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1998-06-01 第142回国会 衆議院 外務委員会 第16号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年六月一日(月曜日)     午後三時三分開議 出席委員   委員長 中馬 弘毅君    理事 福田 康夫君 理事 牧野 隆守君    理事 茂木 敏充君 理事 森山 眞弓君    理事 玄葉光一郎君 理事 松沢 成文君    理事 東  順治君 理事 東  祥三君       岡部 英男君    柿澤 弘治君       河野 太郎君    櫻内 義雄君       宮本 一三君    森  英介君       八代 英太君    島   聡君       藤田 幸久君    丸谷 佳織君       山中 燁子君    古堅 実吉君       松本 善明君    秋葉 忠利君       井上 一成君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小渕 恵三君  出席政府委員         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 阿部 信泰君         外務省総合外交         政策局国際社会         協力部長    上田 秀明君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省経済協力         局長      大島 賢三君         外務省条約局長 竹内 行夫君  委員外出席者         外務委員会専門         員       宮本 吉範君     ――――――――――――― 委員の異動 六月一日  辞任         補欠選任   阪上 善秀君     岡部 英男君   伊藤  茂君     秋葉 忠利君 同日  辞任         補欠選任   岡部 英男君     阪上 善秀君   秋葉 忠利君     伊藤  茂君     ――――――――――――― 五月二十九日  日米相互協力協同作戦計画策定作業中止に  関する請願中路雅弘紹介)(第三三六八号  )  米軍基地の撤去に関する請願児玉健次紹介  )(第三三六九号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中馬弘毅

    中馬委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  本日は、特に、先日強行されましたインドパキスタン核実験、新たな対応を迫られております。これにつきましての件を議題にし、調査を行います。  まず、政府から説明を聴取いたします。外務大臣小渕恵三君。
  3. 小渕恵三

    小渕国務大臣 五月二十八日及び二十九日、二回にわたりパキスタン地下核実験を実施しました。インド核実験を行って以来、国際社会は、パキスタンに対し核実験を行わないよう最大限自制を求めてきたところであり、我が国は、登特使パキスタンへの派遣、橋本総理からシャリフ首相への直接の電話等により、できる限りの説得を試みました。また、我が国は、パキスタン核実験を行わないよう、同国の安全保障につき米国とも協議を行いました。しかし、そのやさきにパキスタン核実験実施に至ってしまったことは、遺憾のきわみであります。  インド及びパキスタン両国核実験は、世界の大多数の国が支持している核不拡散体制に対する大きな挑戦であり、容認できるものではありません。我が国は、核不拡散体制を堅持、強化し、包括的核実験禁止条約早期発効カットオフ条約交渉開始を目指すとともに、核兵器国核軍縮努力を一層進めることが、核兵器のない世界を実現するために重要と考えております。  また、インド及びパキスタン両国核実験により、両国間の緊張が高まっており、南アジア地域での軍拡競争が激化することが強く懸念されます。我が国は、インドパキスタン両国が、互いに最大限自制を働かせつつ、二国間の問題を対話により解決すべく努力することが重要と考えております。  我が国はこのような考え方のもと、今般の一連核実験に対しては、その都度速やかに、在京インド大使在京パキスタン臨時代理大使をそれぞれ招致し、強く抗議いたしております。また、インド及びパキスタン両国に対し、経済協力面を含む一連の措置をとってきております。  具体的には、一、新規無償資金協力原則停止、二、新規円借款停止、三、国際金融機関の融資への慎重な対応を含むものであり、また、大量破壊兵器関連品目等の輸出の厳格な審査を堅持していきたいと思います。  我が国としては、引き続き、インド及びパキスタンの双方に対し、核実験及び核開発即時停止核拡散防止条約及び包括的核実験禁止条約の無条件の締結を求めていく考えであります。  さらに我が国は、先ほど申し上げた立場から、今般の一連核実験を受け、国連安保理においてスウェーデン等とともに決議案を提出したところであり、その早期採択を目指して安保理メンバー国協議を行っているところです。また、今週中にも安保理常任理事国外相による会合が開催される予定と承知しており、また、十二日には、G8の外相会合がロンドンで開催される予定であります。私は、国会の御了承がいただければ、ぜひこのG8外相会合出席したいと考えております。  我が国としては、核不拡散体制の危機及び南アジア地域の不安定な状況に対処すべく、引き続き最大限努力を払うとともに、国際社会に対し、結束して対処するよう呼びかけてまいりたいと思います。
  4. 中馬弘毅

    中馬委員長 これにて政府からの説明は終わりました。
  5. 中馬弘毅

    中馬委員長 これから質疑に入るわけでございますが、政府にただ質問するというだけではなくて、今回このようなことでもございますので、委員各位から、御意見や、また御提言をちょうだいいたしたいと思います。  その趣旨をもって、各委員の方々は発言時間を短く、決められた時間内で終わっていただき、そして、この委員会を継続していきたいと思っております。  それに伴いまして、発言席に来ていただいて発言ということではなくて、自席にマイクがございますから、そのマイクを利用して、ただ先生方は、立った方が発言しやすいとのことでございますから、立っていただいて結構でございますが、その場で発言をお願いしたいと思います。  では、質疑の申し出がありますので、順次これを許します。柿澤弘治君。
  6. 柿澤弘治

    柿澤委員 今回のインドパキスタン核実験は、これからの二十一世紀国際秩序にとって大きな挑戦であり、脅威であると思います。  その意味で、我が国政府におきましても、小渕外務大臣橋本総理大臣初め皆さんが、必死の努力をして、今後のこの問題の拡大を防ぐということで努力をされていることは、私も評価をしたいと思いますが、きょうは、各党からそれぞれ意見を出して、そして建設的な議論をしろということでございますから、そういう観点から幾つか問題を指摘したいと思います。  今回の両国核実験は、三つの意味で我々にとってチャレンジであるというふうに私は感じております。  一つは、今申しました二十一世紀安保体制、また核軍縮への人類の希望に対する大きなチャレンジであり、脅威であるというふうに思っています。その意味では、今回の両国核実験が今後各方面に飛び火をして核の拡散をもたらすことがないように、また、それによって、既に核保有国になっている国々核軍縮への努力をちゅうちょさせるものになってはならない。そういう方向で、我が国外交は全力を挙げて、それこそ火だるまになってでもやるべき課題であるというふうに思います。  その意味でひとつ、大体意見を申し上げたいと思うのですが、我々が日本政府としてやるべきこと、やるべき場は、一つ国連安全保障理事会であろうかと思います。外務大臣もお触れになりました。そして、各国と共同提案決議案を出しているということでございますから、この点について、積極的に採択をされるように努力をしていただきたいと思います。  私はまだ外務省から、または関係筋から案文をいただいておりませんので、きょうの朝日新聞の朝刊の伝える日本安保理決議の要旨というものをちょっと確認しておきたいのですが、この中で、インドパキスタンに対する今後の自制を呼びかける、この点については明確になっておりますが、同時に、自民党外交部会でも出ておりましたのは、現在あるNPT、CTBTの条約枠組みが、核保有国核軍縮に対しての努力に対して明確な規定がない、規定があっても具体的な内容がない、その点で、日本はやはり非核保有国として一層の努力をすべきではないかという意見が再三出されているわけでございます。  これとの関連で見ますと、この新聞の伝える要一旨では「一九九五年のNPT延長・再検討会議採択された「核不拡散核軍縮原則と目標」文書を支持する。」ということだけで、ここのところが決して明確になっておりません。  解説によると、やはり核保有国に対する、五常任理事国に対する遠慮や、また利害の錯綜によって、この点が文言上緩められているのではないかということが書いてありますけれども、私は、この際、日本立場をこの点では明確にして、インドパキスタンに対する今後の核開発の抑制を求めると同時に、核保有国に対しても一層の核軍縮への努力をしてもらうように、できるだけ強い表現でこの決議案をまとめてもらいたいというふうに思っているわけです。  この点について、事実関係と、今外務省が考えている方針を一応聞かせていただきたいと思います。
  7. 阿部信泰

    阿部政府委員 国連安保理日本スウェーデン共同で推進しております決議案につきまして、御指摘のとおり核軍縮を全般的に進めるということが非常に大事でございますので、核保有国に対しても核軍縮を求めるという点も含めるべく努力しておりますけれども、そこはまだ交渉中でございまして、しかも、安保理におきましては常任理事国拒否権がある。これはすべて核保有国でもありますので、そういう難しい情勢にありますけれども、今、最大限努力小和田大使のもとでやっているという状況にあります。
  8. 柿澤弘治

    柿澤委員 最大限努力ということでは結果がどうなるかわかりませんので、これ以上追及しても答えが出てこないと思いますが、とにかく、その面で今後一層努力をしていただくということは我が国国民的なコンセンサスであろうと思いますので、外務省としても、また小渕外務大臣におかれましても、G8の十二日の会議にはぜひ国会が承認をして出ていただきたいと私は思っておりますが、ぜひ発言をし、主張をしていただきたいというふうに思っております。  また、南アジアのこれからの安定の問題に大きな脅威になるということが言われておるわけですが、そのときに引用されるのが、インドパキスタンの間にある領土紛争カシミール問題ということでございます。  この点についても、我が党で議論をいたしましたときにも、多くの方から、やはりこれについて、さらに国連が、また国際社会が積極的な努力をすべきであるという意見が出ておりました。その点で、橋本総理がこの問題を安保理で取り上げてもらうようにとおっしゃったことは適切だったと思いますが、そうした国際機関での議論、G8でもぜひ議論をしていただきたいと思いますけれども、それだけでなく、我が国カンボジア和平で果たしたような、そうしたアジアの問題についてより積極的な仲介努力をする、こうした姿勢も必要ではないだろうかというふうに思っております。  その点で、できることなら、カシミール問題もしくはインドパキスタンの今後の南アジア安全保障に関する問題についての協議を、一つARFで取り上げていただくということも方法だと思いますが、同時に、例えばそうした問題に関するカシミール調停東京会議のようなものを開くことも、日本外交のイニシアチブを示すという意味で有意義なことではないかと思っております。  この点については、もちろん大変難しい問題であるということは承知しておりますけれども、今後日本ODAを、両国に対して新規借款等停止しているこの状況が続いていく中で、やはりカシミール問題について両国の前向きの姿勢が出るということがODAの解除の時期にもつながってくるというふうに考えますので、ここは余り遠慮しないで提案をすることが大事だというふうに私自身は思っております。この点について意見があれば、お伺いをしたいと思います。
  9. 小渕恵三

    小渕国務大臣 具体的な、積極的な御提案でございますので、その意を受けまして対応してまいりたいと思いますが、カシミール問題は、御存じのように、もう長きにわたる歴史的紛争の国際的な地域としては顕著な例でありまして、そのバックには、旧ソ連やまた中国や、いろいろ関連すると言われてきておる国々もございまして、そういった点で、一日として、解決することのなかなか困難性はあろうかと思っております。  しかし、今回、両国核実験に踏み切ったという背景には、このカシミール問題に対する印パ両国考え方が存していることは事実でありまして、そういった意味で、根源を取り除くということが、ひいては核実験を再度起こさないことにつながることだろうと思っております。  したがいまして、ASEAN拡大会議等が行われ、ARFパキスタンが入っておりませんけれども、そういった点も含めまして、今御指摘のように、我が国がこの東京におきまして関係国を招致して、本当に平和を求める我が国の気持ちから出発をして、この歴年の紛争問題に対してのめどをつけられることができれば、もって、まことに我が国としての平和に対する対応として好ましいことであると思っております。  また、G8につきまして、先ほど御報告しましたように出席を要請されておりますので、そういう機会をいかにとらえるかということも重要でございますし、その前に、国連におきまする決議の問題もございます。先ほど答弁申し上げましたが、今その内容その他について検討いたしておるところでございますけれども、我が国として、ぜひP5も含めて、核保有国に対しましても我が国立場を強調するような形での決議案がまとまることが極めて重要だと思いますので、最大限努力を  いたしてまいりたいと思っております。
  10. 柿澤弘治

    柿澤委員 小渕大臣として最大限の、前向きのお答えをいただいたと思いますし、ぜひその方向で御努力をいただきたいと思います。  役所の皆さんお話をすれば、こんな内政干渉がましいことは難しいと言うかもしれませんが、しかし、パレスチナ和平についても、やはりそれぞれの国の内政にかかわる問題に触れなければアメリカ調停外交も成立しないわけです。そして、北アイルランドの問題で果たしたクリントン大統領の役割、そうした問題も、これも内政問題といえば内政問題です。そうした問題について積極的に努力をしていくことが、これからの日本外交に課された課題ではないだろうかというふうに思っているわけです。  その意味で、今回のインドパキスタン核実験というのは、世界安保体制に対するチャレンジだけではなくて、従来の日本外交姿勢に対するチャレンジでもあるというふうに私たちは受け取るべきではないだろうか。  つまり、事故が起こったときに、日本国民が、日本人がインボルブされていなければそれはよそのことというような受け身のことでいいのだろうか。むしろ、これからの国連常任安保理事国を目指すのであれば、世界のさまざまな紛争について、日本としてできることは何なのかということを事前に考えながら、積極的に働きかけをすることが大事だと思っています。  私は、日本カンボジアPKOへの参加の後、モザンビークのPKOに参加したときにも政務次官として決定にかかわりましたが、さらにゴラン高原、そういうところにも出している。その意味では、南アジアというものはもっともっと近い、我々にとってバイタルな地域であるということを考えると、私は、調停外交をやってもいいのではないかというふうに思っております。  受け身外交から、むしろ球を拾う、積極的に前へ出るという外交姿勢に転ずることが今必要だし、それを国民も期待しているというふうに考えて、ぜひ、小渕外務大臣初め外交の衝に当たられる方に、そうした姿勢で積極的に努力をしていただきたいというふうに思っているわけでございます。  時間が限られていますので、さらに、今回の問題は、日本ODA政策に対するチャレンジだというのが、第三のチャレンジとしての私の位置づけでございます。私自身が、自民党対外経済協力特別委員長をいたしているから言うわけではありません。今度の問題で、ODA停止無償停止新規円借款停止を決めましたけれども、しかし、これが本当に効果のある政策として生きていくのだろうか。また、効果のある政策として生かしていくためには、今後、停止して、黙って見ているというだけではなく、核問題に対して積極的に取り組むと同時に、先ほど申しましたように、カシミール問題等紛争についても積極的に取り組んでいくということでなければ、ODA政策というものが根幹から、国際社会からも疑問視されるし、また国民からの支持を失うことになってくるということを恐れるわけでございます。  そういう意味で、ODA基本原則に従って対応していただいたことはよいと思いますが、これを今後どうやってフォローアップしていくか。そして、やはりODAは私ども日本にとって大事な外交の手段なのだということを国民人たちに理解していただく、国際社会の中で理解を深めてもらうということが大事でございまして、これに成功しない場合には、今後のODAの削減に結びついていくおそれがあるということで、あえて自省を込めて申し上げたいということでございます。  以上、序論になりましたけれども、私からの提言と、また意見表明を終わらせていただきます。どうもありがとうございました。
  11. 中馬弘毅

    中馬委員長 続いて、八代英太君。
  12. 八代英太

    八代委員 今、柿澤委員からるるお話がございましたように、五月二十九日に、私たちは党の外交部会におきまして、パキスタン核実験への抗議声明というものをつくり上げました。そして、それをパキスタン日本大使館のみならず、インド大使館あるいは政府にも我々の考え方を送致いたしまして、とにかくこうしたエスカレートした状況を何とか歯どめをかけなければならない、こういう思い議論をしたところでございます。  今世界人口の六割を占めるアジアでございますし、世界人口の、その中で第一位が中国でございますが、この中国が核を持っている。そして、第二位の国がインド。このインドがこれまた核を持った。そして、負けじと隣のパキスタンが、国際世論に逆行して、一度ならずも二度の核実験を行った。アメリカ説得もあったし、あるいは日本のたび重なる、小渕大臣を初めとする説得もあったけれども、それさえも聞き入れなかった。  インドパキスタンには長い歴史の怨念がありますし、三たびの印パ戦争を含めまして宗教の対立もあり、あるいはカシミールの領土問題や、我々の想像を超えて民族間の対立と感情のもつれがあろうとは思いますけれども、しかし、印パ核開発は許されるものではないと思います。  しかし、聞く耳を持たない両国が、ここ一、二日の間に若干少しずつ変化を見せ始めていると思うのですね。インドは、新たな枠組み核管理交渉が必要だ、こう言いまして、パキスタンは、米国国連仲介をというようなことを言っている。つまり、世界核保有国になった立場でこういう発言になったのか。あるいは、実験はしたけれども、国際世論の批判が強い。あるいは、今後インドパキスタンがどういう状況になっていくのだということを想像だにすると、みずからも恐ろしさを感じているのかどうかは別といたしまして、これを外務省はどのように読んでいるか、まず冒頭、伺っておきたいと思います。この変化の兆し、あるのかないのかも含めてお願いをしたいと思います。
  13. 阿部信泰

