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1998-05-22 第142回国会 衆議院 外務委員会 第14号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十年五月二十二日(金曜日)     午後二時十六分開議 出席委員   委員長 中馬 弘毅君    理事 福田 康夫君 理事 牧野 隆守君    理事 茂木 敏充君 理事 森山 眞弓君    理事 玄葉光一郎君 理事 松沢 成文君    理事 東  順治君 理事 東  祥三君       柿澤 弘治君    河野 太郎君       阪上 善秀君    櫻内 義雄君       田中 昭一君    宮本 一三君       森  英介君    森田 健作君       八代 英太君    島   聡君       藤田 幸久君    赤羽 一嘉君       丸谷 佳織君    古堅 実吉君       松本 善明君    井上 一成君  出席国務大臣         外 務 大 臣 小渕 恵三君  出席政府委員         外務省総合外交         政策局軍備管         理・科学審議官 阿部 信泰君         外務省アジア局         長       阿南 惟茂君         外務省北米局長 高野 紀元君         外務省欧亜局長 西村 六善君         外務省条約局長 竹内 行夫君         海上保安庁長官 相原  力君  委員外出席者         内閣官房内閣安         全保障危機管         理室内閣審議官 黒木 慶英君         防衛庁運用局運         用企画課長   横山 文博君         防衛庁運用局運         用企画課長   内藤 昌平君         外務委員会専門         員       宮本 吉範君     ――――――――――――― 委員の異動 五月二十二日  辞任         補欠選任   山中 燁子君     赤羽 一嘉君 同日  辞任         補欠選任   赤羽 一嘉君     山中 燁子君     ――――――――――――― 五月二十一日  米軍基地の撤去に関する請願(児玉健次君紹介  )(第二七三一号) は本委員会に付託された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国際情勢に関する件      ――――◇―――――
  2. 中馬弘毅

    中馬委員長 これより会議を開きます。  国際情勢に関する件について調査を進めます。  質疑の申し出がありますので、順次これを許します。玄葉光一郎君。
  3. 玄葉光一郎

    玄葉委員 民主党の玄葉光一郎です。  本日佳 一つインドネシア情勢について、もう一つ周辺事態法関連の問題、そして、時間がありますれば核実験の問題に触れさせていただきたいというふうに思います。  まず最初に、インドネシア情勢でございますけれども、昨日、スハルト大統領辞任をしてハビビ大統領が昇格をいたしました。三十二年間にわたるいわばスハルト体制、ある意味経済成長をもたらした功の部分と、それと同時に、政治的な矛盾あるいは経済的な矛盾というものをある意味で抱えてきた罪の部分スハルト体制だったと思いますが、そのいわば罪の部分に対する声が国民からあふれ出て、その拒否の声に抗し切れない、そんな状況だったんだろうなというふうに思いますけれども。  さて、外務大臣、今回のスハルト大統領辞任表明ハビビ大統領就任によって、インドネシアの国内の情勢安定化に向かうのかどうか。また、インドネシア政治改革並びに経済改革はどのように進むと見通しておられるか。その見通しを立てるに当たって一つの大きなポイントであったのは、無論、新しい内閣がどんな顔ぶれになるかということであったと思いますけれども、その新しい内閣顔ぶれももう既に発表されたかに聞いておりますので、それも踏まえて、外務大臣としてあるいは外務省としてどのようにごらんになっておられるか、お聞かせをいただきたいと思います。
  4. 小渕恵三

    小渕国務大臣 まずもって昨二十一日、スハルト大統領辞任をいたしまして、ハビビ大統領大統領就任いたしましたが、今回、流血の事態を招くことなく憲法の規定に従って政権交代が実現いたしたことは、評価に値すると思っております。  ハビビ大統領は、政治経済改革の実施とクリーンな政権を目指すことを言明いたしております。これらの改革によりまして、国民経済の回復と民生の安定を実現していかれるよう、心から期待をいたしておるところでございます。  今後は、これから申し上げますが、新しくできた新内閣に対しまして市場反応等がどのようなものになるか注目される点があると考えております。我が国としては、インドネシア国民改革努力に対して引き続き支援を惜しまない考え方でございます。  そこで、本日十時三十分、日本時間十二時三十分ごろでございますが、新内閣閣僚ハビビ大統領より発表されました。新内閣は、改革開発内閣と名づけられておるようでございますので、そういう内閣にふさわしい政治をこれから断行されるのではないかと思っております。  その内閣の中では、ギナンジャール調整大臣ウィラント国防治安大臣国軍司令官アラタス外相等が留任をいたしまして、新たにスビヤント大蔵大臣ラメラン商工大臣就任をいたしたということでございます。特に経済関係におきましては、経済チームとしてギナンジャール大臣がこれをリードされるやに聞いておりますので、ぜひ経済復興等につきましても成果が上がることを期待いたしております。  いずれにいたしましても、この改革開発内閣のもとで改革が着実に実施されることを、政府としては期待をいたしておるところでございます。
  5. 玄葉光一郎

    玄葉委員 関連して、私も本会議で、顔ぶれを実は聞いておりません。ただ、今回の顔ぶれを見るに当たって、スハルト色というのがどのぐらい残ってどのぐらい除かれるのかというのが一つポイントではないか、あるいは幅広い人材が登用されるかどうかというのがポイントではないかというふうに思っておりましたけれども、その点の事実関係と、外務省としての見解といいますか、どういう内閣になったと、短時間でありまずけれども、どういうふうに分析されているかお聞かせをいただきたいと思います。
  6. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今御答弁申し上げればよかったわけですが、いわゆるスハルト大統領系と言われる方でございまして、その中で、ボブ・ハッサン商工大臣、あるいはファド・バワジール大蔵大臣、それからトゥトゥット社会大臣はそれぞれ閣外に去ったということでございます。  それから、いわゆる改革派といいますかそういう方々がどのような形で入っているか。全閣僚名簿を点検しておりませんが、それぞれの閣僚についての、今そういうことで、他の閣僚の色分けといいますかそういうことにつきまして、わかり次第御報告させていただきたいと思います。
  7. 阿南惟茂

    阿南政府委員 既に外務大臣から御答弁ございましたように、新内閣でございますから、どういう傾向かというようなことを私どもから申し上げるのもいかがかと思いますが、ハビビ大統領は、クリーンな政治とかIMF経済構造改革プログラムをきちんとやっていく、そういうことを昨日の、短い演説でございましたけれども、所信の中で述べられておりました。  そういう線に沿って、大臣からもお触れになりましたギナンジャールさんとか強力な経済閣僚が残っておられる、またスハルト大統領に近い方という意味では、長女のトゥトゥットさんという方が典型的な例かと思いますが、彼女は閣外に去ったというようなことで、昨日ハビビ大統領表明されましたようなラインで全体の内閣ができているのではないかなと当面判断しております。
  8. 玄葉光一郎

    玄葉委員 それでは、先ほど大臣の方で、我が国としては引き続き改革努力支援していくということの表明があったわけでございますが、それは具体的に何をどのように支援していくおつもりなのか、お聞かせをいただきたいと思います。
  9. 小渕恵三

    小渕国務大臣 当面は、新しくスタートするハビビ大統領のもとにおける新内閣政策に対しましても、これからいろいろ御相談もあろうかと思いますから、日本としてできることはいたしていきたいと思いますが、従来からIMFと協調いたしまして、何はともあれ経済の安定ということが大切なことと心得て、このことは継続して日本としては援助し協力をしていきたい、このように思っております。
  10. 玄葉光一郎

    玄葉委員 確かに、民間の債務の返済交渉を促進するというのが一つ日本の役割なのだろうと思いますが、もう一つ、今おっしゃったようなIMF、後で少し触れさせていただきたいと思いますが、そしてもう一つは、この際ODAあり方についても考えてみてはどうかというふうに思っております一  実は、私はかねてから、去年の何月だったか忘れましたけれども、ある委員会で、インドネシアへの援助というのがどうも既得権益化しているようですねという指摘を、去年のたしか五月ぐらいの段階だったと思いますが、させていただいた経緯がございます。そして、これはたしかことしの三月、橋本総理インドネシアに行かれる前の段階で、たしかこの委員会で私は、インドネシアに対するODAをそろそろ見直しをしていって、特に、こういう社会不安が起きている状況にあっては、貧困対策とか、農村対策といったそういう社会不安にいわば直接撃ち込むようなODAを真剣に考えたらどうかというようなことを申し上げたわけでありまずけれども、この機会インドネシアに対するODAあり方見直しをしていくつもりがあるかないか、お伺いをしたいと思います。
  11. 小渕恵三

    小渕国務大臣 インドネシアに対しましてのODA供与につきましてでございますが、新内閣が誕生したから直ちに我が国政策を百八十度転換するというようなことはできにくいのではないかと思います。  インドネシアとは、歴史的に、経済的、政治的にも密接な友好関係にあること、また我が国海上輸送にとっても重要な位置にあり、石油、ガス等天然資源供給国となっていること等、引き続き最重点国一つであるという認識はそう変化できるものではないというふうに考えております。しかし、ODAにつきましては、さらにこれからの政権動き等も注目しつつ、常に検討していかなければならない課題ではあると思っております。
  12. 玄葉光一郎

    玄葉委員 私は、インドネシアに対して援助をするなと申し上げているわけではありません。地政学的にもインドネシア日本にとって大変大切な、大事な国だというふうに思っております。  問題なのは、援助の中身をこの機会にしっかり見直しをする。これはきょうの新聞なんかにもありますように、確かにファミリービジネス、いわゆるスハルトファミリービジネスを増長させたという側面は私は否定できない側面としてあるというふうに思います。もちろん、私は、インドネシアに対する援助がすべて悪いなんということを申し上げるつもりはありません。インフラ整備も、当然一定のインフラ整備は必要でございます。ただ、重点インフラ整備からいわゆる農村とか貧困対策に移していくべきではないですかということを申し上げたいわけでございます。  今申し上げたこともお聞きしたいのですが、それと同時にもう一つお尋ねしたいのは、このODAカードを使ってこの機会により政治改革、この場合でいえば民主化ということになるのでありましょうか、自由とか人権とか民主主義、そういった政治改革を進める一つカードとして、今までよりは使って外交政策を行っていくべきではないかというふうにも感じますけれども、その点いかがでありましょうか。
  13. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今委員の御指摘につきまして、一点につきましては、九七年、九八年の援助につきまして、その中で、円借も、特に社会的な弱者救済人材育成失業者対策などにシフト、移すというわけではありませんが、そちらの方に非常に注目しつつ、援助方向を向けて努力をしておる点があると思っております。なおこういつた点について、構造改革努力支援するような形での援助を考えていかなければならないというふうに思っております。  それからもう一点、ODAをいい意味で、政治改革を行う姿勢というものを理解しつつ考慮したらどうかというお尋ね、かつ御意見かと思います。  この辺は、それぞれ、その国の政治に対して我が国がどの程度までアドバイスをできるかという点についてはやはり十分留意をしなければならないのではないかと思っておりますが、そういった点を含めまして、今後の政権のあるべき姿というものが、これから問題があるとすれば、そういった点について我が国として友情あるアドバイスができるようなことは考えていかなければならないのではないか、このように考えております。
  14. 玄葉光一郎

