運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1998-05-18 第142回国会 衆議院 緊急経済対策に関する特別委員会 第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月十八日(月曜日)     午前十時開議 出席委員   委員長 中川 秀直君    理事 甘利  明君 理事 中山 成彬君    理事 村井  仁君 理事 村田 吉隆君    理事 上田 清司君 理事 岡田 克也君    理事 太田 昭宏君 理事 谷口 隆義君       浅野 勝人君    飯島 忠義君       石崎  岳君    遠藤 利明君       佐藤  勉君    阪上 善秀君       桜井 郁三君    下村 博文君       菅  義偉君    鈴木 恒夫君       園田 修光君    田中 和徳君       田村 憲久君    谷畑  孝君       西川 公也君    穂積 良行君       目片  信君    山口 泰明君       池田 元久君    岩國 哲人君       生方 幸夫君    海江田万里君       金田 誠一君    北脇 保之君       島   聡君    古川 元久君       松崎 公昭君    松本 惟子君       石井 啓一君    西川 知雄君       桝屋 敬悟君    佐藤 茂樹君       鈴木 淑夫君    児玉 健次君       佐々木憲昭君    矢島 恒夫君       秋葉 忠利君    濱田 健一君       笹木 竜三君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 松永  光君         文 部 大 臣 町村 信孝君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  島村 宜伸君         通商産業大臣  堀内 光雄君         運 輸 大 臣 藤井 孝男君         郵 政 大 臣 自見庄三郎君         労 働 大 臣 伊吹 文明君         建 設 大 臣 瓦   力君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     上杉 光弘君         国 務 大 臣         (内閣官房長) 村岡 兼造君         国 務 大 臣         (総務庁長官) 小里 貞利君         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      鈴木 宗男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久間 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大木  浩君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 亀井 久興君  出席政府委員        内閣官房内閣広        報官室内閣広報        官        兼内閣総理大臣        官房広報室長   上村 知昭君        内閣法制局長官  大森 政輔君        総務庁長官官房        審議官      西村 正紀君        経済企画庁調整        局長       塩谷 隆英君        経済企画庁調整        局審議官     小林 勇造君        経済企画庁国民        生活局長     井出 亜夫君        経済企画庁総合        計画局長     中名生 隆君        経済企画庁調査        局長       新保 生二君        科学技術庁長官        官房長      沖村 憲樹君        外務省総合外交        政策局軍備管        理・科学審議官  阿部 信泰君        外務省アジア局        長        阿南 惟茂君        外務省条約局長  竹内 行夫君        大蔵大臣官房総        務審議官     溝口善兵衛君        大蔵省主計局長  涌井 洋治君        大蔵省主税局長  尾原 榮夫君        大蔵省理財局長  伏屋 和彦君        大蔵省銀行局長  山口 公生君        国税庁次長    船橋 晴雄君        文部大臣官房長  小野 元之君        厚生大臣官房総        務審議官     田中 泰弘君        厚生省保健医療        局長       小林 秀資君        厚生省児童家庭        局長       横田 吉男君        厚生省保険局長  高木 俊明君        厚生省年金局長  矢野 朝水君        農林水産大臣官  堤  英隆君        房長        中小企業庁長官  林  康夫君        中小企業庁次長  中村 利雄君        運輸省港湾局長  木本 英明君        郵政大臣官房総        務審議官     濱田 弘二君        郵政省貯金局長  安岡 裕幸君        郵政省簡易保険        局長       金澤  薫君        労働大臣官房長  渡邊  信君        労働省職業安定        局長       征矢 紀臣君        建設大臣官房長  小野 邦久君        自治省財政局長  二橋 正弘君        自治省税務局長  成瀬 宣孝君  委員外出席者        衆議院調査局緊        急経済対策に関        する特別調査室        長        大久保 晄君     ――――――――――――― 委員の異動 五月十八日 辞任          補欠選任   小野 晋也君     阪上 善秀君   杉浦 正健君     下村 博文君   森  英介君     遠藤 利明君   池田 元久君     古川 元久君   島   聡君     松崎 公昭君   矢島 恒夫君     佐々木憲昭君   濱田 健一君     秋葉 忠利君   河村たかし君     笹木 竜三君 同日  辞任         補欠選任   阪上 善秀君     飯島 忠義君   下村 博文君     鈴木 恒夫君   古川 元久君     松本 惟子君   松崎 公昭君     島   聡君   佐々木憲昭君     矢島 恒夫君   秋葉 忠利君     濱田 健一君   笹木 竜三君     河村たかし君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     小野 晋也君   鈴木 恒夫君     杉浦 正健君   松本 惟子君     岩國 哲人君 同日  辞任         補欠選任   岩國 哲人君     池田 元久君     ――――――――――――― 五月十五日  景気回復のための積極的な経済対策に関する請  願(北沢清功君紹介)(第二六三二号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  財政構造改革推進に関する特別措置法の一部  を改正する法律案内閣提出第一一二号)  平成十年分所得税特別減税のための臨時措置  法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一三号)  中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一四号)  地方税法及び地方財政法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一一五号)  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一一六号)      ――――◇―――――
  2. 中川秀直

    中川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案平成十年分所得税特別減税のための臨時措置法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案地方税法及び地方財政法の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。海江田万里君。
  3. 海江田万里

    海江田委員 おはようございます。民主党の海江田でございます。  総理は、十五日に、当委員会での質疑を終えてすぐ政府専用機に乗りまして、バーミンガムに飛んで、日米首脳会談日ロ首脳会談、そしてバーミンガムサミットと、大変お疲れさまでございました。特にけさは、八時半ごろですか、羽田にお帰りになって、そしてすぐこの委員会ということでございますから、大変お疲れだろうとは思いますが、この委員会、大変重要な委員会でございますので、おつき合いをいただきたいと思います。  さて、このサミットあるいはアメリカクリントン大統領との日米首脳会談でございますが、私は日本にいまして、新聞報道あるいは昨晩の総理会見ども最近は中継で見られるようになりましたので見ておりましたが、どうも、アメリカあるいは日本を除きましたG7各国日本経済に対する関心が、今度のサミットを契機に、これまでの減税を中心としました財政出動から、どちらかといいますと中長期的な日本不良債権処理策あるいは金融システムの強化という方向へ移っていったんではないだろうか、いわば短期的な景気対策から中長期的な日本構造改革の方へ関心が移っていったんではないだろうか、私はそういう見方をしておるんですが、この見方はそのとおりでしょうか、それとも違うという見方がございますでしょうか、総理のお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  4. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今議員が御指摘になられた感覚というものは、恐らく間違いのない方向ではないかと思います。  首脳会合に先立って開かれた外務大臣会合あるいは大蔵大臣会合においては、確かに短期的な議論が行われた部分も相当あったようです。そして、ある程度そういう雰囲気を引き継いだ形になるという思いで私も現地に参りました。しかし、これについては、むしろ総合経済対策、既に国会で御論議をいただいている減税にせよ補正予算にせよ、そういう状況で、できるだけ早く国会の御同意をいただいて実行に移してくれという話はございましたけれども、むしろ、やはり金融機関不良債権処理というものが非常に強い関心を持たれた状況になっている。  そして、その意味におきましては、今回の三月決算SEC基準並み決算を求めた。それは、当然ながら情報開示においてもそれだけ従来より拡大をする、そうしたものを踏まえて当然ながら対応が行われるであろうという、そうした期待感というものは随所にうかがわれたと考えております。  これは日米日ロ、そのほかに日独日英、そして、これは本当にチャンスがありましたのでイタリアとも首脳会談を持つことができましたけれども、そうしたもの全体を通して、議員が言われたような方向に向かいつつある、その印象は間違いなく私も受けました。
  5. 海江田万里

    海江田委員 そこで、G7国々がそういう日本構造改革に大きな関心を持っているということで、そこでの総理説明、これは新聞報道どもございますが、もう一度、改めて総理の口から直接お話をいただきたいと思います。
  6. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、国会で御審議をいただいております補正予算あるいは減税、さらに関連する施策として、一連のものに対して私は言及をいたしましたけれども、特に、金融機関の抱えております不良債権処理というものは、これは腰を据えて我々はやらなければならないが、そんなに時間をかけていられるものではない。そしてその処理とは、バランスシートから消してしまう。そのためには譲渡もあり得るでしょうし、担保証券といった形態での処理もあり得るでしょうし、そのための権利義務関係を確定させるための仕組みとしての委員会の設置あるいは市場の育成、こうしたポイントを我々として今手がけようとしている。そして、これは当然のことながら、都市の開発あるいは土地利用活性化といった方向にも結びついていき、金融機関の持っております不良債権処理という一点だけではなく、こうした分野からも市場活性化することが期待される、そのような形で整理をし、話をしてまいりました。
  7. 海江田万里

    海江田委員 そうした総理説明G7の他の諸国の大変強い支持を得たというのが評価なわけでございますが、ただ私は、特に昨夜の、サミットが終わった後の記者会見を見ておりまして、そういう総理の決意が強い支持を得られたということを本当にそのまま額面どおりに受け取りていいのかどうなのかという疑問を若干持ちました。  それは、記者会見の一番最後のところで、カナダ女性の、ハリスさんといいましたかね、記者の方が、総理に向かってこういう質問をしました。総理は冒頭のスピーチの中で、ドラスチック金融改革を進めると言っていましたが、それは弱い金融機関破綻も含めるのですか、こういうお尋ねをしたはずでございます。そうしましたところ、総理が逆に質問しまして、それは弱い金融機関も守るということですかということを聞き返しをしまして、そして、それは違うよということを言ったわけでございます。弱い金融機関は守らないんだよということを言ったわけですけれども、それに対しても、このカナダ女性記者は比較的けげんな顔つきをしていた。カメラが映しておりましたから見ておりました。  それからもう一つ、私は昨日、最近は便利になりまして、インターネットでいろんな国の新聞をたちどころにとることができるわけでございますが、ワシントン・ポストのこのサミットに関係します記事インターネットで引きまして、そしてそれを私なりにつたない翻訳をしてみたわけでございます。インドネシアの暴動の問題と、それからインドの核実験の問題がありまして、その後に日本についてこの記事は、論説でございますが、書いております。  それはどういうことかといいますと、日本大蔵当局は、日本不良債権問題を解決するに当たって、アメリカ政府が一九八〇年代にSアンドLの問題を解決するときにとったような適者生存原則を採用することに抵抗しているという書き方をしているんですね。  このワシントン・ポスト記事と、それから先ほどお話をしましたカナダ女性記者の観点というのは同じではないだろうかというふうに私は思うわけですね。それはどういうことかといいますと、確かに総理は、みずからのスピーチの中で、大変力を込めて金融改革ドラスチックに進めるということを言っているわけですけれども、ところが、じゃ、現実に、本当に金融改革ドラスチックに進めるおつもりがあるのかどうなのか。とりわけこの場合は適者生存原則で、つまりこの不良債権をこれから償却していかなければいけないわけですけれども金融機関不良債権償却ができない、不良債権償却のできるような体力を持っていない金融機関があるわけですね。その場合、そういう金融機関に対して、カナダ女性記者が言っているように、弱い金融機関破綻も当然のことながら含めるのですかと。そういう体力の弱い金融機関破綻というものは、これは当然のことながら適者生存原則破綻をさせていいのじゃないだろうかというようなことをやはり言っているわけですね。  それに対して、総理お答え、きのうのでは私は若干ずれていたというふうに思いますので、そういうような適者生存原則を採用して、そして破綻するべき金融機関というものは破綻するということでいいのかどうなのか、改めてお尋ねをします。
  8. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 そのワシントン・ポスト記事は私は存じませんけれども、彼女が質問をしたその疑問は、恐らく各国記者の中に共通して、だれかが聞きたい問題であっただろうと思います。そして、ずれていたと言われましたが、確かに私は少しずらして、むきになった答え方はいたしませんでした。  ただ、そこでお聞きをいただいていたように、十七兆円の、預金者を保護するためのフレームが既にあります、これは、どういう事態があっても預金者に対して、その預金を心配しないで済むということですと。裏返して言えば、そういうケースが全くないと想定するなら、そういう用意は必要がない。同時に、私がむしろ意識的にずらしたのは資本注入部分で、倒れるべきものにはという言い方は、やはり私はあそこでは避けるべきだと思いました。その上で、いいものを支えていくと。  当然ながら、私は、破綻という形ばかりが処理ではないと思います。不良債権部分を切り離した上で、合併をするところもあるかもしれませんし、あるいは業態を変更するものもあり得るでしょうし。ただ、いずれにしても、バランスシートから不良債権を消していかなければ、そうした内容の悪い、しかもSEC基準で公表となりますと、そこは非常にはっきり出てくるわけですから、道はいろいろな道がありましようと。私は、全部、要するに、破綻という形ばかりがその大半だとは思いませんし、それが必ずしもいいことだとも思いませんけれども、統合されるケースもあるでしょうし、提携をされるといったケースがあるでしょうし、あるいはスリムになって自分の進むべき方向を特化していかれるといった方針、いろいろな方針があると思うのです。その上で、意識的にずらして、預金者保護以外の部分についてはお答えをしたことになることは事実です。
  9. 海江田万里

    海江田委員 意識的にずらしたということ、私は今のお話を聞いて、そういう意味では、私も何度も総理とこうやって議論をしておりますので、総理のなかなか巧みなずらし方というのは、一つ答弁のテクニックとしてよくわかるわけでございますが、ただ、これがアメリカやその他の国々記者に通用するのかどうなのかということは、一つ問題があると思います。  それから、総理が今の答弁の中ではしなくもおっしゃいましたけれども資本注入の問題でございます。私は、大胆な、金融システムドラスチック改革をやるということを言いましても、とりわけヨーロッパやアメリカのエコノミストというのは、ことしの春の公的資金による資本注入、しかもそれが横並びで行われたということに対して、やはり大変大きな不信感を持っているわけですね。この春から金融ビッグバンということもあり、日本はそういう金融改革に乗り出すということを言いながら、実際にやっているのはどうも違うのじゃないだろうか。相変わらず横並び護送船団方式アメリカ新聞なんかを読んでおりますと、コンボイですとかエスコーテッドフリートでありますとか、まさに護送船団ですね、こういう言葉が相変わらず出てくるわけです。  それからもう一つは、やはり一昨日、十五日ですね、総理がまさに日本をお立ちになったときのみどり銀行の二度目の破綻でございます。これは、総理はもうお出かけになっておりましたから詳しいニュースは御存じないかもしれませんが、大蔵大臣あるいは日銀がこの経緯についてはよく御存じのはずでございます。  一度みどり銀行を、これは旧兵庫銀行でございますけれども、旧兵庫銀行が九五年の八月に破綻をするに当たって、九六年の一月からわざわざみどり銀行というものをつくったわけでございますが、そのみどり銀行が、実は今度の三月の決算でもう既に債務超過になっている。この債務超過になっているみどり銀行阪神銀行との間で合併救済をするというやり方でございますね。  この問題については、そういう意味では、総理が今し方おっしゃったようなドラスチック金融システム改革ではなくて、相変わらずここにも護送船団方式がつながっているのではないだろうか、こういうような印象を与えると思うのですが、このみどり銀行の問題につきましては、銀行局長でよろしゅうございます、経緯を御説明いただきたいと思います。
  10. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  先生御承知のように、当地区は七年の一月の十七日に大震災に見舞われました。その後、同じ年の八月の三十日でございますが、旧兵庫銀行が、その震災の影響もあったと思いますが、破綻をいたしました。そこで、その後、十月になりまして、七年の十月でございますが、受け皿銀行としてみどり銀行を設立させていただいたわけでございます。  ちょうどそのころ、金融の三法というものを視野に入れておりましたが、それは、成立したのは翌年八年の六月でございます。金融三法が成立した後に処理をいたしますれば、これは全額保護という形で資金援助がフルにできるわけでございます。しかし、そこまで待てない、つまり、当時の状況からして、震災で非常に苦しんでおられた地元のために早く新しい銀行をつくって、その取引先等を守ってあげなければいけないということで、当時の金融界あるいは地元財界等に出資を仰ぎまして、旧兵庫銀行破綻させた上で新しい銀行に引き継いだ。引き継いだときに、金融三法の以前の処理でございますので、ペイオフコストの以内でなければ資金援助を出せないという法律の制約がありました。したがって、赤字部分営業権という形で十年間ぐらいかけてだんだん償却をして、立派な銀行にするという計画でございました。それから、不良債権も一部は引き継いで、そのままスタートしたわけでございます。  しばらくは、兵庫県の経済状況もよくなりました。このままうまくなるかなという感じでございましたが、不幸なことに、その後かなり経済状況も思わしくないということで、その計画どおりに進まなかった。したがって、そういった重荷を背負って出発しましたみどり銀行が、残念なことでございますけれども債務超過に陥りそうになった。したがって、今あります金融三法のスキームで、もしそれが適用できていれば資金援助できた部分を資金贈与してあげますよと、それは合併ができる形になるということで、阪神銀行受け皿になり、ちょうど同じ地区銀行でございますので、県民銀行として兵庫県のために力を合わせて再出発するという形になりましたので、私どもとしてもそれは支援をしてまいりたいというふうに考えております。
  11. 海江田万里

    海江田委員 今淡々と事実経過お話しいただいたわけですが、その程度の事実経過というのは私どもも知っているわけでございまして、やはり私が聞きたいのは、当初、二年四カ月前ですか、このみどり銀行がスタートをしたときには、今局長もおっしゃっていましたけれども、十年かけて立派な銀行にするというつもりだったわけですが、その十年かけて立派な銀行にするつもりが、わずか二年四カ月後にまた再び破綻をしなければいけない。しかも、今度破綻をした場合は、これはまさに金融三法、私どもは反対をしたわけでございますが、金融三法でもって、一つ地域の中における金融機関破綻に際しては二つを合併をさせて、そしてそれで地域金融機関を、地域信用システムを何とか維持をしていこうということでございますけれども、もちろん、そこに当たっては、これは金額はまだ確定はしておりませんけれども、四千億から六千億円の贈与つきで、預金保険機構からのその贈与があるものだから、これは阪神銀行が受けるわけですね。  結果的にみどり銀行がそういうことで生き延びてしまうということ、これは、先ほども私がお話をしましたけれどもアメリカが考えておりますRTCを介在をさせてそして適者生存原則でつぶすべきところはつぶすということとはやはり百八十度違うのではないだろうか。総理バーミンガムで一生懸命になってこの金融システムを抜本的に、ドラスチック改革をしなければいけないということを言っているやさきに、日本の国内で、やはりそういうような処理策がまたしてもここで組み立てられているということ、このことに対する外国からの目というもの、相変わらず日本はまだまだちっとも変わっていないのだという目で見られてしまうというような見解を私は持っておるわけでございますが、その点について、総理、あるいは大蔵大臣でもよろしゅうございますが、あるいはもし何か言うことがあれば銀行局長でもよろしゅうございます、いかがでしょうか。
  12. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  今回の処理におきましても、阪神銀行が救済銀行となり、みどり銀行破綻銀行という認定になります。したがいまして、みどり銀行は、これは俗に言えばつぶれる、こういうことになります。したがって、海外からつぶすべきものが云々という話がありますけれども、この場合におきましてもみどり銀行そのものは存続をしないということであります。  なお、新聞に最近は小さくしか出ておりませんが、信用組合、アメリカで言うSアンドLよりは若干小さいかもしれません、そういった信用組合の破綻処理も相当進んでおります。この間も十信組、大阪地区での再編計画、これはそういった信組を破綻という形、破綻という言葉のイメージが非常に荒っぽいのでございますけれども、消滅させるという形でやっております。  私どもがねらっておりますのは、金融機関がそうやって淘汰される間におきましても、取引先との関係あるいは地域経済への影響、システミックリスクを起こさないためにいかにするかということを預金者保護にプラスして考えているということでございます。海外からその取引先の保護すら護送船団だという批判、そういう理解があるとすれば、それは私は誤解があるのではないかというふうに思っております。  現実に私どもが行っている行政自身は、そういう適者生存の形を原則とし、マーケットメカニズムを中心として考えておる次第でございます。
  13. 海江田万里

    海江田委員 今、破綻をさせる、つぶすのだということをお話になりましたけれども、十五日にこの阪神銀行みどり銀行の両頭取が会見をしておりまして、そこではみどり銀行役員の総退陣はないというようなことを言っておりまして、これはつぶれたのなら当然のことながら役員は総退陣をするわけでございますけれども、リストラはもちろん将来にわたってはやるけれども、スタートのところではみどり銀行の役員がそのまま残るよというようなことを言っておるわけですから、これはだれが見たって、破綻をさせたということではなしに、むしろ救済合併をさせたというふうに受け取られていたし方ないわけでございます。  それから、その局長お話の中で、この旧兵庫銀行処理計画をつくったところで、先ほど局長自身の口から出ましたけれども、十年たてば何とか立派な銀行になるのじゃないだろうかというようなもくろみが二年四カ月で破綻をしてしまったということ、このことに対する責任というものか、あるいは失敗の、見通しが甘かったということについての釈明があってしかるべきだと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  14. 山口公生

    山口政府委員 お答え申し上げます。  二点の御指摘がございました。  みどり銀行の経営陣の問題でございます。しかし、旧兵庫銀行破綻の後に地元財界等から役員が選ばれております。地元の再建のために新しくなられた方々でございます。したがって、そういう方々にどこまで責任を追及すべきかという問題が一つあると思います。したがって、ずっと以前から、そういった不良債権問題を抱えるときからの経営陣はもういらっしゃらないわけで、そういうことが今回特殊事情としてあることをぜひ御理解いただきたい。  それから、十年の計画であったことが二年数カ月でという御指摘でございます。  これは、確かに、そういった御批判があるということは私どもも謙虚に受けとめるべきだと思いますが、当地区震災復興事業の後の一時的な好況がその後予想以上に思わしくない状態であったということで、不良債権の重荷が大きくなったという事情も勘案すべき事項かと思います。
  15. 海江田万里

    海江田委員 これ以上議論してもしようがありません。少しまた前の、総理不良債権処理策についてでございますが、政府は今回の総合経済対策の中で、「土地・債権の流動化と土地の有効利用」という項目を設けております。それを私も読みました。それから、不良債権処理トータルプランというものをつくっておるということですが、この経済対策閣僚会議が四月二十四日にまとめました総合経済対策の「土地・債権の流動化と土地の有効利用」というものを読みましても、総花的で、一体具体的にどこから手をつけていくのかということがなかなかはっきりしてこないのですね。これはもちろん各方面にわたった手当てというものが必要なわけですけれども、まず具体的にどこから手をつけていくのだよということをやはりお話をしていただかないと具体的なイメージが伝わってこないということもありますので、まずどこから手をつけていくのかということ、例えば金融機関に対して不良債権償却を無税償却にさせるのだ、そこのところが、今条件がきついからこれを緩めるのだとか、何か具体的に、まずすぐに議論をしてスタートをしなければいけないというのが那辺にあるかということをお聞かせいただきたいと思います。これは、大臣か総理か、どちらかからお話をいただきたいと思います。
  16. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほどからの委員の御質問の中で、今回のサミットについて、日本の新たな経済対策についての評価は得られたものの、金融機関不良債権処理が進んでいないということについての要望があったということは、実はその前のG7蔵相会議でも、新経済対策についての評価をした上で、金融機関の強化あるいは構造改革ということを私も言われたわけであります、そのことについて私なりに説明をいたしましたが。  今度の総合経済対策の中での不良債権処理を加速化させるという政策、これは非常に大事な政策として私どもはその遂行にこれから全力で取り組んでいきたい、こう考えております。  どれから手をつけていくのかという話でございますが、できることなら優先順位を決めるのではなくして、できるものから先に手をつけていく。その一つが、この償却の場合の損金参入をどこまで認めてやるのかという税との関連が一つ。もう一つは、先般衆議院で通過をさせていただきましたSPC法、これを参議院で成立させていただきましたならば、速やかにこの特定目的会社という仕組みをスタートすることができれば、不良債権処理についての実務的な作業が進むようになるだろう、こういうふうに思うわけであります。  それから、さらに、これは今後のことでありましょうけれども、サービサーという形での不良債権処理の仕組みというものも、実はこれは法律も要るのだと聞いておりますけれども、そういった法制度も整えて、あらゆる手段を通じて不良債権処理の加速化を図っていきたい、こう考えているわけでございます。
  17. 海江田万里

    海江田委員 今のお話で、一つ私がこれは何だろうと思いましたのは、臨時不動産関係権利調整委員会というものをつくるというようなお話があるのですが、私どもは、日本版のRTC、整理信託公社のようなものをつくって、ここで厳しく債権の整理を行うことがいいのではないだろうかということを考えておるわけですけれども、この臨時不動産関係権利調整委員会というものはどんな性格になるのか、もし今の段階でわかっていることがあったら教えていただきたいと思います。これは経済企画庁長官ですか。
  18. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 これはまだ詳細は決まっておりませんが、土地に係る複雑な債権債務関係をあっせん、調停等により解きほぐして、担保不動産が有効利用できるような特別委員会を設置する、こういうことが決まっているわけでございます。  ちょっとつけ加えさせていただきますが、先ほど大蔵大臣から御答弁申し上げました、資産担保証券の発行によります不動産等の証券化を図るということは、現在国会提出をされておりますし、なお、住都公団におきます土地取得のための公的資金を活用する新たな仕組みの整備、あるいは都市再開発に対する民間からの資金に関しまして、開銀の融資保証業務を行うとか住宅金融公庫の融資保証業務の拡充をするというようなこと、さらには防災、福祉、あるいは中心市街地等の公的土地の需要に対しまして、国、地方公共団体の公共用地の先行取得を行う、あるいは都市再開発についてPFIの手法により進めるという、いろいろなことをやりまして不良債権処理を総合的、立体的に進めていくという基本方針だけは固まっているということでございます。なお、詳細につきましては、これを総合的に進めてまいりたいと考えている次第でございます。
  19. 海江田万里

    海江田委員 総理は、大変時差があって、質問を別の大臣にやっておりますと眠くなるのではないだろうかという気がいたしますので、少しここで総理議論をしたいわけでございますが、減税の問題でございます。  この減税の問題では、総理もきのうの記者会見でわざわざ、ここには外国の記者さんもいるので聞いていただこうということを言いまして、我が国の課税最低限が、第一次の特別減税前、この二月、三月の特別減税前が夫婦子供二人で三百六十一万六千円、これが、この前の特別減税で現在は課税最低限が四百二十三万二千円に引き上げになった、こういうことでございますが、それが、新たにまた特別減税をやりますと、今度は四百九十一万七千円になるわけでございますね。この我が国の課税最低限が、もともとの三百六十一万六千円でも、きのうの記者会見ではイギリスの例を引いておりましたけれども、イギリスは百五万円、それからアメリカでも二百四十四万円、こういう世界的な基準と比べると大変高いということ、このことをおっしゃりたかったと思います。もともと高いところへもってきて、定額減税という形での第一次の減税をやった。そして、そこにさらに今度はまた同じ特別減税をやりますから、四百九十一万七千円になるということ。  私が以前、二月二十六日の委員会で、このような特別減税を継続するのは愚の骨頂だと言いましたら、総理も、幾つか条件をつけてではありますけれども、そのとき、その考えはそのとおりだということを言ってくれましたけれども、私はまさに、一度やってもともと高いのをさらに高くしたのをまたもう一回やってさらにさらに高くするというのは、これはやはりどう考えてもおかしいのではないだろうか。  そして、その後の抜本的な税制改正というのは、これは当然のことながら課税最低限を引き下げをするわけでございますから、わざわざ一回上げて、正確に言うと二回上げておいて、そしてその次の税制改正で引き下げるというのは、これはどうにも納得がいかないわけでございますね。  今ならまだ間に合うわけですよ、税制改正をやって恒久減税にするということが。あるいは恒久的な税制改正をやるということが今ならまだ間に合うわけですけれども、それでもあえて総理は、ただでさえも高いところへもってきて、さらに高くして、またさらに高くするおつもりなのかどうなのか。その愚かさというものを認識しておられるのかどうなのかということをお尋ねしたいと思います。
  20. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 愚かと言われれば愚かかもしれません。しかし、今やはり私は、減税というものが必要だと思いましたし、同時に、恒久的な税制改革の観点から所得課税について議論をしている、その時間が果たしてあるだろうかと。あるだろうかというのは、特別減税をしないでです。そういう意味では、私は、特別減税議員のお言葉に対して、愚の骨頂だと言われたとき、確かにそういう答弁を私しましたけれども、今、それでもこの時期、景気対策という意味からは必要だと判断をいたしました。  その上で、もうこれは議員に申し上げるまでもなく、御承知のように、今、二度の抜本的な税制改革の中で、例えばサラリーマンの方々は一〇ないし二〇の税率適用ということで、フラットになった構造というものは既に存在しています。そういう意味では、実は、むしろ所得の高い方々の税率がほかの国に比べて高いということはこれは事実問題として存在しますが、課税最低限を考えてみますと、所得課税全体、これは日本は負担としては各国に比べて非常に低いわけです。同時に、各種の控除のあり方、これも当然ながら、恒久的な税制改革をするとすれば考えなければなりません。あるいは資産性の所得課税、あるいは年金課税のあり方、そういう意味では、実は個人所得課税についてはさまざまな議論が現に存在しているわけです。  だからこそ、そうした問題について幅広くきちんとした議論を行いたい。公正、透明なという言葉を使わせていただきますが、国民の意欲を引き出せるような税制を考えていくには私は時間が多少は必要だと。しかし、その間、減税なしでいい、景気回復が図れるか。心理的なものも含めると、やはり特別減税は必要だという判断をいたしました。  確かに、その結果として課税最低限は引き上がるわけでありますが、これはやはり景気対策という意味で採用した施策であって、根本的に個人所得課税のあり方を検討する時点では、やはり標準世帯でありますなら三百六十一万円というベースから考えていくべきだ、特別減税の結果上がってしまった課税最低限をベースに議論をすべきではない、私はそう思うのです。
  21. 海江田万里

    海江田委員 景気対策という考えで採用した、いわば緊急避難的に採用したということだろうと思います。  私が冒頭に今度のサミットの位置づけを、まさに日本構造改革が注視をされているんだということを改めて確認をしたのは、これから打っていく一つ一つの手が、たとえそれが景気対策ということでありましても、やはりそれは日本構造改革につながっていくものでなければいけないということでございます。これは公共事業などについてもそうでございますし、減税などについてもそうでありまして、これが日本構造改革につながらない、構造改革をむしろ後戻りさせるような対策であれば、幾ら緊急避難だからといっても、これはやはりその議論にたえられないものではないだろうか、私はそういうふうに考えるわけでございます。  一つだけ確認をしておきたい。これは大蔵当局でよろしゅうございますが、課税最低限をそもそもの三百六十一万六千円から今度の、既に第一次はやっておりますが、第二次の特別減税で四百九十一万円まで引き上げることによってどのくらいの人が課税対象から外れるのか、非課税になるのかという数字、大体何百万人ぐらいなのか、あるいは何千万人かもしれませんけれども、その数字をお聞かせいただきたいと思います。
  22. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  今回の特別減税も、追加分を実施いたしますと、納税人員は前回の分と合わせまして約七百万人程度減少するものと見込んでおります。
  23. 海江田万里

    海江田委員 今七百万人程度が減少をするということですけれども、そうなりますと、この人たちは、特別減税で七百万人は税金がかからないわけですからいいわけですけれども、ただ、この後抜本的な税制改正をやる、私たちは恒久減税ということを主張しておりますが、総理はなかなか恒久減税ということは言わない、ただ抜本的な税制の見直しをやると。その抜本的な税制の見直しの一つの重要なポイントというのは、やはり課税最低限の問題だろう。  先ほどお話がありましたけれども、それを三百六十一万六千円のところにとどめるのか、あるいはそれよりもう少し低いところへ持っていくのか。いずれにしましても、この七百万の人たちにとっては、仮にネット減税が行われても、今までは二度の特別減税で税金はゼロになったわけですから、トータルなネット減税をやったところで、この七百万人の人たちというのは、当然のことながらこれは増税になるわけですね、税金の負担をしていただくことになるわけですね、これまで税金の負担がゼロだったのが。  そうしますと、果たしてこの人たちは、そういう意味では、特別減税をやったところで、それはつまりこの後抜本的な税制改正が間近に迫っておる、しかもそれは何度も総理初め大蔵大臣も言っているように、どうもこれは課税最低限を引き下げるところにそのねらいがあるようだということになれば、これは、いわばその人たちにとってみれば増税の予告つきでありますから、減税をしたところでそのお金をきちっと消費に回すことになりますでしょうか、どうでしょうか。この考え方はいかがでしょうか。
  24. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、課税最低限を引き下げるという発言をしたことは一度もないと思います。議論すべき問題点として、標準世帯における課税最低限が諸外国に比して高いということは私はしばしば例示で言ってきました。そして、当然ながら、私は、根本的に議論をしていけばその問題も論議の対象になると思います。あるいは先ほど来申し上げているように、資産性のもの、年金課税の問題、いろいろな角度の議論が現にあるわけです。ですから、そういう例示は私は申し上げてきましたけれども、課税最低限を引き下げるという言葉を私は使ったことはないはずです。ここは誤解のないようにしていただきたい。  そして、議論の中で、私はさまざまな議論があり得ると思います。ですから、先ほど私は、控除のあり方についても言及をいたしました。いろいろな角度の検討というものは必要なわけですし、そういう議論を私は一方に押しつけた形で申し上げた覚えはないと思います。
  25. 海江田万里