    阿部政府委員 インドパキスタン核実験を踏まえまして、世界核軍縮及び核不拡散状況には大変大きな挑戦がなされ、大きな変化がもたらされつつあると見ております。  既に、インド政府からは幾つかの提案あるいはその示唆がなされており、パキスタン側からも幾つかの示唆がなされております。インド側からは、御指摘のような、世界的な新たな核管理枠組みをつくるべしという提案もありますし、また、パキスタンとの間で核先制不使用ということを言っているようでございます。それから、パキスタン側から逆に、インドとの間で不可侵条約を結びたい、あるいは南アジア非核地帯をつくりたいという提案もあるようでございます。  おのおのの魅力を含めておりますが、またおのおののアイデアは、実はこれまでも何度かインドパキスタンからお互い提案された案でございまして、それなりにこれまでに実現しなかった背後の理由もあるようでございますので、その辺を踏まえて、できるだけこういう議論を前向きな方向に持っていくようにこれから努力をしてまいりたいと思っております。
  14. 八代英太

    八代委員 我々は怒っているわけですが、いつまでも怒りばかりでは前へ進みません。日本は唯一の被爆国として、ここはリーダーシップを発揮して、今柿澤委員がおっしゃいましたが、真っ先に核軍縮に向かっての行動を起こすときだ、私はこのように思います。  きょうの報道なんかにもありますが、スウェーデン、コスタリカと共同提案印パへの核技術供与防止決議案を出したとか、それに対して核保有国大国が若干抵抗しているとか、いろいろな解説もございますが、正直言って私は、国連は一体何を考えているのだという思いすら出てまいります。常任理事国の五カ国が核保有当事国であるということを思いますと、何となく国連核遊びをしているのではないかという怒りさえも込み上げてくるわけでありますが、印パへの説得力も、私はこの五大国にはないような気がしてなりません。核軍縮を唱える資格もない、こう言いたくもなるわけであります。  ここは一番、アジア国日本でありますし、南アジア、なかんずくアジアのこの緊張思いますと、我が日本印パの平和のために一肌も二肌も脱ぐべきである。先ほど柿澤委員もそのことは強く申し上げたところでありますが、頼りない国連に依存するのではなくて、アジア安全保障の視点から、印パお互いに平和のために手を結ぶ、そういうためにあらゆる、カシミール地方という非常に複雑な問題があっても、やはりここは日本仲介をしてその努力をすべきだと思うが、いかがでございますか。
  15. 阿部信泰

    阿部政府委員 国連、確かに御指摘のとおり、特に安保理事会は五つの常任理事国というのがありまして、これがたまたま核保有国と一致しているということで、御指摘のとおりこういつた国の核軍縮が進まなければ、いかにほかの国に核を持つなということを言っても威力はないわけでございまして、その点を我が国としても一層強く指摘していかなければならないと考えております。  また加えまして、そのほかに、現在までに、核保有可能性を検討しあるいはその能力を持ちながら一そういう選択をとらないできた国が世界に何カ国もあるわけですけれども、そういった国々に対しても、今度のインドパキスタン核実験による核保有の宣明ということが影響を及ぼすことが懸念されておりますので、そういった国々とも連絡を密にしまして、今後の対策を検討してまいりたいと思います。  差し当たり迫っておりますのは、十二日に予定されておりますG8の外相会議がありますので、そういう場でも話し合いをし、また、加えてG8以外でも、日本と志を同じくする国々と緊密に連携をとってまいりたいと考えております。
  16. 八代英太

    八代委員 十二日のG8がまずその突破口だと思いますが、これはぜひ小渕外務大臣、御出席をいただきたいと思いますし、国会の御了承いかんによってはなどという御答弁ではなくて、もう国会は当然了承するはずだと私は思いますし、私たちはぜひ小渕外務大臣リーダーシップを期待したいと思っておりますので、しっかりとそこで申し述べていただきたいと思います。  あわせて、秋の国連総会は核軍縮総会とむしろ命名をしていただいて、そして、日本がイニシアチブをとりまして、この新たなインドパキスタン核実験ということもさることながら、七カ国の核を廃絶するための強力な論陣を日本政府が張るべきだと思いますが、いかがですか。
  17. 阿部信泰

    阿部政府委員 国連では、来年一九九九年に国連の第四回軍縮特別総会を開くべきだということで議論がなされておりまして、残念ながらいまだ決定には至っておりませんが、その点が恐らく加速されることになると思います。  ただ、ことしの総会につきましてはもう数カ月に迫っておりまして、形式的にこれを軍縮総会にするということはなかなかいかないと思いますが、このような情勢でございますので、当然今度の総会の大きな関心、議題の一つ核軍縮の問題になるということは間違いないと考えております。
  18. 八代英太

    八代委員 このままでは、日本を取り囲む安全保障という視点からも大変危険な状況になっているわけです。太平洋を挟んで東側にはアメリカが核を持っておりますし、北東に目を転じるとロシアにも核がある。西に目を転じると北朝鮮に疑惑がある。中国に核がある。南アジアインドパキスタンの核が新たに証明された。その隣、イランのこれまた核疑惑もないわけではない。リビアの心配がある。あるいはイラクもある。イスラエルもある。この小さな星、愛すべき星、この地球の二十一世紀というのは、大変な核競争時代になるかもしれないというおそれもありますし、核の地球になってしまうという、本当に困った事態だというふうにも思います。連鎖反応も怖いし、あるいは核を持つことが大国への道と、間違った発想も大変怖いですね。  米ソの冷戦時代というのは米ソは争ったわけではありませんが、このインドパキスタンというのは、まさに三度の争いをしている当事国でありますから、それゆえに怖さが私たちにひしひしと伝わってくるわけでございます。そういう核のボタンが押されてしまうことを本当に心配するわけでございますが、先ほどちょっとニュースを見ておりましたら、アメリカのコーエン国防長官が、印パで核戦争になる懸念がある、こういうふうなことを述べておりました。  ここ一番、日本外交戦略は、大きく行動して、大きく、核のない世界平和のために強力に推進してもらいたいと思いますし、まさに小渕外務大臣、本当にお疲れだと思いますが、ぜひとも頑張っていただきたいことを最後に強くお願いをいたしまして、外務大臣のお考え方をお聞きして、私の質問を終わりたいと思います。
  19. 小渕恵三

    小渕国務大臣 御激励と受けとめさせていただきましたが、政府は、国民を代表しておりますので、国民のそうした強い意思を受けまして、今般の問題に対しましても、日本なりのイニシアチブをどういう形でとり得るかということにつきまして、全力を挙げて努力したいと思っております。
  20. 八代英太

    八代委員 ありがとうございました。
  21. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、牧野隆守君。
  22. 牧野隆守

    ○牧野委員 ただいまお二人の意見の陳述並びに政府サイドのお答えもちょうだいしたわけでありますが、今度の問題は、いろいろ意見があるわけでありますが、少なくとも国家の独立と安全の確保、こういうことでインドパキスタン両国がその旨の主張をしているわけでございます。  この事実を無視することはできないわけでありまして、非常に嫌な想像ですが、一つの事実を事実と認めてその前提で今後諸般の措置がとられるということになりますと、ただいま八代先生からもお話がございましたとおり、それでは中近東はどうなるのだろうか、あるいは日本の隣の韓半島ではこれがどういうふうになるのだろうか等々考えますと、これは日本としては、はっきり腰を落ちつけて具体的に対処されないと、大変なことになる可能性が非常に強い、こう憂慮されるわけであります。  世界全体の安全の確保の問題、特に日本立場から日本の安全を確保するためにはという両方の観点から、今後、日本としては具体的にどのような行動をすべきか、この場合に、一つ国連において具体的にどのような活動をするかということであります。もう一つは、二国間で具体的にどのような措置がとられるかということでございまして、我が国は唯一の被爆国でありますから、この際、日本立場から堂々と、ある程度の一つの案を持って国連あるいは関係諸国に対処すべきではないかな、こう考えられるわけであります。  今回の国連におげる提案も、スウェーデン、コースタリカ等と共同提案ということでありますが、日本一国で提案しても何ら支障がない、強く日本立場を主張できるのではないか。そういう点で、共同提案国であるスウェーデンなりコスタリカは、日本立場を十二分にわきまえた上で、日本に続いてフォローすると申しますか、そういう形で共同提案ということになるのであればぜひそうしていただきたい、こう思うわけであります。  今まで、米国及びソ連の強大な国家の原子爆弾を中核とする争いというのは、これは大陸間を含めての大変なことであったわけですが、最近の事例を見ますと、どうも地域間の紛争が、お隣の国との紛争が中心になっている。したがって、安全保障のやり方について、あるいは地域的な集団安全保障というのも一つのあり方として考えられるのではないか、私自身、最近強くそう思っているわけでございます。  こういう措置がとられるかどうか。これは、国の外交方針に基づくわけでありますから、簡単にこういう方向という結論は出ないかもしれません。しかし、国連における日本の役割というのは、皆さん御承知のとおり、アメリカに次いで日本は一九%、その経費を実は負担いたしているわけであります。堂々と主張してよろしいのではないでしょうか。五大国、フランス、イギリス、非常に割合は少のうございます。ロシアはもちろん、中国も非常に少ない。日本アメリカに次いで、アメリカは四分の一、二五%、日本はそれに次いで一九%の大変な負担を国際平和のためということで実は出して協力しているわけでありまして、そういう点と、また日本被爆国であるという立場から、この点についてぜひ強力な主張をしていただきたい。私どもは全力を挙げて支持をさせていただきたい、こう思っているわけであります。  そういう点で、事務局にもお伺いしたいんですが、日本が一九%出している、いろいろな計算でこのようになった、こう説明を受けておりますが、ぜひこの点について、何らか事務当局として不都合を感じているかどうか、それを一つお伺いをいたしたいと思います。
  23. 上田秀明

    ○上田政府委員 お答えいたします。  御指摘ございましたように、日本国連の分担金はアメリカに次いで第二位でございまして、ことしから適用されます分担率、これは一九九〇年から九五年までのGNPのシェアを基礎といたしまして計算されてございますが、そのままでまいりますと日本はいきなり二〇%を超えるようなことになりかかったわけでございますが、種々、国連という場で交渉いたしまして、九八年につきましては一七・九八一%、そして御指摘のとおり、九九年になりますと一九・九八四%、二〇〇〇年には二〇・五七三%というふうな分担をいたすことになっております。  これは、九八年について申し上げますれば、国連の予算が十億五千百万ドルでございますので、日本の分担は二百数十億円ということだと思いますが、大変な額ではございますので、今後、やはりいろいろな機会に、それに見合う責任を果たせるような体制をとっていくということかと思います。
  24. 牧野隆守

    ○牧野委員 先ほど、国連における活動と、第二には、二国間の関係でどう処理するか、こういう問題であるわけですが、御承知のとおり、関係各国と日本の間には、経済協力ということで大規模の実は資金協力等が行われているわけであります。  我が国では、閣議によって閣議決定いたしまして、開発援助についての四原則が実は決められております。その中で一番大きいのは、ここに読み上げますと、   国際平和と安定を維持・強化するとともに、  開発途上国はその国内資源を自国の経済社会開  発のために適正かつ優先的に配分すべきである  との観点から、開発途上国の軍事支出、大量破  壊兵器・ミサイルの開発・製造、武器の輸出入  等の動向に十分注意を払う。こういう大原則が決められておりまして、今回のインドパキスタン核実験に際しまして、直ちに政府では、新規無償資金協力原則停止新規円借款停止国際金融機関の融資への慎重な対応、そして輸出に対する規制、こう直ちに措置をとられて、政府政策を私どもは全面的に支持させていただくわけでありますが、これをきちっと将来にわたってもやっていただきたい、私どもの要請でございます。  そこで、今回はこのような措置がとられたわけでありますが、例えばロシア、中国インドパキスタン等々、皆この原則に照らし合わせますと、いろいろ実は問題が出てきているわけであります。今回のインドパキスタンにつきましても、きょう行ってあした原爆実験ができるわけではありません。したがって、国連を通じ、あるいは我が国単独で、そのような武器関連の、特に原子爆弾開発に関するいろいろな経費の支出が行われているわけでありますが、その辺について、日本政府としてはどの程度の情報を持っておられたのであろうか。実験したからこういう措置をとりますよと。わからなければ、それまでは、今まで同様ずっと経済協力を進めなければならないのかどうなのか。  したがって、日本としては、世界の平和、安全の確保、また、日本として日本の安全確保の見地から、そういう調査能力の拡充強化が強く求められるわけでありまして、それに基づいて堂々と経済協力のあり方について政府として主張できるわけであります。  そういう観点から事務当局にお伺いしたいんですが、今までそのような情報を持っておったにかかわらず、インドパキスタンに対する経済協力は進めたのであるかどうか、念のためにまずお伺いいたしたいと思います。簡単に御答弁をお願いします。
  25. 大島賢三

    ○大島(賢)政府委員 ODA大綱との関係におけるインドパキスタン等への援助実施でございますが、特に三つ、この関連で問題があり得たわけでございます。核疑惑の問題、それから軍事費の傾向の問題、それからミサイル開発に関する動向でございます。  こういつた諸点につきましては、不拡散協議を二国間で行い、またいろいろな援助協議の場等で、日本の基本的な立場については、繰り返して相手側に注意を喚起しておったわけでございまして、その結果、核実験が行われて今回のような措置に至ったわけでございます。軍事費の動向につきましても、絶対額の推移、それから国内総生産に対する比重等がどういうふうに移っているか、その推移等は逐次フォローいたしまして、問題があればこれも反映をしていくべきだと思っております。
  26. 牧野隆守

    ○牧野委員 今後、この問題はどういうように変化するか、私どもも全く予測できません。そういう点で、外務大臣、非常に御苦労になられるわけであり、また、今後の変化に応じて当委員会においてもいろいろな質疑がなされるわけでありますが、きょうの私どもの意見を十二分に聴取された上御判断していただき、的確な外交行動を展開していただきたい、このように大臣にお願いを申し上げまして、私の質問を終えたいと思います。
  27. 中馬弘毅

  28. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 先ほど外務大臣の方から、国際社会パキスタンに対して核実験を行わないよう最大限自制を求めてきたというような御発言があったわけでありますが、私が考えるに、少なくとも、総括的には、国際社会全体として最大限努力が払われたかといえば、私は必ずしもそうではなかったのかなというふうに思います。  それはバーミンガム・サミットを振り返れば明らかでありますし、またパキスタン核実験直後のシャリフ首相の演説を聞けば、それがさらに明らかになります。それはつまり、世界各国のインドに対する措置について注視してきたけれども、残念ながら満足のいくものではなかった、あるいは国連安保理においてもインドに対する十分な措置がとられなかったというような発言を実はされているわけでございます。  私は、実は五月二十二日、前回質問をさせていただいたときに、時間がなくて質問できなかったのですが、ある質問通告をさせていただいておりました。それは何かといえば、非常任理事国である日本が緊急の、緊急のというのは正確ではないのでしょうか、国連安保理の招集を議長国に呼びかけて、インドに対する対応を、サミットでの成果を補うために呼びかけるべきではないかというような質問を用意していて通告させていただいていたわけでありますけれども、このような事態になって残念であります。そういう経過がもしあれば、お聞かせをいただきたいというふうに思います。  同時に、時間がありませんから一気に質問をさせていただきたいと思いますけれども、これから日本には何ができるのだろうか、あるいは何をすべきなのだろうかということでございます。それはすなわち、インドパキスタン緊張の解決に向けて、あるいは核の実戦の配備を食いとめるために何をすべきか、何を行えるのか。あるいは、特に、中東あるいは韓半島へのドミノ現象、あるいは核の連鎖といったものを食いとめるために何ができるのかということでございます。  そのうちの一つは、今までも御議論がありましたように、国連安保理において決議案をつくる、リードしていくということなのでありましょうが、私もこれは報道でしか知りませんので、この機会に質問させていただきたいと思います。  今回の日本提案安保理決議案について、安保理常任理事国はこの案に賛成しそうなのかどうか、つまり採択の見通しについてお伺いをしたい。また、採択されても問題は実効性だと思いますけれども、その実効性についてどう思われているか。また、それとの関連で申し上げれば、これも先ほど柿澤委員がおっしゃったように、私も朝日新聞の報道でしか知りませんけれども、その決議案内容を読みますと、最後に、この決議を十分に実施していない場合は、さらなる措置を検討する用意がある、と結ばれているけれども、具体的にはどのような措置を日本政府としては考えておられるのか。また、これも先ほど出ましたけれども、カシミール問題について、総理は、安保理でぜひ議論すべきだということでありますけれども、この決議案には入っていませんけれども、どういう形でこれから提案をしていくおつもりか。いろいろと項目を並べ立てて恐縮でありますが、お答えいただければありがたいと思います。
  29. 阿部信泰

