運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-04-03 第142回国会 衆議院 商工委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年四月三日(金曜日)     午前十時二分開議 出席委員   委員長 斉藤斗志二君    理事 石原 伸晃君 理事 小此木八郎君    理事 岸田 文雄君 理事 茂木 敏充君    理事 伊藤 達也君 理事 松本  龍君    理事 太田 昭宏君 理事 西川太一郎君       甘利  明君    小川  元君       奥田 幹生君    木村 義雄君       古賀 正浩君    河本 三郎君       桜井 郁三君    新藤 義孝君       田中 和徳君    武部  勤君       中島洋次郎君    中野 正志君       野田  実君    林  義郎君       村田敬次郎君    矢上 雅義君       山口 泰明君   吉田左エ門君       大畠 章宏君    川内 博史君       今田 保典君    島津 尚純君       原口 一博君    藤田 幸久君       渡辺  周君    井上 義久君       坂口  力君    中野  清君       宮地 正介君    青山  丘君       東  祥三君    小池百合子君       大森  猛君    吉井 英勝君       横光 克彦君  出席国務大臣         通商産業大臣  堀内 光雄君  出席政府委員         文部省学術国際         局長      雨宮  忠君         通商産業政務次         官       遠藤 武彦君         通商産業大臣官         房総務審議官  及川 耕造君         通商産業大臣官         房審議官    杉山 秀二君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         通商産業省機械         情報産業局長  広瀬 勝貞君         工業技術院長  佐藤 壮郎君         特許庁長官   荒井 寿光君         中小企業庁次長 中村 利雄君         中小企業庁計画         部長      中澤 佐市君   委員外出席者         法務大臣官房司         法法制調査部司         法法制課長   河村  博君         商工委員会専門         員       野田浩一郎君     ――――――――――――― 委員の異動 四月三日  辞任         補欠選任   甘利  明君     桜井 郁三君   岡部 英男君    吉田左エ門君   竹本 直一君     田中 和徳君   中山 太郎君     矢上 雅義君   島   聡君     今田 保典君   坂口  力君     井上 義久君   権藤 恒夫君     東  祥三君 同日  辞任         補欠選任   桜井 郁三君     甘利  明君   田中 和徳君     中野 正志君   矢上 雅義君     中山 太郎君  吉田左エ門君     岡部 英男君   今田 保典君     藤田 幸久君   井上 義久君     坂口  力君   東  祥三君     権藤 恒夫君 同日  辞任         補欠選任   中野 正志君     竹本 直一君   藤田 幸久君     島   聡君     ――――――――――――― 四月三日  出版物再販制廃止反対に関する請願宮本一  三君紹介)(第一一二六号)  同(目片信紹介)(第一一八二号)  同(家西悟紹介)(第一二〇二号)  同(金田英行紹介)(第一二〇三号)  レコード・音楽用CD等再販制度維持に関す  る請願江藤隆美紹介)(第一一二七号)  同(佐藤剛男紹介)(第一一二八号)  同(亀井久興紹介)(第一二二四号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  大学等における技術に関する研究成果民間事  業者への移転促進に関する法律案内閣提出  第三七号)  特許法等の一部を改正する法律案内閣提出第  三八号)      ――――◇―――――
  2. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 これより会議を開きます。  内閣提出大学等における技術に関する研究成果民間事業者への移転促進に関する法律案及び特許法等の一部を改正する法律案の両案を議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。古賀正浩君。
  3. 古賀正浩

    古賀(正)委員 特許関連法案のただいまからの質疑に入ります前に、一言申し上げさせていただきたいことがございます。  現在大変厳しい経済不況のさなかでありますけれども、我が国ゴム履物大手メーカーでありますアサヒコーポレーション、この経営破綻が先月末にわかに浮上いたしました。特に、同社主力工場が所在する地域といたしまして、関係者は極めて大きな不安を持っておるところであります。  そういう中で、この失業問題であるとか関連倒産問題とかの不安をともかく払拭をして、しっかりまた新しい対応に向けて頑張っていかなければならないわけであります。これの対応については関係行政怠りないというふうに思いますけれども、それとともに、私は、特に現在の深刻な不況問題がついにここまで来ておるかということで、極めて深く地元認識をしておるところであります。  我々は、何よりも我が国経済の深刻な景況をしっかりと認識をし、その回復に向けて手ごたえのある政策努力の結集に取り組まなければならぬということを改めて痛感をいたしておるところであります。まず、このことを強く皆様方に訴えたいと思います。これについて、とりあえずお答えは要りません。  それでは、法案審議に入らせていただきます。  申すまでもなく、我々が愛してやまないこの日本国というのは、土地が狭く資源に恵まれないという国であります。その我が国世界に冠たる経済大国の花を開き、豊かさを享受できるようになりましたのは、ひとえに人的な優秀さ、知的資源の優秀さにあると言っても過言ではありません。その特性は今後ますます生かしていかなければならぬ、ここに日本の将来の生きる道があるというふうに思う次第であります。  平成七年に立法されました科学技術基本法は、まさにこのような観点から、国を挙げて科学技術力の向上に取り組んでいく姿勢を鮮明にしたものでありますが、経済社会グローバル化が一層進 展し、世界規模でのメガコンペティションが繰り広げられる中で、我が国産業競争力を維持し、活力を保っていくためには、技術力、デザインカといった知的な創造を生み出していく力を強化し、世界に伍していくことが不可欠な課題であるわけであります。  また、最近の我が国経済動向は、先ほど私が触れましたように極めて停滞色が強く、閉塞感に覆われておるところであります。このようなときにこそ夢のある産業の将来像を示していくということが必要であると考えますが、そのためには現状を打開する新たな技術開発などに力を尽くしていくということが非常に重要になるわけであります。  このように考えてまいりますと、二十一世紀を担う知的創造活動保護するための特許などの知的財産権制度あり方が極めて重要になってくるということになるわけであります。制度運営に当たる通産省特許庁役割は極めて大きなものがあると思うわけでありますが、まず最初に、これからの知的財産権制度あり方について、大臣基本的な御認識を伺わせていただきたいと思います。
  4. 堀内光雄

    堀内国務大臣 古賀委員先ほどアサヒコーポレーションゴム靴トップメーカー倒産の話、深刻に受けとめておりまして、我々も、それに関する関連倒産の防止とか、いろいろ取り組みをいたしているところでございます。深刻な不況の中で、先生御懸念のような問題についての取り組みをしっかりやってまいりますことを、まず申し上げる次第でございます。  また、ただいまの御質問につきましては、委員の御指摘のとおり、今後の日本産業発展、こういうものは、科学技術創造立国実現ということが一番基本になってまいるというふうに考えております。こういう観点から、知的財産創造あるいはそれに伴うところの権利の設定、そしてそれを活用するというような知的創造サイクルの原動力としての知的財産権重要性というものは、非常に高まってきていると考えております。  こういう状況を踏まえまして、平成九年五月に閣議決定をされました経済構造の変革と創造のための行動計画、これにおきましても「適切な知的財産権保護強化プロパテント政策の推進)」ということで、その方向が打ち出されているわけでございます。  具体的には、知的財産権の強い保護を行っていくということ、あるいは大学における知的財産権取得の支援を行っていく、さらには休眠している特許の有効な活用というような問題、こういうものを含めましてしっかり取り組みをしてまいらなければならないと思っておりまして、通商産業省といたしましては、こういう点を踏まえまして、今後も知的財産権制度強化するための総合的な施策に取り組んでまいる覚悟でございます。
  5. 古賀正浩

    古賀(正)委員 お話のように、今後知的財産権制度強化にしっかり取り組んでいかなきゃならぬ、こういうことでまた頑張っていただきたいと思う次第でございます。特に、特許庁出願して得られました特許権等権利をしっかりと保護していくということが大切になるわけでございます。  かつてアメリカの大統領のリンカーンが、特許制度は、天才の火に利益という油を注いだという言葉を残されたそうであります。非常に言い得て妙な表現だというふうに思っておりますけれども、そういうことから我が国現状を見ますと、注ぎ込む油が我が国では少な過ぎるのではないか、こういう思いがするわけであります。  すなわち、特許権等権利を取りましても、侵害された場合に得られる賠償額が非常に少ない。米国に比べると一けたも二けたも少ないということが言われておると聞いております。技術開発に精進して特許を取得しても浮かばれない、むしろ他人の技術侵害した方が得だといった非常に不届きな状況にあると批判もされているところであります。  このような侵害し得、侵害した方が得だというような状況は、先ほど大臣から御答弁をいただきました、知的創造立国を目指す我が国においては断じて放置できない問題であるというふうに思っております。万一特許権等知的財産権侵害された場合には、しっかりと損害賠償をさせる、刑事罰もかかるということによって、この侵害し得の状況を是正していかなければならぬというふうに思っておるところであります。  今回の改正は、この問題にどのように対応しているのか、この改正により、どのような変化を期待しているのかをお尋ねしたいと思います。
  6. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 現在の我が国状況につきましては、今御指摘のとおり、特許侵害してもその損害賠償額が極めて低くて、技術開発へのインセンティブを損ねているという御指摘がございます。  ということで、今回の改正案では、損害賠償額の引き上げあるいは法人重課ということで、従来は罰金が五百万円だったものを一億五千万円に引き上げるとか、こういう内容を盛り込んでおります。こういうことによりまして、知的財産権侵害の抑止に大きく資していくものだと思っておりまして、これによりまして日本創造的な技術開発が進んでいくということを期待しております。
  7. 古賀正浩

    古賀(正)委員 損害賠償の立証が容易になって十分な賠償が得られるようになる、あるいは刑事罰強化されるということで、大いに結構なことだというふうに考えておるところであります。また、そういう中で、知的財産権を侵してはならないという考え方をしっかり定着させていくということが重要であろうかと思います。また、裁判所におきましても、今回の法改正の趣旨を踏まえた適切な運用が期待されるというところでありますけれども、特許庁としても、知的財産権の十分な保護に向けて努力をしっかりと続けていただきたいと思う次第であります。  そこで、その次に問題を移しますが、この知的財産権というのは非常に大きな財産ということでありますけれども、これがどのように十分に活用されておるかということが一つ課題としてあるわけであります。  話によりますと、実際には、特許が取られた技術のうち、多くのものが利用されずに休眠しているというふうに聞きました。もったいない話ですね。このたびのもう一つ法案に関しましては、同僚の山口委員がいろいろと質問をされることになっておりますけれども、それとは別にいたしましても、特許技術というのは使いようによってはまさに宝の山ということでありますし、何とかその有効活用を図っていくということが必要ではないかと思う次第であります。  また、この特許を使った地域経済の振興はできないものかという思いもあります。新聞によりますと、広島のマツダが開発したアルミ鋳造法に関する特許地元企業が実施する契約が成立したとか、三菱化学のボルト・ナットに関する技術を福岡の企業が利用することになったとかいった記事も見られますが、休眠特許現状について御説明いただきますとともに、その活用のためにどのような施策を実施しようとしているのかをお話しいただきたいと思います。時間の関係がありますから、要点を簡単にお願い申し上げます。
  8. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 せっかくお取りいただいた特許も約四十万件ぐらい使われていないのではないかというような推計もございますし、中小企業の方もいろいろな技術を導入したいというお考えも強く持っているというような調査もございます。  ということで、特許庁といたしましては、こういう休眠特許を有効に使っていただくようなデータベースを整備したり、特許流通フェアを開くとか特許流通アドバイザーを派遣する、こういうことで一生懸命取り組んでいきたいと思っております。
  9. 古賀正浩

    古賀(正)委員 次に、知的財産権保護強化し、侵害を抑止していくという意味で考えていかなければならぬいろいろな問題としまして、発展途上国との関係があると思います。  我が国権利を有している商品のデザインや商標を模倣した模造品周辺アジア諸国で生産され、我が国に流入してくるものは枚挙にいとまがない状況であります。最近ですと、昨年話題になりました「たまごっち」につきましても、あれだけ評判になりますと、たちまち海外から模造品が流入して問題になってくるということであります。ところが他方、我が国企業発展途上国に進出するということになりますと、現地では特許権意匠権商標権といった知的財産権が十分に保護されずに困っているという話もよく耳にするわけであります。  このような問題に関しまして、政府としてしかるべき対応をとる必要があるのではないかと思いますが、現在どのような対応をしているのかについて、簡単に御説明願います。
  10. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 今、日本企業の方がにせもので被害に遭って大変困っておられると聞いておりますので、私どもといたしましても、アジア各国から千人研修ということで来ていただきまして、特許重要性をしっかり学んでいただくとか、あるいは実態調査をやったり、特許庁にも模倣品被害相談窓口、いわゆる模倣品一一〇番を設置いたしまして、一生懸命対応していくということでございます。
  11. 古賀正浩

    古賀(正)委員 経済にも国境がなくなっていくという中で、このような問題はしっかりと取り組んでいく必要があるというふうに思っておる次第であります。  さて、最後に、知的財産権制度国際調和の問題ということについて一言お伺いしておきたいと思います。  本来、私は、一国で出願をし権利を取得すれば、それがそのまま直ちに世界各国で通用する、そのような仕組みができていくことが理想だというふうに思っておるところであります。しかしながら、一気にそこまでいくというのは各国の事情その他でなかなか難しいといたしましても、短期的な目標としては、国際機関などに出願すれば自分の希望する国で権利を取得できるといった、国際出願制度を整備していくことが考えられると思うのです。  特許については特許協力条約ができておりまして、PCT出願と呼ばれる国際出願が可能となっておるわけでありますけれども、商標意匠については、まだこのような制度我が国では整備されていないという状況にございます。このうち、商標国際出願制度につきましては、既にマドリッド・プロトコルという形で国際合意ができておるわけでありますが、日本はまだこれに入っていないということでございます。ひとつ我が国も早急に加盟すべきではないかというふうに思います。この点について御見解をいただきたいと思います。
  12. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 日本企業のいろいろな商品世界じゅうで販売されて、その商標をしっかり守るということが大事なわけでございまして、そのときにマドリッド・プロトコルという商標国際登録条約に入ると簡単に取得できるということでございます。今の御指摘もございましたので、これから日本の加盟について検討を進めてまいりたいと思います。
  13. 古賀正浩

    古賀(正)委員 先ほども申し上げましたように、私は、大きな目標としてはやはり世界共通特許のような仕組みをつくっていかなければならぬ、こういうふうに考えておるところであります。その世界共通特許についてのお考え、またその実現に向けての戦略について一言説明をいただきたいと思います。
  14. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 今、世界経済活動グローバル化しておりますので、世界共通特許が必要じゃないかという御指摘は、全く私たちの方も同じような気持ちでおりますし、そのためには、日本アメリカ、ヨーロッパの先進国特許庁がよく合意をする、さらにアジア各国においてはAPECの場を通じてやる、あるいは世界全体については、世界知的所有権機関という場がございますので、そこの場を通じて、世界共通特許が何とか実現できるように一生懸命努力をしてまいりたいと思っております。
  15. 古賀正浩

    古賀(正)委員 もう時間がなくなってまいりました。  繰り返しでありますけれども、二十一世紀我が国科学技術立国知的創造立国を志向するわけでありますが、その中核として活動が期待されるのは、何といってもこの特許制度という知的財産権インフラということになるわけであります。今後、特許庁役割、責務は極めて大きなものがございます。  特許庁は、現在、二〇〇五年に向けた特許行政ビジョンというものを持っていろいろ努力をしておられるというふうに聞いております。その中に、例えばリアルタイムオペレーションを目指す、つまり、即刻それについて審査をし、結論を出すという非常に野心的な計画がある、本当にすばらしいことだと思っております。ひとつしっかりと今後頑張っていただきたい。  私は、かつて通産政務次官をやらせていただきましたときに、たまたま大臣のかわりに特許庁新入生歓迎会か何かに出させていただいて、皆さんと歓談したことがあります。そのとき、本当に優秀な新入生がたくさんおられて、本当に明るく元気で非常に意欲的な、本当にすばらしい人たちだな、これだったら日本特許行政もうまくいくのじゃないかな、かねてそう思ったことがございます。  先ほども申しましたような、非常に大事な、日本発展の中心的なインフラの中心におられるのが特許庁でありますから、ひとつ今後大いに頑張ることを期待いたしまして、とりあえず私の質問を終わらせていただきます。
  16. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、山口泰明君。
  17. 山口泰明

    山口(泰)委員 自由民主党の山口泰明でございます。  それでは、早速質問させていただきます。  大学等の知識、能力資源研究成果実用化、製品化する道を社会へ開くことは、大変画期的なことであります。また、大学等競争原理を導入し、ある面では大学改革活性化につながることも高く評価すべきであります。技術移転あり方については、米国では既に八〇年代に実施したTLOは、バイ・ドール法導入促進の結果、今日の米国経済発展の基盤となっておると聞いております。我が国においても、新技術創出技術移転構築となるこの法案は、大いに期待するものであります。  以下、何点か質問させていただきますので、答弁は、国民だれが聞いてもわかりやすく、言葉説明をしていただくようお願いいたしたいと思います。私は、これが政治離れの引きとめになると大変確信をしているものですから、よろしくお願いをいたします。  大学等研究成果民間企業等技術移転するに当たり、実際、民間企業のニーズはどの程度あるのか、また、国立大学通産省所管研究機関並びに全省庁が持っている国立研究所等技術特許数はどのぐらいあるのかをお伺いしたい。また、その中で国立大学教官個人として所有している特許数も幾つかを聞きたいと思います。
  18. 雨宮忠

    雨宮政府委員 国立大学関係についてお答えいたします。  国立大学国有財産として管理しております国有特許件数でございますが、平成九年三月三十一日現在で一千百五件ということでございます。  また、国立大学教官個人が所有する特許の数、これはいろいろな時点で取得しているわけでございますけれども、個人が私的に有する財産であるということで、すべてのものにつきまして文部省としては承知していないわけでございますが、御参考まででございますが、平成八年度に国立大学において発明委員会審議されました、といいますのは、発明がございますと発明委員会に届け出ることになっておりますが、発明委員会審議されました発明件数平成八年度におきまして四百四十八件、このうちで、個人に帰属するとされたものが三百八十二件ということでございますの で、全体の約八五%が個人に帰属する、こういうことでございます。
  19. 山口泰明

    山口(泰)委員 ここで重要なのは、これらの特許TLOを通じて円滑に民間企業移転していくメカニズムの構築であると考えます。文部省としてはどのような施策を講じていくのか、お伺いをしたい。
  20. 雨宮忠

    雨宮政府委員 まず一番大きなことは、今回法律で御審議をいただいております技術移転事業そのものでございまして、この立ち上げをいろいろな形で支援していく、これがまず第一でございます。  それから、若干周辺のことになるわけでございますが、要するに、基本的に、いかにして大学の持っているポテンシャルというものを産業界等に普及していくかということでございますので、そのためにはまず大学研究自体がしっかりしたものでなければならない、あるいはしっかりした研究条件を確保しなきゃならないというようなこと。それから、産学連携活動がさまざまな分野で行われておるわけでございまして、例えば共同研究にいたしましても、現在約二千件ほど行われておるわけでございまして、年々ふえておるわけでございます。また、共同研究センターというものを多くの大学で設けているわけでございまして、こういう産学連携活動全体を振興していく。これもまた今回のTLO活動自体に好影響を与えるものだというように考えておるわけでございます。  その他、先ほど発明委員会の設置、その運営の改善でありますとか、あるいは大学として技術移転を全体として取り進めていくための組織的なバックアップというものをどう整えていくかということもございますし、特許ということについての教員の意識というものをもっと改革していくということもまた必要であろうかというようなことで、さまざまな周辺部分も含めまして産学連携というものが進められ、それによって、この法案の御審議をお願いしておりますTLO自体のでき上がっていく環境というものも整えていくということが重要であろうかと思うわけでございます。
  21. 山口泰明

    山口(泰)委員 大学等における研究成果を積極的に民間企業等移転していくためには、大学教官企業において研究開発技術指導に従事する場合の兼業も認めていく必要があると考えております。文部省においても、最近このような取り組みと聞いておりますけれども、実態はどのようになっているのか、また、今後の対応方針をどのように考えているのかもお伺いしたいと思います。
  22. 雨宮忠

    雨宮政府委員 国立大学教官等が勤務時間外におきまして企業での技術指導研究開発を行うために兼業することにつきまして、既に一昨年の十二月の人事課長通知によりまして認めておるところでございまして、認められましたのは昨年の四月からでございますが、平成九年の四月から十二月までの九カ月間トータルいたしまして、この兼業許可を得た者が約一千件ということでございます。兼業許可につきましては、本務の遂行に支障がないとか、いろいろな基準があるわけでございますが、それらの基準を守りつつ、今後とも兼業許可の適正な実施に配慮してまいりたいというように考えております。
  23. 山口泰明

    山口(泰)委員 技術移転のための知的創出には研究開発のための基盤整備が大切だと考えております。教育白書によれば、建築後二十年以上経過しているいわゆる老朽化施設は約一千百四十万平米、全体の五二%と指摘されているわけですけれども、この老朽化施設の解消に向けてのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  24. 雨宮忠

    雨宮政府委員 御指摘のとおり、昭和三十年代後半から四十年代にかけまして建設した建物の老朽、狭隘化というのが大変進んでおるわけでございまして、その改善整備を図ることが、先ほども申しました研究条件全体を改善していくという上で大変重要なことでございます。非常に厳しい財政状況ではございますけれども、私どもとして、予算の重点化を図るなどいろいろな工夫、改善を行いながら、施設の計画的な整備に最大限の努力を払ってまいりたいというように考えております。
  25. 山口泰明

    山口(泰)委員 産業基盤整備基金は、十数本の法律に基づいて業務をこれまで実施してきており、経済構造改革に資する施策を実施するための種々のノウハウを持っているものと考えておりますけれども、そうしたノウハウをこの法案にどのように生かしていくのか、決意並びに運営方針についてお伺いをしたい。
  26. 江崎格

    ○江崎政府委員 産業基盤整備基金の活用の問題についてのお尋ねでございますけれども、御指摘のとおり、この産業基盤整備基金は、現在、民活法ですとか事業革新法といった十三本の法律に基づきまして、債務保証とか出資とかあるいは情報収集、提供などの業務を行っておりまして、いわば経済構造改革の中核的な機関として総合的に業務を行っております。  今御提案していますこの法律におきましても、技術移転事業に対しまして、助成金の交付ですとかあるいは債務保証、それから情報収集、提供事業の業務ですが、これは産業基盤整備基金が一元的に行うということを御提案しておりまして、これは、これまでにその基金が蓄積しました同様な業務のノウハウ、それから組織体制というものを活用できることになるわけでございまして、そういうことになりますと、従来のノウハウを十分生かせるというふうに思っております。  それから、このための新たな機関を創設するわけではないわけでございまして、その意味では行革の観点からも望ましいのではないか、このように思っております。
  27. 山口泰明

    山口(泰)委員 本法案によるTLOの円滑な運営を初め、産学連携を進めていくためには、通産省としてどのような取り組みが重要であると考えているのか、お伺いしたいと思います。
  28. 江崎格

    ○江崎政府委員 この産学連携の問題でございますけれども、我が国経済構造改革を推進しますためには、新規産業の創出、それから産業技術の向上によりまして既存産業の高度化を図るということが大変重要でありますけれども、その目的のために、産学連携によります技術開発ですとか、あるいは大学などの研究成果産業界へ技術移転するということによりまして、大学の研究機能あるいは人材育成機能を産業界において十分活用するということが大変重要だというふうに思っております。  政府としましても、産学連携促進する体制整備を図るために、平成八年には科学技術基本計画、また平成九年には経済構造の変革と創造のための行動計画、これは昨年十二月にフォローアップで新しくしたわけでございますけれども、こうした計画におきまして人材面の手当てとかあるいは資金面での具体的な施策を定めまして、この着実な推進を図っていこうとしているところでございます。  この法案におきまして、こうした産学連携施策の一環としまして、大学等における技術に関する研究成果民間事業者への移転促進するということをねらっているわけでございます。通産省としましては、今度とも文部省関係省庁と十分に連絡をとりまして、大学企業との共同研究ですとか、あるいは大学から企業への技術指導促進といったようなことを通じまして、産学の連携を一層進めてまいりたいというふうに思っております。これを通じまして独創的な研究開発活動促進しまして、その成果が新技術とか新規産業の創出へ結びつくようにしていきたいというふうに思っているところでございます。
  29. 山口泰明