    玄葉委員 実際にODA大綱にも実はそういうことが書いてあるわけで、私は、この政権交代というものを機に、より突っ込んだインドネシアに対する我が国ODAあり方見直しというのをぜひ考えていただきたい。ぜひ一考していただいて、インドネシア政治改革あるいは経済改革につなげていただきたいというふうに考えているところでございます。  それと、先ほど少し触れさせていただいたIMFの問題も、これはたしか、外務大臣は覚えておられるかどうかわかりませんが、この場でこれも三月ぐらいの時点で、IMFのコンディショナリティーが問題ではないか、つまり、ラテンアメリカの、メキシコ風IMFになっていて、実際はファンダメンタリズムは違うと、経済議論を少しだけあのときさせていただいたわけでありますが、それはもうハイパーインフレと莫大な財政赤字を持ったメキシコインドネシアが全く同じような経済改革案になるということ自体が、やはりちょっとおかしいよねという話を実はさせていただいて、この問題については、日本インドネシア実情を踏まえて、まさに友人として、実情を踏まえてIMF先頭に立ってリードしていく、修正を迫っていくということをしたらどうかということを、実は三月の時点で申し上げていたわけでございます。  どうも今回、その後の経緯を見ていますと必ずしも、うまくIMFが修正されたかというとそうなっていない。何かサミットなんかの報道を読むと、コール首相が、たしか、IMFが求めた経済的な忍耐がインドネシア国民をたたきのめしていると発言したとか、あるいは、私はこれは極めて正しいのだと思うのですけれども、おととい、五月二十日、大蔵省の外国為替等審議会アジア金融資本市場専門部会部会長伊藤一橋大学教授でございますが、この部会で、三月に私が申し上げたことをまさに指摘していて、はっきりIMFの対応を批判しています。改善策の手順、期間が性急すぎたことで問題を複雑にした、IMFは、国の経済政策の歴史とか社会的制度に配慮すべきだということで、はっきりと実は指摘しているわけです。  これからどんな政権ができようとも、ある意味では、混乱を収拾していくためには、あるいは軟着陸させていくためには経済復興というのが大切なわけで、そのときにはやはり経済改革プログラムについて、IMFの今のプログラムがいいのかどうかということについて日本はよく考えて、出資金二番目、理事も出しているわけでありまして、ここは先頭に立ってリードしていくべきだというふうに私は思っておりますが、いかがでございましょう。これは大蔵大臣に聞いた方がいいのかもしれませんが、お答えになられる方がいらっしゃれば、外務大臣等々、お願いしたいと思います。
  15. 阿南惟茂

    阿南政府委員 ただいま御指摘のように、五月四日のメダンの騒動というのはガソリン料金の値上げから始まって、それはもとはといえばIMF補助金をやめなさいということから値段を上げざるを得なかったという、その辺が批判されている面は確かにございます。  ただ、IMFインドネシア全体に対する経済構造改革プログラムというものは、先生先ほど御指摘になられました人権とか民主主義とか、そういうものもある程度踏まえて、現在のインドネシア経済構造の中に独占的な部分がある、そういうものを解消していかなければいかぬ、貧しい人たち経済発展の果実が均てんしていかなくちゃいかぬという基本思想もあるわけでございます。ですから、恐らく根っこの方、基本的な処方せん方向としては間違っていないのだろうと思います。ただ、確かにラテンアメリカに使われた処方せんアジアで通用するかというような議論もございます。  そういう中で、橋本総理が三月中旬にインドネシアに行かれてスハルト大統領と会われて、ぜひIMFと合意したプログラム、このライン経済改革をおやりなさいということを言われると同時に、IMFの方にもインドネシアの国情に合ったプログラムをさらに考える必要があるということを申し入れをしているわけでございます。  その直接の結果がどうかはともかくとして、第二次の合意では、食糧調達庁というようなものはしばらくは残す、これは、一万七千も島のある国で、ある程度は中央が見なくては全部に行き渡らぬこともあるだろうというようなことで、少しそういう面が加味されたということもございますし、今後もIMFのいろいろな施策についてはレビューということがあるというふうに聞いておりますので、そういうことで、日本もある程度アジアの現実を踏まえた処方せんということを折に触れて意見を述べていく、こういうことであるべきだと考えております。
  16. 玄葉光一郎

    玄葉委員 基本方向はいいのです。今ここで経済政策議論をするつもりはありませんけれども、私からすれば、緩めるときに引き締めたり、金融政策を間違えたと思うのですね。そういうことを申し上げているのであって、さっき申し上げたような、独占を排除しなさい、それがいけませんと言っているわけじゃない、基本方向はいいのです。ただ、緩めるべきときに引き締めたり、つまり速いスピードでやり過ぎたり、そういうことが問題なのであって、私は、日本がきちっと適宜これからも、私全くこれまでやっていなかったとは言いません、やはりこれから外務大臣インドネシアについては、日本先頭に立って、IMFプログラムに問題があったら注文をつけていこうということで政府の中でぜひ頑張っていただきたいというふうに思います。  時間がありますので、ありますというより問題ですので、次に移らせていただきたいと思います。  全くテーマが変わりまして、周辺事態関連の問題でございます。  先般、高野政府委員そして竹内政府委員と、周辺事態とは何なのか、いかなる地域での事態が適用になり得るのか、あるいは、この周辺事態法の一条と日米安保六条の極東並び極東周辺との関連というのはどうなっているのかということで少し議論をさせていただいたんですが、議論になっていなかったように思っていまして、もう少し議論させていただきたいと思っています。  まずお聞きしたいと思うのは、そうすると、周辺事態法の一条にある「我が国周辺地域における我が国の平和及び安全」云々と書いてあるわけですけれども、この「我が国周辺地域」というのは何を指すんでしょうか。まずそこからお聞かせをいただきたいと思います。
  17. 高野紀元

    高野政府委員  「我が国周辺地域」ということでございますが、これは、我が国領域を除く地域で、周辺事態が生起し得る地域であるということでございます。
  18. 玄葉光一郎

    玄葉委員 そうすると、次に、周辺事態法三条にこう書いてございます。日米安全保障条約目的達成に寄与する活動を行っている米軍に、いわば日本後方地域支援を実施するということが第三条に書いてあるわけでございますけれども、ここで言う日米安保目的達成とは一体何なのか。そして、この場合は米軍活動範囲は、日米安保目的ということですから、日米安保条約の六条にある極東及び極東周辺接続条項による極東周辺ですけれども、極東周辺というふうに考えてよろしいんでしょうか。その点についてお伺いをしたいと思います。
  19. 高野紀元

    高野政府委員 日米安保条約目的という場合でございます。周辺事態との関係で申し上げますと、安保条約六条の目的ということになろうかと思います。  その場合には、委員指摘のように、六条に書いてございますところは、極東における国際の平和と安全の維持に寄与するために我が国の施設・区域の使用を認められていく関係になっております。
  20. 玄葉光一郎

    玄葉委員 そうすると、だんだんわかってきました。そうすると、前回たしか高野局長はこういうふうに答弁しておられた。つまり、周辺事態というのは事態性質にかんがみた概念だ、極東というのは日米がいわば共通の関心を有する地域だ、性格を異にする概念だとおっしゃった上で、その上でおっしゃったのは、結局日本が主体的に行う活動、つまり、被災民支援、NEOとか、非戦闘員救出とか邦人救出とか、船舶検査とか、そういったものが入っているから極東という言葉を使えないといったニュアンスでたしか説明されたということで、そう考えると、結局、じゃ逆に言えば、対米支援についてはその活動範囲は明らかにこれは極東及び極東周辺というふうに考えてよろしいというふうに考えてしまうわけですが、その点はいかがでありましょう。
  21. 高野紀元

    高野政府委員 今幾つかの点の御指摘があったわけですが、一つは、なぜ、今回の新ガイドラインで前ガイドライン、前指針で使っていた極東という言葉をそのまま使わなかったかという観点から申し上げたのが、この前申し上げましたとおり、特に冷戦後のこういう国際情勢でより重要性を増しているという意味で、救援活動避難民への対処、あるいは非戦闘員待避活動、あるいは船舶検査問題等が出てきておるので、そのまま使うことは、いわゆる極東安保条約の六条における米軍活動に対する便宜供与でございますね、その観点だけではないので、新しいそういう状況の中で周辺事態という言葉でくくりましたと。こういうことは、ガイドラインの作成の過程における国会の審議でも申し上げているところです。  それからもう一つは、今おっしゃいました観点から申しますと、周辺事態における活動というのは、日本がいわゆる後方地域支援する部分でございますね、米軍活動後方地域支援する活動がまず重要な項目としてあるわけですが、それは周辺事態において行われるわけでございます。  それでは、じゃ周辺事態が生じたときに行うそのような活動はすべて極東ないし今おっしゃいました極東周辺に当たるかどうかということでございますけれども、その点は、それを概念的に超えることはないということは申し上げられると思います。  他方、それじゃ極東ないし極東周辺で起きたことがすべて周辺事態に当たるかというと、それはまたそうではない。なぜならば、周辺事態というのは日本の平和と安全に重要な影響を与える場合でございますから、いわゆる安保条約で言う極東範囲で起きたことが、ではすべて周辺事態に当たるかというと、それはそうはならないという関係になろうかと思います。
  22. 玄葉光一郎

    玄葉委員 後者の部分はこの間も御答弁いただいたし、それはよくわかるんです。つまり、いわゆる極東と言われる地域の中で起きた事態が即すなわち周辺事態に当たるかというと、それはそうではない。それは確かに事態性質に着目した概念ですから、そういうことだろうと思いますが、今おっしゃった前者、つまり、概念的に超えることはない、つまり日本が行う主体的な活動は別として、対米支援として行う活動については極東概念的に超えることはない、そう考えてよろしいですか。
  23. 高野紀元

    高野政府委員 まず一点でございますが、いわゆる後方地域支援、前の指針において言われております便宜供与でございます、米軍安保条約六条に基づく活動に対する支援、これのみならず、主体的活動と言われている先ほど御紹介申し上げましたような活動、これも周辺事態において行われる整理でございます、ガイドラインのもとにおいては。その意味においては、同じように周辺事態ではございますから、周辺事態というのは日本の平和と安全に重要な影響を与える事態でございますので、この間も申し上げましたが、定義上、それは極東の平和と安全にすなわちかかわる事態でございます。ですから、後方地域支援のみならず、周辺事態で行われる米軍活動そのものは、そういうカテゴリーと申しますか概念のもとに整理されるべき問題ではないかというように考えているわけでございます。  もう一つは、概念上超えることはないということとの関係でございますが、御存じのとおり、昭和三十五年の統一見解におきまして二つ項目がございまして、一つ極東という概念でございますが、極東は地理的に一概に画定し得る地域ではないけれども、強いて言えば、日米の両国が共通の関心を有する地域で、フィリッピン以北云々云々という定義がございます。  それに加えて、第二段で、しかしそれに加えて、米軍が実際そのような目的のために活動する、行動する範囲は、必ずしも今申し上げた極東地域に限定されるものではないということも統一見解にございます。  その意味での、それを極東周辺という概念で申し上げますれば、それは地理的に一概に画定できない地域でございます。そういう意味において、周辺事態もそれと同じようにこれは地理的概念ではない。その総合的な判断に基づいて、その時点時点において判断されるべき問題でございますから、それが生じたものは、極東極東周辺を超えることはないけれども、それと、じゃ、極東との比較、極東周辺との比較をするということは難しい、困難である、こういうことを申し上げているわけでございます。
  24. 玄葉光一郎

    玄葉委員 まだわからなくなってきましたね、逆に。  私は今、最初お聞きしていて、主体的な活動と対米支援を分けるのだと思ったのですね。対米支援については、いわば極東における事態とある意味では言いかえられるのかなと思ったのですね。でも、今お話を聞いていると、やはり私、最初の疑問に戻るのですが、なぜ周辺における事態極東における事態と言いかえることができないのか、あるいはそういう概念を使わなかったのが、どうしても私やはり納得できないところでありまして、もう一回答弁をしていただければと思います。もと聞いた答弁はいいですからね。
  25. 竹内行夫

    竹内政府委員 ちょっと角度を変えて御説明させていただきます。  安保条約目的が、日本の安全とそれから極東の平和と安全の維持、こういうことでございますが、例えば安保条約の五条は、日本に対して武力攻撃があった場合のことを言っておりますが、現在のこの議論されております。辺事態といいますのは、日本に対する武力攻撃はまだない事態でございます。しかし日本周辺において何らかの事態が起こっている、それが日本の平和と安全に重要な影響を及ぼしているということでございますから、日本極東の一部であるということを考えますと、この周辺事態というのを概念的にとらえてみますと、極東に対する、平和と安全に対する重要な影響というものも及んでいるという事態でございます。  ところが、先生の今の質問にお答えいたすことになると思いますけれども、その極東における事態極東の平和と安全に対する重要な影響を与えている事態というものは、必ずしも日本の平和と安全に影響を与えているものではない。それは、極東における事態にいろいろな種類の事態がございますので、そこのところが明確にされると理解がしやすいかなと思うのでございます。  つまり、まだ日本に対する武力攻撃はないけれども、しかし、ひょっとすると日本に対する武力攻撃が迫ってくるかもしらぬ。日本の平和と安全に対して重要な影響を及ぼす事態が生じている。これを、紛争ないしはその事態の拡大を防止して、抑止するということのために米軍が対応しているといたしますと、その米軍の対応というのは、安保条約目的といたします極東の平和と安全並びに日本の平和と安全のために活動している。安保条約目的のために活動している米軍である。そういう米軍に対して、この周辺事態安全確保法のもとで日本としては支援を行いたい、こういうことでございます。
  26. 玄葉光一郎

