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1998-04-10 第142回国会 衆議院 厚生委員会 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年四月十日(金曜日)     午前九時一分開議 出席委員   委員長 柳沢 伯夫君    理事 佐藤 剛男君 理事 長勢 甚遠君    理事 根本  匠君 理事 船田  元君    理事 金田 誠一君 理事 山本 孝史君    理事 福島  豊君 理事 久保 哲司君       安倍 晋三君    稲垣 実男君       衛藤 晟一君    大野 松茂君       大村 秀章君    佐藤 静雄君       桜井 郁三君    鈴木 俊一君       園田 修光君    田中 昭一君       田村 憲久君    戸井田 徹君       桧田  仁君    堀之内久男君       松本  純君    家西  悟君       石毛 鍈子君    城島 正光君       土肥 隆一君    松崎 公昭君       青山 二三君    旭道山和泰君       武山百合子君    藤井 裕久君       吉田 幸弘君    児玉 健次君       瀬古由起子君    中川 智子君  委員外出席者         参  考  人         (健康保険組合         連合会東京連合         会副会長)         (日本通運健康         保険組合理事         長)      安岡 正泰君         参  考  人         (全国市長会社         会文教分科会委員長         (大阪守口市         長)      喜多 洋三君         参  考  人         (日本労働組合         総連合会総合政         策局生活福祉局         長)      桝本  純君         参  考  人         (全国町村会副         会長)         (京都園部町         町長)     野中一二三君         参  考  人         (淑徳大学社会         学部教授)         (日本福祉大学         客員教授)   坂巻  熙君         厚生委員会専門         員       市川  喬君     ――――――――――――― 委員の異動 四月十日 辞任       補欠選任   江渡 聡徳君     園田 修光君   能勢 和子君     大野 松茂君 同日 辞任       補欠選任   大野 松茂君     能勢 和子君   園田 修光君     江渡 聡徳君     ――――――――――――― 四月十日  国立病院療養所廃止民営化等反対、存続  ・拡充に関する請願一川保夫紹介)(第一  二二九号)  同(倉田栄喜紹介)(第一二三〇号)  同(鉢呂吉雄紹介)(第一二三一号)  同(濱田健一紹介)(第一二三二号)  同(原口一博紹介)(第一二三三号)  同(一川保夫紹介)(第一三〇一号)  同(倉田栄喜紹介)(第一三〇二号)  同(濱田健一紹介)(第一三〇三号)  同(原口一博紹介)(第一三〇四号)  同(一川保夫紹介)(第一三二三号)  同(倉田栄喜紹介)(第一三二四号)  同(濱田健一紹介)(第一三二五号)  同(原口一博紹介)(第一三二六号)  同(一川保夫紹介)(第一三八三号)  同(倉田栄喜紹介)(第一三八四号)  同(中川智子紹介)(第一三八五号)  同(濱田健一紹介)(第一三八六号)  同(原口一博紹介)(第一三八七号)  児童扶養手当所得制限額引き下げの撤回に関す  る請願田端正広紹介)(第一二三四号)  公的臍帯血バンクの設立と血液事業法の制定に  関する請願遠藤和良紹介)(第一二三五号  )  同(大口善徳紹介)(第一二三六号)  同(長内順一紹介)(第一二三七号)  同(赤羽一嘉紹介)(第一三〇五号)  同(倉田栄喜紹介)(第一三〇六号)  同(平野博文紹介)(第一三九〇号)  腎疾患総合対策早期確立に関する請願(麻生  太郎君紹介)(第一二四四号)  同(安倍晋三君紹介)(第一二四五号)  同(粟屋敏信紹介)(第一二四六号)  同(江渡聡徳紹介)(第一二四七号)  同(衛藤晟一紹介)(第一二四八号)  同(遠藤和良紹介)(第一二四九号)  同(遠藤利明紹介)(第一二五〇号)  同(大野功統紹介)(第一二五一号)  同(大畠章宏紹介)(第一二五二号)  同(近江巳記夫紹介)(第一二五三号)  同(奥田幹生紹介)(第一二五四号)  同(梶山静六紹介)(第一二五五号)  同(河村たかし紹介)(第一二五六号)  同(河村建夫紹介)(第一二五七号)  同(岸本光造紹介)(第一二五八号)  同(北脇保之紹介)(第一二五九号)  同(旭道山和泰紹介)(第一二六〇号)  同(久野統一郎紹介)(第一二六一号)  同(熊谷弘紹介)(第一二六二号)  同(栗原裕康紹介)(第一二六三号)  同(高村正彦紹介)(第一二六四号)  同(小坂憲次紹介)(第一二六五号)  同(小林守紹介)(第一二六六号)  同(斉藤斗志二君紹介)(第一二六七号)  同(坂本剛二君紹介)(第一二六八号)  同(佐々木秀典紹介)(第一二六九号)  同(佐田玄一郎紹介)(第一二七〇号)  同(鈴木俊一紹介)(第一二七一号)  同(関谷勝嗣君紹介)(第一二七二号)  同(武山百合子紹介)(第一二七三号)  同(谷洋一紹介)(第一二七四号)  同(田村憲久紹介)(第一二七五号)  同(中馬弘毅紹介)(第一二七六号)  同(津島雄二紹介)(第一二七七号)  同(長勢甚遠君紹介)(第一二七八号)  同(中村正三郎紹介)(第一二七九号)  同(中山成彬紹介)(第一二八〇号)  同(野中広務紹介)(第一二八一号)  同(福島豊紹介)(第一二八二号)  同(藤本孝雄紹介)(第一二八三号)  同(細田博之紹介)(第一二八四号)  同(保利耕輔君紹介)(第一二八五号)  同(牧野隆守紹介)(第一二八六号)  同(桝屋敬悟紹介)(第一二八七号)  同(松本龍紹介)(第一二八八号)  同(三塚博紹介)(第一二八九号)  同(御法川英文紹介)(第一二九〇号)  同(宮下創平紹介)(第一二九一号)  同(武藤嘉文紹介)(第一二九二号)  同(村上誠一郎紹介)(第一二九三号)  同(村田敬次郎紹介)(第一二九四号)  同(目片信紹介)(第一二九五号)  同(望月義夫紹介)(第一二九六号)  同(谷津義男紹介)(第一二九七号)  同(山本公一紹介)(第一二九八号)  同(山本孝史紹介)(第一二九九号)  同(吉田幸弘紹介)(第一二〇〇号)  同(相沢英之紹介)(第一三二八号)  同(安倍基雄紹介)(第一三二九号)  同(池端清一紹介)(第一三三〇号)  同(漆原良夫紹介)(第一三三一号)  同(衛藤征士郎紹介)(第一三三二号)  同(遠藤武彦紹介)(第一三三三号)  同(大原一三紹介)(第一三三四号)  同(川端達夫紹介)(第一三三五号)  同(岸田文雄紹介)(第一三三六号)  同(小林守紹介)(第一三三七号)  同(笹木竜三紹介)(第一三三八号)  同(高鳥修紹介)(第一三三九号)  同(棚橋泰文紹介)(第一三四〇号)  同(田村憲久紹介)(第一三四一号)  同(戸井田徹紹介)(第一三四二号)  同(虎島和夫紹介)(第一三四三号)  同(中井洽紹介)(第一三四四号)  同(中川昭一紹介)(第一三四五号)  同(中川正春紹介)(第一三四六号)  同(中野正志君紹介)(第一三四七号)  同(仲村正治紹介)(第一三四八号)  同(根本匠紹介)(第一三四九号)  同(畑英次郎紹介)(第一三五〇号)  同(濱田健一紹介)(第一三五一号)  同(浜田靖一君紹介)(第一三五二号)  同(林義郎紹介)(第一三五三号)  同(桧田仁君紹介)(第一三五四号)  同(福永信彦紹介)(第一三五五号)  同(細川律夫紹介)(第一三五六号)  同(前田武志紹介)(第一三五七号)  同(桝屋敬悟紹介)(第一三五八号)  同(松本純紹介)(第一三五九号)  同(村井仁紹介)(第一三六〇号)  同(保岡興治紹介)(第一三六一号)  同(山本孝史紹介)(第一三六二号)  同(山元勉紹介)(第一三六三号)  同(青山二三紹介)(第一三九一号)  同(浅野勝人紹介)(第一三九二号)  同(石破茂紹介)(第一三九三号)  同(今村雅弘紹介)(第一三九四号)  同(大口善徳紹介)(第一三九五号)  同(小沢辰男紹介)(第一三九六号)  同(加藤卓二紹介)(第一三九七号)  同(鹿野道彦紹介)(第一三九八号)  同(坂口力紹介)(第一三九九号)  同(佐藤敬夫紹介)(第一四〇〇号)  同(城島正光紹介)(第一四〇一号)  同(杉山憲夫紹介)(第一四〇二号)  同(住博司紹介)(第一四〇三号)  同(玉置一弥紹介)(第一四〇四号)  同(玉沢徳一郎紹介)(第一四〇五号)  同(土肥隆一紹介)(第一四〇六号)  同(中川智子紹介)(第一四〇七号)  同(中川秀直紹介)(第一四〇八号)  同(中川正春紹介)(第一四〇九号)  同(能勢和子紹介)(第一四一〇号)  同(野田毅紹介)(第一四一一号)  同(畠山健治郎紹介)(第一四一二号)  同(原口一博紹介)(第一四一三号)  同(古屋圭司紹介)(第一四一四号)  同(細川律夫紹介)(第一四一五号)  同(堀之内久男紹介)(第一四一六号)  同(松下忠洋紹介)(第一四一七号)  同(松浪健四郎紹介)(第一四一八号)  同(村田吉隆紹介)(第一四一九号)  同(持永和見紹介)(第一四二〇号)  同(森英介紹介)(第一四二一号)  同(矢上雅義紹介)(第一四二二号)  同(山下徳夫紹介)(第一四二三号)  同(横光克彦紹介)(第一四二四号)  生ごみなど未利用有機物可燃ごみ中止に関す  る請願田中眞紀子紹介)(第一三一九号)  保育施策充実に関する請願村井仁紹介)  (第一三二〇号)  難病対策充実等に関する請願村井仁紹介  )(第一三二一号)  子供の性的搾取・虐待をなくすための立法措置  に関する請願(辻元清美君紹介)(第一三二二  号)  同(能勢和子紹介)(第一三八二号)  医療保険制度改悪反対保険によるよい医療に  関する請願西川知雄紹介)(第一三二七号  )  差別を生むエイズ予防法廃止に関する請願  (横光克彦紹介)(第一三八一号)  医療保険制度改悪反対保険によるよい医療  に関する請願石田幸四郎紹介)(第一三八  八号)  同(吉田幸弘紹介)(第一三八九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国民健康保険法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第三一号)      ――――◇―――――
  2. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 これより会議を開きます。  内閣提出国民健康保険法等の一部を改正する法律案を議題といたします。  本日は、本案審査のため、参考人として健康保険組合連合会東京連合会会長日本通運健康保険組合理事長安岡正泰君、全国市長会社会文教分科会委員長大阪守口市長喜多洋三君、日本労働組合連合会総合政策局生活福祉局長桝本純君、全国町村会会長京都園部町長野中一二三君、淑徳大学社会学部教授日本福祉大学客員教授坂巻煕君、以上五名の方々から御意見を承ることといたしております。  参考人方々には、御多用中にもかかわらず御出席をいただきまして、まことにありがとうございます。本法律案につきまして、それぞれのお立場から忌憚のない御意見をお述べいただき、審査参考にいたしたいと存じます。  次に、議事の順序について申し上げます。  最初に、参考人皆様方から御意見をそれぞれ十分以内でお述べいただき、その後、委員からの質疑にお答え願いたいと存じます。  なお、発言する際は委員長の許可を受けることになっております。また、参考人委員に対して質疑することはできないことになっておりますので、あらかじめ御承知おき願いたいと存じます。  それでは、まず安岡参考人お願いいたします。
  3. 安岡正泰

    安岡参考人 ただいま御紹介いただきました健保連の東京連合会の副会長日本通運健康保険組合理事長をしております安岡でございます。どうぞよろしくお願いをいたします。  本日は、国保法等改正につきまして、この厚生委員会の場において意見陳述をさせていただくことにつきまして、ありがたく思っておる次第でございます。  さて、これから意見を簡潔に申し上げたいと思います。  昨年の九月に健康保険法改正がございまして、私ども保険財政に多少の改善が見られたということにつきまして、まずもって感謝をしている次第でございます。しかしながら、大変長引いております経済不況が私どもの事業主であります企業の活力も沈滞をさせている、そういう結果から、健康保険組合の多くは、現状、依然として厳しい状況下に置かれているわけでございます。健保連合会の傘下には千八百十五の健康保険組合がございますけれども、その約七割が経常収支赤字に陥っている状況でございます。  私ども日通健保について若干お話をさせていただきたいと思いますが、事業主であります私ども企業全国組織日本通運でございまして、物流業を営んでいるわけでございます。物流業界と申しますのは、貨物輸送を通しまして各種産業と大変密接な関係にあるわけでございまして、いろいろな業種方々と接しておりますので、景気の動向を敏感に反映する、敏感に感じ取る業種でもあるわけでございます。  バブルが崩壊いたしまして、経営環境はまことに厳しい状況になっております。日本経済の先行き不透明であるとか消費の低迷であるとか、設備投資沈滞等によりまして貨物の総輸送量というのは大幅に低下する一方でございまして、一方、顧客の物流費削減志向ということも伴いまして、単価の落ち込みが重なりまして、経営環境は一段と悪化をたどっている。  また、物流マーケットというのも大変大きな変化がございまして、荷主企業の海外への移動というものも出てきておりまして、大変構造的な見直しに迫られているわけであります。  そういうような母体企業経営状況が、運命共同体であります健保組合の業績にも非常に影響をしているわけでありまして、被保険者数の大幅な減少、保険料収入の低下になっているわけでありまして、一方、増嵩いたします医療費、特に老人医療費の増大によりまして非常に苦しい運営になっているということでございます。  そういう状況の中で、当日通健保保険料率は既に千分の九十二までいっておりまして、さらに保険料率を上げるということはまことに至難なことになっているわけであります。  そのくらいにいたしまして、次に、今回のこの国保法等改正につきまして、昨年暮れに、支払い側といたしまして、日経連連合、私ども連合会共同で声明を発表して明確に意思表示もしているところでございまして、その立場、考え方は現在も変わっていないということでございます。すなわち、もう少し具体的に申し上げれば、被用者保険への拠出金負担のつけかえには絶対反対であるということでございます。  以上、申し上げましたことを前提といたしまして、本日、これまでの連合さんあるいは日経連立場等も踏まえまして、五項目にわたりまして意見を申し上げたいと思います。  第一点でございますが、この法案が作成されるまでの経緯、段階、手続、進め方等に大きな問題があるのではないかというふうに考えております。  と申しますのは、関係審議会でほとんど審議が進まないうちに一方的に改正内容予算案に盛り込むというまことに非民主的な形での手段がとられたこと、まことに遺憾に思っているわけでございます。審議会頭越しに、何か公正さを欠いた政策決定が行われて法案化されて国会提出をされたということを、非常に残念に思っております。  第二点といたしまして、改正案内容についてでございますが、退職者に係る老人保健拠出金を私ども被用者保険負担させるというものであるわけでございますが、老人保健医療費負担方法については、いわゆる生まれたばかりの赤ん坊も成人並み負担の対象にされているわけでございまして、いろいろな矛盾や問題点を含んでいるのではないか。平成九年度中に全体的な見直しをすることが三年前の老健法改正で決まっていたわけでございまして、そういう点も若干問題があるのではないかと思います。  それから、第三点でございますが、そういう三年前の約束に反しまして、国庫負担削減に役立つ部分だけを、私どもから考えればつまみ食いといいますか、そういうような形で行われた何か御都合主義的な改正ではないのかなと、ちょっと納得ができない気がいたしております。このようなやり方ではなくて、本格改革の方向を目指した総合的な見直しを行うべきではないかというふうに思っております。  それから、第四点といたしまして、私ども老人医療費負担をしたくない、回避しようということではございません。そうではなくて、公平で、将来も負担可能な制度が実現されることを基本目標としているわけでございます。このままでは、ふえる一方の医療費、特に高齢化に伴う老人医療費の重圧に耐え切れなくなる、みずからの保険制度が破綻することを懸念をしているわけでございます。  第五点といたしましては、改正案内容についてでありますが、ここ一、二年、国の財政負担が緩和される程度のものにすぎない内容ではないか。将来展望がもう一つ明らかにされていない。それだけに、私たちは、その易しのぎ対策ではなくて、診療報酬薬価制度見直しなど、改革の王道に沿った医療制度全体の抜本改革早期実現を望むものでございます。  最後に、本予算成立早々、大型の補正予算が検討される。補正をするなら、あえて被用者保険負担転嫁しなくても、国保に対してその分の手当てが可能なはずではないかと考えます。  予算編成後の状況変化を踏まえまして、医療保険分野に適切な予算措置を講じられて、企業とそこに働く勤労者負担増をもたらそうとしている国保法等改正についてはぜひ再考されるようお願いを申し上げたいと思います。  以上、要点のみ簡潔に申し述べましたが、これで私の意見陳述を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。(拍手)
  4. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 どうもありがとうございました。  次に、喜多参考人お願いいたします。
  5. 喜多洋三