    山口(泰)委員 この法案が成立しますと、大学等の教授、研究者等にも競争原理が働き、実力主義になってまいります。このことは、能力主義を重視していく、民間の意識改革を取り入れていくためにも大変すばらしいことと私は考えます。  そういう意味を含めて、最後になりますが、人事管理のあり方についてお伺いしたいと思います。  現在、大蔵省、日銀官僚の不祥事によって国家 公務員のあり方が問題になっております。今、人事院で新たな時代の公務員人事管理を考える研究会を開催しており、その中で、例えば改革で重視すべき要素として、柔軟で開放的な仕組みの整理、高い専門能力、国際性の涵養、能力、実績の重視と個性の尊重とあります。その中で、能力、実績に応じた処遇の推進、これが私は重要であると考えます。いわゆる行政能力、人物が優秀であっても、ノンキャリの採用はキャリア組に比較して昇進の道に限界があるのが現状でございます。  私ごとで大変恐縮でございますけれども、私は一昨年当選するまで中小のガス会社でサラリーマンをしていた関係で、五十四年より当時の東京通産局、今の関東通産局に出入りをさせていただき、いろいろな方々に御指導いただき、また交流もいたしました。関東通産局は、昔も今も局長、各部長、総務課長はいわゆるキャリアと呼ばれる方々であります。私が接したキャリアの人たちは皆、能力、人格とも大変立派な方でありました。しかし、Ⅱ種採用で入ったノンキャリと言われる人たちの中にも、このキャリアと比較して何ら遜色のない方も見受けられました。この方々は各部の次長またはそれに匹敵するポストで終わってしまいます。  私は、議員になる以前からこのことに関してはずっと不自然に思っておりましたし、一般企業では能力主義が定着しつつある現在、大手企業のオーナーでもあります通産大臣の御所見をお伺いしたいと思います。
  30. 堀内光雄

    堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  委員の御指摘のように、行政の一層の活性化というものを図ってまいりますためには、能力だとか適性だとか、こういうものに基づく人事管理ということを徹底していく必要があると思います。最初からキャリア、ノンキャリアというような区別でもって取り組むということは余り芳しいことではないと考えます。I種、Ⅱ種、Ⅲ種といった入省時の試験区分にこだわらないで、有能かつ意欲の高い職員を幹部にしていくことが重要だと思っております。  通産省といたしましても、こういう観点からⅡ種、Ⅲ種の職員の積極的な登用に努めてまいってきておりますが、現在、人事院においてこういう問題、先ほど委員の御指摘のように登用のための早期選抜の方法などを検討いたしておりまして、十一年度からの実施ということで取り組みを行っているところでございます。  そういう意味で、当省としましてもこうした人事院などにおける検討結果も踏まえまして、今までもその取り組みを行ってまいっておりますが、能力、実績本位の人事をさらに徹底をしてまいりたいと考えております。
  31. 山口泰明

    山口(泰)委員 ぜひそのようになりまして、ノンキャリの方でも、事務次官は無理でもせめて局長ぐらいになれることを希望して、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  32. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、渡辺周君。
  33. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 民友連、民主党の渡辺周でございます。このたびの特許関連の二法につきまして、四十五分間質問をさせていただきます。  まず初めに、今回の特許法の一部改正についての御質問をさせていただきます。  特許侵害賠償額、今回この法律の大きな目玉といいますか、柱になるわけでありますけれども、幾つかの資料を日米で比較してみますと、日本が一件当たり平均四千六百万円、米国では何と平均百二十億円ということで、大変な格差がある。アメリカは、知的所有権については一つの戦略物資として重要な視点で扱っている。この巨額の賠償金ということがその姿勢の一つであろうというふうに認識をするわけであります。  先ほど委員会の中でも取り上げられていますように、いわゆるまね得やられ損、そうした部分について、いよいよ日本も大量生産型社会から開発型の社会になってきた。そうした中で、知的所有権をこれからどのように保護をし、あるいは日本一つの戦略物資としていくかということで、おくればせながら今回このような形で前進が見られた。その点につきましては率直に評価をしているわけであります。今後、我が国技術立国を標榜していく以上、知的所有権の扱い、これについては大変な認識を持って臨まなければならないだろうというふうに思います。  そうした中で、今回の法改正の背景となりました、昨年十二月十六日に工業所有権審議会の特許法等改正に関する答申「損害賠償制度等の見直しについて」というような、各界の方々が集まって答申されたこの審議会の答申を見ますと、なかなかこれが今回の法改正では生かされてない部分があるのではないか。この答申の中にもありますような、一つの考え方としてでありますけれども、米国並みのいわゆる三倍返しと言われる制度、こうしたものがとられていなかった。そしてまた、そのほかにも、被告が侵害していないことを立証するための文書提出などの責任、損害を計算する鑑定人制度の導入、こういうことについてもこの審議会の答申の中には盛り込まれているわけですけれども、今回、この法の中に触れられていないといいますか、見送られたのかなと思うわけでありますけれども、なぜそのような経緯になったか、まず、その点についてお尋ねをしたいというふうに思います。
  34. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 ただいまお話ございましたとおり、昨年、審議会から答申が出たわけでございますが、従来の日本の考え方あるいはやり方とは根本的に随分違う方向に行くということもございまして、大変な議論がございました。そういう過程で、審議会からいただいたものをさらに今回、改正案にするということで、いろいろな議論を進めたわけでございます。  その際、日本で三倍賠償制度を入れたらどうかという議論につきましては、現在は日本損害賠償が低いからぜひ入れるべきだという意見と、一方では、日本の民法の原則との関係があるからさらに考えるべきではないかというような議論、あるいは文書提出命令につきましては、そういう文書を提出するということに伴いまして、提出されたそういう証拠の取り扱いをどういうふうにしていくか、あるいは計算鑑定人につきましても、その機能はどうするかというような、従来の民法の原則などとの関係で一層研究すべきだというような議論もございまして、今回の改正案には入っていないわけでございます。
  35. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 そういう意味で、確かに今回の法改正では、場合によっては通常ライセンス料の三倍以上の賠償額になるというようなことにもなっているわけでありますけれども、そうした中、これはこの間の新聞記事であります。日本経済新聞で、特許法の改正は腰砕けではないかというような指摘がございました。「経済産業グローバル化は止まらないのに、日本特許制度だけが取り残されている。」そうした中で「特許庁は「今国会終了直後にでも、再度法改正の検討を始める」と説明する。」  これは、私もかつて新聞記者をやっていましたので、マスコミの書き方というのが、果たして本当にそう言ったかどうかというところは、どのようにお答えになるかは非常に微妙かとは思いますけれども、言った言わないのその議論は別にして、実際こういうふうなことで、国際水準並みにはほど遠いのではないかと言われている中でこの程度の法改正では、半歩進んだとはいえ、こうした欧米並みにしようという日本としての特許に対する、知的所有権に対する強い思い入れ、保護というものがやはりまだまだ追いついていないのではないか。そういう中で、今国会終了後にでも再度法改正の検討を始めるというようなこと、これが事実かどうかというよりも、実際、今後このような形でまだまだ手直しや見直しをしていくことがあるのかどうか、その点についてお尋ねをしたいと思っております。
  36. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 今、新聞報道について御指摘ございましたが、一方では、今回の法律改正につきましては、従来と違って、日本知的財産権を極めて重視する画期的なことだというような御 指摘もいただいておりまして、いずれにせよ、日本科学技術創造立国を進めていく上では、しっかり技術開発を進める、そのために知的財産権を守るという方向で進み出した、大きなことが期待されるというような御指摘もございます。  そういうこともございますが、私ども特許を担当するものといたしましては、その時代時代の国民の期待、ニーズにこたえて、的確な法制度になっていくよう不断の見直しを進めてまいるつもりでございます。
  37. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 実際、この改正に関する答申が出たのが平成九年十二月十六日であります。この法案が提出されたのがつい先日でありますから、現行の法制度との整合性という意味において、現状、法的な制度においてなかなかそこまで間に合わなかったのかなというふうな思いもありますけれども、実際問題として、この新聞記事に限らず、幾つかの、まだまだこれでは日本の知的所有権に対する政策というものは道半ばではないか、まだまだ甘いのではないかというような点の指摘が各識者や関係するところからは出ているわけでありますので、今後、不断に見直していただいて、本当に名実とも実効力あるものにしていただきたいと思います。  時間もございませんので、次に進ませていただきます。  私も静岡県の人間でございまして、静岡県にも、平成九年度の特許庁の流通支援事業、特許有効活用モデル、知的所有権センターが地域の中核機関として推進をしていくということで、そうした施設も整備されました。  聞くところによりますと、八十三万件の特許のうち、休眠しているものが五十六万件ある、この休眠特許を取得してそのメリットを生かしましようということが幾つかPRをされているわけであります。新技術や新製品の開発は、巨額の投資や長い年月を要する多くのリスクがそこには伴うわけでありますけれども、その反面で、こうした休眠特許のメリットということを生かせれば、地域産業振興においても何らかの着眼点、アイデアが生まれて、そこで一つ産業企業化されるというような指摘もあるわけでございます。  そうした中で、この休眠特許、零細、中小企業は、ニーズをとらえたアイデア、シーズや技術に不安がある断片的な特許、何となく中途半端になってしまってそのまま、アイデアはいいのだけれどもなかなか完成度の高いものになっていない。その反面で、中堅企業や大企業は、完成度は高いけれども、それを今、市場ニーズを見越して製品化したり、あるいは何らかの形で具現化するということには二の足を踏んでいるということで、双方からの休眠特許というものが、今、現状でこれだけ特許が眠っているということであります。  地方ではこうした知的所有権でありますとか休眠特許活用ということについては、実際、正直言つくまだまだこれから対応していくところである。そうした中で、今後、地方のそうした自治体に対してどのような役割が求められていくのか。これからの中小企業あるいは地方のそうしたベンチャーを考えている方々にしてみますと、国一よりも身近な県であるとか市であるとか、そういったところからまずは相談を持ちかけるなり、何らかのそうしたものとの出会いを考えていく、そうした中でこれから地方自治体の役割というものも大きくなってくるわけであります。  今後、地方の最も身近なところにおいてどのようにこの休眠特許というものを活用するような手だてをとっていかれるのか、その点についてもお尋ねをしたいと思います。
  38. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 今、休眠特許のお話がございましたが、せっかくの技術開発をしたその成果の特許が使われていないということは、非常に残念な状態でございます。特許技術情報の塊でございますから、これを有効に使うといろいろ、中小企業の方が発展をしたりベンチャービジネスを起こすという意味で、大きなきっかけになるのではないかというふうにも思っております。  そういうこともございますので、ぜひこれからは、各自治体の皆さん方と連携をとりながら、特に自治体の皆さん方は中小企業やベンチャーと一番身近に接しておられますので、協力をしながら、データベースを整備したり、流通フェアを一緒に開催するとか、あるいは特許流通アドバイザーを派遣していろいろ共同で事業をするとか、そういう事業を都道府県の方、あるいはさらに市町村の方とも御相談、協力しながらやっていきたいと思っております。
  39. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 そういう意味で、ぜひそれはお願いしたいと思います。  身近な自治体あるいは身近な情報提供ということになりますと、これは県であるとか市であるとかあるいは商工会議所であるとか、そういったところでどれだけのそうした情報に出会うことができるか、そしてまたどういった投げかけを受けることができるかということで、こうした知的所有権という古くて新しい問題といいますか、言葉といいますか、これに対しては、ぜひともさらなる地方への浸透を図っていただきたいというふうに思うわけであります。  今度のこの特許法の関連について、こちらの方のおしまいの質問にさせていただきますけれども、先般、私どもも特許庁の方、見学をさせていただきました。大変短い時間でありましたけれども、効率的に見せていただきまして、非常に大勢の方々が大変膨大な数の特許の申請を今一生懸命審査している。  そうした中で、実際問題として、これはよく言われることでありますけれども、特許の取得までに非常に時間がかかる。そしてまた、この状況を改善するためにさまざまな努力をしているということを先般もお話を伺っているわけでありますけれども、これはちょっと開いてみた特許庁のホームページの、審査第五部だったでしょうか、そこでは、いまだほとんど二年前、平成八年に出願された案件を審査している。これは特許庁さんが出しているホームページを開いたわけですけれども。  実際問題として、申請者にしてみると、二年たって今審議されているところであるということで、なかなかまだ期待にこたえられないのではないかなというような率直な思いをするわけでありますけれども、この点について、人員の補充あるいはアウトソーシング、こうした中でどういうふうにして対応していかれるのか。国民に適切なサービス、新たなビジネスチャンスを一日も早く生んでいくという意味でも、この人材面も含めて、こうしたことをどのように対応していかれるのか。この問題のおしまいにお尋ねをしたいと思います。
  40. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 今御指摘ございましたように、特許庁の審査の状況がなお遅いのじゃないかということは、私ども真摯に受けとめております。従来に比べたら速くはなってきておりますが、しかし一方、社会の流れが速くなっておりますし、技術は陳腐化すると言われておりますので、一層努力をしていきたいと思っております。  そういうことのために、まず、しっかりした審査官になるように研修を強化するとか、適正な人員を配置するということをやりたいと思いますが、同時に、こういうものをサポートするコンピューターを使って検索を容易にするとか、いろいろな手続を合理化する、さらにまた準備的な事業、補助的なことについては外部の方、アウトソーシングによってサポートをしていただく、こういうものを組み合わせることによりまして、効率を上げていきたいと思っております。
  41. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 これだけ日本じゅうに優秀な方々、それぞれ在野の中にもいらっしゃいます。そうした方々のそのすばらしいひらめきといいましょうか、考案といいましょうか、そういうものが本当に日本の戦略物資となるように、そのためにも、そうした部分について入り口でつまずかないように、ぜひとも今後体制を整えていただきたいと思うわけでありますし、また、それを要望しておきたいと思います。  この問題でまだまだやりたいところもあります が、もう残り時間が三十分ほどになりましたので、今回の大学研究成果移転法についてのお尋ねをしたいと思います。  かつて象牙の塔と言われた学究機関、学術、学問の塔から、いよいよ今回のこの法律が施行されるようになれば、経済発展の一端を大学というものが担うようになる。そして、その研究の実用化をこの社会発展のためにますます今後高めていくことになるであろうということで、基本的には、この法案が遅きに失したとはいえ、アメリカが一九八〇年、先ほどもお話がありましたような中で始まった。それにおくれること、日本もようやくこのたびこういった形で法制化されるわけでありますけれども、その実効性ということについては、これから大きな問題になってくるであろうというふうに思います。  今回、まずこの問題の第一点目にお尋ねをしたいのでありますけれども、この法案の提出理由。  既にこれまで、国立ていいますと筑波大学がリエゾン研究所、リエゾンというのはフランス語で橋渡しとかそういった意味のようでありますけれども、また、私学でも立命館大学、そういった中で幾つか大学が、東京大学でありますとか北海道大学でありますとか、そういった形で大学研究成果移転促進ということを進めてきた。  こうした中でこの法案がいよいよ必要とされるということになった点について、どういうような考えが背景にあって、これからどのようにこの国の中で大学役割を位置づけていくのかということについて、改めて、この法案提出に至った背景について、できれば大臣にお尋ねをしたいと思います。
  42. 江崎格

    ○江崎政府委員 今回この法案を提出させていただきましたねらいといいますか、背景でございますけれども、私が申し上げるまでもないのですが、大学には研究資源が大変多く集中しておりまして、潜在能力が非常にあるわけでございますけれども、まだごく限られた大学でしかこの技術移転のための組織が設立されておりません。今先生幾つか例を挙げられましたけれども、実際に動き出しているものということで見ますと、全国的にはまだ三つ、四つぐらいしかないかというふうに思っております。  そういう意味で、国全体ということで見ますと、大学の研究の成果が産業界で有効に活用されているかといいますと、非常に不十分だというふうに認識しております。特にアメリカなどと比較しますと非常に見劣りがするという状況でございまして、こうした状況を踏まえまして、大学などにおける技術に関する研究の成果を民間事業者移転をしまして、産業界において有効に活用するということは、新規産業の創出ですとか、あるいは産業技術の向上を通じまして既存産業が高度化するという観点からぜひ必要だというふうに思っておりまして、これが経済構造改革の一つの有力な手段だというふうに私ども位置づけております。  こうした技術移転によりまして、産業界のニーズがフィードバックされる、そして、成果の移転の対価が還流することになりまして研究活動活性化が図られるという点で、大学にとりましても有益ではないかというふうに思っております。  こうした観点から、大学における技術に関する研究成果民間事業者への移転促進するための諸施策をこの法案によりまして講じたいというふうに思っておるわけでございます。
  43. 堀内光雄

    堀内国務大臣 ただいま局長から御説明申し上げたように、大学における先生方のせっかくの研究成果というようなものが、結果的には今非常に埋もれてしまって表にあらわれてきていない。また同時に、そういうものの成果というものを特許権として提出したりする事務だとかいろいろな努力を払うこと自体に、非常に煩雑なこともあり、熱意を持っていらっしゃらない方もいらっしゃる。  一方では、特定の企業との形の中で先生方の研究が企業活動の中に生かされているというようなことを考えてまいりますと、やはりこういうものははっきりと筋道の立った形の中で、二十一世紀に向かっての日本の知的な財産権というようなものを大きく活用できるようにしていかなければいかぬというふうに考えておりまして、委員の御指摘のように、幾つかの限られた大学では技術移転のための組織が設立されておりますけれども、それをもっと拡大して根本的な対応ができるようにしようということが基本でございまして、将来の日本産業活動活性化する一番重要なものだというふうな認識のもとに取り組んだわけでございます。
  44. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 こうした提案に至った背景についてお尋ねをしまして、今お答えをいただいたわけでありますけれども、産学連携研究開発促進という制度は、もう既に昭和五十八年の共同研究から始まって、研究交流促進法、ベンチャービジネスラボラトリー、リサーチ・オン・キャンパス、提案公募型研究、地域コンソーシアム研究開発制度、本当に幾つかの制度がこれまで実行され、あるいは提案をされてきたわけであります。  今回の法律に伴って、一つはこうした諸制度の整理というものがされるのかどうなのか。ある意味では、説明にもありますTLO、テクノロジー・ライセンシング・オーガナイゼーションですか、これが設置されることによって、これまでの制度というものが糾合されるといいましょうか、一つの何らかの形で収束をしていくというふうに理解をしていいものなのかどうなのか。  何よりも、こうした特許を生かすということについて、大学側の特許をこれから企業がある意味では利用できる。また、それによって大学側も、研究開発費が企業の方からその対価として与えられることによって、これからさまざまな新しい分野、基礎分野のみならず応用分野においてもさらなる研究が進むのではないかというふうに思っているわけでありますけれども、そういう意味において、これまでの産学交流と今回の本法によるTLOの設置の整合性についてはどのように理解したらいいのか、お尋ねをしておきたいと思います。
  45. 江崎格

    ○江崎政府委員 これまでの産学連携のための制度整備と、今回御提案しております制度関係でございますけれども、御指摘のように、近年、産学連携の体制整備を図るためのいろいろな制度改革、施策を充実してまいりました。人材面、資金面の手当てをしてまいりまして、例えば、研究人材の交流のための各種の規制緩和ですとか、あるいは共同研究開発を推進するための各種の予算措置等を講じたわけでございます。  この法案で御提案しております制度というのは、大学などにおける研究成果が眠ったままになっている、それが活用されない、非常に不十分な状態にあるということに着目をいたしまして、こうした産学連携施策の一環としまして、大学における技術に関する研究の成果をまず特許化をする、そしてそれを民間事業者移転して、産業界において有効活用を図るということを主たるねらいとしたものでございます。  全体として、先ほど申し上げましたように、研究成果産業界における活用が不十分だという実態を踏まえまして、この制度、それから従来からいろいろ充実してまいりました産学連携の諸制度、これらを相互補完的に、お互いに有機的に連携を持ちながら活用したいということで、重ねて申し上げますが、今回の制度は、研究成果特許化して、それを民間事業者に橋渡しするということを主たる目的にした制度というふうに理解をしております。
  46. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 アメリカではへこれによって大変な、莫大な研究費用を各大学が得るようになった。本当に莫大な金額で、ある大学では年間六十五億円という研究費を企業から対価として得ている、このような統計もあるわけでありますけれども、実際、この法律の目的を達成するには、こうした特許、これを扱うTLOという新たな窓口、窓口といいましょうか橋渡しができる機関というものの中でも、コーディネーターの能力というものが非常に重要になってくると思うわけであります。  特許等の内容ですとかあるいはその価値の内容について、十分に理解する科学的な知見が必要である。もっと言えば、これは市場を見きわめるマーケティング力でありますとか企業とのネゴシエーション、交渉力、そしてまたある意味では人脈といったものも必要になってくるわけだと思います。これは実際幾つかの、ジェトロ等が委託を受けて出している「米国大学研究機関における起業展開促進技術開発支援のための仕組み」、こうしたレポートにもあります。幾つかのアメリカ大学等のこうした産学交流プログラムをレポーティングしたものの中にはあるわけであります。  それについて、日本に立ち返って考えた場合、非常にまだまだそういった人材が、まあこれからの話でありますから、今後、確保し、またこういう方々の役割が大きくなってくるというふうに思うわけでありますけれども、こうしたことについて、今後はどのような人がコーディネーターとして望ましい、また、そういった人をどのようにして育成すべきなのかということで、特許庁のお考えをお尋ねしたいというふうに思います。
  47. 江崎格

    ○江崎政府委員 この事業が成功するかどうかというのは、まさに先生御指摘のように、この事業の目的に合った人材を確保できるかどうかということが決め手だというふうに思っております。  今先生がおっしゃったように、要求される能力として、技術の内容を把握する、それから市場性の観点からそれを評価をしまして、ふさわしい企業にこれを譲渡するというマーケティング能力、こういったことが必要になるわけでございまして、こういったことを実現できる人材というのは、今まさに先生がおっしゃったように、我が国におきまして必ずしも十分でないと思います。  当面、こうした人材のソースとしまして私どもが考えておりますのは、企業知的財産管理部門におられた方々、そういった部門のOBの方ですとか、あるいは特許関係に長く携わっておられる弁理士の方々、こういった方々を活用したいというふうに思っておりますし、また、知見を持つ大学教官、こういった方々の技術の評価の能力といったようなことを買いまして、彼らに助言を仰ぐといったようなことも考えたいと思っております。また、実際にその発明を行いました大学教官が、移転先の民間事業者に対しまして技術指導を行うということも期待をしているところでございます。  通産省としましても、特許庁におきまして既に行っております特許流通アドバイザー派遣制度というのがございますけれども、こういった制度活用、あるいは技術移転事業に関する情報提供を通じまして今回のこの事業の認知度を向上させまして、TLO技術移転機関が有用な人材を確保あるいは育成することを促進していきたい、このように思っております。
  48. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 ぜひとも、これからの話であります、本当にそれこそこれからスタートというところでありますから、そういった人材をとにかく育成していく。これは、民間企業においても、大学においても、あるいは弁理士さんのような特殊といいますか、そういうような専門家においても、今後こういう問題がますます大きなビジネスチャンスになる、あるいはある意味では新しいやりがいのある仕事であるということになれば、生まれてくると思います。  そうした中で、今特許移転ということに関して、ちょっと一つ、私ども地方におりまして、大学の先生ですとかそれから中小企業の経営者の方々にお尋ねをしました。そうしますと、大学のある、ないという地域差。それから、中小企業がなかなか産学連携、今もいろいろな形でやっておりますけれども――中小企業白書、これは平成八年度の「中小企業の動向に関する年次報告」、その中で、産学連携現状というような内容を記されたページがございます。  それを見ていきますと、中小企業の側にしてみますと、「大学との連携が中小企業でも現実的に行えることであると、これまで気がつかなかった」というような回答が三一・七%。何らかの研究開発を行う必要があると考えているにもかかわらず、まさかそこまで自分たちが取っかかることができると思わなかったというようなことがあるわけでありまして、中小企業と大企業、あるいは中堅企業においては、どうしても情報ヘアクセスする能力という意味において非常に、中小企業か大企業であるかによって、まず一つそこに格差が生まれてしまうのではないか。  もっと言えば、工科系の大学がある――私はかつて八王子におったことがあります。八王子、特に多摩地域は、工科系の学部を持つ大学が当時たしか十五、六ありました。大体、全体で大学自体が二十幾つあるわけですけれども、例えば秋田県なんかに行ってみますと、私が調べたところによりますと、国立の秋田大学の鉱山学部しかない。  どうしても地域によって、首都圏であるとか大都市にあるところには、国公立、私立問わず何らかの形で大学という研究機関がある。しかし、地方に行きますと、本当に一つしかない。あるいは、あってもそれが地元の本当のニーズ、これから必要とされるような分野の大学の学部であるかどうかということについて、格差が生まれると思うわけであります。  その点につきまして、これからどのようなギャップというものを考えて、埋めていくのか。確かに、インターネットのようなものができて情報の距離感というものはだんだんなくなってきたとはいいながら、そうした指摘もありますけれども、その点についてどのようにお考えになっているのか、お尋ねをしたいというふうに思います。
  49. 江崎格

    ○江崎政府委員 まず、地方における大学の問題でございますが、技術移転事業というものを安定的に実施するためには、技術移転事業者が、技術のシーズというものを、ある程度の一定量を常に抱えているという状況が必要だと思います。  そういう意味で、大学の存在が、仮に余り数が多くないというような場合ですと、そういう点に支障が生ずるわけでございますけれども、現在、具体的な動きとして、既に幾つかの地方において複数の大学が共同して移転事業みたいなものをやろうというような検討がなされておりまして、こういった方法が一つの解決方法かというふうに思っておりまして、私どももそういったことについていろいろな形で御支援をしていきたいというふうに思っております。それから、今御指摘中小企業の問題でございますけれども、これからの新しい新規産業の創出、ベンチャー企業の創出というようなことを考えますと、中小企業役割というのは大変重要でございますけれども、今先生まさに御指摘のように、中小企業にとりまして、大企業に比べますと、大学との交流ですとかあるいは大学活動に関する情報の収集能力におきましてどうしても不利な状況になっているというのは、御指摘のとおりかというふうに思っております。  私どもも、こうした点を考えまして、中小企業を支援するためにいろいろな施策を既に実施をしているわけでございまして、例えば中小企業地域産学官交流促進事業ですとか、あるいは中小企業地域産学官共同研究事業といったようなことをやっておりますけれども、こうした事業を通じまして、中小企業への大学研究成果の普及ですとか、あるいはどういった研究が行われているのかといった情報提供とか、こういったことをいろいろな制度を通じまして充実をしていきたい、それによって中小企業の不利な点を何とかカバーするように努力していきたい、このように思っているところでございます。
  50. 雨宮忠

