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1998-04-03 第142回国会 衆議院 大蔵委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年四月三日(金曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 村上誠一郎君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 浜田 靖一君    理事 池田 元久君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 谷口 隆義君       今村 雅弘君    岩永 峯一君       大石 秀政君    鴨下 一郎君       河井 克行君    桜田 義孝君       杉浦 正健君    砂田 圭佑君       中野 正志君    根本  匠君       宮路 和明君    村井  仁君      吉田六左エ門君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       上田 清司君    北脇 保之君       末松 義規君    中川 正春君       日野 市朗君    藤田 幸久君       赤松 正雄君    河合 正智君       並木 正芳君    小池百合子君       鈴木 淑夫君    西田  猛君       佐々木憲昭君    佐々木陸海君       濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 松永  光君  出席政府委員         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         外務省アジア局         長事務代理   薮中三十二君         外務省北米局長 高野 紀元君         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局次         長       細川 興一君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省関税局長 斎藤 徹郎君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君  委員外出席者         参  考  人        (日本銀行理事) 本間 忠世君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      山口  泰君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君     ――――――――――――― 四月一日  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)(参議院送付) 三月二十七日  法人税法一部改正法案割賦販売制限規定削除  に関する請願安倍基雄紹介)(第九二五号  )  同(大畠章宏紹介)(第九二六号)  所得税減税中小業者への国民金融公庫の返済  条件緩和に関する請願東中光雄紹介)(第  九二七号)  消費税廃止国民金融公庫中小業者への融資  拡充に関する請願東中光雄紹介)(第九二  八号)  たばこ特別税創設反対に関する請願安住淳  君紹介)(第一〇二六号)  同(池端清一紹介)(第一〇二七号)  同(石橋大吉紹介)(第一〇二八号)  同(伊藤忠治紹介)(第一〇二九号)  同(岩田順介紹介)(第一〇三〇号)  同(上原康助紹介)(第一〇三一号)  同(海江田万里紹介)(第一〇三二号)  同(菅直人紹介)(第一〇三三号)  同(桑原豊紹介)(第一〇三四号)  同(五島正規紹介)(第一〇三五号)  同(小林守紹介)(第一〇三六号)  同(坂上富男紹介)(第一〇三七号)  同(仙谷由人紹介)(第一〇三八号)  同(日野市朗紹介)(第一〇三九号)  同(平野博文紹介)(第一〇四〇号)  同(松本龍紹介)(第一〇四一号)  同(山元勉紹介)(第一〇四二号)  同(渡辺周紹介)(第一〇四三号) 四月三日  所得税恒久減税実施に関する請願佐々木憲  昭君紹介)(第一〇六四号)  同(佐々木陸海紹介)(第一〇六五号)  同(古堅実吉紹介)(第一〇六六号)  同(吉井英勝紹介)(第一〇六七号)  たばこ特別税創設反対に関する請願大畠章  宏君紹介)(第一〇六八号)  同(玄葉光一郎紹介)(第一〇六九号)  同(辻一彦紹介)(第一〇七〇号)  同(土肥隆一紹介)(第一〇七一号)  同(佐々木秀典紹介)(第一一三一号)  同(藤田幸久紹介)(第一一三二号)  同(古川元久紹介)(第一一三四号)  同(山花貞夫紹介)(第一一三五号)  同(小平忠正紹介)(第一一四七号)  同(城島正光紹介)(第一一四八号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第一一四九号)  同(横路孝弘紹介)(第一一五〇号)  同(赤松広隆紹介)(第一一八八号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 三月三十日  減税による内需拡大赤字国債発行等に関す  る陳情書外一件  (第一三九号)  北海道における金融機能維持安定等に関する  陳情書外一件  (第一四〇号)  北海道拓殖銀行受皿銀行としての北洋銀行に  対する経営基盤強化に関する陳情書  (第一四  一号)  金融危機行政責任追及に関する陳情書  (第一  四二号)  用地買収に伴う租税特別措置法による特別控除  額の引き上げに関する陳情書  (第一八四号) は本委員会に参考送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に  伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案  (内閣提出第五四号)(参議院送付)  金融に関する件      ――――◇―――――
  2. 村上誠一郎

    村上委員長 これより会議を開きます。  内閣提出参議院送付国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。大蔵大臣松永光君。     —————————————  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案    〔本号末尾に掲載〕     —————————————
  3. 松永光

    松永国務大臣 ただいま議題となりました国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  国際通貨基金が引き続き国際通貨体制中心的役割を担うためには、世界経済拡大に応じてその資金基盤を強化することが必要とされ、先般、国際通貨基金は、その出資総額を四五%増加させる第十一次増資を行うことを決議いたしました。  同決議において、我が国出資額は、現行の八十二億四千百五十万特別引き出し権から百三十三億千二百八十万特別引き出し権に増額されることとなります。また、我が国出資比率は上昇し、出資額は、現在のドイツと同額の第二位から単独第二位となります。さらに、近年急速な経済成長を遂げ、国際通貨基金への出資比率がその経済力に比べて過小となっているアジア諸国等出資比率が上昇するよう配慮されております。  最近のアジア通貨危機においても、国際通貨基金国際的支援中心的役割を果たしてきましたが、今後とも国際通貨基金がこうした危機に適時適切に対処し、国際通貨体制安定等に貢献するためには、第十一次増資早期発効が喫緊の課題となっております。  こうした見地から、政府としては、本法律案提案し、国際通貨基金出資することができる金額を引き上げるため、所要の措置を講じたいと考えております。  以上が、この法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  4. 村上誠一郎

    村上委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     —————————————
  5. 村上誠一郎

    村上委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  本案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事本間忠世君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  7. 村上誠一郎

    村上委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。鴨下一郎君。
  8. 鴨下一郎

    鴨下委員 おはようございます。  大臣におかれましては、連日大変お疲れさまでございます。  新聞の報道でもありますように、ちょうど本日の未明からASEM、アジア欧州会議が開催されることになっております。その中での最大のテーマは、アジア経済危機についてでございます。このことでIMFが非常に重要な役割を演じているということはもう言うまでもないことでありますが、まず政府として、今回のアジア経済危機に関しまして、タイから始まり、インドネシア韓国というふうに波及したわけでございますけれども、これまでの東アジアもしくはアジア諸国アジアの奇跡と言われるぐらいに経済の発展がずっと順調にいっていたわけでありますけれども、これがなぜこのような事態に立ち入ったかということについての大蔵省見解についてお伺いをしたいと思います。
  9. 松永光

    松永国務大臣 委員指摘のように、かつては世界成長センターアジア地域だと言われるぐらい元気のあるアジア地域であったわけであります。それがなぜ、去年の秋以降、通貨危機そして経済危機が発生したのかというその原因でございますが、各国の状況によって必ずしも一概には害うことはできませんけれども、概して言えますことは、近年の為替過大評価、それに伴う経常収支赤字拡大海外から流入した資金不動産セクターなど生産的でない分野にたくさん使われておった、こういつたことなどから市場信認が著しく低下してきたということが挙げられようか、こういうふうに考えております。
  10. 鴨下一郎

    鴨下委員 このアジア危機日本との関係においてもまさに密接不可分でございます。ある意味で、日本経済アジア経済というのは相互作用の中で成り立っているのだろうというふうに思いますが、日本の立場としまして、アジア経済危機もしくはアジア通貨危機日本経済に対していかなる影響を及ぼしたか、こういうようなことにつきまして御見解を伺いたいと思います。
  11. 黒田東彦

    黒田政府委員 御指摘のとおり、アジア諸国日本経済関係は大変密接でございます。したがいまして、アジア通貨金融市場変動が続く中で、成長率の低下、インフレ率の上昇、失業者の増加といったことが起こり、大変厳しい経済情勢になっておりますことは、当然、我が国経済にいろいろな形で影響を及ぼし始めております。  私どもは、この影響について三つほどあろうかと思っております。まず第一は、今申し上げたようなアジア経済の低迷によりまして我が国のそれらの地域に対する輸出が減少する。二番目には、それらの国に対する我が国銀行の貸国債権内容悪化するのではないかという懸念三つ目には、これらの地域には我が国からたくさんの企業が進出しておりますが、それらの企業収益悪化するということを通じて我が国経済にも影響があるのではないかということでございます。  それぞれについて見てまいりますと、輸出につきましては、既にタイ韓国インドネシア等に対する我が国からの輸出の伸びが昨年の秋ごろからマイナスになり始めておりまして、特にことしの一月、二月とかなり大幅な、二けたぐらいのマイナスになってきております。我が国アジア地域に対する輸出というのは輸出全体の四割ぐらいを占めておりますので、これは遠からず我が国輸出及び経済影響を及ぼしてくるということかと思います。  二番目の、邦銀のこれら諸国に対する貸付残高というものも総額で三十兆円ほどあるわけでございます。特にタイ韓国インドネシアに対する貸し付けにつきましてはいろいろな懸念が示されておるわけでございます。幸いタイ韓国金融状況はかなり改善をしてきておりますが、インドネシアにつきましては依然として金融も含めて非常な変動が続いており、その債権についての懸念が続いているわけでございます。  三番目の現地進出企業収益悪化という問題につきましては、為替が切り下がっておりますので、それらに進出しております企業のうち、輸出中心としたものはむしろ輸出がこれから伸びるであろうと思われますが、国内市場を当てにした進出企業については非常な収益悪化ということが懸念されるということで、これらについてもいろいろな形で影響してくるということになろうかと思います。  したがいまして、御案内のとおり、政府といたしましては、二月からの特別減税実施、あるいは公共事業の追加、金融システム安定化対策などいろいろな措置を講じてきておりますし、これらに加えまして先ごろ可決されました十年度税制改正などの措置相乗効果を持って、こういったアジアからのマイナス影響をどれだけか相殺してくれるような形で寄与するのではないかというふうに考えております。
  12. 鴨下一郎

    鴨下委員 今、四月一日からある意味でのビッグバンが既に始まっているわけでありますけれども、一般の国民の肌で感ずる部分というのは、報道されているように、例えばドルで物が直接買えるようになったり、それからレストランでもドルで支払いが可能だ、こういうような話も報道されているわけでありまずけれども、逆に、日本国内ドルが非常に使いやすくなったというのと同時に日本の円もある意味海外により出ていく、こういうようなことも必要なのではないかと私は考えているわけであります。  要するに、今回のアジアでの通貨危機原因の一つには、アジア諸国全体が余りにもドルに依存していたというようなこともあるのじゃないか。こういうようなことから考えますと、円がより国際的な通貨として利用しやすいもの、こういうようなことで円建ての取引拡大する、こういうようなことも努めるべきではないかというふうに考えるのですが、いかがでしょうか。
  13. 黒田東彦

    黒田政府委員 御指摘の点は従来から指摘されている点でございまして、私どもも同様な考え方を持っております。もちろん、いずれの通貨建て取引が行われるかというのは基本的には取引当事者の合理的な判断ということで決定されるわけでございますが、少なくとも国際通貨としての円を利用しやすいものとするということは必要でございまして、その観点から、東京市場資金を調達する、あるいは資金を運用するといったことの利便性を高めて、円の通貨価値に対する国際的な信認を向上させるといったことを通じまして円の国際的な利用を一層図ってまいりたいというふうに思っております。  御案内のとおり四月一日に改正外為法が施行されましたが、これは今申し上げました資金の調達あるいは資金運用面、両面におきまして残っておりました規制をすべて撤廃をいたしまして、完全に自由な形で東京市場が利用されるような形になってきております。  今後とも、金融システム改革を着実に実施することによって御指摘のような円の国際化環境整備に努めてまいりたいというふうに思っております。
  14. 鴨下一郎

    鴨下委員 今回、IMFに対する日本出資シェアそれからそれに伴う投票権シェア拡大するわけでありまして、出資シェアでいえば今回の改正によって六・二八%、それから投票権シェアが六・二八%ということで、この拡大の幅だけで見ましても、例えばタイ一国の投票権シェアにも及ぶぐらいに非常に大きな部分になるわけであります。  まあ、日本はそういう意味でも、きのうの飛行機の中での記者会見の中で橋本総理も、日本IMFを通じて、それから二国間の中でも、アジア経済に対して非常に寄与しているんだ、こういうようなことをおっしゃっているわけですけれども、例えばインドネシアそれから韓国などでも、IMFプログラムを受け入れる受け入れないというような問題については、非常に国民の中からいろいろな意味での反発があります。例えば、もしIMFプログラムを受け入れてそれを着実に実行するということになれば、これはもう厳しい財政金融引き締めがもちろん必要とされるわけでありますし、それからその結果として信用の収縮それから企業倒産、何よりもその後に、例えば雇用の不安それからそれに伴う労働者スト等が行われてきて、結果的には、例えばIMFプログラムに対して非常に国民反発があって、それに貢献している日本という国は投票権についても二位のシェアを持っている、こういうような国に対してのある意味での、言葉はよくないですけれども、逆恨みに通ずるようなことがあってはならないというふうに私は思っているのです。  そうしますと、この点について私は、日本IMFに貢献するのは大いに結構ですけれども、それが逆の意味につながってくると非常に困るなというふうに考えておりますけれども、そのことについてはいかがでしょうか。
  15. 黒田東彦

    黒田政府委員 御指摘のように、IMFプログラムはしばしば財政金融引き締めを通じまして国際収支調整を行うということでございますので、企業倒産失業等の問題を生ずる場合がしばしばございます。実は、タイインドネシア韓国につきましても、多かれ少なかれ同様な問題を生じているわけでございます。  そのうち、特にタイ韓国につきましては、当初そういうことでIMFに対する非常に厳しい反発もあったようでございますが、他方で、IMF自体も、これは理事会あるいはその他での討議を通じてでございますので余り外には出ておりませんけれども我が国等IMFに働きかけたこともございまして、それから経済状況の変化に対応してということもありまして、プログラムにつきましてレビューを行うことになっております。レビューの時期に、例えば経済の動向を踏まえて財政収支のターゲットを緩めるとかそういう形で現実に合ったような形に修正したということもございますし、また、タイ韓国政府国民の方が必要な構造調整を行うという考え方にだんだん傾いてきたということもございまして、両々相まちまして比較的最近はスムーズにIMFプログラム実施をされております。  他方インドネシアの場合は問題がまだ残っております。具体的に申し上げますと、IMF側インドネシア側との間で既に合意されたプログラム内容についていろいろな議論が出ておりまして、現在新しいレビューに向けて再交渉を行っているところでございます。したがいまして、プログラムの中身について、インドネシアの現状を踏まえた形でより現実的なものになるように、私どもとしてもIMFに働きかけを行っているところでございます。  最近の情報によりますと、インドネシア側IMF側との交渉はもう最終段階に来ておるということでございますので、できるだけ早期に、より現実的なプログラムへ向けてIMFインドネシア側が合意できるよう、我が国としてもIMF側に引き続き強く働きかけてまいりたい、そういう形で、まさに委員指摘のとおり、これから単独第二位の発言権になるということを一層積極的に生かしてまいりたいというふうに思っております。
  16. 鴨下一郎

    鴨下委員 おっしゃるとおりに、IMF支援について一番際立っていることは、これはコンディショナリティーがあるということでありますから、このことについて私は、日本は非常に貢献しているにもかかわらずなかなかそれがアジア諸国に理解されないということは非常に残念に思っておりますし、IMFを通じての支援のみならず、二国間のさまざまな問題も含めて、日本はこれだけ努力をしてアジア経済の安定のために貢献しているんだ、このことについてぜひ日本国政府そのものが一体となって働きかけていただきたい、このことを切にお願いを申し上げたいと思いますが、最後に、大臣、一言だけそのことについてお考えをいただけたら幸いでございます。
  17. 松永光

    松永国務大臣 委員の仰せはごもっともな点があるわけでありますが、しかし、少なくとも今回のこのインドネシア通貨、そして経済危機に対する支援のあり方といたしましては、関係国最大資金援助を約束しておるのは日本。そしてそのほかに、去る二月二十日に東南アジア経済安定化に資するための緊急対策、これを閣議決定をした上で、先日橋本総理が、何期日になられるのか、インドネシア大統領が就任された、その直後にインドネシアを訪問されて、そしてスハルト大統領といろいろな話をしてこられた。それがスハルト大統領就任の直後でもありましたから、大変いいタイミングでの橋本総理インドネシア訪問であり、かつスハルト大統領橋本総理、二人だけで長時間にわたって話し合いをされた、そういったことがインドネシアIMFとの協議の進展にも大きく貢献したのではないかなというふうに言われておるわけでありまして、さらにまた、二月二十日の閣議決定に基づいて医薬品その他の支援を別途行うということも決定をし、既に実行に移されつつあるわけであります。  そういったことを通じて、インドネシアに対する我が国の懸命な支援努力、これはインドネシア政府はもちろん、多くの国民もわかってきておるのではなかろうか、こう思うわけでありますが、今後とも、委員指摘のように、日本努力というものが相手国で正しく評価される、そういったことになるように努力をしていく必要がある、こういうふうに思っているところでございます。
  18. 鴨下一郎

    鴨下委員 終わります。
  19. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、日野市朗君。
  20. 日野市朗

    日野委員 おはようございます。  IMFに対する増資が今問題になっているわけでございます。大蔵省あたりが得々としてと言うと少し言葉が過ぎますか、誇らかに、これで出資シェアそれから投票権シェア単独に二位になるのでございます、こう言われるわけですね。  では、その単独で二位になるということが、IMFの中で目に見える形ではどのように表現されるのか、ちょっと教えてください。     〔委員長退席浜田(靖)委員長代理着席
  21. 黒田東彦

