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1998-05-14 第142回国会 衆議院 緊急経済対策に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月十四日(木曜日)     午前九時開議  出席委員   委員長 中川 秀直君    理事 甘利  明君 理事 中山 成彬君    理事 村井  仁君 理事 村田 吉隆君    理事 上田 清司君 理事 岡田 克也君    理事 太田 昭宏君 理事 谷口 隆義君       浅野 勝人君    飯島 忠義君       石崎  岳君    小野 晋也君       大石 秀政君    大村 秀章君       木村 隆秀君    佐藤  勉君       桜井 郁三君    新藤 義孝君       菅  義偉君    杉浦 正健君       園田 修光君    田中 和徳君       田村 憲久君    谷畑  孝君       中野 正志君    西川 公也君       穂積 良行君    目片  信君       森  英介君    山口 泰明君       池田 元久君    生方 幸夫君       海江田万里君    金田 誠一君       菅  直人君    北脇 保之君       島   聡君    石井 啓一君       西川 知雄君    桝屋 敬悟君       佐藤 茂樹君    鈴木 淑夫君       児玉 健次君    佐々木憲昭君       矢島 恒夫君    濱田 健一君       河村たかし君  出席国務大臣         内閣総理大臣  橋本龍太郎君         法 務 大 臣 下稲葉耕吉君         外 務 大 臣 小渕 恵三君         大 蔵 大 臣 松永  光君         文 部 大 臣 町村 信孝君         厚 生 大 臣 小泉純一郎君         農林水産大臣  島村 宜伸君         通商産業大臣  堀内 光雄君         運 輸 大 臣 藤井 孝男君         郵 政 大 臣 自見庄三郎君         労 働 大 臣 伊吹 文明君         建 設 大 臣 瓦   力君         自 治 大 臣         国家公安委員会         委員長     上杉 光弘君         国 務 大 臣 村岡 兼造君         (内閣官房長官)         国 務 大 臣 小里 貞利君         (総務庁長官)         国 務 大 臣         (北海道開発庁         長官)         (沖縄開発庁長         官)      鈴木 宗男君         国 務 大 臣         (防衛庁長官) 久問 章生君         国 務 大 臣         (経済企画庁長         官)      尾身 幸次君         国 務 大 臣         (科学技術庁長         官)      谷垣 禎一君         国 務 大 臣         (環境庁長官) 大木  浩君         国 務 大 臣         (国土庁長官) 亀井 久興君  出席政府委員         経済企画庁調整         局長      塩谷 隆英君         経済企画庁調整         局審議官    小林 勇造君         経済企画庁調査         局長      新保 生二君         科学技術庁長官         官房長     沖村 憲樹君         国土庁大都市圏         整備局長         兼国会等移転審         議会事務局次長 林  桂一君         外務省総合外交         政策局軍備管  阿部 信泰君         理・科学審議官         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省経済局長 大島正太郎君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 竹内 行夫君         大蔵大臣官房金 原口 恒和君         融検査部長         大蔵大臣官房総         務審議官    溝口善兵衛君         大蔵省主計局長 涌井 洋治君         大蔵省主税局長 尾原 榮夫君         大蔵省証券局長         心得      山本  晃君         大蔵省銀行局長 山口 公生君         大蔵省国際金融         局長      黒田 東彦君         文部大臣官房長 小野 元之君         文部省教育助成         局長      御手洗 康君         厚生大臣官房総         務審議官    田中 泰弘君         農林水産大臣官         房長      堤  英隆君         通商産業省貿易         局長      今野 秀洋君         通商産業省産業         政策局長    江崎  格君         資源エネルギー         庁長官     稲川 泰弘君         中小企業庁長官 林  康夫君         運輸大臣官房長 梅崎  壽君         労働大臣官房長 渡邊  信君         労働省職業安定         局長      征矢 紀臣君         労働省職業安定         局高齢障害者         対策部長    中野 秀世君         建設大臣官房長 小野 邦久君         建設大臣官房総         務審議官    小鷲  茂君         建設省建設経済 五十嵐健之君         建設省都市局長 木下 博夫君         建設省住宅局長 小川 忠男君         自治省財政局長 二橋 正弘君         自治省税務局長 成瀬 宣孝君  委員外出席者         参  考  人 速水  優君         (日本銀行総裁)         衆議院調査局緊         急経済対策に関         する特別調査室         長       大久保 晄君     ————————————— 委員の異動 五月十四日  辞任         補欠選任   菅  義偉君     木村 隆秀君   杉浦 正健君     中野 正志君   園田 修光君     新藤 義孝君   田中 和徳君     飯島 忠義君   田村 憲久君     大村 秀章君   西川 公也君     大石 秀政君   北脇 保之君     菅  直人君   矢島 恒夫君     佐々木憲昭君 同日  辞任         補欠選任   飯島 忠義君     田中 和徳君   大石 秀政君     西川 公也君   大村 秀章君     田村 憲久君   木村 隆秀君     菅  義偉君   新藤 義孝君     園田 修光君   中野 正志君     杉浦 正健君   菅  直人君     北脇 保之君   佐々木憲昭君    矢島恒夫君     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人出頭要求に関する件  財政構造改革推進に関する特別措置法の一部  を改正する法律案内閣提出第一一二号)  平成十年分所得税特別減税のための臨時措置  法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一三号)  中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案  (内閣提出第一一四号)  地方税法及び地方財政法の一部を改正する法律  案(内閣提出第一一五号)  地方交付税法等の一部を改正する法律案内閣  提出第一一六号)      ————◇—————
  2. 中川秀直

    中川委員長 これより会議を開きます。  内閣提出財政構造改革推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案平成十年分所得税特別減税のための臨時措置法及び租税特別措置法の一部を改正する法律案中小企業信用保険法等の一部を改正する法律案地方税法及び地方財政法の一部を改正する法律案及び地方交付税法等の一部を改正する法律案の各案を一括して議題といたします。  これより質疑に入ります。  質疑申し出がありますので、順次これを許します。甘利明君。
  3. 甘利明

    甘利委員 甘利明でございます。自由民主党を代表して、総理並びに関係大臣に御質問をさせていただきます。  思い起こしますと、約七カ月前に私はこの場で財政構造改革法案に対しまして代表質問を行いまして、その必要性を訴えた一人であります。そして今、この修正案に対する質問を行うという事態にいささか複雑な心境を覚えますが、しかし、財政再建必要性は現在も変わらぬ、いや、むしろさらに重要になっている課題であるということは疑う余地もないことでありますし、そうした中でどういうアプローチの仕方がベストなのか常に模索をしていくということは、政治責務でもあるわけであります。  君子は豹変すとは、無責任者の代名詞のように解釈をされていますけれども、本来は、過ちを確認したときに変更する勇気を持つことこそ君子たる資格であるという意味であります。  ところで、現在ほど株価や為替レートの話が頻繁に国会審議の中に出てくる時代はかつてありません。それだけ経済がグローバルな視野で語られる時代になったということでありましょうけれども、いささか神経質になり過ぎているという面も否めないわけであります。  マーケットの声を聞けとかマーケット判断をするとか、スーパーの安売りじゃあるまいし、各般の経済対策マーケットがどう反応するかに一喜一憂するというのも情けない話であります。もっとも、最近はマスコミの論調も少し変わってまいりました。マーケットに振り回され過ぎるなというような論説も散見をされるわけであります。  大事なことは、過去の景気判断のどこに誤りがあったのか、見誤った原因は何なのか、そしてそれに対する適切な処置は何なのかを冷静に分析をして、抜本的な対策を大胆に構築をして、確固たる自信を持って内外宣言をするということであります。そうすればマーケット評価というものはおのずとついてくるわけでありますし、それでも反応しないような市場であったらこちらから見限るというくらいの毅然たる姿勢で臨んでいくべきであろうと思います。(発言する者あり)
  4. 中川秀直

    中川委員長 御静粛に願います。
  5. 甘利明

    甘利委員 そこで、バブル崩壊以降今日までの景気状況を時系列的に検証をしてみますと、次のようになります。最近パネルがはやっていますので、私も実は初めてつくってきました。ここにあるのであります、ちょっと立派なものですけれども。  景気基準日付の谷、つまり景気の底は平成五年の十月でありますけれども、その前後から今日までの経済成長の推移を一覧にしますと、こういうふうになるわけであります。  平成四年度の経済成長率が〇・四、五年度が〇・五、六年度が〇・六。四、五、六と、〇・四、〇・五、〇・六とこれは続いているわけであります。平成七年度に二・八、八年度に三・二となっているわけでありまして、これは、平成七年の九月まで六次にわたる景気対策を行った、それが着実にきいてきているというのがこの時系列でわかるわけであります。平成八年の三・二という数字は、同時期でいいますと先進国中最高の数字になっております。  平成九年の四月に、御案内のとおり、消費税が三%から五%に上がって、特別減税廃止をされたわけであります。そして、この駆け込み需要リバウンドが次の四半期平成九年の四—六に出るわけであります。対前期比マイナスの二・八、リバウンドは予想した以上に大きかった。ということは、駆け込み需要も予想をちょっと超えて大きかったということでありますが、しかし、この懸念は翌四半期、つまり平成九年の七—九には、プラス〇・八ということでこれは回復をしたわけであります。このプラス〇・八というのは、年率換算をしますと三・二%という数字がはじき出されます。この平成九年の七—九期のプラス〇・八というのは、絶好調の経済というふうに言われているこの同時期のアメリカと同じ数字であります。  統計にはもちろんタイムラグがありますから、平成八年度の成長率プラスの三・二%であった、今のこの数字、このことが判明したのが平成九年の六月でありまして、景気はこういう数字を追って拡大してきて、いよいよその時期に、景気財政出動の後押しなしに自分の力で、つまり自走を始めた、つまり官需から民需にバトンタッチしたと政府判断をしたと思います。  さらにその後、野党は、この景気後退の一番の原因は、消費税のアップ、特別減税廃止、そして医療費の値上げたというふうに言われているのですが、政府も四月から上がるということを懸念したわけでありますけれども、その懸念された消費税の引き上げと特別減税廃止に伴うリバウンド、それが意外にも次の四半期には回復したという事実、それが判明したのがタイムラグを置いて平成九年の十二月であったわけでありまして、そこで三・二が確認された。それから、リバウンドが修復に向かったということを確認して、景気はきちんと離陸をしたというふうに政府判断をしたのだと思います。  ところが、実は景気離陸をしていなかった。官需から民需にバトンタッチは本当のところはしていなかったのでありまして、それが、昨年の十一月の金融危機による影響であったわけです。順調に進んでいると思っていました民間企業のリストラや構造調整というものが実は終わっていなかった。当時、大蔵省は、不良債権がただいま二十何兆円です、割と順調に進んでいますとかいうことを発表したわけでありますけれども、これは、銀行側の言うことをうのみにしていた感がある。もっと言えば、実は当の銀行頭取自身でさえ、自分銀行不良債権が一体本当は幾らなのか、承知していなかったのじゃないかと思います。つまり、金融機関のディスクロージャーが全く不十分であったということじゃないのでしょうか。  それらが明確になったのが昨年の十一月危機でありまして、北海道拓殖銀行、北洋銀行、山一証券の破綻であります。加えて、昨年の八月以降に、アジア金融不安を引き金にしたアジア経済の減速、将来不安が急速に個人消費を落ち込ませたわけであります。あんな一流企業でも倒産するんだからうちの会社だって危ないんじゃないだろうかとか、あるいはあんな有名な銀行倒産をするんだから私の預金先だって危ないんじゃないかとか、国民が急速に生活防衛に走ったわけであります。  この間、ある銀行支店長が嘆いておりましたけれども、窓口に、中年の御婦人定期預金を全額引き出したい、解約したいという申し出がありまして、支店長が、また週刊誌が報道する格付の高い銀行とかあるいは郵便局にでも預けかえるんだろうかと、いささかげんなりしてその様子を見ていましたら、引き出した大金を大事そうに抱えたくだんの御婦人が、その銀行貸し金庫室に入っていきまして、ほどなく晴れやかな顔で手ぶらで出てきた、ここまで銀行信用がなくなったのかと、その支店長は天を仰いだそうであります。  そんなこんなで、消費性向、つまり可処分所得に占める消費支出の割合というのは、昨年の九月には七一・九だったものが、ことしの二月には六八・四に落ち込んだわけであります。実に五カ月で三・五%の落ち込みでありまして、これは年別換算をしますと約十兆円になるのだそうであります。マインドだけでこれだけ経済が落ち込んだわけであります。これが今回の景気後退の経緯だというふうに思っております。  今までの私の指摘につきまして、経企庁長官はどうお考えになりますか。
  6. 尾身幸次

    尾身国務大臣 先ほど来、ここ当分の間の経済動向について、甘利委員からお話がございました。全体として、私、おっしゃるとおりだと思うのでございますが、確かに、昨年の第三・四半期、つまり七月−九月には回復の方向に動いてまいりまして、GDPも対前期比で〇・八%増、年率三・二%増ということになったわけでございます。  しかしながら、秋口にかけまして、アジア経済がおかしくなったこと、それから、金融機関等の大型の倒産破綻が相次いで起こったことによりまして、秋口から暮れにかけまして、いわゆる消費者心理、家計の心理状態が非常に悪化をいたしまして、その結果といたしまして、徐々に消費が冷え込む、それにつれて設備投資等も冷え込んでくるという現象が起こりました。消費性向で見ましても、先ほどのお話のとおり、昨年の九月の七一・九%から二月までには六八・四%と三・五%ポイント下がったわけでございます。  そういう状況が、この二月、三月に企業への貸し渋り現象等とも相まちまして、実体経済生産あるいは雇用等の面に非常にマイナス効果を及ぼしてきている、そういう状況のもとで失業率三・九%という非常に厳しい状況になっているわけでございます。  ただしかし、三月の動向を見ますと、消費性向は七一・七まで上がってきておりまして、この三・五ポイント下がったもののかなりの部分回復しております。ただ、これが特別所得減税影響による要因もあると考えておりまして、一概に完全に回復したと言い切れるわけではございませんが、しかし、このいわゆる消費者心理悪化には歯どめがかかってきているという感じもするわけでございます。しかし、実体経済の面で雇用生産等が非常に厳しい状況にございます。  そういうことも含めまして、私ども、総合経済対策を早急にかつ強力に進めてまいりたいということで、今回の提案をしているわけでございます。
  7. 甘利明

    甘利委員 私が与党だから言うんじゃありませんけれども、今回の総合経済対策というのは、かつてないくらい内外評価された、されるべきだと私は確信をいたしております。というのは、先ほど来指摘をさせていただいております景気後退本当原因日本経済四つ症状に対して適切に四つ処方せんが書かれているからなんですね。  四つ症状というのは、一つは、内需を中心とする深刻な不況であります。二つ目は、バブル後遺症、先ほどから述べました。それから三点目は、日本経済構造が古くなってきている、構造改革を迫られているという点であります。そして四点目が、アジア金融不安であります。これらの症状に対して、今回の経済対策には適切な処方せんが書かれている。  尾身長官は、先月の三十日に、我が党の山崎政調会長と一緒に訪米をされまして、グリーンスパンFRB議長ルービン財務長官と会談されたというふうに伺っておりまして、総合経済対策、特に内需拡大策については大変な評価を受けたというふうに聞いております。日本政治家とか日本政策が海外で評価されるということを伝えることは日本マスコミは余り好きじゃないものでありますから、日本では余り報道されなかったようでありますけれども、私が聞くところ、最大級評価を受けたと聞いています。その辺のところ、尾身長官、実際どうでありましたでしょうか。
  8. 尾身幸次

    尾身国務大臣 四月三十日に、山崎政調会長とともにワシントンを訪問して、日本総合経済対策内容及びその効果等につきまして説明をいたし、理解を求めに参りました。ルービン財務長官グリーンスパン連邦準備制度理事会議長等と会談をしたわけでございますが、米国の政府関係者はいわば異口同音に、この総合経済対策が大規模な政策措置であり、かつ積極的な内容であるという高い評価をいただいたわけでございまして、私ども大変に、行ってよかったなという思いと同時に、日本政策努力に対しますこのような評価国際社会で得られましたこと、日本経済の将来に対するコンフィデンスの向上という点からも非常にプラスになると考えて、有意義であったと考えている次第でございます。
  9. 甘利明

    甘利委員 日本経済の病状の正確な分析はできたわけであります。それに対する適切な処方せんも書けました。あとは、毅然たる姿勢自信を持って、患者にいついつまでにこの病気回復しますというふうに宣言をすることが医者としての責務であります。医者が不安に思ったり自信なげな態度をとれば、患者はますます不安になりますし、病気の治癒はおくれるわけであります。  橋本総理総理は、日本経済チーフドクターとして、日本経済は全治何年何カ月か、それまで頑張れば必ず回復をする、自分の手で必ずよくしてみせると、国民にぜひ自信を持って宣言をしていただきたいと思います。経済対策効果が、この対策効果があらわれて景気軌道に乗ってくるまでにどのくらいかかるでしょうか、見通しを示していただきたいと思います。
  10. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今回の総合経済対策、これは、議員からも御指摘がございましたように、我が国経済を力強い回復軌道に乗せていく、同時に二十一世紀における活力のある我が国経済社会を実現するために策定したものであります。そして、これは、今まで既に実施している財政金融の両面からのさまざまな施策と相まって、我が国経済を次第に順調な回復軌道に乗せていくものと考えておりますし、一日も早い景気回復のためにも、十年度補正予算及び関連法案のぜひ速やかな成立に御協力をいただきたいと思っております。  多少の時間をいただいて、そのポイントについて幾つか触れたいと思うのですが、今やはり私どもが考えていかなければならないのは、それは、バブル崩壊後遺症から脱し切れていない現状の中で、そこに、アジア経済の混乱も国内における金融システムに対する不安も、景気落ち込みに大きく影響してきました。ですから、まず当面必要なことは何だといったら、思い切って内需をつくり出していく。そしてそれは景気回復にすぐつながっていくことでありまして、そのために、社会資本整備、そして特別減税を行うことにしました。  社会資本整備は、これは、国におきましても地方公共団体におきましても、ちょうだいした皆さんの税金を使って仕事をしていく、あるいは公債という名前による後世代からの借金をもって仕事をしていくわけですから、これは本当に思い切って必要な分野にそのお金は使わなきゃなりません。ダイオキシン対策のように国民皆さんが不安を持っておられる部分、あるいは新エネルギー対策科学技術の振興、福祉、やるべきことは、これはたくさんあるわけです。  これが一つの柱だとすれば、もう一つの柱は、まさにバブル後遺症の中でも一番我々が今までにもてこずってきました不良債権処理です。この十年間、ずっと実はこの問題がのしかかっておりました。そして、議員が言われましたように、私は、金融機関のトップが自分のところの不良資産不良債権を把握していなかったとまでは思いませんけれども、積極的にそれをバランスシートから落とすという決意というものは必ずしも強くなかったように思います。  ですから、不良債権処理、言いかえれば金融機関不良資産を、債権バランスシートから落とすために何が必要なのか。担保になっている土地などを処分して、焦げついている債権を回収する、あるいは不良債権を売却する、そうした処理が思い切って進められるように、土地にかかわる債権債務を整理するための委員会の設立、あるいは土地担保つき債権証券化、今まで我が国になかった仕組みをここで整備をしたい。これも一つの手法です。そして、これは当然のことながら、関連して、土地取引活性化あるいは都市の開発という問題と連動していくわけでありますから、金融システム改革法案審議も進めていただいておりますので、不良債権処理と相まって、ここでもう一つの柱を立てていきます。  そして、もう一つ大事なこと、それは、さまざまな構造改革の中から、いわゆる規制の撤廃・緩和の中からベンチャー企業が育つ、そのための環境づくりなども非常に大事なことでありますし、この柱のポイント一つです。  また、税制についても、幅広い見直しを既にお約束をしてきました。  こうしたものが今、議論ではなくて実施に移せるようにするためにも、国会における、必要な補正予算あるいは減税法案等御審議をいただいておりますものをできるだけ早く成立をさせていただいて、実行に移させていただきたい、それが今一番大事なことだ、私はそのように考えております。  日本経済は、本来、非常な強さを持っております。これは、あえて、私を信じてくれなんといううぬぼれたことを言うんじゃないんです。日本人自身が持っているその経済の強さあるいは技術力あるいはその資金というものに対してもう一度自信を持っていただく、そのためにも、一日も早い関連法案の御審議を心からお願いをする次第です。
  11. 甘利明

    甘利委員 先ほど来指摘させていただいておりますとおり、将来不安不況、あるいは不安あおり不況という言葉さえあるんですね。総理は、日本自身を信じてくれと。そのとおりだと思うのです。日本の底力を信じてくれ。その日本政府の顔が総理でありますから、総理が毅然たる姿勢で、大丈夫だから頑張ろうという姿勢をぜひ示していただきたいというふうに思う次第であります。  今回の不況は、一面では消費不況というふうに呼ばれております。先ほど指摘をさせていただきましたとおり、GDPの六〇%を占める個人消費が例を見ないくらいに落ち込んでいるからであります。過去に、日本経済危機に直面したことは何度かあります。経済マイナス成長を記録したこともたしか一度ありました、オイルショックのときだったというふうに記憶しておりますけれども。しかし、そのときですら、個人消費は、前年比マイナスというのは記録をしませんでした。過去に、四半期マイナスを記録したということはありましても、年ベースでマイナスを記録したということはないんですね。それくらい消費支出というのは、景気変動に大きく左右をされない安定した経済構成要素なんであります。  その個人消費が、この一年は前年比マイナスを記録いたしました。政府景気対策を打つときには、経済の、ここではGDPを指しますけれども、この構成要素のいろいろな部分を刺激するわけであります。例えば民間設備投資も、各種の分析をしまして、各般にわたる支援施策を講ずる。住宅建設、公共投資しかりであります。しかし、事消費になりますと、画一的な減税しか我々はツールを持たないわけであります。それは、個人消費分析が過去の手法のままだからじゃないかと私は思うのであります。  アメリカでは、既にもう十年くらい前から景気刺激策というのは個人消費に特化してきておりまして、個人消費をいかに細かく分析をしてそこに各般の刺激策を打つかということに重点が移行しているわけであります。  それは、個人消費がGDPの六〇%を占める構成要素だからであるのですけれども、日本では消費関係の経済統計が甚だ不備でありまして、家計調査のサンプリングは八千世帯だけでありますし、百貨店とかスーパーへの消費分析はありますけれども、ディスカウント店とかコンビニヘのそれはありません。さらに、消費の大宗はサービス消費へと移りつつありますけれども、その統計もないというふうに聞いております。ですからきめ細かい消費刺激策が打てないのだと思います。  設備投資とか住宅建設を刺激することはもちろん大事なんですよ。経済の六割を占める部分をより効果的に刺激するということはこれも非常に大事だというふうに思いますが、その消費分析の仕方が非常に粗っぽい。何かといえば単に恒久減税という話しか出てこないということになりますけれども、そこのところはもっと細かく、世帯別、所得別、地域別とか、いろいろな消費支出別とか、こういう分析をして戦略を練った方がいいというふうに私は思うのでありますが、尾身長官の見解を伺いたいと思います。
  12. 尾身幸次

    尾身国務大臣 甘利委員のおっしゃるとおり、消費構造そのものがかなり近年変わってまいりまして、例えて言いますと、必需品の方向から非必需品の方向に変わってくる。したがいまして、マインドの状況というのが消費の水準に非常に大きな影響を及ぼすというような状況になっております。それからまた、サービス化というような方向もあるわけでございまして、私ども、その状況内容の変化に応じて、今おっしゃるとおりのさらに必要な分析、調査等の手法についても工夫をしてまいりたいと考えている次第でございます。  なお、ライフスタイルの変化ということもかなりあるわけでございまして、消費者ニーズというものが変わってきているように感じている次第でございます。したがいまして、これに対応する供給サイドのいわゆる事業者の側も、そのような消費者ニーズに対応した新しい商品、サービスの開発等を行って消費者ニーズを引きつけるような努力もしていただきたいなと私自身は感じている次第でございます。
  13. 甘利明

    甘利委員 私の持ち時間が来まして、もう一点質問通告をさせていただいておりますが、次の機会に譲りたいと思います。  先ほど来私が申し上げていますのは、景気対策、刺激策のツールをもっとたくさん持とうということでありますし、消費不況と言われるのであるならば、消費のマインドをもっと細かぐ分析をしましょう。消費が落ちている、オウム返しに減税という単純な話でなくて、そういう話が出ると、いや、不安が解消されないのだから全部貯蓄に回ってしまって効果がないじゃないか、それよりも公共投資の方が具体的に所得移転に結びつくのだからそっちの方がいいよという話になってしまうわけであります。もっと、消費マインドの落ち込んでいる原因は何なのか、どういう消費構造に今陥っているのか、それをうんときめ細かく分析することによって次の打つ手がいろいろと出てくるのだということを考えている次第であります。  先ほど来、総理に、自信を持って国民に説明をしてほしいと申し上げました。この現状の分析は割と正確にできていると思いますし、先ほど来申し上げていますとおり、その対応策というのは現在考えられるベストなものだと私は思うのであります。これ以上のものはないと思うのであるならば、国民に対して自信と責任を持って説明をしていただきたい。それで、みんなで頑張ろうということを、意思統一を国民にしてもらいたいというふうに思う次第であります。  総理初め関係閣僚の御健闘を心からお祈りをし、与党の一員として全力をもってお支えをすることをお誓いを申し上げます。  ありがとうございました。
  14. 中川秀直

    中川委員長 この際、杉浦正健君から関連質疑申し出があります。甘利君の持ち時間の範囲内でこれを許します。杉浦正健君。
  15. 杉浦正健

    杉浦委員 自由民主党の杉浦正健でございます。甘利先生の御質問に関連いたしまして、二、三点、総理にお伺いしたいと存じます。  本題に入ります前に、甘利先生がお触れになりませんでしたので、ぜひ触れなければならぬと思うのですが、インドの核実験の問題でございます。  これにつきましては、政府も無償新規停止という措置をとられたということでありますが、重ねて、実験を強行したインドに対しまして、私は、断固たる態度を、総理政府としておとり賜りたいとお願い申し上げる次第であります。  日本は唯一の被爆国であって、国際社会に対して核兵器の廃絶を主張し得る権利を有しておりますし、また、将来の国際社会に対して崇高な責務を負担していると存じます。毅然とした態度でインドの核実験に臨んでいただきたい、お願いを申し上げておく次第であります。  ただいま甘利先生からいろいろと基本的な点にお触れになりました。現在の景気は下降局面にある、異常かつ非常の状態である、まあ危機と言っていいかと存じます。先輩方の中には、未曾有の国難に我々は直面しているという表現を使われる方もございますが、私は当たっていると思うわけであります。  総理初め閣僚の皆さん方、医者の車という言葉をお聞きになったことがあると思うのですが、今の日本経済の成り行きを見ておりますと、まさにそうだという感じがいたします。つまり、患者のいる方に、悪い方へ悪い方へ走っていくという感じがいたすわけでございます。  甘利先生もお触れになりましたが、総理もただいまおっしゃいましたけれども、バブル経済崩壊の後始末がしっかりできていない。不良債権がまだ多額に、処理されないで残っております。  それに加えまして、同じ時期に我々は、六大改革、二十一世紀を目指して諸改革を断行する、財政改革並びに経済構造改革、そして金融システム改革に着手したばかりであります。時期が重なりました。それに、金融不祥事から始まりまして、さまざまな金融機関の問題が露呈してまいったところに、昨年秋、アジア危機の突発でございます。金融機関の不祥事は、大蔵、日銀の汚職にまで発展してまいりまして、非常な国民の不信感を助長いたしておるわけであります。  それやこれや重なって、国民の間に非常な不安が広がっておるというのが実情ではないかと思うわけでございます。  総理はたびたび申しておられますけれども、現在の時期は、冷戦の終了に伴います大きな変革期にある、明治維新、終戦後に次ぐ第三の開国の時期だ、変革期だということを総理は再三言及しておられますけれども、そのとおりの大変革期にあると思うわけであります。変革期は、すべて流動的であります。不均衡が常態であります。終戦直後がそうでありました。また、不確実性が支配的であります。先例で物事を判断できない、そういう時代にあるわけであります。そういった大きな歴史の流れ、この時期に集中したもろもろの事象、そういったものが国民の不安を増幅しておると言っていいかと思います。  内外のエコノミストの論評も大変盛んになってまいりました。書店に参りますと、平成の大不況、大恐慌といった言葉が乱舞しておるわけであります。  私は、本来、楽観的な人間でありますが、ここで一つのパロディーを御紹介したいと思います。まあ、エコノミストの言われることは当たっている面もあるし、当たり外れがある面もあるということであります。  この話は、OBサミットを福田先生と一緒にお始めになりました西ドイツの元首相でございますヘルムート・シュミットさんから、昨年夏のOBサミットの際にお伺いした話であります。  二人の男が熱気球に乗りまして出発した。ところが、広い農場、まあ日本にはそんなところはありませんが、アメリカの西部の大平原のようなところに出まして、方向を見失ってしまった。どっちに行っていいかわからない。そこで、下をすっとおりて探したところ、一人の農民が働いておった。近づいていって、その農民に向かって、我々はどこにいるんだと尋ねた。ホェア・アー・ウィーと尋ねた。そうしたら、その農民が上を向いて叫んだ。おまえさん方は私の農場の上の熱気球の中にいるんだと答えたというわけであります。  その二人の男は議論をしまして、三つの結論に達した。一つは、その男の言うことは正しい。正しいでしょう、上の気球の中にいる。第二の結論は、しかし、その答えは我々の質問に対して無関係である。関係がない、関連がない。第三の結論は、したがって彼はエコノミストに違いない、こういうことであります。  ここは政治家の方ばかりでありますが、外国のエコノミストの評論の中には的外れの議論もあるわけでございます。しかし、評論家のおっしゃることをたくさん私も最近は読むようにしておりますが、当たっている面も多々あるわけでありまして、耳を傾けなければならない。特に、海外からのものについては、見当外れのものもありますけれども、中には、日本はぜひ景気回復を当面図るべきである、アジアのエンジンとなって頑張ってもらわないと困る、こういう御意見でございますとか、日本が大不況に突入することによって我々を道連れにしてもらっては困る、こういうような論調もあるわけでございます。  先輩の御努力のおかげで世界の経済大国になり、アジアの中の本当経済初めリーダーの地位を占めている我々としては、これらの声に耳を傾けてやっていかなければならないと思うわけでございます。  先日、山崎政調会長経企庁長官も御一緒だったようですが、グリーンスパン議長に会われた。そのときの議事録と申しますか、メモを拝見いたしますと、グリーンスパン議長は、「金融システムの安定化に成功することが今回プランが実質的に有効となる鍵である。バブルの発生と崩壊は、担保資産、従って金融機関の資産に甚大な影響を与え、これらの価値の下落は金融機関の仲介機能を損ねている。この問題に迅速に取り組み的確に対応しない限り、成長軌道に戻ることは困難であろう。」こういうふうに述べられたと聞いております。「不良債権銀行バランスシートに残っているうちは、邦銀に対する国際的信用影響がある。従って、邦銀が国際金融界からサポートを得るためには不良債権バランスシートから取り除くことが必要だ。」というふうなことを述べられたと聞いておるわけであります。  グリーンスパンさんは実務家でありますが、こういった批判には、もちろん我々も不良債権処理に全力で取り組んでおりますが、耳を傾けていく必要があるかと思います。  総理が、日本発の世界不況は絶対に起こさないというかたい決意を表明されておりましたが、その御決意は特に重要であるというふうに思う次第でございます。  エコノミストの議論の中にも間違っているものもございます。  この財政構造改革法による日本財政改革は取りやめてしまって、景気対策のみに全力を挙げるべきであるという御議論もあるわけであります。しかし、財政改革は、二十一世紀に向かっての五大改革の重要な一部であって、断固としてなし遂げなければならないものであります。景気対策は、いわばマクロ経済政策であって、絶えず生きた経済について我々は注意を払って適正な軌道に乗せなければならない、そういう政策でありますから、これは両立させなければならないことであります。  また、中には、こういう法律を制定したのは間違っていた、臨機応変の対策がとれないようになってしまった、閣議決定しておけばよかったんだというような議論も国内の一部にはございますが、これも私は間違っていると思うわけであります。財政構造改革法を制定した根本的な意義は、国権の最高機関である国会において財政再建についての確固たる意思を内外に示したことにあると私は考えております。  総理の御見解を承れればありがたいと思います。
  16. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 財政構造改革法、これは既に御承知のように、主要な経費ごとの量的な縮減目標あるいは各種の制度改革の内容を定めているものでありまして、こうした構造改革のための具体的な方策あるいは枠組みというものが国会の意思として中長期にわたって明示されている、これに大きな意義があることは議員指摘のとおりであります。  同時に、政府は、この間、みずからの判断、もちろんその判断の範囲内ということはあるわけですけれども、判断のみによって自由に、法定された方針を勝手に変更する、そういうことは許されなくなる。私は、この点に大きな意義があると思っております。  そして、二十一世紀に向けて私どもが努力をしていかなければならない、その財政構造を変えていく努力というものは当然必要なことでありますし、財政構造改革法というものを挟んで、挟んでという言い方が適当かどうか、これによりまして行政府と立法府、それぞれの立場から財政構造改革を進めていくということが非常に大事なことだと思っております。  同時に、議員から御指摘がありましたように、さまざまな情勢に対応して臨機応変の措置をとる、これもまた大切なことでありまして、今回、財政構造改革を進めながらも、その時々の経済状況に応じて緊急避難的に適切な措置をとり得るような、そうした枠組みを整備することを考えました。こうした点についても、ぜひ御理解を賜りたいと考えております。
  17. 杉浦正健

