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1998-05-19 第142回国会 衆議院 緊急経済対策に関する特別委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月十九日(火曜日)     午前九時開議  出席委員   委員長 中川 秀直君    理事 甘利  明君 理事 中山 成彬君    理事 村井  仁君 理事 村田 吉隆君    理事 上田 清司君 理事 岡田 克也君    理事 太田 昭宏君 理事 谷口 隆義君       浅野 勝人君    石崎  岳君       遠藤 利明君    小野 晋也君       大石 秀政君    倉成 正和君       佐藤  勉君    阪上 善秀君       桜井 郁三君    菅  義偉君       杉浦 正健君    砂田 圭佑君       園田 修光君    田中 和徳君       田村 憲久君    谷畑  孝君       西川 公也君    穂積 良行君       目片  信君    森  英介君       山口 泰明君    渡辺 具能君       家西  悟君    池田 元久君       生方 幸夫君    海江田万里君       金田 誠一君    北脇 保之君       島   聡君    中川 正春君       藤田 幸久君    石井 啓一君       西川 知雄君    桝屋 敬悟君       佐藤 茂樹君    鈴木 淑夫君       児玉 健次君    辻  第一君       春名 直章君    濱田 健一君       河村たかし君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 松永  光君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         通商産業大臣  堀内 光雄君         建 設 大 臣 瓦   力君         自 治 大 臣 上杉 光弘君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君  出席政府委員        内閣審議官    坂野 泰治君        内閣法制局第三        部長       阪田 雅裕君        防衛庁参事官   伊藤 康成君        防衛庁運用局長  太田 洋次君        防衛庁経理局長  藤島 正之君        経済企画庁調整        局審議官     小林 勇造君        経済企画庁国民        生活局長     井出 亜夫君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        大蔵大臣官房長  溝口善兵衛君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        国税庁次長    船橋 晴雄君        厚生大臣官房総        務審議官     田中 泰弘君        厚生省老人保険  羽毛田信吾君        厚生省保険局長  高木 俊明君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        中小企業庁長官  林  康夫君        中小企業庁次長  中村 利雄君        建設大臣官房長  小野 邦久君        建設省住宅局長  小川 忠男君        自治省財政局長  二橋 正弘君        自治省税務局長  成瀬 宣孝委員外出席者         衆議院調査局緊         急経済対策に関         する特別調査室         長       大久保 晄君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十九日 辞任          補欠選任   遠藤 利明君     森  英介君   桜井 郁三君     倉成 正和君   西川 公也君     大石 秀政君   山口 泰明君     砂田 圭佑君   池田 元久君     藤田 幸久君   金田 誠一君     家西  悟君   矢島 恒夫君     辻  第一君 同日 辞任          補欠選任   大石 秀政君     渡辺 具能君   倉成 正和君     桜井 郁三君   砂田 圭佑君     阪上 善秀君   家西  悟君     金田 誠一君   藤田 幸久君     中川 正春君   辻  第一君     春名 直章君 同日 辞任          補欠選任   阪上 善秀君     山口 泰明君   渡辺 具能君     西川 公也君   中川 正春君     池田 元久君   春名 直章君     矢島 恒夫君     ――――――――――――― 五月十九日  財政構造改革推進に関する特別措置法の停止  に関する法律案伊藤英成君外八名提出衆法 第二五号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  財政構造改革推進に関する特別措置法の一部  を改正する法律案内閣提出第一一二号)  平成十年分所得税特別減税のための臨時措置  法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一三号)  中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一四号)  地方税法及び地方財政法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一一五号)  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一一六号)      ――――◇―――――
  2. 中川秀直

    中川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案平成十年分所得税特別減税のための臨時措置法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案地方税法及び地方財政法の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。北脇保之君。
  3. 北脇保之

    北脇委員 おはようございます。民主党の北脇保之でございます。  本日は、財革法改正案、そして今回の総合経済対策、そしてそれらとの地方財政関係について質問をいたします。  まず、今回の総合経済対策でも、地方財政負担する部分というのが非常に大きくなっております。住民税減税であるとか不動産取得税減税、さらには地方単独事業、それだけではなくて、公共事業についても当然地方負担部分がある、さらには公共用地取得など、地方財政負担となる事柄が非常に多いわけでございます。  しかし、今の地方財政状況を見ますと、非常に悪化している。したがいまして、このような国の主導による経済対策を果たして今の地方財政現状で支え切ることができるのかどうか、この点に大変な疑問を持つわけでございます。  まず、地方財政現状、幾つかの指標で申し上げますと、大変な財源不足が続いております。平成年度地方財政においても、既に所得税特別減税などによる地方交付税の減収とか、そういった特別な要因もありますが、それを除いても、平成年度通常収支において、四兆六千四百六十二億円もの財源不足が見込まれている。  この財源不足について、過去をさかのぼって見ますと、平成年度の当初予算での通常収支分財源不足が四兆六千億、今申し上げたとおりです。昨年度についても、通常収支分で四兆七千億円の財源不足平成年度、七年度へ六年度とさかのぼっても、毎年度、この通常収支分で三兆円から五兆円の財源不足が生じている。  その結果、こうした財源不足に対応するために交付税特別会計で借り入れを行う、さらには自治体地方債を大幅に増発するというようなことで、本年度地方財政計画に基づいて見ますと、地方債依存度が一二・七%になっている、これが一つ数字でございます。  それからまた、こうした結果として、地方財政全体で多額の借入金残高を抱える結果になっている。平成年度末で見ますと、百五十六兆円にもなる。  さらに三つ目に、個別の団体地方財政状況を見ますと、非常に硬直化が進んでいるということで、公債費負担比率一般財源公債費償還していく比率、おおむねそういった指標でございますが、これが一五%以上になるような団体が約半分を占めている。  こういったような、大変に地方財政悪化を示す指標が出ているわけでございます。これについて自治大臣お尋ねいたしますが、地方財政がここまで悪化してきた原因については、どのようにお考えでしょうか。
  4. 上杉光弘

    上杉国務大臣 御指摘のとおり、地方財政は大変厳しい状況にございます。近年の地方財政は、借入金残高が急増いたしておるわけでございまして、今回の経済対策によるものも加えますと百六十兆円にもなるわけでございます。また、個別の地方団体におきまして公債費負担比率一五%以上の団体が、平成年度決算で全体の半分を超える五〇・三%など、厳しい状況にございます。かつまた、委員指摘のとおり、三兆円、四兆円、五兆円台で、ここ四、五年にわたりまして財源不足が続いておるわけでございます。  このような状況になりましたのは、主な要因として、一つは、景気が長い間低迷をいたしておりまして、それに対する税収等の落ち込みあるいは伸び悩みというものがあるわけでございます。二つ目には、景気対策のための減税公共事業等の実施を地方債発行等により対処してきた結果と考えておるわけでございます。地方債償還も今後増してくるわけでございまして、地方財政が極めて厳しい状況にあることをそのように認識いたしておるところでございます。
  5. 北脇保之

    北脇委員 ただいま大臣の方から、地方財政がここまで悪化した原因ということについて、二つお答えがあったと思います。一つ景気低迷による税収の減少、そしてもう一つ景気対策による公共投資、それに伴う地方債の増発、こういつたことが地方債償還費というふうになってはね返ってきている、こういうことだろうと思います。(上杉国務大臣減税がある」と呼ぶ)減税公共事業減税と、両方ということだと思います。  そこで、今、減税公共事業ということについてでございますが、これを数字で見ますと、一九九二年度、バブルの崩壊以降の景気対策の中で、単独事業については九兆六千億円も地方がそれを行ってきている、こういう事実がありますし、公共事業についても二十兆六千億円、こういったものの負担があるというような状態になっております。  そこで、特に単独事業についてでございますが、国の景気対策ということで地方自治体が国の方針に従ってやらざるを得ない状況、そういう中で、地方財政のこれだけの悪化にもかかわらず非常に無理をしてやってきている、こういう実態があると思うのです。  これは果たして、それぞれの地方自治体財政状況に基づく、地方自治体の本来の判断に基づくものであったと言えるかどうか。特に地方単独事業のこうした景気対策における追加といいますか、これについて、果たして地方財政現状を踏まえたものであったと言えるかどうか。そしてまた、地方自治体の独自の、地方財政それぞれの財政状況判断に基づく決定であったと言えるのかどうか。  この辺について、自治大臣、どのようにお考えなのか、お尋ねをいたします。
  6. 上杉光弘

    上杉国務大臣 今回の総合経済対策地方単独事業一兆五千億の追加措置がとられたところでございまして、私、地方団体とは都合二回お会いをいたしまして、その実情等、また忌憚のない意見の交換をいたしたところでございます。  私といたしましても、地方交付税十七兆五千二百億でございましたが、これについては、年度途中の補正予算では、委員御承知のとおりでございますが、財源、穴があきましたもの、あるいはそういう形での補正についてはすべて地方債財源にゆだねておったところでございますが、このたびは、四千億の追加、増額を交付税でしていただきました。  なお、地方債等で今回措置をいたします分につきましても、後年度交付税で見るということになっておるわけでございまして、特に地方交付税等は対前年度比二・三%の伸びであったものを四・六まで引き上げた形で、ぎりぎりの国庫側との話し合いをし、そういう形で対応していただくと同時に、また地方団体におきましても、大変厳しい中でございますが、景気は非常に地方も悪いわけでございまして、現状のような景気状態では増収が見込めません。税収が伸ぶということには見込めないわけでありまして、そのようなこと等も念頭に置きながら御理解をいただき、御協力をいただくものと思っております。  私といたしましては、誠心誠意協力をお願いいたしてまいる所存であります。
  7. 北脇保之

    北脇委員 今回の総合経済対策に伴う地方財政措置についてはまた後でお尋ねをいたしたいと思いますが、大臣も、ただいまの地方財政悪化については、累次の経済対策に伴う地方税減税であるとか、また公共投資追加、こういったものが地方財政悪化一つ原因になっているということはお認めになっているわけでございます。  ということは、この地方財政が百五十六兆円もの借金を抱えているとか、また毎年三兆円から五兆円もの財源不足が生じるという大変な事態を招いてきた、そのことの一つ原因が一国の経済対策地方が同調してきたということにあるという  ことはお認めになっているわけでございますから、しからば、今まで累次の経済対策において、このような地方財政悪化をもたらさないような対策をどのように講じてきたのか。またそれが十分だったと言えるのかどうか。この結果を見れば、十分だったとは脅えないはずです。  では、そこに私は国としての責任があると思いますが、これはこういう地方財政悪化をもたらしてもやむを得ない、もうこれ以上にやりようのないことであったというのか、それとも、やはり累次の経済対策の中において地方財政措置が十分でなかったためにこういう結果を招いたというふうにお認めになるのか、その点をお尋ねしたいと思います。
  8. 上杉光弘

    上杉国務大臣 私は、さきにもお答えいたしましたように、景気対策を国とあわせて地方が行いまして、財政的には相当の負担をここにいたしたわけでございますが、それはやはり税収期待していたわけでございますが、長期的な景気低迷税収期待ほど伸びなかった、伸び悩んでおるということが大きな原因であろうかと思います。この基本的なものは、景気が思うようによくならない、そのことに大きな基本的な原因がある。  また、国と地方財政公経済で車の両輪だとよく言われますが、国の財政も厳しい中で、国だけに景気対策をゆだねるということだけでは景気対策効果的には打てないわけでございまして、公経済両輪として、地方財政が厳しくとも、それに対応してこの景気対策に取り組んできた。そのために地方財政は苦しくなったわけでございますが、それは、先ほど申し上げましたように、景気対策効果的に成果をおさめずに、そのために税収が伸び悩んでおる、そこに原因があろうか、このように思っております。
  9. 北脇保之

    北脇委員 景気対策が思うような効果を生じなくて税収期待ほど伸びなかった、そのことが地方財政悪化一つ要因になっている、これはおっしゃるとおりだと思います。  しかし、そうはいっても、地方財政というのは、言うまでもなく国の財政とは違って単一の財政ではなくて、三千を超える自治体寄せ集めであるわけでございます。ですから、一つ一つ自治体、特に小さな市町村にとってみれば、その自治体景気の動向を左右するということはできないわけですね。ですから、景気が結果的によくならなかったからといって、それは、それぞれの自治体の責めに帰すべきことではないと思うのですね。ただ、景気がよくならなければ地方税収も伸びないということで穴が生じるということは、それぞれの自治体にかぶってくることなわけです。  ですから、国として見れば、景気対策ということで地方経済対策へ一緒に参加するように同調を求めるのであれば、その景気対策が結果が生じなくて税収が伸びてこなかったときにどうするかということについては、やはりそこまで国が責任を持っていく必要があるんじゃないかと思いますが、この点については、自治大臣、どのようにお考えでしょうか。
  10. 上杉光弘

    上杉国務大臣 国が決めて地方協力を求めたことであるから、地方財政悪化したことの責任は国にあるのではないか、こういうことでございますが、すべて私は国にあるとは思っておりません。国が打つ景気対策地方経済もよくなり、地方がそれに協力することで地方経済がよくなれば、それは財政としての税収が伸びるわけでありますから、そのことで地方にも景気がよくなること、税収が伸ぶことの恩恵は当然受けるわけでございますから、国だけに責任があるとは思っておりません。  ただ、本来であれば国が責任を持って行うべきものであるかもしれませんが、それを国の財政が厳しいということで、地方財政も厳しいけれども共同歩調でこれを取り組んできたということについては、これまでそれを取り組んできたわけでございますから、国だけに責任を押しつけるということには私はまいらない。  このように考えて、これまで地方が取り組んできたことのために、今後この借入金償還という大きなまた財政を逼迫するというか圧迫する課題も抱えておるわけでございまして、これらのことについては、地方分権等推進もありますから、連動した問題として今後どうするのか、そこいらに踏み込んだ議論というものは当然出てこなければならない。それはまた議論の場が違いますから、そのことについても十分視野の中に入れて今後の対応をしていかなければならないもの、このように考えております。
  11. 北脇保之

    北脇委員 一般論として、景気対策について地方自治体一つの役割を担っていくべきだということ、そのことは私はあえて否定はいたしません。  しかし、景気対策がうまくいってきたならばいいと思うのですね。しかし、九二年からもう累次の経済対策を打ってきましたけれども、ストップ・アンド・ゴーといいますか、景気が悪くなったというので何兆円という規模経済対策を何度か打ってきた。しかし、ちょっとよくなったと思うとまた緊縮的な方向措置をとったために、せっかくよくなった景気がまたダウンしてしまうということの何回かの繰り返しがあったわけです。  ですから、そういう経済対策を決めてきたのは中央政府でございますから、そのことを地方自治体としては左右できなかった、その結果が地方自治体に及んできている、このことはやはり中央政府としてははっきりその責任認めなければいけないと思いますが、この点はいかがでしょうか。
  12. 上杉光弘

    上杉国務大臣 自治省として、国の行います景気対策地方三千三百の団体理解を求め協力を求めてきた、その結果が地方財政を厳しくしたということについては、十分私、所管大臣としては責任を痛感いたしております。
  13. 北脇保之

    北脇委員 今、責任を痛感するというお話がありましたので、しからば、今の財源不足が毎年五兆円も生じるような地方財政、そして累積借入金残高が、地方交付税特別会計借入金残高も含めれば当初予算ベースでも平成年度末で百五十六兆円にもなっている。そして、個々の自治体を見たら、公債費負担比率、これは一〇%ぐらいがまあまあの水準だと言われている数値について、それを超えて一五%以上にもなっている団体がもう約半分にもなっている。  この事態をどう改善していくのか、その具体策をどう考えているのか、自治大臣お尋ねいたします。
  14. 上杉光弘

    上杉国務大臣 今後、この総合経済対策効果は出てくるもの、また出てこなければならないものと私ども考えておるわけでございまして、今後は、地方分権推進委員会の勧告、あるいは財政構造改革趣旨等も十分踏まえまして、国、地方双方歳出抑制につながる施策の見直しや、地方団体における徹底した行財政改革推進することが大変大切だ、このように考えておるわけでございまして、厳しい財政事情を克服するために、なお地方財政健全化のための努力をしてまいりたいと考えております。
  15. 北脇保之

    北脇委員 ただいまのは大変抽象論で、今後景気が回復したとしても、それは今回の総合経済対策効果がどの程度出るかにもかかわってくることですが、毎年度財源不足で既に五兆円規模財源不足が生じているという状態ですから、これを解消できるような財政状況に持っていくということがまず先決といいますか、これ自体でも大変なことだと思います、今の仕組みそのものの中では。  その上に、累積している債務が百五十六兆円もあるわけですから、これは例えば、国鉄債務が二十兆円を超えている、これをどうするといったことが国の財政にとって大変重大課題であると同じように、やはり地方財政というのも、今の我が国の国、地方関係を見ていった場合には、決して地方財政が独立して、地方財政単独で取り出して処理できるものではなくて、非常に国の関与が大きいわけですから、ある意味ではそういった国鉄債務が大変な負担になるのと同じように、地方財政のこの累積借入残高というものも大変大きな問題なんです。  これをだんだんに解消していけるという見通しがないと、やはり地方自治体としてみれば、今後の財政運営というものに自信が持てない、思い切ってやっていけないということになると思うんですね。ですから、こうした累積した借入残高まで含めて、これを解消していくにはどうしたらいいのか、このプロセスをどう考えているのか、これを示すべきだと思うんですが、これについてはいかがでしょうか。
  16. 上杉光弘

    上杉国務大臣 前からお答えをいたしておりますように、解消するということを申し上げましても、限られた財源のもとで、どういうふうにと言われても、なかなかこれは、非常に難しい問題があるわけでございます。  最大のものは、景気をよくしまして、今回の総合経済対策等効果をせしめ、景気がよくなることを地方経済に促すことが税収を増額させる、増収を図ることでございますから、そのことを私どもは最大限に期待しておる。また、そうしなければ、地方財政がどうだこうだといって、置いてあるものをとってきて、この累積借入金を、百六十兆にも及ぶものを年次的にどう解消するというわけにはまいらない。  しかし、現状として、行政的には、国、地方を通じた双方歳出を抑制するなど行政的に経費節減を図り、そのような日々の努力を続けながらそういうものを期待しなければ、これは財政対策というものは容易ならざるものだと考えております。
  17. 北脇保之

    北脇委員 地方財政悪化してきているにもかかわらず、なかなか地方自治体努力といいますか、それではなかなか解決しにくいという実態があると思います。  それは一つには、地方財政に対する国の関与というのが今の仕組みでは非常に大きい。平成年度地方財政計画八十七兆円ありますが、このうち国庫補助関連事業が二十六兆円余、さらにまた、警察官の数だとか教職員数とか、そういったことで国が基準を設定している事業もありますので、そういった事業経費を割合で見ますと、地方一般歳出の中で、公債費地方債償還に当たる部分を除いたものの半分になるという状況になっているのです。  つまり、回りくどく言いましたが、地方財政計画で見ても、地方財政計画地方自治体の支出のうち、公債費を除いた部分の半分は、国庫補助関連事業であるとか国で設置基準を定めているようなものだ。こういう状態ですから、国の補助事業予算が決まれば、その事業の枠に応じて地方負担がマクロ的には当然生じてくるし、また警察官とか教職員の数なんかも、国で基準を決めれば、どうしてもそれは地方負担になってくる。  こういう状況がありますから、これをやっぱり抜本的に変えて、その事業の内容についても地方判断で決めていけるように、また財源についても十分なものを地方自治体に持たせるといいますか、地方自治体が持つような状況にする、こういうふうな方向に変えていかないと、いつまでたっても、地方自治体財政健全化努力期待するといっても、これはもうやりようがないという部分が非常にあると思うのです。これをどういう方向で変えていこうとされているか、それをお尋ねしたいと思います。
  18. 上杉光弘

    上杉国務大臣 御承知のとおり、地方財政計画は八十七兆九百六十四億円でございます。そのうち一般歳出が七十三兆四千億ございます。七十三兆四千億の七〇%は、社会保障と教育と公共投資でございます。したがって、五十兆を超えるものがそこにあるわけでございます。  私は、今後の長期的な地方財政を見ましたときに、地方分権とは無縁のものではなかろうと思います。この七十三兆四千億の七〇%、これは国が法律を決め、制度を決め、予算を決め、そして人の配置まで決めたものでございまして、地方ではどうすることもできない問題がそこにはあるわけでございます。したがって、地方分権との関係は、私はそういうところにも議論の及ぶものではなかろうか、そうなれば国の財政地方財政とは当然連動した形で論議をしていくべき筋合いのものと考えておるわけでございます。  そうなると、地方交付税率はそのままでいいのか、あるいは消費税の国と地方の配分はどうするのか、地方税のあり方はどうなのかといった論議にこれは当然展開をし、広がっていく筋合いのものではなかろうか、このように考えておるわけでございまして、中長期的なものも含めた行財政改革あるいは税制改革、地方分権推進の問題等は、一体的なものとして今後議論をしていかなければならない。また、地方財政の今後の対応というものは、そこと無縁には私は論ずることはできないという理解を私なりに持っております。
  19. 北脇保之

    北脇委員 この話は、抽象論でやっても余り前に進まないものですから、やはりこれから地方分権推進計画も出るはずで、これは今国会の早いうちにと言っていたのがなかなか出てこないので、どうなっているかというふうには思っておりますが、そういうものもまた一つの材料として、具体的な議論をしていきたいというふうに思います。  また、ちょっと角度を変えますけれども地方財政がここまで悪化してきた一つ原因として、地方財政に対する責任がどこにあるのか、つまり国と地方自治体の間で責任が明確になっていない。もう少し違う言い方をすれば、地方自治体自体が自己責任で自分のところの財政運営をしょうと思ってもなかなかできにくい仕組みになっているということは今申し上げたとおりですが、また逆に、今の仕組みの中では、地方自治体が余り責任というのを自覚しないで財政運営をしてしまうような仕組みにもなっているというふうに感じるわけでございます。  その一つのポイントは、地方債も近年非常に累増しておりますが、その元利償還金を地方交付税で見るという仕組みがあります。ですから、借金をしても、その元利償還交付税で見るから、まあいいや、何とかなるというようなことが、地方自治体の安易な財政運営につながるという面も否定はできないと思うのです。  そこで、ちょっと事務的なことを自治省の方にお尋ねしますが、交付税の中で地方債の元利償還金については、交付税財政需要額の中にどの程度、何割ぐらい算入されているのかというのが一つ。  もう一つ、特に地域総合整備債というものがありますが、これについては厚い交付税措置があって、これは自治体から見ると、ある意味では非常に魅力的で、事業をやればやっただけプラスになるというような受けとめ方もあると思うのです。プラスになるという意味は、それほど大きな自治体自身の財政負担がなくて事業ができるというような意味でプラスになるというふうな受けとめ方があると思うのですが、その地域総合整備債については交付税措置が何%になるのか。  この二つについて、事務局の方にお尋ねをいたします。
  20. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 地方債の後年度元利償還交付税で見ておるものはいろいろなタイプがございまして、減税を行いました場合の減税補てん債の元利償還は当然後年度財源措置をする必要がございますし、あるいは公共事業関係で、ダムでありますとか港湾でありますとか大きな事業を特定の団体に集中して行うというところについては、元利償還を見て、その事業の消化ができるようにというふうなことをいたしておりまして、その他災害の関係でございますとか、過去に行われました補助率カットの関係でございますとか、いろいろなタイプのものがございます。全部ひっくるめまして、交付税の需要額全体の中で元利償還を見ているものというのは、一番近い段階で約一〇%でございます。  それで、今もう一つ委員がお挙げになりました地域総合整備事業債でございますが、これは財政力に応じて元利償還を三〇から五五%財源措置をするというふうな仕組みになっておるものでございますが、これにつきましては、これは平成年度でございますが、需要額全体の中で〇・九%という数字になっております。
  21. 北脇保之

    北脇委員 今具体的な数字を示していただきましたから、この辺が議論のベースになっていくと思いますが、交付税そのものについても、本来一般財源ということであるわけですが、それがいろいろな形で、今の地域総合整備債などに見られるように、事業促進の一つの材料として使われる面も出てきている。そういったことについては、やはりもう一度見直しをしていく、原点に返った見直しが必要じゃないかというふうに思っております。そのことをちょっと申し上げておきたいと思います。  以上、今の地方財政悪化現状、そしてその原因についてはどう考えるかということを申し上げてまいりましたが、ちょっと角度を変えて、具体的な例で少し紹介をしたいと思うのです。  大阪府も非常に財政が逼迫してきているということで、大阪府が出した試算では、二〇〇一年度には財源不足が四千六百億円に達する、民間でいう倒産に当たる赤字再建団体への転落ということも非常に心配される状況になってきているという報道がございます。  例えば、この大阪府の現状について、こういう事態に至った原因一つの事例であろうと思います。かつては大変富裕な団体であった大阪府ですらも、財政再建団体に転落するかどうかという瀬戸際に来ている。このことは今の地方財政悪化を端的に示す例であると思いますので、あえてそれを紹介いたしましたけれども、この大阪府の場合などを見た場合でも、この大阪府の財政悪化原因はどういうところにあるというふうにお考えか、自治省の御見解をお伺いしたいと思います。
  22. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 地方財政状況は全般に大変厳しくなっておるわけでございますが、都道府県の中でも、もちろんその中で県ごとに若干の差がございまして、今委員がお挙げになりました大阪府の場合には特に厳しい財政状況にあるというふうに私どもは承知いたしております。いろいろな要因があろうかと思いますけれども、先ほど自治大臣からお話のありましたような要因、これは大阪府にも当然当てはまっておるわけでございます。  それに加えて、私どもが承知しております限りでは、やはり全般的に、いろいろな施策の経常的、固定的な経費のウエートが高うございまして、片方で法人関係税収が伸び悩んでおりますので、私ども財政分析の指標でよく使います経常収支比率、経常的な財源と経常的な支出の比率を示すものでございますが、これが大阪府においては一〇〇%を超えているという状況でございまして、通常でございますと一〇〇を超えるということは考えられないわけでありますが、固定的な経費が全体として非常にウエートが高いといったことが片方で言えるのではないかと思います。  そういうことから、大阪府では今、全般的な行財政改革に積極的に取り組んでおられまして、先般も報道されておりましたような、単独の福祉のあり方の見直しといったようなことについても積極的に取り組んでおられるというふうに承知いたしております。
  23. 北脇保之

    北脇委員 次に、今回の総合経済対策における地方自治体の役割ということについてお尋ねをしたいと思います。  地方単独事業についても一兆五千億円が予定されています。ちょっと前置き的な質問になりますが、よく景気対策について真水という表現があるわけです。これは、政府が真水という言葉をみずから使っているかどうかはちょっと私もつまびらかにしないのですが、いわゆる政府・与党として景気対策を説明するときに、この地方単独事業の一・五兆円というのは真水という中にカウントしているのかどうか。  そしてもう一つ、真水という言葉を仮に政府が使うとすれば、仮にもし使っているとすれば、それはどのような意味合いにおいて使っているのか。その点をちょっとお尋ねしたいと思います。これはどなたからでも結構でございますが。
  24. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  新聞等で真水という言葉が時々見られますが、政府といたしましては、真水という言葉につきましては明確な定義がございませんので、これまで、経済対策規模とか効果につきましても、真水という形での整理は実際いたしておりません。
  25. 北脇保之

    北脇委員 政府の方の見解はそういうことだろうとは思うのですが、真水という言葉が世上流布していることは事実だと思います。そうしたときに、真水という言葉の印象というと、一つには、財政出動を伴うという意味だろうと思います。もう一つには、確実に需要をつくり出すんだ、どうなるかはわからないという意味ではなくて、確実な部分だというようなニュアンスも込められていると思うのです。  この地方単独事業の一・五兆円分については、それをやるとなれば地方自治体財政出動、財政負担を伴う、これは間違いないと思いますが、では、確実に一・五兆円分の需要が創出される部分であるかというと、これは大変疑問であると思います。そういう意味で、ですから、真水という議論をするときに、地方単独事業を一・五兆円分含めていくのはどうかと疑問を持っているということをちょっと申し上げたいと思います。  そこで、先日、私どもの菅代表の質問の中にもあったと思うのですが、地方自治体がこの地方単独事業追加に消極的ではないかという疑問があります。これは日付が少し古いかもしれませんが、五月五日の新聞によれば、都道府県と政令市を調査して、今回の総合経済対策に伴う地方単独事業追加について都道府県及び政令市はどういう対応をするかということを調査したところ、五月四日の段階で、追加をする予定の自治体は二十九しかない。都道府県四十七と政令市十二の中で二十九だという調査結果であったという報道がされております。  この辺が現時点においてはどのように変わってきているのか、地方自治体のこの地方単独事業追加に対する取り組みはどのような状況になっているか、これを自治大臣お尋ねいたします。
  26. 上杉光弘

    上杉国務大臣 私は、地方財政の厳しい状況を十分踏まえまして、直接、私の方から求めて、地方団体の皆さんとお会いをいたしました。また、その場で、地方団体の抱える財政の厳しさや、あるいは苦しさや御意見等も十分承ったところでございます。  そのような一つの意見交換の場で、されども総合経済対策を打たなければ、さらに地方財政がよくなるというものにはならないわけでございまして、十分御理解を求めると同時に、政府が対応いたしました財政措置として、例えば、先ほども申し上げましたが、繰り返しで申しわけないのですが、地方交付税等年度途中の補正につきましては地方債にゆだねていたものを、一般会計から措置して交付税額を四千億増額するなど、あるいは、公共事業等に係る問題等についても、地方債で対応はいたしますが、後年度交付税でこれを見るという措置等、大変これまでとは違った、年度途中における補正地方債地方が全部責任を持ってやるというものを、国の支援というか国の対応というものはそのような形で措置したということ等も御理解を求めまして、私といたしましては、そのようなことも十分しておることを御理解いただき、協力をするという姿勢は私はできておるもの、このように認識をいたしておるわけでございまして、さらに、政府が協力をお願いし、理解を求めるということについて足らざるものがあれば、誠心誠意これは努力をしてまいらなければならないと考えております。
  27. 北脇保之

    北脇委員 ただいまの御答弁で、大臣地方自治体に対して本当に積極的に働きかけているということはわかりましたが、では、実際の対応がどういうふうになっているのか、四十七都道府県、そして十二政令市の対応がどうかということ、これは自治省の方で結構でございますから、お示しをいただきたいと思います。
  28. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 地方団体の場合には、この単独事業追加は、これからの補正予算の段階で、それぞれ状況に応じて対応していただけるものというふうに考えておりまして、先ほど大臣からお話のございましたように、六団体の代表の方々といろいろな意見の交換をし、また協力の要請をする傍ら、私ども、実務的には、それぞれの財政担当の方々、責任者の方々といろいろな連絡をとりながら、今協力要請いたしておるところでございます。  これから、とりあえずまず六月県議会で、国の補正予算が決まったのを受けてどういうふうな補正をするか、それから、最も補正の金額が大きいのは地方団体の場合には大体九月補正予算でありますから、九月補正予算でどういうふうな追加をするかということをそれぞれ各県の方でお考えいただけるというふうに思っております。  私ども、これから、その都度いろいろな状況を各県の意向を聞きながら把握してまとめてまいりたいというふうに思っておりまして、今この段階で各県ごとに、どういうふうな方針かというところまでまだ決まっておらないところがたくさんございまして、そういう意味での把握はまだこれからの話でございます。
  29. 北脇保之

    北脇委員 大臣の御答弁の中にも、今回の公共事業そして地方単独事業追加に合わせて、地方交付税の四千億円の増額をしているというお話がございました。しかし、これがどういう仕組みになるかということが、ちょっと地方自治体にとってわかりにくいといいますか、そういう部分もあろうかと思うのです。  私、ちょっとお尋ねしたいのは、この四千億円が、公共事業追加六兆円の地方負担分に当たる二兆円、ここの措置として、それに対する交付税措置として四千億円というものが使われるということになるのか、それとも、地方単独事業に対する措置という意味も含めて交付税措置がなされていると言えるのかどうか、ここのところをもう一度確認をしたいと思います。  今の質問は、四千億円の交付税措置というのは、公共事業地方負担分のみに使われるということなのか、地方単独事業部分にも仕組みの上で考慮した措置になっているのかどうか、これが一点。  もう一つは、私の意見としては、四千億円分交付税措置があるといっても、それは現下の地方財政状況から見れば、公共事業地方負担分の二〇%だってもう四千億円なんだから、その交付税措置は当然必要なことで、それだけでは、単独事業の促進といいますか、それを引き出すに十分な地方財政措置とは言えないのじゃないか、こういうふうに思いますので、この二点について、お答えをいただきたいと思います。
  30. 上杉光弘