    雨宮政府委員 大学のことにつきまして、若干補足させていただきたいと思います。  今、国立大学が全国に約百ぐらいあるわけでございます。今先生御指摘のように、中には工科系学部を持っていないところ、あるいは大学の数自体が非常に少ないところもあるわけでございますが、このところ、非常に財政状況が厳しい中ではございますけれども、例えば、和歌山大学でありますとかあるいは島根大学でありますとかあるいは弘前大学でありますとか、従来工科系学部を持 たなかったところにつきまして、いろいろ学部改組等の工夫、改善を行いまして、そのような学部をできるだけ配置するように心がけておるところでもございます。  国立大学で措置するのはなかなか難しいということになってまいりますと、例えば、最近の動きでございますと、各地方公共団体がかなり意欲を持ちまして、県立大学とかあるいは市立大学でその種の分野の学部を設けようという動きもあるわけでございますが、全体として十八歳人口が減少しておるところでございますので、今後、それぞれの地域にそれぞれのかなりの種類の学部を設けるものがどんどんできるというような見通しはないと思うわけでございます。  むしろ、私どもとしてこれから心がけていかなければならないと思っておりますのは、現に、そういう工科系学部だとか、先生御指摘の、中小企業がアクセスするだけのポテンシャルを持ったものがあるにもかかわらず、そことのコンタクトが十分でないというようなこと、これはやはり改善していかなければならないだろうということで、大学努力も不十分なところもあるかと思うわけでございますが、我が大学はこういうことができるのだということを、経済界あるいは産業界に向けていろいろな機会を通じて啓発していく、知ってもらうように努力する、これを私どもとしても大いに支援していくということも必要ではなかろうかと思っているわけでございます。
  51. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 実際、ある私立の大学の先生に話を聞きましたところ、例えば国公立大学と私立大学がある、そうしたところに県立大学の工学部と私立があったら、どうしても公立大学の方が、地方自治体レベルでいきますと、県立大学なんかの方が、ある意味ではバックアップをしてくれるのじゃないだろうか。大学がそれぞれアピールしても、あるいはそういうものをつくっても、何となく行政が後押ししてくれた方がスムーズに情報は流れやすいし、私立がやるというのは、大学地元産業界と結びつきがなかなかまばらである。その反面で、公立学校ですと、県を経由して、あるいは市におりて、ありとあらゆるところで情報を提供することができる。どうしてもそういう格差が生まれてしまうのではないかというようなことを懸念しているというある大学の先生もおりました。  そうした中で、先ほどもちょっと申し上げたのですが、中小企業が、技術面ですとかあるいは経営面、こういうアイデアがどこかにないだろうかというようなことで、産学交流の取っかかり、本当に情報の双方の出会いということは、これもTLOというよりも、まずはやはり身近な地方の自治体であるとか、あるいは県でいえば工業技術センターであるとか商工会議所であるとか、そういったところにまず最初に相談が持ちかけられると思うわけであります。  こうした意味において、今後ますます自治体の役割は高まる、ある意味では、自治体が大学のそういった研究開発部門あるいはTLO地元産業界との橋渡しをしていく役割は、これからますますふえると思うのですが、この点についても、地方自治体の今後の役割、また整備すべき課題、それをまたこれからどうしていくかということについて、お尋ねをしておきたいと思います。
  52. 江崎格

    ○江崎政府委員 この制度ができましたら、少しでも多くの民間の事業者に活用していただきたいというふうに思っているわけでございますけれども、そうした観点から、今先生の御指摘のような、自治体にもこの制度をよく御理解いただいて、中小企業者によく御説明していただく、広報をしていただくというのは、非常に大事だというふうに思っております。  今後、もし法案が通りましたら、私ども、自治体に対しても十分この制度を御説明いたしまして、相談を持ち込まれた中小企業に対しまして、自治体の方からも十分御説明をしていただくというようなことを重点を置いてやっていきたい、このように思っております。
  53. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 ぜひともお願いしたいわけであります。  ただ、ちょっとアメリカの例を見ますと、こうした産学交流プログラムの中で、これはカリフォルニア大学のバークレー工学部というところなんですが、ある意味では会員制をとっておりまして、その大学一つのおつき合いをする会員をつくる、いわゆるTLOですね。  こうした中で、条件を幾つか見てみますと、例えば工学部には無条件に寄附を毎年二万ドル以上提供をするとか、会員に対するそれによる恩恵は各学科が独自に定めるとか、大学の先生を時には一週間に一日企業へのコンサルタントとして出すとか、あるいは若い研究者をリクルートする機会をつくってもいいですよということで、どちらかというと、これは成熟してきますと、大学の方がある意味では優位に立って、そうした会員向けサービス、それから学生を試験的に雇用できる、日本とこれは百八十度違うと思うのですけれども、あるいは社会人を再教育してあげましようということで、恩恵が授けられるわけであります。  ただ、こうした問題は、大手企業にとって、例えば大学がある、そこの周辺に大手企業の研究所なり事業所がある、そういうところにあれば、そのコストとして年間二万ドル、三百万円近いお金を寄附することもやぶさかではないと今後はなってくるのかもしれませんが、中小企業ですとか、さあこれから芽を出そうというベンチャービジネスにしてみますと、もうその時点で、ある意味では各大学の情報の枠からはみ出てしまうのではないか。会員にならないとそういった恩恵を受けることができないというのでは、中小企業、ベンチャービジネスとこれまで既存の大手企業ではどうしても格差が生まれてしまうのではないかというようなことを、私ども、このアメリカの幾つかの例を見て思うわけであります。  実際、こういったことが今後進んでくると、大学一つの自分たちのチームといいますか、あるところで枠をつくってしまうようなことにならないか、それによって中小企業が不利益をこうむることはないのか、その点について、再度、どのようなお考えで今後この法律が通過をして施行されるようになれば特許庁として対応していくのか、また、どういった指導を今後していくのか、もっと言えば、これからどういう課題が出てきてそれをどう克服していくかについて、ちょっとお考えを伺いたいと思います。
  54. 江崎格

    ○江崎政府委員 今回御提案しております制度でございますけれども、これは大学に眠っております研究の成果を民間の事業者に橋渡しをしようという制度なんですが、これは恩典を受けるためにこの制度で承認とかそういう仕組みをいろいろやっておりますけれども、実は、法律上は許可を受けなければいけないとかそういうことは別にないわけでして、今でもこの事業をやろうと思えば全く自由にできるわけです。ただ、恩典を受ける際に計画の承認とかそういうことになっていますけれども、事業そのものはやることは全く自由だということでございます。  それからもう一つは、産学連携のためのこれまでのいろいろな施策、特に中小企業に重点を置いた各種の施策は、従来と同様といいますか、我々としては従来以上にいろいろ今後ともさらに重点を置いてやっていきたいというふうに思っております。  それから、今回の法案におきましても、実施指針の中におきまして特に中小企業への配慮ということは私ども重点を置いて書いていきたいというふうに思っておりまして、今先生の御指摘のようなことは、今後のこの制度の運用に当たりまして十分配慮していきたいというふうに思っております。
  55. 渡辺周

    ○渡辺(周)委員 時間もなくなりましたので、最後に一つお願いをしたいと思います。  特に今回の法律の主眼というのは、新しい産業を起こす、それによってニュービジネスの担い手というものが地方の地域産業界の中から生まれてくる、これが理想である、これを主眼に出された法律だろうと思います。それだけに、情報量あ るいは資金量、それから人材という面でも大手の企業に比べてやはりどうしてもおくれている、ハンディを持っている中小零細企業にその機会均等が与えられますように、ぜひともその点を運用の中で進めていかれることをお願いをしまして、私の質問を終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  56. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、原口一博君。
  57. 原口一博

    ○原口委員 民政党の原口一博でございます。  大臣並びに関係省庁に特許法の関係、そしてTLO関係で幾つか御質問をさせていただきたいと思います。  まず、堀内通産大臣にお尋ねをしたいと思います。  先ほど古賀委員から問題提起がございましたけれども、本当に今の景気の現状経済構造改革、その改革を進めるにも大変厳しい状況がございます。大臣は三十代で企業のオーナーになられ、そして、企業名を言うとなんですが、冨士急ハイランドというところで子供たちにもたくさんの夢をお配りになった。企業のオーナーとして今まで頑張ってこられた、そういう御経験からしても、今の経済不況、これが大変深刻であるということを御認識なさっているというふうに思います。  また、この国会では、私たちが一番問題にしなければいけないのは、財政構造改革と私たちが今この商工委員会質疑をしている経済構造改革、この関係がどうなるのか。私たちは、この財政構造改革については、日本はまだたくさんの力を持っている、ここで思い切り景気に対して逆噴射を与えるべきではないということを昨年のこの財政構造改革法案が国会に出てくるときから議論をしていたわけでございます。今、この時点に至って、政府・与党におかれましても、やはり近々の大変重要な課題は景気なのだということで、この見直しの議論が活発に行われております。  ただ一方で、私たちは先日まで予算委員会質疑をしておりましたが、ある大臣は、この財政構造改革については、並々ならぬ決意を持ってつくったのだから、そう簡単に改正してもらっては困る、そういう御意見もあったわけでございます。  大臣にまずお伺いしたいのは、現在の景気をどのようにお考えになり、そして臨機応変の経済対策を打つ、あるいは、これから私も質問させていただきますが、知的財産権やさまざまな技術移転を行うためにも、そのバックボーンとなる経済の力というものが大事だというふうに思いますが、基本的な御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  58. 堀内光雄

    堀内国務大臣 御指摘のように、経済構造改革、それと財政構造改革、この二つの問題というのは車の両輪のようなものでありまして、財政構造の改革をする場合には、やはり一面において経済的な発展があって、それによってまた財政が豊かになり、そういう両方の活動によって初めて成果を上げるということになるものだというふうに認識をしておりまして、財政構造改革自体は非常に重要な問題でありますし、これをないがしろにして、将来に向かって放置しておくわけにはいかない問題だ。  ただしその場合に、一方において、景気の拡大といいますか、経済構造改革による規制緩和だとか税制の改革だとか、いろいろな面を含めて経済活動が活発になってきて、それによってまた財政構造の面にフィードバックしてくるというような、二つのものがかみ合っていかないとうまくいかないものであるというふうに私は認識をいたしております。  そういう点で考えてまいりますと、今の景気の不況状況というのは大変深刻なものになってきていると思います。年度末、昨年からの貸し渋りの問題だとか、あるいは経営者のマインドの問題だとかいうものが予想以上に非常に低下をしてきているということを考えますと、今の年度末を乗り切るということが一つの大きな問題であったかもしれませんが、同時に、この五月、六月というのは、大きな不況というか、景気停滞の中で厳しい局面を迎えるのではないかというふうに私も認識をいたしております。  特に年度末については、資金的な面での資金ショートをさせないということによって何とか乗り切るということが一番重要でありましたけれども、今度の五月、六月の山というのは、各社の決算が出てまいります。その決算が出てまいりますと、今度の場合は非常に厳しい決算の会社が非常に多くなってきているということになりますと、さらに企業経営者のマインドが冷たくなってくるというようなことになってまいりまして、それから始まる経済活動というものにまた水を差すようなことになりかねないというふうな感じで、この五月、六月の景気というもの、決算というようなものに向かっての経済取り組みということは、非常に重要なものだと認識をしているところでございます。  私の印象としては、いろいろの景気対策はございますが、企業活動を活発にしていくということはやはり一番基本ではないかと私は思っておるのです。企業活動というのが活発になることによって設備投資も拡大される、あるいは雇用も安定をしてくる、さらに、収益を上げることによってベースアップも増加をしてくる、そういう基本のところから回って経済活動をしてまいりませんと、一時的な減税だとか、一時的な対処療法のようなもので取り組んだ場合は、その時点では何とか一つの効果をあらわすかもしれませんが、長いスパンで考えてまいりますと、まただめになってきた、まただめになってきたというようなことがあらわれてまいります。  したがいまして、私は、やはり企業の減税、企業活動活性化するための政策、そういうものを行っていって、それが結果的には経済全体の設備投資に、あるいはそれが回り回っていって個人の所得の増加につながり、それが消費につながってくるということでありまして、その原点からまいりませんと消費の拡大というものはあり得ないのではないか、特に近ごろの一番の問題は雇用だというふうに思っております。  今度の年度末から始まりまして、今各社の決算の発表などのときに必ずリストラの再建計画というものが大きく出てまいります。その際に必ず出てくるのが人員の削減というものでありまして、人員削減が今別に大手を振って歩いているとも言えませんが、それが当然のことのような印象というのは、これはやはり何といってもこれから先の雇用に対する不安感というものが出てまいっております。  ですから、この雇用不安をなくするということになりませんと、幾ら減税してもそれは必ず貯蓄に回っていくということになるわけでありまして、そういう全体の総合的な、今突然のお話でございまして要領を得たかどうかわかりませんが、私は、そういう意味では企業活動活性化ということを一つ中心に置いた景気対策というものを考えていかなければならないのではないか、現状は非常に深刻であるというふうに思っております。
  59. 原口一博

    ○原口委員 大変御丁寧に御答弁いただきましてありがとうございます。おっしゃるように、一時的なびほう策ではこの経済というのは立て直せないというふうに思います。  私も松下幸之助さんに育てられましたけれども、一軒一軒、月に三百万というノルマをいただいて電気製品を売って歩きなさいということでございました。企業の実態あるいは消費の実態、現場からの声を一番大事にし、今大臣がおっしゃったように、一時的な減税ではなくてむしろこれを恒久化する、あるいは法人税の減税、企業活動思い切って活発化するような施策というのが今求められているというふうに思います。  そこで、本法案の特に特許法の改正につきましては、今まではアンチパテントという考え方、つまり経済成長を、キャッチアップの時代は余り知的財産権なんということを持ち出さないで、みんながさまざまな情報を共有化することによって効率よい経済をつくっていこう、そういう考え方でございましたが、今度は違う。金融のビッグバンも起こり、そしてこれからは情報の分野でもビッ グバンが起こってくる、金融の分野ではもう金融によるエンクロージャー、金融による囲い込みというものが行われようとしています。私は、情報についても情報による囲い込みというものが行われてくるであろう。そのときに一番大事なことは、経済構造改革をする上で大変大事なことは、この知的財産権をしっかり守るということだというふうに思います。  そういう意味で、今回通産省そして特許庁が大変意欲的に取り組んで法改正をされた、しかし、これは最終ゴールではないんだ、時代の変化の要請にこたえてこれをまた修正をしていく。私もこの工業所有権審議会の報告を隅から隅まで眺めまして、知的所有権を守っていくためにはさまざまな抑止、これが大事なんだということをいろいろなところで書かれている。  そういう中で御質問させていただきたいと思いますが、昭和三十四年の全面改正により確立した工業所有権制度というのは、時代の要請にこたえつつさまざまな改正が行われてきたわけでございますが、この制度の果たしてきた役割、それは一体何だったのか。そして、今回の大幅改正によって、侵害し得の現状に対してどのように対応しているのか。  そして、先ほどの渡辺委員質問の中でもお答えになりましたが、三倍賠償の導入など、実現できなかった改正案というのもございます。私は、そこになぜ実現できない理由があったのか。民法七百九条の不法行為、この規定との関係でまだまだそこまでいかないのだという議論もあったというふうに伺いますが、私は、強い知的財産権保護、広い知的財産権保護をうたう上ではここは必ず盛り込まなければいけないところじゃないかというふうに思いますが、御所見を特許庁にお伺いしたいというふうに思います。
  60. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 現在の特許法は昭和三十四年、今から四十年前につくられたわけでございますが、これが果たしてきた役割は、戦後の経済成長にとって非常に大きなものではなかったかと思っております。いろいろ企業の方が戦後の復興に当たって工夫をしていくということで、改良を重ねて今日に至ったという意味では立派な役割を果たしてきたと思っております。  ただ、今新しい時代に入ったわけで、御指摘のような新しい情報が大事になってくる、技術が大事になってくるときに今のような状態でいいのかということから今回の改正法の議論が始まったわけでございますが、確かに日本においては損害賠償額が低い、あるいは損害賠償の裁判に時間がかかるというようなことで、侵害し得じゃないかということが言われておりまして、これでは創造的な技術開発が進まないということでございますので、今回の改正に当たりましては、新しい知的創造社会に向かっていい仕組みをつくろうということで取り組んだわけでございます。そういうことで、適正な賠償額を認定するとか、あるいは刑事罰強化いたしまして侵害を抑止するということに大きく踏み出したわけでございます。  しかしながら、御指摘のように、例えば三倍賠償、こういうものの導入については、いろいろ今までの日本の民法の原則とかその兼ね合いから、依然として、今のままでいいのかどうか、さらに入れるべきかとか議論をさらに続けることが必要だということになりましたので、今回は導入に至らなかったわけでございます。  ただ、いずれにせよ、御指摘のとおり、時代とともに特許制度も変えていかなければいけないと思っておりますので、今後とも、現在の御指摘も踏まえまして、各方面からの御要望につきましては真剣にこれを検討して見直しを加えていきたいと思っております。
  61. 原口一博

    ○原口委員 今御答弁いただいたように、やはり時代の要請に刻一刻こたえていかなければいけない、非常にビビッドな役割を持った役所であるということを御認識の上、法改正についても柔軟な態度をとっていただきたい。私は、これは通過点である、大変大きな決断であり、大変大きな御努力であり、そうであったということは素直に評価をした上で、ただ、まだこれも通過点であるということを申し上げたいというふうに思います。  また特許庁では、業務の効率化を図るために大体三百億円程度を計上してコンピューター化を図っておられます。他の国に先駆けてデータベース化して情報処理のスピードを速めた、これは大変結構なことでございますが、特許等の工業所有権のような重要な分野については、思い切って次なる重点的な投資をやるべきだというふうに思います。  例えば、この間、委員長初め視察をさせていただきましたが、特許の審査、そういったものを多くのエキスパート、人に頼っている。現在審査業務の効率化のためにコンピューター化を図っておられますけれども、もう次なる審査業務の効率化に対して新たな投資を計画をしていく段階に来ているのではないか。例えば推論コンピューターなどの先進的な技術を駆使したコンピューター技術を導入して、さらなる審査の早期化、効率化を図っていくべきではないかというふうに思いますが、大臣並びに特許庁の御所見をお伺いします。
  62. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 特許庁の仕事につきましてはコンピューターを使って相当業務を処理しておりまして、世界の中でも本格的にコンピューターを使っているという意味では日本が一番進んでおります。さらに、日本の行政官庁を比較いたしましても、出願人の方がコンピューターによって公式の文書を出せる、あるいはそういう出願人の方へコンピューターによって通知ができるということで出願人の方にも喜ばれている、こういうことで相当進んではいると思っておりますが、今御指摘のとおり、これで十分なわけではございませんで、いろいろな技術開発が進んでまいりますと、出願の内容もどんどん複雑になっております。また、大変深い、あるいは複雑なものになってまいりますと、人間がコンピューターをさらに使うことが、的確な判断をするということにとって必要かと思っております。  今御指摘の推論コンピューター、こういうものにつきましても、出願の内容から自動的に必要なキーワードを選択的に抜き出して、これを過去に関連する文献等抽出してやっていくということになれば、審査の質も上がりスピードも上がるということも考えられますので、そういう御指摘を受けて、一層またコンピューターの利用を進めてまいりたいと思っております。
  63. 堀内光雄

    堀内国務大臣 ただいま御説明申し上げたとおりでございますが、基本的には、今後とも、出願人の利便性の向上ということ、あるいは負担の軽減という問題、業務の効率化というものに資するようなコンピューター化にしっかりと引き続き投資をしていかなければならないと思っておりますし、同時に、推論コンピューターなどの先進的技術を利用した審査業務の早期化、効率化を行うために思い切った取り組みをしてまいりたいというふうに思っております。
  64. 原口一博

    ○原口委員 大臣、前向きな御答弁ありがとうございます。  ただ、この特許庁の予算、大体九百億円ぐらいだと思いますが、これは収支相償と申しますか、いわゆる特許料やさまざまな手数料によって賄われている。そうすると、重点的な投資をしたいと思っても、今回、特許法の、本法案改正によって大体二十九億ぐらい収入減が見込まれ、一方で、そのことによる効率化やあるいは便利になったということで、それ以上の収入の増も見られます。しかし、この特許庁の予算の枠の中でやれること、三百億円の枠、例えばコンピューター投資の部分の中で、枠でやれること、これは大変限られているのではないかというふうに思います。  財政構造改革ということで、きょうはその視点でもってお話をしたいのですが、財革法のさまざまなキャップがあることによって、本来だったら一番投資をしていかなければいけない、そういう分野についても私たちはさまざまな制約を課されてしまっている。  総理にも、先日質問をさせていただいたときに、カナダの行政改革を例に挙げまして御質問させて いただきました。思い切って削る分野、これは政府歳出の中で不透明な部分、本当に国民の生活、国民のウイッシュリストから離れた部分、このことについては思い切り削減をやらなければいけない。しかし、私たちが大事にしなければいけないこういう経済の成長分野については、逆にふやさなければいけない。一律何%かのカットをする、キャップをはめる、このことは、私たちはやってはならないことではないか。  後で文部省の方にもお尋ねをしますが、国立大学、研究を一生懸命やりましようということで、研究費をたくさん上げていただいている。しかし、実際には、さまざまな研究の周辺の部分、私も一時学校に残ろうという決断をしたことがありましたけれども、実際に学校に残ってみると、自分が助手やあるいは助教授、教授になっていく段階で、本来の研究とは全く違う、雑用と言っては言葉が過ぎるかもわかりませんが、そういったものがたくさんある。日本の若い人たちはそういったものに嫌気をして外に行っているのではないか。工学系の大学あるいは工学系の学部離れというものが叫ばれて久しいわけでございますが、一つは、そういったところに構造的な欠陥があるのではないかというふうに思います。  私は、今大臣がお答えになりましたように、この特許庁予算というその中、特別会計の収支相償の中だけではなくて、その外側から思い切った投資をする、このことが大事だというふうに思いますが、再度大臣の御所見をお伺いいたします。
  65. 堀内光雄

    堀内国務大臣 委員のおっしゃるとおり、これからの将来の、二十一世紀日本産業をリードするということになりますと、技術開発研究というものが一番重要なウエートを占めてまいります。  そういう意味で、財政構造改革を推進する中でも、今の科学技術、環境、情報通信等の経済構造改革の調整措置というものに対して、平成十年度の予算におきましても、前年を五%上回る科学技術振興費を計上するというようなめり張りのある予算配分を行っているところでありますが、今後とも、やはり経済活力を維持向上させるという意味、また経済構造改革を行うという意味でまいりますと、こういう技術開発についてのめり張りのある、ウエートを置いた予算というものを、さらに将来においても取り組んでいかなければならないと思っております。
  66. 原口一博

    ○原口委員 知的財産権については、これから二十一世紀日本経済政策、経済構造改革のまさに一番重要な部分であるということを御指摘させていただいて、そして、今大臣がお話しになりましたような積極的な取り組みをお願いし、TLOの方に移りたいというふうに思います。  私は十数年前から、地元におきましても、ハイテク研究会という、佐賀大学の皆さんと御一緒させていただいて、産業界の皆さん、それから行政の皆さん、そして科学技術分野の先生方と一緒にさまざまなテクノロジートランスファーができないかという研究会を月に一回ずつ開いてまいりました。その中で、例えば海洋温度差発電、これは佐賀大学の上原教授がやっておられるものですが、これを企業に応用できないか、企業の廃液の温度差を利用して発電ができないか、そういうさまざまな実際のテクノロジーのトランスファーというものをつぶさに見てまいりました。  ただ、その中で一番私たちが障害になるなというふうに思ったのは、それぞれの分野の人たち言葉が通じないことであります。私たちが例えば法律の用語、この用語を示してみても、科学技術の皆さんには何が何だかわからない。あるいは科学技術者の皆さんがこういうシーズがあるのだとお話しになっても、それが企業家にとってはどういうメリットがあり、どういうマーケティングをしたり、あるいはその産業が開いていくためにチャンスなのかということがわからない。まず言葉の問題が非常に大きくのしかかりました。同じ日本人ですからそれが通じるだろうというのは、大変甘いことでありました。  また、これは別の省庁でございましたが、ホームケアサポートシステムというものを構築しよう、新しい情報通信によって、家庭にいながらも、リハビリや医療相談やあるいはさまざまな情報のやりとりができるようにということを構築しようということで、国においても過去企画をされました。私もその下書きをさせていただいていたときに特に感じたのは、ドクターの言葉、お医者さんの言葉と、それから通信技術を担っておられる皆さんの言葉がミスマッチをする、そこの橋渡し役がだれもいない、その両方の技術に通じている人たち、いわゆるコーディネートをする人がいないということでございました。  今回の法律は、大学に眠っている、休眠している特許、それを民間企業にトランスファーする、これは大変大事なことだというふうに思います。法案の十二条から十四条の中で、大学にあるパテントを移すのですよという話をされています。先ほど質疑の中で、大学にある特許の中で、大体八五%は教授個人が所有しているということでございましたけれども、残りの一五%は国が所有している、国の財産であるわけでございます。  この国の財産については、これは通産省の方にお伺いしたいのですが、大体私たちが持っている財産、どういうものがあるのか、あるいは幾らぐらいなのか、その財産というのは国民の財産でございますから、きっちり保全できるのかどうか、その辺についてどのようなお考えを持っておられるのか、御質問させていただきたいというふうに思います。
  67. 佐藤壮郎