    杉浦委員 財構法を二、三年凍結したらどうかという意見が、有力な意見がございます。つまり、平成十年度についてはこの法改正で対応できる、十一年度はどうするんだ、もし景気が期待どおりの安定軌道に戻らなかったらどうするか。ことしじゅうにしっかりした軌道に乗ってほしいとは思うわけでありますが、経済は生き物であります。その場合には、十一年度の予算編成で困るじゃないかというような観点からの御議論だろうと思います。  私は、今回の法改正は、去年の暮れ以降の急激な経済の下降、ある意味では予期せざると申しますか予想外の下降に対して、財構法の改正を緊急に御提案なさったものと受けとめておるわけでありますが、各年度の予算編成の時期において、その時点における景況を慎重に判断をして、そして必要あれば財構法の改正も同時に検討するということでもいいのではないか、こう思うわけであります。この点について総理の御見解を承りたいと存じます。
  18. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、内外のさまざまな情勢に変化に応じて臨機応変の措置をとる必要がある、そういう場合はこれは当然想定されるわけですけれども、同時に、日本財政状況というものを考えましたとき、二十一世紀に向けて皆さんに安心していただけるような福祉社会あるいは健全で活力のある経済というものを実現させていこうとするとき、それに十分対応できる財政構造改革を実現するというのは、私は極めて大事なことだと思っております。  そうした考え方をお認めいただけますならば、やはり私は財政構造改革法を凍結するというのは適切ではないと思っておりますし、毎年度の予算編成のたびごとに景況判断をして財革法の改正を検討したらどうだ、これはやはり私は、ちょっと慎重に考えるべきことではないだろうか。  財革法というものがもし必要だと、私は必要だと考えておりますけれども、必要だとして、そして、そのために法律によって政府の予算編成を規律を保つ、そういうことから考えると、やはりその点は慎重に考えるべきだと思っております。
  19. 杉浦正健

    杉浦委員 財革法の意義は、国会において政治に携わる我々が、財政改革についての意思を鮮明にしたという点にあると思うわけであります。法律を改正することにはもちろん慎重でなければならないし、その法の趣旨に従った経済運営を求めるものでありますけれども、経済は生き物であります。状況に応じて適宜適切に改正することは、これまたやむを得ないこともあるのではないかという点を申し上げたかったことを申し添えておく次第であります。  少し、将来に向かった点について二、三言及させていただきます。  今回の抜本対策は、あくまでも現在の日本経済のあり方に対する一石であります。将来に向かってさらになすべきことは山積をいたしておるわけでございます。  六大改革、先ほど触れさせていただきましたが、これは、日本の二十一世紀における新しい時代、子供が少なくなる、人口が減っていく、高齢者がふえる、そういう社会に日本の社会の活力を維持する、そのためにぜひともなし遂げなければいけないことであります。先ほどバルーンの例を申し上げさせていただきましたが、日本の将来について、六大改革が形をなした場合の、まだまだ十分その姿形が見えない部分があるわけであります。そういった方向性がやや国民皆さんにとっては、不透明と申しますか不確実と申しますか、そういうところがあるかと思うわけでございます。言いかえますと、パラダイムの大変換が行われ、自己責任を基本にして、より透明な、そしてグローバルな大競争時代に即していける、そういった活力ある国家や社会の構築を目指しておるわけであります。これからの経済対策、あるいは財構法の運用につきましても、やはりそれに即した方向で取り組まれていくことが望ましいことは言うまでもございません。  経済の面に即して申しますれば、日本はやはり何といっても内需主導型の経済構造に大転換を遂げるべきでございましょう。今、アジアとか環太平洋の貿易、経済構造を見てみますと、アメリカにこぞって輸出をして黒字を稼ぐ、そして日本以外の国は日本に対する貿易赤字をその黒字で払っておるという、いわば一人勝ちの実情でありますけれども、こういった不均衡はぜひ是正していかなければならないと思うわけであります。  そのためにいろいろな方策が考えられるわけでありますが、この財政構造改革との関係でいえば、税制の問題が一つ大きな問題としてございます。  恒久減税につきましては、参議院選後に、選挙の後に本格的に検討するというふうに承っておるわけでありますけれども、私は、この恒久減税論議におきましては、そういった将来を見据えまして、腰を据えて、しっかりした恒久減税に踏み込むべきだと思っておる一人でございます。去る五月十二日の大蔵大臣の所信表明におきましても、国際的な整合性のある税制の確立という御言及もございました。  例えば、個人の所得税におきましては、最高税率は、先進国日本は最高であります。法人税の実効税率も非常に高い状態にあるわけでありますが、こういったところを是正をして、国際社会並みに一刻も早くすることが大切だと思う次第であります。それに際しましては、財源があるとかないとかということではなくて、いわゆるレベニュー・ニュートラルでない一思い切った減税に踏み込むべきである。  財源につきましては、この五大改革の結果、公務員の数も減っていくでありましょうし、諸改革による経済効果もあるわけでありますから、そこのところを見込んで思い切って踏み込むべきであると私は考えておりますけれども、総理の御見解はいかがでございましょうか。
  20. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 税制改正というのが非常にこれから大事なテーマであることは、私は議員の御指摘を否定するものではありません。  その上で、所得税につきましては、二度にわたる抜本的な税制改革の中で、大半のサラリーマンの方々は、生涯、一〇ないし二〇%の税率が適用される。最高税率に今議員触れられましたけれども、最高税率などの問題を除くと、フラット化が進んでおります。同時に一方で、累次にわたる減税の結果として、課税最低限が諸外国に対して高い。ですから、所得課税の負担全体としては先進国中最低の水準です。また、資産性の所得課税あるいは年金課税のあり方、個人所得課税につきましては、さまざまな角度からの議論があるはずです。  こうしたさまざまな問題について、税制調査会において、公正、透明で、国民の意欲を引き出せるような制度改正を目指して幅広い議論をしていただきたい、検討していただきたいと願っておりまして、恐らく、そうした方向での議論を進めていただけると思います。  また、法人課税につきましては、今後三年以内にできるだけ早く総合的な税率を国際水準並みに引き下げたい、そう私自身が意思を明らかにいたしました。十年度改正におきましても、課税ベースの適正化を図りながら、基本税率の引き下げ、これは法人事業税も含めて行ったことは御承知のとおりです。  今後、税体系全体のあり方も踏まえながら、地方の法人事業税の外形標準課税の問題を検討するなど、法人課税のあり方についても、国際的な水準というものを目指して、真剣な検討を政府税制調査会にもお願いを申し上げておりますし、党税制調査会においても行っていただける、私はそう考えております。
  21. 杉浦正健

    杉浦委員 総理並びに政府の方でもぜひ前向きにお取り組み賜りたいと存じます。  次に、文芸春秋を持ってまいりましたが、先輩の梶山静六議員が文芸春秋六月号に「日本興国論」という論文を発表されております。拝読させていただきましたが、住専の処理以来の政権の中枢におられた痛切な反省を踏まえられまして、現在の日本の抱えている諸問題について、実に痛切な、適切な御指摘をなさっている、卓見であると拝読いたした次第でございます。  その中で、梶山先生は、日本は将来に向かって、二十一世紀に活力を維持するためには相当の投資も必要であると思うわけでありますが、それについて、バブル以降目的を失った日本人が将来の目標を得ることができるように、技術開発に関する長期的な国家プロジェクトを検討したらどうかということを申しておられます。そして、幾つかのことを挙げておられるわけであります。例えば、無公害車であるとか、あるいは世界的な課題であるエネルギー、環境問題、食糧問題の解決に四、五十兆円を二十年ぐらいで注ぎ込んで世界平和に貢献するとか、いろいろのアイデアを出しておられるわけであります。  私は、六大改革が成った後の新しい日本、世界に対して我が国はこういう出発をするんだということを天下に示す意味で、現在準備が進められておりまする首都機能の移転、首都の移転を急ぐ、それによって人心を一新するということを積極的に進めたらどうか、こう思っておる一人でございますが、総理の御見解はいかがでございましょうか。
  22. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、梶山議員が「日本興国論」の中で提起をされた問題は、首都機能移転とはちょっと異質の種類の話だと思うのです。  首都機能移転そのものにつきましては、私は、東京一極集中の是正ということがよく言われますけれども、むしろ東京にゆとりのある生活空間を取り戻すという視点でも、また防災、災害対応力の強化という点から見ても、これは本当に大事なことだと考えておりますし、国会等移転審議会におきまして、移転候補地の選定などについての精力的な審議を行っていただいているわけですけれども、私は、むしろ、梶山さんが提起をされた問題というのはこれとはちょっと異質の種類の話だと思うのです。  そして、たしか昭和四十六年に環境庁が生まれましてから二十年後に、環境庁の諸君が、その環境庁をつくるころをもう一度振り返り、当時の公害問題というものを分析し、これに対しての技術開発、公害防除のための投資というものが日本経済にどう影響したかという分析をいたしました。そして、その中には非常に興味を引かれる部分がありまして、結果としてそれが新技術を生み出す土台をなした、同時に、その時点において公害防止の投資を行っていなかったら後により巨大な投資を必要としたであろうという分析でありました。  そして、その次の年の環境白書に、では、その問題解決のために、企業がいかなる理由でそれぞれのテーマを選び研究に着手したか、そしてそれが実験室段階から生産ラインに移されるのに、例えば政府のどのような措置がインセンティブとして働いたのか、これを分析した論文が載りました。その中には、まさに太陽光発電でありますとか、さまざまなテーマが拾い上げられておったことを今記憶いたしております。  私は実は山登り屋ですから、ヒマラヤの遠征などに行きますと、太陽光発電によるエネルギーというものにはどうしても関心を持たざるを得ませんし、遠征のたびに、その能力がどんどん向上し、コンパクト化し、しかしなおかつ非常にまだコスト高のものだということを実は味わってきました。  そういう意味では、私どもはまさに、新エネルギーの分野でありますとか、あるいは環境技術に関連する分野でありますとか、あるいは今我が国の食料自給率の低下が憂えられている、そうした中においていかなる技術を駆使することが必要なのか。私は、梶山論文で提起をされている種類の問題は実はそういう分野のことではないかと思いますし、そうした意味で、実はこの論文を私は大変関心を持って目を通した次第です。
  23. 杉浦正健

    杉浦委員 最後に、先ほどのバルーンの例ではございませんが、海外から、ある意味では力強い励ましのメッセージもあるということを御紹介して、終わりたいと思います。  有名なレスター・サロー教授、近著で「資本主義の未来」というのを書かれました。その中で、非常に日本については厳しい見方をしておられます。「日本は、これまで成功を収めてきただけに、企業政府がとってきた方法がもはや通用しないこと、世界の経済環境が大きく変わっていることを認識できたとしても、それに合わせてみずからを変えていくのはきわめて困難だろう。」と、非常に厳しい見方をされながらも、その四百十五ページですが、「貯蓄率が高く、ヨーロッパよりも集団主義の考え方が強い日本は、長期的な社会投資が必要になるこれからの時代に、どの国よりも簡単に適応できるだろう。」ということも申しておられるわけであります。  橋本総理を先頭にして進めておられます六大改革を進めることによりまして、新しい時代を開いて、いち早く我が国を生き返らせることができることを私は楽観しておる次第であります。  メッセージを御紹介して、終わらせていただきます。
  24. 中川秀直

    中川委員長 これにて甘利君、杉浦君の質疑は終了いたしました。  次に、菅直人君。
  25. 菅直人

    ○菅(直)委員 いよいよサミットに出かけられるわけですが、その直前に大変大きな、しかも憂慮すべきニュースが飛び込んでまいっております。言うまでもなく、インドにおける核実験が、五月の十一日に引き続いて十三日にも行われたというニュースであります。  これについて、各党それぞれ抗議声明を出し、あるいは政府もいろいろな対応を協議されていることは知っております。二十四年ぶりのインドの核実験。この地域はインド、パキスタンといった長年のいわば対立構造もありますし、我が国からは多少は離れておりますが、しかし、アジアの大きな国であるインドの行動として大変衝撃を受けたところであります。インドは、核拡散防止条約にも加盟していない、あるいは核実験全面禁止条約の署名もいたしていない、そういう中でこういった行動がとられてきているわけであります。  そこでお尋ねをしたいわけですけれども、我が国はこれに対してどういう対応をとろうとしているのか。  大使の召還を考えておられるのか。あるいは、ODAが無償、有償合わせて相当の額に上っているわけですが、無償協力あるいは有償協力についても全面的な見直しが必要ではないかと思いますが、この点についてどう考えられるか。さらには、国連でのこの問題に対する取り扱いをどのように考えるか。そして、まさに目の前に迫ったサミットにおいてこの問題が議題になるというふうにも伝えられておりますが、そういう中で、総理としてはどのように取り組まれるつもりか。これらについてお尋ねをしたいと思います。
  26. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 十一日の核実験を受けまして、我が国はインド側に対して、小渕外務大臣を初めとする高いレベルから、これに対する遺憾の意を強い意思で申し入れを行ったところでありますが、にもかかわらず十三日、インドが再び核実験を行った、極めてこれは遺憾な事態であります。  実は、三月三十一日付の、私自身からインド側に対する、首相に対する親書の中でも、核政策に対する最大限の自重を求めておりましたが、結果としては、これに対する返答が参ります前に核実験という事態になりました。昨日、改めて小渕外務大臣から在京インド大使に対して、強く抗議すると同時に、インドの核実験、核兵器開発の即時停止、NPT及びCTBTの締結を強く求めたところでございます。  同時に、パキスタンに対しましても、外交当局を通じましてこれに対する最大限の自制を求めておることも申し添えたいと思いますが、十三日、私どもは、無償資金協力における新規協力の原則停止、あるいは世銀の対インド支援国会合の東京招致を見合わせるといった内容を措置とする発表を行ったところでありますが、当然ながら、新しい事態に臨んで、さらなる措置をとらなければならないと考えております。  本日、サミットに出発いたしますまでの間、国会の方でどれだけの時間をそういう問題の作業に与えていただけるか大変微妙でありますけれども、私の出発までの間に、最終的な方針はいずれにしても決しなければなりません。  同時に、国連におきましては、インドに対して、核実験の即時停止とNPT、CTBTへの参加を求めるメッセージを早急に発出するように、安保理で協議をいたしております。  また、サミットにおきましても、この問題について十分な議論を行い、G8が結束して、明確であり、かつ強いメッセージを発することができますように、議長国であります英国を初めとする各参加国に働きかけを開始しておりまして、当然ながら、協力し、対応していかなければならない。  ただ、現時点におきましては、各国これに対して非常に強い姿勢で臨むという方針には恐らく私は食い違いは生じないと思いますけれども、それぞれの国のとろうとする対応には差異がありまして、その辺が恐らく議論として相当の時間を要する部分になろうかと思っております。  ただ、日本は、少なくとも被爆国としての立場から、今までも強い自制を求めてまいりましたものが、抗議をいたしました直後にまた再度の実験が行われたというような状態を踏まえて対応をしなければならない、そのように考えております。
  27. 菅直人

    ○菅(直)委員 ODAの見直しは、これから最終結論を出されるということですか。
  28. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ODAの問題に限定をされないようにお願いをいたしたいのは、人的な問題その他幾つものオプションをどう組み合わせるかということでありますので、その点についてはしばらくの猶予を与えていただきたいと思います。  各国、今も申し上げましたように、対応には差異がございます。当然、私は、議員が御指摘になりましたような問題点をも選択肢の中には加えなければならないと考えておりますけれども、同時に、それだけで済むかどうかというぐらいの問題だと思っております。
  29. 菅直人

    ○菅(直)委員 この問題は、CTBT、核実験全面禁止条約の問題や核拡散の防止条約の議論のときから、つまり、これらの条約は、ある意味では現在の核保有国の核の独占はそのまま認めながら新たな核の拡散を防ぐという要素があるわけで、当時からインドは、それに対して必ずしも賛成しないという態度をとってきたわけです。  そういう点で、安保理の常任理事国、すべて核保有国です。サミットの中でも多くの国が核保有国です。我が国は、そういう中で、核を保有しない、もちろん唯一の被爆国として、最も強く、我が国においても、もちろん核拡散を我が国自身がするつもりはないわけですから、そういうことをしないという立場を前提として、ある意味では、他の安保理の、特に常任理事国やサミットの核保有国以上にきちっとした態度がとれる問題であるわけですから、そういう点で、特に総理には、サミットにおいてそういう姿勢をもって臨んでいただきたい、そのことを念を押して申し上げておきたいと思います。  さて、それでは本題に入っていきたいと思いますが、その関連として、いよいよバーミンガム・サミットが直前になっておりますけれども、せんだって来日をされたエリツィン・ロシア大統領が、何か報道によりますと、二〇〇〇年に日本で予定されているサミットをロシアでやらせてもらえないか、何といいましょうか、こういう要望があるやに聞いておりますが、そういう事実があるのかどうか、あるいはそれについて総理はどうお考えか、まずお尋ねしたいと思います。
  30. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 そうした意向を報道に対して述べられたという報道はございますけれども、今、ただいまの瞬間まで、外交当局を通じての、あるいは正式な要請というものは全く受けておりません。
  31. 菅直人

    ○菅(直)委員 もしあれば、どういうふうにお考えですか。
  32. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 この議論、ほどほどにしていただいた方が、私、これからその選択肢をふやす意味でもいいと思うのですけれども、まず一つ言えることは、日本だけで決められることではないということであります。逆に言えば、参加国のすべてがそれを求められたとき果たしてノーと言えるのか、反対があった場合にイエスと言えるのか。いろいろなことが考えられるわけでありますし、事前にカードを明らかにした上で会談に臨むというのは、私は余り好きではございませんので、その点はほどほどの議論で、少なくとも公式にも非公式にも日本に対して要請が行われておらない問題でございますので、この程度にとどめさせていただきたいと思います。
  33. 菅直人

    ○菅(直)委員 ほどほどで結構ですよ。私、きょう初めて申し上げたので、そんなに前から何度も何度も言っている問題じゃありません。ですから、まずはお尋ねをしたわけでありまして、それに対してお答えをいただければ結構なわけであります。  そこで、バーミンガム・サミットが始まるわけです。もちろんホスト国はイギリスであり、ブレア首相になるわけです。  ブレア政権、誕生から一年、この一年の間に大変多くの改革を実行されております。スコットランド議会をつくるとか、北アイルランド問題の打開をするとか、そして今日、ブレア総理は、世界の航路標識にイギリスはなっていくんだ、つまりは二十一世紀の世界のお手本になれるような、そういう国を目指すんだ。かつて斜陽国と言われた時代とは全く違って、未来に対して明るい展望を述べ、大変高い国民の支持を受けておられるわけであります。  また、サミットでお会いになるでしょうけれども、先日来日もされたイタリアのプロディ首相、政権ができて二年になりますけれども、通貨統合への参加は大変難しいと従来言われておりました。日本以上に累積赤字が多いとも指摘をされていたわけですけれども、急激な改善によって、通貨統合への最初からの参加が決まっているわけです。プロディ首相は、政府のあり方について、軽い政府を目指す。そして今の中央集権的な体制から徹底した分権化を進めよう、そういう憲法改正の議論が相当にイタリアで進んでいる、こういうふうにも聞いているわけであります。  つまり、これらの二つの国、政権ができて一年あるいは二年という間に、次々と具体的な改革を実行してきているわけです。  橋本政権、二年四カ月になりました。率直に申し上げて、いろいろ問題を提起されましたが、具体的に一体何が実行されてきたのか、何が実現したのか、そう問われたときに、果たして答えるべきものがあるのでしょうか。これらのイギリスやイタリアの改革に対して、総理は、それとの比較において日本が、改革が進んでいないと私は思いますけれども、どのようにお考えか、見解を伺いたいと思います。
  34. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 自分のやったことをどう御評価いただけるかは、まさに国民の目でありまして、私自身がどうこう言うつもりはありません。  しかし、私は、トニー・ブレア首相が、EUの議長国という立場、そして通貨統合には最初から加盟をしないイギリスの立場というものを非常にはっきりと分けながら、その上で、EUの議長国として通貨統合の実現に向けていかれたその努力、さらに、北アイルランド問題に一つの終止符をはっきりとしるされた努力、そして、大陸諸国とアメリカとの間の接点を現に買おうとし、また、しばしばそれに成功しておられる努力、こうしたものは大変高く評価をいたしております。  また、イタリアにおきましても、極めて積極的な社会保障を初めとした歳出のカットに踏み切り、しかも、それを国民が支え、通貨統合の第一陣に入ったというその努力を、私は率直に評価したいと思います。
  35. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、それらの国は、政権ができて一年あるいは二年でそういった具体的な成果がどんどん上がっている。それを総理評価をされている。しかし、日本において、確かに六大改革ということを提案されました。行政改革、あれが果たして本当に意味のある改革なのか。省庁をくっつけただけで、仕事内容はこれから考える、そういったことでありますし、財政再建は、少なくとも今回出された法案でもしばらくは必ずしもその道には思い切っては進めない。あらゆることが停滞しているんじゃないでしょうか。  つまり、私、最近思うのは、スピードの問題が非常にあるんですよ。つまり、いいことでも、ゆっくりやったら実はいいことでない場合もある。一生懸命前に歩いている、歩いているといっても、地球の回転よりも遅いスピードで歩いていれば、結局は、トータルとしては、総体的には後退しているということなんですよ。  ですから、私は、今のような日本状況は、すべての改革が、構造改革がおくれたことでこの非常に厳しい状態があると思うから、あえて政権が誕生して一年、二年というこのイギリスやイタリアの例を引いて、総理にお尋ねをしたんです。なぜこんなに改革が遅いのかということなんですよ。  先ほども杉浦議員が引かれましたが、ここに梶山静六さんが書かれた論文があります。この中にいろいろなことが書いてあります。一つだけまず取り上げてみますと、当時の大蔵省が、銀行は健全であり心配ありません、残るのは信組だけですという説明に終始した、こういう説明をうのみにしたのは政治家としても大変その責任はあるけれども云々と書いてあります。  つまりは、私は、日本の改革というのは、こういうふうな官庁が中心の、官僚が中心の、官僚の皆さんの上に乗った改革だ。ですから、全部の調整が終わらないと改革に踏み出せない。しかも、その調整たるや、不良債権の額からしてきちんとした報告をしない、つまりは自分たちのOBにいわば責任が及ぶから。そういう守りに入っている官僚の皆さんの言うことの上に乗った改革を進めようとするから、一生懸命前に歩いているつもりが、世の中の動きから見たら、逆に後ろに結果的には下がっている、そういう状況の中に今日の状況が来たのではないでしょうか。  そういう意味で、私は、総理にもう一度、なぜこんなに改革がおくれているのか、なぜこんなに改革が進まないのか、総理がどういう見解をお持ちか、お尋ねします。
  36. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私ども、政府の責任者の立場として、それぞれの所轄庁から提出される資料、数字を含めましてその資料というものが判断のベースにあるということは、これは御指摘のとおりでありますし、その資料に正確さを欠いている部分があれば、それに影響を受ける部分があることも私は御指摘を否定はいたしません。その上で、それぞれの改革の努力というものは私は動いておると考えておりますけれども、これに対してはさまざまな御評価があるでしょう。  中央省庁等の再編、このベースに地方分権推進計画等があることも繰り返し御説明を申し上げておりますが、まだ数日あるいは十数日、地方分権推進計画を発表できるまでにも時間が必要でありますし、そうしたものを見ていただくまで、中央省庁の問題が議員の御指摘のような批判を浴びることは、ある程度私はやむを得ない部分があると思います。  その上で、今回も御審議をいただこうとしている中で、例えば不良債権の問題について、根本的な処理をもうこれ以上どんなことがあってもおくらせるわけにはいかないわけでありますから、そして、それはまさに、不良資産不良債権というものを金融機関バランスシートから落とすことであり、そのために必要な、土地にかかわるさまざまな債権債務処理するための委員会の設立、あるいは土地担保つき債権証券化などの仕組みをつくろうとしておるわけであります。そして、こうした改革について、国会の御協力もぜひ得たいというお願いを申し上げております。  それは、遅いという御指摘でありますならば、そのおしかりは受けます。しかし、作業を進め、ようやく御審議をいただけるようになりました以上、国会としての御判断も、できるだけ早く実行に移せるようにお示しをいただきたいと心から願っております。(発言する者あり)
  37. 菅直人

    ○菅(直)委員 与党の皆さんがいろいろやじを飛ばすのですけれども、そのとおりだと言うのですね。私は本当に見識を疑いますね。  先ほど総理はこう言われましたね。資料が正確でなければそれに影響される、そう言われましたね。政府という言葉を使われました。しかし、そこにおられるのは何ですか、内閣でしょう。内閣が行政権を握っているのですよ。内閣をサポートするのが官僚ですよ。じゃ、そのサポートの中身がおかしかったら、影響を受けて仕方ないと言うのですか。内閣が責任者でしょう。  待ってください、総理。いいですか、私、何度も総理とこの場でも議論しました。総理の言われるのは、いや、政府だから、あるいは与党だから、言ってきたことが間違っていれば、それは影響される、それは仕方がない。一見、何かそう言われたら、いや、総理も気の毒だなと思われるかもしれない。じゃ、そんな官僚を何で放置しておるのですか。不良債権処理でも、大蔵と農林の間で覚書があったじゃないですか。何であんなものをほっておくのですか。大蔵大臣も務められたじゃないですか。  つまり、そんなことを何回も何回も繰り返し繰り返しやっていることは、総理も御自身御承知のはずだし、梶山さんもこの中で一つの象徴としてその問題、大蔵省の問題を取り上げているわけですよ。ですから、正確さがなければ影響を受けて改革がおくれるのも仕方がないという意味であれば、私はそんな内閣はやめてもらいたいですね。  内閣というのは官僚の組織じゃありませんよ。国会が総理を指名して、そして総理に、内閣というものをつくってくれ、行政の責任者をつくってくれという、チームをつくることを国会がある意味で委託したのですよ。それが、官僚の言うことによって、それが正確でなければ仕方ない、こんなことを言われるのだったら、かわってもらった方がいいです。どうですか。
  38. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 御自身の議論を発展していかれて、御自分で結論をお出しになる。しかし、今私は、資料の影響を受けますということは申しましたが、だからそれで当然だなんという言葉を一回も使っておりません。私が使っておらない言葉で私を決めつけるというのは、私は、少し方向が違うのではないかと思います。  そして、その上で、確かに国会の指名を受けて内閣を組織いたしております。私は政府という言葉を使いましたが、議員内閣という言葉で限定をされますならば、内閣が施策を立てていきます上において、資料が正確であるかないかというのは、これは確かに一つ大事な問題点であります。その資料に正確さを欠いておれば影響を受ける部分はありましょう。しかし、それを影響を出さないように、あるいは影響が出ても最小限に食いとめるようにするのが我々の責任だろうと思っております。  なお、大蔵省と農水省の覚書について私に対しての御批判をいただきましたが、私が大蔵大臣をやめてから後の両省の事務当局の間にありましたことまで、やめておりました私が責任を問われるのは、少し筋違いだと思います。
  39. 菅直人

    ○菅(直)委員 先ほど私が総理が言われないことまで言われたと言いましたが、ちょっといいですか、お互いに……(発言する者あり)委員長、ちょっと黙らせてください。
  40. 中川秀直

    中川委員長 いらいらなさらず、ともに静粛に願います。
  41. 菅直人

    ○菅(直)委員 私じゃないでしょう。だれのことでしょうね。  いいですか、一つだけ申し上げておきます。総理、私がなぜ内閣ということを申し上げたかというと、これは閣僚の皆さんにもお聞きいただきたいのですが、内閣政府という言い方を皆さんは割と平気で一緒にされるけれども、内閣政治家がつくっているんですよ、そしてそれに官僚組織がくっついたものが政府なんですよ。ですから、政府の責任だと言われるときに、まずは内閣の責任なんです。憲法に書かれているのは内閣なんですよ。読んでみなさい、六十五条を。行政権は内閣にあるのであって、官僚組織にあるとはどこにも書いてない。だから、影響を受けるけれどもという言い方そのものが逃げじゃないですか。そういう意味で申し上げたわけです。  そこで「少し話を進めたいと思います。  先ほど杉浦議員の方から、尾身長官に対して訪米の話がありました。私も、この五月二日から九日までニューヨーク、ワシントンを訪れまして、いろんな皆さんにお会いをいたしてきました。どうも、お会いをした方が少し違ったのか、私は尾身長官とはかなり違った印象を受けたところであります。  財務省のサマーズ副長官とのお話の中では、いろいろ慎重な言い回してはありましたが、相変わらずの護送船団的やり方に対して日本指摘をいただきました。あるいは、USTRのフィッシャー次席代表は、日本の官僚組織をパチンコのくぎ師、フィッシャーさんは日本に大分おられたようですが、アメリカでは有数のパチンコ通だと自分でおっしゃっていました。その方がくぎ師に例えて、適当にくぎを調整して自分たちの目的の対応をするように行政指導する、そういう趣旨のことを言われておりました。そしてまた、国際経済研究所のバーグステン所長に、これはいろいろなところで共通でしたが、我が党の経済政策を申し上げたわけであります。  つまりは、今の経済の非常な困難な状況は、まず第一に、バブル時代不良債権処理がおくれたことが第一の原因だ。そして、それに加えて、思い切った内需拡大策を恒久減税を中心にやるべきだ。また、先日申し上げた平成ニューディール計画という、もし公共投資をやるならばそういった未来への志向のものをやるべきだ。こういう我が党の考え方を申し上げていろいろ議論をしてきましたが、おおむね、私たちの提案に対して皆さん賛意をあらわしていただきました。  つまりは、今の恒久減税を含まない政府の案に対して、言葉で言われたかどうかは別として、議員は言葉ではっきり言われた人がたくさんありますよ、上院、下院の議員は。それは別として、私が受けた感じは、決して積極的な評価という空気はありませんでした。  特にこれは総理によくお聞きいただきたいのですが、一つ一つ政策ではなくて、日本はもう自分の力ではとても改革ができないのじゃないか。ワシントン・ポストが、キッキング・ジャパン、日本にけりを入れろ、そういう論文を書いておりました。つまり、日本は幾ら言ったって何にもリーダーシップがなくてできないじゃないか。私もお会いしたエド・リンカーンというブルッキングス研究所の方は、もう日本にそんなにあれこれ言ってやっても仕方がないから、ほっておいたらどうかという論文までフォーリン・アフェアーズか何かで書かれています。  つまりは、日本のことを改革のできない国ではないかというのが、私が受けたアメリカの大方の、そういう政府関係者を含めた意見のように感じたわけですけれども、総理はいかがお考えですか。
  42. 尾身幸次

