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1998-03-17 第142回国会 衆議院 大蔵委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十七日(火曜日)     午後六時三十五分開議 出席委員   委員長 村上誠一郎君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 浜田 靖一君    理事 池田 元久君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 谷口 隆義君       今村 雅弘君    岩永 峯一君       大石 秀政君    鴨下 一郎君       河井 克行君    桜田 義孝君       杉浦 正健君    砂田 圭佑君       中野 正志君    根本  匠君       宮路 和明君    村井  仁君      吉田六左エ門君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       上田 清司君    北脇 保之君       末松 義規君    中川 正春君       日野 市朗君    藤田 幸久君       河合 正智君    富田 茂之君       並木 正芳君    小池百合子君       鈴木 淑夫君    西田  猛君       佐々木憲昭君    佐々木陸海君       濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 松永  光君  出席政府委員         大蔵政務次官  中村正三郎君         大蔵大臣官房長 武藤 敏郎君         大蔵大臣官房総         務       溝口善兵衛君         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省関税局長 斎藤 徹郎君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君         国税庁次長   船橋 晴雄君         国税庁課税部長 乾  文男君  委員外出席者         通商産業省通商         政策局経済協力         部地域協力課長 伊沢  正君         中小企業庁長官         官房調査課長  小野 伸一君         中小企業庁計画         部金融課長   寺坂 信昭君         自治省税務局企         画課長     桑原 隆広君         参  考  人         (日本銀行総裁松下 康雄君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十七日  辞任         補欠選任   赤松 正雄君     富田 茂之君 同日  辞任         補欠選任   富田 茂之君     赤松 正雄君     ――――――――――――― 三月十二日  所得税恒久減税実施に関する請願(佐々木憲  昭君紹介)(第六〇七号)  同(佐々木陸海紹介)(第六〇八号)  同(春名直章紹介)(第六〇九号)  同(矢島恒夫紹介)(第六一〇号)  消費税率引き下げ恒久減税実施に関する請  願(佐々木憲昭紹介)(第六一一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  平成年度における財政運営のための公債の発  行の特例等に関する法律案内閣提出第六号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三〇号)  法人税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第八号)  租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第九号)  電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書  類の保存方法等特例に関する法律案内閣提  出第一〇号)      ――――◇―――――
  2. 村上誠一郎

    村上委員長 これより会議を開きます。  内閣提出平成年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  趣旨説明を聴取いたします。大蔵大臣松永光君。     ―――――――――――――  平成年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案  関税定率法等の一部を改正する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  3. 松永光

    松永国務大臣 ただいま議題となりました平成年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、平成年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  平成年度予算につきましては、財政構造改革法に従い、歳出全般について聖域を設けることなく徹底した見直しを行いつつ、限られた財源を重点的、効率的に配分したことにより、前年度当初予算に対して一般歳出について五千七百五億円、一・三%の縮減を達成するとともに、公債減額一兆千五百億円を実現するなど、財政構造改革のさらなる一歩を進めたところであります。  その中で、特例公債については、前年度当初予算における発行予定額から三千四百億円減額したものの、引き続き平成年度においても発行せざるを得ない状況にあります。  本法律案は、以上申し上げましたように、厳しい財政事情のもと、平成年度財政運営を適切に行うため、同年度における公債発行特例に関する措置及び厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れ特例に関する措置を定めるものであります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、平成年度一般会計歳出財源に充てるため、財政法第四条第一項ただし書き規定による公債のほか、予算をもって国会の議決を経た金額の範囲内で公債発行することができること等としております。第二に、平成年度における一般会計からの厚生保険特別会計年金勘定への繰り入れのうち経過的国庫負担については、七千億円を控除した金額繰り入れるものとするとともに、後日、将来にわたる厚生年金保険事業財政の安定が損なわれることのないよう、七千億円及びその運用収入相当額合算額に達するまでの金額一般会計から繰り入れることとしております。  次に、関税定率法等の一部を改正する法律案につきまして、提案理由及びその内容を御説明申し上げます。  政府は、最近における内外経済情勢変化に対応する等の見地から、関税率還付制度等について所要改正を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案内容につきまして御説明申し上げます。  第一は、関税率等改正であります。  金属製時計バンド粗糖等関税率引き下げ等を行うこととしております。  第二は、暫定関税率適用期限延長であります。  平成十年三月三十一日に適用期限の到来する暫定関税率について、その適用期限延長することとしております。  第三は、関税還付制度適用期限延長であります。  平成十年三月三十一日に適用期限の到来する関税還付制度について、その適用期限延長することとしております。  第四は、沖縄振興策であります。  自由貿易地域等に係る課税物件の確定に関する特例を設ける等のため所要改正を行うこととしております。  第五は、税関手続簡素化等であります。  保税地域許可を受けている法人合併により解散した場合において、合併後の新法人当該保税地域許可を承継できることとする等、税関手続簡素化等のため所要改正を行うこととしております。  その他、所要規定整備を行うこととしております。  以上が、平成年度における財政運営のための公債発行特例等に関する法律案及び関税定率法等の一部を改正する法律案提案理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。
  4. 村上誠一郎

    村上委員長 これにて趣旨説明は終わりました。     ―――――――――――――
  5. 村上誠一郎

    村上委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁松下康雄君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  7. 村上誠一郎

    村上委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。砂田圭佑君。
  8. 砂田圭佑

    砂田委員 自由民主党の砂田圭佑でございます。大蔵大臣、朝から予算委員会、引き続いて大蔵委員会と大変お疲れでございましょう。御苦労さまでございます。一問だけ伺って、後はしばらく休憩をおとりいただきたいと思います。  ただいま大蔵大臣から提案理由説明のありました公債法関税法について質問をいたします。  我が国の国家財政は、財政構造改革法をつくらなければならないほど財政状況が逼迫をしていることは事実であります。国全体で五百二十七兆円余の借金があり、その借金の半分は国債であります。しかも、二〇〇三年までには赤字国債発行をゼロにするという財革法規定があります。   一方、経済状況は極めて厳しい不況の中にあって、政府対策が渇望をされているところでございます。政府対策といえば、何らかの形で財政出動によって経済活性化を図る以外に道はないのではないかと思います。  そこで、伺います。  先般の二兆円の減税についても、赤字国債発行しなければならない状況でありました。この財政構造改革赤字国債発行という矛盾した状況の中でいかに整合性を保っていくのか、難しい問題ではありますけれども大蔵大臣にお伺いをいたします。
  9. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  我々の子や孫のことを考えると、財政構造改革必要性、これは何ら変わるものではないというふうに思います。このことについては異論のないところだろうと思います。  このため、昨年成立した財政構造改革法においては、財政構造改革の当面の目標一つとして、特例公債発行額を年々縮減し、平成十五年度までに特例公債依存から脱却することを規定しているところであります。また同時に、経済金融情勢変化に応じて臨機応変の措置を講じ、景気の回復を図ることも当然のことでありまして、平成年度予算においては、法人土地等減税等によって大幅な歳入の減収が見込まれる中で、特例公債減額についても三千四百億円の減額を達成したところであります。これは、現下経済金融情勢考えれば、財政構造改革法成立後初めての予算として、しかるべき減額を達成できたものと考えておるところであります。  十年度予算財政健全化目標へのさらなる第一歩を踏み出したものとは言えますが、いずれにせよ、財政健全化目標は容易に達成され得るものではなく、今後とも、現下の諸課題に的確に対処しつつ財政構造改革を着実に推進してまいりたい、このように考えているところでございます。
  10. 砂田圭佑

    砂田委員 大臣、ありがとうございました。どうぞお休みください。  そのように大臣大変御苦労をいただいているところでございますけれども、それにもかかわらず、今後も依然として経済状況に応じて緊急対策的に国債発行する必要に迫られることは、容易に想像のつくところであります。現在、国債建設国債特例国債すなわち赤字国債二つ区分をされております。建設国債には資産の裏づけがあり、特例国債赤字国債歳入不足の穴埋めという性格を持っているものでございます。いずれの国債も六十年の償還でありますから、将来の世代借金を残すことには変わりがありません。  それならば、国家資金繰りとして、社会資本建設にも景気対策にも即応できる柔軟な資金としての国債という考え方から、建設特例区別を撤廃することが望ましいんではないかという気がいたします。もちろん厳密な政策的判断に基づいて、国債発行の歯どめがきかなくなったり、あるいは二〇〇三年度におけるGDP比率が三%以下の国債発行という財革法目標を見失ったり、また公共事業優先につながることのないように配慮をすることは当然であります。その上で、二つ国債区分の廃止について政府の御見解を賜りたいと思います。     〔委員長退席井奥委員長代理着席
  11. 藤井秀人

    藤井政府委員 お答え申し上げます。  先生承知のとおり、財政法第四条におきまして、「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない。」という、いわば健全財政主義がうたわれているわけでございます。そして一方、その中でただし書きにおきまして、世代間の負担の公平の観点から合理性があり得る場合、例外的に建設公債発行が認められているということは御承知のところでございます。  財政現状は、残念ながら、御承知のとおり赤字公債発行を余儀なくされているわけでございますけれども、だからといいまして、こうした財政法のいわば節度原則を捨ててしまってよいのかどうか。やはり財政運営健全性の確保の観点からは意味がある規定であるというように私ども考えております。  これは総理も予算委員会等でお答えいただいているわけでございますけれども建設公債特例公債区別をなくすということにいたしますと、各年度予算の収支じり、これを公債発行で賄うという安易な流れというものが考えられます。したがいまして、この点につきましては慎重であらねばならないと考えております。  なお、今般提出しております特例法案におきましても、特例公債につきましては、法案第二条第四項におきまして、それにつきましては「その速やかな減債に努めるものとする。」。残念ながら、現在六十年償還ルール特例公債よらざるを得ないわけでございますが、しかし、「その速やかな減債に努める」という努力規定が設けられているところでございます。
  12. 砂田圭佑

    砂田委員 それでは次に、関税法に関連してお伺いをいたします。  政府が、本法案提案理由説明のごとく、内外経済状況変化に対応して、関税率あるいは沖縄振興にとって成果が上がることを我々は期待をするものであります。  関税法とは直接関係ありませんが、貿易業者の業務が円滑に進むためにも、かねてから要望をされていることではありますけれども、例えば輸出品消費税を含んで仕入れをいたします。その仕入れた商品を海外に売り渡すわけでありますが、当然そこからは消費税分は価格の中に算入をされません。前もって払った消費税は、年四回に分けて還付を受けることに業者はなっております。  中小貿易業者にとって、その消費税の立てかえ資金が、大変会社資金繰りあるいは経営基盤に大きな影響をもたらすという不満がございます。何とかこの四回をもう少し短縮をしたり、あるいは輸出品仕入れについては消費税を免税にするというようなことが望まれておりますが、この件について御所見を賜りたいと思います。
  13. 尾原榮夫

    尾原政府委員 お答えを申し上げます。  輸出取引についての消費税還付課税期間をさらに短縮するべきではないかというお尋ねでございました。  消費税課税期間でございますが、事業者事務負担などに考慮いたしまして、所得税法人税と合わせ原則一年というふうにしておるわけでございますが、消費税の持ちます預かり金的性格にかんがみまして、また益税をできる限り発生させないという考え方から、消費税申告納付回数の方は原則年四回というふうになっているわけでございます。  今輸出還付お話がございましたが、恒常的に還付が生ずると認められる事業者の方につきましては、その金利負担配慮いたしまして、課税期間を三カ月に短縮し年四回の申告が可能になる特例を設けているわけでございます。これは、ただいま申し上げましたような申告納付制度とのバランスを考慮して、最大限の配慮を行った制度になっているということをひとつ御理解いただければというふうに思うわけでございます。  先生がおっしゃられましたように、さらにこの課税期間を短縮するということになりますと、この年四回になっています申告納付制度とのバランスをどう考えるかといった議論も必要になると考えられるところでございます。
  14. 砂田圭佑

    砂田委員 時間がなくなりましたが、最後に、大蔵省の皆さんに望みたいことを申し上げたいと思います。  日本は、明治以来、官吏が清廉にして無私であった、そのことが今日の日本を築き上げる大きな一つの要素であったことは間違いのないところであります。しかるに、今日の日本官吏不祥事は目を覆うものがあります。権力を持つ者に伴う義務責任については、古くから言われてきたところでございます。  六世紀聖徳太子の十七条の憲法には、官吏はみだりに人と飯を食うなという一節があります。そして訴訟については、訴える者、訴えられる者、その間に立って公正な裁きをしろということがうたわれています。組織に身を置く者の源流として、既に聖徳太子は六世紀にこのことを言っているわけであります。歴史が培った秩序を子供のときから学ばなかったことが、今日の悲劇をもたらしていると思います。  どうかひとつ、特に若い官僚の諸君には、その能力を高めて、そして自信と誇りを持って、日本のために義務責任の遂行をされることを強く望みたいと思います。  以上をもって終わります。
  15. 井奥貞雄

  16. 日野市朗

    日野委員 大蔵大臣まだお見えになりませんから、先に日銀総裁に何点か質問をいたしたいと思います。  私とあなたとは、いろいろなところで席を同じゅうすることはあったのですが、余りいろいろとお話をする機会はありませんでした。きょうは、実はもっと厳しく迫らなければいけないなと思っていたのですが、あなたは退職をされるということで、後任日銀総裁も内定をしたというふうに伺っております。  そこで、もう既に総裁の座を去られるあなたに対して、少し酷かと思いますけれども、やはり今まで日銀総裁としてその責めを負ってこられたわけでありますから、少し失礼にわたる点があるかもしれませんが、そこはお許しをいただきたい。  あなたが日銀総裁になって、そして日銀職員モラルというものをどのように考えておられたか。このような不祥事が出てくる、しかも司法の場に日銀がさらされるということについて、そのような事態は予想しておられたかどうか、今までの日銀総裁としての在任期間、どのような考えを持っておられましたか。
  17. 松下康雄

    松下参考人 私は、日本銀行に在職して以来はまだ三年有余でございますけれどもかって大蔵省に在勤しておりました当時から、日本銀行諸君とはいろいろとお話し合いをしたこともございます。その当時から、総じてこの日銀職員方々生活態度が堅実であると申しますか、そういう風潮の中で職務に尽くしているという印象を持っておりました。そして、三年余り前に日銀総裁に就任をいたしましてからも、そういう頭を前提といたしまして行内の状況を見ていたのでございます。  私が総裁としてむしろ考えておりましたことは、日銀職員が、自分たちだけで内部に閉じこもって、外の世界をよく見るあるいは外の世界にいる方々との接触を通じて、金融経済というものに対する生きた知識を吸収するということを怠るのはぐあいが悪かろう、むしろ外部とのそういう意味での意見交換情報交換というのは進んで行ってこそ中央銀行職員としての資格が高まるというふうに基本的には考えまして、ただ、もうその以前に、私も大蔵省時代に、例えば公費天国でございますとか、いろいろ過剰な接待というものについての経験もございますので、全体としての交際節度を保つようにということは折に触れて申してきたつもりでございます。しかしながら、日銀組織としまして、例えば外部との会食をやってはいけないとか、そういう意味で禁止をするということはなしに、各人自覚にまつということで進めてきたわけでございます。  そういったことから、私どもは、最近になりまして、いろいろと私ども職員に関します外部との過剰な交際というものが報道されるようになりまして以後、大変気がつくのがおくれたという御指摘があればそのとおりでございますけれども、これは一度、内部におきます職員の外の取引先金融機関などとの間のつき合い状況というものを全部調べてみる必要があるのではないかということで調査を始めまして、その調査は現在も進行中でございます。  ただ、その間に今回の逮捕者を出すという不祥事が生じまして、まことに申しわけないと思っているのでございますけれども現状は私どもそういうことで、これまでの行き方に何か重大な欠陥があったのではなかろうか、早くその根底をつかまえて、そしてこれが二度と起こらないような徹底した対策を立てねばならないという気持ちで、現在現場の調査をやり、また機構の改革等をいろいろ工夫をしている段階でございます。
  18. 日野市朗

    日野委員 今総裁は、モラルについては各人自覚にまつ、このようなお話をされました。もちろん、そういう面は非常に大事でございます。しかし、組織には組織としてのモラルがあり、それを統制し、指導し、監督をする、そういう組織がきちんとあるわけでございますね。私は、私の感想を言わせていただくならば、日銀腐敗という、あえて腐敗という言葉を使わせていただきますが、これはひとり吉沢保幸課長腐敗ではないというふうに見ざるを得ないと思いますね。  実は、私もいろいろなところで日銀のその内情等についていろいろ知る機会はありました。それから、銀行とのいろんなつき合いについて知る機会もありました。その中で、私の感想を今申し上げれば、これは総裁が言われるように、決して清廉でも何でもなかったというふうに私考えております。私は司法の関連でいろいろ仕事をしてきた経験がございますので、裁判所とか検察庁、そういったところと対比してみると、これはやはり組織としての緩み、これがあったと言わざるを得ないというふうに私感じているのです。  特に、この吉沢課長、この人に関して問題となっている事柄、そういったものをマスコミ等情報を得るわけでありますが、中には、例えば考査資料を漏らすとか、日銀貸し出しに関する情報であるとか、市場金利の誘導の情報であるとか、こんなものは絶対に漏らしてはならない情報でありますよ。現在は嫌疑の段階でありますが、もし吉沢課長が漏らしたとすれば、これは絶対に許せない。金融世界で、これは絶対に許してはならない事柄であります。私は、そういう点から、今度の日銀腐敗、その一角があらわれたということについて、非常に厳しく見ざるを得ないと思っていますね。  今、調査を進めておられる、こうおっしゃいました。その調査の途中でこういう逮捕者が出たというふうにもおっしゃったのですが、この調査は現在どの程度まで進んでおりますか。私は、これはどんどん進めなくちゃいけない、スピードアップして進めなくちゃいけないと思います。これは、まだ何日か総裁としての任期が残っているわけですから、おやめになるまで残っておるわけですが、どのようにお考えになりますか。そして、これは後任総裁にしっかりと引き継ぐべき事項であると思いますが、いかがでしょう。     〔井奥委員長代理退席委員長着席
  19. 松下康雄

    松下参考人 ただいま御指摘のとおり、かりそめにも接待の見返りとしまして情報を漏えいするとか、あるいは何らかの便宜供与を与えるといったようなことは、銀行の規律というようなこと以前の問題でありまして、私どもも絶対にあってはならないことであると思っております。私どもとしましても、これまでの組織を反省し、組織的にもそういったことが起こらないような体制の整備を図っていくことが極めて重要であると考えているところでございまして、その準備の一つ段階としまして、各職場における調査を行っているところでございます。  この調査のやり方は、私どもの役員と、それから管理職の職員全員、約六百名でございますけれども、これに対しまして、過去五年間におきます取引先金融機関と関係者との間での会食その他の交際内容につきまして、本人の申告を求め、これをその職場職場ごとの上司がヒアリングをいたしまして内容の確認をしていく、そういう方法をとっているわけでございます。  職場の上司がその話を聞くというのは不徹底ではないか、本当に突っ込んだ調査ができるのかという御疑問もあろうかと思いますけれども、私ども考えといたしましては、やはりいろいろな業務がございますので、職場によりまして、その業務の内容でありますとか、それから外部との交際の通常の形といったようなものはさまざまでございますので、そういったものに詳細一番通じております職場の上司からヒアリングを行わせるのが、まず一番内容的に確かなものになるであろうという考えでございます。  この第一次のヒアリングの調査が今大体聞き終わった段階でございまして、今後これを内容をまとめて整理をいたしまして、その中から、これはさらにより詳細な調査を行う必要があると思われるものを抽出するように考えております。  そして、このより詳細な調査を行います場合には、例えば調査者も当然別の人物にいたしますし、また、これが本当に公正に行われますように、外部の法律の専門家、例えば適当な、弁護士の方々にもお助けをいただいて、そういったお力もかりながらきちんとした調査を行いたい、そう思っているわけでございます。  私どもは、調査のめどといたしましては、これまでおおむね今月中にその第一次の調査とこれについての整理を終えまして、その後に第二段階の、次のより詳細の調査段階に移行しようというふうに考えておりました。これはやはりきっちりした調査を行いますためには、例えば場合によっては相手方の事情も聞き取らなければならない場合も出てまいりましょうし、いろいろと内容の確認等にも時間がかかるかということを考えまして、その第二次調査にもある程度の時間が必要だと思ってきたわけでございますけれども、御指摘にもありましたように、今回のような不祥事件が生じてまいりますと、これに余りに時間をかけ過ぎて時期を失するということではぐあいが悪いと思いますので、私も、この調査全体を促進するように、進度を速めて結論を導き出すように、これはまだ数日間の残任期間がございますので、その中でよく行内に徹底をしてまいりたい、さように思っております。
  20. 日野市朗

    日野委員 大蔵大臣、今、日銀総裁といろいろお話をしておりました。そして、まことに日銀の公平性、これを疑わせるような事実が摘発をされて、私はそれに非常に強い遺憾の意を表明していたところです。  私は、この日銀の問題と同時に、大蔵省にもこのことは言わなくちゃいかぬのだ。もう大蔵省の問題としては、国会で議論をされるようになってからかなり久しいものですから、若干新鮮味が欠けるような感じがするのですが、私は大蔵省もかなり腐敗をしているのではないか、こう思っているのですよ。これを私はぜひとも日銀にも大蔵省にもきちんと正してもらわなければならない。  私は、実は怖いのです。非常に今怖い。この国会で、大蔵委員会に身を置き、またいろいろ財政の問題、金融の問題、このことについていろいろ話している身として、私は今怖いのです。  もうこの四月から外為自由化になりますね。ここで一体何が起こってくるのか、こういうことを考えてみますと、これから、今、日本経済大国だといい、一千二百兆の個人資産を持っているといい、外貨準備高もあるという。しかし、この外為の自由化、そしてこれから進んでいくビッグバン、この中できちんとしたかじ取りが行われないとするならば、日本経済というものが非常に脆弱なものになっていく可能性、こういったものを予測するシナリオの中に入れておかなければならない。  私は、為替自由化になったらかなりの資産というものは海外に流出していくであろうという予測も立てざるを得ないですね。一千二百兆円あるといっても、そのうちの大体七〇%ぐらいは五十万人前後の人が持っている、こう言われているわけですね。その人たちがもっと有利な利殖先を求めて、海外に出るということも予測しなくてはいけません。そうしたら、どんな事態が起きるでしょう。銀行のところで、今貸し渋りだ、貸し渋りだといって、中小企業なんかには特にお金が出ないというような事態が憂慮をされている。しかし、ここでどんどん外国にこういった資産が流出していったら、これは貸し渋りなんてものではないです。我々は、一九三〇年、金の自由化ということで手ひどい目に遭った。日本経済は手ひどい目に遭った。そういう経験も持っているわけですね。こういう事態を我々は予測しながら、これにいかに対応していくか、そのことを考えなくてはいかぬのです。  そういうことを考えた場合、やはり大蔵省日銀、しっかりと仕事をしてもらわなくてはいかぬのです。しかし、現状はどうですか。大蔵省も元気をなくしている、日銀も浮き足立っている、こういう状況ではありませんか。これをすぐに正して、しっかりとした仕事を大蔵省日銀もしてもらわなくてはいかぬのです。大蔵大臣日銀総裁、どうです、感想を一言述べてください。
  21. 松永光