    上杉国務大臣 交付税の四千億の追加につきましては、一つ追加分の公共事業、さらに地方単独事業にも円滑な実施ができますようにこれは使えるわけでございまして、そのように対応していかなければならない。これだけでは足りないから、所要の地方債措置等も講じたわけでございまして、それについては後年度交付税で見るということになっておるわけでございます。  地方団体に対しては、財政運営に支障を来さないことを前提として、ぎりぎりこのような対応をいたしたわけでございまして、普通の場合ですと、繰り返し申し上げますが、すべて地方債で賄っていたものを、このような形になったというのは、国の責任においてこれは措置したものと御理解をいただければ大変ありがたいと思います。
  31. 北脇保之

    北脇委員 今回の交付税追加四千億円、これは新たな措置だということはそのとおりだと思います。しかし、それを地方財政全体の姿で見たときに、ではこの四千億円が、本当に地方財政にとって、国から地方財政悪化状況を少しでも和らげる措置となっているかどうかということを考えますと、これは大変疑問です。  というのは、その追加公共事業等に係る交付税の増額四千億円、これは交付税特別会計借入金で対応するということになっていますが、この交付税特別会計借入金は後年度償還しなければいけない。ですから、地方財政全体で考えたときには、一たん借りているだけで、返さなくてはいけないということで、自己負担であるということだと思うのです。  それからもう一つ所得税特別減税とか法人税の減税に伴う交付税の減収が四千七百億円余あります。これについても交付税追加措置がなされているということでございますが、この交付税追加分についても、この財源になっているのは、国庫と地方交付税特別会計の間でいろいろ貸し借りがある中の、本来ならば国庫の方から地方交付税特別会計の方に追加される約束になっている部分を今年度に前倒しして追加するということですから、本来地方財政の取り分になっているものを先取りして、前倒しして、そして減税対応分の地方交付税の穴のあく部分を埋めている。  ですから、本来地方財政全体の持っている手のうちの中でこの措置をしているにすぎないわけですから、先ほど申し上げたような百五十六兆円も借金を抱えているという地方財政悪化させない、そして悪化を和らげるという措置にはなっていない。もともと地方財政の枠の中にある財源の中で今回の措置を講じているにすぎない。  ですから、今回の減税による地方交付税の減収そしてまた地方自治体公共事業地方単独事業追加によって、交付税措置が当面はあっても、結果的にそれはいろいろなものを先送りしているだけですので、これは地方財政悪化につながっていくものである、こういうふうに考えるわけですが、この点については、大臣、いかがでしょうか。     〔委員長退席、村井委員長代理着席〕
  32. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 二点ございまして、交付税の増額の四千億でございます。これにつきましては、確かに交付税特会の借り入れということで対応いたしておりますが、先ほど来、現在の地方財政現状について、いろいろ大臣からもお話を申し上げておりますように、今個別団体でやはり公債費の増嵩で厳しい状況にございます。特に、構造改革の集中改革期間中に入って、今回のような大きな経済対策を打たなければならない、こういう状況になったわけでございまして、すべてを個別の地方団体地方債によって賄うのは適当ではないだろう、やはり一定の一般財源措置する必要があるのではないかということから、こういうふうな交付税追加配分ということを考えたわけでございます。  これにつきましては、今回提出いたしております交付税法の改正案の中で、臨時の地域経済対策費という項目を設けまして、基本的には人口を測定単位とした標準的な要素によって配分いたしたい。そのことで、公共事業地方負担のみならず、単独事業の円滑な実施ということに対しても一定の効果があるものというふうに考えておる次第でございます。  それから、減税関係でございますが、これにつきましては、これも今委員が御指摘になりましたように、一般会計からの加算で、本来穴があくものを穴があかないようにいたしておるわけでございます。国の方の一般会計からの加算をいたしておりますこの内容は、本来は十年度の当初で加算すべきであった法定加算額を、非常に厳しい財政状況の中で、後年度に一部先送りいたしておりましたものを、今回この補正でまた本来の十年度に加算をするという形で加算をしたもの、これを含めて四千七百億円の加算をいたしておるわけでございます。  いずれにしろ、これにいたしましても、それから、住民税減税に伴いますものの減税補てん債、これも当面地方債によって対応するわけでございますが、これらのいわば償還に要する経費につきましては、今後、毎年度地方財政計画を策定するに当たりまして、それぞれの償還に要する財源、あるいは交付税特別会計借入金状況等を踏まえて、各年度地方財政の所要額を的確に見込んで、各年度財源を確保していきたいというふうに考えております。
  33. 北脇保之

    北脇委員 議論が大変細かいところに入ってしまって、私自身恐縮に思うのですが、私申し上げたいことは、今度の総合経済対策に伴う地方財政措置というのは、その交付税の穴のあいた部分を当面の対策としては穴埋めをしているというのは事実だとは思います。しかし、地方財政考えるときには、自治体交付税が予定どおり来るかどうかという、その段階だけを見るのではなくて、もとになっている交付税特別会計現状がどうなっているか、それを含めて考えていかなければいけないと思います。  そういう意味においては、国の一般会計といいますか、国庫といいますか、それと地方財政との関係においては、何ら特別に国の方から地方財政に対する配慮がされているということではないということだと思います。ですから、今回の総合経済対策実行に当たって、地方財政悪化させないように国の方からの配慮があるとは言えないと思うのですね。そのことは指摘をしておきたいと思います。  いずれにしても、この問題は、地方分権の推進地方財政全体の大きな見直しの中で取り組んでいかないと根本的な解決はないというのは、先ほど大臣もおっしゃったとおりだと思います。  ですから、今出されている政府の政策の中でも、例えば財政改革法の中で、補助金の整理合理化ということはうたわれておりますし、また、中央省庁等改革基本法の中でも、公共事業の見直しというようなことがございます。それに何よりも、今地方分権推進委員会で取り組んでいる地方分権の推進という大きな命題がございます。  この辺のところが、本当の意味で抜本的な地方分権、そしてこれは地方財源の充実強化を伴う地方分権ということになっていかなければ、本当に手の打ちようがないぐらいな、この地方財政悪化に対する解決はないと思いますので、これについては、本当に私どもも知恵を絞って取り組んでいかなければいけない課題だ、そういうふうに思います。  時間がほとんど少なくなってまいりましたので、あと一つ税制のことについてお尋ねをしたいと思うのです。  大蔵大臣お尋ねしますが、きょうのニュースでも、政府税調に小委員会を設置して税制改正を検討するということが報道されておりますが、この小委員会の検討課題の中に、どういった項目が含まれてくるのか。そしてまた、特に課税最低限のことが先日来議論になっておりますが、課税最低限の見直しということもこの政府税調小委員会の検討課題の中に入ってくるのかどうか、この点。もう一つは、小委員会の今後のスケジュール。小委員会がどこまでに結論を出し、それを全体の政府税調にどうつなげていくのか、このスケジュール。  この二点についてお尋ねをいたします。
  34. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  今般の総合経済対策で示されておりますように、法人課税と所得課税について、それぞれ検討を進めることにしてございます。  法人課税について申し上げますと、今後三年のうちにできるだけ早く、国、地方を合わせた総合的な税率を国際的な水準並みにするよう検討を行うということにされておりまして、きょう報道にもございましたように、税制調査会に、いわば小委員会をつくりまして、税体系全体のあり方も踏まえながら、外形標準課税の検討を初め法人課税のあり方について検討が行われるというふうに考えているわけでございます。  それからまた、個人所得課税でございますが、これも経済対策の中で、公正で透明で、国民の意欲が引き出せるような税制を目指して、幅広い観点から検討するというふうになっているわけでございます。  検討項目でございますが、御承知のように、税率について申し上げますと、大半のサラリーマンは、生涯一〇%から二〇%の税率が適用されるような税になっておりまして、最高税率の問題を除きますと、十分なフラット化が進められているのではないか。一方、課税最低限が諸外国に比して高うございます。また、低中所得者層の税負担は低いということで、実は所得税負担率は、全体で見ますと、主要先進国中最低になっているわけでございます。こうした中で、税負担のあり方の問題も考えていくということになるのではないか。  また、最高税率の問題が論じられるという場合には、それでは資産課税はどのような税負担になっているのか、総合課税についてどう考えるのか、株式についてどう考えるのかというような論点、さらには納税者番号制度をどう考えるのかというようなところまで検討が行われるのではないかというふうに思っております。さらには、いろいろな意味で各種控除をどう考えるかという論点もあろうかと思います。  いずれにいたしましても、この所得税制をめぐる論点でございますが、従来からたくさん指摘されておりまして、まさにこれらの論点について腰を据えた検討が税制調査会において行われるのではないか。したがいまして、現段階でいつまで結論が出るということを申すのは適当ではない、税制調査会で今後検討されていくのではなかろうかというふうに考えているわけでございます。  以上でございます。
  35. 北脇保之

    北脇委員 質疑時間が参りましたので終わりたいと思いますが、今、政府税制調査会の検討事項の中には課税最低限の見直しも含まれているということは確認をされたと思います。  ただ、いずれにしても、この制度改正といいますか、私どもは制度減税を主張しているわけでございますが、これは一つ経済対策であり、また景気対策でもあるということですから、いつそれを実行するかというその実施時期、タイミングの問題というのは非常に重要だと思います。今の答弁ですと、基本的な問題だからいつまでかかるかわからないということでございましたが、それではほとんど当面の経済対策としては考えていないということと同じになってしまうと思うのです。  私は、それでは、今我が国の経済が求められている構造改革ということについて、機敏に対処することにならないのではないかという危惧を持ちます。そういう意味で、この制度改正の問題は早急に取り組んでいかなければいけない課題だというふうに思います。  以上申し上げまして、質問を終わります。どうもありがとうございました。
  36. 村井仁

    ○村井委員長代理 これにて北脇君の質疑は終了いたしました。  次に、島聡君。
  37. 島聡

    ○島委員 十六兆円にも及ぶ総合経済対策が発表されているのですけれども、株価あるいはマーケットの反応は全く芳しくなかったわけであります。一体これはなぜか。政策、政治、そういうものに対する信頼が本当に失われている。  当たり前でありまして、この審議をずっと聞いておりますと、政策の最高責任者がきちんと負うべき責任からもう逃げの一手に終始している。政策を見誤った、そういう誤ったということに対する結果責任を、全く他人事のように、各関係閣僚が結果責任を全く考えていない。こんなことをやっていますから、本当に、政府、政策に対する信頼が全く失われたことによって、政策が実効性を失っているというのが現在の状況であると思うわけであります。この失った信頼を取り戻すことは極めて難しい。  その意味で、きょうは、きちんとそれぞれ責任をどう感じていらっしゃるかということをお聞きして、一つ一つ質問を進めていきたいと思いますので、よろしくお願い申します。  リーダーシップというものを研究するということで有名なのが、アメリカのアナポリスの海軍兵学校というのがあるわけですが、そこの壁にはリーダーシップ、リーダーというのが絶対犯してはならないという格言が幾つか書かれているそうであります。絶対これは戒めなくてはいけない。その一つに、オーダー、カウンターオーダー、ディスオーダーというのがあるそうです。命令、カウンターオーダーというのは反対の命令つまり命令変更、そうするとディスオーダー、完全な混乱というのが生じるというわけであります。  よく橋本総理は臨機応変という言葉を使われます。機に臨んでまさに変ず。それは、言葉というのは便利なもので、臨機応変と言うのはいいのですが、世界のGNPの十数%も占めるような日本経済、こんな大きな艦が、大きな船が臨機応変にごちゃごちゃやったら大混乱を招くわけであります。駆逐艦じゃないのですから。橋本総理も駆逐艦の艦長ならいいのでしょうけれども、世界のGNPの一五%を占める大きな艦の艦長には全くふさわしくない。だから臨機応変なんという言葉を平気で使うわけであります。  その混乱のきわみというのがこの財政構造改革法の改正の審議にも随分あらわれておると思うのですが、まず最初に、先ほど北脇委員がストップ・アンド・ゴー政策という言葉を使われました。今の日本には、当然二つの政策目的があることはわかっております。一つは、財政再建という目標がある。それは事実でしょう。そしてもう一つは、当然そのたびごとに景気というものをきちんとしていかなくてはいけないという目標もある。  この二つを、まさに臨機応変、賢明な政策責任者であるならばそれはきちんとやっていけるのでしょうけれども、不賢明なというよりも、賢明でない政策責任者がそういうことをやりますと、全くストップ・アンド・ゴー政策になってしまう。私は今この質問は、日本経済の政策がストップ・アンド・ゴー政策に陥っているのじゃないですか、愚かなわなに陥っているのじゃないですかという質問であります。  その根拠を申し上げますと、これは何度も使われたことかもしれませんが、平成四年、五年、六年の経済成長率というのは、平成四年が〇・四%、平成五年が〇・五、そして平成六年が〇・六だったわけです。それで、平成七年に二・八%になって、平成八年には三・二%。ちょっと景気がよくなった。ちょっと景気がよくなったからもう大丈夫だと思って、そして、よく言われる話ですが、消費税を上げて、減税をやめて、そしてその結果、財政構造改革法なんという全く愚かな法律、時期としては全く愚かな法律を出して、また景気を失速させてしまった。  先日、私はアメリカに菅代表とともに行っておったのですが、そのときに、一緒に行っておりました岩國哲人議員がこんなことを言っていました。今までの日本の政策はツーレート・ツーリトルだ、今の日本の政策はストップ・アンド・ゴーで景気をだめにしてしまったからツーレート・ツービッグだと言っています。昔なら、もっと前だったら、懸命にやっておればこんなに政策をやらなくてもよかった、こんなに公共投資等をやらなくてよかったのに、タイミングをミスつたからツービッグになってしまった。  今、日本はそのようなストップ・アンド・ゴー政策のわなに陥ってしまっているのじゃないかという質問に対して、大蔵大臣、お願いします。
  38. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどの、臨機応変というのはよくないという話がございましたが、委員もお認めになりましたように、我が国の中長期的な目標としてなし遂げなければならぬのが財政構造改革であります。財政構造改革の必要性は委員もお認めになっているのだろうというふうに思います。その中長期的な目標は目標として完遂に向けて努力していくと同時に、そのときそのときの経済、景気の情勢を見て、そこで臨機応変的に景気対策を打っていくということ、これはやるべきことだというふうに思います。  そういう意味で、なるほど日本の経済、大きな経済になっておりましても、やはり短期の、あるいはそのときにおける経済、景気情勢を見ながら適切な景気対策を打っていくのは、これは私は妥当なことだ、こういうふうに思います。臨機応変という言葉が適切であるかどうかということは別の問題として、適切に景気対策を打っていくということは適切な対応策だろう、こういうふうに思います。
  39. 島聡

    ○島委員 今聞きましたのは、ストップ・アンド・ゴー政策になっているのじゃないですかということですから、そちらについて答えてもらえませんか。
  40. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど申し上げましたように、中長期的な目標は堅持しながら、そのときにおける景気、経済情勢を見て、そして目前のといいますか、短期の対策として景気対策を十六兆円超で打つということにしたわけでありまして、ストップ・アンド・ゴーとおっしゃったのですかな、私は、財政構造改革をストップさせておるとは思えませんで、やはりこれは、スピードは落としても、坂道はなだらかにしても、やはり着実に進めながら、景気対策の方はゴーということでやっておるのだというふうに御理解願いたいのです。
  41. 島聡

    ○島委員 基本的な言葉だったので特に説明もしなかったのですけれども、ストップ・アンド・ゴー政策というのは、一般的には、一つの目標があって、財政構造改革というのがあった場合に、なだらかにその目標に到達できるのに、ちょっとよくなるとストップさせて、ジグザグになってしまうということなんです。国際収支の天井が壁になったときのイギリスがよく使った、迷走しているというような形の政策の意味なわけであります。  私が申し上げたいのは、さっき言ったツーレート・ツービッグ、例えば今回の景気対策、マーケットは関係ないという社会主義経済かと思うような質問をされた方も与党にいらっしゃいますけれども、私はここはマーケットはきちんと見なくちゃいけないと思っておりますので、十六兆円の対応策が示されたときに株価の反応が鈍かったというのは明らかであります。つまり、これは政策に信頼性がないということですよね。  例えば、今回は財政支出のうち、十二兆円のうちの四兆円が減税で八兆円が公共投資、このうち丁五兆円は地方単独事業だということで、今北脇委員がるる質問をされたわけでありますが、そのうち六・五兆円が純粋な意味の真水だと私は思っています。そうすると、これをもっと前にやっておれば、もっと前にというか、順調な形で、例えば昨年度あのようなデフレ予算を組まずにきちんとやっておれば、三・八%の経済成長の上に、その上に、恐らく六・五兆円で一・三%ぐらいの経済成長があるでしょうから、それがプラスされてうまい軌道に乗ったでしょう。  ところが、もうまたすぐに財政構造改革だといって、がっとやっちゃったから、去年は日本の経済成長は恐らくゼロ及びマイナスになってくる、ことしも含めますと。そうすると、今回の政策を加味しましても一%程度しかないのじゃないかと私は思っております。つまり、結果から見ると、普通なら二・四%、三・八%で順調にいくはずのものを、臨機応変でいいのですが、機を見損なったからこういうふうになってしまう。  そういうことに対する責任は、どうお考えですか。
  42. 松永光

    ○松永国務大臣 本当は総括質疑のときに御質問なさる機会があった方がよかったかと思うのでありますが、私がお答えするのが適当かどうかわかりませんけれども。  とにかく、そのときの政府の景気の見通し、これは尾身長官がよくお使いになることでありますけれども、七―九がよかった、そこで、四―六は落ち込んだのだったかな、とにかく七―九がいい数字が出たということから、この機会に、大事なのは財政構造改革であるということで進んでいったということであります。そのときそのときの景気の動向を見ながら財政構造改革という大変苦労の要る政策に取り組んだ、こういうことであると思うのでありまして、いずれにせよ、国の安定した発展のために必要な措置として、財政構造改革に取り組むことになった、こういうふうに私は理解をしておるわけであります。
  43. 島聡

    ○島委員 では、大蔵大臣にふさわしい質問をさせていただきたいと思いますが、法案の方に入っていきます。  私は、財政構造改革法はもともと非常に反対しておりました。こんなふうに二〇〇三年までにきちんとやったら経済はだめになるということは、私は本当に目に見えていたと思います。ただ、でもまあ唯一評価するとしたら、こういうことかなと思っていました。  普通の財政運営というのは、景気の悪いときにはきちんと財政出動をして景気をよくして、そして景気がよくなって自然増収があればその間にそれで国債を返していく、あるいは歳出削減もきちんとしていくというふうにするならばいいんだけれども、今の与党の体質では、財政歳出を削減するというのはなかなか難しい。それだから負債を累積する、どんどんどんどんまた国債をふやしていってしまう。  そういうような状況であるならば、政府が賢明ならこんな法案をつくる必要ない。景気がよくなったらちゃんと国債を償還していって、そして景気が悪くなれば財政出動するという賢明な経済政策をすればこんな法案をつくる必要ないんだけれども、非常に賢明じゃないから、まあ仕方ないのかなというふうに、通った後は自分自身を納得させておりました。  しかし、また今回は、何か弾力条項というのを改正案に入れた。これでは、財政構造改革法案をつくったときに抜け穴とよく言われたが、補正予算を使えば抜け穴ができるということをよく言われましたが、それと同じように、またこれを抜け穴として使えるようになってしまう。せいぜい財政構造改革法案で私が評価できるとした、族議員のばっこを許さず、政府の愚行を防ぐという、この法律が何とか唯一果たす機能を、弾力条項をつくったことによって、事実上葬り去ってしまったのじゃないかと私は思っております。  そういうことを証明するためにちょっと質問をしていきたいのですが、確認の意味を含めて。まず一つ、弾力条項の発動と、財政再建目標年次の設定というのがあります。例えば、確認のために質問しますが、二〇〇五年が目標年次です。そこまでに赤字をGDPの三%までにしていくという目標がある。  そうすると、もうちょっとで目標が達成できそうだったけれども、二〇〇四年にまた景気が非常な事態になった、そういうときにまた赤字国債をぽっと発動したらこの目標が達成できなくなる、そういう事態になった場合にはどうなるのですか。
  44. 松永光

    ○松永国務大臣 二〇〇五年に目標年次を延ばしたのは、二〇〇三年という目標であれば、要調整額を処理していくのが非常に厳しい、坂が急過ぎる、そこで二年延ばして坂を緩めていけば安定した財政政策がぶてる、そのことが日本の財政についての内外の信任を得る道だ、こういう考え方で、別に楽しようというわけではありませんが、内外の日本の財政政策についての信頼を得るということの方がより重要だという考え方で、二〇〇三年となっていたところを二〇〇五年に延長したということであろうと思います。  なお、弾力条項発動というのは特別な場合のことでありますから、そういう事態を私どもは予測していないわけでありますが、私は、計画どおり二〇〇五年にはいけるものというふうに思っております。  なお、先ほどキャップの点については評価をしていただいたわけでありますが、ある人はこのキャップがいかぬということをおっしゃるのでありますけれども、キャップ制度については評価をしていただいたような気がいたします。いずれにせよ、補正予算公共事業等については何か追加政策がやれるということにはなっておりますけれども、しかし、最終的には二〇〇五年度における国、地方財政赤字をGDP比三%以下という最終目標はきちんと存在しておるわけでありますから、それに基づいて、その財政構造改革の基本理念に基づいて財政運営はなされなければならぬものだというふうに私は思います。
  45. 島聡

    ○島委員 これは事務局に聞いた方がいいのかな。確認のために聞いたんです。  二〇〇四年に、もう少しで達成できょうと思ったときにまた経済が停滞していて、弾力条項を発動して、その結果、三%以下の目標が達成できないというようなことがあったらどういうふうにするんですかということを今聞いたんです。
  46. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  法律論といたしましては、今回の法案におきまして目標達成年次を二年間延長するということでございますので、政府としては、法律ですから、それに従う義務があるわけですから、それに向けて最大限努力するということだと思います。
  47. 島聡

    ○島委員 質問に答えてほしい、私は。そういうようになった場合に、要するに、言いたいことは、二〇〇四年、じゃ、こういうことですか。質問し直しましょう。  ということで、達成できないようなら、二〇〇五年をもう一回再延長するという形になるわけですか、目標達成年次を。
  48. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  今回、法律改正をお願いしているところでございますが、これは、中長期的には財政構造改革は絶対行わなくてはいかぬと。数字的には、先ほど大臣も申し上げましたように、二年延ばせば、延ばさない場合と比較して毎年度の赤字縮小幅が小さくなるということで、我々としては、これは到達可能な数字であると考えているわけでございます。
  49. 島聡

    ○島委員 私の説明能力が低いのか、理解能力が低いのかわからないので、もう一度聞きますよ。いいですか。  つまり、この法律の枠組みは、目標年次の再改正や延長を常態化させてしまうようなことがあるんじゃないかと私は思っているんです。それを恐れている。つまり、先ほど政策の信頼性が失われると言った。これは、今政策を出して、例えば財政構造改革法を五カ月前に出して、すぐ修正する。ということは、臨機応変か何か知らないけれども、どたばた劇で出してきたのか、それとも矛盾を承知で出してきたか知らないけれども、そういうことをやっているから、税金を相当投入しても、赤字を出すだけで景気は戻らない。  政策の信頼性が失われてしまうような枠組みがこの法案にあるのではないかということを質問するために、順序よく質問をしようとしているんだけれども、何か質問に対してきちっと答弁ができてないので、言い直します。  私は、目標年次の再改正、延長をこれは常態化させてしまうようなことがあるんじゃないかというおそれを感じているんですが、それはないですか、大臣
  50. 松永光

    ○松永国務大臣 現在、財政構造改革法の改正案の御審議をお願いしている段階でございます。その改正案の中に、御存じのとおり、二〇〇五年というふうに目標達成年次を二年延ばしておるわけであります。  そのほかに弾力条項が入っておるわけでありますが、この弾力条項というのは、御存じのとおり、赤字公債発行額を前の年よりも減額しなきやならぬという点に弾力条項が入っておるわけであります。二〇〇五年という目標年次についての弾力条項では、法律の改正法案の内容はなっておりません。したがって、それはもう石にかじりついても二〇〇五年に達成するということを、法案審議をお願いしているこの段階では言うしか方法はないんです。
  51. 島聡

    ○島委員 それしか方法はないといえば、その誠実さを多としますが、ただそれだけで終わってはあれなんで、御質問しますけれども、政策の信頼性の議論なんです。  それなら、政策をつくるときに、五カ月前に財政構造改革法を制定する時点で、考え得る可能性、つまり財政構造改革が必要だという、財政構造改革法というのはそういう目標を持っていた。石にかじりついてもやるんだという意識があったはずです。(発言する者あり)そう、滑り落ちたのかもしれないけれども、そのときに、その財政構造改革法を制定する時点で、この法律改正というのは、石にかじりついてもと言われたけれども、またすぐに変えるんだというふうに思われてしまったわけですよ、これ。すぐ改正するんだから、改正案を出しているんだから。もしもその時点で、考え得る可能性に対してきちんとしたきめ細かい配慮、弾力条項が要るなら、わずか五カ月前なんだから、もうそのときに判断して入れるべきではなかったか。なぜそのときに財革法を改正して弾力条項を入れなかったのか。わずか五カ月前です。大臣、お願いします。
  52. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  先生の、この財政構造改革法制定時になぜ今回の規定のような弾力条項を入れなかったかという御質問だと思います。  当時、やはり我が国の財政が世界の先進国の中でも非常に悪い状況である、これをこのまま放置した場合にはどうなるかということで、経済審議会で行いましたシミュレーションが有名なわけでございますけれども、そのシミュレーションによりますと、二〇二五年度には、一般政府の純債務残高が一五三%、対GDP比、これはとてもその段階ではファイナンスできないだろう、それから経常収支の対GDP比が一四・三%の赤字に転落する、それから一般政府の財政赤字を含んだ国民負担率は七三%程度に上昇するということで、いわゆる破綻のシナリオということで世の中に知れ渡ったわけでございます。  このような議論を背景にいたしまして、当時の財政構造改革会議議論におきましては、将来に向けて、さらに効率的で信頼できる行政を確立し、安心で豊かな福祉社会及び活力ある経済の実現という課題に十分対応できる財政構造を実現するため、いわゆる財政構造改革推進方策というものがまとめられたものでございます。  確かに、当時の財政構造改革会議議論におきましては、やはり財政構造改革を中期的にやっていかなくてはいかぬということでございまして、いわゆる弾力条項といった議論はなされていなかったことは事実でございます。これは、いわゆる財政構造改革会議議論でございます。  その後、この法案の成立後に、総理がたびたび答弁申し上げましたように、インドネシアなどアジアの経済金融情勢の影響、それから国内におきましては大型金融機関の破綻やいわゆる貸し渋り等による家計、企業の景況感の悪化の影響ということで、本年に入ってから実体経済全体にまで影響を及ぼし、景気が停滞して一層厳しさを増しているということ等が、これは十二月のQEや日銀短観さらには失業率といった新たな指標により判明したところでございます。  こういうような極めて深刻な経済情勢が新たに判明したということで、政府といたしましては、今回さらなる追加措置を講ずる必要があると判断いたしまして、先般、経済対策を決定するとともに、この財政構造改革法につきましても、現在御審議をお願いいたしております、経済状況に応じて緊急避難的に適切な措置を講じる枠組みを整備し、財政構造改革の基本的方向性は堅持しつつ、必要最小限の修正を加えるということにしたところでございます。
  53. 島聡

    ○島委員 いろいろとおっしゃって、提案趣旨まで説明をもう一度読んでいただきましたけれども、大蔵大臣お尋ねします。要するに見通しを誤った、そういうことですか。
  54. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども局長が答弁をいたしましたし、今までもこの委員会の場で総理も答弁をしておられるところでありますし、また尾身長官が一番明快な答弁のできる人なんでありますけれども。  先ほど委員がおっしゃいましたように、去年の秋深まってからインドネシアその他アジアの国々の金融・通貨不安が起こった。事件はそのときに起こりました。また、国内の幾つかの大きな銀行が破綻をするという事件も起こりました。そうした事件の本格的な影響が日本経済に及んだのはことしになってからである。貸し渋りとかあるいはまた景気景気の先行きその他についての不安感というものが、本格的に広がってきたのはことしになってからじゃないか。  こういったことで、その時点では、これほど大きくなるということが予見できなかったと言えば、予見できなかったということであろうかと思います。
  55. 島聡

    ○島委員 これほど大きくなるまでは予見できなかったと。  一般的に、例えば普通の民間企業の経営者、民間企業のトップリーダーである場合、将来の経済的な予見、そういうものを見通せなかった、そしてその結果、企業経営がうまくいかなかった場合には、それに対してはきちんと責任を明快にするというのが普通、民間のようなトップリーダーだったらそれが当然である。それが、政治の世界あるいは与党の論理とは違うとおっしゃるならそれは結構でございますが、一般的にそういうように考えるものである。  それで質問ですが、今、予見はしていたけれども、これほどまで大きくなるとは思わなかったということに関しては、大臣は、その問題に関してはきちんと責任をとる必要のある範囲以下におさまっているというふうにお思いですか。だから、そういうふうになっていらしたのですか。
  56. 松永光

    ○松永国務大臣 この点についても、この委員会でもほかの場でも総理が答弁しておられることは、これほど大きな影響が我が国の経済に及ぶということについては我々の予想を超えるものであった、その結果何をすべきかということについては、責任を恐れて何もしないというのが一番よくない、現状を打開するための毅然とした措置をとるのが責任を全うする道だというふうに総理は答弁しておられると思います。私もそういうことだろうというふうに思います。
  57. 島聡

    ○島委員 今、経済情勢に応じて、見通しを誤ったという話もあったわけであります。  次にお聞きすることでありますが、例えば今回の弾力条項の適用において、赤字国債の発行制限を一時停止できるように弾力化する。例えば、アメリカがやった財政再建の場合には一包括財政調整法で、二四半期連続でマイナス成長が予想される場合には法の執行が停止される。日本の弾力条項では明確な発動基準は設けていない。確認のために申し上げるわけですが、政府はこれはいわゆる政令等で決めると言われますから、これはかなり政府の裁量にゆだねられていると考えていいわけですか。
  58. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 法律におきましては、経済が著しく停滞したということで、その具体的な要件につきましては、先生御指摘のように、政令にゆだねられているところでございますが、その具体的な運用方針につきましては、先般の財政構造改革会議で具体的な内容を定めたところでございまして、それを政令で具体化するということを考えております。
  59. 島聡

    ○島委員 その財政構造改革会議の場合には、経済活動の著しい停滞については次のような場合を指すというのがあって、一、二、三項目ある。第二項目に、直近の一四半期の実質GDP成長率が一%未満であって、かつ当該四半期後の消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調な場合というのがあるわけですね。それで、昨年度、九七年度の経済状況を見ますと、この第二項目に当たるのではないかと私は思うのですが、その点について御答弁をお願いします。
  60. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 消費、設備投資あるいは雇用等の状況も含めまして、第二項目に現在ただいまの状況は当たっているというふうに判断をしております。
  61. 島聡

    ○島委員 それで見ますと、平成九年の十月から十二月期の実質GDPは前期比年率でマイナス〇・七%、先ほど七―九はよかったという、三・二%であったので二四半期連続で一%未満という状況にはないが、本年に入ってからは、消費、設備投資、雇用の指標を見ると著しく低調であると言えます。ということは、財政構造改革法の審議をし、そしてそれが通過していった平成九年十月から十二月期というのは、著しく異常な経済活動の停滞があったときということになるわけですか。  それで、そのときに我々はこう言っていたはずです。多分そのころは、こういう七-九のパーセンテージはいいですよという話、実感的には我々は違いますよと言っていたのです。どこを見ても、経済を見て、民間企業の話を聞いて、地元の話を聞くと、非常に経済儀しいよ、こんなときに財税構造改革法を通して大丈夫なんですかという話をしていた。デフレ予算を通して大丈夫なんですかという話をしていた。  そのときには、いや、まだ統計が出てませんからというような話だった。実感と全然違いますよ。その実感と全然違う、実感じゃなくて統計、しかもおくれている統計を使ってその説明をしていた。そうじゃないですか、長官。
  62. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 経済活動の著しい停滞という状況のもとで弾力的な対応をするということでございますが、経済活動の著しい停滞を日常生活における実感によって判断して、基本的な財政構造改革の運用を現実の政策として弾力的にするということは、私ども責任ある当局としてはとり得ないところでございまして、ある種の統計で客観的なデータに基づいて著しい停滞ということがはっきりするまでは対応はしにくいというのが正直なところの実感でございます。  そういう意味におきまして一と二というふうに分けておりますが、一は、二四半期連続で成長率が一%未満の場合、統計がはっきりするのは実は三カ月後でございます。七-九の統計は大体十二月十日前後に出る。その前の、例えば第一・四半期と第二・四半期の両方の統計が出るのは三カ月おくれの十月十日でございますから、そういうことを考えますと、やはりできるだけ早く統計が出る、月ごとの統計が出る消費あるいは投資、雇用等の指標をできるだけ早くキャッチして適当な対応をするということで、第二の項目が設けられたと思っている次第でございます。  もちろんことしの第一・四半期、年度で言いますと昨年度、九年度の第四・四半期の数字が出るのは六月十日ごろでございまして、その前に必要な対策判断してやる。しかしながら、全く統計なしの状況では判断できないということで第二項目ができたと考えておりまして、私どもとしてはそういう判断を臨機応変にするということが、一番急いで結論を出すための必要な対応であるというふうに考えている次第でございます。
  63. 島聡