    黒田政府委員 委員の御質問、私どもにとっても大変難しい課題指摘されたというふうに思っております。  すなわち、出資比率は確かに上昇いたしまして、投票権シェアも五・五四%から六・一六%ということでかなり大きく引き上げられます。米国に次ぐ単独第二位になるわけでございます。日本は、従来から単独IMF理事会理事を選任して送っておりまして、常時IMF決定に参与してきたわけでございますが、その理事発言権というものも最終的には投票で決まるわけでございまして、その際の投票権がこれだけ上がるということは、それだけの重みを持ってくるということでございます。  したがいまして、一体どういう形で具体的に我が国IMF決定内容に貢献していくかということは、我々としても大変重く受けとめておりまして、幾つか当面する問題について我が国の貢献をはっきりさせていくということが、そういった投票権発言権の増大を生かしていくことになるのではないかというふうに思っております。  まず第一が、今回のアジア通貨危機に見られますような、これは経常収支赤字によって通貨危機が起こるという従来型のものと全く異なっておりまして、特に、財政収支赤字経常収支赤字という双子の赤字危機が起こってきたラテンアメリカ型の危機と全く違っておりまして、いわば資本収支型というべき新しいタイプの危機でございまして、IMF専務理事も二十一世紀型の危機というふうに言っております。  そういう危機にどういうふうに対処するのか、あるいはこれをどう未然に防止するのかという問題、これは現在も議論されておりますが、恐らくここ一年ぐらいの間、最も重要な課題であるというふうに思っております。この問題に対して、個別に我が国としてアジア通貨危機の収束のために資金的な貢献をしていくというだけではなく、今申し上げたような形で、一体この新しい危機をどう未然に予防し、それでも仮に起こった場合にどういうふうに対処していくかということについて、できるだけ具体的な我が国としての考え方というものを述べ、それが国際的に認知されるように努力してまいりたいというふうに思っております。  そのやや前哨のような形でのあらわれといたしまして、昨年の秋に合意されましたマニラ・フレームワークというのがございます。その第二回会合が東京でございました。そこでも既に、タイ韓国インドネシアといった個別の国の問題に対する対応ぶりだけではなくて、こういった新しい資本収支に関する危機というものについて一体今後どうしていったらいいのかということで、アジア諸国からさまざまな意見が出ておりますので、そういった意見に十分耳を傾けながら、そういう意見をできるだけ集合して、IMF理事会、あるいはこれからございます暫定委員会等の場で一層重要な役割を果たしてまいりたい。そういう具体的な形で貢献することによって、まさに増加した発言権の重みというものを生かしてまいりたいというふうに思っております。
  22. 日野市朗

    日野委員 私が期待した以上に非常に深くお答えいただいたので、私も後の質問で出てくるかなと思ったところが出てしまいました。実は、今お答えいただいたところを大臣に伺って、大臣のお覚悟のほどを示していただきたかったのです。  実は、さっき鴨下さんが聞いておられた逆恨みされる可能性だってあるんだよということは、そのとおりなのですね。今韓国でこういうジョークがはやっているのだそうです。子供が母親にあめをねだった、そうしたら母親はだめだと言った、IMFがだめだと言っているから、こういう冗談があるのだそうです。そんなところまでIMFの存在というのはかなり知られてきて、そして今それがどのような規制を各国の財政にかけているかということを考えてみますと、そういう逆恨みという場面もなくはないと思うのです。  しかし私は、このIMFの中で、先ほどももう既に話が出ておりますが、資本収支危機というようなものを、特にアジア地域でいかにこれを未然に抑え、それからその危機が顕在化したときに、現在目の前にあらわれてきたときにどのようにそれに対処していくかということについては、やはり同じアジアの一国として、きちっとしたIMFの政策、これに日本はしっかりとコミットしていってアドバイスをし、そこでの主導権をとるというようなことは必要なのではないか、こう思うのですね。  大臣、どうですか、そこらについてのお覚悟は。IMFの中でIMFの政策に日本が強い影響力を持っていくということは、シェア第二位になったといって喜んでいるばかりではなくて、そういう具体的な行動によって裏づけられなければならない、私はこう考えます。いかがでしょう。
  23. 松永光

    松永国務大臣 委員仰せのとおり、アジアのいろいろな国々からIMFによる支援とのかかわりで日本が場合によっては逆恨みを受けるなどという事態があってはならぬことなのでありまして、しかし、ある意味ではあり得ることだというふうに思います。それは、日本でもまだ残っておりますけれども韓国インドネシアも同じだと思うのでありますが、経済活動の分野でも、やはり西欧諸国とは違った文化あるいはまた伝統があるわけであります。アジア的な、あるいは韓国ないしはインドネシア的な慣行それからしきたり、そういったものを一挙に変えるということはなかなか難しいことだと思うのでありますけれどもIMFの側も、その国の実情をよく把握した上で、スムーズにIMFプログラムというものが具体的に現実的に実行できるような状況、そういうふうに持っていかなければならぬ面が多々あろうかと私は思います。  そこで、今回の増資日本IMFにおける発言権が増大をしてきたわけでありますから、言うなれば、アジア諸国の意見に日本みずからが十分に耳を傾けて、そしてIMF理事会あるいは暫定委員会等の場でアジア諸国の意見をくみ上げた上で日本が発言をしていく、そういう役割というものが日本に課せられる立場だろう。その立場に基づく日本役割というものを十分果たしていくように努力をしていかなければならぬというふうに私は思うのでございます。
  24. 日野市朗

    日野委員 アジアに対するIMFの政策、プログラムと言ってもいいですかね。シナリオと言ってもいいかもしれない。それらのシナリオ、これは私の感想ですが、特にインドネシアなんかを見ておりますと、考えなければならない何か重要な要素がちょっと落ちているのではないかというような感じが実はいたしました。  今まで中南米や何かでずっといろいろIMFが活動してきた、そしてその実績を上げましたね。ニュージーランドなんかでもやって実績を上げた。それから、東欧諸国や何かでも今IMFの活動は実績を上げています。しかし、考えてみると、アフリカなんかでは必ずしもうまくいっていないと私は思うのですね。その点についての感想は後でまた例えればと思いますが、同じようなことがやはりアジアでもあるのだろうと思うのです。  これはよく指摘をされているのですが、スハルト大統領支援の合意文書にサインをする、それをIMFのカムドシュ専務理事が腕組みをしながら傲然と見おろしているというような写真がぱっと出る。そうすると、これがインドネシア国民感情をえらく刺激するわけですよ。十八世紀ですか、ジャワのマタラムがオランダに屈服するときに同じようなシーン、そのシーンをインドネシアの人たちは脳裏に思い浮かべる。こういう状況が、つまらないことのようだけれども、やはりその国民の持っている国民感情というようなものを非常に刺激をする。  また、韓国に対する支援があんなにおくれていったというのは、やはり韓国国民の持つ誇り高さといいますか、特に韓国はOECDに加盟したばかりです。そして、もはや我々は発展途上国ではないのだ、私はずっと前から発展途上国なんかではない、こう思っていますけれども、そう言って、さあ、これからさらに発展しようというときに通貨危機に遭遇をするということになると、韓国としてはIMFに助けてくれと言うのがおくれる。しかし、だれかがこれを言ってやらなければいけなかったのですね。  こういった事態、こういつたいろいろな国民の感情、文化、そういったものを我々は忘れて、今まで成功してきたというIMFの、言うなればこれは西欧的な、欧米的なと言ってもいいでしょうか、そういった手法のシナリオがずっと用意されているわけですが、私はそれに何か大きなものが欠けているような気がしてならない、こんなふうに思いますが、いかがでしょう。
  25. 黒田東彦

    黒田政府委員 まず、私の方から、ただいま委員指摘の点について、具体的なインドネシアの例に沿ってお話を申し上げたいと思いますが、確かに、インドネシアIMFプログラムは、昨年合意された後、最近に至るまで必ずしも所期どおりの成果を上げませんでした。そうした中で実は幾つかの問題が起こり、既に修正されたものもございます。  一つは、例えば、昨年インドネシアの場合には金融機関の問題があるということで十六の銀行を閉鎖したわけでございます。ただ、閉鎖した際に預金の全額を保護しなかったものですから、その後、金融機関の一種の取りつけのようなものが起こりまして、何百とある民間の金融機関から国営の金融機関へあるいは外国の金融機関へ預金がシフトしてしまうということで、大変な貸し渋りあるいは金融システムの機能しない状況が起こってしまったということがございます。  これは、金融機関の問題につきましてはIMFも十分認識しており、各地でいろいろなプログラムの際に、金融機関を閉鎖する際に預金の全額を保護するということは必ずしもしていないわけでございますが、インドネシアの場合に同じようなことをやったところ、大変な預金シフトが起こり、問題をむしろ悪化させてしまったということがございました。これは、既に一月の段階でIMFインドネシアと話し合いを行いまして、自後、銀行の預金はすべて全額政府が保証する、保護するという政策をとりまして、そういった預金シフトあるいは取りつけ騒ぎ的なものは終息したわけでございます。  これなども、ほかの国‘地域で成功した手法が、アジア、特にインドネシアで必ずしも成功しなかったという例かと思います。ちなみに、タイ及び韓国では、初めから両国政府が非常に強く主張したこともございまして、銀行の預金は全額政府が保証するという政策をとっておりましたために、金融機関に対する取りつけ騒ぎのようなものは結局起こらなかったわけでございます。  それから、もう一つございますのが、インドネシアについて構造改革という中でたくさんの問題が指摘されているわけですが、食糧の専売というものを従来やっております。これを米だけに限定して、その他すべての食糧の専売を廃止するということをインドネシア政府と話して当初の計画に入れたわけでございますが、その後、ルピアの大変な下落の中で食料品価格が高騰する、あるいは一万六千とも七千とも言われている島国でございますので、そういったところへの食糧の供給が十分に行かなくなるのではないかという懸念が生じてまいりました。現在、インドネシア側IMF側とで話しております中に、この食糧の専売を、もちろん長期的にはこれも自由化していくということはインドネシア政府も合意しているわけでございますが、当面どういつだスケジュールでこれを段階的に実施していくかということについて話を進めている。これなども、事前には、一万六千、七千という島国で、しかも人口の四分の一ぐらいがいろいろな僻地に住んでいるというインドネシアの実情が、そのプログラム策定のときにこのインドネシア状況が必ずしも入っていなかったのではないかというふうなことまで言われている状況でございます。  したがいまして、御指摘のように、IMFプログラムというのは基本的に国の経済金融状況が問題を生じたところに適用されるものでございますので、ただでさえ難しいわけでございますが、特にアジアの場合に、その歴史的、地理的な状況というものを十分踏まえてプログラムを策定していかなければならない、それを我が国としても側面からできるだけサポートしていかなければならないというふうに存じている次第でございます。
  26. 日野市朗

    日野委員 インドネシア経済なんかは話し始めると非常に興味を引くものですから、深入りすると困りますから、余り深入りしないようにします。  ただ、IMFプログラムの中で一つ誤算があったというのは、タイのバーツのドルとのペッダ制というものがこれほどもろいものだったということにはちょっと思い至らぬところがあった。特にタイ国内での経済のファンダメンタルズを言えば、悪くないわけですよ。失業率だって、それから貯蓄だって、インフレだって、そういったファンダメンタルズを構成する要素を見てみれば、悪くない。それがあっという間に赤字を積み重ねていってバーツが低落していってしまう。それが今度はインドネシアにばあっと飛び火をするというところにその恐ろしさがあるわけです。  しかも、そのインドネシアのお金なんというのは決してインドネシア国内にあるのではなくて、それはシンガポールにあるわけですから、そういった特殊性。それから、経済があらかたオーバーシーズ・チャイニーズと言われる人たちに握られているわけですね。そういった特殊性というもの。これは、よくその地域を知っていて、その地域における経済運営のノウハウをよく知っている人たちがきちんとした発言をしていかなくてはいけないだろうと私は思うのです。  まあ、こんなところまで考えれば、おまえさん考え過ぎよと言われるかもしれませんけれども、あのスカルノ大統領からスハルトにかわっていったとき、いわゆる革命のときですね。中国人の大虐殺が起こって、そして中国が軍艦をインドネシアの領海内に派遣するというような事態が起きましたね。それから、現在のインドネシアにおける暴動ですか、ライオットはまあ大したことはないと言う人もいますが、いや、実際は相当ひどいものなんだと言う人もいる。経済政策いかんでは軍が経済政策をめぐって二つに割れて内戦なんというまことに不吉な予感を語る人もいるわけでして、こういつたことを避けることは日本の国益にとっても非常に大事なことであると同時に、これからのアジアとしての経済圏をきちっと維持していくために、IMF、これは私はIMFだけではないと思うんだが、IMFの中でも日本はきちんとした役割を果たしていかなければならないというふうに思うのです。決して、シェア第二位、これをモディファイアとして、形容する言葉として使うのではなくて、その実質を私は求めたい。実質的な活動、それをIMFの中でも求めたいと思います。  大臣、いかがですか。
  27. 松永光

    松永国務大臣 委員仰せのとおり、IMFの中での日本発言権が増大してきたということは、アジア地域における危機の克服、通貨の安定のために、先ほど申し上げましたけれどもアジアの国々の意見を十分酌み取って、そしてIMFの場でアジア地域の国々のことを代弁するような形でしっかり発言をしていく、そういう立場をとらなければならぬというふうに私は思います。  同時にまた、アジアの国々が経済が順調になってくるということが、これは日本経済にとっても大変重要なかかわりのあることでありますから、その意味でも、アジア地域の国々が通貨が安定し、経済が安定するということが日本にとっても大きな利益になるわけでありますので、そういったことで、アジア地域経済の安定のために今後とも日本は応分の努力あるいは支援、こういったものをやっていくことが極めて大切だというふうに思っております。
  28. 日野市朗

    日野委員 問題をアジアからちょっと全世界的な規模に広げて考えてみたいんですが、私は非常に疑問に思っていることが一つあります。IMFは投機的なマネーの動きに対して何をやっているんだという思いなんです。  今度のアジア危機でも、ヘッジファンドと言われるものが活躍をいたしました。あれはマハティールさんですか、のろいの言葉をそれこそヘッジファンドに対して浴びせているわけですな。私が驚いたのは、このヘッジファンドの人たちというのはあくまでも日陰でやっているかと思ったら、今度は、韓国あたりでは堂々と大統領と会ったりしているわけです。これは、ヘッジファンドが市民権を得たのかね、いつ、だれがそんなふうにしたんだ、私はこんなふうに思っている一人なんです。  IMFの中でこういつた国際的な投機、暴力的な投機が行われるのに対して、IMFとしてはどういうふうな手が打てるのか。もし日本でそれに対して手を打つということを考えているのならば、ぜひそれは聞かしていただきたい。  実は私は怖いんですよ。アメリカはあんなに株が高いでしょう。あれが正常な形なのかどうかということに対しては、これはいろいろ見解があります。私は疑問を持つ一人です。ああいうところにヘッジファンドの動きが入っていったら大変だなと、それは非常に私は心配しますよ。そのほかにも、いろいろ今までのニュージーランドだってメキシコだってやはり彼らにかなりかき回された。今度タイなんかもかき回されたことは間違いないです。そういった国際的な投機、これに対する考え方を聞かしてください。  今までは実物経済で来たけれども、今は、その実物の価値の移動を伴わない金、マネーが経済を動かす、そういう動きはどういうものかと私は思っているわけですが、ひとつ、大蔵省の方で何か考えていることがあったら聞かしてください。
  29. 黒田東彦

    黒田政府委員 御指摘のヘッジファンド、あるいはいろいろな形での短期資金の移動が今回の通貨危機にかなりの影響を持ったのではないかということは幅広く言われておりまして、実は、今委員の御指摘の中にありましたようなマハティール・マレーシア首相の問題提起もございまして、IMFの中でもこの問題についての議論が行われております。  まだ十分この議論が煮詰まったわけではございませんので、議論の途上ということを御理解いただきたいと思いますけれども、少なくとも、今回のアジア通貨危機の中でヘッジファンドの役割というものがあったということは認められるわけでございますけれども、量的なものをずっととってまいりますと、ヘッジファンドの金額というものは、トータルの国際資本移動の中では必ずしも大きなものになってまいりません。それは、短期資金あるいは長期資金委員案内のように、特に短期資金の場合は国際的な銀行の貸し出しというものが非常に巨額に上っております。それから、長期資金になりますと、直接投資というものも相当あるわけでございます。これらはヘッジファンドが直接には行っておらないものでございます。したがいまして、量的に見ますと、必ずしもヘッジファンドが今回の通貨危機を大きく深刻化させたという統計的な証拠というのはなかなか見当たらないわけでございます。  しかし、御案内のとおり、タイの場合もインドネシアの場合もまた韓国の場合も、それから、IMFプログラムを要請するようなことにはなっておりませんけれども、マレーシアその他の東南アジア諸国の場合も、いろいろな重要な時期にヘッジファンドの動きが見られたということは、これは新聞報道等もされているわけでございまして、確かに重要な時期に決定的な影響を与えた可能性というのはまだ残っておるわけでございまして、さらに今後検討していく必要があるというふうに思っております。  そこで、こういう問題に対する対処の仕方ということになりますと、先日の東京で開かれました第二回のマニラ・フレームワーク会合でも合意された点でございますが、短期的な資本移動の状況を監視する、モニターするということの必要性、これは途上国、先進国、またアジアのいわゆるエマージングエコノミーと言われる国々も一致しているわけでございます。これはIMFも一致しておりますので、今後の経済のサーベイランスの場合には必ず短期的な資本移動の状況を見ていくということになろうかと思います。  そこで、第二段階で、それではそういうモニターした結果に応じてどういつだ措置をとるかということになると、ここで若干意見が分かれるわけでございます。措置ということになりますと、短期資金の受け入れ側、アジア諸国とかそういう国について、受け入れている銀行あるいは企業の外貨資金の取り入れ状況をモニターした上で何らかの措置をそういった国がとるかということになるわけでございます。昔風の為替管理というものはなかなか現在では有効でないという議論が強くなっておりまして、むしろ、銀行企業に対するいわゆるプルデンシャルなというか、過度のリスクを負わないような形に規制をするというようなことは、現に銀行については行われておりますし、一般の企業についても外貨資金繰りについてはそういったことを検討してはどうかという意見が、そういう資金の受け入れ国側の議論としてはございます。これはある程度、今後とも前向きに検討されていく可能性があると思います。  問題は、資金の出し手側、つまりヘッジファンド等がある方でヘッジファンド等について何らかの規制ができるかどうかということでございますが、これについては、これまでのところ非常に悲観的というか、消極的な意見が多いわけでございます。  と申しますのは、銀行の場合ですと、銀行はどこの国でも免許業種でございますし、銀行監督がございまして、銀行のリスクのとり方については厳しい規制がございます。ところが、ヘッジファンド、その他のファンドというものはいわば任意に、個人でも企業でも自由につくって、自由なところがらどんなものにも、どんな場所にも投資するというものでございまして、基本的に規制が難しいというか、どこかの国でありますと、規制のないところにファンドをつくって、そこから投資するということになりかねないということで、出し手側の銀行の規制についてはBIS等を通じて非常に厳しい規制が現在もかかっておりますし、今後もその改善については十分議論されていくと思いますが、事ヘッジファンドについて出し手側で何らかの規制をするということについては、これまでのところ消極的な意見が強いというのが現状でございます。  私どもとしては、確かに、規制というものをヘッジファンド等に直接かけるということは非常に難しいと思いますが、唯一あり得るというか、合理的なものとして我々も考えておりますし、そういうことを検討してはどうかと思っておりますのは、出し手側のそういうところの情報をディスクローズする、どういうポジションをとっているのか、どういう通貨投機をしているのかということについてのデータを何らかの形でディスクローズさせられないかどうか、そういうことによって危険を防止できないか、これは検討に値するのではないかというふうに考えております。
  30. 日野市朗

