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1998-02-04 第142回国会 衆議院 大蔵委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年二月四日(水曜日)     午前九時開議 出席委員   委員長 村上誠一郎君    理事 井奥 貞雄君 理事 衛藤征士郎君    理事 坂井 隆憲君 理事 浜田 靖一君    理事 池田 元久君 理事 北橋 健治君    理事 石井 啓一君 理事 谷口 隆義君       今村 雅弘君    岩永 峯一君       大石 秀政君    大野 松茂君       鴨下 一郎君    河井 克行君       岸田 文雄君    栗原 博久君       桜田 義孝君    杉浦 正健君       砂田 圭佑君    中野 正志君       根本  匠君    桧田  仁君       宮路 和明君    村井  仁君       目片  信君   吉田六左エ門君       渡辺 具能君    渡辺 博道君       渡辺 喜美君    上田 清司君       大畠 章宏君    北脇 保之君       玄葉光一郎君    近藤 昭一君       末松 義規君    仙谷 由人君       中川 正春君    日野 市朗君       古川 元久君    赤松 正雄君       河合 正智君    並木 正芳君       平田 米男君    小池百合子君       鈴木 淑夫君    西田  猛君       佐々木憲昭君    佐々木陸海君       濱田 健一君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 松永  光君  出席政府委員         大蔵大臣官房長 武藤 敏郎君         大蔵大臣官房金         融検査部長   原口 恒和君         大蔵省主計局次         長       藤井 秀人君         大蔵省証券局長 長野 厖士君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君  委員外出席者         法務省刑事局刑         事課長     藤田 昇三君         参  考  人         (株式会社三和         銀行頭取)   佐伯 尚孝君         参  考  人         (元大蔵省証券         局長)     松野 允彦君         参  考  人         (全国銀行協会         連合会会長)  岸   曉君         参  考  人         (第二地方銀行         協会会長)   加藤 千麿君         参  考  人         (日本総合研究         所調査部主任研         究員)     翁  百合君         参  考  人        (日本銀行理事) 本間 忠世君         大蔵委員会専門         員       藤井 保憲君     ――――――――――――― 委員の異動 二月四日  辞任         補欠選任   杉浦 正健君     桧田  仁君   中野 正志君     大野 松茂君   根本  匠君     岸田 文雄君   渡辺 具能君     目片  信君   日野 市朗君     仙谷 由人君   藤田 幸久君     古川 元久君   河合 正智君     平田 米男君 同日  辞任         補欠選任   大野 松茂君     中野 正志君   岸田 文雄君     栗原 博久君   桧田  仁君     杉浦 正健君   目片  信君     渡辺 具能君   仙谷 由人君     日野 市朗君   古川 元久君     近藤 昭一君   平田 米男君     河合 正智君 同日  辞任         補欠選任   栗原 博久君     根本  匠君   近藤 昭一君     大畠 章宏君 同日  辞任         補欠選任   大畠 章宏君     玄葉光一郎君 同日  辞任         補欠選任   玄葉光一郎君     藤田 幸久君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  預金保険法の一部を改正する法律案内閣提出  第一号)  金融機能安定化のための緊急措置に関する法  律案内閣提出第二号)  金融及び証券取引に関する件      ――――◇―――――
  2. 村上誠一郎

    村上委員長 これより会議を開きます。  金融及び証券取引に関する件について調査を進めます。  本日は、参考人として、株式会社三和銀行頭取佐伯尚孝君及び元大蔵省証券局長松野允彦君、以上の二名の方々に御出席をいただいております。  この際、両参考人に対し、一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。  議事の進め方といたしましては、初めに委員会を代表して委員長から総括的にお尋ねし、次いで委員からの質疑に対してお答えいただきたいと思います。  それでは、まず委員長から両参考人に対しお尋ねをいたします。  当大蔵委員会は、昨年秋以降の金融機関の相次ぐ破綻により揺らいでいる我が国金融システムに対する内外の信頼回復させるとともに、今後予想される金融ビッグバンを円滑に推進させるべく、鋭意各法案審査を行っているところであります。そのような折、今般の大蔵省不祥事件の発生などで、金融行政を所管する大蔵省金融機関に対する信頼が失われたことはまことに遺憾であり、早急に信頼の確保を図る必要を痛感しております。  そこで、まず松野参考人お尋ねします。  今回の山一証券破綻は、巨額の簿外債務存在が引き金になったと言われています。ところで、山一証券平成三年末から四年にかけて簿外での債務処理を本格化させたと言われますが、当時大蔵省証券行政責任者であった松野参考人は、この簿外債務問題について当時どのような認識を持っておられたかをお尋ねします。  次に、佐伯参考人お尋ねします。  今回の大蔵省不祥事の背景として、大蔵省金融機関の極めて不健全な関係が指摘されております。また、その象徴として、いわゆるMOF担存在がクローズアップされています。佐伯参考人は、金融機関責任者として、今後こうした事件再発を防ぎ、金融機関に対する信頼回復していくために、どのような実効性のある対策が必要と考えておられるかをお尋ねします。
  3. 松野允彦

    松野参考人 今、委員長から御指摘がございました山一証券破綻に関しまして、多額の簿外債務があるというふうに聞いております。これはいわゆる飛ばし取引というものに関連して発生したというふうに聞いておりますが、当時の認識をということでございますのでお答え申し上げますと、当時飛ばしという問題についていろいろと問題が出ておりました。飛ばしそのものにつきましては、私どもは、企業間の株式を用いた現先取引である、短期の金融取引一つの形態であるという形で、それ自体証券取引法に違反するという違法行為であるというふうには決めつけることができないという考え方でございました。  ただ、それを仲介しております証券会社がその株式を引き取るということになりますと、これはその当時新たに禁止いたしました損失補てんに該当するおそれがあるという問題があったわけでございますし、それから御指摘のように、もし簿外で受け取って簿外処理をするということになりますと、これも証取法で禁止されておりますといいますか、粉飾決算ということになるわけでございまして、そういう行為が私の在任中に行われたということにつきましては、いまだに私は信じられないというのが率直な気持ちでございます。  なお、私自身がそういう違法な簿外処理を示唆したのではないか、あるいは指導したのではないかということが報ぜられておりますが、そういうことは断じてございません。はっきりと申し上げたいと思います。  まあしかし、いずれにいたしましても、私が証券局長をやっておりまして、証券会社を監督する直接の責任者にあった時期に証券会社がそういう証取法に違反する行為を行ったということは大変遺憾でございますし、免許企業である証券会社を監督しておりました立場といたしましては、監督が十分でなかったという反省をせざるを得ないというふうに思っているわけでございます。  以上です。
  4. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 三和銀行佐伯でございます。  まず最初に、今般世間をお騒がせいたしまして、先生方を初め各方面に御心労、御迷惑をおかけいたしましておりますことをまことに申しわけなく、深くおわび申し上げます。また、金融界に身を置く者として、昨今の金融システム不安から多大な御心配、御迷惑をおかけしておりますことを、あわせて衷心よりおわび申し上げます。  今回の問題に関しましては、現在御当局の調べを受けておりますが、行内におきましても事態の究明に取り組んでいるところでございます。  委員長の御質問でございます信頼回復の道について述べさせていただきます。  まず第一に、再発防止という観点から、当行では既に、大蔵省等官公庁との接し方につきまして、一月二十九日付で当局との交渉を専ら担当しておりましたいわゆるMOF担を廃止いたしました。それから、公務員、みなし公務員に対する接待を禁止いたしました。また、法令遵守体制を強化すべく、独立したコンプライアンス統括部を設置することを決定しております。  今後についても、行内調査結果などを十分に踏まえて厳格な行内管理体制を整備し、二度と今回のような事態を招くことのないように措置することで、国民の皆様、利用者預金者方々からの信頼回復全力を挙げてまいりたいと考えております。  同時に、当行としては一刻も早く足元を固めて、一歩進んで金融ビッグバンに積極的に対応することで利用者利便の向上、資金供給など金融機能活性化を図り、金融機関に求められる社会的、公共的責任を果たしてまいりたいと考えております。  こうした経営努力を通じて産業界の発展や雇用の拡大のお役に立つことこそ金融機関に対する真の信頼を取り戻す道であると信じております。ありがとうございました。
  5. 村上誠一郎

    村上委員長 以上をもって委員長からのお尋ねを終わります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許可いたします。杉浦正健君。
  6. 杉浦正健

    杉浦委員 自由民主党杉浦正健でございます。  今度の大蔵省事件は、まことにゆゆしい、残念きわまりない事件であります。私は、今自由民主党財政部会長を拝命いたしまして、微力ながら全力を挙げて取り組ませていただいておるわけでありますが、心の奥底と申しますか心境を申し上げれば、非常に暗たんたる気持ちと、同時に深い憂慮と申しますか、これからどうなるんだろうか、日本の将来はどうなるのかという念でいっぱいであります。恐らく、ここにおられる同僚議員先生方は、政党を問わずそういうお気持ちでいらっしゃるのではなかろうか、こう思っておるわけであります。  今度の大蔵省で発覚いたしました不祥事は、申し上げるまでもなく、一個人の偏執的なと申しますか、世間にはいろいろあるわけですが、私は弁護士をやっておりますが弁護士会でもおかしなのはおります、そういう個人の起こした事件ではどうやらなさそうであります。まだ捜査は進行しておりまして、今のままで終わるのか、新たに逮捕者が出るのか、不透明ではありますけれども、これは大蔵省組織として、かなり重症と申しますかむしばまれた状態にあるのではなかろうか、それを推測させる事件の成り行きであります。松野さんは信じがたいと言いましたが、それに類する話はいろいろちょくちょくと前から耳に入っておったわけですが、これほどまでにひどいということは私も知らなかったわけでありますし、多くの同僚諸君もそうではなかったでしょうか。  この事態は、大蔵省が果たしているその役割、先日の質疑官庁の中の官庁という御表現もありましたが、ほかの官庁役割が低いという意味ではありませんが、少なくとも、国民のお金を預かっておる、国庫を預かっておる、国民から税金を徴収し、それを予算で配分し、国の重要な財産国民から預かっている郵便貯金等を配分をし、そして国の財産を管理する。家庭でいえば女房のような役割でありますが、そういう重大な役割を担っている役所がおかしい。これは現在の国家運営根幹を揺るがす大きな問題だと言ってもよろしいわけですし、これから二十一世紀へ向けて日本が進んでいく上で、この大蔵省が信用を失墜したことがどのようなことになるだろうかと思いますと、背筋の寒くなる思いがいたすわけであります。  ここにお見えの三和銀行佐伯さんは、その大蔵省の相手となった業界の方であります。もちろん贈収賄というのは、受け取る方も悪いわけでありますが、贈る方も悪い。対向犯であります。そのあたりの責任をどの程度お考えになっているのか。今業界としての方向を示されましたが、非常に抽象的な感じがして、これも深憂にたえないわけでございます。  時あたかも、我々は日本版ビッグバンという金融システム改革を遂行しようとしております。これは、日本が二十一世紀でしっかりとした国連を築くために必要な政策であります。しかも、それが昨年末来の金融システム不安の中で遂行されようとしておるわけであります。いわゆる不良債権処理もまだまだこれからであります。  金融システム不安については、この二月、三月が勝負だと言われておるこのときにこういう事態が起こった。この大蔵委員会でも、重要法案、今国会実質三十数本の法案を御審議賜るわけでありますが、この法案の審議の行方も、あるいは予算の成立の方向も、一転して霧の中になったわけでありまして、現実にこの春をどういうふうに切り抜けるかという点についても、まことに心痛にたえないところであります。  そういったとき、まさにこのような問題が発覚をいたしたわけでありますが、松野さんには先ほど、自分は局長時代に知らなかった、知り得なかったと申しておられましたが、これは相当長い間かかってここまで来たと思われるんですね。少なくとも、私は昭和三十二年に大学を卒業して社会に出たわけでありますが、若い時代十数年、大蔵省主計官とも接触する時期が仕事の面であったわけでありますけれども、三十年代から四十年代前半ぐらいの大蔵省には一このような接待を受ける気風は全くなかったと言ってもいいんじゃないかと私は思っております。  いつごろからか徐々に徐々に起こっていったと思うわけでありますが、松野さんの先ほどおっしゃられた、簿外債務を知らなかった、知り得なかったということは、あるいは犯罪行為ですからあり得るかもしれないけれども大蔵省が次第次第にむしばまれていった、特に大切な検査部門で集中的に起こっておるということでありまして、まことに首肯しがたい松野さんの認識であります。そういう傾向について感ずるところはなかったのかどうか、後ほどお答え願いたいと思います。  佐伯さんには、今後の対策が示されましたが、項目としてはそういうことかもしれません。しかし私は、その中身が問題ではないか、こう思うわけであります。  今、金融業界は、世間から貸し渋りで非難をされております。私の選挙区でも、中小業者を初め皆さん、銀行から金を借りるのには非常に苦労しておるわけであります。苦労話を聞きますといろいろございますが、一言で申しますと、銀行が借り主を選別する。ともかく借り手は、貸付係長の言ってみれば草履をとるような感じでお願いをしても貸してもらえない場合もある。  我々は、金融システム国家の血管であり血液だということで言っておるわけでありますが、銀行業界が、佐伯さんのような立場の方は別かもしれませんが、末端一行員に至るまで、本当に銀行社会公器である、公の役割を果たしているんだという認識があってやっておられるのかどうかという点は、長年にわたって疑問を持ってきたところであります。  これから、法案でお願いしておるわけでありますが、この金融システム改革のために、例えば資本注入をやろうと臨時措置法をお願いいたしておりますが、この法律についても、世間からさまざまな批判があります、銀行を助けるのか、けしからぬと。さまざまな御批判があるわけでありますが、しかし、我々はやろうとしている。これは経済社会を混乱させないためでありますが、果たして、銀行が今の状態のままで、真に経済社会の公の機関だという認識がないままになされた場合に、本当に国民の理解を得て所期の目的を果たせるかどうか甚だ疑問であると感ずる面もあるわけであります。  我々自民党は、あの案をつくるに際しまして条件をつけようということを決めておりますが、法律案では条件にはなっておりません。計画を出していただいて審査委員会審査するということに相なっておりますが、その条件の中で一番議論にと申しますか、意見が出されたことは、今の金融機関高給取りが多いじゃないか、一般社会給与水準に比べて金融機関給料は高いじゃないか、高い給料を取っている金融機関に国が支援をする、とんでもない話だ、むしろ給料を下げてもらえという議論が、議論といいますか意見が非常に多うございました。世間にも多数ございます。  これはこの法律ができ上がった場合、審査委員会ができてそういう計画といいますか、条件をつけられることになるわけだと思います。我々がやることじゃありまぜんが、我々は、公的支援を行う場合には、金融機関リストラを徹底的にやってほしい、給料も具体的に目標を決めてカットしてほしい、そういう希望を強く持っておるところであります。  三和銀行として、公的資金受け入れをお決めになっておられる、資本注入をお受け入れになっておられるようでありますが、お受け入れになる場合、従業員全体の給与水準を二割なり三割なり将来に向かってカットしていく決意がおありかどうか。それに限らず、銀行が天下の公器として、これから荒波が来る日本の将来社会において、貸し手に対してえり好みせずに、公の立場機能を果たしていくような銀行に立ち返っていくように強力なリーダーシップを先輩として発揮していただきたいわけでありますが、そういう決意はおありかどうか、お伺いしたいと存じます。
  7. 松野允彦

    松野参考人 今、大蔵省の行き過ぎました接待問題についてのお尋ねでございました。  私も昭和三十六年に入省いたしまして、三十一年間大蔵省に勤めた人間でございます。確かに今いろいろと言われておりますことを考えてみますと、非常に社交儀礼をはるかに超えた、行き過ぎた行政対象との間の会食等々が行われたということは、私も大蔵省先輩の一人として大変反省をしているわけでございます。  いつごろからかというお尋ねでございましたが、率直に申し上げまして、いつごろからというのはなかなか決めがたい問題がございます。ただ、やはり徐々に徐々に社交儀礼を超えたものになっていった、それにみんながなれ親しんだというようなことではないかというふうに思われます。  私自身の問題として振り返ってみますと、証券不祥事が起こって以降は、最後の一年間は、これはもうそういうようなことをやるような雰囲気ではございませんでしたが、率直に申し上げまして、それ以前におきましては、やはり日本的なつき合いというようなものがあったことは事実でございますし、それが一般社会常識からしてやややり過ぎではないかというふうに思われる点があったということもあろうかと思います。  ただ、私なりにその際考えておりましたのは、少なくとも行政の公正さを疑わせるようなことはやってはまずいというふうには考えておりました。その方法としては、一切つき合わないという方向一つはあるわけでございますが、残念ながら、日本の当時の状況では、一切つき合わないということではなくて、特定の者だけとはっき合わないというような形で、何とか行政がゆがめられているのではないかというような疑いを持たれないようにするというのが、率直なところ精いっぱいであったというふうな感じがしております。  いずれにいたしましても、いろいろなそういう風土雰囲気が、御指摘にありましたように、特に厳正でなければならない検査部門にまで及んだ、そういう雰囲気といいますか土壌をつくり上げたということについては、私も責任の一端はあるというふうに考えているわけでございまして、もちろん贈る側の問題もございましょうけれども、恐らく今大蔵省として、そういうようなことに対する信頼回復策を懸命になって策定をしているというふうに信じているわけでございます。
  8. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 先生のおっしゃること、すべてもっともでございまして、私どもも先ほどから反省してお聞きしておりました。  ただ、第一番目の貸し渋りについてでございますが、我々が予想していた以上にひどいというか大きい声である、実態であるということは昨年の年末から特に認識しておりまして、我々もそれなりの、支店長を集めるなり、通達を出すなり、いろいろな形で指導をしておりますけれども、なお、先ほど先生がおっしゃったように、末端の一貸し付けの担当者までそうなっているかということにつきましては、必ずしもここで胸を張って申し上げられないようなことが実態として起こっているのではないかということを反省いたします。  銀行貸し出しというのは、単に債権の保全とかそういうことだけではなくて、貸し出しをするととが社会的責任であるというようなことも含めまして、我々の全銀協の倫理規定にもあるわけでございますけれども、ただいまの御意見をさらに厳しく受けとめて対応してまいりたいと思います。  それから、不祥事の対応につきましても、先ほど申し上げましたことは、現在いろいろ調査中あるいは捜査中で、いろいろな原因が、先生がおっしゃいましたように、根が深いということであろうかと思います。できることをやりましたというのを二つ三つ並べたわけでございまして、決してこれで事足りると思っているわけではございませんし、今後も調査を続けて、一つずつ対応して、こういうことが起こらないように、年月をかけてといいますか、やっていきたいというふうに考えております。  リストラにつきまして約束できるか、こういうことでございましたけれども、私どもももう既にそういう御批判があることは承知しておりまして、例えば、私ども銀行でもこの三年間ベースアップはゼロにしておりますし、賞与もその都度カットして減額をしている。これでも甘いということはあるかと思いますが、これはもう我々としても、リストラ経営根幹でございますので、もっと強力に、特に今回の法律改正も含めて対応していきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  9. 杉浦正健

    杉浦委員 時間がなくなりましたので、まことに残念です。もう少し聞きたいわけですが、私の政治の師匠でございます安倍晋太郎先生が座右の銘としておられたわけでありますが、民信なくば立たず、論語からきておるようでありまずけれども、ともかく信頼こそ、これは政治だけではなく何事にも根本だろうと思うわけであります。  金融機関が、私はもう弁護士時代からそうですが、末端の人といろいろつき合う機会が多かったわけですが、最近の金融マンたちの中にいわゆるバンカー、西洋でいうバンカー社会公器を強く意識したバンカー気質がもうほとんどない。言ってみれば金貸しにすぎないじゃないかという精神的な風土を強く感じておるわけでありまして、これを機にいろいろな措置を講じられるのは結構ですし、おっしゃられたことをやっていただきたいわけであります。銀行協会のみならず、我々がこれから対応していくすべての業界が、社会公器たるの精神に徹してやって前向きに進んでいくように、従業員の教育その他で万全の措置をとっていただきたい、庶民が見ておりますから。心から要望いたしまして、質問を終わらせていただきます。
  10. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、仙谷由人君。
  11. 仙谷由人

    仙谷委員 民友連の仙谷由人でございます。  松野参考人そして佐伯参考人には、御多用中のところ参考人として御出席をいただきまして、まことに御苦労さまでございます。御礼を申し上げます。  そこで、まず松野参考人の方からお伺いをいたしたいと存じます。  今、私、平成三年八月二十一日と平成四年二月二十六日の議事録を持ってきております。そのときに時の証券局長松野局長に、飛ばしについて相当厳しい質問をした記憶があったからでございます。局長も覚えていらっしゃると思います。相当厳しい質問をさせていただいたわけですが、ただ、その時点では局長も我々も、マフィア資本主義とか、やくざが絡んでめちゃくちゃになった日本のマーケットをどう立て直すのかという問題意識はあったと思うのですね、あのときには。  そして、時まさに間接金融から直接金融へという国際的な流れの中で、日本だけがどうも直接金融の世界がばくち場になっているのではないか、あるいは一般の顧客はごみとか掃きだめとか言われてまともに相手にされていない、法人の上得意だけが損失補てんを受けた、やくざにはもっと別の特別の取り扱いをしている、そんな問題意識の中で、例の九一年に損失補てん大スキャンダルが起こったわけでございます。  時の証券局長松野さん、大変御苦労をされたと思うわけでございますが、あれから六年半でございます。ちょうど平成四年二月二十六日の大蔵委員会質問をさせていただいておるわけでございますが、そこから数えましてもちょうど六年でございます。一向に証券市場が、公正なルールのもとに国民が参加するような市場に再建されていない。大変私は残念に思いますし、このことが日本の今の経済の中での資金循環の大変な閉塞状況、脳梗塞状態をもたらしていると憂慮をしておるわけでございます。  そこで、今度の山一の自主廃業について松野局長にまず感慨をお伺いしたいわけでございますが、当時山一の飛ばしというものが一部でささやかれておりましたし、私自身も、先ほど申し上げた二回の、大蔵委員会予算委員会で、山一に飛ばしがあるじゃないか、あると言われているじゃないか、ちゃんと調べたのか、こういう質問をした記憶がございます。これから調べるというのが大体結論的な、これから詳細に検討するというのが当時の局長のお答えであったと記憶をしておりますし、概略そのようにこの議事録の中でお答えになっておるようでございます。  ところが、松野さんが平成四年の六月におやめになった後、さあ次の大蔵省証券局がこの飛ばしの解明あるいは山一の飛ばし体質にメスを入れるということができたのかどうなのか、多分できなかったのでしょう。  そこで、今回は、新聞報道によると、あるいは我々が巷間マーケットから直接聞くところでも、二千数百億、二千六百四十八億という金額を新聞紙上で書いてございますけれども、この飛ばしが足かせになって外国の証券会社にすら身売りができなかった、だから倒産した、こういうことになっておるのですね。簿外があった、こういうことになっておるわけです。あのときにこの飛ばしを、当時問題になった飛ばしに何とかメスを入れておけば、ひょっとすればこんなことにならなかったのにというふうなお気持ち松野さんにはございませんか。
  12. 松野允彦

    松野参考人 そのときの詳細な答弁を覚えているわけではございませんが、確かに飛ばしについてお尋ねがあったと記憶しております。  ただ、飛ばしというのは言葉としては非常に悪い印象を与えるわけでございますが、先ほど初めに申し上げましたように、飛ばしそのものというのは、これは仙谷委員既によく御存じのように、企業間の取引行為でございまして、証券会社取引の当事者になっているわけではございません。企業企業の間で含み損がある株式を簿価のままで売買する、条件つき売買、現先取引でございますが、そういうようなことが行われて、それを飛ばしというふうに呼んでいたわけでございます。  したがいまして、それは証券会社がそういう行為を仲介するか否かにかかわらず、飛ばしというものが当時存在していたのではないかということは、私どももいろいろな情報があったわけでございますが、ただ、その行為自体が、先ほど申し上げましたように証券取引法に触れる行為である、触れる取引であるということが言えないという問題がございました。これは条件つきの売買でございますし、あるいは取引当事者の企業は大体株式担保の短期金融だという認識を持っていたわけでございまして、そういう取引法律で違法だと決めつけるということはできない。  そうなりますと、問題は、証券会社責任を負わなければいけないような飛ばしに関与しているケースがあるかどうかということが一番の問題でございまして、御質問も多分そういうふうな趣旨であっただろうというふうに私は思っておりますが、そういうことで、証券会社に、たしか私のときもそういう形のものがないかというのを聞いて、もしあれば、それは処理をするのであれば証券事故として処理をしなければ法律違反になります、つまり損失補てんになるおそれがありますということで、たしか数件証券事故として処理をしたケースがあろうかと思います。  お尋ね山一証券のケースにつきましては、証券会社が仲介をしているケースはあったと思います。ただ、それが証券会社責任を負わなければいけないということについては、会社自身が、私どもの尋ねに対しては、そういうものはないという報告をしてきていたわけでございまして、そういうふうな形の取引というのは、そういう格好をとっている限りにおきましてはもちろん証券会社の帳簿を一切通らないわけでございます。したがいまして、どうしてもそれを把握するというのはできないというのが率直なところでございました。  今申し上げましたように、飛ばし取引自体が違法でないというところに一つの限界といいますか、私どもとしてやれるところに限界があるわけでございまして、それはいわば企業間の自己責任に基づく自由な契約の世界での取引であるというふうに考えざるを得ないのが飛ばし取引であるというのが当時の考え方であったわけでございます。  確かに、結果としてそういうようなものは証券会社責任になって、証券会社簿外で引き取ったというふうに言われております。これは非常に遺憾な問題でございますし、明らかに証券取引法に触れる行為でございます。そういうような違法行為証券会社が行うということは、我々としては、特に損失補てんを禁止するための法律改正をお願いしたばかりでございまして、その当時、ちょうどその法律が成立をして施行された時点でございますから、よもやそういうようなことをやるとは率直に申し上げて考えていなかったというのが正直なところでございます。
  13. 仙谷由人

    仙谷委員 松野局長が当時から非常にいい人だというのはわかります。しかし、職務上、事証券会社に対していい人であっては困るんですね、当時から。今もそうです。  つまり、検査というふうな立場に立つと、本当は山一にとっても厳しい検査をして、簿外になりそうな現先取引、あるいはもう既になっておる分についても、何らかの保証をしているから、つまり、債務保証をしたり仲介をして保証をしているから最終的に山一が背負わなければいけない分が二千六百億円になって、手かせ足かせになって倒産したということになっておりますよね、結論としては。これ、六年たって今から見ますとそうなっているわけです。検査としては、今おっしゃった中に、当時の大蔵省証券会社と悪く言えばなれ合っている、よく言えば非常に温かい、そういうことしかできなかったみそがありますよね。  つまり、現先取引が事業会社と事業会社の間でなされている、それは我々の関知しないことだとおっしゃいました。裏で山一が保証している、その場合には最終的にまさに飛ばしとして山一に返ってくる、今回のケースはそうだ、こういうお話なんでしょうが、もともと、山一の得意先であるA会社からB会社に現先取引が行われて、実際には評価が低い債券なり株式が高い貸付金なり売却代金として売られていった、BからCへ行く、この間に山一が入っていなければ問題ないというのはそのとおりですよ、それは。しかしそういうのは飛ばしと言わない。  そしてもっと言えば、そもそもその発生は山一とA社の営業特金なりなんなりの、要するに、一任勘定であったのか営業特金であったのか知りませんけれども、山一と金を委託した会社の取引の中から生まれた含み損といいますか評価損があるから決算期ごとにこれを移すという話で飛ばしという話になっているわけですね。なっていたわけです。そういうものがあるんではないかという疑いは当時から物すごくかかっていたわけですよ。なぜそのことを取引先の相手方にまで踏み込むような調査が当時できなかったのか。  今から考えると、そこまでやって――山一は単年度で九一年は多分二千六百億ぐらいの業務純益出していますよ。二千六百億ぐらいの簿外債務があっても、それを償却することはそれほど大変じゃなかったはずですよ、まだ九〇年、九一年、九二年というような年では。今になってくると、粉飾決算しても数億円ぐらいしか山一なんかなかったじゃないですか、この間。そういう体力のあるうちにメスをなぜ入れなかったのか、ここが問題だと思うんです。  おとといの、これは参議院の予算委員会で現在の証券局長はこう言っています。「山一証券に関して言えば、その当時それが受け渡し金額ベースで二十六企業、約二千五百八十億ほどそういったもの」、つまりグレーゾーンの現先取引があったと、こういうふうに松野証券局長から聞いておるという答弁をなさっておるんですね。  九一年の十二月ごろにそういうことございましたか。つまり二千五百八十億円ほど受け渡しベースで現先取引のグレーゾーンにあるものが山一証券にありましたか。御記憶どうですか。
  14. 松野允彦

    松野参考人 今の数字は私は全く記憶にございませんし、恐らくそのとき聞いたことはございません。
  15. 仙谷由人

    仙谷委員 そうしますと、巷間言われております、九一年の年末と次の年の年始にかけて証券局長が山一の方に指導をした、こういう話が新聞紙上で書かれましたですね。そのことに絡んでお伺いをするわけですが、日時風に言いますと、まず、飛ばしの話は九一年の八月のこの国会の予算委員会の中で議論になったのが大きく議論になった話だと思います。つまり、損失補てんから飛ばしの問題が出てきたということですね。その後九一年の十一月に金融ビジネスが大変大きくこの山一の飛ばし問題を取り上げたんです。「「口が裂けても言えない」本当の赤字額 山一証券」「宇宙遊泳玉一兆円」と。つまり、飛ばして宇宙を飛んでいるという話ですな。当然のことながらこの辺のことは御存じだと思う。  そして九一年の十二月二十六日には、大蔵省が大手証券四社に対する特別検査の結果を発表しているんですよ。まだこのときには山一に、先ほど申し上げた二千五百八十億円ですか、そういうグレーゾーンの現先取引があるという話は、認識はしておったかもわかりませんが、この特別検査結果の中に出てきてないと思うんですよ。それで、年が明けてから今度は飛ばしの問題は、大和証券、コスモ、山種というふうに、これは訴訟の和解とか調停の結果払わなきゃいけないと。飛ばしてあったのが、全部そういう証券会社が実は何らかの保証してあったとか念書が入っていたとかということで裁判になって、結果としては裁判所を間に挟んだ損失補てん的なことが行われるという事態になったんですね。それで九二年の二月にまた飛ばし問題が国会で問題になった。  それで大蔵省は、飛ばしの情報開示を促して有価証券報告書に記載せよと。あるいは、九二年の四月には東証もそういうことを決めた。それから四月の二十八日になりますと、山種の飛ばし取引について業務停止処分にしています。それから五月の二十六日には、参議院の大蔵委員会証券局長が、和解もしくは調停、訴訟の例は十五件で千七百五十五億円、大和、コスモ、丸万には処分をしないという答弁をなさっておりますよね。相当飛ばしのことを意識しながら物事が進んでいっているんですよね。  ところが、この山一に対する現先のグレーゾーンのものが、ここで問題になっているように二千五百億円か五百八十億円かはともかくとして、相当の金額があったか、あるいはこの年の、さっきおっしゃったように十月の三日でございましたか、参議院で法律が、つまり損失補てんの禁止も含む証券取引法の改正ができたものだから損失補てんできないと。そこで、このグレーゾーンの現先取引処理の仕方について松野証券局長に山一の方から相談があったんじゃないですか、あるいは指導を受けたいという要請があったんじゃないですか。
  16. 松野允彦

    松野参考人 この問題、私も、六年以上前の話ですからなかなか記憶が定かでないんですが、確かに山一証券から、取引企業との間でそういう問題があって、いわゆる飛ばし取引に絡む相談があったというふうな記憶はございます。(仙谷委員「ございます」と呼ぶ)ございます。  それにつきましては、私は詳細なやりとりは覚えておりませんけれども、要するに、飛ばし取引そのものについて、これは先ほど来申し上げておりますように行政当局としてどうこうと言うことはできない取引だ。ただ、証券会社がそれについて最終的な責任を負わなきゃいけないものであれば、もう損失補てんの禁止の法律ができて、改正されて一月一日から施行されるという状況にあったわけですから、それはその法律で認められている証券事故という形で処理をするしかない。そうしなければ、損失補てん、文字どおり禁止行為に該当する。  証券事故という形であればこれは損失補てんにならないということが法律に明記されているわけでして、これについてもいろいろと御議論がございました。抜け道をつくっているんじゃないかとかいう議論がございましたけれども、私どもとしては、証券取引の性格上、証券事故というのは必ず起こり得るので、これは避けることはできない。そうなれば、それに対して補てんといいますか、トラブル解決をするために補てんをするような形になった場合、これは、それも法律違反だということになってしまうとむしろ投資家保護上問題が起こるということで、一定の要件を決めまして、余り記憶、最近証取法を読んでおりませんので忘れた部分がございますが、たしか主な措置としては、さっきございましたように裁判をする、あるいは裁判上で和解をする、あるいはもう一つ、民事調停で調停をするというようなそういう形をとれば、それは、それに基づいて補償する場合には損失補てんに該当しないというような道を設けたわけでございます。  したがいまして、山一証券についても、そういう方法で引き受ける場合には、処理をするということであれば適法であるということは、多分そういうふうな趣旨のことは申し上げたのじゃないかというふうに思います。
  17. 仙谷由人

    仙谷委員 時間の関係で、これ以上その問題お聞きするのを控えますが、最後に、松野さん、結局これは、山一から飛ばしの後片づけが海外現法とかなんとかというところまでいって、簿外になって飛ばしたあげく、これ全部山一が保証しているから、最後、受けなければならないという簿外債務になったわけですよね。保証なんかしていなければ、あるいは仲介をして、いや、うちは必ず最後は責任持って面倒見ますからみたいなことを言っていなければこんなことにならない。つまり、この背後の心理には、いっか株価は戻すだろうとか、そういうある種の安易なというか、右肩上がりの神話のもとでみんなやっていたというのが僕は背景にあると思いますが、それでとうとう山一はこうなってしまった。  では、当時、現先が幾らあるのか、あるいは営業特金で残って当時しこった、こういうふうに表現もしていましたけれども、そういう玉がどのぐらいあるのか、厳しく検査をして追跡をして、山一の責任があるのであればそこで責任をとらせる、そういう厳しい検査と厳しい処分があれば山一は助かっていた、現在のような状態にならなかったとお思いになりませんか。
  18. 松野允彦

    松野参考人 仮定の問題でございますが、それは確かにおっしゃられるようなことも十分考えられると思います。  先ほど御指摘でございました特別検査というのを当時やっておりましたが、これは例えば、たしか私の記憶では四社に同時に入っておりまして、検査官も非常にそういう意味では手薄であった。しかも、損失補てんでまだ報告をしていない損失補てんがないかというのにむしろ重点的に力を入れて検査をしていた。あるいは野村証券の場合ですと、たしか例の東急電鉄株式の問題に力を入れて検査をしていたというようなこともございまして、検査官の数が少なかった。あるいはそういうものに重点を置いて特別検査をした。これは、一般検査では全部見るわけでございますが、特別検査ということで、かえって非常に狭い範囲で検査をしていたということがそういうものを厳しく見ることに若干、何といいますか、時間もないし人もいないというような状況であったということは御理解をいただきたいというふうに思うわけです。  結果として、検査で見つけて厳しく対応すればよかったではないかと言われますと、まさにそのとおりだと思います。ただ、検査で全部がわかるかということにつきましては、これはなかなか、特に証券取引行為のように第三者の取引の仲介をするというような形の場合には、率直に申し上げて、先ほど言われたように取引当事者を反面調査をしなきゃいけないという問題になるわけでございますが、現在の証取法調査権限からいいますと、違法行為というものがはっきりしないにもかかわらず反面調査をするということは、これはなかなか、やはり行政権の行使としてもそこまでやることができないという制約があることも御理解をいただきたいと思うわけです。
  19. 仙谷由人

    仙谷委員 今の一点だけだけれども、違法じゃない違法じゃないとさつきからおっしゃるのだけれども、これは法律違反にはなっていないかもわかりませんが、少なくとも現先取引に玉が、株式が使われているというのは、昭和五十一年以降昭和五十九年まで出された「債券の条件付売買の取扱いについて」という通達には違反していますね。要するに、株式を現先に使ってはならない、現先売買の対象にしてはならないということは、つまり債券じゃないとだめなんだということは大蔵省が確立した原則だったのじゃないでしょうか。それはもう答弁、結構です。  三和銀行佐伯頭取の方へ少々お伺いいたします。  谷内さんから、谷内さんを接待して、一つ不良債権償却証明書をもらったという新聞報道があるのですが、まず、こんな事実があるのか。谷内さんから不良債権の償却証明をもらったとすれば、何件ぐらいそういうもらった債権があるのか。金額にして幾らぐらいなのか。報道によりますと、九五年の二月の二十一日から二月の二十四日までの大阪本店の検査の中でそういう事実があったというふうに言われておるのですが、いかがですか。
  20. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 償却証明というのは毎年、検査部から来て償却証明を出してもらいます。したがって、新聞報道は実は昨日見たのですけれども、そういう事実がといいますか、もしその人がそのときに来ていれば、当然、谷内さんから償却証明を出してもらっているということだと思いますけれども、ちょっと私、その数字とかあるいは何年間この人にもらったかというのは現在把握しておりません。
  21. 仙谷由人

    仙谷委員 先般から、そのうち調べるみたいなことをおっしゃっているようですから、三和銀行の方でもこれはぜひお調べいただいて、国会に報告をしていただきたいと思います。といいますのは、これ、無税償却か有税償却かの税に絡むんですよ。ですよね。つまり反対に言えば、補助金が出たのと同じことになるわけですから。国民の方からいえば、入ってくる税金が入らなくなったという話ですからね。だから、それはもうぜひお調べいただきたいと思います。  次に、例の、九五年四月に大蔵省が東洋信託銀行に対して行った検査の報告書、示達書を三和銀行が、いわゆるMOF担なのかあるいは企画部なのか知りませんが、入手をしたという事実、あるやに言われておりますが、こんな情報収集といいますか、産業スパイみたいな話があったかどうか確認されておりますか。どうですか。
  22. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 その件につきましては、今、資料もございませんし、捜査中でございまして、私どもの方として確認はできておりません。
  23. 仙谷由人

    仙谷委員 この示達書をMOFからもらってきたと疑惑をかけられている方はわかっておりますね。その人には、会長なりあるいは三和銀行の中の調査委員会なりで調べていらっしゃいますか。
  24. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 捜査とは別に、私どもの中でも調査をしております。  ただ、捜査中のことでございますし、我々もはっきり確認が、確定はしておりませんし、ちょっとお答えはお許しいただきたいと思います。
  25. 仙谷由人

    仙谷委員 頭取が、もらってきた人と何か共犯関係になって、刑事上の犯罪に問われる可能性があるというのだったら、答弁を差し控えさせてもらいたいというときに、はいそうですかと私も引き下がるのですが、まさかそこまでは共犯関係がないと思うのですよ。企画部の何か長がつく人がもらってきて、トップにこの示達書については報告をした、こういう情報も聞こえてくるのですが、頭取自身は、この東洋信託銀行の検査結果、これについて報告を受けた記憶がありますか、ありませんか。
  26. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 私については、指示したこともございませんし、受けたこともございません。  ただ、そのほかのところにつきましては、私がここで今知っていることを申し上げて後で捜査の結果と違ってもいけない、こういうことでございます。
  27. 仙谷由人

    仙谷委員 残念でございますが、時間の関係がございますのでこの程度にいたしたいと思います。  頭取、三和銀行から某政党に職員が出向していたことがありますか。現在していますか。
  28. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 ちょっと質問のあれが、某何ですか、某、どこに出向している……(仙谷委員「政党です」と呼ぶ)政党ですか。政党という形では、ございません。
  29. 仙谷由人

    仙谷委員 優先株の引き受けの話が出ておりますね。これは報道で読ませていただいた限りなのですが、会長は、全銀協の会長時代に、本来は個別銀行が市場原理にゆだねて資本を調達するのが原則だけれども、今回は緊急異例の措置であって、信用収縮の悪循環を断ち切ることが大事だから、三和銀行も優先株を公的資金で買い取ってもらいたい、こういうことを三和銀行としてはお考えなのですか。
  30. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 本来はと言いましたのは、優先株というのは、こういう制度といいますか、新しい国の資金を入れてということがなければマーケットでしか取れないわけですし、そのマーケットが締まってしまえば優先株が出ないというのが、出せないというのが現在の状況で、したがって本来優先株はマーケットでと申し上げたのはそういう意味であります。  しかし、このまま自己資本が傷ついてマーケットがクランチをしていくという状況では、何らかのほかの形で優先株なり自己資本増強策を図らなければいけないのではないかという意味で私は申し上げたわけでございます。
  31. 仙谷由人

    仙谷委員 公刊物ですから、三和銀行の自己資本比率なりあるいはその含み益が日経平均何万円で消えるかというのも必ずしも正確ではないのかもわかりませんが、三和銀行は一万五千円ぐらいの日経平均の株価であれば自己資本比率が八・二〇六、こういうふうに言っているところがありますね。一万五千円で一ドル百三十円ぐらいであれば八・二〇六、株式の含み益は日経平均が一万四千七百六十三円になるとゼロになる、こういうふに、例えばこういう本には書いてあるのですね、書いてございます。  つまり、決算、有価証券報告書等々から分析してそうなっておるのだと思いますが、他の銀行に比べてもいい方なのですね、三和銀行は。三和銀行であればマーケットで取れると思うのですよ。現に、日本興業銀行と住友銀行は、いやいや海外のマーケットで取るから公的資金要らないよ、あるいは日本興業銀行の頭取さんは、金融ビジネスの二月号で、いやいやうちはマーケットで取るから要らぬ、こう言っていますね。三菱銀行も、最初は非常に消極的だった、こう言われております、これは劣後債のようですが。何で三和銀行が、それほどマーケットで取れる力があるのに、公的資金を取ろうとされておるのですか。
  32. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 少し偉そうな言い方になりますけれども金融界全体としてクランチが起こっているといいますか、海外の調達あるいは国内の調達も含めて、必ずしも、私ども銀行が、それではぎりぎり八・〇を達成しておさまってよろしいという形のときに、日本金融界全体がどうなるかということも含めて考えますと、自分のところのために使うだけではなくて、金融界全体のために使うという事態が起こり得るということであります。
  33. 仙谷由人