    佐藤(壮)政府委員 お答えいたします。  通産省工業技術関連国立研究所が現在所有している特許権の数でございますけれども、七千六十八件でございます。それから、出願中の数が二千三百八件。  それで、財産として、例えば金額的にどのくらいかというのは非常に難しゅうございますけれども、例えば現在まで特許の使用料として最大の金額、これはイソメラーゼ技術関連する特許でございますけれども、累積で十四億円でございます。  その次、二番目でございますが、これは液晶ディスプレイに関連する技術でありますけれども、これは、例えば累積で七億円という特許料の収入を上げてございます。
  68. 原口一博

    ○原口委員 国有になる一、二割程度の権利については、これは普通財産として大蔵省の国有財産課が所管することになっているというふうに思います。ただ、その中で、実質的には各省庁で管理しておるわけでございますが、そこには専門のスタッフもおらず、いわゆる知的財産権が大事だというけれども、私たち国民が持っている知的財産権、この保全あるいは管理というのは、まだまだ前の時代の発想でやっているのではないか。  国立大学のさまざまな知的財産権がトランスファーされるのはいい。だけれども、それを民間企業に売り渡すときに、例えば国鉄ですとJRになる、電電公社だとNTTになる、そのときには、NTTの株の売却益ということで国民に戻ってくる財産があったわけでございますが、知的財産権、特にこういう特許については、それの保全、あるいはトランスファーのときに幾ら国民にお戻しになるのか、そういったことについてもきっちり押さえておかなければいけない。ただ眠っているから、その技術については民間にお渡ししますよということでは、国民にとって一つの大きな損失になってしまうのではないか。このことはやはりきっちり指摘をしておかなければいけない。  財政構造改革のときもそうでございましたけれども、国の借金については皆さんおっしゃる。国と地方の借金が五百兆円にも及んで、国が大変ですよということはおっしゃる。ところが一方で、国が幾ら財産を持っているのか、国がどれほどの力を持っているのか。ネットの債務とグロスの債務では大幅に各国と違います。グロスの債務では日本は大変な借金国でありますけれども、ネットの債務として見れば、他国に比べてむしろいい方である。こういったことについてもきっちり議論をした上で、知的財産権のトランスファーをやっていくべきであるというふうに私は思います。  そこで、文部省にお尋ねをしたいというふうに思いますが、民間などの一部の資金の円滑な導入というもの、あるいは拡充というものを図っていく必要があるというふうに思いますが、文部省としてはどのようにお考えなのか。  そして、あわせてお尋ねをしますが、これは我が党の伊藤委員質問の中で、国立大学の先生がベンチャー企業の経営者になりたいと思っても、経営には参加することはできません。今回のTLO法の法案の中でもそのことについてはまだ道をあけていません。この質問に対して、堀内通産大臣はこのようにお答えになっています。「新規産業の創出を強力に推進する立場から、国家公務員法の特例規定を盛り込む必要性を含めて関係各省庁と今検討を進めているところでございまして、あきらめているわけではございません。」という御答弁をなさっています。私は、これは大変大事な御答弁だというふうに思いますが、文部省の御所見をお伺いしたいというふうに思います。
  69. 雨宮忠

    雨宮政府委員 二点お尋ねがございました。  一つは、大学研究条件関連して、民間の資金の導入の点でございます。大学研究条件を改善するということにつきまして、もちろん公的資金の拡充を図るということも大事でございます。国立大学の経費の充実、それから私立大学の三千億近い助成の充実、これは従来からの懸案でございまして、これにつきましてはこれからも努力していかなければならないわけでございます。  もう一つ、民間からの資金導入ということもこれまた重要でございまして、このため、かねてから、国立大学の場合ですと、奨学寄附金というような形で年間約五百億円程度の寄附をいただいておるわけでございまして、これが大学の教育研究の活発化のために大変役立っておるわけでございます。こういうことにつきましては、私どもとしても大いに推進してまいりたいというように考えておるところでございます。  また、税制面におきましても、平成七年度から共同試験研究促進税制を創設いたしましたし、また、今年度から学校法人の取りまし型基金への寄附金の全額損金算入が認められるということになったわけでございまして、これらさまざまな制度を整備することによりまして、民間の資金が円滑に大学研究条件改善ということのために活用されるように考えておるところでございます。  それから、二点目でございます。  国立大学教官の兼業の問題でございます。先ほどの御質疑にもございましたように、昨年四月から、民間企業技術指導というようなことのために勤務時間外で兼業するということについては許可をするということに改めたわけでございまして、先ほどもお答え申し上げましたように、約千件程度その兼業許可があるわけでございます。  先生の御指摘は、それをさらに進んで、例えば今回御審議をお願いしているTLOの役員でありますとか、あるいはTLOに限らず一般の、例えばベンチャー企業等の役員として経営参加するというような形での兼業ができるかどうか、それをどう進めるのか、こういうお尋ねでございます。  何分にも、公務員の服務あるいは公務員の倫理というようなことにも関連するわけでございまして、また、かたい言葉で申しますと、いわゆる全体の奉仕者性でありますとか、いろいろな論点がこれにまつわって出てくるわけでございます。十分検討に値することであろうかと思いますので、今後とも検討いたしたいとは思うわけでございますが、どちらかと申しますと、やはりTLOにつきましての検討というものが先立つのではなかろうかというように考えておるわけでございます。
  70. 原口一博

    ○原口委員 その中で、このTLOの趣旨を生かすためには、私は、この法案の第十二条の中で、「当該研究成果に係る国有の特許権若しくは特許を受ける権利又は国有の実用新案権若しくは実用新案」云々、こういったものの移転事業を行う者は、文部大臣に申請して、その事業が適合しているかどうかの認定を受けることができるというふうなことが書かれています。  これはストックオプションのときも議論をしましたが、私たちはこの発想をもう転換するときに来ているのではないか。何でもかんでも国が認定をして、国のお金でもって産業を育てていく、これはアメリカTLO一つ参考にしているのですが、この中で見落としているものがある。それはNPOの存在であります。一回私たちのお金を国税に納めて、そこで国がすべてに目配りをして産業を育成するという、もうこの形そのものが終わりを告げてきている。  そうではなくて、民間から民間、寄附金の控除をやる。さまざまな企業がいきなり企業化できるわけではありません。その過程においては、NPOという非営利事業、非営利集団をつくって、その中でさまざまな試行錯誤をして、これは企業化できるというものが初めて市場に出ていく。あるいは、株式会社やさまざまな営利集団になっていく。その過程をやはりつくらなければいけない。  この国会でNPO法案が通りましたけれども、まだそこの部分に対する寄附金の条項は弱いと言わざるを得ない。ビル・ゲイツやさまざまなハイテク関連企業の皆さんも、最初はNPOというふ卵器の中で、これは本当にやれるのかどうかという試行錯誤の時期を過ごしていることを考えますと、私は、こういう認定作業についても、できるだけ迅速に、そして、国が何でもやるんだという発想をもう捨てなければいけないというふうに思うわけでございますが、政務次官並びに文部省のお考えをお尋ねしたいというふうに思います。
  71. 雨宮忠

    雨宮政府委員 今回の法案TLOの機能を期待されたとおりのものとして立ち行かせていくためには、すぐさまこれがペイするような形で動くというのはなかなか難しいということでございます。したがいまして、これはむしろ通産省の方からお答えいただくべき事柄かと思いますけれども、公的な助成を通じてでもこのTLOの育成を図っていくということがまず必要なことだということで、今回お願いしているところでございます。  もとより、これが期待されたとおりに動き始めまして、大学からの技術が民間にトランスファーされ、そのトランスファーされたものに基づいた果実というものが、再びTLOあるいはさらにそれを通じて大学あるいは研究者の方に還流していくというサイクルが非常にうまく機能していくということになりますれば、多分、公的な助成がどうこうということを心配しなくてもいい場合が出てくるかとも思うわけでございますが、とりあえずのところ、やはり立ち上げるためにはこういう措置も必要であろうというように考えているわけでございます。
  72. 遠藤武彦

    ○遠藤(武)政府委員 委員おっしゃいますように、あらゆる分野において官といいますか、政治というか政府が関与する、こういうことが改善されていく、これこそまさに経済構造の改革ということの原点ではなかろうか、このように私どもとらえまして、鋭意努力しているところでございますので、なお一層の御指導と御助力のほどをお願い申し上げます。
  73. 江崎格

    ○江崎政府委員 事務的に少し補足させていただきます。  国立の試験研究機関が持っている特許につきましてTLOに譲り渡すときに、この十二条の認定と申しますのは、通常ですと特許を維持するために特許料等を払わなければいけないというわけですが、国有の特許を譲るときにはそれを免除するという、従来の特許制度の中では非常に著しい例外的な厚遇を与えるわけです。そういう厚遇を与えるにふさわしい組織かどうかということはやはり国が責任を持って認定しませんと、むしろ責任が持てないということかと思います。  TLOそのものをつくるのは法律上何ら制限はないわけでして、だれでも自由につくっていいわけです。ただ、特許料を免除してもらうのにふさわしいものかどうかというのは、それぞれ文部大臣あるいは各試験研究機関を所管する大臣が認定をする必要があるという仕組みでございます。
  74. 原口一博

    ○原口委員 補足していただかなくてもわかっていることなので、最後のは蛇足だったのかなとい うふうに思います。  今回のTLO法改正で、私たちは、研究者の自由が広がるのだ、この立場からやはり議論をしていかなければいけない。ある意味では、これによって逆に大学の、特に国立大学の研究が企業の下請になるのじゃないか、そういう御心配をする向きもあります。しかし、そうではなくて、大学の皆さんにとってもさまざまな資金や情報の流入、その風通しがよくなる、その自由を獲得できるのだという方向から議論をしていかなければいけないし、していきたいというふうに思います。  また、知的財産権ということでさっき特許の方のお話をしましたが、これを担保するためにもやはり最も大事なものは、その侵害が起こったときのトラブルシューティング、これをどう迅速に行うかということでございます。  司法制度に対して、あるいは特許庁の審判に対しくこれを迅速にやっていただきたい、あるいはもっともっと司法の仕組み強化してほしい、この意見は至るところから出ておるわけでございます。通産省の御意見、そして、きょうは法務省もお見えいただいておりますが、特に知的財産権保護、その侵害が行われたときにどのように解決していくのか、その解決策、制度の拡充についての御所見をお伺いします。
  75. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 特許庁では特許の審判を担当しております。審判について速やかに結論を出さないと侵害問題に対応できないのじゃないかという御指摘でございますが、私ども、御指摘をそのとおりというふうに痛感するわけでございます。そういうこともございますので、審判を速やかにするということで迅速化に心がけてまいりたいと思っております。  同時にまた、その結果が多くの国民の皆さんに影響を与えますから、インターネットによって審判の結果を出すということを始めました。これも世界的にも非常に画期的なことという評価をいただいておりますが、こういうことによりまして、侵害問題に特許庁としてもきちんと対応していきたいと思っております。
  76. 河村博

    ○河村説明員 御説明申し上げます。  規制緩和を初めといたします社会のさまざまな変化に伴いまして、国家の基礎を支える司法の果たすべき役割というのは今後一層重要になると考えております。法務省におきましては、このような観点から、社会の種々のニーズにこたえるため、例えば法曹人口増加のための法案を提出させていただいたところではございますが、今後とも、国民的見地に立ちまして、司法の機能の充実につき適切な方策を講じ、積極的に新しい時代の要請にこたえてまいりたいと考えております。  また、侵害訴訟について先生お尋ねでございますが、私の承知いたしておりますところでは、この四月から東京地裁におきまして、特許関係と申しますか、知的財産権の専門の部を裁判所におかれても増設しておられるようでございます。裁判所におかれましては、適正迅速な審理と裁判が行われますよう、今後とも事件動向を踏まえつつ適切に対処されるものと思っておりますが、法務当局といたしましても、これに十分に協力してまいりたいと考えているところでございます。
  77. 原口一博

    ○原口委員 質疑時間が参りましたので終わりますが、東京高裁で判事十名、調査官九名、そういう陣容でなさっている。私は、立法府として、司法府に対してもしっかりとこのことを、立法の実現性、立法の趣旨を担保する意味でも、こういった知的財産権に対する司法の充実ということを強く求めまして、私の質問にかえさせていただきます。  ありがとうございます。
  78. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 この際、暫時休憩いたします。     午後零時八分休憩      ――――◇―――――     午後一時二十三分開議
  79. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。中野清君。
  80. 中野清

    中野(清)委員 平和・改革の中野清でございます。  関連法につきましては我が党の井上議員にお願いしまして、特許法等の一部を改正する法律案について質問をしたいと思います。  我が国知的財産権を取り巻く環境の変化を見ますると、我が国経済構造がいわゆるキャッチアップ型からフロントランナー型へ移行が求められてくるのに伴い、これまでのいわば模倣に寛容な時代から、独創的な研究開発の成果を重視する知的財産権の広い保護、強い保護が求められております。  特許庁においても、昨年四月の二十一世紀知的財産権を考える懇談会の報告を受け、プロパテント、特許重視政策を強く打ち出していることはよく存じております。その報告書で、特許重視への具体策としての実損三倍賠償制度、最高懲役十年への延長、敗訴者裁判費用負担の改正は今回の提案では見送りになりまして、いわゆる侵害得をなくし、欧米並みの水準に改めるねらいは一歩後退したと産業界から不満が出ております。  また、先ほど来、本日、渡辺委員、原口委員からも質問ございましたけれども、御答弁については、いつやるかという点が私は率直なところ欠けていると思っております。それについて、再度、特許庁の御見解を承りたいと思います。  それと関連いたしまして、日本知的財産権をめぐる一般的な問題として、いわゆる賠償額が少ない日本の裁判では期待できず、訴訟を起こすなら日本でなく米国の裁判制度を利用するので、日本の裁判制度が空洞化する、第二として、裁判は長期間を要する上に費用もかかり、しかも損害賠償の認定額が少ない、裁判で勝っても費用で訴訟倒れになるケースが多く、日本では特許権利は侵害得である、第三として、侵害訴訟では、被告の代理人は楽だが立証責任を負わざるを得ない原告の代理人は負担が多くて大変だ、そういう声を聞きますが、これに対してどのような認識をし、それに対してどのように対応しようとしているのか、この二点についてお伺いいたします。
  81. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 ただいま御指摘いただきました日本のこれからのあり方ということで、昨年懇談会からプロパテント政策を強く打ち出した報告書をいただいたわけでございますが、その際に、日本科学技術創造立国になるには侵害のし得という状態をなくすべきだということで、今回の法律改正をお願いしているわけでございます。  こういうことでございまして、従来とはかなり方向が大きく変わって、民事においては損害賠償をしっかりとれるようになる、あるいは刑事においても罰則を強化するということで、抑止力を強化した侵害し得を改める方向になっているわけでございますが、なお、今先生から御指摘がございましたように、これで十分なのかというような声があるのも私どもは承知しているわけでございます。そういうことでございますが、日本の従来からの制度とかいろいろあるときに、今後どのようにしていったらいいかさらにまた検討をして、問題のないようにしていきたいと思っております。  もう一点、日本においては侵害し得ということについてどう認識しているかということでございますが、確かに今の裁判の状況では、人の特許侵害して、その間にいろいろなものを売って、もし相手の人が裁判所に訴えても時間がかかる、あるいは裁判所で出てくる判決は少ないから侵害をしている方が得だというような極端な意見すらあるわけでございますので、今回の法律改正ということによりまして、こういう状態を改める、そしてまた、御指摘ありましたような、外国へ行って日本権利を守ってもらうというような状況はやめるという方向で今回の法律改正をお願いしているわけでございます。
  82. 堀内光雄

    堀内国務大臣 お答え申し上げます。  先生御指摘のように、我が国知的財産権侵害訴訟における損害賠償額というのは、ライセンス料相当額にとどまっているケースが多いわけでありまして、知的財産権権利行使が十分確保されていないということで、研究開発へのインセン ティブを損ねているという指摘がございます。  そういう意味で、今回の改正案は、侵害者の販売数量、こういうものをはっきりと立証をしてもらった場合には、それを権利者の販売数量として、それに権利者の利益を乗じたものを損害額として算定する方式を導入したわけでございまして、これによって相当の損害をしっかりとつかめて、しかも受け取ることができるというふうになると思います。  また、具体的な事情を考慮しましたライセンス料の相当額の認定ということを可能とする措置も導入をいたしました。今までですと、二%ないし五%というようなライセンス料相当額というものでありましたが、今度は売り上げの大体二%ないし五%というような算定もしっかりとつかめるようにいたしたところでございます。  また、特許権侵害罪につきましても、法人の罰金の上限を現在の五百万円というところから一億五千万円に引き上げて、法人重課の導入を行いました。  これらの内容が盛り込まれておりますので、知的財産権侵害の抑止といいますか、これには大きく資するものだというふうに思っております。知的財産権がこれによってさらに適切に保護をされ、我が国における創造技術の開発が一層促進されるように期待をしているところでございます。
  83. 中野清

    中野(清)委員 今御答弁いただきまして、ぜひこれから積極的な対応を願うものでございます。  それと一緒に、一般に知的財産権制度というのを含めまして権利関係の理解がなかなか難しい、企業内でも特別の部門の方がこれを担当するという認識が強くて、今後とも一部の専門家の取り扱う特別なものになるということ、いわゆる一般から遊離することは避けなきゃならないと考えておるのです。  そういう意味で、実は特許庁が、この間見せていただきましたけれども、特許庁の親切運動、私はこの意欲については高く評価をいたしております。しかし反面、考えてみると、私も多少経験がありますけれども、今日までの特許庁あり方の中にこの親切運動をやらなきゃならない不親切な面がたくさんあったのじゃないだろうか、率直な話、これは決して文句じゃなくて実態として思っております。  つまり、ユーザーの満足度というものはユーザーの期待にこたえなければだめだということを思いますと、その中で幾つか質問させていただきますと、まず第一に、第一弾としての二十三項目にわたります親切運動の核といいましょうか中心は、いわゆる二〇〇〇年までに特許とか意匠とか商標とかのファーストアクションといいましょうか、そういうものを、現在ではまだ二十七カ月とか二十二カ月というものを世界的標準である十二カ月以内にしようということだと考えております。先ほど特許庁の、平成八年の出願特許を今審査しているのだと、そういうことを考えますと、本当にできるのだろうかという疑問を持ちます。しかし、私はぜひ予定どおり完全にやってもらいたい、そういう願いを持ってこの見通しを特許庁にお伺いしたいと思うのです。  それと、特に特許の場合には、七割以上はいわゆる大企業を中心とした大口ユーザーであります。しかし、今まで我が国を支えてきた中小企業とか個人の皆さんを対象とした積極的な親切運動というものは何だろうかということを私は考えたいと思いますので、まずその点を簡単で結構ですから御説明願いたいと思います。
  84. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 ただいま特許庁の審査の期間を目標どおり短くできるかということでございますが、二〇〇〇年にはファーストアクションを十二カ月にするという目標を立てて特許庁一丸となって取り組んでおりますので、ペーパーレス計画とか民間能力の活用というものとあわせながら、とにかく一生懸命頑張って目標達成に全力を挙げてまいりたいと思っております。  さらにまた、中小企業個人の方、こういう方がいろいろな大事な発明をされたり商標を取られるわけですから、そういう方にとっても役に立つ特許庁になりたいということで、手続を簡素化する、あるいは地方に出かけて面接をするとか、インターネットを通じて情報を提供するとか、特許流通アドバイザーを派遣するとか、いろいろな工夫をいたしまして、中小企業個人の方に対しても親切と言われるような特許庁になりたいと思っております。
  85. 中野清

    中野(清)委員 今の御答弁でぜひ期待したいど思っております。  しかし、これを見せていただいて、第一弾の親切運動で十分だろうかという点であります。今ぜひ頑張っていただいて二〇〇〇年までには達成してもらうとした場合、二〇〇〇年以降の課題は何だろうか、いわゆる第二次親切運動の必要性についてお伺いしたいと思うのです。  それからもう一つは、過日ちょっとお伺いしましたが、二〇〇五年までに世界一速いスピードでの権利設定サービスを目指すところのいわゆるリアルタイムオペレーション、これを実現すると言っておりますが、これについても、当然各国との調整とか制度改正とか、いろいろな実施面での課題があると思いますけれども、私は少なくともその意気込みについてはよしといたしますが、それをどういうふうにするかという点についてもぜひ明らかにしていただきたいと思います。  それからもう一点といたしまして、紛争が生じたときとか新製品を発売するときとか外国に出願するとき、いわゆる早期審査、審理制度というのができると伺っております。これにも書いてあります。三、四カ月でファーストアクションをするという制度を採用すると言っておりますけれども、これは私はある意味で、この第一次の親切運動のシンボル的な作業だと思うのですよ。ですから、その点について完全に実施してもらいたい。そういう意味で、どういうふうにしたらこれが完全にできるのか、やろうとしているのか。  一方、これに対してユーザーの認識がどの程度か、利用状況がどうか、PR等についても、わかったら、簡単で結構ですから、御説明を願いたいと思います。
  86. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 現在の第一次親切運動の後どうするかということで、私ども行政はいつも努力をして国民の負託にこたえていかなければいけないと思っておりまして、そういうこともございますので、あえて第一次と銘打ったわけでございます。現在これをインターネットで示したりあるいは全国に説明をしておりまして、その過程でいろいろな御意見が出てきておりますので、そういうものを踏まえて第二次親切運動をできるだけ早いうちに発表したいと思っております。  さらにまた、二〇〇〇年以後どうなるかということで、できれば二〇〇五年ぐらいには、企業の方あるいは個人の方が出願されたら常に滞りなく審査過程に流れて円滑に権利設定が行われるということで、企業の方、個人の方がいい技術開発、いい商標を考えてよかったというような状況にしていきたいということで、二〇〇五年ごろにはリアルタイムオペレーションという状態にしていきたいと思っております。これはなかなか簡単なわけではございませんが、審査体制を強化するとかコンピューターの利用を進める、あるいはアウトソーシングを進める、こういうことの組み合わせで実現を目指していきたいと思っております。  さらにまた、現在、残念ながら日本では過去大変多くの出願をしていただきましてその滞貨が残っておりまして、そのことの結果、御指摘のように少しまだ時間がかかっておりますので、本当に今紛争に巻き込まれて大変な方とかあるいは外国に出願されている方、そういう方については、早期審査制度ということで早く特許庁としても処理をするということで、三カ月とか四カ月で何とか結論を出そうと思ってそんな制度を入れたわけでございます。  平成七年には四百件の御利用をいただきましたが、平成九年には千二百件ということで三倍にふえておりまして、今多くの方に御利用いただき始めておりますので、こういう制度があるから皆さ んの特許権利は早く結論が出ますよということをこれからも一層PRを進めていきたいと思っております。
  87. 中野清

    中野(清)委員 ぜひ期待したいと思いますし、先ほど原口委員からもいわゆる特許庁の三百億の予算だけではできないのじゃないだろうか、新しい推論コンピューターを含めたそういう機械化も含めてぜひこれは積極的にやっていただきたい、大臣、ぜひそういう点もお願いをしたいと思います。  私は、プロパテントといいましょうか、この政策の中で、知的財産権の広い保護、強い保護というのを推進することについては賛成であります。ぜひやってもらいたいと思うのです。しかし、当然その場合には、権利保護強化といった光が当たる面ばかりじゃなく、逆に特許侵害等をめぐる紛争の増加といった、影になってしまう部分が生じてくるわけであります。いわゆるもろ刃の剣的側面があるということはもう御承知のとおりであります。  そうした中で、特にこの知的財産権に取り組む機能や体制の整っていない中小企業者が思わぬトラブルに巻き込まれるということが今後増大してくるだろう、そういうことを懸念するのでありますし、その立場から何点か質問をさせていただきたいと思います。  私は実は本職がお菓子屋でありまして、商標登録は五十近く持っておりますし、商標登録についてはもう長年経験しております。また、これまでも、内容証明を突きつけられて慌ててどうしたらいいかといって相談に来た同業者の方なんかがたくさんございまして、そういう意味で一番素朴な経験を踏まえてお伺いをしたいと思っているのです。  特許侵害については、故意とか悪意で権利侵害する、これは論外でございますから、それは問題外といたしまして、しかし、公開されている以上、いかに中小零細企業であっても、現に事業を営まれている以上は知らなかったということはなかなか言えない、それは事実であります。これは当然だと思います。  しかし、そういう中で、中小企業が自分たち努力でもってそれをやらなければいけないということは、これは当然のことだと思いますから、そのことは抜きにしまして、現実に何もわからない皆さんに対して、行政として、特に特許庁としてただ事務を受け付けるとかというだけじゃなしに、中小企業、特に零細企業の皆さんが何も知らないということについてどうやって支援体制をしているか、まずこの点についてお伺いをしたいと思います。
  88. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 プロパテント政策というのは、いろいろ自分でいい技術を開発したり商標を考えた方を保護しようということでございまして、従来は、中小企業の方がいろいろ技術開発されても、どちらかというと、ほかの大きな会社に侵害されてなお泣き寝入りをしているというような面もございまして、そういう方からの要望も強いわけでございます。しかし一方、今お話がございましたように、中小企業の方あるいは零細企業の方が、知らないで人のものを使ってしまうということが起きては困るわけでございますので、私どもの方としても、そういう方に対するいろいろな施策を講じていかなければいかぬと思っております。  具体的には、特許とか実用新案の権利関係の事前の調査を、発明協会という団体がございますので、そちらに委託をしておりまして、全国に支部がございますが、そちらに相談をしていただければ無料で調査を実施するということもしております。  さらに、商標につきましては、ことしの七月から商標関係のリストをホームページに掲載いたしますので、インターネットで見ていただければ直ちにわかるというような仕組みにしたいと思いますし、特許庁あるいは全国の通産局で検索をするシステムも近いうちに開きたいと思っております。そういういろいろな問題もございますので、特許庁といたしましても、中小企業、零細企業の方に対して万全の対策を講じてまいりたいと思っております。
  89. 中野清