    海江田委員 引き下げるということは一度も言っていないということですけれども、これは確かに言葉としては引き下げるということは一度も言わなくても、その意味するところ、あるいは総理の考えでおりますこの税制改正というのは、当然のことながら課税最低限を今より上げるものではないでしょうし、あるいは今のままでいいのでしたら、今のままというのはまさに三百六十一万六千円のレベルでございますが、わざわざこれはきのうのサミットの後の記者会見などでもその点に触れて、この細かな数字を挙げて説明をする必要はないと思うのですね。  私は、それは確かに言葉として言わなくたって、当然のことながら、お考えになっておるのはこれは課税最低限の引き下げである。しかも、控除のあり方も見直しをするということでありますと、控除の額を広げたらさらに課税最低限は上がりますから、そこは当然のことながら控除の額をだんだん切り詰めをしていく、それによって課税最低限を引き下げていく、そういうことだろうと思うのですが、違いますか。
  26. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に、外国の方々のいる席でどういう説明をするかというのは、私はある程度工夫を必要とするものだと思っています。そして、今回、私は、幾つかの点で今まで日本のPRが足りなかったなということを感じさせられましたけれども、その一つは、まさに日本の所得課税における課税最低限の問題でありました。議論していて、課税最低限はこうなっている、え、おれのところよりよほど高いな、そこから議論がとまってしまうわけですね。  あるいは、アジアに対してもっと日本は物を買えという意見があります。確かに、国別で見れば、日本はアジアからの輸入はアメリカに次ぐ第二位です。しかし、国民一人頭にすれば我々の方がはるかに多い、ああ、そんなに買っていたのか。同時に、各国の輸入の中に占めるアジアの比率を調べてみよ、日本は高いよ、そういう説明をすると、観念的にもっと買えと言っていた人たち在黙ります。  ですから、そういう延長の中で、私は、記者会見においても、先ほど、税ではなくて金融機関に対する日本の対応についての質問が出たときにも、むしろ、預金者保護のためにこれだけの資金を用意するということは、当然それだけの理由があるからですよというような言い方をいたしました。そして、同時に、それで全部が納得したとは思っていませんけれども、やはり私は、日本の現行の税制がどうなっているのかということから言わなかったら、その情報が十分伝わっていない場合には、そういうところから議論しなければならないのは当然じゃないでしょうか。
  27. 海江田万里

    海江田委員 大いにそういう日本の現状がどうなっているかということをおっしゃっていただくのは構わないわけでございますが、ただ、この話というのは、きのう、おととい急に出てきた話じゃありませんで、これまでの政府税調、あるいは御党でも党税調、それぞれ議論をやっていると思いますが、当然のことながら、ここに問題があるよということはこれまで何度も指摘をされているわけですね。  何も、ここの問題を改めて本当にゼロから議論をし始めなければならないという話ではなくて、もう既に方向性は決まっていると私は思うのです。もしここで本当に課税最低限をさらに引き上げをするような、あるいは五百万円近い額をそのまま据え置くような税制改正というものがあったら、それは全くおかしいわけですよ。やはり経済というのは国際化をしなければいけないわけですから、片一方で法人税の実効税率の引き下げ、これは三年ぐらいかけるということでございますけれども、その問題と、この所得税の課税最低限の引き下げ、それからこの最高税率のところの引き下げでございますね、ここのところはやはり一つの大きな流れが私はできていると思うのですね。だから、そのことを私はむしろ正直におっしゃった方がいいのじゃないだろうか。ただ、正直に今この段階で言えば、当然のことながら、一度上げておってそしてその後また税金を取るのかという話になりますから、それが言えないということであります。  これはまさに本予算と補正予算議論のときもそうでありましたけれども、もう腹の中では補正をやらなければいけないということがわかっておる、あるいは財革法のときもそうでございますけれども、途中から財革法を変えなければにっちもさっちもいかないところに来ているということが御自分の中ではわかりながら、それをきちっと口に出して言わないということ、そして、何か一つ一つがベストである、一つ一つが最良であるということを言っていて、そのすぐ後でそういう新たな手だてを講じるということ、このことは、やはりもう国民がすっかりわかっておるということ、このことだけは申し上げておきたいと思います。  それから、あともう一つ、消費税の引き下げということが野党からも随分議論が出ております。  私どもは、きちっとした恒久減税をやって、そして特に今実質可処分所得が減っております三十代でありますとか四十代でありますとか、あるいは六十以上で年金をもらっている方々、この方々は低金利の影響などもあって実質可処分所得が減っているわけですけれども、そういう方たちには、高齢者に対しては年金の積み増しということで、それから子育てで大変困っておられる方々にはやはり子育ての支援の手当てという形でやはりこれは支給をすればいいというふうに考えているわけでございます。ただ、党内にも暫定的に一年や二年消費税の引き下げをやるべきではないだろうかという議論もあるわけでございますが、私は、この消費税の引き下げについて、仮に十二月一日から消費税の引き下げをやる、あるいは一月一日から消費税の引き下げをやるということになると、当然のことながら十二月一日までは物を買いませんわね、これは。それから、一度引き下げたものが未来永劫ずっとそのまま引き下げになっておればいいわけですけれども、今の財政事情から考えていくと、もちろん一生懸命になって行政改革はやるわけでございますが、それをやってもなおやはり高齢化社会というものを考えた場合、いっかは上げなきゃいけない。そうした場合、上げた後のやはりまた消費の冷え込みというものがあって、これは私は大変経済を混乱させるというふうな考え方を持っておるんですが、大蔵大臣はいかがでしょうか。
  28. 松永光

    ○松永国務大臣 消費税の税率の問題についての委員の御所見、私はよく理解できます。もし時期を定めていつから引き下げるというようなことにすれば、当然のことながら委員御指摘のとおり、そのときまでは実は消費が極めて抑制されるということになるわけでありまして、そのことは景気回復に非常にマイナスになるということだと思います。  我々としては、現在の状況、これは消費税等で新たな負担を重く求めるという考え方はさらさらありませんし、そういう状況ではないという認識に立っておるわけでございます。
  29. 海江田万里

    海江田委員 それから、今回の財政構造改革法の改正案でございますが、目標年次を二〇〇三年から二〇〇五年にするということでございますけれども、いわゆる集中改革期間、これは二〇〇〇年までの集中改革期間ということが法律にはっきり書いてあるわけでございますが、この二〇〇〇年までの集中改革期間自体はこれは動かしをしないわけでございますか、これは変える必要がないというような認識を持っておられるわけですか。
  30. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 今回の財政構造改革法の改正案の御審議をお願いしているわけでございますが、この考え方は最小限の修正を行うということでございまして、この三年間については当初の案どおり改定しない、キャップはその三年間引き続き行うということでございます。
  31. 海江田万里

    海江田委員 まさにキャップというのはこの集中改革期間にかかってくるわけでございますが、実はこれはキャップの議論とも関係をしてくるわけでございますが、この集中改革期間がそういう意味ではまさに一番緊縮財政なわけですね、一番タイトな縛りをかけるわけですね。そうすると、一番大切なことは、実はこの集中改革期間を延ばすということなんですよ。あるいは、私どもはもちろん凍結ということをうたっておりますけれども、集中改革期間で片一方で大変厳しいキャップがかかって、大変厳しい緊縮財政というものをやりなさいということを言って、この二〇〇三年までを二〇〇五年に延ばすと言いますけれども、一番大切なのは、まさに二〇〇〇年までの集中改革期間にやはり景気対策のための手当てをしっかり講じるということが実は一番のポイントなんですね。だけれども、今回の場合は、それをやらずに後ろの方を延ばしているということですね。  どういう表現をすればいいんでしょうか、人の一生に例えてみれば、一番元気でもって一番大事なときに、青春の時代のところを延ばすんじゃなくて、老後になって寝たきりのところを延ばすようなことをやっているわけでございますよ、これは。それに対してやはり、仮に幾つかの条件がございます。「経済活動の著しい停滞」ということがありまして、これが一年で終わればいいですけれども、二年あったらどうなんですか。二〇〇〇年までたった一年しかないことになるんですよ。それで本当の意味での集中改革期間ということで、そしてこれが、財政構造の改革ができるんですか、どうなんですか。これは全く疑問に感じなかったですか。
  32. 松永光

    ○松永国務大臣 委員御指摘があるわけでありますが、先ほど局長答弁いたしましたように、今回の改正あるいは修正というのは、財政構造改革法の基本は堅持しながら必要最小限度の修正を行うということで現在御審議をお願いしているところでございます。しかし、その中で、社会保障関係費については平成十一年度について極力抑制する、そういう表現に変えさせていただくことにしたわけでありますが、やはりこの集中改革期間に一切の聖域なしに制度そのものを根本的に見直して、そしてまた重点化、効率化を図って、そして、言葉は適当でないかもしれませんけれども、むだと思われるものを極力是正していくという精神は、これは非常に大事なことでありますから、堅持していくという考え方に立っておるわけであります。  同時にまた、二〇〇三年までの期間だけではGDP比、国、地方合わせての財政赤字を三%以内にしていくということは非常に坂が急過ぎる、そういう点がありますので、その坂をなだらかにする、それに応じた財政政策をやっていくことが我が国の財政政策についての国内外の信頼を確保することになる、こういったことで目標年次を二年延ばすことと、それから異常な事態が起こった場合の特例の措置ができるようにすることと、それから先ほど申し上げました社会保障関係費について、十一年度限りの措置として、表現を極力抑制という形にさせていただいた、この三つが主要な修正点であります。  こういったことをやりながら、景気の回復とあわせて、歳出のむだな分の削減等の努力とあわせて、二〇〇五年には財政構造改革の目的が達成できるように最大限の努力をしていくのが私たちの務めである、こう考えておるところでございます。
  33. 海江田万里

    海江田委員 二〇〇〇年という年は二十世紀最後の年でありますから、そういう意味での世紀の最後というところでの区切りがあるんですが、ただ、一番大切なのは、何といってもやはりこの集中改革期間ということでまさにキャップがかかってくるわけですね。それによって積極財政がとれないというところにあるので、私は、二〇〇五年にまで二年延ばすんだったら、当然のことながら二〇〇〇年の集中改革期間を二〇〇二年まで延ばして当然だと思う。ただそれは、まさにキャップの問題と絡んできますから、キャップを外さないとどういうことが起きるかということ、きょうはもう時間がありませんから、この後、あした以降何日か恐らく一般質問をやれるはずですから、これはいっぱいそこで議論をしたいと思いますけれども一つだけ指摘をしておきます。  今度の総合経済対策で、政府は景気対策で一般公共事業費、施設費等でたしか六兆円積み増しをしていますね。当然補正予算で手当てをするわけですけれども、当初予算については公共事業費についてはキャップがあって、この一九九八年度の当初予算はたしか七・八%のマイナスになっている。社会保障費は、先ほど大臣がおっしゃったように法律改正をしたけれども、公共事業については法律改正をしていない。まさに補正予算といういわば禁じ手でもって手当てをしているわけですよ、これは。最初からこの補正予算に抜け道があるということは財政構造改革法の審議の中で随分議論になったところです。だけれどもこれは抜け道であり、禁じ手なんですよ。キャップを外さないからどういうことが起きるかというと、今度の九九年度の当初予算では、またがたっと減らさなきゃいけないわけですよ、これはキャップ外してないから。
  34. 中川秀直

    中川委員長 海江田君、質疑時間が終了しております。
  35. 海江田万里

    海江田委員 はい。  ですから、当然のことながら、今度の当初予算でも、これまたキャップをかけて公共事業費はがたっと減らすということでよろしゅうございますね。
  36. 中川秀直

    中川委員長 簡潔に御答弁願います。
  37. 松永光

    ○松永国務大臣 理論的に言えば、平成十一年度の予算編成の場合の公共事業費については、十年度の当初予算を念頭に置いての予算の編成になると思うのでありますが、まだ十一年度のことについては考えていないところでありまして、その時点においてしっかり考えていきたい、こう考えておるところです。
  38. 海江田万里

    海江田委員 ありがとうございました。
  39. 中川秀直

    中川委員長 これにて海江田君の質疑は終了いたしました。  次に、金田誠一君。
  40. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 民主党の金田誠一でございます。  総理サミット出席、本当にお疲れさまでございました。  財革法、財構法につきまして、順次質問をさせていただきたいと思うわけでございます。  今日の不況の原因でございますけれども、さまざまな要因が重なって起きているというふうには考えます。例えば、不良債権の問題あるいは消費税の引き上げの問題等々ございますけれども、その一つとして、大きな要因として、この財政構造改革法、この法律に基づいて予算が組まれてきたということが今日の不況の大きな原因の一つになっていると私は思うわけでございますけれども総理はどのようにお考えでございましょうか。
  41. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身、従来から繰り返し申し上げてきておりますように、財政構造改革の必要性というものは、当然ながらいささかも変わるものではない、同時に、それぞれの時点において、内外の経済情勢あるいは金融情勢に対応して臨機の措置をとることも必要だということを申し上げてまいりました。  そして、十年度当初予算におきまして、予算の作成時点における内外の経済あるいは金融情勢を踏まえながら、財政金融両面にわたる措置を講じ、今その早期執行に全力を尽くしているところにあるわけです。同時に、今の状況をかんがみ、必要かつ十分な総合経済対策が必要、そのための補正予算、また財革法自体につきましても、緊急避難的に適切な措置をとり得る枠組みを整備させていただきたいと、国会に御審議をお願い申し上げている状況にございます。
  42. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 総理質問の内容を多少誤解されているのかなと思うわけでございますけれども、私は、財政構造改革が不必要だとかということを一切申し上げてはございません。必要なことは当然でございますけれども、今日の財政構造改革法、これに問題があるのではないかという立場で御指摘をしておるわけでございます。  財政構造改革法によって、さまざまな財政、各費目ごとに抑制をされた、そういう当初予算が組まれた。そのことが景気の回復にマイナスに作用をした、あるいは景気を後退させる要因となった、少なくとも景気回復にプラス要素にはならなかったということを指摘しているわけでございます。その点について、そうなのかそうでないのかという御認識を伺いたい。  ということは、今回、補正、これほどの緊急経済対策が出されていること自体、財革法による当初予算に問題があったということの何よりの証拠だと思うわけでございますし、弾力条項等の修正をせざるを得なかったということもその証拠だろうと思うわけでございまして、特に他意はございません。そうした客観的な状況を素直に判断して、現行の財政構造改革法には問題があった、それによる予算編成を進めたことは、経済に少なくともプラス効果を及ぼすことはなかったということをお認めいただきたいというのが質問の趣旨でございます。
  43. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、私は、議員の御質問を誤解したわけではございません。むしろ、十年度当初予算におきましても、例えば議員は、そのために動きがとまったんじゃないかという御指摘をいただきましたが、私、ここ数年間の、公共事業に対する大変厳しい御論議が国会で行われましたことをよく記憶をいたしております。  そして、公共事業に大変否定的な御意見というものも数多く出されました。そして、そのむだを省く努力を、当然ながら政府は十年度当初予算においても行ってまいりました。あるいは制度減税特別減税、こうしたものを考えましても、そうしたための手段というものをとられてきたわけであります。  そうしたことを考えますと、景気への、配慮を欠いたとまではおっしゃいませんでしたけれども、影響を与えたということを言われましたこと、これは事実問題として景気が回復していないのですから、これは私自身もその点を否定するつもりはございません。そして、緊急対策をとり得る枠組みを当初から財革法に用意していなかったという点は、私自身、国会論議の中で気づき、むしろ積極的にそれを政策的な、立法政策上の御意見として受けとめるという答弁も申し上げてきたところでございます。
  44. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 多少お認めをいただいたのかなと思って受けとめさせていただきましたけれども総理、緊急経済対策をとれるような条項が組み込まれていなかった、そのことが今修正で出されてきている弾力条項等という意味合いになるのだろうと思うわけでございますけれども、果たしてその程度でよろしいのかということが私の問題意識なのでございます。  財政構造改革を行うという場合は、このような今日のような不況下で財政構造改革ができるわけがないだろう、財政と経済は一体のものである、経済が好調で税収が伸びて、緊急経済対策など要しない状況をつくり上げることが本来の財政構造改革ではないのかという観点なのでございます。その基本的な観点を財政構造改革法は欠いているのではないかという問題意識が実はございます。弾力条項等で緊急にその手だてを講ずる、そういう余地がなかったということが問題なのではなくて、もっと積極的に、経済を回復させる、景気を回復させるということが財政構造改革、財政再建にとって不可欠である、本来そういう観点から財政構造改革法というものは策定をされるべきではなかったかというふうに考、えるわけでございます。  基本理念として、経済の回復が財政構造改革にとって不可欠である、そういう観点からつくられた法律ではない、そこに基本的な問題があるのではないかという私の問題意識なのでございますけれども、いかがでしょうか。
  45. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員の問題意識を否定するつもりはありません。  ただ、同時に、お考えをいただきたいと思いますのは、今回のマーストリヒト条約によるユーロのスタートに向けて、必ずしも、経済の好不調という意味からいくならば、議員のようなお考えをとりました場合に、余り歳出の削減等のできる状況ではなかったような国々が、ユーロのスタートに自国経済の水準を合わせるために、例えばその社会保障費のようなものに対してまで、非常に壮絶なと言いたいぐらいの大なたを振るい、スタートから原加盟国としてスタートのできるような経済運営を行ってきた国々が現にございます。  そうした状況を別に私は日本の例になぞらえるわけではございませんけれども、やはり財政構造改革の努力というものは不断に必要なものではなかろうか、私はそう思います。
  46. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 また総理は誤解をされているのかなと思うわけでございますが、私は、不断に財政構造改革の努力が必要ないなどということは一切申し上げるつもりはございません。これから先も本当に血のにじむような努力が必要だということは十分承知をしているつもりでございます。その上で、景気回復経済の成長ということと、財政の構造改革、財政再建ということとは不可分ではないか。したがって、財政構造改革法の基本的な視点の一つとして、経済を成長させる、景気を回復させる、こういう観点が必要だ。しかし、現在の財革法、財構法にはその観点が欠落をしている、ないしは極めて乏しいということを御指摘申し上げているわけでございます。この点、ぜひひとつお考えをいただきたいと思いますし、またの機会に再度お尋ねをしたいな、こう思ってございます。  そこで、私なりに考えます財政構造改革法の本来あるべき姿ということにつきまして、最低でも次の三つの点は押さえるべきではないか、こういう私見を申し上げたいなと思うわけでございます。その上で総理の御感想をお聞きしたい、こう思います。  第一には、不況時には財政の抑制を義務づけるべきではないということでございます。不況時には財政出動をして景気を回復させる、そのことが財政再建にとって最も効果があることだ。不況時に財政を抑制してさらに景気に水を差すようなことで、税収も低迷して何が財政再建かということなのでございます。  こういう観点から、私ども平成ニューディールというような政策も提起をしているわけでございますけれども、財革法の柱の一つとしては、不況時には財政抑制を義務づけるべきではないという点が一点私は必要だと思うわけでございます。そのことが、基本的な理念として、弾力条項などということではなくて、財革法の構造そのものの基本として位置づけられるべきだと思うのが一点でございます。  もう一つは、その逆に、景気が回復して好況時になった場合、この場合には大胆な財政抑制、それこそマーストリヒト条約に基づいて各国が大変な努力をしたような、そういう血のにじむような財政再建努力は、好況時にこそ明確に位置づけられるべきだ。財革法を発動する場合の観点といいますか、不況時、好況時、その一定の指標を目安にしながら政策というものは発動されるべきである、こう考え、本来好況時にこそ財政抑制が大胆に行われるという観点がこれまた財構法の中には欠落をしておると思うわけでございます。本来それが盛り込まれていなければならない、こう考えるわけでございます。  三点目でございますけれども、これは、好不況にかかわらず財政支出にむだがあってはならない。これは当たり前と言えば当たり前のことでございますけれども、公共事業ばかりではございません、さまざまな面にいろいろな指摘が常々されていること自体が問題だろう。そういう指摘を受けないようなむだの排除というものは、これはもう好不況にかかわらずされなければならないというのが三点目でございます。  具体的には、例えば公共事業について言えば、費用便益分析の義務づけなどが財構法の中で明確にうたわれるということが必要ではないか、こう私は考えるわけでございます。  一つには、不況時には財政抑制を義務づけない。好況時には、その逆に大胆な、本当に血のにじむような財政構造改革をやっていく。そして、好不況を問わずむだを排除する。これこそが本来の財政構造改革法の三本柱、基本的理念としてうたわれて、それに基づいて法律全体がつくられなければならない。それを欠く今の法律ですから、私どもは凍結以外にないということを主張しているわけでございますけれども、この三つの視点、総理、いかがでございましょうか、御感想をいただければと思うのです。
  47. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 また誤解と言わないでください。私、誤解してお答えしているつもりは最初からないのですが、二度ともお答えをしますたびに質問を誤解していたのではないかと言われまして、ちょっと困ったなと思っております。  その上で、今三つの視点を挙げられましたけれども、第三の視点に異論を唱える方はだれもいないだろうと思うのです。  そして第一点、これは第二点にも連動することになるわけですが、今回私どもは、緊急避難的な適切な措置を講じ得る枠組みとして、特例公債発行枠の弾力化を可能とする規定を設けることにいたしました。ある年の予算、特例公債の発行額を前年度より縮減する場合、経済活動に著しい停滞が起こり得る、国民生活などに重要な影響を及ぼすような事態が起こり得る、またそれに対する施策の実施に重大な支障が生じるといった場合には、例外的にそのとき特例公債が前年度に比べて増加することも許容されるわけですから、これは所要の財政出動は可能になるわけです。  私は、そういう意味では、議員がお述べになりました一、二の原則、これはお話として伺ってそれが全然理解できないというのではありませんけれども、どういう指標を用いて、財政構造改革を停止する、あるいは急速に加速する、こうしたメルクマールにするのだろうといったようなことを考えますと、やはり私は弾力条項を挿入していただくやり方の方が実態的には合うように思います。
  48. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そういう微調整ではもはやこの事態は乗り切ることができないのではないか、そういう問題意識から御質問を申し上げたわけでございます。  一、二、三と三つ申し上げました。好況時、不況時、その中間の景気中立的な予算を組むべき事態も、もしかすれば、詳細に分けると一、二、三、四というふうに分ける必要があるのかもしれませんけれども財政構造改革法のつくり自体、景気に着目をして、一定の指標、例えば経済成長率であるとか、今もっと重要なのはもしかすれば失業率かなと思ったりもしているわけでございまずけれども、一定の経済指標に着目をして、それによって緊縮型財政を組むか積極型財政に転ずるか、あるいはその中道型、中立型の予算を組むかという観点が欠落をしているのではないですか。こうせっぱ詰まって、どうしようもなくなって弾力条項を適用するということと、積極的に、景気と財政構造のリンク、不可分のものだというふうにとらえて法律をつくるのとでは、根本的な発想が違うのではないですかということを私は申し上げたかったわけでございます。  先般、厚生委員会総理に御出席いただいて、官僚主導型ではないかというふうに私が御指摘をしましたところ、総理は多少御立腹のようだったと記憶をしているわけでございますけれども、今回の財政構造改革法のつくり自体、私は、単年度収支主義ということにかなり縛られているのではないかなという気がしてなりません。大蔵、財政を預かる立場からするとそうならざるを得ないのかなと思うのですよ。それが悪いとか罪だとかと言うつもりはないのです。立場立場があって、それぞれ自分が任された観点から物を見れば、単年度収支に重きを置かざるを得ないという状況はわからないわけではない。  しかし、世の中財政だけで動いているわけではなくて、そしてその財政自体も経済と密接にリンクして動いている。そういう中で財政構造改革法をつくるとすれば、経済がこのような低迷を続けていて、財政だけが健全化される、構造改革されるなどということはあり得ないわけでございますから、経済をいかに生かしていくかという観点の中で法律をつくり直すということが必要だと思うのですが、再度いかがでしょうか。
  49. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ですから私は、議員の、三つを今四つのルールに改めて、中立的なものを加えてという御見解を全く否定するものではありません。  ただ、私は、そのメルクマールのとり方はなかなか実は難しいのではないだろうかと。そして、失業率をと言われましたが、実は、今確かに我が国の失業率、非常に高いわけですけれども、若い方々の部分と高齢者の部分とには質的な差異があることも御承知のとおりです。そうすると、そうしたものが果たしてうまいメルクマールになるだろうかという疑問を私は率直に呈しました。  そして、まだ私は弾力条項をとることによって先ほど申し上げましたような運営ができると考えておりますということです。
  50. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 かみ合わないようでございますので、次に進ませていただきます。改めてまたこの問題は議論をさせていただきたいなと思うわけでございます。  そこで、それでは今日のこういう極めて深刻な財政状況を招いた原因は一体何なのかという観点で少し質問をさせていただきたいなと思うわけでございます。  大蔵省が「財政構造改革を考える」ということでつくられましたパンフレットがございます。これで危機意識をあおり過ぎて、今日の不況を招いた一つのその要因になった記念すべきパンフレットだろうなと思って拝読をしているわけでございますが、この十ページに「公債残高の累増」というグラフが、これはいつでも出てくるグラフなんでございますけれども、あるわけでございます。これを拝見いたしますと、一貫して公債残高がふえておるわけでございます。好不況を問わず、特に、右肩上がりの成長は終わった、あるいは終わると言われてきた状況の中でも、公債残高だけはふえてきている。これで財政構造がおかしくならなかったら不思議だ、そもそもの原因はここにあるのではないかと思うわけでございます。  どうも、そのよって来る原因を明確にせずに、あたかも自然現象であるかのように、さあどうする、今後どうする、国民の負担増だという危機のあおり方は、私は、本来の財政構造改革につながってこないのではないかなという意識がございます。  そこで、今日の財政破綻を招いた原因でございますが、例えばバブル期、毎年かなりの税収の増が続いたわけでございます。経済も成長し一それに伴い税収増もあった。にもかかわらず、このような国債残、国債を発行して累積がどんどんふえていった。いわば放漫財政だと思うのですが、それが今日の財政破綻を招いた大きな原因の一つであると思いますが、いかがでしょうか。
  51. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、今ちょうど議員の御質問を拝聴しながら、我が国の財政の歩み、昭和四十年以降のものをずっと眺めておりました。そうしますと、幾つかの変化が読み取れます。  昭和三十九年度以前の均衡予算主義から、四十年度に初めて補正予算で歳入補てん債を発行した。四十一年度の当初予算から建設公債を発行し、しかしこれは、高度成長に伴う税収増の中で公債依存度の引き下げにある程度の成功をした。そして、オイルショックというものを経験し、特例公債の発行を行うことになった。その後、いわゆる世界経済における機関車論といったものの中で大量の公債発行を余儀なくされた。そして、いわゆるゼロシーリングという考え方が昭和五十七年から、昭和五十八年度になると予算編成においてマイナスシーリングというものが出てきた。そういう意味では、私は、随分いろいろな工夫がされてきたなと。  しかし、やはり一つは、バブル経済崩壊後、累次にわたる景気の下支え策として公共投資を追加してきたこともありましょうし、あるいは、人口の高齢化に伴う社会保障分野に見られるような政府の役割の増大と、これに伴う歳出の増加、拡大。同時に、大量の国債発行の結果として利払い費が非常にふえてきた。いろいろな要因があることは間違いありません。ただ、私は、それなりに、過去の自然増収を浪費してしまったとまでは言えないのではないだろうか、いろいろな努力をしてきた跡が読み取れるのです。  ただ、これは御批判としてちょうだいをしておきたいと思います。
  52. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 そういう御認識だからこそ、今回の財政構造改革法に好況時における財政の抑制という観点が全く欠落をしてくることになるのではないかと思うわけでございます。  マーストリヒト条約等を引き合いに出されて、各国の財政赤字削減努力ということに対して総理はかなり感慨深い思いを述べられておりましたけれども、そういうことをおっしゃるのであれば、好況時になぜこういう状態をつくってきたのか、そして今、このマイナス成長に陥ったときに、財政出動をするどころか逆に削減をしなければならないというような状態をつくってしまったのか。  責任問題云々ということを申し上げたいと思ってはおりません。そういうことではなくて、本来財政構造改革法というのはいかにあるべきなのか、今国民総ぐるみで大変な苦難に立ち向かわなければならないその指針になる作戦計画、設計図として財政構造改革法というのが本当に適切なのかどうかという観点で御指摘をさせていただいているつもりでございますけれども、バブル期の財政運営に対してまで、総理、今の御答弁はないんではないかなという感想がございますが、時間がなくなってまいりました。総理、それについて御感想ございますか。
  53. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私自身、大蔵大臣のときの平成二年、特例公債ゼロという目標を立て、そこまで抑え込んできたことがございます。そういう運営を自分自身でいたしたこともありますが、その上で、率直に今私はその歩みを見た感じを申し上げました。おしかりになるなら、おしかりはちょうだいをいたします。
  54. 金田誠一

    ○金田(誠)委員 改めて一般質疑の中でやらせていただきたい、こう思います。  あと、厚生大臣に対する質問と大蔵、経企庁に対する質問を用意してございましたのですが、時間がほとんどなくなりましたので、大蔵大臣、恐縮でございます、一点だけ質問させていただきたいと思います。  財政構造改革を考えた場合、税収の適正な確保ということが当然必要でございます。その場合、これは厚生省から出た文書なのでございますけれども、医療保険改革に当たっての厚生省試案なんですが、その中で、「被用者保険と国保とでは、所得捕捉の実態に対する国民の意識や保険料徴収の方法等が異なることなどを勘案し、現行の被用者保険と国保の二本建て制度とする。」というくだりがあるわけでございます。要は、国保、自営業者と被用者保険とでは所得の捕捉率が違う、クロヨンとかトーゴーサンとか言われている状態があるということをこれは暗に示した文書だと思うわけでございます。  それで、先般、厚生委員会で厚生省に聞きましたら、それは大蔵省に聞いてくれという話だったわけでございます。  日本政府として、課税ベースの適正な捕捉という観点から、いわゆるクロヨンとかトーゴーサンとかいう状態があるというのが日本政府の公式見解なのか、そうではないのか、これだけお聞かせください。
  55. 舩橋晴雄

    ○船橋政府委員 お答え申し上げます。  給与所得、事業所得、農業所得等の各所得種類間における捕捉の格差について、クロヨンというようなことが言われておりまして、また、こうした言葉に象徴されるような所得の種類……
  56. 中川秀直

    中川委員長 簡潔に答弁しなさい。
  57. 舩橋晴雄

    ○船橋政府委員 はい。この不公平感が存在することは承知しております。  ただ、私ども、税務調査によって見ますと、これは問題があると認められたものを税務調査しているわけでございますけれども、申告漏れ所得の割合はおおむね二五%程度でございます。したがいまして、このように過去の税務調査等から見て、クロヨン等と言われるような大きな所得捕捉の格差はないと考えておりますけれども、一部に、依然として過少申告を行う不誠実な納税者のいることも事実でございます。  したがいまして、国税当局といたしましては、適正かつ公正な課税を実現するため、今後とも一層の努力を続けてまいりたいというふうに考えております。
  58. 中川秀直

    中川委員長 これにて金田君の質疑は終了いたしました。  次に、岡田克也君。
  59. 岡田克也

    ○岡田委員 民主党の岡田克也です。  限られた時間でございますので、端的にお聞きしたいと思いますので、端的にお答えをいただきたいと思います。  まず、先ほど海江田委員が最後に触れられた点でありますが、来年度の公共事業予算であります。  財革法では、十四条第二項におきまして、平成十一年度の公共投資関係費の額は前年度の当初予算における公共投資関係費の額を下回るようにしなければいけない、こういう規定になっております。ということは、これから補正の議論が進むわけでありますけれども、今年度、平成十年度の当初予算の公共事業の一般会計ベースの予算額を十一年度は下回らなければいけない、こういうことですね。  これは私は大変なことだというふうに思うわけでありますが、先ほど大蔵大臣は、理論的に言えばそうなると思うけれども、十一年度のことは考えていない、こういう答弁をされました。私は、これは大蔵大臣として極めて自覚を欠いた無責任な発言ではないか、こういうふうに思うわけであります。もし、本当に考えておらないで今予算を担当しておられるとすれば、これは私は、このままいけば十一年度は大デフレ予算になるわけでありますから、そのことを念頭に置かずにやっておられるとすれば大蔵大臣失格である、こう言われても仕方ないと思いますが、もし、先ほど答弁について、何か追加的におっしゃりたいことがあるのであれば、大臣の御見解をお聞きしたいと思います。
  60. 松永光

    ○松永国務大臣 考えていないと言ったとすれば、これは大変な言い回し方のまずさでありまして、十一年度予算の編成は、先ほど海江田議員質問に対して答えたとおり、十年度の当初予算を前提にして編成するということになるわけでありますが、その点は念頭に置いておりますが、しかし、具体的な数字その他はこれから検討していくべき、十一年度の予算編成の過程の中で議論をしていくことだ、とう思っておるわけでありまして、そのことを今からいろいろ言うわけにはいかぬ、こういう意味先ほど申し上げたわけであります。  いずれにせよ、財政構造改革の精神を踏まえて、事業内容の効率化とか重点化とか、あるいは費用対効果分析の仕組みの徹底とか、そういったことを通じて、適切な十一年度の予算になるように最大限の努力はしていかなければならぬ、こう思っております。
  61. 岡田克也

    ○岡田委員 私は、大蔵大臣が果たしてこの財構法を御理解されているのかどうか、疑問に思うわけであります。この十四条二項によれば、中身はいろいろあると思いますけれども、トータルの額としては、公共投資関係費は十二年度は十一年度当初予算より上回ってはいけない、下回らなければいけない、こういうことですね。そのことについてはよろしいですね。
  62. 松永光

    ○松永国務大臣 厳しいことでありますけれども、そういうふうに定められておるわけでございます。
  63. 岡田克也

    ○岡田委員 これは、私は、大変なデフレ予算にならざるを得ないというふうに思うわけでございます。  これから補正の議論をするという中で、大蔵省の資料によりますと、今回の対策によって、公共事業の積み増しによる名目GNPの押し上げというのは一・九%である、こういうふうに言われているわけでございます。それは専ら補正による部分でありますから、その補正による部分がなくなるわけですから、平成十年度から十一年度にかけて、単純にその分が今度はマイナスになる。ですから、平成十年度に比べて十一年度、公共事業に関していえば名目GNPが一・九%下がる、こういうことになると思いますが、その点についていかがでしょうか。
  64. 松永光

    ○松永国務大臣 今回の総合経済対策のGDP押し上げ効果、これは経企庁の方で計算をしていただいたところでありますが、私の理解するところ、公共事業費の追加が主たるものでありますが、同時に、その他施策との相乗効果もあっての数字だ、例えば減税効果等も合わせての総合的な数字だというふうに私は理解しております。  いずれにせよ、先ほどから議論の中に入っておりますように、財政構造改革法の規定によりまして、十一年度は十年度の当初予算を前提にしての編成をしなきゃならぬという縛りがあることは事実であります。その縛りの中でいろいろ工夫を凝らして、そして十一年度の予算は編成しなきゃならぬ、こう思っておるわけであります。
  65. 岡田克也