    仙谷委員 その種の横並びのお考え方と意識が護送船団であり、もうそれが通用しなくなっているのじゃないかということがずっと言われて久しいわけですよ。そこがまず第一点。それともう一つは、多分この種の発言をされたときには、まだ三和銀行の行員が贈賄容疑者として捜査対象に、表向きはまだなってなかったときですよね、呼び出しは受けていたと思うけれども。捜索令状を持ってこられて、いわゆる捜索を三和銀行本体が受けたという時期ではまだないと思うのですね。あるいは現時点では、どうも大蔵省に対して、特に大蔵省検査に対して贈賄という犯罪を犯した人が三和銀行にはおるらしい、それも中枢部だ、MOF担というところだと。そしてまたもう一つは、あげくの果てに、他の銀行の機密書類まで横流しを受けた、こういうことがあるのですね。  それから、さっき申し上げた不良債権の償却証明についても、結論的に不正が行われたかどうかはともかくとして、接待漬けにした検査の中で不良債権の償却証明が出されておるのではないかという見方はされますよね、今回のこの谷内さんと御社との関係は。  そういう銀行公的資金を堂々と導入するというのは、国民感情から考えて、まさかのときにはこの公的資金三和銀行が先頭を切って他の銀行のために公的資金の導入をやる。その導入された公的資金で買った三和銀行の優先株は後になって売れるでしょう、立派な成績を持っていらっしゃるから。つぶれる銀行があったら、これはどぶに捨てたのと同じになりますね。その種のお金を、まあいわば現在容疑中の三和銀行が堂々と公的資金の導入を受ける。こんな、李下に冠、瓜田にくつを入れずというものですよ、こんなことがまかり通るとお思いですか、世間の常識から考えて。どうですか。
  34. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 先ほど申し上げました導入を積極的に発言した時点と今では、確かに状況は違いますし、今どうすると言われても、私もまだ、引き続きという答えも、あるいはやめるという答えも申し上げようがないのですが、金融システムを維持するという形で出された法案でございまして、その法案が、あるいは審査基準が出た段階で私どもも考えたいと思っております。  大変申しわけございませんでした。
  35. 仙谷由人

    仙谷委員 金融システムの維持ということは非常に大事です。しかし、そのお題目ですべてが許されるということではない。ここだけははっきりさせていただきたい。我々も、金融システムは維持しなければいけないし、しかし、より自由で公正なマーケットも維持しなければ、国のひもつきの金を銀行が受けるなどという恥辱に本当にあなた方が耐えられるということ、その神経が私はわからないのですよ。それで申し上げているのです。  終わります。
  36. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、河合正智君。
  37. 河合正智

    河合委員 新党平和の河合正智でございます。  佐伯参考人松野参考人におかれましては、御多用のところ御出席いただきまして、厚く御礼申し上げます。私は、この大蔵委員会に所属するのが初めてでございますので、基本的なことからまずお伺いさせていただきたいと思います。  松野参考人にお伺いさせていただきます。  御経歴書を見ますと、昭和三十六年、すなわち一九六一年でございますか、大蔵省に入省になり、一九九〇年六月に証券局長、一九九二年六月二十六日まで証券局長として就任されておりまして、九四年の七月二十日から全国地方銀行協会の副会長に御就任の上現在に至っているという御経歴だと思います。  大蔵省入省から証券局長に就任されている期間、海外に赴任され、もしくは海外を視察された御経験はおありでございますか。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  38. 松野允彦

    松野参考人 私は、西暦で申し上げますと一九七八年、ですから昭和五十三年でございますか、一九七八年から八一年までワシントンの日本大使館に三年間勤務をしておりました。それ以前に一回、たしか一回だと思いますが、海外出張した経験がございます。それで、一九八一年に帰ってまいりまして大蔵省に戻ってからは、かなり頻繁に海外出張をしております。これは、いろいろ金融 関係の仕事をしていたこともございまして、当時アメリカとの間の金融協議等々もございまして、かなり、ヨーロッパにも参っておりますが、ちょっと回数は覚えておりません。
  39. 河合正智

    河合委員 八一年以降、恐らく今お答えになりましたのは一証券局長御在任までの話かと思います。  九二年の六月二十六日から九四年まで二年間のブランクを経て地銀協の副会長に御就任になっているわけでございますが、証券局長をおやめになった後は、海外赴任もしくは研修、講演等ございますでしょうか。
  40. 松野允彦

    松野参考人 平成四年でございますか、一九九二年の六月に証券局長をやめまして、その後、日本開発銀行理事に就任をいたしました。日本開発銀行理事を二年やっておりまして今のポストに参ったわけですが、日本開発銀行理事のときは、開発銀行も政府保証で外債を発行することが認められておりまして、その外債の発行に絡んで、主にこれはロンドンでございますけれども、何回か出張しております。
  41. 河合正智

    河合委員 ありがとうございます。  それから、先ほど仙谷委員質問に対して、山一から飛ばしに関する相談があった、このようにお答えになっておりますが、これは正確にいつ相談があったということですか。
  42. 松野允彦

    松野参考人 正確な日付は実は記憶していないのでございますけれども証券取引法を改正していただきまして、損失補てんを禁止するということになった法律が通りましたのが、たしか平成三年の十月でございました。それを平成四年の一月一日から施行するということになっておりまして、その法律が通った後だということは明確に認識しております。したがいまして、多分十一月か十二月か、何かその辺ではないかと思いますが、正確な日付はちょっと記憶しておりません。
  43. 河合正智

    河合委員 ここからはただいまのお答えに非常に密接に関連することになるかもしれませんが、新聞報道でこういう報道がされております。  東京駅八重洲口前にあった山一本社六階の役員室で、三木前社長は役員会のメンバーに対しまして、「大蔵省松野氏に、大手百貨店とのトラブルの経緯を説明したうえで「こちらで処理するしかないでしょうか」と話した。これに対し、松野氏は「ちょっと待って……。方法があるんじゃないか」」こういう報告がなされたと報道されておりますが、この辺の事実関係につきましてお答えいただきたいと思います。
  44. 松野允彦

    松野参考人 私もその新聞記事を読んだわけでございますが、少なくとも私の記憶する限りでは、相手方企業の名前は私も覚えておりません、百貨店だったのかどうかというのは正確には覚えておりませんが、確かに取引企業とのトラブルがあるという話が三木さんから、三木さんは当時まだ副社長じゃなかったかと思うのですけれども、あったという記憶はございます。ただ、それに対して、その記事にありますように、山一が処理をするのを抑えたというようなことは全くございません。  先ほど来ちょっと申し上げておりましたように、山一で処理をする場合には、それは証券事故として処理をしないと違法行為になるということは恐らく申し上げておりますし、それから、その処理をするかしないかは、それは経営者の判断の問題だということも多分申し上げたかもしれません。  といいますのは、現先取引そのものは法律に直接触れる取引ではございませんので、その仲介をする行為も、特別に約束などをしない限りは、これは仲介行為としても違法行為ではないわけでございまして、したがって、そういうような趣旨のことは申し上げたのではないかと思いますが、少なくとも処理をするのをやめろというようなニュアンスの話をしたということはないと思います。
  45. 河合正智

    河合委員 さらにその先、この役員会での応答が報道されております。もっと具体的でございます。「外でやってはどうか。」海外という意味でございますね。外ならこれは見えない、大蔵検査も見えないなどと松野氏が答えた。この点についてはいかがでございますか。
  46. 松野允彦

    松野参考人 それも、今御説明しましたところがらしまして、私にも理解できない。そういうふうにもし受け取られるとしても、それは全く理解できないことでございます。  と申しますのは、もし現先取引のままで継続するのであれば、それは、仲介業者として相手を見つけてくれば、証券会社がコミットをしない限りは違法行為にならないということでございますから、その相手先が国内企業であろうが海外企業であろうが、それは別に問題になるわけではございませんし、そもそもがそれは違法行為ではないわけですから、検査で問題になる、ならないというような問題ではないというふうに私は考えておりましたし、また、恐らくそういう趣旨の話をしたんではないかと思いますが、少なくとも、検査を免れるために海外でやった方がいいというように受け取られるような説明をした記憶は全くございません。
  47. 河合正智

    河合委員 検査を逃れるためという具体的な指示ではないというお答えでございました。  一般的に、この簿外処理を海外でやったらどうかというふうにサジェスチョンされたことはございますか。
  48. 松野允彦

    松野参考人 今、簿外処理というふうにおっしゃられましたけれども、それは、もし証券会社がその現先取引の対象である有価証券を引き取って、それを帳簿に載せないと初めて簿外処理になるわけでございまして、企業間の現先取引の仲介行為をするということであれば、これは簿外の問題すら起こらないわけでございます。  したがって、簿外処理ということをするということは、これはもう直ちに証券取引法に触れる行為でございますから、そういう違法行為を示唆するというようなことは全く考えられないわけでございまして、違法にならない形で処理するのであれば、それは経営者の責任である、判断であるというふうな趣旨の話をしたんではないかというふうに思います。
  49. 河合正智

    河合委員 さらに、三木社長はそのときに松野氏にこのように聞いたと報道されております。  三木前社長は、外為法上、有価証券を海外に持ち出す場合には日銀の許可が必要なのではと質問したことに対して松野氏がお答えになったということでございますが、その答えは、返事は「問題ない」ということでございますが、このようにお答えになったんですか。
  50. 松野允彦

    松野参考人 その部分は全く私の記憶にないところでございまして、どうしてそういうふうに受け取られたのかがよくわからないわけでございますが、現先取引というものの相手方が仮に海外の企業だ、あるいは海外の投資家だとしても、それは証券取引法上の問題としては特に問題はないわけでございますが、海外ということになると、当然、外為法上の問題が出てくるということは、これは考えられるわけでございます。まあしかし、かといって、それが外為法上問題になるのかどうかというのは私が判断できる問題ではございません。  したがって、そういうふうに受け取られたということは、私としてはどうしても理解できないわけでして、まあそれは、仲介行為をする過程において、国内企業でなくても、海外企業でも別に仲介をすることは行われているわけでございますから、そういうふうなことを外為法上問題がないというふうに受けとめられたのかどうか、そこは私としては全く理解ができない点でございます。
  51. 河合正智

    河合委員 さらに、この場面で松野氏は「心配なら、専門家に聞いてみたらどうか。紹介するよ」とまで語ったと報道されております。この点については、答弁、必要ございません。  佐伯参考人にお伺いさせていただきます。  この委員会で今審議されております、最もこの国のシステムにとって大切な問題、いわゆる公的資金を導入するかどうかという問題でございますが、その前提として、不良債権の総額の数字が非常に国民にとって、わかりづらいというよりもわからない。全銀協の会長をおやめになった立場でございますので、三和銀行として、公表不良債権の総額と、それからいわゆる自主申告されました不良債権の総額と、それから全銀協の会長としてリードされてまいりましたSEC基準による不良債権の総額、これを三和銀行の場合でお答えいただけますでしょうか。
  52. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 三和銀行という数字ですと、平成九年九月の末が最後になりますが、公表の不良債権が一兆二千七百七十九億でございます。細かくは、破綻先が八千百七十億、金利減免が千二十一億、経営支援が三千五百八十八億ということでございます。
  53. 河合正智

    河合委員 昨年九月の数字というのはSEC基準による数字でも同じでございますか。自主申告による数字もあわせてお伺いさせていただきます。
  54. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 ただいま申し上げましたのは全銀協基準でございます。SEC基準についてはまだ計算をしておりませんので、ここには持ち合わせておりません。
  55. 河合正智

    河合委員 どのくらいの金額になるとお考えでございましたか。概数で結構でございます。
  56. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 SEC基準というのは、三カ月とか、経営支援というか、金利引き下げということで、一件ずつ計算しないとわかりませんので、現在、我々として想像がつかないわけであります。六カ月のよりも多くなることは間違いないということでございますけれども、全然こちらとしては持ち合わせておりません。
  57. 河合正智

    河合委員 自主申告された数字についてお答えがございませんけれども、後の答弁と御一緒にあわせてお答えしていただきたいと思います。  東洋信託銀行の問題につきましてお伺いさせていただきます。  三和銀行は東洋信託銀行を合併の対象として検討されていたということでございますが、具体的に合併を決定するというセクションは三和銀行の場合はどこになりますでしょうか。
  58. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 合併を検討していたということはございませんし、もし合併が最後決まるとすれば、それは取締役会であろうと思います。
  59. 河合正智

    河合委員 合併を検討されていたということはないというお答えでございましたが、間違いございませんか。
  60. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 それはございません。
  61. 河合正智

    河合委員 先ほどの答弁にもございましたけれども、いわゆる検査資料が三和銀行側に渡っていたということにつきまして、頭取として御存じなかった、指示もしなかったし報告も受けていなかったという答弁でございますが、事実このようなことが発生していることについての経営者としての責任については、どのようにお考えでしょうか。
  62. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 我々としても調査をしておりますし、捜査中でございます。事実とすれば大変遺憾なことでございますが、それ以上の実態については、ちょっと私からは申し上げかねます。
  63. 河合正智

    河合委員 確認でございます。  先ほどの不良債権の総額、自主申告、いわゆる七十六兆円という数字が出ている、その三和銀行としての不良債権はどれだけかという点と、それから経営者としての責任ですね、これはおっしゃりにくいことかと思いますけれども、ちょっと明確にお答えいただきたいと思います。東洋信託銀行に関してです。
  64. 佐伯尚孝

    佐伯参考人 不良債権につきましては、先ほど申し上げた数字がいわゆる銀行基準でございまして、もう一つ大蔵省の方から、二分類から四分類までということで、全国の七十七兆円という数字が出ております。  我々も大蔵省に対しては報告をしておりますが、今後どういうふうに自己査定の分を公表していくかというのは、現在その基準等をつくっているところでございまして、そういう分類の方針を出すのか、あるいは数字を出すのか。もう数字を出すと公表をされているやに聞く金融機関もありますけれども、私どもとしては、個別銀行の分類、二、三、四分類については現在公表しておりませんので、御勘弁いただきたいと思います。
  65. 河合正智

    河合委員 質問時間が終了いたしましたので、終わります。
  66. 坂井隆憲

    ○坂井委員長代理 次に、西田猛君。
  67. 西田猛

    ○西田(猛)委員 自由党の西田猛でございます。十八分間しかございませんので、的確に簡便にお答えを願いたいと思います。  今我が国が直面している金融システムの危機は、必ず回避しなければなりません。しかし、そのためには、過去この金融秩序の維持のためにどのような行政が行われてきたのかを明確に振り返ってみて、そしてこれからの参考、そしてこれからの誤りなきを期していかなければならないと思います。その意味でお聞きをしていきたいと存じます。  先ほど松野参考人は、六年以上前の話でよく覚えていないが、確かに山一証券から、取引企業との間で、当時その用語が使われていたかどうかは別にいたしまして、飛ばし問題について相談を受けたことはあるというふうにお答えになられまして、さらに、先ほどの河合委員質問に対して、明確な時期は記憶していないけれども平成三年の十一月か十二月、すなわち証券取引法改正法の法律が成立した以降ではないかというふうにお答えになっておられますが、そこをもう一度確認いたしたいと思います。今のことで間違いございませんでしょうか。
  68. 松野允彦

    松野参考人 記憶をたどっているわけでございますが、大体、非常に漠然としておりますけれども、そういうふうな感じで、記憶しているところではそういう感じだと。
  69. 西田猛

    ○西田(猛)委員 他方、これは新聞記事でありますけれども、一月三十日の日経新聞の記事で、これは日経新聞の記者と松野参考人との一問一答の形式をとっております。ここで、質問「九二年一月前後、山一証券の当時の三木副社長が大手百貨店の飛ばしの処理について報告に来たとの証言があるが。」松野参考人のお答え「僕が記憶している限り山一はない。、」とお答えになっておられますけれども、これはいかが考えたらよろしいでしょうか。
  70. 松野允彦

    松野参考人 九二年の一月でございますか。ちょっと……。
  71. 西田猛

    ○西田(猛)委員 新聞の記事は「九二年一月前後こと聞いております。  しかし、私が聞きたいのは、松野参考人は、山一はこの件について相談に来たことはないとお答えになっておられるというところでありますが。
  72. 松野允彦

    松野参考人 それは、そのときは本当に私は忘れてしまっておりまして、当時、九二年になって問題になっておりましたのは、先ほど別の委員から御質問ありました大和証券とか山種とかいうのがございまして、山一証券の件については全く失念していた、その日経の記者が聞かれたときには本当に覚えていなかったというのが正直なところでございます。  また、九二年の一月には、私は全く、これは法律が施行された後でございますけれども、そのときに山一に会ったという記憶は全くございません。
  73. 西田猛

    ○西田(猛)委員 ちょっと今のお話、私よくわからなかったのですが、山一証券の方に全く会ったことがないといいますのはどういうことでしょうか。
  74. 松野允彦

    松野参考人 その九二年の一月という時点では会った記憶はないということでございます。
  75. 西田猛

    ○西田(猛)委員 それでは、この日経新聞の記事の聞き方も問題があったのでしょうけれども、ただ、この記事の聞き方は、飛ばしの処理の件で、こうあるわけですね。  じゃ、時期の件は別にいたしまして、その当時いわゆる飛ばしと呼ばれていたかどうかは別にして、その取引企業の証券を用いた現先取引の件で山一証券の方が相談に来たことがある、そしてそれについて話をしたことがあるということは確実なわけですね。
  76. 松野允彦

    松野参考人 九一年の十一月か十二月ごろに来たというふうに記憶しております。
  77. 西田猛

    ○西田(猛)委員 それと、先ほど松野参考人は、特別な約束をしない限り現先取引そのものは違法な行為ではない、企業企業との行為であって、証券会社が絡むものではなく、証券取引法に直ちに触れるものと決めつけることはできない、仲介をしてもそれは違法ではないというふうな御答弁をしておられます。  しかし、なぜ山一証券の方がそんなにも巨額な証券現先の処理の件について相談に来なければいけないのかという件について、相談に来られた山一証券の方にお尋ねになりませんでしたか。
  78. 松野允彦

    松野参考人 当時の記憶はございませんが、ただ、その当時の状況から考えてみますと、証券不祥事で相当証券界に対する信用も失墜しましたし、あるいは証券行政に対する批判もありまして、証券不祥事が、たしか九一年の六月ですか、に表面化したわけでございますけれども、それ以降、十月に損失補てん禁止の改正法が成立するまでの間というのは、率直に申し上げて、証券局と証券界の間は非常に疎遠になっておりました。これはもちろん行政処分をしたりした関係もございます。  しかし、十月以降、今度は証券市場が非常に不振に陥っておりまして、その関係を修復すべきではないかというような要求、要請がかなりあったことも間違いございません。私は、証券不祥事が明るみになって以降、特に十月以降は、一応国会で法律が成立したということもあって、証券業界の人には、ともかくもし何かあれば証券局に来てほしい、私どもはそのときはもう定例の昼食会というのも取りやめておりましたし、一切その業界の人と意見交換ができないということは非常に困るわけでございますので、証券局長はあけてあるから、いつでも業界の人は来てくれ、来てほしいということを協会等を通じて事あるごとに、あるいは担当の課長などを通じて話をしていたことは事実でございます。  したがいまして、三木さんがそういう問題を持ち込んできたときに、私は、そのトラブルの相談というよりは、飛ばしについての処理一般の考え方を聞きに来たというふうに受けとめて対応をしたというふうに記憶をしております。
  79. 西田猛

    ○西田(猛)委員 今、三木さんがとおっしゃったので、それを尋ねてきた方は当時の三木副社長であったということですね。だと思います。  それで、飛ばしの処理について一般的に聞きに来られたというふうに今おっしゃったのですけれども、それはどういうことでしょうか。飛ばしの処理について一般的な質問というのは、三木社長の方からどういうふうな形の質問なんでしょうか。
  80. 松野允彦

    松野参考人 詳細はあれですが、要するに、飛ばしというものについての行政当局としての考え方、先ほど来申し上げています、飛ばし行為証券取引法でどういうふうにとらえられるのか、理解できるのかという問題、それからそれが、証券会社が関与したときに、証券会社にどういうふうな問題が起こり得るのか。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕  つまり、飛ばしというのは純粋には企業間の取引でございますけれども、仲介している証券会社がそれを引き取るということになれば損失補てんになる。あるいは、そういう約束をすれば、これは当時省令ではございましたけれども、健全性省令という省令に違反するとかいうような法解釈上の問題。そういうようなことを含めて、飛ばし行為についての証取法の解釈というようなものを一般的に御説明をしたというふうに記憶しております。
  81. 西田猛

    ○西田(猛)委員 当然、当時の証券行政の最高責任者とされて、証券取引法の改正に取り組まれたわけです。なぜその当時証券取引法が改正されたかといえば、いわゆる営業特金というものの存在があり、これが損失補てんあるいは利益保証の温床になるのではないかということが言われたからであります。  そうしますと、そういう問題があるということを当然認識しておられて、そして証券会社の方が、いわゆる飛ばしという問題について、一般的とはいえ、今おっしゃった言葉をかりれば一般的に御相談に来られた。そうしたら、その御相談の真意は、あるいはよって立つところの原因はどういうところにあるのかという問題意識は当然持っておられたと思うのですけれども、どういう問題意識を持っておられましたか。
  82. 松野允彦

    松野参考人 それは、今いみじくも御指摘をいただきましたように、損失補てんそのものは、そもそも営業特金ということから発生した問題でございます。したがって、法律を改正して損失補てんを禁止するときに同時に取引一任勘定を禁止したわけでございまして、営業特金というのは俗な言葉でございますが、いわゆる取引一任勘定ということであるわけです、法律的に。したがいまして、そういう取引一任勘定で生じた損失をめぐるトラブルというようなものではないかというふうには当然認識をしたわけでございます。
  83. 西田猛

    ○西田(猛)委員 取引一任勘定にまつわるトラブルに関しての相談だという認識は持っておられて、その質問に来られた副社長という最高幹部の方に、当時そう言われていたかどうかは別にして、証券を用いた現先取引そのものは違法ではない、それに証券会社が絡まなければ、あるいは最終的に何ら約束をしなければ違法ではないのだよということを言うということ自体は、それを聞いた、しかも聞く立場から見れば相手は証券行政の最高責任者でありますから、その方が言っている言葉をどう受けとめるかということも、やはりこれは行政立場としてはお考えになっておられたと思うのですね。  しかも、違う言葉で申し上げれば、そういう問題があった上でこういう相談に来ておられるとすれば、その相談に来た方に対して、御社が、例えば山一証券が引き受けられた一任勘定で生じた損失がこちらからこちらへ、こちらからあちらへと帳簿上移るというふうな形での現先取引を仲介するのであれば、それは違法ではないかもしれないけれども正当ではないよ、あるいは好ましいことではないよということぐらいはおっしゃるべきなのではなかったのでしょうか。
  84. 松野允彦

    松野参考人 確かに、私もその現先取引そのものが好ましい行為である、好ましい取引であるというふうに考えていたわけではございません。  ただ、当時の状況から申し上げますと、やはり企業がそういう取引を行っているという現実を無視するわけにはいかないわけでございまして、法律に形式的に触れない行為である以上は、企業が自己責任でそういう行為を行うということが証券市場に対して、まあ損失補てんの場合には証券市場に対して非常にゆがみを与えるということで私どもは問題視をしたわけでございますが、個別の企業がそういう、株を現先取引の形で一時移しかえるというようなこと、これが現先という形で行われているということについて、そこまで法律で規制ができない以上は、これはもう後は経営者の判断の問題だというふうに私は受けとめたわけです。  もちろん、要するに、違法な行為をしない限りは経営者が判断をすべき問題ではないか。引き取ってしまうのであれば、それは違法にならないように証券事故として処理をしなきゃいけない。現先としてつなぐのであれば、それは違法にならないように仲介をしなきゃいけないということであって、そこはもう経営の判断の問題である、自己責任での契約の自由の問題だというふうに私は認識をしたわけです。
  85. 西田猛

    ○西田(猛)委員 そういうお答えはできるのかもしれません。しかし、当時の状況あるいは今の状況からも考えて、そういうふうに続けていって、先ほどもお話の中にありましたが、いずれ株価が上がって帳簿上の損失が消えてしまうだろうという予測の上に立っていればそれはいいかもしれない。しかし、どこかでその損失が露呈したときにそれをどう処理するか。それもまたもちろん企業経営判断の問題であって、それは経済主体の問題であると言い放ってしまうことはできるかもし れません。しかし、そういう行政の指導の態度が今日の山一の問題を、あるいは証券業界に対する不信の問題を生じせしめてきたのではないかなというふうに考えられるのですけれども、いかがですか。
  86. 松野允彦

    松野参考人 そこのところはちょっと私は考え方が違います。むしろそういうものについて行政がいろいろ介入することが市場を育てないのではないか。むしろ自己責任でやってほしい。当時の損失補てんをめぐる一連の事件が起こってから、あわせて私はその当時はいわゆる制度改革法の法律案の作成の最中でもあったわけでして、証券市場をよくするにはどうしたらいいのかという点について、私はむしろ自己責任で、かつプレーヤーをふやす、銀行を参入させるということで証券市場をよくしていくという考え方に立っていたわけです。  したがって、ここは見解の相違になるのかもしれませんが、私としては、それは経営者の判断にできるだけゆだねていく、そのかわり責任もとってもらうというような方向行政をしていくというのが証券不祥事の教訓といいますか、それを生かしていくための方向転換ではないかというふうに考えたわけです。
  87. 西田猛

    ○西田(猛)委員 まさにそのとおりだと私どもも思うわけです。  それは企業の自己責任の原則ですから、例えば証券会社が一任勘定で損失を生じせしめてしまった。そうしたらそれはその一任を委託した会社に対して、これだけ損が出ましたということを正直に言う。そのことによってこの証券会社は運用ができなかったというリスクをみずから負うということが、これは原則だと思うのですね。  しかし、それを一たんこちらの会社に、こちらへと。それは証取法上、あるいは法律上は構成として許されない行為ではないかもしれないけれども、しかしそういうことを行うということを当時の証券局長は知りつつ、それがいいとか悪いとかはもちろん別として、それを知っていた。しかもその行為自体が今問題になっている。そして当時もその直後に禁止された損失の補てん、利益の保証に絡んでいる、それに原因した問題だということなんですよね。  ですから、今おっしゃったように、企業の自主的な責任原則でいえば、こういう問題が生じてくるはずはないのじゃないかというふうに思うわけです。だから、そこの当時の行政責任がやはり厳しく問われるべきではないかなということを申し上げているのであります。  というのは、これはくしくも三和銀行の問題でありますけれども、きのうの新聞に出ておりました。三和銀行が不動産の仲介をされた。そのときに銀行はその不動産手数料を取ることができないから、その分を売り主から違う顧客の方につけかえてくれと。それに対して国税局は、それは一たん銀行の所得として計上した上で交際費として支払われるものだった、したがって、所得がふえるような更正・決定をしなさいという指導をしたということもあるわけですね。  そういう実態もありますから、当時の証券業界が行った行為が果たして好ましいものであったかどうかも含めて、行政当局の指導はさらに問われていかなければならないのだと私どもは考えております。  時間が参りましたので、きょうはこれで終わります。
  88. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木憲昭君。
  89. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。きょうは、松野証券局長に対して中心的にお伺いをしたいと思います。あなたは、日経の一月三十日付のインタビューで、「僕が記憶している限り山一はない。」「山一は全然聞いてない。」それから、三木さんに会ったという記憶はないかと聞かれまして、「会ったという記憶も全くない」、このようにおっしゃつていたわけであります。  ところが、先ほどの答弁では、相談があった、三木さんから相談があったという記憶がある、こういうふうにおっしゃっていますけれども、そうしますと、日経のインタビューというのは言い方が正確ではなかったということになるわけですね。
  90. 松野允彦

    松野参考人 多分、その日経のインタビューを受けましたのは一月の初めだったと思います。記事はかなり後でございますけれども、インタビューを受けたのは一月初めでございまして、そのときは、先ほど申し上げたように、全くその当時のことは、全く記憶の底に埋没していたというふうに申し上げた方がいいのかもしれません。  ただ、私はそのときに、その記事をちょっと私も読みましたけれども、正確には覚えておりませんが、三木さんに絶対会っていないとは答えておりません。たしか、会ったか会っていないかの記憶がないと、絶対会ってないとまでは自信がないということは申し上げたと思います。
  91. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 記憶が、その当時はあいまいであったが、次第にはっきりしてきたということかもしれません。  そこで、そこで何が話題になったかということでありますけれども、先ほど一般的な飛ばしの話をされたというふうにお答えになっていましたが、それだけですか。山一の側の何か問題点について相談を受けませんでしたか。
  92. 松野允彦

    松野参考人 それは、一つ取引企業との間でトラブルがあるという話は聞きましたけれども、それ以外に記憶するに足るような大きな問題があったとは思っておりません。記憶にございません。
  93. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そのトラブルでありまずけれども、このトラブルの内容というのはお聞きになっていたと思うのですが、内容なしにトラブルがあるという一般的な話をされたとはちょっと想像できないわけでありまして、何がトラブルになっていたか、お答え願いたいと思います。
  94. 松野允彦

    松野参考人 詳細はあれですけれども、トラブルになって、しかもそれに関連して飛ばしの話をしたということは、要するに飛ばしに絡んだトラブルであるというふうに、恐らくその案件もそうではなかったかというふうに思います。
  95. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 先ほどのお話をお聞きしていますと、外に持っていったらどうかということについては、そういう指導は断じてしていないというふうにお答えになっていましたが、山一証券に対してそういう指導をしたという記憶は全然ありませんか。
  96. 松野允彦

    松野参考人 外に持っていった方がいいという指導をした記憶はございません。  ただ、先ほどちょっと申し上げましたように、もし現先取引を続けていく、仲介を続ける、それがもちろん法律に触れるようなことでは困るわけでございますけれども、触れないような形で仲介を続ける場合に、その仲介先としていろいろな選択肢が考えられる、国内企業というふうに限ることは別にないということは話の過程であったかもしれませんが、そこはちょっとはっきり記憶はしていません。
  97. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 その話の内容については、記憶で今お話をされているわけですが、何かメモだとか、手帳、日記、こういう記録はございませんか。
  98. 松野允彦

    松野参考人 そのときは、私の記憶ではもちろんメモをとっておりませんし、六年前のことでございますので、手元にその当時の記録は残念ながら私は何もございません。
  99. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 客観的な証明がないわけであります。  山一証券の側は複数の元役員の証言がありまして、いわゆる海外、外で処理したらどうかとはっきり言われたというふうに言っているわけですね。社長を初め複数の証言がありますが、山一の側とあなたがどちらが真実を述べているのか、これは証明できないわけです。今の段階では、複数の証言者のある側にどうも説得力があるように私は思うわけであります。  それで、あの当時のこのトラブルの処理、飛ばしにかかわる含み損、どちらがかぶるかという点 について、その処理の方法としては訴訟で行うのがその当時は各社に対して指導されていた、こういうことでありましたが、山一証券のそのトラブルについては、訴訟でこれは処理されたでしょうか。
  100. 松野允彦

    松野参考人 私が在任している間には、そのトラブルが訴訟になったということは聞いておりません。  訴訟というのは、証券会社が現先の有価証券を引き受ける場合にはという前提があるわけでございまして、引き受ける場合には損失補てんになる可能性がある、だから、損失補てんになるのであれば、法律的には訴訟、つまり証券事故としての手続を踏まないと証取法違反になるということになるわけです。  私がいろいろなお話を、詳細を覚えているわけではございませんが、冒頭の委員長からのお尋ねにも申し上げましたように、少なくとも、証券会社に対して証取法違反になるような損失補てんをしていいとか、あるいは簿外処理をして粉飾決算をしてもいいとか、そういうふうなことを指導するということはあり得ないわけでございまして、それは、証券会社としてもそんなものを認めてもらうというふうに考えることが、私としては全く理解できないというふうに考えます。
  101. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 あり得ないと言うわけですけれども、しかし証拠もないわけでありますね。  それで、客観的にどういう関係になっていたかということでありますが、例えば、これは予算委員会に提出された資料でありますが、この中に山一の飛ばしの受け皿となった相手先の名称及び金額という一覧表があります。この中に、東急百貨店二百六十四億円という数字がございます。  飛ばしの受け皿になったということで、その関係で当時は三百億をどちらがかぶるかというので大きな問題になっていたというふうにも聞いておりますけれども、そういうときに、どちらが引き受けるかという点で裁判がなかったわけであります。  それで、これは、この東急百貨店からその次に飛ばす場合の飛ばし先については調査中である、こうなっているのです。調査中ということは、相手が明確ではない。つまり、最終的には山一証券がそれを引き受けた。二百六十四億円、この分を引き受けた可能性は極めて大きいわけですね。それを簿外処理をした、こういう可能性もありますけれども、その点はどのようにお考えでしょうか。
  102. 松野允彦

    松野参考人 今のお話は、実は私、資料を見ておりませんのではっきりしたことは申し上げられませんが、仮に山一証券が引き受ける、引き受けざるを得ない、話し合いで引き受けざるを得ないとなった場合には、当然のことながら証券事故として処理を、さっき裁判になったというふうにたしかおっしゃられたと思いますが、裁判で処理をして引き受けるということになるわけでして、その場合には簿外になるということはあり得ないわけです、もう裁判になれば表ざたになるわけでございますから。それが、簿外にするということは、私としてはどうも理解できないというふうに思います。
  103. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 だから裁判になっていないわけであります。裁判になっていないから表に出ず、適正に処理されず、そしてそれが結果的に簿外処理をされた可能性が極めて大きい。これが今回の山一証券の自主廃業の要因となった。こういうことであるとすれば、そこにどのような形でかかわったかという松野さんのかかわり方が非常に大きな問題となるわけであります。  これは、私は、引き続き徹底して真相を究明する必要があるという点を申し上げまして、終わります。
  104. 村上誠一郎

    村上委員長 以上をもちまして、金融及び証券取引に関する件についての参考人に対する質疑は終了いたしました。  両参考人におかれましては、御多用中のところ、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚く御礼申し上げます。御苦労さまでございました。      ――――◇―――――
  105. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、内閣提出預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案の両案を議題といたします。  本日は、参考人として、全国銀行協会連合会会長岸暁君、第二地方銀行協会会長加藤千麿君及び日本総合研究所調査部主任研究員翁百合君、以上三名の方々に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと思います。  なお、議事の順序でありますが、まず岸参考人、加藤参考人、翁参考人の順序でお一人十分程度御意見をお述べいただき、次に各委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと思います。  それでは、まず岸参考人からお願いをいたします。
  106. 岸曉

    ○岸参考人 ただいま委員長から御指名をちょうだいいたしました岸でございます。  本日は、預金保険法の一部を改正する法律案金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案に関しまして、私ども意見を述べさせていただく機会をちょうだいいたしまして、心より感謝を申し上げます。  私は、一昨日、全国銀行協会連合会の会長に御指名をいただいたばかりでございまして、関係方面へのごあいさつもまだこれからというところでございます。先生方の御質問に十分お答えできるかどうか甚だ心もとないところでございますけれども、どうぞよろしく御指導のほどをお願いいたします。  さて、現在御審議いただいております金融二法の目的でございますけれども、我が国の金融システムに対する信頼を一刻も早く回復させ、経済全体が危機に陥る事態を防ぐことにあろうかと思います。その背景には、昨年末にかけて我が国金融システムが不安定化したことがありますので、金融界に身を置く者の立場から、まずはその経緯について若干お話をいたしたいと存じます。  昨年十一月、三洋証券が会社更生法を申請し、北海道拓殖銀行が北洋銀行への営業譲渡を決め、山一証券が自主廃業いたしました。このように、我が国金融界にかってないような大型の破綻が相次ぎましたことから、内外で我が国金融機関に対する信頼が揺らいだのであります。このうち、三洋証券の破綻に際しましては、金融機関相互間の短期金融市場で初めての債務不履行が発生いたしました。四十兆円を上回る大規模な市場においてこうした事態が発生しましたことから、市場参加者は金融機関の倒産の危険性に非常に敏感な状況に陥りました。  その結果、一部の金融機関では、実際には健全であるにもかかわらず資金調達が厳しくなるといったケースが発生いたしました。私どもが親密なお取引をいただいております金融機関にも、マーケットの思わぬうわさにより資金調達に支障が出まして、私どもが急速資金をお回しするといった例もございました。また、金融機関の中には、調達に対する懸念から急激に資産を削減するといったところも出たようでございます。十二月に入りますと、こういった動きが一般企業にも影響いたしまして、有力な大手企業ですら資金の取り入れを急ぐといった動きにもつながつたわけでございます。  この時期の借り入れ需要は極めて旺盛でございまして、例えば私ども銀行でございますけれども、弊行の貸し出しは、十二月一カ月の間に約一兆円増加しております。また、社債市場におきましても、従来を大きく上回る規模の調達がございまして、十二月一カ月で普通社債の国内発行額が初めて九千億円を上回りました。  一方、金利面では、調達コストが欧米金融機関を大きく上回るいわゆるジャパン・プレミアムが発生いたしました。米ドル建ての三カ月物の調達に関するジャパン・プレミアムは、十月の末には〇・〇六%から〇・〇九%程度にとどまっておりましたわけですけれども、十一月下旬には〇・五%、そして十二月上旬には一%にまで拡大いたしました。  以上のような我が国金融システムの動揺はアジア地域に波及する気配を見せましたが、まさにそうした中で橋本総理が、日本発の金融恐慌、経済恐慌は決して起こさないと強い決意を述べられ、また、金融二法で三十兆円の公的資金を導入する御方針を示されたわけで、このことは市場の心理に極めて大きな影響を与えたのではないかと存じます。  次に、金融機関の自己資本比率といわゆる貸し渋りの問題について申し上げます。  BIS規制は、海外展開をする金融機関の自己資本比率を八%以上に保つことを求めておりますが、一部に、円安、株安の影響などから、今年度末の自己資本比率がBIS国際基準の下限である八%を切るおそれが出てきたわけでございます。ちなみに弊行の場合、分母を構成する総資産の約三割は外貨建てでございまして、五円の円安によって資産が約七千億円、円建てでございますが、七千億円膨れます。一方、分子である資本金等の自己資本の中には八千億円弱の有価証券の含み益がございまして、株価の下落によってこれが目減りいたします。  こうした中で、自己資本比率を維持するために、銀行が資産を圧縮せざるを得なくなる状況があったと存じます。しかし、土地の再評価益を自己資本に算入する方法、有価証券評価に関する原価法、低価法の選択制、利益性引当金の義務づけ廃止など、自己資本比率対策を相次いでお示しいただきました。さらに、金融機能安定化のための緊急措置に関する法案では、緊急の特例措置として、万一の場合に優先株や劣後債という形で自己資本を増強する枠組みが示されました。  資産規模の問題は、基本的には個別の銀行経営戦略の主要なテーマの一つでありますから、全銀協という立場からの発言は差し控えまずけれども、私個人といたしましては、現在各行とも、こうした対策をどのように利用するか、それとあわせて、お客様の資金需要にどのようにおこたえしていくかについて検討を重ねているものと思います。  なお、現在貸し渋りと言われている現象の中には、こうした自己資本比率規制に関する要因から生じているもののほか、景気の低迷を背景といたしまして業績が悪化している企業に対して、金融機関貸し出しに慎重な姿勢をとらざるを得ないというケースがふえていることがあります。こうした企業にも資金を行き渡らせるためには、金融機関の自己資本対策に加え、やはり景気対策一経済政策によりまして我が国経済がはっきり上向き、経営者が景気回復を実感できるようにしていただくことが最も有効であると考えます。  景気対策については、今年度補正予算を初め種々御議論を賜っておりますけれども、以上申し上げたような事情がありますことも御理解をいただければ幸いでございます。  さて、御審議いただいております預金保険法の一部を改正する法律案は、預金保険機構の体制を強化し、信用組合に加えて一般金融機関破綻につきましても公的資金を導入することにより、預金者保護の手当てを万全とするためのものであると理解しております。平成十三年度末まではペイオフ制度を発動しないという特例措置を確実に遂行する御方針を保証するスキームであります。これは、戦後初めて普通銀行に業務停止命令が発せられた阪和銀行や、都銀初の破綻となった北海道拓殖銀行のようなケースが今後万一再発したとしても、預金者の皆様が不安感を抱かれることがないような枠組みであると思います。  次に、金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案でありますが、国内のマーケットの動向を見ます限り、ひところの我が国金融システムに対する不安感は緩和をしておりまして、法案の上程自体によって相当な成果を上げていると考えます。しかしながら、ジャパン・プレミアムは足元でまだ〇・五%程度残っており、金融機能が完全に旧に復したわけでももちろんございません。いつまた不安心理の再燃が起こるか懸念されるような状況にございます。  公的資金金融機関の資本に投入することの是非に関しましては、種々御議論があることは承知をいたしております。  ただ、古い事例で恐縮でございますけれども、一九三〇年代の米国におきまして、復興金融公庫が公的資金を利用した優先株等を購入した事例がございました。このとき、十五年間でございますけれども、政府の得た配当収入や金利収入は、政府が投じた株式投資の償却や資金コストを大幅に上回ったと報告されております。つまり、当時の国民の税金は損失に充てられたのでなく、最終的に政府に戻ってきたということでございます。  我が国におきましても、金融システム不安対策を考える場合、これが一つの参考になるのではな  いかと私は考えております。  今回の法律案におきましては、優先株等の買い取りスキームの詳細は今後金融危機管理審査委員会が決めることとされておりますけれども、私といたしましては、このような例をも参考といたしまして、特例措置を発動し公的資金によって優先株や劣後債を購入する際には、投資資金の回収の可能性という点に重点を置くことも一つのポイントになるのではないかというふうに考えております。  最後に、このところ私ども金融機関と監督官庁であります大蔵省との関係のあり方につきまして諸方面より大変厳しい御批判、御叱責を賜っているところでございまして、この点につきましては心よりおわびを申し上げます。  以上で私の意見陳述とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  107. 村上誠一郎

