運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-05-06 第142回国会 衆議院 行政改革に関する特別委員会 第10号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月六日(水曜日)     午前十時開議  出席委員   委員長 高鳥  修君    理事 虎島 和夫君 理事 野呂田芳成君    理事 二田 孝治君 理事 山口 俊一君    理事 伊藤 忠治君 理事 北脇 保之君    理事 若松 謙維君 理事 中井  洽君       安倍 晋三君    石崎  岳君       今井  宏君    岩永 峯一君       江渡 聡徳君    小野寺五典君       大石 秀政君    大野 松茂君       金田 英行君    熊谷 市雄君       倉成 正和君    小林 多門君       河野 太郎君    実川 幸夫君       菅  義偉君    砂田 圭佑君       田中 和徳君    滝   実君       松本 和那君    松本  純君       宮島 大典君    石毛 鍈子君       上田 清司君    生方 幸夫君       桑原  豊君    古賀 一成君       田中 慶秋君    平野 博文君       古川 元久君    大口 善徳君       冨沢 篤紘君    福島  豊君       東  祥三君    石垣 一夫君       佐々木洋平君    平賀 高成君       松本 善明君    深田  肇君  出席政府委員         内閣審議官   坂野 泰治君         内閣審議官   松田 隆利君  委員外出席者         参  考  人         (日本労働組合         総連合会事務局         長)      笹森  清君         参  考  人         (日本国家公務         員労働組合連合         会中央執行委員         長)      藤田 忠弘君         参  考  人         (東京大学法学         部教授)    佐々木 毅君         参  考  人         (法政大学法学         部教授)    五十嵐敬喜君         参  考  人         (構想日本代表)         (慶應義塾大学         総合政策学部教         授)      加藤 秀樹君         参  考  人         (大阪大学大学         院国際公共政策         研究科教授)  跡田 直澄君         参  考  人         (法政大学法学         部教授)    浜川  清君         参  考  人         (東洋大学教授         学部教授・経済         研究所長)   中北  徹君         衆議院調査局第         三特別調査室長 田中 達郎君     ――――――――――――― 委員の異動 五月六日  辞任         補欠選任   砂田 圭佑君     江渡 聡徳君   谷  洋一君     田中 和徳君   戸井田 徹君     河野 太郎君   牧野 隆守君     大石 秀政君   松本 和那君     菅  義偉君   宮本 一三君     滝   実君   池田 元久君     石毛 鍈子君   田中 慶秋君     古賀 一成君 同日  辞任         補欠選任   江渡 聡徳君     砂田 圭佑君   大石 秀政君     牧野 隆守君   河野 太郎君     小林 多門君   菅  義偉君     松本 和那君   田中 和徳君     谷  洋一君   滝   実君     宮本 一三君   石毛 鍈子君     生方 幸夫君   古賀 一成君     桑原  豊君 同日  辞任         補欠選任   小林 多門君     安倍 晋三君   生方 幸夫君     池田 元久君   桑原  豊君     田中 慶秋君 同日  辞任         補欠選任   安倍 晋三君     松本  純君 同日  辞任         補欠選任   松本  純君     戸井田 徹君     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  中央省庁等改革基本法案内閣提出第四一号)      ――――◇―――――
  2. 高鳥修

    高鳥委員長 これより会議を開きます。  内閣提出中央省庁等改革基本法案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、午前中の参考人として日本労働組合連合会事務局長笹森清君、日本国家公務員労働組合連合会中央執行委員長藤田忠弘君に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序でありますが、まず両参考人からそれぞれ十分程度意見をお述べいただき、次に委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、笹森参考人にお願いいたします。
  3. 笹森清

    笹森参考人 おはようございます。連合事務局長笹森です。  きょうは、行政改革関係をする委員会意見を述べさせていただく機会をいただきましたことを心からお礼申し上げたいと思います。  私は、三つ観点から冒頭意見を申し上げたいと思うのですが、まず一つは、現在の行政弊害をしっかりと認識した行政改革を実行すべきだ、こういう観点に立つことであります。  内容的には二つありまして、一つは、まず政府提案中央省庁等改革基本法案は、簡素、効率、透明という三つのスローガンが掲げてあるわけですが、その命題のもとに行政組織転換理念に掲げて、一府十二省庁への組織改編内閣機能の強化、そして独立行政法人設置などを提起されておるわけであります。連合は、この間に、雇用労働者約六千万、その中で八百万人連合組織をしておりますが、そのうちの約二百万人の私ども官公労働者立場、それから一般的な国民立場等々を勘案しながら、現在の行政問題点について労働組合としての討議をさせていただいた上で、行政の質を国民中心に改めるという見解を取りまとめまして、各党にいろいろな形での御要請を展開し、国民に対するアピールを行ってきた、こういう経過がございます。  今回提出をされました政府改革基本法案を見ますと、最大問題点というのは、従来の行政の旧弊である裁量行政、そして官主導の不透明な政策決定に対する反省というものが全く欠けているのではないかというふうに指摘をせざるを得ないと思っております。  今後の少子高齢化社会の中で、あるいはまたグローバル化時代におきまして、行政役割はこれから増していきこそすれ低くなることはないというふうに考えておるわけです。しかし、これまでの官僚主導型では政策の欠陥や失敗を改めることができるわけがないわけでして、不祥事が続発するなどの弊害が続いているという現況の中からいえば、このことが今の行政改革の中身では変わらない、こういうふうに言わざるを得ないというふうに思っております。そういう意味で、今こそ国民が求める生活の安定に責任を持った、民主的かつ透明、公正、効率的な行政システム抜本改革をしなければならないということをまず一番目に御指摘を申し上げたいと思っています。  二つ目は、行政改革目標行政の質を転換することでなければならないということについてであります。  これについては四点ございまして、まず一つ目行政改革のこの点に関する課題というのは、行政あり方を真に国民中心とした行政に改めることである。  現在の行政は一部関係者との調整に重きを置き過ぎて、官僚裁量に余りにも任され過ぎ、主権者たる国民意思、また国の最高機関である国会が定めた法律の趣旨がないがしろにされているという状況があると思います。この行政が恣意的にというふうに言えるほど独走している現状を考えますと、法律主権者たる国民意思に沿った公正な行政に改める必要がある。そのためには、政策企画実施、そして効果についての行政情報を公開し、また国民意見を積極的に聴取するなど、行政透明化が欠かせない。このことがまず第一の課題であるというふうに申し上げたいと思います。  二つ目課題は、現在の行政行政官僚権限を与えた裁量行政となっているあり方を改めて、官僚裁量ではなく、明文化をされた法律ルールによる監視監督型にすることが必要だということです。  この裁量行政弊害は、この間の金融証券行政において接待や不明瞭な行政措置が多発をしているという現状我が国金融システムの混乱の大きな要因をなしたという結果からも明らかだというふうに指摘できると思います。公正ルールを明確に定めて、行政はこのルールの遵守を行うというあり方体質改善をしなければならないというのが二つ目課題でございます。  三つ目改革課題は、行政行為に対しまして行政の外から評価監視するシステムを設けることが必要だということであります。  現在では行政監察制度があるわけでありますけれども、もたれ合いの弊害が見られている。第三者が参加をした行政に対する外部評価、監査の制度をつくって、行政企画実施、結果についての評価監視をしっかりと行うことが必要であると同時に、会計検査院や国会行政監督役割を抜本的に強める必要があるのではないかというのが三つ目改革課題であります。  四つ目改革課題は、中央省庁権限財源などを地方公共団体に移譲するということであります。  現在におきましては、中央省庁地方公共団体が行い得る業務に対し、補助金必置規制、そして国の関与などにより介入をし過ぎているのではないかということであります。地域生活などの問題につきましては、地方自治体に任せられる権限財源については積極的に地方に譲るべきであろうと考えております。  産業に対する規制についても、個別業界への許認可行政は見直しをして、公正取引などの産業共通公正ルールによる監視監督中心にするように改めるべきだというのが第四の改革課題でございます。  大きな三つ目として、国民生活の安定と改善責任を持った行政への改革にならなければいけないということであります。  二十一世紀少子高齢化社会を目前にいたしまして、行政役割はこれまで以上に重要となることは間違いありません。国民が安心をし、安定した生活実現する上では、社会保障公正取引労働基準など公正ルールの徹底、安全・防災対策環境保全、教育など社会的公正さの確保が必要不可欠だというふうに認識をしております。この公正ルール生活基本条件確保というのは中央行政の重要な役割と位置づけなければならないと考えております。これらの公正条件公正ルールの確立がなければ社会の安定が確保できないということを忘れてはならないというのが国民責任を持った行政改革のまず一点目の視点であります。  最後に、行政改革では、その場に働く人たち雇用の安定と働く意欲を高めるものでなければならないということを指摘させていただきたいと思います。  一部には、公務に携わる人員の削減行政改革であるかの意見がございます。この考えには賛成はできません。日本公務員の数は世界に比べてどうかというと、国民に対する比率の問題でありますが、先進国の中でも低い水準にあります。むしろ、公務員の働く意欲を高めて効率向上を図るべきだという観点中心にしながら、公務員国営企業労働者がより一層働きがいと意欲を持って働ける仕事と条件を備えたものに行政を改めるべきではないかというふうに思っております。そして、行政組織の再編成及び独立行政法人設定等組織変更においては、当然、当該の労働組合との事前協議を行っていただき、労働条件の維持と雇用の安定を確保することも求められなければならないというふうに思います。  G7の主要国の中で、公務員労働三権を認めていないのは日本だけであります。公務員労働条件にかかわる交渉権を認めて、現場の働く者の意見を十分に反映した行政あり方にすべきだというふうに考えております。今回の行政改革におきまして、ぜひ公務員労働者労働三権問題の改善もあわせて検討していただきたいということを申し上げまして、冒頭意見にさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手
  4. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、藤田参考人にお願いいたします。
  5. 藤田忠弘

    藤田参考人 国公労連藤田でございます。  私ども組織は、一府十二省庁のほか、裁判所、人事院などの組織を含めまして、二十一の単位組合、約十七万人で組織をしております。  私どもは、これまで一貫いたしまして、組合員労働条件はもちろんでございますが、これと同じぐらいの比重で、自分たちの従事している行政をいかにして国民皆さん方の御期待に沿うものとして充実をさせるか、こういう立場からの運動に微力を尽くしてまいったところでございます。したがいまして、今回、私どもにこのような発言の場が与えられましたことに、率直に感謝を申し上げる次第でございます。特に、行政改革会議が、この間、私どもに何ら意見を求めてこられなかった、こういう経過にかんがみましても、大変貴重な機会をちょうだいいたしたというふうに思っております。  そこで、まず私は、行政改革というものに対する私どもの基本的な立場を申し上げたいと存じます。  端的に申しますと、私どもは、国民皆さんが本当に求めていらっしゃる行政改革というものは当然行うべきだ、こう考えております。  しからば、国民皆さんが求める行政改革とは何か、こういうことになるわけでございますが、私は、主権者たる国民が、自分の納めた税金が自分たちのために有効に使われている、このように実感できるような行政と施策の実現、こういう点にあろうかと考えます。言いかえますと、憲法が定めております国民の基本的な人権、これを最大限に実現することだと思います。したがいまして、そのような観点で、行政役割機能というものを社会状況の変化、発展に応じて見直すことは当然である、こういうふうに考えているところでございます。  そのような意味で、今最も大切なことは、政財官癒着をして利権をあさるというこの行財政あり方を抜本的に是正することでありますし、軍事費公共事業に偏った行財政構造抜本改革財政赤字の解消でありますし、さらには情報公開法の制定によるガラス張りの行政実現などであろうかと考えます。このような立場からいたしますと、今回の中央省庁等改革基本法案、これにつきましては反対の立場であることを明確に申し上げておきたいと思います。  次に、この法案に対しまして私どもが抱いております疑問あるいは問題意識につきまして、五点に絞りまして申し上げておきたいと思います。  その一つは、今回の行政改革基本理念にかかわってでございます。  法案行革会議最終報告の中で、総合性戦略性機動性、あるいは透明性、さらには効率性簡素性、こういう観点が強調されているわけでございますが、その反面で、民主性とか公平性という、本来重視さるべき国民サイドに立った視点がかすんでいるのではないか、こう思われてなりません。この点では、国民基本的人権実現という立場ないがしろにされるのではないか、この危惧を禁じ得ないのでございます。  例えば、労働福祉省の場合、その編成方針を見てみますと、厚生省や労働省がそれぞれの設置法中心的な任務に位置づけてまいりました「社会福祉社会保障及び公衆衛生向上及び増進」であるとか「労働者福祉と職業の確保」、こういうものがどう位置づけられていくのか、明らかではございません。これは国土交通省の場合も同様でございまして、運輸行政任務社会資本整備の方向に矮小化されていくのではないか、こういう危惧を禁じ得ないのでございます。  第二は、行政組織あり方について、果たして行政分野多様性を踏まえて個別の論議が尽くされたのであろうか、こういう疑問を抱くのでございます。  例えば、行革会議最終報告では、国立試験研究機関につきまして、政策研究機関以外は独立行政法人検討対象にする、こううたっております。しかし、一体どのような具体的検討を経て、これらを国がみずから主体となって直接に実施する必要はないものとして結論づけられたのか、一向に明らかではございません。  また、十年間で一割の定員削減目標を掲げるとか、局の数を一省で十以下とか全体で九十程度にするとか、課の数を約九百にするとか、いわゆる数値目標法案に盛り込まれておりますが、これらにつきましても、数値目標先にありきでありまして、局や課について、その行政目的役割機能などの面から具体的に検討されたという形跡をうかがうことはできないのでございます。このような本末転倒は到底許されるものではないと思います。  三つ目は、行政改革行政スリム化公務員削減に一面化をした議論に関してでございます。  私どもは、現場実態をリアルに認識していただきたい、このように切望するものでございます。先ほども出ましたが、我が国公務員の数が、先進諸国と比べましても、人口当たりで二分の一から三分の一という状況にあることは今ではよく知られているところでございますが、そのことがどのような現場実態となってあらわれているか、その一端だけを申し上げておきたいと思います。  本省庁の場合です。私ども調査では、夜八時以前の退庁者は四五%にすぎません。夜十一時以降の退庁者は一八%にも上っております。  第一線を見ますと、気象庁では、測候所廃止や夜間の無人化の進行で、あの阪神大震災の際、もしも淡路島の測候所に人が配置をされていたならばと、こういう無念の涙をのんでいるところでございます。また、労働基準監督署では、労働基準監督官が全事業場を一巡するのに二十年を要する、こういう状況にございます。法務局や特許庁では、それこそけた外れの膨大な事務処理に全く追いつかない、これが常態化をしているわけでございます。  これらは、多かれ少なかれ、ほぼ全体に共通する状況であることをぜひ御理解いただきたいと思います。その上、さらに定員削減、それも第一線公務員削減する、こういうことになれば、もはや行政責任の遂行はおぼつかない状況に立ち至ると思います。  四つ目は、独立行政法人に関してでございます。  その一つは、イギリスを参考にするというこの制度が将来の民営化につながっていることは明らかでありまして、ここでも、国民に負うべき国の行政責任の放棄という問題を強く指摘しておきたいと思います。  もう一つは、対象と目される約七万三千人、この人たち雇用生活労働条件が重大な不安にさらされることから、私どもは、到底容認できるものではない、こう考えているところでございます。  最後の五番目は、公務員制度に関してでございます。  法案の内容は全体として抽象的でございますから、具体的に目指すものが何であるかをつかみづらいのでありますが、その関連で申しますと、官僚天下りが世論の批判の的になっているとき、天下り廃止を含めた政財官癒着構造をなくすことが重要課題に据わるべきであります。しかし、その点に踏み込んでいますのは、わずかに退職管理適正化、この文言にとどまっておりまして、大変不十分だと思っております。  私どもは、こういう機会にこそ特権的な人事慣行を変えるべきでありますし、行政内部で不正、腐敗をチェックする機能として労働組合役割にもっと目を向けること、同時に、職員個々の諸権利の問題につきましても検討さるべきだ、こういうふうに考えているところでございます。  以上で意見の表明を終わりますが、最後に、私は、この法案の帰趨がそれこそ二十一世紀の「この国のかたち」を規定する、こういう関係にありますだけに、性急に結論づけられてはならないと思います。どうか、私どもの疑問の解明も含めまして、慎重な審議を尽くされることをお願い申し上げて、私の発言を終わります。  ありがとうございました。(拍手
  6. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  7. 高鳥修

    高鳥委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。平野博文君。
  8. 平野博文

    平野委員 民主党の平野博文でございます。  両参考人におかれましては、大変多忙な中に御出席をいただき、また、それぞれ貴重な御意見を述べていただきましたことに、心から感謝を申し上げます。  そこで早速でございますが、私どもも、今回の基本法案に対しまして、参考人も述べられましたように、二十一世紀国づくりとして今後の行政あり方を追求しよう、こういう立場、位置づけのもとに、簡素で効率的で透明な行政組織への転換を目指す中央省庁改革前提には、地方分権規制緩和行政における情報公開を一体として実現をしていかなければ真の行政改革実現できないという認識を持っております。  そういう観点から、二、三御質問をさせていただきます。  笹森参考人の、裁量行政と不透明な政策決定に対する反省基本法には欠けている、この指摘は私どもも強く問題意識を持っておるところでございます。今日まで裁量行政を可能にしてきた背景には、設置法における包括権限規定の存在や、情報公開が非常に不備なためによくわからない、不透明である、こういうことがあるように私は思います。  そういう意味で、今後具体的な各省の設置法づくりが進められていく予定でございますが、この点について笹森参考人はどのように考えておられるのか。この際ですから、今政府提出しております情報公開法についても、御意見がございましたらお聞かせをいただきたいと思います。
  9. 笹森清

    笹森参考人 平野先生の御質問お答えをしたいと思います。  まず、全体的な行政改革に対する今回の一連の流れと、それに対する認識の問題なんですが、確かに御指摘のとおり、私どもも、二十一世紀日本のこれからの国づくり、それに最大の問題だというふうに思っております。しかし、その最大の問題にしては、審議の時間、それから結論の出し方、こういったものがこれでよかったのだろうかという部分については、非常に危惧を持っているところであります。  国鉄改革の問題のときなども、相当時間をかけてやりまして、五年以上の歳月を要したわけですが、行政改革、国の百年の大計をどう決めるか、余りにも今回の論議は短時日の中で、それも強引な結論の導き方であったのではないか。このことについて、まず、これからの審議の中で十分な論議が積み重ねられるかどうか、これは非常に大きな要素になっていくだろうというふうに思っています。  それからもう一つは、全体的な流れの中で中央なのか地方なのかという役割と、では、そのことに対して、集権なのか分権なのか、そして官なのか民なのか、そういう前提条件の整理が今回の場合きっちりとできたのかどうかというと、これはやや疑問があるというふうに言わざるを得ないと思うのです。  当然、そうなっていきますと、その前提条件がクリアになって初めてそこに、国民に対する真のサービスの裏づけがとれるのか、そして働く人たち身分保障雇用保障が十分なものになるのかどうかというところにつながらなければいけないのですが、そこが非常に短絡的であったというふうに言わざるを得ないと思っておりますので、まず早急な結論の導き方というのは、これからもう少し時間をかけた論議をやっていただきたいというのを冒頭申し上げておきたいと思います。  それから二つ目の、裁量行政ルール型に転換するそのやり方についてどう考えておられるかという御質問でありますが、裁量行政ルール監視監督型に改めるというのは、省庁権限法律で明記して、官僚の安易な裁量を許さないようにする必要がある、このことがまず一番基本だろうと思っています。現在裁量行政が一般化をしている原因の一つには、平野先生指摘されましたように、省庁設置法の規定が余りにも広くて、組織権限を大量に与え過ぎているところに最大問題点があるだろうというふうに思います。  したがって、この省庁設置法による裁量行政を改めるためには、各省庁権限について、省庁設置法を根拠に通達や政省令でその権限を定めるという現行のやり方ではなくて、各種の経済法、消費者保護法、労働法あるいは税法、そういったものをすべて、国会で定める法律によって具体的に権限を与え直す必要がある。その上で、省庁設置法によって省庁権限を付与する現状あり方をとめる。このことをまずしておいて、したがって、今後の省庁設置法の改正作業では、権限付与の根拠法とでもいいますか、そういうものを別途に整理して定めることが重要なのではないかというふうに、まず、包括的規定に過ぎて裁量行政を許す原因と思われる部分についての考え方について、申し上げておきたいと思います。  それから、情報公開法の問題につきましては後ほど細かくお話をする機会もあるのかと思いますけれども、基本的には、日本の場合に情報公開が余りにもなされ過ぎていないというところにあるわけで、これがすべての問題の根本的な要因になっているというふうに思っております。  地方行政の問題、国の行政の問題を含め、あるいは金融の問題等も含めて、最大の問題は情報公開国民に対していかに理解させるかということであったはずなんですが、そこがネグられているところが諸悪の根源というふうになっておるわけで、したがって、情報公開法設置については、その大前提をどういうふうにクリアできるかということがこれからの行政改革やもろもろの施策の中で最大のポイントになっていくだろう、そういう認識だけまず申し上げておきたいと思います。
  10. 平野博文

    平野委員 今参考人が申されましたように、私も、やはり早急にやり過ぎる、もっと時間をかけてやる、こういうことが大事であろうと思います。特に、今回の中央省庁の再編というのは、国民のために考えていくならば、地方分権をどうしていくかということがまずありき議論でやっていかなければならない、このように私も強く思っておりますし、同感でございます。  さて次に、参考人の方からもございましたが、行政の施策に対する評価システムの確立が必要である、こういうことでございます。その評価の確立については、今回、各省それぞれに評価部門を設けましょう、府省庁の枠を超えての政策評価機能の強化、さらにはその政策評価に対する情報公開評価結果の政策への反映、あるいは国民への説明、こういう三点は、具体的なことは別にいたしまして、文言としては盛り込まれているわけであります。  しかし、御意見にありましたように、第三者による評価、監査の仕組みまではこの法案については言及されていない、このことは事実でございますし、同じ組織の中でそれなりにやってしまう、こういうことでは本来の評価にならないと思うのであります。したがって、私は、第三者による評価システムというのはどうしても必要な機能だと思っておりますが、特に、国のみならず地方も、あるいはセクターにおいてもこの第三者の評価システムというのが必要だと思っております。  そこで、笹森参考人にお聞きしたいわけでございますが、参考人の方から見られた場合の、第三者による評価システムというのはこういうふうにしたらいいよ、あるいは、民間でやっている場合であればこういう仕組みを今使ってやっていますよ、こういうところでの御意見があればお聞かせをいただきたい、このように思います。
  11. 笹森清

    笹森参考人 第三者による評価システムの問題についてですが、連合の方は、十八本の国民課題に対する政策制度の項目について毎年提起をさせていただいておりまして、今年度の場合にも、八月に各党の方にお持ちをして御相談申し上げたいと思っておりますが、そこの中での要求項目として、中央省庁等のこれからの公正、透明、国民参加の簡素、効率行政システムに改めるという項目の中で、今の御指摘の問題について考え方として整理をさせていただいております。  項目的に申し上げますと、政策評価に当たりましては、内部評価行政監察の強化を図って、あわせて民間有識者が参加をした第三者監査機関による評価システムを設けるというのが基本でございます。地方分権の推進のところでは、権限財源地方公共団体にでき得る限り移譲する。行政組織の目的、機能については、民間組織でなくて、国民生活の安定、向上等のために行政として行う必要があることを説明して、行政と民間との役割分担を明示するというのが基本的な項目の考え方になっておるわけです。  この考え方を出すに当たっては、今回の行政改革の内容が、橋本内閣が提起をした六大改革の中で、課題提起としては、その提起の仕方としては私は悪くなかったのだろうと思うのですが、取り上げていく改革の手法として、国民との連携が余りにもなさ過ぎたというのが一番の欠陥になっていたのではないか。  例えば、財政構造改革の問題では大蔵主導型になり過ぎていたよ、それから、行政改革の問題としては、分権が伴わない行政改革が果たして効果があるのかどうかということについての、そのシステムづくりが全く欠けていたということになっていくのだろうと思うのです。今の国も地方行政も、やっていることの中でなぜ内部監査的なものが効果を発揮しなかったのかといえば、やはり最初に申し上げた、国民との連携というのが非常に薄かったというところに問題があるわけです。  したがって、これからの行政改革が形としてでき上がり、そのことが本格的に機能していくということになれば、その機能していくシステムに対して、内部的なものの人たちが監査をするのでなくて外部の人たちが、それもまあ本来的な審議会の場合には公労使というような三者構成という形になっておるわけですから、今回の場合に公労使という区分けがいいのかどうかは別にいたしまして、第三者機関の中では幅広い、そういった大体三つのジャンルぐらいに分類されるような人たちの中からの監査のシステムができ上がって初めて外部からの評価ができていくというふうに思っておりますので、そういう中身のつくり方でお願いができればというふうに思います。
  12. 平野博文

    平野委員 監査をすることによって、よくやってもらっている、こういうことが国民皆さんにわかるわけですから、国民との連携、こういう考え方をこの中にぜひとも導入していかなければならない、このように私も思うところであります。  さて、ここで一つ行政評価ということでありますが、私も民間出身でございますから、先ほど笹森さんもおっしゃっておられましたけれども、働きがい、こういう視点雇用は守っていく、これは当然働く者の立場ですからあるわけでありますが、やはり働きがいというのは非常に意欲と業務効率を高めていく、こういうことになってくるわけでございまして、今日までの公的機関でのそれぞれの立場の人というのは、そこに少し欠けているところがあるように思うのであります。  そこで、今先進諸国では、少ない資源で充実した行政サービスを提供しよう、こういう命題に取り組んでおるわけでございまして、その方法として業績評価制度という制度を活用しようとしておられるわけであります。それぞれ行政機関の仕事の中身には業績評価がなじまない分野もあるわけでございますが、あるいはその評価対象をどういう分野にしていくかという非常に難しい部分があるわけでありますが、行政評価制度あり方としては、私、今後一考していかなければならない方法だ、このように思うわけでございます。  そこで、私は、この業績評価という制度を、例えば連合立場、あるいはきょうお越しの藤田参考人にもお聞かせいただきたいのでありますが、今後の行政改革の中に業績評価を取り入れていこう、このときにはやはりどういう基準でやっていくのかというのは非常に難しいわけでありますが、この業績評価を導入する、こういうことに対してはどういう御見解をお持ちでございましょうか、御両人にお聞かせいただきたいと思います。
  13. 笹森清

    笹森参考人 正直申し上げて、大変悩ましい問題であります。  冒頭申し上げましたように、連合八百万のうちの六百万が民間で、二百万が官公労の組合員、こういうことになっておりますが、連合行政改革の考え方は連合八百万の総意というふうには必ずしもまだなっておりません。当然それぞれの立場の中で問題点はございます。  ただ、今回なぜ連合行政改革会議の中に連合の前会長の芦田さんを入れて御論議に参加をさせていただいたかということになれば、組織を背負って、働く人たちの声をその中に反映できるというのは、今回の行革会議のメンバーの中では芦田前会長の立場だけなんです。  そういう中で、私どもは、前提条件がクリアできるならば、一つには身分保障雇用保障をどうするか、そしてその働き方に対する評価についてどうするかという踏み込みもしよう、こういう論議展開を考えておったわけですけれども、現在の中では、省庁再編の問題も含めまして、分権、集権を含め、地方中央役割分担がまだはっきりしない中で、では今までの仕事とどう変えるのかということが明確になっておらないわけです。したがって、今の形のままで業績評価の問題についてどう導入をするのかということになると、これはまだ時期尚早、こういうふうに申し上げざるを得ないというのがまず一つであります。  それから二つ目の、システムがしっかりしてきたということになって初めてその役割分担がわかったときに、では官なのか民なのかという、その違いは一体どこにあるのかということであります。  当然、国民に対する行政サービスが今よりも下回らない、さらに向上するのだということが伴わなければいけないわけですが、例をとりますと、労働組合に加入をするために組織に入ってくる人はおりません、よほどのプロパーの方以外は。○○株式会社に入社をし、そこに労働組合があって、そこに加入をするというのは二次的な行為になるわけですね。  ただし、行政職につく人たちは、一次的な行為として入ってくる。すると、国の立場国民に対して何をやってあげられるのかという物すごい意欲を持っている方たちがおられるのに、そういった意欲を全く度外視して、仕事的に変わるから公務員でなくて民間の身分に当然切りかわるんですよというような押しつけ方でいいのかどうかということになれば、これはモラールアップにはつながらないということなので、ここの部分は十分な検討をお願いしたい。  それから、業績評価の問題については、民間では、そういったシステムができ上がればこれはもう当然適用されております。したがって、公務員立場でも業績評価は全く度外視をされるんだということにはつながらないと思いますので、システム上の問題ができれば、それに連動して業績評価はあって当然というふうに思っております。
  14. 藤田忠弘

    藤田参考人 私どもも、業績の評価ということ自体は必要なことだと思います。ただ問題は、その業績評価制度を導入するという場合には相当慎重な検討が必要になろうかと思うのです。  と申しますのは、それぞれの行政分野ごとに行政目的あるいは評価の基準というものが異なってまいります。件数で処理をする分野、あるいは業務のそれこそ質的な内容で評価をする分野、いろいろございますから、それぞれに応じた評価の基準、物差しをどうつくるのかということは大変難しい問題だと思っておりまして、これは私ども意見も十分お聞きをいただきながら検討を進めるべき問題だ、こういうふうに思っております。
  15. 平野博文

    平野委員 それでは、時間もありませんので次に参ります。  先ほどのお話の中にもございましたが、地方分権ということが私はまずありきだと思っておりますが、そういう中で、産業との公正なルールの確立、こういうことが必要だと私は基本的に思っております。裁量行政廃止、公正なルール化による事後監視行政という点でいえば、規制緩和とか、消費者保護法、個別業法、こういうことをなくして、よりディスクロージャーを徹底させる、こういうことは非常にやっていかなきゃならない、いわゆる縦型のルールを横型のルールにしていくことにつながっていく、このように私は思います。そういう中で官と民の役割分担の明確化にもつながっていく、このように思っております。  そういう中で、地方分権の必要性について少しお聞きしたいと思うのですが、この基本法地方分権前提にしておる法案でございますが、具体性が全くないわけでございます。  私どもは、行政改革地方分権ありき、こうなければならないというふうに考えておりまして、政府案に対しまして民主党も対案を今準備をしているところでございます。そこで、国と地方役割分担として、極論すれば、国はナショナルミニマムあるいは社会の共通なルールを追求する、地方は自立と自治のもとで地域のすべてを受け持っていくんだ、こういうふうに私、地方分権の中での地方役割というのを考えていくべきだと思っておるのです。  ここでお聞きしたいのでありますが、そこで受け皿となります基礎自治体である市町村の規模、今現在三千三百あるわけでありますが、この三千三百が、今進めようとしております地方分権の受け皿になり得るのか。これでは多過ぎるよというのか、適正規模がこれぐらいだよということであれば数値もお答えいただいたらいいのですが、基礎自治体の規模についての御認識笹森参考人にお聞かせいただきたいと思います。
  16. 笹森清