    玄葉委員 一つ、きょうとにかくわかったことは、周辺というのは極東概念的に超えることはない、これはおっしゃったですよね。ここはわかりました。またいずれ議論させていただきたいと思います。  これはこの間も申し上げましたけれども、何でこだわるかと申し上げれば、国民の皆さん、わかるかなと思うのですよ。私だけなんでしょうか、わからないのは。  いや、ちょっと申し上げさせてください。結局、旧ガイドラインだったらいいのですよ、いわば軍同士だから、軍と自衛隊だから。だけれども、今度はいわばトータルな枠組みを決めたんですね、ガイドラインで。そして、今回は当然、周辺事態法にもあるように、国民、民間あるいは自治体の皆さんにも協力を求めたり、協力を依頼したりするわけです。そういうことを考えると、国民の皆さんにわかりやすい説明が必要だということで私、こだわっているのです。  じゃ、余り時間ないので、簡単できょうは結構です。
  27. 高野紀元

    高野政府委員 今の点でございますけれども、まず、二十年前の旧ガイドラインの際も、これは、いわゆる五条事態それから六条事態にかけて研究し、日本の国内の体制を整備するという基本的な命題があったわけです。五条事態については相当研究が進みましたけれども、六条事態は、残念ながらいろいろな事情で進んでこなかった。  その場合の六条事態の典型的な活動、当時の活動というのは、米軍が、極東において何らかの事情、当然この地域で武力攻撃、武力紛争があったときに、それに参加してそれなりの活動をする、そのときに日本がどういうかかわり方をするか、つまりどういう便宜供与をするか、基地の提供、補給、支援、いろいろな形があると思うのです。現実にそれはこれまでも行われてきたわけでございます。ですから、軍対軍だけでなくて、これは……(玄葉委員「それはもういいです」と呼ぶ)はい。そういう意味で、トータルなということについて、今までと今回は違ったということとの関係で言えば、それはそうではないということをまず申し上げたいと思います。  なぜ今度は極東という言葉を使わなかったかということは、先ほど来申し上げましたような新しい事態に、新しい国際情勢のもとに行われている、こういう今までは想定されなかったようなものが出てきているということと、それから、極東で起きた事態が直ちにすべて周辺事態であるということではないということは申し上げているわけでございますから、じゃ、極東においてすべてこういう支援をするかというと、そういうものではない。その二点が、なぜ周辺事態という整理をしたかということになろうかと思います。
  28. 玄葉光一郎

    玄葉委員 これは続いて、またいっかやらせていただきたいと思います。  きょうは、先日全く触れられなかった問題で、国会承認の問題なんです。つまり、内閣が策定する周辺事態への対応措置に関する基本計画を、周辺事態法では国会への報告にとどめているわけでありますけれども、これはなぜ報告にとどめたのか、その点についてお伺いをしたいと思います。
  29. 小渕恵三

    小渕国務大臣 周辺事態への対応は、我が国全体で対応する性格のものであり、内閣が一体となり、内閣の責任において対応する体制をとることとしまして、周辺事態の対応にかかわる基本計画については、安全保障会議に諮り閣議決定を行った上で、その決定後、遅滞なく国会に御報告することといたしております。  そこで、国会との関係につきましては、一、周辺事態への対応が武力行使を含むものでないこと、二、国民の権利義務に直接関係するものでないこと、三、迅速な決定を行う必要があること等を総合的に勘案いたしますれば、周辺事態への政府としての対応は、防衛出動やPKOの凍結業務の実施とは異なるものでありまして、今回の法案における基本計画について国会に遅滞なく御報告し、議論の対象としていただくことを妥当と考えております。  もとより、我が国周辺地域における武力紛争が生起している場合には、国会においてさまざまな議論が行われていることが当然予想され、また、基本計画につき御報告することにより、さらに国会で議論も深まるものと考えますので、政府としては、対応措置の実施に当たりましても、国会の意思が十分反映されるものと考えておりまして、そうした観点をすべて勘案いたしまして、政府といたしましては国会に事後、御報告を申し上げるということで対処いたしたい、こういうことで現在おるところでございます。
  30. 玄葉光一郎

    玄葉委員 対応措置にかかわる基本計画に、国会への報告だけで私は国会の意思が伝わるとはとても思えないわけでございます。  先ほど、権利義務に直接関係ないというお話でありますけれども、私は、今回の周辺事態法の場合は、当然、空港を使えば旅客とか貨物に影響が出るわけでありますし、また、負傷者を病院に収容すればお医者さんとか看護婦さんにいろいろな影響が出て、特に、長期化した場合はまさに直接かかわってくるのだろうなというふうに思います。  そういう意味で、私は、これは今から意見を申し上げたいとは実は思っていないのですけれども、こういう立場があるという意味で、一般論として申し上げれば、自治体とか民間の方々に対して協力を求めやすくするためにも、あるいは協力をしていただける環境をつくるためにも、まさに国民の代表者である国会の承認というものが、これはもちろん対象あるいは方法、例えば事後承認なのか事前承認なのか、あるいは対象も、周辺事態の認定そのものなのか、今申し上げたような基本計画なのか、あるいは基本計画の一部なのか全部なのか、自衛隊の外の活動なのか、それはいろいろありますけれども、より国会の関与を強める方がよろしいのかなという立場というのが必ず出てくると思いますけれども、その点についてはいかがお考えになられますか。
  31. 高野紀元

    高野政府委員 先ほど大臣の方からも御答弁があったわけでございますけれども、今回の周辺事態安全確保法案の形というものは、基本的に安全保障会議を経て閣議決定を図る、そこにおいて具体的な我が国としての協力の内容を決定するということでございます。  その際に、私どもとしてやはり考えなければならないのは、これは迅速な決定を行う必要があるということが一つ。それから、これへの対応は、我が国自体が武力行使を行うという性格のものではないということ等がやはり重要な観点かと思われます。  国民の権利義務に直接関係するかどうかということとの関係で申し上げますと、今回は強制的に民間ないし自治体の御協力を得るという形には、今回の法律はなっていないという点は確認させていただきたいと思っております。
  32. 玄葉光一郎

    玄葉委員 これはもう継続的に長く議論しなければいけない問題だと思っています。  あと五分ですから、ちょっと一つだけ、ある論文というか小論を紹介して、それに対する御意見をお伺いして、このテーマ、本当はずっと続くのですが、終わらせていただきたいと思うのです。  マイケル・グリーンさんていらっしゃいますね。これは多分、多分というよりアメリカの対日政策にかなり影響を持っている人の一人だと思いますけれども、こういうことを言っています。やはりガイドラインに対する国民の真の理解というのを得るためにも、国会の関与というのが極めて大切だというようなことを言って、今日本の場合は恐らくこうなるだろうということを、これは「新ガイドライン法整備 やっと「一歩」を踏み出した」という論文に書いてあります。  それは、今外務大臣がおっしゃったようなことを言いながら、アメリカの戦争権限法なんかを参考にしながら、日本の国会も、いかにして周辺事態が認定されたかについて、最大人十日間かけて政府に対し当該情報の提供を求めて、その判断基準、支援の規模、態様の妥当性、事態の推移などについて国会の場で詳細に審議をすべきである、仮に対米支援活動の妥当性につき一定期間内に国会の承認が得られなければ、つまり政府が説得に失敗をすれば後方支援活動は中止されなければならない、これが民主的統制というものだろうということを実は言っているわけであります。この場合は、これは事後承認ですね。  さっき局長おっしゃったように、迅速性ということにかんがみて事後承認ということを求めているわけでありますけれども、こういった意見に対しては、どういうふうにお考えになっておられますか。
  33. 高野紀元

    高野政府委員 現在のこの法案に関する考え方は、先ほど来申し上げているとおりでございます。  戦争権限法との関係で申し上げますと、これはあくまで軍が武力行動を行うあるいは武力行動に直接巻き込まれるという事態との関係において、この権限法がどういう適用関係になるかということでございまして、今回私どもが御提出申し上げているような意味での自衛隊の活動というような性格の活動、それが戦争権限法との関係では直接の適用があるというふうには私ども理解はしておらないわけでございます。
  34. 玄葉光一郎

    玄葉委員 いや、それはもう当たり前でありまして、もう一つだけ、あと一分時間がありますからせっかくだから聞いておきたいと思いますが、さっきPKOとのバランス論、比較論をおっしゃった。PKOと比較して、今回は国会に対して承認を求めなくてもいいというような話でありましたけれども、本当にPKOとのバランス論、比較考量してそういうふうにお考えになられるのですか。その根拠は何でしょう。
  35. 高野紀元

    高野政府委員 国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律、この関係で、PKO凍結業務は国会の事前承認になっている、そのとおりでございますが、私どもの考え方では、先ほど申し上げましたように、PKO業務そのものは、このような意味での迅速性、迅速な決定という観点から申し上げますと、私ども今用意しております。辺事態安全確保法で求められている我が国の協力内容ということの関係においては、性格の異なるものではないかというふうに考えております。
  36. 玄葉光一郎

    玄葉委員 もちろん性格は異なるのは当たり前でありますけれども、もともとPKOは、確かに政府も最初は国会承認を求めないということを言っていて、実はそのときは、我が国にとっての重大な事態の対応ではないというのが大きな一つの理由だったわけですけれども、まさに周辺事態というのは、我が国の平和と安全に重大な影響を与えるから活動するわけですよね。そういう意味で、本当にそれがバランス的に正しいのかどうか、これからいろいろ継続的に議論させていただきたい。きょうは提起だけ、提起というかこういう立場、それぞれ出てくるんじゃないかというようなことを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。  どうもありがとうございました。
  37. 中馬弘毅

    中馬委員長 次に、赤羽一嘉君。
  38. 赤羽一嘉

    赤羽委員 新党平和の赤羽一嘉でございます。  本日は、インドネシア情勢ということでございますが、限られた二十分間ということでありますので、在留邦人の脱出について限定的に質疑をさせていただきたいと思います。  在外邦人の身の安全を確保するということは、私たち国会議員にとっても、当然の義務であるというふうに思っております。残念ながら、出席されている議員も余り多くないようでございますけれども、本日は与党野党、党派を超えて、次なる危機に備える、よりよい方法をお互い知恵を出していきたいというふうに思っておりますので、ぜひよろしくお願いいたします。  まず、大臣、在外邦人に対する身の安全を守る責任というのは一義的にどこにあるということをお考えになっているか、ここのことを前段としてすり合わせてから具体的な質問に入りたいと思いますので、まず大臣から御答弁いただきたいと思います。
  39. 小渕恵三

    小渕国務大臣 お答えいたします。  基本的にはそれぞれの領域国の政府の責任でございますが、なお日本政府といたしましても、たしか外務省設置法第四条によるところだと思いますが、我が国国民の安全についての責任を負う、こういうことになっておるわけでございます。
  40. 赤羽一嘉

    赤羽委員 政府外務省が在外の邦人、国民の安全を守る責任がある、まずこれを確認させていただきました。  それで、インドネシア情勢とは直接関係がないかもしれませんが、きょうは防衛庁に来ていただいておりますので、二十分間で答えられないと申しわけないものですから、一般論として、まず防衛庁に、ちょっと通告の順番は逆でございますが、質問させていただきたいと思います。  自衛隊法の第百条の八で、外務大臣が防衛庁長官に、緊急事態があったときは邦人の輸送を依頼できるということになっておりますが、そういう緊急事態の定義というのは、民間機での輸送が無理な場合、そういう場合に外務大臣は防衛庁長官に邦人の輸送の依頼を行う、こういう考え方でよろしいですか。
  41. 内藤昌平

    ○内藤説明員 民間航空機が利用できないといったような場合に、邦人等の輸送に万全を期すためということでございます。
  42. 赤羽一嘉

    赤羽委員 しかし、この百条の八の一項の中で、当該輸送の安全性については確保されているということが、自衛隊機が出動するときの前提条件となっております。これは、民間機には危ないから自衛隊機に行けという状況でありながら、実際は、自衛隊機にとっても輸送の安全が担保されていなければ行けませんよ、これは大変矛盾するのじゃないでしょうか。どう解釈すればよろしいのですか。
  43. 内藤昌平

    ○内藤説明員 もちろん、自衛隊機は相手国政府の同意の上で参ります。相手国政府がその同意を与えた瞬間に、我が国の自衛隊機の安全を保護する責任を負うわけでございます。そういう形で安全が確認されるということになります。
  44. 赤羽一嘉

