというのであるならばこの人を何回も接待しようと思うわけでございます。今お聞きした判断基準というのはあくまでも時系列の大蔵省側の判断でございまして、出す側にしますと、その大蔵省の内部の倫理規程云々とは別に、この人を接待することによってどういう利益還元が自分たちの金融機関の方に返ってくるかで判断をするわけですから、その接待をした側からきっちり情報を収集をして、あるいは審査をして、そしてどういう目的、意図でどの人にどういう接待をしたのかということを聞かなければ全然意味がない、  つまり、もらう側の倫理規程云々の内部的な判断基準よりも、実際にどういう目的でどういう意図でだれにどういうふうな接待をしたかということを調べなければ全貌が明らかにならない。これは弁護士、検事をされた大蔵大臣、一番よくおわかりと思いますので、したがいまして、これは金融機関側の方からより詳細な調査をする、あるいはインタビューをするということが重要なんではないでしょうか。それでなければ本当の意味での整合性のある調査と言えないのではないでしょうか。
  216. 松永光

    ○松永国務大臣 今委員の御指摘になった事柄は、強制捜査権を持った専門的な捜査当局ならそれがやれるのです。あるいは、それをやる責任がある役所は捜査機関なんです。大蔵省の内部調査というのは、職員に対しては、任命権者でありますから、強制とまでは言わなくともある程度、任命権者あるいはそれにかわる者という立場でいろいろな話を聞くことができます。しかし、第三者に対しては、あくまでも任意に我々の調査についての協力をお願いするという立場なんですよ。しかも、その場合には、先ほど官房長も言いましたけれども、外部に公表するということじゃなくして、我々の方で内部調査をした結果に基づいて、それの正しさを確認する意味での協力をいただいた、そういうことでありますので、強制捜査権を持った捜査当局が事情聴取をするとか、そういった立場での調査はできないのです。  したがいまして、委員のおっしゃったような事柄までは、これは任意調査という立場である以上、我々の調査の及ぶ範囲ではないわけなんです。しかも、いろいろな資料はほとんどがもうその金融機関等にはないのです。当局が押収して持っていっておるわけなんです。したがって、これ以上の内部にわたったような、接待の趣旨、そういった事柄等については専門機関の調査にまっしかないというのが実情なんです。その点は御理解願いたいと思います。  そしてまた、延々とやるわけにいきませんから、春には行うというふうに約束した関係上、しかも対象人員は当初の五百五十名が千名近くに なったわけでありますので、大変な苦労でもあったわけでありますが、調査の目的というのが、大蔵省の職員で公務員倫理に反する行いをした者がいるかどうか、どの程度であったかということを把握をして、それに基づく厳正な処分をするという調査目的であったわけでありますから、その調査目的から処分をするのに必要な資料はまずまず把握できた、こう思って最終的には処分を決めたということであります。
  217. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 時間が参りましたので質問を終わらせていただきますが、一言、形式論ですと今大臣おっしゃったことだろうと思いますけれども、本当に大蔵省がこれから改革を進めるならば、やはり実際に金融機関側が、例えば大蔵省のこういうシステムあるいはこういう人事制度のあり方があるので実は我々も衝動に駆られてこういう接待をしたのだ、そういう具体的なことについて意見を聞かれることが、これから人事体系とかあるいは大蔵省の職員の方々の活動に対しても一番私は参考になると思うのです。つまり、検事の方にお答えをする場合には処分に対する答えですから、むしろ、実際に金融機関方々がどういうモチベーションで接待をされたかということについて意見を聞かれるということが今後の教訓に生かされるのではないかということを申し上げまして、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  218. 松永光

    ○松永国務大臣 委員の御意見はよく承りました。     —————————————
  219. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁山口泰君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  220. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  221. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 質疑を続行いたします。河合正智君。
  222. 河合正智

    ○河合委員 新党平和の河合正智でございます。  本日は、日本銀行から山口副総裁にお越しいただいております。  冒頭、鴨志田理事の御冥福を心からお祈り申し上げて、質問に入らせていただきたいと存じます。  私は、実は議題となっておりますこの法案につきまして、衆議院の本会議で御質問いたしました。その折、改正日銀法によりまして日銀総裁の御出席もいただいてぜひとも答弁をいただきたいと申し入れいたしましたけれども、国会の条件がまだ整備されていないという条件の中でそれがかないませんでした。  したがいまして、そのときは大蔵大臣は総理大臣とともに御答弁いただいておりますので、本日は日本銀行の立場からこの問題について主としてお答えをいただきたいと存じます。  まず、この法案金融ビッグバンは、御案内のように、ただいま各同僚委員から御質問も多数ございましたように、不良債権の問題と同時に進行しなければいけない、しかも日本がかつて経験したことのない不況、いわゆる複合不況の中でこれを行わなければいけないという困難さに我々は直面しているわけでございます。  まず、外国為替法の改正がトップランナーとしてなされました。この外為法の改正、これは恐らく、間接金融に依存してきました日本金融システム、これが金融自由化以来、プラザ合意を経てバブルの発生と崩壊、その過程から生じました不良債権、こういう問題を抱えまして、間接金融中心としました日本金融システムというのが閉塞状況に陥っている中で、直接金融グローバルスタンダードに合わせて自由化していかなければいけないというトップランナーとして外為法が改正されました。  したがいまして、今後、この四月から起きていることでございますけれども、この改正外為法によりまして恐らく国内から資本の流出現象が起きていくであろう。そのときに、国内金融市場としましてはタイトになりまして、これが金利の上昇圧力になっていくのではないかと懸念されます。  しかしこれは、不良債権、そしてゼネコンの債務保証といった問題を抱えている日本にとりまして、金利の上昇現象というのは現況では金融システムの不安定化をもたらすのではないかと思いますけれども、その辺の金利上昇圧力についてどのように日本銀行としては認識されておいでなのか、また、大蔵省としては金融システム不安に対してどのような対策をお考えなのか、まず最初に  お聞きしたいと存じます。      〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  223. 山口泰

    山口参考人 ただいま御指摘いただきました、外為法の改正を契機にいたしまして日本から大きな資本の流出が起きるのではないかという御懸念はごもっともなところだと思って、私どももマーケットの動きを注意して見ているところでございます。  実際にどういうことが起きているかということを、例えば国際収支統計などで当たってみますと、先生御案内のとおりと存じますけれども、例えば対外中長期債の投資というようなものがございまして、これが一番海外日本の金利に敏感に動く投資でございますけれども、ここ半年間でこれは海外にどっと流出するというようなこととはむしろ逆に、日本に向かって少しお金が戻ってきているというようなことが起きております。言いかえますと、外為法の改正を契機といたしまして、日本から海外に向けて非常に大きなお金が流出していくというようなことは起きておりません。  いろいろな理由があると思うのでございますけれども、その一つの理由は、やはり外貨に対して投資をするということに伴うリスクでございまして、その一番大きなものは、やはり為替が変動するということによるリスク、為替リスクではないかと思います。したがいまして、内外の金利差が大きいということだけで大きな資本の流出が起きるというものでは必ずしもないというふうに考えております。  実際、今御質問いただきました、金利に対してどういう影響が出ているかというところを見てみますと、例えば我が国の国債の利回り、これはいわゆる指標銘柄というもので見ておりますけれども、三月の末ぐらいには大体一・六%弱ぐらいの水準でございましたけれども、外為法の改正が行われましたこの四月以降、じりじりとむしろ低下しております。ごく直近のところでは一・四%台というふうになってきておりまして、金利の上昇圧力というのも幸い国内では生じておりません。
  224. 山口公生

    山口政府委員 金融システム不安についてどういう対応をするのかというお尋ねでございましたが、ことしの年初早々から金融二法を御審議賜りまして、その際、しばしば申し上げたことでございますけれども、これだけ発達した我が国においても金融システム不安というのが起こるのだということを十分自覚しまして、そうした預金者あるいはマーケットあるいは企業経営者等にすくみ現象が起きないようにできるだけの備えをさせていただくということをお願いしたわけでございます。  御理解を得まして、金融二法、すなわち預金者の保護に万全を期すということとそれから自己資本比率等の対策をやらせていただくということで、何とか今はそういった不安もなくなっているわけでございますけれども、絶えず私どもとしてはそういったものに対する備えというのを十分にやっていくということを心してまいりたいと考えております。
  225. 河合正智

    ○河合委員 それでは、本題に移らせていただきたいと存じます。  昨年の十二月一日の衆議院予算委員会におきます宮澤元首相の質問でございます。繰り返しになりますけれども、十一月、三洋証券、北海道拓殖銀行、山一証券、徳陽シティ銀行の破綻が起きておりました。この状況の中での貸し渋りについ て、官澤元総理は、資産不況が根本にある、したがってBIS八%と貸し渋り現象は一体であるという認識を示されておるところでございます。  私はきょう本題として質問申し上げたいのは、宮澤元総理がおっしゃったもう一つの貸し渋り、これは日銀が貸し渋っていたのではないかという論点についてお伺いさせていただきたいと思います。  宮澤元総理の質問でございます。「三洋証券の倒産のときでございますけれども、普通、毎日、金融機関はインターバンクの金をやったりとったりする、コールのようなものでございますけれども、三洋証券の最後の瞬間というのは、実はコールの一部にデフォルトが起こった、債務不履行になった」「これがありましたものですから、その後どこかの金融機関が危ないということになると、コールがとれない、コールを出さない。こういうことはかってなかったことでありまして、いわば患者から突然酸素マスクを取ってしまうようなことでございますから、」とん死する、サドンデスになるという現実があったと指摘されました。  結局、三洋証券の場合は、日銀によるコール市場への流動性の適切な供給が、最後の貸し手となって流動性を供給する日銀によって息の根をとめられた。それをサドンデスという言葉を使って宮澤元総理は表現されておりますけれども、これに対しまして、当時の三塚大蔵大臣は、患者から突然酸素マスクを取ってしまったということについて、宮澤元総理に全く反論されておりません。それのみならず、このように申されております。三塚大蔵大臣の答弁です。日銀総裁ともこの辺のところは十分に相談させていただきました、日本銀行により十分な流動性を市場に提供するということでインターバンク取引の安全を確保するというふうに答弁されております。  山口副総裁は、この四つの大型金融機関の倒産は日銀の貸し渋りによるものだという御認識でございますか、質問させていただきます。
  226. 山口泰

    山口参考人 お答え申し上げます。  まず、昨年十一月の初めに起きました三洋証券の経営破綻についてでございますけれども、これは、申し上げるまでもなく、三洋証券という会社が大幅赤字を継続してまいったことに加えまして、同社の関連ノンバンク向けの債権が不良化いたしましたことから、これ以上経営改善計画を引き続き遂行するということはもはや困難であるという判断に達しまして、そういう判断に基づきましていわゆる会社更生法の適用申請に踏み切った、こういうふうに理解しております。  会社更生法の適用申請というのが裁判所で認められましたので、その後は裁判所の御判断、保全処分というものに従って物事が進行したというふうに思います。そういう保全処分の中におきまして、三洋証券が以前に調達しておりましたごく少額のインターバンク資金の取引におきまして御指摘の債務不履行が生じたということではないかと存じます。  当時、日本銀行金融市場に対しまして流動性の供給を絞った、貸し渋ったというようなことは全く事実ではございませんで、今申し上げましたとおり、三洋証券による少額のインターバンク資金の債務不履行は、やはり会社更生法の適用を申請し、それが認められた結果として生じたことでございます。日本銀行の流動性供給姿勢というものとはこれは関連しておりません。そのように理解しております。
  227. 河合正智

    ○河合委員 これは、問いをもって問いに答えているような答弁ではないかと私は思います。事実をお述べになっただけでございまして、私はその原因をお聞きしているわけでございます。  といいますのは、こういうケースの場合は、かつては日銀のインターバンク市場による供給によってこういう倒産は起こさせてきませんでした。かつて起きておりません。しかし、十一月になってなぜ起きたかということが、日本の政策にとって、今後恐らく検証されていくであろう非常に大きなターニングポイントの問題であろうと私は思います。必ず僕はこの問題は検証されると確信いたしております。  それではお伺いさせていただきますけれども、現に京都大学の名誉教授である宮崎義一先生は、それまでは準備預金制度によって、インターバンク市場の資金需給の調節は日銀によって適切なコール市場への流動性が確保されてきたことによってかつては倒産しませんでした。しかし、ここで三洋証券のような事態が、今副総裁のおっしゃったように、会社更生法による保全処分によってインターバンク市場で債務不履行が起きたのだという事実はそのとおりかもしれませんが、その原因として、宮崎義一先生は、これは政府が財政構造改革法をこの月に通したことによって、日銀が敏感にそれを反応してこういうことになったのではないかと指摘されておりますが、いかがでございますか。
  228. 山口泰

    山口参考人 私も先生の御指摘に触発されまして宮崎先生がお書きになっていることも、その部分だけでございますけれども、読ませていただきました。しかし、率直に申し上げまして、日本銀行のどういう方針あるいは政策を具体的に指摘しておられるのか、ちょっとうまくのみ込めないでおります。  財革法につきましては、これは政府及び国会の御決定になる事柄でございまして、日本銀行がこれによって直接政策なりあるいは資金供給の方針なりを変更するとか、あるいは直接影響をこうむるというようなことは全くございませんでした。当然、財政政策の大きな動きというものは経済全体に対して影響を与える筋道でございますので、日本銀行といたしましては、経済全体の動きを踏まえてベストと思われる政策の選択をしてきている、このように考えております。
  229. 河合正智

    ○河合委員 私も、中央銀行というのはぜひともそういう毅然とした独立性を内外に向かって堅持されていくべきであると思います。それは改正日銀法の立場でもございますけれども、従来はそうではなかったことが指摘されております。これは後の質問に譲らせていただきます。  とりあえず、本件、この時点の場面でいいますと、現に十一月二十八日、日銀の資金供給額は三兆七千億円に上った、その時点で無担保の特別融資を合わせると信用供与残高は七兆円を超えたという事実が起きております。これはどのように御説明されますか。三洋証券等の問題が少額のインターバンクの債務不履行によるものだという山口副総裁の御答弁とは全く矛盾するといいますか、私としては納得できない数字でございます。
  230. 山口泰

    山口参考人 三洋証券のさっき申し上げましたような経緯の後、御案内のとおり、十一月という月には大型の金融破綻が残念ながら続いたわけでございます。結果といたしまして我が国の金融・資本市場は非常に大きな信用不安の波に襲われたわけでございまして、そういう中での日本銀行の政策は、まず何よりも金融・資本市場における極度の信用不安を何としてでも静めていきたいというところに優先的な目標を置いたところでございます。  そのために何をしたかと申しますと、日々の日本銀行のオペレーションにおきまして潤沢な流動性を供給するということを心がけたつもりでございまして、今御指摘の数字、具体的な日銀の信用供与の手段別の数字は、私は今手元にちょっとございませんけれども、当時私どもが懸命に心がけておりましたのは、あらゆる手段を動員して金融市場に潤沢な流動性を供給するということでございました。その中には、以前から続いておりました無担保の融資、いわゆる特融というようなものも含まれておりました。とにかく、資金の需給関係が信用不安によってこれ以上逼迫しないようにということを心がけたつもりでございます。
  231. 河合正智

    ○河合委員 ただいまの副総裁の御答弁で、私は、半分ぐらい非常に納得できる部分がございます。実は、ここで大きな政策転換が図られた形跡を今、日銀の立場でお述べになったのではないかと思います。  といいますのは、それまでは日本金融市場に おきまして、預金者保護という観点からの議論はございましたけれども金融機関全体をシステムとして保全していくという考えではなかったと思います。ただ、たまたま今副総裁は、四つの破綻によりまして金融・資本市場における極度の不安を静めるという判断に立たれたということは、これはまさに預金者保護に優先して金融システムそのものを保全するという立場に立たれたということでございまして、これで私は十二月一日の宮澤元首相の質問と、それから三塚大蔵大臣の答弁というのは非常に合点がいきました。宮澤元総理という方でなければ恐らくこの役回りは演じられなかったくらい大きな舞台回しをこの予算委員会でされたのではないかと私は常々思っておりましたけれども、今の副総裁の御答弁というのは、その日銀としての立場をお述べになった中にそれがあらわれているのではないかと私は受けとめさせていただきました。  さて、そもそも私が本日テーマとしております金融ビッグバン不良債権の同時処理というこの問題につきましては、なぜ日本の国でバブルが発生して、なぜそれが破綻して、なぜ日銀のこういう超低金利政策が続いたかということにつきまして、私は橋本総理に御質問いたしました。  一九八四年六月、円転換規制の撤廃という金融自由化が行われた。当時、財政赤字と貿易赤字という双子の赤字を抱えていたアメリカに対し、日本は五百六十億ドルの貿易黒字を計上、日米貿易摩擦解消という切実な状況にあった日本は、一九八五年九月二十二日、プラザ合意に加わった。中曽根総理大臣、竹下大蔵大臣による時代でございます。  ところが、この合意には、実は為替市場への介入と同時に、政策協調の合意もなされていた。それが内需拡大要求となり、具体的には、宮澤当時大蔵大臣に対するカウンターパートナーであったベーカー財務長官からの円高圧力をてことした減税と公共投資と公定歩合下げの強い要求となった。これに対して、早急になし得るものとして当時の日本の政権が選択した、史上最低の三%そして引き続いて二・五%という公定歩合の下げがバブルに点火し、金は有利な投資先、土地、株を求めてあふれていった。  ここに日本のバブルの発生の原因があるというふうに私はお伺いして、さらに、金融引き締めによってバブル経済を崩壊させた政治責任も含めて、自民党歴代内閣の政治責任について橋本総理に伺ったところでございます。  これに対しまして、私は意外でございましたけれども、総理はこのように答弁されました。「その後振り返ってみて、実体経済への影響について的確な認識が不十分であったという御指摘は受けなければならないと思います。」と、実に率直な答弁をされましたので、かえって私は驚いたくらいでございます。  この総理の認識も含めて、大臣、また日銀の副総裁につきましては、金利の切り下げ圧力を受けざるを得なかった事情について、私がただいま概略申し上げた認識と一致していらっしゃるか、もしくは異なっておいでか、大臣と副総裁からお伺いさせていただきたいと思います。
  232. 松永光

    ○松永国務大臣 当時、委員が今御指摘になりましたように、我が国の貿易黒字、特に対米貿易黒字が大幅に存在しておったということ、それに対してアメリカの方からこの貿易黒字の縮小に向けての要請が出されておったという事実関係、それは私は記憶にあります。  しかし、その後とられた措置等については、我々の先輩のなさった措置でありますから、私がこの立場でいろいろ論評することは差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  233. 山口泰

    山口参考人 お尋ねの趣旨は、いわゆるプラザ合意という八五年九月の国際的な合意の後、日本銀行の政策金利が何回かにわたって引き下げられたわけでございますけれども、その引き下げの中で何らかの圧力があったのかどうかというようなことではないかと存じます。  日本銀行金融政策の運営につきまして、特にこのプラザ合意以後の政策運営につきましては、既に前総裁あるいは前々総裁がそれぞれの表現で何度か御答弁させていただいてまいりましたけれども、政策運営につきましては日本銀行みずからの判断で行ってきたつもりでございます。  どういう判断だったのかということになるわけでございますけれども、当時の状況を振り返ってみますと、いわゆる経済について将来とも成長し、資産価格が上昇していくという右肩上がりの神話というか、そういうような見方が非常に強い中で、さまざまの要因が複雑に影響し合っていわゆるバブルと言われるような現象が生じたと思います。そのとき我が国の物価は大変安定基調を維持しておりまして、物価安定のもとで、国際収支の面では先生指摘のとおり大幅な経常黒字の是正を迫られるとか、あるいはそれ以上の円高は何としてでも避けたいというような大きな政策課題がございました。  当時の日銀の金融政策運営というのも、そういう客観的な環境の中でぎりぎりの政策の選択を行うという形で、金融緩和を八九年の五月まで続けていったわけでございます。結果といたしまして、私どもも、長期にわたる金融緩和がバブル発生の一つの原因であったということは否定できないと思います。ただ、そこに至る政策運営は、日本銀行みずからの判断で行ってまいったつもりでございます。
  234. 河合正智

    ○河合委員 実は、私、ただいま御質問申し上げていることも、それからきょう御質問したいことの一番の本意も、例えば一橋大学の中谷教授は、日銀の金融政策は政治と行政の圧力にゆがめられ、長く財政の犠牲になってきた、その結果バブル経済が発生し、日本はバブル崩壊後の後遺症からいまだに抜け出せずにいるというふうに指摘されておりますが、私は、これは短い表現ではございますけれども、非常に正しい判断なのではないかなと思っております。  しかし、冒頭申し上げましたように、このビッグバンを契機に、日本銀行はまさに中央銀行としての独立性を、先ほど独自の判断とおっしゃいましたけれども、内外ともに独立性を確保していただきたい、その思いからこれからさらに質問を続けさせていただきたいと思います。  一九九五年の夏にジャパン・プレミアムが発生しました。これは、ユーロ市場、ここで国際的なインターバンク市場での資金調達難ということが起きたわけでございます。それに対しまして、日銀はさらに金融緩和策をとっていかれました。それは、大量の円資金を国内金融市場に対して供給して、そして銀行の本支店取引でこの国際的なインターバンク市場での資金調達難を解消させたのだと思うのです。具体的には、三・四半期で十七兆円という金額が投入されたことが明らかになつております。これが後ほど申し上げますように日本の円安を生んでいくわけでございます。  もう一つ、その前にお聞きしておきたいことがございますが、公定歩合をこのとき〇・五%に下げられました。これは一九三〇年代、一九二九年の世界恐慌の時代にも経験しなかった今世紀最低の公定歩合に下げたわけでございます。しかし、金融政策が全く効果があらわれなかった。  本来、金融政策がきかないときには財政政策によってその国の景気対策を図っていくというのは、これは世界恐慌後ケインズが唱えたところでございますけれども、現にその間、一九九六年、翌年の二、三月というのは、九五年の九月に十四二一兆円の景気対策が打たれて八兆円の真水だと言われておりますが、財政政策によってこの第一・四半期というのはGDP一二・七%という数字を出しているわけです。  したがいまして、ケインズの言ったことというのはこの場面だけをとらえていうと正しく作用しているといいますか、金融政策が全くきかないときには財政政策によるべきだというのに、橋本政権は、財革法を昨年十一月に、ある意味で全野党の反対にもかかわらず強行的に通してしまった、ここに政策不況と言われている原因があるわけでございます。  私が申し上げました認識につきまして、山口副総裁の御認識はいかがでございますか。〇・五%に金利を下げても金融政策がきかなかったこと、それからジャパン・プレミアムによる資金調達難に対して大量の円資金を供給して、それは十七兆円に上ったこと、この二点についての認識でございますが、いかがでしょうか。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  235. 山口泰

    山口参考人 九五年九月の公定歩合の引き下げにつきましては、当時私も事務方の一人として若干のお手伝いをいたしましたけれども、当時の日本銀行の判断は、国内の経済が相当弱くなりつつある、その背景といたしましては、まだバブルの後遺症を引きずっているということのほかに、この年の初めから春にかけまして一ドル八十円になんなんとする非常に急激な円高が起こりまして、そのことのデフレ的な影響もあらわれつつあった、こういうふうに考えておりました。  そういう状態を放置いたしますと、やがては物価がさらに下落していき、本物のデフレ的な状況に突っ込むという可能性がないではないというふうに考えまして、そのような危険な動きに対しまして未然に手を打ちたいというふうに考えました。そのことの政策的な意思表明がこの公定歩合を〇・五%に下げるという決断となったというふうに記憶しております。  ただいま御指摘の、そのときジャパン・プレミアムを抑えるために金利を下げ、大量の資金を供給するという判断が働いたのではないかという御指摘につきましては、私どもの判断のよりどころは、主として、ただいま申し上げました、国内経済が弱くなりつつある、それが物価が安定傾向を通り越して下落を始めかねないというそこの心配にございました。  その政策が経済に対してどのような効果、影響を持ったのかという点でございますけれども、先ほど御指摘のとおり、経済活動は九六年の初めごろから上向き始めました。それにつきましては、財政面からのサポートによるところが大きかったと存じまずけれども、金利を思い切って下げました結果、例えば株価が多少とも回復を見せました。また、一ドル八十円まで突っ込んでしまいました円・ドル相場も、いわゆる円高修正ということが定着するような動きになってまいりまして、為替市場、株式市場、両面から景気の回復をサポートするような動きになっていったと思います。そういう金融・資本市場あるいは資産の市場の動きを金利面から非常に強力にてこ入れするという効果をこのときの政策は持ったのではないかというふうに考えております。
  236. 河合正智

    ○河合委員 貴重な分析と御判断をお聞かせいただきましてありがとうございます。  ただ、その結果、国内は株価がやや上昇し、円高にストップがかかったという効果は確かに副総裁のおっしゃったとおりでございますけれども、実はこのことがアジアの金融危機の遠因になっていったのではないか。また、アメリカの株式市場の株高テンポが急上昇したのではないか。それは、ただいま私が申し上げました本支店問のネットベースの資金移動が十七兆円、これは一ドル九十円で換算しますと千九百億ドル、これをグローバルベースに直しますと二百十二兆円、約二兆ドル、これが全世界に向かっての流動性拡大効果が計算されるわけでございます。たまたま、近年、金融派生商品であるデリバティブ取引を介在したヘッジファンドでは二十五倍ものレバレッジ効果があったというふうにも言われております。そのことによりましてアメリカでは九五年から九七年の秋にかけまして年平均三七%という株価上昇テンポに入っていきましたし、アジアではまた流動性が過剰になりました。そして、それは結局アメリカの財務省証券に還流されていってアジアのバブルを引き起こしたのではないかと言われております。  この点につきましては、ただいまは副総裁、国内の状況について御答弁いただきましたけれども、それが国際金融市場、また経済に与えた影響についてどのように認識されているのか、お伺いさせていただきます。
  237. 山口泰