    松永国務大臣 委員指摘のとおり、大蔵省のなすべき仕事、非常に範囲も広いし、難しい問題を抱えておるわけでして、このときに、しっかりした財政運営経済政策、そしてそれに加えて、今委員指摘の為替自由化にどう対処していくか、あるいは金融ビッグバンにどう対応していくか、とにかく難しい課題が山積しております。こういうときこそ、大蔵省一体となって、国家国民のために正しい選択をしながら汗を流して働いていかなければならぬという大事なときでございます。  そういうときに大蔵省の大変な不祥事が起こったわけでありまして、そのことが発火点となって、今世間では大蔵たたきの状況に実はあるわけです。我々としては、厳しく反省しながら内部調査をスピーディーにかつ厳正にやって、そして問題ある人についての処分もきちっとやって、大蔵省の元気を取り戻す。これを早くしないと、元気がない状態では、知恵を出しながら一生懸命になってやっていくことが難しいかもしれません。そういう大変なときが今だ、私はそう認識しておるわけでございまして、その難しい局面における大臣として、微力でありますけれども、全力を挙げて、次官以下全職員の一致結束した支援を受けながら、職務に邁進しなければならぬ、こう思っているわけであります。  その前に、先ほど申し上げましたように、きれいな大蔵省をつくり上げていかなければならぬと思う。そして大蔵省に課せられた大変大事な仕事を立派にやり遂げていく、そういう働きをしなければならぬ、こういうふうに思っております。そういう考え方で、これからもしっかりやっていきたいと思っているところでございます。
  22. 松下康雄

    松下参考人 私ども中央銀行は、一国の通貨の信用を支えるという責務を担っているわけでございます。そういう自覚を持ちまして、通貨の信用に万全の強さを与えていくということが私ども目標でございますけれども、今回の不祥事のようなことで、万が一にも中央銀行に対します内外の信用が揺らぐようなことがあって、市場に動揺を生じさせるといったことが起これば、それは取り返しのつかない問題でございます。私どもとしましては、そういうことに絶対にならないように、組織の全力を挙げて信用の回復に努め、また適切な政策業務の運営を図っていかなければならないと思っております。  こういった観点から、私も、この事件の発生しました直後に、全職員に対しまして、電子メールを使いまして、引き続き各自の職務に整々と取り組むように、決して遺漏を生じないように指示をしたところでございます。  それからまた、市場に不測の事態が生じるようなことがありませんように、金融調節面からの対応を含めて万全を期する考えでございまして、まず、そのような当面の動揺を絶対に起こさせないという努力とあわせて、今後、このような事案の再発を完全に防止できるような内部の体制と、それから業務運営方法の改善等を図っていくつもりで、現在その具体案がある程度はでき上がっておりまして、この四月から実行に移せる、また、一部はまだ検討中という状態でございます。
  23. 日野市朗

    日野委員 実はもうビッグバンは始まっているわけでございますね。私、このごろ非常に気になっていることがあります。銀行が貸し渋りだなんて言っているうちに、中小なんかはもう外銀から高い利息で金を借りているわけだ。本当だったら、銀行は、じゃお金を貸しましょう、ただし利息は高くなりますよでも構わないわけなのですが、しかし、銀行は全部横並びだ。新しい分野に展開していこうという意欲を欠いている。やはりこれは大蔵や日銀責任もあると私は思うのですよ。そして、これから大きな企業というのは直接金融の方に走っていくでしょう。そうすれば、本当は、中小なんていうのは日本銀行のいいお客さんになるはずなんです。それが今、外銀の方にもう走っている。  こういう事態なんか見ていますと、大蔵省何をやっているのだ、銀行何をやっているのだ、これはもう戦う前から既に非常に不利な状況日本銀行なんかは立っている、こう思うのですよ。それは銀行のビヘービアにも問題はある。しかし、大蔵、日銀、もっと力を入れてしっかりした政策を打ち出していく、こういうことが必要なのです。そうでなければ、このビッグバン、これが具体的に目に見えてわっと進んできたときに、非常に寒心にたえぬ。  私はここで一つ提案をしたい。  今失われているのは、大蔵省の政策であり、日銀の政策なんです。金利政策一つとってみても、ああでもない、こうでもない、いろいろ言う。こういう政策に対する信頼性を失っているところがある。私はさっき総裁に、もっと調査を急げ、こうお話しした。総裁も、急ぎましょう、こういうお話をした。大蔵省も今調査を進めておられることを私は知っています。これももっと急ぐべきだ。そして、うみを完全に出し切りなさい。完全にうみを出し切りなさい。内部の自浄作用として出し切る、これが私は必要だと思う。  ここに並んでいる大蔵省の面々を見れば、私もよく知っている顔が随分並んでいるわけでありまして、こういう人たちの更迭をも含めた人事の異動をやれということをお話しすれば、心は痛む。しかし、それはやらなくてはいかぬのです。調査を急いで、そして大胆に、更迭をも含めた人事の異動をやる。きょうの夕刊によれば、日銀理事の更迭をも含めた人事の異動をやられるようですが、大蔵省日銀も、みずからうみを出し切って、清潔なメンバーで、清潔なスタッフで新しい仕事に取り組んでいく、この姿をぜひ見せてもらいたいと思う。大蔵大臣、いかがです。
  24. 松永光

    松永国務大臣 貴重なアドバイス、ありがとうございました。  私自身、ある程度焦りの気持ちが出るぐらいに、実は官房長以下に急ぐように指示しているところでありますが、急いで、そして内容のある内部調査をまとめ上げて、やり遂げて、そして厳正な処分をして、新しい形で大蔵省の再出発をやり遂げたい、今委員のおっしゃったようなことも十分参考にさせていただきながら、そういうことをやり遂げたい、こう思っております。
  25. 松下康雄

    松下参考人 私どもの監督者責任につきましては、やはり一番重い責任を持っておりますのは、トップにいます私自身でございます。私自身は、この責任を痛感いたしまして職を辞するということになりましたが、加えて、事務当局としての束ねの立場にあります副総裁も、この事件に対します監督者責任というものを痛感いたしまして、辞意を表明したところでございます。  私が思いますのに、この案件に対しまして、まことに遺憾なことでございますし、その実際の広がりがどの程度にまでなっているものかということは今後の調査にまつところがございますけれども、この責任のとり方といたしましては、一番上の二人が監督者責任をあわせてとるということで、基本の点におきましては、私はこれで十分とは申しませんけれども、とるべきものは一応とりましたと。そして今後におきましては、今度は個別の事案の内容が判明をしてまいります、または捜査の結果が進んでまいります、そういったものを見ながら、必要に応じまして、それぞれの行員につきましては、また場合によりまして処分を行うこともあろうかと思いますけれども、一番の、根本のところはこれによって終わらせていただいて、この後、全行員が挙げて四月一日から発足をする新日銀法のもとでの新しい日銀づくりということに前向きに結集をして頑張っていけるような、そういう下地をつくっていきたいのでございます。  その点から申しますと、きょうちょっと新聞に出ておりました理事の全員も退任というのは、これはちょっと私から見ますと、そういう趣旨でいかがなものかという気持ちもいたしております。ただ、その点はもちろん新総裁以下の新陣容が決めていくことでございますけれども、私といたしましては、この問題に対して早くけじめをつけて、前向きの方の努力に全員立ち上がってもらうように進めてまいりたい、そういうふうに思っております。
  26. 日野市朗

    日野委員 お二人とも、その問題の深刻さということについて、また御自分たち責任ということ、それからその仕事の重要さというものは十分に認識しておられると思いますから、私はそういう前提に立って申し上げたつもりであります。ぜひともちゃんと私の意のあるところ、これを受けとめていただきたいものだというふうに思います。  何しろ、我々は政治家であります。いろいろのことについて、いろいろ考え、勉強もし、多くの指針について我々も議論をいたします。しかし、皆さんは何といってもその道の専門家であり、皆さんが果たすべき役割というものは非常に大きい。これは、皆さんが果たすのは単に大蔵省のためだけではありません。日銀のためだけでもありません。今非常に苦しい状況に置かれているこの日本という国家、これに対して果たすべき役割を果たせということを私は申し上げたつもりであります。よく御考慮いただきますように。  総裁、お忙しいでしょうから、あと私の方はこれでよろしゅうございます。  では次に、法律に関する質疑をいたします。  この特例法、これと財政法との関係とか、そういった若干古典的な質問を私は今するつもりはございません。本当は問題意識を持っておりますが、するつもりはありません。  そこで、私は、特例公債というものについて、その基本的なところについて質問をいたしたいというふうに思います。  バブルが崩壊したのは大体平成四年、こう言われているわけでありますが、その当時、既に国債残高は百兆円超であったわけでございますね。百兆円を超えていた。この点については、平成二年に財政審が、残高を増加させてはならないという答申を既にやっておられた。ところが、その後、景気対策ということで、数次にわたって景気対策が打たれてまいりました。これは大体財界による要望というものが非常に強くて、財界の論理というのは、景気がよくなれば返せるのだから、特例公債発行して景気対策をやりなさいというものでございました。  それで、過去をちょっと振り返ってみて、そういった景気対策、そしてそこで発行された特例公債、それがどのように処理されてきたのか、ちょっと伺います。数次にわたることで恐縮でございますが、それについてひとつ御説明をいただきたい。
  27. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 御指摘のように平成年度から総合経済対策というのが実施されておりまして、七年九月までに七本の総合対策を打っております。この七本合計いたしますと、事業規模にいたしまして約六十六兆円でございます。  当時は、平成年度から五年度、六年度と成長率が一%を切るというような経済状況がございました。他方、国際収支は非常に黒字でございまして、その過程で円高が急速に進みまして、円高による影響を各企業なども受けておりまして、雇用の状況も非常に悪くなるという実態がございました。  さらに、物価面におきましては、円高が進みまして、卸売物価などは前年比マイナスというような状況でございまして、そういうもろもろの経済情勢の中でこういう景気対策は実施されたわけでございまして、これによりまして、こういう景気対策がなかりし場合と比べますれば、有効需要を拡大し、その分、企業収益でありますとか、あるいは雇用にも貢献をしたというふうに考えられるかと思います。
  28. 日野市朗

    日野委員 模範的な答案ということになりますかね。  しかし、トータルで見てください。大臣平成四年から、その対策を始めてきているのですよ。そして、ことしは平成十年のものをやろうとしているわけです。その間に、七次にわたって大体六十六兆だ、こうおつしゃいました。これは景気対策としては、どうなんでしょうか、成功してきたのでしょうか。現在の景気はこのようなものであります。さらにまた大型の対策を打たなければならないだろう。まさに砂漠にバケツで水をまいているような感じがいたしまして、私にはなかなか納得できないのです。  それを打った直後の指標がどうなっているか、これはちょっと脇に置きましょう。今それを出せと言っても、恐らくお出しにならないでしょう。出さないだろうというのは、それは整理するのも非常に大変だしという意味ですよ。決して溝口さんに悪意があって出さないだろうと言っているのではないのです。出しにくいことは私もよくわかっていますから、それをトータルに見ましょう。  大臣、どうですか、これでよかったのだろうか。その都度、もちろん言うまでもないことですが、特例公債は次から次へと出されてきて、六十六兆円にわたるものが出されてきた。そして、現在の日本財政赤字、公債残高がどのくらいになるかということは今ここではもう言いません。このような状態でいいのですか。どうでしょう。大臣がお答えになりにくかったら、どなたでも結構です。
  29. 藤井秀人

    藤井政府委員 お答え申し上げます。  先生の御質問に的確なお答えになっているかどうか必ずしもわかりませんが、当時、平成八年の七月でございますが、私どもの方で財政制度審議会というのがございますが、そこで「財政構造改革に向けての中間報告」というものが出されているわけでございます。そこでの分析におきましては、以下のような表現で記述がなされております。  「バブル期に極めて積極的に設備投資と住宅投資を行い過剰な供給力を積み上げてきた民間セクターは、バブル崩壊後、過剰な設備等の調整を余儀なくされた。政府は、これに伴う景気の大幅な後退を防ぐため、積極的な財政政策を発動し、景気を下支え」をした。あるいは別の表現で申し上げますと、「バブル崩壊後に発動された財政政策は、経済が潜在的な本来の水準に軟着陸するための緩衝材の役割を果たしたと言えよう。」ということでございまして、現実問題といたしまして、今先生がおっしゃいましたように、建設公債あるいは特例公債、それぞれ従前に比べまして相当大きな残高になっているわけでございますが、ある意味では、財政制度審議会の報告にございますように、いわば緩衝材として景気の下支えをしたということは、一面では言えようかというように考えております。
  30. 日野市朗

    日野委員 私もそれはよくわかっているのですよ。例えば住宅関係の減税であるとか、そういったいろいろな景気対策が、ここでは確かにきいたなというのは数々あったわけでございます。私が今言っているのは一トータルに見てみましょうよということなんですね。  それで、結局一番の問題は、特例公債発行して景気対策をやる、それから減税をやって景気対策、そういったものと複合的にいろいろ対策は打たれていきます。しかし、その特例公債発行されることによって景気がよくなって、税収がふえて、特例公債償還可能なんですよという論理が当たっているのかどうか。いかがでしょう。これはトータルで見て、私は当たっていないと見ざるを得ない。  それから、特例公債償還していくというのは大変なことでございましょう。あのバブルの時期にあんなに税収が上がって、では、その税収でどのくらい特例公債償還しましたか、ちょっと教えてください。
  31. 藤井秀人

    藤井政府委員 お答え申し上げます。  一つの試算としてお答えいたしますけれども、六十一年度から平成年度までの間のいわば発射台といたしまして六十年度、これに対します税収増の累計は全体としては約六十四兆円弱ございます。  これがいわば具体的にどのような使途に使われたのであろうかということを大別いたしますと、まず特例公債の縮減が約二十一兆円強ございます。さらに地方交付税交付金の増、これは税収増のいわばはね返りで当然交付税交付金がふえるわけでございますが、この増が約十六兆円となっております。さらに国債費の増が十兆円ということでございます。したがいまして、この間、残渣といたします約十二兆円程度、これが一般歳出の伸びにいわば使用されているということで、伸率で申し上げまして一・七%、極めて抑制をされたものとなっております。  さらに、あえて一言申し上げますと、この一般歳出十二兆円強の中には、例えば元年度に見られますように、年度内の増収を、過去に行った特例歳出削減措置の処理にも約四兆円強充当をしているところでございます。  そこで、先生指摘特例公債の早期償還につきましては、残念ながらただいま申し上げましたような数字の対応関係になっておりますので、国債費増十兆円のうち、特例公債の早期償還に充てられた分というのは七千億円強ということにとどまっておるわけでございまして、先生指摘のとおり、特例公債発行によりましても、その早期償還財源というものは、いわば今までの数字で見る限り、現実問題としては、それを確保するのは極めて難しいということが言えるのではないかと思っております。
  32. 日野市朗

    日野委員 大蔵省も随分苦労をして苦労をして、いろいろな隠れ借金と言われるものをいっぱいつくって、それで何とかやりくりをし、特例公債を出したくない、この一心でやってきたのでしょう。私もその気持ちはよくわかるのですよ。どうですか。
  33. 藤井秀人

    藤井政府委員 お答えいたします。  特例公債は、先ほどもちょっと申し上げましたように、財政法健全財政主義ということからいいますと、これはいわば特別立法によりまして初めて認められるということで、いわば例外中の例外という位置づけになっているわけでございます。いわば将来世代に対する負担というものを考えますと、やはり私どもとしては、この例外中の例外たる特例公債発行はでき得る限り避けるべきであるというように考えております。  ただ、先生がおっしゃいました、かって私どもいろいろ特例措置というものを講じてきておるわけでございます。マスコミ等では隠れ借金というようなことも言われているわけでございますが、私どもといたしましては、何でもかんでも特例措置を行うということではございません。その場合にあっても、一つ一つ制度、そういうものをきちっと見まして、その安定的な運営が繰り延べ措置を講じてもなお図り得るというようなものにつきまして、特別立法によりまして特例措置を講じてきたということでございます。  なお、今般提出させていただいております特例公債法におきましても、厚生年金の繰り延べにつきまして七千億円の減額ということをお願いいたしておるわけでございますが、これもこの年金勘定の財政事情というようなものを十分に勘案いたしまして、繰り延べを行っても支障がないということで今般お願いをするというものでございます。
  34. 日野市朗

    日野委員 大変やりくりに御苦労をされていることはよく私も存じております。できれば特例公債なんというものはふやしたくないものだなと私は思っておりますので、苦しい胸中はよくわかりながら、やはり私は、こうやって特例公債をふやしていく、これに反対です。  そもそも、こういう特例公債なんかふやしてその残高がどんどん増えていく、これは国の借金で、後世代へのツケ回しにもなることはもちろんです。しかし、それと同時に、私が怖いのは財政の硬直化です。これはもうちゃんとした政策を打とうにも打てない。私は、こういう財政を硬直化させていくということにはどうしても賛成できない。  それで、こういう特例公債、まあ建設公債についても余り出過ぎるといけませんけれども、一応これは財政法上の根拠はあるわけですね。いいとは言いませんよ。先ほどどなたか言われた、特例公債と言おうが建設公債と言おうが同じじゃないのという一面も、これはあります。ただ、先ほど藤井さんが言われたような問題点もあるわけでして、私はそういう点から、公債をふやすというのは私の主義主張からいうと本当は嫌なんです。  それで、ちょっと伺いましょう。  そもそも景気対策景気を向上させようということについて、財政政策、金融政策はどの程度有効ですか。ちょっとでっかい議論になつちゃって恐縮ですが。
  35. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 お尋ねは、財政金融政策が景気に対してどの程度有効かということでございますが、経済状況によって効果は異なると思います。  財政におきましては、大ざっぱに分けますと、歳出を拡大するという方法、あるいは減税を行って、いわば個人、法人の可処分所得を増加することによって需要を喚起するという方法でございますが、これは平均的にはモデルなどで計算されておりますけれども、そのときの状況あるいは消費者のマインド、あるいは企業の先行きの見通し等にいろいろ影響される面が多いと思います。  金融政策につきましては言わずもがなでございますが、これも金融状況経済状況によりまして、金利の低下が余り影響をもたらさない場合もございますし、区々でございまして、その時々で適切な組み合わせを判断していくべきものではないかというふうに考えております。  一般論でございます。
  36. 日野市朗

    日野委員 私はフランスの予算大臣のソーテールさんと最近朝飯を一緒に食う機会がありました。フランスが経済成長三%を達成したということで、誇らかに彼は語っておりました。  私はフランスのことをちょっと知っているのです、ほんのわずかですけれども。あそこで最大の悩みは何といっても失業率でありまして、失業率がひょっとすると二〇%なんていうところまでいっている。そしてフランスでとった景気対策というのは、私はこれは経済成長に非常に役に立ったかなと思うのは、公共セクターで失業者を使うという政策を打ち出しました。これがやはりフランスの経済成長を高めた非常に大きな要因になったのではないか、私はこう思っているのですよ。まあ間違っているかもしれません。しかし、私はこれはきいたな、こう思っていますね。  日本は今、大体三・七%の失業率ですか。こういった公的な資金が入っていく、公的なセクターで人を使う、こういうことの景気の盛り上げ効果というのは、やはり失業率とかなり関連しているわけですね。日本で現在三・七%程度の失業率のところで、こうやって特例公債なんかを出してこういう景気対策をやるのがいいのかどうか、私はちょっと疑問だと思っているのです。もっとやるべきことは日本経済に先行き明るさを見せること、これが今一番やるべきことだと私は思っているのですね。特例公債を出して景気を刺激するんですという言い方、これはもう使い古した、手あかのついた手法でございまして、ではこれで先行きみんな明るいと感じるかといったら、これは感じません。  今の日本の不景気というのはエコノミークライシスというよりはコンフィデンシャルクライシスだ、こういう指摘が強いですな。みんながもうすっかり自信喪失している。本来なら三%程度の成長をなし遂げるだけのポテンシャルは日本経済にはあるということはみんな言うのですよ。みんな、それは認める、こう言うのです。しかし、何か政策を打とうとすると、みんなで寄ってたかって、この間まで日本経済世界一だなんて言っていた人たちが、もう日本経済はだめだなんて言っているんですからね。これは私はとても理解に苦しむ。その人たちが今までどんなことを言ってきたのか、その人たちの書いた本だとか論文だとか全部並べてみたらおもしろいことになるだろうなと思ったりしているのですが、そこは少し私の勝手なおしゃべりだと思っていてください。  私はやはり先行きにちゃんとした明るさを見せていく、そういう政策がとられなければならないと思う。こういうことに対して皆さんどうですか、賛成ですか。そうやって手あかのついた手法を使うよりは、何か一つそこで知恵を出す、そのことが大事だと思いますが、どうでしょう。  皆さんの意見を聞いて、大臣にひとつ、あと意見伺いたいところですね。
  37. 松永光

    松永国務大臣 委員のおっしゃるとおり、今月よりも来月は少しよくなる、そういう確信がわいてこないと、私は消費は伸びないだろう。今月よりも来月はもっと悪くなる、さらにその次はもっと悪くなる、こういう状態では、いや応なしに消費は萎縮していくんじゃないでしょうか。  したがって、まず足元を固めて、そして来月はよくなる、再来月はもっとよくなる、こういう確信をみんなが持てるような状態にすることが景気をよくする上での一番大事なことではないか、こういうふうに私は思います。
  38. 日野市朗