    喜多参考人 おはようございます。全国市長会社会文教分科会委員長をいたしております大阪守口市長喜多でございます。  衆議院厚生委員会委員の皆さんには、医療福祉分野において常に御尽力いただき、心から感謝と敬意を表するものでございます。また、本日は、国民健康保険立場から意見を申し述べる機会をいただき、深く感謝をいたしております。  さて、今国会提出されております国民健康保険法改正案のうち、特に老人保健拠出金医療費不正請求対策の二点につきまして意見を申し述べたいと思います。  まず、老人保健拠出金についてでございますが、現在の医療保険制度の危機と言われるものは、実は老人医療費の問題でもあります。  若年の五倍という多額の老人医療費をどのように負担していくのか、この問題の処理のためにつくられたのが老人保健制度であります。しかし、その前提である医療保険制度間の不公平などの欠陥是正に手をつけず、各健康保険からの財源拠出と、その際保険制度間で複雑な財源調整をするという手法により解決を図ったわけでございますが、昭和五十八年に発足したこの制度は、拠出金をめぐって、法案国会審議段階から現在に至るまでの争いがあり、二、三年に一度は按分率変更老人加入率上限変更等調整を繰り返してきております。社会保障としていかにあるべきかという視点が隅に追いやられ、財源負担をめぐっての国民健康保険被用者保険側の無用のせめぎ合いだけが目立つような事態は不幸と言わざるを得ません。  このような制度が発足以来十五年存続してきたのも、高い経済成長という歴史的に見れば特異な環境に支えられたからであります。これからの低成長、超高齢化社会にたえ得る制度改革に当たっては、部分的なものではなく、医療保険全般に切り込むことが必要であります。  健康保険加入者の構成が年齢や所得で大きく偏っているなどの状態が是正されていれば、さらに踏み込んで言えば、健康保険制度が一本化されていたなら、今回のような拠出金論議はしなくて済んだのではないかと考えます。そのためにも、前提となる医療保険制度抜本的改革を早急に実現するようお願いしておきたいと思います。  今回、拠出金について改正される二つの点については、国民健康保険にとって財政的に改善される内容ではあります。しかし、私どもは、現行制度老人を全国民が公平に支えるという理念とは乖離していることを問題にしているのであります。その意味で、改正内容は、国民健康保険運営を預かる立場として決して納得できるものとは言えません。  まず、一点目の老人加入率上限問題ですが、なぜ現行制度では老人加入率により調整しなければならないのかを考える必要があります。  繰り返して申しますが、老人医療費国民全体で支えるとすれば、高齢化により特に大きな負担を担っている保険者を支援するのが制度の公平です。何となれば、老人加入率は、各健康保険者、また加入する方に責任のない事項だからです。  このような事情に対し、加入率上限を置くなどというのは、理念的に何ら根拠のない、法のもとの平等に反することと言わざるを得ません。この老人加入率上限という制約によって大きな負担を強いられているのは、多くは過疎化に悩む財政的にも困難な地域ではないでしょうか。  老人保健制度創設当初は不公平な状態も一部の団体に限られていましたが、今や、この老人加入率上限制約により大きな負担を強いられることとなる団体が、三千余りある国民健康保険者の三分の二以上になろうとしております。これは異常な事態と言わざるを得ません。本来は上限を撤廃すべきと考えますが、少なくとも、法に定められたとおり、上限超過団体が三%程度になるようにという基準が守られるべきであると考えます。  今回の改正案では加入率上限を三〇%に引き上げることとされておりますが、この場合でもなお、三分の一、約一千二百の保険者上限を超え、いわれのない負担が解消されないこととなります。さらに、法案では、上限改正医療保険制度抜本改革が行われるまでの間の措置となっていますが、医療保険制度改革がおくれた場合、異常事態を固定化することになりかねないという点について危惧いたします。制度改革目標時点を明確にすべきと考えます。  なお、私が運営の責にあります守口市の国民健康保険にあっては、老人加入率が約二八%ですので、現行老人加入率上限二五%を下回っております。このため、改正により、被用者保険と同様、むしろ負担が増加することとなるわけでございますが、制度の公平という点ではやむを得ないと考えていることもお含みいただきたいと存じます。  二点目の退職保険者に係る拠出金問題ですが、本来全員が負担すべき老人保健拠出金退職者医療制度適用者負担せず、その他の国保加入者に転嫁されています。なぜ、このような事態が現在に至るまで放置されていたのか。今回それを是正しようということですが、なお、負担すべき額の二分の一が一般の国保加入者負担として残されることについては理解に苦しむところであります。激変緩和措置ということなのでしょうか。この点からも、医療保険制度抜本改革を急ぐべきであります。  以上、老人保健拠出金についての意見を申してまいりましたが、くどいようですが、今回の法案については、根本的な解決ではなく、十分納得しているわけではありません。現在の状況を一定改善できること、他の健康保険では負担が増加する場合もあることから、痛み分けという意味で理解するものであります。老人医療については、医療費総額の抑制など、他にも重要な課題がありますが、少なくとも、財源負担システムのあり方としては、公平なものを目指すこと、根本的には、年齢で切り分けるのではなく、若年者を含む総合的な保険制度を目指す中で解決すべきと考えます。  次に、診療報酬の不正請求対策強化でありますが、現在の診療報酬支払いシステムは、請求に不正がないことを前提として成立しており、不正には無防備な状態にあります。このような信頼関係を破る行為は犯罪であり、厳正な対応を望みます。  なお、不正防止については、患者自身が請求内容を確認できるような手だても講ずるべきと考えます。技術的な検討も必要でしょうが、医療についても消費者保護を考えるべきです。  また、この際付言すれば、診療報酬請求内容の点検のあり方も大きく改善する必要があります。国保連合会での点検では不十分ということで、各保険者においても再度点検を要する理由は、旧態依然とした紙による請求方式にあります。一部地域で試みられている磁気による方式を早期に導入するなど、事務の効率化、点検の充実を図るべきです。  以上、国民健康保険法改正案のうち、老人保健拠出金と不正請求対策について意見を申し上げましたが、率直に言って、全国の市長が思うところを十分に代弁できたとは思っておりません。なぜこのような狭い範囲の議論なのか、国民健康保険についてはより根本的な議論が必要ではないのかといった、多くの市長の声が聞こえてくるようです。厚生委員会委員の皆さんにおかれましても、ぜひ地元市町村の国民健康保険担当者の意見を直接聞く機会をお持ちいただき、その窮状を具体的に実感していただきたいと思います。  最後に、医療保険制度抜本改革が早期に実現いたしますよう、委員の皆さんの御尽力をお願いいたしまして、私の意見表明を終えたいと思います。御清聴ありがとうございました。(拍手)
  6. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 どうもありがとうございました。  次に、桝本参考人お願いいたします。
  7. 桝本純

    桝本参考人 おはようございます。連合桝本でございます。  厚生委員会の皆さんの日ごろの御尽力に敬意を表するとともに、本日、見解を表明する機会を与えていただきましたことを、まずもってお礼申し上げたいと思います。  私は、毎日職場で働き、病気になればお医者さんのお世話になり、そして多くの場合に年老いた親のことを心配している、ごく普通の労働者の立場から、今国会に出されております健康保険法等の一部改正について意見を申し述べたいというふうに思います。  まず第一に、九八年度の予算案と、その中における老人医療費拠出金負担見直しの問題であります。  去年施行されました財政構造改革法、これによって、社会保障関係費は、ほとんど合理的な理由も示されないまま、大幅に抑制をされました。とりわけ医療費に関する国庫負担というものは三千億円以上削られる、こういう内容でございます。  この国庫負担を削る策の一つとして、政府は、老人保健制度と、いわゆる退職者退職したサラリーマンの人たちにかかわる老人医療費拠出金について国庫負担を約五百六十億円削る、そして、その倍額に当たる一千百億円を我々が加入する健康保険に転嫁する、こういう内容予算でございます。こういった予算編成をするに当たって、厚生省の方は、極めて厳しい財政事情、極めて厳しい予算編成制約という中でやむを得ないのだ、こういう説明を繰り返してされました。一言で言えば、財源がないのだ、こういうことでございました。  片方ではどこからともなく一千億円以上のお金が出てきて、これによって診療報酬一・五%、国庫ベースで約九百七十億円、それから、診療報酬の合理化改定分という説明がありまして、〇・七%、合計二・二%引き上げるということが一方でされておりました。これが昨年の年末の状況でございます。私どもは正直に言って唖然といたしました。  この内容について、老人医療費拠出金負担見直しを検討しておりました医療保険福祉審議会運営部会あるいはまた診療報酬の改定を審議していた中医協、いずれも討議をまとめることができず、いわゆる各論併記で報告書を出さざるを得ませんでした。また、与党三党の医療改革プロジェクトも、この問題についてついにその意見を集約することができない、こういう状況事態は経過したわけであります。そして、一方における負担の転嫁、他方における診療報酬の引き上げという内容は、審議会とも、あるいは与党の医療改革協議会とも別な場所で、国民の目が届かないところで特定の団体が圧力を行使してつくり出した政治決着だったというふうに私どもは思わざるを得ません。  正常な審議会運営も踏みにじり、あるいはまともな政党間の協議もおざなりにして行われた、こうした決定というものを、私どもは到底認めることはできないわけでありまして、もし九百七十億円を捻出できるということであったらば、先ほど申しましたような、退職者にかかわる老人医療費拠出金をサラリーマンの健康保険に転嫁するといったようなことはしないで済んだはずでございます。  したがって、今回法案として提出されております老人医療費拠出金にかかわる内容、これはまさしく改悪としか呼びようのない内容であり、その成り立った過程の問題も含めまして、私どもはこの内容に全く反対であります。  この点、先ほど健保連の安岡会長からも触れられましたが、毎月、健康保険保険料を負担しております我々労働者と、それから企業経営者、いずれもこの点については同じ考え方に立っていることを申し上げたいというふうに思います。  昨年の九月、御案内のとおり、保険料が引き上げられ、それから患者の自己負担が引き上げられる、こういう形で我々は大きな負担を負っております。こういったことが社会保障制度の将来に対する国民の不信感あるいは不安といったものを強めていることは言うまでもありません。  現在、国会でやっていただきたいことは、こうした国民の生活不安や将来に対する不安、そして社会保障に対する信頼度の低下という問題をどうやって食いとめることができるか、この一点にかかっているのではないだろうか、そのように思います。私どもは、この社会保障費の必要な増額に対して天井をしいてしまった財政構造改革法を一刻も早く見直し、必要な社会保障費の負担をぜひとも予算として確保していただくようにお願いをしたい、このように思っているところでございます。  今回の非常に大事なテーマは、今申しましたように、老人保健拠出金でございますが、そもそもこの拠出金によって賄われている現在の老人保健制度というものは完全に行き詰まりが来ていると思います。このような行き詰まりを導いた理由は何なのか。  私ども、素人なりに勉強してみますと、老人一人当たりの医療費というのは若い人たち、といっても六十五歳以下ですが、こういう人たちの一人当たり医療費に比べて五倍もかかっている。これは世界的に見ても異常な事態であります。高齢になれば医療費がかかることはもちろん自然なのですが、それにしても、ヨーロッパなどで、データを見ますと高齢者はそんな五倍もかかっているということはない、せいぜい二、三倍であります。  我が国の医療というのは、いわば高齢者を食い物にして成り立ってきた医療なのではないだろうか。このことにメスを入れることが絶対に必要であって、これを放置したまま、お金がかかると言って、その分は負担できるものが負担しろということで次々と続けられてきたのがこの過去の、いわゆる医療改革なるものの実態であったと思います。  いわゆる三K赤字というものの一つに数えられた健康保険の赤字体質の改善というものは、制度抜本改革なしには決して実現されない、これが私どもの基本的な立場でありました。そういう観点から、医療制度及び医療保険制度改革について、私どもは自分たちの考え方をまとめて発表してまいりました。  高齢者の扱いについて申しますと、現在の退職者という方々は、サラリーマンの健康保険に長い間入って、保険料を納め続けながら、一たん退職をしてしまいますとこの健康保険から抜けざるを得ません。抜けた後ほどこへ行けばいいのかというと、市町村国保しかないわけですね。  もともとは、市町村国保というのは自営業者のための地域保険としてつくられたものであり、労働者に対しては健康保険がかつてからありました。しかし、実際は、退職サラリーマンは市町村国保へ行かざるを得ないということで、市町村国保自身がいわば高齢者のたまり場になってしまったわけであり、そこで七十歳以上の人だけを特別扱いして全保険集団で支えるという現在の老人保健制度が生まれました。  もともとこの制度は臨時の制度として出発し、そのたびごとに見直されなければいけないということでございましたが、実際には、制度そのものの見直しは行われずに現在まで来ている。この事態を称して私どもは行き詰まりだ、このように言っているわけであります。  それでは、どういうふうに変えたらいいのかということでございますが、連合は、退職サラリーマンも市町村国保にいわばおしりを持ち込むのではなくて、サラリーマン健康保険全体の中に退職後もとどまる、こういうシステムを提案してございます。これは各政党の皆さんから必ずしも十分な御支持をいただいていないようでございますが、引き続き御理解を賜りますようお願いをしたい、そのように思います。  なお、今回の法改正には医療費の不正請求の防止に対する事項が含まれておりまして、この点では一つの前進だろう、そのように思っております。もちろん、各地で働いているお医者様方、多くの方は良心的、献身的に医療に取り組まれている、このことはよく承知をしております。そして、患者と医師との信頼関係なしに、医療の未来はないだろうと思います。  しかし、他方では、現在の医療制度医療保険制度はさまざまな不正請求あるいは過剰請求、こういったことを生み出しているわけでありまして、大阪における安田病院事件が取りざたされましたけれども、あんなものは氷山の一角だろう、このように考えております。  そうした不正請求等々にかかわる医師の行為について、例えば医師免許の取り消しや業務停止といったような処分が少しずつは行われております。しかし、去年の十月に医道審議会が発表いたしました「行政処分者一覧表」という資料を見ましても、その処置というのはその内容に照らして大変軽微なものだというふうに言わなければならないのではないか。医師への国民の信頼を取り戻すためにも、ぜひこの点での強化を図っていただく必要があると思います。  もう一つ、病床規制に係る法改正提出されております。これについても私どもは賛成でございます。  一方で、都市部では医師もベッドも過剰でございまして、過剰なベッドが過剰な医療費を生む、残念ながらこういう傾向が指摘をされているところであります。他方では、過疎地では医師も病院も足りない、こういった事情がなお続いております。したがって、我が国の貴重な医療資源というものがもっと国民全体のニーズに対応できるように適切な配置がなされるべきであろう、その点で、地域医療計画というものが具体的に力を持って施行されていただきたい、このように思います。  最後に、国会におかれましては、医療並びに医療保険制度抜本改革に対してぜひとも具体的な道筋をつけていただくように重ねてお願いをしたいと思います。  昨年の夏、政府・与党はこの改革国民に約束し、そしてそれとの引きかえで九月から保険料の引き上げや負担の引き上げというものを行ったはずであります。しかし、仄聞するところによりますと、二〇〇〇年実施をめどにして今国会提出予定の医療改革の具体的な法案というのは果たして提出されるのかどうか、極めて危うい状況にある、このように伝えられております。  私どもは、そうした改革が具体的になされることなしに、これ以上、ただ負担のツケ回しだけを受けるということにはもはや耐えきれない、このような状況に至っておりますことを御報告し、本委員会を初めとして、議員各位が我が国の社会保障の未来に向けて、信頼に足る医療制度医療保険制度改革に御尽力いただきますよう重ねてお願いを申し上げて、私の意見陳述にかえたいと思います。  どうもありがとうございました。(拍手)
  8. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 どうもありがとうございました。  次に、野中参考人お願いいたします。
  9. 野中一二三