    山口参考人 日本も経済的な大国でございますから、我が国の金利もある程度国際的な影響を持つということは当然のことだと存じます。その上で、ただいま御質問の二点について簡単にコメントを申し上げたいと存じます。  第一点は、日本の低金利がアメリカの株価のバブルをもたらしているのではないか、あるいはその一つの原因ではないかという見方でございまして、これは、そのような見方を私もかねてから随分耳にしているところでございます。  ただ、日本の金利がアメリカの株価に大きな影響を及ぼすためには、例えば日本の金利がアメリカの長期金利を大きく引き下げる影響を持って、それがアメリカの株価を押し上げるとか、あるいは日本からアメリカの株式市場に直接大きな金が流れ込むとか、そういうことが起きる必要があると存じます。私どもがいろいろなデータをチェックする限り、そのようなことは必ずしも観測されておりません。  日本の金利とアメリカの金利が同じ方向に動く場合もございますが、全く別々の動きをしている場合もございまして、アメリカの金利は長いトレンドで見ますと確かにじりじりと下がってきておりますが、これはアメリカの中で財政赤字がほとんど姿を消しつつあるとか、あるいはアメリカの物価も非常に落ちついているとか、そういうアメリカの内部の事情によってかなりの程度説明可能だと存じます。  第二点のアジアに対する影響というのも同様でございまして、日本金融緩和がアジア諸国に非常に大量の資本の流入を促しまして、それでアジアのバブルが発生したというような見方も全くないではないと思います。ただ、冒頭外為法改正の影響いかんというところで申し上げましたように、日本の中からアジア諸国も含めまして外に向けてお金が大量に流れ出すためには、やはりそこにそれほど大きなリスクがないというような理解が必要でございまして、アジア諸国の場合は、御案内のとおり、それぞれの通貨を主としてドルに対して固定するような政策をつい最近までしておりまして、そういうアジア諸国サイドの事情というのがやはり大きいのではないかというふうに考えております。
  238. 河合正智

    ○河合委員 グローバル的な影響というのは私が申し上げたほどにはないという御認識だと思います。  では、国内に論点を絞らせていただきますけれども、冒頭に申し上げましたように、昨年十一月の三洋、北拓、山一、徳陽の経営破綻というのは国内のインターバンク市場でシステミックリスクを発生させたということを契機としまして、日銀が信用創出ですとか金利変動に対するコントロール能力を失いかけているのではないかという批判に対してはどのようにお考えになっておりましょうか。
  239. 山口泰

    山口参考人 これは、率直に申し上げて大変難しい問題だと考えております。  といいますのは、金融市場の中でいろいろな取引が行われるわけでございますけれども、お金を出す側から見まして、お金を借りたいという側に信用上の不安があるというような場合には、その不安の部分を金利に上乗せして要求するというようなことが起きてまいります。先ほど先生のお言葉でジャパン・プレミアムという言葉が出てまいりましたけれども、国内においてそういうプレミアムが発生するということがございますし、それが事実、昨年の十一月末からことしに入りましても、かなり大きな規模で残念ながら出てまいりました。そういう部分というのは、日本銀行の潤沢な流動性供給だけによりましてはなかなか抑え込むことができない部分でございまして、基本的には金融機関の経営上、もはや全く不安がない、信用上の問題がないというところまでたどり着きませんと、完全にそれが払拭されるということにはならないかもしれません。  私どもは、そういう認識のもとに潤沢な流動性供給方針を現在も続けておりまして、幸い、この 三月、四月、五月というふうに時間がたつにつれまして、申し上げましたような信用面でのある種の懸念に基づく金利の上乗せ分というのも、着実に、じりじりと低下、縮小してきております。何とかこういう傾向を定着させたいというふうに考えております。
  240. 河合正智

    ○河合委員 これは、日銀副総裁に対しましては最後の質問になるかと思いますけれども、これだけの長期間の金融緩和政策を打ち続けてきた上での信用収縮というのは、もしかしたらこれは世界同時なのかもしれませんけれども日本はデフレに既に突入している、デフレスパイラルに入ったという認識はお持ちでございますか。
  241. 山口泰

    山口参考人 ただいまの御質問は、経済全体についての日本銀行の判断いかんということではないかと存じますが、デフレスパイラル、本物のデフレスパイラルということになりますと、物価がかなり大幅に下落するだけではなくて、それが、例えば賃金の切り下げでありますとか企業収益の大幅な落ち込みでありますとかそういうことにつながり、それが次の局面でまた個人消費や企業の投資を大幅に落ち込ませるというふうにして次々と悪循環が生まれていく、こういうプロセスを指すのではないかと存じます。  現在、私どもは、そういうような局面に日本経済が入ってしまったというふうには考えておりません。
  242. 河合正智

    ○河合委員 それでは、ここで大蔵大臣にお伺いさせていただきます。  先ほど私が申し上げましたように、日本金融自由化以後の歴史を駆け足で今概括したわけでございますけれども、その中における超低金利政策、これは一つは、本来、金利政策がきかないときには財政政策で景気対策を行うというセオリーがあると思うのですけれども、そこで余りにも早く低金利政策を打ったがために、政府として残された景気対策というのは赤字公債発行による公共事業しか道はないという点に追い込まれたのではないかという点ですね。まず、この点についてお伺いさせていただきます。
  243. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  まず、公定歩合の操作等金融政策は日本銀行の所管事項でありますので、私からあれこれ申すことは差し控えさせていただきますが、いずれにせよ、日本銀行においては適切な対応をしてこられたというふうに私は思っております。
  244. 河合正智

    ○河合委員 質問とちょっと違う角度でお答えになったと思いますけれども、では、もう一つ、形を変えまして御質問させていただきます。  住専法が九六年六月に成立しました。それ以後、私の部屋にも大蔵省の皆さんが、住専の法律が成立した翌日だったと僕ははっきりと覚えているんですけれども日本の国のいわゆる財政赤字、この数字について御説明にいらっしゃいました。住専法を審議している間にこの話をしますと、住専法そのものが通らなくなってしまうのですが、成立した翌日に説明に来られたというのは、大蔵省というのはさすがだなと思いました。しかし、この時点から緊縮財政路線というものを大蔵省というのは既にスタートさせてきたんだなと、今になって思うと私は私の体験として思うわけでございますけれども、そのきわめつきが昨年の財革法ですね。  大臣はこの委員会でも、この法律については最良のものだと思っておりますというふうに御答弁され続けてこられましたけれども、今私が質問した中でも、金融政策がきかないときには財政政策で景気浮揚を図る以外にない。それなのにこの財革法を強硬に成立させてしまった。これはもっと言えば、金融政策がきかない今こそ減税と公共事業と、これはどちらかという議論はありますけれども、せざるを得ないのに財革法の網をかぶせてしまった。これが政策不況のきわめつきだと私は思っておりますけれども、大臣、予算は成立しました。その後の、現在の立場でこの財革法についてどのようにお考えですか。
  245. 松永光

    ○松永国務大臣 九六年の財政運営、そして九七年、すなわち昨年の秋深まってからの財革法の成立てあったわけでありますが、その当時の財政担当大臣の政策についての批評めいたことを言うことは、私は差し控えさせていただきたいというふうに思うのであります。  しかし、後世代の人に多額の負債を残すということはよくない。したがって、財政構造改革をやって赤字の縮小に向けて努力をしていこう。特に、急速に高齢化社会に入っていくことを考えればなおさらのことであるという考え方は、やらざるを得ない施策だというふうに私は思うわけです。ただ、そちらの方にのみウエートを置くというと、厳しい経済、景気状況にある我が国の現状を打開することはできない。したがって、景気の動向を踏まえて適宜適切な景気対策を打っていかなければならぬということであろうかと思っております。
  246. 河合正智

    ○河合委員 私なりにちょっと整理させていただきますと、財革法の目指す方向は正しいけれども、景気対策を適時適切に打っていけるようにむしろ改革しなければいけないという御認識と受け取ってよろしいですか。(松永国務大臣「そうです」と呼ぶ)わかりました。  以上、一時間にわたって大臣それから日銀副総裁に、金利政策と財政政策について私なりに質問をさせていただいたところでございますけれども、結論から申し上げますと、中谷教授の指摘がまことに正しく私には思えますように、金融と財政というのは、アメリカのように制度的にきちっと分離して、アメリカのようなグローバルスタンダードにこの金融ビッグバンを通じてシステム的に改革していくというのであれば、金融政策、財政政策そのものもシステム的に分離して運営すべきであるというふうに私は考えますけれども、これは、まず副総裁にお伺いしまして、最後に大臣にお伺いさせていただきたいと思います。
  247. 山口泰

    山口参考人 金融政策につきましては、この四月の新日銀法施行に伴いまして、日本銀行政策委員会というところが責任を持って判断し、決定していくという体制が整ったわけでございまして、先ほど来、先生からもそのような精神でしっかりやるようにという御激励をいただいたというふうに思います。まさに、そのような精神でやってまいりたいと思っております。
  248. 松永光

    ○松永国務大臣 今副総裁からの話もありましたように、この四月一日から新日銀法が施行になりました。この新日銀法で日本銀行の独立性が強化をされたわけでありまして、金融政策の決定については政策委員会で決定をなさるわけであります。政府の方は、意見を述べることはできるけれども決定に加わることはできないというふうに日本銀行の独立性が保障されました。この新日銀法の精神に基づいて日本銀行は適切な金融政策を行われるもの、そういうふうに承知いたしております。
  249. 河合正智

    ○河合委員 最後でございます。重ねて大臣に、一言で結構でございますが、金融と財政というのは分離すべきであるという命題についてはどのようにお考えでしょうか、それを質問させていただきまして、終わりたいと思います。
  250. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども申し上げましたように、金融政策、これは日本銀行の所管事項であり、先ほど申し上げましたような独立性を持った金融政策を決定して適宜適切に運用されることを期待をしておるわけであります。
  251. 河合正智

    ○河合委員 時間でございます心終わります。ありがとうございました。
  252. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、石井啓一君。
  253. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 平和・改革の石井啓一でございます。  きょうは大きなテーマで、金融の検査に関する質問、それから、これまでも本日の質疑でございましたが、投資者保護、利用者保護、大きくこの二つの分野の質問を用意しておりますが、まず投資者保護の方から先に質問をさせていただきまして、時間がありますれば検査の方に質問を移りたいと思いますので、よろしくお願いいたします。  まず、いわゆる金融サービス法についてでございますが、昨年の六月十三日付の証券取引審議会 の報告書を拝見いたしますと、「金融サービス法等の検討」につきましては、  今後、金融システムの全般的な改革において仲  介者や投資商品・サービスの多様化が進んでい  く中で、市場性の低い商品まで含め、様々な投  資商品金融サービスについてどのような投資  家保護を図っていくべきかについての検討が必  要となる。こうした観点からは、現在証券取引  法の枠外にある投資商品金融サービスをもカ  バーし得るよう、すべての市場参加者に横断的  なルールを適用する新たな立法(いわゆる金融  サービス法)等も視野に入れた検討が行われる  べきである。こういう報告書がございます。  さらに、同じく金融制度調査会の答申を読みますと、これは同様のあれでございますけれども、  金融システム改革の今後の進展の中で、多様な  金融商品の登場、金融機関リスク管理の確  立、自己責任原則の浸透等の状況を見極めなが  ら、従来のいわゆる業法中心の縦割りの枠組み  を見直し、利用者の視点に立って、規制に係る  負担の軽減にも配慮しつつ、市場参加者に共通  に適用される横断的なルールを確立することが  必要になってくると考えられる。さらに、   本件についての今後の議論の進め方として  は、直ちに検討を進めるべきであるとする意見  と、より中期的な課題として検討していくべき  であるとする意見とが出されたところである  が、いずれにせよ、幅広い金融サービスに対し  て整合的な規制を行う新しい法的な枠組み(い  わゆる金融サービス法)を検討すべきであると  いう基本的な方向性については、概ね意見の一  致が見られたところであり、今後、先進各国の  例も参考にしながら、現行法制等との関係も含  め、幅広く検討を進めていく必要がある。  両審議会あるいは調査会、非常に前向きな方向で打ち出されておりまして、また、今大蔵省においてもそういう方向で検討が進められているというふうに理解をしておりますが、現在の政府はいわゆる金融サービス法の導入についてどういう見解をお持ちなのか、伺いたいと思います。
  254. 山口公生

    山口政府委員 先ほど北橋先生からも大臣への御質問がございましたけれども金融の法制自体が我が国は業法の体系になっております。例えば、銀行法、証取法投資信託法、商品ファンド法云々というふうになっております。アメリカも実はそうなのです。アメリカも、証取法証券取引所法、投資会社法、投資顧問法云々、こういうふうになっております。イギリスは、逆に業法が十分な形になっておらなかったという例があって、今度はサービス法という横断的な取引法的な考え方で律しております。  我が国の場合、縦割りの業法で対応をして、それぞれ濃淡ある対応、行政とのかかわりもやっておりますけれども、今回お出ししております法律も、金融のサービスがいろいろまたがっていくということを頭に入れて、各業法にそれぞれ手当てしてあります。それぞれの業法で手当てをしてありますので、今はエアポケットとして落ちるところはまずはないと思いますが、将来、またいろいろな形の金融の改革が進むとなると、果たしてその業法的な形での対応で十分だろうかという問題があるわけです。  確かに、業法の方がそれを担保しやすいのです。例えば銀行が何かやったときに、いつも先生方に私が追及されて、何とかしろとおっしゃると、私どもとしては、こういう御意見がありましたよという形で銀行にその趣旨を伝えるという形で担保をしやすいという面があります。単に取引法だけですと、司法関係かね、それは業法関係かねというようなことで、では、後は訴訟でどうぞという形になってもなかなかこれはうまくいかないという問題があります。  したがって、金融サービス法の問題というのは、縦割り的な業法でそれぞれきっちりやらせていることが、将来、そのままでいけるかどうかという問題意識だと思うのでございます。そういう意味で、中長期的な課題として私どももひとつ勉強して取り組んでいこうということで、今勉強会を開いているわけであります。  したがって、今回の法改正でも、いろいろな取引ルールとか行為規制とか説明義務とかディスクロージャーとか、消費者のためになることはできるだけの配慮はいたしておる所存でございます。ただ、法体系というのは余り固定的に考えるべきでもない、縦と横が相互に関連し合ってもいいではないかという考え方もあろうかと思います。  ちょっと長くなりましたが、そういう考え方で対応しておるところでございます。
  255. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 原則的な方向を確認しますと、この証券取引審議会の報告書を読みますと、今私が読んだ前段部分で、「金融商品に係る投資家保護との視点から、証券取引法の有価証券の範囲を更に大幅に拡げられないかとの議論もある。」しかし、それを否定しているのですね。それは適当でないと否定しておいて、市場参加者に横断的なルールをつくりましょう、こういう言い方をされているのです。  このことを読むと、基本的な今後の方向としては、業法中心の法体系から業法横断的ないわゆる金融サービス法的な方向に進む、これは明らかにこういうふうに理解できるのですけれども、その点について確認したいのです。
  256. 山口公生

    山口政府委員 基本的な方向は、私どももそういう方向に行く方がいいのではないかというふうに思っております。それは、金融技術がどんどん発展していきます。そうすると、今まで結びつけることがとても考えられなかったものが結びついた商品というのが出てくるわけであります。そうすると、これは一体何の業法なのだというような議論も出てくると思います。したがって、今後の金融システム改革状況を的確に把握しながら、これについては前向きに対応していきたいというふうに考えている。基本的なスタンスは先生のおっしゃるとおりです。
  257. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そこで、私は確認したいことがあるのです。  今局長の方から御説明ありましたけれども、我が国の証券関係法制はアメリカの法制がベースになっています。アメリカの法制というのは業法中心で、なおかつ証券については幅広い定義が採用されておるわけですね。だから、従来の伝統的な株式や債券というそういう定義に限定されず、一般の人々に対して売られる投資性のある商品という定義を採用されていますから、アメリカの場合は証券法とほかの法律でダブルで規制されている。  私も本を読んで初めて知りましたけれども、いわゆる定額保険についても、保険法と証券法と二つで管轄しているんですね、アメリカの場合。そういうやり方が方向としては一つある。証取法証券の定義を幅広くして証取法の方で規制をしていくよという方向と、もう一つ、今イギリス型といいますか、イギリスの場合は投資業とか投資物件というそのもの自体の定義を幅広くしておいて、業態ではなくて機能として管理をしている、そこで詐欺的あるいは誤解を招くような説明というか行為を一般的に禁止している、そういう法規制のあり方であるわけです。  ある意味で我が国はもともとアメリカのが母体であったはずだと思うのですけれども、それがイギリス型の方に大きく法体系が変わっていく、こういうふうに私は理解しておるのですが、その背景がどういうことなのか、あるいはその理由がどういうことなのか、そこら辺について私はちょっと説明を求めたいと思うのです。その点についてはいかがですか。
  258. 山本晃

    山本(晃)政府委員 今先生の方から御指摘がありましたけれども、要するに、アメリカ型からイギリス型の方に変わっていくのではないかというお話でございます。  確かに、証取法観点から申し上げますと、証取法はアメリカの証券取引法、これを下敷きにしてできたものでございます。ただ、アメリカの場合には、例えば有価証券の概念そのものも非常に 広い概念を使っております。ただ、そうなりますと、一体何が有価証券に該当するのかという点につきましてアメリカの場合は非常に抽象的な文言でできて、あとはということになるわけでございますけれども日本の場合にはこれがまた罰則もかかってくる、こういう問題もまたあるわけでございます。そういう意味から申し上げますと、例えば有価証券定義というものを包括条項的にやって何が何でもすべて証券取引法の体系でもって押さえ込むということは、これはなかなか日本の場合、現状にそぐわないのではないかという感じがするわけでございます。そうなってまいりますと、一つ参考になるのがイギリスのようなやり方ではないかというふうに思われるわけでございます。  いずれにいたしましても、今後この金融サービスの革新というものが続いてまいりまして、非常にいわゆる業際間の垣根というものも低くなって横断的な商品もできてくる、こういう状況というものがだんだんと現出されてくるであろうということを考えますと、やはり横断的なサービス法というものを真剣に検討していかなければならない、こういうことになってくるのではないかというふうに考えております。
  259. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そこで、これは大臣に確認したいのです。  先ほどの銀行局長の答弁ですと、これは中長期的な課題というふうにおっしゃっているんですけれども、私はこれはなるべく早く検討すべきだと思うのですよ。といいますのは、今この時点では今の業法ごとの規制で十分だという答弁ではありますけれども、しかし、金融に関する技術革新といいますか、日進月歩でございまして、どういう商品あるいはサービスが今後出てくるか想像もつかないわけですよ。残念ながら、我が国のこういう投資家保護あるいは消費者保護というのは、どっちかというと後手後手に回るといいますか、問題が起こってから対処する、こういうやり方が非常に目立っておりまして、先ほど大臣も午前中の質疑の中で変額保険について言及をされましたが、ああいった事例に見られますように、いろいろな意味での被害が起きてからでは私は遅いと思うのです。いろいろな商品あるいはサービスがこれから次々と出てくるということは容易に予想されますので、中長期的な課題というそういう悠長な話ではなくて、これはもうやはり早急に検討を進めるべきである。これはある意味で、この金融システム改革を成功させる意味でも非常に重要なことだと私は思うのですよ。  といいますのは、もう御承知のとおりでありますが、我が国の場合は一般投資家リスクがかかるような商品になかなか投資していかない。一千二百兆円個人資産があると言われていますけれども、その大半は預貯金であり、あるいは保険でありということで、いわゆる有価証券は非常に少ないわけですね。今後こういう一般投資家を有価証券市場にもう一度戻していくという意味でも、やはり一般投資家が安心して投資ができるようなそういう法的な枠組みというのはきちんとつくるべきだと思うのです。  そういう意味で、中長期的ではなくて、私は早急にこの金融サービス法の検討は進めるべきだ、こういうふうに思いますので、この点大臣、ぜひ御答弁をいただきたいと思います。
  260. 松永光

    ○松永国務大臣 私自身、余り証券とかそういったものには関係をしていない人間でありますけれども、ただ、二、三年前から、あるいは数年前から起こっておる変額保険等の被害者などが、午前中も申し上げましたけれども、今までは銀行相手に訴訟を起こすという例はめったになかったのに、あの事件があちらこちらに被害が発生してから相当数の損害賠償を求める訴訟が銀行あてに起こされておる、それでしばしば銀行が負けているという例を見ますというと、この点について何らかの措置をしないと紛議が絶えないなという感じを私は持っておりました。  今度この金融ビッグバンを実施した場合に、個人の金融資産が、現在の六割近い預貯金になっておるのが、株式あるいは信託、証券等々にどの割合で移っていくのかそれはわかりませんけれども日本国民の今までの伝統からいうとそうたやすくは移らぬかもしれぬけれども、しかし、この仕組みをつくる以上は、それがうまく機能するような万全の法体系を整えることが大事なことだろうというふうに思います。  先ほど局長は、中長期と言ったかもしれませんけれども、長期というのはいかぬと思うのです。直ちにというのもいかぬと思うのでありまして、少し時間をかけて、理論的な検討も、それから新たな金融商品の出ぐあい等も考慮しながら理論的に研究をして、そして長期ではなくして、中期のうちには法体系の整備をする必要があるというふうに私は思っております。
  261. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 振り返って考えてみますと、変額保険も性質からすると非常に投資性の高い商品だったわけですね。ところが、規制されているのは、あの商品は保険業法だけです。そういうように、今の業法の中だけでもやはり問題が起こり得る。なおかつ、今の業法で規制できない、いわゆるポテンヒットというものが出てくる可能性もやはりありますので、私はある意味で、金融システム改革を成功させる上でも、ぜひこの点については、直ちにとは申し上げませんけれども、なるべく早期にやっていただきたいと思いますので、なるべく早期にということで、もう一度大臣御答弁お願いします。
  262. 山口公生

    山口政府委員 私どもとしましても、この問題については、早速各省、これは大蔵省だけの問題ではございませんで、実は経済企画庁、文部省、厚生省、農林省、通産省、郵政省云々と、たくさんの省庁がまたがっている話でございまして、それが一緒になって学識経験者を入れた勉強会を今精力的にやっております。この間私も出たのでございますが、まだそのあり方の理念の問題で先生方の御意見も大分違うようですし、どういうふうに整理していっていいかという問題はありますけれども、御指摘のとおり余りのんびり構えるべき問題ではないということは十分に心得ておりますので、真剣に検討を加えてまいりたいというふうに考えておる次第でございます。
  263. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 その点、ぜひ大臣もリーダーシップを発揮していただきますようにお願いいたします。  それでは、今回の改正証券取引法における投資者保護の考え方を改めてここで確認をしたいと思いますので、政府委員の方からお願いします。
  264. 山本晃

    山本(晃)政府委員 現行証取法では、断定的判断の提供による勧誘の禁止あるいは損失補てんの禁止等の投資者保護のための行為規制がございます。また、顧客の知識、経験等に応じた勧誘を行わなければならないとする顧客適合性の原則、また証券会社の経営悪化に対する是正措置、こういったものによりまして投資家保護を図っているところでございます。  今回のこの金融システム改革法案におきましては、これらの投資者保護というものをさらに充実させるために、まず第一に、証券会社が投資顧問業や投資信託委託業をあわせて行う場合の相互の情報利用の制限や顧客取引に先回りした自己取引の禁止、通常フロントランニングと呼んでおりますが、その禁止、こういった行為規制の強化並びに早期是正措置の明確化、さらには、証券会社が破綻した場合に備えた顧客資産の分別義務の強化、投資者保護基金の創設、こういった規定の整備を図っているところでございまして、証券取引における投資者保護には万全を期してまいりたいということで考えているところでございます。
  265. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、これまでの質疑の中でも取り上げられていましたが、今回、証取法改正案第六十五条によりまして、銀行、保険会社における投資信託窓口販売、これが可能になったわけであります。この投資信託販売においては、証券会社販売をしていても不正な勧誘あるいは強引な販売行為が行われて損害賠償を求められる、そういう事例もあるわけでございますが、今回、銀行、保険会社がこれを扱うということ で、銀行でいえば、もともと預金という元本が保証されている商品を扱っている、あるいは保険会社においても大半が定額保険ということでありますから、投資者が、預金やあるいは定額保険と同じ安全性を有する、こういうふうに誤解する可能性が、懸念が十分あるわけでございます。この点に対して投資者保護策がどうなるのか、この点について御説明いただきたいと思います。
  266. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  証券投資信託銀行等金融機関窓口販売するに当たりましては、顧客に対しまして、この証券投資信託が、銀行等の扱う預金商品などとは異なりまして、元本保証のないリスクキャピタル商品であるという商品性の違いについて十分認識していただいた上で販売することが重要であると考えております。  このような観点に立ちまして、有価証券販売に係る証券取引法上の誠実公正義務、これが新法でも三十三条にございますが、こういった販売ルールを適用する、また銀行法等におきます顧客に対する預金との誤認防止ルール等が適用できるような手だて、これも銀行法等に講じているところでございますが、こうしたことをした上で銀行等金融機関によります証券投資信託窓口販売を導入したいというふうに考えております。これはアメリカでも同様な規制が行われているというところでございます。
  267. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 この点大変懸念される向きがありますので、私、ちょっと改めて確認したいのですけれども銀行、保険会社等で窓口販売するときもこの証券取引法上の販売ルールが適用されるということですね。ちょっとその点、確認のため御答弁をいただきたいと思います。
  268. 山本晃