    日野委員 皆さん、お金は持っているのですよね。結構持っている。それを使わないのです。  それで、そうやってお金がない、消費に回らないと言っていて、さっぱり物が売れない、売れ筋は金庫だけでございますなんというのは、これは本当に下手な落語の落ちを聞いているようなものでございまして、ここをいろいろ工夫するということは私は必要なことだと思います。それはぜひとも知恵を出してもらいたい。特例公債なんか出そうというよりは、むしろそっちの方に何か知恵を出していくということが必要だと思いますね。  私は、手あかのついた景気対策と先ほど言いました。もう今は、公共事業でございますといったって、土木に金を出したって、その乗数効果はだめなんです。減税はある程度乗数効果を示しますけれども。お金を使うとすれば、これからは私の注文になりますが、先に希望の持てるような場面、そういうところにもつと使っていくべきだ。  そういうものはあるじゃないですか。例えば情報関連に投資をしていく、それから環境関連などというのはすばらしい環境ビジネスのネットワークができているので、これに金を使っていくということになれば、かなりの景気の刺激になっていくだろうと思いますよ。そして将来非常に有益な結果をもたらしていくだろうというふうに私は思いますね。  きょうの新聞を読んでいたら、研究用のスペースに金を使って日本の研究を促進する。いろいろな技術の研究とか科学的な研究を振興していく、どんどん進めていく、そのために研究用スペースに金を出すべきだというようなことを言っている人がおりましたが、私もそのとおりだろうなというふうに思っております。そうやって民間の投資を誘発するような方向にお金を使っていかなければいけないでしょうね。  何度も言いますが、従来のような手あかのついた対策というよりは、そういう民間の投資を誘発していくような方向にぜひとも私はお金を使うなら使ってもらいたいと思う。大臣、どうですか。
  39. 藤井秀人

    藤井政府委員 お答えいたします。  今先生おっしゃいましたように、情報関連あるいは環境等のいわば民間投資を誘発する分野につきましての予算措置というもの、これも極めて重要だと私どもも認識をいたしております。現に十年度予算、現在御審議いただいているわけでございますが、この十年度予算におきましても、経済構造改革に資する分野等を初めといたしまして、重要施策に思い切った重点化を図ることといたしております。  これも先生承知かと思いますけれども、十年度予算編成を始める前に、環境・科学技術・情報通信等経済構造改革特別調整措置というものを千五百億円設けたところでございます。そして、この特別調整措置につきましては、予算編成の十二月の段階でございますが、特に総理からの御指示もございまして、環境、科学技術、情報通信といった分野を中心として、省庁間の共同連携を重視しつつ、具体的には地球環境問題への対応あるいはゲノムの問題等々につきまして特に重点的、優先的に措置をしたということでございまして、方向性としては私どもも十分に理解をしているというふうに考えております。
  40. 日野市朗

    日野委員 最後に、これはインサイドレポートなのですが、いつだったかコールさんが来たとき、橋本総理がコールさんに、長期政権の秘訣は、こう聞いたそうです。そのときのコールさんの回答は、新聞を見ないことですと。これはインサイドレポートでございますが、日本の新聞の果たしている役割というのは非常に大きい。私は、マスメディアを一概に排斥しようとかおとしめようというのではない。要は、皆さん自信を持って、信念を持ってやってもらいたい。景気対策景気対策だと言ってわっと騒ぎ立てるとマスメディアもそれを書く、それによってずるずる動かされるなよということを私は言いたいわけです。  これもインサイドレポートだが、G7でアメリカが非難したのは日本だけではないはずです。ヨーロッパ先進各国全部やられた。しかし、日本だけがこんな騒ぎになるのはなぜか。私は、そこらを非常に憤りを持って見ている。皆さんは、ひとつ省内をきちんと整理をし、そして自信を持って、確信を持ってみずからの信じるところをやってもらいたい。  終わります。
  41. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、末松義規君。
  42. 末松義規

    ○末松委員 民主党の末松義規でございます。  きょうは、関税定率法の改正を初めとして、日本経済及び金融が抱える問題の幾つかの点を指摘するとともに、議論をさせていただければと思います。  まず、関税定率法に関してなんですけれども関税の役割として、国内産業の保護や税収確保といった役割もあるかと思いますが、今後の関税改正においては、経済のグローバル化なども踏まえて、日本の消費者の利益をもっともっと拡大していくことが、ある意味では産業基盤あるいは経済基盤を大きくすると思います。そういった意味で消費者サイドをもっと重視すべきではないかと思いますが、その点について、まずお聞きをしたいと思います。
  43. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  関税というのは、かつてというか、今まではずっと、農産物に代表されるように、国内の弱い産業を保護するという機能があったわけでありますし、現在もあるわけでありますが、同時にまた、関税収入増によって税収が確保されるという効能があったわけでありますけれども、昨今はやはり自由貿易の時代でございますから、そこで、消費者のためには関税が低くなればそれだけ消費者に安い商品が届くようになる、こういつたことでありますので、それを調和させながらやっていくのがこれからの関税政策であろうというふうに思うわけでございます。
  44. 末松義規

    ○末松委員 大臣の今のお言葉、私もまさしくそうだろうと思います。そういった意味で、もっともっと日本の消費者の利益を重視しながらぜひやっていただきたいと思います。  今の大臣のお言葉の中で、私も使ったのですが、国内産業の保護という言葉がございました。今、日本で不況とか金融危機から端を発した貸し渋りとか非常に大変な状況になっておりますし、特に中小企業が大変大きな悪い影響を受けていて、本当に息も絶え絶えだということで、私も選挙区に帰っていろいろな方と話しますが、本当に想像を絶する厳しさがあると思います。  きょうは通産省の方も見えられていると思いますが、通産省の方に、最近の中小企業の経営実態はいかがなものかというのをまずお聞きをしたいと思います。
  45. 小野伸一

    ○小野説明員 お答えいたします。  先生おっしゃいましたように、中小企業の景気動向は総じて現在低迷をしておりまして、非常に厳しい状況にあるというふうに認識をしております。  判断材料といたしましては、中小企業庁の方で四半期ごとに景況調査というのをとっておりますけれども、ことし一月公表の調査によりますと、業況の判断あるいは売り上げ、経常利益等DIでございますけれども、総じて悪化傾向が続いております。  また、業種別に見ましても、非製造業、特に卸、小売、建設業等の悪化が進んでおります。また製造業につきましては、従来比較的堅調でございましたけれども、昨年の後半、第三・四半期以降、悪化が続いております。  また、大企業と中小企業の生産指数を私どもとっておりますけれども、一月の速報を見ますと、平成二年を一〇〇としまして、中小企業が九三・四、大企業が一〇五・五ということになっておりまして、中小企業は弱含んでおります。したがいまして、大企業との生産水準に格差が見られるという数字になっておるかと思います。  それから、設備投資につきましても、九年度において、製造業で伸び率が鈍化しているということでございます。三・五%という数字でございますけれども、また下振れの可能性もございます。それから商業についてはマイナス一一・八%という見通してございまして、大変低い数字になっております。  以上申し上げましたように、中小企業の景況は総じて低迷をしておりまして、非常に厳しい状況にあるというふうに私どもとしても認識をしております。     〔委員長退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  46. 末松義規

    ○末松委員 今の御説明なのですけれども、大企業とも格差がある。そういった意味で、ちょっとこれは突然の質問になりますけれども、その主な理由といいますか、その辺についてはどういうふうな認識をされておられますか。
  47. 小野伸一

    ○小野説明員 格差の原因といたしましては、従来、大企業との格差として、特に輸出の水準が違ったということが顕著にあったかと思います。輸出の水準が大企業の方が非常に好調でありましたときに、中小企業の方はさほど直接輸出に関与していないということで、どちらかというと下請企業を中心とする製造業が余り調子がよくなかったという部分が、従来大企業との格差で見られた中で要因としては一番大きいのではなかろうかというふうに考えております。
  48. 末松義規

    ○末松委員 私も、中小企業についていろいろと選挙区で聞いたとき、例えば先日も中小企業の経営者に聞いたのです。そうしたら彼は、結構人を雇っていて、零細企業も抱えているんだと。それで仕事がないのだけれども、ないと零細企業はまた干上がってしまう。逆に仕事をとろうとすると、今度はお金が前もって必要になる。そうすると、銀行が金を貸してくれない。そうすると、今度はなかなか仕事がとれなくなってくるといった意味で、非常なジレンマが起こっているということなのですね。  今、政府の方で貸し渋り対策ということで資本注入をやっていますけれども、どうもそれは銀行の自己資本比率はある程度確保されたとしても、それが貸し渋りの方の対策として直接響いてきていないのではないか、あるいは本当に響いてくるのかということを私自身が非常に疑問に思っているのですけれども、貸し渋りの対策、通産省の方からもちょっとその辺の対応についてお聞きしたいと思うのですが、お願いします。
  49. 寺坂信昭

    ○寺坂説明員 御説明いたします。  私ども政府金融機関等を通じまして先月中旬に実施いたしました中小企業の資金調達に関する実態調査によりますと、約三割を超えます中小企業の方が現在貸し渋りを受け、また五割を超える中小企業の方が今後の貸し渋りにつきまして懸念を持っておられるといったことなど、厳しい状況が続いていると認識をしております。  そのような状況も踏まえまして、政府といたしましては、政府金融機関に新たな融資制度を創設することなどによりまして、信用保証の分も含めまして総額約二十五兆円の資金量を確保する対策を実施しているところでございます。  これから年度末の資金繁忙の時期を迎える、そういうことが目前に控えているわけでございますので、引き続き貸し渋りに関しましては予断を許さない状況にある、そういう資金調達に関しまして予断を許さない状況にあることから、私どもといたしまして、中小企業のニーズを適切にくみ上げながら、事態の推移を注意深く見守り、今後とも、各政府金融機関等の窓口での親身な対応を含めまして、中小企業の資金調達に万全を期してまいりたいと考えているところでございます。
  50. 末松義規

    ○末松委員 万全を期していただきたい、本当にそう思うのですね。  私のところにも助けてくれといういろいろな陳情も舞い込んできますし、二十五兆円用意したと言われますけれども、その金を貸す基準を別に緩めてきたわけではないですよね。そういうふうなお金を貸す額はふやしても、そのレベル、要件を緩めないと、ある意味では救いにならないといいますか、実際に経営が非常に悪いわけですから、その悪い中、君のところはこんなに悪いのだから当然貸せないよねと言われれば、ほとんど救済にならない。そういうこともあるかと思いますが、その辺、その要件とかあるいは弾力化とか、そういうことに向けてどういう御努力をされているかお聞きします。
  51. 寺坂信昭

    ○寺坂説明員 御説明いたします。  政府金融機関の窓口におきましては、例えば融資条件に関しましてできるだけ担保評価を高める対応をすることなど、あるいはいわゆるマル経と呼んでございます無担保、無保証の融資制度につきましては限度額を六百五十万円から一千万円に引き上げるなど、担保不足に悩む中小企業を支援するための措置を講じているところでございます。  また、保証に関しましては、第三者保証のところにつきまして弾力化措置を講じましてできるだけ保証を受けられるようにするなど、中小企業の皆様方の実情に応じまして、できるだけ弾力的な対応ができるように措置をしているところでございます。
  52. 末松義規

    ○末松委員 ぜひその弾力化に向けても、国民の税金ですから、余りいいかげんなところに金を貸すというのは確かにいけないことだと思いますが、全体がみんな困っているということですので、できるだけ弾力化に向けても努力していただきたいと、さらにお願いいたします。  さて、話を法人税改正の方に向けますが、今回の法人税改正の目的というものを簡潔に述べてください。
  53. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の法人税制改革でございますが、公正で中立て透明性の高い法人税制を構築し、新規産業の創出や企業活力の発揮など経済構造改革の推進に資する、こういうことのために、課税ベースを適正化するとともに、法人税率を思い切って引き下げるというものでございます。  こういうふうな税率、課税ベースの両面からの改革は、いわば法人税制をより中立的なものにするという面もございまして、新規産業の創出や企業活力の発揮に大きく寄与することとなり、経済構造改革の推進に資すると考えているわけです。  なお、課税ベースを適正化して法人税率を引き下げるという改正は、米国、イギリス、ドイツ、同じような形でやってきているところでございます。
  54. 末松義規

    ○末松委員 新規産業の創出、企業活力の発揮ということを中心にした経済構造改革を視野に置かれてやっていく、これは大企業もそうでしょうけれども、中小企業に対してももちろん、むしろそういうベンチャーとか、昔レーガン大統領が言っていましたけれどもスモール・イズ・ビューティフルというような、小規模な企業をもっと育てる、そういうふうに理解してよろしいですか。
  55. 尾原榮夫

    尾原政府委員 先生指摘のとおりでございます。  二点申し上げさせていただきますと、中小法人についての軽減税率、これも三%引き下げを行うこととしてございます。  なお、今回の課税ベースの適正化による影響でございますが、引当金等はどうしても大法人が利用度合いが高うございます。中小法人の利用度合いが低うございます。したがいまして、課税ベースを適正化して税率を引き下げるということになりました場合、中小法人がより軽減の、税制的に見ても相対的に大きな、よい影響を受けることになります。それが第一点。  それから第二点でございますが、今の課税ベースの点で申し上げますと、新しい仕事をしているベンチャー型の法人考えてみますと、どうしても内部留保は薄うございます。加えて、例えば年齢層も若いということで、引当金の方も薄いことになってまいります。そこに税率が引き下がるということになりますと、課税ベースの関係の影響は少なくて税率が直接きいてくる。こういう意味でも、まさにベンチャー、中小企業に大変効果のある法人税制改革だと考えているわけでございます。
  56. 末松義規

    ○末松委員 その課税ベースの拡大なのですけれども、確かに大企業は退職金の引当累積限度額の比率が四〇%から二〇%になるということなど、大企業の方がより打撃が大きいのかなと。あと、賞与引当金を廃止したり、その辺についてはいいし、また雇用の水平移動、それをすれば、企業に縛りつけなくて別の方面に人をやるといった効果もあって、それは非常に私は一定の評価をしているのですけれども、中小企業にとってどうかと見ますと、やはり中小いじめといった面があるのじゃないか、そう思うわけです。  例えば、例を申し上げれば少額減価償却制度、これは二十万円までは備品として落とせた、それが今度は十万円まで引き下がる。そうすると、一番今ぱっと頭に浮かぶのは、コンピューターとかその辺を購入しようと思っていたところが、十万円以下というとなかなかそれはないわけです。世を挙げて今情報化の時代に、そういったことをあえてなぜ今やらなければいけないのか。むしろコンピューターとか、あとほかにリースという商売形態がありますけれども、それがかなり大きなシェアを占めてきている。そういったことで、この二十万から十万に限度額を引き下げるということ自体、私がいろいろとっき合っている中小企業の方々の声をそろえての大きな不満と、これはやめてくれという悲痛な叫びがあるわけです。それは本にもいろいろと載っていますし、雑誌にも書いてありますけれども、そういった面はやはり十分に考えてやらなければいけないんじゃないか。  もうちょっと具体例で言えば、先日訪ねてきた友人なんですけれども情報関連の企業を経営していて、資本金は二千万で営業利益が二億、雇用が二十人、そして経常利益がちょっと今期は悪くて二百万ぐらいしか出なかったという話なのですが、この企業は、コンピューター、情報機器にかけるコストが年間大体二百五十万円だそうなんですね。そうすると、二百五十万円もかかるのに、これがある意味では二十万円の控除が十万円に下がると、その七、八割が結局はだめだ。七、八割がだめだとすると、二百万円ぐらいがその企業にとって過大な負担になるわけですね。そうしますと、三%軽減税率が適用されたとしても、経常利益二百万円で三%で六万円、それだったらむしろ重税じゃないかということ、これが結構中小企業の実態じゃないかと思うのですけれども、そういうふうなことについて、中小いじめじゃないかという御批判についてはいかが答えられますか。
  57. 尾原榮夫

    尾原政府委員 お答えいたします。  ただいまの先生のお尋ねは少額減価償却資産の即時損金算入制度、二十万円を十万円に今回引き下げることにしております。この制度は企業の事務負担がなかなか大変だろうということで設けられているものでございますが、実は今回、課税ベースの勉強を税制調査会の小委員会でやりましたときに、この少額減価償却資産が取得される場合、年間の償却額に上限はございません。二十万円以下のものであれば幾らでも買っていい。そうすれば、それが全部損金になるという実は制度なのでございます。そういたしますと、やはり期末において、本来、減価償却資産であるならば、コンピューター六年という耐用年数がございます。それで償却していくということでございましょうが、期末において一種の利益調整が可能な仕組みになっているという指摘があるわけでございます。  また、主要先進諸国の取り扱いというのを調べてみますと、例えばアメリカとかイギリスは、少額資産に対する日本のような特例はございません。したがいまして、耐用年数に従って償却していく。ドイツでございますと八百マルク以下、つまり五万三千円以下のものは損金算入になるわけでございますが、それ以上のものはどうも耐用年数に従って償却していく、こういうようなことがございます。  こういうことを踏まえまして今回の改正になったわけでございますが、ただ、先生が今御指摘のように、では二十万を十万に下げるだけでいいのか、確かにいろいろな問題が出てくるように思えます。事務の負担もさようでございましょう。したがいまして、十万円以上二十万円未満の資産につきましては事業年度ごとに一括して三年間で償却できる方法を認める、こういうことにしてございまして、いわば、その間の調整を図っているわけでございます。  なお、このような課税ベースの適正化を行う反面、税率の引き下げを三%行っているわけでございますし、また、この課税ベースの適正化による増収効果といいますのは、経過期間の六年間で財源がなくなってまいります。そうなりますと、七年目以降はそれこそ実質減税にもなるということもございまして、御理解いただければというふうに思っているわけでございます。
  58. 末松義規

    ○末松委員 なかなか局長、もっともらしいお答えをいただいたのですけれども、利益調整は三月期ですか、それもその研究会の方での議論なんでしょうけれども、それで物を買ってはいけないですかね。逆に、今こういった世の中ですから、ある意味ではきちんと消費マインドを確保するということも非常に重要なタイミングであろうと思うのですね。  あと、消費マインドという話になれば、交際費の算入も九割から八割に落とした。それも交際費云々は結構議論はあるところですけれども、例えば今の会社で年間五百万円ぐらいどうしてもかかってしまう。そうした場合、やはり影響が起こる。そうしますと、結局飲み屋さんとか、あるいは結構ネオンがどんどん消えていって、さらに消費マインドが冷え込む。我々、目に映るものがやはり一番影響が大きいですから、そうすると、どうしてもそういうふうなところをきちんと確保するという配慮があってしかるべきではなかったか。どうも消費に対して少し配慮が足りなかったのではないか。  先ほど局長の方から、主要国は少額の制度は五万円とか、私も大蔵省から資料をいただいて見ました。ただ、これは、先進国はみんなそうやっているから日本がやらなければいけないという議論でもなさそうな気がするし、大蔵省さんも時々、いや日本日本独自の考え方がございますという話もするわけですから、そこは余りとらわれる必要もないし、むしろこういうベンチャーとかあるいは中小企業がもっともっと生きるような形あるいは成長するような形、今局長が言われたように、その目的の大きな一つが産業構造の転換であり、新規事業の開発であり、あるいは企業活力の発揮という形なんでしょうから、その辺をもっともっと出していただきたいと思うのですね。そういった意味で、今の新規事業とかあるいは産業構造改革、この観点から、ここはどう法律の中で生かされているのかをもう一度、ちょっと今まとめてお答えいただけますか。
  59. 尾原榮夫

    尾原政府委員 まず、今回の数字のフレームからお話しさせていただくのがひとつわかりやすい点かもしれません。  まず、今回の法人税制改革でございますが、平成年度、来年度は初年度でございますが、三千二百六十億円の減収を見込んでおります。実質減税でございます。それから、平年度のスタイルでございますが、平年度といいますのは、今回の課税ベースの適正化は、平成年度から十五年度の六年間で適正化を行うことにしております。その六年間をとって税収を眺めてみますと、一・七五%の成長率のケースと三・五%と両方ございますが、単年度平均で二千五百八十億円から二千百四十億円の実質減収になってまいります。  なお、この間、中小法人と大法人に分けさせていただきますと、大法人の方はレベニュー・ニュートラルあるいは若干負担がふえる可能性がございますが、中小法人につきましては、三千億円の実質減税ということになります。  それでまた、この経過措置期間を過ぎますと、つまり引当金等は一過性の財源でございまするから、この税率の引き下げが丸々きく実質減税になってまいります。一兆円強かなというふうに見込まれるところでございます。それが、税収から見た、法人税制改革がどのように構造改革にきくかという一つの姿でございます。  それから、もっと大きな考え方といたしましては、先ほど、この法人税制を中立的なものにするということを申し上げました。  実は、これまでの法人税制、昭和四十年に全文改正ができ上がったわけでございますが、企業会計を尊重する、それはそれで大変よろしい考え方だったと思いますが、やはりある特定の業種に引当金とかがどうしても偏ってしまうものでございますから、結果的に偏った法人税制になっていた。今回、課税ベースの適正化を図ることによりまして、結果的に特定の企業なり業種なりを利することのないようにする、そのかわり税率を引き下げるという形で、まさに先生から御指摘がございましたように、産業構造改革あるいは新規産業の業種にとって非常に効果のある法人税制改革であるというふうに考えているところでございます。
  60. 末松義規

    ○末松委員 これは大臣にお聞きします。法人税を三%下げましたけれども、もっと中小企業とか新規事業を起こしていくための大胆な日本の活力再活性化というのですか、そういったために法人税の実効税率を国、地方合わせて四〇%、そのくらいに思い切ってやるべきだと思うのですけれども、それについての大臣のお考えはいかがでしょうか。一〇松永国務大臣 お答えいたします。  委員承知のように、法人税の税率を、基本税率も、それから中小法人に対する税率も、それぞれ三%ずつ下げたわけでありますから、税率としては、国税に関する限りはアメリカよりも低い状態に持ってこれたわけでありますけれども、地方税の方が負担があるものですから、その結果として四九・九八が四六・三六になった程度でありまして、四〇%という御意見からすれば、まだ六%近く上になっているという状態です。  この点については地方の法人課税の問題になるわけでありまして、この点については、平成年度の税制改正に関する答申の中で指摘された検討課題であるわけでありますから、それを踏まえつつ、今後、政府税制調査会で御論議がなされる。その御論議がうまいぐあいにまとまってくれれば、十一年度以降の可能性が出てくるわけでありますけれども、その論議にまちたいというのが私の考えでございます。
  61. 末松義規

