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1998-03-11 第142回国会 衆議院 大蔵委員会 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年三月十一日(水曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 村上誠一郎君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 浜田 靖一君    理事 池田 元久君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 谷口 隆義君       今村 雅弘君    岩永 峯一君       大石 秀政君    鴨下 一郎君       河井 克行君    桜井 郁三君       桜田 義孝君    杉浦 正健君       砂田 圭佑君    滝   実君       中野 正志君    根本  匠君       桧田  仁君    宮路 和明君       村井  仁君    矢上 雅義君      吉田六左エ門君    渡辺 具能君       渡辺 博道君    渡辺 喜美君       上田 清司君    北脇 保之君       末松 義規君    中川 正春君       日野 市朗君    藤田 幸久君       赤松 正雄君    河合 正智君       並木 正芳君    若松 謙維君       小池百合子君    鈴木 淑夫君       西田  猛君    佐々木憲昭君       佐々木陸海君    濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 松永  光君  出席政府委員         内閣総理大臣官         房管理室長   佐藤 正紀君         大蔵大臣官房長 武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   原口 恒和君         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局次         長       細川 興一君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省理財局長 伏屋 和彦君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省銀行局保         険部長     福田  誠君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君         国税庁次長   船橋 晴雄君  委員外出席者         国税庁課税部酒 税課長    岡本 佳郎君         自治省税務学府         県税課長    片山 善博君         日本輸出入銀行         理事      鏡味 徳房君         参  考  人         (日本銀行総裁松下 康雄君         参  考  人         (預金保険機構         理事長)    松田  昇君         参  考  人         (日本銀行理事)本間 忠世君         参  考  人         (日本銀行副総         裁)      福井 俊彦君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 三月十一日  辞任         補欠選任   今村 雅弘君     桧田  仁君   鴨下 一郎君     矢上 雅義君   砂田 圭佑君     桜井 郁三君   渡辺 博道君     滝   実君   赤松 正雄君     若松 謙維君 同日  辞任         補欠選任   桜井 郁三君     砂田 圭佑君   滝   実君     渡辺 博道君   桧田  仁君     今村 雅弘君   矢上 雅義君     鴨下 一郎君   若松 謙維君     赤松 正雄君     ――――――――――――― 三月十日  平成十年度における財政運営のための公債の発  行の特例等に関する法律案内閣提出第六号)  法人税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第八号)  租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第九号)  電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書  類の保存方法等特例に関する法律案内閣提  出第一〇号)  関税定率法等の一部を改正する法律案内閣提  出第三〇号) 同月二日  所得税減税中小業者への国民金融公庫の返済  条件緩和に関する請願坂上富男紹介)(第  三九三号)  同(木島日出夫紹介)(第四四二号)  同(佐々木憲昭紹介)(第四四三号)  同(佐々木陸海紹介)(第四四四号)  同(中林よし子紹介)(第四四五号)  同(藤田スミ紹介)(第四四六号)  同(不破哲三紹介)(第四四七号)  同(矢島恒夫紹介)(第四四八号)  同(山原健二郎紹介)(第四四九号)  消費税減税に関する請願坂上富男紹介)  (第三九四号)  酒販免許制度堅持等に関する請願砂田圭佑  君紹介)(第三九八号)  食料品消費税非課税即時実施消費税廃止に  関する請願佐々木憲昭紹介)(第三九九号  )  同(瀬古由起子紹介)(第四〇〇号)  同(大森猛紹介)(第四四〇号)  同(瀬古由起子紹介)(第四四一号)  消費税廃止国民金融公庫中小業者への融資  拡充に関する請願木島日出夫紹介)(第四  七五号)  同(志位和夫紹介)(第四七六号)  保険契約者保護制度確立に関する請願木島  日出夫紹介)(第四七七号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  法人税法等の一部を改正する法律案内閣提出  第八号)  租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第九号)  電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書  類の保存方法等特例に関する法律案内閣提  出第一〇号)  国の会計税制及び金融に関する件(財政金融  の基本施策)      ――――◇―――――
  2. 村上誠一郎

    村上委員長 これより会議を開きます。  国の会計税制及び金融に関する件について調査を進めます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各件調査のため、本日、参考人として日本銀行総裁松下康雄君及び預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  4. 村上誠一郎

    村上委員長 財政金融基本施策について質疑の申し出がありますので、順次これを許します。濱田健一君。
  5. 濱田健一

    濱田(健)委員 おはようございます。大臣所信に対する質疑というものが、きょう午前中、各党からなされるわけでございますが、十分間という持ち時間ですので、三点に絞ってお尋ねをしたいというふうに思います。  新日銀法の施行が四月ということで目前に迫ってまいりましたけれども、この時期、同意人事等いろいろなものが、この日銀に関して対応がなされていくものというふうに認識をしております。  そういう中で、大臣所信の中でも申されましたとおりに、大蔵省綱紀の保持ということ、本当に大事なことでございますが、またぞろいろいろな疑惑が出てきておりますし、ここ二、三日の新聞では、日銀営業局幹部がやはり似たような接待疑惑でクローズアップされてきた、司直の手も入るのではないかというふうに言われております。  これらの点に関して、大臣の御努力にもかかわらず、まだまだいろいろなものが出てきているという状況の中で、大臣としての御心境と、これらの問題に対してさらにどういう手を打たれようとしているのか、御見解をお聞かせいただければ幸いでございます。
  6. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  大蔵省職員が、委員御存じのとおり二名起訴され、二名逮捕されているという状況でありますが、いずれも古くからずっと続いてきておる事件でございまして、この関係では捜査当局が厳正な捜査を進めるものと思っております。  大蔵省としては、その捜査当局捜査活動には全面的に協力をしていかなければならぬ、そういう立場にあるわけでありまして、そのとおりしていくつもりであります。  私が力を入れておるのは、捜査当局捜査対象にはなっていないものの過去において公務員として恥すべきことをした者がおる可能性が相当ある、そういう者について内部調査をきちっとやって厳正な処分をすること、それを通じて大蔵省綱紀粛正確立をきちっとやっていく、それによって大蔵省職員一同心を新たにして大蔵省信頼確保のために頑張ってもらう、そういうふうにしていくのが私の務めである、こう思っておりまして、そういう心構えで今後もしっかりやっていきたい、こう考えているところでございます。
  7. 濱田健一

    濱田(健)委員 日本中央銀行までもがこういうふうに腐り切っているのかということで国民の不信は本当に極限に達しているというふうに思っておりますので、本当に深いところまでさまざまな疑惑については解明をしていく方向で、きょうもほかの委員もそういう部分でいろいろと材料をそろえていらっしゃるというふうに思いますが、しっかりやっていただきたいというふうに思っております。  二点目ですが、新日銀法は、日銀独立性政策決定責任明確化を目玉にしているというふうに思っております。現下の接待疑惑などからして、日銀法三十二条の服務準則趣旨に照らして、適切な執行を確保するためには、いわゆる私企業からの隔離等々が厳格に守られなければならないというふうに思っております。現在の疑惑に関してもこれらがしつかり守られていないという状況でございますが、大臣の御所見はいかがでしょうか。そして、これらについてこれからどう御指導されていかれるのか、お聞かせいただければ幸いでございます。
  8. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  委員指摘のとおり、新しい日銀法においては、日本銀行自主性の尊重及び意思決定透明性確保といったことから、御指摘のような規定ができておるわけであります。日本銀行は、その業務公共性にかんがみ、私企業からの隔離等に係る服務に関する準則を定めることとされており、先般、日本銀行において決定、公表されたところであります。  そういうときに、報道されているような不祥事があるとすれば大変残念なことだというふうに思っておりますが、いずれにせよ、日本銀行において適切に対応されるものというふうに考えておるところでございます。
  9. 濱田健一

    濱田(健)委員 いわゆる政策決定責任透明性明確化というものが、先ほど申し上げましたとおりにうたわれているわけですが、長引く国民の金利に対する失望感というものがあります。特に、年金でお暮らしの皆さんなどにはその感が一〇〇%強いというふうに、いろいろな方からお話を聞いて感じているところでございます。いわゆる公定歩合など政策委員会の活発な論議があるのかと言われたときには、どう見ても、外側からそういう、どうしょうという悩んだ姿というのは見られないというふうに思うわけでございまして、今度の日銀法の改正は、これらの面も明確に活発化されていく方向性が大事だというふうに思います。  この政策委員会の活発な論議と展望を国民の前に明らかにすることこそが、先ほど大臣も言われました政策決定透明性明確化ということにつながると私は思うのですが、いかがお考えでしょうか。そして、当然、それらについてもどう御指導されるおつもりか、お聞かせいただければ幸いでございます。
  10. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  新しい日銀法において、金融政策についての政策委員会における議事の要旨あるいは議事録、こういったものを公開すること等を通じて透明性確保するということになっておるわけでありまして、新しい日銀法もとで、今の点については適切な対応が行われるものというふうに考えておるわけでございます。
  11. 濱田健一

    濱田(健)委員 時間がありませんのでこれで終わりたいと思うのですが、とにかく、明治以降の日本銀行制度を含めて指導的な立場にありました日銀というものがいその持っているノウハウや指導性、そして日本金融にかかわるさまざまな政策、これに今後も大きくかかわっていかれるわけでございますので、改正された新日銀法のその趣旨というものがしつかり生きるように、大蔵としてもさまざまな観点で指導をいただかなければ、今起きております疑惑の渦中にある問題等々もますます広がっていくものというふうに私思いますので、その辺、大臣、しっかりと頑張っていただきたいということを申し添えて、終わりたいというふうに思います。ありがとうございました。
  12. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、村井仁君。
  13. 村井仁

    村井委員 二月の二十五日に大臣からこの委員会所信を承りました。ちょうどその前の週の週末、大臣G7に御出席になられた後でいらっしゃいまして、G7におけるいろいろな議論なども踏まえてお話を伺ったわけでございます。  アジアにおける通貨の不安とかいろいろ難しい問題も出てきてそれにどう対処するか、それから我が国経済金融情勢余り芳しくない、これについて国際的ないろいろな懸念も示されたという環境の中で大変有意義な意見交換をされてこられた、このように承っておるわけでございますが、率直に申しまして、我が国経済は非常に深刻な状態にあるのではないか。補正予算を通しまして、それから金融関連法律もある程度通した、それからきょうたまたま金融持ち株関連二法も施行される、こういう日でありますけれども、これだけではなかなか今の状況を改善することにならないのではないかという懸念を、私ども率直に言って持っております。  私どもも、今党内で、例えばSPC、特定目的会社によりまして不動産証券化を図るとか、あるいは債権回収機関、いわゆるサービサーの問題、これは弁護士業務の問題と非常に絡むわけでございますけれども、いずれにいたしましても、いわゆる住管機構で採用されました債権回収システムをより一般化するシステムとしてこういう問題も検討中である。そのほかに、案外知られていないことでございますが、競売がしこっていると言ってはなんでございますけれども、余り円滑に動いていないという話もある。総じて申せば、不良債権の根っこにありますのは、何と申しましてもバブルのときの不動産に対する過大な融資、それがいわば動かなくなってしまっているという問題なのではなかろうか。そういうところをどうやってほぐしていくか、こういうような問題もあるわけでございます。  そういう問題も含めて、総合的な対策を講ずることによりまして金融システム安定化を図っていく、これが私は今最大の課題ではないか、こんなふうに思っておりまして、与党内でもいろいろ議論を重ねている、こういう状況でございますが、大臣のお立場で、今の経済情勢をどういうふうにごらんになっていらっしゃるか、改めてお伺いをさせていただきたいと存じます。
  14. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  今の日本経済状況景気の実態は、経済企画庁の発表では足踏み状態という発表でありますけれども、相当に厳しい状況にある、こういうふうに認識しております。  この状態から抜け出していくために基本的に大事なことの一つ金融システムに対する信頼感、こういつたことを高めていく、強くしていくことが大事なことの一つ。そのために、国会で通していただいた金融安定化二法、これに基づく措置を今急いでやっているところでありますが、同時に、平成十年度が間もなく始まりますけれども、平成十年度の予算、これは速やかに審議をしていただいて、そして通していただいて、新年度からそれが施行できるようにしていただくということが二番目に大事なこと。三番目には、今与党の方でいろいろ知恵を絞って議論をしていただいております、先ほど委員指摘不良債権処理のためのいろいろな方策、こういったものも大変問題解決に貢献する方策であると思いますので、ぜひこれも早く結論を出していただいて、そして法律ができてそれが動き出すようになることが非常に望ましいことだというふうに思っております。  そういうもろもろの施策を総合的に推進することで、現在の厳しい状況から一日も早く抜け出せるようにしていくことが大切なことであるというふうに考えておるところでございます。
  15. 村井仁

    村井委員 私は、やはり景気というのは、気という字も入っておりますように、気分の問題というのが非常にあるわけでございますから、一日も早く平成十年度の予算を成立させて、さらに必要であれば臨機応変の措置をとっていく、これが大切ではないかと思っています。  次の問題に移らせていただきます。  先ほども濱田委員からお触れがございましたけれども、金融検査官の逮捕に続きまして、あのときに大臣は既に遺憾の意を表明されましたけれども、将来の幹部候補であります、とりわけていろいろな意味で身を慎まなければならないいわゆるキャリアが逮捕された。私はこれは非常に深刻な問題だと思っている。  日本官僚制度では、私自身もそのシステムの中に身を置いた一人として思い返すわけでございますけれども、若いうちから政策立案という大変大切な仕事に関与することができるというのは、ある意味では身に余る光栄であると思う立場でございまして、私は、率直に申しまして、本当に一番身を慎まなければならない、そういう立場に置かれていた人ではないだろうかと思うわけであります。それが司直の手を煩わすというようなことになるというのは、私は、本当にもう残念としか言いようがない思いであります。  アメリカの場合は、そういう政策立案とかなんとかいう立場に立つためには、相当な社会的経験も積み、あるいは大統領選挙に貢献するとかいうようないろいろなプロセスが必要だが、それに対して日本の場合は、まさに生涯をかけて国家国民に奉仕する職業としてそれを選ぶことができる。私は、そういう意味で今度の事件というのは本当に深刻だと思っているのです。  さような意味で、もう時間も余りありませんから手短にお伺いいたしますけれども、三塚大蔵大臣の大変重い責任をとった御退任の後を襲われて、そうして大蔵大臣の重責にあられる大臣から、本当にこの事態に対しまして、大蔵省綱紀粛正の問題にどういうふうに取り組まれるおつもりか、ぜひ御決意のほどをお伺いしたいと存じます。
  16. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  今回、今委員指摘キャリアと言われる者も逮捕されたという事態は、これはまことに深刻に受けとめなければならぬ、こう思っております。そういう事態になったということ、まことに申しわけないことでありまして、心からおわびを申し上げる次第です。  基本的には、今委員指摘のように、キャリアと言われる人は、若いうちから政策決定に参画できる立場、それだけにその立場の者はより高い使命感倫理観を持って仕事をしていかねばならぬわけであります。今、委員もその立場に身を置いた方ということでございましたが、委員のような使命感倫理観を持っておればよかったわけですね。それが欠落しておったということは非常に残念なことでありますし、申しわけないことだと思っております。  同時にまた、行政の手法といいますか仕組み、こういったものも根本的に見直す。特に、大蔵行政の中には許可事項認可事項が多い。余りにも多過ぎるという点もあるでしょう。そういった点を改めて、ルールを事前に明示をして、そしてそのルールに基づいた行動がなされておるかどうかということを事後的にチェックするという形の、事後チェック型の行政に転換をしていかなければならぬ。後で御審議を願う金融ビッグバン法はそういったことを志向する法律案になっておるわけでありますが、さようなわけで、行政やり方、仕組みというものも改革をしていく必要がある。  職員使命感倫理観という面と、もう一つ行政やり方の面と、その両面から根本的に改めていかなければならぬ、こう思っておりますが、同時に、いつも申し上げることでありますけれども、捜査当局捜査対象にならなかった者であっても、過去において倫理もとる行為があった職員については内部調査を厳正にやって、そして問題のある者については厳正な処分をすることによって綱紀の徹底した粛正を図っていく。これで国民信頼が再び大蔵省に寄せられるように、そういう方向で最大限の努力をしていきたい、こう考えているところでございます。
  17. 村井仁

    村井委員 私は、ぜひ大臣にそういう方向で頑張っていただきたいと思いますが、同時に、いたずらなる役人バッシングにならないように、やはりプライドを持って公務に従事していただく雰囲気もまた維持していただきたいと思います。  終わります。ありがとうございました。
  18. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、池田元久君。
  19. 池田元久

    池田(元)委員 参考人として出席いただいた松下総裁松田理事長、きょうはありがとうございます。  まず、大蔵省内部調査の方からお尋ねしたいと思います。  最近、新聞テレビを見ますと、連日のように大蔵日銀不祥事が報道されております。今思い出したのですが、かってアメリカテレビ界が大変ひどくなったときに、FCCの委員長が、一望荒野であると言いました。どうも日本金融村は一望荒野になったのではないかと大変危惧しております。大蔵省金融行政は、バブル崩壊後、不良債権処理を放置してきたと言っていいと思います。また、山一に見られるように、金融機関と癒着して粉飾経営に手をかすなど、今日の金融不安を招いたと私は思います。  そうした中で、金融検査担当者が、あろうことか検査対象銀行から利益供与を受けた。そればかりでなく、幹部接待漬け物品提供を受けるなどの疑惑が明らかにされ、いわば構造腐敗の様相を示しております。大蔵省金融行政べの信頼は、今や地に落ちたというべきであろうと思います。金融不安を解消するためにも、大蔵行政を刷新し、信頼を回復することが緊急の課題であると私は考えております。  そういった状況の中で、大蔵省はいわゆる内部調査をすると発表いたしました。私が一月の本会議質問でその問題を取り上げて質問通告したその朝、たしか内部調査をやると前大蔵大臣は言ったと思うのですが、もうかれこれ二カ月になります。内部調査の進みぐあいはどうか、お聞きしたいと思います。
  20. 武藤敏郎

    武藤政府委員 現在、内部で行っております調査進捗状況についてのお尋ねでございますけれども、金融関連部局に在籍いたしました職員につきまして過去にさかのぼって金融機関等との関係について調査をしている最中でございます。  具体的には、まずその対象となる本人から、記憶なりあるいは自分の手元に残っておる記録に基つきまして、本人なりのメモをつくっていただきまして、それをもと各局服務管理官、これは各局総務課長クラスでございますけれども、それが一対一の関係でヒアリングを行いながら確認作業を進めております。  これは基本的には自主的な申告をもとにするものでございますけれども、それの客観性を高めるために、金融服務監査官というのをこのたび設けましたので、その金融服務監査官におきまして資料相互突き合わせでありますとか、各種の関連情報を収集いたしまして、また顧問弁護士も委嘱いたしましたので、その方の意見も聞きながら、今、事実関係確認に努めておるわけでございます。
  21. 池田元久

    池田(元)委員 大変しっかりとした形でやっていらっしゃるという言葉を信じたいと思いますが、現時点で、中間報告といいますか、関係業者から接待等利益供与を受けた者のおよその数、調査対象に対する割合はどうなっていますか。
  22. 武藤敏郎

    武藤政府委員 ただいまお答え申し上げましたとおり、まさに調査中途段階にあります。調査対象者が五百五十名を上回るような大変な多数に上るということと、それから、海外まで含めまして、いろいろなところに散らばっているわけでございます。そういう意味で若干の時間がかかるということが一つございます。  大臣からは、できるだけ早く調査を進めるようにという御指示もいただいておりますけれども、同時に、ずさんなものであってはならないという御注意もいただいておりますので、そういう意味で一生懸命やっておるわけでございます。  それともう一つは、この対象者の調査の過程で、いろいろ相互の関係をチェックする必要がございます。だれと同席したのかとか、どういう状況であったかといったようなことが一つございます。それから、現在、捜査当局捜査しておりますので、関連する部分におきまして、いろいろな捜査に影響を与えないように、私どもとしては、私どもの都合だけで調査を進めることができないという状況にございますので、今お尋ねのようなことを申し上げるまで調査がまだ進んでおりません。
  23. 池田元久

    池田(元)委員 しからば、調査がまとまり、公表するのはいつになるのですか。端的にお答え願いたい。
  24. 武藤敏郎

    武藤政府委員 調査のまとめの時期につきまして、現時点で具体的にいつというような見通しは立っておりませんけれども、大臣からは、できるだけ早く、少なくとも春のうちには公表できるようにという指示をいただいております。
  25. 池田元久

    池田(元)委員 春のうちにはとか、そういういいかげんな答えはしてほしくないですね。これは一月の半ばからやっていることですよ。民間企業でそんなことやりますか。例えば突き合わせとか、何でもっと早くできないのですか。  大臣、この調査の進捗を今聞いたら随分かったるい印象を受けるのですが、一言御答弁をお願いします。
  26. 松永光

    松永国務大臣 決して、スピードがない状態でやっているわけではないのでございます。  実は、難しくしている点が二つあるのです。一つは、去年の秋にやった調査、これが余りにも短い期間でやったということ、それからもう一つはその当時、金融機関等の接待に関する資料その他全部捜査当局に押収されておって、反面調査といいますか、そっちの方面から話を聞くということができなかったということもあって、実は、結果において、ずさんな調査だったというふうに批判を受けたわけですね。そういったことがないようにせねばならぬというのが一つ。したがって、結果において、より正確性のある、そういう調査にしたいというのが一つ。  もう一つは、委員もよく御存じと思いますけれども、過去五年にさかのぼっての調査になるわけでございまして、なぜ五年にさかのぼるかというと、もっと古いのもあるのかもしれませんが、現在捜査当局から捜査をされている被疑事実あるいは起訴された事実を見ますと、何と平成五年からの話なんですね。それが、起訴された人や逮捕された被疑事実等から見ると、二年、三年と続いておる。その間に多数回にわたる、多額の金額に上る接待を受けておったということでございまして、期間も長い。そういった両面から、ある程度の時間がなければ、よく調査したなという評価が受けられるような調査にならぬわけなんですね。そういう制約の中で、急ぐべし、正確にやるべしというわけで、督励をしておるというのが実は現状でございます。
  27. 池田元久

    池田(元)委員 いろいろ理由は述べられますが、決定的な理由ではないと思うのですね。例えば捜査資料の問題について言えば、私が聞くところによれば、第一勧業銀行関係は押収されて大蔵省にない、ほかはコピーがあるということですから、まずその第一の理由がちょっとおかしいなと思います。ぜひ急いでやっていただきたいと思います。  公表するとき、処分結果とあわせて、処分の理由、事実関係、そして六百人に及ぶ調査の全容を明らかにするものと私は当然思っているのですが、お答えをいただきたいと思います。
  28. 松永光

    松永国務大臣 調査をし、問題のある者について厳正な処分をします。処分をしたならばそれは発表いたしますが、同時に、事実関係の概要も、これこれこういうことがあったのでこういう処分をしたということになるわけでありますから、そのような発表をするつもりでございます。
  29. 池田元久

    池田(元)委員 ぜひ全面的に、国民の関心の的でもありますから、大蔵省信頼性もかかっておりますので、出していただきたいと思います。  次に、大蔵省OBに対する調査は行わないのですか。
  30. 武藤敏郎

    武藤政府委員 大蔵省を退職した者は既に大蔵省職員でないということで、私どもとして調査をする立場にはないというふうに考えております。  ただ、在職中の行為につきまして具体的な非違が明らかになったといったような個別の問題がある場合には、それは個別に調査する必要があるというふうに考えております。
  31. 池田元久

    池田(元)委員 しかし、大蔵省OBが金融機関に多数天下ってもいるわけですよ。ずっと昔の話を調べろという話じゃなくて、大蔵省のつくった調査要領にあるとおり、平成五年一月一日以降に在職していた者については少なくとも調査を行うべきではないですか。
  32. 武藤敏郎

    武藤政府委員 繰り返しになって恐縮でございますけれども、私どもが調査するのは、私どもの職員であるということで調査をするわけでございます。退職者ということになりますと、もう既に公務員でないということでございますので、一般的にはそれを調査する立場にはないということでございます。  ただ、本当に大きな疑惑が具体的にあるという場合には、それは職務の公正を疑われているわけでございますので、そういう場合には調査をしなければならない、このように考えております。
  33. 池田元久

    池田(元)委員 私も、昔の古傷までさわろうとは思わないのですよ。少なくとも平成五年一月一日以降に在職していた者については調査をする。もともとこの調査というのは強制調査でも何でもない。自己申告がベースですからね。任意の調査を行うべきであると思いますが、大臣の御見解を聞きたいと思います。
  34. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  在職する職員についての調査、それは任意でありますけれども、しかし、公務員として公務に服しておる、したがって大蔵省としては監督権を持っておる、そういうことが実は背景にはあるわけですね。それで調査をしていっている、こういうことなんでございます。  ところが、OBになっている人は、監督権とかそういったものはもうなくなっておるわけでありますから、その意味で、職員と同じような立場での調査は実際上は難しい。ただしかし、今官房長が答弁を申し上げましたように、在職中に具体的な非違があった、非行があったという場合には、個別にそのことは調査をする、こういうことでありますので、それで御了解願いたいのです。
  35. 池田元久

    池田(元)委員 大臣は元検事でいらっしゃるので、権限とかなんとかすぐおっしゃいますが、大蔵行政信頼性の問題で、大蔵省で禄をはんで金融機関などに行っている方も多いわけでしょう。アンケートというものがありますから、アンケート調査ぐらいできないのですか。大臣に聞きます。
  36. 松永光

    松永国務大臣 委員もよく御承知と思いますが、在職している人についての非違、非行については、人事権に基づいて、これは任意であっても調査するという根拠があるわけですね。やめた人についてはそういう根拠はありません。しかし、事大蔵行政信頼性のかかっておる問題でありますから、具体的な非行、非違等があるというふうな場合には個別にその者についての調査をするというふうに今官房長申し上げたわけでありますが、私もそうしたい、そうすべきだ、こう思っているところでございます。
  37. 池田元久

    池田(元)委員 具体的にといっても、今はそういう接待漬けといいますか、もう広がっているわけですよ。つい最近在職した人に対して全く任意のアンケートまでできないというのは、何ですか、これは。どうしてそのくらいのこと言えないのですか。大蔵大臣余り僕もこんなところで時間とりたくないのですが、いかがですか。
  38. 武藤敏郎

    武藤政府委員 私どもの調査は、要するに服務関係にあるということを前提として調査をしているわけでございます。全く関係のない者にこういう調査をするといったような立場にはありません。(池田(元)委員「全く関係ないことない」と呼ぶ)いや、服務関係にない者に対して調査をする立場にはないということを申し上げているわけでございます。
  39. 池田元久

    池田(元)委員 とんでもないことをおっしゃいますね。全く関係のない者まで調査するのはおかしいと。あなたはそれで官房長ですか。官房長の仕事というのは、服務をやるわけですよ。関係ないですか。  大臣、きょうは大臣所信表明に対する質疑で、最初ですから、余り強く言うのはなんと思いましたが、今の答弁はいただけません。  大蔵省は、これまで不祥事を起こした職員に対して処分を行ってきました。そんな多くありませんが、最近は比較的多い。これらの処分は、処分を受けた職員の人事、処遇に反映するのかどうか、端的にお答え願いたいと思います。
  40. 武藤敏郎

    武藤政府委員 一般論として申し上げますと、国家公務員法に基づく懲戒処分を受けました場合に、その実行行為者につきましては、その昇進に相応の影響が生じます。また、内規に基づく矯正措置を受けた場合には、その後の勤務成績によりまして相応の評価を受けるというふうになっております。  実行行為者の場合につきましては以上のとおりでございますが、監督者としての処分を受けた場合には、これは国家公務員法に基づく懲戒処分あるいは内規に基づく矯正措置にかかわらず、一般論といたしましては、その後の勤務成績によりまして相応の評価を受けるというふうに考えております。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  41. 池田元久

    池田(元)委員 ちょっと大臣に聞いてほしいのですが、平成七年から平成九年一月まで延べ十三人の幹部不祥事処分を受けました。これは総務庁がまとめた資料です。中には減給というのもありました。しかし、口頭や文書による厳重注意が中心であったわけです。  具体的に見ると、どういうことになるか。中島、田谷事件による二度にわたる処分では、直接の上司として監督責任を問われた篠沢主計局長は、最初口頭による厳重注意を受けましたが、すぐに次官に昇格した。その後、二度目の処分で、今度は減給処分を受けた。これが一つですね。  それからまた、当時の小村官房長は口頭による厳重注意を受けましたが、その直後に主計局長に昇格し、その後、訓告処分を受けた。しかし、小村氏は、その後さらに次官に出世をした。処分を受けて、直後に昇格したり栄転したりしているわけです。  さらに、涌井官房長は、中島、田谷事件で文書による厳重注意を受けた後、泉井事件の泉井被告から絵画を受け取ったことで口頭による厳重注意を受けたが、主計局長に栄転をした。  これを見ますと、処分を受けても人事、処遇に何ら影響がない、反映されないと言えます。それどころか、処分を受けた者が逆に出世することになる。サラリーマンなどには到底理解できません。処分というのは世間をごまかす一時逃れのものではないかと思います。  大蔵大臣のお考えをお聞きしたいと思います。
  42. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  先ほど官房長も申し上げたところでありますが、みずから非違を行った、そのことによって処分を受けた人、それと監督が十分でなかったということで監督者としての処分を受けた人、これはそれぞれ分けて考える必要があるというふうに思います。  行為者としての処分を受けた人は、その後も処分を受けたことによるマイナス面をしょっていくわけですね。監督者としての処分を受けた人の場合には、その後の人事の場合に、監督者としての処分を受けた、そういうマイナス面もあることはあるわけですけれども、その後の勤務成績によってマイナス面が緩和されるというか、そういった面も実はあろうかと思います。  したがって、実行行為者としての処分であるか、あるいは監督者としての責任を問われたのか、それによってその後のことは変わってくるんじゃなかろうかというふうに私は思います。
  43. 池田元久

    池田(元)委員 実行行為者と監督者を分けて説明なされました。松永さんらしい答弁ですが、監督者でもその後の成績によってはという話をされました。これは世間でいえば同じですよ。ただ行為者と監督者には軽重はあります。  今の大臣お話ですが、篠沢恭助主計局長は、中島、田谷事件平成七年三月十三日口頭厳重注意を受けました。そして同じ年の間もなく、半年もたってないときに次官になって、今度は減給二カ月の処分を受けているわけです。これは成績がよくなったのですか。あなたたちの説明は全然納得できませんよ。大臣、これを見ると、信賞必罰という言葉がどこかへ行ってしまった。  私は、ちょっと大蔵省の方に聞いてみたといいますか、自然に、かなりの人に聞いたのですが、私の方から聞いたのではなく、たまたま耳に入ってきた。大蔵省のいわゆるノンキャリアと言われる方々の批判は強い。そればかりではなくて中堅キャリアにもこれは強い批判があるわけです。処分されても人事、処遇に全然影響しない、ここに問題がある。こういうところにモラルの退廃が起こるのではないか。中堅キャリアは真剣に言っていますよ。大臣、答弁をお願いします。
  44. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  私は、処分の内容のいかんを問わず、やはり行為者とそれから監督者責任、この責任の問われ方、処分のされ方については、その点には差があってもおかしくないんじゃなかろうか。ただしかし、監督者責任を問われた場合であっても、実は、処分の程度に応じて、昇給延伸とかあるいはまたその時期に支給される勤勉手当の支給率が低くなるとか、そういうマイナスは受けるわけでありまして、行為者として処分を受けた人と、監督者としてその監督責任を問われた場合と一律に論ずることはいかがなものかな、私はそう思うんです。
  45. 池田元久

    池田(元)委員 質問の趣旨を理解されてないようですが、内部処分が処遇、大事に全然反映されてない、そんなもの痛くもかゆくもない、どんどん出世する、こういう批判が省内にあるわけですよ。これはもっともなんですよ。世間の常識と合致するわけです。  もう一度、答弁をお願いします。
  46. 松永光

    松永国務大臣 そういう批判については、これはまじめに受けとめて、そしてこれからの参考にしなければならぬというふうに思います。
  47. 池田元久

    池田(元)委員 今の最後の話は、大蔵省トップとしてぜひ真剣に考えていただきたい。  日銀についてお尋ねをしたいと思います。  日銀は、金融機関から職員への利益供与問題で、先月九日、調査役以上のおよそ六百人に対して調査をすると発表いたしました。調査の進みぐあいはどうか、端的にお尋ねしたいと思います。
  48. 松下康雄

    松下参考人 日本銀行職員に関しまして現在さまざまな報道がなされております点につきましては、まことに遺憾に存じます。こういった報道も踏まえまして、私ども、まず実態を把握することが重要であると考えまして、内部調査を行っております。  この調査の内容は、役員とそれから管理職の全員約六百名を対象といたしまして、過去五年間におきます取引先金融機関との交際の実態を明らかにする目的で、自己申告をもとにしながら、その職場職場の実情に即しましたきめの細かいヒアリング調査によって取り進めているところでございます。  この調査につきましては現在なお作業の途中でございまして、その内容につきましては、まだ私も詳細な報告を受けるところまで進んでおりませんので、十分な内容のお答えはただいまの段階では差し控えさせていただきたいと思いますが、私としましても、中央銀行としての信頼回復のために調査を急がなければならないと考えて督励をしているところでございます。
  49. 池田元久

    池田(元)委員 次の質問の答弁まで読まれてしまいまして、ちょっとあきれてしまいました。  松下さんは、官房長、主計局長、事務次官、太陽神戸三井、さくらの会長、日銀総裁という、もう歴戦の勇士というか、自分の言葉で語れる方だと思いますので、ぜひ自分の言葉で語っていただきたいと思います。  報道によりますと、日銀営業局幹部が、この四年間で、銀行から、例えばある二行に限定すると四百五十万とか、もっと広げると一千万近くになる、そういった接待を受けていたことが明るみに出ました。  今度の調査で、この事実関係を把握していらっしゃったのですか。
  50. 松下康雄

    松下参考人 今回の調査は管理職全員の悉皆調査でございますので、当然、この現在報道の対象となっておる者につきましても、調査対象となっております。
  51. 池田元久

    池田(元)委員 この幹部に対する疑惑というものは大分前からうわさに上がっていました。そして、いろいろな情報の漏えいという問題が取りざたされておりますが、いわゆる日銀短観を発表前日に金融機関にファクスで流した証拠が押さえられているとされております。  調査ではどんなことが出てきましたか。
  52. 松下康雄

    松下参考人 ただいま全体の調査が進行中でございまして、私といたしましては、この個別の事案につきましての内容を……(池田一元)委員「個別じゃない」と呼ぶ)個別というのは、具体的な個々のケースにつきましての報告を受けるところまでまいっておりません。  私といたしましては、この現在報道の対象となっております者についてどのような事実関係が把握されているかというところにつきましては、まだ存じておりません。今調査をいたしておりますのは、その者が外部との交際の関係でどのような接待を受けてまいったかということに、まず焦点を置いて調査中でございます。
  53. 池田元久

    池田(元)委員 報告を受けていないとか知らなかったという、それで済みますか。これだけの世間を揺るがしている問題について、あなたは日銀総裁なんですから、報告を求めるのが当たり前じゃないですか。きょう、どういうことでこの場にいらっしゃったのですか。何か報告を受けているか、あるいは報告を求めたことはないのですか。
  54. 松下康雄

    松下参考人 私どもの行っております調査が一定の段階に達しましたところで、私としては、その段階での全体の調査内容についての把握をいたそう、そういうふうに考えて進めさせてまいったところでございます。
  55. 池田元久

    池田(元)委員 日銀のこの態度、こののんきな態度には私は大変あきれました。  これ以上聞いても、知らなかったとか報告を受けていないという話ですから、私はもっと職務に精励していただきたいと思います。  職員の聞き取り内容の相互の突き合わせ、相手金融機関との確認を行うことになっていると思うのですが、どうですか。
  56. 松下康雄

    松下参考人 ただいま調査の段階は、個々の職員の申告に基づきます聞き取りを行っているところでございます。  その聞き取りの調査がある程度行き渡りましたところで、今度は、その中でなお詳細にこれは調査を行う必要があると認められましたものが出てまいりましたときには、それをまとめて、さらに詳細調査を実施をするということにいたしております。  聞きますというと、その第一次的な聞き取り調査はいましばらくすれば一応終了して、第二段階に入る準備ができるように聞いております。
  57. 池田元久

    池田(元)委員 どこの会社でもトップは、これだけの不祥事があって、個別具体的に大きな問題ですよ、承知しているのが当たり前ですよ。私の言っていることは違いますか。  日銀調査大蔵省調査と違うわけです。私は、大蔵省をいつもけなしてはかりいるわけではないのです。問題点を明らかにしたいと思っているのですが、大蔵省調査表というのをつくった。ところが、日銀調査表の提出もなく、単なる聞き取り調査なんです。こんなことでしっかりとした調査ができますか、突き合わせとか相手金融機関との確認とか。一言でお答え願いたいと思います。
  58. 松下康雄

    松下参考人 ヒアリングでございますけれども、そのヒアリングのもとになっております資料は、各人がそれぞれの記録等をもとにしまして、過去五年間について作成をいたしました金融機関等との会食等のデータでございます。それは各人が作成をしまして、ヒアリングの際に提出をいたしております。
  59. 池田元久

    池田(元)委員 どうもきのうの人事担当者の話とはちょっと違いますので、私はこの問題をもっと明らかにされたいと思います。  要するに、調査表をつくっていないということでしたので、何か本人の手書きのものを出すというのでは、食い違っていますよね。今、服務担当の理事も呼んでいませんので、またこれは後で聞きたいと思います。  それで、調査は三月中にまとまると考えていいのですか。
  60. 松下康雄

    松下参考人 第一次の調査はできるだけ早く締めくくりたいと思っております。ただ、その調査にはもう全く関係がない、問題がないという人も多数含まれているわけでございますから、その中でさらにこれ以上もう一段調べる必要があるというものを抜き出すところまでは、できるだけ今おっしゃったようなふうに運びたいと思っております。
  61. 池田元久

    池田(元)委員 次に、私は余り他人の懐をのぞくことはしないのです。また好きではありませんが、総裁が極めて重要な社会的責任のある公の立場にいらっしゃいますので、あえてお伺いしますが、総裁が大蔵事務次官退任以来取得した退職金の額はどの程度か、お尋ねをしたいと思います。  総裁は、一九八四年六月、大蔵事務次官を退職した後、八六年六月から太陽神戸銀行取締役に天下りをしました。翌年、すぐに同行の代表取締役頭取に就任し、その後、三井銀行と合併して、九〇年四月、太陽神戸三井銀行の代表取締役会長になり、さらに名称変更して、九二年四月、さくら銀行の代表取締役会長、そして九四年六月、同行の代表取締役相談役を務め、九四年十二月に退職したというのが経歴と聞いております。  八四年六月の事務次官を退職する際の退職金、さらに天下り先の太陽神戸銀行と合併行のさくら銀行を退任した際の退職金の額をお伺いしたいと思います。
  62. 松下康雄

    松下参考人 公務員を三十四年間勤務いたしまして退職いたしましたときの退職金は、私、税込みの数字はちょっとわからないのでございますけれども、当時、手取りの金額で三千万円をやや上回る程度の金額であったと記憶をしております。  それから、八年半の間、民間銀行に奉職をしまして、頭取、会長を務めましたが、それを退任いたしましたときに受け取りました退職金は、これも手取りで一億六千万前後の金額であったと存じます。
  63. 池田元久

    池田(元)委員 きのうから事前にお尋ねしてなかなか数字が出てこなかったのですが、率直に出されたので、了とさせていただきたいと思います。  ただ、次官退任時の退職金は、大蔵省に聞きましたら六千万円弱というふうに聞いたのですが、何かありますか。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  64. 松下康雄

    松下参考人 それは税込みの数字だと思います。
  65. 池田元久

    池田(元)委員 そして、総裁、余りこういうことは僕、趣味ではないのですが、もう一言言わせていただくと、日銀を任期満了で退任した場合の退職金はどの程度になりますか。
  66. 松下康雄

    松下参考人 これは全く仮定の計算ということに相なりますが、今回、四月以後は退職金の支給基準が変わりましたので、仮に両方の支給基準を適用いたしまして五年間という期間で機械的に計算をいたしますと、これは税込みでございますけれども、六千六百八十四万円と聞いております。
  67. 池田元久

    池田(元)委員 年収とは別に松下さんは、大蔵省退職時、さくら銀行退職時、これから任期満了までやった場合、合わせると二億五千万円の退職金を取得されることになるのです、客観的な推定として。大変な額ですね。これの評価を今この瞬間に私はしょうと思いませんが、ちょっとよく聞いておいていただきたいのですが、それだけの退職金を取得されるということがここで明らかになりました。  そして、退職金はまた後で話すことにして、私は、松下さんの経歴からいって、まず大蔵省OB、それから民間有力銀行であるさくら銀行の会長、そして日銀総裁、その三つの点について順次聞いていきたいのです。  大蔵省OBとして総裁の考えを聞く前に、まず、歴史は繰り返すと言いますが、一九七八年から七九年にかけて公費天国問題というのがありました。当時、大分世間を騒がせました。当時の大蔵省調査でも、三十数人の職員が鉄建公団から百二十二件の接待を受けた。あなたはその際、前任の主計局次長としての監督責任に加えて、「一連の過剰接待の是正に官房としての対応に欠けるところがあった」として、長岡事務次官とともに、処分された九人のうちで最も重い戒告処分を受けましたね。  それから、官房長として、最近少し引用される「職務上の関係者からの会食等への招待には、原則として応じない」という通達を出しました。この事実関係、間違いないですね。
  68. 松下康雄

    松下参考人 おっしゃるとおりでございます。  ただ、私、そのときの処分の中には、主計局におりましたときの、何か受けた方というような事実は入っておりませんでした。監督責任だけでございました。
  69. 池田元久

    池田(元)委員 今正確に私は言ったつもりです、監督責任としてというのに加えて、官房といいますか綱紀保持の立場から、最も重い処分を受けたと。  あなたはその後六年間大蔵省に在職し、官房長から主計局長、事務次官に上り詰めた。松下さんは、過剰接待で重い処分を受けたばかりではなく、今も引用される綱紀保持の通達を出した責任者ですね。あなたの名前で出ています、こういうものがありますね。しかし、あなたは出世したけれども、通達は空念仏に終わったわけです。今日の事態はそうでしょう。この一九七八年、七九年の公費天国問題、これは、今日の接待漬け、モラルの退廃のプロトタイプといいますか、原型がここにあるのではないかと私は思います。  大蔵省OB、とりわけ事務次官経験者の責任を問う声がありますが、その中でもあなたの責任は重いと思うのですが、いかがでしょうか。
  70. 松下康雄

    松下参考人 ただいま御指摘綱紀粛正に関します通達は、私が官房長として発出をいたしたものでございます。  当時のいわゆる公費天国のときの問題の中心は、いわゆる今日でいいます官官接待と申しますか、官庁から予算に関連をして会食に招待を受ける、その場合に相手先側で架空経費でこれを捻出したというようなことがございまして、大きな問題になったわけでございます。  私どもは、それが事案のもとでございますけれども、その機会に発出をしました通達では、官庁に限らず、民間も含めた外部一般との交際についての自粛の通達にいたしました。私といたしましては、当時、その通達の実施にいろいろと努力をいたしまして、綱紀粛正のための委員会を設けて適用の実行に当たらせるというようなことをやっていたのでございますけれども、それから十九年たちました今日、再び交際問題が生じたということは大変遺憾なことでございまして、当時の私の努力にも足らざる点があったかという感じを持っております。
  71. 池田元久

    池田(元)委員 この松下官房長発出の通達から四種類ですか、その後大蔵省は出しているわけですね。もう空念仏に終わっているわけですよ。松下さんは、余り言いたくありませんが、その後六年間トップにいたわけですね。ですから、その責任というのは免れないと私は思います。  次に、さくら銀行の会長としての責任お尋ねしたいと思います。  あなたが太陽神戸銀行とさくら銀行に頭取、会長として在任したのは、一九八七年六月から九四年六月まで。その前後もありますよ、相談役とか取締役とか。トップとして七年間君臨した。その間あなたはどのような経営を行ってきたのか。  松下さんの前任者にも責任はあると思いますよ。しかし、今その銀行は、不良債権処理が進んでいないのが実情ですね。九七年九月期の不良債権額は一兆六千六百六十八億円、公表不良債権比率や貸倒引当金カバー率などが都銀の中でも見劣りがすると言われている。そして、今度一公的資金で一千億円の永久劣後債の買い取りを申請しています。上乗せ金利は一・五%以下で、都銀の中で最も高くなっている。この事態をあなたはどう考えますか。
  72. 松下康雄

    松下参考人 私が銀行の頭取、会長を務めておりましたころを振り返りますと、当時の私どもの最大の課題は、いかにしてこの合併銀行というものを本当に二つないし三つの銀行が融和をした銀行組織に育て上げて、そして営業力を高めるかということが課題の一番大事なところと思いまして、これに熱中をしておりました。  もちろん、そうは申しましても銀行でございますから、貸し出しの審査等の体制の確立ということも努力をしてまいったつもりでおりますけれども、当時のいわゆるバブル期に入りましたときに、銀行が全般に過剰流動性を持ちまして、これの運用に四苦八苦をいたしておりました時代でありましたために、その結果として、後にバブルが崩壊をしましたとき多くの不良債権を残すことになりましたのは、まことに遺憾なことだと考えております。  ただ、その後、各銀行も、さくら銀行を含めまして非常に努力を続けてまいりまして、今日におきましては、不良債権処理に各行とも大体の目安をつけられるようなところまで戻ってきたということは認めたいと思います。
  73. 池田元久

    池田(元)委員 トップは結果責任があるということを持ち出すまでもなく、松下総裁は、さくら銀行不良債権処理におくれをとった責任があるのではないですか。また、公的資金で資本注入を受ける以上、あなたの責任を不問に付すわけにはいかないと私は思います。  あなたは、頭取、会長として、多額の年俸と退職金を得ました。公的資金によって資本注入を受ける元の経営者として、少なくとも退職金ぐらいは返上するつもりはないですか。
  74. 松下康雄

    松下参考人 この支払いを行いました銀行そのものは、今日におきましても銀行としての経営を続けておりまして、その内容につきましては、非常に、何と申しますか、いろいろの急迫した問題を抱えているというような状況ではございません。  私は、その点につきましては、銀行側の判断を尊重してまいりたいと思っております。
  75. 池田元久