    ○岡田委員 そのいろいろ工夫という余地がどこまであるのかという問題だと思います。  私が今一・九と申し上げましたのは、社会資本整備で名目GNP比一・九%の効果、つまり九・八兆円の効果があるというのが政府の出した数字であります。その中には地方単独事業一・五兆円も含まれておりますから、その分を除いたとしても、一・五%ぐらいの経済成長押し下げ効果は十一年度予算を組むことによって出てくる、こういうことになると思うのですね。別途大減税でもやられるのなら別ですよ。今年度を上回るような大減税をやられるのなら別ですけれども、そうでなければ、もう既に、十一年度の経済ががたがたになることは見えているわけであります。  そのことについて、政府として、総理、どういうふうにお考えでしょうか。
  66. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 十一年度につきましては、またその状況に応じて対応するということでございますが、今回の補正予算及び関係の総合経済対策の中には、いわゆる十兆円、事業費関係で八兆円、それから減税で二兆円のプラスがございますが、そのほかに柱が二つありまして、一つ経済構造改革を進める。規制緩和や情報通信、科学技術、あるいはベンチャーを育てるというようなことによります経済構造改革を進めて、民間活力を生かしたような体制にしていく、そういう点が一つ含まれております。それからもう一つは、先ほどお話しになっておりますとおり、不良債権の抜本的処理を進めるトータルプランを進めるということでございまして、そういう政策を全体として進めてまいりまして、経済活性化を図り、民間活力中心の方向に行くというのが考え方でございます。  もとより、十一年度につきましては、その時点における経済情勢等を考えて各般の施策を講ずることは、当然のことであると考えております。
  67. 岡田克也

    ○岡田委員 十一年度予算を具体的に政府の中で御議論されるのは、ことしの秋以降ということになると思いますが、そんなに先の話じゃございません。そして、私は、今回の景気対策で、確かに有効需要が盛り込まれることで多少景気が底上げされることはあるかもしれないと思いますけれども、しかし、それは公共事業による一時的なものであります。今度、十一年度にその公共事業がどんと減るわけですから、これはまたジェットコースターみたいにがくっと景気が悪くなる。規制緩和とかいろいろおっしゃいますが、そういうものの効果はすぐに出てくるわけではございません。  したがって、私は、公共事業の予算をそんなにふやすのは必ずしも賛成するものではありませんが、もし政府が公共投資が重要だというのであれば、ことしのこの補正に加えて、来年度当初予算でも、少なくともことしの当初と補正を足したぐらいの公共投資は盛り込んでいかないと、これは景気は絶対おかしくなりますよ。総理、そういうふうに思われないですか。
  68. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、今議員の御議論を伺いながら、これ、反論するのじゃありません、しかし今まで公共事業について、本院でもまた参議院においてもいろいろな角度からの議論がございました。そしてその意味では、私は、今後ともに財政構造改革の趣旨というものは公共事業についても踏まえていかなければならないと思います。  しかし、それ以上にそこで必要になるもの、それはコストの縮減であり、あるいは費用対効果の分析の活用、そして再評価システムというものを導入し、そうしたことを通じてどれだけ重点化、効率化を図っていけるかという課題がもう一つ公共事業については必要だと思います。  ですから、財革法の縛りの限度内ということ、これは私は議員の指摘のとおりだと思うのですけれども、同時に並行して進めなければならないこと、それは、公共事業というもののいわば効率化とでもいいましょうか、まさにコストの縮減から始まる一連の今申し上げましたような手法、これは同時にそれだけ事業量を拡大する効果は同じ金額の中であるわけですね。そうしたこともまた議論の中に必要な視点ではなかろうか、率直に今そういう感じで伺っております。
  69. 岡田克也

    ○岡田委員 今の総理の御答弁に対しては、二点指摘をしておきたいと思います。  まず、我々は、公共投資についてはこの予算で四兆円という政府よりは小ぶりな提案をしております。ただし、その四兆円の配り方については、従来とは全く違う考え方で、地方自治体の自主性に任せるような方法でその配分をすべきだということを申し上げております。  それからもう一つは、もし総理が今おっしゃったようなことであれば、この十五条の第一項を改正して、従来の五年計画を七年に全部延ばすというようなやり方ではなくて、この補正でも、実態はともかくとして、情報化とか生活関連とかそういうものに重点を置くと言われたわけですから、全体の本体からそういうふうに直される。そのためにはこの十五条を改正するということを言われるのが筋だ、そういうふうに私は指摘を申し上げておきたいと思います。  いずれにいたしましても、こういう状況の中で単価の圧縮とかいろいろなことをされるとしても、金額ベースで大変な、五兆、六兆という予算、公共事業予算が減るわけでありますから、そのことによる景気への悪影響というのは私は免れないと思うのです。恐らく、来年の一月にことしと同じようなことになっているのじゃないか。  つまり、当初予算は財革法の制約があるから圧縮予算、しかしもう同時に補正がだんごになってくっついてくる。しかし、政府としては補正の話はしばらくはできないから、この予算が最善でございます、早く通してくださいと言い続ける。それで、終わった途端にまた財革法の改正等、公共事業について積み増す改正と、あるいは補正ですから改正しなくてもできるのかもしれませんが、補正予算がだんごになってまた出てくる。ことしの繰り返しが来年も行われることは私は確実ではないか、こういうふうに思うわけでございます。  今年度のこの予算のやり方は本当に異例で、私はこういうものを本来認めるわけにはいかないというふうに考えております。例えば今だって、時間がないのか何かわかりませんが、補正が出てこないのに関連法の審議をしている。このままいけば、関連法の採決の時期と補正の採決の時期が恐らく二週間ぐらいずれると思うのですね。国会始まって以来そんなことはありませんよ。大体時期は合わせているのですよ。そういう異例なことをやり続けながら無理している。  同じことを恐らく来年もやらざるを得ないと私は思いますが、総理総理の御任期もあるとは思いますけれども、もし来年のこの国会においてことしと同じようなやり方で、当初予算を出されながら、それじゃとてもだめになって補正をすぐ出さざるを得ないという状況になったとしたら、総理はその責任というものについてどういうふうにお感じになられますか。
  70. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず最初に、議員が触れられました補正予算及び補正関連法案の院における御審議、これはまさに院の御判断の話でありまして、政府としては、十年度補正予算、補正関連法案、これは五月十一日、同時に国会提出をさせていただきました。そして、我々としては、この国の経済、そして経済運営に対する内外の信頼を回復するためにも、一刻も早い成立に対して心から御協力をお願いしたい気持ちでいっぱいであります。  そして、先ほど海江田委員から御質問がありましたように、今回、各国関心がむしろ不良債権処理に移った、言いかえれば中期的な問題に移ったという御指摘を受け、私もそう感じましたけれども、それは既に補正予算並びに関連法案が国会で御審議をいただいているという状況を踏まえての私は関心の変化だととらえております。  また、来年度の予算編成並びにその後における議員のお見通しというものは、今拝聴をいたしました。今後に対する忠告、警告と受けとめさせていただきます。
  71. 岡田克也

    ○岡田委員 来年度、十一年度の予算が、法律の制約上、公共事業についてはことしの当初よりも減らすということにならざるを得ないという、それだけで私は恐らく市場関係者の心理というものを冷やしてしまう、そういうふうに思うわけであります。私は、少なくとも公共事業について当初予算でふやせるだけの余地を、この法律改正をどうせするのですから、そういうものを入れておくのが本来じゃないか、それは野党の私が言うよりも政府の中でそういうふうに当然お考えになるべきじゃないか、そういうふうに思います。  それから、先ほど、補正それから関連法案は一括して国会提出したのだから後は国会の問題だと。総理は恐らくそういうふうに御答弁になるだろうと予想はしておりましたが、そうすると、大蔵大臣、今後予算と関連法案が非常に採決の時期が離れてしまうということについて、大蔵省としてはそういうことは構わないのだと。これは一つの前例になりますからね、我々は認めませんけれども、大蔵省としては構わないのだ、こういうふうに考えてよろしいですね。
  72. 松永光

    ○松永国務大臣 構わないのだと考えておるわけではございません。関連法案もそれから補正予算も一日も早く成立をさせていただきますように心からお願いを申し上げる次第です。
  73. 岡田克也

    ○岡田委員 私が聞いたのは、一日も早くの話ではなくて、採決の時期がずれてしまう、二週間ぐらい。こういうことは今まで国会にないのです。関連法案と予算の採決の時期は、多少入り繰りはあってもほぼ同じ時期にやっている。それは補正予算法律の中身がずれが出ては困るということで、ほぼ同じ時期に国会の運用としてやってきたと思うのです。それが今回、このままいくと二週間くらいずれそうだ、しかも補正が後になりそうだ、こういうことは一つの前例になりますが、大蔵省は構わないのですねというふうに確認しているわけです。  そういうことになる前例をつくることになりますよ、そのことについて、構わないのですねと聞いているわけですが、いかがですか。早くしろとか、そういう次元の問題じゃないのです。
  74. 松永光

    ○松永国務大臣 大幅にずれることは困りますので、なるべく早く補正予算の方も成立をさせていただきますようにお願いをする次第でございます。
  75. 岡田克也

    ○岡田委員 大蔵大臣に御答弁いただきましたから、私は、本来はこの関連法案の採決は補正の採決と同じ日にすべきだと思っているのです。だから、補正の審議も並行して進めて、同じ日に採決すべきだ、逆に言うと、それまで、補正の審議が済むまでは関連法の採決は待つべきだ、こういうふうに考えております。今の大蔵大臣の御答弁もその趣旨に沿った御答弁であった、そういうふうに理解をいたしました。
  76. 松永光

    ○松永国務大臣 政府の側では一緒に提案をさせていただいたわけでありまして、どういう順序で審議をしていただくかというのは、先ほど総理から御答弁がありましたように、まさに国会の案件の審議順序の問題でありますから、そのことについて私の方からとやかく言うことはできません。  いずれにせよ、関連法案が先に成立した場合においても、なるたけ早く補正予算も続けて成立させていただいて、そのずれの幅はできる限り短いものにしていただければありがたい、こう思っているわけです。
  77. 岡田克也

    ○岡田委員 大蔵大臣に御答弁いただきましたので、今後、関連法案と予算の審議についていろいろ政府の側からこうすべきだとかこうしてくれという話はない、そういうふうに理解をいたします。  次に、自治大臣、住民税の減税につきまして、今回の補正の部分については十一カ月で減税するとなっていますね。五千八百億円を十一カ月でやれば一カ月五百億円ちょっとです。五百三十億円ぐらいですね。こういう減税のやり方というのはないと私は思うのですよ。どうして一括でやらないんですか。いろいろ事務的な説明は自治省から聞いておりますけれども、しかし、そういう事務的なものを乗り越えてきちんとした一括減税をやられるのが政治家としての自治大臣の務めじゃないか、こういうふうに私は思いますが、いかがでしようか。
  78. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 お答えいたします。  事務方から説明はお聞きしておる、こういうことでございますが、今回追加をお願いいたします特別減税の実施方法につきましては、市町村における平成十年度分の個人住民税の賦課作業が短期間のうちにも円滑に実施できることを基本としつつ、二点申し上げたいと思うのです。  減税の早期の経済効果を期待するためには、できるだけ早いタイミングで、かつ、まとまった規模で実施することが適当であること、二つ目には、極力給与支払い者の事務負担の増加とならないようにすること。これは五千万にも及ぶ納税対象者があるわけでございまして、膨大な事務負担になるわけでございまして、さような意味でこのことを十分考えました。  これらのことを十分考慮しながら、六月を不徴収として、減税額を控除した年の年税額を七月以降の十一カ月間で徴収することとしたものでございます。この実施方法によりましても、給与所得者に係る特別減税額のおおむね七割が六月時で実施されるものと考えておりますが、これは八千億円のうちの五千五百億円程度となります。  なお、六月及び七月を不徴収とする方法については、その二カ月間の減税額、約一兆八百億ございますが、特別減税八千億の総額を超えることが見込まれます結果、増税感がそこに出てくるわけでございまして、減税感よりも、この二カ月間というものを取らないということになりますとそういう結果になりますから、八月以降は特別減税を行わない年よりも多くの税額を徴収しなければならなくなる、こういうことから採用しないことといたしたものでございます。
  79. 岡田克也

    ○岡田委員 私が聞かないことまでお答えをいただいたわけですけれども、十一カ月にばらさないとかえって月々の徴収額がふえてしまうというお話もありましたが、所得税の減税方式というのは集中的にやるんですよ。なぜそういうやり方は地方税はできないんですか。  大臣も、この問題は相当真剣にお考えいただいたと思うのですよ、何しろ五千八百億円というお金を使っていかにして景気をよくするかと。だから、いろんなケースがあると思うのですが、それを詰めに詰めた結果十一カ月しかないということになったと思うのですが、なぜ所得税方式でやられるということはだめなんでしょうか。大臣の見解を聞きたいと思います。
  80. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 御理解いただきたいと思いますが、この点につきましては、十カ月でやるよりも十一カ月でした方が減税感がある。せっかく減税をするわけでございますから、五千万の対象者に減税感を持っていただくことが景気対策になる。したがって、八月からと所得税と一緒にしなかったというのは、そういう点もありますことを御理解いただきたいと思います。
  81. 岡田克也

    ○岡田委員 今の大臣の御答弁は、私、理解不能であります。いずれにしましても、時間もございますから、引き続き一般質疑の中でこの問題は詰めていきたい、こう思いますので、よろしくお願いをしたいと思います。  最後に、時間もございませんが、厚生大臣、一つお聞きしたいと思いますが、最近マスコミで厚生共済会の問題がいろいろ触れられております。私もこの問題につきまして、あるいは共済会だけではなくて厚生省所管の財団法人、社団法人の問題につきまして、予算委員会や厚生委員会で昨年何度も取り上げました。私は全体のそういう財団法人、社団法人の見直しをしろということを申し上げて、厚生大臣も、そういうものについて今後適切にやる、こういう御答弁もいただいているわけでありますが、そういう中でこの問題が起きたわけでございます。厚生大臣は、そのことについてどのように責任を感じておられますか。
  82. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 この厚生共済会の問題につきましては、過日、委員会でも取り上げられまして、批判の点もよく考えながら厳正に指導するということで対処しております。  また、何日か前に新聞紙上でも取り上げられまして、その運営の実情に対して私も疑問に思う点があるということで、再度、この厚生共済会の存在の必要性があるのかどうかも含めて再検討するように指示しております。そして、批判に耐え得るような改善措置を講ずるように、厳正に指導、指示しているところであります。
  83. 岡田克也

    ○岡田委員 昨年、予算委員会でお聞きしたのが医療用食品の問題でございました。この医療用食品について、この厚生共済会というのはそこに登場するんですね、登場人物として。つまり、医療用食品を国立病院に対してあっせんをする、それでそのあっせんをすることによって三%ピンはねするということをやってきたわけであります。だから、札つきの悪徳財団法人、こう言っても私は過言じゃないと思うのです。そういうものについて、この一年間一体どうしてきたのか。そういうことをやっているわけですから、ほかにもいろんな問題があるに違いないというふうに考えて、徹底的に調査を一年前にすべきではなかったのか、こういうふうに思いますけれども、いかがでしょうか。
  84. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 そういう点についても、生ぬるい点があったんじゃないかということで厳しく指導しております。
  85. 岡田克也

    ○岡田委員 これは事務方だけの話じゃなくて、予算委員会で大臣も、全体についてですけれども、しっかり調べるとおっしゃったわけですから、私は大臣の責任というものを免れない、こういうふうに思っているわけでございます。  この問題についてもいろいろとお聞きしたいことがございますが、時間も参りましたので、少し早いですが、私の質疑を終わらせていただきます。後ほど一般質疑でやりたいと思います。
  86. 中川秀直

    中川委員長 これにて岡田君の質疑は終了いたしました。  午後一時三十分から再開することとし、この際、休憩いたします。     午前十一時五十八分休憩      ――――◇―――――     午後一時三十分開議
  87. 中川秀直

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。生方幸夫君。
  88. 生方幸夫

    ○生方委員 きのり、私も総理記者会見をテレビで見ておりまして、その総理にあした私が午後質問する、まことに地球が狭くなったなという感を強く持ちながらきのうの会見を拝見いたしました。また、総理が各首脳に伍して意見を述べられているさま、テレビ等で拝見いたしまして、大変頼もしくも思った次第でございます。  さはさりながら、事国内の問題ということになりますと、総理に私たちは一言やはり言わざるを得ないことがあるというふうに私は感じております。  この間、私たちは、財政構造改革法の審議並びにその後の補正予算審議、本予算の審議、こうした審議を繰り返して行ってまいりました。私は、この間の総理の政治責任というものを幾つか指摘をせざるを得ないというふうに考えております。  まず第一に、経済運営の見通しを誤って日本の景気を悪化させたことの責任。第二に、財革法を成立させてからわずか半年でこれを修正しようとし、また本予算に至っては成立後わずか一カ月で大幅な補正を組むなど、その一貫性のなさで、内外の日本の政治に対する信頼を大きく失墜させたことの責任。さらに、第三に、結果といたしまして国民の皆様方に多大の迷惑をかけた責任。この三つの大きな政治責任があると私は考えます。  以下、三点について、その政治責任の内容を述べていくつもりでございますが、その前に、政治責任ということについてお伺いをしたいと思います。  総理は、ことしの四月九日に行った記者会見で、政治責任の追及を恐れて必要な政策を実施できないとしたら、私はその方が政治責任だと思う、このように述べられております。  私たちは、財政構造改革法の論議のときに、財政再建に向けての枠組みはつくった、しかし景気が悪化しつつある現在、それを来年度予算に適用したら景気はさらに落ち込むことになってしまう、したがって財政構造改革法の枠組みを残したまま、その執行を一時凍結するべきではないか、このように要求をいたしましたが、総理は私たちのこの要求を突っぱねられました。また、本予算の審議の際にも、この財政構造改革法にのっとった予算を組めば当然デフレ予算になるわけで、このまま本予算を組んでいけば景気がさらに悪化する、この際、財革法の適用を一時停止し、本格的な景気対策を盛り込んだ予算に修正するべきである、このように私たちが要求したことに対しても、総理は一顧だにされませんでした。これは、まさに総理記者会見で述べた、政治責任の追及を恐れて必要な政策を実施できなかったという好例ではないでしょうか。総理の弁に従えば、これこそ政治責任に相当するのではないでしょうか。  私たちは、今、財革法を総理が言うように一部だけ修正したというのでは的確な景気対策は打てない、もっと大胆に、この際財政構造改革法を凍結をし、そのことを内外に向けて宣言し、その上で抜本的な景気対策を打つべきであると野党は要求しているところでございます。  総理がみずからの政治責任の追及を恐れて、必要な政策、すなわち財革法凍結を決断しないことは、まさに政治責任ではないのでしょうか。本当に必要な政策を実施しよう、政治責任をとるというなら、今私たちが主張するように、財革法を凍結し、本当の景気対策構造改革につながる恒久減税を実施するべく政治判断をするべきだと思いますが、いかがでございましょうか。
  89. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 責任ということから多くの御意見をちょうだいをいたしました。これは議員の御意見として、そのまま私はちょうだいをいたします。  その上で、私は、財政構造改革、やはり必要なことだと考えておりますし、凍結という手法はむしろ問題を後に送る、そういう意味でありますだけに、私としてはとるところではありません。また、今回、機敏な対応を必要とする場合に備えての最小限の措置をお願いを申し上げて国会のお許しをいただきたいと考えておりますが、やはり基本的に財政構造改革は私は必要だと考えております。  また、恒久減税というものをどうとらえるかについても御意見をいただきましたけれども議員の述べられる恒久減税というものが一体どの分野のものなのかにもよるわけですが、例えば法人課税について、少なくとも三年以内にできるだけ早く国際水準並みにということを私は申し上げてまいりました。その上で、これがなぜ微妙な問題を含むかというならば、地方税としての法人事業税の存在についてどう考えていくかということは、国とはまたおのずから違った判断のある地方自治体の見解というものもこれに反映をする必要があるからであります。  また、所得課税につきまして、もしこれを御論議であるならば、先ほど来例えば課税最低限も議論になりましたし、高額所得者の部分が高いということは私も認めております。資産性への所得課税あるいは年金課税等非常に広範な検討を必要とするものでありますし、その結果を考えますときに、それなりの審議の時間は必要であると私は思っておりますが、少なくとも、国民に対して透明であり公正な税制というものを目指した検討は行うということは既に申し上げてまいりました。  党の税制調査会は、これは参議院選に後ろをくくられておりますから、むしろ参議院選後に本格的な検討に入ると存じますが、政府税制調査会は そろそろそうした検討に、勉強に入ると思います。そうした問題はそれぞれに大切な問題ではありますけれども、それだけに真剣な、しかも幅広い方々による論議を必要とする問題ではないだろりか、そのように考えております。
  90. 生方幸夫

    ○生方委員 特別減税、恒久減税の問題については後ほど述べさせていただきますが、一言だけ申しておけば、特別減税という形で実施されて、翌年度、今度の場合は来年度も特別減税を実施するということですが、その先にどうなるかわからないということがあれば、減税を実施してもなかなかそれが消費に結びつくことはない、したがって私たちは制度的な恒久減税というものを盛り込むことが景気対策にとって最大の道であるというふうに考えておるわけでございます。  それで、今申し上げました総理の政治責任ということについて一つ一つお伺いしていきたいと思います。まず、経済見通しを誤ったという点について質問をさせていただきます。今回の財革法の一部修正ということでは、特例公債を発行できる条件として「経済活動の著しい停滞」というのが挙げられております。まさに、この財革法が成立したのが昨年の十一月二十八日でございます。この十一月という月を思い起こしていただきたいのですが、この月には、三日に三洋証券の経営破綻が明らかになり、十七日には北拓が、二十四日には山一証券の経営破綻というものが明らかになるほど、日本経済が、ここで言う「経済活動の著しい停滞」ということにまさにふさわしいような事態が起こったときだったのではないでしょうか。  今、特例公債を発行できる条件として云々、財革法の一部修正というのがなされるのであれば、このときにこそ、財革法を変えるという政治決断、ないしは財革法の骨格を残したままこれを凍結するという政治決断がなされてしかるべきではなかったのか、そのときに、財革法を改正して、本年度予算案をきっちりと景気対策を盛り込んだものにしておけば、私たちが今ここで補正予算案の前の審議ということをしている必要がないのではないかというふうに考えております。  すなわち、私たちの反対を押し切って、経済見通しを誤った上、財革法を強行して通してしまった政治責任は極めて大きいと言わざるを得ませんが、総理、この点について、いかがお考えになりますでしょうか。
  91. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 何回か同様の御趣旨の御意見を、他の委員の方々からもちょうだいをしてまいりました。もっと正確に申しますならば、まず第一に、消費税率の引き上げの影響を見誤ったのではないかという御議論であります。  確かに、昨年の一-三月、四―六月を見ますと、私どもは、消費税の税率引き上げに対する国民の反応というものを十分には見きわめていなかった。それが、一-三月における駆け込み需要の予想以上の増加につながり、四-六の消費の落ち込みにつながった。これは、私は、既に今までも認めてきたことでありますけれども、そうした点までを含めて御指摘があれば、これは甘受せざるを得ません。  しかし同時に、七-九に消費が回復していたことを、プラスに転じていたことをなかなか受けとめていただけておらないように思います。しかし、数字は正直にここを物語っておりまして、七-九にはこの影響はある程度薄れてきているという見方を私どもはいたしておりました。  その後のアジアの経済情勢、あるいは我が国における、今議員が御指摘になりましたような大型の金融機関の倒産、営業停止といったものが非常に大きな影響をその後に及ぼしたことは、事実、そのとおりでありますし、私どもが、今、その影響の中から、この日本の景気を確実な回復の基調に乗せていく、その軌道に乗せていくために必要と思われる施策を総合経済対策として公表し、それに基づきます関連の法律案、税制あるいは補正予算というものを、また御論議をいただくということになるわけであります。願わくは、こうした措置ができる限り早く実行に移せるように、国会での御承認がいただけることを今心から願っております。
  92. 生方幸夫

    ○生方委員 七―九の数字がよくなったということは、もう何度もここで指摘されておりますので、私どももよく承知をしているところでございます。しかしながら、多くのエコノミストが言うように、景気は昨年の五月ないしは六月から悪化に向かっているということは、今やだれもが認めるところでございます。  しかるに、政府、これは経企庁の月例経済報告でございますが、これは、十月まで、景気の回復基調は続いているというふうにしておりました。このような景気判断というものがあったから、景気対策がすべて後手後手に回ったのではないかというふうに私は考えております。その意味におきまして、尾身経済企画庁長官の政治責任も、私は、極めて大きいものがあるのではないかというふうに考えております。  尾身長官は、もう有名になりましたが、桜の咲くころにはということをたびたびこの場で申しておりました。きのうまた、私、テレビを見ておりましたら、七月にはというようなことを今度また言い出しておるようでございます。もう桜は散ったから、今度は、七月にまた景気がよくなるというふうに言って、もし七月に本当に景気がよくならなかったら、尾身長官は、今度はどのような政治責任をおとりになるおつもりでしょうか。
  93. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 景気の現状でございますが、先ほど来のお話のとおりの状況でございますが、全般としては、消費動向等から見ると、去年の九月から二月まで一本調子で下がってまいりました消費性向が、三月には七一・七%と、昨年九月の七一・九%に近い水準にまで戻っておりまして、もとより四月、五月の数字をちょっと見なければわかりませんが、やや状況が変わってきたかなと考えております。  そのように、いわば、川上、川下に例えますと、川上の方は多少状況が変わってきていると感じておりますが、しかし、川下の方のいわゆる生産あるいは雇用、失業率等の実体経済の数字は極めて厳しい状況にあるというふうに認識しているわけでございます。したがいまして、そういう状況に対応して、総合経済対策を取りまとめ、現在、国会で御審議をいただいているところでございます。  私は、昨日の話は、この経済対策がいつごろ国会を通るかということについてはまだ予断を許さないところでございますが、国会を通ってから一、二カ月、場合によっては、物によっては三カ月ぐらいになると思いますが、そういうタイムラグを持って現実に資金が経済の中に出ていく、そのことが経済に好影響を与えるタイミングがその程度の状況になるのではないか、こういうふうに申し上げたわけでございます。
  94. 生方幸夫

    ○生方委員 どうも、経企庁の発表する数字と我々が感じる実感というのが、余りにも違っているような気がしてならないわけです。  あるエコノミストの中には、経企庁は文化を変えるべきだというような指摘をしているところもあります。例えで言うならば、きょう、今もう雨はやみましたけれども、表は雨が降っているにもかかわらず、そして、大きな黒い雲が向こうからやってくるというときに、今は曇っているがこれから晴れるでしようというような天気予報を出すのと全く同じような景気対策、景気予測というのを出しているのじゃないでしょうか。これで、その経企庁の天気予報を信じて傘を持っていかないで出た人がびしょぬれになって帰ってくるというのが、今の状況ではないでしょうか。  尾身長官個人の意見として、本当に七月に、今これだけ悪い状況であるにもかかわらず、七月に日が差してくるというふうに、今の時点でお思いになるのですか。
  95. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 先ほど申し上げましたとおり、今回の総合経済対策の効果は、国会を通ってそれを実現されるまでの間にタイムラグがございます。しかしながら、このタイムラグはございまずけれども財政出動、今年に限りましても真水で十兆円に上る財政出動、それから規制緩和あるいは研究開発投資あるいは情報通信、その他物流等におきますいろいろな対策あるいはベンチャーの育成等もございまして、そういう政策と相まって徐々に効果をあらわす。そして、少なくとも、早ければ一、二カ月、遅くとも三カ月ぐらいのタイムラグを持って、これは必ず効果が出てくる。  そして同時に、いわゆるお金が出るだけではございませんで、中長期的には、経済構造改革を一方で進め、一方では景気回復の大きな障害となっております不良債権処理をトータルプランとして進めるという二つの対策もしておりますので、そういうものが相まって、民間活力中心の回復軌道に乗ってくるというふうに期待している次第でございます。
  96. 生方幸夫

    ○生方委員 これが、一回だけこういう対策を打ち出してその効果を待っているというのであれば私も理解がいくのですが、十一月にも既に二十一世紀を切りひらく緊急経済対策というのが打ち出されて、特別減税二兆円というのが実行をされたわけでございます。尾身長官は、こういう政策が着々と打たれれば桜の咲くころに景気が回復するというふうにおっしゃったんじゃないのですか。前に一回もやってなくて、今初めて対策を打って、その効果があらわれるのが七月だというのなら私たちも納得いくのですが、十一月にやって、補正を組んで、本予算を通して、そうすれば必ず景気がよくなるんだと言ってきた言葉を我々は信じて、前にあるから、今そのように聞いているわけで、また同じように、合格段の政策を打っているから七月によくなると言っても、なかなかこれは私たちは信じようがないのですが。
  97. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 十一月に二十一世紀を切りひらく緊急経済対策を決定をいたしました。そして、その中身は、いわゆる前年度、九年度の補正予算における二兆円の特別減税あるいは土地関係の土地譲渡益課税の軽減、地価税の凍結などの措置を決めました。さらに、規制緩和、電気通信あるいは労働者派遣業の規制緩和等の措置を決めたところでございますが、その措置が現実に国会を通って実施されましたのは、減税等で二月、三月でございましたし、それから、土地の税制、土地譲渡益課税の税制等は三月の末に通りまして、一月にさかのぼりましたけれども法律が通ったのは三月の末でございます。それから、電気通信の規制緩和等も最近国会を通りました。  ただ、労働者派遣事業の規制緩和等につきましては、十一月に方向は決めたつもりでございましたが、現在まだまとまって、連合等の反対もございまして、国会等に出されている状態にないわけでございまして、十一月に私どもとして方向性を決めたものがまだ完全には実施の段階に入っていないという点もございます。  したがいまして、私どもといたしましては、そういう方向を決めたものをできるだけ関係方面の御理解をいただきながら出して、そしてしっかりと実施をしていくことが一番大事であるというふうに考えている次第でございまして、確かに十一月には決めましたけれども、その実施あるいは国会における審議、法案の提出等の具体的な措置はまだ完全には実行に移されていないという段階にあるという点もぜひ御理解をいただきたいと思います。
  98. 生方幸夫

    ○生方委員 景気の見通しそのものが甘く、対策が、もう何度も言われていますが、ツーリトル・ツーレートになってしまったということに私は大きな政治責任があるというふうに指摘をしておきます。  次に、一貫性のない財政経済運営についての政治責任ということについて、総理にお伺いしたいと思います。  総理は、四月九日の記者会見で、  我が国経済に対して、もはや成長する力を失っ  てしまったかのような危機説を殊さら喧伝され  る方もあります。しかし、今までも申し上げて  きたことですが、私はそのような日本経済の悲  観論にはくみしません。我が国の優秀な人材、  豊富な資金、そして新しい時代を創造する技術  という世界に誇る財産を結集して、一致団結し  てチャレンジしていくことができれば必ず明る  い未来を展望することが可能になる、このようにおっしゃっております。私もこの総理の考え方には全く同感をいたします。  しかるに、景気対策、緊急対策というのを幾ら打っても景気がよくならない、この原因は一体どこにあるのか。それは政府の政策が一貫性を欠いて、世界に信頼されていないからではないか、このように私は考えております。  先ほども指摘をいたしましたが、財革法が通ってからわずか半年で修正案を出してくる、この予算がベストと言っておいて舌の根も乾かないうちに補正予算が出てくるということもしかりでございます。さらにつけ加えれば、財革法で公共事業を一律七%カットしておきながら、緊急経済対策では、財革法の骨格はそのままにしておいて、公共投資を七兆七千億円も盛り込んでおります。さらに、今特別減税ということを言っておきながら、また自民党の一部の方たちは参議院選挙後には恒久減税を実施するというふうに、それを示唆するといったぐあいに、全く政策に一貫性がないことが日本の政治に対する信頼性をなくして、景気対策に成果が出ない原因だと私は考えております。  このような一貫性のない政策運営をしてきた総理の政治責任というのは大きいと思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  99. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今お話しをいただきましたようなことを何も全部否定をしようとは決して思いませんけれども、その前提として、この国の未来を信じると言っていただいたことに私は一つの救いを覚えます。  その上で、今回の総合経済対策について、このサミットの前の外相レベル会合、蔵相レベル会合で説明をしてきていただいたものが首脳レベルにははね返りましたので、むしろ早くこれが実行に移せるように努力してほしいという要請となって今私どもの肩に乗っております。  ですから、私は、議員の御意見を、私自身が申しておらない分まで私の責任にされるのはちょっと困るところもあるのですけれども、少なくとも日本がこの総合経済対策を着実に、できるだけ早く実施に移すことに対する強い期待があるということ、この点は、それだけ逆に言えば我が国としての責任も重いわけでありますので、ぜひともこれを実行に移せるような御協力をお願いを申し上げます。
  100. 生方幸夫

    ○生方委員 今度の総合経済対策の中で、新社会資本の整備ということがうたわれておりました。当然、情報化関連の投資とか新規産業の投資というようなものが含まれているというふうに政府は宣伝をしておりますが、その中身というものをチェックをしていきますと、補正予算の省庁別シェアというのがこれまでの予算のシェアとほとんど変わっていないわけですね。これは当然、新社会資本の整備というのであれば、そのシェアが変わって、あるところに大きく予算がつけられるということでなければ今までと違った効果というのが出てこないと思うのですが、日本経済新聞によりますれば、土地流動化対策を除いた各省庁別のシェア、この補正予算に関してのシェアは、建設省が七〇・二%、農水省が二八・八%、運輸省が七・〇%、これは九八年度当初予算で比較をいたしますと、建設省が六九・一、農水省が一九・三、運輸省が六・九、ほとんど変化がないというふうになっております。  これでは、新社会資本の整備というふうに口では言っても、中身は旧態依然たる公共投資ではないかというふうな批判がなされてもしかるべきだというふうに思いますが、総理、いかがでございましょうか。
  101. 松永光