    村上委員長 どうもありがとうございました。  次いで、加藤参考人にお願いをいたします。
  108. 加藤千麿

    ○加藤参考人 金融システムの安定に関する二法案の御審議に当たり意見を申し述べる機会を得ましたことは、光栄であり、心から感謝申し上げます。  私は、社団法人第二地方銀行協会会長として地域金融を担う者の立場から所見を申し述べたいと存じます。  さて、今さら申し上げるまでもなく、金融システムは経済の基本的インフラであり、その安定性を確保することは、我が国経済の活力を維持していくために不可欠であると考えております。  しかしながら、民間金融機関破綻等を契機として、金融システムに対する不安が広がっていることは御高承のとおりであります。特に、昨年後半からその傾向が著しく、金融不安ムードが社会に蔓延していると言っても過言ではありません。  信用不安が広がりますと、相対的に体力の劣る金融機関を中心として、その地域や業界に伝播し、預金の流出をもたらします。そして、個別金融機関の流動性危機が与信先に対する信用収縮となって、不安の輪を広げていくこととなります。加えて、風説の流布等により意図的に株価が下落させられている状況ではいかんともしがたく、預金の流出が続くこととなります。  当業界は、旧相互銀行平成元年、普通銀行に転換して今日に至っているところがらもおわかりのとおり、会員行六十四行は、地域と共存する金融機関として地元の中小零細企業の育成に努める使命を有しておりますが、このまま預金量の減少傾向、この一年間で二・三%減、これが続きますと、地元中小零細企業への融資という本来の責務が果たせなくなるおそれがあると大変危惧しております。  もとより、金融システムに対する内外の信頼回復するためには、金融界における自助努力が第一に肝要であることは申すまでもありませんが、昨年来の社会に蔓延する金融不安ムードを一掃するためには、政府における強力な施策の発動と未来に対する明るい展望を示すことが不可欠な状況になっていると認識しております。  その第一は、今回御審議中の金融システム安定化のための強力な施策を一日も早く実効あるものとしていただくことであります。  三十兆円に及ぶ公的資金支援があるという後ろ盾により、金融システム安定にかかわる国会及び政府の断固たる意思が明らかになるとともに、すべての預金が当面保護され、インターバンク取引等の安全が保証されることとなります。  また、資本注入等の手段によって受け皿銀行等の財務基盤を強固にするという政策は、金融不安ムードを一掃する上で大きな効果をもたらすものであります。  私ども業界におきましては、北洋銀行による北海道拓殖銀行の道内営業の譲り受け、仙台銀行による徳陽シティ銀行の営業の譲り受け、幸福銀行による京都共栄銀行の営業の譲り受けなどのケースについて、今回御審議中の諸措置が適用されるようになることはまことに適切なことと考えております。  第二は、預貯金の多くが国家信用を背景とする郵便貯金にシフトしているような最近の事態を打開する方策に取り組むことであります。  郵貯への資金シフトは、十二月に三兆三千億円、一月には一兆円弱と言われておりますが、これらにより近時生じている資金偏在現象は、コール市場を初めとする金融市場の機能を麻痺させつつあり、金融システムにとってゆゆしき問題であります。  この打開策として、まず、郵便貯金制度本来の趣旨に沿った業務運営が行われるよう、預入限度額の管理を一層厳正に行うこととし、また、そのための技術的手法の改善につき、責任部局において一層真剣に取り組んでいただきますようお願いいたします。  さらに、個人預貯金に占める郵便貯金のシェアは、現在約三五%と余りにも高過ぎます。これが相当程度減少するよう、預入限度額の思い切った引き下げ、例えば従前の五百万円または三百万円まで引き下げる等の改革を行うほか、郵便貯金を取り扱う店舗の縮小や配置の見直し等の改革に本格的に取り組むようお願いいたします。  以上をもって私の所見とさせていただきます。ありがとうございました。(拍手)
  109. 村上誠一郎

    村上委員長 どうもありがとうございました。  次いで、翁参考人にお願いいたします。
  110. 翁百合

    ○翁参考人 参考人といたしまして意見を述べる機会をいただきまして、ありがとうございます。  金融法案に関しまして、四点ほど意見を申し述べたいと思います。  まず第一ですが、金融危機からの脱出が緊急課題であり、金融システム安定化法案預金保険法案ともに早期成立が極めて重要であるという点でございます。  現状は、金融恐慌の一歩手前とも言える危機の状況でありまして、短期的には、金融システムの安定を図ることが極めて重要だと思います。そのためには、内外市場参加者の不安心理を払拭する必要があると思います。関連法案を早期に成立させ、金融システムは断固として守るという政府の姿勢を裏づけることが、内外市場の信認を回復する上で極めて重要だと思います。そのことがまた、最終的な破綻処理コストを小さくする上でも役立つと思います。  第二の点でございますが、投入する公的資金の最終的な額、すなわち国民の負担を小さくする努力を徹底的にするということでございます。  まず、預金保険法案につきましては、金融機関整理型の公的資金投入ということになりますが、これは、いかに最終的に不良債権を効率的に処理していくか、高く売却していくかということがポイントになると思います。  この公的資金の回収率が高まるかどうかというのは、結局、その投入対象であります不良債権の市場価値に依存するということだと思います。したがいまして、公的資金によるサポートというのは、市場に逆らうのではなくて、市場を補完する形で行われる必要があると思います。言いかえますと、こうした処理に対して市場原理を無視しますと、最終的に公的資金及び国民が負担するコス下はより大きくなるという可能性があるということでございます。  この事態を避けますためには、現在、法案にもございますけれども、預金保険機構による回収や不良債権売却を効率的に行えるよう、整理回収銀行の改組、それから住専管理機構との関係強化を初め、体制を抜本的に整備するという必要があると思います。  また、特に重要と思われますのは、不動産の有効利用を妨げるもろもろの規制の見直しということと同時に、民間活力とノウハウを利用しまして、担保不動産を流動化していくという努力だと思います。不良債権の担保となっている不動産に付加価値をつけて有効利用を可能にして、そしてキャッシュフローを生む価格づけできる資産として市場に売却していく、これができなければ果実を生まない不良債権の山がいつまでも残り、公的資金の所要額はさらにさらに大きくなる可能性があると思います。  なお、現在、整理回収銀行は、不良債権の整理回収のためのいわゆるバッドバンクの機能だけでございますが、今後、金融機関破綻した場合に一その金融機能を維持するため、一時的に営業を可能とする受け皿銀行としての機能も充実させておくのはいかがかと思います。受け皿となる銀行が見つからない場合を想定いたしますと、一時的に破綻銀行の良質債権と預金を承継する、かつての昭和銀行のような平成銀行といった受け皿銀行機能を用意しておくことが必要ではないかという点については、検討が必要ではないかというように思います。  第三の点でございますが、これは、金融システム安定化法に係る点でございますが、この法案ビッグバン後の日本の将来の金融システムの姿との整合性を保つということが極めて重要であるという点でございます。  現在の我が国の金融機関のバランスシートを統合してみますと、不良債権の発生により自己資本が大きく毀損されておりまして、これが運用資産に対して非常に小さくなっているということで、貸し出しなどに伴うリスクが金融機関が十分とれないという状況になっております。その対応として金融機関が自助努力でできることは二つしかございません。一つは、分母の資産を圧縮するということか、もう一つは、独自にマーケットから分子の自己資本を調達するかということでございます。  しかし、資産圧縮は、借り手企業の資金繰りを圧迫し、経済全体に悪い影響を与えます。また、独自に自己資本を調達するとコストが余りにかかり過ぎるなどの理由で、事実上調達困難と見られる先も多いことも事実です。このことは、公的資金を自己資本に注入するという最後の選択肢を残しておかなければ、国民経済的なコストが余りに大きくなる可能性が高いことを示唆していると思います。こう考えますと、今回の金融機関に対する自己資本注入につきましては、厳に法案にある対象先に限定することが守られるのであれば、緊急避難的な措置としてやむを得ない面もあるかと思います。  しかし、問題は、この措置と、それから効率的で透明性が高くグローバルな金融システムと整合的な金融システムをつくっていくという中長期的な課題とどのように両立させるかということだと思います。現状、我が国の金融システムは、非効率的な金融機関を多く抱えている、いわゆるオーバーバンクの状況にあることも事実であり、優先株の購入は、一歩間違えれば非効率性の温存にもなりかねないと思います。  言いかえますと、今回の対応をいかに効率的な金融システム構築という長期的な課題につなげていくのかということがポイントとなると思います。その答えは、公的資金の自己資本注入に当たって、市場原理と自己責任原則の徹底という流れを踏み外さないということだろうと思います。  そのために、私は四つの点に留意すべきだろうと思います。  一つは、個々の金融機関の自主的な情報開示の徹底ということでございます。不良債権の開示額などにつきましては、やはりグローバルなスタンダードと合わせますと明らかに不徹底でございます。自主的な開示が求められますが、特に自己資本注入先については、厳密な情報開示が求められるのだと思います。  二つ目でございますが、破綻金融機関は存続させないというルールを確認しておくということでございます。自己資本注入を希望する金融機関に対しては、資産負債を時価で正確に把握し、債務超過となっていれば、対象とせず、破綻処理を行うということをルール化するということでございます。  三点目は、日本的問題解決方式である護送船団方式との決別でございます。優良銀行から自己資本を注入するという考え方は、これを評価する声がある一方で、海外からは、不透明性の復活につながり、金融システムの再編が促されないのではないかという懸念も見られております。  公的資金による金融機関の自己資本買い取りにつきましては、横並びで行うことなく、個々の金融機関が自主的な判断で申請し、客観的なルールで選択されるという精神が貫徹されるべきだと思います。護送船団からの決別こそが、結局、健全な金融機関をより強くしていき、金融システム活性化に結びつくと思います。  四点目ですが、優先株購入対象先金融機関については、経営合理化計画などを出させて、徹底的なリストラを実施するということでございます。これは、当該金融機関の優先株を高く市中に買い戻させるということにもつながり、結局、最終的な公的資金の投入額を小さくすることにもつながります。  スウェーデンでは、公的資金を投入した銀行同士を合併させるといったリストラを実施して株式の売却、民営化を行った結果、民間の投資家からの応募倍率も非常に高く、九四年の七月時点では六百五十億クローナの公的資金の投入でございましたが、最終的なロスは百億クローナまで縮小するというように見込まれております。  最後のポイントでございますが、破綻処理や優先株購入に関して、国際的に見た透明性や説明責任、すなわちアカウンタビリティーということを確保するということが極めて重要だろうということでございます。  アメリカでは、破綻処理コストの計算方法や破綻処理のルールが事前に確立されており、SアンドLという中小金融機関処理した整理信託公社、RTCにつきましても、事後的に公的資金の投入について詳細な説明が議会で求められております。また、北欧につきましても、当局は、公的資金による自己資本注入後に、株式の市中売却のスケジュールを極力早目に公表しようと努力をしてきております。  我が国におきましても、破綻処理に関するルールをまず確立するということと同時に、将来の優先株売却を念頭に置いて、自己資本注入破綻処理を行った場合に比べて明らかに国民の負担を小さくしたのかどうかということが事後的にきちんと検証できるような透明な仕組みを担保するということが極めて重要だろうと思います。  以上で意見陳述を終わらせていただきます。(拍手)
  111. 村上誠一郎

    村上委員長 それぞれ示唆に富んだ御意見、まことにありがとうございました。  以上で参考人からの意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  112. 村上誠一郎

    村上委員長 これより参考人に対する質疑を行います。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。中川正春君。
  113. 中川正春

    ○中川(正)委員 民友連の中川正春でございます。参考人の皆さんには御苦労さまでございます。  それぞれの立場で今必死に頑張っていただいておるわけでありますが、私たちも今の金融の現況というのを見ておりまして、一つは、本当に危機感を持ってこれに対応していきたい、そんな気持ちでもおります。  もう一つは、今回の法案で三十兆円の国の保証という枠組みをつくるということでありますが、これをすることによって、ある意味では非常に残念なのであります、いわば金融業界そのものが国家管理になってしまうという、これは当事者の皆さんにとっては恥すべき状況に陥ったということであります。それだけに、この状況に対して、真摯な反省と、それから将来に対する本当に前向きの議論そしてビジョンというのが出てこないと、国民そのものに理解をしてもらえないのだろう、こんなふうに思うわけであります。  そんな観点から、それぞれの参考人の皆さん方に、二つの項目について大きく分けてお尋ねをしていきたいと思っております。  一つは、今回の金融二法のスキームといいますか、この制度自体の有効性という観点からの質問を幾つかさせていただきます。  そして、その後、国民の皆さんに本当にこれが必要なんだと理解をしてもらうためには、業界自体の自己努力というか、どういう体質、まあ体質そのものがこれは問われておるわけでありまして、ある意味ではそれこそクレジビリティーギャップというか信頼性の問題でありますが、これを回復していくのに自己努力というのがどの程度なされていこうとしているのか、そんなことを中心にお聞きをしていきたいと思っております。  まず第一点は、先ほどもそれぞれからお話が出ました貸し渋りについてでありますが、これはさっきの説明にありましたとおり、クレジットクランチが起きているんだということ、これは一般的に我々も聞かしていただいておりますし、理論的には理解ができるのですね。ところが、実際の数字を見てみますと、貸し出し総枠といいますか、これは全体として一つは伸びているじゃないかという前提があると思うのですね。  それと同時に、それぞれの中小企業の例をとってみますと、地域によって非常に大きな差があるようにも思いますし、現実問題、それが銀行の中でどのような指示に基づいて現場に対して話がおりているのか一その主体ですね、銀行の主体としてこれをどうつかまえて、どう指示をしておられるのかというのをお聞きをしたいと思うのです。これは岸参考人、加藤参考人、それぞれお願いをしたいと思います。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  114. 岸曉

    ○岸参考人 今回の金融安定化措置法案及び預金保険機構改正案におきまして、三十兆円の公的資金の投入を御審議いただいておるということでございますけれども、バブル崩壊後の我々民間金融機関のダメージが非常に大きくて、これをなかなか業界内あるいは自力で回復するということが難しくなりまして、そのために非常に不安心理、不安が不安を呼び、厳しい状況に陥りましてこういう御審議をいただいているわけであります。まず、こういう状況に立ち至りました金融界の不明というのでしょうか至らなさに、国民の皆様におわびを申し上げなくてはいけないというふうに思います。  そして、先生も御指摘になりましたように、自己努力、これを払っていくということがまず第一でありますけれども、私どもは、それぞれの銀行不良債権の償却を早くきちんと済ませまして、前向きな資金投入に向かっていけるようなそういう体力を早く回復をしなくてはいけない。そのためには、先ほど御指摘がありましたようなリストラ努力を十分に払いまして、そういう両面で努力をしていかなくてはいけないというふうに思っております。  それで、地域的な貸し出しの差でございますけれども、私ども銀行に限って申しますれば、この地域はどういう方針でいこうとか、この地域は枠はこのくらいにしようとか、そういうところまではまだやっておりませんで、今は、三月末にどのくらいの御資金の需要があるのであろうか、これを調査し、整理をいたしまして、このうちの、例えば大企業の方が非常に融通がきくと思いますけれども、この部分はほかの調達手段でもってかえることができるのではなかろうかというような御相談を積み重ねまして、三月末の全体としての着地をにらみ、その間、中堅中小企業には御迷惑がかからないようにできるだけ資金を回す、こういう方針でただいま努力しているところでございます。
  115. 加藤千麿

    ○加藤参考人 私どもは地域金融機関という立場でございますので、一般的に新聞紙上等で取り上げられております貸し渋りというのは、私どもとしてはないというように承知しております。しかし、これだけ景気が低迷してまいりますと、業況不安というような取引先が出てまいりますと、そういったところにはそれなりの貸し渋り現象というのが起きる可能性はあろうかと思…ます。  一つの例として、一月三十日の日本経済新聞に名古屋地区の預金、貸し出しの五年間の増減というデータが出まして、それをちょっと御披露させていただきますと、名古屋に私たち地銀、三行ありますが、五年前と比較しますと、預金が八・五から九・六に上昇し、貸し出しは六・五から七・〇に上昇しているわけでありまして、上昇している反面、これが減少しておりますのが都銀の名古屋支店ということになるわけであります。  これは決してその都銀の対応が悪いということを言っておるわけではございませんで、先ほど御質問がありましたように、実は私どもも東京、大阪に支店を持っております。したがって、東京、大阪においてはやはり資金を引き揚げている、引き揚げた資金を地元の取引先に回しておる、こういうことでありまして、どちらかといいますと、全国的にこういつたことが波及しているのかもわかりません。  したがって、根本的に、今回の預金法の改正とかあるいは金融システム安定化法案等を通していただきまして、私たちにもそういった必要な資金をいつでも出せるような状態にしていく必要があるのではないかというふうに思っております。  以上でございます。
  116. 中川正春

    ○中川(正)委員 それぞれ説明をお聞きしておりますと、いわゆる学問的に言われるクレジットクランチというような意識よりも、営業方針の中で、先ほどのお話のように、それぞれ拠点になる地域、これが一番効率がよくてコストがかからないということでありますから、そこへ向いて資金を集めながら運用していくような形態にそれぞれの銀行というのが今経営戦略として変わってきて、それに不況という、もう一つの資金繰りが、需要が大きいという部分もあるのかもしれませんが、それが構造的なものとしてあるのだというふうに受けとらせていただいたのですが、そういうことを前提にして、今回のいわゆる資本注入についても少しお話をお伺いしたいと思うのです。  この資本注入については、目的というのを私たちは二つほど大きく議論をしてまいりました。  一つは、それこそ、国際的に見てもあるいは国内のそれぞれデフレスパイラルをとめる、こういう意味からいっても、信用秩序をここでしっかり確立していくんだ、これが一つの目的。これはいいですね。  それともう一つは貸し渋り。これに対して、さっきの話で、クレジットクランチが起きているからその資本を充実させなければいけない、こういうことで資本注入が公的に必要なんだろう、こういう前提で議論がありました。  ところが、先ほどの参考人の御説明、特に岸参考人の御説明を聞いていますと、もともと三洋証券や北海道の拓殖等々、破綻が起きたのはどちらかというとコール市場で、インターバンクの中で資金ショートが起きて、それが、あってはならないことがあった、いわゆる市場が先にそれに結論を出してしまったというようなことが一つの大きな風説を生む、あるいはまた、いわゆる金融に対してのいろいろな憶測が流れるもとであるのだ、ここをひとつ何とかしてほしいという議論がありましたね。  私は、そういう意味からいくと、この資本注入の話と、それからコール市場だとかインターバンクの中でいわゆる流動性を確保していく話とはこれはちょっと話の枠組みが違うのじゃないかということ、これを一つ疑問に感じておるのですね。これが一つ。  それからもう一つは、この資本注入をしていくときに、今政府としては、はっきりとこういう基準でこういう銀行に対して資本注入をしますよということはなかなか言わないで、七人委員会でその基準を決めていきます、こういう答弁になっているのです。ここが問題なんです。ここが問題なんですが、しかし、それの背景の中で、自民党の政策部会、あるいはまたそれぞれ自民党の高官、あるいは報道を通じてさまざまないわば基準づくりが今提言されておるわけなんですね。  その中で、基本的に出てきているのが、一つは、破綻金融機関の受け皿銀行、これのために資本注入をしますよということですね。これについては私も異論はないのです。賛成なんですね。これは必要だろう、これはいいでしょう。はっきりしているからいいでしょうということなのですが、しかしもう一つは、一般銀行に対してはABCぐらいのランクをつけて、そのうちの優良行ABぐらいはいきましょう、しかし、経営が思わしくない金融機関に対しては資本注入はしません、こういう基準なんですね。  これに対して、それぞれ、それを受け入れるというかそれを申請する、これは申請という建前で来るわけですから、申請をする立場銀行としてはどういう受け取り方をされているのかということですね。これでやりますと、申請した銀行によってはそれが却下される可能性があるということでありますし、却下されればその銀行は危ないよという烙印を押されるということになるわけですね。  そういういろいろな矛盾がこの制度の中に内包されているわけですけれども、そういうことも含めて、このスキームをどういうふうに受け取られて、実際これが働くのかどうかということ、そんな観点からそれぞれのお話を聞かせていただきたいというふうに思います。これも岸参考人、加藤参考人、それぞれよろしくお願いします。
  117. 岸曉

    ○岸参考人 まず、最初の部分でございますけれども、これで流動性対策が万全なのかというお尋ねでございますけれども、これは先ほど翁先生もおっしゃいましたように、そういう資本と資産の状況が非常にきついバランスになっておる金融機関にそういう公的資金を投入することによって、全体としての不足感といいますか、緊張感といいますか、そういうものを和らげる、そのことが全体的に流動性不安というものに対する緩和、軽減になるのではなかろうかというふうに思いますが、これはやはり日本銀行金融政策と相まって効果を発揮していくことであろうと思います。  それから、後段の申請銀行の基準というようなお尋ねがございましたのですけれども、これも全く私個人の考えでございますけれども法案には、破綻銀行の救済になる資金ではないのだということが書いてありますし、それから、できるだけ早期に資金回収をするのだということも書いてございます。そういうことからいきますと、手を挙げて資本注入の申請をする銀行が今後数年間の間にどういう経営計画を持っておるのかということが問われるのではなかろうかというふうに思います。  今持っております、これはそういう意味でABCというふうにおっしゃられたのかどうかちょっと存じませんので不確かでございますけれども、私が勝手に解釈をいたしますならば、Aというのは、一応の経営計画を持っておりまして、これを見れば数年後にはそういう注入した資本が回収される、かなり確かだというような経営計画になっておりますればこれはAということになるのじゃなかろうか。  一応こういう回収できることになっているけれども、ちょっと何か違う、外からのショックみたいなことがあるとやや心配であるという銀行の場合には、恐らく追加のリストラ策を求められるのではなかろうかなというふうに思います。これがいわばBグループになるのかなと。  最後は、そういう計画がかなり無理があって、これでは資金の回収というものは難しいのではないかという場合にはこれは資本注入は認められないのであろうと思うわけでございまして、私なりにABCというような区分けはそういう基準なのかなと。  いずれにしても、回収できるかどうかというところがやはり非常にキーポイントではなかろうかと。もし回収できれば、さっき翁先生がおっしゃられたような市場原理というものを外さずにこの政策が展開できるのではなかろうかなというふうに思っています。率直にそういうことを申し上げております。
  118. 加藤千麿

    ○加藤参考人 ただいまの法案が審議に入る状況にあるのと、また、預金保険機構内の審査機関がどう対応していくのかということについて私どもは全くわかっておりません。  したがって、私たちが判断いたしますのは、大蔵省から出ました今回の法案の案に出ております、一般金融機関の場合、どういつだ条件で適用される金融機関が決まるのかというところでありまして、その一つは、著しく悪化していない金融機関の中で内外の金融市場における資金調達が極めて困難な状況であるというのが挙げられておりまして、私はこれを判断する限りはBIS基準を適用しておる、国際基準を適用しております都銀等の金融機関が今回の資本注入の対象になるのかなというように判断しておりましたが、その後、いろいろ各界の皆さん方の御意見等が出てくるに従って、国内基準を採用しております地銀のレベルでもこの制度は使えるのではないかというようなことから、最近は積極的に手を挙げておられるところもあるようであります。  そういう意味で、ランクづけということよりも、本当にこの資金が必要だという金融機関で、今おっしゃられたようにAとかBとかいうことでなくて、本当にこの資金が回収されるのかという前提であれば、使わせていただきたいというのが私の考え方でございます。  以上です。
  119. 中川正春

    ○中川(正)委員 これについては、もう一つは、市場で資金を獲得するという手段があるということ、先ほど御説明がありまして、しかしそれにはコストがかかるという話でありますが、既に最近の報道で明らかなように、海外の市場でその資金を獲得し始めておる金融機関もあるわけですね。私たちも、その辺の部分というのをしっかり整理をした上での議論というのが大切なんだろう、そんなふうに思っております。  この問題について、翁先生、先ほど市場でのコストの問題も出されましたが、我々、本当に客観的に見ていると、大体、営業がうまくいっているところは民間市場で資金調達はできるじゃないか、普通、難しいところに対して資本注入をするんだ、しかし難しいところはリスクが高い。ということであれば、この制度そのものに内部矛盾があるわけであります。これをどう説明するのかというところ、これが頭を悩ますわけですが、翁先生、これはどうでしょうかね。
  120. 翁百合

    ○翁参考人 今の御質問についてですけれども、基本的には、金融機関は、マーケットから調達ができない、または調達コストが非常に高いというふうに考えれば、当然のことながらリストラをする。経営リストラクチャリングして、経営の合理化を図ることによって資金調達のコストの低下を図るというのが本来の姿だと思います。そのリストラを図りながら、かつ公的資金のサポートを受けたいというふうに判断する金融機関のみがそういった形で申請をすればいいというように考えます。  ですから、あくまでも金融機関の自主的な判断にゆだねて、また、自行がきちんと経営リストラをやって資本を自力でマーケットから調達したいというふうに考える先については、強制的に公的資金を投入するというようなやり方はすべきではない。あくまでも自発的な選択にゆだねるべきで、そして、個々の金融機関経営合理化を個々の金融機関が自主的に判断して徹底的にやっていくということがまず検討されるべきだというように思います。
  121. 中川正春

    ○中川(正)委員 私も大賛成ですね。一律、横並びの対応はもうこの際はだめだというふうな基本的な自己責任の原則をここでも貫いていただきたいという気持ちで私もおるわけであります。  それから次に、それこそ肝心の自己努力の部分に話を移していきたいというふうに思うんです。  端的にお伺いしますが、今回いろんな不祥事が出てきて、特に大蔵省との関係というのを見直していかなきゃいけない、こういう議論が出てきております。MOF担にしたって、これは廃止していく方向だとお聞きをしました。しかし、そのMOF担大蔵省をつないでいたのは、またその中で本当の癒着というか、それの流れをつくり出していたのは、MOF担よりも大蔵省からの天下りというものがあるんだということ。これも新聞紙上で指摘をされておるところ、いろんな方からこういう事実があるというものが上がってきておるわけであります。ここでそれを繰り返すこともないと思うんですが。  それで、これはいろんな数字があるんですが、銀行業界には現在二百四十人ぐらいの大蔵官僚の天下りがいる、こういうことを聞いております。その中で、検査部から来ているのが何と百四十人ぐらいになるんですかね、検査部が一番多いというデータもいただいたりしておりますが、どうでしょうか、この際大蔵省からの天下りについて業界として考え直していく、あるいはその癒着を切るためにこの際は大蔵省の天下りは採らない、そういう宣言ができますか。
  122. 岸曉

    ○岸参考人 お答え申し上げます。  お役所からのOBを受け入れて仕事をやっていただくということは、これまでも私ども銀行でも役員でお迎えした方がありますし、例があろうかと思いますけれども銀行としましてはやはり人材というものが非常に貴重でございまして、そういう人材の受け入れ先として、今後は、勤めの流動性というのが、ビッグバンになりましてますますそういう雇用の流動性というのが高まってくるんではないかなというふうに思いますので、これはやはりそれぞれの会社の独自の判断でやっていただきたい。  ただ、今まで言われておりますようないわゆる天下り、お迎えするけれども仕事は余りないというような、ただ情報ルートとしてそういうふうに受け入れるというようなことは、これは実際減っていくと思いますし、そういうことは規制緩和に伴って減っていくであろうというふうに確信をしております。
  123. 加藤千麿

    ○加藤参考人 私ども第二地銀協加盟行六十四行は、御承知のように、戦後の金融機関ということで誕生いたした経緯もありまして、やはり外部からの人材を受け入れて、そして金融業務を円滑にしていくということから、かなりの方が第二地銀加盟行の中にはおられるわけであります。会員行の役員として六十九名ほどということで報告が来ておりますが、私ども銀行としても何人かの方に来ていただいてそれなりに活躍していただいておりますので、やはりこれは個別行の問題であろうかというふうに存じております。
  124. 中川正春

    ○中川(正)委員 そういうお答えが国民にとってどういう印象を与えるかというのが、これが大事なところでしてね。  人材がいないというなら、こんなのは話にもならないわけですよ。実際いるわけですよね。なぜ大蔵省の人間が有用なのか、なぜ大蔵省からの天下りというのが人材として活用価値があるのかということ、これをしっかり掘り下げて議論して、その中で、私たちはこういう基準の中で、こういう思いの中で、受け入れるんだったらこういう形で受け入れます、そこまでやらないと、今回は、それぞれまた同じことを繰り返すじゃないかということの結論になってしまうだろうというふうに思うんです。  どうですか、もう一回お答えいただけませんか。(発言する者あり)
  125. 井奥貞雄

    ○井奥委員長代理 御静粛に願います。
  126. 岸曉

    ○岸参考人 重ねてお答え申し上げますけれども、規制緩和の進行というのは非常に速いスピードで進んでおります。私どもも、銀行に入りましたころと今との銀行大蔵省との関係というものを考えますと、大変に変化しておりまして、今後も規制緩和の進展に伴いまして、そういうこれまでのような習慣はなくなっていくというふうに、そういう方向に行くということを確信しておりますので、重ねて御理解をいただきたいと思います。
  127. 加藤千麿

    ○加藤参考人 重ねてお話しさせていただきますけれども、やはり企画力等あるいは国際感覚等お持ちの方々がおられるわけでありますので、私たちにとっては大変得がたい方もおられるわけですので、すぐにとかそういうことではちょっと対応できないというふうに感じております。
  128. 中川正春

    ○中川(正)委員 この問題、まだまだ何回も出てくるでしょうけれども、共通した問題意識として、官僚に対して民間がどう頑張っていくのか、ここが勝負なんですよ。これまでと同じような感覚で続けていくという証左なんです、さっきの答弁は、大蔵省に対しても。護送船団、なかなか抜け切れないよという証左なんですよ。そこのところをひとつ肝に銘じていただきたいというふうに思うのです。  それから次に、この金融二法でとりあえずのところ三十兆円の保証枠をつくっていくという流れができていますね。二〇〇一年になったらそれを清算をしていくという前提でやっていますよ、こういうことなんですが、これは本当に緊急避難的な有事立法でありまして、その目的というのがとにかく今信用秩序をここで守らないとという、その共通認識というのは我々も持っています。その上で、そのための最終コストなんですね。  これは先ほど翁先生からも指摘がありましたように、回収銀行であるとかRTC型のものを用意をして、いわゆる不良債権の回収にも精いっぱい努めなければいけない、こういう施策も一つは必要だろうと思うのですが、それでも最終的に二〇〇一年で締めた時点で焦げつきが残ってくる可能性がある、まあこれからの金融状況次第でありますが。  そのときに、今のスキームでいきますと、その最終の焦げつきを一たんは例えばNTT資金とかあるいは建設国債で置きかえる、その資金を捻出するという議論も出ていますが、私たちの感覚からすれば、この最終の焦げつきの清算というのは、やはりこれは国民が持つべき金ではないのだろうと。これは業界自体のいわば金融危機でありますから、最終的には業界が立ち直った時点で、今でなくても、立ち直った時点で、それぞれの保険料という形で預金保険機構の枠の中で返済をしていく、そんな性質のものではないかというふうに考えています。  それで、その上に立って、これは業界に誇りがあるならば、あるいは国家管理と言われたくなければ、逆に業界のサイドからそうした逆提案があってもいいようにも思うのでありますが、そこのところをそれぞれどんな議論を、あるいはどんな前提で受け取っておられるか、聞かせていただきたいというふうに思います。
  129. 岸曉

    ○岸参考人 金融システムの安定のために巨額の国家資金を投入していただくということは、業界としても非常に容易ならぬことでありまして、これにつきまして、私ども業界に大きな責任がかかってくるということはよく承知をいたしております。  それで、最終的にどうだというお尋ねでございますが、保険料で最終ロスを埋めるということかと思いますけれども、実は今、日本金融機関ビッグバンを前にいたしまして、我々は非常な緊張感に包まれているわけであります。本当に毎週、外国の金融機関証券会社日本銀行と提携するなりあるいは買収するなりして進出してくるというニュースが流されておりますし、我々は日本金融機関としてこの国際競争に立ち向かいまして、何とか日本経済の活性化金融の強固な安定というものを目指さなくてはいけないというふうに思っております。  そういう中で、どのぐらいのロスになるのかということも全くこれはわかりませんけれども、現在臨時的に増額されております預金保険料、五年間ということでありますけれども、我々にとりましては大きな負担でございます。こういう負担がさらに多くなるとかあるいは長く続くとかということになりますと、やはり日本金融の体力が全般的に低下をしてまいりまして、ビッグバンにおける競争に勝てないのではないかということを心配しておるわけでございます。そういうあたりのこともぜひ御理解をちょうだいしたいと思う次第でございます。
  130. 加藤千麿

    ○加藤参考人 今回のこの金融システム安定化法案に基づく緊急異例の措置であるというふうに私たちも思っておりますので、二〇〇一年までには日本の景気も立ち直るし、日本金融機関も恐らく元気になってくるというように私は思っておるわけであります。  今お話ありましたように、これ以上の保険料の負担というのは私どもにとっても大変きついことでありまして、平成七年から八年に七倍に上がっておるわけであります。この数字は、業務純益における比率からしますと、私たちの第二地銀では平均で八%強、中には一〇%を超えるところが二十行ほどあるような状態でありますので、その点を皆さん方にも御了解あるいは御判断いただきたいというふうに思います。
  131. 中川正春

    ○中川(正)委員 SアンドLのときには二十倍でしたか、アメリカの場合にはそれだけの保険料の上昇があったというようなデータもあって、私たちも、これはどこまで皆さん方の今の負担というのが本当に重荷になっているのかということ、こういう点を一遍客観的に翁先生に聞かせていただきたいところだなというふうに思います。  それから、私のさっきの議論は、今の時点でそれを負担しろということではないのです。今は国として一たん立てかえますから、最終それを清算するときにはどこまでいっても皆さん方がそれは払ってくださいよ、国は保証するだけですよということを、やはり逆に業界の方から一自立をしているのであれば、これから世界に対して競争していくということであれば、それだけの誇りは業界の方から持っていただきたいなという気持ちを込めての質問であったわけであります。そういうことも含めて、翁先生の見解をお聞かせをいただきたいと思うのですが。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  132. 翁百合

    ○翁参考人 今の御指摘、いろいろ金融機関不祥事どもありまして、国民感情としては非常によくわかる部分があるのですけれども日本金融機関、いつまた保険料が上がるかわからない、膨大な公的資金、それがまたすぐ金融機関の負担になってくるかもしれないというような形で国際的な金融機関から見られますと、またジャパン・プレミアムが上がり、護送船団が復活するのではないかというような認識を与えるのではないかという点を少し危惧しております。  アメリカの場合は、現在、可変保険料率といいまして、リスクの高い金融機関ほど保険料が高い、そして健全な金融機関は保険料が低いというような形になっておりますが、現在の日本金融機関の場合は預金保険料が一定でございますので、そうした可変的保険料をとっていれば別ですけれども、今のような一律なものでどんどん上げていきますと、また健全な金融機関の足を引っ張るという形で日本金融機関のシステム全体が沈んでしまうという懸念があるのではないかと思います。  ましてや、ことしの四月からは外為法の改正がございまして、アメリカの金融機関の預金保険料はゼロという状況で、それでさらに日本金融機関の保険料が上がるかもしれないというようなことになりますと、全く太刀打ちができないというような状況になりかねない。  また、今は預金保険の範囲だけではなくて、金融債なども含めて、すべてのものを守るという形になっております。まさに臨時異例の措置のものを守る、守るものが非常にふえているのに、それに対してまた金融機関に負担を求めていくということでありますと、国民感情的な部分は非常によくわかるのですが、そういった形でどんどん金融機関をずるずるやっていきますと、日本金融システムという船自体が沈んでしまって、国益に反する部分が出てくるのではないかというような点が懸念される点でございます。その点を十分検討していただく必要があるかと思います。
  133. 中川正春

    ○中川(正)委員 時間が来たようでありますので、これで質疑を終わります。ありがとうございました。
  134. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、並木正芳君。
  135. 並木正芳

    ○並木委員 平和・改革の並木正芳と申します。お三方には、きょうは御苦労さまでございます。  今デフレ色が強い景気後退と、そして巨額の不良債権、さらには深刻な金融システム不安、アジアにおいては通貨・金融危機、そこヘビッグバンが始まるということで、大変日本経済は深刻な危機に冒されているというところかと思います。そうした点で、お三方の今後の御活躍に期待するところも大きいわけでございます。きょうはそういった点ではいろいろお聞きしたいこともあるわけなのですけれども、十九分という時間でございますので、絞って質問をさせていただきたいと思います。そうした中で、国民が率直に疑問に感じることからお尋ねしたいと思うのです。  岸参考人にお伺いしますけれども、東京三菱銀行の頭取でもあられるわけですけれども、東京三菱銀行は定款に優先株発行の規定がないということで来ているわけであります。今回定款を変更してまで優先株の買い取りを申請する。それは今の国民感情からすると、郵貯と東京三菱というぐらい貯金、預金が流入している、そういう中で、大変不思議だという声があるのも御存じかと思いますけれども、その辺については銀行独自の御判断なのか。ある意味ではやはり今までの護送船団方式といいますか、そうしたものを残している大蔵当局、そうしたものとの相談によるものなのか。その辺はいかがなんでしょうか。
  136. 岸曉

    ○岸参考人 まず、優先株に対する私どもの対応はどうかというお尋ねでございますけれども、私ども銀行は、御指摘のとおり、定款の中に優先株の取り決めが入っておりませんものですから、定款を変更しないと優先株は発行できません。したがいまして、手続的にいってもこの三月には優先株は間に合わないということでございます。優先株以外には劣後債というようなものも用意されているわけでありますけれども、優先株については間に合わないということでございます。  本件につきましては、大蔵省からは何のお話もございませんし、私どもの方で優先株を発行するということは全くまだ決めておりません。これからの検討でございます。
  137. 並木正芳

    ○並木委員 大手銀行は十九行あるわけですけれども、例えばその半数の銀行に今回公的資金を十兆円投入するとすると、自己資本比率、先ほど八%を切るとという、BIS規制のその辺の問題をお話しされたわけですけれども、十兆円まで投入すれば、欧米の優良行並みの一三%前後に上がるとも言われております。これは金融システム安定効果が大きいというわけです。  一方では、先ほどの審査機関等の信用秩序の維持に支障がある場合にはというような、こういう認定基準があるわけですけれども、この辺あいまいな点もあるわけです。そういう認定基準を受けて、さらには当局の監視がかなり経営面で強まつていくということが、そのリスクという面に銀行ではなっていくかと思うのですけれども、そこまでして自己資本を充実させる必要というか緊急性が、現在大手銀行を中心として優良行から順番にこの優先株等を引き受けるという経緯からして、そういう緊急性が大手銀行にあるのでしょうか。
  138. 岸曉

    ○岸参考人 先ほども昨年末に至る経済界の経過を御説明したわけでありますけれども、ああいう状況のもとで、日本機関投資家の投資意欲というものが急速に減退といいますか冷却いたしまして、マーケットで調達ができるのじゃないかというお尋ねがございましたけれども、今現在の状況は、マーケットでの劣後調達というものはかなり難しい状態になっております。  そういう意味で、機関投資家ではありませんけれども、十三兆円の資金、資本というものがマーケットの中に登場されるということは我々にとっては非常にありがたいことでありまして、それによって現在の難しい問題というのが相当解決するのではないかというふうに思っております。
  139. 並木正芳

    ○並木委員 大手銀行から投入するというのは大蔵省の方針とも言えるわけで、皆様方がどこまであずかり知っているかということもあるわけですけれども、その傾向は、その考え方はまさにグッドバンクとバッドバンクとを選別していく、今後のビッグバンというものを控えての金融の分離ということにつながっていくかと思うわけですけれども、その辺についてはどうお考えですか。
  140. 岸曉

    ○岸参考人 今後の金融界の動向、推移を考えてみますと、やはり非常に厳しい市場の選別というのでしょうか、そういうものを受けて、大変難しい状況にあると思うわけでありますけれども、いい銀行と悪い銀行というのはやはり固定しているわけではなくて、一生懸命リストラをやって、経営改善を図っていきますればいい銀行になっていくわけですし、いい銀行もやはりそういうリストラを怠って、あるいは時代の流れに沿っていけないと悪い銀行になっていくわけですから、そういう選別というものによってそれぞれの銀行が努力する、そして金融全体のパワーが上がっていくというのが一番望ましいのではないかと思います。
  141. 並木正芳

    ○並木委員 選別化につながっていく、これもやむを得ない部分もあるのかなと思うわけなのですけれども。  加藤参考人にお聞きしますけれども、そうした中では、第二地銀の場合は、ある面では大変弱い立場に立たされるのかなということもあるわけですけれども、この第二地銀の立場からして、いわゆるスーパーリージョナルバンク以下のそういう銀行はむしろ海外からは撤退して、自己資本もBIS規制等の規制を受けない、そういう中で国内的なリテールバンクというか、そういうところを目指す方法が賢明なのかなとも思うわけです。  加藤参考人は、一月四日付の朝日新聞で、「対論」という記事がありますけれども、地銀レベルで優先株購入とかは難しいだろう。優先株を購入してほしいと名乗りを上げると、つまりあそこは苦しいというふうなことで、市場の評価が悪くなる危険性がある。うかつに手は挙げられないのだと言っておられるわけです。そういう意味では、こうした地銀のレベルでの優先株引き受けというものは申請する銀行も少ないだろう。今回の法案でも、そういった意味での効果は薄い、そういうふうにお考えなのでしょうか。
  142. 加藤千麿

    ○加藤参考人 先ほど私もちょっと触れさせていただいたのですが、一月四日前後の状況は、まだ私も全くこの法案がどういう方向で実行されるのかということがっかめておりませんので、BIS基準、いわゆる国際基準を適用しておる大手銀行、都市銀行等に適用されるのであろうという判断でお話をしたわけでありまして、私どものいわゆるローカルバンクの立場からいたしますと、やはり国内基準を採用することによってかなり今回自己資本の充実策というのが考えられておるわけでありまして、そういう意味では、国内基準を適用してローカルバンクに特化していくというのは大変大きな力点かというふうに感じておるわけであります。
  143. 並木正芳

    ○並木委員 その辺では、いわゆる八%のBIS基準というのは必要ないという中で、自己資本充実が四%程度のものでもいいのかなという、私見ですけれども。そういう点からすると、まさに今度は貸し渋りという分子分母論があるわけなのですけれども、その辺において、地銀がこの制度を活用して貸し渋り対策に効果を上げていく、その辺の効果というのは、現在、手を挙げるか挙げないかという話もあったわけですけれども、このスキームで効果がかなり見られるとお考えなのでしょうか、加藤参考人
  144. 加藤千麿

    ○加藤参考人 自己資本比率向上策としては、今回提案されております優先株、あるいは永久劣後債を私どもも発行させていただくということは大変大きな力になろうというふうに私も感じております。
  145. 並木正芳

    ○並木委員 貸し渋り対策にどの程度効果があるのかなという期待は、非常に抽象的になるのかもしれませんけれども、万全だと言うとまた言い過ぎかもしれませんけれども、そういった点で、お任せくださいということがこういうスキームだけで考えられるのか、もう一度加藤参考人にお聞きしたいと思います。
  146. 加藤千麿

    ○加藤参考人 先ほど触れさせていただきましたように、今回の法案だけでなくて、当然、有価証券の原価法の採用とか、あるいはまだ法案は通っておりませんけれども、不動産の再評価等を使わせていただくことによって貸し渋りという現象は恐らくなくなるであろうというふうに思っております。
  147. 並木正芳

    ○並木委員 お話が出たのであれですけれども、不動産の再評価というのは、いわゆる都合のいい面での含み益部分だけで、含み損とかいうのを計上しないというような、しかも限定的な期間の対策ということになると、むしろ不明朗なものも出てくると思うのですけれども、その辺についてはどうお考えですか、加藤参考人
  148. 加藤千麿

    ○加藤参考人 不明朗になるかどうかは、ちょっと私はその辺のことは存じませんが、いろいろ検討されている中でお聞きしていますと、これは金融機関だけでなくて、上場企業のある一定の資本金を持っておる企業にも適用されるということですので、日本の全体の体系がそういう方向に進んでいるということかなというふうに感じておるわけであります。
  149. 並木正芳