    ○野中参考人 お許しをいただきまして、全国町村会の副会長をいたしております京都園部町長の野中でございます。  本日は、町村の国民健康保険事業について意見を申し述べる機会を与えていただき、厚くお礼を申し上げたいと存じます。  このたび、国民健康保険法の改正案提出をされまして、国会で御審議をいただいているところでございますが、今回の制度改正に当たっては、制度抜本的改革を行うまでの間における当面の措置としての改正でありまして、私どもといたしましても、まだお願いしなければならない点も多々ございますが、現時点ではやむを得ないものとして、条件づきながら、賛成の立場から意見を述べさせていただきたいと存じます。  まず第一点の、国民健康保険制度の現状について簡単に申し述べさせていただきます。  御案内のとおり、国民健康保険制度については、被用者保険と比べ、高齢者や低所得者の極めて多くを被保険者として受け入れる仕組みとなつておりますので、その財政基盤は脆弱であることは当然であり、しかも近年の医療費の増嵩等によりまして保険料の負担が著しく高くなっておりまして、被保険者に対してこれ以上の負担を求められない現状に来ております。  特に、市町村国保老人加入率が極めて高く、健保組合老人加入率は二・九%であり、政管健保は五・三%となっているのに対しまして、市町村国保は二一・八%となっております。また、七十歳以上の者を除きました加入者の平均年齢を比較いたしましても、国保が四十二・三歳、組合健保が三十一・五歳、政管健保は三十三・七歳という状況でございます。  このように、市町村国保は、高齢者を多く抱えているとともに、所得のない方や低所得者の方の多くを抱えており、この点からも財政基盤が極めて脆弱であります。当然、被用者保険におきましては無職世帯や所得なし世帯はほとんどおいでになりませんが、国保加入世帯におきましては無職世帯の割合は約四割、所得なし世帯は二割以上をも占めておる現況でございます。  また、加入者の平均年間所得について見ましても、国保は二百四十二万円であるのに対しまして、組合健保は三百五十万円程度、政管健保は二百八十万円程度となっております。  ちなみに、私の園部町におきましても、老人加入の割合は二七・九%であり、また退職保険者の加入割合も一一%となっております。また所得なし世帯についても二八%の実態であります。他の市町村国保同様、率直に申し上げて極めて厳しい財政運営を行っているのが現況でございます。  このように市町村国保が抱える困難な問題については、高齢者の加入率が高いこと、被保険者所得水準が低いことなど、そもそも構造的な問題に由来するものであり、保険者としての責に負いかねる面が強いことをまず御理解をいただきたいというふうに思います。  しかし、こういった厳しい構造的な問題の中で、各市町村は国保運営を強いられておりまして、このため市町村の多くは国保会計に対して毎年多額の繰り入れを行わざるを得ない現況になっております。  その数を見ますと、国保会計の赤字補てん等のために一般会計から法定外の繰り入れを行っている市町村は全体の約六割あり、法定外繰入金額は三千百七億円に上っておりまして、国保は、一般会計からの繰入金を受けることなしには、その運営は不可能な状況になっております。  このような国保の置かれました厳しい構造的な問題を解決するためには、何よりも医療保険制度抜本改革が一日も早く実現されることが必要であり、その最大の理由は、国民は法のもとに平等であるべきであります。基本的には負担と給付が同じであるべきでありますが、今は各保険によって差があり過ぎます。ぜひとも早急に、法のもとに平等である実態に即して抜本改革をなし遂げていただきますことを、この機会にお願いを申し上げたいと存じます。  しかし一方、抜本改革が一朝一夕に実現できるものでないことは私たちも承知をいたしているところでございます。であれば、当面は現行制度の枠内でも、公平の観点から、すぐに着手できる問題について、市町村国保の構造的な厳しさを踏まえた上で、できる限り現行制度見直しを行っていただくことが大切であるというふうに思っております。  まず、老人保健拠出金改正問題でございますが、このような国保の現況を前提にして、老人保健拠出金に関する改正案についてでございますが、御案内のとおり、老健拠出金の算定方法に関しましては平成十年三月を目途に所要の見直しを行うとされております。今回の改正はその一環としてのものと理解をいたしております。  思えば、老健制度の趣旨は、国民のすべてで老人医療費を公平に負担しようとするものでありますが、現在、加入率上限を超えた保険者は、超える部分については調整されることなく負担するという状況が続いております。  御承知のとおり、平成九年度は上限が二五%に設定されておりますが、二五%を超える市町村数はもはや千八百四十六市町村に上っておりまして、この割合は市町村国保の約六割にも達しているという状況でございます。  そもそも市町村保険者において老人加入率が高いということについては、保険者の責に帰さない事由でございまして、これに上限を設けて老健制度の趣旨を否定するような仕組みについては、このこと自体が不合理であると言わざるを得ません。  さらに、上限を超えているような市町村は、先ほども申し上げましたとおり、過疎地域等の財政基盤の脆弱な市町村国保が多く、このような市町村が主に過重な拠出金負担を課されております。老健制度のそもそもの趣旨に照らせば、ぜひとも上限は即撤廃すべきであるというのが私どもの気持ちであります。  次に、退職者に係る老健拠出金の半分を退職者医療制度を通じて負担することについてでございますが、退職保険者は確かに国保の被保険者でありますが、もともとは、退職者医療制度は、被用者保険に属していた方が退職してから市町村国保に加入することによる不合理を是正するために設けられた制度でありまして、退職者に係る費用は被用者保険において負担するということをその制度の考え方としているものであります。  しかし、現在の老健拠出金の算定に当たりましては、保険者における加入者数に応じて負担することとされておりますために、退職保険者の数も国保の被保険者として算定されている一方で、この老健拠出金退職者以外の一般被保険者負担することになっておりますことは、やはり不合理であると言わざるを得ません。  退職者医療制度創設時におきましては、市町村国保に占める退職者の数も少なく、その不合理さもさほど問題にはなりませんでしたが、市町村国保における退職者数の増加に伴いまして、退職者に係る老健拠出金負担が高まってきており、その額は現在約二千億円程度にも達しております。これは制度創設当時と比較いたしますと約二倍以上の金額に膨れ上がっております。  今後もなおこれを市町村が負担し続けることは、余りにも不合理な負担を強いるということになります。  このような老健制度の原則や、退職者に係る費用は被用者保険負担するという退職者医療制度の趣旨を踏まえれば、町村会としては、加入率上限は撤廃すべきでありますし、また退職者に係ります老健拠出金は全額、退職者医療制度を通じて被用者保険負担すべきものであると考えますが、しかし、今回の改正抜本改革までの一時期の期間であり少々痛み分けの措置であるならば、我々としてもやむを得ないという、いわば一面考えながら、改正案については、先ほども申し上げましたように、条件づきながら賛成せざるを得ないというのが現況でございます。  また、不正請求の防止策については、国保を初めとする医療保険制度を健全に運営していくに当たっては、老人医療費を初めとする医療費の適正化を図ることは極めて重要な課題であります。このため不正請求に対しては厳しい姿勢で臨むことが肝要であると考えており、今回の不正請求防止対策の強化については、我々としては評価をしているところであります。  また、抜本改革について、先ほども申し上げましたとおり、高齢者や低所得者が多く偏っているという構造的な問題に対しまして抜本的にメスを入れていかなければ、市町村国保が抱える現在の困難を解決することは不可能であります。私ども町村国保立場からも、ぜひとも医療保険制度抜本改革を早急になし遂げていただくことを切にお願いいたしたいことを申し述べさせていただきます。  現在、市町村国保が、構造的に保険になじまない方々の多くを抱えております。世界に冠たる国民保険制度をこのようなゆがんだ形で支え続けていくことは、もはや限界に達していると言わざるを得ません。  医療保険制度抜本改革に当たりましては、医療保険制度の一本化など、医療保険制度根本に立って、負担と給付の平等化など、抜本改革が必要であります。  特に私は、受益を受けた方については、それ相当の負担をしていただく必要もあると存じます。今後の高齢化の進行を踏まえれば、持てる高齢者には一部負担金や保険料は相応の負担をしていただくことも当然であると存じます。  また、いかに健康を維持し、できる限り病気にならないようにする動機づけを医療保険制度の中に組み込む必要があると考えます。  ともあれ、医療保険制度をめぐる問題の解決については、極めて緊急性を有し、重要な課題でございます。市町村行政を預かる立場といたしましても、今後とも保健福祉と連携した公平、効率的な国保運営の取り組みを積極的に進めたいとは存じますが、またあわせて健康づくり等の保健事業の充実等を図っていきたいと考えております。  このためには、財源の確保とともに、公平な費用負担がどうしても必要になってくるわけでございまして、何とぞ先生方の特段の御尽力をお願いを申し上げる次第であります。  国会の先生方も、本来地元の国民健康保険に御加入いただいていると存じますし、負担は最高の五十三万円を負担をいただいていると存じております。どうぞ先生方も、一度地元の市町村の国保の実態について御検討いただき、市町村の苦しい実態を把握をいただきますことを私はこの機会に重ねてお願いを申し上げますと同時に、抜本改革の一日も早い実現を願うとともに、抜本改革までの間におきまして、公平の観点から必要な見直しを行っていただきまして、今回の法案の速やかな成立をお願いをいたしまして、私の意見とさせていただきます。どうも御清聴ありがとうございました。(拍手)
  10. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 どうもありがとうございました。  次に、坂巻参考人お願いいたします。
  11. 坂巻熙

    坂巻参考人 御紹介いただきました坂巻でございます。  社会保障制度の推進に御努力していただいている先生方の前で発表の機会を与えられましたことを大変うれしく思っております。  まず最初に、私ごとで恐縮でありますが、私の母の話をさせていただきたいと思います。  九十二歳になりまして、二年前、脳梗塞で倒れ、現在全くの植物状態で生きております。病院に入院しておりまして、毎日一日一回鼻腔栄養を受けながら生き続けております。その母にかかる医療費老人保健法の規定によってきちっと払われ、調べてみますと、月々四十数万円が医療費から出ております。さらにまた、家族の負担というものが、医療費の個人負担を含めまして、毎月十二万から十四万の負担が家族にかかってまいります。  私は社会保障制度審議会委員もしておりますが、こういう状態がどんどんふえていくとなれば、日本の医療は大変だという思いがいたします。その一方で、医療保険があるからこそ十数万の負担で済むのだという日本の医療保険のありがたさも身にしみて感じております。その意味では、日本の医療保険制度というものをいかに守っていくか、あるいはこの医療保険制度をいかに国民が信頼できるかという、そこが一番の問題だろうというふうに考えております。  さて、今回の改正でありますが、三つのポイントが出されております。その一番の目的は、言うまでもございません、一番目の老人医療費拠出金の問題であります。二番目の診療報酬不正請求の防止あるいは病床指定の問題に関しましては、恐らくさしたる反論もないごもっともな改正であろうと私は思っておりますけれども、最大のポイントである老人医療費拠出金の問題については、いささか異論があるわけであります。  と申しますのは、そもそもなぜこの改革法案化したかと申しますと、先生方御存じのとおり、財政構造改革法の縛りによる歳出削減というものの一環で取り組まれたテーマであります。平成十年度の予算で一律に削減をし、自然増というものをカットいたしまして、厚生省の予算でいきますと三千億の予算の増しか認めないということになってまいります。福祉予算あるいは社会保障予算では、先生方御存じのとおり、当然増、自然増というものがございます。年金にしても医療にしても、ほっておいても人口の高齢化でふえていく予算でございます。それを一律にカットするというところからこの法改正がスタートをしているということは、疑うべくもない事実であろうというふうに思っております。そして、その結果が、健康保険組合被用者保険へのツケ回しという形であらわれ、そしてその結果として国庫負担が五百六十億の負担減になる、これが今回の法律改正のポイントだろうと思います。  もちろん、膨大な財政赤字を抱え、借金を抱えているときに、すべてが辛抱していこうという形ならば、まだ納得ができるのでありますが、けさの新聞で御存じのとおり、財政改革法自体がもう意味のなさない法律になっている。そのときに、社会保障関係でなぜこういうことをやらざるを得ないのかという疑問が一点ございます。  確かに、健康保険組合国保の間でさまざまな負担の不均衡があることは事実でございましょう。元気なうちは健康保険組合でもって保険金を掛け、年をとって退職したらば国保に移り、そして国保負担がかかっていくというような制度のあり方、これは確かに問題がございましょうし、加入率も二五%から三〇%にするというのも納得できない話ではございません。  しかしながら、国保の側にもいろいろな問題点を抱えていることは事実であります。国保はすべて正しく、健保組合がすべて間違っているということではございません。国保の加入者の所得の捕捉の問題であるとか、あるいは国保がなぜ最高と最低の医療費が倍以上の開きがあるのか。熱心な国保保険者の市町村とそうでない市町村も中にはあるだろうと思います。そういう意味では、健保組合がやっているような厳しい経営努力をしている市町村とそうでない市町村も私はあるだろうと思います。両方ともさまざまな問題を抱える中で、この医療費を考えていくというときに、これは小手先の財政対策では決して解決がつきません。  御存じのとおり、今まで財政対策ということでさまざまな改正が行われてまいりました。その都度、国民負担という形で国民にその重荷がかかってくるわけでありますけれども、幾ら財政対策で手直しをいたしましても、老人医療費あるいは日本の医療制度の抜本的な改革をなくしては、これは繰り返しが永遠に続くテーマであろうと思います。そして、今こそ、抜本改革が言われるときに、その基本構想から改めていく時期が今をおいてないだろうと思います。  一つは、平成十二年に介護保険が導入されます。介護保険が導入されれば、日本の医療費体制というのはがらっと根本から変わってまいります。今の延長線上で考えるのではなく、全く新しい医療費という問題が出てまいります。そのときに、今の延長線上でとりあえず当面被用者負担でもって負担の公平を図ろう、二年後にはまた基本的に変わるというふうな行き方をとるのか、それとも四兆円の大減税をするというような形で、お金があるならば、二年間我慢をして、そして抜本改革によって全く新しく負担の公平を図っていくという、どちらかをとるということになってくるだろうというふうに思います。  問題は、小さな改革を繰り返し、それを毎年のように続けておりますと、国民社会保障制度あるいは医療保険制度に対する不信感というものがどんどん高まっていく、私は今それを一番恐れております。  例えば、特別減税をして二兆円減税をした。それが消費に回らないのはなぜか。これは、国民が先行きの不安を抱えているからであります。社会保障制度というものに不信感を抱いているから、自分自身で貯金をして守ろう、こういう形で貯金に回るのだろうと私は思います。  その意味では、財政改革目当ての、あるいは財源対策で小手先の改革を繰り返すことは決して私は得策ではないだろうと思います。まさに国民が安心できる医療保険体制あるいは社会保障のシステムというものをしっかりと二十一世紀につくり上げる、この努力を今こそやらなければならない時期だろうというふうに考えております。  政治への不信感というものも私はあるだろうと思います。どの選挙でも三〇%台の投票率、これは、言うまでもない、国民の政治に対する不信感のあらわれではないかと私は思っております。その政治の不信感を何がつくるかといえば、目先目先でもってからからと猫の目のように政治の中身が変わっていく、あるいは国民負担にどんどん負担をツケ回していくような社会保障制度のあり方というものもそこの一因にはなっているのではないか、そういうふうに私は考えております。  どうぞ先生方、二十一世紀の日本の医療保険というものは、だれもが安心して年がとれ、だれもがいつでも適正な負担でもって医療にかかれるのだ、そして年金制度にしても社会福祉制度にしても、長生きをしてよかったと言える国になるためのしっかりした制度をつくるのだという安心感を国民に与えていただきたい。毎年のように医療費が上がり、あるいは年金にしても先行きがわからないというようなイメージを国民に与えることは決して得策ではない。まさにその辺を先生方の御努力にお願いをいたしまして、私の意見発表にかえさせていただきます。  ありがとうございました。(拍手)
  12. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 どうもありがとうございました。  以上で参考人方々の御意見の開陳は終わりました。     ―――――――――――――
  13. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。佐藤剛男君。
  14. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 ありがとうございます。  ただいま参考人皆様方から、非常に示唆に富む、また有益なお話を伺いました。それぞれの立場におかれましたお話、篤と承りました。私ども委員会法案審議に役立てさせていただきたいと思っております。  安岡参考人からは特に資料を賜りまして、小手先の制度いじり反対抜本的改革を急げ、あるいは、健保組合の財政収支状況等々についての、私どもが欲しい資料でございましたが、ありがとうございました。心より感謝申し上げる次第でございます。  お聞きいたしまして、不正請求の部分、今回の改正、パートワン、パートツーと分かれますと、パートツーになるのでありますが、これにつきましては喜多参考人また桝本参考人、野中参考人から触れられましたが、これについては別途、別の機会に、また参考人を中心にしましてお聞きするということになっておりますので、これについては触れないで質問をさせていただきたいと思います。  また、全参考人から、びほう策じゃなくて抜本的な改革をしてくれ、これをやらないと、今坂巻参考人がおっしゃられましたが、言うなれば、国民の不信感というものが増長されるということで、二十一世紀に向けまして、しっかりとした抜本改革をやってくれということでございました。五人の参考人方々、そうでございます。  また、私ども政治家、まさしくそれでございまして、また橋本総理大臣みずから、この問題につきまして、二十一世紀の社会保障をどうするかということで、今、六つの改革の中にある大きな一つということは御承知のとおりであります。また、当委員会においても、しばしばこの問題、小泉大臣との間で展開されるわけでございまして、抜本改革ということを、あらゆる面で各委員からこの問題が触れられているわけでございます。その点につきましては、私ども、そういう気持ちで与野党問わず立ち向かっているつもりでございます。その点は御理解を賜りたいと思うわけでございます。  今回の改正、そういう意味においては、抜本改正にほど遠いわけでございまして、老人医療費拠出金負担見直しは当面の対策であるわけでございます。そして、喜多参考人、野中参考人が、条件つきであるけれども、とにかく今の国保の現状を見ておると、一時代前と違って、構造的に、高齢者が増大しておる、あるいは低所得者が多くなっておるということで、もう国保では医療費負担をし切れないんだ、こういうことで、加入者の状況等、あるいは、一般会計から繰り入れを余儀なくされているというお話がございました。  特に野中参考人は、六割の数字をおっしゃられ、全体として三千百七億円の一般会計からの繰り入れが国保について行われておる、もうそろそろこれも限界であるというようなことをおっしゃって、そして、抜本的改革の必要性、負担と給付の公平性について触れられたわけであります。  私は、この抜本改革、まさしく国保の問題、これを避けて通れない、いわば構造的に高齢社会という、世界一の長寿社会になったわけでありますけれども、その反面、老人医療費というものがますます増大いたしまして、老人医療費が既に十兆円に上っているわけでございます。  そういう意味で、喜多参考人、野中参考人は、健康の問題、あるいは、この老人医療費負担というものは痛み分けなんだから、今回の改正というものが、そういう意味で、抜本改革前提にしながら、条件つきながら、早く通していただきたいというお話があったわけでありまして、参考人の中におきまして、それぞれの立場があるわけでございますが、その差異というのが明確になったんじゃないかなと私は思うわけでございます。  そこで、まず安岡参考人にお聞きいたしたいと思います。  安岡参考人からは、日本通運健康保険組合状況、それから全体としての健保の財政収支の資料を賜ったわけでございます。ここに全体としての健保組合の財政収支があるように、老人保健拠出金というのが、平成三年度を一〇〇にしまして、平成八年度一四一と、ほとんどこれ、金額にいたしまして五千億ぐらいの増大になっているわけでございまして、ここに、各健保、あるいは政府管掌、それから市町村健保をどうするかという、国保をどうするかという問題が如実にこの数字で出ておると私は思うわけでございます。  そして、私の聞くところによりますと、特に健保の関係で、情報通信産業など若い人たちの産業などでの健保組合では、加入者は比較的若いわけでありますが、当然拠出金負担をしなければならぬ。そうすると、不満が出ておるという状況を伺うわけでありますが、まず、そこら辺につきまして、私はこれは一つの大きな今後の課題であろうと思っておるのでありますが、情報通信産業、一例でございますが、もしおわかりになりますれば、健保組合の加入者の加入の実情などをまずお聞かせいただけたらと思うわけでございます。
  15. 安岡正泰