    日野委員 こういう議論もぜひIMFの中で私はきちっとやってもらいたいし、これは日本がぜひともイニシアチブをとってもらいたいと思うのです。といいますのは、今、日本というのは非常にもろいのですよ。三月の期末、一万八千円の株価にしましょうなんて言って、まあいいですよ、それは努力するのはいいのですが、そうやってそういったいろいろな介入、しかも口先介入がかなり多くて、その都度株価が上がったり下がったりするわけですよ。それから、円も上がったり下がったりするわけです。私がヘッジファンドで一勝負やるとすれば、これはねらいますな。日本というのはこういうもろさを持っている。私はここらのそういったもろさというのはある程度、こういう資源的な制約が非常に強い日本のような国なんかにおいてはねらわれやすいと思う。ですから、ここらもしっかりやってもらわなくてはいかぬところだなというふうに思います。  それで、もう一つ、アジア通貨基金の構想を出しましたね。これは本当はアジアの国々も希望をしていたことなんだけれども、実際に出してみたら、アメリカ、ヨーロッパ、中国あたりからまで猛反対を食っちゃって、とうとうだめになったようでありますが、しかし、こういった似たようなものに対するニーズといいますか需要というのは実は私は強いと思うのです。特にアジアを見た場合ですね。私は、何でアジア通貨基金がこんなに簡単にみんなに大反対されたかというと、これは、事務局を設けてIMFと同じようなことをやるというふうに思われたところがまずかったのじゃないかと思うのです。  あれがもろくも失敗をした原因、どのように総括しておられますか。ちょっと聞かせてください。
  31. 黒田東彦

    黒田政府委員 御指摘アジア通貨基金構想は、昨年の秋、特に香港で行われましたIMF総会の際に、アジア諸国が集まりましてそういう議論を始めようといったやさきに、実はアメリカなどから強い反対が出て、その場では結局それ以上の議論がなく、その後、十一月のマニラの会合におきまして、いわばアジア通貨基金構想のコアの一部が生かされた形で新しいフレームワークができて、そこの中ではアジア通貨基金構想のように、アジア地域IMF支援を受ける場合に、それに足りない部分をいわば補完的にアジア諸国でバイラテラルに支援をしょうという形で生かされているわけでございます。  ただ、御指摘のように、香港で議論をされた際のアジア通貨基金構想とマニラ・フレームワークとは二つの点で違っております。  一つは、特にこれはアジア諸国の中でそういう意見が強かったわけですが、やはり相互の支援を行うということになればそのための事務局が要るのではないかということで、小さくても何らかの事務局が要るのではないかという構想があったわけですが、それがマニラ・フレームワークではなくなっております。  それからもう一つは、アジア通貨基金構想では、各国がいわば将来何かあったときに二国間支援を行う金額の限度額を具体的に示すということを構想しておりました。そうしますと、トータルがこのぐらいになる、それで、具体的にどこかの国で問題が起こった際に必要な額をみんなでコミットした額に比例してシェアしていくという構想があったわけでございますが、アジア通貨基金構想のそういった具体的なコミットメントではなくて、マニラ・フレームワークでは、そういう支援を行うというコミットはしておるわけですが、金額等具体的なコミットメントはしておりません。  その意味で、御指摘のように事務局といった構想、それから具体的な金額のコミットメントといった構想、この二つの点が特にアメリカ側に強い反発というか反対というか、そういうことを招いたのではないか。今、これは後知恵でございますけれども、そういうふうに考えることは可能ではないかというふうに思っております。
  32. 日野市朗

    日野委員 マニラ・フレームワーク、やはり何らかの形でアジアにおける通貨の安定を図るという必要性はあるわけでして、そういったバスケットみたいなものをつくっておいてそこにお金を入れておいて、要るときはそれぞれの国がちょっとここから借りますよということで使えるようなシステムというのは、私も必要だと思っております。そのときはかなり円は入れなくてはいかぬですよ。よその国よりは日本が円をごそっと入れないと成り立たないだろうと私は思いますが、しかしそれでもやはり頑張ってやる必要があるのだろうと私は思っております。  それにつけても、ちょっと円について、一言大蔵省に物を申しておかなくてはいかぬ。去年、私はフランスに行ったのですよ。ちょっと田舎に行きました。そして、そこの田舎のホテルで、フランを持っていなかったものだから、フランを買おうとしたわけですね。そうしたら、今まで円を扱ったことなんかない、勘弁してくれと言われてしまった。僕は、フランはないし、困り切ってしまって非常な苦労をした覚えがありますが、円というのはまだその程度なんですね。これをもっと強くしていかなくてはいかぬと思うのです。  それは、バイラテラルな援助とか何かでいろいろ金を出していますし、インドネシアだって今度金が総枠で足りなくなれば、日本何とかしてくれと言ってくるに違いない、今までそうしてきたから。そういうときに、最近は円建てでやるようになったのですね。そういう円建てをもっともっとふやしていかないといかぬのではないか、こういうふうに思います。  そして、国際的なそういった取引の場で、私はもっと大きい顔をしてもらいたいと思うのですよ。韓国はもう破産するからなといって個別の債権国と交渉を始めようとしたときに、アメリカが乗り出しましたね。大体、韓国の一千億ドルの借り入れに対して、アメリカが持っているのは百億ドルぐらいでしょう。日本はもっともっと持っているはずだ。もっと大きい顔をしろというより、もっと大胆に機敏に円の活躍する場をつくらなくてはいかぬのじゃないですか。最後にそのことだけ聞いておきます。
  33. 黒田東彦

    黒田政府委員 御指摘の円の国際化につきまして、いろいろな要因が絡んでいるわけですが、二つほど我々として相当考えなければならない点があると思います。  一つは輸出入でございまして、我が国からの輸出は三割五分、三五%から四〇%ぐらい既にもう円建てになっておりますが、輸入は二割ぐらいしか円建てになっておりません。円建て以外はほぼすべてドル建てだというふうにお考えになっていいかと思いますが、このことは何を意味しているかと申しますと、我が国企業は外国に輸出する場合には円建てで輸出する場合が多いわけですので、相手国に円で払ってください、こう言うわけです。ところが、相手から輸入してこちらが払うときはドルで払うということで、相手国、特に貿易の非常に重要な地位を占めておりますアジア諸国から見ますと、日本と取り引きしておりましても円が入ってこない。円を払おうとするとないわけですので、ドルで調達して円に転換してやるということになりますと為替リスクを生じます。それから、円を借りればまた為替リスクが生ずるということで、我が国の貿易が輸出と輸入と両々相まって円建て化が進んでいかなくて、輸出だけの円建て化が急速に進んでおります。  実は、二十年も前ですと輸出の円建て比率というのは非常に低かったのですが、さっき申し上げたように最近は四割近くなっている。輸入の方は円建て化が遅々として進んでいない。二割ぐらい。これは、過去ずっと円高傾向があったものですから、企業としては輸出は円建てで輸入はドル建てでという性向が強かった。それから、輸入品にいわゆるコモディティーがあって、これらはどうしてもドル建てで取引されているということがあったと思いますが、こういった貿易面で円を相手に供給することがないということですと、どうしても相手側に円不足、円リスクを回避したいということになってしまうということが第一点でございます。  もう一つは、円の資金を調達したりあるいは運用したりする東京市場がどれほど利便性があったかということでございます。今回の為替管理の抜本的な自由化によって何がしかの貢献ができるかと思いますが、今後ともさらに、短期金融市場の整備とかあるいは東京市場への資金調達の環境をもっとよくするといったことを通じて、円を調達あるいは運用する面での利便性を高めていかなければ、これもなかなか円の国際化につながってい  かない。  今申し上げた貿易面と資本の調達、運用面、両方の面で我々としてもさらなる努力が必要なので  はないかというふうに思っております。
  34. 日野市朗

    日野委員 時間が来ましたので、終わります。
  35. 浜田靖一

    浜田(靖)委員長代理 次に、北脇保之君。
  36. 北脇保之

    ○北脇委員 民友連の北脇保之でございます。日野委員に続いて質問をいたします。  昨四月二日の株価とそれから円の動向を見てみますと、株価については日経平均で一万五千七百二円九十銭、五百三十八円七十六銭安で一万六千円を割り込んでおります。そしてまた円の方も、百三十三円八十六銭ということで円安が進行しており、日本経済状況はますます厳しい状況になっております。国内景気の立て直しということが急務であることは言うまでもありませんが、このことはアジア経済世界経済に対する日本の責任でもある、こういう認識のもとで、今回提出されておりますIMF増資のための法律改正案について質問をいたします。  まず第一に、今度の第十一次増資は四五%の増資規模になっているということで、現行、日本円でいえば約二十五兆円であるものを約三十六兆円に増資をするということでございます。ただいまの大臣説明にも、世界経済拡大に応じて資金基盤を強化する必要がある、そういうことでIMFの決議がなされている、こういう説明がございましたが、しからば、この四五%の増資一そして約三十六兆円にするということの数字的根拠、なぜそれだけの規模が必要なのか、このことについて説明をいただきたいと思います。
  37. 黒田東彦

    黒田政府委員 議論の経過を御説明いたしますと、御案内のとおり、IMF協定では、基本的に五年ごとにIMFのクォータを見直すということになっております。前回の見直しというのが、実は実際に発効いたしましたのは一九九二年でございます。五年の期間というのは一応決まっておりますけれども、時々短くなったり長くなったりしておりますので若干期間がずれておりますけれども、いずれにせよ、前回、一九九二年に発効いたしました増資の際には、実は五割の増資を行っております。その後、現在に至るまでの期間の経済規模の増加あるいは資本取引その他いろいろな状況が変わっておりますが、一定の計算方式で計算いたしますと、約六五%ぐらい増資することが一定の程度で望まれるという結果が出たわけでございます。  しかしながら、各国ともいろいろな経済状況もございますし、それから、実はクオータの場合には、トータルの額も大変重要でございますが、クオータのシェアの調整というものも必要になります。そういたしますと、我が国のようにシェアが高まる国もございますが、米国あるいはその他の国のようにシェアが低下する国もあるということで、実際にクオータの増加、増資に対してはさまざまな各国の利害が絡みまして、いろいろな議論の中で、結局四五%、これは前回の五〇%よりも若干低いわけでございますが、そういう数字になったわけでございます。  過去ずっとさかのぼってみますと、三五%程度の増資であったり、あるいは三〇%程度の増資であったりしたこともございますが、過去の平均的な増資状況を見ますと、おおむね五割前後ということが多いわけでございます。  先ほど申し上げたように、単純な計算だけでいくと実は六五%ぐらい増資することが望ましいわけですが、さまざまな交渉の中で最低限四五%は必要だということで、昨年秋の香港におけるIMF総会で百八十カ国ほどの加盟国の間での合意が成立して、四五%の増資になったというふうに承知しております。
  38. 北脇保之

    ○北脇委員 この件は、国際的に決定されたことではありますが、政府としては日本国に戻って国会に対して説明する責任を負っていると思いますので、そういう意味でお尋ねをしているわけでございます。  今の答弁でちょっとよくわからなかったのは、単純な計算でいくと総額は六五%の増が望ましいというところが一つベースにあるということでしたが、その単純な計算というのはどういうことなのか、本当に端的で短くて結構でございますから、どういう要素を盛り込んでの単純な計算ということなのか、ちょっと説明いただきたいと思います。
  39. 黒田東彦

    黒田政府委員 これは、IMFが発足した際、ブレトンウッズ会議というのがございましたが、そこで採択されたブレトンウッズ・フォーミュラという計算式がございまして、それによりますと、各国のGNPあるいはGDP、輸出額の変動あるいは貿易規模、外貨準備などを考慮に入れた算式で計算するものでございます。
  40. 北脇保之

    ○北脇委員 次に、今回の増資が発効するためには出資総額の八五%を有する加盟国の同意が必要であるということでございますが、この必要な加盟国の同意が得られる見通し、どの程度の期間を要するとお考えなのか、教えていただきたいと思います。
  41. 黒田東彦

    黒田政府委員 八五%多数決が増資については必要ということになっております。今回もそうでございます。  そういたしますと、実は決定的に重要なのが米国の動きでございます。米国は、出資シェアが一七%程度でございまして一五%を超えておりますので、米国一国が増資に同意しなければ増資全体が発効しないということになります。ちなみに、米国以外の国も固まって一五%以上反対が出ればもちろん発効しないことになりますけれども、過去の例を見ますと、ほとんどの国がかなり早急に増資に同意をいたしますが、米国が、いつもと言うと失礼ですけれども、しばしば同意がおくれるということで増資がおくれることが過去にあったわけでございます。  そこで、最近の米国の議会の動向を見てみますと、最近のアジア通貨情勢等にかんがみて米国政府が強く議会にこの増資の早急な同意を働きかけたこともあったかと思いますけれども、既に上院では、このIMF増資を含む九八年度補正歳出法案が本会議で成立をいたしております。それから、下院でも、担当委員会では議決が行われたわけでございますが、下院の本会議ではまだ議決が行われておりません。  したがいまして、米国議会の見通しが一番重要でございますが、それについて確たることを申し上げることはできないわけでございますけれども、最近のアジア状況等にかんがみますと、できるだけ早く、同意通告期限までに増資の発効に必要な加盟国の同意が得られることを強く期待しているところでございます。
  42. 北脇保之

    ○北脇委員 今回の増資で、日本は今度単独シェア二位ということになるわけですから、ただいまでも二位ではあるということで、そのシェアに応じた発言権を確保し、かつ、それを活用していかなければいけないというふうに思います。  そういう意味で、現実において日本は、IMFの意思決定とか運営において出資額にふさわしい影響力を発揮しているかどうか、今回のアジア危機に関するIMFプログラム策定に当たってどのようにその影響力を行使できたのか、このことをお聞きしたいのですが、これは、タイとか韓国インドネシア、それぞれにプログラム内容に沿ってお答えをいただくと大変な時間になってしまいますから、プログラム決定に当たって日本政府として特に重要だと考えたことはどういうことであって、それがどのように具体的なプログラムに盛り込まれているか、そこの例というようなことでも結構ですから、手短にお答えいただきたいと思います。
  43. 黒田東彦

    黒田政府委員 御指摘の点につきまして、まず手続的な話で申し上げますと、実はIMF理事会がすべての決定を行うわけですが、そこの理事会のメンバーとして、日本だけではなくて、中国あるいは東南アジア諸国理事も出ておりますので、そういったアジア諸国関係理事が常に非公式の会合を行っておりまして、その中でタイインドネシア韓国などに対するプログラムについてできるだけ意見のすり合わせを行い、IMF理事会あるいはIMF当局に強く働きかけを行うということを行ってきております。  一番典型的に申し上げますと、財政政策、金融政策、構造政策とあるわけでございますが、金融政策につきましては、アジア諸国もまたIMFも基本的な考えは一致しておりまして、為替が下落するときにはやはり金融引き締めというのはどうしても必要であるということでございます。  問題は財政政策でございます。アジア諸国は、すべてこの三カ国とも過去ずっと財政は黒字でございました。通貨危機のもとで景気が悪くなり、財政赤字に転落しているわけでございますが、そういったときにさらに財政をどこまで引き締める必要があるのかという点について、日本といたしまして特にアジア諸国とともに、一時的な、つまり多くの先進国やラテンアメリカのようにずっと財政赤字が続いている国については、財政赤字のできるだけ早い圧縮が必要なわけですが一これらアジア諸国のようにずっと黒字が続いていた国については、一時的な財政赤字というのは容認してしかるべきではないかという考え方をかなり述べておりまして、具体的に、タイ韓国、さらにインドネシアについて、いずれもそういった形で、特にレビューの際に現実的な財政収支ターゲットに改定するような形で努力を行ってまいりました。  構造問題につきましては、やはり各国の実情に合った形にするべきだということで、それぞれ、日本のみならずアジア諸国理事は、そういった国々に対する実情を踏まえたアドバイスをIMFに対してしてきたわけでございます。
  44. 北脇保之

    ○北脇委員 次に、アジア経済危機日本への影響のことについてお尋ねしたいと思うのです。  まず第一に、日本の景気が現在のアジア経済危機によってもっと悪くなるのではないかという心配なんですが、経済企画庁の試算でも、九八年度の成長率アジア経済危機によって〇・五%程度押し下げられるという見通しがありますし、先日発表されました日銀短観でも、九八年度上期の輸出の売り上げがマイナスになる。これは、日銀の話でも、アジア危機が要因になっているのであろうというような話が出ております。そうなると、日本からの輸出が減少し、輸入がふえる、したがって、外需の成長寄与度が低下して対アジア向け貿易の黒字も大幅に縮小してくるだろうということがあります。それからもう一つは、邦銀のアジア向けの融資、これが一部不良債権化して国内の貸し出し能力低下という形ではね返ってくるのじゃないか。  こういつたことから、現在のアジア経済危機日本の景気に対して悪影響を及ぼしていく、もっと悪くなってくるというように見通されると考えるのですが、この点についての政府見解をお聞きしたいと思います。
  45. 松永光

    松永国務大臣 委員指摘のように、昨年夏以降起こったアジア通貨危機というものが日本にも大きな影響を及ぼしたことは事実だろうと思う。そして、その後に起こった日本国内の大型金融機関の破綻等、これによって企業家のマインドもあるいは消費者のマインドも著しく低下をしてきた、それが日本の景気を悪くすることに大変な影響があったのだ、こういうふうに思っております。アジア地域通貨危機を通じて経済が悪くなってまいりますというと、我が国アジア地域に対する輸出が減少する、あるいは現地に進出している企業収益悪化をする、こういつたことで日本経済に少なからざる影響を及ぼしておるわけであります。  そこで、我が国としては、こうしたアジア地域通貨金融危機を乗り越えるために、IMF中心とする国際的な支援の枠組みの中で積極的な支援実施しているところでありますが、今後とも関係各国及びIMF世界銀行アジア開発銀行等々の国際機関とも密接に連携しながら適切に対処していかなければならぬ、そしてアジア経済が立ち直ることが日本の景気の回復にも大きな影響があるわけでありますので、そういう点をしっかりやっていかなければならぬ、こう思っておるところでございます。     〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  46. 北脇保之