    ○島委員 要するに、統計が出るまでのタイムラグがあるということですね。しかし、臨機応変ということでいくならば、これはタイムラグをできるだけ少なくしなくてはいけないと私は思うわけでありますが、その努力は何か今後されるおつもりはございますか。
  64. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 これは、月ごとの統計、私どもはあらゆる統計について一日も早く整理をして、わかるようにしたいと考えている次第でございますが、現在のいろいろな技術上の問題等を考えて、統計の出るタイミングを一日でも早めるということが実は実態としてかなり難しい状況にございまして、私どもとしては、今の統計の出し方というのはもう最短距離であるというふうに考えております。  しかしながら、できるだけ早く実態を認識するということも必要でありますので、今後とも、前向きの努力を続けてまいりたいと考えております。
  65. 島聡

    ○島委員 今お話ししたのは、情報のスピード、情報を伝え、それが政策に伝わるスピードが、それこそ経済は臨機応変なのですから、きちんとしてもらわなければ困るという話なわけなのです。  それからもう一つは、松永大蔵大臣、G7、四月十七日にお帰りでしたよね、ワシントンから。(松永国務大臣「いや五月、最新のは」と呼ぶ)最新のはそうです。その前の四月のとき、ありましたですね。  そのときに、私、ちょうど外務委員会がありまして、そのときに、新聞でこんなことが書いてあるのです。日本の経済に関する議論が時間の半分も費やされた、費やされたというか論議があったのですよ。新聞に書いてある。  それで、その中で、日本経済の問題がこんなに大きな議論がされているということは、非常に深刻にとらえて対処すべきではないですかという質問をしたどころ、大蔵省の方は、今成田に着かれたばかりで、全然そういうことは聞いておりません、まだ報告を受けておりませんという御答弁でした。  まあ外務大臣の方は直接は所管外であれでございますが、外務大臣の方は、何か、まだ閣議が開かれていませんので、直接報告がありませんので答えられませんという答弁でありました。新聞がそうやって報道しているのに、そういうような御答弁をいただいている。その事実確認もできなかったというのが今の日本の政府の情報の伝わり方かなというふうにすごく思ったわけであります。  それからもう一つは、大蔵大臣、ちょうどお疲れだったのでしょうが、これはニュース報道でもありましたが、きょうのマーケットはどうですかというふうに聞かれたときに、いや、今着いたばかりだから株価も聞いておりませんしというようなことを言われたと私は記憶しておりますが、どうも情報というものがうまく伝わっていないというような気がするわけであります。  それで、今から先御質問しますのは、マーケットというものをどういうふうにお考えかという質問なのでありますが、例えば、今、景気対策のところにおいて、減税が大事なのか公共事業効果があるかというような議論がされております。それで、乗数議論についてはるるされているわけです。これは当たり前の話でありまして、減税をすれば、自分たちが使うときに、貯蓄をする分だけ減税乗数が下がるのは当たり前の話なのでありますが、マーケットの方は、実はそうではないわけであります。  例えば、マーケットの方で考えていった場合に、どうも減税が否定されると株価が下がる、こういう景気対策において、公共事業の方が多いとこれまた株価が下がるというような状況になっていると思います。これをどのようにお考えなのか、まず最初に大蔵大臣に聞きまして、理論的なことを長官にお聞きします。大蔵大臣、お願いします。
  66. 松永光

    ○松永国務大臣 まず、事実関係でございますから、本来は質問の趣旨でなかったかもしれませんけれども、G7における日本の経済情勢についての議論の時間の長さの問題でございますが、二月のG7のときを十とすれば、四月のときには七ぐらいでしたかな、五月のときにはそれが四以下になっているということでございました。  なぜそうなったのかというと、四月のときは、実は、G7の大蔵大臣・中央銀行総裁会議の前にルービン長官に会って、そして、日本の税制の現状等につきまして相当私の方から説明し、資料を渡しました。それはどういうことかというと、もう委員御承知のとおり、我が国の個人所得税課税の水準がどうなっているか、所得が二千万ぐらいまでの間は、もっと下を言えば千五百万ぐらいまでの間は、アメリカよりも相当低い状態にあるということ等々をよく説明いたしました。  そしてまた、法人課税につきましても、今国会で、三月の時点で、もうあの時点では成立しておりましたから、三月の国会で、法人税について、基本税率を三%引き下げるという法律が制定されました、法人税についても同じように、二八%が二五%になる、そういう減税が決定をいたします、したがってこれから税制調査会で検討される主要項目は地方税の法人負担のあり方になっておりますというふうなことをよく説明しておったということもあってかもしれませんけれども、四月の方は、二月の場合に比べれば、七あるいはそれ以下ぐらいの長さであったわけです。  私は、そのときは、参議院の委員会で十時から始まるのに出なければならぬ、そこには出るという約束で、行くことを参議院の方でお許しをいただいているということがございましたので、その後の共同記者会見等に出る時間がなかったものですから、そこで、共同記者会見には出ずに、あれは何というのですか、出たところで日本の新聞記者等に十数分にわたって会議の内容は説明して、それからすぐ車をふつ飛ばして、ワシントンの飛行場から実は成田に帰ってきた。成田に着いたのが午前八時ごろでございました。そしてこちらに九時半ごろに着いたということでございますから、実は、株価の動向等を知ることが物理的にできなかったわけであります。そのことは御理解願いたいと思います。  マーケットをどう見るかという話でございますが、市場における株価の動向等、いろいろな状況等によって株価は変動するものだ、こう思っておりますが、いずれにせよ、市場の動向については十分注意しながら、政策のあり方等も決めていかなければならぬと思いますけれども、同時に、政府の側も、新しい政策、財政政策あるいは税制の問題等、これはマーケットにも十分説明するということが必要であろうというふうに思います。
  67. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 一つは、先ほど来議論になっておりますマーケットの反応との関係でございますが、確かに、今お話しのとおり、マーケットの反応は必ずしもよくないと考えております。  ただ、私どもといたしましては、この総合経済対策によりまして、実質二%以上の経済成長へのプラス効果がいずれ出てくるというふうに考えておりまして、いつもでありますと、マーケット、株価の方が先行指標的な動向で景気を示しているというのが通説でございますが、今回の対策につきましては、実体経済がよくなって、数字がよくなって、それに対応してマーケットの反応が、ああ、やはり政府のやっていることが正しかったなというふうに理解をしていただいて、反応が後からついてくるのではないかというふうに考えている次第でございます。  それから、恒久減税議論につきましては、確かに、所得減税は、減税とすれば、だれでも減税の方が個人的にはいいわけでございますが、しかし、所得税と法人税のバランスをどうするか、課税最低限とか最高税率をどうするか。  具体的に恒久減税ということになりますと、所得税は基本税率でございますから、税体系全体、法人税あるいはその他の資産課税、固定資産税のような資産課税とか間接税の問題とか、そういうものを全部立体的に考えて決めていかなければならない問題であり、かつ、現在の財政状況のもとで、財源手当てがないままに、先に減税をして、数年後に苦い薬である増税をするというような対応はなかなかとりにくい、責任ある私どもとしてはとりにくいというのも現状でございます。  そういう意味で、減税議論をされることは大いに結構だと思いますが、ぜひ、皆様方におかれましても、減税をするときには、どういうふうに制度を直して、そしていつの時点でどういう形で財源を確保するかということも含めていろいろ御提案をいただけると、議論がかみ合ってくるのではないかと考えている次第でございます。
  68. 島聡

    ○島委員 逆に、今の議論をかみ合わせてほしいと思うのですけれども。  今私がお聞きしたのは、マーケットにおいては、公共事業だと株価が下がるでしょう。今尾身長官がおっしゃったように一実績が将来は上がらないとマーケットは判断して、実績というか、景気がよくならないと判断しているでしようということなんです。それをきちんと答えてくれと言ったわけであります。
  69. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 マーケットは、先ほどの大蔵大臣の御答弁のとおり、いろいろな要因で株価が決まるものでございまして、私どもがこれをコントロールできるわけでもありませんし、また、コントロールしようということを考えることは適正でないというふうに考えております。ただ、私どもといたしましては、経済そのものを回復させるということが大変大事でございますから、そのようなことに全力を注いで、最終的にはマーケットの理解も得たいというふうに考えております。  それからもう一つ、あえて申し上げますれば、マーケットの皆様は株価のことを中心で考えておられますが、私どもは、日本経済の現状、それからまた現在の日本の国民及び私たちの子供たちや孫たちのことまで考えて、この国をどういうふうに持っていくかということを総合的、立体的に考えた上で税制問題も考えていかなければならないわけでございます。  短期的な現在の状況から見て減税がいいとか、そういう観点ももちろん必要でございますけれども、しかし、中長期、二十一世紀に向かって日本の税体系、日本の経済のあり方がどうかという点も含めて考えていく必要がある。そういう意味で、マーケットの視点とは私どもの視点がやや違っているということも事実かと思います。
  70. 島聡

    ○島委員 今、中長期的と言われたので、ちょっと。  マーケットと視点が違う。それは、ただ景気対策というふうに、みんなの予想、これで日本経済がよくなるかどうかということをいろいろ予測した上で、そしてその集大成が株価の形として、情報の形としてあらわれていると私は思っています。  今、いろいろな不規則発言で、マーケットがどうのこうのというような御発言がありますけれども……(尾身国務大臣「いや、不規則発言じゃない」と呼ぶ)そちらではなくて、こちらのやじの方で。まあいろいろな見識を疑うわけでございますが。  それはともかくとしまして、例えば、それならばこういうふうにいきましょう。私の一つの仮説でございますが、今、尾身長官が、減税をしても将来は増税になるだろう、それを見越してなかなかうまく反応しないという話がある。同じことは公共事業でも言えるのではないかと私は思うわけであります。  公共事業をすれば、例えばいろいろなものをつくる、メンテナンスコストが必要になってまいります。その結果、今回の公共事業をすることによって、公共投資をすることによって将来的にメンテナンスコストが上がって、それによって、またそれを賄うための税金になる。そこまでいわゆるいろいろな情報を総合した形でできているというものがあると思うわけでありますが、一つ公共事業に対してメンテナンスコストがどれぐらいあるかということについて、お尋ねいたします。建設省の政府委員 来ていると思います。
  71. 小野邦久

    小野(邦)政府委員 お答えを申し上げます。  公共事業によってどのくらい将来メンテナンスコストが出てくるかというお尋ねでございますが、私ども、一九九〇年度に推計をいたしたことがございます。公共事業は、一般に新規投資それから更新、災害復旧、維持補修、こういうふうに分かれるわけでございますが、一九九〇年度の実績では、これは私どもの所管しております道路、下水、都市公園、治水、海岸の五つの施設について試算をしたものでございますが、新規投資は七六%弱でございました。更新、災害復旧、維持補修合わせて大体二五%弱、こういう実績でございました。  これが、例えば二〇〇〇年度にどうなるかということでございますけれども、これは、その時々の総投資額をどのように押さえるのかということによっても当然変わってくるわけでございます。また、個別の事業がふえると全体の数値も変わるわけでございますが、一般的には、九〇年度の実績値が、将来はやはり維持管理費のコストがある程度上昇していく、そういう過程にあるというふうに思っております。  今回の公共事業補正予算等での追加で具体的にどの程度の将来の管理費の負担増というものが出てくるか、十分まだ推計はいたしておりませんけれども、一般的な傾向としては、現在既に九〇年度の実績で維持管理費二五%、これは当然災害復旧を含んだ数字でございますけれども、そういう実績になっているということでございます。
  72. 島聡

    ○島委員 いわゆるコストも当然十分考慮して今後の補正予算審議等もやりていただきたいと思うわけであります。  例えば、もちろん財政再建も景気対策も、両方とも当然目標があるわけでありますけれども、今審議しておりますのは財政構造改革法の改正であります。それは、先ほど尾身長官言われたように、今経済が非常に著しい停滞にあるわけでありますから、政治というのは、ある意味でプライオリティーをつけて、どちらを重視していくかという話であると思います。そういう意味でいけば、今日本の経済というものをどのように復活させていくかということにかなり重きを置かざるを得ないわけであります。  これは、もう今さら、何度も言われた質問なので、言いますが、最近アメリカ経済が好調である。アメリカ経済が好調で、それは経済のサプライサイドが強化されたことも当然でありますが、幾つかのレーガン時代の大幅な減税があった。その要因一つに、冷戦終結後、政府支出から軍事費が削減されて、その資源が経済の基盤を強化する投資に向けられた、いわゆる平和の配当があると言われているわけであります。  つまり、軍事費は、短期的な需要喚起にはなるけれども、長期的な生産能力の改善にはならない。軍事費削減によって、政府によるある意味で非効率的な投資をなくした。まさしくこれは財政構造改革だと思うわけでありますが、それがアメリカの経済を支えたわけであります。アメリカ経済の経験を背景としまして、経済構造改革の一環として、政府の公共投資というのは、長期的な生産能力の改善に寄与するものに集中投資すべきだと私は思うわけでありますが、大蔵大臣、御見解をお願いします。
  73. 松永光

    ○松永国務大臣 今回の審議をお願いすることになっておる補正予算においては、今委員指摘のような点を十分念頭に置きながら、将来の我が国経済の発展に大きく寄与するであろう情報通信の高度化とか、科学技術振興とか、あるいはまた物流の効率化とか、そういった点に相当のウエートを置いての補正予算の編成、こうなったわけであります。  そうなっておるわけでありますけれども、新聞その他は、従来型のゼネコン云々という批判をしておるわけであります。中身を見ていただければそういう批判は起こらぬことだと思うのでありますけれども、そういうのが起こるものだからマーケットの反応が鈍いのじゃないかな、私はそう感じておるところでございます。
  74. 島聡

    ○島委員 今、ゼネコンの批判というのが、ゼネコンのばらまきだから、そういう批判があるからマーケットの反応が鈍いというのがありました。その辺は、マーケットというのは、何度も言いますが、これは認識が違うと思うのできちんと申し上げますが、いろいろな情報、いろいろな方々の集大成です。そういう情報もあるし、ほかの情報もあって、そういうことの集大成として結果としてあらわれるのですから、そういうような一面的なことはないと私は思っておりますので、それは御認識を賜りたいと思います。  今、公共事業減税かという話でずっと進めているわけですが、よく言われるのが、減税しても、消費性向が低いからなかなかできないんだ、消費者が生活防衛に走っているのじゃないかというような議論があるわけでありますが、私は、消費性向が低迷しているから減税しないというのは、非常に本末転倒な議論だと思うわけであります。  もちろん、消費性向というのは、今それほど高くはないと言われております。例えば、去年ですと、九七年一月に大体七二・三%だった。三月には、駆け込み需要もあって、消費性向というのは七四・一になって、二ポイントほど上がっていた。九七年の十二月あたりから金融不安なんかが生じて、六九・六。九八年一月、二月、もう政府の経済運営がだめだということで六八・六、六八・四に下がっている。三月にはまた七一・七に上がった。  こういうふうに考えてみますと、例えば減税をするということがあれば、消費性向というのは上がるわけであります。消費性向が低迷しているから減税しないというのは、私は本末転倒であると思うわけでありますが、尾身長官、どうですか。
  75. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 最近における消費性向の動向はおっしゃるとおりでございまして、九月から二月までずっと下がりましたが、三月に七一・七%ということで、九月の七一・九%に近い水準まで戻しました。この三月の消費性向が戻りましたのは二つ要因かなと今思っておりまして、一つは、二月、三月に特別減税が行われたその効果。それからもう一つは、いわゆる消費者のコンフィデンスが少し回復した兆候かなと思っております。  これは四月、五月の動向を見なければいけませんが、そういうことかと思っておりまして、三月の動向を見ますと、確かに特別減税効果がある程度はあったというふうに考えておりまして、私どもは、この特別減税の消費に対するプラス効果というものは、今後とも当然予想されるものと考えております。
  76. 島聡

    ○島委員 時間が多分あと十分ぐらいしかありませんので、せっかく通産大臣おいででございますので、そこに少し説明して、後でまたちょっと経企庁長官にお尋ねします。  今回、中小企業信用保険法、中小企業金融公庫法、環境衛生金融公庫法、中小企業倒産防止法と四つの法律の変更が提案されているわけでございますが、今回、各法律におきまして、小売業及びサービス業については資本金を一千万円から五千万円へと引き上げ、卸売業では三千万から七千万へと引き上げる。  企業のカバー率等々があるわけですけれども、中小企業基本法の規定によりますと製造業の中小企業者の資本金は一億円となっていて、今回の四法の法改正では、引き上げの上限額は小売、サービスでは五千万円、卸売は七千万円。製造業の一億円レベルには資本金の額は引き上げられていないわけですね。その理由を御説明いただきたいと思います。
  77. 林康夫

    ○林(康)政府委員 お答え申し上げます。  今回の改正により、御指摘のような資本金上限額を卸、小売、サービス業について引き上げることにしたわけですけれども、この基本的な考え方は、今回の引き上げは融資対象を拡大するという趣旨でございまして、業種によりまして、その実態によって中小企業と考えられる資本金の額が若干差があるということがその決断の背景にございます。  その具体的な引き上げ額の検討に当たりましては、平成五年の中小企業政策審議会の基本施策検討小委員会の中間報告の考え方を反映したものでございまして、これは昭和四十八年中小企業基本法改正時との比較、そして企業の資金面、設備面での規模の拡大の進展、あるいは四十八年以降の経済成長とか物価上昇等を考え、またあるいは平成三年の改正商法施行によりまして、最低資本金額が企業としては一千万ということに決められたことの影響等を総合的に勘案して、それぞれ引き上げ額を考えたものでございます。  これらの措置によりまして、改正後の基準によりまして、中小企業の全企業に占める割合が、卸の場合には九八・二%、そして小売業が九九・一%、サービス業が九七・九%に改善されますので、製造業の九九・一%に比べても十分なカバレッジになっていると考えておりまして、実質的に中小企業と考えられる人たちが新たに中小企業の融資を受けられるということになるわけでございまして、大体感じとしては適切な改正ではないかと我々は認識しておるわけでございます。
  78. 島聡

    ○島委員 通産大臣、いろいろな意味で中小企業の関係する法律は六十本近くあるわけであります。今回提案されている四本の法律に従って改正を行いますと、対象となる中小企業の変更でいろいろな意味で、今回臨機応変にやっていることによって法体系がいろいろ混乱を招くときがあるわけですよ。  今回のように、たった四本だけの中小企業の関連の法律で定義を統一してやるよりも、きちんとした方が、全部定義をした方がいいと私は思うわけですが、それをするのかどうか。あるいは、混乱をするのかもしれないので、それに対してどう対処されるのか、御答弁をお願いしたいと思います。
  79. 堀内光雄

    ○堀内国務大臣 御指摘のとおり、中小企業の問題については基本的に考え方をまとめていかなければならないことだというふうに思っております。  しかし、今般の改正は、民間金融機関の貸し渋りが相変わらず非常に厳しいような状態の中で、本来ならば中小企業として扱ってもらえる方々が、中小企業金融公庫その他政府系金融機関に参りましても、資本金の枠というようなもので受け付けてもらえないというようなことがございます。そういう意味で、現在の状態ではカバレッジできない小売業とサービス業というものが大変大きな、民間からは締め出されて、政府系金融機関からは受け付けられないというものが多くなっております。  その数をちょっと見ますと、小売業では約一万一千社、サービス業では約一万六千社というようなものが窓口でもって受け付けられないということになっておりますものですから、これを、資金の融通それから円滑化を図る観点から、金融面での支援対象の範囲を緊急にひとつ拡大しようというものであります。  そういう意味で、民間金融機関の機能を補完する上で必要な中小企業信用保険法、中小企業金融公庫法、環境衛生金融公庫法及び中小企業倒産防止共済法の改正をとりあえず対象としてやったわけでございますが、中小企業基本法を初めとした中小企業政策全体に係る定義の見直しも、これは行っていかなければならないものだと思っております。  しかし、ただいまのところでは、中小企業の範囲が拡大しますと既存の中小企業に対する支援に支障を来すのではないかという心配を持ってのいろいろと反対の御意見もございますし、あるいは昭和四十八年に改正以来中小企業をめぐる環境の大きな変化を踏まえて、中小企業基本法の改正に際しては中小企業全体のあり方について十分な検討を行う必要があるということもございますので、実態を把握したり、関係団体の意見を把握したり、審議会における議論等を含めて、ひとつ十分な検討をしてこの問題に取り組んでまいりたいというふうに思っております。
  80. 島聡

    ○島委員 最後、もう恐らく五分ぐらいですので経済企画庁に申し上げるのですが、どうもこのところ、経済企画庁の言うことがいろいろな言い方をされています。大本営発表だとか、言うことが信用できないとかいう話がよくされているわけであります。尾身長官自身も、よく桜は散ったぞなんて言われて、ある意味で精神的な非常にいろいろな屈辱にも耐えられているのかなと思うときもあるのですけれども。  きょう、質問は、例えば、確かに、私が不況になると宣言すると本当に不況になってしまうからそう言わざるを得ない、国のためにはそういうことを言わざるを得ない、そんなふうに思っておっしゃっているのかもしれない。だけれども、それは決して望ましい態度じゃないと思うのです。  例えばバブルが崩壊したころ、日本経済が一九九一年四月ごろに不況に突入したと私は思うのですが、政府が不況入りを認めたのはその十カ月後だった。さらに、九一年の経済白書では、過去の資産価格変動と個人消費の支出動向との関係を分析した上で、株価や地価の急落はあっても不況に陥ることはないという見方を示しているのです。これはもう過去として完全に検証された例を挙げている。  こういうようなことをいつまでも発表していては、日本経済にとって、あるいは政府の経済運営にとって決して望ましいことでないと私は思う。本当に大変だと思っても、言うべきことは率直に言えるということをつくっていかないと、いつまでたってもそれは水かけ論になるかもしれないし、その点について、尾身経済企画庁長官、どう思われますか。
  81. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 島委員のお言葉を私としては大変温かいものとして受けとめさせていただいております。  経済企画庁といたしまして、就任以来、特に経済の実情についての正確な分析を客観的に行って、それを正確に国民の皆様にお知らせすることが我々の責務であるというふうに考えておりまして、いやしくも大本営発表というような批判を受けないように、私自身としては特に注意をしてきたところでございます。  なお、今後の経済の動向につきましては、現在、審議をいただいております総合経済対策が経済にプラスの効果を持つということにつきましては、私自身絶対の自信を持っておりまして、そのことによって、必ずそんなに遠くないうちに我が国経済は正常な回復軌道に乗ると確信をしている次第でございます。
  82. 島聡

    ○島委員 経済企画庁が誠実な景気判断をするという姿勢がなければ、全く政策の信頼というのはいろいろな意味で崩れ去りますから、私も絶対の信頼を持ってそれを今後やっていただくようにお願いを申し上げます。そして、もしそれが崩れたらもっと厳しく追及しますので、よろしくお願い申し上げます。  そして、最後に一言だけ申し上げますが、先ほど大蔵大臣は、物理的に株価の動向を知ることができなかった……(松永国務大臣「あのときは」と呼ぶ)あのときはとおっしゃった。例えばその姿勢がリーダーとしての姿勢なのです。リーダーが、大蔵大臣という日本経済の財政運営をしているリーダーが一体何に一番興味を持っているかということが発信される。ニード・ツー・ノーといいますが、一体何を必要としているか、例えば株価だったら、すぐにそれだけのことを秘書官にメモを入れてくれと言っておけばそれで済む話でありますから、そういうこともきちんとやっていただいて、日本経済に、少しでも政策に信頼が置けるような形に一歩でも二歩でも近づいてもらうことを、それが今足らないということを指摘しまして、質問を終わらせていただきます。  以上です。
  83. 村井仁

    ○村井委員長代理 これにて島君の質疑は終了いたしました。  次に、金田誠一君。
  84. 金田誠一

    金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。きのう、時間が短くて途中で終わったものですから、その続きということで質問させていただきたいと思います。  まず、大蔵大臣お尋ねをいたしますけれども、きのう総理にもお尋ねをいたしました。本来の財革法、財構法というのでしょうか、このあるべき姿といいますか、私なりに考える点としては三点あるのではないかということで問題提起をさせていただいたわけでございます。  一つは、不況のときには財政削減を義務づけるべきではない、当然のこととして財政出動をして景気を回復させるという観点が財構法の中にあってしかるべきだということが一つ。  もう一つは、それとは逆に、好況時には、これはきのり総理もおっしゃっておりましたが、血のにじむような財政再建努力ということがこのときには可能になる条件が整うわけでございますから、そのときには厳しく財政を抑制する、自然増収は国債償還に回るような措置をとる、これが二点目。  そして、好不況にかかわらず財政のむだを排除する、そのために、例えば公共投資であれば、費用便益分析とでもいいますか、費用対効果の分析、こういうものがきちんとあらわれてくるような、これにそぐわない事業は当然縮小なり中止なりされるような、そういう構造の財政構造改革法が本来ではないかということをきのうは申し上げました。  総理はこれについては否定はされなかったと私は思うわけでございます。余り積極的に受け入れてももらえなかったかなという気もしますけれども。改めて、大蔵大臣としていかがかということをお尋ねさせていただきたいと思います。
  85. 松永光

    ○松永国務大臣 委員が今おっしゃいましたように、きのう、その点についてめ質問を総理に委員はなさいました。それに対する総理の答弁は、第一点、第二点、第三点と三つに分けて委員は質問されたわけでありますが、それに対して総理は第三点から答弁をされました。  それは、いかなる場合でも財政のむだは省くべきである、その点はそのとおりだという答弁をされ、そして、第一点と第二点につきましては、正面からはイエス、ノーじゃございませんでしたけれども委員の主張、全然理解できないというものではありませんが、やはり、どういう指標を用いて、財政構造改革を停止するあるいは急速に加速する、こうしたメルクマールにするのだろうといったようなことを考えますと、私は弾力条項を挿入していただくやり方の方が実態的には合うように思います、これが総理の答弁でありましたが、私も全く同じ考え方でございます。
  86. 金田誠一

    金田(誠)委員 好不況を問わず財政のむだを省くということには御賛同いただいたわけでございますけれども財革法、財構法を見る限りでは、このことについて具体的に条文としての規定はないようでございます。それなりに省庁の内部ではされておられるのでしょうけれども、具体的な、費用便益計算といいますか、そういうシステムといいますか、そういうものが別な法律、まあ法律によらない場合もあるかもしれませんけれども、明確に、どういう観点からどういう評価をして、どういう場合はその事業がゴーサインが出るのかというものをきちんと組み立てていく必要があるのではないか。  これは、総理も御同意いただいたむだの排除ということでございますから、そうした観点から具体的に、公になる形で、そしてだれもがわかる形で、例えば諌早とか長良川とかいろいろなことがございましたけれども、共通のテーブルで、これが費用便益、費用対効果としてどうなのかということが議論し合えるような、環境アセスメントとは別な観点で議論し合えるような仕組みをつくる、そういうことを御検討いただくということはできませんでしょうか。
  87. 松永光

    ○松永国務大臣 委員がおっしゃること、私も本当にわからぬではないんです。好況時に思い切った削減策をやり、そして不況時には厳しい削減策はしないという物の考え方は、私は委員とそう違ってはいないんです。  ただ、問題は、過去の政治決定の流れからいうと、好況時に公共事業の削減とかそういった緊縮策というのはなかなかとれないというのが事実なんですよ。歳入がうんとあるのだからもっと公共事業をやれ、そういったことが過去の例なんです。大蔵省が一生懸命になって厳しい査定をしようにも、全般の状態が十分歳入があるという場合にはなかなか縮減というのは難しい。そういったことからいえば、この主要項目についてキャップをはめたということには、先ほどどなたからか評価をいただいたんですけれども、そこには効き目があるなというふうに感ずるわけであります。  今度の財政構造改革法の改正をお願いするに当たって弾力条項を入れたこと、これは景気対策をやるための措置であり、しかしながら、それをやる場合の条件というものは厳しく設定をし、そして最終的には国会で特例公債法で発行を許していただくという議決が必要なのでありますが、そういった措置で、厳しいときには景気対策をやる、すなわち財政構造改革推進を相当緩める、しかし好況時においてキャップを十分生かしていかぬというと改革がおくれる、こういったことでありまして、基本的な委員の御主張、きのう総理が答えられましたように、わからぬわけじゃないし、またそのことを考えての今回の改正法のお願いだというふうに御理解を賜りたいと思うんです。
  88. 金田誠一

    金田(誠)委員 好況時に財政抑制というのはなかなか難しいということについては次の質問で実は予定をいたしてございまして、それは次にまた質問をさせていただくこととして、三点目の費用便益計算のシステムを検討する、今にわかにここで断言とは申し上げませんけれども、共通のテーブルで議論できるような、そういうシステムを御検討いただけないものか。むだを排除するということはこれはもう共通した認識でありますから、ぜひひとつ前向きな御答弁を賜りたいと思います。
  89. 松永光

    ○松永国務大臣 公共投資については、平成年度予算においても、ダムとかあるいはまた大きな農地の造成とか、そういったものについては相当中止ないし停止という措置をしたわけでありますが、いずれにせよ、公共事業を実施する場合には、費用対効果分析、それからコストの縮減、こういったことを厳しくやって、そしてむだがないように、これはもう当然のことだと思うのであります。  そこで、三年間のコスト縮減に取り組んできておるわけでありまして、建設コストの少なくとも一〇%以上の縮減を目指す、費用対効果分析の積極的活用などにより効率的な整備の推進をする、公共工事の再評価システムの導入、こういったものに取り組んで一層の効率的な実施を図っていく、同時にまた、むだを省く。こういう考え方で進めていかなきゃならないし、今そういうやり方で進めているところでございます。
  90. 金田誠一

    金田(誠)委員 これは、具体的に担当されるのは建設省ということになるのでしょうか。失礼をいたしました。  今の御答弁ですと、費用対効果分析あるいは再評価システム、そういうシステムがこれから形づくられていって、そして、どういう観点からどういうシステムができるか、それに基づいて議論できる、例えば諌早湾の費用対効果はどうなのかという議論が共通のテーブルでできるようなシステムをつくりますということをおっしゃっているというふうに理解してよろしいですね。
  91. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  費用対効果分析の活用による効率的な整備の推進とそのチェック機能の強化につきましては、平成九年六月三日の財政構造改革推進についての閣議決定で決めているところでございまして、これは政府全体、事業執行官庁を含めて各省がやっていくということで、例えば建設省におきましても、平成年度においては各種事業について、やや試行的なところもあるのですけれども、そういう努力をしているということでございます。
  92. 金田誠一

    金田(誠)委員 この問題で時間をとりたくないのですが、申しわけございません。  そういう評価システムとはいかなるものなのか。どういう立場でどういう評価がされてということで国民に公表をされて、その評価の結果もまた公表されて議論し合えるというシステムができるのですか、それとも省庁の内部でやっていますということにとどまるのですか。どっちなんでしょうか。
  93. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  費用対効果の分析につきましては、これらにつきましては、客観性、透明性を確保するということで、再評価の結果の手続等を積極的に公表するということでございます。
  94. 金田誠一