    中野(清)委員 今の御答弁を期待したいと思っております。  そういう意味で、私は、現在特許庁の、全国の通産局特許室が八カ所、知的所有権センターが四十五カ所、発明協会が四十七カ所という相談業務だけで、今長官がおっしゃったような中小企業、零細企業に対する対策が十分かという点については、率直な話、疑問を持っているものであります。  きょうは中小企業庁長官もいらっしゃるし、大臣もいらっしゃいますから、私はこの場で御提案したいのですけれども、今我が国には三千カ所以上に及びますところの商工会議所、それからまた商工会のネットがございます。このネットワークを利用して、それぞれに少なくとも特許相談所、または特許コーナーというものをつくった方がいいだろうということを提言をしたいと思うのです。  なぜかといいますと、はっきり言って、県に一個や二個ある施設について中小企業がわかるわけがないのですよ。ですから、常日ごろ中小企業、零細企業地域で日常接することが多い商工会議所や商工会に特許の相談ができる体制をつくる、整備することで、今までの特許行政というのは、先ほど言いました専門的なものからもっと一般的になるだろう、そういう意味で私はぜひこれをやってもらいたいということをお願いをしたいのです。いわゆる紛争等の専門的な問題解決は、知的所有権センターとか発明協会とか弁理士の先生とか、そういうところにお願いするのはいいと思いますが、そういう点が一つあります。  それから、先ほど県レベル、地方自治体についてもこの問題どうだという話がございましたけれども、これも私は同感であります。特許の問題というのが、何回も言いますけれども、どうか一部の人じゃなくて地域のもの、地方のものにしてもらいたい、地元のものにしてもらいたい、そういう意味で、この提案についてどう考えているか、特に中小企業庁長官にお伺いしたいと思います。
  90. 中村利雄

    ○中村(利)政府委員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、近年中小企業の間におきましても、特許問題に対しまして大変関心が高まっているところでございます。こうしたことを踏まえまして、私ども、高度な知識を持つ専門経営指導員というのがいるわけでございますが、この方々につきましては、今年度から特許問題に関する研修を行うことにいたしておりまして、そうした専門指導員を通じて指導をする、あるいは講習会とか研修会等を実施するための地域産業人材育成指導事業というのがございますが、こうしたものを通じまして、特許に関する研修、指導といったニーズにこたえてまいりたいと考えております。
  91. 中野清

    中野(清)委員 今の答えの中で、商工会とか商工会議所にそういうものをつくる気があるかどうか、もう一回はっきりしてくださいよ。
  92. 中村利雄

    ○中村(利)政府委員 商工会、商工会議所は、いろいろな多様なニーズにこたえるということで、現在その体制を整えているわけでございますが、そうした中で、先ほど申し上げましたように、経営指導員に対する研修あるいは地域中小企業者に対する講習会、研修会ということを通じまして、今先生おっしゃいました特許に関する相談コーナーというふうに、実質的にそういうことに対応できるような形を整えてまいりたいと思っております。
  93. 中野清

    中野(清)委員 それについてもっと言いたかったのは、商工会議所とか商工会というものに何でも相談できる、その中にやはりきちっと相談所というものが、決して常駐しなくてもいいわけですけれども、例えばこういう資料なんかがいつもあって、それでもってやらなければ困るだろうということ。  それから、さっき特許庁長官がおっしゃったけれども、インターネットの話も、私も自分で一度やってみましたよ。確かに七月からは、今度は商 標登録についてはわかるわけでしょう。そういうものができるんですよ。だったら、つくるということでちゃんと言ってくださいよ。  ただ、指導員は、おっしゃるとおり、それはそのとおりだと思う。だけれども、とにかく指導員がいても、その地域人たちがそういう相談を受けてくれるということがわからなければだめに決まっているじゃないですか。それはやはり看板をつけてもらうとか、相談所をつくりましたと広報なんかにやってもらわなければ、第一、地域の皆さんが商工会議所や商工会に来て相談しようなんで思わないですよ。もう一回はっきりしてください。
  94. 中村利雄

    ○中村(利)政府委員 商工会、商工会議所でそうしたことをちゃんと対応できるということがわかるようにさせていただきたいと思います。
  95. 中野清

    中野(清)委員 ぜひお願いをしたいと思うのです。そういう意味で、商工会議所の中に、インターネットのお話もそうですし、それからこういう資料なんかもやってもらったり、相談員もやってもらうということがまず第一歩の初歩だろうと思いますので、ぜひこれはお願いしたいと思います。  時間もありませんから、未利用特許活用する中小企業への支援の体制、そういうものについてひとつお伺いをいたしたいと思うのです。  これは先ほど来いろいろな議論が出ておりますが、いわゆる中小企業サイドから、開放特許を探したいとか、特許開放企業から直接話を聞きたいとか、専門家に相談したいとか、特許参考文献が見たいとか、分野ごとの特許の全体像が見たいとか、事業化資金の融資を受けたい、技術の専門家を派遣してほしい、そういうような声が聞こえていると思いますし、特許庁もその要望はつかんでいるはずと思います。その中で、今、未利用特許市場の創設を考えてございますが、それを含めて簡単にお願いしたいと思います。もう一回質問しますので、なるべく簡単に答えてください。
  96. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 未利用特許を使って中小企業の方に技術的に強くなっていただく、あるいはベンチャー企業を起こしていただくということは大事だと思っておりまして、特許庁といたしましても全力を挙げて支援しているわけでございます。データベースをつくったり、インターネットで提供するとか、特許流通アドバイザーをするとか、そんなことをやっております。
  97. 中野清

    中野(清)委員 今のことでぜひもう少し説明をいただきたかったのですけれども、期待をしたいと思っております。  その中で、未利用特許企業化への努力、資金調達、技術指導という面が、これから私は、ただ紹介するだけじゃなくて、具体的な問題としてあるような気がするのですよ。そのときに、まず第一に未利用特許企業化事業資金、そういうものについて政府としてどう考えているかが一点。  それからもう一点は、私は、中小企業庁の実施している事業の中で、中小企業技術金融会議というのが、多分技術課さんだと思いますけれども、あると思うのです。これは、技術の問題について民間の金融機関によくそういう点の勉強をさせるということだと思いますけれども、これに政府系の金融機関も入れてもらって、少なくともこの特許の問題について、未利用の問題というのは、ただ単に特許庁だけの話じゃなくて、そこにあるいろいろな問題、先ほどは国の特許の話も出ました。そういう未利用特許について、本当に企業化できるかどうか。当然、そのときは資金の裏づけがなければだめに決まっているんだ。  そうしますと、こういう金融機関の皆さんが勉強をして、場合によったら自分の取引先のある企業に、これは使えるんじゃないですかと言えるようなことをやらなければいけないんじゃないだろうか、私はそう思うわけでございますが、その点もお伺いをしたいと思います。  それから、中小企業庁の中にエキスパートバンクがある。その中では、恐らく生産管理とか経営管理とかと一緒に、いわゆる法律とか工業所有権の関連で、弁理士さんや弁護士さんの関係もあるはずです。その点については、どういうふうにこれからそれを活用していくか。  それと、これと一緒に、今度特許庁の方ではいわゆる特許流通アドバイザー、そういう制度がございます。これは両方とも大事だと思いますが、特に私が言いたかったのは、マーケットにもそれから技術にも通じる人材でなければこの手の仕事はできない、そういうことについては中小企業庁、特許庁はやはり真剣に考える必要があるだろう、この点についてもお伺いをしたいと思います。
  98. 中村利雄

    ○中村(利)政府委員 まず最初に、未利用特許の利用でございますけれども、中小企業が未利用特許の利用等によりまして技術開発、事業化を行うということになりますと、当然資金が必要なわけでございまして、このような資金を調達するということが中小企業にとって困難な場合も当然あり得るということでございまして、中小企業庁におきましては、既に特許、実用新案の導入のための低利融資制度というものを設けております。  また、技術開発を行うための補助金というものがございますけれども、これも、例えば未利用特許を利用いたしまして新しい製品をつくるというような場合には、この補助金が利用できるわけでございます。さらに、事業化のための低利融資制度というものがございまして、こうした施策を通じまして支援をしてまいりたいと考えておるわけでございます。  また、未利用特許の事業化に当たりましては、中小企業が単独で利用していくということはなかなか困難な場合がございまして、当然技術指導等が必要になるわけでございます。そこで、御指摘のように、私ども、エキスパートバンク事業というのがございます。これは商工会、商工会議所に設置されているものでございますけれども、さらに都道府県などには地域活性化アドバイザー事業というのがございまして、こうしたところの専門家を通じまして、中小企業のニーズに応じた技術指導を行うということにいたしておるわけでございます。  さらに、エキスパートバンク事業におきましては、平成九年度に弁理士の方が六十一名登録されておりまして、特許の申請とか商標登録などに百二十七件の相談に応じているところでございまして、もろもろの特許に関する問題については、総合的に指導をできるような体制を整えているところでございます。  それからさらに、中小企業技術金融会議という点の御指摘がございました。これは平成八年度から実施いたしておりまして、金融機関を通じて技術現状とか中小企業技術開発への理解を深めてもらうということで、公的支援機関と連携をとりまして、いろいろな公的支援制度についても説明を行うということで行っておるものでございますが、この会議には政府系金融機関にも御参加をいただいているところでございます。また、政府系金融機関におきましては、低利融資制度とか債務保証制度によりまして、新規事業に取り組む中小企業への支援を行っているところでございます。  こうしたことを通じまして、既に民間金融機関側におきましても積極的にこれにこたえていただいておりまして、パンフレットを作成するとか、公設の試験所を紹介するような形で各金融機関の御協力をいただいているところでございます。
  99. 中野清

    中野(清)委員 もう最後ですから、大臣に、先ほど言いましたように、ぜひ私は特許の問題についても商工会、商工会議所を通した全国的なネットワークをつくるべきだ、長官からも御答弁いただきましたけれども、ぜひ御決意だけ、一言で結構ですからお願いして、やめたいと思います。
  100. 堀内光雄

    堀内国務大臣 委員の御発言のとおり、この特許の問題については、広く商工会、商工会議所の機能を通じてネットワークを広げていくということは非常に重要なことだと存じております。  商工会、商工会議所では、これまでも金融だとか税務等を中心として中小企業からの経営に関するさまざまな相談をお受けしたりして、それに対するきめの細かい指導や情報提供をやってきたわけでありまして、そういう中で、今までも、持ち 株会社の解禁のような問題だとか、独占禁止政策に対する十分な理解を要求されるようなときにも、いろいろと取り組みをやってまいったわけであります。  したがいまして、通産省といたしましても、各地の知的所有権センターや公正取引委員会との連携のもとに、経営指導員に対して、特許問題あるいは独占禁止法問題、今までもやっておりますが、こういう問題に関する研修を実施をいたしまして、これからの新しい問題に対する商工会や商工会議所の広報活動あるいは相談、指導体制、こういうものの強化をしっかりと図ってまいりたいと思っております。
  101. 中野清

    中野(清)委員 ありがとうございました。
  102. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、井上義久君。
  103. 井上義久

    井上(義)委員 新党平和の井上義久でございます。  私は、日本資源小国である、やはり科学技術で立ち行く以外にない、こういうことで大学も工学部を選択した一人でございまして、科学技術創造立国ということについては大変格別な思いを持っているわけでございます。  もう大臣御承知のように、平成七年に科学技術基本法ができまして、平成八年から十二年までの五年間に科学技術基本計画によって約十七兆円の投資をする、こういうことが閣議決定され、今進んでおるわけでございます。科学技術にとっては極めて追い風で、関心のある者としては非常に喜んでいるわけでございます。  ただ、科学技術創造立国ということを実現するためには、科学技術が研究にとどまっている、論文が幾らできても国は立ち行かないわけでございまして、科学技術創造立国実現のためには、その科学技術というものがきちっと産業移転されていなければいけない。しかも、その産業が、国際的な競争力を持つ新しい産業というものがそのことによって生み出されなければいけない、こう思うわけでございますけれども、やはり現状は、科学技術産業界に対する移転についても、あるいはその移転された技術が国際競争力を持った新産業に育つという意味でも、まだまだ問題がたくさんあるわけでございます。  そういう面からいいますと、この大学等技術移転促進法が今回上程をされまして、大学研究成果というものが産業界に技術移転をするような新しい仕組みができるということについては、私は、ようやくここまで来たかなと。特に大学は、研究者六十七万人のうちの二十四万人が大学にいるわけでございますし、それから、日本の科学技術予算は年間で約十五兆あるわけでございますけれども、そのうちの約二割の三兆円が実は大学の科学技術研究予算になっているわけでございまして、そういう意味からいいますと、ようやくここまで来たかな、そんな思いがしているわけでございます。  初めに、やはり通産大臣、一番踏ん張っていただかなければいけないわけでございますし、この科学技術創造立国ということについて、今日本現状をどのように認識をされ、また将来どのような方向を考えていらっしゃるのか、大臣基本的なお考えを伺っておきたいと思います。     〔委員長退席、岸田委員長代理着席〕
  104. 堀内光雄

    堀内国務大臣 お答えを申し上げます。  ただいま井上委員のお話のとおり、科学技術創造立国の実現というものに対しては、大変重要な問題でありますし、今までこの問題に大変お取り組みをいただいてまいりました委員に対しても、心から敬意を表する次第でございます。  本格的な高齢化社会がやってまいりますし、また大競争時代が到来する中でございますので、活力のある豊かな国民生活を実現をさせなければいかぬということになりますと、委員のおっしゃるとおり、技術革新を通じて新たな産業が次々と生まれるということが不可欠なことだと思います。そのためには、技術のシーズと申しますか、種の創出を促進するだけではなくて、まさに先生の御指摘をいただいたように、技術移転及び産業化の促進ということ、そのための環境整備が重要になってくる、それを政策的に一体化しながら持っていこうというのが科学技術創造立国実現に向かっての一歩だろうというふうに思っております。  具体的には、この法案によりますと、大学などから産業界への技術移転、これを促進することを初めといたしまして、産学官、みんなの連携のもとによる技術開発の推進あるいは研究開発環境の整備、研究開発に係る税制の措置の一層の充実、こういう総合的な施策を行いながら、科学技術創造立国へ向かっての大きな基盤をつくってまいりたいというふうに思っております。
  105. 井上義久

    井上(義)委員 少し具体的な問題に入らせていただきますけれども、まず、この法案が成立をいたしますと、文部大臣、通産大臣が実施指針をつくって公表する、こういうことになっておるわけでございます。関係行政機関の長と協議をするということでございますけれども、この技術移転事業者といいますかTLO、各大学で大分盛り上がっておるわけでございます。私は、大学の中でこれだけこういうことに対して機運が盛り上がってきたということは画期的なことでございまして、今というチャンスを逃したらもうなかなかこういうことが実現するチャンスがなくなってしまうのじゃないかというふうに思っておるわけでございまして、法案成立後どのぐらいの時期にこの実施指針が公表されるのか、できるだけ速やかにやるべきだと思いますが、どうでしょうか。
  106. 江崎格

    ○江崎政府委員 御指摘の実施指針でございますけれども、これは、移転事業の基本的な方向ですとか、あるいは事業内容とか実施のやり方について定めるわけでございますけれども、この法律が公布の日から三カ月以内に施行するというふうになっているわけでございます。したがいまして、施行後速やかにこの実施計画の承認手続を行いたいというふうに思っているものですから、実施指針の公表につきましては、できるだけ速やかに、つまり施行後ほとんど時間を置かないようにして公表したいというふうに思っております。
  107. 井上義久

    井上(義)委員 この実施指針が公表された後に、それぞれのTLOが実施計画をつくって文部大臣、通産大臣に承認を求める、これが承認されて初めて産業整備基金等による債務保証とか助成金が支出されるということになるわけであります。文部大臣、通産大臣に実施計画を出すということが法律にあるのですけれども、窓口があちこちにあったり、どうも手続が煩雑だったり、あるいは審査事務がおくれてなかなか結論が出なかったりと、何しろこれに携わっている皆さん、大学の先生方でございますので、余りそういう事務が煩雑ですと、せっかくのやる気をそぐようになってしまうのじゃないか、こういうことについて、できるだけ簡素に、計画が出たら速やかに承認をするような配慮が必要だと思いますが、どうなっていますか。
  108. 江崎格

    ○江崎政府委員 実施計画の承認の問題でございますけれども、文部省通産省が密接な連携をとりながら処理をしたいというふうに思っておりまして、例えば、申請に当たりましてヒアリングなどがあると思うのですが、二度手間にならないようにしまして、両省で合同してヒアリングをするというふうな工夫をしたいと思っておりますし、また、申請の手続の簡素化に努めるのは当然だと思っておりまして、申請のフォーマットなどはいずれ決めるわけですけれども、必要最小限のものにしたいというふうに思っております。それから、審査の期間でございますけれども、これも一カ月程度を私ども今考えておるところでございます。
  109. 井上義久

    井上(義)委員 この実施指針、それから実施計画の承認というスケジュールで、公布後速やかにというお話でしたけれども、やはり十月一日ぐらいということを想定していろいろ計画を、各大学いろいろ聞いてみますと、お考えになっているようなところがあるわけでございまして、もちろん、法律が通らなければ何とも言えないわけでありますけれども、その辺の期日については、はっきりできないところがあるかもしれませんけれども、十分考慮してやっていただきたいと思うのです が、どうでしょうか。
  110. 江崎格

    ○江崎政府委員 先ほど申し上げましたように、公布後三カ月以内に施行するということでございますので、例えば今国会にこの法案を通していただければ、三カ月以内には公布されるわけでございますし、今おっしゃった十月一日を想定しているというような場合には、十分それに間に合うようにいろいろな指針等を公表し、手続も迅速にやりたいというふうに思っております。
  111. 井上義久

    井上(義)委員 次に、このTLOを設立するに当たっては、やはり一番の問題は人材の確保ということじゃないか、こう思うわけでございます。  TLO運営業務は非常に多岐にわたるわけでございまして、特に研究成果の評価、それから特許権の取得、それからさらにはマーケティングといいますか、そのシーズが技術移転されて産業化された場合にどの程度の市場性があるのか、それからやはり、TLO自体もそうですし、それからTLOから技術移転する企業などにとりましても、資金の確保という問題、それから、技術移転されれば、これは当然ロイヤルティーという形で収入が入ってくるわけでありますけれども、その財務管理等々、そういう意味で、特に研究成果の評価といいますか、いわゆる技術の目ききといいますか、この技術は本当にどのぐらい産業化の可能性があって、どのぐらいの利益を生み出し得るのかというような、そういう人材が一番必要なんですけれども、どうもなかなかそういう人が今までの日本社会で育ってきていないのじゃないか。  アメリカの例などを見ますと、一つの機関に十人から十五人ぐらいのそういう専門スタッフがいてやっているというようなことも聞くわけでありますけれども、そういう人材の確保ということについて、通産省はどのようにお考えでしょうか。
  112. 江崎格

    ○江崎政府委員 この技術移転事業が成功するかどうかというかぎは、まさにふさわしい人材を確保できるかどうかということにかかっているわけでございます。  今先生御指摘のように、必要な人材の備える能力としまして、技術の内容を正確に把握するとか、あるいは市場性の観点からその技術を評価するとか、あるいはこれを適正な企業に譲渡する、つまりマーケティングの能力、こういったものが要請されるわけでございますけれども、現在の時点で、確かにこうした人材は十分育っていないというふうに私どもも感じております。  したがいまして、当面、この事業に必要な人材というのは、企業知的財産の管理部門のOBの方ですとかあるいは知見を持つ大学教官の方などを期待しているわけでございまして、こういった大学教官の方々に助言を仰ぐというようなことも考えたいと思っておりますし、また、譲渡した先の企業に対しまして、そうした教官の方々が技術指導するというようなことも期待をしているわけでございます。  通産省としましても、現在、既に特許庁におきまして特許流通アドバイザー派遣制度というのがございますけれども、この制度をさらに拡充しまして、この移転事業に対しての情報提供を行うようにしたいというふうに思っておりますし、また、この制度の認知度をさらに向上させたいと思っておりまして、それに伴いまして、TLO自身が有用な人材を次第に確保できるようにしたいというふうに考えております。
  113. 井上義久

    井上(義)委員 これは、通産省として今のようなお話、よくわかるのですけれども、具体的な人材のストックといいますか、ここにこういう人がいる、この人はある一定の期間だったらこのTLOに派遣してもいいよというような、そういうめどといいますか、そういうストック、通産省としてはお考えでございますか。
  114. 江崎格

    ○江崎政府委員 先ほど紹介しました特許流通アドバイザー派遣制度というのがございますが、これも実は企業知的財産管理部門のOBの方々に何人かお願いをしております。今これは実は十数人なんですけれども、こういった方々をさらに、私ども、企業の方々と接触をしまして、企業を卒業されたり、あるいは途中で移られる方もいると思うのですが、そういうところの方を次第にふやしていきたいなということ。  それからもう一つは、大学教官自身の方が、兼業の問題がございますけれども、そういった許可を得まして、TLOなどへ来ていろいろお仕事をしていただくというようなことを考えております。したがいまして、大学の方との接触も深めまして、TLOで事業をしていただくということを考えていきたいというふうに思っております。
  115. 井上義久

    井上(義)委員 それで、今ちょっとお話が出ましたけれども、きょうは、この大学教官の業務の兼任ということについてちょっとお伺いしたいと思います。  大学研究成果、これを事業化しよう、そういう今回の法案の趣旨でありますけれども、それを支援していくためには、国立大学教官等が経営者として事業化に責任を持つような、技術移転事業を行う企業とかいわゆるTLOの、ある意味では経営に参加をする。いろいろなTLOでは、当然出資をして株主になる。いわゆる百四条兼任でアドバイザー的な役割を果たすということは当然なんですけれども、責任を持つという意味では、役員を兼任するということも必要だと思います。  それから、諸外国の例、特にアメリカの例なんかを見ますと、やはり技術というのは、例えば特許をとったその特許だけでは企業化というのは非常に難しいわけでございまして、周辺技術を含めてきちっとやらないと、特に中小企業なんかというのはベンチャーとしては立ち上がることはできないわけでございます。そういうことも含めて、ある程度移転先の企業の経営についても責任を持つような、ひいては、そういうことからいわゆるベンチャー型企業大学の中からこのベンチャー型企業というものを創造していくというようなことまで含めて考えないと、TLOというのはなかなか成功しないのじゃないか。  そういう意味で、現状では百四条兼任でしか事実上認められていない。本来、百三条でそういう役員になることはできないように事実上なっているわけでありますけれども、この辺の規制緩和ということをそろそろ考えていかないと、なかなかこの事業は成功がおぼつかないのじゃないかな、こんな思いがするわけであります。これは通産、文部両方に関係していると思いますので、もしわかればぜひ御答弁をお願いしたいと思います。
  116. 雨宮忠

    雨宮政府委員 昨年四月から行っておりますのは、例えば、月一回でありますとかあるいは年に数回でありますとか、勤務時間外に技術指導等を行うという場合に兼業していいのかどうかということについて、それはもう本務に支障がなければ構いませんという兼業の許可の仕組みを開いたわけでございます。今の先生のお尋ねは、さらにそれを広げて、TLOの役員でありますとか、あるいはさらに進めてベンチャー企業の役員などとして経営参加ができるかどうか、こういうお尋ねでございます。  私ども、今当面の検討課題としておりますのは、先ほどの先生の御議論に直接かかわるわけでございますが、いわゆる技術移転機関に技術の目ききというべき適切な人材をどう確保するかということとも関連するわけでございますが、国立大学のある教官が場合によってそれに適しているかもしれない、その場合に、兼業の許可ということができるような方途というものを考えていいのではないかという問題意識を持っているわけでございます。もちろんこれは、公務員としての職務専念義務でありますとか、あるいは公務の適性でありますとか、さまざまな議論との兼ね合いの中で検討すべきことであるわけでございますが、当面の課題としてはそういうことがあるわけでございます。  ただ、もう一つおっしゃいましたベンチャー企業、これは見方を変えますと、見方と申しますか言葉をかえて申しますと、一営利企業の役員として経営参加する、そういう道を開けという御提言でございますが、これはTLOの場合に比べて、率直に申しまして、問題はやはり少なくないだろ うというように考えておるわけでございます。  議論を突き詰めますと、場合によっては、そこまで一営利企業の経営参加ということをやるぐらいならば、いっそのことやめて、それにどっぷりつかって責任をとってやったらいいじゃないかという議論さえも出る。そういうことでもございますし、全体の奉仕者性というような観点からも甚だ問題は少なくないのではないかという、そういう感じを持っておるわけでございます。     〔岸田委員長代理退席、委員長着席〕
  117. 江崎格