    ○北脇委員 また、日銀短観について触れたいと思うのですが、この短観を見ると、日本が本格的なデフレになるのではないかという懸念が表面化してきているというふうに思います。例えば、業況判断指数、いわゆるDIを見ても、主要企業の製造業を見るとマイナス三一ということで大変なマイナスの見通しになっております。もはや景気の腰折れがこの日銀短観のいろいろな数値によって裏づけられているのではないか、そういうふうに思います。  そのほかのところを見ても、例えば非製造業の九八年度の売上計画を見ると、もう年度当初の売上計画からマイナスになっているわけです。売り上げがマイナスだ。それから、主要望造業の製品価格が下落するか上昇するかというのを差し引きで見た場合に、下落するという見通しをしている企業が上昇を上回っているのですね。ということは、売り上げが下がる、そして価格も下がるという見通しになっている。昨年来消費の低迷ということがありますから消費の減少があり、それが企業の売り上げの減少、そして生産の縮小につながり、そして設備の冷え込み、雇用がまた過剰であって雇用の削減ということにつながる、そしてそれがまた企業収益や家計所得の減少につながる、そして物価下落になる、経済規模が縮小していく、こういう循環があらわれてきているのではないかと思います。  まさにこれはデフレということだと思うのですが、そこにもう一つ対外的な要因としていえば、アジア通貨危機通貨引き下げ競争みたいなことに一時的になっておりますから、アジアの製品が安値で日本輸出されてきて日本の物価をさらに引き下げる、こういう要因もあると思います。ですから、まさに日本の今の経済というのはデフレが現実化しつつあるということだと思うのですが、この点について政府見解をお聞きします。
  47. 松永光

    松永国務大臣 日銀短観が非常に厳しい数字として出たことは御指摘のとおりでありますが、これを見ると、我が国企業、中小企業も含めて景況感が大変厳しいものになってきているということは、あの短観によって認めざるを得ない状況でありますが、しかし、さればといって、日本経済全体にデフレ圧力がかかっておるという状況にはないというふうに思うわけです。  結局、政府としてもいろいろな手は打ってまいりました。まず、去年の秋深まってからの金融不安、我が国金融システムについての内外の信認の低下、こういったものを克服するために金融安定緊急措置法を成立させていただいて、まず金融不安の解消に努めたところでありますが、これからもこういう点については大事なことでありますのでしっかり対応していかなければならぬ、こう思っております。  同時にまた、補正予算を成立させていただき、それに基づいて公共事業、合計二兆五千億の追加措置等をやったわけであります。そして、平成十年度の予算の成立が間もなく期待できるわけでありますが、成立をしたならば速やかに十年度予算の執行に移る、こういつたことを通じて景気の回復に向けての努力をしっかりやっていかなければならぬ、こう思っておるところであります。  一方、与党の方で十六兆円の経済規模の対策を打ち出しておられるわけでありまして、あれは与党の決定事項でありますが、これから与党関係者の意見をさらによく聞きまして検討を加えて、どういう手を打つべきか、これからの検討課題だ、こう受けとめておるわけでありますが、そうしたことも含めて適切な対応策を打っていって、そして景気の厳しい状態を早く乗り越えることができるように努力をしていかなければならぬ、こう思っておるところでございます。
  48. 北脇保之

    ○北脇委員 経済の現況の判断ということについては、感覚的なことではなくて、やはりいろいろな調査統計、そういう数字に基づいて判断していかなければいけないと思います。そのことがバブル以来の日本経済運営についての大きな反省点だと思いますので、そのことはしっかり受けとめていただきたいと思います。  そういう点でいうと、デフレの心配ということについて、もう既に売上計画がマイナスに転じているとか、製品価格の見通しについても下がっていくという見通しを持っている人が多い。加えて、この委員会でも何度も出ていることですから繰り返し言うことはないのですが、経済を引っ張るそれぞれの要因についても、個人消費はもう低迷しっ放しですし、あと設備投資も在庫増ということもあり非常に冷え込んできている。そういうことが所得、雇用環境の悪化にもつながってきているということですから、当然企業収益の見通しも悪化してきているということで、悪い方へ悪い方へと循環しているわけですね。どれも数字に出ていることですから、それを否定することはできないというふうに思います。  そこで、今大臣、十六兆円の与党の経済対策のことをおっしゃいました。日銀短観の時点ではまだ十六兆円という話は出ていなかったと思うのですけれども、昨日の株とか円の動向、これはもう既に十六兆円ということを織り込んだ上で株価は一万六千円を割り込んでいる、円安傾向も進行しているということですから、十六兆円という与党段階の案についてはマーケットは反応していない、評価していないということだと思うのです。  そこで、大臣にもう一度お尋ねいたします。  今の非常な経済状況悪化、これはいろいろ見解の幅はあると思いますが、デフレの懸念が非常にある。そういう中で十六兆円という金額だけではもうてこ入れになっていない。では、それを踏まえて、政府としては、与党提案を受けてどういう中身でどういう対策を講じていけばこのデフレのトレンドを反転させていくことができると思うのか、その対策をお尋ねしたいと思います。
  49. 松永光

    松永国務大臣 先ほども申し上げましたように、与党の方で景気対策についての方針は決められておるわけでありますが、私どもはこれを重く受けとめなければならぬ、こう思っております。一方、参議院で現在十年度の予算の審議をいただいているところでございますので、その予算の成立した後においてどういう手を打つべきかということは、これは、与党の決定事項を踏まえてさらに検討を加えて、そして対応策を考えていかなければならぬ、こう思っているところでございます。
  50. 北脇保之

    ○北脇委員 予算成立後ということは、たびたび繰り返し答弁があったところではございますが、そのこと自体がもう手おくれになってしまう。政府は、財政構造改革法に基づく緊縮予算という足かせがあって、それとのつじつま合わせということでやってこられているとは思うのですが、本当に日本経済日本国民、そして世界経済のことを考えると、そういった、何というのでしょうか、足かせというようなものにとらわれることが結果的にマイナスをもたらすということを大変懸念するところでございます。  それからもう一つ、アジア経済の関連でお尋ねしたいのですが、アジア危機によって日本銀行アジアに貸し込んでいるものの回収がどうなってくるのか、そのことが日本金融システムの安定にまた悪影響を及ぼすのではないか、こういう心配があります。報道されているところによれば、格付機関であるスタンダード・アンド・プアーズの発表によれば、日本銀行の信用度について、アジア諸国向けの貸し出しがら多額の損失が発生する可能性があり、不良資産問題はさらに悪化する、こう見ているというような発表もされております。  この点について、今、日本銀行アジア金融危機が発生している国にどの程度の額の貸し出しをしているのか、そしてその回収の見通しについてはどのように見ているのか、この点をお答えいただきたいと思います。
  51. 黒田東彦

    黒田政府委員 委員指摘の、現在、通貨危機の生じている国に対する邦銀の貸し付けがどの程度かということでございますが、具体的に、タイインドネシア韓国、この三カ国に対する邦銀の貸付残高は八百四十六億ドルとなっております。具体的に申し上げますと、タイに対して三百七十七億ドルインドネシアに対して二百三十二億ドル韓国に対して二百三十七億ドルでございます。これは、昨年の六月の段階の数字でございまして、BISが発表しております最新の統計でございます。恐らく、韓国に対しての邦銀の貸出残高は若干これよりも減っている可能性がございますが、いずれにいたしましても相当な大きな金額であることは事実でございます。  このうち、特に韓国につきましては、国際銀行団と韓国側との間で合意が成立をいたしまして、現在、その貸し出しについて、返済期限を延ばす、長くした形の新しい貸し出しに切りかえていっておりまして、順調に進んでいるところでございます。既に韓国は、そういうことも踏まえまして新しく国際資本市場資金を調達するというところまで復帰してきておりまして、韓国金融情勢はかなり改善を見ております。もちろん、経済自体はまだ大変な不況に陥っておりますので、経済構造調整はまだ時間がかかると思いますが、金融問題については相当な改善を見ておりまして、韓国に対する邦銀の債権については、今のところそう大きく心配する必要はないというふうに見ております。  タイにつきましても、これは韓国の場合のような、G7諸国でそれぞれの銀行を説得してロールオーバーをしてもらうとか、あるいは貸出期限を延ばしてもらうというようなことをせずに、全く自立的、自主的にしているわけでございますが、その中でも邦銀は自主的に債権のロールオーバーをしております。ということは、タイにおける債権について今後とも、特に日系企業の進出が多いわけでございまして、そういうところを中心に貸し付けをしておるということもございまして、比較的大きな危険が現在あるということにはなっておりません。ちなみに、タイで非常に問題になりました、五十六閉鎖されることになりましたファイナンスカンパニーというノンバンクがございますが、そういうところに対する邦銀の債権はほとんどございません。  問題はインドネシアでございまして、金融情勢はまだ依然として極めて不透明ということでございます。特にインドネシアの場合は、相手側が銀行ではなくて一般企業でございますので、その業態、経営状況その他さまざまでございます。しかもルピアが非常に下落しておりますので、それらの企業が返済できないような状況に陥っているということでございますので、そういうインドネシアの地元企業に対する部分については非常な問題を含んでいる。ただ、二百三十二億ドルすべてが地元企業に対するものということではなくて、日系企業に対するものとかあるいは別途保証を受けて貸しているもの等もございますので、インドネシアに対する二百三十二億ドルが直ちにすべて不良債権化するということではないと思いますが、このうちの一定部分が不良債権化する危険性があるということは事実でございます。
  52. 北脇保之

    ○北脇委員 今のインドネシアの二百三十二億ドルというのは円に換算すると、直ちに正確な計算はできませんが、二兆円というような規模の金額ですから、そのことがやはり日本銀行の不良資産問題、これに大きな影響があるということだと思います。  次に、幾つかお聞きする予定のあったこともあるのですが、時間の関係で、同僚の日野議員が質問をいたしましたので、最後にちょっとお尋ねをしたいと思うのです。  アジア経済危機に対する日本の責任をどうやって果たしていくかということなんですが、これもまたいろいろ報道されているところによると、アメリカの通商代表部、USTRのフィッシャー次席代表というのが、アジア経済危機における日本の行動について大変対応が貧弱だという評価をインタビューで述べております。  このUSTRの次席代表が言っていることは、日本経済の刺激が不十分であるし、また外国製品の購入ということも進んでいない、日本の景気をよくする、それだけではなくて、それと同時に規制緩和そして市場開放を進めることで外国製品の輸入をふやしていく、そのことがアジア経済危機の対策にもなっていく、アジア諸国輸出品の受け皿として日本市場を開放し、規制緩和をしていく、これを求めているということですが、このような米国からの評価について日本政府としてはどのようにお考えになっているかをお聞きしたいと思います。  私も、外国でどう言っているということを引き合いに出して、そのことを材料にしていくというのは余り適切なことではないというふうに思っておりますので、それは申し添えたいと思うのですが、ただ、いずれにしても世界経済の中の日本経済ですから、こういう米国政府の要人の指摘があるということはしっかり受けとめ、反論すべきところがあるならば反論する、そういう対応が必要だと思いますので、今のことについてのお考えをお聞きしたいと思います。
  53. 黒田東彦

    黒田政府委員 USTRの方がどういうコンテクストで発言されたのか必ずしも存じませんが、私どもとして次のことが言えるのではないかというふうに思っております。  まず第一に、アジア金融通貨危機への対応ということになりますと、どうしてもIMF中心とする国際的な支援の枠組みの中で対応するということになるわけですが、その際に、御案内のとおり、タイにつきましてもインドネシアにつきましても韓国につきましても、関係国最大規模の金融支援を行っておりますし、さらに、去る二月二十日に閣議決定いたしました東南アジア経済安定化に資するための緊急対策についても着実に実施しているわけでございます。  次に、これまでも御質問がございましたように、アジアのこれら諸国に対するIMFプログラムの作成、あるいはそういう国に対するいろいろな支援の取りまとめ等につきまして、側面からIMF支援する、あるいはIMFに働きかけるということを行っておりますし、また同時に、それらの国々に直接出向きまして、それらの国々の要請、要望を踏まえた対応をとっておるわけでございます。最も顕著な例が先月の総理のインドネシア訪問ということでございまして、IMFインドネシア政府が新しいプログラムについて早期に合意に向けて今最終段階に入っていると聞いておりますけれども、そういうふうに向かう上でこれが非常に大きく貢献したというふうに考えております。  さらに、委員指摘のとおり、我が国経済の東南アジア経済に対する影響というものも大きいわけでございますので、当然のことながら、我が国経済が内需中心で成長するということが非常に重要でございます。  ただ、これは必ずしもアメリカの方自身がよく御存じないわけでございますが、韓国との貿易の最大相手国日本ではなくて米国でございます。輸出入を通じて米国が最大韓国の貿易相手でございまして、もしそういう国から物をたくさん買ってその国の成長を促進しなければならないということが言えるとすれば、韓国についてはまず第一義的に米国の努力が必要であるというふうに思っております。  タイインドネシアにつきましては、もとより我が国の貿易が最大でございますし、さらに投資、金融等におきましても非常に大きなウエートを持っておりまして、現在、先ほど申し上げたような形で金融支援を行うとともに、そういった国との貿易が今後とも一層拡大していくように、貿易、金融面の支援、あるいは貿易保険、さらには先ほど申し上げたような形で内需主導型の成長が実現することによってこれらの国からの物の輸入を増加していくということが非常に重要であるというふうに認識しております。
  54. 北脇保之

    ○北脇委員 時間が参りましたので一言だけ申し上げますが、今の答弁の中で、アジア各国からの、特に韓国からの輸出の受け皿として米国がもっとしっかりやるべきだということをおっしゃいましたけれども、米国ばかりが頼りにされるという状況を何とか改善をして、日本世界第二位の経済大国としての応分の責任を果たしていかなくてはいけないというところに問題の焦点があると思いますので、そういう意味で非常に日本の責任は大きいし、政府に求められていることも大きいということを御指摘申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  55. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、石井啓一君。
  56. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 平和・改革の石井啓一でございます。  まず、先ほどから大臣趣旨説明あるいは各委員の質問でもございましたけれども、今回の増資により我が国IMFへの出資シェアが、現行のドイツとの同率二位、五・六四%から単独二位、六・二八%に上昇する、こういうことになるわけでございますが、出資シェアにふさわしい我が国IMFにおける存在感、我が国の主張をIMFの運営に反映をさせるということが当然のことながら求められるわけでございます。  ところで、事前にIMFにおける日本人職員がどれぐらいいるのかということを確認をいたしましたところ、現在IMF全体で千五百七十六人職員がいらっしゃるところ、日本人の職員はわずか二十六人と一・六%にとどまっているという、人材という面では甚だお寒い状況にあるわけでございます。ポストを見ますと、確かに専務理事に次ぐ副専務理事三名のうちの一名を我が国が得ているということのようでございますけれども、やはり全体の数そのものが極めて少ない、こういう状況にあるわけでございまして、私はやはりこれは何とか改善しなければいけない状況だと思うのです。  これはIMFに限ったことではなくて、国連本部を初めとする国際機関全般に共通する課題だとは思いますけれども、私は、IMFを初めとする国際機関の日本人職員の増員あるいは待遇改善というのをやはりきっちり政府としても後押しをすべきだというふうに考えております。大臣見解を伺いたいと思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席
  57. 松永光

    松永国務大臣 委員指摘のような数字になっておるわけであります。したがって、日本人職員を増加させること、これは引き続き極めて重要な課題であるというふうに認識しておるところでありまして、IMFはもちろんその他の国際機関についてもそうでありますけれども日本人の増員を要請していくとともに、これらの国際機関で活躍できる人材の育成という面も大事でありますので、今後とも積極的に努力をしていかなければならぬ、こう思っておるところでございます。
  58. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 その点、ぜひお願いをしたいと思うのです。  実は、私、昨年の十一月にアメリカの国連協会の招聘で超党派の議員団の一員として米国に参りまして、国連機関の方々と懇談をする機会がございました。その中で、国連に働いていらっしゃる日本人職員の方と懇談の機会がございまして、いろいろな実情の声を伺ってきましたので、ちょっと簡単に紹介しますので、ぜひ大臣の御感想を例えればと思うのですけれども、こういうことをおっしゃっているのです。  まず、給与に魅力がないということだそうです。かつて、一ドル二百五十円ぐらいの時代であれば、日本に帰ってくれば相当ドルも使い手があったということで魅力があったのだけれども、百二十円、百三十円ぐらいになると帰国する費用もなかなか大変だということもあって、円が高くなったことによって相対的に給与に魅力がなくなった、こういうことが一つある。あるいは、契約が二、三年で終身雇用ではないということらしいです。あるいは、これは日本人的かなと思いますけれども、年功序列でない。こういうことがあって、中堅の職員、特にこれはプロパーの職員でございますけれども、中堅の職員が若いときに、二十代で夢と希望を持って国連の機関に入っていくのだけれども、だんだん勤めていって管理職目前というときになると息切れしてしまう。中堅の職員が息切れしてしまってやめる人も多い、そういうことが非常にあるらしいのです。  また、これは私もちょっと耳が痛い思いがしたのですが、我が国においては高いポストには大変興味があるのだけれども、プロパーの職員の待遇改善には余り関心を持っていない。だから、国連でいえば、事務次長クラスのポストを何とか押し込んでいこうということには大変熱心なんだけれども、プロパーの職員の待遇改善にはそれほどでもない。そういった点をぜひお願いしたい、こういう要請を受けましたので、せっかくの機会でございますからお伝えをいたしまして、ぜひ大臣の御感想を伺いたいと思うのですが、どうでしょう。
  59. 松永光

    松永国務大臣 給与の問題、これは日本に帰国した場合の円高の影響がここに出ているのかなという感じがするわけでありますが、終身雇用あるいは年功序列、これらの日本の慣行と国際機関での給与体系との差がまさにここに出ているような感じがしておるわけでありまして、さて、これを日本型にしてもらうということはなかなか困難なことだと思うのであります。案外、年功序列も悪いことではないのかなという感じがここから出てくるわけでありまして、いろいろこれは勉強しなければならぬ問題かな、こういうふうに思いました。
  60. 黒田東彦