    池田(元)委員 ちょっと角度を変えますが、あなたは、預金保険機構金融危機管理審査委員会委員の一人として、さくら銀行の会長等に対するヒアリングに加わったわけですね。一言確認したいと思うのですが。
  76. 松下康雄

    松下参考人 そのとおりでございます。
  77. 池田元久

    池田(元)委員 あなたは、普通の考えでいって、さくら銀行の申請を受ける資格があると思いまずか。  松下総裁、あなたには管理審査委員会は大変居心地が悪いのじゃないかと私は思うのですよ。銀行経営の責任を問われる立場のあなたが、その銀行の経営責任を問うことができますか、これは世間の常識ですよ。そんなこと許されますか。
  78. 松下康雄

    松下参考人 審査委員会委員につきましては、法律の規定によりまして、私もこの委員の一員となっております。  そして、この金融機関の優先株引き受け等に関します承認に関して判断をいたす立場にあるわけでございますけれども、この判断をいたしますときの手続は、法律におきまして、現に在任する委員の全員一致をもって議決を行うということになっておりまして、審査委員会委員が意思の表明を行わないで会議に欠席しますとか、あるいは議決に棄権をするといった場合には、この全員一致の条件を満たさなくなるという手続上の法律問題が生ずると理解をいたしております。  そういった枠組みの中で、私は審査委員会出席をいたしまして職務を行っている次第でございますけれども、私自身は、自分が民間銀行の頭取、会長でありましたことで、いささかなりとも私の審査委員としての判断がゆがむような、公正を欠くようなことがあってはならないと常に自戒をしながら職務を行っております。
  79. 池田元久

    池田(元)委員 そんな法律がどうとか、心構えの問題じゃないですよ。こういうことは一般社会ではないことなのです。問題のあるプレーヤーがジャッジの立場に回る、こんなことがありますか。よく考えていただきたい。  時間がありませんから次へ行きますが、先ほど少し触れましたが、日銀の現職幹部二人が都銀などから多額の飲食やゴルフなどの接待を受け、このうち営業局幹部が、一九九三年営業局に着任してから四年間、六行から七百万円を超える接待を受けていたと言われます。その際、日銀の企業短期経済観測調査、いわゆる短観や日銀の貸し出し、公開市場操作の情報が漏えいした疑いが強まっています。一両日中に司直の手が入るという情報が有力です。  世界の中央銀行で、先進国の中央銀行司直の手が入ったところはないそうです。中央銀行信頼を揺るがす事件になります。責任はどのように感じていらっしゃるか、お尋ねをしたいと思います。
  80. 松下康雄

    松下参考人 この日々の報道をされるいろいろな点につきまして、私どもは、調査を行い事実を把握し、そしてその中で不都合が発見をされた場合には、厳正に対処をすべきものと考えて対応をいたしております。それ以上に、さらにこの問題が発展いたします場合につきましては、それはまだその事実が生じておりません段階で、いろいろとそれに対しまして申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。  現在の私の考えは、こうやって命を受けまして日銀総裁の職にあります限りは、中央銀行としての機能を万全に果たせるように全力を挙げて職務の遂行に努めたいということ、それが私に与えられた責務であると思っております。
  81. 池田元久

    池田(元)委員 まあ、いろいろ問題が残念ながら出てくるわけですね。  一九九三年はまださくら銀行の会長を務めていらしたわけですね。それで贈賄側にさくら銀行が入っていたらどうなるのですか。これ一つでも問題があるのじゃないですか。  私がこれまで申し上げてきたとおり、総裁は、大蔵省のOBとして、現職当時、過剰接待問題で重い処分を受けたばかりではなく、空念仏に終わった綱紀保持の通達を出したその責任者であったことが一つ。それからまた、七年間都市銀行のトップにありながら、不良債権処理におくれをとり、公的資金による資本注入に至った経営責任は大変大きいと思います。さらに三つ目として、日銀総裁として幹部に対する重大な監督責任があります。  ごくごく常識的に考えて、総裁はみずからの出処進退を明らかにすべきではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  82. 松下康雄

    松下参考人 厳しい御意見でございますが、しかと承りました。
  83. 池田元久

    池田(元)委員 真剣に考えてください。  私は、改正日銀法審議の際には、日銀を世界のデファクトスタンダードに合わせて、独立性信頼性を高めるために対案、修正案を出しました。日銀独立性信頼性を何よりも重視する立場におります。新生日銀を後押ししょうとした一人であります。  総裁は、経歴からいっても立派な方だと拝見いたします。大事に臨んで判断を誤ることはないと私は考えております。こういうことを言うのは大変残念ですが、総裁、ほかから迫られるよりも、みずからの判断で進退を明らかにされるよう申し上げたいと思います。  もう一言。私もこんなことを聞きたくはないのですよ。でも、これはやはりこの社会のフェアネスとかそういう立場から聞いているのですが、不祥事をめぐる調査は三月中にまとまるということです。また、改正日銀法審議の際には、大蔵委員会の自民党の若手議員有志の賛同も得ましたが、四月から新生日銀が発足するのを機会に、人心一新、職員の意識改革のために総裁人事を行うべきだと我々は主張しました。年度内に決断されるよう申し上げたいと思います。お答えをいただきたいと思います。
  84. 松下康雄

    松下参考人 ただいまの御意見は、よく承りました。  一つだけ、今の、細かいことで恐縮でございます。先ほど、私は調査のときにメモを出していると申しましたけれども、それは、場合によってそういうものを使ったこともありますけれども、全員出しているということではございません。それから、調査につきまして、三月いっぱいと申しましたが、それは第一次的な調査の取りまとめの時期でございます。
  85. 池田元久

    池田(元)委員 総裁が真剣に受けとめるということを私は信じたいと思います。  そうして、この日本のまず大蔵省行政の失墜、そしてそれが日銀に波及する、もう金融村は目を覆うばかりです。それを回復するために、やはり決断が大変重要だと思います。ほかから言われるのではなく、特に権力のある政党の一角から言われるようなことは大変避けるべきことではないかと私は思います。中央銀行というのは、それだけ大事な組織であるということをぜひ自覚されるようお願いをしたいと思います。  きょうは資本注入についてお尋ねをするつもりでおりました。松田理事長におかれましては、きのうまで大変御苦労さまでした。資本注入は私は全然賛成しておりませんが、作業をやって夜遅くまでやられたと聞いております。資本注入の理由等について私はぜひ聞きたかったのですが、時間がありません。一言申し添えれば、なぜ優良銀行、グッドバンクに国民の公的資金を入れるのか。しかも非常にあいまい粗雑な基準、何でもありの基準ですね。何でもありですよ。  それで、上乗せ金利、ジャパン・プレミアム等があると金融機能に障害が起きるとされています。今、ジャパン・プレミアムは、これはもっとやりたいのですけれども、急速に下がって〇・二五%ですよ。市場から資金を取れるのですよ。取れないときにはいろいろ考えることはあっていいでしょう。市場から取れるのに何でこんなことをするのですか。我々の公的資金を使ってやるわけです。これを一言申し上げ、また別の機会にやりたいと思います。  総裁も、ぜひまた、きょうの私の意見を聞いていただければ幸いに存じます。
  86. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、石井啓一君。
  87. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 平和・改革の石井啓一でございます。  昨日深夜まで、金融危機管理審査委員会におかれて優先株等の引き受けの審査が行われました。その申請の一部について承認がされたとけさの新聞等でも発表になって報道されておりますので、まず、この点についてお尋ねをしたいと思いますが、昨夜深夜の決定でけさの質問ということでございますから、事前に質疑通告をしていない部分もございますが、よろしくお願いしたいと思います。  預金保険機構理事長お尋ねをいたします。  まず、今回の審査でございますけれども、駆け足審査じゃないかという批判もございますね。八日に五時間、日曜日御苦労されておりますけれども、八日に五時間審査をされた。九日、十日は、これは大臣の国会の方の時間が制約されているということで、委員会が終わった後、九日には四時間、十日には五時間、これは夜遅くまで行っていただいたということでございますが、三日間合計いたしますと十四時間の審査ということになります。申請されている二十一行について十四時間ということでございますから、平均をいたしますと一行当たり四十分、こういうことでございまして、これだけの、合計いたしますと二兆にも上るこの公的資金を審査するには、私は、いささかやはり駆け足審査という批判も当たるのじゃないかなという思いもいたしますが、その点、理事長いかがでございますか。
  88. 松田昇

    松田参考人 お答えをいたします。  そのような報道があることももちろん承知をいたしておりますが、私ども審査委員会といたしましては、事前に二回の審査委員会を開きまして、審査基準と経営の健全性確保計画の内容を決めて、その取り寄せなどをいたしております。  会議の時間は、確かに今申されたとおりでございますが、その前後に、審議委員を中心に、私どもの事務局の者が意見の集約に走って回りまして、追加資料もお届けし、それぞれ意見をまとめながらまとめながら会議の席に臨んでおります。  私どもとしましては、当面の目標が三月末を控えているということでございますので、もちろん慎重に時間をかけるということと、それから、とりあえず三月末に間に合わせなければ何の意味もないではないかという思いと二つがありまして、その中で一生懸命やらせていただいているということでございます。
  89. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今理事長おっしゃるように、確かに決算期の三月末までに間に合わせなければいけない、こういう事情はわかりますので、私もこれ以上厳しく言うつもりはございませんけれども、ただ、一行当たり数百億ないしは一千億にも上る公的資金を導入するに当たっては、やはりいささか泥縄的という指摘を免れない。この点については、私申し上げておきたいと思います。  続いて、今回承認された中で、特に劣後ローンについて、申請額より承認額が大分削られている。特に日債銀については、劣後ローンを二千三百億申請をしていたということが報道されておりますけれども、それに対して全く認めなかった、こういう結果になっております。記者会見等の中身を見ますと、劣後ローンが算入されるティア2が日債銀については現状で十分だったので、これは認めなかったということであります。  これは確認をしたいと思うのですけれども、長銀の場合は七百億申請して四百六十六億認めている。日債銀の場合、二千三百億申請して全く認められないというのはこのティア2が上限いっぱいまで来ている、こういうことなのかどうか。その点についてちょっと確認をしておきたいと思います。
  90. 松田昇

    松田参考人 委員お話しいただきましたとおりでございまして、日債銀の場合にはティア2がいっぱいであったということでございます。一方、日本長期信用銀行の方は、若干すき間がございましたので、その部分だけ認めた、こういうことになります。
  91. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ところで、この日債銀については、経営再建中である、こういう状況でございますが、今期から五年間無配当という業績の予想もあるところでございます。一方、審査基準を見ますと、申請金融機関の経営の状況が著しく悪化していないことの具体的な基準として、最近三年間連続して赤字決算ないしは無配当となっていないこと、これが基準なわけです。これは過去三年間無配当になっていない、こういうことが条件なわけですけれども、日債銀の場合は、過去はなっていないとしても、これから五年間無配当になるという業績予想をしているわけですよ。ということは、私は、やはりこういう予想をしているところに公的資金を入れるというのはどうかなと思うのですけれども、その点についての議論はどういうことでございましたでしょうか。
  92. 松田昇

    松田参考人 議論の中身をどこまでお話しできるかわかりませんけれども、概要についてお話ししますと、問題点としては、日本債券信用銀行が、今先生おっしゃった御指摘の基準の一でございますけれども、そういう条件を満たしているかどうかということで、まず判断をいたしました。  法令では、今先生おっしゃったように、著しく経営の状況が悪化している場合となっておりますが、それを落とした審査基準では、三年間連続して無配当または赤字決算、こういうことでございます。それで、日債銀の場合は、昨年四月に経営再建策を取りまとめておりまして、大幅な資本増強を図っております。その際の収益計画は、内部留保の拡充に重点を置くということでございました。今年度の決算を拝見しますと、業務純益が、当初の計画が大体六百五十億のようだったのですが、それが千二百億円に上振れをいたしております。大体好調に推移しているのであろうということと、今回の申請におきましては、配当を織り込んだ収益計画が経営の健全性確保計画の中に出ておりますので、そういう点をいろいろ考えますと条件に当たる、こういうことで判断をいたしたところでございます。     〔委員長退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  93. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そういたしますと、今後業績が上向くだろう、こういう予想でということだと思いますが、仮に三年間連続無配当になるような事態が今後生じた場合、これは結果として審査基準から外れるような銀行になってしまうわけですね、その時点では。そういう事態が生じた場合、これはどういうふうに対処するということになるのでしょうか。
  94. 松田昇

    松田参考人 今回の法令と審査基準、あるいは健全性確保の計画の中には、罰則等のペナルティーはもちろんないわけでございます。  ただ、審査委員会としては、健全性確保計画を、これで内閣の議決がございましたらば、了解が得られましたならば公表することになっておりますので、その世間に公表したものを経営者が守るように努力するのは当然だろうと。なおかつ、審査委員会としては、その後もフォローをいたしまして、時に報告を求め、それから履行状態について公表できるということになっております。  私ども、注意深くそれを見守って、いやしくも天下に公表した経営計画が仮に外れれば、それなりの覚悟をその経営者もとるのではないだろうか、そのように思っております。
  95. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今、理事長から経営改善計画の話が出ましたので、改めてお尋ねしたいと思います。  今回、資本注入する前提として経営改善計画が出されているわけでありますけれども、この経営改善計画が実行されるための担保というのはどうなっているのか。特に、実行されない場合のペナルティー、法令的にはございませんけれども、実行されない場合のペナルティーというのはどういうふうに考えているのか。この点について、理事長、お願いします。
  96. 松田昇

    松田参考人 若干繰り返しになって大変恐縮でございますけれども、まず、法令上、罰則等のペナルティーがないということは先ほど申し上げたとおりでございます。  私どもは、法令に従って審査基準をつくっておりますので、その中で最大限履行状態確保する、きちっとした形で確保するということで、審査に当たっては、例えば不良債権であれば自己査定の資料も取り寄せて、なおかつ、検査、考査をしておられる当局側の委員からも意見をいただいていろいろ審査をして、真実かどうかの判定の材料にいたして慎重にやっているわけですけれども、その承認が決まりました後で、その後のことは先ほど申し上げたのと同じでございまして、事後のフォローをいたします。なおかつ、場合によっては公表をすることも考えております。  そういう私どもの審査委員会の仕組みと、御当局の監督や考査の成果と申しますか、その仕組みが相まって健全性が保たれていくのであろう、このように考えております。
  97. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 これだけの税金を投入するわけですから、当然、これは経営改善計画を実行してもらわなければいけないわけですね。そのフォローをする、そのフォローの状況も公表していくということで、あるいは当初の計画も当然公表するということでおのずからそういうことが促されるだろう、こういうお話かと思うのですけれども、逆に言うと、罰則、ペナルティーでもってその実効性を担保するというのは、それは残念なことではありますけれども、そういうことで努力を促すという面もございますね。  先ほど理事長は、当然そういう覚悟でもっておやりになっている、こういう発言ではありましたけれども、もし実行されない場合、どういう措置をお考えになっていますか。
  98. 松田昇

    松田参考人 委員の御指摘のとおり、現在罰則その他のそういうペナルティーはございませんので、私どもやれることは、預金保険機構の審査委員会として、先ほど申し上げたように、場合によってはそういう不遵守の状態を公表することになる、こういうことでございます。
  99. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、優先株、劣後債等の発行条件、今回もう承認をしたわけでありますけれども、この発行条件がどういうふうに決まったのか、この点について御説明ください。
  100. 松田昇

    松田参考人 申請されました優先株なり劣後ローン、劣後債の金額については、先ほど申し上げたような基準が一つございますし、その他いろいろな要素を考えて決めているわけでございますが、発行条件、配当の利率、それから金利回り、それにつきましては、客観性、合理性を持たせるために、当委員会の審査だけではなくて、専門的知識を持っている複数の機関に鑑定と申しますか評価をお願いいたしまして、それの評価の結果も踏まえて、審査委員会で厳正に審査をしております。  と同時に、発行条件でございますから、発行体の銀行が最近出されたような実績があればそれも参考にしますので、資料の取り寄せを行って、そういうことも総合判断した上でそういう発行条件を決めさせていただいております。
  101. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今回も確かに、承認された四行を見ますと、優先株について、それぞれ一株当たりの配当に大分差がついておりますね。新聞等に出ておりますけれども、大分差がついている。第一勧銀で年〇・七五%ですか、日債銀だと年で三%ですね。それだけの差がついているということでございます。  ちなみに、各銀行から申請をされている申請の内容を公表するお考えがあるかどうかちょっと確認をしたいんですが、大蔵大臣及び内閣総理大臣の承認後に経営改善計画の各行の計画を発表しますね。なおかつ、審査委員会での議事要旨あるいは議事録等も公表する。同時に、各行から申請されている内容もこの際公表されてはどうかと思うのですね。  もう公表されているというか、新聞でほとんど発表されていますから半ば公表されているようなものでございますが、ただ、今申し上げましたように、発行条件が申請されているのと実際にどうなっておるか、そこでもってどういう審査が行われたのかというのが我々にもわかるわけでありますし、審査委員会での透明性、公平性をやはりきちんと公にするという意味でも、この審査内容を公表されるということを御検討いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。
  102. 松田昇

    松田参考人 先生御案内のとおり、私、六人の審査委員の一人でございます。ただ、事務局を預かっております預金保険機構責任者でもございます。  ただいまの御意見については、非常に難しい問題でございまして、それぞれ金融機関の、例えば発行条件についての申請状況自体もかなりマーケットに響く問題でもありますし、私たちが取り寄せているいろいろな資料の中には、よそに漏らさないということを条件としていろいろお聞きしているところもあるわけでございます。  そうでございますけれども、私ひとりで決めるわけではございませんので、持ち帰りまして、委員長にそういう御意見のあったことを報告いたします。
  103. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ぜひ御検討いただきたいと思うのですね。議事要旨、議事録も公表するということでありますから、その中でも数字を挙げて御検討なさっているということだと思いますし、またあえて言えば、銀行の言いなりになっていないということをちゃんと示すという意味でも意義があるのじゃないかと私は思いますので、これはぜひ持ち帰っていただいて、審査委員会の中で御検討いただきたいと思います。  それでは、大臣にお聞きをいたします。  今回、二十一行申請されているわけでございます。申請の内容は公表されていませんが、新聞発表になっておりますので、二十一行、公的資金で資本注入、この申請がされているわけでありますが、報道されている申請の状況を見ますと、大手銀行十九行のうち十八行が申請をしている。特に都銀については、その申請額がほぼ一千億程度で横並びというふうに報じられております。実際に、第一勧銀は九百九十億ということで承認を議決されたようでありますけれども、こういう横並びの申請というものはまさに護送船団方式そのものだというふうに思いますけれども、大臣はいかがお考えですか。
  104. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  委員今仰せのように言う方もいらっしゃいますけれども、実際のところ、大蔵省が、申請したいと思う銀行に対していろいろな関与をしたことは全くないのでございますから、これは、申請銀行が文字どおり自分の判断で申請をしてきたと私は見ておるわけです。  申請の内容についても、ある銀行は優先株、ある銀行は劣後債あるいは劣後ローン、注入を受ける受け方についてもそれぞれ差がございます。  同時にまた、注入を受けるというのは、よく御存じのとおり、補助金とか支援金を受けるわけではございませんから、優先株の場合には配当について優先して配当する、そういう銀行側の負担があるわけですね。あるいは劣後債、劣後ローンにしてもしかりでありまして、それなりの金利を払っていくということでありますから、それぞれの銀行が自分で判断された、これは間違いないところだというふうに思います。
  105. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 大蔵大臣立場で、それは大蔵省が関与したなんということは口が裂けても言えないとは思いますけれども、ただ、申請の状況の結果を見ますと、本当に横並びですよ。  確かに、都銀では劣後債あるいは劣後ローン、第一勧銀は優先株と手法は若干違っておりますけれども、その金額がほとんど横並びの一千億というふうに報道されておりますし、また、先ほど池田委員の質問にもございましたが、本来、公的資金を要請しなくても市場で十分自己資本が充実できるような優良行も一緒に申請をしてきている。  これは金融二法の審議のときにも随分議論をしましたけれども、やはり優良行以外の銀行が申請をすると、その銀行が経営不振というレッテルを張られかねない、こういうことから、これは優良行がおつき合いをしているというふうにみなさざるを得ないのですね。そういうやり方というのは、まさに船足の遅い船に合わせて船団を組んで進んでいくという護送船団方式そのものだ、少なくとも申請の状況を見る限り、私は、これは護送船団方式そのものではないか、こういうふうに思います。大臣と見解が違いますから、これ以上やりとりはいたしません。  ところで、今回申請した各行が、リストラ策、経営改善計画を出されていますね。私ども、申請した内容を正確には把握をしておりませんが、報道でもいろいろ伝えられております。大臣は、これらの銀行のリストラ策というのが十分なものとお考えになっているのかどうか、この点についてお伺いします。
  106. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  申請銀行は、経営健全化計画というものを具体的に文書として審査委員会に提出する。その経営健全化計画につきまして、相当厳しく審査をしたわけであります。  申請行としては、リストラ計画、これはすべてについて本来はみずからの判断でやるべきことでありますし、そして、それが適正妥当であるかどうかというのは、実は株主総会の評価の対象になるという事柄でありますけれども、しかし、それを前提にしながらでしょうけれども、相当この機会にリストラをやるべきだと。実際の話、役員の賞与その他は別として、職員の給与水準を引き下げる、あるいはまた人員の整理をする、人員の縮減を図るなどというのは、従業員との関係でいろいろ苦労もあろうかと思うのでありますけれども、この機会にリストラをして自分の銀行の体質を強化したい、そういう気持ちでのリストラ計画だと私は思うのでありまして、相当努力した跡が見られるというふうに私は見ました。
  107. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ただ、公表されていますリストラ策を見ますと、他の産業界から比べますと、まだまだ不十分だという声もございます。  また、このリストラ策自体も横並びなんですよ。今後、日本金融ビッグバンを迎えるに当たって、私は、公的資金を導入する云々という前に、まず銀行みずからが海外の金融機関と対等に戦うような体力をつけるために努力をしなければいけない問題だと思いますけれども、やはり今のを見ていますと、本当にこれで海外の金融機関に立ち向かえるような競争力がつくのかしらと。やはり横並び主義で、本当に厳しいリストラ策が出されていないのではないか。金融二法のときに随分心配しましたけれども、モラルハザード的な状況に陥っているのではないか。そういう懸念がございますので、その点については指摘をしておきたいと思います。  それから、三月五日の申請によって、今回決めた四行だけではなくて二十一行分の申請によって、貸し渋りの解消にどれだけの効果を見込んでいるのか。貸し渋りと全く正反対ですけれども、逆に今度は不良債権処理にどれだけの効果が見込まれているのか、この点についてちょっと大臣御答弁ください。
  108. 松永光

    松永国務大臣 私は、今回の資本注入を受けることによって、どれだけ金融の円滑化、俗な言葉で言えば貸し渋り解消のための措置がなされ得るのかということは、私が一番関心を持っている点でありましたから、ほとんどの銀行責任者にその点を指摘しておきました。  それで、今委員指摘のとおり、不良債権をふやす結果になるような貸し付けばしてはならぬことであるけれども、自己資本が充実されてくれば、その分にふさわしく融資は拡大をしていきたいと、いろいろ数字を挙げての説明もございました。私は、これによって貸し渋りの解消に大きく資するものだというふうに判断をいたしました。
  109. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 各行から提出されておるこの計画の中には「金融の円滑化」という項目で具体的な方策もございますね。この中で、例えば今回の二兆一千億程度だと具体的にどれぐらいの金融の円滑化の効果があるかというのは、これはわかりますね。その点についてはどうなんでしょう。今、決定しているわけではありませんけれども、議決をしたわけではありませんけれども。
  110. 山口公生

    ○山口政府委員 今回の資本注入措置によりまして、いわゆる期末を心配する余りの貸し渋り現象というものの解消に向かうことが期待されるわけですが、健全性の確保のための計画におきまして、「金融の円滑化」という欄を設けてございます。そこにできるだけ具体的に書いていただきたいということで、特にお願いしてございます。  ただ、この問題につきましては、数量的に幾らというのはなかなか難しいと思います。だから、どういう考え方でそういった問題に対処するかということをできるだけ具体的に書いてほしいということをお願いしてございます。  それで、それは決定されますと、その後公表されますので、それをごらんいただくということになろうかと思いますけれども、数量的な、幾らふやしますというのは、それはなかなか難しい議論だと思います。
  111. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 本来、当初のこの金融安定化措置法案の趣旨は、貸し渋り解消ではなくて金融不安を安定化するということでございまして、自己資本充実ということでございますから、貸し渋りの解消効果というのは副次的な効果だったと思うんですが、その後いろいろな議論の中で、やはり税金を投入するんだから、中小企業が今運転資金の借りられないこの非常に厳しい状況の中で、貸し渋りについても緩和されるようにすべきだという議論が大きく起こってきました。  総理も金融界の代表に会ってそういう点について要請をされる、こういうふうに伺っておりますので、経営健全化のための計画、リストラもフォローするということでございますけれども、ある意味では、自己資本を注入した後の金融の円滑化についても私はこれはきちんとフォローすべきだと思うんですね。額としてどういうことになったかというのはなかなかわかりにくい点があるかと思いますが、そういうふうな点をきちっとフォローすべきだと思うんです。その点について、局長どうですか。
  112. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今御紹介しました健全性確保のための計画は、御提出いただいた上で公表されますので、審査委員会におきまして、これはフォローをしていただくことになります。  私ども監督当局も、これについては十分注意を持って見てまいりたいというふうに考えております。
  113. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 じゃ、その点についてよろしくお願いをいたしたいと思います。  もう時間が参りましたので、実はきょうはG7についても質問をする予定であったんですが、自己資本の方で終わってしまいました。G7については、予算委員会のこれは自由党の二見委員とのやりとりの中で、IMFの見方を我が国が認めたか認めないかということで随分激しいやりとりがございましたね。結果として、榊原財務官の御説明によりますと、事前の事務当局におけるやりとりの中で、ほかの国は日本について財政刺激が必要だという見方をする国もあったが、我が国はそういう見方をしなかった、IMFがそういう見方をするということについて認めたんだ、こういうことでございました。  最後に一問ちょっと大臣お尋ねをしますけれども、このG7に先立ってアメリカのルービン財務長官と会談されていますね。その会談の中身が報道されていまずけれども、ルービン長官が、日本の九八年度予算景気に対して抑制的になっている、減税、公共事業の前倒しが終わったとき日本がどうするか世界が懸念している、こういうふうに述べたというふうに報じられております。  それに対して大臣は、これも報道によりますと、いろいろな日本の二兆円減税だとかあるいは三十兆円の公的資金の投入だとか、自民党の方でおまとめになった第四次の経済対策とかそういうことを説明された後に、内外の情勢に応じて適切に処理するというふうにつけ加えられたと。これは報道でございますけれども、そういうやりとりが事実かどうか。  内外の情勢に応じて適切に処理するというそのことは、私は、アメリカ側には追加的な財政出動を示唆するというふうに受けとめられたんじゃないかと思うんですけれども、その点について最後に確認をして、質問を終わりたいと思います。
  114. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  今委員の申されたことの中で、内外の情勢に応じて適切に対処するということだけが違うですな。あとは委員申されたとおり。  実は私は構えて行きました。相当厳しい要請があるだろうということを想定して、構えて参りました。したがって、私の方からむしろ積極的に、二兆円減税は二月、三月に集中的に一兆円減税するんですよというようなこととか、あるいは補正予算、公共事業前倒しも含めて早急に二兆五千億円やるんですよとか、あるいは三十兆の公的資金を使って、そして日本金融システム安定化を急いでやりますよとか、そういったことを私の方から構えて先にばんばんやったわけでありまして、それでそうかということになったというふうに私は理解をしておるわけであります。
  115. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 時間が参りましたので、終わります。
  116. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員長代理 次に、小池百合子君。
  117. 小池百合子

    ○小池委員 自由党の小池百合子でございます。  大臣所信に関しまして、きょうは日銀総裁にも御足労をおかけいたしております、幾つか御質問をさせていただきます。  昨日、たまたま今来日中のシップリー・ニュージーランド首相にお目にかかりました。大胆な行政改革を実行して、そして今、国際競争力が急激に上がった国として日本でも大変注目されたところでございます。ただ最近は、オークランドの中心街で停電が起こっていて、行革のやり過ぎじゃないか、規制緩和のやり過ぎではないかというようなことで、また別の意味で世界からの注目を集めているところでございます。そのシップリー首相がおっしゃったのは、その国の問題点が世界中に知らされると、まさに信頼感を一気に失ってしまうんだな、怖いことだな、こういうことは気をつけていかなければならないというようなことをおっしゃっていたのを大変印象深く思いました。  そこで、我が国の場合でございますが、大臣にもかねがね私どもが指摘もしくはお伝えしております、また、いろいろなところで耳にし目にされております海外のマスコミの論調でございますが、日本に対してはまことに厳しい論調がずっと昨年来続いているわけでございまして、ウォールストリート・ジャーナルではブレーンデッド、脳死状態にある。日本がブレーンデッドである。そして日本政策はバーチャルポリシーであるという指摘もございます。仮想政策というような厳しい指摘がございます。  また、過日のニューヨーク・タイムズでは、橋本総理を煮え切らない執事、スチュワードという表現を使っているわけでございますが、このような表現で今の日本政府の経済政策、そしてそのリーダーシップのなさということを辛らつに書き記しているところでございます。  一番新しいところですと、ファイナンシャル・タイムズで政府の小出しの経済政策についてストリップティーズという言葉を使って、最近話題のあのお店のことなんかもつい想像してしまうわけでございますけれども、そういった、本当に一国に対してこんなに厳しいことを言うのかというようなことで書き記しております。  また、同じくファイナンシャル・タイムズの一番新しいところでは、日本経済政策にはいらっく、またその政策を理解することは極めて難しい、これは日本の禅を理解するよりもなお難しいというような表現まで使っているわけでございます。  つまり、こういったことが海外での論調になればなるほど、ますます日本への信頼というのが損なわれる。これは全く違う話でございますが、今回の公的資金合わせて三十兆円というようなお金の額がいろいろと言われておりますけれども、日本の世界に対しての信頼ということはお金の額にはあらわせませんけれども、この間の大蔵省そして金融機関等々の不祥事の問題、そして経済政策の過ち、そして迷走状態にある今のこの景気等々を含めまして、これら全体が、日本に対しての世界からの信頼に額にはもう全くあらわせないほどのマイナスになっているというふうに思うわけでございます。  大臣、いかがでしょうか。こんなに書かれていて恥ずかしいとお思いになりませんか。
  118. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  委員今御指摘のように、日本に対するいろいろな外国のマスコミによる発言というか記事があるということは、私もある程度承知しております。  しかし、どうでしょう。この日本という国は脳死状態でしょうか。我が国経済は、残念ながら停滞状態にあります。それを克服して安定した成長路線に乗せることができるように、今、日本では真剣に取り組んでいるわけでございますね。G7の会合でも、先ほど委員が申されました三十兆の公的資金を使って日本金融システム安定化させる、このことについては、G7発表にもありますように、日本が厳しい状態から回復していくためにはまず金融の強化が大事だ、こういうふうなことで、日本努力は評価する、こうなっておるわけであります。  私どもとしては、外国のいろいろな報道は参考にしながら、一日も早い不況からの脱出ができるように頑張っていくのが私たちの務めだ、こう思っておるわけでございます。
  119. 小池百合子

    ○小池委員 精神論はよくわかりました。  しかし、実際には、マスコミの論調は、私はある意味で、日本のマスコミもそうでございますけれども、的を射ている。どういう表現を使うかは別ではございますけれども、海外のマスコミ、論調などを見ておりますと、まさしく私どもがこれまで主張してきているようなことを主張し、ですから、これは外圧とかそういう意味ではなくて、我々の主張を論調として載せているようなところがございまして、本来、脳死などと言われる前に、もっと本当の意味経済政策をしていただくことがすべてのポイントではないかというふうに思うわけでございます。  また、海外のマスコミだけではございませんで、先ほどのバーチャルポリシーという言葉も、あのサマーズ財務副長官もお使いになっていて、バーチャルポリシーでは不十分であるというようないら立ちを述べておられることをつけ加えておきたいと思います。  この後、時間がございませんので、それぞれポイントを伺わせていただきたいのでございますが、最近の不祥事に係るポイントでございます。三塚大蔵大臣が、松永蔵相が御就任前、突然おやめになりましたよね。もう一度振り返ってみたいのですけれども、松永大蔵大臣は、三塚大蔵大臣がなぜおやめになったのか、もう一度確認をとらせてください。
  120. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  三塚前大臣の心境については、私自身が三塚さんから直接承った言葉は、事務引き継ぎのときに、自分がすべての責任をとってやめるのだ、このことを重く受けとめて、私昔からの友人でありますが、大蔵改革を断行して、内部調査も徹底してやって、厳正な処分をして、そして大蔵省を生まれ変わらせてもらいたい、それによって大蔵省に対する信頼をぜひとも回復させてもらいたい、こういつたことを私は引き継ぎのときに三塚前大臣から言われました。大蔵省改革をやり遂げる途中でやめざるを得なかった悔しさも私はにじみ出ておったような気がいたしますし、何としてでも改革をやり遂げてくれという強い熱意を私はしっかり受けとめたわけであります。  同時にまた、三塚前大臣、やめる少し前に金融服務監査官という制度をつくっていただいて、それを中心にしながら、従来からある服務管理官と相提携して内部調査を徹底するようにということも言われました。大事なことだと思って、そのことが実のあるものになるように、今一生懸命頑張っているところでございます。     〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  121. 小池百合子

    ○小池委員 今大臣は、三塚前蔵相がすべての責任をとってということをおっしゃいました。すべての責任とは何でしょうか。
  122. 松永光

    松永国務大臣 それは三塚さんの言葉でありますから、そのとおり私は今申し上げたわけでありまして、いろいろ中にはあったろうと思いますけれども、三塚前大臣の言葉はそうでございました。大蔵改革の途中でやめることになった残念さもにじみ出ておりましたし、それからまた、この事態を長く放置しておけば大事な補正予算等の成立にも支障がありはせぬかな、あるいはまた気分一新の気持ちもあったかもしれませんが、いずれにせよ三塚さんの言葉でありますから、私はいろいろな意味で受けとめて、大変な決断をされたんだな、こう思ったわけです。  同時にまた、私に引き継ぐことになったその内容、改革とそれから内部調査を徹底してやって、そして綱紀の一層の徹底、こういつたことを言われましたので、それをしっかり受けとめて頑張っていかなければならぬ、こう思っているところでございます。
  123. 小池百合子

    ○小池委員 お話が長いので、短くお答えいただければと思っておりますけれども、すべての責任をとってやめざるを得なかった。だから、要はやはり不祥事の問題ですよね、重なって。であるならば、今キャリアの方が逮捕されてということで、また新たな不祥事が出てきた。そのたびにかわっていてはという現実問題もありましょうけれども、また松永大蔵大臣、今同じ立場に立たされておられるのじゃないのでしょうか。御認識はいかがでしょうか。
  124. 松永光

    松永国務大臣 金融検査の職務に従事しておる者二人がさきに逮捕されて、起訴されたわけでありますが、今委員指摘のとおり、その後二人のキャリアを含む職員について逮捕がなされました。これは大変重要に受けとめなければならぬ、こう思っておるわけでありまして、その点は深くおわびを申し上げる次第でございます。  私は、三塚さんから事務引き継ぎを受ける前に、総理から、三塚さんの後を受けてぜひひとつ大蔵省の徹底した改革を進めて、そして大蔵信頼を回復するように、同時にまた、三塚さんがやりかけた内部調査の徹底、問題ある者についての厳正な処分、こういったものもしっかりやってもらいたい、それを通じて大蔵省の立て直しを図ってもらいたい、こう言われました。その総理の言葉と三塚さんが私に引き継いでくれたこと、それを大事に受けとめて、その任務をそれこそ命がけで遂行していかなければならぬ、私は現在はそういう心境であります。
  125. 小池百合子

    ○小池委員 心境ばかり伺っていても仕方がありませんので、次のポイントに移らせていただきたいと思います。  今回の不祥事に絡みましても、さまざまな裁量行政が問題になっているわけでございますが、ことしは金融監督庁ができるということで、大蔵省と切り離しをしてという話でございますけれども、現時点ではそちらの準備が進んでいるかと思います。  そこで、せんだって官房長官の方から、千人規模の体制が必要なのではないか、予算の方では二百五十大規模ということが出ているようでございますが、一千人ぐらいをということで官房長官はおっしゃっておられる。それに対して総理の方は、いや、数よりも質の問題である、そういうやりとりが予算委員会でしょうか、あったかに聞いているわけでございますが、総理府の方、今、現状、どういう準備が進んでいるのかお聞かせください。
  126. 岡本佳郎

    ○岡本説明員 お答えいたします。  委員指摘の総理の御発言、官房長官の御発言でございますけれども、官房長官の御発言の趣旨ということにつきましては、まず基本的に、総理も言われたような検査の基本的あり方の見直しを踏まえて、検査体制の計画的な整備に努めていくことが必要という御趣旨で御発言がなされたと我々は受けとめております。  いずれにしましても、私ども設立準備室としては、予算にも種々盛り込ませていただきましたことを踏まえて、六月の発足を念頭に置きまして今鋭意準備を進めているところでございます。
  127. 小池百合子

    ○小池委員 私、前回質問に立たせていただいたときも、例えばアメリカの例ですと八千人体制でやっている。SECであるならば、職員が二千六百名、うち弁護士が一千人、そして会計士が百八十人。それに対して日本の場合は、これは証券取引監視委員会の例でございますけれども、職員が二百名のうち、法曹資格を持った者がわずか四人というようなことでございます。よって、質とともに人数を確保していかないといけないということは、これからの透明な金融行政を進めていくのに不可欠であろうというふうに私は思っておりますので、私は、こういう方向に行くべきではないかということを改めて主張したいと思います。  三番目に、私は、これはいまだにひっかかっていてどうも解せないので、きょうは日銀総裁にお出ましいただいておりますので、山一証券の問題について伺わせていただきたいと思っております。  まず、総裁、いわゆる日銀特融でございますけれども、この貸出残額は現時点で一体幾らになっているのでしょうか。
  128. 松下康雄

    松下参考人 お答え申し上げます。  現在、日本銀行が実行いたしております日本銀行法第二十五条に基づくいわゆる特融の残高は、二月の末には三兆三千五百六十六億円でございましたが、昨日、三月十日時点では約三兆四千億円となっております。
  129. 小池百合子

    ○小池委員 それでは、そのうち山一には幾ら行っているのでしょうか。
  130. 松下康雄

    松下参考人 山二証券向けは、昨年の十一月ぐらいには一兆二千億円ぐらいでございましたが、現在では約五千億円になっております。
  131. 小池百合子

    ○小池委員 一兆二千億で、現時点で五千億ということは、七千億のバックがあったということなんですか。  それで山一が日銀特融を受けるときなんですが、これは山一の口座に入れられるのですか、それともどういう経路をたどって特融というのは行われるのか、お願いいたします。
  132. 松下康雄

    松下参考人 山一証券向けの特融は、富士銀行経由で行っております。富士銀行は、山一証券との日常の取引関係がございまして、山一証券の資金繰りを非常に的確迅速に把握できる立場にございますので、富士銀行を通じた貸し出しという手続をとっております。
  133. 小池百合子

    ○小池委員 今まさに山一証券は清算に入っているわけでございますね。そこで、清算に当たっている人たちにいろいろ聞いてみますと、特融が本当に入ったんだろうかというような疑念を持っている方がおられるんですね。だから、私はこの辺のところがわからないと言っているところなんですけれども、富士銀行がメーンバンクの役割をしている。つまり、日銀から富士銀行に入る、そしてそれが山一の方に日銀特融として使われるということでございますけれども、ちょうど年末というと、富士銀行のみならず大変な時期であったのではないかと思うんですね。  では、富士銀行の方は、山一証券の特融の部分のどれだけがどういう形で使われてなどということについては把握しているんでしょうか。
  134. 松下康雄

    松下参考人 今回のこの山一に対します特融の対象となりますのは、例えば顧客資産の返還や約定済み取引の決済、海外業務からの円滑な撤退のために必要な資金等でございますが、この金融をつけます際に、これが、本来の目的に沿って、しかも必要最小限度、効率的に使われてまいることを私どもはやはり保証を受ける必要があると思っております。  そこで、この山一証券の財産管理を確保しますために、証券業協会が選任いたします顧問委員会、公正中立な方々、弁護士さんが委員長でございますが、顧問委員会を設けまして、この方々が山一証券の支出を一々検討いたしまして、これは特融を受ける対象としてふさわしいという承認を受けられたものが日銀融資対象に上がってくるわけでございます。
  135. 小池百合子

    ○小池委員 一兆二千億が出て、そして今五千億ということは七千億、こういう日々の動きであるとかそういうことに対して、日銀はきっちりフォローしておられるんでしょうか。
  136. 松下康雄

    松下参考人 日銀におきましても、営業局の担当でございますが、山一証券から所要資金の規模、内容につきましての見通しは随時間き取りをいたしております。
  137. 小池百合子

    ○小池委員 そもそも私は、この根本問題からなかなかよくわからないのですけれども、結局、そういう形で日銀特融が出て、そして今自主廃業といいますか、これからの整理がされているというところでございますが、資本金四千五百億、そして簿外債務が二千六百億と長野証券局長がそのとき記者会見なさいました。一千九百億の資本が残るわけでございますね。だから、債務超過ではないから日銀特融が受けられるというような御説明だったと思うのですが、そうすると、この後五千億戻ってきて、その後の見通しはいかがなんでございましょうか。これは証券局長の方からお答えいただけますか。
  138. 長野厖士

    ○長野政府委員 お答え申し上げます。  ただいま御質問に含まれておりました数字につきまして若干補正をさせていただきますと、昨年の十一月二十五日の段階で山一証券が有価証券報告書の追加の報告書を出しておりますけれども、その段階では、他の債務も含めまして資本勘定の残りは一千億ということになっておりますから、十一月二十五日現在では一千億の資本超過という状態でございました。  その後、山一証券は残務の整理にかかっておりまずけれども、率直に申し上げれば、収入がゼロという状態で、人件費、物件費その他を支払いつつ今整理いたしておりますし、そのほか市況の変動要素とか、関連会社の整理に伴います負担とかいうことが現在進行中でございまして、この一千億を減らす要素というのは多々ございますけれども、現時点で債務の超過になっておるという認識は持っておりません。
  139. 小池百合子

    ○小池委員 いろいろな市場関係者に私も聞いてみているのですけれども、本当に山一に対しての日銀特融だったのか。先ほどありましたように、富士銀行の口座を通るわけですよね。そこで別の目的があったのではないかという懸念が、どうしても私は払拭できないのですよね。そんなことはありませんか、長野局長
  140. 長野厖士

    ○長野政府委員 ただいまのお尋ねは、私自身初めて耳にします御疑念でございますけれども、ただいま総裁が説明されましたように、富士銀行、それから、あわせて興銀と東京三菱、この三行、これは四十年当初の山一証券に対する特融のときと同じメンバーでございますけれども、そういったものの管理のもとに、それをスルーして、そして、先ほど申しました顧問委員会のチェックという中で融資が実行されておりまして、他の目的に流用されるという余地は全くないものと考えております。
  141. 小池百合子

    ○小池委員 時間が参りました。この問題は、公的資金の十三兆プラス十七兆というようなものと同じように、日銀がお金を刷るだけで済むのかどうなのか、マネーサプライとの関係はどうなのか、非常に広範な問題をまだまだ抱えているかと思います。  これからの金融ビッグバンにおいてさまざまなケースも今後考えられるかと思っておりますので、きょうはこのあたりで終了させていただきますけれども、さらに次の機会にお聞きしたいと思っております。ありがとうございました。
  142. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木憲昭君。
  143. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  昨日、大蔵大臣出席されました預金保険機構金融危機管理審査委員会で、優先株を発行する四つの銀行について公的資金による引き受けを承認をされたということでありますが、この三十兆円の銀行支援策に関連をしまして、今国民の中に、贈賄した銀行にも血税を投入していいのか、こういう怒りが広がっているわけであります。  資本増強のための公的資金を申請しましたのは二十一行、うち大手銀行が十八行でありますが、このうちの半数の九行が接待汚職事件に関連をしているわけであります。都市銀行だけ見ましても、十行のりち七行が関与しているということでありまして、まさに底知れない贈収賄疑惑であります。  そこで、大蔵大臣にお聞きしたいわけですけれども、二月二十七日の衆議院予算委員会で我が党の春名議員の質問に答えられて、「不祥事を起こした金融機関について、行政処分等が存続しておれば別ですけれども、」そうでない場合については、ただそれだけで受付の対象から排除するというようなことはしないという趣旨の答弁をされたと思いますけれども、この答弁は御記憶がありますか。
  144. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  今委員仰せのような答弁をした記憶はあります。それはどういうことかというと、銀行の行員が贈賄に該当する接待をしておったということ、これは大変遺憾なことでありまして、これは厳しく指弾されなければなりません。  ただ、今回の銀行に対する自己資本充実のための公的資金の活用による資金の注入というのは、個々の銀行のための措置というよりは、日本全体の金融システム安定化のためだということでありますから、したがいまして、個別の金融機関の問題とは切り離して対処すべきであるということが、審査委員会の基準づくりのときに定められたところでございます。  もちろん、審査委員会で基準を定められたときに、どういう銀行対象になるかということがまず決められ、要するに申請の基準、受け皿銀行ならこういう基準だ、一般行ならこういう基準だということがまず決められ、そして同時にまた、あの法律の二十四条でございますか、申請銀行は経営健全化に関する計画書を出すべしという規定があります。  その規定に基づく計画書の内容、それについて厳しい内容が、実は出すべきことが決められたわけであります。その中で、銀行の社会性、公共性にかんがみて、きちっとした対応をしていくということ、その具体的な方策についても計画書の中で明記すべし、こういうふうに定められております。その方で、今の問題についての今後のきちっとした行動というものがチェックされるというふうに私は見ておるわけであります。
  145. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 予算委員会での答弁については、大体そういう趣旨だというふうに先ほどお答えになったわけでありますが、つまり「行政処分等が存続しておれば別ですけれども、」というところが、大変重要な答弁だったと私は思っております。  昨日、審査委員会で公的資金の投入が承認されました第一勧業銀行の場合は、総会屋への不正融資で起訴され、現在、営業停止などの行政処分を受けているのじゃありませんか。第一勧銀の処分というのは、これはいつまででしょうか。
  146. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  ちょっと今手元に数字がありませんから正確には申し上げられませんが、措置のうちで一番重い部分が半年、それから一年をまたがるものもありました。そのまたがっている部分が、たしか八月まで続いているかなと思っております。
  147. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 具体的に言いますと、銀行法第二十六条に基づく行政処分を受けているのは、第一勧銀がことしの八月五日までであります。したがいまして、松永大蔵大臣が御答弁になりました行政処分等が存続しているわけでありますから、第一勧銀というのは、この公的資金の対象から外されて当然だと思うわけですね。  ところが、昨日の審査結果を見ますと、都市銀行の中でこの第一勧銀がどの銀行よりもいち早く真っ先に承認されている、こういうことになっているわけでありまして、そうしますと、大蔵大臣は、行政処分が存続しているのは別だと言いながら、これを承認してしまうということになると、全くこれは違うことをやったことになるわけですね。  昨日の審査委員会大蔵大臣自身は、第一勧銀を対象から外すようにという発言はされましたか。
  148. 松永光