    阿部政府委員 お答え申し上げます。  一つは、パキスタンに対して、安保理関係で緊急会合を求めるべきではなかったかということでございますが、これは、まさにパキスタン実験間近ということの情報に接しまして総理から向こうのシャリフ首相に電話しましたときにも、向こうから、安保理などでこういう問題を取り上げてくれないのが一つの問題だという指摘がありました。そういうこともありまして、安保理日本の働きかけで議長声明を出し、また現在、決議案採択すべく努力をしているところでございます。  それから、現実にインドパキスタンが核弾頭を配備するのを何とかとめられないかということでございますが、これもこれからの問題としまして各国と協議して考えていかなければならない問題と考えております。  そのほかの国へのドミノ現象をどうやって防ぐかということでございますが、これについてもいろいろ方法があるかと思いますが、例えば一つ日本がやったような、実験をし核開発をしたら大変な反発が来るということを明らかにしておく、これはもう既に日本がやったわけでございます。それからもう一つは、そのように実験をした、国際世論に逆らって実験をした国に対して御褒美を上げないということを明らかにするということが必要でございまして、この点については各国の協力も得てそういうことを確保していく。それから、現実に核関係あるいはミサイル関係の技術が流れないようにするということで、これについては関係国の輸出管理を一層強化するように協力を求めていくというような幾つかの方策があると思いますので、こういうものを組み合わせてやっていくということがあるかと思います。  それから、安保理における決議採択の見通してございますけれども、これは常任理事国拒否権が出ないように、多数がとれるように目下努力しているところでございまして、何とかその方向に持っていこうと努力しておるところでございます。  それから、決議の最後に、実施されない場合にどうするかということでございますが、これについてはどのような事態が起こるかということがいろいろありますので、その態様に応じて安保理においてまたさらに検討を求めるということになるかと思います。  それから、カシミール問題を明確に含めるべきではないかということでございますが、これにつきましては、長年の問題で、例えばインドの方はカシミール問題というのを明確に安保理の議題とすることに非常に強く反対しているようでございますので、またそれに理解を示している国もあるようでございますので、その辺を何とか乗り越えて、うまいぐあいにインドパキスタン間の問題というものを安保理で取り扱えるようにということで、現在のような表現になっているということで御理解いただければと思います。
  30. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 先ほど八代委員だったと思いますけれども、核保有クラブにはインドパキスタンに対して説得力がないのじゃないかというお話がありまして、私もそれは同感なのです。特に、インドパキスタンに対してこれからいろいろと働きかけを行っていく際には、今回も決議案共同提案したようでありますけれども、スウェーデンとかあるいは南アフリカとか、そういったまさに先ほどの表現をおかりすれば志を同じくする国々との連携というのが極めて大切になってくるし、そういった国々提案であれば受け入れる、より受け入れられやすいということは私は十分あり得るのじゃないかというふうに思います。  またこれから交渉をいろいろしていく過程の中で、そういった国々が妥協案を示していくとか、そういうことが私は十分あり得るのじゃないかと思っていますが、その点についてはいかがお考えになっておられますか。
  31. 阿部信泰

    阿部政府委員 現在、核を持っている国が核軍縮努力を真剣にやらなければ説得力がないというのは、全くおっしゃられるとおりでございまして、そういう意味でも、今度の安保理決議努力に続きまして、安保理常任理事国が五カ国で近々集まるということでございますので、そういったところで真剣な話し合いをしてもらいたいというふうに考えております。その点につきましては、我が国からも、そういった点が考慮されなければ安保理常任理事国会合というものも説得力がないということはぜひとも指摘したいと考えておりまして、その過程におきまして、スウェーデンとか南アフリカとか、そういう日本と同じような志を持つ国と緊密に連絡をしてまいりたいと考えております。
  32. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 いや、私が申し上げたかったのは、それは審議官がおっしゃるとおり、核保有クラブがみずから核軍縮の意欲を示さなければ説得力がない、これは全くそのとおりなのですが、同時に、特にインドとかパキスタンに対しては、私は、核を持たない国あるいは核開発を廃棄、断念した国の方が、むしろいろいろな点で妥協案なんかを示したり交渉をリードしていけるのじゃないかという意味で、実は申し上げたのです。ですから、ある意味でそういう視点というのも大切にして、これから交渉を進めてもらいたいというふうに思います。後で御意見がございますれば、いただければと思います。  最後に、もう時間ですから一つだけ、さっきのドミノ現象に関連して、やはり少し気になりますからお聞きしておきたいと思うのです。  最近、北朝鮮が、米朝合意の履行は不十分だということで核凍結の解除を警告しているというような報道がございます。また、韓国の東亜日報なんかの報道によれば、パキスタンと北朝鮮は友好関係にあって、核技術の移転の可能性は全くないとは言えないということを書いていて、そういった核凍結の解除について、また核技術のパキスタンからの移転可能性について、日本政府としてはどのように見通しておられるか、お聞かせをいただければ幸いでございます。
  33. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 まず、御質問の前段でございますが、北朝鮮の核開発疑惑については、これは重油の供給と軽水炉の建設ということでKEDOというプロジェクトで対応しておりまして、いろいろ北朝鮮は進捗ぶりに不満もあるようでございますが、基本的にはこういう考え方対応をしております。  パキスタンの核技術が北朝鮮に逆流するのではないか、移転するのではないかということをどう見ているかということでございますが、これはなかなか察知が難しいところでございますが、少なくとも現在、パキスタンは今回の核実験に用いたような技術を他国に移転するということはありませんということを、一昨日でございますが、外務大臣から在京の臨時代理大使に申し入れをしたときの回答の中にもそういうことがございました。
  34. 玄葉光一郎

    ○玄葉委員 私の質問は終わらせていただきます。ありがとうございました。
  35. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、松沢成文君。
  36. 松沢成文

    ○松沢委員 民主党の松沢成文でございます。  済みません、自席からの質問でもよかったのですが、外務大臣の顔がちょっと見えないので、ここだったらしっかり見えますし、きょうは政治家同士、短い時間ではありますけれども、ぜひとも議論をさせていただきたいと思いまして、この席からやらせていただきます。よろしくお願いします。  さて、この問題で一番大きな、大上段に構えた今後の議論としては、NPT、CTBT、この二つの条約による核不拡散の体制、この体制で今後も核不拡散を守り抜けるかということが一番大きな議論になってくると思うのです。  NPTの場合は、核五大国核保有を認めていて、それ以外の国々は核を持ってはいけませんよ、簡単に言えばこういう発想でありまして、したがって、インドパキスタン日本も即時無条件で入るべきだと言っていますけれども、こういうことを認めろというのであれば、恐らく彼らは入れないわけです。  したがって、またCTBTのみ入られてしまうと、もう私たち実験を十分にやりました、コンピューターシミュレーションで臨界前実験の、いろいろやるデータもそろえましたからもう実験は必要ない、では核も持ったので入りますよということになれば、これは核不拡散枠組みの外に新たな核保有国をつくることになってしまって、これはNPT、CTBT体制のある意味で崩壊とも見ることができるのです。  それで、三十一日にインド外務省政府は、こういう核不拡散核軍縮枠組みはだめだ、差別条約だ、もうこんな体制は機能しないということで、新しい協定なり条約をつくるべきだということを提案しているのです。そういう交渉を早期に始めていくべきだと。インドパキスタンは、このことについて国際社会から今批判を一手に受けていますから、それに対抗するためにこういうことを言わなければいけないという部分もあると思うのですが、ただ、インドの主張を聞いてみますと、なるほどそのとおりだと思う部分は多いのですよ。  これは、例えば、新聞から引用しまずけれども、NPT、CTBT体制は核五大国のみに核保有を認める差別条約であり、核廃絶の規定もない、だからインドはこの体制には入らないと言って署名を拒否してきているのです。そして、核兵器は、世界じゅう差別のない枠組みの中で核不拡散核兵器の廃絶は取り扱うべきだ、こういう主張もしているのです。この主張を聞く限り、そのとおりだと思う方は私は多いと思うのです。  それで、インドはもう一つ、化学兵器禁止条約というのも例に出している。化学兵器禁止条約は、私もこの場で議論をいたしました。それは化学兵器を十年後までにすべて廃絶する、目標年次も決めて、化学兵器の製造、移動、すべてを禁止している。日本中国にある遺棄化学兵器については、この条約に入っている以上、それを守って廃絶しなきゃいけないのです。自国のものだけじゃない、ほかの国に残したものも廃絶する、こういう化学兵器禁止条約のような核兵器の廃絶に向けての新たな体制をつくらなければいけないというのが、ある意味インドの主張なんです。  そこで大臣、日本被爆国であって、そういう意味では非常に特殊な国であって、核爆弾の悲惨な体験もしている国であります。そこで、NPT、CTBTの体制が今回のインドパキスタンのこの実験によって機能し得るんだろうか、大きな疑問が世界じゅうから上がっているこのときに、日本政府として、やはりこの体制がベストじゃないけれどもベターだから、この体制に入ってもらえるように、多分無理だと思いますが、インドパキスタン説得を繰り返すのか。それとも、日本世界の中で唯一の独特な経験を生かして核軍縮、核不拡散の新たな体制を提示する、私はこういう積極性が今日本に求められているんじゃないかと思うのですが、外務大臣、政治家としてどうお考えでしょうか。
  37. 小渕恵三

    小渕国務大臣 このように核という兵器を持たずして世界の平和と安定が確保されるということが究極の望ましい姿であり、そのことは、我が国としても究極の核廃絶に向けての努力は傾注しなければならぬと思っております。しかし、現実の問題として、世界核保有国、あるいは今回二カ国がまた保有国となった時点におきまして、こうしたことの中でそうした究極の廃絶の運動を展開いたしましても、その実を実るということはなかなかもつて困難な状況だろうというふうに想定せざるを得ません。  そこで、であればこそ、NPT、CTBT、カットオフ条約、現実的な措置として、さっき御指摘ありましたが、インドの主張からすればそうした主張もあろうかと思いますけれども、現行の各国ともその方向で進んでおる大方の方向性の中で、新たにこの二カ国が誕生しておるわけでございますので、その二カ国には引き続いてNPTに参加してもらう、CTBTの実験を行わない、こういうものにまずはともかく参加してもらうということを慫慂していくということが、現実には今の段階ではなすべきことだと思っております。
  38. 松沢成文

    ○松沢委員 現体制の中で最大限このNPT、CTBTの枠組みに入ってもらうように努力をしていきたいという御答弁だったと思います。  さて、時間がないのでもう一問お聞きします。  これまでの議論の中で、もうこの場に及んでしっかりと国際社会でこのインドパキスタン核開発問題をどうにか制御する話し合いをしなければいけないということで、G8プラス中国ですか、そして国連安全保障理事国の中でも緊急の外相会談を招集して話し合いをしていこうということであります。その中で、日本は、G8の会談にむしろ当事者、当事国であるインドパキスタンを呼ぶべきだという提案をされたというふうに新聞に載っていましたが、私は、積極的な発想で、日本提案したのであれば評価はしたいと思うのです。  さて、この交渉もあります。そして、先ほど柿澤先生の提案の中で、ARF、ASEAN地域フォーラムでもこの問題を取り上げてみたらどうか、あるいは、インドパキスタンの当事国も呼んで東京会議というのをやって、日本がこの問題の解決に向けてのイニシアチブをとるべきだという、こういう提案もありました。すばらしい提案だと思いますし、私も支持したいと思うのです。  ただ、私は、もっと日本外交を一歩突っ込んでこの問題に挑戦ができないかというふうに思っております。それは、できれば大臣みずからインドパキスタンに乗り込んで、そしてイスラマバードとニューデリーの間を何往復もして、シャトル外交をしてこの両国の利害の調節、言い分を聞いて、この核の問題、そして地域紛争の問題、この二国間の問題の解決に汗を流す、それぐらいの本当に顔の見える日本外交、活躍を大臣に期待したいのであります。  内政干渉になるからこういうことをやるべきでないというのが、今まで恐らく日本政府もとってきた態度だと思うのです。ただ、もう事は内政干渉じゃ済まない、これが最悪の状況になると、核戦争まで結びつく可能性もゼロじゃないと言われている不安定な両国関係なんです。私は、内政干渉なんかに当たらない、世界の人類を救うためにだれかがここで動いていかなければいけない、こう考えております。  今までアメリカでも、例えばキッシンジャーが、中東和平、そして中国との国交回復に向けて、みずから飛行機に何度も乗ってシャトル外交を繰り返して、その外交の目的を果たすために汗を流してきました。イギリスも今回中東和平にまた加わるようでありますし、さまざまな外交努力外交の先進国はやっているんです。  私は、日本外交の顔が見えないと常々外務大臣にも御批判をさせていただきましたが、この前の質問で、登審議室長ですか、バーミンガムから急遽インドに送っていただいて、シャリフ総理大臣とも会談をするということを私も委員会提案させていただいて、すぐに動いていただきました。ただ、今回の問題、私は、特使だけではなくて、むしろ外務大臣がそれに挑戦するぐらいの心意気が欲しいんです。  何度も言われていますように、日本というのは唯一の被爆国であります。非核保有国じゃない、世界で唯一核爆弾を経験している、大変な経験を持った国なんですね。その日本こそがやる意義があると思いますし、また、日本インドパキスタン両国への最大の援助国であります。日本がこれまで両国の発展に果たしてきた役割というのは非常に大きいわけであります。そして、ほかの大国はすべて両国核開発についての利益関係者でありまして、やはりこの交渉をまとめ上げる資格もないし、私は、ほかからまたうがった見方が出てうまくいかないと思うのです。  御承知のとおり、中国アメリカパキスタン核開発に絡んでおります。そして、ロシアやフランスはインドに絡んでおります。インドへの最大の武器輸出国でもあります。英国は両国の旧宗主国でありまして、なかなか難しい場面があるわけであります。  そうであれば、日本こそがこの両国の間に立って、カシミール問題、停戦合意を取りつけるべきだと思います。そして、不可侵条約、さまざまな動きもこれまで両国の間であるわけでありまして、小渕外務大臣こそが、私はそれをやる資格があるし、外務大臣ならできると思っております。私は、外務大臣自民党の総理・総裁、ひょっとしたら次の我が国の総理大臣になる器の方であると信じたいと思います。そうであれば、まず、日本のリーダーになる前に、世界から小渕外交ここにありと、これぐらいのことを言っていただけるような外務大臣に期待をしたいわけでありますが、大分時間がオーバーしておりますから、これで終わります。  外務大臣、一言私の提案にコメントをいただければ幸いでございます。
  39. 小渕恵三