    尾身国務大臣 私は、私自身が山崎政調会長とともに、アメリカの政府の代表とも考えられますルービン財務長官、サマーズ副長官あるいはグリーンスパン議長等にお目にかかって、直接お話を伺ってまいりました。そのいずれの方々にも、日本政府の今度の総合経済対策について、前向きで実質的であるという高い評価を正式にいただいたわけでございまして、これが私はアメリカの正式の日本総合経済対策に対する評価であると考えております。  もとより、アメリカは大きい国でありますから、お会いになったいろいろな方々がいろいろなことをおっしゃることはよくわかりますけれども、しかし、アメリカ政府としての正式の考え方というものは、政府の責任者に会ったときの向こうの正式の話であるというふうに考えております。
  43. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、経企庁長官は、自分自身も訪米をした立場として見解を述べました。  私は、アメリカという国を私なりに存じておりますから、さまざまな意見があるであろうということは想定ができます。その上で、少なくとも私自身が感じておりますこと、それは必ずしも、アメリカで例えば恒久減税を言われる方が、日本の課税最低限が幾らであり、アメリカの課税最低限と比較したときにどうであるのか、あるいは我が国の扶養控除がどうなっているのかといったことは十分御承知なしに御発言の方が多くあるということであります。  その上で、金融機関における不良債権処理を急がなければならないというメッセージは、私は共通のものとして受けとめておりますし、それを今御論議をいただいている中に含んでおりますことも御承知のとおりであります。
  44. 菅直人

    ○菅(直)委員 総理にはぜひお願いしたいのですけれども、私が言っている一番メーンのところを、できればまずは答えていただきたいのですよ。  つまり、所得税の税率構造がアメリカの人がどこまで詳しいかなんという話は、それはもちろんそうでしょう。おっしゃるとおりでしょう。今アメリカの多くの皆さんが言われていることは、日本は改革を自分の力でできない国ではないか、リーダーシップが欠如しているのではないか、それが私の受けた最大の印象だったと申し上げたの ですよ。それに対して、一番の対象はだれですか。内閣であり、総理大臣でしょう。それに対してどう答えられるかということですよ。
  45. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 日本は、アメリカのために改革をするのではございません。  そして、日本自身、例えば規制緩和一つをとりましても、着実に進んでおりますことは議員も御承知のとおりであります。そして、その上で、我々は逆にアメリカ側に提起すべき問題も持っており、提起している。その点は、日本自身が努力をしております部分は、私は正当に評価をいただきたいと存じますし、幾つかの問題で私自身も、例えば通産大臣の当時の自動車を初めとした交渉で、アメリカ側とは激しい論戦をいたしましたけれども、アメリカの求めるものが必ずしも日本の国益にふさわしいものばかりではないことも申し上げておきたいと思います。
  46. 菅直人

    ○菅(直)委員 水かけ論になりますから、この問題はこの程度にしますが、私が言っているのは、アメリカが言っているということを含めて、我々が言っているということなんですよ、当たり前のことですが。この間の予算委員会でもこの間の行革委員会でも、私申し上げたじゃないですか。六つの改革、全部うまくいかなかったからと。そのことをアメリカでも感じたということを言ったんじゃないですか。尾身さんがわざわざアメリカのことを言われたから。与党の質問に言ったんですよ、いいですか。  そこで、尾身さん、こう言われましたね、先ほど。サブスタンシャル・ポジティブという言葉ですよね。つまりは、実質的に肯定的な内容だという、これでそろえたそうですよ、私聞きました。アメリカ政府内で、今回の緊急対策経済対策に対してどういう答えをしようか、サブスタンシャル・アンド・ポジティブという言葉でそろえたと担当者が言っておりました。これが前向き、前向きという根拠になっています。  そこで、尾身さんが余り言われるのでちょっと順番を変えて言いますが、尾身経済企画庁長官はこういうようなことを言われていませんか。桜の花の咲くころには順調な回復軌道に復帰しているものと考えますと。もうちょっと前から読みましょうか。また、さきの経済対策に盛り込まれた規制緩和等の効果が徐々に本格化してくることから……(発言する者あり)
  47. 中川秀直

    中川委員長 静粛に願います。
  48. 菅直人

    ○菅(直)委員 平成十年度の経済見通しをこのように述べられませんでしたか。  たしか、これは尾身さんのホームページですよね。きのうとったのです、私。桜が散ってからもう大分たつのですが、まだこれが入っておりました。  大体こういう見通しを持っている経済企画庁長官が行って、それでサブスタンシャル・アンド・ポジティブということで、いや、大変褒められた。まず、この見通しは何ですか。見通しは間違ったとはっきり言えますか。
  49. 尾身幸次

    尾身国務大臣 この話はことしの一月に私がアメリカに行ってスピーチをしたときの話でございまして……(発言する者あり)いや、初めて行ったのは一月でありまして、四月からは順調に予算が通って支出がなされる、その予算もちょっとおくれました。四月八日になりましたが、そういう状況が想定され、かつ規制緩和等の、現在国会に提出されてまだ現実には通っていないわけでございますが、例えば電気通信関係の規制緩和あるいは労働者派遣事業等の規制緩和あるいは土地有効利用等に関する規制緩和等々の規制緩和がなされる状況が実現され、そしてまた、二月、三月の厳しい貸し渋り現象が緩和されるような状態になれば、徐々に経済回復軌道に乗り始めるというふうに申し上げたわけでございます。  その後の状況を見ますと、確かにコンフィデンスという点ではかなりの改善が見られましたが、特に三月におきましては消費性向等もやや上がってきておりまして、これを一体どういうふうに判断するかということについては、まだ四月、五月の状況を見なければならないと考えているわけでございますが、しかし、そのコンフィデンスの低下の結果として、実体経済の面であります生産あるいは失業率等については非常に厳しい状況になっていると認識をしております。  そういう状況の中で、私ども、経済状況に応じて今回の総合経済対策をまとめて、それを早急に実施に移すことにより、できるだけ早く経済を順調な回復軌道に乗せていきたいと考えているところでございます。
  50. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、桜の咲くころには順調な回復軌道に復帰しているものと考えますという見通しは間違っていたと言われるのですかと、もう桜は散っているのですから。これはきのうのホームページですよ。どうぞ。桜の咲く咲かないというのは別にホームページがあろうがなかろうが、どうですか。  だから、見通しは間違えました、これから努力しますなら、それならそれで、そう言ってくださればいいのですよ。何かぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃ言って、見通しが間違ったのかどうかもはっきりしないから、だれも国民政府信用しない、経企庁を信用しないのですよ。どうですか。
  51. 尾身幸次

    尾身国務大臣 実体経済の面では、少なくとも三月の統計等に見る限りにおきましては、まだ厳しい状況が続いていると申し上げております。予算は三月の末ではなしに四月八日に通過をいたしました。規制緩和等の法律につきましては、私はもうちょっと早く通ると思っておりましたが、そういう意味でまだ通っていないという状況にもございます。  そういう状況の中で、もう一つは、四月の統計数字等につきましてはまだほとんど出ていない状況でございまして、私自身としては、もう少し様子を見なければ何とも言えないところであると考えている次第でございます。
  52. 菅直人

    ○菅(直)委員 こんな経済企画庁長官を持って、国民皆さんがどう思うかですね。普通の常識で考えて、桜の花の咲くころといえばもう二カ月ぐらい前ですよ。そのころには順調に回復するだろうというのがどうもうまくいかなかったと言われるのならごく自然ですけれども、データがまだ出てないからとか、三月期がちょっとよかったからとか、何を言っているのですか、一体。そんな判断で今回の景気対策の案を出しているのですか。これ以上は聞きません。もう少し率直に、素直な答弁をされた方がいいと思いますよ。  それからもう一つ総理は、一つの改革のこととして、規制緩和は順調に進んでいると言われましたよね。これも、国民的な感情なり、少なくとも私の感覚からすると、決してそうではないですね。確かに、いろいろなものの規制緩和の改革は進んでいることはわかりますが、一方では新しい規制がどんどん生まれている。つまりは、日本全体として規制緩和が進んでいるというふうに言えるかといえば、私は、あるものは確かにかつてのものより少し緩めたのもあるけれども、一方では新たないろいろな問題が生まれてきている。数からいったって減ってないじゃないですか、数だけいったって。  ですから、着実に進んでいるなんということを言われれば言われるほど、これまた国民の目から見ると、一体総理の考え方と我々の実感とはどこでかみ合わないんだろうかというふうに思うんじゃないですかね。総理、いかがですか。
  53. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに一面、菅議員指摘をされましたように、一つの規制を廃止した場合に別のルールが出てくる、それはあります。例えば大店法一つをとりましても、従来の大店法、経済的規制として存在をしておりました。今回、これはむしろ大店法の精神から変わり、いわゆる社会的規制のルールに変わりました。そして、それに伴って都市計画その他のあり方も変わったわけでありますから、数の論議をすれば、あるいはこの大店法改正という一点からいっても、数はあるいはふえている部分があるのかもしれません。  都市計画法を活用し、ゾーニングの手法を活用し、生活環境を維持する方向に問題を進める。内容時代の要請に沿って大きく変化をする。経済的規制が廃止をされ、社会的規制をもってこれを律する。数の増減からだけ言われるならそういうことはあるかもしれません。しかし、着実に質的な変化を遂げているということは、委員御承知のとおりであります。
  54. 菅直人

    ○菅(直)委員 これ以上、これも水かけ論ですから。だから、着実、着実と言われるから、着実ではないんじゃないですかと言ったわけで、総理も、見方によってはそういうこともあるだろうと言われましたから。  いやに与党がうるさいですね、委員長
  55. 中川秀直

    中川委員長 静粛に願います。
  56. 菅直人

    ○菅(直)委員 そこで、もう一つ申し上げたいと思います。  ちょうど私がワシントンにいるときに、レーガン・ビルというものがオープンしました。私は、レーガン政権におけるレーガノミックス、当時は、あれだけの大幅減税をやって、当時は軍拡もやっていましたから、大変大きな財政赤字が生まれる、これで大丈夫だろうか、こういうふうに率直に言って思ったことを思い出しておりました。しかし、今アメリカでは、レーガン税制が、レーガノミックスの政策が結果的に今日のアメリカ経済回復をもたらしたという大変高い評価をされているわけであります。  そういう意味で、今回、このレーガノミックスの当時のことを少し聞いてみました。そうすると、二度にわたる税制改革がありますけれども、最初は相当の恒久減税、大幅減税をやり、二段階目には比較的レベニュー・ニュートラルな減税をやった。そういう形になっておりまして、そして、当時の予算の中に占める国防費の比率が、一九八七年度は二八%あったわけですが、それがことしは一五・八%というぐらい下がってきて、結果においてこのクリントン政権で財政収支も黒字に転換する、そういうふうになっているわけです。  この恒久減税について、もちろん私たちは六兆円の恒久減税ということを従来から主張しております。しかし、ちょうど私がワシントンにいるときに加藤幹事長が来られて、どこかで、恒久減税は余り効果がない。いや、その発言はすごい効果でしたね。翌日の株式市場は三百円以上の下落でありました。  まさにそういうことについて、恒久減税というものはただ単に特別減税を連ねたものではないことは、もちろん総理よく御存じですよね。総理は、特別減税を続けるなんというのは愚の骨頂だと自分で言われた。つまり、恒久減税が経済構造の改革につながっているという意味で、単なる特別減税とは全く違うんだ、まさに、レーガノミックスの評価について、アメリカの評価はそういう評価に今日なっているわけです。  そういう意味で、橋本総理にお聞きしたいのは、そういった構造改革につながる恒久減税、私たちは今それに取り組むべきだ、やるべきだと思っておりますが、総理はどうお考えですか。
  57. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員も触れられましたように、レーガン政権の第一期の減税、これは所得税の税率引き下げや租税特別措置の拡充などが行われたわけでありますけれども、結果として、期待した成長率を達成することができないまま、不十分な歳出の抑制と相まって大幅な財政赤字をもたらし、長期金利高あるいはドル高の進行、経常収支の赤字拡大というものを招きました。  これに対して、レーガン政権第二期の税制改正、これは歳入中立てあったということを申し上げなければなりません。(菅(直)委員「言ったって」と呼ぶ)いや、レベニュー・ニュートラル、議員もおっしゃいましたけれども、私だって申し上げていいでしょう。あなたがおっしゃったことを僕が言ってはいかぬということはないと思うんです。そして、その内容が所得税、法人税の税率引き下げと同時に課税ベースの拡大、適正化でありましたこと、そして課税ベースの拡大、適正化は、優遇制度の利用度の違いによる企業間、産業間の税負担の格差の是正が目的だったと言われております。  そして、その後、それを受けたブッシュ政権による九〇年の包括財政調整法、いわゆるOBRA90、そしてクリントン政権における九三年包括財政調整法、OBRA93、歳出の削減と増税をあわせて実施することによって財政赤字が大幅に改善されてまいりました。そして、本年の二月には、九九年度の財政収支均衡の大統領予算教書が出ております。  八一年のレーガン税制、これは巨大な財政赤字及び経常収支赤字を生んだ。その後、まさに歳入中立の税制改正をレーガン政権は行った。そして、その後の財政赤字削減の努力、そして恐らく議員がお触れになるのでしょう規制緩和、そして企業経営の合理化などを背景とした民間需要主導の経済成長が行われたことが今日のアメリカ経済をつくっている、私どもはそう考えております。
  58. 菅直人

    ○菅(直)委員 ですから、それを含めてどうかということをお聞きしたがったんですが、それは、同じことを言っていただいても結構ですが。  昨日、民主党、自由党そして平和の皆さんと財革法の凍結について合意をいたしまして、我が党を含めた案を国会に提出をさせていただきます。  つまり、もうこれは何度も繰り返しませんが、私たちの立場からすれば、今回政府が出している財政改革法、財革法の改正案というのは両面で非常に中途半端だ。私たちは、きちんと二年間凍結をして、その間に恒久減税を含む構造改革につながるそういう経済政策をやるべきだ。その理由は、せんだっての委員会でも申し上げましたが、まさに今の金融が非常に不安定な、不良債権処理が進んでいない中では、本来の血液を流すべき心臓が機能不全を起こしている、金融が。そういう中では、ある程度財政再建を凍結をしてでも財政による措置が必要だ。そういう意味からそういう提案をしているわけです。  しかし、今政府が提案されている財革法は、先日の議論もありました、基本は変えないんだとか、あるいは大枠は変えないんだとか。そして、では変えないのかと思ったら、あのとき、基本は何ですかと聞いたら、総理は最後まで答えられなかった。キャップはどうするんですか、目標年度はどうするんですか。キャップも一部は変えたし、目標年度も二年間延ばして、そして弾力条項。  つまり、これは、抜本的に経済政策を変更したのか、相変わらず財政再建というブレーキに足を置いたままアクセルを時々吹かして、そうすると、ブレーキを踏んだままアクセルを吹かしたら何が起きるか。ガソリンばかり使って一向に車は進まない、そういう状況になっているんじゃないですか。  そういった意味で、私は、この財政再建の大枠は守るとか基本は変更せずということと、今回の政府案がどういう関係があるのか。何が……(発言する者あり)ちょっとうるさいよ、与党は、本当に。きょうは少し静かにしようと思ったけれども、一体何を言っているんだ。  そういう意味で、総理の見解をまずお聞きしたいと思います。
  59. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほど議員は、平成ニューディール計画という言葉自身を述べられながら、御意見を開陳されました。そして、厚生大臣経験者の議員としては、社会保障関係費の削減というものが、制度改正を伴わない場合にはどんなに困難であり、また、制度改正を行うこと自体にもいろいろ問題があることはよく御承知だと存じます。  そして、来年度の社会保障関係費のキャップは、確かに今回停止をいたしました。それは、今景気回復の途上にある中で、国民生活にこの分野で新たな負担を課すことを避けたい。十二年度になりますと、医療保険制度の抜本改正が動き始める、あるいは介護保険が動き始める。状況の変化が生じますので、単年度を停止するという措置をとりました。同時に、最終年次を二年後に動かしましたのは、その間がなだらかな状況で推移でき るようにであります。  しかし、私はやはり、議員のたびたびの御指摘にもかかわらず、財政構造改革法というものは、国会が財政構造改革という方向性を明示されたという非常に大きな意義を感じておりますし、凍結という御議論には、私はなかなか賛成ですと申し上げる気になれないということは本会議等でも申し上げてまいりました。  その上で、今回も私どもは、まさに新たな需要をつくり出す、そして仕事をつくり出すという視点から、社会資本整備においても、環境とか新エネルギーあるいは情報通信高度化、科学技術振興、福祉、医療、教育といった分野に重点的な配分をしようとしております。税制についても、法人課税あるいは所得課税につきまして、私どもの考え方は既にお示しを申し上げておるところであります。
  60. 菅直人

    ○菅(直)委員 この梶山論文では、財政改革法を凍結せよ。まさに我々と同じことを、与党の有力な方がこういうふうに言っているわけですよ。そういうことを含めて、もう一度、我々の出す法案を与党の皆さんもよく考えてもらいたいと思いますね、与党の皆さんも、やじを飛ばす暇があったら。  そこで、申し上げたいと思います。  五月一日に、たしかこれは自民党の研修会の席で、総理は参議院選挙後の税制改正について触れられたようであります。朝日新聞や毎日新聞は、恒久減税で橋本首相、参議院選挙後に検討とか、恒久減税について本格検討とか、これは見出しです。私は、橋本総理がその場でどういう話をされたか細かくは知りません。総理として、参議院選挙後にこういう恒久減税を本格検討する、そういうお考えを述べられたのですか。
  61. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 参議院選挙後に本格税制をと言われますけれども……(菅(直)委員「恒久減税」と呼ぶ)どちらでも結構ですが、それこそ私は議員ほど言葉の使い方、細かくありませんので、どちらの言葉を……(発言する者あり)いや、報道に使っておられる言葉と同じ言葉を使ったということについて、私は自信がありません。しかし、内容的にそうした問題を論議いたしたことは事実であります。  そうした中で、例えば、資産性所得課税の問題とか年金課税のあり方とか課税最低限が諸外国に対して高いというようなこと、そして、所得課税の負担全体としては主要先進国中最低だということ、こうしたことを含め、その上で、政府税制調査会、党税制調査会にも検討をお願いをする。また、法人課税についても、同様の趣旨を三年以内に完了できるように検討を願うということは既にお願いをしており、その作業は多分参議院選後になるだろう、特に与党の税制調査会の作業は選挙後になるだろうということは確かに私は語っております。
  62. 菅直人

    ○菅(直)委員 いいですか、正確にこれはお聞きしますよ。  先ほど、与党議員である杉浦さんも言われていました。参議院選挙後に恒久減税をやるべきだ、そのときには、レベニュー・ニュートラルではなくて、減税にきちんとなるような恒久減税をやるべきだと与党の議員も先ほど言われましたね。そういうことを含めて検討されるということですか。はっきり言ってください。
  63. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もう一度正確にお答えを申し上げたいと存じますが、所得税について二度の減税が抜本的に行われた結果、大半のサラリーマンは生涯一〇ないし二〇%の税率が適用されるなど、最高税率の問題を除きますとフラット化が進められていることは議員もお認めがいただけると思います。  同時に、累次にわたる減税の結果として、課税最低限が諸外国に比して高いことなどから、所得課税負担全体として、主要先進国中……(菅(直)委員「答えていないよ」と呼ぶ)正確にお答えをしております、最低となっておることも議員御理解のとおりであります。同時に、資産性所得課税や年金課税のあり方など、個人所得課税についていろいろな議論がございます。  ですから、こうした議論全体を踏まえて、税制調査会において、公正、透明で国民の意欲を引き出せるような制度改正を目指して御論議を願いたいと考えております。  法人課税につきましても、三年以内にということを申し上げ、総合的な税率を国際的な水準並みにしたいということを申し上げ、税体系全体のあり方も踏まえながら、地方の法人課税の外形標準課税の検討を初めとして、法人課税のあり方について真剣な検討をお願いをしているわけであります。  私は、今、正確に申し上げております。
  64. 菅直人

    ○菅(直)委員 ちょっと委員長、正確ですか、これが。  私が聞いていることは、参議院選挙後に恒久減税を検討すると山崎さんがアメリカで言ったとか、自民党税調は恒久減税に言及とか、橋本総理が五月一日に恒久減税を本格検討とか言われたと書いてあるから、恒久減税を含めた検討をするのですかと言ったのですよ。今の答えは何ですか、それは。ちょっと待ってください。  例えば、課税最低限が高いからということは、では課税最低限を下げるということを検討するのですか。先ほど言ったように、レベニュー・ニュートラルなのかレベニュー・ニュートラルでないことも含めて検討するのか、そこを聞きたいのですよ。  つまり、いいですか、総理にお聞きしたいのは、もうちょっと国民皆さんに、あるいは我々に対してでもいいですよ、わかりやすく答えてくださいよ。細かく細かく、所得税はこうで、法人税は三年間でこうで、その税体系がこうで、税調がこうでというのは、細かいだけであって、何も正確ではありません。  参議院選挙後に実質的な減税、つまり歳入が下がることを含めて、恒久減税をやることについて、それも含めた検討を行われるつもりがあるのかないのか、総理自身の考え方をお聞きしているのです。どうですか。
  65. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ですから、マスコミの見出しがどうかということについて私は責任持てませんと先ほど申し上げました。そして、その上で、公正、透明で国民の意欲を引き出せるような制度改正を目指した審議をお願いをしております。
  66. 菅直人

    ○菅(直)委員 では、時には大蔵大臣にお聞きしましょう。いいですか。  今回の財政改革法、政府案ですよ、改正したときに、恒久減税を実施しようと思ったら、この政府の改正案でやれますか。つまりは、平成十五年を十七年にした、あるいは弾力条項、そういうことだけで、例えば法人税を四〇%に下げるとか、所得税、住民税の上限を六五から五〇に下げるとか、そういった本格的な恒久減税をこの法律ではできないのではないですか。  それについて大蔵大臣の見解を聞きたいと思います。
  67. 松永光

    ○松永国務大臣 減税のことでございますから、財政を預かる私の立場から申し上げさせていただきますが、まず、法人税につきましては、御案内のとおり、国税については、課税ベースを拡大した上で税率を三%減額することをこの間の国会で決めていただきました。  今税制調査会等で議論されておるのは、実効税率を考えますというと、地方の法人事業税という問題があるわけでありまして、その点をどういう形で整理していくかという問題になってくるわけであります。それが一つ。したがって、それはそういう具体的な問題になってきておるわけです。  ただ、法人税を三兆円減税しますといっても、どの部分をどう減税するかという議論が出てこないというと与野党の議論がかみ合わないのです。  それから、所得税についても実は同様なのであります。個人の所得税について言えば、国民所得に占める個人所得課税の割合がアメリカは一二・何%、日本は七・六%ということになっておりますので、大幅な実質減税ということは、財政を預かる者の立場からすれば、これは相当慎重な検討をさせていただかなければならぬ問題だ、こう思っております。  この、今政府が提案をさせていただいておる財政構造改革法の中で大幅な恒久減税ができるか、国の財政状況を考えますというと大変難しい課題だ、こう私は認識しております。
  68. 菅直人

    ○菅(直)委員 最後のところ、もう一度お聞きします。  財政状況を勘案するという形容詞を抜きにして、今回出されている政府の案で、もし財革法の改正が成立したときに、その政府案で、改正された財革法の枠の中で恒久減税が法律的にできるのかということなのです。  私たちが見るには、そういう恒久減税をやるにはもう一回財革法改正が必要になるのではないか、こう思うわけですが、それが必要なくできるかどうかということをお聞きしているのです。もう一回最後のところだけ、大蔵大臣。
  69. 松永光

    ○松永国務大臣 財革法云々の前に国の財政状況を考えながら税の問題は考えていかなければなりません。財政を預かる者の立場からすれば、その点で非常な難しさがあるので、慎重な御検討をお願いしたい、こう申し上げておるわけであります。
  70. 菅直人

    ○菅(直)委員 いいですか、今の話だったら、ちょっとあれですよ、これは大変なことですよ。財革法の前に——何ですか、財革法の前にとは。この委員会は何のための委員会なのですか。財革法の前に何とかというなら、もっと別のところでやったらどうですか。財革法を出している委員会じゃないのですか、この話は。その財革法の政府案について議論する話じゃないのですか。  だから、財革法を政府が言うように改正したときに、恒久減税がその枠の中でできるのかできないのか。私たちの見通しでは、できないのではないか、幅を超えるのじゃないかということを言っているのです。財革法の前に議論する——それは幾らでも議論していいですよ。少なくとも問うたところを答えてください。いいですか、大蔵大臣、答えられなければこの議論はできませんよ。  今回の政府案の財革法改正案が成立したときに、その後、今言われたような恒久減税をやる場合に、財革法の改正された中身でできるのかできないのか、そのことです。
  71. 松永光

    ○松永国務大臣 私は、今委員が言われたように、財革法改正問題を議論しているときに財革法の前にと申し上げたことをおしかりになりましたけれども、法律上できるかできぬかという問題の前に、財革法の仕組みの中でのできるかできないかという問題の前に、国の財政を預かる大蔵大臣としては、慎重な検討をしなければならぬ問題だ、こう思っております。  もし、税制改正についての議論がまとまり、そして多くの方々の賛同も得られそうな政治情勢になって、そしてやれるという場合においても、財革法がある以上その範囲内でしかやれないという、そういう理屈になってくる、私はそう思います。
  72. 菅直人

    ○菅(直)委員 いいですか、これは財革法の内容がどういう拘束力を持つかということですからね。これは国民皆さんにぜひ御理解をいただきたいのですが、つまり、気をつけないと、今政府や自民党、与党の首脳部が言っていることは、言葉は悪いけれども、二枚舌になるのですよ。アメリカでは、恒久減税を……(発言する者あり)聞きなさいよ。恒久減税をやるやると一方で言って、今の大蔵大臣の話では、レベニュー・ニュートラルならできるかもしれないけれども、レベニュー・ニュートラルを超えた幅ではどの程度できるか微妙なところだと……(松永国務大臣「そうは言っていない」と呼ぶ)そうなるのじゃないですか、そんなこと言っていないと言うけれども。  では、レベニュー・ニュートラルではなくて、大幅な実質減税ができるのですか。
  73. 松永光

    ○松永国務大臣 私が申し上げましたことは、今回、財政構造改革法の改正をお願いいたしております。それによってできることは何かというと、一つは、特例公債の、前年度よりも減らさなければならぬということを、特別の事情の場合にはその枠を外すことは可能という改正点が一つ。  もう一つは、財政構造改革の目標年次が二年延長になりました。しかし、その目標年次において、国と地方の財政赤字というものをGDP比三%以内に抑えなければならぬというのは残っておるわけですね。残っておるわけであります。  そういった点を考えますというと、恒久的な減税をするにしても、法律上天井はある。したがいまして、大変難しい問題でありますが、そういう法律論の前に、国の財政を預かる者としては、国の財政破綻させてはいかぬという考え方を持たなければならぬので、慎重な検討を要する、こう申し上げたわけであります。  もっとも、大変経済状況がよくなりまして、そしていわゆる自然増収がうんと出るような状況になってくればこれはまた別の問題でありますけれども、現段階で言えることは、財政を担当する者は、国の財政破綻させないということを常に念頭に置きながら職務を執行していかなければならぬ、こう私は申し上げておるわけであります。
  74. 菅直人

    ○菅(直)委員 私、今の大蔵大臣の答弁は、少なくとも率直さにおいては一歩前進だと思いますよ。天井があるということを言われましたね。いいですか、天井があると言われたのです。——ちょっと待ってください。今回の新しく政府が出した法案では、恒久減税を議論するときに天井がある。私たちは、一般的に言えば、この財革法があるから、あるいは一時弾力条項で例外を認めるとしても、それは年度ごとのことだから、単年度の減税はできる。まさに今総理がやろうとしている、皆さんがやろうとしている特別減税はできるけれども、恒久減税はできない、こういうふうに理解しているわけですよ。  それが、天井はある、つまりは、恒久減税をやる場合には天井がある。問題は、その天井の中身ですよ。いいですか、もう一回言いますよ。(松永国務大臣「天井とは言わなかったな」と呼ぶ)天井と今言いましたよ。何を言っているんですか。議事録を見てください。  つまり、これは簡単に言うとこういうことなんですよ。皆さんも、与党の皆さん、おわかりでしょうけれども、恒久減税という言葉は、減税という言葉がついているように、少なくとも、当初それが行われたときには、実質的な減収になることを含めて減税なわけですよ。直間比率の改正とかレベニュー・ニュートラルということになれば、率は下げるけれども課税ベースを広げて額が一緒というのは、これは一般には減税と言わないのですよ。大体、税制改革と言われるのでしょう。だから、税制改革と言われるときには、確かに、率は変えても全体の額は余り変わりません。レベニュー・ニュートラルだというやり方はありますよ。  その話をしているのか。そうじゃない、景気対策も含めて思い切った恒久減税を参議院選挙後にやる、そういう言い方を山崎さんがアメリカのルービン長官に言った、こういうふうに少なくとも報道されている。今度は、サミットに行ったら総理はそう言うのですか。恒久減税、聞かれたときに、いや、税制改革で、先はどのように細かいことをいろいろ言われるのですか。  もう一回聞きますよ。大蔵大臣、あなたが言ったのですよ。天井がある。当然ですよ、天井がある。だって、二〇〇五年までに三%以下に抑えなければいけない、しかも弾力条項がある。その枠の中で恒久減税ができますか。実質的な減税になる恒久減税ができますかということを聞いているのです。
  75. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほども申し上げましたように、財政構造改革法を改正していただいたとしても、目標年次が二年延びた、しかし、二〇〇五年における国、地方の財政赤字をGDP比三%以内にしなければならぬという法律はそのまま残るわけ。二年延びたという状態で残るわけ。そういう限度がありますと。委員は天井とおっしゃいましたが……(菅(直)委員「私じゃない、あなたが言った」と呼ぶ)私が言ったかね。同じような意味でありますけれども、そういう上限が法律で決められる、したがってそれは守らなければなりません、こう申し上げたわけであります。  そうした中で減税をどうしていくかということは、これは、経済が非常によくなって税の自然増収があるなどという状況になれば相当なことがやれると思うのでありますが、そうでない状況であれば、財政を預かる者としては慎重に研究させていただかなければならない、こう申し上げたわけです。
  76. 菅直人

    ○菅(直)委員 非常に率直ですよね。松永大蔵大臣、今言われたでしょう。経済が非常によくならなければなかなかできない。(松永国務大臣「いや、難しいと」と呼ぶ)経済が非常によくならなければ難しい。参議院選挙後に経済がよくなっていなければ逆にできないということを今言われたのですよ。  いいですか、参議院選挙後に、悪いからやろうという話と、経済がよくならなければできない……(発言する者あり)何を言っているんですか。今の話を聞いたらわかるでしょう。
  77. 中川秀直