    ○並木委員 もう一度岸参考人にお聞きしますけれども審査機関、七人の審査委員というか、それも基準が非常にあいまいだ、しかも、今の時点では非常に情報開示も、不良債権、この間七十六兆円とか一部分公表されましたけれども、まだまだ情報開示がおくれている、あるいは会計基準等も不透明さを残している。  こういう中で、優先株だとか劣後債とかもあるわけですけれども、こういうものを政府が引き受けていくということは、むしろ日本金融に対する不信を海外が増幅させるんじゃないか、そういうおそれも考えるわけです。その辺については、むしろ私は、その辺の、グッドバンクあるいはバッドバンクの明確な判定をしていく上での措置というのをとっていかないと、国内だけ見たものでなくて海外というものを考えたときに非常にマイナス面が大きいと思うわけですけれども、岸参考人はどういうふうにお考えでしょうか。
  150. 岸曉

    ○岸参考人 今先生が御指摘になりましたとおり、審査委員会がこれからできるわけでございますけれども、どういう基準で検討されるか私はわかりませんけれども、先ほど翁先生がおっしゃったようなアカウンタビリティーというのでしょうか、そういう透明性はやはり確保していきませんと、先生がおっしゃるように、かえって国際的な信用を低めるということも心配されるわけでございます。  それから、ディスクロージャーにつきましても、一歩一歩前進をしておりまして、国際基準並みのディスクローズというものが徐々に行われることになっております。
  151. 並木正芳

    ○並木委員 質問がいろいろ飛んで申しわけないのですが、加藤参考人にもう一度お聞きしますが、第二地銀協の内部では、既に優先株等、これを申請していく、買い入れを、引き受けを申請していく、そういうものが是としてもう議論としては決まっている、そして、そういう希望する銀行が既にあるんでしょうか。
  152. 加藤千麿

    ○加藤参考人 私は、今のところは聞いておりません。個人的にそういったお話をされている方はおられるわけでありますが、協会ベースでそういった話し合いをしているわけではございません。
  153. 並木正芳

    ○並木委員 最後に、翁参考人にお聞きしますけれども、翁さんはいつも、公的資金を投入する場合は、破綻金融機関処理と存続させる金融機関の自己資本充実の二つの方策を明確に峻別して検討すべきだ、そして、RTC型、いわゆる整理信託公社型の処理が望ましいとさまざまな機会におっしゃられているわけです。  そういう中で先ほどは、緊急とすれば、法案、これは早期の成立が望ましいというような御意見もあったわけですけれども、やはりなお不透明さを残したままでその辺の、法案が緊急性ゆえに問題を残したまま可決されていく、これがスキームとして成り立っていくということになると、むしろ今後の本当の意味での強化策にならないんじゃないかと思うのですけれども、今そうしたものを踏まえて、翁さんの考えとして最も有効な方策の第一は何とお考えか、最後にお聞かせいただいて、質問を終わらせていただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
  154. 翁百合

    ○翁参考人 やはり、平時であれば市場規律で、RTC型でやっていくということがもちろん一番重要なわけでございまして、破綻金融機関は存続させないというルールを守っていくということが極めて重要だろうと思います。  現在は金融恐慌の一歩手前というような危機であるという認識に基づいて、そういった自己資本注入型もやむを得ない面もあるというふうに考えるわけでございますけれども、先ほども申し上げましたが、日本金融システムがそれで不透明な感じを与えれば、まさに国際的な金融市場からも落後してしまう、脱落してしまう瀬戸際であると思いますので、やはり透明性、そして説明責任ということの重要性をきちんと認識した上でこの法案を早急に通すということが重要であり、不透明性を保ったまま、こういった重要な、二十一世紀金融システムをまさに規定するような法案でございますので、そこについてはきちんと透明性を確保するということを条件として、早期に成立をさせていただきたいというように思います。
  155. 並木正芳

    ○並木委員 お三方にはありがとうございました。
  156. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、小池百合子君。
  157. 小池百合子

    ○小池委員 自由党の小池でございます。本日は、三人の参考人の皆様、御苦労さまでございます。  先ほどよりの質問、問題意識を共有いたしておりますので、できるだけ重複は避けていきたいと思います。また、時間が短うございますので、できるだけ簡潔にお答え願いますようにお願いいたします。  私は、木を見て森を見ないというようなことにならないためにも、極めて基本的なことをまず岸会長の方に伺わせていただきたいのでございますが、けさほど参考人として前会長の佐伯さんがお見えになりました。そこでも、一言世間をお騒がせしたと。よくこういうときには使われる言葉でございますが、それじゃ、そもそも前会長は何でおやめになったと認識しておられるのか、岸会長に伺わせていただきます。
  158. 岸曉

    ○岸参考人 銀行として、個別銀行でございますけれども大蔵省との行き過ぎた交際、接待があって、そのことを金融団体の長として反省して辞意を漏らされたというふうに承知しております。
  159. 小池百合子

    ○小池委員 それでは、一昨日岸会長が全銀協の新会長に、御就任になったばかりでお呼び立てしたわけでございますが、御就任の際の記者会見で、東京三菱銀行接待や会食が全くなかったわけではないというふうに述べておられる。そうしますと、大蔵官僚との接待に行き過ぎがあった、これは、スピード違反とか、たまたまそれが下手くそであったとか、私はそういう問題じゃないと思うのですね。  今おっしゃいました前会長辞任の理由ということでいきますと、そうすると、会長は御就任になったばかりでございますけれども、会長自身その任を預かる立場にあるというふうに御認識なさいますでしょうか。
  160. 岸曉

    ○岸参考人 私どもの方の銀行でもそういう接待というようなことあるいは会食というようなことが過去にあったということは、もう御指摘のとおりでございます。それで、社会通念とか程度の問題とかというのも申し上げましたのですけれども、それは私としては極めて不適切な発言だったというふうに反省をしております。程度の差はどうあれ、監督される立場にある者が監督する人といろいろ会食をしたり接待をしたりするということは、やはりこれは非常に疑わしいということに相なりますので、今後はそういうことのないように反省しております。  金融機関の団体の長といたしまして、こういう難しい時期に、このように法案の御審議もいただいておるわけでありますので、大変そういうことはございますけれども、何とかその職を全うしていきたいというふうに私は考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
  161. 小池百合子

    ○小池委員 よく護送船団方式と言われるわけでございますが、輪番制でやっておられるこの会長職でございますね、大蔵省の過剰な接待で会長がやめるということになりますと、これは、私もずっといろいろな取材を通じて、銀行方々ともお目にかかることは、行状を知っているというか、それでいくと、結局、このままいくと会長はだれもなれない、逆の意味での護送船団ではないかというふうにも思います。  それから、全銀協の定款を見ますと、総会決議を破ったり体面を毀損した場合は除名とあるのですけれども、今回の三和の会長の件ですね、会長というか、個人ではなくて銀行ですけれども、これは除名というような話は全銀協の中で出ているのでしょうか。
  162. 岸曉

    ○岸参考人 除名というような話は出ておりません。
  163. 小池百合子

    ○小池委員 そうすると、今回の問題は協会の体面を毀損していない、汚していないということなんでしょうか。
  164. 岸曉

    ○岸参考人 個別銀行としては非常に問題がありましたし、また、そういうことが三和銀行さんだけではないという意味で我々反省するところでございますけれども、除名に値するほど金融全体の、そこまでの事件ではなかったのではないかというふうに思っております。
  165. 小池百合子

    ○小池委員 大変残念に私は思います。今まさに、金融システムを守るか守らないか、そのための法案をここで審議しているわけでございます。その対象となっている皆さん方がまだそういう認識にあるのかということになりますと、これは、納税者の立場からいってやはり納得いかないのじゃないでしょうか。  それから、私はここで基本に戻ってというふうに申し上げたのは、そもそも、きょうは第二地銀の方の加藤会長にもお越しいただいている、まさに業界団体ということでお越しいただいているわけですが、この全銀協の前身は、一九四二年、国家総動員法に基づいて設立されました全国金融統制会だというふうに思います。そして、この国家総動員法はまさに戦時体制に持っていくということで一九三八年、そしてその後敗戦があって、現在の全銀協は一九四五年の九月に再スタートなさったわけでございます。  ただ、そこでGHQの改革等もあったわけですけれども、不思議なことに、金融の世界というのは、なぜか戦時体制そのままの延長線でいくわけですよね。  例えば、一九四七年に臨時金利調整法という形で金利の規制が行われて、これがずっと延々と続くわけです。どこの銀行へ行ってもみんな同じ、横並び、護送船団。それから、大蔵省行政指導によります店舗規制というのは、これは延々続いたわけですし、特に、岸会長、三菱銀行の御出身でいらっしゃいますからよく御存じのことだと思いますけれども、かつて、銀行法の改正に全銀協が猛反対なさったときに、まさにその後、店舗を展開するときに大蔵省からいろいろな、わかりやすく言えばいじめをお受けになったというふうに私は承知いたしております。  まさに行政と民間の関係は、これは、例えば経済企画庁なんかでありますOTO、これは前のガットと違う、いろいろな不公平などを訴える機関でありますけれども、なかなか民間の人たちは、規制に対して、これじゃだめだと思っているけれども、言いに行かないのですよね。訴えに行かないのですね。なぜならば、訴えた会社がどこであるかということで、結局江戸のかたきを長崎で討たれるとみんな思うから言わないのですよね。というようなことはこれまであった。  それで、私が申し上げたいのは、きょうは全銀協の会長としてお越しいただいたわけでございますけれども、まさに金融ビッグバンがこれから始まる、業界団体で護送船団方式をやろうなどというのはもうだめだということは既に御認識だと思います。私は、岸会長のお役目は、全銀協最後の会長をお務めになることではないか。まさに護送船団方式をやめるということは、この全銀協そのものを、見直しとかリストラとか、いろいろ、為替の関係の手形の交換であるとか、振替の手続などのいわゆる金融インフラの役目を果たしていることも承知いたしておりますが、全銀協さん、そしてきょうお越しの第二地銀さんのいわゆる業界団体そのものをおやめになることではないかと私は思うのですが、お二方、いかがでしょうか。
  166. 岸曉

    ○岸参考人 先ほど御指摘ありましたように、全銀協でございますけれども、これは、銀行の決済機能を守るために、一番最初、手形交換所というのが各地でスタートいたしまして、その手形交換所が同じようなやり方で全体としてうまく機能していくように、横の連絡をとらなくちゃいけないということで、全銀協というような連合体が発足して今日に至っているわけでございます。その間、いろいろと政策問題がやってまいりまして、これに対応してきたという状況だと承知しております。  それから、規制の問題でございます。やはり戦後、日本経済を再建していく過程で、成長通貨の供給というものも非常に大きな役割であったわけでございますけれども、その一つの非常に大きな手段になります店舗というようなものを野放しにいたしますと、その方面にリソースが非常に偏って投入されまして、かえって別の弊害が生じてくるということで、こういうある時期の規制というものはどうしてもやむを得なかったのではないかなというふうに私は思っております。  ただ、今後、こういう資本の蓄積も進みまして、国際競争が盛んになってくる。こういう自由化の時代でございますから、もう既に規制緩和はどんどん進行しております。今後とも規制は緩和されていくであろうと思います。  そういう中で全銀協というのは何だということでございます。将来のことはわかりませんけれども、現在のところは、やはり金融界のいろいろな意見をできれば集約していく、できないものはできないように思いますけれども。そして、外からの御意見もこうやって代表してちょうだいする、そういうことも必要なのかなというふうに理解しております。
  167. 加藤千麿

    ○加藤参考人 私どもは、第二地方銀行協会は、平成元年に普通銀行転換で全銀協に入れていただいたわけでありまして、私どもの第二地銀協会の前身の相互銀行協会時代から、やはり共同していろいろ進めていこうということで、システムを共同化したり、あるいは商品の共同開発をしたり、あるいは調査研究等、協会を中心にやっていく動きをしておりまして、若干立場が違っているかなということを感じております。
  168. 小池百合子

    ○小池委員 いずれにいたしましても、全国金融統制会というのが前身である全銀協、これはまさに時代の終えんといいましょうか、これをみずからで大きくリストラ、もしくはもう廃止というような、そういう結論をお出しになる時期ではないかというふうに思う次第です。ぜひとも、最後の会長と私は勝手に名づけさせていただいておりまずけれども、まさに金融ビッグバンの前に全銀協ビッグバンをやるべきである、特に、金融二法を審議しているこの最中にやはりそういう方針をお示しいただくということが、これは最大のアピールではないか、またそうするべきではないかというふうに思っております。  それから、全銀協でこれまでやってこられたのは、そのほか、銀行が出すカレンダーの大きさは何センチ掛ける何センチで一枚紙にしろとか、景品が幾らとか、何か本当に、為替などの金融インフラの部分もありますけれども、ちょうど大蔵省との仲介役といいましょうか、メッセンジャーといったら失礼かもしれませんけれども、そういう役目をしておられたような認識が私はあるんですね。ですから、まさに護送船団の母港、母なる港がこの全銀協ではないかというふうに思います。一刻も早くこの見直し、リストラを進めていただくように強く希望いたします。  それから、先ほどからも出ているわけですけれども、東京三菱会長として伺うわけでございます。先ほどから優良行、よい銀行、悪い銀行、その他出ておりますけれども、今市場ではトップをぶつちぎりで走っていらっしゃる東京三菱というふうに認識しているわけでございますが、その東京三菱さんが定款を変えてまで優先株で公的資金をというお話、これには私はやはりひっかかります。なぜならば、先ほども御答弁でございましたけれども、海外市場での調達が非常に難しいというお話です。ところが最近、住友銀行とか興銀さんとか、東京三菱よりも格付の低い銀行が海外市場で自分たちで、自分で資金を調達しようとしている動きがあるわけですね。じゃ、トップであるとだれもが認めている東京三菱さんが優先株を引き受ける理由は一体何なんだという話になるのですが、いかがでしょうか。
  169. 岸曉

    ○岸参考人 まず、優先株の問題でございますけれども、私どもの方は、まだ定款にその規定がございませんので、優先株の申請をすることはできませんものですから、その点は申し上げておきます。  それから、海外の調達でございますけれども、おっしゃいますように、コストを相当かけて、極端に言うと幾らでもいいんだというようなことでございますと、それは調達の道があろうかと思いますけれども、やはりこれは今後の経営にとりまして、そのコスト、利払いというものは相当の負担になりますし、我々の経営に役立つ範囲内でのコストで調達をしたいというふうに考えておりますので、これはもう個別行の判断でございますから東京三菱銀行だけの判断でございますけれども、そういうふうに考えております。そういたしますと、先ほど申し上げましたように、国内の機関投資家の投資マインドというものが相当冷却しているのが我々にとって非常に厳しいということでございます。
  170. 小池百合子

    ○小池委員 その辺のところは、どうもそれぞれの各行の判断、これはまさに護送船団方式からの脱却ということで、それぞれの経営判断で結構かと思うのですが、それは、今回のお金の意味が、きのうの東洋経済で会長のインタビューでしたか、私、見させていただいて、国は大きな機関投資家じゃないわけですから、そのお金の出どころは一体何なんだということをもう少し認識していただかないと、この貴重な原資というものが本当に生かされないのではないかというふうに思います。  もう時間がございませんので、最後に一点。先ほどからもお話を伺っておりますけれども、貸し渋りの問題で、早期是正措置一年先送りというふうに言われているんですが、加藤会長の方に伺います。  先ほど名古屋の例も伺わせていただきました。しかし、普通、経営者であるならば、この是正措置が一年先送りになったら、むしろその一年先に備えようとして、貸し渋りは直らないんじゃないか、もしくは問題の先送りだけになるんじゃないかと思うのですね。御行の場合はどういう計画を立てておられるのか、教えていただきたい。
  171. 加藤千麿

    ○加藤参考人 先ほどお話しさせていただきましたように、貸し渋りは私どもはないというふうに認識しておるわけでありまして、地元の金融機関立場から、地元の企業にはそれなりに資金の融資をさせていただいているというように思っておるわけであります。
  172. 小池百合子

    ○小池委員 時間が参りましたからこれでやめさせていただきますけれども、しかし、問題の先送りをすればするほど、また情報開示がおくれたことが今これだけの大きな傷になって、そして国民の大きなお金、政府のお金を使わなければならない事態に陥ってしまったこと、ここはまさに癒着行政の結果であるということを一言申し述べまして、終わらせていただきます。ありがとうございました。
  173. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木陸海君。
  174. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 日本共産党の佐々木陸海です。  一昨年の住専の処理に六千八百五十億円の公的資金を投入するということに関して国民の強い批判がありました。当時政府は、もうこういう投入はしないんだ、信用組合の関係はやむを得ないにしても、こういうことはあり得ないということを約束をしてまいりました。  ところが、今回、税金投入を含めて三十兆円の銀行支援策と私たちは特徴づけておりますけれども、そういうことが行われてきた。しかも、この間長い間低金利政策をとって、これもまた銀行を利してきたと多くの国民は受けとめている。もちろん、国民感情だけで問題を論ずるわけにはまいりませんけれども、同時にまた、日本金融システムでありますから、日本国民がそれを信認するのか、信頼を寄せるのかどうかということは大変重要なかぎになっているわけであります。  そういう立場から御質問をさせていただきたいと思いますが、何分時間が限られておりますので、きょうは岸会長中心にお聞きすることをお許し願いたいと思います。  最初に、確かに日本金融システムの信認が内外で揺らいでいることはもう間違いのない事実でありますけれども、その信認が揺らいできた最大の責任は、では一体どこにあるのかという問題についての岸会長の御認識をお伺いしたいと思うのです。拓銀のような個々の銀行にあるのか、あるいは銀行業界全体として責任を負わなければならないのか、あるいは政府なのか、国民なのか、いろいろな考え方はあると思います。私たちは銀行業界全体が、あのバブルの行動も含めて責任を負うべきではないかと考えるのですが、会長のお考えはいかがでしょうか。
  175. 岸曉

    ○岸参考人 大変難しい御質問でございまして、これだけ大きなマグニチュードで日本の経済、金融というものが大きくいっとき上昇し、またその後下降したということでございますので、一体これがだれの責任だったのかというふうにお尋ねになられますと、なかなかこれは特定が難しゅうございまして、もちろん銀行のビヘービアにも行き過ぎがあったと思いますけれども、やはりいろいろなところの原因が合成されてこういう状況になっているわけでありますものですから、はっきりとこれ、この人が責任ということはなかなか申し上げにくいので、お許しをいただきたいと思います。
  176. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私は、少なくとも銀行業界責任というものは重大なものであるということを指摘するだけにとどめておきたいと思います。  前の銀行協会の会長さんは、現在の銀行不良債権の問題に関して、全体としては償却は終わりに近づきつつある、もちろん個々の金融機関にとって事情が違うことも当然あるけれども、全体としては償却が終わりに近づいているという認識をお示しになりました。それから、大蔵省銀行局長も国会の答弁で、つい最近の答弁ですが、金融機関は全体として見た場合、十分な償却財源は持っている、もちろん個々の銀行に問題はあるけれどもという認識を述べておられるのですが、この点について岸会長の御認識はいかがでしょう か。
  177. 岸曉

    ○岸参考人 不良債権処理の問題でございますけれども、これは全体的なことは私どもの方でもなかなかつかみにくいわけでございますけれども、一定の基準で公表されております公表不良債権から債権償却特別勘定、引当金でございますね、引当金を引いた、今後問題として残っておるという金額は年々減少してきておりまして、この四月から導入されます早期是正措置に伴いまして、さらに今年度一段と処理が進むであろうというふうに思っております。
  178. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、銀行局長が言っているように、全体として見た場合に、金融機関が償却財源は十分持っているという認識は正しいと言ってよろしいでしょうか。
  179. 岸曉

    ○岸参考人 償却財源をすべての銀行が持っているかどうかということは……(佐々木(陸)委員「全体としてと聞いているのです」と呼ぶ)ちょっと私も全体のことがわかりませんので何とも言えませんが、銀行局のおっしゃることが正しいのではないかというふうに思っております。
  180. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 協会の会長に就任されたばかりなので、協会全体のことはわからないというお立場なのかもしれません。しかし、銀行局長の言っていることが間違いではないだろうというふうにおっしゃったのを受けとめておきたいと思いますけれども。  一つの原則の問題として、私は、今、日本金融システムが揺らいでいる、信認を内外で失っているというのですが、この預金者の保護とか、あるいは借り手の保護だとか金融システムの危機管理だとかといったものについて、やはり第一義的に責任を負うべきところは金融業界自身ではないのか。そして、そうである以上、そのシステム安定の費用の負担はまず第一義的には金融業界自身が可能な限り負っていくべきではないのか、これが原則ではないのかというふうに私は思うのですが、会長はいかがでしょうか。
  181. 岸曉

    ○岸参考人 銀行業界全体でどうか、こういうことでございますけれども、基本的にやはり銀行はそれぞれ自己責任経営をやってまいっているわけでございますし、今後、外国との競争、国際競争の中で日本金融機関として金融機能を立派に果たすというためにますます自己責任原則の方向に向かっているわけでございますから、何か問題が起きたら業界全体でプールして処理をする、こういう考え方には私はちょっと賛成いたしかねるところでございます。
  182. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 そうすると、個々の金融機関破綻して、それで金融システム全体が不安に陥るというようなことがあっても、それは金融システム全体として守るというようなことではなくて一勝手にしなさいということになってしまうわけですが。
  183. 岸曉

    ○岸参考人 これまでそういう金融破綻が起こりました際に、私どもの方はいろいろ、例えばみどり銀行の出資でありますとか、これに人材を派遣するとか、いろいろな面でできるだけの御協力は申し上げておりまして、今後もそういうできる限りの御協力はしなければならない、こういうふうに思っております。
  184. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 預金保険機構というのももともと、大蔵省銀行局長に言わせても、銀行業界の相互扶助組織だという位置づけもしているわけですね。だから、あの預金保険機構というようなものを通じて業界全体としてシステムを守っていくというのが、そしてその費用負担も、これまでその保険料で賄ってくることをやっていたわけですから、基本的に業界責任を持つというのが原則だということは間違いないことじゃないでしょうか。それは全然違うと言われるとちょっと話が大分こんがらかってくるのですけれども
  185. 岸曉

    ○岸参考人 おっしゃるとおり、預金保険機構には、金融界のシステムの支障が生じないように一定の比率で拠出をしておりますわけでございます。私が先ほど申し上げましたのは、無限にというのでしょうか、出たものは全部ということになりますと、先ほど翁先生がおっしゃったように、日本金融機関の格付みたいなものが、今後幾ら負担が出てくるのかわからないということで非常にダメージを受けると思いますので、そこはもうぜひ御理解をいただきたい。
  186. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 私も無限にということを申し上げているのではなくて、通常の原則としては、業界業界内の負担でシステムを守っていかなければならぬ、それが原則だろうということを申し上げているわけですね。もちろん、異常な事態が発生すれば、異常な事態に対応した例外的な対応も当然あり得る、原則とはそういうものだと思うのです。そういう意味での原則かということをお聞きしているわけで、それはよろしいわけですね。  今度の事態に関してです。  昨年の十一月以来のこの金融システムの危機と言われているような事態の中で、それでは、業界がそれに対応する実質的な対応としてどんな対応をしてきたかということが問題になるのですが、それは、まだ会長になったばかりですから、どんな対応をしていたかは全然御存じないということになるのでしょうか。
  187. 岸曉

    ○岸参考人 先ほども申し上げましたように、私どもの親密な金融機関の決済、資金調達の危機なんかの場合には我々も御支援を申し上げましたし、我々としては、先ほど申し上げましたように、金融界で起こる事態につきましてはできる限りの御支援、御協力はさせていただく、こういうことでございます。
  188. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 一昨年、保険料も七倍に引き上げるというようなことがあって、今の事態に対応してくるということをやってきていることは私も重々承知しているのですが、去年の十一月以降の事態の中で、それじゃ、業界としてどういう対応を、全体としてシステムを守るために努力をしてきたのかという点については残念ながら何も聞いていない。  そして、政府や自民党などがこういう税金を投入するシステムなんかを打ち出すと、これは岸さんの一月十三日付の日経に載った発言ですが、「政府・自民党の金融安定化策をどうみるか。」これはまだ会長になられる前ですからなんなんですが、「全体としてかなり評価できる。事態の難しさを認識して対策を打ち出しており、いままで以上に腰を入れている。パッケージとしてでてきた点もよい」。何か、自分はその金融システムの外にいて評論しているみたいな感じに受けとめざるを得ないのですが、私は、やはりこういう姿勢ではうまくないのじゃないか。これから会長としてやっていかれる以上、やはり業界全体のリーダーとして、業界としての責任を最大限果たしていくということをきちんとやっていかれる必要があるのじゃないかと思うのですが、その点いかがでしょう。
  189. 岸曉

    ○岸参考人 大変不適切な言葉遣いがあったとすれば大変申しわけないことで、そういうようなことで申し上げたつもりはなかったのでございますけれども、今後とも、そういうことについては十分注意して、まず我々の力をそれに注ぐというつもりでやってまいります。
  190. 佐々木陸海

    ○佐々木(陸)委員 時間になりましたので、終わります。
  191. 村上誠一郎

    村上委員長 以上をもちまして、両案についての参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人各位におかれましては、御多用中のところ、まことにありがとうございました。  午後一時三十分より委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     午後一時三分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十一分開議
  192. 村上誠一郎

    村上委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  内閣提出預金保険法の一部を改正する法律案及び金融機能安定化のための緊急措置に関する法律案の両案を議題とし、質疑を続行いたします。  この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  両案審査のため、本日、参考人として日本銀行理事本間忠世君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  193. 村上誠一郎

    村上委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――
  194. 村上誠一郎

    村上委員長 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平田米男君。
  195. 平田米男

    平田委員 まず、新大蔵大臣に対しまして、このような状況の中で勇気を持って大臣に就任をされました、そういう大臣に対して、敬意を表したいというふうに思います。  火中のクリを拾うといいますか、大変な重い責任を負われる覚悟で大蔵大臣に就任をされた、このように私理解をしているところでございます。そういう意味で、今国民から期待をされております大臣のその責任をぜひとも全うしていただきたいと心から期待をするところでございます。  今回の大蔵の不祥事は、これまで、戦後の中で役人の不祥事も幾つもございましたし、また政治家のスキャンダルもありましたが、私は、国家の屋台骨の幾つかのりちの一つが腐った、このように見て、まさに国家の存亡にかかわるような大問題である、こういう問題意識を持っておるところでございまして、そういう意味で、それを立て直して、そういう成果をぜひ上げていただいて、松永大臣の成果としていただきたいと思うわけであります。  そのあたりの御認識、どのような御認識また覚悟、決意をお持ちなのか、まず大臣からお伺いをさせていただきたいと思います。
  196. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えを申し上げます。  今、激励の意味を込めた質問をいただきまして、ありがとうございました。  私は、やはり政治家として、火中のクリを拾うことになることが予想されても、与えられた使命は懸命に努力するというのが政治家の生き方だろう。実際の話、考えるいとまもなく、急いで決断せざるを得なかったので、大蔵大臣就任要請を引き受けたわけであります。  私の大臣就任と同時に、総理からは、大蔵改革を断行して、大蔵省を生まれ変わらせることによって国民信頼回復するよう、そういう強い指示を受けました。私は、この指示を受けまして、綱紀粛正を徹底するとともに、いわゆるMOF担などの存在を必要としない、そういう行政に転換していくことが私の使命であり、いかなる事態になっても、一身をかけて綱紀粛正を徹底し、国民信頼の得られる大蔵省に立て直したい、そういう決意を持って臨んでおる次第でございます。
  197. 平田米男

    平田委員 総理からも、大蔵省を生まれ変わらせてもらいたい、そういうお話であったということを引かれまして、決意を述べていただいたわけでございますが、要するに、このモンスターのような大蔵省にお一人入って大改革をやるというのは大変なことだというふうに私は思います。  武村元蔵相も、経済問題、財政問題で突然言われると、結局は役人に引っ張られてしまった、こういうことを述懐しておられた記事もございましたし、また、さきの中島、田谷、二氏の大蔵キャリア官僚の不祥事処理についてもやはり中途半端だったな、こういう印象も漏らしておいでになる。今度、松永大臣も、結局やはり巨大組織の大蔵官僚の前には大臣一人ではなかなか戦い切れなかった、こういう述懐とか、あるいは一生懸命やったけれども不十分だった、こういう御発言がないようにぜひともしていただきたいと思うわけであります。  そういう意味で、大臣が就任されたときの大蔵省でのあいさつでこんなことをおっしゃっておいでになる。前蔵相の辞任で大方は済んだと言えるくらい重みのある辞任であったとか、あるいは、三塚前蔵相に比べると私は小さくて軽量だが一生懸命やるので皆さん支えていただきたいと。大変謙遜されておっしゃったんだと私は理解をしたいとは思うのですが、私は、こういうときは余り謙遜して言っていただきたくない。これは国民の期待を、また我々は野党ではありますが、橋本内閣の命運を背負って大臣に就任されたというお立場なんだろうと思いますから、私は、このような遠慮とか謙遜の心というのは抑えていただいて、もっとやはり国民に御自身の考え方がはっきりわかるようにぜひ御発言をしていただきたいな。これはあえてくちゃくちゃ質問しませんが、このような報道もありましたので、私自身は非常に気にかかりました。そういうことで、一言申し上げておきたいと思います。  それで今、金融二法が審議をされているわけでありますが、今回の不祥事あるいはまたいろいろな報道の記事、こういうものを国民がどう見ているかといいますと、金融二法は、確かに預金者の保護だとかあるいは金融システムの安定だとかいう大義名分はあります。しかし、もう一方から見れば、大蔵省銀行接待して、接待されて、そして談合してつくった法案だ、こういうふうに見るのも私は大きな見方だろうと思うのです。また、やむを得ない見方だろうと思うわけでありまして、その辺を……(発言する者あり)そんなことないと言って与党の方から声が出ましたが、そういう見方をしないと、本当にこの問題の本質まで突いた解決はできぬと私は思うのですよ。この法案さえ通せばこれで大蔵省不祥事問題はのど元過ぎて終わりなんだ、こういうような姿勢にもしなってしまったなら、我々国会に籍を持つ者として、与党であろうと野党であろうと国民に対しての責任を果たしたことにならぬと私は思うんですよ。  住専のときに国民は何で反対をしたのか。住専も実は同じ構造だったわけですよ。農水省と大蔵省の役人同士が勝手に覚書を取り交わし、そして住専に天下った人たちはほとんど大蔵の高級官僚であった。もし野党が言うように法的処理をしたら個人責任経営者として問われる。それを免れるために、まさに役人同士で、また業界と一緒になって、責任逃れのためにつくったのが住専の処理スキームではないか。  今、中坊さんが国民立場になって銀行責任を追及していますよ。銀行経営者の責任を追及しようとしていますよ。借り手の責任も追及している。しかし、あれは中坊さんがなられたのでようやく国民の期待にこたえられるように住管機構が動き始めたわけでありますが、大蔵省のスキームにはそんなようなものはなかったわけであります。したがって、住専の処理スキーム、これは国民は認めなかったわけです。  今回の金融二法も、こんなに金融破綻になって、もうアジアの金融危機が大変な状態だ、日本が世界恐慌の引き金になるかもしれない、こういう土壇場になってきて、大蔵省が大変だ大変だと、六千八百五十億以上は一切公的資金は出しませんと国民の前に約束したにもかかわらず、それを一気にひっくり返してしまって、三十兆もの金を簡単に出す。しかも、補正予算との絡みでとんとんと審議してください。こんなばかな話がありますかというのが国民の素朴な感情です。  それにこの金融不祥事、とんでもない接待をしている。ただ、審議では各役人は否定しておいでになるようですが、国民はその官僚の答弁は全く信用しておりません。こういう状況の中で、こんな金融二法を簡単に通そうなどという姿勢は私は許されないということも特に強調しておきたい。  それで、大蔵改革に取り組まれる松永大臣にお伺いしたいんですが、今回の不祥事、表面的にはノンキャリが二名逮捕された。ノンキャリの一人が自殺をされた。まだこれだけです、具体的事実、確定した事実としては。しかし、そういう中から、こういう事態になってきた、また、大蔵行政の結果として三十兆もの公的資金を導入しなければならないというようなところに追い込まれたと橋本内閣が判断をしなければならない状況に至った、そういう事実から、今回の不祥事の問題、原因というものを何だというふうにお考えなのか、これを私ぜひ伺いたいんですよ。  まず、私自身の考え方を申し上げておきたいと思うんですが、まず一つは、大蔵省に権力が集中した。思い上がってきたんですよ。絶対的権力は絶対的に腐敗をするというのはもう言い古された言葉でありますが、しかし真理なんですよ。これは政治権力だけじゃないんですよ。行政権力だって、権力が集中し、官庁の中の官庁と言われて、高い使命感でまじめに仕事をやっている分にはよかったんですよ。バブルのあのめちゃくちゃな社会で、経済状態の中で、まさに士気が緩み、そういう中でおごり高ぶってしまったのが、私は、大蔵省がこのような事態に立ち至った、また行政の大失敗を重ねてきた根本の原因だ、権力集中だ、このように思っています。  それから、逮捕されたのはまだノンキャリですよ一こつこつこつこつ仕事をやってきた方だと思います、本来は。ノンキャリが真っ先に腐って、キャリアが全くそれとは縁のない状態ですっきりやってきましたなどということは、国民はだれも信じませんよ。大蔵省をおかしくしたのはキャリアなんですから。キャリアが腐ったがゆえにノンキャリが腐ったんですよ。逮捕されているとかされていないということで区別される問題ではない。キャリアが腐ったんだ、ここを正しく認識をしなければこの問題の本質をえぐったことにはならないと私は思うわけであります。  それで、一つの提案でありますが、もう既にいろいろ言われております。与党内でもそういう御発言もありますが、まず、権力の集中を改革するには権力の分散をしなくちゃいかぬ。財政と金融の分離ということが言われております。与党内でもいろいろ議論があったけれども先送りになりました。私は、今回の行政改革をやる際にはっきりやるべきだと思いますよ、この通常国会で。  それから、もう一つは国税庁の分離です。  これまで大蔵省は、マスコミが批判する、あるいは議員が追及する、そうすると国税庁を差し向けて圧力を加えてきたと言われています。また、キャリアがいろいろな税務上の疑惑があったとしても、税務調査を受けたという報道は我々は受けていない。権力を持っているがゆえに、何やつてても、批判を受ければ国税庁を差し向けて圧力を加える、自分たちは正当な調査さえ受けようとしない、こういう実態をつくってきた。具体的事実を挙げろと言うなら幾らでも言いますよ。こんなものお調べになればすぐわかることですよ。マスコミも何度も書いていますよ。しかも、橋本総理は、もともとは行政改革で国税庁の分離ということを明確に言ってこられた。それを大蔵省が反対をしてつぶしたんじゃないですか。  橋本総理が、橋本内閣が本当に大蔵改革をするんだ、松永新大臣に生まれ変わらせてくれとおっしゃったとするならば、私は、国税庁の分離というのが当然そこの中に一つのテーマとしてあるのは当然だと思っていますが、それについてのお考えも伺いたい。  それから、今約五百人の金融部局関係のキャリア、ノンキャリアの調査をしておいでになるというお話はもう何回も聞いておりますが、今問題になっておるのは、大蔵省のキャリアの私有財産の形成の疑惑ですよ。衆参の委員会でも、特定の局長についてそういう質問が投げかけられています。その答弁はだれも納得できるものじゃない。どのように資産をつくったのか。たかだか年収一千万前後の課長補佐とか課長クラスで何で立派な家が建つんだ、借金もせずに。私も謄本をとってみました。担保なんか何もついていない。こういう疑惑に対してきちっと答えなければ、本当に国民に疑惑を明らかにしたことにならない。  私は、そういう意味で、大蔵省の審議官以上の、地方にも出ておいでになる方もいるから審議官級以上と申し上げよう、そういう方々の資産公開、それからその資産づくりについてきちっとした文書でもって直ちに説明をしていただきたい。こういうお考えがないのかどうか、これもぜひお伺いしたい。  昨年の臨時国会で決算行政監視委員会というのができました。それに合わせて各委員会は予備的調査というものを要求することができるようになりました。委員会だけじゃなくて、議員四十名で要求すればそういう報告を求めることができるようになっています。まだ予備的調査は行使されておりませんが、もし大蔵省がやらないと言うのだったら、予備的調査第一号にこの大蔵官僚の資産公開と資産づくりについて、私はやるべきだ、回答次第によってはそのような対応も考えざるを得ない、このように思っております。  先般マスコミに聞きましたら、実は、三年ほど前、大蔵担当をやっていた、毎晩夜回りしていた。どこのお役人のところ、局長、審議官クラスでしょう、毎晩帰ってくるのが遅い。帰ってくるとハイヤーでお帰りになる。そして、もうぐでんぐでんに酔っぱらっている。両手には抱え切れないお土産を持って帰ってきた。それをマスコミ自身が目にしていたのですよ。だれじゃないですよ一ほとんどの大蔵官僚がそうだったと言っているわけですよ。こういう実態がある。  それを踏まえて、ぜひ大臣、今の私の提案、質問に対して、まさに総理から言われた、生まれ変わらせる、そういう構想のもとで明確な御答弁を  いただきたいと思います。     〔委員長退席、浜田(靖)委員長代理着席〕
  198. 松永光

    ○松永国務大臣 いろいろなことの御質問をいただきましたので、それぞれについてお答えいたしたいと思いますが、数が多かったものだから抜ける点があるかもしれませんが、その点はお許しください。  まず、金融二法が通ってしまえばそれでおしまいだなどということであっては絶対ならないのです。私の申し上げておる大蔵省を生まれ変わらせるというのは、本当に私はそうやっていくつもりでありますから、それはぜひひとつ御了解願いたいと思います。  それからもう一つ、私が就任して翌日か翌々日に、新旧大臣交代のときに職員にあいさつしたときに私が申し上げたことは、とにかく前三塚大蔵大臣が、三塚さんの気持ちとしては、部下の分まで含めておれは責任をとってやめるのだという言葉があったわけです。その三塚さんの、前大臣の言葉を重く受けとめて、そして大蔵省の職員全部が意識の改革をしてもらいたい、こういつたことを申し上げたつもりなんであります。  そしてまた、やはり私、謙虚な人間なものですから、三塚さんと比べると、実は体も小さいし、それから立場が向こうの方が重いのです。私は軽いものですから軽量と申し上げたわけでありますけれども、まあ言わなかった方がよかったかもしれません。しかし、すぐそばに三塚さんがおるものですから一歩引いて申し上げたわけでありますが、国民に与える影響としてはそれはまずかったかな、そういう気持ちもないわけじゃありません。  いずれにせよ、この金融二法が通ったらそれでこの大蔵改革はおしまいになるなどということは絶対ありませんし、そうさせません。  そこで、今大蔵省の職員二名が逮捕されておるわけでありますが、まことに遺憾千万なことでありまして、そこで、これも三塚さんが残してくれた、つくってくれた仕組みなんでありますが、おやめになる日の朝、金融服務監査官という制度をつくってくれました。金融服務監査官。これは室長を中心にして十名でございますけれども、これを中心にして、地検その他の捜査当局から被疑者として調べを受けた否とにかかわらず、過去五年さかのぼって金融関連部局に在職した全職員について調査をしょうということであります。その調査の結果を待って厳正な処置をするというのが私どもの方針であります。  また、被疑者として逮捕された人等については、捜査当局捜査の結果を見て、法令の範囲内でこれまた厳正に処置をしていく、こういうことであります。  今委員のお話の中にありました、何でこれほどの腐敗した状態が起こってきたのだろうかと。その原因にさかのぼって考えていかなければならぬわけでありますが、委員も御指摘になりましたように、どうも大蔵省が、権力が集中して大きくなり過ぎたという点は否めないと思うのです。  大蔵省の改革としては、組織の改革をぜひやっていかなければならぬわけでありまして、その第一弾として、御案内のとおり、金融に対する検査監督の部局は大蔵省から離れて、総理府のもとに設置される金融監督庁、そこに金融機関に対する検査と監督の業務は移管することになります。そして、同時にまた、銀行局と証券局は統合して、大蔵省から証券局と銀行局はなくなるわけです、そして金融企画局というややスリムな一つの局ができる。これもスリム化の一つであります。そして、大蔵省に残すのは、金融の関係については企画立案部門だけ、こうなるのがこの六月までになされる改革の第一弾であります。  ほかの省庁はまだそこまでの改革は――手順からいえば、ある意味では大蔵省は先にそれをやるわけです。  第二弾としては、これは与党三党で合意がなされておるわけでありますが、金融に関する業務の中で、実は、破綻処理ないし危機管理に関する企画立案だけを大蔵省に残して、あとは全部金融監督庁の方に持っていく、これが第二弾の改革であるわけです。  委員指摘の国税庁を大蔵省から分離しろという話でございますが、この点は随分あの行革の場合に議論の対象になったところでありますが、分離した方がいいという意見も随分あったようであります。ただ、分離した場合には、地方税の徴収まで一括して全部それにやらせてしまったらどうだというのが相当強い意見のようでありましたが、しかし、そうなりますというと地方税関係の方との間でなかなか議論がまとまらずに、結局、検討事項というわけで残っておるわけでありますけれども、これもこれからの検討事項でありますから十分検討されると思うのでありますが、そうした行革の方の絡みで話がまとまったことが出てくれば、私の方は思い切って第三弾目の改革も進めていきたい、こう考えておるわけです。それが仕組み、組織の話であります。  もう一つは、職員の意識をこの際変えてもらわなければならぬと思う。  先ほど委員の話の中にありました、官僚の中の官僚とかという言葉ですが、これがいつの間にか自分は官僚の中でも一番偉いのだ、だから民間から接待されても不思議なことではないのだなどという意識になった人がある程度いたのではなかろうか。それがだんだんだんだんはびこってきたのが、私は、今度の供応接待を多額に受けたということのよって来るものはそこにあったのではないかな、こう思うのでありまして、そこで、より大事な仕事に従事している人ほどより高い倫理観が求められる、当然のことでありますが、その公務員倫理の原点に立ち返って、そして使命感と倫理観をしっかり身につけて行政に当たってもらいたい、そういう意識改革をぜひやり遂げたい、私はそう思っております。  そういう考え方でこの問題に対応してまいりますので、ぜひひとつしばらくの間見ておっていただきたい、全力を挙げて頑張っていく所存でございます。
  199. 平田米男