    小渕国務大臣 時間がないそうですので、余り時間とって申し上げませんが、一つは、G8の問題、それにパキスタンインド両国を招いたらどうかという話ですが、そもそもこの話はイギリスのクック外相からの提案でございまして、私は、当初、ここに中国が入るんだろうと実は早とちりをしたのです。  そうあれば、パキスタンインドがそこに、まずG8プラス中国で話し合って、そしてその結果、インドパキスタンに対して何らかの提案をできたらと、こういう気がしたのでございますが、実は、ロンドンにはG8となっておりまして、中国に参加を求めたかどうか、私まだお聞きしていないんですが、不参加ですね。ですから、そういった中でなかなかこの二カ国を招致するということの困難はあるんじゃないかなと思っております。  一方、ジュネーブでP5はやるんです。それで、私は、P5に日本をなぜ呼ばないかと率直にそう思ってはいるんです。しかし、核保有国たるということよりも、むしろ常任理事国の中での五大国が集まってまずは相談しようということですから、それは相談していただきたいと。そこでまた一つの答えが出てくれば、それはそれなりに結構だろう、それぞれの会合最大限のよき結果を生む努力をしていかなきやならない、こう思って、日本として出席できますのはロンドンでございますから、これはぜひ出席させていただきたいと願っておるところでございます。  それから第二に、インドパキスタン、ともに飛び込んでシャトル外交をやれと。お気持ちのことは非常にわかりますし、私も、実はこの外務大臣をしょってなければすぐ飛んででもいきたいところなのでございますが、問題は、どういう解決方法があるかということもきちんと想定しませんで、ただ行って倫理の話をしてきたって、話にならぬだろうと思うのです。したがって、そういった意味で、このきょうの委員会もあえて月曜日お開きいただいたのは、いろいろの具体的な御提案なりそういうものが、先ほど来お聞きをちょうだいさせていただいていますが、こういうものを全部受けとめさせていただいて、本当に両国がこれをやめるためには何が行われなきゃならないかということですね。  実際、二つの国がこの実験をしなければならなかった背景から考えまして、そのそれぞれの両国の言い分を聞くわけじゃありませんし、また、パキスタンについては、インドの後行ったんですから、日本としてのそれをとどめる武器はいわゆる経済協力云々ということになっておるわけですが、アメリカなどは、伝えるところによりますれば、アメリカのファイターをどのくらい供与するかしないかというような話もあったやに聞いておるわけで、それがある意味パキスタン安全保障を担保するゆえんのものとして核実験に踏み込まなくてもいいというような、そういう形での具体的な提案がそれぞれの国としてあるわけです。我が国としては、言うまでもありませんが、武器輸出三原則もこれあるし、そういった形で日本世界の平和に貢献するということでない、できることは、経済協力を行うことによってそうした国々の地位を高からしめるということでやってくるわけです。  長くなりましたが、どうぞひとつ松沢先生も――本人が飛んでいく、ニクソンが中国と国交を正常化しましたが、キッシンジャーの話が出ましたが、キッシンジャーも働きましたし、私、昨晩、IRAの問題でのテレビをずっと深夜まで見ておりました。メージャー首相その他が非常に苦労されたのを今振り返って、かなりドキュメントとして見ておりまして、その間には多くの方々が、すなわちキッシンジャーにかわる方々が働いておるわけです。ですから、一応肩書き持った者が表に出てきて、されやるというのは非常にそれは結構なことなんですが、それと同時に、本当にこの下積みの苦労をしていただく方があって、またこういう問題が解決するのじゃないか。どうぞ、一翼を担っていただければ大変ありがたいというふうに思っております。  そういうことで、御答弁になったかわかりませんが、よろしくお願いいたしたいと思います。
  40. 松沢成文

    ○松沢委員 どうもありがとうございました。終わります。
  41. 中馬弘毅

    中馬委員長 島聡君。
  42. 島聡

    ○島委員 非常に残念だと私は思っております。といいますのは、先週木曜日の五月二十八日に、この委員会でちょうど私は外務大臣にこのパキスタンの問題について質問をしておりました。そのときに阿部軍備管理・科学審議官が、核実験実施可能性について、友好国から得た偵察衛星情報などによると、実験準備は完了に近いところまで行っている、実験するかしないかはパキスタンの政治的決心によるというような、私のメモによるのですが、そういう答弁をされたわけであります。それが二十八日の日の日本時間で三時半ぐらいだったと思うのです。今思うと、政治的決心をするだけだというその答弁を、すごく私自身も、そのときはそうだなとしか、政治的決心だなとしか思わなかったのですが、非常に緊迫した意味の答弁であったということをもっと早く気づくべきであったということを、痛切に思っております。  私の質問に対しまして小渕外務大臣は、パキスタンインドよりも日本の経済援助に依存する割合が高いのであるから、いわゆる経済協力、あるいは経済制裁というようなものを行えば、少なからぬ影響が出ることをパキスタンに認識してもらいたいという趣旨の御答弁をされた。これはまた、そのときはなかなか思い切った、きちんとした御答弁だと私は思ったわけでありますが、結果として、その答弁、その外務委員会議論がされたほぼ三時間、四時間の間に核実験が行われたわけであります。  極めてその意味で、非常に残念であると同時に、これは一体、きちんと我々は反省するべき点は反省しなくてはいけないんじゃないか。つまり、今外務大臣が松沢議員の質問にも答弁されました、やはり経済協力というものを中心にと言われましたが、結果として、そのときも、対外援助を手段とした我が国外交はこういうことをやるとおっしゃいましたが、それは非常に冷厳な国際政治の中においては、あるいは国家の生存ということを考えたパキスタンにとっては、なかなか自制というまでに至らなかった。  ただしかし、我が日本においてはそれしか手段がない、ということは、今後のことも含めて、これからもこの政治的決心を覆すために、今回の問題、効果ある政策としてならなかったことをどのように分析し、そしてこれから、パキスタンについても含めて、経済援助を中心とした外交の今後をどのようにお考えなのか、まず大臣にお尋ねしたいと思います。
  43. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今回の二国の核実験というものは、言葉で言えばもう遺憾のきわみで、こういうことでございます。  そこで、経済協力については、あのとき申し上げましたが、インドの例を取り上げてパキスタンも、パキスタンの国情からいって、我が国の援助というものは極めて大きい。数字的に言えば、九六年まで二億八千二百万ドルで、二国間としては、パキスタンにとっては三分の二を我が国から協力を求めている。したがって、そういうことが中止されるということになったら、これは国民皆さんも、経済状況から判断して、政府としても、それに踏み切るのにはよほどの事由がなければならぬじゃないかと言って、日本としてはそういう警告を常に発してきたわけでありますが、にもかかわらずということになってしまった。  しかし、私は、インドパキスタンも、これは実験を行いましたが、国民的な今の沸き立つような感情からいって、よくやったということを両国国民両国政府に対して言っておるのだろうと思いますが、きょうの新聞などを見ますと、当初、インドでも九一プロがもう全く賛成した、しかし、今になってみると一〇%ぐらい下がってきているというようなことで、だんだん、なぜインドが率先して核実験をやらなきやならなかったかというある種の声もインド内に出てきている。と同様に、これから経済制裁が行われてきますれば、パキスタンにおきましてもじわりじわりと私はきいてくるのだろうと思います。  ですから、核実験を行うことを中止できなかったという意味ではまことに遺憾のきわみでありますけれども、日本としてとっておる態度は、必ずパキスタンにおいても向後において、これからの対応については、十分日本側のこの考え方も受けとめながら対応していってほしいと、心から願っておるところでございます。
  44. 島聡

    ○島委員 時間がありません。最後の質問ですが、先ほど玄葉議員が質問をされたわけですが、いわゆる核拡散、特に、もしも先ほど玄葉議員が言われたように、北朝鮮が核凍結解除などということに踏み切った場合には、非常に日本安全保障にこれは直結する話になってまいります。  先ほどの答弁では、現在のところは軽水炉で基本的に対応していますという御答弁だった。それから、さらにパキスタンの技術移転でも、先ほどは、今のところは察知は難しいが、外務大臣が大使の人を呼ばれたときの意見では、少なくとも今移転する気はないというふうに言われたという答弁であります。その気を、今はないわけであって、政治的決断ですぐひっくり返る話でございますから、これは。それをさせないためにどのようにするかということを、大臣の御答弁をお願いしたいと思います。そして最後にします。
  45. 小渕恵三

    小渕国務大臣 こうしたことがほかの国に伝播しないように、最大限努力をしていかなければならぬことでありますが、北朝鮮につきましてはKEDOの計画があるわけですから、日本としては相当の経済的負担を行うということになっておりますけれども、これは、韓国、アメリカあるいは関係する諸国をさらに参加させていただきまして、やはり核の問題は平和的利用に限るということでやっていくために、この計画を実行していくために日本としては最善の努力をしていくということだろうと思います。
  46. 島聡

    ○島委員 きょうは時間がありませんので、この問題はもっと今後、厳しくお互いに討論をして、いい形に持っていきたいと思います。  以上です。終わります。
  47. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、藤田幸久君。
  48. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 せっかくの機会でございますので、大臣に、ちょっと歴史的な経緯も踏まえてお話をさせていただきたいと思います。  私は、大学を卒業してから二年間、アジアの青年とホームステイをしながら世界じゅうを回ったことがございます。その中に数名、インド人がおりまして、実は、このグループをつくった方は、インドの独立の父のマハトマ・ガンジーのお孫さんでございます。そして、その間にいろいろな経験をいたしましたが、一つ、私がずきっとしたことがございます。  それは、インドの方が独立と言う場合に、インデイペンデンスという言葉を使わずにパーティションという言葉を使うわけです。したがって、インドの方々にとっては、独立はもちろん大英帝国から独立をしたという喜びであると同時に、分割をさせられてしまった。もちろん、マハトマ・ガンジーは、インド亜大陸全体が一つの国として独立を望んだわけです。しかしながら、パキスタンにはジンナーという方がいらっしゃった。それからもう一つは、イギリスの場合に、やはり分割統治という戦略的、地政学的な考えがございましたので、インド亜大陸が全体として独立するのではなく、インドのヒンズー教、それからパキスタンのイスラム、それからセイロンの仏教と、分割をして独立を与えた方がコントロールがしやすい。ですから、インド亜大陸の方々は、一九四七年の八月十五日は、独立の喜びと同時に分離独立をさせられた、そして実際に、四七年から四八年にかけては数十万人の方々が実際に被害に遭っておるわけでございます。  私は、今回の核実験を見ておりまして、単に印パ問の問題というよりも、やはり当時にさかのぼった被害者意識というものが一つある。被害者意識というのは、お互いに対する過大な恐れを持つわけでございます。その辺に対する取り組みというものが、この際、必要ではないか。  核ということについていろいろ議論が出ておりますが、核というのはあくまでも手段でございます。しかしながら、ボタンを押すのは人間でございます。人間が押すがゆえに、それぞれの国のセンチメンツとかナショナリズムが台頭してきておる。ガンジーのお話を申し上げましたが、そのマハトマ・ガンジーを撃った方はヒンズー至上主義者で、実は、その流れをくむBJPという政党の首相が、首相に就任後、二カ月後に核実験を行っておるという流れがあるわけです。  私は、昨年、インド独立五十周年に参加をいたしました。ハリジャンという不可触民から大統領になった大統領にもお会いしましたが、実はそのとき、先ほど申しましたガンジーのお孫さんがいろいろ面倒を見てくださったわけですが、同じ時期に、そのガンジーさんの娘、つまり独立の父のマハトマ・ガンジーのひ孫に当たる女子大生でございますが、インドパキスタンの二百人の学生が一緒になって、印パ国境で独立を祝ったのです。十四日にはパキスタン側で、インドの学生もパキスタン側に行って独立を祝い、翌十五日には、パキスタンの学生も今度はインド側に来て一緒に独立を祝った。そういった、大変、和解の出来事もございました。  私は、今回の問題を解決していく場合に、そういう歴史的なことも踏まえた対応が必要ではないか。ある意味では、今日までのパワーポリティックスの限界というものを示したのではないかというふうに思っております。  具体的な提案でございますけれども、よく唯一の被爆国という言い方をいたしますが、もちろん、唯一の被爆国であることは間違いないわけですが、私がアジア人と旅をして感じたことでございますけれども、アジアの方々は、広島の被害者はもちろん被害者と思っておりますが、日本国というものに対して必ずしも被害者とは思っていない。むしろ、私が今回、もしシャトル外交あるいはその前段階としてのいろいろな手段を講じられる場合に、重要だと思う点を一つ申し上げたいと思いますのは、広島の碑文の言葉でございます。  これは、昭和二十五年に当時の浜井市長という方が選ばれた言葉でございますが、安らかにお休みください、二度と過ちは繰り返しませぬから、となっているわけです。ところが、もともとはこの言葉は、過ちは二度と繰り返させませぬから、というふうになることになっておったのです。繰り返させませぬからという意味は、日本語は主語等を省略しておりますが、つけ加えますと、アメリカに対して、過ちは二度と繰り返させませぬから、と非難をする碑文になるものであったところを、過ちは繰り返しませぬから、と自省の意味を込めて変えたわけです。  このときに、インドのパル判事という方が、何も日本が被害者であるのにそこまで変えなくてもいいじゃないかという言葉に対して、浜井市長という方は、だれが爆弾を投下したかにかかわらず、一たん原爆というものが落とされた限りはこの被害者の前に立ってすべての人類が自省をすべき事柄であるということで、過ちは二度と繰り返しませぬから、としたわけでございます。  ですから、これから日本がメッセージを伝える場合に、単に唯一の被爆国であるというだけではなく、今後さまざまの紛争の根にあるところの恐れとか不信といったものを超え、手段が核であっても、実際に事が起こる場合にはすべてやはり我々全体の責任であると、まず例えば核を保有しているクラブの皆さんに、そこまで日本は実はメッセージを持っているということを申し上げた上で、この印パ関係に関しましては、日本がそういう自省の気持ちを示した上で、旧宗主国イギリスを含めたこの今日の問題の根底にある精神的、心理的な要因も含めた解決策について提示をする。そういった積み上げがなければ、外務大臣自身がシャトル外交に行かれるところまで実はいかないのではないか。  そういうさかのぼった国民同士、あるいは指導者同士の信頼関係をそういう角度から発信をしていく、そのためには、単に手段の制限あるいは援助によるいわばインセンティブといった次元では恐らく解決がつかないのではないか。そういったレベルでの積み上げと外交をしていただくことが私は必要ではないかというふうに感じております。  ここに、たまたま私の友人たちが書きましたアメリカのCSIS、戦略国際問題研究所の本がございます。日本版は「宗教と国家」となっておりますが、数年前にワシントンで出版されてアメリカの国務省の方々も読んでおる本ですが、これはドイツとフランスの和解とか、ジンバブエの独立とか、ドイツの統合とか、そういう紛争に関する心理的、精神的な要因がそういう紛争の種をディフューズしたというようなことが書いてある本でございます。  こういった実はアプローチの過程に、先ほど申しました広島の浜井市長もスイスの会議でそういったものに触れられて、過ちは二度と繰り返させませぬから、から繰り返しませぬから、に変えた経緯がございます。ぜひそういった観点、せっかく小渕外務大臣外務大臣でいらっしゃいますので、アプローチをしていただきたい。  もう一言申し上げるならば、核という手段は、ある意味では大臣が取り組んでおられる対人地雷に似ております。一つは無差別性であるということ、二つ目は文民に被害を及ぼすということ、三つ目は攻撃する側と攻撃される側の区別がつかないということ、そして四つは被害が永続的になる、しかも、対人地雷に比べて核というものは世代から世代までつながるということで、非常に似ておる。ということは、根絶問題として核そのものを廃絶しなければ、結局は解決にならない。手段に対する対応ではなく、根本に対する対応が必要であるという意味では、まさに対人地雷と非常に似ている点が多数あると思いますので、そういった点をお願い申し上げたいと思います。  ちょうど時間になりましたので、簡単に御答弁をいただければ幸いでございます。
  49. 小渕恵三

    小渕国務大臣 ささやかながら私も存じておった点もございますが、いろいろ御指摘をちょうだいいたしました。  根本的には、問いただしていくと、人間とは何か、あるいは宗教とは何か、国家とは何かという問題に帰着する、極めて高遠なお話のような気がします。しかし、具体的にはこういう問題を解決しなければこの核の問題も解決しないということでございますので、さらに勉強の努力をしていきたいと思っております。
  50. 藤田幸久