    笹森参考人 一言で申し上げると、連合は、基本的な考え方は道州制を念頭に置いております。数が幾つかというのは、いろいろございますので数字的には申し上げませんが、そういった概念の中で、三千三百が余りにも大きく差があり過ぎるというところに、今の地方行政に分配をしていくというには問題が大きいのかなというので、ある程度大ぐくりにしていくという方向性の中で地方分権を考えるべきだというふうに思っております。
  17. 平野博文

    平野委員 それでは、これも参考人の方々、答えにくいところかもわかりませんが、独立行政法人化における条件整備。雇用、働きがいを求める、こういう先ほどの陳述でございましたが、今回の基本法案は、御意見にもありましたように、独立行政法人化というのが一つの柱にもなっております。  しかし、私ども指摘しておることでありますが、いわゆる内局と外局、外局と独立行政法人独立行政法人と現在の特殊法人、それぞれの機能や性格、機能の整合性など、行政機構の全体が極めてわかりにくい法案になっているところであります。参考人も申されましたように、労働組合としての事前協議であるとか労働三権の検討は当然であると私は思っていますが、わかりにくいということは、逆に国民にもその役割が見えにくいということにつながるのではないかと思っております。効率的な行政サービス、多様な公的サービスヘの期待も、そういう意味では国民は多く望まないのではないか、このように考えるわけでございます。  そういう意味で、こういう点での認識と、独立行政法人制度に対する御要望があれば、この際ぜひとも御意見をお述べいただきたい、このように思います。笹森参考人、お願いします。
  18. 笹森清

    笹森参考人 基本法の第三十六条に定めがあると思うのですが、独立行政法人の職員は、行政機関の職員の定員に関する法律対象としていない、これは四十条の四。また、その職員は必ずしも国家公務員の身分を与えられておらず、第二の特殊法人を生み出しかねない定めとなっており、問題があるというのがまず私ども独立行政法人をつくるに当たっての問題意識であります。  独立行政法人は、三十六条に示されておりますように、経済社会の安定等の公共上の見地から確実に実施されることが必要な事業というのが一つ、それから、民間の主体にゆだねた場合には必ずしも実施されないおそれがあるものに独立法人の制度を与えるわけでありますから、この業務を担う職員の身分保障というのは、当然国家公務員でなければならないだろうというふうに思っておりまして、国家公務員定員法の対象とすべきだというのが一つの考え方であります。  それから、独立行政法人の性格が、今のままで民間にゆだねた場合には実施されないおそれが強い事業だということであるとするならば、新たに設置をされた法人の職員が、従来は公務員であれば当然公務員とすべきと考えるわけでありますが、独立行政法人組織がえする場合には非公務員のままでよいというふうに今言われているわけでありまして、とするならば、非公務員という扱いがあったらどうなるかということを、もう少し細かく規定をしなければいけないのではないか。  したがって、その個々の選定に当たりましては、当該の機関の組合との協議というのは、先ほど先生も御指摘されたとおり、なければならないと思っておりますけれども、これまで維持されてきた良好な労使関係に配慮をするというふうに書かれております四十一条のところが最大に尊重されるかどうかというのが、この独立法人の身分と形を決める最大のポイントになっていくであろうというふうに思っております。
  19. 平野博文

    平野委員 時間も参ったわけでございますが、最後に、公務員制度の考え方について少しお聞きしたいと思います。  今回の基本法では公務員制度改革も盛り込まれているわけでございますが、縦型行政弊害行政機構の柔軟性の欠如、国益よりも省益、こういうことで、さまざまな問題点指摘になっておるわけでございます。今回、一括管理の仕組みを導入しようとしておるわけでございますが、この点について、これは問題あるよ、あるいは従来のままでいいよ、あるいは従来では問題あるけれども一括管理ではぐあいが悪い等々、もし御意見があれば、御両人に一言ずつお聞かせいただきたいと思います。
  20. 笹森清

    笹森参考人 一言で申し上げさせていただきますが、一括管理などの変更については、公務員制度調査会、ここでの十分な検討が必要だというふうに思っておりますので、早期な結論は、なるべく拙速は避けていただきたいと思います。
  21. 藤田忠弘

    藤田参考人 公務員制度の問題は、公平、中立な人事をどう確保するかということと、それから公務員の安定的な労働条件確保、この二つの側面からの検討が大事だと思っています。  おっしゃっている一括管理につきましては、その対象がどの程度になるかということにもよるのでございますが、懸念いたしますのは、そのことが懇意的な人事を招いたり、あるいは公務員に対する政治的なコントロール、こういう側面を強めるということになるようですと、私どもとしては、にわかに肯定するわけにはいかない、そういうふうに思っているところでございます。
  22. 平野博文

    平野委員 時間が参りましたので、私からの質問は終わります。両参考人には本当にありがとうございました。
  23. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、福島豊君の質疑に入ります。
  24. 福島豊

    ○福島委員 平和・改革の福島豊でございます。  両参考人におかれましては、お忙しい中この委員会に御出席をいただきまして貴重な御意見を伺わさせていただきましたことに、まずお礼を申し上げる次第でございます。  先ほど両参考人がお触れにならなかった点について、確認的に御意見をお聞きしたいわけでございますが、まず一点目は、今回のこの基本法一つの柱は内閣機能の強化ということでございます。この点につきまして、両参考人はどのようにお考えなのか。まず、その点についてお聞かせください。
  25. 笹森清

    笹森参考人 極端に申し上げると、今回の一府十二省庁の再編の中で、内閣機能の強化だけ私は評価できるのではないかというふうに思っております。  それは、全然別なイメージで申し上げているのです。強大な権限を内閣に与えるなどというつもりは全くありませんで、ただ、迅速、即応な体制をどうつくっていくかということになると、今の内閣機能ではとても、例えば阪神・淡路大震災のときもとても間に合わなかったというような部分もありますので、そういったものがスピーディーに処理をされるという観点から申し上げると、今の内閣よりは機能させなければいけないという部分の中で、評価ができるというふうに申し上げたいのが一つ。  ただし、その前提は、内閣を構成する大臣の合議が前提とならなければいけないということでありまして、総理大臣の権限は基本方針の発議権であって、内閣の合意が基本でなければ独裁のおそれがあるというふうに、いろいろなところでも指摘をされておりますように、少なくとも、そういうことのないように受けとめていかなければいけないし、そういう対応が伴わなければいけないというふうに思っております。  内閣の独裁のチェックでは、国会が内閣への監視あるいは批判をどういうふうに行うかという部分が十分裏づけの保証としてなければ、内閣機能の強化をさせても独走を許すということになりますから、逆説的に申し上げれば、評価ができるというのはそういう意味合いで申し上げたというふうに御理解いただきたいと思います。
  26. 藤田忠弘

    藤田参考人 端的に申し上げますと、現在の機能でも大変強力だというふうに思っております。  問題は、やはり内閣総理大臣御自身の指導性と、それから、重大な災害等に対応でき得る行政の体制が十分に確立をされているかどうかということの方がむしろ重要ではないかというふうに思っているところです。
  27. 福島豊

    ○福島委員 よくわかりました。  次に、今回の一府十二省庁の再編ということで、大くくりにしよう、縦割り行政弊害をなくすためには大くくりにするしかないという判断からこのような結論になったのかと思うわけでございます。  その中にありまして、先ほど両参考人から御指摘がありましたように、行政の質、透明性確保といったことは当然必要でございますが、この大くくりにすること自体、これは賛成なのか反対なのか、どのようにお考えなのかお聞かせをいただきたいと思います。
  28. 笹森清

    笹森参考人 必ずしも大きくくくることについて反対はしておりません。しかし、今の一府十二省庁のくくりでいいのかというと、これは問題ありというふうに思っています。
  29. 藤田忠弘

    藤田参考人 私どもも、現行がベストであるかどうかということについては、断定的に肯定的に申し上げるつもりはないのですが、先ほども申し上げたように、それぞれの省庁の果たすべき役割の子細な吟味を抜きに大ぐくり、それこそ数合わせと言われるような形でまとめられているこの法案の内容につきましては、賛成できない、こういう立場でございます。
  30. 福島豊

    ○福島委員 再度、笹森参考人にお聞きをしたいわけでございますが、大くくりそのものには反対ではないということでございますが、どのようなイメージのくくり方であれば、これは認めてもよいというようにお考えでしょうか。
  31. 笹森清

    笹森参考人 行政改革の必要性、釈迦に説法ですので改めて申し上げるつもりは全くないのですが、国民に対してどういう信頼を与えるかというのが最大の問題ですね。それからもう一つは、それに対して行政サービスが裏づけ保証されるのかどうかということだと思うのです。現在の場合には、情報開示の問題と、それから公務員あるいは政治のいわゆる倫理という問題と、それから直接参加をするかしないかという問題と、すべてのものに対して、今のこの十二省庁のくくりの中では、国民に信頼を与えるものになり得るかどうかというと、これは疑問があると思うのです。  それはどういうことが最大の欠点かと申し上げますと、政策行政一つにくくれる、そういう組み合わせでなければいけない。しかし、今の十二を固めた中で、大体二つぐらいの省が一緒になっていくという形になっているわけですが、果たして、政策一つの思想のもとに、行政をそこに遂行できる組み合わせになっているかどうかということになると、これはやはりそうじゃないのじゃないかというふうに思わざるを得ないわけです。  したがって、くくりをする場合には、最大の柱は、政策で一本になれるかどうかという部分の中で今二十幾つもあるようなところをスリム化させるということになれば、当然、要員の問題を含めて分権とのセットの中でどうするかということになると思います。  分権の問題を申し上げますと、第四次の諸井委員会の答申が、総理すらこれではだめだと言った分権の内容でありますので、あの程度分権の内容で、では行政改革中央で各省庁の再編にフィットできるのかどうかというと、これは当然そういうところに行っていないわけであります。  そういうようなことから、くくりの問題は、これだというベストの形はありませんが、政策を軸にして考えるべきだというふうに申し上げます。
  32. 福島豊

    ○福島委員 非常によくわかりました。  そして、このくくった後の、確かに、整合性のあるものなのかどうなのかと首をひねらざるを得ないようなところもあります。これからの作業として、先ほども平野委員の方から御質問がございましたけれども設置法の制定の過程をどうするのか。この中身を本当にきちっとやらないと大変なことになる。行政の質ということを先ほどから参考人指摘されておられますけれども、それをきちっと担保して、国民が納得いくようなものに変えるためには、個々の設置法のところのつくり方、ここを十分に監視しなきゃいかぬというふうに思っているわけでございます。  そのプロセスについてどのようにお考えなのか、再度、笹森参考人にお聞きしたいと思います。
  33. 笹森清

    笹森参考人 プロセスは幾つかの考え方があると思うのですが、最大の問題は、まず一つは、そこに働いている人たち意欲の問題が先ほど平野先生の方からも出されました。  私、資源の少ない日本において最大の資源は何だったのかというと、これは人的資源が最大の資源だったのですね。五十年間の日本の繁栄の中で、いい悪いはそれぞれ評価が分かれるところでしょうが、その繁栄を支えた最大のものは何かといえば、優秀な国家機能であった、こういうふうに思うわけです。ただ、しかしながら、そこに腐敗がよどみ、そして行政改革最大の問題である倫理問題がそこに生じたというところが、これは大変残念なことだったと思うのです。  そういう中で、これから新たに行政改革に基づきまして各省庁設置していくということになれば、一つは、先ほど申し上げたように、政策中心にする省庁の組み合わせの中で、最大のファクターである中央予算の権限をどういうふうに地方に配分をしていくか、この一点に尽きてくるのじゃないかと思っております。  予算のコントロールの中で中央地方をコントロールし、そして中央行政役割をいつまでも持っているというところに今の再配分ができないわけでして、予算をまず先行させて、中央から地方にどういうふうに落としていくのか。これは、今の地方交付金の問題で中央がコントロールするというようなことであると時代逆行ということになるわけですから、はっきり権限と予算の配分を変えて、そのことによって省庁スリム化中央で図れるかどうかというふうに持っていかないと、具体的な省庁再編や行政スリム化中央の段階ではできない、こういうふうに認識をしております。
  34. 福島豊

    ○福島委員 地方分権前提にしなければ中央行政改革というのは進まないという点については、私も全く同感でございます。  そして、次にお尋ねをしたいことでございますけれども、先ほども行政評価外部評価ということが平野委員から御質問がございました。私は、アメリカのように、行政評価法、ガバメント・パフォーマンス・アンド・リザルト・アクト、こういうものを日本でも定めて、きちっと評価をする仕組みをつくるべきであるというふうにも思いますし、そしてまた、先般来民主党からも御指摘がありましたようなGAOですね、国会行政をきちっと評価する仕組みをつくるべきだというふうにも思っております。  今回の法案に盛り込まれた内部的な行政評価ということでは、これはお手盛りと言われても仕方がないわけでございまして、そのようなことだけでは行政の質を変えるということにはなかなかならないというふうに思っているわけでございます。  笹森参考人から先ほど、会計検査院の強化、国会機能強化という御指摘があったわけでございますが、具体的なイメージとなりますと私が申し上げるようなことになるのかなとも思うわけでございますけれども、さらにそこのところを突っ込んで御意見をお聞かせいただければというふうに思います。
  35. 笹森清

    笹森参考人 基本的には、閉鎖的な政策決定システム政策評価、これが情報公開をされていないことによって閉鎖的という言葉を使うわけですが、これを改めるというのが今回の、今先生が御指摘の内容の最大のポイントではないかというふうに受けとめております。  したがって、行政の計画、経過、検討についての評価を行うというのは、国民評価結果を示さなければ何も意味がないわけでありまして、示すために、今の会計検査院のシステムがどうかというと、これは必ずしも機能していないだろう、こういうふうに思いますので、有効性、効率性評価を行う検査評価システムに今の会計検査院法を強化させるということ、現状法律を使うとすればそのことがまず一つ必要じゃないか。  それから、その次に、閉鎖的な政策決定過程を改めるためには、公正ルール設定型行政へというふうに重点を移しかえられるかどうかということだと思います。  では、今の裁量型の場合と事後チェック型の場合とどういうふうに変わるのかというと、今のシステムのままで事後チェックに変えると膨大な人員が必要だということになりますね。この要員とのアンバランスをどういうふうに整理をさせるかというと、これはシステムを先行させなければだめだということだと思うのです。  具体的に、では、例えば労働基準監督署の問題なんかも事後チェック方式に変えた、こういうことになりますと、今の基準監督署の要員配置では十分の一も務まらないというぐらいの極端な例が出てくるわけでありまして、したがって、事後チェック型に改めるという場合には、そのシステムをまず変えさせておいて、そしてそれに対する人員の手当てをどうするかということにしないといけないだろう。そうなっていくと、先ほども申し上げたように、初めて仕事のあり方評価の問題が出てくるということにつながっていくわけですね。  だから、現状をどう変えるかということと、その評価システムを変えるということになれば、まずは閉鎖的なものを開放的に変えさせる、それから事前から事後に変えるとすれば、そのシステムを変更させた上で、そこに要員の配置をクロスさせて、十分かどうかということをした上での評価がそこに伴うものになるかどうかという三段階だ、こういうふうに思っています。
  36. 福島豊

    ○福島委員 これは藤田参考人にお聞きをしたいわけでございますが、今笹森参考人からも、事後チェック型にすると大変人員の厚みをふやさなければいかぬところがあるというお話があったわけでございます。先ほど、労働基準監督署監督官も数が不足しているからこれはもう大変な仕事だ、なかなか八時までには帰れないというお話があったわけでございます。私もそのとおりだと思うのです。今の行政の仕事の量をどうするのかという話ですね。事後チェック型にすれば仕事の量がふえる、だからそれに応じた人員の配置はしなければいかぬということになるのだろうというふうに思うのです。  ただ、それだけではなくて、これだけ遅くまで仕事をされている方がいる。四〇%以上の人が八時過ぎぐらいまで仕事をしているわけですね。これはやはり仕事の分量を減らさないとどうしようもないのだろうというふうに思うのですね。今のままでやっている以上はこれは同じようなことになる、そこで一方的に人員だけ減らせといっても減りようがないし過重労働になるではないかという御指摘は、そのとおりだと思うのですね。  事前規制型から事後チェック型ということで、部署部署によって仕事のふえるところと減るところも恐らくあるのだろうというふうには思うのですけれども、全般として行政の事務量を減らすためにはどうしたらいいのか、その点について藤田参考人の御意見をお聞きしたいと思います。
  37. 藤田忠弘

    藤田参考人 少し議論の角度が私どもと違う部分がございますが、私どもは、今の公務、これは全体として基本的に国民皆さん方にとって必要だ、そういう立場に立っております。  したがって、例えば効率だけで論じ切れない仕事の分野、これはもう先生も御承知のとおり、例えば一人の看護婦が多数の患者を見るということは、効率ではあってもそれは本当の意味公務責任を全うしているかということがありますし、労働基準監督官が二十年かからないと全事業場を回れない、これは公務を全うしているのかということがございますし、四十五人の学級よりも三十五人の学級の方がいいに決まっているわけですから、そういう意味で、私どもは、公務あり方というものをきちっと検討して、その上でどれだけの行政体制が必要なのか、こういうふうにいくべきだというふうに思っているところです。
  38. 福島豊

    ○福島委員 次に、公務員制度のことについてお聞きしたいわけでございますが、先ほど笹森参考人から労働三権を認めるべきであるという御意見がございました。私もそのとおりかなとも思いますが、これに対しては、三権は認めるかわりに解雇もできるようにすればいいのではないかという意見もありますけれども、こういった意見につきましてはどのようにお考えなのか、お聞きしたいと思います。
  39. 笹森清

    笹森参考人 二つあると思います。  一つは、定年制の問題ですね。今の公務員の場合の、天下り規定とかいろいろあるのですが、定年の年齢からいうと、ある部分、そういった保障先を持っていなければいけないという部分が当然必要になると思います。  それから、民間の場合に、労働三権が認められている企業についてどうかということになれば、これは信賞必罰ということになるわけですから、解雇問題というのはそこに裏腹の関係で出てくる。これは規定上のつくり方として、そういうものが必要だということになれば、当然そのことは労働協約上の確認事項という扱いの中で整理ができるというふうに思っております。
  40. 福島豊

    ○福島委員 そしてまた、一括管理について笹森参考人は、これは慎重に検討すべきであるというお話がございました。現在、中央省庁あり方として、縦割りの弊害というのはそれぞれが公務員としてみずからの省益のみを追求するというところに一つの理由があるんだ、その省益のみを追求する公務員の姿勢というものを改めるためには一括管理、一括採用というようなことがどうしても必要なんじゃないかという意見から出てきた考え方だと思うわけです。  この点について、慎重な検討というふうにおっしゃられました本意といいますか、もう少し詳しくお聞かせいただければと思います。
  41. 笹森清

    笹森参考人 公務員問題を論議する、年に一度だったと思いますが、人事院主宰の公務員問題懇話会というのがございます。そこの中で、民間がいつも大体二人呼ばれて御意見を申し上げるのですが、今の問題は、ここ六年ぐらいずっと論議になっております。ただ、まだ結論が出ておりません。  民間側の意見としては、個人的な腹からいえば、一括管理という方向は今の時代に余りそぐわないのじゃないかというような気持ちも若干はあるのです。ただし、公務員というものが横断的にこれから国政をどういうふうに行政立場としてつかさどっていくのかということからいうと、各省庁省庁の扱いの中でそれぞれの省益や枠の中にはめ込まれてしまうということはこれからの日本の方向にとってよくないという状況になりますから、採用の問題と配置の問題とが整理されれば、私は、ばらけさせる方向も一つの手法だろうと思うのです。  ただし、今の中では、全体を採用させておいて、個別のそれぞれの塀の中の懲りない面々にさせないということを考えた場合には、一括管理、一括採用方式の方が、そういった人事上の問題とモラル上の問題を整理させるにはやりやすい形になるのではないか、こんなような気持ちを持っております。
  42. 福島豊

    ○福島委員 時間が参りましたので、以上で私の質問を終わりにさせていただきます。両参考人、本当にありがとうございました。
  43. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、石垣一夫君の質疑に入ります。
  44. 石垣一夫

    ○石垣委員 自由党の石垣一夫でございます。  両参考人には、本日は大変お忙しい中御出席いただき、貴重な御意見を賜り、ありがとうございます。  そこで、いろいろと御意見をお伺いしたのですけれども結論から言えば、基本的な考え方として、連合の方は、いわゆる行政改革は推進すべきだ、ただし、この中央省庁改革基本法案については修正すべきではないか、また国公労連の方では、これはあっさり撤回すべきだ、こういう極めてはっきりした御意見なんですけれども、そういう基本的な考え方を踏まえてお聞きしたいと思うのです。  まず最初に、連合笹森参考人にお聞きしたいと思うのです。  先ほどからいろいろ論議されておりますけれども、この法案については修正すべきだという御意見をお持ちだと思うのですが、具体的に、この法案に規定されていない、そういうお考えがあって、さらにこういうことを法案に盛り込むべきだという御意見があればお聞きしたいと思うのです。
  45. 笹森清

    笹森参考人 具体的な部分から申し上げますと、一つは行革の理念、それから行政組織の再編成、これは何回も申し上げておりますように、行政国民生活の安定に責任を持つというナショナルミニマムをどういうふうに確立させるかということが必要だと思うのですね。そして、業界と申しますか、そういったレベルの人たちに対しての行政裁量による指導型から公正ルールにどう取りかえるかということがなければいけないというのが大前提としてございます。  そうなりますと、私ども立場からいえば、そのことをやっていくことについて何が欠けていたかというと、公務員労働三権を保障するという中身が一つも入っていないというのが一点ございます。それからもう一つは、行政組織の再編成及び独立行政法人設定等組織変更をやった場合に事前協議をやるのかやらないのかということも入っていない。それから、労働条件の維持と雇用の安定を確保できるのかどうかということについても全く言及をされておらない。労働組合立場からいうと、この三つは非常に不本意であります。  それから、全体的な部分から申し上げますと、今回の行政改革の必要性、今先生御指摘のように、私どももこれは必要だというふうに思っておりますが、形が示されたのみで中身的にはすべてにわたって中途半端だというふうに指摘せざるを得ないと思っております。  この中途半端にした要因は何かというと、先ほどの答弁の中でも申し上げさせていただきましたが、すべて財政問題に尽きるというところにこの中途半端の原因があるのではないかというふうに思っておりまして、それを取り除いていくために何をしたらいいのか、そのことによって中央省庁をどう変えるのかというふうな展開をしていかない限りは、今の一府十二省庁に形を整えるというだけでは、私どもは、これは行政改革であるとは言えないというふうに思っております。
  46. 石垣一夫

    ○石垣委員 先ほどの答弁の中で、いわゆる改革の主体は政策が軸であって、当然地方分権がリンクされていなきゃいけない、セットでこの法案審議されなきゃいけない、こういう御意見だったと思うのですけれども、では具体的にどういう政策が軸にならなきゃいけないのか、こういうことでお考えがあれば、ひとつお話しいただきたいと思うのです。
  47. 笹森清

    笹森参考人 これは組織的にはオーソライズされている考え方ではありませんので、個人的にというふうなことで御理解いただきたいと思うのですが、例として二つとらさせていただきますと、一つ国土交通省の問題があります。  これは今までの予算体系上からいっても最大省庁になるのだろうというふうに思っておりますが、では、今までのそれぞれのポリシーが、どういうふうに日本全土の中で建設と運輸がやられていたか。これは全く利害相反する競争的な関係の中でそれぞれの政策を実行していた。これを、道路行政だからというようなことで建設部分に全部かこつけて一つ省庁として合体をさせて、巨大な実施省をつくってしまっていいのかどうか、これはいかがかなというのがまず一つありますね。  それから、ネーミングの問題は全く別ですが、労働福祉省の場合には、もともと根っこは一つだったという部分があります。ただ、これからの少子・高齢化の時代を考えたときに、社会保障と労働という問題についてどう考えるかということになれば、私は、これは政策的にはくくれる部分があるのではないかというふうに思っております。  そういう意味では、今の十二省庁のくくりが、そういったものを少しずつ精査をしていきますと、数を少なくするための便法であって、政策が主になった組み合わせになっていないというところが今の二つの例の中で言えるのじゃないか。したがって、政策中心というふうにくくっていくと、数的にはここまで少なくならないのかもしれませんが、今の省庁よりはまだまだ再編の可能性があるくくり方はできるのじゃないか、こう思っております。
  48. 石垣一夫

    ○石垣委員 今回のこの法案の大きな目玉は、先ほども話がございましたように、独立行政法人ですね。これがどういう形で設置されていくのか、これがまた大きな焦点になると思うのですけれども国公労連の方では、これはもう絶対認められない、こういう御意見なんですね。これについてもう少し御意見を聞きたいと思うのです。
  49. 藤田忠弘

    藤田参考人 先ほどの繰り返しも少し含みますが、独立行政法人というものの特徴は、先生も御承知のとおり、一つは、行政組織の枠外に置く、それから二つ目は、所管大臣の定める中期目標の達成にのみ責任を負う、そして三つ目が、労働条件を決めるに当たっては実績が反映をする、そしてもう一つが、業績評価が行われる、こういう点にあろうかと思うのです。これは、言いかえますと、効率重視、また営利中心、こういう側面を前面に立てることになるのではないかと思っております。  そういうことからいたしますと、公務が担っている業務というのは大変公共性の高い分野でありますから、例えば国立病院、御承知のとおり高度の医療の分野を担当いたしますし、それから難病の分野、あるいは離島、僻地という地域医療、こういう点で国が持つというところに大変重要な意味があるわけであります。それを効率重視というふうな立場に立ちますと、一体不採算の部門はどうなっていくのかという率直な疑問を、不安を私どもは持たざるを得ないわけでございます。  国立の試験研究機関の場合も同様でございます。特に基礎研究の分野というのは、長期にわたる研究の積み上げというものが大事でございますから、そういうものが効率重視というふうに切りかわった場合に、そういう部門はどう担保されるのかという点で大変不安を持たざるを得ない、こういうふうに思っているところでございます。
  50. 石垣一夫

    ○石垣委員 個別的にはそういう問題があると思うのですけれども、今回の大きな行革の目玉でございますから、十分そういう点も配慮しながらこの制度の確立に向かって行政が進んでいく、このように私は理解をいたしております。  そこで、四十一条では、労働関係への配慮ということで、「政府は、それぞれの独立行政法人に行わせる業務及びその職員の身分等を決定するに当たっては、これまで維持されてきた良好な労働関係に配慮するものとする。」こういうふうにわざわざ労働関係への配慮ということが提起されております。これについて、笹森参考人はいかがでありましょうか。
  51. 笹森清

    笹森参考人 先ほども申し上げたように、労働三権が保障されていない部分の中で、この言葉が入ったというのは大変前進だというふうに評価はしたいと思っています。  ただ、これも二つありまして、一つは、独立行政法人にするかしないかということについて当該労使の協議が必要だということなんですね。それから二つ目は、今度は法人の対象となった場合、業務と職員の身分を決定するに当たってどうするのかということであります。  労使関係上の問題でこれをすべてさばくことができるのかどうかというと、独立行政法人にするかしないかというのを労使協議の中で最終確認をさせていただくのは大変結構なんですが、では独立行政法人にするということについての論議は一体どこでやられるのかという部分について、民間にゆだねた場合には実施されないおそれが強い事業であるから、新たに設置した法人の職員がやりなさいよと、何かよくわかったようなわからないような規定になっていますので、この二つをきれいにセパレートしてもらわなければいけないだろう。  それから、四十一条の問題については、当然のことだとは言いながらも、文章化をされたということについて評価をさせていただきたいと思います。
  52. 石垣一夫

    ○石垣委員 諸外国のいわゆる行政改革の成功した例を見ますと、例えばカナダでございますけれども、現業の行政内容を徹底的に分析をしておりますね。そこから何を残すべきか、何を廃止すべきか、何を民間に移行すべきか、いわゆる廃止基準、それから存続基準、民間移行基準、これらを政府がまず明確にして、官僚がいかに反対しても覆すことのできない、そういう一つ実施基準をつくったということが私は成功した例だったと思うのですけれども、残念ながら我が国の作業は官僚依存型であるということが現時点では否めないということで、これは今後国会に与えられた大きな改革視点だと私は思うのです。  これについて御意見があれば、ひとつ参考人の方からお願いしたいと思うのです。
  53. 笹森清

    笹森参考人 一つは、現業の改革という問題についてあると思うのですが、公共性だとか公益性によって判断をして、現業だということの理由だけで一方的にアウトソーシングをするという考え方については、これは容認はできないという部分があります。  それから、官と民の役割分担の問題ですが、民間に任せておいては社会的公正上などから弊害が生じかねないもの、これはやはり官がやらなければいけないということになっているわけですね。  ところが、民間は、民間でできるものについてどうなのかということになると、一つだけ例を申し上げますと、今、道の駅という、車で走っていますと、ドライブインだか何だかよくわからないものがあります。あれは官営だそうであります。例えばドライブインなどの場合には、これは民間で十分できて、官でなければやれないという業務範囲の中には入らないわけですね。しかし、こういった社会的公正上からどうなのかという部分まで逸脱をしていくということについて、官が入り始めるということについては、これは否定しなきゃいかぬ。だから、官と民の役割というのは、社会的な公正上どうなのかという部分で明確なルールをつくった上で、そしてそこにアウトソーシングがどうなのかという部分が折り合っていかなければいけないだろうというふうに思っております。
  54. 藤田忠弘

    藤田参考人 多少繰り返しも含みますが、各省庁役割任務というのは、多かれ少なかれ、憲法の定めている基本的人権実現するということを踏まえたそれぞれの設置法というものがつくられて、それを踏まえて行政を進めているというのが今日までの状況だと思います。  しかし、社会状況の発展に伴ってそういうものを改革、改編をしていくということは当然のことであろうと思いますし、その際には、その行政内部で働いている一般の職員、それを代表している労働組合、この御意見もぜひとも聞いていただくということが、まともな改革方向を追求していく上で不可欠ではないかというぐらいに私ども思っておりますので、そのことだけ申し上げておきたいと思います。
  55. 石垣一夫