    中川委員長 静粛に願います。
  78. 菅直人

    ○菅(直)委員 見通しとして、参議院選挙後というのはあとわずか二カ月です。(発言する者あり)ちょっと静かに。
  79. 中川秀直

    中川委員長 国民皆さんが見ている質疑ですから、静粛に願います。  質疑者も一々やじを気にせずに質疑をしてください。
  80. 菅直人

    ○菅(直)委員 いいですか、大蔵大臣。私は、大蔵大臣が言われることは、ある意味で財政当局者の感覚としてわからないわけではないですよ。あるいは財革法のもともとの趣旨はそういう発想でしょう。つまりは、そういう発想だから私たちは、その発想のもとでの今回の緊急なこういう状況には対応できないから凍結しようということを言っているわけです。  それを残せばそういう発想になるのですよ。天井がある、枠は狭い。だから、景気でもよくなって税収がどんどん入ってくれば、思い切ってそれを当てにした恒久減税ができるけれども、景気がよくならなければ恒久減税は難しいという結論はごく自然ですよ。それでいいんですかということですよ。  参議院選挙後に恒久減税というのは、一般的には追加の経済対策と理解されているんですよ、世界でも。多分、今から行かれたらサミットでそういう議論になるでしょう。追加の経済対策というのは、今回の経済対策が不十分だからもっとやれという話、あるいはもっとやろうという話ですよ、山崎さんが言っていることも。ということは、景気がよくならなければやりませんということになると、矛盾しませんか。どうですか、大蔵大臣。
  81. 松永光

    ○松永国務大臣 私の申したことを委員流に解釈をして決めつけてしまうというのは、ちょっと厳し過ぎではございませんか。  法律の規定が、二〇〇五年にGDP比三%以内にしなければならぬという天井というか枠がありますので、その範囲内でしか法律上はやれないという一つの縛りがあります。それで、それまでの間に我が国経済を正常な状態にするために今最大限の努力をしておるわけでありまして、その結果が出て、経済の状態がよくなって税の自然増収があれば、相当な減税ができるでしょう。  したがって、理屈だけを言いっこすれば、そういう理屈しか出てこないのだろうと私は思う。特に、財政を預かる者の立場は、やはり国の財政状況をにらみながら、そして後世代に多額のツケを残すようなことは避けなければならぬという考え方も持ち続けなければなりません。そういう考え方で私は対応したいと考えているところであります。
  82. 菅直人

    ○菅(直)委員 大蔵大臣の姿勢は非常にわかりました。つまり、大蔵大臣の姿勢は、簡単に言えば、景気がよくなるまでは恒久減税はできない、そういう御意見です。  いいですか。今度は総理にお聞きします。いいですか、総理。  大蔵大臣が言われることは、この政府の改正案については、私もそういう趣旨だと思いますよ。私も、間違っていると思わない。つまり、この政府の改正案だと、二年延ばしたといったって、三%はなかなか厳しいんだし、そして弾力条項だっていろいろな条件がついて厳しいんだし、キャップを一部外してさらに厳しいんだし、いろいろな意味で厳しいんだから、そう簡単に実質減税になるようなことが、この枠の中ではできるのは幅が狭い、だから増収でもない限りは、景気がよくならない限りはなかなかできませんというのは正確だと思いますよ。正確ですよ。それでいいんですかということを聞いているんですよ。  我々は、それじゃまずいんじゃないですかと、まさに恒久減税を当初予算からやるべきだ、今からやるべきだということを言っているんですよ。それに対して、与党の中でもそういうことをかなり強く示唆する発言がどんどん出ている。参議院選挙の中で出ている。(発言する者あり)自民党がだれでもといったって、政調会長が言っているんですよ。あるいは総理そのものが、先ほど言われたように、五月一日のときそういう議論をやったと。  じゃ、過去のことはいいことにしましょう。いいですか、過去のことはいいことにしましょう。総理に今の見解を聞きましょう。今の見解をですよ。  参議院選挙後に、今大蔵大臣が言われたように、景気がよくなって自然増収でもあれば減税は考えるけれども、(松永国務大臣「大きいのを」と呼ぶ)ちょっと待ってください。大きいのを考えるけれども、しかし、そうでなければ、今の政府の改正案では非常にその余地は小さいから、そういう意味では本格的な減税、恒久的な本格的減税はできない、そういう見解なのか。いや、それでも必要ならやる。必要ならやるんだったら、それは法律の枠を超えるわけですから、もう一回再改正をしてでも必要ならやる、そういう覚悟なのか。そのことについて総理自身の見解を伺いたいと思います。
  83. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変まくし立てられるものですから、論旨を追うのに、(発言する者あり)いや、先ほどから、私にと言われて大蔵大臣に行ったりするものですから、それは混線する部分があるのです。言葉が過ぎたとすれば、それは申しわけありません。一生懸命になって聞いて、その上で今伺っておりました。  そして、過去のことはいいと言われましたけれども、私自身、党の研修会で話したことはそのとおりなんです。先ほども申し上げましたように、法人課税について、三年以内のできるだけ早い時期に国際水準に持っていきたい、これは今だってそうですし、党の研修会で語ったときと変わっておりません。  同時に、所得課税について、先ほど申し上げたような問題点を既に論議の中で出されております。問題があることは議員も御承知のとおりです。そして、先ほど議員は、サミットでそんな細かいことまで言うのかと言われましたけれども、私は、国益のために必要だとなれば、日本の税制を知ってもらうための説明は細かくいたします。必要であるならそれをすることをいといません。その上で、国民の活力を引き出し得るような公正な所得課税のあり方というものを検討をするということを宣言をしている。  そして、議員の御議論は、財革法でできるのかできないのかというお話にすぐなるのですけれども、その範囲というものはおのずから幅がありますから、大きくなるか小ぶりなものになるか、いろいろな、それは逆に、議論の終結する部分においての選択肢はありましょう。しかし、方向を今から勝手に決めてしまって議論づけをするというのも、私はちょっと行き過ぎじゃないかなと思います。
  84. 菅直人

    ○菅(直)委員 いや、それで結構ですよ。  ただ、方向を決めているのは私たちですか、財革法の改正案そのものが決めているのじゃないですか。大ぶりであっても小ぶりであっても自由に議論しましょう。総理、大ぶりの減税をやったときに、政府案のこの財革法の改正の中身でできますか、方向づけをしているのは総理の方じゃないですか、どうですか。
  85. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私、大変失礼ですけれども、議員に枠をはめてと申し上げてお答えをしているのじゃないのです。税制調査会の議論のことを申し上げております。政府税制調査会、党の税制調査会、実質的に党の税制調査会は、特に参議院選の前に作業はこれはとてもできないと思います。ですから、参議院選が終わり次第作業に入る、これは非常に政党の状況として素直なことでございます。  その上で、そのときの経済情勢等々論議の方向づけに今から私は予断を持つつもりはありません。いわんや菅議員に対して、私は枠をはめて……(発言する者あり)いやいや、菅さんが私に怒られたのは、政府が勝手に決めているんじゃないかという、言いかえれば議員の議論を封じるような……(菅(直)委員「財革法はそういう中身だと言っているのですよ」と呼ぶ)議員お話をされたので、私は率直に素直な話を申し上げたのです。
  86. 菅直人

    ○菅(直)委員 いいですか、これは与党の皆さんもよくわかって言ってくださいよ。財革法というのは、今の改正案は政府が出しているのですよ。私個人に対して枠とかなんとかという議論を聞いているのじゃないですよ。政府が出している財革法が方向を決めているのじゃないですかと言ったのですよ。  つまり、小ぶりなものはできるかもしれない、あるいはレベニュー・ニュートラルなものはできるかもしれないけれども、大きなものはできないような枠をはめているのじゃないですかと。ですから、いいですか、もし政府税調なり与党税調で大きなものが必要だとなったら、総理、もう一回財革法を改正するおつもりですか。そこを聞いておきたいです。
  87. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 どう申し上げたらおわかりいただけるのでしょう。あるいは極端な論議だけに終始しなければならないのでしょう。(菅(直)委員「何が極端ですか」と呼ぶ)いや、極端ではないでしょうか。私は、税制改正、確かに所得課税についても、幾つかの問題点をクリアした中で、あるべき税体系というものは考えなければならないと思うからこそ問題を提起しております。法人課税については、国際水準並みに下げていかなければならないと思うから、そのとおりのことを申し上げております。  そして、私どもは、これから、例えば政府税制調査会にしても党税制調査会にしても、既にお願いは申し上げておりますけれども、論議を始めていただきます。私は、税制調査会が、国の財政運営に支障を来すようなことは多分お考えにならないだろう、十分深みのある議論をしていただけるだろう、そして税制調査会の皆さんは、例えば消費税引き上げを税制調査会の中で主張しておられた方が、外に出て真っ向反対のことを言われるなんてことはないだろう、そう願っております。
  88. 菅直人

    ○菅(直)委員 総理は前のときも、たしか四月十三日のときは、財政改革会議に云々と言われて、そこに判断をゆだねる。今回は政府あるいは党税調、もちろん政府税調は重要ですよ。しかし、今私が申し上げているのは、まさに予断を持たないというふうに総理自分で言われたけれども、今政府が出している法案そのものが、その枠内ということでいえば、少なくとも大ぶりな恒久減税は不可能だと私たちは見ているわけです。そうじやないと言うなら、そうじゃない根拠を示してください。そうだと言うなら、そうだという根拠を示してください。ですから、単年度減税、いわゆる特別減税しかできないじゃないですか、現実に。  もう一度聞きますよ。ちゃんとした答えがなければ、この法案の議論ですからね、財革法がどういう意味内容を持つかというその議論をやっているのですよ、一番中心の中心を。それが……(発言する者あり)大ぶりとかなんとかと言ったのは、総理が大きなものとか小ぶりなものと言われたから使っているんじゃないですか、総理自身が。何を言っているんですか。ですから、参議院選挙後に予断なく議論をした結果、大きな恒久減税、実質減税が必要だということになったら、もう一回財革法を改正するんですか。
  89. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに大ぶり小ぶりと言ったのは僕なんです。ですから、これは誤解がないようにしてください。与党席にもお願いをいたします。  その上で、例えば税制改正において大幅な減税という答えが出ましたときに、それは当然ながら歳入の減が生ずるということですから、議員の言われるような方法も一つの考え方かもしれませんが、その前に、それに見合うだけの歳出の減というものを考え、それで対応できるかどうかを工夫するという手法もあるんじゃないでしょうか。これはあくまでも理論の話ですから、そういうふうに申し上げたときに、今度は、それでは歳出減でデフレが心配だというような御議論も、これ、継続しようと思えばできるんです。そういう議論もできるんです。  しかし、今議員が述べられたような考え方にお答えを正確にするどするならば、大規模な減税イコール歳入の減、これに見合う歳出を組み立てる、こういうお答えも一つのお答えとしてあるわけです。
  90. 菅直人

    ○菅(直)委員 少し前進しましたね。今総理は、私の理解がもし間違っていないとすれば、私が言われるような方向もあるけれども、歳出の減をする方向もあるというふうに言われた。私が言った方向というのは、再改正が必要になるんじゃないですかと聞いたんです。だから、再改正をやってやるやり方もあるし、再改正をやらないで歳出減でやるやり方もある、そういうふうに私は理解したんですが、そういう理解でいいんですか。
  91. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 まず第一に、税制調査会の出される答えが、よほど大きな減税のみを主張されるものになるのか、あるいはそれなりに他の部分を整理するような方向になるのか、あるいはその時点における歳入の状況がどうか、いろいろなケースがあり得るわけです。  そして、極端なケースとして、財革法の範囲におさまらず、しかも大変大きな歳入減となるような税制改正を答申される、私はそんな極端なケースというのは本当は想定できないのですけれども、そういうことがあったとすれば、議員お話しになるような方向もあり得るでしょう。しかし、歳出の方を見直すという努力もあり得るでしょう。  極端と極端の議論のぶつけ合いをしたのじゃ余り意味がないと思うのですけれども、私はそう思ったということをお答えしたのです。
  92. 菅直人

    ○菅(直)委員 私は、今の総理の答弁は大変重要だと思いますよ。それが極端であるか極端でないか、大蔵大臣もよく御存じのように、天井はそう高くないですからね。これは、なかなかきついですからね。ですから、極端だとは私は思いません。今、与党議員がどなたか言いましたが、そうなる可能性は大変高いのじゃないですか。この山崎さんが言っておるようなことをやったり、いろいろやったら、なるのじゃないですか。  それで、私の時間はそろそろ終わりますので、一つだけ申し上げておきます。  いいですか、今の総理大臣の答弁はどういうことを意味しているか。つまりは、今提案されている法案を、参議院の選挙後に、税調などで、大型な恒久減税が必要になる、景気対策上もそれが必要だ、構造改革上もそれが必要だとなれば、再改正をすることもある。それは極端だと言われたけれども、極端であるかないかは、それは判断の問題。私の考え方についてというか、私がそういう可能性があるのじゃないですかと言うことについて、そういう場合もあり得るということを今総理が言われました。  つまり、今出した法案を、これはついこの間、五カ月ですか、六カ月前につくった法案ですよ、野党の反対の中で。それをまた一部微調整して、我々のようにもう思い切って凍結しろと言うのを、いや、凍結はできない、凍結は反対だ、梶山さんが言おうが反対だ、それで一部の改正でとどめる。これが重要だと言っていて、そしてまた、参議院選挙後にそういう大きな減税が必要だとなったら、また再改正もあり得る、それが極端なケースかどうかは別としてあり得ると。  そういう前提で出されたこんな法案に果たして私たちが賛成できるのでしょうか。そんなことなら、もともと、我々が出そうとしている凍結法案に与党の皆さんも賛成したらどうですか。(発言する者あり)静かにさせてください。いいですか、参議院選挙のときに恒久減税なんということを口にする人があるのだったら、我々が出す法案に賛成してから言ってください。我々が出す法案に反対しておいて恒久減税ということを言うとすれば、まさに二枚舌というふうに言わざるを得ないわけでありまして、そのことを申し上げておきます。
  93. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、できるだけ議員と論議がかみ合うように努力をしたつもりでございます。そして、あえて、課税ベースの拡大とかいう議論を私の方からは提起せず、議員の展開された議論に従ってお答えをいたしました。  しかし、税制改正を行います場合に、ただ単に単純な、例えば高額所得者の部分だけの減税というようなことで国民が納得されるかということも考えたり、さまざまな視点が私はあると思います。その論議を私はあえて、ですから、そうした場合の課税ベースの拡大の仕方がどういう格好になるか、資産性所得に対する課税、年金課税と例示で申し上げておりますけれども、そうしたものを含めて考える税制改正というものは、私は、議員が非常に単純に要約されたような形の結論に必ずしもなるものではないと考えております。  法人課税については、三年間の間にできるだけ早く国際水準並みにという、まさに方向を出しておりますから、これにも法人事業税の関連において外形標準課税等、検討すべき問題があるわけであります。  ですから、税制改正というものは、それだけにきちんと整合性を持った論議が行われなければならないものであり、議員が最後にまとめられましたような、単純に要約した形にはなかなかなりにくい性格のもの、そして、最初から今回の財革法の改正案を崩すことを前提に減税の論議が進められるかのような要約の仕方は、私は事実に反すると感じております。
  94. 菅直人

    ○菅(直)委員 同僚議員の了解をいただいて午前中はやらせていただくことにしますが、いいです、総理がそういう言い方をされるのは。それを判断するのは国会であり、国民皆さんですから。ですから、恒久減税ということを、本格的なものを議論すれば、今回の法案では、天井があって大変窮屈だということがまずはっきりしたわけですよ。  そのはっきりした中で、それでも今回政府案でいくのか。ちゃんと我々は対案を出しているのですからね。単に政府案に反対すると言っているのではないのですよ。もっと積極的にやれと言っているのですよ。恒久減税にもっと踏み込めるようにやれと言っているのですよ。そういう野党案、民主党を含めた案に賛成するのか、その選択をこれから問うわけですから、これについてはこれからのいろいろな議論をやった上で判断をいただきたいと思っております。  そこで、少し話を進めたいと思います。  今回の経済危機の最大の原因は、やはりバブルによって生じた不良債権処理のおくれにある。実は私は、去年の十二月一日の予算委員会で、この不良債権処理のスキームをお見せして、日本版RTCをつくって、思い切って不良債権を、場合によっては、責任問題は明確にした上で、公的資金を導入してこちらに移したらどうか。  この間、ルービン長官ですか、どなたかも言われたようですが、移して、そして思い切ってここで中坊さんのようなああいう機関を、もっと強力なものをつくって、そこで債権回収に当たったらどうか。その債権回収に当たった上で、今回法案あるいは補正予算にも出てますが、その虫食い的な土地都市計画的な手法で利用できる土地にして、そしてそれを活用する。場合によったら売却する。アメリカのSアンドLの処理のときには、約二十兆円の公的資金を導入したけれども、最終的に住宅を建てて売却をして約十兆円を回収して、その後の金融の、いわば不健全なものに陥らないで、それの解決をしたわけです。  私は、そういう意味で、このことをまず急いでやる必要があるという認識がやっと与党の中でも、加藤幹事長を含めて、こういうことを重要だと。あるいは、これまた梶山さんがこの論文の冒頭で、何といっても一番重要なのは不良債権の問題だと言われ出したのは、遅いとは言っても、まあ気がつかないよりはよかったと思っております。  そこで、もう一つだけお聞きしておきます。  それに加えて大変重要な問題が起きているのですよ。それはアジアにおける金融危機です。アジアのこの金融危機から、ついせんだってもいろいろな銀行がそれに対して引当金を計上したい、たしか五百億とか三百億とか、簡単に言えば、アジアのいろいろなところに貸し付けたお金が返ってこない可能性が出てきているから、それに対してはきちっと準備したい、こういうことを言われています。  大蔵大臣に聞きますが、このアジア経済危機から生じている不良債権あるいはそういう可能性のあるものについてどういう把握をしているのか。また、この間の土地不良債権のように、最初は二十兆だ三十兆だと言って、自主申告させたら七十八兆だ、そういうことにならないように、現段階でどういうふうな認識を、どういうふうな内容を御存じか、そのことについて大蔵大臣にお聞きします。
  95. 松永光

    ○松永国務大臣 国際決済銀行の国際与信統計によると、去年六月末における我が国金融機関アジア向け債権の残高は約二千七百億ドル、日本円で約三兆円というふうになっております。これは全国の銀行の総資産残高の約三%ということであります。  これらの債権不良債権となる可能性につきましては、一概に申し上げることは困難であります。それぞれの国の経済状況あるいはまた貸出先の企業動向があるわけでありますが、主要行からヒアリングしたところによると、我が国金融機関アジア向け債権については、原則として為替リスクをヘッジしているということ、我が国金融機関アジア向け債権のかなりの部分が日系企業ないしは地場の大手優良企業向けであることなどから、各金融機関とも為替リスク、信用リスクに配慮した融資が行われておると聞いておるところでありまして、今般のアジア諸国の通貨不安が我が国金融機関の経営に直ちに重大な影響を及ぼすというふうには考えておりません。  しかし、今後ともこの点については十分注視をしていきたい、こう思っております。
  96. 菅直人

    ○菅(直)委員 最初に申し上げたときに、大蔵省のいろいろな報告が必ずしも正確でなかった、それが内閣あるいは政府の運営に影響をしたかもしれないというふうに総理みずからおっしゃいました。  この間、検査問題というのは、それ自体まさに接待の問題まで絡んで問題がありましたし、まさに不良債権の見通しを大きく誤ったことが一つ処理のおくれにつながっているわけです。これは今までの問題です。  そして今回、今おっしゃいました、三兆円規模の債権アジアについて持っていると。その中で、為替リスクなどもちゃんとしてあるので、そんな重大なことにはならないだろうと、比較的楽観的なことを言われましたけれども、私はそれほど楽観できるものではないのではないかと思っております。  せんだっても、韓国に金大中大統領の就任式に行ったときに何人かの方に会いましたが、一時的なオーバーローンで、当面の通貨危機そのものは確かに鎮静化しておりますけれども、しかし、構造的な、大変過大な投資をしたものが生きた設備投資になっていないわけであります。また、インドネシアの状況は、ごらんのように政治危機をも招いてきていて、果たしてそこに投資したものが、たとえそれが日系企業であったとしても、本当に回収できるのか、私はかなり厳しい状態が生まれていると見るべきだと思います。  そういった点で、もともとの日本の中におけるバブルによる不良債権に加えて、アジアにおけるこの不良債権がそれにさらに重荷として乗っている、そういう厳しい状況にあるということを私たちは認識をしておく必要がある。つまり、大丈夫だと言うのではなくて、いや、相当に危険性を持っているからそれを注視している、そういう姿勢で当然いくべきだと思います。  そこで総理に、もう時間がありませんので、もう一度といいましょうか、さきに申し上げたこと等、申し上げてみたいのです。  銀行に、特に土地を中心とした不良債権をそのまま残した形で、そこに三十兆円のいろいろな、例えば優先株とかを投入する。私は、これを例えて、がん細胞に侵されている人が、本来なら手術でまずがんを切り出して、そして体力をつけて、リストラをさせて、そして元気な銀行にしていくべきだ。つまり、がんでいえば、まず手術があって、その後リハビリだ。それを手術もしないで、がん細胞を体の中に残したまま栄養剤を打っている、これが今の政府のやっていることではないか。  そういった意味で、思い切って責任問題を明確にして、不良債権処理銀行から移していくという、そういう抜本的なやり方、与党でも議論がされているように聞いておりますが、総理として積極的に取り組む気があるかどうか、お聞きしたいと思います。
  97. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど私、邦銀のアジア向けの債権の額について、ドルについては二千七百億ドルだったかな、これは申し上げたつもりでありますが、円で計算すると三十一兆、三十兆と言いましたかな、三兆と言いましたか。二千七百億ドルでございますから、三十一兆になるわけであります。  なお、この点については楽観はしていないのですよ。注意深く見守っていく所存だというふうに申し上げたところでございます。
  98. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員から御指摘がありました不良債権の問題の処理、これが極めて重要であることは私も全く同感でありますし、先刻も、その抜本的な処理というのは金融機関バランスシートから落とすことだ、消すことだということも申し上げました。  ですから、不動産担保つきの不良債権などに係る債権債務関係を整理するための制度、体制づくり、担保不動産や不良債権の売却や証券化によって土地債権を流動化し、不良債権処理しやすい環境を整備すると同時に、並行して都市再開発を促進する措置などを講じて土地取引活性化させていきたい、そういう方向を申し上げ、またそのための委員会づくりをお願いをしております。  こうした考え方を持っているわけでありまして、金融機関不良債権バランスシートから落とさせる、これまでやらなければいけないということについて、議員の御意見と私は変わらないと存じます。
  99. 菅直人

    ○菅(直)委員 では、終わります。
  100. 中川秀直

    中川委員長 この際、休憩いたします。     午前十一時四十七分休憩      ————◇—————     午後一時二十五分開議
  101. 中川秀直

    中川委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を続行いたします。  この際、池田元久君から関連質疑申し出があります。菅君の持ち時間の範囲内でこれを許します。池田元久君。
  102. 池田元久

    ○池田(元)委員 民主党の池田元久でございます。  きょうは、これから二十五分でございますので、各位、できるだけ御協力をお願いいたします。  現在、政治がまずやらなければならない優先的な課題は何か。国民の皆様の経済、暮らしの不安をなくすこと、経済景気対策であることは言うまでもないと思います。それとともに、膨大な財政赤字は国、地方を合わせて五百二十兆円余り、国民一人当たりにしますと四百二十三万円になる、こういう状況です。将来の世代にツケを残さないということから、財政赤字を抑制し、なくしていかなければなりません。しかし、今の政府方針で財政再建財政構造改革の目的が達成されるかどうか、見ていきたいと思います。特に、財政赤字の国内総生産に占める比率を三%以下にするという目標の年次を二年延長して果たして目標が達成できるかどうか、検証したいと思います。  お手元に、大蔵省がつくりました「財政事情の試算」、平成十七年度、二〇〇五年度まで書いてありますが、あると思います。法案の審議入りを急いだために、事務当局の担当者は大変苦労したそうです。大変御苦労さまだと思います。この試算は、延長した目標の年次、二〇〇五年度に赤字国債の発行をゼロにすることを前提に各年度の歳入歳出をはじき出したものと理解してよろしいでしょうか。
  103. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先生のおっしゃるとおりでございます。
  104. 池田元久

    ○池田(元)委員 これから歳入歳出の各項目をそれぞれ検討していきたいと思います。  まず、歳入のうちの税収ですが、九七年度は補正後五十六・二兆円、九八年度補正後は五十七兆円を見込んでおりますが、九七年度は、経済成長率マイナス成長が必至である、そういう見通しになっていることなどから、この税収の達成は難しいのではないかと思いますが、いかがでしょうか。
  105. 尾原榮夫

    ○尾原政府委員 お答え申し上げます。  平成九年度の税収の動向でございますが、現在判明している直近の実績は三月末の税収でございます。これを対前年同月比で、累計で比較いたしますと、補正後予算では八%でございますが、三・四%ということで、確かに予算を下回っていることは事実でございます。ただ、今後の特殊要因といたしまして、源泉所得税、特別減税によります三月支給分の給与に係る特別減税影響が見込まれる一方で、消費税の引き上げによる増収効果が三月決算法人を中心に集中的にあらわれてくるというふうに判断しておりまして、三月末の税収累計の前年比をもって年度全体がそうなるというふうにはなかなか言えないのではないかと思っております。  いずれにいたしましても、九年度税収全体の動向について申し上げますと、進捗割合がまだ七三%ということで、三割弱今後税収が入ってきます。主なものを申し上げますと、いわゆる申告所得税のうち、確定申告による振りかえ納税分、これが四月の税収になってまいります。それから、法人税につきましては、ウエートが大きいのが三月決算法人でございまして、これが五月の税収になってまいります。したがいまして、この残された二カ月の税収につきまして、どのように出てくるのか、十分注視していきたいと思っております。
  106. 池田元久

    ○池田(元)委員 中身はそうでしょうが、いずれにしても税収の伸びは期待できないと思います。  その他収入というのがありますね。ここに、その他収入、歳入の二番目ですね。この中身はといいますと、外国為替特別会計受入金、日銀納付金などが主ですが、外為特会からは九八年度は一・四兆円も受け入れた。しかし、平年度ペースに戻して〇・五五兆円を基本にするということですから、これも伸びは見込めないと思います。  最近、総理が記者会見した後、政府、日銀は史上最大規模のドル売り、円買い介入をした、それで、政府の方に二千億円収入があったようです。その部分に限っては喜ばしいと思うのですが、外貨準備高が減少するし、いつもこんな介入はできないのではないかと私は思います。  次に、この上の方の歳出を見ますが、今度の改正案では、社会保障費について御存じのとおりキャップを外したために、六千億円から七千億円と言われる自然増経費の相当部分が来年度は支出されるということになろうと思いますが、いかがでしょうか。
  107. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 来年度の一般歳出につきましては、社会保障関係費につきましては今回の法律において特例をお願いしているわけでございますが、その他、公共投資あるいはODA、科学技術振興等につきましては、法律上数量的に明確なキャップを設けておりません。したがいまして、それらにつきましてはこれからの予算編成過程で具体的に検討していくこととなるわけでございまして、したがいまして、全体としての一般歳出がどのような姿になるかというのは現段階では予測できませんので、この表におきましては前年度の数字プラスマイナス・アルファという表の作成をしたわけでございます。
  108. 池田元久

    ○池田(元)委員 これは、前年度プラスマイナス・アルファですが、ここは実際問題として大分厳しいのじゃないですか。  今、私が質問しない先までおっしゃいましたが、それはそれでキャップがかかっている分、そこから大幅カットするのは難しい、こういうことだと思うのですが、社会保障経費の支出、これはどの程度になるのでしょうか。小泉さん、一言。この前、本会議で言った発言を聞いています。——ちょっと時間がありませんので、できれば小泉さん。(発言する者あり)いやいや、事務的な話ではないのです。当然増経費の相当部分が支出されるのではないかという、これは極めて政治的な話ですから、一言答弁をお願いします。こんなことではだめですね。委員長、これは困りますよ。委員長、当然所管事項じゃないですか。
  109. 中川秀直

    中川委員長 ちょっと速記とめて。     〔速記中止〕
  110. 中川秀直

    中川委員長 速記を起こして。
  111. 池田元久

    ○池田(元)委員 社会保障費はキャップを外すことになっていますが、どのような支出といいますか、額になるかお聞きしたい。これはぜひ、キャップを外したのですから、この部分がどうなるか、これは小泉厚生大臣に直接お尋ねをしたいと思います。
  112. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 ことしは当然増が前年度に比べて大体八千億円程度、それで、いろいろな医療費等の見込みというのは暮れにならないとわからない面は若干ありますが、十一年度の当然増というのは、前年度に比べて、今のところ六千億程度じゃないかなと。これも、医療費の伸びを見なきゃわかりません。五千億になるのか四千億になるのか七千億になるのか、その辺は、医療費の趨勢もありますし、わからない点がある。さらに詳しいことなら、事務当局から答弁させます。(池田(元)委員「いや、あなたの方針、あなたの考えは」と呼ぶ)  だから、当然増は、そのときにならないとわからない。そのときに、極力抑制した方向で見ておるけれども、キャップは前年度から二%といいますと、十五兆円の二%というと約三千億ですから、それでは当然厳し過ぎるというのでキャップを外してくれということをやったわけですから、その三千億よりももっと予算を確保するようにする。しかし、無原則な、むちゃな要求をするものではないということで、キャップ停止を求めたわけであります。
  113. 池田元久

    ○池田(元)委員 初めからそういう答弁をしていただければ問題はなかったのです。いずれにしても、社会保障経費を見る限り、相当ふえるということでございます。  次に、国債費です。この一番上の、ずっとありますね。国債の増発が続く、残高がふえるので、国債費は抑制が難しいですね。ひとつ確認したいと思います。
  114. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 先生御案内のとおり、国債費は、発行した国債に係る元本償還とその利払い費が大宗を占めるものでございます。したがいまして、極めて義務的な経費の面が強いわけでございますが、ただ、金利の動向にもある程度影響されるという点は否定できないと思います。
  115. 池田元久

    ○池田(元)委員 抑制が難しいと思います。  次に、上杉自治大臣、地方財政も大変厳しい状況ですね。去年もおっしゃっていましたが、地方交付税の抑制はできないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  116. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 委員御承知のとおり、地方交付税は、地方共有の固有財源でございまして、国税五税の一定割合が地方交付税となることが法律上明確に定められているところでございます。  地方交付税の総額につきましては、毎年度の地方財政対策におきまして、地方財政の運営に支障がないように所要額を確保してまいる所存でございます。
  117. 池田元久

    ○池田(元)委員 端的に、抑制はできるのですか。
  118. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 交付税は、この先生の資料で見れば、大きくなっておる数字になっております。ただ、地方交付税の特別会計の償還が一方にはあるわけでございまして、この数字どおりに大きくなるということではなかろう、こう思っております。
  119. 池田元久