    ○藤田(幸)委員 ありがとうございました。
  51. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、丸谷佳織君。
  52. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 丸谷佳織でございます。よろしくお願いいたします。  五月十一日にインド地下核実験を実施しまして、当委員会の方でも再三議論がなされましたけれども、残念ながら、懸念していたように五月二十八日午後、パキスタン地下核実験を実施したという中で、こういった形での当外務委員会の実施というのは非常に意義深いものだというふうに思ってきょうは参加させていただいておりますし、またこの討論、議論質疑応答の中で、ある程度日本が今何をすべきなのか、あるいはどういつだ方向に向かって今回を乗り越えていくのかという道筋が少しでも明らかになってくれば、それはまた大変意義深いものだなというふうに思っ  ております。  まず確認をさせていただきたいわけなのですけれども、我が国としまして、世界安全保障また平和を考えたときに、私たちの国が目指している方向は、核の全廃という方向でよろしいでしょうか。それとも、核を持つ国というのは安全な核を、管理体制をひいてそのほか持たない国は核の開発、保持をしないで既存の核保有国の傘の下で安全保障を図るというような方向もあるかと思うのですけれども、我が国姿勢をまず確認させていただきたいと思います。
  53. 小渕恵三

    小渕国務大臣 先ほど御答弁申し上げておりますように、究極の願いは、この全世界に核を持つて他国を制圧したり自国の安全保障を図っていくということは、これはあってはならないことだろうと思います。  しかし、現実的には、アメリカ核開発から始まりまして、旧ソ連の開発が行われ、二大大国が核を持つことによって核の抑止力という形で、この恐れの中での平和というものが世界の中で存在してきた、それが拡散してきて五大国になり、今七つの国になってきておるということでございます。  したがって、これまでの状況の中で核の五大国もそれぞれ、特に二大国が核の削減について、なかなか難しい話し合いでありましたが、両国の最高責任者の話し合いによって幾つかの協定を結んで、今その努力を傾注しておるところでございますから、そうした現実の姿の中で核を削減していくという形で一つ方向性が出たかと思ったこのときに当たって、二つの国が核実験を行ったというところで、今世界の中で一体これからどう対応したらいいかという大変な大きな疑問符がつけられておるということであります。我が日本としては、当然のことながら究極の目標と、そして同時に、現実に我が国としてできることを一つ一つ着実に努力をしていくということの構えでいかなければならない、このように考えております。
  54. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 究極のその目的、核の全廃に向かって、本当にこれは究極で非常に崇高な目標だというふうに思うわけなのですけれども、核を全廃するというこの理想を真ん中にどんと掲げて、しかも、短期的な取り組み、中期的な取り組みそして長期的な取り組みといった、重層的な軍縮の地道な貢献で実績を上げていくように努力することが、日本にできる大変重要な軍縮外交なのだろうというふうに思います。  そこで、時間がございませんので、短期的な取り組みの一つとして提案させていただきたいのですけれども、小渕外務大臣は、先ほどからいろいろな議員の方が本当に褒めたたえていらっしゃるように、私も個人的なお話をさせていただいたことはございませんけれども、大変人間味にあふれる方だというお話を聞いております。ですから、大臣のすばらしい点を生かして、本当に真の対話をインドパキスタンの首相レベルで呼びかけていただきたいというふうに思うわけです。インドパキスタンの対話の仲介をぜひしていただきたいというふうに思います。  なぜなら、インド地下核実験のときのバジパイ首相のコメントもそうでしたし、またパキスタンシャリフ首相のテレビ演説のコメントを見ていましても、やはり実験の根底には恐怖の均衡というものがあるのだろうと思えてならないわけです。やはり、恐怖という人間の感情を揺り動かす一番有効なものが、理論の上に真の人間味あふれる対話なんじゃないだろうか、このように思うわけなんですけれども、大臣、いかがでしょうか。
  55. 小渕恵三

    小渕国務大臣 インドパキスタン、それぞれの事情でこういつた事態に立ち至っていることはまことに残念であります。あらゆる機会をとらえまして、それぞれの責任ある、特に政治家同士の間の気持ちをお互いとらえられるように努力をしていきたいと思っております。
  56. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 どうもありがとうございます。  私は、戦後生まれの世代でございまして、実際に戦争がどういつだものなのかわかりません。いろいろな歴史の教科書を見たり、あるいはうちの祖父に話を聞いたりする中で、戦争はこういつた悲惨なものなんだというのは聞いて、伝聞でわかっているつもりなわけなんですけれども、これから二十一世紀に生きていく子供たちも、そういった形で戦争の悲惨さというのを学んでいくんだろうなというふうに思います。  ただ、私自身が実際に歴史の教科書等を見て、こういう戦争の歴史があったんだ、背景があったんだということは字面ではわかるのですが、何で戦争をするんだろうといったところまでは、実際に、なぜなんだろうというその不思議さしか残らなかったこともあります。しかも今、一九九八年のこういつた事態を踏まえまして、二十一世紀に生きていく子供たち歴史の教科書で学んだときに、一九九八年の時代というのはもう米ソの冷戦も終結をしていて、一つ人類は学んだであろうに、なぜか一九九八年にインドパキスタンがまた同じような構図をつくってしまった、どうして二十世紀人たちはこういうことをしたんだろうかと非常に不思議な歴史一つとして見られるのじゃないか、また、これは二十世紀に生きている私たちにとっても非常に恥ずかしい歴史になっていくのではないだろうか、そんなふうにも思うわけでございます。  その中で、ぜひ日本の子供たちに、この危機の中で、新たな冷戦構造と言ってもいいかと思うのですけれども、その中で日本の当時小渕外務大臣はこのように尽力をされて、核全廃に向けて一歩新たな前進の対話を深めたということが、ぜひ歴史の教科書に載るぐらいに頑張っていただきたいというふうに思いますし、また、今ここで新たな対話を進めていくこと、また非核地帯条約等を重要視していくことが非常に必要になってくるのではないかというふうに発言をさせていただいて、私の発言を終わりたいと思いますが、最後に、もし小渕外務大臣、言いただけたらと思います。
  57. 小渕恵三

    小渕国務大臣 言うまでもありませんが、核戦争が起これば人類は滅亡してしまうわけでございますから、今のように後世の人に語り伝えるという人までみんないなくなってしまうわけですから、そういうことが起こる危険性を常にはらんでいるこの問題については、本当に真剣に取り組んで、いろいろな知恵を絞り、また、きょういろいろいただいた御提案等もぜひこれを参考にさせていただきまして、私としてでき得る限りの努力を傾注していきたいと思っております。
  58. 丸谷佳織

    ○丸谷委員 ありがとうございました。
  59. 中馬弘毅

    中馬委員長 山中燁子君。
  60. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 山中燁子でございます。  十分ほどの時間でございますので、今回のことで感じたことを申し上げて、最後に御所見をいただければと思います。  まず、私たちは今、時代の流れの中でどういう方向に行くのかということをしっかりと見据えなければいけないというふうに思っております。その今どこにいて、どこへ向くべきかということで、三つの要素を簡単に私が感じていることを申し上げたいと思います。  一つは、ちょうど九七年の一月に発刊されたカナダのブリティッシュ・コロンビアのカルビ・ホルスティ教授の「国家、戦争、戦争状態」という本の中に、この結論というのは、来るべき時代において重要なことは、現在問題になっている国際システムの状態、つまり、これまでのような国際政治や戦争への伝統的なアプローチ状態ではなくて、問題なのはむしろ国家の状態であるというような伝統的な提議に帰結するという一項があります。この中から私たちは、これから予期せぬいろいろな状況が起こったときに、地域の平和と安定のためにどのような対処をしていかなければいけないかということを十分予測をしていかなければいけないということが読み取れるわけでございます。  そして第二は、安全保障そのものの性質が私はやはりアデンストからウイズへ変わった。つまり、ある一つの目的に対しての安全保障、つまりある国に対して、ある地域に対しての安全保障から、ウイズ、つまりそこの地域を構成するすべての国や国家が、どのようにしてその地域安全保障を考えていかなければいけないか、そういう時代の流れに来ています。そういった認識を持つこと。  そして、申し上げるまでもなく、二十世紀は戦争の時代と言われましたから、私たちはそこからどういうことを学んでいくか。  この三点で考えてみますと、今度のインド、それからパキスタン核実験の問題というのは、単に地域紛争であるということではなくて、世界全体の冷戦後の平和、安定の秩序への大きな挑戦であって、それをみんなの国がどういうふうに考えていくか、そして日本はどうあるべきかというふうな、そういう認識で見なければいけないというふうに思っております。  具体的な問題点といたしましては、先ほどからいろいろ出てきたと思いますけれども、NPTの軍事上の崩壊、CTBTが本当に発効し、そして機能できるのかどうか。あるいは、米国が主導した冷戦後の安保体制というものがこのままで本当に機能するのであろうか。ヨーロッパにはNATOがあり、それから北米を中心にしたNAFTAがございますけれども、ちょうど中東、そしてアジアというのはそういった安全保障の、ある意味ではあいている、穴になっている地域、そこの地域でさまざまな紛争が起こっている。  こういう状況の中で、先日、五月二十五日の新聞の中で、中曽根元首相が「日本が死に物狂いで会議の正面に立ちはだかり、世界国民の声を代弁して歴史に記憶さるべき成果をあげる場所であった」とバーミンガム・サミットのことを伝えておりますが、私はこの記事を読んで、ちょうどイラクがクウェートに侵攻したときに、その当時の英国のサッチャー首相がアメリカへ飛んでいって、ゆっくり構えているブッシュ大統領の机をたたいて、これは冷戦後の世界秩序に対しての挑戦なんだ、すぐにアクションを起こさなければいけないというくらいの訴えをしたという光景を思い起こしました。  また、NPTが定めた核軍縮というのが核を持つ国の論理で推移してきたのではないだろうか、そういう指摘もなされておりますし、また、中国を含むアジアは新しい核の脅威の時代に入ったということで、中国の存在ということにもかなり言及している意見が野村総研の森本研究員からも出されております。  技術のレベルよりも、核実験を実施したということそのものが政治的な意味を持っている、そういう認識で見ますと、クリントン大統領が四回にわたって電話でシャリフ・パキスタン首相を説得したにもかかわらず、あるいは日本も含め経済制裁、それからあるいは経済、軍事の支援というその両方を提示したにもかかわらず、今回パキスタンが結局は核実験を行うことになってしまいました。  これは、ちょうど九四年に私がお目にかかったときに、ハーバードのガルブレイス教授が、日本アメリカは非常に優秀な製品を生産するのには大成功したけれども、本当のハッピーピープルをプロデュースするのに成功したかどうかは疑問である、そういう観点で、経済学者でありながら「カルチャー」という本をお書きになった。そういった視点から見ますと、これは今までの、経済至上主義も含めて、こういった価値観へのチャレンジでもあろうと思います。  しかし、外交というのは、理念だけではなくてプラクティカルでなければなりません。そういったことで、幾つか具体的にその政策、戦略として私が考えたことを申し上げたいと思います。  まず、日本立場は、先ほどから何度も言われているように非核三原則がありますから、どこの国も日本が将来核を持とうと思っているとは思っていません。それだけの認識はされているわけですし、武器の輸出の禁止ということもきちっとうたっております。  それから、唯一の被爆国であるということも再三言われておりましたが、国際社会の、世界の平和と安定のためにそういうことを望んでいる国であるとしたら、今回の日本対応というのは私は大変弱い、今の段階では少し弱いのではないか。すなわち、インド核実験後、バーミンガム.サミットで、核全廃へ向けて核保有の五つの国へ平等に、やはりその意思を一つ表明すべきであっただろう。それから、インドが対中国を意識して核実験をしたということは今まで何度も指摘されていることでもありますから、この時点で中国に特使を派遣するということもあったのではないかというふうに思います。  それを踏まえまして、今後の対応でございますけれども、まず最大の努力は、幾つかあるわけですが、先ほどから皆さんおっしゃっているように、さまざまな重層した形の努力の中で、まず二国間では対米、閣僚級の、あるいは大臣が無理であれば政務次官、あるいはどなたか先ほど、外務委員会から派遣ということでもいいですけれども、じっくりとこの問題について、今後の安全保障のあり方がどういう方向へ向かうべきかという話し合いをすべきである。同様に、中国に対しても同じようにしなければいけないと思っています。と申しますのは、九三年の核政策の見直しが、ことしの秋、アメリカでは大体まとまるというその時期でございますから、日本の意思というのをその中に反映させるというチャンスであろうと思います。  それから、中国に関しては、G8に入っておらず、先ほど小渕外務大臣がおっしゃいましたように、今回の十二日も中国は参加いたしません。しかし、アジアにおいて中国をどういうふうに仲間として一緒に軍縮の方に歩んでいくことができるかどうかというのは、大変大きなポイントになろうと思います。特使の派遣といいましても、これは単に人を送ってということではなくて、本当にロジカルに日本の長期的なあるいは短期的な、そして現実の政策というものをきちんと相手にわかってもらうということのできる、つまりタフな外交の展開の一つの機会だろうというふうに思っています。  NPTは、崩壊と言われていますが、これを再構築することが必要なのであって、核実験をしたら仲間に入れるということは、これは到底認められません。そういうふうにすると、次もそういうことが起こります。しかし、ではその外に置くかということは大変難しい問題ですから、NPTあるいはCTBTへの加盟、これも、核の実験を行ったのなら核を廃棄してから入るというような、そういった条件づけをするような方向で、もう一度どういう再構築ができるかということがあると思います。  G8についても先ほど出ましたが、緊急核軍備世界会議というようなものを日本提案して、中国も含めて、インドパキスタンも含めて早速に実施すべきでありますし、それから今回の国連は、先ほどもう大体のアジェンダは決まっているということですが、やはり今の位置づけとしては、軍縮の会議としての特別の位置づけに持っていくように日本は最大の努力をすべきであろうと思います。  そして同時に、柿澤委員からもARFのことがありましたが、これはパキスタン、北朝鮮をぜひオブザーバーで呼んでほしい。オブザーバーで呼ぶことによって、核を持っているアメリカ中国、ロシア、そしてEUであります英仏、それが全部そろうことになるわけです。そして、これはアジアで行われる会議でございますから、緊急の会議ということも日本がもっと主導して、リーダーシップを持っていったらいいのではないかとふうに思っております。残念なことではありますけれども、これは日本の信頼回復、信頼醸成の一つの大きなチャンスだ、そして世界のために、日本のためにこのチャンスを日本が生かせるかどうか、日本自身が問われている。そういう意味におきまして、毅然とした態度で大きな貢献をしていく、そういう動きは幾らでもできると思います。  先ほどのガルブレイス教授が、昨年九月にお会いしたとき、私が政治家になったものですから、違うアプローチでこうおっしゃいました。あき子、二十一世紀の問題は三つある、一つはプアとリッチの問題である、二つ目は核の問題で、これは日本世界を主導できる唯一の国であるよ、そして三つ目は、伝統的な差別である宗教や民族や性の問題である、これを私に三回繰り返しました。対人地雷のイニシアチブをおとりになっている小渕外務大臣が、核廃絶のイニシアチブもおとりになった思い切ったアクティブな外交を展開されるように、そして、この外務委員会も、あるいはどういう立場にあっても、国会の一員としてもNGOとしても、みんなで何ができるかということを本当に真剣に、日本の二十一世紀への展望が問われているという認識で進めていただけたらと思います。  時間になりましたので、もし言いただけたら幸いでございます。ありがとうございました。
  61. 小渕恵三

    小渕国務大臣 種々御意見をちょうだいし、また御提案もいただきました。それぞれ極めて参考に値することだろうと思いますので、可能な限りできるものから率先して努力をしていきたいと思っております。  ただ、先ほど中国の問題に触れられました。私自身、キーカントリーだとは承知しています。しかし、インドが主張しておりますように、対中国があればこそインド核実験をしたという主張、こういうことのインドの主張は主張でございましょうけれども、また現実冷厳な国際政治の中で、いろいろな国がいろいろな形でそれぞれ相反応しながら政治が動いているとは思いますけれども、そういうことを日本としてそのままに認識するということにおいてはなかなか困難であろうと思っております。  ただ、ジュネーブにおきまして中国が参加する、これは、国連常任理事国として参加をされるということは非常に意義の深いことだろうと思いますので、そういうジュネーブでの動き等も、先ほども御答弁申し上げましたけれども、その会議の動向について極めて注目をしつつG8に臨んでいきたい、こう思っております。
  62. 山中あき子