    山本(晃)政府委員 当然のことながら、銀行等窓口販売される場合、その販売をされる資格、これは通常の有価証券販売する場合にも外務員資格というものが求められておりますが、当然これも求められることになりますし、証取法の基本的なルールが適用されるということは言うまでもございません。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  269. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それから、もう一つ確認しますが、今回の改正案によりまして、証券投資信託の受益証券について、これが証取法の第二章、企業内容等の開示の対象になるということですね。ですから、目論見書を作成し、そしてそれを交付する義務がある、こういうことでよろしいわけですね。
  270. 山本晃

    山本(晃)政府委員 そのとおりでございます。
  271. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、なぜるる心配しているかというと、先ほど言った変額保険の件がまさに心配される事例なわけですよ。振り返って考えてみますと、あれはバブル期のことではありますが、一般の方に銀行から多額の融資をして、それを保険に一括払いをする、それを専ら有価証券に投資をして、その運用実績によって保険の金額や解約の払戻金にこれを連動させる、変動させる、こういうことでありましたけれども、消費者、投資家の方は、それは銀行とか保険が推薦するものだから安全だな、大丈夫であろう、こういうことでそれに応じたわけですよ。ところが、バブルがはじけて元本は全く目減りしてしまっている、片や担保に入れた自宅まで差し押さえられてしまう、どうなっているのだ、こういうことで大変な訴訟の事例が起きているわけであります。その裁判のいろいろなあれを見ますと、説明するときに十分なリスク説明がなかった、あるいは、先ほど言いましたように、説明を聞く方は、信用度の高い銀行だとか保険会社がやるのだったら大丈夫だろうと。これは、契約は保険会社がやったとしても、実際にそれを一生懸命勧めたのは銀行だったということもあって、こういう被害の事例があったわけです。  私は、今回の投資信託窓口販売の解禁ということで、やはり同じような事例が起きてはならない、これは当然のことでありますけれども、そういう意味でこの点についてやはり厳しく監視をしていかなければいかぬと思うのですね。その点、ちょっと大臣、見解を求めたいと思います。
  272. 松永光

    ○松永国務大臣 委員が今おっしゃったような変額保険の契約あるいは販売、私が承知している例もまさしくそれなのです。銀行の外務員というのですか、お得意さん回りをする銀行員と保険会社が二人行って、そして、そこの御主人は病気で寝ておったのでありますが、その人の娘さんにうまく話をして契約をしたというケースでありました。現に訴訟になっているわけでありますが、私は多忙でありますから代理人はいたしておりませんけれども、専門的な弁護士がやっておるわけでありますが、そういうケースでございました。  結局、日本国民は、概して銀行はかたいと信用しているのですよ。しょっちゅう外務員として自分のうちに来ているものですから信用している、それが勧めれば信用してそういう商品を買う、こういうことになっておるわけですね。  したがって、午前中も申し上げましたけれども元本保証の、間違いない定期預金証書とかそういったものと違う、リスクのある、元本保証はないということなどが明確に説明される必要があると思う。少なくとも、消費者に誤認を与えるような方法での販売、これはしてはならぬことだと思う。そういったこと等を通じて、消費者に誤解を与えないように、リスクのある商品だということ、元本保証はないということを明確にした、誤認をさせないような状態だけは確保する必要がある、私はそういうふうに思うわけでございます。
  273. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今、大臣の答弁の中にもありましたけれども、もう一度確認をいたします。  私は、こういう商品に対して一般投資家に勧誘する場合は、やはりその仕組みとか危険性をわかりやすく説明をし、そしてそれを理解をさせて、その上で、それでも投資をするのだという意向を確認する、こういう丁寧なプロセスを踏む必要があると思うのですね。そういった点、きちんとそういうプロセスを踏んだ上でなければ、投資家に対する自己責任を問うという状況にはないと思うのです。そういう点について、もう一度大臣、確認をさせていただきたいと思います。
  274. 山口公生

    山口政府委員 大臣が申し上げた趣旨は、今回の法案の中にも銀行法の改正の部分で入れてございまして、第十二条の二というところに「預金者等に対する情報の提供等」という規定を新たに設けさせていただきました。第二項で「その業務に係る重要な事項の顧客への説明」云々というふうにして、それを講じなければならないという義務つけをしております。こうした考え方は、今までの銀行法の考え方からある意味ではちょっと踏み込んだ、行為規制的、行為規範的な条項を入れさせていただいたということでございまして、今まで申し上げたように、業法の形をとりながらもかなり金融サービス法的な、そういう行為規制的なものを入れていっているという流れの一環でございます。
  275. 松永光

    ○松永国務大臣 今局長が答弁を申し上げましたように、法文上もそういうふうになっておるということでありますから、先ほど来申し上げましたような、消費者に誤認を与えるようなことがあってはならない、きちっと説明した上で販売すべしということでありまして、法文上もそれは担保されておるというふうに思うわけでございます。
  276. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それではもう一つ、有価証券デリバティブについてお聞きします。  これが全面解禁をされる、しかも銀行や保険会社においても、一定の範囲内ではありますが、これを扱うことができるというふうにされておるわけでございます。このデリバティブ取引は仕組みが大変複雑でございますね。通常の投資信託とは比較にならないほど大変複雑な仕組みである上に、極めて高いリスクを持っているということでございまして、私は、これは本来は一般投資家向けではないというふうに思いますけれども、この有価証券デリバティブが解禁されることに伴う一般投資家への保護策、これについて伺いたいと思います。
  277. 山本晃

    山本(晃)政府委員 石井委員おっしゃいますように、確かにこの証券デリバティブというのは、 通常は、一般投資家と申しましょうか、そういった方々がというよりも、むしろ機関投資家とかそういった方々中心になるであろうというふうには思いますが、例えば先物取引のように、場合によればこれもデリバティブの一環でございますので、一般投資家にもこの証券デリバティブ取引を行う可能性というものはあるわけでございます。  今回の法案におきましては、有価証券の店頭デリバティブ取引というものを証券業というふうに位置づけまして、その導入を図るとともに、投資家保護上の問題が生じることのないように、先ほども触れましたが、顧客の適合性の原則、つまり顧客の知識、経験及び財産に応じた勧誘を行うべきであるというこの顧客適合性の原則、また、相場等の動向について断定的な判断を提供して勧誘することを禁止するといったこと、あるいは取引の概要を記載した書面の事前交付義務、こういった行為規制、これが有価証券店頭デリバティブ取引に適切にかかるようにするとともに、また、この有価証券店頭デリバティブ取引を用いましたいわゆるインサイダー取引あるいは相場操縦、こういった不公正取引を禁止するなどの所要の規定整備を図って万全を期しているところでございます。
  278. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今、適合性の原則のお話がございましたけれども、私は、適合性の原則からしますと、この証券デリバティブを勧める対象というのは極めて限られてくるのではないか、この点について確認したいと思うのです。  リスクの高い証券に投資できるだけの知的能力といいますか、あるいは財産も相当程度余裕があって、たくさんある財産のうちの一部をそういうリスクのあるところに多少投資してもいいというような方、あるいは、なおかつそういった方で、そういう極めて高いリスクを持っていたとしても自分はやるのだという意向をきちんと持っている方、そういう方に限られて、それは今の日本の現状からすると極めて限定されるのかと私は思いますが、適合性の原則からするとそういう方々に限定をされて、一般的な投資家については向いていないと私は考えるのですけれども、その点について確認したいと思います。
  279. 山本晃

    山本(晃)政府委員 確かに、特にこの店頭デリバティブ取引になりますと、対顧客の営業というものが非常に問題になってくるわけでございます。先ほども申し上げましたように、この適合性の原則というものを厳守をするとともに、いろいろなデリバティブ商品についての説明義務なり、あるいはタイムリーな情報提供、これをやっていくことは当然でございます。  そして、基本的には、先ほど申し上げましたような基本的な法令というものがあるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、このデリバティブ取引というのは店頭で行われるわけでございますので、それぞれの証券会社のいわば自主的な対応というところにまたざるを得ない面もこれまたあるわけでございます。基本的には、この適合性原則というものを各証券会社がどういうふうに判断をするのか。例えば、先ほども質問が出ておりましたけれども、ワラント訴訟なんかの場合にもこの適合性原則というものは非常に問題にされていたわけでございます。こういった観点から、一度、これを取り扱う各金融機関につきましては、この適合性原則の持つ意味というものを十分に考えた上で営業をしていただかなければならないだろう。石井委員のおっしゃっているような方々、こういった方々が恐らく対象になるのであろうというふうに考えておるところでございます。
  280. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 大臣、よろしいですか。私、ちょっとしつこくずっと申し上げていますのは、これから銀行にしろ証券会社にしろ、非常に厳しい競争というのが予想されますね。そういった中で、かつてのように営業マンにノルマが非常に課される、そういった状況になりますと、とかくやはりこういつたリスクの高い商品一般投資家に売り出すような、そういう動きにもなりかねませんので、私はあえて重ねて確認をさせていただいておるのです。  デリバティブについては、ある意味では、通常の、従来の投資信託以上に、適合性を満たした顧客に対しても十分説明し、いや、私もいろいろな説明を読んでも、これは難しいです。一遍聞いただけではこれはなかなかわからないですよ、本当に。書面に書いたものを見てもなかなかこれはわからないということでありますから、これは十分説明しなければいかぬと思いますし、また投資家の意向もきちんと確認しなければいかぬと思うのですよ。その点について、大臣、もう一度確認をしたいと思います。
  281. 松永光

    ○松永国務大臣 大体私の頭の中も委員と同じような考え方でございます。したがって、今証券局長心得が答弁いたしましたように、顧客の知識、経験及び財産に応じた勧誘を行うべしという顧客適合性の原則とか、あるいはまた相場などの動向について断定的な判断を提供して勧誘することの禁止とか、あるいはまた取引の概要を記載した書面の事前交付義務とか、そういったものをきちっと守らせて取引がなされなければならぬというふうに思っております。  問題は、先ほどの変額保険の場合もそうでありますが、外務員が実際にそれを履行するかどうかということなんですね。規定の整備は行うわけでありますから、ぜひその規定を守って勧誘をするということにしてもらいたいというふうに思います。
  282. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ある意味では、今後金融機関に対する検査監督は金融監督庁に移るわけでありますけれども、いろいろな事例が出てその判断を裁判に任せるということではなくて、せっかくこういう法整備をしたわけですから、この法令の遵守状況等についてもきちんと、これは検査をするようでありますけれども、日常的な監視といいますかモニタリングといいますか、そういうものを十分やっていただきたいと思います。  続いて、投資者保護基金に関しまして質問を移します。  この基金の規模について、発足時三百億円、あるいは二〇〇一年三月末時点で五百億円程度を確保する方向である、こういうふうに聞いておりますけれども、この基金の規模、どういう根拠でこういう額を考えていらっしゃるのか。あわせて、各証券会社の負担金の算定がどういう形でされるのか。このことについて説明をいただきたいと思います。
  283. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  まず、発足時三百億円、そして二〇〇一年三月末時点で五百億円という規模の根拠でございますが、これにつきましては、実際問題といたしまして、今後の証券会社の破綻の頻度であるとか、あるいは破綻時の財務状況、あるいはこれから分別管理というものを徹底させていくわけでございますが、その定着度など、さまざまな要因によるために、基金の規模としてどの程度が適正であるかというものを数量的に明確な積算根拠をもとにして定めるということはなかなか難しい問題がございます。  ただ、実際問題といたしまして、現在の、この前身となります寄託証券補償基金の資金残高がピーク時で三百六十億円余あるということ。あるいは、アメリカの同じような制度の拠出実績、これは、アメリカができましたのは一九七一年でございますが、それから九六年までの累計で、一ドル百三十円で換算いたしますと約三百四十億円ぐらいである。あるいは、英国の同様の例がございますが、これはこの十年間で約二百四十二億円であるといったようなことから考えますと、おおむね、発足時三百億円、そして二〇〇一年三月末時点で五百億円という程度の規模であれば、当面目指すべき基金の規模としては妥当なのではないかというふうに考えているところでございます。  また、証券会社が負担をする負担金の算定方法でございますが、現在の寄託証券補償基金、最近ではこの拠出は休止をしていたわけでございますが、従来はいわゆる取引高というものをもとにしてやっていたわけでございます。これにつきまし ては、基本的には、新たにできます投資者保護基金の業務規程で定められるということになっておりますが、現在業界において検討が開始されているというふうに承知をしているところでございます。まだこれが従来のように取引高でいくのかどうかという点を含めまして、今現在検討がようやく開始されたという段階であるというふうに承知をしております。
  284. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 通例であれば法案審査の折にそういう算定方法というのは出てくるのじゃないかと思うのですけれども、業界で今検討中ということでありますが、いつまでにこれを定めるのでしょうか。それで、その調整というのはうまくいくのでしょうか。
  285. 山本晃

    山本(晃)政府委員 私どもも、こうして今、国会に法案の審議をお願いしておるわけでございますので、できるだけ早くということで今調整作業を急がせているところでございますが、まだ業界の中でいろいろな議論があるというふうに聞いておる、そういう段階でございます。
  286. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 では、それはぜひ早目にまた教えていただきたいと思うのです。  あわせて、この投資者保護基金の中で経過措置として、二〇〇一年三月末まで日銀借り入れと政府保証の付与、この公的支援を可能にしているわけであります。これは後ほどお聞きします保険契約者保護機構についても共通の問題意識を持っているわけでありますが、銀行の破綻に備えて公的資金を導入した際には、銀行は決済システムを持っているのだ、決済システムを持っているから連鎖破綻になると信用秩序は崩壊してしまう、だから公的支援が必要なんだ、こういうことが大きな理由の一つだったと思うのですね。  ところが、現行の場合、証券会社についてはそういう決済機能がないにもかかわらず公的資金を入れるのはどうしてなのか、こういう問題意識がございますので、その理由を説明をいただきたいのと、もう一つ、日銀からの借入限度額と政府保証額がどうなるのか、この点について答弁を求めたいと思います。
  287. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  投資者保護基金の業務支出というものは証券会社が納付する負担金を充てるということを基本としているわけでございますが、仮に基金の資金が一時的に不足するという場合におきましても、基金の資金調達が円滑に行えるようにということで、二〇〇一年三月までの破綻の処理については基金の日銀借り入れや政府の債務保証を可能とし、金融システムの安定に万全を期すこととしたものでございます。  また、基金の借入限度額、これは政令で決める、また政府保証の限度額は予算総則ということになるわけでございますが、したがいまして、日本銀行からの借入限度額というものも基金の借入限度額、この中に入るわけでございます。これにつきましては、いずれも、今後、基金の設立準備過程、または設立後におきまして、基金の業務に支障を来すことのないように必要最小限の額を定めたいというふうに現在考えているところでございます。
  288. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 前段のお答えで、私の問題意識とちょっと、答えていただかなかったので。要するに、銀行の場合は決済機能を持っているからという理由だったのだけれども証券会社にはないわけですね。にもかかわらず公的資金を入れるのはどういう理由なんだ、その点についてもう一度答えてください。
  289. 山本晃

    山本(晃)政府委員 昨今の金融システムをめぐる状況を考えてみますと、証券会社の破綻でございましても、それが円滑に処理されないという場合には金融システム全体に対する不安感を高め、経済全体に対しまして深刻な影響を与える可能性を排除できないというふうに考えられますことから、こういった公的支援措置というものを講じさせていただくという御提案をさせていただいているところでございます。
  290. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、その借入額は政令の範囲だ、政府保証は予算の総則の範囲だということですが、この政令がいっ決まるのでしょうか。そして、予算の総則というのはいつの予算になるのでしょうか。
  291. 山本晃

    山本(晃)政府委員 原則として、政令につきましては、これも法案を仮に成立させていたださましたらできるだけ早い機会にというふうに考えているところでございますが、現在、いつまでにということまでまだ詰め切った状況ではございません。  また、政府保証につきましては、これは予算総則でもって定めていただくということになるわけでございますが、先ほどもお話をいたしましたが、基金発足当初、約三百億円程度でスタートするということでありますと、この基金が発足するのは本年の十二月という予定でございますが、恐らく、本年中につきましては、特段政府保証ということを考える必要はないのかなというふうに今考えているところでございます。
  292. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そうしますと、政府保証を予算の総則で書くというのは、問題が起きそうな時点でやるということなのでしょうか。ちょっとそこを確認したいのです。  といいますのは、ことしやりました金融二法、これについては、法案審査の段階で十兆円の交付国債と二十兆円の政府保証という額がはっきりしていたわけですよ。それを前提にいろいろ議論していたのですが、後ほどの保険の方も同じなんですけれども、今回は法案審査の段階でどれだけの公的支援が必要になるかというのはわからないのですよ。だから、私は、正確な額をここで申し上げろとは言いませんけれども、大体どの程度のことになるのか、概算額ぐらいは明らかにすべきじゃないかと思うのですよ。  ちょっと大臣、御答弁いただきたいと思うのです。公的支援、私もそれは否定するものではないのですけれども、どれだけ入れるかわからないのに入れることだけ決めてくれというのもどうなんだろうな。やはり、法案審査の段階でその点の概要、概算額については明らかにすべきじゃないかと私は思うのですよ。大臣、どうでしょうか。
  293. 山本晃

    山本(晃)政府委員 この限度額の問題につきましては、基金の設立準備過程の段階において必要と判断される額を定めたいというふうに考えておりますが、ただ、いずれにいたしましても、これは資金繰りでございますので、さほど巨額になるというものではないというふうに御認識をいただければと思います。
  294. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 大臣、ちょっと御答弁いただけませんでしょうか。私の問題意識は、金融二法のときはきちんと公的支援の額というのが明示されていて、それを前提に議論をした。今回の証券、あるいは後ほど聞く保険の場合は、公的支援の額がはっきりしないで、とにかく公的支援は必要だということで認めろ、額は後で教える、こういうことになっています。予算が出てきた段階でそれははっきりするのかもしれないけれども、予算というのはそれだけじゃなくて、ほかの項目があって審議をするわけですから、現段階である程度の概算額ぐらいはやはり示すべきじゃないかと思うのですよ。大臣、ちょっと答えてください。
  295. 山本晃

    山本(晃)政府委員 現時点におきましては、スタート時に三百億ということでスタートし、そして二〇〇一年三月には五百億ということが基金の残高でございます。万が一いろいろな事態が仮に生じた場合ということでございますけれども、大体その辺の三百ないし五百というのが、今のところ、通常の場合想定される補償額でございます。それに対する資金繰りということでございますので、その金額とさほど大幅に違いがあるというようなものではないということではなかろうかと思います。ただ、あくまでも現時点においてはこういうことでございます。
  296. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、証券の方ばかり聞くとあれですから、保険の方に聞きます。  同じ質問ですけれども、保険契約者保護機構で、二〇〇一年三月末までの経過期間の間で、これは日銀借り入れと政府保証、この公的支援、それぞれどれぐらいの額になるのか、そしてまた、 そもそもこの公的支援をする理由、保険の方、御答弁いただけますか。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  297. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  まず、事前積立限度額の規模でございます。午前中も御答弁申し上げましたように、今後発生し得る保険会社の破綻を現時点で予測することは困難でございますが、一応、制度創設に当たっての考え方といたしましては、十年間という期間を念頭に置きまして、複数の破綻が起きても対応できるようにということで、生命保険の場合は四千億円程度、損害保険の場合は五百億円程度を考えておりまして、この必要資金額の推計といいますか、仮置きに応じまして、事前積立限度額もこれが一つの目安になるのではないかというふうに考えております。  したがいまして、いわゆる負担金、これは年間の負担金でございますので、それぞれの金額を十で除した、生命保険ですと四百億円程度、損害保険の場合ですと五十億円程度が一つの目安になるのではないかというふうに考えております。  それから、公的支援がなされる理由でございますが、保険につきましては、申し上げるまでもなく、国民生活、国民経済の基礎としてさまざまな危険に備えて、万が一事故が発生した場合に国民の経済生活を保障するという保障機能がございますが、そのほかにも保険会社金融機関の一角としまして金融仲介機能も現に担っておりますので、保険会社の破綻が生じた場合には金融システムに及ぼす影響も大きいことから、保険契約者保護のために公的支援を行うことといたしております。  その内容につきましては、証券と同様でございまして、二〇〇一年三月末までの経過期間中に破綻した保険会社につきましては本則よりも手厚い保護をいたしますので、その期間につきましての資金調達に限り、日銀借り入れ及び政府保証を可能とすることとして、資金調達の円滑化を図ることとしているわけでございます。  そして、その日銀借り入れや政府保証につきましては、機構の借入金につきまして、やはり青天井ということになりますと保険会社の負担能力で困難でございますので、これも午前中に申し上げましたように、政令で一定の限度を設けることといたしております。その政令の限度としては、今申し上げた年間負担額の十倍程度が一つの目安ではないか。したがいまして、この範囲内で借り入れが行われるわけでございますので、日銀借り入れもその範囲内であり、かつ政府保証につきましても、あくまで国会で御審議いただく毎年の予算総則でございますが、その中で限度額が決められていくのではないかというふうに考えております。  ただ、数字で恐縮でございますが、四千億とか五百億と申し上げましたが、この当初の経過期間におきまして上乗せの補償を行うために必要な資金が若干上乗せされるわけでございまして、生命保険ですと四千億プラス六百億円程度が必要になるのではないか、先ほどの仮定ではそういうふうになるわけでございまして、そのようなものも含めまして政府保証枠を設定していただくことになろうかと存じます。もちろん、そのような破綻が現実に起きるということを申し上げているわけではございません。
  298. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、今確認しましたが、証券の方の投資者保護基金の三百億とか五百億という額とはそんなに差がない額だ、こういうことですね。  それからもう一つ、保険の方は、ちょっと今私初めて聞いたのですけれども、借入金の上限、政令で定める範囲内、これは大体事前負担額と同額程度なんですね、十倍の範囲内ということですから。わかりました。それが大体上限だ、その範囲でやはり政府保証だ、こういうことでそれは理解いたしましたが、ところで、この保険の方は政令で定める範囲内で借り入れができる、その政令というのは経過期間中も、あるいはそれ以降も同じなんでしょうか。  といいますのは、今、保険部長説明ありましたけれども、政令の根拠といいますか、それが保険会社に余り過剰な負担を入れない、負担能力の範囲内だということでありますが、一方で経過期間中は、要するに原則としての補償より幅広い、なおかつレベルの高い補償をやるわけですね。ですから、破綻に対する機構の資金提供額が大きくなる可能性がある。ところが、保険会社の負担上限ということで上限を決めてしまえば、事前積立額プラス借入限度額以上の破綻が起きた場合どうなるのか、ここが恐らく改正案の三百十一条の二につながってくるとは思うのですけれども、その点についてはどうなんでしょう。
  299. 福田誠

    ○福田政府委員 お答え申し上げます。  十年間のいわば本則ベースによる所要資金あるいは積立限度額と、それから経過期間、二〇〇一年までの手厚い保護の分を含めた所要資金額等について申し上げましたが、これは、いろいろな仮定で議論した結果の数字でございます。恐らくこの程度で必要かつ十分であろうという見込みのもとにそのような数字を申し上げているわけですが、今御指摘のように、万が一そのような枠では済まないような破綻が最悪の事態生じてしまったときどうかというお尋ねにつきましては、まさに今御指摘のとおり、保険業法、御提案申し上げている法律案の三百十一条の二で、機構の利用可能な資金の状況が著しく悪化し、その結果保険業に対する信頼性を揺るがすおそれがあると内閣総理大臣、これは実施主体でございますが、内閣総理大臣が判断する場合には、保険業に対する信頼性維持を図るために必要な措置に関して、制度全般の企画立案を担う大蔵大臣に協議しなければならないという協議規定が入っているわけでございます。  ただ、具体的に、どのような場合にこの協議が行われるかは現段階で特定はできないわけでございます。
  300. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 その場合、これも別の委員の質疑でありましたけれども、必要な措置というのが非常に幅広い解釈になっておりまして、何でもできることになっているんだけれども、ある意味で非常にこれは、要するに公的支援を青天井にしかねない条文ではないかなと懸念するのです。一つは、特例期間中、経過期間中、これはいわゆる日銀借り入れと政府保証に加えて、要するに財政資金の投入ということも道を開きかねない、こういうこともあるし、あるいは特例期間以降もさらなる公的支援の道を開くような規定になっているわけです。  私は、保険会社をつぶせというようなことは言わないけれども、そういうことを申し上げているのじゃなくて、まず事前積立限度額あるいは政令で借入限度額を設けているけれども、本当に限度額がどうなのか、まず業界の自主的な努力があって、その上でさらなる措置だと思うのですよ、順序としては。その点をやはり確認をしたい。  これはちょっと大臣にお聞きをしたいのだけれども、まず業界の自主的な努力がこれは大前提である、その上でのやはり公的支援、こういう考え方でなければ到底私は国民理解は得られないと思うのです。
  301. 福田誠