    ○石垣委員 大蔵省を頂点とする公務員の腐敗、汚職、まさにこれは国民の信頼を大きく失いつつある、こういうことなんですけれども行政の基本はやはり国民の信頼だという先ほどからの御意見でございます。  折しも、公務員倫理法の制定がいよいよ国会に上がってくるという時点でございますけれども、この公務員倫理法の制定について、両参考人、御意見があれば、この際ひとつお述べいただきたいと思うのです。
  56. 笹森清

    笹森参考人 行政の不祥事の原因を徹底究明するというのは、これは当然必要だと思います。それから、内部監査をどういうふうに強化するか、このことも必要だと思う。  ただ、問題は、今までの、便宜をどう計らったかということになれば、関係業界との接触のルールをどういうふうにするかということ、これは接触をしてはいけないということになると、もう全く行政が進まないということになりますから、その接触のルールのつくり方だと思うのですね。  そういう中で、いわゆる接待とか贈与、そういったものについて、どの部分までがどうかというのは線引きをすればいいのでしょうけれども、報告制をどういうふうにするか。それから二つ目は、第三者監査機関というものを定めた中で、いわゆる公務員倫理法をどう制定するかということが必要だと思います。  今の倫理をやっていく場合に、財産公開の問題等もいろいろありますが、これはプライバシーとの関係もいろいろ出てきますので、どういうふうに扱うかというのは別にいたしまして、信賞必罰の関係からいえば、罰を与える場合の公開というのは、これは当然必要だと思いますが、何も悪いことをしていない人のことまで全部クリアにしなさいというのも、これもいかがかという部分もありますので、そういうものの、個人的なプライバシーの問題と、オープンにするフォーマルな部分とをどういうふうに整理をするかという区分けの中で扱っていただければというふうに思います。
  57. 藤田忠弘

    藤田参考人 腐敗の防止は公務員倫理法だけではないと思いますが、公務員倫理法自体は必要だというふうに考えております。  個人の倫理観の問題ということももちろんございますが、より基本は構造的な問題だろうというふうに思っております。  その構造問題の一つは、やはり天下り問題だと思います。  御承知のとおり、天下りというのは、省庁の側の権益擁護というものと、率直に申し上げて見返りを期待するという業界、これとの利害の一致というところから生じている問題だと思いますので、これはやはりきっぱりとなくしていくということが一つ大事だと思いますし、それからもう一つは、特権官僚を優遇するという事実上の制度公務の中で行われておりまして、このことをやはり根本から改めていくということがございませんと、腐敗の防止にはつながっていかないのではないかというふうに思います。  あわせて、特にこの機会にお聞きいただきたいのですが、大蔵省の場合、そこにある労働組合というものを敵視する、こういう政策が昭和三十八年当時からずっと続いておりまして、これは、内部における一切の批判勢力の存在を許さない、こういうことでありまして、そういうものがやはり腐敗を生み出していく体質に結びついていっているというふうに思いますので、その面も重視をしなければいけないと思っております。
  58. 石垣一夫

    ○石垣委員 終わります。
  59. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、平賀高成君の質疑に入ります。
  60. 平賀高成

    ○平賀委員 日本共産党の平賀高成でございます。  きょうは、大変お忙しい中、こうして委員会に御参加をいただきまして、心からのお礼をまず申し上げさせていただきます。  初めに、今回の中央省庁改革法案の中には、四十七条の四号に、「定員について、十年間で少なくとも十分の一の削減を行う」、こういう条項があります。私は、一律に削減をするというのはたくさんの問題があると思います。実際には、サービスの需要が多い部署やそうでない部署があると思います。  先ほどは、阪神・淡路の震災に当たって測候所の職員の人数の問題もお話がありましたし、労働基準監督署の人数の問題もお話がありました。これ以外いろいろな分野があると思いますが、実際、この辺の実態というのはどういう状況になっているのか、藤田参考人に伺いたいと思います。
  61. 藤田忠弘

    藤田参考人 具体的な実例を挙げてみろ、こういうことでございましょうか。(平賀委員「そうです」と呼ぶ)先ほど申し上げたのが端的な事例でございますが、特に申し上げたいのは、一律の削減方式というものが職場にどういう弊害をもたらすか、このことをむしろ御理解をいただきたいというふうに思っているところでございます。  政府は、この一律削減の方式というのは、必要なところに増員を行うための財源をそのことによってつくるのだ、こういうふうに説明をしているわけであります。しかし、現実には、新規需要が生じないところは、したがって増員が行われません。一方で、一律の削減だけが押しつけられる。こういうことになりますから、実際には純減、こういう職場実態が生じるわけでございます。それから、新規需要が生じている場合でも、一律削減によって生じた人員が財源でございますから、限りがあります。したがって、必要な増員措置ということには手が回らない場合が多々あるわけであります。そういった意味で、全体として必要な部署に必要な増員が配置をされない、こういうことの繰り返しが行われている、こういうことでございます。  ちょっと御質問とかみ合わなかったかもしれませんが、とりあえずはそういうことで挙げさせていただきます。
  62. 平賀高成

    ○平賀委員 今回の中央省庁の再編は、企画立案部分と実施部分を分離するという重要な問題が含まれております。そもそもこうした分離がいいのか悪いのか、国民サービスが低下するのかどうなのか、福祉、労働などの分野で国民にとってどういう弊害が生まれるのか、その辺について、藤田参考人に伺います。
  63. 藤田忠弘

    藤田参考人 結論から申し上げまして、企画立案部門と実施部門を分離するということについては、私どもは基本的に反対でございます。  理由の一つは、その場合の最大の価値基準が、効率化あるいは重点化というところに置かれている点でございます。そういう考えのもとにおきまして、実施部門につきましては、外局化を図るとか、あるいは独立行政法人化をするとか、そして公社化を図る、こういうことになっているわけでございますが、それぞれの分野で、先ほども申し上げましたが、公務が果たさなければならない責任というものは厳として存在をしているわけでありますから、それに対する個々の十分な検討抜きでその方向が目指されるということは、大変無責任のそしりを免れないのではないか、こういうふうに思うのが一つ。  もう一つの理由は、行政責任といいますのは、企画立案部門と実施部門を一体的に運営する、このことによって初めて貫徹をされる、こういうふうに思っているところでございます。御承知のとおり、憲法の六十六条は、「内閣は、行政権の行使について、国会に対し連帯して責任を負ふ。」こういうふうに定めております。この立場から見ましても、また、一つの施策が首尾よくいったか、あるいは不首尾に終わったのか、この検証は、やはり企画立案部門と実施部門が一体になって行いませんとリアルな検証が行われない、こういう関係だと思っておりますので、冒頭申し上げたように、この分離ということについては私どもは賛成するわけにはいかない、こういう立場でございます。
  64. 平賀高成

    ○平賀委員 今回の中央省庁の再編は、企画立案部分と実施部分を分離するというのは今お話にあったとおりでありますが、実施部分については、民営化前提とした独立行政法人制度をつくるということになっています。  独立行政法人についての組合の考え、例えば身分の問題や法人にすることによる問題点などがありましたら、藤田参考人に伺いたいと思います。
  65. 藤田忠弘

    藤田参考人 先ほど別の先生の御質問お答えしたことが、独立行政法人に対する私どもの基本的な見解でございますので、時間のこともありますから繰り返すというのは恐縮かと思いますが、私ども独立行政法人前提にした議論というものを現時点で行う立場ではございませんので、この段階で、独立行政法人をりくることの是非について、ぜひとも慎重な議論をやっていただきたいというところが、現時点の私ども立場でございます。
  66. 平賀高成

    ○平賀委員 今、独立行政法人についての現時点での組合としての考えは、慎重に審議をしていただきたいというお話ではあったわけなんですが、しかし、実際に、もしこれが現実のものになった場合、この場合について組合としてはどのようにお考えになるのか、これはどうなんでしょうか。
  67. 藤田忠弘

    藤田参考人 先ほど申し上げましたとおり、現に公務が担っている分野が大変公共性の高い分野でございますから、例えば国立病院の場合、これは果たして国が直轄的に責任を負うべきなのか、あるいは独立行政法人になじむものなのか、このあたりについての吟味というものを十分に行っていただかないといけないのではないか、そういうふうに思っておりますので、そういう吟味、検討には私どもも大いに参画して議論をさせていただきたい、こういうふうに思っているところでございます。
  68. 平賀高成

    ○平賀委員 次に、郵政の民営化についての問題でお聞きしたいと思うのですが、連合笹森参考人にこの点についての御意見を伺いたいと思います。
  69. 笹森清

    笹森参考人 簡潔に申し上げますと、三位一体国営というのが連合の基本的なスタンスです。  もちろん、連合の中でもいろいろな意見がございますが、今の郵政三事業の問題を考えた場合には、それぞれ別個の状況で業務運営をさせ、そして、そのことが本当に効率的になるのかどうかということについては疑問がございまして、したがって、三位一体事業運営というものを前提にしながら、そうなっていけば体系的に変わらないということになりますので、公務員の身分資格は保障すべきだというのが基本であります。
  70. 平賀高成

    ○平賀委員 今回の中央省庁の再編は、一つ内閣機能の強化、二つ目には企画立案部分と実施部分を分離する、三点目には省庁の大くくりというのが基本的な枠組みや方法論になっていると思います。  私は、本来行政改革というのは一体どうあるべきなのか、この点について、全体的にはなると思いますが、藤田参考人意見を伺いたいと思います。
  71. 藤田忠弘

    藤田参考人 この点は、冒頭意見のところでも申し上げましたように、今国民皆さんの間で、行政改革が必要だ、こういう声が強まってきているわけですが、なぜそういう声が強まってきたのかということを思い起こしてみますと、やはり、大蔵や厚生省などを初めとした特権的な官僚の汚職、腐敗問題が続出した、こういうことをなくしてほしいということが一つあったと思います。  それから、財政の執行の仕方が、これも率直に申し上げますが、めどの立たないダムが幾つも幾つも計画をされていたり、あるいは使われもしない港などがぼこぼこつくられてみたり、自分たちが納めた税金が、果たして有効に、言いかえれば国民生活の充実のために使われているのかどうか、これを改めてほしいということであるとか、それから、薬害エイズの問題あるいはO157の問題が生じたときに、一体行政の中はどういうふうに行われているのかということが全くわからない、これをもっとガラス張りにしてほしい、こういった気持ちが渦巻いていたと思うのです。したがって、そういうことを実現してほしいというのが、国民皆さん行政改革というものに対する出発点だったと思うのです。  その意味で、冒頭申し上げましたとおり、今出されている法案、これも一つの考え方ではあろうかと思いますが、私が申し上げたような、そもそもの行政改革に対する国民皆さんの要請との関係でいきますと、これはこたえるものになっていないのではないか、そんな気持ちを大変強く持っているということでございます。
  72. 平賀高成

    ○平賀委員 時間が終了しましたので、終わります。ありがとうございました。
  73. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、深田肇君の質疑に入ります。
  74. 深田肇

    ○深田委員 きょうは、私が最後でございますので、いま少しのおつき合いをよろしくお願いいたします。  お二人の参考人の方、御苦労さまでございます。ありがとうございます。  そこで、幾つか予定しておりましたけれども、きょうは重複を避けて御質問したいと思っておりましたがへ先ほど、参考人藤田先生のお言葉の中でちょっと気になることがございましたから、先にそれを聞いておきたいのです。  大蔵省では労働組合を敵視しているのですか。この実態はどういうことなんでしょうか。ちょっと聞かせてください、正確に。敵視という言葉が出ましたから大変なことだなと思って、この民主国家で。
  75. 藤田忠弘

    藤田参考人 御承知かと思いますが、大蔵省の中には幾つもの労働組合がございます。私どもと直接関係のある労働組合は、全国税、これは税務署員でつくっている労働組合、それから全税関、これは税関の職員で構成している組合でございますが、昭和三十八年当時から、この労働組合に加入をしている者に対して、いわゆる昇任昇格における差別を中心に、いわゆる差別政策といいますか、こういうものが非常に強硬に行われてまいりまして、したがって、結果として、そういう労働組合に属するということがなかなかできにくくなるということで、今では大変少数の労働組合になってしまっている、こういう現状があるわけであります。  しかし、この労働組合はいずれも、今日生じております一連の汚職、腐敗問題などに対しまして、率直にこれを批判して、どうすればこれを正すことができるかというような点での提言なども社会に対して行っている、こういう状況でございます。
  76. 深田肇

    ○深田委員 恐らく労働慣行上の差別があるのだろうということだと思いましたが、敵視じゃないですね。こういう場で敵視と言われると、日本労働組合や職員団体はどうなるのかなという感じがちょっとしましたので、もう一度敵視と出られましたらどうしようかと思っておりましたが、今敵視という言葉を使われなかったので、ほっとした次第でございます。差別なき労働慣行があることが大切なことはお互いの共通認識でございますけれども、その点は申し上げた上で、ちょっと気になりましたので、最初に質問させていただきました。  そこで、持ち時間は短いのでありますが、本論に戻ります。  まず最初に、連合の事務局長の顔を見たときに、最初に思ったことはメーデー、よかったです。今度はデモ行進まで敢行してもらって、恐らく現場労働者にとっては、大変な意気高しというメーデーだっただろうと思います。そういう意味合いでは、ぜひ、現場労働者の意向をしっかりとくみ上げていただきまして、一定のスローガンのもとに共同行動ができますように、よろしくお願いをいたしておきたいというふうに思う次第でございます。  そういうふうに申し上げた上で、実は、先般の行政改革会議の中で、芦田前会長がよくテレビに映りました。敬称略でいきますが、橋本、水野、その次が芦田と言っていいぐらいテレビによく映ったので、これで恐らくや、労働組合という名前といいますか、働く者といいますか、いわゆる社会的弱者といいますか、雇用関係でいえば使う側と使われる側、いろいろな方々の声が圧倒的に行政改革会議の中に保障されて、十分御意見を聞いてやっておりますよ、それを水野さんがまとめているんだ、最後の決裁は橋本さんがやったんだというふうに見える風景でした。  しかし、でき上がったものに対しては、私どもは、今与党でありますから自民党さんと協力しながらこの法案を通すべく努力しているのですが、大変注文をつけさせてもらっている立場でございますから、その点では、率直に、連合さんが出された文書などを見て、共通認識をたくさん持っています。  その意味から思うのでありますが、時間がありませんから、もう一度そのお話を聞くのではなくて、芦田前会長を送り込んだことによってこういう成果はあったという、そのいいところだけちょっと聞かせてもらいたい。そうせぬと、これは我々も、なかなか一緒になって賛成しにくくなるしという感じもしますので、成果を少ししっかりと、あると思いますから、御説明いただきたいと思います。
  77. 笹森清

    笹森参考人 基本的な部分もありますので、ちょっと前振りの方を先にやらせていただきますと、メーデーの問題とか連合の運動の問題ですね。  昨年の十月に、三代目の鷲尾・笹森体制になりまして、私はそのときに、余り物わかりのよい労働運動を続けていくのはよくない、右肩上がりのときにはいいけれども、右肩下がりになってきたときに、本当にそういうような運動で労働組合の存在価値が出るのか、やはり本当に怒らなきゃならないときには、怒る労働運動をやろうよというふうに申し上げました。  その象徴的なものが、働く人たちのこれから二十一世紀のワークルールをどうつくるかという、いわゆるパート法だとか派遣法だとか労働基準法、そういった一連の問題に象徴される労働基準法の改定問題になったわけで、そういう意味では、今回のメーデー、七年ぶりに、行動する、闘うメーデーというふうに取り返させてもらいましたが、働く人たちの共感をかなり得られたメーデーにことしの場合にはなっただろう、毎年やるかどうかはまた別にしまして。  そういう中で、行革の問題について、先生の方から御指摘がありました。メンバー十五人だったと思います。労働者代表というのは芦田前会長だけなんです。先ほどもちょっと申し上げましたけれども組織を背負ってあの会議の中で発言をしたという方は、ほかにはおりません。例えば学者の方ですとかマスコミの方ですとか、それぞれの個人的な見解や学説の中でいろいろ意見は開陳をされますが、では、働く人たち立場をどうするのかという立場意見を言われた方は、恐らくゼロだったと思います。  そういう意味では、効果があったかなかったかという具体的事象は別にいたしまして、私は、十五分の一の中で、芦田前会長は本当によく奮闘なされたというふうに評価ができると思います。そういう意味で、あの最終的な局面の中で、かなり難しいと思われていた部分が、若干ではありますけれども、働く側の方の中身に寄った部分がなかったわけではないというふうに申し上げたいと思うのです。  問題は、ではその働く人たち意見が本当に通ったかどうかというのは、それぞれの積み重ねの中で、あの会議でどういうふうに論議をされて、その結果が反映をされたのかというのが一番問題なんですが、最終の合宿をやって、大論議をしました。これで大方いけるのかなという状況の中で、これは仄聞ですから、もし間違っていれば後で訂正はいたしたいと思いますが、休憩の時間があった。その休憩後に事務方から提出をされた最終的な案というのが、それまでの論議の積み重ねとは非常に似て非なるものであったというところに、今回の行革基本法最大のウイークポイントがあるというふうに思っているわけで、では、今までの積み重ねは何だったのかということです。  それから、冒頭申し上げたように、国鉄の改革のときには、あれだけの年数をかけてやって、改革についての国民的な世論喚起をした。今度の場合には、百年にわたる大計を五十年ぶりに直そうという行革基本法の問題ですね。そこのところで、前提条件がどうクリアされたのかというのが明らかになっていないということなんです。  言われましたように、行政改革は必要なんです。そのことによって、では、どういうふうに中央集権なのか分権なのか、官なのか民なのかという役割を整理をして、そこに働いている人たち雇用と保障をどういうふうに安定的なものにしていくのかというのは必ずセットで使わざるを得ない。その部分を芦田さんは大変頑張られたと思います。ただ、この前提条件がクリアにされておりませんので、働く人たち身分保障雇用保障ばかりに働く側の代表として連合の前会長が余りにもこだわり過ぎて、守旧派だというふうに言われるぐらいのレッテルも張られるような発言になってしまったのかどうか。  私はやはり、この前提条件がクリアされれば、決して守旧派ではなかったと思う。クリアされていないからこそ、そういう身分保障雇用保障にこだわらざるを得なかったというところが、大変苦渋の選択だったというふうに思っています。そういう意味では、効果があったというふうな部分はそういう点で申し上げられると思います。.
  78. 深田肇

    ○深田委員 これは率直に伺うのでありますが、法案には、公務員の定数問題は、一〇%の削減が出ているのです。先ほどから討論がありましたが、先輩議員の中では、思い切って三〇%ぐらいからスタートせぬと、一〇%じゃ追つつかないぞ、こう言われる。私どもにしてみると、一〇%でもどうなのかと心配して、何回か総務庁長官にお尋ねしたら、私どもに対するニュアンスと、全体の討論をしてだんだんと総務庁長官は押された感じで、一〇%以上、以上という言葉が入ってきたのであります。  そういうことを含めて、これからの公務員あり方、しかも、先ほどの雇用問題や定員の問題や、世界の国に比べてみての量が必ずしも多くないという話だとかを考えながら、時間がありませんから、その一〇%問題というのにひっかけながら、今後の公務員の労使関係というものはどのようにしていったらいいのか。それと、現在の中で、三権がありませんから、これは三権をすぐ取り返せれば一番いいのでありますが、そう簡単にいくとも思えませんから、そういう状況の中で、当面、これから一、二年の間にどういうふうな労働慣行をつくり上げていく、そのために政府に何を強く求められるのかということを、できれば我々の方に、連合としての御意見を聞かせていただければありがたいというふうに思いますが、いかがですか。
  79. 笹森清

    笹森参考人 人員削減の問題については幾つか意見が分かれますけれども、十年間で十分の一程度少なくとも削減をするという表現だったと思います。  これは、今の業務のあり方の中で新たに生まれるものがどうかというのは、システム上の体系をうまくつくりかえれば、私は、人員問題としては、それほど大きな問題にこの十分の一程度削減をするというのはならないというふうには思っておりますが、そこに保障されなければいけないのは、やはり雇用の保障をどういうふうに安定的にさせるかというのがついていなければいけないということ。  そうなっていくと、長期的、中期的に人材育成をどういうふうにやるかという研修体系の充実と、それから、新たなる業務をどういうふうに担当させるかということになれば、新たなる役割分担の問題と業務変更、配置転換、これについて事前協議が当局との間に行われるかどうかというのが、一番大きな要素としてあるのではないか。  これは民間の場合でも、事前協議をやれば、どこまで合理化や省力化の問題について自分たちみずからが納得してやり得るかというところに必ずつながるわけですから、この事前協議制をどういうふうに徹底させていただくかというのは、大変大きなポイントになるだろうというふうに思っております。
  80. 深田肇

    ○深田委員 もう時間が終わりますので、藤田先生、先ほどは大変失礼なことを御質問したかもしれませんが、事前協議というのはなかなか難しい問題でしょうけれども、現実に、いわゆる皆さんの方の労働組合、職員団体との間は、一定程度労使間で話をされたり、そこで決まった約束事が実施されているという事実はあると思いますが、その点の評価はいかがでしょうか。
  81. 藤田忠弘

    藤田参考人 おっしゃるとおり、そういう事実はございます。  ただ、これは先ほどの連合に対する御質問にも関連するのですが、例えばILO百五十一号条約というのがございます。これは、労働条件決定システムを労公使でつくっていく、こういう中身でございますが、日本政府はこれを批准しておりません。ですから、こういうものが仮に批准されて、それに沿った国内法の整備が行われていけば、労働条件の決定にかかわる公務における労使間の関係というのは今よりも前進をしていく、こういうことだと思っておりますので、そういうことを目指しております。
  82. 深田肇

    ○深田委員 どうもありがとうございました。終わります。
  83. 高鳥修

    高鳥委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  参考人各位には、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚くお礼を申し上げます。  午後一時から委員会を再開することとし、この際、休憩いたします。     正午休憩      ――――◇―――――     午後一時一分開議
  84. 高鳥修

    高鳥委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  午後は、東京大学法学部教授佐々木毅君、法政大学法学部教授五十嵐敬喜君、構想日本代表慶應義塾大学総合政策学部教授加藤秀樹君、大阪大学大学院国際公共政策研究科教授跡田直澄君、法政大学法学部教授浜川清君、東洋大学経済学部教授・経済研究所長中北徹君に御出席をいただいております。  この際、参考人各位に一言ごあいさつを申し上げます。  本日は、御多用中のところ本委員会に御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。参考人各位におかれましては、それぞれの立場から忌憚のない御意見をお述べいただきたいと存じます。  なお、議事の順序でありますが、まず各参考人からそれぞれ十分程度意見をお述べいただき、次に委員からの質疑に対してお答えをいただきたいと存じます。  それでは、佐々木参考人にお願いいたします。
  85. 佐々木毅

    佐々木参考人 今度の中央省庁の再編にかかわる極めて重要な法案につきまして、最初に手短に私の考えを述べさせていただきます。  第一点は、この法案は、かねて日本行政機構のあり方について政治の責任において抜本的な再検討をしなければならないという重要な課題に、初めて大規模な形でこたえようとした試みであるというふうに考えております。  これまで、ともすれば政治と行政機構との関係がはっきりしない、あるいは責任の所在が見えにくいという国民の不満は、否定すべからざる事実でございます。こういう問題に対する一つの極めて正攻法として、今般こういう形で行政機構のあり方について正面からメスを入れ、その見直しを図るということを考えられたのは大変結構なことであろうと思いますし、また、日本の政党政治のこれまでの歴史におきましても、大変重要なステップをなすものであるというふうに理解いたしております。逆を申し上げれば、これまでなぜこういうことが行われてこなかったのかということに対して、非常に大きな疑問を国民の一人として抱くものでございます。  第二点は、やや内容的なことにかかわる問題でございます。  この中には大変重要な内容が幾つか含まれております。これにつきまして、私自身も必ずしも全般的に承知しているわけではございません。しかし、その趣旨といたしまして、これまでのさまざまな行政の抱える病理現象というものに焦点を当ててそれに取り組もうとされたものであるということはわかるわけでございます。その際、例えば内閣のあり方内閣機能の強化というような問題に取り組む、しかも、特に内閣官房等の人事の運営を含めて政治の側のイニシアチブというものを大幅に認める方向を打ち出すといったようなことは、多くの国民にとっても特に重要な関心事だろうと思っております。  もちろん内容につきまして多々御議論のあることは私自身も承知いたしておりますが、そういう点で一言申し上げさせていただきますと、この法案の内容は、二十一世紀行政あり方を展望するものだというのが一つの理解のようでございますけれども、なかなかまだそこまでは行き切っていないなという感じが率直にいたすわけであります。やや厳しい見方をしますと、ようやくこれで二十世紀行政システムにキャッチアップしたなという面も少なからずあるように思われます。特にアカウンタビリティーといいますか、情報の公開と説明責任といったような問題を含め、また、これまで肥大してまいりました行政官庁の権限等の見直しにつきましても、ようやくこれが緒についたという感じがするわけでございます。  その意味で、これは終点ではなくてベースキャンプだろう、大変率直な言い方をさせていただきますと、そういうふうに私は思っております。一度政党政治がこういう形で行政機構の問題を扱われたという経験を生かして、問題はいろいろ出されているやに聞いておりますので、今後さらに一層行政機構のあり方を継続的に見直していかれる上でのベースキャンプとして、私はこれを評価したいというふうに思います。その意味では、国会議員の先生方の今後の重要な活動の舞台となるべき非常に大きな問題群というのがこの法案の中に含まれているということであると私は理解いたしているわけでございます。  さらに三点目になりますが、これは余り議論すべきことではないかもしれませんけれども、この法案が当初政治の世界で話題になり、いろいろな作業が進んでいく過程で、官僚制をめぐる、あるいは行政機構をめぐるいろいろな問題が出来いたしました。その意味で、例えば数年前と比べましても、行政機構に対する国民の信頼感が非常に大きく揺らいでいるということは間違いないところかと思います。  したがって、このまま事態を放置しておくということになりますと、行政機関そのものの役割がますます果たせなくなるという事態が進み、それはひいては国民生活にとりましても大変重大な結果を招くというふうに思われます。行政の担い手の間にもいろいろな意見があろうかと思いますが、ここは、相当大規模な改革をやることによって初めて日本行政機構というものは新たな生命を得ることができ、そしてそこから新しい活動を始めることができるのではないかというふうに、私も時間がたつにつれてそういう気持ちにならされているというのが実態でございます。これはある意味では残念なことでございますけれども、しかし、もうこのままの事態を放置しておくこと自体、事の持つ重大さというものに私は最近特に深刻な問題を感じているわけでございます。  その意味におきまして、やはりここで、いろいろ御意見はあろうかと思いますけれども、相当大規模な見直し、あるいは、まさに本法案はその一つの例でございますが、これを一つのベースにしまして大規模な見直しを継続的に行政機構に入れていくということをぜひお願いしたいと考えます。  非常に自明なことでございますけれども行政機構が何か国民意思や政党政治の意思とは別のところで立っているかのような印象を与えるということは、それ自体非常に大きな問題でございます。ある意味で、行政機構の改革というものは不断に、そして決して大きな政治的なリスクを伴うことなく進められるべき課題一つだろうと思います。  この法案のこれからの審議について私はとやかく申し上げるつもりはございませんけれども、こういう形で一つの大きなくわが入れられることによって、行政改革問題がいわば一つの当然の政治のテーマとして今後扱われることを祈念している次第でございます。  以上でございます。(拍手
  86. 高鳥修