    松永国務大臣 どの銀行に対しても、私は、健全性確保に関する計画書の内容について、それぞれチェックする発言をいたしました。すなわち、倫理基準はつくってあるのか、あるいは資本が充実された場合に、それによっていわゆる貸し渋りに対してどの程度その解消のための対応ができるのか、私が主としてチェックした点はその二つでございました。  なお、残っておると言われる処分の内容を、私はまず銀行局長から答弁させたいと思うのです。
  149. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 予算委員会での発言は、不祥事のあった銀行、その銀行について行政処分が存続しておれば別ですけれども、そうでない場合は受け付けてもいい、こういうふうに答弁されているわけです。  ですから行政処分は、あの総会屋への不正融資というのはこれは大問題でありまして、それを受けているのが第一勧銀なのですから、継続しているわけですから、ことしの八月五日まで行政処分を受けているわけです。いわば処分中なのですね。そういうところは別だ、こういう答弁をされたわけですから、当然外すべきではありませんか。なぜこれは承認したのですか。
  150. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今回のこの資本注入の目的が、個々の金融機関の救済とかいう問題ではございませんで、金融システムあるいはその持っている金融機能を十分のものにするというのが目的でございます。  したがいまして、その銀行につきまして、当該銀行が、例えば健全化計画によりまして倫理規定をきっちりつくっているかどうか、あるいはつくるつもりかどうか、それをちゃんと実行しているかどうかということを審査委員会でよく議論をしていただきまして、それで問題がなしということであれば、その機能を守るために資本注入を行うということをそこで決定されるわけでございます。  大臣がおっしゃったのもそういう趣旨で申されておりまして、今一勧の例を挙げられましたが、そういう不祥事件を起こした場合には、特にその辺を気をつけて議論をする必要があるという意味で申されたわけで、現にそういった審査をなさっているわけでございます。
  151. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 先ほどの予算委員会での答弁に関連して私はお聞きしているわけでありまして、資本注入の目的がどうのということを聞いているわけじゃないのです。松永大蔵大臣が、行政処分を現在受けているものは、つまり処分等が存続しているものは別ですがとおっしゃっているわけですから、つまり、それは別としてということでしょう。対象外ということなのですよ。そういう答弁をされているわけです。  第一勧銀に対しては処分が継続中なわけでしょう、八月五日まで。継続中にもかかわらず、なぜ承認するのかということなのです。これは矛盾していると思いませんか。
  152. 松永光

    松永国務大臣 今委員指摘のような答弁を委員会でした記憶はあるのですよ。あるのですが、要するに私の考え方としては、処分の内容とそれから資本注入という関係になってくるわけでありますが、一般銀行とは同じ物差しで論ずるわけにはいかぬという意味で別ですがと、したがって別の基準で判断せざるを得ないという意味を持って私は答弁をしたつもりでございます。
  153. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 よくわからないですね、その答弁は。  行政処分が存続しておれば別ですけれども、そうでない場合は受け付けます、こう言っているわけでしょう。別ですというわけですから、行政処分というのは何もこれから行われる行政処分の話じゃないのです。実際に今資本注入を申請してきている銀行、その銀行があの総会屋への融資に関連をして行政処分を受けているわけでしょう。国内の営業所及び海外営業拠点の新設、国内及び海外における新たな業務の展開、八月五日までの間はこれを行わないこと、こういう処分を受けているわけですね。そういう処分を受けているところに対して、これは別ですがというわけですから、これは外さなければいけないわけです。  それなのに、きのうの審査委員会では真っ先にこれを決めた。都市銀行の中で決まったのは、この処分を受けている第一勧銀だけしか決まっていないじゃないですか。言っていることとやっていることが全然違うのじゃないですか。この点を聞いているのです。矛盾していませんか。
  154. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  別としてという意味は、それはやりませんというふうに言ったつもりじゃありません。それは、特に厳しい審査の対象になるという意味を込めて言ったつもりなのですが、そういうふうにひとつ御理解願いたいと思うのです。
  155. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 これは全然答弁になっていないですね。  春名議員が質問をしたのは、行政処分を受けているような銀行に公的資金を投入するというのはおかしい、むしろペナルティーを科すべきではないか、こういうふうに聞いたわけです。それに対して、行政処分等が存続していれば別ですけれども、そうでない場合には最初から受け付けから排除するという考えはありませんと、明確にこういう趣旨の答弁をされているわけです。ですから、当然、こういう不祥事を起こして現に処分を受けている銀行に対しては、公的資金など国民の血税などは投入してはならない、そういうところにはすべきではないということを首尾一貫、答弁と同じ立場を貫くというのが本来の筋だと思うのですね。  きのうやらなかったけれども、今度閣議で決定されるわけですから、その際にはこれは外すべきだ。私どもはこういう三十兆円投入の仕組みそのものは大体やるべきじゃないと思っておりますけれども、しかし大臣の答弁の筋からいっても、少なくとも、こういうところに投入するというのは首尾一貫しない、矛盾しているという点を私は厳しく指摘をしておきたいと思いますが、どうですか。
  156. 松永光

    松永国務大臣 私は、その点につきましては、特に厳しい審査をすべきだという気持ちで申し上げたわけでありまして、実は今の総会屋云々という話がありましたが、私は健全性確保に関する計画についての審査をする中で、その点は厳しく代表者に言ったつもりであります。言ったかどうかということは、後で議事の概要が公表されますから、その中に多分出てぐるだろうというふうに思います。
  157. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。      ――――◇―――――
  158. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、内閣提出法人税法等の一部を改正する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等特例に関する法律案の各案を議題といたします。  趣旨の説明を聴取いたします。大蔵大臣松永光君。     ―――――――――――――  法人税法等の一部を改正する法律案  租税特別措置法等の一部を改正する法律案  電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書  類の保存方法等特例に関する法律案     〔本号末尾に掲載〕     ―――――――――――――
  159. 松永光

    松永国務大臣 ただいま議題となりました法人税法等の一部を改正する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等特例に関する法律案につきまして、提案の理由及びその内容を御説明申し上げます。  まず、法人税法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、近年の経済社会の変化や国際化の進展にかんがみ、企業活力の発揮に資する等の観点から、法人税率の引き下げを行うとともに、法人税の課税所得の計算の適正化等の措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  まず、法人税率について、基本税率を三七・五%から三四・五%に、中小法人の軽減税率等を二五%に引き下げることとしております。  次に、法人税の課税所得の計算について、賞与引当金等の廃止、貸倒引当金の繰入限度額の計算方法の見直し、長期工事の収益計上方法の見直し等、所要の経過措置を講じた上、その適正化を図ることとしております。  また、所得税についても、法人税に準じて課税所得の計算の適正化を図るほか、特定扶養親族に係る扶養控除額の引き上げ等を行うこととしております。  次に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、最近における金融経済情勢を踏まえつつ、経済社会の構造的な変化及び諸改革に対応するため、金融関係税制、土地・住宅税制等について適切な措置を講ずることとし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、金融関係税制について、有価証券取引税及び取引所税の税率の半減、特定の株式の取得に係る経済的利益の非課税制度の改組、銀行持ち株会社に係る措置の創設等を行うこととしております。  第二に、土地・住宅税制について、地価税の臨時的な課税停止、個人、法人の土地譲渡益課税の大幅な軽減、事業用資産の買いかえ特例の拡充、居住用財産の買いかえに係る譲渡損失の繰越控除制度の創設等を行うこととしております。  第三に、沖縄の経済振興や中心市街地の活性化に資する措置を講ずるほか、既存の特別措置の整理合理化等による課税の適正化を行うこととしております。  その他、いわゆるオフショア勘定において経理された預金等の利子の非課税措置、揮発油税及び地方道路税の税率の特例等適用期限の到来する特別措置について、これを延長する等の措置を講ずるほか、阪神一淡路大震災の被災者等が取得した特定の土地の所有権等の移転登記に係る登録免許税の免税措置の創設等及びしょうちゅう等の酒税の税率改正時期の変更等を行うこととしております。  次に、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等特例に関する法律案につきまして御説明申し上げます。  政府は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、国税関係帳簿書類の電磁的記録による保存制度の創設等を行うこととし、本法律案を提出した次第であります。  以下、この法律案の内容につきまして御説明申し上げます。  まず、自己が最初の記録段階から一貫して電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類については、税務署長等の承認を受けた場合には、一定の要件のもとで、電磁的記録等による保存等をすることができることとしております。  また、国税関係帳簿書類の保存義務者のうち一定の者について、電子取引に係る領収書等に相当する電磁的記録を保存しなければならないこととしております。  以上が、法人税法等の一部を改正する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案及び電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等特例に関する法律案の提案の理由及びその内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  160. 村上誠一郎

    村上委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。     ―――――――――――――
  161. 村上誠一郎

    村上委員長 これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。坂井隆憲君。
  162. 坂井隆憲

    ○坂井委員 与党を代表いたしまして、今回の税三法の改正に関して質問をいたしたいと思っております。  私は、自由民主党の税制調査会の幹事として今回の税制改正に携わった者の一人でありますが、ただいま大蔵大臣の御説明にありましたように、今回の税制改正は極めて画期的なものであり、与党の一人として、一刻も早いこの三法の成立と国民の評価が行き届くことを心から期待しているところであります。  ただ、この税三法の中で、特に電子帳簿の問題について私が質問いたしたいと思っておりますのは、この電子帳簿制度の問題につきましては、グローバルスタンダードの潮流と規制緩和が社会全体から求められている中で、帳簿書類の電子制度の導入自身も喫緊の課題であって、まさにこの法律もいち早く通していただきたいと思うところでありますが、この制度の導入を通して、公正公平な納税制度のスキームということも当然ながら形成していくものでなければならないと思っております。  この問題につきましては、自由民主党においても、コンピューター会計法規整備推進議員連盟というものがありまして、そこが中心となって検討を進めていったものであります。情報化、ペーパーレス化が進展し、会計処理のコンピューター化も相当程度進んでいるわけでありますが、帳簿書類の電子データ保存はいわば時代の要請でありまして、当然、私としても帳簿書類の電子データ保存制度の創設に賛成するものでありますが、新しい制度の導入にはいろいろな不安がやはりつきまどうものでありまして、私のところにも、制度の導入は非常に大歓迎であるけれども、実務面でいろいろ心配があるのだという相談が幾つか来ております。したがいまして、その点について、何点か確認を兼ねて御質問いたしたいと思う次第でございます。  まず第一に、帳簿書類の電子データの保存、これは税務署長の承認を受けた場合に一定の要件のもとで認めることとされておりますが、具体的にどのような要件を考えていらっしゃるのか。税に関する帳簿書類の保存であるから、やはり適正公平な課税を確保するという観点が重要でありまして、会計の真実性というものを確保するために、訂正・加除の履歴が確保されるシステムの使用や各帳簿書類間での記録の相互追跡可能性確保などが必須だと思うわけであります。こういう点についてどのように考えていらっしゃるのか、御答弁願いたいと思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  163. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  言うまでもなく、帳簿書類といいますのは申告納税制度の基礎となる重要なものでございます。したがいまして、この電子データ保存制度の創設に当たっても、納税者の負担の軽減に配慮するというのは当然のことでございますが、同時に、適正公平な課税という点が損なわれることのないような制度にする必要があるわけでございます。  そのような観点から申し上げますと、二つ視点があるのかなと思います。記録の真実性確保のためにどのような要件を考えるかという点が一つ。それから、コンピューターの電子データというのは目で見えないものでございますから、可視性、目で見えるようにどう確保するのかということでございます。そのようなことから、必要な一定の要件と、税務署長による事前承認制のもとで電子データ保存ができる制度にしているわけでございます。  したがいまして、今お話が一例としてございましたが、電子データというのは簡単にデータを直せるわけでございます。しかし、それでは適正公平な課税の点から問題があるということで、訂正・加除をいたしましたらその履歴がわかるようなものにしていただく必要があろうかと思います。それからまた、通常の取引でございますと、伝票を起こしてから仕訳帳、総勘定元帳というふうにたどれるわけでございますが、同じようにこの電子データのもとでも帳簿書類間での相互追跡可能性とでも申しましょうか、そういう点が確保される必要があるのではないか。それ以外にもいろいろございますが、記録の真実性を確保するための要件として、以上のようなことが考えられようかと思います。  それから、もう一つ、可視性という点から申し上げますと、やはり一定のディスプレーやプリンターを備えつけていただきまして、これは当然こういうことをやっておられれば装置としてあるのだろうと思いますが、そういうもので税務調査のときも見られるようにしていただく、このようなことを考えておるわけでございます。
  164. 坂井隆憲

    ○坂井委員 次に、電子データの保存制度の導入の問題は、もともと国税庁においても帳簿書類の保存等の在り方に関する研究会、あるいは政府の方での「規制緩和推進計画の再改定について」という中での方針、さらに、昨年十一月には政府の緊急経済対策、これにも盛り込まれていた事項であったと記憶しているところであります。  一部にはこの制度の導入によって十億円単位のコスト軽減になる企業もあるという新聞報道がありまして、そういう意味では、この制度の導入で負担軽減が行われるということは非常に好ましいことであるなというように高く評価しているところでありますが、実際問題として、どの程度企業にとっての負担軽減になっていくと考えていらっしゃるのか、その辺について御答弁願いたいと思います。
  165. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  この電子保存ということが導入されますと、企業の規模、業種あるいはコンピューター化への取り組み状況がどうなっているかということで、企業によって若干コスト軽減が異なってこようかとは思いますが、これまでに比べ事務負担やコスト負担は大幅に軽減されると考えております。  例えば、会計処理業務処理のコンピューター化に積極的に取り組んでいるある大手スーパーの場合の例をとってみますと、帳簿書類の出力費用、保管料等年間約一億円かかっているそうでございますが、このコスト負担が約四分の一になるであろう、こういう試算もございます。  以上でございます。
  166. 坂井隆憲

    ○坂井委員 今のお話では、大手スーパーでは約一億円かかっているのが四分の一ほどになるのではないかというようなお話でありましたが、確かにデータ保存によって企業の帳簿書類の保存コストは軽減することになるかもしれませんが、求める要件が厳し過ぎますと、質問検査権の強化や要件に合わせるための新たな負担の増加、例えば会計業務ソフトの購入、開発をしなければいけないとか、あるいは国税庁が質問検査する、その場合に電子データを読み取らなければいけない、そのために必要な機器や運用要員の確保、そういうこともしなければいけないのではないかとか、いろいろと新たな負担の増加が行われてくるのではないかというような懸念指摘されているところであります。  そうなりますと、制度導入の趣旨が生かされないのではないかというようなことになるわけでありまして、電子データの保存導入に当たり一定の要件を付すということは納税者に過度の負担を求めることになってしまいますので、そういう点についてやはり十分配慮していかないと、この制度の趣旨が生かされていきません。その点について、ぜひ大蔵省の答弁を願いたいと思います。
  167. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答えいたします。  冒頭申し上げましたように、コンピューター処理といいますのは、痕跡を残さずに記録の遡及訂正が簡単にできてしまうというところがあるのだろうと思います。そういうことから、適正公平な課税をするために一定の要件をお願いしているわけでございますが、これらの要件といいますのは、紙による帳簿保存と同じ程度の真実性、可視性を確保するために最低限必要なものであるというふうに考えているわけでございます。  また、コンピューター会計システムを既に導入している企業におきましては、今我々が求めているような要件といいますのは、内部牽制上の理由からも、既にこれらの要件に合った形で記録を行っているところも相当あるのではないかというふうに承知しているわけでございます。  したがいまして、今申し上げましたような要件は、決して納税者に過度の負担を求めることにはならないのではないかというふうに考えているところでございます。
  168. 坂井隆憲

    ○坂井委員 次に、税務署長の事前承認が必要であるということでありますが、私も大蔵委員として適正公平な課税の確保ということが大変重要であるという認識を持っております。こういう電子帳簿の導入によって適正な課税を確保していくということが一つのこれからの大きなグローバルスタンダードという流れでございますし、グローバルスタンダードに沿って社会的信用を確保できる制度をつくっていっていただかなければいけないわけでありまして、税務署長の事前承認制が必要であるということ自体については理解をしておりますが、納税者の立場からしますと、承認申請に対して税務署の審査がどのように行われていくのかということが非常に不安であるのではなかろうかという気もいたします。  余り裁量に流されていってもいけません。いろいろな承認を税務署長が取り消すことができるというような規定もあるわけでありまして、そういう行政の裁量権を余り自由に与え過ぎてもこれはまた信頼性を欠くことになっていくわけでありますから、そういう点について国税庁はどういうように考えていかれているのか、国税庁の方から答弁をいただきたいと思うわけであります。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  169. 舩橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答え申し上げます。  執行当局といたしましては、電子データ保存の承認の申請があった場合には、基本的には申請書の記載事項や添付資料に基づきまして、各要件に適合するか否かを審査し、必要に応じて申請者に対して照会等もさせていただきたいというふうに考えております。  この申請書の記載事項といたしましては、申請者の納税地、住所でございます。それから氏名、名称、それから承認を受けようとする帳簿書類の種類とかその保存場所、それから備えつけ、保存を開始しようとする課税期間等、それから電子計算機の種類等です。  それから添付書類といたしましては、申請に係る帳簿書類の処理の事務手続を明らかにした文書などに基づいて判断をさせていただきたいと考えております。  いずれにいたしましても、執行当局といたしましては、帳簿保存の分野における高度情報化、ペーパーレス化の流れが妨げられることのないよう、先ほど大臣の方から趣旨説明がございましたけれども、制度導入の趣旨を十分に踏まえて執行してまいりたいと考えております。
  170. 坂井隆憲

    ○坂井委員 電子データの保存制度は全く新しい制度でありますから、国税庁においても納税者の立場に十分配慮して執行していただきたいと思います。  例えば電子データ保存を行っている青色申告者が要件不備によって電子データ保存の承認が取り消された場合には、同時に青色申告の承認の取り消し要件にも該当することとされたりしているわけでありますが、例えば青色申告が手続規定だけではなくて実体規定を含めた特典であるために、青色申告の承認取り消しにより納税者の税負担に及ぼす影響も多大なものになったりするわけであります。したがいまして、こういう制度について余り厳しくしますと、青色申告者でもこの制度の利用について消極的にならざるを得ない面が出てくるかもしれません。したがって、こういう新しい制度の場合にはこれから細かいことがいろいろと問題が起こってくるかもしれませんので、国税庁においても納税者の立場にも十分配慮して執行していただきたいと思うわけであります。  それに関連しまして、やはり執行の問題でありますが、電子データ保存制度が導入された場合に、国税庁は、質問検査権、そういういろいろな絡みの中でどのような税務調査を行っていこうとされているのか、その点についてお考えを聞かせていただければと思います。
  171. 舩橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答えを申し上げます。  まず、青色申告の取り消しの問題についてのお尋ねがあったわけでございますけれども、新しい制度を今回お認めいただくわけでございます。そういったものについて、納税者が十分に周知をして判断をしていかれるということが非常に大事だと思っております。私どもも、青色申告の取り消しの問題については、慎重かつ柔軟に対応してまいらなければいけないかなというふうに考えております。  それから、この電子データ保存が導入された場合の税務調査はどうするのかというお尋ねでございますけれども、具体的な調査の方法につきましては、それぞれの事案によってさまざまな形があろうかと思いますけれども、先ほど主税局長の方からのお話もございましたけれども、まずは電子データで保存されている帳簿書類について、一般的には、必要に応じて電子データをディスプレーに表示していただく、またはプリントアウトするということなどを通じて内容を確認し、適正に処理されているかどうかの検討を行っていくことになると考えております。  いずれにいたしましても、従来以上にコンピューター会計に精通する必要性が高まるというふうに考えておりますので、国税庁の中におきましても、今後さらにコンピューター処理に関する研修の充実等に努め、適正公平な課税の実現を期してまいりたいと考えております。
  172. 坂井隆憲

    ○坂井委員 近年のコンピューター技術の発達及びその普及というのは非常に急激なものでありまして、大企業から小企業に至るまであらゆる局面でコンピューターが利用されております。特に、近時、商取引でも電子でなされつつある状況でありますし、本制度の導入が国際社会の中で我が国の競争優位、経済活力の増強になればと、心から願っているところであります。  ただ、そのようにコンピューター技術が非常に発達していく中でこの制度が導入された場合、今の税務調査の執行との関係でございますが、やはり国税庁の執行体制の確保、定員の増強というのも、今なかなかふえておりませんが、昨年外為法を改正したときに国際化に応じた体制のことを附帯決議でつけたところでありますが、今回はこういう情報化の中でどのように執行体制をつくっていくかということもやはり非常に重要なことだと思っております。そういう意味で、国税庁の今後の組織の整備のあり方等についての決意を聞かせていただければと思います。
  173. 舩橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答え申し上げます。  国税庁といたしましては、この高度情報化の急速な進展に的確に対応していかなければいけないということで、国税局及び税務署に機械化調査専門官を配置するなど、調査体制の整備に努めてきております。現在、国税局では四十二名の機械化調査専門官がおりまして、今予算委員会で御審査いただいている予算によってお認めいただければ、十年度は五十五名という形で逐次増加をさせていただいているところでございます。  今後、この制度が導入された場合には、先ほどお答え申し上げましたような承認申請の審査に関する事務が新たに加わるわけですし、また、この電子データ保存を前提とした新しい調査手法の開発ということも必要になってこようかと思っております。そういう意味で、国税庁といたしましては、本制度の円滑適正な執行のために必要な体制整備を図りたいと考えておりまして、関係方面の御理解が得られるように、今後とも努力してまいりたいと考えております。
  174. 坂井隆憲

    ○坂井委員 どうもありがとうございました。これで質問を終わらせていただきます。
  175. 村上誠一郎

    村上委員長 午後一時に委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後零時五分休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  176. 村上誠一郎

    村上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  各案審査のため、本日、参考人として日本銀行副総裁福井俊彦君、日本銀行理事本間忠世君及び預金保険機構理事長松田昇君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  177. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  178. 村上誠一郎

    村上委員長 質疑を続行いたします。中川正春君。
  179. 中川正春

    ○中川(正)委員 やがて一つの党になってまいりますが、民友連の中川です。代表して質問をさせていただきます。  まず冒頭、三つの法案に入る前に、二つほど大きなテーマで議論をさせていただきたいというふうに思っております。  そのまず第一は、この間からこの委員会でも議論になっておりました金融検査そのもののあり方、そしてその結果の情報開示という点でありますが、これについて質問をしていきたいというふうに思っております。  実は、平成九年の十二月、去年の十二月に総務庁の行政監察局が金融に関する行政監察結果というものを出しております。これの中身を熟読していきますと、現在問題になっておるそれぞれの検査官そのもののあり方あるいは資質それ自体の問題もさることながら、全体のシステムとして、いわばいかに緩慢なというか惰性で流れてきた世界であったかというのがつぶさにわかるような結果になっておりまして、その点についても、こういう調査を踏まえて、現在大蔵省としてどのような将来に対しての対策を考えていくのか、その視点にも立ってひとつ質問をしていきたいというふうに思っております。  まず第一に、示達書の内容について触れられておりますが、これは実質的に監察官がこの示達書の内容を調べたということでありまして、これについてはどうも私は脇に落ちないところがあるのですね。  同じ行政内で調査をしていく場合には、こういう形ではっきり開示していく、そういうものが残っているわけですね、いわゆる検査をした結果が。それが議会の方の、特に国会の調査権でもって資料提出したときには、本当に大事なところが黒塗りにされてでなければ開示をされない。この矛盾というのは、どこから来ているのかということですね。  まず、ここで指摘していることを読んでみますと、事例百七十九件をピックアップして調べておるわけでありますが、その示達事項についてまず何が指摘してあるかというと、同一金融機関に対する直近検査の前の検査、だから順を追って時系列で検査しているのですが、それと比較すると、前回検査結果による示達事項と同一種類となっているものが、業態別には若干の差があるものの、全体としてはおおむね半分ある。だから、前回と同じことを書いて同じ示達をしているものが全体の半分に及ぶ、こういう中身の結果が出ておりますし、さらには、中でも貸出金の審査、管理等に係るいわゆる資産内容、これを検査官はちゃんと見ているのですね。それから、牽制機能や不祥事等に係る内部管理に関する重要事項の問題、これの改善が指摘をされているのですが、同じ改善事項が繰り返し指摘をされたままになっておるという状況、こんなことがつぶさに検査結果として出てきておる、こういうことであります。  こういうことであっても、まだやはり黒塗りでないとこちらへ出てこない。あるいはまた、この結果を踏まえて、大蔵大臣、検査というもののあり方をどう考えていかれるか、このところをまずはお答えをいただきたいというふうに思います。
  180. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。委員の御指摘の点は、この委員会で議決をされて、そして国会に提出するよう要請のあった四つの銀行に関する件だと思うのでありますが、これは、委員よく御承知のとおり守秘義務のかかっておる書類なのでありまして、しかし、守秘義務がかかっておっても、国会の国政調査権に基づく要請でありますから、国会の国政調査権には許される範囲内でこれは応じなければならぬという点があります。言うなれば、守秘義務という法の規定による義務と、国政調査権の調査の要求には応じなければならぬという義務と、どういうふうに調和させるかということに結論としては帰着するだろうと思うのであります。  そこで、先般当委員会に提出申し上げました書類というのは、銀行融資先、銀行から資金の融資を受けて事業活動をしておるいろいろな企業の資産内容とか営業内容とか、そういったこと等が公になりますと、その人たちに少なからず損害あるいは迷惑を及ぼすおそれがあるということで、それに関連するところを黒塗りさせていただいた、こういうことでございます。御了解願いたいと思うのです。
  181. 原口恒和

    ○原口政府委員 今大臣がお答えしたことに補足させていただきます。  まず第一点、総務庁の監察の過程におきましては、総務庁の要求されました書式に従って、検査結果等の一定の要約といいますか概要という格好でお示しをしたというふうに認識をしております。  また、いろいろ検査の結果として繰り返し同じことが指摘をされているということでございますが、これは背景といたしましては、バブル経済崩壊後、どうしても資産内容の悪化というのがかなり長期間にわたって続いている、あるいは非常に金融業務の高度化の中で、リスク管理ですとか内部チェック、そういう問題がやはり各銀行金融機関特有の問題として、一度指摘しても必ずしもそれによる対応が不十分で、また同じ指摘をせざるを得ないということがあったというような背景についても御理解をいただきたいと思います。
  182. 中川正春

    ○中川(正)委員 プライバシーといいますか、それぞれ関連の企業に対して大きなダメージが与えられる、こういう理由でありますが、しかし、私はそれに対しても納得ができないわけであります。そういうことが言えるのであれば、この行政監察局の調査に対しても同じことが言えるはずであります。それが行政に対してはこういう形で開示がされておる、ところが国会に対しては黒塗りになる、これに対してはやはり説明がつかないだろうというふうに思います。  それと同時に、いわゆるコーポレートガバナンスという言葉が最近非常に重要視されておりますが、それぞれ、いわゆる対象の企業にしても、株主を中心にして情報開示というのは既にされているのですよね。どこの銀行でどれだけ借りているかというような話は、既にオープンになっているはずであります。それをとらまえて、逆に銀行のサイドから見たらそれは情報開示の対象にならないのだという考え方、これ自体ももう一つ納得ができないということ。  さらに言えば、これはアメリカで例があるのですね。アメリカの場合も、金融検査の結果というものは基本的には情報開示の対象にはなっていないということ、これは同じなんです。ところが、議会ないしは裁判所からの開示請求に対しては、これはオープンにしますということで、みんなオープンにしているということであります。私は、これで正しいのだろうというふうに思うのです。  そういう点から考えて、現在の大蔵省のそれこそ物の考え方というのが、もう一つこれまでのよく言われる護送船団方式そのものから切りかわっていなくて、情報開示を中心にした新たな体質への改善と構造というものを基本的に変えていこうという、そこまでの切り込みというのが、やはりまだそれぞれの担当者、特にかわられた早々で私も期待をしておる大臣そのものもできていないのじゃないか、これを言わざるを得ないというふうに思っております。  そのことを申し添えまして、さらに理事の先生方にも頑張っていただいて、ここは本当にすっきりとした形でこの調査ができるように、委員長、ひとつよろしく御配慮をいただきたいというふうに思うわけであります。  次に、もう一つ大枠でお尋ねをしていきたいというふうに思うのですが、先ほどから資本注入の話題が何回も出てまいりました。今その努力をしておっていただくわけでありますが、最終的にはこの議論に結びつけていきたいわけでありますけれども、その前に、私、非常に今気になることがございます。それは、現在の経済状況をどう把握していくかということであります。  冒頭お尋ねをしたいのですが、大臣の今の感覚、感覚というよりも情報とそれから分析、知識の中では、去年からことしにかけての経済成長率――これは去年の四月には橋本総理は、アメリカからいわゆる景気対策というものを強く要請された。その状況に対して、日本は一.九%の経済成長率はしっかり見込んでいけるから、財政再建を主眼にしてやっていきたい、こういう一つの公約みたいなものですが、これをしておるということであります。それが、それこそ一つ日本のコミットとして世界に受け取られたということでありますが、この経済成長率について、大臣自身はここ一年、どのように分析をされておるでしょうか。
  183. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  委員指摘のとおり、当初の計画、見通しとしては、平成九年度一・九%成長を目指しておったわけでありますけれども、去年の秋以降のアジアの金融・通貨不安、あるいは日本国内では、大きな金融機関の破綻等々の影響で金融システムについての内外の信頼度が著しく低下した、あるいはまたその関係で倒産する企業も出てきた、こういつたことから雇用の不安も出てきた。そういったことで消費が落ち込んできて、残念ながら平成九年度は、一・九%の見込みに対して〇・一%かそこらの成長しかすることができないという状況になっている、そういうふうに、厳しい、すなわち停滞をしておるというふうに見ておるわけであります。
  184. 中川正春

    ○中川(正)委員 〇・一%、これはやがてその統計指標というのが出てくるのでしょうけれども、ちまたというか民間では、これがマイナス成長になっていくのではないかというさらに厳しい見方さえ出ておりますし、ことしに向かってはさらにその落ち込みがきつい状況になってきている、こういうことだろうというふうに思います。  先般、いわゆる景況が経済企画庁の方から出ておるのですが、これを見ていましても、ことしに入ってから、在庫がふえて工業生産がさらに下がる、あるいは乗用車の登録台数も大体二割ぐらい下がってきた、輸出で好調であったという自動車業界でさえも生産自体がここに来て下がってきたということ、あるいは住宅の着工戸数も百二十万戸台に落ちてきている等々、公共事業なんかは言うに及ばずでありますが、こういう状況が報告をされております。いわば、生産減が所得、収益低下に結びついて、需要減に結びついて、そしてまた生産減に結びつくといういわゆるデフレスパイラルがそろそろ始まってきておるのではなかろうか、そういう懸念というものが産業界でもあるいは経済の専門家の間でもささやかれる、そういう状況であるわけであります。  こういうような状況を踏まえて、日銀の方のいわゆる金融の面から見た今の経済状況、この間、初めて日銀の中の政策委員会の要旨というのが発表されましたけれども、改めて今の状況をどう見ておられるか、そして日銀としてはどういう施策を今とっていられるのかということを説明をいただきたいと思います。
  185. 本間忠世

    ○本間参考人 お答えさせていただきます。  ただいま御質問をいただきました日本の今の景気の現状、これに対して日本銀行としてどういう対応をしておるかということでございますが、経済の現状につきましては、私どもは、内需の減速の影響が生産とか雇用あるいは所得の面にも及んでおりまして、一言で申し上げれば、景気は停滞を続けているというふうに判断をいたしておりまして、先生御指摘の、先般の政策委員会の後の月報でも、そういう認識を世の中に申し上げているものでございます。  先行きについてでございますが、純輸出の増加が引き続き景気の下支えに働く、こういうことは引き続き考えられると思いますし、それから二兆円の特別減税が個人消費によい影響を及ぼすというようなこともあわせて期待ができるのではないかというふうに思っております。  ただ、在庫調整の圧力が現在強まっておりますもとで、これまで増勢を維持してまいりました設備投資も、このところ頭打ちの様相を呈してきております。また、これまでの景気減速によって、我が国経済の追加的なショックに対するいわゆる耐久力も低下している。こういうことを考えますと、今後、アジアの経済の情勢が日本の輸出などに与える影響とか、金融面の動向が実体経済に与える影響などには、さらに十分注意を払っていく必要があるというふうに考えております。  こういった経済情勢を踏まえまして、私どもといたしましては、当面の金融政策の運営に当たりまして、引き続き金融の面から経済活動をしっかりと下支えをしていくように、これまでの金融緩和基調を維持しているところでございます。
  186. 中川正春

    ○中川(正)委員 そうした総論の中で、私はちょっと気になるところがありまして、それを日銀なりに御説明をいただきたいのです。  一つはマネーサプライなのですけれども、全体、総枠としては横ばいということなのですが、その中のM2プラスCDについては極端に上昇をしている、こういうことですね。この二、三カ月の現象でありますが、これはどういう要因によってここ二、三カ月上がっているのか、ここのところをちょっと説明してください。
  187. 本間忠世

    ○本間参考人 マネーサプライの動きは、基本的には、先ほど申し上げましたような経済全体の動きをバックにした姿にこのところずっとなってきていると思っております。  その中で、先生御指摘のように、このところ若干この数字が上がりぎみになっている、こういう面があると思いますが、ここにさほど現段階で大きな意味合いを認めるべきかどうかということについては、もう少し私どもとしては慎重にここは判断をしていくことが必要だというふうに思っております。  ただ、例えば、先ほど申しましたように輸出が増勢を続けているというふうなことも、その背景の一つかというふうに思います。
  188. 中川正春

    ○中川(正)委員 この背景の中に、直接この間の勉強会で私も同じさっきの質問をしたのですが、担当者から返ってきたのは、これは実は投資信託の解約が今極端に大きくなってきている、こういう要因が第一にあるということ。これは、いわば先行き不安の中で、よりかたい預金の方へ向いて金が移ってきている、こういう現象が起きてきているということ。これがその第一要因なのだということでありますが、これは正しいのかどうかという確認ですね。  それからもう一つは、いわゆるインターバンク市場なのですが、これは山一等々の倒産のときに、けつまずいて倒産するよりも早くこのインターバンク市場が結論を出してしまった、こういうことが言われ、短期市場へ向けて流動性確保のために日銀が資金を供給していきますよ、こういうオペレーションがあるのだろうというふうに思うのです。そのオペレーション絡みできょうも、接待があったのではないか、それを事前に聞いたら銀行がもうかるからという、その話題のオペレーションであります。  これが、それ以降相当の資金量をその中に投入をしておるはずなのです。それが今のレベルで、近々のもので十五兆円ぐらい、こう聞いておるのですが、今それが二十兆円からになってきたという指摘もありまして、これは去年などと比べると異常な数字なのですね。去年あたりは、たとえ決算期をまたぐ資金需要の大きい時期であっても二兆円前後かなというふうな状況であったのが、二十兆円、十倍の資金をその中に投入をしている。それにもかかわらず金利ではどういう現象になっているかというと、短期金利は公定歩合よりも高いところでとまっている、一%前後のところで横ばいでとまっている、こういうことですね。  これをどう解釈したらいいのかということ、それもあわせて、日銀の見解をお聞かせいただきたいと思います。
  189. 本間忠世

    ○本間参考人 二つ御質問をいただいたと思いますが、一つはマネーサプライの動きと、それから、その要因に昨秋以来の投資信託の解約というものが相当影響として大きいのではないか、こういう御質問をちょうだいしました。  確かに、昨年の十一月、三洋証券、特に山一証券の経営破綻の後、ある種の不安心理が市場関係者あるいは投資家に走りまして、その結果、投資信託の解約というものがかなりの動きになったという時期があったことは事実だと思います。そういうことが何がしかマネーサプライにも影響しているというところは、これはこれであると思いますが、その後の状況を見ますと、そういった動きは一応一段落をして、現在は落ちついた推移になりつつあるというふうに判断をしております。  それから、もう一つ御質問いただきました、日本銀行金融市場におきます現在の行動と、それがマネーマーケットにおける金利にどういう影響を及ぼしているかということでございます。  金融調節でございますが、御承知のとおり、銀行券あるいは財政資金、その日その日のお金の需要が日々増減いたしますので、これを反映して、私どもは、この資金の過不足を市場でならしながら、そのときの金利の水準を中央銀行の目的として望ましい方向に誘導していく。現在は、発表させていただいておりますとおり、短期の金利を公定歩合よりやや下回る水準に安定的に持っていくということを目的として運営をしているものでございます。  それで、御承知のとおり、昨年の十一月に証券・金融の破綻が残念ながら相次ぎまして、その後、短期の金融市場で資金の出し手が資金の供給を急速に慎重にする、ある種の緊張感がマーケットに走りまして、資金の取り手がそれを見て資金の取りを急いだということのために、マーケットにおける流動性が一時非常に低下をいたしました。要するに金が非常にしぼみました。そういうことがございまして、これに対して金利の方も、短い金利からやや長い期間の金利にわたりまして、市場の金利が全般に上昇したわけでございます。  こうした事態に対しまして、私どもは、まず先生今おっしゃいましたように、市場に思い切って資金を供給するということを、十一月の特に後半以降、そういうオペレーションをやってきております。その結果、足元の、短いところのオーバーナイト、翌日に返す金利でございますが、そこの金利は安定をしつつあるというふうに思っております。  ただ、市場の信用リスクというか、これは大丈夫かというふうな意味での相手に対するリスクに対する警戒感が引き続き非常に根強いものですから、やや長めの金利、特にこれから三月の期末に至りますが、この期末を越える、ここを越えるところのCDとかユーロ円などのターム物の金利が、ごく最近に至りますまで高どまりを続けてまいりました。高い状態が続いておりました。ちなみに、三カ月物の金利は一時一・二%ぐらいのところまで上昇いたしました。  仮に、こうした市場金利の高どまりが続くようでありますと、これが金融機関の貸し出しの金利にも反映して貸出金利も高くなる、企業収益とか株価にも悪影響を及ぼしかねないということを考えまして、私どもは、ターム物の金利の低下によい影響を与えるということを期待いたしまして、日々の調節の中で、極力年度末を越えるところの長目の資金の供給を厚目にやるということで調節を今いたしております。  ちなみに、きのう現在の年度末、この三月末を越えますところの資金の供給は二十・一兆円に達しております。先生おっしゃるとおりでございます。去年のこの時点はこれが三・二兆円でございましたので、それに比べますと極めて大規模なオペレーションということになります。  こうした金融調節の結果、先ほど申しましたように、これまで高どまりを続けてきました長目の金利も、今月に入りましてはっきりと低下に向かっております。きのうは〇・八%台にまでこれが下がってきております。ただ、その水準は、昨年の秋、そのころは〇・五%台でございましたので、そのころに比べればまだ高目でございます。  私どもでは、引き続き断固とした金融調節を続けることによりまして、市場金利の安定に努めていくことが現下の金融経済情勢もとで極めて大切なことであるというふうに認識をいたしておるわけでございます。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  190. 中川正春

    ○中川(正)委員 こういう情勢を総合して考えていくと、勝負はまだこれからだということだろうというふうに思うのですね。この三月期の決算を乗り切るために、あらゆる手だてを講じながら、あるいは口先介入も含めて、全力を尽くしてきた。しかし、これはすべていわば応急処置の痛みどめを打ったということ、ひょっとしたら麻薬を打ってしまったのかもしれないけれども、そういうところで終わっておるだけでありまして、本来、金融機関が立ち直って、アジアの今の状況日本がリードして回復に向かっていけるのかどうかというのは、これからの施策にかかわってくるということだろうというふうに思います。  そういうことを前提にしまして、まず、もともと政府が十三兆円の資本注入枠を枠組みとしてつくりたい、こういう考え方を出してきたときにさまざまな議論がありました。それに対して、また金融機関の今の状況に対しての認識というのも、また受け取り方というのも、その議論の中でそれぞれはっきりしてきているはずであったのでありますが、私、ここに来てわからなくなってきたわけですね。  というのは何かというと、その手法は、資本注入をするというのは、これは貸し渋りの問題も一つこれありでありますが、それと同時に、あるいはそれ以上に、金融システムをいかに健全な方向に持っていくか。株価変動の中で、それこそ金融恐慌が起こるぐらいの倒産件数になってくるというような、いわゆる早期是正措置が裏目に出たような、そういう状況を防いでいくと同時に、それを株価から切り離していくという、そんな役割も加味させながらはじいてきた数字というのが十三兆円だと私は理解をしておりました。  ところが、実際こういう導入ということになってくると、そこのところの議論、最終的に今の経済状況をこうして見たときにどれだけ一体公的資金が必要なのか、最終的にこの金融状況をひっくり返していくにはどれだけ必要なのかという議論がどこかへ消えてしまって、今上がってきたのは、さっきから話が出ていますように、護送船団方式のまた焼きかえなんですけれども、銀行の方から必要な額を言ってきなさいよ、こういう形で出したわけですね。それが一律で一千、二千というふうな単位の金額で出てきた。それを審査する対象といいますか、その議論というのは、いつの間にか行政指導、いわゆる行政的に処分を受けたところは悪いじゃないかいいじゃないかという話であるとか、リストラはどういうふうにしていかなきゃいけないとか、そういうような部分のものを基準にしている。これはミクロですよ。ミクロの世界を基準にして資本注入をするような議論に今もう完全に切りかわっているわけでありますね。  そこで、私がもともとお聞きしたいのは、一体大蔵省の意思として、国家の意思として、今どれだけの金額というのを資本注入をしていかなきゃいけないのかという、そこの部分の議論はどうなっていったのですか。この二兆円でいいのですか、それとも、あとどういう意思のもとにこのシステムをそれこそひっくり返そうとしているのですか、こういうところをはっきりさせていく必要がある。でないと、外から見ていると、いつまでたっても日本の国家の意思が伝わってこないのですよ。そうでしょう。建前のうちでは、国家の意思じゃないでしょう。  それぞれの銀行が自分のところで解釈して、これだけ来た。結局、申請を上げてきた銀行というのは、それこそ我々がもともとから批判しているように、この資本注入が必要ないところじゃないか。本当に要るのはもっと別なところにあって、そこは手を挙げていない、挙げることができない。そんなようなことが現実なんではなかろうかという見方をせざるを得ないと思うのですね。その肝心なところをはっきりしないと、それこそ、先ほどから海外の批判が何回も出ていましたが、日本の政府というのは一体何をやっているんだということになるのだろうと思います。  そういう意味から、大臣のひとつ見解をお聞きしたいと思います。
  191. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  中川先生の大変多岐広範な、またかなり奥の深い御議論でございますので、そのお答えが満足いただけるかどうか自信もないわけでございますが、現時点での例えば株価一万七千円程度、百二十六、七円のレート、これで今度の三月末を見たときのお感じで御議論をされているかもしれません。  しかし、もしこの十三兆円という施策が合成立していなくて、このスキームがなかったとしたらどうだったろうか、あるいはもっと前の時点で、株価がひょっとしたらもっと低いかもしれない、あるいは円安がもっと進行するかもしれないというふうにみんなが思い出したときどうだったろうかというようなことを考えますとき、金融というのは実物経済とはちょっと違った側面があると思うのです。  つまり、不安が非常に不安を呼ぶという非常に怖い現象を呼び起こす。そうすると、この措置意味というのは、確かに先生おっしゃるように、十三兆円と今度の申請の二兆円というお話は、あることは私もわかりますけれども、しかし、こういつた万全の備えをするということがまた目に見えない形で経済にプラスを与えているということでございます。しかも、これはまた三月末までの話だけではなくて、三年間の措置でございます。  また、もう一つ言わせていただきますと、日本のマーケットですんなりと自己資本の調達ができる状況でありますれば、こういった問題は比較的軽微に済むのでございますが、非常にすくみ現象がまだ続いております。そういったことに対する手だてをしないと、今度は海外から見たとき、日本経済の危うさが、日本のマーケットの危うさあるいは日本金融機関の危うさからもたらされるというふうにいつまでも思ってしまうということだろうと思うのでございます。  そういうことを考えますと、この措置自体の持っている非常に潜在的な意義というのは大変高いものと私どもは思っておりますので、御理解賜りたいと思います。
  192. 中川正春

    ○中川(正)委員 去年からことしにかけて、そうした一つ一つ施策、二兆円の所得減税も含めてずっと見てきまして、効き目がないというか、ここというところで起死回生のものになっていない。これは本当にちまたで批判の出ているところですが、タイミングも遅いし、出し方もちょろちょろしか出てこない、こういう批判のされ方をしますけれども、私は、どうもその一番大もとというのが、一番基本的な考え方というのが先ほどの山口局長の言葉にあらわれているのじゃないか。  それは何かというと、経済の基本に向けて施策を差し込んでいくのじゃなくて、株価の変動を意識し過ぎて、それを口先介入のちょっともが生えたような形で日本施策をつくり出そうとしてきたことが、もともと日本の今の政策を混迷に導いてきた大もとではなかったのかなという気が今つくづくしているのです。これまで何回も何回も局長の答弁には先ほどのトーンがにじみ出ているのですね。それと同じようなトーンで、自民党のそれぞれの力のある議員が発言をする。それで株価が揺れる。その中でずっと来たわけですが、これはこのままでいったらどこかで破綻するよというその部分というのが、今アメリカ日本の批判をさせているのだろうというふうな気がするのですよ。  私は、国が施策を言う場合にはそういうスタンスであってはならないと思うのです。逆に、一・九%の経済成長をやるとアメリカに対して約束したのであれば、それは何をもってやるかということをやはり政策をもって示す、その考え方というのが貫かれないと、周りから見て信用をしてもらえないのだろうというふうに思うのですね。  それは具体的に何かと言えば、さっきの資本注入でも、十三兆円の根拠はあったのだろうと思うのですよ。十三兆の根拠というのは、株の資産を全部払拭させる、それを強制的にでも国の方が入れて、不良債権を含めてこの際はきれいにするんだというその腹決めがあったら、全然違う政策として具体的に入ってくるだろうと思うのです。それぞれの銀行が手を挙げて、私のところがやるんだというのじゃなくて、国の方から一律でこうだよという入れ方がそこで出てくるのだろうというふうに思うのですね。  あるいは、二兆円減税もそうであります。減税をやっても、地元へ帰ってこの二月、三月の話を国民に聞きますと、いわば一般の労働者でいきますと源泉徴収で二千円から三千円ですよ。それだけしか税金を払っていないのだから、戻りも二千円か三千円ぐらいしかない。私の場合は一年がかりでこの減税が戻ってくるんだなということで、何をやっているんだ、こんな金の無駄遣いはないじゃないかというふうな形で返ってくるというのが一般の反応なんですね。  その辺のことも含めて、私は、ここで国としての政策の基点、基本になるところというのをもう一回考え直していただきたい、そんなような気持ちがしております。  以上の議論を聞いていただいて、大臣、ちょっと答えてください。もうこれまでこういうことで繰り返してきたということなんです。どういうふうに考えられますか。
  193. 松永光