    安岡参考人 お答えいたします。  情報産業関係について、ちょっと私の方と業種が違いますので、はっきりしたことはわかりかねますが、いずれにいたしましても、高齢化ということは、企業の中でも従業員の平均年齢が非常に上がってきている。私どもの方の企業でも、四十歳から四十歳以上になってきているという段階で、確かに情報産業の健保の方々の平均年齢というのは、恐らく三十歳代であると思います。年齢差が、一年、一歳違うということは非常に大きな違いがございます。  したがいまして、そういう中で、千八百十五あります各健保の組合の中でも、いろいろ財政的には、はっきり言えば、高低といいますか違いがあると思うのでございますけれども、例えばそういう中で拠出金を考えた場合に、いずれにしても、これからますます高齢化が進んでいくという形の中で、一体そういう高齢者の保険のあり方というものをどうしたらいいのかということになってくるのではないかと思います。それに対する拠出の仕方というものに絡んでくる。  私ども企業でも、やはり部門によって若い人たちの多い部門もあるわけでございます。これは、国際部門であるとか航空貨物輸送部門というのは割合若い人たちが従事をしている。それから、いわゆる国内輸送の分野においては割合高齢化があるという実態がございますので、その情報化との絡みのような、若い人からのいろいろな問題が出てきているわけであります。  しかし、今のところはそれを一本でやっているわけでありますけれども、将来の高齢者の保険というものをどうとらえていくかによって考え方は違ってくるのではないかというふうに考えているわけでございまして、その高齢者保険のあり方というものが、例えば、先ほど連合桝本さんからもございましたけれども、被用者グループ一本で抱えるとか、あるいは高齢者の独立したグループを考えるとか、いろいろ考え方はあると思いますが、将来的には、これはもう私個人のあれでございますけれども国保と被用者の二つのグループにして考えていくという方向になっていくのかどうか。そこら辺はもう少し内部論議も必要になってくると思いますけれども、いずれにしても、いわゆる公平なあり方、それを模索していかなければいけないのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  16. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 提出いただきましたこの財政収支によりますと、安岡参考人のおっしゃるように、これを見て、平成三年、四年、五年とこれは黒で来ておるわけですが、六年から八年に来てというのは、これはもう明らかにあれなんですね、この問題、老人保健拠出金の増大というのがいかに健保組合の財政基盤、財政収支に影響を与えているかというのは、もう公知の事実と言っていいんじゃないかと思います。  それで、安岡参考人の傘下の組合の数で言いますと、ちょっと私、おっしゃられたのかどうか聞き漏らしたのですけれども、どの程度の赤字の組合の現状になっておるのかをお教えいただきたい。
  17. 安岡正泰

    安岡参考人 現在で、千八百十五のうち約七割強が……(佐藤(剛)委員「数で言いますとどうなりますか」と呼ぶ)数で言いますと、ちょっとお待ちください。(佐藤(剛)委員「結構です」と呼ぶ)よろしゅうございますか。大体そのぐらいの、ちょっと掛ければ大体わかる数字でございますけれども、以上でございます。
  18. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 それで、先ほど桝本参考人からお話がありました。医療改革報告を連合としてされて、そして高齢者の問題というのは、これはもう大きく取り上げなければいけない、それが健保から抜けていけば、これは市町村に行ってしまう、国民健保の方に行くという話で、これをどうするのかということで、ちょっと連合としての、今努力をされていて調整中だと承っておるのでありますが、桝本参考人におかれましては、どのような見通しをお持ちなのか。本日現在で結構でございますが、そこら辺を将来の展望と同時に、抜本改革に極めて関連するわけでありますが、その点についてのお話を聞かせてください。
  19. 桝本純

    桝本参考人 お答えいたします。  もともと、先ほど申しましたように、労働者には健康保険というものがありまして、それから、国民保険という立場から、労働者のこういう健康保険に入れない方々のために、地域保険として現在の市町村国保がつくられたわけでございます。  当初、この制度の趣旨は生かされておりました。つまり、当時、退職した人たちについては、非常にわずかな年金しかなかったために、扶養家族としてサラリーマンの健康保険の中にとどまっていたわけでございます。それから、終戦直後の状況で申しますと、農業で働いていた人たちが日本の労働人口の約三分の一ぐらいおりましたから、その意味で地域保険というのは自営業者の方々保険としてその趣旨を全うしていたと思います。  しかし、その後、一方で自営業者の数が非常に減る、それから、他方で年金制度充実してきた結果、退職者の人たちも自分の所得というものを捕捉されて扶養家族ではいられなくなった。この結果として、市町村国保の被保険者にならざるを得ないわけですね。そのあたりから制度発足の趣旨が非常にゆがんできてしまったのではないか。私どもは、現在の状況に合わせて、これを制度のそもそもの趣旨に合わせる、それが全体の医療保険制度の中での高齢者の方々の位置づけの問題として審議会で議論されてきたテーマについての回答でございます。  したがって、高齢者の方々だけを取り出して、切り離して別な独立保険制度をつくる、与党三党で合意をされたこの内容は、恐らくはうまくいかないだろう。現に、与党三党で提案された中身は、この独立保険はだれが保険者なのか。独立した保険である以上はだれが保険者なのかをはっきりさせなければいけないはずですが、保険者がだれかを明らかにされていない。これは案と呼ぶには残念ながら足りない一つのアイデアではなかろうか、そのように思いますし、むしろ全年齢について、元サラリーマンはサラリーマン保険集団の枠の中でその医療が保障されるというシステムに大胆に切りかえるべきであって、これがおくれればおくれるほど事態は深刻化する、このように考えております。
  20. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 ひとつ、そういう形での御努力を願いたいと思います。  また、国民健保につきまして、喜多参考人、野中参考人にお伺いさせていただきます。  先ほど、野中参考人は、国民健保はこのままでいきますと、国保財政そのものがほとんど破綻状態になってしまう、一般会計から繰り入れしているのが六割、三千百億円程度の繰り入れに当たっておると。これはいかがでございますか。このままほっておきますと、この六割とその三千億というのは、全国的なベースでいきましてどのような見通しを持っておられるか。置いておきますれば、どんどん割合もふえ、それから一般会計繰り入れを余儀なくされるという状況になるのだろうと思うのですが、そこら辺、喜多参考人、野中参考人にそれぞれお聞きいたしたいと思います。
  21. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思います。  先生今おっしゃっているように、このまま放置すればどうなるかということになりますと、ますます赤字の額がふえてまいりますし、それから、基本的に国保保険料というものの計算根拠が非常に高うございますから、払わない人がますますふえてくる。払えない人ではなしに払わない人がふえてくるという心配もたくさんございます。  もちろん医療費の高騰もその大きなウエートの要因だと思いますが、もう一つ、先ほど法定外で三千百億円近い繰り入れをしているという説明を野中町長さんがされたわけですが、それ以外の法定分の三千八百億円、法定ですからどこかから金が出ているだろうと思っていただいているかもわかりませんが、実際は、法律とかいうもので算出の根拠としては決まっていますが、これも一般財源からほとんどが出ておるというふうに申し上げても過言ではなかろうかと思います。  したがいまして、実質的に市町村が負担している額は三千百億円だけではなしに、さらに三千億円ぐらいがその上積みになるというふうに御理解をいただいた方がわかりやすいのではなかろうかと思います。これだけのウエートのものに市町村が耐えられるかどうかということをお考えいただければいいのではなかろうかと思います。  以上、的を射ておりませんかもわかりませんが、お答えにさせていただきたいと思います。
  22. 野中一二三

    ○野中参考人 今先生のお話のとおり、喜多さんもおっしゃいましたように、法定内の負担金と法定外の負担金と二面性があるということでございまして、私が先ほど申し上げましたのは、法定外負担でそれぞれの市町村で負担をしなくてはならない、赤字補てんのために対応しなくてはならないということが一点と、先ほどから連合関係者の皆さんもおっしゃっておりますが、我々、国民健康保険についてもこの老人医療費に対します拠出金が、例えば私の町、園部町を例にとってみましても、一年間十億円程度医療費のうち三億九百六十万四千五百九十九円を老人医療費拠出金として負担をいたしているわけでございます。  これは、雇用者保険や健保連だけが負担をされて老人保健を持っていただいているのじゃございませんので、この辺、我々市町村の国保も三割程度はいわば老人医療費拠出金として負担をしている。この拠出金がなければ一定の健全な経営ができるのじゃないかというふうに、私たちから見れば言えるのも現況でございますので、この辺を一点、十分私たちは御理解をいただきたい。そのことが我々の市町村の国保運営に、法定外負担とこの拠出金によって大変な過重負担をしているということが実態でございます。  このまま放置したらどうなるのかという御質問ですが、我々は、近いうちに、やはり町村として国に対していわば保険制度を返上するような対応をして財政健全化を図っていかないと、医療だけが我々町村の仕事じゃございませんので、多くの仕事を抱えておりますので、国で決められた我々の義務かもわかりませんが、国に対して町村会として返上申し上げる機会も考えざるを得ないというのが私たちの現況でございますので、よろしくお願いをいたします。
  23. 佐藤剛男

    佐藤(剛)委員 野中参考人から厳しいお話をいただきました。返上されてはまた困る部分もあるわけでございますから、ここで結局、老人医療費拠出金改正というのは、老人医療費負担をいわば痛み分けのような形で調整するものじゃないかなということでございます。  そして、先ほど喜多参考人が、払わない人が多くなっているということで、この委員会でもしばしば各委員から未払い部分についての問題が指摘されております。どうかその点について、払わないのか集めないのかといういろいろな問題はありますが、そういう点については御努力をお願いいたします。  きょう、坂巻参考人、お帰りの時間があるそうでございますので、私の持ち時間はありますが、十分間減らしまして、これをもちまして終わらせていただきます。ありがとうございました。
  24. 柳沢伯夫

  25. 山本孝史

    山本(孝)委員 民友連の山本孝史でございます。  参考人の皆様にはお忙しい中お越しをいただきまして、ありがとうございます。せっかく来ていただいて現場の声を聞かせていただいているのに、自民党の先生方は随分空席が目立っておりまして、遺憾に思います。  遺憾に思いますことのもう一つは、昨晩、橋本総理が記者会見をされまして、景気対策として、減税あるいは財政出動並びに財政構造改革法の改正を今国会でするというようなことをおっしゃったわけですけれども、今回通りました予算はこの財革法を前提につくられておりますし、予算編成はそういう形でなされている。  今審議をしております国民健康保険法等改正案もこういう政府の考え方を前提につくられている、提出されている法案ですから、そこのところをもっとはっきりさせていただかないと、本来、参考人の皆さんのお話をお伺いをしてもこの法案審議の意味がないと言っては失礼なのですが、という状況なんですね。でありますけれども、きのうの夜の発表できょうの参考人の皆さんのお話なので、きょう聞かないというのは大変失礼になりますので、委員会は予定どおりに開かせていただきましたけれども、ぜひこの点はしっかりとした対応を政府にはお願いをしたいというふうに思います。  並びに、今参考人の方たちがお話になりました、関係者すべて、満足しておられない、条件つきながら賛成という、渋々というようなお話もございます。何といっても、二十一世紀の医療体制に向かって安心感を醸し出してほしいという坂巻先生の御指摘、まさにそのとおりで、抜本改革への道筋なしに、政府みずからもおっしゃっておられるように、財政的な危機だけ何とか小手先で、あるいはツケ回しでやっていくという形は大変に遺憾に思っているところであります。与党協の皆さんには、ぜひしっかりとした案を出していただきたいと思っております。  まず、桝本参考人にお伺いをいたしたいのですが、先ほどの御発言の中で、審議会での議論がまとまらないうちに政治決着をされて今回の改正案になっているということについて御不満を表明をされたわけですけれども、何だか特定団体の圧力があったとかなんとかとおっしゃいましたけれども審議会の中のまとまり方というのは、今回この法案提出するに当たって十分であったのかどうか、御意見を伺いたいと思います。
  26. 桝本純