    金田(誠)委員 公表されるというシステムがこれからできてくるということで理解をさせていただきたいと思います。  そこで、大蔵大臣、先ほど御答弁をいただいた、実際問題、好況時に財政を切り詰めて国債償還に回すというのは面倒でできてこなかった、したがって今回キャップをはめるんだということでございますけれども、そういう観点からすれば、財政構造改革法のつくり自体が本当にこれでいいのかという疑問をきのう来持つわけでございます。  今のそのキャップのかけ方は、好況だ不況だということに関係なくかかっているのではないですか。景気というものに着目をして、その観点からめり張りのきいた政策を打ち出せるような、そもそもそういう法律の構造になっていないということを御指摘申し上げているわけでございます。  それともう一つ、好況時にもキャップをかけているんだと言いますけれども補正というものがあって、これは、好況時に税収がどんどん上がってきた、追加事業は幾らでもできる、ある意味ではしり抜けになりかねない。不況時には抑制をするという法律になっていて、好況時にはしり抜けになりかねない、こういう法律のつくりになっているのではないですか。  大蔵大臣、今までそうだったんだからというふうにおっしゃるのであれば、つくりそのものを観点を変える必要がある。一律キャップをかけるというものを一方でやっておいて、補正は全くオーケーですよとやってしまう。そして、その補正の方は、今回の補正もそうですけれども公共事業関係にしか補正というのはきかないわけですね。  例えば児童扶養手当なんというのは、小泉大臣、削りましたけれども、これを補正で復活するなんというのは不可能な話ですよ。そういう財政構造改革法なんです。キャップをかけて、補正でやれるのは公共事業関係追加がきく部分だけというっくりなんです。  したがって、この財政構造改革法は欠陥があるのではないかということを再三申し上げているのですが、再度御答弁いただきたいと思います。
  95. 松永光

    ○松永国務大臣 好況時において歳出の縮減等、これは相当努力はしてきたのですよ。例えば、過去においては好況時には特例公債の縮減をしたり、こういったことをしてきたことは事実なんです。また、一般歳出の伸びも好況の割には抑えてきたというあれもあるのです。実績もあることはあるのですけれども、相当な苦労をしてそれを実現してきたというふうに、努力した人がたくさんいるわけでありますから、それはそういう形に言い直させていただきます。  なお、全くしり抜けだという話がございましたけれども、実は全くのしり抜けにならぬように、二〇〇五年の目標年次の、三%以内に財政赤字を抑えるということは残っておるわけでありますから、それを念頭に置きながらの財政運営をしていかなきゃならぬわけでありますので、景気状況が大変厳しいときに補正公共事業追加するということは可能でありますけれども、しかし、最終目標年次における財政赤字の三%という目標、これは当然かかっておるわけでありますから、それを念頭に置きながらの追加策、公共事業についても。  そういったことになってくるわけでありまして、しり抜けというのは、ちょっと表現としては正確じゃないというふうに申し上げざるを得ないのです。
  96. 金田誠一

    金田(誠)委員 私が懸念をしておりますのは、この縮減目標も、単年度財政赤字を目標として掲げてはおりますけれども、トータルとしての公債残高をどのように抑制をしていくかということが明確に決まっておらないわけでございます。しり抜けという言葉が適切かどうかは別にしまして、それが懸念をする一つでございます。  もう一つは、税収が好調になってくれば、赤字をつくらなくても公共事業はできるということになるわけでございます。したがって、好景気のときに本当に財政縮減努力というものに結びつくかどうか。大蔵大臣、言い直しはされましたけれども、現実問題として、好況時、税収がどんどん上がる、そのときにやれるかという話になりますと、そのときにやれるような網をこの財革法はかけておらないということを私は懸念をしております。  この問題は恐らく水かけ論になるでしょうから、次に進ませていただきたい、こう思います。  そこで、今の質問とも関連しますけれども、今日の財政破綻、大蔵省のパンフレットによると破局のシナリオと、非常に感情的といいますか、衝撃的といいますか、私は余りこういう言葉というのは使うべきではないのではないかなという気はいたしますけれども、大蔵省に言わせますと破局のシナリオという状況になっているわけでございます。こうした財政状況を招いた原因は何なのか。  今回の財革法、財構法は、それに対する処方せんという意味合いを持たせようということでございましょうから、まず原因を探り当てる。今の状況は確かにこういう財政状況でございます、したがってこういう処方せんですというふうにはなっているのですが、それでは一体このような財政状況になった原因は何なのか。  先ほど大蔵大臣がいみじくもおっしゃった、好況のときには抑制しにくいんだ、言われれば出さざるを得ないんだということでなかったのか。言葉をかえれば、これは放漫財政ということになるわけでございます。私はそう思いますけれども、今日のこういう国債残、大蔵からいただいたパンフレット、一貫してふえているわけでございます。好況時で恐らく償還できるときでもしてこなかった、収支不均衡の予算を常に組んできて破局のシナリオを招いたということだと私は思いますが、大蔵大臣、いかがでしょう。  今日の財政破綻を招いた原因は何かということをお尋ねいたします。(松永国務大臣「大蔵省に答えさせます」と呼ぶ)いやいや、委員長、これは大臣ですよ。大臣ですよ、これは。
  97. 松永光

    ○松永国務大臣 累次にわたって予算を編成してきたのは大蔵省の主計局の連中でありますから、その人たちから言われることが正確な答弁になるだろう、こう思って、まず主計局の責任者にと思ったわけでありますが、私にということでありますので、お答えいたします。  好況時に歳出の縮減というのは、相当やってきたことは事実なのです。現在における批判からすればまだ不十分だったということが言えるかもしれませんが、数字を言えば、昭和六十一年度から二年間の税収の増、これは、主として特例公債の縮減、それから地方交付税交付金の増、そして国債費の増、こういったものに充ててきたわけでありまして、相当な努力をしてきたということは認めていただかなければならぬと思うのであります。  現在の厳しい、悪化した財政状況、これは、バブル崩壊後の累次にわたる景気の下支え策としての公共投資追加、これが一つあったと思います。さらにはまた人口の高齢化、こういったことの財政を取り巻く状況の変化、それから社会保障分野に見られるような政府の役割の増大に伴う歳出拡大、それからまた、大量の公債発行を続けてきた結果として利払い等に要する国債費が巨額に上っているということ、こういったものが構造的な要因として今日の状況になっておるというふうに思うわけであります。
  98. 金田誠一

    金田(誠)委員 大蔵大臣、大変率直な御答弁をいただいておりまして、私は評価をいたしたいと思ってございます。本当に御本心で御答弁いただいているなというふうに、本当に受けとめてございます。  その中で、実際予算を組んできたのは主計局だというお話でございましたけれども実態はそうだとしても、これは言っていいことか悪いことかという気もいたしてございまして、老婆心ながら、本当にそのまま答弁を生かしておいてよろしいのかなというふうに思っているということだけ、まず申し上げたいと思います。  その上で、今、高齢化、バブルの後遺症対策、社会保障、利払い、いろいろよって来る原因を挙げられたわけでございますけれども、確かにいろいろな要素があってこうなったわけでございます。何の意味もなく、なるわけではない。  そこで、お尋ねをしたいわけでございますが、いろいろな要素はあったとしても、安易に国債、安易かどうかは別にして、とにかく事実として国債に依存をしてきた。収支均衡ということをもつと強く意識してこなかった。ここの低成長に転化した段階で、非常に厳しい経済状況の中で財革法というものに手をかけざるを得ない、こういう状況を招いたことについて、この財政運用は適正であったと思うかどうか。  私はやはり安易であったということは免れないと思うのです、今となって考えればです。当時はよかれと思って恐らくやったのだろうと思いますけれども、今となって考えると、確かに景気の後退面もありましたけれども、もっと好況の時期もあった。バブルの後遺症の対策とおっしゃいましたが、バブル時期もあったわけでございまして、そのときでも、特例国債は発行はしておりませんけれども、建設国債は発行して、一貫して国債残はふえてきている。一度も横になったことさえないわけでございます。  こうした財政運用を今となって考えれば、反省すること多い、適切を欠いた面もあるというふうに私は思うのですが、いかがでしょうか。
  99. 松永光

    ○松永国務大臣 委員も御承知のとおり、ここ二十年、三十年の間だけを考えてみましても、実は二度にわたるオイルショック、大変なことでありました。それを乗り越えていくために公債の発行をやって、それで対策を打ってきた。それから、急激な円高という問題もありました。あの当時は、日本の製造業が大変な打撃を受けたことは事実でありますが、それを乗り越えるためにも特別の財政出動が必要であった。そういったそのときそのときの国難ともいうべき厳しい経済状況を乗り越えるために、財政は多くの役割を果たしてきたということも実は事実だと思います。  最近のことは、バブル崩壊後のこの不況を打開するために、財政出動を相当大きくやらざるを得なかった。その効果がどの程度であったかということについてはいろいろ異論もあるわけでありますが。発行した公債高に比例してその効果があったかどうか、これはいろいろ異論もあるでしょうけれども、とにかくそういう対策を打ったから日本の経済が、失業者が甚だしく増大するとか、あるいはまたその他の厳しい状況が表面に出てきたということなしに、厳しいながらも何とか乗り越えてきた。それは、そのときそのときに財政が手を打ってきたからだというふうに思うわけであります。  ただ、今になってみて、一〇〇%正しいことだけであったかというと、多少甘かった点が全くなかったということまでは言い切ってはいかぬと思う。やはり過去に対する反省はしなければならぬだろうというふうに思います。
  100. 金田誠一

    金田(誠)委員 大蔵大臣、先ほどおっしゃった、好況のときに、緊縮財政を組んで国債償還などという視点がなかったと。  確かに、おっしゃるとおり、そのときそのとき、バブルもあり、あるいは高齢化もありということに対応してきたということは私はわかります。わかりますけれども、その対応の仕方が、収支均衡というものを原則としてとらまえて、それに向かって最大の努力を本当にしてきたか。問題の先送りではなかったか、ツケ回してはなかったか。そして、その前提としては、一定の成長がこれから先も持続をするという前提があったのではないか。その前提の置き方。  あるいは、その時々の厳しさを本当に国民と一緒になって受けとめて、どうこの削減努力をしていくかということがおろそかになった。後年世代へのツケ回しということに結果的になってしまった。特に、好況時にも財政縮減という観点が働かなかったということを、国民に今痛みを求めるのであれば、きちんと国民ともども過去を振り返って共通認識に立つべきだ、私はこう思います。  これも何度繰り返しても水かけ論になりそうでございますから、きょうのところはこの程度にとどめまして、次に移らせていただきたいと思います。  厚生大臣、せっかくおいでいただきましたから、通告した順序とは多少違ってまいりますけれども、社会保障関係費につきましてお尋ねをいたしたい、こう思います。  今日の不況はさまざまな要因が重なって起きているわけでございますけれども、その一つとして、国民の生活に対する将来の不安感というものが非常に浸透してきているということがあると思います。そういう状況を招いた原因としては、医療あるいは年金という社会保障制度の信用、将来にわたる信用が揺らいできているということが私は大きな要因一つだと思っておりますけれども、厚生大臣、この点の御見解、いかがでございましょうか。
  101. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 いろいろな要因はあると思いますが、今言ったような社会保障制度に対する不安が消費の低迷の原因だというように割り切れるのかどうか、私は疑問に感じています。  というのは、アメリカは、年金制度にしても医療保険制度にしても、日本の制度に比べれば国民はもっと不安を感じておると思います。日本の方が安定している、社会保障制度として。にもかかわらず、アメリカの消費は拡大しているということを考えますと、それだけでは割り切れないのではないか、いろいろな要因がかさんでいるのではないかというふうに考えております。
  102. 金田誠一

    金田(誠)委員 いろいろな要因が重なっているということは私もそのとおりだと思っております。そのいろいろな要因一つに、特に年金を中心とする社会保障制度に対する信頼の揺らぎ、信頼の喪失というものがあるのではないか、その辺の御認識がないのかということをお伺いしているわけでございます。  日本人の場合、非常に貯蓄性向がもともと高いわけでございますし、老後あるいは病気のときに備えて自己防衛に走る。選挙区でいろいろな方にお会いをしましても、言われるのはまずそのことでございます。とにかく年金、そして医療費が実際の支出としては三倍から四倍になったということを常に言われるということが一つ要因になっているのではないか。いいとか悪いとかという評価は別にして、それも今日の消費支出の低迷の一つ要因になっているということはお認めいただけませんでしょうか。
  103. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 一つ要因かもしれません。しかしながら、これはそれぞれの人の判断でありますから、これから年金制度にしても医療保険制度にしても給付と負担というものを両面見ていかなければならないということを考えますと、あるいは、年金にしても将来今よりも給付は若干抑制される、保険料も負担は低くなるという傾向が今のところ大方の考え方だと思うのであります。そうなった場合に、給付だけ見て、給付が抑制されると消費が抑制されるかというと必ずしもそうじやない。経済全体の状況を見なきゃわからない。  一つ要因であるという見方を私は否定するものではありません。
  104. 金田誠一

    金田(誠)委員 私がこのテーマを取り上げておりますのは、何も給付を削るなとか負担をふやすなとか、そういうことを申し上げようと思っているわけではないのです。客観的に事実は事実としてつかまえながら、何が一体最善なのかということを、さまざまな選択肢を並べながら政府側と議論をいたしたいという観点でございますので、もし誤解があれば解いていただければありがたいなと思います。  現在、医療保険、国民医療費というのでしょうか、二十八兆、年金給付三十三兆ぐらいでしょうか、合わせて六十兆を超えるという、国民所得に対しましても十数%を占める膨大なウエートを占めておるわけでございます。この制度が少し変わるというだけでもどれほど国民生活に影響を及ぼすかということでございまして、そういう観点からの質問をさせていただいているわけでございます。  そこで、ひとつ厚生大臣にお伺いしたいと思いますけれども、旧来、社会保障というものは、いわゆる経済の効率性という概念からは相対立するものという受けとめられ方が普通ではなかったかなと思うわけでございますけれども、ここ数年来、社会保障制度をどのようにつくっていくかということが、国民所得の適正な配分、経済の効率性という観点から改めて見直されているということについて、今、文献の一部を御紹介いたします。  もちろん御承知のこととは思いますが、これは元厚生省にいらした千葉大学の広井良典先生、三十少しの方だと思います。まだ若い方でございまずけれども。その方の最近の著書でございますけれども、ちょっと長いです、済みません。  社会保障については、これまでは公平性の観点からの制度として理解され、論じられることが多かった。したがって、その分、経済学者が経済学そのものの問題として社会保障について論じることは比較的少なかったし、仮に論ずるとしても、それは、まさに公平性の観点からの制度であるがゆえに、市場経済の効率性とは対立するもの、ないし市場の効率性をその分損なうものとして理解されてきた。いわゆる国民負担率をめぐる議論ども、しばしば暗黙の前提とされているのは社会保障についての以上のような認識である。しかしながら、近年では、イギリスなどを中心に、特に情報の非対称性から帰結する市場の失敗の問題に着目し、そうした市場の失敗を是正するシステムとして、つまりむしろ効率性の観点から社会保障制度の意義を論ずる傾向が強くなっている。  これが最近の傾向だと思うわけでございます。ところが、財革法を見ますと、まず国民負担率ありき、そして福祉のキャップありきということで連なっているわけでございます。  これは最近数年の議論の傾向だと思います。例えばアメリカは、自由主義、自己責任にゆだねている。しかし、医療費は、日本の対GDP比では倍の医療費になっている。これが効率がいいかというと、私はそうではないと思うわけでございまして、効率という観点から新たに社会保障制度をどう見直すかということだと思います。  そのことが、冒頭申し上げた、社会保障に対する信頼の喪失が消費支出に影響を与え、景気に影響を及ぼしているのではないかということにつながってくるわけでございますけれども財革法にこの観点がない。ないと私は思うのですが、これで果たしていいのか。もっとこういう観点を含めた議論ができるような財革法というもので本来あるべきではないかと思うのですが、大臣、いかがでしょうか。     〔村井委員長代理退席、委員長着席〕
  105. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これからの社会を考えると、社会保障制度を充実していくという方向はどうしても必要だ。その際に、税金とか保険料とかあるいは自己負担というものをどのようにうまく調整して組み合わせていくかの問題だと思うのです。  市場経済がすべてじゃない。市場経済にはよさもあれば、反面、弊害もある。そういうことから、私は、どの政党も政治家も、目指すのは福祉国家の建設でありますから、この福祉国家ということの理念から年金制度なり医療保険制度なりが出てきた。これをやはり安定的に充実して運営していくことは大変重要なことだ。  その際に、社会保障制度というのは経済の発展を阻害するものではない、むしろ安定した経済運営のためには必要なのだということを基本に置きながら、それではどのように活力ある福祉社会を築いていくかという問題だと私は思うのであります。  税がいいのか保険料がいいのかとすぐ議論をする場面がありますけれども、私は、今の日本の社会保障制度におきましては、税と保険との組み合わせ、この組み合わせ、調整をどのように果たしていくのがいいかという点で考えるのが望ましいのではないか。一方では税だけでやろうという議論もありますけれども、むしろ、ここまで年金も医療も介護も保険でやろうということでありますので、私は、これからの社会保障制度を考える場合において、社会の仕組みとして、国民ひとしく安定した生活を送ってもらうためにも、社会保障制度というものは、経済全般にいい影響をもたらすような社会保障制度でなければいかぬというふうに思っております。
  106. 金田誠一

    金田(誠)委員 そういう大臣のお考えであれば、今の財革法はそういうつくりになっていないということをやはり御指摘申し上げざるを得ないと思いますので、申し上げさせていただきたいと思います。  そこで、最後に経企庁長官。その社会保障制度がどのように変更すれば国民経済にどういう影響を及ぼすかという観点でのシミュレートが本来あってしかるべきだろう。  そのような実証的研究、どうも社会保障というのは国民経済に悪影響を与えそうだという感情的な、心情的なといいますか、何となく今まで持ってきたそういうものではなくて、先ほど紹介した論文でも、今まさに大きな転換を全体としてしている世界状況の中で、経企庁として、その辺の社会保障制度と国民経済との仕組みに対する実証的な研究などはされているのでしょうか、あるいはする用意があるのでしょうか。
  107. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 なかなか難しい基本的な課題でございまして、私ども、今後の日本経済、社会を考える際に、いろいろと検討していかなければならないと考えております。  そういう中におきまして、先ほど厚生大臣のお話にもありますように、社会保障制度における給付と負担の適正化を図るということが一つ大事であると考えておりますし、それからまた、福祉、医療分野におきます民間の活力が発揮されて、効率的なサービス提供が行われるように規制緩和を推進していく、そして経済全体としての効率性を阻害しないような社会保障制度を構築するということが大きな課題であるというふうに考えておりまして、今後ともいろいろな意味での検討を続けたいと考えております。
  108. 金田誠一

    金田(誠)委員 終わります。
  109. 中川秀直

    中川委員長 これにて金田君の質疑は終了いたしました。  午後一時四十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十二分休憩      ――――◇―――――     午後一時五十二分開議
  110. 中川秀直

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。石井啓一君。
  111. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 平和・改革の石井啓一でございます。  私の方からは、昨年成立をいたしましたこの財政構造改革法、今回改正案が出ているわけでございますが、そもそも見直すべき点がそのままになっているのではないか、この点をまず指摘を申し上げたいと思います。  財政構造改革法では、建設国債の発行枠、この制限は極めて緩くなっております。目標年次において財政赤字がGDP比三%、それから同じく目標年次の公債依存率を平成年度に比べて低くする、こういう縛りはございますが、それは目標年次という、あるピンポイントにおける縛りでございます。もう一つ、集中改革期間。ここはキャップがはめられているわけでありますけれども、しかし、このキャップも当初予算のみということでありまして、補正予算についてはキャップはかからない。  したがって、建設国債に関しましては目標年次までの間の発行枠というのは極めて緩い規定になっておりますが、その一方で、特例公債については非常に厳しい規定になっております。毎年縮減をするということで、なおかつ目標年次にはゼロにする、こういうことでございます。  これは、財政再建のみを考えればこういったやり方でというのもあり得ると思いますけれども、やはり、経済の運営と経済の再建のバランスをとりながらこれを進めるということであるといたしますと、結果として、柔軟な、適切な財政運営を妨げている、こういうことになっているのではないかと思うわけでございまして、私は、この際、特例公債を毎年縮減する規定を外して、特例公債と四条公債、これを合計した国債のトータルで財政赤字をコントロールすべきではないか、こういうふうに考えますが、大臣の見解を伺います。
  112. 松永光

    ○松永国務大臣 御審議を願っている財政構造改革法の改正法案の規定の解釈は、委員指摘のとおりであると思います。  今御質問のありました、建設公債と特例公債についての区別を撤廃してはどうかという御意見でございますが、私が申し上げるまでもなく、委員がよく御承知のことなんでありますけれども財政法四条ですか、これは健全財政主義という立場に立っておるわけでありまして、したがいまして、四条公債以外の公債によって予算を編成しちゃいかぬという健全財政主義であります。  なぜそこがそうなっておるのかというと、これまた私がくどくど言う必要ないことでありますけれども、世代間の負担の公平という立場に立ちますというと、将来世代も便益を受ける資産がある、それに見合うものであれば世代間の負担の不公平ということはないであろうということから、後世代の人も便益が受けられる資産として残る、そういう公共事業に限って四条公債として建設公債の発行を認めているというのが財政法の正確な解釈だろう、こう思うわけであります。  したがいまして、その反面解釈からいえば、見合いの資産の残らない特例公債の発行については、将来世代への負担の先送りそのものであるということになってくるわけでありまして、したがって、その発行は厳に回避すべきものである、こういうことになっておるわけでありまして、そういう考え方を踏襲しながら財政構造改革法はできておるというふうに思うわけでございます。
  113. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 現在ある財政法の規定があるからそうしなければいけないということではないとは思いますけれども、私は、この議論は恐らく財政法の改正というのも含めた議論になるとは思いますが、おっしゃるのは、要するに建設国債は、四条公債は投資的な経費である、資産を残すからこれは許される。赤字国債、特例公債は経常的な経費である。このことから、善玉、悪玉ということでいえば、建設国債は善玉であり、赤字国債は悪玉である。こういったような分類かと思いますけれども、そもそもこれは、昨年の秋の財革法の特別委員会でも当時の民主党の議員の中から大分議論があったようでありますけれども、どちらも借金であることは変わりないのですね。  借金であることは変わらないということであれば、今この財革法の大きな趣旨が、国債の発行の総額をコントロールしていこうということであるならば、私は、要するに、赤字国債をむやみに増発しろということを主張しているのではなくて、赤字国債と建設国債とトータルで管理するということも、もう一つの意味の、経済の運営を柔軟化させるという意味では、私はぜひこれは真剣に考えるべき課題と思うのですけれども、その点どうでしょう。
  114. 松永光

    ○松永国務大臣 委員が今申されたようなことがいろんな方面で議論されていることは承知いたしております。我が党の中にもそういう意見をお持ちの方もいらっしゃるわけでございます。  ただ、私は、世代間の負担の公平を図るという観点、したがって、その観点からいえば、後世代の人も利用できる、そういうものとして資産が残る、その資産を建設するための資金については、これはいわゆる四条公債としての発行という形で特例公債とは異なった取り扱いをすることが、世代間の負担の公平という見方をとれば妥当な解釈ではないか。私はそう思っております。
  115. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 その点であえて申し上げれば、建設国債で資産を残すからいいというものではなくて、これは、将来にわたって真に必要な資産でなければならないはずですね。むだなものに使っていれば、これはもうどうしようもないわけでありまして、実は、そこら辺のチェックは、また別の議論として本来は必要だと思うのですけれども。  では、これはちょっと質問通告はしていなかったのですけれども、欧米で国債の区分はどういうことになっているのでしょうか。政府委員の方からで結構です。
  116. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  日本と同じように建設国債と赤字国債と区分しておりますのが、西ドイツが現にそうでございます。これは憲法上そういう規定がございます。(石井(啓)委員「ドイツじゃないですか」と呼ぶ)ドイツです。失礼しました。  なお、現在、ブレア政権になってからのイギリスにおきましては、日本と同じような考え方を導入しようという動きがあると承知しております。
  117. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 では私の方から紹介しますと、アメリカではございませんね、建設国債、赤字国債の区分。それからフランスもない。イギリスは、法律上はないのだけれども、ブレア政権になってからゴールデンルールというのを設け始めた。ただし、このルールでも、単年度ごとの厳格なものではなくて中期的な観点からやる、なおかつ不況期においては短期的に投資的経費を超える借り入れが行われても大丈夫だということから、柔軟な規定になっておりますね。  また、ドイツについては、確かに建設国債、赤字国債の区別はあるのだけれども、ただ、法律上、例外的に赤字国債の発行も認められておりまして、我が国のように、毎年公債発行特例法を成立させて、それで特例公債を発行するというような厳しい規定になっているのは、我が国が唯一、唯一といいますか一番厳しい規定になっているのではないかと思います。  欧米での事例を考えても、赤字国債、建設国債の区別をなくすかというのはまた別の議論にはなりますが、少なくとも財政赤字をコントロールするという観点では、赤字国債、建設国債をトータルで管理をする。私は、こういうやり方は、もう一度確認しますけれども、真剣にやはり考えるべき課題ではないかと思うのですが、どうでしょうか。
  118. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、財政法四条の考え方、すなわち健全財政主義、それから世代間の負担の公平という観点からの、真に後世代のためにも役に立つ、そういう資産として残るものを整備するための建設公債とそうでないものとはやはり差があるという、現行財政法四条の考え方が堅実な考え方であろう、そう思っておるわけであります。  いろいろな議論があることは承知しております。すなわち、元利償還ということからいえば同じであるということ等からいって、それはそうなんでありますけれども、やはり、健全財政主義という原則、それから世代間の負担の公平という立場、それは重視すべきであるというふうに私は思っております。
  119. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 これは水かけ論になりますので、また今後も引き続き議論をさせていただきたいと思います。  もう一つ。そもそも、財政構造改革法の目標年次が二〇〇三年度になっていたのですが、この目標年次を今回二〇〇五年にするわけですけれども、この当初の二〇〇三年という目標年次の設定がどうだったのか、無理があったのじゃないのか、こういう考え方もありますけれども、この点についてはいかがでしょうか。
  120. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  二〇〇三年の目標年次の設定に無理があったのではないかという御質問でございますが、経緯を申し上げますと、実は、おととしの十二月十九日の閣議決定、財政健全化目標におきましては、二〇〇五年までのできるだけ早期に、国及び地方財政赤字対GDPを三%以下にするという閣議決定をしたわけでございます。  他方、財政構造改革会議議論の中では、むしろ、これではスピードとして遅いのではないかという議論がございました。それから、そのスピードにつきましては、諸外国もやはり相当なスピードで財政赤字の解消が進んでおりました。  そういう議論の中で、二年繰り上げて二〇〇三年ということになったわけでございますが、これにつきましては、昨年、この財革法の御審議の段階で政府の方から提出した試算におきましても、毎年度、年々一兆二千五百億円ずつ国債を減らしていけば目標年次を達成するのではないかということで、当時としては、これは可能であると考えたわけでございます。
  121. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 目標年次の議論はまた後ほどさせていただきます。  それでは、今回の改正につきまして伺います。  まず、今回の改正、特例公債の毎年縮減を弾力化をする、特例公債発行枠の弾力化、この発動の基準でございますが、これは改正案の第四条第二号で、著しく異常かつ激甚な非常災害の発生または国内総生産の伸び率の低い状態が継続する等の経済活動の著しい停滞が国民生活等に及ぼす重大な影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生じない限り、こういうふうになっております。  この中身については、四月二十四日の財政構造改革会議で事例等が挙げられているわけでありますが、私、確認のために、これをそれぞれお答えをいただきたいと思います。  まず、「著しく異常かつ激甚な非常災害」というのが、阪神・淡路大震災に相当する災害というふうにしておりますけれども、この相当というのはどういう趣旨であるのか。これを確認したいと思います。
  122. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先生御指摘のとおり、「著しく異常かつ激甚な非常災害」につきましては、阪神・淡路大震災級の極めて大規模かつまれに見る災害を念頭に置いているところでございます。  具体的には、死者あるいは行方不明者、負傷者、避難者等の罹災者が多数発生し、それから住宅の倒壊等の建物の被害が多数発生し、交通やライフラインが広範囲に途絶し、これらの被害により地域全体の日常生活や業務環境が破壊された状況に陥るような災害であると考えておるところでございます。
  123. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 わかりました。  続いて、「経済活動の著しい停滞」ですが、これは三つのケースが挙げられておりました。  一つは、直近の二四半期連続で実質GDP成長率が一%未満の場合。これはよくわかります。  二つ目のケースで、直近の一四半期の実質GDP成長率が一%未満であって、かつ当該四半期後の消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調な場合。このケースでございますけれども、消費、設備投資、雇用の指標としてどういう指標を用いるのか。そして、著しく低調というのはどういう判断基準があるのか。この点について確認をしたいと思います。
  124. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調な場合でございますが、消費につきましては、家計調査をもとにして経済企画庁においてつくっております消費水準指数、それから設備投資については資本財出荷指数、雇用につきましては有効求人倍率を基本的な指標として用いることを考えております。(石井(啓)委員判断基準」と呼ぶ)  まず、消費水準指数でございますが、これは、月々の一世帯当たりの消費支出金額を四人世帯及び一カ月当たりの平均日数、これは三百六十五日を十二カ月で割った三十・四日と……(石井(啓)委員「いや、定義じゃなくて、この指標がどういうふうになったらこの著しく低調か」と呼ぶ)はい、わかりました。  これらの三つの指標につきまして、三カ月ごとの、その前期に対しましてマイナスになるというものが少なくとも二つ以上あるようなケースを考えておるということでございます。
  125. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そうしたら、今おっしゃった三つの指標を、直近三カ月とその前三カ月とを比べて、その指標のうち二つマイナスであればこういうケースに該当する、こういうことですね。わかりました。  それでは、もう一つでございますけれども、直近の実質GDP成長率は今言いました二つのケースのような状態にはないけれども、予見できない内外の経済ショックによって急速に経済活動が停滞状態に陥る場合。この予見できない内外の経済ショック、これは例えばどのような事態を想定しているのか。この点について確認をしたいと思います。
  126. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 この規定は、まさに予見できない内外の経済ショックということで、上の二つの要件につきましては、少なくとも一四半期あるいは二四半期のQEが出ている状況でございますが、このような実質GDPの成長率のQEが公表されていない、つまり、QEが出るまでは大体二カ月半時間があるわけですが、これを待たずして早急に講ずる必要があるという場合が考えられるわけでございます。  そのケースというのは非常に少ないのではないかと思われますが、例えばのケースとして、石油ショック時のケースを見てみますと、これは昭和四十八年の十月から十二月にかけての石油価格の高騰に伴いまして昭和四十九年の一-三月の実質GDPの成長率はマイナス一三・一%を記録したわけでございます。  ところが、その前の四十八年の七-九月が前期比一・一七、十-十二月は五・〇四%ということでございまして、少なくとも十-十二、七-九のQEを見ている限りでは足元の石油ショックの状況というのはわからないということで、このような石油ショック時のようなケースにつきましては、QEの数字は出ていないわけですけれども、まさに予見できない内外の経済ショックというような状態ということで、少なくともそういう状況があった場合には、何らかの、赤字国債を縮減しなければならないという規定に抵触するような対策を打つことを検討することが許されるケースに当たるのではないかと考えております。
  127. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは確認しますけれども、昨年の秋の時点、アジアの経済危機が勃発しておった、なおかつ我が国の金融機関の大型金融破綻が相次いでいた状態。こういった状態は、この内外の経済ショックに当たるのでしょうか。
  128. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 昨年の秋の状況がこの三号に当たるかどうかという御質問でございますが、少なくとも当時の段階では、QEの数字を待たずしてすぐに対策を打たなければならない状態であるというようなことに当たらないのではないかな、これは私の私見でございますが、と考えます。
  129. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いや、それは私、どうかと思うのですよ。  というのは、都市銀行がつぶれるなんというのは、昭和恐慌以来の、いわば七十年ぶりの大変な事態なわけですね。そういう状況がこの第三項目に当たらないとなると、ほかにどういう事態があるのかしら。ちょっと私はそれは非常に疑問なんです。それは主計局長の個人的な判断というのだけれども、それで果たして本当にいいのでしょうか。もう一度ちょっと答弁いただけますか。
  130. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 正確に御答弁をもう一度申し上げますと、この財政構造改革会議の決定の中で、この部分につきましては、「直近の実質GDP成長率は①②のような状態にはないが、予見できない内外の経済ショックによって急速に経済活動が停滞状態に陥る場合等①②に匹敵する状況」ということでございますので、数字的には①②の要件に該当するわけですから、むしろ、二四半期一%未満、あるいは一四半期一%未満でかつ消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調な場合。振り返ってみるとその数字に該当することになるということだと思います。     〔委員長退席、村井委員長代理着席〕
  131. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 ちょっと今の説明はよくわからないのですけれども。今から振り返ってみるとその当時はそういう状況だったということなんだけれども、ああいう事態自体が内外の経済ショックに当たるのかどうか、そのことを私は今確認したいのです。  昨年の秋のような状況が起きたとき、これが、①②には当たらないけれども、③に当たるような事態だと判断をするのかどうか、この点を確認したいのですが。
  132. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 昨年の秋のようなケースが発生したときに、この法律上の「経済活動の著しい停滞」という要件に当たるかどうか。つまり、これの要件に当たった場合には、これはいわゆるトリガーになるわけでございまして、その結果、すぐに対策を打つとか、あるいは赤字国債を減らさなくていいということの判断は、さらにその後の判断になるわけでございますけれども、いずれにしても、そのような事態が発生したときにこの要件に当たるかどうかというのは、最終的にはこれは、少なくとも一次的には予算編成権を持つ政府、内閣議論し、判断されることになろうかと思います。
  133. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 では、大蔵大臣、どうでしょう。  内閣の一員である大蔵大臣は、昨年の秋のような大型の金融破綻が相次ぎ、なおかつアジアの経済危機が勃発している、こういった状況が内外の経済ショックというふうなことに該当するのかどうか、大蔵大臣としての見解を伺いたいと思います。
  134. 松永光