    平田委員 要するに、私の提案に対しては何もお答えにならなくて、間接的にやらないということをおっしゃっているわけですわ。  では大臣、生まれ変わらせるということは、要するに倫理倫理と言っていれば生まれ変わるということなんですか。金融監督庁を分離するという話は、もうそういうのはくどくど御説明されなくても私自身はわかっているわけで、今申し上げているのは完全分離をもうやりなさいと申し上げているわけですし、国税庁の分離は総理がおっしゃった提案なんだから、もう一遍やるというぐらいのことの構想を新大臣が持っていなければ、大臣になられて何をやるおつもりなんですか。単に五百人の調査をする、そして厳正な処分をする、それ以外今のところないじゃないですか。公務員倫理法は、野中幹事長代理が中心になって自民党で委員会をつくっておいでになる、野党でも私たちがやっていますがね。それは大臣のお仕事じゃないわけですよ。  一体、大臣として何をおやりになるのかというのが今全然明確じゃないですよ。今までのレールにただ乗っかっています、ただ内部調査はやりますと。だけれども、内部調査はもう武村さんのときだってやったわけですよ。二番せんじじゃないですか、そんなのは。ただ規模をふやしました、それだけの話ですよ。何にも新しいものはない。大臣に就任されて、こういう新しいことをやりますというものはないですよ。内部調査をやりますというのは三塚前大蔵大臣のときにおっしゃった話なのであって、松永大臣になられてから新しいことを、私ははっきり言って何も聞いてないなという印象なんですよ。  今の御説明を伺っていても何もないじゃないですか。それで何が生まれ変わらせるんですか。そうしたら三塚大臣がずっと続いていたって生まれ変わるという話じゃないですか。単なる大臣の首を切ってそれで終わりだ、残った官僚、まあ次官はやめられましたが、あと腐ったキャリアの皆さんはそのまま残っちゃうというわけですよ。制度改革をちゃんとやってくださいよ。今までの議論では不十分だった、こういうところがら出発しなければ改革なんてできないじゃないですか。今の大臣の答弁なんというのは、先ほどの改革の決意を述べられた大臣の御発言とは思えない。全く思えない。  残念ながらきょうはNHKの中継じゃないのですが、ぜひ聞いておってもらいたかった。こういうことをやってちゃいかぬのですよ。片一方では、抽象的には決意を言う、具体策は何もない、これの繰り返しだったじゃないですか、今まで日本の五十年というのは。それでこのぎりぎりのところまで来ちゃったんですよ。大臣がその気になればできるんじゃないんですか。なぜ、自分の責任で国税庁の分離、これを新たに提案してみたい――それは与党があることですから、与党が反対されれば大臣お一人の力ではできないでしょう。しかし、私は首をかけてでもやるんだとおっしゃれば、実現できる可能性は極めて高い。財政と金融の分離だってそうですよ。金融監督庁つくるだけで私の在任期間は終わります、いや、またちょっと考えますけれども、もうちょっと時間をください、旧来のレールのまま歩きます、これでは大臣、あかんですよ、本当に。みんな何も期待していないですよ。  あした何か総理が中間報告をされるという話がありますが、こんな話聞いておったら、あしたの中間報告って一体何が出るんだ、中身は何もないじゃないか、こう言わざるを得ませんよ。一番期待をかけられている新大蔵大臣がこんな状況では、国民に期待をしろ、安心しろ、見ていてくださいと大臣言われても、説得できないんじゃないですか、大臣。説得できますか。内心はできないなと思いつつ顔を上げられたんだと思いますが、まあ、私は話を聞いていて情けなくなりましたよ。  予備的調査、先ほど言いましたが、もう予備的調査やるしかありませんか。大蔵キャリアの資産公開ぐらいできないんですか。もう公務員倫理法の中にそういうのを入れようと言っているわけでしょう。大蔵省はこういう不祥事を起こしたんだから、前倒しに先行的に任意でやったっていいじゃないですか。法律ができなければやれないという話じゃないでしょう。大臣が、やってくださいと、それが大蔵省が変わりましたということを国民にわかってもらうために必要なんだと、こう言って決断されればできることじゃないですか。何も官僚と相談することじゃないでしょう。大臣自身が孤立しているのですよ、あなたは。腐った大蔵省の中に、ひとりあなただけが期待をかけられて入った唯一の期待の星なんですから。やるかやらないか自分で決めてくださいよ。  与党でさえ資産公開等も含めた公務員倫理法をつくろうという動きの中で、前倒しで大蔵省の高級官僚だけの資産公開、資産づくりの説明をするということぐらいできないというのだったら、一体何ですかという話ですよ。じゃ、私はただ待っている人、改革の先頭に立つわけじゃありません、全体的な政府・与党の動きを待っているだけです、こういう話じゃないですか。予備的調査をやられる第一号になる不名誉を受けられるという覚悟ならいいですけれどもね。  大臣、明確にもう一遍答えていただけませんか。
  200. 松永光

    ○松永国務大臣 高級公務員に関する資産公開、特に大蔵省の高級職に対する資産公開、大変示唆に富んだ御意見、十分拝聴させていただきました。  自民党の中でも、あるいはまた与党三党の中でも、公務員倫理法、これが急いで議論されておりますので、その議論がまとまって、恐らく今国会に法案が提出される可能性が高いと思っておりますけれども、そういったものができることを私は期待をしているわけでありますが、その法律ができましたならばそれに基づいて、それはそれなりにきちっとやっていきたい、こう思っております。  それから、国税庁の分離の話でありますが、これは行政改革会議との関連の話でありまして、大蔵省だけで話をまとめることはできません。特に、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、地方税の徴収と一緒にやらなければ意味が半分しかないという意見等もあって、それが実は議論として残っているところだと私は承知しております。そういったことがきちっと議論がまとまってくることを私は期待をしておるわけです。
  201. 平田米男

    平田委員 今お話を伺っていて、落胆以外の何物でもないですわ。まあ本当にこれ以上質問することが情けなくなってきましたね。公務員倫理法ができなければ資産公開やらされない。そうですが。国税庁の分離についても自分で御提案もできない。国税庁が分離された後どうするかという議論は、それはあるでしょう。しかし、権力の集中が問題だと言っているわけですから、それもうお認めになったわけですから、まずやらなくちゃいかぬじゃないですか。  ちょっと横道にそれるかもしれませんが、公務員倫理法の中身の議論をやっている中で言われるのは、政治家並みにしなくちゃいけないというのですよ、政治家並みに。公務員だけ厳しくするのはよくないです。とんでもないと私は言っているんですよ。どうするのがいいのか、最適なあり方、中身というのを議論して公務員倫理法をつくるべきだ。そして政治家のいわゆる倫理法がおくれているんだったら、そっちを改正しなさい。政治家の倫理法の方が低いからそれに合わせるなんというのは、本末転倒の議論だ。今の議論と同じですよ、それは。そんな、国税庁が分離された後、地方税との関係がまだ結論が出ませんので分離ができませんと。分離すべきだとまずおっしゃればいいじゃないですか。そこから議論が始まるんでしょう。  行政改革会議があるから、その結論を待ちますと言う。あなたは、大蔵省改革という立場で御発言する立場でしょう。行政改革会議の指示を受ける立場じゃないでしょう。行政改革会議は改革会議でいいじゃないですか。大臣は、大臣としての、政治家としての、また省を預かる最高責任者としての御自身の見識で御発言いただくのが、国民の期待にかなうことじゃないでしょうか。こういうことを何遍言っても御答弁は一緒なんでしょうけれども、情けない限りですね。  山一証券、拓銀が昨年つぶれました。これについて、大蔵省はだれも責任をとっていません。実は、一月十五日に平和・改革は、北海道札幌で貸し渋りの問題の公聴会、いわゆる私的な公聴会ですが、やりました。そこで、拓銀がつぶれたことの大きさというのを初めて肌身で感じてまいりました。  北海道では、拓銀の預金量というのは、拓銀さんと北海道では言われているんですが、この拓銀さんの預金量は二五%なんですよ。その銀行があっという間になくなつちゃったんですよ。銀行局長ですか、市場が淘汰したなんというのんきなことを言っていましたよ。でも、全国的に預金量二五%の銀行がつぶれるというのはどういうことなのか。ちなみに、主要十九行だけの預金の二五%はどこかというと、東京三菱と第一勧銀ですよ。要するに、北海道の拓銀がつぶれたということは、北海道の人たちからすれば、日本国民にとっては東京三菱と第一勧銀がつぶれた、それ以上のことなんですよ。  こんな重大な結論を出しているにもかかわらず、北海道に対して何の手当てもしていませんよ。いや、二十五兆融資ができるように手当てしましたと言う。公的金融機関は一〇〇%融資はしてくれぬのです。いろいろな規制があって、その上で五〇%ですよ、七〇%ですよ、こういうことをやっていますよ。北海道だけ特別扱いしますなんということはやっていません。したがって、宣伝文句だけを聞いていると、ああ何か対応策ができているなというふうに思いますが、現場へ行くと、こんなことでは公的資金も借りられません、民間銀行が一緒に貸してくれなければ貸してくれないんですよ、借りられないんですよと、みんな悲鳴を上げています。  したがって、拓銀の連鎖で、幾つかの北海道にすれば大会社がつぶれていますよ、貸し渋りで。それで、その会社の地元の町役場は、もうしょうがないから、税金で商品券を買って町民にそれを配って、これを使ってくれ、このような緊急措置までやっていますよ。そんな実態を大蔵大臣は御存じですか。  私たちが質問すると、いや、公的金融もきちっと対応しています、貸し渋り対策は今度の金融二法でやりますと。そんな話じゃないんです。窓口規制というのがあるんですよ、窓口規制というのが。窓口規制を北海道だけでも緩めないと、要するに、民間の金融機関が四分の一が吹っ飛んじゃったんですから、それにかわって前面に公的金融が出てこないと、北海道はお金が回りませんよ。経済の血液が回らない状態になってますよ。そういう実態をよく御理解いただいて手を打ってもらいたいんですよ。  同時に、山一証券、拓銀をつぶした責任をちゃんととってもらいたい、大蔵省に。三塚大臣がやめただけじゃないですか、銀行局長証券局長は何も責任をとっておらぬじゃないですか。それで、金融機関は市場原理の中で淘汰されるべきだと言っていたのが、突然国際金融局長が、もう銀行はっぷすべきじゃないと言い始める。アメリカだって、小さい銀行は何百とつぶしましたよ、町の小さな銀行ですよ、それは何百とつぶしましたよ。しかし大銀行は、経営者の責任を追及しながら、その銀行そのものは、経営陣をかえ、あるいは経営主体をかえ、あるいは資本関係もかえて存続させていますよ。そんなこと知っているでしょう、銀行局長証券局長も。日本だけですよ、大銀行をつぶしているのは。たしかイギリスに銀行がありましたね、万やむを得ずつぶれた銀行が。日本は、一年で立て続けに都市銀行一つと四大証券の一つをつぶしちゃった。この責任はだれもとっていないですよ。護送船団方式でずっとやってきたんですから、それを変える変えるとはおっしゃっていますけれども、今までのツケは全部護送船団方式のツケなんですから。  松野証券局長は、きょう午前中いろいろおっしゃっていました。話を聞いていたら、いろいろアドバイスしたんじゃないかという印象を私受けましたよ。相談を受けた後のフォローなんか何にもしていないじゃないですか。きちっとフォローしていれば、変なことをやっているということはわかるはずですよ。ただ、私は適法な処理をすることは経営者の責任ですと言いました、こんなばかなことを言っていたという。めちゃくちゃですわ。それでしゃあしゃあと、地銀の副会長ですか、やっておいでになる。  だれも責任をとっていないですよ。小村次官はおやめになりましたが、あの人だけが詰め腹切るなんてとんでもないですよ。銀行行政証券行政の当事者、最高責任者はちゃんと責任をとってく ださい。それをとらせるのはまた大臣の責任だと思いますよ。信賞必罰、改革の一番の原則は信賞必罰ですよ。何をやっていたってどんどん出世していく、エリートはどこまで行ってもエリート、最後に次官になれるかどうかはわからないけれども局長までは行ける。どんな暴言を吐こうと、どんな態度をとろうと、どんな失政、失敗をしようと、汚職で捕まらない限りはどんどん上がっていく。こんなことをやっておってはいかぬですよ、それが綱紀粛正じゃないですか、大臣。  どうですか、山一、拓銀のつぶれた責任をきちっと究明して、そんな接待の話じゃないですよ、接待の話じゃありません、行政担当の責任者としての責任を調べた上で追及されるお考えはございますか。
  202. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどの、拓銀の破綻による北海道の経済界、なかんずく中小企業に与えた影響が極めて甚大であるということは御指摘のとおりでございます。  そこで、その当時私は自民党の中小企業調査会長でございましたが、特に中小企業に対する対策を強化すべしということになりまして、政府の方も真剣に取り上げてくれて、政府系金融機関国民公庫、中小公庫、商工中金、それから中堅企業のための北東公庫、こういった政府系金融機関の資金、融資の必要量を確保すると同時に、それぞれの政府系金融機関の支店に相談窓口を設けまして、その相談窓口に相談に行ってもらって、しかもそれは窓口だけで処理するのではなくて、必ず支店長まで上げて対応するようにということで、去年の十二月以降そういう作業がなされておると承知いたしております。  その結果として、これは全国的なことでありますが、昨年からことしにかけて、前の時期に比べると、政府系金融機関の融資件数それから融資した金額、いずれも二割ないし三割増加しているということもあるわけでありまして、北海道についてどうなっているか、詳細な点は事務方から答えさせますけれども、努力をしているということはお認め願いたいと思います。
  203. 平田米男

    平田委員 山一の話はどうですか。山一、拓銀の責任は。
  204. 松永光

    ○松永国務大臣 山一の関係につきましては、実は証券取引等監視委員会で特別検査が今行われているところでありまして、その検査によって、倒産の原因またその責任一これは結果を見れば明らかになってくる点があろうかと思いますが、その結果を見て対応したい、こう思っております。
  205. 平田米男

    平田委員 大臣、一度札幌に行ってくださいよ。僕が地元の人から言われたのは、野党が真っ先に来るなんておかしい、与党が何で現地に調査に来ないんだ、こう言っておられましたよ。大臣みずから一遍北海道へ行って、地元の人の話を聞いてあげてくださいよ。  そんな抽象的に融資金額をふやしますという話じゃないのですよ。二五%の預金量を持った銀行がつぶれたのですよ。それで、公的金融機関が二割か三割ふえました、そんな話じゃないのですよ。そこで取引したのは一万数千社あるのですから。そういうところがぱたっと資金繰りにもう行き詰まったわけですから。新たな事業展開をやろうと思ったってできなくなってしまっているわけですから。北洋さんに行ったって、昔のつき合いとは違いますから、新規取引と一緒ですから、厳格ですよ。公的金融機関の融資額が二、三割ふえているというのは、二、三割しかふえていないと見なくてはいけないのですよ。二倍、三倍、五倍とふえましたというならわかりますよ。一遍それをきちっと調べてみてください。一遍北海道に行かれるお気持ちはないのですか。  それから、大蔵だけじゃなくて通産絡みもあるのですが、要するに中小企業金融機関の窓口規制。条件は幾つかあるのですが、これは全部通達なのです、法律じゃありませんよ。役所がちょっと変えようと思えばすぐできるのです、通達は変わるのですから。だから国会にかけなくたって機動的な対応ができるわけですから、ぜひやっていただきたい。これだけ簡単にちょっと答えてください。
  206. 松永光

    ○松永国務大臣 北海道の実情を視察すべしという御意見でございますが、ごもっともと思います。今はしかし、国会の方は御存じのとおり、予算委員会そしてこの委員会等々、しばらくの間は委員会に体全部、あるいは本会議で体全部とられてしまいますので、すぐというわけにいきませんけれども、行ける時間帯がとれましたならばぜひ実情は見てみたい、こう思っています。
  207. 山口公生

    ○山口政府委員 北海道拓殖銀行破綻しまして、大変北海道の皆様方には御心配をおかけしておるわけでございますけれども、日銀の特別融資等を使いまして、その窓口はあけたまま今対応しております。したがりて、融資が正常な先については続けておられますし、それがいずれは北洋銀行の方へ引き継がれるわけでございます。そういうことで、その影響を最小限に食いとめるという努力をさせていただいているところでございます。  それから、融資について、窓口でいろいろ規制しているというのはございませんで、あるとすれば大口融資規制等があるだけでございます。
  208. 平田米男

    平田委員 体があいたら行かれるというお話ですが、御本人が行かれなくても、銀行局長をやるなり、やめてもらいたいと私は思っていますが、あるいは政務次官も二人おいでになるわけだから、すぐにだって対応できると思いますので、ぜひやっていただきたい。  大口規制があるとかというそんな話じゃないのですよ。それは時間がなくなってしまいますのでよく調べてみてください。それは、だから北海道に行かないとわからないですよ。もうみんな悲鳴を上げているのですから。  あとまだ二つ重要な質問が残っているのですが、まず全銀協。この間会長さんがかわりましたが、私は会長なんかかわる必要ないと思っているのですよ。全銀協はもうやめた方がいい。要するに、金融機関大蔵省の談合の巣じゃないですか、ここは。護送船団でやってきたのでしょう。これから護送船団やらないというのだったら、全銀協は要らない。それから政治献金の窓口でしょう。これも要らない。それから天下りの受け皿でしょう。天下りが批判されているのですよ。  大臣どうですか。もう全銀協なんて要らないとお思いになりませんか。全銀協の存在意義は、大臣としてはどんな理由で認めておいでになるのですか。
  209. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  全銀協というのは大蔵省がつくらせた団体でもありませんし、言うなれば民間銀行が自主的につくっておる団体でありますから、御存じのとおり。したがって、こちらの方でこれはやめろ、解散だというふうに言うわけにはまいらぬ点もあるわけでありまして、必要性があるかどうか、それは向こうさん側で判断していただいて適切に対応していただければいい問題じゃないか、こう思います。
  210. 平田米男

    平田委員 では、今後は全銀協は大蔵省としては相手にしない、こういう態度はお決めいただけますか。
  211. 松永光

    ○松永国務大臣 民間の人たちが自主的につくった団体でありましても、みんなの意見を何か言いたいというのであれば相手にせぬというわけにもいかないでしょうね。やはり必要な意見は承るということになるのだと思います。
  212. 平田米男

    平田委員 もう一つ重要な質問がありますので、もうこれはこのままにしておきますが、今後また時間をいただいて再度やりたいと思います。  もう一つは整理回収銀行の問題ですが、これはずっと見ますと、役員が、社長と常務は大蔵出身、専務と常務は日銀出身、その他の役員も一人を除いて金融機関の出身です。一人のみ大阪の弁護士さんで、昨年の六月に就任をしておいでになる。それから弁護士さん、まあ顧問弁護士としてはいろいろ使っておいでになるという話は聞きましたが、これは、住管機構と比べまして非常に大蔵、日銀、金融機関の影響力が物すごく大きい。  しかも、ここに今度、三兆円でしたか、使って優先株を買わせよう 劣後債を買わせる。要するに、銀行の持ち株会社に整理回収銀行をさせる。要するに、大蔵省から天下っている人たちが社長をやっているところを金融機関の持ち株会社にする、こういう構想ですよ、今回の金融安定化法というのは。これはとんでもない話です。住管機構のような役員構成にぜひしていただきたい。これが一点です。     〔浜田(靖)委員長代理退席、委員長着席〕  それから、回収能力等も非常に弱いので、職員の人たちも厳しい状況に置かれているのでなかなかその回収も思うようにいかない。全部不良債権だということもありますので同情すべきところもありますけれども。  一つは、事業部がつぶれた金融機関ごとにできるんですよ。それで、そこの事業部に配属される職員は、従前に勤めていた金融機関の職員の何人かが二年契約で採用されるわけです、整理回収銀行に。そこのつぶれた銀行の回収が終わると、本人は仕事がなくなるからやめなければいかぬわけですよ。二年ごとに契約更改されるということでまず地位が不安定。それから、自分が一生懸命回収すると仕事がなくなるから首になつちゃうんですよ。これで一生懸命回収しなさいと言ったって、これはなかなか人情として、一生懸命やっておいでになると私は思いますが、システムとしてはおかしいと私は思いますよ。この辺ぜひ改革していただきたい。  それから、もっと弁護士を採用しなければいかぬですよ。社長に中坊さんみたいなまた有能な人が日弁連から出てくるかどうかわかりませんが、社長、専務にそのくらいの人を起用して、整理回収――これから拓銀もやらなくちゃいかぬでしょう、阪和銀行もやらなくちゃいかぬわけですよ。今までの整理回収銀行と質的に整理回収銀行は変わるんです。しかも、優先株を購入したら持ち株会社になつちゃう。こんなのを日銀や大蔵の天下りの人たちが支配するような、そんな形で存続させるなんというのは、それだけでこの金融二法のおかしさがありますよ。  大臣、これ改革されるお考えございますか。住管機構のように大改革してくださいよ、住管機構やったんですから。
  213. 松永光

    ○松永国務大臣 今お話のありました、回収をすれば自分の仕事がなくなる云々の話は、実は、一月ぐらい前にある場所で中坊さんと会ったときに、そのことを中坊さんからも住管機構についてもそういう話を聞きました。その場合に中坊さんが言ったことは何であったかというと、預金保険機構に住専の債権についてだけ罰則つき立入検査権、これがつけてもらえた、それで回収が強制的に相当進められたという話を中坊さんしておられました。  今度法律を制定させていただければ、この整理回収銀行の行う債権回収事業についても住専処理機構に罰則つき立入調査権がつけてもらえますので、回収については一歩も二歩も前進になるというふうに私は思っております。(平田委員「役員の話ですよ、役員の話」と呼ぶ)
  214. 山口公生

    ○山口政府委員 大臣の御答弁の前に、ちょっと過去の事実を申し上げたいと思いますけれども、整理回収銀行は仕事自体が大変つらい仕事でございます。破綻した金融機関債権を引き取ってそれを回収する。その中には、大変難しい事案、非常にこじれた事案、ときにはやや身を危険にさらされるようなこともございます。そうしたときに、どなたか適当な方をぜひということでいろいろ探しまして、それで今の方々にお願いを申し上げたという次第でございます。  先生のおっしゃるようないろいろな御批判も私どもはあるということは承知しておりますけれども、今そういった方々が大変一生懸命やっておられるということもぜひ御理解賜りたいと。  それから、各銀行や信組の人たちが事業部ごとにおりますけれども、それは、その人たちが一番よく貸出先のことを存じておられます。そうした方々にその回収の実を上げるためにお力になっていただいているというのが現状でございます。
  215. 松永光

    ○松永国務大臣 整理回収銀行の役員、私は詳細には知りませんが、水野さんという人が社長だとおっしゃいましたけれども、あの人は面つきから見てもなかなか厳しい人だ、私はそういうふうに、昔から知っておったわけでありますが、いずれにせよ、適材適所に人材を配置するのが妥当であるというふうに思います。
  216. 平田米男

    平田委員 もう時間が参りましたので終わりますが、今の答弁を伺っておると、橋本内閣または松永大臣が大蔵改革に取り組もうという熱意が全然私感じられませんでしたので、次質問さしていただくときにはその熱意が感じられるようにぜひ御努力をいただきたいと最後にお願い申し上げまして、質問を終わります。
  217. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、鈴木淑夫君。
  218. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  御承知のように、日本経済、戦後例を見ない危機的状況に陥っておりますし、また金融システムは、昭和二年の金融恐慌以来の深刻な事態に陥っているわけであります。こういうときに新たに大蔵大臣の重責を担われました松永新大臣に対してまず敬意を表しますと同時に、国民の期待が非常に大きいということを、十分御承知だと思いますが、私からもそのことを強調させていただき、適切な施策をこれからおとりいただくよう、質疑等を通じてお願いをしてまいりたいというふうに思います。  新大臣は、就任以来、大蔵省の綱紀粛正、機構改革等について発言される機会が多いわけでありますが、申すまでもなく、これと並んで、今申し上げました危機的状況の日本経済に対する財政面からの対処策、それから金融不安に対するシステム安定化策も今喫緊の課題であるわけでございます。現在当委員会質疑の対象になっておりますのもこの金融二法でございますので、私は、きょうは時間も限られておりますから、この金融二法に沿った質問をさせていただきたいと思います。  ちょうど一年前になるかと思うんですが、昨年の二月十日の予算委員会の議事録がここにございます。ここで私は、橋本総理と三塚大蔵大臣に対してこういうことを申し上げて確認したんですね。それは何を申し上げたかというと、橋本内閣の金融システム対策というのは、まず第一に、住専を初めとするノンバンクにはもうこれ以上公的資金を入れません、二番目に、預金取扱金融機関も、信用組合の破綻のケース以外は公的資金を入れません、三番目には、二〇〇一年三月まではペイオフをいたしません、預金等を全額保証します、そして四番目に、大銀行はつぶしません、こういう骨組み、フレームワークになっておりますが、景気の現状を考えると、これは去年の二月十日ですが、四月以降、日本の経済はゼロ成長に落ち込むことは目に見えておると。事実、政府はこの前改定して、この九七年度の成長率〇・一%とおっしゃったから、一年前に私が予言したとおりぴたりとゼロ成長になつちゃったわけですが、そういうことを考えるとこの枠組みでは足りないではないかということを質問したわけであります。  それに対して総理が主としてお答えになって、公的資金を投入するつもりはないということ、それから鈴木委員が言うほどデフレが深刻になるとも思われない、ゆえに金融三法を基本とするこのシステム対策で十分であるというお答えをいただきました。私は、ではひとつ今のことを覚えておいてくださいな、もしそうでなくなって、私が言うとおりになったら責任をとっていただきますということを申し上げたわけであります。  新大臣はもちろんこのとき閣僚でないわけですし、予算委員長にもおなりになる前でありましたが、しかし自民党の有力な指導者でございますから、当然この政府の方針というのは自民党の方針であったわけでございますので、以下のことをお伺いしたいのです。  それは、一年前にこれだけきっぱりと言っておきながら、今ここに出ている二法案というのは完全に一年前に言ったことを変更する法案であります。つまり、この三十兆円のうちの十七兆円とい うのは、信用組合以外の預金取扱金融機関破綻で預金を全額保証できなくなる場合に備えての公的資金の投入であるわけですね。残りの十三兆円は資本注入であります。  まずお伺いしたいのは、松永大臣、何で橋本内閣は、あるいは自民党は、こういう百八十度の政策転換を金融システム対策についてなされようとしているのですか、何が原因でございますか。お答えいただきたいと思います。
  219. 松永光

    ○松永国務大臣 お答え申し上げます。  昨年、二月十日になりますか、私、予算委員をしておりましたものですから、委員の御質問の場合に、私も非常に興味と関心があるものですから、大体予算委員会に出てメモするぐらいに熱心に聞いておりましたが、今申されたようなことで橋本総理を責め立てておられたという記憶がございます。  そこで、なぜ今度は、今御審議を願っている二つの法案を出して、そして十七兆の公的資金国民の預金をしっかり守る、十三兆で資本注入をやる、こういうふうにしたのかという話でございますが、私思いますのに、去年の秋以降、大規模な銀行破綻等もありまして日本金融システムに対する内外の信頼が大きく揺らいできた、このままではえらいことになるという大きな事情の変化もありまして、今度の新しいスキームをつくることになったというふうに理解をいたしております。
  220. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 それはおっしゃるとおりでございますが、その大きな事情の変化というのは、一年前に少なくとも私とそれから旧新進党の人たちは予見をして、警告をしていたわけであります。  ですから、ここで、まことに恐縮でございますが、新大臣も、そうであったなら、見誤った、予想を間違えた、楽観的に過ぎたとその非をお認めになった上で、ついては、やや遅くなっちゃったけれどもこれを出すのだ、この二法案を出したのだ、通してくれ、こうおっしゃるのが筋ではないかと思うのです。やはり私どもの言っていたとおりではないですか。ちょっとそれは一度お認めいただいて、自分の方が間違えた、しかし間違えたのに気づいたら大急ぎでそれを正すための法案をこうやってつくったのだから通してくれ、こういうごあいさつが当然あってしかるべきだと思うのですが、恐縮でございますが、やはり見通しは誤ったのですね。いかがですか。
  221. 松永光

    ○松永国務大臣 去年の二月の予算委員会の総括質問の一部でなかったかと思うのですけれども、そのときの激しいやりとり、私、少し記憶にあります。しかし、そのときには、あの委員の御指摘、それほど私にはぴんときてなかったことは事実であります。夏以降、大変厳しくなってきたということを私自身も痛感するようになりました。  それで、見通しを誤ったかどうかは別として、こうなってきたならば何としてでも日本金融システムの安定性を守っていかねばならぬ、したがってお願いしておる、こういうふうなことでありますので、御了解願って、ひとつよろしくお願いしたいわけです。
  222. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 見通しを誤ったかどうかは別としてというところが気に食わないわけでございますね。見通しを誤ったと男らしく言っていただきたいと思いますが、これ以上このことには時間をかけないで、先に参ります。  見通しを誤った、ごめんなさい、しかし気がついたからこういう法案を出してきた。さあこの法案でございますけれども、ここで確認をしていきたいというふうに思います。  三十兆円の金を用意した、そのうち十兆円は欠損が出たときに備えているわけで、政府保証に伴う借り入れの二十兆円が預金の保証あるいは資本投入に使われていくわけでございますが、これだけのお金を用意して投入するという以上は、その対象となっております預金保険機構並びに整理回収銀行について、これから私がお尋ねする程度の情報の開示があってしかるべきというふうに私は思いますので、質問をさせていただきます。  まず、今度、信用組合の関係の特別勘定とそれ以外の一般勘定を両方一緒にして特例業務勘定にして、ここから預金保証のための公的資金の注入をするというわけですね。それで、そこに十七兆のお金を用意したわけでございますが、大臣、現状において、一般勘定、特別勘定両方足した、この法案が通れば特例業務勘定になるこの責任準備金というのは、例えばこの一月末の状況でもいいのですが、一体幾らぐらいあるのでございますか。赤字なんでございますか、お答えください。
  223. 山口公生

    ○山口政府委員 九年度末で四千億円の赤字という状況でございます。
  224. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 わかりました。  そしてこの赤字を前提にして、ここから先、年々入ってくる預金保険料というのは四千六百億円ぐらいでしょう。他方、今もう公表済みの破綻処理案件だけ考えても、私、ちょっと拾ってみると、朝銀大阪信用組合とか田辺信用組合、京都共栄銀行、拓銀、徳陽シティ、静岡商銀信用組合等々、ずらずらっとあります。これだけ考えてみても相当なお金が預金の支払い保証にかかると思いますが、もう既に五千億の赤字になっているわけですが、年々入ってくる預金保険料が四千六百億ぐらいとして、今見えているこの案件だけで、この先どういう推移をこの特例業務勘定はたどるのでしょうか。逆に言えば、特例業務勘定がこれだけ赤字になっていくということは、すなわち、今度準備する十兆円をどんどん使っていくということになろうかと思うのですが、その辺のお見通しはどういうふうになっていますか。
  225. 山口公生

    ○山口政府委員 これまでしばしば私が申し上げていたようなベースでのお話を申し上げた方がわかりやすいと思いますのでそういうベースで申し上げますと、八年度から十二年度までの財源見込みが二・七兆円あるとしばしば申し上げました。うち一・四兆使って一・三兆残っているというのが昨年の臨時国会での御答弁申し上げた内容です。それで、現時点では、一・五兆円金銭贈与を使っておりまして、一・二兆円が残りという状況になっております。  それで、今先生が御指摘になりました、破綻が表面化した金融機関で今後処理を要する機関は六機関、既にございます。そういったものの債務超過状況を見ましてざっと計算しますと一兆一千四百六十四億円、つまり一兆一千五百億円弱が債務超過額ということになわております。もちろん、以前のスキームにおきましても、信用組合の分は政府保証というのをつけさせていただいておりましたので,その二.・七に政府保証分というのが、余裕としては理念的にはあったわけでございますけれども、いずれにせよ、御指摘のような機関の数字を見ましても、かなりの額に上る。  今後、どういうふうな状況で破綻が起きるかということについては、ちょっとこれはなかなか読みづらい、まあ、ないことを願うと言うしかないのでございますけれども、そういったのが現状での御報告でございます。
  226. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 今の数字の中では、拓銀の債務超過額というのを多分八千四百億ぐらい考えていますか。これについては、私はまだどうなるかわからない数字だなと思っています。もっと拡大する可能性あり。  それからもう一つは、去年の暮れに預金保険法通っちゃいましたから福徳となにわの特定合併が実行できますね。このときも資金援助をしなきやなりませんが、これは入っているんですか。以上二点。     〔委員長退席、坂井委員長代理着席〕
  227. 山口公生

    ○山口政府委員 特定合併の場合は、臨時国会でも御説明いたしましたように、金銭贈与はございません。資産の時価での買い取りでございますので、二次ロスが出た場合はそのロス埋めの財源が要るという形になるわけでございますので、アプリオリに、特定合併即金銭贈与ではございません。
  228. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 そうしますと、とりあえずは、この法案が通りますと、借り入れの政府保証枠を使って借り入れを実行してつないでくるという形になるわけですね。その辺の御計画はどうなっているんですか。  これは、債務負担行為という形ではこの前通った補正予算に出ていましたが、実際の実行をすぐやらないと間に合わなくなると了解していいですか。もしそうなら大体幾らだということを教えていただきたい。
  229. 山口公生

    ○山口政府委員 スキームといたしましては、必要額が生じたときに国債の償還、つまり現金化でもってお支払いするということでございますが、ただ、保険料が将来入ってくる部分がありますので、そういうのを優先して充てるという考え方はずっと貫いております。ただ、そういった穴埋めを先送りしてしまうというわけにはまいりませんので、そういった、その都度その都度対応していくという考えであります。ただ、保険料の見直し、十年度末までにという要素も一つ加わってはおります。
  230. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 一般論は僕もわかっているんですが、とりあえず、目先、十年度に入ってくる四千六百億ぐらいの保険料じゃ足りないことはもう見え見えですよね。だから、必ず使うわけですね。  なぜ僕がこんなことを聞いているかというと、それ使うと、これ財政赤字ですから、予算にどうはねてくるの、それでそれが財政構造改革法との絡みでどうなるのか、ここまで聞きたいから聞いているんですね。もうそこまで言っちゃいましたから、どういう形で赤字が出てくるのということを十年度についてお答えいただきたい。十年度、必ずこれ使うでしょう。いかがですか。
  231. 山口公生

    ○山口政府委員 今申し上げた見込みは、これからいろいろ清算検査等をしてのことでございますので、まだ十年度に幾ら出るのかということまではちょっと定かに申し上げる段階ではございません。
  232. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 本当はそんなはずないと思いますよ、大体の見込み額わかっていると思うけれどもね、私の方だってちょっと計算してみればわかるのだけれども。じゃ、金額はいいが、とにかく出ます、必ず。この財政赤字の処理どうするのということを、これはもう銀行局長ではないのかもしれないけれども、来ておられないからね、これ赤字としてどう処理されていくんですかね、予算上。
  233. 山口公生

    ○山口政府委員 償還して現金化された段階で歳出になりますので、ただ、それが赤字かどうかという話とはまた別の話だと思いますけれども
  234. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 それは赤字だよ、だって国債整理基金がへこむんだもの。そうでしょう。ほら後ろでちゃんと国際局長がうんと言っていますがね。それはそうだよ、そんなの常識だよ。だから、それは赤字なんですね。ですから、私は、これは財政構造改革法との絡みが出るんだぞということです。じゃ、これは時間も限られているから、まだまだこの法案の審議をしなきゃいけないわけですから、次の機会までにきちっと準備をしていただきたいと思いますが、とにかく、この法案の関係で財政赤字の拡大が出てくることは間違いないんですよね。それが財政構造改革法との関係でどう処理し得るのか、あるいはできないんじゃないかと私は思うんですが、そこをどうするのというところです。先へ行きます、でも、必ずこれは後で同僚に聞いてもらいますよ。  それで、先に行きます。  今は金繰りの話をしているんだけれども、さっきも銀行局長ちらっと言ったように、もう一つ、損失が出たらという話があるわけですね。それで、それを埋めるための十兆円の交付国債もあるわけですが、これから強化、拡大していこうという整理回収銀行、これもう損失が出ているんじゃないの。今、整理回収銀行というのはどういう収支になって、損失が出ているとすればどのくらいあって、この法案が成立したら、たちまち、その損失を埋めるためにどのくらい交付国債使うんですか。
  235. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  整理回収銀行の九年度の中間決算は、整理回収銀行の改組前の二信組及びコスモ信組に係る不良債権等の償却等がありましたので、約百九十三億円の赤字となっておりまして、その結果、繰越損失金が約七百七十九億円となっておるところでございます。  この整理回収銀行は、御存じのように、八年九月に東京共同銀行が改組されて新たな形で発足しまして、その体制の整備を図って債権の回収に取り組んでいるところでございまして、今、相当強力また効率的な債権回収に努力をしていると同時に、資産の効率的な運用にも努めているところでございます。
  236. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 私の方の調べでも、約八百億円ぐらいもう累積で赤字が出たということでございますので、今銀行局長がおっしゃるとおりだと思います。  これについても、今度のこの法案が通ると、交付国債を使って処理することになっていくのですか。
  237. 山口公生

    ○山口政府委員 整理回収銀行には出資金がございますので、先ほど申し上げたような損失の部分はそれとのかかわりで問題になるわけでございますが、今回お願いしてございます部分で、預金保険機構が不良債権を買い取って、それを整理回収銀行に回収をしてもらう、あるいは整理回収銀行に買い取りを委託するということになります。そうすると、その出てくる二次ロス、そういったものについては補てんをするという考え方でございます。
  238. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 言われるとおり、整理回収銀行には資本金があるわけですね。そのりちの二百億は日本銀行からも出たりしているわけですね。これに対して八百億近い損失が出てしまったということは、恐らくこの自己資本は半減してしまっているのですね、半分ぐらい減ってしまっている。だけれども、まだ債務超過にはなっていないなというふうに思いますが、これもうっかりすると、整理回収銀行自身が債務超過の銀行になっていくおそれもあって、それは今度の法案で準備はできていますが、しかしさっきの件と同じで、今度の法案で準備した分で整理回収銀行の債務超過を埋めていくことになれば、これは当然財政赤字になりますから、これまた財政構造改革法にはねてくるということは、十分認識しておいていただきたいと思います。  以上、私は、今度のこの二法案のうちの一つ日本版RTCの十七兆円側について質問したわけであります。私の質問のポイントというのは、十七兆円も用意して日本版RTCをつくって強化するんだという以上、もう少し財政赤字との関係等、内情をディスクローズしてほしいという意図でどんどん聞いたわけでございます。最初の点、ちょっとよくお答えいただかなかった点を含めて、まだこの問題は当委員会でしっかり詰めなければ、この法案の採決というわけにはいかないだろうと私は思っております。  次に、もう一つの十三兆円の資本注入の話に移っていきたいと思います。日本版RFCの方ですね。  松永大臣、この日本版RFCの話、資本注入の話でございますけれども、実は、参議院の本会議でございましたでしょうか、大臣は御出席いただいておりませんでしたが、きょうの午前中の参考人質疑でも大変問題になっていたところでございます。  それは、このRFC、資本注入というのはアメリカにも例があるよといいますが、このRFCというのはアメリカで一九三〇年につくったのですよね、大恐慌のさなか。そして、大恐慌直後の三三年から実際に資本注入が始まるわけですね。それを見本にしましたよというわけですが、もうアメリカの学界では定説になっていることであり、日本でも専門家の間で定説になっているのですが、あれは現代日本の参考にはならぬというのですよ、三〇年代のこのお話は。  なぜかというと、アメリカでもこの資本注入というのは、金融機関経営の援助のし過ぎ、経営救済のやり過ぎであって、大変不公平だった、モラルハザードも発生した、こういう形で経営救済を してはならぬというのが、戦後のアメリカにおける結論になっているからであります。  唯一こういうことが許されるとしたら、それをしないともうその金融機関はどこからも資本調達できないし、その資本調達を公的に助けてやらないとペイメントシステムあるいはファイナンシャルシステム、決済システムや金融システムが動揺しかねない、支払い不能の連鎖が起こりかねない、そうしたら国民経済にとって重大なる損失になる、そういうシステミックリスクがある場合に限りこういう経営救済も許される。これがアメリカの学界の定説であり、それが同時に米国政府の今の方針になっていると思うのですね。だから、そういう意味では、アメリカに前例があるよというのは一ちょっとこれは今の日本では使えない、外国の例だと思うのですね。  それからもう一つ、これはこの前予算委員会で総理にも申し上げたけれども、慶応大学に池尾という教授がおりまして一金融システム専門家です。彼が近ごろ一生懸命強調していますのは、アメリカの一九三〇年代というのは銀行というものが発展産業だったというわけですよ。発展産業で、国の大きな政策としても、銀行業なるものを助けることは産業政策としても合理化できたんだと。ところが、今の日本で預金を預かって貸し出しをするというバンキング、銀行業というのは発展産業か。池尾教授はノーだと言うわけです。  これから発展していくのは銀行業ではない。金融ビッグバンで業務分野規制を緩和してもらって、商業銀行業務、投資銀行業務、証券業務、信託業務、それから投信の業務あるいは投資顧問業務、そういうのを多角的にやる、あるいは保険も入りますね、多角的にやる金融サービス業こそが発展産業だ。だから、金融サービス業を助けるなら、ある程度公的資金を使ってもこれは産業政策としては正当化できるかもしれない。それは他産業の場合だって、発展産業はちょっと公的に助けるということが正当化される、それと同じ意味でですね。だけれども銀行業というのはだめだよ、これはもう衰退産業だ。銀行だけやるのは、もう衰退産業だ。これがあの池尾教授の議論なんですね。  以上、アメリカではもう否定されているよということと、産業論的に考えても銀行業そのものを公的に助ける時代じゃないでしょう、この二つの意味からいって、私はこの十三兆円が、日本版RFCの方は、システミックリスクが明らかにあるような、例えば拓銀の受け皿銀行となった北洋銀行を助けてやる、こういうケース以外はちょっとこれは正当化できないのではないの、経営救済だし、モラルハザードは発生するし、他産業との関係でも不公平だし、産業政策的にもどんなものかねというふうに思うのですよ。  それがきょうの午前中でも随分出ていたと思うのですが、きょう出ていたお話で一番わかりやすかったのは、相手が参考人だから質問された委員方々はそれ以上突っ込まなかったのですが、一番わかりやすい例は、一番いいしつかりした銀行、国際的なレーティングも高い、海外でも自由自在に資金調達がまだできる、それが東京三菱と三和だと思うのですよね。その次に位しているのが興銀とか住友なわけですね。その興銀や住友が、子会社を通じて海外で優先株を調達して、連結ベースで自己資本比率を上げる、こう発表しているわけですね。ましてや、それよりレーティングの高い優良行である東京三菱や三和なら、海外市場だって国内市場だって資本調達はできるじゃないのというわけですよ。そういうできる銀行に対して、どうして今度のこの十三兆円の対象にするのですかという議論ですね。  これは、岸東京三菱頭取はお立場上非常に苦しそうでした。僕は、あの方の本音は、実は要りませんということだと思うのですね。実は要りません、私どもは市場で調達できる。だけれども、私どもが市場で調達できるから要りませんと言うと、公的資金をお願いしますと手を挙げる銀行は市場で調達できない問題銀行ということになっちゃうから、そうしたらその連中がお気の毒だから、国策に協力するために私どもも手を挙げなきゃいけないのかな、そういう心の揺れ動きが私は見えたような気がします。だから、ここではっきり答えられなかった、お気の毒なことながら。  しかし、大臣、これは、今もしこの安定化法案ができたときに、市場で調達できる優良行からお金を入れることによって不良行をカムフラージュしてやるというやり方、これおとりになったら、まさに昔の護送船団方式、つまりみんなを守る、そのためには一番弱いやつを守る、一番弱いやつを守るためには強いやつもちょっと犠牲になって必要ないこともやってちょうだいなという、まさに護送船団方式の裁量型、介入型の金融行政への逆戻りになっちゃうと思うんですよね。  だから、これはテクニカルな話じゃないので大臣にお伺いしますが、こういう裁量型行政、護送船団方式に逆戻りしそうなやり方は、大臣はどうお思いですか。これは、もし反対だ、おれはそんなことするつもりはないというなら、そう言っていただきますと、この十三兆円の方の安定化法案の運用の仕方について、ああ大臣はそういう御見解か、そういうことで、一つの情報として大変大事だと思うのですね。どうお考えでしょうか。
  239. 山口公生