    ○末松委員 この点については、もうちょっと後で議論をさせていただきたいと思います。  先ほど企業会計という話が出ましたけれども、企業会計についてちょっと簡単にお聞きします。  山一の破綻の引き金というのがムーディーズの格付の引き下げだったということは有名な話ですし、外人から見れば、日本の格付機関の格付では甘い、信用ならぬと。特にその前提として、外国人の公認会計士なんかがよく言うのは、日本の企業のバランスシートが全く信用できない、そういうことをよく言われるわけであります。どうもそのバランスシートが、自分の企業の実力をきちんとあらわすのじゃなくて税務署用の節税対策、それからもっともらしさをつくってきているような、そういう体質があるんじゃないかと。  私自身、企業会計については素人ですから、余り大きなことは言えませんけれども、どうも現行の企業会計というものでは対応できないんじゃないのか。そういう気がしてならないのですけれども、その辺はいかが認識をお持ちでしょうかっ
  62. 長野厖士

    ○長野政府委員 お答え申し上げます。  大変残念なことでありまずけれども日本の企業会計の信頼性につきまして、いろいろな疑念が諸外国においてもあることは事実でございます。  私は、幾つかの要素に分解して対応を考えていくべきであろうと思っております。  ただ、その含み損を簿外にしておったという企業のビヘービアというものは、いささかこれは論外にいたしたいと思いますけれども、例えば最近破綻しました例で申しますと、大きく言いまして二つの点が問題でございまして、貸付金に生じておる含み損というものが適時適切に会計上反映されておったかという問題、これは主として銀行について起こりました。それから、もう一つ、現実に債務保証が請求されるまで引き当てを計上しないということに近い考え方をやっておりまして、それが問題化いたしましたのが主として建設業、それから証券業の中の三洋証券でございます。  これらにつきましては、明らかに、今後、貸付金や債務保証でいずれ負担になって、それに備えていなければいけないということの会計実務の取り扱いが一番大切かなと感じられますので、これは公認会計士協会におきまして、貸付金につきましては、銀行の早期是正措置延長線で、自己査定と言っておりますけれども、自己査定ということは、私どもの立場からいえば、貸付金に含まれている含み損の引き当てを計上するということでございます。それから債務保証につきましても、二月の末でございますけれども、公認会計士協会の方で、建設業を念頭に置きまして、債務保証のディスクロージャー上の扱い、それから引き当ての指針というものに取り組んでおります。  この二つが非常に大きい。ただ、まだ検討しなければいけない項目はたくさんございますけれども、大きなものとしては今の二点を御報告させていただきたいと思います。
  63. 末松義規

    ○末松委員 今、簿外債務、含み損を簿外にすることは論外というお話がございましたけれども、山一の場合、これは何回も多分質問されたかと思いますけれども、これは今の企業会計では全く対応できなかった、要するにシステムそのものに大きな欠陥があったんだという位置づけでよろしいのですか。
  64. 長野厖士

    ○長野政府委員 これは個別の事案といたしまして関係当局が既に捜査、調査を行っておりますので、その結果を待ちたいと思いますけれども、基本的には、まず、企業がその扱いをしておることが会計監査人から発見できるような状態であったか、あるいは会計監査人にこういう処理をしておりますということを教えておったかどうかといったことなども、問題が発覚しなかった原因との関係でいろいろと調べられるべき事柄だと考えております。
  65. 末松義規

    ○末松委員 そうすると、会計監査人の責任なのか、企業経営者が黙っていたことによる責任、どっちが重く責められるべきか。多分法律によるのだろうと思いますけれども、これはどうですか。
  66. 長野厖士

    ○長野政府委員 これは一般論でお答えさせていただきたいと思いますけれども、企業には問題なかったけれども、会計監査人だけ問題があったというケースは想定しがたいと考えます。  まず企業がありきで、その上で、公認会計士が故意または過失で重大な虚偽のないものとして証明した場合には責任がございますという法制度になっておりますので、あくまで主は企業であり、公認会計士は従だということであろうかと思います。
  67. 末松義規

    ○末松委員 先ほど長野証券局長が言われた自己査定の改善といいますか、これは多分審議会か何かでこれから議論されるのかどうか知りませんけれども、その辺の法律化の検討というのですか、そういうことについては、どういうふうなことを思っていらっしゃいますか。
  68. 長野厖士

    ○長野政府委員 この点は、法律問題と申しますよりも、会計の実務そして監査の実務でございます。すなわち、一〇〇という貸付金がある場合に、そろそろ三〇ぐらいは引き当てで備えておった方がいいなと認定するかどうかということでございます。  少し付言させていただきますと、従来、日本の会計制度、会計の慣行の中では、税務上の取り扱いというのが念頭にあって、企業会計がそれに引っ張られがちであった。つまり、ノンバンクに対する貸し付けなどにつきましては、税務上はだれが見ても公平でなくてはいけませんから、ノンバンクが会社更生法の申請をしたとか破産手続に入ったとかという客観的な事実があった場合に初めて税務上は損金処理を認めます。これは税務の扱いとしては公平な扱いだろうと私は思いますが、逆に、それを前提に税務の範囲内だけで企業会計上もやりますと、きのうまでは会社更生法の適用はなかったけれども、ある日会社更生法の適用になったら、よく話題になります、破綻してみたら十倍、二十倍に引当金がどんと膨らんだというのは、その客観基準のところでやるものですから、そういう問題が起こりました。  したがって、企業会計実務上は、税務上はまだ損金の扱いにならない状態であっても、もうそろそろリスクに備えた方がいいなというときには、三〇%、四〇%というのを備えておくという会計実務を定着させたいという考え方でございます。
  69. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、今証券局長が言われたことを、会計士協会の皆さんですか改善すれば、一番先に局長が言われた、海外からの日本に対する企業会計の信頼、これが得られるレベルまで達しますか。
  70. 長野厖士

    ○長野政府委員 ここ二、三年最も疑念を抱かれた部分については手当てができたと思いますけれども、まだ課題がございますと申し上げましたのは、企業会計全体を例えば連結ベースに持っていきますとか、あるいは、今貸付金について申し上げましたが、その他もろもろの金融商品につきましての会計上の評価をどうするかといった課題がございます。  それから、監査実務の点につきましては、その監査人の能力を向上させるために、例えば公認会計士の監査をまたもう一人の人がチェックするとか、いろいろな諸外国で行われております先進的な取り組みがございまして、それを参考にしながら実務能力を引き上げたいというのが公認会計士協会の考え方でございまして、昨年の四月に十項目の提言をまとめまして、それを逐次実施に移しておられます。  昔会計士の資格を取っても、最近の金融商品についての知識を深めるために、ふだんから一定の研修をやるとかいろいろなことに今取り組んでおりまして、できるだけ外国から見ても、全体としての日本の会計制度あるいはディスクロージャーそのもの、そして公認会計士の監査というものの信頼性が高まるような努力をいろいろなレベルでやっていきたいと考えております。
  71. 末松義規

    ○末松委員 できるだけ早くやっていただきたいのですね。といいますのは、今度、国際会計基準というものが、世界じゅうでことしの秋にもそれがまとまろうとしているという話がございまして、こうなりますと、その可能性と同時に、これはつまり共通のベースで企業をはかろうよという話ですね、世界的に、グローバルに。そうしますと、これが日本の企業にどう影響を与えていくのか、あるいはそのときに日本はどういう対応をとるのか。逆に言えば、乗っ取りがやりやすいとか、要するに全部クリアにわかってしまう、そういうふうな懸念もあるわけですけれども、その辺についてどう考えておられるか、答えてください。
  72. 長野厖士

    ○長野政府委員 多少専門的になりますけれども、御説明をお許しいただきますと、国際会計基準というものは、それをつくりましたら世界じゅうの国がそれに従うということではなく、国際基準に従っておれば、例えば日本の企業がアメリカで調達しますときは、SECの基準でなくて国際会計基準によってアメリカでディスクロージャーすればよい、アメリカの企業も、日本の基準ではなくて国際会計基準に乗っておればよその国に行って資金調達ができるという、ある企業が外国で資金調達する場合のディスクロージャー上の基準でございますので、そのこと自体が特定の国の企業の力とか立場とかにどう影響を及ぼすかということはない、それぞれが外国における資金調達がわかりやすくなるということであろうかと思います。  それを超えまして私どもが今取り組んでおりますのは、もう一つ、国際会計基準とは別な言葉として、会計基準のグローバルスタンダード化ということを申し上げたいと思うのです。つまり、それぞれ自分の国の基準をできるだけ、国際的な動向を見ながらレベルの高いものにしていくという動きが一方にございます。国際会計基準というのは、それぞれの国は違う基準を使うのだよというのが前提になってやっておりますけれども、その違うもの同士の中で少しずつグローバルなスタンダードに近づけていこうではないかという動きがございます。  先ほど私がちょっと申し上げました、例えば連結ベースの決算制度に今日本が移行しようとしているのはそういう流れでございますが、そういった流れになってきますと、外国の投資家から見た場合に、日本の企業の状況というものの判断が非常にやりやすい方向に動いていく。それは日本にとっての投資魅力ということにつながるかもしれません。  末松先生、それは外国から買収されるという御心配をする向きがあるではないかということを念頭に置かれて御質問かなと思うのですが、買収というのと外国の投資家が日本の企業に魅力を感じて日本の株に投資をするというのはやや紙一重でございますけれども、いずれにしても、日本の企業の価値というものが正当に表示されて、外国の投資家に歓迎されるということであれば、買収という言葉を使うよりも、むしろ日本の企業の魅力が国際的に増していくというふうに考えるべきではなかろうかと考えております。
  73. 末松義規

    ○末松委員 それは言葉の違いなのかもしれません。  ただ、世界共通の会計言語というものがこれからどうしても必要になってくるのだろう。それは、その国の会計基準をグローバル化するといったって限界があるわけでしょう。だって、その国その国で全然システムが違うし、税制が違うし、だから限度はある中で共通の言語をどこまで求めていくかという位置づけでしょうから、そういった中で透明でわかりやすい企業会計基準ができるということが、日本の企業を評価しあるいは世界の企業を評価する一番のポイントになるし、それが国際スタンダードまで来る一番の信頼を得る道じゃないかなという気がするわけです。  ある意味では、逆に日本企業家のマインドをそこのところの会計言語に置きかえていくという作業を地道に、しかも早くやっていただきたいというのを心からお願いします。  そこで、今度は法人事業税についてお話をさせていただきます。  これは自治省の管轄かと思いますが、外形標準課税という問題についてちょっとお尋ねをしていきたいと思うわけです。  まず、赤字法人の割合というものがどのくらいなのか。自治省の方もおられるかと思いますが、ぜひ参加してください。
  74. 桑原隆広

    ○桑原説明員 赤字法人についてのお尋ねでございますが、法人事業税におきますところの欠損法人、いわゆる赤字法人は、平成年度におきまして、全部の普通法人の数が二百四十二万一千社でございまして、そのうちの百五十四万二千七百社、割合で申し上げますと、六三・七%ということになっております。
  75. 末松義規

    ○末松委員 これは国も地方も大体同じと考えていいですね。  これらの赤字法人も公共サービスを受けていると思いますけれども、その辺に対する対価というのはどういうふうに考えればいいのでしょうか。
  76. 桑原隆広

    ○桑原説明員 法人事業税は、法人がその活動を行うに当たって地方公共団体のさまざまな行政サービスの提供を受けているということから、そのために必要な経費をそれぞれ分担していただきたいという考えで課税している税でございます。  法人事業税につきましては、所得の計算が黒字であるか赤字であるかを問わず、地方の行政サービスを受けているということから、広く薄く御負担いだだくのが望ましい姿というふうに考えております。
  77. 末松義規

    ○末松委員 それとの関係もあって外形標準課税論議というのが出てくるかと思うのですけれども、この外形標準課税の議論といいますか、それをちょっとわかりやすく簡潔に御説明いただけますか。
  78. 桑原隆広

    ○桑原説明員 事業税の課税標準への外形基準の導入の議論は大変古くからございまして、現行の地方税法が制定されました昭和二十五年以来ずっと続いている議論でございますが、最近では、昨年末の政府税制調査会の答申におきまして、「地方の法人課税については、平成年度において、事業税の外形標準課税の課題を中心に総合的な検討を進めることが必要」とされ、来年度以降、政府税制調査会等の場におきまして検討が進められることとされております。  外形標準課税を導入いたしますと、都道府県の税収の安定化が図られますほか、結果といたしまして、法人の所得に対する表面税率が下がるということにもつながりまして、そうしたことから、最近、法人事業税についての外形標準課税の導入が議論されているというふうに理解いたしております。
  79. 末松義規

    ○末松委員 税収の安定化というのと表面税率が下がる、これをもう少し詳しく説明いただけますか。どういうメカニズムでそうなるのですか。
  80. 桑原隆広

    ○桑原説明員 まず、税収の安定化についてでございますが、現行の法人事業税は法人の所得を課税標準といたしておりますので、景気の動向によりまして法人の所得も増減いたしまして、その結果、法人税収が非常に変動が大きいということになっております。法人事業税の課税標準に外形基準を導入するといたしました場合、どのような外形基準を導入するかにもよりますが、変動の大きい所得を課税標準とするよりは、都道府県の税収の安定化に資するものであると考えております。  それから、表面税率の引き下げの議論でございますが、現在議論されておりますのは、法人の所得に対する表面税率が諸外国と比べて高いか低いかということでございまして、外形基準ということになりますと、所得以外に課税標準を求めるということになりますので、所得に対する税率の比較という基準からはその部分が外れてくるということでございます。
  81. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、所得というか資本に対して非常に過度に寄りかかっていたものを、むしろ中立的に、やれ給料がどうだとか、コストがどうだとか、あるいは土地代がどうだとか、そういった形でより広い要素の中で税をかけていこうということですよね。そういうことですよね。ちょっと確認させていただけますか。
  82. 桑原隆広

    ○桑原説明員 おっしゃいますとおり、所得以外の企業の活動量をあらわします何らかの基準を採用しようということでございます。
  83. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、赤字法人に対しても、それは課税、つまり税金を払ってもらう。そこは当然ですよね。うなずいていらっしゃいますね。  今、法人事業税というのは地方の応益課税だとよく言われるのですけれども、もしこの法人事業税が、そういうウエルバランスというか、よくバランスされた課税が可能だということであれば、別に法人事業税だけじゃなくて、これは大蔵省に聞きたいのですけれども法人税そのものについても外形標準課税をしても、理屈上はそれほどおかしい議論にはならないのじゃないか。よく国税は応能税だと言われますけれども、どうもそこの区別が私自身がよくわかっていないのですね。その辺について可能なのか、全く論外なのか、それについてお答えください。
  84. 尾原榮夫

    尾原政府委員 国税として赤字法人課税が可能であるか、外形課税が可能であるかというお話だったと思います。  今の法人税はまさに所得に対する課税でございますので、外形について国税で税金を課するということになりますと、恐らく法人税法の枠内ではおさまらず、別途の税法になるのではないかというふうに考えます。  赤字法人の問題といいますのは、前々から課税の適正化の面からも指摘されてきたことでございまして、実は今回の法人税制改革の中でも、試案として、例えば賃金に対しまして国税として課税することができないかというような考え方を、昨年の十一月五日に課税ベースの適正化の項目とあわせて御提示させていただきましたが、政府・与党の税制調査会での議論を聞きますと、やはりこのような赤字法人課税の問題というのは、むしろ地方税で考えるべきではないかというのが議論の流れだったように記憶しております。  なお今回、所得課税の分野で課税ベースの適正化をやらせていただきますが、その結果、所得の幅が広がってまいります。そういう意味からいたしますと、今回の課税ベースの適正化は赤字法人課税に資する面もあるというふうに考えているところでございます。
  85. 末松義規

    ○末松委員 そうしますと、それは自民党の税調さんがそういう空気だったというのは今お聞きしましたけれども、理論的に外形標準化が全く不可能というわけではないですよね。課税ベースの適正化というのが同じような効果を持つかもしれませんねというのはあるけれども、もうちょっと論理を突き詰めていけば、法人税の外形標準課税化ということは理論的には大丈夫ですね。
  86. 尾原榮夫

    尾原政府委員 ただいまお答え申し上げましたが、法人税は、基本的には企業会計によって計算されます所得に対して課される税が法人税というふうに考えておるわけでございます。したがいまして、法人税として外形に課税せよということになってまいりますと、恐らく法人税の枠内にはおさまらない、別途の課税ということになってくるのではなかろうか、こういうふうに考えているわけでございます。
  87. 末松義規

    ○末松委員 そうすると、現行の法人税ではそれは理念としてはないという話ですね。  ただ、さっき自治省の答えは、税収の安定にも資します、どちらかというと税収の中立性もきちんと守られますというようなことであれば、より望ましいじゃないかと。ただ、それは政治の中で赤字法人に対してやれるのかというところがひっかかってくる、私はそういう理解をしているのですけれども、その辺はよろしいですか。
  88. 尾原榮夫

    尾原政府委員 先ほどの繰り返しになりますが、国の法人税、まさに所得課税でございます。したがいまして、外形標準に対する国税としての課税は別物になるのではなかろうかということを申し上げました。  それからもう一点、国の法人税でございますが、やはり景気の安定化機能とでも申し上げましょうか、景気が悪いときには税収が余り伸びなくなる、景気がいいときはたくさん入ってくるというようなこともございまして、そういう意味からも、所得課税は確かに景気によってぶれる税ではございまするけれども、そういう機能を持っているのも国税ではないかというふうに思っているわけでございます。
  89. 末松義規

    ○末松委員 それは、くどいようですけれども、そういうふうにぶれることがいいと考えているのですか。
  90. 尾原榮夫

    尾原政府委員 私ども財政を預かる立場からいたしますと、税収は安定していることが望ましいことはもちろんでございます。したがいまして、所得、消費、資産のバランスということをよく申し上げておりますが、やはり所得課税のほかに消費課税のような税を組み合わせることにより国税の税収面でも安定化が図られることが、財政運営を行っていく上で望ましいものと考えているわけでございます。
  91. 末松義規

    ○末松委員 ちょっと論理の組み立て方が少し違っているので、その辺は何か議論がかみ合いませんけれども、それはこの辺でやめておきます。  自治省に戻るのですけれども法人事業税は付加価値の加算方式というのですか、あれが今一番私なんかはいいと思っているのですけれども、それのメリット・デメリット、それについて述べていただけますか。
  92. 桑原隆広

    ○桑原説明員 これまで外形基準の選択肢の一つとして検討されてまいりました加算法による付加価値につきましては、一般的には、事業の人的、物的な活動量を客観的かつ公平にあらわしているのではないか、あるいは法人税の実務経理との関連性等から課税標準の算定が比較的容易ではないか、さらには、資本、労働等の生産手段に対しまして中立的な税となるのではないかなどのことが言われておりますが、一方で、課税標準の算定上、給与のウエートが高いのではないかなどの意見もあるところでございます。  事業税へ外形基準を導入するに当たりまして、具体的にどういう外形基準がふさわしいかということにつきましては、これまで、今申し上げました加算法による付加価値を初め、売上高あるいは企業の資本金などさまざまな議論がなされてきておりますが、政府税制調査会等の場におきまして、外形基準として何が最もふさわしいかということについて、専門家の方々の御意見伺いながら検討してまいりたいと考えております。
  93. 末松義規

    ○末松委員 一生懸命検討してください。  ちょっと大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、そうびっくりしないでください。ちょっとこれはとっぴなんですけれども、民主党の中でも一時期この議論はよくなされたのですけれども、道州制というか連邦制を前提として、例えばドイツみたいに共有税といいますか、まず全部地方で取って、そしてその三割なら三割を国にやる。今まで、地方分権とか地方主権とか言っていても、結局お金が伴わない。大体六割から七割近くを国が吸い上げて、そしてそれを地方にばらまいて逆に地方のニーズの六割を満たしていくという中央の方式をやめて、そういった、ある意味では道州制なんかを前提としなければいけないのかもしれませんけれども、その税金を取るやり方について大臣のお考えをいただければと思います。
  94. 松永光

    松永国務大臣 法人税所得税も、実は、そのうちの三二%を地方交付税で地方に回すという仕組みが日本ですね。それは、どの地方であっても一定水準の行政サービスが提供できるようにという、日本全国がほぼ同じような行政水準が保てるようにという知恵でやっているのではなかろうか、こう思うのでございます。  地方で法人税を取って、そのうちの何がしかを国に回す、残りは地方で使うのだとなりますと、豊かな地方と貧しい地方との間の格差をどういうふうにして是正していくかという問題もあるでしょうし、そういったもろもろの点を考えますと、委員指摘のようなことが日本で果たしてなじむのかどうか、やはり慎重に検討する必要があるのではなかろうかというふうに私は考えます。
  95. 末松義規