    赤羽委員 安全が担保されて出動する。任務の途中にいわゆる安全性の確保が困難な状況になったとき、それはだれが判断し、だれの指揮権のもとで自衛隊機は任務を中止する、この決断をするのでしょうか。
  45. 横山文博

    ○横山説明員 お答えいたします。  先生御指摘のとおり、当該活動実施中に輸送の安全に係る状況が変化した場合ということでありますが、そのときの輸送の安全が確保されているか否かにつきましては、防衛庁長官と外務大臣がそれぞれの立場から判断することになると考えられますが、その上で任務を中止するか否かについては、防衛庁長官が判断する事項であると考えております。  以上であります。
  46. 赤羽一嘉

    赤羽委員 外務大臣の依頼するという立場と、途中で防衛庁長官が、これは無理だ、その依頼はあったけれども任務を中止する、こういう状況があり得るわけですね、そうすると。外務大臣の依頼、要請があったにもかかわらず、防衛庁長官の判断で任務を途中で中止するという事例は起こり得るのですね。それだけ、起こり得るのかどうかだけ。
  47. 内藤昌平

    ○内藤説明員 もちろん、緊急事態でございます、依頼のときには同意を取りつけてお願いします。それから時間がかかりますから、その瞬間の判断という余地はあろうかと思います。
  48. 赤羽一嘉

    赤羽委員 いや、私はそういうことを聞いているのじゃなくて、そこの中止だという判断の中に、防衛庁長官は中止だという判断をし、外務大臣は在留邦人を救わなければいけないのだから行ってくれ、こういう判断のずれというか、見解を異にする状況というのは起こり得るのでしょうか。想定の話ですけれども。
  49. 竹内行夫

    竹内政府委員 安全確保に関する認識の問題でございますが、外務大臣の立場からいたしますと、防衛庁長官に在外邦人等の輸送を依頼します場合、それから刻々と状況が進展いたします際におきまして、外務大臣の立場から、例えば現地公館長、大使からの報告とか外国の航空機の運航状況等を踏まえまして、派遣先国の空港及び航空機の飛行経路が安全か否かの判断を行うことになります。仮に、外務大臣が安全が確保されていないと判断した場合には、依頼を行わないことになるわけでございますし、途中でまたそういう状況が生じたという場合であれば、そういうことを防衛庁長官にお伝えするということになるわけでございます。  他方、防衛庁長官の立場からいたしますと、当該輸送の運航責任を有するという立場から、専門的見地から運航の安全性が確保されているか否かという判断を行うこととなると存じます。この場合、外務大臣の判断を踏まえました上で、さらに、例えば空港の滑走路の状況とか飛行経路上の航空保安施設の機能等の面から、防衛庁長官として安全性の判断を加えることはあり得るということでございます。  したがいまして、仮に防衛庁長官の判断というものが安全に輸送を実施できないという判断であれば、その場合は外務大臣にそういうお返事をされるということだろうと思います。
  50. 赤羽一嘉

    赤羽委員 そうしますと、依頼で外に出た、それ以後は防衛庁長官の指揮権にゆだねられるという、今長い御答弁をいただきましたが、最終的にはそういうことでよろしいのですね。
  51. 横山文博

    ○横山説明員 お答えいたします。  輸送の任務、活動そのものについては防衛庁長官の指揮下に入るということでございます。ただ、先ほど御答弁が外務省からありましたように、そこの最終的な判断は、外務大臣と防衛庁長官が判断した上で、最終的に防衛庁長官が判断するということであります。
  52. 赤羽一嘉

    赤羽委員 どうも、緊急事態のときに緊急な判断を求められるという答弁をいただきながら、最終的には外務大臣と防衛庁長官の再審議で最終的なディシジョンをするというような答弁で、私は、これはもうちょっと詰めておく必要があるのじゃないでしょうか。今ここで指摘だけさせていただいて、次の質問に移りたいと思います。  今後起こり得ることを想定して、十分想定されていると思いますが、指揮権のことだけははっきりしなければ、今回の臨時便を飛ばす、飛ばさないのときに、省庁間の意見を調整するのに手間取ったというような報道もあったりして、本当に国民の安全を第一ということを考えれば、指揮権ということはぜひはっきりさせていただきたいというふうに思います。  次に移りたいと思いますが、今回日本に帰国された方たちの中で、政府の対応が遅かった、こういうことがここの記事にも随分なっております。恐らくこれは、地元の大使館は大変一生懸命やった、しかし、身の危険を感じながら帰国してきた人たちにとってみれば非常な不満を感じるというのは、これはある意味ではやむを得ないかもしれないというふうに思いますが、しかし、具体的な問題点というのも明確に、それを教訓としていかなければいけないというふうに私は思っております。  私自身、十年前のあの中国の天安門事件のときに、ある総合商社の北京の駐在員として天安門事件に遭遇をいたしまして、命からがら逃げて帰ってきた一人であります。そのときに痛感した問題点というのが、今回も余りクリアされていない部分もある。改善されている部分ももちろんありますが、クリアされていない部分もあるということで、二つの点について指摘をし、質問をさせていただきたいと思います。  一つは、皆さんがなぜ政府の対応が遅かったかと感じる要因を推定すれば、一つはいわゆる海外危険情報の発令ですね。危険度二、三、四というのが、五月十四日に危険度二、五月十五日に危険度三、十七日に危険度四。このように、毎日のように刻々と変わる発令が出されました。そして、臨時便は十七日の深夜から十八日の未明にかけて第一便が日本から出された、こういう状況でございます。片や外国はどうだったかといえば、五月十四日にはイタリアとカナダ、十五日にはアメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、オーストラリア、ニュージーランド、フィリピン、これはすべて退避勧告を出して、十五日の夜から十六日にかけてチャーター便がインドネシアから飛び立っているということであるわけでございます。  どうもこの危険度の発令について、何となく他の大使館の、特にアメリカ大使館の後追いで出ているのじゃないかということを言っている人もいますし、私たちも、正直言って北京にいたときも、そういうようなことを感じながら逃げてきたというのが実態としてございます。  それは、危険度二、三、四、五というふうに細かく出ておりますけれども、その発令をする根拠、客観的な状況というのは余り明確じゃないと思うのです。在留邦人に対しての危険度を判断する客観的な事実に基づいて出されているとは、僕は言えないのじゃないかというふうに思います。  そして、この危険度の段階が極めて細かい数字になっています。危険度二は観光旅行の延期勧告、危険度三は渡航延期勧告、危険度四は家族等退避勧告、危険度五が退避勧告、こういうようにすごく親切にガイドラインとして、多分この前改正されてこういう表示、二、三、四、五というのをつくられたと思うのですが、私は、こういう国外の内乱みたいなのは急激に状況が悪化することが多い。そのときに、こういう細かい指示の発令というのは、退避をしようかどうか、かえって在留邦人の決断をおくらせ、結果として危険を高めてしまうのではないかというふうに私は思うのですが、この点について、まずどうでしょうか。
  53. 内藤昌平

    ○内藤説明員 危険度につきましては、欧米諸国も大体日本と同じように五段階に近いものを持っております。  ちなみに、今般もアメリカは、十三日に我が方の危険度二に相当するもの、十四日に我が方の危険度三に相当するもの、それから十五日に我が方の危険度五に相当するものをジャワとスマトラに限定して出しております。そういう形で、各国とも、段階的に上げることもあればジャンプすることもある。それは、各国のそれぞれの自国の国民が、現地でどれだけいわば危険に適応力、対応力があるかを見ながら判断していくわけでございます。  それから、アメリカは確かに十三日で、我が方の十四日より一日は早かったかもしれませんが、十四日の時点では、ほかの国はみんな危険度一の事態でございました。我が国は、その時点で危険度二に上げたわけでございます。
  54. 赤羽一嘉

    赤羽委員 では聞きますけれども、アメリカは危険度五が十五日に出ましたね。そして、日本はまだ出していないのですね。これはどうしてこんなに違うのですか、状況は。
  55. 内藤昌平

    ○内藤説明員 我が国は、家族等退避勧告という形で、家族及び可能な限り出られる方には帰国を勧める、出国を勧めるというレベルの危険と判断したからでございます。
  56. 赤羽一嘉

    赤羽委員 アメリカはいわゆる我が国の危険度五を十五日に判断し発令し、我々はそういう発令に至っていない、判断に至っていない。  私も企業の駐在員として行っていました。企業の駐在員というのは、日本の企業モラルとしては、政府が退避勧告を出していない段階で、企業の戦いの場を放棄してどこかに退避するということはできないのですよ。ですから、そういう細かい分析をすることはもちろん前提として大事かもしれませんが、危なくなりそうだということに関しては、この五を出すことにちゅうちょをしないで、アメリカも出しているわけですし、たまたま結果論としてはよかったかもしれませんが、その決断に逡巡があってはならないというふうに私は思います。  客観的な情勢でまだ五ではないと言われるかもしれないが、五が出ない限り、駐在員などは日本に帰ってこれませんよ。今回だって、十八、十九に帰ってきているのはほとんど家族だけでしょう。別に僕は何か恣意的に言っているわけではなくて、事実は事実で、そういう論理が働くわけですから、その点についてはやはり政府の決断を出す。これは勧告ですから、強制力はないわけだから、五を勧告しておけばあとは自己責任、企業の判断ということになるわけではないですか。それを、四を出したまま五を出さずに駐在員が帰れないような状況にしておくというのは、私は判断としては正しくないのではないかというふうに思いますが、その点どうですか。
  57. 内藤昌平

    ○内藤説明員 私どもは、この五月二十日のデモというのが非常な危険をはらんでいる、そのデモに在留邦人が巻き込まれるのが危険であると。在留邦人がねらわれているという情報はございません。ですから、あくまでも予防的な措置として危険度四を出したわけでございます。
  58. 赤羽一嘉

    赤羽委員 四がいいか五がいいかというより、現実に、日本人は華僑と間違えられ、また裕福でありますから、空港に行く途中の車の後ろが投石で割られて、盗難まがいの危険というのはあったはずですよ。これはしっかり調査するべきだと思います。別にどちらがいいかと言い争っているわけではなくて、よりリスクのない、危険が起こらないということ、それを回避するために、私は、私自身の体験からも、今後、政府としてはそういうデシジョンをしていくべきだということを訴えたいと思います。  もう一つなんですが、今回は臨時便が大半でした。そうしますと、航空券を購入しないと飛行機に乗れないのですよ。私、天安門事件のとき、北京の空港に行くまで、それが本当は物すごい大変だった。タクシーで二十五元、当時日本円で千円です。私自身が空港にタクシーに乗って行ったときは、当時千元だったと思います。日本円で四万円出さなければタクシーの運転手が行ってくれない。運転手だって命がけですし、ガソリンもないし、そういう中で、命からがら飛行場に行きました。しかし、そこの飛行場で何が起こったかというと、オープンチケットを買わなければいけない。そこから窓口に私、六時間並びました。  これは、チャーター便であったら航空券は要らないと思いますが、臨時便で今回も大半を任せた。航空券を購入するというのは大変なんです。そして、銀行もシャットダウンした。だから現金をおろせない。現金がおろせなくて航空券を購入するとなると、さらに大変だ。ここには、「高騰〝脱出航空券〟 片道千ドル、四倍近くに」などという記事も出ているわけです。  そんな中で、かつ出国税、インドネシアは百万ルピアですね。チェックインする。ボーディングパスをもらう。それから出国税の百万ルピアを払って領収書をもらう。それからイミグレーションの手続を行う。これだけでも大混乱、大渋滞。そして飛行機に乗れなかった。または飛行機が飛び立つのが遅くなった。こういう実態があったというふうに私は聞いておりますし、外務省もそれは認識をしているはずです。  一方では、アメリカのチャーター便は、ジャカルタのメーンエアポートじゃなくて、別のハリム空港に到着させた。そして、出国手続もボーディングパスの購入もそれは別の措置、多分、政府政府の話し合いの中で決めていると思いますが、横づけにして、パスポートさえ持っていればみんな出られた。これが本来、危機のとき、混乱のときに政府が在留邦人にとるべき正しい態度であるというふうに私は思います。そこがあれば、政府の対応は遅かったなどという話は出ていなくて、政府には本当によく身を守っていただいたという思いで帰ってこれるのではないかと思います。  この点については、ぜひ、臨時便での措置ではなくてチャーター便にして、出国手続も省略させて、日本国民、在留邦人を救出するべきだというふうに思いますが、大臣の御意見をぜひ聞かせていただきたいと思います。
  59. 内藤昌平