    ○山口政府委員 お許しいただきましてへ大臣の前に事実関係等を御説明させていただきます。  確かに、先生おっしゃるようにRFCの形と大変似通ってはおります。しかし、先生もおっしゃいましたように、システミックリスクというのは、これは大変な我が国経済全体にかかわる問題でございます。ひとり金融機関の問題ではございません。したがって、この法律もシステミックリスクというものをやはり避けるということを基本理念にしております。  それで、確かに、アメリカで経験した三〇年代と今とは大分違うだろう、こういう御指摘もあると思います。ただ、我が国独特の、いつも尊敬している先生の御指摘で私が意見申し上げる立場にありませんけれども、昨年の十一月ごろの現象を見ますと、非常に日本のマーケットというのが極端にすくみ現象をする、動いてしまう。これが正常にワークしますと、すぐ治癒できるマーケットの均衡点というのができ上がるんですけれども、どうもそれが非常に危なっかしい状態が現出したわけでございます。  これは海外においてもそうでした。例えば、十二月の期末越えのドル資金を取ろうとして物すごいラッシュが起きた。それでジャパン・レートが一%も、これは信じられないことであります。それが、何かはかのアジアの国の銀行と同じように同一視された時期もありました。海外でもそういうこと。国内では、まして、そういうマーケットのすくみ現象が起きていました。  これは単に金融機関だけの問題ではなくて、金融機関が持っている機能がそこで損なわれてしまう。その結果、例えば昨年の十二月に東食という食品の商社の破産が生じました。確かに経営内容も余りよくなかったという面ありますが、これはメーンバンクはある銀行でしたが、そのほかの銀行がアベイラビリティーの問題からどんどん資金を引いていったわけでございます。そうすると一方的にそのメーンバンクだけに負担がかかっていった。そうすると負担がかかり過ぎたメーンバンクが持ち切れなくなったという現象が起きました。  それで、その日にまた、ちょうどあのときは減税の話が出ていたころと同じ時期だったと思いますが、株価が大変に下がりました。今度は商社がどうだゼネコンがどうだという話になりまして、株価が暴落し、それでまた金融機関が大変に心配し出したわけでございます。年が明けましてからも、次の三月期を迎えて、三月期の株価をどう見るかで物すごくそこは見解が分かれます。  しかし、最悪事態を予想しますと、金融機関はそれこそ貸し渋りというものをやらざるを得なくなるということになる。決していいことではありません。しかし、そういったものに対して手だてがいろいろあれば、いざというときは何か手が打てるというようなことで、そういう準備、環境整 備をして、それで必要ならそこで資本注入をするということが、やはりシステミックリスクを防ぐためにも要るのではないかという気がします。  それから、池尾先生、私もよく存じ上げていますが、確かに産業として見た場合の議論はそういうこともあるかもしれません。しかし、私どもがお願いしておりますのは、単に銀行業を救うためだということではなくて、こうした機能を持っている銀行を通じて我が国経済を救わなければ、これは大変なことになるということでお願いしているということでございます。  それから、海外で、例えば興銀、住友でございますか、資金を調達しているではないか、これは御指摘のとおりでございますが、それは、みずからできるものはどんどんやっていただく必要はあるわけです。しかし、実を言いますと、どうせ私募でやるわけですけれども、そのマーケットは、こういうことは余り言うべきではないかもしれませんが、かなり限られているというのが現状でございます。あれはたしか十億ドル程度しか取れません。しかもアメリカだけなんです、そういったリスクをとろうとするマーケットは。そうしますと、それで十分か。それで自己資本比率が〇・二とか〇・三ぐらい上がるかもしれません。しかし、八%というものを完全にクリアできるという自信を持つためには、もっともっと、やはりあらゆる手だてを考えなければいけないというのが現状だろうと思うわけでございます。  ただ、政府がそういう手当てをしているからみんなそれに寄りかかってくるというのは、それはまたモラルハザードの問題だと思います。だから、やれるところは自分でやるという自助努力は必要だと思いますので、決してそれは矛盾はしないというふうに思うわけでございます。  そういったことで、裁量行政との御批判もありますけれども、あくまで申請主義に基づいて公正な審査機関が適切に御判断をされるという形に法案もさせていただいておりますので、そういった御批判のないように努めさせていただきたいと  思っております。
  240. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えを申し上げます。  今御指摘のとおり、護送船団方式などということにならぬようにすべきだというふうに私も考えます。  この仕組みによる資本注入、どの銀行に対してやるかということは、銀行の申請に基づいて、預金保険機構の中に設けられる公正な審査機関、この審査機関が、御審議願っておる法律及びこの委員会等における議論の経過等々を踏まえて自主的に基準をつくっていただく、その基準に基づいて審査をしていただいて、全会一致で決議をし、そして閣議にかけて、その上で決定するわけでありまして、私がああだこうだと言うわけにはいかぬケースであります。  いずれにせよ、右申し上げたような仕組みで決められるわけでありますので、厳正、そして中立的な審査機関審査の結果、そして閣議の結果決めていただく、こうなるわけであります。
  241. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 ありがとうございました。  まず、最初の銀行局長のお答えの方からまいりたいのですが、東食の例を引かれました。東食の例を引かれましたので、これを使うとわかりやすいと思って、私もこの話をしますが、アベイラビリティーの問題が起きてという表現をされたが、ずばり言って、これは貸し渋りの切り合いをやったのですね。つまり東食のメーンバンクは都市銀行系ですよ。それに対して、東食というのは幅広くいろいろなところがら、地方銀行からもお金を借りていたわけですね。特に東食の子会社なんか地方にいるから地方から借りていた。これの貸し渋り合戦が始まりまして、地方銀行が、おれは東食のメーンじゃないんだからといって、自己資本比率が気になった地方銀行貸し出し回収をかける。それで、わあっとメーンバンクのところへ資金需要がやってくるけれども、メーンバンクも面倒見切れない。泡食ったメーンバンクは、今度は自分がメーンバンクをしていない地方の企業に対する貸し出し回収をかける。両方で貸し出し回収をかけ合って、いわば切り合うような、ちょっとした戦争が実はあのとき起きたのですね。その犠牲になったというかその結果、東食はついに金繰りがつかなくなったわけであります。ですから、このケースというのはもう典型的な自己資本比率規制を気にした貸し出し回収であります。  自己資本比率規制を気にした貸し出し回収ですから、貸し渋り対策というのはいろいろほかにもあり得るのですね、公的資本注入以外に。  一つは、もうちょっと一部おやりになりましたが、早期是正措置を緩和しちゃう、あるいは繰り延べるということです。この三月末の自己資本比率が気になってひいひい言っているのですが、国内で仕事をしている銀行なら、これは国内の政策として三月末をちょっと繰り延べするよと言ったら、それだけで彼らはほっとするだろうと思いますね。あるいは、無理して横並びで海外業務をやると言っている銀行なら、さっさと無理しないでもう海外業務やめちゃいなさいと言えば四で済むとかですね。ですから、一つはそういう自己資本比率規制の手かげんということです。  なぜ私がこれを言うかといいますと、自己資本比率規制そのものは結構なことなんですが、なぜ、場合によってはこれは繰り延べてもいいんじゃないかと言うかといいますと、実は、アメリカでは不良債権の早期処理と自己資本比率規制の順番が日本とは逆で、不良債権の早期処理を強力にやったのが八九年から九一年にかけてです。そういう不良債権処理に目鼻がついたところで九二年から早期是正措置が入ってくる。そのとき、やはりさすがのアメリカも、それでもなおかつクレジットクランチ、今の貸し渋り的なものがちょっと起きました。しかし、幸いにしてそのころからばあっと景気が回復してくるわけですね。景気が回復してくればこれはもう株価が上がる、自己資本比率は上がる、地価も上がるので不良債権の整理が進むとかいうことで、すうっと消えちゃったわけですね。  日本は、不良債権の早期処理を怠って二年間おっぽり出して、おっぽり出していたと言っちゃあれですが、強力にやらないで、まだ相当不良債権を抱え込んだ状態、しかも不幸にして景気は回復しないところか逆に落ち込んでしまった状態で早期是正措置を入れてくるから、これは相当無理があるのですよ。順番を間違えていると私はあえて申し上げたい。  だからこそ、新大臣に申し上げますが、早期是正措置をそんなにリジッドにお考えにならないで、国際的にも、不良債権の早期処理を先にやるよ、その上で早期是正措置だと言えば、国際的な信用はそんなに落ちることはありませんよ。もっともだ、合理的だと言われると私は思います。それはアメリカの友人やなんかと話していてそうですから。彼らは、何で順序を取り違えたんだと言  いますよ。順序を取り違えたんだから、これはちょっと延ばしてもいいのですね。これが公的資金注入にかわる一つ対策です。  もう一つは、今自民党さんの中で検討しておられて、私も基本的には賛成なのが、土地の再評価です。  これはもうある意味ではこそくな手段です。実態は何にも変わらないのにちょっと数字だけ変わるのですが、しかし、そんなことを言えば、四%だとか八%というのもイワシの頭みたいなもので、合理的な根拠があるのじゃなくて、ぽんと決めた数字なんだから、ぽんと決めた数字をくぐるのに、ちょっと形式的にごめんなさいと言って再評価をやってくぐったって、僕はそんなにおかしなことではないなと思います。この方が公的資本の注入よりましなのは、民間の銀行の自己責任原則に基づく経営努力だからですよ。だから、僕はこっちの方がまだましだな、ややこそくだけれどもまだましだなというふうに思います。  それから、一番いいのは、実力のあるやつは市場から調達しろということですね。  これだけ三つ並べてみると、大臣、やはりこの三つの方がベターですよ、公的資本の注入より。これをある程度やらせた上で、万々が一、この三月末に何かとんでもないことでも起きて、株価が下がっちゃって、自己資本比率が下がっているようなときの緊急避難的な枠組みとしてなら、まあ準備しておくだけなら、私も理解できないことはないと思いますが、この法案が通ったらもうどんどんどんどん資本注入を始めるんだというのだったら、いやいや、その前に今申し上げた三つが先じゃないのというふうに申し上げたいと思うのですね。  さらに、この三つ以上に効き目があるのが、この前予算委員会で橋本総理に申し上げた景気対策なんですね。政策転換をはっきりおっしゃって、財政構造改革法に弾力条項を入れるというぐらいばんとおっしゃってくれれば、これは株価は安心して上がりますよ。だから三月末の株価が少なくとも今より下がることはないでしょうな、上がることはあっても。  そういう状況になりますと、この前も数字をちょっと申し上げましたが、私の試算では、大銀行十九行で、日経平均株価が千円上がりますと二・四兆円含み益はふえますよ。そうすると〇・三%ぐらい自己資本比率は上がります。それぐらいよくきくのですね、景気対策による株価の回復。円相場も十円円高になったら、〇・二%ぐらい大銀行の場合自己資本比率は上がるというふうに私は思います。これは大蔵省の試算とびたっと一致しました。大蔵省の試算は〇・二で、私の方がやると〇・三だという程度の違いはあるのですが。  いずれにしても、根本的には景気対策、なかんずく政策転換を明示されること。二月中に政策転換を明示されれば、これはもう、こんな資本注入なんて護送船団方式に逆戻りしそうな危ない橋を渡らないでこの年度末をクリアできるというふうに思います。  以上、いろいろ申し上げましたが、もう一度整理しますと、公的資本の注入をやる前に、三つ、もっといい方法があるでしょう。早期是正措置の緩和ないし延期があるでしょう。土地の再評価もあるでしょう。市場調達もあるでしょう。さらに、根本的には景気対策ですよ、政策転換ですよということを申し上げたわけですが、大臣、いかがでございましょう。やはり今私が申し上げた方がよろしいんじゃないですか。自己責任原則に基づいて、何よりも政府が四月一日から一段と進めようとしているビッグバンの基本原理にかなっているじゃありませんか。いかがですか。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  242. 松永光

    ○松永国務大臣 いろいろとうとい議論を出していただきまして、ありがとうございました。  まず、早期是正措置の延期云々でございますが、これは延期するということにはまいりません。ただ、改善命令その他の発出を、銀行側でリストラその他改善措置計画を出させて、それを見た上で改善命令措置を穏当なものにしてやる、こういう仕組みでこの問題には対応していきたい、こう考えておるわけであります。  それから、資産再評価の問題。これは、我が党でも担当者が真剣に検討していただいておるわけでありまして、これが話がまとまれば大変いいことだ、こう思っておるわけであります。  それからもう一つは、株の評価方法についての改善もあります。  そういったこと等を通じて、やはり国内四%、国際八%のあの基準をクリアすることが実は大事なことであります。しかし何としてでも産業の血液である金融システムは絶対安定させなきやなりませんから、そのために、いろいろな基準の上ででありますけれども資本注入措置、これも私は急いでやる必要がある、それによって日本金融システムが安定することが日本の経済を立て直す上でも非常に大事だ急いでそれをやらなきやならぬ、こう思っているわけであります。
  243. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 政策転換はいかがですか。
  244. 松永光

    ○松永国務大臣 これは、予算委員長当時、予算委員会委員意見も含めて随分議論になりまして、そのたびごとに橋本総理大臣の基本方針を何回も聞きました。その基本方針をお持ちの橋本総理から指名された大蔵大臣でありますから、すなわち現在においても財政構造改革の必要性は少しも変わらない。しかし、財政構造改革というのは、基本は二〇〇三年度の時点で赤字公債がゼロになっておること、それから、国と地方の財政赤字がGDP比三%以内になっていること等が中心なのでありまして、その原則を守りながら適時適切に、そのときの景気状態を見て景気対策はしっかりやるべきだ、これが総理の基本的な考え方でありますから、私もそれを踏襲してそう発言しておるわけであります。  いずれにせよ、補正予算、きょう参議院を通していただきましたが、これからはこの法案とそれから次に来る本予算、これを審議を進めていただいて、そして早くこれは成立させていただく。そうすると、補正予算の施策と、それから本予算の施策と、そしてこの法律が制定した後の金融システム安定化の施策と、こういったものを早期に実行に移すことによって相乗効果も発揮されてくるであろう、それによっていい傾向が見えてくる、そういったことを期待しつつ、注意深く見守っていくというのが私の立場でございます。
  245. 鈴木淑夫

    ○鈴木(淑)委員 大臣のお立場はわかりましたが、それでは最初に申し上げました国民の期待にこたえられないのではないかということを私は危惧いたします。  なぜなら、今大臣は、きょう補正予算が成立した、同時に二兆円の特別減税復活もこれで確定をしたわけでありますし、それから、この金融法案が通れば、あと来年度本予算ですか、これはしかし来年度の当初予算は財政構造改革法に沿った歳出削減のデフレ予算でございますから、これ自体は景気に全然プラスにならない、むしろマイナスになりますが、しかし、これは景気にマイナスだからどけておいたとしても、この二兆円の特別減税復活と今審議しておりますこの二つの法案に対して日本のマーケットがどういう反応をしたのかということは、大臣、しっかり覚えておいていただきたいと思います。  去年、この二兆円の復活と、それからこの二法案、三十兆円の金融システム強化策が出てきたときに、日本株式市場の反応は、一日ちょっと上がりましたが、その後どんどんどんどん下がってきて、そしてとうとう年明け後、一時一万四千円台まで突っ込んで、底値の一万四千三百円を割ってしまったら大変だという状況になってきた。また、金融機関も、ここまで下がりますと、もう一斉に株式の含みは損になりますし、自己資本比率も下がるものですから大変な状況になってしまったわけですね。ですから、今大臣がおっしゃった二つの金融法案と補正予算、二兆円の特別減税復活が成立しただけでは、私は、この二月、三月の危機を乗り切って日本経済が再び回復に向かっていくと、少なくともマーケットの参加者は考えていないと思うのですよ。  一月十三日から株価が回復をいたしましたね、六日連騰したり、その後にまた二日ぐらい連騰したりして。きょうはまた前場一万七千円を割っていたようですが、一万七千円前後まで回復をした。これを促進したのは、もう大臣よく御存じのとおり、十七日の朝日の夕刊と十八日の朝刊に出た額賀官房副長官の米国政府高官に対する発言、これが伝えられて、政府はその事実なし、額賀副長官もその事実なしと否定しておられますが、市場はこれを信用しているわけですね。つまり、来年度当初予算はデフレ予算ですが、これを前倒しに執行しておいて四月にでもすぐ補正予算を組むんだ、これをマーケットはある程度信用したから一万七千円前後まで今株価が戻っているのだと思います。  しかし、私ども野党が、共産党も含めて私ども全野党が足並みをそろえて要求していますように、もしそれをおやりになるんだったら、この平成十年度当初予算は欠陥予算でありますから、当然、四月に出すとおっしゃる補正予算を組み替えて出し直していただきたいということになりますし、そして、それをやりますと、実は財政構造改革法違反になりますから、同時に財政構造改革法の改正案、弾力条項を入れる、私は二〇〇三年に財政赤字を対GDP比三%以下にするというあれを動かす必要はないと思っているのですよ、弾力条項を入れて、途中経過をもっと弾力的にやれるようにしなさいと言っているわけなんですね。それをおやりにならないと、私は、株価が、あるいは民間の経営者、日本国民が、あれ、やはりあの新聞報道はうそだったのかということでがっかりしますと、二月、三月、この難しい時期に動揺が起きたりしたら大変だと非常に心配するものでございます。  今の大臣のお立場としては、はいはい、そうですが、政策転換しますなどと言えるわけがないことは承知の上で申し上げておりますが、どうか私が今申し上げたことを十分お心にとめていただきたい、それをまた国民は期待しておると私は信じて申し上げている次第でございます。  では、時間になりましたので、これで私の質疑を終わりたいと思います。ありがとうございました。
  246. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、北脇保之君。
  247. 北脇保之

    ○北脇委員 民友連の北脇保之でございます。きょうは金融二法につきまして、できるだけ法案の条文に則してお尋ねをしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕  まず最初に、大蔵大臣に、ただいまの政府の金融政策、金融機関に対する政策についてお尋ねをいたします。  と申しますのは、昨年の今ごろの通常国会のときには、金融改革ということで、政府は、フリー、フェア、グローバル、こういう金融市場を目指すんだということで、金融ビッグバンということを盛んにおっしゃっていたわけでございます。  その手段として、早期是正措置をこの四月から発動する、そしてまた、当時の言葉で言えば、ビッグバンのフロントランナーとして外為法の完全な自由化をするということを言っていたわけでございまして、その当時の考え方は、フリー、フェア、グローバルという中で、実質的に経営破綻を来しているような金融機関についてはこれは市場からは退場願う、そのためにこそ早期是正措置ということを講じて、早いうちからそういう対策を講じていく、このような方針だったと思います。しかし、それがここのところへ来て、どうもその方針が貫かれているのかどうかということがちょっとあいまいになってきているような印象を持ちます。  昨年の十一月に金融機関の大型の破綻が相次いだというようなことで、また貸し渋りというような現象がある、そんなことから、金融機関資本注入をするというような、そんな案が今出ているわけでございます。それからまた、早期是正措置も一部延期をするというような方針が出されております。そんな点からすると、昨年の通常国会のころに掲げていた方針、グローバルな市場をつくるという方針が何か後退しているような印象があります。  私自身の考えとしては、実質的に破綻しているような金融機関についてはこれを市場から退場願う、そういう形で日本金融機関をすっきりした体力の強いものにしていく、この方針というのはやはり貫くべきだというふうに思っているわけでございますが、この点について、大蔵大臣、冒頭で恐縮でございますが、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
  248. 松永光

    ○松永国務大臣 お答え申し上げます。  御提案申し上げている法案の中にもそのことは書いてあるわけでありまして、その方針に変わりありません。同時にまた、この早期是正措置というものは計画どおり四月一日から施行することとなるわけでありますが、ただ、金融機関の側で、誠心誠意改善措置をする、リストラをやる、こういった計画を出して、それが誠意を持って十分やるというふうに認められる場合には、改善命令の発出をしばらく猶予をするということで対応していくことになっておるわけであります。
  249. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいま早期是正措置の一部先送りの内容についてお答えがございましたが、もう一度ちょっと確認させていただきたいんですが、早期是正措置の仕組みというのは、金融機関が自己査定をして自己資本比率を出し、それを当局に報告をする、それに応じて、当局措置、業務停止というような非常に厳しいものから改善計画の提出という段階がありますが、措置を命じて、それを公表するということでございますが、自己資本比率を算定したときに、それは当局に報告されるだけではなくて一般に周知するような形で公表されるのか、それが一点。  もう一点は、国内業務に専念する四%基準の金融機関について早期是正措置の発動を一年延期するということでございましたが、ただいまの大臣のお話ですと、自己資本比率の自己算定といいますか、自己査定はする、しかし経営改善計画の命令を出すとかそういったことは一年先送りするというようにちょっと受けとめられたんですが、そういう理解でいいのか。もしその場合に、自己資本比率そのものは、そういう一部発動を先送りする対象になった国内に専念する金融機関についても自己資本比率の数字の公表ということは行われるということなのか、そこの点をちょっと確認させていただきたいと思います。
  250. 山口公生

    ○山口政府委員 御説明を申し上げます。  早期是正措置の仕組みは、大まかに言いまして、各金融機関先生おっしゃるように自己査定をしまして、その自己査定は、回収の困難の度合いで査定するわけでございます。  それをなぜやるかといいますと、企業会計上償却すべきもの、あるいは引き当てすべきものというものを算定するためでございます。したがって、そこには最終的には公認会計士のチェックをしていただく必要があるわけです。ただ、すべては、自分で債権を全部査定してよく洗い直してみないとそういった作業はできませんので、予備的な作業としてそういう自己査定というのがあるわけでございます。それは当局のチェックも検査のときには入りますけれども、そういった自分で行う作業でございます。それを当局へ報告するというよりは、それに基づいて客観的に、償却すべきものを償却するという公認会計士の目でもって、正当な、企業会計の原則にのっとった財務諸表をつくるわけでございます。そうしますと、そこで自己資本比率というのが出てくるわけで、それは各銀行が公表することになります。こちらから公表するというよりは、各金融機関が、その結果、出すということになります。  今回の早期是正措置の弾力的運用というのは、ちょっとわかりにくくてまことに申しわけないんですけれども、本来、国内基準の銀行については、四%を切っておりますと自動的に省令で決めた基準でもって命令を出す、これは行政の透明性のためでございます。そういうことになっておりますけれども、非常にそれを気になさって貸し渋り現象とか起きているということもありまして、仮にそういった三%台のところ、あるいは三・五%でもいいですが、そういったところが一年以内に自己資本比率が四%以上に達成することが確実だと認められる経営改善計画をお出しになったときは、その命令書を出す、つまりそうした命令の発出を猶予する、こういう措置でございます。  したがって、先生がおっしゃいましたように、自己査定そのものは各金融機関はやります。もう既に半期決算のところは、もうこの間集計してお出ししましたように、自己査定の試行をやっております。一年の通期決算のところも、今度の三月期からはそれをやることになっております。それをやらなくていいということではございません。  以上のようなことが、今回の自己査定と、それから早期是正措置の弾力的運用という中身でございます。
  251. 北脇保之

    ○北脇委員 そうしますと、一応すべての金融機関がこの四月目途に自己査定をして自己資本比率を出すということだと思うんです。それで、ただいまの局長の御説明だと、自己資本比率というものは、銀行、そういう金融機関自身が公表するものだ、こういうことでございましたので、四%以下の金融機関で、当局が今回の一部弾力運用のゆえをもって業務改善計画などの提出命令を出さない、そういうことをした銀行であっても、自己査定に基づく自己資本比率はみずから公表をする、こういう理解でよろしいんでしょうか。
  252. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘のとおりでございます。
  253. 北脇保之

    ○北脇委員 私はなぜそれをお尋ねしたかといいますと、もしそういうことであれば、私は、情報開示という意味で、そのこと自体は、国内に専念する金融機関であっても自己資本比率を公表するということはいいことだと思っております。しかし、貸し渋りの解消のために早期是正措置を一部弾力化したらいいじゃないかというところがら今のような措置が出てきたということだとすると、やはり自己資本比率が四%もいっていないというようなことが出てしまうことは、その金融機関にとっては、非常に経営状況が悪いということを公表することになりますから、それはちょっと困るということで、依然として、もし早期是正措置が貸し渋りの一因となっているということならば、それを解消する対策にはならないんじゃないかという疑問があるんですが、いかがでしょうか。
  254. 山口公生

    ○山口政府委員 御指摘のとおり、各金融機関にとりますと、それはかなりのプレッシャーが続くということはあると思います。したがって、この貸し渋り対策を十二月二十四日にお出しいたしましたときに、自己資本比率対策というのをあわせて発表させていただきました。  具体的には、株式の評価を、商法の原則といいましょうか、原価法、低価法の選択でもいいということを言いました。  それから利益性の引当金、例えば国債価格変動引当金、商品有価証券売買損失等引当金の引き当てを義務づけておりましたが、この義務づけを廃止しました。そうしますと、その分は利益として、専門用語で恐縮ですが、いわゆるティア1の資本に組み入れることができます。  それから、国内適用銀行だけでございますが、債務者預金につきまして、つまり貸付債権の残存期間以上の残存期間を有する定期性預金を借り手側が預け入れている場合にはネットアウトしていいよというふうにしてございます。そうすると分母が小さくなりますから、そこでかなり楽になる。  それからインターバンク預金等、これは大きな銀行の方が多いと思いますけれども、インターバンク預金のネッティングも容認する方向で検討するというようなこと。  それから、政府系金融機関の保証がつきますと、ちょっとこれも専門用語で恐縮でございますが、リスクウェートというのを、裸の場合は一〇〇%分母に置かなければいけませんが、それが保証がついている部分は一〇%になりますので、かなりそれも資産のリスクウェートが小さくなるということで、そういった措置をあわせてとらせていただきましたので、各金融機関としてはかなりその辺を御利用いただけるのではないかと。  また、先ほどの鈴木先生の御質問にもありましたが、土地の評価という問題も、これは政党間でいろいろ御議論をされているようでございますが、そういったことも、もし採用されますと、それの評価がえしたうちの一部が、これはティア2になろうかと思いますが、それに算入できるということになって、いろいろ手段をこちらとしてはできるだけ与えて、各金融機関ともそういったものに対応してもらいたい、それによって貸し渋り現象等をやめてもらいたいというふうに思っているわけです。
  255. 北脇保之

    ○北脇委員 今のお話の中で、自己資本比率の算定の基準を弾力化すること、そのこと自体は反対しているわけではありませんが、中にやはり株式の低価法の関係、これを変えていくということについては、土地の方については時価を基準としたそういう国際的な会計基準に沿っていこうという中で、逆行する、この批判は非常に強くあるところでありまして、私もそれは同じように思います。ですから、すべてが肯定できるものではないということは申し上げておきたいと思います。  もう一つお聞きしたいことは、もともとの預金保険法金融機関破綻処理がいろいろと発動されるわけですが、そのときに、どういうきっかけでその金融機関破綻させていくのか、そこのところをちょっともう一度確認させていただきたいのです。  と申しますのは、預金保険法破綻金融機関の定義というのは、「預金等の払戻しを停止するおそれのある金融機関」または実際に預金等の払い戻しを停止した機関、こういう定義になっているわけですが、これをもう少し具体的に言うと、具体的にというか、もう少し細かい基準で見た場合に、「預金等の払戻しを停止するおそれのある」状態というのはどういう状態を指すのか。それと、今早期是正措置というのが導入されておりますから、早期是正措置の中の査定の結果というものと、この「預金等の払戻しを停止するおそれのある」という判断というのがどのように関連づけられているのか、その点を教えていただきたいと思います。
  256. 山口公生

    ○山口政府委員 「預金等の払戻しを停止するおそれのある」ケースというのは、まずすぐ思い浮かびますのは、債務超過の状態になってすぐには回復の見込みがないという状態一つあると思います。もう一つは、多額の不良債権を抱えて資金繰りに非常に困難を来しておりまして、早晩その資金が取れなくて行き詰まってしまうというようなケースが考えられると思います。  早期是正措置は、自己資本比率という一つの客観的なメルクマールでもって行政措置を発動しよう、つまり裁量的な行政措置から透明性のある行政措置へ変えようということでつくっておりますが、一応の基準としては、国内銀行でいいますと、四%、二%、〇%という刻みをつくってございます。〇%ということになりますと、かなり債務超過状態。それ以下になりますと、そういうことになります。  そうした場合、すぐ、瞬間タッチ的にそういうことが起きている場合はともかくとしまして、そういう状態に立ち至った場合は、やはり業務の停止を命ずるというケースもあろうかと思います。そういった場合は確かに、預金の払い戻しがもう停止するおそれがある状況に立ち至ったということになる場合が多いのではないかというふうに思うわけでございます。
  257. 北脇保之

    ○北脇委員 今のお話で早期是正措置預金保険法の発動の関係というのはわかりましたので、早期是正措置というものがあることが非常に客観性を担保することになると思いますので、私は早期是正措置については予定どおり実施していただきたい、そう思います。先ほどの業務停止命令とかまたは業務改善計画の発出を一年猶予するということは、貸し渋り対策とかそういったことについては余り効き目があるというふうにちょっと思えないので、私は業務停止命令や経営改善計画の提出命令、そういうことは先送りせずに、予定どおり四月から発動をするべきだ、そういうふうに考えているということを申し上げて、次へ行きたいと思います。  次に、今回の法案の中で、金融安定化の方で一般金融機関に対して資本注入をすることについて、この委員会でもたびたび議論になっております。これはちょっと条文の方に沿って見ていきたいと思うのですが、破綻金融機関を引き受ける場合に、その引き受ける金融機関の資本が弱化するので資本注入するというケースが一つありますが、これは私も問題ないと思っております。  そのケースではなくて、「経営の状況が著しく悪化している金融機関等でない金融機関等」なんだけれども、優先株の引き受け等をやらないと、「我が国における金融機能に対する内外の信頼が大きく低下するとともに信用秩序の維持と国民経済の円滑な運営に極めて重大な支障が生ずることとなる事態として次に掲げるいずれかの事態を生じさせるおそれがある場合」、こう言っているわけですけれども、これは長々しい表現でちょっと申しわけないのですけれども。  その事態というのはどういう事態かというと二つあって、一つは「金融機関等が内外の金融市場において資金の調達をすることが極めて困難な状況に至ることとなる等により、我が国における金融機能に著しい障害が生ずることとなる事態」というのが一つあります。突き詰めて言うと、金融機関が内外の金融市場において資金の調達をすることが極めて困難な状況に至るという一つ条件を言っているわけですが、これは具体的にはどんな事態が念頭にあるのか、どういう場合にこういうふうに内外の金融市場において資金を調達することが極めて困難な状況ということが生じてくるのか。そしてまた、できれば最近の事例の中で、いついつの時点で、こういう金融機関でそういう事態が生じた例があったということが、別に固有名詞は結構ですが、そういうことを含めてお答えいただければありがたいと思います。
  258. 山口公生

    ○山口政府委員 これは一言で言えば、システミックなリスクということと申し上げたいのでございますけれども、現実問題として、非常に悪循環に立ち至った場合だと思います。例えば期末越えの資金を必要とする、それが一斉にそういうラッシュが起きますと、我先にそれを取ろうとする。そうすると、金利を高くすれば取れる状態であれば何とか大丈夫なんですけれども、そこで出し手側の方が自分もひょっとしたらそういった資金繰りに困るかもしれないと思うと資金を出さない。仮に日銀が緩めていろいろな資金を供給しましても、それが本当に必要なところに流れていかない。  マーケットで流れていかないという市場のすくみ現象ということをしばしば申し上げておりますが、そういうことは現に現出する危険性があるわけでございます。それから、海外におきましてもあります。そういった非常に不安心理が不安を呼ぶと大変な悪循環に陥るというのが金融の持つ悪い面といいましょうか特徴でございまして、そういったことをぜひ防ぎたいということであります。しばしば申し上げて大変恐縮ですが、昨年の十一月にはかなり、特に海外では、そういった冷や冷やした現象が起きたというふうに私は伺っておるわけでございます。  また、株価の状況等で格付が下がる。格付が下がるといろいろな危機の報道が行われる。そうすると、資金を必要以上に取るといいましょうか自分のところで確保しようとする。そうすると、血流が流れない。こういうことはやはり何か外からの力をちょっとかしてあげないとそこが緩まないといいましょうかほどけないというような状況が生じる。それが金融界だけの話ならいいのですけれども、それがまた企業の倒産になり、それがまた株価を下げ、それでまた不安感を増殖してしまうということになりますと、これはもうひとり金融界だけの話ではないということで、ぜひそういったことを防ぐためにこういった措置をとらせていただきたいという趣旨をそこに述べているわけでございます。  したがって、資金繰りが困難になるという事態というのは、平常時の個別の銀行で考えますとそういうことが起きるのかなという感じもいたしますけれども、現に、非常にそういった事態が生じようとした経験があるということを踏まえて考えていく必要があるのではないかと思っております。
  259. 北脇保之

    ○北脇委員 それともう一つの例として、金融機関破綻によって連鎖的な破綻を発生させる場合なんということもあるのですが、その二つを合わせたときに、条文をそのとおりに読むと、私は非常に個別の金融機関の問題という表現になっていると思うのです。経営の状況が著しく悪化している金融機関ではないのだけれども、その金融機関が内外の金融市場で資金の調達をすることが極めて困難になった場合とか、その金融機関がつぶれると連鎖的な破綻が生じる場合、そういう言い方になっているわけで、それですと、特定の銀行がそのような状態に陥ったときには、手を挙げてくれば厳密な審査をして優先株等の引き受けをすることもありますよ、これが法律の内容だと思うのですね。  しかし、今巷間言われていることは、優良な銀行から入れるのだとか、それからまた、東京三菱銀行から始まって、いいところには入れる。そうすると、いいところにはもう軒並み入れる、悪いところには入れない、こういう言い方がされていますし、その裏側に、貸し渋りが生じているから、貸し渋り対策のために資本注入をやるのだと言っているわけですね。確かに、貸し渋り対策ということでやるというのだったら、個別の銀行にレアケースでやったってそれは対策にならないから、貸し渋り対策だということを認めているのでしたら、やはり巷間言われているように、大量に、いい銀行からかどうか知りませんが、十九都市銀行であれば、それを全部入れるとか、そういうことを意味しているのかなという感じがあるわけです。  ですから、これを提案している政府としては、実際にこの法文を運用するときに、どのような考え方で具体的に運用に当たろうとしているのか。そして、今私が申し上げたような、巷間言われている優良銀行から軒並みに入れるとか、貸し渋り対策として入れるのだ、こういうことについて、政府は、実際の意図はどうかということを明確に教えていただきたいと思います。
  260. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  今先生が御紹介いただきましたような法律の考え方でございますが、実際の運用は、審査委員会が各銀行のみずからの申請に基づいて判断をするわけでございますが、そのときも計画を出させ、それを判断をするということでございます。それは、個々の銀行のことが書いてありますのは、資本注入の手段は、あくまで相手は個々の銀行でございますのでそういう書き方にしておりますけれども法律が想定しておりますのはそういった経済全体を考えてのことでございます。  例えば、この例が適当かどうかわかりませんが、ある銀行が海外で資金調達が非常に苦しくなった、もうちょっとこれ以上は私はそのお得意さんに貸せないから、ほかの銀行にちょっと肩がわりで貸してくださいと言っても、これはなかなか簡単にいきません。したがって、銀行間はお互いに競争しております。競争してお得意さんを確保しようとする努力もしております。しかし、ある意味では支え合っている。先ほど一つ商社の話が御紹介もありましたけれども、そういった形でお互いに絡み合っているという面もあるわけです。競争相手でありながら、また信用秩序を構築しているというものがあります。一人抜けた、二人抜けたで、すぐそれがぱっとカバーできるというものでもないわけであります。かといって、私は特定のことを意味して言っているわけではありません。したがって、システミック的にそういった広がりというものは起こり得るということであります。  それから、貸し渋り現象のためかどうかという御質問でありますけれども、もちろん貸し渋り現象が非常に経済に悪い影響を及ぼしているということを私も聞いております。それが、もしこういつた手段を用意することによって、あるいは場合によってはそれを注入することによってそれが解消し、経済全体がそれで安心感を持ち、また前向きに明るく伸びていけば、これは大変効果のあることだろうというふうに思うわけでございます。  だから、特定の銀行を考えて私ども申し上げているわけではございません。それは個々のケース、ケースで審査委員会で御判断されるということでございます。
  261. 北脇保之

    ○北脇委員 今局長から長い御答弁ありましたけれども、やはりよくわからないのです。  というのは、この三十兆円の金融安定化対策というのが打ち出されてきて、そのうちの十三兆円分が資本注入だということで、それが出たことでもう何かが起きたというか何か実現したというような印象が広がっているというのが率直なところじゃないかなという感じがするのですね。ただしかし、では、この法律が成立したときに、運用というか実際にどういうふうに動いていくのだろうということを考えるとさっぱりわからないのですね。  ここで言っているのは、どう読んだって個別ケース。個別の銀行がみずから手を挙げてくる、そうしたら審査をするのですと言っているわけですが、しかしそれを、今局長が言われたようなシステミックリスク対策というようなことで、ある程度多くの金融機関資本注入を仮にするというようなことであるならば、そこに、法律に書かれていることと実際に政府としてやろうとしていることに非常に大きな開きがある。法律どおりに運用するのではなくて、とにかくこぞって主要金融機関から手を挙げさせようとするのだったら、まさにそれは行政指導をやるしかないわけで、ほっておいたら、もう金融機関に任されているわけですから、手を挙げる銀行もあれば手を挙げない銀行もある、その程度の効果しかないはずなので、それをこぞって仮にやるとすれば、まさに護送船団方式、法律にないことを政府の働きかけでやるということを大々的にやるということになりかねないわけです。  そういう意味で、もう一度確認をいたしますが、この法律の運用というのは完全にそれぞれの相手方金融機関の自発的判断によって申請をさせるといいますか、申請を待って、その申請が出てきたらそれを厳正な審査によって判断をしていく、そういう個々の金融機関の自発的な判断、それに任されるんだということを、それで間違いないか、そこだけ確認いたします。
  262. 山口公生

    ○山口政府委員 先生の御指摘のとおりでございます。
  263. 北脇保之

    ○北脇委員 それは今後の運用といいますか、それを見ていけばわかることでございますから、今の発言に間違いないというふうに受けとめさせていただきます。  それからまた、次に審査委員会のことをちょっとお尋ねしたいのですが、審査委員会でまた審査の基準を定めるということが法律にあるわけですが、その審査基準ということの要件が法律にも書いてあります。  例えば、優先株等の引き受けが経営の再建を目的とするものではないということとか、それから、当該金融機関が発行する優先株を引き受けてもその金融機関破綻する蓋然性が高いと認められる場合でないこととか、三つばかり書いてありますね。  じゃ、こう書いてあるけれども、それを審査委員会審査基準として客観的に定められるのかどうか。法律に書いてある定性的な判断基準、それ以上にどういう基準を定めようとしているのか。例えば、数字を用いた指標にするとか、何かそういう客観化ができるのか、そのことをお答えいただきたいと思います。
  264. 山口公生

    ○山口政府委員 今先生が御指摘いただきました二十三条の項目、これを含んだ審査基準を審査委員会が決めるというふうになっております。したがって、それだけが審査基準ではもちろんないと思います。  それで、審査委員会、まだ構成等も、法律をお通しいただきませんとメンバーも決まりませんけれども、そこでできるだけ具体性のあるものという形になっていくと思います。ただ、数値基準まで設けられるかどうかは、事柄の性格上、可能かどうかということについては審査委員会で御判断されると思いますけれども、難しい面もあろうかとは思います。  いずれにせよ、審査基準も公表されますし、それから、具体的に適用された場合にもそれは公表されますので、国民の皆様にも見ていただくということになるわけでございます。
  265. 北脇保之

    ○北脇委員 今の答弁ではちょっと納得できないのですが。  例えば、優先株等の引き受けが経営の再建を目的とするものではなくて信用秩序の維持を目的とするものであることとここに書いてありますけれども経営の再建を目的とするのではなくて信用秩序の維持を目的とするのだというのは、例えばどういうことが満たされればそれなんだというふうに言えるのか。そういうことがなければ、ただ、だれでも文句のない基準ということを列挙しているだけで、それはほとんど判断基準として意味をなさないということになってしまうのではないかと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
  266. 山口公生

    ○山口政府委員 これはまた審査委員会の方で御議論される話ではございますけれども、例えば今先生の御指摘になったような、経営の再建を目的とするとなりますと、破綻を防ぐためにこういった申請をするというような場合は、どうもこれには該当しないということになろうかと思います。     〔井奥委員長代理退席、委員長着席〕
  267. 北脇保之

    ○北脇委員 今の答弁で、ちょっと答えようがないということがわかりましたので、結構です。  次に、審査委員の人選なんですけれども、一応七人ということで、審議委員、大蔵大臣とかそういう、いわゆる充て職でない方が三人予定されているようですが、やはり公平、中立性ということが非常に重要だと思いますので、この審議委員というのはどういう方を想定されているのか、お答えいただきたいと思います。
  268. 山口公生

    ○山口政府委員 三名の方は、金融、経済に関しすぐれた識見と経験を有する民間の方でございまして、ただ、任命が内閣の任命でございますので、私の方から特定のイメージを持ってお答えするのは適当ではないと思いますけれども、最終的には、国会両院の御同意をいただくという手続を踏んで、内閣で決定されるということになってございます。
  269. 北脇保之

    ○北脇委員 具体的な任命行為は今おっしゃったとおりですから、今だれをというような、そういうことを聞いているわけではないのですが、政府は法案の提案者として、この審議委員というのはどういう要件を満たす人、また、要件という中にはどういう経験とか知識を持っているどういう人かという、法律の提案者として審議委員の要件というのはどんなものを考えているか、それは具体的な話じゃないですから、やはりお答えいただかなければいけないと思います。
  270. 山口公生