    黒田政府委員 IMF状況について若干補足させていただきますと、大臣からも答弁申し上げたとおり、確かに給与というものは、そのまま計算いたしますと、この十年ほどの円高のせいか非常に魅力に欠けるということは事実でございます。  ただ、御案内のように、ワシントンにおける諸物価というのはかなり低いわけでございます。それからさらに、国際機関の職員は所得税が非課税になっております。したがいまして、実質的な購買力という面で見ますと必ずしもひどく悪いわけではないというふうに思っておりますけれども、なかなかその点が、特に大学を卒業したばかりの若い方にいろいろな形で御説明いたしましても、そんな給与が低いところには魅力を感じないという反応が非常に強いわけでございまして、このあたり、特に日本のような為替の高いというか高所得の国から就職する者に対する何らかの措置を講じてくれないかということも含めて、給与の改善については努力してまいりたいと思っております。  それから、IMFの場合ですと、採用の形態には二つございまして、一つは、大学の博士号、phDを取った職員をそのまま雇うという形、これはほとんど終身雇用のようになるわけでございます。他方、中途採用というのがございまして、これは、既に各国の政府であるとか大学であるとかあるいは民間の企業であるとかで一定の仕事をした方を中途採用するということもかなり行われております。  最近、IMFの東京事務所がオープンをいたしました。ここは、いろいろな情報交換も行いまずけれども、このIMFへのリクルートという面でも活動してもらえると思っておりまして、ぜひ私どもとしても、一方でいろいろな処遇の改善について働きかけると同時に、リクルートの努力をしてまいりたいというふうに思っております。
  61. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 その点、よろしくお願いしたいと思います。  それから、先ほどもちょっと話題になっておりましたが、米国の場合は、こういったIMF増資あるいは国際機関における出資なり分担金なり、これは議会が極めて厳しい評価をしておりまして、例えば国連分担金もなかなか支払わないのです。議会が支払わせない。国連が米国向きではないということからなかなか分担金も払わないで、払わないということをてこにしながら何とか国連を自分の国に有利に活用しようという、極めてしたたかなことをやっております。  私は、その米国の例が決していいとは思いませんけれども日本の場合は逆に余りにも金払いがよ過ぎて、人がよ過ぎるのではないかという嫌いがなきにしもあらずということで、米国のしたたかさを多少なりとも見習っていただいて、増資に応じる限り日本人職員の待遇をきちんとやれ、それぐらいのことはきちっとおっしゃっていただきたいと思います。  続きまして、先ほどもちょっと話題になりましたが、アジア通貨基金構想でございます。  伺うところによりますと、もともとの目的はIMFを補完するという目的で日本政府のイニシアチブで提唱されたというふうに聞いておりますが、アメリカを初めとする各国の反発が強くて、形を変えてマニラ・フレームワークの中でこの構想の一部が生かされたというふうに理解しておりますけれども、そもそもこの構想はどういう内容であったのか、あるいはこの構想をめぐる経緯がどういうことであったのか、また今後我が国としてこの構想をどういうふうに扱っていくのか、こういった点につきましてお伺いをしたいと思います。
  62. 黒田東彦

    黒田政府委員 アジア地域にこういった相互支援的なファンドをつくろうという議論は、実は一番初めに行われましたのはASEANの蔵相会議でございました。一昨年とも昨年とも言われておりますけれども、ASEANの蔵相会議で、これはIMFのカムドシュ専務理事出席している場でそういう議論が行われ、それについて引き続きASEAN蔵相会議で議論が行われていたそうでございます。そこで、七月にタイにバーツ危機が生じまして、この支援をどういうふうに行うかという議論があった際に、既にASEAN蔵相会議で議論をされていたことを踏まえて、アジアにこういったファンドをつくってはという議論が出ていたそうでございます。  具体的に議論が行われましたのは、東京で八月十一日にタイ支援国会合が行われたときでございます。そこでは、IMFが四十億ドルを出す、日本が四十億ドル出す、それからアジア諸国がそれぞれ十億ドルとか五億ドルとか出しまして、トータルでアジア地域で百億ドルを超える金融支援がコミットされたわけでございます。その際に、こういうふうにアドホックに行うというのはいかがか、むしろ権利義務関係をはっきりさせるという意味で、コミットした額をはっきり示し、今後必要に応じてそれを使用していくという、彼らの言い方をかりますと常設的なファシリティーをつくってはどうかという議論がタイ支援国会合で、東京で出ておりました。  それを踏まえまして、特に日本とASEAN諸国とでいろいろな意見交換をいたしまして、ASEMの蔵相会議というものが秋にバンコクであった際に、特にASEAN諸国が一種の機関決定を行いまして、ASEAN諸国としてこのアジア通貨基金構想を進めていくという決定を行ったわけでございます。  その後、香港のIMF総会で、日本韓国、中国、さらにASRAN諸国、オーストラリア等で集まってアジア通貨基金構想を進めていこうというふうに考えておりましたところ、先ほど御紹介いたしましたようにアメリカ等から強い反対の意見が出て、香港ではそれ以上の前進がなかったわけでございます。  その後、これについてどういう形で進めていくかということを我が国一アメリカそれからASEAN諸国等との間で意見交換をして、十一月にマニラで議論を行ったわけでございます。この際、日本アジア諸国としても、ぜひそういうフレームワークをつくろうということで一定の妥協をしたわけでございます。他方、米国の方も、香港の場では全く反対、必要なしということであったわけですが、その後、インドネシアその他の国に通貨危機が波及したということもございまして、インドネシアには具体的に二線準備的支援日本やシンガポールとともに行ったわけでございまして、そういうことも踏まえて米国側も妥協をする、コンプロマイズするというふうに言ってきたわけでございます。  そこで、先ほど御説明いたしましたような形で、つまり、具体的な金額を事前にコミットするということではないんですが、地域の国でそういう必要が出てきたときにIMF支援を補完する形で支援を行おうという合意をいたし、それが現在、例えば韓国の場合にも発動されましたし、当面そういう危険性はないといたしましても、将来何らかの通貨危機のようなことが生じた場合には、当然このマニラ・フレームワークの枠組みの中で地域の国が支援を行うということになろうかと思います。そういう意味では、アジア側と米国側とでそれぞれ一定の妥協を図ることにより、完全な形ではございませんけれどもアジア通貨基金構想の中心部分は生かされたというふうに認識しております。  今後これをどう進めていくかにつきましては、先日東京でございました第二回のマニラ・フレームワーク会合で、これはすべてのメンバーが一致したわけですが、このメンバーのフレームワーク会合は非常に有益である、したがってこれをさらに強化していこう。年二回行うということになっておりますが、いわば今後これを一層制度化していく、インスティチューショナライズしていくという方向に向かつて我が国としてもアジア諸国としても努力してまいりたいというふうに思っております。
  63. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ところで、けさの朝日新聞の一面に、アジア欧州会議、ASEMに関しまして、「最大のテーマのアジア危機については、国際通貨基金IMF)と協調した制度改革の必要性を確認したうえ、アジア諸国金融システム改革支援するための基金の設立て合意する見込みだ。」、こういう記事が載っておりました。この点についてちょっと確認をしたいのです。
  64. 黒田東彦

    黒田政府委員 それは、今回のASEMの首脳会談の議長国であります英国が提案しております基金でございますが、これは、非常に小さな規模の技術支援のための基金でございます。つまり、金融セクターの改革などを進めていくために専門家を派遣するとか、あるいは研修をしてあげるとか、その他そういったことを行うための基金を世銀に設けまして、そこに欧州諸国出資をする。最終的なものとしてどういう金額になるかは存じませんが、一応暫定的に五千万ドル程度を欧州諸国が出す、七十億円程度かと思いますが、出すということのようでございます。  他方、御案内のように、我が国は世銀とアジ銀に日本特別基金というものを設けまして、これも同じく技術支援のための基金でございますが、特に今回のアジア危機にかんがみまして、世銀とアジア開発銀行とを合わせまして十六億円程度をこの金融セクター改革のための技術支援に充てるということをいたしております。その十六億円の金額を今回さらに増加をしょうということで、世銀、アジア開発銀行と話し合いを行っております。  したがいまして、このASEM基金というのは、金融セクター改革等のための技術支援をヨーロッパ側もアジアに対して行ってくれる、非常に好ましいことでございますが、我が国が先行して行っておりますこういったことと両者を、アジア側の基金が実際に拠出されて動き始めましたら、できるだけ協調してアジア金融セクターの改革について技術的な支援を行ってまいりたいというふうに思っております。
  65. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 このアジア通貨基金の構想というのは、我が国がイニシアチブをとったという意味では極めてまれといいますか、非常によかったんではないかと私は思うのです。米国の反対で形を変えざるを得ないということでございますが、このマニラ・フレームワークの中でその中核が生かされるということでございますから、マニラ・フレームワークを当初のアジア通貨基金の構想の形で生かせるように、より充実する方向でぜひやっていただきたい、こういうふうに思います。  それから、続きましてアジア通貨危機に話題を移します。  今回、特にタイ韓国インドネシアIMF支援を受けるわけでございますが、先ほど、全体的な今回の危機原因大臣の方からおっしゃっていただきましたが、詳しく見るとそれぞれその事情が大分異なっているようでございます。特に、タイ韓国インドネシアのこの通貨危機原因について、それぞれ各国ごとに我が国としてはどういうふうに認識をされているのか、そしてその危機克服策といいますか処方せんといいますか、それについてはどういうふうに認識をされているのか、まず政府の基本的な認識を伺いたいと思います。
  66. 黒田東彦

    黒田政府委員 先ほど大臣が答弁いたしておりましたように、基本的な要因は、類似している面もあるわけでございますが、御指摘のとおり、タイ韓国インドネシア、それぞれかなり違った面もあるわけでございます。  一般的な傾向に最も類似しておりますのがタイでございまして、この国につきましては、一九九五年、九六年と経常収支赤字が巨額になっておりまして、しかも不動産バブルが崩壊して金融機関に不良債権が累積しているというようなことで、典型的なマクロ経済及び金融セクターの問題を生じ、そこに通貨危機が生じてきたということでございます。  それに対しまして、インドネシア及び韓国の場合は、もちろん、それぞれの国について何らかの、特に韓国の場合は昨年の春ごろから一部の財閥が破綻するというようなことで問題は生じておりましたけれども、何よりもやはりタイ・バーツの切り下げが波及したという面が大きかったわけでございます。波及したことを通じて潜在的にはらんでいた問題がいわば顕在化して、それによって信認がさらに低下し、資本が急速に流出したということかと思います。したがいまして、タイの事件がなかったならば韓国インドネシアにおいてあのような事態が昨年生じたかどうかというのは、現在でもいろいろ議論の余地のあるところでございます。  したがいまして、それぞれに対する対応策もIMFプログラムの中で若干異なっております。すなわち、タイにつきましては、最も典型的に、為替過大評価経常収支の大幅赤字、不動産バブルの崩壊による金融セクターの問題等々でございますので、まず第一に何よりも財政金融の、特に金融政策を引き締める必要がある。それから、金融機関の不良債権処理を抜本的に進める必要がある。そういうことを通じまして為替の安定、さらに経常収支赤字の縮小、経済の不均衡の打破ということがプログラム中心になっております。  これに対しましてインドネシア及び韓国の場合は、そもそも経常収支赤字がそれほど大きくなかったわけでございますので、国際収支調整に非常に大きなウエートを置く必要がないということで、そもそもそれほど大幅な財政引き締めは要請をされておりませんでしたし、経常収支赤字を急速に減らすという必要もプログラムの中には含まれておりませんでした。むしろ、為替の下落に対応して金融引き締めるということと、それからそれぞれの国の構造問題、インドネシアの場合には、金融機関それから企業債務、その他独占の問題であるとかそういう構造問題に重点が置かれましたし、韓国の場合は、財閥の破綻に伴う金融機関の不良債権という問題に対してどう対処するかということが重要なポイントになっておりました。  したがいまして、全般的にアジア通貨危機原因といいますのは、為替の問題であるとか短期資金の流入であるとか、流入した資金が非生産的に使われたのではないかというようなことがあったことは事実でございますが、最も典型的にはタイにあり、韓国インドネシアは相当状況が違っていた。したがって、それに対する対応策もそれぞれに違った形になっていた。しかし、全体として通貨危機に見舞われて大きな経済へのショックを受けたということは事実でありますので、それぞれに今IMFプログラムのもとでその回復を図るべく最大限の努力をしているというふうに認識しております。
  67. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今説明のあったとおりだと私も大体認識をしておりますが、ところで、このIMFの融資の条件、このプログラムというのが欧米のやり方をアジアに押しつけるものであって、各国の歴史的な経緯や経済構造を無視した厳し過ぎるものであるという指摘もあります。あるいは、IMF危機管理対策というのはかって中南米危機の際に開発されたプログラムであって、今局長からも御説明ありましたように、今回のアジア危機の場合、特に韓国インドネシアでは国際資本が、特に短期の国際資本が急激に資本移動を起こすということに伴って資金ショートが起きている。こういう事態に果たしてこれまでのプログラムが対応できるのか、そぐわないのじゃないかという指摘もございますね。  こういった点についてどういうふうな見解なのか、伺いたいと思います。
  68. 黒田東彦

    黒田政府委員 ただいま御指摘の点は、いろいろな学者の指摘もございますし、実はIMFの中でもそういう議論も行われているわけでございます。  確かに、中南米の場合は、典型的には過剰な財政支出、財政赤字、そして輸入の急増、対外債務の累積、国際収支赤字の急拡大といったことから、当然そのプログラム中心財政収支の改善、それからインフレ抑制、国際収支赤字の縮減といったことに重点があったわけでございます。  先ほど申し上げたとおり、タイの場合には、財政赤字ではありませんでしたが、国内の開発投資あるいは民間のいろいろな投資の行き過ぎといった面もありましたし、バブルあるいはインフレというのもございましたので、やや中南米の場合と同様な財政金融政策の引き締めということが典型的に必要であったことは事実でございますが、韓国インドネシアの場合は確かに実情が相当異なっておりました。国際収支の赤字もそれほど大きくない。財政は従来ずっと黒字であったということ。むしろ問題は、短期資本が急激に先ほど申し上げたような信認の低下から流出したということが問題であったわけでございます。  したがって、これに対応して、IMFも一定程度従来と違ったプログラムを組みました。インドネシアにつきましては、特に国際収支調整の必要性はほとんどないわけですが、他方で、短期的な資金が非常に急速に出たということから、IMFとしてはかなり大幅な、百億ドル支援を行い、さらにいろいろな第二線準備を要請して、日本も含めて万一のために、短期資金が非常に多く流出して外貨準備が不足するといった事態が生じた場合にはさらに支援を行うというような形をとりました。  さらに、従来、メキシコについても、タイインドネシアについても、結局それぞれの国のクオータの五倍程度までしか貸さなかったわけでございますが、韓国の場合には韓国のクオータの二十倍ぐらいを貸すという、IMFとしてはこれまで全く例のなかった巨額の資金を貸すということを決めております。しかも、そのために新しく短期的な貸し出しファシリティーをIMFに設けまして、これは一年ないし一年半ぐらいの短期の貸し出しを行うというものを設けて今申し上げたようなクオータの二十倍の巨額の資金を短期的に貸し付ける。これはまさに韓国から短期資金が急速に逃げたということが問題なので、それに対応するために大きな額を短期的に貸すということで問題を打開しようとしたわけでございます。  結果的に見まして、韓国も急速に金融面につきましては実情が改善しておりますのは、こういつた短期資本の動きに対応する新しい貸し付けの制度もつくってIMFが対応したということも一定の貢献をしたものというふうに認識しておりまして、まさにおっしゃるとおり、新しい事態であるということを次第にIMFも含めて国際社会が認識し、インドネシア、特に韓国についてはさっき申し上げたような新しい対応もしているということでございます。
  69. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今回のアジア通貨危機への我が国支援策といたしまして、金融支援、これはもう既に表明をしておるわけでございますけれども、それに加え、内需拡大によるアジアからの輸入振興、やはりこれは私は日本として図るべきだというふうに考えます。  といいますのは、いずれにしろ巨額のドル債務があるわけですから、それを返済するためにはどこかでドルを稼がなければいけない。今のアジアは大変な輸出能力を持っているわけでございますから、基本的には輸出拡大するということでドルを稼ぐということになろうかと思いますけれども、そのアジア各国の輸出先ほどこか、それを引き受けるのはどこかということでありますが、やはり我が国はそれを引き受けることを期待をされている、こういうふうに思うのでございます。  ちょっと事前に、日本とアメリカとそれからEU、それぞれがアジアからどれぐらいの輸入の状況になっているかということを確認しましたら、アメリカは経済が活発化していることもありまして大変輸入が伸びているわけであります。対前年同月比で見ますと、例えばことしの一月では、世界全体では輸入の伸び率が五・四%に対して、タイに対しては九・〇%、インドネシア七・六%、韓国九・一%、アメリカはアジアの貿易に大変貢献をしているわけですね。ヨーロッパにおいては、これはちょっとデータが古いのでつい最近のことはわかりませんけれども、昨年の九月の時点では、タイでは二四・九%、インドネシア二〇・五%、韓国二四・三%、かなりハイレベルで輸入がふえている。  一方、我が国の動向を見ますと、昨年の十月以降マイナスになっておりまして、ことしの二月では、全世界に対しても一四・九%のマイナスになっているのですが、タイでは一五%、インドネシアでは三〇・七%のマイナス韓国でも七・七%のマイナスインドネシアについては原油とかLNGの価格の減少という要因もあるようですけれども、いずれにしましても、アメリカ、ヨーロッパ、日本と比べますと、日本アジアからの輸出の受け入れ、すなわち日本の輸入というのが落ち込んでいるというのは極めてこの三地域の中では目立っておるのです。  こういう状況の中で本当に我が国アジア経済のリーダーの一員としてその責任を果たしているかどうか、私はこれは現状では大変疑問だと思うのですね。先ほども申し上げましたように、アジアのリーダーとしてもアジア経済の回復を早めるために我が国内需拡大によるアジア製品の輸入促進を図るべき、こういうふうに考えますが、見解を伺いたいと思います。
  70. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 御指摘のとおり、内需を拡大するということにつきましては、国内経済ということももちろんでございますけれども、対外的な面も配慮しながら考えていかなければいかぬというのは当然でございまして、特に今日のように相互の依存関係が非常に大きくなってまいりますと、近隣の諸国アジア諸国も政策を立案するときに念頭に置かなければいけないと心得ております。  そういうこともございまして、昨年末のアジア危機に関連いたしまして、そういうことも考慮しながら、九年度の補正予算でございますとか、あるいは特別減税でございますとか、あるいは十年度の予算等々を立案してまいったわけでございまして、今後とも、国内の事情に加え、近隣諸国、国際的な関連も念頭に入れながら適切な政策運営をやっていくべきだというふうに考えております。
  71. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 特別減税とか十年度予算、それではやはり厳しいといいますか、各国の評価はやはり厳しいわけですよ。現状では、日本アジア経済危機の防波堤にならないという批判が高いわけであって、今総理はロンドンに行かれているわけだけれども、与党の発表した十六兆円の経済対策をやるということで、何とか我が国の内需振興を図るということで説明をされているわけでしょう。そういう点で、この与党の発表した十六兆円に上る総合経済対策、総理もそれから大蔵大臣も重く受けとめるというふうに発言をされていますけれども、これを具体的にどういうふうに具体化をするのか、この点について、大臣見解を伺います。
  72. 松永光