    ○江崎政府委員 基本的には、文部省が今お答えになったのと同じでございます。  簡潔に申し上げますと、国立大学などの研究者が企業の役員を兼ねるということにつきましては、今お話ございましたように、国民全体の奉仕者であるという公務員としての性格、それから最近議論になっております公務員の倫理の問題、こういったことを留意しまして検討しなければいけないというふうに思っております。ただ、その中でも、特に今回御提案しておりますこの技術移転機関、この役員を兼ねることにつきましては、政府の中でも特に早急に結論を出したい、このように思っております。
  118. 井上義久

    井上(義)委員 今答弁ありましたように、少なくともTLOの役員については幅広く仕事がしやすいような仕組みをぜひ考えていただきたい、こう思います。  時間も余りないので、大臣、この法案の目的は技術移転なんですけれども、TLOはまだいいと思うのですけれども、TLOの先、ベンチャー企業ですね、やはりここをどう育てるかということは、通産省としてはもう一方でやっていただかなければいけないわけでございます。  先ほど中野先生の質問の中にも出ていましたけれども、特許が八十三万件ある、ところが実際には五十六万件、六七%が未利用特許だ。いろいろ話を聞いていますと、特許だけではどうも活用が難しい。その周辺技術を含めて、そういう技術支援というものがなければいけないのじゃないかというのが一つ。  それから、やはり資金。今いろいろなベンチャーファンドというのがあるのですけれども、聞いてみると、これもほとんど使われていない。使い勝手が悪いのか、どうもシーズがないのか、この辺もちょっとわからないわけですけれども、やはり資金も必要。  それから、やはり人材の確保。こういうことを抜本的にやらないと、今いろいろなベンチャー施策があるのですけれども、どうも効いてないな、こんな感じがするわけですけれども、大臣、どうでしょう。
  119. 堀内光雄

    堀内国務大臣 本当に委員指摘のとおり、技術と資金、それから人材、この三つがベンチャー企業の支援策の中で重要なことだろう、そうしないとそれが発展していかないということになると思います。  技術移転先であるベンチャー企業を支援するというときには、技術移転を成功に導くだけではなくて、本法案の中におきましても、中小企業投資育成株式会社法の特例措置を設けておりまして、そこからの資金を出せるようにいたしております。また、通産省としましては、本法律案以外でも、資金の面あるいは人材及び技術に関する総合的なベンチャー支援策というものを推進したいということで取り組みをいたしております。  具体的に申し上げますと、資金面では、昨年実施をいたしましたが、企業年金だとか、あるいは証券投資信託の投資対象、これにベンチャー株を含めるための運用規制の緩和というものを実現いたしましたので、これからは新しい生まれたばかりのベンチャー企業であっても、この投資信託の対象にすることができるようになっております。また、米国のように、年金資金からのベンチャー企業への資金の供給というものを円滑にさせるために、投資事業組合法案、これを今国会に通産省から出させていただいておりまして、これによって、今までこの組合の有限責任、無限責任の中で非常に運営がしにくかった、出しにくかったものを容易にできるようにいたすことになっております。  また人材面では、企業の人材確保、社員の士気高揚に資するために、これまたストックオプションの制度の導入というのをいたしましたので、この導入を円滑化する税制措置を本年度から措置をいたしましたので、新しい人が大いに意欲を持ってベンチャービジネスに取り組むことができるストックオプション制度の成果というものが出てくるのではないか。  こういうような問題を総合的に全部考えてまいりますと、今までと比べますと、これでベンチャー企業の育成を相当達成できるようになるのではないかというふうに考えておりますし、さらにこれからもベンチャー企業の育成のための努力を払ってまいりたいと思っております。
  120. 井上義久

    井上(義)委員 ちょっと細かな問題になりますけれども、大学で生まれた知的財産TLOに譲渡する場合、大学の先生、研究者の場合は個人との関係ですからいいわけでありますけれども、いわゆる国有の知的財産TLOに譲渡する場合に、これは国有の資産でありますからただというわけにはいかないと思いますけれども、これがTLOに対して過重な負担になるようではこの法案の意味はないのじゃないかと思うわけです。  そういう意味で、いわゆる国有の特許TLOに譲渡する、負担にならないような形で、できれば対価がゼロで移転されるような仕組みを工夫する必要があるのじゃないか、こう思うのですが、どうでしょうか。
  121. 江崎格

    ○江崎政府委員 この法案によりまして認定を受けた事業者が国から特許権などを譲り受ける場合に、財政法の規定にのっとりまして適正な対価を支払うということになると思います。これは財政法の九条に適正な対価を支払うということになっております。それから、具体的なやり方としては、競売に付すということになろうかと思います。  それから一方、受ける側の技術移転の事業者の方から見ますと、これは専門家としてその技術を評価する能力を持っているわけでございますので、その技術のシーズの将来性、収益性あるいはみずからの財務状況を勘案しまして、対価が過重かどうかということは御自身で判断されて、その上でその譲渡を受けるかどうかを選択されるということになると思います。  それから、今御指摘の点に多少関連しますけれども、国有特許を譲り受ける場合には、特許料などにつきましては特例措置を設けまして特許料を免除する。これによりまして、より効率的にTLO活動できるようにするということにしたいと思っております。
  122. 井上義久

    井上(義)委員 それから、文部省にちょっとお伺いしますけれども、いわゆるTLOがライセンシングによって得た収益、これを大学とか研究室に還元をする、これが大きな目的の一つになっているわけです。今までの研究者とか研究室の場合は奨学金という形で戻せば問題ないわけなんですけれども、大学によっては、これをいわゆるファンドとして、例えば大学支援機関みたいなものにストックして、大学全体の研究ニーズに適切に、また適切な時期に配分していこう、こういう考えを持っている大学があるのですね。  株式会社の収益ですから、一たんこれをそういう支援財団みたいなところに移す場合に、当然これは課税の問題が出てくると思うのですけれども、研究成果を還元していくという意味ではここはひとつ配慮が必要なんじゃないか、こんなふうに思うのですが、そういう仕組みは考えられるのかどうか。
  123. 雨宮忠

    雨宮政府委員 御指摘のように、この法案で御提示申し上げている仕組みがうまくいくかどうかの一つの重要な要素として、TLOからの大学へのロイヤルティーなどの還元というものが非常に重要な要素であると思うわけでございます。  その場合にどういうような形で還元がなされるかということについては、大学それから研究者、TLO、それからその特許の実施企業との間の契約の定めでいろいろなバリエーションがあろうか と思うわけでございます。そのバリエーションの中で、今先生御指摘のように、寄附金税制とか、現存の税制でどう対処したらいいのか、あるいは、もし足りなければどういう税制を考えていくのがいいかどうか、そこは今後よく検討してまいりたいと思っております。
  124. 井上義久

    井上(義)委員 ぜひ配慮をお願いしたいと思います。  最後に、きょうは特許庁に来ていただいていると思いますけれども、科学技術創造立国ということを考えますと、技術産業に対する移転、それが国際競争力を持った新産業ということになると、やはり国際特許といいますか、これが一番重要なポイントになるのじゃないか、こう思うわけです。  アメリカなんかでは特許の国内出願よりも海外出願の方が多い。国家戦略として海外特許を取るということをやっているわけです。そういう面では、日本の場合は極めて弱い。科学技術創造立国ということを標榜する以上、国家戦略としてこの海外特許というものを積極的に取るような何らかのインセンティブがないと極めて厳しい。  いろいろな話を聞きますと、特にパテントローヤー、弁護士で技術がわかって英語ができる人は日本には数人しかいない、これではとてもじゃないけれども国際競争には勝てないという指摘もあるわけでございます。私の先輩なんかは、科学技術創造立国ということで十七兆円の金を使うのだったら、その五%ぐらいは海外特許取得のために使え、それがあって初めて科学技術創造立国だ、こういう指摘をする人もいるわけでございます。特許庁としての基本的な考え方をお伺いして、質問を終わりたいと思います。
  125. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 ただいま御指摘ございましたように、アメリカに比べて日本の方は外国で特許を取るということはかなり少ないわけでございまして、そこについて何とかしていかなければいけないという御指摘、まことにそのとおりではないかと思っております。  日本大学の先生方あるいは企業の方が外国で取るということについての意識、認識がまだ低いわけでございますので、私ども、今世界の様子を御説明するということをやっております。さらにまた、外国の制度がわかりにくいということでなかなかそこまでいかないという方もおられますから、外国の特許庁の長官に来てもらって国内で説明会を開くとか、あるいは日本特許庁のホームページを当たっていただければ外国の特許庁仕組みがわかるとか、あるいは外国政府に働きかけるとか、いろいろ努力はしておりますが、これで十分と思っているわけではございません。今御指摘のようなしっかりしたインセンティブを与えること、どういうものがいいかは、これからよく検討してまいりたいと思います。
  126. 井上義久

    井上(義)委員 以上で終わります。
  127. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、小池百合子君。
  128. 小池百合子

    ○小池委員 自由党の小池百合子でございます。  本日は、特許法等改正案、そして特定大学からの技術移転に関する法律案につきまして御質問をさせていただきます。先ほどから続いておりますので、できるだけ重複を避けて御質問させていただこうと思っているわけでございますが、この両法案に関しましては、これからの新しい日本のシステムづくりということで大変重要な法案だとは思います。  ただ、昨今の目先のことだけに私はとらわれるつもりはございませんけれども、例えば、きょうも円安が進みまして六年ぶりの円安水準、一ドル百三十五円台に入ろうかというような動きとなっておりますし、それから、とにかく三月三十一日の午後三時までということで何かとおかしな株価操作等々も行われて、そのとき大変注目されていたわけでございますけれども、四月に入りまして、きょうも五十円安というような午後に入っての相場の動きが続いております。  今国内産業が非常に厳しい状況にある、そしてその中でまた円安が進んでいきますと、今度はまた対外的な貿易の問題から狭められてくる、まさに八方ふさがりの状況になつでくるのではないかと思います。こういった為替相場、そして最近の日本企業が置かれている、特に産業、物づくりにおける産業、ソフトも含めてでございますけれども、そういった状況に対して、実体経済をわかっておられる数少ない方として通産大臣に、この状況についてのお考えをぜひともお聞かせいただきたいと私は思います。
  129. 堀内光雄

    堀内国務大臣 なかなか難しい御質問でございまして、なかなかお答えを申し上げにくいところも多いのでありますが、昨日発表されました日銀短観、平成十年の三月の調査によりますと、在庫、生産調整ということでは、在庫もふえておりますし、生産調整がおくれているというような中で、企業収益も、九年度は主要企業中小企業ともに減益となる見通しでありますし、昨年来の景況感の厳しさというものが年明け以降も続いてきて、実体経済面での影響を大変大きく受けているというように感じられます。  また、消費の面を見ましても、昨年の末以降の消費者マインドの冷え込みというものがありまして、低調な動きになっております。これは、小売商店その他を眺めてみましても大変厳しいものだというふうに思っております。また住宅建設も、年率百三十万戸程度ということでありますから、低水準になっておりますということをあわせて考えますと、このごろの景気というものは大変厳しい状態だというふうに認識をしなければならないと思っております。  こういう中で、ただいま先生の御指摘のように、株価についても、四月に入ってからさらに株価を大変落としているというようなこともございますし、株価自体については、いろいろな要因をもとにして変化するものでもございますから一概に評価するわけにもまいりませんが、日銀短観が発表された昨日の株価はもう大変下落をいたしましたし、一万六千円を割ったというようなところを見ますと、現在、大変厳しい景況の中で推移しているということは、これは認めなければならないことだと思います。  その中で、私の感じとしましては、一つ消費の面でも非常に厳しいものを出しておりますのは、これから五月、六月の決算、株主総会に向かって各社の決算が発表されてまいりますと、先ほども申し上げたように、大変厳しい赤字の企業がふえる、配当の減配がふえる、無配もふえるというような状態を考えてまいりますと、この五月ないし六月の総会に向けての景気認識というもの、あるいは全体の景況感というものは、さらに冷え込むおそれがあるというふうに思っております。  それと同時に、もう一つ憂慮すべき感じのものは雇用が不安定になっているということでありまして、三・六%というような失業率も出ておりますし、二百四十五万人というような失業者の数も今までかつてないものでございますし、今までのリストラ、合理化という中で、今、人員削減というものが大分大手を振って発表されてくるような事態というものを考えますと、これは消費には非常に厳しいものを与えてまいります。  先般、どこかの新聞でもございましたけれども、二年先に自分が職を失わないでいられるかどうかというのに対して、回答者の中で約五割以上の人が、非常に不安感を持っているというような発言、回答があったのを見ましても、今の消費あるいは景気のマインドを実際よりもさらに悪くしているのは、将来に向かっての雇用不安によって消費を抑えるというようなものが厳しく出てきているからだというふうに私は感じております。  そういう意味で、こういう企業者の経営マインドを前向きにさせるというようなことを考えますと、企業活動を活発化させていって、そして企業活動が活発化されることによって設備投資が拡充され、企業の行動が広がり、雇用が確保され、また同時に、企業収益が上がることによって各勤労者の所得がふえる、それがまた将来に向かって安定することによって消費がふえていくというような回転を始めていかないと、これから先の景気というものを直していくことはなかなか難しいので はないか。ただ対処療法的なもので考えて景気に取り組んでも、一時的にはよくなってもまただめになってしまうというような、今までかつて経験しないような難しい経済活動状況というものになっているというふうに思っております。  そういう意味で、最後につけ加えさせていただければ、まず十年度の予算を一日も早く通していただきまして、それから次の問題に取りかかっていくということにさせていただきたいというふうに思っております。
  130. 小池百合子

    ○小池委員 一部、実体経済をよく御存じのはずの経営者としての本音の部分もあったかと思いますが、数えていたわけではないのですが、今の御答弁の中で厳しいという言葉を十八回ほどお述べになつて、その辺のところは私も伝わるところがございました。  最後のは、何よりも政策のすべて、手順とそれから今回の経済危機の認識の甘さ、これが全部ボタンのかけ違いと順番間違いで、財革法などがその一番いい例ですけれども、金縛り状態にみずからがなさって、そして何も言えない状況が続く。そして結局、今の政権維持と総理の意地の方を優先させる結果、日本経済そのものが今大変な状況、未曾有の状況に入ってきているということかと思います。  この間、政府関係者の方々の口先介入で、本当に風説の流布と言えるものがずっと続いたわけで、そのたびに、国内ももちろんそうでございますが、海外のマスコミ論調なども、もういいかげんにせいというようなものが非常に多くなってきております。  例えば、きょうのファイナンシャル・タイムズなんですけれども、一面のところには、ソニーの幹部が、日本経済は崩壊の危機にさらされている、直面しているというふうに書いてありまして、政府関係者ではもう見出しにならない、優良企業であるソニー、これは会長ですけれども、その人だったらまともに取り扱うというような状況にまで陥っている。  そして、日本経済そのもの、それを担っておられるべき政府言葉の信頼感、コンフィデンスというものがもう大きく欠落している。それが結局円相場に反映し、四月一日になったらいきなりヘッジファンドがばあんと銀行株を売りに出るわけですね。これは実体経済をずっと見ている人だったらわかる。その意味で、今、大臣のこれまでの御経験を踏まえてのお言葉を私は伺いたかった。  特に、きのうの村岡官房長官の、株価についての感想を何か求められたときに、あの日銀短観が出たから株価が下がったというふうにおっしゃる。私は大変、わかっていないなという気持ちに再び、三たび、四たび駆られたところでございます。短観が出たから、悪い結果が出たから株価を下げたのではなくて、それももちろん一つの原因にはなりますけれども、経済が悪いから株価が下がるわけですね。ですから、そこのところの、ではその経済をどういうふうにして立ち直らせていくのか。  先ほど大臣もおっしゃいました。きのう日銀の短観で、貸し出しのDIがマイナス四一、そして製品価格がマイナス三一、設備投資計画、こちらもマイナスということで、想像もしておりましたけれども、想像以上という部分もあったかと思います。まさに今、デフレスパイラルの構造の中に日本は突入してしまっているわけですね。  ですから、今の十年度予算云々の話も、もちろん議会内の手順とすればそうかもしれないけれども、今そんな手順のことを言っている場合じゃないのじゃないかというほど、私は大変危機感を持っているのですね。厳しいというお言葉は十八回ありましたけれども、百回あっても千回あっても足りないと思う。  それから、先ほどちょっと落とされたのですけれども、円の動きですね。これは私は本当に、これまた円安へいきますとおしかりが来る、この構造もそろそろやめたいと思うのですけれども、ここのところも大変懸念しているところでございますが、大臣、その辺のところをもう一度お聞かせください。
  131. 堀内光雄

    堀内国務大臣 円の問題は、なかなかこれも景気との関係というものがやはり一つの大きなファクターになっておりますし、また同時に、これは先ほども申し上げておしかりを受けましたけれども、まず十年度の予算を通すというのは、いろいろな意味でまず第一に必要なことだと思うのですね。その上に立った景気対策なりなんなりいたしませんと、今の暫定予算の中で行動を起こしているというのは、これはもうどこから見たって、円相場にだってマイナスの影響を及ぼすということになってくると思います。  どうしてこうなったかとかいうことは別にいたしまして、また過去のことをいろいろ言ってもしょうがありませんから、ひとつこれから先の問題としましては、まず十年度の予算を成立させていただく。同時に、効果的な景気対策というものをいろいろと考えていかなければならないのではないか。今自民党におきまして、いろいろと対策を考えた計画を出されております。それを一緒になって勉強しながら、ぜひこの対策を実現できる方向に向かって取り組んでまいりたいというふうにまず思っております。
  132. 小池百合子

    ○小池委員 結局、また大臣のお声しか聞かされなかったように思います。  ちなみに、これは別にここで議論するつもりはなかったのですけれども、予算の編成につきましても日本は極めて硬直的で、審議であるとか公聴会であるとか、そういったところの声がほとんど反映されないで、儀式として通過してしまうという現実がこれまでありました。諸外国の例を見ておりますと、予算に対しての修正というのは幾らでもやるわけなんですね。それが決して政権にとっての、もうそれでオール・オア・ナッシングとかそういう状況じゃなくて、ましてや予算編成における数字の計算などというのは、今どき、そろばんはじいて、鉛筆なめなめ、カーボン用紙敷いてやっているわけじゃないのですから、今の時代から考えましたならば、それは即座に計算もできるわけですね。  ですから、この制度を改めないと、またこれは議会内のことですから大臣としてはお答えにくいかと思いますけれども、今の世界のスピードと日本の今やっていることとのギャップが余りにも激し過ぎるというふうに、私、議員として非常にいらいらするところがございます。経営者として、時間との勝負でこれまで長年やっていらしたということで、そちらの思いも強いのでしょうけれども、こういったスピード感のなさ、欠如ということが日本の今の経済そのものに大きな悪影響を与えているのではないかと思います。  これについてはまたお話を伺えるとは思いますけれども、多分返ってこないと思いますので、法案関係したことについてもう少し伺わせていただきたいと思っております。  先ほど井上議員の方からもお話がございました特許についてでございますけれども、日本特許行政というか、国家戦略としての特許の位置づけであるとか、国家戦略としての今回の大学からの技術移転の問題であるとか、やはりそういった大所高所に立った観点を失ってはいけないというふうに思うのですね。  特許法につきましては、先ほど渡辺、中野議員なども質問なさっておられましたので、それと重複することは避けたいと思いますが、今回、知的財産権、肝心の賠償のところなども腰砕けの状況になってしまっている。先ほどもありましたけれども、今回のをとにかく成立させて、それから修正云々の話が出て、これはまさに今の財革法と同じような議論で、そういうことでは、では一緒にやってしまえばいいじゃないかというふうに思うわけですし、世界のスピードから日本がおくれていく一つの例にもなろうかと思うのですね。  アメリカの場合ですと、私は、ミノルタのオートフォーカスのときの国際的な訴訟などを見ておりまして、これはまさに国家戦略としてアメリカがやっているなということをつくづく感じて、す ごく背筋がぞくっとしたことを覚えております。ましてや、冷戦構造が終わりまして、かつてのCIAというのは、米ロの戦いのウォッチャーではなくて、むしろ経済の方にシフトしているというのは、彼らも公言しているところでございます。  そういった中で、日本として、国家戦略としてこの特許をどう位置づけるのか。そしてまた、それのシーズを花開かせるための今回の特定大学技術移転の法だというふうに私は理解しておりますけれども、こういった大ぐくりのところでやはり国家戦略そのものを考えていかなくてはいけない。では、例えば橋本政権の中でこの国家戦略を考えているというのは一体どなたなんですか、大臣
  133. 堀内光雄

    堀内国務大臣 橋本総理大臣だと存じております。
  134. 小池百合子

    ○小池委員 そうあってほしいとは思うのですが、どうも、一度決められたことをすぐ変えられるということになりますと、それは国家戦略ではないのじゃないかということを、これまでの幾つかの例を見まして、私は、何となくそれじゃ困るというふうな思いもするところでございます。  それから、先ほど大臣がおっしゃいましたけれども、これからリストラが進むことによって失業がふえて三・六%という数字が出て、それがまた消費を冷やしているという悪循環のことをおっしゃいました。株価を上げようと思ったら、上場企業はリストラすれば株価にプラスに反映するというのが非情な株式の世界だと思いますが、確かに、この雇用問題というのは大変大きな問題になっているかと思います。それだけに、新しい産業の芽を今から育てて、はぐくんで、そして次なる産業を、雇用の場をつくるということは、これは必要なことだと思っております。  ただ、今何が起こっているかというと、十三兆円優先株、劣後債などを購入して、そして金融機関のシステムを安定化させるということで、結局バブルをつくった張本人の金融機関に対してそれだけの金をぶち込んでという方策がこれでとられようとしている。そしてまた、これによって貸し渋りを少しでも和らげるというようなことがねらいとされているわけでございますけれども、日銀短観にしても、貸し渋りの件は金融システム安定化策の後からの統計でございますし、また、特にニュービジネスという観点から申し上げますと、ベンチャーというか新しい産業ということで申し上げますと、ニュービジネス協議会というところがございます。そこが資金繰りについてのアンケートをとりました。  その結果、今後六カ月間にいわゆる貸し渋りが緩和される見通しについて、過半数の五九%、六〇%が緩和されないと見ている。それによって自社の経営に及ぼす影響について、成長が阻害される、取引先のリスクが高まるなどなど、極めて厳しい状況にこの新規産業の分野が立たされている。それはそうです、大企業でさえ今厳しいと言っているところに、それよりも体力の少ない、そして担保の少ない中小企業、零細企業、新規産業、ベンチャー、これはますます厳しい状況になっていくかと思います。  ですから、もちろん金融が大事なことはわかるのですけれども、今の状況のように、まだまだ責任者がはっきりしない、また責任者がはっきりするような方法、システムを今回とっていません。そして、そこに血税がつぎ込まれていくと、結局これはモラルハザードにつながるのじゃないかというふうに思うのですが、大臣、今回のこの金融システム安定化策で合計三十兆円が投入され、また貸し渋り対策ということですが、現実にはそれはつながっていないわけですね。本当に貸し渋りを防ぐために、もっと大胆な策というのが必要なんじゃないでしょうか。
  135. 堀内光雄