    ○山口政府委員 最終的には国会の御同意をいただきますので、国民を代表していらっしゃる国会でよしとおっしゃる方だということに尽きるわけでございますけれども、広い範囲で人選をしていただく。ただ、特定の利害が余りある人というのはいかがなものかという感じはいたします。だから、そういう意味では、両院で御同意が得られるような、国民に納得をいただけるような人というものを内閣で選んでいただきたいなというふうに思っております。
  271. 北脇保之

    ○北脇委員 今の答弁もよくわからなかったのですが。  それから、審査委員会については全員一致で決定をするということになっているのですが、これは、緊急の事態というときに全員一致を求めるということは非常に機動性を欠くということもありましょうし、全員一致の結論が常に一番いい結論かというとそうではないということは、いろいろな意思決定の学問でも言われているところだと思います。  特に問題なのは、全員一致ということになると、やはり結局は根回しということがどうしたって出てくるんじゃないかというところが心配なんです。とにかく結論を出すために、事務方がやはり委員のところに事前にこういうことですからということをあらかじめ説明をして誘導していく、そうしないとなかなか全員一致にならないというのが懸念される。そこでまた審査委員会というものの形骸化が心配されると思うのです。  その点について、なぜ全員一致ということにしているのか、そして今私が申し上げた、実際には非常に事務方主導になるのではないか、この点をどうやって防いでいけるのか、その点についてお答えをいただきたいと思います。
  272. 山口公生

    ○山口政府委員 確かに、先生おっしゃいますように、全員一致という方法もあるし、多数決という方法もあろうかと思います。しかし、事柄が大変重要で、国民の皆様にも御納得いただけるということが必須の要件でございますので、事柄の性質上、例えば優先株などの引き受けを行うか否かというような大事な判断のときには、あるいは審査基準をつくる、あるいはそれを変更するというような重要な場合には、全員一致で議決を行う方がいいのではないかというふうに思うわけでございます。そうした形でもって、やはり国民の皆様に広く御理解いただけるような運用をする。  それから、事務方がいろいろなことを行ってというのは一まあそういうふうな見方をされること自体がもう全く信用されないということでもありますので、そういうことのないように運営をしていく必要があるというふうに思うわけでございます。
  273. 北脇保之

    ○北脇委員 ただいまの一般金融機関に対する資本注入のことについては、今いろいろ申し上げたように、法律の条文に書かれていること、それと実際の運用ということについて乖離が生じるのではないか、非常に大きな疑念があります。ですから、今の答弁で言われたことをそれで間違いなく運用されるかどうか、それは今後も、この法案の行方にもかかわることではございますが、それをしっかりと見守っていかなければいけないことだというふうに思います。  それから次に、今度の対策の財源のことをお聞きしたいのですが、三十兆円ということで、その根拠、この委員会でもたびたび質問がありますが、金融危機管理勘定の方の、そちらの十三兆円について、もう一度、十三兆円という金額を用意するという根拠を、簡潔で結構でございますから御説明いただきたいと思います。
  274. 山口公生

    ○山口政府委員 十兆プラス三兆、十三兆円の資本注入の用意をするということによりまして、いざとなった場合には自己資本比率として欧米の主要国の金融機関に遜色のないくらいまでは持っていけるという安心感を与えるためでございます。  何も、単に自己資本比率を上げるためだけにこれはもちろん使うわけではありません。そういう用意があるということで、まず三月期末を心配している、心配して過剰に防衛的になっている金融機関に、いざとなったときの準備はあるんだぞということで、場合によっては資本注入するということで、過剰な、経済に悪い影響を及ぼすような行動をしないように環境整備をしてあげる、こういうことに必要かつ十分な用意だというふうに思っているわけでございます。
  275. 北脇保之

    ○北脇委員 公的資金ということで、場合によっては国民の税負担ということになりかねない。その金額としての十三兆円ということですから、そういう大ざっぱな、安心できる金額としてというようなことでは、これはもう説明にはならないと思うのですね。やはり数字を、十三兆円ということを置く以上は、その根拠となることを言っていただかないとその数字の説明にはならないと思うのです。
  276. 山口公生

    ○山口政府委員 簡単にという御指摘でございましたので少しはしょって申し上げましたが、仮の計算をしますと、主要十九行、まあここに入れるということを前提にして言っているわけではありません、これが今大体平均約九%という自己資本比率になっておりますが、この半数の銀行を優先株の引き受けに充てるとしますと、機械計算しますと、二%ぐらいになるわけです。そうすると、欧米主要国の上位行と遜色ない水準になる。これぐらいの規模、これが十兆円を使って購入した場合でございまして、三兆円は、ロスが生じた場合のロスの穴埋めにも充てられますし、また、ファイナンスにも使えるわけでございますけれども、こうした水準のものというものをめどに置いておきますれば、そういった危機の対応にも十分対応が可能であるというふうに思う次第でございます。
  277. 北脇保之

    ○北脇委員 先ほどの資本注入のやり方の説明としては、全部網をかけてやるというようなことではなくて、もちろん個別の金融機関からの申請に基づいてやるんだということでございましたから、そうすると、十九の銀行の半数程度というようなことを想定するというのはいかがなんでしょうか。そこにも何か説明があり得るのか教えていただきたいと思います。
  278. 山口公生

    ○山口政府委員 あくまでそれは仮定の計算でございまして、特定の銀行あるいは特定の銀行の数というのをイメージしたものではありません。どれくらいのイメージを持った数字かということを申し上げているわけでございます。
  279. 北脇保之

    ○北脇委員 それから、交付国債の方の使い道ですけれども、三兆円分で基金をつくるということになっていますが、その基金の使い道としては、法律によれば、整理回収銀行に対する貸し付けとか整理回収銀行損失補てん、それから金融危機管理勘定を廃止したときの補てん、それに使えるというふうに法律には書いてあります。  それは、全項並行的といいますか、並べて書いてあるのですね。私の理解が間違いなければそういうことだと思うのです。そうだとすると、交付国債による三兆円の基金を整理回収銀行損失補てんとか、もしくは預金保険機構の中のこの勘定の損失補てんに使うというのではなくて、条文上からすれば、いきなり整理回収銀行に対する貸し付けに使って、そこで整理回収銀行が優先株を買うというふうに使うこともあり得るように読めるのですが、その理解で間違いないでしょうか。
  280. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  三兆円の性格としては、ロス埋めに使えることと同時に、それをファイナンスにも使えるということでございます。政府保証の十兆円は、ファイナンスに使うという前提でございます。
  281. 北脇保之

    ○北脇委員 そこのところが非常に複雑でよくわからないのですよね。  今言いましたように、交付国債もあり、それから十兆円といっても、それも預金保険機構が日銀や金融機関から借り入れる、それに対して政府保証をつけるというのもあれば、また債券発行をしてそれに政府保証をつけるという、言ってみれば三つの資金調達の手段が用意されていると思うのですが、なぜその三つを用意しているのか。そして、実際の資本注入を行うときの資金の使い方としてはどういう方針でその三つの手段を使い分けるのか。これがわからなくて、非常に複雑なので、そこのところを答えていただきたいと思います。
  282. 山口公生

    ○山口政府委員 金融危機管理勘定の方のお話としてお答え申し上げますと、国債の交付の方は、ロスの穴埋めとファイナンスと両方に使えます。それから、日銀等からの、これは金融機関も含まれますが、借り入ればファイナンスでございますし、それから債券の発行もファイナンスでございます。どちらか有利な方、あるいは期間の問題もありますし、預金保険機構の方で適切にその辺の運営を考えるということでございます。ファイナンスの手段は幾つか用意してあるということでございます。
  283. 北脇保之

    ○北脇委員 もうちょっと具体的に言うならば、十兆円分について、借り入れに対する政府保証と債券発行についての政府保証があるわけですから、もしそれが、借り入れにしても、それから債券についても償還ができなくなったというような場合には、政府保証がついている以上は政府が最終的に面倒を見るということですから、そういう前提で勘定を運用していって、最後、保証を発動せざるを得ないということならばやるというふうに考えれば、あえて交付国債を交付をして基金を設ける必要はないと思うんです。  それと、もう一つ言えば、我々の考え方、民友連の考え方としては、当然そこに金融機関の負担というものも考えるべきなんで、それは、保険料も含めて預金保険機構の今の勘定を緊急措置期間が終わった時点で整理をしていけばいいという考えもありますので、少なくとも交付国債を交付するという必要性、これはないと思うんですが、いかがでしょうか。
  284. 山口公生

    ○山口政府委員 お答え申し上げます。  さきの、昨年十一月のころの非常に不安な、心理、これは預金者方々もかなり、取りつけとまではいきませんが、不安感をお持ちになった、それからプロの世界のコール市場も大変に不安を持った、したがって金融機関自身も大変不安を持ったということで、非常に不安感が高まったという私どもは貴重な経験をしたわけでございます。  そのときに、やはりこういつた仕組みをつくったときに、いざとなったらきちっと対応をするという姿勢をまず示すということが大切だと思うわけであります。本来埋めるべきものを埋めないでずっと最後まで引きずって、後で何とかということよりは、その都度その都度きっちり対応をいたしますということで安心感を与えさせていただきたいということで、一言で言えば内外の信頼の確保のために国債を交付させていただいて、それでいつでも対応をいたしますという用意を明らかな形で示してある、こういうふうに御理解賜れば幸いでございます。
  285. 北脇保之

    ○北脇委員 じゃ、具体的にちょっとお尋ねしますが、もしこの法律が成立して、施行後、資本注入の申請があって、それが一千億なら一千億というようなことで申請があったときに、実際のその資金の調達は、今私が申し上げた交付国債、それから借り入れ、そして債券発行、この三つの中で、その一千億なら一千億ということを調達するのに具体的にはどういうことになるんでしょうか。もちろん預金保険機構が判断することだということはあるかもしれませんが、この法律を提案している政府として、どんな考え方、どんな方針をお持ちなのか、お伺いしたいと思います。
  286. 山口公生

    ○山口政府委員 これは、提案している私どもとしては、いろいろな手段を与えているということでございまして、預金保険機構がそこは判断をしていただく話だと思います。
  287. 北脇保之

    ○北脇委員 先ほどから日銀の理事にもおいでいただいておりますので、この点についてお聞きをしたいと思うんですが、全部で、もう一つの方の勘定等を含めると二十兆円について日銀等の借り入れがあって、それについて政府が保証する、こういうスキームになっているわけですが、二十兆円というと大変膨大な金額ですので、政府保証の借り入れに応じるということは、国債を日銀が引き受けているのと結果的には同じになるという指摘もあります。それが日銀の信認といいますか、そういうものの低下につながるんじゃないかという心配もあるわけですが、この点について日銀としてはどのようにお考えでしょうか。
  288. 本間忠世

    ○本間参考人 お答えをさせていただきたいと思います。   今回提出させていただいております二つの法案、この二法案におきましては、日本銀行等の貸し出しというものにつきまして幾つかの出方を予定されていると思います。  一つは、特例業務勘定におきまして特別保険料の収入が、これが上がりますまでの間のある種のつなぎの措置といたしまして、それまでの間に必要な金を特例業務勘定に対して貸し出しを行う。それから、特例業務勘定のもう一つ役割といたしまして、整理回収銀行不良債権を買う、その間のまた不良債権を買うためのファンディング、この買い取り資産のファンディング、このための出動というのがもう一つ予定されていると思います。それから、金融危機管理勘定の方につきましては、この金融危機管理勘定が優先株等の引き受けを行う、引き受けを行いますための資金のファンディング、これが必要になる。いろいろな役割貸し出しという形でもって予定されていると思います。  それで、日本銀行は、こうした貸し出しが、ただいまの御議論にございますように、幾らになるかということは、当然これは現時点で見通すことは困難でございますが、財務の健全性、いろいろな機会に日本銀行貸し出しの非常に大切な一つの要因、要素というふうに私どもが考えて申し上げさせていただいております財務の健全性ということにつきましては、この二つの勘定の借り入れにつきまして政府保証が付されることになっております。また、ただいま申し上げましたような意味での、買い取りました不良資産あるいは引き受けを行いました優先株等の処分におきまして、仮にそこにロスが生ずるというふうなことになった場合には、そこのところは交付国債の現金化によって補てんをされるというふうにこれがなされることになっておりますので、こうした貸し付けを実行することによりまして日本銀行の財務の健全性が損なわれるとか、あるいはそれに伴いまして円の価値が、信認が損なわれるとかいうふうなことにはならないというふうに私どもは考えております。  国債の引き受けと同じような効果を持つのではないか、こういう御指摘をただいまちょうだいしましたが、基本的には、ただいま申しましたように、特例業務勘定におきましては特別保険料や預金保険機構の買い取り資産の処分のかわり金等、それから金融危機管理勘定におきましては優先株等の処分のかわり金、それをそれぞれ返済財源ということとして行われるものでございますので、国債の引き受けのように政府に対して直接信用供与を行うというものではないというふうに理解をいたしております。
  289. 北脇保之

    ○北脇委員 時間が参りましたので、今回の質問で申し上げたかったことを最後に一言だけ申し上げて終わりたいと思います。  と申しますのは、今度の金融二法、特に一般金融機関に対する資本注入の部分については、同僚議員、いろいろ申し上げている問題点もありますが、それに加えて、法律の書きぶりと、それと実際の運用というもの、いろいろ言われていることとの間に開きがあって、そこのところに余りよくない法律をつくるという部分があると思いますので、そのことを申し上げて質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  290. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、上田清司君。
  291. 上田清司

    ○上田(清)委員 大変御苦労さまです。  それじゃ、山日銀行局長、御就任以来どのくらい時間がたちましたか、何年何カ月とか。
  292. 山口公生

    ○山口政府委員 一昨年の七月二十何日だったと思いますから、一年半強でございましょうか、それぐらい……。
  293. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  松永大臣、私も埼玉県選出の国会議員として、日ごろから尊敬する松永先生が正義感と誠実さを持って金融、大蔵行政に立ち向かわれることを心から御期待申し上げているということをまず申し上げたいと思います。  それで、山口局長銀行局でというよりも大蔵省で、あなたが、この一年で結構でございますけれども、この一年で銀行局長の一ごめんなさい、質問の通告はこれはしておりませんが、いろいろな話をしているうちに思いつきがどんどん出てきますので。どのくらい通達を出されたか御記憶にございますか、一年間で、あなたのお名前で。いや、当然印鑑を押されているんでしょう。
  294. 山口公生

    ○山口政府委員 ちょっと正確には覚えておりませんが、ある程度の数はあったと思います。
  295. 上田清司

    ○上田(清)委員 別にこれでどうこう言うつもりはありませんので、ぜひ、どのぐらいか、感覚的に言っていただきたいと思います。
  296. 山口公生

    ○山口政府委員 ちょっと正確には申し上げられません。申しわけございません。
  297. 上田清司

    ○上田(清)委員 それは、少なくて覚えていないのか、それとも多くて覚えていないのか。
  298. 山口公生

    ○山口政府委員 数はだんだん減ってきているんだろうとは思っておりますけれども、ちょっと、余り、こうした公式の場でございますので、いいかげんな答弁はできないという気持ちでおります。
  299. 上田清司

    ○上田(清)委員 別にいいかげんな答弁を求めているわけじゃありませんが、ちなみに、五年間の銀行局長の通達を見ましたら、約七十ページございました。それで、一ページに四こまから八こまぐらい出ていまして、平均で六としても四百二十ぐらいあります。実は、大蔵省全体で、この五年間に通達の目次だけでこれだけありまして、約二百ページありますので、これは千二百ぐらいあるのかな。そうすると、一年間に二百四十ぐらいあるかな。そうすると、銀行局だけで一年間にどのぐらいあるかなと思うと、やっぱり七十ぐらいあるんじゃないかな。特に、保険とか、生保関係の、いわゆる保険業法の改正絡みの関係だけでも約三十四本、一年間で八本ありました。信農連、農協関係のさまざまな改正関係でも、五年間で四十五本、一年では平均的に約十一本当ている。  むちゃくちゃ通達が多いので――実は、このことをひらめいたのは、一週間前にある地銀の頭取と二時間ほどお話をしまして、とにかく、なぜMOF担かという話も出まして、こういう通達行政が多いので、裁量行政が多いので、どういう意味合いをこれから持ってくるのかとか、あるいはこれからどういう通達が出てくるのかとか、そういうことを先走ってやっておかないとなかなかやりづらいんだ、そういうところに原因があるんですというようなお話を聞いたもので、では、通達行政はどのぐらいあるかということをちょっと確認をして、今局長が言われましたように、大分減ってきたと。大分減ってきたと言うので、大変なものだなと。  私の率直な感想でありますので、この点について、大蔵大臣、このように大変多い数字の通達行政が、ある銀行の頭取に言わせしめれば、MOF担もせざるを得ないようなところもあるんだというようなお話を承りまして、なるほどと思っだような次第ですが、大臣の率直な感想はいかがでしょうか。
  300. 松永光

    ○松永国務大臣 お答え申し上げます。  民間の業界の方で、それは通達の多さに苦労するぐらいのことがあっては、私はやはりいかぬと思いますね。それは、いわゆる通達行政と言われますし、あるいは裁量行政と言われかねない問題でありますから。  だから、基本的には、まず透明性のある行政にしなきやなりませんし、それからルールを明確にして、そして、事前の指導じゃなくして事後チェック型の行政、それが新しい形の行政でなきやならぬし、そっちの方向に向かうべく最大限努力していくのが今の行政改革を含めた新しい行政のあり方だろう、こう思います。
  301. 上田清司

    ○上田(清)委員 山日銀行局長はよく御存じだと思いますが、たまたま私は東海銀行の裁判の記録とかを見て、判決の中に、大蔵省が隠ぺい工作をしていたとはっきり判決文に書いてあったんですね。そんなところがら、金融行政のあり方について何度か大蔵委員会、決算委員会で御質問させていただいた経緯がありますが、銀行検査で、年間三百行ぐらいありますが、法令違反の告発というのはなされたことがございますか。通告なしですので、よく記憶になかったら、なかったでも結構です。
  302. 山口公生

    ○山口政府委員 第一勧銀の検査忌避、あれは告発をさせていただきました。
  303. 上田清司

    ○上田(清)委員 そうですね。九七年七月、その事件がありましたが、ほとんど告発がなされていないということは、逆に言えば、常に健全性に関してよかったという判断がなされてきたのかな、その都度ですね。過去において告発するような事件というのはほとんどなかった、一件あったのみと。  そういう形になると、銀行局、検査部で検査された中身では、常にまあまあの健全性であったというふうな考え方でよろしいんでしょうか。
  304. 山口公生

    ○山口政府委員 先生は、告発、刑事事件のことを申されましたけれども、最近、私が就任じましてからは、いろいろな命令もできるだけ文書できちっと出す。二十六条の命令、二十七条の命令、これはそういう透明な形でやるように努めてはおりますが、先生の目からごらんになりますとまだまだ足りないというような御指摘かと思いますけれども、これからの行政としては事前指導型から事後チェック型ということでやってまいりたいというふうに思っておる次第でございます。
  305. 上田清司

    ○上田(清)委員 今申し上げましたのは、要するに、告発をするほどのことはなかったということの形になって検査がその都度終わっていながら、結構銀行破綻している。ということは、健全性のチェックというのは働かないのが銀行の検査行政かなと私は思わざるを得ないということを、きちっと検査ができていれば是正措置もとれるでしょうし、さまざまな指導監督もできるでしょうから、破綻しない。破綻するということは、よく検査ができないということではないかということですので、検査というのはそもそも限界があるんじゃないかということを私はずっと申し上げておりましたので、このことも含めて、改めて考えていただきたい。  特に、私は、昨年の六月十七日の大蔵委員会で三塚大蔵大臣と中川検査部長に、どうですか、ちゃんと検査できるんでしょうかと、あるいはそういうことを申し上げた経緯もございましたし、それから、MOF担の問題にも触れさせていただきましたけれども、こういうふうに言っておられますね。「接待も含めて、そうした情報を提供することをなされたことはございませんか。接待を受けているとか、そういう銀行担当者から。」ありませんかということを私がお伺いしましたら、中川政府委員は、今のことに関しては、「平素から検査官の綱紀粛正につきましては厳正に対処しているところでございますし、そういうことはあってはならないことと思います。私といたしましても、そういうことはないだろう、ないというふうに信じております。」と、ちょっと最後の方が怪しくなっていましたけれども。それで、大蔵大臣もまた、そういうニュアンスのことを言われましたけれども、さまざまな事件が起きてきている。  もう御承知のとおり、五十四年に、松下官房長時代に、「綱紀の厳正な保持について」で接待を受けちゃいかぬというようなことも言われたり、八年の十二月にも三塚大蔵大臣の名前で出ておりますし、それでもたくさんお話が出てきているというこの原因について、なぜそうなのかということについて、これは、あとの質疑の関係もございまして、きょうはこの部分はこれで終わりますけれども、このように過去において綱紀粛正のための文書が配付されたり、それから、大臣もそれはないと申されながらもしばしば起きてきているということに関して、率直に大臣としてどのように思っておられるかをまず伺っておきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。     〔委員長退席、井奥委員長代理着席〕
  306. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  国会の委員会で、ないと言っておりながら実際はあったということは、これはそう軽く見てはいかぬと思います。ある意味では、本当のことを言っていないような感じがいたします。また、部長さんだから知らなかったということはないだろうと思いますね。  その意味では、やはり、指導したのかどうか知りませんが、そういったことが日常茶飯事に行われておって、麻癒しておったのではなかろうかという感じすらいたします。そこらをきちっと直していくことから公務員としての倫理というものが立ち直ってくるのではなかろうか、こういうふうに私は思います。
  307. 上田清司

    ○上田(清)委員 大臣、ありがとうございます。  本当に、委員会できちっとした答弁を金融検査部長がなされている、それから三塚大蔵大臣も、そういうことはない、万全を期している、こういうお話をされた後にしばしばそういうことが起こっているということは、これはやはり大変なことでありまして、山日銀行局長もこの点に関して、官房長、きょうおられませんので、特に金融検査関係も多かったわけですから、ぜひ、どのように受けとめておられるか、委員会での発言、重みというものについてもう一度確認をさせていただきたいと思いますので、この委員会での大臣の答弁あるいは政府委員としての答弁についてどのように受けとめておられるかを確認させてください。
  308. 山口公生

    ○山口政府委員 国会での御答弁は私ども責任を持って御答弁申し上げるべきことでありますので、今御指摘のようなことがないように最大限努めなければならないというふうに自戒をいたしております。
  309. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、一の資料を御配付ください。  私はかねてから、昨年の十二月の大蔵委員会でも銀行リストラ状況とかさまざまな問題点について御指摘をさせていただきましたけれども、今回、三十兆に上る政府公的資金、いわば国民の税金を投入して金融システムを守る、あるいは預金者を保護する、あるいは緊急事態における金融システムを守るために今回のスキームを提案されているわけでございますが、極めて問題点が多いということは既に同僚議員指摘されております。  まず、与党の議員の方々にもぜひ御理解を賜りたいのですが、大変、銀行リストラができていないことや、あるいはもうけ過ぎの問題点や、さまざまな責任の追及が十分なされていないことについて、私は、果たしてそこまでやっていく必要があるのかどうかということについて改めて申し上げたいと思います。  例えば役員の報酬について、五年の三月期で、一人当たり、都市銀行でございますが、三千六十一万、年収でございます。八年の三月期、一番新しい資料ですので恐縮ですけれども、二千九百七十万、約一%リストラされておられます。カットされております。  大臣の感想として、都市銀行だけを今取り上げましたけれども、一%カットされてリストラだというふうな感覚になられますかどうか、お尋ねしたいと思います。
  310. 松永光

    ○松永国務大臣 銀行リストラ、甘いという指摘があるということ、私も承知しておりますが、今委員指摘のように、公的資金を入れていこうというときでありますから、今までのように甘い考え方ではなくて、本当に国民が理解をしてくれるような思い切ったリストラをするのが当然であるというふうに思います。  役員の報酬、これは一%程度の減額で果たしてリストラと言えるか、ちょっと言いにくいと思います、言えないと思います。ただ、賞与については、七年、八年は辞退しているというか払っていないという点は、これは少しやっておられるな、こう思うわけでありますが、特に問題行として指摘されたところは、厳しくリストラをやってもらわぬことには国民は理解しないだろう、こういうふうに思います。  ただ、基本的には、役員の報酬等、これはそれぞれの会社で決めることでありますので、命令したりすることはできませんけれども、いろいろな方法でリストラを真剣に行うように促していきたいというふうに思います。
  311. 上田清司

    ○上田(清)委員 大臣、ありがとうございます。  同じように、退職金について、もちろん少しずつ減額をされておるのですが、長期信用銀行、三行ございますが、この中でも、実は、昨年の十二月にも御指摘しましたけれども、私が提出しております資料でございますけれども、五年の三月期に、三銀行ですね、長期信用銀行は、二十人退職数がおられまして、退職金額が全部で四十五億。一人当たり二億二千万になっておるわけですが、このときに、あくまで推定ですが、二十五億退職金を取った元頭取がおられます。そういう中身がずっと続いている。  ちょっと信じがたいことが現実に行われているということも現にあるということを、私は与党の議員の皆様方も含めまして、やはり政府委員の皆様方も、そういうことがなされているということについて、何ら、もちろん、民間の給与でありますから何にも言えない、しかし、通達行政がもしあるとすれば、そういうことこそまさしくしっかりやるべきものではないかなというふうに思いますが、先ほど大臣の感想を私はいただきましたから、山日銀行局長、私は、三塚大蔵大臣に以前、こういう話がありますので、場合によっては注意してくださいよというお話をしたことがございますね。ぜひ、ちょっと、政府委員の現在おられるトップとして、この問題についてどんなふうに感想を持っておられるか、銀行局の最高責任者としての御見解を聞いてみたいと思いますので、よろしくお願いします。
  312. 山口公生

    ○山口政府委員 いろいろ、リストラについての厳しい国民の声あるいは国会での御議論というのを十分私も聞いております。  昨年の十月に、私の事務連絡という形で、こういう厳しい声があるということを伝えました。一部の新聞では、過剰介入ではないかとか、役所がそこまでまだやるのかという、やや非難めいた記事も出ました。しかし、国民が何を求めているのかということをやはりしっかりとお伝えするのも私どもの仕事だろうと思いますし、また、これから、公的な資金という問題を御議論いただいているわけでございますので、そこはぜひ私どもの事務連絡の趣旨を徹底していっていただきたいと切に願っており、また、そのような対応を促していきたいというふうに思っている次第でございます。
  313. 上田清司

    ○上田(清)委員 二番と三番の資料を皆様にお渡ししてください。  私は、役員の報酬について、わずか一%しかカットしなかったというところは、現実の問題として、銀行は平均的に言えばすごくもうかっている、大変な利益を出しているということを指摘せざるを得ませんし、そういう空前の利益の中である意味でのリストラが進んでいない、そういう部分もあるのだということを指摘せざるを得ないのが二の資料でございます。  これは、御承知のとおり、全国金融機関の七年から九年までの半期ごとの業務純益と土地、有価証券の含み益を含めた資料を全国銀行協会の連合会の資料の中でつくらせていただきました。  これを見てわかりますように、大変な含み益並びに業務純益を上げている、こういう実態があるいはこのリストラを避けさせているのかな。また、こういう実態があったから不良債権の償却も徐々に進んできたんだという言い方もできるかと思いますが、私は、やはりこの問題について、どんなふうに業務純益を考えていけばいいかということについても改めてしっかりと確認しなきやならない。  特にこの数年間は、御承知のとおり、百万円預けて二千五百円か二千円しか利息がないという時代でございます。雨の日にタクシーに乗っていけば損をする。したがって、金庫がたくさん売れる。こういう事態になっておりまして、とりわけ、預金と貸出金の利息の平均利率を追っかけていきますと、例えば九一年度に預金利息の合計は三十二兆七千億からございます。そして、九六年度は約四分の一の八兆円になっております。こういう、四分の一に預金が減っても、現実に貸出金利息合計と預金利息合計との差を引き算していけば、九一年当時の三十二兆円と九六年の八兆円当時と比較して、減の九六年の八兆円のときの方が実はこの合計差は大きくなるというそういう数字が出ております。  これほど数字の上では銀行はもうかる状態になっている。このもうかる状態の中で一体何が起こってきているのかということについて、銀行局長、これは不良債権の償却に相当使われたというふうに思っておりますが、この九一年から九七年まで、あるいは六年までで、この中では九六年までですが、多分最新の数字を持っておられると思いますけれども、どの程度銀行不良債権をこの業務純益の中から処理をされてきたのか、雑駁な数字でも結構でございますので、御教示いただきたいと思います。
  314. 山口公生

    ○山口政府委員 全国銀行債権償却特別勘定の純繰入額を私今見ておりますけれども、四年度で一兆一千六百九十九、ちょっとまとめて申し上げますと、五年度で一兆七千二百三十二、六年度で二兆五百八十三、七年度で七兆三千五十六、八年度が三兆四千六百七十五という純繰入額となってございます。  今突然資料を見ておりますので、本当に正確にこの数字かどうかちょっと留保させていただきますが、一応そういう数字がございます。.
  315. 上田清司

    ○上田(清)委員 結構でございます。  私が確認した数字では約二十七兆ぐらい処理しているんではなかろうかというふうに思っており ますが、これはまた金曜日に私予定させていただいておりますので、改めて確認の上議論させていただきたいというふうに思っています。  それで、大手十九行の内部留保は九四年三月で一体何兆円残っておられますか。これは質問というか、資料通告をお願いしているので数字を把握されておられると思いますが、もしおられていなければ私が申し上げますけれども。――はい。それでは、十一兆六千三百七十五億という、これだけ内部留保があるんですが、大蔵大臣、これだけあれば少し吐き出してもいいんじゃないかと私は思うんです。  例えば保険料の料率についても、たえられないなんというような話がよく出てくるんですが、アメリカの約三分の一ぐらいの保険料利率なんですね。私ども同僚議員であります岩國先生などは二倍ぐらいに引き上げていいんじゃないかというようなことも言っておられますが、預金保険機構の保険料率を、これだけ、十一兆からの内部留保はある、毎年最低でも四兆からの業務純益がある、多いときには八兆、九兆円になっている。そういう中で、なぜ預金保険機構の保険料利率が、私には高いというのが理解できないんです。  これは大臣も、これは大事なことでございますから、銀行の不始末は銀行でするというのが本来の筋ですから、そういう観点からすると、これだけ業務利益を上げておいて、内部留保も十一兆円を超えておきながら、十九行ですけれども、この十一兆六千三百七十五億は。にもかかわらず、自分たちの不始末を国民の税金にお願いしょうという話はいささか、私はちょっと疑問のあるところでございますので、松永大蔵大臣にお尋ねしますけれども、最小限度、預金保険機構の預金保険利率が必ずしも高いという話にならないんじゃないかということを、私は十分たえられるんじゃないか。この点に関しては共産党的意見になって恐縮ですけれども、ぜひ大臣の御感想を聞きたいと思います。申しわけないです。
  316. 松永光

    ○松永国務大臣 預金保険料の利率の話でございますが、私は考えなきゃならぬのは、やはり同率でなければならぬわけですね、預金保険料率は。そうすると、力のない銀行が大きな負担になって、特に中小金融機関がたえられるだろうかという問題が一つ。それからもう一つは、アメリカでは、聞くところによりますというと、優良銀行は、心配がない銀行はゼロになっている、そういう制度もあるやに聞いています。そこらのところを兼ね合わせて判断しなきやならぬ問題だろう。  いずれにしろ、これは何年でしたか、見直しのときがあるわけでありまして、そのときまでの間にいろんなことを勘案しながら対応していくべき事柄であろう、こういうふうに思います。
  317. 上田清司

    ○上田(清)委員 大臣の御答弁は御答弁としまして、山日銀行局長、同じ質問です。
  318. 山口公生

    ○山口政府委員 大臣が申し上げたとおり、中小の金融機関、業態を言いますとちょっといろいろ語弊がありますので中小金融機関という形で言わせていただきますが、これが負担率としてはもう九%をかなり上回っております。だから、もし個別に見ますと相当な負担になっておるということ、これもちょっと考慮しなきゃいけないというのがございます。それから国際的な問題も大臣から申し上げましたけれども。しかし、十年度中には見直しをするというふうにしておりますので、そういったことも勘案しながらいろいろ検討をさせていただきたいと思っております。  先生がおっしゃいますように、金融機関の問題は金融機関の中で解決というのも一つの理屈でございますが、アメリカ等を見ますともうちょっとそれが進みまして、いい銀行、つまり破綻しそうにない銀行が何で破綻預金者まで見なきゃいけないのかという、今度は金融機関の中でのまた差別化といいましょうか、そういった現象が起きているわけです。したがって、今大臣が申し上げたように、優良というところはゼロで、非常によくないというところは非常に高くなっているという状況であります。だから、どこの範囲までが身内なのか御親戚なのかというような話になってきますとなかなか議論が難しくなるのでございますけれども、今私どもが抱えております預金保険法の考え方はみんな一応一律という考え方がございますので、そういう中小金融機関等の問題がございますという御指摘を申し上げたわけでございます。
  319. 上田清司

    ○上田(清)委員 例えば、資金量あるいは銀行の内容について、余力のあるところに少し余分に負担させるとか、そういう考え方に立つのか、あるいは、自動車の保険みたいによく事故を起こす人ほど高い保険料を払う、こういう考え方と、二通りあると思うのですね。正確に言えば三つあるかもしれません、一律でいくという。一律でいって引き上げを図ると小さいところは困るという議論をちょっとなされた嫌いがあるかと思いますが、私は、やはりこの問題は案外本質に迫る問題ではなかろうかというふうに思っておりますが、これは特に銀行局でかなり深い研究というのはなされたことはあるのでしょうか。
  320. 山口公生

    ○山口政府委員 預金保険の制度自体の問題というのは非常に奥の深いマターを含んでおりまして、これは今私どもでもいろいろ研究をして、また、学識経験者の方々の御意見も今聞いておる最中でございます。  何を保護すべきなのか、どこまで保護すべきなのか、だれが負担すべきなのかという問題は、非常にこれは今後の金融行政根幹にもかかわってまいります。そのときそのときの情勢に左右される面もありますけれども、基本的な考え方というものをやはりきちっと構築した上で、それで現在に一番適応、あるいは対応するのにはどういうやり方がいいのかというような議論をこれからも進めていく必要があるだろうなというふうに思っておりますので、先生がおっしゃいますように、アプリオリにこうあるべきだというふうなことを私は思っているわけではないことをぜひ御理解いただきたい、いろいろ考えるべきことは多いというふうに、御指摘のとおりだと思います。
  321. 上田清司

    ○上田(清)委員 これからの金融行政のあり方については、既に提言もなされて、それにあわせて、外為法の改正を初めさまざまな制度の改正、また運用の問題、議論もしてまいりましたけれども、これはもう先延ばしできない議論だというふうに私は思っております。  もう既に、ことしの四月から新しいフロントランナーとしてのビッグバンの一環が始まるわけでありますから、これは銀行がどういう形できちっと国際社会の中でうまく機能していくのかどうか、そういうことも考えれば、今の銀行局長の答弁では、問題先送りにしかすぎない、こう言わざるを得ません。一律がだめならどういう形で負担させるのか、また、どこに本当の合理性があるのか。預金者保護を中心とした物の考え方、あるいは国際的な競争の中で打ちかつ条件というのは一体どうなのかとか、何かポイントを絞って、どれもこれもというわけにはなかなかいかないと思います。そういう議論をずっとしておりますから、結果的にいつまでたっても不良債権は片づかない、おまけに公的資金の導入をせざるを得なくなってきている、こういう状況に追い込まれているわけです。ずっと先送りをしております。  私は、これは早急に実は結論づけなくちゃいけない大変な問題だと思います。これから、場合によっては、既に法案の中にも出ておりますように、金融不安につながるような大変な事態が予測されるようなときに云々という条文までわざわざ書いてありますけれども、そういう事態のときにこの預金保険機構がどういう役割を果たすのかということについてきちっとした議論をやはり出していただかなければ、今みたいな答弁では、またこれはわけのわからない形かと言うしか私は申し上げるすべがありません。  ぜひ大蔵大臣におかれましては、これは早急に結論を出す議論ではないかということだと私は思いますので、できましたらこの審議期間中にでも一つ方向性というものを出していただきたいというふうにお願いいたします。
  322. 山口公生

    ○山口政府委員 大臣の御答弁の前に一つお話しさせていただきたいと思うのでございますが、今、預金保険の役割は大変重要でございます。おしかりを受けるかもしれませんが、今、預金保険制度を例の金融三法で国会でお認めいただきました、この仕組みがあることによって本当に我が国の今の金融の秩序は、あるいは信用秩序は保たれております。日本経済全体がある意味では保たれていると言っても言い過ぎではないと私は思います。  そういった形で、預金保険というものにかなりある意味では期待をかけて、またその運用に期待をしているという面が非常に強いわけでございますが、こういう我が国の現状からしまして、当面、二〇〇一年の三月まではこういった形でしっかりと日本経済を預金保険という仕組みでもって支えるということが今は非常に大切なのではないかというふうに思っておるわけでございます。  先生のそのあるべき姿の御議論は当然大切なことだと思いますけれども、二〇〇一年三月までの姿としては、ぜひこれを、今やっております例の三法の考え方をお認めいただきたいというふうに思うわけでございます。
  323. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  保険というならば、例えば任意保険の場合には、事故発生可能性の高いところが保険料高くて、低いところが保険料安いという仕組みが、保険、特に任意保険の仕組みだろうと、私それの専門家じゃありませんが、若いときに習った保険の理論からいけば。強制保険ならば一律、原則、こういうものだろうと思うのです。それで、大きいところ、それから強いところがら高く、小さいの、弱いのからは低くというのは、どうも税の理論のような感じがしてくるわけでありまして、なかなかそこのところは難しいな、こう思います。  いずれにせよ、勉強の対象にさせていただきたい、こういうふうに思います。
  324. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  山日銀行局長に申し上げますが、なぜこの議論をしたかといいますと、もう御承知のとおり、マイナスになっていますよね、預金保険機構の残額が。想像を絶する以上にもう使ってしまっているわけですね。だからこの議論を申し上げておりますことを改めて一あのときには、あの改正のときには、この程度でよかろうということをみんなが、みんながというか多数で改正が通ったわけですけれども、しかし、それを超える、現実にもうお金を使ってしまっている、マイナスになっている、この状況があるということを踏まえて私は議論をしているつもりですので、ちょっとその辺が物足りなかったなということを申し添えておきます。  それでは、三というナンバーを打っておりますが、「貸し渋りの中、サラ金に貸し出す大手銀行のモラルを問う」とあえてタイトルをつけておりますけれども銀行の貸し渋りの現実についていろいろなところで議論が出ておりますが、銀行が貸してくれないものでついサラ金に、あるいは町金融にというスタイルが、実は私の仲間にもおりまして、その後始末で十二月の暮れに苦労した経験も私ございます。  そういう中で、これも民間銀行金融機関がそれぞれ勝手に借りたり出したりするのは何の規制もないのかもしれませんが、ただ、もし、大手銀行がこういう現況の中でサラ金の融資をどんどんふやしていくということが、結果として個人の破産やあるいは企業の倒産ということにつながっているという仕組みができておるとすれば、これは決して見逃すわけにはいかない議論だというふうに私は考えておりますので、あえて一石を投ずる意味で、大手銀行のサラ金への融資の金額が極めて最近ふえてきている、都市銀行でいえば前年比で三七・四%、信託銀行でいえば前年比二四・一%という形で。  私の資料のこの九三年というのはどこか間違っているんじゃなかろうかと思います。申しわけありません、ちょっとどこかでワープロの打ち間違いか何かやっていると思いますが、九八年だと私は思っております。  こういう状況があるということについて、例えば銀行局で、これはサラ金は通産省の管轄だとお逃げになることも簡単ですが、大銀行がサラ金の融資を高めているという現実について、その与える影響ということについて、何らかの形で内部で検討されたことがあるかどうか、このことだけお尋ねしたいと思います。
  325. 山口公生

    ○山口政府委員 先生がお示しいただきました数字でございますが、私が今たまたま手持ちで持っております数字だと、八年十二月末あるいは九年十月末というのは前年に比べると減ってきておりまして、総体的に見ますと、一番、国内銀行の貸金業等への貸し出し、いわゆるノンバンク向け融資がピークだったのは、平成五年の十二月末に私の資料ではなってございます。それからはだんだん減っておりまして、最近では少し減りぎみだという数字になっております。  しかし、先生の御指摘は、そういうこととは別に、こういつた――ただ、私が申し上げたのはノンバンク全体でございますから、先生はサラ金大手十一社と限られておりますから、それは違う資料を私は申し上げているかもしれませんが、そういう前提で申し上げますと、そういったサラ金業界を通じていろいろ、いっかも先生の御指摘があったと思いますが、自己破産が多いとかいう問題があったということも社会問題化した経緯もあります。ただ、銀行がそういったところに貸し出すことがいけないということではないと思いますけれども、ひいてはそういうことの現象の裏づけみたいなことになるということがもし明らかでありますと、それは好ましいことではないというふうに思うわけでございます。  ただ、一つだけ御理解賜りたいのは、サラ金、サラ金という表現で貸金業自体を世上言われますけれども、いろいろな見方をされる方はありますが、しっかりした企業もございますので、その辺はぜひ御理解を賜りたいというふうに思います。
  326. 上田清司