    松永国務大臣 橋本総理がしばしば国会で答弁をしておられますように、与党の経済の現状を克服するための強い意思の表明としてあの経済対策は決められたものだというふうに理解をしておるわけでして、この与党の決定を重く受けとめて、内容等についても詳細に精査をし、我々の方でも研究をして、そして対応を図っていかなければならぬ、こう思っておるところでございます。
  73. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ところで、アジアからの輸出を引き受けるという意味で、この内需振興ということなんだけれども我が国の輸入をふやすという意味での内需振興、それはやはり公共投資より減税がきくことは火を見るよりも明らかなわけです。この十六兆円の経済対策、山崎政調会長も、財政構造改革会議を開いて税制の根本的な議論をして結論を出してその十六兆円の内訳を決めるというふうに発言をされておりますし、また宮澤元総理も、三兆円を超える減税が必要だ、こういうふうに発言をされています。各紙でも、特別減税を継続させるとか、政策減税を含めて四兆円の減税、これを検討しているとか、こういうふうに報道をされているわけで、世間でもそういうふうに受けとめておりますし、市場もそういうことが織り込み済みだと思うのだけれども、やはり私は、国内の需要を喚起するという意味でも当然必要だし、昨日の日銀短観を見ても、先ほど北脇委員の質問にもありましたように、大変なデフレの危機も迎えているというような状況でありますから、需要の大幅な積み増しが必要でありますし、それはなおかつこのアジア経済危機我が国として支援する最大支援策の一つにもなる、こういうことでやはり減税というのは真剣に考えるべきだと思います。大臣見解を改めて伺います。
  74. 松永光

    松永国務大臣 お気に召さぬかもしれませんけれども、大型の恒久減税をする場合には、当然のことながらその財源をどうするかという問題にぶつかるわけですね。その財源をもし特例公債の発行によってということであるならば、いずれ早晩その公債の返却のための何らかの形での歳入増、増税ということが想像されるわけですね。そういう状況であれば、減税というものがどれだけ消費に行くのかという問題が一つ出てきます。のみならず、我々の次の世代、子や孫に対して巨額の負債を負わせるようなことをしてどうなるのであろうかという視点もありますね。  そしてまたもう一つは、消費性向が落ちているということ。消費性向はなぜ落ちるのかという議論もあろうかと思いますが、要するに先行きについての不透明感があるのじゃないかと思います。その不透明感を一つ一つ克服をし、解決をしていくということが大事なことだというふうに私は思うのですが、いずれにせよ財源という問題を考えればこれは慎重に検討しなければならぬ問題だ、こういうふうに思っております。
  75. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 この問題、またいずれ早晩大臣と議論することになると思いますので、時間が来ましたので終了いたします。
  76. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 次に、谷口隆義君。
  77. 谷口隆義

    ○谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  まず初めに、先日当大蔵委員会理事会で、我々が要求いたしておりました銀行の検査報告書、示達書、示達回答書の閲覧をさせていただきました。  この検査報告書、我々はありのままの検査報告書を、三回分でございましたが、要求いたしておったわけでございますが、出てきたのはこれを墨で塗りつぶしたものでございまして、またかつ、メモ、コピー、だめということでございますので、本当にこの閲覧の我々の要求水準は達せられなかったわけでありますが、しかしその中で何点か気になる記載がございましたので、そのことについてまず初めにお聞きいたしたいというように考えております。  昨年の十一月に経営破綻をいたしました北海道拓殖銀行の平成六年八月の基準日の検査報告書でございます。多分これは平成六年の三月期を検査したのではないかというように私は思うわけでございますが、その検査報告書の一番初めの概要報告、ちょっとそのテーマはどういうように書いておったのか、私は覚えておらないのですが、概要報告のところでこういう記載がございました。業務純益の二十倍のロス見込みがあり、これを入れてしまうと自己資本を毀損しておるというような報告になっておりました。これは要するに、ロス見込みがあってこれを処理しておらないわけですね、見込みですから。それを処理すると自己資本を毀損するということは、債務超過になるということをあらわしておるのだろうというように私は解釈をいたしたところでございます。  それで、この北拓の有価証券報告書を見ました。平成六年三月期でございました。これは、有価証券報告書には業務純益が載っておらないわけでございますが、ディスクロージャー誌を手に入れまして見ますと、業務純益が当事業年度において三百二十億ほどございました。この三百二十億の二十倍でございますので、六千四百億ぐらいになるわけですね。  それで、先日の予算委員会の要求資料の中で、北海道拓殖銀行の不良債権の資料要求がございまして、それを見ますと、第四分類が千七百億円、第三分類が四千七百億円、第二分類が一兆四千億円、このような報告がございました。このいわゆる第四分類というのは、一〇〇%だめというようなものでございます。第三分類というのは、要するに時期、金額は確定しないもののその回収に重大な懸念のある資産、こういうような資産のようでございます。  この第四分類、第三分類の合計をしますと、ちょうど業務純益の二十倍になりまして六千四百億円、このようになるわけでございます。それに対しまして、北海道拓殖銀行の平成六年三月期の貸倒引当金が上がっておりまして、これが約一千六百七十億の貸倒引当金がございます。それや何や計算しますと、この第四分類は全部だめ、第三分類は七五%だめというように計算して、私が申し上げました貸倒引当金を考慮に入れますと三千五百五十二億円ということになりまして、やはりこれは自己資本を毀損しておるわけでございます。  ここでまず初めにお聞きしたいわけでございますが、この検査の中で、第四分類は先ほど私が申し上げましたように全部だめだ、回収できないというようなものだろうと思うのですが、第三分類についてはどの程度回収できないというように読んでいらっしゃるのかをまずお聞きいたしたいと思います。
  78. 原口恒和

    ○原口政府委員 お答えいたします。  検査において三分類というのは、時期、金額は確定できないもののその回収に重大な懸念がある資産ということで分類をしているということで、今先生がお話しになったとおりでございます。したがいまして、検査におきましては、一概にこの三分類が何%回収できないかというのは、まさにそこのところは非常に危ないのだけれども、確定できないという資産として分類をしております。したがって、一義的に何%ということではなくて、それはおのおのの状況に応じて企業の方が公認会計士等と相談をしながら適正な会計処理をその資産状況に応じてやっていただくということかと思い、ます。
  79. 谷口隆義

    ○谷口委員 だから、基本的にはこの検査をやる場合に、第一分類から第四分類まで分類を分けておるわけでございますので、多分これは行内の検査の基準か何かがあるのだろうと思うのですね。これは、例えば七五%だめとか二〇%だめとかというようなことをやらないと検査のしょうがないわけでございますので、私はそのような基準が多分あるだろうという前提で今お聞きしたわけでございます。それを個別的にいわば裁量でこれはだめとかこれは回収できるとかいうようなことであれば、分類を分ける必要がまずないわけでございますので、そのあたり、検査のときの基準があればもう一度御答弁をお願いいたしたいというように思います。
  80. 原口恒和

    ○原口政府委員 先生がおっしゃっているのは、分類されたものがまさに回収不能だということで、三分類のうち何%償却を直ちにしなければいけないかということが検査の段階で基準としてあるのではないかという御指摘だろうと思うのですが、検査自身はおのおのの資産の状況を分類するということがとりあえずの目的でございます。後、それぞれ会計の決算においてそれをどのようにするかというのは、過去行われた決算についてそれが適正であったかどうかということは把握をいたしますけれども、三分類をしたときに、これは一概に何%直ちに償却すべきものであるという基準を検査の時点に持っているわけではございません。  それから、先ほど先生の御指摘の中で、債務超過ではなかったかという御指摘がございましたが、六年八月の検査時におきまして、御指摘のように第四分類が千七百億円、第三分類が四千七百億円ございました。仮に三分類が全額ロスになると仮定いたしましても、合計六千四百億円でございまして、その当時、ロスの処理に充当可能な自己資本というのは有価証券の含み益等を含めますと七千四百億円ありましたので、その時点では債務超過ではなかったということを過日発表したところでございます。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 谷口隆義

    ○谷口委員 おっしゃっているのはわかるのですが、狭義の自己資本と広義の自己資本があるわけですね。いわゆるバランスシート上の自己資本は含み益は入れないのです。含み益を入れない狭義の自己資本で私は今お話をしておるわけでございますが、そういう状況の中でまず明確なのは、先ほども私申し上げましたように、大蔵検査の結果、ロス見込みを処理すると自己資本を毀損するというようにも書いておるわけでありますので、その段階で検査を担当された検査官がそういう判断に立たれたのだろうというようにまず初めに思うわけでございます。  そういう状況の中で、昨年でございましたか、昨年十一月に経営破綻したわけでございますが、四月に道銀と拓銀の合併の話が持ち上がったわけでございます。それが九月に至りまして、その合併の話が道銀サイドから、拓銀の不良債権が当初の不良債権に比べるとかなり多額に上るようであるというような状況の中で、この合併の話はないものというような形でこれがなくなったわけでありますが、この話を持っていったのは基本的に、水面下と申しますか、どういう状況であったのか、私は現場におらなかったわけでございますのでわかりませんが、大蔵省が道銀と拓銀の合併の話を結びつけたのであろうというように思うわけでございます。  先ほども申し上げておるように、仮に含み益を入れて債務超過でなかったというようにおっしゃるわけでございますが、いわゆるバランスシート上の狭義の自己資本は明らかに債務超過になっておったわけでございます。そういう状況の中でこの二行の合併を進められたというようなことについては、極めて責任は重いのではないかというように私は思っております。これについて御答弁をお願いいたしたい。
  82. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  合併の話が道銀との間に起こりましたのは昨年の三月、公表されたのは四月一日だったと思いますけれども、そういうわけでございますが、この合併の構想はあくまで拓銀と道銀の当事者の自発的な意思でありました。  これは、両行がいわゆるリストラ合併といいましょうか、両行の店舗がかなり重複している、北海道の中でもう少し重複店舗を整理していけばリストラ効果は相当あるということで、両行で自主的に構想が出てきたものであります。したがって、大蔵省が結びつけたとおっしゃいましたけれども、その事実は違います。私どもとしては、両行が不良債権問題に取り組む中でリストラ合併というものを一つの方策として考えたということは、北海道全体にとってみるといいことではないかという評価はしました。しかし、私どもがこれを無理に合併しなさいと指導したということではありません。それで、当時両行とも公認会計士の御意見を聞きながら自分のところの財務内容を判断してこの合併話を進めておられた、こういう事実でございます。
  83. 谷口隆義

    ○谷口委員 基本的には、もうこの段階で北拓がいわゆる狭義の債務超過に陥っておったということは大蔵省は知っておったわけでございますね、検査報告書に出ておるわけでございますので。そういう状況の中で道銀と拓銀が合併しようとしておるというようなことについて、仮に今局長がおっしゃるように間の仲介役をとっておらないというようなことであったとしても、今この金融機関はこのような状態だということを説明するなり申し上げるなりやっておかないと、そこから大きく状況が変わって、この合併が要するに、具体的に申し上げますとうまくいかなくなって、それが大きな端緒となり、金融システム全体に影響を及ぼすようなことになるというふうに考えなかったのですか。
  84. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  先ほど、官房検査部長の方からお答え申し上げましたように、債務超過の状況ではなかったわけでございます。それは六年八月の検査のとき。その後も、銀行としては、自社の店舗を売るとかいろいろなことをやっております。また、話としては、増資の話をいろいろ関係先にもお願いをしていたとか、いろいろな状況があります。あくまで当事者間でそういうことが可能であろうということで話を進められておったというふうに私どもは考えます。
  85. 谷口隆義

    ○谷口委員 確かに、債務超過じゃないとおっしゃるのですが、検査報告書には狭義の意味で自己資本が毀損しておるというように記載してあったと僕は思うわけです。ずっと後を追いかけてみますと論理的に合うわけでございますので、実はそういう状況大蔵省の責任が極めて重たいですよというように私は申し上げたかったわけであります。  あと、もっとこの検査報告書等を閲覧していろいろ現下の実態を見たいというように思ったわけでございますが、そのあたり、大変目についたところでございまして、きょうは申し上げたところであります。  次に、昨日公表されました日銀短観についてお聞きいたしたいと思います。  当初予定をされておったよりかなり悪化しておるというような報告でございました。企業の景況感が大幅に悪化し、消費低迷や金融システムの不安で変調を来した景気がさらに悪化しかねない状況にあるということをこの日銀短観は示しておるところでございますが、そういう状況の中で、昨日は年初来の安値、一万六千円を株が割ったところであります。また、東京市場に限りましては、昨日は円安がより一層進みました。また、債券も売られたようでございまして、ミニトリプル安というような状況のようでございます。本日の株価は、私まだ見ておらないところでございますが、やはり極めて景況感が悪化したというような日銀の短観のようでございました。  具体的に申し上げますと、先ほども同僚議員の中で日銀短観の質問も出ておりましたので簡単に申し上げますが、業況判断で十年三月期の主要企業の製造業はマイナス三一ポイント、これは、お聞きしますと九四年八月以来の低水準のようであります。また、主要企業製造業の業況判断の変化幅がマイナス二〇ポイント、これは七五年二月以来の低水準のようでございます。  一方、中小企業でございますが、中小企業の製造業、十年三月期マイナス三八ポイント、これも九四年二月以来の低水準のようであります。変化幅マイナス一七ポイント、これも七五年二月以来の低水準。また、中小企業の非製造業におきましては、十年三月期マイナス三七ポイント、これは八三年以来の、統計をとり始めて以来のボトムであるというような業況判断のようでございました。  また、貸し渋りの状況でございますが、金融機関の貸し出し態度DIは主要企業マイナス四一、これは九一年八月以来の低水準。それで、これは今までなかったようなことでございますが、金融緩和局面での貸し渋りが鮮明となっておる。従来は、金融引き締めておるときの貸し渋りというのが起こっておるわけでございますが、今回のように金融緩和局面での貸し渋りが鮮明となっておるというような報告でございました。  それで、この短観の調査時期は、大手十八行と地銀三行に対する先日の公的資金投入が既に決まっておった時期でございまして、貸し渋り問題は改善に向かうというどころか、むしろ悪化しておる。この時点においては公的資金状況はもう既に認識しておる、にもかかわらず悪化しておるというような状況のようでございました。  また、先ほど何人かの同僚議員もおっしゃっておられましたが、デフレスパイラルのおそれが出てきた。製品価格の下落が進んでおり、下落が上昇を三一ポイント上回っておる。物価の下落がいわゆるプラスに働くのではなくて、企業収益の低下、在庫投資、設備投資の抑制を通じて企業を一段と冷やすデフレスパイラルの懸念がいよいよ強くなってきたというような状況のようでございます。  私、今ざっと申し上げたんですが、きょう日銀から本間理事に来ていただいておりますので、理事の方から概要を、もう一度ちょっとお話をいただきたい。
  86. 本間忠世

    本間参考人 昨日私ども発表させていただきました短観につきまして、今先生から数字を挙げられまして詳細なお話をいただきました。基本的にはそのとおりだと思いますが、改めまして、私ども、この短観についてどういうふうに全体を受けとめておるかということを申し上げさせていただきたいと思います。  私どもはこれまで、景気の全体についての認識といたしまして、景気は停滞を続けており、下押し圧力が強まりつつある、こういう基本的な判断をしてきておるわけでございます。先月、三月の日銀の政策判断は、以上申し上げたようなことでございます。  昨日発表いたしました短観の調査の結果を見ますと、先生お話しのようなことが全部出ておるわけですが、基本的に、一つは、内需が低迷を続けているということと、それから在庫調整の影響、これがやはり非常に強く短観にも出ております。こういうことを受けまして企業のマインドが一段と悪化をしている、これが非常にはっきり出ている。それからもう一つは、九八年度の事業計画、これもかなり慎重なものになってきているというふうに受けとめております。  つまり、企業マインド、これが非常にこの時期特に大事なわけでございますが、その動きを示すと考えられます業況判断、今先生がおっしゃいましたような数字はそのとおりでございますが、主要企業で前回十二月に調査をいたしましたのと比べまして大幅な悪化を示しております。その水準も、先生おっしゃったとおりの非常に低いレベルにまで過去数年にさかのぼって下がっております。また、中小企業の業況判断も、これもほとんどの業種で悪化を見ているというところでございまして、先行きについても一段の悪化が見込まれる、こういう状況にございます。  以上が企業マインドでございますが、事業計画の方を見てみましても、主要企業収益が、前回の調査、十二月対比で見ましてかなり下方修正されておりますし、それから製造業が減益に転化をしている、それから非製造業も減益幅を拡大している、こういう中で、やはり収益環境が悪いものでございますからどうしても設備投資にもそれが出てまいりまして、これまで過去何年間か堅調を続けてまいりました製造業におきましても、当該年度、九八年度は減少する計画にこれがなっているということで、頭打ち傾向がここに来て一段と鮮明になってきているというのが今回の大きな特色だというふうに受けとめております。  このように、今回の短観では、内需の低迷の影響企業活動のさまざまな面にあらわれているということが改めて確認されたというふうに考えております。特に企業収益悪化悪化悪化なんですが、それ以上に企業マインドが後退している、企業収益悪化以上に企業マインドが後退しているというところに私どもは今回の短観の一つの意味合いがあるように今考えております。  それからもう一つ、先生がおっしゃいました貸し渋りの方の数字でございますが、これも確かに非常に厳しい数字が、資金繰り判断、それから金融機関の貸し出し態度判断、それから借入金利水準判断、いずれにつきましても企業のサイドから見まして大変厳しい数字が主要企業、中小企業ともども出ておりまして、これは私どもも大変厳しい認識がここに改めて出ているということを強く感じ、受けとめております。  この要因等につきまして、確かに、一つは先生もおっしゃいましたが、公的資金の投入ということの判断がここにどう出ているかというのがございますが、私どもは、公的資金が投入されるということの中でやはり金融機関の自己資本の制約というものはそれなりに緩和されている面があるのではないか、これはなかなか定量的には難しいところでございますが、そういうふうに思っております。  ただ、一方で金融機関の慎重な融資姿勢、やはりあれだけの大きなバブルを引き起こした金融機関の融資姿勢というものに対する大きな反省も金融機関サイドにはございますので、そういうものが金融機関の経営リスク管理というふうな中にこれからも続いていく。そういう意味では、四月以降も金融機関の慎重な融資姿勢というのはある部分はやはり続いていかざるを得ないところはどうしてもあるのだろう。そういう中で企業によっては厳しい調達環境というのが続く可能性があるというふうに考えておりまして、この辺のところを私どもも今回の数字を十分踏まえながらしっかりフォロー、点検をしていくことが極めて大切だというふうに思っております。  それからもう一つ、最後に先生おっしゃいましたデフレスパイラルということに関する物価の面の話でございますが、ここのところも数字は、例えば製品価格の判断それから需給判断、こういうところが、製品需給が一段と緩和し、在庫が積み上がるというふうな製品のところがありまして、一方で価格につきましては、上昇と下落を引きました下落の超過という、いわば短観では三角になっておりますところの数字がどんどん大きくなっております。それだけやはり物価については下方の方向に向かって判断が傾いてきているということでございます。  物価につきまして、商品価格が軟化を続けておりますが、サービス価格まで含めてこれをつかまえてみますと、これまでのところは全体としては横ばい圏内の推移となっている、先行きにつきましては全般に軟調に推移する公算が大きいというのが三月における私どもの見方でございますが、こういう今回の短観の結果も踏まえながら、これは改めて点検をしていくことが大切だというふうに考えておるわけでございます。
  87. 谷口隆義