    松永国務大臣 委員からは先ほど、日本アメリカに対して一・九%の成長を約束したという御発言がありましたけれども、私は、経済見通しとかあるいはまた経済運営の基本というのは、アメリカと約束したからするとかしないとかという問題じゃなくして、日本の現在の国民のために、将来の国民のためにどういう経済運営が望ましいのか、そういう考え方でやるべきものだと考えております。  したがって、そういう方針でやりますということは全世界の人が知るわけでありますけれども、先ほども言ったとおり、一・九%成長を目指して九年度はスタートしたわけでありますけれども、いろいろな見込み違いもありましたし、特に昨年の四-六は前の期の駆け込み需要の反動として大変落ち込みましたが、七-九になりますとある程度いい面が出てきた。  しかし、残念ながら、その後に、先ほども申し上げましたけれども、アジアのいろいろな国の通貨不安や金融不安の影響があって、これが日本にはね返ってきた。同時にまた、日本の国内の大きな金融機関が破綻をし、その結果として金融に対する不安が生じ、そしてまた幾つかの企業が破綻したがために雇用不安まで起きてきた。それが消費の相当な減退を招いた。そういったことで、残念ながら一・九%成長じゃなくて〇・一%の成長しか達成できないような厳しい状況になってきておる、こういうふうに認識しておるわけであります。  そこで、経済の基本は、やはり金融が安定すること。よく言われますことは、金融は人間で例えれば血液なんだ、金融システムというのは動脈の血管なんだ。これを健全なものにすることが経済の安定成長の基本という考え方に立って御審議をいただいて、金融安定のための二法を成立させていただいたということであります。  せっかく十三兆、公的資金注入の用意ができたのに、わずかしか銀行の方から申し出がなかったという点でございますが、それはそれ、大蔵省が民間金融機関指導して、あなた申し込みなさいと、こうやらせる立場じゃありませんから、やらせたわけじゃありませんから、それぞれの金融機関が自分の銀行状態を見て、そして三月期を乗り切り、そしてまた自己資本比率を高めていく、そのことのためにはこの程度注入を受けた方が自分の銀行にとっては望ましいという個々の銀行の判断で実は申請がなされたわけであります。  それで、全般的に言って、日本銀行の自己資本比率、これは日本のトップの銀行といえども外国の銀行と比べるとまだ相当低い自己資本比率しか持っていない、こういう状況もあるわけでありますので、それぞれの銀行がより堅実で健全な経営ができるように、そしてできるだけ強い銀行になろうというわけで、それぞれの立場努力してくれることの方が望ましいというふうに私は考えておるわけでございます。
  194. 中川正春

    ○中川(正)委員 今のは、どう聞いても大蔵大臣見解じゃなくて、大蔵省見解という形で官僚の公式見解を棒読みされたような気がいたしました。非常に残念に思います。  いわば十三兆円というのは、これは政治決断だっただろうというふうに思うのです。しかし、それを実行していく中ですりかえが起こって、いわば官僚の責任逃れですよ。銀行の方に責任を押しつけておいて、それで中途半端に政治決断をしてしまったということが現在の姿ではないか。これを改めて指摘をさせていただいて、本当にこれでいいのですか、本当にこれで日本金融の情勢というのが立ち直ることができるのですかということに対して、はっきりと大丈夫ですというその答えを大臣見つけてください。それを改めてお願いを申し上げたいというふうに思います。  関係法令について、せっかくでありますので、質問をさせていただきたいというふうに思いま す。  まず、法人税の方でありますが、これがいろいろな議論の中で、現在の税率をおおむね三%下げますよ、こういうことを決めていただいたのだと思うのですけれども、一つは、グローバルスタンダードというのが何回も議論になって、その辺のところを意識しながら持っていかなければいけないのじゃないかという話、それから、現在の経済状況でタイミングとして今がいいのじゃないか、大まかに言ったらこういうことだろうと思うのです。  ところが、これはグローバルスタンダードから見てもまだ足りないのですよ、もう一頑張り。実効税率でいきますと、アメリカあたりでも四一%ぐらいまでもう下がっていまして、あと五%、六%の差があるわけでありますが、これは将来どのように位置づけていくということなのか、その辺をまずお聞かせください。
  195. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  法人課税につきましては、今般御提案申し上げていますように、課税ベースを適正化するとともに、国税の基本税率については三%引き下げるということにしてございます。実は、この三%でございますが、その結果、三七・五から三四・五ということで、シャウプ税制以来、最も低い水準になってまいります。  それから、国税につきまして、それでは他の主要先進国と比較してみるとどういうことになるかというわけですが、アメリカの連邦の法人税率、地方税抜きの裸の税率でございますが、三五%でございますので、これを下回ることになってまいります。  同じように、地方税の問題がありますものですから、国のものを実効税率ベースで比較いたしますと、イギリスが三一、あるいはドイツが今三六、フランスが四一と三分の二という形で、国の税率としては大体いい水準にいきつつあるのではないかな、いろいろ御意見があるのは承知しておりますが、そのように認識しているわけでございます。今国税だけ申し上げましたが、その結果、地方税を合わせたところでの今回の改正後の実効税率、表面税率とも言っておりますが、四九・九八から四六・三六というふうになりました。  さて、これからの法人課税をどうするかということになってくるわけでございますが、実は平成十年度の税制改正に関する答申でも御指摘をいただいておりまして、「今後は、事業税における外形標準課税の検討が法人課税の表面税率の」、今先生のおっしゃられました実効税率と同じ概念でございますが、「議論にもつながることを念頭に置きながら、法人課税の表面税率のあり方について検討を進めることが適当」というふうに指摘されておりまして、今の考え方に従いまして、税制調査会において検討が始められていくのではなかろうか、こういうふうに考えているところでございます。
  196. 中川正春

    ○中川(正)委員 次に、有価証券の取引税あるいは取引所税、先物、オプション取引関連の税率でありますが、これは理解できないのは、なぜ一気にやらなかったかということですね。これは半分だけに抑えている。なぜなんですか、これは。
  197. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今、我が国金融市場につきましては、二〇〇一年までに、フリー、フェア、グローバルといった理念のもと金融システム改革が推進されているところでございます。  有価証券取引税と取引所税でございますが、一つは、今のような政策的観点から、つまり金融システム改革を推進し、金融・資本市場の活性化を図るという政策的観点からこの税制をどう考えていくか、あるいはよく指摘される点は、金融のグローバル化に伴いまして、金融取引の海外シフトの可能性が出てくるのではないかといった状況が一方においてございます。  他方、有価証券取引税、取引所税というのも税でございますから、税制全体の中で適正な税になっているか。例えで申し上げますと、株式の譲渡益課税について申し上げますと、現在、いわゆる申告分離課税あるいは源泉分離課税と二本立てになっておりまして、税の公平の面からいろいろな御指摘をいただいているわけでございます。また一方において、今先生がおっしゃられましたように、税でございますから財源の調達手段になっていることも事実でございます。  そうしますと、今の政策的要請と、今申し上げました金融・証券税制全体の中の役割を総合的に勘案していく必要があるわけでございまして、今年度の改正では税率を半減するという御提案をさせてもらっております。ただ、要綱その他におきましても、「平成十一年末までに、金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止する。」というふうになっているところでございます。
  198. 中川正春

    ○中川(正)委員 ここのところも、本来は政治決断なんだろうというふうに思うのです。いわゆるテクニカル上あるいはまたそれぞれの法案との整合性、これは役人の方の考えることでありまして、この四月から外為法が変わって自由化される、それに対して今の経済状況を見ながら、これは半分で残していく方がいいのか、すぱっと全部なくしてしまって対等の競争ができるような状況にこの国内の状況をするのがいいのかというのは、これはもう政治決断だというふうに思うのです。その決断ができていないということ、これはやはり全廃をすべきところだということを指摘をさせていただきたいというふうに思うのです。来年するのだったら、ことしやったらいいのですよ。そんなけちな、役人的なことはこの際はだめだと、それぐらいいわば経済というものに対して腹をくくって見ていただきたい、こんなふうに思います。  ちょっと時間がなくなってきたので、本当は大臣の答弁がもらいたいところなのですが、まとめてもう一つだけ聞きます。  もう一つは、これからずっと進んでいくと、いわゆる納税番号といいますか、総合的な番号というものを確保しながら税制全般を体系化していきたい、こういう意向が出てくるわけでありますね。それで、自治省の住民基本台帳のシステムの問題が今この国会に提出されようとしていますが、大蔵省としてはこれに相乗りするつもりなのでしょうねということの確認をしたいと思います。
  199. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  納税者番号制度でございますが、従来から、一つは税務行政の機械化、効率化、電算化が進んでおりますのでそういう観点から、あるいは所得課税、資産課税の適正化に資するためというような観点から検討を続けてきているところでございます。  御承知のように、最近、納税者番号をめぐる環境については変化が出てきているのではないかというふうに思います。  一つは、いろいろなカードが普及しまして、番号利用が一般化してきているようにも考えられます。また、今先生御指摘がございましたように、基礎年金番号は既に実施されておりますが、住民基本台帳法の一部改正法案が、昨日でございましょうか提出されたというふうに承知しております。そういう点からいたしますと、この納税者番号制度に関します国民の理解は以前よりは広がっているのではなかろうかというような気もいたします。  したがいまして、このような環境を踏まえまして、この納税者番号制度につきましては、従来から言われております、経済取引への影響をどう考えるんだ、あるいはプライバシーの問題をどう考えるんだというような問題、あわせて検討を進めていく必要があろうか、こういうふうに考えているところでございます。
  200. 中川正春

    ○中川(正)委員 この問題も、従来から議論を積み重ねてきて、最終的には政治が決断をしていくところだろうというふうに思うのです。  そういう意味で、今、厚生省、大蔵省、自治省、それぞれそうした番号を使っていきたいという意向があるわけなんですね。それを、それぞれが別個に番号をつけていたら国民の方としてはたまったものではない、こういうことだろうと思うのですが、それについての共通した話し合いの基盤というか体系というのを大蔵省としても求めていく必要があるんじゃないかということ、政治的にこれを決断してやっていくという意思がありゃなしや、ここのところを大蔵大臣、御答弁ください。
  201. 松永光

    松永国務大臣 納税者番号制という背番号制というのは前から議論があったところでありますが、私は率直に言って、行政の側からすれば、国民一人一人に番号をつければ非常に効率的な、そして公平な行政ができることになる可能性が非常に強いと思う。しかし、今度は国民の側からすれば、何でもかんでも番号によって行政の側に把握されているという状態については非常な抵抗感があるのではなかろうか。  そこで問題は、世論がどういうふうになっていくか。世論の成熟度を見ながら政治が決断する、こういう形にせざるを得ない、あるいはなっていくんじゃなかろうか、こういうふうに思うわけです。国民の側と行政の側と、そういったことではなかろうか、こう私は思っております。
  202. 中川正春

    ○中川(正)委員 時間が来たようでありますので、これで質問を終わります。ありがとうございました。
  203. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 次に、上田清司君。
  204. 上田清司

    ○上田(清)委員 上田清司でございます。大臣もお疲れさまですが、どうぞよろしくお願いいたします。  まず最初に、これはもう基本的なことですが、今回の法人税法の一部改正並びに租特の関係、特に租特では土地税制関係でございますが、かねてから、ここ二、三年ぐらい野党を中心に強い改正要望をやってきたところでございますが、その都度拒否された経緯がございます。今回、なぜ法人税法の一部改正、法人税の軽減を中、心とする中身、あるいは租特における土地税制等の緩和、軽減措置をされたのか、大臣に御所見を伺いたいと思います。
  205. 松永光

    松永国務大臣 私は、法人税の基本税率を三%下げたということは、やはり経済活動、企業活動の中心となって活動しておるのは法人でありますから、その法人の負担を軽減することを通じてより一層経済の活性化を図っていきたい、こういう考え方が基本にあると思います。  同時にまた、諸外国の法人税の負担率を考慮に入れながら、できるだけその負担を外国の税制に近づけていく、それを通じて日本自身の対外競争力を高めていく、こういった観点からの今回の改正だというふうに私は思っております。
  206. 上田清司

    ○上田(清)委員 大変失礼ながら、大臣、それは三年前から我々が主張していたところでございます。同じ御回答をされておりますが、我々がそう申し上げてきたのです。そのときには拒否をされまして、今大臣が御回答された言葉は我々が言っておりました。経済活動を活性化するため、あるいは海外とのバランスの問題でまずいのではないか、そういうことを申し上げていて、それはそうだけれども今はということで表現をされておられたように私は記憶しておりますので、今の回答だとちょっとおかしいのではないか。  今回なぜこのような措置をとられたかということを聞いておりまして、少なくとも今までとは違った考え方があるのではなかろうかというふうに私は理解しておりますけれども、いかがでしょうか。
  207. 松永光

    松永国務大臣 私は、前々からそういう考え方だったのです。それでようやく決断した、私はそういうふうに理解をしながら、去年の党税調の議論を見ておったわけでございます。
  208. 上田清司

    ○上田(清)委員 大臣は個人的にはそうだったということですが、大蔵立場では必ずしもそうでなかった、改正を常に見送ってきたという経緯がございますということを指摘させていただきたいというふうに思います。  それでは、今回の改正で、法人税並びに租特関係で、トータルの数字でどのような税収の形になるか、それぞれ数字をきちっと出してください。
  209. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  平成十年度税制改正の、いわゆる税制改正による増減収見込み額について申し上げさせていただきたいと思います。  まず、平成十年度の所得税、これはもう既に法律が通過し実施しているところでございますが、平成九年分の減収見込み額が九千七百九十億円、平成十年分の減収が四千二百四十億円、いわば一兆四千億円が国税分の減収額でございます。地方と合わせまして、二兆円と言われているものでございます。  今回三つの法案を提案させていただいておりますので、それについて申し上げますと、法人税制改革関係で、初年度でございますが、三千二百六十億円の減収、金融関係税制でございますが、有価証券取引税の税率の引き下げと取引所税の税率の引き下げを合わせまして二千百十億円の減収でございます。  それから、土地・住宅税制の改正でございますが、地価税の課税の停止ということで千三百四十億円の減収、その他で百四十億円、計千四百八十億円の減収になっております。  それから、その他の改正といたしまして、いわゆる特定扶養の関係あるいは障害者の方の関係でございますが、これが六百六十億円の減収、課税ベースの拡大ということで企業関係の租税特別措置の整理合理化を行っておりますのが、初年度で百七十億円の増収でございます。その他といたしまして百八十億円の減収、今のその他の項目で計六百七十億円の減収になります。  したがいまして、今の項目を足し合わせますと、合計といたしまして七千五百二十億円の初年度の減収、これが国税関係の改正の概要のトータルになってまいります。
  210. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございました。  それでは、ちょっとこの問題はおきまして、今回の橋本総理のさまざまな事実上のなし崩し的政策転換の原因の一つにアジア通貨危機を挙げておられるところでありますが、このアジア通貨下落に伴い邦銀の不良債権がふえたのではないかなというふうな認識をしても決して差し支えのない議論ではないかなと私は想定をしております。この点について、先般、大蔵省の分類債権で七十六兆という数字を挙げておられましたが、あれは九月までのお話でございます。このアジア通貨下落は十一月、十二月にかけてということですので、当然その後、改めて何らかの形で邦銀の不良債権がふえたであろうというふうに私は想定しております。この辺の実態解明、実態解明というのはオーバーですが、実態についてどの程度数字を把握しておられるか、銀行局長お尋ねしたいと思います。
  211. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  不良債権の総額につきましては、今国会におきましても新たなる視点からの数字をお示ししたところでございますが、アジア向けの債権として特記してその内訳を求めておりませんのでよくわかりませんが、先生の御指摘もありますので、ちょっといろいろ聞いてみたところでは、アジア向け債権が、これは優良債権を含めての話ですが、全体で三十一兆ぐらいございまして、全国銀行ベースで総資産の三%ぐらいを占めております。  そうしたエクスポージャーになっておるわけでございますが、このアジア向けの債権につきまして、これは不良債権と申し上げておるわけではありませんので、それは念のため。その為替リスクについてはかなりヘッジをされている。ドル調達、ドル貸しというような形での為替リスクのヘッジは大分できている。  それからアジア向け債権の貸し先でございますけれども、かなりの部分が日系企業に出ていて、そこに貸している。あるいは地場の大手の優良企業とか銀行というふうに聞いておりまして、そういう意味では、為替リスクや信用リスクについては、今直ちにそれが我が国金融機関に重大な影響を与えるという感じではなさそうでございます。  しかし、先生が御指摘のように、アジア諸国の経済はかなり流動的だと言わざるを得ないと思います。したがって、そうしたことを考えてみますと、ややよく注視をしていく必要があるのかなという感じを持っておる次第でございます。
  212. 上田清司

    ○上田(清)委員 具体的に、どのくらい時間があればかなり把握できますか。
  213. 山口公生

    ○山口政府委員 不良債権の集計をしますときには、アジア向け債権だ、ヨーロッパ向け債権だ、あるいはこれは国内の例えばゼネコン向けだというふうなとり方をちょっとしておりませんので、あくまで、先生にお答えできるとすれば、銀行からのヒアリングでの感触をお伝えするということになろうかと思います。
  214. 上田清司

    ○上田(清)委員 感触ではなくてできるだけ具体的な数字を調べていただきたいというふうに要望しておきます。  日本輸出入銀行の方、来ておられますか。日本輸出入銀行が貸し出している部分に関しても同じようなことがあるいは起こっている可能性もあるかなということで、きょうおいでいただいたわけです。  今の質問の趣旨に対して、輸出入銀行が抱えておられる部分に関してどのような変化があったか、この問題についてお答えいただきたいと思いますし、もし邦銀のそういう不良債権の問題について把握されていられれば、ぜひ、具体的な数字までいかなくても大方ということで、ありましたらお答えいただきたいと思います。
  215. 鏡味徳房

    鏡味説明員 輸出入銀行では、東南アジア向けの出融資残高でございますが、約二兆五千億円ほどございます。現在のところ、これにつきまして滞っているところはございません。  それから、実際貸し出しが行われるに際しましては、国からは担保はとれませんけれども、企業にお貸しする場合にはそれなりの債権保全措置をとっておりますので、現在のところ、これが延滞というようなことになることのないように注視をしていきたいと思います。  それから、万が一、国の債権が滞るようなことになった場合でも、これはいわゆるパリ・クラブと申しますか、公的債権につきましては、先進国間で債務国と協議をしながらそのリスケなどを諮って回収を図っていくという手段もございますので、流動的な情勢をよく注視しながら、お貸しした債権についてできるだけ滞らないように考えていきたいと思っております。  なお、民間債権につきましては、私ども、把握する立場にございませんものですから、お許しをいただければと思います。
  216. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございました。お時間をとっていただきまして恐縮です。どうぞ、結構でございます。  それではもう一つ、視点を変えまして、延滞税の利率について、少し常識的な観点から考えさせていただきたいというふうに思っております。  と申しますのは、御承知のとおり、決算行政監視委員会では、平成目安箱と銘打って、広く国民各位から御意見を聞く仕組みをつくっておりまして、現在、それに対してどのような回答をしていくかとか、どのように処置していくかということに関して、理事会の各党協議の中でシステムをつくっているところでございます。既に御案内してから約二カ月でありますが、六百六十九、十日現在ですが、さまざまな提言、苦情、あるいはさまざまな御意見が来ているところでありまして、その中の一つがこの問題に触れておりまして、私もちょっと啓発を受けましたので、なるほどと。  確かに、公定歩合が〇・五%で、最近は若者向けの自動車ローンですら一%で貸し付けるようなお話がある中で、延滞税が最初の二カ月の間は七・三でございますね。それからその後は一四・六%になる。いかにも高いではないかという御指摘、御提言がありまして、なるほどと私も思いまして、これは改めて基本的な考え方について少し考えてみる必要があるかなというふうに思いましたもので、この問題を取り上げさせていただいた経緯がございます。  大臣、今申し上げた趣旨でございますが、いかにもこれは高いのではないかという指摘について、私も実は同感をしているところであります。商法、民法では、金利が五、六と書いてあります。公定歩合が五%、六%のときにこの一四・六あるいは七・三という延滞税が定められた。  現在の状況の中で、既にもうこの低金利あるいは公定歩合の低い部分の中で、日本経済社会が基本的にビルトインされております。預金金利生活者あるいは年金生活者に大変だという御意見も何度も御指摘がありましたけれども、反面、住宅ローンの問題でありますとか、あるいは企業の負担の問題だとか、さまざまな形でプラス・マイナス・ゼロではないかという御意見も、日銀あるいは大蔵当局からお話が出ている。こういう御指摘の中で、なぜこれだけが突出しているのかなという素朴な疑問でございますので、大臣に感想を伺いたいと思います。
  217. 松永光

    松永国務大臣 この延滞税というものでございますが、これは基本的には、納付すべきときに納付しない、ある意味では遅延損害金という性質のものだと思います。同時にまた、国民のための施策を施行するための財源を確保するためでございますから、そして一方においてはまじめに納税している人がいるわけでありますから、それとの均衡も考えなければならぬでしょうし、何よりも納税促進ということのための意味もあろうかと思います。  そういった点を総合的に考えて今のような率になっているのだ、こういうふうに私は理解しておるわけでありますが、そう考えますと、普通の利子と同じ物差しではかるのはいかがなものかな、やはりそれは物差しが違うのじゃなかろうかな、私はそう思います。
  218. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 ちょっと事実関係についてお話しさせていただきます。  今、七・三%と一四・六%というお話がございました。実は、納税に対する誠意があるような場合は、一四・六%ではなくて七・三%の延滞税ということになっているわけでございます。さらに、災害、病気等の事情があってそういうような場合には、納税猶予期間中の延滞税が全額免除されるというような制度にもなってございます。  それで、今大臣からまさにお話がございましたように、この延滞税は、納期限を守ってくださった人とそうでない方との負担の公平をどう考えるか、滞納の防止をどう考えるか、あるいは一種の期限不履行ということになりますと、損害賠償というような性格を持ってまいります。そういう目的で課しているのが今の延滞税でございます。  そうしますと、この延滞税の割合は、このような趣旨から、当然今申し上げましたような目的にかなうものでなければならないということになってまいります。他方、納税者がみずからこれは計算して納付していただくというものでございますから、やはり制度として安定性、明確性についての十分な配慮も必要である。  したがいまして、この延滞税でございますが、その時々の金利水準で判断するということではなしに、より長期的な観点から判断すべき性格のものではなかろうかというふうに考えているところでございます。
  219. 上田清司

    ○上田(清)委員 法律の達人でありますところの松永大蔵大臣に釈迦に説法で恐縮ですが、いわゆる刑法的な感覚で量刑を加えるとか云々という話になってきますと、おのずから罰則的なものというのは限度がありまして、必ずしも量刑をたくさん加えればいいというものではない。そこそこ社会通念上必要な最小限度の刑を、あるいは罰することをもって善良なる社会国家をつくっていくという趣旨からして、以前はこれでよかったのかもしれませんが、現在の状況の中で必ずしもそういうことが言えるのだろうかということで、私は一考すべきではないかなというふうに思います。  また、なおかつ、それぞれ登録免許税初め社会の常識に合わせて引き上げられたりあるいは引き下げられたり、変化しているわけでありまして、このことだけが変化しないというのは明らかにこれは怠慢ではないかなというふうに私は思いますので、いま一度、一考すべき余地があるのか、あるいは検討する余地も全くないのか、この数字がどこから出てきたのか、根拠も含めて改めてお伺いしたいと思います。局長で結構でございます。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  220. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 ただいま申し上げましたように、延滞税につきましては、種々の目的、性格がございます。したがいまして、預金金利はもとより、考え方から申し上げますと、市中貸出金利とも本質的には異なるものではなかろうかと思います。したがいまして、これと単純に対比して考えるべきものではないということになるわけでございます。  ただ、延滞税の割合でございますが、最低限言えることは、市中貸出金利を上回る水準でなければならないだろう、こういうことは間違いなく言える。そういう中で、まさに債務不履行に対する遅延利息あるいは期限不履行に対する損害賠償としての性格、それから滞納防止という目的、そういうことを勘案してどう考えていくのかということかと思います。  なお、現在の七・三%あるいは一四・六%でございますが、通則法ができましたとき定められまして、今日まで続いているわけでございます。  これからの考え方をどうするかということでございますが、先ほど申し上げましたような趣旨を踏まえまして、より長期的な観点から判断すべき性格のものであろうと思っておりまして、確かに、ここ数年低金利の状況が続いていることは事実でございます。しかし、長期的な観点から金利水準を判断するに当たりましては、これからどうなっていくのだろうかということも見きわめることが不可欠ではなかろうかというふうに思っているわけでございます。  したがいまして、引き続き金利水準の動向を見守り、長期的な観点からの金利水準がどうなっていくのか、いましばらく見させていただきたいということでございます。
  221. 上田清司

    ○上田(清)委員 まさに模範的な回答でありますが、極端なことを言えば、先ほど大臣も言われましたように、やはり善良なる納税者に対比して、促進をさせるというような意味もあるということですが、市中金利を上回らなければならない。そういう観点も今局長が申されましたけれども、事と場合によっては、ほかのところがらお金を借りて延滞税をずっと払っていれば、ずっとそのことを続けられるということもございます。今そういう金利状態であるということで、必ずしも罰則的な意味を持たなくなってきているという現況もあるということを承知した上で、そういう視点も改めて検討していただきたいということを再度申し上げておきます。  それでは、次に移ります。この委員会でも問題になりました日産生命の問題でございます。  この問題は、その後破綻処理のあおば生命がつくられまして、なおかつ保証制度のあり方についてもいろいろな議論が出てきておりまして、これから保険、生保等々について、どんな形で、まさかのときにどうするかという議論も含めて、大変重要な問題であるというふうに私は認識しております。  共産党の佐々木憲昭議員が、昨年のたしか十一月だったと思いますが、議論をされておられました。特に福田保険部長が、個々のケースでございますのでなかなか回答できませんということばかり言っておられましたけれども、いつの話だったのかなというふうに私は思います。もうこの問題は八八年当時から出ている話でありますし、しかも昨年の四月に破綻した経緯がございますから、昨年の十一月の段階で、今調べておりますとか、個々のケースですからヒアリングをやっていますとか、こういうことでは断じていけない。こういうことをまず申し上げて、そういう答弁をされるときは福田保険部長答弁に立たなくて結構ですから、あらかじめ申し上げておきます。  それでは、まずお聞きします。  当時、三塚大蔵大臣に最後にいろいろな事実関係をお聞きしておりましたが、「いろいろ飛び交っております。事実関係を整理をして、これから本件についての実態に応じ対処、こういうことであります。」と、若干最後の方がよくわからなかったようなあれですが、少なくとも「事実関係を整理をして、これから本件についての実態に応じ対処、」と、対処するということを申されておられます。  このことについて、山日銀局長局長も答えていらっしゃるのですよ。違法関係があったかどうか調べてみますというようなことを言っておられるのですから、総体的にどういう形で大蔵省として整理をされてこられたか、事務方のトップとして、基本的な問題について、もう既に問題点は指摘されてきましたから、どんな形で整理をされてきたかをお尋ねしたいというふうに思います。
  222. 山口公生

    ○山口政府委員 御指名でございますので、お答え申し上げます。  日産生命の提携ローンにかかわるいろいろな諸問題については、前国会でも御指摘を賜りました。大臣からも、事実関係をよく整理してというふうな御答弁を申し上げておりました。  早速、個々の具体的な事案を把握するため、地方の財務局等を通じて、今も把握している最中でございますが、今まで出てきた案件で百八十五件上がってきております。その結果を見ますと、うち七十七件は、契約者及び相手方とも違法な行為はなかったものという整理ができると思います。残りが百八件、まだ調査中であります。またふえるかもしれませんので、これで終わりと申し上げている趣旨ではございませんが、これらのものの多くにつきましては、無登録の募集を行っていたか否かという当事者間の事実関係に関する主張がかなり食い違っているということで、さらにこの辺については調査をしているわけでございます。今までのところ、明らかに保険業法に違反というような事実は認定されておりませんけれども、こういった形で今現状把握をさせていただいているわけでございます。  そのほか、種々の点について御指摘がございました。例えば協力預金をやっているのはおかしいという御指摘もありました。  この点につきましては、協力預金自身が保険募集の違法行為の対価としてあれば、それは大きな問題でありますけれども、紹介した銀行に協力預金があるということ自体については、必ずしも保険募集を金融機関がやったということにはならないと思います。その辺については、行き過ぎた協力預金かどうかという問題であろうかと思いますが、今までのところそういうふうなことは認められないと思います。  それから、パンフレットとかチラシについて、これは前の国会で佐々木先生の御指摘だったと思いますけれども、御指摘もありました。具体的にはスルガ銀行という名前も挙がっておりました。これは昭和六十三年当時の話でございますが、ローンのチラシにつきまして、銀行が保険募集を行っているかのような誤解を与えているのじゃないかという御指摘がありました。  これについては、ちょっと調べてみましたら、確かにそういった面があったということで、すぐ回収をしております。これは六十三年七月に回収を指導しておりまして、その後、そういったものはなくなっております。  それから、別の件だと思いますが、ほかの金融機関との間でも名前が連名であったのじゃないかという御指摘もございます。  これも、ローンと保険ですから、連名というのも理屈があるようなないような、ちょっと紛らわしい部分があるのですが、これが金融機関自身が保険募集を行っているというふうに誤解をされるおそれがあるのじゃないかということで、これも指摘をしまして、元年の三月でございますけれども、金融機関の名前を載せるのは誤解を招くということで、生命保険の会社だけの名前にしたというような処置をいたしております。  そういった、そのときそのときで対応をしてまいっておるわけでございますけれども、先ほど申し上げましたように、なお個々の具体的な事例で問題点がなかったかどうかということを今調べておるところでございまして、もしそういうところに法律に違反するというようなことがありますれば、それは適切に対応をしなければならないことであろうというふうに考えております。
  223. 上田清司

    ○上田(清)委員 極めて明確に御答弁をしていただきまして、ありがとうございます。後でその答弁が必ずしも正しくないということを私としては証明をさせていただきますけれども、大変丁寧に言葉をごまかさずに言っていただきまして、ありがとうございます。  今お手元に資料として提供させていただきましたのが、今、山日銀局長お話をされたパンフレット類の代表的なものの二枚でございます。  表紙だけにさせてもらいまして恐縮ですが、ここに「あましん 年金保険プラン」という形で書いてありまして、銀行ですが、なぜか「年金保険プラン」と。もちろん「一括払いにすると、」というところからお話があれば、当然そこからローンの話かなということは想像できないとは言いませんが、表紙からして日産生命はどこにも出ておりませんで、実はこの裏側の方に小さく「日産生命」と書いてあるのでありまして、あくまでこれは尼信の年金保険プランであるかのごとく思われるのが一般的だというふうに私は思っております。.  その裏側の方まではちょっと面倒くさいのでコピーをさせていただきませんでしたけれども、もちろんこれは日産生命の年金保険プランを一括で尼信が受けることで、ローンの金利稼ぎ、あるいは何らかの形で営業活動に役立てようということで、こういうパンフレットができたわけであろうかというふうに思いますが、これはまさに詐欺商法に近いような感覚ではなかろうか、こんなふうに思うこともできると思います。  先ほど並列して名前が出ていたというのが、そこに出ておりますところの「ケアプラン」。「日産生命」、左側には「住友銀行」「住銀保証」と出ておりまして、これは比較的日産生命が表に出ているからまだましなのですが、表に日産生命なんか出てもいないようなパンフレットというのはたくさんございまして、幾つかあるのですが、スルガ銀行のものも表に日産生命なんというのは出ておりません。こういうパンフレットが当時大変出回っておりました。  それで、いわばたくさんの年金保険を獲得する。理屈は簡単でありまして、毎月毎月年金保険を積み立てるよりは、一括して払ったら、その一括した分のローンを返済する方が総額で安いですよ、こういう勧め方で、できるだけローン払いにしていただくという仕組みをつくったわけであります。これが広く当時銀行で非常に勧められておりまして、そのことは東京新聞がキャンペーンで相当やっておられるというような傾向で、在席の大蔵委員のメンバーの先生方も、あるいは政府関係の皆様方も多分に知るところではないか、私はこんなふうに理解をしております。  これを、今、山日銀局長は、六十三年七月に回収を指導した、こんなふうに言っておられましたが、指導されたのはどういう形で指導されたのでしょうか。通達ですか、それとも口頭でしょうか。どういう形で指導されたのか。  そして、その指導は本当に徹底していたのかどうかという検証を当然されたというふうに私は思います。これは八八年当時にも、後に横浜銀行の頭取になられました平澤銀行局長でしょうか、質問があった経緯がございます。そして、あれから約十年以上たっております。また、この問題は四月の破綻の当時に相当問題があったわけですし、大蔵委員会でも御指摘があったわけですから、指導したということで終わったのではなくて、その指導に問題があったのではないかということも指摘を受けていたわけですから、本当に検証されたかどうかについて確認をさせていただきたいと思います。御答弁をお願いします。
  224. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  私が六十三年と申し上げましたのは、スルガ銀行作成のローンチラシについての回収の指導でございます。  それから、元年というのをもう一つ申し上げたと思いますが、これは日産生命作成のパンフレット、Will-Wellという提携商品についてのパンフレットに、日産生命と金融機関が併記されていたということの指導でございます。  恐縮でございますが、詳しくは保険部長からお答えすることをお許しいただきたいと思います。
  225. 福田誠

    ○福田政府委員 御指摘のように、スルガ銀行につきましては、パンフレットへの銀行名と保険会社名の併記が誤解されかねないということで、元年の三月に削除をきちっと要請したわけでございますが、その当時、ほかの銀行につきましては、すべての銀行に問題があるか否か、その辺も必ずしもはっきりしなかったこともございまして、御指摘のように、銀行全体に対してそのような誤解されかねないパンフレットへの併記を指導していたかどうか、その辺につきましては十分でなかったかもしれないわけでございます。  いずれにしましても、こういうことできょうもそのような御指摘をいただきましたので、ちょっと調べさせていただきたいと思います。
  226. 上田清司

    ○上田(清)委員 今の答弁では納得できません。  十一月の段階で佐々木憲昭議員からも御指摘をいただいております。あれから時間もたっておりますし、それ以上に、この問題が起こってからもっと時間がたっております。それで、これから調査ということでは、この院の質疑はそういう程度の対応しかされていないのかということになりますから、そういうことではなかなか審議もできないということになってしまいますよ。今のは重大な発言ですよ。保険部長、今のは間違いないか、これからの調査なのか、それとも調査できているのか、もう一回聞きたいと思います。
  227. 福田誠

    ○福田政府委員 先ほど銀行局長が御答弁申し上げましたように、日産生命の提携ローンに関する個別の案件につきまして、財務局等で今ヒアリングをし、かつ是正できるものはしてまいりたいというふうに思っておりますが、パンフレットについての口頭指導につきましては、日産生命以外につきまして必ずしも十分な指導ができていなかった面はあろうかと思います。
  228. 上田清司

    ○上田(清)委員 指導ができていなかったということですか、十分な指導が。基本的にできていないのでしょう。基本的にできていないのですよ、これは。だから、たくさんできたのですよ。そして、これも前回の委員会でも指摘があったとおり、そういう六十三年の七月あるいは五月、銀行局長の七月というのは五月の可能性が高いと思いますが、この六十三年の五月、あるいは七月でも結構ですが、いずれにしても、六十四年の一月に日産生命はある銀行に対して、余りにもこの勧誘をやり過ぎだ、こんなにやってもらっては困る、ばれてしまう、こういう要請をしているのですよ。そういう指摘もあったわけでしょう。そういう文書を手に入れられましたか。
  229. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  ただいまの御指摘は、スルガ銀行の件だと存じます。  昭和六十四年一月六日付で、日産生命からスルガ銀行に出された文書「〝Will-We11〟の販売中止に関するお願いについて」というものでございます。これについては、日産生命の内部資料でございますが、当時、日産生命の支社の募集体制の規模から見まして保険の取扱件数が多過ぎるということで、適正な募集がなされていないのではないかということから、日産生命がスルガ銀行に対しまして提携ローンの業務提携中止を申し入れたものでございまして、その後、基本的に日産生命とスルガ銀行の提携は行われていないものと承知しております。
  230. 上田清司

    ○上田(清)委員 たまたまきょう決算行政監視委員会理事会に大蔵委員会よりも先に提出がされました、これは大蔵省OBの方々が天下りされた、あるいは再就職されたと言ったらいいのかもしれませんが、すべての金融機関の名簿であります。この中に、やはりこの日産生命とセットでパンフレットをつくられた尼崎信用金庫、尼信も入っております。その中にちゃんと、お名前は申し上げませんが、近畿財務局の総務部部付の方が平成二年に常務理事で入っておられますし、それから、中国財務局理財部の金融課課長補佐、この方が理事会長をやったりもしております。  こういうすべての信金に至るまで、大蔵省のOBの方々が、その有能さがゆえにいろいろ入っておられる。やっていいことと悪いことをわかった方たちが役員として、責任者として現におられるわけですよ、その時点でも。こういうパンフレットが内部でクリアされるということ自体がどういうことなんだろうと、まさに癒着じゃないかと言われても仕方がない。  大臣、こういういきさつで、日産生命の問題については必ずしも実情について御存じないと思いますので、私も深追いはしません。話の筋を聞いていただければわかると思いますが、少し常軌を逸脱したこういうパンフレットが出回り、なおかつ銀行が年金保険の勧誘をし、なおかつその銀行責任者に大蔵省幹部の方や財務局の方々がそれぞれ理事長理事として入り、その事件当時、監督すべき人たちが主宰者になり、しかも違法に近いパンフレットをつくり、違法な勧誘をしている。この実情に対して、今福田保険部長が言われましたように、必ずしもその実態について深追いをしておられない。委員会指摘され、あるいは八八年の段階で当時の銀行局長に質問をし、当時の銀行局長は、適切に対応したい、こういう議事録が残っていながらも、何らやっていない、こういうことが癒着でなくて何なんだということを私は言わざるを得ない。  大臣におかれましては、この問題について改めて調査をしていただきたいということをお願いを申し上げたいと思いますが、大臣、御回答をお願いいたします。     〔委員長退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  231. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  私は、数年前に、保険会社の件については、変額保険というものだったか、その関係で、私の法律事務所に相談に来られた方が一人二人あったのです。しかし、非常にやかましいものですから、しかも私の選挙区域ではなかったものだからお断りして、ほかの弁護士さんに紹介したわけでありますが、いろいろ問題の起こるケースがあるらしいということは承知しております。  しかし、この件については全く私自身知りませんので、事実関係について関係者からよく話を聞いて、そして法律に違反していると認められる点があったならば、それは当然のことながら厳正に対処しなければならぬ、こういうふうに思っております。
  232. 上田清司

    ○上田(清)委員 大臣、ありがとうございます。  残り時間の中でも、ぜひ大臣の賢明なる御判断の中でなるほどというふうに理解していただくようなお話をさせていただきますので、ぜひよく聞いていただきたいというふうに思っております。  恐縮ですが、新聞の方ではなくて、もう一つの資料をお配りください。  実は、違法性がなかったのではなかろうかというふうな答弁を銀行局長が先ほどされました。無登録の募集を行ったのではなかろうかどうか確認したけれども、その違法性については行き過ぎたものではなかった、対価として協力預金がなされるとしたらそれは問題だけれどもそれは認められなかった、このようなことも言われました。  無登録の募集を行ったかどうかについても、調査した限りにおいてはわからなかったというふうに言っておりますが、明確に内部資料の中に残っているということを佐々木憲昭議員も言われておりまして、そういう資料を手に入れられましたか、福田部長。あれだけ国会で、大蔵委員会指摘されて、「するが 年金保険ローン ステップ」の取扱要領説明書というのを御説明されましたね、佐々木憲昭議員が。あなたは何かけんもほろろに答えておられましたけれども、ちゃんとお調べになったでしょうね。
  233. 福田誠

    ○福田政府委員 御指摘の資料はスルガ銀行内部資料ということでございまして、これは誤解されかねないということで、平成元年の三月にスルガ銀行内部で削除されたものど承知しております。
  234. 上田清司

    ○上田(清)委員 私が聞いたのは、削除をされたかどうかということじゃなくて、手に入れていただいたかどうかということでございますが、手に入れられましたか。
  235. 福田誠

    ○福田政府委員 私ども、削除前のそのものについては入手しておりません。
  236. 上田清司

    ○上田(清)委員 削除するようにという指示をして、削除したという報告はどんな形であったのですか。
  237. 福田誠

    ○福田政府委員 当時、削除したという報告をいただきまして、削除した際に、このコピーなるものを入手したようでございます。  それから、前回も御答弁申し上げましたように、この表現自体は大変遺憾でございますけれども、このこと自体で実際の募集行為に違法な点があったかどうかということは、必ずしもこの文書だけでは申し上げられないということを前回申し上げてございます。
  238. 上田清司

    ○上田(清)委員 大変失礼ながら、監督官庁の担当部長とも思われないお言葉でございますね。  委員の皆様方にも見ていただきたいのですが、ちょうど真ん中あたりでございます。二回目の③というところでございますが、「保険契約の勧誘並びに受付は「保険募集の取締に関する法律」第九条」今は保険業法となっておりますが、「銀行員が行うことは禁止されているので注意のこと。〔本件はたてまえでのことであります。〕」と丁寧に注意書きまで書いてあります。要するに、銀行でこれを扱う場合には注意しながらやれよ、うまくやれよ、こういうことを文書で書いているだけですよとあなたは申されたいのですか。それとも、このことが実態的にあったのかどうかということについて調査をされたのかどうか、それを聞いているのですよ。
  239. 福田誠

    ○福田政府委員 お答えいたします。  スルガ銀行の件につきましては、当時の担当部局において調査をいたしました。個別にかかわる事柄ということでこれまで御答弁を詳細に申し上げておりませんが、結論的には、当時の調査によりましては、特別違法な行為は認定されなかったというふうに承知しております。
  240. 上田清司

    ○上田(清)委員 認定の問題は後にしますけれども、保険部長、この文書を入手されたときに、大蔵省としてどのような対応をされたのですか。削除しろとどなたに言ったのですか。そして、どういう回答がどなたから戻ってきたのですか。
  241. 福田誠

    ○福田政府委員 当時のことでございますので、そのような詳細なところまでは、ただいま御答弁する材料を持ち合わせておりません。
  242. 上田清司

    ○上田(清)委員 それは怠慢だと言っているのですよ。  何度も申し上げますが、八八年、当時の銀行局長は、適切に対応したい、そう言われているのですから、委員会で。だったらそうすればいいじゃないですか、適切に対応されれば。きちっと具体的に問題が残るようにされればいいじゃないですか。また、昨年十一月に佐々木議員が質疑をしているわけですから、しかも最後に大臣が答弁しているわけですから、事実関係確認して対処したいと言っていらっしゃるのですから、なぜしないのですか、きちっと。  私は質問通告もしたじゃないですか。予算委員会でこれをやる予定だったのですけれども、細かい話はレクで言ったはずです。なぜしていないのですか。
  243. 福田誠

    ○福田政府委員 その具体的な当時の、どなたがどのように、だれに対して指導したかということまではちょっと確認しておらなかったということでございます。
  244. 上田清司

    ○上田(清)委員 では口頭ですか、文書ですか。何ですか。
  245. 福田誠

    ○福田政府委員 その辺は少し確認させていただきたいと思いますが、少なくともこれまで文書としては確認されておりません。
  246. 上田清司

    ○上田(清)委員 非常に怠慢でありますし、文書でこれだけのものが出てきていて、もし口頭で注意ということになるといかがなものかというふうに私は思いますよ。  先ほど申し上げましたように、決算行政監視委員会の方でも、信金レベルまでの大蔵OBの皆さん方の再就職のお名前やお立場も出てきております。年度も出てきております。あなた方のお仲間が責任者や役員でいらっしゃって、そしてこういう内部文書が出て、恥ずかしいと思いませんか。これは重大な問題じゃないですか。  明らかに法を破る話が内部の文書で出ている。にもかかわらず、現時点において、どういうことだったかよくわからない、あるいは調べなければわからない、こんないいかげんなことしかできないのですか、皆さんは。  これでは、こんな回答しているようだと、今まで委員会審議されたこととかで、あなた方は適切に対処したいとか調査したいとか言ってもやらないということを証明している話だから、審議なんかできないですよ。
  247. 福田誠

    ○福田政府委員 この問題は何度も御指摘をいただいておりますが、この法律は建前でありますという内部資料については、不適当な内容でございまして、スルガ銀行内部で削除したわけでございます。その削除したということは明白でございます。  ただ、そのとき、具体的にだれが、だれに、どういうふうに指導したかにつきましては、申しわけございませんが、現時点でちょっと確認をしてみないとわからないということでございます。
  248. 上田清司

    ○上田(清)委員 明白の証拠を見せてください。明白であったという証拠を見せてくださいよ。
  249. 福田誠

    ○福田政府委員 どのようにお答えできるかちょっと検討させていただきますが、少なくともそのようなパンフレットが削除されたということだけは申し上げたいと存じます。
  250. 上田清司