    ○松永国務大臣 今主計局長が答弁したことと趣旨は同じでありますが、要するに、予見できない内外の経済ショックによって急速に経済活動が停滞状態に陥る場合等①②に匹敵する状況であるかどうかということを内閣が全体として判断をして、その上で対策を立て、その上で、結果的には特例公債の発行あるいは補正予算、こういったものの国会への提出をして、国会の最終判断を仰ぐ、こういうことになるのだと思います。
  135. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 これからはそういうことになるとは思うのですけれども、今から振り返って、あのときどういう判断をすべきであったのか、こういうことを聞きたいのですけれども、これは恐らく責任をまた追及されると思ってなかなかはっきりとしたお答えが出ないのかと思いますが、ちょっとこればかりやっていますと時間があれですから。  それでは続きまして、今トリガーとおっしゃいましたけれども、この第四条第二号の規定では、著しくかつ激甚な非常災害の発生とか、あるいは経済活動の著しい停滞が国民生活等に及ぼす重大な影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生じない限り。この国民生活等云々、ここの文言はどのように理解をすればいいのでしょうか。
  136. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 この規定でございますが、まず、ある年度において特例公債の発行額を前年度より縮減するとすれば、それが、経済活動の著しい停滞が国民の生活等に及ぼす重大な影響に対応するための各種の施策の実施が困難となる。そうしたときを除いては特例公債を縮減するという意味でございます。
  137. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 非常にわかりにくくお答えをいただきましたが、では、要は、異常な非常災害あるいは著しい経済停滞が起こったとしても、それで自動的に弾力化措置が発動されるということではないということですね。ちょっとその点。そういった著しい経済停滞あるいは非常災害が起きて、それでどういう事態になった場合にこの弾力化措置が発動されるのでしょうか。
  138. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 例えば、今のような経済状況にありまして、当面の景気の回復と、それから景気回復の足かせとなっている不良債権の本格的処理が強く求められているところですが、このために社会資本の整備だとかあるいは減税による国内需要の拡大や不良債権問題を本質的に処理するための総合的な施策の実施が必要である。そのときに、この施策の実施に必要な歳出追加等を提案すると同時に、その場合に、その財源として特例公債の発行を行い、その結果として特例公債の縮減ができなくなる。そういうケースをこの法律においては念頭に置いているわけでございます。
  139. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 このような、著しく異常かつ激甚な非常災害だとかあるいは著しい経済活動の停滞、こういった異常事態が起きてもなおかつまだみずから手足を縛っているわけですね、自動的に外れるわけではありませんから。そのことについてちょっと私は疑問なんです。  といいますのは、弾力化措置の発動をちゅうちょして必要な対策を打ち出せないということがあるのではないか。逆に言うと、自動的にこういったケースで弾力化措置を外すとどういう支障があるのか。自動的に外れても私は一向に構わないのではないかと思うのですけれども、その点、どうでしょう。
  140. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 直近二四半期連続で一%未満等々の、要するに経済活動が著しい停滞に陥った場合に、政府として、そのような経済状況におきまして経済対策を打ち、かつ特例債の縮減をしないというような経済対策を打つ必要があるかどうかというのは、単純にただ二四半期一%未満が続いたからといって、その経済状況の水準によってもまた異なろうかと思いますし、その時々の状況、それがいかに国民生活に深刻な影響を与えているか等総合的に勘案して、政府としてやはり対策を打つべきだと判断し、その結果補正予算を出す、そういうことでございますので、直ちに、単純にこの指標に当たるからといって政府は対策を必ず打たなくてはならないものではない、それはそのときの経済状況を総合的に勘案するということだと思います。
  141. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 これは本来総理に聞くべきだったところかもしれませんけれども、弾力化措置を外すということと対策をとるということはイコールではありませんから、弾力化措置は外しておいても、別に特例公債を増額して補正予算等組まなくてもこれは構わないわけだから。私は、ある意味で、こういった異常な状態になっても政府がまだみずからの手足を縛っているというのは、よほど財政秩序に対する自信がないのかなといいますか、そういうのを感じるところであります。これは本来は総理に問いただしたいところなんですけれども。  それでは、この弾力化措置が発動される。一度発動されるとこれがいつまで継続するのか、逆に言うと、いっこの弾力化措置というのは停止になるのか、この点について確認したいと思います。
  142. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 これは、例えば今の経済状況におきまして今回総合経済対策が打たれ、これによって景気が回復した場合には、少なくとも特例債が前年より減らなければならないという部分は今年度まででその効力は失われる。逆に、景気がずっとさらに悪くなって、それが続いていって、さらに補正予算だとかいう話になり、それが年度を越えて来年まで行った場合には、その状態がさらに続いているということでございますので、その都度判断していくということになろうかと思います。
  143. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そうすると、確認いたしますと、一度弾力化措置が発動されると、その発動された当該年度中はその措置は継続されるということですね。もう一回言うと、今回の補正でこれが発動された場合、仮に今年度中に二次補正があるとすれば、その補正というのは特例公債の発行枠はない、こういうことにもなりますね。  だから、ある年度で発動されればその年度中はその当該措置は継続される。一回その発行枠を外してしまえば、その年度は別に枠の規定がないわけですから、その年度の中においては特例公債の発行枠はなしということで年度末までそれはあり得る、継続されるのだ、こういうことだと思うのです。その点について確認したいと思います。
  144. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  例えば、十年度補正予算におきまして、赤字国債、特例債は前年度よりもマイナスにならないわけでございます。ですから、要するに、この法律によって特例債の発行額がふえることになるわけです。この法律案をお認めいただき、補正予算案をお認めいただきますとそういうことになるわけでございます。ですから、そうすると、仮に景気が回復してこのような状態がなくなったとしても、その部分がもとへ戻ることというのはあり得ないわけでございます。
  145. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そうすると、ではもう一度確認をしますと、一回弾力化措置を発動した場合に、それを次の年度も継続してやるかどうかは翌年度の当初予算を編成するときに判断するということですね。だから、この法律が通って今回の補正で弾力化措置が発動された場合、十年度中はそれは継続される。十一年度もやるかどうかは、当初の予算編成をすることしの年末にそういった状況かどうかを判断する。こういうことでよろしいですね。
  146. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 各年度予算編成に当たっては、その段階で入手し得る最新の経済情勢等を踏まえつつ予算編成を行っていくということになろうかと思います。
  147. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 わかりました。  そういたしますと、続いての質問ですけれども、当初予算を編成するときに、来年度とは限りません、毎年の当初予算を編成するときに、弾力化措置が必要だ、こういうふうに判断をした場合、主要な経費に係るキャップというのはどうなるのでしょう。
  148. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 キャップについては法律上定められているところでございますので、今定めているキャップは、今回お願いしております十一年度の社会保障を除きましては既に定められているキャップの中でございます。
  149. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 今質問した点は、私、今回の改正の一つの欠陥ではないかと思うのです。  といいますのは、今回の改正では、特例公債発行すなわち歳入の弾力化は可能としているのですけれども、集中期間においては当初予算歳出の弾力化は可能になっていないのですよ。ですから、来年度、十一年度当初予算のときに、予算編成時に弾力化の措置が必要だと発動されても、キャップがかかっているから適切な経済対策がとれないということになるのです。そのとおりじゃないのでしょうかね、大臣、どうですか。
  150. 松永光

    ○松永国務大臣 これも、きのうも議論になったところでありますが、財政構造改革法の規定、それから改正法案の規定では、委員指摘のとおり、キャップそのものは社会保障関係費を除いては変動がないわけでありますので、今委員がおっしゃったようなことになるという解釈が正しい解釈だろう、こう思っております。
  151. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いや、だから大臣、それは問題じゃないのかということを聞いているわけですよ。十一年度当初予算の編成時に弾力化措置が必要だというふうな判断をしたとしても、キャップがかかっているから予算が上積みできないわけですよ。  だから、もう少し言うと、来年度予算で、当初予算を組むときに弾力化措置が必要だということになると、特例公債を財源とする減税等は可能になるわけですけれども、逆に、今度は公共事業は上積みできないということになるのですね、当初予算で。そうすると、ことしのように、当初予算を設定しておきながら、またすぐに補正予算公共事業を上積みする、こういうふうにせざるを得なくなってしまうのです。これはまさに財政法二十九条に反することじゃないでしょうか。
  152. 松永光

    ○松永国務大臣 その点もきのう岡田先生からぎりぎり質問を受けたところでありますが、その点は、まさにあれは工事費についての節減というのですか、それの検討、あるいはまた費用対効果考え方の一層の徹底、そういったいろいろな工夫を凝らして、そして財政構造改革法の定めた規定の中でいろいろな工夫をして対応するというのが、この法律及び改正法案の規定からいえばそうなるわけであります。
  153. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いや、大臣、工事費の節減とかおっしゃいますけれども、それは来年の当初予算のときではそんなに大きな効果は出てこないのじゃないでしょうか。今建設省でも、いろいろ工事単価の節減等を検討されているようでありますけれども。  大幅に公共事業を上積みをしなければいけない、例えば非常な災害が起きた、だから当初予算のときから公共事業を上積みしなければいけないとしても、できないのですよ、この法律では。それが非常に問題ではないか。このことを言っているわけですけれども、どうです。
  154. 松永光

    ○松永国務大臣 異常災害等の場合に、災害復旧事業をうんとふやさなければならぬという事態があった場合にどうするかという話でございますか。(石井(啓)委員「そういったことも含めまして」と呼ぶ)いや、そういう場合には、異常災害に対する対策を、財政構造改革法の許す範囲内で重点的に予算編成せざるを得ない、こういうことに法解釈上はなると思います。
  155. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 私が主張したいのは、今回は特例公債発行枠の弾力化だけなんでありますけれども、そうではなくて、法の施行そのものを運用停止した方が経済状況に応じた適切な財政運営が可能になるのじゃないですか、このことを申し上げたいのです。どうでしょう。
  156. 松永光

    ○松永国務大臣 これまた水かけ論になるような形で恐縮でございますけれども、いつも言っておりますように、財政構造改革の必要性は変わらないという考え方でありまして、凍結すれば必要性を凍結したみたいなことになるおそれがありますので、我々としては凍結という態度をとるのは適切と思わない、こういうことになるわけです。
  157. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いや、私が申し上げたのは、今回のトリガー、弾力化措置ですね、こういったケース、いわば非常災害だとか著しい経済停滞、こういったことが起きたそういったケースにおいて、特例公債発行枠の弾力化ではなくて、法の一定限の運用停止、こういうふうにした方がいろいろな意味で柔軟な適切な経済運営ができるのじゃないですか、このように主張しているわけです。その点についてお答えをいただきたいと思います。
  158. 松永光

    ○松永国務大臣 財政構造改革法自体の停止という意味じゃないのですね、そうすると。(石井(啓)委員「いや、そうです。財政構造改革法の停止です」と呼ぶ)財政構造改革法の停止ということになりますというと、財政構造改革を着実に進めるという基本的な精神をしばらく停止するということになりますので、我々の考え方としては適切ではない、こう申し上げているわけでございます。
  159. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いや、私は財政構造改革法を廃止するというふうに言っているわけではなくて、著しい経済停滞のときにある期間だけ停止したらどうかと。期間が終わったらまた発動すればいいわけですからね。一たん廃止して、やめろと言っている議論ではないのですよ。だから、財政再建を否定しているわけではないのです。そういう著しい異常な事態においてはその期間だけ停止するということでもいいんじゃないのかということを言っているのです。  財政再建を否定しているわけではない、廃止しろと言っているわけではないのです。一定期間停止したらどうかということを言っているのです。
  160. 松永光

    ○松永国務大臣 同じことの繰り返しになりますけれども財政構造改革の必要性は変わらないから、一時的にでも財政構造改革という旗をおろすわけにはいかぬ、こういうことを申し上げておるわけであります。結局、考え方の相違かなという感じがいたします。
  161. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、もう一つ提言しますけれども、私は、少なくともこの特例公債発行枠を弾力化するような事態が生じた場合、キャップもそのとき外したらどうかと思うのですよ。キャップを外して、私、キャップを全部否定するものではないけれども、それを次年度以降に先送りする、先延ばしする。特例公債発行枠を弾力化する期間についてはキャップを外すというふうにしたらどうですかね。そうすれば、私は随分柔軟な財政運営ができると思うのですよ。
  162. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  お配りしてあります中期財政試算でも明らかなように、現行法上のキャップを前提といたしましても、この目標を達成するための毎年度年度の要調整額は大変膨大なものがあるわけでございます。したがいまして、二〇〇五年の目標に向かって財政構造改革を進めるというためには、キャップを外すことは困難ではないかと考えます。
  163. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 では、私は、本来はこの数年は集中改革期間ではなくて、集中経済再建期間である、このことをやはり主張しておきたいと思います。水かけ論になりますから、次の質問に移りますが。  それでは、平成十一年度の特例公債の発行限度額は幾らになりますか。
  164. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 十年度補正予算におきます特例公債発行額が九兆一千四百億円でございますので、十一年度予算における特例公債の発行額の上限は九兆一千四百億円ということになろうかと思います。
  165. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 大臣、恐縮ですが、この財政事情の試算という表をお持ちになっていらっしゃいますか。お持ちになっていなかったらお渡ししますが。  それでは、皆さん、お持ちになっている方はごらんになっていただきたいと思うのですが、財政事情の試算では、平成十一年度の公債金は十四一五兆だけれども、この内訳は、四条公債が八・四兆で、特例公債は六・一兆。すなわち、十一年度以降の特例公債の減額というのは、十年度当初予算の七・一兆をベースにして引き下げていっているのですよ。これは、下の注の6を見ていただきますとそういうふうに書いていますけれども。  何で補正後の九・一兆から減額をせずに、十年度当初の七・一兆から減額をする試算を行っているのでしょうか。
  166. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 十年度補正予算における二兆円程度の特例公債の増発は、特別減税の実施等の単年度限りの特殊要因によるものでございます。こういうものは十一年度以降にはなくなるわけでございますので、そういう特殊要因を除いた十年度当初予算ベースをむしろ基本とすることが適当であると考えています。
  167. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 そうすると、確認しますと、先ほど十一年度の限度額は九・一四兆円ということでしたから、今、十一年度の試算では六・一兆円ということは、試算上は三兆円の発行余裕枠があるということですね、十一年度。この点について確認します。
  168. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 少なくとも九兆一千億円までは発行できるということでございます。
  169. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、それを確認した上で次の質問に行きますけれども、今回二〇〇五年度に目標年次を延ばしているわけでありますが、二〇〇五年に延ばす必要性というのはどうしてでございますか。
  170. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  今回の総合経済対策の実施に伴いまして、各般の施策を講じ、それに伴いまして国債費の増加等がございます。それらを念頭に置きまして、最終的には歳入歳出の要調整額の数字を見つつ、かつ、単純計算でございますけれども、目標年次まで毎年度どの程度特例公債を減額しなければならないか、そういうことを総合的に勘案いたしまして、むしろ二年延ばすことによって特例公債の減額幅はこれからは約一兆円程度で済むということで、二年程度延ばすことが適当ではないか。  それから、おととしの十二月の当初の閣議決定におきましても、二〇〇五年までに三%目標を達成するという方針もございましたので、それに合わせて二年延ばすということにしたわけでございます。
  171. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 先ほど確認したところ、十年度補正後の九・一兆円をベースにして引き下げていくのであれば私は多少わかるのですけれども、十年度当初予算の七・一兆円をベースに引き下げていくわけですよね。実は、十年度当初予算のときの試算を見ると、この当初の七二兆円を、毎年一・四兆円ずつ五年間かけてゼロにしている。今回は一兆円ずつ減らして七年。それだけ傾斜を緩くしているということだと思うのですが、十年度当初のとき一・四兆円ずつ減らすというふうに、そういう意気込みで臨みながら、何で一兆円ずつというふうに緩めてしまったのか。この点は疑問に思います。  もう一つ指摘をしますと、目標年次においては、特例公債をゼロにするのと同時に、GDP比三%以内におさめますよね、財政赤字を。この試算を見ても、二〇〇三年度には確かに三%以上になっているのですが、二〇〇四年度、十六年度には三%以内におさまっているのですよ。だから、その目標は一つクリアできます。なおかつ、公債依存度も平成年度より下がっていますから、この目標もクリアできています。したがって、十年度当初予算の七・一兆円を一・二兆円ずつ六年間で減らせれば、平成十六年度には十分目標は達成できるわけです。  そういった意味で、私は二年を先延ばす必要性がわからない。この点についてはどうですか。
  172. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先生御指摘の、国、地方財政赤字の対GDP比は、確かに試算上は二〇〇四年度において三%を割るという数字になっておるわけでございますが、これはあくまでも特例公債も毎年毎年一兆円ずつ減らしていくという前提でやっております。  したがいまして、この財政事情の試算の要調整額という欄を見ていただきますと、実は、もし公債を予定どおり減額するとしたならば、この要調整額の欄にお示ししてありますように、膨大なる金額のものを歳入歳出の両面から処理していかなくてはならないということでございますし、それはもちろんやらなくてはならないわけでございます。そういう意味で、この要調整額の処理はやらなくてはならないのですけれども、処理しなければならないのですけれども、大変な作業になると考えております。  そういう前提の上で、非常に理想的な形でいったとすると、財政赤字のGDP比は二〇〇四年に三%を割る。ただ、さはさりながら、特例債はまだ一兆円この年は残っているということでございます。
  173. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いや、私は、目標年次に関しては合理的な必要性、理由というのがどうもわからないのですね。むしろ、弾力化措置を実施する年度に応じて目標年度を先に延ばした方がよっぽど合理的じゃないか。弾力化措置を実施する年度が一カ年度であれば目標年次を一年延ばす、それが二カ年度あるとすると目標年次を二年延ばす、この方がよっぽど説明が合理的じゃないでしょうか。
  174. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 目標年次を二〇〇五年度までに延ばしたわけでございますけれども、おととしの閣議決定におきまして目標年次二〇〇五年度にしました。  そのときの理由と申しますのは、平成十七年度以降、戦後生まれのベビーブーム世代が六十歳を迎えることになるということと、それから平成七年十月のG10のディベートにおきましても、このころにおいて我が国においては貯蓄率が顕著に低下し始めると予想されているということから、平成十七年度ころが我が国の社会経済構造のターニングポイントであると考えられまして、遅くともこの年度までに財政健全化目標を達成する必要があるということで、二〇〇五年度というものを定めたということでございます。
  175. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いや、その二〇〇五年度の意義というのは私もわかるのですけれども、でもそれは、もう、そもそも昨年法律を成立させたときにそうだったわけですよね。  ではお聞きしますけれども、今後、二〇〇五年度という目標年次をさらに延ばすということはないのでしょうか。その点について確認します。
  176. 松永光

    ○松永国務大臣 これは午前中も申し上げたわけでありますが、二〇〇五年に延ばすことの改正案を御審議願っておるわけでありますから、御審議を願っておる段階に、また延ばすことがあるかもしれませんなどということは、これは絶対口にはできないことなのでありまして、延ばすことはありませんというふうに答弁するしかありません。
  177. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 いや、確かに大臣の建前的な答弁ではそのとおりだと思いますけれども、ただ、弾力化措置はいつでもこれは発動できるわけでしょう。ですから、今後、弾力条項がどれぐらい発動されるかわかちないわけですよ。わからない時点において、決してないということが言えるんでしょうか。その点について、私は非常に疑問なんですね。この弾力条項が適用されるような事態が今後続くということになると、目標年次をおのずから延ばさざるを得なくなるんじゃないですか。どうですか。
  178. 松永光

    ○松永国務大臣 弾力条項というのは、もう委員よく御承知のとおり、特例公債発行額を前年度よりもふやさない、前年度よりも減らすということについてのこの枠を、特別の場合にのみ外した上で適切な対策を打てるようにさせていただく、そのためのことでありまして、年次を延ばす云々のことについての弾力条項という規定はないわけでありますから、そういう法案の審議をお願いしているときに、仮定の話としても、延ばすことがあるかもしれませんなどということを申し上げることは大変よくないことだと思っておりますので、午前中も、石にかじりついてもその実現に向けて最大限の努力をするのが私どもの立場です、こう申し上げるしか申し上げようがありません。
  179. 石井啓一

    ○石井(啓)委員 それでは、この点についてもっとじっくりやりたいのですが、質疑時間終了ということでありますから、また、機会があればしっかりやらせていただきたいと思います。終わります。
  180. 村井仁

    ○村井委員長代理 これにて石井君の質疑は終了いたしました。  次に、太田昭宏君。
  181. 太田昭宏

    太田(昭)委員 平和・改革の太田昭宏です。  今、石井委員からも質疑がございましたけれども、私は、十四日の質問の中で、やはり今の経済状況、そして今後というものを考えると、日本の経済構造改革というものが必要である。それが財政の改革にもつながりていくんだ。特にその場合に、恒久減税というものが大事である。その恒久減税ということを考えると、一つは、将来への不安というものがあるからこそ恒久減税だ。特別減税では、一時的なもので、将来への不安感を払拭できない。  そして、現在の政府のやっている特別減税というのは、いかにも細切れで、去年、ことし、来年というのにすぎない。まさに、これは積み増した形のものではないということを申し上げ、次にもう一つ、恒久減税は構造改革ということを伴うという大事な視点があって、これがそのまま小さな政府へのインセンティブになっていく。  さらにもう一つでは、サプライサイドに立った経済運営というものを今後積極的に進めていくという新しい経済学的な視点が大事であるということを申し上げたつもりであります。  もう一点、実は今の論議の中で大事なことがありまして、私も非常に論議が中途半端に終わりましたので、冒頭に一つだけ申し上げます。  だからこそ恒久減税と言うのと同時に、だから今の政府の弾力条項での改革はだめなんだということを恒久減税を引きながら申し上げたのですが、もう一点は、今の石井委員の話にもありましたように、一番大事なのは、大蔵大臣、やはり当初予算ですよね。  この当初予算が、バランスを持って、そしてそのときの経済状況に合わせて組まれるということが何よりも一番大事なんですが、その当初予算が、まさにこれは最善の当初予算を組まなくてはならないわけなんですが、そのところにキャップがかかりているということで極めていびつになって、当初予算をこれから組もうと思っても、そのままもう補正予算というものを想定するというようなことになると、財政法二十九条ということからいっても問題であるし、また非常にいびつになるということでも問題が生ずるし、キャップということについては、もう一遍そこで考え直さなくてはいけないということで、今回の政府の改正案というものは大変問題だ。  私も十四日に申し上げましたが、例えば今回、補正を十六兆やる、公共事業費四・五兆、そのうちの国債が二・三兆です。そして私は、先日このことをお尋ねして、大蔵大臣ではなくて建設大臣が答えたわけなんですが、公共事業のキャップは今回の改正でも触れていないわけですから、キャップが生きているわけですから、来年度は九兆円を下回る予算ということになります。そうすると結局、またしても、公共事業費七%ダウンどころか、二五%もダウンとなるわけですね。それで、新規事業となると四〇%以上の恐らくダウンとなる、悲鳴が上がってくる。そんなことは最初からわかっている。ですから、補正をすぐそこで想定してやらざるを得ない。  こんなことをやっていて、ぎくしゃくぎくしゃくした予算というよりも、まさに予算自体を、当初予算を最善なもの、適正なものにするということからいくと、私は、今回の改正というものは極めてこれは不十分であり、中途半端であり、既に財革法それ自体がこういう考え方では破綻をするのではないか、このように思いますが、この点について再度御答弁をお願いしたいと思います。
  182. 松永光

    ○松永国務大臣 仕組みの話は今の委員の仰せのとおりであります。したがいまして、平成十一年度の本予算編成の場合には、これは相当検討をし、研究を加えて、そして予算の編成作業に入らなければならぬ、こういうふうに思っております。  その場合に、先ほども申し上げましたけれども、思い切った事業経費の節減、それから費用対効果、そういったものについての徹底した見直し、それから先ほど言いました経費の縮減、そういったものを徹底してやって、そして、真に必要な公共事業がやれるように工夫を凝らして公共事業関係予算は組んでいかなければならぬという、大変厳しい検討を迫られる、こういうふうに思っておりますが、何とか予算の編成だけは批判にたえ得るような予算の姿にしなければならぬ、こう思っております。
  183. 太田昭宏

    太田(昭)委員 まさに、この財革法改正の持つ根本的な欠陥ということを、石井委員も私も今指摘したわけなんです。  もう一つ大事なことは、現在の不況ということを考えますと、それは消費不況であり、金融不況であり、そして資産デフレという複合不況であると同時に、これほどの低金利でも資金需要がない、金融政策がきかないというところで、財政政策というものをどのようにやっていくかということが非常に大事なポイントであろうというふうに思っておりますが、消費の低迷について特にきょうはお聞きをしたいわけなんです。この消費の低迷がなぜ起きているか。  第一として、特に可処分所得や実質賃金が減っているというけれども、その現状をどのように政府は認識され、データを持っていらっしゃるのかということについて、お聞きをしたいと思います。
  184. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 消費低迷と言われておりますが、可処分所得、実質賃金等につきましては多少の低下傾向がありますが、むしろそれよりも、消費性向の低下によります影響の方が実は大きいというのが最近の状況でございまして、昨年の九月までの段階で、大体七二%程度のレベルにまで戻しております。四月は駆け込み需要の反動で大変低かったのでありますが、九月までで七一・九%という水準まで戻したのでありますが、十月以降、アジアの状況等を反映して徐々に下がり、二月には六八・四%という数字になりました。  そういうことで、この原因は何かということでございますが、近時の、ここ数カ月の動きの原因というのは、やはりアジアの問題、あるいは金融システム、金融関係の大きな破綻等があったことによります先行き不安感というものが大きな原因かというふうに考えております。  なお、それまでの間に、バブルの崩壊前は七五%程度の水準でございましたが、ここ数年で七二%程度にまで下がってきておりますが、これは、全体として、失業率が徐々に上がってきたこと、それから、株価や土地価格の低下によります資産デフレというものがそういう消費性向の中長期にわたる低下に影響を及ぼしたのではないかというふうに考えている次第でございます。
  185. 太田昭宏

    太田(昭)委員 五月十五日発表の労働省の毎月勤労統計調査の平成年度分の結果によりますと、実質賃金は前年度比一・三%減ということで、平成年度以来、四年ぶりの減少となっているんですね。同じ月勤、五月一日、三月分の結果速報によりますと、実質賃金が前年同月比一・五%減で、八カ月連続の減少となっている力一年分でも、今申し上げましたように四年ぶりの減少であるということで、実質賃金が非常に減っている。  月例経済報告でも、雇用者所得の低迷もあって低調に推移しているというふうに、個人消費について指摘をしております。  今、尾身長官がおっしゃったように、消費性向については、これは九八年三月、七一・七ということで、若干違ってきているわけなんですが、その後、まだデータは出ていないと思います。これは出ていないのに聞くということはどうかと思いますが、私は、その後、実は危ないのではないのかなというふうに思っているわけなんですが、いかがですか、その辺。
  186. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 先ほど申しました、二月まで消費性向が下がりましたけれども、その後、三月には七一・七%と、ほぼ九月の水準にまで戻しております。これは、三月の水準は、二月、三月と行われました特別減税効果が出たとも考えられますし、同時に、消費者のマインドが好転したというふうにも考えられるわけでございまして、この四月、五月の数字を見なければちょっと何とも言えないというふうに考えておりますが、全体として消費の動向は、一本調子で下げてきた非常に厳しい動向からは、やや変化の兆しが見られるというふうに考えております。
  187. 太田昭宏

    太田(昭)委員 貸し渋りも四月以降なお悪い状況、そして倒産が、きょうの新聞にも出ておりますが、大変な悪化をした状況。それにもう一つ、消費の問題に影響している不安感というものが一体どうなっているか。将来に不安があるから消費が低迷する、こういうわけなんです。  私は、日本リサーチ総合研究所が五月に出したものの中で、再び悪化した消費者心理ということで、生活不安度指数というのが昨年後半から悪化傾向にあって、大型金融機関の経営破綻が相次いで報じられた直後の十二月、一三三と過去二番目に悪い水準まで悪化。二月は一二七と、いっとき改善したものの、四月、一三一と再び悪化して、過去四番目に悪い水準にある。非常に不安感がふえているという状況指摘をされているんですが、この辺の認識はございますか。
  188. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 このあたり、個々の消費動向等についての指標をどう見るかということでございますが、そういう意味で、雇用及び生産が非常に厳しい状況になっておりまして、他方、消費の方については、やや下げどまりの感じもあるというふうに考えております。  それから、もう一つぜひ御理解をいただきたいと思いますのは、四月の二十四日にあれだけの大きな総合経済対策をまとめました。そのことの結果として、補正予算及び関連法案が六月ごろ通るといたしますと、支出が数カ月のおくれで出ていくわけでありますけれども、しかしそれ以前に、総合経済対策、サミット等におきます各国の反応も、非常に強く歓迎するというような高い評価をいただいているところでございまして、そういう総合経済対策の心理面へのプラス影響というものもこれからは相当考えていいのではないかというふうにも考えている次第でございます。  いずれにいたしましても、もう少し様子を見ながら対応してまいりたいと思いますが、何よりも、現在取りまとめて、今、国会で御審議をいただいておりますこの補正予算及び関係法案の一日も早い施行をぜひ行いたいと考えている次第でございます。
  189. 太田昭宏

    太田(昭)委員 もう一つ、これは俗説なのかもしれません、もう買う物がないから消費が低迷するという声をよく聞いたりするわけです。  きのうも、庶民とはだれかとかいろいろな話がここでありましたが、私が直接聞くところ、また特に三十代、四十代の人たちにとりましては、後から福祉の問題についても申し上げますけれども、非常にこれは、一万円でも二万円でもあったら大変ありがたいことでということを、みんな買う物なんか山ほどあるということを言うわけなんですが、飽和状態だから個人消費は低迷するということをまさか政府は思っていないと思いますが、その辺の認識はいかがですか。
  190. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 これはいろいろな考え方があると思いますけれども、実は、消費の中身の内容がここ数年でかなり変わってきておりまして、食料品等の非耐久財支出が八〇年ごろには四七%ありましたが、九七年、最近ではこれが四七から四一%に下がっている。他方、サービス向けの支出が八〇年の三三%から四一%に上がっているということでございまして、どちらかといいますと、いわゆる必需品的なものの比率が下がって、非必需品的なものの比率が消費全体の構成の中で上がってきております。  したがいまして、つまり、生活に絶対に必要であるという消費が少なくなってきておりまして、これは全体の生活水準の向上を反映していると思いますが、そういう意味からいいますと、消費者のマインドが消費の水準に響く率が非常に大きくなってきているというふうに考えております。  そこで、飽和状態かどうかということでございますが、例えば、国民全体のライフスタイルが変わってきていることによりまして、消費構造、内容ということにもかなり変化が見られているわけでございまして、やはり、消費者ニーズに合ったような、ある意味でいいますと付加価値の高い商品、あるいはライフスタイルの変化に応じたサービス、商品等の提供をする供給者側にもかなりの努力をしていただいて、消費の喚起、買いたいサービス、買いたい物を提供するようなことにも努力をしていただきたいというふうに私自身は感じている次第でございます。
  191. 太田昭宏

    太田(昭)委員 今のお話の中にも出てきましたが、もう一つ最近の大きな特徴として、また特に金融ビッグバンの影響というのは、私は社会全体の大きな変更であろうというふうに思っております。  非情な競争社会、あるいは優勝劣敗、弱肉強食、二極分化、こういうことが非常に今後の日本の社会というものに展開をしていく、こういうふうに感じるわけで、今出ております日経ビジネスでも、この辺の二極分化、崩れる一億総中流とかあるいは中流なき社会という形に展開をしていくというような、この二極分化の傾向が総務庁の調査とかさまざまなところでどうも具体的に出ているようなんですが、そういう兆候とか動きというものを認識されているでしょうか。
  192. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 なかなか難しい問題でございまして、総理府で行っております国民生活に関する世論調査、昨年の五月の数字で申しますと、「中の上」九・六%、「中の中」五六・三%、「中の下」二五%というようなことでございまして、「上」と答えた人が〇・九%、「下」と答えた人が五・五%ということで、圧倒的にやはり中流意識といいますか、そういうものが、傾向は多少の変化があるのかもしれませんが、全体としては、やはり中流意識が日本国民全体としては強いのではないか、そんなふうに感じております。
  193. 太田昭宏