    ○松永国務大臣 公共投資の内容につきましては、もう委員も既に御承知と思いますが、まずは、環境、新エネルギー……(発言する者あり)いや、内容もそうなっているって、あなた。ダイオキシン対策とか、あるいはまた地球温暖化対策とか、それぞれ新しいものが入っているということを、それは岡田さん、認めてくれなきゃ。それから、情報通信高度化、科学技術振興とか、あるいは福祉、医療、教育、この三つの分野に公共投資の六割、事業費ベース三兆六千億を割り当てておるわけでありまして、そういう意味では、真に国民のためになるものに重点を置いた、必要とする公共投資に重点化をしたというふうにひとつ御理解願いたいわけです。
  102. 生方幸夫

    ○生方委員 でも、やはりシェアがほとんど変わらないというのでは、これは前のを踏襲したというふうに批判されても仕方がないのじゃないでしょうか。これは、いずれ実施をされていく中で、私どもが旧来の公共事業とは違ったものであるというふうなことをチェックをしていきたいと思いますので、それについての質問はこれで終わらせていただきます。  この間、私が政治責任ということを申し上げまして、さっき後ろの方からも後ろ向きの論議だというような話がございましたが、これは決して後ろ向きの論議をしているわけではございません。私は、総理に政治責任をとってやめろと言うためにこういうことを言っているのではなくて、みずからの政治責任をきちっと認めた上で内外に政策の転換というものを明らかにすることが本格的な景気対策になるのだというような観点から、私は政治責任ということを質問させていただいているわけです。  やはり明確に、政策が変わったのだ、財政再建路線、これは一時的に横へ置いて、景気対策を今重点にするのだということを内外に向けて総理がおっしゃることが私は最大の景気対策だというふうに思うのですが、総理、いかがでございましょうか。
  103. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 繰り返し繰り返し同じような御答弁を申し上げて大変恐縮だと思いますけれども、私は、財政構造改革の必要性というのはやはり存在をしていると思っております。(発言する者あり)財政構造改革、必要ないと言われますか。そして、その中で、でき得る限りそれぞれの状況に対応した施策をとっていくこともまた当然だということを申し上げてまいりました。財政構造改革が不必要だと、あるいは不必要とは議員は仰せられておりませんから、そのまま例えば凍結状態にしておいて後でどこかでこれを起こすという御主張かもしれません。しかし、私は必ずしもそれと意見を一つにしておりません。
  104. 生方幸夫

    ○生方委員 先ほども岡田議員の方から質問がございましたが、今公共投資をやっておく、これでまた財革法にのっとった形で来年度予算を組むという形で公共予算をカットすれば、景気が悪化するのは明らかじゃないかと思うのですが、建設大臣、来年度予算でまた七%減というようなものがかかるとして、景気にどのような影響が出るというふうにお考えになっていますでしょうか。
  105. 瓦力

    ○瓦国務大臣 たびたびお答えをいたしてまいりましたが、財政構造改革というのは、これから我が国の少子・高齢化社会を通じまして、財政の状況を見ましても追求していかなければならない課題だと思いますが、その時々の景気状況によりまして手だてが必要なときは財政の出動もお願いするということに相なろうと思いますが、目下のところ全力を挙げて景気浮揚に努めてまいることが与えられた使命だ、かように考えておるところであります。
  106. 生方幸夫

    ○生方委員 今、後ろから声がありましたが、また本当に補正を組むということになるのですか。私たちは、やはり小さく小出しに、遅くやってきたのが景気回復をおくらせている最大の原因であるというふうに考えているわけですから、今、後ろから声がありましたように、財革法にのっとった予算を組んでまた来年度予算で補正を出せばいいんだというようなお考えで予算を考えられたら、これは国民の皆様方に対する非常に失礼なことだと思うのですが、大蔵大臣、今のやじについていかがですか。
  107. 松永光

    ○松永国務大臣 やじには私の立場として答えることはできません。
  108. 中川秀直

    中川委員長 生方君、衆議院の先例集では、発言者は私語に応酬してはならぬ、こういうことでございますので、よくそれを念に入れて。
  109. 生方幸夫

    ○生方委員 それでは、もう一度お伺いいたします。  今私たちは、財政構造改革法にのっとって予算を組めば、いずれこれは補正予算を組まざるを得ないというふうに考えており、政府・自民党の首脳も、私たちが本予算を審議しているときから補正予算を組むんだというようなことを申しておりました。私たちは、それは議会制民主主義にもとっていることではないかというふうに指摘をしてまいりました。財政法二十九条でしっかりと本予算も変えることができるわけですから、本予算できっちりと対処をするべきであるというふうにたびたび指摘してきたにもかかわらず、この予算が一番正しいんだというふうに言ってきて、今私たちが補正予算を論議をしているわけですから私は指摘をしたわけで、またこの轍を来年度予算案についても踏むというようなことがあればこれは国民の皆様方に対する重大な裏切りだと思うんですが、大蔵大臣、いかがお考えになりますでしょうか。
  110. 松永光

    ○松永国務大臣 当然のことではありますが、十一年度の予算案というものは財政構造改革法の規定に従って編成をしなければならぬことになっておるわけでありますけれども、しかし、その問題を議論をしていくというか検討をしていくのは秋以降、暮れの編成時まででありますので、今の時点で十一年度のことについて詳細なことを言う時期ではないというふうに思っております。  今やるべきことは、既に成立をさせていただいた十年度の予算に計上されておるもろもろの事業の速やかな執行そして十年度の補正予算国会審議をお願いしておるわけでありますが、この補正予算そしてそれとともに現在この委員会審議されておる関連法案、それを速やかに御審議をしていただいて成立をさせていただきたい。成立をさせていただきましたならば、これも速やかに執行していくということを我々は考えておるわけであります。
  111. 生方幸夫

    ○生方委員 速やかにやるために、本予算できっちりと修正をするべきである、そうすれば執行がもっと前にできるわけですね。そこで本予算を無修正のまま通すから今このような形で財革法を変えてまた補正予算を出して、その執行をするには何カ月かおくれて、さっき尾身長官もおっしゃいましたように、その効果があらわれるにはさらに何カ月かおくれてしまう。私たちは、そういうことがないように本予算できっちりと、どうせ補正を出すんだろうから、これは暫定予算を一カ月組んでもいいからその前に本予算できっちりと修正をしたらいかがかという論議をしていたわけで、それをもう一度来年も繰り返していたのでは、それは国民の皆様方の税金をお預かりしている我々としては失礼なんじゃないですかという質問をさせていただいたわけです。  だから、私たちは、本予算をきっちりと修正して、今ここで出ているような補正を組み込んだ本予算にすればいいじゃないかというようなことを指摘してきた、そのことを突っぱねたことに対する責任はいかがお考えになりますか。
  112. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど総理からも御答弁がありましたけれども、実は今日の経済状況、非常に厳しいことは認識しておるわけでありまして、それに対する速やかな対応策を実施せなならぬというわけで、特別減税の追加実施そして補正予算の編成と、そしてまたその成立をさせていただいた後の実施、こういったことを責任を持って執行していくのが政府の務めであろう、こう思っておるわけであります。
  113. 生方幸夫

    ○生方委員 景気は極めて厳しいということはもうことしの二月から三月にかけてみんなわかっていたわけですよ。だから何とかしなければいけない。したがって、私たちは、本予算をきっちりと修正をして本格的な景気対策を盛り込むべきだというふうに指摘をしてきたわけでございますから、今大蔵大臣が言ったことには私は納得ができないのです。  次に、もう一点確認をさせていただきたいのですが、政府は、三月に、決算期にかけましてPKOを実施するというふうに新聞で報道をされました。本当にPKO、いわゆる株価維持のためのオペレーティングをしたのかどうか、そのことをまずお伺いしたいのです。
  114. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 生方委員お答えをさせていただきます。  今の御質問でございますが、郵貯資金、簡保資金の運用は、確実で有利な方法で行うことによりまして郵便貯金事業あるいは簡易保険事業の経営を健全たらしめるということが大変大事なことでございまして、同時に、それぞれの事業に対する預金者、加入者の利益の向上を目的として行っているものでございます。  年度末に簡易保険事業団、簡保事業団を通じまして単独運用指定金銭信託、いわゆる指定単と申しますけれども、指定単運用を九千七百十二億円増額して実施いたしましたが、これは、より一層有効あるいは適切な資金運用を可能ならしめ、また預金者あるいは加入者の利益の向上につながるために実施したものでございまして、株価操作を目的として実施したものではございません。このことは、指定単という制度そのものが、株式の購入が信託銀行みずからの市場判断に基づく投資判断によるものでございまして、簡易保険事業団と信託銀行と契約をいたしまして、一体どういう株式を、買う銘柄あるいは数量、時期などについては国は一切指定できないという仕組みになっているのが指定単契約でございますから、このことから見ても明らかであるというふうに思っております。
  115. 生方幸夫

    ○生方委員 確認なんですが、要するに、株式市場に九千七百十二億円、簡保あるいは郵便貯金の資金を投入した。これは信託銀行を通してでも何でも構わないのですが、投入したというふうに解釈してよろしいのですね。
  116. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 合計九千七百十二億円のお金、内訳は、郵貯が千四百一億円、簡保資金の方が八千三百十一億円、三月三十日の簡保事業団への資金交付をしたのは事実でございますし、そのことは当時から公表いたしております。
  117. 生方幸夫

    ○生方委員 私がこの間の予算委員会のときに、PKOを実施するのかどうかということで、松永大蔵大臣質問をさせていただきました。そのとき松永大蔵大臣の方が、郵政省の方でまず考えて、その後大蔵省の方に相談があるというふうにお答えになられましたが、郵政省の方からこのPKOについての相談というのはございましたのですか。
  118. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、PKOという言葉を使ったことはありませんし、PKOとは何だ、プライスキーピング何とかということらしいのですが、大蔵省でも、私ども、PKOという言葉を使ったことはありません。  問題は、郵政省の方から、この運用する資金の増額についての協議はあったわけでありまして、その協議には応じたわけであります。それをどういうふうに活用するかというのは、これは郵政省の所管になっておる簡保事業団なり何かでありまして、PKOというものの相談を受けたことはありません。
  119. 生方幸夫

    ○生方委員 議事録を読ませていただきますが、「仕組みにつきましては指定単という仕組みでなされるものだと思うのでありまして、大蔵省の方では、それをうんとふやすような場合に協議の申し込みがあるそうでありますから、そのときに協議に応ずるという、そういう関係でございます。」  その協議には応じられたということでよろしいのですか。
  120. 松永光

    ○松永国務大臣 そういうことでございます。PKO云々ということで協議を持ってきたわけでありませんから、誤解のないようにひとつ。
  121. 生方幸夫

    ○生方委員 私はこのときに、自由であるべき市場に政府が介入するようなことはやめた方がいいのではないか、小泉大臣にもそのことを聞いたら「政府が株価操作の疑いを持たれるようなことは、やめた方がいい」という明快なお答えをいただきました。  そのとき私は、株価維持というようなことをやれば、必ずその反動があるはずだ。このときは山崎政調会長が三月末に一万八千円の株価を維持させたいというふうに言っておりましたが、実際の株価の動きがここにございます。確かに三月時点では株価は一万六千円から七千円、三月三十一日は一万六千五百二十七円という額で、一応、危機と言われた一万六千円を下がることはなかった。多分これはPKOがきいたのではないかというふうに思うのですが、やはりその反動というのがその後ちゃんとあらわれてきているわけですね。四月の二日には株価は一万六千円を割り込み、一万五千七百二円。その後、一たん一万六千円は回復をしておりますが、四月の十六日以降、一たん二十四日に.一万六千十一円というのがございますが、ずっと一万五千円台になっておりまして、きょうの株価は私見ておりませんが、五月の十五日は一万五千二百四十二円という株価の低迷を続けているわけでございます。  このように、政府が介入するということが日本の株式市場そのものをゆがめているのではないかと私は非常に懸念をいたすのですが、大蔵大臣、これはいかがでございますか。
  122. 自見庄三郎

    ○自見国務大臣 生方委員お答えをさせていただきます。  今大蔵大臣から運用計画についての話があったわけでございますが、実は簡保資金は、九年度の運用計画のうち、約八千億円を超える計画額が未使用となることが確実になってきたわけでございます。  これは、いろいろ貸し付けをしておったところが、地方公共団体なんかに貸し付けたお金が、実はその事業がその年度内に行われない、そんなことがございまして、返ってくる不用額というのがございます。これが、約八千億円を超える計画額が、未使用額が確実に見込まれてきたものでございますから、これは一々資金運用審議会にかけて、当然国民からお預かりした貴重な資金でございますから、そこできちっと資金運用審議会にかけて御了承いただいて、資金計画を変更するという手続が必要でございまして、そのことを年度末にさせていただいたわけでございます。  もしこの資金を、運用計画を今回年度末に変更しなくてそのままほったらかしておきますと、実は十一年度まで一年間原資を遊ばせるということになるわけでございますから、その場合は約八千億円を超える金が、現金、預金等の短期の運用、先生御存じのように一%未満でございますから、そういった利回りで行わざるを得ない。そういったことで、やはりこれは、安全、確実、有利ということでございますから、そういった変更をさせていただいて、指定単契約を結ばせたということを御理解をしていただきたい、こういうふうに思うわけでございます。  また、今、先生御存じのように、債券市場が大変市場環境として厳しい状況になっておりまして、逆に、日経平均株価が一万七千円を下回るというのはここ十年間でも四回ぐらいでございますから、この簡保資金、郵貯資金というのは大変長期の運用でございますから、そういった意味で、この日経平均株価が極めて低い水準であるような、こういった割安の株式を組み入れるということは、大変安全、確実、有利ということを考えればいいタイミングであったというふうに思っておりますので、あくまでこの資金運用の安全、確実、有利だということを念頭に入れて行ったということを御理解をしていただきたいと思うわけでございます。  もう一点、まさに指定単契約でございますから、市場メカニズムの中にある信託銀行に全額をお願いするわけでございますから、今さっきも答弁いたしましたように、どういった株式をいつどれくらい買うかは、あくまでこれは信託銀行独自の、マーケットメカニズムの中にある信託銀行の判断でございまして、そこに関しましては、政府、郵政省は一切指示をするということはできない仕組みになっておりますから、その点も御理解をしていただきたいというふうに思います、
  123. 生方幸夫

    ○生方委員 これを申しますと、また党と政府は違うというふうに言われると思うのですが、山崎政調会長がPKOを実施すると、自民党の高官が、PKOというものを実施して市場にそもそも政府が介入するようなことを言うこと自体が、日本の株式市場を非常に大きくゆがめているのではないか。  これは新聞に出ていたのですが、米系証券アナリストが新聞のインタビューに答えて、株価操縦のせいで株価が実体経済を反映していない、そんな国の株式をどうして買えるのかというような指摘をしているわけです。事実、この四月以降、個人投資家と外国人投資家が日本の株式市場から逃げていってしまっている。この責任はやはり私は極めて大きいと思うのですね。  仮に、もしPKOをやるとしても、これは市場に知れないようにやるのが筋であって、自民党の高官が、PKOをやって一万八千円を維持するのだなんということを言うこと自体、私は、日本市場を非常に大きくゆがめ、内外の信用を損ねることにつながると思うのですが、大蔵大臣、いかがでございましょうか。
  124. 松永光

    ○松永国務大臣 私の立場は、株式市場における価格について、高いの低いの、こういったことを言える立場ではありません。同時にまた、原則論として言えば、株価というのはいろいろな状況によって変化するものでありまして、そういう意味で、株価操縦と言われるようなことを政府の関係者はやらないはずだし、やってはならぬことだというふうに私は思っております。
  125. 生方幸夫

    ○生方委員 時間がなくなりましたので、総理に最後に一点だけお伺いしたいのですが、今デフレ懸念というのが非常に国民の間に深まっております。これはフローのデフレとアセットのデフレというのがございまして、アセットのデフレは、既に地価も下がり、株価も下がりという形で進行しているというふうに思うのですが、これに加えてフローのデフレというのも深刻になってきているのではないかというふうに私は思います。  特に、生産指数を見ますと、二月がマイナス三・三%であったにもかかわらず、出荷指数がマイナス三・六で、減産している以上に出荷が落ち込んでいて、その結果、在庫が非常に四カ月連続で最高水準を記録しているというような数字が出ております。  総理は、現在の状態をデフレスパイラルの入り口にあるというふうな認識をお持ちになっているのかどうか、お伺いしたいのです。
  126. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先月、卸売物価指数が出ましたとき、報道機関の方々から同様の御質問をいただきました。そして、私はそう考えていない、在庫の動き、在庫は相当量ございましたものが動いているということ、それからもう一つは原油価格の下落、そうしたものの要素を組み入れたときに、私はそうは思わないという答えをいたしました。  今も同様にお答えを申し上げたいと思いますが、注意深く見守っていく必要のあることは私どもも感じております。
  127. 生方幸夫

    ○生方委員 これも、どちらが正しいかというのはいずれ後にならないとわからないと思うのですけれども、私はやはり、デフレスパイラルの入り口、あるいは一歩ぐらいもう踏み込んでしまったのではないかという認識でこれからの経済運営をしていかないと、またツーレートになる可能性があるのではないかという指摘をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。  どうもありがとうございました。
  128. 中川秀直

    中川委員長 これにて生方君の質疑は終了いたしました。  次に、西川知雄君。
  129. 西川知雄

    西川(知)委員 西川でございます。  きょうは一時間二十八分いただいておりますので、法律の内容等について、具体的に少し詳しくお尋ねをしたいと思います。  まず最初に、社会保障関係費の量的縮減目標というところが第八条でございます。  第八条は、「平成十一年度及び平成十二年度の当初予算における社会保障関係費の額は、当該各年度の前年度の当初予算における社会保障関係費の額におおむね百分の百工を乗じた額を上回らないこと。」というのが現行法でございまして、これを今度は改正をしようということで、「平成十一年度の当初予算における社会保障関係費の額の平成十年度の当初予算における社会保障関係費の額に対する増加額は、できる限り抑制した額とすること。」というふうにされているわけです。  ところで、こういうふうに改正されたということは、平成十一年度の当初予算、この件については百分の百二を乗じた額を当然に上回るということでございますが、小泉厚生大臣、これは百分の二以上であるというふうに思いますが、具体的にはどのぐらいなのか、また、これを客観的に判断するのはだれかということについてお答え願いたいと思います。
  130. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 これは、十一年度の予算というのはことしの暮れですから、これからの医療費の状況とかを見なきゃわからないのですが、三千億を上回るのは確実だと思っております。
  131. 西川知雄

    西川(知)委員 もう一度お尋ねしますが、百分の百二を乗じた額を上回るということは、それでよろしゅうございますね。
  132. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 今年度が大体十五兆円ですから、百分の二というと三千億円。三千億円を上回るのは、まず確実ではないかと思っております。
  133. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、今のお答えは、百分の二を上回ってよいという改正でございますけれども、それを上回るのは確実だと。それは当然のことだと思うのですけれども、それをどのぐらい上回るのか、また、できる限り抑制した額というのは客観的にだれが判断するのか、お答え願いたいと思います。
  134. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 それは、厚生省、大蔵省当局が年末ぎりぎり交渉の末に、最終的には厚生大臣、大蔵大臣が決めることだと思います。
  135. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、内閣の予算提案権と国会の予算修正権、この話にそれが連動しておりますので、お尋ねをしたいと思います。  平成九年十月二十一日の財革法の審議のときに、私の質問に対して大森法制局長官が、この関係について、昭和五十二年二月二十三日における政府の統一見解を説明されました。それによりますと、    国会の予算修正については、それがどの範   囲で行いうるかは、内閣の予算提案権と国会   の審議権の調整の問題であり、憲法の規定か   らみて、国会の予算修正は内閣の予算提案権   を損わない範囲内において可能と考えられ   る。  したがって、国会におきます予算修正というの  は内閣の提案権を損なわない範囲において可能  であると私どもは考えており、また、これがそ  の後ほぼ受け入れられてきているところであろ  うと思います。こういうふうに御答弁をされているわけです。  そうすると、今度政府が、今のお話ですと、大蔵省と厚生省が綿密に話をして、そしてできる限り抑制した額であるとして予算を提出されてきた。そのときに、国会の立場として、我々委員会の立場として、委員として、では我々は一体どのぐらい予算を修正できるのであろうかということを考えないといけないわけです。  ということは、予算の提案権がありますと。そのときに、予算が提案されてきたけれども、それはできる限り抑制した額ではないというふうに例えば判断したとします。そうすると、我々はそれはおかしいということで修正をするということになるのですが、それは、できる限り抑制した額が一体どういう額かということがわかって初めてそういうことができるわけです。私がお尋ねしたいのは、そういうような我々の判断をする材料として、できる限り抑制した額というのは一体幾らなのか。大体どこからどの範囲なのかということを明確にしておいていただかないと、我々としては、国会の方で予算修正をするという審議のしょうがないわけです。  したがいまして、もう一度お尋ねしますが、三千億を上回る、百分の百工を上回ることはわかりました。しかしながら、それが四千億なのか五千億なのか、百分の三なのか四なのか。そこをはっきりとしていただかないと、我々が、国会がどういうふうにして予算を修正したらいいのかわからないということになるのですが、その点はいかがですか。
  136. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 できる限り抑制するものとする、それは政治判断なんです。国会で多数が修正しようという意見だったら修正されます。その声が少数だったら修正されません。
  137. 西川知雄

    西川(知)委員 総理、その見解でよろしゅうございますか。
  138. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今のは非常に的確な要約じゃないでしょうか。国会の御意思として多数が修正をすべきであるとなれば、政府が困りますと申し上げても修正はされるでありましょうし、修正に同意される方が少なければ原案のままということになる。厚生大臣の要約したとおりであろうと思います。
  139. 西川知雄

    西川(知)委員 それは間違いなんです。というのは、大森政府委員は、私が先ほど読みましたように、「憲法の規定からみて、」まず憲法上の解釈ですから、「国会の予算修正は内閣の予算提案権を損わない範囲内において可能と考えられる。」と。だから、多数決で決めたらいいという話じゃないのです、憲法上。憲法上、国会の修正というものは、そもそも内閣の予算提案権の範囲内、またこれを損なわないということ、その限度でしか許されないのです。ですから、総理、その今おっしゃった見解は違うのじゃないですか。
  140. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 法律の専門家である議員の御質問でありますので、法制局長官に答弁をさせたいと存じます。
  141. 大森政輔

    ○大森政府委員 ただいまの提案権と修正権との調整、これは、委員御承知のとおり、それについての第三者的な判断者は、我が国憲法上は予定しておらないということでございます。  したがいまして、先ほど委員が御引用になりました、あれは政府の統一見解を私が紹介したということでございますが、あの統一見解が出される際の国会におきましても、そのあたりの議論が非常にるる重ねられまして、そのときに述べられました意見を御紹介するのがただいまの委員の御質問に対するお答えになろうかと思うわけでございます。  すなわち、第三者機関としての解決審査機関はないわけでございますから、双方で協議をして、お互いの立場を尊重して調整点を見つけ出していくことを憲法は期待しているのではないでしょうかと。したがいまして、そこのところは十分に、提案者である内閣と、そして修正権者である国会との間で十分に協議をよくしなさいというのが憲法の法意であろうという、そういう答弁がなされているわけでありますが、やはりこの席においても私はそのように申し上げたいと思う次第でございます。
  142. 西川知雄

    西川(知)委員 それで、協議するのはいいのですが、どういう基準でどういうふうにして協議したらいいかということがわからない限り、協議のしょうがないわけです。  厚生大臣、政府ができる限り抑制した額というのを出されたときに、それができる限りなのか、そうじゃないのかということは、我々はどういう基準で判断すれば、協議の場に着けばよろしいのでしょうか。
  143. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 私は法律論はいたしませんが、現実の政治論として、政府は与党とよく綿密に相談します。与党がこれはできる限り抑制した額だといって承知して、国会でいわゆる予算を出す。それに対して、いわゆる野党がどういう判断をするか、これはできる限り抑制した額ではないといえば異議を唱えるでしょうし、そうでなかったら賛成するでしょうし、そのときの政治判断です。 政党の、政治家の政治判断だと思います。
  144. 西川知雄

    西川(知)委員 よくわからないのですけれども、「憲法の規定からみて、国会の予算修正は内閣の予算提案権を損わない範囲内において可能と考えられる。」というのが昭和五十二年二月二十三日におきます政府の統一見解であるというふうにおっしゃるわけですから、政治判断ということじゃなくて、これは憲法上の判断である、そういうふうに政府は統一見解をされているわけですが、大森法制局長官、今の小泉大臣の政治判断であるというのは、今の統一見解と合致していますか。それとも違うのですか。
  145. 大森政輔

    ○大森政府委員 ただいま厚生大臣が述べられました政治判断という言葉の意味いかんの問題であろうと思いますが、先ほど私の方から申し上げました、両方の機関がよく双方で協議をして、お互いの立場を尊重して調整点を見出す、その結果の結論と申しますのが、ただいま厚生大臣の述べられた政治判断という言葉の意味であろうと思いますので、そういう意味からいたしますと、憲法の予定していることとそごするものではないというふうに聞き取ったわけでございます。
  146. 西川知雄

    西川(知)委員 小渕外務大臣、内閣は連帯して国会に対して責任を負うわけでございますから、これも内閣の一員として、今の、私が申しました、「憲法の規定からみて、国会の予算修正は内閣の予算提案権を損わない範囲内において可能と考えられる。」こういう統一見解が出ているわけですから、今法制局長官がおっしゃったように、我々が国会として協議の場に出る場合に、どういうことをベースとしてお話をしたらいいのか、討論をしたらいいのか、これは今おっしゃったように、与党と協議をしますと言いますけれども、与党の方も、一体できる限り抑制というものはどういうものかということが具体的にわからない限り、十二分な協議はできないわけだというふうに私は思うのですが、小渕外務大臣はどういうふうに思われますか。
  147. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 長い間の国会での常識で判断していくものだろうというふうに思っておりますが、私も、かつて国会における予算の修正問題について、たまたま国会対策の副委員長をいたしておりましたときに遭遇いたしまして、いろいろ議論をさせていただいたことを覚えておりまして、形式修正、実質修正云々ございましたが、これは憲法にかかわる重要な問題でございまして、従前、自民党としても、与党でありました場合に、これは国会に責任を持って提出したものについての国会での修正権というものについての論議がいろいろございましたが、これは国会におきまして、従前の長い慣例の中で培われてでき上がっておるものと認識しております。
  148. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっとほかの大臣にもお尋ねしたいのですけれども、今私が言っているのは、内閣の予算提案権というものと、どの範囲で国会がそれを修正できるかという比較をしているわけです。比較をするためには、まず初めにあった提案権というものの範囲が何かということがある程度わかっていない限り比較はできないわけです。  私は、さっきから聞いているのですが、できる限りというのは、百分の百二以上、または三千億円以上ということはわかりました。しかし、それは幾らでも上があり得るということですから、できる限り抑制というものはどの辺なのかなというのを私は内閣全体の意見として聞きたいということでございまして、やはり内閣、さっき言いましたように、全体的な連帯責任がございますので、町村文部大臣、いかがですか。
  149. 町村信孝

    ○町村国務大臣 突然の御質問でございまして、どういうお答えをすべきか、先ほど来から悩みながら御質問を聞いておりました。  私は、確かに委員おっしゃるように、何かそれは明確な基準を示しておけばいいのかもしれません。しかし、そういうことになじむのだろうか。むしろ、できる限り抑制するという方針のもとで、それが例えば、政府と与党との相談で、仮に、例えば五%になった、しかしこれは、野党の立場でいえば、それでは最大限の抑制にならないという御判断を、それは野党としてなさるかもしれない。そこは、あらかじめどこがラインであるということを事前に決め切ることは難しいので、むしろ、そこはまさに、例えば社会保障の予算等々の内訳を見ながら、これは最大限確かに抑制しているなということを、個々の予算を詳細に分析した結果、これは十分であるとか不十分であるというのが後から出てくるので、あらかじめに基準を示して、これだから十分抑制的であるとか抑制的でないということを事前に言うことは、それは不可能なんじゃないのかなと私は思います。
  150. 西川知雄

    西川(知)委員 最後に、大蔵大臣お尋ねします。  大森政府委員は、先ほどの見解に続けて、「この場合は、この法律は」、財革法ですが、「基本的には内閣の予算編成権に対する制約たる性質を有します。」というふうにおっしゃっているわけです。すなわち、この財革法というものが決められるその内容は内閣の予算編成権に対する制約である、ですから、その範囲でしか政府は予算を提出できない、こういうことなんですが、大蔵大臣、例えば小泉厚生大臣が百分の百四という数字を持ってこられたといったときは、その場合、この内閣の予算編成権に対する制約であるこの財革法を見て、これは財革法の範囲内にあるのかないのかというのをどうやって判断されますか。また、それは財革法違反ですか、それとも財革法の範囲内ですか。
  151. 松永光

    ○松永国務大臣 今、西川委員が、厚生大臣が百分の四だと持ってこられた場合どうするかという話でございますが、私は、数字を百分の四として持ってくることはないと思うのですよ。それぞれの項目ごとに積み上げてきて、積み上げた数字が百分の二を超えているかどうかという後の数字になるわけでありまして、問題は、積み上げてきた数字が極力抑制になっているかどうかという判断の問題が出てくるのでありまして、四とか五とかという数字が先に出てくることはない、私はそう思いますね。  そして、その上で、極力抑制になっているかどうかを査定側の大蔵省が判断し、最終的には内閣において極力抑制ということが言える内容になっているかどうかを検討した上、閣議で最終的には内閣としての決定がなされる、こういうふうに私は理解します。
  152. 西川知雄

    西川(知)委員 それは当然のことだと思うのですが、もし積み上げて百分の四になった場合は、それはできる限り抑制した額となりますかどうですかという質問にはどういうふうにお答えになりますか。
  153. 松永光

    ○松永国務大臣 百分の二を超えたものになるだろうということは、先ほどの厚生大臣の答弁を聞いておりましたのでよくわかります。しかし、それが幾ら、どの程度になるかどうか、今から数字で言うことはできませんが、内容を審査して、極力抑制したと言える内容であるならば、それは閣議で最終的にその内容の予算というものが閣議決定されるであろう、こういうふうに思います。
  154. 西川知雄

    西川(知)委員 今のいろいろな方の御答弁を聞いていますと、要するに極力抑制するとか、できる限り抑制するということははっきりとはわからない、これは多数決で決めましょう、そんなふうに私は聞こえまして、先ほどの五十二年の二月二十三日における政府見解、憲法上の問題から、「憲法の規定からみて、国会の予算修正は内閣の予算提案権を損わない範囲内において可能と考えられる。」というのが、これが何か意味のない、要するに憲法が意味のない規定である、多数決によっていかにでもできるというふうに聞こえるのですが、私の見解は、総理、間違いでしょうか。
  155. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、どこかで違っておられるのじゃないかと思うのですが、どこで違っているのかが実は明確にわかりません。  と申しますのは、議員先ほどから議論を展開しておられます中の一部は、政府の中における予算編成の手順とその査定の問題であります。そして、その上で、編成されました予算は、内閣が当然ながら編成権を持ち、国会提出する。国会はこれに対する審議権をお持ちのことは当然でありますけれども、それと昭和五十二年ですか、における当時の法制局見解と申しますものとの論議の中で、どこかで私はすれ違いが起きておるように思いますが、そのすれ違いがどこだかがもう一つ私よくわからないのです。
  156. 西川知雄

    西川(知)委員 私が申し上げたいのは、要するに、今度この法律が改正されようとしている、何がどのように改正されるのか、そしてそれをどういうふうに判断したらいいのかということをまず明確にしていただかないとなかなか議論ができないというふうに思うのです。  そこで、別の観点からまた御質問をします。  特例公債発行枠の弾力化を可能とする措置ということで、これについてやはり第四条の二号、これが改正をされるということになっております。「著しく異常かつ激甚な非常災害の発生」、これは別としまして、「又は経済活動の著しい停滞が国民生活等に及ぼす重大な影響に対処するための施策の実施に重大な支障が生ずるときを除き」ということが新たな改正でございますが、その「経済活動の著しい停滞」ということの後ろに括弧書きがありまして、「国内総生産の伸び率の低い事態が継続する等の政令で定める状況をいう。」というふうにされております。  記録のために、これは大蔵大臣でも結構ですし大蔵当局でも結構ですが、この「国内総生産の伸び率の低い事態が継続する等の政令で定める状況をいう。」というのは具体的にどういう状況か、説明をいただきたいと思います。
  157. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  この政令で定める経済活動の著しい停滞の状況の内容についてでございますが、現在、現時点では、一つは、直近の二四半期連続で実質GDPの成長率、これは前期比の年率でございますが、これが一%未満となっている状況、これはアメリカの基準と同じでございます。それからもう一つは、直近の一四半期の実質GDPの成長率、これも前期比の年率でございますが、これが一%未満であって、かつ当該四半期後の消費、設備投資及び雇用に関する指標が著しく低調となっている状況を規定することを考えております。
  158. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、大蔵大臣、そういうことが政令で規定をされるということですが、この二つの場合に限るのかどうか。今、涌井主計局長はこの二つを挙げられましたが、その「政令で定める状況」というのはこの二つであるということでよろしゅうございますか。
  159. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  今回のこの財政構造改革法の弾力化等につきましては、去る四月二十四日の財政構造改革会議での決定が行われております。その決定におきましては、「「経済活動の著しい停滞」については、次のような場合を指すものとする。」ということで、先ほど政令で規定することを予定しております二つのケースのほかに、もう一つ、直近の実質GDP成長率は、先ほど申し上げたように、二四半期連続で年率一%未満、あるいは一四半期が一%未満でかつ消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調な場合、そのような状態にはないが、予見できない内外の経済ショックによって急速に経済活動が停滞状態に陥る場合等、二つの基準に匹敵するような状況になった場合も該当する、予想しているということでございます。
  160. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっと意味がよくわからないのですが、内容はわかりましたけれども、初めの一番目と二番目は政令に規定する。三番目はどこに規定するのですか。
  161. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 二つの基準につきましては、これは客観的基準なものですから、あらかじめ政令で基準を書くことが技術的にも可能なわけでございますが、三番目の状態というのは、ある意味では予見できないような状況でございます、それからまた、具体的にそれをあらかじめ政令で書くことは技術的にもできない状態でございます。  したがいまして、客観的基準としては政令では書けないわけでございますが、一般論として申し上げますと、重大な経済ショックの結果があります、それで、そのときにはまだQEが出ていない、あるいは直前発表されているQEがまだ非常にいい数字である、しかし、例えば急激な円高のショックだとかオイルショックだとか、そういうケースが該当するのではないかと思うわけでございますが、QEの悪い数字は出ていない、さはさりながら、その足元の一カ月あるいは二カ月の経済指標を見てみますと、経済の急速な停滞が認識し得る、そのような場合においては、その段階において政府としてこのような状況に対応しなくちゃいけないと判断した場合には、政府におきましてその段階で政令指定するということを考えております。
  162. 西川知雄