    高鳥委員長 どうもありがとうございました。  次に、五十嵐参考人にお願いいたします。
  87. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 五十嵐です。  私は、今回の行政改革を次の三点から眺めてみたいと思っております。  一つは、国民が統治の客体ではなくて主体となるということです。第二番目は、柔軟な組織にするということです。三番目は、スリム化のためのスリム化とか、あるいは中央省庁の看板のかけかえだけに終わらせてはいけないということであります。これは、私が独自に言っているわけではありませんで、この行革基本法のもとになっております行政改革会議最終報告の中に書いている文章がそうでありますので、大方この三つ視点についてはコンセンサスの得られることではないかというふうに思っております。  この三つ観点から、今回の行政改革の二つのテーマ、一つ内閣機能の強化、もう一つ省庁編成について考えてみたいと思っております。  第一は、内閣機能の強化であります。  これに関しましては、内閣総理大臣の発議権、第六条、以下条文は省略いたしますけれども、国務大臣の数、あるいは内閣官房の国政に関する基本方針の企画立案、内閣府の創設、それから国の行政機関の幹部職員の任免等についてというのが内閣機能の強化ということで今回の法案に盛られたものであります。  ただ、これを細かく見ますと、この中には必ずしも法改正を必要としないで現行でもやれるものがあります。多分現行法でやれることの方が非常に重要であります。現行法でやれることの内容の第一番目が内閣総理大臣の発議権でありますし、あるいは内閣官房の国政に関する基本方針の作成ということであります。こちらの方がはるかに内閣機能の強化を考える上で重要な論点かと私は理解しております。  問題は、現行法でできるにかかわらずなぜ改めて法律に書くかということでありまして、これは、現行法で必ずしもうまくいかないからやはり書かざるを得ないということでありましょうが、なぜ現行法でもできるにかかわらずうまくいかないかということについての理解を正確にしておかないと、単なる屋上屋を重ねることになるのではないかというふうに私は考えるわけです。  これは、いわば日本の議院内閣制の根本の理解にかかわる問題でありまして、大きく言って二つの考え方が、ここで分岐点があるのだろうと理解しております。  一つは、御承知のとおり、先生方、国会議員の方々は国民を代表して国会に来られまして、その中から総理大臣を選出する、いわゆる議院内閣制をとっているわけですが、その場合の総理大臣とは何よりも国会の代表者であること、それから、それから選ばれる大臣はいわば国務大臣であること、したがって、内閣というのは完全な政治構造体、政治共同決定体といいますか、そういうものだろうというふうに私は理解しております。これはいわば国会に基礎を置いた議院内閣制だ、本来の趣旨は憲法上そう理解できるのではないかと思います。  しかし、現実には、まさにこれは行政改革を生み出す最大の原因かと思いますが、内閣総理大臣はいっか行政の長になり、国務大臣はいっか省庁の長になって、いわば事務次官会議等で決められた政策をそのまま追認するのが内閣機構だ、いわゆるそういう構造になっておる。こちらの方を仮に官僚内閣制と言います。つまり、国会内閣制にするか官僚内閣制にするかがまさにポイントでありまして、今回の改革はどうも官僚内閣制の方に傾斜したままで終わっている。したがって、今後も余り、内閣の機能強化ということの本当の意味、つまり国民を代表する政治家が政策をつくるということについて機能しないのではないかというのが私の感じであります。  これを解決するためには、何よりも、内閣総理大臣とそれをめぐるスタッフ、あるいは大臣とそれをめぐるスタッフに民間を含めた政治参加を考えて、そこの機能を強化して、いわば官僚を、政策決定をしたその政策決定に従って行政を運営するというふうに機構を変えることの方が先決ではないかというのが第一点であります。  第二点は、省庁編成であります。  この点について、言ってみれば、地方分権を先行するとかあるいは規制緩和を先行するとかということは当然の順序論でありまして、ここがやや一緒くたになって進んでいて、必ずしも行政改革が何をするのかよくわからないのはこれが一緒くたになっていることがあるからだと思います。それから、省庁の内部についても、財務省や総務省についてもいろいろ問題がありますが、私自身は公共事業というのを研究してまいりましたので、国土交通省問題点について絞ってお話をさせていただきたいと思います。  なお、ここできよう指摘することは、各省を考える上でも、いわば共通する論点ではないかというふうに理解していただければと思います。  御承知のとおり、国土交通省は、建設省、運輸省、国土庁、北海道開発庁をいわば合体する形で新しく設立されることになっております。御承知のとおり、これは公共事業官庁でありまして、公共事業の七割ないし八割を担当すると言われております。この予算、人員、局数、許認可数、あるいは公共事業関係する特殊法人あるいは公益法人というのを考えますと、世界に全く例のない巨大官庁であります。イギリス、ドイツ、フランス等々、行政について調べましたけれども、こういう巨大官庁は世界に全く存在しておりません。そもそも、なぜこのような巨大な官庁をこの際つくる必要があるのかということについて、絶えず疑問を持っておりました。  そこで、私自身は、こういうのはやはりよくないだろう、少なくとも二十一世紀の新社会資本を考える上で、こんな巨大官庁をつくるとだれもがコントロールできなくなるという心配がありましたので、できればこの国土交通省については再考願えないかということを考えまして、実は各党の代表者の方々をつい過日訪ねました。自民党加藤幹事長以下それぞれの党首にお会いしまして、率直に私ども意見を申し上げましたところ、少なくとも野党ははっきりこの巨大国土交通省については反対であるということを、自由党の方も民主党の方もその他の政党の人たちも言っておりました。  問題は与党であります。加藤幹事長は、これは問題があることはわかるけれども、後で申し上げます地方支分部局というところにいわば分散をするので、そんな恐れるほどの巨大官庁にならないのではないかということでありました。社民党及びさきがけの人たちも、行革全体としては賛成だけれども、やはりこれにはいろいろまだ問題があるのではないかということを言っておりました。つまり、明確にこれは絶対に正しい、これは絶対にやるべきだと言っているのは、およそ建設省と一部を除いてほとんど世の中にいないのではないかというふうに私は思っております。  さらに、行革会議のプロセスで、この問題については絶えず問題になっていたことを御承知おき願いたいと思います。何よりもこの巨大化を心配していたのは行革会議そのものでありまして、御承知のとおり、橋本総理大臣みずからが、巨大官庁はぐあいが悪いということで、中間報告のときには国土開発省と国土保全省に二分するということを決めていたわけであります。  中間報告から最終報告の段階でこれは逆転するわけですが、報道等によりますと、大蔵省や郵政三事業に対するのと同じようないろいろな政治的な動きがありまして一括されたということのようでありますが、なぜ二分割案が統合される必要があるかについて、ほとんど明快な理由は国民の前に示されていないと思います。橋本総理大臣の危惧が当たるのではないかと私は思っております。  さらに、これについてさまざまなアンケートや識者の談話等が発表されております。新聞の報道によりますと、国土交通省については大方の国民が反対しております。  さらに重要なことで幾つか指摘しておきたいと思いますけれども、例えば橋本さんの行政改革を支える文化人あるいは学者の会があります。この筆頭者が堺屋太一さんになっておりますが、この人も、国土を開発するなどというのはもう幻想に近いということとか時代錯誤だとか言っております。さらには、政府のかなり高官であります榊原さんも、公共事業に頼る時代はもう終わったんだというようなことを言っておりまして、多分大方の、党派を問わず、年齢を問わず、全国的に、この国土交通省については問題があると皆さん考えているのではないかということを第一点に申し上げたいということであります。  第二点は、唯一国土交通省巨大化に対する反論として言われているのが、地方支分部局に公共事業を分担させるということであります。つまり、国がやるべきことと自治体がやるべきことを分けた上で、さらに国のやるべきことを地方支分部局に分担させるというやり方でありますが、一体この地方支分部局は何かということについても必ずしも明瞭になっていません。今のところ、これは国家組織そのものでありまして、必ずしも国の仕事を減らすわけではないということが一つであります。  二番目は、これはやはり大きな矛盾をはらんでいると思うのですね。国が余り大きな事業をやらないということのためには、地方支分部局について独立した権限を与えなければいけない。予算をつくり、あるいは箇所づけをするということになると思いますが、地方支分部局に対してチェックする機能は一体どこにあるのかということが明瞭でありません。国でありますと国会がありますし、自治体でありますと議会があるわけですけれども、この地方支分部局については、これが暴走したときにとめる方法は全くないということであります。仮に独立を減ずる方向でいきますと国家と全く変わりがないということで、唯一の切り札とした地方支分部局案についてもほとんど理由がないのではないかと私は思います。  こういうふうに、内閣機能省庁の再編成、両方とも私は非常に大きな疑問を感じますが、もっと大きい疑問は、国会の中に、国家のいわば骨格をなす行政改革について内閣からたった一つの案しか与えられていなくて、これがいいか悪いかしか答えようがないというのが最大の不幸ではないか。ぜひ野党の先生方もこれにかわる対案を国民の前に示していただいて、そのどちらがいいか、優劣を国民が決めていくというスタイルにしてほしいというのが私の願いであります。  終わります。
  88. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、加藤参考人にお願いいたします。
  89. 加藤秀樹

    ○加藤参考人 私は、一昨年まで二十年余り国家公務員をしておりました。その経験から一点だけお話をいたしたいと思います。それは、裁量権限官僚あるいは官庁の裁量権限ということと、それから設置法省庁設置法についてであります。これを簡単にまとめたものを資料としてお配りさせていただきました。時折それを引用いたしたいと思います。  最近、裁量権限ということについては、公務員の汚職との関係でかなり新聞などでも話題になっていると思います。ただ、これはそれだけではなくて、今から日本が経済なり社会の体質を強めていく、その上で必要な規制緩和あるいは地方分権を進めていく上でも大いに障害になり得るもので、この省庁の再編あるいは行革において見直していくことが不可欠であると考えております。  設置法自体は、ここで審議していただいております基本法の次のステップになるわけですが、私は、今の段階から設置法について議論していただく必要があると考えております。  権限といいますのは、言うまでもないことですけれども、本来は個々の法律によって行使されるものであります。例えば、大蔵省は銀行法第何条に基づいて銀行に対してかくかくしかじか、例えば許可とか報告を求めるとか、そういうことをする権限を有する、これは法治国家であれば世界共通であります。ただ、日本設置法というのは、設置法の中に、役所の仕事の分担、いわゆる所掌事務だけではなくて、それをほとんどすべてカバーする形で非常に広い権限を与えております。  これを絵にしましたのがその資料の二枚目にございます矢印がいっぱい出たものですが、例えば大蔵省に例をとりますと、大蔵省設置法の第五条に、金融についてですが、「金融機関の融資及び金利を規制すること。」といったような非常に包括的な権限が与えられております。また、通産省ですと、やはり設置法第五条に、「輸出及び輸入を制限し、又は禁止すること。」といった非常に広範な権限が与えられております。これを絵にすると、本来法治国家で普通はこうだと言われておりますのが右の形でして、何々法に基づいてどういう行政が行われる。ところが、日本の場合には現在は左側の絵でして、それ全体をすべて包み込む形で設置法が包括的な権限を与えている。ここに官庁の非常に広範な裁量権限の一番基本の根っこがあると私は考えております。  それで、こういう仕組みについては、私が知る限りにおきまして、欧米を中心にして海外には例を見ません。では、なぜ日本にこういうかなり特殊なシステムができたのかといいますと、これは明治に定められたいわゆる官制というものを現在の設置法がかなりの程度引き継いだ形で戦後定められたからと言えるのだと思います。  この官制といいますのは、内閣制度が明治十八年につくられまして、そのとき以来のものですけれども、実は、帝国議会が置かれて日本法律に基づいて行政を行うようになったのが、帝国議会が置かれましたのが明治二十三年ですから、この官制ができましたのはそれより五年さかのぼるわけです。ですから、ここに、今法治国家と言われる国で必ずしも当たり前の仕組みでない仕組みが存在しているということの源があるのではないかと私は考えております。  その結果、どういうことになるかといいますと、日本においては、日本人の、国民の活動のすべてがどこかの官庁で所掌、所管されて、どこかの官庁がそれに関して権限を行使できる仕組みになっている。これを絵にいたしましたのがこの三枚目の楕円形の絵でして、本来、例えばアメリカであってもヨーロッパであっても、最近は東南アジアの国であっても、右のような絵ではないのか。官庁が行使する行政権限、これをすべて足し合わせても、国民の活動の何割かをカバーするというのが本来の形なのではないか。ところが日本の場合には、戦前の官制、すなわち官僚が天皇の官吏として統治権を持って行政を行っていたというときの名残があるものですから、役所の仕事、官庁の仕事をすべて足し合わせると日本が全部入ってしまう、どこかの役所の担当になってしまう、そういう仕組みになっている、こう言えるのではないかと思います。  そこで、これは私がこういうふうにあるべきではないかという一つの御提案なわけですけれども、この設置法における権限規定というのを取ってしまう、削除してしまう。そういうことによって、行政指導あるいは裁量権限というものが一掃されるということにはならないにしても、少なくとも一番根っこにある規定がとれる、そこで初めて国際的にほかの主要国に比べられる仕組みになるのではないか、こんなふうに思っております。  このことは、今回の基本法の第四十四条「国の規制及び補助金等の見直し」の中で、事前の規制から民間の自由な意思に基づく活動を重視したものに転換する必要があること、規制については必要最小限のものとすること、あるいは国際的な整合性の確保、こういうことがうたわれていることからしても、まさにこの基本法の趣旨に沿ったものではないかと思います。  最後に、そのことの効果ですけれども、これによってまず省庁権限なり根拠というものがはっきりする。その非常に広範な裁量権限というものが一番根っこのところでなくなるわけです。これは、私の国家公務員としての実感からしても、設置法で広範な裁量権限を与えられている、それがなくなるということは、やはり一つ背筋がぴしっとするような気持ちになると思われます。また同時に、民間サイドにおいても、とりあえずすべて役所にまずは相談しようといういわゆるもたれ合いの精神というのが、一番根っこのところで、これは見直す必要がある、そういうふうになるという意味で、精神的な意味も含めて非常に大きい効果を持つと思われます。  また、これは同時に、内閣においても、今は官庁の権限というものが各法律に書いてあるもの以外に非常に広範に与えられているものですから、一体どこからどこまでが各省庁権限かというのは実はよくわかっていない。したがって、内閣が各官庁をコントロールするという観点からも非常に大きい効果を持つと思われます。その結果として、規制緩和あるいは地方分権の効果が上がる、また行政指導のような根拠のあいまいな行政の介入が防止される、そういう効果を持つものと思われます。(拍手
  90. 高鳥修

    高鳥委員長 どうもありがとうございました。  次に、跡田参考人にお願いいたします。
  91. 跡田直澄

    ○跡田参考人 大阪大学の跡田でございます。  今お三名の方がお話しになられまして、聞いておりましたところでは、政治ないしは法律の側面からのお話が多かったかと思います。私自身は、経済学の中でも特に財政学の方を専門としておりますので、話が大分変わりまして、むしろ経済学者的な観点から今回の中央省庁等改革基本法案について考えているところを申し上げさせていただきたいと思います。  経済学者というのは、大体、最初に結論を申しまして、後で云々と理由を申し上げますので、最初に私が考えております四つの結論を申し上げさせていただきます。  まず第一点といたしましては、今回の法案提出に際しまして、内容を読ませていただきましたところ、法案及び行革会議最終報告、両方を読ませていただいて考えますところでは、基本的に現状に対しての認識ないしは分析が十分にできていたのかどうかというところが少し疑問に思われる。そのために、発生している問題というものに対して根本的な原因がきちんと把握されていない。経済学の中では一番最初の段階で行うべきテーマなわけでございますけれども、この部分がどうもはっきりとしない、できていないのではないかという点がまず第一の私の感想と申しますか、結論でございます。  そして第二番目に、読ませていただきましたところ、行革会議最終報告におきましても、法案の中の書かれておりますところでも、基本理念はかなり格調が高く、私自身も一〇〇%同意してもいいと思われるほどの内容が書かれております。ところが、そのすばらしい基本理念にもかかわりませず、原因の部分、本当の原因というものをきちんととらえていなかったがために、法案にした段階で中身がかなり薄れてしまった。きつい言葉を申し上げるならば、お粗末というとつくった方に申しわけないですけれども、かなり厳しい評価しかできないというふうに申し上げられるのではないかと思います。  そして第三番目、この法案自身の中にも書かれておりますし、行革会議最終報告の中にも書かれておりますが、二十一世紀行政システムを標榜しているということでございますが、そこまでおっしゃっているにもかかわらず、基本的な議論の中でプロセスが少しおかしいのではないか。つまり、中央省庁の再編だけがここで議論されてしまっている。もちろん内閣機能の強化ということが加わっておりますけれども、基本的に中央省庁の再編だけで議論をしてしまうのでしょうか。  まずやるべきことというのは、二十一世紀中央政府、国というレベルのものが一体何をしていくのかということ、どこまでに仕事を限定するのかということが明確には議論されていないということです。それをまず明らかにして、地方にどれだけの仕事と財源を回すのか、さらには民間にどれだけのことを任せるかという議論をあわせてしなければ、単なる中央省庁の統廃合、数合わせと言われるような表現に陥ってしまうのではないかと思います。現実に、今現在のこの法案だけで見るならばそう言わざるを得ない。  行政改革というもの自体は、地方分権推進委員会も含まれております。そこの成案がおくれ過ぎているということも原因かと思いますけれども、本来ならばそういった側面をすべてパッケージにして議論をしなければ、二十一世紀行政システムというほどのものができ上がるとは思えないということでございます。  そして最後に、これは皆様方に文句を言いたいという、今回の法案とは少し違うかもしれませんが、行政改革する、つまり内閣のもとにある行政府というものを改革していくということでございます。その中で、内閣機能を高めていくということ、これは私自身も大いに賛成でございます。方法論にはまだ問題がございますけれども、基本的な方向としては必要なことではないかと思います。ところが、行政だけを強めて立法府の方を何にも改革していないといいますか、これも行政改革と同時に議論をしなければいけないはずのものでございます。つまり、政策立案機能というものが現在の立法府に非常に、これも劣っているという言葉を使わせていただくと非常に申しわけないですけれども、そう言わざるを得ない。  この部分に関しましてもあわせて改革をしなければ、行政だけがまた非常に効率的で、機動的で、権限を持ってしまいます。これでは国権の最高機関たる国会が真に機能できるのかどうかということが疑わしいという点で、この第四番目に申し上げた点、立法府の改革ということもあわせて行政改革の中で議論していかないと、将来の日本、二十一世紀日本という国を運営していくのに非常に危惧を感じられるということ。この四点が私の申し上げたい結論でございます。  以下、残りました時間で、なぜこういうふうなことを申し上げたかという理由を述べさせていただきたいと思います。  まず、第一点目に関係することでございますけれども制度改革していくというときに、やはりどうしても最初に処理しなければいけないのは、現状の中にどんな問題があるのかということをきちんと把握することでございます。どこに問題があるかを明らかにいたしまして、その原因を究明するということ、こういった現状認識が一番必要なわけでございます。  行政改革会議最終報告というものは、ある面では踏み込んだ議論を展開されております。例えば、公共性の空間は決して官の独占物ではない、公益、公共というようなものをすべて中央政府といいますか、官、私自身も文部教官でございますけれども、官が支配する、独占的に提供するというようなものではないということを明確に述べていらっしゃいますし、さらに価値選択のない理念なき配分、これでは内外の環境に即応した政策展開にもはや適応できないとまで言い切っていらっしゃいます。この二つの現状認識というのは、私自身はある面では感服すると言っても言い過ぎではないと思います。大いに賛成できる点でございます。  ところが、そこまで言っていらっしゃるにもかかわらず、もう一つ踏み込んだ議論を展開されていないというふうに私は思います。  と申しますのは、現状の強力な中央集権的な行政システムというもの、これは戦後の極端に平等性を志向すると申しますか、平等な状態を望んだ結果として、ないしは望むと同時に求めてきた福祉国家建設、こういう基本政策、これ自身を達成するためにつくられたものと申し上げてもいいかもしれません。もちろん、明治期から中央集権的な国家をつくってまいりましたが、一応戦後という時点で考えますならば、そこの部分、福祉国家建設が悪いというわけではなく、あくまでもかなり平等志向の基本政策を持ち続けたということが理念なき配分につながっていると思います。  その辺の失敗ということ、ないしはそこが問題であるということを本来ならきちんと書かなければいけなかったのではないか。現に、そこに書かれているわけですね。価値選択のない理念なき配分という言葉までは使われているのですが、もう一歩踏み込んだ、基本政策が二十世紀の初期ないしは後半の前段階においては必要であったかもしれませんが、後半そして二十一世紀においてこれが求められているかどうかに今疑問が生じているということを明確に認識する必要があった。そして、それを書き込めば、行政改革の基本的な方向がどこに行くかということはおのずと明らかになってくるはずでございます。ところが、そこの部分が明確にされなかったということが今回の議論の一つ大きなマイナス点であり、足りなかったところではないかと思います。  そして、たとえ理念が全員共通化いたしましても、今度は政策の手段、改革の方法というものはいろいろな方法が出てくるはずでございます。それにつきましては、今度は、本来、今政府が提案した案のほかに、各党、ないしは野党という単位でも結構ですけれども、そういう対案が示されて、そこで初めて議論ができる、その政策の効果をいろいろ経済学的にも評価したり、政治学、社会学的に評価をして、いろいろ議論をした中で最終的な改革を遂行していくということが必要ではないかと考えております。こういうためにも、国会機能というものもぜひとも高める改革を追加的に議論していただけたらというのが最後の希望でございます。  以上でございます。(拍手
  92. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、浜川参考人にお願いいたします。
  93. 浜川清

    ○浜川参考人 浜川でございます。  行政法をやっておりますので、その見地、立場から二、三お話を申し上げます。  まず第一に、今回の法案の性格について申し上げますが、幾つか疑問点がございます。  例えば、組織の改編を提案するのであれば具体的に個別法で提案することは十分可能であるのに、なぜ三年ないし五年にわたって、個別法、いわゆる設置法の形になりますが、設置法で定めるべきことを法律という形で制定しなければいけないのかという点が、大変わかりにくくあります。国家行政組織法という法律がありますので、それとの関係も問題になるわけでございまして、今回の法案、大変わかりにくい。特に、一府十省について定めておりますが、三年ないし五年で本当に行政需要が変わらないのかどうか。法律で固定化してしまう、これは、法案にも書いておりますが、本来行政組織は柔軟でなければいけないという点からしまして、いささか問題があるというふうに思います。  それから、政治的任用の問題等で、国家公務員法の改正あるいは国家行政組織法の改正等が必要であれば、それはそれとして具体的に法案をつくって提案すべきでありまして、こういう方向で法律をつくろうという法律のつくり方は、私どもにとっては大変わかりにくい。方針法というのですか、宣言法といいますか、新しいタイプの法律が出てきたなというふうな感じがしているわけです。財政改革法もやはり同じような問題があったのではないかと思いますので、柔軟に対応すべきときに、一体どういう法律をつくってやるのか、もう少しお考えいただきたいということです。  次に、内容についてお話しいたします。  内閣の機能強化が今回の法案の非常に大きな目玉になっておりますが、提案されたこと自体は、内閣官房を強化するということ、それから内閣府を設置するということを除きまして、それほど目立ったものではありません。  それぞれについて少し意見を申します。  内閣を政策立案機能とかそういった点で強化すべきことは異論がありませんが、内閣総理大臣の機能を強化しよう、これが行政改革会議最終報告立場でございまして、条文には、六条と、それから非常にあいまいですが十四条という形でそれがあらわれております。しかし、各国の内閣制度を見ましても、行政最高機関はあくまでも合議体である内閣でございまして、その中の総理大臣、首相に特に強い権限を与える、まあある程度強い権限を与えますが、ほかの大臣に対して指揮監督できる、上級庁である、そういうふうな位置づけをしているところはないようでございます。  例えば、フランス憲法二十一条では、首相は政府の活動を指導するという表現をしておりますけれども、フランスの最高行政裁判所の判例では、指導といっても指揮監督ではない、上級庁ではないというふうに言っているわけでございまして、いささかこの点心配がある。憲法の六十五条で内閣をもって最高機関としているわけですが、それに触れないかどうか。条文そのものは余りはっきりしていないのですが、最終報告の考え方には、私は大変疑問があるということでございます。  それから、内閣官房を強化される、政治的機能を発揮させるという点は、これまで、特に第三次行革審の最終答申から言われてきたことでございます。世界的に見て、日本行政部の中の政治的な部門、要するに政治主導の政策立案部門が大変弱いということはそのとおりでございまして、これに何らかの手だてを講ずることは、私もやぶさかではありません。そのために、政治的な任用、いわゆる大臣、首相の裁量によって人事を行い、その任期、政権が終わったと同時にやめる、こういうシステムを導入することは、ある程度必然性、合理性があろうかと思うのです。  しかし、その場合、当然のことですが、国の行政システムとして特定の政党を基盤にする政権の政策能力を補強するわけですから、それが政治的な党派のためになってはいけないことは言うまでもありません。どうするかといえば、人数を非常に限定して、小さな規模をどういうふうにして維持するかということが当然に問題になるわけでございまして、既に政治的任用を採用している国では、長らくこの点が課題になってきております。今回の法案では柔軟に定数管理をするということで、むしろその点では、国際的な水準から見て、まあ制度がまだないわけですからやむを得ないかもしれませんが、大変危険な感じがするわけでございます。  内閣官房は、そういう意味で、ある程度の必要性は認めますが、非政治部門との区別を明確にし、政治的な任用に基づくスタッフについては小規模なものにいたしまして、党派的な利益のために行政が使われることのないように、そういう工夫が必要かと思います。  それから、省庁再編については、先ほど申しましたとおり、なぜ十省でなければいけないかということについてはここでは申し上げません。それぞれ、先ほど五十嵐先生も御指摘になられたとおり、多くの問題があります。それから、任務規定が相変わらず残っている点については、加藤先生も、我が国特有の設置法における任務規定の乱用といいますか、問題点指摘されまして、私も全く同意見でございます。  一つだけ申し上げますと、各省庁の内部部局と外局に関しまして、政策立案企画機能政策実施機能との区別をしておりまして、内部部局を政策立案企画機能だ、それを専らやるんだというふうに言っている点は、私は大変わかりにくく思うわけでございます。  政策というものが、もし法をつくる、予算を編成するということであれば、それは国会のお仕事でございまして、大臣がそれを用意する、それはもちろん構いません。あるいは、今回の提案にはございませんが、内閣官房には政治的任用がございますので、ここを通じてそういう政策立案をする、首相をバックアップする、これはいいでしょう。  しかし、各省には政治的任用のスタッフはいないわけでありまして、今回提案には入っていないわけでありまして、それが政策立案企画機能をするというのは大変わかりにくい。それは本来国会の仕事であって、あるいは政治家たる大臣の仕事であって、内部部局の仕事ではない、もちろん補助するのは当然でございますけれども。その点少し、法案自体は、十六条は大変抽象的なものですが、解釈に疑義を生じさせ、問題がある。  もともと、大臣といいましても、各省大臣は政治的な、あるいは政策立案機能だけを行うものではございません。各省大臣は、そういう機能をもちろん持ちますが、反面、適法に行政を進める、皆様方が国会で制定された法律や予算に従って適正にそれを執行する、実施機能を持っているわけでございまして、内部部局にそうした実施機能を適切に補佐させるということが、今回の法案では少し抜け落ちているのではないかと思います。  時間がございませんので、あと一言だけ申しますが、独立行政法人の問題に関しましては、なぜ国の外に試験研究機関や、今回提案にはそこまで明らかではありませんが、こういうものを出さなければいけないのかについては大変わかりにくい。特殊法人と同じ轍を踏まないかどうか。行政部内に置きながら行政を改めるということ、それをもう少しお考えになってはどうか、慎重であるべきではなかろうかというふうに思います。  以上でございます。(拍手
  94. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  次に、中北参考人にお願いいたします。
  95. 中北徹

    ○中北参考人 東洋大学の中北でございます。よろしくお願いいたします。  私は、この中央省庁再編にかかわる法律案、これを拝読いたしまして感じましたことを、特に金融市場と国家とのかかわりに関連いたしまして、大きく三点申し上げたいというふうに思います。  第一点目は、今回の行政改革、その理念についての議論がもっとより鮮明に取り上げられるべきではなかったかということであります。すなわち、世界標準というものを一つ目標に掲げ、それにさや寄せしていくという考え方が、基本的にまだまだ希薄であるというふうに私は思います。  戦後五十年、復興開発が行われ、そして、今や世界的な所得水準まで達したわけであります。同時に、この行政改革、考えますと、明治以来の百年守ってきた軸を大きく変えていくという意味があったというふうに私は考えます。すなわち、キャッチアップの終えん、それにかわる一つの大きい行政ないし国家の枠組みというものを提示し、それを大所高所から明快に、しかも具体的に議論していくということが、私は最も重要な点ではなかったかというふうに思うわけであります。  なるほど、高度成長、そして先進国へのキャッチアップというものは、今やほぼ完全に近い形で、所得水準あるいは金融資産の蓄積という観点から見ますと達成されたかに思われるというふうに私は思います。しかし、世界の市場原理、もっと言いますと、グローバリゼーションの進行というものは、この日本の国内における関係者の取り組みあるいは意識の改革をさらにしのぐようなスピードで、今全世界的に進行しているわけであります。そのような流れにいわば追いつくような形で、この行政の仕組みあるいは機能というものを根本的に見直していくことが重要ではなかったかというふうに思うわけであります。つまり、市場原理重視、そして消費者重視の形に大きく軸を変えていくということが、私は最大の行革の役割ではなかったかというふうに思うわけであります。  しかしながら、現実の私の見る行政改革というのは、余りに国内の利害調整、利益と利益の考量というものが重視され、基本的な軸が終始ぼやけていて、時間の経過とともに大きく後退していったプロセスではなかったかというふうに思います。  殊に経済、なかんずく金融行政改革に関連して申し上げますと、昨年の十一月、十二月、あの金融危機以来、日本におきましては、危機管理と称して実態は護送船団へますます後退していく、そしてその状況が、四月にビッグバンがスタートしたと言われる中においても、この構図は余り変わっていないのではないかというふうに私は危惧しております。そのような意味におきまして、この行政改革、特に経済に関連した改革について申し上げますと、やはり大蔵省の改革、そして郵便貯金に代表されます財政投融資の改革というものがもっともっと強固に、そしてもっとスピーディーに行われるべきであったというふうに思います。  現在、景気が大きく後退していることもあり、関係者の間では、いかにして目前の景気回復を達成するかということが、恐らく行革以上の、今頭の痛い問題になっているというふうに推察いたしますが、私は、最大の景気対策というのは、やはりマーケットに対して国家が、政治が行革の意思を明瞭にシグナルとして送ることであるというふうに思います。  幾ら財政支出を積もうと、十兆円、二十兆円ということで総額を積み上げようとも、マーケットは基本的にセンチメントを変えていないというふうに私は思っております。今、市場関係者は、日本という国を見るに当たって、一番近く、つまり金融市場、金融行政とのかかわり合いという観点からどうしても日本というのを見がちであります。そして、世界の市場は今や一続きになっておりますから、そのような場合において、日本の国内の利害にのみ目線を置いた運営、枠組みの維持ということに執着しておりますと、日本の経済、金融というものは、一向に活力がよみがえってこないのではないかというふうに私は思うわけであります。  そのような意味におきまして、特に大蔵省の改革金融と財政の分離、そして郵便貯金に関する将来の方向性をもっともっと踏み込んだ形で、関係者は明瞭に市場に、国民に対して選択肢を提示すべきであったというふうに私は思っております。そのような意味において、大変残念であります。つまり、あの金融改革を考えてみますと、この行政改革の枠組みでは、ほとんど目新しい議論はなかったというふうに、私は残念ながら思います。  住専問題があれほど大騒ぎになり、そこで大慌てして改革チームが設定され、渋々金融監督庁を設置するという流れに今回なったわけでありますが、この金融監督庁に関する基本的なあり方、構造、機能、そして人事体系等に関する具体的な議論というのはまだまだ不十分で、突っ込んだ論議が行われていないというふうに思います。しかし、金融監督庁はもう一カ月を待つことなく創設され、具体的に金融機関に対する検査監督を始めなければならない。しかし、目下においての状況は何かといいますと、金融機関の破綻に加え、金融不祥事が相次いでいる、さらに財政の破綻もあらわになっているというのが現状ではないかというふうに思うわけであります。  二点目でありますが、このような中において、高齢化社会が進行しています。社会保障など、担い手である国家の財政が事実上破綻を来しているということは、老後の生活保障がままならなくなってきているということを意味しております。国からの手厚い保護と福祉というものが期待できなくなってきたということは、国民一人一人がみずからの生計、老後の生活自分で面倒を見なければならないという状況であり、いや応なく、自己責任の原則に向かっていかざるを得ないという流れであるわけであります。  そして、このような中でビッグバンがスタートする。ビッグバンをスタートさせるということはどういうことかと言えば、それは金融という手段を通じて老後の生活設計の突破口を見出していかざるを得ない。そのような意味において、破綻した財政にかわって、金融改革により公正で競争的なマーケットをつくっていくという流れの中で、老後の生活設計、個人の金融資産の運用に向けた大きな潜在的なニーズをすくい上げていく、満たしていくという流れになってくるわけであるというふうに思うわけであります。  したがいまして、私は、このマーケットの機能、いわゆる一千二百兆円の金融資産というものが有効に、効率的に活用される基盤、なかんずく市場インフラの整備に早急に取り組んでいただきたいというふうに思うわけであります。  この金融監督庁の設置というのは、最初の一歩、一里塚にすぎません。やはり、この先、金融監督庁を質的にも量的にも充実させることが急務であります。つまり、金融と財政をまず完全分離させるということが、これは最も重要であるというふうに思います。金融と財政は根本的に性格を異にしております。財政は強制的に所得、お金を移転することであります。金融というのは、マーケットを通して、貸借関係を通してやりとりをするものであります。  ということでありまして、やはりこの金融監督庁を、すぐれた検査官が一千人体制で早急に整備されるという声もありますが、私はそれを強く支持するものであります。そして質的にも、あのアメリカやイギリスの金融行政の質的な強化にかけている具体的な努力、内容の中身を、海外から専門家を招聘し、そして必要に応じて日本においても金融検査官の研修機関を官民挙げて創設するぐらいの気構えが私は最も必要であるというふうに思います。  言いかえますと、三点目、最後になりますが、これからは日本が学ぶ番であるというふうに思います。八〇年代は、欧米に対して製造業の分野で日本のノウハウは随分輸出されました。これからは、日本が競争力において劣っている分野、金融業を初めとする国内サービス産業において、率直に、海外からの関係者を呼び、ノウハウを学ぶべきときが今来ているというふうに思います。金融行政改革の継続、そして加速を強く望んでおります。(拍手
  96. 高鳥修