    ○山中(燁)委員 ありがとうございました。
  63. 中馬弘毅

    中馬委員長 東順治君。
  64. 東順治

    ○東(順)委員 私の持ち時間があと六分でございます。端的に私の意見というものを申し述べさせていただきまして、最後に大臣の御所見をいただければというふうに思います。  私は、先ほどから話が出ておりまずけれども、唯一の被爆国日本という言葉が再三出ておりますが、この唯一の被爆国日本だからこそやらねばならないことというものがあるのじゃなかろうかという観点から、意見を申し述べてみたいと思います。  先ほどからございますように、NPTあるいはCTBT、非常に限界性というものを露呈し始めている。それで、パキスタンにしてもインドにしても、この枠組みの中ではどうも核開発というのを凍結しそうにない。そうすると、下手をすると核のエスカレートという形になる、中東にも飛び火しそうだ、北朝鮮も危ない。こうなってまいりますと、どうしても新しい枠組みというものをやはり考えるときに来ているのではないだろうか、冷戦時代の形というものではもう通用しない、実態的に、時代的にもう合わなくなってきているというふうに思います。  それで、まず、これは私なりの提言ではございますが、被爆国日本としてこの新しい枠組みというものをつくる出発点としてぜひ、例えば核廃絶世界会議というような名称のものを我が国が議長国となって開催を呼びかける。しかも広島というようなところでこの開催をしていく。これを臨時的なものではなくて恒常的なものとして、いわば会議の本部というようなものを広島に置くというようなことで、我が国世界に対するメッセージというものをきちっとこれから送り続ける国になっていかなきゃいけないのじゃなかろうか、こう一つ思います。  それから、当面我が国が、パキスタンインドに対して、もちろん先ほどからございましたように、二国間の交渉仲介に立つ、あるいは調停の仲介に立つということで懸命に努力をするということも非常に大事でございます。  同時に、私は、こんなことができるのじゃなかろうか。あのパキスタンインド国民人たちの反応というものをテレビで見ておりまして、やった、やったともう大喜びしている。つまり、これは被爆国日本で、核を体験をしたその恐ろしさ、おぞましさというような実態的な情報というものが視覚で、あるいは活字で、ちょっとこれまでアメリカとかヨーロッパに比べて訴え方が弱かったのじゃないだろうか、率直に思いました。あの大喜びしている人たちの画面を見て、広島や長崎の被爆者の皆さんというのはどんな暗たんたる思いで見ただろうかと思いました。  したがって、今、この両国のできるだけ多くの都市で被爆展というようなもの、あるいは核の脅威展というようなもの、こんなに原子爆弾というのは恐ろしいんだよ、水爆というのは恐ろしいんだよというものを訴えかけていく展示会、アピールする、そういう催しみたいなものがこの二つの国のできるだけ多くの都市でできないものだろうか。日本政府はそれは両政府に働きかけられないのだろうか。そしてまた、日本から出ていくときに、NGO、民間団体の人たちとも協力をして、強烈に両者力を合わせてこういう訴えかけをして、あの国の国民人たちに核の恐ろしさというのを徹底的に教えていかなきゃいけない。そういう責務というものが被爆国日本としてあるのでは一なかろうか、こういうものを感じました。  それから第三点目に、ロシアとアメリカの問題ですけれども、核兵器の削減交渉でありますSTARTⅡ、これがロシア議会が批准していないということでとまっています。とまっていることによって、STARTⅢまで行けない。これは日本国として、ロシアの議会でもあるいは国に対してでも、これはもう早急に批准すべきではないかという働きかけが何らかの形でできないか。  働きかけることによってSTARTⅡを批准する、そしてSTARTⅢに行く、そしてSTARTⅣは、これはアメリカとロシアの関係ではなくて、核保有国、今回の二カ国も含めて七カ国でこのSTARTⅣというものをやっていく、交渉の場にしていくべきではなかろうか。こういう道筋をつけることによって、我が国世界に対して、平和国家日本、唯一の被爆国日本はずっと平和というのを希求し続けていくんだという、強い強いメッセージになるのではなかろうかと私は思います。  と申しますのも、きのう実は私は長崎に行ってまいりました。長崎に行っていろいろな青年たちと実は話してきたのです。政治談義です。しかし、彼らから出てくる言葉は、内向きの政治に対する不満、国内政治に対する不満のみでした。非常に残念だったのは、このインドパキスタン核実験に対する怒り、これから世界はどうなっていくのか、連鎖に対する不安、そういうことに対するものがもう本当にだれからも出なかったということに僕は物すごい驚きを感じた。しかも、場所は長崎です。同時に、大変残念な思いが実はしたのです。というのも、結局は、なぜ彼らはこんな反応しかないのだろう、こんな大変な事態が勃発しているのに、これだけ大勢の人がいて、だれ一人そういう発言をする人はいない。どうしてだろうと考えました。  そして、僕なりに思い至った結論は、日常的に私たち国日本が核の恐ろしさというものを常に世界に発信し続ける、そして、平和国家たろうとして、こういう問題が起こったときには極めて敏感に、イニシアをとろうとして一生懸命総理大臣なり外務大臣なりが必死になって走り回る、こういうものが常に日常の姿としてあるならば、やはり敏感に反応するのは青年ですから、こういうときに至ったときに彼らからいち早くそんな反応が出たんだろうなと思います。  そういうことも含めまして、先ほど申し上げました三点について、大臣、どうお考えか、簡単にお答えいただければと思います。
  65. 小渕恵三

    小渕国務大臣 まず、我が国として、ただ一つ被爆国として核廃絶の国際会議を提唱せよ、こういうことでございますが、我が国としても、今回のことを踏まえまして何ができるかということで、世界に訴えるためにあらゆる国に日本としてのメッセージを発すべきだとは思っております。  ただ、現実の、ずっと今日までの姿を見ていますと、国連におきましてこの問題を取り上げて、一時はある意味では五大国に封じ込めされておった核が、また拡散の動きになってきておるということでございますので、この時期をとらえてどうしたことがよろしいかということについては、御提案を含めて勉強させていただきたいと思います。  それから、ロシアの、まさに米ロの間のSTARTの問題につきましてでございますが、これもそれぞれの自国の安全保障の問題にかんがみてあることだろうと思いますし、また、ロシアはロシアとしての政治情勢の中でなかなかこれに踏み切れないという形のことがございますので、こうした点につきましても日本としての努力も必要かと思います。  さらに、いろいろ日本の受けた原爆の被害、こういうものを国際世論の中で訴えていくべきだということでございます。かなり私、広島、長崎の方々を中心にして世界各国に、キャンペーンといいますか、深刻な状況についてはいろいろな形で今までも催し物その他やってこられたと思っておりますが、御指摘のように、アメリカとかそういった国々には非常にその回数その他が多かったかもしれませんが、インドのようなところではある意味ではその努力が少なかったかという反省もあろうかと思いますので、すぐ調べて、ある意味では大変迂遠なことかもしれませんけれども、しかし、そういった国民の世論の形成ということで、いかに核の被害が大きなものであるかという、体験した我が国立場を理解を求める努力をしていきたいと思っております。
  66. 東順治

    ○東(順)委員 ありがとうございました。
  67. 中馬弘毅

    中馬委員長 続いて、東祥三君。
  68. 東祥三

    ○東(祥)委員 外務大臣、本日はすばらしい機会をこういう委員会で設定でき、また多くの方々から本当に示唆的ないろいろな提案がなされていることをすばらしいことだと思います。  私は、三つの切り口で今回のインドパキスタン核実験について質問させていただきたいと思います。  まず第一番目の切り口としては、もう既にいろいろと議論されていることに内包されていると思いますが、インドパキスタン核実験が私たちに突きつけている危機の内容をまず明確にする必要があると思います。外務大臣とその危機の内容を、それが共通の認識に基づくのかどうなのかということについてまず質問させていただきたいと思います。  第一に、今回のインドパキスタン両国核実験というのは、戦後の核不拡散体制に対する挑戦である。戦後の核不拡散体制は、もう既に皆さん御存じのとおり、一九六八年に作成された核兵器拡散条約NPTを基軸としてきた。これは、核兵器を保有する国を国連安保理常任理事国に限って、そしてそれら核兵器国核軍縮の義務を果たすとともに、非核保有国に対して核兵器の不保持とそして原子力エネルギーの徹底的平和利用を義務づける内容のものであった。  インドパキスタンは、アメリカ、イギリス、フランス、ロシアそして中国の五大国と並んで核クラブの仲間入りを強行したわけです。もしこれが容認されるようであれば、第二、第三のインドパキスタンがあらわれて、そして核不拡散体制は有名無実となって根底から崩壊する危機をはらんでいると思います。例えば、仮に北朝鮮が核兵器を保有すれば、我が国安全保障は根底から脅かされることになる。しかし、インド及びパキスタン核保有国際社会が黙認すれば、核に野心を持つ国にとって核保有への誘惑は断ち切りがたいものとなる。  政府は、核不拡散体制がこのように根底から揺らいでいるという危機意識を有しているのかどうか。まずこの点について外務大臣にお伺いしたいと思います。     〔委員長退席、福田委員長代理着席〕
  69. 小渕恵三

    小渕国務大臣 五核大国といいますか、それがNPT体制の中で、既に自国が保持しているものはそのまま存続し得て、他の国のものを許さないということは、特にインドが主張しておるように大変不平等であるという立場で、今までもこの条約に参加してこられなかったということでございまして、この体制が崩れたかと言われると、崩してはいけないということを申し上げて、何としてもこの体制の中で、これから核を保持する国々、すなわち核クラブ入りをする国々をふやさないという意味で、NPT条約というものはきちんと守っていかせなければならないのではないかというふうに思っております。  ただ、これも委員御存じのところですが、なぜ五大国が核を持つことになったかといえば、米ソは当時の二大国として世界を二分した冷戦構造の中で、アメリカが持ち、それに対抗してロシアが持ってきた。その他の仏とか英とかというのは、ある意味でそれぞれの国としてのその地位を高まらしめるということもあったでしょうし、また中国は、対ソ連の脅威というようなこともあって核開発に専念したというような歴史がございますが、今回の二国は、私は、核クラブに入って核保有国として、大国としての地位を得たいということであったようには思えないので、むしろこの印パ両国安全保障の問題が非常に切迫した形の中で、この開発にいそしんできたというような形があるような気がいたしております。  それはそれとして、このNPTの体制が崩れたかと言われれば、崩してはならぬと。繰り返しになりますが、そうしたこととしてこの国際社会の中で努力をしていくべきものではないか、このように考えております。
  70. 東祥三

    ○東(祥)委員 基本的には、NPT体制を崩してはならないという外務大臣の御指摘は、極めて重要なことだと思っています。ただ、私が質問しているのは、まさにそのNPT体制が根本から揺らぎ出しているのではないのか、そういう危機認識を持っているのですかという質問です。だから、それに対して、ちょっと僕はすっきりしませんけれども、そういう危機認識を持っているというふうに理解して、時間が限られていますから次に行かさせていただきます。  そうすると、その危機の内容の第二番目の問題ですが、インドパキスタン核兵器保有は、冷戦時代の米ソ核対決に比して現実に核戦争に転化する危険が高い、こういう問題があります。それはなぜなのかというと、米ソ両国はともに、例えば戦略的な原子力潜水艦だとか、あるいは戦略空爆機を保有しています。したがって、第一の攻撃に対して自分たちが持っているものがすべてなくならないということが前提です。そして、つまり第二撃、報復能力を常に確保することによって、相手方の戦略核攻撃を抑止することを核戦略の基本としている。  しかし、外務大臣御存じのとおり、インドパキスタン核兵器は地上配備の弾道ミサイルに配備されるだけであって、いずれかが第一撃によって、敵の核能力を除去することによって勝利を得るという考え方を軍事的に合理的と信じる可能性が十分にある。ここに、まさに危機があるわけですね。インドパキスタン核兵器は使用のための敷居が極めて低くなっている。したがって、冷戦時代の米ソの核とは同列に論じられない。  日本政府は、インドパキスタン核兵器両国間に冷戦時代のような核の均衡をもたらさず、むしろ地域的核戦争に転化する危険が高いと正確に認識しているのかどうか、まずこの点についてお伺いしたいと思います。  いや、外務大臣。僕はわかりやすく、技術的な問題を排除して説明させていただきました。言っていますから。
  71. 小渕恵三

    小渕国務大臣 まず先ほどの答弁でございますが、NPT体制が揺らぎ出しているという危機があるかということですが、言葉で申し上げれば、そういう危機は起こりかねない、こういう認識で対処しなければならぬ、第一の質問についてはそう答えさせていただきます。  それから二番目の問題については、私も戦略的なことはよくわかりませんが、いずれにしても、双方とも弾道ミサイルを既に実験済みであると。したがって、そういう弾道の上に取りつけられるものが製造できているのかできていないのかわかりませんが、いずれにしても、そうした危機をはらんでおると言わざるを得ない。  そのために、インドとしては先制攻撃をやめるということを言っておりますが、すなわち、両国ともそうしたことで、先に手は出さぬけれども、そうした事態を危惧しておるということでございまして、問題は、そうしたものに対してそれを抑止する力、抑止する方法論はどこにあるかということは、これは全世界的にひとつこれから考えていかなければならない問題だろうと思っております。
  72. 東祥三

    ○東(祥)委員 その点を踏まえた上で、まさに今ここで議論しております。  それでは、第二の切り口ですけれども、このようなインドパキスタン核保有に対して日本政府は何をなすべきなのかという問題に入っていくのだろうと思うのです。  それで、先ほど藤田委員が物すごい感動的なそういうお話を、歴史的考察また体験を踏まえて開陳してくださいました。私は、我が国は唯一の被爆国である、と同時に日本というのは、もし核を開発しようとするならば、財政的にもまた技術的にも十分できるにもかかわらずそれをしないという意思を明確にした国なのだろう、私は、このことをもっと世界にアピールしていくべきなのだろうと。その上で、世界で唯一の被爆体験国である、つまり前者の部分、発展途上国が、いろいろな国々核保有に対する誘惑に駆られるときに、日本が核廃絶に向けて進んでいける一つの根拠というのは、唯一の被爆体験国であると同時に、技術的には高度な、平和的利用でいろいろな原子炉を使っているわけですから、また財政的にも、それをやろうと思うならばできないことはない。しかし、それを絶対に、国是として、国の意思としてやらないのだということを言ったことがすごいわけですね。それを全面的に、アメリカの核の傘にいるかどうかだとか、そういうことは別にして、僕は徹底的に言っていくべきなのではないのか。そういう意味では、決意を聞いていると時間がなくなってしまいますので進めさせていただきますが、同じような気持ちをお持ちになっているのだろう、このように思うのです。しかしながら、政府はこれまでに核兵器拡散防止のためにどのような努力をしてきたのだろうかと疑問に思う点がたくさんあるわけです。  冷戦時代の厳しい核対決の雰囲気の中で、中ソの核の恫喝に対抗するために米国の核の傘に安全保障の根幹を依存せざるを得なかった日本というのは、日米同盟に基づく米国の核抑止力の確保を国家安全保障政策の基幹としてきました。私は、これもまさにそのとおりであり、それをまた推進していかなければいけない、このように思っております。  それと同時に、我が国核兵器の究極的廃絶の理想を訴え続けてきた。しかし、我が国外交の中に、核不拡散体制強化に向けて、具体的な真摯な取り組みがあったと言えるのだろうか、疑問が多いです。核廃絶の理想というのは、ある意味で、いっか自己満足のための空疎な文言の繰り返しに同化していったのではないのか、このように思える面も多々あります。政府はこれまでの核不拡散体制強化の分野における無策を率直に反省すべきではないのか、このように私は思います。  政府は、これまで、インド及びパキスタン等潜在的核保有国に対し、核拡散防止の観点からどのような働きかけを行ってきていたのかを明らかにすべきだ、このように私は思います。例えば、我が国パキスタンに対するトップドナーのはずです。その影響力を政策的助言に転化できていたかどうなのか、率直な評価をお伺いしたいと思います。  ただ、時間の関係がありますが、外務大臣、どういうことをやっているかというと、五月四日の時点で、日本政府パキスタンに十五億円の無償援助をやっているわけです。これは決めたのです。つまり交換公文が五月四日ですよ。五月十一日にインド核実験を行っている、インド核実験が行われた後すぐパキスタンに連鎖が走るのではないのか、核の連鎖が起こるのではないのか、そこで動き出しているわけです。  私が申し上げたいのは、まさに核不拡散体制において、日本が真摯に考えているとするならば、交換公文を結ぶときに、発展途上国の国々、あるいは核を保有したい、保有する危険性のある国々に必ずそういうことを言っているのかどうなのかということです。したがって、日本政府から出てきている政策、これは新規無償援助に対しては凍結するというふうになってしまっている。交換公文が結ばれているのは五月四日ですよ。しかし、それに対しては、そういうことを言っていないがゆえに、そこはもう済んでしまったがゆえに、何も手をつけることができない、こういうふうになってしまっているのではないのか、このように思います。  この点について外務大臣、どうですか。外務大臣、僕は外務大臣を責め込もうと思っていないのですから、日本政府外交政策、とりわけ核不拡散体制に対して、本当にできることをやってきたのか、またそれを日本の持てる能力を使ってやってきているのかどうなのか、この点です。
  73. 小渕恵三