    ○上田(清)委員 全然明白じゃないじゃないですか。言葉が軽過ぎますよ、保険部長。全然明白じゃないじゃないですか、削除したという。文書がない、文書がないと言いながら、削除されたということだけが明白ですなんて、一方的にスルガ銀行の言うことを聞いているだけにしかすぎないじゃないですか。あなた方は、被害者の言うことを聞かなくて、違法行為を犯した可能性が高いこの文書がありながら、明白な回答ですらもらっていない、調査もしていない、そういうことじゃないですか、一言で言えば。  この問題は再度、次の委員会までに調べてください。委員長にお願いしておきます。
  251. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員長代理 理事会で協議させていただきます。
  252. 上田清司

    ○上田(清)委員 理事会で協議じゃなくて、具体的に保険部長の回答を求めます。来週かどうかわかりませんが、次の委員会までにきちっと対応していただきたい。理事会の問題じゃないと思います。
  253. 福田誠

    ○福田政府委員 御指摘の点につきましては、できる限り事実関係を再度確認してみたいと存じます。
  254. 上田清司

    ○上田(清)委員 できるだけじゃ済まされません。もう十年間ほっておいて、四月に破綻して、一年近くほっておいてできるだけなんというような生ぬるいことじゃだめです。全力を挙げて次の委員会までにけりをつけてください。そういう回答をいただくまで、私はもう質問できません。
  255. 福田誠

    ○福田政府委員 事柄がスルガ銀行内部文書でございますので、とにかくできる限りの努力をさせていただきたいと存じます。
  256. 上田清司

    ○上田(清)委員 納得できません。
  257. 浜田靖一

    ○浜田(靖)委員長代理 速記をとめてください。     〔速記中止〕     〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  258. 村上誠一郎

    村上委員長 速記を起こしてください。  何分十年前のことでありますが、極力大蔵当局に努力させるようにします。  ただ、上田委員に御理解いただきたいのですが、十年前のあれですから、あるかどうかは調べてみなければわからないので、その辺は御理解いただきたいと思います。  それでは続けてください。上田君。
  259. 上田清司

    ○上田(清)委員 委員長の御配慮に感謝申し上げます。  十年前のことではありますが、しかし破綻したのは昨年の四月でありまして、この問題で被害者の会がつくられ、そして東京新聞ではキャンペーンを打っておりまして、多分、社会面のトップで打たれたことは十数回あるのではないか、私が持っているだけでも十枚近くありますので。こういうキャンペーンまで張られているときに、当事者の大蔵省が何の反応もせずに、丁寧な調査もしないというのは、これは明らかにおかしい。これだけは相当な反省をしてもらわなくてはいけない。このことをまず申し上げたい。  一応、事務方のトップの山日銀局長、十分反省の弁をお聞きしたい。
  260. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘のとおり、いろいろ問題になっておりますので、全力を挙げて調べてみたいと思っております。
  261. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。申しわけありません、呼び出しまして。  それでは、時間が少なくなっておりますが、まさしく通達でありますが、昭和五十七年四月一日付で「普通銀行業務運営に関する基本事項等について」ということで通達を出されております。  この中でも、社会的批判を受けかねない形態での預金受け入れ等の自粛、協力預金とか歩積み両建て云々とか不公正な取引はやめろ、こういうことを注意しなさいという通達を出されております。  まさしく先ほど申しました、協力預金で対価としてあれば問題ですけれども、そのことは認められなかったと銀行局長は言われましたけれども、これが本当かどうかということについてお互いに証拠をぶつけ合っているとまた時間がかかりますので、あなたの答弁は間違っていますよということをまず申し上げておきます。正しいと言うのだったら、改めて私のところに正しいという証拠を、証拠とは言いませんけれども、説明に来てください。間違っていますよ。逆に私があなたの答弁が間違っているということを証明してあげます。このことをまず申し上げます。  それで、平成元年の六月に「歩積・両建預金の取扱いについて」という通達を出されておりますね。要するに五十四年の分に関しては廃止だということでございますが、これは別に質問通告しておりませんのでちょっと恐縮ですけれども、こういう事実があるのです。  五十七年には、協力預金も含めて留意をしなさいよと。しかし、平成元年六月に廃止と言っておられるのですね。その文言が「自主的な対応によること」云々というようなことで、しかし、それでも留意はしなさいよということは書いてあります。それで「不適正な事例が見受けられた場合には、個別に所要の指導を行う考えであるので、念のために申し添える。」といって、今申し上げました五十七年の四月の通達等をこの時点で廃止ということですが、この認識というのは一体どういうことだったのでしょうか。  もう一切合財、「念のために」ということですから、それでもまだそういう協力預金だとか、そういうことはあるかもしれないということを念頭に置きながらも、いつまでも通達行政で縛るのもいかがなものか、こういう判断で多分出されたのではなかろうかというふうに私は思います。当時の局長でありませんのでこれを聞くのもいかがかなというふうに思いますので、ぜひ宿題として記憶にとめておいてほしいのですが、ちょうどこの時期なのですよ、日産生命の問題が起きているのは。まさか、そのためにあえてこの通達を廃止したわけではないと私は思いますけれども、もしそうだとすると大変な問題になってきまずからね。なぜこういう背景になったのか、後で調べていただきたい、こんなふうに思っております。  それで、時間も来ましたので、最後になります。  この問題は大変根が深くて、銀行が保険の勧誘をする、そしてその勧誘をするときに、まさか露骨に本体でもらうわけにはいかないもので、代理店を使って、代理店に手数料をもらう。おまけにそれぞれのランクに応じて、たくさん保険をとったところにはへ実績に応じて協力預金をたくさんするという仕掛けを当時つくっておったわけですね。こういう指摘を東京新聞でも出されましたし、当委員会でも出たわけですから、この点について、銀行はもしこのことが事実だとすれば三重に罪を犯している、こういうことでありますから、これはやはり見過ごせない。しかも、当時、この関係で提携ローンを組んでいた銀行は百六十数行あったはずです、地銀、大手の銀行も含めて。広範囲にこういうことがなされた可能性が高かったわけです。高かったというよりも、そういう内部資料があるのですよ。これは現にあると見た方が正しいのですね。  そういうことでありますから、しっかりこれは再調査が必要だ、こういう認識に立っていただかねば困るということを強く申し上げまして、時間が参りましたので終わります。ありがとうございました。
  262. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、北橋健治君。
  263. 北橋健治

    ○北橋委員 大臣、連日御苦労さまでございます。  きょう、税制三法について質問させていただきますが、その前に一点だけ、私、この間の捜査当局の動き、そして金融機関に対する公的資金の注入の動きを見ておりまして、やはり日本国内だけではなくて、アメリカ政府の理解も本当に得られているのだろうか。アメリカ政府関係者の話を聞くと、十七兆円の預金者保護というのは、これはよくわかることだけれども、経営者責任というものもはっきりさせていないし、そして市場から本来ならもう退出してもらった方がいいような銀行も含めて、何か救済をしているような感じがある。ましてや日本国内において、一般納税者の理解というものが得られるのだろうか。私はこれについての有力な世論調査がどの程度あるかわかりませんが、ある調査によれば、九割以上の国民は、今日の銀行に対して公的資金を三十兆円つぎ込むことについては納得できない、そのように答えている調査もあるわけです。  そこで、一問、大臣、御所見があればお聞かせ願いたいと思うのですが、私は、今日の事態を招いた金融機関並びに日銀の総裁、そういった方々のいわゆる経営者責任といいますか監督責任といいますか、これをある時点できちっと明確にしなければ、金融行政に対する信頼というものは取り戻せないのではないかと思います。  そういった意味で、今まさに審査委員会においてその作業をしているわけで、今とは申しませんが、やはりアメリカにおいても金融機関を救済するときにおいては厳しい経営者責任が問われたわけでございまして、これに対して、不問に付すということは許されない。現に今、春闘の時期で、ベアはゼロだという話が金融機関の経営者からいっぱい出ておりますけれども、働く者の立場から見れば本当に気の毒なことで、別に金融機関に働いている職員の人たちが不正をしたわけではない、一生懸命汗を流して働いてきた。これはやはり経営者の責任なんだ。  今回のことを、公的資金で、リストラをやらなければいけないというのをいいことにして、役員の数も減らすというところもあるようですけれども、結局そのしわ寄せというものが銀行で働いている職員の人たちに一方的に行っているのではないか。やはり頭取を中心に重役が腹を切らなければ、これは本当の経営者責任にならない。  そういった意味で、日銀総裁を含めて、金融機関はいずれかの機会において必ず責任をとっていただく、これぐらいのことを大臣、どこかの席で言っていただかないと、金融行政に対する信頼を取り返せない。いつまでたっても国民の間に何だか釈然としないいろいろな気持ちがあって、これは次のステップに向けて日本金融が立ち直るときに必要な決断ではないかと私は思うのでありますが、こういった見解に対して大臣の御所見がもしございますれば、お伺いしたいと思います。
  264. 松永光

    松永国務大臣 日本金融システムが内外の信頼を損なうようになったその背景にあるものの一つは、私は、バブル時代の放漫な貸し出し、そしてバブルの崩壊によってその多くは不良債権になった、その不良債権処理が速やかになされずに、今日まで多少の努力はしてきて、特に最近はその努力の跡が見られるわけでありますけれども、それが長引いたということが、私は今の日本金融を弱くしている原因の一つかな、こう思っております。  もっと早く決断をして、そして不良債権処理をしておけば、今よりも日本のそれぞれの金融機関は力があったかもしれませんし、日本金融システムももう少し内外の信頼の厚いシステムになっておったのではなかろうかというふうに思います。その意味では、バブル時の金融機関の野方図な貸し出し、そしてその後の不良債権処理ののろさ、これは大いに反省をしなければならぬ点だろう、こういうふうに思います。  したがいまして、そういう金融機関の姿に対して適切な対応がなされていなかったとするなちば、それはそれなりの責任があるというふうに私は思います。
  265. 北橋健治

    ○北橋委員 これは、ここできちっと議論する段階では今ないと思うのです。ですからあえて申し上げませんが、希望を申しますと、例えば梶山官房長官時代によく記者会見で、銀行業界のリストラは進んでいないとか、言われることはきちんと言われておりました。私は、やはり金融機関の経営者責任、これは不問にはできない、それぐらいのことはどこかでおっしゃらなければ前進はないのではないかと思っております。これはまた、別の機会に譲らせていただきたいと思います。  さて、税制三法の議論でございますが、何といっても法人税の基本税率を引き下げたということは、これは当然のことでございまして、遅きに失したといいますか、一歩前進であると評価をさせていただきます。  しかしながら、同時に、課税ペースを適正化するという名目でいろいろな増収が図られておりますので、純減は極めて低い。全体の法人税収の中で、純減が初年度三千三百億、平年度二千億。これぐらいのことで下げた下げたと、これで国際社会で生き生きと経済活力を取り戻すような法人税制の改革と、私はこれは胸を張っては言えない数字だと思います。  既に橋本総理からは、財界四団体首脳との会合においていろいろな追加景気対策の発言があったようでございますが、総理自身も法人の課税はなお高いのではないかとおっしゃっておられますが、大蔵大臣も同じ認識だと理解してよろしゅうございますか。
  266. 松永光

    松永国務大臣 先ほど上田議員の質問に対しても私はお答えしたのでありますが、基本税率を三%下げた、これが今度の改正の一つであります。しかし、事業税あるいは法人住民税、こっちの方はまだ本格的に手をつけていないものですから、結果においては実効税率は四九・九八から四六・三六というふうに下がりはしましたけれども、この四六・三六というのは欧米に比べれば高いわけでありまして、これから、そういう点についての税調における本格的な論議を私は期待したいわけであります。
  267. 北橋健治

    ○北橋委員 既に三月七日、自民党の森総務会長も、四〇%ぐらいにこれから下げていかなくてはいけない、一段の法人課税の軽減が必要だということはおっしゃっておられます。そしてもう具体的に、そのためには法人事業税の引き下げが大事なのだということもおっしゃっておられるわけでありまして、そうしますと、大蔵省としては、もうこれ以上ないそでは振れない、あとは自治省でやってもらわないと困る、こういうことでございますね。
  268. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 最初、先生の方から課税ベースのお話がございました。一言、事実として申し上げさせていただきたいわけですが、アメリカ、イギリス、ドイツという先進諸国が法人税率を今まで下げてきました。そのとき、我が国と同じように、課税ベースを拡大する、そのようなことで税率を引き下げ、その活性化効果をねらってきたわけでございます。一点だけ申し添えさせていただきたいと思います。  それから、今回、法人税率の基本税率を三%引き下げる提案をさせていただいておりますが、国税としての法人税率というのは、ほぼ国際水準並みになってきたのではなかろうかというふうに考えているところでございます。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  269. 北橋健治

    ○北橋委員 そうしますと、総理も既に、また大蔵大臣も今言われたように、法人にかけられる課税は今なお重いという認識を共有されている。そして自民党の総務会長も、それは法人事業税の軽減、具体的に税目を挙げられた。  自治省、ここにおいでいただいていると思いますが、政府税調におきましても、これまで地方法人課税については随分と長い間議論がされております。とりわけ学者の間では、税理論からしまして、今、赤字法人がバブル崩壊後六十数%まで来ていると聞いておりますが、そういった観点もありますし、安定した地方税収の柱である、そしてまたこの法人事業税という税の性格がはっきりするという意味におきまして、外形標準課税の議論がずっと前からございました。政府税調の今回の答申の中でも、そのことははっきり書いてあります。「平成十年度において、事業税の外形標準課税の課題を中心に総合的な検討を進める」、これが政府税調の答申でございます。  法人税を外国並みに四〇%まで下げるというのは緊要の課題であります。通常のスケジュールでいきますと、年末、十二月十五日ぐらいに与党の税調がまとめるわけでございまして、そんな悠長な時間はない。自民党の武藤改革本部長も、税調を二回やったらどうだという発言もあるぐらいでございますが、それはそれといたしまして、これはもう長いこと先延ばしにした問題であります。  そしてまた、今大変な不景気でございますので、税理論的にこれが一つの有力な方向だといっても、なかなか国民の理解も得られにくい面もある。政治的にも非常に難しい側面がありますが、政府・与党は、既にこの道しかもう選択肢はないような立場を表明されておられるわけであります。  自治省、結論が出ますね。それでやりますね。どうでしょうか。
  270. 片山善博

    ○片山説明員 まず、事業税につきましては、現在提案しております今回の地方税法の改正案の中におきまして、法人税と同様の考え方から、基本税率を一一%に引き下げるなどの改正をすることにしております。  それから、今後の事業税のあり方につきましては、今御指摘ございましたように、昨年の政府税制調査会でも種々議論がありまして、まさに「平成十年度において、事業税の外形標準課税の課題を中心に総合的な検討を進めることが必要」とされておりますので、この方針に沿って、私どもは一生懸命検討してまいりたいと考えております。
  271. 北橋健治

    ○北橋委員 きょうは、自治大臣はお越しいただけない委員会でございますから、これ以上申し上げませんが、今おっしゃったような御趣旨の答弁は、ずっと前から同じようなことをおっしゃっているのではないでしょうか。そして、毎年、政府税調でもこの議論が重要課題と位置づけられて、また税制改正で議論を深めるべきという、そのことを繰り返してきているのですよ。  今私が申し上げたかったのは、四〇%まで引き下げたいというのは、これは自民党の役員の発言であるけれども、大変重みのある発言なのですね。そして追加の景気対策も求められてくるでしょう。サミットも近い、アメリカG7もあるわけだから、そういった意味では、悠長な十一年度税制改正の状況ではない。もっと踏み込んで、やるのかやらぬのか、そして、やるとすればどういうふうな形でこれを導入していくのかということをきちんと早く検討していただきたいと私は申し上げておきます。  その次でございますが、課税ベースの適正化というのは欧米でもやったということは、私もそのように承っております。そのこと自体がいいとか悪いとかということは申し上げません。それは諸外国においても、そのように増減税一体でやって、減税財源を捻出するために相当の努力をしたということはわかります。しかし、政府税調の答申でも、中小企業への配慮が必要だということが書いてある。これはもう政府税調がどう書こうと、我々の認識としては、もう塗炭の苦しみで中小企業が苦しんでいるわけでございまして、その中で税制改正を行っていくわけです。  今回、中小企業の税率も下がりました。結構なことであります。我々の要求してきた内容であります。しかしながら、その過程で中小企業の交際費課税が一〇%から二〇%にふえている。これによる増収は千百億円と聞いております。同時に、割賦販売の収益の見方についても、アメリカ型のスタイルに一歩近づける、このように説明を聞いたのですが、これも不思議な話でございまして、アメリカ型に近づけると言うけれども、アメリカの公的債権の回収機関なんというのは皆様方は目もくれないわけでしょう。こういったところだけ、グローバルスタンダードかアメリカンスタンダードか知りませんが、お話をされる。  ここでやりとりをする時間はございませんし、結論は出ないかもしれませんが、いずれにしても言えることは、例えば中小企業の交際費課税、割賦販売の収益の基準の廃止、これによって千二百億円、これは中小企業に対する負担増になっているわけです。課税ベースの適正化、この総論はわかります。しかし、その背景で、千二百億円の中小企業に対する増税がある。中小企業への配慮に欠けた税制改正と言えないでしょうか。
  272. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  今回、課税ベースの拡大ということで、いろいろな引当金を初め、今お話がございました交際費課税についても適正化を図ることとしております。各種の統計から眺めますと、実は引当金等の利用割合というのは大法人が多いわけでございまして、中小法人も利用しておりますが、その利用度合いは低い。今回、引当金等の課税ベースの適正化を図りました理由の一つとして、そういうこともまた背景にあったわけでございます。  そのような中で、今回、基本税率を三%引き下げる、また中小法人の軽減税率につきましても三%引き下げることにしております。したがいまして、課税ベース拡大と税率の引き下げによる効果、それはそれぞれの企業によって影響度合いが違うわけでございますが、今のような引当金等の利用度合いから申し上げまして、中小法人について申し上げますると、一般的には、相当な税負担の軽減になるのではなかろうかと思います。  それから、さらに一言申し添えますと、この引当金等の課税の適正化、実は経過期間が過ぎますると、そこで増収効果というのは消える形になってまいります。そこからは、まさにネットで丸々税率の引き下げの効果が出てくるということも御留意いただければというふうに考えているわけでございます。
  273. 北橋健治

    ○北橋委員 私も、細川政権のときに、税制ワーキンググループの一員としまして税制改正の作業で末席を汚させていただいておりました。若干の経験がございます。いずれにしても、私どもは減税を求めていくわけでありますが、ネックになるのはその財源でございまして、そのためにいろいろな苦労をされていることはわかりますが、今申し上げました千二百億円の増収、交際費課税と割賦販売、これについては、景気が今塗炭の苦しみといいますか、本当に極端に冷え込んだ状況の中で、経営者が資金繰りに困って、結局、車に乗って波止場に飛び込んだり、三人そろって首をつるという時代でございますから、私は、そういった意味では、一年間の凍結ということが考えられないか。  それからもう一つ、退職給与引当金を初め各種の引当金がありますが、私自身は、この退職給与引当金について、課税ベースの適正化の名のもとに、六年の経過措置はついておりますけれども、これを見直したことについては承服できません。これについては当局には当局のお考えがありまして、ここで決着がつく代物ではないと思いますけれども、これは、ただ、こういう言い方ができる。  財政構造改革法の目標年次二〇〇三年まで六年間の間に階段を設けて激変緩和措置ということになっているわけでありますが、だれが考えたって、もう二〇〇三年の財政再建目標なんてないでしょう。もう既に政策転換されているでしょう。二〇〇三年の赤字国債ゼロなんて、だれが信用していますか。だれができると言っていますか。一兆数千億円の赤字国債を出して二兆円減税を突然だれの相談もなく総理が決断した時点において政策の転換は既になされている、我々はそう思うのでありますが、皆様はなかなかそれを認めるとまずいこともあるのでしょうから、それは言いません。二〇〇三年というのは財政再建の目標年次だということで、そこまで階段を設けた。どうせ延びるんだから、この激変緩和措置で十年にできませんか。
  274. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 ただいま割賦販売、それから中小法人の交際費についてのお尋ねをいただきました。  それで、割賦販売と退職給与引当金等について、六年間の経過措置を長くせよ、こういうお尋ねであったかと思います。  この六年間といいますのは、確かに、法人税制改革と財政構造改革との整合性を図るという観点を総合的に勘案して六年間と設定したものでございます。  また他方、この課税ベースの議論をしていく中では、もっと早目に経過期間をとれないかという議論もあったところでございます。しかし、まさにそこが短くなりますると、今先生のおっしゃられましたような企業活動への影響が出てくるとも考えられますものですから、そのような問題を総合勘案いたしまして六年間とさせていただいたわけでございます。   したがいまして、この六年間といいますのは、今申し上げましたような法人税制改革全体を見て決定したものでございまして、これを変更するのはいかがかと思っております。  なお、先ほど申し上げましたように、この六年間の経過期間が過ぎますると、まさに税率引き下げの効果がストレートにあらわれてくる、減税の効果が中心になってくる、一兆円近い減税が行われることになるということにも御留意いただきたいというふうに考えているわけでございます。
  275. 北橋健治

    ○北橋委員 政府の御意見は今承りましたけれども、当方といたしましては、やはり現下の経済情勢にかんがみて、中小企業に対する配慮という見地から、中小企業に税率引き下げの見返りにやつている項目については一年間の凍結ができないか。そして、各引当金の中でも退職給与引当金は六年の激変緩和措置でありますが、たまたまそれが財政構造改革の目標年次に合わせているというのであれば、どうせそれはもう破綻しているわけでございまして、十年ぐらいにそれができないかという提案を申し上げました。  これは押し問答していてもらちがあきませんので、次に移らせていただきます。  公益法人の課税について、一点だけお伺いします。  公益法人もこのたび二%の税率が下がりました。結構なことでございます。ただ、法人税につきましても、課税ベースの適正化ということで、一部痛みを味わいながらも減税という道を踏み出しました。中小企業につきましても、税率を引き下げる過程でまた幾つかの増収というものと抱き合わせになっております。  それでは、公益法人はどうでしょうか。既に各方面におきまして、公益法人のあり方についてはこれまでるる指摘されてきたところでございますが、さすがに特殊法人につきましては世間の視線も厳しいし、なかなか新設もできません。そうなりますと、最近では認可法人という形をとっている。天下りがあって、国からお金が出て、国庫支出金があって、そして官民一体になって仕事をしているところは、特殊法人も認可法人もほとんど同じであります。そして、認可法人もだんだん難しくなってくると、今度は公益法人という形をとっているものがある。そういったものを含めまして、今、公益法人というのは大変な数になっているわけでございます。その中には立派なお仕事をされているところも少なくありませんが、一部において、やはりこの際、公益法人につきましても鋭い見直しというものが要るのではないか。  例えば公益法人については、国や県から数千億円の補助金、六千億円強の委託費というものを受けているところがあるわけでありますが、その調査、検査など行政からの委託業務を独占しているところが、しばしば各方面から問題点を指摘されております。  そこで、私は政府に資料として今後提出をお願いしたい点がございますが、その補助金、委託費のうち、実際に使っているのは人件費がほとんどだった、つまり管理費が五割を超えているものの法人のリストを出していただきたい。その次に、委託を受けた事業をそこで使わずに別法人に丸投げしているような例も間々あるのだそうであります。公益法人は、財団法人、社団法人、二万六千ありますけれども、その多くは非常に熱心に、そして善良なる目的に沿って一生懸命やっていらっしゃいます。その一部においてこのようになっていることは大変、この際きちっとしておいた方がいいと私は思うのであります。  どこに要求すればいいのでしょうね。総理府に要求すると、うちは金目の話は余りないとおっしゃるし、大蔵省に聞いたら、予算のことは大抵知っていらっしゃると思うのですけれども、こういつたことをお願いしたときに、どこに要求すればいいのでしょうか。一応、総理府は公益法人を所管されているから、端的に、総理府でできるならばできるとお答えください。
  276. 佐藤正紀

    ○佐藤(正)政府委員 お答えいたします。  総理府におきましては、各省庁が所管の公益法人を監督する際の指導監督基準の調整を担当いたしております。そのような立場から、各省庁がどのぐらいの法人に委託費、補助金を出しているかというようなトータルの話は一応把握はいたしておりますが、個別の法人におきまして、委託費、補助金がどういうふうに執行されるか等、そういうような中身についてまでは把握しておりません。
  277. 北橋健治

    ○北橋委員 大蔵省は、こういった公益法人のリストをお願いした場合に出せますか。国から委託費だとか補助金というものが支出されているわけです。末端の公益法人について、そんなリストが出せますか。
  278. 溝口善兵衛

    ○溝口政府委員 予算の執行の話になるかと思われます。そういう意味では、申しわけありませんが、主計局の担当者がおりませんので、私は総務審議官でございますけれども、かわってお答えするわけでございますが、やはり各省に執行の状況をお聞きする必要があるのではないかというふうに思われます。
  279. 北橋健治

    ○北橋委員 やはり公益法人の問題については、行革の観点からもるる指摘されてきたこともございますので、全体的に把握をしてコントロールしている主務課があってしかるべきだと思いますが、そういう御説明でございますれば、それぞれ各官庁に資料の要求をさせていただきたいと思います。  自治省並びに総理府の方、ありがとうございました。御退出なさって結構でございます。  次に、今回の税制改正の中で、金融・証券関係税制についても改正が行われております。  既に同僚委員からるる御指摘がありましたように、有価証券取引税並びに取引所税につきまして、二年後には廃止をされるということで、その点は不十分でございますけれども、半歩前進をしたと思います。  何事も財源がなければ減税というのは進まないことは私ども承知しております。財源だけが理由でしょうか。  先ほどの局長の御説明を聞いておりまして、この取引課税の問題については、政府税調の中でも株式等の譲渡益課税の課税の適正化をめぐっていろいろな議論があるということで、私の理解し得る範囲内では、申告分離課税の一本化ということで適正化をやらないとだめだ。しかし、それをやると、政府税調の書き方はえんきょく的に書いてあるのですが、現在の市場にかなり影響が出るので、それもできない。したがって、しばらく時間をかけて様子を見ながらということになったのでしょうか。  私は、必ずしもこれは財源だけではないような気もするのですが、財源だけの理由で二年になつだのか、それとも、今言いましたように、課税の適正化を譲渡益課税でやらなくてはいけない、それが市場に影響があるのでできないとおっしゃっているのか、どうでしょう。
  280. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今回、有価証券取引税等については半減することにしているわけでございます。  そこで、ただいま先生から御指摘ございましたように、かねて、現行の株式等譲渡益課税については、税制の見地から見て、適正化を図るべきではないかという意見が強くございました。  今年度の税制改正におきまして、それでは株式譲渡益課税の適正化をし得る状況かということを考えてみた場合、今先生から御指摘がございましたように、税制調査会の中でも、株式市場の状況を見て、今それはやるべき時期ではなかろうという意見があり、今年度の改正では適正化は見送っているわけでございます。  そういうことも踏まえまして、平成十一年末までに、金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止することとしている、こういうふうになっているものと理解しております。
  281. 北橋健治

    ○北橋委員 いずれにしましても、取引課税を半分軽減した、二年後には廃止を宣言したというのは、現下の金融情勢にかんがみまして、市場を活性化させるという意味があると思うのです。そういった意味におきましては、課題を早くクリアをして、速やかに廃止へ持っていくということが目標でなければならないと思います。その努力を引き続きしていただきたいと申し上げておきたいと思います。  そこで、よく政治学者の中でも、マーケットに国政が突き動かされる時代はかつてなかったという言葉があります。とにかく三月の決算期をどう乗り切るかということで、政府・与党は一生懸命その努力をされていると連日のように報道されているわけでございますが、その中で、一つ注目されておりますのは、簡保資金、郵貯資金を投入してPKOをやる。何でも一兆円という資金の上積みが検討されているように聞いております。また、ある報道によりますと、それは去年の暮れ、橋本首相から加藤幹事長の方にぜひやっていただきたいという趣旨の話があって、そして山崎拓政調会長が取りまとめの努力をされておられて、来週にも総理の方にその返答が行くんではないかと書いている新聞もあります。  これは、株価にどの程度影響があるのかという問題だけではなくて、現在、指定単で運用しているわけでございますけれども、重要な一つ政策の提示だと思います。大蔵大臣、この話を聞いておられますか。
  282. 松永光

    松永国務大臣 簡保資金等による株の購入というのは、自民党内で山崎政調会長などが議論をしておられるということは聞いておるわけでありますけれども、自民党として具体的な方針を決定したという話はまだ聞いておりません。  いずれにせよ、簡保資金は、法律上、郵政大臣が管理運用することになっておりますので、今私がこの問題について云々することは、これはもう差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。議論がなされているということは承知いたしております。
  283. 北橋健治

    ○北橋委員 それはわかっているのですけれども、大蔵省の中に証券局があるのです。この簡保資金を投入してPKOをやるというのは、証券政策にもかかわってくることです。ですから、大臣、全くそれは御存じないのですか。私ども報道しかわからないのですが、登場される方は、総理大臣と幹事長と政調会長なんです。恐らく郵政大臣もいるかもしれません。大蔵大臣は全然関与されていませんか。
  284. 松永光

    松永国務大臣 今までのところは関与いたしておりません。
  285. 北橋健治

    ○北橋委員 郵貯・簡保資金は国民の大事な財産でございまして、一時的な株価といいますか、投入するといいましても、一兆円だとかいろいろな数字がありますけれども、東京市場の大きさからすればそれは大したものではないわけで、しかも指定単という形で、直接国は株を買えないわけで、そこで、金銭信託を結んでそこでやっているわけであります。  私は、これは余り見えない世界で重要なことをやり過ぎるのではないか。私は、この問題を議論するのであれば、そもそものこういった発想からして、大蔵大臣は証券行政をつかさどる責任者でございますから、当然入って発言をしていただきたい。私は、これは慎重に考えるべき問題ではないかと思っております。ひとつ要望させていただいておきます。  さて、今入ったニュースによりますと、先ほど同僚の池田委員の方から日銀総裁に対しても質問しておりましたが、その日銀幹部営業局証券課長の吉沢容疑者が収賄の容疑で逮捕されたとニュースが入りました。また、午後二時過ぎ、東京地検特捜部が八十人で日銀の家宅捜索を始めたというニュースも入っております。このように中央銀行が強制捜索を受け、家宅捜索されるというのは、先進国では例のないことであります。通貨の番人、金融をつかさどる日銀信頼を損なう、まさに重大なゆゆしき事態を迎えたと言わねばなりません。  この事態につきまして、日銀に対して予算や定款などの認可権を持つ大蔵大臣としてどう考えているか、率直な御所見を承りたいと思います。
  286. 松永光

    松永国務大臣 私も先ほどメモによってその事実を知りました。しかし、詳細なことはまだ私の手元に入ってきておりません。  このような事態は、まことに遺憾なことだと。日本銀行は、その業務公共性からいって公共的、社会的役割が大変大きいわけでありますし、関係者はその責任の重さを自覚して業務運営をしなければならぬという立場であるわけでありますから、そこに今御指摘のような事態が発生したということはまことに遺憾なことである、こういうふうに思います。  大蔵省としては、捜査当局における捜査を見守っていくと同時に、日本銀行において厳正な措置がとられるものと考えておるわけでありまして、そうした状況を見きわめていきたい、こう考えております。
  287. 北橋健治

    ○北橋委員 大蔵省に強制捜査が入ったときに、大蔵大臣辞任をされました。今回のことは、重大なゆゆしき事態であります。給料の面では向こうの方が高いかもしれませんけれども、大蔵大臣日銀に対する監督権を持っているわけです。予算、定款の認可権はあなたがお持ちであります。このような事態のときに、事態を見守っていく、そういうことでよろしいんでしょうか。私は、これは金融不安といいますか、日本金融行政に対する致命的な不信感を海外から招くことになる。私は、この際、日銀総裁の監督責任は免れない、それに対しても大蔵大臣から何らかの明快なる御発言があってしかるべきだと思いますが、いかがでしょう。
  288. 松永光

    松永国務大臣 新しい日銀法が国会で制定されて、そして、あと二十日で新日銀法に移るわけであります。新日銀法の精神も踏まえなければならぬというふうに思いますので、ただいまの段階では、今申されたことについてコメントすることはひとつ差し控えさせていただきたいというふうに思います。
  289. 北橋健治

    ○北橋委員 これは民友連としては、日本金融行政は歴史的な重大な転換期に来た、これは決して看過できない、そして事態の推移を見守るという話ではないと私は思います。ここで委員会をストップさせていただきたいところでありますが、もうしばらく待ちましょう。この法案の審議、まあ日切れということでもございますので、またこれは改めて、重大な案件でございますから、院で取り上げることにさせていただきたいと思います。  そして、新日銀法になられたということでえんきょく的な表現をされましたけれども、大蔵大臣に就任されるときに日野委員の、また捜索があったときどうするのかという質問に対して、はっきりお答えになられましたよ。それでも我々は審議をとめてないんですよ。三塚さんのときにはとめて、やめてもらったんです。あなたは、大蔵省の再生についても頑張る、命を張ってやるとおっしゃった。この問題について、日銀総裁責任をとれ、それぐらいのことをおっしゃる侍だと思ったから私たちは審議をとめなかった。そのこともよく念頭に置いて決断をしていただきたいと要望しておきます。  さて、所得減税の話に入りますが、扶養控除を引き上げたことは、これは結構なことだと思います。ただ、これは新党平和の先輩議員も教育減税ということで重要な視点からこの減税についての重要性を指摘されておりますが、私どもも深く共感をしておるところでございます。  問題は、今回の措置措置といたしまして、予算が成立後と言われておりますが、これからサミットがある。そしてG7がまたワシントンであると聞いております。これまでの報道によれば、アメリカ政府はもう中途半端なことを日本政府が言っていたのでは納得できない、私はそう思います。大変な不信感を持っているのではないか。  我々は、野党だから政策転換をしたのじゃないですかと言っているのではありません。だれに聞いたって、財政構造改革で、ないそでは振れないと言っていた人たちが突然変えたわけですから。  サマーズ副長官に斉藤大使が呼ばれて日本は何かしろと言われて、そしてクリントン大統領と電話で話をして、山中元税調会長も御存じなかったのでしょう。前の日まで、自民党税調は財源がないため物すごく苦労してきた。どんなに野党が言っても減税はできぬ、ないそでは振れないと言ってきた。橋本総理を先頭にして、我々は財政再建必死で頑張っているのだとおっしゃっていたのですよ。それを赤字国債で二兆円減税です。だれが考えても、既に政策転換がなされているのです。それを言うと内閣がもたない、それだけの政治的理由で皆さんはうそをついている。皆さん方にとって、我々野党に対して二枚舌を使うことは許されるかもしれません。しかし、外国との関係において、このような姿勢が認められるはずがない。  大蔵大臣、ルービン長官にG7でお会いになられたときにいろいろな話があったと思います。その全容を聞かせてくださいとは言いません。減税をやってくれとおっしゃったのではないですか。
  290. 松永光

    松永国務大臣 私は、基本的には、アメリカがこう言った、ルービンがこういうことを日本に要求した、だから日本はこういう政策をやる、そういう行き方はいいことではないと思っているのです。御意見として承った上で、日本日本独自の立場国家国民のために政策は遂行すべきものだというふうに私は基本的に考えております。  G7における私とルービンさんとの会談の中で、減税云々という話は出ておりません。むしろ、私に対していろいろな要求が突きつけられるだろう、こういう前評判でありましたから、私は、ある意味では突きつけられる前に、日本政府がやっておること、やろうとしていること、そちらの方を先に力強くかつ十分に説明をしたわけでありまして、それに対してルービンさんの方は、G7の共同声明にもありますように、日本経済の弱い状態、これから回復するために大事なのは金融を強化することだ、それからいろいろな改革を進めることだと、ビッグバンをやろうとしていることについても実は高い評価を下されたわけであります。そういう面からの評価とかあるいはまた激励とか、それはございましたけれども、減税をという話はなかったというのが真実でございます。
  291. 北橋健治

    ○北橋委員 最近、宮澤元総理がアメリカに行かれたときに、米国政府高官の方からぜひお会いしたいということで、大規模な減税の要請があったと伝えられておりますが、その報告は聞いておられますか。
  292. 松永光

    松永国務大臣 まだその話は私は聞いていないわけでございます。
  293. 北橋健治

    ○北橋委員 新聞社はあらゆるところに取材ネットワークを持っております。アメリカ政府側にも日本政府側にも、いろいろな財界人にも持っております。  既にいろいろな新聞が書いております。数兆円規模の減税を、米財務長官が宮澤氏に伝えたと書いてあります。そしてある新聞では、本当に橋本さんにクリントンさんのメッセージが伝わったのだろうか、そんなことまで書いてあります。  先ごろ、総理が経済四団体の首脳にお会いになられた。そのときに、法人税制を下げてほしいという、そして公共事業も含めて、減税と公共投資の組み合わせ、人それぞれ言い方は違ったかもしれませんが、四団体から口々に、大変な景気なんだ、やってほしいという要請があったと思います。  したがいまして、政府・与党の中に今念頭にあるのは、人によって若干のウエートは違うかもしれませんが、公共投資と減税だと思います。アメリカ側が求めてきているのは減税じゃないでしょうか。そのことを、大蔵大臣G7で、あるいはいろいろな方がアメリカ政府側とお会いになって打電されてくるわけです。いろいろな世界の情報が大蔵省の中には入ってくると思いますが、アメリカ側の意図というのは、公共事業というよりは減税を求めているのではないですか。そのようにお感じになりませんか。
  294. 松永光

    松永国務大臣 私は、先ほども申し上げたとおり、アメリカがこういう要求をしているから、そこでその要求に合った政策をとらなければならぬというふうな政治のやり方あるいは政策決定やり方はすべきではない、こう思っているのです。意見意見として聞きながら、日本独自の判断でやるべきことをやる、そういう基本的な姿勢でなければならぬというふうに思います。  私どもの基本的な立場は、何といっても、あと二十日すれば新年度に入るわけでありますが、できるだけ早く新年度の予算の成立をさせていただいて、そして新年度に入ったならば、九年度補正と切れ目のない状態予算が執行できる、あるいは減税を含めた関連法案の執行に入れる、そういう状態に持っていくことが現在ただいまの私どもに課せられた責務であり、そのために国会の皆さん方の御協力を切にお願いしたいというのが私の現在の心境であります。
  295. 北橋健治

    ○北橋委員 宮澤元総理もメンバーになった日米二十一世紀委員会が、昨年十二月、テキサス州で会合を開いております。ここで東アジアの金融危機についての声明がなされております。アメリカ側はブッシュ政権の幹部だった人であります。日本側は、宮澤先生、堺屋太一さん、田中直毅さん、稲盛さんといったそうそうたるメンバーであります。はっきり書いてあります。「日本は、経済を刺激するために、公共事業支出を増加させるべきではない。」と書いてあります。日米の合意ですよ、これは。  これまで、いろいろなところがら外国側の意図というのがあるのですけれども、別に我々は外国政府に従う必要はないわけでありまして、その点では、大臣おっしゃるのと同じことであります。  しかし、なぜ日本に対してああしろ、こうしろと言わんばかりのことが報道されてくるのかというと、アジアの通貨下落によって輸出ドライブがかかっているからですよ。アメリカに対してもヨーロッパに対しても、土砂降りのように輸出になってくるわけですよ。それが怖い、アメリカで保護主義が台頭する可能性があるということを言っているのじゃないですか。  この日米合意の中でそういうことを書いてあります。「今回の金融危機によって、東アジアの国々には輸出圧力が生み出されている。特に既に大幅な貿易赤字を抱える米国への輸出圧力となっている。」だから、「アジア経済の健全な分野を維持するのに必要な東アジア諸国からの輸入を増加させるように」すべきだと書いてあります。  そういった意味では、私は、やはり減税というのは、アメリカ側が強く言ってきていることはそのとおりではないかと思っております。これについては何もお答えがないようでございますから、これ以上押し問答していても仕方がありませんが、そういう趣旨減税ということを強く言っている。  ところが、与党の中には、加藤幹事長の発言を聞いても、山崎政調会長の最近の発言を聞いても、減税というのは余り効果がないのだ、貯金に回ってしまって余り効果がないから、内需刺激効果は公共事業の方があるのだというお話をされている。  最近では森総務会長が、最高税率の見直しは必要かもしれないとおっしゃった。また、山崎会長もおっしゃっている。課税最低限を下げる、最高税率のところは手直ししていくとおっしゃっている。課税最低限を下げたら、勤労大衆の増税になるのですよ。  そういった意味で、私は、政府・与党内で公共事業を依然として後生大事にしょうとする発想がこびりついていることが一つ。  減税というときに、購買力を持っているのはだれですか。一握りのお金持ちじゃない。どんなに金を持ったって、ダンヒルのネクタイを十本もできない。一本しかできないのです。圧倒的多数は、九十数%の納税者は一千万円以下の年収なのです。勤労国民であります。その勤労国民に行き渡るような減税をしなければ、消費の刺激にならないのです。  そういった意味で、私は、民友連が主張しておりますように、ぜひとも六兆円の減税を恒久化させる、それは米国政府とも完全に利害が一致する道だと私は思うのです。大臣、どうでしょうか。
  296. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 一言、我が国の今の租税負担の現状についてお話しさせていただきたいと思いますが、御承知のように、我が国の租税負担率でございますが、欧州諸国に比べてかなり低い水準でございます。ちなみに我が国は二四・五%でございますが、イギリス三六・六、ドイツ三一・一、フランス三三・五というふうになっております。  それから、我が国の所得税の負担水準でございますが、平成元年、さらには六年等と中低所得者の方の負担の軽減は相当行ってまいりました。諸外国と比べて相当低い水準にございます。ちなみに給与収入の七百万円の方で比較してみますと、日本の場合でございますが、四十五万七千円でございます。米国の場合は九十四万円というふうになっております。  また、今課税最低限のお話がございましたが、日本の課税最低限が高いことはもう御案内のとおりでございます。したがいまして、このような状況の中で大規模な減税というお話がございまするけれども、税負担のあり方としていかがであろうかというふうに考えるわけでございます。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  297. 北橋健治

    ○北橋委員 政府は、失礼な言い方かもしれませんけれども、二枚舌を使っているのではないか。既に政策転換をしているけれども、それが言えない事情があるので、内々ではどんどん四月の大型の追加景気対策、G7とサミットに行くためのかばんに入れるパッケージを今つくっているのではないかと思うのですよ。その中で公共事業主体で減税も考えようということです。ところが、法人税の減税について言えば、地方税は外形標準課税という厄介な問題があるものだからなかなか言えない。そうなると、所得減税になるでしょう。そして、党の首脳陣が最高税率云々だとか、勤労大衆は一応何か横に置いておいたような形での減税を考えている。  昔、渡辺美智雄先生が、貧乏人に減税しても余り効果はない、金を持っている者に金を使わさぬと減税にはならない、私はそれは一面真実だとは思います。現に、一千万円以上の人口は六・三%です。それが四割も払っているわけですから、確かに重いと思います。しかし、今の消費不況を立て直すためには、圧倒的多数を占める一千万円以下の年収の人たちが、やはり使ってみようという気にならなければだめなんですね。  そういった意味では、大臣、本当に検討されていないのですか。バーミンガム・サミットもワシントンG7ももう日取りが決まっていますよ。何もなしで行くのですか。そして、適切に対応すると何か新聞に出ていますけれども、G7でこの間ルービンにお会いになったときに、どういうふうに通訳が翻訳しているのかと私は思います。一体向こうに大臣のメッセージは伝わったでしょうか。もう時間がありませんよ。  ですから、追加景気対策を作業しているとなるとこれはまた厄介なものになるから、それは聞きませんけれども、今後所得税の減税を考えるときに、自民党首脳陣からは高率、六五%を含めたところに重点を置いた発言が何人からか出ているので、そうではなくて、圧倒的多数を占めている勤労大衆に恩典があるような減税を考えないとだめではないですかと申し上げているのです。それぐらいのポリシーは今お話しいただいてもいいのではないでしょうか。大臣、どうでしょう。
  298. 松永光

    松永国務大臣 先ほども申し上げたとおり、私の立場は、一つ金融システム安定化をしっかり図っていくということ、それから平成十年度の予算をできるだけ早く成立させていただけるように努力をしていくということ、同時にまた、平成十年度の税制改正を含む関連法案を通していただいて、そして新年度からそれらのもろもろのことを切れ目なく実行させていただけるように、そういったことをすることが現在の私の務めであります。  減税の話をいろいろ委員なさいました。これは一般論でありますが、減税の場合には、当然のことながら財源を考えなければなりません。その財源が、もし赤字公債、特例公債でやるとするならば、公債発行高が非常に多いものになります。そうすると、それはいずれば国民の税負担において元利を払っていかなければならぬ、こういう論理になるわけでありまして、したがって、これは一般論でありますが、減税というものは、後日赤字国債を解消するための増税がある、そういう心配があるような状態では減税の効果はそれほど出てこないという説もあります。  さようなわけで、私自身は、先ほど来申しておるとおり、減税をやるとか、あるいはどういう形でやるとか、それはまだ私の念頭には現在ありません。先ほど申したとおり、予算と関連法案を一日も早く通していただくようにお願いするだけであります。
  299. 北橋健治