    高鳥委員長 ありがとうございました。  以上で参考人意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  97. 高鳥修

    高鳥委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。倉成正和君。
  98. 倉成正和

    ○倉成委員 自由民主党の倉成正和です。  本日は、参考人の先生方、それぞれのお立場から貴重な御意見をありがとうございました。ただいま審議中の中央省庁等改革基本法案は、いわゆるプログラム法案でございまして、行政改革を進めていく上でいわば入り口の法案でございまして、今後、各省庁機能権限の中身について具体的な検討を進める上でも早期の成立が望まれると考えます。この立場から、幾つかの点に絞って参考人の先生方の御意見を賜りたいと存じます。  第一番目として、国の行政組織の再編成におきまして、この場合は省庁の名称の問題も含めまして、各省庁設置法及び業法その他の関連法について、全面的な見直しがこれから必要になってくると思います。私は、ここに今回のこの法案における最大の意義、今回の行政改革の大きな意義があると考えます。  当然ながら、単にA省とB省の設置法を合体させて、それをAB省の設置法であるとするのはできないわけでありまして、この点から考えますと、最初の基本認識行政改革における基本認識であります戦後五十年続いてきた行政システムについて抜本的な改革が必要である、そういう基本認識からスタートしたわけでございますので、今後のさらなる改革についても余地を残す、そういうものであってしかるべきだと考えます。こういう意味での今後の修正を担保した上で、ある程度一定の期間を設けまして議論を集約する必要があると思います。  そういう意味で、この観点から参考人の先生方の御意見を伺いたいと思います。手短に、佐々木先生の方からお答えいただければと思います。
  99. 佐々木毅

    佐々木参考人 お答えいたします。  したがいまして、私が大変注目しているのは、推進本部というものがどのような方々によって構成され、どのような権限と、それからインフラ、それを支える集団、それがどのような形で形成されていくかということが非常に大きなかぎだろうと思います。そういう中において初めてこの問題の重要性あるいはこの法案の重要性というものが明らかになることを期待して、したがって、その意味でも見守っていきたいというふうに思っております。
  100. 倉成正和

    ○倉成委員 順次ほかの参考人の先生方からもお話しいただければと思います。
  101. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 おっしゃるとおりでありまして、行政改革というのは量の改革ではなくて質の改革だと、私も同じように考えております。  問題は、その質の改革をどなたがおやりになるか、どういう方法でおやりになるかということだと思いますね。行政改革会議国民が非常に学んだことがありまして、せっかく行政改革会議、あれがいいかどうか問題ありますけれども、仮に了としまして、中間報告を出しましても、結局は、大蔵省と郵政省の事案に見られたように旧来型のスタイルがありまして、それが最終報告になるとひっくり返されました。それで、設置法を含む、最大限をとりますと千七百本のうち恐らく千本ぐらいが改革対象というふうに言われているわけですけれども、それをどなたがどういう方法でやるかということが一番重要だろうと思うのです。  だから、先ほど佐々木参考人もおっしゃっていました、その委員会をどうやってつくるかということですけれども、これこそ実は国会の方がイニシアチブをとるべきではないかというふうに私は思っていまして、行政改革会議以来、官僚にすべてを任してしまう、行革会議は若干違いましたけれども官僚が結局つくるという方法論を変えない限り、質的な改革の担保ができないということだろうと私は思います。  もう一つは、これに関連する法案というのは実はかなり出されておりまして、それがみんな未採択になっているわけです。例えば、今回の国土交通省関係しまして、政策透明化とか決定手続をオープンにすることなどがいろいろ行革法案に入っております。これと同じ趣旨のものを、実は公共事業コントロール法案という形で前国会に出させていただいたのですけれども、これについては審議もしないで廃案にいたしました。趣旨は同じですから、こういうことを、先行的に法案を可決してしまえば、行革法で質の変革をやろうとしているところの幾分かはかなり先行的にできると思いますが、こういうことについて国会の方で全然審議もしないということ自体の方を私は非常に疑問に思っているということであります。
  102. 加藤秀樹

    ○加藤参考人 若干先ほどの繰り返しになりますけれども、この基本法の趣旨を踏まえて省庁の再編を具体的に進めていく際には、設置法を改める、この作業が非常に重要になってまいります。  その上で、設置法は、先ほど申しましたように百二十年余り前につくられた制度が、そのままその残滓が残っている、こういう制度であります。したがって、この設置法というのは、しかも一つあるいは幾つかの官庁の設置法だけ変えるというわけにはまいりません。一度に全部変えるチャンスというのはそうめったにあるものではない。戦後初めてですから、次は五十年先かもわからない。そういう意味で、これは千載一遇のチャンスであるのだと思います。これを変えることによって、先ほどほかの参考人の方からもお話のありました、まさにグローバルスタンダードに合う、古い言い方をいたしますと法治国家に見合った仕組みをつくり上げるチャンスであると思いますし、また、問題がある場合には国会法律をつくる、制度をつくる、その上で行政はその制度に基づいて実行される、ごく当たり前ではあるのですけれども、必ずしも今日本では十分でないそういう仕組みをつくっていく上で大事なポイントだと思います。  また、その上で、先ほど佐々木先生からもお話がありましたけれども、推進本部がそういうことをどういうふうに見ていくか、リードしていくかというのがやはり重要なかぎになってくると思います。
  103. 跡田直澄

    ○跡田参考人 お答えいたします。  今加藤さんもおっしゃられましたが、百二十年前というものを引きずっている、そして現在のは五十年引きずってまいりました。では、今回の改革で一連の改革というものがあり得るのかどうか。  そもそも制度改革するということは、基本的に我々の生活の方向を決めるものでございます。その制度を、一連の改革があるから今はとりあえずこれでいいなどといういいかげんな議論をするということが、国会の場であるとは私は思いも寄らなかったのです。政策を議論しているのではないということ、制度を議論しているということをお考えいただきたいということです。  以上でございます。
  104. 浜川清

    ○浜川参考人 改革の手順というか、進め方に関する御意見かと思うのですが、今回の改革基本法を見た場合に、大変中身がいろいろなレベルのものが入っていると思うのです。  例えば、内閣機能を強化するという場合は、内閣法の問題で、非常に内閣固有の問題です。それから、政治的な任用をどうするかといった場合に、現在は内閣官房と内閣府しか想定されておりませんが、国家公務員法の改正にもつながりますし、それからもっと大きなことを言いますと、いわゆる世間で言うキャリア職員の人事の運営全体に大きな影響を及ぼすことになろうかと思うのです。それから、省庁編成になりますと、郵政を国から出すとか出さないとか、あるいは国土を、運輸と建設をどうするかとか、これはまた全然別の、性質の違った問題ではないかというふうに思うのです。  その点で、委員のお言葉ですが、やはり慎重に、今議論すべき問題。その場合も、いわば超党派的に、現在は三党で与党が構成されておりますが、野党がなる場合にもやはり同じ組織編成の仕方をしたいというふうに、やはりできるだけ一致してやるべきところ、それは内閣法とか政治的任用とか言ったのは、そういうものじゃないだろうかと思うのです。これは、私は、政府の中の推進本部というよりは、十分公平に意見を聞くような形で慎重に、基本法じゃなくて現在具体的な提案をされる、それがなければ、それまで十分審議をされる方がいいのじゃないかと思うのですね。  省庁編成は、これは現在の政権のいわば政策というのですか、公約そのものですから、私は、柔軟にお考えになって、それができないところに日本官僚制度というか問題があるなとそれは思っていますけれども、そういう関係じゃないかなと思ったりもしているわけです。
  105. 中北徹

    ○中北参考人 私は、大蔵改革をかなりそばで見ていましたので、実務的な点で簡単にお話しします。  プログラム法案というのは、柔軟性があると同時に、大変危険だ。と申しますのは、具体的なディテール、細かい言葉、文言ですね、これがやはり最後は専門家、つまり黒子によって、いろいろ根回しをして落とすところに落ちてしまう、従来型の形になってしまう危険性が大変強いと思います。言いかえますと、国会は、やはり自律性を持っていただいて、つまり予算も情報も、それから立法能力も、みずからの力でやり抜いていただきたいというふうに思います。  もう一点は、メディアの方もいらっしゃいますが、行政のところでいろいろ改革の話が出ると、記者クラブ制もあってわっと情報が出るのですが、どうも国会の方へ出ると、その先どういうふうに修正されていって、国民の考え方が反映されていったという形跡が具体的に報道されていない、少ないというふうに思います。  それからこの傍聴の席も、もう少し自由に多くの方が、主婦の方もお年寄りも見に来て、それで、いろいろもっとフィードバックできるような形にしていただいて、国民全体の力がわき上がってくるような行革をぜひしていただきたいというふうに思います。
  106. 倉成正和

    ○倉成委員 今、各参考人の先生方から御意見を一いただきましたけれども、先ほど佐々木先生から、これは終点ではなくてベースキャンプとして大いに評価をするというお話がございましたけれども、やはりいつまでもこの入り口のところでぐるぐる回って何年も何年も過ぎていくということでは、いつまでたっても行政改革は進まないわけでございまして、入り口のところはある程度の段階で通過をして、そして本質的な中身の議論をさらに進めていく。これは、入り口のこの基本法案が通ったらあとの法案はすべて、あとの個別については全部官僚に任せる、そういうことでは決してないわけで、国会審議をしていくわけですので、その辺をぜひ御理解をいただきたいと思います。  次に、私なりに考えまして、二番目の問題として、本法案で国家公務員制度改革について、第四十八条でございますけれども、この辺について御意見を伺いたいと思います。  この法案の中で、四十八条で、人材の一括管理のための仕組みの導入、多様な人材の確保及び能力、実績等に応じた処遇の徹底並びに退職管理適正化について、引き続き検討を行うとしてあります。この辺について私なりの考えを述べまして、参考人の先生方の御意見を伺いたいと存じます。  まず、一括管理の仕組みについては、ぜひ導入すべきであると考えます。理想的には、各省庁間にあって自由に異動できるということが実現できればと考えます。今後、規制緩和の進行とか、あるいは業態の変更、業種その他の変更によって、これから十年、二十年の間にいろいろな変化があると思いますけれども、その際に、人員を削減すべき部門が出てきたり、また増強すべき部門が出てきたりというのは当然考えられますので、省庁内の人事異動だけでなくて、省庁間の人事異動ができれば人材の有効活用ができるというふうに考えております。  さらに、現在天下りの問題がいろいろと議論をされております。これはきょう、参考人の先生方の中にも実際にいらっしゃるわけですが、官僚をされていた方で学界に異動されている先生方がいらっしゃるわけです。例えば、官僚から一方的に経済界とか学界への異動が行われるということでなくて、それだけの、一方通行が問題であると思いますので、米国の例のように、学界、実業界あるいは民間の研究機関からの職員の登用、これが行われるような制度を、ここまでこの法案そのものには含まれておりませんけれども、そういったものを今後考えていく必要があるのではないかと考えます。  この点につきまして、各参考人の先生方の御意見を伺いたいと思います。
  107. 佐々木毅

    佐々木参考人 お答えいたします。  公務員制度改革は、まさに今先生おっしゃられますように、この問題の成否を握る重大問題だろうと思います。そもそも、どういう形で広い意味公務に携わる人を受け入れ、待遇していくかということについて、これは恐らく民間の企業もそうかもしれませんけれども、今、雇用のスタイルというものが、いろいろなものが出てきているのではないか。端的に申しますと、政策立案を終身雇用でやるというのはできるものかというのが、実は私は問題としてあるような気がするわけでございます。  そうしますと、ある政策領域についていわば非常に通暁された方をむしろ受け入れなくてはいけないという問題が一方にある。しかし他方で、非常に地道に、着実に、公平に公務をこなしていくという人もいなければいけない。ですから、私は、公務員という概念が一つの概念としてどこまで成り立つかな。成り立つことは成り立つのですが、その雇用から活動から、それからそれを終えた後のあり方からして、一つの枠で今まで固定的に見てきたのじゃないか。この辺を、非常に多様化した中でどういうふうに公務員制度をつくっていくかということについて、抜本的な御議論をお願いしたいと思います。  そういう点で、もう一つ申し上げさせていただきますと、今先生の御指摘の点と若干違いますけれども、私は内閣の官房等も、先生おっしゃられたように、まさに一方向になって出ていくだけである。こっちへ入れなさいということになりますと、官房等については、むしろ外から人材を入れるということは想定されていることかと思います。  問題は、出す方の体制がそういうふうにできているかどうかという問題でございます。先ほど大学について御言及がございましたように、大学といったような組織も、そういうところに若いときに人を出すというような機会に恵まれますと、あるいは研究、教育にとりましてもプラスの面が出てくる可能性は非常にあるというふうに私は思っております。そういう点も含めて、この問題は幅広く御議論をいただきたいと思います。  以上です。
  108. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 先生の趣旨に全く賛成であります。  恐らく、国家公務員等についても非常に柔軟化を今後図らなければいけないと私は思いますが、一番の大きい理由は、自分の一生を自分で、二十二歳ですか、一番最短では二十二歳で全部決められてしまうというのはやはりおかしくて、自分が何をしたいかということを見ていくときが必要である。そのためには、いろいろなものを見なければいけない。やはり自分が一番好きなことに当たったときに一番その人は力を発揮するんだろうというふうに思いまして、非常に単純な原理から賛成です。  とりわけ、ひとつぜひ先生に頑張っていただきたいと思いますのは、行革会議の先ほどの最終報告書の中にも、行政とは一体何なのかという話がありまして、最終的には国民が主体となる行政改革をしなければいけないということがあります。いわば、今まではどちらかというと行政が統治体でありまして、国民は客体、統治される側というふうに考えてきたのですけれども国民を主体にするというのは、具体的にどういうことかといいますと、恐らく、公務員の中に入らせる、国民を入らせるということだろうと思うのですね。  とりわけ、今後、二十一世紀我が国を考える上で非常に重要だと思いますのは、例えば情報公開とかあるいは男女共同参画とかということについて、官僚から見ると、従来の官僚の発想からいくと非常に苦手な分野というのはやはりあるわけですね。そういう分野については、例えば公募制をとってもいいですし、要するに市民が入っていって、そういう部分を市民も受け持つというような行政スタイルにしていただけると、もっと非常に斬新な、世界に誇り得る行政スタイルが出てくるのではないか。その際、公務員とは何かということについて、市民が自由に出入りできるような公務員像といいますか、そういうものを考えていただいたらどうでしょうか。
  109. 加藤秀樹

    ○加藤参考人 私からは二点、御参考までにお話をいたしたいと思います。  一つは、まず、公務員、あるいはどこの官庁、どこの官僚と言っていいかもわかりませんが、どこの役所に何をやらせるか、あるいはどこの役所のどういう役人に何をやらせるかということについては、これは、大部分のいわゆる欧米先進国と言われる国では、議会あるいは内閣がリーダーシップをとってかなり柔軟に変えることができる。これは内閣が専ら指示をする、アメリカでは議会がそれを決める、そういう仕組みになっております。ここが日本の場合には法律で非常にかたくなっている。  ですから、今の公務員あり方についてもそうだと思いますけれども、内閣がリーダーシップをとって、これをそのときそのときの経済社会の情勢に合った形で、柔軟に、だれに何をやらせるかということを決めていく仕組み、そういう仕組みに変えていっていただくのが適当なのではないかと思います。  それから二番目に、これはまた私の実体験を踏まえての話ですけれども、現在の役所、これには本当の意味でのキャリアと呼ばれる官僚、それからノンキャリと呼ばれたり、いろいろありますが、これが、キャリアと呼ばれる者が本当のキャリアを持っていないのではないか。本当にその法律のプロであったり経済分析のプロであるかというと、必ずしもそうではなくて、やや荒っぽい言い方をいたしますと、むしろノンキャリと言われている人の方がよほどそういうことに関してはプロであります。  では、キャリアと言われる人は何をやっているかといいますと、かなりの程度、調整です。これは政治家との間の調整であったり、業界との間の調整であったり。これは、私はここで大いに強調いたしたいと思っておりますのは、本来、こういう調整というのは、どこの国を見てもそうですし、政治家がやるべきことだと思います。したがって、これをやはり本来の形に戻して、この委員会委員の方々を初めとして、政治家の方に本来のこの調整の部分を大いにやっていただいて、それで官僚がそれをやる必要がないように、そういう形に戻していただきたいなと思っております。  ですから、もとに戻りますと、今のキャリアというのは本当の意味でのプロあるいはキャリアではなくて、むしろロビイストとしてのプロではないか。これが本来のキャリアと言われるような形になれば、だれに何をやらせるかというところもはっきりいたしますし、また、おのずとそういうプロに対しては、例えば定年後についても、労働市場においてああいう人材が欲しいという声もかかってくるのだと思います。ですから、いわゆる天下りといったようなものについても、かなりの程度解決の糸口が見えてくるのではないか、こんなふうに思っています。  それからもう一つ一つだけつけ加えますと、先ほど倉成委員のお話にありました一括管理についてですけれども、これについては、私は、これだけ大勢の公務員を一括管理していくというのはなかなか困難も伴うのではないかと思っております。これもやや荒っぽい言い方を申しますと、自分は教育をやりたいから例えば文部省に行く、自分金融をやりたい、こういうのが本当のプロでありまして、自分はとにかく役人になりたいというのは、そういう人というのは余り望ましくないのではないのかな、こんなふうに思っております。
  110. 跡田直澄

    ○跡田参考人 私も、今加藤さんがおっしゃったのとかなり近いと思いますけれども、一括管理で公務員を採用するというのは、今現在のシステムを変える一時的な措置としては必要ではないかとは思いますけれども、根本的に今の体制を変えて一括管理でやるというのは、将来の、行革が終わった後の公務員の採用として必要なものかどうかというのは、私は疑問に思っております。  むしろ、専門家を任期制で採用する。そして、今現在の中級職と呼んでいる、どちらかというと現状をとらえるための資料をつくる、そういう役割人たちに関しましては、一括管理でも、専門的に持っている分野、法律的な分野、経済的な分野ということで、ある一定の業務内容に応じて採用するということも、一括管理をしながらもある程度制限をして採用していくという方向はあり得ると思いますが、いわゆる上級職と言われる方たちに関しては、私は、将来的には少し変えていく、もちろん私自身が勤めております大学もそういう方向へ行った方がいいと思っております。  以上でございます。
  111. 浜川清

    ○浜川参考人 一括管理とおっしゃるのは、恐らく省庁官僚制の、どういいますか閉鎖性、それから政あるいは財に対する影響力をある程度是正しようということでお考えになっていることかと思います。したがいまして、一括管理と局長、次官の閣議承認の考え方は同じような発想から出ていると思うのです。それは、私もその動機というのはそのとおりだろうとは思うのですが、うまくいくかどうかの問題は別の問題だと思うのです。  まず、ちょっと話がそれるかも知れませんが、政治的任用とも関係しますのでそちらの方から申しますが、局長、次官、現在もこれは事実上行われているんですが、閣議の承認制度はやはりかなり問題がある。政治任用以外の職員については本来客観的な基準で能力に従って判定すべきであって、政治的な考慮をしてはならないのが公務員法の原則であるわけです。そういう点からしますと、現在も事実上かけているわけですが、どういう基準で承認をするのかということを明らかにしないと問題がある。内閣という、政治による官僚制支配は、政治的任用でむしろ行うべきじゃないか、そういうふうに思ったりもするわけです。  それから、それ以外の問題として一括管理が言われているとすれば、しかし、恐らく一般のキャリア以外の職員については、ましてその一括管理はほとんど無理だと思うのですね。したがいまして、加藤参考人が言われたとおりの問題が起こってきまして、いわゆる行政の専門性はキャリアにはなくて、それ以外の一般の職員のところに蓄積される、キャリアは結局行政組織の統制力を失うという問題が他方で発生してくるわけです。これは、一般的にも、日本だけじゃなくて諸外国でも一つの問題として指摘されていることかと思うのです。そうしますと、一括管理を行う結果、行政組織の統一性というものの確保が大変難しくなるのではないか、このように思っておるわけです。
  112. 中北徹

    ○中北参考人 私は、先生のおっしゃる御趣旨には基本的に賛成です。行革に限らず、今の規制緩和の背後にある、一番やはりそれが進まない原因は、労働市場の流動化が進まないからだというふうに思います。その意味で、御趣旨には全く賛成です。  ただ、この点についてはいろいろ工夫の余地が大きいというふうに思います。  簡単にお話ししますと、アメリカのSEC、証券取引委員会などがございますが、これは、日本でいうと司法試験のトップで受かった者を数十人集めてきまして、それでみっちり最前線で教育をして、指揮督励し、二、三年終わると、ニューヨークやワシントン事務所に三倍ぐらいのお給料をもらって行く。それから、イギリスのFSA、今度監督庁の、すごいハイテクの監督庁ですが、こちらはやはり専門性が高いものですから、お給料を普通の公務員よりかなり高くしている、それでいい人をヘッドハントしてくる。ということで、欧米の例を見てみますと、いろいろ工夫の余地がありますので、ぜひその点を考えていただきたいというふうに思います。  もう一点は、やはり出す側、民の方も、制度だとか枠組みというのは、明治以来、与えられるものだ、規制緩和政府が推進している、早く決めてくれたらそれに合わすと。やはりこの通弊を変えていく必要があるのではないかというふうに思います。  一括管理については、私は、最初からその考え方を捨てることはないのではないかというふうに、これはためにする議論が若干横行していますので、やはりまずその枠組みの中でいろいろ工夫していただきたい、そんなふうに思います。
  113. 倉成正和

    ○倉成委員 質疑の持ち時間が終了いたしましたので、これで終わります。ありがとうございました。
  114. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、北脇保之君の質疑に入ります。
  115. 北脇保之

    ○北脇委員 民主党の北脇保之でございます。  本日は、参考人の皆様方におかれましては、この委員会にて意見の陳述をいただき、本当にありがとうございます。  私は、まず行革の理念についてお尋ねをいたします。  今、本当に日本の国が大きな転換点に差しかかっていることは皆さんが認めるところでございます。それでは、今のこの中央省庁等改革基本法案に果たして理念というものが明確に盛り込まれているかどうか。私は、この法案を読みますと、確かに基本理念の項目はあります。しかし、それが抽象論のレベルにとどまっている。特に、地方分権をどうするか、また、先ほども指摘のありました財政投融資制度などを含めた金融制度をどうしていくか。いろいろな点を取り上げてみても、プログラム法案だというような説明で、具体的なことがすべてほかに送られてしまっている。そのために、この行革をやっていったら国の姿がどうなるのか、これが明確に見えない、このように思います。  そこで、五十嵐教授にお尋ねをいたします。  先ほど教授は、行革の理念目標として、まず何よりも国民が統治の主体である、このことをはっきり実感できるような、そういう改革をしていかなければいけないということ、また行政組織については、柔軟な組織でなければならない、またこの改革が単なる看板のかけかえなどに終わってしまってはいけない、このようなことを御指摘ございました。  教授の観点から見て、この基本法案、その理念に関して果たして明確になっているかどうか、どのように評価されるか、お尋ねいたします。
  116. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 私の考えを述べさせていただきます。  よく、今回の行政改革は、その他の財政構造改革等と並びまして、第三の改革というふうに言われております。第一の改革は明治維新でありますし、第二の改革は戦後改革であります。それに引き続く第三の改革というものであります。  第一の改革の明治維新は、要するに、従来の律令体制を廃棄いたしまして近代国家になりまして、憲法を定めまして、秩序というのを定めました。  戦後改革は、いわば、マッカーサーが来られまして、国民主権者とする憲法を定めまして、これに反する法律を排除した上で新しい秩序をつくったということであります。  第三番目、第三の改革は一体何をするのか。憲法を維持した上でその他さまざまの法律を改正するということでありますが、何が一体実質的に問われるべきことかといいますと、多分、戦後改革によって定めた国民主権者であるという規定が、事実上やはり官僚中心とする中央集権体制に支配されていまして、必ずしも実現しなかった。これを踏まえ直して第三の改革をしよう、二十一世紀の姿というのはそういうものだろうと私は理解しております。国民が主体になるという観点から今回の内閣機能の強化やあるいは省庁編成を見ると、やはり必ずしもそういうことになっていないのではないかというふうに思われるということであります。  今回の行政改革理念というのが第二条以下ずっと書いてありますけれども、言葉としては、自由にして公正な社会とか地方分権規制緩和と、いわば国民が総意で今回意している文章、言葉はありますけれども実態は、国民を奮い立たせるものはほとんど見えてこない。これによって何が国民にとってよくなるのかということがほとんど見えてこないということが最大の欠点だ。つまり、美しい文字で書かれながら、何も世の中に見えてこないのが最大の問題だというふうに私はまず思います。  それで、あと二つばかり答えたいのですけれども、柔軟な組織にしたいというのは、要するに、今回の省庁改革によっても多分解決できない問題が世の中に山積みしているわけですね。例えば、ごみ一つとってみましても、生活ごみからプルトニウムまで、原子力のごみまで見ますと、今回の省庁改革で何が一体解決できるのだろうかと思いますと、必ずしも解決できない。あるいは、農村や地方都市の衰退を見ますと、この行政改革で何が解決できるのか、何もできない。  要するに、私が言いたいことは、それを解決するためのアドホックな組織をつくりまして、この解決に全力で当たらせる、そしてその問題が解決したらそれで解散してしまうというような、新しい行政スタイルというのを考えていいのではないかということを申し上げたいということであります。  それからもう一つ。イギリスやアメリカやドイツ、フランス、こぞって全世界の国々が行政改革に取り組んでいるわけですけれども日本一つだけ基本的に違うことがあります。それは、行政改革によって何が変わるかということについて、例えば、改廃すべき法律の数、あるいは削減すべき予算の量、あるいは人員などについてちゃんと明確な目標が設定してあって、それが実際できるかどうかをカウンティングして、国民がそれを見てイエスとかノーとか言うという形になっているということです。これが日本の行革では全く見えないわけですね。  なぜ見えないかといいますと、地方分権規制緩和などが、先ほど申し上げましたように、こうやって一体となっているからです。むしろ、先行すべきものが先行しますと、地方分権によって残りの国家は何をなすべきか、規制緩和によって残りの国家は何をなすべきかが見えて、それで初めて減らす数とかふやす量だとかというのが見えてくる。順序がやはり誤っているのではないかというのが私の実感です。  できれば、今問題になっている、先ほど言いました公共事業コントロール法案なり副大臣制なり、地方分権に関するさまざまな法律を一回可決して、やってみれば、残り国家が何をすべきか見えてくるのではないかというふうに思っているということです。
  117. 北脇保之

    ○北脇委員 同じ質問佐々木毅教授にいたします。  今この時点で、この国の行革、その理念とは何であるべきなのか、そして、そのことがこの基本法案に明確に示されているかどうか、これを教授の見地からお聞かせいただきたいと思います。
  118. 佐々木毅

    佐々木参考人 ここで問題になっております法案というのは、はしなくも中央省庁等改革基本法案ということでございまして、恐らく行革というのはもっと広い概念だろうというふうに私は思っております。その意味で申しますと、例えば財政の問題、あるいは特に税金の問題をどういうふうに考えるかというようなことなど、一連のものとして扱われたときに初めて、なるほど行政はこういう役割を果たすことに変わるのかとかいうようなことが国民の目に見えてくるということかと思います。  そういう意味でいいますと、それぞれをとって法案化するという作業をしているという点が、私は今回のこの中央省庁等改革基本法案一つの大きな特徴であろうと思うのです。したがって、行革全体の理念がここに必ずしも、理念は私はそれなりに述べられていると思いますが、先ほど私も最初に申しましたように、これはベースキャンプだという言い方をした。あるいは、もっと言えば、ある面は非常にキャッチアップに近いところもあるのではないかということを申し上げました。  ですから、ありていに申せば、今まで余りにも長い間何もしてこなかったということが問題になっている面が多くて、では、先がこうなるという方に全部エネルギーが費やされた法案改革法案かと言われると、なかなかそこまでは行き切れてない。その意味で、非常にこの法案のつくり方そのものに悩みが出ているという感じを私は持つわけでございます。  若干、誤解のないように一言申し上げさせていただきますが、その意味でいいますと、我々が改革を考える、具体的な場で改革を考えるというときに、一体どこから出発するかということでありまして、少なくともこの法案について見る限り、現在ただいまの日本から出発する一つの案としてこういうものが出てくるということについて、そしてそれが一定の今までの弊害を除去するということにつながるものであるという面を持っていることは私は認めますが、では、これから二十年、三十年先の日本が見えてくるかというところになると、これはさらに一層これから努力していただかなければいけないというふうに思います。
  119. 北脇保之

    ○北脇委員 私は、この法案のつくり方、そしてまた、今の政府の行革の進め方に問題があると思います。そのために、この基本法案にそうした問題が集約されて出てしまっているというふうに思います。  具体的に申し上げますと、先ほど跡田教授がおっしゃられた、現状認識から出発するべきだ、そのことが抜け落ちているという御指摘、私、まさにそのとおりだと思います。本当に全く同感でございます。  そういうことがあるために、例えば今のこの基本法案、先ほど佐々木毅教授は、ベースキャンプなんだ、緒についたところなんだというふうにおっしゃいましたけれども、しかしここに盛り込まれていることが、私どもから見れば、既によくない方向を方向づけてしまっている、そういう部分があるわけなんです。  例えば、この省庁再編の大くくりの中で、総務省、これ一つ例にとってみても、総務庁と自治省と郵政省の機能一つにする、これを統一的に説明することはできるのか。これはたびたびこの委員会でも議論になりましたが、十分な説明は得られなかったというふうに受けとめております。また国土交通省についても、ただいまの参考人の御意見の中にもたびたび指摘がございました。  こういうふうに、既に余り好ましくない方向をこの法案で方向づけるというところに問題があると思いますが、佐々木教授は、この点についてはいかがでしょうか。
  120. 佐々木毅