    ○池田(元)委員 以上、「財政事情の試算」の歳出歳入の各項目を見てまいりました。  歳入では、伸びるものがない。税収はむしろ、歳入欠陥のおそれがあるというくらいの報道もあるくらいです。  歳出の方は国債費、地方交付税、一般歳出、このままで、カットできるものはありませんね。その結果、財政構造改革法に沿って毎年赤字国債を減らしていく、縮減していくと、歳出歳入のギャップ、いわゆる要調整額が生じます。毎年度、この試算によれば一・二兆円から九・三兆円まで出ることになります。  名目成長率一・七五、これは現実的な数字だと思うのです。そして、二〇〇一年度からこの表にあるとおり一般歳出の伸びをゼロにする、これも本当はもうちょっとふえるかもしれませんね。なかなか厳しいですね。そうすると、七年間合計すると要調整額は二十六兆円も出ます。二十六兆円出ます。このままでは歳入に増加要因はありません。歳出に削減要因はない。この要調整額をどのように解消していくか、これは財政の大きな課題ですね。それを橋本総理大臣にお尋ねしたいと思います。
  120. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 五月十一日に国会に提出をいたしました「財政事情の試算」、まさに御引用いただいたわけでありますけれども、目標年次を二年延長する、その結果として、要調整額の縮小が今回の経済対策による国債費の増加などに伴う要調整額の増加を上回る、トータルで見て各年度の要調整額が本年一月の中期財政試算に比べて縮小することになる、これはごらんをいただいたとおりでありますけれども、同時に相当程度の要調整額が残るということは事実です。これにつきましては、やはり歳出の中身にまで踏み込んだ構造改革を進めていくということによって解消し、特例公債依存の体質からの脱却を図らなければなりません。  これは国の一般会計の試算についての問題でありますけれども、同時に、特例公債依存からの脱却が平成十七年度にまでこれがうまく持っていければ、地方公共団体財政の健全化の努力と相まって、試算の中にもありますように、目標達成の軌道に乗る、私はそう考えておるわけですが、いずれにいたしましても、財政健全化目標というのは容易に達成されるものではないと従来からも申し上げてまいりました。それだけに、財政構造改革を着実に進めていくという点において、目標達成に向けての努力をしてまいりたいと思っております。
  121. 池田元久

    ○池田(元)委員 なかなか難しいと思います。  この要調整額は、解消できなければ赤字なんですね。これを国債で穴埋めした場合はどうか。前にも一度計算しましたが、その場合、財政赤字の対GDP比はどうなるか、政府の専門家に試算をしてもらいました。お手元にあると思うのですが、この半裁のペーパーです。これは、こちらの方でつくったという資料です。  一番大事な財政赤字の対GDP比は、九八年度補正後は一一・七、それが九九年度は五・〇、二〇〇〇年度は四・八。二〇〇一年度から、歳出の中で一般歳出の伸びをゼロにしたケース、一番下段ですね。(発言する者あり)これは大事な資料なんです。こちらの方が大事な資料なんです。では、口頭で言いますので。  私の方で試算した結果、今、間もなく配られると思いますが一要するに、要調整額を国債で穴埋めした場合どうなるか。一番現実的な数字なのですよ、今なかなか調整できませんから。  そうすると、一番大事な財政赤字の対GDP比は、九八年度は一一・七。それが五・〇、四・八。二〇〇一年度から歳出の伸びをゼロにしたケースでは、四・四、四・一、四・〇、三・六。それで、二〇〇五年度にはどうなるか、ここを見てほしいのですが、三・二%で、目標は達成できません。  これは名目成長率一・七五%、これは現実的だと思うのですが、一般歳出を年率一%で伸ばす場合は二〇〇五年度が三・七、二%の場合は四・一になるわけです。いずれも達成が不可能です。これについて、橋本総理大臣そして松永大蔵大臣。
  122. 中川秀直

    中川委員長 主計局長が答弁を求めています。
  123. 池田元久

    ○池田(元)委員 では、まず主計局長に。
  124. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  先ほど総理からも御答弁がありましたように、要調整額につきましては、基本的には、この財革法のもとでは、歳入歳出両面から解消していくということでこれからの予算編成を行うということでございまして、この先生の御試算の資料は、要調整額をすべて国債発行という前提で計算したのがこの姿でございます。その点ではあくまでも、法案を提出する政府側といたしましては、要調整額は歳入歳出両面から解消を図っていくということでございますので、御理解いただきたいと思います。
  125. 池田元久

    ○池田(元)委員 それは建前でございまして、先ほどから各項目やってきましたね、難しいのではないですか。そう簡単にできますか。  しかも、この試算には、先ほどから問題になっております減税のうちの、九九年に行う二兆円の特別減税は入っておりません。入っていないですよ、方法がわからないからまだ入れないというのです。しかし、試算ですから入れてもいいと私は思うのですが。それから、金融システム安定化のための特例業務勘定の交付国債十兆円は入っておりません。これは償還が行われれば赤字になるわけですね。ですから、赤字のふえる要因は、私の試算、これよりもっとふえるわけですよ。  これで政府は、財政再建の道筋をこれで考える、あるいはこれで財政再建ができるのだと言えるのでしょうか、橋本総理大臣。
  126. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 と申しますよりも、先ほども私申し上げましたけれども、まさに要調整額、今私が申し上げましたような形をとった場合でも、議員が述べられましたような場合におきましても、要調整額というものは、縮減されても相当のものが残るわけです。だからこそ、構造改革が必要であり、そして、その「財政事情の試算」で示しましたような要調整額を解消していこうとすれば、これは、さまざまな施策の組み合わせが必ず必要になります。そして、これは、具体的な政策手段の組み合わせというのは毎年度の予算編成においても考えていくべきことですけれども、社会保障制度のように、仕組み自体をきちんと見直していかなければならないものもあるわけでありまして、決してそれは楽なものだと私は申し上げているわけではありません。  ただ、議員の試算は、すべてを、これを公債金収入で賄うという試算をお示しになったわけですけれども、我々はこれを公債金収入以外で解消していかなければならないわけですから、歳出を、まさに中まで入って見直さなければならないということを申し上げているのもそのゆえであります。
  127. 池田元久

    ○池田(元)委員 要するに、この試算でもまだ甘いといいますか、まだ赤字要因がいっぱいこれにさらにつけ加わるわけですよ。特別減税は入っていない。それから、例の金融システム安定化のための特例公債も入っていない。そして、先ほど菅代表がここで取り上げましたが、恒久減税を行えばどうなるか、これにさらに赤字要因が出るわけです。毎年度、その分赤字になる。そして、最後の二〇〇五年にまたそれも、赤字を解消しなければならない。だから、事実上できないのですよ。恒久減税はこのプランではできないということを申し上げて、また後日、質問をしていきたいと思います。
  128. 中川秀直

    中川委員長 これにて菅君、池田君の質疑は終了いたしました。  次に、太田昭宏君。
  129. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 新党平和の太田昭宏です。  平和・改革を代表して、質問をさせていただきます。  まず、冒頭ですが、インドの核実験について若干お聞きをしたいと思います。  サミットを前にして、インドの核実験という衝撃的なニュースが走りました。大変憂うべき事態です。一昨年九月の包括的核実験禁止条約、この採択によって高まった国際的な核軍縮の流れにまさに逆行するものだということで、怒りを感じるわけです。さらに昨日、再び二回目の実験が行われる。これ自体が大変な衝撃であったと思いますが、この今回のインドの実験を強行した理由、背景についてどのような認識をしているのか、まずお聞きをしたいと思います。
  130. 小渕恵三

    ○小渕国務大臣 このたびインドが地下核実験を行いましたことは、まことに遺憾のきわみでございます。  日本政府といたしましても、在京インド大使を招致いたしまして、昨晩も我が政府の立場を強く抗議をもって申し上げておったところでございます。  そこで、お尋ねのように、どうした背景かということでございますが、それは、インド政府として、シン大使からの御説明によりますれば、近隣諸国との関係において、自国の安全保障上核実験をせざるを得なかったというのがインド政府の立場、こういうお話でありましたが、日本政府としては、そうした状況を理解しがたいということで、再度抗議を申し上げておったところでございます。
  131. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 政府は昨日、インドヘの無償資金協力の凍結などの制裁措置を発表したわけですが、二回行われたということで、私は、さらに追加的な措置というものが必要であろう、このように思っております。  それで、午前中の質疑でも、総理はさらなる措置を検討しているという話がありますが、今検討中なんでしょうが、総理の頭の中にあるその措置というものの内容について、例えば、言える部分があったら御答弁願いたいと思います。
  132. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 繰り返しになる部分は避けたいと存じます。  私どもといたしまして、さまざまな対応を今考えておりますことは事実でございますが、細部にわたりまして今申し上げられる状況に残念ながらございません。  しかし、少なくとも、例えば、我が国だけのことではございませんけれども、我が国が相当程度の関与をいたしております国際金融機関等からの融資に対し、当然ながら我々は慎重にならざるを得ないという気持ちを率直に持っております。そして、当然ながら、我々は、ODAについての一定のルールを、原則を持っておるわけでありますから、こうしたものも我々が考えるべき選択肢の中から全く排除されるものではないと存じます。  ただ、同時に、ここで明らかにしておかなければなりませんのは、インド政府の行動と、一般国民に対して苦しみを与えることが目標ではないということ、この辺の仕分けはきちんと自分自身つけておかなければなるまい。そうした思いがありまして、昨日、無償資金供与につきましても、緊急、人道的な案件あるいは草の根無償というものは除いて、無償の停止を公表したわけでありますが、その他の手段を選択していきます中でも、一般国民を苦しめることが目標ではない。政府に反省を求め、核政策の変更を迫るために何が効果的か、そうした視点から政策選択を行いたい、そのように考えております。
  133. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 考え方としての整理の仕方は、私は結構だと思います。  その上で、私は、明日からサミットが始まるわけですが、非常に大事なときのサミットであろうというふうに思います。この核実験が議題になるわけですが、しかし、その中で、G8の中で四カ国は核保有国、そして四カ国が非核保有国。我が国は、一つは非核保有国であるという一点、また世界で唯一の被爆国であるということ、そして同じアジアの重要な一員であるということ、さらに援助を最もしている国であるということ、そういうことから、ぜひとも広範な論議のリーダーシップをしっかりとっていただきたい。このことが一点です。  そしてもう一つは、平和学の権威である、例えばヨハン・ガルツゥング博士が長年の間、構造的暴力問題ということについて指摘をしている。クラウゼビッツの戦争論に始まるわけなんですが、結局は、バックグラウンドというものをどのように整えていくかということが非常に大事だ。単に制裁措置だけではない、社会的、経済的、さまざまな角度からのアジアの安定ということについてもこの機会にリーダーシップをとることが日本責務である、私はこのように思いますが、いかがでしょうか。
  134. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 既に昨日来、外務省並びに在外公館を通じ、インドの核実験即時停止、同時にNPTあるいはCTBTへの参加を求めるメッセージを早急に出すように、安保理においても協議を開始してもらっております。また、サミットにおきましてもこの問題について十分な議論が行えるように、そしてG8が結束して、明確であると同時に強いメッセージが発出できるようにという準備に入りました。シェルパの諸君にその点では大変苦労をかけておるわけでありますけれども、議長国である英国を初めとする参加国と協力をし、進めていきたいと考えております。  同時に、議員が御指摘になりました視点、私は極めて大事な視点であると思います。それは、ただ単にこの核実験というものだけを問題にするものではなく、人種間あるいは宗教間、さらに長年の歴史的な対立の中におけるものをいかに解きほぐすか、その中にいわば社会的な協力と申しますか、そうしたものを考えていく、そうした余地があることは間違いないと思います。そうした視点も踏まえてサミットの議論には臨みたい、そのように思います。
  135. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 財革法、経済の論議に移りますが、正直申し上げまして、今こうして財革法の改正論議というのがここで行われる。私にとりましては、総理もそうかもしれませんが、朝令暮改で、大変情けないことだなという気持ちがどうしてもよぎるわけです。  昨年、この場所で私たちは、私自身もそうですが、財革法はやめなさい、やるべきではないと再三言ったのに、無理やり政府あるいは自社さきがけ政権はこれを通した。私は財革法の特別委員会委員で、ここで二時間にわたってそのことについては申し上げたのですが、たった半年で、まさに朝令暮改、異例というまさにこの事態の中でなぜに改正を決断したのか、その責任と理由というのをここで明確にしていただきたいと思います。
  136. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、財政構造改革法というものについて、将来と申しますより、もう目の前に迫っている二十一世紀でありますけれども、我々が健全で活力のある経済というものを実現させていくために、十分対応できる財政構造を実現するその必要性というものには何ら変わりがないと思いますし、財政構造改革法の成立ということによって国会の意思というものが財政構造改革に対して明らかにされた、この意義は極めて大きなものだと思っております。  そして、臨機応変の措置ということを今までもしばしば申し上げてまいりましたが、そうした措置は必要でありますけれども、その基本的な考え方というもの、骨格というものはこれからも維持すべきものだ、そのように思っております。  しかし、これを申し上げるとよくおしかりを受けますけれども、財政構造改革法の成立後におきまして、インドネシアなどアジア経済金融情勢の影響、あるいは大型金融機関破綻やいわゆる貸し渋りによる家計や企業の景況感悪化影響というものが、十月−十二月のQEあるいは日銀短観さらに失業率といった新たな経済指標によりまして、証明をされたというか、明らかになったという形になりました。  そして、そうした深刻な経済情勢が新たに判明したということにかんがみまして、政府としては、今回さらなる追加措置を講ずる必要があるという判断をし、我が国経済を力強い回復軌道に乗せていきますためにも、先般、総合経済対策を決定をいたしました。同時に、財政構造改革法につきましても、その時々の経済状況に応じて緊急避難的に適切な措置を講じ得る枠組みを整備する、財政構造改革の基本的な方向性というものは堅持しながら、必要最小限の修正を加えることとしたわけであります。
  137. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 今の御答弁については、私はまた後から一つ一つ詳しくしたいと思いますが、まず、この財革法というのは一体何であったのか、ここの認識が非常に実は大事なことです。どういう方向に経済を向けていくかというところの象徴的なものが、私はこの財革法という法律であろうというふうに思います。  昨年暮れの特別減税の提案あるいは九年度補正、あるいはまた超緊縮の十年度予算、これを最善と政府は言う。成立するや総合経済対策の十六兆円、そして財革法改正……(発言する者あり)今むちゃくちゃだという話がありましたが、文字どおり政府政策は右往左往している。ここは国民が非常に見えないところです。  昨年、九七年の政府経済政策は、正直言いまして、完全に失敗した。景気回復が脆弱であった昨年の春より、消費税日本経済は風邪を引き直す、特別減税打ち切りで風邪をこじらす、そして九月の医療費上げでベッドに伏せて、もう点滴状態。そして、横からは東南アジアの通貨危機というのが押し寄せる。大変な状況というのは当時そのままですよ。  そのときに、私たちは、経済再建そして景気回復が大事だ、財革法というのはあってはならない、こういう主張を言った。それを強引に、まあある意味では、ベッドで点滴状態の人をそのまま急凍冷蔵庫という、財革法という中に押し込んだ。桜が咲くころに冷蔵庫の中にいて、そんなものはとても花が咲くわけがない。  あるエコノミストは、昨年回復軌道に乗ったところで、日本経済号の主翼エンジンである個人消費に九兆円負担増というミサイルを撃ち込んだ、そして撃墜をしてしまった、とどめを刺すように緊縮予算への財革法を決めたんだ、これがとどめだった、このように指摘しています。全く私はそのとおりだと思います。  経済理論的には金融政策がきかない状態の今の日本です。景気回復には財政政策しかないときに、最も財政政策を出動させていかなくてはならないときに手足を縛った、これが財革法と言うことができるのですよ。  総理、この財革法の改正そして十六兆の総合経済対策、これは、今言った財革法というものの位置づけそしてその路線の誤りを正して、経済再建ということに全面転回した、このように受け取ってよろしいですか。
  138. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 またしかられるかもしれないのですが、私は、先ほど来、他の委員の方の御質問に対しても、今のまさに深刻な経済状況にかんがみて、必要かつ十分な規模の総合経済対策を講じ、そのための補正予算提出すると同時に、前提として財政構造改革法についても特例公債発行枠の弾力化などの修正を加えることにいたしました。しかし、これは、我が国経済状況を踏まえて、その時々の状況に応じて、いわば緊急避難的に適切な措置を講じ得る仕組みを、枠組みを整備するものである、その基本的な骨格は維持していると申し上げてまいりました。  そして、財政構造改革必要性はいささかも変わるものではありませんし、同時に、臨機応変の措置というものも必要になるときは当然だということを申し上げてきましたが、今回御審議をいただいております財政構造改革法の改正というものも、このような基本的な考え方に沿ったものでございます。  いずれにいたしましても、財政構造改革というものが、危機的な状況にある我が国財政、これを健全化して将来に備えていける、十分対応できる財政構造をつくるために今なお必要な改革であるということは、私は議員もお認めをいただけると思います。  まさに今回の措置は緊急避難的な対応を私としては考え、その上で景気回復軌道に乗せ得る補正予算を編成し、その他の施策とあわせてこれからの対応をしていきたいと考えております。
  139. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 私は、ここで明確なメッセージを国民に送る必要がある。それは、経済再建なくして財政再建はないんだ、経済再建ということに全面的にここで出動するということを国民は求めている。  私は全面転回ということを言いましたが、なぜかといいますと、いろいろな企業の方あるいはいろいろな方とお会いをしますと、総理の話の中には、やるやらないという話とは別に、経済活性化しなくちゃなりませんよ、景気対策をやらなくちゃなりませんよと言いながら、最後には財政再建も大事ですねという言葉が必ず入って、あの言葉を言われるとどきっとして、がっとブレーキを引かれる思いがすると。  今は景気回復ということの一点突破という、兵を一点に集中するという、その全面転回の戦というものが日本には一番求められていると私は思いますが、再度、どうですか。
  140. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、今議員が私に対する批判とは別に述べられた部分に対して、基本的に異論を唱えようとは思いません。今私どもが御審議を願い、御検討いただこうとしておりますものも、この国の景気回復を本格的なものにしていくための手法であります。  そして、その一つを、当面の内需を呼び起こすための社会資本の整備に置いておりますし、もう一つを、本当バブル後遺症の中でなかなか正体をつかみ得なかった、今も完全につかみ得たかと言われれば私自身不安が残りますけれども、不良債権金融機関バランスシートから落とすための方策を講ずるということであり、さらに、新たな企業が起こり得る、ベンチャー企業が立地し得る、そうした環境を整えていく、そうした方向に向けての対応をとろうといたしております。  そして、不良債権処理、これは金融機関バランスシートからこれを消すということでありますから、それを売るのか、債券化して流通させるのか、そうした仕組みをつくらなければなりません。入り組んでおります権利義務を整理するための仕組みも、委員会という形でこれを御検討いただいているわけでありますし、また、市場もつくろうといたしております。  こうしたものは、ある意味でまさに景気回復に向けて全面的に努力をしていく方向でありますが、それをつけちゃいけないと言われますけれども、やはり私は、財政再建という目標は本当に要ることじゃないだろうか。ばかかと言われるかもしれませんけれども、私は、それはやはり認識は持ち続けたい、続けるべきことだ、そう思うのです。  今申し上げたように、全面的に私どもはこの景気回復に向けての努力をいたそうとしております。そして、少しでも早くこれが実行に移せるように、予算案、関連法案、それぞれの施策を実行するための個別の法律案、御審議をいただき、政府に一日も早く実行に移らせていただきたい、そのように願っております。
  141. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 フィナンシャル・ダイムズの、四月の末だったと思いますが、大きな見出しがついていまして、ブリージングスペースということを日本経済対策について書いてある。そこにはもうさまざまな批判がいっぱい書いてあるんですが、まさに飛び飛びで、島が飛んでいるように、細切れでどんどん飛んでいるように、連続性がないという批判が出ておりまして、私は、全くそういうような行き当たりばったりの経済対策になっているというふうに思わざるを得ません。  一つは、もう一遍私申し上げますが、ブレーキを放せ、もう一つは、ツーリトル・ツーレート、これについてお答えいただきたいと思います。
  142. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ツーリトル・ツーレートというのは、大変おもしろいぐらい私によく各党の方が、どなたかの発言以降、引用されております。  私ども、本当に、今申し上げましたように、我々が野党でありました時代も含め本格的な処理のおくれておりました不良債権の問題を根本的に片づけなければ日本経済というものは離陸できない、そうした思いの中で処理に取り組もうとしております。そのための武器は、御審議をいただいておりますそれぞれの法律案の中に込められております。  私は今一々、今回の経済対策の中身を繰り返したいとは思いませんけれども、要は、我々は金融機関バランスシートからその不良債権を消し去らなきゃなりません。そのためには、これが売れるのか、債券化して流通をさせられるのか、そのための市場の整備をといった施策を進めさせていただきたい。  私は、まさにこうした構造改革を進めていくためにも、一日も早く御審議を願いたい。(発言する者あり)今、本委員会ではない、大蔵委員会だという御指摘がありました。本院と言いかえましょう。本院において、できるだけ早くこうしたものについての、これ以上ツーレートと言われないような御審議をよろしくお願いをいたします。
  143. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 それは、政策のやり方についてツーリトル・ツーレートということで、審議は、私たちはちゃんとこうしてきょうから始めて全力でやっているわけですから、それは取り消してください。  それから、政策路線の誤りと私は申し上げたわけですが、もう一つやはり反省すべきことがあります。それは、手法といいますかやり方といいますか発言といいますか、私はそういうことが大変な不信感を呼んでいると思います。  例えば、尾身長官、昨年、私、十月の二十二日と十月二十八日、財革法で質問しました。当時は、緩やかな回復基調にあると、盛んにそういうことを言った。しかし実際は、現場は違いますよ。データはかくかくしかじかで、緩やかな回復基調でございます、足踏み状態ですと。私たちは、足踏みし過ぎて天井が崩れちゃう、こういうような感覚を持っていた。  そして次には、先ほども話があったけれども、桜の咲くころと。来年の桜なのか、東北地方の桜なのか、北海道の桜なのか。そして、もみじのころなんという冗談までまたどこかから出てくる。景気認識のナビゲーターが私は希望を言ってもらったら困ると思うのです。クールヘッドにウォームハートという言葉があるけれども、一番冷静な頭脳をもって景気認識を、尾身長官、経企庁がしなければならない。  そういうことで、今までの誤りについてどう今反省するのか、そして、今後の景気認識についてどのように思っていらっしゃるのか、何々が咲くころではなくて、もう少し冷静に答えてください。
  144. 尾身幸次

    尾身国務大臣 経済は生き物でございまして、まさに私は、太田委員がおっしゃったように、その時々の経済状況をクールに正確に判断をして政策に反映させる、そういうことが必要であるというふうに考えております。  そういう意味で、昨年秋までは、私ども、消費税駆け込み需要、そのまた反動がございましたが、秋口までは順当な状況になっていたというふうに理解をしております。しかしながら、秋口になりまして、アジア経済の問題あるいは大型の金融機関の相次ぐ破綻等によりまして、消費者マインドあるいは企業家の心理状況が急速に悪化をしたという状況になってまいりまして、昨年の十一月、十二月ごろ、大変に心理面でのいわゆるコンフィデンスの状況が悪くなってまいりました。  それは、一つは、金融システムに対する不安感というものが非常に出てきたわけでございます。それに対しまして、三十兆円の資金を用意して金融システム安定化のための対策を講じました。それによりまして、金融システムに対する不安感、例えば銀行がつぶれるのではないかというような状況はかなり改善をしてきたと思っておりましたが、しかし、その心理的なマインドの低下という現象が、その後、徐々に最終需要、それから雇用生産という実体経済の面に及んできた。  現在は、そういう意味で三月の数字等を見ますと、実体経済面では、失業率三・九%、生産マイナスであるということで、大変厳しい状況であるというふうに理解をしております。たたしかし、消費性向等は三月、多少戻しておりまして、最終需要のマインド的な面はやや改善をしたかなと思っておりますが、これもまたやや、四月、五月の数字を見てみないとわからないという状況でございます。  したがいまして、経済が大変に難しい状況であることは私ども極めて深刻に受けとめているわけでございまして、そういう状況に対応してこの総合経済対策をまとめて、これによりまして経済を順調な回復軌道に乗せたい、そういうことで今全力で頑張っているところでございまして、ぜひ御理解と御支援をお願い申し上げます。
  145. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 私は理解できないですよ。  もう一つ、私は後から今のことについてはまとめて御質問しますが、言葉の重さといいますか、これは私は二月の予算委員会の総括でも申し上げたのですが、閣僚等の発言が非常に軽過ぎるということも最近の特徴であって、これが私は、日本のあるいは世界の不信を買っていると思えてならないのです。  昨年十月に、補正予算について、私は、財政法第二十九条の厳正な適用が必要だ、間違いないですねと。当時は三塚大蔵大臣であった。そして、三塚大蔵大臣は、財政法二十九条は厳正に守ると。私は、重ねて、ウルグアイ・ラウンドというのは、これは当初予算でやるべきものですねと。そのとおりでございます、農政の根幹にかかわる問題だからということを当時の三塚大蔵大臣はおっしゃった。しかし、結局これもいつの間にか覆されている、葬り去られている。  また二月二十六日、私は、予算委員会で、この場で総理質問をした。平成十年度に特例公債を出す余地は一兆三千八百八十億しかない、この毎年毎年赤字国債を下げていくという、これは大変なことになりますよ、この幅はもうありませんねと。これは徹底的に、赤字国債というものもできて、恒久減税ができるようにしなくてはいけないのだということを私は言ったわけですが、総理はこう答えている。九年度補正、十年度予算、金融システム安定化策等の施策が相まって、特別減税の継続を必要としない状態にすることに全力を注ぎたいと思うと。努力しますと言うだけで、そして二月二十六日ですから、まだこれは三カ月もたっていない。  私は、既にそのときに、実は今日の特別減税等々が想定され、財革法改正も考えられていたのではないかと。そして、もうそのときには補正予算という話も当然出ている。そういう中で、平成十年度予算は最善と言い続ける。自民党の幹部がその一方で次々と補正に言及する。さらに、市場にあるいは為替に介入をしていく。PKOとかPLO、リフティングするというようなことが平然と言われるようになってくる。  けじめをつける、言葉への責任ということがないのではないか。教育の問題とかさまざまなことを言うけれども、ここに座っているあなたたちが一番言葉に責任を持って、こうやりますよということを言うのが私は一番大事だと思いますが、いかがですか。
  146. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、二月二十六日の予算委員会議員の御質問に対して、特別減税の継続を必要としない状態にするように全力を尽くすということを申し上げ、結果としてそうはまいりませんでした。この点は、私は自分の力足らずをおわびをいたします。
  147. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 素直な答弁であったと思います。  それで、申しわけありませんだけでは困るわけで、日本国民本当に、自殺する人がどれだけいるかとか、大変な状況という、そこの現実感覚というものと政治の責任ということはしっかり考えてもらわなければいけないし、これは大変な責任だと私は思います。  この不信感というのは日本国内だけではないのですね。より深刻なことは、世界から大変な不信感がある。三月に株価を必死に上げようとした。今私申し上げたPKO、PLO。あるいは四月の初めに、これは私は非常に大変な問題だと思ったのですが、ムーディーズが日本の国債格付見通しをネガティブ、このように変えると発表した。そこから今度は政府がどうも動いたようだ。為替操作をするとか、こんな動きが拡大する。  一つ一つが、実は景気対策をしているように見えるかもしれないけれども、そこの表現の仕方、やり方、そして言ったこととやったことが違ってくる、こうしたことが本当に大きな不信感を世界にまき散らしているということは、私は大変なことであろうというふうに思います。  株価が否定的に反応する。十六兆という、これは未曾有でしょう。しかし、それで株価が上がるかというと、もうオオカミ少年のようになってしまって、上がらない。市場が間違っているのか。午前中の質問をされた方の中にもあったけれども、市場が間違っているのか、また反省というものがあるかないか、これについてお聞きしたいと思います。
  148. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私が申し上げた言葉ではない部分にまで、私は責任は負い切れません。私は、市場は関係ないとか、そんなことを言ったことないはずです。同時に、市場の水準というものに対して、注意深く見守っているとまでは言っても、その水準がどうである、こうであるということも申したことはないはずです。  その上で、私は、議員の今の御質問にこう答えたいと思います。何も私を信じてくれと言っているのじゃありません。しかし、この日本という国の持つ経済力、技術の力、国民の能力、資金、私はこうしたものに国民にもっと自信を持っていただきたいという気持ちは率直にございます。  そして、その上で、今皆様に御審議を願っておりますそれぞれの施策、当面において需要をつくり出す、そのための社会資本整備であり、金融機関バランスシートから不良債権を消すための施策であり、ベンチャー企業というもののなかなか育ちにくい風土のある日本でありますけれども、これを積極的に育ち得るようにしていくための努力であり、さらに、他の議員の方々から既に、その三年をもっと縮められないかというような御論議もありましたけれども、三年以内にできるだけ早く法人課税を国際水準並みにしていこう、そうしたことも申し上げております。  こうしたものを、この国の将来に向けて、景気回復に向けて推し進めていこう、いきたい、そう願って、関連の法案もまたこの補正予算も御審議を願っておりますということを繰り返し御説明をさせていただきます。
  149. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 私は思うのですけれども、政府はいかなる経済的な理論を持って、また支えとして、何を目指しているのかということが、どうも国民にも世界にも、お持ちかもしれません、ないのかもしれません、そういう説明が私は非常に欠けているんだと思います。  レーガノミックスについても評価は、当時はいろいろあったし、また今日もいろいろあるでしょう。減税ということを評価する、あるいは規制緩和という方を評価する、レーガノミックスについても、評価の基準というのはいろいろあろうと思います。しかし、少なくとも言えることは、レーガノミックスというのは、経済学者を初めとしたブレーンの理論的な背景というものがあって、そして国民に真っ向から訴えている、何を目指しているのか、どうして経済が再建されるのか。  私は、そういう説明とか理論的支柱というものが非常に今欠けているということがもう一つは不信になっているんではないのかな、こう思えてならないわけですが、これは簡単で結構ですが、お答えください。
  150. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 レーガノミックスと言われる中にも、第一期政権、第二期政権、さまざまな軌跡を描いておりましたが、これについての評価は、議員もお持ちでありましょうし、私もまた私なりの見方を持っております。  そして、その上で、今政府は、先ほど来申し上げておりますように、本格的に金融機関バランスシートから不良債権を消す、消し去ってしまう、そのためにはいろいろな手法がありましょう。そしてそれは、土地の利用の活性化であり、あるいは都市開発というものに結びついていく、そうした拡大する面をも含めて、他の施策と相まっての景気回復への努力をしようといたしております。  私どもが考えておりますことを要約するならば、まさに一つの柱が、内需を起こしていくための社会資本の整備であり、しかもそれは将来において国民から感謝されるような方向にこれを変えていく、これが一つの柱である。もう一つの柱は、繰り返すようでありますが、私は、日本金融機関バランスシートから不良債権を消し去らなければなかなか金融に対する信頼というものは回復しないと考えておりますので、金融システム改革とあわせてこれらの努力をしなければなりません。  また、新規産業の創出という、言葉は楽でありますが、従来新たな分野で新たな業を開こうとする方々が立ち上げの資金を得るになかなか困難を来していた日本状況の中から、ベンチャー企業の育成という方向へ向けての努力をしていくことであり、法人課税、所得課税等についても考え方は述べておりますが、こうした包括的な努力を払っていくことが今大切なことだと考えております。
  151. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 財革法の内容に入りますが、目標年次を二年延長する。なぜ二年なのかという論議が先ほどからありました。  それを踏まえて申し上げますと、一つは、大蔵省みずからが出した、先ほどもありましたが、「財政事情の試算」。私は、この一・七五%の成長率、これで要調整額が、歳出が二%増の場合、九・三兆になる。要するにこれは、九・三兆は増税でいくのかなと。  何らかの歳出削減で賄うというような話があったけれども、歳出削減で賄うというには、どうも、中央省庁再編という論議を見ても、中央省庁の枠組みだけをいろいろいじっているだけで、中身の行革という論議が非常に欠けているなという印象を持っていまして、何らかの歳出削減で賄うということが果たしてできるのかなと。現実には、今のままのこの景気の低迷状態からいきますと、一・七五%というのはなかなか至難のわざかもしれない。  そういう意味では、二〇〇五年に延ばしたとしてもこれはなかなか厳しいデータであろうというふうに、大蔵大臣みずからが認識されませんか。どうですか。     〔委員長退席、甘利委員長代理着席〕
  152. 松永光