    西川(知)委員 ということは、この毎年毎年の特例公債、これを縮減するということはもう極めて重要な財政構造改革一つの要素であるというふうに私は理解しておりますが、大蔵大臣法律に定める事項と政令に定める事項というのはどういうふうに分けるのかという私の大蔵委員会質問で、大蔵大臣は、基本的なことは法律に定めましょう、それで細かいことは政令とか省令に定めましようというふうにおっしゃったわけです。  ところで、どういう場合に特例公債の毎年度毎年度の縮減を図ることに対する例外を設けようというのは、これは基本的なことじゃないのですか、どうですか。
  163. 松永光

    ○松永国務大臣 御提案申し上げておるこの第四条の第二号の改正部分でございますが、ここに書いてありますように、「国内総生産の伸び率の低い事態が継続する等」というのが言うならば総論でありまして、その内容となる言うなれば各論部分、これを政令で定めよう、こういうことであるわけでありますから、私が大蔵委員会で申し上げたことと、この改正条文というものは、あるいは政令で定める事項というものとの間にはそこはないというふうに思っております。  今局長答弁いたしましたように、直近の二四半期連続で実質GDP成長率が一%未満とか、あるいは直近の一四半期の実質GDP成長率が一%未満、かつ当該四半期後の消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調、こういったものは客観的に書ける事項でありますので、政令としてはこういったものを書くつもりだ、こういうような答弁があったわけでありますけれども、さようなわけで、第四条第二号で基本的な部分ないし総論的な部分国会審議をいただいて改正させていただき、そして、その中で政令で定める状況というのもありますので、その状況を、政令で今申したようなことを定めさせていただく、こういうことになっておるわけでございます。
  164. 西川知雄

    西川(知)委員 総理平成十年四月二十四日の財政構造改革会議の「財政構造改革法の弾力化等について」の第二項に、財政構造改革を進めつつも、内外の悪条件等が重なったいわゆる極めて深刻な経済状況にかんがみ、その時々の状況に応じ、いわば緊急避難的に適切な措置を講ずる仕組みを整備する必要があるということで、基本的には毎年縮減しないといけないけれども、緊急避難的に、特別な状況にあった場合においてはその枠を外す、こういうことがこの財政構造改革会議でも言われております。  そうすると、基本的に財政構造改革路線というものは守らないといけないというふうに総理もいつもいつもおっしゃっているわけです。それで、緊急避難的にそういう措置を講じない場合がある、それはどういう場合で具体的にどうかということは極めて基本的なことであって、こういうことは法律に書き込んで、そしてそれが正しいかどうかということを国会審議する、政令に任すのではなくてこの法律の中で書いておくということが、総理の今までの御見解からするとそうじやないかというふうに思うのですが、総理の御見解はいかがでしょうか。
  165. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、議員の御見識は一つのお考えだと思います。その上で、例えばアメリカのOBRAを日本に引き写そうといたしました場合、OBRAにおいて採用されておりますような適切な指標が現実にありません。そういう状況の中で考えました結果、今議員も論議をしておられますような内容の条文を整理をいたしました。  基本的に、議員が御指摘になろうとしている問題点は私なりに理解をしておるつもりでありますけれども、そのOBRAの場合にも、幾つかのケースを想定した上で、その場合においても、しないことがありますというのがありますね。日本の場合も同様な考え方を法律的に整理をしたということであります。     〔委員長退席、村井委員長代理着席〕
  166. 西川知雄

    西川(知)委員 それで、大蔵大臣、今の総理答弁を踏まえまして、法律で今言ったことを書くと何かまずいことがございますか。
  167. 松永光

    ○松永国務大臣 まずいかまずくないかは別として、今提案していることは理にかなっていることだと私は思っておるのです。  というのは、第四条第二号の改正をお願いしている状況としては、「著しく異常かつ激甚な非常災害の発生又は経済活動の著しい停滞」、そういうことで総括的に、発行額の縮減という枠が、制約が解除される場合の条件の総論をまず書いて、そして具体的な内容につきましては政令で定める、こういうふうにしておるわけでありまして、私は、立法技術的にも妥当な手法であり、問題はないのじゃないか、こう思っております。
  168. 西川知雄

    西川(知)委員 私が心配しておるのは、「経済活動の著しい停滞」ということの定義というものが一体どういうものだろうか、これは刻々刻々、国会審議を経ないで政令で追加的にどんどんどんどん変えられていくというようなことになると、実質的にこれは骨抜きになるのじゃないかということを私は恐れて言っているわけです。私のそういうおそれというか懸念ということは、大蔵大臣、理解されますか。
  169. 松永光

    ○松永国務大臣 一般論として、そういう懸念を持ちがちな方もいらっしゃることは承知しておりますけれども、本件の場合は、先ほども申し上げましたように、もう政令の内容についても局長答弁をいたしましたし、私からさらに申し上げても結構なんでありますれども先ほど読み上げました直近の二四半期連続で云々、あるいは直近の一四半期の実質GDPの成長率が一%未満かつ何がしというわけで、もう既に内容も国会審議のことも考えてお示ししておるわけでありますから、委員の御懸念はその必要はないのじゃなかろうか、こう私は思います。
  170. 西川知雄

    西川(知)委員 大蔵大臣か涌井主計局長で結構なんですけれども、政令で定めるのは、さっき言われた一と二の二つ、そして三の状況が発生した場合はそれを追加的に政令で定める、それ以外のものは追加で決めることはない、そういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  171. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  財政構造改革会議の決定もあるところであり、考えておりません。
  172. 西川知雄

    西川(知)委員 大蔵大臣、考えてないということでございますが、考えてないというのは現在考えてないということかもしれませんが、将来もずっとそういうことはございませんね。
  173. 松永光

    ○松永国務大臣 ただいまの主計局長答弁と同じであります。  財政構造改革会議議論の結論として出ている事柄でありますので、その趣旨はきちんと私は踏まえていく所存でございます。
  174. 西川知雄

    西川(知)委員 確認しますが、将来もこういうふうな、今の三つ以外のものについては政令事項として定めないというふうに理解してよろしいですね。
  175. 松永光

    ○松永国務大臣 そのとおりでございます。  「予見できない内外の経済ショック」というものは、これは予見できないわけでありますから、予見できないことが具体的に起こってしまって、そして急速な停滞状態に陥る場合、これは予見できないことでありますから、あらかじめ政令で定めておくことができない。実際起こったときに政令に定めて、そして内閣の姿勢を明確にし、かつ、それに基づく具体的な措置というのは、特例公債発行の承認をいただくための国会審議ということになってきますし、あるいは補正予算ということになってくるわけでありますから、その時点で国会の議決をいただく、こういう手順になるものだと思っております。
  176. 西川知雄

    西川(知)委員 もしそうだとするならば、この三つの、初めの政令で定めるべき一つ、二つ目、これを法律に書いてもまずいということはないと思うのですが、いかがですか。
  177. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  その問題は、法律でどこまで書くか、政令にどこまでゆだねるかという問題だと思うわけでございますが、この法律におきましては、「経済活動の著しい停滞」、そのケースがどのような場合かということにつきましては、先ほど申し上げましたように相当明確になっておる。かつ、その政令で定める内容につきましても、GDPの二四半期にわたる一%未満であるとか、非常に内容的にも技術的な内容にわたることもあり、むしろ政令にゆだねた方が適当ではないかと我々は考えているわけでございます。
  178. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっと具体的な話でお尋ねしたいと思うのです。  この財政構造改革会議の十年四月二十四日の件でございますが、その第四項に、例えば、消費水準指数、資本財出荷指数、有効求人倍率について、それぞれ直近三カ月平均と前三カ月平均とを比較した場合、これら三つの指標はいずれもマイナスというような場合に、先ほどおっしゃいました政令の第二の分類の当該四半期後の消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調ということに当たるというふうなことが言われておりますが、簡単に、尾身長官、この三つの指標がどういう基準で選ばれたのか、また、例えば消費水準指数はプラスであってあとの二つはマイナスであった、そういうような場合とか、いろいろな組み合わせがあると思うのですが、その場合に、その著しく低調だということに入るのかどうか、この辺のことをちょっとお答え願いたいと思います。
  179. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 この二番目の、直近の一四半期の実質GDP成長率が一%未満で、かつ当該四半期後の消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調ということでございますが、現状につきましては、直近の平成九年十月-十二月期は前期比年率で〇・七%の減でございましたが、その前の七月-九月期は同じく前期比年率で三・二%増となっておりまして、二四半期連続の①には当たらないわけでございます。しかしながら、直近の一四半期の実質成長率一%未満というところには当たります。  そして、その後、その状況のもとで、かつ当該四半期後の消費、設備投資、雇用の指標が著しく低調ということでございますが、個人消費について見ますと、消費水準指数は、直近三カ月平均、十年の一月-三月とその前の三カ月平均、平成九年の十月-十二月を比較いたしますと〇・五%増となっておりますが、四月の新車登録、新規登録届け出台数が前月比二-九%減、また、四月の東京、大阪地区百貨店販売額が前月比でそれぞれ五・六%減、八・二%減となるなど、個人消費は、昨年末の落ち込みからは下げどまる動きが見られるものの、雇用者所得の低迷もあって低調に推移しているというふうに考えております。  設備投資について見ますと、資本財出荷指数が、直近三カ月平均と前三カ月平均で比較いたしますと一・三%減となっているだけではございません。三月の法人企業動向調査、全産業実績見込みも一-三月期が前期比で三・〇%減となるなど、設備投資は頭打ち傾向が顕著となっているわけでございます。  雇用状況は、有効求人倍率が、直近三カ月平均と前三カ月平均とを比較いたしますと〇・〇八%ポイント低下していることに加え、三月は雇用者数が前月比で〇・五%減となり完全失業率が三・九%と過去最高値となるなど、雇用情勢はさらに厳しさを増している状況でございます。  以上のように、消費、設備投資、雇用の指標は著しく低調な状況にあり、現在の経済状況は「経済活動の著しい停滞」に該当すると考えております。
  180. 西川知雄

    西川(知)委員 質問答弁というものが全然食い違っておりますので、これは後で鈴木委員の方でやっていただくと思いますので、私はちょっともう少し違うことをお尋ねをしたいと思います。  先般、たしか民主党の委員質問された件で、要調整額というものがどんどん膨らんでくるということで、これをどういうふうに解消するかということに関連して質問をしたいと思うのですけれども総理は、サミットでも日本の税制のあり方ということについて言及をされました。そこで、端的にお尋ねしますが、要調整額の解消について、将来とも消費税のアップで対応することはいかなる場合にもないというふうに言明をされることはできますか。
  181. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、自分が責任を持っている間のことはお約束はできましても、その後のことまで私が責任を持ってお答えをすることはできません。  その上で、少なくとも今消費税の税率の引き上げを考え得る状況にはないと考えております。
  182. 西川知雄

    西川(知)委員 総理はいろいろなところで税制について直間比率の見直しということを言っておられますが、所得税の減税がなされる、法人税も国際水準に近づける。ということは、法人税も税率は下げる、所得税も今回減税をされる。ということになりますと、直間比率の見直しということをしつつ、そして要調整額の解消をするために歳入をふやすということになりますと、間接税を増加するという方法しかないのじゃないかというふうに思うのですが、それはそのとおりで、総理がもし自分の総理大臣の間のことしか責任は当然のことながらとれないというふうにおっしゃるとするならば、その間接税をふやすということについて、消費税アップの形でふやされるということはありますか、ないですか。
  183. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に申し上げたいと思うのですが、あちこちで直間比率の見直しを言っているとおっしゃいますが、最近、例えば国会でそのような御答弁を申し上げたことがあるでしょうか。むしろ、消費税率の引き上げの前に、先行しておりました所得税減税等の議論がなされましたころ、まさに直間比率の問題は、私だけではございません、国会として大変議論のあったテーマであります。その時期において、確かに私はその議論をいたしておりましたが、その後、それほど私の方で直間比率、直間比率と申し上げたことはございませんと思います、御質問お答えしたことはございますが。その上で、消費税率を今引き上げられる環境にはないと思いますということを私は申し上げました。  そして、要調整額は、従来から予算編成の折における査定の大きなポイントであります、査定の努力がなされる部分であります。議員は、税による増収のみをお考えのようでありますが、要調整額というその一つのすき間を考えましたときに、税外収入を確保する努力も当然ありますし、各省の要求を査定し、その範囲におさめる努力も手法としてございます。常に、楽な作業ではございませんでしたけれども、私どもはそういう努力をいたしてまいりました。これから先もその努力は常に必要だと思います。
  184. 西川知雄

    西川(知)委員 それは、必要であるということは十二分にわかります。  しかしながら、それができなかった場合にどうするかということを私は今お尋ねをしたいわけです。そういう場合に、歳出のカットもままならない、歳入の増加も十二分に予想し得ない、またいろいろなほかの方法でもうまくいかなかったというときにどうされますかということを私は質問をしたいというふうに思うのです。  税制問題等に関する特別委員会平成九年三月二十四日に、当時の三塚大蔵大臣が、「直間比率の是正ということ、広く公平に負担をいただくという意味で、消費税、間接税が、逆進性は若干ありますけれども、水平的な公正という観点から言えば一番望ましい税体系ではないのか。」というふうに述べられております。これは大蔵大臣内閣の一員としてそういう発言をされたというふうに思います。  そこで、今私が言いました前提にかんがみて、こういう、今総理がおっしゃったことでもどうしても要調整額のギャップを埋めることができないというような場合に、間接税の一つの大きな税目としての消費税を上げるということがないというふうに言明されることはできますか。
  185. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 何遍同じことを申し上げればいいのでしょう。  今、消費税を引き上げられる環境にはないと思いますということを、これで議員に対して、本日、三回繰り返すことになります。
  186. 西川知雄

    西川(知)委員 私の言っているのは、今というのはよくわかっております。私は、将来においてもそういうことはないでしょうねということをお尋ねをしているわけで、それは将来はわからない、将来は将来の話であるというふうにお答えをされるならそれでもいいと思いますが、総理の見解はいかがでしょうか。
  187. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず最初に御質問がありましたときに、私、将来と言われても、自分の任期を超えた部分までとてもお約束をし、保証することはできませんということを申し上げました。その上で、今そのような環境ではないと思いますということを繰り返し申し上げております。
  188. 西川知雄

    西川(知)委員 それでは、総理が現在総理であるというときに言われた財革法の改正とその政治的な責任ということについてはお答え願えると思うのです。  私の質問に対して、これは行革委の十年四月二十二日の質問でございますけれども、もし財革法というものが守れないということになったらどうなるんだということについて、いろいろな質問、そして答弁総理または法制局長官からいただきました。そして、総理は、そういう場合には、例えば目標を守れないというときには政治責任はあると。私が、政治責任をそれではとるのですねと申し上げたら、とるとは申し上げていません、あると申しておりますというふうに答えられたわけですが、そうすると、もう少しだけそこの点ではっきりしたがったのでお尋ねをしたいわけですけれども、これは、あるというのは、まずある。そうすると、とるのはだれがとるのですか。それは、またどういう事情があればとるということになるのですか。
  189. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず、多分、委員がお触れになりました質問は、最初に昨年の十月二十一日に議員が、この法律に違反した場合ということでいろいろ御議論をいただきましたときのやりとり、そしてそれを受けまして、また四月二十二日、御質問になりましたものに対して私がお答えを申し上げたこと、その二つについてのお話だろうと思います。  あるととるとどう違うんだとおっしゃるならば、ある、その場合には、それに対する対策をとる、そのように言いかえてもよろしゅうございます。
  190. 西川知雄

    西川(知)委員 そこで、この問題について内閣法制局長官は多分こういうことをおっしゃっていると思うのです。それが政府の責めに帰するという場合に初めて責任をとる必要があるというふうにおっしゃっています。これは議事録の二十五ページ目にあります。ちょっと参考のために読みますと、   なぜこういうことを、ここを強調したいかと  申しますと、「それが政府の責めに帰するとい  う場合には、」というところが重要でございま  して、責めに帰すべき事由がない場合には、特  に効果、責任は負わないというのは、これは民  法その他の法律の大原則でございますので、そ  こを特に強調させていただきたいと思います。というふうに答弁をされているわけです。  ということは、今総理は対策をとるというふうにおっしゃいました。ということが政治責任であるというふうに述べられたわけです。そうすると、政治責任がある、政治責任はとります、そしてその間には、政府の責めに帰するという場合に初めてあるととるとが合致するわけです。そうすると、総理は、今の御発言では、こういう今度の財革法を改正しないといけないということになったのは、政府の責めに帰する、そういうような場合であるということを明確におっしゃったわけです。  私の考えは間違いですか。
  191. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員はあるととるとの違いをお確かめになりましたので、私はあるととるについてお答えを申し上げました。  その上で、御自身のお考えの中に私の発言を適宜ちりばめられまして解釈を組み立てられますことは、私は多少困ったことだと存じます。私が申し上げております趣旨と似て非なるものになる、そのように思います。
  192. 西川知雄

    西川(知)委員 だけれども、政治責任はとるというふうに今おっしゃったわけです。そして政治責任をとるという意味としては、必要な施策をとるというふうにおっしゃったのではないかと思うのですが、総理、違いますか。
  193. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変繰り返しその御議論を好んでなさるのですが、四月二十二日の御質問でも、議員は、あって、とるという言葉を言いかえられましたのに対し、私は、「多少似て非なる言い方に変えておられるように思います。」という答弁をいたしております。  今、ある、とるというお話がございました。あるから対策をとるという私は一つお答えを申し上げたわけでありますが、その上で、それを本当に随所にちりばめて別なストーリーを組み立てられるというのは、私としては本当に困ったなと思います。
  194. 西川知雄

    西川(知)委員 私は全然別のストーリーを組み立てているわけではなくて、四月二十二日の議事録に基づいて答弁を求めているわけです。  そこによると、「恐らく議員のお気持ちの中では完結しておられると思います。私は、」政治責任については「ありますと、そしてその場合に対策をとる責任もあると思っております。」こう述べられておるわけです。  そうすると、その場合に対策をとる責任というのは、私は、政治責任というふうに橋本総理の気持ちの中では完結しているというふうに思うのですが、それは間違いですか。     〔村井委員長代理退席、委員長着席〕
  195. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私の手元に議事録ございます中で、ここに載録しております部分を正確に読み上げさせていただきます。  議員はその前に、  十月二十一日に私が質問をさせていただいたと  きに、総理は明確に、改正ということがあっ  て、それが経済状況による改正であれば政治責  任をとるというふうにおっしゃっているわけで  ございます。政治責任があるということは、総  理がとるということでございます。これについ  て明確な御答弁をこれは議員の御発言です。  そして、それに対して私が申し上げておりますのは、   まず第一に、わざわざ参議院の本会議までお  立ち会いをいただきまして、ありがとうござい  ました。   そして、それに引き続いての御質問でありま  すが、今私は、当時の議事録を、議員がそうい  う御引用になると思わないので持っておりませ  んけれども、多少似て非なる言い方に変えてお  られるように思います。責任があると申して、  それは私、多分そのとおり申し上げただろうと  思います。その上で、しかし、そういう御批判  を心配して何もしないことの方が大事なのか、  それとも、この国が今必要とすると思う施策を  とろうとすることが批判の対象になるのか、こ  れは皆様の御判断であります。しかし私は、こ  こで、必要なことは進めなければならないと今  考えております。というのが二十二日、この、ある、とるという部分について私がお答えを申し上げている議事録のその部分答弁そのものでございます。
  196. 西川知雄

    西川(知)委員 こういうのは綿密に、わかるまでちょっとお尋ねをしたいのですが、それが政府の責めに帰する場合に初めて政治責任をとるというふうに、そういうときに政治責任があるというふうに、これは平成十年四月二十二日に大森法制局長官がおっしゃったわけです。  そうすると、私が総理お尋ねをしたいのは、この財政構造改革法を改正せざるを得なかった、しかし、それについては政府の責めに帰するという場合ではない、そういう場合ではないというふうにおっしゃるのか、それは政府の責めに帰する場合であるから必要な施策をとるというふうにおっしゃるのか、それはどちらですか。
  197. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 例えばインドネシアを初めとするアジアの経済状況金融不安。このインドネシアの状況は今別種の心配に拡大をいたしておりますけれども、あるいは金融機関破綻、貸し渋りの影響というものがこれほど大きくということを予測できなかった。それはそうした状況の中でございましたけれども、結果として財革法の改正の御審議をお願いすることになりましたことについて責任は感じております。その上で、一刻も早い経済回復を図るためにも全力を尽くしてまいりたいと思っております。
  198. 西川知雄

    西川(知)委員 ちょっとまだわからないので質問しますが、それは政府の責めに帰する場合なんですか、それとも政府の責めに帰さない外因的な要因によるというふうにおっしゃっているのですか。それとも、それは、繰り返しますが、こういう状態に、改正せざるを得ないということになったのは、それが政府の責めに帰する場合であるというここの中に入りますか、入らないか、どっちですか。
  199. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 例えばインドネシアの政情について私は責任は負えません。そうした要因は当然ございます。また金融機関破綻に対し、それぞれの経営者の責任は当然ございますけれども、これを防げなかったという意味で政府に全く責任がないなどということを申し上げるつもりはありません。さまざまな要因がございますので私どもが責任を感じなければならないこともあります、そうでないこともあります。その上で今改正をお願いを申し上げております。
  200. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、まとめますと、政府の責めに帰する事由というものもある、そしてそれは政府の責めに帰するということは、政府として政治的な責任がある、政策の失敗であるというふうに考えてよろしゅうございますか。
  201. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 例えば、昨年の秋倒産をいたしました某証券会社が多額の簿外債務を持っていた、これは企業経営者の責任の問題であります。その上で、そうした状況を把握し切れていなかった監督当局に責任がないと私は申し上げておりません。それは金融機関の場合でも、検査等において深刻な状況を十分把握し切れなかったという責任は行政としても存在をいたします。しかし、それ以前に、経営者みずからの責任ははるかに大きいものがあろうと存じます。
  202. 西川知雄

    西川(知)委員 今、政府の責めに帰する事由ということで一つ金融機関についての簿外債務の詳細というものを把握できなかったということを挙げられました。そのほかの政策というのは正しかったのですか。また、そのほかに責めに帰するということは何かございましたか。
  203. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 過去長い間、そのときそのときの経済状況の中で、歴代の政府は適切と思われる対策をとってきたと私は存じますが、その施策そのものが時間の経過とともに批判の対象になっておるようなケースがございます。例えば、今国会の御論議の中におきましても、当時、地価高騰のさなかに旧国鉄用地の売却を停止し、その当時としてはメディアもすべてその行為を支持いたしましたものが、今日になると、そのときに売却しなかった責任を問われるようなこともございます。  ですから、議員がどこまで、何を言えと仰せられるのか私はわかりませんが、過去にさかのぼってまいりましたとき、その時点その時点において評価され、支持を得た政策でありましても、時を経ますと、当時それを主張し、継続を主張された方々も全く違った意見を述べられるケースはございますので、どこまでが政府の責任という厳密な線引きをできるほど私には能力がございません。
  204. 西川知雄

    西川(知)委員 今、過去の話というか過去の政策等についての現在での妥当性というようなことをお話しになりましたが、しかしながら、財革法を改正するということは、財革法ができたときにはそれまでの政策というものはわかっていたはずです。それで、今度改正するということは、財革法が成立してからそして現在まで何かがある、新しい何かがあるということから、そういう理由で財革法を改正するということになるというふうに私は理解をしているわけです。  ここで財革法を改正する法律案の提案理由の説明というものを受けました。それによりますと、先ほどの大型金融機関破綻、アジアの混乱、これに伴って「家計や企業の景況感が厳しさを増すなど、内外の悪条件が一斉に重なり、我が国経済は極めて深刻な状況にあります。」こういうふうに説明をされているわけです。ところが、大型金融機関破綻、そしてアジアの幾つかの国での金融経済の混乱というものは、先ほどどなたかの質問にもありましたように、それは財革法の成立以前からあった話です。  そこで、私が確認をしたいのは、こういうことの悪条件が一斉に重なったから改正をするというふうにどうも私は読めるのですけれども、またそういうふうに考えられるのですけれども、これは正しいですか、間違いですか。
  205. 松永光

    ○松永国務大臣 インドネシアその他アジアの幾つかの国の通貨、金融の問題が発生した時点は、なるほど去年の秋でしょう。しかし、その影響が日本経済に大きく及ぼしてきたのは、実はそれから数カ月たったことしの二月あるいは三月ごろから本格的に影響が出てきたというふうに私は思います。  また、幾つかの金融機関が、去年の十月、十一月に破綻したのが出てきました。それに対する対応策として、金融安定化緊急措置法というものの成立をことしになりましてからさせていただいたわけでありますが、それで手を打ったことは打ったわけでありますけれども、しかし、去年の十月、十一月に起こったあの破綻というものの今度は具体的な影響が激しく出てきたのも、これまたことしになってからだというふうに私は思うわけでありまして、そのことを提案理由説明の中に要約して申し上げた、こういうことでございます。
  206. 西川知雄

    西川(知)委員 それはちょっと、大分違うのじゃないかと思います。なぜかというと、財革法を改正しないといけないというのは、基本的には、補正予算を組まないといけない、そして景気対策に資する補正予算を組むということで、この財革法の改正というのはその一つの手段にすぎないわけですね。そうですね。  まず、そうかどうかということを、大蔵大臣お答えください。
  207. 松永光

    ○松永国務大臣 どこか別のところで委員から尋問されているような感じがするのだけれども、これは国会の場でございますから、それぞれの人がそれぞれの考え方を正確に申し上げるのが正しいだろう、こういうふうに私は思うわけでありまして、あなたの尋問にそのまま答えるという形にはならぬかもしれませんけれども、いずれにせよ、政府の責任として、現在のこの厳しい状況を一日も早く乗り越えるために必要な施策をやろうとしているわけであります。そのためには、その必要な施策をやるためには、財政構造改革法の規定である、毎年度の特例公債発行高を前の年よりも減額しなければならぬという条項等があるものですから、それを改正をさせていただいた上で、冒頭申し上げたような必要な施策をやることを実行に移させてもらいたい、こういったことでお願いをしているところでございます。
  208. 西川知雄

    西川(知)委員 私は、別に尋問をしているというつもりは到底ございませんが、要するに私は、今までの議論の整合性が全然ないので、そこをお尋ねしているわけです。  すなわち、この財革法ができるときに、私は、どういう場合にこの財革法というものを改正する場合があるかということをそもそもずっと前にお尋ねしているわけです。そのときに、私は、尾身長官の言われるように経済は生き物でございますから、そんな経済状況に弾力的に対応することができない、そういう財革法というものについてどうなんだという質問をしました。そして、改正する場合はどういう場合かと言ったら、例えば湾岸戦争とか、全く予見できない事故が起きるとか、そういうことしかないというふうにお答えされたわけです。すなわち、経済状態が悪いから財革法のキャップとかそういう枠を外すということはしないというふうにおっしゃったわけです。ところが今度は、すると。それは何ですかというふうに聞いているのです。私は、内外の悪条件が一斉に重なったからじゃないかというふうに、そういうふうに読めるのじゃないかと。  前々からそういうことは起こっていたわけです。しかも、今度は、財革法というのは、補正予算を新しくつくるための一つの手段なわけでしょう。ということは、この間の一月十九日までにそういう事態というものは起きていたわけです。そして、その起きていたのを、ことしになって起きましたというふうに今大蔵大臣は言われましたけれども、それは……(松永国務大臣「ことしになって起きたとは言わない。事実は前に起こっておって、ここまで大きくなるとは思わなかったと」と呼ぶ)ここまで大きくなるとは思わなかったと。しかし、ここまで大きくなるとは思わなかったという、そういうふうなあいまいな発言では、いつこれを改正するのか、いっ改正しなくてもいいのか、これは全然わからないわけですね。  だから、私が申し上げるように、たしか、経済状態が変わるということについては、それは法の改正の条件には入らない、そういうことにはならないというふうにおっしゃっていたのに、それが今度はそういうふうにするというのは、一体どういう場合なのかということをはっきりしていただかないと困るというふうに申し上げているのですが、総理、いかがですか。
  209. 松永光

    ○松永国務大臣 主として第四条二号に関する御質問でございますか。  そのことについての議論はもう先ほど済んでいるような感じがするわけでありまして、繰り返し答弁することはいたしませんが、要するに、提案理由で申し上げましたように、インドネシアを初めとする云々という通貨・金融の危機、あるいは去年の秋深くなってから後の幾つかの金融機関の大型破産、そういった事実そのものはその時点で起こりましたけれども、その影響が厳しく日本経済に及んできたのはことしになってからである。その影響があって、我が国の経済状況が大変厳しくなっておる。その厳しい状況を一日も早く克服するのが政府の務め、その務めを速やかに実行するために新たな施策をやる必要がある。やるためにはこの財革法の一部改正をお願いしなければならぬ、こういったことでお願いをしているところでございます。
  210. 西川知雄

    西川(知)委員 経済状況が厳しくなっても財革法は改正しないというのがそもそもの答弁ではなかったのですか、総理
  211. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 私ども経済政策の責任者といたしまして、経済の厳しい現状に応じて必要な対策をとる責任というものは、政府として確実にあると考えております。そういう趣旨から、必要な対策をとり、その対策を臨機応変にとるために必要な改正を国会にお願いをしているということだと思います。
  212. 西川知雄

    西川(知)委員 二つ質問します。簡単にお答えください。  対策をとる、それは当然必要です。しかし、それは、財革法の改正はしない、そのほかの対策をとるという趣旨ではなかったのかという点が第一点。  第二点目は、この財革法の改正を今度提案されました。もう二度とこういうような改正の提案は ないでしょうか。ないですねという確認をしたいと思います。二つ。
  213. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 政府の責任は、現在の景気の現状、経済の現状に応じて必要な対策をとり、景気を正常な回復軌道に乗せるということであると考えております。したがいまして、従来から総理答弁をしておりますように、臨機応変、適時適切な対策をとる責任があると考えております。  現在の経済状況を考えまして、現在提案しております緊急避難的な手を打つ、財革法においてもその改正をするということでございまして、財政改革財政構造改革の必要性は当然これからもあるわけでございますが、必要な対策としてこういう提案をしているわけでございまして、経済は生き物でございますし、また、その経済を順調な回復軌道に乗せるというのが政府の責任である。そういう意味におきまして、必要なときには必要な対策をとるということは当然あると考えております。
  214. 西川知雄

    西川(知)委員 総理総理に御質問したことをもう一度確認だと思うのですけれども経済はまさにいろいろと変わる、そして厳しい状況にも陥るだろう、だけれども改正ということはやらない、改正するのは、湾岸戦争とかそういう全く予見できないことであるというふうにおっしゃったはずですが、今の尾身長官の意見はそうではないように聞こえますが、総理と違うように思いますが、総理、いかがですか。
  215. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、あなたが大変粘り強く、この法律というものに違反した場合ということで、法制局長官あるいは涌井主計局長等と議論をされまして、私に御質問をくださいましたときに、仮定を置いてお答えすることをお許しいただきたいということを申し上げ、要するに絶対に自分は認められないという前提からいろいろな角度の御質問があったということで、私がお答えをした中に、例えば湾岸危機から湾岸戦争、全く予見できない事態が発生したというケースを私が一度申し上げました。そうしたら、それに対してまたあなたから御質問がありまして、要するに社会経済はしょっちゅう変わるのだから、こんな法律要らないという議員の御主張をなさいました。そして、それに対して私は、私が極端な例を引いたのがあるいはいけないかもしれませんということを申し上げ、湾岸戦争という引例で議員に要らざる予見を与えたことに対しおわびをし、極端な例を引いたのがいけないのかもしれないということを申し上げております。
  216. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、そのときの御答弁というのは、湾岸戦争のようなときとか、経済状態が非常に厳しくなった、そういうときには改正をします、そういう御趣旨だったのでしょうか、総理
  217. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 そのときの答弁の全文を読み上げます。   私が極端な例を引いたのがあるいはいけない  のかもしれません。しかし、こうした法律案を  私どもが提案をしたいと考え、現に提案し、国  会に御審議を願わなければならないと判断をい  たすぐらいに、我が国の財政状況が厳しい状況  にあることは既に申し上げるまでもないと存じ  ます。そして、私どもは、この法律案国会に  おいて通過、成立することを心から願っており  ますし、その上で、この法律のもとにおいて財  政を再建していきたいと本気で考えておりま  す。そして、もう一度湾岸戦争の話をいたしまして、  国家においてそのような、全く現時点において  想定できない事態を全く否定することもできな  いのであります。そういう場合には、これは逆  に言えば国会においても、その変化の状況とい  うものは、その結果として採用する施策のいか  んとは別として、その状況というものはお認め  をいただけるでありましょうから、その場合に  は法律の改正をお願いいたすことがあるか、そ  れは私はあり得ることだと存じております。そう御答弁をその当時申し上げております。
  218. 西川知雄