    桝本参考人 お答えいたします。  そもそも、今回の退職者に係る老人保健拠出金の振りかえという問題は、政府の、予算を抑制をする、社会保障関係予算を抑制する、その抑制した負担のツケ回しを国民健康保険かあるいはサラリーマンの健康保険かという形で出されたもので、先ほど、痛み分けというお話もございましたけれども、問題は、痛み分けの以前に、財政構造改革法を前提にした社会保障費の不当な抑制ということがまずあったわけですね。これをめぐって、同じ国民であります市町村国保にかかわる方々とそれから我々健康保険にかかわる労使とが、何か、本来対立すべき問題でもないところで引き裂かれ、対立をさせられ、そして予算を削った側だけがそれを冷たく笑って見おろしている、こういう構図が今回の予算編成でございました。  当然、こういう構図の中で開かれた審議会は、実際の必要な予算の手当てなしには具体的な合意に至るはずもない.そういう問題でございます、そして年末の医療福祉審議会も中医協もその見解をまとめることができなかった。一方でお金がないお金がないと言って、そしてこれだけの負担をぜひしろと。本当にないのかと思っていたならば、一方で一千億ぐらいがどこからともなく出てきて診療報酬は引き上げられる。そしてこれは、審議会で決められるべきものが審議会ではないところで決められている、極めて非民主的かつ不明朗なものでございまして、我が国の医療が抱えている不明朗さがそのままもろに表現をされたような印象を持っておりました。大変に残念でございますし、ぜひ国会におかれましてそういう黒い霧が吹き払われますように期待をしております。
  27. 山本孝史

    山本(孝)委員 坂巻先生から、低投票率は政治への不信のあらわれだと、大変厳しい御指摘を受けました。しっかりとした審議をさせていただきたいというふうに思っておりますが。  安岡参考人から、きょう、細かな数字もお出しをいただきました。日本通運健康保険組合という、みずから御所属の団体の財政状況の表をお出しいただいたわけですけれども、見ておりまして、被保険者数が、加入しておられる方たちの数が減ってくる、企業のリストラ等が進んで、だんだん保険料を払う方が減ってくるという状況が一方ある中で、保険料収入はほとんど、九八・七八ですから、同じぐらいは集めておられる。あるいは一生懸命集めようとしておられるのでしょう。  その中で、老健拠出金の割合だけが平成五年度に比べて二割、平成九年度は上がってくるわけですね。老健拠出金がこの財政状況に非常に大きい影響を与えているという表をお示したというふうに思うのですが、今後、日本経済の中で、企業のあり方も含めて皆さん方の、流通業という中の特定の企業ではありますが、企業の全体のあり方も含めた上で、今後どうなっていくというふうに思っておられるのか、どういうふうな状況を予測されておられて、どういうふうにしないとこれは大変なことになるというふうなお感じでおられるのか、少しお話をしていただければと思います。
  28. 安岡正泰

    安岡参考人 今、私どもの方の母体企業である日通の内容に踏み込んだ御質問になるのかと思いますが、そこに、お手元にお配りいたしました平成五年から平成九年度までの概要の推移、今御指摘ございましたように、保険料収入につきましては五年度から若干下降で行っている。給付費につきましては上昇をしている。微増みたいな、この段階では一〇〇に対して平成八年度が一〇二・一四でございます。  ただし、その中で拠出金が非常にふえてきているわけでございまして、特に老健拠出金が一二二・六九まで行ってしまっているということで、これを今後どうするのだというような御質問だと思うのでございますけれども、今保険給付費で平成八年度で六三・二%になっております。それから、老健拠出金を含めて三拠出金で三三・五%になっておりまして、両方合わせまして収入の九六・七%、これだけのウエートを占めてしまっているわけでございます。  それで、保険料収入の九六・七%を医療費拠出金で取られてしまっておりますと、残り数%で、健保本来のもう一つの柱であるいわゆる福祉活動であるとか、そういうものが果たして成り立つのかどうなのか、我々としても非常に大きな危惧を持っております。  これからは、従業員、勤労者を病気にかからせない、予防をしていくということが、企業の福祉活動としては、また健保活動としても非常に大事なことであります。病気にかからせないためのいろいろな保健活動、福祉活動をしていかないと。それをすることによって医療費を落としていくということが、我々健保としてこれからやらなくてはならない仕事、責任であると思うのです。  そういう段階で、こういう医療費が毎年一兆円規模で増大をしていく。その中でも老人医療費が拡大をしていく。拠出金も大幅に上がってきている。健保組合の中で今老人拠出金を一番多く拠出をしているところは、収入の六〇%、六〇%を拠出金拠出をしている組合もあるやに聞いております。そういう実態の中で、やはりこういう拠出金のあり方というものを、いわゆる小手先だけのことではなくて、もっともっといろいろな観点から、診療の問題、医療費の問題、医療提供の問題、薬価の問題、そういうことも含めて、どういう形で今後の高齢者の保険を創出していくか、それを早急に検討していかないと、保険料収入の五〇%も六〇%も持っていかれたら、本来の民間健保としては一体何なんだ、これが民間健保の保険組合なんですかということにもなってまいりますので、そこら辺のいわゆるメスをもっともっと入れていかなければいけないのではないのかな。  そうしませんと、私ども健康保険組合につきましても、そこの数字でございますように、経常収支、差し引きで、八年度で二十九億八千六百万の経常収支赤字になっております。九年度で十七億、これはまだ九年度はあれでございますけれども、推定で十七億の赤字になってきている。なおかつ、十年度の予算編成をいたしましたけれども、これでも十億の収支赤字という予算編成をいたしました。  したがって、じゃ、この後どうなっていくのか。しかし、表面上は繰入金を入れてやっているわけでありますが、繰入金を入れてもこの経常収支がこうだということでございまして、その繰入金というのは別途積立金を取りまして繰り入れて、バランスをとっているわけです。なおかつ、経常収支で見ればこういう赤字だ。別途積立金をずっとつぎ込んできております。それは繰入金のところで見ていただけば、これは別途積立金から入れた繰入金でございますけれども、もう十年度の予算編成をした段階で、別途積立金は、私ども日通健保ではほとんどゼロに近い。七十数億ありました別途積立金が、平成五年度以降取り崩し取り崩しておりますので、十年度の予算編成をした段階でもうほとんどゼロになってしまったというのが実態でございます。  そういう苦しい状況でございますので、我々としても、どうやって将来に向けてやっていくかということになってまいりますと、いわゆる老人保健のあり方について、いろいろと内部でも検討していかなければならないのではないかというふうに考えております。  以上でございます。
  29. 山本孝史

    山本(孝)委員 福祉活動とおっしゃいましたのですけれども、お薬を配ったりとかあるいは立派な保養所を持ってみたりとかというあたりは、なかなか国民の側は理解しにくい部分であって、あるいは健保組合さんの場合は企業負担率が、我々政管健保は半分ですけれども、大分企業の方たちの方の持ち分が多かったりして、なかなかちょっと我々には理解しがたいというか、うらやましいというような部分もありまして、ここは痛しかゆしの部分があるのですけれども、ただ、今おっしゃいました中で、やはり三割あるいは四割、五割と老人拠出金で出ていくというのはいかがかとおっしゃる。  問題は、高齢者の医療を一体だれがどのようにして負担をするかという話が一番問題なんですね。そのときに、だれのために払っているかわからないという考え方は、自分たちの保険集団の中で払っているはずなのに、外へ出ていってしまったのがおかしいとおっしゃっているのだけれども、でも高齢者全体を広く国民負担をするということであれば、拠出金という方法がいいのかどうか別にしても、だれかが負担をしなければいけない。そこのところを抜きにして、自分の組合は大変だから、自分の市町村国保は大変だからという話は、これは成り立たない話なんですね。これは制度がやはりおかしいのだというふうに思います。  それで、野中町長おっしゃったように、やはり国保の赤字というのは構造的なものですから、これはやっている限りにおいては幾らでも赤字が出てくる。これはもう仕方がない話、ここもやはり変えなければいけないというふうに思っているのですけれども、この質問をしますと、皆さんに実はお答えをいただくと、多分私の持ち時間がなくなってしまうのでいけないのですが、要は、高齢者医療を一体だれがどのような方法で支えるのが一番いいと思っているのか。  市町村国保であれば、県単位の方がいいのか、あるいは規模がどうなのかという問題もありますし、連合さんの話はちょっとどうかと実は思っているのですけれども、この高齢者医療制度というものをどういうふうにセットするか、今与党協の中で大分もめておられますね。そういったあたりを含めて、御指名して申しわけありませんが、喜多市長と坂巻参考人に、ひとつこの高齢者の医療制度という、高齢者の医療費というものは一体だれがどのような方法で持つのがいいというふうにお考えなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  30. 喜多洋三

    喜多参考人 山本先生の御質問にお答えをいたしたいと思います。  結論から申し上げますと、先ほどの十分間の意見陳述のところでも申し上げました、抜本的に、そして一元化できるような制度にすべきだと思います。  老人というのは、いずれ国民全員が通る道でございます。それを、若年層は所得がないからだめだとか、いやそれはのけるんだとか、または企業の分はのけるんだとか、国保の分はどうだとかという議論じゃなしに、人間と生まれた限り、オギャーと生まれてから死ぬまでの間に一回は通る道ですから、全員が負担をするという、一本化してだれもが納得できる医療保険制度にすべきだというふうに考えております。  ただ、国保立場から申し上げますと、既に国保制度そのもの自体は壊滅をしているんじゃないかと私は思います。私のところの例で申し上げますと、生活保護者、二人世帯で年額約二百十万ぐらいの生活保護費があるわけです。それを下回る所得の方が、私ども国保、全世帯の中の六九%に該当する人が生活保護世帯よりも下だ。しかも、所得がない世帯は全体の三〇%ある。所得ないのになぜ生きているんだ、しかも生活保護ももらわずになぜ保険に入っておるんだということがありますけれども、これは、トーゴーサンピン、クロヨンという言葉もありますように、国税当局が認めた所得でございますので私どもとしてはいかんともしがたい。そういう中で、徴収率を上げろ、やれを何しろ、負担をしろと言われても、とてもやっていけない。先ほど野中参考人がおっしゃったように、私も個人的に申し上げれば、今すぐにでも返上したいというのが心理でございます。
  31. 坂巻熙

    坂巻参考人 お答えいたします。  大変難しい問題だと思うのですね、だれがどのように負担をするか。しかしながら、医療保険につきましては長い歴史がございますし、現実に幾つかの制度が、ばらばらでありますけれども、その中で調整し合って今日に至っているわけでありますが、私は、医療保険という考え方、保険というふうに使いますけれども、日本の場合は純然たる保険原理で動いているわけではございません。御存じのように公費負担というものがかなり入っておりますから。そうしますと、純然たる保険でしたらば、加入者が保険料を払って、その加入者の中で賄っているわけでありますが、介護保険にしましても医療保険にしましても、国保の場合には給付費のたしか二分の一が国庫負担でございますし、介護保険に至っても半分が国庫ということでありますと、もう保険原理ではないだろうと私は個人的に思っております。  その意味では、老人医療費負担国民全部が共同負担をするという大原則をつくり、公費負担の部分を強めていくという行き方しか私はないだろうというふうに思っております。もちろん財源の問題がいろいろございますけれども、現実に全額公費でやっているような国もあるわけでございますし、国民が、自分の生活、医療にかかっても安心して受けられるということになれば、全額公費負担という、全額というのは歴史的に現実には無理でありましょうけれども、公費負担の部分をもっともっと強めていく、この方向は私は望ましい方向ではないかというふうに考えております。  以上です。
  32. 山本孝史

    山本(孝)委員 私たちも、私なども新進党におりましたとき、高齢者医療という制度のあり方、もう少し公費を入れてきっちりとしたものにせぬといかぬのじゃないかというふうに思っているのですが、いずれ、その平成十二年の介護保険の発足まで何とか逃げ込めばいいわ、あそこに逃げ込んでしまえば医療保険も少しは状況が変わるわいというのがどうも政府の考え方のような気がしていまして、それはいかぬ、ここはしっかり将来を見据えていただかないと困るので議論をさせていただいているわけですけれども保険者機能の強化という問題が常にやはり出てきているわけですね。  この点について、安岡参考人喜多市長と野中町長にお伺いをしたいと思っているのですが、いわゆるこの保険者機能の強化という部分で、一つは、レセプト点検という問題をどういうふうに受けとめておられるのか、それから、とりわけレセプト開示という問題について国の方から通達が出ておるわけですけれども町長さんの窓口あるいは市長さんの窓口のところで、レセプト開示という問題どんなふうに受けとめておられるのか。  それから、喜多市長からは国保返上論がやはり出ましたけれども守口市の状況で大変厳しい数字をお示しになりましたけれども、野中町長園部町のところで、去年からまた保険料も上がり、あるいは自己負担もふえというような形の中で、この国保運営しておられる上でのお困りになっておられることがありましたらお聞かせをいただきたいというふうに思います。
  33. 安岡正泰

    安岡参考人 保険者機能の強化というのは、私ども健保組合としては非常に重要な問題であるという認識をまず持っております。その具体的な内容についてもっともっと我々としても論議を深めていかなければならないというふうに考えておりますが、やはりこれからは、患者の立場に立ったということでのベースが必要であろうと思います。  したがって、そのためにはどうしても医療情報の開示というのはまずあらねばならないということが一番の大きな問題でありまして、その上に立ちまして、例えば医療費審査に対する保険者機能のあり方、その中の具体的な例で言えば、レセプトの問題である、いろいろあるわけでありますが、レセプトが支払基金から審査をして私どもの方にまた回ってきて、私どもの方でまた審査をしてそれをまた戻すということになっておるわけでありますけれども、その支払基金でのレセプトチェック後、私どもの方に回ってきても、また相当数のチェック対象枚数、件数が出てくるという形で、これも私どもの健保でも、何億という不正というのか不備というのか、お返しをして再度チェックしてもらうというあれが出てきております。したがいまして、その支払基金に対して健保としては費用も払っているわけでありますので、そういう意味で、医療費の請求に対して、やはり私どもは請求されたものについては内容をしっかり確認をするということは当然の権利でありまして、そういう意味で、レセプトの点検あるいは医療費の通知というものについて、もっともっと充実していかなければならないなというふうに思っております。  そういう中で、やはり患者さんに対する、保険者というのでしょうか、保険者に対する審査情報の提供であるとかあるいは患者さんの調査の自由化であるとか、そういうこと、それから患者さんに対して保険医療機関の利用に関する選択権のあり方であるとか、そういう問題についても、これから健保の機能強化というものについては、よりもっと強化をしていかなければならないというふうに考えております。  以上でございます。
  34. 喜多洋三

    喜多参考人 冒頭ちょっとお断りをいたしておきたいと思いますが、先ほど私、国保の返上論を申し上げましたが、これは気持ちとして申し上げたわけで、それだけ真剣に考えていただきたいという思いを込めてでございますので、誤解をしていただかないようにお願いをしておきたいと思います。  ただいま御質問のレセプトのことでございますが、御案内のように、保険者、市町村では自立的に権限がないわけでございます。医者に対する資格の取り消しとか、本日は出ておりませんが、病床、ベッドの数の制限とか、いろいろなそういう問題については全都府県以上でおやりになっておられまして、本来保険者であるべき我々がやるべき仕事に対しては、我々に対しては権限が与えられておらないというのが現状でございます。したがいまして、先ほど本論の参考意見のところで申し上げましたけれども、消費者保護という意味から、受けたその内容等が受診者がよくわかるようなシステムにしていただくことが少しでも改善される方途ではなかろうかな、このように考えております。
  35. 野中一二三