    ○内藤説明員 先ほども申し上げましたように、危険度四、二十日に向けての予防的措置、安全を守るためには、もちろん情報も大切でございます。同時に、身を守るための手段がある限りにおいては、それによって身が守れます。したがいまして、大使館はバスを用意しましたし、警察本部長に、長官に大使から頼んでエスコートもつけております。そういう意味での安全措置も講じております。  それから、臨時便であったのも、やはり予防的措置であればこそでございます。これが真の緊急事態になれば、先生御指摘のようないろいろな手段は講じなければならないかとは思いますが、あの時点では、やはりインドネシア国との関係でも、出国手続はとらざるを得なかったと考えております。
  60. 赤羽一嘉

    赤羽委員 もう最後にします。  インドネシアとの外交関係への配慮というのもあるかもしれませんが、在留邦人の生命の確保ということも大事です。空港までの移動も、バスを出されたというが、日本人学校がチャーターしているバスだったと思います。普通のバスなんですよ。そこでリスクというのはあるわけで、そこを現地の大使館が全部見ていくというのは大変だと思います。  私は、個人的には、あのバスに、防弾ガラスにするとか自衛のものを、全世界じゅうにそうしろというわけではありませんけれども、国情が不安定な、またかつ在留邦人の数が一定限度いるところについては、そういう考慮もし、予算づけもして、現地の大使館が安心して働けるような措置、そして私は、繰り返しますけれども、出国手続、エアチケットの購入の省略といったこともぜひこれから、今回の事件、また天安門事件のときも全く同じでしたから、教訓として生かして、危機管理の充実というものを求めたいと思いますが、最後にぜひ一言、大臣、この質疑を聞かれての御決意と御見解を伺って、終わりにしたいと思います。
  61. 小渕恵三

    小渕国務大臣 現在、その経過中でございますので、今回の問題が一件落着といいますか、その暁におきましては、政府としての対応についてもう一度よくレビューをいたしまして、最善のとるべき対応であったかどうかにつきましても努力をしてみたいと思いますが、現時点で、私がずっとオペレーションセンターに入ってそれぞれの情報を把握した範囲の中におきましては、もちろん自画自賛するつもりはありませんけれども、もちろん委員指摘のようにいろいろ、それぞれの方々の中には大変御不満のある方もおろうかと思いますけれども、民間航空の臨時便、チャーター便そしてまた自衛隊のC130ほか、かなりそれぞれ適切に手を打ってきたというふうに思っておるのでございます。  しかし、せっかくの御指摘でございますので、改めてより一層、こうした事態が起こらないことを祈念しておりますが、この緊急事態に対する対応につきましては研究をしていきたいと思っております。
  62. 赤羽一嘉

    赤羽委員 どうもありがとうございます。
  63. 中馬弘毅

    中馬委員長 東順治君。
  64. 東順治

    ○東(順)委員 東順治でございます。よろしくお願いします。  大変短い時間でございますので、一、二点絞ってお伺いしたいと思います。  まず最初に、内閣危機管理監というものが四月七日から設けられたというふうに伺いましたけれども、この危機管理監の役割、そもそもどういうものだろうか、この点についてまずお伺いします。
  65. 黒木慶英

    ○黒木説明員 お答えします。  内閣危機管理監は、緊急の事態が発生した場合に、内閣として必要な措置について第一次的に判断を行い、初動措置について関係省庁と迅速に総合調整を行うこと等の役割を担うことが期待されております。そのため、内閣危機管理監には、内閣官房副長官に準ずる立場で危機管理に関して行政各部の総合調整を行う権限が与えられております。
  66. 東順治

    ○東(順)委員 それでは、今回のインドネシア邦人救出の問題について、どういう役割を果たしたのか、そしてまた、その権限というものはどの辺にあったのか、この辺はいかがですか。
  67. 黒木慶英

    ○黒木説明員 今回のインドネシア危機におきまして、内閣危機管理監はどのような役割を果たしたかというお尋ねでございますけれども、具体的には、十四日のインドネシア現地情勢の急変を受けまして、その夜、関係省庁の局長等を緊急に招集しまして、情勢認識について相互の統一を図り、政府としてとるべき措置について具体的な検討を行っております。  十五日以降も、連日、危機対策関係会議を開催するなど、各省庁のさまざまな対策の総合調整を行っているところでありまして、権限という面で先ほどお話しいたしましたけれども、各省の今回の件に関しますさまざまな対策、その対策が全体としてスムーズに進行するように総合調整を行うということでございます。
  68. 東順治

    ○東(順)委員 そうすると、危機管理監というのは、こういうふうに海外で邦人救出のような緊急の問題が生じたときに、その現地に赴くというようなことはないのですか。一切国の中から出ないで、このオペレーションは国の中でやるのですか。
  69. 黒木慶英

    ○黒木説明員 緊急事態が発生した場合に、官邸等におきまして関係省庁の施策につきまして所要の調整を行うということ、そういったことを通じまして内閣総理大臣、官房長官等を補佐することが内閣危機管理監の主たる任務でございます。  とは申しますものの、事態の具体的な進行状況等々を踏まえまして、必要に応じて内閣危機管理監が現地に赴き、諸対策の調整等を行うことも今後あり得るものと考えております。
  70. 東順治

    ○東(順)委員 その必要に応じてというのは、どうなんでしょう、何を基準にしてどういう場合にという基準みたいなものはあるのですか。
  71. 黒木慶英

    ○黒木説明員 現地に赴くということについての基準というのはございません。  それは、必要に応じてというのは、基本的に、海外におきましては当然のことながら大使館があり、大使がいらっしゃいまして、その大使の調整のもとに現場のいわゆるオペレーションとしてのさまざまな対応がされるわけでありまして、そういった点を考えますと、現地に赴くというのは大変厳しい、本当に厳しい、日本人が大量にまたいろいろな被害に遭う、例えば多くの死者が出るとか、そういった極めて厳しい場合を考えますと、なおその場合において内閣危機管理監が現地で何らかの調整、調整というと非常に何というかやわらかいことに聞こえますけれども、何らかの対応をせざるを得ないといったようなことも、危機管理でございますので、どんな危機がこれから我が国に訪れるかわからないということを考えた場合には、そういった場合を想定することも当然あり得るのかなというふうなことでございます。
  72. 東順治

    ○東(順)委員 そうすると、こういう理解でいいですか。国内外にわたって危機が生じたときに、内閣危機管理監という立場の人は、その危機管理をしていく上でのいわばかなりの権限を委譲されて、全権的なものを持って事に当たる人ではない、あくまでも内閣を補佐する、そういう範囲内の立場の人だ、こう判断していいのですか。
  73. 黒木慶英

    ○黒木説明員 結論からお話ししますと、そのとおりでございます。  危機管理監というのは内閣官房に置かれる官職でございまして、基本的には官房副長官に準ずる立場、権限を持っております。それは、総合調整の段階で仕事をするというのが内閣官房の基本的なスタンスでございますので、その範囲内での仕事になりますけれども、ただ、官房副長官に準ずる立場でございますので、当然のことながらその調整も極めて高いレベルの調整が行われるというふうなことで、いわゆるオペレーションの段階というよりは、むしろいわゆるストラテジックと申しましょうか、戦略的な段階での調整が行われることになる。もちろん、そういったオペレーションなんかの情勢を踏まえての話でございますけれども。
  74. 東順治

    ○東(順)委員 よくわかりました。  それでは、外務省に聞けばいいのでしょうか。今回のインドネシアの問題で、現地で危機の状況を判断する、危険な状況を判断する、この現地での最高責任者というのですか、判断をする一番最後の人というのはどなたなんですか。大使なんですか。
  75. 内藤昌平

    ○内藤説明員 大使でございます。
  76. 東順治

    ○東(順)委員 わかりました。  それでは、恐らく危機管理監というのは阪神大震災とかサリンだとかそういうことの中から必要に応じて出てきたものなんだろうと僕は解釈をしておるのですけれども、こういう危機の状況というものを管理していくのに果たして現地の大使がどのぐらいまでの権限、つまり内閣総理大臣が最終判断の責任者なんですけれども、どのぐらいのものを背負って現地で判断できるのか。  というのは、本国と一回一回連携をとりながら、いろいろな指示を仰ぎながら最終的に現地で対応していると、どうしてもタイムラグというのが出てくるわけで、どのぐらいの現地での判断の責任というもの、権限というものを持っておるのか、その辺はいかがですか。
  77. 内藤昌平

    ○内藤説明員 例えば、海外危険情報は、外務大臣の責任において出します。したがいまして、現地の危険の判断と本省での分析とあわせたものを、外務大臣として判断しております。
  78. 東順治

    ○東(順)委員 要するに、危機というのは、事態が刻々と動いていく、どんどん変わっていくということなんですね。その動いていく、刻々と移っていく事態に対して、どう適切に対応したところの判断をし、指揮をとるか、あるいは決断をするかということになるので、例えば、今回巡視船が二隻出ていきました。これは運輸省の管轄になるわけです。そうすると、今度自衛隊機が六機出ていく、これは防衛庁の管轄になる。  それで、現地で危機がいよいよ深刻な状況になって、本当にそれぞれが邦人救出で必死になつてやらなければいけない状態になったときに、こっちは巡視船、こっちは自衛隊機、それぞれ仕事、任務を遂行するけれども、この責任者というのはだれになるのですか。片や運輸大臣、片や防衛庁長官ということでいいのですか。
  79. 内藤昌平

    ○内藤説明員 先ほど、自衛隊機につき若干議論がございましたけれども、あのときも安全の確認というのは、外務大臣と防衛庁長官の二人が常に協議して行います。依頼した後も、その点は協議が継続されます。それと同様に、巡視艇の場合も行われることになります。それが二つの大きなオペレーションであればなりますが、細部の部分についていろいろなことがあろうかと思います。先生御指摘のように、緊急事態にいろいろな対応があります。それは、ある程度、大使がその場で行うこともあろうかと思います。
  80. 東順治

    ○東(順)委員 それでは、確認ですけれども、現地の判断の最高責任者は、大使が負うということ。こっちは運輸省から出ていっている、こっちは防衛庁から出ていっている。  例えば、先ほどもちょっと議論がありましたけれども、安全が確保されているという前提のもとに自衛隊機は出ていっている。ところが、出ていったはいいんだけれども、現地でこの前提が崩れてしまった、非常に不安全な状況になった。これをどうするか。任務をそのまま遂行するのか、あるいは撤退するのか。同じように、巡視船の方も順調に邦人救出に当たっていたんだけれども、それこそ保安庁法二十五条に抵触するような状況が出てきた。これをどうするんだ。  こうなったときに、それぞれが防衛庁長官だとか運輸大臣の指示を仰ぐことはわかりますが、いずれにしても、最後は現地での判断。やめるぞ、続けるぞ。あるいは、巡視船の方はできるけれども、自衛隊の方はちょっと無理だ。こういう刻々と移り変わるところの現地での判断があるわけですね。これも大使がやるのですか。
  81. 内藤昌平

    ○内藤説明員 大使は、やはり基本的に、外務大臣の指示を仰いで動くことになると思います。
  82. 東順治

    ○東(順)委員 だから、私は申し上げた。要するに、自衛隊機がそこに絡んでいるわけだから、大使の権限を越えている世界じゃないですかと聞いているわけです。それからまた、巡視船は運輸省の管轄なわけだから、どうなるんでしょうか、そこら辺の、現地での最終責任というか。
  83. 内藤昌平

    ○内藤説明員 その決断の内容のレベルというのは、いろいろあろうかとは思います。しかし、基本的なことについては、それはやはり、自衛隊機が現地でどういうトラブルに巻き込まれるかというような重要なことになりますので、それは当然、日本の本国の決断を仰ぐ。それは当然、外務大臣と防衛庁長官が常に安全の確保について協議しているということでございますし、対策本部というところが決定することになると思います。
  84. 東順治