    佐々木参考人 個々の法案の部分について、私自身、一々必ずしも意見を固めているわけではございません。個々の、特に省庁あり方等についていろいろ議論がされているということ自体は私も承知いたしております。恐らくそういうことは、これから実際に作業をしていく過程で、新たな問題が出てくるということもあるかもしれない。あるいは、実際にどのような姿がそこで描けるのかということについて、いろいろさらに議論が出てくる可能性があると私は思います、もし無理なことを考えていきますと。ですから、そういう過程の中で、また解決していくべき問題というものを私たちは確定できるのではないかというふうに私は思っております。  先生おっしゃられるように、どこまで将来がこれによって確定されたのかということについてはいろいろ議論があるというふうに思います。しかし、もし本当に無理なものがあるとすれば、私、これはまだ十分見通しがつきませんが、あれば、それは必ず出てくる。そして、そこで問題になる。そしてまた、やはり手直ししなければいかぬということになるのではないか。そのような、ちょっと私の話、穏当な表現なのかどうか知りませんけれども、緩い意味での縛りというものがあることは認めますけれども、全部これでもって細かいところまで決まってしまったという意見は、必ずしも私は納得することはできません。  以上です。
  121. 北脇保之

    ○北脇委員 私ども立場を明確にするために、お許しを得て、行政改革基本法案の骨子をお配りしてございますので、ごく手短に紹介をさせていただきたいと思います。きょうの参考人質疑に資するためということでございますので、御了解いただきたいと思います。  お手元にお配りしてございますが、私ども、従来から述べてきましたように、行政改革に関する基本理念については、第二というところで述べておりますように、住民参加を真に実現するための地方分権の推進、そして市民の自立的な活動を尊重して行う国の規制の撤廃等、こういったことによって国の役割を限定していくということを基本理念としております。  そして、具体的には、「地方分権の推進」という第四のところにございますように国の役割の限定、これは、国際社会における国家としての存立にかかわる事務とか、そういったものを限定していくということが一つの主張でございます。  それから、第五として「国の規制の撤廃等」、こういったことを進めまして、第九には内閣機能の強化も触れておりますが、ここはまさに、ただいまいろいろ御議論がありましたように、各省に副大臣三人及び政務補佐官五人以内を置くというような形で、まさに政治が政策立案をしていく、内閣そしてまた各省の大臣のスタッフ機能を強化していく、こういったこともこの法案の中に盛り込んでいるところでございます。  そして、第十一として「国の行政機関の見直し」、これについては、地方分権の推進それから国の規制の撤廃等、こういったものを進めていった上で省庁再編に取り組んでいくということでございます。  そして最後に、第十二として、国会行政改革調査会を置く。これが二年以内に、所要の検討をして立法についての勧告を両議院にしていく。こういう形で、国会がしっかりと関与した形で行政改革を進めていこうというのが私どもの提案でございます。  その点で、この行革の進め方についてまたお尋ねをしたいと思うのですが、一つ行革会議、これが総理府令によって設置されたものであって、委員国会同意でないというようなことで進んできている。これが、国民が本当に参加する形での行革ということから少し違う方向になるもとになっているのではないかというふうに私ども指摘をしております。  この点について、五十嵐教授はどのようにお考えになっているのか、お尋ねをいたします。
  122. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 憲法の規定によりますと、国権の最高機関国会であります。したがって、行政改革を含むすべての改革について、国会がイニシアチブをとるのは当然のことだと私は理解しています。  現実を見ますと、行政改革会議を含めまして、今回の行政改革法案などを含むすべての法案は、内閣が国会に提案をしておりまして、これがイエスかノーかというだけの判断になっているということですね。私自身は、国会でこれをもっと活性化する必要があると思いまして、こういう、ちょっと中身自体は今配られただけでよく理解できませんけれども、少なくとも、国会がこの行政改革に関してイニシアチブをとる方法を考えるというのは正道だと思っております。
  123. 北脇保之

    ○北脇委員 また、この進め方ということで、国会が関与するために行革調査会を設ける、これは私どもの提案ですが、さらに、第三者機関を設けて、今後の行革の推進をしっかりと監視していくといいますか、そういうことをしていくべきだという意見もございます。  そういう点で、今後のこの行革の進め方、国会関与のあり方、また第三者機関的なものの必要性、こういったことについてどのようにお考えになっているか、これは加藤教授にお伺いいたします。
  124. 加藤秀樹

    ○加藤参考人 先ほど佐々木先生がおっしゃいましたベースキャンプというのは、私も全くそのとおりだと思います。  ですから、行革というのは、私は、あくまでも行政というのは政治全体の一部だと思っております。したがって、本来は政治改革全体を考えないといけないのではないか。そういう意味では、政治家と役人の役割分担というのが非常に重要だと思っています。  そういう中で位置づけていきますと、どこから入っていくのか。これは中央省庁の再編というところから入っていくというやり方もあると思いますし、もう少し違うところから入っていくというやり方もあると思います。ですから私は、今のここで御審議されております基本法案審議するところから入っていく、あるいは先ほど民主党の案ということで御提示されましたそういうところから入っていく、これは国会の中での入り方のお話だと思いますけれども、どこから入っていくにしても、結局は官と民、あるいは国と地方、あるいは政治家と官僚との役割分担というものを一つ一つ解きほぐしていく必要があるのだろう。  それには、例えば今お話の中にありました第三者機関、こういったものは非常に有効であると思います。それがこの法案の中で言及されております推進本部ということなのか、あるいは違う形なのか、これも実際には、具体的にはいろいろな形があると思いますけれども、これを単に事務的に処理するということではだめなのであろう。ここは、やはり国会、あるいはさらにその背後にある国民が、きちっとどういうことが議論されているのかわかる形で、国民意思が反映された形で行革が進むようにという意味での第三者機関の設置というのは非常に有効であると考えております。
  125. 北脇保之

    ○北脇委員 先ほど中北教授は、この法案のプログラム法案としての危険性を指摘されました。私もその点について同感でございます。  というのは、この法案を見ても、省庁再編の方向性、また個々の改革の方向性というものも非常に抽象的です。例えば、先ほどから言っている地方分権とかまた規制緩和ということについても、この法案そのものが政府を十分に規制し拘束するかというと、そこまでの具体性がないと思うのです。これで政府に授権されて、政府中央省庁改革推進本部をつくって、そこで各省設置法を改正していくということになると、まさに官僚の手に作業がゆだねられて、そこでまた官僚の主導で行われてしまう、こういう心配が非常にございます。  この点についてもう一度、中北教授はこの法案そのものをどう評価されているかという点、それから、そうした点を踏まえて今後の行革の推進はいかにあるべきか、この点について御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  126. 中北徹

    ○中北参考人 私は法学者でありませんので、いささか大ざっぱな議論になるかもしれませんが、今先生おっしゃったように、この法案を事務局から送っていただきまして拝見しまして、大変驚きました。プログラム法案だったものですから。  これは私自身の知識のまずさをあらわしているのかもしれませんが、やはり行革という大変国家の大枠を決めるもの、これが非常にいわば粘土細工になっているような気が私はするわけです。ただ、そうはいっても、全くこれが無意味であるとか徒労であるというふうに申し上げるつもりはありませんが、しかし、これは国家五十年、百年の軸を明瞭にかく作業ですから、最初の文字が非常にぼやけているのでは私は危惧するわけであります。  戦後五十年、護送船団、あるいは五五年体制と言われる中で、多くの関係者が脱皮し、世界の標準に近づいていこうという作業の始まりですから、余り多くを期待するのもなにかもしれませんが、しかし今、世界は非常に猛スピードで変わっているわけであります。この連休中のEUの中央銀行総裁の議論を見ましても、大変高い議論をしております。一方、国内のマーケットを見るとあのとおりでありますので、私は、やはりここは高きを望んで、本筋で議論すべきだというふうに思います。  そのような意味で、先生がおっしゃるプログラム規定の危うさというのは私も大変同感いたします。  以上です。
  127. 北脇保之

    ○北脇委員 またお話がちょっともとに戻るようで恐縮なのですが、先ほど私の方も繰り返させていただきました跡田教授の御指摘現状認識が不十分だということでございました。  端的な例を挙げていただけるとありがたいのですが、今の日本の政治、行政、そして社会システムの中で、特にどういう点について念頭に置かれて現状問題点を把握され、その認識に立った案になっていないという御指摘をされたのか、具体的な例を挙げて御説明いただけるとありがたいと思います。
  128. 跡田直澄

    ○跡田参考人 何かきついことを申し上げるかもしれませんが、まず第一点といたしましては、やはり公共事業に関しての問題でございます。  内容的に余りにも、国民福祉の増進に基本的にはつながっていない。かなり私ややこしく申し上げましたけれども、恐らく事業者にはプラスになってはいると思われますけれども、実際の生活面で本当に役に立っているものがどれだけつくられているか。特に、この五年ぐらいの景気対策の中で試みられてきた公共事業のかなりの部分が、はっきり申し上げると不良債権化していると申し上げてもいいかもしれません。  そういうものをつくっているというシステム、これは国のシステムもそうですし、地方の中の公共事業の発注システム、ここもはっきり言って物すごいむだをしております。中小事業者にのみ細かく発注をするということを念頭に置いた発注形式をやっております。これはすべて、最初に私が申し上げましたように、効率性を考えている公共投資といいながら、実は中小事業者の保護というような形の再分配を行っている。  そして、さらに追加するならば、地方の交付税の問題、補助金の問題を含めまして、これも効率的な配分をしているという、配分の仕方は確かに効率的かもしれませんが、しかしやっている結果は、貧しい地方にお金を配るという再分配の志向。さらには、農業における歳出におきましても同じように、農業ではなく農家を救うための再分配的な支出をして、それを公共事業と称しているようなところがある。  公共事業中心にして今申し上げましたけれども、歳出の中にそういう非常におかしな発想、日本社会主義と申し上げても言い過ぎではないかもしれません、そういうような歳出システムをつくってしまった今の中央集権型のシステムというもの、ここに問題があるということが、気づいていながらはっきりと表に出さない。そういうもとでの今回の法案というのに、私は現状認識が甘いというふうなことを申し上げました。  以上でございます。
  129. 北脇保之

    ○北脇委員 浜川教授にお尋ねしたいと思うのですが、先ほど教授は、もうとにかくこういう法案をつくらなくても、例えば内閣の強化であれば内閣法の改正であるとか、そういう個々に、すぐにでもやれるじゃないかとおっしゃられたと思います。  そういう点で、この法案では新体制への移行目標時期というのが、遅くともこの法律の施行後五年以内に、そして、できれば平成十三年一月一日を目標として中央省庁改革による新たな体制への移行を開始するものとする、こういう規定になっているのですが、このような移行目標時期の考え方について、教授はどのように御意見をお持ちか、お聞かせいただきたいと思います。
  130. 浜川清

    ○浜川参考人 先ほどもこの点はお話ししたのですけれども基本法案で扱っているものの中には幾つかレベルの違うものがあると思うのですね。例えば、今回の法案で私は大変重要なテーマだというのは内閣制度の扱いの問題だと思うのですが、これはやはりそれ自体固有に十分御議論される必要があるのじゃないか。憲法上の問題がございます。  基本法というのは、末端と言うのは変ですけれども「各省の任務規定まである非常に幅の広いものです。そういう形で一緒に憲法問題をはらむような内閣制度を考えるのはどうかというのが私の意見でございまして、もし、内閣の運営を変える、あるいは政治的スタッフが必要であるというのであれば、それ自体法案として具体的なものをおつくりになったらどうか。今後の方向としてこういう法案を用意する。例えば六条と十四条というのは非常にあいまいな規定でございまして、それでは大変不確かというか、危うい感じがするということでございます。
  131. 北脇保之

    ○北脇委員 少し具体的なこともお尋ねをしたいと思うのです。  中北教授は、先ほど財政、金融の分離の問題についてお触れになりました。この法案では、当分の間、金融破綻処理の企画立案については財務省が所管する、こういうふうになっているのですが、当分の間というのは、ちょっとはっきりしない期間なんですが、この規定について教授はどのように考えていらっしゃるか、お聞かせいただきたいと思います。
  132. 中北徹

    ○中北参考人 これは、私は大変不適切だというふうに思います。今の経済の客観情勢を見ますと、即刻金融、財政の分離を貫徹すべき時期だというふうに思います。  加えまして、この一月二十日に与党三党合意というのが出ているというふうに了解しているわけですが、その直後にあのような金融不祥事が次々に噴出し現在に至り、現在もなおその明瞭な展望というのは開けていないわけです。のみならず、六月に監督庁が、もう来月発足するというにもかかわらず、私の理解するところでは、人事も含めて明瞭な体制というのは我々の前に、国民の前に提示されていないわけです。  しかし、ビッグバンはもう現に進んでいて、そして欧米からは外資が参入し、会計制度、格付、それからBISの基準その他、具体的な形でマーケットを通して我々に調整を迫っている。それは、単に商品のやりとりではありません。組織づくりから仕事の進め方、すべてについて、もうこれは待ったなし。  このような時期に、従来型の金融財政一体論。これはキャッチアップの時代にこそそれなりの役割を果たし得たかもしれませんが、そのような時期はもう過ぎているというふうに思います。やはり貫徹すべきだというふうに思います。その意味で、当分の間というのは、これは私はよくないというふうに思います。
  133. 北脇保之

    ○北脇委員 時間が参りましたので、同僚議員にバトンタッチいたします。どうもありがとうございました。
  134. 高鳥修

    高鳥委員長 この際、伊藤忠治君から関連質疑の申し出があります。北脇君の持ち時間の範囲内においてこれを許します。伊藤忠治君。
  135. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 民主党の伊藤忠治でございます。  きょうは、先生方、大変御苦労さまでございます。私は、二十分の時間でございますので、なるべくはしょる感じになると思いますが、先生方にお話を聞かせていただきたい、こう思っております。  まず第一点でございますが、先生方のお話を聞いていまして、今回の基本法案、これはなかなかいいじゃないか、一日も早くひとつ国会で通した方がよろしい、こんな感じは全然ないと私は思っているわけでございます。実際どこまでできるのかな、やってみてもうまくいかぬ場合には、また見直して、時間もかけてやるしかないのかな、無責任な私の受け取り方で恐縮でございますが、そんなふうに印象としては聞こえてしょうがないわけでございます。  そこで、私たちも一連の審議に参加をしてまいりまして、今回の基本法案が、こういうプログラム法でございまして、全く抽象的に書かれていまして、ではこれが設置法をつくる際にはどのように生かされていくのかということも、なかなかこれは答弁としても、はっきりしたものは各閣僚からは返ってきません、総理を初めとして。抽象的でございます。  それで、私は思うのですが、つまり、これまでの統治型行政官僚行政、五十嵐先生が言葉ではっきり指摘をされておりますが、これでは二十一世紀はやっていけないと思うのですね。お上意識。ですから、国民の側もお上に依存して、業界もそうだったと思いますが、言うならば、規制行政にどうしたってもみ手すり手でいかないことには、需給調整から何から全部縛られていますから、商売がうまくいかないということだったと思うのですよ。  しかし、そういう時代ではなくなっていまして、二十一世紀というのは、それこそ市民主役の社会に私は大きく変わっていくと思います。それは申すまでもなく、今日が成熟社会ですから、当然情報化も進みますが、高学歴社会ですから、市民の意識もだんだん高まってきたと思うのです。だから、今回の一連の行政改革というのは、第三の、平成の民主主義革命、このように別名言われているのも、そこに意義があると私は理解をいたしております。  先生方のお話を聞いていまして、佐々木先生を初めすべての先生方も、官僚主導行政ではだめですねと。国会で選ばれた総理大臣が閣僚を任命しまして、政治が主導で行政責任持ってやっていく、こういう体制に切りかえようというところで初めてこれはもとから改革ができる、民主主義革命に値するだろうと私は思っているのです。  このように位置づけましたときに、審議の中で閣僚答弁で明らかになっておりますことは、つまり、中央省庁内閣機能は強化いたしますと。ところが、地方分権規制緩和、これはこれまでやってきましたけれども、どうもタイミングが合っていないのです。まず基本法だけ通してくれ、そうしたら、あとは設置法をつくる、これにタイミングを合わせて具体化していきますよというあたりまでは明らかになっているのですね。それから先は、このように設置法をつくるときにはコミットしていきますよという答弁までは、なかなか具体的な答弁としてはなさらないわけでして、そこのところが審議では全然詰まっていない。絡み合わない。ですから、すれ違いの議論というのがどうも目立ってしょうがないというのが私の印象でございます。  佐々木先生は、言葉じりをとらえるという点で失礼があればお許しをいただきたいと思いますが、何のかの言うけれども、過去には政治が主導を持ってやったことはなかった、いろいろ問題はあるけれども、今回初めてそういう動きになったのかな、だから、これはベースキャンプを今回しくのかな、それで、言うならば継続的に見直していくということになるのかな、こういうお話をいただいたわけでございますが、そうしますと、これは基本的な枠組みをつくるわけですね。  これは一たんつくりますと、私は、基本的なフレームワークをまた見直していくなどということは、今の官僚の体質からいったらそう生易しいものではないと思っているのですが、この点はどのようにお考えなのか、ちょっとお聞かせをいただきたいと思うのです。
  136. 佐々木毅

    佐々木参考人 お答えいたします。  今先生がおっしゃられましたように、官主導の体制ではやっていけないということは、おっしゃるとおりでございます。私もその認識を共有するものでございます。  さて、問題は、では政主導でうまくいけるかということに実は話はだんだん移ってきているところに、今我々が見ているのは、官主導システムをどう変えるかという、何といいますか、残された問題を扱わなければいけないという面が多々あるのではないかというのが、私が最初に申し上げた点でございます。私は、そういう意味で申しますと、政主導というものに対して大変大きな期待を持っておりますので、仮にどこまで固まるのかということについて、これはまたちょっと議論をすれば切りがございません。  確かに、方向、ある枠づけというものがないと作業もできぬということですから、それはできるでしょう。しかし、それがもう、あとどうにもならなくなるというものではないのじゃないか。そこにおいても、まさにその具体論においても、私は政治主導というものに大いに期待をし、かつ可能ではないか。今の先生のお話を聞いていますと、むしろ私は、もうちょっと政主導を信頼して将来を切り開いていっていただきたいという感じさえいたしているわけでございます。  官僚制の体質の問題というのがあることは事実でございます。しかし、官僚制にとって、やはりこういう話ほど嫌な話はないと私は思っております。しかし、嫌だという話も、ここまで嫌だ、あそこまで嫌だ、いろいろ度合いがございます。その意味でいいますと、確かに、これはまだ本当の嫌な本丸まで踏み込んだところまでいっていないかもしれないというのは、先ほど加藤先生からもお話があったとおりです。そこをもう一歩、二歩これからさらに踏み込んでいただくことを私は先生方に期待したいというふうに思っているところでございます。  保証するわけではございませんけれども、しかし、これをやる以外に日本は恐らく将来を切り開けないというふうに私も思っております。ですから、先生のお考えと私は、その意味では余り違わない立場にあるのではないかというふうに理解をいたしております。
  137. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 佐々木先生のお話を伺いまして自信を持ったわけでございますが、もう少し政治家の方がしっかりせよ、これは反省を含めまして、頑張らなければいけないと思ったのです。  ただ、議論していまして一番空回りしますのは、四次にわたって分権推進委員会が勧告を出していますね。しかし、その勧告では不十分だということで、総理が三つ注文をつけているわけですね。ところが、注文をおつけになった総理に、あなたは役割分担、分権と言うけれども中央地方中央は言うならば限定的な仕事をやるところなのですよ、それでは、それは具体的に言えばどのような基準として考えられるのですかというような話にいきますと、なかなかそれが決まらないということなんですね。でも、推進計画は国がつくるのですから、これはもう国会が終わるまでに出してこなければいけない、そういう責務を国が負うわけですね。ところが、具体的にそれがなかなか出ない。  一番大切なのは、一番基本的な問題として、私は、地方分権をどこまでできるかということでやはり決まっていくような気がするのですよ。  地方の仕事が多くなれば中央の仕事は限定的なものにならざるを得ない。官から民にどういう仕事を切り出していくのか、それから市民活動で何ができるのかということで整理をしていかなければいかぬわけですが、この点について五十嵐先生は市民活動にもお触れになって、評価制度を第三者機関としてこれから十分生かしていかないことには、行政透明性なり、あるいは市民の立場からするならば、チェックができて意見が反映できるということにならないわけですから、その点について思い切った提案もされていると私は聞いておりますが、その点を第一点伺いたい。  二点目は、佐々木先生と五十嵐先生にお伺いしたいのは、行政委員会というのは、中間報告が出たわけですが、せんだっても事務局長を務められました水野先生にお越しいただきましてお聞きしたのです。もう少し突っ込んだお話があるかなと思ったら、いや、道具なので、これは、つくってみたけれども、評判が悪くてだめだったという答弁で終わりでした。そんなものだろうか。  政府独立行政法人にかなりこだわっているわけですよ。同じように、私は、行政委員会方式というのは、二十一世紀日本行政形態としてとらなければいけないというか、ぜひ採用したい一つの形だと思っておるのですが、この点についてもあわせて、お二人の先生から御所見がございましたらお伺いをしたい、こう思っております。
  138. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 お答えいたします。  まず、地方分権をこの行革基本法の中でもうたっているわけですが、それは一体どういう意味を持つかということをはっきりさせたいと私は思います。  要するに、この法律は、宣言法であるとか基本法であるとかプログラム法だとか言われていますが、正確に言うと、非常に抽象的な理念を持った部分と具体的に拘束する部分の二つがあるのです。多分、この行革基本法が通りますと、一府十二省庁という骨格はもう変えられないと思います。だから、ベースキャンプだといっても一府十二省庁は変えられないという上でのベースキャンプであるということになるわけですね。  細かいことを申し上げます。例えば、非常に変な規定が入っていまして、こういうことを皆さんは本当にお認めになるのかどうかということを、全部言うとあれですので、一つだけ申し上げたいと思います。  国土交通省編成方針、第二十二条というのがありまして、その中に七というのがあるのですが、これをちょっと読み上げます。こういうことが本当に決められてしまうと、一切影響力がないものか、拘束してしまうのか。私は、これは拘束するのではないかと思う部分です。  「北海道開発庁の任務及び行政機能を引き継ぐものとし、その関係予算は、国土交通省に従前のとおり一括して計上し、北海道開発局は、同省に置くこと。この場合において、農林水産省が所掌する事業については、従前のとおり、同省に所要の予算の移替え又は繰入れをするとともに、農林水産大臣のみが北海道開発局長を指揮監督すること。」とありまして、一つ省庁の中に二つの大臣がそれぞれ介入するようなことがありまして、こんなことを本当に考えていいというのかどうか。多分、この法律が通ると、ベースキャンプはまさにこれになるのだろうと思いますね。  しかも、重要なことは、一たん決めてしまいますと、法律というのは、やはりかなり恒久性を持つということなんです。つまり、大蔵省が明治以来と言われていますように、一たんこの法律が、一府十二省庁が決められてしまうと、五十年とか六十年とか、法律家の感覚でいえばそうたやすくは変えられないものだということがありまして、仮にこの今の二十二条第七号がこういうことになりますと、非常にへんちくりんな、だれが見たっておかしいと思うようなことが骨格になるということです。これは、やはりいけないと思います。  同じように、地方分権についてもありまして、ここで言う地方分権というのは、まさにいわゆる宣言法、基本法でありまして、ここでは、いわば理念を言っているだけですね。問題は、地方分権も一から始まっているのではなくて、既にもう第四次勧告まで出ていまして、その中でどのくらいのことが守備範囲として扱われているかということが問題なわけです。  これは行革会議会議録を見ますとよくわかりますけれども、先生方は非常にこのことを気にしておりました。むしろ行革会議は、基本法をつくる際には、地方分権を先行させて大幅に中央省庁の仕事を減らさないと、結局は看板のかけかえに終わることになりかねないということを随分強調されたのであります。  改めてその観点から第四次報告までの文章を見ていただきますと、例えば先ほどから問題になっている公共事業を見ますと、権限論でもあるいは財源論でも、これはほとんど進まないです。実は、規制緩和委員会でも、入札のところについては少し進んでおりますけれども、いわゆる五全総、全国総合開発計画を決め、それから十六本の中長期計画を定め、それを閣議決定するということ。つまり、市場に全くゆだねない、官が独占するという形態は、規制緩和委員会でも地方分権委員会でもほとんど取り上げられていないわけですね。そうすると、現在の地方分権推進委員会の勧告をベースにしますと、すとんとその部分が抜けるということなわけです。  だから、ベースキャンプという言い方はいいのですけれども、最終的に拘束するものと拘束しないものをよく分けていただかないと、実は拘束するものが、後で考えたときに非常に首を縛ってしまうということが起こり得るというのが第一点であります。  第二点は、同じ地方分権を推進すべきである国会責任もちょっとあるのだろうと私は思います。  地方分権推進委員会の動きを見ていただくとわかりますが、これは衆参両院の国会決議というのが前提にありまして、分権推進法をつくられて委員会があるわけです。第四次勧告に至るまで国会は何をしたかといいますと、ほとんどこれについては具体的な案を提案いたしませんでした。この点については、国会の方がむしろその中身を先取りして提案することによって、地方分権推進委員会の勧告とあわせて討議できるようなシステムにしないと、政府を責めるだけではやはりだめだという感じがするということです。  三番目は、市民が主役であるというのはどういうことかということで、私自身が考えているのは、要するに、今までのように、国家にしろ自治体にしろ行政機構がありまして、ノンキャリにしろキャリアにしろ、地方公務員なり国家公務員なりの試験を通った人だけが統治機構を構成するという考え方が、もう既にもたないのだろう。仮に、分権によって権限を外に出す、あるいは規制緩和によって外に出しても、中核が従来型の公務員像で占められていたら、やはり市民参加というのは具体的に実現できないというふうに思うのです。  個別法の中で市民参加を実現する方法もありますけれども、世界に誇り得る二十一世紀行政を考える市民自身を行政府の中に登用するということを考えたらいいのじゃないか。私は、これを仮称市民府といいまして、内閣府と並ぶ非常に重要な機構として位置づけたらいいというふうに考えているわけですね。それによって初めて、開かれた行政とか開かれた政策とか、あるいは市民が主役であるというところにいくのではないかというふうに思っているということであります。  独立法人や行政委員会についてもそれと同じような考え方でありまして、要するに、すべてが国家を担う必要はありませんで、いろいろなことについてそれぞれの形で分担したらいい。その際、決定的に重要なことは、情報が公開されていること、それから市民が参加できているということです。  今までの行政委員会や特殊法人等を含めた委員会について問題があるとすれば、それはやはり、官と、学者もその一部に入るかもしれませんが、そういう人たちのみでクローズドした形で行っているということですね。これは、市民を入れるということ。  それから、もう一つ重要なことは、これは非常に重要だと思うのですけれども、やはり永遠の組織と考えないということですね。役目が終わったら終わっていいということを、いろいろなことを考えずにしたらいいのではないか。日本の場合には、特に法律がそうでありますけれども、一たんつくったらなかなか変えられないということがあります。これをスクラップ・アンド・ビルドが非常に自由にできるような社会にしたらいいのではないかというふうに思うということです。  以上です。
  139. 佐々木毅

    佐々木参考人 これについては、特にプラスもマイナスも積極的な意見はございません。
  140. 伊藤忠治

    ○伊藤(忠)委員 時間が参りましたので、非常に残念でございますが、ほかの先生方にもお聞きしたいことを結構持っていたのですが、お許しをいただきたいと思います。  終わります。
  141. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、大口善徳君の質疑に入ります。
  142. 大口善徳

    ○大口委員 新党平和の大口でございます。  きょうは、六人の先生方、大変お忙しいところをありがとうございます。連休明けということで、連休をつぶしてこちらの方に来ていただいたことに、心から感謝を申し上げます。  私の方からは、もう先生方お話をされておりますが、今回の省庁再編ということの順序のあり方でございます。  行政改革というと省庁再編が先行してしまいまして、官民の役割あり方あるいは地方分権規制緩和、こういうものがセットになっていない。地方分権推進委員会の方においても、規制緩和においても、現在の行政組織というものを前提にしてやっている。また、省庁再編の方は、地方と国の権限だとか官民のあり方とか、現状前提にしてやっている。お互いにそういう点で連携がないためにちぐはぐになっている。そういうことで、私は、やはりこれは思い切ってまず国の仕事というものを確定する、こういうことが一番大事であろう、こういうふうに思うわけでございます。  そういう中で、佐々木先生の方からは、政治が主導しているという点においてはなかなか評価できるという点もあったわけでございますけれども、こういう手順について、本当に正攻法と言えるのかどうか、これについてお伺いしたいと思います。  また、五十嵐先生には、先ほども同趣旨のことをお話しされましたが、こういうふうにちぐはぐになっているために弊害が出てきていると思いますね。中央省庁の再編だけが先行している。弊害が出ている。どういう弊害が実際出てきているのかということをお話し願いたい、こういうふうに思います。  そしてまた、跡田先生におかれましては、先ほどもそういうプロセスについて、私が今申し上げましたことをそのとおりおっしゃっていただいたわけでございますけれども、このプロセスについて御意見をお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、野呂田委員長代理着席〕
  143. 佐々木毅