    太田(昭)委員 まさにそこの、最近のこの二極分化の傾向として、例えば総理府の平成九年の国民生活に関する世論調査、中流意識はあるのです。中流意識の中で、中の上、中、下と分けたときに、中の下というところがふえたというところに最近の動きがあるのだという指摘を私はしておきます。  そうなりますと、可処分所得が減り、消費性向も本当に回復しているのかは定かではない、さらに二極分化が進む、こういう中で、社会保障というものは非常に大事な要素を占めるというふうに私は認識をしております。そこのところが安心感を持たれないと、減税をしてもそれが消費に回らない、あるいはまた、だからこそまた恒久減税が非常に必要になってくるということであろうというふうに思いますが、今回の財革法改正では一年だけキャップを外した。  今まで私たちが述べてきましたように、減税したものが消費に使われる、二極分化の中でもこの社会保障というものが大事であるということからいいますと、しかもまた、社会保障は安定的にこれは制度として確立されていかなくちゃいけないというときに、一年だけキャップを外したというのは、余りにも場当たり的な中途半端、私はそれしか思えないのですが、いかがでありましょうか。
  194. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のとおり、社会保障関係予算というのは、制度的な要因によって当然増が出てくるという性格の予算でございます。そういう性格の予算でございまして、平成十一年度におきましては、その縮減のための制度改革を要するというその性格、それから、現下の経済状況では歳出削減のために新たな国民負担を国民に求めることがないようにできる限り配慮する必要があるということにかんがみまして、緊急避難措置として、平成十一年度の社会保障関係費に限り、おおむね二%というキャップにかえ、その増加額をできる限り抑制するということにしたわけでございます。  平成十二年度につきましては、財政構造改革の必要性は何ら変わるものではないこと、それから医療保険制度の抜本的改革等により医療、福祉の分野における効率化が期待できることから、現行の財政構造改革法の規定が適用されることとしているわけでございます。
  195. 太田昭宏

    太田(昭)委員 だからこそ、私は社会保障が緊急避難というような言葉で表現できるのかなという大変な疑問を実は持っていますから質問したわけなんですが、例えば難病対策というのが削られる。  あるいはまた、私自身も主張してきましたが、子育て減税ということは、非常に少子化が進んでいる。一番の活力ということからいきますと、子供がやはり大勢元気であって、そして三十代、四十代の一番の働き手というところも元気だという日本の社会というのが非常に大事だと思います。  ところが、三十代、四十代は、給料は高くないし、子供は小さいし、養育費はかかるし、奥さんはそこで子育てに懸命だし、家は狭いし、気分も晴れないしというようなことで、ここのところの三十代、四十代に対する支援ということと、それから子育て、あるいはまたこの少子化対策ということが大事だということからいきますと、子育て減税ということの私たちの主張、あるいは、教育減税とのドッキング、こういうことが極めて大事だと私は思いますが、いかがでしょうか。
  196. 松永光

    ○松永国務大臣 少子・高齢化という言葉がございますが、高齢化というのは、みんなが元気で長生きなさるということでありますから、これはまあ喜ばしいことでありますし、また、高齢者がふえるということをとめるわけにはいきませんし、とめることはよくない。そういう意味で、高齢化が進むということはこれは必然だと思います。ただし、問題は、委員仰せのとおり、少子化という問題でありまして、少子化が進むということは、これは国の将来にとっても大変なことだ。  どうすれば今委員のおっしゃられた、子供さんができる男女の年齢層は二十代、三十代、四十代の前半までぐらいでしょうか、そういう人たちがもっと、子供さんを産み育てるのにその苦労というものは常にあるわけでありますが、その苦労の度合いがいささかでも公的な支援によって軽くなって、それによって子供さんの出生数がふえるということ。これによって、少子化が進まないで、高齢者を支える年代層が相当程度将来にわたっているという人口構成が望ましい人口構成ではなかろうか。  そういうことを考えますと、出生率が一・四六とかという数字、これは簡単に見逃すわけにはいかない数字だろうと思います。その意味で、委員初めグループの人たちが、子育て支援策、あるいは子育て減税、こういったことで一生懸命になっていらっしゃることはよく承知しておりますし、私自身も、子育ての負担が少しでも軽くなるような措置ができて、それで子供がたくさんできて、また子育ても順調に進むという状況に持っていくことは大変大事なことだ、実はこう思っておるところなんです。  それをどういう形で支援していくかというその支援の仕方の問題でありますが、委員のかねがねの子育て支援の重要性の主張を参考にさせていただきながら、今般の補正予算では、すべての保育所で乳児保育を開始できるように最低限の設備等を緊急に整備するための経費百七十億円を計上することにしたわけでありますし、また、子育て支援基金九百億円を創設し、継続的にきめ細かい子育て支援を実施できる体制を整備する、こういつたことをして、これまで以上に少子化対策としての子育て支援、子育て支援少子化対策と言っても結構だと思いますが、特別の配慮をしてきた、こういうことであります。  いずれにせよ、少子化対策の重要性は、これはもう議論をまつまでもないことでありまして、今後とも、関係者から幅広く意見を聞きながら、どういう方面に手を打った方が効果的かということに意を用いて、真に有効な少子化対策を着実に実施してまいりたい、こう考えておるところでございます。
  197. 太田昭宏

    太田(昭)委員 真摯な受けとめ方をしていただいておりますが、私は、税制改革の本格的な論議ということが今後予定をされているというようなことも聞いておりますし、その中でのしっかりした論議ということもありましょう。それから同時に、歳出面も含めた御答弁を今いただきました。そういうことも含めた子育て、同時に、三十代、四十代の親御さんたちへの支援ということについて、さまざまな形で知恵を絞って真剣に取り組んでいただきたいというふうに思いますが、最後に御答弁をお願いします。
  198. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども申し上げましたように、真に有効な子育て支援というのはどういう策をやることが子育て支援なんだろうかということについて、各方面から幅広い意見を聞いて、そして、真に有効な子育て支援少子化対策、これを着実に推進してまいりたい、こう思っているところでございます。
  199. 太田昭宏

    太田(昭)委員 終わります。
  200. 村井仁

    ○村井委員長代理 これにて太田君の質疑は終了いたしました。次に、佐藤茂樹君。
  201. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 自由党の佐藤茂樹でございます。  きようでこの特別委員会も三日目でございまして、先ほど来御議論を聞いておりますと、朝からきょう私がやろうと思っておった質問を大分された方がおりまして、なるべく重ならないように質問させていただきたいと思います。  まず最初に、冒頭、きょうの朝にも議論があったのですが、政府税調がきょうから総会を開いて意欲的に税制について御議論を始められる、そういうお話でございますけれども、朝の段階でも答弁がありましたが、テーマとしては、一つは法人課税、これは地方課税も含めた、外形標準課税も含めた部分を検討される、さらには所得税住民税の最高税率、また課税最低限についてどうしていくのかということも検討課題であるというような、そういう報道があったわけでございます。  そこで最初に、質問通告は特にしていませんけれどもお答えいただきたいのですけれども、この大蔵省の出した試算で、実は九九年度に行う二兆円分の特別減税について、減税方法等について、今後検討するのでここには入れておりません、そういうことになっているのですけれども、具体的にこれはきょう報道でもありました政府税調の中で検討されていくのですか。どういうところできちっと検討されて、いつごろこの特別減税のやり方についてはきちっとしたものを出されるのか、まずお答えいただきたいと思います。
  202. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  平成十一年の二兆円の特別減税につきましては、先生が今お話がございましたように、今後その減税方法について検討するということで、今回計上されておりません。政府税調及び党の税調におきまして、今後しかるべき時期にどのような具体的な方法で行うのか検討が行われるものと考えております。
  203. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今、主税局長に答弁いただいたのですけれども、政府税調がきょうから始める議論の一環としてこの二兆円の特別減税減税方法を議論されるのか、そうではなくて、この特別減税減税方法というのは急ぐから先行して議論をしていただく、そういう方針で大蔵省として考えておられるのか。そのあたりについて、明快にお答えいただきたいと思います。
  204. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  いろいろ報道がございますが、きょう政府税調で審議が行われておりまして、法人課税につきましては、まさに総合経済対策に示されているような検討を行うために地方法人課税小委員会というものを設置しまして、その第一回目がきょうの午前中に開かれたというふうに承知しております。  また、個人所得課税につきましても、公正、透明で国民の意欲を引き出せるような税制を目指し、幅広い観点から検討を行うとされているところでございまして、まだ報告が入っておりませんが、恐らく小委員会を設置いたしまして検討が進められるものというふうに考えているわけでございます。  この個人所得課税の方の問題と申しますのは、御承知のように項目がたくさんございます。今長くなりますので、まさに所得税制として、あり得べき所得課税かということを一つ一つ論点について検討が進められていくものと承知しているわけでございます。  今お尋ねの二兆円の特別減税でございますが、これはそういう意味ではまさに特別減税でございますので、この税制調査会でどういうお取り計らいになるのか私が今言うのは不適当かと思いますが、小委員会で検討されるというよりは通常の改正のときに検討が行われるものではないか、あわせて当然のことながら党の税制調査会でも検討が行われるもの、そういう意味では質的に若干異なるのではないかというふうに考えているわけでございます。
  205. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 ぜひ早急に議論していただいて、どういう形にするのか出していただきたい。というのは、これは具体的にそのことによって大分内容が変わってきますので、引き続いての議論をさせていただく意味でもはっきりとさせていただきたいなと思います。これ以上やるとくどくなりますので、行いません。  それで、先ほど来石井委員がされ、また昨日は西川委員が大変粘り強く同じ点を質問されておったのですけれども、今回の財政構造改革法の改正案、私はどういう観点から質問したいかということを最初に申し上げますと、きのうも総理が答弁されておりましたけれども、アメリカに包括財政調整法、OBRAというのがありますけれども、これが非常に弾力化できる条件を厳密に決めているのに比べて、私の見た感じでは、今回の政府が出された財革法改正案というのは、非常にやはり弾力条項の部分について基準があいまいで、一言で言うと、政府の判断一つで恣意的な運用をしょうと思えばそういうことができるような部分がほうっておくとあるのじゃないのか。だから、大変細かくなりますけれども、何点かお聞きをしたいと思います。  それで、最初に、先ほどの石井委員とちょっと最初の質問は重なりますけれども、まずこの第四条の二号の今回新しく加わる部分、「著しく異常かつ激甚な非常災害の発生又は経済活動の著しい停滞(国内総生産の伸び率の低い事態が継続する等の政令で定める状況をいう。)が国民生活等に及ぼす重大な影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生ずるとき」というここの部分なんです。  先ほど答弁もあったと思うのですが、まず、「著しく異常かつ激甚な非常災害」を、財政構造改革会議では、阪神大震災に相当する災害、そういうふうに一応決められているのですけれども、再度、重なるのですけれども、阪神大震災のどの部分に相当する災害というように判断されるのか、もう一度ちょっと答弁をいただきたいと思います。
  206. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  通常の災害というのは、これは年々起きるものでございますが、これは毎年度の各年度予算で対応しているということでございます。  今回のこの法律で「著しく異常かつ激甚な非常災害」ということでございますが、これは、阪神・淡路大震災級の極めて大規模かつまれに見る災害を念頭に置いて運用してまいるという考え方でございます。  具体的には、死者とか行方不明者、負傷者、避難者等の罹災者が多数発生し、住宅の倒壊等の建物被害が多数発生し、交通やライフラインが広範囲に途絶し、これらの被害により地域全体の日常生活や業務環境が破壊された状況に陥るような災害であると考えておるところでございます。
  207. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、私は、旧新進党時代に議員立法で災害対策基本法の改正案提出した一人として、過去の例もいろいろ調べてみましたけれども、阪神大震災級のあれだけの被害というのは、日本で過去それに匹敵するものは何だったか。約七十年前の関東大震災しかないわけですね。  そうすると、大蔵省の今の御見解ではそういうものをイメージされているのか。それとも、その間に、最近でも例えば震災ではありませんが雲仙・普賢岳の噴火によるそういう災害、さらには、阪神大震災ほどまでいきませんでしたけれども、例えば北海道南西沖地震なんというのもそれなりの被害が出ました。こういうものは、この第四条二号の「著しく異常かつ激甚な非常災害」という範疇としては全く考えておられない、そういうふうに受けとめてよろしいのでしょうか。
  208. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  災害は年々いろいろな形態でこれまで起きてきております。その中で、今回のこの規定で設けておりますのは、先ほど申し上げましたように、通常の災害というのはこれは各年度予算で対応できるということでございますので、そういう形では対応できないような非常にまれに見るような災害を念頭に置いているということでございます。  ちなみに、特定非常災害の被害者の権利利益の保全等を図るための特別措置に関する法律で、やはり「著しく異常かつ激甚な非常災害」ということで指定されておるのは、阪神・淡路大震災のみでございます。
  209. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 だから、今遠回しに言われましたけれども、要するに関東大震災とか、それは法律に出ていないと言われましたが、阪神大震災級でないと今回のこの弾力条項については発動しない、そういう御見解だというように受けとめさせていただきます。  それで、ちょっとお聞きしたいのですけれども、これは全体にかかわる話なんですが、今の阪神・淡路大震災に相当するものというのは、四月二十四日の財政構造改革会議で具体的に決定されたのですけれども、これについては具体的に何か、法律上は出ておりませんけれども、政令できちっとそういうように記されているのかどうか。それとも、それはもう運用上の不文律として大蔵省の中で大体イメージされているというだけのものなのか。ちょっとお伺いしたいと思います。
  210. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先生の御質問の趣旨は、この財政構造改革会議の決定を政令で書くかどうかということでございますか。  災害の点につきましては、先ほども申し上げましたようなことを念頭に置いて、そのような災害が発生した場合にそれ相応の予算対応をしていくということでございまして、個別の災害の指定を政令で行うことは考えておりません。ただ、経済活動の著しい停滞につきましては、GDP等の基準につきましては政令で書くことを考えております。
  211. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 いや、きのうの議論とあわせますと、この著しく異常かつ激甚な非常災害の発生ということが阪神大震災に相当するという部分と、それと、これからちょっと聞きたいのですが、経済活動の著しい停滞で、三番目の、直近の実質GDP成長率は①②のような状態にはないが、予見できない内外の経済ショックによって急速に経済活動が停滞状態に陥る場合等①②に匹敵する状況というのは、政令化はしていないということで認識しておいてよろしいですか。
  212. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 GDPの基準につきましては政令で書くことを考えておりますけれども、三番目の、GDP成長率が①②のような状態にはないけれども、予見できない内外の経済ショックによって急速に経済活動が停滞状態に陥る場合等①②に匹敵する状況につきましては、あらかじめ政令で書くことはできませんので、そのような状況になった段階で政令で指定するということを考えております。
  213. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 わかりました。  次に、経済活動の著しい停滞の場合で、きのう来あるのですけれども、特に今回の場合は②に該当するのだ、そういう御判断なんですけれども、それでそのときに、この財政構造改革会議のときにも指定されているのは、要するに、直近三カ月平均と前の三カ月平均とを比較した場合、これら三つの指標はいずれもマイナスである。それはどういう指標を用いられているのかというと、消費水準指数がマイナス二・五である、また資本財の出荷指数がマイナス一・三%である、有効求人倍率がマイナス〇・〇六ポイントになっている。  具体的には、消費、設備投資、雇用の指標、この三つについては今後とも、今言いましたような消費水準指数、資本財出荷指数、有効求人倍率を指標としてずっと用いられていく、少なくともこの七年間ぐらいはそういう判断をされるということで認識してよろしいでしょうか。
  214. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 経済活動の著しい停滞という要件の判断に当たりまして、先生御指摘のように、消費水準指数、資本財出荷指数、それから有効求人倍率の三つの指標を用いることとしております。この三つの指標を今後判断に当たっては基礎資料として考えていく、判断基準として考えていくということでございます。
  215. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 要するに、七年間はこの三つの指標を変えられないという認識でよろしいですね、この三つの指標判断材料として。わかりました。  そこでもうちょっとお聞きしたいのは、この三つの指標、今回はすべてマイナスだったのですね。それで、消費、設備投資、雇用についてのこの三つの指標が、今大蔵省としてイメージされているのは、どの程度になれば著しく低調というように判断されているのか。  というのは、例えば一つ一つ指標判断されるのか。今ここの文章だけを見ると、私のとったイメージは、三つともマイナスである、だから今回著しく低調であるというように私は受けとめておるのですけれども、この三つの指標一つ一つの値を見ながら判断されるのか、三つを総合勘案してやはりこれは低調である、そういうふうに判断されるのか。その辺の判断基準をどのように考えておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  216. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  この三つの指標を用いることといたしましたのは、実は第一の基準であります、これはアメリカと同じ基準の、二四半期前期比一%未満という指標がある場合には、これはトリガーとして、当然のことでございますが、この法律基準に該当するわけでございます。さはさりながら、二四半期の指標が出ていない段階で、かつ足元の景気指標から見ると実質二四半期一%未満の状況が続くようなことが想定される場合を考えまして、それで、その指標として、この消費、設備投資、雇用という三つの具体的な指標を用いることとしたわけでございます。  そうしますと、過去の四半期ごとの数字を振り返ってみますと、実質的には、この三つの指標のうち二つ指標が直近三カ月が前三カ月平均を下回っているような状態がむしろ①と同じような状態になっているということでございますので、考え方としては、三つのうち二つ指標が下回っている場合を著しく低調と考えているところでございます。
  217. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 わかりました。一つはちょっと明らかになった部分であるというふうに思っております。  それで、いずれにしろ、ここでちょっと大蔵大臣にお聞きしたいのですけれども、今回のこの例でもはっきりしているのは、やはり、日本の経済指標というのは公表がなかなか遅い、そういうふうに言われておるのですね。  今回でも、その前の三カ月と直近の三カ月たった、その公表されるまでのプラスアルファの月日がたってから、結局、弾力化するかどうかという判断をせざるを得ない。ここはやはり、それから弾力化するかどうかという判断をしていると対応が非常におくれる可能性があるというふうに私は思うのですけれども、多分この弾力化条項をつくられるときに既にその辺は検討もされ議論もされたと思うのですけれども大臣はそのことについてどのように考えておられるか、お伺いしたいと思います。
  218. 松永光

    ○松永国務大臣 そういう心配をなさることは、もっともなことだと思います。  そこで、この比較というものは、QEが公表されている直近の四半期以降、最低二カ月間の指標が公表されている場合に限り行うこととする、こうなっているものですから、したがって、おくれるおそれがあるわけでありますけれども、その場合には、その時点における状況について、翌四半期の実質GDPが公表される前であっても、消費、設備投資、雇用の諸指標から見て実質GDP成長の低下が見込まれるなど早急に施策を実行すべき場合もあることで、そこで、具体的には、先ほど言ったように、消費水準指数、設備投資についての資本財出荷指数、雇用についての有効求人倍率、こういったものを基本的な指標として用いることを考えておるところなんです。
  219. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 いや、大臣の今の答弁ではさっぱりわからぬのです。  要するに、何を言いたいのかというと、今の場合、十―十二、例えばことしの具体的なケースが非常にマイナスになった。ところが、一―三はどうかというと、そうではないんだ。それははっきりわかった。ところが、さっき言った三つの指標が悪かったというのがわかったのはもう四月以降なんですよね、結局。要するに、一番悪かった十―十二のときに悪いなと思っていても、この一―三の、三カ月たって、それからさらにプラスアルファの日数、きちっとした指標が出て、それから判断して動かざるを得ない。  それで、例えば、後でも言いますが、弾力化して、そして補正予算を組むなら組むという、ある意味でいったら、もしかしたら軽く半年から九カ月ぐらいたってしまった時点で手を打たざるを得ない、そういう状況がタイムスパンとして考えられる。要するに、即対応をしないといけない部分がゆっくりとした形で対応しなければいけない部分について、大臣はどう考えておられるのかということをお聞きしたがったのですけれども、もう一度、答弁があればお答え願いたいと思います。
  220. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  先生の言われるように、経済統計が出てくるのにはある程度のタイムラグがございます。したがいまして、第一の基準の二四半期の一%未満という基準でいきますと、例えば、今十-十二が出まして、一-三が出てくるのは六月になるわけでございます。したがいまして、今の二四半期一%未満という基準でいきますと、現段階では、その基準だけではそれに該当しないということでございます。したがいまして、実は第二の基準をアメリカとは異なって新しく考えたわけでございます。  これによりますれば、十-十二の指標が三月にQEが出てまいりました。それでは一%未満であることがわかった。そうすると、さらに一-三の数字を待っていますと六月まで判断ができないということになるものですから、実は三月のQEが出て半月後にはこれらの指標の二月までの数字が出てくるものですから、十二、一、二の三カ月の数字とその前の三カ月の数字とを比較してマイナスになれば、三つの基礎とする指標についてそのうちの二つがマイナスになればそれに該当するということで、QEそのものが発表まで時間がかかるのはやむを得ないと思うのですけれども、それを踏まえてさらに三カ月待つのではなくて、約半月間で判断できるというような案になっているわけでございます。
  221. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今の主計局長の御説明、そのとおりだと思うのですけれども、①のケースよりは非常に早い。しかしながらそれでも結局、悪いなというように現場で実態として感じながらも、それから三カ月たって、プラスアルファ、半月ですか、この辺たたないと具体的にはそのあたりの判断の材料が出てこない。そしてそこから動き出す。それから結局、もう一回補正予算が必要であるならば補正予算を組み直す。そういう手順を踏まざるを得ないというところに、私は、今回のこの改正案の中でも一つ大きな問題点があるのではないのか。  それともう一つは、今るる細かい質問をさせてもらったのは、そこまで質問しないと、結局、ここの第四条二号のこの文章だけでは非常に抽象的な表現で、一体大蔵省がどういうものを基準にされているのかということがはっきりわからない。財政構造改革会議で決めたことが拘束力があるんだからそのとおりやりますと言われるかもわからないけれども、しかしながら、例えば、もうちょっと詰められたら詰めたらよかったのでしょうけれども、先ほど聞いていても三番目の基準も非常に幅があると思いますし、また二番目の今議論してきた基準でも、基準を一応決めているけれども非常に幅がある。  何よりも問題なのは、どちらも運用上の基準である。法律にはきちっと明記されていない。そこの部分から考えると、具体的な基準とか判断がそのときの政府の判断にゆだねられてしまうというのが一つの今回の改革法の大きな、またそういう裁量の余地が物すごくあるということが一つの大きな問題点ではないのかな、そのように私は認識しているのです。  きのうの質問にもありましたけれども、なぜ明確に弾力化の具体的な厳格な基準というものをこの第四条の二号に法文として、条文として盛り込まれなかったのか、そのあたりについて明快な御答弁をいただきたいと思います。
  222. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  法律におきましては、「経済活動の著しい停滞」「国内総生産の伸び率の低い事態が継続する等の政令で定める状況」という規定が入っておるわけでございます。その具体的な内容につきましては財政構造改革会議で明らかになっておりまして、さらにこれを政令で定めることとしているわけでございます。  これをどの程度法律に書き、どこまで政令で書くかというのは、ある意味では立法政策の問題かもしれませんけれども、やはり基本的なところは法律、それからある程度、例えばGDPの基準とかこういうものは、やはり規定ぶりそのものが技術的なものでございますし、一般的には政令の規定になじむのではないかと考えております。  それから、もともとこれはあくまでもトリガーでございまして、このトリガーに該当すると、まず予算編成権を持つ政府がこのような対策を打つかどうかを検討し判断する、その上で、対策を打つことを決定した場合には、今度は国会の御承認をいただくということでございます。  これは実はアメリカの場合も同じでございまして、アメリカも同じような基準があるわけでございますけれども、過去において、その基準に該当したときに、予算編成権を持つ議会がそれを発動するかどうか議論が行われまして、結論としては、基準に該当したけれども発動しないという決定をしたこともございます。  ということでございまして、一次的には、このトリガー、基準に該当した場合には内閣が検討し、その発動をすると決定したときにはさらに国会の御承認をいただくということでございます。
  223. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 今、主計局長の答弁でアメリカの例も引かれましたけれども、アメリカのOBRAの場合、弾力条項の発動自体は議会に議決権があるのですね。ところが、私の認識しているところ、今回の改正案にはそういうものは一切ありません。  しかしながら、今までの答弁を聞いていると、補正予算を出すからそれが結果的には議会の承認になるんだ、そういう認識をしておるのですけれども、そのとおりでよろしいですか。
  224. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 その点はまさに日本とアメリカとの制度の違いでございまして、我が国の場合は、憲法上、予算編成権は内閣にあるということでございますので、一次的には政府が予算をつくって、そしてそれを国会へ提出して国会の御承認をいただく。他方、アメリカの場合は、政府には予算編成権がございません。議会にあるわけでございます。ということで、そこに違いが出てくるのではないかと考えております。
  225. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 細かく言うと仕組みはそのとおりなんですけれども、要するに、例えば我々野党が、我々は反対していますが、今回の財革法が具体的に改正案が通ったとして、弾力化には賛成である、しかし、その結果、その弾力化を受けて出てきた補正予算案には反対である、そういうケースも十分出るわけですね。だから、まず弾力化するかどうかというところをやはりきちっと国会の判断に仰ぐということも必要なんじゃないですか。  さきのアメリカの場合は、弾力条項に、基準に合うので議会に出した、しかしそれを議会で否決された例もあるというように、まず弾力化すべきかどうかというところを議会にきちっとかける、国会にかける、その上で補正予算補正予算案として別にきちっと議論すべき筋合いのものなんじゃないですか。その辺についてはどういうように考えておられるか、お尋ねしたいと思います。
  226. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 経済政策の発動についての基本的な考え方でございますが、三つの指標でカバーをするという考え方そのものが、見方によってはいかがかという観点もあると私は思っております。  しかし、一応のめどとして、生き物の経済をこの数字三つで一応判断をして、必要な対策をおくれない状況のもとにとるという考え方で、こういう指標を一応決めているわけでございまして、政府が決定をし、国会に提案をした弾力化及びそれに伴います補正予算、あるいはそれに関連する法案等につきまして、議会で議論をしていただき、御賛同をいただけるかどうかの検討をしていただくということでございますので、経済政策を生き物である経済の状況に応じて機動的にやるという趣旨から考えますと、やはり原案程度のところがぎりぎりの限界かなというふうに感ずる次第でございます。
  227. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 だから、結局、我々国会の判断としては、今回の改正案でいうと、まず弾力化を発動し、そして結果として出てきたこの赤字国債、枠を外して発行して、補正予算案、これをトータルとして見て判断せざるを得ない。そういう改正案仕組みになっている、私はそのように認識している。まあ、それでいいというならそれでいいのですけれども、私は、そこはもう一段階必要ではないのか、そういう主張を先ほど来している。これには意見が分かれるところなので、いずれにしろ、これ以上聞きませんけれども。  ただ、私はもう一回財革法そのものを、どういうものだったのかということをもう一回振り返りますと、私たちは財革法そのものをもともと反対でしたけれども、これは棚に上げて、この財革法のねらいというのは、ある角度から見ると、政府が提出するここ数年度分の予算の大枠というものをあらかじめ国会が法律で縛ってしまう、悪い言葉で言うと。ある程度大枠を決めてしまう、そういう部分だったと思うのですよ。  ところが、今回の改正案では、先ほども言いましたけれども、まあ経済は生き物だというように長官は言われましたが、政府が弾力化を判断して、政府の判断一つで、ある程度の最低限の基準は設けておられますけれども、時の内閣の裁量で、判断で弾力化ができる部分が相当ある。  この改正案が通ってしまうと、そういう意味でいうと、もともと国会で縛っていた、議決で縛っていたその法律自体の存在意義というものが政府の裁量で相当変わる部分も出てくるから、法律自体の存在意義が失われる部分があるのじゃないのかな、そのように私は感じるのですけれども、そのようには大臣は感じられませんか。
  228. 松永光

    ○松永国務大臣 御存じのとおり、財政構造改革の当面の目標を二〇〇五年にさせていただくというのと、それから特例公債の発行について前年度よりも縮減するというそれを、特殊例外の場合にはその枠を外すということ、それから社会保障関係費について十一年度に限っての措置として極力縮減、こういったことにさせていただく、以上三つが今度の改正をお願いしている改正事項であります。  その他は当初の法律のとおりということでありますので、やはりこの財政構造改革法で、先ほど委員指摘のとおり、財政構造改革のためにこの法律によって相当程度、いや応なしに、かつ一切の聖域なしに歳出の改革と縮減をせなければならぬという法律の縛り、それは原則残っておるといりことでありますから、したがって、政府の判断の幅が広がったというようなことはないのじゃなかろうか、こういうふうに思います。  強いて言えば、二〇〇三年が二〇〇五年に延びたという点は、広がったといえば広がったことになるでしょうが、その他の点はそう変わらない、こう思っています。
  229. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それと、私は、今回の改正法案、先ほどの質問者と重なる部分もありますが、もう一つは、一たん弾力条項を発動した後に、弾力条項の適用を打ち切って本来の規定に戻す、そのときの基準も含めてどうするのかという部分がこの法律には明記されていない。そこの部分をもう一回、先ほどの質問者と重なりますけれども、明快に、わかるように、どういうように政府として今考えておられるのか、お答え願いたいと思います。
  230. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  先ほどから御答弁申し上げておりますように、この基準に該当した場合が、これはトリガーでございまして、その上で政府として対策を打つべきかどうか、それで必要とある場合には打って、国会の御承認をいただくということでございます。  したがって、その段階で、対策あるいは予算を出す段階で一つ判断が行われているわけでございまして、仮にその状況が続いた場合に、さらにもう一度対策を打つかどうかというのは、その段階、予算編成の都度考えていくということになろうかと思います。
  231. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私は、さっきから大蔵の話ばかり出して申しわけないのですけれども、アメリカの場合は、そういう国民性なのかわかりませんが、割とすっきりしていて、原則として弾力化から一年たった後の最初の会計年度には本来の規定に戻す、そういうように規定しているわけですね。  今回、そこが日本の場合は違うのだと言われたらそれまでかもわかりませんけれども、一たん停止した執行を再開する際の基準もよくわからないし、特にマスコミなんかも言っているのは、結局、その都度その都度、予算編成の都度判断していくなら、時の政府によって、財革法がせっかく法律として決まったけれども、弾力条項が発動されたまま、なし崩し的になっていくのではないのかな、そういう懸念を持っているわけですね。  例えば、先ほどの発動するときの基準、経済状態一つ見ても大きく三つありました。そういうものに似たような何らかの、こういう経済状態になっているから、もとの規定で、財革法できちっと枠をはめてやっていきましょう、そういう基準がやはり何らかの形で必要ではないのかなという感じがしておるのですが、そのあたりについて、大蔵省、どのように考えておられるのかをお尋ねしたいと思います。
  232. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  予算の性格上、一たん特例債が前年度よりふえますと、例えば、今回の補正では前年度の特例債発行額をもう上回る補正予算をお願いしているわけでございますが、そうしますと、これは景気がよくなったとしても、多分、前年度より、この状況は、弾力条項によって法律上許された形の状態が少なくともその一年間は続くわけでございます。  そういうことでございますので、このような弾力条項の発動が必要かどうかというのは、その予算編成の都度、要するに補正予算なりを組む段階で、それがそもそも必要なのかどうかということで判断していかざるを得ない。ここでもうこの状況は終わりというようなことよりも、むしろこれは予算編成に絡む話でございますので、その予算編成の都度総合的に判断していかざるを得ないのではないかと考えています。  それから、こういう弾力条項があれば安易に何でもできるじゃないかという御指摘があるかと思いますが、さはさりながら、これはGDP比率三%以下にしなくてはいけないとか、あるいは特例債をゼロにしなければいけないという財政の目標があるわけでございますので、その途中、安易に何でもしてもいいということにはならないし、財政当局としては、当然のことながら、やはり財政運営には厳しい姿勢で当たっていかなくてはいけない、財政の合理化を進めていかなくてはならないという考え方でございますので、安易なことは全く考えておりません。
  233. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 わかりました。  法案に絡んではこれで一応質問を終わりまして、続いて、補正予算のことで、確認も含めて質問をさせていただきたいんです。  今ちょっと席にいらっしゃいませんが、私も昨年の臨時国会のときの財政構造改革の特別委員会の議事録をもう一度最初からざっと読み直させていただいたんですけれども、そのときに、きょう理事で頑張っておられる自民党の甘利委員の御質問に対して、当時の三塚大蔵大臣が、補正予算について次のように答えておられるんですね。  要するに、甘利委員が、「補正予算については安易な編成はしないのだということとされているわけでありますけれども、しかし、災害復旧はこの限りではないわけでありまして、その際に便乗して補正がかなり膨らんでいきはしないかという懸念が指摘をされているわけであります。」と。それに対して当時の三塚大蔵大臣が、「二十九条」これは財政法二十九条のことを言っておりますが「御案内のとおり、「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費の支出」。御指摘のように災害であります。予見しない事由によりまして、人命そして地域が崩壊の危機にさらされた。二次災害を防ぎ、人命のとうとさをさらに確認をするという意味で緊急災害事業、直ちに補正国会というのもいっかあったような気がいたします」という答弁をされておるんです。  きょう、法制局、来ておられると思うんですけれども、来ておられますね。まず、この財政法二十九条の「予算作成後に生じた事由」というのは、もう一回確認ですが、政府としてどのようにここの部分を解釈されているのか、お尋ねしたいと思います。
  234. 阪田雅裕