    ○北橋委員 今回は税制三法の審議でございまして、電子帳簿保存法、これは私の方からも重要案件ということできょうの審議を求めた経緯もございますので、このまま終わりたくないところではありますけれども、時間も限られておりますので、また機会もあると思います。  ただ、金融関係でビッグバンで評価されたと聞いておりますが、それは違うのじゃないですか。宮澤さんの入っていらっしゃる日米のこの委員会でもそうでありますが、十七兆円で預金者を保護するのはいいのだけれども、本来市場から退出してもらうべきところまでお金を使うというのはいかぬと書いてありますよ。  それから、日経新聞の報道ですけれども、アメリカのクリントン政権では、預金者保護だけじゃない、銀行救済にも使うのかといって不信の声が上がったと報道していますよ。私は、これはうそではないと思いますけれども、そういった意味では、そういう議論はしたいところでありますが、いずれにしても、この電子帳簿の問題をやらせていただきます。  これは税理士会の中の有志でございますTKCの皆様を初め、世の中でコンピューターによる帳簿というものをつける、そういった流れが大きくなってまいりまして、行政が、これは外国では皆先進国でやっていると聞いておりますけれども、日本においてもコンピューターによる保存を認める、電子データを認めるということは結構なことだと思います。  問題は、紙と違って心配なのは、痕跡を残さずに修正が簡単にできるのではないか、その点が新たなる不正の温床になってはだめなわけでございます。我々としては、はっきり言って税務の現場に通じていないわけですから、どういう問題点があるのかということは具体的なイメージとしてなかなかわかないのでありますが、このコンピューター会計が普及してきて、例えばこういつた業種においてこんな事例があった、このようにうまく書類を改ざんしていたという事例があったら、まず教えていただきたいと思います。
  300. 舩橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答え申し上げます。  高度情報化社会の進展とともに、私どもの税務調査におきましても、コンピューターを利用した不正計算の事例が数多く把握されてきておりますし、また内容も巧妙化してございます。  具体的な事例をというお尋ねでございますので、幾つか申し上げさせていただきたいと思いますが、例えば手形決済の得意先と現金決済の得意先とで顧客番号の付番の仕方を違えて、その顧客番号に基づいてそれぞれの売り上げを別に集計するプログラムを導入する、したがって、そこで例えば現金決済の得意先分だけをコンピューター処理して消してしまうというような事例もございます。  あるいはまた、決算時に、事後的に架空外注費を入力いたしまして、帳簿は日付順に並べかえたものを出力するというような形で、事後的に入力したときの痕跡が、今先生痕跡という御指摘がございましたが、痕跡が残らないようにしていたような事例、あるいは一部の在庫品の単価を減額するような入力をいたしまして、その減額後の単価に基づいて期末棚卸しを出力するというような形によって棚卸しを除外するとか、そういった事例が、一例でございますけれども、把握されております。
  301. 北橋健治

    ○北橋委員 コンピューター会計というのは今急速に浸透しておりますが、そういう不正の事例というのは増加傾向にあるのでしょうか。それをまた把握するということは簡単にできるものなのでしょうか。
  302. 舩橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答え申し上げます。  コンピューターを利用した不正計算につきまして具体的な計数を把握はしてございません。しかしながら、この高度情報化の進展に伴いまして会計処理をコンピューターによって行う企業が増加しておりますので、コンピューターを利用した不正計算も増加傾向にあるというふうに私ども考えております。  簡単に把握できるものなのかどうかということでございますけれども、やはりコンピューター会計におきましてはプログラムの操作あるいは不正な入力等によりましてその痕跡を残すことなく会計帳簿を容易に改ざんするというようなことができるなどの特性がございますので、不正計算の端緒を把握することは困難でございます。  ただ、しかしながら、国税当局といたしましては、これらの変化に的確に対応し得るようコンピューター会計に関します調査能力の向上を図るなどをしておりまして、それを通じて適正公平な課税の実現に努めてまいりたいと考えております。
  303. 北橋健治

    ○北橋委員 結局、今後、同僚委員からも質問が出ておりましたけれども、七月に税務署の署長の認可をもらうということなのですけれども、ソフトによっては確かに心配なそういう面もあることもわかりましたので、ただし、そういった手続を通じて、また当局にいろいろと大変な事務手続といいますか煩雑なものを求められるということ、そうならないように努力はされると思いますけれども、そういった点を、また利用者の利便性のために努力をしていただきたいと思います。  それから、そういう新しい時代に対応してやっていくためには、今まで書類を見ていた作業の中からいきなりコンピューターの世界になるわけでございますから、相当のマンパワー、そしてまたトレーニングといいますか、そういう電子化、機械化に対応した国税組織の抜本的な新しい段階に入っていくのではないか。それに必要な人員の確保なり政策の充実というものが求められると思いますが、これについて、大蔵省の言うなれば身内にもなるわけだから言いにくいでしょうけれども、私はこれは必要なことだと思っております。それが納税者の利便性の向上にもつながる問題だと思っておりますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
  304. 舩橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答え申し上げます。  今回、この法案をお認めいただきました暁でございますけれども、この制度導入当初において、制度内容の周知、納税者からの照会、相談等、適切に対応してまいりたいと思っております。  また、私どもの国税職員におきましても、電子データ保存を前提とした調査をしていくわけでございますので、新たな調査手法の開発を進める、あるいは厳しい財政事情のもとではございますけれども、税務の困難性等を強く訴えさせていただいて、所要の機構の整備、税務職員の増員等についても関係方面の御理解が得られるよう、今後とも一層の努力をしてまいりたいと考えております。
  305. 北橋健治

    ○北橋委員 時間が参りましたので、これで終わらせていただきます。
  306. 村上誠一郎

  307. 若松謙維

    若松委員 新党平和の若松謙維でございます。  大蔵大臣、お疲れですから、五分、十分、お休みいただいて、ちょっと質問の順番を変えさせていただきたいと思います。  まず、先ほど北橋委員から触れられましたけれども、実はきょう日銀総裁を呼んでいたのです、大事な局面だし、何としても大蔵委員会へ出てくれと。そうしたら、私のときは出てくれなくて池田委員のときに出るというのは、これは差別ですか。日銀の方、来ているでしょう。ちょっと説明してください。
  308. 福井俊彦

    ○福井参考人 お答え申し上げます。  総裁のスケジュールを私詳細に承知しておりませんが、先生の御要求に総裁はきょうはこたえられなくて大変申しわけない、かわりに説明してまいるようにという下命を受けて参上いたしました。
  309. 若松謙維

    若松委員 副総裁ですから、副総裁の発言は総裁と同じ、そう理解してよろしいですね。
  310. 福井俊彦

    ○福井参考人 日本銀行の行務に関します限りは、そういうふうに御理解いただいて結構だと思います。
  311. 若松謙維

    若松委員 では、日銀の行務に関することでありますけれども、先ほどのいわゆる吉沢容疑者の逮捕に関しまして、これは当然行務に関係することですし、かつ日銀に検察当局が入ったのは歴史始まって以来ということですね。そう伺いました。  今どういう気持ちでいらっしゃいますか。これから総裁を含めてどう責任をとろうと思っていられるのか。特に日銀という金融の番人、非常に信頼性が求められる。これは非常に大きな罪だと思います。どうお思いですか。
  312. 福井俊彦

    ○福井参考人 ただいま委員指摘いただきましたとおり、甚だ遺憾ながら、本日私どもの職員であります吉沢保幸が東京地方検察庁の手で逮捕されました。同時に、日本銀行の営業所をただいま家宅捜査を受けている最中でございます。  中央銀行は内外から幾重にも強い信認を受けなければいけない立場でございます。そうした点にかんがみまして、こういう事態に至りましたこと、まことに遺憾に感じております。そして、国民の皆様方に幾重にも深くおわびを申し上げたいということでございます。
  313. 若松謙維

    若松委員 副総裁、おわびだけで終わりですか。それで日銀のけじめがつくと思っているのですか。
  314. 福井俊彦

    ○福井参考人 今後の対応につきましては、捜査の進展の状況、さらに私ども内部での調査を継続中でございますが、それらの状況も勘案しながら、しかるべき対応をきちっとやらしていただくということでございます。
  315. 若松謙維

    若松委員 捜査捜査と言って、日銀の体質がこれから問題になるのですよ。大蔵省はずっとやってきましたよ。ここ最近になって、この日銀の接待も極めて重大だ、そういうことになったわけなのですね。ですから、捜査以前にみずから何らかの回復措置というのをすることが本来の日銀のやることなのですよ。捜査を見守ってでは答えにならないですよ。副総裁、どうですか。
  316. 福井俊彦

    ○福井参考人 御承知のとおり、来る四月一日から新日銀法が施行されることになっております。新日銀法の精神にのっとって新しい日本銀行のカルチャー、そして業務運営の姿、世界に信認を問うていく仕組みというものをつくっていかなければならないわけでございます。  現在は旧法のもとでの最終局面にございます。古い体質は、従来からも改善努力をしてまいっておりますけれども、残された時間でそのすべての変換を遂げる努力をしなければならない、仰せのとおりでございます。
  317. 若松謙維

    若松委員 今答えましたか。全然答えようとしていないですね。どうしたら信頼回復できますか。吉沢容疑者の刑が確定したら信頼回復できるのですか。新しい日銀法になれば信頼回復ができるのですか。できないでしょう。できますか。どうやったらできるのですか。本当に総裁みずから、そして幹部も含めて、それを見過ごしてきた人の責任をはっきりとみずから示さないと、新しい日銀はできないじゃないですか。新日銀法に逃げないでください。
  318. 福井俊彦

    ○福井参考人 新しい日銀法がスタートいたします前に、あらゆる責任問題も含めてきちんと対応するということを申し上げたつもりでございます。
  319. 若松謙維

    若松委員 では、もう既に出ております六百人の幹部の接待のリスト、いつ出すかまだ具体的に言っていないでしょう。少なくとも日銀法施行の前に出すのでしょう。どうですか。
  320. 福井俊彦

    ○福井参考人 調査はまだ途上ではございますけれども、これは全力を挙げてやっているものでございます。責任ある形できちんと調査結果は御報告をしたいということでございます。
  321. 若松謙維

    若松委員 結局、成り行き任せで、こっちに決意が伝わらないのですよ。  では、副総裁、聞きますけれども、日銀の接待というのは、いろいろ周りから騒がれて慌て出しましたけれども、実際にはいつごろから接待を問題視してきましたか。
  322. 福井俊彦

    ○福井参考人 日本銀行の場合、世間とのおつき合いにつきまして、つい先般御報告申し上げましたような非常に明示的なルールは従来から制定してきていなかったことは事実でございますが、時代の流れ、価値観の変化に即して、十分ディシプリンを守るように行内的な規律の引き締めは繰り返しやってきたつもりでございます。  昔から、日本銀行職員は中に閉じこもりがちである、デスクにかじりついていては世間がわからなくて仕事ができないという批判を非常に長く受けてきていたものですから、世間とのつき合いと申しますか、意思の交流は十分やりながら仕事をするようにということは、行内的に教育方針として示されてきておりましたけれども、同時に、いわゆる接待の範疇に属するようなことについて重々規律を守るようにという指導も、年を経るごとに厳しくやってきたわけでございます。しかし、明示的なルールを定めていなかったということは重大な反省点であったというふうに思います。
  323. 若松謙維

    若松委員 副総裁、ここに「日本銀行員の心得」というものがあります。銀行行政ではありませんので、いわゆる通達とかというのがないわけですけれども、そういう心得があります。  そこに、「会食等」ということでありますけれども、まず(1)として、「職務上の関係者との無償での会食等(ゴルフ等の遊技、旅行も含む)については、これに応じてはならない。」はっきり言っております。「ただし、所属長の承認(所属長自身の場合は規律委員会の承認)を得て出席する食事を伴う会議、式典等については適用除外とする。」恐らく今回の容疑者だって全然承認を受けていないですよ。もうわかり切っています。さらに、ほかにも今捜査中の人がいるわけなのですよ。それで、万が一「対価を支払う会食等については、参加して差し支えないが、その頻度、場所等については、世間から誤解を招くことのないよう慎重な配慮が必要である。」と非常に細かく規定しているのですよ。  だけれども、実際に何らやっていないじゃないですか。本当に規律をしっかり守ったという、何らかのいわゆる社内の徹底、通知とかいうのを過去においてされましたか。何回ぐらいしましたか。
  324. 福井俊彦

    ○福井参考人 ただいま御指摘の「日本銀行員の心得」というのは、こういうふうな形にまとめて各職員に持たせておりますけれども、先ほど御報告申し上げましたとおり、こういうふうに明文の心得をきちんと定めましたのは、つい先日のことでございます。それ以前は、明文の規定なくディシプリンを強めてきた、規律を強めてきたということでございまして、このルールがしかれまして以降は、これを厳格に守っていくということでございます。将来にわたりこのルールを風化させることなくきちっと守っていく、こういうことを現在の時点においてはお約束できるというふうに思っております。
  325. 若松謙維

    若松委員 この心得、そしてその黄色い持ち物で、最近になってやっと個別にウォーニングを出したということでしょう。何で最近まで出さなかったのですか。それは問題意識として感じていなかったからでしょう。どうですか。
  326. 福井俊彦

    ○福井参考人 問題意識は感じながら、しかし、最終的な自己責任はそれぞれの個人の判断にゆだねるということでやってきたのが従来のやり方でございます。それが甘かったというおしかりを受けるならば、それは甘んじて受け入れざるを得ない、私どもも、ルールをもっと早く定めなかったことが今となっては重大な反省点になっているというふうに申し上げたところでございます。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  327. 若松謙維

    若松委員 では、副総裁、その自己責任ということですけれども、副総裁や総裁レベルの自己責任というのは、部下が行った不祥事に対して責任を負うのが総裁レベルの自己責任でしょう。そうでしょう。
  328. 福井俊彦

    ○福井参考人 組織としての自己責任ということになると思います。
  329. 若松謙維

    若松委員 ということは、組織の長はそれなりの責任がしっかりと出される、そういうことですね。
  330. 福井俊彦

    ○福井参考人 さように考えております。
  331. 若松謙維

    若松委員 本当に、日本金融システムを守るために、しっかりとした責任をとってください。  私もきのう本会議で、万が一日銀から逮捕、立件が出た場合に、大蔵も出て日銀も出た、もう日本金融監督も行政の当事者も含めてまさに世界の信頼の失墜です、もうこうなれば総理の責任しかないと。大蔵大臣、申しわけないですけれども、本当にこれを変えるために恐らく大臣になられたのでしょうけれども、総理そして大蔵大臣、さらには日銀総裁、あわせて三位一体の辞職しか、これは日本金融システム信頼回復にならないですよ。あわせて与党ですね。  それで、実際に日銀から、私も先ほどリストをいただきましたけれども、大勢の日銀天下りが各銀行、都市銀行、地方銀行等に行っております。まさに癒着ですよ、癒着。  それで、今の総裁は大蔵省出身ですよね。大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、今、日銀の総裁が、結果的にプロパーそして大蔵省出身、こういう形で順繰りになっていますけれども、これからも大蔵省出身の総裁を、出すと言ったら答えにくいでしょうけれども、そういうことを期待されていますか、大蔵大臣日銀総裁にこれからも大蔵出身の官僚がなるのかどうか。どうですか。
  332. 松永光

    松永国務大臣 新しい日銀法もとでは、国会の承認を得て内閣が任命するというふうになっておるというふうに思うのでございます。したがって、私に聞かれてもちょっと適切な答弁はできないですね。
  333. 若松謙維

    若松委員 ただ、内閣といっても議院内閣制ですし、当然与党の数で決まってしまうわけなのですね。そうすると、与党の、かつ金融の中心の大臣の決意というのは、非常に影響力があると思いますよ。日銀は常に大蔵省と独立して、金融の番人として、常に距離を保ちながらしっかりとその行政をやってもらう、そのために大蔵出身の官僚は日銀には出さない、これはやはり大蔵省としても一言言うべきだと思うのですけれども、大臣どうですか。
  334. 松永光

    松永国務大臣 出身のいかんを問わず適切な人が選ばれてしかるべきでありますし、そうなることが望ましい、こう思っております。
  335. 若松謙維

    若松委員 では、ぜひその言葉を大事に、私もこれから見守っていきたいと思います。  この日銀なのですけれども、今回の不祥事、または金融監督当局の独立性というところで、金融監督庁の機構等が今度改正されるわけです。いわゆる総理府に金融監督庁が置かれるわけですけれども、そこで、ちょっとこの金融監督庁の独立性をどう確保するかについてお聞きしたいと思います。副総裁、恐縮ですけれども、まだいてくださいね。  この金融監督庁を見ますと、約四百三名予定しております。六月ぐらいからということですね。これは総理任命ですので、いまだ長官は人選中ということで、まだわからないと思いますけれども、大蔵大臣、個人的な考え方で結構なんですけれども、これは総理任命といいながら、当然重要な閣僚には御相談されると思います。こういう金融監督庁の初代の長官というのは、官僚出身の方がいいのか民間出身の方がいいのか、どちらがいいとお考えですか。
  336. 松永光

    松永国務大臣 内閣で検討して、そして任命されるものと思うのでありまして、出身にこだわることよりも、どこの出身であろうと、国民の目から見て、なるほどこの人ならばという人が選ばれるべきであるというふうに私は思います。
  337. 若松謙維

    若松委員 やはりこういう議論になると、恐らく堂々めぐりになると思います。結局、だれでもいいというのも当然大事です。原則論です。ただし、状況によってはそういう誤解を受けやすいような立場の人は置いちゃいけないというのも、そのときの説明の必要性として当然重要な要素だと思うのですね。それはぜひ考慮してもらいたいと思うのです。  じゃ、ちょっと質問を続けますけれども、この金融監督庁、四百三名当初定員として予定されております。それで、じゃ大蔵省から何人来るかというと三百七十三名。ですから九割以上ですよ。九割以上の人が大蔵省から金融監督庁に行く。そうすると、金融監督庁というのは大蔵省ですよ、九割以上ですから。かつ、今大蔵省はそういう接待とかで業界癒着になっちゃっている。  こういう状況で、どうしたら金融監督庁の大蔵省からの独立が保てるのか。自分の所属する名刺の所が変われば変わるのか。皆さん変わっていないのですよ、大蔵省のOBの天下りしている方。こういう実態で、この金融監督庁の独立性確保できると思いますか。大蔵大臣、いかがですか。
  338. 松永光

    松永国務大臣 望ましいことは、今委員がおっしゃったような、大蔵省の出店だみたいに批判されるようなことのないような状態にすることが望ましいことだと思います。それは、立派な人が長官に就任して、長官の持っておる独立の人事権を厳正に行使して対応していただくべき事柄だろうというふうに思います。
  339. 若松謙維

    若松委員 例えばこれは受け入れ側の問題になると思うのですけれども、金融監督庁はまだできていませんけれども、その準備にかかわっている方、いわゆる大蔵省、使命に燃えて夜中まで働いて、そして狭い官舎に住んでいる方が大勢いらっしゃいます。でも、灰色の官僚もいます。受け入れ側として、それをしっかりフィルターするような、そういうチェックをかけますか。私はぜひかけてもらいたいと思いますけれども、どうですか。
  340. 岡本佳郎

    ○岡本説明員 委員の御質問にお答えいたします。  私ども総理府金融監督庁設立準備室といたしましては、金融監督庁の職員の人事ということについては、委員指摘のような点も含めまして、最終的には任命権者たる長官が、その判断により、業務を的確に遂行して信頼される行政を実施していくという観点で、適切に人事権を行使して望ましい人材を確保していくべきものというふうに私ども考えております。  また、国民信頼される金融行政確立していくためには、この長官の指導もと職員一人一人が自覚を新たにして、倫理観使命感を持って職務に精励することが肝要であるというふうに考えております。  なお、金融監督庁には、その設立の趣旨に照らしまして、今後、市場規律を基軸とした透明かつ公正な金融行政への転換が図られていくということになりますので、こうした金融行政のあり方の基本的な転換ということも不祥事の未然防止に資するものではないかと私ども準備室の立場では考えている次第でございます。
  341. 若松謙維

    若松委員 これはぜひ具体的に国民が納得するような形でフィルターというものを示していただきたい、それをしっかりと遵守して、まさに新しい金融監督庁、人心一新の体制をつくっていただきたい、それを切に要望します。  大臣、送る側の大蔵省としても三百七十三名ですよ。これはちょっと大蔵省うっとうしいから、いろいろと業界との癒着もうわさされているから、そういうのはもうこっちに送っちゃえ、そんな発想がありますか、どうですか。大丈夫ですか。しっかり明言してください、委員会で。
  342. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  今の委員の言葉は半ば冗談だろうと思うのでありますけれども、(若松委員「本気ですよ」と呼ぶ)送っちゃえなどということであってはいかぬというふうに思いますね。やはり金融監督庁の仕事は非常に大事でありますから、立派な人を送るといいますか推薦するといいますか、そういったことは、立派な人を送って、そして日本金融機関に対する監督あるいは検査の行政というものが的確に行われるようにしていくことが非常に大事なことだというふうに私は思っております。
  343. 若松謙維

    若松委員 それでは、ちょっと観点を変えまして、先ほどの金融監督庁ですけれども、これから銀行、証券等を監視していくわけです。  それで、最近の山一の飛ばしにしろ、いわゆる決算書の信頼性がいろいろと揺らいでおります。いわゆる会計監査。私も公認会計士です。同業者として大変恥ずかしい。でありながら、現実に、例えば銀行監査ですと昨年の三月期決算は不良債権余りしていなかった。それが昨年の九月の中間決算でどっと一挙にやった。そこら辺が、大蔵省のいわゆる決算承認監査というのでしょうか、本来外部の独立すべき公認会計士が結局大蔵省の意向に沿って監査意見を出している、そういう実態が幾らでもあるわけです。  ちょっとこれは話がそれますけれども、大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、今、東京証券取引所、例えばあとは大阪証券取引所、名古屋証券取引所、国内八つの証券取引所がありますけれども、これは理事長が全部大蔵省出身なんですよね。当然、そのほかに広島とか札幌等も専務理事等も抱えていますし、日本証券業協会は副会長も天下りで来ている。  アメリカのいわゆるニューヨーク・ストック・エクスチェンジですと、SECがありますね。SECというのはもともと独立なんですよ。その独立しているところに認可をもらって、いわゆる証券取引所を設ける。ですから、独立したSECが証券取引所をしっかり監視しているというケースになっている。日本を見ますと、先ほどの取引所はほとんど大蔵省からの天下りなんです。いざ何か問題があったときに適切な処理ができるのかどうか、また、そうならないような日ごろの監視体制というのがしつかりできているかどうか。ちょっと急の質問で恐縮ですけれども、大蔵大臣、どのようにお考えですか。
  344. 長野厖士

    ○長野政府委員 事実関係も含めまして、私から御答弁を最初に申し上げることをお許しいただきたいと思います。  全国八証券取引所の理事長につきまして、全部とおっしゃられましたけれども……(若松委員「言ってないです、全部なんて」と呼ぶ)現在、理事長は三取引所だけでございます。  もちろん、証券取引所の理事長の選任というものは、その取引所の会員の総意によって決められておりますので、行政立場で、その会員の総意によって選ばれた人事というものにはコメントを控えるべきであろうと存じますけれども、取引所全体として、きちんとその取引所の業務を適正に遂行していただくということが大切であろうと考えております。
  345. 若松謙維

    若松委員 長野局長、非常に申しわけないけれども、局長が幾ら言ったって、もう今はまともにとる人はいないですよ、本当に申しわけないけれども。そういう状況なんですよ。  それで、大臣、政治家として、これから大蔵行政信頼を大きく取り戻そうとされるお立場で、こういう状況というのはいいことなのか悪いことなのか、どうお考えですか。私個人としては、アメリカのSECに準じていろいろと日本の証券監視委員会も変えましたし、そのもとにいる証券取引所の独立性というものもさらに求められていると。急な問題提起で恐縮ですけれども、どうお考えですか。
  346. 松永光

    松永国務大臣 ちょっと的が少し外れておるかもしれませんけれども、証券取引等監視委員会、これは非常に大事な役所だ、こう思っております。そこで、そこの理事長にも立派な人材が来てやっておるわけであります。実はこれも金融監督庁ができればそちらの傘下に入るわけでありますが、私は、この証券取引等監視委員会は非常に大事な役割を果たすべき役所だ、こう思っております。  それともう一つは、委員も埼玉県では名のある公認会計士の先生でありますけれども、公認会計士あるいは監査法人、こういったものの役割もますます重要になってくるな、こう思っております。  その公認会計士協会とか監査法人とかに大蔵省のOBの天下りの問題も指摘されておりますが、私は、歴史を積み重ねてくれば、最初から公認会計士をやっている人の権威というものがいずれ非常に高まってきやせぬか、こう思います。それは弁護士会を見ればわかるのです。弁護士にもいわゆるやめ検、やめ判がいますけれども、弁護士会に関しては根っからの弁護士の方がきちっとやつていますね。それは、それだけ長い経験があり、そして長い歴史を踏み締めてきた人の方が信頼が厚い、そういう結果になっているんだと思うのです。  公認会計士の社会でも、あるいは監査法人、公認会計士協会でもそういう状況になっていくことは間違いないと私は思っています。時間の問題だろう、こう思っておるわけでありまして、大いに先生のような公認会計士に活躍していただきたい、私はそう念願しておるのです。
  347. 若松謙維

    若松委員 証券取引所はいかがですか、証券取引所の理事長は。
  348. 松永光

    松永国務大臣 私はその内容をよく知らなかったものですから、ちょっと急なことでコメントできませんけれども、いずれにせよ、世間一般から大蔵の天下りだから云々と言われるようなことがないようにやってもらいたいな、こういうように思いますし、十分考えるべき事柄だ、こう思います。
  349. 若松謙維

    若松委員 証券取引等監視委員会には、実際に事務局九十八名おりますけれども、もともと大蔵省の方が九十一名。これは大蔵省のいわゆる巨大化、権限の集中化、それを分散しようという動き、歴史的な形でやむを得ないと思います。でも、こういう現実がある以上、いや増して、私は、新しく証券取引等監視委員会に行かれる方はしっかり監視しなくちゃいけないし、その委員会委員長というのも、この方はちょうど検察出身で恐らく大臣と同じぐらいの年代でしょうか、それだけ本当に厳しい自覚を持ちながらやらなければいけないと思っております。  それでは、先ほどの公認会計士協会なんですけれども、公認会計士協会のいわゆる所轄局というのは証券局なんですね。ところが、アメリカの公認会計士協会、AICPAといいまずけれども、それは、まさにSECが独立してあると同じように、どこも所轄官庁というものがありません。あくまでもAICPAはAICPA。恐らく日弁連だって同じだと思うのですよ。法務省の所管なんておかしいですよね。  会計士も同じだと思うのです。そういう理解でよろしいですよね。どうでしょうか、大臣お願いします。
  350. 松永光

    松永国務大臣 合弁護士会の話が出ました。弁護士会も昭和二十一年ごろまでは、実はそれぞれの地方検察庁検事正の管轄下であったのです。それが戦後、新しい弁護士法のもとで、よその役所の監督を受けない、文字どおり自主独立の弁護士の会になったわけなんですよね。非違を犯した人の懲戒の問題その他も含めて、全部自主的な措置でやる、こういうことになっておるわけでありますが、それと比べれば、まだ公認会計士協会というのは弁護士会とは相当違う形になっているな、こう思いますが、いずれ先生のような人が活躍してくれば、だんだん役所の監督はなくなってくるのじゃないですか。やはり歴史が必要だというふうに思いますね。
  351. 若松謙維

    若松委員 実は、私、個人名は言いませんけれども、実際に会計士協会の事務総長に大蔵省の天下りの方、その方は非常に有能ですけれども、結果的に大蔵省との連絡、何か協会でやるとすぐ大蔵省に情報が流れる、そんな構図になっているのですね。これは私が言っているわけじゃなくて、もう何度も同僚の議員が言っておりますし、週刊朝日の二月二十七日の記事にも出ておりますけれども、事務総長という大変重要な位置に大蔵省の官僚の方が来られている、こういう状況なんですね。  確かにいろいろな制度の問題とか、専門的な問題、そのアドバイスとして大蔵省出身の方がそういう協会なり会計士協会に勤めるのはいいと思うのです。ところが、非常に重要な三役クラスのところに天下りがあるということは本当におかしいと私は思うのです。松永大蔵大臣在任中には絶対送らない、そういうお答えをぜひいただきたいのです。いかがでしょうか。  先ほど言っていただいたように歴史が必要です。一つの権威を得るための歴史は必要です。でも、まだ若い会計士協会の独立性をさらに高めるためにも、今こそ大蔵大臣の力が必要なんです。官僚は送らない、天下りはさせない、いかがでしょうか。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  352. 松永光

    松永国務大臣 公認会計士協会の方で迎えたというか、そういう形に形式的になっているのでしょう。したがって、公認会計士協会そのものの努力が実は大事なのではないでしょうか。そしてまた三役クラスですか、それも公認会計士協会の中の人事でしょうから、公認会計士協会そのものがこれからさらに努力をしていただくことが大切なことであると思うのでありまして、私がどうこうするというのは、これはむしろ適切でないのじゃないでしょうか、私はそう思います。
  353. 若松謙維

    若松委員 大臣、協会の方から求めてきた、そういう面も否定できません。しかし、私がいた監査法人は、これはいつも大蔵省からだれだれを受けてくれという話は、私は当事者でしたから聞いていましたよ。その圧力があるのですよ、先ほどの証券局所管にしているから。その所管をぜひなくしてもらいたいのですよ。所管をなくして、協会はやはり独立すべきです。許認可法人ですからやむを得ないけれども、法律があるのと所管とは別な話ですから、所管をやめてもらいたいのです。それで、公認会計士のいわゆる意見が不適正だった、適正意見なのに会社が倒産した、これはどんどん訴訟してもらって損害賠償を負わせる。それまで大蔵省がかばうから、結局癒着という構造になって、本来の会計士としてのチェック機能が弱まつでしまうわけですよ。もう衛藤先生なんか、よく御存じですよね。私、そういうふうにぜひ認識してもらいたいのです。  大臣、御理解いただけますか。ぜひ日弁連ぐらいの独立性を持ったものに育てていただきたいのです。いかがでしょうか。
  354. 松永光

    松永国務大臣 現在は、法律に基づいて設立認可された法人ですね。したがって、法律に基づいて監督権というのでしょうか、それがあるという仕組みになっておるわけですね。それを日弁連のような形にということでございますが、それは歴史が必要、もちろん努力の積み重ねが必要、こう思うのでありまして、要は公認会計士の先生方の自助努力といいますか、それが一番大事なことではないかなというふうに私は思います。そして、世間がそれを認めるという形になっていけば法の改正もできるでしょう、そういったことではなかろうかなというふうに私は思うのでございますが。
  355. 若松謙維

    若松委員 わかりました。では、それも努力するように私も一会員として頑張ります。ただし、そういう大蔵省からのそれなりの要請なり圧力がもし発覚したならば、それは厳しく罰していただけますね。
  356. 松永光

    松永国務大臣 不適切な要請とか、ましていわんや圧力等があるとかあったとかという場合には、それは私が大臣をしている間ならば、適切に私自身対応してまいります。
  357. 若松謙維

    若松委員 ありがとうございます。ぜひ期待いたします。  それで、これもちょっとおかしい話なんですけれども、これはちょっと専門的なのでどなたになるのですか、有価証券の低価法と原価法、今度これの選択適用が実は法案に出てこないなとずっと思っていたら、これは省令対応なんですね。裏をかかれたと私は思いました。  これは実際、国際会計基準に反していまして、この時代に自国の経済事情の手前勝手で、GNP世界第二位の国の会社に対して、今都合が悪いから低価法はだめ、原価法にする、こんなのは許されないと思うのですけれども、本当にこれはやられるのですか。
  358. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  大変な専門家でいらっしゃる先生に御説明するのもあれですけれども、今回この措置をとらせていただくのは、きっかけは貸し渋り問題があったからでございます。  これまで銀行は、商法の一般的な原則どおりではなくて、より健全な財務の表示ということで低価法をとっておったわけでございます。低価法をとりますと、持っている株価が、売る気がなくても、もし仮に市場で下がりますと、それは銘柄別に低い方の価格で評価いたします。そうしますと、含み益をたくさん持っている、あるいは利益をたくさん内部留保しているときは、それで埋められます。そうすると、より健全な形での財務諸表がつくれるということでございますけれども、大分簿価も上がってまいりました。経済状態からしても、金融機関がかなり不良債権処理を迫られております。そういうときに三月末の株価を物すごく心配する、その結果、貸し渋り問題というのも出てきたわけでございます。そうしますと、やはりそこには商法の一般原則に戻りまして、原価法、低価法、いずれでもいい、しかし、原価法をとった場合も必ずディスクロージャーはしてくださいというような措置をとらせていただいたわけでございます。  より健全な財務諸表の方がいいということからいえば、それは低価法の方が望ましいとは思います。しかし、余りにもそれを金融機関がとる余り、株価に振り回された、また、それでもって実体経済にまで影響を及ぼしたということがございましたので、商法の一般原則に戻らせていただきたい、こういうことでとらせていただいた措置でございます。
  359. 若松謙維

    若松委員 低価法は当然望ましい。かつ、そうはいいながらも、これは特にいわゆるアングロサクソン系では、流動資産の投資勘定の時価評価というのですか、マークアップ方式というのですか、これも一方にあるのですよね。ですから、低価法か時価法なんですよ。ところが、日本は第三の道を行こうとしているのですよ、第三の道を。情報公開をすればいい、今こういう状況だからと。  それはいいのですけれども、じゃ、基本的には、それが本来の意図するところじゃないわけですね。それを確認したいのです。あくまでもこれは超法規的な処理なんだ、そういうことですね。いかがですか。
  360. 山口公生

    ○山口政府委員 世界のいわゆるデファクトスタンダードがいかなるものかというのは、いろいろな議論があるかと思います。例えば米国でも、売買目的有価証券はおっしゃったような時価評価、売買可能有価証券も時価評価、しかし満期保有有価証券は原価評価となっております。それから英国でも、流動資産の有価証券は低価法または時価評価、投資有価証券は原価評価または再評価法といろいろになっておりまして、何がいわゆるグローバルスタンダードかということについては先生の方がお詳しいかと思いますが、私どもの考え方としては、今の商法の原則に戻らせていただいたということでございますので、その企業会計原則あるいは商法の原則が次第次第に時価の方に移るのであれば、それは銀行会計もそういうふうになろうと思います。  それは、商品有価証券の評価方法をどうするのか。特に株について考えなければいけませんのは、特に日本の場合特色がありますが、持ち合いで持っていて、ほとんど放出することがないというような株を持っている場合に、それが時価評価だけでいいのかという問題もあろうかと思います。この辺については企業会計審議会等でも御議論されていると聞いておりますので、そういった世界の流れ、我が国における検討の動向等は私ども十分に承知しております。そうした上で、今回は商法の原則に戻らせていただいたということでございますので、先生の御指摘とそれほど違わない考え方ではいると思っておりますけれども。
  361. 若松謙維

    若松委員 そうすると、何かこれは当然の措置なんだというふうに解釈してしまうのですけれども、それはおかしいでしょう。そういう答えになっているのですよ。
  362. 山口公生

    ○山口政府委員 現時点におきましては、商法の原則に戻らせていただいたということでございます。今後、商品有価証券の評価方法をどうするかという議論が進みますと、またそれに合わせた検討が行われるということになろうかと思います。
  363. 若松謙維

    若松委員 世界の信頼を得るには、自国の状況で勝手に変えるのが一番マイナスですから、それはおわかりですね。かつ、商法だって原価法が原則とおっしゃいましたけれども、保守主義とか安全性とかいうのがもう大前提にあるわけですよ。だからこそ低価法が、原価法といいながらも重要視されているわけですよ。それは説明になっていないのですよ。それをぜひ忘れてはいただきたくないのです。  それと、先ほど持ち合いという話がありましたけれども、持ち合いは長期ですよ。だけれども、今そういう慣行を改善しようという方向であるがゆえに、この議論というのは重要性が少なくなっているわけなんですね、日本では。それだけに、いわゆる商品有価証券とか流動資産、これの評価が、やはり世界の大勢である時価かまたは低価、その選択であって、原価と低価の選択というのはちょっと時代おくれ、いや、時代にちょっとマッチしていない、そう主張します。ぜひ検討してください。  それで、もう時間もなくなりましたので、ちょっと税法について、先ほど自民党の議員の方からも御質問がありましたけれども、青色申告制度というのがありますね。今度、法改正で三十五万円から四十五万円になる。私個人の意見としては、青色とか白色とか、それで青色申告すると所得控除がもらえるというのは、こういう法律は世界にはないですよ。商売をやる以上はきちんと帳簿は備えると恐らく言いたいのでしょうけれども、団体がございますから一恐らく一生懸命それに意を配してやっていると思うのです。でも、これはおかしい。  それで、私もこんなことを言いながらも、本当は票が減るなと思って言っているのですけれども、そうであっても、この青色申告制度というのは、実際、事前承認制度なんですね。今回、電子データも事前承認制度にしょうとしている。同じです、ところが、青色申告制度の場合には、きちんと帳簿をつければ四十五万円の所得控除が得られます、こういう恩典つきなんです。だけれども、では実際に帳簿を見るのかというと、見ておりません。実質、届け出制度の事前承認ですよ。この電子データも、一々そのシステムを見るということは時間的に無理だと思うのです、能力的にもマンパワー的にも。  ですから、私が確認したいのは、電子データ保存制度というのは、いわゆる事前承認制度ですけれども、実質的に、今の青色申告制度のような届け出制度的なところを想定されているのですか。それはお答えいただけますか。
  364. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 電子データ保存でございますが、これは税務署長の事前の承認を必要という制度にしてございます。  その理由でございますが、御承知のように、まさに電子データが国税関係帳簿書類にかわってくるわけでございまして、この帳簿書類といいますのは、まさに申告納税制度の基礎となる重要なものでございます。そうしますと、どうしても納税者の負担に配慮すると同時に、適正公平な課税が損なわれることのないような制度にする必要があるわけでございます。  そのための要件といたしまして、さきに真実性確保のための要件あるいは可視性の確保のための要件ということで種々申し上げたわけでございます。その要件が守られませんと、どうしても、この電子データというものの特性からいたしまして、税務調査の実効性が著しく低下するなど、ほっておきますと適正公平な課税の実現に困難を来すことになりかねないという問題がございます。したがいまして、事前に要件に適合するかどうかということを確認した上、納税者の方には電子データ保存を開始していただく必要があるわけでございます。  また、納税者の方にとっても、始めてみたのはいいが後でだめであったというのでは、その設備投資の面でもかえって負担をおかけすることにもなるのではないかというふうに思うわけでございます。したがいまして、そういう観点からも、あらかじめ要件に適合していることが明確に確認された状態で電子データ保存が開始できることが望ましいというふうに考えているわけでございます。  それで、さらにその調査をやってみまして、その要件を満たしていないということが事後的に明らかになったという場合は、紙の形での帳簿保存に戻す措置をとっていただく必要があるわけでございますが、納税者にとってみますと、電子データ保存を行う資格の得喪は、大変重要な資格かと思いますが、明確な手続で行われ、不服があれば争う手段が確保されていることが望ましいのではないか。  したがいまして、このように事前事後に要件の適合性をチェックして、納税者にも確認できる方法で資格を与えたり失わせたりするような仕組みが必要というふうに考えたわけでございまして、承認制でお願いしているところでございます。
  365. 若松謙維

    若松委員 もう時間となりましたからこれ以上質問はいたしませんけれども、先ほどの電子データ、ぜひ手続的には今の青色申告制度の事前承認程度にしていただきたいというのが現場の要望です。  そして、きょうは総裁には来ていただけませんでした。恐らくきょうのガサ入れが予測されて来なかったのかとだれか同僚議員が言っておりましたけれども、福井副総裁、ぜひきょうの議論はお伝えください。しっかりと、日本金融システムを回復するための、きっぱりとした責任をとっていただくように期待して、質問を終わります。ありがとうございました。
  366. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、並木正芳君。
  367. 並木正芳

    ○並木委員 改革クラブの並木正芳でございます。  平和・改革として質問をさせていただきますけれども、大臣と論を交わすのは自由民主党の埼玉県連以来でございます。御活躍の様子でお喜びを申し上げます。お疲れのことかと思いますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。  金融機関あるいは大蔵省の相次ぐ不祥事の中で三塚大臣辞任するという、いわばあらしの中で三塚丸が難破した、その後を松永大臣が引き受けられた、そして新たな船長として船団を率いた、この辺の船団がまだまだ護送船団方式というところが改まらないわけで、老朽船までは港には着けられないというような認識の中で今行政運営を行っているような感がいたしますけれども、かねてから歯にきぬを着せない語り口で、松永大臣の魅力が感じられるところでありますが、現在大蔵においてはキャリアまでが逮捕された、あるいは、ただいま日銀幹部が逮捕された、こういうような事態に至っているわけであります。  きょうは、日銀総裁も来られないということなので、主に大臣にお聞きしたいと思うわけでございますけれども、既に多くの議員から質問もあったところですけれども、大臣は、就任に当たって、こうした事態を果たして予期されていたのか。経緯からすれば、キャリア逮捕まで行くのかなというようなこともあるいは考えられていたところであります。そうした中で就任され、そうしたことがあろうとも断固として綱紀粛正大蔵の改革を進めよう、そういう決意で大蔵省に乗り込まれたのか、それとも、ノンキャリアの逮捕、三塚大臣辞任という事態で、まあこれでほぼおさまったのだろうというような認識の中で就任され、いや、こんなはずではなかった、大変深刻な事態に至っていたのだ、そういうふうに思っていらっしゃるのか、この辺を率直にお聞かせいただければと思いますけれども、いかがでしょうか。
  368. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  かつては同じ組織の中で仕事をした仲でありますので、率直にお答えしたいと思います。  私は、これほどまでに恥ずかしいことをした職員がいたとかいるとか、これは想像もつかないぐらいでございました。ただ、捜査当局というのは、ある意味では中途半端で仕事をやめるということはなかなかない仕組みだ、こう思っておりましたので、しかしこうなるとは想像はしていませんけれども、逮捕された二人だけで済むかどうか、私は済まないんじゃなかろうかという気持ちも半ばはありました。しかし、今度は、御指摘のとおり若いキャリアまで逮捕されたわけでありますから、これは大変深刻な事態だ、こう私は受けとめております。  大臣就任のときから一貫して私が申し上げておりますように、二人の逮捕で信頼が大きく揺らいだ大蔵省、さらなる二人の逮捕でさらに信頼が揺らいだ大蔵省、これをいかにして信頼のある大蔵省に立て直すか、そのためには徹底した大蔵改革をしなきやならぬ、職員の精神の面で、そしてまた行政の仕組みの面で。それをやり遂げなければ、財政を中心にして担当する日本大蔵省国民信頼を失ったならばこの日本はどうなるだろうか、こう考えますと、何としてでも今申したような大蔵改革をやり遂げなきゃいかぬ。そしてまた、捜査当局捜査対象にならない人であっても、事の大小は別として、間違った行為をした人がいるという情報が頻々と飛び交っております。したがいまして、金融関連部局に在職した人を中心でありますけれども、五百数十名、過去五年にさかのぼってその人たちの行状を内部的に調査をして、これは通り一遍じゃなくして本当の調査をして、そして問題のある者に対しては厳正な処分をしていかなきやならぬ、そう思います。  同時にまた、委員も御承知と思いますが、この役所は大変忙しいところでありまして、例えば先般提出することになった金融ビッグバン法、こんなでかい法律案ですね。それの法改正の問題にしても、相当数の職員が、長期間にわたって夜遅くまで、連日のように明け方までかかって、そして法案をつくった、こういういきさつもあるように、国家のために、国民のために、文字どおり夜も日も寝ずに頑張ってくれている職員もたくさんいるのですね。その人たちの名誉を晴らす意味でも、間違ったことをした人については厳正な処分をしなきやならぬ、こう思っているわけであります。  その仕事をやり遂げるのが私の務め、就任に当たって橋本総理からもそのことを強く言われたわけであります。その総理の指示に基づいて、私自身も命がけでこの仕事をやり遂げたい、こう考えておるわけでございます。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  369. 並木正芳

    ○並木委員 決意のほどを伺ったわけですけれども、これまでひどいとは予期できなかった、しかし一方で、もちろんまじめに努力されている職員も多い、権力の上にあぐらをかいて、ついついそれに麻痺してしまった職員もいる現実もある、こういうことでありますけれども、大変裏腹なわけですけれども、つまり、大臣が真相究明をすればするほど、大臣の地位も脅かされるというようになっていくわけです。  現在、こうしたことは本来余りはやし立てるべきことではないですけれども、局長クラスに及ぶまでのそうした不正があるというようなマスコミ報道もなされております。現に日銀幹部も、マスコミ報道等果たして本当かというようなことが、現実に逮捕という事態に至ったのです。つまり、そうしたことからすると、大臣は、みずからの進退をかげながら綱渡りをするような形でこの大蔵改革、綱紀粛正をやり遂げなきゃならないということですけれども、当然、局長クラスが不祥事ということになれば、大臣の進退というのが問われるわけです。そうした、つまり辞任をするという、そういうものをかけても徹底的な真相究明をこれから行う、そういうことであろうかと思いますけれども、もう一度その辺をお聞かせいただき  たいと思います。
  370. 松永光

    松永国務大臣 私は、先ほども申し上げましたとおり、総理から指示された、命令された大蔵改革をぜひやり遂げるべし、そして徹底した内部調査をして、問題のある者については厳正な処分をすべし、そして大蔵省職員の意識の改革をやり遂げて、先ほど委員の言葉の中には、権力の上にあぐらをかいているという言葉がありましたけれども、思い上がった気持ちを持った人もいると思うのです、そういう思い上がりの気持ちは許されないですね。同時にまた、行政の仕組みも、御存じのとおり、去年の金融監督庁設置法、これによって、金融機関に対する監督検査の行政あるいは証券取引等監視委員会という仕組み、これらも実は大蔵省から切り離されて、総理府のもとに設置される金融監督庁に移りますが、さらに、中央省庁再編基本法でさらに大蔵省はスリムなものになるように法律はできております。  それのみならず、行政のあり方そのものを、従来の事前指導行政というか裁量型の行政というか、そのやり方を根本的に変えて、事前にルールを明示して、そのルールが遵守されているかどうか、それを事後にチェックするという事後チェック型の行政に抜本的に切りかえていかなきやならぬ、そういう改革もしていかなきやならぬ。もろもろの改革のために、私はわき目も振らずに頑張り続けていきたい、こう考えておるわけであります。
  371. 並木正芳

    ○並木委員 既にキャリア逮捕あるいは日銀への監督責任、こういうもので、先ほど若松議員から辞任に値するというような言もあったわけですけれども、ぜひ、現在国民からいわゆる疑われている、そのような部分も明らかにして、なおかつその上での出処進退を決めていただきたい、そのように要望をしておきたいと思います。  次の質問でありますけれども、さきに二兆円減税というのが決まったわけです。その決定に際して、橋本総理は、アメリカに言われていた、そしてASEANに行ってみたら日本で聞いていた情勢と全く違ったというようなことで、帰ってきて、アジア危機ははるかに深刻である、こういうようなことを述べて二兆円減税を決められたわけです。これは、言葉をかえれば、いわゆる官製の情報が全く見通しが甘く、総理の判断さえ間違えさせかねなかった、そういうことになるわけであります。大臣も、こういった事態に新たに大臣に就任されて、非常にまだ今もいろいろな細かい事務的なこと、もちろん聞くべきものは聞く必要がありますけれども、官製の情報に頼らざるを得ないところがある。そういうようなことで果たして経済運営がうまくいくのか、現状把握ができているのか、懸念するところもあるわけでありますけれども、ぜひアンテナを高くして、経済の大変厳しい状況についてしっかりと認識をしていただきたい、そういうふうに考えるわけですけれども、現在置かれている経済情勢、これは三月危機とも言われています。それについてどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたい。
  372. 松永光