    西川(知)委員 そうすると、例えば今のような経済の厳しい状況というのは、全く昨年十月二十一日の時点において想定できないというような事態だった、そういうふうに解釈してよろしゅうございますね、総理
  219. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員は絶対にこの法律を認めないという立場からの御質問をされておりました。そして、それに対して私は、必要だと思われる内容を持った御答弁を申し上げてきたと存じております。  その上で、先ほど議員からいろいろな御指摘がありましたときに、インドネシアを初めとするアジアの経済あるいは金融不安、あるいは金融機関破綻や貸し渋りなどの影響がこれほど大きいと予測できなかったとはいいながら、その結果、財革法の改正をお願いすることになった点については責任を感じておりますということを御答弁を申し上げました。何かそこからぐるぐる同じところを回っているような感じが、私はしてなりません。  ですから、昨年十月のときの御答弁申し上げた内容は今読み上げたとおりでありますし、四月の二十二日でありましたか、また議員の御質問に対してお答えをした内容も、先ほど読み上げたとおりの内容であります。
  220. 中川秀直

    中川委員長 西川君、質疑時間は終了しました。
  221. 西川知雄

    西川(知)委員 わかりました。  それでは、またこの件は質問をいたしますので、私の質問は終わります。
  222. 中川秀直

    中川委員長 これにて西川君の質疑は終了いたしました。  次に、鈴木淑夫君。
  223. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 自由党の鈴木淑夫でございます。  総理バーミンガムサミット、まことに御苦労さまでございました。お疲れさまでございました。お見受けするところ、総理には珍しくお疲れの御様子もございますので、率直に言ってやや気が進まないような気もいたしますが、しかし、この委員会は緊急の経済対策に関する委員会でございまして、日本経済の危機に対処して緊急に経済政策を議論しようということでございますから、お許しいただきたいと思います。  それに、バーミンガム時間でもぼつぼつ八時でございますから、もしお疲れの原因が時差でございましたら、東京時間でもバーミンガム時間でも昼間は活動の時間帯でございます。頑張っていただきたいと思います。  さて、私も、きょう最初に御質問に立たれた海江田委員と同じように、サミットの反響を欧米の新聞で大急ぎで調べてみました。総理が朝から御答弁のとおり、十六兆円の総合経済対策に対しては各国はこれは期待すると。しかし、期待するということは、この効果がおっしゃるように出ることを期待して見守るということであったと報道にも出ております。  それからもう一つ、これも総理おっしゃっておりますけれども、今回は日本に対して、日本経済停滞の大きな原因が不良債権処理し切れないで持ち越していることにあるので、これから先はひとつ不良債権処理にウエートを置いてもらいたいものだという各国の要望があり、それに対して、今もう既に手を打ち始めたというようなことでお答えになった。この二つの総理お話新聞にも出ておるとおりだと思います。  しかし一ちょっと気になる言い方が、例えばニューヨーク・タイムズのバーミンガム発の記事一つありまして、それは、US・ステップス・アップ・イッツ・プレッシャー・オン・ジャパニーズ、米国が日本に対する圧力をステップアップした、高めた。何だろうと中身を見ますと、その下に、クリントン・アージェス・アクション・オン・ザ・バンキング・クライシス、だから、銀行の危機についての日本の新しい行動をクリントンが総理に勧めているよという記事ですから、これは総理がけさから委員会でおっしゃっていることと同じだと私は思います。  そこで、きょうの質疑は、まず最初は、十六兆円、向こうは期待しているよと言っているわけでありますが、これについて、諸外国の期待どおりいくかどうかということから御質問をさせていただきまして、次に、不良債権早期処理の方法について、今お考えのことで大丈夫かなということについて質疑を続けさせていただくということで始めたいと思います。  さて、この十六兆円の総合経済対策の効果でございますが、政府は、約二%程度成長率を高める、実質の成長率を高める効果があると言っておられます。私は企画庁のお役人さんたちを呼んでその根拠を詳しく聞きましたので、尾身さんからここでお伺いする必要はございません。  私の方からもう時間の節約で言っちゃいますと、二兆円減税については、乗数を〇・四六と見た、したがって、これを掛け合わせると、GDPを〇・六%、四捨五入して〇・二%ぐらい持ち上げる。それから公共投資七・七兆円については、用地費を五%ぐらい見て、〇・三兆円引いて七・四兆円、これに乗数は一・三二ぐらいと見て掛ける、そうすると一・九五になるわけですね。両方足すとたしか二・一ということになりまして、これが二%程度成長率が高まるという根拠だというふうに私は了解をしております。  念のために尾身長官、確認しますが、これでよろしゅうございますね。二%程度この十六兆円の対策で成長率が上がる、だから経済見通しの一・九%は実現できると思うと。前にもそう言っておられましたが、そういう御見解、内閣の御見解というふうに考えてよろしゅうございましょうか。
  224. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 公共事業の関係及び所得減税の関係は、大体今、鈴木委員のおっしゃるとおりでございます。  たださらに、実は私ども計算を表に出しておりませんが、住宅減税とか中小企業の投資促進税制とか、いわゆる政策減税がございます。そういうものの効果はあえてこの数字の中に入れていないわけでありますし、さらに、土地問題等に対する用地先行取得、そういうものについても効果を計算していないわけでございまして、実は、二・一%、二%程度というふうにしておりますが、私どもの計算はかなりかた目な数字である、したがいまして、向こう一年間、全体として二%程度のGDPに対するプラス効果は確実にあるというふうに考えております。
  225. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 確認をさせていただきました。  それで、私、一つ不思議に思うことがあります。  二%程度の効果の結果一・九%の見通しは実現できると思うとおっしゃっているわけですから、逆に言うと、今回のこの対策を打たなかったら、一・九から二・一引いたらマイナス〇・二ですから、ゼロ%か、うっかりしたらマイナスの成長だというふうに政府はお考えになっているということになりますね。  そうしますと、三月に当初予算をお出しになったとき、政府は同時に経済見通しを御説明になっていて、この当初予算で一・九%いくというふうに説明していたわけでありますから、当初予算が成立して次の日に突如十六兆円が出てきて、これを受けてさらに補正予算ということでありますので、まあ極端に言えば一夜にして、もう少し間を置いても一カ月か何かのうちに政府の見通しが、一・九%成長だから大丈夫と言っていたのが突如ゼロ%かマイナス成長に変わったということになるのですが、一体何が原因でこんなに見通しが激変して下方修正されたのでしょうか。総理はその点、どういうふうに考えておられますか。  じゃ、尾身長官
  226. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 この経済対策、今計算の中身等については申し上げましたが、既に実施しております金融システム安定化対策、あるいは規制緩和、さらには土地税制、四月一日前に国会を通りまして、一月からさかのぼって実施されております土地譲渡益課税の減税、あるいは地価税の凍結等々の効果もございまして、その結果、全体として一・九%程度の十年度達成は十分可能である。しかし、現在の景気の状況は非常に厳しい状況でございますから、私どもは、かた目に見て一・九%程度は十分可能であるという趣旨で申し上げているわけであります。
  227. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 どうもよくわからぬ説明ですが、もうはっきり言います。  要するに、当初予算をここへ出していたころ、実は内心では、もう一・九%とてもだめだ、この当初予算じゃとてもだめだと思って、一生懸命陰で自民党が準備をしていて、もうあの時点で自民党の政策立案者たちはこのままじゃゼロ%かマイナスだというふうに思っていたという以外、つじつまが合わないのですね。全くつじつまが合わない。  それで、そういうことをみんなよく見ているのですよ、ばかじゃないですから。マーケットも、あるいは諸外国もよく見ているわけです。だから、一・九%見通しがあっという間にゼロかマイナスに変わったりするんだから、今度の十六兆円の総合経済対策についても結果待ちだねという外国の反応が出ちゃうのですね。とにかく、言っていることとやっていることが違うので、もうとにかく結果待ちだという感じだと思います。マーケットの方は、かなりはっきりと、これじゃだめねという反応を示しておるわけですね。  それで、総理、大変御苦労いただきましてサミット説明をして、記者会見でもああいうふうにおっしゃったので、さあ日本のマーケット、おれの方が間違っていたかなと反省するかと思いきや、けさ、前場は、御承知かどうか知りませんが、株価は危うく一万五千円を切るところまで突っ込みました。しかし、その後、ちょっと逆の動きも出まして戻りましたけれども、しかし円相場の方は百三十五円台まで円安になっちゃっているわけですね。どうしてマーケットが反応してくれないのか。まあ中にはマーケットの方が悪いとおっしゃる方もおられますが、市場経済の中にあってそんなむちゃな論法は通じない。  どうしてだろうということなのですが、私、少なくとも二つ、具体的に御指摘したいのですね。  一つは、減税が四兆円だとおっしゃる。これは本年と来年、二兆円、二兆円で、特別減税合わせて四兆円だとおっしゃるのですが、しかしマーケット参加者を初め、物のわかった人は、特別減税というのは、御承知のように、九四年に二兆円でスタートしましたね。それで、九四、九五、九六と最初の三年間は予定どおりなのですね。そして九七年に、御承知のように、私どもの継続の法案をつぶして打ち切ってしまったわけですね。それで景気が突っ込んで、九七年度はマイナス成長になった。しまった、間違えたというので慌てて九七年度分の二兆円を復活させ、そしてあと二年継続しますというので二兆円、二兆円なのですから、ならしてみれば、この二兆円特別減税というのは、九四年から九九年まで毎年二兆円減税なのですね。  ということは、経済拡大効果というのは、九四年の二兆円減税でぽんと出てきて、それでおしまいなのですよ。減税を二兆円続けているからといって、毎年、はい二兆円から乗数効果といって拡大するわけじゃないですよ。それを、二兆円、二兆円で四兆円だ、それで、少なくとも本年度はこの二兆円は新たな減税だみたいにおっしゃるから、物のわかった人は何を言っているのだと。これは、二兆円を打ち切ったら増税だ、増税ならマイナスの効果だ、しかし打ち切らないで続けたからマイナスの効果じゃなくてゼロだ、ニュートラルだ。プラスの効果だなどと言うのは、これはもう経済学の分析では、何を間違ったことを言っているのということになります。  ですから、マーケットが、四兆円減税、四兆円減税というのに全然踊らないのは、そういうことなのですよ。要するに、新たな減税じゃないのです。九四年以来ずっと二兆円減税は横ばっているということだけです。これは増税を延期しただけであって、新たな減税をしたわけではないのですね。これがまず一つ。ちょっと誇大広告になっているのですよ。これをちゃんと見抜いている。十六兆円のりちの四兆円、誇大広告というのをみんな見抜いている。  それからもう一つ。公共事業は七・七兆円ですが、そのうち一・五兆円が地方の単独事業ですね。しかし、地方の首長さんたちはみんな悲鳴を上げています。経済がこれだけ悪くて地方の独自税源からの税収が落ちている上に、特別減税につき合わされて住民税の減税もある。ですから、この単独の事業につき合えと言われてもとてもつき合い切れないねと、いろいろなところで言っているわけであります。  自治大臣、これは本当に一・五兆円も地方公共団体がやれると思いますか。この前の新聞に、東京都も神奈川県も、これはとてもできない、返上だみたいな記事が出ておりましたが、現在のところ、どういうふうな把握の仕方をしておられますか。
  228. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 私、このたびの総合経済対策で、都合二回、地方六団体の代表の皆さんと懇談をいたしました。相当時間をかけていたしました。その場合、地方財政が大変厳しいことは非常に率直にお伺いをいたしたところでございます。また、そういう実態的なものを踏まえた上で、今回の総合経済対策の追加措置につきまして、特に公共事業の分野の地方単独事業の円滑な実施につきまして財政措置等を説明いたしました。  普通、年度途中における補正予算は、財源に穴があきましたものは地方債によってこれを埋めるわけでございます。しかし、今回は、年度途中の補正でありましても、地方交付税の増額によりまして四千億円程度の財政措置をいたしました。また、単独事業における財源としては、地方債で今回はいたしましても、後年度、交付税でこれを見るということにいたしまして、地方財政については支障を来さないように措置をいたしたところでございまして、この辺についてもよくよく私の方から御説明を申し上げ、十分御理解をいただき、納得いただいたものと考えております。  また、地方経済は非常に悪うございまして、地方税収の増は、現状でいきますと見込めません。したがって、国、地方を通じた景気をよくすることにおいて、地方財政対策の方向づけも含めて御理解をいただいたものと私は承知をいたしておるところでございまして、今後さらに地方団体については御協力をいただきますように、誠意を持ってひとつお願いをしてまいりたいと考えております。
  229. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 自治大臣がそういうふうに誠意を持ってお願いしておる、御努力いただいておるということはわかっております。そして政府が、こういう手も打つ、ああいう手も打つという説明をして、首長さんたちがそれを理解したろうというのもわかります。しかし、だからやるよという言質をきちっととっているわけではないのでありまして、一・五兆円のうち、私の見るところ、半分以下だろうなと思っています。まあこれは後でふたをあけてみないとわかりませんが。  そういうわけで、十六兆円、十六兆円とおっしゃるが、四兆円の減税はこれは丸々引かなきゃいけない。単独事業一・五兆円も怪しいねというふうに、どんどん小さくなっていくものですから、民間の調査機関の経済予測の根拠となっている今度の効果を見ますと、せいぜい一%から、大きなところで一・五%ぐらいしか成長率は上がらないだろうなというふうに見ております。しかも、この政策なかりせばという当初の予測は民間の方がずっと厳しいです。この政策なかりせば平成九年度のマイナス成長に続いて十年度もマイナス成長、それも政府の言うように〇・一か〇・二という話じゃなくて、〇・五ぐらいのマイナスを置いていますから、今度の対策を乗っけてみても、本年度の成長率は〇・五から一・〇ぐらいにしかならないのですね。これは、マイナス成長という大不況が〇・五から一・〇%のプラス成長という普通の不況に変わる程度のインパクトしか持っていないというのが今の民間の見方でございます。  それから、あと二つほど民間がこれはまずいねと言っていることがありまして、一つは例のデフレスパイラルの話でございます。  先ほど総理への質問が出ましたときに、総理は、これは石油の値段が下がっているとか、それから在庫が何とかとおっしゃったのは、私、全く理解できませんでしたが、デフレスパイラルという場合に二つありまして、一つは、物価が需給バランスを失したために下がっていって企業収益を圧迫する、そこからデフレが出るという話ですね。それに対しては、総理がさっきおっしゃったように、いや、原油価格が下がっているんだ、あるいはアジアの通貨との関係では実は円高なんだ、そんなことで輸入物価が下がって下がっているのだからこれは別に収益圧迫じゃないよ、これをおっしゃりたかったのだと思うのですよ。私は、その要素はあると思います。  しかし、もう一つありまして、それは、今、公定歩合は〇・五%まで下がってしまって、もうこれ以上金利は下げにくい、しかも、低金利が長く続くものですから、大変年金生活者その他から批判があります。これ以上ノミナルな、名目的な金利を下げられない状況にあるときに、卸売物価で見たらマイナスになってしまっている、下がっている。マイナスインフレ率だということは、実質金利が上がっているということなんですね。これなんですよ、今新たに出てきたデフレ要因は。民間はその意味で、実質金利は上がってしまっているではないかと。在庫を抱えている企業の収益圧迫になりますよ、これは。そういう一連のことから、ちょっと政府見通しは甘いね、これが三つ目ですね。  四つ目は、余り自民党の政策の責任者の方が、さっきも話題に出ていました、年度末一万八千円超えるんだということをおっしゃる、そのために今度の十六兆円の総合経済対策の中身を小出しにされたのですね。四兆円減税やるよというから期待していたら、何のことはない、さっき言ったように、これは減税じゃないよ、増税の延期だというようなこと。それから公共投資の中身についても、やはり余り小出しにしてぺらぺらしゃべって口先介入をおやりになったために、政府の政策に対するコンフィデンスが落ちたということがもう一つあると思います。  この口先介入、しばしば話題になりますが、念のために申し上げておきますが、証券取引法の第百五十八条に、何人も有価証券等の相場の変動を図る目的をもって風説を流布してはならないというのがありますよ。ですから、兜町の人たち、中堅、若手、まじめに一生懸命働いている証券市場関係者は頭にきているのです、はっきり言って。責任ある立場の自民党の政調会長さんが、あんなぺらぺら風説を流布して何で許されるのかということですよね。それで、明ろかに目的は相場の変動を図る目的ですからね。だから、こういうことやっては、もうますます政策に対する信任が下がる一方だというふうに思います。(発言する者あり)そういう相場操縦の罪にはならないのですよ。  相場操縦の禁止というのは、これはもっとほかにいろいろ条件があるのです。俗に相場操縦と言いますが、そうじゃないのです。風説の流布の罪です、これは。相場の変動を目的とする不正行為なんですね。こういうことをやっていたんじゃ、政府に対するコンフィデンスは低下する一方だということだと思います。  以上、私、四つ理由を申し上げまして、この程度の総合経済対策で景気が底を打って、何か六月にはよくなるなんて言っておられる大臣がおられますが、とんでもない話でございます。  今、鉱工業生産は、三月までの実績、四月、五月の予測指数しか出ていませんが、四月、五月の予測指数、それで六月は仮に五月横ばいとしますと、四-六月期の生産は前期比四・四%落ちるのですよ。これはえらいことですよ。年率換算したら一八%も落っこちてしまうのですよ。それぐらいの勢いで、今景気が突っ込んできているのです。そんなときに何で六月にはよくなるなんて言えるか、まことに不可思議ですね。またこんな風説で相場のことをおっしゃったら、ますますコン フィデンスを失うと思いますが、そういうわけですから、どうぞ御油断召されるなということを私は申し上げたい。  何度も何度も経済予測を失敗しておられますが、今度もまた失敗するに違いないと私は思います。どうぞ御油断召されるなという意味は、この先の経済の動向をきちっとフォローしていただきたい、この十六兆円で大丈夫だなどと余り外国でしゃべったりすると、対外関係でもコンフィデンスを喪失するということを私は心配をいたします。  さて、もう一つバーミンガムサミットで御説明になった。それは、先方が不良債権処理をやらなければだめじゃないかというふうにおっしゃったわけですが、その不良債権処理に対して、いや、日本でも考えているんだということで、いろいろ御説明をされたのだというふうに思います。  私は、総理がここへ来て、なるほど不良債権処理が今の景気を本格的に立て直す一つの決め手だなと、お気づきになったのか、決心されたのか、そういうふうに見方が変わったのは大変結構なことだと思います。というのは、私自身も、私ども新進党時代にも、そのことを実は口が酸っぱくなるほど申し上げたわけですよ。  私の手元に議事録があります。平成九年、昨年の二月十日の予算委員会、四月三日の本会議における私の代表質問、四月九日の大蔵委員会、この三つ議事録がここにありますけれども、ここで私は繰り返し、金融三法に基づくフレームワークでは、景気がこのように沈んできているとき、とても金融システムの安定は図れません、必ず公的資金を投入しなければ預金者保護ができないような金融破綻が起こりますということを、この三回とも私は指摘申し上げているわけであります。  それで、本会議で御指摘申し上げたときの橋本総理の御答弁がここにあるのですが、お読み申し上げます。「金融システムについてお尋ねがございましたが、不良債権処理は着実に進んでおります。そして、個々の金融機関の経営状況はさまざまでありますけれども金融機関全体としては、私は不良債権問題を克服することは可能だと考えております。また、金融システム改革を進めるに当たりまして、金融機関不良債権を速やかに処理いたしますとともに、金融三法の枠組みを最大限活用することによって、システム安定に細心の注意を払って」いく。ここで総理、三つ間違えたんですよね、今振り返ると。三つ間違えています。  まず第一、不良債権処理は着実に進んでいる。着実になんか進んでいないですね。大変な持ち越しをしている。それどころか、この景気の悪化で再生産さえされている部分がある。  それから二つ目、金融機関には不良債権処理して克服する力があるとおっしゃっている。これも間違い。  それから三番目には、金融三法の枠組みでシステムの安定ができるとおっしゃっている。これも間違いですよね。だって、十一月に大変な金融システムの動揺が起きた、そして、あの金融三法じゃだめだということで、金融四法をおつくりになったわけですから。  総理、今振り返ってみて、やはりあのとき新進党あるいは野党、私どもが言っていたことに耳をかして、不良債権処理日本の景気を立て直すためにキーになるポイントだと、なぜあのときお気づきにならなかったのですか。なぜ外国人に言われると、今回のように急にぱっと変わって、不良債権不良債権と言い出すのですか。これは情けない。何で外圧に遭わないとわからないのですか、私ども野党の主張に耳をかさないのですか。総理、いかがですか、この点。具体的に私聞いております。
  230. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに今、議員は幾つかの御指摘をされ、私自身の誤りをただされました。  しかし、では、例えばある証券会社が簿外債務を持っているということを御存じであった方が、会社の関係者以外にあったんだろうか。金融機関それぞれが抱えている不良債権というものを、いろいろなお話はありましたけれども、例えば、決算における監査あるいは銀行局等の検査、こうした中で把握されている以上に想像しておくべきであったと言われれば、想像力不足かもしれません。  そして、不良債権処理は、私どもは、少なくとも金融機関の報告というものをある程度信頼しておりましたから、それなりに進んでおると思っておりました。その報告を信じていたという点に責めがあるとするなら、その責めは負います。同時に、検査で発見し得なかったということでおしかりを受けるなら、受けざるを得ないでしょう。  ただ、不良債権の問題が大事だとは思っておりましたけれども、これほど傷んでいるという認識がなかったことは事実です。それだけに、この三月期決算からSEC基準による決算が行われ、今月末か恐らく来月の適当な時期にはこれがきちんと公表されるでありましょう。そこからが私は勝負にならざるを得ないと思っておりますし、議員はわざわざ外国から言われてとおっしゃいましたけれども、外国から言われてではございません。むしろSEC基準によって出てくる数字というものを私は大変気にいたしております。その上で、バランスシートから消さなきゃならぬと本気で思っております。
  231. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 きょうは、これ、NHKのテレビつきじゃなくて、ですから一般の方は見ておられませんけれども、今の総理の御答弁を伺って、恐らく金融関係者はちょっとがっくりしたかもしれないと思います。  といいますのは、去年、大蔵省が発表しているあんな程度の不良債権じゃないよ、もっと多いよというのは、もう関係者の間ではほとんど共通の認識になっていましたよ。そして、私もこの席で言いました。これだけ景気が悪くてまだまだ地価が下がっていくと、以前公表された不良債権処理は進んでいるかもしらぬが、不良債権じゃなかった根っこの部分が新たに不良債権になってきているのだ、あるいは、取引先がもう六年、七年という経済停滞で耐えられなくなって倒れることによる不良債権が新しく出ているのだ、そういうことをここで申し上げました。そんなに深刻だとは思いません、処理は進んでいますと。  ですから、やはり、私はこれは一種の危機管理だと思うのですが、総理官邸の情報が不足していると思いますよ。大蔵省から上がっているあの数字だけを信じていたのだとおっしゃるんだったら、全く情報管理の欠陥をあらわしているというふうに思います。もっと正確な情報をきちっと集めてもらわなければ困るな、特にここで私申し上げたのですから、何回も。それは大変残念に思います。  それから、総理バーミンガムにいらっしゃる前の最初のこの委員会で、私の同僚である谷口委員総理一つ質問をしました。それは、総理は、これからは不良債権の早期処理を最優先にする、ついては今度の対策の中で不良債権の流動化、証券化等の対策が入っているというふうにおっしゃったわけですね。それに対して、谷口委員は、しかし、流動化、証券化するためには不良債権をディスカウントして売り飛ばすんですよね、だから、ハイリスクだけれどもハイリターンの証券になってだれかが買ってくれる、当然大きな損が銀行に出るわけです、それは一体どうやつて処理するのという質問を谷口委員がされましたが、今度の対策の中にそういう配慮はちゃんと入っているのでしょうか。
  232. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 谷口さんがその質問をされたとき、議論がございましたように、これは間違いなしに、流動化させた場合、債権回収の見込みを反映した適正な価格での流動化、すなわちディスカウントということが起こるというのは、私はこれは御指摘のとおりだと思っております。当然バブルのときの時価で動くわけはありません。しかも、その後の状況の中で、場所によって変動はありますけれども、おおむね地価が低位に推移している。しかし、同時にこの四月導入をいたしました早期是正措置をきっかけとして、公認会計士が関与するそのもとにおきまして、それぞれの金融機関は、資産の自己査定というものを通じて適正な償却、引き当てを行うことになるわけです。ですから、その適正な償却、引き当てが行われていないとすれば、これは本当にちょっと問題です。  しかし、適正な償却、引き当てが行われている不良債権が流動化する、そこではその含み損が必ずしも表面化するのだというだけではないんじゃないでしょうか。ただこれは、ある意味では私自身新しい分野でありますので、詳細につきまして、お許しがいただけるなら、政府委員から説明をさせたいと思います。
  233. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理がよく御理解されているということがわかりまして、私も大変結構だと思いますが、適切な償却、引き当てというのは、これはお金がかかる。つまり、有税の引き当て、有税の償却をしていくということは、これは損益に食い込んでいくわけですよね。そして、自己資本を毀損していくわけですよね、損益に食い込むということは。  ですから、ここが大事なポイントになるのですね。それは、適切に償却しなさい、はい、わかりました、これは大変な不良資産ですから償却いたしますと言えば、これ、償却は損益を食い、自己資本を食っちゃうわけですよね。だから、自己資本比率は下がりますよ。ROEも下がる、収益率も下がるという状況なんですね。だから、適切に償却しなさい、適切に引き当てをしなさいと説教しただけではだめなんですね。それじゃ自己資本比率が下がっちゃうじゃありませんか、どうしたらいいんでしようと言われたら、どうするんですか。  片っ方では早期是正措置で自己資本比率を上げろ上げろと指導しているのでしょう。自己資本比率を上げろ上げろと片っ方で言っておいて、他方じゃ、償却や引き当てを適切にやりなさい、適切どころか早期にどんどんやりなさいと言ったら、自己資本比率は下がっちゃうんですよ。えっ、どっちですかという話になりますね。  ここに、前にも予算委員会の席で申し上げたと思います、大蔵委員会の席では大蔵大臣に申し上げたと思いますが、混乱があるということであります。大蔵当局の指導、政府の方針に混乱がある。一体どっちが大事なの、自己資本比率を上げることが大事なんですか、それとも不良債権を早く処理することが大事なんですか、どっちなんですかと。この二つは矛盾するんですよ。  それで、アメリカの例をちょっとお話しいたしますと、御承知のように、RTCをつくって、SアンドL不良債権を、SアンドLをどんどんつぶしながら不良債権を買い取る。つぶして買い取ったものですから、この不良債権はうんとディスカウントしてマーケットに売る。これでマーケットができて流動化していくわけですね。そのチャンスを逃さずに、今度は銀行側が、自分の不良債権をディスカウントして、損失をかぶりながら、そのでき上がったマーケットに売って、それで早期処理が進んでいくわけですね。  だから、最初のきっかけをつくっているのは、もうその銀行をつぶしてしまって、思い切ってディスカウントして売っているんですね、SアンドLの関係のものを。それに力のある銀行が早期処理ということで乗っかった。しかし、これがうまく動き出したのはやはり九二年以降です。九二年といえば、御承知のように、アメリカの今の長期景気の始まりですよ、やはり景気が回復してこないとなかなか無理。だから、不良債権早期処理と景気というのは、鶏と卵みたいな関係があって非常に厄介であります。景気が回復し始めれば不良債権早期処理も進む、しかし、不良債権が早期処理できなきゃ景気が回復しないみたいな非常に厄介な関係にあるわけであります。  ですから、改めてお伺いいたします。  政府は今、三兎、三匹のウサギを追っかけている。一つは早期是正措置ですよ。自己資本比率を上げなさい、上げなさいと言っているのですよ。二番目は、今や不良債権早期処理という二匹目のウサギを見つけた。これを早くやったら自己資本比率は下がるのですからね、この二匹のウサギは一遍には追いかけられません。そして、実は三匹目がいる。これは金融ビッグバンですね。金融ビッグバンを本格的に始めた。特に、ことし四月から外為法を抜本的に改正して為替管理、原則廃止してしまった。さあ、イコールフッティングで海外の金融機関と競争しなさいと。競争するときの決め手というのはやはりROEになるわけですよ。資本単位当たりの収益率がどのくらいあるかということですね。これが三匹目のウサギです。  そうしますと、このROEを上げるということと自己資本比率を上げるということも矛盾してしまうのですね。自己資本比率を上げるために増資、増資とやれば、資本一単位当たりの収益が下がってしまいます。この三匹のウサギをどうやって追いかけるのですか、矛盾しているのに。順番をどうつけるのですか。あるいはトレードオフの関係にあるから、どういうウエートをかけるのですか。そういうことを、総理、お考えになったことございますか。
  234. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、専門家として議員は見識を述べておられるのだと思って拝聴をいたしておりましたが、私、逆に、それでは金融機関バランスシート不良債権をいつまでも残しておいたらどうなるかなという思いを持ちながら、大変失礼でありますけれども、今のお考えを拝聴しておりました。そして、私はやはり、これから競争が激しくなればなるほど、国際間における金融機関の競争というものが激化すればするほど、不良債権バランスシートに残しておくメリットというものはないだろうと思います。  その上で、今、三つの組み合わせをそれぞれに問題ありと。議員よく悪い方の予測について実に確信を持ってお話りいただくのですけれども、私は、その組み合わせの中から、要するに経営者の判断として、それぞれの特色といいますか、従来からのそれぞれの得意分野あるいは不得手な分野、そうしたものを勘案しながら経営戦略というものは練られるものだと思います。  ただ、いずれにしても、私は、これから先不良債権バランスシートに残しておくことがいいことだと判断する経営者はいない、その上でさまざまな工夫を、例えば先ほど述べておられました自己資本との関係をどうとるかとか、それぞれの考え方を持って行動するであろうと思います。
  235. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理、私は、回答不可能な意地悪な質問をしているつもりは全くありません。これは、さっきちょっとその辺でどなたかささやかれて、できっこないのじゃないかみたいなことをおっしゃったけれども、そうではないのだというふうに思います。やはり、日本のこの経済危機を救うため、日本を救うため、政府・自民党だけじゃなくて、私ども野党と真剣にディベートして、討論していただいてこの回答を見つけなきゃいけない問題だと思います。  私、今、我が自由党が考えていることを申し上げます。  三つターゲットがあったら少なくとも三つ政策手段を用意しろというのが経済政策論のイロハなんですね。教科書には必ず書いてあります。ですから、この三つに対してそういうふうに整理していきますと、私は自己資本比率というものは高ければ高いほどいいわけじゃないと思っています。  一定の流動性を持っていればいいのです。だから、インターナショナルに活動していたらBIS基準で八%クリアしていればいいのです。それを、いや、いい銀行になるためには一〇%かな、一二%かななどといって横並びで今日本銀行はちょっと競争しているところがある。これはよろしくない。国内なら四%を楽にクリアしていればそれでいいのです。ですから、まずこの自己資本比率のところは、四%、八%を楽にクリアしたらもうそれでいいよと言わなきゃいけないと思います。  それから、今度はROE、資本単位当たりの収益率、これはリストラですよね。リストラで経費 を落とし、むだな事業をやめ、そして今、融資構造もリストラの一環として収益性の低い融資を切っていくものですから、貸し渋りで大変なことになっていますが、あれは彼らの必死のリストラの努力でもあるのですね。単に自己資本が足りないからではありません。これはリストラでやってもらう以外にない。政策を打つとしたら、そのリストラを助ける政策を打つ以外にない。  アメリカの例を見ても、本店の建物を売り飛ばしたりなんか、もう相当なことをやりました。シティコープだって、今はいい調子ですが、あのときは、本当に尾羽打ち枯らして日本に来て、シティコープの資産を買ってくれないかみたいなことまでやったのですね。それぐらいにすごい勢いでリストラをした。これがROE対策です。  問題の、総理が今やこれが非常に大事だと言っておられる不良債権の早期処理、これは私どももずっと言ってきました。これについて、我が自由党が基本政策というのを間もなく党大会で発表します。その基本政策はほぼできていますが、その基本政策の中ではっきり打ち出します対策は、不良債権早期処理に使う場合に限って不動産の再評価益に課税しない、損益通算やらしてやる。今、自己資本比率を上げるために再評価使ってもいいよという法律通しましたね。かなり多くの銀行が保有不動産の再評価で自己資本比率を上げていますが、しかし、あれを使って不良債権償却しようと思ったら、これは損益通算というわけにはいかない、税金がかかります。これは再評価益に向かって法人税がかかってきますね。だから、これを不良債権早期処理に限り、この二年なら二年、特別立法で期間を定めて損益通算を認めてあげるよと。  これは、今銀行にそんな含みあるのとおっしゃる方いるかもしれませんが、昭和二十年代、三十年代に目抜き通りに店舗網張った銀行は、この辺はまだ含みに余裕ありますよ。でも、今含みを再評価で表に出してしまったら税金かけられるからそれはやれない。もし今回、この二年に限り、不良債権処理に、不良債権償却、引き当てに使う場合は損益通算認めると言ってやれば、これはかなり一気に不良債権処理が進みます。私どもはそういうことを考えております。  さっきも申し上げましたように、どうか、政府・自民党の中でだけこの三つの難問を考えて、これは回答なしなんて言っていないで、私どもとも知恵を交換し合ってこの日本を救うための対策を考えていただきたい。私は回答不能な意地悪な質問を出しているのじゃないのです。日本を救うために一番大事なことを言っているつもりでございます。総理、どうぞ、そういう意味で今私が申し上げていることを真剣にお考えいただきたいと思いますが、いかがでございましょう。
  236. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 国会に出られる以前からよく存じ上げ、その見識に敬意を払い、国会に議席を持たれるようになりましてからも私は敬意を持ち続けているつもりです。  その上で、回答不能な問題を出したということを私は申し上げていませんよ。その三つを言われた。その中で、私は逆に、それではいつまでも不良債権バランスシートに残しておけるか、だからまずそこからではないですかと。そして、私は議員ほど率直に申し上げておりませんけれども、自己資本比率等を考えればいいじゃないですかという言い方をさせていただきました。何も高ければ高いほどいいと思っているわけではありません。ただし、国際的に評価を受けるためのBISのルール、あるいは国内における四%ルール、これはやはりきちんとクリアしてもらわなきゃ困りますけれども、高ければ高いほどいいというふうなものではないと私も思っております。
  237. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 ぜひ今私が申し上げましたことを御理解いただきたい。不良債権処理が緊急の課題だということは共通の認識ですね。その上で、三つの問題があって、うっかりすると矛盾するから、三つ一遍に解決する一つの政策体系を考えないとだめだ、そのためには、私どもとも一緒に考えていただきたいということを与党の皆さんにも申し上げているわけでございます。  さて、それではもう一つの問題、今は、景気立て直しのために不良債権処理は大事だという、このことについて少し深く政策論を申し上げたわけでありますが、もう一つは、総需要拡大といいますか、成長率を引き上げる方の政策でございます。  このたび、財政構造改革法、財革法を、弾力条項を入れるという形で改正するという案が出ているわけでございますが、これについても、昨年、総理覚えていらっしゃると思います、この財革法をつくるときの特別委員会、十月二十一日、十月三十一日、私は繰り返し総理に申し上げたわけであります。こういう形で今後の財政運営を縛ってはいけない、今景気がこういう状況なのに、と言うのに対して、総理お答えは、財政状況は先進国中最悪です、「財政構造改革は一刻の猶予も許されない」、「一刻の猶予も許されない」。あるいは、その次はもっと、総理、極端なことをおっしゃったのですね。「財政構造改革というのは一瞬のちゅうちょも許されない状況にある」。  一刻の猶予も許されない、一瞬のちゅうちょもできないほどせっぱ詰まっているのに、何で今財政構造改革法を改正して赤字拡大するのですか。どうなっちゃったんですか。総理、いかがですか。
  238. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、本当に、議員が言葉じりをとらえたなどと申し上げるつもりはありませんけれども財政構造改革の必要性というものを、私は全く、今も必要がないと考えているわけではないということを繰り返し申し上げてきました。だから、財革法を凍結しろ、あるいは廃止しろという御主張の方々に対して、私は、それはできないということを申し上げてまいりました。その上で、現下の経済情勢の中において、私は、必要な対策をとることも大事なんだということも申し上げてまいりました。それが私の申し上げたいことです。  そして、財革法反対という立場の御論議に対して、私は確かに、一瞬の、一刻のというような言葉を使ったと思います、その必要性を訴えることに。私は今その議事録を持っているわけではありませんが、そういう言葉を使ったであろうことを私は決して否定をいたしません。その必要性は、私は本当にそう思っているのですから。その上で、現在、緊急の景気に対する対応が必要だと考え、そのためには、考えておかなければならない手段、幾つかの中の一つとして財革法の改正というものもお願いを申し上げております。
  239. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 総理、私は、総理との質疑の中で、私も財政構造改革が必要でないなどとは一言も言っていないのですよ、財政構造改革は必要だという立場で言っているのですね。だけれども総理は、財政構造改革は一刻の猶予も許されない、一瞬たりともおくれちゃいけない、今すぐやるんだ、こうおっしゃるのに対して、いや、それは違う、経済再建が先だ、その次に財政構造改革だと言っていたわけです。ですから、今の総理の御答弁は、財政構造改革が必要だ必要だという御答弁、それは全然私と食い違っていないのですよ。問題は、一刻の猶予も許されないというところを私は申し上げているのです。  総理も、一刻の猶予も許されない、あるいは一瞬もちゅうちょできない、こう言っちゃったわけですが、これは総理、私は総理を尊敬しておりますし、もう、これはちょっと言い過ぎたと言っちゃえばそれでいいことですよ。だって、そうでしょう。これはだって、一刻や一瞬猶予できなかったら、財革法を改正なんかしちやいけないということになっちゃうんだから。そうでしょう。これはやはりちょっと言い過ぎちゃった、一刻とか一瞬というのはちょっと強調し過ぎちゃったよと。実は数年間の猶予はあるんですよ、数年間の猶予はあるんです。  それじゃ総理、今きっと私の方をにらみつけられましたから、具体的に申しますが、OECDがエコノミック・アウトルックというのを出していることは御存じのとおり。時々、財政状況の国際比較を出しますが、また最近、昨年の十二月とことしの四月に出したわけですね。それはきちんと大臣席に報告しておくようにというふうに官僚の皆さんに申し上げたからお手元にあるかと思います。この最新の国際比較を見ると、九六年の財政赤字の対GDP比率、なるほど悪いが、日本よりもっと悪いのがあります。それはイタリアとイギリスです。しかし、三番目に悪いんだから、自慢はできない。これは何とかしなきゃいかぬ。  しかし、よく言われることに、公的債務残高が五百兆円近くなっちゃった、だから一刻の猶予も許されないという論法がありますね。五百兆円近くなっちゃったという議論が、少しこれも、ためにするというか、国民をおどかす結果になってやしないか。  確かに、公的債務の対GDP比率、日本は八二・六%、これもイギリスとカナダに次いで三番目に高いです。しかし、この統計は、同時に、公的部門が持っている金融資産を差し引いたネットの債務残高を書いてあります。ネットの債務残高というこ之になると、何と日本は一番低いですね。一五・八%であります。将来の我々の子供たち、孫たちへの負担でいくのは、ネットの公債残高でしょう。ネットの債務残高ですね。これは何とG7中一番低いというOECDの統計が出ております。これは何もOECDの統計を引用するまでもないことで、経済企画庁が出している国民経済計算の年報の残高表にもちゃんと出ていることであります。  総理、一刻の猶予も許されないというのは、やはり言い過ぎでしょう。ネットの債務残高がそんなに多いわけじゃないんですから。総理、いかがですか。  総理は、グロスのストックが五百兆円に近づいているとかいうことをおっしゃいますが、同時に金融資産も持っている、ネットでは二百兆円を切っているんですね。余りグロスで大変だ大変だと言い過ぎたもので、国民は本当にそうなのかと思ってびっくりして、それがかえって投資マインド、消費マインドを冷え込ませ過ぎちゃっているという説さえ最近民間のエコノミストは言っております。余り財政危機を強調し過ぎて、おどかし過ぎたから、もう日本はだめだとみんなが思い込んで、こんなに消費や投資が沈滞しちゃった。これは総理どうですか。子孫に残すのはネットでしょう。ネットはそんな多くないんですよ。いかがでしょう。
  240. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、グロス、ネット、いずれをとるかでその数字に大きな開きがあることは議員が御指摘のとおりです。そして、どちらをとれば最悪であり、どちらをとれば最善の姿と言われた引例にも、私はそれにクレームをつけるつもりはありません。  ただ、その上で、そこを強調されること、その部分については、ちょっと私、議員と意見が違うのです。  というのは、このグロスとネットで出る差というのは何だと考えてみれば、一つは、厚生年金なんかの社会保障基金の積立金を初めとする金融資産ですね。しかし、政府が保有している金融資産というもの、これは間違いなしに、その社会保障基金の積立金、あるいは特殊法人などへの出資金もあるかもしれません。あるいは外準も数えられるでしょう。これは本来、やはり取りまして財政収支の補てんに充てる性格のものではないように私は思います。それは、当然のことながら、特殊法人への出資金なんかはちょっとまた違う問題があるでしょう。しかし、社会保障基金あるいは外準、こういうものは、やはり私は財政収支の補てんに使っちゃっていい性格のものではないと思います。  また、その場合、ですから私は、海外においても、通常では国及び地方の債務残高という場合にはグロスの債務残高を言うと教わってきました。これは間違っているかどうか、私、そこは自信がありませんけれども、少なくとも、やはり社会保障基金とか外準までを数えてしまう、それは私は問題があると思います。そして、その意味では、私は、グロスの数字の方が実態をあらわしているという意味では正しいと思うのです。  議員は首を横に振られますが、私はそう思うということでありまして、これはネットの数字、グロスの数字、それぞれに意味のある数字であることは私は認めますが、その上で、私は、やはり社会保障基金あるいは外貨準備というものをカウントすることは、実態を正確に把握する上では、この場合は違うのではないだろうかという感じを持っております。
  241. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 グロスの方が、物を考える上で、特に財政状況、将来の子孫の負担を考える上で基本だというのは、私は間違いだと思ったから首を横に振ったのですが、社会保険の基金をカウントすることはいかがかという点は、総理はいい点をついておられるのだと思います。  なぜなら、これから高齢化が進んでいって、この社会保険基金は全部、二〇二五年ぐらいまででしょうかね、取り崩さなければいけないのだから、これをカウントしてはいけないよとおっしゃるなら、それはそうなんですというふうに私は答えます。そして、外準なんというのは大した額じゃないのですね。ここに表がありますが、大した額じゃない。三兆円ぐらいです。ですから、社会保険基金については議論をしなければいけないところがある。  それで、社会保険基金を除かない場合は、グロスの負債が大体四百七十兆で、金融資産は何と日本は三百九十四兆も持っているから、差し引き、たったの七十六兆円のネットの債務残高なんですよ。こんなのは小さなものなんです。対GDP比率でG7中最低。しかし、二百二十四兆円社会保障基金があるじゃないか、これは二〇二五年まで取りますんだ、だから、これはここから除けと言われると今度は三百一兆円のネットになっていきまして、これは割と大きい、高いねということになるのですね。  私が御議論申し上げたいのは、この社会保険の基金、それは二〇二五年までには取りますでしょう。しかし、最近どうなっているのですか。これ、まだふえ続けているのですよ。まだふえ続けています。減り始めるのは、二十一世紀に入ってから減り始めるのです。私は言葉じりをとらえているんじゃないのですよ。そういう意味で、一刻の猶予も許されないとか、一瞬たりともというのは間違いですよ。これは言い過ぎだったと認めていただきたい。数年間の猶予はあります、社会保障基金だってふえているのだから。これを取り崩しに入るのは随分先ですよ、まだ。いかがですか。
  242. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 言葉というのは、発するには、その前にどのような御質問があったかということにもかかわります。私は、細かいことを記憶しておりませんので、議員は速記録を見ながら御発言でありますから、どうしても取り消せと言われるなら取り消しても結構ですが、私は、今議員が言われたのは、ますます反対なんです。  まだふえているじゃないか、だから今はまだカウントしていいと。私は、社会保障基金をカウントすることに、本当に納得いかないのです。確実にこれは給付に将来回っていくわけです。今のうちに積めるものはできるだけ積んでおきたいというむしろ性格のものでありまして、これを外準まで、外準、たった三兆ですよと言われました。三兆円をたったと言う勇気はとても私にありませんけれども、私は、やはり社会保障基金をカウントするのは間違いだ、私はそう思います。  議員はそこを、首を横に振られました。ですから、議員の御意見は議員の御意見として、私は、このネットとグロスの議論をいたしますときに、社会保障基金をカウントするのは決して望ましいことではないと考えております。
  243. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 私も、社会保障基金を当てにしろと言っているのではないのです。これを除いたっていいですよと言っている。除いて三百一兆円がネット債務だと言ったっていいですよと。三百一兆円と五百兆円は全然違うのですね。三百一兆円だったら、もう一刻の猶予も許されないとい うことはないというふうに思うのですね。  そこで、私が申し上げたいことはこういうことなんですよ。今度の財革法の改正案というのは、成長率が一%以下のときにはちょっと執行停止みたいにして先送りをする。また経済が元気になって一%を上回ってきたら、再び三年間集中改革期間でがりがり歳出カットをし、赤字をふやしてはいけませんでいくんだということなんですね。これでは絶対うまくいかないですよ。  総理に申し上げたいけれども――重要閣僚が大勢いらっしゃるし、自民党の政策マンたちが大勢いらっしゃるから言いますが、だって、ちょっとお考えになってわかるじゃないですか。一%を切ったらちょっと先送りだ、ようやく一%台に乗ってきたらまた集中改革期間だといってぎゅうぎゅうやったら、いつまでたっても一%前後でふらふらしていくでしょうね。それがいけないのですよ。だから、私ども野党は、みんな三会派一緒になって、執行停止、この施行を停止する、それで、その間に新しい財政再建の枠組みを考えようと言っている。  その場合、私ども自由党は、この枠組み、全然だめだと思っているのです。最初の、例えば今世紀中の三年間は経済再建の集中期間にしなければだめだと。それから、次の二十一世紀の初頭のところで、いよいよ日本経済、民間主導型の持続的な成長軌道に乗った、税収も正常化してきたというところで、いよいよ財政構造改革を含む各般の構造改革を完結させる、そういう二段階のアプローチにしなければだめだよと。このままで、財政再建最優先で、成長率が一%台になったら、はい、また始めますといって集中改革期間、それで、また一%を切ったら執行停止だ、こんなことを繰り返していたのでは、全然日本経済の建て直しができない。  総理、お席にいない間に私が申し上げていたことは、要するに、今の財革法改正の枠組みは、成長率がちょっと下がったら執行停止で先送りをする、成長率が一%を上回ってきたら、再び三年間、財政再建の集中期間だといって歳出を縛り、赤字を縛っていく。そうしたらまた経済は落ちますよ。そうしたらまたこれ、解除しますと。こんなことを繰り返すような、こんな弾力条項の導入という改正では、日本経済はとても立ち直れない。そんなことをしてふらふらふらふら、あと十年行ったら、それこそ一刻の猶予も許されないところに来ますよ、本当に。  今なら大丈夫。今なら大丈夫。今なら、ネットの債務残高からいって大丈夫なんです。この三年間ぐらい、赤字拡大をあえて許容してでも、経済再建の集中期間にする余裕がありますよ。ですから、そのことを私は申し上げたくて、言葉じりをつかまえて言っているんじゃないのです、最初の三年間、どうですか、経済再建の集中期間にしましようよ。財政再建を初めとする構造改革の集中期間は、二十一世紀に入ってからでも大丈夫、間に合う。この赤字の残高からいって間に合います。一刻の猶予も許されないということではありません。そのことを申し上げているのであります。  いかがですか、総理。成長率がちょっと上がったら、またこれ、復活して抑え込みます、下がったらまた弾力条項です、こんなことを繰り返したら、日本経済は持続的な成長軌道になんか乗れません。いかがですか。
  244. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 恐らくこのようなやりとりの中で、その一瞬とかいっときとかいう言葉を私が使ったのだろうと思いながら、今御意見を拝聴しておりました。  フローベース、ストックベース、あるいはグロスの債務残高、ネットの債務残高、それぞれの資料を、今OECDのエコノミック・アウトルックの数字を改めて眺めておりますけれども、私は、何となく、議員の方が楽観的なのか、どっちなのか、さっきからちょっとわからなくなっているのです。私は、今もう本当に厳しいと思っておりますし、同時に、先ほど私、もしかすると外準で三兆と言ったかもしれません。三十兆です。これ、大変ちょっと失礼しました。  しかし、社会保障基金の積立金などを抜いたら、それ、三百ちょっとだよ、大したことないよと。私は、そうではない、三百ちょっとという数字は大変な数字だと思うのです。それを議員は非常にその部分は明るく見ておられる。私はその数字自体が大変厳しいものだと思っております。その点が、残念ながら、認識の違いなのか、考え方の違いなのか。恐らくそういうやりとりの中でいっときとか一瞬とかいう言葉を使ったんだろうなと、今思っておりました。
  245. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 時間も迫ってまいりましたので、まとめて申しますけれども、三百兆だって、それはかなり多い額ですよ。しかし、五百兆よりは大分余裕がある。  それよりも何よりも、総理、今失業率が三・九に上がってきた。学校を卒業した直後の男子、十五歳から二十四歳の失業率は一〇%を超えてしまった。十人いれば一人。こんなこと、戦後ないですよ。こういう危機的状況経済が陥っていても、なおかつ三百兆に余裕がないから財政構造改革最優先なんですか。これはおかしいですよ。経済政策というのは国民生活のためにあるのですから、失業というのは国民生活を根本から揺さぶることですから、こういう危機的状況のときに一体どっちが大事だと思っているのですか総理は、というのが私の言いたいことです。  そして、この財政構造改革最優先というのは実は大変な罪つくりの政策であって、八〇年代の後半に一回やりました。財政改革最優先でやりました。そのしわは、あのときも金融政策に寄った。そのために、金融政策は内需を拡大し黒字を縮小するためにひとり奮闘した。その結果……
  246. 中川秀直