    ○松永国務大臣 二〇〇五年に延ばしましたのは、厳しい状況を考えますと、二〇〇三年のままだというと相当厳しい。厳しい状態のままの財政運営ではかえって内外の信認を失う。そこで、二〇〇五年に延ばして、内外の信認が得られる安定的な財政運営ができるようにしたいという考え方で、二年間延長させていただくということをお願いしておるわけであります。
  153. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 二〇〇三年で厳しくて、二〇〇五年は何とかなるのですか。どうですか。あり得ないんじゃないですか。
  154. 松永光

    ○松永国務大臣 経済を安定した成長路線に乗せ、そしてまた歳出項目については、制度の根源にまでさかのぼって制度、仕組みの見直しをし、聖域なく見直しをして、そして削減への努力をしていく。行政改革による歳出の縮減というものも当然考えなければならぬと思いますが、そういったあらゆる努力をして財政構造を改革していくのが我々の務めであろう。政府におる者だけじゃない、国民の代表として国の将来を担う政治家全部の責任であろう、私はそう思っております。
  155. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 そのためには、二〇〇三年はだめで何とか二〇〇五年はというためには、今、経済再建ということと歳出削減という二つを言われたけれども、そのためには、景気回復するためには、この財革法が結局は、今回の改正では中途半端な縛りになって、経済再建、景気回復はできないのじゃありませんか。
  156. 尾身幸次

    尾身国務大臣 このたびの総合経済対策は、景気を順調な回復軌道に乗せるということと、二十一世紀に向かって活力ある我が国経済社会を実現するために経済の体質を強化、改善するという、二つの大きな目的を持っていると考えております。  そして、その中で、十六兆円規模の財政出動を行うこと。それから、さらに二番目に、経済構造改革を進める。例えば規制緩和とかベンチャーを育てるとか、あるいは金融ビッグバンとか、そういうことをやっていく。そして三つ目に、先ほど来御答弁をいただいておりますように、不良債権処理を進める。  そういう大きな三つの枠組みの中で経済を立ち上がらせていくというふうに考えているわけでございますが、そういうことを考えた場合に、現在の財政構造改革法の改正をもって今の三つの具体的な内容が実現できる、そして、それによりまして経済を順調な回復軌道に乗せ得ると私は考えている次第でございます。
  157. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 私がなぜそういうことを言ったかといいますと、もう一つ民間シンクタンクが出したシミュレーションがありまして、大蔵みずからがその要調整額のことについて言ったことを私は今触れたんですが、この民間シンクタンクの報告によれば、「現行財革法の枠組みを維持する限り、二〇〇五年度時点で赤字国債が十・四兆円残り、財政赤字のGDP比率も四・一%となる」。それで、いろいろな人に見てもらいました。かなり好意的にこの試算は行われている、財政改革に好意的だと言うんですよ。それでさえも赤字国債が十・四兆円残ると。  そして、そこの分析の中に理由として、「大幅な歳出削減を行ったとしても、それが構造改革を伴わない場合は景気低迷を長引かせ、税収が下振れる」。つまり、税収が下振れるという、こういう状況だからということを言っているわけですね。私は、そのことについては念を押しておきたいと思います。  そして、これをどう補うかということです。私は、いずれも、二〇〇五年にしても達成は難しいと思うけれども、重ねて聞きます。昨年十月二十八日の財革委、または本年二月二十六日の予算委で、私はこう言ったんです。財政赤字削減の目標を達成するための手段として増税をするのでは全く意味がない、増税ではなく、歳出を削減する、構造改革をするというのが法の趣旨ですね、間違いないですねと、こう念を押した。  三塚大蔵大臣そして松永大蔵大臣からは、増税による財政改革ではない、また、今の状況国民に増税をお願いするような状況ではないという明確な答弁をいただいておりますが、これは変わらないですね、時々変わるから困るんだけれども。
  158. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。変わりません。
  159. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 それで結構です。  そして、これは総理に、この二〇〇五年問題については念を押しておきたいんですが、一昨年の十二月の閣議決定でこれは二〇〇五年にするはずだったのを、昨年三月でしたかね、総理は、これは不退転の決意だったと思います、二〇〇三年ということにした。これをあえて、総理のこれはリーダーシップと言えるかもしれませんが、そうした。これを今度は二〇〇五年にまた戻す。その二〇〇五年も私は危ういと思う。  これについてはどうですか。
  160. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 確かに、私は、二〇〇五年までに余裕を持って財政再建をある程度片づけたい、そうした思いから、これを、二〇〇三年という選択をいたしました。  そして、二〇〇五年という年を一つの目標として議論が進められましたのには、大きな理由がございます。一つは、まさに、戦後生まれのベビーブームの世代が六十歳を迎える年であるということであります。いつの間にか、第二次世界大戦の敗戦から六十年という日がそこでたってしまいます。同時に、平成七年の十月、G10のリポートの中で、このころになりますと、我が国において、高齢・少子化の延長線上の課題でありますけれども、貯蓄率が顕著に減少し始める、低下し始めるという予想がありました。  それだけに、この二〇〇五年という数字は、我々がどんなことがあってもこの財政構造というものを一定のところまできちんと仕上げておかなければならない年だという思いは強くございます。そして、それに少しでも余裕を持たせておきたい。まさに私が二〇〇三年に繰り上げてこれを考えました。  しかし、今、この弾力条項を入れることを国会がお許しをいただきました場合に、終わりを二〇〇三年にしておきましたときには後の数字が非常にきつくなりますから、少しでもなだらかにするためには、目標年度、最終を延ばす必要がある。しかし、この二〇〇五年という年が、戦後生まれ世代が六十歳という年齢を迎える年であり、G10レポートにおいて我が国の貯蓄率が顕著に低下し始めるという予測をされている年でありますことを考えますと、それ以上後にずらすことは私はすべきではないと考えております。
  161. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 実は先ほど来出ているので、はしょりますけれども、総理が五月一日の自民党の全国研修会で恒久減税に触れて、参議院選挙が終わったころから党税制調査会が間違いなく真正面から取り組んでくれる、政府税調も作業をしてくれると述べたというのが先ほどもありました。  一昨日の財政演説で松永大蔵大臣が、法人課税のあり方について真剣に検討する、そして「個人所得課税のあり方についても、税制調査会において、公正、透明で国民の意欲が引き出せるような税制を目指し、幅広い観点から腰を据えた検討を行うこととしております。」と。  恒久減税に含みを持たせているのか、恒久減税という名に値するのかしないのかよくわからないのですけれども、言えることは、人々の、国民消費というものは一時的な可処分所得の増加でふえるのではない。あすが見える、したがって長期に安定的なものでなければ今消費に回らない。  尾身長官がけさから言われているけれども、消費性向が一時ちょっとよくなったという話をしているけれども、この消費を上げるということからいくと、長期的なものが必要だということで、特別減税ではこれはきかないのですね。きかないのですね。恒久減税でなくては人々は安心しない。安心感がないということが今一番大きな問題ですよ。  しかも、政府のやっておる特別減税、四月九日に総理がわざわざ記者会見をした。四兆だと言った。ああ、四兆すぐ入るのかなというふうに国民は思ったようだが、実は二月が二兆入っていて、どうもこれからは十二月ぐらいになるのかな、そして残りの二兆は来年度だなと、それを聞いた瞬間がっくりした。  慌ててこれを前倒しして、この暮れの二兆を前に持ってくるというので今回少し改正しようとしているのかもしれないけれども、まさにさっき言ったフィナンシャル・タイムズのブリージングスペースじゃないけれども、転々と、去年の二兆分というのが実はことしの二月の二兆で、二兆。そして、ことしの八月ぐらいから二兆、来年はいっかわからないかもしれないけれども二兆。これでは国民は、減税をしたというわけではないのじゃないか、どこに消えたかわからない、こういうことになる。不安感の除去というものが非常に大事になってくる。  そういう意味では、消費というものが、消費不況というものが金融不況と並んで今回の一番大きな要素ですから、消費の低迷を脱するためには、これは細切れのこんな特別減税を、去年分とそしてことしと来年というような形ではなくて、私は、一気にここで恒久減税に踏み込むという政府の明確な意思が必要だと思いますが、いかがですか。     〔甘利委員長代理退席、委員長着席〕
  162. 松永光

    ○松永国務大臣 いわゆる恒久減税の場合は、通常は毎月十二分の一ずつの減税効果がその人に及ぶことになります。特別減税は、一遍にどんと減税効果が及ぶという仕組みでありまして、言うなれば現在の厳しい景気動向に早くきくようにするためという措置としては、御理解がいただけるのではなかろうかというふうに思います。  もちろん、財政演説の中で、法人課税、個人所得課税について、税制調査会の審議を速やかにしていただいて、法人課税については三年のうちのできるだけ早い機会に実行できるようにということを申し上げたのはそのとおりでありまして、そうなりますように努力をしていきたい、こう考えているところであります。  また、税制改革というのは、政府・自民党だけの考え方もさることながら、有力野党の人たちの理解がないというと、実際なかなか実現しにくい面がある。したがいまして、減税論議をなさる場合には、できるならば、法人課税ならばどの部分の改正をなさるのか、なさろうという御意見なのか、あるいは個人所得税であるならば、御存じのとおり、中所得者、低所得者の所得税あるいは住民税負担は、日本の場合には、二度にわたる改正の結果、近代国家の中では一番低いという水準になっておるわけであります。  お座りの鈴木先生などが税制調査会の委員となってやっていただいた。それをある程度実行した結果、今申したようなことになっておるわけでありますが、残っているのが、最高税率六五などというのが残っておるわけでありまして、どういう点に重点を置いた個人所得税減税というふうに、恒久的な減税というふうに考えていらっしゃるのか、お互いに意見の交換をしながら進めていく必要があるというふうに私は考えております。
  163. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 それは、協力して恒久減税をやりますという発言とも見ていいですか。そういうことになりますよ、今の論理は。
  164. 松永光

    ○松永国務大臣 先ほど申し上げましたように、税制調査会で、公正で透明で、そして国民の意欲をわき立たせるような、そういう税制になるようにというわけで、個人所得税課税、検討を願うわけでありますが、お互い国会議員同士、どういうのが望ましいかということをおいおい議論するのもいいことではなかろうか。ただ減税減税と言うのではなくして、内容についても議論をし合うということが大切ではなかろうか。  同時にまた、財源をどうするかという問題が実はあるわけであります。  今委員の御意見の中に、特別減税は、ことしだけの減税あるいは来年だけの減税、だから消費に回らぬという御指摘がありました。そういう面が一部あることは私も否定するわけではありません。しかし、大型の減税をする場合には、当然のことながら、大きな財源が実は必要なのでありまして、それをもし特例公債に全部頼るということであれば、賢明な国民は、特例公債、元利の償還についての負担増がいずれ来るということになることを理解しておるわけでありますから、そういった点も考えながらこの税の問題は検討していかなければならぬことだろうというふうに私は思うわけです。
  165. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 私が先ほどから経済理論ということを申し上げたのは、まさにそういうことで、この恒久減税というのは構造改革ということをもたらすわけですよ。行革なくして財政再建なし、経済再建なくして財政再建なしですよ。つまり、小さな政府ということに踏み込んで、構造改革をするため、そのためにも恒久減税が必要だ、私はこう言っている。  もう一つは、政府がみずから意欲ということを盛んにきのうからおっしゃっているけれども、まさに、サプライサイドに立った意欲ということからいうならば、これはレーガノミックスはそうかもしれません。そういう角度というのをもっと入れた景気対策をやるべきじゃないですか。どうですか。
  166. 尾身幸次

    尾身国務大臣 今、太田委員のおっしゃいました、サプライサイドについて十分対応した景気対策をやれという意見は、全く同感でございます。  そういう意味で、今度の景気対策の中で大きな柱は経済構造改革の推進ということでございまして、規制緩和とかあるいは技術開発をするとか、金融ビッグバンを進めるとかベンチャーを育てるとか、そういうことによりまして、二十一世紀に向かって日本経済の体質を改善、強化していく、そういう中に新しい日本の発展を見出していくという方向性をかなりきめ細かく打ち出しているわけでございます。社会資本の整備にいたしましても、むしろ、情報通信とかあるいは技術開発とかそういう面に重点を置きまして、そういう方向性をしっかり出した上で対策を講じているところでございます。  したがいまして、消費者のマインドも、将来日本経済がしっかり立ち直るという、そのことについての確信を持てるようになりますれば、その結果として消費性向も上がり、お金も使ってくれる、そして景気がよくなるということになると考えておりまして、そういう意味で、構造改革の方向をしっかり出すということが大変大事であるということを、私どもも意識的に考えている次第でございます。
  167. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 そういうことを五月一日とかあるいは一昨日の本会議財政演説等でも言いながら、今度は、新聞とかそういうところを見ますと、赤字法人への課税というような、外形課税の導入というようなことを自民党の幹部が発言をしたり、あるいは課税最低限ということについても、これは庶民からいくと非常に深刻な問題です。それが、一方でサプライサイドというのはいいかもしれませんと言いながら、すぐ、そういうような課税最低限を下げる、あるいは赤字法人課税というのもやるようなことを言って、一番大事な中小企業とかあるいは庶民というものに不安感を与えるというこういうやり方は、私はいかがかと思います。どうですか。
  168. 松永光

    ○松永国務大臣 委員もよく御承知のとおり、この間、三月の時期で法人税の基本税率三七・五を三四・五に、すなわち三%引き下げる、そういう改正を国会で成立をさせていただきました。その結果として、実効税率が四六・何がしというふうになっておるわけであります。  この点につきましては、地方税の関係が諸外国に比べて高い、そういう点から、法人の事業税について外形標準課税も含めた検討をするというふうに税制調査会の答申の中に入っておるわけであります。そしてまた、地方法人課税の小委員会というのもつくられておるわけであります。そうした小委員会等の意見を踏まえて、法人税減税の方向は見出されるものというふうに私は理解しております。
  169. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 財革法が赤字国債を縛っているがゆえに建設国債の方になだれ込む、非常にバランスを失するということは、私は事実の問題としてあろうと思います。  建設大臣、昨年来、公共事業悪玉論というような流れの中から七%公共事業を削る。これがキャップです。社会保障のキャップを外した、一年間。これは一年間だけではなく、今この金融ビッグバン後の日本の社会というのは、競争原理あるいは弱肉強食という非常に熾烈な社会になりますから、そういう点では、社会保障というのは充実させなくちゃいけない、子育て減税というものもやらなくちゃいけない、そして難病対策というのは、削られたならばそれは戻さなくちゃいけない、そういうことを盛んに私たちは言って、その点は十分政府も留意をしてこれからの対策を打ってもらいたいと思います。  一方、建設ということからいきましても、七%削減ということは、新規事業では大体三〇%ぐらいの削減になるのですね。仕事は非常に継続的ですから、そういう点ではこれが一体どの程度の影響かということを私は昨年来聞いてきているわけなんですが、失業者は六十万人出るのだとか、そのうち大体半分ぐらいは建設業の失業になるのだとかいうような深刻な状況になっていて、現実に私たちの周りでも自殺者が出たり、そういうような深刻な状況がありますよ。  こういうことについて建設大臣としてどういう手を打ち、本当は財革法というのはあってはならないなとあなたの心の中では思っているはずなんですが、いかがですか。
  170. 瓦力

    ○瓦国務大臣 太田委員から委員会を通じましてたびたび建設業界における不況の状況についてお尋ねがありまして、その都度お答えもしてまいりましたが、建設投資の低迷など建設市場は大きな構造変化の中にございまして、依然として受注の減少、利益率の低下、建設業は厳しい経営環境に直面をしておる。また、倒産も急増しておる。建設業就業者数も最近減少傾向にある。  この数字はもうおわかりでございますからお示しはいたしませんが、そういう中にありまして、なお、昨年来、中小、中堅業者に対する受注機会の確保でありますとか、貸し渋り状況に対処するための円滑な資金供給の確保でありますとか、いろいろ手だてを講じてきたところでございまして、このたびの補正予算におきまして、公共投資の大幅な追加と切れ目ない執行が確保されることによりまして建設業の経営改善が図れる、そういったことを期待し、我々も全力を挙げて取り組まなければならぬと思っておるわけであります。  なお、委員指摘財政構造改革につきましては、先ほど来、総理、大蔵大臣からも御答弁がございましたが、我が国の子々孫々、将来にかけて我々はいかなる心得を持って臨まなければならぬかということにつきましては、委員も同様にお考えと思うわけでありますが、このことは、私は、我が今内閣のみならず、しかと心得ておかなければならぬことだ。  景気状況につきましては、その時々の対応、手だてをきちんとして、我々は前線に出て景気の浮揚に取り組むことが肝要なことと心得て取り組んでおるところでございます。
  171. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 今回の補正を初め総合経済対策の十六兆のうち、公共事業費は四・五兆、そのうち国費が二・三兆、キャップは外していないわけですね。キャップがきいているから、来年度は九兆円を下回る予算にせざるを得ないのですね。そうすると、またしても二・三兆以上の当初ダウンですから、そういうことからいきますと、大体二五%当初予算はダウンになるわけです。ダウンになって、また今度は補正をするわけでしょう、きっと。当初で削って補正をする、そしてつじつまを合わせていく。ぎくしゃくぎくしゃく現場は大変な状況になってきます。  こんなことなら、キャップを変えるか、もう一度公共事業についてのあり方自体を考えるか、財革法というのをもう一遍考え直すか、何かしなくちゃいけない、私はそう思いますが、いかがですか。
  172. 瓦力

    ○瓦国務大臣 こういう状況の中におきまして、公共事業の実施に当たりましては、我々は、事前、事後のいわゆる費用効果分析、これらにつきましても従前以上にその実施、事業採択に努めてまいるわけでございます。加えて、今日までの公共事業のあり方につきまして、何が効果的かというようなことにつきましても、この機会に存分に私どもは知恵を出して取り組んでまいることが時代の要請でもある、かような認識で取り組んでおるところでございまして、既に御案内のとおり、再評価システムにいたしましても、それぞれに、執行につきまして最善を尽くして効果あらしめたい、こう考えておるところであります。
  173. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 最後に一問だけ聞きますが、貸し渋りが非常に深刻な状況になっています。この貸し渋りには、京大の宮崎先生がおっしゃっているように二つあるということで、一つは、昨年十一月のインターバンク市場における銀行間のいわゆる貸し渋り、もう一つは、銀行のいろいろな企業に対する貸し渋り。こういう二つがあるということを指摘をされていて、私も全くそのとおりだと思いますが、私は、このインターバンク市場も実はクリティカルな状況にあるという認識を一つ持っています。  もう一つは、実は三つ目になるかもしれませんが、金融ビッグバン型貸し渋りといいますか、金融ビッグバンが始まって、世界の銀行を相手にしながらやっているという、銀行のこれからの生き残りをかけた、そういうものが貸し渋り現象というものを実は本格化させている、こう思います。  そういう意味では、非常にこの貸し渋り対策というのが足りないと思います。これについて何か手を打たなくちゃいけない、そして、これについてはさらに留意をしていただきたいということを私は申し上げて、答弁をひとつお願いしたいと思います。
  174. 中川秀直

    中川委員長 松永大蔵大臣。簡潔に御答弁をお願いします。
  175. 松永光

    ○松永国務大臣 簡単に申し上げます。  金融機関の本来の任務は、健全な中小企業等、その企業の必要とする資金について融資をするというのが本来的な務めでありますから、それなるがゆえに公共性がある、こうされているところであります。  であるのに、貸し渋りなどという現象があるということは甚だ好ましくない、こう思っておるところでありまして、先月二十七日も、銀行の代表を大蔵省に呼びまして、その点を厳しく要請をしたところであります。  数字によりますというと、一番ひどかったのが三月のようでありまして、都市銀行についていえば、三月は前年に比べましてマイナス三・四という貸出量になっておった。それが四月になりますというと、プラスの一・五、額にして三兆円ふえているという状況になっておるわけでありまして、少しよくなりかけているかなという感じでありますけれども、私は、安心することなく、十分注視して、必要に応じてさらなる要請もしたい、こう考えているところでございます。
  176. 太田昭宏

    ○太田(昭)委員 終わります。
  177. 中川秀直

    中川委員長 これにて太田君の質疑は終了いたしました。     —————————————
  178. 中川秀直

    中川委員長 この際、参考人出頭要求に関する件についてお諮りいたします。  ただいま議題となっております各案審査のため、本日、参考人として日本銀行総裁速水優君の出席を求め、意見を聴取いたしたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  179. 中川秀直

    中川委員長 御異議なしと認めます。よって、そのように決しました。     —————————————
  180. 中川秀直

    中川委員長 次に、谷口隆義君。
  181. 谷口隆義

    ○谷口委員 自由党の谷口隆義でございます。  まず冒頭、インドが一九七四年以来二十四年ぶりに二回にわたる地下核実験を行ったわけであります。平和を希求しておる人類全体に対する挑戦である、極めて遺憾な行為であると厳重に抗議をいたしたいというように思います。先ほどから同僚議員が外務大臣に答弁を求めておりまして、先ほどおっしゃいましたので、私の方は厳重に抗議を申し上げて終わりたいというように思います。  今回のこの財政構造改革法の改正案でございますが、実は昨日、大蔵大臣が提案理由説明を行われました。この提案理由説明を読んでおりまして私はびっくりしたわけでありますが、先ほど答弁を聞いておりますと、総理も同じようなことをおっしゃっておった。  これは、人口構造の高齢化等、財政を取り巻く環境は大きく変容しており、財政構造改革推進する必要性は変わるものではありません、しかしながら、昨年末に大型金融機関破綻が相次ぎ、また、アジアの幾つかの国で金融経済の混乱が生じたことに伴い家計や企業の景況感が厳しさを増すなど、内外の悪条件が一斉に重なり、我が国経済は極めて深刻な状況にある、こういうような経済状況を踏まえれば、財政構造改革を進めつつも、状況に応じた適切な財政措置を講じなければいかぬ、こういうことなんですね。  これは、よく考えていただきたいんですよ。この財政構造改革法は昨年の十一月に成立したものであります。ここに書いております大型金融機関の経営破綻は、北海道拓殖銀行、山一証券、三洋証券の経営破綻はもう既に十一月には発生しておりました。また、アジア金融危機は、昨年の七月二日にタイのバーツの切り下げから始まりまして、もう十一月には極めて深刻な状況になっておったわけであります。  こういう深刻な状況の中で、我々は景気活性化していかなければいけないとずっと言っておったわけでありますが、橋本内閣は、今回のこの財政構造改革法を成立させたわけでございます。その後、まだ半年過ぎてないですね。しかし、今回のこの改正案を出されて、今、審議をしようということなんですね。  このようなことで、先ほどから同僚議員質問もございました総理の責任の問題。私は本会議で先日申し上げたわけでありますが、このような状態は既に成立のときにわかっておったわけでありますので、そういう状況を十分考慮に入れれば、あの段階でまた再提出をするということをやられたらよかったんですよ。今回、この改正案の内容を見ますと、私は、財政構造改革という精神が抜け去って、抜け殻だけがある、後でまた申し上げますが、このような法案になっておるというように申し上げたいと思います。  まず初めに、総理、成立のときに既にこういう事態が起こっておったということに対して、原案と申しますか、当初のこの法案を成立させたことに対する、総理の責任を含めて、御所見、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  182. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先日、本会議でも御答弁を申し上げたことでありますけれども、バブルの生成から崩壊に至る過程、そしてその後、今日までの間において我が国経済がその後遺症から抜け切れておらない状況にある、言いかえれば構造的な変動が続いていることは、私も決して否定するものではありません。  そして、そうした状況の中で財政構造改革法を考えた、そしてそれが、責任という言葉を今言われたわけでありますけれども、それぞれ今議員が挙げられましたような課題、その影響というのは従来からの予想をはるかに上回るものでありましたし、それは実体経済にまで非常に深刻な影響を及ぼしている事実からも、逆に、申し上げなければならないことだと私は思います。  そして、これは先ほど来経企庁長官も申しておりましたけれども、昨年の七−九の消費性向等がそれなりの手ごたえを与えておったことも事実であります。  しかし、間違いなく、今年に入りましてから景気は一層厳しさを増しまして、そして、本年に入りましてから発表されました十−十二月のQE、あるいは二月、三月の失業率、日銀短観など、新たな経済指標によりましてより明らかになったと考えております。
  183. 谷口隆義

    ○谷口委員 この五月十二日に月例経済報告が出ておりまして、それを見ますと、また大変厳しい状況になっております。御存じのとおりに、完全失業率も、二月に比べまして三月は〇・三ポイント上がって、現在、三・九という極めて厳しい状況になっております。また、百貨店の販売等々を見ますと、大変消費が落ち込んでおるというのを如実にあらわしております。また住宅の販売戸数も、ここに来て急激に低下しておる。  それにつけ加えて心配されるのは、デフレスパイラル。デフレスパイラルに入ったんじゃないかと。先日の、これも五月十二日の日銀の発表によりますと、四月の卸売物価指数は、ことしに入って四カ月の下落でございまして、十年九カ月ぶりの大幅な下落になっておる。デフレの傾向がいよいよ強烈に出てきた。エコノミストによりますと、既にデフレに突入したというようなことさえ言われております。  我々は従来から、先ほども同僚議員がおっしゃっておりましたが、この財政構造改革という趣旨は十分理解ができるわけでありますが、今の経済状況を十分勘案したときに、まずやらなければいけないことがあるだろう、それは景気活性化ではないか、このように強く言っておるわけであります。  実質のGDPを見てまいりますと、七年度が、実質GDP二・八%でありました。また、八年度は三・二%でございまして、この九年度予算で、いわゆる緊縮予算、デフレ予算を政府は組まれたわけでございます。本来これが、経済財政中立予算が執行されておったら、持続的な成長軌道に乗ったはずであるというようにエコノミストが言っておるわけでございます。  昨年四月に、あの消費税の引き上げ、特別減税廃止、また社会保障関係費用の引き上げ、これら合わせまして九兆円の負担増を国民に押しつけたわけでありますが、私は、あのときに政府はどのように考えていらっしゃったのか、大変不思議に思うわけでございます。小石につまずいて、こけたぐらいじゃなかったのかと。すぐに立ち上がるのではないか、このように思ったんじゃないですか。しかし、四月以降どんどん景気が悪くなる一方ですよ。大変深刻な状況になってまいったわけであります。  そのような状況の中で、この財政構造改革は金縛り状態で、景気活性化への政策転換ができない、経済政策の転換ができないというような状況の中で、ますます悪くなる一方というのが現状ではないのか、このように思うわけでございます。  今やらなければいけないのは、私は、この財政構造改革という法律を棚上げして、凍結する。我々野党三会派で昨日共同提案することに決まったわけでありますが、そのように凍結をして、まず目いっぱい景気対策を講ずるということが大事なのではないかというように思います。  アメリカで財政赤字が大変な状態でありましたが、この五年間で急激に減少した大きな理由の一つは、五五%が景気拡大効果である、このように言っております。  このような財政構造の改革には、歳出を削減する、また増税をして増収を行うということだけで財政構造改革ができるのではなくて、財政構造そのものの構造改革をやっていかなければいけません。  今の状況を考えますと、経済はデフレギャップが生じておる、このように言われております。いろいろはかり方、計算の仕方があるのでしょうが、GDPの一二、三%のデフレギャップがあるのじゃないか、このように言われております。そうしますと六十五兆円程度のデフレギャップがある。エコノミストによりますと、十四、五兆円と言う方がいらっしゃいますが。このようなデフレギャップがあるような状況の中では、先ほど出ておりましたが、レーガノミックスの折のラッファー・カーブというのがありますね、税率の引き下げによって増収を生じさせるというのは、あのときには大変厳しい批判を受けたわけです。ところが、このようなデフレギャップが生じておるときには、十分そのようなことは考えられるわけであります。  そこで、先ほどから議論になっております減税の問題になるわけでございます。恒久減税が果たして今回の財政構造改革でできるのかどうかというようなことになるわけでございますが、これはまた後ほどお尋ねをいたしたいというように思いますが、先ほど私が申し上げました、アメリカの財政赤字がこの五年足らずのうちに急減した理由は、これは米国政府の資料によりますと、五五%の景気拡大効果であったと。先進国の共通課題である財政再建を進めるに当たって、景気や民間活力への配慮が極めて重要であるということを米国政府はおっしゃっておるわけでございます。財政赤字を今急いでやらなければいけないというヨーロッパ、また我が国に対して、増税であるとか歳出削減に寄り過ぎて景気を冷やし過ぎないようにと、このように言っておるようであります。  そういう状況の中で、私は、この財政構造改革法そのものが、先ほどから申し上げますように金縛りになっており、また今回の法案そのものも、これも後ほどお話をさせていただきたいというように思うわけでございますが、社会保障関係費用のキャップをなくしたり、目標年次を先送りにしたり、弾力条項を入れたりというような形で、形は残っておるけれども精神はなくなってしまった、こういうようになったのではないか、私はこのように思うわけであります。  私たちは昔、新進党で、私もおりました。新進党におったときに……(発言する者あり)十八兆円減税というのを我々が叫んだわけであります。そのときに、今与党の諸君が笑われましたが、潮笑に似た批判を我々は受けたわけでありますが、あのときに我々の申し上げておった減税をやっておれば、今回、この三十兆円に上るような公的資金の導入、また十六兆円に上るような大型経済対策をやっていなかったと思いますよ。何か大きな景気の問題、破局的な、破滅的な景気の問題が出てきたときにそれに対して行うとか、外圧があるから、外圧の結果、経済対策を行うとかいうようなことではこれはだめなわけでありまして、私たちは、そういう意味で先見性があったというように思っておるわけであります。  また、それ以外にも何点か申し上げております。  九五年八月に法案を出しておるわけでございますが、有価証券取引税、九五年八月に出しておりました。これは否決されたわけであります。九五年八月に我々は出したわけでありますが、九八年一月に与党の方はこれを出されて、半減でございましたがやっている。  取引所税も同じく九五年八月に我々は出しておるわけでございます。これを本年一月に成立させたわけであります。これも半減で成立させておる。  地価税も、九五年八月に我々は法案として、凍結すべきであると言っております。これも九八年、本年の一月に凍結。  法人税の税率につきましても、我々は、国際的整合性の観点から見ますと実効税率を四〇%にすべきである、このように言っておったわけでありますが、ここへ来て、本年の法人税法の改正で、これは満足いくわけじゃありませんが、四六・三六%、このようなことになって、先ほど総理お話を聞いておりますと、三年以内に四〇%にしたいというような御答弁があったというように思います。  特別減税につきましても、我々は継続すべきだと言っておったわけでございますが、これは否決されたわけであります。そして、ここへ来て急にまた、特別減税をやるのだ、このようにおっしゃったわけであります。  国民は、新進党の折に我々が掲げた政策は正しかったのだと、今私が地元に帰っていろいろな話をしますと、あのときの政策は正しかったですね、このように言いますよ。今政府のやっていることは、全く意味がわからない。外圧がかかれば経済対策を行う、あのときにやらないと言っていたことをやる、こういうような連続で、極めて国民の信頼感を失ったのではないかというように思うわけでございます。  先ほど出ておりましたが、本年の本予算の審議の前に既に補正予算を行うというようなことを自民党の幹部がおっしゃる。それで株価を上げる。三月末の株価はどんなことがあっても一万八千円にしたいのだというようなことをおっしゃる。そのために、簡保であるとか郵貯の自主運用の部分をPKOで株式市場に入れるのだと、恥ずかしげもなくおっしゃる。  今、我が国はビッグバンをやろうといたしておるわけでございますが、ビッグバンというのは、御存じのとおり、開かれた市場にしていこう、我が国企業だけではなくて、どんどん海外のプレーヤーに入ってきてもらおうと。そのときには、ぜひとも必要なのは、透明性、また情報公開ですね。そういう状況の中で、今私が申し上げたようなことが行われておるというようなことで、私は大変遺憾に思っておるわけでございます。  今とらなければならないのは、一貫した経済政策、それも、明確に従来の経済政策を転換したということを宣言することであるというように思うわけでございますが、総理の御所見をお願い申し上げたいと思います。
  184. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変広範な問題に触れられながら、最後に、明確な国民に対しての政策メッセージを求められました。  私どもは、今まさに、景気回復のための喫緊の課題として幾つかの施策を国会に御審議を願っております。その一つは、まさに補正予算そのものでありますし、また、特別減税の法案もあります。そして、私どもは、基本的に今、景気の立て直し、回復に取り組むためには大きな柱が幾つか必要であり、それぞれに国会の御承認を得て一日も早く実行に移させていただきたいと考えております。  その一つは、まさに内需を起こしていくという視点から、社会資本の整備でありますけれども、これは国民の税金を使わせていただく仕事でありますし、また、国債という名によって将来から借金をさせていただく仕事でありますから、当然のことながら、重点的、効率的なこれの使用を考えなければなりません。そして、ダイオキシン対策を初めとした環境、あるいは医療、福祉、科学技術、高度情報通信、物流といった、これから、将来の国民が暮らしを振り返ったときに感謝していただけるような分野に重点的にこれを使おうといたしております。  同時に、何といいましてもやはり、私は、日本内外の市場における信認を回復していくためになさなければならないこととして、金融機関における不良債権を根本的に処理してしまわなければならないという問題があると思っております。言いかえれば、金融機関バランスシートから不良債権を消してしまわなければならない。そのためには、売却という手法もありましょうし、証券化という手法もありましょう。そのためには、入り組んだ権利義務関係を整理するための仕組みとしての委員会組織を考えたり、あるいは担保つき証券の市場をつくり上げることを考えたり、さらに、これは土地利用の活性化あるいは都市再開発といったものにも結んでいかなければなりませんから、こうした仕事を一方で進めていこうといたしております。  また、我が国は、ややもすると従来から、業を起こしにくい国、ベンチャー企業の立ち上げのしにくい国という批判を受けてまいりました。この数年、こうした方面に意を用いてまいりましたけれども、必ずしもこれが十分だったと言える状況ではございません。開銀の融資等を見ますとそれなりのものはございますけれども、それでも、例えば欧米に比べればそれは低いものであります。こうした新たな業が立ち上げられるような状況もつくり出さなければなりませんし、先ほど引用されましたが、法人課税を三年以内に国際水準並みに下げていきたい、そのためには、法人事業税の問題も含め、外形標準の問題も含め議論をしていかなければならない、そのようなことを申し上げてきたところであります。  アメリカの例を引かれましていろいろな御意見をいただきましたが、九三年に就任されたクリントン政権におきましても、財政赤字削減は最重要課題の一つでありました。そして、いわゆるOBRAを初めとする歳出削減、歳入増加措置をとり、九七年八月には、いわゆるメディケア、高齢者等医療保険などの歳出削減を行う法改正を実施する、そうした非常な努力の結果として、九九年の財政収支均衡という予算教書が出ております。ただ、この米国の財政収支、これは、社会保障年金でありますとか郵便事業等の黒字も含まれるわけでありますから、我が国とはちょっと仕組みが違いますけれども、やはりこの財政収支均衡への努力というものは私は評価しなければならないと思います。  そして、先ほど議員から、財政構造改革法をとめてしまえ、あるいはやめてしまえ、そういう意見もいただきましたけれども、私はやはり、先ほど太田議員の方にもお答えを申し上げましたけれども、二〇〇五年、戦後生まれの方々が六十歳になる、そして我が国の貯蓄の減少が加速化する、そう言われている時期を、巨額の財政赤字をなおふえ続ける状態で置いておくということはいかがなものか、これは私は本気でそう考えております。
  185. 谷口隆義