    ○末松委員 この議論はここでとめて、これはまた別途の形で質問させていただきます。  ちょっと話題を変えまして、あと懸念材料として私が考えるのは、アジアの通貨の暴落によって日本経済そのものが大きな影響を受けるのだろうなという気が、気というかもう実際に影響が出てきているのですけれども、この影響、例えば日本銀行のアジアにおいての債権残高、これが十兆円で回収不可能な債権になってきているとか、そういう情報もあれば、アジアの不景気で最悪なものが日本のGDPを一年目で約一・六%強、そして二年目で三%下げる、そういうふうな数字も出てきているし、日本の対アジア輸出、これを半分にするだろう、そういう厳しい認識がよく示されておりますけれども大蔵省として、アジアのこの危機的な状況日本にはね返ってくる影響、この悪い影響をどういうふうに認識しておられますか。
  96. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 お答えいたします。  最初に、アジアの通貨危機が邦銀の不良債権にどのような影響を与えるかという点について申し上げます。  御案内のように、我が国の金融機関がアジア向けに持っております債権の残高は約三十一兆円、二千七百億ドルございます。このうち、現在問題になっております国々、タイ、インドネシア、韓国、これらに対する邦銀の債権がそれぞれ二百億ないし三百億ドルずつございますが、幸い、現在、タイの状況は著しく改善しておりますし、韓国につきましては既に各国の銀行の債権の期間をボランタリーに延長する、その上、近く韓国自体が資本市場で資金を調達することができるまでになりつつある、こういうふうに言われておりまして、タイや韓国に対する邦銀の債権につきましては、全体として大きな問題はないというふうに見ております。  問題はインドネシアでございまして、インドネシアに対して邦銀が二百三十二億ドルの債権を昨年の六月時点の数字で持っております。その中身につきましては、個々の銀行の事情によるところも大であると思いますが、一般的には為替リスクはヘッジされておりますし、債権のかなりの部分が日系企業あるいは地場の大手優良企業向けである、こういうふうに言われております。  ただし、例えば日系企業であるといいましても、その日系企業自体がインドネシアにおける事業がうまくいかないということになりますと、少なくともその企業としての問題が生じますし、その企業に対する邦銀の債権も、本社の保証が仮にありましても、いろいろな問題を生じ得ることは事実でございますので、このあたりにつきましては、今後とも十分注視していく必要があるというふうに思っております。  ただし、先ほど申し上げましたとおりアジア全体で二千七百億ドルございますが、かなりの部分が香港、シンガポールというマネーセンターでの債権でございまして、問題になっておりますタイ、インドネシア、韓国の金額は先ほど申し上げたとおりで、しかも現時点で非常に懸念しておりますインドネシアに対する債権は、邦銀の債権全体で二百三十二億ドル程度であって、その中身について先ほど申し上げたように注視しているということでございます。  二点目、貿易を通じた日本経済への影響についてお尋ねがございました。  確かに我が国の東アジアに対する輸出は、昨年の秋以来、特にタイについて減少しておりますし、たしかインドネシアに対しても伸びが非常に急速に鈍化しております。したがって、東アジア、なかんずく東南アジアに対する輸出は、ある程度の影響を受けざるを得ないというふうに思っております。  その数字全体といたしましては、実は、御承知のように我が国の輸出はGDPの大体一〇%ぐらいでございまして、アジア向け全体を通じましてもその四割ということですから、GDPに対して四%ぐらい、そのうち最近特に問題になっております東南アジア諸国に対するものは恐らくその半分以下であろうと思いますので、それらの輸出が相当減りましても、我が国のGDPに対して非常に大きな割合になるということはないと思います。  しかし、やはりアジア全体に波及してまいりますと、それなりの影響があることは事実でございますし、現にもう出てきております。したがいまして、今後ともそういう面については十分注視していく必要があるというふうに考えております。
  97. 末松義規

    ○末松委員 今の局長の御説明を聞いていると、何か余り大したことないじゃないかと。そういうふうな説明の仕方でいいのですか。いや、私ちょっと驚いたな、今のは。局長は、最近、問題のいろいろなタイとかインドネシアとか韓国なんか、局長になられて回ってこられましたか。
  98. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 先ほど申し上げましたタイ、インドネシア、韓国、これらの諸国が通貨危機にまず集中的に見舞われまして、IMFに支援を求めた。その結果、いろいろな問題を処理しつつあるわけですが、タイと韓国は、先ほど申し上げましたように、かなり改善しつつある。インドネシアにつきましては、先日総理に同行いたしましてインドネシアに参りまして、インドネシア側からいろいろな状況は伺っております。現にインドネシアの経済金融市場、ともに極めて厳しい状況にあるというふうに認識しております。
  99. 末松義規

    ○末松委員 通産省の認識は、大蔵省と同じですか。
  100. 伊沢正

    ○伊沢説明員 御説明させていただきます。  ただいま貿易面とか産業面の御説明大蔵省からございましたが、基本的には貿易面におきまして、タイ・バーツ等のアジア通貨が円に対して切り下がったことやアジアの内需の低迷によりまして、例えばASEAN四カ国向けの輸出では昨年十月からマイナスになっておりまして、一月では二〇%以上の減少となっております。また、こちらから現地に進出しております日本企業につきましても、特にアジア市場向けに進出した企業につきまして、相当程度内需停滞による打撃を受けておりまして、稼働率も低下しておりますし、生産調整の必要が生じてきております。  またさらに、アジア各国の金融・通貨システムの混乱とか信用収縮のために、現地企業が事業活動を行う上で必要な部品とか原材料の輸入のための資金調達にも支障を来しておりまして、アジアがこれから借りた金を返す観点から見ますとどうしても輸出をしていかなければならないわけでございますが、そのための資金もちょっと問題が起こっている状況でございます。  こういうことを踏まえまして、こういう資金調達に支障が生じているこうしたアジア各国の民間企業、さらに現地の日系企業も事業活動を金融面で強力に支援する必要があると考えておりまして、こうした観点から貿易保険や輸銀の活用を講じているところでございます。  さらに、アジア各国がこうした中から抜け出してさらに改めて回復するためには、どうしても産業競争力の強化が必要でございまして、これに対しましても、よく言われておりますが、すそ野産業が弱いとか中小企業が弱いとか言われておりますので、こうした観点から何ができるかということを頭に置きまして、人材を派遣したり、特に自動車産業なんかも研修を積極的に受け入れるつもりでおりますが、こうした面で協力していきたいと思っております。
  101. 末松義規

    ○末松委員 アジアの状況は、これから大きな影響が多分出てくると思うのですね。だから、もうちょっと何か、楽観論というのは今言っていいのかな。確かにインドネシアが問題だというのは言われましたよね。あれも相当な問題ですよ。恐ろしいぐらい問題です。韓国だってとりあえずの今ふたが閉まっているというだけあって、それを一歩はいだら、また大変な状況に陥るという状況じゃないかと思うのですよ。  私は、この際、アジア通貨圏というのですか、例えばバスケット方式で、そういった意味で通貨の安定のためにアメリカとかヨーロッパを巻き込んで、ADBとか、あるいはIMF、それからEBRDとかあの辺を巻き込んで、日本がイニシアチブをとって、そういう通貨の安定について日本がかなり真剣な努力をやっていかないとだめなんじゃないか。あるいはアメリカやヨーロッパからまたばかにされるのじゃないかという気がするのですね。  日本国民自身、この国民というのは物をつくるのはうまいのですが、その物をつくって得た利益、これをいかに膨らますかとかどう調整していくかとか、この辺については私は全く低い評価しか与えていないのですね。私も、外務省にいて、ユダヤ人の方とか、中東にいてアラブ人とかいろいろとっき合ってきましたけれども、彼らのセキュリティー、あるいは金銭とか物に対するセキュリティーというのはすさまじいくらい進んでいると思ったのですね。そういうのを考えていけば、ぜひ、このアジア地域においては日本がイニシアチブをとっていく、当然そういうふうな仕掛けを考えてしかるべきだと思いますけれども大臣、いかがでしょう、そういうふうなことについて。
  102. 松永光

    松永国務大臣 今般のといいますか、アジア地域の通貨、金融についての不安のことについての解決は、IMFを中心にした国際的な枠組みの中で日本も懸命に協力をしているところでございますが、委員の話では、IMFとかそういったことと関係なしにアジアで日本を中心にした云々という話であるとすれば、これは非常に難しい問題と思うのであります。むしろ、IMFの世界的な枠組みを尊重しながら、その中でアジアの金融・通貨安定のための取り組み、この問題については、実は去年の十一月に各国が協力してアジア地域における支援の枠組みをつくろうというわけで、マニラ・フレームワークが合意されておるわけでありまして、それの活動の中で日本は積極的に努力をしていくという仕組みに今なっておりますが、この仕組みを大事にしながらやっていくということが大切ではなかろうかというふうに私は思っているわけです。     〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席
  103. 末松義規

    ○末松委員 日本が中心にというと誤解を招いてまた大変なことになりますから、日本が本当の意味で一番汗を流してイニシアチブを、何とか枠組みをつくっていこうよということを働きかけるという意味において中心でやっていくべきというふうに考えて、私の質問を終わります。どうもありがとうございました。      ――――◇―――――
  104. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、内閣提出法人税法等の一部を改正する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等特例に関する法律案の各案を議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。富田茂之君。
  105. 富田茂之

    富田委員 平和・改革の富田でございます。大蔵委員ではございませんが、委員長、各党の理事の皆様の御了解をいただいて大蔵委員会質問できることを本当に感謝しております。  私、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等特例に関する法律案について、何点かお尋ねしたいと思います。  実は、この法律案は、今なくなってしまいましたが、当時新進党の税制調査会コンピューター会計法問題小委員会平成七年五月に発足いたしまして、きょうはその当時の事務局長井奥先生、またその問題にずっと取り組んでこられた村井先生を前にして私が質問するというのも非常に恥ずかしいのですが、このコンピューター会計法問題小委員会の新進党最後の事務局長でございまして、そういう立場から、賛成はいたしますが、何点か問題点があると思いますので、お尋ねしたいと思います。  最初に、この法案が今回策定されるに至った背景について、ちょっとお尋ねしたいと思います。  いろいろな書類を読んでおりますと、まず今回こういう法案が出てきたという理由の第一点として、企業間取引において受発注の取引データ等をネットワーク上で交換するいわゆるEDI取引がかなり普及してきている。また経済団体あるいは経済界の方から、帳簿書類を紙の状態で保存するのはもうコストがかかってたまらぬ、このコスト削減のために電子データ保存を認めてほしいという、かなり強い要請がずっとあった。そして政府の方でも、規制緩和の観点からこの要請にこたえるべきだということでいろいろな閣議決定等をされておりまして、最新のものでは、平成九年の十一月十八日ですか、経済対策閣僚会議が緊急経済対策ということで、「各種法令で民間事業者に保存を義務づけている帳簿等の電子媒体による保存の容認について、原則として平成年度末までに所要措置をとる。」法改正が必要な場合については法案も提出するというような決定をされておりました。こういう流れの中で出てきた。  また、法務省の方も、電子帳簿に関する見解ということで、平成七年の三月十五日ですか、参事官室の見解というのが出ておりまして、「現行商法の下では、債権者、株主等の閲覧等の請求に応じて合理的期間内に商業帳簿等を見読可能なものとすることができるのであれば、商業帳簿等を電磁的記録によって保存することも可能である。」こういう画期的な見解を出されて、こういうものが背景になって、十年度税制改正の一環として政府の方で法案を出されてきたというふうに理解しておりますが、そういう理解でよろしいのでしょうか。
  106. 尾原榮夫

    尾原政府委員 まさに先生の御指摘のとおりかと思います。今先生から御指摘ございましたように、高度情報化、ペーパーレス化が進展する中で、会計処理の分野でもコンピューターを利用した帳簿の作成が普及してきたわけでございます。かねて、経済界を初めとして関係各界から、コスト負担の軽減あるいは規制緩和ということで、国税関係帳簿書類の電子データによる保存を容認してほしいという要望が寄せられておりまして、最近の閣議決定は、まさに先生がおっしゃられたとおりでございまして、平成九年の十一月十八日、「二十一世紀を切りひらく緊急経済対策」におきましても、まさにこの九年度末までに法改正をして所要措置をとりなさいというふうに決定を見ているわけでございます。  それから一点だけ。商法上の商業帳簿の取り扱いでございますが、平成七年三月に、これも御指摘のとおり、電子データ保存を容認するという旨の見解が公表されておりますが、これは今回の電子データ保存制度の導入の背景というよりは、むしろ流れを同じくしているものではないかというふうに理解しております。
  107. 富田茂之

    富田委員 今、流れを同じくしているというふうに御答弁ありましたけれども、法務省の方が商法上、電子データによる保存が可能だという見解を示しても、一般の企業あるいは個人が、商法上の帳簿と税務申告上の帳簿は重なる帳簿が多いわけですから、二種類つくって保存するということは多分なかったのだと思うのですね。法務省の方は、そういう意味では、ちょっと前にこういう見解を出して、一歩進んだのかなと。  税法上のそういう見解がなかった、あるいは今回のような法案がなかったということで、実際に現場で電子データによる保存がなかなか逆に進まなかったという点を考えて、今回立法に至ったというふうに理解してよろしいのですか。
  108. 尾原榮夫

    尾原政府委員 先生指摘のとおり、商法と税法で、商法の場合は会社の株主や取引関係に立つ者の権利の保護でございますが、税法の方の制度目的は適正公平な課税の確保ということで、両方の帳簿は相互に密接な関係にはあるわけですが、制度目的は異なるわけでございます。  また同時に、商法上の帳簿書類と国税関係帳簿書類は、それぞれお互いの帳簿書類を兼ねているものが実際には多いわけでございまして、したがって、商法上の帳簿書類について電子データの保存を認めるという解釈を出されましても、国税関係の方でそのような制度を設けませんと、まさにそういう意味で生きたものにならなかった、こういうことだと思います。
  109. 富田茂之

    富田委員 今の点は了解いたしますが、アメリカでは、一九六四年の段階で帳簿書類の電子化が許容されていたというふうに書かれている本等もあります。そうしますと、四半世紀日本がおくれてやっとこういう法案が出てきたというようなことになると思うのですが、コンピューター等の一般社会への普及というのは、アメリカからそれほどおくれていないと思うのですよね。  なぜ今回、平成年度税制改正になってやっとこの法案が出てきたのか。アメリカやドイツの例を参考にして、本来ならもっと早い段階で出てもおかしくなかったのじゃないかと思うのですが、その点はどういう経緯でこうなったのでしょうか。
  110. 尾原榮夫

    尾原政府委員 残念ながら、今先生の御指摘のように、アメリカやドイツに比べて大変おくれて今回導入することにしてございます。ただ、諸外国と我が国との状況の差を申し上げますと、やはり情報化の進展状況が若干日本の方がおくれていた面もあるのかな、あるいはコンピューター化の進展状況もおくれていた面があるのかなというのは一つございます。  と同時に、制度面で申し上げますると、税務訴訟におきましては、アメリカでは立証責任はまさに納税者サイドにあるわけでございますが、日本の場合には当局サイドにある。あるいは帳簿保存義務の罰則があるかないかというような面もあっておくれてしまった面があるということも御理解いただきたいというふうに思うわけでございます。
  111. 富田茂之

    富田委員 ちょっと今の点はまた後の質問でお尋ねしたいと思うのですが、先ほど局長が言われていた、コスト削減の要求が強かったと。今回、この法案が成立することによってどのぐらいのコスト削減につながるのか、そういう点について大蔵省の方で何かデータ等をとって、今回の立法事実としてそういう裏づけがあるのだというような調査結果は何かあるのですか。
  112. 尾原榮夫

    尾原政府委員 この電子データ保存制度の導入によりまして、企業の規模あるいは業種、コンピューター化への取り組み状況によって個々の差はあるだろうとは思いますが、企業の事務負担やコスト負担はこれまでに比べ大幅に軽減されるというふうに考えております。  例えば、会計処理や業務処理のコンピューター化に積極的に取り組んでおります。ある大手スーパーの場合、聞いてみたわけでございますが、帳簿書類の出力費用、保管料などで年間約一億円を超えるコストを支払っているそうでございますが、これが約四分の一になるという推計もございます。  いずれにいたしましても、現在、八割以上の企業が何らかの形で実務にコンピューターを利用しているということを考えますと、今回の制度の導入は、全体として極めて大きな負担軽減効果をもたらすのではないかというふうに考えているところでございます。
  113. 富田茂之

    富田委員 一億円で四分の一の削減になるのだというような調査結果を今示されましたが、大蔵の調査室の方からいただいた資料ですと、メーカーが二つと大手のスーパー一つ調査した結果で、負担軽減効果というのが本当に四分の一になるような調査結果もいただいておりますが、今回ちょっと調べてみましたら、実は平成六年のもう三月の段階で、財団法人日本情報処理開発協会の産業情報化推進センターというところが、EDI法的問題調査研究報告書という報告書を出しておりまして、この報告書を見ますと物すごいのですね。  大手スーパーの例を挙げて、年間に六千万枚帳票を出す、この年間の紙の作成コストと、五年間仮に保管した場合のコスト削減効果を出しているのですが、十五億かかっていたものが、磁気データを媒体にして保存すると、何と百五十万になってしまう。これは、このまま本当にこのとおりになるかどうかは、いろいろ基準が違うと思いますので実際やってみるとまたわからないところはあると思いますが、これは約一千分の一になっているのですよね。  もう平成六年三月の段階で、民間の方の報告書ですけれども、こういうコスト削減効果の指摘がされているので、大蔵省もこういうところにも目配りして、もう少し早くこの立法をされたらよかったのじゃないかなというふうに、今回この法案が出てきて勉強して思いました。こういうところにも、立法事実の背景について、これからこういう法案が出る場合に、大蔵の方でもきちんと努力をしていただきたいと思います。  今回ちょっと勉強させていたださましたら、国税審議官の私的研究会であります帳簿書類の保存等の在り方に関する研究会、ここが平成九年三月二十六日付で、「帳簿書類の保存の在り方について」と題する報告書を出されておりました。いろいろな方から、公認会計士の皆さんとか税理士の皆さんあるいは経済団体の方からいろいろ意見を聞かれて、これをベースに今回の法案になったのかと思いますが、そこの文の中にこういう指摘がされておりましたので、ちょっと紹介させていただきたいと思います。   申告納税制度の下において、税法上の記帳義務と帳簿書類の保存義務は、その基礎となるものであり、帳簿書類の電子データによる保存が行われる場合には、税務執行面における税負担の公平確保の要請についても十分念頭に置く必要がある。   従って、改ざん、消去が容易である等の電子データの特性を十分考慮し、電子データによる保存については、紙による保存から電子データによる保存への変更という保存媒体の変更の問題と単純に捉えることなく、コンピュータ処理を行うこととする場合には、その処理の適正性の問題が適正・公平な税負担の確保上重要であるとの認識の下、真実性、可視性、証拠能力・証明力の観点から十分に検討を行い、電子データによる保存の条件等について必要な法令等の整備を図る必要があると考える。 こういうふうに報告書で提言されております。  この報告書に基づいて今回の法案が条文化されたというふうに理解してよろしいのでしょうか。
  114. 尾原榮夫

    尾原政府委員 まさに今回の電子データ保存制度、関係各界からの要望、さらには政府全体としての取り組みを踏まえて導入することにしたものでございます。  国税庁の研究会報告との関係を申し上げますと、まさに国税庁は執行の責任者でございます。我々立案部門に対しまして要望を取りまとめるに当たりまして、今の報告を踏まえた検討が行われたわけでございまして、我々も今回の制度の中に十分反映させているわけでございます。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  115. 富田茂之

    富田委員 今の報告書の提言を法案化するということになりますと、新進党時代に受けた要望なのですが、職業会計人の団体から、この法案についてはこのような点を入れてもらいたい、特にこういうところを入れてもらいたいということで、いろいろ勉強会をやったのですが、その際に五点ほど言われておりました。  ちょっと紹介させていただきますと、まず第一点として、コンピューター会計法における正規の簿記の諸原則の明文化。コンピューターシステムによる会計記録の作成及び保存は、正規の簿記の諸原則にのっとり、完全網羅的に、真実を適時に、かつ整然明瞭に行わなければならない、この原則を明確化しろと。  二点目として、遡及入力についても触れておりまして、一たん入力された電磁的記録の追加・訂正・削除は、その痕跡をとどめること。その訂正は、簿記の原則に従って、その訂正時に反対仕訳と正しい仕訳をすることにより行う。  三点目として、監査証跡の確保。取引に関する電磁的会計記録は、すべて、原始記録等と決算書等における最終合計金額との間で互いに追跡することができるようになっていなければならない。  四点目として、処理プロセス等に関する文書の作成及び保存の点について触れておりまして、コンピューター会計に関するシステム内容及び処理プロセスは、これを文書化して、法令の定める期間、保存されなければならない。このシステム内容または処理プロセスについて、新規作成または変更したときは、その目的、改定等の内容、使用開始日時等を記載した書類を作成し、法で定める期間、保存しなければならないというふうにされております。  また最後に、五点目として、コンピューター会計法規遵守に係る担保措置ということで、遵守しない存在を考慮し、コンピューター会計法規遵守のための担保措置に関し、所要の条件整備を行う必要がある。  この五点を私どもの方で勉強会をやった際に何度も強調されまして、こういう原則に基づいてコンピューターに関する法案をつくってほしいというような要請がありました。  この勉強会を通して、今言った二、三、四については今回の法案にかなり取り込まれているのかなと思うのですが、第一点について、ちょっと落ちているのじゃないか。商法の三十三条の一項には、帳簿は整然かつ明瞭に記載せよというような規定があります。ただ、これがあるだけで、他の商法の規定あるいは税法の規定を読んでも帳簿の記帳条件の一般原則を定めた規定がないのですね。このために、日本では記帳に対する緊張感が希薄で、きちんと納税している者がまじめに帳簿をつけている、ところが逆に帳簿をつけていないでたらめなことをやっている人が過少な申告をして得をしているのじゃないか、そういう不公平な状況がある。  税務調査を担当されていたことのある税理士さん、国税等に勤めていたことのある税理士さんにお話を聞いたことがあるのですが、自分が調査に行くと、帳簿書類だけどんと出して、はい調べてください、もし課税することがあるのならどうぞ課税していただいて結構ですよと。ところが帳簿書類がないと書類で連続性を確認することができなくて、結局時間がなくて適正な課税ができなかった。そういうような不公平はやめてもらいたい、こういう電子データによる保存の法案がもしできる場合には、そこをきちんとしてもらいたいというような生の声も聞かせていただいたことがあります。  こういうことを考えますと、今回せっかくこういう法案を出すわけですから、国際的な水準に合うように記帳条件をきちんと原則として明記してはどうかと思うのですが、その点はどうでしょうか。
  116. 尾原榮夫

    尾原政府委員 ただいま先生お話ございましたように、真実性の確保の観点からは相当な制度にさせていただいたわけでございます。  お尋ねの点は、正規の簿記の原則の明文化がないのではないかというお尋ねかと思います。  正規の簿記の原則の明文化でございますが、私ども、基本的には会計法規において手当てされるべき性質のものではなかろうかというふうに考えているわけでございます。また、今回の電子データ保存制度でございますが、まさに規制緩和などの観点から、納税者の負担軽減を図るために、各税法の帳簿書類の保存制度を前提として保存媒体の特例を定めるものであるということもまた御理解いただければというふうに思うわけでございます。
  117. 富田茂之