    中川委員長 鈴木君に申します。質疑時間は終了しました。
  247. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 はい、わかりました。すぐ終わります。  長期間、低金利をやってバブルを発生させた。そのバブルの崩壊が今日の苦しみの始まりでしょう。今度は日本経済が腰抜かしてしまっているから、これだけ長期の超低金利政策をやっても、バブルは発生しない。そのかわりに、米国のバブル、ニューヨーク・マーケットのバブルの一因になっているとすると、総理、これはえらいことですよ。今度こっちが立ち直ったときに、向こうがバブルの崩壊を起こします。
  248. 中川秀直

    中川委員長 再度言います。質疑時間は終了しました。
  249. 鈴木淑夫

    鈴木(淑)委員 世界じゅうから日本の財政再建最優先の政策を批判される、こういう局面に来ることを私は大変心配しております。  これで結論とさせていただきます。もし、総理お答えがございましたら、どうぞ。
  250. 中川秀直

    中川委員長 これにて鈴木君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木憲昭君。
  251. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。先週に引き続きまして、質問をさせていただきます。  初めに、先週、私の質問に対しまして、総理から明確な答弁がなかった問題からお聞きをしたいと思うのです。  財革法では、一切の聖域なしということで一律カットということでありましたけれども、今回、公共投資関係費というのはプラス二五%、当初は七・六%のマイナスでありましたが、大きく拡大をしました。私はこの数字を挙げまして、総理に、公共投資を抑制するという方針は転換したとみなしてよろしいでしょうかとお聞きをいたしましたけれども、はっきりした答弁がございませんでしたので、改めてお聞きをしたいと思います。  公共投資抑制という方針は、これで転換したというふうに理解してよろしいですね。
  252. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今財政構造改革法の改正案の御審議を願っておりますけれども、その中にございますもの、それは明年度の社会保障のキャップを外すことと、同時に弾力条項の挿入をお願いを申し上げております。  そして、今、その御審議とあわせながら、我が国の景気回復についての努力の御議論が並行しております。その中で、私どもが公共投資の効果を最大限に発揮してもらいたいと考えており、社会資本整備についてそれなりの役割を果たしてもらおうとしている、それはそのとおりです。
  253. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 それはそのとおりとおっしゃいました。  公共事業抑制というところから拡大というところに転換をしたということは、これはお認めになったということでよろしいでしょうか。
  254. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 財政構造改革法は厳として存在をいたしております。そして、その改正をお願いをしておりますのは、弾力条項の部分と社会保障の部分、正確に申し上げますならあと期限というものはありますけれども、お願いをしておりますのはそういう点です。  一方、現在、景気回復のための努力を払う中に社会資本整備があることは事実ですと申し上げました。
  255. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 転換したかどうかとお聞きをしているわけです。(橋本内閣総理大臣「だから、今答えた」と呼ぶ)  補正で二五%ふえたことになるわけですね。これはもうだれが考えたって、マイナス七%からプラス二五%ですから、抑制から拡大へということはもう事実でありまして、この事実はお認めになるわけですね。
  256. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 繰り返して申し上げますが、財政構造改革法の改正案を御審議いただいております内容は、先ほど申し上げたとおりです。そして、景気回復のために今努力をしている、その中に社会資本整備があることも、その効果というものをお考えいただければ御理解がいただけるであろうと思います。
  257. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 景気回復のために二五%増という形になっているわけでありまして、公共投資を、これまでは抑制という立場であったのが大幅に拡大というわけでありますから、この部分は明確に、聖域という言葉が前にありましたが、聖域化されたということになると私は思うわけでございます。  財政構造改革の骨格は維持しているというふうにこれまでも総理はおっしゃいました。しかし、私は、社会保障の抑制という点で申しますと、これは悪い骨格が生きているのではないか。実際、社会保障は、自然増で今年度八千億円の増が見込まれているわけですけれども、そのりち三千億円しか認められない。つまり、五千億円がカットされているわけでございます。補正ではそれは復活をしておりません。  ということは、公共事業の場合はマイナスからプラス二五%へと大きく転換をしたけれども、社会保障の側は抑制という基本は変わらない。公共投資はプラスになるが、社会保障は抑制。その二つはなぜ違うのか、社会保障はなぜ抑えたままなのか、その理由をお聞きしたいと思います。     〔委員長退席、村井委員長代理着席〕
  258. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  今回の補正予算におきましては、例えば社会保障関係費におきましても景気対策に資する内容といたしまして四千五百億、あるいは文教及び科学技術振興費にいたしましても五千億、その他、中小企業対策費につきましても、中小企業対策の場合は当初予算が千八百五十八億でございますが、追加額がそれを上回る二千六百二十一億、それぞれ景気対策の内容を含む補正予算でございますので、公共事業以外の各般の施策におきましても、それ相応の追加が行われているところでございます。
  259. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 四千五百億社会保障を積み増ししたとおっしゃいましたが、先週の厚生大臣の答弁でも、五千億円のカットというのは、「もとに戻したということではありません。」というふうにお答えになっているわけですね。つまり、今年度のキャップはそのままであります。新たに四千五百億円がつけ加わったと言いますけれども、これは中身が、性格が違うわけでございます。カットしたこの部分については戻っていないわけです。  ですから、公共投資は二五%ふやしたけれども、社会保障を抑える形になっている。なぜ社会保障だけ抑えるのか、この質問に対しては、今答弁は答えておりませんので、明確に答えていただきたい。
  260. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 現行のままで、現状維持でいくと、何ら重点化、効率化を図れない。将来、社会保障ばかりの予算で、ほかの省庁の予算はどうなるのか。全体の国民負担率を五〇%を超えないという大きな前提で取り組んでおりますから、これからの給付と負担の均衡を図りながら、社会保障関係費だといっても、すべてふやせばいいというものじゃない。効率化、重点化を図らなければいかぬということで、新たな補正予算を組むということでありますから、これからの時代に即した予算というものはふやしてもらいたい、そして今後見直ししなければいけない制度というものはできるだけ重点化、効率化を図っていくということであります。
  261. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 公共投資は二五%もふやしたけれども、社会保障は抑制をした基本は維持されているわけでありまして、なぜそうなのかと聞いているのですよ。なぜそういうアンバランスな状況を進めるのかという点を聞いているわけであります。その点についての答えにはなっていないですね。
  262. 瓦力

    ○瓦国務大臣 お答えいたします。  先般もお答えをいたしましたが、公共事業の一面におきましては、景気誘発の力が一方においてございます。今、景気対策を進めるという観点におきまして、予算が補正予算に盛り込まれたところでありまして、私どもは、その使命を全うしたい、こう考えておるわけでありまして、福祉における問題と、また一方におきまして公共施設における投資につきまして、委員は御理解をいただいておると思うわけでございますが、改めて私からも今申し上げさせていただきます。
  263. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私が聞いたのは、公共事業が二五%も伸びているのに、社会保障は伸びていない。なぜ伸びないのか、なぜこのような差を設けるのかと質問しているのに、それについての答弁はございません。結局、私が聞いていることに答えられないということになるのじゃありませんか。それぞれの説明はしたけれども、なぜ公共投資だけふやして社会保障がふえないのか、ふやさないのか、その理由の説明には一切なっておりません。  私は、こういう事実を見て、やはり今回の財革法、財政構造改革法という法律の性格が非常にはっきり出ていると思う。つまり、生活関連、社会保障、そういう分野については徹底して抑えつけるけれども、しかし、公共投資についてはともかく拡大する、そういう性格がはっきり出ている。  つまり、生活を抑制するという点が直らない限り、本当の景気対策にはならないと思います。そういう意味で、私は、このような、もう破綻したような財政構造改革法は撤廃する、そして本来の国民の立場に立った景気対策に切りかえるべきだということを主張したいと思うのです。  次に問題にしたいのは、このように公共投資を補正予算でどんどん積み上げていくというやり方が財政の悪化に一層拍車をかけることになるわけでございます。  財政制度審議会の財政構造改革白書、これは次のように述べております。   ケインズ的な財政政策は、成長への一時のカ  ンフル剤としての効果は否定しえないとして  も、赤字の累積という副作用も伴いがちです。  経済成長への近道のつもりが、却って回り道を  することにもなりうるのです。このようにはっきり財政制度審議会が書いているわけでございます。  総理、このようなやり方というのは、財政制度審議会も指摘しているように、つまり、公共事業をどんどん積み増しして景気対策をやるというやり方が、かえってマイナス、副作用が大きい、こういう指摘をされているわけですけれども、この指摘についてはどのようにお考えでしょうか。
  264. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず、その前に、議員は、公共事業費をふやしてほかのものをふやしていないというかのごとき言い回しをされましたが、先ほど主計局長が御答弁を申し上げましたように、他の項目も予算はふやされているという事実は御認識をいただきたいと思います。  その上で、公共事業というものを、どういう位置づけを議員がなさるのかわかりません、しかし、将来を考えましたときにも、一定のものはもちろん国民の暮らしを安定させていく上で必要なものでありますが、今、この景気回復という私どもの目標の中で、有効な手段としてこれを新たな分野に活用しようとしていることも御理解をいただきたいと思います。
  265. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 他の部分もふえているとおっしゃいました。多少ふえておりますが、しかし、今回の十六兆円を超える最大の景気対策と言われている、その中で七・七兆が公共事業、こういう内容になっているわけでありますから、これが最大の拡大率になっておりますから、全体としての比重は極めて大きいわけでございます。つまり、公共事業をどんどん積み増しする従来のやり方を今回も繰り返していると言わざるを得ない。  このようなやり方は、例えば財政制度審議会の財政構造改革特別部会長でありました石弘光教授が、「今再び公共事業を拡大し、後世に莫大なツケを先送りするという愚行を繰り返してはならない。」四月十一日号の週刊東洋経済、ここでもはっきりと指摘をしているわけでございます。  総理自身も、昨年の十月十七日に衆議院本会議で、我が国では、バブル崩壊後の経済情勢に対応するため、景気対策として大型の補正予算を累次にわたって編成をしてまいりましたが、そのためもありまして、公債依存度が急増するなど、現在の財政状況が危機的な状況に立ち至っていると述べ、続けて、今後は、安易に財政に依存せず、民間需要中心の自律的成長の達成を図っていくことが基本であると考えておりますと述べておられました。  景気対策として公共事業中心の大型補正を組むというのは、半年前の総理の本会議での答弁、この立場に明確に反しているということになると思いますが、これはいかがでしょう。
  266. 尾身幸次

    ○尾身国務大臣 このたびの総合経済対策におきまして、公共事業、公共事業とおっしゃいますが、私どもは、社会資本の整備というふうに理解をしているわけでございまして、しかも、このたびの対策の内容を詳細にごらんになっていただきますと、例えば環境、エネルギーあるいは将来の発展基盤となります情報通信の高度化、科学技術の振興、あるいは少子・高齢化に対応した福祉、医療、教育、物流等でございまして、将来の民間活力を生かす日本経済活性化のためにプラスになるようなところに重点的に資金を投入をいたしまして、いわゆる需要面だけではなしに、供給サイドにおきましても、二十一世紀に向かって日本経済の体質強化を図っている、そういうところを重点にしているという点につきましてはぜひ御理解をいただきたいと思います。
  267. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私の質問に全然答えていないじゃないですか。私が質問したのは、総理国会の本会議、衆議院の本会議で十月十七日に、景気対策として大型の補正を累次にわたって編成をしたために、現在の財政状況が危機的な状況に陥った、今後は、安易に財政に依存せずに民間需要中心の成長を図っていきたい、こうおっしゃったわけです。しかし、またまた公共事業中心の大型補正を組んだということは、今御紹介しましたようなこの立場から見て、明確に反するのではありませんかと聞いているわけです。尾身長官の回答は全然違う。公共事業の中身がどうのこうのと聞いているんじゃないんです。
  268. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 尾身長官は尾身長官として誠心誠意、議員お答えをしていたのでありまして、そんなに目を三角にしてにらみつけたりしないでいただきたいのです。  そして、本会議で、累次の経済対策というものが下支えの効果はあったけれども、後に残す影響も大きかった、それは、確かに私はそういうふうに申し上げました。その上で、なお現在の経済情勢の中で、新たな社会資本の整備をすることを一方では将来のために進めながら景気回復に資していきたい、今そのように考えているわけです。  そして、先ほど来の委員の御意見とここが少しどうも食い違っちゃうみたいなんですけれども、公共事業という言葉に対して非常に何かウエートをかけて、悪いイメージと言ってはいけないかもしれませんけれども、余りよくないイメージを強調されているように感じて仕方がありません。しかし、その中でやはり、例えばダイオキシンあるいは環境ホルモン、新エネルギー、こうしたものに対する投資をしていこうという努力、あるいは福祉、医療、教育といった国民の暮らしに密着している分野、こうした分野に対する事業というものも、私は、きちんと認めていただくべきものは認めていただきたいと思います。
  269. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今度の補正で、内容については若干の違いを今説明されましたが、結局、このように七・七兆の社会資本整備とおっしゃいました。それが中心になりまして補正が組まれる。こうなりますと、結果として、九八年度の国債発行額は二十一・七兆円。これは過去最高でありました九六年度実績に次ぐ規模となるわけでございます。公債依存度は二〇%から二六・三%。補正後の公債残高は二百八十五兆円。ですから、今まで禁じ手として否定されたこのようなやり方をまた繰り返して、同じように財政悪化に拍車をかけていると言わざるを得ないのです。  私は、景気対策ということであれば、今大事なのは、消費をどれだけ拡大するかという点にウエートを置いた政策の転換ということをやはり図る必要がある、そこに重点を置くべきだということをぜひ理解をしていただきたいと思います。  そういう点で、次に減税問題についてお聞きをしたいわけですが、今国民の中では減税をめぐってさまざまな意見が出ております。例えば、朝日新聞の三月十八日付の投書でありますけれども、このような投書が出ております。   私は今、減税分を蓄えに回しています。いくら景気浮揚に効果的でも、個人消費拡大に参加する気は毛頭ありません。   それは底の見えない負担増に備えるためです。医療費本人負担が二割、消費税が五%では、減税も焼け石に水。二〇〇〇年からは介護保険、年金支給は「ない袖(そで)は振れない」。一体どこまでお金がいるようになるか、見当もつきません。   だから、減税は一時的であろうと継続的であろうと、ありがたく貯金させていただきます。   負担の底が見えるようになったら、はじめて余剰分を取りまして有意義な消費に回すことにしています。私が豊かさを求めて消費し始めるのは、こうなってからです。 私は、ここに庶民の心情がよくあらわれていると思います。  総理は、この投書、こういう心情に対して、どのように受けとめ、どのようにお答えになりますか。
  270. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず、今伺いながら感じたことを率直に申し上げてよければ、あなたの言われる庶民という、一体その方々はどういう方々なんだろう。私が今感じましたのは、むしろ、私の知る人々の中にも、貯金をする余力はない。毎日の暮らし、家賃、そうした負担で貯金をする余力はないという方たちが結構あります。学校時代の後輩、いろいろな機会にそういうケースもあります。あるいは、まさに減税と言われて喜んで、気がついたら、おれ、所得税払うほどの収入を取っていなかったと言われたこともあります。  それだけに、瞬間、そういうケースがよぎり、議員の言われるその方は、どのぐらいの年収をお持ちの、あるいは資産をお持ちの方なんだろうなと思いました。
  271. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私が紹介したのは三十九歳の会社員の方でございますが、普通のサラリーマンだと思います。  今、庶民とはどういう方かとおっしゃいました。総理御存じの方で、貯金をする余力もない方がいらっしゃるとおっしゃいました。昨年の消費税の引き上げ、医療の負担増、そういう点を考えますと、貯金をする余力もない人に対してあれだけの負担増を強行したということを一体どのように考えておられるのかと逆にお聞きをしたいわけでございます。  私は、減税という問題を考える場合には、九兆円の負担増で消費マインドが極めて冷たい、冷え込んでいる、そういう状況の中で、またこれからの社会保障などの改悪によって負担増がどれほど大きくなるか、そういう点で将来不安を持っておられる方々、こういう方々のその不安を解消するということ、そして現実にそういう方々の購買力を引き上げる手だてを打つということ、これが一番肝心の景気対策のかぎにならなければならないというふうに思うわけでございます。  政府がこれからやろうとしている二兆円の減税、ことし、来年合わせて四兆円とおっしゃいますが、二年限りの時限的な所得減税でございます。これは期限が切れますと、あとは事実上の増税効果が生まれるわけでございます。これは当委員会で他の委員も指摘をされているところでございますが、将来不安が強まって消費マインドが冷え込んでいるというそういう中で、増税が約束されているような一時的な減税では、これはなかなか消費に回らない、貯蓄に回ってしまうということは、これは当然だと思うのです。  例えば、ここに企画庁と関連の深い日本リサーチ総合研究所というところが五月十五日に発表しました報告書がございます。生活不安度指数というものです。これは「再び悪化した消費者心理 萎縮状態が続く消費意欲」、こういう題がついております。ここでは次のように述べているわけです。「前回二月と今回の調査結果をみる限り、この間に実施されている九七年度補正予算による二兆円の特別減税は、消費者心理の改善に期待されたほどの効果をあげなかったようである。」このように結論が書かれているわけでございます。  確かに、総合経済対策のプレゼンテーション、政府がお示しになったこの中でも、「直ちに有効需要を創出するための減税を行う。個人消費刺激のための個人所得課税の大型減税(総額四兆円)」これを行うというふうに書いておりまして、個人消費を刺激するのが目的だ、このように書かれているわけであります。しかし、一時的な減税では、当然その期限が切れれば増税に転化するわけでありますから、なかなか消費拡大の効果が薄いわけでございます。  したがって、私は、個人消費を刺激するための所得減税と言うならば、一時的なものではなくて恒久的な減税が明らかに効果があるというふうに思いますけれども、その点はいかがでしょうか。
  272. 松永光