    ○谷口委員 今、本間理事のおっしゃった企業マインドの後退というのは、これはデフレスパイラルに入る一つの端緒になる可能性が極めて高いというように私は思っておるわけでございます。  きょうは経企庁の方からも来ていただいておると思いますが、昨日の日銀短観を踏まえての現下の景況判断について、経企庁の御見解をお述べいただきたいと思います。
  88. 新保生二

    ○新保政府委員 お答えいたします。  先ほど御説明あったように、日銀短観は、企業の景況感が一層厳しさを増しておって、設備投資の頭打ち傾向であるとか、あるいは雇用の過剰感の高まりなどが非常に明らかになっておりまして、一言にして言えば景気は一層厳しさを増しているというのが確認されたということだと思います。  昨年末以来の景況感の悪化ということが、実は御承知のように家計の消費を大きく引き下げるという方向できいてきている。特に最近の消費の不振を見ますと、所得のファクターもさることながら、消費性向が大きく落ち込むという形で消費が減ってきております。  これは、企画庁の消費者態度指数なんかを見ますと、去年三月が底で、六月、九月と消費者態度は改善していったわけですが、十二月にかけて一挙に落ち込むという形になっております。五項目の要素から成っているのですが、それの中でも雇用環境に関する見方が非常に悪くなっているわけですね。これは、十一月以来の大型金融機関の破綻、こういうものがやはり先行きの雇用不安というものを非常に悪くし、悪化させている、そういうことで財布のひもがきつくなる、そういうパターンが非常に目立っておると思うのです。  御承知のように、家計調査で見ますと、消費性向は九月の七一・九からことしの二月の六八・四まで三・五ポイント下がっておるわけであります。非常に大ざっぱな計算で恐縮ですが、家計の可処分所得はGNPベースで三百三十兆ありますので、これが十兆円以上のデフレ効果を及ぼしているというのが一点。これが、川下から消費の不振が始まったのですが、今は生産財、鉄鋼とか化学までそれが波及してきておるという状況だと思います。  それから、先生御指摘の貸し渋りが中小企業だけでなく大企業に対しても非常に状況を厳しくしておる、これが二点目であります。  三点目は、アジア向けの輸出が相当落ち込んできておる、これがさらに下押し圧力になっておる、そういう背景が最近の悪化の基本的な背景だというふうに思っております。
  89. 谷口隆義

    ○谷口委員 総合的にどういう判断なのかということを聞きたかったのですが、ちょっと非常にわかりにくいお話でございました。  確かに雇用環境は極めて悪化しておる。先日も、完全失業率が三・六%。先ほどからお話ございましたように、アジア経済危機が与える影響も極めて潜在的に大きい。今、我が国のバブルが崩壊してから、我が国の邦銀またゼネコンがどんどんアジア地域で投資をし、また商いをやっておったわけでございますので、そのあたりの焦げつき債権が、私が大変気にしておるのはゼネコンの経営破綻を気にしておるわけでございますが、ゼネコンの経営破綻は、それが雇用に影響を及ぼす度合いがかなり高いものでございますので、今後そういうようなことも当然含めて考えていく必要があるのではないかというように考えております。  そこで、大蔵大臣にお聞きしたいのですが、先ほどからも出ておりました、今与党の方では十六兆円の経済対策ということのようでございますが、今は巷間言われておるのは、真水がどの程度あるのかというのが一つ大きな問題なんだろうと思います。これだけでは現下の大変悪い景気を改善させるだけの力はないだろうと言われておるところでございます。そうしますと、今我々も要求しております減税も含めてやっていかなければいけないというように私は申し上げたいわけでございますが、しかし、一方で財政構造改革法があって現下の状況は金縛りになっておるというような状況になっておる。このままいきますとずるずるといって、先ほど私が申し上げたデフレスパイラルに入ってしまう。これは大変な状況になるわけでございますので、今本格的な景気対策をやっていかなければ大変な事態になるのだろうというように思います。  先ほど大臣の答弁を聞いておりますと、デフレ圧力はないというようなお話でございましたが、デフレ懸念は認めざるを得ないような状況になってまいりました。今そういう状況を踏まえて、先ほどの日銀短観、経企庁の話を踏まえて、大蔵大臣に、現状の景気状況を踏まえての経済対策の御見解、御所見をお願いいたしたいと思います。
  90. 松永光

    松永国務大臣 先刻もほかの委員の御質問に対してお答えをいたしましたように、昨日の日銀短観の結果を見ますと、企業の景況感が非常に厳しくなってきておる、それが設備投資に影響を及ぼし、また個人消費や住宅投資にも影響してきておる、そして景気は引き続き停滞しておるというふうに認識するわけでありますが、先ほどの政府委員の話にもありましたように、消費性向も落ち込んできておる。これはどこから来ているかというと、やはり雇用不安あるいは金融システムについての不安、不安感が消費性向を低下させている、こういうふうに思うわけでありまして、その意味で、そうした不安感を取り除くための一つ一つの政策を着実に進めていくことが大事ではないか、こう私は考えます。  そういうことから、御承知のように補正予算も成立させていただいて直ちに執行に移っているところでありますが、同時に、金融システムを安定化させることが大事ということで、御審議をいただいて金融二法案を成立させていただき、それを三月の末に実行に移しました。これで金融システムについての不安感というものはほぼ解消する方向に向かっているのではなかろうか、こういうふうに思っておるわけであります。  そして、先般、十年度税制改正法案、これも通していただきました。これで合計八千四、五百億の減税が実行できることになったわけでありますが、十年度の予算を成立させていただきますれば速やかにこれを実行に移す、こういつたことになるわけでありまして、それぞれの施策が相乗効果を持って景気の立ち直りに貢献してくるものだというふうに私は思います。  同時にまた、先般、与党三党の方で経済対策というものを決めていただきました。それを私ども重く受けとめまして、これから検討を加えて適切な対策を打っていかなければならぬ、こう思っているところでございます。
  91. 谷口隆義

    ○谷口委員 さっき私が申し上げたように、株式市場状況は、既に昨日、年初来の安値でございます。今与党の考えておる経済対策を考慮に入れてもそれでは生ぬるいという市場の要求である、私はこのように思っておるわけでございまして、今の大蔵大臣の御答弁では経済対策としては極めて不十分というように私は強く申し上げたいと思います。  時間がないものですから、次に参ります。  IMFに関する追加出資のこの法案でございまして、先ほどから同僚議員がAMF構想のことをお話をされておりました。このAMF構想というのは極めて政治的な意味合いもあるのだろうと私は思っておりまして、これはまた質問をしますとちょっと時間が長くなりますので、飛ばします。  次にお聞きしたいのは、米中関係が極めて接近しておる。今回また、六月の末にクリントン米国大統領が訪中するというようなお話を聞いております。本来は秋に訪中という予定が早くなったというようなことでございますが、その折に、我が国に寄らないと申しますか、訪日の予定はないという状況のようでございますが、本日外務省から来ていただいております高野北米局長、米国に対して大統領の訪日の要請は行われたのか、そのあたりの状況説明をお願いいたしたいと思います。
  92. 高野紀元

    ○高野政府委員 クリントン大統領の訪中でございますが、これまでいろいろな情報がございまして、当初、春、三月ごろ、あるいは秋のころというような情報もございました。その都度、私ども、米国政府との間では、いろいろな情報交換、意見交換をしてきているわけでございます。  今回、六月下旬から七月初旬ということで発表になったわけでございますけれども、この前後に関しましては、米国の連邦議会の日程あるいは七月四日の米国の独立記念日等の要因があって、極めて窮屈な日程の中を訪中するということでございまして、この機会に他国をあわせて訪問することは極めて困難だというふうに私ども了解しております。  そういう中で、私どもの方としては、仮に我が国を訪問されるということになればもちろん歓迎するものでございますが、そういう困難な状況ということも了解しておりますので、特に正式の招待、招請ということは行っておりません。
  93. 谷口隆義

    ○谷口委員 どうも最近、米中間、日米間の状況が若干変わってきたのではないか、このように言われておるところでございまして、今回、米国大統領の訪中も、どうも中国サイドが中国以外の訪問を極端に嫌っているというような状況もあるようでございます。  そういうようなことで、私が申し上げたいのは、今、巷間言われておるのは、現在行われておるASEMの会議においても、朱鎔基首相が人民元の切り下げをやらないということに対して評価を得ておるというような状況でございますが、この六月の訪中以後、人民元の切り下げが行われるのではないかというような市場関係者の声もございます。そのあたりの状況について御答弁を求めたいのですが、そのことと、仮に人民元の切り下げが行われた場合に、先ほど申し上げたアジア地域経済状況に対する影響についても触れて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  94. 黒田東彦

    黒田政府委員 外国の通貨制度あるいは為替レートの見通しなどにつきましてコメントするということは差し控えたいと思いますけれども委員指摘のとおり、この中国人民元の動向というのは非常に注目されているところでございます。  その中で、中国の当局者はすべて、人民元の切り下げはないということを公の立場で、また公の場で繰り返し発言しているということを承知いたしております。したがって、私どもといたしましても、そういう発言は非常に重みのあるものであるというふうに認識をいたしております。
  95. 谷口隆義

    ○谷口委員 これで時間が参りましたので終わりたいと思いますが、中国国内における状況は必ずしも明確にわからないわけでございます。仮に人民元の切り下げが行われる場合には、このアジア地域における経済危機は大変な状況でございますが、より一層明確にそういうような状況になるのだろうと思いますが、大きく影響するわけで、そういう状況も踏まえて、今、実効ある経済対策をやっていく必要がある、このように申し上げて質問を終わりたいと思います。
  96. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木陸海君。
  97. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  四月に入りましてビッグ・バンのフロントランナーが走り出した、いよいよ本格化し、一千二百兆円の国民の資産をめぐる争奪戦が繰り広げられるということになりつつある時期だと思うのです。それに関連して、最初にちょっとお聞きをしておきたいと思います。  こういう時期に、バブル期の金融機関の羽目を外した行動といいますか、そういったものにしっかりとけじめをつけることは、もう本当に緊急の課題だと思うのです。その視点からお聞きしますが、ここに昨年三月二十四日付の雑誌アエラの記事があります。前文で、「バブル期、大手銀行は強引な商売をした。融資拡大のため、なりふり構わなかった。」というようなことから書き始めまして二つの例を挙げております。私が取り上げたいのはその一つの例でございますが、ちょっとその部分を読み上げさせていただきたいと思います。   相続税対策だとして外国の不動産を勧められた例もある。   B子さん(八〇)によると、今から約十年前、厳密に言うと九一年の二月ころですが、会社を経営していた夫が亡くなり、都内の住宅地に先祖代々住んでいた自宅で、実娘夫婦と年金暮らしをしていた。九〇年の年の瀬、東海銀行の若い支店営業マンがB子さんを訪ねてきた。  「オーストラリアっていいところですよ、いっしょに行ってみましょうよ」   まるで孫のように振る舞いながら「海外不動産情報の御紹介」とワープロ書きの書類を見せた。それで、いろいろ勧誘するわけですね。   B子さんは、「英語もできないし外国でビルを買うなんてとんでもない」   と断ったが、その後も一週間に二、三回、B子さんは営業マンや支店幹部の訪問を受けた 来ない日も電話だけはかかってきた。   営業マンは、ビザの手配にまで連れていってくれ、結局、「建物を見るだけなら」と渡豪を決めた。シドニーに到着すると日本からの営業マンに現地の銀行関係者が加わり、「よかったですねえ。治安も空気もいいし、年に一度は大家さんとして視察に来られますよ」とレストランで歓待された。   翌日、市内のオペラハウスなど名所を案内されブリスベーンに到着した。   建物を見るとすぐに少し離れた事務所に案内された。現地の関係者が十人ほどずらりと並んでいた。そして電話帳ほどの厚さの書類に何カ所もサインを迫った。  「購入資金は東海銀行がお世話します。返済は家賃でできます」   B子さんは書類の内容がよく理解できないまま日本語でサインしてしまった。ところが、 テナントは数カ月で撤退。その後も全部テナントが埋まらず採算がとれなくなった。  融資回収が滞った東海銀行は、九六年八月、B子さん家族がそれまで融資を受けていた別件の分も含め、自宅などを対象に競売申し立てをした。 というケースが書かれているわけであります。  私も少し調べてみましたが、先ほど、この記事に出ておりますワープロ書きの文書というのはこれなんですが、「海外不動産情報の御紹介 株式会社東海銀行営業情報部」という文書で、最初のページにこういうふうに書いてあります。「本物件は、マーケットで売りに出ている物件ではございませんので、甚だ勝手ではございますが、対外秘とお願い申し上げます。又、本物件についてのコンタクトは、弊行とのみ、お願い申し上げます。」ということで、このオーストラリアの、日本円にすると四億円ぐらいの物件を細かく紹介をしている。そして、アエラに書いてありますように、英語もわからない人を連れていって分厚い英文の書類にサインをさせて、それで四億数千万円を融資をしたという形になっているわけですね。  そして、その支払いについての、購入手続終了の報告についての東海銀行の文書も出されておりますが、その中にはアドバイザリーフィーという名目で、東海オーストラリア、オーストラリアの東海銀行ですね、ここに十一万百オーストラリア・ドル日本円に換算すると二千万円くらいになるそうですが、二千万円くらいの手数料もちゃんとその四億数千万円融資する中から取っているという形になっているというケースであります。  仲介のための、先ほど紹介しましたこの文書等々の存在からしましても、これ一件だけ例外的にあったわけではなくて、こういうものが何件もあるのだろうということは当然推測されるわけであります。これは、だから率直に言って、不動産業者の行うような不動産の勧誘と仲介、あっせんを東海銀行が実質的に行ったという意味で、銀行法十二条の他業禁止、こういう規定にも触れるという行為になるのじゃないでしょうか。
  98. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  個別案件につきましての御質問でございますので、それの具体的なコメントは差し控えたいと思いますが、銀行法との関係でのお尋ねに関しまして、一般論で申し上げますと、取引先に対していろいろ情報を提供するということはしばしば行われ、それ自体をもって直ちに法令に違反すると言うことはできないと思うわけであります。  先ほど、フィーのことを御指摘いただきましたが、これも、現地法人はこれはオーストラリアの法人で、そしてオーストラリアの法律でもってそれが可能だということだというふうに聞いております。日本でそういうことがあれば、それは不動産業を営んでいるのじゃないかというような話になるかもしれませんが、日本におきましては、情報をいろいろ提供するということ自体について銀行法違反ということを直ちに断定するというのはできないのだろうというふうに思います。
  99. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そのアドバイザリーフィーと称する手数料は、現地の東海オーストラリアというところに払われているわけですね。  東海銀行のホームページを見ますと、海外関連会社ということで東海オーストラリア・ファイナンス・コーポレーション・リミテッドというのがちゃんと入っていて、今の資本金が七千万オーストラリア・ドルで、出資比率は一〇〇%ということが書かれております。  この東海オーストラリア・ファイナンス・コーポレーション・リミテッドというのが八五年の八月上旬から営業を始めたわけですが、それに先立つ時期の日本の新聞、これは日本経済新聞ですが、これによると、八月上旬から営業を始める、会長には三宅重光東海銀行会長、社長には、名前は省きますが、東海銀行国際企画部参事役が就任をした。東海銀行に問い合わせてみると、海外に支店を持っているところもあれば、こういう現地法人を持っているところもあるというのですが、それは、現地の法律では支店ができないから支店をつくらないだけの話で、これは実際上、東海銀行のオーストラリアの支店なんですよね。オーストラリアの法律からいって支店というふうには名乗れないからそうなっているだけの話で、一〇〇%出資しているし、会長も東海銀行の会長と同一人物がやっているわけですから、もう実際支店なので、これは国内だったらまずいだろうけれども、現地法人に払っているのだから、これは手数料じゃないから、だから不動産あっせんをやったのだというようなことは言えないという議論は私は成り立たないと思うのですが、いかがですか。
  100. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  あくまで現地法人でございますので、現地の法制上認められるか認められないかの問題だというふうに思います。
  101. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本国内で東海銀行の行員がしつこく勧誘して、オーストラリアにこういう物件があるよと紹介して、ビザまでとるのも一緒にやって、そしてオーストラリアへ無理やり連れていって、現地でその東海銀行リミテッドの社員が来て、一緒につき合って、そして見させてすぐにサインをさせて、そしてその東海銀行の事実上の支店にお金を払わせているわけですよ。  これが銀行法違反だということを、銀行局長はなかなかそれはお認めにならないでしょうけれども、しかし、実際、国内でこういうことがやられていたら完全に銀行法違反になりませんか。
  102. 山口公生

    山口政府委員 国内法で、つまり銀行法では他業を禁止しておりますので、いわゆる不動産業のようなものはやってはいけないというふうになっております。  ただ、ちょっとつけ加えさせていただきますと、個別問題について私は申し上げるべき立場にないと申し上げましたが、この案件については、双方、いろいろな言い分があるようでございます。司法等の場も含めてその当事者間で解決を図っていただきたいというふうに思っている次第でございます。
  103. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 双方に言い分があることは私もよく存じておりますが、今私が取り上げているのは、このオーストラリアの物件を東海銀行紹介して、これで買わせて四億何千万円もの融資をして、そして競売を今かけているというこの件についてどうなのかということを問題にしているわけであります。わかりますか。それは、本人と東海銀行の間にいろいろあるということは私も聞いていますよ、存じていますよ。先ほどのアエラにもそういう趣旨のことがちゃんと出ておりますね、B子さん家族がそれまで融資を受けていた別件の分も含め自宅などを競売に付したということは私も承知している。  今問題にしているのは、こういうオーストラリアの物件を紹介してこれを買わせて、それを融資してやるというようなことが銀行としてまともな行為だったのかどうなのかということを、見解を求めているわけです。
  104. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  これはこの件と離れての話として聞いていただきたいと思いますが、お客様がいろいろ外国の情報を知りたい、例えば海外で自分がオーナーになりたい、どこがいいだろうかとかいうようなときに、その情報をいろいろ提供してあげるということ自体は、これは問題ないと私は思うわけでございます。  ただ、先生がおっしゃっている趣旨がいかなるものか、ちょっと正確に把握しないで申し上げるのも適切でないかもしれませんが、バブル期にこうした少し過剰とも言えるようなサービスというのが仮にあったとすれば、それは過去たくさんそういった現象もあったように聞いておりますが、それが、では今もって社会的批判を受けない行為かと言われますと、それはいろいろ問題があるのではないか、それ自体が違反そのものではないにしても、過剰とも言えるようなサービスというところについてはいろいろな問題点として挙げられる面もあるのではないかと思うわけでございます。  しかし、この個別の案件自体については、繰り返しになって恐縮ですが、それぞれお互いにどうも言い分があるようでございます。そういった場、お話し合いないしは司法の場で御解決をいただければと思う次第でございます。
  105. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 言い分がある問題を問うているのではなくて、私は、こういう具体的な勧誘文書と、そしてこのアドバイザリーフィーというものが東海銀行の事実上の支店に払われているという、そういう事実の上に立って、その事実がどうかということをお聞きしているわけです。まあいいです。  銀行局長の名前による「普通銀行の業務運営に関する基本事項等について」という通達があります。この通達の中では、「社会的批判を受けかねない過剰サービスの自粛」と今言われたような話が出ておりまして、顧客に対する金融商品以外の商品の紹介、あっせんということを含めたその他の社会的批判を受けかねない行為は厳に慎むべきものだということを銀行局長名で通達をしているわけですね。まさに、少なくともこれは顧客に対する金融商品以外の商品の紹介、あっせんをしていたということに当たることは間違いないのじゃありませんか。
  106. 山口公生