    佐々木参考人 今御指摘ございましたように、手順について、どこから入ればいいのかということについては、先生おっしゃられますように、地方分権という入り方もあり、規制緩和という入り方もありということは、おっしゃるとおりだろうと思います。そういう中で、中央政府というものの役割を限定していくという手法も十分とり得たというふうに考えておりまして、そういう意見がいわゆる野党の間でかなり強いということも私自身十分に承知しているところでございます。  そういう中で、この中央省庁の問題をどういうふうに扱ってきたかというこれまでの流れを見ていきますと、やはり今までの中央の政治や行政システムあり方の見直しをやってきた流れの上にこの話が出てきたなという感じがするわけでございます。そういう意味で、特に地方分権の位置づけといったような問題について、今後もっと重要視して進めていかなければいけないとかいう点が多々あることは私自身も認めるところでございます。  ただ、そことの関連で、一言私の意見を申し上げさせていただきますと、中央の政治、中央役割は何なのかということについては、余り消極的にばかりとらえられるとちょっと困るなという感じがするわけでございます。  今、日本中央政府問題点は、余りにもたくさんの権限を抱えているという点もありますけれども、ちょっと能力的に十分でないのではないかということも実は問題だろうと思うのですね。こっちの方をどうするかという話も同時にぜひお考えいただかなくてはいけない。小さくするというのも一つですが、同時に質的な向上という問題がかなり深刻な問題として出てきているのではないか。これは、先ほど中北先生からお話があった点とも私は関連すると思うのですね。ですから、この両様のにらみでこの問題を、きょうの案件についていきますと、見ていかなければいけないという点を私は強く感じております。  先ほど、ベースキャンプ論は必ずしも余り評判がよくなかったですが、そういう意味でいいますと、ここの点もまだベースキャンプの感が少なからずあるということを申し上げさせていただきたいと思います。
  144. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 行政改革地方分権あるいは規制緩和、その他もろもろの改革が同時進行である。しかも、それがいろいろちぐはぐになっているように見える。その弊害は何かといいますと、私自身は、比較的国会の動向については地行等を含めて注意深く見ている方の部類だとは思うのですが、何が起きているのかさっぱり理解できないということです。  とりわけ財政構造改革などを見ますと、あれだけ大がかりにつくって、一カ月や二カ月でまたぱっと変わるというようなことを見ていますと、何を一体政治はしようとしているのか、国民からはほとんど見えない。日本が今パッシングに遭っている最大の理由は、何も見えないというのが番大きいのだろうと思います。  それで、それをもう少し具体化いたしますと、こういう改革一つ一つについてだれが一体責任を負うのか、それがまた見えない。  例えば、わざわざ総理大臣が議長になりまして行革会議を主宰しました。財政構造改革会議も、総理大臣みずからが議長になりまして主宰いたしました。従来の政策決定のプログラムと比べますと、これは非常に変わったことですね。従来は、審議会をつくりまして、そこに諮問をしまして、そこから答申を受けて実施するという形でしたけれども、みずから議長ということですから、いいも悪いも、みずから総責任者としてこの案を出すということを決意したあらわれだろうと思うのです。しかし、それらがことごとくいろいろなところで反乱軍に遭いまして、いつの間にか趣旨が不明朗になってきているということですね。つまり、いい意味での責任者、統治というのが日本では全く見えなくなっていることが一番の大きな弊害だと思います。  最後の問題、やはりこれは国会とかかわると思うのですが、今の行政改革地方分権規制緩和というのは、要するに官の改革、質の改革を目指すというものだろうと思うのです。ところが、その質の改革をするためには、先ほどからずっと話題に出ております設置法を含めて、膨大な法律を改正しなければいけない、あるいは新設しなければいけないわけですね。その法案をつくる作業が、本来は国会も分担すべきだと思いますが、依然として日本の場合にはその法案の策定作業をやはり官僚にゆだねざるを得ない。つまり、まないたのコイに包丁をもたらすようなことがどうしてもブレークスルーできないために、絶えず官を片っ方でいじめながら、片一方で官に頼むということをやるから、いろいろな構造が国民から見ると不明確に見えるということだろう。  思い切って国会の中に委員会をつくりまして、小委員会をたくさんつくりまして、ここに在野の、大学とか、あるいは専門家とかその他を入れて、国会みずから具体的な法案をたくさんつくっていけばいいだろう。地方分権法なんかについていえば、みずからつくっていったらいいんじゃないか。何も政府のスピードに合わせなくたっていいわけでありますから、できるところからどんどんやっていくと、その結果として、行政とは何なのかということが別な角度からちゃんと国民に見えるようになるのではないかというふうに私は思っております。
  145. 跡田直澄

    ○跡田参考人 基本的なところは委員と全く一緒の意見と思います。  手続に関して一つだけ。もう少し大きなところからの手続ということで申し上げるならば、こういう改革をするときに、内閣が一本だけぽんと法案を出してくるというやり方、これがいいのかどうか。本来ならば、国会の中で、まず与党ないしは現在でいうならば自民党という形で案を出し、そして野党の方が案を出す、それを調整するような形で内閣が最終的な案を出すというようなプロセスをとるべきではないかと思います。  多少委員長に申しわけないのですが、私は、出ていて非常にきょうは不愉快でございまして、真剣に議論されているのかどうかというのがちょっと、委員長自身に私は質問してはいけないというふうに聞きましたけれども、大学で教えている者として、こういう形で人に話をしなければならないというのは非常に不愉快でございますので、少し委員長から委員の方々に何か言っていただきたいと思います。
  146. 大口善徳

    ○大口委員 この行革は、それこそ国家百年の計でございまして、そういう点では、本当に我々は真剣にやっていくべきである、こう思っております。今参考人からの厳しい御指摘がございました。またしっかり取り組んでいくべきだと思います。  そこで、行政改革というのと財政改革というのは、これはやはり表と裏の関係にあると思います。少子高齢化社会、これからますます進んでくるわけでございまして、本当に福祉等にも、これは非常に高齢化ということにおいてお金もかかってくるわけでございます。そういう中で、今景気対策ということもございますから、減税という問題もある。そういうところで、欧米等を見ましても、やはり行革というのと財政改革というのは非常に表裏の関係になっておるわけですね。  ところが、今回のこの省庁再編において、コストの削減ということがはっきり見えてこないということが私は言えると思います。十年間で公務員の数を一〇%、これは定員を削減するということですが、純減ということではないという答弁もございました。  そういう点で、やはり国民に理解していただくためには、一般の企業においてはもう非常に徹底したリストラをしておるわけですが、また国民生活向上のために、思い切って増員するところは増員する、あるいは公正な社会をつくるために、例えば検査制度についてはきちっと拡充するとか、こういう構造改革、そしてまた、そういう中で思い切ってリストラをしていく、コスト削減もしていく、こういうことが大事だろう、こういうふうに考えております。  そういうことで、この点につきまして、加藤先生、そしてまた財政学の関係から跡田先生、そして五十嵐先生にもお伺いをしたいと思います。
  147. 加藤秀樹

    ○加藤参考人 今の大口委員の御指摘については、私は全くそのとおりだと思います。  行政と財政というのは、財政というのは行政を行う上での必要な経費ですから、行政を見直すことが財政の見直しにつながっていかないといけないというのは当然でしょうし、そうならなければこれは本来の行政改革ではないということなんだと思います。  ただそこで、では、どういう意味での財政改革につながるかといいますと、私は、定員そのものの削減というのは、これは極めて微々たるものではないかと思っております。現在、既に日本公務員、特に国家公務員の例えばGNPあるいは人口に対する比率というのは、主な先進国の間でも非常に低い方ですし、これは予算の中で占める比率自体小さいものですから、むしろ、定員を減らすことによるコストの削減よりも、どういう仕事を行政で行うかという仕事の中身の見直しに尽きるんではないか、こんなふうに思っています。  そういう意味では、先ほどからたびたび各参考人のお話の中でも出ております、公共事業をどう見直すか。これは、公共事業がすべて悪いというわけではないにしても、現在の公共事業の中には非常にむだなことが多いわけですから、それの見直しというのは非常に大きいと思いますし、また、例えば高齢者に関することを含めた福祉についての財政、予算についても、どこまでこれは行政で行うのか。むしろ、いわゆるNPOといったようなことを含めた民間で行った方が、よほど安く、しかも行き届いたサービスが行えるという指摘は、これはいろいろなところで行われております。ですから、そういうことをきちっとやれば財政は相当小さくなるのではないか。  例えば今回のような景気対策についても、私は、税をカットしていくということは、これは一時的なことではなくて、もっと長期的に見て、日本行政あるいは経済社会構造を変えていく上で大事だと思いますけれども、そのときに大事なのは、税をカットするだけではなくて、それに見合った歳出削減をやっていくことではないかと思っております。それが結果的には、行政・財政改革、それから国民の側での経済構造の変化あるいは体質改善につながっていくということだと思います。
  148. 跡田直澄

    ○跡田参考人 内容的には今の加藤さんと全く一緒でございます。  財政を再建していくということ、これ自身は確実に進めていかなければいけないと思いますけれども、定員を削減するということが直接につながるとは思いません。ただ、業務を見直して仕事を減らしていけば、それのついでに公務員の数も減る、それが財政再建につながる可能性はございます。  しかし、最終的な姿というのは、国がやる仕事は減るかもしれませんが、地方財源とともに回すものというのはかなりございますので、本当の意味での、今国家がやっている、中央政府がやっている財政規模というものの中にどれだけ不要な部分があるかというと、これはそれほど多くはないと私は思っております。規模的には大体二〇%ぐらいは削減できると思われますけれども、それ以上のものはかなり難しいのではないかと思っております。  以上でございます。
  149. 大口善徳

    ○大口委員 次に、いろいろ大蔵省の接待の問題等がございました。山一の問題におきましても、証券局長の示唆があったということ、それが飛ばしにつながったんじゃないか、そういうことも議論されております。非常に官僚権限というものが大きい、ここにメスを入れていかないと本当の行革とは言えない、こう思うわけでございます。  そういう点で、今回いろいろ設置法について加藤先生の方からお話がございました。非常にわかりやすく、図を交えての御説明でございました。要するに、今の各省庁設置法というのが、天皇の官まであり、そして憲法制定の前の官制というところからきている。そして、そこに所掌事務とともに権限がセットで規定をされている。本来、例えば法律というのは、国民に対して作用する、国民の権利義務に対していろいろと作用するということと、それから省庁の中の権限関係を規定する。この二種類が設置法権限規定の中にあると思いますが、例えば国民に対する作用法、こういう個別のものがなくて、そして設置法というものを根拠にいろいろ行政指導が行われる。そういうことが加藤先生、二十年にわたって大蔵省でやられていた、その実感としてある、こうお伺いしたわけでございます。  そういう点で、この設置法につきまして、とにかく所掌事務だけを規定すればいい。要するに、これは行政庁内部の役割、境界線を引くという問題、それにとどめるべきであって、権限規定というものを盛り込むと、かえってそれを根拠に行政の民間に対するいろいろな関与がある。これは弊害が多いということで、この権限規定を削除する。私は、非常にわかりやすいことでありますし、こういう設置法すべてを見直していく中にあって、そういうことこそ本当に議論をすべきである、こういうふうに思うわけでございます。  さらに、では、そういうふうに権限規定を設置法から外しただけで裁量行政というのはなくなっていくのかどうかということ。今、法律自体が非常に抽象的になっていますね。そして、定義だって非常にあいまいです。幾らでも役人が解釈をしたりすることができます。そういう点で、法律の規定の仕方ということも根本的に考えていかなければいけないのじゃないかな、こう思ったりもしております。  それから三番目に、行政権限法ですね。これも、例えば許可とか認可とか届け出とか、もう何十項目にもわたって行政国民に対する関与というのがいろいろあるわけですね。そういうことについてもきちっと定義をしていくとか、あるいは個別の権限法がむやみに乱用されないような形の、そういうきちっとした行政権限に対する枠をはめていくような法律も必要ではないか、こう思っておるわけでございますが、御意見をお伺いしたいと思います。     〔野呂田委員長代理退席、委員長着席〕
  150. 加藤秀樹

    ○加藤参考人 今の、行政権限法、これは必ずしも一般的に知られた名前ではないのだと思いますが、私の理解では、権限というものについて改めて定義し直して、整理し直すための法律、こういうことであろうと思います。  それで、例えば大口委員の最初の御指摘にありました飛ばし、違法行為の相談、こういうものは本来、役所にこれはどうしましょうかというような話ではないのだと思います。それを、企業の側もあるいは受ける役所の側も、ごく当たり前のように、あるいはこれは非常に大事だから何とかしないといけない、そういう意識で相談に乗ること自体が、これは悪意ではなくて、何とかしないといけない、むしろ責任感でもってそれをやろうとしているところに今の日本行政の非常に重大な問題があるのだろう。こんなことは本来、役所に相談に来れば、相談に来るなと言わないといけないところであって、その前に、民間の方が、隠すことはあるかもわからないですけれども、役所に相談に行くという意識を持っていること自体が、やはりもたれ合いの象徴ではないのだろうか。ですから、こういうところを大いに改めないといけない。そういう意味では、設置法権限の見直しというのは不可欠だと思います。  その上で、先ほどの権限規定、権限法でありますけれども、私自身法律学者でないものですから、やや荒っぽい言い方を申し上げますと、いわば日本じゅうにいろいろな、本当にもう数え切れないぐらいの法律があって、その中にありとあらゆる、例えば許可、認可、認証、届け出、報告、さまざまた言葉が使われた役所の権限というのがあるわけです、それが規制につながっているわけですけれども。これを例えばパソコンの中に全部入力して検索しやすくする。私は、権限法というのは、簡単に言えばこういうことではないのかと思います。  例えば一つのアイデアとして、許可とか認証とか届け出とかいう権限の具体的な項目ごとに整理をし直す。それで、許可であれば、何々省がどういう法律に基づいてこういう権限を持っている。それがA省、B省、C省というふうにずらっと並んでいく。そういうものが権限法としてあり得るのではないかなと思っております。  それで、今の設置法から権限を取るだけでも非常に絶大な効果があると私は思いますし、そのことによって起こる不都合というのはないと私は思っております。それによって権限が乱用されるということはあり得ない話ですし、権限というのは個々の法律に基づかないといけない。むしろ、設置法権限規定はそれより幅広く与えているわけですから、それがなくなって乱用ということはないと思います。  また、必ず反論としてあり得ますのは、世の中、何が起こるかわからないではないか、何が起こるかわからないから広目に権限を与えているのであって、それがなくなると、何か起こったらどうするのだ、こういう反論があり得ると思います。  ただ、これについては、何が起こるかわからないものをあらかじめ行政官庁が何とかしようとすること自体が本来ルール違反ではないのか。おこがましい話であって、何かしないといけないかどうかというのは、まず国会が判断して、その上で、必要なら法律を定めて、それに基づいて行政を行うというのが本来のルールだと私は思っております。  ですから、そういう意味で、まず権限を外すということ、さらに、先ほどのパソコンの例で申し上げましたように、権限一つ一つ整理していきますと、国民の側からしてみますと、何か仕事をしようとすると、そこにどういう規制があって、どういう役所がどういう権限を持って何をしようとしているかということが、権限法があれば非常にわかりやすくなる。  と同時に、内閣にとっても、これは先ほども申し上げましたように、内閣自体、各省庁に、規制緩和をする、ついてはどういう規制があるかというのをまず持ってこいと言っても、全容がわからないと、十個持ってきたのが全体の一割なのか一%なのかわからない。ですから、そういう意味で、こういう権限法を整備しますと、内閣が行政官庁をコントロールするのも非常にやりやすくなる、そういう効果があると思っております。
  151. 大口善徳

    ○大口委員 そこで、中北先生にお伺いをしたいのですが、先ほども、事前裁量型の行政、それに対してルール行政、こういうことがある。特に金融行政というものは、そういう点で事後チェック的に非常にきちっとやっていかなければいけない。検査官一千人体制をつくるべきだ、まさしく非常に正しい御指摘ではなかったかと思います。  そこで私、金融に対する監督とそして検査、この分離というもの、これは大事じゃないか。といいますのは、それが一緒になりますと、監督を十分していなかった、検査を一生懸命やりますと監督が不十分ということが出てくる、こういう利害相反が出てくるのじゃないか。そういう点で、一つは、監督と検査の分離、これについてお伺いしたいということ。  あと、この金融、財政の分離につきましては、信用秩序の維持とともに通貨主権ということがございます。通貨主権のことを考えると、財政、金融の分離というのはできないんだ、こういう議論がございます。その辺、通貨との関係。  この二点についてお伺いしたいと思います。
  152. 中北徹

    ○中北参考人 具体的な御指摘ですので、それに対して具体的にお話しいたしますと、私は、金融と財政をまずすっぱり分けるべきであって、そこには企画立案も含めて金融をそっくり監督庁に移すというのが基本だというふうに思っています。  その上でなんですが、今先生がおっしゃいました監督と検査、これをまた区別して、さらに峻別すべきではないかという御指摘のように承りましたけれども、それは私は正しくない考え方だというふうに思います。  一点目は、まず監督に関して、監視というか監督というか、そこはちょっとニュアンスがありますけれども、従来の護送船団方式に立つ監督というのは、これからはうんと縮小していく必要があるというふうに思います。原則自由、これがまさにビッグバンの精神だというふうに思います。しかし、その上で、なおかつシステミックリスクといいますか、決済の問題その他ございますので、ある程度の検査、監視と言った方がいいと思いますが、それは私は極めて重要だというふうに思います。  問題は、この両者が一つの屋根の下に同居すると、またその先、癒着だとか不祥事が起こりかねないのじゃないかという御心配だというふうに思いますが、そうではない。私は、ここにおいては、まず一にも二にもディスクロージャーを徹底してやっていただくということが重要だというふうに思います。  ディスクロージャーを徹底して行い、そしてそれをサボつた金融機関に対しては厳しい罰を加える。そして、市場からもまた、事実上の資金の引き揚げ、あるいはリスクプレミアムという形で罰則を受けるという形でありますので、私は、ディスクロージャーを徹底して担保すれば、その問題というのはおのずと解消されるというふうに思います。ここで、せっかく監督庁に出して、その上またさらに分ける、あるいは監督を大蔵省の企画局に残すというのは、もしそういうお考えであるとすると、それは私は正しくないというふうに思います。  基本的に、ディスクロージャーを徹底することによって、これからは、単に銀行、バンキングだけではなくて、広い意味での証券とか保険とか、そういった伝統的に銀行以外がやってきたものも含めて、包括的にチェックが、オープンな形で、そして平等な形で、ゆがみのない形で基本的に当局のにらみがきくという意味で、私はその方がいいというふうに思います。  それから、通貨主権のお話でありますけれども、これは一言で言いますと過去の御神体のようなものでありまして、歴史的には、フリードリヒ大王とか中世の国王が発行したように、金貨、硬貨にみずからの印影をつける、あるいは紙幣に何か国王の文字を入れる、それで発行すれば、いわゆる貨幣の鋳造利益、つまりセニョレッジというものが得られたわけで、要するに、印刷代を除けば全くコストなく資金を集められた、これが財政だったわけです。つまり、金融と財政が歴史的に一体だったわけであります。  しかし、そういう流れというのは、資本主義の市場経済の発達の流れの中で、自律的に金融機関、銀行というものが預金をとりながら、同時にそれが広い意味の貨幣を生産するということで、市場において、より多くの我々が日常使っているいわゆるマネーというのが生産されてきたわけでありまして、逆に、そういった国王なり財政当局が発行することによってつくられるマネーというのは縮小してきた。今や日本においても、ハードカレンシーといいますかコインですね、あるいは紙幣の持つ比率というのは十分の一ぐらいになってきているわけです。  ですから、これからの流れというのは、財政と金融が峻別されていき、市場経済の流れの中でより多くの貨幣、いわゆるマネーというものが生産されるという時代に入っているというふうに思います。  そのような意味で、歴史的な経緯はそのとおりですけれども、今や資本主義、そしてグローバリゼーションという流れの中で考えてみますと、過去のそういった経緯にとらわれるというのは大変まずいというふうに思います。
  153. 大口善徳

    ○大口委員 どうもありがとうございました。
  154. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、東祥三君の質疑に入ります。
  155. 東祥三

    ○東(祥)委員 自由党の東祥三でございます。  参考人の諸先生方、午後一時から長時間にわたりまして貴重な御意見をいただきまして、本当にありがとうございます。  先ほど伊藤委員の方から全く同じ印象が述べられました。私も、諸先生のお話を聞いていて、どなたかこの基本法を積極的に推進される方がいらっしゃるのかなというふうに思いましたけれども、だれも積極的な評価を下されている方はいない。そういう意味において、ぜひ与党の皆さん、深くこの点を踏まえていただきたいと思います。  さらにまた、跡田先生におかれましては、大変申しわけなく思っております。不愉快なお気持ちになられたその背景については、また後でいろいろとお聞きしたいと思いますけれども、多分、参考人の諸先生が、専門分野を踏まえた上で、この極めて重要な法案についての意見を開陳してくださっている、それを踏まえた上で、それがどのように反映されていくのかな、そういう思いで来てくださっていると推察いたします。  しかし、この委員会における状況を見ていると、多分、いろいろな意見を開陳してくださったとしても、それがいい方向に反映されないのではないのか、そういう思いでひょっとして不愉快になられてしまっているのではないのか。それがまさに、今日における行政システム、また国会、とりわけ日本の政治家の役割、そういうものが極めて制度疲労を起こしてきている、その証左なのかもしれません。  そういう意味で、何と申し上げていいかわからないのですけれども、申しわけなく、また、そういう政治ではない方向に持っていかなければならないのだろうと、改めて決意を深めている状況でございます。  その上で、まず佐々木先生に。  この法案というのは、成立しても、まあ五年以内に動き出すわけですけれども、早ければ平成十三年。佐々木先生の冒頭のお話の中に、二十一世紀型のシステムというよりも、やっと二十世紀型のシステムに近づいたのかな、こういう御発言がございました。  二十世紀型のシステム、そしてまた二十一世紀型のシステムというのを先生はどのようにお考えになっているのか、また、何でこの法案が二十世紀型のシステムというふうに言われたのか、その点についてちょっと敷征していただければというふうに思います。
  156. 佐々木毅

    佐々木参考人 あるいは私の発言が必ずしも適切でなかった面もあろうかと思いますが、趣旨はこういうことでございます。  二十世紀型のシステムというのは、大変強い国家というものを前提にしております。ですから、当然のことでございますが、そこで例えば総合調整とか強力なリーダーシップというようなものを担保するための仕組みというものを私はつくってきたと思うわけでございます。アメリカの大統領制しかり、イギリスの内閣制しかりでございます。内閣機能の強化というような話がこの段階になって出てくるというのは、ある意味でいうと、別にそのこと自体は私は評価いたしますけれども、そういう話はもっと前から出てきていただかないといけない話だったのではないかというようなことがあるわけでございます。  その意味で、例えば情報公開にしましても、何も二十一世紀ではなくて、二十世紀後半において既にこれもいわば話題になってきたテーマであったろうと思います。それも、不幸にして必ずしも今まで十分だったとは言えなかったという面が指摘できるかと思います。今度、情報公開関連の法案というものが審議される中で、ようやくそこも出てきたというような話だろうと思うのですね。  二十一世紀というのはどういうものか。これはもちろん簡単にどこかで線引きできるものではございませんけれども、どちらかというと、先ほど来先生方から御発言のあります分権などというのもそういう感じのものに近い。二十世紀もそうだったのですけれども、あるいは規制緩和とかいったようなものも恐らく二十一世紀に近い。二十世紀は、どちらかというと、やはり国家というものが面倒を見てくれるというような感じの仕組みだったと思うわけでございます。それがこの法案理念の中でも、いろいろなものがまじっているという面はやはりあるわけでございます。  私の申し上げました趣旨は、では二十世紀はもう終わりだからやらなくていいのかというと、そうではないだろう。そこはやはり、やらなければいかぬことはきっちりやらなくてはいけないだろう。しかし、それで終わったということではないということも、この法案の中でいろいろな趣旨が出てきているわけでございます、それはまたそれでやらなくてはいけないのだと。  先ほど来、一度方向が定まりますともう何十年か動かないよという議論がございました。それは確かに正しいかもしれませんが、私は、その考え方そのものがやはり二十世紀的のようにも聞こえるわけでございます。その意味でいえば、今、音を立てて今までの仕組みが崩れてきている。そして、かわるものがないという不安感の中に国民がほうり出されているというような状況ではないだろうか。次に行かなければいけない、しかし前の課題も整理しなければいけないという意味で、先生は積極的に推進するという意見がなかったというふうにおっしゃられましたけれども、まことにその意味では、この法案は悩ましい面を持っている法案であるというふうに思います。  しかし、悩ましいけれども、ではやらなくていいのかといえば、そういうことではなくて、それはまさに、そこから仕事を始めていかなければいけないという意味で、先ほどベースキャンプという言葉を使わせていただいたということでございます。  以上でございます。
  157. 東祥三

    ○東(祥)委員 私の質問の角度、二点に絞って質問させていただきたいと思います。一つは全般的なこと、もう一つは個別具体的ということで、内閣機能の強化についてどのように思われるかということで質問させていただきたいと思います。  自由党の考え方に関しては、今お手元に配らせていただいております。  誤解のないように前もって御報告しておきますが、旧新進党時代、一九九五年、三年前ぐらいになりますが、特殊法人、この問題についてはこの法案においては全く言及されていないわけですが、既に特殊法人全廃を含んだ中央省庁再編法案提出させていただきました。  また、一九九七年六月には、いわゆる政治改革、政治の活性化という意味で、きょうは参考人の方々と直接こういう形で質疑をさせていただいておりますが、諸先生御存じのとおり、各委員会あるいはまた本会議において議員が質問するときに、あらかじめ質問内容を全部配ります。当然、その質問内容がどういうことなのかということで、官僚の方々が各部屋に来て、どういう質問をされるのですか、これが旧態依然としてまだ行われているわけでございます。行政改革委員会においても、質問するときに必ず皆さんが来ます。そういうものをなくすことが少なくとも行政改革じゃないのか。官僚皆さんはもっとやらなくてはいけないことがある。当然、私たちが質問する相手というのは大臣ですから、政治家ですから、政治家が政治の話をする上で、技術的な問題はともかくとして、当然答えられる質問だ、別に具体的な質問内容とかそういうものは必要ない。そういうことを制度化させていくためには、政府委員制度というものをある意味廃止して、当然政治家が表に出てきて議論すべきだ、そういう法案を出させていただいておりますけれども、現実にはそれが否決されてしまっているということをぜひ理解しておいていただきたいと思います。  今回のこの法案に関しては、基本的には三点大きな問題があるのだろうというふうに私どもは思っております。  一つは、もう既に多くの委員の方々から質問も出ておりますし、また諸先生から答えが出ている、順序の問題でございます。この問題に対しては省かせていただきます。  もう二つあると思います。一つは中身の問題、もう一つは他の改革とのリンケージの問題でございます。  中身の問題に関しては、もう御案内のとおり、この法案というのは国だけが対象になってしまっているわけですね。地方分権の内容がまだわからない、今国会中に出てくるらしいですけれども。また、規制緩和に関しては、三月末に一応出ておりますけれども、この法案が成立した後、具体的にはめ込んでいかなくてはいけない。それがどういう形でもってはめ込まれるのかということもよくわからない。いずれにしても、国だけが対象になっている。地方のことについては全く含まれていない。また、民間の活動についても含まれていない。さらにまた、特殊法人に関しても含まれていないわけでございます。  先ほど、跡田先生の方からも、プロセスに問題がある、と同時に、国が何をしようとしているのかということが非常に不明確であると。対象が国だけなんですけれども、国が一体何をやろうとしているかということも不明確になってしまっている。  例えば、日本の大きな特徴として、安全保障の問題というのは本来国が担わなければならない問題、そのうちの一部を機関委任事務ということで県に委任している問題がございます。今後の検討によって、機関委任事務というものが全部廃止されて国の方に戻ってくるとするならば、こういう行政改革をやることによって国の役割を明確化することによって、ある意味で国の仕事というのは、ある一部分においては減るのではなくてふえるということも出てくるのではないのか。しかし、そういう問題に対して明確にちゃんと言っていない。また、言えない。そういう問題をはらんでいるのです。  まず、この問題について、これは中身の問題ですけれども、五十嵐先生、どのように思われるのか、この点についてお願いいたします。
  158. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 過日、国土交通省の問題で小沢党首にお会いしたとき、こういう話をさせていただきました。  少なくとも、今先生より渡された「行政改革に対する視点」のうちの自由党の部分について、「行革の手順」については全く一致であります。それから「法案」についても、これはまさに私の方は可決すべきであるというふうに思っています。つまり、官僚内閣制から国会内閣制へ変えることが行革の目的であって、国会内閣制に変えるのであれば副大臣などは絶対に必要というふうに私は思いますので、これは可決すべきであるというふうに思います。  あと、以下のことについてちょっと読む暇がありませんけれども日本再生のビジョン以来ずっと読ませていただいているのですが、できれば、これをトータルに、やはり法案等の形でもう一度出していただいて、国会で、今の内閣から出されている案と対比するような形で、国民の目に見えるような形にしてどちらを選ぶかというところまで押し上げていただけると、国民から、行政改革というのは何をしているかということが非常に見えてくるのじゃないかと思います。  それから二番目に、行政改革の中ではもちろん、先ほどちょっと気になることがあったので申し添えたと思うのですけれども行政の質の改革が問題でありまして、必ずしも全部削減するということでは本来ないのですね。国家として重要なことについては、場合によったら量がふえることもあり得るわけでありまして、それは、その一つ一つ行政領域に関してどういう政策を出すかということにかかわっているのだろうと思います。それが地方分権規制緩和ということで大くくりされているわけで、それが見えないものですから、何かぼうっとして議論のしようがないというか、そういうことになっているのじゃないか。  この点に関しましても、地方分権については、新進党が大分議員立法で頑張ったことを承知しておりますので、ああいう形でもう一度自由党も引き継いでいただいて、そういう案を活発に国会に出していただければ、国民の目に、何が今問題になっているかということが見えてくるのじゃないかというふうに思います。
  159. 東祥三

    ○東(祥)委員 跡田先生に質問させていただきます。  今回の基本法案というのはプログラム法案なんですが、他の、橋本内閣が進めようとしている、例えば経済構造改革、あるいはまた財政構造改革とリンケージされていないんですね。これは質問をさせていただいているわけですけれども、これはこれ、あれはあれ、そういうとらえ方をしているわけです。  私どもは、ここにも簡単に書かせていただいておりますけれども、二年ほど前ですけれども一つは十八兆円減税というのを訴えさせていただいた。残念ながら、国民の信を得ることができず、だめになってしまった。これは恒久減税、ある意味で経済構造改革。それと同時並行的に、まさに行革によって二十兆円のスリム化をさせる、お金を節減させる。さらにまた、公共料金の値下げ、社会保障改革、そして、先ほど言った政治改革という五つのパッケージで申し上げているのですね。  今回でも、行革で歳出を削減して、その金でもって減税の財源にさせることができるではないか、そして、その減税で構造改革を進めることができるのではないのか、こういうふうに普通考えるのでしょうけれども、先ほどからいろいろと先生方からおっしゃってくださっているとおり、この行政改革は、中央省庁を再編することによって一体何がどのように具体的になるのかさっぱりわからない。したがって、わからない以上リンケージさせようがない。したがって、とにかくこの法案だけは通過させてくれという、これ一点なわけですね。  つまり、基本的に今、まさに中北先生の方からも冒頭お話がありましたが、多くの国民にとって最大の関心事項というのは、日本金融状況あるいはまた経済状況がどういうふうになるのか、それに対して政府は何をやろうとしているのか、それと同時並行的に、行政改革というのは、やはり日本というのはスリム化させなくちゃいけないね、その関係性というのはどうなっているのか。だれも答えてくれない。答えられる人がいないということがまた悲劇なんですけれども、このリンケージされていないということに関して、跡田先生、どのような御意見をお持ちか。  また、跡田先生は、大著の「無税国家」という本も読ませていただきましたけれども、基本的には限りなく無税に近い国にしていくことができるんだ、そういう論をお持ちの先生でもございます。この点について、御所見を伺いたいと思います。
  160. 跡田直澄