    小渕国務大臣 そのようにきりきり詰められできますと、確かにお説のことの十分な思慮があったかどうか、今において反省はいたしますが、たしかこれは、アユブ・カーン外相が参られたときに、日本としては、もろもろの経済協力の中でお手伝いをするということの中でこの交換公文を署名しただろうと思います。あわせて、そのときに、パキスタンにおいてのそのような動きにつきましても、相手方に対して、そのようなことが起こり得ないことを前提として、ぜひひとつ今後の動きについては十分なる配慮をしてほしいということを申し上げたことも事実でございます。  したがって、委員お示しのように、そういうおそれありといえば、すべてのものはすべてその前提において、他国との問題について問題がありとせば、先んじてすべての援助をとどめておくべきだ、こう言われますと、それは御指摘を甘受しなければなりませんけれども、確かに、そのときのパキスタンに対するものは、パキスタン自身の今後の発展のためにぜひ力を尽くしてほしいということで日本側の誠意を示したということでございまして、あわせて、そのときに外相に強く危惧を申し上げておきましたが、そのとおりにならなかったことは、結果論としては大変残念なことだと思っています。
  74. 東祥三

    ○東(祥)委員 ということは、極めてまた重要なことをおっしゃっているのですが、新規援助を結ぶときに、今回の政策というのは新規支援です、これは凍結する。五月四日にE/N、いわゆる交換公文を結ばれたのですが、ここにも手を入れるということですか。入れるためのことを、ちゃんともう既に交換公文を結ぶときに言っていたということですか。もし言っていたとするならば、私、謝ります。
  75. 小渕恵三

    小渕国務大臣 交換公文の署名は、ラホール工科大学教育機材整備計画、ミタワン地区流域保全施設建設機材整備計画でございまして、その署名を行ったわけですが、それは先ほど申し上げたように、パキスタン自身の、大学の教育施設とかその流域保全の建設資材を供与することによりまして、パキスタンとしての経済発展に協力をしてほしいという意味で、長年の話し合いの中で結ばれてきた問題について、その署名式が行われたということです。  それと同時に、一方ではパキスタンにおける、特に印パの間の状況というのは厳しいということで、まだインドがやっておらない状況でございましたけれども、両国とも自制をしてもらいたいということを重ねて申し上げておきまして、条件として署名をしたということではありませんが、気持ちとしては、今日行われたようなことが起こり得ないことを、パキスタンに対しましても、我が国考え方として、インドとの間の正常な関係をつくり上げてほしいという気持ちも込めて、こうしたパキスタンに対する経済協力をした、こういうことでございます。
  76. 東祥三

    ○東(祥)委員 結局、日本の持つ外交的能力、それと日本が掲げる核不拡散体制、これを強化していく、それはリンクしていないではないですか。だから結局、本当に真剣に、日本は唯一の被爆国である、先ほど東先生が言われているとおり、世界にそのような経験をしているところはないわけですから、それを堂々と政策的助言の中に入れていくべきなのではないのか。そういうことをやっていないから、もっと反省すべきなのではないのかと私は申し上げさせていただいているわけです。  その後に、一九九〇年代にできてきた四原則にしても、これを本当にそのまま適用しているのか適用していないのか。外交官というのは僕は、ただ単に友好関係をつくるということだけではないと思いますよ。言うべきことは徹底的に言っていかなくてはいけないのだと思いますよ。  その上で、政府インドパキスタンによる核兵器保有が世界の不拡散体制に与える影響を最小限にとめたい、このように外務大臣はおっしゃっている。かつ両国間の熱核戦争勃発の可能性を最小限にするために、我が国として最大限努力をすべきである。では、具体的に何をやっていったらいいのかということを提案させていただきたい。私は、三点あると思っています。  一つは、その前提になるのですが、よく政府の方々がおっしゃいます。まず、インド及びパキスタン両国に対して、これ以上の核実験をやめさせるべく、CTBT、包括的核実験禁止条約に一日も早く加入させることが必要と考える、皆さんおっしゃっています。では政府は、インド及びパキスタンのCTBT加入にいかなる見通しを持っているのか、まずこの点を聞きたい。  第二に、国連安保理において、不拡散体制を強化することの重要性を改めて強調する、インド及びパキスタンに対しては核兵器の放棄を促す、そして、不使用、包括的核実験禁止条約締結を妥結する決議採択すべきと考えるけれども、これはどうなのか。  我が国は、現在、国連安保理に非常任理事国として議席を占めております。すばらしい小和田大使がいらっしゃいます。小和田大使が一言言えば、世界各国の人たちは聞く耳を立てます。そういうすばらしい代表を持っている。しかし、非常任理事国として議席を占めているけれども、唯一の被爆国として、また絶対、核を持たないと言った国として、我が国が核不拡散体制護持、さらにまた、南アジア地域の安定のために安保理でいかなる活動をしているのか、これも明らかにしていただきたい。  第三番目に、我が国として、インド及びパキスタンも含めて信頼醸成を図って、さらにまた、南アジアにおける地域核戦争偶発の危険をわずかでも減少させるべく努力をすべきと私は考えます。その意味で、インドパキスタン核兵器の実戦配備を凍結、さらにまた、相互査察の実施等を呼びかけていくべきだと思います。そのために多国間協議の場を設けることとして、例えば、インドパキスタン中国、ロシア、そして米国を加えて、南アジア安全保障及び信頼醸成を考えるための政治的対話に向けて、我が国がイニシアチブをとってはどうなのか。  この三点についてお伺いして、最後の三つ目の切り口は次回に譲りたいと思いますけれども、外務大臣、御所見を伺いたいと思います。
  77. 小渕恵三

    小渕国務大臣 現行のNPT、CTBTへの加入に対する両国可能性、こういうことでございますが、今の時点で私、申し上げられませんが、今、日本としては積極的に両国に申し入れをいたしまして、一刻も早く参加されるべきことを慫慂し、これは強く努力をしていきたいと思っております。  第二点の安保理決議につきましてでございますが、御指摘のように我が小和田大使、まことに有能にして、また信頼の高いことはそのとおりでございますが、十五カ国の皆さんの御理解が得られなければ決議は成立をしないということでございますので、我が国としては、我が国の今おっしゃっているような種々の問題も含めて、我が国のこうした御意見のありましたことはお伝えして、それが国連の場で諸外国の賛成が得られるように努力をいたしていかなければならぬと思っております。  それから、印パの実戦配備の問題についてでございますが、これは軍事的な問題で、私も十分な理解を得ておりませんけれども、これから、先ほど申し上げたようにG8の場等がございますので、こうした点で、決して熱い戦争にしてはいけないという意味で、どういうことができるかということについて関係皆さんとも話し合ってみたい、このように思っております。
  78. 東祥三

    ○東(祥)委員 時間が来ましたので、終わります。
  79. 福田康夫

    ○福田委員長代理 松本善明君。
  80. 松本善明

    ○松本(善)委員 外務大臣に御質問をいたします。  現在の事態というのは、アジア世界の平和にとって極めて重大な緊急事態であります。インドの二度の核実験に続いて、パキスタンが行った二度にわたる核実験、我が党も、いずれに対しても、委員長の談話という高いレベルで厳しい抗議の意思を表明いたしました。日本政府も抗議と経済制裁を行いましたし、日本の各自治体、大衆団体も行いました。それから、世界各国も抗議や経済制裁、いろいろな形でやっておりますが、にもかかわらず、二度目の核実験という事態になったわけであります。  事態が悪化すれば、インドパキスタンの核軍拡競争の悪循環、偶発的な核戦争の危機、この事態の両国以外への波及など危惧される重大な事態であります。これは、世界全体、人類全体を破滅の危険にさらす狂気の道につながるものであります。  この委員会の異例のこのような質疑も、理事懇談会で与党理事の抗議をしているだけでいいのかという発言から始まりました。各委員がいろいろな形で発言をされておりますけれども、核保有国が二つふえて、核不拡散体制が事実上崩壊したと私は思います。これは、この審議でも、崩壊とか限界だとか根底から揺らいでいるとか、いろいろな表現がなされ、外務大臣も、揺らいでいるということはお認めになりました。この事態では、このままではいけない、やはり核兵器の廃絶に向けて一歩踏み出さないと世界の平和は守れないという事態ではないかと思います。  昨日、自民党の野中幹事長代理が広島市内での講演で言われたことが報道されていますが、「第二次世界大戦で勝った五つの国が核を持っている。それ以外は持ってはいけないというのが核拡散防止条約NPT)体制だ。唯一の被爆国である日本が、この五つの国に核をなくしなさいという勇気が、なぜないのか。」と言って政府対応を批判したという報道であります。  私は、やはりパキスタンの二度目の核実験で、核兵器の廃絶に向けて一歩踏み出さないと、世界の平和が守れないという事態ではないかと思いますが、外務大臣、どうお考えですか。     〔福田委員長代理退席、委員長着席〕
  81. 小渕恵三

    小渕国務大臣 言葉の問題で申しわけありませんが、東議員に、NPTの体制が揺らぎかねない、そういう危険を持っている、揺らいでいると申し上げておりませんので。たかが言葉の問題ということでなくて、この問題は非常に重要な問題と心得ておりますので、揺らいでおかしくなっているという認識になるとまた困ることだと思います。揺るがしてはいけない、そういう決意のもとで、政府としては対応しなければならぬと思っております。  そこで、今の御指摘で、我が党の有力な野中議員からの御発言も、新聞で拝見いたしました。中身を全部承知いたしておりませんので、論評することはちょっと差し控えたいと思いますが、日本としては、究極の核廃絶を目指して、まず大きな核保有国に対しましても、日本として言うべきことは言うべきではないか、こういうこととも受け取れるわけでございます。日本日本の、先ほどの御指摘にもありましたように、つくる能力がかりそめにもあるとしても、あえて我が国としてはそうしたことを行わず、世界の中のそうした意味での極めて指導的な立場に立ちたいと願って、平和憲法のもとで対処しているわけでございますから、日本として言うべきときには、敢然として言うことは言わなければならない、このように考えております。
  82. 松本善明

    ○松本(善)委員 今、重要なことは、インドパキスタン核実験の最大の根源が核保有諸国の核兵器独占体制の固執にあることをはっきり直視することだと私は思います。  この問題は、後から詳しく、もうちょっと突っ込んでやりたいのですが、その前に、まず当面の問題として、この両国の領土問題をめぐる紛争を一日も早く解決するために、新たな話し合いを直ちに行うことを国際社会も積極的に支援をする必要があると思います。これは、国連憲章と日本国憲法の武力不行使、紛争の平和的解決という精神にも合致をすると思います。政府は、そのために今まで何をしたのか、今後どのような方針で臨むのかということを簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  83. 阿南惟茂

    ○阿南政府委員 カシミール問題についてのお尋ねだと思いますが、これは、長い経緯の中で、イギリスもアメリカも何か仲介の労をとろうとして手を引いたような経緯がございまして、正直申し上げまして、日本カシミール紛争の解決のために積極的に仲介の労をとったというようなことはございません。  ただ、今回、こういう印パ核実験という事態になりまして、新しい状況が出てきたというふうに認識をしております。したがいまして、関係各国と十分に協議をしながら、何ができるか、これは真剣に検討していかなければいけないと考えております。
  84. 松本善明

    ○松本(善)委員 それは早急に、今これから検討というのは非常に遅いと思いますが、早急にやるべきだと思います。  先ほどの核不拡散条約の問題でありますが、これはやはり根本問題だと思います。核不拡散条約NPTは、非核保有国が新たに核兵器を持つことを禁止しております。しかし、核超大国にはその保有を事実上保障して、九五年のNPT検討会議で、非同盟諸国が核兵器廃絶の目標を明記するよう繰り返し求めたのにかかわらず、アメリカはこれを拒否しました。包括的核実験禁止条約、CTBTは、臨界前核実験の抜け道があります。アメリカはこれを繰り返して核兵器維持、開発の能力を保持し続けております。自分は核を保有し続けるが、他国は核兵器を持ってはならないという、アメリカなど核保有国、今までの核保有国の論理は、世界の世論を決して納得させることはできないと思います。この委員会でも多くの委員がそのことを述べられました。  橋本総理は、シャリフ首相被爆国立場から核実験思いとどまるよう説得したというけれども、アメリカの核戦略の傘のもとにあり、それに積極的に協力している日本政府が、核実験をやめよと言っても、説得力がないのは当然なのではないか、外務大臣は実際に日本外交活動を見て、そのようにお感じになりませんか。
  85. 小渕恵三

    小渕国務大臣 そもそも、インドがこうしたことを行ったことについて、五つの国が核を保有しながら、その国々が他の国の核実験を認めないのは不公平である、自分たちは未臨界実験等行って、ますます核の保有についてその保持を示しておる、こういうことの批判がある、こういうことだろうとは思いますが、ちょっと委員のお尋ねにつきまして十分な理解があるいはできておらなかったかと思いますが、もしお許しいただければ、ポイントについていま一度お話しいただければありがたいと思います。
  86. 松本善明

    ○松本(善)委員 そのとおりでございます。それは、そういうことでは説得力がないのではないか、自分は核を持っている、あるいは自分は、日本の場合はアメリカの核に守られている、こういう立場で、あなたのところは核を持ってはならぬと言うのは、世界を納得させないだろう、世界に大義をもって核兵器を持たない社会をつくろう、こういうことになっていかないのじゃないか、あなたが外務大臣として外交活動をやっておられて、説得力がないというふうにお感じにならないか、こういうことです。
  87. 小渕恵三

    小渕国務大臣 説得力という言葉がなかなか難しい言葉だろうと思いますが、というのは、現実には五つの国が持っておる、ほかの国は持ってはいかぬと言われることは、一般的な常識論からいったら大変不公平なことだろうと思います。しかし、現実にこの段階の中で、さすれば、そのことが不公平だからといって、他の国々がみずから核を保持して、その国自身安全保障を図ろう、あるいは時においては他国を威嚇するというようなことがあっては、これまたいけないことでございますので、現実に立脚して、そしてその累を他に及ぼさないという意味で申し上げれば、この現実を冷徹に直視をしながら、さらにこの拡散していく方向についてはお互い力を合わせて阻止していくという努力も、これは同時並行的に行わなきゃならない事柄である、このように考えております。
  88. 松本善明