    堀内国務大臣 今回の金融システム安定化対策というものは、私は評価ができるものだと思っております。  と申しますのは、金融の安定というのは、これは金融会社自体の問題ではなくて、預金者の安定と借り手の安定という二つがございます。預金者の安定につきましては、御存じのとおり、預金者保護の対策が打たれました。片方の借り手の方の安定というものは、これは銀行一社がおかしくなりますと、北拓でごらんになっておわかりのように、それこそそこをメーンにしていた企業がみんな大変なことになっております。ですから、それを救済するのに今大変な努力をいたしております。  そういう意味で、銀行を助けるのではなくて、借り手の方の対策という意味でいきますと、私は、今度の金融安定化対策というもので一つの落ちつきを取り戻したということは、日本経済を安定化させるために非常にプラスになったというふうに考えておりますし、これをもしやっておりませんと、今ごろもっともっと大きな、北拓と同じような状態があちこちで生ずるようなことにもなりかねなかっただろうというふうに私は理解をいたしております。  同時に、今度は貸し渋りにどうだったかという点に参りますと、少なくとも、今度の公的資金の導入をされた銀行の資料を今いろいろととって見ておりますけれども、貸し渋りというより、貸し出しの量は増加をいたしてきております。そういう点では、あれを契機に、貸し渋りはなくなったとは申しませんが、今までよりもずっと形はいい流れになってきているのではないかというふうに思っております。  中小企業に対しては、これはもう私どもは、本来は金融というものは銀行が受け持つべきものであって、政府系金融機関というのは、補助して守る緊急避難のような形で、ここに二十五兆円の資金を用意して対応をいたしているわけでありますが、この方は少なくとも万全の体制の中で成果を上げてきているというふうに思っております。  民間金融機関の貸し出し姿勢が厳しくなっているかという質問に対しまして、中小企業に対するものでありますが、厳しくなったというところが全体で三割を超えて、地域的には北海道、関東、近畿において数字が高くて、特に近畿は約四割の事業者が厳しくなったというふうに答えております。  こういう貸し渋りに対して、政府は、政府系金融機関及び信用保証協会への特別な相談窓口の設置、あるいは新しい融資制度をつくって貸し出しを行い、またマル経資金の拡充、あるいは保険限度額を倍額にする業種をふやしたり、あるいは保証をなくして弾力化するというような対策も打ってまいりました。こういうような対策の効果もありまして、この対策が始まった昨年の十二月から三月の末までの間の期間で、政府系金融機関の中小企業向けの融資全体では二兆七千億円、前年同期比で約二五%の伸びを見せているわけでございますし、また、無担保、無保証のマル経につきましては、約一千八百億円、前年同期比約六一%の伸びとなっております。また、信用保証協会における保証は約六兆円と伸びておりまして、これも約八%の増加でございます。  こういうぐあいに、中小企業対策としての貸し渋りにつきましては政府系金融機関が万全を期して取り組みをいたしておりますが、それでもまだいろいろと御注意をいただく面が多いので、先般も政府系金融機関のトップに全部集まってもらいまして、私から、窓口においての対応、それから、さらに親切に、万全を期するようにという指導を行ったところでございます。  そういう意味で、現在、貸し渋りの面についての対応は、銀行を含めて、中小企業は万全を期しておりますが、銀行の方も徐々に対応はいい方向に動き出してきているというふうに理解をいたしております。
  136. 小池百合子

    ○小池委員 この貸し渋りの問題は、これから伸びようとする企業に、新しい産業の芽をまさに靴でがあんと踏みつけるようなことになるのではないか。また、新しい産業が芽を出すというのは、技術の回転はすごく速いですけれども、そうはいってもやはり五年、十年かかるわけですね。ですから、今種まきをしても五年、十年かかってしまう。では種まきしなければいいかといったらそ うじゃなくて、それでも頑張ってやっていかなくてはいけないというふうに思うわけで、その意味で、これからの産業をそれこそ大切にしようという思いで貸し渋り対策に全力を挙げていただきたいと思います。  はっきり言って、これまでの古い企業は何かと政治的にも声が大きい。そして、それが一丸となって、やれ公的資金だ、補助金だと言う。そもそもベンチャー企業に補助金は矛盾すると思いますので、それを声を上げたからといってどういうものでもないというふうに基本的には思いますが、今、我々のお金がつぎ込まれようとしておるのは、銀行もこれから間接金融から直接金融に変わるわけですから、はっきり言って構造不況業種です。ゼネコンだってそうです。それから、後で大学のことについても伺いますけれども、大学もひょっとしたら構造不況業種じゃないかというふうに思ったりもするのです。  ですから、そういったところにどっとお金がつぎ込まれて、そしてこれからのところに十分にお金が回らない。お金を上げるのじゃなくて、そこの血液を回してあげるということこそが重要ではないかというふうに思いますが。
  137. 堀内光雄

    堀内国務大臣 先ほども他の委員の方に御説明を申し上げましたけれども、資金面ではベンチャー企業に対する対応ということを昨年からずっと取り組みをいたしてきておりまして、企業年金、あるいは証券投資信託の投資対象、今までは投資信託の対象には生まれたばかりのベンチャー企業はなっておりませんでしたけれども、これを対象にすることもよくなっておりますし、あるいは米国のように年金資金等からのベンチャー企業への資金提供を円滑にするために投資事業組合法を今国会に提出をいたしまして、大量にベンチャー企業に向かっての資金が供給できるようにいたしております。  この投資事業組合法におきましては、今まで組合員がすべて無限責任でありましたから、それぞれの年金資金やその他から資金を流す場合でも、間違ったときには全部上まで、厚生年金のもとのところまで持っていかれてしまうということで、みんな資金が停滞をいたしておりましたけれども、そういう組合員については有限責任をもって取り組むことにいたしましたので、今度は思い切った投資が行えるようになるということにもなっております。  また、御存じのように、ストックオプションの制度もつくり上げましたし、これによって働く人たちの意欲も盛り上がる。新しいベンチャーに対してのいろいろの取り組みをいたしておりまして、従来と比べまして、ベンチャービジネスに対する資金の供給の可能性というものは十分でき上がってきたというふうに思っております。
  138. 小池百合子

    ○小池委員 これも、世界の変化のスピードからいえば、日本は遅過ぎると言わざるを得ないかと思います。  先ほど申し上げましたように、日本経済というのはまさに瀬戸際、そこでみんなが危ない危ないと言っているのじゃなくて、今こそ芽をしっかりと植えつけておかなければならないという意識でもって、今回のこの技術移転法案についても御質問をさせていただきます。  振り返ってみますと、日本は、現在の優良企業でありますトヨタであるとかソニーであるとか、本田、松下、三洋といった大企業、これも最初は町工場からたった一人で、もしくは奥さんと一緒にとか、今は大企業でございますけれども、最初は大河の一滴と申しましょうか、すべてベンチャーから始まったわけでございます。ただそれが、時代の波であるとか、それからいろいろな経済状況によって、第一次、第二次ベンチャーブームが日本でも起こって、それでも生き残ってきているところは、それはやはり技術力であったり、人に恵まれていたり、それから先見性があったりということで、日本でもベンチャーが全く起こらないわけではないところか、日本自身が資源もない国としてこれだけ立ち直ったのは、まさにベンチャー国家ではないかと私は言えるのではないかと思っております。  そして今回の特定大学技術移転に関する法案でございますけれども、このベンチャー、新しい産業というのは、あらゆる組織、企業体、団体、国家、すべてに言えることでございますが、やはり人、物、金、そして最近では情報、私はこの四原則から見ていく必要があるのではないかと思います。その意味で、今回の法案というのは、技術と人、この両方にいろいろな意味でお金のバックアップをつけてあげるということで、非常に必要なことだと理解をいたしております。  ただ、現実の問題といたしまして、我が国大学というのは、例えばかつての福沢諭吉さんとか大隈重信公であるとか、最初の創業者、創立者の建学の精神といいましょうか、それがだんだんと何か横並びになってきているような感じがいたします。私立の大学の中には、新しい学部・学科をつくって、最近の世界の、そして日本の必要な分野もどんどん動いていくわけですから、それに柔軟に対応したところで新しい人材を育てようというような意気込みも感じられる昨今ではございます。しかしながら、まだ大学問の競争というのが十分行われてないのじゃないか。また、マスコミの方もその辺の、大学の競争というのは、結局週刊誌に合格者の名前をずらずらと出身高校別に書いてみたり、それからどこに入社したかというようなリストをつけてみたり、入ったり出たりする学生のことについて書いてあるけれども、じゃ、実際その学校で何をしているのか、どういう教授がいてどんな成績を上げてというのは、一般的になかなか出ていないのじゃないかと思うのですね。  例えば、アメリカの場合ですと、ビジネス・ウイークなどという週刊誌に、毎年教授陣とか講義内容、これが専門別に大学でランキングがつけられて、最近金融機関に格付というのがありますけれども、アメリカでは大学の格付を載っけたりしている。大学の方も、そういう競争をするときに何をしているかといったら、そうやって新しい学部をつくったりするところもありますけれども、マラソンでアフリカの方から人を引っ張ってきたり、スポーツ入学などということで、何かちょっと違う方向での競争をやっているのではないかなというふうに思います。  金融機関が護送船団というならば、私は、この大学社会も、教育の世界こそ護送船団だったのじゃないかなというふうに思うわけでございますが、今回のこの法案によって、できるだけそれぞれの大学が競争をする、そしてそこでいい学生を募る、そしてまたいい教授を募る、それによって切磋琢磨して、新しい日本の新産業の芽ができてくれることを期待しているところでございます。この法案についてちょっと伺いたいのですが、まず、第二条のところで、最後に「特定研究成果活用を行うことが適切かつ確実と認められる民間事業者に対し移転する事業であって、当該大学における研究の進展に資するものをいう。」ということですが、この「適切かつ確実と認められる」というのは、だれがそれを認めるのか、そしてその認める人そのものの能力というのは一体どうなるのか、これについて伺わせていただきます。
  139. 江崎格

    ○江崎政府委員 この法案で想定しておりますスキームによりまして、最終的にその技術の譲渡を受けましてこれを企業化するという場合に、受け取った技術が死蔵されるのではなくて、積極的に製品化、商品化されるということを想定しているためにこう書いたわけでございます。  では、具体的にTLO技術移転機関がどの民間企業移転するかという場合に、これは技術移転を行う人自身が選別をするわけでございまして、まさにこれは市場原理のもとで、専ら事業上の自由な判断に基づいて行うということでございまして、少なくとも政府が関与するというようなものでは全くないものでございます。
  140. 小池百合子

    ○小池委員 同様の質問になろうかと思いますが、その次に実施計画の承認、そしてこの第四条のところには承認事項として幾つか出ているわけでございます。先ほども同じ質問があったかとは 思いますけれども、通産大臣そして文部大臣の承認を受けるというふうにあります。では、承認をするその目安というのが、今の問題では市場原理ということでございましたけれども、第四条の部分についてのこの承認事項、これはどれぐらい官が関与するものなのか、それについて伺わせていただきます。
  141. 江崎格

    ○江崎政府委員 これは、この移転事業を実施しようとする方が提出した実施計画というものがまず第一に実施指針に照らして適切かどうかという点を見ます。それから、その実施計画というものが確実に実施されるかどうかということを見るわけでございまして、これを文部大臣及び通産大臣が見るということでございます。  その実施指針の内容、つまり、その実施指針に照らして適切かどうかというもとになる実施指針の内容でございますけれども、これは、その移転事業の基本的な方向ですとかあるいは移転事業を実施する方の要件ですとか、それからその事業の内容、実施のやり方、こういったことについて実施指針に定めるわけでございまして、その実施指針に照らして適切かどうかという点をチェックするということでございます。
  142. 小池百合子

    ○小池委員 つまり、実施の時期であるとかについてチェックをなさるということで、中身については市場原理に任せるというふうに理解してよろしいわけですね。つまり、私はこうやって法案を読ませていただいて、承認であるとか認証であるとか、認証という言葉は出ていないですが、ここで文部大臣、通産大臣ということで、また承認事項になっていきますと、せっかくのベンチャーの部分が、例えば通産省のお役人の皆さんが、この事業はいいとか悪いとかいうふうになってしまうのではないかという、私はそういう心配を抱いたからであります。  そして、できるだけ伸び伸びとさせて、千三つとも言われるベンチャーでございますけれども、そういったところに対しての目ききがお役所におられるかどうかというのは、これは私はよくわからない。  これまでの土地の不良債権の問題も、そもそもさかのぼって考えますと、例えば業を興す銀行と書いてあるはずの銀行が、結局土地を担保にとることで安心をして、もしくは慢心をしてしまった。そして、その審査の責任を免れる、みんなで渡れば怖くないみたいに、とにかく土地土地ということに走り過ぎた結果だったと思うのです。銀行、金融機関も最近は理工系の方を採るようではございますけれども、その人たちも自転車こいで営業で走り回っていて、本来の能力というのが適切に使われているとは思わない。結局、自分の保身、責任逃れということで、土地ということにみんながだあっと走り過ぎたがために今不良債権がこれだけ大きな問題になってきて、それがまたベンチャービジネスを苦しめているというような、そういう回り回っての構図が見られるわけでございます。  その意味で、銀行にそれだけの目ききがいなかったのに、通産省文部省にその内容を吟味するような目ききの方がおられるのかどうかということに私は大変疑問を抱いたわけでございますが、その意味では、市場原理に徹底して任せるということで理解してよろしいわけでございますね。
  143. 江崎格

    ○江崎政府委員 大学と、それから研究成果を実際に商業化といいますか企業化します企業との間に、技術移転機関というか技術移転事業が入るわけでございますけれども、まず、特許に値する技術かどうか、あるいはその市場性がどうかというようなことを判断する、それは移転事業者の方がなさるわけでございまして、そういったことを役所がチェックするわけではないのです。役所は、その移転事業者に対して、これは経営上の問題とかいろいろあるわけでございますので、確実に事業を実施する能力があるのかどうかとか、あるいは先ほど申し上げた実施指針に照らして適切かどうかという点をチェックするだけでございまして、技術の将来性の問題、マーケティングの問題、こういったことはその移転事業者自身が先ほど申し上げました市場原理の中で判断されるということでございます。
  144. 小池百合子

    ○小池委員 文部省の方に伺います。  第九条で、文部大臣は「研究の進展が図られるよう必要な配慮をする」というふうにございますけれども、「必要な配慮」というのは例えばどういうものをいうのでしょうか。
  145. 雨宮忠

    雨宮政府委員 今先生御指摘の点は、第九条の「大学における学術の応用に関する研究の進展が図られるよう必要な配慮をするものとする。」という部分についてのお尋ねであろうかと思います。  大学は、御案内のように、いろいろな教育研究活動を幅広くやっておるわけでございますが、特にその応用面に関しましてどんな必要な配慮をしているのかということでございますが、例えば、一昨年から日本学術振興会への出資金を活用した学術の応用研究等の推進ということで出資金の予算措置を講じておりますし、また科学研究費補助金の中でも特に研究の成果が実用に移される可能性を持つ研究を対象とした展開研究という区分を設けて、そういうものを推進もしております。  それから、予算措置ということではございませんけれども、学内におきますいわゆる発明の取り扱いについての発明委員会の設置、運営などにつきましてもいろいろ大学にお願いもしておるところでございます。また、特許につきましてのいわば大学の先生方の意識改革、意識改革となぜ申しますかというと、特許を云々するような研究は余り一流の研究ではないというような考え方をする向きがまだあるというようなことに対処して、そういうことではないのだというような、そういう意味での意識改革でありますけれども、そういうような研究業績全体に対する見方について、学術審議会の考え方を大学側あるいは研究者側に提示する。  ちょっとまとまりませんあれでございますけれども、そういうようなもろもろの政策的な措置あるいは予算措置、それらがすべて配慮をするということにかかわりのあるものだというように考えております。
  146. 小池百合子

    ○小池委員 今おっしゃいました意識改革というのは大変重要なことだと思います。今回のこのTLOが設置されましても、例えば教授陣たちの意識改革、象牙の塔にこもって、だれだれ先生の弟子ということで、もう年功序列がちがちのところが結構ございます。そういった教授陣のマインドを変えていかないといけないと思いますし、そのためには、一番手っ取り早いのは成功例を出すことではないか。それによって、何か大学教授がみんな企業家になってわっせわっせとやり始めるということを考えるのも、ちょっとそら恐ろしいような気もいたしますけれども、そういった方向への選択の道が開けるということは、私は重要なことではないかと思います。  今回のこの法案というのは、アメリカの例なども参考にされているようでございますが、これまでベンチャー、そして大学ということでいつも引き合いに出されるアメリカのスタンフォード大学でございますが、もともとは、スタンフォードさんという方が私財を投じて、鉄道王をやったり州知事をやったりした方でございますけれども、十六歳になるかならないかの息子を突然失ってしまった、それでは、息子のかわりに若い人たちが育ってくれればということで、私財を提供してできたのがスタンフォード大学でございます。  そしてまた、その中でそういった建学の精神を受け継いだ教授が、わずか五百三十八ドルかな、何かを学生に提供して、ヒューレット君とパッカード君に出してつくったのが、スタンフォード大学から初めてスピンアウトしてできた今のヒューレット・パッカードである。それから、サン・マイクロシステムズというのが今でも大変シリコンバレーの中でもリーディングカンパニーの一つでございますけれども、サンという会社名というのは、スタンフォードーユニバーシティーからきているSUNであるというようなことを考え ましても、やはりそれでスタンフォード大学というのは非常に大きな大学の特色を出している。  であるならばというので、またそこの大学に行きたいと学生は思う。そして、またそこで、それならば教授、プラスアルファの自分の技術を世に出したいと思う先生が集まってくる。シリコンバレーもいいときもあったり悪いときもあったりで、スタンフォード大学だって、いいときもあるし悪いときもあるけれども、それこそ、まさにこれからの大学の競争において、このスタンフォード大学というのは、特色をはっきりと打ち出しているという一つのいい例ではないかというふうに思います。  それから、今特定大学の方でいろいろと名乗りを上げている大学国立も私立もございますけれども、私は、地方にある国立大学、そして私立大学にはこれからぜひとも頑張っていただきたいというふうに思います。  と申しますのも、大体アメリカのベンチャー企業を見ておりますと、ニューヨークだとか大都市で発生したベンチャーの数は、少ないとは言えませんけれども、そういった大都市、特にニューヨークで発生したビジネスの数というのは、むしろニュービジネスには余りない。ましてやワシントンでは余りない。政治とか経済のエスタブリッシュメントに近いと、新しいものは出てこないのですよね。そういったところと全く関係のないところから新しい芽が出てくる。むしろ政治とか経済に邪魔されないところから出てくる。  あのナイキにしましても、もともとはオレゴン州のポートランドという大変小さな町から始まりましたし、今世界一のお金持ちの、あのアップルであるとかマイクロソフトであるとか、そういったところも最初はガレージから始める。まさにかつての松下、本田と同じような芽がそういった地方都市で育ってきているというのがアメリカの最近の、またこれまでのベンチャーの共通した事項ではないかと思います。また、地方の方が土地だって安い。そして最近は、就職難ということでございますが、本当にガッツがある学生ならば、地方に戻って、地方に根差してやっていこうという人がそういったところから少々出てきてほしいなというふうにも思うわけでもございます。  ただ、残念ながら、ここのところ、入社とか卒業式とか、そういうニュースを見ておりますと、何かまだ学生さんたちは今の世の中の厳しさがよくわかっていないみたいで、とにかく首になるまで勤めますとか、模範的な回答をするような人たちばかりで、何かつまらないなと私なども思ったわけでございます。かくいう私も、日本大学をスピンアウトして、どんどんベンチャーの世界ばかり、ある意味でのベンチャーの世界へ入って、そして今、通るか通らないかわからないという、最もベンチャーの政治の世界にいるわけでございます。しかし、日本人が、今大変消費が冷え込むと同時にマインドが冷え込んで、あれもだめだ、これもだめだと思ってしまう、そして若者たちが、そんなものだと思って、またしょげてしまうなどということは、次の二十一世紀に非常にマイナスな点になってくるというふうに思います。  今のこの時期、大変重要な時期でございます。あれもだめ、これもだめというような政策を出さずに、どんどんと本当の意味で構造改革につながる抜本的な対策を政府としても出していただきたいし、こういった法案についてはぜひともバックアップさせていただきたいというふうに思いまして、最後にさせていただきます。  ありがとうございました。
  147. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次に、吉井英勝君。
  148. 吉井英勝

    ○吉井委員 日本共産党の吉井英勝でございます。  本来、大学や国研での研究成果特許など知的所有権として結実し、産業技術の向上を初め広く社会的に活用されることは、大変有意義なことだと考えております。しかし、そのことが、大学が本来果たすべき真理の探究を通じて人類社会の進歩に貢献するという役割を見失って、大学の研究を産業活動に直結させたり、研究内容や研究活動を民間の新製品開発に従属させるものとなってしまっては、これは長期的に見て大学の学問研究の荒廃と社会的貢献を衰退させるものになってしまう、そういう問題が出てこようかと思うわけです。  大学等における研究成果技術を民間に移転するときには、このことについて最も慎重に、深い考慮を払うべき問題だというふうに思うのですが、この点について、最初に大臣の所感を伺っておきたいと思います。
  149. 堀内光雄

    堀内国務大臣 お答え申し上げます。  大学には我が国の研究資源の多くが集中をいたしているわけでございまして、技術革新を生み出す大きな潜在能力が存在しているのでありますが、我が国におきましては、その潜在する能力、研究資源社会において必ずしも十分に活用されていないというのが実情だと思います。  そういう意味で、我が国においても喫緊の課題である経済構造改革というものを強力に推進するためには、こうした大学における技術あるいは研究成果、こういうものを民間事業者移転をして、先ほどからもございますようなベンチャービジネスのようなものを育てながら有効な活用を図っていかなければならないのではないか。新規産業の創出だとか産業技術の向上を促進することが非常に重要であり、有効であるというふうに思っているところでございます。  確かに、こうした技術移転は、大学などにとりましても産業界のニーズのフィードバックにつながるものではありますが、しかし、これをもって大学の研究が産業界のニーズに合うようにゆがめられていくというふうには考えておりません。事実、産業界への技術移転が活発な米国の一流大学の場合には、アカデミックな評価から見てもすぐれた業績を上げているところでございます。また、技術移転の対価の研究資金への還流などを通じて研究活動が一層効果をあらしめる、活性化をさせているということもございます。  大学の学術研究の振興そのものの価値の重要性は当省としても十分認識をいたしておりまして、本法案も、技術移転による大学の研究活動活性化を通じて学術の進展を図っていこうというものであります。  特に国立大学の場合、今までのところ一〇〇%のうち約八五%が各先生方のパテントの所有につながっていて、一五%が、先ほども報告がありましたけれども、国が持っている。この八五%がほとんど活用されなくて、しかも活用されるときには特定の先生が特定の事業につながって成果を上げている例もあるというふうに考えますと、これは、かえってこういうオープンな形の中で取り組むことの方が大きな成果を上げ、明瞭なといいますか、すっきりとした形の中で国民に理解していただけるというふうに私は感じております。
  150. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は本来、大臣と違うような議論になるとは思っていないわけなんです。  冒頭申し上げましたように、本来、大学国立研究機関での研究成果特許など知的所有権として結実して、産業技術の向上を初めとして広く社会活用されるということは、有意義なことだと思うのですよ。そこは大臣と一緒だと思うのですね。しかし、そのことが、大学が本来果たすべき、大学というのは真理の探究を通じて広く人類社会の進歩に貢献するという役割を持っているところですから、そのことを見失って、大学の研究が産業活動に直結してしまう、あるいは研究内容や研究活動を民間の新製品開発に従属させるようなものになったら、結局そういうことになってしまったのでは、長期的に見て大学の学問研究の荒廃と社会的貢献を衰退させることになってしまうと私は思うのですよ。恐らくその点は大臣大学あり方としては一緒じゃないかなと思って、その点についての所感をお伺いしておいて、後ほど議論に入っていきたいと思っているのです。その点だけもう一遍お願いします。
  151. 雨宮忠

    雨宮政府委員 大学の学術研究の特徴といたしまして、研究者の自由な発想で研究を行うということが一つございます。  それから、その研究成果実用化されるという側面をとりましたとしても、大学の研究者が行う研究の種類、性格というものは、これは一般論でございますけれども、同じことを民間企業の研究者がやるということとはやはりおのずと異なった切り口なり攻め口なりというものが出てくるわけでございます。  そういう特徴というものをもし殺すようなことがあったら元も子もないわけでございまして、先生御指摘のように、研究者の自由な発想により、また真理の探求ということを目指して行われるべき研究のもとから出てくる成果、これをできるだけ生かしたい、こういうことでございます。
  152. 吉井英勝

    ○吉井委員 せんだって、三月十一日、これは委員会は異なりますが、科学技術委員会で私は紹介したのですが、プロジェクト研究費とか競争的資金でない普通の経常研究費で非常に大きな成果を上げている例というのは、相当多くあるわけです。  一例を挙げますと、通産省の大阪工業技術研究所で八年間の経常研究の積み重ねでPAN系の炭素繊維の開発に成功して、科学技術庁長官賞を受賞した。宇宙工学の分野とか航空機の翼とかさまざまな分野でこれが使われて、これ自身が発明されてから大きなプロジェクト研究費がついてきて、さらにどんどん行っているというものもあるわけです。  それから、科学技術庁の金属材料技術研究所の高温超電導酸化物の発見というのも、経常研究費の枠の中での、研究者個人のアンダーグラウンドの研究の中での成果として生まれてきました。  それから、例えば気象庁の研究所が本来業務でこつこつデータを集積して、今日では地球環境問題として注目されるようになりましたオゾンホールの発見を一九八四年に世界で初めて行ったというものもあるわけです。  大学国立試験研究機関の経常研究の中でこうした貴重な成果が上げられているということは、日本の科学技術の高い水準を示している。私はこれは誇るべきことだというふうに思っているのですが、大臣、どうでしょうね。
  153. 佐藤壮郎

    佐藤(壮)政府委員 委員指摘のとおりだと思います。  私も二年前まで研究所におりまして、経常研究を中心とする基礎研究が、研究者自身を磨き、かつ研究所のポテンシャルを維持向上させるためには必要不可欠だというふうに考えております。  工業技術院の研究所の現状におきましても、現在、プロジェクト研究として推進しているテーマであっても、そのもともとの発想は経常研究の中で行われたというものが数多くございます。
  154. 吉井英勝