    ○谷口委員 この財政構造改革法改正案の詳細について質問をする前に、今総理がおっしゃったことで、私、一つ気にかかったことがあるのです。  これはおわかりになっているのかどうかわかりませんが、金融機関不良債権処理のことをおっしゃったでしょう。金融機関不良債権処理というのは譲渡したり証券化したり、こういうふうにおっしゃったわけですが、例えば、仮にA銀行があって、ここに一億の不良債権がある。これを譲渡するでしょう、大体二千万か三千万。外資系なんて、一割ぐらいで買うらしいですよ。一千万。九千万はどうなりますか。損になるのです、売却損。その段階で含みの損が実現するのですよ。この含みの損が実現するということはどういうことかといいますと、今、自己資本比率が大変厳しい状況であります。この自己資本比率が一挙に悪化する、こういうことになるのを御存じですか。ですから、それは極めて重要な問題なんです。総理、どうぞ。
  186. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 わかっているかと言われれば、どこまでわかっているのか、私も金融機関の内部を全部知っているわけではありませんから、それはわかりません。しかし、バランスシートがその場合に非常に大きな赤字を計上することになる、当然のことながら、その程度の常識は持っておるつもりであります。しかし、逆に、それではそれを残していつまでも大事に抱えていくので しょうか。今、私は、少なくとも一般常識程度には持っておると思いますが、専門機関におられた方々の知識に及ぶほどの知識は持っておりません。
  187. 谷口隆義

    ○谷口委員 いや、そういう専門知識というほどのことでもないわけです。ですから、要するに、そういうことが起こるので不良債権処理は極めて難しいのですね。それができれば簡単にできるわけでございますが、そういうスキームが、SPCも今審議しておるわけでありますが、簡単にできないのです。それをやってしまうと、せっかく四%、八%で今小康状態になっている金融機関が、またがたっとなってくるというようなことになるわけでありまして、そういう状況を十分勘案しなければいけないということを申し上げたいわけであります。  それで、財政構造改革法の改正案につきましてまず初めにお聞きしたいわけでございますが、財革法の五原則というのがありましたね、五原則。この二つ目に、今世紀中の三年間を集中改革期間として歳出の改革と縮減に一切の聖域なしとするというようになっておるわけでございますが、この改正案は、この集中改革期間は放棄したのですか。まず初めにそれをお聞きしたいと思います。
  188. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、財政構造改革法の基本的骨格は維持すべきであると思うということを、本日も何回か御答弁を申し上げてまいりました。そして、我が国の将来を考えますときに、経済構造を活力のあるものにしていく、それを実現するためにも十分対応できる財政構造というものを我々は持たなければならない、その必要性は変わりないと申し上げてまいりました。  改正案におきまして、社会保障関係費について、緊急避難的措置として平成十一年度に限っておおむね二%というキャップを停止することにいたしましたが、財政構造改革法の基本的な骨格である主要な経費に係る量的縮減目標の仕組み、財政健全化目標は堅持をするとともに、その時々の状況に応じていわば緊急避難的に適切な措置を講じ得る枠組みを整備する、そのための必要最小限の修正にとどめております。ですから、財政構造改革法に定められた三年間の集中期間、その考え方についても変えておらないつもりであります。
  189. 谷口隆義

    ○谷口委員 集中改革期間は変えておらない、残ったままであるという御答弁でございました。これはまた後で出てくると思いますが、集中改革期間、これでまた金縛りになって減税ができなくなってしまう可能性がありますよ。後でまた申し上げます。  それと、先ほど民主党の池田議員が、この「財政事情の試算」というのを見ながら御質問がございました。これを見まして若干理解のできないところがございますので、大蔵大臣にお聞きいたしたいと思います。  この歳入のところの公債金収入の特例公債がありますね。特例公債、赤字国債。この当初予算のところは七・一兆円、補正後で二兆円特別減税で上積みされますから九・一兆円ですね。その後の平成十一年度から十七年度までの間の減額がずっと書いてありますね。一兆円ずつ減額をしていくということになっておるわけでございますが、これは七年かけて一兆円ずつで七兆円なんですね。七兆円ということは、当初予算の七兆円を前提にしておりまして、特別減税の二兆円、上積み分の二兆円はどうなるのですか。
  190. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  今回提出いたしました資料の中にも、「財政事情の試算」の注中でお示ししているところでございますが、二兆円につきましては、今後どういう形でやるかというのが決まっておりませんので、その部分については今回この試算の中には入れておりません。
  191. 谷口隆義

    ○谷口委員 私が言っているのは、十年度の二兆円の減税と、また来年、二兆円やるというのでしょう。これも載っていないのですよ。この既に確定した二兆円、補正後の二兆円と、来年の二兆円も載っていない。だから、この公債の減少が、この二兆円が加わると、一兆円じゃなくて一・三兆円を削減していかないとゼロにならない。
  192. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 今回の補正予算におきまして御審議をお願いいたしております二兆円の減税につきましては、今回、補正予算の中で特例公債の増発要因になっておるわけでございます。ただし、これはあくまでも特別減税でございますので、特殊要因であるということでございます。そういうことで、当初予算ベースにおいてはこういう特殊要因は除いておるわけでございます。
  193. 谷口隆義

    ○谷口委員 それはまたおかしいな。  そうすると、要するに、これは補正予算は対象外になっているわけですね。補正予算であれば、建設国債でも赤字国債でも発行し放題、こういうことになるわけですか。計算に入れていないということですか。大臣、ちょっと答えてください。
  194. 中川秀直

    中川委員長 いま一度主計局長が答弁を求めています。
  195. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答えいたします。  先ほど申し上げましたように、十年度補正予算におきまして特例公債を増発した分につきましては、これはあくまでも単年度の特殊要因ということで来年度の当初の中には入っておりませんが、ただし、それの関連の公債費は、当然のことながら、後年度の推計の中には入れております。  それから、十一年度に行う二兆円の特別減税につきましては、その方法等については今後検討することとされておりますので、これによる影響については、今回の試算に織り込みようがないものですから織り込んでいないということでございます。
  196. 谷口隆義

    ○谷口委員 それは総理がおっしゃったように、これはもう来年も二兆円やるというようにおっしゃったわけでしょう。そうすると、公債の減額の計算、一兆円ずつ毎年減額していくというのは、そういうことを考慮しておらない数字になるわけで、「財政事情の試算」がおかしいんじゃないかと言われても仕方がないですね。  大蔵大臣、どうぞ答弁を。
  197. 松永光

    ○松永国務大臣 今主計局長が答弁したとおりになるわけでありますが、今委員指摘のとおり、十年度当初の特例公債発行七兆円、これをもとにして、七年かけて一兆円ずつ減額ということで今お示ししておるところでありますが、十年度補正をして、そして二兆円減税を追加する関係上、十年度補正後の特例公債は九兆円になるわけですけれども、それは十年度の特殊要因によって膨らんだものであって、十一年度予算ではその九兆円を出発点にして減額するものではない。でありますから、七兆円を出発点にして一兆円ずつ減らすという計算になっておる、こういうことであります。そういうことになっておるわけであります。
  198. 谷口隆義

    ○谷口委員 これは要するに、結果的に今の二兆円減税に二兆円積み増して四兆円。来年また二兆する。来年二兆ということは、二兆を減額するということですね。最終的に、それを入れてネッティングになると同じになる、こういう発想ですか。
  199. 涌井洋治

    ○涌井政府委員 お答え申し上げます。  十一年の二兆円の減税の方法につきましては、いろいろなやり方が多分あろうかと思います。そのやり方についてまだ決まっておりません。したがいまして、その減収が、その減税のやり方によって、今年度に出てくるのか来年度に出てくるか、今の段階では確定できませんので、今回のこの試算においては織り込んでいないということでございます。
  200. 谷口隆義

    ○谷口委員 極めて不満是な答弁ですが、これにかかっておりますと時間がなくなりますので、同僚の質問の折にでもまた申し上げたい。  あと、日銀の総裁がきょう来ていただいておるので、ちょっとお聞きしたいことがございます。  四月九日に総理が発表されました減税案、本予算の成立の翌日に減税案を発表されました。九八年度は四兆円の減税、九九年度は二兆円だけ継続するというようなことでございました。  その日に円安が発生したんです、急激に円安が。それで、百三十三円台までになりました。日銀がこの四月九日、四月十日と、二日間にわたって円買い、ドル売りの介入を行ったわけでございます。これは過去最高で、二百億ドルですよ。二百億ドルというのは大変な数字なんですね。我が国の外貨準備が今二千二百億ですか。我が国の外貨準備の一割弱を介入資金に投入したのですから、大変な金額になるのです。カナダ一国の外貨準備にほぼ匹敵するのですから、二百億ドルというのは。インドネシア、オーストラリアの外貨準備を上回る金額なんですよ。これを四月の九日と十日の二日間に分けて介入したわけであります。介入直後は一ドル百二十七円四十銭まで上昇したわけでございますが、この月、四月の三十日には百三十一円台に戻ったわけであります。今これは、昨日も円のレートが百三十四円ぐらいになっておりましたが、このような状況になっておったわけでございます。  その余波と申しますか、このような介入を行った結果、四月の十四日でございましたが、短期金融市場で、この介入資金が予想外に多かったものですから、金融機関預金をしておる資金を吸い上げたわけですね。大量の資金が市場から調達されたわけで、有名な都銀の一行が資金不足に陥ったのですよ、考えられないですが。これは、金融機関もいわば大変不用意なことではあったのですが、急遽日銀が貸し出しを実施して事なきを得たというようなことなんです。二百億ドルに上る介入資金を出した結果、このような問題が起こった。  まず、このような介入は果たしてどのような意味があるのか、またどういう意図で行われたのか、お聞きいたしたいと思うのです。これは大蔵省になるのかな、大蔵省の国金局。
  201. 黒田東彦

    ○黒田政府委員 お答えいたします。  委員御承知のとおり、個々の介入の金額あるいはその効果等につきまして申し上げることは、マーケットに不測の影響を与えるおそれがありますので差し控えたいとは存じますが、一般論として申し上げますと、介入は、当然のことでございますが、相場の行き過ぎに当局としての明確なメッセージ、シグナルを送るという意味が一つございます。また、市場の需給関係に一定の変動をもたらすものであるということで、短期的な効果云々もございますし、仮に短期的に明白でないという場合であっても、中長期的に見ますと、やはり相場に一定の影響を与える効果は持つものではないかというふうに考えております。  いずれにいたしましても、我が国経済としては為替相場の安定が非常に重要であるということで、今後ともその動向については十分注視して、行き過ぎた円安につきましては、やはり適時適切に対応していく必要があるというふうに考えております。
  202. 谷口隆義

    ○谷口委員 このときの円安は、先ほども申し上げたように、総理の大型景気対策を発表した直後に、市場は円安に進んだわけであります。市場の方は、総理のメンツを保つために介入したのではないか、このように言っておるわけであります。総理、二百億ドルというのも異常な数字なんです、先ほども私が申し上げましたように。  こういう状況の中で、景気対策の発表直後に円安が進行するというような事態になったわけでございまして、この景気対策そのものが市場によって無視された、そういうような形になったわけであります。これに対して、総理、御所見、御答弁をお願いいたしたいと思います。
  203. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今議員からは、介入というものを前提とし、その金額まで明示をしてさまざまな角度からの御意見の後の御質問をいただきました。  私自身は、介入というものがあったのかなかったのか、あったとすればどのようなタイミングで、どれぐらいの金額で行われたのか、あるいは、なかったとすればなぜなかったのかを含め、お答えをすべきことではないと考えておりますし、そのような性格のものだと存じます。  また、総合経済対策発表直後に市場がどう動いたかということについて御意見を賜りましたが、私どもは、発表はまさに発表でありまして、実行に移していく、これが非常に大切なことでありますし、しかも、迅速な対応を求められていると思っております。そのためにも、十年度補正予算及び関連法案の速やかな成立に心からの願いを今込めております。
  204. 谷口隆義

    ○谷口委員 要するに、市場は、マーケットは、先ほどから同僚議員質問にもございましたが、ツーリトル・ツーレート、余りに対策が小さ過ぎる、また遅過ぎるというように評価したわけでございまして、このような円の為替相場になったということであります。  きょうの午前中に、与党議員質問の中に、マーケットを無視するぐらいのというような話がございましたが、この国民の声またマーケットの声は始終聞いていかなければいけません。我が国政策を打ち出す場合に、このような声を無視してやるというのは大変問題があり、危険だというように私は申し上げたいと思います。  御存じのとおり、経済はグローバル化がどんどん進んでおります。こういう状況の中で、アジアの通貨危機の折にマレーシアのマハティールとソロスの論争等がございました。ヘッジファンドというのがありますが、このヘッジファンドは、OECDの統計によりますと、約一千億ドルある。一千億ドルというのは、大体このヘッジファンドが一千億ドルあれば、この十倍をしかけられる、こういうようなことでございます。今我が国が二百億ドルの介入をしても、そういう市場の流れの中で余り、若干影響があったというように国金局長はおっしゃいましたが、昔ほど効果がなくなっておるわけでございます。ですから、そういうことを行うことによって、先ほども申し上げました  この介入資金は二つ方法があるのですが、一つは、外貨準備で米国債を持っているわけですが、米国債を売るのか。また、市場の金融機関に置いておる預金を吸い上げるのか、どっちかなのです。二百億ドルもそのような市場から吸い上げてしまいますと、これはそのような問題が起こってくるのです。市場全体が資金ショートするのです。  また一方、米国債なんて売ってみなさい。総理がデンバー・サミットの折にちらっとおっしゃったら、翌日、アメリカの株式相場が大暴落、こういうような状況になったわけです……(橋本内閣総理大臣「その日に下がっちゃった」と呼ぶ)その日に下がったでしょう。その日に下がったのです。  そういう状況なわけでございまして、そういう極めて全体的な視野でやっていかなければいけないというように思うわけでございます。そういう状況を勘案しながら、ぜひやっていただきたいというように申し上げたいと思います。  先ほどの財政構造改革法について一つ質問漏れがありました。  先ほど申し上げましたように、今回の改正案は、社会保障関係費用のキャップが外された、こういうようなことでございます。先日、小泉厚生大臣の本会議の答弁を聞いておりましたら、財政構造改革の精神を念頭に入れながらやりたい、こういうような御答弁でございました。これは平成十一年度だけキャップを外すということなのですが、高齢化はこれからもどんどん進んでいくわけでございます。  厚生大臣にお聞きしたいわけでございますが、十一年度のみキャップを外すということについての大臣の御答弁をお願い申し上げたいというように思います。
  205. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 社会保障関係費は、制度を改正しないと、ほっておっても高齢者がふえますから、年金にしても医療にしてもどんどん増額していきます。そこで制度改正をしなければならないのですが、十一年度は、制度改正で費用が削減できる状況にはありません。  今、医療制度におきましても年金制度においても、制度改革を前提にそれぞれ審議会で御審議をいただいておりますけれども、いずれも十二年度以降であります。そこで、十一年度、制度改正しないで国庫負担を削減するということになりますと、現行制度でやらなければならない。  なぜもっと早く制度改正しないのかという声もありますけれども、三十数年間なれてきた制度を一挙に抜本的に改革するわけですから、時間がかかります。  ということで、私は、十一年度を上限枠を外してくれた方が、十二年度以降の制度改正に国民の理解が得られやすいと思う。十二年度以降は、キャップがはめられても、上限枠が設けられても、医療に例をとれば、むだな部分を削除する、あるいは効率化を図っていくということによって削減できる部分がかなり出てきます。  でありますので、私は、十二年度以降は、制度改正がきいてくるような改革をいたします。そのことによって、私は、十二年度は上限枠を設けても結構だということで、十一年度だけの上限制の停止を求めたわけであります。
  206. 谷口隆義

    ○谷口委員 いずれにしても、当初の財政構造改革法案からしますと、社会保障関係費用のキャップが外れたということは法案全体の整合性から問題があるということで、冒頭私が申し上げたように、今回のこの改正案については精神が抜けて、抜け殻だけ、このように申し上げたいと思います。  あとは、日銀総裁にきょう来ていただいておりますので、質問をいたしたいと思います。  今、民間銀行が日銀に預けております準備預金がございますね。準備預金の残高が九八年三月末に五兆七千三百三十八億円に達した、九〇年十一月以降、七年四カ月ぶりの高水準になったと。  これは、不慮の預金の引き出しなどに備えるために、銀行が法定準備率以上に積み上げておるというようなことです。優良な銀行のところへどんどん資金が今集まっておりますので、そういう金融機関が法定準備率以上に積み上げておる。そういうような原因で、結局、本来貸し出しに回る資金が日銀に預けられたまま、このようになっておるわけであります。  御存じのとおり、準備預金は民間銀行による日銀預金で、残高の一定割合を無利子で、これは無利子なんですね、日銀に預ける義務がある。昨今の金融不安で、預金信用力の高い金融機関にざあっと集まりますから、自己防衛という意味で、利子を生まない準備預金に積み立てられておる。この結果、市中では貸し渋りが起こっておる。総理、貸し渋りが起こっておる。  この一つ原因は、公的資金を入れても、この資金が日銀の行内で準備預金として残っておって、それも不必要に残っておって、利子を生まない。本来金融機関は、経営を優先するなら、貸し出しをして、収益を生むところにこの資金を回すべきなんです。こういうことをやらないで、やっておるというようなことでございます。  私は、そういう意味において、今、預金準備率を引き下げる等の措置をやらなければいけないのではないかというように思うわけでございますが、総裁の御見解をお願い申し上げたいと思います。
  207. 速水優

    ○速水参考人 現行の準備預金制度、これは御指摘のように、各金融機関預金残高に一定の準備率を掛けた金額を日本銀行の当座預金に積み立てることになっております。  金融機関全体で今、一カ月平均で約三兆五千億、毎日積んでおればいいわけでございますが、御指摘のように、三月末、銀行が決済がかさむということを予見いたしまして、当座預金残高がこの日だけ五兆七千億になったことは御指摘のとおりでございます。しかし、その翌日からはまたぐっと落ちてまいっておるわけでございまして、平均三兆五千億というのが保たれていけばそれでいいわけでございます。  日本銀行としましては、決済需要が増加する期末にこういう短期金利に対して強い上昇圧力がかかってくる、そのために、積極的に資金の供給を行うことによって市場金利の上昇抑制に努めてきておるわけでございまして、このようなことで、三月末の当座預金残高が増加しているからといって、金融機関が余剰資金を貸し出しに回さず当座預金に積み上げ続けている、あるいは準備率が高いために資金が還流しないというようなことではございません。この点はぜひ御理解いただきたいと思うのです。  準備率というのは、どこの国でもそうでございますが、公定歩合や金融調節と並んで、特に短期金利の安定化のためには欠くべからざる存在でございます。政策委員会金融政策決定会合の中で、常に、金融政策を決めますときにこのことも含めて検討いたしております。  前回、四月二十四日の決定会合では、最近の金融経済情勢に関するさまざまな討議を経て、金融政策運営全般について現状維持を決定したわけでございまして、私どもとしては、今後とも、政策決定会合で十分討議を尽くした上で、政策の運営に誤りなきようにしてまいりたいと思っております。
  208. 谷口隆義

    ○谷口委員 今総裁の御答弁をお聞きしますと、この準備率を引き下げるということについては言及されなかったわけでありますが、やはりおかしいと思うのですね。三十兆円の公的資金、十三兆円は優先株なり劣後債、劣後ローンで資本注入をするわけでしょう。お金に色はついておりませんので、この資金が日銀に行って、金利のつかない、必要以上に積み立てられておる。その結果、本来市中に回らなければいけないのに、国民はもう今大変です。地元に帰っても、貸し渋りの問題は大変な状況になっております。この五月十二日の月例経済報告を見ましても、倒産件数がここに来て一挙にふえております。  大変な状況になっておるわけでございまして、そういう状況にかんがみると、総理も大蔵大臣も、銀行経営者を呼んで、貸し渋りのないようにというようにおっしゃったのでしょう。おっしゃったにもかかわらず、こういうように日銀の内部で留保されたままで市中に回っておらない。それも、金利がつかないのですよ。金融機関の収益はこれで悪化するわけですよ。これは極論を言うと悪化するわけですね、金利がつかないわけですから。  本来、金融機関は収益を生むところに資金を運用しなければいけない。そういうことからしますと、この預金準備率の引き下げも十分検討する余地があるのではないかというように思うわけでございますが、もう一度総裁の御答弁をお願い申し上げたいと思います。
  209. 中川秀直

    中川委員長 簡潔に御答弁願います。
  210. 速水優

    ○速水参考人 先ほど申し上げましたように、三月末、一日が五兆七千億になったわけで、その前の日も、その後の日ももとに戻っておるわけで、全体として下げるかどうかというようなことは、これは金利政策とも関連し、金融政策全般の中で討議してまいりたいというふうに思っております。
  211. 谷口隆義

    ○谷口委員 時間が参りましたので、これで終わります。
  212. 中川秀直

    中川委員長 これにて谷口君の質疑は終了いたしました。  次に、佐々木憲昭君。
  213. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 日本共産党の佐々木憲昭でございます。  日本経済はかつてない深刻な事態に陥っております。失業率は三・九%で最悪。倒産も激増し、追い詰められた中小業者が自殺するという痛ましい事件も相次いでおります。  昨年四月から実施されました消費税の増税、これを初めとする九兆円の負担増が個人消費を急速に冷え込ませたということは明白であります。景気対策ということであれば、国民の懐を暖めて消費を拡大するということがやはり決定的だと私は思います。  ところが、今回提案されております総合経済対策というのは、これにまともにこたえておりません。相変わらず公共事業が中心であります。もちろん、私たちは公共事業一般を否定するものではありません。生活に密着した社会福祉施設あるいは教育施設、下水道、生活道路、これらについてはまだまだおくれていると思っております。これらはやらなければならない。しかし、ゼネコンの浪費型公共事業、これは抜本的にメスを入れてむだを省く、これが私ども日本共産党の基本的な立場でございます。  そこで、初めに、財政構造改革法との関係についてお聞きをしたいと思います。  橋本内閣が最重要課題といって昨年十一月に強行しました財政構造改革法、これでは一切の聖域なしということで、一律カットというのが最大の特徴だったわけでございます。公共投資の場合は七%カット、こういうことでありました。ところが、今度の補正予算では、公共投資額は約三兆四千億円の積み増してございます。この結果、本予算と合わせまして十三兆四千億円。これは前の年の当初予算と比べまして実に二五%の増額でございます。  総理にお聞きをいたしますけれども、これで公共事業を抑制するという方針は転換されたとみなしてよろしいでしょうか。
  214. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほどから他の委員の方々にもお答えを申し上げてまいりましたが、私どもはこの財政構造改革というものは、将来を見据えたとき、本当に必要なものだと考えております。  その上で、今、景気回復という問題に取り組むときに、一つは、内需を起こす手法として社会資本の整備というものがございます。そしてその中で、真に国民の暮らしに直結し豊かになる社会資本を重点的に整備をするということだけではなく、三年間のコスト縮減の取り組みによりまして公共工事の建設コストの少なくとも一〇%以上の縮減を目指す、また、各種事業間の連携あるいは費用対効果分析の活用などによる効率的な整備推進とチェック機能の強化を図る、同時に再評価システムを導入するといったことにより、一層の効率的な実施を図っていこうといたしております。  当然ながら、そのほかに私どもは、金融機関不良債権処理の問題、これはバランスシートから消してしまわなければならないということまで私は先ほど申し上げましたけれども、あるいはベンチャー企業の育成の問題等々をあわせて国会で御審議をいただこうとしておるところであります。
  215. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 公共投資を抑制するという方針を転換したのかどうかということをお聞きしたわけでありますが、どうも明確な答弁はないわけです。しかし、七%をカットすると言いながら実際には二五%ふえているわけですから、これは明らかに転換であります。いわば公共投資については聖域にしている、もとに戻ったということでございます。  そこで、この公共投資の拡大という点について、今回重大な問題があると私は考えております。  まず第一の問題点は、そのほとんどが従来型の公共事業だという点でございます。  今度は、新社会資本という言葉は使われておりません。  環境・新エネルギー特別対策だとか情報通信高度化・科学技術振興特別対策という、確かに名前は変わってはおりますけれども、これは一体どこが新しいのかということになるわけでございます。  補正予算を見ると、例えば建設省の関係では、その四割が道路整備であります。しかも、物流効率化特別対策として道路整備というのが半分を占めておりまして、これは拠点港湾や空港を結ぶ幹線道路建設でありまして、高規格道路が中心です。  運輸省はどうかといいますと、公共事業のうち、中枢・中核国際港湾、空港の整備、複合一貫輸送対応ターミナル、これで約六割。これは、何も新しいものではございません。しかも、大型事業が中心でありまして、結局、看板は変えたけれども中身は変わらない。いわば、看板倒れの従来型対策ではないのかという感じがしますが、総理、いかがでしょうか。
  216. 松永光

    ○松永国務大臣 お答えいたします。  今委員は、共産党も公共事業一般を否定するものじゃない、下水道あるいは福祉施設、教育施設、これは賛成だとおっしゃいました。今度の補正予算で、重点を置いているのは、まさにそこなんです。  まず第一に、環境・新エネルギー部門で、事業費ベースが一兆六千、国費が七千八百四十九になっておりますが、その主なるものは下水道事業とそれからダイオキシン対策費、これが重点であります。さらにまた、福祉・医療・教育、この分野が、事業費ベース一兆円。さらにまた、物流効率化というのは、せっかく高速道路ができておってもそこから中心市街地に行くところ、あるいはまた住宅地域に行くところ、そういう道路がなければ国民にとってはうまく利用できないという点があるので、物流を効率化させるという意味の道路は入っておりますけれども、実は主たるものは環境・新エネルギー、情報通信高度化・科学技術振興、福祉・医療・教育、これが全体の公共事業の六割を占めておるわけでございます。
  217. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今そういう説明があったわけですが、私ここに、例えば建設省の資料を持っております。道路整備が四割。しかも、物流効率化特別対策というのは全部が道路であります。情報通信は、最大の費用が道路。中心市街地活性化、中心は道路。全部道路じゃないですか。ですから、何か新しいことをやったとか生活に関連することだけをやったかのようにおっしゃいましたけれども、実はそうではなくて、従来型のゼネコン奉仕型ということにならざるを得ない。  例えば、四月二十五日、朝日新聞はこのように報道しております。建設省の伴襄事務次官が、土木系建設会社百七十九社でつくる日本土木工業協会のパーティーに出席をしております。それで、次のようにあいさつをしているのですね。ちょっと静かに聞いてくださいよ。「「新社会資本」とかが騒がれてたいへんだったが、ふたを開けたら我々の言う「本来型」事業に大幅に補正が付いた」、このようにあいさつしまして参加者から拍手を浴びた、こう報道されておるのですね。まさにここに本音が出ているわけであります。従来型の内容が中心だ。それで、補正がついた、よかった、よかったというので関係者が万雷の拍手だと。これが実際じゃないでしょうか。  二つ目の問題について申し上げたいのですが、大手ゼネコンに工事が、公共事業がどんどん大型化しますと、どうしても大手中心になります。それで、中小企業にはなかなか仕事が回らない。  これまで、緊急経済対策が繰り返されるたびに事業規模が拡大されてまいりました。例えば、そのために資本金一億円以上の企業が受注したのは九〇年で六・四兆円、それが九六年になりますと八・五兆円、この間三三%ふえている。これに対しまして、資本金二千万円未満の地方ゼネコン、中小零細企業の受注、これは九〇年の六・九兆円から九六年の五・九兆円、一五%落ち込んでいるのです。とりわけ資本金一千万円未満の零細業者は十分の一に落ち込んでいるのです。  ですから、結局、従来型の公共事業をどんどんふやして、ゼネコンには仕事は回るけれども、なかなかこれは中小零細企業に回っていかない、これが実態でございます。  今度の緊急経済対策も、結局、高速道路、拠点空港、港湾の整備、こういうものが中心であります。なかなかこれは中小企業仕事確保ということにつながっていかない。やはりこの点を是正しない限り、経営者の自殺が相次いでいる中小建設業者の救済、こういうところにはつながらないというふうに思いますけれども、この点、いかがでしょうか。
  218. 瓦力