    ○阪田政府委員 お答え申し上げます。  ほとんど字句どおりということでありますけれども、若干、平たくといいますか敷衍して申し上げますと、当初予算その他、ある一つ予算作成後に発生した事態、今の災害のようなものは事態というふうにとらまえることができようかと思いますが、あるいは情勢の変化、そういったものに対処するため、その年度内に追加することがぜひとも必要となった経費といったような意味合いであろうかと思っております。
  235. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 同じ質問になるんですけれども、大蔵省は、今の法制局の通り一遍の解釈、紹介されましたけれども、要するに「予算作成後に生じた事由」というのは、その上でどういうように大蔵省としては解釈されておるのか、お尋ねしたいと思います。
  236. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  「予算作成後に生じた事由に基づき特に緊要となった経費」ということでございます。この場合の「特に緊要となった経費」というのは、予算作成後に生じた諸情勢の変化に対し、当該年度内に執行することが必要となった経費をいうと我々は解しております。
  237. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 諸情勢の変化に対しというのは、そうすると、ちょっとこれ、総理、いらっしゃらないんですけれどもね。  総理は総合経済対策のきっかけになった四月九日の記者会見で、私は今国民の皆様の景気をよくしてほしいという強い御要請と御期待にこたえるために、構造改革を推進しながら云々と、今回こういうことをすることになったということを言われているんですが、ここの部分でいうと、諸情勢の変化というのは、国民の皆様の景気をよくしてほしいという強い御要請と御期待にこたえるためにという、そういうことが大蔵省の言う諸情勢の変化だというようにとらえてよろしいんですか。
  238. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 今回の総合経済対策補正予算補正事由でございますが、これは、予算作成後に生じた事由といたしましては、インドネシアなどのアジアの経済金融情勢の影響、それから大型金融機関の破綻やいわゆる貸し渋り等による家計や企業の景況感等の悪化の影響等が、本年に入ってから実体経済全体にまで影響を及ぼし、景気が停滞して一層厳しさを増している、こういうことが十-十二月のQE、これは三月に出てきたわけですけれども、それから同じく三月に出てまいりました日銀短観、さらには失業率といった新たな経済指標により判明した、これが該当するものと考えております。
  239. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 これは何回も議論があったのですけれども、今主計局長が説明された、インドネシアを初めとした東南アジアのそういう危機ですね、さらには大型金融関係、山一とか北拓とかそういう倒産というのは、事実としては予算編成前ですよね。そういうものによっての経済の影響というものが今回の補正予算のきっかけであった、そういうように解釈していいんでしょうか。これは大臣、首を振っておられるんで、大蔵大臣
  240. 松永光

    ○松永国務大臣 前にも答えたことがあると思いますが、事件の発生は前ですけれども、その影響が本年に入ってから実体経済全体にまで影響を及ぼし云々、こうなるわけでありまして、激しい影響というものが出てきたのは、そしてその結果、失業率の問題あるいはQEや日銀短観の問題等々が明らかになってきたのが本予算編成後である、ことしになってからである。こういうことに考えておるわけであります。
  241. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 そうすると、今回のケースのような形で補正を組むということ、過去にはあったかもわかりませんけれども、そうなると、事件の発生が予算前でも、今後とも、その影響によってやはり経済が著しい停滞を起こしたとか、また景気対策が必要である、そういう事態が起こってきた、そういう場合には、これからも十分そのことを理由として、法律用語で言うと事由として、補正予算はこれからもどんどんこういうことは組んでいくんだ、そういうものであるというようにお受けとめしてよろしいでしょうか。
  242. 松永光

    ○松永国務大臣 これは恐縮ですけれども、先ほど局長が答弁したこととほぼ同じ内容になるわけでありますが、財政法二十九条の解釈としては、予算作成後に生じた諸情勢の変化に対応し、当該年度内に執行することが必要となった経費について編成するわけでありますが、その場合の諸情勢の変化は、事件そのものは前であっても、重大な影響がその後に発生してきたという場合ならば、二十九条の解釈として補正予算が組めるというふうに思うわけであります。     〔村井委員長代理退席、委員長着席〕
  243. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 わかりました。  それで、その上で、もう一点ちょっと大蔵省に聞いておきたいのは、補正予算を組む場合に、補正予算に計上してもいいものと、逆に計上してはいけないもの、そういうものを大蔵省としてきちっと立て分けておられるのかどうか、そのことをまずお尋ねしたいと思うんです。
  244. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  財政法の二十九条の規定に基づきまして、補正事由に当たるかどうかという判断をするわけでございまして、したがいまして、これは補正予算は絶対だめという経費をあらかじめ具体的に申し上げることはなかなか難しいかと存じます。
  245. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 先ほども言いましたが、私は昨年の十月からの議論をずっと見ておりまして、ふと、おもしろい部分というか、そういう部分に突き当たったわけです。  これは経企庁長官にお尋ねしたいのですけれども、今回、総合経済対策ということで三つの柱を立てて打ち出した。総額約十六兆円、そういう話をされておるのですね。ところが、十月二十日、冒頭の財政構造改革に関する特別委員会で、尾身長官は、もう既にそのときに、今回の三つの柱のうち二つぐらいが経済構造改革をするためには必要であると。  これはどういうことを言われているのかというと、民間部門を中心とした経済活動を活発化するのだ、そのためには、経済構造改革を進めるために三点考えていると。  一つは、ほかの国とイコールフッティングで企業活動ができるような経済の環境を整える。例としては、法人課税の問題とか有価証券取引税の問題とかをそのときに言われているのですね。二つ目は、非常に景気のいわば足かせになっております不良債権というしこりを取り除くことである、そのように言われているのです。そのために土地取引の活発化を進めるのだとか、土地の流動化を進めるのだという話をそのときにされている。三つ目に、規制緩和をして、新しいベンチャーを育てるとか新しい経済活動を活発化する。  この三つとも、今回の総合経済対策の一番目の内需拡大にも関連するのかもわかりませんが、特に二番目、三番目ですね、ここの部分に相当することを、既に昨年の予算編成の前の十月の時点で尾身長官は言われていたのですね。  なぜ今の段階で、補正予算の段階でそういうことを盛り込まれてこられるのかなと。もっとやはり、あの時点なら、まだ一月に予算を出す前に尾身長官がそういう観点から、今年度の本予算をこうすべきであるという形できちっと織り込めたのではないのかな、そのように私は思うのですけれども、尾身長官はどのように考えておられますか。
  246. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 十月二十日ごろの段階で、ただいま佐藤委員の言われましたようなことを私自身は考えておりまして、そのことが日本経済の問題の基本的な解決に必要であるというふうに考え、また、答弁も申し上げました。  したがいまして、例えば法人課税の問題にいたしましても、法人税の実効税率を三・六%引き下げるということをやったわけでありますが、まだ足らないというのが正直なところ実際でございまして、今後三年間に国際水準並みにするということを今回正式に決めていただいた、こういうことでございます。  それから、有価証券取引税につきましても、当面半分にして、あとの半分は、たしかあと一年半か半年後かにやるということに決めたわけでありますけれども、その間に残りの半分もなくする。  それから、不良債権処理につきましては、地価税の凍結、それから土地譲渡益課税の大幅軽減をいたしました。この点につきましてはそういう対策をしたのでありますけれども、しかし、その後の状況等を見てみますと、不良債権のしこりというのが経済の大きな足かせになっているという実態でございまして、このたびの総合経済対策においては、特にトータルプランとして臨時不動産関係権利調整委員会を設置するとか、あるいはこれは前にもちょっと決めましたのですが、資産担保証券の発行によりまして不動産の証券化を図るとかいうことを決めましたし、また、このたびの予算におきましては、住宅・都市整備公団における土地取得のための公的資金を活用する新たな仕組みの整備、またそのための予算の確保等をしているところでございます。  さらに、都市再開発につきましても、開銀の融資保証あるいは住宅金融公庫の融資保険業務の拡充等を行う。あるいは、防災、福祉、中心市街地等について、国、地方公共団体公共用地の先行取得を拡充する。さらに、都市再開発についてPFIの手法を用いる等々、トータルプランとしての対策をやるということでございまして、規制緩和も、ベンチャーも、今度さらに充実をいたしました。  全体として、私自身の感じといたしましては、現在の経済の状況に応じて財政出動を片方でやりながら中長期的にわたって経済の体質改善を図って、二十一世紀に向かって民間活力中心の経済に持っていくという大きな方向が、昨年の暮れ以上にはっきり出されているというふうに考えております。     〔委員長退席、村田(吉)委員長代理着席〕
  247. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私がこのことを通して言いたいのは、要するに、当初予算にはキャップがかかる。発想としては長官も、十月二十日のこの答弁でも残っているように、経済をこうしないといけないというようなことを持っておられた。  しかし、当初予算にはキャップがかかるので、こういう形で、名前は総合経済対策であろうと何であろうといいのですが、補正予算のときにこういう形で今後とも景気対策と銘打って、例えば今回は十六兆円規模ですけれども、それでだめなら、だめならということを考えておられないという答弁かもわかりませんけれども、当初予算のときにキャップがかかるので補正予算で、考えておられる経済対策、少々時間が延びても打っていこう、そういうように今後ともなっていくのではないのかな、そういう懸念を私は持っているのですけれども。  長官は、二度とそういう形じゃなくて、今後はできれば当初予算でそういう経済に対しての対策なんかはきちっと打っていきますという考えですか。その辺、ちょっとはっきりさせていただきたいと思います。
  248. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 経済の実情に応じて適宜適切な対応をするということでございまして、来年度のことまで今から何とも申し上げるわけにいかないわけでありますけれども、しかし、財政改革法案、改正されるべき財政改革法案のもとで必要な対策をしていくというのが、今後長期の課題であると考えております。  現在の提案をしております補正予算そのものは、当面の財政出動によります景気刺激策と同時に、二十一世紀に向かって不良債権の処理を進め、そして経済構造改革を進め、ベンチャーを育てるというような意味におきまして、民間活力中心の経済活性化の方向に向かって日本経済が進み得る大きな手だては講じているというふうに考えております。
  249. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私は、今回の事情を通しても、やはり二度とこういう形ではなくて、財政構造改革を本当にやるというのなら、補正も含めてきちっとある程度大きな枠の中でやっていくべきだろう、そういうふうに私自身は申し上げておきたいと思います。  その上で、防衛庁長官、きょうお忙しいところお越しいただいているので、ちょっとお聞きしたいのですけれども、これは五月十二日の読売新聞によると、今回の総合政策の中で景気対策として防衛費七十四億円が盛り込まれた、そういうふうに報道されているのですけれども、それは事実でしょうか。まず長官、お答え願いたいと思います。
  250. 久間章生

    ○久間国務大臣 今度の補正予算の中に七十四億円は盛り込まれております。景気対策になるかどうかですけれども総合経済対策の一環にはなるというふうに私どもは思っております。
  251. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それは、内容的にはどういうものですか。
  252. 久間章生

    ○久間国務大臣 御承知のとおり、基地周辺対策費として防音工事をやっておりますけれども、この防音工事につきましては、まだまだやらなければならないものが結構あるわけでございます。そういうものについては、この際、いわゆる環境対策の一環としてやらせていただくということでございます。  それともう一つは、今防衛費につきましては取得価格が非常に高いという問題がございますが、これは単に取得するときの価格だけではなくて、その後のライフサイクルコストも一緒に考えていろいろ考えなければならないというふうにかねてから思っておりまして、これにつきまして、いわゆるCALS化をしようということで今進めております。これは、まさにここで言います情報通信の高度化に資する事業であるということで、これをお願いして補正予算に組んでもらったところであります。  それぞれ、住宅防音が四十二億円で、CALS化の推進が三十二億円で、合計七十四億円でございます。
  253. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私は、今回の防衛関係費ですけれども、この内容自体は、それぞれ騒音防止事業であるし、また一つはCALS、これは私が前に安全保障委員会でも、そういうものをきちっとアメリカのことを勉強して装備していくべきであるということを訴えて、私は当然今後とも日本としてやらないといけない内容ではあると思うのです。  ところが、今回の総合経済対策の中では、そういうものが、例えば説明資料の中でも一つも表面化せずに、具体的には基地周辺の騒音防止事業というのは環境・新エネルギー特別対策費という枠に入っているのです。もう一つは、CALSについては情報通信高度化・科学技術振興特別対策費の枠でこれは計上されているのですね。  私自身は、防衛庁も応援したいし、自衛隊の方々にも本当に頑張っていただきたい、そういう意見を持っているのです。これは反対の立場から言っているわけじゃないのですけれども、でもやはり、本当にそういう防衛関係費としてこの七十四億、今の二つ事業が必要であるというならば、やはり本予算の中で、例えば今回の当初予算でもよかったのですよ、また来年度でもいいのですけれども、ほかのものを削ってでも堂々と入れるべき代物ではないのかな、私はそのように思っておるのです。  防衛庁長官、なぜ今回の総合経済対策の中で、わざわざ名前を変えて、こういう形で盛り込まれたのか。私は、本予算の中できちっと盛り込むべきではないのかな、そういうふうに思うのですが、いかがでしょうか。
  254. 久間章生

    ○久間国務大臣 名前をわざわざなぜ出さなかったかということでございますけれども、全体の大枠の中では七十四億円、しかも三十二億円と四十二億円でございますから、規模的にも非常に小さいので、ほかの事業の、言うなれば何々等の等に入るような、そういうささやかなものでございますので、あえて柱立てするほどのことができなかったわけでございます。  それと、当初予算にということでございますけれども、なかなか当初予算も厳しい中で予算編成をやりまして、その後に、やはり住宅防音等につきましては非常に要求も強く出てまいりました。私どもはもちろん、五カ年計画のいわゆる中期防の枠内でこれはやっているわけでございまして、計画的にやっているわけでございますけれども、やはりこういうものにつきましてはできるだけ早くやる方がいいというようなことで、ちょうど総合経済対策の一環としてこれも取り込んでもらえるということになりましたので、大蔵の方にも要求して取りまとめさせていただいたわけでございます。
  255. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私は、ちょっと過去のことを調べますと、補正予算で防衛費というものを今まで入れたことがあるのか一そうすると、九五年から九六年というのは、阪神・淡路大震災があったので、その特例措置の関連費として入れられている。九七年度は、これは外交的な理由、国際情勢の理由で、対人地雷廃絶関連費というものが九七年度にはほうり込まれているのですね。私は、これはそれなりに補正に入れる特例として意味があったと思うのですよ。それ以外は補正の中に防衛費というのは計上されなかった、そういうふうに私は認識しているのです。  今回のこの形で、新社会資本整備の一環という名目でほうり込んでしまうことについては、やはりそれまでの前例を全く破ってしまうのではないのかな、そんなように私は思うのですが、これからも防衛関係費がこのような形で、総合経済対策の一環として、新社会資本整備という形で、隠れた形で盛り込まれていく、またそういう道筋をつくったことになるのかどうか。そのあたりについて、今回は特例なのだ、そういうことなのかどうなのか、ちょっと御説明をいただきたいと思います。
  256. 久間章生

    ○久間国務大臣 私は、何も特例ということではなくて、その時々におきます補正予算の編成方針なり、その要望に沿って認めていただければ組み込んでいけばいいのじゃないか、防衛関係費だから補正で組んではだめだということではなくて、必要性に応じてはやはりやっていくべきじゃないか、そういうふうに思っております。  先ほど言われましたように、阪神大震災のときも、それに伴いますいろいろな輸送のための経費でございますとか通信のための経費でございますとか、そういうものをやったわけでございまして、私は、やはりその時々の必要につきましては遠慮せずに要求すべきことは要求して、また国会にもそれを提案して、補正予算に組んでもらっていいのじゃないかというふうに思っているわけでございます。
  257. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、せっかく防衛庁長官にお越しいただいたので、同時代で、ずっと、いろいろ政府が手を打たれている問題についてちよっとお聞きしたいので、もしかすると、自治大臣地方単独事業のことをお聞きしたがったのですが、そこまでいかないかもわかりませんが、御了承いただきたいと思います。  経済企画庁長官、済みません、あしたまた経済の見通し等については別の委員会でお聞きしたいと思いますので、御退席いただいて結構でございます。  それで、具体的に、きのうからきようにかけて、テレビのニュース等をかけても、自衛隊機が最初二機で、さらに四機追加して、インドネシアの邦人救出のためにどんどん派遣されていく、そういうニュースが流れているのですけれども、まず、そのあたりの状況について、防衛庁長官、御説明いただきたいと思います。
  258. 久間章生

    ○久間国務大臣 五月の十五日に関係閣僚会議を開きまして、インドネシアにおきます邦人の救出といいますか、そういう事態になったときにどうするかということで、やはり万一自衛隊機を派遣するような場合に緊急な対応ができるよう態勢整備をしておくべきだという話が持たれまして、そしてそれを受けまして、十七日に、外務大臣から、自衛隊法第百条の八の規定に基づき、インドネシアにおる邦人の輸送を依頼する可能性があるので所要の準備を行うよう依頼があったわけでございます。  そして、その後の推移を見ておりましたら比較的安定しておりまして、しかも、同じ関係閣僚会議のときに、民間機をできるだけたくさん出すようにしようということで、まず民間機を派遣するようなことを決めまして、それに基づきまして運輸大臣の方から関係会社の方に要請をしてもらいまして、臨時便を大分出していただきました。その後、臨時便にたくさん乗られて、大体順調に国内に帰ってきておられるわけでございます。  しかしながら、御承知のとおり、二十日に、いわゆる覚せいの日という独立記念日の大きなデモが予定されておりまして、かなりの規模になるのじゃないかという、そういうことがございましたために、やはりそれに対して、万一の場合に備えて前進待機をしておくべきじゃないかというような、そういう判断を外務大臣の方でされまして、外務大臣から、準備に万全を期すため、自衛隊輸送機のシンガポール・パヤレバ空軍基地への移動について、向こうの同意が得られたので対処願いたい旨の依頼がございました。  それを受けまして、うちの方でもすぐ手配をいたしまして、C130H型輸送機というのを二機、まずきのう出しまして、そしてきょう、四機、小牧空港から出したわけでございます。このC130というのは、御承知のとおり、人数は八十人乗りで少のうございますけれども、足の非常に強いところで、万一、民間機、要するにジャンボ等がおりられなくなりましても、C130なら着陸ができる、滑走路も短くてもいい。そしてこれはバックもできますので、駐機場が狭くてもいい、そういう性能もございます。  ただ、八十人乗りでございますから、これは長い距離も飛べませんので、近くの方でピストン輸送をすることによって、六機で八十人だと四百八十人でございますから、それでピストン輸送をしたらかなりの人たちが運べる。しかも、満杯にならなくても、ジャンボでございますと、政府専用機みたいなものでございますと全員乗って飛ばなければ効率が悪いわけですけれども、これは八十人乗ったらすぐ出られるという、そういうこともございまして、これで運用しようということで、今それを向かわせているところでございまして、きょうじゅうにはシンガポールに着くような手はずになっております。  ただ、私どもとすれば、願わくはそういう混乱がなくて、今民間機で皆さん帰って、脱出しておられるわけでございますので、そういう形でスムーズにいきまして、これがもし空振りになってもかえってその方がいいのじゃないかというようなそういう思いの中で、ただ、万一の場合に備えて万全を期すということでやっております。  これがもし百条の八で本当にインドネシアに行くということになりますと、改めて閣議決定等をして、正式に外務大臣から文書で依頼をもらいまして、それに基づいてそういう邦人輸送を行うという、そういうような手はずをすることになっております。
  259. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 それで、ちょっと今のことで関連して、残り五分なので聞きたいのです。  一つは、これは昨年もあったのですけれども、百条の八の準備行為という考え方ですね。私どもは、ここに村井委員もいらっしゃいますが、村井委員と前、新進党で一緒だったときに対案をつくったことがあります。それは要するに、派遣の事前準備行為について、今の百条の八を改正してきちっと入れるべきではないのかと。  具体的に言うとどういうことかというと、百条の八の二項を改正して、長官は同項に規定する緊急事態の発生のおそれが著しい場合において云々、あとは外務大臣から云々、そういう、準備行為というものをきちっと法律に明記すべきではないのか。そうでないと、今回もやはり同じようにマスコミから法的根拠は何だというようなことを書かれて、いや、これは百条の八の準備行為として行くのだ、ぎりぎりになって内規で決めたのだ、そんなことが書かれるわけです。  そうではなくて、やはりきちっと、今回残念ながらガイドライン関連の法整備にはありませんでしたけれども、百条の八の改正をして準備行為というものをきちっと入れるべきではないのかな、そのように私は思うのですが、長官はどのように考えておられますか。
  260. 久間章生

    ○久間国務大臣 何かをするときの準備というのは非常にたくさんあるわけでございます。それで、そのうちのどれをとって準備行為として法律要件にするかどうかというのは、これはなかなか議論のあるところだと思います。  したがいまして、現在の法律は、とにかく最終的にこういう目的でこういうことをするということを、それはやってよろしいという、そういう法律をつくって、しかもそのための手順を、外務大臣から要請があって、しかも安全の確保について協議して云々ということになっているわけでございます。  そういう最終の目的をきちんとしておけば、その前の段階での準備というのはいろいろなことがありますので、そのそれぞれを法定しなくてもいいのではないか。そういう考えのもとに、私どもは、現在の法律に基づいて百条の八で十分対応できる、その前の準備としてはいろいろあるであろうと。  海外に行くことについてどうかということでございますけれども、海外に行くことは、ほかのことでもたくさん行っておるわけでございますので、行くことそのものが悪いならこれはまた法定する必要はあるかもしれませんけれども、そうではございませんので、やる最終の目的をきちっと法定しておけばいいのではないか、そういうふうに思っているわけでございます。
  261. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 私はちょっと長官と違いまして、準備行為といえどもやはり何らかの事故等に遭う可能性も十分あるわけで、その行為自体が法的にきちっとした根拠に基づいて動いた行為であるのかどうかということがやはり大事だと私は思っております。これは、きょうここは別の委員会なので、また今後議論していきたいと思うのですけれども。  もう一つは、なぜ今回、政府専用機ではなくて、いきなり自衛隊機なのか。  例えば、法律をそのまま読みますと、百条の八の二項は、まずやはり「前項の輸送は、第百条の五第二項の規定により保有する航空機」これは政府専用機のことですけれども「により行うものとする。」それで、ただし書きで自衛隊機の使用というものを書いているのですね。ところが今回、政府専用機ではなくて、いきなり自衛隊機というものがなぜ派遣されたのか。  そのあたりについて、防衛庁長官はどのように見ておられるのか、お答えいただきたいと思います。
  262. 久間章生

    ○久間国務大臣 一つには、政府専用機は総理がこの間バーミンガムのサミットに出ておるときに使っておった、そういうこともございます。  それと同時に、政府専用機が使えるような状態でございますと、今度の場合、民間機がそのまま運行しておるわけでございます。むしろ、万一のことを考えますときに、いわゆる政府専用機みたいな大きい飛行機が使えなくなる、そういうような可能性があるかもしれない。そうなったときに、今言いましたように、C130H型輸送機の方が非常に効率がいいんじゃないか、そういうようなことも考えました。  民間機が今どんどん離発着していますあの空港がそのまま使えた場合はいいわけでございますけれども、使えたとしても、非常に下が傷んだ場合なんかは、舗装のところが傷みますと、この間のカンボジアもそうでございましたけれども、C130だったらかなり路盤が悪くても離発着てきる、そういう利点もございまして、それらを総合的に勘案して、今回C130でやろうということを決心したわけでございます。
  263. 佐藤茂樹

    佐藤(茂)委員 時間が参りましたので、質問を終わります。  自治大臣、済みません、長々とお待たせして。地方単独事業、もし次の質問の機会がありましたら質問させていただきたいと思います。ありがとうございました。
  264. 村田吉隆

    ○村田(吉)委員長代理 これにて佐藤君の質疑は終了いたしました。  次に、春名直章君。
  265. 春名直章

    春名委員 日本共産党の春名直章でございます。  自治大臣には単独事業のことを詳しく聞きますので、これから登場していただくようになると思います。よろしくお願いします。  私は、主に今度の景気対策地方財政などの問題について、中心的に伺っていきたいと思っております。  まず、地方単独事業の総額が一・五兆円ですね。これが今度の対策の中に入っていますが、どういう経緯でこの金額になったかをまず御説明いただけますか。     〔村田(吉)委員長代理退席、委員長着席〕
  266. 上杉光弘

    上杉国務大臣 総合経済対策の決定に際しましては、非常に厳しい地方財政状況にかんがみまして、地方団体の代表の皆さんと会うなど、種々の機会を通じて、地方実態状況を把握したところでございます。  地方単独事業追加規模一兆五千億についてでございますが、一つには、過去の経済対策における地方単独事業追加要請の規模補正予算状況二つには、公共事業のみでなく地方単独事業等の円滑な実施にも資するように、臨時特例措置としての交付税増額、これは四千億でございますが、これを図ることなどを総合的に勘案して設定いたしたものでございます。  地方団体に対しましては、厳しい地方財政状況が少しでもよくなるという、そのためには税の増収期待しなければなりませんから、公経済両輪一つとして、地方財政が幾ら苦しくとも、地方経済をよくするために、できるだけ理解をいただきまして、御協力をいただくように努力をいたしたところでございます。
  267. 春名直章

    春名委員 それで、公経済両輪なので理解もいただかなければいけないということで、その面はまた後でちょっと議論をしたいのですけれども。  今回のこの一兆五千億円の決め方を拝見していますと、四月十五日の日経新聞には、自民党の地方行政部会の方で、まず単独事業追加については八千億円程度になる見通したというのが報道されています。二日後の十七日の日本経済新聞には、それが単独事業で一兆円になるだろうと、二日後には一兆円になっております。そして今回出されてきたのが一兆五千億円ということになっているわけでありまして、数字が出始めてから、金額は倍近くに膨らんでいるわけですね。  だから、いろいろなことを勘案されているということは確かにそれはそうかもしれませんが、私は、どんどん膨らませてきたという印象を非常に持たざるを得ないわけでありますが、そういうことはないのでしょうか。大臣、どうでしょう。
  268. 上杉光弘

    上杉国務大臣 私はそういうふうには思っておりません。党、与党三党の協議もこれあり、また橋本総理の判断も含めて、そのような方向がなされたものと存じております。
  269. 春名直章

    春名委員 それでは、もう一つ角度を変えて聞きますが、今回の一兆五千億円は、おのおのの事業の必要性、それから地方からのさまざまな要請、必要な事業の積み上げというような作業はなかなか時間的には大変だったと思うのですが、そんなことはやられたのですか。
  270. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 今回の一兆五千億という地方団体に対します追加要請の額は、先ほど大臣から答弁がありましたような、そういう状況、事情を背景にいたして決めております。その過程で私ども地方団体財政責任者といろいろ意見の交換等を行っておりますが、一兆五千億という数字を決めるときに、事業の種目ごとに積み上げて数字を決めたということではございませんで、いろいろな状況のやりとりの中から、その感じをつかみながら、過去の経済対策規模等を考慮して決めたということでございます。
  271. 春名直章

    春名委員 今、種目ごとに積み上げたのではないということをおっしゃいましたので、確認をしておきたいと思います。  全国知事会の事務局にお話を聞いてみました。確かに、協力せにゃいかぬというふうにおっしゃっていました。ただ、単独事業追加については、下から盛り上がっているわけではございません、こうはっきりおっしゃっております。  そこで、自治省にお聞きをしておきます。今年度の都道府県の当初予算の特徴、とりわけ地方単独事業経費の特徴の内容をお示しください、簡潔で結構ですので。
  272. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 平成年度の都道府県の当初予算の特徴を簡潔に申し上げますが、予算規模は、都道府県五十三兆六千五百億円で、対前年比一・九%の増になっております。そのうちの、歳出の普通建設事業関係でございますが、骨格予算を編成いたしました三つを除きました四十四県の合計では八・四%の減少になっておりまして、そのうちの補助事業では、一〇・三%の減少になっております。したがいまして、単独事業につきましては、地方財政計画はマイナス四%ということで計上いたしておりますが、四十四県の合計では、対前年度比七・四%の減少になっております。
  273. 春名直章

    春名委員 まさにそのとおりでございまして、地方単独事業四%縮減を財政構造改革で打ち出して、その予算を決めたわけです。そして、地方自治体は、それを上回るある意味では努力といいますか、七、四%の縮減ということになりました。  ここに、岡山県の行財政懇談会の答申というのを私持ってきました。これは九七年の十月二十七日に出ているものですが、御存じのとおり、岡山県というのは全国でも指折りの大変な財政状況の県でございます。この答申の中で、こういう文章が出てくるのですね。  近年岡山県は県が単独で実施する大規模事業公共事業などを積極的に実施してきたが、その財源として多額の県債を発行してきた、こうした状況の中で、平成四年以降、国の経済対策として公共事業等が大幅に増加をし、それに伴い多額の財政負担を余儀なくされたことも重なって、現在の危機的状況に至ったものと考えられる、こういうふうに述べて、方策として、単独事業は二割程度を目標に削減しなければならない、こういうふうに目標として去年の十月言っているわけであります。  こうした努力を、努力といいますか縮減をやってきたわけですけれども、わずか一、二カ月たった今の時期に、新たに各地方団体に一兆五千億円の単独事業を積み増ししてもらうと。できる根拠が一体どこにあるのでしょうか。私はそこがどうしても納得できないわけでありまして、わずか一カ月か二カ月の間に、そういう予算を編成しておいて、六月の補正でやるのかどうかわかりませんけれども、一兆五千億国会度は積み増ししてくださいと。どこにそのできる根拠があるのでしょうか。明確にお答えください。
  274. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 御指摘のように、各県の当初予算は、十年度地方財政計画とほぼ同様の方向で、全般的に歳出の抑制という基調で編成されております。かねていろいろ議論がございますように、その片方で、今非常に大変な厳しい経済状況の中で、経済対策を打たなければいけないという状況になっておるわけでございます。  その中で、過去行いました経済対策、そういうときに地方単独事業追加要請を平成年度、五年度、七年度というふうにやってきておるわけでございます。それぞれそのときの規模、いろいろな要素を勘案しながら追加要請する規模を決めてきておりますが、結果的に、それぞれの要請いたしました金額について、地方団体補正予算で、当初以降補正計上いたしておりまして、そういう形で協力が得られておるわけでございます。そういう実績がございます。  それから、平成年度、昨年度でございますが、これは特に経済対策を要したそういう年ではございませんが、そういう年におきましても、県、市町村においては、当初予算編成後の補正予算で、単独事業追加、約一兆円の追加補正をいたしておりました。  そういうものに加えて、先ほど大臣から申しましたように、今回、交付税追加配分ということを四千億するというふうなことをあわせて決めておりまして、そういうこと全体を考え合わせますと、今の一兆五千億という数字は、地方団体の方に最大限お願いをして、御協力いただけるものというふうに我々なりに考えておるところでございます。
  275. 春名直章