    ○野中参考人 今御質問いただきまして、喜多市長さんは気持ちの問題とおっしゃいましたが、私は、もう町村は本音として返上したいというのが現況でございますので、市と町村の違いというのはその辺にあるということを私は御理解をいただきたいというふうに思いますことが一点。  レセプトの関係につきましては、私たちほとんどがレセプト点検は各町村で嘱託制度でやっておることは事実でございます。その辺で、大変財政的には、徴収、または先生方もそれぞれ記載間違い等が大変多くあることも事実でございまして、私の町で、七億余りの医療費の中で、大体年間四、五千万近くそういうレセプト点検で上がってくるものがあるというのも事実でございますので、これは二名嘱託を置いていますが、これをなくするわけにはいかないというのが現実でございまして、これは悪意じゃなしに、点数の間違いであり、または記入漏れ等があってそういう形が起きているというのが実態でございます。  また、レセプトの公開性の問題については、やはり患者の皆さんからぜひ知りたいという形がありますことが一つ。もう一点は、市町村から公開をしてお送りをするわけでございますが、その場合に、内容がわかりにくいという逆に問題を提起される点がございます。  これからやはり薬価の問題とか薬の内容とかいうものももう少し細部にわたってお知らせできるようなことをしないと、患者の皆さんには専門的な形で書いただけではわからない、こういう一面がありますので、もう少し公開を明確にしていくことが私は大切ではないか、患者がむしろ理解ができやすいというふうに思っておりますことが一点でございます。  また、私たちの町も徴収の関係で大変苦労いたしております。私たちは、他の一般税については九九・五%程度の徴収率があります。ただし、国保だけは九四・七%。先ほど喜多市長さんからもおっしゃいましたように、国保だけは大変でございます。  この辺を、というのは、税は納めなくてはならないけれども国保は納めなくても診てもらえるという安易さがあることも事実でございます。また、保険証を出さないわけにはまいりませんので、短期間に制限をしたりして保険証を提示をしたりしておる経緯がございますので、この辺の問題点が少々ある。  ただ、この徴収に私たちも昨年度から嘱託の徴収員を別枠に置きまして、そして実態の説明をしていただきながら徴収に努力をしておる。これによって二%程度、今まで大体九二%程度でしたけれども、九四・七まで上がってまいりましたので、これによって少々、私たちもできるだけ対応していきたいというふうに思っております。  もう一点、問題点というのか、町村として考えなくてはならないなというふうに私が思っておりますのは、保険料を満額、毎年、前納制度でお納めをいただいて医療に一度もかからない、何年間も医者を利用されないいわば住民がおいでになるわけなのです。  ところが、この人たちには減額制度もなければ、感謝金等で制度化をしてお礼を申し上げるような形の制度ができない一面がございます。これは減額したらまた法律上の問題がありますので、この辺が一番私は問題で、むしろ利用しないで保険料を納めていただいておる皆さんにやはり何らかの道あけをする制度というのが、国保充実をしたり、収納率を高めていく上においては大切ではないかというふうに思っておりますこともこの機会に申し上げておきたいと思います。
  36. 山本孝史

    山本(孝)委員 大変に御苦労いただいているお話、よく理解をさせていただきました。  最後の質問にさせていただこうかと思いますが、先ほど喜多市長少しお触れになりましたベッド数の問題なのでございますけれども、厚生省の方からいただきました、医療計画に基づく必要なベッド数と今あるベッド数という数字をずっといただきまして、ベッド数というよりは、必要な医療の供給をどういう形で今、喜多市長と野中町長にもう一度お伺いしたいと思っているのですが、市長あるいは町長がおられます地域を見て、あるいは医療圏を見て、提供されている医療の量と質というものがどういうものであるというふうに評価をしておられるのかという点なのです。  病床数のことだけでいきますと、町長のところは京都府の中部医療圏ということになります。六十三年と平成八年末、平成九年三月のベッド数の比較なのですけれども、まず既存のベッド数からいきましょう。京都府の中部医療圏の既存のベッド数は、六十三年が千百十四、それから平成八年が千百八十五、ほとんど動いていないのです。必要ベッド数は千二百九から千四百に上がりましたので、不足しているベッド数は、昭和六十三年は九十五床足りないというところが今は二百十五床足りないという計算になっております。  大阪府の東部医療圏、守口市、私が住んでおります八尾市も同じ医療圏でございますけれども、これも今、既存のベッド数でいきますと、一万六千三百九十が一万六千二百三十七、百五十ほど減りましたけれどもほとんど変わっておりません。必要ベッド数は、逆に一万三千九百五から一万五千二百四十七というふうに上がりまして、したがって、オーバーしているベッド数は、二千四百八十五だったものが今は九百九十まで数字が下がってきております。  ベッド数だけでいきますと、実は六十三年から平成八年末までの間に余り大きな動きはない。ただ、人口の高齢化であるとかということで数字の計算だけが変わりますので、結局は必要なベッド数あるいは足りないベッド数のところの数字だけが動くというのが今医療計画上の必要ベッド数という考え方なのです。  という説明を申し上げて、最初の質問に戻ります。  守口市の大阪東部医療圏あるいは京都府の中部医療圏で今提供されている医療の量と質という問題について、首長さんのお立場からどういうふうに評価しておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  37. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思います。  私どもの市の面積は十二平方キロ強でございます。その中で約十六万人、十五万八千人の市民がおいでになるわけでございますが、そういう狭いところでたくさんの人口を抱えて、実は市民病院はございません。かわりに大学の附属病院が一つとそして大企業の病院が一つございます。そのおかげで市民病院を今日までつくってこなかったわけでございます。  大阪府下の状態から見ますと、人口比で申し上げまして大阪府下で第三位でございます。大阪市が一番、そして二番目が池田市、守口市が三番目ということになっております。これは非公式の計算でございますが、面積比にいたしましても二百メーター四万に一カ所医療機関があるということになりますので、相当充実しているのではなかろうかなというふうに思っております。したがいまして、市の休日診療体制とかそういう、先ほど申し上げました大学、大規模病院がございますので、休日診療を含めまして、受診環境は極めて良好な状態にあるのではなかろうかなと思います。  守口の入院の実態でございますが、全国平均の〇・九八八が実態でございまして、ベッドが不足しているということを市民から直接聞いたことはございません。
  38. 野中一二三

    ○野中参考人 京都の中部地域の関係につきましては、先生御案内のとおり、ベッド数が不足をいたしておることは事実でございます。  ただ、私たち広域的に一市八町、亀岡市と他の八町で一市八町が中部広域圏になっているわけでございますが、この中においては医療の質は相当高まってきているというふうに思っております。  ただ、ベッド数が果たして本当に少ないのか否かということについては、京都市内等に大変病院が多くあるということも事実でございまして、手術であるとか入院であるとかというのはこの辺の京都市内の地域へ行く場合が大変多くありますので、即ベッド数が足らないということだけにはつながらないのではないか。  むしろ、公立南丹病院という一市八町で経営をいたしておるのが一つございます。ここは今三百五十床のベッドを持っております。これに今百床を増床するという形の認可をいただいておりますので、これの建設をやることによってベッド数についてはそう多くの問題がないのじゃないか。  しかし、現況の医療制度の実態では果たして公立病院の経営ができるのかということで、正直申し上げまして、一市八町が完全によう踏み切らないというのが現況でございます。市町村にこれ以上過重負担をしてはならないという一面がございまして、その分不足のものは京都へ行ったらいいじゃないかという一面があることも事実でございまして、その辺については、即二百十五床の不足が必ずしも適切であるのか否かというのはもう少し私は見直しをしていただいて、周辺地域での病院の利用ということも含めて考えていく必要があるのではないか。  ただ、我々の中で一番問題は、八町の中に診療所、病院、こういうものは各市町村、園部町なり八木町は除いて、そのほかにはすべてと言っていいほど診療所があったり町立の病院があったりするわけでございます。  この辺の経営が何億、最低一億から二、三億の赤字を各町が出しているという現実もございまして、私たちは、南丹病院のベッド数をふやすことよりも、周辺の八町の病院なり診療所に対して南丹病院の構成の中で面倒を見ていくような制度に変えていくことの方が、市町村の財政負担の軽減のために大切じゃないか、今、こういう問題の提起をいたしておりまして、早急にベッド数をふやすのか、それともまず八町のそれぞれの診療所や病院を南丹病院は補完をするのか、こういう形の提起はしたい。  ただ、医療内容等については、十分満たされていると言っても言い過ぎでないような状態であることだけは申し上げておきたいと思います。
  39. 山本孝史

    山本(孝)委員 医療計画の考え方をもう一遍ちゃんと精査をしてみないといけないと思っています。といいますのは、先般も河内長野で、小児の急患、夜間の急患というのが非常に、今どの地域もそうだと思いますが、大阪でも結局インフルエンザで亡くなったりもしているわけですね。  そういう意味で、今、市長さんも町長さんもお触れになりました自治体病院のあり方というものも、もう一遍考え直してみないといけない。大学病院の役割というのもあると思いますし、そういったことも含めて、医療計画上のものをもう少し考え直さないといけないんじゃないかなというふうに実は思っております。  時間が参りましたので、質問を終わらせていただきますけれども、やはり安心した医療体制というのは、国民にとっては大変大切な問題でございますので、今回の委員会審議等を通じて、しっかりとした議論をさせていただきたい、きょうの貴重な御意見参考にさせていただきたいと思います。  きょうは本当にありがとうございました。
  40. 柳沢伯夫

  41. 福島豊

    福島委員 平和・改革福島でございます。  本日は、参考人の皆様、大変に御苦労さまでございます。貴重な御意見をお聞きすることができまして、大変幸いに思っております。  まず最初にお聞きしたいことは、医療制度抜本改革ということでございますが、近年、抜本改革ということがずっと国会においても語られているわけでございます。しかし、今回のこの国保法の改正にかかわる昨年の暮れの経緯を見ておりますと、果たして関係団体が合意に達するということは可能なんだろうかという思いを私は深くいたしております。  経済成長によってパイが広がっていくときはいいわけですが、現在のような大変厳しい状況の中で、果たして関係団体が一つの合意に達することができるのかどうか、合意に達するためにはどのような戦略をとるべきなのかなこということを、本日お話をお聞きしておりまして感じました。  先ほど、喜多市長おっしゃられましたように、私は、国保制度そのものが崩壊しているといいますか、構造的にもう立ち行かないということですから、やはり一本化するという方向が、とらざるを得ない道なのではないかなというふうに思っているわけです。  この点につきましては連合桝本局長は意見を異にすると思いますが、この一本化というようなことについて果たして合意する可能性があるのかないのか、そのあたりを率直にお聞きしたいと思います。
  42. 桝本純

    桝本参考人 医療保険制度の一本化という議論は、昨年の夏、厚生省案の中で出された一つの考え方でございます。すなわち、現在の市町村国保も、それから被用者にかかわる健康保険も、すべてを地域別に統合してしまおう、こういう考え方ですね。  私ども、それが全く荒唐無稽だとは考えませんが、現在までの歴史、それから現在の医療保険の現状、そしてまた所得捕捉と保険料賦課のあり方、こういうことについて考えますと、これを現在議論することがどれほどの実践的な意味があるのかということについては、大変疑問でございます。  むしろ、現在までの、我が国、我が国だけではありませんが、被用者にかかわる定率負担での労使の負担し合う被用者保険というあり方と、それから被用者以外の方々を対象にいたしました地域保険というもののあり方がそれぞれの機能をきちんと果たせるような条件をつくり出すことが我が国の課題なのではないだろうか。それが、それぞれの持つべき機能ということが大変大きくゆがんできてしまって、地域医療保険制度、すなわち市町村国保が、あたかも老人保険のごとき姿を呈するようになってきてしまった、このことの見直しが必要なのだろうというふうに思います。  そのときに、わざわざ到底実現の見通しもないような医療保険の一本化という議論を持ち出すことは、実は、かえって現在直面している制度改革の具体的な問題から目をそらし、不必要な制度議論へ誘導することになりはしないか、むしろその方を我々は懸念しております。
  43. 福島豊

    福島委員 喜多市長にお聞きをしたいわけですが、そうしますと、一本化というのは到底無理だという御意見なんですが、国保に関しまして、高齢者を全部切り離してしまうということで立て直すということは、これは可能な道でございましょうか。
  44. 喜多洋三

    喜多参考人 高齢者だけを別建てにして保険をするという御意見の方が方々においでになることは、よく存知をしております。しかし、保険料が果たして取れるのかどうか、そういう原点から考えますと、老人保健医療だけを別建てにするということは非常に困難な面が多々あると思います。拠出金制度を別の保険制度にしても、結局は、そのお金はだれが持つのだということになれば、それは机上の空論ではなかろうかな、このように思っております。
  45. 福島豊

    福島委員 この点について余り議論していますと時間が足りませんが、というように非常に隔たりは大きいというのが現状だというふうに私は思います。  ですから、先ほど返上論が出ましたが、私は、市長会また町村長会で一年後には返上するぞという議決をしていただいて、待ったなしのそういう枠をはめていただくのが抜本改革を本当にしようと思えば必要なのではないかというふうにすら思うわけでございまして、これはお願いということではございませんが、大変共感をいたしたということで申し上げておきます。  高齢者の医療がやはり問題なんですね。数もふえる、そしてまた医療も進む。医療が高度化すればするほどまたお金もかかる。数も質も両方とも拡充するわけです。これをどうするのかという本質的な問題があるというふうに私は思います。  先ほど桝本局長から、高齢者を医療は食い物にしているという御発言がございましたが、私は決してそうではないというふうに思います。私自身老年医学に携わってまいりまして、お年寄りは病気がたくさんあります、そしてまた、死に至る病というのも多いわけでございまして、そこで医者として非常に誠実に医療をすれば、どんどんお金がかかるというのがやはり実際だというふうに思います。  例えば、先ほど坂巻参考人がおっしゃられましたように、寝たきりになったとしますね、肺炎が起こる。肺炎が起こってそのままほっておくのか、ほっておきはしないわけですね、抗生物質も使う。そうこうしているうちに褥瘡も出てくる、これも何とかしなければいけない。というようなことで、次から次へとトラブルが起きてきて、それに対応する。対応するにしても、できるだけいい対応をしようという話になるわけですね。そしてお金が必然的にかかってしまうということだと私は思っています。これは食い物にするとかしないとかという問題ではない。  この問題は、最近、ターミナルケアをどうするのかということで論じられております。そしてまた、医療費も、実は亡くなる前にかかる医療費が一番多いわけですね。しかも、その医療費は、お金をかけても亡くなるということで、果たしてこれが国民経済的にどういう意味があるのかということも議論になるわけでございます。ここのところが私は、制度の問題、どうやってお金を集めてくるのかという問題はあるわけですけれども、一番本質的な問題として国民的な議論をすべきなんだろうというふうに実は思っております。  この点につきまして、坂巻参考人、そしてまた先ほどおっしゃられました桝本参考人に私は御意見をお聞きしたいと思っております。
  46. 坂巻熙