    ○松永国務大臣 景気対策としての減税は恒久減税としてやれというお話でございますけれども、しかし恒久減税をやる場合には、当然のことながら恒久的な財源を必要とするわけでありまして、これはそもそもの所得税のあり方の問題として、さまざまな点から検討を加えて結論を出さなければならぬ問題であります。  もし恒久減税をやる財源として特例公債の発行にすべてを頼るということになりますというと、賢い消費者ならば、いずれその増額発行された特例公債の利払い、元本償還のために負担増が来るであろうというふうに予測いたします。それはまさに委員が今おっしゃった特別減税と同じように、あるいはそれ以上に、もし将来の負担増ということで消費が抑制されるというのであれば同じ結果になるのじゃないだろうか、そういう点を考えて、この恒久減税というものは常に恒久財源というのを考えながら議論をしなければならぬ問題だろう、こういうふうに思います。  そこで、問題は、特例公債発行という形での財源じゃなくして、別の財源をどうすべきかというのが十分考えられなければならぬ問題だろうというふうに思います。その別の財源というのは、歳出構造の改革を徹底せしめていってどれだけ余裕が出てくるかという問題、それからまた景気の浮揚による自然増収がどれだけ出てくるか、こういつたいろいろな面からの検討をした上で恒久減税というものは考えていかなければならぬというふうに思うわけです。     〔村井委員長代理退席、委員長着席〕
  273. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 財源は、確かに歳出構造についてむだを省くというようなことを当然やるべきだと思うのですね。  私がお聞きしましたのは、一時的な減税ではなくて恒久減税をやる方が消費拡大効果がある、こういうことをお認めになりませんかとお聞きしたわけです。そういう点についてはお答えになっていないのじゃないですか。
  274. 松永光

    ○松永国務大臣 今回の特別減税は、既に二月、三月で実施をした特別減税もそうでございましたが、一年のうち十二分の一ずつ減税していくのじゃなくして、一時期に集中的に減税の効果を納税者に及ぼすという特色も実はあるわけであります。そのことはまた、消費の拡大に少なからず貢献するというふうに私は思います。
  275. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 例えば、日経の社説でこういうのがあります。「一時的な特別減税では消費活動は刺激されないことを端的に物語っている。消費は一時的な所得ではなく、将来にわたっても獲得できると予想される恒常的な所得によって決まるというのは、どの経済学の教科書にも書いてある。」常識だ、こう言っているわけですね。  それだけじゃなくて、自民党の幹部の方々からも、恒久減税を当然やるべきだ、こういうことが次々と発言があります。例えば朝日新聞四月十八日、これによりますと、自民党の行政改革推進本部長の武藤嘉文氏はこのように言っておるわけです。「税率構造を変える恒久減税ではない一時的な特別減税では、国民は『一、二年で減税は消えて元に戻るんだろう』と将来を心配して金を使わない。所得税なら恒久減税でないと消費増につながらない」「思い切って恒久減税を検討すべきだ。」このように言っているわけです。  私は、自民党の中にもこういう意見があるというのは、大変おもしろく新聞を読ませていただきました。したがって、幹部も認めざるを得ないように、一時的な減税よりも恒久減税の方が効果があるということはもはや明らかであります。そういう点はお認めになりませんか、効果について。
  276. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど答弁の繰り返しになるような形で恐縮ですが……(佐々木(憲)委員「どちらが効果があるか」と呼ぶ)いや、私は、先ほども言いましたけれども特別減税をある時期に集中的にどんとやるという効果は、私はあるものと思っております。
  277. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 それでは、例えば、今百貨店の売り上げというのは大変落ち込んでおります。その点について、日本百貨店協会の会長、伊勢丹の社長の小柴さんが次のように言っている。二兆円の特別減税は消費につながりませんかと聞かれまして、ほとんど効果はない、九九年は追加減税がなくなり、再び二兆円規模に戻る、先が見えている減税では多くを期待できないだろう、九兆円の国民負担を強いるのは性急過ぎた、こういうこともおっしゃっているわけであります。  ですから、このように、今の一時的減税よりも恒久減税にした方が効果があるというのは、一般的な国民の常識でもあり、自民党のかなりの方々もそうだとおっしゃっているわけでありますから、こういう方向に踏み切るというのが当然のことじゃありませんか。なぜそれをやらないんでしょうか。
  278. 松永光

    ○松永国務大臣 似たような答弁になって恐縮ですが、恒久財源を示すことなく減税議論をするのは必ずしも適切じゃないというふうに私は思うのです。それからもう一つは、恒久減税をやる場合には、そもそも日本の所得税の負担割合というものがどういう状況にあるかということも考えた上での議論でなければならぬというふうに思います。  なお、私が直接聞いたところでは、伊勢丹その他、若い女性の衣料品等は、先月に比べると、四月の方はある程度伸びてきたというふうな話を聞いております。要するに、若者向きについて少し売り上げが伸びてきたという話は聞いております。
  279. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 恒久減税には財源が必要である。だから、私どもは財源問題についても提起をしているわけでありまして、公共投資などの浪費的な部分については徹底してメスを入れる、予算全体の構造について再検討していくということを提起しているわけでございます。  それから、四月の百貨店の話、売り上げがふえたと言いますけれども、昨年の駆け込み需要の反動減というのが四月に出たわけですよ。それに比べれば、前年比でふえる、それは当たり前であります。それから、三月に比べて若干ふえたと言ったって、全体としては、大きく落ち込んだという水準は回復されておりません。  ですから、大事なのは、そういう個人消費をどのように刺激していくか、そこが必要であって、したがって、もともとこういう一時的所得減税というのは限界があるわけで、しかもこの所得税を、先ほどもおっしゃっていましたように、納めていない方には減税は当然行かないわけで、高齢者や低所得者には恩恵が及ばない。だから、減税を受ける人の場合も、一定部分がこれは貯蓄に回るという状況ですので、やはりこのような一時的な減税ではなくて恒久的な減税の方が、所得税の減税ということを行う場合にはそちらの方が効果があるということはもう明らかでございます。  そして、もっと効果がある消費拡大策、こういうことになれば、当然、消費税の減税、こういうことになるわけであります。これは、その効果はすべての国民に及ぶ。しかも、消費に直結する税制ですから、消費をするたびにその効果が上がる。また、低所得者の購買力を引き上げる。低所得者の場合には、購買力は大変今深刻な状況でありまして、消費性向が高いわけでありますから、そこを引き上げる効果があるということです。また、消費の落ち込みによって今中小業者が大変な状況にあります。そういう中小業者の営業を助ける、そういう点でも抜群の効果があるわけでありまして、当然、消費拡大ということにウエートを置くということであるならば、これは消費税の減税が一番効果があると思いますけれども、この点はお認めになりませんか。
  280. 松永光

    ○松永国務大臣 まず、消費税の減税は、消費をしない人には効果はないわけです。もう一つは、所得税を納めていない人に特別減税の効果が及ばないと同じように、それは恒久減税でも所得税を納めていない人には効果は行かないわけであります。
  281. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 全く答えにもなっていない答えですが、それではお聞きしましょう。消費をしない人とはどんな人ですか。消費しない人が世の中にいますか。
  282. 松永光

    ○松永国務大臣 正直に申し上げまして、消費をたくさんする人には効果が及ぶでしょう。しかし、消費が比較的少ない人には消費税減税の効果は余り及ばないということを申し上げたわけであります。消費というよりも買わない人という意味なんですよ、それは厳密に言えば。  それからまた、もう一つ申し上げたいことは、消費税を二%上げたことについて非常な批判をしていらっしゃるわけでありますが、実は、この消費税の二%引き上げというのは、地方消費税の一%分を含めての二%であるわけですけれども、その前に所得税減税を先行しておるわけでありまして、それに見合うものとしての引き上げであったわけであります。なぜそうしたか。少子・高齢化社会を展望して、その時代に適応できるような税制にすべしという考え方のもとに法律ができ、そして実行に移された、こういう経過であるということをひとつ思い出していただきたいと思います。
  283. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 消費しない人というのはいないはずであります。消費の少ない人、例えば低所得者の方々こそ消費性向が高いんですから、政府の統計で明らかでしょう。だから、そういう方々に減税効果が及ぶ消費税減税こそ一番効果があると、当たり前のことを私は言っているだけなんです。それをお認めにならないのかどうかと聞いているわけです。  今、先行減税に対する見返りだ、こういうふうにおっしゃいましたが、しかし、サラリーマンは差し引き、所得税の減税、消費税増税で八割がプラスマイナスで増税になっているんですよ。全然見返りになっていないじゃないですか。しかも、高齢化社会のためだというふうにおっしゃいますけれども、例えば消費税を導入した八九年度から九六年度までの国の消費税収は三十一兆一千七百八十一億円、これに対して、ゴールドプランで国が上積みした予算額というのは、九〇年度から九六年度までの合計で一兆八千八百十三億円、消費税の税収に対してお年寄りのために新たに使われた金額はわずか六%にすぎない。今後の展望だって明確に示されていないじゃありませんか。少子・高齢化社会のためというのもこれは理屈が通らない。  ですから、やはり景気回復の最大の決め手、最後の決め手と言ってもいい、これは消費税の減税にあるというふうに思うわけです。もちろん、我々は消費税の廃止を目指しておりますけれども、少なくとも今直ちに消費税を三%に戻す、これが当然景気対策としてとるべき手段だというふうに思いますけれども大蔵大臣は、消費税の税率引き下げが消費拡大に直結するということはお認めになりますね。
  284. 松永光

    ○松永国務大臣 これも委員の御希望に沿う答弁にならないことを恐縮に存じますけれども、例えば、これはあくまでも例えばの話ですよ、ある時期から、消費税を少し引き下げますという話が出たその段階から、買い控えが相当進むのじゃないか、そのことは景気にとって大きなマイナスになるという点があるということを指摘しておきたいわけであります。
  285. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今のは全然反論にも何にもなっていないわけで、消費拡大効果があるのはもう厳然としているのですよ。消費税の減税をやれば駆け込みの買い控えが起きる、こう言うけれども、すぐにやればそんな心配はないし、また、消費税を減税したら消費はどっとふえるわけなんですよ。だから、もうそんなのは理屈にもならない理屈で、消費税の減税について否定してもこれは説得力はないと思うのです。景気回復の決め手というのは、やはり消費税減税方向に踏み切るということが極めて重要だというふうに私は今の議論をしてみて思います。  宮澤元首相はアメリカで、消費税を三%にしたら政権が崩壊するなどと言ったと報道されておりますけれども、橋本内閣が続く限り消費税の減税はできないということであれば、これは直ちに総理に退陣を願いまして、あるいは衆議院を解散して国民に信を問うて、消費税三%ができる内閣にかえるというのは、これはもう当然のことでございます。  私は、最後に、消費税の三%への減税を実行できる内閣をつくる、そういう方向を目指してさらに奮闘するということをここで宣言をいたしまして、もう時間が参りましたので、質問を終わらせていただきます。ありがとうございました。
  286. 中川秀直

    中川委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、秋葉忠利君。
  287. 秋葉忠利

    秋葉委員 サミット大変御苦労さまでした。お戻りになってまたすぐ、恐らく時差に対する適応が、どちらからどちらかかわかりませんが、まだおできになっていないかもしれないような状況で長時間頑張られるというのはやはり大変なことだと思います。だからといって、別に質問の内容を易しくするという意味ではありませんが、ともかく肉体的にも大変だと思いますので、その中でなお頑張っていただきたいと思います。  それから、これは質問通告を必ずしも正確にはしていないのですが、きょうの午後、自衛隊の輸送機がシンガポールの方に飛び立つという決定がなされましたので、それに関連して、総合経済対策の中にもアジアの経済の問題が入っておりますので、関連してインドネシアの情勢と邦人の保護、救出について何点か質問させていただきますのでその点、通告がおくれていますけれども、対処していただければ大変ありがたいと思います。  まず最初に、今回の財革法の改正等ですが、非常に難しい状況の中での財革法改正という事態になりました。いろいろと反省をすべき点というのはあると私は思います。  その中で、一つやはり日本社会全体の持っている傾向というふうに考えたらいいと思うのですが、それに対して政治の場でどういう対処をしていけばいいのか、そのあたります総理のお考えを伺いたいと思うのですが、例えば、私たちが国会の中あるいは日本社会全体を含めて財政再建の議論をしていたときには、もう財政再建一本になってしまった。財政再建以上に大事な問題があるのじゃないかというような少数意見があったとしても、なかなかマスコミには取り上げられないということで、何か熱に浮かされたような議論になってしまう。どうも議論が上滑りする傾向がある。  それは、ただ単に財政再建の面だけではなくて、数年前にやりました政治改革。これも小選挙区制度を導入するということにすりかえられてしまいましたけれども、その時点でも、ともかく政治改革と言わないとマスコミに取り上げられない。政治改革の中でも一選挙制度を変えると言わないと、マスコミからは守旧派と呼ばれて全く無視をされる、そういう状況になりました。あるいは、もう一つ例を挙げるとすれば、規制緩和というのがありまして、これも規制緩和と言わないと全くマスコミにも相手にされないし、社会的にも、何か学者のレベルでもなかなか主張がきちんとできない、そういった傾向があるように思います。  そういった中で、財政再建、確かに大事な問題です。今申し上げた問題一つ一つ、大事な問題なんですけれども国会の中でも、例えば政治改革の場合にも、国会議員の中にも、熱に浮かされてしまっていた、冷めてみるとやはり反省することしきりであるというような発言をしている方もいらっしゃいます。仮にこれが日本社会全体の傾向であるとすると、当然マスコミを含めてですけれども、そういう社会の中で、しかしながら二十一世紀をにらんで、重要な問題については冷静な議論を重ねた上できちんとした結論を出していかなくてはいけない。  そういう点において、熱しやすく冷めやすいという言葉が正しいのかどうかわかりませんけれども、政治の立場からこういった、一つの何かこれが大事だという問題提起がされると、日本じゅうがもうその方向に走ってしまって、それに対するアンチテーゼとして冷静な分析ができないような雰囲気になってしまう。一億総翼賛体制と言ったらいいのですか、そういうことなのかもしれませんが、こういうところに対しての政治的な歯どめをやはり我々は考えないと、二十一世紀の政治を正常なものにしていけない、そんな気がいたします。  特に、今回の財革法改正に関連して私はそういった思いを持っているのですが、このことについて、例えば世界的な視野で、サミットでさまざまな議論をされてきた橋本総理に、まずこういつた問題についてどういうお考えをお持ちになっているのか。これまでの経験でも結構だと思いますし、今後の方針でもいいのですが、お考えをまずお聞かせいただきたいと思います。お疲れのところ申しわけありませんが。
  288. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは大変難しいテーマです。そして確かに、私ども過去を振り返りましたとき、そのときそのとき大変な勢いで、その問題がすべてのような感じの論議が行われた時期がございました。そして、それはしばしば、例えば国論の分裂にまでつながるような騒ぎになったり、あるいは、まさに小選挙区制を口にしない者は善良なる政治家にあらずのような雰囲気になったり、さまざまな局面があったと思います。  ただ、私はやはり、実はそれは日本人だけじゃないと思います。そして、国際社会でも同じようなものはありますし、ある場合私どもが気をつけなければならないのは、そうした習性を利用して仮想の敵をつくって問題をそらすといった手法がとられることだってないとは言えません。  ですから、私は、逆に、これは議員に対して正確な答えになるかどうかわからないのですが、今、三党連立という姿をしばらくの期間お互いに体験をしてきてみて、こういう中での議論というのは比較的冷静な議論ができるのじゃないのかな、そういう感じを何回か持ちました。  率直に申して、私どもが必ずしもうれしいと思わない課題に他の二党の論議が集中して、我々が妥協してきたこともあります。逆に、私どもはこう考えるということで、御党を初めとして他党に協力を求めたこともあります。私は、こういう形というのは割合にクールな議論ができるな、いろいろな意味で試行錯誤を繰り返してきている中の一つの体験一そういう印象を持ってまいりました。  私は、あなたも大好きですから、そして議論を楽しみにしておりますから、そういうことが大事ではないかと本当に思います。
  289. 秋葉忠利

    秋葉委員 連立政権の中でいいことの一つは、おっしゃるように、非常に率直な議論が連立の中では多くの局面でできるということは確かにあると思います。反面、それが国会審議に必ずしも反映されないわけですから、国会審議が不活発になると言うと野党の皆さんには怒られるかもしれませんが、そんな傾向さえあったというところがあると思います。  今回の総合経済対策についても、与党の中でさまざまな議論をいたしました。結論としては、三党とも一〇〇%満足しているという結果にはなっておりません。妥協の産物だと思います。その中で社民党が特に力を入れて、ともかく景気の面で最重要視しなければいけないのだということを強調した点が何点かありますけれども、その一つが雇用の問題です。やはり社民党は、働く皆さんの立場で景気対策に取り組む。  今回の景気の問題も、余りにも景気、景気ということで、先ほど申し上げましたように、景気の悪さだけが強調されて、それに対する別の面の問題提起がなかなかできない。例えば、環境面から考えると、景気が悪いということは必ずしも一〇〇%悪いということにはならないのですけれども、そういった声も消されてしまうほど景気が悪いという状況なのか、あるいは日本社会の傾向なのか、その辺、判断に迷うところですが、しかしながら、景気の面では、例えば中年の男性が家に帰って、家族から、お父さんの仕事は大丈夫なのと言われるような状況になってきてしまっている。それは、山一とかさまざまなほかの問題があったことも事実ですけれども、景気の面で雇用が大きな問題になってしまっている。そこを何とか立て直すことで、お金の面では、これは循環が少しおかしいかもしれないけれども、しかし最低限仕事だけは何とかあるというところから始めなくてはいけないのじゃないか、それほどひどい状況になっているのだ、そういう声を私たちはあちこちから伺いました。  それで、景気対策について特に力を入れたつもりなんですけれども、そこで労働大臣に伺いたいのですが、労働問題、非常に悪い。特に失業率にそれが端的にあらわれておりますけれども、現在の雇用の問題についての認識と、特に総合経済対策の中における労働省としての今後の対策と見通し、簡単でいいですからまとめていただきたいと思います。
  290. 伊吹文明

    ○伊吹国務大臣 突然のお尋ねでございますので十分なお答えができるかどうかわかりませんが、まず、現在の失業率あるいは有効求人倍率から見て、現在の雇用状況はやはり非常に厳しいと私どもは認識をいたしております。  その中で、総合経済対策をつくります際には、社民党の御示唆もございまして「雇用対策」という一つの項目を起こしました。  その中にございますのは、労働省として実行できます、例えば雇用調整助成金、これは、大型倒産が起こった場合あるいは雇用調整が行われている場合に、人を解雇せずに引き続き職場にとまってもらうための助成金ですが、これを上積みするとか、あるいは従来の待ちの姿勢で求人を待っているのじゃなくて、職安の諸君が積極的に企業をお訪ねして求人を探してくるとか、あるいはまた新しく雇用創出をされるベンチャーの方々に対する雇用面の助成とか、こういうものを約五百億国会回の補正予算の中に計上したわけでございます。  したがいまして、労働省分といたしましては、現在国会提出いたしております補正予算あるいはまた規制緩和等の関連法案を一刻も早く通していただくということを期待しているわけですが、全体として言えば、消費が落ち込む、消費が落ち込めば小売屋さんは卸に注文を出さない、卸はメーカーに出さない、メーカーはそれを見て設備投資を抑制しながら人員調整をするということですから、消費が落ち込んでいる最大の原因、これはやはり将来不安から消費性向が落ちているわけですので、従来お願いをしております金融関係のシステムの信認を得るための諸法案、あるいは平成十年度予算、そして今お願いしておる補正予算等を的確に運用することによってマクロ経済の管理をするということが基本の上に、今申し上げた雇用対策がついていく、こういう位置づけだろうと思っております。
  291. 秋葉忠利

    秋葉委員 今後とも雇用の状況は余り短期間に改善されないだろうというのが大方の見通しのようですので、私たちも、もう一度党として実態調査を行った上で、さらに今後の政策提言として、何とか国会の中でも、あるいはもし第二次補正というようなものが必要になればその中で、あるいは来年度の予算の中で提案をしていきたいというふうに思います。  次に、先ほど申し上げましたように、海外の、特にアジアの経済問題もこの総合経済対策の中の一つの柱なんですけれども、インドネシアの情勢が非常に緊迫化しております。先ほど伺った話によりますと、C130を六機シンガポールの空軍基地に移すという決定がなされたようですけれども、これは官房長官に伺うんですか、外務大臣ですか。外務大臣、その現状をまず御報告いただけますでしょうか。
  292. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 現在、定期便や臨時便によりまして在留邦人の出国を進めております。また、こうした便を利用いたしまして今帰国が進んでおりますが、不測の事態が発生いたしまして民間機等が利用できないといった場合には、邦人等の輸送に万全を期すために、シンガポールに自衛隊機を移動し、待機させることといたしたものでございます。  このような準備行為は、御案内のように、自衛隊法百条の八を根拠として実施し得るものと考えております。
  293. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 本委員会に入っております間に届いておりますインドネシアの状況、これはもう昨日来のことは省略をさせていただきますけれども国会周辺のデモが相当警備の強化につながっているといった状況が伝えられております。そして国会の内外にある程度の学生たちが集結をしていること、そして国会内に入ろうとする学生たちが学生証の提示を求められていること、しかし非常に秩序が保たれた状況でデモが行われていること、一部の道路が車線規制が行われておりますけれども、交通線は確保されていること、そうした状況が今手元に入っておりますが、本日の場合は、一応小康状態を保っている、そのような感じです。
  294. 秋葉忠利

    秋葉委員 その点に関して、外務省の危険度が四にまで上げられたということで、実は先ほど、与党の政策調整会議の中では、それは甘い判断ではないかという意見と、いや、厳し過ぎるという意見と両論あって議論をしてまいりましたけれども、それについて、自衛隊機を実際に海外に派遣する以前にもっと十分な手だてを尽くす必要があったのではないか、率直にそういう感じを持っております。  具体的には、民間航空の飛行機をもっときちんと使うべきだ、そういう感じがしているわけですけれども、民間航空機、現在、これは外務省の方で手配をした結果、臨時便が十五便出ているということでございます。それ以外にも定期便がまだ正常な状態で利用できるということで、おおむね五千人規模の邦人を臨時便、民間航空で救出する、救出するというのが正しい言い方かどうかわかりませんが、ともかく帰国させることができるという報告をきょう受けましたけれども、しかし、それだけで十分なことをやっているのか。  例えば、C130というのは八十人乗りの飛行機です。ジャンボー機で、一番大きいものですと五百四十人乗れる。ですから、数の点からいきますと当然これはジャンボを飛ばすべきだと思いますけれども、それに対して、防衛庁、外務省の説明は、シンガポールとジャカルタの間をピストン輸送するから量はふえるんだということが答えでした。でも、ピストン輸送をするのであれば、今の臨時便というのは成田あるいは関空とジャカルタの間を飛んでいるので、それを、ジャカルタとシンガポールの間をジャンボを使ってピストン輸送をすれば、一万人を簡単にシンガポールに移すことができる。その後で次の輸送手段を考えるということはある意味で可能なことだと思うんですけれども、報告を受けた感じでは、そういった可能性も検討されていないような感がいたしました。  そういったことも含めて、ぜひ民間航空の活用ということについて、もう少しきちんとした議論あるいは検討をしていただきたいと思うのですけれども、その点について、もう少し民間航空の活用についてより充実した施策をとるつもりがおありになるのかどうか、官房長官、お願いいたします。
  295. 村岡兼造

    ○村岡国務大臣 お答えをいたします。  運輸大臣もおりますけれども、実はインドネシアの情勢で、我が国の日本人学校が、七百五十人ないし八百人でございますか、道路で阻まれまして、一泊をするというような事態が起きました。それからストアにおいて略奪、焼き討ち、こういう状況の問題がございまして、向こうの現地の大使からも危険度四に上げていただきたいという要請、あるいは諸外国の情勢も勘案いたしまして、四に上げたわけでございます。  その間でございますけれども、実は臨時便を十一便ということで確保をいたしました。それでも足りない、こういう状況で、当時は、まだどのくらい出てくるかという状況もわからない、こういう状況でございましたが、運輸省、その点大変頑張っていただきまして、ほかの外国へ行っている便を、キャンセル、まあお金を払いまして、したがいまして日本航空あるいは全日空等に多大の犠牲を払っていただきまして、四便を追加いたしまして、二十日の朝までは六千七百席ぐらいの席数になりましたけれども、現状でどのくらいまた出てくるのか。今のところ五千人ぐらい、こう見ておるわけであります。  二十日まではこれが民間としては精いっぱいでございまして、二十日以降につきましても、今運輸省は、あるいは近隣諸国の民間航空機を利用する、こういうことも検討をいたしておるところでございます。二十日の日がインドネシアの覚せいの日という、慶賀の日なようでございますが、その日には、各大学で集会がある。これに備えて精いっぱいの、あらゆることを今やっている状況でございまして、二十日過ぎ、また、いろいろな予断を許さない状況でございますから、引き続き民間航空機あるいはまた船舶、こういうものも運輸省を通じまして手配をいたしておるところでございます。  しかし、どういう状況になるか。自衛隊機につきましても、まさかに備えまして、先ほど外務大 臣が答えたように、シンガポールに二機ないし六機を駐機して様子を見守る、邦人保護のために万全のあらゆることをやる、こういう方針でいるところでございます。十分に民間航空機も利用するけれども、二十日まではこういう状況であったということであります。
  296. 秋葉忠利

    秋葉委員 もう一つなんですが、政府専用機が導入された際には、例えばこういった状況のときに政府専用機を使うんだという理由づけが行われました。現在のこの政府専用機の利用の計画というのがもう既にかなり詰まっている。総理がきょうお戻りになった。週末からは天皇の訪欧のためにこれまた使われるということなんですが、今週一週間はあいている。ところが、内装を変えなくちゃいけない、そのために二日間かかるという話なんですが、政府専用機は二機あって、一機は代替用の飛行機であります。今までの記録では、少なくともふぐあいが生じて代替機を使わなくてはいけないという状況が生じたことはありませんので、この際、仮に一日や二日のおくれがあったとしても政府専用機を投入して、例えばシンガポールとそれからインドネシア・ジャカルタの間を結ぶということは、少なくとも机上の計画としては可能であります。そういったこともぜひ検討していただきたいと思うのです。  それともう一点、私が非常に憂慮しておりますのは、今回のインドネシアの状況について、外務省からの報告はほとんど邦人の保護の問題ばかりに集中して、インドネシアの状況がどうなっているのか、インドネシアの人たちが一体何を期待しているのか、どういう不満があるのか、インドネシアの市民の立場に立った分析や、あるいは提案といったものが余り見られないというふうに思います。やはり我々は、ただ日本人がよければそれでいいんだという印象を与えるようなことは厳に慎まなくてはいけないわけですし、インドネシアの市民の立場から、国民の立場から、やはりさまざまな、友人としての提言をしていくべきだと思います。  きょうの報告の中には、先ほど国民覚せいの日の話も出てきましたし、それから軍のさまざまな動きとか、反対派の動きということも出てきましたけれども、その他、市民活動家の情報、学者の皆さんの情報等によれば、もっといろいろなことが起こっている。大統領の家族やその側近が、自分の資金の安全を図るために、外国の銀行にどんどん大量の金を預けている、それがルピア暴落の非常に大きな原因の一つであるといったことさえあるわけです。  こういった点について、最後に総理に、これは例えばインドネシアのスハルト大統領個人に対しては厳しい忠告になるかもしれませんけれども、やはり親しい、同時にこれまでの長い関係のある
  297. 中川秀直

    中川委員長 秋葉君に申し上げます。質疑時間が終了しました。
  298. 秋葉忠利

    秋葉委員 はい、これで終わります。  それをもとにして、やはり友人としての、こういった厳しいアドバイスではあっても、アドバイスをするようなことも当然必要だと思いますが、最後に総理のお考えを伺いたいと思います。
  299. 中川秀直

    中川委員長 橋本内閣総理大臣、簡潔に御答弁ください。
  300. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 サミットの場におきましても、インドネシア情勢については非常に細かい分析を行い、論議をいたしました。そして、経済改革の努力は慫慂しつつ、政治的な対話等も求めていくべきであるというような議論をいたしたところでございます。
  301. 秋葉忠利

    秋葉委員 どうもありがとうございました。
  302. 中川秀直

    中川委員長 これにて秋葉君の質疑は終了いたしました。  次に、笹木竜三君。
  303. 笹木竜三

    笹木委員 笹木竜三です。  非常に短い時間なので、総理は非常にお疲れのようですけれども、おつき合いいただきたいと思います。  まず最初に、この財政構造改革法の修正についてですけれども、上限を決めて、キャップ制で量的に蛇口を締める、そのことによっていろいろな抵抗を排して何とかきっかけをつくろう、これはこれで一つ意味があったと思うわけですけれども、これは当然、その後の構造改革、行政のむだを削る、やる必要のないことをやめさせる、非能率を直す、この質的構造改革につなげることがあくまでも第一義的な目標だと思います。  そういった意味で、この質的な行革、構造改革ということで、どうされるのかについてお伺いしたいわけですけれども、例えば十四日、総理は、三年間で一〇%以上の建設コストの削減をする、費用対効果分析もする、再評価システムの活用、こういったことも図っていきたいと答弁されているわけですけれども、これは現状では、例えばいろいろな省がもう既に始めていて、費用対効果の事後評価とかをやる。建設省とか運輸省でもやると言っている。問題は、これは各省庁がばらばらにやっていても全然意味がない。  といいますのは、例えば会計検査院の方と話をしていまして、こういったいろいろな試行錯誤が始まっている、例えば建設省の費用対効果分析の計算式、あるいは運輸省の計算式、共有できますかと会計検査院に聞く。かなり難しいのじゃないでしょうかという答えが返ってくる。要は、統一基準でやらないと意味がないし、もっと言えば、事前に、その計画を決めたときに、どういった基準で、どういった費用対効果分析のもとでこの計画を決定したか、事前の発表と、そして統一的な基準で評価する、このことがないと全く意味がない、そう思うわけですけれども総理はどういった姿勢で取り組まれようとしているのか、お答えいただきたいと思います。
  304. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 これは、事改めて申し上げたのではなく、平成八年四月にスタートをいたしまして、平成八年七月に、公共事業の効率的・効果的実施についての検討委員会の中間報告を受け、事業の実施過程の透明化を図るための費用対効果分析の活用を一層進めていくというのを、まず建設省でスタートをさせました。そして、今これを各方面に、言いかえますなら、公共事業関係省庁の実施するすべての公共事業を対象として、費用対効果分析及び再評価を考えたいと思っているわけです。  その場合には、やはり国あるいは公団、地方公共団体など、事業主体が実施をすることになるわけですが、その分析あるいは評価の客観性、透明性という観点から、どうやったら再評価の実施に当たって第三者の意見を聞くシステムを構築できるのか、あるいは再評価の結果、手続、こうしたものの公表を積極的に進めるという方向を今打ち出しております。
  305. 笹木竜三

    笹木委員 もう一度お願いするわけですけれども、事前の計画を決定した段階で、どういった基準で、どういった計算式で決定したのか、こういったことを公開してこそ事後評価も意味がある。各省庁が勝手にやって、しかも勝手に評価している、それを発表されても、全く国民的な合意にはつながらないわけですから、事前での評価、このことをぜひ考えるべきだと思います。そのことを確認したいと思います。  それともう一点、先ほどもほかの委員から、政府も役所も借金の話ばかりしている、五百兆だ、五百兆だと、マインドコントロールみたいにその話ばかりしている、だから不景気になったのじゃないのかという話もありました。それに対する、五百兆に対する資産が一体どのぐらいあるのか、どう御認識をされているのでしょうか、お答えいただきたいと思います。
  306. 伏屋和彦

    ○伏屋政府委員 お答え申し上げます。  国有財産法がございまして、その第二条におきまして、今先生御質問の、資産として一つ大きいものは、国有財産として不動産とか地上権等がございます。これらにつきましては、毎年国有財産の現状を明らかにするという意味で、財政法二十八条に基づきまして、予算の参考書類として国会にも提出させていただいております。  ちなみに申し上げますと、平成十年度末の国有財産の見込みでございますが、これは約百兆でございます。
  307. 笹木竜三

    笹木委員 今は国有財産ということでお答えいただいたわけですが、五百兆に対応する資産はどれだけあるかとお聞きしているわけです。地方政府も入るだろうし、先ほど話にあった社会保障基金、先ほど委員への答えでもいろいろ議論がありました。社会保障基金も入るだろう。これは、国連の勧告による額で、国民経済計算によると八百九十四兆円、約九百兆円になるわけです。どうしてこのことをもっと議論しないのか。これを民間の商売をしている方、サラリーマンの方から見ると、政府はどうなっているの、借金を返そうと思ったら、普通なら預金はどれだけあるの、むだな資産はどれだけあるの、こちらを当然検討するだろう、これが全くない、これがのうてんきだとほとんどの国民が考えている。  さっき社会保障基金のお話もありました。これは将来に対して取りますべきものじゃない、そういう面は確かにあると思います。この社会保障基金の内訳、土地もある森林もある、あるいは短期の債券もある長期の債券もある、株式ももちろんある。じゃ、取り崩さないとして、社会保障基金、この資産の一部の金融資産を最低どのぐらいで運用しているのか、それについてはどうなんでしょうか。平均で結構です。
  308. 新保生二

    ○新保政府委員 国民経済計算ベースで申し上げますと、資産は八百九十四兆円ほどあります。これは八暦年末であります。有形固定資産が五百兆円、それから金融資産が三百九十四兆円ということでございます。  その中は、現金、短期債券、長期債券、株式、政府出資金、生命保険等々いろいろなものが入っておりますので、これを一律に、どれだけで運用しているかということを計算するのは非常に難しいというふうに思っています。
  309. 笹木竜三

    笹木委員 いや、大体現状さえも把握されていないのじゃないですか、担当の方ともいろいろやりとりをしましたけれども。こんなことをやっているから破産するのだと思うような答弁がいっぱい返ってきました。ぜひこの資産についてもしっかり目を配る。最低、義務として何%以上で運用する、これは当たり前でしょう、国の経営で。この九百兆を全くほっておいて、五百兆だ、五百兆だと言っても、だれも信用しません。  時間がないので、最後に一言だけ。  国有林野事業、二十三年間一回も評価がえをしていない資産を、二十三年間一回も評価がえをしないで幾ら返すなどと言っても、全くの机上の空論です。こんな前提に立った財政構造改革だから、民間から笑われる、サマーズさんからも笑われる。ぜひしっかりと、資産のことをもっと把握する、そして事前の評価制度をしっかり公開する、そしてきっちりと、意味のある社会資本整備をやっていく、そのことをお願いしたいと思います。  質問を終わります。
  310. 中川秀直

    中川委員長 これにて笹木君の質疑は終了しました。  次回は、明十九日火曜日午前八時五十分理事会、午前九時委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時三十一分散会