    ○福田政府委員 仰せのとおりでございます。  支払い保証機構の基本は、これは保険会社が負担金をそれぞれ供出して契約者の保護に当たるという制度でございますので、当然に、保険会社の中においていろいろな合理化措置等々行い、極力制度の範囲内でおさまるように努力をしていただくということかと存じます。そういう意味で御指摘のとおりでございます。
  302. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 最後、その点についてもう一度大臣に確認したいと思います。
  303. 松永光

    ○松永国務大臣 保険契約者保護機構に基づく破綻事故が起こった場合の処置については、すべての保険会社が加入義務を負っておるわけでありまして、それに基づいて負担金を拠出している、その拠出した金で処理するというのが原則であります。ただし、移行期というのですか、それまでの間に十分な負担金等がまだ蓄積されていないとい う場合の資金繰りの都合で政府保証によって資金繰りをつける、政府保証で資金繰りをつけた分の最終支払いは負担金で清算がなされる、こういう関係になるものと理解しております。
  304. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 大臣、済みません。私、質問を終わろうと思ったのだけれども、ちょっとずれた答弁だったので。  いや、経過期間に限らず、保険業法の改正案の三百十一条の二では、機構の利用可能な資金の状況が著しく悪化した場合は、内閣総理大臣が必要な措置に関し大蔵大臣に協議しなければならないとなっているのだけれども、これが安易に公的支援を拡大するような方向に使われてはいけない、やはり保険業界の中の、まず業界の自主努力が大前提でしょう、その点を確認したいと思って質問いたしました。
  305. 松永光

    ○松永国務大臣 委員仰せのとおりだと思います。
  306. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、時間が参りましたので、きょうはもっとほかの質問も用意しておりましたが、また次回、次の機会にお願いをいたしたいと思います。  以上です。
  307. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 次に、鈴木淑夫君。
  308. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  松永大臣、ゴールデンウイークの連休明けというのに、朝から大変御苦労さまでございます。また、あしたはサミットの大蔵大臣会議にお出かけになると思うので、まことに大変だと思います。特に、委員席の方を見るとこのような状態ですし、委員長さんも席をあけておられる。こういう状況で朝からやっておられる大臣には、心から御苦労さまと申し上げたいと思います。  そうやって御苦労いただいておるにもかかわらず、私どもこの法案反対だということになると寝覚めが悪いのでありますが、幸いにして、この金融システム四法につきましては、その方向性について私どもは賛成でございまして、金融システム改革、なかんずく規制撤廃、規制緩和は、むしろ遅きに失することはあっても、この方向はぜひとも推進すべきだ、日本のためにぜひとも推進すべきだと考えておりますので、その点では寝覚めの悪い思いをしないで済むわけでございます。そういう立場できょうは質疑をさせていただきたいと思うのです。  ただ、この金融システム四法そのものの方向はいいのでございますが、私は、それを取り囲む環境について大変大きな問題があるなというふうに思っております。それは、私、前々から、衆議院議員に当選させていただいて初めて質問させていただいた一昨年の臨時国会の予算委員会、あるいは税制特別委員会等のころから言っていたことなのでございますが、こういう大きな構造改革を成功させる一つの大きな条件というのは、マクロ経済面の受け皿がしっかりしているということだという点なんですね。  どういうことかといいますと、構造を変えるということは、言うまでもなく、一方には新しい条件のもとで発展する部門がありますが、他方では、条件が変わる、規制がなくなってしまう、保護されていた部門は競争にさらされる等々で衰退する部門もある、そこから失業者が吐き出されてくる。ですから、それを吸収して発展する部門が他方にあって初めて構造改革というのはうまく進むわけですね。そういう意味では、衰退する部門、発展する部門、両方を合計したマクロの経済が着実に発展しているときに構造改革はうまくいくのだということでございます。  大変失礼ながら、私は、実は昨年の初めに、東洋経済新報社から二カ月に一回出ている「論争」という雑誌がございまして、そこに「橋本政権の「5つの改革」は失敗する」、当時は教育改革が飛び出してきまして中身がわからないものだから、五つの改革というタイトルで論文を書かせていただいたのですが、なぜ失敗するかという大きな理由として、今申し上げたマクロ経済の受け皿がない、それどころか、私の見るところ、間違いなくこれから日本経済は再び不況に陥るぞということを昨年の二月の時点でその論文に書きました。不幸にしてそのとおりになってきているわけでございます。そういたしますと、財政構造改革のための財革法、昨年十一月末に成立したばかりなのに、今またその改正論議が出ているように、構造改革というのは立ち往生するということは避けられないわけですね。  この金融ビッグバンについても同様の問題が私はあると思います。前にもある委員会で申し上げたのですが、サッチャーがビッグバンをやるとき、あれは八六年ですね。サッチャーが天下とつたのは七九年の終わりごろですが、七九年、八〇年、サッチャーが天下とったときのイギリスの成長率というのはマイナス成長でした。  彼女はそこですぐ構造改革に手をつけないわけですね。少なくともビッグバンみたいなことはやらない。何をやったかといえば、直接税の大規模減税をしてやる気を起こしてもらう。個人には働く気を起こしてもらう、企業には投資意欲を起こしてもらうということをする。それから、民間の活動の場を広げるために国営企業の民営化をしていくということで、いわゆるサプライサイドからずっと改革していくわけですね。そうしますと、成長率が八一年からプラスになります。しかも、だんだん加速してきまして、一%や二%からだんだん上がっていって、ついにイギリス経済では珍しく四%台という、イギリス経済にとっては猛スピードが出てきたころにどんとビッグバンをやっているわけですね。ビッグバンをやった結果、例のウィンブルドン現象が起きてしまって、ジョバーなどというのは消えてしまいましたし、マーチャントバンクスの多くも外国資本に吸収されたりするのですが、それでも経済が発展しておりますので社会的な問題は起きていない。それで、順調にイギリスの金融サービス業というのは発展しているわけであります。  そういうことを考えますと、この四法案の方向は大賛成であるが、これを成功させる一番大事な条件が今崩れてきておるじゃないかということを非常に心配するわけです。  それはマクロ経済ですね。この前、先週の行革特で、大臣も御出席のときに、私は、堀内通産大臣に、御所管の鉱工業生産、出荷、在庫率のグラフをお見せして、えらいことになっていますぞ、生産は、どんどん落ちてきておるところか、ここへ来て落ち方が加速をしているじゃありませんかということを申し上げたわけですね。  それで、その後、またもう一カ月後の統計が出ましたけれども、やはりえらいことであります。生産は、御承知のように去年の四−六に横ばいになってしまった後、七−九にマイナス〇・四、季節調整済みの前期比でマイナス〇・四、十−十二、マイナス二・三、この一−三にマイナス一・四ですが、今出ている四月と五月の予測指数、そして六月は、あれは予測が出ていないから五月と横ばいと仮定すると、マイナス四・四%なんですよ。四半期に前期に比べてマイナス四・四というのは大変な落ち込みです。これはもちろん一−三に相当落ちたものですから四−六がマイナスのげたを履いているということもありますが、四・四というのは大変な落ち込みなんですね。だから、足元の経済というのは、景気は明らかに後退しているのですが、それが加速している。鉱工業生産が過剰在庫を減らすための生産調整で一四半期に四・四%も落ちょっとしている。年率一〇%近くなってしまうのですね。えらいことです。その結果、水準はもう九五年の水準より低いですよ。九四年ごろの水準までおっこちてくるのですね。  だからこそ、失業率も御承知のように、この前発表のあった三月の数字が三・九%、もう四%台乗せは時間の問題。さらに驚くべきことには、学校を卒業した直後の十五歳から二十四歳の男子の失業率は一〇%台になってしまう。二けたになってしまう。あるいは定年退職後、まだ働けるという五十五歳から六十四歳の人たちの失業率も二けたになってしまったというえらい状況であります。こういうときに金融ビッグバンを推進してい くというのはまさに逆風であるわけで、北海道拓殖銀行あるいは山一証券で働いていた方、職を失って、職を求めるにしても大変な逆風が吹いているわけですね。ですから、金融改革はいいのだけれども、ちょっとこのマクロ経済を何とかしてよという感じを非常に強く持っています。  企画庁から調査局長、見えていますね。何かすごい勢いで、ジェットコースターが下っていくぐらいのスピードですわ、四半期率四・四%というのは。企画庁は、これは在庫調整でこうなっているわけですが、この在庫調整の先行き、どう見ていますか。いつごろまで生産はおっこちていくと思っているのでしょうか。まずその点を伺っておきます。
  309. 新保生二

    ○新保政府委員 お答えいたします。  先生指摘のように、このどころ鉱工業生産はかなり減少傾向にあります。これは先生も御説明あったように、やはり去年末から消費、特に自動車とか家電とか川下産業が相当需要が落ち込んだ、それが川上産業、素材型に波及してきておるという状況がありますし、それプラスアジア向けの輸出がこのところ不振であるということで、相当在庫調整が必要な局面になっておるということでございます。したがって、相当下向きの圧力がありますし、雇用が減少し始めますと消費にさらにマイナスに響くおそれもありますので、相当下押し圧力が強いというのは事実です。  ただし、あえてプラス面を少し御説明しますと、消費が御承知のように三月、七カ月ぶりに消費性向がプラスになるという形で、少なくとも下げどまりの動きになってきておるということで、これは企画庁の消費者態度指数なんかにも出ておりますが、昨年末の極端な金融不安というのが少しずつ薄らいできておるのが若干プラスに作用しておるという背景があるかと思います。  それで、やはり一番重要な点は、今後設備投資がどうなるかということですが、確かに十年度は大体四%前後の減少になっております。ただ一つだけ、これも明るい方をあえて御説明しますと、通常、前年の八月が最初の調査で、三月の調査で上方修正になるか下方修正になるかが非常にポイントなわけですが、大体景気後退局面では八月調査から三月調査にかけて下方調整になるわけですね。九二年から九四年は大体そういう形になりましたが、今回は、八月調査よりは三月調査の方が若干上方修正になっておりますので、景気後退局面のような下方修正の動きにはこれまでのところまだなっていないわけです。したがって、今回の十六兆円対策が効果を発揮すれば、設備投資がどんどん下を向くという形は何とか食いとめられるのではないかというふうに見ております。
  310. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 相変わらず楽観的というか、いい材料ばかりおっしゃるなというふうに思いますね。年率二割近いスピードで生産が落ち始めているときというのは、これは賃金物価に、それから雇用にはねていきますから、消費が所得面から崩れてくるのですね。おっしゃるように、消費性向が久しぶりにちょっと上がったという明るい話題はあるけれども、しかし、消費性向掛ける所得が消費になるわけで、その所得の方が生産の急落によって雇用、賃金面から崩れてくれば、消費全体はとても回復局面なんて展望できないというふうに私は思います。  それから、設備投資については、おっしゃるようなことはありますが、おたくで調べている法人企業動向調査を見ても先は非常に暗いですね。それから、もちろん金融機関日本銀行を含めて行っている本年度の設備投資計画調査を見ても一斉にマイナスという結果が出ております。  ですから、はっきりはおっしゃらなかったが、民間の調査機関の見解を見ますと、今始まった在庫減らしの生産の落ち込み、生産調整というのは、一番楽観的な言い方をするところで七−九までと言っていますよ。九月までと言っているのですね、年度上期。それから、ほとんどは年末と言っているし、一番悲観的なのは年度末、来年三月と言っていますね。そういう非常に深刻な状況にあるわけであります。  そこに、今局長も言われた十六兆円強の事業規模の景気対策をぶつけてきたわけでありますが、その効果やいかんというのが次の質問でございます。  この中身は財政政策ですので大蔵大臣にお伺いするわけですけれども、この十六兆六千五百億の中に直接需要拡大に結びつかない、いわゆる真水ではない部分が四兆三千五百億ぐらいありますね。土地債権の流動化対策、中小企業対策、雇用対策、この辺の効果については、この政策を打った大蔵当局はどのように分析しておられますでしょうか。
  311. 塩谷隆英

    ○塩谷政府委員 総合経済対策の効果の試算は経済企画庁で担当いたしましたので、私からまず御説明を申し上げます。  今回の総合経済対策には数値化できない項目がいろいろと含まれているわけでございまして、その効果を定量的にお示しすることは大変困難でありますが、あえて試算をいたしますと以下のようになると考えております。  今回の対策における国と地方の減税や社会資本整備の財政負担は合計で十二兆円程度でございます。総事業費は十六兆円超と過去最大となっております。ここから、来年継続をいたします二兆円の特別減税、これは差し引いております。それと政策減税、さらに政策金融等を除きまして、かために見積もって試算をいたしております。その波及効果を含めた向こう一年間の効果を試算いたしますと、名目GDPの二%程度になるというふうに見ております。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  312. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 私は、今の分析とはちょっと違う考えを持っておるのですね。  松永大臣、二兆円、二兆円、特別減税、ことしと来年二回やって四兆円だというわけですが、この特別減税、大臣も御承知のように九四年から一やっていますね。九四、五、六と三年来たわけですね。これは、二兆円特別減税した後ずっと二兆円で横ばいで来ているわけですから、需要追加になっているわけではない。二兆円減税した後そのままで来ているのですね、二兆円ずっと。そして、去年打ち切っちゃった。私ども、新進党時代に一生懸命反対したのに、打ち切っちゃった。それを、しまった、間違えたといって、ついこの間復活したわけですね、二兆円、九七年度分を。そして本年にももう一回やるというのですから、しまったといって復活した分は、あれは九七年だといって九七年に入れます。そして、九八年におやりになる。そして来年、九九年もおやりになる。何のことはない、九四年から九九年まで六年間二兆円減税が横ばいだということですよ。  もし、そういうふうに考えると、二兆円減税した後年々二兆円減税しているというときに、どうしてこれは需要拡大しますか。これは増税をしないというだけ。これは、打ち切ったら二兆円増税になるわけですね。だから、九七年度には二兆円増税のインパクトがばんときたわけですね。それにあと消費税の五兆円も加わって、七兆円増税のインパクトがきたわけですが、これは、打ち切るのをやめましたと言っておられるだけですよ。四兆円とおっしゃるが、何のことはない、もう九四年からやっている二兆円減税を九九年まで続けます、その九八、九九年分を四兆円、こう言っておられるわけでしょう。  これは、確かに九七年にサボって九八年に二年分やるから、そこはちょっと効果が出ますよ。けれども、ならして見てしまえば、二兆円減税がずっと九九年まで横ばいになるということでしょう。これは増税延期であって、減税じゃないのですよ。減税したのは九四年なんです。あとはその減税を続けているということだから、これは増税延期ではあっても、新たな減税ではないのですね。  だから、ここに言っている四兆円減税、その効果はとおっしゃるが、そんなものはならして見ればないのですよ。ただ、ちょっと九七年にサボって、九八年に九七年度分も年初にやり、それから九八年度分もこれからやるというから、それは ちょっと出る、ちょっとはプラスになるけれども、ならしてしまえば、これは胸を張って減税でございますと言うのは、ちょっと私はごまかしであるというふうに思います。  したがって、この真水十二兆円の中から今二兆円をお取りになると言ったが、まずこの減税については四兆円引くのが正解。つまり、これは増税をしないということなんです。増税をしないということであって、新たな減税をするのじゃない。減税は、九四年にやった減税がずっと横ばいなんですよ。  そこは、大蔵大臣はそういう説明を下から受けておられないと思いますが、今私がこういうふうにわかりやすく申し上げたことをお聞きになって、どうお思いですか。なるほど、これは減税、減税と言っておるが減税継続ということだな、新たな減税ではないな。ということは、これは増税をしないとは言えても、減税したとは言えない。どうでしょう、その点は。
  313. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 事実関係ですので、最初、私どもの考えでいる事実関係について御説明させていただきたいと思います。  今先生の御指摘がございましたのは、昨年二兆円の特別減税がなかった、それで、ことしに入って二兆円の特別減税、さらに二兆円の追加をするということになっておりますので、その辺が、本来昨年のない分を計算するべきではないかというお尋ねかと思います。  ただ、平成六年秋の税制改革といいますのは、まさにバブル崩壊後の経済対策にも配慮するという見地から、三年間減税を先行する、十六・五兆円の減税を先行する、それと見合いで消費税率を、地方消費税の一%を含めて二%引き上げをするという一体のものであったわけでございます。  確かに、昨年度、そういうことで、当時の経済状況から見ても必要がないということで二兆円の特別減税は行わなかったわけでございますが、今申し上げましたこの平成六年秋の税制改革というのは、そのような三年の先行減税をすることによって後年度にわたってプラスの効果を期待するということでございましたものですから、今先生がおっしゃいましたように、今回、二兆円の年内の追加減税を行うこととしておりますし、来年の二兆円の減税、これはまだ実施方法が決まっておりませんので、今回の景気の効果を計算する上から外してございますけれども、この二兆円は丸々減税になると考えてよろしいのではないかと思っているわけでございます。
  314. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 いや、今の説明は僕は納得しませんね。私も九四年ごろは政府税調のメンバーでしたからよく知っています。要するに、年間五・五兆円なんですね。それで、そのうち二兆円が特別減税で、それで三年やったらおしまいよ、十六・五兆円でおしまいよと。これは、だから五・五兆円の減税を三年続けるという約束。そして、約束どおりでございますよといって二兆円の特別減税をやめた。残り三・五兆円分は消費税のアップで回収しますよといっておやりになった。だから、両方合わせて五・五兆円の減税を取り戻すのに七兆円の増税をされた。  それは、その間の金利負担等々いろいろあってそういう計算をしたのは、私も税調のメンバーとしてよく知っています。そうやってつじつまを合わせていこうと思ったあのときの前提になっている経済状況というのは、三年やれば立ち直ると思っていたのですね。それで、事実、九六年に経済が立ち直ってきたものだから、これは三年たって立ち直ったわいということではんと約束どおりやっちゃったら、やはり七兆円増税のショック、それにあと二兆円の健康負担の増加もあった。それから、公共投資をぐんぐんカットした。このデフレ効果まで加わったものですから、経済が参ったといっておっこっちゃってマイナス成長になつちゃったというのが九七年度の姿で、それで、やはり間違っていたというので二兆円分は戻したというのが現状なんですよ。  ただ、二兆円分戻したというところだけ見れば減税効果はありますよ。けれども、それは九七年度にやめちゃった分を慌てて年度末に戻したのだから、ずっと見れば二兆円は継続しているじゃないかと言っているわけです。  だから、今のせっかくの主税局長の御説明ですが、私は、そういうことは百も承知だが、今言った意味で、これはならして見れば、新たなる減税ではなくて、打ち切るはずのものを継続しているというにすぎない。打ち切ったら増税ですが、継続していれば増税ではない、つまり増税延期ということだというふうに思います。  もう一つ引き算しなければいけないことがあると思うのですよ。それは、一・五兆円の地方公共団体の単独事業であります。きのうでしたか、新聞に出ていましたが、地方公共団体は、もう大臣、自治大臣に聞かなくてもよく御存じのように、やはり国と同じように非常に財政事情が悪いわけですね。経済が落ち込んでいるために独自税源から入ってくる税収が少ない。その上、ここでまた特別減税が復活しちゃったものですから、住民税でおつき合いをしなければいけないという状況ですから、何と東京都や神奈川県のような大口のところが、私は嫌ですよ、つき合いませんよとはっきり言っていると新聞には書いてある。  ですから、地方の単独事業の一・五兆円というのも、私はやはりちょっと丸々いただくわけにはいかない数字だ、こんなものを入れて乗数効果でどうのこうのと企画庁は計算しているとしたら、それはちょっと過大でしょうなというふうに思いますが、大臣、この一・五兆円の地方の方は大丈夫ですか。どのくらいやってくれそうですが。僕の感じでは三分の一ぐらいしかやってくれないのじゃないかと思っていますが。
  315. 細川興一

    ○細川(興)政府委員 今回、全体の経済対策をとる中で、地方にもよろしくお願いしたいということでお願いしているところでございまして、私ども、一・五兆円になるように期待し、要請しているところでございます。
  316. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 なかなか正直な回答でよろしい。期待し、要請しているのですよ。しかし、地方自治体の方は、とてもおつき合いできませんと言っているところが非常に多いですね。  ですから、私は、民間の調査機関の検討状況を見ていくと、さっき言った、まず四兆円は引いちゃう、それからこの一・五兆円も丸々引くか一兆円ぐらい引くか、引いちゃうのですよ。そうやっていきますと、それから政策減税やなんかも引いていっちゃうと、大もとは六兆円強だというふうに私は見ております。六兆円強がいわゆる純粋な需要に追加になるであろういわゆる真水だなというふうに思うのですね。  そうしますと、六兆円強というのは、乗数効果をどのくらいに見るかにもよりますが、効果は本年度から来年度、そして再来年度の一部にかかるでしょう。けれども、本年度だけに限定しちゃいますと、民間が言っているように、GDPの一%強持ち上げるかなという程度であって、とても先ほどの調整局長が言われたような二%という数字は出てこないですね。  それで、一%強だとしますと、大臣、本年度は政府のお見通しの一・九にはとても届きません。なぜなら、今度の十六兆円の対策を打たなかったら本年度経済はどうなったか。民間の調査機関は、九七年度のマイナス成長に続いて本年度もマイナス成長だっただろうというのを標準型にしているんですよ。それに向かって十六兆円の効果をつけてくる。そうすると、マイナス成長がゼロ%台のプラス成長、〇・五から一・〇ぐらいのプラス成長になるだろうなというのが大体の民間の調査機関のコンセンサス、多数意見であります。  一・九に届くという企画庁の分析は、それはそれとしてあるのでしょうが、私は、今言ったように、大もとのところが大き過ぎるから、こうやって引いていって、それから乗数効果を伴う拡張効果というのは本年度から来年度、再来年度へわあっと分かれて出てくるということを考えると、本年度の成長率を一%ちょっと持ち上げるのが精いっぱい。民間の調査機関によっては一%も持ち上げないと言っているところがあります。もちろ ん、その分来年度にもプラスの影響は出るんですよ。  ですから、大臣、そういうマイナス成長が何とかプラス成長にはなったが、〇・五から一%ぐらいの成長率という中でこの金融構造改革を推進していくというのは相当の逆風であって、やはり本来は、大蔵大臣は金融構造改革と並んで財政政策の担当者でいらっしゃるわけですから、こういうマクロ経済状況のもとで金融ビッグバンを進めるというのはかなり摩擦がある、うっかりしたら立ち往生じかねないから、もう少しマクロ経済の受け皿をよくしなければだめだという御主張をしていただきたいというふうに私は思うのですね。ぜひそれは、私がそう言っていたということを頭に入れておいてください。  今のままでは金融ビッグバンも大変ですぞ。せいぜいゼロ%台のプラス成長ということだと、これは九二年度から九四年度の三年間のあの不況の状況と同じだということです。あれは大体〇・四%、〇・五%、〇・六%なんですよ、覚えやすい数字ですが、九二、九三、九四年度という成長率が。あのころに逆戻りする程度なんですね。ですから、どうぞ油断を召されないように、マクロ経済の受け皿について油断されないように、さっきの企画庁のような説明を聞いて、おお、一・九かなんて思わないように、私は警告をしておきたいというふうに思います。  そこで、この金融システム改革に入っていく前にもう一つお伺いしたい。  これは割と純粋に教えてちょうだいという話ですが、先般三十兆円用意されましたね。十七兆円、十三兆円。そのうち二十兆円は債務負担行為で予算書に出ていた。十兆円の交付国債はどこかにあるかと思ったら出てなかった。その処理はそれでいいんだと思いますが、どのくらい今お使いになっているか、またこの先どのくらいお使いになる見込みになっているかということです。例の十三兆円の分については、二兆円ちょっと資本注入したらストップしちゃったんじゃないかと私は思いますが、この先どうか。それから、十七兆円についてはちょっと、拓銀の処理をやっていくと多分足りなくなって十七兆円に手がつくのかなと思っていますが、どういう状況でしょうか。
  317. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げますが、十七兆円、十兆円と七兆円に分かれておりまして、十兆円の方はいわゆるファイナンスという形でございます。それは、ロスが出れば七兆円の方になりますので、七兆円のことをちょっと頭に置いて御説明申し上げてよろしゅうございましょうか。  前にも先生からのお尋ねがあって、ちょっとその時点から若干変わっておると思いますが、五年間の財源見込みが二・七兆円、これは保険料での収支の収入でございます。それで、現時点での実行済みの金銭贈与が十四金融機関ございまして、一・五九兆円でございます。それを差し引きますと一兆一千百億ぐらい、こんな感じになっておりますが、既に破綻が表面化した金融機関で三銀行、九組合、これの処理が実は予定されております。これ以降一切破綻がないということであるといいんですけれども、それは何とも申し上げられませんので、現在破綻が表面化したものだけを申し上げますとそういった数になって、その中には北海道拓殖銀行も含まれております。  それで、資金援助となりますと、実際、精査をしませんと債務超過額、幾ら資金援助すればいいのかというのがはっきりいたしませんので、ざっとした考え方、例えば北拓だと八千四百億という一応とりあえずの検査結果を公表しておりまずけれども、そのベース、それから徳陽シティはまだ検査が終わっていませんので、一応ゼロと置いたいうような前提でお聞きいただきたいのですが、それが足しますと約一兆でございます。  正確に言って、一般勘定と特例勘定と分かれますので、またごちゃごちゃになった説明がありますので、ちょっと省略させていただきますと、大体そんな感触でございまして、今後の破綻、あるいは今申し上げた金融機関での実際の資金援助の所要額というものを考えますと、七兆円をお認めいただいたものを利用させていただく可能性というのはあるというふうに私は考えておるわけでございます。その破綻がどんどん出てくるとかいうことを予想して申し上げているわけではないわけでございますけれども、そんな感覚で今おるわけでございます。
  318. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 要するに七兆円の一部に手がつきそうだな、これは非常に常識的な判断でそうだと思います。それ以外にも、十兆円の金繰りのところも使いますね。保険料というのは一年一年入ってくるので、今の金額を聞けば、保険料と大体とんとんだということは金繰りで使うということです。  それと、山口局長、もう一つ。十三兆円はあれで終わりかね、二兆円ちょっとで終わりかねという点についてもお答えいただきたい。
  319. 山口公生