    松永国務大臣 アンテナを高くして諸般の情報を的確に把握する、非常に大事なことだと思います。偏った情報を、その情報だけが正しいと思って、誤った判断をしてはなりません。その意味では、アンテナを高くしていろいろな情報をキャッチする、大事なことだと思います。  その情報をもとにして、今大事なことは、一つには平成十年度の予算をできるだけ早く成立させていただく、今御審議を願っておるこの税制改正法案も早く成立させていただいて、両方が新年度に入ると速やかに実行できるようにしていただく、これが一番大事なことで、それが私に政策面では課せられた任務だ、こう私は思っております。
  373. 並木正芳

    ○並木委員 早く成立させてほしいというのは大臣として当然かもしれませんけれども、質問においても、相次ぐ不祥事ばかり、法案の審議にさえろくに入れない、そういう状態であるわけです。それで、ただただ法案さえ通れば何とかなるというのは、国民にとっても、今橋本不況とも言われて、多分、橋本不況という言葉が歴史に残るのだと思いますけれども、一方、信頼喪失不況ということまで言われてきている。まさにこうした問題をきちっとせずして、何でもいいから早く通してください、そういうようなことで、本来の、国民が頼りにして信頼して、お金もきちっと使うべきは使っていくところを、将来の不安ばかりで、多少減税してもみんなたんす預金になってしまうということが常日ごろから言われているわけですけれども、こんな状態をそのままにして、ただただ法案を通せばいい、そういうわけにはいかないと思います。  また、この十年度予算にしても超緊縮予算、いわゆるデフレ予算と言われているわけです。私も、いわゆる景気回復策と、財政構造改革と呼ばれている、構造改革になっているかどうか疑問ですけれども財政健全化策、これは二者択一の問題ではないと思っております。六つの改革と橋本総理が言われているこの改革も当然必要でありまして、上辺の改革でなくて真の構造改革を進めるべきだ、そのように考えておりますけれども、手順、つまり優先順位の問題として、その点からすれば、まず景気回復を最優先させる、いわゆる潜在成長軌道に戻す、その後で財政構造改革が、構造改革は必ずしも簡単ではありませんけれども、財政も後についてくる、そういうふうに考えているわけであります。  そのようなことからすれば、もう既に路線は変更されたということも言われているわけですけれども、むしろ明確に、この三月の厳しい情勢に当たって、きちっとした国民へのスピーチをして、路線を転換して、民間の力を活用しながら景気回復をさせ、そして十年度のさまざまな諸課題を遂行していく、そうすべきだと思いますけれども、この点いかがでしょうか。
  374. 松永光

    松永国務大臣 委員も、今、財政構造改革とそのときそのときの情勢に応じての景気対策、二者択一ではないとおっしゃいましたけれども、橋本総理は、まさにそういう基本的な考え方で経済運営の基本を決めておられるというふうに私は理解をしております。  私が言うまでもなく、財政構造改革法、去年成立したわけでありますけれども、二〇〇三年度までに赤字公債の発行をゼロにするということ、二〇〇三年度で国、地方の財政赤字をGDP三%以内にすること、毎年の特例公債の発行を前年よりも少なくすること、これが財政構造改革法の基本であります。その基本を守りながら、そのときそのときの情勢に応じて対策は打っていくというのが総理の考え方であります。  私は、その考え方の基本は変わっていないというふうに思います。そのもと大蔵大臣を務めている私でありますから、その総理の基本方針を踏まえて今後とも職務を遂行していきたい、こう考えているところでございます。
  375. 並木正芳

    ○並木委員 もう一つ、二兆円減税等に関して政府税調の加藤会長は、景気が腰折れすることはあるだろう、そうすれば特別減税というボーナスみたいなものを出せばいいんだ、そのようなことを幾つかの場で述べられているわけですけれども、こうした、その場その場でいわば対症療法的に経済政策を打っていく、これでは停滞しているこの経済を活性化できないんじゃないか、そういうふうに思うわけです。つまり、かなり楽観論に過ぎる。この上に乗った経済政策というのは有効ではないと私は考えるわけですけれども、大臣は、この辺についてはいかがお考えでしょうか。
  376. 松永光

    松永国務大臣 財政構造改革というのは、それはある程度の苦しみは伴う。それを乗り越えて進んでいかなければならない。後世代へ巨額な負担をツケ回しをしていくわけにはまいりません。そういう基本的な認識で政治は進まなければならぬというふうに私は思います。  減税という話を随分聞きますけれども、やはり財源を考えていかなければ、そう簡単には我々は言うわけにはいかないですよ。やはり財源を考えて、あくまでもその点は慎重に考えなければならない。  国債を含めた国、地方の長期債務が五百兆を超えるような状況もとでは、この長期債務の利子と元本の支払いのために何でその支払いをしていくのか、いずれ税収増を考えなければならぬ時期が来るだろう、国民がこう考えておるとするならば、減税しても、その効果は実は非常に小さいものになるということを説く学者もいらっしゃいます。大いに参考にすべきじゃないかな、私はそう思うのであります。  橋本内閣のもとで、去年の暮れから、経済回復のためにいろいろな手を打ってこられた。二兆円減税もそうです。補正予算もそうです。そして、いろいろな議論もありましたけれども、日本金融システムを健全なものにして、そして金融の面からのいろいろな問題が起こらぬようにしていくといういわゆる金融安定化策、これも非常に大事なことでありまして、今真剣にその問題と取り組んでおるわけであります。そうしたもろもろの施策を着実に推進していくことによって、今の日本経済の置かれておる厳しい状況から一日も早く脱出できるようにするということ、これが大事なことだというふうに私は思っております。
  377. 並木正芳

    ○並木委員 私が申し上げたのは、現象があらわれたら対症療法を講じればというのでは、特別減税というのは本来そういう思想かもしれませんけれども、これでは現在の経済は活性化できない。六兆円減税なり思い切った先行的な活性化策を打つべきであるというふうに考えるわけですけれども、そうしますとはおっしゃらないと思います。しかし一方、このままの予算を通したからといって、必ずこれは補正を組まざるを得ない。非常に問題があるかと思います。もう既に我々は、恐らくこれはもう補正を組まざるを得ないのだという認識も持っておりますけれども、そのようなつけ焼き刃的な予算を通すというようなことに極めて疑問を感じているわけであります。  時間がない中で基本的な問題を聞いたわけですけれども、こうした基本的な問題がきちっとすれば日本の持っている力はまだある、経済の活性化する可能性はあると考えましたので、ぜひその辺を、極めてなし崩し的に政策転換するのでなく、これからの時代、アカウンタビリティーの大変必要な時代とも言われております。そういうことで、政府としてもきちっとした責任と、そして明確な説明性を持って政策を遂行していただきたい、それは要望しておきたいと思います。  時間が余りありませんので、法人税の問題で幾つかお聞きしますけれども、この今回の法人税率の改正で三%が下げられる。一方、もちろん課税ベースの拡大ということで、全体的には減税基調にはなっていると思いますけれども、そうした税収中立性というか、一方では増税、一方では減税という中でこれが進んでいるわけですけれども、やはり国際化という中で、国際水準というのはどの辺にあるか、なかなか難しいところかもしれません。とりあえずはアメリカ並みの基準というところに向かっていくべきかと思います。それからすると、これはまさにまだ不十分であるということになると思います。  国税として一つはお聞きしたいわけですけれども、こうした課税ベースの拡大ということでなく、先ほども大臣が、減税するには財源が必要だと。この財源については非常に大きな意味があるわけですけれども、公共投資というものが、かって縦割りあるいは対象別、分野別といいますか、こういう配分の形が硬直化して配分されて、非常に効率的でないというか、国民のニーズにかなっていない。しかも民間のコストに比べて非常に割高になっている。こういつたところをきちっと、まさに構造改革ですけれども、メスを入れればそうした財源は生み出せるのではないか。まず国税としてはこういったところを考えながら、さらなる法人税の引き下げを検討すべきと考えますが、いかがでしょうか。
  378. 松永光

    松永国務大臣 委員も御承知のとおり、公共事業については財政構造改革法を踏まえて徹底した見直しをして、前年度比七・八%のマイナスにしたわけですね。そしてまた、事業の効率的な実施を図るために再評価システムというのを導入して、そして事業の徹底した見直しも行ったわけです。  公共事業を減らせば財源が出てくるという話でありますが、具体的にどの事業をやるかやらぬかということは、指摘されてくればこれは話はまとまりやすいのでありますけれども、実際の話、地方に行きますというと、ここの下水道事業を急いでやってもらいたい、ここの市街地再開発事業をやってもらいたい、この混雑している道路の改修事業をやってもらいたいと、公共事業に対する要望というのは地元に帰ると非常に大きいですね。したがって、抽象的には公共事業を縮減して云々ということは言えても、実際の場合にはなかなかそうはいかないですね。七・八%の削減をしたというのは相当な努力の結果だというふうに私は見るのです。  それで、並木委員も、例えば並木委員の地元の地域でどうですか。公共事業に対する要請はまだ相当あるでしょう。ここの事業は要らぬということをみんなが言い合って、そして減らしてくるということができれば話はまとまりやすい。しかし、実際はなかなかそうはいかぬ。  実際、日本国民生活と欧米先進国と比べるというと、一般的に言って社会資本整備がおくれている分野がまだたくさんある。そういったおくれているものは、着実に追いつくような努力をしていかなければならぬのじゃないでしょうか。むだと言われる公共事業なら、それはやめるべきだというふうに思いますが、必要なものは経費の縮減合理化を図りつつ進めていかなければならぬのじゃないでしょうか。私はそう思います。
  379. 並木正芳

    ○並木委員 公共事業全体を率だけで減らす、そういうことを言っているわけではありません。もっと精査していくべきだ。今私が申し上げたように、割高なコストというものもあるわけですから、今まで申し上げたのは、まさに縦割りとか、あるいは対象別、地域別の果たして今本当の意味での国民的ニーズがあるか、ここをまさに大蔵省がきちんとチェックをかけていく。もちろんある部分やられているわけですけれども、いわゆる省庁間の争いの中で、そういった公共事業が改められないというような形でなし崩し的に行われてしまうという現実もあるわけです。  これを議論していても抽象論ということになりかねないわけですけれども、そうしたものをきちっと精査し、効率的に同じ事業成果を上げながら投資コストを下げていくということが可能なのじゃないか、そういったところでの財源を創出する努力も当然やらなければならないだろう、そういうことを申し上げたわけであります。  法人税の問題でもう一点お聞きしますけれども、現実には、その法人税、これは表面税率としては大変高水準で、しかもこれを払っているのは先端的な企業、ごく少数の企業であるわけです。実際には赤字法人とかが大変多いわけでございますけれども、こういったものへの応益的な課税ということになると、法人事業税とか、あるいは法人税割の法人住民税ですか、こういうふうな地方税の問題が出てくるわけです。これは、かねてから外形標準課税の導入ということでいろいろ議論されているところです。自治省の担当分野になると思いますけれども、必ずしもそれは、縦割りで大蔵としては全く関係ないというわけにはいかないと思います。そんな点で、このいわゆる地方税の部分での外形標準課税、この導入についてどういつだ考えでおられるか、これを大蔵立場からお聞かせいただきたい。
  380. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 御承知のように、今回、国の法人税については三%の引き下げが行われ、国税においては、他の主要先進国並みかそれ以下の水準となります。したがいまして、平成十年度の税制改正に関する政府税制調査会の答申におきましても、まさに先ほど申し上げましたように、「今後は、事業税における外形標準課税の検討が法人課税の表面税率の議論にもつながることを念頭に置きながら、法人課税の表面税率のあり方について検討を進めることが適当」と指摘されておりまして、政府税制調査会において、この事業税の外形標準課税の問題について検討が進められていくと承知しているわけでございます。  当然、新しい税でございますから、どのような転嫁をする税であるか、国民の皆様にその議論の内容が適正に伝わっていく検討が望ましいものと考えておるところでございます。
  381. 並木正芳

    ○並木委員 金融・証券税制あるいは土地税制等、たくさんの問題があるわけでございますけれども、時間もなくなってきたわけです。ほかの議員さんからもさらに質問があろうかと思います。  最後に、有価証券取引税ですけれども、これについてもいろいろ議論があります。ヨーロッパではまだ残っているものもある。アメリカはなし。今、私としては、やはりアメリカのスタンダードにそろえるべきと。今回半減して、さらに全廃という方向性はできたのかと思いますけれども、手数料等の問題云々があるというようなことで、こういうふうな段階的な廃止というふうになっているのかもしれません。あるいは土地税制に関しても、地価税を凍結するというようなところで、廃止はしない。  こういう中で、いわゆる官僚主導、活字にするとそういうようなことが言われて、いつでも復活できますよというようなやり方の中で進められている。そういうことについて、いかにも政治としての主導権が官僚によって握られているというような印象が強いのです。そういう点について、ぜひもっときちっと、やはりグローバルスタンダードというか金融ビッグバン、こういうものに合わせて廃止すべきはする、さらに必要なときは当然またそれなりの立法措置をとる、こういうのが国会の本来の姿だと思います。  役所に根っこを残して、役所の判断でまた復活するのだというようなことを私は懸念するのですけれども、最後に大臣に、こういった点、ぜひそういうことを配慮して行政の長として当たってほしいということもありまずけれども、一言その辺をお聞きして、質問を終わらせていただきます。
  382. 松永光

    松永国務大臣 今回の有取税、取引所税については、二〇〇一年までに我が国金融市場をニューヨークやロンドンに並ぶ国際金融市場とすることを目指して、フリー、フェア、グローバル、こういった理念のもと金融システム改革が推進される、それを念頭に置きながらの今回の改正だ、こういうふうに位置づけるべきだ、私はこう思っているわけであります。
  383. 並木正芳

    ○並木委員 ありがとうございました。
  384. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、谷口隆義君。
  385. 谷口隆義

    ○谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  まず初めに、先ほどから同僚議員がずっと質問しておりますが、本日、日銀営業局の課長が逮捕されたというような報道の状況の中で、実はきょう日銀総裁に来ていただきたいというように先ほど申し入れたわけでございますが、本日五時より日銀本店で記者会見ということのようでございますので、まず、大蔵大臣に御所見をお聞きいたしたいというように思う次第でございます。  御存じのとおり、本年の一月に金融検査官の逮捕が大蔵省でもございまして、その事件の引責辞任ということで三塚前大蔵大臣辞任されて、小村事務次官も辞任というような事態になったわけでございます。  一方、本日、発生したと申しますか逮捕されたわけでございますが、この日銀百十五年の歴史の中で初めての汚職事件というようなことのようでございます。これは極めて重大な事態になった、このように私は思うところでございます。そういうような状況の中で、日銀総裁の辞任を考えていただかなければいけないのではないか。金融政策のトップにいらっしゃる、その日銀でそういう幹部の逮捕があったというようなことでございますので、私はそのように考えておるところでございます。  日銀総裁が総裁になられたのは、一九九四年十二月になられたようでございます。その翌年に、長期不況の状況の中で超低金利、〇・五%の公定歩合が実施されたところでございまして、その後、今に至るまで、二年半を超えておるわけでございますが、そのような状況が続いておる。  そういう状況の中で、一つは、確かにそういう超低金利が企業収益と申しますか、金融機関の収益を好転させた。ということは、御存じのとおり預金者の金利を金融機関に所得移転するという、そういうような仕組みになっておるわけでございますので、そういうようなことで金融機関が延命をした、ある意味ではそういうように言われておるところでございます。  また、その結果、安易にそういうような状況になったわけでございますので、モラルハザードが発生したとさえ言われておりまして、今、もう既に三年近くなるこのような超低金利政策に対しまして、果たしてこれでよかったのかという議論が大変沸き上がっておる。こういうような状況でございまして、そのようなことに対するお考えも、きょう本来なら、来ておられたら私はお伺いいたしたいところであったわけでございますが、そのようなことがあるわけでございます。  また、この四月一日から、先ほどから出ておりましたが、日銀法の改正が施行に移されるわけでございまして、この直前にこういう日銀幹部の逮捕というような事態になって、中央銀行としてのあり方がまさにこれから問われようとするわけでございますが、今私が申し上げた状況を、松永大蔵大臣、考慮に入れていただきまして、私は、冒頭お話をさせていただいたように、この際、松下日銀総裁の辞任を求めたいというように思うわけでございますが、大蔵大臣の御所見をお願いいたしたいと思います。
  386. 松永光

    松永国務大臣 お答えいたします。  日本銀行職員が逮捕されたということ、そして日本銀行捜査当局捜査が入ったということ、まことに重大なことであると私は受けとめております。  日本銀行業務公共性、そして金融政策の中心にある法人だということを考えますと、このような事態になったということは、まことに遺憾なことであり、重大に受けとめなければならぬ、こう私は思っております。  今、総裁の辞任云々という話でございましたけれども、大蔵省としては、まずは捜査当局における捜査を見守っていく、現状に対する対策は日本銀行において厳正になされるものだというふうに私は受けとめております。今の時期で、今のこの段階で総裁の地位について云々するということは、これは差し控えさせていただきたいというふうに思います。  なお、公定歩合の問題等について、いろいろ御発言がございました。そういう意見があるということは私もよく耳にいたします。しかし、公定歩合の問題は、日本銀行のいわゆる専管事項でありますから、私の方からコメントすることは、これは差し控えさせていただきたい、こういうふうに思います。
  387. 谷口隆義

    ○谷口委員 そういう御答弁は予想されておったのですが、私は、個人的に、先ほど申し上げたように、大蔵省においては三塚大臣金融検査官の逮捕に絡んで辞任したわけでございますので、そういう大変重大な事態が出来したという観点で、大蔵大臣は、個人的な見解でも結構でございますが、どのようにお考えなのか、こういうようにお聞きしたわけでございます。もし、さらなる御答弁がございましたら……。  わかりました。そういうことで、きょうは本来御本人に来ていただきたいというように思っておったわけでございますが、今記者会見をやっておるという状況でございますので、また後日、当大蔵委員会の場でお話をお伺いしたいというように思います。  それで、きょう預金保険機構松田理事長が来ていらっしゃいますので、まず初めに、このことをお聞きしたいと思います。  きょう午前中の議員の質問にもございましたが、本日のマスコミの報道でございまして、例の公的資金の投入の件でございます。三十兆円の仕組みができて、そのうち十三兆円が例の金融システムを保持していくと申しますか維持していくための資金ということで金融機関の申請を受け付けたというような状況の中で、きょうの朝刊を見ますと、四行についてはまず申請を受理し、あと十七行については再審査という状況のようでございますが、このようなことについて若干お聞きいたしたいというように思います。  この状況を見ておりますと、これは金融二法の審議の折にも出ておりましたが、この公的資金の導入の方法は一つの方法だけではない。一つは、優先株を発行して政府がそれを引き受けるという場合もありますし、劣後債、劣後ローンというような方法もあるというような状況でございます。  本日受理されたと申しますか、承認されたこの四行の状況を見ておりますと、優先株はほぼ承認された。ところが、劣後ローン、劣後債については、一部削減されているというか切り捨てられているわけですね。これは当然の話でございまして、優先株は、いわば基本的事項と申しますかティア1になりますね。劣後債、劣後ローンは、補足的事項と申しますかティア2になるわけでございまして、キャピタルインジェクションと申しますか、資本注入は、本来はやはり原則的に優先株でやるべきなのだと僕は思うのですね。なぜ優先株でやらないのか。と申しますのは、先ほども申し上げた理由でございまして、劣後債は全部それが自己資本比率の改善につながらないというような観点で私は申し上げておるところでございます。  まず初めに聞きましょうか。どうして優先株だけではなくて、劣後債、劣後ローンを認められたのか。これについて御答弁をお願いいたしたいと思います。
  388. 松田昇

    松田参考人 私がただいまの質問にお答えするのが適当かどうかちょっと迷うのでございますが、私どもが与えられましたこのたびの緊急措置法の中にこの三つの方途が書いてございまして、それを私どもは、法令に従って審査基準をつくりまして、受け付けを待っていたわけでございます。そこで劣後ローンと劣後債と優先株、この三つの種類の申請が出てきた、こういう経過であると承知をいたしております。
  389. 谷口隆義

    ○谷口委員 確かに松田さんにお聞きするのはちょっと適当ではないかもわかりませんが、とにかくそういうような方法があって、要するにティア1の目いっぱいのところはティア2を抑えたということですね。よくこれをお聞きしますと、先ほど申し上げましたように、ティア1の限度額までティア2ができるわけでしょう。今回そういうことで、金融機関はもう初めからティア2がティア1を超えておるということがわかりながら申請しておるわけですね、これを見ますと。その七人の審査委員会で、それは行き過ぎだと。これは私も当然行き過ぎだと思う。  なぜなら、この公的資金はむだ遣いしてはいけません。ですから、本来この金融二法は、貸し渋り対策、金融システム安定化の法案ですね。それと、自己資本の比率を改善するという意味において使われるべきであるという観点からすると、これはティア1を超える以上に劣後債、劣後ローンを導入すべきではないという観点でございますので、この審査の結果は私は支持するものでございますが、ただ、これが基準になっていないということをお聞きしたわけでございますが、それは正しいのでしょうか。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  390. 松田昇

    松田参考人 委員指摘のとおり、審査基準にはなっておりませんが、一般金融機関が公的資金の導入について申請をする場合には、先ほど申し上げた三つの方法がございまして、それを当審査会で三日に分けていろいろ討議をしたのですが、その中で、先生おっしゃるように、むだのない、有効適切な資金の使い方をしょうということで、先ほど先生御指摘のありましたティア2の部分はティア1の部分を超えない範囲で認めるという原則をつくり上げたといいますか、そういうことを審査委員会の全員で決定した、そういうことになります。
  391. 谷口隆義

    ○谷口委員 それでは、もうこれを審査する場合の一つの基準として行われる御予定はございますか。
  392. 松田昇

    松田参考人 これも私、六人の審査員のうちの一人でございますので、この場でお約束するような事柄ではないと思います。ただいまの審査基準では、一般金融機関の申請について法の目的に照らして適当な額というような抽象的な決め方をしておりますので、今度適用しました一つの考え方、ティア2とティア1の関係、それによる金額の圧縮といいますか金額の決定というのは、恐らくこれからしばしば使われていく一つの事実上の基準になるのではないかな、このように思っております。
  393. 谷口隆義

    ○谷口委員 ですから、私が今申し上げた観点で、これは一つの基準として、ぜひ今後も、この運用をする場合にやっていただきたいというように強く申し上げたいと思います。  それと、先ほどの話に戻るわけでございますが、本来、私は、優先株でやるべきだ。優先株は、全部これはキャピタルインジェクションできるわけでございます、ティア1になるわけですから。そうすると、どうして劣後債、劣後ローンでやるのかといいますと、株の希薄化、そういう問題が出てくる。要するに、市中に株が多く流れるというようなことも一つの理由だというような御回答でございました。  それであるならば私は申し上げたいのですが、これはまだかかっておらない法案でございますが、どうも政府の方は、例の土地の再評価の法案、また自己株式の利益による消却の法案を準備されておるようでございまして、これは賛否は別にして、土地の再評価を行う。行いますと、準備金がふえるわけですね。この準備金で自己株式を消却する。そして市中の過大に流れておる株を消却することによって株価対策にしていこう、多分こういうような発想なんだろうと思う。  そうしますと、今申し上げておるような、この優先株だけを認めるというような観点でも、それがセットのものであると考えますと、十分できるというように考えております。劣後債、劣後ローンというのは安直にできるものですから、これが多用されてくるということになりますと、公的資金を導入するという、障害を乗り越えるというか、それなりの覚悟でやってもらわなければいかぬわけでございますので、そういう観点から私はそういうように思うわけでございますが、今私が申し上げたことに対します御見解をお願いいたしたいと思います。
  394. 松田昇

    松田参考人 委員指摘のとおり、株数がふえるというのは、一般的、理論的に言うと、株価が全体に希薄化するという関係にあるのは、御指摘のとおりだと思います。  ただ、どうして優先株でやらずに別の方法でやるのかといいますと、それは発行主体、つまり公的資金を必要として申請してくる銀行の個々の事情によることが第一原則でございまして、それをとやかく我々は言える立場にないわけでございますけれども、私の考えと申しますか、個人的に考えてみますと、優先株は定款で限度が決められております。定款で決められているということは、株主がみんな了解をしているということだと思います。それで、その範囲でまず優先株の申告をなされたのではないか、そのように私は考えております。
  395. 谷口隆義

    ○谷口委員 定款に記載されていない金融機関は数行あるようでございますが、ほとんど定款には記載されているようでございますので、これは取締役会決議でできると思うのですね。そういう意味では機動性もあるわけでございますので、私はそういう考え方を持っておるところでございます。ぜひそういう考え方も考慮に入れていただきたい。  次に、大蔵大臣にお聞きしたいのですが、この貸し渋り対策に金融二法が果たして効果があるのかどうかということがあるわけでございまして、資金注入をします。資本注入をしますね。優先株ないし劣後債、劣後ローンで資金注入しますが、この資金を自己資本比率の改善のために使うわけでございますね。それが、その資金は一たん会社の資産に計上されるわけでございますが、基本的に金融機関の経営を今後問題のないようにしていくためには、一番大きな問題は、不良債権処理をしていかなければいかぬというようなところがあるわけでございまして、ただ単純に自己資本比率四%、八%の基準をクリアするというだけでは、これはまずいわけでございます。  そうしますと、この不良資産の償却のためにそのような資本注入した金額を使う、こういうようなことになるのではないか、資本注入したものがいわゆる貸し出しを増加させる、貸し渋りを阻止するというようなところに使われないのではないか、こういう危惧があるわけでございますが、これに対して大蔵大臣、どのようにお考えでございましょうか。
  396. 松永光

    松永国務大臣 基本的な考え方を私が申し上げまして、より詳しいことは局長から答弁をさせることにいたします。  自己資本比率について四%ないし八%がクリアできるかどうかという危惧のあるような場合には、どうしても貸し出しは慎重になるという傾向があることは事実であります。それがいわゆる貸し渋りの一つの原因ではないか。それは、資本が充実してくれば貸し出しの力はついてくるわけでありまして、したがって、貸し渋りの解消につながっていく。  それに加えて、申請に当たって経営健全化計画というのを出させておるわけでありまして、その経営健全化計画の中で、資本が充実したことによって、いわゆる金融の円滑化についてどのように考えておるのか、どのようにやっていくのかという具体的なことを記載した計画書を出させておるわけでありますから、それを金融監督庁は注視していくという立場にありますので、その面からも貸し渋りの解消に貢献してくる、こういうふうに私は思っております。
  397. 谷口隆義

    ○谷口委員 私が言いたいのは、一つは、後ろ向きの金といいますか、キャピタルインジェクションで注入した金額が不良債権処理に使われますと、貸し渋りが解消されませんよと。また、もう一つは、経済全体が成長していかないと、金融機関の方は初めから不良債権になるような貸出先に対して貸し出しをなかなかふやさないですよと。  こういうことでございまして、この資金注入をしていわゆる自己資本比率をクリアするといったところで、それが必ずしも貸し渋り対策にはならないですよということを私は申し上げたいわけでございまして、反論がございましたら、大蔵大臣、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  398. 山口公生

    ○山口政府委員 貸し渋り現象というもの、いろいろな複雑な要素だと思うのでございますけれども、リスク管理をきっちりやるということではない形での、ある意味では理屈のない資金の回収等ということに定義づけていきますと、それは各金融機関がやはり決算を非常に心配して、過剰に防衛的な行動をとっているということだと思います。そうしますと、こういった措置をとることによって、その緊張感をほぐすということで、貸し渋り対策にまず一つはなると思います。  それから、先生がおっしゃっている意味は、確かに自己資本の向上だけに充てたりあるいは不良債権処理だけに充てれば貸し渋り対策にはならないのではないか、それは、理屈としてはそういう理論が成り立つと思います。  しかし、基本的に、短期的な話と長期的な話ということで考えてみますと、いずれにせよ金融機関の財務体質がよくなりませんと、これはいつまでも貸し渋りと言われる現象を引き起こしてしまうわけでございますので、金融機関のそういう財務の健全性を保っていくということによって、資金の供給余力といいましょうか対応余力といいましょうか、そういったものを加えるということになりますと、いろいろなルートはありますけれども、結局それは、我が国の取引先にとってはプラスに働くのだろうというふうに思うわけでございます。
  399. 谷口隆義

    ○谷口委員 やはり一番大事なのは、私は従来から申し上げておったのですが、我が国景気バブル崩壊後一進一退をずっと繰り返しておる一番大きな原因は、不良債権の問題が根底にあってこれを解決していかないと足を引っ張られてしまう。ですから、今回の資本注入にしても、不良債権の問題はそのままにしておいて、一方で貸し出しを増加させるといったことでは根本的な問題解決にはなっておらない、このように私は言っておるわけでございます。  それにつけ加えまして、本年の一月でございましたか、大蔵省から不良債権の公表がございました。この数字は、自己査定の結果出てきた数字ということで、九七年の四月から九月までの半年間の自己査定の結果で出てきた不良債権の金額が、七十六兆円余りございました。四月から九月までの不良債権の金額は、その後起こった問題、例のアジア通貨危機から始まりましたアジアの危機、これは昨年の七月から始まったわけでございますが、これがこの不良債権の中には入っておらない。また、昨年の十一月におきます北拓、三洋証券、山一、徳陽シティ、これもこの中に入っておらない一また、翌月の東食の倒産にかかわる不良債権、これも入っておらない。こういう観点からすると、この後の不良債権は私は増加しておるのではないかというように思うわけでございますが、これに対しまして御見解をお願いいたしたいと思います。
  400. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  正確に申し上げますと、早期是正措置を控えて四月から九月の間にトライアルとしてやった自己査定の結果を集計したもので、二分類から四分類を足すと七十六兆円、こう申し上げておるわけでございますので、先生、不良債権が七十六兆円とおっしゃいましたので、そういう受け取り方をよく一般にされておりますが、決して不良債権が七十六兆というわけではございません。余計なことでございますが、ちょっと言わせていただきたいと思います。  それで、御指摘の、ふえているか減っているかということにつきましては、三月期決算で今度は本番になるわけでございまして、それで自己査定をきっちりやっていただくことになりますので、どうなるかちょっとわかりません。ただ、先生がおっしゃるようなことも要素としてはあると思います。  ただ、逆に、先ほど申し上げましたように四月から九月までのトライアルでの自己査定でございますので、九月期に償却したものというのも結構あろうかと思います。差し引きそれでどれくらい増減があるかというのは、ちょっと今の段階ではわからないというのが正直なところでございます。
  401. 谷口隆義

    ○谷口委員 今おっしゃったように、確かにこの七十六兆円というのは、第二分類が六十五兆円で、第三分類八兆円、第四分類が二兆円というような状況のようでございます。第二分類というのは、やはりこれは正常債権ではないのですね。銀行局長がどう言われようと、要注意貸し金と言われるものでございまして、やはり回収に疑義のある債権でございます。そういう意味において、やはり不良債権というように認識しておる方が多いというのは当然の話であります。  そこで、今試行的に行われたというようにおっしゃいましたが、その後の九七年十月から本年三月までの半年間におきます同基準における不良債権の金額を公表する御予定はございますか。
  402. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  恐らく次のきちんとした自己査定は三月期決算の前提となる自己査定になろうかと思いますが、それをどういう形でこういうふうに御報告申し上げるのがよろしいかどうか、いろいろ御議論を踏まえながら検討していきたいというふうに思っております。  せんだって出しましたのは、金融安定化二法を御審議いただきますときに公表不良債権のいわゆる二十八兆ベースの数字だけではなかなか御理解が賜れないだろうということで、急ぎそういうトライアルの数字を集計したものでございますので、そういった御事情をお考え賜れば幸いでございます。
  403. 谷口隆義

    ○谷口委員 ですから、第二分類においてもこれは要注意貸し金には間違いないのです。そういう意味において、この三月期が終わってしばらくかかるでしょうけれども、ぜひ同じ基準のものを公表していただきたい。  大蔵大臣にお聞きします。ぜひ同じ基準のものを公表していただきたい。要するに、まだわからないという御答弁なんでしょう、どういう対応にするか。大蔵大臣、言ってくださいよ。大蔵大臣が、いや同じ基準で出しますよと言ったら、出してくれるのですか。
  404. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。また三月期の決算が出ましたときに考えさせていただきたいと思いますが、一つだけちょっと懸念がありますのは、先ほど先生からもいみじくも正確におっしゃっていただきましたが、例えば二分類を非常に問題がある債権だというふうに余り決めつけていきますと、実はそれの取引先になつているところの融資というものの性格が非常に決めつけられるというおそれも若干持っているわけでございます。つまり、例えば相手企業が何年か赤字が続いたら、もうそれは不良債権だから貸してはいけないというふうに世の中がそれを見ていくという懸念もややあるかなと。したがって、私がいつも七十六兆という数字は不良債権とは呼ばないでいただきたいと申し上げているのはそういうことでございまして、中小企業等で二分類になってしまっているところもあるわけでございます。そういうところがもうちょっと頑張れば正常債権に戻る場合もあるわけでございます。それを、不良債権だからもうそこには貸すなというような感じになっていきますと、先ほどのちょっと貸し渋り現象との結びつきもありますが、その点も考慮に入れなければいけないなというところがありまして、ちょっとそういう意味での御返事をさせていただいたわけでございます。
  405. 谷口隆義

    ○谷口委員 金融二法の三十兆円を導入するということは、莫大な金額です。これは交換条件といってはなんですが、情報公開をしっかりやってもらわなければいかぬ。国民は必ずこういうふうに言っていますよ、情報公開を。そういう観点でいくと、一々個別の不良債権先を提示するのではなくて、大蔵省が本年一月に出したような基準に基づいて分類別に出すというようなことは、これは当然の話であるというように私は思います。ぜひそういうようにしていただきたいというように申し上げたいと思います。余り時間がないものですから、次に参りたいと思います。  次に、今回のこの税制関連の質問をいたしたいと思いますが、一つお尋ねしたいことは、個人の居住用財産を買いかえた場合の譲渡損失の繰越控除制度を今回創設されたということでございます。今までは譲渡損失が出れば単年度に限りその年間の所得から控除されておった。それが、今回はそれにつけ加えて三年間延長したということですから、合計四年間この対象になる、控除ができる、こういうことだろうというように思うところでございます。  それで、バブルが崩壊して今一般的に言われておるのは、地価は大変下落した。九七年九月現在で六大都市商業地の地価は、ピーク時の二六・一%の水準まで下落しておる。ですから、もう七割以上の価格がバブルで吹っ飛んだと言われております。  一方、個人住宅の含み損ですね。含み損というのは、例えば一千万で家を買って、もう今三百万円でしか売れない、こういう含み損。これのマクロ的な合計で統計をとりますと、大体三十二兆八千億ぐらいあるというように言われておりまして、これは九六年の名目住宅投資二十七兆九千億を上回っておる、大変大きな含み損がある。その中で特に分譲マンション、一九九〇年ぐらいに買われた分譲マンションが大体半数ぐらいの含み損だ、このように言われています。マンション保有者にとっては、このような含み損があるので、本来なら、今までは八年ぐらい住んだらそれを売却してまた次にかわった、こういうような買いかえ需要があったわけでございますが、それができない。それにつけ加えてマクロの、マクロというのは、全体の住宅ローンの残高の累計が今百三十五兆五千億。これは九六年の名目個人消費の、三百三兆でございますが、大体これの四五%ぐらいに当たっておる、このように言われておりまして、大変な借金残がある。  こういう状況の中で、今回譲渡損失の繰越控除制度が創設されたわけでございますが、初めに、この制度が創設された意味合いと申しますか、目的をまず述べていただきたいと思います。
  406. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今先生からお話がございましたように、平成十年一月一日から十二年十二月三十一日までの三年間の臨時的な措置といたしまして、居住用財産の買いかえの場合の譲渡損失の繰越控除制度を設けることにいたしました。中身は省略させていただきます。  この制度の目的でございますが、もちろん住宅をめぐる諸情勢に配慮するとともに、バブル期に住宅を購入し、住宅の含み損を抱え、買いかえに踏み切れないでいる人の住みかえを支援するため、臨時的に措置することにしたものでございます。
  407. 谷口隆義

    ○谷口委員 そういうように私もお聞きしておるところでございますが、先ほど申し上げましたように、大変なローン残高があるというような状況の中で、例えば夫婦二人子供二人の四人家族の場合、夫の収入が一千万としますと、これは所得税と住民税を合わせて年間百二十万かかるわけでございます。これが例えば四年間繰り越しができるということになりますと四百八十万なのですが、分譲マンションの一戸当たりの平均含み損を見ますと、大体千九百万になっておるようでございまして、この千九百万に対して、今回のこの譲渡損失の繰り越しを行っても五百万あるかないか。こういう状況の中で、果たして当初の目的どおり景気活性化、買いかえ需要の喚起というようなことができるのかどうかというようなことがあるわけでございますが、これに対して御答弁をお願いいたしたいと思います。
  408. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 先生のお尋ねは、もっと大胆な措置にすべきではなかったかということかと思います。  実は、この所得税でございますが、一暦年の所得に対して累進税率を適用する税でございます。したがいまして、一暦年ごとに所得計算を行うのが原則でございまして、ある年に生じた損失といいますのは翌年以降の所得計算には反映させないというのが基本的な考え方であって、この例外は極めて限定されているところでございます。また、居住用資産の売却時に譲渡益が生じる場合の取り扱いでございますが、三千万円の特別控除がございます。あるいは買いかえの特例、軽減税率というようなことがございまして、ほとんど譲渡益に課税はなっていないのでございます。そうなってまいりますと、その損だけ税制上配意していくというのは、所得税の考え方からしてどうであろうかというふうに考えられるところでございます。  この点、諸外国の税制について御説明してもよろしいわけでございますが、時間もありませんのでそれはともかくといたしまして、今回の制度をもう一度申しますと、我が国の所得税制といいますのは、譲渡損失の発生した年におきましては、そもそも全額他の所得からの通算が認められるわけでございますが、今回の措置は、さらにその繰越控除の制度も認めるということになっているわけでございます。したがいまして、所得税制の中で何を考えるかということでございますが、もっと大胆なこととなりますと、この所得税制の限界を超えるということになってしまうということもぜひ御理解いただきたいと思います。  なお、十年度税制改正はこれだけではございません。居住用財産につきましては買いかえ特例の要件緩和をしてございますし、住宅取得促進税制の所得要件につきましても引き上げなと思い切った措置を講じていることも御理解いただきたいと思うわけでございます。
  409. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたので残余の質問は後日いたしたいと思いますが、先ほど主税局長おっしゃったように、やはり買いかえ需要を喚起するほどの効果はないように私は思うわけでございまして、本来ならもっと大胆にやっていただく必要があったのではないかというように申し上げて、質問を終わりたいと思います。
  410. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、鈴木淑夫君。     〔委員長退席、浜田一靖一委員長代理着席〕
  411. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。主として法人税の引き下げ、それから租特の関係で、きょうは一回目ですから、基礎的なことをお伺いしたいと思っております。  まず最初に、法人税の基本税率引き下げでございますが、松永大蔵大臣は、この法人税の基本税率引き下げの目的と期待しておられる経済効果、どういうものが頭にあってこの基本税率の引き下げを御提案されておられますのでしょうか。
  412. 松永光

    松永国務大臣 経済活動をしておる主体は法人が非常に多いと思うのですが、法人税が引き下げられれば、その経済活動の主体の負担が軽減されて、それによって事業活動が盛んになってくるという面が一つ。もう一つは、今や国際的な競争時代でありますから、外国の法人に比べて日本の法人の負担が多いと競争力がついてまいりません。その二つの面が主たるプラスの効果かなというふうに私は思っております。
  413. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  そういうこと、特に二つ目におっしゃった、国際比較で国際競争力上法人税率をお下げになったということでありますと、この程度の下げではまだ国際比較をしたときに税率は高いというふうに思いますが、その点については蔵相自身はどういうふうにお考えでしょうか。つまり、この先もっとやりたいんだけれども、とりあえずはこうなんだよということなのか、それとも、いや、これでいいんだというお考えなのか、いかがでございましょう。
  414. 松永光

    松永国務大臣 国税の基本税率としてはアメリカよりも少し低くなったということがありますが、実際の負担からすれば、地方税の方の負担があるものですから、その面でアメリカよりも負担が重いという状況にあると思います。税制調査会の方でもその点についてはさらに検討が加えられるものと思うのでありますけれども、地方税の場合には、地方の財源をどうするかという問題等と絡んでくるものですから、大変難しい問題も出てこようかと思いますけれども、それはこれからの税制調査会の議論の中で何とかまとめられることを期待しておるわけであります。
  415. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 私も、実効税率から考えてまだ引き下げは不十分だなと思っておりますが、その理由の一つに地方税の事業税との絡みがあるということはおっしゃるとおりだと思います。後ほどその点についてもお尋ねしたいと思います。  そういうわけで、いい方向に動いているのだけれども、国際比較、国際競争力という観点からは、私はこの法人税率の下げ、特に実効税率ベースで議論したときに下げは足りないなと思っておりますが、もう一つ経済効果ですね。おっしゃるような経済効果が確かにあるというふうに私も思っておりますが、他方で、来年度の予算は財政構造改革法のキャップの関係で相当な歳出の切り込みをしておりますね。一般歳出で四%ぐらいですか、額にして二・二兆円でしたか。公共事業だけ見ると、十四兆円ぐらい切り込んで、たしか額は一・三兆円でしたか。歳出の削減を相当やっておられます。ネット減税の額よりはるかに大きな歳出の削減をしておられますので、この法人税の減税の目的が、そういう法人企業の投資活動を活発化させて、事業を盛んにして、それを通じて景気を支えていこうということにあるとすれば、他方で全然逆行する歳出削減をやっておるわけですが、その辺の整合性について蔵相はどういうふうに考え、整理されておられますか。
  416. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 一言、法人税制改革についてつけ加えさせていただきたいわけでございます。  今回の税制改革、ネット減税で課税ベースを拡大し税率を引き下げるということにしてございます。この課税ベースを拡大するという意味合いでございますが、まさに産業間、企業間の中立性を確保するという意味合いがあろうかと思います。つまり、税制の面からすると、ある特定の企業を結果的に有利に取り扱わない、みんな同じような状況でやっていただきましょうという意味合いがございます。それから、特に課税ベースの観点でまいりますると、新規産業や新規企業といいますのは内部留保が薄うございます。税率の引き下げの効果がもろに、そのままきいてくるというところがございます。  こういう形で経済活動に対する税の中立性の確保を図り、税負担の不均衡を直す、こういう意味合いで、当面の景気に対しても有効かと思っておりますが、構造改革的に、まさに資源配分を適正化し、新規産業を創出し企業活力の発揮に役立ち、さらに外国との関係では対内投資の拡大につながる、このようなものが今回の法人税制改革であろうというふうに考えております。
  417. 松永光

    松永国務大臣 歳出の方は、一般歳出が一・三%、五千七百五億……(鈴木(淑)委員「当初予算ベースじゃなくて、補正後の九年度比較で」と呼ぶ)失礼しました。当初予算ベースのメモしか持っていないわけでありますけれども。  しかし、公共事業等を七・八%もカットしたわけでありますけれども、特に科学技術振興費等を四・九%増にしておるわけでありまして、新しく伸びる分野には配慮をしながらの公共事業費のカットであるというふうに認識しておるわけであります。  法人税の減税によって国内の企業活動を盛んにするという効果、その効果が初年度は三千数百億あるわけですけれども、課税ベースの適正化ということが二年目からかかってきますが、六年計画でやりますので、七年目からは一兆円近い減税効果が出てくるということで、それを法人の責任者は、将来はそうなるということで期待を持ってくれているのじゃなかろうかというふうに思います。  なお、法人が設備投資する場合には、当年度もさることながら、数年後の税負担がどうなるかということを見た上での設備投資等の投資に入るのだと思うのでありまして、その面で、二年度からしばらくの間減税効果は少のうございますけれども、七年目からふえてくるという期待があるということでその効果は出てくるだろう、こう見ておるわけであります。
  418. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 私は、ここに提出されている税制改革関連の法案の中で評価していることの一つは課税ベース拡大です。  先ほどの主税局長の御説明にありましたことは私も賛成でして、課税ベース拡大によりまして、在来型の産業、古い企業にとって有利だけれども、エマージングインダストリーあるいはベンチャービジネスにとって不利に働く、今回の課税ベース拡大はそこを修正することによって、日本経済、産業の構造改革を促進する効果があるという点は私は大変評価をしております。  今蔵相おっしゃいましたように、この課税ベース拡大の影響が終わる七年目以降は、蔵相は遠慮して一兆円近いとおっしゃったけれども、一兆円を超える減税になるのですね。それはそれでよくわかっているのですが、私が蔵相に御質問したことは、経済効果を考えるときは当初予算ベースで比較して議論していたのではだめだと思うのですね。予算編成上の技術的な話になると当初の方がいいかなということになりますが、経済効果の場合は、補正後の前年度予算に対して当初予算はどれくらいかなということで議論をしておかないといけない。その議論をしないと、では追加的な補正予算はどのくちい要るのだろうという議論も成り立たなくなりますから、そういう意味で、私がさっき言った、一般歳出の削減が四%ちょっとだ、金額にしてたしか二・二兆円ぐらいだったかなと言ったのは全部そういう補正後の比較なのですね。それでいったときに、ちょっと歳出削減の方がネット減税額より大きいので、もしこの減税景気刺激を考えているというのなら、これは足りませんよということを言っているわけです。  課税ベース拡大のような構造改革をねらっているところは今申しましたように私は評価しておりますが、景気刺激ということを考えているという点と、さっき言った国際的な比較をしてちょっと日本の企業負担は高過ぎるなということを考えるど、この二点は、この程度の法人税率下げじゃ足りないのですよというのが私の意見でございます。  ですから、さっき質問しましたのは、足りない減税をして、その減税景気刺激を考えているのだとおっしゃると、しかしおかしいですね、予算全体では逆じゃないですか、歳出削減の額の方がはるかに大きいじゃないですかという僕の疑問になるわけでございます。  なお、さっき蔵相は、科学技術振興等は公共事業を伸ばしておる、それは私も十分承知しております。そもそも財革法のキャップのところがそういう格好をしているわけですから、それを反映してそういうふうになっているのですね。そのこと自体は私は結構だと思いますが、しかし、単にそういうふうにキャップの高さでプラスシーリング、ゼロシーリング、マイナスシーリングとやっているだけでは本当の歳出構造改革にはならないと思うんですね。歳出の構成は変わりますよ。公共投資の構成は変わります。このこと自体は私は評価します。だけれども、やはり公共投資の中に含まれているむだとかあるいは公共投資の単価とか、そういったものへの制度的切り込みなしに、キャップという言葉をお使いだから私もキャップという言葉を使っていますが、何のことはない、プラスシーリング、ゼロシーリング、マイナスシーリングで一般歳出項目ごとに頭を抑えている。それだけじゃ、私は、橋本総理が言っておられる構造改革、真の意味の構造改革は進まないなというふうに思っております。それは私の意見として申し上げておきます。  そういうわけで、私は、どうもちょっとこの法人税率引き下げは中途半端だ。景気刺激としては歳出削減の方が大きいから、これは差し引きしたら総合効果ではデフレ的だ、そういう意味で中途半端だ。それから、国際比較してもまだ実効税率かなり高いじゃないですか。これも中途半端だというふうに考えております。  重ねて蔵相にお伺いいたしますが、いかがでしょう、中途半端なことはわかっておる、だから国際比較上もう一歩実効税率下げるのは来年度以降の仕事である、それから経済効果としてややデフレ的なことはわかっておる、だから今は言えぬが補正予算を考えておる、この辺の御説明があると、なるほどねということになるわけでございますが、補正予算言えと言ったって言いっこないので、それは除いて、いかがでございますか、やはりちょっと中途半端だ、まだこれは緒についたところだというふうに考えておられますか、税率下げ。
  419. 松永光