    春名委員 そういう過去行ってきた対策の結果、地方財政は大変な事態になっているのですね。そこのところの反省はどこにあるのでしょうか。  私は、大体の県、いろいろ聞いてみました。確かに、協力しなければならないという声もあります。しかし、幾つか紹介しますけれども公債費負担比率が一九・九%、全国最低ランクにある富山県の担当者にお聞きをしました。平成四年から不況対策として地方自治体財政協力を求められるようになった、当時としては、一、二年の短期的措置かと考えていた、こんなに長く政府の不況対策事業地方自治体協力しなければならなくなるというのは予想外の事態である、こういうふうに言っております。  また、私の今住んでおります高知県でも、県の財政再建の問題もあるので、真に役立つ事業を精選しなければならない、無条件に国の方針を受け入れる状況にはございませんという声であります。  もっと深刻なのは、規模の小さい市町村ですね。これは、四月二十五日付の福井新聞であります。この福井新聞には何と書いてあるか。「市町村の負担ずしり」という表現で、福井市の財政課の方の言葉を紹介しております。国の財政構造改革の路線に沿って、この市は、返す以上の借り入ればしないという原則で今やってきているが、この原則が崩れかねない、再建計画ががたがたになってしまうという嘆きの声をお上げになっております。これまで何回かの経済対策で起債による事業を進めてきたが、今その償還に苦しめられているところなんですということもつけ加えておっしゃっています。  私は、こういう声に今どうこたえるのかということが問われているように思います。地方まで、国の右往左往につき合わされてたまるかというのが率直な気持ちではないでしょうか。  そこで、自治大臣に、私は別の角度から、地方自治を担われている自治大臣としてお聞きしたいのですが、こういうやり方をやることは、前の五回の経済対策から違うのは、今地方分権ということを一生懸命言っていらっしゃる、そういう方向に行こうと言っていらっしゃる、そういうときに、こんな財政上二カ月で大転換するようなことを、上から金額も決めて要請をする、私に言わせれば押しつけるですけれども、そういうふうなことが地方自治との関係で許されるのだろうか。私は、そのことに非常に疑問を持たざるを得ません。  自治大臣は、どのようにこの点お考えでしょうか。
  276. 上杉光弘

    上杉国務大臣 委員の御指摘の点と私どもの認識は違うておりまして、上から押しつけたつもりはさらさらございません。御理解を求め、協力を要請したことはございます。したがって、私どもは、極めて民主的に、地方団体の代表とも、私の方から求めて二回もお会いをし、長時間かけて意見をお聞かせいただき、御懇談を申し上げたわけでございまして、さような意味では、私どもは押しつけたという気持ちはないわけでございます。  地方分権との関係を言われましたが、地方分権が進んでいけば、国の財政地方財政、おのずと国の仕事と地方団体の仕事が仕分けをされて、これが形になってあらわれれば、当然それは財政との連動もありますし、税制との連動もあるわけでございますから、長期的に見れば当然そのことはあると思いますが、地方分権があるから上から押さえつけてやるのは逆行すべきものという意見には、そうではございませんということを申し上げざるを得ないわけでございます。  また、地方団体からいろいろな意見も寄せられておりますが、それは、私どもが例えば地方交付税の増額をいたしました、このことはまだ御理解になっていない時点のものだと思うのです。  年度途中の経済対策は、これまでの実績では、追加財源は全額地方債によって対応してまいりましたが、今回は四千億の増額を交付税でいたしまして、これによって地方債の発行は随分余裕が出た、余力が増加したものと判断をいたしております。また、追加公共事業のみならず、地方単独事業の円滑な実施にもこれは大いに資するものだと判断をいたしております。  次には、地方単独事業への財政措置でございますが、この点も、地方団体には御理解いただいていなかった時点での御意見、コメントではないかと思うのです。  通常の事業債の充当の残部分につきましては資金手当てのみ、あるいは通常の事業債の部分についてはそれぞれ通常の交付税措置だけがございました。今回は、従来の措置に加えまして、一定量以上の地方単独事業を実施する団体については、充当部分についても交付税措置つきの地方債を充当いたしたところでございまして、この点についても御理解いただいていない時点での地方団体のコメントではないか、このように考えております。
  277. 春名直章

    春名委員 御理解いただいていないからそういうコメントになるんだということですが、これは、御理解すれば余計怒ると思いますよ。  交付税特別会計借入金、四千億円の地方交付税の増額措置、これは物すごいことをやったんだとおっしゃるけれども、結局返すのは地方じゃないですか。一つ一つ地方自治体負担を押しつけるということは、今はないかもしれないけれども交付税特別会計借入金じゃありませんか。  そして、財政措置をいろいろやられたというふうにおっしゃいますけれども交付税で後で面倒を見ると言いますけれども、そういうやり方をすることが地方交付税の補助金化じゃありませんか。自由に使える固有財源でしょう、地方交付税は。こういう事実を知れば知るほど、余計おかしいじゃないかというふうになると私は思いますよ。私は、そういうことで全然納得できない。  押しつけでないというのなら、私はもっときちっと、いろいろな話を聞くというのを言われたけれども、大体総枠を決めてから、十六兆数千億円そして一兆五千億円の総枠をお決めになってからこれを要請に行った、こういう形になっているじゃないですか。そして、意見を聞いて、いろいろな財政措置もしてほしいということだったので、それで手当てをするということでやったのかもしれないけれども、そもそもそこから出発しているわけであって、そういう言いわけは通用しないということを私は指摘しなければなりません。  そして、私は、こういうやり方をやってきたので、非常に重大な問題があると思っているんですよ。  例えば、ここに四月二十八日付の自治省財政課の財政課長さんの名前の内簡があります。この内簡では、地方財政措置追加にかかわる財政措置の中でこういう項目があるのですね。民間の社会福祉法人に貸与する土地を自治体取得する際に地方債の発行を認めるという措置をとるようにしたというふうに出ているんですね。  地方財政法の五条の地方債の制限のどの項目にこれは該当するんですか。お答えください。
  278. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 端的に条項で申し上げますと、地方財政法の第五条の第五号の規定に該当するということでございます。
  279. 春名直章

    春名委員 この五号というのは、公共施設または公用施設の建設事業費並びに公共用もしくは公用に供する土地またはその代替地としてあらかじめ取得する土地の購入の財源とする場合にのみ地方債を発行できるということになっています。  それでは、民間の社会福祉法人に貸与する土地を、この項目でなぜ地方債発行できるんですか。公用施設じゃないですか、公共施設じゃないですか。民間の社会福祉法人に貸すための土地を買う、そのために地方債が発行できるなんてこと、できないじゃないですか、これは項目を読んだら。どうですか。
  280. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 この地方財政法の第五条の第五号に言っております公共施設または公用施設ということは、用途に着目して規定がされているわけでございまして、設立の主体がここで特に限定されておるわけではございません。  今回、社会福祉法人が特別養護老人ホームなどの施設整備を行います場合に、今実態として、これは地方団体がみずから設置する場合と社会福祉法人が設置する場合とでは、同じような財源措置がとられる仕組みになっております。建設費にっきましても、あるいは運営段階の措置費につきましても、地方団体がみずからつくる場合と、それから社会福祉法人がつくる場合と同様の財政措置がとられております。したがって、でき上がります特別養護老人ホーム、公共施設として同様の効用といいますか、そういう使い道を持つものでございます。  現在の実態といたしまして、特に都市部なんかで、用地を地方団体の方で手当てして、上物を社会福祉法人がつくる、いわば共同でそういう施設をつくるというふうな実態がふえつつございまして、そういう状況の中で、今申しましたように、建設費におきましても運営の措置費におきましても高率の公的な補助がされているということに着目をして、この五条五号に言います公共施設の建設事業費として地方債措置を講ずることとしておるものでございます。
  281. 春名直章

    春名委員 公用に使っているからということで拡大解釈するのですけれども、逐条解説を読みますと、公共施設というのは地方公共団体の建設、管理に係る施設であるとはっきり書いてあります。公用施設は、地方公共団体が専ら行政目的のためにみずから使用する施設である。民間の社会福祉法人がやっていいなんてことはどこにも書いてありません。完全にこれは脱法的なやり方じゃないですか。  そこまでして、今度の地方単独事業推進させようというような、そんなことをやっていいんですか。私は全然これは納得できませんよ。この逐条解説は石原信雄さんがお書きになっているものでありまして、皆様方の先輩ですけれども、こういう法の趣旨からいっても、今度やっていることは非常に脱法的なやり方ではないですか。  そもそもこれは、自民党の皆さんが土地流動化の対策一つの目玉だということでお出しになってきたという経過があるようですけれども、私は少なくとも法の概念、趣旨といいますか、これは守らなければならない、このことは、私はちょっと声は大きくなりますけれども、はっきり申したいと思いますが、これは自治大臣、いかがですか。
  282. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 再度お答えをいたしておきますが、この五条の五号で言います公共施設ということにつきましては、地方団体がみずから設置するものに限らず、公共的団体が設置するものも含まれるというふうなことで従来から解釈がされてきております。  ただ、この規定は、五条五号自体は、原則として地方債以外の歳入をもって財源としなければならないということで、地方債の発行については限定的に運用するという条文でございまして、そういうことから、先ほど申しましたような最近の実態で、地方団体と社会福祉法人がいわば共同で特別養護老人ホーム等をつくる、そういう実態に着目して、この五条五号で言います公共施設の建設事業費として地方債措置の対象にするというふうにできるというふうに私どもとして考えておるわけでございます。
  283. 春名直章

    春名委員 公共的団体にも当てはめるというのはどういうことですか。もう一回言ってください。どういう例があるんですか。公共的団体にも従来当てはめましたと言われましたので、それはどういう例があるんですか。
  284. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 公共的団体がつくる公共施設というものについても、この五条五号で言います公共施設としてこの五号の規定が適用できるというふうな解釈、たしか今委員がお挙げになりました逐条解説にもそういうふうに書いてあるはずでございます。したがいまして、今回、今のような実態にかんがみまして、これを対象にするというふうに考えたわけでございまして……(春名委員「事例を言ってください」と呼ぶ)今すぐにそのことについての事例というのを、今手元に持っておりませんが、例えば、公共的団体といいますと、商工会でございますとか、そういう公共的な活動をしている団体、そういうところがつくります限り、公共用の機能を果たします施設がある場合には、この条項を当てはめることは可能であるというのが従来からの五条五号の解釈でございます。
  285. 春名直章

    春名委員 従来からの解釈なんですね。よく聞きました。  しかし、これを突っ込んでいくと時間があれになりますので、こういうやり方までして、地方単独事業の執行をやってもらうということが私は問題じゃないかと言っているのであります。そのことを、一兆五千億円をどうやるかということの一つのやり方として、こんな脱法的と、私に言わしていただければそういうやり方までやられてきているということを厳しく指摘しておきたいと思います。  私、こうしたやり方の連続が地方財政に何をもたらしてきたのかを、次に問うていきたいと思います。  九二年から五回の景気対策が行われました。まず、この景気対策あるいはそれに伴う補正予算の中で行われた地方負担の総額、またその全体の総額に占める地方負担の割合、これを示していただけますか。
  286. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 平成四年からの過去五回の景気対策について、社会資本整備等を中心とする地方負担額でございますが、平成四年八月の経済対策におきましては三二兆円、それから平成五年四月の経済対策におきましては三・六兆円、それから五年九月、同じ年の九月でございますが、これは一・○兆円、それから平成六年の二月一・七兆円、平成七年の九月三・七兆円、合計しますと十三・一兆円になります。
  287. 春名直章

    春名委員 割合を言ってください。総額の中で占める地方の割合は。
  288. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 ちょっと比率を出しておりませんが、例えて、一番近い平成七年の九月で申しますと、地方が先ほど三・七兆円と申しましたが、そのときの国費も三・七兆円だったと思います。
  289. 春名直章

    春名委員 じゃ、一対一ということですね。かなり大きな比重で地方が五回の経済対策負担を強いられてきているというのが、今の数字でもおわかりいただけると思うんですね。  それで、九二年の宮澤内閣のときの総合経済対策が、九〇年代に入ってからの最初のはしりなんですけれども、ここで初めて、単独事業が国の景気対策の重要な柱に位置づけられていくということになっていくんですね。例えば、九二年七月十三日付の日経では、地方単独の公共事業追加額一兆円から一兆五千億円、政府が要請する、景気対策の柱にするんだ、こういう記事があります。  それからまた、地方単独事業が一〇〇%起債でできるようにするということも、このころ対策でとられるようになりました。それまでは県が七〇%の起債制限、市町村は七五%だったんですが、それが全部取っ払われまして、一〇〇%現ナマがなくてもやれるということをやって、どんどんやってくれということが九二年からやられていくということになりました。  それで、これらの記事を読んでいて、私は非常に、あっと思ったんですね。何でこんなことをやるのか。その当時の宮澤首相が、日経新聞の九二年七月二十一日、地方財政が堅調であると言っているんですよ。国は大変だが、地方財政は堅調なので、単独事業をもっと柱に据えてやろうということがやられてきたわけであります。非常にこれがありありと出てくるわけであります。  そして、調べてみると、驚きました。この五回の経済対策年度途中の経済対策地方単独事業の合計が五兆九千億円、基本的には全額借金でこれができるようになりました。そして、地方財政計画における地方単独事業年度当初の伸び率、九二年度が一一・五%、九三年度が一二・一%、九四年度一二%、軒並み二けたの伸びでございます。ところが、同時期の国の直轄、補助事業は、九二年度が二・二%、九三年度五・七%、九四年度二・九%、三%程度なんですね。  国が行ったこのような景気対策地方財政に大きな負担をもたらして、その悪化を加速させてきた、この事実をまずお認めいただきたいと私は思うんですが、これは、大蔵大臣はいらっしゃいませんけれども自治大臣、この点はそうですよね。
  290. 二橋正弘

    ○二橋政府委員 地方単独事業が近年相当な割合で伸びてきたことは、委員指摘のとおりでございます。  私どもは、この点につきましては、単に経済対策という観点だけではなくて、かねてから、地方団体の方がみずからの創意工夫を生かして地域づくりを行うという場合に、補助金の要件にいわば縛られたり補助金を待ったりするということができるだけ少なくなるように、地方がみずからの創意工夫で行える事業をふやそう、これは地方財政の中におきまして非常に重要な課題でございました。  その点について積極的に取り組んできたことは確かでございまして、そういう意味で、地方単独事業のウエートが高まってきたことは御指摘のとおりでございますが、これは、全部がその経済対策との関係ではないということは特に申し上げておきたいと思います。
  291. 春名直章

    春名委員 そうはおっしゃいますけれども、ことしの地方財政白書二ページ、何て書いてあるでしょうか。公債費の構成比が高い水準にあるのは、昭和五十年度以降の巨額の財源不足とともに平成年度以降の経済対策等に対処するため国、地方を通じて大量の公債が発行されたためであるとちゃんと書いてあるじゃないですか。地方財政悪化もこれが大きな要因になっておるといって、この本の中にも掲げられているわけでありまして、そこのところをまず御認識いただかないとまずいですね。  それで、大蔵大臣、話の脈絡があれかもしれませんけれども、ぜひ、大蔵大臣とお話しする機会が余りないのでお聞きしておきたいんですけれども、私は、先ほど自治大臣が、地方も国も公経済両輪だというふうにおっしゃって、地方協力してやろうというふうにおっしゃるわけだけれども、ここで聞いておきたいんですけれども、この借金増大の伸び率、これは国よりも地方の方が大きいんですよ、この間。私はそういう認識を持っておる。  言えば、地方財政悪化の方がスピードが速いということを言いたいんですけれども、大蔵大臣自身は、そういう御認識といいますか、事実の問題でもありますけれども、そういう御認識を持っていらっしゃるのかどうか、御確認を願いたい。
  292. 松永光

    ○松永国務大臣 お答え申し上げます。  自治大臣と同じ言い方になるわけでありますけれども地方財政は国の財政と並ぶ公経済の車の両輪であることから、近年における景気対策をする場合には地方公共団体の御協力をお願いするという形をとってきたことから、公共投資追加がなされ、その結果として、国の建設国債の増発とともに地方債の増発がなされてきたということは、委員指摘のとおりであります。  その結果として、国の財政と同じように、地方財政もともに厳しい状況にあることはそのとおりでありまして、その赤字を縮小し、財政構造改革推進していくことは、国、地方いずれも重要な課題であると認識しております。
  293. 春名直章

    春名委員 申しわけないですけれども、御質問に答えていただきたいんです。つまり近年の借金のふえ方は、国のふえ方も大変だけれども地方の方がもっと深刻なふえ方をしておるという事実は御確認していただきたいんですが、それは事実ですから、いかがですか。大臣、そこは認識してもらっておかないとまずいんです。
  294. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 国債残高は十年度末の見込みで約二百八十五兆でございます。これに対しまして、地方債務残高は、地方債のほかに、交付税特会のうち地方負担分それから公営企業債のうち普通会計負担分の残高を合わせた金額は約百六十兆円となっており、ともに厳しい状況にあるものと認識しております。
  295. 春名直章

    春名委員 なかなかまともなお答えがないんですけれども、もう数を言います。一九八九年と一九九七年のこの八年間の変化を比べてみると、国の国債残高ももちろんふえています、一・五八倍です。大蔵大臣、一・五八倍です。地方債残高のふえ方は二・一五倍です。額は国の方がまだ大きいんですよ。しかし伸び率は、地方の伸び方の方がはるかに激しいということを、これは確認しておきたいと思います。  公経済の車の両輪だとおっしゃいましたけれども、片一方の車にだけより強い圧力を加えると、交通事故を起こすんですね。今国の財政が大変だというのはよくわかっていますけれども、しかし、今、地方に対して過重な負担をかぶせ続けてきたということの事実を冷厳に見なければならないということを、私は指摘しておきたいと思うんです。さっき、お願いをするというふうなことをずっと言われましたけれども、こういうふうになってきたのは、かなり国の相当強引なやり方が行われてきたということを指摘せざるを得ません。  例えば、九二年の七月二十二日、各都道府県の総務部長さんにあてた内簡の文書があります。この文書の中で、私は驚いたんですけれども、こういうふうに言っていますよ。これは九二年の補正のときです。各自治体の九月補正以降における単独事業追加の内容について承知するため、別途調査を行いますというくだりが出てきます。単独事業を国の思惑どおりやっているのかどうか全部調査しますよというんですね。これはやり過ぎだと私はこの文書を読んで思ったんですが、こういうことも出てくる。  それからまた、これは九二年の十月八日の新聞で、これは東京新聞の小さい記事ですけれども、九二年十月八日の東京新聞の記事では、こう出ています。下水道の整備のための、通常は国庫補助事業で行う太い管渠のうち、緊急に整備が必要な部分は、地方債地方交付税を活用して自治体単独事業で実施することに合意をいたしました。自治省と建設省の合意だそうです。  いいですか、通常は国庫補助事業で行うような事業も、九二年の経済対策をどんどんやられて、そして、単独事業が柱の一つに大きく据えられる中で、補助事業でやっていたものを単独事業に振りかえていく、そんなこともやられてきたんですね。これはもう、事実の問題であります。そして、圧力が地方にどんどんかかって、先ほど言ったような、借金の伸び方が異常な事態になっているということを、しっかり私は認識していただきたい。  私は、これは、日本共産党とかが言っているだけじゃないです。政府税調委員地方分権推進委員会の専門委員でもいらっしゃる東大教授の神野直彦さんもこういうふうに言っています。国が地方に借金のツケ回しをしているんだ、早い話が、というふうに厳しく指摘もされていらっしゃる。  私、だから、こういう強引な指導と言ったらまた反発されるかもしれませんけれども、結果として、そういうやり方を地方にやらせてきたというのが地方財政の火の車の状態をつくり出してきたということを、どう反省されているのか、どういう認識をされているのかということを、私はしっかり伺っておきたいと思います。  自治大臣、どうですか。これは大きな問題ですから、大臣の認識を聞かせてください。二橋さんじゃなくて自治大臣、そういう指導や強力なやり方をやってきたために、地方の借金がさっき言ったように膨らんできたんじゃないかということを聞いているんです,
  296. 上杉光弘

    上杉国務大臣 私は、まず一つには、社会資本の整備が地方は立ちおくれていたということ、特に、地方経済の中に占める公共事業は、私、宮崎でございますが、三〇・一%であります、全体の。それは、ある意味では地域住民の生活の下支えをしておる、経済の支えをしておることは事実であります。  ですから、そのそれぞれの地方団体における自主的な判断も含めまして、地域に住む人たちのことも考えなければならない。生活環境の整備を含めた社会資本の整備も当然考えなければならない。これは、今、地方が持っておる、政治的なことだけではなくて、行政的な課題でもあろう、私はそう思っております。  しかし、それらのことについて、国の景気対策というものが、景気低迷が長く続いておりますから、それをどうするかというのは、当然国の施策として打ち出された方向でございます。  今回もそういうことでございまして、公経済の車の両輪として、景気をよくしなければ、今のままで、地方の経済が悪い状態で、税収の伸びというのは期待できません。景気をよくすることが地方財政をよくすることの基本でもございますから、我々といたしましては、そのような認識を持って、私どもの時代に後世代に残さないように地方財政健全化というものを図る必要がある、こういうことで対応してまいったことでございます。  結果的に地方財政がそれで苦しくなったじゃないか、そういう御意見でございますけれども、これは、国と地方、国だけが、財政が苦しいのに国だけで景気対策をやれ、こう言っても、私はできる状況にはない。やはり、地方も足並みをそろえてこれに対応してきた結果が今でございますが、今回の十六兆円の総合経済対策は、さような意味で地方経済にも必ずいい結果をもたらすと私どもは確信をし、また、そのことに期待をかけておるわけでございます。
  297. 春名直章

    春名委員 私が言っているのは、両方協力するというのはいいんですよ。しかし、地方負担をだんだんしわ寄せしてきているという姿があるじゃないですかと言っているのでありまして、景気対策をやるのは当然です。  きょう、一覧表をつくってまいりました。三枚の表ですけれども、この表なんかを見たらよくわかるんですよ。例えば、資料の一を見てください。建設省がおつくりになった公共工事着工統計年度報。公共工事全体の総額の中で五億円以上の工事の占める割合が一七・一から三一・八%とふえているわけですが、同時に、注目してもらいたいのは、地方の伸びがどうなっているかということなんです。  公共工事全体の総額の中で国が発注者となった五億円以上の工事の占める割合は、六・八から一二・三%です。これは八七年度から九六年度までの十年間ですけれども。ところが、地方が発注者になっての五億円以上の工事の占める割合は、一〇・二%から一九・五%。はっきり言って、国よりも二倍近い伸びを示しているわけであります。十年間で二倍近い伸びを、五億円以上の発注者、地方がやっているということです。  そして、二ページ目は、これは一億円以上です、同じ資料で。一億円以上の発注者の国、地方の割合の表をグラフにしたものですが、ここでも同じ傾向があらわれているということは、見て一目瞭然でございます。  それから、私、そういう点で、両方やらなければならないと言うんですけれども、総額が先にあって、地方にそれをやっていただくというやり方をずっと積み重ねてきたので、かなり無理なことができているなと思うんですね。単独事業というのは、さっき自治大臣がおっしゃったけれども、身近に、住民に役立つ事業が多いというのはよく知っています。  しかし、例えば単独事業でやられている問題で、一つだけ例を紹介しますけれども、豪華庁舎というのはすごい批判があるでしょう、豪華庁舎の問題一東京の都庁が千五百六十九億円、足立の区庁舎が五百十一億円、これは区長選挙のすごい大きな争点になりましたが。今後、大阪府が二千五百億円、茨城県が八百五十四億円、群馬県が七百五十億円、石川県が七百億円、長崎県が六百億円、香川県が三百七十七億円、巨額の豪華庁舎を建設するという予定がずらりと立っているわけであります。  何でこんな豪華庁舎などが全国的にこうやられてきたのか、不思議だなと思いました。九三年の四月十四日に、自治省財政課長の名前で、同じく内簡というものを出しております。これを読んで私は驚いたわけであります。  地方単独事業追加の中身ということで、道路や公園、下水道の身近な社会資本整備はもちろんだけれども、わざわざこう書いてあるのですね、文化会館、美術館、博物館、図書館、スポーツ施設、庁舎等の大規模改造、ぜひこれを入れてほしいと。これはちゃんと言っているのですよ。この文書は確かに庁舎の大規模改造です。そして、これだけ豪華な庁舎が要るのだろうかというような批判を全国で浴びるような問題が起こってきたわけであります。  私たちは、単独事業というのは身近なものでなければならない、そういう性格のものだと思っています。しかし、景気対策としてやっていただくということの指導によって、このような形の豪華な庁舎の建設などが全国的にもやられてきた。読売新聞の調査でも六十九カ所、事業費は一兆五千億円。内簡でこういうことが出ているのですから、こういうふうにやってくださいと言えば、当然やるでしょう。(発言する者あり)静かにしなさい。  いいですか、そういう問題だということを言っているのであって、初めに総額ありきで、そして、残念ながら疑問が生じるような事業推進されるということになってきているじゃありませんか。そういうところについてきちっと、どういう分析をされているのか、使い方の中身も今回の対策でどんな分析をされているのか、私はぜひ聞かせていただきたい。自治大臣、どうぞ。
  298. 上杉光弘

    上杉国務大臣 豪華庁舎をつくれという指示をしたことはないわけです。しかも、それを押さえつけて、地方の権利まで踏み込んで自治省が行政指導をするというようなことはございません。  それは、やはり地方には議会がございますし、地域住民を代表する議会があるし、そこのまた執行当局と議会との、地域住民がしっかり見ておる中でのそれは方向づけでなされたことだと思いますが、しかし、必要以上に豪華なものはこれは不必要でございまして、自治省としては、改造ということでそのような文書を出したというのは、これは決して地方の権限まで踏み込んで豪華庁舎をつくれといったことじゃございませんので、その点は御理解いただきたい。  なお、文化会館でありますとかそういうものについては、地方の時代をどう迎えるかという極めて、地方にあっても中央と同じような文化的なもの、あるいはそういう芸術的なもの、それに地方の住民の皆さんが触れるということについて私どもが差しどめをするということには相ならぬだろう、このように考えております。
  299. 中川秀直

    中川委員長 春名君、質疑時間が終了しました。
  300. 春名直章

    春名委員 時間が来ましたので、最後の質問で終わります。
  301. 中川秀直

    中川委員長 いや、質問はできません。質疑時間が終了しました。
  302. 春名直章

    春名委員 終了しましたか。そうですが。  しかし、九二年からのそういう対策をやってきて、地方財政が国以上に大変になっているという事実、これを見て、しっかりそういう総括をしていただきたいということを申し述べまして、質問を終わります。  ありがとうございました。
  303. 中川秀直

    中川委員長 これにて春名君の質疑は終了いたしました。  次に、河村たかし君。
  304. 河村たかし

    ○河村(た)委員 無所属の会、河村たかしてございます。  ずっと政府のお話を聞いておって、熱心にいろいろしゃべっておられますけれども、これは明らかに、残念ながら、どうも古いですね。要するに、ちょっと昔の公共経済学というのですか、財政学の、上級職を受けられたかどうかわかりませんけれども、どうもその結果ではないか。特に大蔵省の美学にはまってしまって、要するに、きちっと、下々というか国民から集めた金を、国民から……(発言する者あり)いや、失礼いたしました。大蔵省から言うとということです。それは大蔵省の感覚からいくとです。要するに、国民から集めた金をおれのところが、お上が全部整理整とんして、それをきちっと措置する、措置ですね、公共部門というのはそういうことである、そういう発想からどうも抜け出ていない。  経済というのは全然違うのですよね。要するに、官か民かというのも一つ考え方ですけれども、それよりも独占か競争かということなのですよ、特に成熟した国家においては。  戦後復興の時代は、確かにお金がなかったということで、国民が苦労したお金をみんな大蔵省に集めて、当時は主計官が何人おったか知りませんけれども、今十二人だそうですけれども、十二人の方が分配する。橋をつくったりダムをつくったり道路をつくったりと、これでよかったのですけれども、どうもこの時点になってくると変わっていまして、もう欧米の先進国は変わっているのですよ、考え方というのは。公共部門にも競争を入れる、税金にも競争を入れるのだという時代に入っているわけですよ。全然そこへ議論が入っていない。  だから、野党側の皆さんにも、これはぜひ野党再結集の基軸にしていただきたい、こう思うのですけれどもね。公的資金の分配を大蔵省が独占するのが、この今の平家である自民党、こういうことですね。こちらが源氏グループとして、源氏グループとしてはそれを分配にも競争を及ぼす。この間言いましたけれども、国民が主計官になる、あなたが主計官になる。全部じゃないですよ、多分目標は税の一割ぐらいでいいと思います、後で言いますけれども。  アメリカの話ばかりしてなんですけれども、アメリカは、今、寄附が一千五百億ドルあるのですね。税収が、所得税と法人税を合わせますと七千四百七十二億ドル。もう一回言いましょうか、法人税と所得税を合わせると七千四百七十二億ドル。寄附が二割ですよ、一千五百億ドル、こういう国になってきておるわけです。ですから、今の話を聞いておると、では、これは質問に行かないといけませんね。  まず大蔵大臣、恒久減税、制度減税と言ってもいいかわかりません、それは公共投資よりも景気回復効果が高いという説があるのですけれども、これを支持されますか。
  305. 松永光

    ○松永国務大臣 そういう説を唱える人もいることは承知いたしておりますけれども、私は、そういう説じゃなくして、直接需要を創出するという効果と波及効果の方は公共投資の方が高い、減税の方は、国民の可処分所得増加を通じて消費の拡大、それを通じて景気浮揚の効果となってくる、こういうふうに、私は、書いた本には書いてあるので、それを読んでおります。
  306. 河村たかし

    ○河村(た)委員 これは大蔵大臣、その話を聞きましたら、多分、私はマーケットのことを余り言いませんけれども、マーケットは非常に多様ですから、だけれども、僕は欧米もがっくりすると思いますよ。  恒久減税というのは構造改革を促進する効果があるのですよ。入ってくる金を少なくするということです。それで、大臣の話なんか聞いていると、入ってくる金が少なくなる、だけれどもそれを全部いわゆる特例公債で賄うと言っているからだめなんで、そこを歳出カットにちゃんとつなげるということなのですよ。小さな政府にするということなのです。そうなると構造改革をしなければいかぬ。  では、公共サービスはどうするのかということにそこでなるでしょう。これは当然なるわけでしょう。福祉切り捨てにするのですか。これはできませんでしょう。だから、そのお金は寄附に回していこうということなのです。わかっておられぬようですね。(松永国務大臣「だれがだれに寄附するのですか」と呼ぶ)それは国民がですね。では、行きましょう。
  307. 中川秀直

    中川委員長 委員長の許可を得て発言を、答弁側もそうしていただくようにお願いをいたします。  質問してください。
  308. 河村たかし

    ○河村(た)委員 いい話になってきましたけれども、だれがだれに寄附するのか。国民が公共サービスをやるような人に寄附するのです、団体に。なぜ、公共サービスの対価を全部あなたが分配するんですか。国民が考えて、ここの方がいいと思ったら、例えば学校でもそうですよ、地域で何人か集まって、仕事が終わった後に大変苦労されておるような方をみんなで教えようという場合に、そこへ直接寄附をして、税金をまけてもらうシステムにしたらどうですか。そうでしょう。どうですか。(発言する者あり)いや、そんなことを言ってはいかぬです。これはそうじゃない。
  309. 中川秀直

    中川委員長 私語に応酬しないようにしてください。
  310. 河村たかし

    ○河村(た)委員 海外ではもう既に一九八〇年代に実行しているんですよ、これを。この話をタブーにしていると、いつまでたっても財政構造改革景気回復というのがどうしても相反するものになってしまう。そういうのは実は自民党が気づかなきゃだめですよ、これは。自由主義です。税金による統治を嫌って個人の自由の選択をふやす、これが自由主義の、本当の意味での保守主義の思想ということなんですけれども大臣どうですか、今の考えは。
  311. 松永光

    ○松永国務大臣 私の方から委員に対して質問することはできないそうでありますので、念のために、私に対する質問をなさる場合には、できるならば、寄附という言葉がありましたので、それはだれがだれに対する寄附だということを明確にした上で質問してもらいたいなという気持ちがあったので先ほど申したわけでありますが、今のお話だというと、その寄附する相手は公共投資をやる人に対して寄附するというふうに……(河村(た)委員「公共サービスです」と呼ぶ)公共サービスを出す人、それは、また聞くわけにはいかぬのでありますけれども、それは民間でございましょうか、国または公共団体でしょうか。
  312. 河村たかし

    ○河村(た)委員 いずれでも結構でございます。  こういう減税に対する、恒久減税に対する哲学がないのに、これは漫然と減税議論に入ります と全く失望をさせるということでございますので……
  313. 中川秀直

    中川委員長 河村君、質疑時間が終了いたします。
  314. 河村たかし

    ○河村(た)委員 ちょっと時間がこれで終わりましたので、またぜひチャンスをいただいて、この議論を続けたい。  どうもありがとうございました。
  315. 中川秀直

    中川委員長 これにて河村君の質疑は終了いたしました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時三十二分散会