    山口政府委員 御承知のように、十三兆円につきましては、約二兆円弱を三月末の時点で投入をさせていただきました。この措置は二〇〇一年三月までの措置でございますので、今後の状況いかんによっては、金融機関から申請があり、審査委員会が是としたものについてはまた資本注入があるわけでございますので、何ともそこは申し上げられないということでございます。
  320. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 前半の十七兆円は私が言うとおりでいいんですね。金繰りには使うということですね。  さて、私ども、この三十兆円が出てきたときに、十七兆円については基本的には賛成をさせていただいたわけですね。これは機能的に日本版RTCの設立に相当するものであって、むしろ遅きに失した、新進党は住専処理のときにもこのことを言っていたんですよということで、これには賛成いたしました。それで、これの使用状況、やはり、今伺ってみますと、金繰りではもちろん欠かせないし、最終的にも少し公的資金を使うようになるかもしれないということで、つくってよかったねということだと思います。  ですから、これはいいんですが、十三兆円の方は、御承知のように、私どもは、これは日本版RFCで、一九三三年に逆戻りだと。公的資本の注入というのは、これは経営救済的に使えばモラルハザードが発生する、大変不公平だということで、アメリカではそういう使い方をしてはいけないということになっている。健全な銀行なら市場で調達できるからどこも手を挙げないはずだ。つまり、これは使えば問題を引き起こす、そういうところに入れないといえば要らないお金だ、そういうことで反対したわけですが、その後、委員会などをおつくりになって、私どもが猛反対をした経営救済的な資本注入はしないという方向でおやりになったものですから、結果は二兆円弱でとまってしまったのですね。それは私に言わせればよかったということであります。モラルハザードを発生させるような経営救済的な方にお金を使わないから二兆円でとまったので、それはそれで私どもの主張を入れていただいたという意味でよかったね、今後も経営救済に使ってはだめですよということであります。  それでは、二兆円弱がどうして出ていったのか。これはあのときにも御指摘申し上げましたように、どう見ても市場で調達できる銀行にも手を挙げろといって手を挙げさせて、何か護送船団的に使ってしまったな。これは私が言っているだけじゃなくて、世間一般の受けとめ方もそうでありますし、そう言ってはなんですが、私は銀行の頭取を大勢知っておりますから、直接裏話も聞いておりますので、もうこれ以上は申しませんが、そういうことで二兆円弱お使いになったが、それ以上は使わぬということは、私はむしろ結構なことだと思っております。  どうぞ、貴重な国民の税金でございますから、経営救済的な使い方、不公平な使い方はしないで、まだ十一兆円あるなというので何か使えないかというような下知をなさらないように大臣にお願いをしたい。今の御方針でやっていただきたいというふうに思いますが、いかがでございますか、大臣。
  321. 松永光

    ○松永国務大臣 委員よく御承知のとおり、申請主義でございますから、考えられるのは、受け皿銀行については、これは資本注入の申請についてはそれに応じて資本充実のための支援をするという考え方になっておるわけでありまして、こちらの方が出てきた場合には、十三兆のうち二兆使って残り十一兆あるわけでありますけれども、厳密に言えば、三兆の交付国債の方は使っておりませんで、政府保証によって日銀等から借り入れた分から二兆円使ったということでございます。受け皿になる銀行が出てきて、そして、何といいますか、分子の方が足りなくなったということでの申請があった場合には、これは審査委員会を開いて、審査基準に基づいて適正な審査をして対応する、こういうことになろうかと思います。
  322. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 私ども自由党だけでなくて、他の野党も受け皿銀行に資本注入するということには賛成していたと思うのですね。受け皿銀行のような例外的な場合を除くとこの公的資本注入は問題ですよということを繰り返し申し上げていた。当時は新進党としても申し上げていたし、ですから、今の野党も大体の意見はそうなのだろうと思います。ですから、今大臣お答えのように、受け皿銀行が、どうしても市場で調達できないのだ、受け皿になって資産だけえらい大きくなってしまったけれども、資本調達力からいうとちょっと無理なんだということであれば、残りの十一兆円強をお使いになっていただいて結構だと私は思います。  ただ、当面話題になっていた北洋銀行に関して言いますと、私が集めた情報では、北洋銀行はその気になれば公的資本注入してもらわなくても自己資本比率四%達成できそうだという話もありますね。これは、もしそうだとしたら無理に公的資本を注入する必要はないので、市場調達する、自立した銀行として自己努力でやれるのだというなら、ぜひそういうふうにさせていただきたいというふうに思います。無理やり護送船団的におやりにならないでいただきたいと思いますが、いかがでございますか。
  323. 松永光

    ○松永国務大臣 申請があった場合には審査委員会で審査をして、あれは全会一致であったかと思うのでありますが、それで決まったならばその決まったとおりになるということでございます。  なお、仕組みとしては、民間の方で資本の充実を図りたいというわけで申請があった場合には、これまた審査委員会で決めることでありますので、私の方がここであれこれ言うというのはちょっと言い過ぎになろうかと思います。私も現段階では審査委員の一人でありますけれども、申請があった場合には審査委員会議論をして決める、こういうことになるわけでございます。
  324. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 それは形式的にといいますか、建前といいますか、それではそうだと思うのですが、私が大臣にお願いしましたのは、内々で、もうやめたはずの密室談合型の、誘導型の、事前介入型の行政指導などは決しておやりにならないでくださいという意味であります。  それでは、今話題になっていた資本注入の話なんですが、今の政府金融行政というのは考え方の根本のところで少し混乱してやしないかと思う節が幾つかあるのですね。  例えば、今の公的資本注入の話というのは、自己資本比率を高めなさいという話ですね。ですから、国際的に競争している大銀行の場合、九%台ですね。八%ぎりぎりなんてありゃしない。九%、いいところは一〇%。ところが、何となく金融界、私さっきも言いましたように大勢知人がいますから聞いてみると、自己資本比率は多々ますます弁ず、高ければ高いほど健全なんだ、いい銀行なんだということで、一〇%の次には一二%、一二%の次には一五%といいますか、自己資本比率引き上げ競争みたいなのが横並び意識と絡んで進行しているように思えてならないのですね。これが御承知のように貸し渋り、貸し出し引き揚げの一つの背景にあるわけです。自己資本比率をそんなに上げようと思わなければもっと貸せるのに、上げようと思うものですからそうなる。これは、早期是正措置の中から出ている政府の御指導で、自己資本比率は高ければ高いほどいいという雰囲気をつくり出していると思うのですね。  ところが、景気がこういう状況、しかもその大きな原因が資産デフレということだものですから、他方で不良債権の早期処理もやりなさいという指導をしている。それがいいことだ、早く不良債権を償却して早期処理していくことはいいことだ、これもまた健全な銀行に戻る道である、こういう御指導、考え方をお持ちでしょう。  しかし、大臣、もう私が何を言おうとしているかおわかりだと思う。この二つ、矛盾していますね。不良債権処理を急がせれば資本は傷みます、償却していくわけですから。ところが、他方では、自己資本比率多々ますます弁ずみたいなことを早期是正措置に絡んでおっしゃる。金融界は今、この二つの路線のどっちなんだろうということに迷っています。迷った結果、何となく自己資本比率引き上げの方へウエートをかけた経営をしている。  大臣、この二つのうちどっちが大事ですか。矛盾しているのですから、どっちか大事とおっしゃらないと説明つかぬでしょう。いかがでしょう。
  325. 山口公生

    山口政府委員 お答えいたします。  いつも先生の御質問、考えさせられる難しい問題でございますけれども、早期是正措置の考え方自体が、少し私どもの考え方と御認識において違いがあるのかなと思いますのは、早期是正措置というのは、確かに措置としては行政措置、行政命令を出すということでございます。それは、自己資本が高ければ出さないということですから、どうしても自己資本を上げるということを要請するという結果になることはそのとおりです。  ただ、強調したいのは、早期是正措置になる前提となる自己資本をはじく前の段階、つまり自己査定をきちっとやりなさい、それから償却すべきものは監査法人に見てもらってきちっとやりなさいという前提なんですね。したがって、金融機関が今一番頭を痛めているのは、ある意味では、本来やるべきことだったのですけれども、きちっとそういった措置をする、そうするとそれは何を意味するかというと、不良債権を早期に処理をせざるを得ないという、よほどそこに何かの事情があれば別ですけれども、そういうことに追い込まれている。そうすると、その結果として残念ながら自己資本比率が落ちざるを得なくなってくる。それはまた先生おっしゃるとおりです。  そうすると、物事の発想としては、まず不良債権処理が最初にあって、それから自己資本比率を下げないようにしなければいけない。一方で、国際的に八%というバリアはある。そこで、せっぱ詰まった形で、市場が機能していればよかったのですけれども、していないので公的資金、こんな話に流れていったと思うのでございますが、それは四%銀行においてもしかり。そうすると、そういう公的資金の導入を得なかったところはどうするかというと、これはもうリストラしかないんだと思うのです。リストラして業務純益を上げて償却財源をつくるしかないということでございまして、確かに先生がおっしゃるように、それが余りにも近接して起きているじゃないかという御批判は、それは当たっていると思います。  しかし、現在の時点においてやるべきこと、まず不良債権を償却すべきものは償却して、自己資本が下がろうとするものをどうやって自助努力あるいはリストラで最小限にとどめるか、こういうことを今急速にやってもらっている。それで金融機関としては頭が痛い。しかし、これはいずればやらざるを得なかったということではないかというふうに考えるのでございます。
  326. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 山口局長の御説明はそれなりにわかるのですが、実際は、さっき私ちょっと言ったように、不良債権の早期処理はやりたい、しかしそうすると自己資本比率は痛む、何とかぎりぎり八%あるいは四%をクリアしたい、こういう思いでやっているなら私もしょうがないなと思うのです。ちょっと矛盾した二つのことを要求してしまった以上しようがないなと思うのですが、さっ き言いましたように、実際に銀行界の雰囲気を見ると、自己資本比率引き上げ競争みたいなところがあります。八%で満足していない。もっと上げていかないと他行におくれをとるぞという、例の横並び意識が働いてしまって、次は一〇だ、次は一二だという意識で動いているのですよ。  そこで、私は松永大臣にお願いしたいのは、昔のような行政指導をやってくださいと言っているのじゃないですよ。一行一行呼び込んでやれなんて言っているのじゃない。ましてや局長に対して晩飯食いながら話しろなんていう危ないことを勧めているのじゃない。そうでなくて、昼間きちっとしたところで、自己資本比率というのは高ければ高いほどいいわけではないよ、この指標というのはオプティマルな、適正な水準があるよ、これが八であったり四であったりするんだ、それをちょっと超えたぐらい、そうしたら、そこから先は、こっちは上げればいいという話ではないんだ、大いに不良債権処理を急いでもらっていいんだよという行政の基本方針を言っていただきたいものだと思うのですよ。  大臣にも、そういう考えをどこかで講演でもなさるときに言っていただきたい。いたずらに横並び意識で自己資本比率引き上げ競争なんかするなということを言っていただきたい。自己資本比率にはオプティマルなレベルがある、それを超えてどんどん引き上げたら、それはだめですよ。競争に負けてしまうし、もちろん貸し渋りも起きますし、それを大事に思ったら不良債権の早期処理が進まなくなってしまうのですね。  これは今や両方一遍にやってしまっている。山口局長、正直に言われてそのとおりなんですが、本来はこれは順番にやらなければいけなかったのですね。米国の例を見ると、不良債権早期処理を八〇年代後半に先にやっているんですよ。それから、自己資本比率を問題にする早期是正措置が九一年の暮れに入ってくるんですね。そういう形で順番をつけてやればよかったのだけれども、今ごろになってそんなことを言っても手おくれですから、批判することはできても手おくれだから、建設的な物の考え方として申し上げるとすれば、今言ったようなことです。この二つは本来トレードオフの関係にあるのだ。トレードオフの関係にあるのに、片一方を多々ますます弁ずだと思ってやられたのでは、こっちがだめになってしまう。しかし、今の日本の景気にとっては、不良債権早期処理ぐらい大事なことはないのですよ。むしろこっちの自己資本比率は一定のところにいっていたら、あとは不良債権早期処理の方へ急がせなければいけない。いかがですか、大臣。
  327. 松永光

    ○松永国務大臣 今委員指摘のように、自己資本比率、高ければ高いほどいいというものではないと思いますよ。八%を悠々クリアしておけばそれでいいのじゃないかなというふうに私は思います。自己資本比率をさらに高めていく、一〇にし、一二にし、一五にする、そのことのために不良債権の償却を怠るとか、あるいはまた貸し出しをふやさないとか、そういったことは実は我が国経済にとっていいことでありませんので、自己資本比率上昇競争はやめてもらいたいなという感じを私は持ちます。  実は今、政府・与党で十六兆円強の経済対策を決定をして、いろいろなことをこれからお願いするわけでありますが、その経済対策をやったとして一番気になるのは銀行等の貸し渋り。貸し渋りがあればいろいろな対策をやったとしてもその効果は減殺されるぞ、それほど出てこぬぞという指摘もあるものですから、そこで先般、二十七日の日でございましたけれども、都銀の代表、長信銀の代表、信託銀行の代表に来ていただきまして、少なくとも公的資金によって資本注入を受けた銀行が、国民から依然として貸し渋りをしているなどという批判を受けることは甚だ残念、そういった批判を受けないように、健全な経営をしておる企業に対してはきちっと融資をしてもらいたい、円滑な貸し出しをしてもらいたいということを実は要請をしたわけであります。  銀行法の規定では、命令するとか指導するというのではなくして、要請というか、そういう形でやりなさいというふうにわざわざあの法律、書いてあるようでありますから、あの法律の精神に基づいて要請をいたしました。そうしたら、ある新聞では、実は批判されたんですよ。銀行の代表を呼んで要請するのは実は護送船団方式の復活じゃないかなどという批判を受けました。しかし今、貸し渋り問題が世間で非常に厳しい批判を受けているときでもありますから、そしてまた、資本注入をしたことでもありますから、やはり国民の批判がないように、銀行としての社会性、公共性の精神に立ち返って健全な企業に対する融資というものはやってもらいたいということを要請したわけであります。私は、間違ったことをしたとは思っておりません。今後ともその点については努力をしていきたい、こう考えているところでございます。
  328. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 二つのことがありまして、一つは、自己資本比率が高ければ高いほどいいわけじゃないということなのです。ぜひそのこともそうやって銀行の指導者を集めたときには強調していただきたい。それもおっしゃっていただいたのかもしれませんが、ぜひその点にウエートを置いていただきたい。  それから、もう一つあるのは、貸し渋り解消。貸し渋りをしないでくれというのは、大臣おっしゃるように、それは要請です。昔のようにそれを命令してしまってはいけないわけです。要請としてそういうふうにおっしゃっていただくのはもちろん結構だと思います。しかし、それが何か実は要請という名の命令だ、昔流の介入行政だというふうにとった人は新聞で批判したのだろうと思いますから、ぜひそれは、介入行政じゃない、命令じゃないというところをはっきりさせておっしゃっていただきたいものだというふうに思います。その限りでは、私はそういうことをやっていただくのは結構なんだと思っております。  ただ、要請される方の立場に立ちますと、実は貸し渋りをしている理由は資本が足りないためだけではないのです。これはまさに金融ビッグバン、このシステム改革法案が実行に移されることを頭に置いて、収益率を高めるためのリストラの一環として融資構造をリストラしているのですよ。ですから、要請される方の身になってみると、ちょっとつらいものがあるのです。ここにもちょっとしたトレードオフというか、行政指導上の矛盾というか、矛盾を自覚された方がいいですよという点があると思います。  それは、一体日本銀行の資本は過大かね、過小かねというのです。それは、なぜこういうことを言うかというと、早期是正措置で自己資本比率を上げなさいと言うときは、日本銀行の資本は過小だよという観点からふやしなさいと言うわけですが、言うまでもなく、資本をふやせば資本一単位当たりの収益率、ROEが下がってしまう。だから、それで評価されれば株価だって下がってしまう。そうしたら、ビッグバンで国際的に競争しようとするときにあの銀行はだめ銀行だという話になってくる。つまり、自己資本比率に示されるような安定性指標とROEに示されるような収益性指標というのが矛盾していて、実は資本をふやせば安定性は上がるが収益性は下がる、資本を落とせば今度は逆になってくる、こういう矛盾もあるのですね。  それで、ROEを上げるもう一つの手は、言うまでもなくまたリストラがあるわけですね。リストラで体質を強め、収益率を上げるのだ、それこそが今目指している大事な目標なのだということだと思います。  大臣、この点についてもぜひ講演などされるときに言っていただきたいと思うのです。つまり、さっきのお話のときに、自己資本比率は多々ますます弁ずじゃないよという、もう一つ言えば、収益率が下がってしまったらこれからビッグバンで戦えないじゃないか、資本をただただふやしたら収益率下がるのだぞ、株価もおっこってしまうぞ、こういう話もぜひ言っていただきたいと思いますが、いかがでございましょうか。
  329. 山口公生

    山口政府委員 大変大事な点の御指摘だと思います。  我が国の銀行は、まあ言ってみれば非常に規模が大きいということで今まで高い格付をもらっておったということですけれども、逆に言いますと、先生の御指摘のように、資産だけ大きく、それに見合った自己資本も多いだろうけれども、効率が悪いね、収益率が低いねと。例えば、利ざやを見ましても、アメリカの銀行等は三%ぐらいは取っている、日本は一%台しかない、これでは幾ら銀行が逆立ちしても勝てないじゃないかという議論もあるわけです。そうすると、国際競争力を強めるためには、もちろん、自己資本比率をできるだけ高めると同時に、ROEとかROAとかいうその収益性を高めなければいけない。  そのときにいろいろな方策があって、リストラということを再三申し上げていますが、加えて、やはりいろいろな手段も与えてあげる必要があるということで、今回法案で御審議賜っておりますSPC法等は、これは要するに資産を少し減らすお手伝いをする仕組みでございます。要するに、資産を減らすというときに、例えば中小企業向け貸し出しを健全な先もむやみやたらと削ってしまうということになりますと、大臣が御心配された貸し渋り現象ということになる。そうでない非効率な、例えば不良資産、あるいは良質なものでもそれは証券市場の方でやるということもありますし、いろいろな形での資産の組み立て方といいましょうか、効率的な資産構成といいましょうか、そういったものをいかに構築するか。  それと、もう一つはやはり戦略だと思いますね。もうからない仕事を一生懸命やるのか、少し自分の得意な分野なりノウハウで食っていけるようなところを伸ばすというようなことをやりませんと、なかなか一挙に資産を半分にすればいいじゃないかとも言えない話でございますので、そういったところの努力、まあ広い意味ではリストラだと思いますけれども金融機関はそれぞれ考え、これから国際的な競争裏で打ちかっていっていただきたいというふうに考えておる次第でございます。
  330. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そういう考えでお願いしたいと思いますが、ただ、ちょっと気になりますのは、銀行の経営者の立場に立つと、今山口局長の話を聞いていたときに引っかかるところが一つあると思うのです。  私どもは収益率を高める融資構造のリストラをやっているのだ、だれが健全な中小企業、成長性の高い優秀な企業に対する融資を切るものか、冗談じゃないよ、必ずそう言われますよ。ですから、そこはお気をつけいただきたい。そんなばかな経営者じゃないのです。そんな形式的に中小企業だから切るなんということをやっているのじゃないのです。相当考えて考えて、成長性の高い企業を残し、それから融資の歩どまりが悪かったり、その他いろいろな理由で収益性の悪い融資しかできないところを切っているのです。だから、そこはお気をつけになった方がいい。経営者は必死になって今リストラをやっているわけです。  それから、似たような、資本は多いのかね、少ないのかねという話なのですが、これは政府というより自民党さんなのです。議員立法でおやりになって、私も基本的には賛成したのですが、二つおやりになった。土地の再評価を認めてやろうねという法案、ありましたね。私ども賛成しています。それから、自社株の買い入れ消却をやりやすくしてやろうと。これも私は、前国会のときは一緒に議員立法で名を連ねさせていただいて、一緒に賛成していますが、実は、この土地再評価を認めて資本をふやしてやろうという話と、自社株買いで資本を減らしてやろうという話は、方向が逆方向なのです。一体日本は資本が多いのかね、少ないのかね、問題意識は一体どうなっているのかねと。  実は、これは別に自民党さんの政策企画者の頭が混乱しているのではなくて、二つ問題があるのですよ。御承知のとおりです。つまり、バブル時代に物すごい安いコストで、ほとんどコストなしでエクイティーファイナンスができた時代にばんばん資本調達してしまった企業が、その後の情勢の中で、これは資本過剰だ、自社株買いをして一単位当たりの品物を上げていかなければだめだなということに気づいているというグループが一方にあるのです。他方には、実は相当ないい土地を持っておる、この含み益を出せば相当自己資本比率が上がるのに、ちょっと税金が怖くてやれない、そういう連中に対してこっちを使えと、両方やったんだと思うのです。だから、僕は両方とも賛成いたしましたし、我が党も賛成しました。  それで、方向はいいのですが、ここにも、資本は過剰なのかね、過小なのかねという問題がある。ですから、この問題は一律に扱ってはいけないのですね。一律に扱うと行政が混乱しているのじゃないかという印象を与えて、どっちかだと思い込まれて横並びではあっと走られると困るのです。これは企業によって違うのですからね。そういう問題があるということを指摘させていただきたいと思います。必ずこっちだ、必ずあっちだと言ってはいけないのだというふうに思います。  それから最後に、今の絡みで、ちょっとこれは不健全なやり方だったなとは思いますが、しようがないというので、低価法から原価法へ切りかえてもいいよということをやりました。銀行さんによっては、それに飛びついて自己資本比率を上げたりしましたが、大臣、本来は、銀行というのは信用第一、健全性第一ですから、これは低価法の方がいいし、切りかえるならグローバルスタンダードで時価会計に全面的に切りかえていくというのが方向なのじゃないかと思いますよ。いかがでしょう。
  331. 山口公生