    富田委員 何となくちょっとだまされたような、ごまかされているような気もするのです。本来一般の会計原則できちんと定めていく話だというのはよく理解できるのですが、今後大蔵の方でいろいろな法案を出される際に、今のような点もぜひ検討をしていただきたいと思います。  真実性確保のためにいろいろな手段をとられたと思うのですが、先ほど御紹介しました報告書では、真実性を確保するためには、電子データの改ざん可能性を減殺すること、あるいは入力及び出力の正確性を確保することなどにより、電子データの信頼性を高める措置をとることが必要だというふうに指摘しておりまして、例として、データの訂正・加除の履歴の確保、あるいはコンピューター処理過程の適正性の確保、あるいはデータの入出力記録の保存、最後に保存媒体を制限してみてはどうだ、こういうような提言もされております。  今回の法案ではこの中でどういう手段をとろうとしているのか。法案に書かれていない部分がありますので、そこは大蔵省令によると思うのですが、大蔵省令の方は大分準備が進んでいるとも聞いております。省令の中ではこの辺についてはどのような手段によろうとしているのか、ちょっと説明してください。
  118. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今の真実性確保あるいは可視性一の問題について申し上げますと、まさにコンピューター処理といいますのは、痕跡を残さずに記録の遡及訂正を容易にできるという特性を有しております。そこで、訂正・加除履歴が確保されるシステムの使用、あるいは各帳簿書類間で記録の相互追跡の可能性を確保するというような要件をつけることにしてございます。  それから、当然のことながら、電子データといいますのは肉眼でその内容を見ることはできません。したがいまして、ディスプレーあるいはプリンターの備えつけあるいは検索機能の確保という可視性の確保のための要件を付すことにしております。  なお、遡及的に訂正あるいは加除した場合の識別についてもう少し詳しく申し上げますと、この訂正・加除の履歴が確保されるシステムを使用してください、あるいはその履歴を保存してくださいということで、納税者が遡及的に訂正あるいは加除した場合にはその事実が明らかになるようにすることとしているわけでございます。
  119. 富田茂之

    富田委員 今のところなのですけれども、例えば企業が月次処理を終了した後で、過去にさかのぼって仕訳の訂正という問題が起きてきたときに、今のコンピューターの処理では会計データが遡及的な訂正によるものであるかどうかはわからないわけですよね。現行の簿記の原則に従えば、紙への記入による場合は赤の二重線ですか、これで訂正を行ってきちんと識別が可能なわけですけれども、コンピューター処理の場合具体的にどういうふうに行うのか、今の局長説明でははっきりしない部分があるのですね。遡及的に訂正あるいは加除した場合の識別はどういうふうに具体的にされるのですか。その点もう少しわかりやすく説明してください。
  120. 尾原榮夫

    尾原政府委員 まさに今申し上げましたが、電子データ保存の真実性確保のための要件といたしまして、訂正・加除の履歴が確保されるシステムの使用及びその履歴を保存する、こういうことでございます。それからもう一点が、各国税関係書類間での記録の相互追跡可能性を確保するということでございます。それからもう一つが、そのようなシステム設計書等を保存しておいてください、こういうことでございます。     、
  121. 富田茂之

    富田委員 今のでもちょっとよくわからないんですけれどもね。  じゃ、入出力者及び入出力日時等の記録を保存する方法というのも先ほど例に挙げた中にあったんですが、そういう方法をなぜとらなかったのか。だれがいつ入れたのかがはっきりわかれば、それが一番過去の履歴の確保に資すると思うんですけれども、今回どうもその方法はとられていないようですね。それをなぜとられなかったのかについてちょっと説明してもらえますか。
  122. 尾原榮夫

    尾原政府委員 ちょっと説明が舌足らずでした。  今申し上げたかったのは、まさに訂正・加除の履歴が別のファイルにきっちり事実として明らかになるような、そのような仕組みでなければならないということを考えているわけでございます。  それで、今先生のお尋ねは、まさに入出力のログといいましょうか、そこまで明らかにすればより真実性が高まるのではないかということかと思います。  しかし、現在その入出力ログの保存というものを調べてみましたら、障害が発生した場合への対応等を大体主な目的としているようでございまして、自社システムにおいてその保存というのはどうも一時的なものになっているようでございます。あるいは、市販システムの場合は保存の対象となっておりません。  そこで、入出力ログの保存を求めなくても、今申し上げました訂正・加除の履歴の確保、帳簿書類間での相互追跡可能性の確保等の要件を付せば真実性の確保は図られるというふうに考えまして、今のような考え方をとっているわけでございます。
  123. 富田茂之

    富田委員 こういうふうに理解していいですか。訂正しちゃったところはもうその訂正したのは見えないですよね、コンピューター処理の場合は。ただ、訂正あるいは加除した場合には、そういうことをしたんだというのを別のシステムにきちんと入れておけ、それによって連続性が追跡できるようになるんだというようなことを省令で考えているというように理解してよろしいんでしょうか。
  124. 尾原榮夫

    尾原政府委員 そのとおりでございます。
  125. 富田茂之

    富田委員 あと、今回の法案の中で、このシステムを使える対象者ですけれども、青色申告業者でかつ相当に質の高い記録を励行している企業を想定しているようにも条文を丁寧に読んでいくと思えるんですが、この点、この法の対象となるような人はどういう人たちになるんでしょうか。
  126. 尾原榮夫

    尾原政府委員 この対象者の問題でございますが、青色申告とかに限定しておりません。  この電子データ保存の容認といいますのは、情報化の進展を踏まえ、規制緩和の観点から求められているものでございますので、まさに納税者全体がこの一定の要件の電子データ保存に該当するかどうかということで、この対象を決めることにしているわけでございます。
  127. 富田茂之

    富田委員 あと、今回は税務署長の事前承認制という手続をとっているわけですけれども、なぜ届け出制ではなかったのか。当委員会でも何度かこの質問は出たようですが、なぜ承認制なのかという点と、その承認基準あるいは承認の要件についてもし検討が進んでいるのであれば、こういうふうになっていますよというのを明示していただければ、電子データ保存をしょうと思っている人たちにとっても安心な材料になるんじゃないかと思うんですが、その点はどうでしょうか。
  128. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の電子データ保存制度の導入に当たりましては、この帳簿書類は申告納税制度の基礎となる重要なものでございます。そのようなことから、真実性確保のための要件、可視性の確保のための要件のもとで、税務署長の承認制のもとで電子データ保存ができるようにしてございます。  今、先生、届け出制ではなぜだめかというようなお話がございました。実は、届け出制ということになりますと、訂正・加除の履歴の保存など、事後的には補うことができない要件が出てくるわけでございます。例えて申しますと、後になって訂正・加除の履歴が保存されていなかったということがわかった場合、じゃそれを再現できるかといいますと、届け出制によって後から確認したのではこれは取り返しがつかない状況になるというふうに思われます。  それから、納税者サイドのことでございますが、届け出制でございますと、一定の要件を満たすために非常に慎重になり過ぎるということで、設備投資をたくさんやり過ぎるというようなことも場合によっては出てくるのかなというような問題がございます。  それから、承認制でございますれば、まさに電子データ保存に関する税務署の処分に関して不服があった場合、これはきちっとした手続で納税者が争うという道があるわけでございます。届け出制の場合でございますと、恐らく法律でこういうものはだめだというようなことを書くんでございましょうけれども、それでは納税者が、自分のシステムがこれに合っているものかどうかまさにわからないというようなことにもなってまいります。  以上のような点から、税務署長の承認制にかからしめることにしているわけでございます。
  129. 富田茂之

    富田委員 実務の運用としては、できる限り届け出制に近いような運用をすることが納税者の利益になると思いますので、その点はぜひ御配慮いただきたいと思います。  最後に、この真実性を担保するためにはやはり罰則を検討する必要があるんじゃないかと思うんですね。今回の法案には一切この点触れておりません。アメリカを初めとする諸外国では記帳・保存義務違反に対してきちんと罰則がある。先ほど局長も言われておりましたけれども、そういう罰則があったから電子データ保存を認めることが早くできたんだというような話もありまして、そういうことから考えますと、やはりルールを遵守しない者に対してきちんとした制裁を用意しておくということが真実性確保のために一番必要じゃないかと思うんですが、その点についてはどういう検討がされたんでしょうか。
  130. 尾原榮夫

    尾原政府委員 最初に先生からお話がございました国税庁の私的研究会の報告の中で、「過料も含め何らかの罰則を設けることの適否について、記帳・保存義務全体に対する担保措置の在り方も念頭に置きつつ、今後更に検討を進めることが望ましい。」というような指摘がなされていることは承知しているわけでございます。  現在、記帳義務あるいは帳簿保存義務自体の違反に対しましては、罰則は現行制度では設けられておりません。したがいまして、今御質問の点に関連いたしますと、今申し上げました記帳義務、帳簿保存義務全体のあり方の中でどうしていくかということを検討していくべき課題だろうと考えているところでございます。
  131. 富田茂之

    富田委員 ありがとうございました。
  132. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、谷口隆義君。
  133. 谷口隆義

    ○谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  きょう、初めに法人税の実効税率についてお聞きしたいと思いますが、税は国の基本であり、税によって国が変わる、このように言われておるところでございまして、税制には理念がなければなりません。そういう観点で、まず初めにお聞きいたしたいというように思うわけでございます。  御存じのとおり、従来は実効税率が四九・九八%でございました。先ほどの御答弁にもございましたが、今回の税制改革の結果、実効税率が幾らになり、それはどのような観点、理念からそのような改革が行われたのか、まず初めに御答弁をお願いいたしたいと思います。
  134. 尾原榮夫

    尾原政府委員 法人の、表面税率と我々言っておりますが実効税率で言いますと、四九・九八から四六・三六へ今回三・六二%引き下げられることになっております。  今回の理念でございますが、課税ベースを適正化するとともに、思い切って税率の引き下げを行うということで、国税である法人税の基本税率は三%引き下げ三四・五%ということで、シャウプ税制以来最も低い水準でございます。  また、各国比較を行っても、アメリカの連邦法人税率を下回るわけでございまして、大体他の主要先進諸国並みに国税についてはなるものと認識しているわけでございます。  以上でございます。
  135. 谷口隆義

    ○谷口委員 今主税局長おっしゃったように、今回は国際的整合性、こういう観点からの税率の引き下げがあったのではないか、このように思うわけでございますが、国際間によって税率の差がある。これは、それぞれの国によってそれぞれの状況が違うわけでございますので、差があって当然ということでございますが、しかし、余りこの差が大きくなりますと、国際的な取引の中で高いところがら低いところに流れるというようなことになるわけでございますので、ある程度はそういう国際間の税率を念頭に入れた税制改革が必要である、このように考えるところでございます。  先ほどアメリカの税率について若干触れられましたが、国際的な実効税率の差と申しますか、こういう観点を、今おっしゃったのは多分国税だけが念頭にあっておっしゃったと思いますが、地方税も念頭に入れて、今回、四六・三六%という表面税率と申しますか、実効税率になったプロセスをおっしゃっていただきたいというように思います。
  136. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今、実効税率について全体の数字を申し上げましたが、いわゆる地方税につきましてその内訳を申し上げますと、地方税が一六・五から一五・二八、国税の実効税率は三三・四八から三一・〇八、その結果、四九・九八から四六・三六になっております。  なお、法人税率につきまして、国税の法人税率につきまして三%引き下げということを申し上げましたが、地方の事業税につきましても課税ベースが適正化された分、一二%から一一%へと一%引き下げることにしてございます。  なお、国、地方をあわせた法人課税の実効税率のあり方につきましては、地方の法人課税の問題など、平成年度の税制改正における答申で指摘されているところでございまして、今後、まさに外形標準課税の検討を中心に政府税制調査会で勉強がなされていくものと考えております。
  137. 谷口隆義

    ○谷口委員 御存じのとおり、本年の四月から外為法の自由化が始まるわけでございます。資金的には従来と比較してより一層頻繁に国際間を移動する、こういう状況の中で、先ほど申し上げました、実効税率を国際的な実効税率を念頭に置いて決めるということが極めて重要ではないかというように思うわけでございまして、我々自由党は、従来から四〇%の実効税率をやるべきである、四〇%程度の実効税率でないと、なかなか国際社会の中で我が国で利益を稼得してやっていこうという企業が少なくなるのではないかというような危惧が出ておりますので、そのように申し上げておるところでございますが、今回の実効税率の引き下げ程度で果たして、そのような国際間の資金移動といいますか、むしろ、我が国から資金が出ていくというようなことを避けられると考えていらっしゃるのでしょうか。
  138. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の法人税制改革でございますが、まさに国際的潮流を踏まえた検討を行ったものでございまして、法人税率の三%引き下げ、実効税率におきましても四九・九八から四六・三六と引き下げさせていただきました。まさに企業活力の発揮あるいは国際競争力の維持に役立つ改正だと考えておりまして、経済構造改革に大きく資することになるというふうに考えておるわけでございます。
  139. 谷口隆義

    ○谷口委員 ですから、私申し上げましたように、より一層の実効税率の引き下げが今後必要ではないかというように申し上げておきたいというように思います。  それでまた、先ほど申し上げました、我が国は今どんどんグローバル化が進んでおるわけでございますが、そういうグローバル化を念頭に入れた配慮が今回の税制改革の中で行われたのか、もし行われておるならばどういう観点で行われたのか、教えていただきたいというように思います。
  140. 尾原榮夫

    尾原政府委員 まず、課税ベースを適正化し、税率を引き下げるといいますのは、何度か御説明させていただきましたが、米国、英国あるいはドイツでやられてきた手法でございまして、税制そのものを経済に対してより中立的なものにしていくということでございまして、そういう意味で、今回の法人税制改革は、その基本的な手法、考え方におきまして国際的な潮流を踏まえたものになっているのではないかと思います。  それからなお、課税ベースの問題でございますが、引当金、減価償却、費用収益の計上基準あるいは資産の評価方法など、商法、企業会計との関係も含め検討いたしましたし、また国際的な会計基準がどうなっているかというようなことも念頭に置きながら、今回、適正化を図ることとしているわけでございます。
  141. 谷口隆義

    ○谷口委員 ぜひ、そういう観点を忘れないでやっていただきたいというように申し上げたいと思います。  あと、その次に、これは今回の法人税関係の改正の中で、割賦販売の収益に係る認識基準の変更と申しますか、一部廃止が行われておるところでございます。  この内容を見ますと、従来、割賦販売に係る商品の販売収益につきましては、割賦基準というのがありまして、入金に基づいて収益を認識していく、その段階で課税が行われる、このようになっておったわけでございますが、今回の改正でこれを廃止し、激変緩和措置はこれはあるようでございますが、賦払い期間が二年以上であるという一定の要件を満たす商品の割賦販売についてのみ、現行の延べ払い基準で収益及び費用の額を計算することができるというように改正をされておるわけでございます。これはちょっと私理解しにくいわけですが、どういう観点で廃止になったのか、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  142. 尾原榮夫

    尾原政府委員 まず、やや大上段的に聞こえるかもしれませんが、今回、課税ベースの見直しの視点といたしまして、実は法人課税小委員会の報告にあるわけですが、七つほどあったのではないかと思います。一つは、費用または収益の計上時期の適正化、つまり、税制の立場から、各年の企業業績を的確に把握、確定するため、費用または収益の計上時期を適正化するというものでございます。今回の割賦基準の改正は、まさにこの一に当たるものでございます。  なお、参考までにそれ以外の視点を申し上げますと、保守的な会計処理を抑制する、あるいは会計処理の選択制の抑制・統一化を図る、債務確定主義の徹底を図る、経費概念の厳格化を図る、租税特別措置の一層の整理合理化を行う、国際課税の整備を行う、こういう中での一項目でございます。  この割賦基準の見直しについての考え方をもう少し申し上げさせていただきますと、割賦販売等をする方でございますが、二つの機能があるというふうに思われます。一つは、言うまでもなく商品の供給機能でございます、もう一つ金融機能、この双方の役割があるのかなと思います。  それで、国際的に見てみますと、割賦販売につきましては、基本的には商品等の引き渡し時に収益を計上するということにされているわけでございます。仮に割賦基準このままということになりますと、実は、商品等の供給機能のみを果たして金融機能は別の会社、第三者にゆだねている法人と、今両方の機能を一つの会社でやって割賦基準を採用しているものとの間では、収益計上時期の比較においても不均衡が生じていると考えられるわけでございます。  そういうことから、今回、割賦販売等による商品等の販売収益につきましては、基本的にその引き渡し時に計上することを提案させてもらっております。この場合、今先生が言われましたように、賦払い期間が二年以上の期間にわたるものなどの要件を満たすものにつきましては、現行の延べ払い基準により収益の額及び費用の額を計算することができるように配慮することとしております。  なお、この割賦販売に係る収入のうち金利相当部分でございますが、引き渡し時ではなく、代金の支払い期限到来時に収益計上を行うということを認めることにしているわけでございます。  また、一挙にこれを行うわけではなく、まさにこの課税ベースの適正化は企業活動への影響に配慮する必要がございます。また、財政構造改革というものにも配慮する必要がございます。そういうところがら、六年間の経過措置期間を設けるということにしているわけでございます。
  143. 谷口隆義

    ○谷口委員 それぞれの販売形態というのが多岐多様にわたっておりまして、今主税局長おっしゃったように、引き渡しのときに収益を認識して、その段階で課税されるというのが一般的でございます。  ところが、この割賦販売の場合は、先ほども申し上げましたように、一たん販売する、販売して、その回収は例えば十回であるとか二十回であるとか分割になっておるわけですね。ですから、その入った段階で収益を認識する、これが一般的でございます。また、割賦販売の場合は、最終の入金がないと売り主に所有権は留保されておるわけでございます。  また、先ほど聞いておりますと、供給機能と金融機能というような話が出ておりましたが、この割賦販売業者はいわゆる自己月販と申しまして、ファイナンスも自分でやっているわけですね。どこかのクレジットを利用するということでなくて、みずからが金融機能を持ってやっておるところでございまし、従来この方式がずっと認められてきて、今回このような売上計上基準を廃止しなければいけない理由がどうも納得できないというように思うわけでございまして、今主税局長お話しなさったことを聞いておっても、どうも納得がなかなかできないわけでございます。多岐多様の収益認識基準が御存じのとおり税法でも認められておるところでございますので、これを一律に引き渡し時に課税するというのは若干やはりおかしいのではないかというように思っておりますが、このあたりもう一度御答弁お願いいたしたいと思います。
  144. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回のこの改正は、まさに課税ベースの適正化という観点から行うことにしたものでございます。  なお、日本の、昭和四十九年、改正前の旧企業会計原則におきましては、一種の回収基準を指示していたわけでございますが、昭和四十九年に改正された新企業会計原則におきましては、回収基準は理論的に現金主義に属する基準ではないか、まさに企業会計原則の実現主義の例外となるのではないかというようなことから、原則として企業会計においても既に販売基準を採用するよう改められていたものでございます。  それで、今回の課税ベースの適正化でございますが、税制の面で所得計算を行う場合、できる限り同じような基準で所得が比較できるということが大切だというふうに考えております。  他方、現実の問題として、高額な商品、二年以上にわたるようなものもあることも事実でございますので、まさに二年を境に今回の改正を行うことにさせていただいているわけでございます。  なお、今回の割賦基準の見直しでございますが、中小軽減税率につきましても三%引き下げることにしてございます。それで、まさにこの課税ベースの適正化、この経過措置期間は六年間でございまして、これが過ぎますと、まさに税率引き下げの影響がそのまま軽減効果として出てまいります。したがいまして、今回の割賦基準の問題も、今申し上げましたような法人税制改革の全体の姿の中で御評価いただければというふうに思っているわけでございます。
  145. 谷口隆義

    ○谷口委員 実務の世界を見てみますと、この割賦販売を利用しておる割賦販売百貨店というのがありまして、どうもこれが大体我が国で三百社ぐらいあるようですね。またあと、それ以外に大型建築機械なんかもこのような販売形態をとっておる。ですから、言えば極めて小さいマーケットなのですね。この極めて小さいマーケットを、従来踏襲しておったやり方を廃止をして違うやり方と申しますか、原則的な課税のやり方にやるというのは、まさに中小企業いじめではないか、このように言われるところでございまして、この販売形態からして、当然こうあるべきだという収益認識基準でございますので、どうも課税ベースの拡大というのは私ちょっとぴんとこないところがございます。再考していただきたい。  大蔵大臣、今私が申し上げましたこの割賦販売に係る収益認識基準について、御見解をお願いいたしたいと思います。
  146. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回の課税ベースの適正化に当たりましては、法人課税小委員会を実は平成七年十月に設置いたしまして、この報告書は平成八年の十一月、一年間かかったわけでございますが、審議の都度、実はすべて外に出しまして、意見を聴取しながら進めてまいりました。  また、今回の具体案を作成するに当たりましても、昨年の六月からいろいろヒアリングをし、この割賦の、クレジット協会でございましょうか、そういうところがらもヒアリングをし、進めてまいりました。さらに、今回の具体的試案につきましては、平成九年の十一月にも提出させていただき、十二月にも同じように出させていただくという形で、全体として問題がないように、つまり広く世に問う形で今回の改正を進めてきたわけでございます。  ただ、おっしゃるように、今回の改正が全く影響がないというわけではございませんので、そこはまさに経過措置をとるという形で対処させていただき、今回の課税ベースの適正化の一環といたしまして適正化を図ることとしているわけでございます。何とぞ御理解いただければと思うわけでございます。
  147. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたのでこれで終わるわけでございますが、どうもおっしゃっていることがぴんとこない。私は実務の世界に長いことおりましたので、そういう販売形態の場合に、このようなことを認めてもいいのではないかというように私は思っております。  また、先ほども申し上げたように、マーケットは極めて小さいのですね。これが税収にどのくらい影響があるかといったら、大した影響はないわけでありますので、またそれが間違った処理をしておるということであれば、これまた問題でございますが、そういうことでもないということでありますので、どうかもう一度考え直していただいて、従来あるべき姿に戻していただきたいというように申し上げまして、私の質問を終わりたいというように思います。
  148. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、佐々木憲昭君。
  149. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  政府は、三月十三日に、第一勧銀を初め四行に対して公的資金で優先株を購入するということを閣議決定しました。そして本日、引き続いて十七行に対しても公的資金の投入を認めたということであります。合わせて約二兆円、大変な血税が使われるということになるわけであります。私は、そもそもこういう形で国民の血税を使う、この仕組み自体に反対でありますが、とりわけ問題なのは、今回の大蔵省日銀不祥事に関連をして過剰接待を繰り返した贈賄銀行財政資金を投入するということであります。これはどう考えても私は道理がないというふうに思います。収賄で逮捕されたのは、大蔵省日銀、道路公団など合わせて六名であります。しかし、収賄の裏には当然贈賄があるわけで、収賄には贈賄というのが裏腹の関係であります。  今度の贈収賄事件で、この贈賄側となった銀行、これは現在明らかになっているだけでも、第一勧銀、さくら銀行、富士、東京三菱、あさひ、三和、住友、都市銀行だけで七行であります。これに興銀と長銀を加えまして、九行が贈賄側となっているわけですね。中でも、総会屋に対する利益供与事件で処分中の第一勧業銀行に公的資金の投入を決めたことは、私は極めて重大だというふうに思います。  そこで、松永大蔵大臣にお聞きをしたいわけですが、三月十一日のこの大蔵委員会で、私の質問にお答えになりまして、総会屋への違法な融資、利益供与を行って行政処分を受けた第一勧銀のような銀行については特に厳しい審査をすべきだ、こういう意味の答弁をされました。この第一勧銀については、既に公的資金の投入がそのまま申請どおり決められたわけであります。特に厳しい審査をする、こう言われたわけですから、具体的にどのような審査を行ったのか、この点をお聞かせいただきたいと思います。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席
  150. 松永光