    松永国務大臣 委員の誘導質問にひっかかってしまいはせんかということを常に警戒しながら答弁をしておるわけでありますが、やはり私の立場は、よく御存じのとおり、御審議を願っておるこの法律案を新年度からすぐ施行できるような状態にしていただきたいということが一つ。  それからもう一つは、今度の法人税の改正法案、これは国税の関係では先ほど申したとおりアメリカよりも少し低くなりましたけれども、実効税率がアメリカ等に比べて高いのは、やはり地方税の関係でございます。これについては、これからの税制調査会で十分論議をしていただいて結論を出していただくものと思いますし、それから地方財源との関係がありますのでなかなか難しい面もあろうかと思いますけれども、いずれにせよ、これからの政府税制調査会で議論していただいて結論がいただけるものだ、こういうふうに考えているところでございます。
  420. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  そうなんですよね。私さっき申しましたようにちょっと中途半端なんですが、その一つの原因が地方税の法人課税にあるわけであります。基本税率としては三四・五まで下げたというのはかなりの下げだと思いますね。私ども自由党が主張しているのは三二・五まで下げろと言っていますが、しかし三七・五から三四・五まで来たというのは、真ん中よりも三二・五に近づいている、かなり下がつたなと思います。でも、まだ中途半端だと思いますので、私どもとしては、基本税率を三二・五まで下げると同時に、やや棚上げの形になつちゃった地方税における法人課税をどうするかという問題についても、正面から取り組んでいただきたいというふうに思っております。  いろいろ厄介な問題がある、それはまあそうでしょう。事業税もカットしてしまえば、じゃその財源どうするのとか交付税よこせとか、いろいろな問題にはね返っていきます。でも、だからといってそれを回避していっていいものではないわけですね。ですから、とりあえず来年度の税制改革ではちょっとこれ素通りさしてもらったが、この先やはり手をつけるんだということだと思うんですね。  自治省の方にもお伺いしますが、蔵相に、ちょっとこれは厄介だから回避したが、本来はこういうふうな形で地方税の法人課税も減税すべきだ、あるいは改革すべきだというお考えがございましたら、お聞かせいただきたいと思います。
  421. 松永光

    松永国務大臣 いずれにせよ、それは税制調査会で論議を重ねていただいてその結果を見て我々は対応していくという立場でございます。
  422. 片山善博

    ○片山説明員 法人事業税の問題でございますが、平成十年度の地方税法の改正案の中で、法人事業税の基本税率を二%に引き下げるという改正案にしております。  これは、法人税の改正によりまして課税ベースが適正化されるということに伴いまして、法人税と同じような考え方から行うものでありますが、法人税と同様に、地方税の中にもいわゆる実質減税が含まれております。  さらに、法人税に対して一定の税率で課税しております法人住民税の方も、税率を変えませんので、比例的に下がるということになります。  このほか、法人事業税につきましては、いわゆる外形標準を導入してはどうかという問題がございまして、政府税制調査会においても昨年種々議論があり、答申においては、「平成十年度において、事業税の外形標準課税の課題を中心に総合的な検討を進めることが必要」とされておりますので、私どもはその方針に沿って検討してまいりたいと考えております。
  423. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そうしますと、法人税率の下げがはね返った限りでは下がるわけですが、実効税率の低下は国税側でどれだけ、地方税側でどれだけになるんですか。
  424. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今回、実効税率、私ども表面税率という言い方の方が誤解が少ないかと思っておりますが、これで申し上げますと、トータルで四九・九八から四六・三六へと下がるわけですが、その内訳を申し上げますと、国税の実効税率は三三・四八から三一・〇八、地方税の方でございますが、一六・五〇から一五・二八ということになります。
  425. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 もう一度言ってください。
  426. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 もう一度申し上げますと、地方税の方が二八・五〇から一五・二八でございます。国税の方が三三・四八から三一・〇八でございます。  以上でございます。
  427. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 私は、今の数字でおわかりのように、もう少し本格的に地方税について税制構造の改革を通じて実効税率を下げて、全体としての実効税率は、我が自由党の主張は四〇%までは少なくとも下げようよということなんですね。四〇%まで下げようとすると、法人税側は基本税率を三二・五まで下げていただいた上で、地方税の方も、そのはね返りというだけではなくて、やはりさっきちょっとおっしゃいましたように、法人企業に対する課税そのもののあり方を地方税の体系の中でぜひとも検討をしていただきたいものだというふうに思います。  それで、地方税というのは、やはり基本的には地方公共団体が提供しているサービスを享受している主体に対する応益課税だと思うんですね。それに対して国税は、担税力を考えて、応能課税でネーションワイドでかけていくということでよろしいと思うのですが、地方税の場合は公共サービスに対する応益課税というふうに考えていって、そういう地方独自の税源を確保する方向にぜひとも税制改革をしてもらいたいと思います。  そういたしますと、やはり私も外形標準でかけるべきだと思うのですよ。そうすると、赤字であろうと黒字であろうと、とにかく地方公共団体のサービス、そのサービスの中にはインフラストラクチャーを使っているという意味が入りますが、そういうサービスを享受して企業活動をしている以上、赤字だって一定の応益課税を払わなきゃいけない。その意味で、私は外形標準でかけるべきだと思います。  外形標準といった場合に、さまざまなものが考えられるわけですが、自治省さんは、今方向としては、一長一短ありますが、どういうものを外形課税の標準として一番いいと考えていますか。
  428. 片山善博

    ○片山説明員 外形基準の導入につきましては、先ほど申しましたように幅広く検討するということになっておりますので、何を外形基準にとるかということも含めてこれから検討してまいりたいと思います。  外形基準のとり方によりまして、やはり納税者間の税負担の変動でありますとか、それから当面の都道府県間の税収の変動がありますので、どういう外形をとればどういう影響があるか、一長一短いろいろありますので、その点を含めて検討してまいりたいと考えております。
  429. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 どういう外形基準がいいかという議論のときに、今のような御配慮はもちろん必要ですよ。納税者間で影響が違うとか、地域によって影響が違うとかいう配慮も必要だけれども、まあそんなのは激変緩和措置をやればいいことで、もっと基本的な視点は、やはり産業構造に対する影響の視点というのを忘れないようにしてほしいのですね。  今の地方税の外形基準ですと、事業所とか人員とかそういうものを手がかりにしたのがある。そういうことになりますと、すごく産業別に有利不利が分かれちゃうわけですね。人を大勢使う産業は、人員を外形基準にとられたらえらい不利になつちゃう。それから事業所の数と言われると、ディーラーみたいにたくさんの事業所を持っているところがえらい不利になっちゃう。産業別にひどく公平不公平が発生するわけですね。  そういう観点から考えると、私は、産業に対して一番ニュートラルな、中立的な外形基準というのは付加価値だと思っております。これがまた売り上げというと不公平になっちゃうのですよ。これは不公平になります。もちろん人件費も不公平になる。だけれども、付加価値は、各産業に対して割とゆがみなく中立的にかかっていくというふうに思いますね。  ただ、付加価値を外形基準に取り上げたときの一番の弱みは、それが消費税とどこが違うのかという話であります。もちろん理屈を言えば、付加価値税は企業負担だ、消費税は消費者に負担させるんだから違うんだ。それから、消費税はしたがって応能負担ですよ、消費をする能力のあるやつにかけているんだ。だけれども、付加価値税は、それだけの付加価値を生み出すに当たって地方公共団体のサービスを享受しているのだから、これは応益課税だ。まあ理屈を通せばそういう議論もできるのですが、弱みはちょっとあって、付加価値にかけた地方の企業課税を転嫁したら消費税と同じだ、こういう弱みもあるのですね。ただ、転嫁の議論を始めたら、法人税だって転嫁されているかもしれないという議論がありますから、これは泥沼に入りますので、転嫁の話は私はおよそ実りのある議論じゃないと思うのですね。  だから、そういう意味では、ぜひ真剣に外形基準として付加価値をとるということを、今後の税制改革の中で、政府税調の場等において、自治省の見解としてももっと大胆に打ち出していい。さっきおっしゃったみたいに、納税者の間の公平不公平とか地域間の公平不公平とか、そんなのではなくて、企業活動、マーケットに対する税制の中立性、企業活動の話なんだから、そういう観点を理論的に打ち出して、それでいけば付加価値が一番いいよということでやってもらいたいものだというふうに私は思います。それが導入できたら、その場合には地方消費税をなくしちゃってもいいんですね。消費税はやはり応能課税で、これは国税だよといってなくしちゃってもいいわけです、地方税としてきちっとした付加価値を外形基準にした課税が入れば。  いかがですか、自治省さんとして今の私のような考え方は。
  430. 片山善博

    ○片山説明員 従来の議論の中で付加価値が適当ではないかという議論、もちろんありました。その場合でも加算型がいいとか控除型がいいとか、そういう議論はありました。ただ、付加価値に対する異論反論もございます。そのほか幾つか外形の候補としてはございますので、それぞれ、先ほど申しましたように一長一短検討しながらやっていきたいと思いますが、何よりも、やはり何を外形にとるかといった場合には、事業活動の大きさを客観的かつ公平にあらわしていること、これが一番肝心だろうと思います。それから先ほど御指摘になられましたが、できる限り、例えば経済活動に中立的であるとか、それから将来の産業経済構造の姿にも合致しているとか、そういうことが重要だろうと思いますし、それから地方税でありますので、いわゆる負担分任の原則、公平に薄く広くという原則にもかなっていること、それからやはりこれによって徴税費が莫大にかかるということは避けたいと思いますので、なるべくシンプルで簡素なものが望ましい、こんなことを頭に置きながら、これから検討してまいりたいと考えております。
  431. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そういうことを頭に置くのはもちろん結構ですが、ひとつ前向きに御検討いただきたい。  これは、実は私、税制調査会のメンバーとして長年主張してきたことですから、自治省さんの内部でも大蔵省さんの内部でも御存じの方はいらっしゃると思いますが、多少そういう方向へ動いているなという感じがするものですから、もう一押ししたいというのが、今度は政治家の立場になっての私の見解であります。  それから今度の税法でもう一つ、これは実は質問要項の中に入れておきませんでしたので、主税局長さんで結構でございます。蔵相、もちろん御意見がありましたらぜひお聞かせいただきたいのですが、資産取引に対する課税、資産の取引コストを上げている税制というのが日本にある。国際比較で見ても、日本の資産取引のコストを上げているこの税金、外国に余りないから、これは不利だというのがあるわけですね。有価証券については、御存じのとおり有取税と取引所税がそれに当たります。土地については、不動産取得税と登録免許税がそれに当たるわけですね。  今度の税制改革で有取税を半分下げるというのが入っているわけですが、これまた中途半端だなと私は思うのですね。金融ビッグバンに備えて、日本の資産取引のコストをできるだけ下げようという観点から考えますと、土地と有価証券の取引コストを上げている税制というのは、できることなら廃止した方がいい。土地の取引はなかなか海外へ逃げ出しませんが、有価証券取引はビッグバンの後は海外へ逃げ出しやすいですからね。そういう意味で、ここもちょっと中途半端だなと私思っているんですよ。これもさっきのお答えと同じで、いや、有取税は将来廃止したいのだが、納番制の導入との絡みもあったりして、そろりと参ろうというので半分やったというのがお答えかなとは思いますが、この辺の、資産取引コスト下げのための税率の下げが中途半端じゃないのかという点についてはどういうふうにお考えですか。     〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕
  432. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 今委員お尋ねがございましたのは、いわゆる流通税についての一つの、どう考えるかということでなかったかと思います。  今回、有価証券取引税、取引所税につきましてはそれぞれ半減しているわけでございますが、これらの税につきましては、一方におきましてそれなりの税収になっているという点もございます。また他方、デリバティブその他が複雑になってまいりますと、所得課税の分野で取り切れない分野が出てくる。仮にそうであるとするなら、このような外形的な税も見直す点もあっていいのではないかというような意見もございました。  しかし、よくよく今我々に要請されていることといいますのは、政策的観点からまさに金融・資本市場の活性化を図っていくことにあるということだと思います。また、今御指摘のように、金融のグローバル化に伴いまして、海外シフトへの可能性の拡大ということも念頭に置かなければならない。  他方、今のような意見やらこの税制全体を考えます場合は、有価証券取引税だけではなしに、株式なら株式を取り巻くキャピタルゲイン課税がどうなっているのかということもあわせて検討していかなければ、その税についての結論も得がたい面もございます。  そういうことで、今年度は税率を半減することといたしまして、平成十一年末までに金融システム改革の進展状況、市場の動向等を勘案して見直し、株式等譲渡益課税の適正化とあわせて廃止することとしているわけでございます。
  433. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そうなのですね。譲渡益課税の問題も総合的に解決をしなければいけない。そこで、納番制の話が出てくるわけですね。あるいは資産取引にだけ入れる納税番号かもしれないし、総合的な番号かもしれない。蔵相は、この納税番号制を導入してこういう資産取引のキャピタルゲインを把握しようという、この方向についてはどういうふうにお考えですか。
  434. 松永光

    松永国務大臣 午前中も私は率直に自分の気持ちを申し上げたわけですが、やはり番号制というのは、行政の側からすれば非常に効率的に業務が遂行できるという面があると思うのですね。大いにあると思うのです。  しかし、今度は一般国民の側からすればどうだろうかなと。その一般国民の理解度といいましょうか、そういったものを見ながら判断しなければならぬことではなかろうか、こう午前中申し上げましたが、まあそうだろうと思っておるわけでございます。
  435. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 前に、グリーンカードのときに大失敗をしましたから、蔵相のような御心配があるということは私もよくわかります。  ただ、グリーンカードのときは、もうあれで何もかもみんな情報開示みたいになりかねなかったと思うのですが、資産取引に限定して使う納税者番号ということでやりました場合には、私はもうぼつぼつ国民の側にも理解が進んできているのじゃないかなというふうに思うのですね。ですから、私は推進論者の一人でございます。  ただ、その場合に、納税番号制を入れるのだ、それでキャピタルゲインを把握するのだといいますと、ああそれで総合課税ですかと、ぽんとそこへ議論が飛んでいくのですが、私はそこでいつも待ったをかけておりまして、キャピタルゲインを把握したからといって、それを所得税の中に入れてしまって総合課税するのが一番いいとは限りませんよと。  これは、今利子に二割かかっているわけですね、源泉で。全部の金融資産について、そこから上がる果実には二割なのですよという形の源泉課税という手も残っているのですね。納税番号を入れても、総合課税にいかなければいけないという理屈はない。  そこでもう一つ議論があって、総合課税か源泉かという選択があるわけですね。私は、どちらかというと源泉でいった方が、税制としての、金融取引に対しての中立性が保てると思うのですね。所得の水準によっていろいろな税率ですよというのは、金融取引に対する中立性がゆがんできてしまうのですね。金融取引を撹乱するおそれがあります。  特に、デリバティブスというようなものが入ってきますと、この部分はキャピタルゲインでこの部分は金利だなんて識別が難しくなってしまうこともあります。  だから、もう全部一律に分離課税で二割なんということができれば、これは納税番号を入れて非常にすっきりした中立、簡素な税制になるなというふうに考えております。  これが私の最後の質問でございますが、その点について、もしお考えがございましたら、どうぞ。
  436. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 金融システム改革が、いよいよビッグバンが始まるということで、税制でどうするかということから、税制調査会に実は金融課税小委員会というのを設けまして、昨年来議論を続けてまいりました。それで中間報告というのを出させていただいたわけでございます。  その中で、今先生御指摘の総合課税と分離課税をどう考えるかというところがございます。一つは、今、納税者番号制度の導入あるいは資料情報制度の整備状況がどうなるかという問題がございますが、それはさておきまして、前提となる所得課税の累進度との関係、具体的には最高税率が国、地方を含め六五%である現状のもとで総合課税化すれば、垂直的公平は確保される一方、海外や不表現資産へ資金シフトしないかというような問題点の指摘、また所得課税の税率構造をフラット化していけば、総合課税と分離課税との実質的な差異は縮小していくのではないかというような御指摘もございまして、これからなおどのように考えていくか検討していかなければならない課題だというふうに認識しているところでございます。
  437. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 質問を終わります。
  438. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木憲昭君。
  439. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 午前中の質問に続きまして、まず、公的資金投入問題についてお伺いをしたいと思います。  私たちはこの投入そのものに反対ではありますけれども、今度の申請を見ますと、二十一行申請書が出されている。合わせて二兆一千億円。このうち、都銀九行というのがすべてほぼ一行当たり一千億円と横並びである、これはどう見ても異常な事態であります。各銀行状況というのは、それぞれ違うと思うのですね。自己資本比率も違う、それから不良債権の額もやはり違うと思うのです。  しかし、この十三の銀行がなぜ一千億円で横並びになってしまうのか、都銀九行が全部一千億円になるのか、なぜかという問題があるわけですけれども、これは大蔵大臣、なぜこうなるとお思いでしょうか。
  440. 松永光

    松永国務大臣 なぜと言われても、私にはわからないのです。  いずれにせよ、もう前々から護送船団方式という批判を受けていることでもありますので、今回のことについて大蔵省銀行側にいろいろな働きかけをしたということは全くないというふうに私は聞いております。  銀行側は補助金とか助成金をもらうという関係じゃないのでございまして、自分で判断をして、そして優先株を発行しよう、あるいは劣後債、劣後ローンを出そうと。当然のことながら、金利を払うわけですね。あるいは配当金を払わなければいかぬ、しかも優先株の場合には優先して。そういう銀行側の負担を考えれば、やはり独自の判断で、この機会にこの程度の、あるいはこういう方式による資本充実を図ろう、資本の注入を要請しようということで、それぞれ銀行が考えられて申請された結果がこうなったんだというふうに私は理解をしておるわけです。
  441. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 それぞれの銀行が独自に判断をして出した結果がこうだと。どうも私は不思議でならないわけです。何かがあったのではないか。少なくとも、談合があったのではないか。  大蔵省は圧力をかけたことはない、このようにおっしゃいました。しかし、これは毎日新聞が三月八日付でこういう記事を出しているわけであります。自民党が圧力をかけた、こういう記事が出ているのですね。けしからぬ話であります。二月中旬の自民党財政部会・金融問題調査会と大蔵省とのやりとりの内容が報道されているわけです。どういう中身かといいますと、かいつまんで申しますと、こういうことなんです。  大蔵省の説明としては、大蔵省「現在のところ、申請を打診してきた銀行は一行もありません」。これは二月の中旬の話です。自民党「利用されないのはおかしい。党の威信にかかわる」。大蔵省「申請は各行の独自判断です」。自民党「大蔵省にはもう頼まない。党の幹部から直接、銀行に働きかけてもらう」。こういうやりとりが載っているのですね。自民党幹部は、その直後に銀行の代表を呼びつけているのですね。「足並みをそろえて申請すれば、日本が官民挙げて金融システム安定化に取り組んでいる姿勢を内外にアピールできる」、こう言って銀行を説得したという記事が出ているわけであります。  こういうことを報道されているわけです。大蔵大臣、こういうことはやってはならないと思うわけですけれども、こういう報道を今御紹介しましたけれども、実際にそういうことはあったのでしょうか。
  442. 松永光

    松永国務大臣 私は、財政部会というところには二十七、八年の政治生活の中で何回か出たことがありますけれども、金融問題調査会というところに行ったことはありません。ましていわんや、閣僚に任命されてからは行ったことはありません。  その記事は、私は見たことはないのです。多忙なものですから、新聞をろくすっぽ見られないぐらいなんでありまして、そういうふうな会があって、そして議論がなされたということは、全く私は知らないところなんです。
  443. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 これは、かなり目立つような内容の記事なんですね。毎日新聞としては取材をして書いたのだろうと思うのですね。これは、今確かめていないというふうにおっしゃいましたが、こちらの方に聞いた方がいいかもしれませんけれども、三日前にこういう重大な報道があるわけです。やはり大臣としても、こういうことがあったのかどうかということについて注目して調査をするということは、事実関係をただしてみるということは、これは当然のことだと思うのですけれども、この点、いかがでしょうか。
  444. 松永光

    松永国務大臣 本当に私はその会合に出ておりませんし、実はその新聞も見ていなかったのです。今委員お話でございますから、友達で出た人があれば、その話を聞いてみたいというふうに思います。
  445. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 なぜ私はこういう問題を提起するかといいますと、銀行の側が本当に必要として申請を出しているのかどうかという点に疑問を感じるからなんです。別な形で説得されて出したのではないか、本当は出す必要がないのに出さざるを得なくなったんじゃないか、こういう疑問を持つからなんです。  例えば東京三菱銀行の岸頭取、全銀協会長でありますけれども、この方は十二月の時点でこういうふうに発言をされているわけです。これは「金融財政」というものですけれども、十二月二十五日号ですが(最大手の東京三菱からやったらどうかということを問われまして、こう答えているのです。「それはかなり違和感のある話。どの銀行が危ないかをぼやかすために、ある銀行に国家の資本を入れるというのはどうかと思う。」違和感がある、こうおっしゃっているのですね。それから、「東洋経済」の二月七日付、これを見ますと、「私どもはコマーシャル・ベースだけでも対応できると思うので、できれば避けたい。」申請を出すのは避けたいと言っているのですよ。それから岸頭取は、毎日新聞の昨年十二月二十日、「金融機関の自己資本拡充への活用は、モラルハザードの問題がある。護送船団方式と言われかねず、」難しいのではないか、こうも言っているのです。  ですから、私は、この全銀協会長の認識、これは二月の上旬までは、公的資金の投入は自分の銀行としては必要がない、できれば避けたいと。なぜ避けたいかというと、公的資金を投入されるといろいろ介入があるかもしれない、あるいはリストラを強制されるかもしれない、こういうことがありますから、独自の自主的なやり方をしたいという気持ちがあったのかもしれない。ところが、先ほど言いましたように、横並びだから、東京三菱も一番銀行としては大手のトップだけれども、そこが申請を出してもらわないとほかが困るからやってくれ。こういう形でもしゃられていたとすれば、これは極めて重大であります。  問題は国民の血税を使う話であります。そういうことをやったとすると、まさに護送船団方式が、大蔵省銀行の癒着ではなくて自民党と銀行の癒着の関係に広がっている。そういう関係国民の税金が投入されていくという形になっている。こういうことになるわけでありますから、私は、この点は徹底して明らかにしていただきたい。調べていただきたい。  この点について、例えば自民党の中でも梶山メモというのが出ておりまして、その梶山メモを見ましても、「もちろん、銀行といえども民間企業ですから、経営者が「公的資金はいらない」と言うなら、それは強制できません。優先株を発行する銀行が「経営的に危ない」ということがわからないかなちで、公的資金を入れるなどということははじめから不可能なことです。」「各銀行にまんべんなく公的資金を注入したところで、金融システム安定には繋がらない。」このように梶山メモでは言われているわけです。ですから、自民党の中でも、このように横並びでやっても意味がない、こういう意見が出ているわけであります。  したがって、この圧力をかけるような形で国民の血税をのませるようなやり方は、私は、絶対に国民は納得できないと思うのです。こういう点について、もう一度、大蔵大臣は事実関係を調べて明らかにしていただきたい。そういう決意をここではっきりさせていただきたいと思います。
  446. 松永光

    松永国務大臣 幾つかお答えしたいわけでありますが、まず、申請銀行がどういういきさつでどういう考え方のもとに申請したのか。それは、私、現在ただいまのところ、その申請銀行責任者の気持ちというか腹の中を知る由もありませんけれども、いずれにせよ、日本銀行で一番強いと言われている東京三菱でも、これはBISの自己資本比率は九・二八じゃないでしょうか。それに対して、スイスのSBCというのは一一・六とか、あるいはアメリカのモルガンは一二・二三とか、圧倒的にそういうところが強いんですね。日本では三菱が一番強いのかもしれません。そういう中で、より強い銀行になろう、そういう気持ちがわいてきてもおかしくないと思います。  ただ、委員も先ほど申されましたけれども、この申請をするに当たっては、経営健全化の計画というのを出さなきゃなりません。その経営健全化の中で、具体的なリストラ計画も出さなきゃなりませんし、それから公共性、社会性というものを考えた経営理念、倫理の問題を含めて、それを具体的にどう履行していくかということを計画書の中に書き込まなきゃなりません。あるいは、いわゆる貸し渋り対策と言われる面でございますけれども、それについてもどう考えているのか、どういうふうに実行していくのかということも出させるということに実は決められたわけですね。それが嫌だから出したくないという気持ちになることもあり得ると思うのです。  そしてまた、これは先ほども申し上げましたけれども、預金保険機構に優先株なりあるいは劣後債、劣後ローンを買ってもらう、こちらはそれを買い取る、こういう関係になりますね。当然のことながら、金利負担あるいは配当の負担が銀行側にあるわけですね。しかも、それも、私細かい数字は存じませんけれども、二%とか三%という金利というか利息というのか、それを負担するということになるわけでありますから、そこで、そういった点を総合的に判断して申請をされたもの、私はそう確信しておるんです。  ただ、今委員おっしゃったように、党の中でいろんな意見が出されたということでありますならば、その様子は私はよく聞いて、知りたい、こう思っております。  それから、梶山議員の話が出ましたが、梶山さんの意見は、実は力のある銀行などには資本注入要らぬのじゃないかという前提に立っているんですね。そして、むしろ危ない銀行に応援をしてそれを立ち直らせろ、基本的にはそういう考え方のようであります。  しかし、今度の法律は、危ない銀行は、もうだめなものはだめなんですから、そこで、著しく悪化していないということになっておるわけでありまして、その点で、梶山先生の議論というのはこの金融安定化緊急措置法とはかみ合わない議論だというふうに私は理解をしておったわけであります。いろんな意見が自民党の中にあるんです、自由濶達に意見言っていいわけでありますから。まあ、そういうことだというふうに御理解願いたいわけです。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  447. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私が聞いたのは、具体的な圧力をかけるようなやり方があった、こういうことについて、実際にその点を大臣として調査をし、もし問題があればそれを是正させるという立場に立つべきだと私は主張しているわけであります。今、一般的な仕組みの話を私は質問したわけではありませんので、質問に対して直接お答えをいただきたいということをぜひお願いをしたいと思います。  次に、国税についての法案が出されていますけれども、その前提として、大蔵行政のあり方、この点について幾つかただしておきたいと思うのですが、大蔵省不祥事が次々と明るみに出まして、金融機関と高級官僚の癒着、腐敗、まさに底なしの観を呈しております。きょうは日銀にも広がりまして、営業局の証券課長が収賄容疑で逮捕された、本店に司直捜査が入る、こういう状況であります。  大蔵省に関連をしてお聞きをします。つい最近逮捕されました大蔵省キャリアの榊原容疑者に関連をしてお聞きをしたいと思いますが、榊原容疑者は、昭和六十三年七月、二十代の若さ、二十八歳で多治見の税務署の署長になっております、これはいただいた略歴からも明らかであります。  一部、東京新聞が詳しく報道をしておりますが、榊原氏は、この税務署長時代に、税務署の署員らが榊原会という親睦団体をつくって、榊原氏が本省に戻ってからも定期的に囲む会を開いていた。なぜこのようなことをやるかといいますと、その後、税務署関係者の昇進や登用に関して署長経験者の推薦が大きな影響を及ぼすからだ、こう言われているわけですね。「キャリア出身の署長が赴任すると、週末ごとに観光名所を案内したり、署長の趣味に合わせたサークルを署内につくり、折に触れて宴会を開くなどの親ぼくを重ねる。また、在任期間を終え送別会などの際、署長の名前などを冠した「○○会」などの会をつくり、」まさにこれは榊原会というような会をつくり、「本省に戻ってからも、地元のお祭りシーズンなどに合わせて招待し、歓待に努める。招待された官僚の中には、先輩や同僚を同行して地元の高級料亭などで接待を受けたケースもあるという。」、こういうふうに報道をされているわけです。  このように事実関係が報道されているわけでありますが、大蔵大臣は、このような実態を調査する、そういう気持ちはありますか。
  448. 武藤敏郎

    武藤政府委員 今、委員から御指摘のありました記事、確かに御指摘のようなことが書いてあるわけでございますけれども、ただ、これを見ますと、今の、榊原会というお話がございましたが一むしろ、キャリアの元税務署長がこういうことをやっているという趣旨の記事があった後で、大蔵省キャリアが二十代後半には地方の税務署長として赴任する、今回逮捕された榊原容疑者も多治見税務署長の経験者だといったようなことで、この記事を見る限りは、榊原会ということなのかどうか、ちょっと私どもはそこは、少なくともこの記事にはそういうことは書いていないように思います。  その点はともかくといたしまして、こういうことがあったのかどうかというのは、私ども具体的には承知していないわけでございます。確かに、税務署長に赴任した者が職場をともにしたということで親睦的な集まりを持つということは、これはあり得ることかもしれません。ただ、もちろん、それはあくまでもその職場を同じくした者同士の個人的なつき合いの会ということだと思います。ここにありますとおり、何か社会的な批判を受けるような、特に空出張で一部の費用を捻出したようなこともあったと聞いているというような指摘がございますけれども、こういうことが行われているというのは、ちょっと私どもは信じがたいと思います。  いずれにいたしましても、こういう税務署長に今ある者あるいは最近この職にあった者が、こういうような社会的な批判を招くようなことがあってはならないということは当然のことだと思います。空出張云々というところについては、私ども、本当に信じがたいと思いますけれども、ここではある西日本のというようなことなんでございますけれども、仮に具体的な疑惑指摘されれば、それは調査をしたいというふうに思っております。
  449. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私は、この記事だけで質問をしているわけではございません。具体的に多治見税務署の中に榊原会がつくられているということを調べて、それで質問をしているわけであります。ですから、具体的な実態がどうであったのか、その点について、大蔵省としても大臣としても当然注目をして調べる、実態を明らかにするというのは、これは当然のことだというふうに思うわけであります。  それで、具体的なことで少しお聞きをしたいのですが、例えば山日銀局長にちょっとお伺いをしたいと思います。山日銀局長は一九七二年に伊勢崎税務署の署長になっておられると思うのですが、何歳で税務署長になられましたでしょうか。それから、その署長は何年ぐらいお務めになったでしょうか。
  450. 山口公生

    ○山口政府委員 二十七歳か二十八歳で、一年間でございます。
  451. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 その際に、税務署長になったときに、この新聞に報道されているような事実、例えば接待ですとか、いろいろなそういうことはおありになったでしょうか。体験されましたでしょうか。
  452. 山口公生

    ○山口政府委員 社会的に問題になるようなことは一切なかったというふうに思いますが。
  453. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 社会的に問題になることをやったという事実を私は言っているわけじゃありませんで、例えばその地域の有力者の接待を受けたとか、そういうようなことがあったかどうかという記憶を聞いているわけです。
  454. 山口公生

    ○山口政府委員 随分前のことでございますので、よく覚えておりません。
  455. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 確かに一年しかいなかったわけですから、それ自体も極めてスピード出世の事実を示しているわけでありますけれども、署長をやめる際に山口会というような会はつくられましたでしょうか。
  456. 山口公生

    ○山口政府委員 そういったものをつくるつくらないということではなくて、私がいたときの人たち、署員がその後何年か集まったことはあると思います。ただ、それは、先ほどもお話があったように、単なる親睦会でございまして、本当に昔を懐かしんでというだけの話で、もちろん自分の費用は自分で出していますし、金一封を出していますから、私は人よりは余計出していますけれども、そういった会合は非常に懐かしいものとしてあります。最近はちょっと忙しくて、そういうものはなくなりましたので残念でございますけれども、そういうことでございます。
  457. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今お認めになりましたように、その親睦会のようなものがあった。これは伊勢崎税務署の関係者にお伺いしますと、山口会というものは確かにあったということをおっしゃっているわけです。  実はなぜそういうことをやるかということについては、先ほど私も新聞記事などで紹介をさせていただいたわけですけれども、関係を密にしておくということによって、将来の昇進の問題、そういうときにいろいろと便宜を図ってもらう、そういう関係が構造的に、意識的につくられているということがあるのではないか。実際にそういう話も、山口さんそのもので言っているわけではありませんけれども、そういうことが実際にあるということであります。  大臣にちょっとお伺いしますけれども、大蔵省では、Ⅰ種採用試験に合格し、採用されると一生出世の道が保証される、こう言われておりまして、そういう人事システムがある。二十代で税務署長に就任して、地域の名士やあるいは取り巻きにちやほやされるということもよく言われるわけであります。その後も、一般職員とは比較にならないスピードで出世街道を歩み続ける。退職後は次々と特殊法人ですとか関係業界に天下って、高額の給与、退職金を手に入れる、こういうことが現実にあるわけですね。  当大蔵委員会でも天下りリストというのが政府から提出されましたけれども、そういうものを見ましても、かなり広範な金融機関にこういう方々が天下っている。このような特権的な官僚のいわば優遇人事、こういうことをやはりなくすということは大事だと思うのです。大蔵省という、あるいは大蔵関係の職場の中で、例えば不正があるということを発見した場合には自由にそれを批判できる、そしてそれを是正する、こういう職場環境をつくっていくということが大変重要だと私は思うのです。検事出身であられる大蔵大臣でありますから、そういう点はやはり問題があれば常に率先してメスを入れる、こういう立場に立つべきだというふうに私は思うのです。  当面やるべきことは、こういうキャリアの特権的優遇大事についてどのように改めていくかということであります。例えば、キャリア署長は廃止するとか、天下りについては禁止するとか、そういう点、大臣としても積極的にそういう方向に進むべきだ。そういうことがない限りは、今回のような不祥事というのはいろいろな形で癒着の中から生まれてくる。この点について、大蔵大臣の決意を伺いたいと思います。
  458. 松永光

    松永国務大臣 お答えします。  難しい言葉で言えば非違を犯した人、易しく言えば間違ったことをした人、悪いことをした人がおるとすれば、それにはきちっとメスを入れなければなりません。その点は委員と同意見です。  それからもう一つは、若くして税務署長に任用するということ。これは、大蔵省の人事として、比較的若いうちに現場の空気を吸ってくるということには意味があると思いますが、余り若過ぎるうちに署長などになりますと、私は実態は知りませんけれども、どうも地方の名士がちやほやするように思われる。そして、本人も偉くなったという気持ちになっているように私は見受けるのです。そのことは本人のためにもなりませんし、またいいこととは思いませんので、そこで、その点は、地方の税務署長に任用する場合においても、もう少し年がいってから、世の中のことがわかってきてからにした方が望ましいということを私は申し上げたわけです。大体そういう方向で、税務署の署長に任命するのは今までよりもある程度年をとった人にしていくという方針は決まって、数年のうちにそうなる、だんだんそういう方向に行っているという現在の状況であります。  もう一つは、国家公務員上級職試験を合格して役所に入った人が非常に出世が早いじゃないかという問題がありますが、これは、実は日本行政官庁の人事全体の関係があると思うのですね。よその省も、上級職を合格して入省した人はそれなりに大事なポストに早くからついていく。村井先生などもその日なのでありますが、やはりそれなりの使命感を持って従事してもらうということが大切なことであろうというふうに思いますが、同時に、いわゆるノンキャリであっても、よく勉強し、よく仕事のできる人は抜てきするという制度があることが望ましいというふうに思います。  それからまた天下りの問題、これは総理もしばしば予算委員会等で答弁されておるわけでありますが、ほかの役所にもあることですけれども、大蔵省職員で、組織を活性化させるという面で定年になる前にやめていく人がいる。それから、定年になった後といえども、昔と違って人生八十年時代になりましたから、そのやめた人の能力を買って自分の会社に来てもらいたい、こういうところに来てもらいたいということで、来てもらいたいという人、行ってもいいという人、その二人の純然たる自由な意見交換もとで、合意の上でそれがなされるということであるならばこれは問題でないわけでありますけれども、問題は、役所の方である程度圧力をかけて天下りをさせる、そういう職場に行ってもらうなどということについては問題が少しありはせぬか。  いずれにせよ、この問題は、実は寿命が延びたことによる、公務員の、役人をやめた後の人生をどういう仕事について働いていくかという問題ともかかわってくるものですから、公務員制度全体の問題として実は議論がなされておるということでありますので、その議論の結果を待って適切な措置をするようにしなきやならぬ、こういうふうに思うわけでございます。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  459. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 この問題はいろいろな形で引き続き議論をしていきたいと思います。  提案されているこの法案について入りたいと思いますが、法人税の一部改正の法案ということでありますが、今回の改正というのは三十三年ぶりという抜本的なものであります。基本税率をシャウプ税制以来最も低いものにする、アメリカの連邦法人税率を下回る水準、こういうところまで引き下げるということが提案をされているわけであります。  考えてみますと、一方では、昨年四月から消費税は五兆円増税、二%アップ、その結果、消費が全体として冷え、景気が大変な事態に直面をしている。他方で、大企業に対してはかなりの減税になる、こういう法人税の抜本的な引き下げというのが行われようとしている。どうも私はこれは納得できないわけであります。実際、この法人税の引き下げを最も熱心に主張されてきたのはやはり経団連を中心とする財界側でございまして、なぜ引き下げなければならないのかということでありますが、その理由として経団連の説明は、日本の法人税の負担は先進国の中で重いからだ、こういうふうに述べておられるわけであります。  そこで、まず基礎的なことでありますが、お聞きしたいのは、本当に日本の法人の税負担は国際的に見て高いのか、との点について説明をしていただきたいと思います。
  460. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  我が国の法人課税の実効税率、調整後の表面税率でございますが、改正前は四九・九八ということで、他国に比べて高い水準になっていたわけでございます。  それで、今先生の御質問は、税負担水準がどうか、こういうお話でございます。そうなってまいりますといささか複雑になってまいりまして、つまり、その意味での税負担といいますのは、課税ベースに税率を掛けたことになってまいります。したがいまして、課税ベースが狭いか広いかということの議論に入ってくるわけでございます。そういう意味からいたしますと、なかなかその高低は容易には判断できないところもございます。  と申しますのは、例えば日本の場合、確かに退職給与引当金というのがございまして、今回、累積限度額について二割にしておりますが、それでは日本のような退職給与制度が外国にはあるのかというようなことにもなってまいります。いずれにいたしましても、そこのところを詰めてまいりますと非常に難しい点はございまするが、国際的に、例えば日本に投資をするかどうかという場合の判断、これはどうもいろいろ聞いてみますと、税率だけで判断していることが多いようでございます。  あるいは、例えば日本の海外展開が進んでまいりまして、子会社から日本の方へ分担金を送ってくるというようなケースを考えてみた場合、その課税ベースといいましょうか、表面税率がそのままきいてくるという面もございます。そうなると、なるべく日本にそういう投資を還流するためには、日本の表面税率自体が低くなければならないという問題もございます。  いずれにいたしましても、厳密に比較せよということになってまいりますと、なかなか難しい問題があるということを申し上げたいと思います。
  461. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今おっしゃいましたように、企業の税負担ということを考えますと、表面税率だけでは判断できないわけでありまして、課税ベースが実際にどうなのかということとの関係で総体的に見なければならない。そうしますと、一昨年十一月に出されました法人課税小委員会報告書によっても、この水準の高低というのは容易には判断できない、こう書かれているわけでありまして、今の御答弁と全く同じでございます。ですから、日本の企業の税負担が重い重いということを一方的に主張して税率をどんと下げていく、実質減税を行う、こういうことになっていきますと、国際的に見て容易に判断できない、そういう水準のものを極めて低く下げてしまう、こういうアンバランスの状況を逆につくってしまうということになるわけでありまして、そういう意味では、大変私はこの経団連などの主張というのは一方的なものであるというふうに感じるわけであります。  確かにアメリカ、イギリスなどは、負債性引当金というのは原則的には認められていないわけですね。ドイツ、フランスでも四種類程度ということであります。  私は、昨年の七月に衆議院の欧米各国金融税制調査議員団という調査団の一員として参加をいたしました。村上委員長も御一緒に参加をされました。大変勉強になりました。  その際に、法人税の税率を統一することによって、日本アメリカもヨーロッパも同じ税率という方向でやってみたらどうか、こういう質問をこの日本調査団からアメリカの財務省に提起をしたわけであります。その報告書がここにかなり分厚いものがありますけれども、この中でも、その回答が載っております。これは非常に私は注目すべき回答があったなと思っておりますけれども、内容を見ますと、こういうふうに言われております。「各国とも、課税主権を放棄することには躊躇するに違いない。」つまり、税率を決めるのは、各国の課税主権というのが基本にあって、それによって決められるものであって、それを一律に統一的にやるというのは、課税主権そのものに対して、これを放棄をせよということと等しいので、これはちゅうちょするに違いないと。大変注目すべき回答であります。「また、課税ベースが国によって異なる以上、」今おっしゃいましたように課税ベースが違うわけでありますから、「税率のみを合わせても合理的とは言えないし、国際的な課税ベースの統一化もあまり現実性が高いとも思われない。」こういう回答でありました。さらにつけ加えますと、「一般的に、税制の調和を考える場合には、社会保障等の税制以外の制度も視野に入れて考える必要がある。例えば、法人の流動性を考える場合には、法人税のみならず、社会保険料等の負担も考慮すべきである。」こういうふうな回答をいただいたわけであります。これがアメリカの財務省の公式の回答でございました。  こういう点でいいますと、今議論をされている日本の税率が高い高いという議論、これは表面税率を比べるのでは意味がないということでありますから、アメリカの回答もそうでありました。したがって、この辺をよく検討していかなければ、実際に、一方的に財界側の言い分をただうのみにするということになってしまうわけでありますから、その点はよく科学的に検討をする必要があると私は思うわけでございます。  大蔵省の従来の見解では、例えば一昨年十一月の法人課税小委員会報告によりますと、課税ベースを拡大しつつ税率を引き下げるという立場であったと思うのです。つまり、税収中立という立場ですね。法人税の中で増減収を処理する、こういう考え方であったと思うのですが、今回はその考え方を修正されたのでしょうか。
  462. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 法人課税につきましては、かねてから、これは税制調査会の答申にも指摘されているわけでございますが、課税ベースを適正化しつつ税率を引き下げるということが指摘されておりまして、今回の改正は、まさにこの基本的方向に沿った検討が行われた成果と考えております。  それで、なお、今回の法人税制改革での税収の点でございますが、初年度におきましては、税率の引き下げによりまして約八千二百億円の減収、他方、課税ベースの拡大、これは効き方が後年度に出てくるということもございまして、四千九百億円の増収ということになっているわけでございます。  なお、平成十五年度までの六年間の一年あたりの平均値で見てみますと、税率の引き下げにより一兆四千億円の減収となる一方で、課税ベースの拡大により一兆一千億から二千億円の増収ということになりまして、税率引き下げによる減収の大部分は課税ベースの適正化によりカバーされていると言って差し支えないというふうに考えております。
  463. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 実質減税平成十年度で、国税で三千三百億円ですか、地方税合わせると四千億ということで、実際には実質減税になっているわけですね。  それで、問題は、経団連に対して大蔵省が昨年の七月に提示した素案というのが報道されております。これは、九八年度税制改正で、現行の三七・五%の法人税率を最大二・五%引き下げる、その一兆円の財源として企業への優遇措置の見直しあるいは廃止を行う、まあ課税ベースの拡大、こういうものを提案した。これは経団連に対して提案したとされていますけれども、これは事実でしょうか、提案したこと自体は。
  464. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 経団連に提案したというようなことで今おっしゃられましたが、私どもの方では、実務的に課税ベースの拡大のそれぞれの案がどういう意味を持つかということで、実務家に聞いたことはございます。  なお、今先生がおっしゃっておられますのは、ちょうど十一月の頭でございましたでしょうか、課税ベースの適正化で幾らというその金額を指し示したことかと思います。なお、確かにそのときの引き下げ幅の計算におきまして、二・五%の引き下げ幅で出してあったかと思います。それは、なぜそうさせていただいたかといいますと、減収額を計算するためには、法人税率が何%であるかということを実は決めないと計算できないわけでございます。そこで、便宜、二・五%引き下げた三五%で計算するとどのような減収幅になるかということでお示ししたことはございます。
  465. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 一点だけ、もう時間が参りましたので。  これを示したのは、経済団体というのはいろいろあると思うのですけれども、経団連だけに示されたのですか。ほかのいろいろな団体がありますよね。そういうところには示されなかったのでしょうか。
  466. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 実は非常に、私どもも実務がどうなっているかというのがありますものでございますから、具体的な案につきましては、日本租税研究協会という、シャウプの税制が始まったときの公益法人がございます。そこのところの実務家にお諮りいたしました。  なお、税率の引き下げと課税ベースの数字でございますけれども、これはまさに与党税制調査会、政府の税制調査会、さらには対外的にも発表させていただいたところでございます。
  467. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 経団連以外には示したということを言われなかったわけでありまして、そういう点では、私は、極めて偏ったやり方をしているなというのが非常に深い印象でございます。  以上で終わります。
  468. 村上誠一郎

    村上委員長 次回は、来る十七日火曜日午後五時五十分理事会、午後六時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後七時五十九分散会