    山口政府委員 低価法、原価法の選択制をなぜとったかについてはるる御説明いたしましたので、ここで繰り返すとくどくなりますので省略させていただきますが、結果として、三月三十一日の株価に金融機関の決算が余りにも左右されるということがなかったという意味では、落ちつきを取り戻せたという意味では私はプラスだというふうに評価していただきたいと思うわけでございます。  しかし、健全性の観点からいいますと、確かにおっしゃるとおりの問題はあると思います。そこで、ディスクロージャーをきちんとやっております。原価法をとった場合にはディスクロージャーをやっております。それから、BIS基準の含みにも算入しなくいたしましたので、その辺については不健全な経営ということにはならないように配慮しているつもりでございます。  将来的に金融商品をどうするのか、評価をどうするのかということについては、企業会計の問題として今審議会で議論しております。確かに、時価会計にみんな金融商品をやっていくというのが大きな流れだろうなとは思います。しかし、株式でも、長期の保有のものとそうでないものとを少し分けて議論していいじゃないかという議論も当然あると思います。アメリカやドイツでもそういった考え方というのがございますので、今後、企業会計審議会等の御議論を注意深く見てまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  332. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 今、山口局長のお話の中で、時価会計が大きな方向だとおっしゃったのを聞いて私は安心いたしました。大蔵省全体としてこの方向性というのはしっかり踏まえて、審議会も大事だけれども、大蔵省の行政、各局の行政の中にコンシステントにその方向性を出していってもらいたいというふうに思います。  そういうふうに考えると、尾原局長、一つ大きな問題があるのですね。時価会計に移行していこうという場合に、土地の再評価の問題がありますね。そして、土地再評価を認めてあげるよ、資本に入れる形で認めてあげるよ、こう言っていますが、それは無税でやらせたわけですが、再評価益を何かに使ったらやはり税金がかかってきますね。  私は、先ほどお話ししていた早期是正措置と早期処理の矛盾とかあるいは金融ビッグバンとの矛盾とか、要するに早期是正措置、それから早期処 理、それから金融ビッグバンをにらんだ収益率を上げる、この三つが複雑に矛盾し合って困っている。その中で一つの方向性として考えられることは、今相当地価が下がったとはいうものの、一流銀行は昭和二十年代、三十年代、あるいは戦前から銀座を初め目抜き通りのいいところに店舗張っていますから、まだ相当土地の含み益は持っていると思うのですね。ですから、あの土地の含み益を、いずれにしても時価会計に行くのだからいずれは出さなければいけないのだ。いずれは出さなければいけないのだったら、ここでこの含み益を出して、それで不良債権の早期処理、一挙償却ばっとやれ。そのときに限り主税局は目をつぶる、つまり課税しない、無税でやらせてやる。これをやったら早期処理はぽんといくし、それから表面にあらわれている自己資本は傷つけないのですね。そして早期処理がいく。これは、バブル崩壊資産デフレで痛めつけられた日本の企業に眠っているほとんど唯一の宝みたいなところへ手をつけるのだと思います。しかし、方向が時価会計だったら、これに早晩手をつけるのですから、今不良債権一挙処理の手段として手をつけた方がいいじゃないか。  これは、実は政治家が判断することであって、官僚の皆さんにそう言っていてもちょっと無理なんです。残念ながら、大臣お手洗いが長いようでありますが、大臣のような政治家に御判断いただきたい非常に重要な問題なんですね。ですから、私はこの際は、大蔵省の皆さんに、時価会計というグローバル世界の流れを踏まえて今後やっていくというなら、早晩表に出てくるこの土地の含み益を今有効に使うことを考えてくれ、これが我が自由党の主張であるということをお伝えしておきたい。  それで、尾原局長、これは課税上の問題ですけれども不良債権の早期処理に限り、含み益を損益通算に使ってしまっていい、こういう議論をぜひ税調に投げかけて考えていただきたいと私は思っているのですが、いかがですか。     〔委員長退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  333. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今の法人税法における時価会計が入った場合の取り扱いについてのお尋ねだったと思います。  現在、法人税法の方で時価会計についてどう対応するのか、企業会計審議会の対応を待って検討していきたいと思っておりますが、現在も、金融機関等の認可を受けて、投資勘定についてデリバティブその他金融資産について時価会計をとった場合には、それをそのまま認めるということを税法でもやっているところでございます。  ただ、土地についてはいろいろ問題があるようでございまして、現在いろいろ検討が進んでいるということでございます。したがいまして、今の企業会計審議会での動向を見ながら税制においてどう取り扱うかを検討していくことになると思いますが、今先生おっしゃいましたように、仮に時価会計をそのまま税金で受け入れた場合、そのまま償却と認めろということになってしまいますと、では、時価で評価しましたら損が出た場合もあるわけですね。それと逆にいたしますと、それは認めないということに逆になるような形にもなりかねない問題を含んでいるという気がいたします。したがいまして、先生からの御提案がございましたが、まさに企業会計審議会の動向を見ながら、税制でどうするか、その時点で検討してまいりたいと思っております。
  334. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 松永大臣、お席を外しておられるときに、私はこういうことを申し上げたのです。  先ほどからお話ししているように、不良債権の早期処理、それから自己資本比率を上げるための早期是正措置、それからビッグバンを迎えての収益率を上げる、これは三つとも重要だけれども、相互に微妙に矛盾したりなんかして大変だ。これを解決する一つの手段として、今の銀行を含む日本の企業に残されている最後のとらの子のようなもの、それは地価だ、土地。相当値段が下がったとはいっても、もっと以前に目抜き通りに銀行が買って店舗を張っている。あの辺はまだ相当な含み益があるわけですから、もし、時限立法で本当にこの一年、二年、不良債権処理に使った場合に限り損益通算させてやるから、含み益出して不良債権一挙に処理してしまえ。これをやりますと、自己資本を傷めないで不良債権の一挙処理が進むのですね。私ども自由党はそれを主張しております。それをぜひ御検討いただきたい。  特に、さっき山日銀行局長のお答えの中で、世界の大勢、グローバルスタンダードの方向は明らかに時価会計だというお話があって、私は、大蔵省がそう思っているのは大変結構だ、ぜひとも大蔵省も各局共通に時価会計の方向をにらんだ行政をこれから考えていってほしいというふうに申し上げたのですが、時価会計にいきますと、いずれにしても含み益が出てくるわけですね。それだったら、本当に危機に陥った日本経済を突破する、それこそ緊急避難的な一時的な措置として土地の含み益で不良債権を一挙処理させてやる、その場合、損益通算で税金かけないよ、こういう考えがあり得ると思うのですね。だから、尾原局長、さっきのお答えは一般論として答えておられましたが、私は、割と一、二年の短期の特別措置というふうに考えておりますが、今お席を外しておられるときに、そのことを大蔵省の皆さんに申し上げていたところであります。  しかし、これは政治家の決断にかかっているのであって、大蔵省の官僚の皆さんの方は提案してくる話にはならないと思います。恐らく、各局の利害が対立してしまって、こんなことをやろうと言ったらとてもだめだなというふうに思います。政治家の指導性がないとできないことであろうというふうに思います。ぜひ自民党さんにも真剣にお考えいただければありがたいと思います。私どもはその方向で提案していきたいと思っております。  それから、次に、この金融四法そのものの話に移ります。既に前の質問者の方がいろいろ言っておられますので、私は大きな質問をさせていただきます。  福田保険部長さん、おられますが、私は、この金融システム改革法案の中で、保険の取り扱い、保険業の取り扱いが気に入らないのですね。これはもう御存じだと思いますが、銀行が保険会社を子会社としたり兄弟会社とする時期は、平成十二年度末までの政令で定める日。遅いですね。しかし、他の類似ケースの相互参入、その中には保険が銀行に入ってくるのも含みますが、それらは平成十一年度末までに自由化すると言っているのですよ。片方は、十一年度末までに自由化するでしょう。保険については十二年度末までの政令で定める日、こういうふうになっているのですね。なぜ業態間の垣根撤廃について保険だけ別扱いするのですか、お答えいただきたいと思います。
  335. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  金融システム改革内容、進め方についての御指摘でございますが、この金融システム改革につきましては、御案内のとおり、一昨年十一月の総理指示によりまして、結論の得られたものから速やかに実施し、今後五年間のうちに完了することとされておるわけでございます。  保険会社金融他業態との参入につき.ましては、保険審議会報告におきまして、「今般の金融システム改革の趣旨を勘案し、制度面では二〇〇一年までに実現を図ることが適当である。」ということで、しりは二〇〇一年までということで答申をいただいているわけでございます。最後のしりの時期でございますが、この内容、この改革を円滑に進めるためには、やはり利用者の保護、業務の健全性確保の観点から必要な弊害防止措置を講ずる必要がございますし、他方で、やはり金融システムそのものの安定性確保にも十分配慮しなければならないということが指摘されたわけでございます。  このような点を踏まえまして、具体的には、競争条件の公平性を確保するという観点から申しますと、比較的問題の少ないとされております保険会社から銀行業への参入につきましては、当然弊 害防止措置は講じますが、できるだけ速やかに参入を認めるとの観点から、先ほど御指摘の平成十二年三月までに実施することとしたものでございまして、この平成十二年三月の前の平成十一年度下期には、今行われております信託銀行会社あるいは証券会社の業務範囲の制限が撤廃されるということもにらんだ結果の時期でございます。  他方、銀行による保険業への参入につきましては、やはりそのような公平性の確保の点からややいろいろ問題があるということもあり、総理の指示を踏まえまして、二〇〇一年、平成十三年三月までに環境が整い次第速やかに実施するというのが結論になったわけであります。具体的には、御指摘のように、今申し上げた考え方のもとに、参入時期は別途政令で定めるということになっているわけでございます。
  336. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 残念ながら今の答弁は全然わからないよ。何で、保険から銀行への参入、あるいは他業態からの参入に比べて、保険への他業態の参入を抑えておるのか。今、公平性とか言ったね。全然わからない。何が公平なんだ。何でこんな不公平なことをするのが公平なんですか。ちょっとわかるように説明してください。
  337. 福田誠

    ○福田政府委員 金融システム改革に係る検討を行った際に、保険審議会等で議論が行われているわけでございますが、銀行等による保険業の参入につきましては、銀行等のメーンバンク制による影響力あるいは情報力を踏まえますと、銀行の保険業への参入については慎重に行う必要があるとの指摘があったわけでございますが、他方で、保険会社による銀行証券業務への参入、あるいは証券会社と保険業との相互参入につきましては、ただいま申し上げたような問題が比較的少ないと考えられることを踏まえた結果、そのようなタイミングのずれになっているわけでございます。  なお、銀行の子会社方式による保険業への参入につきましては、銀行証券のような、当初業務範囲の制限が行われておりましたが、そのような業務範囲の制限は予定しておりませんで、二〇〇一年三月までにはフルビジネスでの相互参入が完全に実施されるということでございます。
  338. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 公平性の中身は、今おっしゃったところによると、銀行は強い、保険会社銀行より弱い、だから銀行から保険への参入を抑えるのが公平だ、こういう議論ですか。そのように聞こえましたね。恐らくそうなんでしょう。  そして、あなたは保険審議会、保険審議会と言うが、保険審議会というのはやはりどうしたって保険業界の利益の代表者が相当入っていますよ。学者も入っているけれども、何となく保険業界の、専門家といえばちょっと聞こえがいいが、やや癒着しているような人も中にはいます。他方、金融制度調査会は銀行について審議する。証取審は証券業について審議する。それぞれの審議会はどうしたってそのバックの業界と密接な関係にある。それはそうだ、委員の中へ入ってきているんだから。そこから出てきた答申を見て、こう言っているからこうしましたというのでは、行政は情けない。三つ出てきたら、その問のバランスをよく考えなければいけないと思うのですよ。ところが、この金融四法は、出てきた答申の基本線をきちっと守ってつくっちゃったから、どうして保険だけ守られているのという形になっていると思います。  今ちょっと金融商品の種類について言ったけれども、保険を守っているのは、もう一つ守っているんですね。これは銀行窓口販売し得る保険商品、今後政令で、子会社または兄弟会社が引き受けたもので住宅ローン関連の長期火災保険及び信用生命保険に限ると書いてあるんだ。要するに、銀行が住宅ローンをします。そうすると、借りた相手がぽこっと死んじゃうと困るから、担保のために生命保険を掛ける。あるいは、焼けちゃったらいけないから火災保険を掛ける。こういう銀行固有の融資業務に関連した保険だけやらせてやるよという物すごい制約が入っている。こんなにまで保険業だけ垣根で囲んでしまう。  それは保険業以外の金融サービス業が強者だからですか。そんな考えでいったら日本金融ビッグバンなんかできないよ。金融ビッグバンでもうグローバル化して扉をあけたのでしょう、四月一日から。そんなときにそんな日本だけで通用するようなばかみたいな公平感、これは公平な話じゃないよ。それでやったらとてもグローバルな競争に太刀打ちできないですよ。  これはあなたはよく御存じだと思うが、今欧米でバンクとアシュアランスとくっつけたバンカシュアランスという言葉がはやっているでしょう。バンカシュアランスと言われるほど銀行と保険は今や一体ですよ、世界的に。そんなときに保険だけ別扱いする。何が金融ビッグバンですか。それから、ついこの間もトラベラーズとシティの合併の話が出たじゃないですか。これなんかまさに銀行証券、保険、全部を網羅する一大金融コングロマリットですよ。こういう時代に来ているときに、おくればせながら日本もオープンにして、ドアをあけてこの競争に参加しますというのがこの金融ビッグバンでしょう。何でこんなときに昔々の護送船団方式時代のような、強者だから入れてあげません、弱者を守りますみたいなことを言うのですか。これではとても太刀打ちできませんよ、外国のコングロマリットに、バンカシュアランスに。  大臣、これは非常におかしいのですよ。規制緩和、規制緩和と言っておきながら保険だけ守っている。これは理屈が通らぬ。業界からの陳情を受け入れたとしか思えない。その陳情は保険審議会の答申という格好をとったというだけの話だ。どうですか。
  339. 福田誠

    ○福田政府委員 委員指摘の点につきまして、正面からこれにつきまして御意見申し上げる立場ではございませんが、保険制度ないし保険業法につきましては、私見でございますけれども、ややほかの業態と事情を異にすることがあったのではないかと申し上げさせていただきたいと存じます。  と申しますのも、保険制度につきましては、昭和十四年に制定されました旧保険業法につきまして、五十六、七年ぶりでございますか、改正が行われたのが二年前の四月でございます。この改正の中にも、例えば生損保の相互参入とか、保険募集人の一社専属制の緩和とか、保険ブローカー制の導入等々、それから商品届け出制とか、いろいろな、それまでの保険制度にはないかなり大がかりなものが盛り込まれたわけでございまして、それが施行されたのが二年前の四月でございますし、生損保の相互参入はその年のやっと十月でございます。その四月に施行された年の一年たたない間に、総理の方からビッグバン内容をまとめるようにという御指示があったわけでございますから、いわば法的に見ても安定性のぎりぎりのような状態だったわけでございまして、そういう意味で申しますと、かなり大きな変化がここ数年のうちに起きているということを申し上げさせていただきたいと存じます。  各論につきまして申し上げますと、銀行証券は御案内のとおり既に四、五年前から相互参入が実現しておりますが、保険と他の金融業態は全く相互参入が行われておらなかったわけでございます。この点につきまして今から三年後の二〇〇一年までに、業務制限もなしにそれまでにはすべて参入を行うということでございますから、今までの相互参入と比べますと短期間のスケジュールにすべて盛り込んだという点では御理解いただけるのではないかと存じます。  また、銀行による保険窓販の問題も、これは二年前の新保険業法のプロセスではこれまた平行線だったものでございますが、この長年の論争といいますか、そういうものに一応決着をつけまして、これまた二〇〇一年を目途として、とにかく曲がりなりにも明確に導入することにいたしたわけでございます。それは、二年前も保険審議会そして国会の御審議を煩わせたわけですが、今回もそのようなことでようやく相互参入の道が開かれているということでございますので、いろいろな御意見があるのは承知しておりますが、一言、保 険制度についてはそのような事情があったということを申し上げたいと存じます。
  340. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 今御説明いただいた保険業界の事情というのは、私流に言葉をかえて言えば、三年前までがんじがらめにしていたということですよ。大蔵省によって完全に、もうはしの上げおろしまで本当にがんじがらめにされていた。それで、その言うことを聞いて今日まで来たら、突如自由化だといってどんどん垣根を外されたのでは、それはたまらぬよというのが保険業界の言い分ですね。それは私ももう十分に承知しています。だから、そのことを福田部長はお立場上つらいながらも今のような言い方をしていたなというふうに思いますから、この点、これ以上あなたを追及する気は全くないのですが、要するに、そういう事情というのは、過剰介入行政だったのです。金融が過剰介入行政だと一般的に言われるが、保険は銀行証券の比じゃない。もうひどいがんじがらめにしていた。そのツケがここへ出ているわけですね。  だから、それは業界にしてみれば、今まで一〇〇%言うことを聞いていたのに、突然何です、こういうことでしょう。言われるとあなた方も困るでしょう、がんじがらめにしていた以上。けれども、これは大臣、政治家としてのお立場で大きな判断を日本国のためにしていただかないといけない。そういう過去における間違った行政を引きずるために、これから日本金融サービス産業が世界に伍して発展しようとしていくときに、まだ日本金融サービス産業だけに手かせ足かせを残す、そういうことをやらんとしているのですよ。バンカシュアランスと何度も私は申し上げますが、バンカシュアランスという言葉が飛び交っている世界に向かって出ていくときに、保険業だけ過去のいきさつで例外扱いしてはいけませんよ。これはひとつ、大臣の政治的決断に期待したいと思います。  それから、今のに関連しておりますが、だんだんと直ってきているとは思うけれども金融制度調査会、それから証券取引審議会、保険審議会、全部これは業界と官僚の間の、悪く言えば隠れみの、よく言えば意見交換の場ですが、しかし、これは色濃く業界の利害が反映されているのですね。そこから上がってきたものを行政がうのみにしなければいけないなんという理屈はないですよ。行政は行政で、特に行政の長としての政治家の判断も入って、日本国の将来を考えてやはりバランスをとっていただきたい、そのこともあわせて大臣にお願いいたします。  ですから、できれば審議会のメンバーを全部ごらんになって大改革をおやりになる、あるいはもう業界横断的な審議会に全部切りかえてしまう。また、そこには学識経験者以外は余り入れない、業界代表は証人として来てもらうのはいいが、もうメンバーには入れないぐらいの大改革をしていただきたいというふうに大臣にお願いをしておきます。  それから、もう一つこの金融ビッグバンのスピードで問題にしなければいけないことがあるのです。  今は、保険と銀行その他の関係がアンバランスでとても世界の流れについていけないよということを申しました。もう一つおかしいところがあるのですよ。これは、金融サービス産業と一般事業会社の間なんです。法律用語では商業と言いますが、実は商業だけじゃなくて、金融サービス業以外の産業であります。金融サービス業、つまり銀行証券、保険、これらは新しい分野へ入ってくるときは、これこれの分野、金融関連業務を専ら営む会社とかといってこうやって制限がついているのですね。つまり、制限がついているということは、垣根をぶち破って一般事業会社へ入っていけないようにしているのですよ。ところが、一般事業法人が銀行銀行持ち株会社を保有することは何も制限していないのですよ。また、こうした一般事業会社がそういうことをやった場合の親会社に対する規制、監督の規定もないのですよ。  ですから、例えば、昔、トヨタ銀行とか松下銀行とか言われました。トヨタ、松下、大変な資力を持っているのですね。それで、今は少し様子が変わってきたかもしれないけれども、やはり商社なんかもすごいですよ。これだけ金融グローバル化されていますと、銀行その他の金融サービス産業でなくても、あれぐらいの世界的な大会社になったら、ソニーなんて特にそうです。もう自由自在にグローバル化した市場から資金調達できます。銀行だけが金融支配力を持っているのじゃないのです。一般事業会社金融支配力を持っています。どっちの金融支配力が強いかは市場における評価によります。  御承知のように、最近、日本銀行はレーティングが暴落しています。一般事業会社はそうじゃない。世界のマーケットで金を調達しようと思ったら、一般事業会社の方がはるかに安いレートで大量に調達できますよ。その一般事業会社金融サービス業に入ることについて禁じてもいないし、何の監督規定も入っていない。ところが、今度は、金融サービス業側がこっちへ入っていこうと思ったら、何やかんやと書いてあるのですね。これは大蔵省の皆さんもよく考えてほしい。  昔は、金融独占資本の支配というヒルファーディングの「金融資本論」という本がありますね。あれは、十九世紀末から二十世紀にかけては金融資本こそがすべてを支配してしまうんだ、こういう時代です。私も学生のころ、そういうのを読みました。でも、今はその時代じゃない。今申し上げましたように、金融資本だけが強いのじゃないのです。どんな業態であろうと、市場で評価される企業であれば物すごい資金調達力を持ち、金融支配力を持つのです。だから、金融四法のここの部分はちょっと時代おくれですよ。これがあるから金融四法に反対するとは言いません、金融四法には賛成しますが、これは時代おくれだ。  大臣、今の私の話を聞かれていかがですか。余りそんなことは考えたことがなかったというのなら、ぜひ御検討をいただきたいと思います。銀行局長でも結構ですが、御答弁ください。    〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  341. 山口公生

    山口政府委員 先生からの御指摘でございますが、正直申し上げて、実は私どもこの法律をつくる際にはかなり悩んだ点でもあります用意識の中にはきちっとあります。  今回、金融システム改革法案における銀行法改正でも、先生、事業会社とおっしゃいましたが、銀行の親会社を規制の名あて人とする措置は講じておりません。これはある意味では新規参入をどんどんやらせたいという気持ちがある中で、もともと、規制を強化していくということに少し慎重であるべきではないか、弊害が生じない限りその方がいいのではないかという判断が一つあります。  それから、現時点において、事業親会社による銀行の子会社化について何か特段問題が生じているかというと、それほど問題が生じているという認識はありません。問題が生じればそれは考えなければいけないと思いますが、むしろ、銀行の資本増強という観点もあります。それから、新規参入という先ほど申し上げたようなこともあります。金融機関金融機関だけでもう一切外からは受けつけないということもいかがなものかということで、今回は特段の制限を課しておりません。  しかし、一方で、銀行に対するリスク回避の観点というのは大切でございますので、アームズ・レングス・ルールの対象範囲の拡大とか、あるいは大口信用供与規制における授信者側の合算等の改正は行っておりまして、今先生の御指摘にあったような点が何か弊害を生じるようなことがないように手当てをさせていただいているところでございます。  問題意識としてはありまずけれども、やはり規制強化をしていくということについてはやや慎重に検討したい、こういうことでございます。
  342. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 問題意識の中にあるということを聞いて安心いたしましたが、山口局長は私が言っている意味をちょっと反対方向に取り違えたと思います。私は、こういう問題があるから一般 事業会社金融サービス業に入ることを規制しろと言っているのじゃないのです。逆です。金融サービス業が一般事業会社を傘下に入れていくことをこんなに厳しく禁じてはいけないよと言っているのです。もっとここのところを緩めろと言っているのです。  銀行の場合は、さっき言ったように、銀行証券、保険、従属業務を専ら営む会社金融関連業務を専ら営む会社、新たな事業分野を開拓する会社またはこれらの子会社云々で、一般事業会社を傘下に入れてはいけないことになっている。これは、この前成立した金融持ち株会社とこの金融四法、あわせて一つで私は議論していますよ。そういうふうになっている。私は規制を強化しろと言っているのじゃない。逆ですよ。金融サービス業、こっちへ行ってはいけないというのはやめなさい、ここの規制を緩和しなさいということですっ監督としては大きく全体に網をかぶせておきなさいという意味なのです。  ですから、問題意識の中にあったということでありますので、大臣、ぜひこの金融四法について、そこにも問題あり。きょう二つだけ申し上げました。保険、それとこの一般事業会社金融サービス業との関係、いずれも規制緩和の方向で僕は問題にしていますからね。ぜひ御検討の上、また改めて、この法律をいずれまた改正するようなときには、ぜひここに問題ありということで考えていただきたい、私が今申し上げている方向で考えていただきたいというふうに思います。  随分たくさん時間をちょうだいしたものですから、広範な問題を議論してまいりましたが、あと幾らも時間がなくなってきました。そこで、やはり最初に提起した問題に戻って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。  やはりこういう大改革、構造改革をやる以上、マクロ経済の受け皿をしっかりさせてからでないと、サッチャーがやったようにやらないとうまくいかないということだと思うのです。さっき質問を一つしないできてしまったのですが、この十六兆円の今度の効果については、先ほど申し上げましたように私は考えるのですが、その中で、公共投資拡大が非常に大きいのですね。私ども自由党、また他の野党は恒久減税を主張している。公共投資は必ずしも言っていないのですね。もちろん、まだ必要なところはありますよ。必要なところはあるが、冗費を含んで民間に比べて単価が高いままのこういう在来型の公共投資を余りふやさない方がいい、効果も少ないし、貴重な税金のむだ遣いにもなるし、それよりも恒久減税、こう言っているわけです。  これは企画庁に答えていただいていいのですが、公共投資と減税の効果なのです。これは、私も経済の勉強をしているのだから、乗数効果を単純に計算すると公共投資の方が大きいなんというのは当たり前ですね。ところが、御承知のように、乗数効果、所得乗数で考えるのに、さらに加速度原理を加えて投資誘発の方も考えてくる。それからさらに、これはモデルなんかではとてもやれないことだけれども、恒久減税のときの企業や人々の期待の変化、わかりやすくいえばやる気とか、あるいはもう少し専門用語を使えば将来予測の変化が投資関数のパラメーターを変えるとか消費関数のパラメーターを変えるとか、そういう動き、こういうことまで入れてくるから、中期的には、三、四年、四、五年という単位で考えると、公共投資、それも在来型で、その地域の失業救済、その地域の建設会社救済に回ってしまって、その地域にとっては一時的に金が潤うが日本経済全体にはそんなに回ってこない、ましてやサプライサイドとはまるっきり関係ないようなものに比べると、恒久減税というのは、長い目で見ると、今の在来型の、ばらまき型の公共事業より経済を持続的に民需主導型の成長軌道に乗せる上でよほど力があるのではないかというふうに私は考えるし、自由党はそう考えるし、多くの野党がそう考えているから恒久減税と言っているわけですね。  私は、調査局長は新古典派の経済学をしっかり学んだ方だから、今私が申し上げていることをよく御理解いただけると思うのでありますが、どうですか。恒久減税と、今のようなばらまき型の、単価が高いままで冗費を含んだ公共投資とは、三、四年たって、中期的に日本経済をポテンシャルグロースパスに乗せる上でどちらが効果がありますか。
  343. 新保生二