    ○瓦国務大臣 佐々木委員の御質問でございまして、まず中小零細企業の受注の機会の確保でございますが、これらにつきましては、上位ランクヘの参入機会の拡大でありますとか、経常JV制度の活用でございますとか、分離・分割発注の推進等、それぞれ手だてを講じながら努めておるところでございます。御党を支援する団体の方々にも私は極力お会いをして状況をお聞きもいたしまして、格別これらの仕事が、今こういう景況でございますから、広く行き渡るような努力をしなければなりませんが、恣意的な行為は私どもとしてはできませんので、それぞれ努力をいただいておるところでございます。  また、大蔵大臣からいろいろ、従来型であるとかあるいは浪費であるとか、そのようなことに対しまして、かつてはそういう時代もあったかもわかりません。しかし、もう建設省も経済官庁であると同時に総合政策官庁でございまして、十分に公共事業につきましても配慮をいたしながら、ハイテク等の、トンネルなんか見ましても、穴掘りだけするような仕事ではございませんから、ましてや道路も、道路という二文字になりますと、従来の車だけ走ればいいというのと違いまして、我が国の道路はもう福祉型の道路に切りかえていかなければならぬ、そういう課題も持っておるわけでございます。  それぞれに私どもはコストを縮減し、費用効果をまた考慮し、経済効果我が国の地方にまで均てんされるように努力しておるわけでございまして、従来型公共事業というその言葉につきましてはいささか理解をしがたいものがございます。  今後とも、良好な環境の保全、創出に資する下水道でございますとか、生命財産、これらを災害の危険から守るための手だてでありますとか、あるいはまた豊かな国民生活、経済社会の実現のために社会資本の整備をしなければならぬ。  委員は北海道のお生まれでございますから、いわゆる崩落事故でありますとか、大阪へ参りますといわゆる阪神・淡路であるとか、そういう基盤の弱い国土でございますので、安心できる国土につくり上げていくというのが大事な仕事でございますから、委員におかれましても、むだであるとかという表現は社会資本整備には極めて意外な発言でありますので、よくお考えいただきたいと思います。
  219. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今聞いていないことまで長々と答弁されましたが、幾らそういうことを言いましても、本来型事業に大幅に補正がついた、建設省の事務次官が言っているのですよ。だから、在来型の今までのやり方をやったというので盛んに強調しているのですから、大臣が幾らそんなことを言ったってだめです。  それからもう一つ、中小業者の問題、これは極めて重要な問題でございます。結果的に中小業者に仕事が回っているかどうか。幾らそのように努力しますと言っても、先ほど述べましたように、現実の数字が、中小業者に回っていないということを建設省の統計が示しているのですから、その点は十分実際に回るような、そういう手だてを打つということが重要だと私は思うのです。  それから、今回の公共事業の第三の問題点、それは地方単独事業をどんどんふやしていくという中身になっております。一つの柱であります。ところが、マスコミの調査でも、消極的な自治体が多く、総額一兆五千億円の実現は困難だ、こういうことが明らかになっております。地方単独事業に消極的な自治体が多いということでありますが、その理由は、総理、どのようにお考えでしょうか。
  220. 上杉光弘

    ○上杉国務大臣 お答えいたします。  総合経済対策の決定に対しましては、非常に厳しい地方財政状況にかんがみまして、私、直接地方六団体の代表の皆さんにもお会いし、また種々の機会を通じまして地方の状況を把握したところでございます。  それらを踏まえて、総合経済対策により追加される公共事業及び地方単独事業の円滑な実施が図られますように、特に四千億円の地方交付税の増額を図りますとともに、所要の地方債の措置を講じたところでございます。そして、この結果、地方団体の財政運営には支障が生じないように適切に対処をいたしておるところでございまして、私は、昨夕も地方六団体の代表の皆さんとお会いいたしました。御理解をいただいておるものと承知いたしております。
  221. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 いろいろ上から旗を振ってやっていただこうということ、そういう答弁でありますけれども、しかし、現実の自治体の側の財政事情というのは大変厳しいものであります。財源の多くは地方債の発行、こういう借金でございます。そのため、財政危機にある自治体は、これ以上の借金はもう限界だ、こういうふうに言っているわけです。  五月一日の日経でありますけれども、都道府県の単独事業の追加に関する調査が載っております。「可能な限り上積みしたい」と答えたのは岩手県一県しかありません。「これ以上の実施は財政運営に深刻な影響が出る」、こう答えたのが東京、神奈川など四県。「最低限の追加にとどめたい」というのが静岡、京都など九県。合わせて十三県が、困る、こう言っているわけでありま肥す。  総理にお聞きしたいのですけれども、総理の選挙区である岡山県でも、追加投資の財源は全くない、景気回復協力したいがこれ以上の借金は限界に来ていると。確かに岡山県は全国でも最悪の財政状況でございます。  地方自治体というのがこういうふうに消極的なわけでありますから、これは幾ら通達で押しつけても景気回復につながらないし、また自治体の財政赤字を増大させていく、結果として財政危機を深刻化させる、こういうことになるのではありませんか。
  222. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私の郷里まで御心配をいただきましてお礼を申し上げます。知事が上京をいたしましたときにも、県の財政状況の厳しさ、その話は、私自身も、これは内閣総理大臣としてではなく、県出身の衆議院議員の一人としても話を聞く機会がございました。  そうした中で、今御指摘のように、全国の中でも非常に厳しい状況を抱えている県の一つであります。同時に、県民の中にさまざまな事業を求めている県民がいることも、私は自分の郷里のことであるから存じております。県としてもさまざまな工夫をされるでありましょうが、それはひとり岡山県だけの話ではなく、全国それぞれの地方公共団体は、先ほど自治大臣から御答弁がありましたように、工夫をし、努力をしてくれる。それでまた、地域住民の方々の選ばれるような分野に、望まれるような分野に事業が行われていくであろう、そのように考えております。
  223. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 現実に税収が落ち込んでいるのに自治体独自の公共事業に充てる借金をふやせば、ますます借金漬けになるわけであります。自治体の借金は今、百六十兆円ということでありまして、これはもう政府経済対策をやるたびに借金がかさんできているわけであります。  自治体の借金がかさむということになりますと、何が起こるかということですね。まず、土木費にかなりとられますので、民生費や教育費を中心とした市民向け歳出というのが削減されてまいります。さらに、使用料、手数料、例えば保育料ですとか授業料ですとか、こういう分野が値上げされる。いずれにしましても、住民に対する圧迫になるわけであります。公共事業を地方に押しつける、こういうやり方はやはりやめるべきだというふうに私は思うのです。  そもそも、景気対策のために公共事業を上積みしてばらまくというやり方は、既に有効性を失っている。総額先にありきということになる、さらに、それを消化するために浪費やむだを拡大する、財政悪化に拍車をかける。こういうことはやってはならない禁じ手だというふうに思うわけでありますが、財政との関係で、総理の見解をもう一度伺いたいと思います。
  224. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 議員が御指摘になりますように、ばらまきはよくないと思います。重点的に、国民の喜ばれるような方向に使用していきま す。
  225. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 実際に、総額をまず決めるわけですね。通常の予算じゃありません、補正予算というのは、まず幾ら幾らという総額を決めて、その総額をどのように消化していくかというのがやり方でしょう。ですから、その消化をどうするか。地方自治体に対して、単独事業はこれこれの金額、もう示しているわけですから、それをやりなさい、こう言うわけであります。消化しなければならぬ。しかし、借金もしなければならない。大変な矛盾を抱えるわけです。その結果、逆に、住民の側にしわ寄せがいっている。  こういうやり方については、これは総理自身が今まで言ってきたことにも反するのじゃありませんか。  例えばここに、総理官邸のホームページに載った、昨年六月三日の財政構造改革会議長終報告、橋本総理の記者会見の記録がございます。  この中で、このように言っております。「確かに我が国バブル崩壊後、経済状況に対応するために景気対策として大型の補正予算を何回も編成をし、これによって景気のてこ入れをしてきたことは私、決して否定しません。 しかし、その結果、ある程度景気は立ち直った、そういう局面もありましたけれども、公債残高は非常に増えて、財政状況本当危機的な状況にあります。」このようにおっしゃっている。  さらに続けて、我々は例えば財政制度審議会からもこういう財政による景気刺激ばかりを用いるとか、体質が結果として体力がなくなってしまう、そういった御指摘も既にいただいています。こうした状況の中で、私は本当にこれから安易に財政に依存しない、そういう手段を使いながら安定成長につなげていきたい、こういうふうにおっしゃっているのですね。  ですから、実際に、今まで言ってこられたことと現実にやっている結果というのは全く逆だということになるのじゃありませんか。  私は今まで答弁を聞いてまいりまして、今度の経済対策というのは、公共事業を事実上聖域化している。これはもう非常に大幅にふやした。二五%もふやした。  しかし、それでは社会保障の方はどうか。構造改革法でキャップがはめられた。本年度の当初予算では、必要な予算増、これは当然増ですが、五千億円もカットされました。このカットされた五千億円というのは、今度の補正でもとに戻されましたでしょうか。
  226. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 もとに戻したということではありません。新たに必要な、ダイオキシン対策とか廃棄物処理対策、福祉関連、今までできなかったことを公共事業に加えてもらいたいということで、補正で認められた。さらに、十一年度のキャップを停止するということが認められたのであって、戻したということではございません。
  227. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 結局、戻っていないわけですね。今までカットされました、例えば難病患者に対する医療費の自己負担の導入、あるいは母子家庭の児童扶養手当に大幅な所得制限を強化した、こういう点は全然戻っていないのですよ。一方では公共事業をどんどんふやすけれども、社会保障の方は抑え続けたままじゃないですか。  構造改革法の強行で、今年度予算から、難病患者医療費の一部自己負担が押しつけられている。五月からこれが実行されております。本当に血も涙もないという声が上がっているのですよ。  国の難病特定疾患に指定されている、例えば膠原病患者。膠原病患者でつくっている膠原病友の会、ここが、一万三千人を対象に大規模なアンケート調査を行っております。これほど大規模な、詳細な調査は初めてだと言われているわけですが、それによりますと、現在仕事についていない人は六三・二%。そのうち三四・六%が、病気原因で職を失った、うち二・三%が退職させられた、こう回答しているのです。発病によって家計の赤字がふえたり、家族関係が悪化したと回答した人も四九・七%に上っております。これは極めて深刻な状況です。  これらの方々にとって、公費負担というのはまさに命の綱であります。絶対にこういうところは削ってはならない。財政難のツケを難病患者に回す、しかもわずかな金額です。そういうことは絶対にやってはならないと私は思うのです。  総理の決意をお聞きしたいのですけれども、こういう部分は直ちに復活するというのは当然じゃありませんか。いかがですか。
  228. 小泉純一郎

    ○小泉国務大臣 共産党の意見を聞いていますと、福祉関係はすべて削減してはいけないということに聞こえるのですが、難病患者に対しても、難病に指定されているけれども、難病に指定されていない方よりも軽い患者もいるわけです。本来だったら、難病の対象項目も検討し直さなければならないという議論もあるわけです。難病対策においても、負担できる方はできるだけ負担してもらおう、重症の方は全部公費で見ますよということで、いろいろな難病の見直しもしなければならないという意見にこたえて、重点化、効率化を図ったのです。福祉関係予算は二%しか伸びていませんが、難病対策費は二〇%伸びているのですよ。その点を評価していただきたいと思うのです。
  229. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の答弁は全然なってないですね。全体が伸びたと言いますけれども、難病患者の一部自己負担というのはそのままじゃありませんか。復活していないでしょう。結局、そういう形で、本当財政全体からいえば、公共事業の膨大な数からいえばほんのごく一部、それを回せば難病患者の方々の生活が救えるのですよ。そういうことをやらないということが、まさに今の橋本内閣の冷たい姿勢をあらわしていると私は思うのです。  九九年度、キャップを外すということもありますけれども、しかし、それは当然増で若干緩めるという程度のものであります。しかも、先ほどもおっしゃっていましたように、今後、年金や医療などの制度改悪を計画して、これは変更されていない。再来年はこれを強行する。私は、こういう姿勢はやはり転換すべきだ、こういうふうに思うわけでございます。浪費を生むような公共事業はやはり削減をする、そして社会保障に回す、暮らしと福祉に回す、これが経済全体にとっても安定的な経済発展につながるのですよ。  例えばここに、大阪地方自治研究センターの永峰幸三郎氏の研究がございます。この研究によりますと、「福祉サービスと公共事業の経済波及効果の比較」というのがあります。こういう種類の研究は今までもなくさんございまして、例えば三菱総合研究所あるいは長寿社会開発センターあるいは学者のグループなど、そういう研究の中で、例えば産業連関表を使いまして、それで例えば一兆円を公共事業に回した場合には、福祉に使った場合にはどういう違いが出てくるか。公共事業の波及効果は二兆八千二百五十五億円。福祉の場合には二兆七千百二十億円。同じ一兆円を公共事業と福祉に使った場合の波及効果経済的波及効果、これはほとんど差がないのです、確かに。しかし、雇用をどれだけ拡大するかという雇用効果を見ますと、公共事業の場合には二十万七千三百九十九人。福祉の場合には、同じ金額を使っても二十九万四百六十九人。これはもう福祉は抜群の効果がある。ですから、私どもは、こういう分野にこそ資金を回すべきだ。  これは決して、福祉というのはお荷物という考え方はやめていく必要があると思うのです。高齢化社会に向けても、この福祉の分野を充実するということは、それらの方々の生活を安定させるということにつながるだけではなくて、経済全体の正常な発展、安定的な発展につながっていく、こういうことをこれは証明していると思うわけでありますけれども、この点で、公共事業と福祉との関係で、明らかに公共事業よりも福祉は効果があるという点は、総理、お認めになりませんか。
  230. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 先ほどからの御議論を聞いておりますと、途中から、公共事業における、特に中小零細企業の受注機会の問題から、本当にどこかでその福祉の問題にお話が変わっておりまして、その上で、そのお話雇用の問題に変わりました。  私は、福祉というものが人手の必要な仕事であることをよく承知しておるつもりでありますし、今あなたからの御質問で改めて考えるのではなく、福祉のマンパワーをいかにして確保するかというのは、以前から私どもにとって非常に切実な一つの課題でございました。それは、福祉だけではございません。医療における看護職の問題を含め、医療、福祉の関係の人材を確保するというのは大きなテーマであります。それだけ人手の必要な分野であります。そして、そのマンパワーとして求めなければならないものと、公共事業におけるまさに人件費コストとして考えられる部分とを直接対比されて、どちらが効果があるかという御論議をされるのは、私はちょっとすりかえだと思うのです。  むしろ我々は、医療、福祉の分野に、将来、間違いなしに今よりも多くの人材を確保しなければなりません。同時に、公共事業というものの持つ経済効果というものも除外して議論をすることはできない性格のものだと思います。
  231. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 私の立場は一貫しております。公共事業の中で、浪費部分は抑えなさい、中小企業に重点的に、生活密着型に変えなさい、全体として縮減をしながら。そういう内容をまず明らかにし、同時に、公共事業と福祉を比べた場合にどちらが経済効果雇用拡大効果があるか、こういう点で福祉の方が大きな効果があるということを、研究を紹介しながら述べたわけでありまして、そういう点を十分に踏まえて政策転換をするというのが、今後の日本経済日本の社会にとつて重要だという点を指摘しているわけであります。  もう時間がありませんので次に参りますが、減税問題。  緊急経済対策では、今年度二兆円、来年度二兆円、こういうことでありますけれども、時限的な所得減税、一時的な所得減税というのはやはり限界がある。つまり、期限が切れたらその後は増税、こういうことになるわけでありまして、いろいろな投書もありますが、結局、将来増税になる可能性があるのであれば今回の減税は貯蓄しておこう、こういう発想にどうしても庶民の側がならざるを得ないわけです。  いろいろな調査がありますが、例えば日経の意識調査を見ますと、買い物などで消費支出をふやすかという問いには、「変わらない」と答えた方が七六・一%、圧倒的多数。「増やす」と答えた世帯は七・七%。したがいまして、私はこの問題については、やはり一時的な減税ではなくて恒久減税にすべきだ。そしてまた、消費拡大ということを言うならば、消費拡大のために一番効果があるのは消費税の減税。消費税の減税というのは、買い物をするためにすべての国民に及ぶ。しかも、所得の低い方ほどそちらに減税が回って消費の拡大効果が抜群であるということが明らかでありますが……
  232. 中川秀直

    中川委員長 佐々木君に申し上げます。お約束の時間が参りました。
  233. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 総理にお伺いしますが、恒久減税と消費減税、当然やるべきだと思いますが、いかがでしょうか。
  234. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 もう時間がないようでありますので、簡単に一言。  算数で、合わない数字というものはやはりできない算数だと思います。
  235. 佐々木憲昭

    ○佐々木(憲)委員 今の答弁は不満ですが、時間が参りましたので、終わります。
  236. 中川秀直

    中川委員長 これにて佐々木君の質疑は終了いたしました。  次に、濱田健一君。
  237. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 社会民主党の濱田健一でございます。  財政構造改革は、我が国財政危機を克服すると同時に、超高齢化社会に対応する財政支出構造に変えていくことが最大の眼目だったと、半年前を思い出して考えているところでございます。しかし、その超高齢化社会を支える社会保障関係費について、他の項目と一律の縮減規定を設けたことは的を得ていなかったのではないかなと私は反省をしているところでございます。したがって、今回の財政構造改革法の改正で、先ほどから出ております社会保障のキャップが外れるということについては評価をしているところでございます。  しかしながら、先ほども答弁がございましたけれども、その措置が来年度だけというのは我が党としてはちょっと納得できない。再来年からはまたキャップをかぶせるということになると思うんですが、また外すというような繰り返しにならないんだろうか。つまり、国民の不満、将来への不安というものを解消するためにも、社会保障関係費は通年的にキャップを外すということを講ずるべきだと思うんですが、総理、いかがでしょうか。
  238. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 平成十一年度の社会保障関係費、これは、毎年社会保障の世界においては多額の当然増が見込まれるわけでありますし、その縮減をしようとすれば制度改正を必要とする、そうした特質を持っている社会保障関係費。そして、現下の経済情勢を考えましたときに、平成十一年度の社会保障関係費の歳出削減のために新たな負担を国民に求めることがないように、できる限り配慮する必要がある。そうしたことを考えた上で、緊急避難措置として、平成十一年度に限ってこのキャップは停止をいたしました。しかし、それは無制限でいいということではありません。増加額は極力抑制していただきたいと思っております。  平成十二年度は、財政構造改革そのものの必要性は何ら変わらないということだけではなく、薬価制度、診療報酬体系の見直しなどを内容とする医療保険制度の抜本的改革が平成十二年度を目途に実施されるということが今考えられているわけであります。そうしたことが行われることによりまして、医療、福祉の分野における効率化が期待できることから、現行財政構造改革法の規定が適用される。その中で、将来に向けてのやはり制度改正は、行うべきものはきちんとやっていかなければならない、私はそう考えております。
  239. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 いわゆる経済状況景気の低迷というものが、いろいろな要素が言われておりますけれども、やはり不安要素というものをどう実態的にも精神的にも取り除くかということが、これからますます大事になっていく。そういう面では、今総理が答弁いただきましたようなところも、注意深くこれからも対応すべきは対応していただきたいというふうにお願いを申し上げたいき思います。  公共投資について二点お伺いしますが、今回の経済対策では、十二兆円以上の財政出動が行われることになります。過去最大ということでございますが、いろいろ見てみますと、あそこにもここにもという形で、若干焦点が絞り切っていないのかな、もちろん総合的に手当てをするということも必要なわけですが、めり張りのきいたものにすべきだったのではないかという感じが私いたしているところでございます。  福祉や環境そして情報といった分野に配慮をされていることも評価をしたいというふうに思いますけれども、先ほどから出ておりますとおりに、これまでの枠内といいますか、域といいますか、なかなか、ぽんと殻を破ったような、おお、こういうところにすごいなというのがちょっと見られないような気がしておりまして、景気回復経済の伸長に十分な効果が上がってほしいというふうに思うんですが、どうなんだろうかということも考えております。  見通しを、総理、お伺いしたいと思います。
  240. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 ちょっと見通しと言われる意味がもう一つ明確でないのですが、例えば、これが一体経済効果としてどういう数字を考えられるのかといったようなことなのか。それとも、それぞれの事業分野が将来どういう変化をしていく というようなお尋ねなのか。実は今の御質問を伺っておりまして、ちょっと私わからなかったのです。
  241. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 先ほどから出ておりますとおりに、環境、福祉、情報といったようないろいろな形で手当てはされているというふうに思うのですが、総合的に緊急経済対策という、緊急という意味からこういったところにどんとやって、爆発的な国民の意欲といいますか、そういうところが、目玉という言い方はちょっとおかしいかもしれませんけれども、そういうところがあればよかったのになという感じを持っております。  それでも、当然この手当てが総合的な力によって今の暗い世情というものを持ち上げていくだろうというふうな予測はしているのですが、そういうところの総理の今後の展望といいますか、それをお聞かせいただければというふうに思ったわけでございます。
  242. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 今、私ども間もなく出発してサミットに臨もうとしておるわけでありますけれども、そのサミットにおいて、あるいはその前の二国間会談において、当然ながら日本のこの緊急経済対策総合経済対策というものについての説明を求められると思います。  そして、そういう場合に、こうした一連の社会資本整備あるいは減税を含む今回の対策効果というものはできるだけかた目な数字を持ちたいということで議論をいたしてまいりました。そして、向こう一年間で名目GDP二%程度、二%という数字を使おうと今考えております。もちろんこれには、土地の有効利用とか、そうしたものが動き出しますと、ほかのものが連動していく分、プラスが出てまいりますが、この際、そうした枝葉の部分は変な積み上げ方をすまいということで、二%という数字を持ってまいろうと思っております。
  243. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 もう一点は、ちょっと細かいといいますか、今回の補正の中で、社民党は高齢社会に対応するための生活基盤型の情報通信ネットを拡充していくということで、テレビ電話やパソコンを地方公共団体が各家庭に無償で貸与できるような、そういう購入助成として三千億から五千億の対策を図るべきだというような主張をさせていただきました。しかし、こういう主張をするときには、やはり公債のいわゆる中身といいますか質といいますか、建設公債の趣旨にそぐわないということで取り上げられなかったというふうに話を伺ったところでございます。  前からも主張しておりましたが、いわゆる特例公債と建設公債、これらの垣根を取っ払う、そういう、時代を先取りするような公共事業等の方向性というものはこれから考えられないかというふうに思うわけでございまして、与党三党では、これからの公共投資を時代に即した見直しを行い、二十一世紀に向けて真に必要とされる社会資本を整備するということを確認しながら、経済対策の基本方針を作成されてこられました。ぜひこの趣旨も生かしてもらいながら、こういうところに目を向けていただきたいと思うんですが、いかがでしょうか。
  244. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 特例公債と建設公債の垣根を取り払うという御議論は、今この委員会室におられる方々のお顔を拝見しましても、海江田議員を初め何人かからこれまでも提起をされました。そして、私は、そうした考え方も政策的にあり得る、それは立法政策上の判断としてあり得ることだというお答えをしながら、同時に、私は、五年とか十年とかいう、今議員が提起をされましたような物品を対象とした場合でありますなら、むしろもっと短期の国債というものを考えることはできないのかと、逆にそのような考え方を申し上げてまいりました。  今まで必ずしもこの論議というものは深まっているとは申せませんけれども、私は、建設公債の対象となる経費、あるいはその公債の償還期間、両方の面からもいろいろな議論があることはよく存じておるつもりでございます。そして、今後において幅広く御論議をいただくべき問題の一つと考えておりますが、今回の総合経済対策の中でも、従来の枠を超えて社会資本整備においてさまざまな工夫を凝らしておりますことは、議員御承知のとおりであります。
  245. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 最後の質問ですが、どの委員も、経済が低迷している最大の原因というものは個人の消費が落ち込んでいる、個人消費のマインドを高める必要があるということについては共通的に持っていらっしゃるというふうに思います。医療費の引き上げや年金受給に対する不安が相互に複雑に絡まって作用して、将来に対する不透明感を強め、国民消費意欲を減退させていることに間違いはないと私は思います。この不安と不透明感を取り除かない限り、消費の拡大は期待できないし、景気回復も望めないというふうに思います。  今般の経済対策では、緊急と補正であるとの趣旨にかんがみ、本格的な制度改正を伴う政策については経済対策から外すことを与党三党で了解をされたわけでございます。したがって、ここでそのことを蒸し返そうとは当然思ってはおりませんが、社会民主党は、この間、低所得者層に対するいわゆる逆進性という消費税の持つ昔からの課題について、飲食料品に係る消費税額給付制度の創設を訴えさせていただきました。  今後、先ほどから出ております恒久減税という論議が行われる、それと並行しながら、社会民主党はこの消費税の給付制度というものを提起させていただきたいというふうに考えているわけです。納番制などの取り組みも大蔵の方でもここ何年かよりも進んでいるというふうに思っているわけですが、その辺を含めて、このことについての見解をお伺いしたいと思います。
  246. 松永光

    ○松永国務大臣 社民党の年来の御主張でありますので、その御主張は承知しておるわけであります。しかし、問題は、この消費税額給付制度は、本人確認、それから的確な所得把握、こういった面で種々問題があると考えられるものですからなかなか難しい点があるわけでありますが、いずれにせよ、消費税の逆進性の問題でありますから、これは、消費税を含む税体系全体の見直しの中で検討さるべき課題だと、問題意識は常に持ち続けておるつもりでございます。
  247. 濱田健一

    ○濱田(健)委員 今大蔵大臣がおっしゃいましたところは、解決ができる方策というものを私たちは持っておりますので、また今後論議をさせていただきたいというふうに思います。  これで終わります。
  248. 中川秀直

    中川委員長 これにて濱田君の質疑は終了いたしました。  次に、河村たかし君。
  249. 河村たかし

    ○河村(た)委員 総理、とにかく景気が悪いということでございまして、これを何とかしなければいかぬということで非常に努力されておられると思いますが、なかなかうまくいっていない。あなたも、何か自分のせいにされたり、おもしろくないことが多いと思います。  だけれども、一つぽっかりと抜け落ちた視点があるのですよ、実は。これはちょうどきょうテレビで出ておりますから、要は、景気回復というのはお金を使うことなんですよね。お金を使うことなんです。お金の使い先というのは、一つは、ラーメンを食べたりそれから車を買ったり、そういういわゆる民生部門。もう一つ、税金を使う部門がありますよね。社会保障費も含めて、税の部門。  なぜ民生部門は日本は伸びたのだろうかといいますと、これは、ラーメン屋さんはたくさんあるじゃないですか、車のメーカーもたくさんあって、物すごい勢いで競い合っているじゃないですか。しかし、今の話をどれだけ聞いておっても——総理、社会保障費も含めて税金で賄っている部門ですね、これは、国内経済のどのくらいあるか御存じですか。総理、どうですか。
  250. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 そういう視点で数字をはじいたことはございませんでした。
  251. 河村たかし

    ○河村(た)委員 三分の一なんですね、GDPの。GDPというのは、日本全体の経済の三分の一が税金と社会保障費の部門なんですよ。ここが全然競争がない。  今もうすぐ始まります相撲でも、おもしろいのは、やはり競争して盛り上げているからおもしろいのですよね。ここをどうやって——税金の部門ですよ、国民は税金を決められた分を払って、特に日本は源泉ですから何にもわかりはせぬわけですよ。払って、あと皆さんが、ここは幾ら、ここは幾らと、決まった量は常に分配される。こういう構造をどれだけやっておっても、その部門は盛り上がらないじゃないですか。そこら辺の哲学を持ってみえますか、総理。どうですか。
  252. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 大変失礼でありますが、確かに内閣が予算を編成いたしますけれども、それを御審議いただき御承認をいただく、言いかえれば、その使い方に承認を与えられるのは国会であります。その国会を今議員は外して、私どもが決めると決めつけられました。そして競争というものを言われました。しかし……(河村(た)委員総理、時間がありませんので、ちょっと済みません」と呼ぶ)お尋ねで、これちょっと私、失礼だと思いますよ。あなた、お尋ねになったのですから。私もまた後、答弁の機会を与えてくださいますように。
  253. 河村たかし

    ○河村(た)委員 今、総理、国会の承認のことを言われましたけれども、ぜひこれは国民に向かっても言いたいのです、税金をなぜ払うか。  税金の払い方というのは実は二通りあると思うのですよ、二通り。これを日本は一通りしかつくっていない。全部税務署へ払って、今、十二人の主計官がそれを全部分配する方式。  もう一つあると思うのですよ、これは。自分がこういうところがいいと思ったらそこへ、名前は寄附でもいいですけれども、私は選択納税という名前を使っていますけれども、そこへ出したら税制控除を受ける。こういう方法をしますと、ああ、こういう団体がいいなというところに税金を出すことができる。すなわち、あなたが主計官、こういう国になるんですよね。これが、実はアメリカ経済を持ち上げた非常なポイントになるわけですよ。  私はこれを今、全国回って訴え続けております。ここの視点がない限り、減税したら、そういうことで直接に寄附をさせないと、減税してもそのお金が全部赤字国債だったら、これ、将来の不安があるわけでしょう。それから歳出カットしたらどうなるんですか、これ。これは、公共サービスはマイナスになっちゃうじゃないですか。だから結局、減税しても安心させるためにはやはり公共サービスの対価は払うのですよ。これは払うんです、減税しても。税務署を通らない、そういうお金をつくるんですよ。  それが成熟した国家の姿だということで、総理は国会での承認があると言いましたけれども、国会の承認は、別に税金の分配権について競争しておるものじゃありません。税金の分配権を競争させる仕組みに早く気づかないと、国民が安心していろいろなところにお金を使う仕組みはできないということでございます。どうですか、この考え方は。
  254. 橋本龍太郎

    橋本内閣総理大臣 私は、多分非常に頭が悪いのだと思うのですが、伺っていてどうもよくわからないのです。  要するに、例えば一般的な寄附、その寄附に対して、例えばその受ける側あるいは寄附をする側で控除を行うとかいった、そういう仕組みの話としてのお話であればわかります。しかし、国あるいは地方公共団体に納入する税を、税としてではなく、各人の拠金として行うということに仮になった場合に、例えば安定した事業というのはできますでしょうか。  例えば、わしは、わしのうちの前の道路だけ直してもらえばいいんだ、だからその分、道路屋さんに寄附する、道路屋さんというのはないですな、関係業者に寄附するというような話、あるいは、私の郷里にはお年寄りが多いから例えば高齢者対策のための費用にということで寄附をする、ある意味では大変ユニークな御発想ですけれども、非常にばらつく。そうしますと、あるいは国にいたしましても地方公共団体にいたしましても、計画的な事業というものの執行は相当難しくなるのではないかと思います。
  255. 中川秀直

    中川委員長 これにて河村君の質疑は終了いたしました。  総理に申し上げます。  出発直前まで御審議、まことに御苦労さまでした。バーミンガムで日本のために力いっぱい御活躍いただきますよう、お元気でお帰りをお待ちしております。(拍手)  次回は、来る十八日月曜日午前十時から委員会を開会することとし、本日は、これにて散会いたします。     午後五時二分散会