    山口政府委員 この通達は、たしか平成四年に出したと思うのでございますが、金融商品以外の商品の紹介をやるということでは、今のようなケースはこれに当たるかもしれませんが、ただ、過度かどうかとなりますと、お客様がぜひその情報を欲しいと言われて、例えばその御親戚の方が、あるいは御家族の方がぜひということで、それで御説明したとなると、過度かどうかという問題は判断の問題だと思います。
  107. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 東海銀行の側は確かに、これは危ないからやめた方がいいですよと言った、けれども、このB子さんの方がぜひにもと言ったので売ったというような弁明もしているわけですね。しかし、こういう文書を東海銀行の側は出して誘っているわけですね。それで、買いたいと言ったけれども危ないからやめておきなさいなんで言うはずがないですよ。双方の言い分があると言いまずけれども、東海銀行の側の言い分というのはそんなものだというふうに私は聞いております。まあ、時間もありませんから、結構です。  その東海銀行の側は、これはことしの三月十日付の朝日新聞ですが、四月一日付で頭取に就任する小笠原日出男副頭取、もう頭取に就任されたわけですが、これが三月九日、朝日新聞の取材に対して述べたというのですが、これまで飲食やゴルフなどで大蔵省職員らを接待してきた事実を認め、監督する側とされる側の間で疑われるようなことはやるべきではなかったと述べた。はっきりと認めているわけですね。  大蔵大臣にお聞きしますけれども、前に久保大蔵大臣でしたか、こういう事例について、金融のプロがアマチュアをだました、こういうことは望ましいことではないんだということを言いました。この場合も、プロとアマという違いだけじゃなくて、プロの方は本当に巨大な組織を持っている、そしてアマチュアの方は全くの個人である。問題を提起することさえも個人の側はなかなか難しいという事情に金融問題では大体の場合置かれているわけですね。そして、そういう問題を国会の場で私なんかが取り上げると、個別の問題については何も述べることはできません、それは司法の場でというような話がすぐ出てくるわけですけれども、司法の場でやるといったって、この個人の側、アマチュアの側は大変な状況に置かれているわけですよ。  ですから、大蔵大臣、率直にお聞きしたいのですけれども、先ほどのアエラの記事を紹介したこういう事例、こういうことはやはり望ましくない、大蔵大臣はそうお思いになりませんか。
  108. 松永光

    松永国務大臣 私は突然これを見せられたわけであります。これは、競売の申し立て等がなされておると。したがって、法律問題になっているのじゃないでしょうか。したがって、これはその判断にゆだねないというと、突然言われて何ともお答えできないわけでありますが、全くの一般論でいえば、金融のプロがそのことについて極めて疎いアマチュアの人をだましたと言われるようなことは、これはやらぬ方がいい、こう思います。
  109. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 今競売ということを言われましたけれども、私が知っているケースでも、こういうバブル期の銀行の我々から見れば本当に羽目を外した行動、いろいろな事例が多々あるわけです。そしてそれが今、ことごとくとまでは言いませんが、多くの事例が、銀行側が自分の方の反省は棚に上げて競売をかけるということをやっているわけですよ。  だから、その競売の事態を見守りましょうと言っているだけでは、大蔵省としての銀行金融機関に対する監督の責任は果たせないのですよ。そのままビッグバンの方向へ移行してしまったらどういうふうになるかという問題があるわけですね。だから、こういうことでの競売ということをすぐかけていくようなやり方も好ましくないと私は思っているのですよ。  大蔵大臣、競売なんかやっているのはもうやむを得ないというお立場なのですか。
  110. 松永光

    松永国務大臣 私も大臣に就任する前は弁護士をやっておったわけでございまして、バブル時代のことについて、言うなればだまされたということで私の事務所に依頼に来た事件もありました。そして、いけそうだという事件については訴訟を起こした例もあります。  結局、こういう場所で議論をする場合には、両方の意見を聞かぬことには、どうだこうだというのはちょっと答えにくいのです。ただ、一般論として言えば、双方の主張が全く食い違っているというような場合、この場合には司法の判断にまっしかない。一般論ではそう思いますが、また一般論として言えば、銀行たるもの、そういうことで相手方から苦情を言われるようなことはしない形で活動する方が望ましいことは、これは当然のことです。一般論でございます。
  111. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 時間がなくなりましたから、IMF問題についてちょっとお聞きをしたいと思います。  このIMFという機関が各国の通貨の安定とそのための国際的な協力という目的で出発して動いている。そして、時代とともにその目的達成の手段や方法はそれなりに変化をさせてきているということだというふうに理解しているのです。その方法、手段の一つとして、今、途上国の経済危機に対応して必要な資金を供給するということをIMFがやっているということも、これはあり得ることだと一般論としては私も思うのですが、しかし、その融資の条件として、当該国が言ってみればIMFの管轄下に置かれて、国民生活切り下げを伴うようなさまざまな経済政策やら、貿易の自由化とかあるいは税制の改革とか、あるいは労働市場の規制緩和だとか金融改革だとか、為替管理の部分的ないし全面的な撤廃だとかいうようなものまで迫られるような厳しい条件を課されているということについて、かなり広範な不満というようなものが起こってきているというのは、先ほどからの議論でも明らかだと思うのですけれども、それが今のIMFの一つの重要な問題だという認識を大蔵省は持っておられるのでしょうか。
  112. 黒田東彦

    黒田政府委員 IMFがその時々の経済金融情勢に応じていろいろな役割を果たしてきているということは御指摘のとおりでありまして、特に最近のアジア通貨問題に対して、タイインドネシア韓国についてIMFの。プログラムをつくり、それを条件としてかなり巨額の融資を行っているということでございます。  ただ、歴史的に見ますと、IMFは、かつては比較的マクロ政策に偏重したというか、マクロ政策を主として政策融資の条件にいたしておりました。ところが、その後、開発途上国に対する融資が非常に中心的になってまいりますとともに、単なる財政金融政策あるいは為替政策の変更のみではその国の経済問題は解決できないということから、かなり構造問題にも関与し、そういうものを条件として融資をするということを行ってきたわけでございます。  最近の時点で申し上げますと、タイインドネシア韓国に対しましては、確かに従来のマクロ政策のみならず構造問題にも必要に応じて関与しておりまずけれども、それらによって短期的には確かに痛みを伴うことは事実でございますが、これらの国の経済の回復にとって必要な限りにおいては、そういった経済政策上の条件も必要であるというふうに思っております。ただ、その内容がそれらの国の実情に応じたものになる必要があるということは、御指摘のとおりでございます。
  113. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は、そういう不満を招くような方向を一体どこが、だれが、どういうふうに決めているのかという問題が一つあると思うのですよ。  アジアの問題についても、例えばことしの一月十一日のある新聞の報道によりますと、   米政府は、アジア各国の金融危機市場開放  実現の好機ととらえ、国ごとに優先目標を設定  して市場開放を求める政策に着手した。国際通  貨基金を中心とする支援計画で米国が主導権を  握り、緊急融資の条件として規制緩和や制度改  革など米産業界の要望を盛り込む戦略だ。  これは、赤旗が書いているわけじゃありませんよ。日本経済新聞が書いたのです。つまり、アメリカ政府がこういうアジア経済危機を好機と見て、IMFを活用してアメリカの戦略を有利に展開するような方向で迫っていこうという態度で臨んでいるということが、幾つも新聞はありますけれども、こういうことが伝えられているわけですね。他方、この間のイラクの危機なんかを見ますれば、国連の状況などはどうでもいいという形で武力行使に走ろうとするというような状況もあるわけですね。  そして、アメリカがこのIMF中心とする計画で主導権を握るという、実際、主導権を握れるような条件が構造としてあるのではないか。つまり、今度アメリカのシェアは減りますけれども、しかし投票権シェアは一七%で、八五%以上の賛成がなければ物が決められないということの中では拒否権を持つわけでありまして、IMFとか世銀とかいった国際的なそういう重要な機関では、アメリカはすべて、すべてとまでは言いませんが、例外もありますが、アメリカがそういうシェアをきちんと握っていて、それに基づいてアメリカの意図が通るようにしているという問題が現実にあるのじゃないかと思うのですが、その辺についてはどうお考えですか。
  114. 黒田東彦

    黒田政府委員 御指摘のとおり、米国が一七%程度の投票権を持っておりますので、八五%多数決の必要な決定については事実上ビートを持っております。ただ、八五%多数決が必要な重要な決定といいますのは、IMF協定の改正であるとか、今回御審議いただいておりますようなIMF増資であるとか、そういうものに限られておりまして、例えばタイ韓国インドネシアに対する貸し出しの決定というのは、これは単純多数決でございます。したがいまして、米国一国が反対いたしましても、ほかの国の賛成によって当然支援が行われるわけでございまして、IMFはしばしばコンセンサスでやっておりますので、必ずしも常に投票が行われるわけではございませんが、IMFあるいは世銀におきましても、アメリカが反対したにもかかわらず多数の賛成によって貸し出しが行われたということもございますし、今回のタイインドネシア韓国につきまして、もちろん米国のさっき申し上げたようなビートを背景にした影響力があることは事実でございますが、その内容につきましては、日本、ヨーロッパ、あるいは特に地元のアジア関係国の意見というものもそれなりに盛り込まれているというふうに認識をいたしております。
  115. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 投票権の配分については、これが大国に偏ることを防ぐために基礎票という制度があって、二百五十票が各国平等に配分されることになっているわけですね。しかし、これに加えて十万SDRの出資に対して一票という規定があって、ですから、設立以来今日までに増資が何度か行われて出資規模が相当大きくなったけれども、基礎票については設立時と同じ二百五十票のままで固定されているという現実がある。その結果、投票総数に対する基礎票の比率というものは、設立時は一一・八九%あったのだけれども、今回の増資後で見るとこの比率は二・一%になってしまって、本当に微々たるものになってしまう。そのために途上国のIMFにおける発言権は相対的に小さくなっているという現実もあるということだと思うのです。  それで、このアジア危機に対する対応に関しても先進国の都合になりがちだという問題があるわけで、大蔵大臣に最後にお聞きしたいのですけれども我が国は今度の増資単独二位に躍進して発言力も強まることになるわけですから、その立場を生かして、アメリカの言いなりにならずに、こうした投票権の配分などについても適切に是正を図るということに力を入れるべきではないかと思うのですよ。それでこそ我が国アジアに信頼される国になるのじゃないか。ささやかな努力ですけれども、その程度の努力はしていくべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  116. 松永光

    松永国務大臣 先ほどからの委員の御発言を聞いていますというと、IMFを通じてアメリカが自己の世界戦略を推し進める、そういう道具にしているような、それととらえるような発言がございましたけれども……(佐々木(陸)委員「そういうふうに新聞が書いているのです」と呼ぶ)いや、新聞が書いておっても、国会議員としての発言の場合には、新聞の言うとおりというわけにはまいらぬでしょう。  私は、この第二次大戦後、第二次大戦が起こった原因について反省をした上で、世界の秩序を維持していくために国連とかガットとかこのIMFとかそういった仕組みができたものだと理解しておるのです。そして、今日まで五十数年間、それぞれの国際機関が努力をしてきたから、そこで世界の平和は保たれたし、また、貧しかった国であってもそれなりの経済成長を遂げてきて、そして人類の幸せに貢献してきている、私はそう思っております。その意味IMFの活動というものは大変大事なものだ、こう思っております。  今度、日本増資を引き受けたことによってIMFにおける日本発言権は強化されるわけでありますが、特に、アジア通貨危機を乗り越えるためにも、IMFの活動、非常な貢献をしておるということでもあります。今後とも、日本は、アジア地域の意見を十分聞きながら、IMFの会合等において、アジアの一国である日本の立場でしっかりアジアの発展に貢献するような発言を続けていく必要がある、こういうふうに私は思っているところでございます。
  117. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 アメリカの評価については、それはいろいろおありでしょう。しかし、先ほどのお話にも出ましたように、自分たちの増資分を出すのはなかなか渋っていて、しかし拒否権を確保するに必要な分は確保するということを確固としてやっているわけですね。そして、新聞でもこう書かれるように、自国の戦略に沿ってやっている。その戦略が世界国民のためになるのかならないのかという問題は別にございますけれども。  今お答えにならなかったのですけれども、こういう投票権の配分などについても適切に是正を図る努力をすべきじゃないかということをお聞きしたのですが、その点についてはいかがですか。それをお聞きして終わりにしたいと思います。
  118. 黒田東彦

    黒田政府委員 御指摘のように、基礎票という制度がございますが、成立以来今回に至るまで、この基礎票についてはいろいろな議論がございまして、御指摘のように基礎票をふやすべきという議論もありましたし、IMF、世銀のような金融機関たる国際機関については、やはり出資額、負担額に応じた発言権であるべきだという議論もございまして、いろいろな議論があって、結果的に現在のところ、基礎票をふやすということに合意はできておりません。  ただし、一つだけ申し上げますと、開発途上国全体の投票権シェアIMF成立時に三割程度でございましたが、その後、開発途上国のクオータ自体がふえたこともございまして、今回の第十一次増資が発効いたしますと途上国全体の投票権シェアは三八%ぐらいになるということで、戦後五十数年たって見ますと、これらの国の投票権シェア自体は若干ふえているということでございます。
  119. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 終わります。
  120. 村上誠一郎

    村上委員長 これにて本案に対する質疑は終局いたしました。     —————————————
  121. 村上誠一郎

    村上委員長 これより討論に入るのでありますが、討論の申し出がありませんので、直ちに採決に入ります。  国際通貨基金及び国際復興開発銀行への加盟に伴う措置に関する法律の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  122. 村上誠一郎

    村上委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  お諮りいたします。  ただいま議決いたしました法律案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  123. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————     〔報告書は附録に掲載〕      ————◇—————
  124. 村上誠一郎

    村上委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  金融に関する件の調査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁山口泰君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  125. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  126. 村上誠一郎

    村上委員長 それでは、日本銀行副総裁山口泰君にお願いをいたします。
  127. 山口泰

    山口参考人 四月一日の新日本銀行法に基づきまして副総裁を拝命いたしました、私、山口でございます。藤原副総裁とともに、政策、業務の執行に当たりまして総裁をしっかりと補佐いたしますとともに、政策委員会の一員といたしましてその職責を果たしてまいりたいと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。  また、日本銀行改正に当たりましては、当委員会の先生方を初めといたしまして関係各位に多大な御尽力をちょうだいいたしました。この機会をおかりいたしまして改めて厚く御礼申し上げる次第でございます。  現在、日本銀行は、その政策と業務を通じまして景気と金融システムの立て直しに貢献していくという大変重い課題に直面しております。そのような状況のもとで、私どもの職員が逮捕、そして起訴されるという事態になりましたことは、私どもにとりまして痛恨のきわみでございまして、深刻に受けとめております。改めて現在の私の立場からもおわびを申し上げたいと存じます。  申すまでもないことでございますが、新日本銀行法の基本精神は独立性と透明性ということであると承知しております。私は、法によって定められました独立性ということも、それ自体不可欠なものと思っておりますが、それと同時に、中央銀行の独立性というものは、究極的には国民の信頼に基礎を置くものであるというふうに考えております。そういう意味で、日本銀行といたしまして、まず今般の不祥事を率直に反省いたしまして、一刻も早く国民の信任を回復し、さらにはより高い信頼をかち取ることが必要であるというふうに考えております。  そうした観点を踏まえまして、日本銀行では先般、服務準則と「日本銀行員の心得」というのを定めましてその徹底を図りますとともに、今般、藤原副総裁を委員長といたしまして、外部の専門家にも入っていただきまして、法令遵守の観点から業務執行体制のあり方を全面的に議論する委員会、これをコンプライアンス委員会と称しておりますが、そういう委員会の設置を決めました。この際、これまでの日本銀行の運営上何が問題であったかということを徹底的に洗い出しまして、これまでの運営手法にとらわれることなく抜本的な改善策を講じていきたい、このように考えております。  新しい日本銀行法のもとで、新しい政策委員会がこの四月一日から活動を始めました。先般、国会で御同意いただきました新しい審議委員の方々も加わりまして、日本銀行の最高意思決定機関にふさわしい新しい委員会が誕生したというふうに思っております。  新法のもとでは、私ども副総裁も新たに政策委員会のメンバーとして位置づけられました。私は継続的に日本銀行で仕事をしてまいりましたので、日本銀行のスタッフの専門的な知識とか能力というものを政策委員会での議論に最大限生かしていきたい、そういう意味ではスタッフと政策委員会との間にブリッジをかけていくということも私の役割ではないかと考えております。  以上、お時間をちょうだいいたしまして、副総裁就任に当たりまして一言だけごあいさつを述べさせていただきました。私といたしましては、新たな日本銀行法のもとで日本銀行が与えられた使命をきちんと果たすことができますように、副総裁という立場から微力ながら全力を尽くしていきたいと考えておりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。  どうもありがとうございました。(拍手)      ————◇—————
  128. 村上誠一郎

    村上委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  金融に関する件の調査のため、来る四月七日火曜日、株式会社第一勧業銀行、株式会社さくら銀行、株式会社富士銀行、株式会社東京三菱銀行、株式会社あさひ銀行、株式会社三和銀行、株式会社住友銀行、株式会社日本興業銀行及び株式会社日本長期信用銀行の代表者並びに日本銀行の役職員を参考人として委員会出席を求め、意見を聴取することとし、その人選等につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  129. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。  次回は、来る四月七日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後零時四十九分散会      ————◇—————