    ○新保政府委員 非常に難しい問題でありますが、要するに、短期のリフレ効果と長期のサプライサイドの効果とは区別して考える必要があるかと思うのですね。足元の状況が非常に需要不足ということであれば、先ほど先生自身がお話しになったように公共投資の方が需要拡大効果は大きいわけですから、即効性は大きいということだと思います。  ただし、長期の効果をサプライサイドまで含めたときどういう話になるかというと、これは非常に難しい話になってきますが、先生指摘のように、公共投資の中には長期的にサプライサイドの改善に結びつきがたいようなものも結構ありますので、そこの中身を改善していかなければいかぬという点はそのとおりでありますし、減税でも、日本の場合、限界税率が非常に急速に高くなっているので勤労意欲にマイナスになるとか、あるいはビッグバンを控えていて、東京をニューヨーク、ロンドンに並ぶような国際金融センターにするときに、最高税率が六五%というような状況でいいのかというような問題を考えますと、長期的には減税をしっかり検討していく必要があるというのはそのとおりであるというふうに思います。  ただし、即効性という観点からいうとき、先生も先ほどから御指摘になりましたけれども、今消費が不振なのは、長期的に財政バランスが非常に悪化して負担がどんどん高まっていかざるを得ないのではないか、高齢化と低成長下、この両方のダブルパンチで将来負担が相当高まっていかざるを得ないのではないかという見通しが非常に強くなっている。先行き不透明感といいますか、そういうものがあるわけですね。したがって、恒久減税をするにしても、恒久減税した結果、それを将来の歳出削減なり、あるいはほかの効率化で十分財政バランスがつじつまが合うのだという見通しを立てない限り、即効性には非常に欠けるのではないかというふうに思います。
  344. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 たたしから先のところは私に言わせれば余計なことであって、そんな即効性で考えてはいけないのですよ。中期的な効果で考えなければいけないということだと思います。  時間があと一分になってしまいました。一つだけ申し上げておきたいと思います。  大臣、景気がこんなになってしまうほど財政再建、財政再建でやってきたその最大の根拠は、G7諸国の中で日本は一番財政赤字が大きいじゃないか、対GDP比率でも。実は、イタリアの次です。それから、五百兆円も借金があるじゃないか、その対GDP比率は一〇〇%だぞとか、こういうことでおやりになったと思います。これは、次の機会に必ず質問させていただきますので、事務方から、時間を見つけて聞いておいていただきたいと思います。  OECDがエコノミック・アウトルックというのを発表しております。去年の暮れに六十二号で最新版の国際比較、それからことしの四月ですか、またその後の六十三号で国際比較をした。これを見ますと、公的機関の借金の残高の対GDP比率はG7中悪い方から三番目。一番悪くないからといって威張れたものじゃありませんね。ところが、ネットの債務残高、つまり五百兆、五百兆というのはグロスですね。ところが、金融資産も持っているのです、日本の公的部門は。資産と負債とネットアウトしたときのネットの債務残高は、驚くべきことに、対GDP比率はG7中一番少ないのです。  ですから、五百兆円、五百兆円という声にある意味では踊らされて、経済を犠牲にしても財政再建をしないと日本が破産するような、こういう恐ろしい幻想をばらまいたために、すっかり消費マインドも投資マインドも落ち込んでこんなひどいことになってしまったけれども、実は、ばらまい た幻想そのものが違っていたじゃないか。ネットの債務残高の対GDP比率はそんなに大きくないのですよ。大きくないところか、G7中一番低いという報告がOECDのエコノミック・アウトルックで出ました。  ぜひこれを御研究されて、これを根拠にしっかりした政策転換をしていただきたい。財政再建、そんなに待ったなしじゃないですよ、この統計表を見たら。OECDの分析を見たら待ったなしじゃない。それより経済再建の方が待ったなしたということで、きっぱりとした、はっきりした政策転換、国民にわかりやすい政策転換をしていただきたいというふうに思います。私どもが主張しているとおりの政策転換をしていただきたいというふうに思います。  以上、お願いをいたしまして質問を終えたいと思います。長時間、どうもありがとうございました。
  345. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木陸海君。
  346. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  先週、当委員会で、私たち、大蔵省が発表した処分の問題について質問をいたしました。その質問を受けて、先週の大蔵委員会理事会に大蔵省から一つの資料が提出をされ、処分の詳しい内容についての中身が発表されました。これは、全体を集めると相当分厚いものになります。しかし一これを見ても、率直に言って肝心な点は何にもわからないということを言わざるを得ないと思います。  一つお聞きしますけれども、一番処分の重い杉井審議官、ゴルフや会食の数は六十七回で処分の軽い人よりも少ないというのもありますが、この人が一番重い処分になった理由は、反復、継続的な会食等があった、これが理由ですか。
  347. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 処分の基本的考え方といたしまして、平成八年十二月の倫理規程以降において依然として会食等をやっていた場合は特に重く判断する、それから、職務に関連のある者との会食については関連がない場合と比べて厳重な判断をする、それから、反復、継続が行われている場合には重大に判断する、あとは、管理監督の地位にある者に対してはそれ相応の責任を求めるといったような四つの基本的な考え方によって私どもは判断をしたわけでございます。  杉井につきましては、一つは、八年十二月以降におきましても倫理規程に定める手続きを経ずに会食を六回行った。それから、確かに反復のものが、十回を超えたものが複数あったということであります。  さらに、この点について私ども特に重大に考えているわけでございますけれども、杉井は、平成四年から七年までの間に綱紀保持の担当者であります大臣官房秘書課長の職にありまして、特に七年五月のいわゆる田谷、中島事件のときに出されました「綱紀の厳正な保持について」という通達の発出に携わっておりました。その前後においても会食等が行われていたということについて私どもは重く判断をしたわけでございます。  回数ももちろん基準の一つではございますけれども、そういう中身において杉井については大変重大な問題が多いというふうに考えた次第でございます。
  348. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 杉井審議官が金融機関から受けた十回以上の会食、複数だと言いまずけれども、これは二つの金融機関ですか、三つですか、四つですか、五つですか。
  349. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 二つの金融機関でございます。
  350. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 複数というのは彼一人だと思います。  大蔵省の発表した文書によりますと、この「反復継続的な会食等」という項目に「反復継続的に会食等を行っている場合等には、職務の公正さを疑われる恐れが特に強い」ということを述べているわけですが、職務の公正さをゆがめるような事実があったのかどうか。これは調査の対象になつているのですか、なっていないのですか。
  351. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 私ども民間金融機関からいろいろ聞き取り調査を行った際に接待の目的というものをきちんと調べたのかという御質問がございました。  私どもは、民間金融機関の趣旨を調査すること、そのこと自身が直接の目的ではございませんので、何月何日の会食はどういう目的であるかというような、そういう意味で詳細に承知しているわけではございません。  ただ、金融機関からヒアリングをしましたときに、背景の一つとして、大体どういう趣旨であったのかということはもちろんお聞きをしております。大体顔合わせでありますとか意見交換の場であったというようなことでございまして、私どもの調査におきましては、職務に関して何らかの依頼を行ったとか、あるいは便宜的な取り計らいを要請したといったような事例があったという確認は得られなかったわけでございます。  ただ、いずれにいたしましても、接待の趣旨が仮に顔合わせでありますとか意見交換であったといたしましても、行き過ぎた関係ということが判明した場合には厳正な処分が必要だ、こういうふうに考えた次第でございます。
  352. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 要するに、職務の公正の問題については十分な調査はできなかったということですね、いろいろおっしゃいましたけれども
  353. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ただいま申し上げましたとおり、一つ一つの接待の趣旨というものについて、便宜的な取り計らいを要請した事例があった、あるいは何らかの依頼を行ったといったことがあったという確認は得られなかったというのはそのとおりでございますが、ただ、一つの金融機関と一定の、社会通念を超える以上の会食の回数を重ねるということについては、やはり職務の公正さというものを疑わせることになるのではないか、そういう趣旨で、私どもは、反復、継続した場合にはそれなりに重大に考えるということでございます。
  354. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ですから、私は申し上げたいと思うのですけれども、十回以上も続けて特定金融機関から会食を受けていれば、その金融機関に対して何か特別のサービスをしてあげるとか、あるいはその金融機関に対して不利なことをしないようにしてあげるとか、つまり、作為、不作為によってその金融機関に対して有利になるようなことをしたということは、当然、国民からは疑われるわけですね。それで、それを疑われるような事実は大蔵省が調べた限りでは確認できなかったということであって、そういう事実が本当になかったかどうかということの証明は、もちろん捜査機関じゃないわけですから、できていないということははっきりしていますね。ですから、この調査の結果からはそういうことは我々も全然わからないわけです。  そして、ついでにお聞きしておきますけれども、この杉井審議官の場合の二つの金融機関というのがどの金融機関とどの金融機関ということは発表できないわけですね。
  355. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 相手のあることでございますので、個別名は差し控えさせていただきたいということでございます。
  356. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 相手のあることということをしばしば繰り返されるのですけれども、その相手というのも、十回以上も会食をして何らかの依頼をしたという疑いを持たれる金融機関のわけです。いいことをやっているわけじゃないのですよ。  相手のあることだから相手から聞いたところは発表できないと言うのだったら、少なくとも本人の申告したものだけについて、どの金融機関と何回会食したかと、確認した相手の金融機関の名前を出してはいけないと言うのだったら、本人の申告したその金融機関についてだけでも発表できることはいろいろあると思うのですよ。私たちは、あなた方が職務の公正をゆがめることがなかったということを証明するようなものはなかったと言われても、軽々に信じるわけにはいかない、金融機関の名前が全然出てこないわけですから。  だから私は、ここで余りいろいろやってもしよ うがないですから、委員長要望しておきたいと思うのです。もう少しこの調査の内容の具体的なものが出せるように理事会でもさらに協議をしていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。
  357. 村上誠一郎

    村上委員長 後日、理事会で相談します。
  358. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 ともかく、我々としてもそのことを確認しなければ、国民の疑惑を晴らせないわけですから。  そこで、少し法案の方について伺います。  この金融ビッグバンなるものが完全に動き出して、業態の自由化とか事業者参入の自由化、こういったものが動き出すと、今後、千二百兆円の個人金融資産の争奪戦が激しく繰り広げられるということになります。国民がその激しい争奪戦のるつぼに投げ込まれることになるわけです。しかも、その際販売される商品は、金融商品自由化によって複雑しかもリスクの大きい投機的なものが続々と登場することになります。この金融システム改革法案というのはそういうことをやろうという法案であります。ところが、今度の一連の法案の中では消費者保護策の重要な部分が欠落している、このことを指摘せざるを得ません。  昨年六月の金融制度調査会の答申、「我が国金融システムの改革について」は、こういうふうに述べています。「今般の金融システム改革により多様化・高度化した金融サービスが利用者に提供されることとなることから、専門的な知識を持たない一般利用者がこれらを安心して享受することができるよう体制を整備する必要がある。」こう言って利用者保護の体制整備を答申しておりました。  この中では、先ほどから話が出ております金融サービス法、それから統一的消費者信用保護法、さらに苦情紛争処理体制、この検討がうたわれておりました。この三つは、金融被害者団体がその実現を求め、また日弁連等も日本ビッグバンに伴う消費者保護方策についての提言などで繰り返し要求しているものです。  既に金融自由化を行ったイギリスやアメリカなどの経験に照らしても、そして一九八〇年代半ば以降の我が国での金融自由化とそのもとでの金融被害の続発の経験に照らしても、金融サービス法それから消費者信用保護法、苦情処理体制の確立は、金融消費者保護の諸施策の中でも特に重要な三点セットというべきものだと私たちは考えています。  そこで、けさからの審議で問題になったまず金融サービス法についてですけれども、大蔵大臣はこの金融サービス法の制定については中期的課題だ、中期的ということをさっきおっしゃいました。この中期的というのが、ことしの十二月一日からいろいろな問題が始まってまいりますけれども、そのときまでというような意味合いなのか、それとも一、二年先という意味なのか、それとも五年くらいということを考えているのか。一体中期的というのはどのくらいのことを考えておられるか、もう少し具体的に言ってくれませんか。
  359. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  まず、千二百兆の個人金融資産の争奪戦が始まるというお話でございましたが……(佐々木(陸)委員「そんなことはどうでもいいのです」と呼ぶ)いや、物の考え方ですね。  国民が汗水流して働いて蓄えを持っている。現在はその六割近くが預金か貯金、しかも金利は安いという状況でございますね。そこで、我々が考えておるのは、そのお金というものをもう少し有利に運用するチャンスを国民に与えてはどうだ、こういう考え方が我々の考え方なのです。争奪戦をあおるということではないというふうに私たちは考えておるわけです。  それから、もちろん、新しい金融商品が出てくる、あるいは銀行等による投資信託窓口販売というのがなされてくる、こうなってまいりますというと、当然のことながら、一般消費者といいますか、そういう人たちの利益がきちっと守られるようにしなければなりません。そのための消費者保護規定、これは必要なことなのであります。  したがって、御審議をいただいておる法案においても、金融機関ディスクロージャーの充実、銀行等による顧客等への説明義務の導入、利益相反防止のための証券会社等の行為規制の拡充、投資者保護基金、そういったことで所要の措置は盛り込んでおるわけでありますけれども、午前中からもお話がございました網羅的な消費者保護規定といったもの、そういう一般法を、全部を網羅できるような消費者保護の規定を設けるべしという御主張でございます。  この点につきましては、先ほども銀行局長が答弁いたしておりましたけれども、大蔵省だけではなくて、ほかの省庁にもたくさん関係がある。そうしたものが集まって今や勉強会が始まっているということでありますので、勉強会の結果として成案がまとまればその時期になって法案ができ上がる、こういつたことだと思いますので、十年も十五年もということではありません。そうするとそれは中期以上になりますから。数年、二、三年ないし三、四年はかかるのではなかろうかという感じでございます。
  360. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 大変無責任な答弁だと思いますよ。争奪戦かどうかということは、それは解釈の違いですからいいですよ。ひとまずおくことにしますけれども、一千二百兆円の個人の金融資産をいかに投資に振り向けるかというのが今回のビッグバンの一つの目的であるわけです。自由化によってさまざまな金融商品が開発されて広範な国民に向かって売り込まれることになる。イギリスでは、ビッグバンの開始後、金融商品が爆発的に増加して、現在では三万種類にも及ぶと言われています。イギリスでは、御承知のとおり、八六年のビッグバンとほぼ同時に金融サービス法を施行して投資家保護仕組みをつくっている。ところが、我が国では自由化だけが先に進む。  今の答弁は、投機的商品の大波が国民に向かって押し寄せようとしているときに、その大波への規制は全部取り払うけれども国民を守るために必要な高さの堤防は築かずに、大波をかぶった後にその影響を見ながら対応しようというものになるわけで、そんな態度では国民の大切な資産は守られないと私は申し上げたいと思うのです。  我々は、金融サービス法を、五年とか六年とかという話ではなくて、直ちにつくるべきだというふうに考えていますが、今勉強会が始まっているという、新しい金融の流れに関する懇談会ですか、この懇談会は、ではいつまでに結論を出すことになっているのですか。
  361. 山口公生

    山口政府委員 午前中にも御答弁申し上げましたように、種々の観点からの検討をしなければいけない非常に難しい問題でございます。したがいまして、いつまでに結論を出すとかあるいは方向性を出すということまでは決まっておりません。各省庁がそれぞれ持っている金融分野の監督体制のあり方にもかかわる問題です。法制全体にもかかわる問題です。  ただ、先生にぜひ御理解いただきたいのは、金融サービス法がなければ何か今の時点で重大な欠陥があるということではないような手当てはしてあるということです。それは、大臣が御説明されましたように、ディスクロージャーとか説明義務とか、いろいろ各業法の中で入れました。  それで、もし、では縦割りの業法でなくて横断的な法律にしたらどうか。例えば、イギリスは縦割りではなくて横割りだけなのです。アメリカは縦割りですね。そうすると、横割りだけに変えたときに、ではエンフォースメントをどうするかという問題があるのです。司法で解決するのですか、行政で解決するのですか、それとも自主規制機関で解決するのですかとかいうまた難しい問題が出るのです。  今の業法の体制は、ある程度監督官庁がきちっと見るべきものと、行為規制として司法当局で摘発するというようなものといろいろ分かれております。それは各業態によって分かれておりますが、一応、そういった消費者を保護するためのできるだけの措置は図っておる。しかし、さはさりながら、これからのイノベーションでもっていろ いろな商品が出てくる。いろいろな組み合わせが出てくるかもしれない。それだったら少し横割り的な発想も考慮に入れて検討してみよう、こういうことでございますので、ぜひそこは御理解いただきたいと思います。
  362. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 さっきの堤防の問題に例えれば、幾つかの堤防が並んで立つ、しかしその間隙を縫って波が押し寄せてくるだろう、そういうところをどうするのかという問題にもなるわけです。まあ、それは後にしましょう。  次に、実際の金融機関との間のトラブルが起こったときの十分な救済体制があるかどうかという問題です。  金制調答申は、「今後、多様かつ複雑な商品が登場することに対応して、司法手続に至る前段階で簡便に苦情、紛争処理を図るため、民間レベルで、利用者に信頼されるような苦情処理紛争処理のための仕組みを整える必要がある」「関係業者中心として早急に検討が進められることが必要である」と述べて、苦情処理体制の検討を早急に必要なものというふうに位置づけておりますが、この具体化はどうなっておりますか。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  363. 山口公生

    山口政府委員 各業態によって少しずつ違う事情もあると思いますけれども銀行について申し上げますと、銀行に関する苦情等の処理は、各銀行の相談、苦情受付窓口及び各地銀行協会の相談窓口において対応しております。  実は、この国会の審議におきましてもいろいろな問題が提起されました。そういうこともありまして、八年十一月十三日に各銀行に対しまして、相談、苦情処理体制の充実強化を図り、適切に対応するよう要請をいたしましたし、また、全銀協の連合会に対しても、各地銀行協会の相談所の苦情処理体制の充実強化を図るとともに、相談窓口の存在の一般への周知を図るように要請しております。  現在の体制としては、銀行がその役割として、自費でもってそういった苦情あるいは御相談、問い合わせというものに対応するという形で、それを充実するという形でやらせていただいているというのが現状でございます。
  364. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 金制調の答申は、そういう現状のものでは不十分だから早急に仕組みを整えろ、そう言っているわけでしょう。それはどう具体化されていくかという問題ですよ。
  365. 山口公生

    山口政府委員 それは、先ほど申し上げたような金融サービス法の問題と同じように、エンフォースメントをどうするかという問題であります。だれがそれではやるのか、だれがお金を出すのかという問題になるわけでございます。司法の方に期待をかける人もいらっしゃいます。もっと簡便にやれないだろうかという御意見もあります。いや、行政がということもありますが、行政は余り手出しをするなというような方向にありますし、やはり、業界が自分の負担でお客様に対して親切に対応するという方向で、それをまず充実するという方向でやっております。  さらに、将来の問題としては、いや、それだけでも不十分だということになれば、それはまたいろいろ考えて、より消費者のためになる方策を考案する必要があります。しかし、そのときだれがやるのか、だれが負担するのかという問題も必ず出てまいります。それと、司法との関係も必ず出てきます。そこをどう調整するかというのは、私どももこれから真剣に考えていくべきことだと思っています。
  366. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 だから、そんなことはわかり切っている話ですよ。そういうことを含めて処理の体制を検討しなさいと言っているわけでしょう。  現状の銀行協会の窓口なんか、資料をいただきましたけれども、例えば銀行協会の銀行よろず相談所、ここでは例えば平成九年には一千百七十四件の相談を受けた。それからまた生命保険協会では、平成八年、一千百九十六件の相談を受けたとか、あるいは損害保険協会、六千九百八十八件の相談を受けたとかいうことは私どもにも報告が来ていますけれども、ではその中で処理されたのが何件かというようなことは、全然報告にもなっていないのですよ。  だから、今の機関があるからといって、それに任せておいたらだめなことはわかり切っている。充実させなければいかぬこともわかり切っている。しかし、それをさっぱりまだやっていないということになるわけでしょう。大蔵省としてもそういう指導をしていない。  この業界の団体では、もうはっきりしていますように、業界の人たちが集まって窓口をつくっているだけですから、そこにいろいろな相談が来ても、それをまともに解決するような能力を発揮できない。だから、結局金融トラブルは裁判に訴えるしかないのが現状であります。銀行局長は、裁判に訴えたいという人もいるだろうなんて言っていますけれども裁判なんか訴えたら長くなっちゃって、しかも立証が大変なんですから、そんな簡単に訴えたいなんという人がいるはずはないのですよ。もっと簡便に相談できる窓口がある必要があるのだということをこの金制調の答申は言っているわけですよ。司法手続に至る前段階で簡便に苦情、紛争処理を図るため、処理体制の早急な検討が必要だと。今の話ではそれが全くまともに進んでいないということでしょう。  大蔵大臣にはっきり聞きたいのですけれども、我々は業界団体の苦情処理では全く不十分だと思います。行政としてもっと責任を持って被害者救済の体制をつくるべきだと考えますけれども、少なくとも答申を受けて業界団体に早急な検討を指示するなど、この問題での前進を図るために大蔵省が積極的なイニシアチブを図るべきではありませんか。
  367. 山口公生

    山口政府委員 司法上の争いでありますと、原則論だけを言いますと、それは司法の場で解決するということになると思います。しかし、先生がおっしゃいますように、すべて司法でやりなさいというのが現実的かという問題があります。そうしますと、だれかがやらなければいけない。そうすると、やはりお客様のことを一番よく知っておられる金融機関、また、その金融機関が親切に対応すれば、それは評判がよくなるわけです。悪い対応をすれば評判は悪くなります。そういった市場の評価もあるわけです。  そして、各金融機関が自分で負担をしてできるだけお客様にサービスする、それをある程度やればそれで済むだろうということではなくて、しつかりした体制でやっていただきたいということを行政としては要請をしているわけです。それが先生が不十分だとおっしゃることが、私は間違っていると申しているわけではありません。しかし、そういうことを一生懸命やっているということはぜひ御理解いただきたいというふうに思うわけであります。
  368. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 やっているといっても、通達を出して督励しているという程度の話でありまして、その実態は、いろいろな件数が来ているけれども、解決されたという報告がさっぱりないというのが実情だということを申し上げているわけです。  次に、統一的消費者信用保護法の問題についてですが、昨年六月の金制調の答申は、この消費者信用の問題のトップに銀行等の消費者ローンに係る消費者の保護、利用者の保護を掲げて、「銀行等の消費者ローンに係る更なる行為規制について、今後所要の措置を講ずる必要がある。」という認識を示しています。  この銀行の消費者ローンをめぐる法制度の不備というのは、バブル期以降の銀行融資をめぐる金融被害が最も浮き彫りにした大事な点であります。変額保険とか日産生命の個人年金保険とか不動産共同投資などに見られるように、生命保険などの他業態の商品のあっせんとセットで購入資金を銀行が融資して、自宅などを担保にとって本人の返済能力を度外視した過剰融資をする。そして、今、銀行自身の不当な融資行動は棚に上げて、個人の自宅を競売にかけて資金回収を図る。こういうことをどんどん続けているわけです。貸 金業法や割販法では過剰融資あるいは悪質な資金回収が禁止されるなどの行為規制が定められているのに、銀行法にはそれがない。その法の不備が浮き彫りになっている。  この是正は緊急の課題でありまして、金制調の答申はこういうふうに言っているのですよ。「消費者信用保護の諸施策については、今後検討を進めて九七年度中に結論を得、速やかに所要の措置を講ずることが望ましい。その際、」「欧米の統一的な消費者信用保護法のように、消費者信用を行う全ての業態に対し横断的に適用される法制を構築することを視野に入れ検討すべきである」、こう言っているのですよ。  九七年度中に結論を得るとして、統一的消費者信用保護法の構築も視野に入れて検討することとしていたのに、大蔵省には何の対応も見られない。もう九七年度は終わっているわけですけれども、これは一体どうするつもりなのですか。
  369. 山口公生

    山口政府委員 消費者信用保護、つまりお金を貸す場合のケースでございますけれども現行法はいろいろな法体系によりまして少しずつ違うということでこういう問題意識が出ていると思うわけでございます。私どもとしてはこの法制を統一的にするということも課題として掲げておりますけれども、今非常に問題になっておりますのは、消費者の信用情報が漏れるというような問題でございます。  まず、これについては、個人信用情報保護、利用のあり方ということで、これは通産省と一緒になって懇談会を開いて検討を進めております。それから銀行につきましては、融資に係る約款でございますね、これをやはり見直していただく必要があるだろうということで、全銀協において見直しに向けた検討が進められております。  したがって、やれるものからどんどんそういった消費者信用保護という観点を取り入れていくべく、今努力をしておるところでございます。
  370. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 金制調の答申は、今も言った信用情報の保護とかあるいは約款の改定とかというのは、今私が言った統一的消費者信用保護法とは別の項目で言っていることなのですよ。だから、それを幾ら言ったからといって、それはこの統一的信用保護法を九七年度中に結論を得て推進しなさいといったことに全然関係ないのですよ。そんなごまかしをしてはまずいですよ。  もう私の時間が来ましたから、これ以上続けませんけれども、要するに、金融サービス法は中期的な課題として、十五年は先送りしないだろうけれども、五、六年先送り、金制調が早急な検討を求めていた苦情処理体制の整備あるいは消費者信用保護、こういうものの具体化もまともにまだ手がついていないわけですよ。イギリスやアメリカでは、このような消費者保護制度があるもとで金融自由化を進めた。ところが、日本政府は、十分な消費者保護体制をつくらないまま、ビッグバンだけを推進しようとしている。全く逆立ちしたやり方と私は言わざるを得ないと思います。  そして、大臣、最後に私は強調したいのですけれども、先ほどは答申をそのままみんなうのみにして大蔵省はやっているからけしからぬという話も出ましたけれども、私に言わせれば、この答申さえ言っている消費者保護の方は全部オミットして、まともに推進しないで、規制緩和の方ばかり進めている、業界に有利な問題だけを進めていると言わざるを得ないし、それが大蔵省全体が接待漬けになっていることの一つの結果なのだということを私は率直に申し上げざるを得ないというふうに思うのですよ。  大蔵大臣、何か反論ありますか。
  371. 松永光