    松永国務大臣 委員指摘のように、不祥事に関与したような銀行の場合には特に厳重に審査する必要があるということを私は答弁をしましたし、そう思っております。実際、この銀行については、社会性、公共性を踏まえた経営理念を厳しく審査する必要がある、そういう考え方から、実際の審査委員会において、御指摘の第一勧業銀行の場合もそうでありますが、私から法令遵守体制をどのように整備していこうとしておるのかということの確認を求めると同時に、特に倫理規定整備、それから反社会的勢力との決別宣言といいますか対決姿勢、こういったものを明確にしてもらいたい、こういつたことを申し上げて、その点についての確認をした上で、そこで申請を認めるような議決に実はなったわけであります。  今申したような点については特に厳しく審査を実際にしたわけでありまして、しかもそれは、審査の際に来た銀行の代表者、頭取であったかと思いますけれども、今申したような点を発言して、そしてそれに対応する書類も実は出してもらって、それで審査を終えたということでございました。
  151. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 では、具体的に伺いますけれども、今回贈賄事件を引き起こした銀行、先ほど述べましたが、九行がそれに当たるわけですけれども、具体的なこの贈賄の事実について社内調査を行うということは、当然それらの銀行はやらなければならないと思うわけであります。最低限それは必要だと思うのですけれども、例えば健全性確保計画に、そういう内容については書かれていますでしょうか。
  152. 松永光

    松永国務大臣 前回決まったものについては、健全性確保に関する計画書も公表されたところでありますが、きょう閣議決定した分も五時過ぎに公表になったはずでございます。それをごらんいただければ大体のことがわかることになっておるわけでありますが、まず倫理規定遵守、倫理規定整備してこれを遵守するという姿勢、それから、特に総会屋絡みの銀行については、反社会的勢力との決別宣言、対決姿勢、こういったものが約束されておるはずでございます。そういったことをきちっと代表者に申し渡して、それに基づく書類が出て、それで審査を終えたという経過でございます。
  153. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私が聞いているのは、そういう規定を新たにつくったりあるいは厳しくしたり、そういうことをやっているかどうかということではなくて、贈賄事件を起こしたわけですから、その贈賄事件を起こした銀行が、その行内で実際に何があったのかを調査し、そしてその規定に基づいて処分を行う、こういうことを具体的に表明しているのかどうか、あるいは書かれているのかどうか、この点を聞いているわけです。
  154. 松永光

    松永国務大臣 贈賄をしたということで当局の取り調べを受けた者に対する事実関係と処分というものは、これは捜査当局がやるべき事項だと思うのでありまして、私どもがやったことは、これから絶対しないような体制をつくったかどうかという点に我々は視点を置いて審査をしたわけであります。すなわち、倫理規定をきちっとつくってそれを遵守するようにしておるのかどうか、先ほど言ったように、総会屋など反社会的な勢力との対決姿勢をきちっとしておるのかどうか、それを実行に移すという姿勢があるのかどうか、そういった点を私どもは特に注意をして、そして申請銀行の代表者に申しつけたということでございます。
  155. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 検察が調べるというのは当然やっているわけですけれども、問題は、銀行自身が、みずからの行内で起こったことですから、みずからの自浄作用として、実際に何が行われたかについて調査をし、どこに責任があるかを明らかにして、そして一定の規定に従って処罰をする、こういうことをやっているかどうかというのが極めて重要なわけであります。それをやらずに、一般的な規定をつくった、これだけでは何の自浄作用にもなっていかないわけでありまして、実際、今までもそれぞれの銀行は独自の倫理規定を持っているわけであります。持っていながら事件を起こしているわけであります。  ですから、繰り返さないという体制をつくるためには、もう二度とやりませんというような、あるいはこれからはこういうことを守りますという一般的なことではだめで、実際に起こっていることについてどのような対応をしているかということが重要なわけであります。健全性計画に書かれていますか、その点は。
  156. 松永光

    松永国務大臣 繰り返しになって恐縮でございますが、贈賄をしたということで捜査当局の取り調べを受けた者についての処置というものは、これは捜査当局が厳正にやることだというふうに思っておりますが、私の方で注意したことは、これは特に第一勧銀の場合でございますが、まず「公務員等に対する接待・贈答の全面禁止」それに対して第一勧銀の約束といいますか誓約したことは、   当行は、清例で透明性の高い経営を長期間に  わたり確保することを内外に表明しておりま  す。このような方針のもと、公務員およびみな  し公務員等に対する接待・贈答を全面禁止する  ことといたしました。既に全店宛て通牒を発信  し、これについての周知徹底を図ったところで  あります。それから、   検査体制につきましては、検査部による臨席  検査時に、公務員およびみなし公務員等に対す  る接待・贈答に関し、その遵守状況につき検査  を実施いたします。それから、   この定めに違反するものにつきましては、法  律違反となる場合は言うに及ばず、当行服務規  律違反ということになり、その違反の程度に応  じて、懲戒規程に則り、厳正な人事処分を受け  ることとなります。こういつたことを誓約させたというか、そういうふうにしたわけでございます。
  157. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の答弁は、第一勧銀が出した健全性確保のための計画の内容紹介されたわけでありますが、私もこれは持っているのです。持っておりますが、問題は、今回問題となった贈賄事件についてどのように調査をし処罰をするのかということが書かれていないのですよ。「当行は、清例で透明性の高い経営を長期間にわたり確保することを内外に表明しております。」表明していたら、こういう事件は起きないわけでしょう、表明したとおりやっていれば。しかし、起きたわけですから、起きた以上は何が起きたのか調査をし、だれが責任をとるのか、この点をはっきりさせるということが、健全性を確保するためには大事なことであります。そのことについて何も書いていないじゃないですか。  私は、今おっしゃったように、二十一行の健全性確保計画について全部取り寄せました。持っております。書いておりませんよ、今回の問題について。九行が贈賄事件を起こしたわけですね。贈賄事件を起こしていながら、今回の贈賄事件について具体的な調査もしない、具体的な処罰もしない。そういうことをやらないと、実際にはまた同じようなことが起こってくるのです。  その点について、私は今回の公的資金投入というのは極めていいかげんだと思うのですね。贈賄事件を起こした銀行に対して国民の税金を注ぎ込む。しかし、贈賄事件を起こしたことについては何ら具体的な調査も処罰もしない。銀行自身が自浄作用を発揮しない。それが今回のやり方だということですよ。私は、こういうやり方は絶対に認めるわけにいかない。  この点について、時間も参りましたので、私どもは引き続き政府に対して強く要求を行うということを表明しまして、もう時間がありませんので、これできようは終わらせていただきます。
  158. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、上田清司君。
  159. 上田清司

    ○上田(清)委員 お疲れさまです。  先日は、大蔵大臣には問題があれば厳正に対処するという、そういうお言葉をいただきまして、ありがとうございます。最高責任者の威令が行き届いて、十分調査をしていただいた上できょうは一御答弁ができるものと期待しておりますので、たった十五分ですので、簡潔明瞭に先日の宿題を答えてください。いいですか。もうわかった範囲内でどんどん言ってください。
  160. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  何点も御指摘いただいておりますので、簡潔に申し上げたいと思います。  まず第一点、日産生命作成の金融機関と日産生命連名のパンフレット、WiIl-Wellについての日産生命にどのような指導をしたかという点でございますが、当局におきましては、この金融機関と日産生命連名のパンフレットにつきまして、大分昔でございますが昭和六十三年七月に、保険会社以外の者が保険募集者であるというような誤解をされかねないということで、日産生命のみの表示に改定するよう指示しております。当局の担当係長から日産生命の担当課長に口頭で指示をしております。日産生命は、その指示を受けまして、六十三年度末を目途に委託代理店からのそのパンフレットの差しかえ作業を行いまして、ほぼ元年三月に終了したということでございます。  ただ、細かくなりますが、提携先金融機関のうちスルガ銀行につきましては、既に元年一月には原則提携ローンそのものを取りやめておりましたし、それ以前にも提携の縮小を求めておりましたので、削除したパンフレットの差しかえ自体を行う必要がなかったと思われますので、差しかえが実際に行われたか否かは明確でございません。  それから第二番目に、スルガ銀行に対する指導の経緯でございますが、御指摘が大きく二つございまして、一つは、スルガ銀行作成のローンチラシ、ステップという保険料ローンのチラシでございますが、これにつきましては、昭和六十三年六月に外部からの御指摘を受けまして事実関係の調査を指示したところ、同じ六十三年六月にこれはスルガ銀行より、銀行員が保険募集を行っているかのような誤解を契約者に与えないよう全行員に周知徹底するとともに、このチラシを回収し文言を修正する等の回答を得たわけでございます。  当局におきましては、さらに指示をいたしましたところ、銀行におきましては七月、翌月に至りまして古いローンチラシを回収し、改定した新しいローンチラシを使用することとなったとの報告を受けております。  それから、同じスルガ銀行の第二点目の御指摘でございますが、スルガ銀行内部資料の中に「本件はたてまえのことであります。」という記載のあった資料でございますが、これは提携ローンに係るスルガ銀行内部の研修教材でございました。これにつきましては、平成元年五月、正確には二十四日でございますが、衆議院の大蔵委員会におきまして矢島委員からの御指摘を受けて、同日、スルガ銀行に対して事実関係の調査を指示したわけでございます。これに対しましてスルガ銀行から、この研修教材は前年の昭和六十三年、さっき申し上げましたローンチラシの是正指導の際よりもさらに以前に作成した内部教材でございまして、平成元年五月にはこの研修教材を既に使用しておらなかったわけですが、法律に抵触するかのごとき疑念を抱かせる文言があるということから、行内において直ちに回収を指示した旨の報告が、同じ五月二十五日でございますが、当局にございました。  本件一連のてんまつにつきましては、翌月、平成元年六月に改めててんまつ報告を求めるとともに、その際当局からは、部内研修の場とはいえ、違法行為を容認するかのごとき文書を使って商品説明の研修を行うなど行き過ぎた行為を根絶するよう再度指示しておりまして、同じ六月に、当時の平澤銀行局長がスルガ銀行の岡野頭取を呼びまして、健全かつ適正な業務運営に努めるよう厳しく指導いたしております。  なお、その提携ローンにつきましては、スルガ銀行においては平成元年五月以降取り扱いを行われていないと承知しております。  それから、スルガ銀行以外の提携金融機関につきましてどのような指導を行ったのかという点でございますが、先ほど申し上げましたように、日産生命作成のパンフレット、Will-We11の表示が連名になっておりましたことにつきましては、スルガ銀行以外についても金融機関の名称は削除されたところでございます。  この際に、各金融機関に対して当局が直接指導したのかとのお尋ねでございましたが、これは、まず当局としましては各金融機関の自主的な対応にゆだねたところでございまして、金融機関すべてに一律の指導を行ったわけではございませんが、個別具体的な苦情等があった場合には、申し出内容に即してその都度対応してきたものと承知しております。  なお、ローンチラシの書きぶり等は金融機関によって区々でございまして、必ずしも一律に指導しがたい面があったことは御理解いただきたいと存じます。  とりあえず、以上でございます。
  161. 上田清司

    ○上田(清)委員 ちゃんと調べれば、ある程度わかるじゃないですか。それを、あなた、何にも答えずに、個別案件だから答えられませんなんて平気な顔して言っていたでしょう。だめですよ、院をなめちゃ。丁寧に調べればきちっと調べられるということであります。本当に大変御苦労さまでした。  それで、少し確認したいんですけれども、明確な違法性はなかったというふうな判断も、前回、答弁の中であったのですが、この日産生命そのものの内部の報告書の中で、今お話しされたような案件で、六十三年の十月二十日あるいは十一月一日の報告書についてのヒアリングを受けたが、担当課長補佐の所感は、文書内容はともかく、極めて銀行法、募集取締法違反を推定し得る取扱件数であった、こういう内部文書を日産生命の中に残しておりますし、後でぜひ担当の方でも私の部屋にでもとりに来ていただいても結構でございます。また、大蔵省保険部保険第一課斉藤募集管理係長、小林調査係長の名で、いわゆる提携ローンのヒアリングをやった内容が日産生命保険の内部資料として残っておりまして、必ずしも内部で使われた教材が結果的に何ら違法性に影響を与えなかったような内容じゃない資料を含んでいるというふうに私は思っております。ここで十五分間で議論する時間がございませんので、ぜひ係官にこの資料をとりに来ていただいて、もう一回再調査していただきたいというふうに思います。  とにかく、最終的には、ローン提携金融機関が百六十三行、契約件数が四十万件、年金保険だけで三十三万件、日産生命経営破綻時において総資産の半分の一兆円がこの年金保険であったということでありますし、あなた方が注意した後でもぐんぐん伸びているんですよ、契約件数が。半端な伸び方じゃないし、また代理店を使ってやったということも判明しておりますし、協力預金のこと、それから代理店の問題について、私まだ十分言及しておりませんので、委員会でやるのか部屋でぐんぐんとやるのかわかりませんけれども、どっちにしてもまだ十分じゃありません。私は納得できませんので、ぜひ今申し上げましたことを注意していただいて、確認の作業をしていただきたいと思います。  御苦労さまでした。ありがとうございました。終わります。
  162. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、北橋健治君。
  163. 北橋健治

    ○北橋委員 民友連の北橋健治です。  まず最初に、大蔵省並びに日銀不祥事というものが起こりまして、捜査が続いております。国民の間には著しい不信感というのが渦巻いております。そしてまたマスメディアの社会でございますので、さまざまな報道、それはすべてが真実であるとは思えませんけれども、いろいろな報道がされております。  この間、私が地元で多くの方から指摘を受けたのは、接待魔王という方は逮捕されるんですか、こういう話でありまして、魔王というのは、ゲーテの詩の魔王であります。あるいは、最近では接待大魔王という言葉もあるのだそうでありまして、つまり、いろいろな情報をマスメディアを通じて庶民、一般国民の方はよく知っておられます。そして、その中で、皆さんが非常に不思議に思っていらっしゃるのは、不幸にして自殺をされたり、あるいは捜査当局に逮捕された例というのはノンキャリアの方、そして最近ではキャリアの方も含まれておりますけれども、実際、業界との癒着だとかあるいはいろいろな問題で問われるような接待、こういったものは最高幹部の方が一番接待額も大きいのではないか。これまで逮捕された例を見ていると百数十万とか二百何十万という額でありますが、報道によりますと七百万、八百万だとか、一千万以上だとか、そういった話が出てきているわけです。  したがいまして、まず、大臣にお伺いいたしますが、私は、すべての、五百人以上と言われていますけれども、その金融行政に携わった方の調査をするのには時間がかかると思います。しかし、もうそんなに多くの方ではないのではありませんか、世間の関心を持たれている方は。十名前後でしょう。そういった方々について、それは皆さん幹部であります。局長、審議官クラスの方であります。そういった方についてはもうとつくの昔に調査は完了している、私はそう思うのでありますけれども、伝え聞くところによりますと、調査はまだだという説もある。したがいまして、五百数十人全体の調査が出る前に、大蔵省の高官については速やかに、この接待、その経緯、そういったものについてきちんとした報告をまず本院になされるべきではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  164. 松永光

    松永国務大臣 前にも申し上げたことがあるかもしれませんけれども、今回の調査は、当然のことながら、国家公務員法に基づく厳正な処分をするということを前提にして、その処分を厳正に行うための資料集めという性格を持った調査でございます。したがいまして、内容的にも、委員を含めて多くの人に一定の評価が得られるような内容のあるものでなければならぬというふうに私は思っております。というのは、去年の秋の調査が余りに簡単というか短期間でやったものですから、後で非常に批判を浴びたということもありますので、それを浴びないように、スピーディーに、かつ内容はきっちりと、そういう考え方で私自身は取り組みを始めているところでありますが、御指摘のような、幹部クラスの人について先にさっとやれという御指摘でございますけれども、やはり会食等の場合には、同席者の話も聞いて、そしてそれを突き合わせるという作業もしなければなりません。そして、処分はぽつりぽつりではなくして、まとめて一括してやるのが妥当だ、こう思っておるわけでありまして、その意味で、一部の者について前倒し的にというのは、御意見としてはわからぬでもありませんけれども、やはりまとめて処分をしたいというのが私の考え方でございます。  さようなことでありますので、私自身、非常にそれに当たる時間がとれずにいらいらしているところでありますけれども、事務方には急いでやるように、そしてさらに、予算委員会でございましたか、どこかの委員会で、政務次官にも手伝ってもらって、そしてやれという話でございますので、その点も、政務次官に相談相手になってもらって、そして進めていきたい、こう考えておるわけでございます。     〔委員長退席井奥委員長代理着席
  165. 北橋健治

    ○北橋委員 今の答弁は極めて遺憾であります。大蔵省の再生、信頼をから得るために、大臣は先頭を切って頑張ると言ってこられたわけでありまして、今国民が注目しているのは、さまざまなマスメディアを通じて極めて疑惑と思われているような人物、十人前後であります。その人たちに対して調査をするということは、時間がかかるはずがない。この問題で調査を始める、あるいは捜索が入った時点から相当の時間がたっておりまして、私はそういった意味で、国民の目をそらせる意図があるのではないか、そう思っております。  確認しておきたいのですが、小泉厚生大臣の場合は、厚生省汚職のときには、調査をするときに、もし事実と違うことができた場合には厳格に処分するぞという、そういう指示を彼は号令一下出したのですね。これは相当きいたそうです、いろいろ聞いてみますと。当然それぐらいのことをやっていらっしゃるのでしょうね。  それから、もう一度聞きますけれども、なぜ十人前後のこれだけ疑惑ではないかとさんざん指摘されている人物について、五百数十人と一緒にしか出せないのか。それではとても私は大蔵省の再生のために頑張っている大臣とは思えません。再答弁を求めます。
  166. 松永光

    松永国務大臣 正直に述べた人がばかを見て、うそをついた人が得をするなどということは、絶対に私はあってはならぬと思います。その意味では、調査の結果が日ごろその人が申し立てたことと異なる、こういった場合には厳しく処分を行うというのは当然のことだというふうに思っております。
  167. 北橋健治

    ○北橋委員 押し問答をしていても、大臣は何か五百数十人と一緒にしか出せないということでございますけれども、これではとても私は国民の理解は得られない、そしてこれからずるずると国民の不信感は増幅していきかねない、大変憂慮すべき御発言だと理解をいたしております。  さて、刑事的な責任というのは捜査当局が今やっているわけでございますが、先ほども申し上げましたように、逮捕された人たちというのは、位といいますか役職が、局長、審議官クラスではございません。接待の額も、今までの収賄罪の過去の事例からいいますと、それほど高くはありません。しかし、いろいろなメディアを通じて、七百万を超えるような人の話がいっぱい出ているわけでございまして、私は当たらずとも遠からずであろうと思います。そういう方々については、私は、刑事的な責任は問われなくても、行政官として社会的道義的責任は免れない、そのように思いますが、大臣、どう考えますか。
  168. 松永光

    松永国務大臣 一部の新聞とか雑誌とかに出ていることが事実とすれば、捜査当局の捜査の対象でなくとも、これは相当厳しい処分をしなければならぬ事態だろう、そういうふうに私は思います。
  169. 北橋健治

    ○北橋委員 大臣、もうそういった問題になりそうな方の人名は特定されているのじゃありませんか。  現に、日銀のいろいろな汚職もありまして、金融行政に対する信頼を取り戻すためどういうことをすべきかというときに、ノンキャリアの人たちとか捕まったキャリアの人たちは額がまだ非常に低い、それの二倍、三倍もらっている人がいるのは当然だろう、そんな人たちはこの際総退陣してはどうかという、いろいろな識者のそういった声もありますし、私はそれは世論の支持を得られると思うのです。  したがいまして、捜査が一段落をした時点におきまして、逮捕された人と比べて明らかに接待額が大きい人たちは、私は無罪放免ではあり得ない、そういうことを無罪放免にしておっては、私は大蔵省に対する信頼を取り戻せないと思いますが、どうですか。
  170. 松永光

    松永国務大臣 報道を真に受けるわけにはまいりませんから、先ほど申したとおり、事実とすれば、私は、厳正な処分をしなければ済む問題じゃない、そう思っております。
  171. 北橋健治