    坂巻参考人 お答えします。  全く同感でございます。これからはみんなが七十、八十、九十まで生きる時代に、自分の死に方というものを一人一人が考えていかないと医療費ばかりがかかって、それが若い人の負担になるということになってまいります。  私は、実は健康保険組合連合会の新聞に年四回コラムを持っておりまして、そのコラムに三カ月ほど前でありますが「死に方を選ぶ時代」という記事を書きました。  どういうことを書いたかと申しますと、臓器移植法が成立いたしますとドナーカードというものが法的に認められるわけですね。それと同じように、七十歳の老人医療の対象になったときに、自分の死に方を選択するようなカードを一人一人が持つようなシステムをつくったらどうかと、こういうふうなとっぴもないことを書いてみたわけですが、要するに、自分がどういう死に方をしたいのか。とにかくスパゲッティ症候群になり、ぐるぐる、意識もないままに生かされる生き方を望むのか、それともクオリティー・オブ・ライフということを考えて尊厳死を選ぶのかというような、あるいは何もしないでほしいとか、それぞれ自分の死に方を覚悟として決めて、それに法的な根拠を持たす。日本尊厳死協会というのが民間団体でやっておりますけれども、そういった覚悟をしていきませんと、もう三人に一人が六十五歳以上の時代に、現行医療保険制度は私はもうとてももたないだろうというふうに思っております。  ぜひそういう意味では、国民一人一人が自分の最期を、どういう生き方をしたいのかということをきちっと認識をし、そして、医療機関がそれにきっちり対応する。ただ単に命を長らえさせることが医療の責任ではないというふうに私は考えております。  ぜひ医療機関は、今まで死の教育ということを医師の世界でしっかりやってこなかったというところもありましょう、あるいは、医療の本質というものはともかく命を一秒でも長く延ばすことが医学の進歩であるというふうにお考えになっておりますけれども、これはもうこれからの時代に私は考え直していいテーマではないかというふうに考えております。  以上です。
  47. 桝本純

    桝本参考人 お答え申し上げます。  まず、老人を食い物という表現の仕方は大変品格を欠く表現でございまして、まことに申しわけございません。ただ、ヨーロッパに比べて、高齢者の方々の一人当たり医療費がいわゆる若い層に比べて我が国の場合突出して多い、この事態はやはり改善する余地があるテーマではないか、これは私どもの問題意識でございます。  よく言われます検査漬け、薬漬けということがございます。例えば外来でいらっしゃるお年寄りの方々が、帰りには両手で持ち切れないぐらいの薬を持たされて帰ったり、あるいは、自分で飲み切れないでほかの人にその薬を分けてあげたり、極端な場合には売るほどもらうなんて言い方をされる。そういった過剰投薬の現状。あるいはまた、高度医療機器が我が国の場合に極めて諸外国に比べると高い台数設置されて、それぞれ設置されたところではその減価償却のためにそれが使われているという現状。こういった問題をやはり改善をするということがまず前提なんだろう、このように思います。  それから二番目に、ターミナルケアの問題を含めてお話がございました。  ターミナルケアについては今坂巻先生からお話がございましたので、私はもう一つ別な観点から問題を考えたいと思いますが、我が国では長寿化ということは確かに目覚ましく達成をされておりますが、健康で元気で働ける年齢、いわゆる健康寿命というものはそれに対応して長くなったかといえば、そうではないわけですね。むしろ、近年、健康寿命は逆に短くなったというふうにも言われております。  すなわち、心臓が停止するまでの時間は長引いたけれども、それは、丈夫で元気で働くことは既にできなくなってから亡くなるまでの時間が延ばされておる。つまり、そこに専ら我が国の医療は資源をつぎ込んできたのではないだろうか。むしろ、今後はこの健康寿命をどうやって長くすることができるのかということに焦点を当てるべきだろうというふうに思います。その点では、先年二人の有名な俳優が極めてすばらしい例を見せてくれたというふうに私どもは思っておりますが、これは高齢者の問題では実はありません。  つまり、若いときにむちゃな働き方をして、そして六十を過ぎてから体にがたがくるというのはある意味では当たり前なのであって、むしろ、三十代、四十代に健康な生活、健康な働き方、健康な暮らし方をすることによって健やかな老後を迎えることができるようになるのではないか。その意味では、全年齢にわたる健康医学の貢献というものを来世紀についてぜひとも期待をさせていただきたいというふうに考えております。
  48. 福島豊

    福島委員 確かに、桝本参考人おっしゃられますように、健康をいかに増進するのかということは極めて大切な視点だと思いますし、その道筋が必ずしも今の時点では明確になっていない。その点は、より我々自身が検討しなきゃいかぬというふうにも私は思います。  それに関連しまして、本年度の予算が成立いたしましたが、老健ヘルス事業がこれは一般財源化されましたね。これに応じてというわけではありませんが、先日も、がん検診をやめるという話を決定した自治体もあったようでございます。そういう意味では、市町村では、大変厳しい財政状況の折ですから、こういった予算編成というのが多大に影響を与えるところがあるのかなというふうにも思ったわけでございますが、この点につきまして、喜多市長さん、そしてまた野中町長さんにどういう状況なのか、お話をお聞きできますでしょうか。
  49. 喜多洋三

    喜多参考人 がん関係の検診でございますが、補助はカットをされましたが、私どもの市といたしましては、今までどおり、より以上充実するようにしております。  何を充実したかと申し上げますと、平成十年度は前立腺がんの検診も加えてやるということにいたしました。実は、平成八年、九年、二カ年にわたって大学病院のお手伝いを受けまして実態調査をしてみたんですが、非常に男性の間でチェックをする必要があるという結果が出ましたので、これは、市民が健康に暮らしていただくためには、お金の問題じゃなしにやはり施策の問題だということで、私どもではがん検診については以前よりも充実したつもりでございます。
  50. 野中一二三

    ○野中参考人 私の町も、健康診断につきましては、むしろ節目健診という制度を取り入れております。節目健診というのは、三十歳、四十歳、五十歳、こういう年齢になったときに、節目にそれぞれ健診を受けていただく。これは、町で無料化をして健診を受けることによって常に健康であっていただくことが一つ。  もう一つは、がん検診等それなりの今までどおり継続をさすということが一つと、私たちは今、先ほどから先生方がおっしゃっておりますように、やはりお年寄りにどう健康を維持していただくかというのが課題だというふうに思います。定年退職をしてふるさとへ帰ってこられたら途端に弱られるという形が、精神的に弱ってまいりますので、私のところの場合は、四十歳以上すべての人たちに万歩計を持っていただきまして、健康万歩方針という形で毎日記録をいただく。これを三百六十五日完全になし遂げていただいた人たちには、一年に一度それなりの表彰規定を行う等行いまして、やはり町民の皆さんが、四十歳以上になったら、必ず――私もここに万歩計をつけておりますけれども、そういう形で自分の健康を自分でやはり監視をしていただく。  これは、厚生省がどのようにいわば補助制度を削られましょうとも、我々市町村は、やはり過重負担に少々なろうとも、町民の皆さんの健康維持というのを基本的に考えていかない限り、すべての財政負担が町村にかかってまいりますので、健康の間に、少々投資をしてもやはりそういう制度を確立していくことがこれから大切だというふうに思いますので、その辺についても御配慮いただいたらありがたいと思います。
  51. 福島豊

    福島委員 大変積極的な取り組みをしておられるということで、いたく感心をいたしました次第でございます。  それで、健保の組合から安岡参考人おいででございますが、大変経済状況が厳しい中で、ことしは全体としては、財政状況は薬価も下げましたから改善していますよという説明を私は厚生省からお聞きしたわけでございます。いろんな組合があると思いますが、制度改正が成立しまして、そのもとで来年は果たしてどうなんだろうか、果たして厚生省の説明のようにいくんだろうかという点について危惧を持っておりますけれども、これは、数字的にどうとかこうとかというのはなかなか出ないと思うんですが、いろんな組合を見ておられまして、今の感触としてどういう話か、お聞かせいただければと思います。
  52. 安岡正泰

    安岡参考人 いろいろな意味で、昨年の九月に健保法の一部改正という形でその効果というものは徐々に出てきているというふうに思います。ただし、これが十年度、十一年度、そのとおりいくかということになりますと、これはちょっと私は厳しいのではないのかなというふうに思っております。  それはどういうことかと申しますと、景気の関係もあるのですが、被保険者数が減少してきている、一つの組合ごとに見だ場合に。もちろんふえているところも、業績のいいところはふえているかもしれませんけれども、一般的に言えば被保険者数が減少してきているという実態。したがって、保険料の計算のもとになります標準報酬月額、これが非常に上がり方が、こういう各企業の低迷の中で上がり方が少ない、そういう中で人員数が減っているということですね。  それと、じゃ、今まで上がってきている一方、その支出である医療費の方が、いろいろ薬価の下げとか何かありますけれども、計算どおりにいくのかなと。それと、例えばくしゃみ一つ一億円という、風邪がはやった場合に一億円ぐらいかかるというようなこともあるわけでありまして、数字どおりにいくかどうか。これは私は非常に疑問を持っておりまして、したがって、やっても一、二年で、もっかもたないのかな、それ以後はまた悪さが上昇していくのではないのかな、そんな感じを持っております。
  53. 福島豊

    福島委員 時間が参りましたので、以上で質問を終わりにします。本日は、大変ありがとうございました。
  54. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 久保哲司君。
  55. 久保哲司

    ○久保委員 参考人の皆さん、本日は大変に御苦労さまでございます。また、ありがとうございます。  冒頭、それぞれ約十分という短い時間でしたけれども参考意見を述べていただいて、聞かせていただきながら、これで全部、これですべてかな、これ以上議論することもないのかなというような思いで一つは話を聞かせていただきました。  先ほどもどなたかがお触れになっておられましたけれども、それこそ橋本総理、きのうの夕方、突然記者会見して、財革法改正あるべし、補正やりまっせ、こんな話であります。  そうであるならば、それこそこの国会で、皆さんに申し上げるべきことではございませんが、我々が、補正補正というのなら予算を出し直しなさいということをずっと言い続けてきました。ここで十六兆円ものお金を突っ込むというのなら、それこそ今回の医療関係改革にしても、黙って計算したって八千億ふえるやつを三千億のアップでとめろ、すなわち五千億どないかして引っ込めろ、こういう話でありまして、そういう意味ではその部分をまさにやり直すべきではないか、そんな思いを私自身は強うしております。  そういう意味で、冒頭に、一番最初に参考人陳述していただいた安岡理事長の方の意見骨子のペーパーの最後に、法改正についてはぜひ再考されるようお願いしたい、このようにお述べいただいたわけでありますけれども、このお考えになっておられる意図をもう一度、ぜひ再考というところについてお聞かせをいただきたいと思います。
  56. 安岡正泰

    安岡参考人 私どもは、やはり、健保組合も赤字である、あるいは政管健保も赤字である、国保ももちろん赤字である、国も赤字であるという形の中で、そういう中で小手先といいますか目先、そう言っては失礼かもしれませんけれども、そういう問題だけで何かなすり合いをしていたのでは、いつまでたっても根本的な改革はできないであろう。いかにしてこの医療費の、これはもうほっておけば自然増、どんどんふえていくわけですね、医療費というのは。ですから、それをやはり基本的にどうやって適正な範囲の中で抑えていくかということが私は大事だと思うのですね。そのために、いわゆる今回のこの法案につきましても、何かそういう意味での基本的な論議がなされていないのではないのかな、目先の作業だけで乗り切ろうとしているのではないのかなというふうに感じているわけです。  したがって、これからの医療というものを考えた場合には、医療費の適正化を図っていくための抜本的なことといえば、診療報酬の問題もあるでしょう、薬価の問題もあるでしょう、医療提供体制もあるでしょう。そういうものをもっともっと深く突っ込んだ議論をしていかなければならないのではないのか。  お互いの立場がございます。ですから、それぞれの立場の中でいろいろな問題が出てくるかと思いますけれども、そういう中でやはり一つ、そういう問題の中でも特に老人医療費の問題をどうとらえていくのか、制度的にどういうものにしていくのか。こういうことをまず基本的にして論議を詰めていくためには、もう少し再考していただけないでしょうかということで申し上げたわけでございます。  以上でございます。
  57. 久保哲司

    ○久保委員 ありがとうございます。  国民医療というのは、昭和三十年ぐらいから、三十年代前半ですか、国民保険制度ということで動き始めました。以来ずっと見てまいりますと、国費の投入の割合というのは決して一定の決まったルールがあってやっているわけじゃなくて、一番最初に何ぼかあった方がええやろというような感じで入って、それが一つの基準になって、徐々に、ちょっとずつふやせと。市町村苦しんでおるで、健康保険組合苦しんでおるで、こんな格好で動いてきたようなことかなと。過去の歴史を見てみると、そんな感じがするわけであります。  そういう意味では、国民医療費全体の中で国費が割合として一番たくさん入ったのが昭和五十五年、一九八〇年、三〇%少々入っています。それが一番直近のデータでは、一九九五年、平成七年ですけれども、二四%まで逆に言うたら下がっている。その分をどこがカバーしているかといえば、いわゆる地方自治体の負担部分がふえ、保険料がふえてきている。保険料についても、今は、労使折半になりますけれども合計で約八・三%ぐらいですか、年金はそれの倍近い数字になっていますから、そうなりますと、それを、労使折半とはいえ、いわば若年者が負担する比率というのは収入の十数%になる。これに税金が乗っかってくるとなると、これは、お年寄りは大変だ、だけれども、一方でそれをふやしていけば若年がぶつつぶれてしまう、こういうことにもなりかねない。  であれば、それは一体どこから持ってくるねん。先ほどもおっしゃったように、どこもかしこもが赤字だという中で、どうするんだということになるわけでありますけれども、それにしても今回の改正というのは、ある意味で負担の公平化という美名の陰で、国庫負担削減するための財政対策、それを逆に、制度をぐるぐるといらうことによって皆さんのところに、言うたらそれこそツケ回しを持っていっているという感が否めませんけれども、この点について、もちろん今回の制度によって、それこそ先ほど喜多市長が、国保そのものにとってはある意味ではありがたいことだけれども、もっともっと根本的な体制というものを見直してもらわぬといかぬという御意見もございましたが、この点について、一つは桝本参考人から、そして国保を代表されて喜多市長から、それでもう一つは学者といいますか、坂巻先生の方から、それぞれ御意見を例えればと思うのですが。     〔委員長退席、根本委員長代理着席〕
  58. 桝本純

    桝本参考人 私どもは、先ほど申し上げましたように、今回のこの退職者にかかわる老健拠出金負担被用者保険にツケ回すという内容については、これはあくまで反対でございまして、これについては国会でぜひ否決していただくように希望したい、こう考えております。  しかし、それは、その分だけ市町村国保の側に押しつければ済むという性質の問題だとは全く思っておりません。むしろ、政府の予算削減の結果、先ほど申しましたように、同じ国民である市町村国保と我々サラリーマン保険とが不要に対立させられているという、この構図から脱却することがぜひとも必要である、このためには、あの乱暴な社会保障費の削減を決めた財政構造改革法の枠組みそのものを見直していただくということが前提なんだろう、このように考えておりますことを特に強調したいと思います。
  59. 喜多洋三

    喜多参考人 お答えをいたしたいと思いますが、抜本改正をするについては、いろいろ立場の違いで意見があろうかと思います。  先ほど本論のところでも申し上げましたけれども、決して今回の改正は、国保側にとりましては改善をされたという点では賛成ではございますが、本来あるべき公平の負担からいきますとまだまだそれは道が遠いわけでございまして、そういう点では納得できないということを申し上げておるわけです。  その反面、先ほどからこれは被用者保険側の皆さんがおっしゃっておりますように、その分が全部そちらの方に行くということの問題についても、我々としても全然それは理解していないということじゃなしに、よく理解した上で申し上げておるわけであります。  つまり、一番、制度をつくるときに、その足りない分のお金をだれがどのように出すかということのコンセンサスが全然できずに、単に拠出金をみんなで出そうかということで、高成長の経済情勢もあったのかもわかりませんが、そういうところで単純に決めてしまった。それがやはり今日的問題になっているのではなかろうかと思います。  やはりここで抜本的に改正するためには、いろいろな議論はあろうかと思いますけれども、本来、全体のうち何%はそれぞれの被保険者が持ち、また国からはどれだけ持ち、そして市町村はどれだけの負担をするかということの議論を徹底的にして改善をしなければ、この問題はいつまでたっても解決できないのではないか、このように思っております。
  60. 坂巻熙