    ○東(順)委員 いや、日本の本国で決断できないぐらいに事態が刻々と現地で動いて、そして、現地にいなければ、現実に即応した決断や判断や撤退のタイミングをねらったりというようなことが、現地にいないとわからない状況というのは当然あるわけですね。それを本国の大臣がそれぞれ話し合って、どうだこうだということになってくると、的確に危機に対応することはできないということを私は言いたい。  それで、最後、これは大臣にお伺いしますけれども、危機管理監というのが出てきたので、これはいよいよ、国内外の危機が生じたときに、かなりの権限を背中に背負って、きちっと判断できるだけの、非常に機動性に富んだ、そういう立場の役割、そういう人なのかなと思ったら、そうじゃない。  そうなったら、大臣、例えば今回のような問題は、世界のいろいろなところで起こり得る可能性が十分あるわけですね。そういったときに、即座に、かなりの権限を持って現地に出向いていく。そこでもって、大使の権限の枠をはるかに越えて、トータル的にかなり判断をしたり指示をしたりする、そういう立場の人というものはこれからつくっていかなければいけないんじゃないだろうか。  そして、その人間と本国のしかるべき人たちとの連携の中できちっと対応していく。あるいは、連携をとっている時間的余裕がない場合には、その人間がきちっと権限を持って、事態にきちっと対応していくというような対応の仕方みたいなもの、つまり私が想定しているのは、アメリカの危機管理庁というのがありますね。これは本当に、国内なんかで地震が起こったときなんか、即座に出ていって、ここの長官がかなり、大統領に近いぐらいの権限を持って、どんどん即決しながら現場で対応していきますね。そのことによって犠牲者が最小限に防げたりというような、非常に機動性がある。こういうような役割を持った立場といいますか、そういうものがこれから必要じゃないでしょうか。この辺はいかがでしょうか。
  85. 小渕恵三

    小渕国務大臣 必要であるかと問われれば、必要かと思いますけれども、今回の危機管理監は、国内外の危機に対処いたしまして、内閣にあります安全保障室の中で種々の指示をし、取りまとめる役をしておりまして、海外における問題につきましては、外務省といたしまして、現地の大使館を中心にして対処いたしておるところでございます。  現実には、そうしたものがあった方がよろしいかと思いますけれども、世界がこれだけ広がっておるところでございまして、そういう意味で、現地に飛びましても、指揮監督、適切なアドバイスができるということのために要員をすべて抱えておるということも、実際なかなか大変じゃないかと思っております。  しかし、いずれにいたしましても、せっかくできました危機管理監でございますので、国の中、そして特に、世界、多くの国々がございますので、そういったときに適宜適切に対応できるスタッフなりなんなりというものがそろえられれば、これは大変結構なものだと思っておりますが、いずれにしても、現在は、与えられた体制の中で最大限に努力をしていくということで、努力をさせていただいておるということだと思います。
  86. 東順治

    ○東(順)委員 ありがとうございました。
  87. 中馬弘毅

    中馬委員長 東祥三君。
  88. 東祥三

    ○東(祥)委員 外務大臣、きょう一般質疑で、幾つかの件について質問させていただきたいと思います。  最初にインディペンデント・オン・サンデーの問題、その次にインドネシア情勢について、三番目はインドの核実験関連してパキスタンの情勢について、そして四番目にベチューン医科大学整備計画についての無償資金協力の問題、そして最後に、時間があれば、日韓漁業協定について質問させていただきたいと思います。  初めに、インディペンデント記事問題でございますが、既に二十日の委員会で、天皇陛下と異常殺人犯三人の写真を一緒に掲載した五月三日付の英国インディペンデント・オン・サンデー紙の記事を取り上げて、外務省はこの記事に対して何らかの形で抗議したかを尋ねました。  調べてもらった結果、外務省西欧二課英国担当でさえ、この経緯は、これは推察でございますが、十九日にうちの同僚議員である西村眞悟議員が問い合わせるまで把握していなかったということがこちらの調査でわかっております。自由党の質問がきっかけとなって、同日、駐英大使館はインディペンデント紙の編集長に謝罪記事の掲載を求める手紙を送付した。  政府の対応に問題はいろいろあったと思いますが、一つは、現地の事情に最も詳しいはずの英国担当がこんな重要な話を把握していなかったことだと思います。私は、今までいろいろな委員会において政府内の情報の流れの問題を何回も指摘しておりますけれども、この点についていつも言うたびに、政府は一生懸命頑張っている、問題はないということを常に言っているわけでございます。  バーミンガム・サミットや天皇陛下の御訪英の準備で大使館が幾ら忙しいといったって、二週間以上もこの記事に外務省のスタッフ、大使館のスタッフが一人も気づかなかった、一人も何とも思わなかったというのは情けなさ過ぎるというふうに私は思います。外務省は皆一体何をやっているのか、こういう声が聞こえてきたとしても、この問題に関してのミスはぬぐい得ないのではないのか。  外務省、とりわけ駐英大使館は、この国の利益を守るというのが最大の役割だと私は思います。そういう意味で、今回のインディペンデント紙に対する対応は極めて遅過ぎたし、余りにも恥ずかしいことであったのではないのか、このようにまず感想を申し上げます。  その上でお聞きしたいのですけれども、今回の情報おくれ、また情報を明確にキャッチできなかった原因というのは一体どこにあったのか。大使館から外務省に上がっていなかったということも聞いておるわけですけれども、これは記事自体に気づいた人は一人もいなかったという意味なのか、それとも気づいても上に上げるほど重要ではないと思ったのか、いかがでしょうか。  さらにまた、十九日の大使館の抗議文書に対して、五月三日当時の編集長、フェイ氏というふうに理解しておりますが、彼は、もし日本人がこの記事で不快な思いをするとしたら遺憾なことだと言っている一方で、大使館が求めた謝罪記事の掲載をするということは、その意思を示さなかったとも聞いております。  このことを踏まえた上で、外務大臣並びに詳細なことに関しては欧亜局長に、今申し上げた点についての御所見を伺いたいと思います。
  89. 西村六善

    ○西村(六)政府委員 情報のおくれの部分につきまして、私の方からお答えさせていただきます。  この問題につきまして、大使館が気づいていなかったというのは事実でございまして、気づいていながら措置をとらなかったというケースではないのでございます。その点は御理解をいただきたいと思います。  気づいていなかったことにつきましては不注意であったと思いまして、このようなことがないように、強く注意をして戒めてまいりたいというふうに思っております。
  90. 小渕恵三

    小渕国務大臣 私自身は、東委員が先般御指摘をしたことによりまして私自身は承知をしたというケースでございます。  そこで、このペーパーは五月三日付だということなのでございまして、そういう意味で、現地の大使館におきましては、少なくとも現地の各紙、各マガジン等は恐らく目を通しておくことが必要じゃないか、特に天皇陛下、皇后陛下、両陛下の御訪英を前にしておりますし、また、ことしは日本における英国年、こういうような年で、日英間が非常に大きく進展をさせていかなければならないこういう時期におきまして、このような記事を掲載されるということは甚だ遺憾のきわみでありますし、またそれを見落としておったとすれば、これまた、まことに遺憾千万なことではないかというふうに思います。  ただ、弁解するわけではありませんが、ことしはいろいろサミットの問題、閣僚そして首脳会談あるいはまたこれから参ります両陛下の御訪英等々、恐らく大使館もてんてこ舞いの状況じゃないか、あえて申し上げればそういうことだろうと思いますが、しかし、それによって許されることではないかと思います。  したがいまして、こうした事態が二度と起こらないように細心の留意を払って、少なくともそれぞれの地域における報道機関の報道というものについては目を皿のようにして、やはり一つ一つ我が国に対する記事というものは見落としてはならぬことじゃないかと思っております。  今回、これに対して、おくればせでありますが、抗議を申し込んでおるわけですが、今委員指摘のように、それに対する御返答もなかなか、謝罪広告を再びということになっておらないようでございまして、したがって、これに対してどういう対抗手段が講ぜられるのか、これはひとつ研究していかなければならぬと私自身は思っております。
  91. 東祥三

    ○東(祥)委員 インディペンデント紙は謝罪広告を出さないということですけれども、では、それに対して日本政府としては、外務省としてはインディペンデント紙に対し抗議をしているという旨を当然マスメディアに流されていると思いますが、この点についてどうなのか。  さらにまた、こういう記事が、写真が載り、そして、それに対して日本政府として明確なる抗議文をインディペンデント紙に出しているということをイギリス政府にも明確に知らせると同時に、イギリス政府としてこの問題に対してのコメントを引き出す必要性があるのではないのか。この点に対してどのようにお考えになるか、外務省の御所見を伺いたいと思います。
  92. 西村六善

    ○西村(六)政府委員 インディペンデント・オン・サンデー紙の編集長から、二十一日でございますけれども、林駐英大使に対しまして、インディペンデント・オン・サンデー紙としましては、天皇陛下を犯罪者と同列に並べる意図を持っていたわけではなく、日本の人々が、我々が意図していなかった意味合いを読み取られたことにろうばいしている、このような誤解を引き起こしたことは申しわけないという趣旨の書簡が参っております。  この書簡につきましては、我が国、我が方といたしましては、イギリスにおきまして、在英日本大使館のプレスリリースの形でイギリスにおいて公表する手だてにしております。それからまた、我が国におきましては、本日、この手紙の書簡全文を公表いたした次第でございます。  それから、イギリス政府日本政府の立場を申し述べるべきではないかという御指摘でございますけれども、まさしくその点も昨日の段階でいたしておりまして、それに対しましてイギリス政府は、英国では報道の自由が確保されているけれども、インディペンデント・オン・サンデー紙の今回の記事は、イギリス政府としては支持しないという意思を、そういう立場を明確に改めていたした次第でございます。
  93. 東祥三

    ○東(祥)委員 最後の部分ですが、イギリス政府はインディペンデント紙と立場をともにしない、それはだれに対して言っているのですか。もし日本政府であるとするならば、それだけではなくて、私が申し上げているのは、イギリス政府のそのコメントを在イギリスのマスメディアに流すべきではないのか、それを日本政府として要請すべきではないのか、この点についていかがですか。
  94. 西村六善

    ○西村(六)政府委員 今のイギリス政府の発言は、我が方日本大使館の上級館員に対して行われました言明でございます。今先生がおっしゃられましたように、その言明を外部に対して公表するようにイギリス政府に対しまして働きかけをしたり、話し合いをいたしたりいたそうと思っております。
  95. 東祥三

    ○東(祥)委員 次に、インドネシア情勢でございますが、新大統領就任関連した問題については後ほど述べますが、まず初めに、前回、海上保安庁長官にここの委員会に来ていただいておりましたが、時間が足りず質問することができませんでしたので、その点から始めさせていただきたいと思います。  今週末か来週初めに海上保安庁の巡視船二隻が現地インドネシア近海に到着するということを伺っておりますが、邦人救出のための巡視船を海外に派遣するということは今回が初めてであると理解しておりますけれども、まず、基本的な問題でございますが、今回の巡視船派遣の法的根拠についてお聞きしたいと思っております。  海上保安庁に与えられている任務というのは日本国の沿岸警備だと思いますけれども、海保法第五条十七号に官庁間協力の規定がある。政府はこれを派遣の根拠にしていると聞いております。海保は海難救助や離島の急患輸送などをふだんからやっておりますけれども、他国の海域内で巡視船や搭載されているヘリが活動することは、この規定で可能だと政府は思われるのかどうか確認したいと思います。  海外とりわけ他国の領域、水域内における邦人救出任務また権限は海上保安庁に与えられていると思っているのか、その法的根拠はどこにあるのか、この点について、海上保安庁でいいのかな、相原さん、よろしくお願いします。
  96. 相原力

    ○相原政府委員 お答え申し上げます。  今回の邦人救出の任務を帯びました巡視船の派遣につきましては、基本的には在外邦人の保護に関する事務を所掌しております外務省からの要請を受けまして、基本的には、関係行政庁に対する協力を定める海上保安庁法第五条第十七号の規定に基づいて海上保安庁の任務の範囲内で行うものでございます。根拠としては、そういう海上保安庁法の五条第十七号の規定に基づくものであるというふうに考えております。
  97. 東祥三

    ○東(祥)委員 一九八三年三月当時の海上保安庁長官は、参議院の運輸委員会において、巡視船を邦人救出に活用できるかどうかということに関して、「直接当庁の任務ではないと考えております。」このように答弁されている。  そうすると、邦人救出は海保の任務ではないと言っておりますけれども、今回、二隻派遣したという事実によって、政府の考え方が変わったのかどうなのか、この点についていかがですか。
  98. 相原力