    ○松本(善)委員 現実を直視するというのは、私どももそう思います。現実は、核を保有する国が二つできてしまったという事実です。世界が新しい段階に入っている、この段階で核兵器のない世界をつくっていくのにどうしたらいいか、こういう問題です。  核不拡散体制のこの深刻な矛盾を正しく解決する唯一の道は、あらゆる国の核兵器を全面的に禁止する国際的合意を実現すること以外にはないと思います。国連総会は、期限を切った核兵器廃絶交渉を行うよう繰り返し決議をしている、究極的、やがてということではない、期限を切って、もう核兵器のない社会をつくろうというところに踏み出すべきなんです。  一昨年、一九九六年七月八日、国際司法裁判所は核兵器の使用や核兵器による威嚇を一般的には違法とした勧告的意見を示し、第五十一回国連総会は、この意見を踏まえて、賛成百十五、反対二十二、棄権三十二で決議採択いたしました。その主文第四項は、核兵器の開発、生産、実験、配備、貯蔵、移転、威嚇、使用を禁止し、その廃絶を準備する核兵器協定の早期締結のための多国間交渉を一九九七年に開始することを求めたものであります。もし、この多国間交渉が一九九七年に開始をされていたら果たして、今回のようなことが起こらなかったかもしれません。あるいは別の発展があったかもしれません。日本はこの決議に棄権をいたしました。  私は、昨年五月十六日、本委員会でこの件について質問をいたしましたが、政府は、アメリカ、ロシアなど核兵器国を含む関係諸国との十分な検討、調整のない要請は現実的な方策でないから棄権した、きょうの外務大臣の御答弁もそれのニュアンスの御答弁がございましたが。こういう態度を改めて、核保有国に積極的に核兵器廃絶協定締結交渉を開始するよう働きかけるべきではないか、そうして初めてインドパキスタン説得力のある外交が展開できるのではないか、こう考えますが、外務大臣はいかがお考えですか。  同時に、インドの提唱する核協定についての態度もあわせて伺います。
  89. 小渕恵三

    小渕国務大臣 我が国は、御指摘決議の、核軍縮努力を誠実に継続し、交渉を妥結する義務が存在するとの国際司法裁判所の全員一致の意見に関する段落を支持しております。そして、核軍縮を推進するためには、現実的かつ具体的な措置を着実に積み重ねていく努力が重要であると考えております。  そのためには、戦略兵器削減条約プロセスの推進支援、NPTのもとでの核不拡散体制の維持、強化、CTBTの早期発効に向けた働きかけ、カットオフ条約交渉の早期開始等がより有効、重要かつ現実的だと考えております。
  90. 松本善明

    ○松本(善)委員 やはり世界と人類の生存の危機という問題ですから、ぜひもう一歩強く踏み出してほしいということを要求し、もう一つ、非核地帯構想の問題も重要ですが、これは古堅委員から質問をいたします。
  91. 中馬弘毅

    中馬委員長 古堅実吉君。
  92. 古堅実吉

    ○古堅委員 政府核実験核兵器拡散を許さない立場からあらゆる努力を展開されることは、これは極めて当然のことであります。  私がこの質問に立つに及んであえて強調したいことは、アメリカやロシアなど五カ国の核兵器保有は認めておいて、新たな核兵器保有国の出現を抑え込もうという態度では、何の説得力もないし、展望も生まれないというこの点。もう一点は、唯一の被爆国である日本政府が、アメリカに追従するのではなく、核兵器全面禁止条約の実現を正面に据えた取り組みに抜本的転換をするということ、そのことこそが、求められている最重要な点ではないかという点についてであります。その基本的立場を踏まえて、次の点を伺います。  今地球上には、中南米地域、南太平洋地域、アフリカ、そして東南アジア地域で非核地帯条約が締結されています。アジアでの残りの地域は、北東アジア、南西アジア、中東ということになります。アメリカは、東南アジア非核地帯条約にあれこれの注文をつけているように聞いておりますが、唯一の原爆被爆国日本政府としては、アメリカがどうであれ、東南アジア非核地帯条約を支持すべきではないかという点と、それをアジア太平洋全域に広げることを重視して優先的外交課題にすべきではないかという点について、大臣の御見解を求めます。
  93. 小渕恵三

    小渕国務大臣 核兵器国を含むすべての関係国の同意等、適切な条件がそろっている地域におきまして非核地域が設置されることは、一般的に言って、核拡散防止等の目的に資すると考えております。  しかしながら、今御指摘のありました北東アジアにおきましては、依然として、域内の対立緊張関係が継続していること、また、複数の核兵器国が存在すること等によりまして、非核地帯実現のための現実的環境はいまだ整っていないと考えております。  いずれにいたしましても、我が国としては、アジア太平洋地域安全保障環境改善のため、ASEAN地域フォーラム、ARFの場等を通じまして、安全保障対話の促進の努力を継続していく考えでございます。
  94. 古堅実吉

    ○古堅委員 そういう消極的な態度ではだめなんですよ。インドにしろパキスタンにしろ、アジア全域が非核地帯となれば、アメリカ中国などの核兵器保有国が核兵器を持ち込むことも使用することもできなくなるわけですから、核兵器保有の理由もなくなります。  唯一の被爆国日本は、絶対にアメリカなどの核兵器保有国と同じ立場をとってはなりません。大臣、せめて、非核地帯条約アジア全域に拡大するためのイニシアチブを発揮するぐらいのことをすべきではありませんか。
  95. 小渕恵三

    小渕国務大臣 最後のところで御答弁申し上げましたように、インドパキスタンにつきましては、これからASEAN拡大会議等も開かれます。ARFにはパキスタンが参加しておりませんけれども、ぜひこれは、アジア全体の問題でもございますので、こういった場所でこの両国の問題等につきましても十分検討して、アジアの声というものをまとめることができればこれは幸いだ、こう考えております。
  96. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間ですので、終わります。
  97. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、秋葉忠利君。
  98. 秋葉忠利

    秋葉委員 社会民主党の秋葉でございます。  きょうは、非常に変わった形で外務委員会、しかも核兵器の問題についてこういつた形で会議を開いてくださったことにお礼を申し上げます。  一つ残念なのは、広島出身の国会議員がかなりいるわけですけれども、ここで発言するのは、名簿を見ますと、私だけであるということにちょっと残念な感じを持っております。  まず、その広島について、先ほど藤田議員の方から大変情熱の込もった意見の開陳がありました。一、二不正確な点がありますので、その点を訂正させていただいてから私の意見を申し上げたいと思います。  広島の平和公園にある平和の碑文は、「安らかに眠って下さい 過ちは繰返しませぬから」という言葉でございます。これは一九五二年に完成をいたしました。  この文章は、広島市が、市長、浜井市長と言ってもいいのですが、委託をしまして、雑賀忠義先生、当時の広島大学の先生ですけれども、その先生の発案でこういつた文章になりました。ですから、最初からもう既に文章としては、「過ちは繰返しませぬから」という言葉が広島の意思として選ばれた。それは原爆投下後七年間たっていたわけですから、非常に苦しいその七年間の中で広島の人々がこういった言葉を選んだという意味が私は非常に重要だと思っておりますので、改めてここでそのことを、その事実を申し上げておきたいと思います。  インドのパル博士も、その他世界じゅうの著名な方がこの五十三年間広島を訪れていますけれども、パル博士も一九五二年十一月に広島で開かれた世界連邦アジア会議という会議出席をされております。そのときにこの碑文を見て、非常に不満を持った。原爆を落とした人間の手はまだ汚れているという趣旨の発言をされました。しかしながら、それに対して雑賀先生が、そうではないんだ、これは私たち広島の人間も含めて、過去、現在、未来、すべての人類が望んでいることをこの碑文に託したんだという説明をされております。  ですから、過ちを繰り返しませんというふうに誓うのは、ただ単に広島の碑文の前に立つ個人だけではなくて、全人類、あるいは日本政府を代表して、例えば小渕外務大臣がその前に立たれるのであれば、日本政府はという、非常に厳かな決意を表明するという意味があります。一番広くそれをとれば人類ということですから、その人類という点が実は一番大事だということを改めて強調をしておきたいと思います。広島の哲学というのは、いわばその一言に尽きると言っても過言ではないと思います。  今回のインド並びにパキスタン核実験を私たちが聞いたときに、やはり一番残念に思ったこと、これは人によって少々違いますが、私たちの世代の人間が非常に残念に思ったのは、ガンジーやネルーといった象徴的な人物を持つインド、そしてパキスタンも同じような文化圏にあるわけですが、こういった地域人たちが、広島のこの人類の悲願としての、人類一体の責任としての核兵器の廃絶といったことを理解してくれていたつもりであったのに、やはり軍事力に屈してしまった、核の力に屈してしまったという点であります。  例えばもう一つ、第二次世界大戦中の経験から申し上げれば、ホロコーストを体験したユダヤの人々の中には、残念ながら、人類一体の問題として戦争を考えるという考え方は、広島あるいは長崎ほど強く育ってはおりません。御存じのように、イスラエルは核兵器を保有しております。その力によって自分たちの安全を図るということが、こういったホロコーストを経験した人たちあるいはインド、ガンジー、そしてネルーを生んだインドの人々の間にまで蔓延をしてしまったということに、実は、人類のこれまで積み重ねてきた知恵ががらがらと崩れ落ちていく、その危機をまさに見ている思いで、大変残念な気がいたします。その視点から、私は、改めて日本政府の責任を考えてみたい、こう思います。  かつて、インドパキスタン非核保有国のリーダーとして活発な外交活動を展開した時期がありました。例えば、一九六〇年代の初めですけれども、国連で毎年のように核廃絶決議案提案をされた。例えば、時間がありませんので一言だけ申し上げますが、その決議案日本政府はどのような態度をとってきたか。唯一の被爆国ということは言いながら、こういった核廃絶の決議案に対しては、先ほどからも言及がありましたような、現実的ではない、その他さまざまな理由をつけて最終的には冷水を浴びせるような行動をとってきた。棄権をした、あるいは反対をしたというのが日本政府の態度です。  私は、今回のインドパキスタン核実験を機に、改めて日本政府にこういった態度を変えていただきたいというふうに思いますし、先ほど来何人もの委員が主張しているように、核超大国インドパキスタン以外の既に核を保有している五大国に対しても、核の廃絶を迫るべきであるというふうに思います。  しかし、外務省の現実路線というのは、そういったことは行わない、それどころか核廃絶という言葉に外務省は必ず究極という言葉をつける。それは、核廃絶がかなり、私たち現実的に物を見ると、きょうあすじゆうに実現できる事柄だとは思いませんけれども、ある程度手の届かないところにあるかもしれないという絶望に打ちひしがれながら頑張っている立場人たちから考えると、その先に、今度は望遠鏡を逆さまにして、もっと遠くに核廃絶を追いやってしまうのが外務省の究極的という言葉だと思います。  なぜ外務省はそういう態度をとるのか、そこのところを実は問題にしたいのですけれども、それに対して非常に端的にいい回答を寄せてくれている人がいます。ポール・ウォーンキという人ですけれども、SALTIの交渉のときのアメリカ側の代表です。彼がこの核の問題について、自分の第二の人生はまさに核の問題にかけた人ですけれども、こういうことを言っております。核廃絶をするために一番必要なのは、どのような道をたどれば核廃絶ができるかといった青写真ではない、あるいはどの案が一番実現可能かといった、そういった検討でもない、核を廃絶しようという強い意思が一番大事なのだ、それがないから核の廃絶ができないのだということをSALTIの代表を終えた後に彼は言っています。  私が日本政府に対して、外務省に対して申し上げたいのは、今後の日本政府外務省の活動はこの意思を世界的にどういうふうにつくるかということにかけて、全力を尽くしていただきたい。それ以前の問題として、この意思を全く持っていないかのように見える外務省並びに日本政府が、核をどうしても廃絶しなくてはいけないのだという熱い意思を持っていただきたい。そのことをぜひお願いしたいと思います。  その上で、参考になる事例がございます。世界じゅうには核をどうしても廃絶しなくてはならないという強い燃えるような意思を五十年以上持ち続けてきた人たちが、まだ少数ではありますけれども、残っています。昨日、私は広島でそのうちの最低限二人、名前を私が存じ上げていて、しかも親しくしているお二人と話をしてまいりました。一人は笹森恵子さん、原爆乙女としてアメリカの病院で治療を受けた。もう一人は石田明さん、社民党の広島県連合の代表です。お二人とも中学生のとき、十四、五歳で原爆に遭いました。そして、その後、その体験を世界の平和をつくるために、核廃絶を実現するためにささげてきたと言っても過言ではありません。それだけではなくて、広島市長を初めとする広島市民、多くの広島の人間がさまざまなアイデアを出し、提案し、行動し、五十三年間頑張ってきた。にもかかわらず、インドもそしてパキスタン核実験をしてしまうという状況になってしまった。  このギャップを私は何とか埋めたいというふうに思いますが、その第一歩として外務大臣にお願いしたいのです。ぜひ広島に行って、こういった貴重な体験を持つ被爆者の皆さん、そして運動を引っ張ってきた多くのリーダーたち、そういった人たちと長い時間かけて、一体何が彼らの中にこういった強い意思を持たせたのかを聞いていただきたい。それを理解していただきたい。御自分のものとしていただきたい。そういった中で、例えば外務省として、あるいは日本政府として、今、日本世界に対してなさなくてはならない政治的な動きもありますけれども、より広い見地から考えて二つのことを緊急に実行しなくてはいけないということに気づかれると思います。  その一つは、被爆体験の整理とそれから思想化であります。世界の主要大学では、ユダヤ人のホロコーストの経験についての体験が整理され、心理学や哲学の面で非常に重要な人類の遺産として受け継がれる体制ができております。被爆体験についてはこういつた整理がいまだにできておりません。被爆者援護法の目的の一つはこういった整理をすることにあったはずですけれども、残念ながら、お金の問題に隠れて人類の遺産としての被爆体験まで目が届かなかった。現在計画されている祈念事業にしても十分な措置が行われているとは言えないと思います。ぜひこういつたことを御自分の体験としてお気づきいただきたい。  第二点目が、世界の主要大学における広島、長崎講座の開設です。ユダヤ人のホロコーストの経験については、世界の主要大学で人類の遺産として若い人たちに、このユダヤ人の虐殺がどういつだ意味を持つのか、哲学、心理学、社会学、さまざまな面から若い世代にこの体験が紹介され、引き継がれています。残念ながら被爆体験にはこれがありません。現在、被爆者が死んでしまえば直接この体験を、どういう意味があったのか、そしてなぜ核廃絶が行われなくてはならないのかを生の声で伝えることが不可能になってしまいます。緊急な事業であるにもかかわらず、この点についても十分な措置が行われていない。  これを私がここで申し上げるだけではなくて、外務大臣、ぜひ広島に行かれて、もう広島に行かれた経験はおありだと思いますけれども、じっくりと、問題意識を持って、できれば数時間何人かの方にお会いいただいて、こういった体験をしていただきたい。それを小渕外務大臣から始めて、外務省としての伝統としてぜひ続けていただきたい。そういった中から核廃絶のための力強い意思を、外務省総体としての意思としてぜひ形成していただきたい。事務次官には、もう既に現在の斉藤駐米大使のときから広島に来ていただくということをやっていますけれども、大臣にもぜひお願いしたい。外務省全体としてもこの問題を取り上げていただきたい。そのことをお願いいたしまして、私の質問といいますか、意見の開陳を終わらせていただきます。  大臣、ぜひ一言お願いいたします。
  99. 小渕恵三

    小渕国務大臣 貴重な御意見を拝聴させていただきまして、感謝いたします。御指摘ありました、広島で生の声を聞け、こういうことでございますので、機会を見てぜひそういう体験をいたしたいと思っています。  私の選挙区にも、数は少のうございますが、被爆された方々が会をつくっておられまして、そうした方々から御意見等はお聞きをしておりますけれども、しかし、実際の体験をまた広島でお聞きするということは意義深いことだろうと思いますので、機会を見たいと思っております。  それから、究極の核廃絶ということで、外務省への御批判もいただきましたが、理想は、私は政治家としては、常に高くなければならぬ、しかし、現実は現実としてこれを直視しながらその理想にする努力をしていかなければならないと常々思っておるわけでございまして、決して、究極であり、また高きがゆえに届かないものとして、より高いものにしようという魂胆は決してないと思っておりますが、その努力を通じて、理想に近づく努力をしていくことが我々の務めではないかというふうに思っております。  そういった意味で、今後とも御指導をいただければありがたいと思っております。  以上、御答弁でございますが、お許しいただきまして、実は、本委員会の冒頭、私が行いました報告の中で、パキスタン核実験を行った日付を五月二十八日と二十九日と申し上げましたが、五月二十八日及び三十日の誤りでございましたので、謹んで訂正させていただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
  100. 中馬弘毅

    中馬委員長 以上でございますが、きょうは本当に、委員の各位、貴重な御意見を御開陳いただきまして、ありがとうございました。  次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後六時十分散会