    ○北橋委員 もう少し捜査当局の状況を見守った上で、改めて質問させていただきますが、私は、この問題はきちんと本当に早くけじめをつけなければ、大蔵行政の再生にはつながらないと思っております。  きょうは法人税質問の時間でございますが、前回も質問させていただきました。橋本総理も、今回の税制改正によっても、なお外国に比べて高いという認識を経済団体首脳に対して示されておりますが、松永大蔵大臣も総理と同じように、今回法人税の税率を下げたわけでありますが、なお高いという共通の認識をお持ちになっていると思います。  それで、じゃどうやって下げるかというときに、前回質問しましたように、自民党の森総務会長ははっきりと、四〇%ぐらいまで実効税率を下げねばならぬ、その場合には地方税だ、法人事業税を引き下げることをやらねばならぬと言いました。つまり、国税の世界法人税をさらに下げるということは、そのコメントの中にはございません。  そこで、大臣にお伺いいたしますが、これから景気対策でいろいろな追加というものは当然お考えになっていると思いますけれども、公共事業だとかあるいは所得税減税、いろいろな議論がありますが、やはり設備投資を促進する、企業の活性化を図るということは景気対策で重要な柱でなければなりません。大臣、総務会長言われるように、それは地方税の世界なんだ、そのように割り切っておられるのでしょうか、それとも、大臣も今なお割高だと思うのであれば、国税の世界において努力をされる余地がおありなんでしょうか、お伺いいたします。
  172. 松永光

    松永国務大臣 国税における法人税減税措置、今まさに御審議をお願いしているところでございます。国税と地方税と合わせた実効税率が外国に比べてもまだ高いという認識は持っておるわけであります。その意味では、これから目をつけるべきは法人に対する地方税だ、こう思っておりますけれども、その点については、地方財政がどうなるかということも議論の対象に当然なることでありますし、いずれにせよ、この問題についてはこれから税制調査会で議論をしていただいて、そしてその答申をいただいてから対応すべきことだというふうに私は思っております。
  173. 北橋健治

    ○北橋委員 追加の景気対策をやらないのであれば、その答弁でもいたし方ないと思いますが、現に六兆円だ、十兆円だという追加景気対策予算成立後やろうとしているではありませんか。いろいろなところで自民党首脳も語っておられる。そこで議論になっているのは、公共投資がどうしても中心だという方が多い。そして外国からの要請は、個人消費に元気が出るためにはやはり減税が大事だという議論がある。そういう中で、今の大臣のお考えでは、政府税調でまた検討してもらうということなんですが、随分先の話です。  なぜこの話を持ち出したかといいますと、この法人事業税を下げるということになりますと、当然外形標準課税という、課税ベースの適正化という議論とセットになります。しかし、それは六十数%とも言われている赤字法人に対する課税にかかわってくる、非常に難しい問題なんです。ということは、この難しい問題をクリアするためには相当の時間がかかる、それまでは法人課税というのは下げられないのか、今回の三%下げるだけで終わりなのかということになってしまいます。私は、努力の余地があるのではないですか、例えば投資減税だとか政策減税の形で法人税を下げる、そういう道もあるのではないか、そういう答弁を期待しておったのですけれども大臣、どうなのですか。
  174. 松永光

    松永国務大臣 景気対策とのかかわりで、我が党の方でいろいろな意見が闘わされているということ、それは私の耳にも入ってきておりますが、今、私は、平成年度予算の速やかなる成立をお願いしている立場でありますので、現段階においては、私の口からは景気対策云々ということを言うわけにはまいらないのです。ただひたすら、平成年度予算とそれに関連する今御審議を願っているような税制改正その他、これを平成年度の補正予算と切れ目なく実行できるように、早く成立させていただくことをお願いするというのが私の立場でございますので、御了承賜りたいと思います。
  175. 北橋健治

    ○北橋委員 それだったら、今回の法人税引き下げてもなお国際的に見て高いと総理が言われたのですけれども大蔵大臣も共通の認識を言われたじゃありませんか。なお高いとおっしゃっているのだったら、方向性ぐらい示すべきですよ。既に検討されていると思うのですね。そして、自民党首脳もどんどん発言しているわけですから、そういった形で国会を軽んずるような答弁が出たことは本当に残念であります。  さて、前回質問いたしましたときに、有価証券取引税は二年後に廃止をする、とりあえず半減だという話がありました。そのときに、政府税調の中でそれまでにどうしても解決をせねばならぬ問題がある、それは課税の適正化という問題であります。つまり、申告分離に一本化をすべきであるということが政府税調の答申の大宗の意見として書かれているわけですけれども、これが解決しなければ、二年後ゼロにはできないわけですね。廃止はできない。そういうふうに考えていいですね。
  176. 尾原榮夫

    尾原政府委員 まさに今回の税制改正要綱におきましても、「平成十一年末までに、金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止する。」こととしている、そのとおりでございます。
  177. 北橋健治

    ○北橋委員 政府税調の中の議論でも、なぜ今回急いでこの申告分離一本化ができなかったかというと、現在の株式市場に影響が出ることを配慮していると書いてあります。それはそうですよね。今、例えば選択分離であれば五万円ぐらいで済んでいるものが、申告分離になれば物すごく高くなるとかあるわけですから、それはなかなか個人投資家も考えてしまいますね。  本当にできるのですか。間違いなくこの問題をクリアすると。株式市場に影響が出るのは今だけじゃありません、将来だってそうであります。間違いなくこれをクリアして、申告分離一本化にして二年後に廃止すると明言されますね。
  178. 尾原榮夫

    尾原政府委員 今回、株式等譲渡益課税につきましては、現下の株式市場に配慮をして、現行制度のまま延長することにさせていただきました。  これからでございますが、「平成十一年末までに、金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止する。」ということで、文字どおりこの方針でまいりたいと思っております。
  179. 北橋健治

    ○北橋委員 要するに、現在の株式市況に不測な事態を招いてもいけないこともあって先送りしたわけですね。  株価についてちょっとお伺いいたしますが、大蔵大臣は、三月期末の株価がどの程度まで市況があれば満足されますか。
  180. 松永光

    松永国務大臣 株価はいろいろな要素によって市場において定まるものだと思っておりますが、大蔵大臣としては、株価そのものについて、こういう程度が望ましいとか期待するとかという発言は、これは控えさせていただきたいというふうに思います。
  181. 北橋健治

    ○北橋委員 今の政治はマーケットによって突き動かされるような時代になっております。そして、いろいろな首脳陣が口先介入という形で、三月末の株価が一定のところまでいくように必死の努力をされていると思うのです。  そこで、大臣の基本的なそういう立場というのはわからないでもないのですが、自由民主党の政調会長は、このことについてはっきりとこれまで発言されてきております。去年の十二月十日、平成九年三月末、つまり一年前ですね、一万八千三円、そこを必ずクリアしたい、これができなければ責任問題になるというところまで思い詰めた発言をされているのです。そして現に政調会長は、次から次へと日本景気回復のために必要な施策というものを大胆に発言されています。その中には、私も賛同できるものも一部はございます。  一万八千三円、責任問題になるのだ、そういうふうに言っておられますけれども大臣、そういった自民党首脳の発言があるのですが、関知しませんか。
  182. 松永光

    松永国務大臣 株価の問題について影響を与えるような発言は、大蔵大臣としてはこれは差し控えなければならぬことだというふうに私は思います。  山崎政調会長は、その意味ではやや気楽な立場かな、こう思うわけでございます。
  183. 北橋健治

    ○北橋委員 それでは別の角度から聞きますが、PKOという対策があります。既に報道がいろいろとされておりますように、政府・与党内部で、郵便貯金、簡保資金、その運用資金を使って、PKO対策で一兆円以上の規模で検討が煮詰まってきているという趣旨は何度か報道されております。この間も私は質問させていただきましたが、大臣は一言、そういう政府内の話は一切聞いていないとお答えになられたわけです。現時点でどうでしょうか。
  184. 松永光

    松永国務大臣 これも山崎政調会長及び副会長さんたちの中で真剣に議論されているということは私の耳に入っておりますけれども、この問題は、実は郵政大臣の方で簡保事業団の認可予算の変更ということがあるのが先なのでありまして、そのことについての郵政大臣からの協議の申し入れその他はまだございません。あるのかどうかわかりませんけれども、その意味では、まだ私どもの方に正式にそのことについての相談は来ていないわけです。山崎さんあたりが一生懸命議論をしていらっしゃるというのが現在の状況だというふうに私は理解をしております。
  185. 北橋健治

    ○北橋委員 三月七日付の毎日新聞でございますが、これによると、私どものうかがい知れない与党首脳陣の話し合いが出ています。まず、橋本首相の方から「郵貯・簡保の公的資金による直接投資も含めた株価対策を検討してもらえないか」、加藤幹事長「法的に無理なことは、総理自身がよくご存じでしょう」、首相「だからこそ検討してほしい」。そして具体的に、一兆円に乗るか乗らないかの検討をしているという報道が出ています。ほかにも、朝日新聞であれ、いろいろな新聞に出ております。その報道の中で、大蔵省主計局としては慎重である、そういったコメントも報道されております。  ここで、大蔵省主計局あるいは証券局、こういった政府・与党内の話し合いがあることは事実だろうと私は思うのですけれども、検討に加わっているでしょう。郵政省だけの話ではないでしょう。どうでしょうか。
  186. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 大臣からお答え申し上げましたように、党におきましてそういう議論があり、郵政省におきましても党の動きを見ながらそういう検討を慎重にされているということは聞いておるわけでございまして、そういう状況でございます。  大臣から先ほども答弁ございましたが、簡保、郵貯の資金は、法律上郵政大臣が管理運用するものでございますから、郵政省がまずこの問題をどう考えるかということがポイントになろうかと考えております。
  187. 北橋健治

    ○北橋委員 この間の私の質問は先週だったと思います。政府・与党内のやりとりは聞いていないとお答えになっているのですよ。つまり、事務局は大蔵省、主計局も証券局もあるわけですから、当然そんな問題では私は合議があるだろうと思うのですね。大臣に上げてなかったのですか。もう一兆数千億円まで具体的に話が煮詰まってきていると報道されているわけですけれども、つまり、大臣の全然知らないところで、事務局だけで検討しているのですか。
  188. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 具体的に党の方でそういうことで煮詰めているということは聞いていないわけでございますけれども、検討はされておるわけでございまして、そういうことを踏まえて、私どもも話は聞いておるということでございます。
  189. 北橋健治

    ○北橋委員 いずれにいたしましても、これ以上いろいろとやってみても答えは出てこないようであります。しかし、これだけの、一兆数千億円規模だと言われているのですけれども、次の景気対策に盛り込まれるだろうとみんな予測しております。私も予測しておりますけれども、こういった重要な問題について、証券局あるいは主計局というものを部下に配する大蔵大臣が的確にその情報をつかんでおられない。つまり、党の方だけでというのは極めて不自然であります。しかし、それ以上言ってもお答えは返ってきませんから、残念でありますけれども、どういうものが出てくるかを見守りたい、こう思っております。  所得税に関しまして、女性少年審議会の方から、二月二十日、建議が出ております。これは、パート労働者の税制の見直しを求める内容でございます。  御案内のとおり、働く女性はどんどん社会に進出しておりまして、パートの形態で働いている方の労働力なくして今の日本経済は成り立たなくなっております。ところが、どなたに聞いても、年収が百三万円を超えますと、そこで控除の関係で場合によってはその世帯で手取りが減る場合もあるということで、百三万円の頭打ちというのは非常に悩ましい問題になっております。したがいまして、年収が百三万円を超えないように、勤務形態を変えたり、いろいろと苦労をしている。つまり、この百三万の頭打ちという問題が、パートで働いている女性にとりまして大変桎梏になっていると思うのです。  そういったところを見直してはどうかということなのでありますが、既に政府税調におきましても配偶者控除の見直しというのは前々から議論になっておりますけれども、今回、審議会で建議が出ました。この問題について、今度は踏み込んで検討して、結論を速やかに出していただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。     〔井奥委員長代理退席委員長着席
  190. 尾原榮夫

    尾原政府委員 近年女性の社会進出が拡大しておりまして、まさに今の税制や社会保険制度等がパートタイムの労働に影響を及ぼしているのではないかという指摘がなされていることは承知しております。  ただ、税制面で申し上げますと、先生からお話ございましたように、昭和六十二年、六十三年の抜本改正におきまして、配偶者特別控除の創設、拡充を行ったわけでございます。つまり、配偶者控除のほかに、もう一つ消失控除になる配偶者特別控除というのを重ねることにしたわけでございます。これによりまして、それまではパートの主婦はその収入が一定額を超えますと、御夫婦での手取り収入がかえって減少するという問題がございましたが、税制面からの逆転現象の問題はこれによって解消されたというふうに私ども考えているわけでございます。  なお、それでは何が残っているかということになるわけでございまするけれども、例えば扶養手当、これは一定金額を奥様が超しますと打ち切りになってしまいます。ゼロになります。あるいは、一定金額以上に奥様の収入がなってまいりますと、みずからが健康保険あるいは年金に入らなければならないということになっております。そういうことで、税制面からの問題は解決されているのかなと思います。  いずれにいたしましても、この問題、実は、個人所得課税の課税単位を個人とするのか世帯とするのか、あるいは家庭におきます配偶者の貢献をどう評価するのか、さらには片働き世帯と共働き世帯との税負担の問題というようなところまで絡んでくる話でございまして、このような個人所得課税の基本問題として、このパートタイマーに関する税制のあり方についても検討していかなければならないと思っているところでございます。
  191. 北橋健治

    ○北橋委員 パートの税の問題につきましては、従前から各方面から指摘されております。したがいまして、今後検討するのは大いにやってほしいのでございますが、もう先延ばしできないところまで来ているのではないかと思います。したがいまして、強くその点を要請しておきたいと思いますけれども、今回の審議会の建議が出たのを機会に、ぜひとも関係方面の理解を得て、この問題についての大きなステップを踏み出してほしい、このように強く要請しておきたいと思っております。  一点、今回は、政府税調の今後の課題として残された納税者番号制の導入の問題について聞いておきたいと思います。  といいますのは、同僚委員からのこれまでの質問のお答えとして大臣がおっしゃっている方向が、私には、納番制の導入について、新しい松永大臣が積極的に環境整備を図っていこうという意欲がうかがえなかったからであります。大臣、まず、納番制につきましては、政府税調の答申で今後の検討課題になっておりますけれども、今までに比べますとかなり踏み込んだ答申になっております。つまり、いろいろと問題はあるけれども、着実に環境は整いつつあるというのが行間ににじみ出ております。  そういった意味で、納税者番号制度の導入について大臣は積極的に今後対応されるお気持ちかどうか、まず確認しておきたいと思います。
  192. 松永光

    松永国務大臣 私は、国民のこれについての認識、理解、そして支持する側がどの程度の率になるのか、要するに世論の動向をしっかり見極めてやっていかなければならぬ問題だろう、こう思っておるわけなんです。  税を取る側からすれば、非常に望ましいことでしょう。しかしながら、それとの関連で、個人は自分のプライバシーが果たして守られるのか等々の不安感を持っておると私は思います。したがって、そういう人たちの理解と支持、そういったものがどの程度集まるのか、こういつたことを判断しながら決断すべき問題だろう、こう思っております。
  193. 北橋健治

    ○北橋委員 大蔵大臣は税制の総責任者でございまして、世論の動向をじっと見ながら云々するのでは、前へ進みません。そうではなくて、取る側の話だというふうにおっしゃいましたけれども、それは基本的に私は誤りだと思います。なぜならば、納番制の導入に積極的なのは、取られる労働者、勤労国民であります。サラリーマンは所得を一〇〇%把握されております。トーゴーサンピン、クロヨンと言われて、利子や所得や資産やいろいろな課税に対して自分たちは非常にインバランスである、だからきちっとしてほしい、どうしても税に対する信頼感が持てない、そういう中から、総合課税であるとか納税者番号制度を検討してはどうかという声が起こっているわけでありまして、本来、最も納番制を望んでいる階層というのは、私は、一〇〇%所得を把握されている圧倒的多数の、数千万人のサラリーマンであるとかたく信じております。  そういった意味では、その方々に対して、政府もいよいよ本格的に検討するからということで、もっと積極的なPRをされるべきでしょう。大臣が先頭に立ってPRをすべきだ。その信念があなたにないことは、大変残念であります。  主税局長、どうなんですか。今回の検討課題における政府税調の書き方というのは、今までと違うでしょう。今までよりさらに踏み込んで、外国の動向だとか、プライバシーについても、それを保護するための方策を検討するだとか、具体的にステップを踏んで着実に前進させようという意欲にあふれている。大臣の答弁と全然違うでしょう。局長、どうですか。
  194. 尾原榮夫

    尾原政府委員 納税者番号制度でございますが、これが導入されるということになりますと、国民生活に少なからぬ影響を及ぼすことは、これは間違いないことでございます。そういう意味で、大臣から国民の理解が大切であるというふうにお話があったかと思います。  また、この納税者番号制度につきましては、経済取引へどういう影響があるか、あるいはプライバシー保護をどうするのかということについても検討を進めていく必要がございます。  なお、平成年度政府税制調査会でございますが、最近の納税者番号制度をめぐる環境について眺めてまいりますと、基礎年金番号が実施されました。それからまた、住民基本台帳法の一部改正法が提出されているというようなことを考えますと、納税者番号制度をめぐる環境は新しい局面を迎えており、国民の受けとめ方を十分に把握しつつ、より具体的かつ積極的な検討を行わなければならない時期に来ている、こういうふうにされているわけでございまして、納税者番号制度についてもこのような方向で鋭意検討を進めてまいりたい、こういうふうに考えているわけでございます。ただ、この制度が国民生活へ少なからぬ影響を及ぼすこともまた事実でございます。
  195. 北橋健治

    ○北橋委員 あえて大臣の再答弁を求めませんけれども、私は、数千万人の所得を一〇〇%把握されている人たちがなぜ今日の税制に信頼感が持てないのか、その中から総合課税なり納番制の議論が起こってきている、税を取られている方々の気持ち、それがあると思うのです。したがいまして、思い切ってその前進に向けてPRを大臣みずからぜひともやっていただきたい、そのことを強く要請しておきます。  最後の質問は、減税問題です。  先般、ルービン長官と松永大臣はG7でもお会いになっていると思います。具体的にいろいろな話があって、国会で話せることと話せないことがあるでしょう。しかし、ルービンさんを初めとしてアメリカが言ってきているのは、大型の減税を要求していることは間違いなく事実だと思うのです。  私ども承知している限り、あの二兆円の特別減税は、突然総理大臣の決断によって発表されました。場合によっては、近々、予算成立したあたりに、総理大臣がもう一回二兆円特別減税の追加を発表されるのじゃないですか。私は、ここまでアメリカ政府から強く減税に対する要求が来ている中で、政府の方もそのように動き出すのではないかと思いますが、一度あることは二度あるといいます。全く知らないところで総理がお考えになることかもしれませんが、そんな予感されませんか。
  196. 松永光

    松永国務大臣 G7での私とルービン長官との会談の中で、税の問題を持ち出したのは私なんです。二兆円の特別減税のことを詳細に説明したのです。ルービンさんの方からは税のことについては私には話はありませんでした。  新聞等の報道で、ルービン長官が大型の減税を云々ということは承知しておりますけれども、基本的に言うと、アメリカの長官がこう言った、だれがこう言ったという外国の人の話をそのまま受け取るようなことであってはいかぬと私は思っています。それは一つ意見として受けとめて、日本の置かれている現状からいってどういう施策が望ましいのか、独自の考え方で政策は決められるべきものだ、私はそう思っています。
  197. 北橋健治

    ○北橋委員 それではお伺いしますが、自民党の首脳陣が、この間、景気対策として公共事業は効果があるからぜひやりたい、しかし所得税減税というのは、消費性向が落ちていることもあって、これに余り踏み込まれない発言が目立っているのです。大臣もやはりそういうお考えでしょうか。
  198. 松永光

    松永国務大臣 景気対策とのかかわりでの公共投資の追加とかあるいは減税とかということは、私の立場は、今御審議をお願いしておる平成年度予算、そしてきょうも御審議を願った税法その他こういった関連法案の速やかな成立をお願いをして、そして九年度補正予算と切れ目なく十年度予算や関連法案が実行に移せるようにお願い申し上げたいというのが私の立場でございますから、それを離れて今の段階でいろいろ申し上げることはひとつお許し願いたい、こう思うのです。
  199. 北橋健治

    ○北橋委員 大蔵省の事務当局に聞きますが、大蔵省の当局には世界各国の大使館からいろいろな公電が入ってくると思います。世界じゅうの情報大蔵省に集まっていると思います。  私も予算質問しましたが、サマーズ・斉藤会談を初め、この一連の半年間の間に、アメリカ政府側は相当ないら立ちを持って日本政府に対して思い切った内需の振興を迫ってきているのではないか、私はそのように感じております。その中で、公共事業ではなくて減税が主体であるべきだということをはっきり言ってきていると私は思うのですけれども、事務当局はそのことを全部知っていらっしゃると思うのですね。  例えば我々には、国会で要求したけれども、額賀副長官とアメリカの幹部との話し合いというのは出してもらえなかった。内容は皆さん御存じでしょう、事務当局は。アメリカ政府の意図を、別に従う必要はありません、日本政府が主体的にやればいいのでありますが、しかし正確に把握していくことが大事だと思うのです。  多くのマスコミは、アメリカ側は減税中心に言ってくると。しかし、参議院選が前に近づいてきたというせいか、何でも日本政府側、与党首脳は公共事業ばかり言っている。何か日米の政府間に物すごく乖離がある。私は、そういうことを放置しておくことは不幸なことだと思うのです。  大蔵省の当局、これまでの一連の半年間で結構です、昔のことは言いませんが、まさに日本減税の断行を迫ってきているのではありませんか。そのシグナルを送り続けてきているのではないですか。事務局からお伺いいたします。
  200. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 情報はいろいろな情報があると思います。公開された議会での証言とか、あるいは記者会見でございますとか、あるいは大臣のG7での議論だとか、あるいは個別の会談とか、いろいろあると思うのでございますけれども、私がまずそういう情報に接している限りで、具体的にこういうことだというのは私自身は今記憶には余りないわけでございます。
  201. 北橋健治

    ○北橋委員 時間が参りました。  こういう国会の質疑というのは、いろいろな大使館も皆知り得るわけでございまして、果たしてそういう当局の御発言をどのように受けとめているか、私は大変心配に思いますが、また次回のときに質問させていただきます。ありがとうございました。
  202. 村上誠一郎

    村上委員長 次回は、明十八日水曜日委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後十一時六分散会      ――――◇―――――