    ○相原政府委員 お答えいたします。  御質問の昭和五十八年の、これは参議院の運輸委員会での、当時の海上保安庁長官の答弁との関係でございますが、御指摘の答弁につきましては、この趣旨は、在外邦人の保護に関することは一義的には外務省の所掌事務であり、これに関する邦人の輸送はその意味で海上保安庁の直接の本来の任務とは言えないという旨を述べたものでございます。  一方で、外務省の協力要請を前提としまして、外務省が行う邦人の保護に必要な輸送手段の一つとして、海上保安庁の巡視船を活用するといった観点からの邦人の輸送を行うことは、海上保安庁の任務の範囲内であるというふうに考えているところでございます。
  99. 東祥三

    ○東(祥)委員 要するに、別に考えが変わったわけではなくて、今回は官庁間協力、外務省からの要請に基づいてやったのだ。であるとするならば、外務省が自衛隊、防衛庁に要請して自衛艦を出すという根拠にもなり得るものになってしまうのではないですか。この点はいかがですか。
  100. 相原力

    ○相原政府委員 私の立場からでございますので、海上保安庁法の規定の考え方を申し上げさせていただきたいと思いますが、先ほど先生の御指摘にもございました海上保安庁法の第五条第十七号の規定で協力規定があるわけでございます。  この第十七号の協力規定、これは関係行政庁との間における協力規定、協力、共助の関係の規定でございます。この規定の趣旨でございますけれども、海上保安庁は船舶、航空機多数持っておるわけでございまして、海上保安庁が管理運営いたします船舶、航空機などを他の省庁の業務に利用させるという観点、そういう観点から、当庁が保有する船舶等の利用が必要な事務を所管する行政機関を広く含んだような形で協力をするという趣旨の規定でございます。そういう意味で、海上保安庁法五条十七号に基づく協力はそういう広い意味での協力ができるというふうに考えているところでございます。  なお、自衛隊法については、ちょっと私、お答えしかねます。
  101. 東祥三

    ○東(祥)委員 国際法的に言うと巡視船というのは準軍艦に見られるわけですよね。そういう意味では極めて法的根拠の薄い、それによってその場しのぎで今回二隻を派遣したという印象は免れないと思います。外務省にお聞きしますが、外務省の要請に基づいて防衛庁の持っている自衛艦を動かせる何か法的根拠、今海上保安庁が巡視船を派遣したのに相当するようなものというのはありますか。
  102. 内藤昌平

    ○内藤説明員 自衛隊につきましては、自衛隊法百条の八に「在外邦人等の輸送」という規定がございます。この際、ここには、邦人の輸送の依頼が外務大臣からあった場合には、「航空機による当該邦人の輸送を行うことができる。」と明記されております。したがいまして、この範囲内で輸送が行われると承知しております。
  103. 東祥三

    ○東(祥)委員 その場合は、艦船は入っていないわけですね。
  104. 内藤昌平

    ○内藤説明員 入っておりません。
  105. 東祥三

    ○東(祥)委員 今回の巡視船二隻を派遣した法的根拠は極めてあいまいであるということを指摘しておいて、次の問題に行かさせていただきます。  今回、インドネシアは新大統領を迎えて、今後どのような推移をたどるのか。先ほどの外務大臣の御答弁にもありましたけれども、その推移を見ていかなければならない、そういう状況下にあると思うのですが、問題は、アメリカと日本インドネシア、とりわけスハルト大統領に対する外交姿勢といいますか、それが今回際立った形で明らかになったのではないのか、このように思っております。  それは、アメリカはスハルト退陣に極めて積極的であったのではないのか、このようにも言われている背景として、オルブライト米国務長官が二十日に同大統領辞任への期待感を表明した直後に、スハルト大統領の退陣表明が発表された。余りにもそのタイミングがよ過ぎるのではないのか、このような印象を私は持ちました。また、これまで米国はインドネシアに対して積極的に発言を繰り広げていた。そういう意味からいたしましても、スハルト大統領退陣と、そしてアメリカとのかかわり合い方が、いろいろと議論されている背景にあるのではないのか。  それに対して日本は、スハルト氏を何とかして支えて、社会的混乱を起こさないよう政権交代する道を探っていたのではないのか。バーミンガム・サミットにおいて橋本首相は、スハルトを助けるとか助けないといった問題ではなく、世界経済のためにいかに対応していくかだ、このように主張されていた。  私は、今回の新大統領就任によって橋本総理表明されたこの表現に、物すごい関心を持っているわけでございます。  橋本総理は何と言ったのかというと、インドネシア国民改革努力に、引き続きできる限りの協力をしていきたい。ここで関心を引くのは、引き続きできる限りの協力をしていきたい、つまり、ここで言っていることをそのまま直接理解いたしますと、インドネシア国民改革努力国民、つまり民衆による民衆の改革努力に対して前向きに進んでいきたい、そこに、なおかつ引き続きと言っているわけですが、今まで日本政府というのは、インドネシアにおける民衆に対する、改革努力あるいはまた改革運動なりそういうものに積極的に支援してきたことというのは一体あったのか。私には、にわかにはそういうふうには思えない。それは、先般インドネシアに対し、橋本総理がぽんと飛んでいって、スハルト大統領と個人的な関係を見せつけたり、それは現体制を維持していくという、そういう視線でしか私たちには映らないわけでございます。  そうすると、先ほど玄葉委員が質問されていたことに関連してくるわけですが、改革努力というのは一体具体的に何を意味するのか。表向き見える体制を維持していくための、例えばIMF体制に対して日本がどういうふうに関与していくかだとか、そういうこととは別に、今回の新大統領就任し、なおかつ多くの不満な国民たちが、その体制の変換なりそういう動きをしたときに、日本政府はどのようなスタンスで臨んでいくめかという問題を突きつけているのではないのか、このように私は理解するわけでございますが、非常にあいまいな表現であるというふうに言わざるを得ない。  そういう意味におきましては、日本政府の外交姿勢、そういうものを、ある意味で明確にすべきところが明確にできない、そういうものがあるのではないのか、このように私は思うのですが、外務大臣、この点についてはいかがでしょうか。
  106. 小渕恵三

    小渕国務大臣 今回、民主的手続によりまして、新しいハビビ大統領のもとに内閣を改造して進んでいくということでありまして、その中には、当然のことながら、国民の輿望にこたえていかなければインドネシアの発展はないということだろうと思いますので、そういった意味で、日本政府としては、この政権がきちんとした対応を内外に向かって働きをしていくということを見守りつつ、それぞれの懸案に対して日本政府としてはおこたえをしていくというのが当面の対応ではないか、このように思います。
  107. 東祥三

    ○東(祥)委員 つまり、現段階においては、日本インドネシア政府に対する外交方針といいますか、それは全然変わらないということをおっしゃっているのですか。
  108. 小渕恵三

    小渕国務大臣 要するに、新しく生まれ変わろうとして努力をされておられると思いますので、その動きを十分見きわめて対応するということでございますから、お尋ねをそのままに受けとめれば、日本政府として、インドネシアそのものを体しての協力でございますから、従来のそういう対応は変わらない、こう思っております。
  109. 東祥三

    ○東(祥)委員 インドネシアは変わろうとしているかどうかというのはまだわからないわけですね。まさに新大統領スハルト大統領の側近中の側近であり、また、大臣初め外務省の皆さん方が、今後どういうふうになっていくのかということを見守るということは当然でございますが、もう既に、新大統領が発表になってから、国民のある方々からは、これでは満足できないという動きも出てきている。それが混乱状況にいくかどうかということは見守らなければならないわけでございますが、私が申し上げているのは、日本というのは民主化支援ODAの中にもあるわけでございますが、対インドネシアに関しては民主化措置、これを促進するという形での関係というのは明確にしてこなかったのではないのかということを申し上げているのです。  したがって、今回の新大統領が生まれ、そして今後どのような展開をしていくかということは、当然我々は見守っていかなければいけないわけでございますが、そこで問題になるだろうというそのポイント一つは、いかに民主化が促進されていくのか。また、それに対して、促進させていくために日本政府として一生懸命できる限りの協力をしていくというスタンスに立つのか、その問題をぼやかした形で支援をしょうとしているのか、このポイントを私は明確にしてほしい、こういうことを申し上げているわけです。この点について、いかがですか。
  110. 小渕恵三

    小渕国務大臣 合法的にあらわれた政権と、それに民主化の動きというのは、それとともに助けていって、力を合わせてそれぞれの国の発展に努力をしていくという立場なのか、民主化という名のもとにおける政府を、これはインドネシアということではありませんが、一般論的に、政府を、何といいますか壊していくという動きかどうかということですね、この辺をやはりよく見きわめていきませんと、一般的に民主化という言葉の中に、ある意味で合法的な手段によらざることによってその政権を樹立したいというようなものもございます。  したがって、インドネシアにおいての民主化というものも、そういうことだとは思いませんけれども、どのように政府と、そしてそうした民主化を標傍されている方々と共同の力によって政権を、国家を運営していこうということになるかどうかという、その見きわめも必要な点があるのではないか、こう私は考えます。
  111. 東祥三

    ○東(祥)委員 外務大臣が、私の言っていることも含めた上でどういうふうに答えたらいいのかということで非常に苦労されていることがわかると思うのですが、僕は明確にしなくてはいけないと言っているわけです、提案しているのは。  あいまいもことしているのではなくて、今回、スハルト大統領が記者会見において、改革委員会設置、それによって新しい選挙をやろうと。これは白紙に戻ってしまったわけですね。それでも、自分が退陣することによってハビビ大統領就任させる、就任した。そして、それによって国民が満足感を表明しているのかといったならば、直ちに不満を露出させているではないか。  そうすると、考えられることは、予想されることは、何らかの形で政治改革なり、あるいはまた民主化措置というものをとらなければならないのではないのかということは、にわかに想定することは可能なんじゃないのか。そういう動きに対して、日本政府は、支援していくスタンスに立つのか、そういうこともひっくるめた上で、そういうこと、は今はまだまだ明確にすることはできない、とにかく状況を見守らなくてはいけない、どっちなんですかということを言っているわけです。  外務大臣は、今おっしゃっていることを私が理解する限りにおいては、その前者の部分というのは今明確にすることはできない、それは後者だ、とにかく状況を見守って、その場その場で判断していきましょう、そういう印象を私は受けるわけですが、外務大臣、いかがですか。
  112. 小渕恵三

    小渕国務大臣 なかなかこの答弁の難しいことは、今ハビビ政権が誕生して、ハビビ政権自身も政治改革を含めて努力をしていくという立場を宣明して内閣を樹立しておるわけでございますから、その努力を我が政府としては認識をして協力をしていくということでございますが、一般的に、インドネシア国民改革努力、こういうことになりますれば、それは我が国としても引き続いて協力をしていくということだろうと思いますが、質問者の趣旨が、改革勢力といいますか、あるグループとかそういうことをお考えになっておられるのか、一般的にこのインドネシア国民改革を支持していくかと言われれば、これは当然のことと答弁を申し上げることだと思います。
  113. 東祥三

    ○東(祥)委員 大変難しい答弁だと思いますけれども、一番初めに引用させていただいたとおり、橋本総理が使っている言葉で言っているのです。インドネシア国民改革努力に、引き続きできる限りの協力をしていきたいと。  スハルト体制支援することは日本政府というのは一生懸命やってきたと思いますが、スハルト体制下にいる国民の具体的なその改革努力、こういうものに対して一体何をやってきたのですかということを僕は聞いたわけです。それが非常にあいまいだ、そういうことはやってきていないのじゃないのか、にもかかわらず、国民改革努力に引き続きと言っているのですよ。前に、じゃどういうことをやってきたんだろう。  それは、内政干渉という非常に難しい、定義もなかなか難しいと思うのですけれども、内政干渉に受け取られたくないという形で、日本政府というのは一生懸命インドネシア政府との間に二国間関係をつくり上げてきたわけです。だから、そういうことを恐れていて、またあいまいもことさせていれば、結局今までと同じような茫漠としたものになってしまうのではないですか。  しかし、橋本総理が新大統領就任に対してこういう言葉を使っているわけですから、その意味するところを明確にしてください、そうであるならば、基本的な考え方は明確になります、それがいいか悪いかは別として、そのことを明確にしない限り、何を言っているかわからないじゃないですかと。僕自身の印象は、これはインドネシア国民の民主的な努力、そういうものに日本は一歩踏み出そうとしているのかな、こういう印象を持っていますよということですよ。それが違うというならば違うでいいのですよ。いかがですか。
  114. 阿南惟茂