    ○跡田参考人 お答えさせていただきます。  まず、日本の経済状況というものがどういう状況にあるかという点が一番大きな問題ではないかと思います。  現在、一時的な不況だというふうにとらえ、景気対策等を大幅に続けてこれまでやってきております。五年間続けてやってきておりますけれども、そういう一時的な景気の後退期というふうにとらえるべきなのか、もう少し構造的に、日本経済がそろそろへこたれている、これは欧米の先進国病、欧米といいましてもイギリス、アメリカというふうに考えていただいたらいいと思いますが、そういうところの十年から二十年前の状況、それに近いところまで日本が行き着いている可能性があるのではないかという、その辺の認識の違いということがまず大きいような気がいたします。  一時的な不況だというふうに考えるならば、今の対策というのが少し有効になってくる可能性もあると思います。しかし、この四、五年やってきたことから見ますとほとんど効き目が出てこないというのは、従来の経済対策ではどうにもならないような経済の構造的な不況に陥っている。ですから、これはシステム自体を変えないといけない段階に来ているというふうに考えております。  そのシステム全体を変えるというのは、日本型の経済システム、これは経済自身の中にあるシステムもございます。ですから、これは民間自身が変えていく必要があります。それに対して、経済システムを支える背後には、やはり財政のさまざまなシステムがございます。財政の支出もありますし、それから税のシステム。その財政の支出の方のシステムを形づくっているのが、一つは予算であり、そして、その予算を執行する行政システムというものになりますので、やはり、これらを全部上から見て総合的に改革しない限りは、日本の現下の経済状況というものを変えていくことができないのではないか、ないしは二十一世紀に活力を持つ、ないしは現在あるとするならばその活力を維持していくということはほぼ不可能ではないか。  そういう認識が必要だというふうに思うのですが、現段階でそれが出てこないのは、恐らく、貿易収支がまだ黒字の段階ですので、これが、将来的といいますか、近い将来かなり厳しい状況になりますと、日本の経済はかなり深刻な状況になりますので、そこまで真剣な改革がおくれてしまうのかなというのが今現在思っているところでございます。  以上でございます。
  161. 東祥三

    ○東(祥)委員 この点について、五十嵐先生、同じ質問ですけれども
  162. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 私は専門家じゃありませんので、これはちょっと答えることはできません。しかし、いずれにしても、構造全体が問題であるということは同感です。
  163. 東祥三

    ○東(祥)委員 五十嵐先生に御質問させていただきたいのですが、この法案のもう一つの大きな柱というのは内閣機能の強化なんです。とりわけ、内閣機能の強化の中で、危機管理体制にどのように対処していったらいいのか、どのように取り組んでいったらいいのかというのは大きなテーマでございました。  残念ながら、法案の中身を読ませていただきますと、先ほど御発言がありました、総理大臣の発議権というのができた、あるいはまた危機管理監というのを新設することができた。しかし、本質的に、つまりここ数年来起こっている問題に対してどのように対処していけるのかという見通しが全然立っておりません。  阪神・淡路大震災のとき、あるいはまたペルーの大使館人質事件のとき、あるいはナホトカの流出事故のとき、あるいは動燃の事故の問題、こういう問題に対して、その前提流れていた問題というのは何なのかといえば、一つは、総理の権限、あるいはまた官僚依存の体質、あるいはまた情報の流れ、こういうところにメスを入れない限り、また問題は繰り返されるだろう、私はこういう印象を持ってしまうのです。  行政改革会議において、内閣法六条、これを改正したらどうなんだという提言も出されました。事前に閣議の了承を得ておいて、そしてその問題が出たときに対処しよう。しかし、想定できる問題というのは限られておりますから、この世の中で想定できない問題が起こったときに果たしてどうなってしまうのか、一切その辺の危機管理の問題に対しての抜本的なメスは入れられていない。このように私は思っているのですけれども、この点について、五十嵐先生の御意見を賜りたいと思います。
  164. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 認識は共通です。  ただ、要するに、権限が足りないからできないのか、あるいは権限があってもできないのかが問題で、多分、正確に言うと、内閣総理大臣ができないことは何もないと私は思うのです。させないようにしているシステム、つまり、例えばボトムアップシステムであるとか、あるいは各省庁縦割りになっていて総合的な対策が打ち出せないとか、そこが問題なんだろうと思います。  今回の行政改革によってそのことがどのように改善されるか、先生おっしゃるとおり、必ずしも明瞭ではない。一応、内閣機能強化ということでそれをカバーしようということでしょうけれども、実際それがどうなるかは、よく見えないと思います。  問題は、そういうことについてだれが責任を負うかということで、先ほどから繰り返しておりますけれども、内閣総理大臣を頂点とする国民の代表者である国会が、政がやはり責任を負うというシステムをはっきりさせることが一番重要なんじゃないかというふうに私は理解しております。
  165. 東祥三

    ○東(祥)委員 それは責任権限という意味ですか。例えばペルーの人質事件が起こったときに、外務大臣を派遣させるに当たって、総理は、当然犠牲者が出るかもわからない、したがって警察庁の医療チームを一緒に派遣させたらどうなのか、こういうことを考えるのですね、最高責任者として。しかし、この担当というのは国家公安委員長ですね。したがって、それを頭ごなしに言うことはできない。そして、じくじたるもので、基本的にその決断をあきらめるのですね。  そうすると、今お話がありましたとおり、権限がないからできないのか、権限が明確になかったとしても人によって本当に機能することができるのか、この点について非常に不確かなんですね。先生はどのように思われますか。別に権限を明確にしなくても、今の体制の中でそういうものに関してはできるんだと。
  166. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 人間の頭の中で考えられる限りのことをすべて想定して、これをすべて法律に書くことは不可能です。だから、危機というのはまさにそうでありまして、通常のノルマルでは解決できない、マニュアルでは解決できないことを危機というわけでありまして、それは政治的責任において権限がなくてもやる場合もあり得ると私は思っております。
  167. 東祥三

    ○東(祥)委員 ありがとうございます。  それでは、私の質問はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  168. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、松本善明君の質疑に入ります。
  169. 松本善明

    松本(善)委員 参考人皆さん、御苦労さまでございます。貴重な御意見をいろいろありがとうございます。  早速ですが、佐々木参考人からお伺いしたいと思います。  佐々木さん自身が、ベースキャンプ論は余り評判がよくない、こういうふうに言われましたけれども、それは佐々木さんだけの責任ではなくて、やはり今議論になっております中央省庁再編のこの法律が評判がよくないという反映であろうかと思います。佐々木参考人自身がおっしゃいましたけれども、やはり二十一世紀を展望するというようなものになっていない。ほかの参考人からも、国の形が本当に論議されているというような、ものではない、こういうお話がたくさん出ました。  ベースキャンプ論との関係で、佐々木参考人は、政主導を信ずるということを言われたわけでありますけれども、政というのはやはり国民がもとでありまして、国権の最高機関である国会でこれを十分論議するということがまず何よりも大事なんじゃないだろうか、参考人の中でそういう御意見もございましたけれども。  行政改革が必要だということに関しましては、これは方向はいろいろ違うかもしれません。政党の中でも真っ正面から違う場合もあります。しかし、行政改革が必要だということについては皆同じです。そういう点についてやはり国会の果たす役割、これはどうお考えになるか。  この行政改革会議は政令で設置をされまして、国会で議論をするのは今回が初めてなんです、この法案が提案されまして。やはり行政改革の方向を国会で十分論議して、拙速ではなくてやることが必要ではないかと思いますが、佐々木参考人の御意見を伺いたいと思います。
  170. 佐々木毅

    佐々木参考人 いずれにいたしましても、国会で決めていただかなくてはいけないわけでございます。したがって、国会で議論を進められるということの重要性は、国民の注目するところでございます。  私の認識によれば、実はこれは最初にちょっと申し上げたのですが、私はベースキャンプはかなり強く信じておりまして、ほかの方がいろいろおっしゃっているのですが、私自身はベースキャンプ論は信じているのですが、大事なのは、とにかく手をつけなければいけない。つまり、今までの負債といいましょうか、今までやってこなかったことが余りにも多過ぎたということでございまして、したがいまして、私は、この問題について、やはり国会及び政党政治が本腰を入れて取り組むべき絶好のきっかけではないかというふうに考えているわけでございます。  ですから、本法案審議のみならず、今後におかれましても継続的に国会の方で努力をされるということがやはり大事である。特に行政機構の改革というのは、これはもう継続性以外に保証すべきものはないというふうに私自身は思っております。そういう意味で、事はこの法案審議にとどまらず、将来にわたってどういう仕組みで努力を続けていかれるかという点が、私は非常に大事ではないかというふうに思います。
  171. 松本善明

    松本(善)委員 佐々木参考人、書いたものではかなり手厳しくこれを批判していらっしゃる。きょうは大分おとなしくなっていたようでございますけれども政府の誤診と誤断の累積だとか、あるいは信頼性が危機に陥っているというような言葉で言われる。「「入れもの」再編成中心行政改革に膨大な政治エネルギーを費やす意味はきわめて乏しい。」ここまで書いておられます。  この議論をずっとやっておりましても、二十一世紀日本をどうするか、国家百年の大計とか国づくりとかいうことが言われているのですけれども、そういうような議論になっていないのですね。  私がもう一つ伺いたいのは、その信頼性がなくなっている根本は何なんだ。もうずっと、本当に嫌になるほど、行政機構の腐敗が次から次へと出ています。やはりそこを正すということが根本ではないのか。その信頼性がなければ何をやってもだめなのではないか。この点は、佐々木参考人、どうお考えになっていますか。
  172. 佐々木毅

    佐々木参考人 最初に申し上げますが、先ほどの私の書きました文章、これはちょっとこの話とは文脈がずれている面もございますが、今のことについてお答えいたします。  私の感じでは、とにかく諸改革を進めていく以外に信頼は回復できないというふうに思っております。したがって、私は、国民の目から見ますといろいろ政治に対する不満がございますが、しかし、政治の一つのありようといたしまして、具体的な成果を上げて前進していくということが、やはり長い目で見ると大変重要なことであろうと思います。もちろん、その中身についていろいろ議論があること自体は、私は結構でございます。  ただ、私自身が率直に申し上げて非常に重要だと思いますのは、時間が非常にタイトになってきているということ、先ほど来私が申し上げてきたことの中身もまさにそうでございます。つまり、これまで長い間、問題が結果としてうまく扱われてこなかったということのいわば累積というものを十分お考えいただいて、手をつけるべき問題については、やはり適切なタイミングで問題に取り組まれるという必要があるのではないかというふうに思っております。
  173. 松本善明

    松本(善)委員 浜川参考人に伺いたいと思います。  短い陳述の時間で、行政法の専攻でいらっしゃいますので、法案に沿っていろいろお話をいただきました。行政改革そのものについての御意見を承りたいというふうに思っておるのでございます。  三点伺います。  一つは、浜川参考人がジュリストにお書きになっていた点でございますけれども、「日本行政がはらむ問題点は、単なる「肥大化・硬直化」でもなければ「制度疲労」でもなく、本来国民の期待に応えるべき行政が利権の具と化してきたことにある。」ということが書かれてありました。ほかの参考人からも、公共事業福祉に密着していない、そういう方向へ行っていない、むだ遣いがいっぱいあった、こういうことが言われておりますが、この点についてどのようにお考えであるかが一つです。  それから、規制緩和と市場至上主義の問題です。これは、規制緩和をして市場原理にすべて任すということになれば、行政が必要でなくなる、政治も必要でなくなる、弱肉強食だけがはびこるということになろうかと思います。それを真正面から言う人はいないと思いますが、規制緩和万能ということがどうなるか。浜川参考人が岩波講座の「現代の法」の中で行政改革官僚制について論文を書かれていますが、その中で、「市場原理のみを主張し規制緩和をすすめ、社会的・公共的な考慮に基づく行政の適切な介入を否定しようとするとき、安全・雇用など国民生活に深刻な不安定さを生み、また、国民の間に富の偏在を生じ新しい貧困化を生むことがようやく指摘され始めている。」この点について敷衍をしていただきたいということが第二点です。  それから、これは余りほかの参考人やその他からも言われていませんが、大事なことであると思いますし、ぜひ御意見を伺わせていただきたいと思いますのは、やはり同じ論文で、「明治維新や戦後改革につぐ改革であると繰り返しいわれながらも、効率性のみを追求し、その背景に常に日本の軍事的な再生を望む意図があるかぎり、官僚制の改革ができるはずはないのである。」この点について敷衍をしてお話しいただきたい。  時間が限られておりますので、可能な限り簡潔にお願いをいたします。
  174. 浜川清

    ○浜川参考人 第一の問題ですが、もともと省庁再編の話が出てまいりましたのは、先ほども冒頭で申しましたが、第三次行革審の最終答申でございます。最終答申は、細川政権下で行われまして、それまでの政財官癒着構造に対する批判として、政治あるいは行政の見直しを特に言っておられたように思います。  私が言っているのもその点では同じ問題意識なのですが、ただ、今回、政治による行政の支配、官僚の統制ということが強く言われておりますが、日本行政と政治を見た場合に、国際水準から見て足りないのはそれだけではございません。同時に、政治と行政の分離といいますか、行政の中立性の確保日本では十分には発達していない。これはフランスの研究者が日本行政と政治について述べたことでありまして、日本行政寄りか政治寄りかは、評価が難しいのですが、どちらかといえば行政寄りで、行政と政治の間に境目がないというところに大変問題があるというふうに言っているわけです。  したがいまして、今次の省庁改革でこの点を改善しようとするならば、政治による支配だけではなくて、政治によって行政を統御するという、いわゆる政治的任用とかそういうものを言ってその点の改革論を説くだけではなくて、行政を政治から中立的なものにするということも明確にしなければいけませんし、先ほど来参考人の方もおっしゃっておられましたが、行政指導等を通じた法律に根拠のない行政の市民生活、企業への介入をどう制限するかということ、これをやはり考えなければいけないだろうということでございます。  二つ目の問題は、例えばヨーロッパで最近言われていることですが、ヨーロッパは、EC共同体の中で、ドイツは違いますが、ほとんどの国が社会民主党を標榜する政権によって占められておりますが、要するに、規制緩和を進めても雇用確保できないという議論のようでございます。そこで、福祉国家というかどうかはいろいろ議論があるようですが、新しい社会政策が必要である、ソシアルなヨーロッパというのが今言われているわけでありまして、そういうことを考えなければいけないときに来ているのではないかと思うわけです。  三番目のおっしゃられた点は、私が特に危惧するのは、先ほどの御議論でもありましたけれども省庁再編の議論が少し集権的に寄り過ぎているのではないか。  各国の行政組織改革の基本的な手法というのは幾つかあるのですが、主なものとしては二つございまして、権限分権ないしは分散、もう一つが参加です。そういう点からしますと、どうも今回の省庁改革の中では、奇妙にも集権的な発想が前面に出てきていて、私ども、わかりにくいということでございます。
  175. 松本善明

    松本(善)委員 時間の制約がありますので、まとめてお伺いをいたします。  が、まず、五十嵐参考人には、十分述べられたと思いますが、行政改革ということについては何が一番大事なのか、今の中央省庁再編法でそれが果たされるのかという点についてお答えをいただきたい。  それから、加藤参考人、跡田参考人、中北参考人にお伺いしたいと思いますのは、今、財政構造改革路線の破綻ということが言われております。八日にも自民党総務会で大議論になるという話になっておりますが、だれが見ても明白であります。  それで、この行政改革は、五百兆の負の遺産を何とかする、これが一つ課題になっています。この中央省庁再編法にも財政構造改革の推進というのが明記されていますが、これによって、日本の負の遺産が今の方向で解決するだろうかという問題について、御意見を賜りたいと思います。  以上です。
  176. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 行政改革会議の資料を読ませていただきました。二つだけ欠けていることがあると思います。それは決定的だと思っています。  それはやはり、この国をどうしたいかということについて、大くくりにしろ何にしろ、全く何も見えてこないということで、哲学不在、理念不在ということが一つです。  なぜ見えてこないかというと、その裏腹でありますが、やはり国民という言葉が一つも出てこない。要するに、霞が関の範囲内で考えてはいけないということなんですが、結局は霞が関の視野の中に限定されていて、国民が見えてこないということです。  二十一世紀行政は、よかれあしかれ、市民といいますか国民といいますか、その人を除いてはとても行政はできないです。多分、福祉一つとっても、公共事業一つとっても、市民を除いてはできないと思います。それで、あらゆる方法で、それは国会でということもありますし、行政委員会でということもありますし、あるいは行政府そのものの中にということもありますし、あるいは個別法、道路法とか河川法とか、その他いろいろな個別法にもありますが、市民が参加することをつくらないと、二十一世紀はたえられないだろうと私は思います。  そういう意味でいえば、佐々木先生に少し同調するところがありまして、仮にこのままつくっていったら自爆するのじゃないかと私は思います。そういう意味ではベースキャンプであるというふうに私は思っています。
  177. 加藤秀樹

    ○加藤参考人 今の点でございますけれども、財政構造改革がこの行革の法案で実行できるかどうか。当然の話ですけれども、これはもう、全くこれ以降、この基本法案以降、中身をどうするかということにかかっていると思います。  ですから、先ほども申し上げましたように、仕事の中身、行革あるいはそれと表裏の関係である財政というのは、仕事の中身をどこまで行政がやるかということだと思います。ですから、先ほど申し上げましたような設置法の見直しを含めて、しかも地方を含めて、仕事の中身をどこまでやっていくか。  ですから、例えば、この基本法の中でも触れられております公共事業の見直しといったようなことは不可欠だと思いますし、さらに、若干違う視点ですけれども、私は、景気対策と行革あるいは財政改革というのは、本来は二者択一ではなくて、むしろ、行政あるいは財政を強くしていく、スリムにしていって、その結果、強くしていくことによって、どうやって経済なり社会の体質を改善していくかということだと思います。  ですから、そういう意味で、繰り返しになりますけれども、これをもとにして、その後で、これは先ほど佐々木参考人の方からお話がありましたように、継続性が非常に大事である、常にその仕事の中身を見直していくということが一番大事な点だと思っております。
  178. 跡田直澄

    ○跡田参考人 お答えいたします。  財政構造改革というものが今破綻をしようとしておりますけれども、これは内容に関して問題はございますけれども、財政構造改革という考え方を放棄してしまえば、二十一世紀はほとんどないと言っても言い過ぎではないと思います。ですから、その財政構造改革の中身をもう一度見直していくということは必要だろうと思います。  それから、進めるテンポを変えるとか、つくったときがかなり現状判断を誤ってつくっておりますから、そこをきちんと変えながら、各省庁の業務の内容を、単なる、大ざっぱに公共事業何%とか、社会保障何%とかいう議論ではなくて、本当に必要なものと必要でないものとをきちんとふるいにかけた上で各省庁の仕事を減らす、ないしは国の仕事の範囲を決めて、それと同時に、行政改革の方の設置法、私が問題だと思うのは、国土交通省、それとか労働福祉省、この福祉関係のところでも大幅に切り込まない限り、二十一世紀というのは日本はかなり苦しい状況になりますので、そういう側面をあわせてやっていくということが必要だと考えております。  以上です。
  179. 中北徹

    ○中北参考人 私も、財政構造改革を推進するということ自体に関しては、何ら間違いではないというふうに思います。  しかし、その手順、中身というのを見ますと、基本的には、シーリングをかけるということで、従来型の発想から何ら抜け出ていない。大事なのは、これからの国家のあり方というのを見据えて、財政の支出の中身を切り込んで入れかえていくということなのだけれども、それがなされなかった。したがって、従来型の発想ですから、目先の景気が悪くなると、またあのあしき、いわゆるケインジアン型の、つまり地元への利権誘導型に今やまた舞い戻ってしまおうというふうなことであって、私は、要するに、本来の財政構造改革規制緩和とまさに一体にして今こそ推進すべきだというふうに思います。  ちなみに、ヨーロッパでは、アメリカでは、もう十年前に立法が行政に対してたがをはめているというのが基本的な今の流れであって、遅過ぎたぐらいだというふうに思っています。
  180. 松本善明

    松本(善)委員 ありがとうございました。終わります。
  181. 高鳥修

    高鳥委員長 次に、深田肇君の質疑に入ります。
  182. 深田肇

    ○深田委員 参考人の先生方、大変御苦労さまでございます。あと二十分足らずでございますので、おつき合いのほどをよろしくお願い申し上げたいと存じます。社民党の深田肇でございます。  もう先生方のお話も伺いましたし、同僚議員なり先輩議員の極めて具体的な質問に対してのお答えもいただきましたので、物事が明確になってまいりましたが、ここで、どうしても参考人佐々木先生に一声いただきたいなと思いますことは、お話の中では、今回の法案はぜひ仕上げなければならないとおっしゃっているわけでありますけれども、もう少し元気よく、これを仕上げようと思っている側はたくさんいるわけでありますから、その点ではここの点は足らないよ、この点はこうしようよというようなことを、ひとつ積極的に御指摘いただきながらお話しいただけないかなと思いながら伺っておりました。  私ごとの私語をしてはいけないのでありますけれども、テーブルの皆さんと話す中で、全部が全部消極的とおっしゃるから、そうではないのじゃないかと話をしたりしたわけでございますから、何か積極的に、今回の法案をつくり上げる意味、そして、この法案をよりいいものにするためには今後こういった手当てをすればよかろうということなどを御提言いただければいいというふうに思って立ちました。  ついては、それに関連いたすわけでありますけれども、やはり町の中は行政改革という言葉が大変広まりまして、国民の側は、必ずしも行政改革が何物かまだわからぬ段階でございましょうけれども、景気が悪いだけに、景気をよくするために政府がみずからしっかりするということであるならばよかろうという声がたくさんあるわけであります。  そういったことを抽象的にお話し申し上げた上で、その雰囲気の中で、先般、大蔵省の関係で不祥事が出まして、二十七日には大きな処分が発表されました。処分が発表された後の新聞報道なんかを見ますと、もう時間の関係がありますから細かいことは読み上げませんけれども、これはちょっと一方的過ぎるのじゃないかということが大蔵省内部であるということが載っていますし、同時にまた、大蔵大臣のコメントとして、これはいわゆる接待を受けた者だけを調査して処分したんだ、こういうふうにわざわざ御丁寧に御説明になると、国民の側から見ると、大蔵省はどうなっているんだ、こういった大蔵省の改革をやらずに行革だと言ってみたってどうなるのか、省庁の一府十二省庁についてもいろいろな意見があるし、よくわからぬことがあるけれども国会の先生方がやっていることだろうけれどもと言いながら、一般庶民は大蔵省に対する不信と批判が大変ある。ここのところを払拭しないと、私は、実際問題、国民的に行政改革を推進するというエネルギーは上がってこないのではないかというふうに思っている側の一人であります。  その意味からいたしますと、今回の不祥事はなぜ起きたのか、こういったものが再び起こらぬようにするためには今一番のポイントは何なのかということについて、時間の関係もございますので、全部の先生方の御意見を伺うのが筋でございますけれども佐々木先生にひとつお願いした上で、あと一方、恐縮でありますが、中北先生に一言、これからの大蔵省はいかにあるべきかということを伺って、次の問題に入ってまいりたいと思います。
  183. 佐々木毅

    佐々木参考人 先ほど申しましたように、私は、とにかくこれは動かさなきゃいかぬということを申し上げた。では、どういうふうに動かすかということなんです。  一つは、きょういろいろ御議論が出ましたように、やはり内閣を中心として仕事をきっちりやっていく体制をつくっていくということが必要だろうというふうに思います。  もう一つは、今先生おっしゃられた点とも関係しますけれども、やはり、各省庁の今までの役割というものをこれから各論的に詰めていくということで、きょうも、設置法の問題等について、大変有益な御議論があったと思います。それをやっていくときに初めて、地方の問題、あるいはもろもろの権限の問題が出てくるだろう、この筋だけ追っかけていきますと。当然それと並んで、今お話が出ていますように、税の問題もやらなくてはいかぬということになりますと、今までちょっと、そっちはそっち、こっちはこっちというふうに先ほど御表現があったんですけれども、そういう問題にぶつかってくるというふうに私は思っております。  いずれにしても、どこかからとにかく動かさなければいけないという意味で、この切り口というのを放棄する必要は全くございませんし、先生の後の方の御質問にも答えることになりますけれども、役所の問題というのは、結局、政治だけではございませんけれども、我々は絶対に大丈夫なんだという思い込み、ある意味ではそういう思い上がりという問題がやはり根本にあるということだろうと思います。全部の仕組みが一度テーブルの上で料理し直されますよということがわかるということ自体が、及ぼす影響は大変大きいだろうと私は思います。その上で、単に今のお役人を驚かすだけではなくて、将来に向けて、できるだけいいものへ中身を入れかえていくという、先ほどちょっと申しました継続的な努力をやっていただく必要がある、これが私は政治の仕事であろうと思います。  私が申し上げましたのは、誤解を招くといけませんけれども、何度も申しましたように、今までとにかくやらなさ過ぎてきたために、問題がたくさんあり過ぎるので、いわばほかの国並みにいくのに時間がかかって、さらに、ほかの国が今やっている問題も一緒にやろうということでございますので、その意味でいえば、仕事はもう山のごとくあるということでございます。これを、山のごとくあるからやめようという話になるのは、話の順番としては大変まずいだろうということでございます。  先ほど来申し上げておりますが、私も、内容的には、全部これはいいというふうにはなかなか申し上げにくい点もございます。しかし、きょうここに立ちましたのは、とにかくもうこれ以上先延ばしはできないのじゃないかという点、この点での切実さというものを大変強く持っているものでございますので、この場であえて一言、いろいろなことを申し上げさせていただいたところでございます。ですから、ここで終わったのではやはりだめなので、これから先の中身を詰めるところまで含めて、監視と積極的な関与をお願いする以外にちょっと手はないというふうに思います。  以上です。
  184. 中北徹

    ○中北参考人 私はやはり、キャッチアップの過程で金融行政がいわゆる護送船団方式というものを推進してきた、水も漏らさぬような体系でこれまで来たわけですが、しかし、日本の経済がそのキャッチアップの過程をもう既に終わっていた、加えて、欧米の先進国の経済の世界化の流れ、グローバリゼーションの流れが予想以上に速かったというのが、このように問題を大きくしてしまった基本的な背景ではないかというふうに思います。つまり、国内に目が完全に向いていたということであるというふうに思います。  これからはやはり、特に金融、財政の分離に関して言いますと、金融監督庁ができるということは、それなりに経済が成熟したんだ、キャッチアップに成功したんだというふうにとらえて、ここは若い人が中心になって、新しい発想で、独立したしっかりした監督庁をつくる、そこに思い切ってこれからの行政を託していくべきだというふうに私は思います。  言いかえますと、しょせん大蔵省の中に企画に関連するような部署をつくっても、もうこれからは金融関係者金融監督庁の方に目が向くというのは必然であります。こうなりますと、やはりこれまでのシナリオ、つまり、第一段階は日銀法の改正、それにこれまでありました設置法の徹底した見直し、三番目に、金融監督庁がいよいよこれから創設されるということですから、この監督庁をぜひしっかりしたものにつくっていただくというのがこれからの課題だというふうに思っております。
  185. 深田肇

    ○深田委員 短い時間で恐縮でありますけれども、私たちがいろいろと与党間でも話し合ってきましたことは、何といっても大蔵の改革がなくては行革は進まぬだろうということで、しかも、その中で財政と金融の分離を一生懸命主張してきたわけであります。いろいろな経過がありまして、今お話しのとおり、金融監督庁というところまでは来たのでありますが、これをもっとこれから進めていかなければいかぬというふうに思いますので、そのことについて、中北先生、どうでしょうか。  外から見ていると言うとしかられるかもしれませんが、これはなかなか動かないものだという感じも一方ではあるのですが、きょうの午後からのお話の中で、先生から、学問的にも、そしてお考えの基礎のものとしてのお話も随分ありました。我々は、この六月にスタートする監督庁、目の前でありますけれども、これをこれからどのようにしていくべきなのかという部分で、ひとつ具体的な提言をいただいておきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  186. 中北徹

    ○中北参考人 くどいようでありますけれども金融と財政というのは、性格が、全くメカニズムが違うわけです。ところが、同じお金が出入りするという現象的な面で見ますとほとんど違わない。これまで現に、キャッチアップの体制で一体でやってきました。加えまして、財政投融資などという、金融なのか財政なのか、見ようによってはいわばえたいの知れないものもあり得る。したがいまして、金融、財政が根本的に違うのだということを、もう何度も何度も、関係者に、あるいは一般の方に、やはり国のかじ取りに責任を持っていただいている政治家の方々が深く認識していただいて、呼びかけていただくということが重要ではないかというふうに思います。  そうして、金融は、何をさておき、マーケットの上、市場の中で成立するものでありますから、これから、できましたら金融監督庁は、民の力を中心に、人事も含めて、できるだけ最前線のノウハウも入れる形で、それも、単に日本国内だけではなくて欧米のノウハウも入れながら、いわばアジアに手本を示すというぐらいの気概を持っていただくということが重要だというふうに思います。  あのアジアの金融・通貨危機は、ある意味で、アジア型の土着的な発想、リスク管理もしない、情報も開示しない、官民が癒着している、これが今回の破綻を招いたといういわば共通した問題点があるわけでありますから、先進国である日本が率先して大転換をして、アジア、もちろん世界に示していただくということが重要だというふうに思います。
  187. 深田肇

    ○深田委員 お話を聞いている限りでは、これは全くそのとおりだと思いますし、我々は内部的にもそういうふうに確認をするのですが、なぜこれが進まないのかというのが率直なところあるのです。  そのことにつきまして、本当に短い時間で恐縮なのでありますが、きょう一日御意見を伺っていて、ぜひひとつ五十嵐先生に、なぜ動かないのか、だれが悪いのかというところをちょっと聞かせてもらうと参考になるなと思うのですね。  これは聞いていると、反対するところは何もないのですね。与党三党でもそういうふうにしようでないかと確認ができるのでありますが、現実に動かない。これは、五十年の、百年の歴史のしがらみだけが原因だとも思わないのですけれども、その点の日本システムといいますか、詰まっているゆえんを少し解説いただければありがたいと思います。
  188. 五十嵐敬喜

    ○五十嵐参考人 非常に難しいと率直に思います。  やはり原則に戻って、国会最高機関です。先生が決意すれば変わるかもしれません。そういうことだと思います。
  189. 深田肇

    ○深田委員 最後に、大変励ましていただきましたので、全国会議員が意識して頑張ることをお約束申し上げて、これで終わりたいと思います。  ありがとうございました。
  190. 高鳥修

    高鳥委員長 以上で参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、参考人各位に一言お礼を申し上げます。  参考人各位には、長時間にわたり貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表して、厚くお礼を申し上げます。  次回は、明七日木曜日午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時五十三分散会