    ○松永国務大臣 質問であれば答えまずけれども
  372. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 では、結構です。  終わります。
  373. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、佐々木憲昭君。
  374. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。本日最後の質問ですので、どうかよろしくお願いをいたします。  きょうは、ビッグバン関連法案について総論的にお聞きをしたいというふうに思います。  まず初めに、日本ビッグバンがどれほどの大きな影響力を持っているかという問題でございます。  日本ビッグバンというのは、金融証券、保険のすべての分野を含んでいるということでありますが、アメリカの場合は手数料自由化中心とするメーデー、イギリスの場合には証券市場改革のビッグバン、それと比べまして日本ビッグバンというのは、産業経済、日本国民生活への影響というのは比較にならないほど大きいというふうに思うわけでありますが、その点の大臣の基本認識をまずお聞きしたいと思います。
  375. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  先ほどの佐々木先生は、ビッグバンについて国民の千二百兆の個人金融資産の争奪戦が始まるという感じから議論を展開されましたが、私どもの考え方は違うのですよ。個人の持っていらっしゃる金融資産をより有利に運用できる機会を拡大していこう、それによって国民の利益を図ろうということが一つ。もう一つは、日本金融市場というものが活性化してくれば事業者の方はそこから必要な事業資金を手に入れることができる、それを通じてベンチャー企業と言われるようなものを含めて事業活動が活性化する、それによって国の経済が発展をし、国民全体の利益につながる、こういう考え方でこの法案の審議をお願いしておるわけであります。  そういう意味で、この金融ビッグバン法を成立させていただければ、これは国民の利益につながる、ひとつ大いにつながるようにやっていかなければならぬ、こう思っているところでございます。
  376. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 争奪戦という言葉のことで先ほどからいろいろ議論がありますが、新たな商品が次々と生み出されまして、国民金融資産、それをどのように運用するか、こういう話でありますから、金融機関にとってみるとお客さんをどのように争奪するか、こういうことになるわけでありまして、まさに争奪戦が始まるわけでございます。その影響が、単に証券市場だけではなしに、日本金融、保険も含めた金融制度全体の大きな改革になるわけでありまして、産業や国民の暮らし全般に極めて大きな影響を与える。その影響が果たしてプラスになるのかマイナスになるのか、この点が今問われているわけであります。  昨日、きょうの夕刊で報道されておりますけれども、加藤幹事長は、金融ビッグバン、これには痛みが伴うということをアメリカでお話をされているようでございます。「金融破たんが北海道拓殖銀行や山一証券にとどまらず「長期的には、さらに脱落するところが出てくるかも知れない」との見通しを明らかにした。」さらに、「最も重要なのは金融ビッグバンで引き起こされた不安定性だ。国民は自らの仕事、会社、人生の将来について強い不安感を抱いている」、このようにも述べたというふうに報道されております。  きょうの夕刊では、これはコピーですけれども、「邦銀破たん、今後もあり得る」、物すごい大きな見出しで報道されまして、そういう点で大変大きなショックを、影響を与えているわけでございます。話をするだけでこれだけ大きな影響が与えられて、株も落ちたという話でございます。  大臣の基本認識をお聞きしたいのですけれども、加藤幹事長のように、まさに競争が激化していくということになりますと、今後とも邦銀の破綻、これはあり得るというふうにお考えでしょうか。それとも、今後はそれとは違って、ない、こう考えておられるのか。そのどちらか、その点をお聞きしたいと思います。
  377. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、あり得るとか絶対ないとか申し上げることはいたしません。  しかし、どんなことがあっても、銀行について言えば、預金者預金は全額保護するという仕組みがきちっとできました。それから、自己資本比率が低いがために、自己資本が不足しているがために経営の将来について心配があるような銀行があれば、条件が合えば、預金保険機構に資本注入 の申請をすればそれに対して審査の上資本注入にも応ずる、それを通じて金融システムをより安定したものに持っていけるというための仕組みもおかげさまできちっとつくらせていただきました。  こういった仕組みができておりますから、銀行等に関する限り何の不安もない、安心して商売に励んでいただきたいというふうに私は申し上げるわけであります。
  378. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 大銀行はかなり体力があるということでありますが、地方銀行の場合には大変不安を抱えておられる方々がいらっしゃいます。例えば名古屋銀行の加藤頭取は、九六年十二月十九日付の日経で次のように言っておられます。「地域金融機関にとって問題点もあるというのが本音だ。証券などとの垣根が低くなっても、中小の地域金融機関対応しきれないのできつい。」「金融界でもすみ分けがなくなると大手銀行が我々の営業基盤に攻め込み、外国勢も乗り込んでくる。中小が淘汰される局面が出てくるだろう。  しかし日本金融界にとってそれでいいのか。」このように述べておられるわけでございます。  ですから、競争が激化するということはもう明らかでありまして、そうなりますと、こういう危険性は一層強まるわけですね。今まで以上に、弱いところは淘汰の可能性というのはかなり強くなってくる。ですから、当然加藤幹事長もこのように言っておられるわけでございます。  そこで、金融の公共的性格、公共性という点についてぜひお聞きをしてみたいと思うのです。  銀行法あるいは保険業法の場合には、例えば、公共性について銀行法では「銀行の業務の公共性にかんがみ、」このような規定がございます。あるいは、保険業法でも「保険業の公共性にかんがみ、」このように規定しています。  言うまでもなく、金融機関というのは、経済活動の血液というべき欠くことのできない金融サービスを提供しているわけであります。とりわけ銀行の場合には、信用創造、決済機能、大変重要な機能を持っております。  この金融サービスを受ける機会は一部の者に偏ってはならない、これは当然だと思うわけであります。どの地域に住んでいようと、すべての国民にあまねく公平にその機会は提供されなければならないというふうに私は思います。公共性というのはやはりそういうものだと思うのですけれども、大蔵大臣はどのようにお考えでしょうか。
  379. 松永光

    ○松永国務大臣 今委員が読み上げられました銀行法の規定、要するに銀行というのは町の金融機関と違うぞ、やはり預金を預かり、あるいはまた資金を必要とする企業に融資をし、それを通じて経済の発展に貢献するという責務がある、そういったことを表現した規定だろうというふうに思います。  先ほど委員言葉の中に、どこに住んでいようとという話がございましたけれども、それは例えば埼玉県にある銀行が北海道の人にはなかなか応対できませんよ。民間金融機関でございますから、やはり自分の事業活動というものが便利にやれるところを中心に事業活動をやっていくというのは無理からぬことだろうというふうに思います。
  380. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 どこに住んでいようとというふうに申し上げましたのは、どの地域にいようと金融というサービスを受けるその条件は、できる限りこれは平等でなければならない。つまり、民間金融機関であろうと公共性ということが言われているわけですから、Aという銀行が埼玉県で経営している、そこに北海道の人が平等にということではなくて、北海道なら北海道のBという銀行が当然その地域のサービスを提供する責任がある、そういうふうに私は思うわけであります。それがやはり公共性ということの一つの内容だろうというふうに思うわけですね。  今度のビッグバン法案では、銀行証券、保険、こういう業態間の垣根を抜本的に引き下げて、相互の自由な参入を認める方向をはっきりさせております。それから、証券売買手数料あるいは損害保険の保険料も自由化する、新しい金融商品を自由に販売することができる、こういうことを目指しているわけであります。ここでは、市場原理をより一層徹底して激しい競争に入っていく、そういう可能性があります。しかし、金融機関の公共的性格あるいは社会的責任ということについて、今回の法案では全く触れていないわけであります。  大臣は、ビッグバンによって公共的な性格というのはより一層強まるというふうにお考えか、それともこれは弱まっていく可能性があるというふうに考えておられるか、この点についてお聞きをしたいと思います。
  381. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど、埼玉県にはAという銀行がある、だから埼玉県はAという銀行がやるのだよ、こういう考え方はいけない。これは地域独占、消費者のサービスにならないのです。だから、Aという銀行もあればBという銀行もある、Cという銀行もある、それが公正な競争をしていく、それによってサービスもよくなる、そのよくなるサービスの利益を消費者は受ける、これが公正な自由競争の一番の利点なんですね。そういう意味で、いろいろな金融機関が公正な競争をすることによってサービスがよくなる、その利益を消費者が受ける、こういう考え方が妥当だろうと思うのですね。  したがいまして、金融ビッグバンが実行されたとして公共性というものが損なわれるということはないのでありまして、それは変わらないというふうに思います。
  382. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 弱小の金融機関がこの競争の中で仮に負けてしまう、競争に負けて破綻するという可能性もこれはかなり高くなるわけでありますが、これまであったある特定の地域の金融機関が、それは今おっしゃったように、A、B、C、Dとたくさんあれば、それはよろしいのですけれども、そこにはCという金融機関しかなかった、しかし残念ながらそのCという金融機関が競争によって店を閉めざるを得ない、こういう状況になったとしますと、この金融というサービスはその点では低下を招くということになるのではないかと思いますけれども、その点はいかがでしょう。
  383. 松永光

    ○松永国務大臣 もし、ある地域にCという銀行しかないならば、その地域は相当Cが支配していますよ。そういったところはまず破綻するなどということはないです。小さい銀行であっても、地域によいサービスを提供しておればいいお客さんがつきますから、小さいからといって倒れるということはないのですよ。問題は、いかにして消費者の信用を得るか、そしてより効率のいい事業活動をしているか、それによって勝敗は決まるのだというふうに思います。
  384. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 先ほど名古屋銀行の頭取のお話を紹介しましたけれども、第二地銀などはかなりの危機感を持っておられるわけでございます。これは通常の競争よりも相当激化しますから、まさにお客さんの争奪戦というのがあり得るわけでありまして、それをお互いにやるわけですから、大変激しい競争の中で破綻をするということも十分あり得るわけでございます。  きょう、ちょっと紹介をしたいのですけれども、この坂井隆憲議員の、今委員長席に座っておられますけれども、「日本ビッグバン構想の視点」、これは私、じっくりとこの連休に勉強させていただいたわけでございます。この中で、イギリスのビッグバンに精通しているピーター・タスカさんという方が次のようにおっしゃっているわけです。「いまの銀行証券、損保の垣根がなくなってしまうと、互いの分野にすぐ乗り入れできるようになるんです。そしていまある程度までの採算があったとしてももっと低くなる可能性があります。」「しかし金融システム全体は、能力縮小がいずれ起こらざるを得ず、その場合どういうセーフティーなやり方があるか。私たちはまだ不透明感を持っています。」というふうにおっしゃっているわけですね。  ビッグバンが進んでいきますと、当然、競争が 激化し、コスト切り下げ競争、こういうことが起こってまいります。そうなりますと、当然その中で今まで採算がとれたところがとれなくなっていく。例えば、手数料の自由化によって手数料引き下げ競争というのが起こる。そうなりますと、その競争の中で採算がとれなくなって赤字に転落をしていく、その可能性というのは非常に強くなっていく。その結果、セーフティーなやり方がどういうことが可能なのか、まだ不透明感を持っている、イギリスのビッグバンを体験された方がこのように述べておられるわけでございます。  ですから、金融サービスの低下というのは、個別のこういう金融機関の破綻を通じて、ある地域、あるところ、ある方々にとっては突然起こり得る可能性があるというふうに私は思うわけでございます。そういう可能性というのはやはり否定できないと思いますけれども、大臣はどのようにお考えでしょうか。
  385. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  先生ビッグバンの、ある意味では競争が悪い面に働くケースを大変御心配いただいてお話しになっているわけでございますけれども、例えば、イギリスで、ビッグバン後にGNPにおける金融業のウエートは著しく向上したわけでございます。結局、こういった改革というものを乗り越えていかないと産業としても成り立たない。その途中、雇用の問題とかいろいろ生ずるかもしれません。しかし、より効率化し、金融機関そのものがしつかりすることによって、また経済にもプラスに働くということであります。  いろいろ先生の御指摘は、ある意味ではある局面、ミクロで起きる、そのときどうするかという問題は当然出てくるかもしれません。しかし、かといって、ビッグバンシステム改革をしない方がいいということにはならないというふうに思うわけであります。
  386. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私が申し上げておりますのは、金融の持っている公共的性格、この性格を弱めてはならないということを申し上げているわけでございます。ビッグバンを推進するという、仮にそういう立場に立っても、公共性をどう確保するかという立場からこの問題について対応していかなければならないわけでありますが、まことに残念ながら、今回のこの法案の中にはそういう視点が欠落をしているという点を私は指摘をしているわけでございます。  破綻するという例を今挙げましたけれども、それだけではなくて、例えば、競争の中で採算の上がらない店舗がありますね、支店ですとか出張所。銀行の店舗が、今まではどんどん店舗の配置をふやしていった。しかし、この数年は店舗が縮小の方向に転じております。  例えば、この点については、昨年の四月二十二日、当大蔵委員会で我が党の佐々木陸海議員が、清瀬市のさくら銀行清瀬旭が丘出張所の廃止問題を取り上げました。また、世田谷の住友銀行希望ヶ丘出張所の廃止問題、これを公共性とのかかわりで、地域の暮らしをどう支えていくかという点の公共性、そういう点のかかわりで取り上げたわけであります。店舗の統廃合については地域の方々には全く連絡がなかった、あるいは通帳の更新、定期の手続にバスに乗って遠くの支店まで行かなければならなかった、毎日の現金処理で困るなど大変大きな問題になり、そのやり方についての批判というのがかなり大きく広がったわけでございます。  これは部分的な問題といえばそうかもしれませんけれども、しかし、ビッグバンが進行するに伴いまして、店舗の縮小、閉鎖、統廃合、こういう点が非常に大きく進むということが現実に起きております。私は調べてみましたけれども、一九九四年の三月と九七年、昨年九月を比較しますと、例えば都銀では百五十六の店舗が減っております。全国銀行でいいますと三百六十四店舗が減っております。しかし、これはこれにとどまらない。これからさらに店舗の縮小ということが起こっていくわけでございます。  大蔵省にお聞きしたいのですけれどもビッグバンを控えまして、各金融機関、とりわけ大手都市銀行は店舗の縮小を目指しているようですけれども、この数年間でこの先どの程度の縮小を見込んでいるか、数字を明らかにしていただきたいと思います。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  387. 山口公生

    山口政府委員 せんだっての公的資金を活用した資本注入の際に健全性確保のための計画を出していただいたのですが、それによりますと、平成八年度実績にして、平成十二年度までに都市銀行九行で、国内、海外、本支店合計で約三百五十カ店の統廃合を計画しているというふうに承知しております。
  388. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 海外の数字というのは極めて少ないと思うのですね。大半が国内の店舗の縮小だと思います。それでも、九行で三百五十カ所の店舗縮小ということでありまして、これは極めて地域の方々にとっては大変な事態を引き起こす可能性があるわけでございます。そういう点では、住民に対するサービスの切り捨てということが競争激化の中で当然生まれてくるわけでございます。  私は、ビッグバンという前にまずやらなければならないのは、このような地域の中小金融機関の役割も一層高めるという点だとか、あるいは大手銀行の地域に対する責任、こういう点をより一層明確にするということが必要だというふうに思うわけでございます。公共性を高めるということがやはり今後の日本金融にとってますます重要になってくるわけでございますので、その点を抜きにして単純にビッグバンを推進するということでは、やはり国民の不安が広がるということは生まれてくるわけで、その点をぜひ考慮に入れていただきたいというふうに思います。  次にお聞きをしたいのは、雇用の問題でございます。  言うまでもなく、現在、雇用は最悪の事態でございます。失業率は三・九%。若い方々それから中高年の方々の失業率というのは大変なものでございます。これは、戦後調査を始めて以来、最悪の事態になっているわけですが、問題は、雇用の吸収力のある産業が日本経済の中で失われつつあるという点だと思うのです。金融機関が雇用を吸収できるのかどうか、これが今後問われると思います。  私は昨年の四月十六日の大蔵委員会で、ビッグバンが進めば雇用はふえるのかという点をお聞きをいたしましたところ、当時の榊原国際金融局長は、ビッグバンで東京市場が活性化すれば雇用はふえる、このように答弁をされました。松永大蔵大臣も、ビッグバンをやれば金融で雇用がふえる、このようにお考えでしょうか。
  389. 山口公生

    山口政府委員 どういうレンジで見るかということにかかってくると思います。  ビッグバンが来ますと各銀行もリストラを迫られます。リストラは人を減らせ、給料を減らせ、この国会でも随分そういう御議論がありまして、私も金融機関にそれをしょっちゅう問いかけております。しかし、それは新たなるまた発展のもとになるわけであります。金融界がしっかりしてくれば、今度は千二百兆の個人金融資産をバックに、またアジア経済というものを背景に、我が国の金融界が雇用を吸収できる力はあるのではないか。これは、ビッグバンが成功しなければできないということでありますけれども、そういう意味では、榊原財務官が申し上げたふえるというようなことは、長期的にはそうあるだろうし、そうありたいというふうに考えているわけでございま.す。
  390. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 どうも、具体的に雇用がふえていくという展望がなかなか見えにくいわけでございます。  具体的な数字をまず確認をしたいのですけれども、一九九四年三月から九七年九月までの三年半で、都市銀行、信託銀行、長信銀、地銀、第二地銀、それぞれの従業員の削減の数を示していただきたいと思います。そして合計で何人の削減になるか、数字をお聞きしたいと思います。
  391. 山口公生

    山口政府委員 先生の御指示の平成六年三月末の従業員数と平成九年九月末の従業員数を比較して申し上げます。  都市銀行は、拓銀を除く九行では一万八千三百八十六人の減少、長期信用銀行三行では千九十二人の減少、信託銀行七行では三千七百四十二人の減少、地方銀行六十四行では四千六百二人の減少、第二地方銀行では五千五百三十四人の減少となっており、これら五業態を合計いたしますと、全国銀行百四十六行で三万三千三百五十六人の減少でございます。
  392. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 たった三年半で三万三千三百五十六名の減少である。これは、まさに今雇用不安が広がっている一つの要因となっていることは明らかでございます。  それでは、証券それから保険、この二つの業界でこの三年間で従業員は何人減ったでしょうか。
  393. 山本晃

    山本(晃)政府委員 お答えいたします。  証券会社の従業員数は、平成七年の三月末から平成十年三月末までの三年間で、平成七年の三月末が約十二万三千人でございました。これが平成十年三月末には約九万九千人ということで、約二万四千人減少をしておるところでございます。
  394. 福田誠

    ○福田政府委員 お尋ねの数字でございますが、保険業界全体では三年間で六千四百人の減でございます。
  395. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今お聞きした数字だけでも大変な数になるわけでございます。約六万数千人の金融業界全体での減少ということでございます。これは実に経済全体に大きな影響を与えておりまして、例えば、証券業界の場合のピーク時の人員は十六万七千人だったわけでございますので、この間に四一%の落ち込みということでございます。  さてそこで、ビッグバンをやれば雇用はふえるのかという点であります。  大蔵省にお聞きしますけれども銀行証券、保険業界ではそれぞれ何人の雇用拡大計画を持っているでしょうか。
  396. 山口公生

    山口政府委員 銀行における従業員の雇用の問題については、各銀行それぞれ経営判断として持っていると思いますが、当局としてはそれは承知しておりません。
  397. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 ビッグバンによって活性化して雇用がふえるといいながら、実際に今後雇用を拡大するという具体的な計画はつかんでいない。むしろ拡大計画がないのではないかというふうに私は思います。これでは雇用がふえるといっても全く無責任なことになるわけでございまして、実際に出されているのはリストラ計画、人員削減計画だと思うのです。  どのような人員削減計画を出されているか、この点についてお答えを願いたいと思います。
  398. 山口公生

    山口政府委員 健全性確保計画を先ほど御紹介いたしましたが、同じその計画で、二十一行の合計でちょっと申し上げますと、平成九年三月末に比べ、本年三月末で六千九百人の削減の見込みでございます。平成十二年三月末までは二万二千六百人を削減する計画であるというふうに承知しております。
  399. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 一九九七年の三月から二〇〇〇年の三月、その間に二万二千六百二十六人の削減計画になっているはずでございます。つまり、ビッグバンを推進していくことによって雇用はますます減らされるということが明確でございます。これは二十一行ですけれども、これが全銀行、さらには保険、証券、それぞれの業界のそれぞれの会社の見通しを出せば、当然それを集計しますともっとたくさんの、何万人という単位の削減計画になると思います。そうしますと、ビッグバンを推進する中で雇用がふえるといいながら、現実には雇用はふえる展望がないということになるわけであります。  したがって、雇用がふえるというのは言ってみれば願望でありまして、現実の動きは極めて過酷であります。そういう意味で、私は、このビッグバンの問題について考える際に、そういう面も頭に入れて対応しなければならないと思うのです。それで、日本経済全体で今雇用不安が非常に広がり、それが将来不安をさらに増幅させて、その結果、財布のひもが締まって消費が落ち込んでいく、その一つの大変重要な構造的要因になっているわけであります。  そこで、私は、ビッグバンを推進する際の考え方として、本当に雇用をふやし、国民の生活を安定させていくという展望を示すということが政府にとって大事なことではないか、そういう方向が必要ではないかというふうに思うわけですけれども、この点で大蔵大臣の見解をお聞きしたいと思います。
  400. 山口公生

    山口政府委員 銀行業界、保険業界、証券業界、いずれも大変なリストラをしております。それは次なる飛躍のための苦しみでもあるわけでございます。当局の方で雇用が幾らふえるべきだということを示すという状況ではないと思います。  マーケットの信認を得べく各金融機関は努力をし、その結果として効率的な金融機関になる。それで、世界にロンドン、ニューヨーク、東京と並び称されるような金融マーケットをつくっていく。そういうことになれば、先生の御心配の雇用問題も解決されるというふうに考えるべきだろうと思うわけでございます。今のままいて解決があるのか、雇用がどんどんふえるのかということになりますと、それは逆だと思います。
  401. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 次の展望を示すことができないというような意味もおっしゃいましたけれども、次の飛躍の苦しみというふうにもおっしゃいました。現実の従業員の現場では、職場の実情を聞きますと、これはなかなか大変な事態でございまして、例えば、既に破綻をしました山一証券あるいは拓銀、徳陽シティ、三洋証券など、阪和銀行や日産生命も含まれますけれども、これらの再就職問題というのは極めて深刻な状況でございます。次の飛躍の苦しみと言いまずけれども、雇用の場合は、一度そこで職を失ったらなかなか次の飛躍につながらないのですよ。  労働省にきょうは来ていただいていると思いますが、昨年十一月に自主廃業を決めました山一証券の三月末の再就職状況、これは全体の就職の確定状況、それから外務員の場合の確定率、それから五十歳以上の再就職の確定率、これについて示していただきたいと思います。
  402. 浅野賢司

    ○浅野説明員 御説明いたします。  山一証券からの報告によりますと、山一証券が本年一月末、二月末、三月末の三度に分けて解雇した従業員は全体で約九千三百人でありまして、そのうち再就職を希望する従業員は約八千二百人おりました。そのりち、三月末時点で約五千八百人、七〇%の従業員が再就職の内定を受けております。  このうち、メリルリンチ証券などへ就職が内定した者約二千人など、多くの者が四月からの再就職ということで、再就職の内定を受けた従業員が三月末までに既に何人ぐらい就職していたかという点については把握できておりません。  もう一点、外務員それから五十歳以上の高齢者の方々の就職状況でございますが、再就職を希望する外務員は全体で千三百十二人、うち内定者は六百十二人、約四六%でございます。また、再就職を希望する五十歳以上の従業員は九百七十人でございまして、内定者は四百七十五人、約四九%というふうに報告を受けております。
  403. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の数字でも明らかなように、全体として八千人以上の再就職希望者がいらっしゃいますけれども、ところが、実際に内定をされたのが七〇%でありますが、確定したのはまだわかっていないということであります。  特に重要なのは、五十歳以上の場合には内定率が四割台、約五割近いわけですけれども、そういう大変低い状況にある。ですから、新しい金融商品の開発ですとかビッグバン対応できる、そういう分野に専門的な職を求める方々は比較的就職率は高いわけでありますが、しかし、それ以外の従来型の仕事を再びやろうとしてもなかなかこれは難しい、そういう現実にあるわけでございます。  したがいまして、このビッグバンを推進する場合には、先ほど来の議論にありますように、国民全体の、消費者の側に立った、その面からのアプローチが一つは極めて重要でありますし、同時に、その金融界で働いておられる方々、従業員の方々がどのような雇用状態に置かれるのか。人員が減らされれば、当然また労働強化、サービス残業というのも広がっておりますし、そういう状況ども念頭に置かなければならない。あるいは地域の中小金融機関が整理、淘汰されていく、そういう危険性も広がっていく。したがいまして、体力のある大手の銀行はますます巨大になる、そういう独占的集中といいますか、これは一層進みますけれども、しかし、多くの国民にとって必ずしもこれはプラスばかりではなくて、逆に大変な被害を受けるという面もあるという点をぜひ認識をしていただかなければならないというふうに私は思うわけでございます。  最後に、大蔵大臣に、そのような状況についてどのように考えておられるか、対応についての決意をお聞きをいたしまして、質問を終わらせていただきたいと思います。
  404. 松永光

    ○松永国務大臣 どうも両佐々木先生は物事を悲観的、悲観的にばかり議論をしていらっしゃるような感じがするわけでありまして、やはり公正な競争を通じて経済の発展を図る、その中で国民の福祉が充実していく、こういう考え方で私どもは取り組んでいくつもりであります。  そしてまた、雇用の問題でありますが、御存じと思いますけれども、英国におけるビッグバン、これは成功したと言われるわけでありますが、実は、金融関連部門の雇用者数は、一九八六年から一九九〇年の間に十数%ふえておるという実例もあるわけでありまして、日本金融市場も、そういうロンドンに比肩するような活気のある金融市場を創出することによって雇用もふえていくというふうに考えるわけであります。
  405. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今後、具体的な問題についてさらに突っ込んで、十分時間をとって質疑をしたいと思いますので、きょうはこれで終わりたいと思います。
  406. 村上誠一郎

    村上委員長 次回は、来る五月八日金曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時四十四分散会