    阿南政府委員 私からお答えするのも僭越かとも思いますが、今先生のおっしゃいました橋本総理の御発言、国民改革努力に、引き続きできる限りの支援をしていきたい、これは何も政府国民かという区別のもとで言っておられるわけでは全くないわけでございまして、インドネシア政府経済構造改革とか改革を進めていく中で、国民にもその負担がかかる、よく最近言われます社会的弱者にしわ寄せがいく、そういうものもひっくるめて国全体で改革努力をしている、それに日本は引き続き協力をしてきた、対インドネシア支援策が典型的な例でございますが、そういうものを今後とも引き続きやっていきたい、こういうことを言われたわけで、あえて、政府を支持してきたのか国民を助けてきたのか、こういう区別をして発言されたわけではないと思うのでございます。
  115. 東祥三

    ○東(祥)委員 インドネシア関連して、もう一つ。  日本の企業がインドネシアに多額の投資をしていると思います。一説には一兆七千億円とも、それはドルなのか円なのかわかりません、基本的に円なんだろうと思うのですが。インドネシア経済が今後回復し、よくなっていただくことを私も期待するわけですが、にわかにはそのような期待が実現されるとは思えない。もし、さらにインドネシア経済が悪化していった場合、この多額な投資が行われていることに対して、日本政府として何らかの措置あるいは救済措置を、例えば投資保険を作動させるのか、インドネシアとの間には投資保護協定は結ばれていないと思いますけれども、そういう問題に対して、何をお考えになっているのか、どうされようとしているのか、この点についてお聞きしたいと思います。
  116. 阿南惟茂

    阿南政府委員 インドネシア経済改革、回復と申しますか、これに対する支援は大変難しい、大規模な施策を講ずる必要があるわけでございまして、一つIMFの方から当座の通貨金融危機に対する手当て、これに日本も協力をしていく。もう一つは、インドネシアの場合、インドネシアの各企業、これまた内訳を見ますと実は日系企業が多いとか、いろいろそういうことがございますが、短期債務を物すごくたくさん抱えている。これの返済が、短期でございますからすぐ企業の経営を圧迫する。これをどういうふうに解決していくか。  今、インドネシア側もそういうものの特別な委員会をつくって、まずは短期債務の仕分けをして、各国別に債権者と協議をするということをやっておりますが、そういう個々の問題に的確に対応するという形で、先生が御指摘になりましたようにインドネシア日本企業がこうむるであろう大きな損害等を最小限にする努力をしております。
  117. 東祥三

    ○東(祥)委員 直接的な答えは得られないのですけれども、多くの日本企業の中でも、不良債権額の中に海外で焦げついてしまっているものをなかなか入れていない、こういう指摘もあるわけでございます。そのうちの一部はインドネシアに投資している額があるということも指摘されているわけでありまして、いずれ、インドネシア経済がいい方向に行けばいいわけですけれども、そうではなくて、悪い方向に行ったときにこの問題に直面せざるを得なくなるということだけ指摘させていただいて、あっという間に時間が過ぎ去って、残りの問題はまた別の機会にぜひさせていただきたいと思います。  ありがとうございます。
  118. 中馬弘毅

    中馬委員長 古堅実吉君。
  119. 古堅実吉

    ○古堅委員 本日のしんがりの質問となりますが、私は、在沖海兵隊のインドネシア軍訓練を最初に質問したいと思います。  今回のインドネシア事態指摘しておきたいのは、インドネシア国軍が国民運動に対して武力を使用し、犠牲者を出す弾圧を行ったという問題です。インドネシア国軍は、国民弾圧という点では、世界の中でも最も訓練された軍隊と言われております。この軍隊を訓練してきたのが在沖米軍です。  アメリカのジャーナリストであるアラン・ネアン氏が、米誌ネーション三月三十日号に、在沖米軍インドネシア国軍に対する訓練の実態を明らかにしておりますが、その訓練の中心はインドネシア国軍の陸軍特殊機動部隊のためのもので、狙撃技術、交戦、偵察、心理作戦などから拷問、拉致、暗殺などというものであります。  五月九日の産経によれば、沖縄トリイ基地所属の陸軍第一特殊部隊群が五月八日にインドネシアから沖縄に帰還したと伝えられているように、在沖米軍インドネシア軍の国民弾圧の教育訓練に当たっていたことが明らかで、これはまさに重大問題と言わねばなりません。  大臣、在沖米軍インドネシア国軍に国民弾圧の訓練を施すことがどうして日米安保条約のもとで許されるのか、これは安保条約の建前にも反する許せない行動ではないか、最初にその点を伺います。
  120. 高野紀元

    高野政府委員 在日米軍日本の国外において第三国との合同演習等を行うことは、かなり多くの国と年次計画に基づいて実施されていることは御承知のとおりでございます。そういう形で在日米軍が演習に参加する、ほかの国と共同演習をする等の任務につくことは、日米安保条約上何ら妨げられていないというふうに考えております。
  121. 古堅実吉

    ○古堅委員 全くひどいと言うしかないですね、今の答弁は。  三月二十三日付ニューヨーク・タイムズ紙は、その社説で、インドネシアの悪名高い残虐な治安部隊を米国が軍事訓練することは、議会が数年前に人権の見地から明確に禁止していた危険な考えであると厳しく批判しています。また、米議会でも同じ立場から厳しい批判が展開され、いろいろな動きとなっております。  一方、インドネシアの著名な野党政治家であるメガワティ・スカルノ氏は、去る三月、クリントン米大統領あてに手紙を送り、インドネシアの人民がより民主的なシステムをつくり上げようとしているそのときに、米軍は社会を統制する致命的な方法で軍への訓練を行っている、心理作戦訓練、都市型地形訓練、狙撃訓練などいずれも人民抑圧型のものであると、米軍の関与に対して厳しく抗議しています。  このようなインドネシア国民弾圧の訓練が在沖米陸軍第一特殊部隊群によって行われてきた、そのことを問題にしているのです。それは、日本極東の平和と安全を守るという安保条約の建前からいっても、認められないことでありませんか。、大臣、いかがですか。
  122. 高野紀元

    高野政府委員 まず、米国が、インドネシアを含めまして第三国との関係で、それぞれの軍隊との間でいかなる演習をするかということについての種々の意見があるということについて、私どもとしてコメント申し上げることは適当ではない、差し控えさせていただきたいと思いますが、我が国に駐留する米軍が、先ほど申し上げましたように、この地域を含めまして、いろいろな形で合同演習をするということはございます。そのこと自体は安保条約との関係で何ら問題はないということはこれまでも申し上げているところでございます。  米軍インドネシア軍が合同の軍事演習に参加した例としては、例えばの例として、九五年八月に豪州で行われた、カンガルー95という名前の演習がございますが、豪州、米国、英国、カナダ、インドネシア、マレーシア、シンガポール、PNGが参加した演習がございます。
  123. 古堅実吉

    ○古堅委員 五月六日開かれた米上院歳出委員会軍事小委員会の公聴会で、プルアー太平洋軍司令官は、アジア太平洋地域の安全と安定に影響を与える最重要政策一つとして、東南アジア諸国の金融危機から来る国内不安を挙げ、米軍がそれらに関与していくことが長期的に見れば米国の戦略的利益につながると指摘して、軍事的視点から見ると、軍事教育訓練計画、特にインドネシア、タイ、マレーシア、フィリピンに対する軍事教育訓練計画は、将来の指導者たちに影響力を持っていく上でも重要な手段であるというふうに述べています。金融危機がつくる国内不安に軍事力で対応するための教育訓練だ、こういう証言にほかなりません。  こんなことを容認していいのですか。大臣、いかがですか。
  124. 高野紀元

    高野政府委員 米国が、我が国を含めてアジア太平洋地域に展開しているということは、この地域の平和と安定の維持に寄与しているということは、我が国を含めて、この地域の各国がこれを認めているところでございます。その過程、その一環として、米軍がいろいろな形でそれぞれの国の軍隊と交流し、信頼を深め、訓練をするということは、当然あるというふうに私どもは理解しております。
  125. 古堅実吉

    ○古堅委員 こういう政治問題を含め、大臣みずから答えるべきですよ、何一つ答えられないのですか。  政府は、沖縄県民には日本を守るためと言って基地を押しつけてきたが、実際はこうした内政干渉をやっている。沖縄が他国の内政干渉の基地にされるなど、県民の立場からは到底認められるものではありません。  それだけではないのです。嘉手納基地の第十八航空団のF15戦闘機十八機と空中給油機数機が、十九日に、イラクに出動したことを政府は承知していますか。
  126. 高野紀元

    高野政府委員 御指摘のような、米軍の湾岸地域における軍事行動に関するものを含めまして、米軍の運用の一々について、私ども、その詳細を承知する立場にはないということでございます。
  127. 古堅実吉

    ○古堅委員 第十八航空団の広報局副局長であるダトゥコ中尉が、九六年四月に、第十八航空団の任務は太平洋全域をカバーし、制空権を掌握することにあるということを明らかにしています。今回の行動は、ソ連崩壊後の嘉手納基地の任務に基づくものであります。それを知らないというわけにはいかないのではないですか。もう一度お答えください。
  128. 高野紀元

    高野政府委員 私ども従来から申し上げておりますとおり、我が国の施設・区域を使用して、米軍極東の平和と安全の維持に寄与し、あるいは我が国の安全に寄与するということで基地の使用を認められているということでございます。  そういう中で、世界的な米軍の運用、再編成ということで、我が国に駐留する米軍に関しましても、それぞれの部隊、艦船がその時々の必要に応じて移動し、再展開するということはあり得る。それ自体は安保条約上認められるものであるというふうに考えております。
  129. 古堅実吉

    ○古堅委員 三沢基地からは、四月末に、F16戦闘爆撃機十二機がイラクに出動しております。これでイラク上空の飛行禁止区域に実施されるサザンウォッチ作戦では、嘉手納基地のF15戦闘機が制空を担当し、三沢基地のF16戦闘爆撃機が地上攻撃を担当して、イラクに軍事威圧を加えるという態勢がしかれている。  在日米軍がイラク上空の監視作戦の主役を演じることになったが、これは日本極東の平和と安全の維持を目的とするとしている安保条約にも抵触する行為ではありませんか。安保を是認する政府の立場であっても、米軍に抗議すべき代物ではありませんか。今度は大臣、お答えください。
  130. 小渕恵三

    小渕国務大臣 我が国の施設・区域を使用する米軍部隊が、その抑止力をもって我が国の安全と極東の平和と安全の維持に寄与していることは明らかでございまして、このような実態がある以上、米軍部隊が一時的に湾岸地域に派遣されることがあっても、日米安保上何らの問題はないと認識をいたしております。
  131. 古堅実吉

    ○古堅委員 ひどい話です、本当に。アメリカの高官が来てここで答弁に立っているような、そういう感じさえ抱く、本当に許せないと申さねばなりません。サザンウォッチ作戦の主力として在日米軍が参加している、まさに中東作戦を主任務とされていることは明白です。  先日も、本委員会指摘したように、海兵隊は、北部訓練場を新しくジャングル戦闘訓練センターへと機能強化を行っているだけではなく、インドネシアの内部干渉の足場にする、また嘉手納航空隊はイラク作戦の中心的役割を担わせるなど、日本防衛とは無関係米軍基地の実態を如実に示すものであります。  大臣、こういうことを押しつけておいて、沖縄県民が米軍基地に対する理解を深めることができる、こうお考えですか。
  132. 小渕恵三

    小渕国務大臣 沖縄県の基地が存在することによりまして、多くの方々に御迷惑をかけておることは承知をいたしております。しかしながら、日本全体の安全保障のためにまた大きな役割を果たしていただいていることにも、感謝をいたしておる次第でございます。  そういった意味で、日米の安全保障条約によりまして、そうした基地がその機能を整えておられることについて、政府としては、これは政府の任務として考えておるところでございます。
  133. 古堅実吉

    ○古堅委員 時間が参りましたから終わりますが、日本国憲法にはもちろん、日米間で結ばれた日米安保条約についてさえも説明のできないような、こういう内容の問題を指摘いたしました。  県民、国民を欺きながら、アメリカ言いなりの基地国家づくりを進める政府のそういう態度に対しては、県民の怒りは募るばかりだということを厳しく申し上げて、質問を終わります。
  134. 中馬弘毅

    中馬委員長 次回は、公報をもってお知らせすることとし、本日は、これにて散会いたします。     午後四時四十七分散会