    ○吉井委員 大学における経常研究の中からにしても、国立試験研究機関のものにしても、真理の探究を求めながら、こつこつした、さまざまな研究者の粘り強い努力、頑張りの中で本当にたくさんの成果が生まれてきているということは、これは私は誇るべき日本の宝だというふうに思っているのです。今挙げた例なんかは、いずれも研究成果が上がってからプロジェクト研究費がどかんとついていっているわけなんです。  実は、九三年二月の予算委員会の総括質問を行ったときに、私は、政府研究開発費がGNP比で欧米の半分だ、早く〇・五%という水準から一%へ二倍にふやす必要がある、大学などの積算校費を五年間で二倍にふやすくらいの計画を聞きたいということを主張したわけですが、当時の森山文部大臣も、先生御指摘のとおり、研究費の拡充や大学施設整備を推進していきたいと答弁をされました。  しかし、残念ながら、経常研究費の方は、国立研究所の方で見ますと、人当研究費で実は一九八一年の百四十四万円が八九年までずっと九年間据え置かれたのです。そして、九八年予算では百六十七万一千円に上がっていますが、これは一九八一年比で見ますと一六%の伸びというところで、消費者物価指数の伸びに比べても極端に低いという異常な事態です。国立大学も同様に低い伸びです。  そこで、文部省の方に聞きますが、経常研究費、大学でいう教官当たりの積算校費について、科学技術基本法をつくったときに、この委員会でつくったわけですが、我々国会が意図した五年間で二倍に増額という目標に向けて、これは相当な努力をしていくということが今大学の方で求められる、大学分野で求められると思うのですが、この点はどうですか。
  155. 雨宮忠

    雨宮政府委員 御指摘がございましたように、科学技術基本計画大学に対する研究費ということに関しましては二つのことを言っているわけでございまして、一つは、今先生が御指摘のように、いわゆる恒常的な研究費、研究基盤というような表現で言っているかとも思いますけれども、これの強化ということが一点。それからもう一つは、競争的な研究資金、これも拡充するべきである。この二点を言っているわけでございます。  今御指摘の、国立大学におきます当たり校費の問題でございますが、今般の財政構造改革特別措置法等によりまして、国立学校につきましては、集中改革期間におきます一般会計からの受入額が前年度を上回らないということとされたことによりまして、既定経費の大幅な見直しを図る中で、今回、来年度に向けまして単価二%減という状況になったわけでございまして、科学技術基本計画が目途としたところ、この実現に向けて、なかなか厳しい状況であることは先生御指摘のとおりでございます。今後とも、厳しい中ではございますけれども、努力をしてまいらなければならない課題であるというように考えております。
  156. 吉井英勝

    ○吉井委員 大臣も今お聞きいただいたとおりなんです。私は、プロジェクト研究費とかそれに類するものについて、何もけちをつけているのじゃないのですよ。そういうことを言っているわけじゃなくて、大学とか国立研究所などで研究成果が生まれて、それからその成果を技術移転するという課題が出てくるわけなんです。だから、まず政府開発研究費を五年間で二倍にするというこの目標実現に向けて、これは特に通産大臣とか文部大臣とか科学技術庁長官とか、大学それから国立研究機関のかなり重要な部分を所管していらっしゃる大臣に、相当な努力をやってもらう必要があると思うのですよ。  八〇年代、国研の場合、全く増額なしできているのですが、八一年比でわずか二八%しかふえていないというこの経常研究費ですね。その中で、本当に研究者の皆さんが、先ほどもわずか三つばかりですが、御紹介をしましたように、国際的にすぐれた成果を上げているのですよ。しかし、その最も基礎的なところが伸びていないということについては、私は、特段の努力というものを、やはり大臣としては閣議のときに提起されたりして、本当にそのことに向けて努力をしてもらいたいと思うのです。この点、大臣、どうでしょうか。
  157. 堀内光雄

    堀内国務大臣 科学技術基本計画平成八年七月の閣議決定においては、国の基礎的、独創的な研究開発を推進することが重要と指摘をされておりまして、こうした指摘を踏まえて、当省としても競争的資金の拡充や基盤的資金の充実等、多元的な研究資金の拡充は図ってきておりまして、あと具体的にはいろいろと数字もあるようでございますので、政府委員から御説明を申し上げます。
  158. 吉井英勝

    ○吉井委員 だから、言っていますように、大臣、プロジェクト研究について、別にけちをつけているのじゃないのです。しかし、経常研究費というのは、すべての研究者にかかわってくる、最も基礎をなす部分なんです。それが、この間、八一年の一人当たり百四十四万円というその水準から、二十年近くたってわずか一六%しかふえていないのです。消費者物価の伸びから比べてみたって、これは全然違うのですよ。  シーズを育てるだなんだという議論も、やはりこういうところを本当にしっかり進めて、大体この経常研究費でうまく出たものについてはどかんと、さっきおっしゃった競争的資金だとかさまざまなプロジェクト資金が出てくるのですよ。しかし、それは成果が上がってからの話なんですね。その基礎の部分をしっかり育てるということが、日本の科学技術発展というものを大学でも国研 でも考えたときに、やはりそこのところを、大臣として関係する各大臣に呼びかけられて、本当に頑張っていただく必要があると思うのです。この点だけ一言、もう一遍聞いておきたいと思います。
  159. 堀内光雄

    堀内国務大臣 御支援をいただいてまことにありがとうございます。  こうした、ただいま申し上げましたり、あるいは先生から御指摘のありましたような経常研究費を含めまして、今後とも関係各省庁との連携を保ちながら、基礎的な、独創的な研究開発を推進するための資金の拡充に努めてまいります。
  160. 吉井英勝

    ○吉井委員 通産省の方が九五年に独創的産業技術研究開発促進制度を創設されて、NEDOに出資して、NEDOを通じて大学国立研究所の研究者グループから研究テーマを提案公募し、将来の新しい産業の創出、技術実用化につながる有望な産業技術シーズに関する研究開発促進するということをやってきたことは、私も知っているわけです。毎年多数の応募が殺到しております。  ただ、よく見ますと、その背景には大学や国研の深刻な研究費不足というのがあるのです。だから殺到してくるわけなんです。  九六年度からは、これと同様の制度が、通産省だけじゃなくて文部省、科学技術庁など他の五省庁でも創設されてきました。この提案公募型の研究開発費やプロジェクト研究費をふやすことで経常研究費の方の増額という根本的対策が放置されてはいけないわけですから、幾らシーズを育てるといっても、やはり水や肥料をちゃんと補給しないとうまくいかないわけですから、今、大臣、経常研究費を含めて基礎的な研究分野について力を入れるという努力をお聞かせいただきましたので、ぜひそういう方向でやっていただきたいと思います。  さて、通産省の提案公募型事業としてどういうものがあるかというのを、昨日いただいた資料を見ますと、昨年度の産業科学技術領域のプロジェクトでは、研究代表者というのはほとんど国立大学国立研究所の人たちなんですが、例えば、横浜国立大学の塚本先生を総括研究代表者として、しかし、そこには、住友電気工業とグループを組んで、高温超電導体の非超電導材料との複合構造の最適化による交流超電導性能向上というのを進めております。  また、北海道大学雨宮先生を代表者として、NTTと半導体の表面構造を利用する自律分散形情報処理システムの開拓など、共同研究機関の方には大企業がずらりと並んでいるというのが、これの実態じゃありませんか。
  161. 佐藤壮郎

    佐藤(壮)政府委員 私ども、いわゆる提案公募制の予算制度につきましては、産業技術の振興という意味から、共同研究者として企業と一緒にやるということを平成八年度から原則にしております。  ただ、その技術的な要素につきましては、すぐ開発あるいは商品化できる技術ではなくて、やはり十年先、二十年先をにらんだリスクの高い先導的な研究テーマを選んでいるつもりでございます。
  162. 吉井英勝

    ○吉井委員 通産省の方の提案公募型事業の領域別内訳というのを少し見てみると、中小企業領域の比率というのは、九六年度では三〇%、九七年度は二五%、九八年度は二九%ということで、通産省の方は中小企業支援ということをよく言われるのですが、確かに中小企業にも出ているのは出ているのですが、実態は、地域中小企業大学技術支援をするというよりも、やはり大企業大学の直接の共同になっているというのが、ここに見られる特徴じゃありませんか。
  163. 佐藤壮郎

    佐藤(壮)政府委員 ただいまの提案公募制度の中での中小企業を対象とするものでございますけれども、平成十年度におきましては約五〇%、半分に増額をしております。
  164. 吉井英勝

    ○吉井委員 いただいた資料によると、九八年度は、総予算額五十一億四千万円の中で、中小企業領域比率は十五億円、二九%ということです。これは、この分野だけじゃなしに、九八年度通産省予算を見ますと、新規産業創出型産業科学技術開発制度三百億円、大企業向けの技術開発補助金、委託費が大宗を占めるニューサンシャイン計画制度四百六十七億円、物流の情報化などハード、ソフトの研究開発費など情報化対策に三百三十三億円。これだけで一千百億円もの大企業向けの研究開発予算を組んでいます。  これら全体と比べると、中小企業領域での九六年度の八億円、九七年度の十二億円、九八年度の十五億円というのは本当にわずかなものであって、今おっしゃったような、仮にこの十五億円が若干膨らんだところで、全体として見れば、中小企業支援という面では非常に弱いものがあるということは数字が示しているということを指摘して、次の点に入っていきたいと思います。  今回の法案の出発点になったのは、産学の連携・協力の在り方に関する調査研究協力者会議の昨年三月のまとめと、十二月の中間まとめに示された方向ですが、そこでは、ベンチャーキャピタル、シンクタンク等の民間企業や第三セクターが主体となって各種の取り組みが進行している状況等を踏まえ、これらの活動がより効果的に展開されるとともに、全国的な標準モデルの開発に資するとしておりました。  そこで伺っておきたいのですが、日本の民間大手のベンチャーキャピタルにどんなものがあるか、これを最初に伺いたいと思います。
  165. 江崎格

    ○江崎政府委員 私ども、余り正確なデータは持っておりませんけれども、大体百六、七十ではないか。それから、カテゴリーに分けますと、銀行系のもの、あるいは証券系のもの、あるいはメーカー系のもの、あるいは独立したものというふうに分けられると思いますけれども、直接調べる手段がなかなかございませんので、余り詳しいことはわかっていない実情でございます。
  166. 吉井英勝

    ○吉井委員 いや、民間の大手のベンチャーキャピタルについては資料がないと言うが、あなたのところから資料をいただいて、一番大きいのは野村証券系のジャフコ、九六年度末投資残高千九百三億円とか、二番目が大和証券、長銀系の日本インベストメントファイナンスとか、三番目が富士銀行系の富士銀キャピタルとか、こういう証券、銀行系のベンチャーキャピタルが上位を占めているというのが実態ではありませんか。
  167. 江崎格

    ○江崎政府委員 今挙げられたような企業がベンチャーキャピタルとして活動しているのは、私どもも承知しております。
  168. 吉井英勝

    ○吉井委員 それで、ことし三月十六日付の朝日の大学シリーズでは、日興証券系の日興キャピタルが横浜国立大学に、法律案で言われるところのTLOを持ちかけているという話ですが、これは今はどういう状況ですか。
  169. 江崎格

    ○江崎政府委員 私ども、事実関係を承知しておりません。
  170. 吉井英勝

    ○吉井委員 法律案の提案者が事実関係を承知していないというのは、これは非常に奇妙な話だと思います。大体、マスコミ等で広く知らされていることですから。  では、あわせて聞きますが、ジャフコという会社はどういうベンチャーキャピタルであって、このジャフコは、大学研究成果の事業化で具体的に今どんな取り組みをしていますか。
  171. 江崎格

    ○江崎政府委員 現在、北海道大学と東北大学技術移転関係の機関をつくるという検討が行われているというのは承知しておりますが、それに関連してジャフコが参画をしているというふうに聞いております。
  172. 吉井英勝

    ○吉井委員 ジャフコは北海道大学で既に北大アンビシャスを設立しており、筑波大学の方では、ジャフコが中心になって、日興キャピタル、山一ファイナンス、日本インベストメントファイナンスなど九社、十一億円で筑波先端技術投資事業組合、いわゆる筑波ファンドを昨年六月に設立しているのではありませんか。  それで、この間、二十三日の読売の特集を見ると、野村証券の総合研究所副主任研究員の方が登場して、「授業料に頼った大学経営は今後、少子化が進むとともにさらに厳しくなる。」とした上 で、「学会や論文ではなく、産学協同の成果を研究者の評価に加える。」という主張を行っておりました。これはジャフコをつくっているところの方ですね。つまり、ベンチャーキャピタルというのは、この論理を今大学に迫ってきている。  大学側の期待しているものとして、朝日の記事の中に紹介されていたのは、「将来の研究費確保にもつながれば」というのが横浜国立大学の声で、「特許で収益があれば、半分以上は特許を出した研究室の研究費にまわすが、一部はほかの研究費にも充てる予定だ。」準備の中心になっている東大先端科学技術研究センターの玉井教授は「天文学、哲学、古代史などいわば「金にならない」研究にも研究費をまわしたい。利潤追求だけで大学としての理念を見失ってはいけないと思う」ということを言っておられました。  つまり、経常研究費が今余りにも低い、それが本当に長い期間続いている、それが大学をベンチャーキャピタルに期待したり依存したりするところへ追い込んでいる。こういうことは、これは文部省に来ていただいているのだけれども、本当に今の大学あり方としては懸念すべき一面を持っているのじゃないですか。
  173. 雨宮忠

    雨宮政府委員 国立大学研究条件の点で、先ほど恒常的な研究基盤のことについてお尋ねがありましてお答えしたわけでございますが、もう一つの競争的な資金ということにつきまして申し上げますと、科学研究費補助金につきましては、十年度に向けまして五十七億円の増、十年間で二倍以上の伸びを示しているわけでございまして、全体としては必ずしも悪い状態ではないというように考えておりますし、また学術振興会の出資金事業というものもおととしからでき上がってきておるわけでございまして、それらの競争的な資金の改善とあわせて今後とも研究条件の改善を図ってまいりたい。  また、公的資金の導入、投資ということ以外に、もしできることなれば、先ほど奨学寄附金ということで御論議がございましたけれども、民間からの資金導入ということもあわせて国立大学としては大いに努力してもらいたい、かように思っているところでございます。
  174. 吉井英勝

    ○吉井委員 今私御紹介しましたように、マスコミにさえ登場してきて、今本当に研究費が余りに低い、それが長く続いているということでの大学人の苦しみというものが紹介されております。  三月十六日付の朝日には、これはあなたのおっしゃった数字よりも少し古いけれども、九六年度の文部省資料からというので広く紹介されておりますが、大学運営経費、科学研究費補助金、今おっしゃった分も紹介しておりました。同時に、外部資金が科学研究費補助金にかなり並ぶぐらい今ふえているのですね、寄附や受託研究費等。だから、経常研究費がやせ細ってくる、外部資金への期待を持たざるを得なくなっているという大学の大変さというものを私は記事を見ておりまして実感しました。  今日、証券スキャンダルのときの暴力団との癒着とか損失補てん、飛ばしやっけかえというので証券会社といえば有名ですが、暴力団系総会屋との癒着や大蔵省官僚への接待汚職などで幹部が次々と逮捕をされる、言ってみればベンチャーキャピタルの本体の方は悪いこと何でもありという状態です。  この基礎研究費が低く抑えられる中で、ベンチャーキャピタル中心に、あらかじめ工業所有権の取得を前提として産業技術として実用化することを目的とする研究に誘導されていくと、これは実用化に結びつかないような研究は軽視されてしまう、それは大学における学問、研究がゆがめられるおそれがあると思うのですね。  だから私は、冒頭申し上げたように、大学の研究の成果が社会に還元されることは有益なことであり、当然のことだと思っているのですよ。しかし、今のような問題については、文部省通産省はやはりそういう事態を避けるために、だから冒頭大臣にお聞きしたのですが、本当に慎重な深い考慮というものが必要だというふうに思うのですね。何をしなければならないと今考えておられますか。
  175. 江崎格

    ○江崎政府委員 大学の研究活動の自主性というのは、私ども十分尊重されなければならないというふうに思っております。今御提案しております法案におきましてもその点は私ども配慮しているつもりでございまして、例えば法案の第三条の第二項四号に実施指針を定めることになっているわけですが、大学における学術研究の特性に十分配慮するというふうになっておりますし、それから法案の第十条のただし書き、これは産学の連携のことに触れておりますが、これにおきましても「大学における学術研究の特性に常に配慮しなければならない。」というふうになっているわけでございまして、こういった点を十分配慮しながら、しかし、大学にある研究の成果を、将来性のあるもの、マーケッタビリティーのあるものについてはこれを商業化する、産業化して日本経済の活力に寄与するということを考えたいと思っているわけでございます。
  176. 吉井英勝

    ○吉井委員 五年ほど前になりましょうか、私たちは全国の国立大学調査をやりました。施設も大変だ、文献とか、日本のスタンダードになるようなものあるいは国際標準になるような資料が雨漏りのする部屋に置かれているとか、あるいは学生が実験するのに研究費が不足してワンカップ大関のワンカップをビーカーがわりにしている例とか、それは極端な例だけじゃなしに、本当に今深刻な事態に置かれているというのを調査してきて、私たちは国会で紹介もし、取り上げたことがあります。  今第十条で学術研究の特性に配慮し云々をおっしゃったけれども、その十条とその前の九条のところで「特定研究成果民間事業者への移転促進に資するため、大学における学術の応用に関する研究の進展が図られるよう必要な配慮」とか、大学民間事業者との連携及び協力の円滑化に努める、「民間事業者が特定研究成果活用するために必要な知識及び技術の習得を促進するための施策を効果的に推進するよう努めなければならない。」大学や国研の研究条件が今言ったように極めて貧弱かつ不十分なもとで、わざわざ法律でこのような規定を置くことは、大学や国研の研究がますます大企業産業界の利益に沿った方向に進まざるを得ないというところに行ってしまうおそれがある。私は、この点については、本当にそういう事態を避けるために、やはり大臣として特別そこのところについて深い考慮を払った対応というものをお考えになる必要があると思うのですよ。大臣、どうですか。
  177. 堀内光雄

    堀内国務大臣 先ほどからの御指摘のように、大学の研究活動における自主性というものは尊重されなければならないということはもちろんでありまして、その趣旨は本法案の規定にもあらわれておりまして、その線はしっかりと守ってまいりたいと思っております。
  178. 吉井英勝

    ○吉井委員 本当はもう少しこれで議論したいのですが、特許法も一言お聞きしておきたいと思いますので、いずれにしても、この問題は、ベンチャーキャピタルが大学へ乗り込んで、学問、研究の自由や研究者の自立、研究成果社会への還元、人類への貢献ということがゆがめられることのないようにしなきゃならぬということを重ねて申し上げておきたいと思います。  それで、特許法については、現行法による手続は、オンライン、文書、フロッピーなどのいずれの方法も可能ということであります。今回の改正で、原則としてフロッピー出願をオンラインシステムの故障などで使えない場合に限るとしています。この方法は、中小企業や零細な弁理士などがオンラインシステムになじむコンピューターを設備するための相当程度の費用負担を考えると、やはりフロッピー出願にも余地を残すということで中小企業の利便を考えるべきだというふうに思いますが、この点についてどうですか。
  179. 荒井寿光

    荒井(寿)政府委員 今回の改正でオンライン出願を推進していくというふうになっております が、従来、文書、紙で出していただく場合と、それからさらにフロッピーディスクで出していただいてもおります。今、中小企業の方も弁理士の方もフロッピーディスクの多くはパソコンでつくっておられます。今までの出願の場合には専用の端末を買っていただかなければいけませんでしたので、相当お金がかかるということでございましたが、今回は、普通のそういうフロッピーディスクをおつくりになるパソコンでそのままオンライン出願していただけるように便利にしたものでございますので、基本的には中小企業の方や弁理士の方に対する負担はふえないというふうに思ってはおりますが、なお一層の配慮が必要ということで、パソコンの出願のソフトは無料で配付するとか、全国の都道府県にあります発明協会の支部で無料で使っていただけるとか、出願のアドバイザーをするとかいう配慮をしながら、中小企業の方や弁理士の方に御負担のかからないように配慮してまいりたいと思っております。
  180. 吉井英勝

    ○吉井委員 もうこれで終わりたいと思います。  それで、特に今の点、中小企業者の方に特段の配慮をしていただきたい、このことを申し上げまして、私の質問を終わりたいと思います。
  181. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 これにて両案に対する質疑は終局いたしました。     ―――――――――――――
  182. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 これより討論に入ります。  両案中、大学等における技術に関する研究成果民間事業者への移転促進に関する法律案に対し、討論の申し出がありますので、これを許します。吉井英勝君。
  183. 吉井英勝

    ○吉井委員 私は、日本共産党を代表して、大学等における技術に関する研究成果民間事業者への移転促進に関する法律案に対する反対討論を行います。  反対理由の第一は、本法案が特定の大企業、証券・金融機関系のベンチャーキャピタル等による大学等の成果の事業化を促進し、その利益に奉仕するものだからであります。  文部省学術国際局長が設置した産学の連携・協力の在り方に関する調査研究協力者会議が一九九七年三月三十一日に発表したまとめによれば、ベンチャーキャピタル、シンクタンク等の取り組みが進行している状況を踏まえ、積極的に支援していくとされており、本法案による特定大学技術移転事業という新たな法的枠組みが、現に一部の大学で進んでいる大企業、証券・金融機関系のベンチャーキャピタルによる大学の成果の事業化をモデルとし、それを促進するためのものであることは明らかです。  反対理由の第二は、本法案大学等の学術研究を大企業の利潤追求に従属させ、真理の探求を通じて人類社会の進歩に貢献するという本来の役割を阻害するものだからであります。  近年、一方では大学や国研の経常研究費が抑制され、他方では提案公募型や競争特研などの研究費が急増し、特定大企業に直結する研究が重点的に促進されています。こうした状況のもとで、本法案のように、第九条で特定研究成果民間事業者への移転促進に資するため、大学における学術の応用に関する研究の進展が図られるよう必要な配慮をすることを文部大臣に義務づけ、技術移転事業が促進されれば、基礎的研究が一層抑制され、特定大企業に奉仕する研究への重点化が進むことは明らかです。大学等の学術研究を産業活動や大企業の利潤追求に従属させることは、大学等の学術研究の発展を阻害し、その社会的貢献をも衰退させるものです。  大学や国研における研究成果社会の貴重な知的財産であり、これが特許技術等を含め、さまざまな形態で広く社会に還元され活用されることは有意義なことであり、我が党は産官学連携一般を否定するものではありません。しかし、そのことが、真理の探求を通じて人類社会の進歩に貢献するという本来果たすべき役割をゆがめることがあってはなりません。  以上、本法案に反対する理由を述べて、反対討論を終わります。(拍手)
  184. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 これにて討論は終局いたしました。     ―――――――――――――
  185. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 これより採決に入ります。  まず、大学等における技術に関する研究成果民間事業者への移転促進に関する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  186. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 起立多数。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。  次に、特許法等の一部を改正する法律案について採決いたします。  本案に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  187. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 起立総員。よって、本案は原案のとおり可決すべきものと決しました。     ―――――――――――――
  188. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 ただいま議決いたしました両案中、大学等における技術に関する研究成果民間事業者への移転促進に関する法律案に対し、岸田文雄君外四名から、自由民主党、民友連、平和・改革、自由党及び社会民主党・市民連合の五派共同提案による附帯決議を付すべしとの動議が提出されております。  提出者から趣旨の説明を求めます。伊藤達也君。
  189. 伊藤達也

    ○伊藤(達)委員 ただいま議題となりました附帯決議案につきまして、提出者を代表して、その趣旨を御説明申し上げます。  まず、案文を朗読いたします。     大学等における技術に関する研究成果民間事業者への移転促進に関する法律案に対する附帯決議(案)   政府は、本法施行に当たり、特定研究成果民間事業者への移転の円滑かつ効果的な促進を図るため、国立大学等の研究者が本法の対象となる技術移転機関の役員等の職を兼ねることを可能とする措置について早急に結論を得るとともに、国立大学等の研究者が自らの研究成果に係る事業化を図ろうとする民間企業の事業活動に対し、主体的に参画することが可能となるような制度構築に向けて積極的に検討を進めること。 以上であります。  附帯決議案の内容につきましては、審査の経過及び案文によって御理解いただけるものと存じますので、子細な説明は省略させていただきます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願い申し上げます。
  190. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 これにて趣旨の説明は終わりました。  採決いたします。  本動議に賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  191. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 起立多数。よって、本案に対し附帯決議を付することに決しました。  この際、堀内通商産業大臣から発言を求められておりますので、これを許します。堀内通商産業大臣
  192. 堀内光雄

    堀内国務大臣 ただいま御決議のありました附帯決議につきましては、その趣旨を尊重し、本法律案の実施に努めてまいりたいと考えております。     ―――――――――――――
  193. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 お諮りいたします。  ただいま議決いたしました両案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  194. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     ―――――――――――――     〔報告書は附録に掲載〕     ―――――――――――――
  195. 斉藤斗志二

    斉藤委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時六分散会