    坂巻参考人 最初にも申し上げましたが、この法案をつくるのに大変厚生省は頭をひねり、苦労をしたと思うのですね。とにかく、当然、公共事業でしたらば、道路をつくるのをちょっと一年延期してもさしたる影響は出ませんし、本四架橋を四本も五本もかける必要もないという考え方も成り立つわけでありますけれども、年金とか医療費というのは黙っていてもふえていく性格のものでございます。これを一律に削減しろという政府方針でありますから、大変苦労をし、知恵を絞ってこの法案をつくったのだと思います。それなりに私は大変評価をしているわけであります。  一つは、負担の公平という視点から、少なくとも現状よりはプラスな部分、現実に即した部分が、加入率上限を上げるとかあるいは退職者医療の部分の一部、老人拠出金の部分を組合健保に負担をしてもらう、ある意味で公平性により近づいた要素があるわけでございます。しかしながら、二分の一というような非常に根拠のない、足して二で割ったような発想の基準でやっているわけでありますから、そもそも余り説得力がないという部分もございます。  要するに、これは一つの選択、まさに諸先生方の政治の選択だろうと思うのですね。財政構造改革法が破綻に瀕したけれども、しかし財政構造改革社会保障分野でしっかり守り通していくのだ、こういう形になればこの法案を認めて国庫削減もやむを得ないということになります。そしてさらに、抜本改革の間に負担の公平という部分では何がしかの前進が見られるわけでありますから、それはそれで一つの選択だと思います。  しかし、その一方で、安易に被用者負担のところにつけかえをするというような発想で、取れるものを取っておこうという形で抜本改革がまたそれによっておくれるということになってまいりますと、先ほども申しましたけれども国民医療保険に対する不信感あるいは政治に対する不信感がいや増しに増していくわけでございますから、その辺を政治責任としてしっかりと選択をしていただきたいということでございます。  以上です。
  61. 久保哲司

    ○久保委員 とにかく、人間だれも好きこのんで病気になろうなんて思う人はおりません。ただ一方、先ほどもお話がありましたけれども、お年がいけばいくほどに、本人の好むと好まざるとにかかわらず、どこかがたがきてというのは、これまたやむを得ない話かな、こう思うわけであります。先ほど来お話の中で、日本の医療を見た場合、統計的にお年寄りは若年層の五倍ほど医療費がかかっておる、欧米はせいぜい二倍から三倍だというお話がございました。これは、一つは重複診療といったような問題もあるのかなというふうに思います。  それも、もっと言えば、お年寄りを責めるわけじゃないですが、よく世間で聞く話。朝家を出ていったら夕方まで病院やら医者やらずっと回って帰ってくる。けえへんだら、どないしたんや、風邪引いて家で寝ているらしい。これは一つはお年寄りが家におりにくい環境があるから、お年寄りは嫁はんの顔を見る、息子の顔を見るのはどうもおもろないというので出ていくということもあるのかなとも思います。  しかし、そんな重複診療を避けていくためには、一つは、先ほどどなたかの御質問であったように、レセプト等をしっかりと点検をしていただくというのも必要でしょう。しかし一方で、いわゆるお年寄りがそんな遠路はるばるバス乗って電車乗ってというよりは、特別な病気ならいざ知らず、むしろ近くでかかりつけ医がおられて、その方がしっかりとそのお年寄りの健康状況をつかず離れず診ていただいている、こういった状況があってしかるべきなのかな。  先ほど守口市長のお話では、二百メートル以内に病院、医療機関があるよという、これはまさに守口のような、びたっとそこそこに家が全部並んでいるような地域だからこそそうなるのかな。  一方、きょうお見えの参考人の中では、まだ京都園部町、決してそんなど田舎ではないと思いますけれども、この中ではどちらかといえば一番僻地かなと思いますが、僻地におけるそういうかかりつけ医的なものというのは、先ほど町としてこういうことを取り組んでいるよというお話もございましたけれども、そういったものは確保されているとお考えなのか、どういう状況なのか。あるいはまた、そういったことについて住民に対してどういう啓発活動等を行っていただけているのか、お聞かせいただければと思います。
  62. 野中一二三

    ○野中参考人 きょう出ております中では一番過疎地域だと言っても言い過ぎでないと思いますが、ただ、私たちの中部広域圏、一市八町の中で、先ほど申し上げましたように、各町村が病院や診療所を持っているということは、やはりかかりつけ医対応的なものとして診療所等を持っているというのが過疎地域の町の実態でございます。  ただ、私の町で考えますと、私の町でも十年ほど前に、実はお年寄りが知らない間にお亡くなりになった。そうしたら、このことについて、発見した後、警察医に検視を受けなくてはならないという問題が起きました。これは大変なことでございまして、これから私たちが町としてそれならかかりつけ医制度をつくろうという形で、それぞれ地元のお医者さんに地域の担当を決めていただきました。やはり月に一度ぐらいはその先生に診ていただくような配慮、いかに健康であっても診ていただくような配慮なり、もし万一のことがあったときに、そのかかりつけ医の先生に診断をいただけるようなシステムをつくっておかないと、お年寄りが亡くなったら必ず検視を受けなくてはならないような形であってはならないというような形で、かかりつけ医の制度を町でつくったことは事実でございます。  そういう形で、私のところの場合はできるだけ、病院に恵まれたり医者に恵まれ過ぎている一面があるわけでございます。しかし、おかげさんで私のところの国保は黒字経営を行っておることも事実でございます。これは三億余りの基金を積んでおりますことも事実でございます。  ただそれは、先ほど申し上げましたように、国保以外に万歩計の問題を持ったり健康診断を節目節目で行わせたりすることによって、町民の皆さんの健康を適宜やはり診断を受けて事前に発見をするような措置を町が他の分野で一般会計で負担をしてやっておりますので、そういう点でこの国保は健全に黒字経営ができているというのが実態でございまして、やはり私たちも、今後もどの町村においてもかかりつけ医制度程度は考えていかないと町民が不幸になる一面がございますので、この辺はむしろ法的に制度化いただけるようなことが私は大切ではないかというふうに思っております。
  63. 久保哲司

    ○久保委員 きょうそれぞれお聞かせいただいた意見を私、また私ども自由党の方は十分に参照させていただいて今後の法案審議に臨みますことを申し上げて、質問を終わります。ありがとうございました。     〔根本委員長代理退席、委員長着席〕
  64. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 児玉健次君。
  65. 児玉健次

    ○児玉委員 日本共産党の児玉健次でございます。  財革法の破綻がだれの目にも明らかになって、きょう財政構造改革会議が開かれる、そういうときに五人の方の御意見を聞く、妙なめぐり合わせだと思います。  今度の国保法の中で、特に老人医療拠出金の増額の部分は文字どおり財革法の申し子だ、そういうふうに言ってもいいと私たちは考えております。  まず坂巻先生にお伺いしたいのですが、この法案を準備される過程で、一月三十日に社会保障制度審議会が宮澤会長のお名前で答申を出されている中に、「財政構造改革の流れの中で、」と言った上で「今後も、財政対策を優先した改正を繰り返すことは国民社会保障制度全体への不信感を強めることにもなりかねない。」と非常に率直な御指摘をいただいております。  ぜひこの後の審議に生かしたいと思っておるのですが、この社会保障の問題というのは、単なる財政問題というよりは、私たちはむしろこれを積極的に見て、社会保障における給付というのはすぐれて個人消費に直結する、そしてこの分野は雇用の分野も大きく創出していく、そういう立場からこの法案審議も行うべきではないか、こう考えておるのですが、先生のお考えを伺いたいと思います。
  66. 坂巻熙

    坂巻参考人 お答えいたします。  あの答申は、実は私ども学識経験者から成り立ちます小委員会で起草をいたしまして、全委員会の承認を得て発表したものでございます。  当時はまだ財政構造改革法が生きておりまして、現在の政治が、緊縮財政といいましょうか、財源難であるから痛みを分かち合おうという発想で行われておりました。したがいまして、そういう時代に社会保障にばかり金をよこせということは現実にそぐわない事実がございます。  そして、一方で、先ほども申し上げましたけれども、ある意味での負担の公平化を促進する要素がこの法案にも現実にございます。  したがいまして、その二つを認めてとりあえずの了承という形でいたしましたけれども、基本的には、小刻みに変更を繰り返し、朝令暮改のような行政をやっていれば、制度そのものに対する国民の不信というものが高まるばかりでございます。したがいまして、そういう一項目をつけ加えたわけでございます。  何回も繰り返しになりますけれども、今の国民が日本の政治あるいは自分たちの将来というものに安心できるということが一番大事なことでございますから、その意味で、今回の改正がそういった国民の信頼感を高めるものになるのか、それとも不信感を招くもとになるのかということをよくお考えいただきたいなというふうに個人的に思っているということでございます。  以上です。
  67. 児玉健次

    ○児玉委員 きょうは被用者保険の方を代表してお二人においでいただいておりますが、安岡理事長にお伺いしたいと思います。  先ほどお配りいただいたこの資料を拝見すると、日本通運健康保険組合平成九年度の老健拠出金が七十七億何がしとなっておりますが、この後平成十年、十一年、特に十一年は平年度ベースになりますから、そこで大体どのくらいになると見ていらっしゃるか。私たちは、本来、今度見直しという名前で増額された部分は健康保険の加入者、家族の健康と暮らしのために活用されるべき金額だと思っておるのですが、そのあたりについてのお考えもお聞きしたいと思います。
  68. 安岡正泰

    安岡参考人 この拠出金関係はちょっと複雑な計算がございまして、二年前の実績が上がってきてそれをいろいろ計算をして出てくるという形でございますので、はっきりとこういう数字になりますということはなかなか御説明しづらい面がございますが、九年度で大体、ここに出ておりますので、一二〇・八九という形で、八年度に比べて若干下がってはおります。  これは、九年度というのは、七年度の分のいろいろ精算や何かが入っておりますので、そういう関係で出てくるわけでございます。では、十年度はどうかと申しますと、十年度につきましては、ざっとした計算で九年度と大体同じくらいかちょっと多いかなというような、これはもう読みでございますけれども、そこら辺になってくるのではないのかな、決して減ることはないであろうというふうに考えております。  以上です。
  69. 児玉健次

    ○児玉委員 野中町長さんにお伺いしたいと思います。  先日この委員会審議で厚生省は、国民健康保険というのは本来国がなすべきことであって、それを市町村に団体委任をしている、その原則については変わりがない、こういうふうにはっきり答えました。  ところが、そういうふうに述べながら、市町村国保の事務費負担については次々に一般財源化している。平成四年度に人件費七百八十億円、平成五年度に臨時職員の賃金等百四億円、平成六年度に光熱水費等で百億、そして今度の法改正に籍口して市町村国保に対する事務費はゼロにする、こういうふうにしております。  この点についてお考えをお聞きしたいと思います。
  70. 野中一二三

    ○野中参考人 一般財源化の関係につきましては、私たちは、厚生省だけではなしにどの省庁においても、交付税といういわば美名のもとに隠れて補助金が一般財源化されてきた。ただし、一般財源化という形は理解はできる一面はございますけれども、実質上、交付税の算定基準でございます国税三税の三二%という原資が一銭も上がらないで、この原資の見直しが全然行われないで、だんだん一般財源化という形で市町村に送られておる形については、財源的に市町村がより苦しくなるという以外何物でもない。  この一般財源化を行われるなら、私は率直に申し上げて、交付税算定基準でございます国税三税の三二%等を少なくとも三五なり四〇に見直した上で一般財源化されるなら我々は甘んじて受けていきますけれども、今の時点では、その辺については何かしら押しつけられた一面という感じをしないでもございません。  ただ、今回の場合、退職者医療のいわば負担金を二分の一軽減という一つのあめがありますので、この辺で我々としては遺憾ながら受けざるを得ないというのが現況であることも申し上げておきたいと思います。
  71. 児玉健次

    ○児玉委員 最後に桝本参考人にお伺いしたいのですが、先ほど安岡さんに、今度新たに拠出する分、例えば政管健保でいえば五百二十億、組合健保でいえば四百八十億、共済、船保でいえば百六十億、この金額がもし確保されるのであれば、本来、組合員や家族の健康と暮らしに活用されるべきものではないかというふうに申し上げて、安岡さんからはその点についてのお答えはいただかなかったのですが、桝本さん、この点はいかがでございましょうか。
  72. 桝本純

    桝本参考人 金額で並べていただきましたものは国庫の予算ベースのものということになると思いますが、私どもはそれだけのお金があったら何に使うことができただろうかと、率直に申し上げて考えたことがございませんでした。それを考える、そういう希望のある話よりも、まさに我々の希望を砕くような話ばかりが次々と襲いかかってきたのが昨年の予算編成に向かう過程でございました。  私どもがそのように楽しいことを考えることができますように、今国会において、財革法の見直し改正に伴いまして、社会保障制度にかかわる国費負担のあの暴力的とも言うべき削減についてぜひとも国会見直しを具体化していただきますように、特にこの機会をかりてお願い申し上げておきたいと思います。失礼しました。
  73. 児玉健次

    ○児玉委員 ただいまの先生方の御意見をぜひこの後の審議の中で真剣に生かしていきたいと思います。  ありがとうございました。
  74. 柳沢伯夫

  75. 中川智子

    中川(智)委員 社会民主党・市民連合中川智子でございます。きょうは本当にありがとうございました。  与党内野党でとてもつらい立場でございまして、努力が本当に生かされないということの、本当に申しわけない思いを抱えながら、七分だけで質問をさせていただきます。  最初に、二問、お二方に御質問させていただいて、十二時前までにきっちり終わらなければいけないということで、御協力をお願いいたしたいと思います。  まず、桝本参考人に伺いたいのですが、退職者退職後も継続して健保にとどまるというところの議論が連合の中でどれぐらいまで進められているのか、そこのあたりを一点お伺いしたいのと、これは桝本参考人坂巻参考人にお伺いしたいのですが、抜本改革を約束して、去年の九月からの健保法の改正というのがありました。私も答弁席で、ごめんなさいという言葉をつい言わざるを得なかった。でも、それは抜本改革という約束があってのことだったのです。  これを逆に、本当に第三者の方というか、国会を外から見られて、なぜこれが進まないのか、そして、やはりそれに対する、中身じゃなくて、忌憚のない御意見ですね。抜本改革というのは早急に必要であるにもかかわらず、外から見られて、やはりどこが問題になっていて、それに対する、本当にしっかり、みんなで決意をそこでするためにも、この抜本改革に対しての御意見をお二方に伺いたいと思います。  あと、死に方を選ぶとかいろいろな形のおもしろいお話が、もっともっとしたいのですけれども、それは後ほどのこととしまして、今の二点を、限られた時間の中でお聞かせ願いたいと思います。
  76. 桝本純

    桝本参考人 手短に申し上げます。  まず、私どもが提唱しております、退職者も引き続き退職後も健康保険のシステムの中にとどまる。これは、現役部隊は全くこれで一致でございますし、私どものOBでございます退職者組織の人方にも大方の御理解をいただいているところでございまして、したがって、これは検討中の案ではございません。世の中に対して、連合として提起をしている内容でございますので、そのようにお受けとめいただければありがたいと思います。  なお、抜本改革前提にした負担増、私どもは昨年、制度改革なき負担増は凍結せよということで、ここの周辺で騒いだりして大変御迷惑をおかけいたしましたが、今もその考えは変わっておりません。今国会改革にかかわる法案をついに提出することなくただ負担増だけが実現するということになれば、重大な決意を迫られることになろうかというふうに思います、  なお、社民党の先生方には、与党の中におかれまして大変な御苦労、御努力をいただきましたことについては、これは私どもも親しく承知をしているところでございます。  以上でございます。
  77. 坂巻熙

    坂巻参考人 抜本改革が難しいのは当たり前でございまして、それぞれの団体が既得権を主張し、自分の権利は一歩たりとも侵されてはならぬという姿勢を貫くからでございます。それは当然でありますけれども、そこを乗り越えるのが私は政治というものだろうと思います。  いろいろな団体からいろいろな要望がある。しかしながら、政治家として二十一世紀の日本に責任を持つのだからという形で、個々の利害を超えたところで判断をしていただく、それができないで振り回されていれば、いつまでたったって抜本改革はできないと私は思っております。  以上です。
  78. 中川智子

    中川(智)委員 ありがとうございました。
  79. 柳沢伯夫

    柳沢委員長 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。  この際、一言ごあいさつを申し上げます。  参考人皆様方におかれましては、貴重な御意見をお述べいただきまして、まことにありがとうございました。委員会を代表いたしまして、厚く御礼を申し上げます。(拍手)  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午前十一時五十五分散会