    ○上田(清)委員 言葉に穏当に欠ける部分があったことに関しては、訂正させていただいても結構でございます。  それでは、四番と五番の資料を配っていただけますか。  かねてから私は申し上げておりますが、住専国会のときも、経営者の責任追及あるいは悪質な借り手の責任追及、大臣によっては、地獄の底まで追いかけるなどというような非常に格好いいせりふもあったのですけれども、本当に地獄の底まで追いかけたのかどうか、大変疑問がございます。  というのも、これから三十兆からのお金を費やしながら金融システム全体を守るための法案を提出されて、やはり破綻銀行に関してさまざまな形での経営者の責任をきちっと追及するというようなことをおっしゃっておりますが、過去にさかのぼってどんなことが行われてきたかということを見ると、この責任追及が甘いのではないかと私は申し上げざるを得ないわけであります。経営者の民事、刑事責任の追及が余りにもなされていない、とてもじゃないけれども、こんな責任追及で果たしてこれから国民の税金を使うことが可能なのかどうかと私は思います。  銀行関係だけで申し上げますが、近年破綻いたしました兵庫銀行、太平洋銀行、阪和銀行、京都共栄銀行、あるいは北海道拓殖銀行、徳陽シティ銀行もそうでありますけれども、役員の刑事、民事の責任追及について確認をしましたら、兵庫銀行、刑事、民事ともになし、太平洋銀行、刑事、民事ともになし、阪和銀行、刑事責任が出ておりますが、民事なし、京都共栄銀行、刑事、民事ともになし。これは一体いかなることか。  なぜならば、その下の方の段に資料として申し上げておりますが、兵庫銀行などは、破綻前の公表不良債権の金額では六百九億だったのが、破綻後に確定したので一兆五千億。倍率で二十四倍になっている。こういうのは普通は虚偽報告とか粉飾決算と言うのですね。したがって、経営責任追及されてもしかるべきなのにもかかわらず、なぜ追及されないのか。うがった見方をすれば、元銀行局長が頭取だったからだ、こういう議論まであるぐらいです。もちろん、北海道拓殖銀行、徳陽シティ銀行はまだ時間が短いので、今後刑事、民事の責任追及がなされるのかもしれませんが、どうもそういう動きが余り見えない。  ちなみに、住専七社のことも申し上げます。まだ一社しか経営者の責任の追及はされていないのです。日本ハウジングローン以外はまだ何ら責任追及されていないのですよ。一社当たり大体一千億近い公的資金国民の税金から投入されながら、あの七社のうち一社しかまだ現実に責任追及はされていない、経営者として、経営陣として。これはおかしいのじゃないか。だれが見てもおかしいのです、これは。  このことについて、まず大蔵大臣は、まさしく私が知るところでは正義の味方で、もう良識的な感覚の中でこの数字を見ていただけるというふうに私は確信しております。二十四倍も二十五倍もなったり、あるいは六倍、三倍、五倍と不良債権の金額が上がっていく。こういうことが起こっていて、それはいろいろな数字の仕方の過ちがありますと言いまずけれども、三倍までぐらいだったらまだしもわかりますけれども、三倍だって大変なことです、これは金額がでかいわけですから。二十四倍などといったら、とんでもない話でありまして、これを粉飾決算と言わずして、虚偽の報告と言わずして、何をもって言うかということになりますので、そういう点を踏まえれば、これは背任罪ですぐにでも逮捕できるような気がいたしますが、経験的に考えていただいていかがなものか、大臣の御見解を伺いたいと思います。兵庫銀行に限っても結構でございます。     〔井奥委員長代理退席、坂井委員長代理着席〕
  327. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  私の感じでございますが、木津信用組合、三百二十億、破綻前公表不良債権、それが破綻後二十五倍になっているなどというのは、何ともはや理解に苦しむわけでありまして、少なくとも商法違反その他の法令違反があるような感じがいたします。
  328. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  法務省の方、来ておられますか。この問題について、法務省としてどのような見解と、あるいはどのような捜査をなされるつもりなのか、伺いたいというふうに思います。
  329. 藤田幸久

    藤田説明員 破綻した金融機関経営者らの責任につきましては、ただいま、株式会社阪和銀行の頭取の特別背任罪、それから住専の一つであります日本ハウジングローン株式会社についての起訴について御指摘がございました。  これら以外の事件につきましても、検察当局平成七年以降におきまして数件の起訴をいたしております。まず、平成八年の六月から八月にかけまして木津信用組合の理事長らを背任罪と詐欺罪によって起訴いたしております。それから、安全信用組合、東京協和信用組合、コスモ信用組合、それから大阪信用組合、これらにつきましても経営責任者等を背任罪等によって起訴をいたしております。こういうことでございまして、検察当局におきましては、刑事責任の解明と関係者の処罰につきましては厳正に対処してまいったものと承知をいたしておるわけでございます。  今申し上げました以外の起訴されていない事案につきまして検察当局捜査をしたかどうか、あるいは今後捜査をするかどうかというようなことにつきましては、これは捜査機関の活動内容にかかわる事柄でございますので、法務当局としては答弁を差し控えさせていただきたいと存じます。  ただ、一般論として申し上げますと、検察当局といたしましては、刑事事件として取り上げるべきものがございますれば、関係機関とも十分協力しながら法と証拠に基づいて適切に対処するものと存じております。
  330. 上田清司

    ○上田(清)委員 課長にお尋ねしたいのですが、仮にで結構ですが、二十倍だとか二十五倍だとかという虚偽の報告があったときには、これは犯罪なんでしょうか。
  331. 山口公生

    ○山口政府委員 恐縮でございますが、ちょっと法務省の答弁の前に説明をさせていただきます。  例えば、兵庫銀行で六百九億円の破綻前公表不良債権、これはそのとおりでございますが、当時、全銀協の開示基準で破綻債権の公表だけが義務づけられておりました。そうしますと、それが六百九億円だけの開示になっております。今はそれに延滞、金利減免というのを足しております。そうしますと、ちょっと細かくなって恐縮ですが、兵庫銀行の場合は延滞債権が二千九百十一億、金利減免が二千五百六十三億、それをトータルしますと六千八十五億になります。確かに、当時の不良債権の公表がおかしいと言われれば、それはもう私も不十分であったと言わざるを得ませんが、今の基準でいきますと六千億を若干超えるわけでございます。  破綻後の確定というふうに先生御紹介いただきました。これは破綻した後に検査に入りまして、今度はそういう形式基準じゃなくて、しばしば申し上げておりますように、回収ができるかできないかで分けるわけでございます。そうすると、回収不能と言われる不良債権が、調べてみたら七千九百億、六千幾らが七千九百ということです。  それから、回収可能だけれどもちょっといろいろ不良債権化しているというのが七千百でございます。それを足すと、七千九百と七千百ですから、一兆五千、こういうことでございまして、二十四倍ということをよく他の委員会でも私も御指摘を受けまして、いつも説明をしたいと思いながらなかなかお時間をいただけなかったので、このときにこの事実関係だけをちょっと説明させていただきました。
  332. 上田清司

    ○上田(清)委員 刑事課長の前に山口局長、そういう話になりますと、では検査のとき、不良債権の見込み額だとかそういうことの検査というのは一体どうなっているのですか。後だったらわかるけれども事前だったらわからないという話になるのですか。
  333. 山口公生

    ○山口政府委員 公表不良債権というものは客観的基準でピックアップしているというのは、しばしば申し上げているとおりでございます。  それで、資産の査定というものは検査のときやっております。これはまた、一兆五千というのは七千九百と七千百に分かれると申し上げましたが、これはある意味ではまた清算検査でございまして、清算検査というのはそこでストップする。だから、銀行がメーンになっている企業が回収不能になったり、あるいはそれの系列ノンバンクがあったらそれが行き詰まる、こういうことを考える場合が清算検査であります。ただ、この兵庫銀行の場合そうであるかどうかというのはちょっとまだ確認しておりませんけれども、一応破綻したときの検査というのはそういうふうな形で見るわけでございます。だから、今回の北拓の場合もそういうふうな形での清算検査をやらせていただいております。  清算検査でない普通のゴーイングコンサーンの場合は、一応四分類、三分類と分けまして、四分類はその期のうちに償却しなさい、三分類のうちでも償却ができそうなものは償却すべきであるという企業会計的な考え方からその銀行が適切な経理処理をする、こういうのが検査の中身だというふうに私は聞いております。
  334. 上田清司

    ○上田(清)委員 聞いておりますではちょっとなかなか頼りにならない話ですけれども、では、北洋とかあるいは北拓で清算検査をしたら、こんなふうに二十倍だとか二十五倍とかになるんですか。
  335. 山口公生

    ○山口政府委員 ちょっと北洋とおっしゃったのは、それは今生きている銀行でございます。北拓の……(上田(清)委員「どうも失礼しました。シティです、徳陽シティです」と呼ぶ)そういった銀行の場合には、公表不良債権額というのが一方でありまして、清算検査をすればまた違った見方での数字が出てまいります。そのときも回収不能と回収可能というふうに分ける考え方での清算検査というのを行うわけでございます。  ただ、先生の御疑問は、不良債権の公表額とこんなに違うのはおかしいじゃないかというごもつ ともの御指摘でございますが、今は公表不良債権の範囲を相当広げてありますし、また今度、三月期からはSEC基準に準じてやりなさいということでやっておりますので、相当幅が広くなってまいります。必ずしも概念的にオーバーラップするものではございませんけれども、そうした考え方でこの不良債権の公表ということをどんどん進めていくという所存でございます。
  336. 上田清司

    ○上田(清)委員 私は、どうしても納得できませんので、後でそのことに関して、とりあえず兵庫銀行に関して詳しく御説明いただきたいと思いますので、担当の方に申し入れを伝えておいていただきたいというふうに思います。  それで、私は常識的に見て、こういうのは虚偽の報告としか思えない。大臣も、何らかの形で商法上の違反もあるのではなかろうかというような御発言もありました。それが私は常識ではないかなというふうに思っておりますので、刑事課長さん、大変恐縮ですが、先ほどちょっと申し上げましたように、一般論でございますので、こういう形で不良債権が公表されて、破綻後に二十倍、三十倍になったときに、これは清算後の、破綻した後の清算後の数字だから云々というような御説明も銀行局長からありましたけれども一般論で結構ですけれども、こういうのは普通は怪しいとかこれは臭いとか、そういうふうに思われるのですか、思われないのですか。
  337. 藤田幸久

    藤田説明員 大変恐縮でございますけれども、ただいまの御質問は、個別の具体的な事案についての御質問のように私ども受け取るわけでございまして、個別的な事案につきましては、やはり個別の事実関係、証拠関係ごとに判断をすべき事柄でございますので、一般的にはなかなか申し上げられない、一概には申し上げられないと思います。
  338. 上田清司

    ○上田(清)委員 前置きで抽象的にと私は言ったはずでございますが、個別で言ったわけではありません。全く抽象的に、一般論でということを申し上げているのに、何が個別的なんですかね。
  339. 藤田幸久

    藤田説明員 失礼しました。  抽象的、一般的に申し上げますと、ある銀行についてこのような、今御指摘のような事態が起こったときにそれが一般的に怪しいと思うかどうか、こういうことにつきましては、一般的に、一概には申し上げられないと考えております。
  340. 上田清司

    ○上田(清)委員 何か禅問答ですね。捜査をされる方々が人権の問題やさまざまな問題から慎重になられるということはよくわかりますが、しかし、この問題は国民注視の問題であります。しかも今度、住専と同じように国民の税金を三十兆から何らかの形で、最終的に使い切る、使い切らないは別にして、できるだけロスを少なくという議論をされておりますし、与野党を通じてこのロスを減らす努力をするつもりでありますけれども、しかし、こういう問題について、一体検察当局は本当に責任追及する意思があるんだろうかどうかということについて危ぶむような発言に今のは私は思えます。  もう一度確認させていただきますが、まさしく一般的、抽象的でありますけれども不良債権の公表額と破綻後の公表額が二十倍、三十倍に開きが出たときに、これは捜査当局として怪しいと思うのか思わないのかということについて、私は、何か答えを出しても何ら人権侵害にもならないし、だれかを誹議するわけでもありませんし、国民に対しての法務・検察当局の物事の考え方として、きちんとした物の言い方としてむしろ信頼感を与えるのではなかろうかと私は思いますので、二度目になって恐縮ですが、もう一度だけお願いいたします。
  341. 藤田幸久

    藤田説明員 一般論として申し上げますと、本来あるべき常識的な数字と、それから明らかになった数字とがそごがあるというようなことが明らかであるという場合には、そこに通常の疑念が生ずるであろうということは御指摘のとおりであろうかと思いますけれども、個別の事案にわたるというわけにはまいりませんので、これはどこまでも一般論ということで御理解を賜りたいと思います。  そして、蛇足でございますけれども、先ほど来申し上げましたように、一般的に申し上げますと、検察当局としては今後とも、刑事事件として取り上げるべきものがございますれば、関係機関と十分協力しながら適切な対応をするものと存じております。
  342. 山口公生

    ○山口政府委員 ちょっと一言つけ加えさせていただきますが、先ほど、一般論として清算検査のお話をしましたが、この兵庫銀行がそういう検査だったかどうかはちょっと確認はしておりませんので、それはちょっとお含みおきをお願いしたいと。数字はあれで合っていると思いますが、その検査の形態はちょっとお含みいただきたいと思います。  それから、もう一つつけ加えさせていただきたいと思うのでございますが、これからは、破綻した金融機関について、預金保険機構あるいは整理回収銀行で回収に当たるわけでございます。そのときに、責任解明委員会というものを預金保険機構の中につくります。そこには、司法当局からの方とか、あるいはそういった専門家、法律の専門家にお手伝いをしていただいて、そこは厳正に責任を追及していくということになろうかと思います。確かに、先生がおっしゃるように、まだまだ足りないという御指摘はありますが、これから債権回収に当たります。債権回収に当たりますといろいろな事案が出てまいります。そうしますと、そこで民事、刑事の問題を取り上げるということになろうかと思います。  それからもう一つ、住専につきましても、住宅専門の、中坊さんの方で委員会をつくりまして、これは弁護士さんの集まりでございますが、それで、その責任を追及するということで今準備をしておられます。  そういった形で、今後この責任問題というのを厳正に対処していきたいというふうに考えております。
  343. 上田清司

    ○上田(清)委員 藤田事課長、ありがとうございました。二度目の答弁はすっきりして非常にわかりやすかったと思います。  それから、山口局長に申し上げますが、まだまだ足りないというような認識じゃないんですよ、私の認識は。ほとんどなされていないに近いんです。これは、もしなされているというんだったら言ってください。  確かに信用組合等々関係はされています、刑事責任やそれから民事責任が。なぜ大きい銀行になってくると捕まらないんですか。なぜ告訴されないんですか。この住専関係でも、借り手はもう既に何人もブタ箱に入っていますよ。貸し手はだれも捕まっていないじゃないですか、日本ハウジングローンだけしか。なぜなんだと。これから回収を進める中でわかってきますなんて言っておられますけれども、同時に作業をやっていて、借り手はばんばん捕まるのになぜ貸し手が捕まらないか、これが素朴な国民の疑問でもありますし、私の疑問でもあります。心してやっていただきたいというふうに思います。  それから、あなた方は指導監督の責任があったわけですから、商法上、銀行法上さまざまな問題点で摘発ができるはずですよ。それをなぜやらないんだというんですよ、行政上の問題として。やる意思がないんじゃないかというふうに思われても仕方がない。私は、あるはずだと思っています。  この議論をしていると時間がなくなりますので、また改めてさせていただきたい。  それから五番目に、資料として出しましたけれども、私財の提供なんかだれもしないんですね、厚かましい人ばかりで。日銀の総裁にも言いました。松下総裁はさくら銀行の頭取、会長を何年もやっておられる。三井銀行系と太陽神戸系だけで二つも住専の母体行であった。大体二千億もこのさくら銀行関係で国民の税金を使っているから、あなたも少しは考えて、もらった給料を全部返すぐらいになったらどうだと言ったこともあります。  いいですか。木津信以降、破産金融機関の役員から私財提供があった事例はたった三つしかない。木津信と大阪信用組合と土岐信用組合。この間に十八金融機関破綻しております。その中で三つだけ。  特に兵庫銀行の頭取なんか、元銀行局長なんだから私財の提供ぐらいしなければ恥ずかしいでしょう、倫理観として。そういうのをあなた方は忠告もできないのかと言いたいんだ。そういうのは鈍いというんですよ、倫理観として。私はそう思っておりますから、山日銀行局長、この問題に関して、個人的な感想で結構でございます、それから大臣も、大変何度も恐縮ですが、私は、非常に良識的な御見解、御答弁がきょうなされていて、今後の大蔵、金融行政に対して非常に期待ができるものと思っておりますので、ぜひまた御見解を承りたいと思います。     〔坂井委員長代理退席、委員長着席〕
  344. 山口公生

    ○山口政府委員 民事、刑事の責任の追及というのは厳正にやっていくべきものであるというふうに思います。  ただ、今先生の御指摘の私財の提供ということになりますと、これは御本人の心情といいますか考え方の問題でもありますし、先生の御指摘のお気持ちは私もわかりますけれども、それを何らかの形で強制するとか、そういうことはちょっと無理ではないだろうかなというふうに思うわけでございます。
  345. 松永光

    ○松永国務大臣 かつて昭和の初めごろ、銀行破綻等の場合に私財を提供されたという、美談といいましょうか、責任を果たされたという例を私も承知しておるわけでありますが、結局、オーナー頭取といいますかオーナー理事長と雇われ理事長、雇われ頭取、やはり意識が違うような感じがしますね。  そうなってきますというと、やはり先ほどから話が出ておりますように、民事ないし刑事の責任があるのかどうかというのが先に確定されるべきであって、それがないのに求めるというのは、結局本人本人の、何といいましょうか、道徳観の問題に帰着するような感じがいたします。そういう意味では、やはり小さくてもオーナーがみずからやっている方が、万が一の場合でもきちっと処理する例が多いなという感じを私は持っています。
  346. 上田清司

    ○上田(清)委員 ありがとうございます。  時間が少なくなってまいりましたので、金曜日にお願いをしておりますが、法案の中身については金曜日にまたしたいと思いますけれども、基本的な認識についてちょっと幾つか大臣に確認だけさせていただきたいのです。  橋本総理は、いわゆる日本発の恐慌は起こさないということを国会の答弁の中でなされておりますが、これはもうまさしくさまざまな金融不安に対する総理の決然たる決意というふうに思いますが、これは大蔵大臣としても同じでございますか。
  347. 松永光

    ○松永国務大臣 そのとおりでございます。
  348. 上田清司

    ○上田(清)委員 優先株の購入の問題についても、いいところから入れて悪いところからは入れない、これもまた総理は発言されておりますけれども、このような認識は同じでしょうか。
  349. 松永光

    ○松永国務大臣 破綻しているようなところにはもちろん入れないわけであります、法律上。どこに入れるかというのは、審査機関が基準に基づいて全会一致で決めていただくということでありまして、私の方から今の段階でいいところがら入れるということを申し上げる立場にはありません。
  350. 上田清司

    ○上田(清)委員 橋本総理は、ちょっと確認をしなければならない部分もありますが、議事録をもう一回確認してみますが、いいところは入れられる、つまり資本注入ができる、しかし破綻しそうなところは、悪いところという表現で私は記憶しているのですが、多分に、いかにも破綻しそうなところにわざわざ資本注入はしないというような、そういう発言の趣旨だったように私は、ちょっと議事録をまた読み返してみなければわかりませんが、また確認はいたします。  今大蔵大臣は審査会で決めるというお話でございますが、これも金曜日にじっくり議論させていただきますが、まだ審議委員も決まっているわけじゃありませんし、審査会で決めるという、余りにもこれは無責任ではなかろうかというふうに私は思っております。これから委員会をつくって、だれが委員になるかわからないにもかかわらず、この大蔵委員会の場で議論されることなく、とにかく選んだ委員にすべてお任せという感覚で果たしていかがなものかというふうに私は思いますが、このことだけちょっと確認をさせてもらいたいと思います。
  351. 松永光

    ○松永国務大臣 法律に書いてあるわけです、法律案に。私も、大蔵大臣をしておれば、充て職として審査委員になるということになっております。法律が成立する前にどんな人が委員になるのかということを云々するわけにはいかぬわけでありまして、あの法律に書いてあるとおりに選ばれるものだ、こういうように思います。
  352. 上田清司

    ○上田(清)委員 中途半端な時間ですので、法案の中身については金曜日にさせてもらいたいと思いますが、一つだけ。  土地の再評価法について与党の方で研究をされておられるということでございますが、この点について当局としては基本的な認識はどのようにされているのか、このことをまず確認させてもらいたいと思いますが、局長、よろしいですか。
  353. 山口公生

    ○山口政府委員 今、政党間の方、あるいは政党の方でいろいろ御議論されておりますので、それを見守っているところでございますが、現下の金融、経済情勢を踏まえますと、いろいろな形でのこうした対応策というのを考えるという手段の整備といいましょうか、やはりそういった声が出てくるのも、現行からいうと自然な流れかなという感じはしております。
  354. 上田清司

    ○上田(清)委員 ある程度試算の計算はなされているのでしょうか、当局の方で。
  355. 山口公生

    ○山口政府委員 これは今、党の方で御議論されておりますので、余りちょっとそこのあたりまで、今、また手元にも資料がございませんので、申しわけございません
  356. 上田清司

    ○上田(清)委員 それでは、結構でございます。  それでは、最後になりますが、きょう参考人銀行協会、全銀協と第二地銀の会長にそれぞれ来ていただきましたけれども、例えば、私の知る限りでは、第二地銀の傘下の銀行の中で優先株を購入する中身のある銀行はないにもかかわらず、是とするような意見を言っておられまして、並木議員の追加的な質問の中で、内部で集約されたのかと聞かれたら、実はしていないなんというようなことを言って、個人的な意見にもかかわらず、何か代表したような意見を言っておられました、第二地銀の会長が。  よくいろいろなところの報道の中で、これは比較的まともなさまざまな金融関係の報道の中で、大蔵省の方で、本当は別に優先株の購入をしていただかなくてもいいにもかかわらず、あなたのところが先行して買わなければほかのところは不良金融機関だというふうに思われるので、ちょっと先ぶれでやってくれやというようなそういうことを頼んでいる、そういう話がよく出ておりますけれども、余り出ているので、何回もそういうのを見ると、新聞とか雑誌とかで見ると本当かなというふうについつい思わざるを得なくなるので、その点についてどうでしょうか。
  357. 山口公生

    ○山口政府委員 私どもはこの法案を一日も早く通していただきたいということでお願いしておりまして、どこの銀行がどうとかいうことはやっておらないはずでございます。
  358. 上田清司

    ○上田(清)委員 時間が来ましたので終わりますが、国内の銀行における優先株の発行及びそのための定款を変更しなければとても優先株を発行することができない、そういう状況で、現実には、ほとんど六月に総会を行いますので、それまで変更はできないということですので、優先株を発行できる銀行は極めて少ない数だというふうに私は計算をしております。この点について金曜日に改めて質疑をさせていただきたいと思いますので、なぜこんなに数少ない銀行のために三十兆からの、あるいは十三兆でも構いませんが、用意されているかということについて、納得のいく説明ができるようにぜひ丁寧な準備をしていただきたいということをお願い申し上げまして、終わります。ありがとうございました。
  359. 村上誠一郎

    村上委員長 次に、佐々木憲昭君心
  360. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 初めに、山一証券についてお聞きをいたしたいと思います。  山一証券の三木前社長が、九一年の十二月に、大蔵省松野証券局長に東急百貨店との間のトラブルを報告したということが言われております。その際、松野証券局長は、山一で償却するしかないでしょうかと打診されまして、国内だと大蔵省が検査の際に調べざるを得ない、外に持っていったらどうかと答えたというふうに報道されております。  きょうの中日新聞によりますと、大蔵省のお墨つきが得られたと受けとめて、簿外処理がさらに進められた。九二年の一月にも松野氏を訪問し、山一として損失を簿外処理する方針を決めたことを報告したとされる。二回訪問をして、第一回目は相談をした、そしてその指示を受け、二回目は一月に報告に行った、こういうことになるわけであります。これが事実なら極めて重大でありまして、大蔵省が山一の破綻の原因をつくったということになるわけであります。法案質疑の前提として、そういう疑惑を晴らす、究明するということは極めて重要だと思うのです。  きょう、参考人質疑松野証券局長は、時期を正確に記憶しないが、多分九一年の末だったと思うけれども山一証券から顧客との間のトラブルについて話があったという記憶がある、このように述べました。  そこで、この山一証券と顧客の間のトラブルというのは何を指しているのか。飛ばしにかかわって損失をどちらがかぶるのかというトラブルではなかったかと思いますけれども、この点、事実関係ではどのように把握されていますか。
  361. 長野厖士

    ○長野政府委員 一月三十日に本件に関します一部報道がございましてこの件につきまして、松野証券局長に私どもの方から聞き取りもいたしました。そのとき、顧客との間のトラブルについて話があったんだと思うというようなことでございました。当時、トラブルといえば、恐らく顧客が保有している有価証券に生じておるロス、それが飛ばして起こったのか、それともその方自体にお勧めして持ったという相対の関係であるのかわかりませんけれども、そういう顧客とのトラブルというのは間々ございますけれども、そういった一つであったろうと想像はいたしますけれども、どの件ということの確認はとれておりません。  いずれにいたしましても、山一の簿外債務につきましては、その発生の過程も含めまして解明しなくてはいけない点が多々ございます。官房の検査、証券取引等監視委員会において、全体につきまして現在特別検査中でございます。
  362. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 当時は山一証券と東急百貨店との間で何度も飛ばしの関係がありまして、受け皿となった。そのときに一定の利回りも保証されていたということも幾つか指摘をされているわけであります。  当時、松野氏は、証取法の改正もあったので、このような問題については当事者間の訴訟などで解決されるべき問題だということで各社を指導していたので、山一に対しても訴訟などで解決されるべき問題だと言ったと思うと。しかし、実際には、損失をどちらがかぶるかという点についての訴訟は行われていなかったわけでありまして、そうなりますと、これが極めて大きな争点になっていたわけでありますから、大蔵省としては、その後の処理の経過について、どのようにそれが処理をされていったのか当然つかんでいるはずだと思うわけであります。山一はその後どのように処理をしたでしょうか。
  363. 長野厖士

    ○長野政府委員 平成三年の夏から秋にかけてでございますけれども、いわゆる損失補てんが問題となりまして、国会に早急に調べて損失補てんの内容を御報告するということで、特別検査等を当時行っております。山一証券につきましては、その過程でたしか二回に分けまして六百億余りの損失補てんの内容を公表し、国会に御報告したと存じますけれども、私ども、現在、当時の資料を調べますと、現先取引と言われる範疇に属するものがございまして、二十六先ございますけれども、受け渡し金額ベースで二千五百八十億ほどに集計するとなりますが、これらにつきましては、山一側の考え方としては、含み損を若干抱えておるけれども金融取引でございますので、もとの法人の方で引き取ってそちらでロスが受け取られれば通常の現先として終結する、あるいは第三者に通常の金融取引として転売すれば問題ない、すなわち山一がロスを引き取ってしまう予定がないのでこれは損失補てんでございませんという話でございました。  これらの二十六先につきましては、したがって、それがどういうふうにその後その契約が履行されるかどうかを確かめる必要がございますので、そのフォローをいたしまして、預け先法人に最終的にロスが引き取られたということの確認をいたしました。  ただ、今日にして思いますと、この二十六社の中にただいま先生が御質問になっておられます案件が含まれていないということでございますので、その案件は我々が把握しておった現先取引の中に含まれていないということでございました。
  364. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そうなりますと、予算委員会に提出されました資料で、飛ばしの受け皿となった企業の名称と金額が出ておりますが、この中で二百六十四億円という東急百貨店の数字がございます。これはその先どうなったかという点については、「鋭意調査中でございます。」というふうに書かれているわけです。最終的にどこに行ったのかがわからない。要するに、簿外債務の中に入っている可能性が私は非常に高いと思うのです。今回、破綻の引き金になりました二千六百五十億円の簿外債務の要因の一つになっているのではないか、その可能性は否定できないと思うのですが、いかがでしょうか。
  365. 長野厖士

    ○長野政府委員 全貌につきましては、証券取引等監視委員会などの調査を待ってと御答弁申し上げるべきでございましょうけれども、この予算委員会の資料を見る限りにおきまして私が感じておりますことを申し上げますと、これはそのものが簿外取引簿外で関係子会社が引き取ったという金額そのものだと思います。ここに書いてございますこれらの法人は最終の引き取り先でございますので、これらの会社につながる飛ばし取引先を鋭意調査中でございますというのは、もう山一の簿外債務として引き取ってしまったんだけれども、その原因が過去の取引のどこから始まったのかという、そのさかのぼったのを調べておりますという意味と私は理解いたしておりまして、まさにこれが簿外の内容であるというふうに理解しております。
  366. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 これが簿外の数字であるということになりますと、結局、損失を山一側がかぶって、それを簿外処理をしたということになるわけであります。  これは証取法の違反ということが当然考えられるわけでありまして、一つは、飛ばしの過程で、例えば東急に特別に高い利回りを保証した、こういうことも言われております。そうすると、五十条で禁止された利回り保証、これに違反するということになりますし、二つは、損失補てんということの可能性が極めて大きいわけであります。飛ばしを繰り返した山一が結果として巨額の損失を抱えることになって簿外債務を膨らませた、これが山一を破綻させた大きな原因になったということだろうと思うわけでございます。  焦点の問題は、山一からのトラブルの相談を受けた松野証券局長がここにどのようにかかわっていたかということになるわけであります。簿外処理を指示していたとすれば、これは極めて重大だと思うわけです。  先ほど大蔵大臣は、拓銀と山一の破綻が三十兆円投入の非常に大きな原因になった、金融システムの不安定をつくったということをおっしゃいましたけれども、この要因であります山一の破綻、その破綻の原因となった簿外処理大蔵省がかんでいた、こういうふうになりますと、これは極めて重大なことになるわけでございます。  そこで、私は、三木前社長の話が正しいのか、あるいは松野証券局長の話が正しいのか、この点が極めて大きな問題として浮かび上がっておりますから、やはりその真相を当委員会として解明する必要がある。そのために、この委員会に二人を証人としてぜひ喚問をしていただきたいということを委員長にお願いしたいと思いますが、検討していただけるでしょうか。
  367. 村上誠一郎

    村上委員長 後日、理事会で検討、話し合ってみます。
  368. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 次に、大蔵検査のあり方についてお聞きをしたいと思うのです。  大蔵官僚と銀行の贈収賄事件の究明をすることなしに三十兆円の血税を投入するという仕組みをつくるというのは、大変これは問題があると多くの国民が怒っているわけであります。一体大蔵省の検査というのはどのように行われているのか、余りにもこれはずさんではないのか。私は、この問題も根本的に問い直さなければならないと思います。  今回の事件のもともとの発端となりましたのは、野村証券、第一勧銀による総会屋小池隆一への利益供与事件でありますが、大蔵検査でこの問題がなぜ発見できなかったのか、当委員会でもこの疑問が提起されたわけであります。その真相の一部が、最近司直の手が入った贈収賄事件で明らかになりつつあります。  宮川宏一室長の部下であった検査官の一人が、不正常な、不可解な融資、これを発見しまして、検査報告書に詳細に記載されるということになったところが、検査報告書に記載しないようにと第一勧銀側から働きかけを受けて、ゴルフ接待を受けた宮川室長が握りつぶしたというのが真相だというのが明らかになってきました。驚くべき実態でございます。  六月十七日の当大蔵委員会日本共産党の佐々木陸海議員が、なぜ不正融資を発見できなかったのか、このようにただしました。これに対して大臣官房金融検査部の中川部長は、第一勧銀側が適切な説明を行わなかったと述べております。これは、検査はまともに行われていたけれども相手が報告しなかったのが悪かったのだ、こういう答弁だと思うのですね。しかし、真相は今述べたとおりでありまして、中川部長はこのことを知っていながら、実際には握りつぶしたということを知っていながら当委員会に事実に反する答弁を行ったのではないかという疑問が出てくるわけですけれども、この点はいかがでしょうか。
  369. 原口恒和

    ○原口政府委員 御指摘の、第一勧業銀行の総会屋に係る不正融資については、第一勧業銀行が意図的に検査の対象外としたことから、検査忌避を行ったということで検査で把握をするに至らなかったということを当時調査をいたしまして、また告発という措置もとったところでございます。  現在いろいろな報道がなされているということは承知をしておりますが、本事件に関しましては捜査が継続をされているということで、今後捜査当局による事実解明等を踏まえて、大蔵省として厳正に対処していきたいと考えております。
  370. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 当時の答弁が正しい答弁であったのかどうかという点を私は聞いているわけであります。検察の捜査が入っているということは、当時この宮川室長が、部下からの報告があったにもかかわらず、それを握りつぶしたという疑惑があるということだと思うわけです。そうなると当時の答弁が正しくなかったということになるわけです。うその答弁だったということになるわけです。あの当時の答弁は、六月の答弁は正しかった、こういうふうにおっしゃるのでしょうか。
  371. 原口恒和

    ○原口政府委員 当時、私の前任者として、把握していた限りにおいての御答弁をしたというふうに認識をしております。その答弁した事実について、今検察当局捜査が入っているということは事実でございますが、その答弁申し上げた事実、事実といいますか、認識と実際の状況はどうであったかということについては、今後の捜査の結果を待って厳正に対処していくということだと思います。
  372. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 要するに、うそをついた可能性があるということをお認めになったと思うのです。  さらに重大な問題があるのです。中川部長は、金融機関の検査の場合は金融機関の資産内容の健全性あるいは適切性といった観点を中心にチェックするので、総会屋融資といった法令違反、商法違反といったものを検査しているわけではないと答弁をされております。では、検査の中に、総会屋の問題あるいは法令違反についてのチェック項目は一切ないということなんでしょうか。
  373. 原口恒和

    ○原口政府委員 金融検査におきましては、先生の御指摘のように資産査定を中心といたしますが、それ以外にも、銀行の運営が健全にされているかどうかという観点からさまざまな角度からチェックをしております。ただ、一方で、銀行法にもございますように、当初から犯罪捜査を目的として入るということではございませんので、そういう限界はありますけれども、その中で、銀行の健全な運営という面から見て問題のある融資についてはその都度指摘をするということはやっております。
  374. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 問題のある融資ということで、具体的に私は、総会屋の問題や、あるいは法違反の問題についてチェックする、そういう項目があるのかと聞いているわけです。
  375. 原口恒和

    ○原口政府委員 御指摘のように、問題のある融資という中には、いわば社会批判を受けるということで総会屋、暴力団等に対する融資等が含まれますが、ただ、総会屋の場合に、単にそれが通常の商行為としての取引である場合でございますと、それが利益供与とか、そういう形をとっておらないという場合には、それ自身直ちにすべて問題であるという指摘は難しいかと思います。
  376. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 チェックリストに載っているのかどうかということを私は聞いているのです。  ここに大蔵省大臣官房金融検査部というところがつくりました「銀行検査資料の様式と作成要領」という資料がございます。この中に「株主の状況」というところがありまして、「特殊な株主について」、こういう項目があるのです。こういう解説になっております。「「特殊な株主」とは、銀行と訴訟関係にあるもの、いわゆる総会屋といわれているものなどをいう。」ちゃんとあるじゃないですか。チェックリストの中に入っているじゃないですか。いかがですか。
  377. 原口恒和

    ○原口政府委員 先ほど申しましたような、健全性を確保するという意味でさまざまな角度からチェックをするということで、そういう趣旨のチェックリストは提出をさせております。
  378. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そうしますと、六月の大蔵委員会での答弁であります、総会屋融資といった法令違反、商法違反といったものを検査しているわけではない、この答弁は事実と違っていたということをお認めになったということだと思うのです。  この中には「検査報告書附属表」というものもありまして、ここには「特記貸出金の内容」というのがあります。この中に「法令、通達に抵触する貸出金」「内部規定に違反する貸出金」「不祥事件等に関係する貸出金」こういうチェック項目もあるわけですから、六月の当委員会での答弁が事実と大きく違っていた。こういう項目があるにもかかわらず、いかにもそういうものはない、一般的な健全性のチェックしかやっていないという答弁でありましたから、これはうそをついていたということになるじゃありませんか。私は、そういうあり方が、金融検査の姿勢が問題だと思うわけです。  今問題になっておりますのが、意識的にこういう事実関係を大蔵検査が見て見ぬふりをしていた、あるいは事実を隠ぺいしていた、こういう関係が問われているわけであります。  私は、この背後に、大蔵金融検査部門銀行との間の非常に根深い癒着構造があるのではないか。例えば、破綻したあの拓銀の検査の際、どういうことが行われていたか。これは、きょうの北海道新聞ですけれども、一九九四年八月十日ごろ、東京都内で大蔵省検査官OBの拓銀顧問と、つまり天下った先の拓銀の顧問と同省職員らとの懇親会が開かれた後、この顧問が谷内容疑者ら四人の職員を誘い、都内の飲食店で接待した。費用は全額拓銀側が負担した。九四年は既に拓銀の経営悪化が表面化していたときで、大蔵省の立入検査は同年八月の接待から約十日後だった。こういう事実も指摘をされている。  さらに、検査部OBが各銀行に大量に天下りしているという報道も、これは東京新聞の一月三十日、キャリア二百三人、金融機関への天下り、東京あるいは中日、二月一日付、こういうことが次々と報道されているわけであります。  したがって、今大事なのは、銀行とのなれ合い、あるいは銀行との癒着、こういう点にきちっとメスを入れるということだと思うわけであります。  平成八年、一九九六年十二月に制定されました大蔵省職員倫理規程、この中に関係業者との接触に当たっての禁止事項というのがあります。この関係業者という場合、当然、銀行というのは含まれると思うのですけれども、それはいかがですか。
  379. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 ただいまのお尋ねについては、銀行局の人間に職務権限があれば含まれることになります。
  380. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 そこで禁止をされている項目というのは、具体的にはどういうものが挙がっていますか。
  381. 武藤敏郎

    ○武藤政府委員 職員倫理規程によりますと、接待を受けること、会食をすること、遊技、旅行をすること、その他いろいろ、十二項目にわたって禁止項目がございます。  会食につきましては、いわゆる費用を自己負担する場合、仕事の上で必要だということが認定される場合には例外として認められる、こういうことになっております。
  382. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 つまり「会食(パーティーを含む。)」「遊技(スポーツを含む。)、旅行をすること。」それから「講演、出版物への寄稿等に伴い報酬を受けること。」こういうことが細かく規定されているわけですね。それで「次に掲げる行為を行ってはならない。」つまり禁止する、こういうことになっているわけであります。  そこで、大蔵大臣にお伺いをしますけれども、霞桜会という組織を御存じでしょうか。
  383. 松永光

    ○松永国務大臣 残念ながら知りません。
  384. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 大臣も知らないような組織でありますが、これはこの存在を御存じの大蔵省の幹部の方、お答えを願いたいと思います。
  385. 原口恒和

    ○原口政府委員 霞桜会というのは、金融検査部に在籍したことのある者の任意的な親睦団体というふうに認識しております。
  386. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 これは単なる私的なOB会ということでしょうか。
  387. 原口恒和

    ○原口政府委員 御指摘のとおりでございます。
  388. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 全く私は今の答弁はでたらめだと言わざるを得ない。  ここに「「霞桜会」会員名簿」というのがあります。これは平成九年四月一日現在でございます。これは、大蔵省銀行局検査部及び大蔵省大臣官房金融検査部のOBだけではありません。これを見ますと、会員と準会員、こうなっておりまして、「準会員は、現在検査部に在籍する者及び在籍したことのある者で大蔵省を退職していない者とする。」現職の大蔵省金融検査部の職員、それと退職をし民間の金融機関に天下ったOB、これが一つの名簿をつくっております。会員と準会員ですから、事実上一体のものでありまして、この名簿にはOB四百十七名、現職百二十三名の氏名、住所、そういうものが書かれております。合計五百四十人であります。OBの多くは銀行に天下っております。  これは単なる親睦団体ではありません。銀行に天下った者と現職の者が一体になって組織をしたものであります。つまり、金融検査を受ける側と金融検査を行う側が一つの親睦団体を構成している、極めて重大な内容を持った組織でございます。これは、当然この中では情報交換の場になり、癒着を生み出す場となる。  しかも、重大なのは、今度収賄容疑で逮捕された谷内敏美が世話人としてこの中に麗々しく書かれております。  では、この霞桜会の連絡場所はどこにありますか。
  389. 原口恒和

    ○原口政府委員 連絡先としては、金融検査部であったと思います。
  390. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 「金融検査部管理課総務係」となっておりまして、住所、電話番号、内線、これが書かれております。つまり、OBだと言いながら現職がそこに含まれ、そして、その全体の組織の連絡場所が省内の金融検査部の総務係に置かれている。そして、「名簿の記載内容について、変更その他お気付の点がありましたら、総務係までご連絡いただければ幸甚です。」このように書かれております。  これは、天下り先の銀行から、何かあったら直ちにいつでも大蔵省の大臣官房金融検査部管理課総務係に電話がかかるという仕組みになっているわけでありまして、大蔵省はこのような親睦団体の仕事を勤務時間中にさせているということになるわけですが、そういうことになるわけですね。
  391. 原口恒和

    ○原口政府委員 同じ職場に在籍した者が親睦会をつくった場合に、その職場を連絡先にするということが便宜であったということで、そういう形になっていたと思います。  ただ、いろいろ御指摘のような社会批判も踏まえまして、もとより霞桜会そのものは退職者によって自主的に創設された団体でございますが、霞桜会の今後のあり方についてはまた霞桜会の方でいろいろ検討されるのではないかというふうに考えております。
  392. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 これは単に親睦団体ではないんですよ。検査をする側とされる側が一緒に親睦ということになると一体どういうことになるか。まさに情報が筒抜けになり、手心が加えられ、そして一緒に会食もするわけでしょう。  この会則には年に一回以上総会が開かれると書いてあります。必ず総会を開く。春に開く。昨年は夏に開かれました。こういうことが堂々と行われている。このような組織がある限り、私は癒着はなくならないと思います。  この名簿には、今度の事件で問題になりました贈賄側の拓銀の接待窓口になった者も含む三名の天下りが載っております。また、あさひ銀行に天下った者も載っております。つまり、今回の不祥事の贈賄容疑で対象になった方々が全部この名簿に、全部とは言いませんけれども、名簿に記載されている。今お配りした資料はこの天下り先を整理したものでございます。これだけ大量の検査部からの天下りがあり、日常的に連絡をとり合い、そして総会も開き、連絡先ほどこかといえば、本省のまさに金融検査部の中にある。これは極めて重大な問題だと思うのです。  そこで、大蔵大臣、大臣はこのような組織があるということを今初めてお知りになったんだと思いますけれども、こういう組織は好ましい組織なのか、それとも余りよくない組織なのか、その辺についてはどのようにお考えでしょうか。
  393. 松永光

    ○松永国務大臣 お答え申し上げます。  先ほどの事務方の答弁の中にありましたように、OBだけの親睦団体というのであればよくある例でございます。しかし、その中に検査部の現役の人も入って一緒の会をするということになりますというと、それは好ましくはないというふうに思います。
  394. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 まさにこれは重大な問題を含んだ組織であります。倫理規程を幾らつくって、先ほど言われたように十二項目もつくって、こういう行為を行ってはならない、このように書いても、現実にはこういう組織が堂々と運営されている。こういうことでは全く今の癒着の構造そのものが根本的に直らない。  私は大蔵大臣にぜひ要望をしたいと思います。こういう癒着の組織は直ちに解散すべきだと思いますけれども、大臣の決意をお願いしたいと思います。
  395. 原口恒和

    ○原口政府委員 先ほど申し上げましたように、会そのものは自主的な団体でございますが、いろいろな社会批判を踏まえた上で、それなりの対応をされるものというふうに認識をしております。
  396. 松永光

    ○松永国務大臣 現役が入っておりますというと、先ほど申したとおり好ましくないし、問題が起こりやすい、そういうふうに思いますので、現役の人についてはその会から抜けるように指示したい、こういうふうに思います。
  397. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 時間が参りましたので、以上で終わります。
  398. 村上誠一郎

    村上委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十七分散会